姫と王と鬼さんとモブA(全員訳アリ) (一途一)
しおりを挟む

何か起こる予感(100%的中)

三億円事件の番組を見てセドリック三十九年型が欲しくなりました。

お楽しみ下さい。


「君、ここ間違っているよ。直しておいてくれるかな?」

 

「すいません…直して来ます。」

 

「君…最近ミスが多いぞ?彼女に振られたのをそんなに気にしていたら

他の事で心が持たないぞ?」

 

「そうですよね…」

 

僕、五能廻間は最近彼女に振られた。

何でそんなに気分が落ちるのかって?そりゃあ、初恋だったからだ。

しばらく付き合っていたんだが、『五能くん、普通過ぎて毎日に面白味がない。』

何て言われて振られれば、誰だって落ち込むだろう?(そうだと信じたい。)

そんな感じで、失恋とかじゃ無くて、“普通過ぎて、何の面白味が無い男”だと思われているのが傷ついたのである。

 

 

 

 

「なあ、どうしたら“普通過ぎる男”を脱却出来ると思う?」

 

「またその話か…これと同じ話もう何回もしてるぞ?」

 

今話かけているのは同僚兼親友の、田中である。

こいつ、名前は普通過ぎるくらいなのに、そのルックスで社内の女性を虜にしているという噂が後を絶たない。

体交換してくれよ。

 

「ああ、じゃああれだ、あそこ行ってこいよ。『封じ山』」

 

「どこだそれ?」

 

「富士山の裏にある、日本屈指のパワースポットって言われてる場所だよ。

色々噂が絶えない場所だよ。例えば、『富士山』と、『封じ山』って、読み方が似てるだろ?

それで、富士山に神の力があるなら、封じ山には妖怪の力があるんじゃないか、って。」

 

「何だそれ、只の噂話だろ?」

 

「まあまあ。案外面白い発見があるかもだぞ?

今度の休日にでも行ってこい。」

 

「うーん…何かありそうで怖いな…」

 

「怖く無いって。ほら、そこに行ったら妖怪の力、とか手に入るかもだぞ?」

 

少し間を空けて、

 

「それはちょっと気になる…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

というわけで、来てしまいました封じ山。

 

田中は、『一番のスポットは封じ洞窟っていう色んな妖怪を封印している場所らしいぞ。実際は只の洞窟らしいがな。』と言っていた。

まずはそこを訪れてみよう。

 

 

洞窟の中は、思ったよりも広かった。

鍾乳石などもあって本格的に洞窟って感じだ。

しかしこの洞窟、ずっと何かに引き寄せられている気がする。本当に何か封印してるのか?

このまま引き返した方がいいんじゃないかとも思いつつ、つられて動いてしまう。

 

そして着いたのは、何も無い壁だった。ここで引き寄せられることは無くなった。

一体何があるのだろうか。

壁を伝って行くと、何やら模様を見つけた。この模様は…星?

気になってそれに触れてみる。すると、壁が音を立てて奥の方に崩れた。

怖くて閉じた目を開けてみると、手前に一つ、奥には三つの石碑の様な物があった。

 

「何だ…これ?」

 

手前の石碑は何も書いても無い只の石の棒に見える。

 

気になるのは奥の棒である。

 

1番右の石碑には、『姫』

 

2番目の石碑は何故か十字架の形をしていて、真ん中に『KING』と書いてあった。

 

3番目の石碑には、四文字で『鬼子母神』の文字が。

 

周りは手付かずで、苔が生い茂っている。

 

とんでもないものを見つけてしまったなと思いつつ、1番前の石の棒を見る。

三つの特徴的な物の前にある。何の変哲もない普通の石の棒。

少し自分の様に思えて来た。

 

 

 

「石の棒だけに意思の棒。ってか。」

 

 

 

 

そう言って石の棒に触れると、急に目の前の石碑達が光り出し、この空間が光に包まれて行った。

少しして目を開けると、そこには3人の人の姿が。

 

一人目はまるで日本のお姫様の様な服装をした綺麗な女性。得体が知れない。

 

二人目は紳士服を着た背中に小さめの蝙蝠の羽の様なものが生えている青年。吸血鬼かな?

 

三人目は額に一本の長い角が生えている一人の中学生くらいの身長の女の子。鬼っぽい。

 

一人目はともかく、二人目と三人目は絶対にやばい。

本当に何かが封印されているとは思わなかった。

三人が口を開く。

 

 

 

 

 

「其方が私を助けてくれたのですか?」

「貴方が私を助けてくれたのですか?」

「お前が私を助けてくれたのか?」

 

 

ここは丁寧に対応しておかないと後々大変なことになる。

 

 

「助けたっていうか、勝手に出て来ただけですよ。僕は何もしてません。」

 

 

「そうか…だが、其方からは割と大量の妖力が発せられてるぞ。体は人間なのに。」

 

「そうですよ。しかもここ貴方以外の人いないじゃないですか?」

 

「とういことはお前だ。」

 

 

 

「知りませんよそんなの…僕は帰りますね。」

 

ここは帰るのが賢明な判断のはずだ。なんか凄い顔の整った三人が目の前にいるが、得体の知れない物程危険な物は無い。

そうして帰ろうとすると、

 

「待ってくれ其方、今はいつじゃ。」

 

「今?今は令和ですよ。」

 

「令和、とういうのは何じゃ?」

 

「年号ですよ。ああ、西暦で言うと今は2019年ですね。最近変わったばっかりですけどね。」

 

「2019年…私が封印された時から200年は経ってますね。」

 

「じゃあ、帰りますね。僕。」

 

「待つのじゃ。」

 

「え?」

 

「その…家、泊めてくれぬか?」

 

「…?…!確かに…私からもお願いします。」

 

「私も頼む。」

 

「何故僕があなた方を家に泊めないと行けないんです?」

 

お姫様が少し考える仕草をして、

 

「それは、ここでは我らの存在が段々薄れて行くからじゃよ。

其方の様な妖力を沢山持っている者の近くにいないと我らは消えてしまうのじゃ。」

 

「皆さん強くないんですか?」

 

「「「いや、強い。」」」

 

「…じゃあ何で消えてしまうんですか?」

 

「強さと存在出来るかは違うのじゃよ。自分の強さが皆に分かるから存在出来る。皆そんな存在なんじゃよ。」

 

「私は違いますがね。」

 

「吸血鬼さんは何故違うのですか?」

 

「私は人間との混ざり物だからですね。私は妖力の無い所では力が弱くなるだけで、普通に行動出来ます。」

 

「そんな訳で、泊めてはくれぬか?」

 

「うーん…」

 

食費、水道代、ガス代…ただ、泊めないと二人の存在が消える…

泊める他ないじゃ無いか。

 

「しょうがないですね…但し、しっかり家事とかして貰いますからね。」

 

「おまかせ御用じゃ!」

 

「じゃあ行きましょうか。」

 

「おっと…その前にやらないといけない事があるな…」

 

そう言うと鬼の少女が拳を振り上げて、1番前の石碑を殴り、砂の様に霧散させた。

少女は付いた石の破片を振り払った。

「あースッキリしたこの忌々しい封印石め。

じゃあ、行くか。」

 

 

冷や汗が止まらない。

自分は内心、取り返しのつかない事をしたと思った。

だけど、もう後戻りは出来ない。

汗を手で拭い、拳を握る。

いざという時に、三人を止めなければならない。

 

 

ボソ…「やってやんよ…」

 

 

「何か仰いましたか?」

 

 

「い、いや…何も。」

 

 

 

 

 

やっぱ無理かも。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

次の日、洞窟の石碑跡が発見、研究チームが派遣されて、調査が行われた。

 

その場所には、妖力の残滓と、足跡があった。

 

足跡の数と歩幅から予想される人数は四人。その内の二人は男性、もう二人は女性である事が分かった。

 

一人の女性は中学生程の身長であることと、一人の男性がスニーカーを履いている事が分かったため、

スニーカーの足跡の男が封印を解いた人間だと断定された。

 

「…以上のことから、ここに偶然、又は意図的に来た人間が封印を解いた可能性があります。」

 

「分かった。如月君。」

 

「皆、よく聞け、これより第二研究院は、この封印を解いた男と、他の三人を追う。

確実に見つけろ。そして、再封印するのだ。」

 

「「「「「了解!!」」」」」

 

 

一斉に研究員が立ち、各々行動し始める。

 

「妖力の追跡はどうだった?如月君。」

 

「残念ながら、洞窟を出た所で途切れていました。ローラー作戦で妖力の残滓を追う事になりました。」

 

「頼むぞ。如月君。今回の作戦の主な目的は“あの姫”を再び封印する事だ。」

 

 

 

 

 

「分かりました。安倍さん。確実に対象の居場所を特定しましょう。」

 

 

 

 

「全ては…この国の未来の為に。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうでしたか?

主は五能ニキが心配で心配で仕方がありません。(ゲス顔)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

鬼さんの見た目は中学生(これ重要)

第二話で御座います。

今回は鬼さんの出番があんまりないですね。


これからの話に向けての踏み台の様な話です。



封じ山からバスなどを乗り継ぎ、家まで帰って来た。

道中、初めて見る現代の物に三人は目を輝かせていたが、今は割愛しておこう。

今は家で三人と自己紹介している。

 

「儂の名前は紫姫。妖怪の国の姫をしておった。読み方は『しき』じゃぞ。気軽にしきりんとでも呼んでくれたら嬉しいのじゃ。」

 

「私の名前はレグエル・アージャー。イギリスで吸血鬼をしていました。半人半妖です。」

 

「私の名前は貫。つらぬきと書いて『かん』だ。力が強いだけの鬼だ。」

 

 

三人とも自己紹介を終えた。次は僕の番か。

 

「僕は五能廻間…えっと、只の会社員…です。」

 

「何でそんなに言い淀むんだ。『会社員』響きがいいじゃないか。」

 

「そうですよ、そこまで躊躇うものでも無いんじゃないんですか?」

 

「そうじゃぞ。どこが恥ずかしいんじゃ。」

 

今の知識がない人達の言葉がグサグサ刺さる。

誤解されても困るし、今の内に説明しとこう。

 

「会社員、と言うのはその企業に勤めている人の事を言うと思うんですが、

その中でも僕は割と下っ端でして…特に誇れる事でも無いんですよ。」

 

「おいおい、そう言うでない。組織において下の者は必要不可欠じゃ。

別に誇ってもいいではないか。」

 

「そうですよ。貴方は誇っていいんです。」

 

 

駄目だ。この人達いい人過ぎる。

このまま何を言っても無駄になる気がして来たので終わりにする。

 

「それにしても貴方の家、大きいですね。」

 

「親が資産家で、今海外に移住してて、この家を譲り受けたんですよ。」

 

「ほう…では何故会社員という立場になったのです?」

 

「何ででしょうね。普通の暮らしも味わってみたい。なんて昔は思ってたんですけどね。

実際なってみると大変でしたね。」

「だけど、この暮らしが楽しいんですよ。会社に出勤して、働いて、夜は仲間たちと呑みに行く。

この暮らしが堪らないんです。それに、僕そこまで教養は無いんで、丁度良いって感じなんですよ。」

 

「そうだったのでしたか…」

 

「まぁ先ずは皆が生活する準備をしましょう。」

 

語りを自分で切って話を始める。

 

「今重要なのは皆さんが着る服です。食料やお金はどうにでもなります。

だけど、生活する為にはまずは服が必要でしょう?流石に貴方達の服装ではお世辞にも日常生活が出来るとは思えませんしね。」

 

「確かにそうだな…」

 

「儂もこの格好じゃ外に出れないのう…」

 

「私はこの服装でもいけますがね。羽さえ隠せればどうにかなります。」

 

「羽を隠したら穴あき服になっちゃわないですか?」

 

「あ、本当ですね。私の分も買わないと…」

 

「じゃあ早速服を買いに行きますか…この家、女性用も男性用も服が余り無いし、それにお下がりを着せる訳にも行きませんからね。

取り敢えず今は仕方が無いので、服を取って来ますね。」

 

「私も行きます。これでも昔仕立てなどをした事があるので。」

 

 

 

クローゼットに着くと、思ったよりとんでもない速さで服が選ばれて行った。

アージャーさんが事前に測って、自分の服、紫姫さんの服を選んだらしい。流石に貫さんのサイズの服は無かった様だが。

どうやら目で見てバスト、ヒップ、ウエストを測ったそうだ。

目で見て測るってどういう事だ。

 

「凄いの〜!めっちゃ似合うのじゃ〜!もうこれで良いのではないか!?」

 

「そうですね…ここまで似合うものがここにあったとは…凄いですね、アージャーさん。」

 

「私もここまで似合う物がこの家にあるとは思いませんでした。」

 

「…私の服は?どうするんだ。」

 

「そうだね。貫さんの服と、皆の分の下着を買いに行きます。」

 

「ちなみに、五能さんは、どこで服を買う予定で?」

 

「ショッピングモールっていう、何て言うんですかね。大きくて、色んなお店が集まっている所ですね。

食料品も、衣服も雑貨も全部そこで揃う様な場所ですね。」

 

「どこにあるんだ?」

 

「そうですね。ここから10分ぐらいですかね…」

 

「じゃあ、行きますか。貫さんはここで待機してて下さい。僕と紫姫さんとアージャーさんで行ってきますから。」

 

「おい、何で置いてきぼりなんだ。」

 

「だって、その服装で行けないじゃないですか。」

貫さんは、綺麗とはお世辞にも言えない格好をしていた。

 

「流石に、その格好で連れては行けないし…それに、こんな小さい身長の人は連れては行けないですしね。」

 

「小さいとは何だ!これでも、お前の十倍は生きているんだぞ!」

 

「小さいのはしょうがないでしょう…取り敢えず、アージャーさんが買う服の大きさを覚えていますから。服の事は大丈夫です。」

 

「ぬぅ…」

 

「じゃあ行ってきますから。大人しくしていて下さいね。」

 

「分ってるよ。」

 

「そう言って手のひらをひらひらする貫さん。」

 

◇◆◇◆

 

ショッピングモールは、久しぶりに行った。

ここに来るのは、実に2年ぶりぐらいである。

目の前では二人が目を輝かせながら歩いている。どうやら初めて見るみたいだ。

 

「面白い場所じゃの〜、屋内に店が沢山集まっておる。」

 

「そうですね。私もここまで大きい建物は見た事が無いです。」

 

どうやら大きさとそこに入っている店の量に感嘆しているらしい。

 

「まずは服屋に行きましょうか。」

 

「そうじゃなー」

 

服屋に着くと、アージャーさんが紙を紫姫さんに渡した。

 

「これ、貫さんの服の参考サイズです。これを使って選んで下さい。」

 

「あれ?付いてこないのかの?」

 

「僕も遠慮します…」

 

「五能も?」

 

「いや、僕女性のそういうお店入るの苦手なんで…」

 

「私もちょっとそういうのは…」

 

「え゛〜儂そんな服のセンス無いんじゃが。」

 

「大丈夫、貴方なら出来ますよ。」

 

「うーん、しょうがないのじゃ。儂が選んできてやろう。」

 

「僕達は夕食の買い物をしに行きましょう。」

 

「そうですね。」

 

そして僕達は食品売り場に向かった。

 

「凄いですね、ここ。新鮮な魚がありますね。」

 

意外にも新鮮な魚に驚くアージャーさん。

そんな感じで楽しく買い物していると、アージャーさんに話しかけられた。

 

「五能さん、ずっと気になっていたんですが、何で敬語なんです?」

 

「そうですね、なんか接してると勝手になっちゃうんですよね。」

 

「少し直した方が良いですよ。ずっと敬語で接しているといつか舐められちゃうかもしれませんし。」

 

「そうですか…じゃあ、元に戻した方が…」

 

「良いですね。元の喋り方がどうか分かりませんけど…」

 

「分かった。いっつも僕こんな感じなんだけど、これで良いかな?」

 

「そうですね。それで良いかと。」

ボソ「それにキャラ被りは避けたいですし…」

 

「え?」

 

「いえ、何も。」

 

そんな感じで買い物を終えると、丁度紫姫さんが服を買い終わった様だ。

 

「二人〜買い終わったのじゃ〜」

 

「どうだった?しっかり買えたかい?」

 

「なんか話し方変わらなかったか?お主。」

 

「元に戻した方が良いってアージャーさんに言われたんだ。」

 

「そうなのじゃな…なんかイメージが180度変わった気がするのじゃ。」

 

「そうかい?これが普段の喋り方なんだが…」

 

「取り敢えず帰って、お披露目会したいのじゃ。ちょっとこれを選ぶのに時間かかったからのう。」

 

「そうだね。一旦帰ろうか。」

 

 

 

 

 

 

家に帰ると、貫さんがだらけていた。

「暇ぁーーー」

 

「取り敢えず夜ご飯作るんで、その間に買ってきた服、着てみたらどうだい?」

 

「おっ、そうだな。」

 

そう言ってトタトタと廊下を駆けていく貫さん。

途中で止まって、

 

「なんかお前喋り方変わったか?」

 

「戻した方が良いってアージャーさんに言われたんだよ。」

 

「そうか…なんかそっちの方が良いな。」

 

「そりゃどうも。」

 

 

 

◇◆◇◆

 

可愛い。只一言に尽きた。

 

いや、恋愛的な奴じゃなくて、こう、母性(父性?)をくすぐられる感じの服装だった。あの頭撫でたくなる感じ。

 

ワンピースの様な白い服に、ベルトをしていて、とても動きやすそうな格好だった。

 

「これは我ながら完璧じゃな…」

そう言って貫さんの頭を撫でる紫姫さん。

 

「凄い…良いと思います。」

 

アージャーさんもびっくりしていた。

 

「なんだお前ら。そんな子供を見る様な目で見やがって。」

 

「子供で…良いのではないか?」

 

「良くないわ!」

 

 

 

本人は気に入ってない様だが。

 

 

 

 

こんな感じで、僕の日常はだんだんと変わった物になってきていた。

 

 

 

◇◆◇◆

 

「どうだ。ローラー作戦は上手く行っているか?」

 

「そうですね。少しですが妖力の残滓が残っているのを確認しています。」

 

「分かった。頼んだぞ、如月君。」

 

「承知しております。」

 

 

 

 

「早く見つけなければ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




廻間ニキが住んでいる家は、洋館を意識して下さると嬉しいです。

貫さんの顔は清楚な感じで、子供っぽい設定なので
母性がくすぐられるのは必然ですね。

まだ2話ですが、精進していきたいですなぁ…

いつ幻想入りさせようか…


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

アージャーさんの過去と魔改造セドリック(39年型)と未来のお嫁さん(笑)

今回はアージャーさん主役です。

凄い考えました(語彙力喪失)


 

「五能さん。」

 

「ん?何だい?」

 

「車が必要です。」

 

「それは…なんでだい?」

 

「私は食品などの買い物へ行く時に車があると便利だと思いまして。」

 

「確かに…だけど食費と服代に更に車、となるとお金が…あ、確かガレージに車があった筈だよ。」

 

「そうですか!」

 

「うーん…そうなんだけど…それが中々に古いやつでね。走れるかどうか…」

 

「取り敢えずガレージに向かいましょう。」

 

「そうだね…」

 

そうして僕らはガレージに向かった。

そのガレージにあったのは、セドリックの39年型。三億円事件のあの車だ。

自分的には両端の丸い二つのライトが特徴的だと思う。

特に関係は無いが。

 

ともかく、これは自分が生まれた時からここにあって、走った所を見た事が無い。

 

「確かに、これだと走れるかどうか分かりませんね。」

 

「そうなんだよ。どうにか出来るかい?」

 

アージャーさんは少し考える仕草をして、

 

「確か、ここには電話機という遠方と通信できる機械がありましたよね。」

 

「あぁ。確かにあるけど…」

 

「一つ、試したい事があります。」

 

「どこに繋ぐんだい?」

 

 

 

「イギリス政府です。」

 

 

 

ん?いまこの人何つった?

「わ、わんもあぷりーず?」

思わずふわふわ英語で聞き返してしまった。

 

 

 

「イギリス政府です。」

 

 

 

「一回そこに掛けてください。そこからは私が話します。」

 

「何でそこに?」

 

「話は電話してからにしましょう。」

 

「ま、まあ分かった。電話掛けに行こうか。」

 

そしてガレージを出て電話があるリビングへ行く。

ちなみに紫姫と貫さんはこの館を散策している。

 

「じゃあ、掛けますね。」

 

電話番号を押し、受話器を持ち上げる。

応対して貰う事もあるかもしれないので、電話の掛け方は事前に教えていた。

 

プルルル…と音が鳴った後、電話が繋がった。

アージャーさんが喋る。

 

The King Escapes the Seal and Comes Back(王は封印から逃れ舞い戻る)

 

そう言って受話器を持ち上げ、スピーカーモードにした。

スピーカーから声が聞こえる。

 

『お久しぶりです。レグエル・アージャー様。“騎士団”ともども、貴方をお待ちしておりました。』

 

英語で返事が来た。もしかしてアージャーさん凄い人だったのか?

 

『御用は何でしょう。』

 

「ああ、車があるんだが、直して欲しいんだ。ついでに改良もね。」

 

『分かりました。我ら“騎士団”、その車を最高の車にして見せましょう。』

 

「ああ、頼むよ。」

 

『それでは、今から3時間後にそちらに向かいます。派手に向かいますね!』

 

「分かった。なるべく控えめで頼むよ。」

 

そう言ってアージャーさんは電話を切った。

 

思わず聞いてしまう。

 

「何でイギリス政府に伝手があるんだい!?」

 

「落ち着いて下さい。それは今から言います。」

 

 

 

 

 

 

「これは、私の生まれた時からの話です。」

 

 

 

 

 

そして、アージャーさんの過去の話が始まった。

 

◇◆◇◆

 

私が生まれ、意識がしっかりした時は既にどこかの孤児院に入れられていた。

 

半人半妖の吸血鬼だったお陰で、『悪魔だ。』『吸血鬼だ。』と言われ、

自分が施設を出るまでずっと虐められ続けた。

 

だからといって、自分は半分人なので、吸血鬼側に着いても同じ様に虐められるのは分かり切っていた。

 

そしてそのまま働く事も出来ず、そのまま飢え、道の端で遂に倒れた時、ある老婆に声をかけて貰った。

 

 

「お前さん、大丈夫かい?そんなに若いのにそんな所で倒れて。働く所は無いのかい?」

 

 

「私はどこにも受け入れられないんです。半人半妖だからどちら側にも受け入れらなくて…」

 

「そうかい。じゃあ、うちに来るかい?」

 

「…え?」

 

 

その老婆が放った言葉は、確実に私の人生を変えた。

 

「良いんですか?私は半人半妖なのに…」

 

「そんなの関係ないよ。危害を加えないなら、困っている者は誰でも助けるもんだろう?それに…」

 

ビッと人差し指をこっちに向け、

 

「あるプロジェクトにお前さんの様な人が必要なんだ。」

「ついて来い。私の名前はホワイト。白は平和の白、だ。」

 

ホワイトさんはそう言い、先に歩いて行った。

 

 

 

 

ホワイトさんは、昔妖怪と人間両方から迫害を受けていた人を集めて、

妖怪たちに対抗できる組織を作ろうとしていた。

僕は、自分と同じ様な境遇の者達を集める役割を任された。

 

 

 

 

そして、数年経った後、ホワイトさんは言った。

 

「私は、昔は妖怪が嫌いだった。だが、混ざり者の彼らが迫害されてるのを見て、耐えられなくなったんだよ。」

「だから、彼らを集めて、自分たちの居場所ができる組織を作ろう。そう思った。」

「まあ、人を守る組織になるとは分かんなかったけどね。」

 

そう言って苦笑いするホワイトさん。

 

あの時から集めた者たちは、半人半妖から、とある理由で迫害されていた妖怪まで、様々な者が居た。

彼らはそこから人間と交流する事で、次第に人間に心を開き、仲間となり、中には恋愛関係に発展した者も居た。

そこで、そんな人間達と手を組み、迫害された妖怪、そして人間も救う組織“騎士団”となった。

 

「人間と妖怪では歳の差はあるが、そこで育んだ友情は一生残る。」

 

彼らは、ホワイトさんが言ったその言葉をこの“騎士団”のモットーにした。

 

次第にその活動も広まって行き、イギリス政府にも活動が認められつつあった18世紀、ホワイトさんは既に亡くなり、

私はいつの間にか“キング”と言われる様になっていた。

その時から、この“騎士団”を良く思わない連中が現れて始めた。

 

それは、西洋を代表する妖怪、吸血鬼である。

中でも、スカーレット家の者たちはよく思っていなかった。

スカーレット家は純血の吸血鬼を絶対とし、混ざり者は排除してきた。

それが今になって脅威になったのである。

スカーレット家から目をつけられ、そこからはその一派による

“騎士団”への攻撃が始まっていった。

 

スカーレット一派は“騎士団”に関係のある者を殺害し、自分の力を誇った。

当然“騎士団”の連中は怒り狂った。

 

そしてそこからは戦いが始まった。

 

スカーレット一派の力は凄まじく、精鋭が集まっていると言える“騎士団”でも均等な強さだった。

 

そして遂に、イギリス政府直々にスカーレット一派の当主を討伐して欲しい。との要請が来た。

 

私達はそれに応え、準備を整えてスカーレット一派の本拠地である紅魔館(Red chamber )へと向かった。

 

本拠地の防衛は人間と少しの妖怪に任せた。

 

館に突入して、自分たちの量と質に任せて突き進んでいく。

 

そして主人がいる部屋に着き、扉を突き破って数十人で主人を取り囲む。

私は口を開いた。

 

「スカーレットの主。お前はもう終わりだ。」

そう私が言うと、主人は嘲笑う様に、

 

「終わるのはお前らの方だ。」

 

その時、後ろでパンッと何かが弾ける音がした。

何なんだと後ろを振り向くと、8人ほどの仲間の頭が、人間で言う3歳程の身長の吸血鬼の子供に“弾けさせられていた。”

だが、今の最優先は主人を倒す事だ。

 

「スカーレットの主を殺せぇぇぇぇ!」

 

それを皮切りに、主人との戦いが始まった。

スカーレットの主はとても強く、戦いの途中で数人の仲間がやられて行った。

そして、10人がけで銀の剣を同時に刺すことで完全に息の根を止めたのだ。

 

「終わりだ…スカーレットの主。」

そう言うと、後ろで声がした。

 

 

 

「まだ…終わりじゃないでショ?」

 

「お、お前は…」

完全に失念していた。最初に仲間の頭を弾けさせた奴だ。

この子は、少しおかしい。まるで…何かに支配されてる様な…

 

「貴方達、強いわネ…!わタシとも…遊んでくれる?」

 

瞬間、非常に強い危機感を覚え、“能力”を使った。

 

目を開けると、周りに仲間の姿は無く、代わりにあったのは無惨にも弾け散った肉塊と血、

仲間がさっきまで使っていた武器だった。

 

「嘘だ…」

 

「あラ、すぐ壊れちゃったわネ?だけど、貴方はまだまだ壊れてないわネ!」

 

そこからは速かった。もう一回能力を使って私の体が弾けるのを防ぎ、

ドアを開けて窓を打ち破って外に飛び出る。

 

幸い、この体のお陰で特に傷を負う事も、日に焼ける事も無く済んだ。

敵もいない様だった。

 

 

 

本拠地に戻ると、聞きたくない事が聞こえてきてしまった。

 

 

「攻略に向かった人達は全滅…命からがら戻って来た人も今は危険な状態です。スカーレット一派の大体の勢力はもう無くなったと言っても良いでしょう。千人ほどいたのが半分程になりましたしね。当主も倒しましたし、このまま権力争いが起きるでしょう。騎士団は…これで終わりかもしれません。」

 

 

「まだ…人間が残っている。」

 

「私達人間では、吸血鬼に太刀打ち出来ません。」

 

「いや、吸血鬼は自分の力を過信している。最近は武器の技術も上がって来ている。

このまま研究すれば、吸血鬼をも越えられる様になる。」

 

「本当ですか?」

 

「本当だよ。」

 

「君たちはこれからも不遇な人の保護を裏から進めて行って、研究を進めて行ってくれ。

そして、大事なことは慢心しない事だ。慢心するとそこを吸血鬼に漬け込まれる。

頑張ってくれ、これからは君たちに主導で進めて貰う。」

 

「分かりました。これからは私達にお任せ下さい。キング。」

 

「頼んだ、リブアル。ああ、私が戻った時の合言葉は、」

 

 

 

The King Escapes the Seal and Comes Back(王は封印から逃れ舞い戻る)だ。」

 

 

 

◇◆◇◆

 

「そして私は“騎士団”を離れ、スカーレット家に追われない様に自分から封印されたんです。」

 

「だけどそれなら何故日本に?」

 

「何ででしょう…多分封印されたのを知った誰かが、私をこちらまで持って来たのでしょう。」

 

「そうだったのか…一体誰が?」

 

「それは分かりません。私も封印が解けた時日本にいてびっくりしましたからね。」

 

 

「い゛い゛話だな゛ぁ〜」

 

後ろで貫さんが感極まっている様だが、見なかったことにしよう。

 

「そういえば…3時間で来るって言ってたけど…どうやって来るのかい?」

 

「さあ…私にもそれは分かりませんね…」

 

その時、遠くからバラバラバラ…というヘリの音がしてきた。

 

「来た様ですね。」

 

窓を開けると、一機の輸送ヘリと攻撃ヘリ3機がこちらに向かって来ていた。

 

攻撃ヘリが。

 

「これは派手に来すぎじゃないかな…」

 

ヘリ4機がこちらに降りて来る。

 

そこから降りて来たのは、眼鏡をかけた女性だった。

 

「え…!?」

 

何故かアージャーさんが驚愕している。

 

「何かあったのかい?」

 

「か…彼女は…私が“騎士団”を抜ける際に最後に話をした人です…」

 

「えっ?それからもう200年も経ってないかい?」

 

彼女が話す。

 

「これからは私もここに住みます!あっ、車は任せて下さいね!必ず良い車にして見せます!それより!

遂に封印から解かれたのですね!封印された石碑がどこに行ったか分からなくて、私達は任務がてらずっと探してたんです!

これってあれですかね!運命的な再会ってやつです!これからはもう絶対に離れません!」

 

一息ついて、

 

「という訳で!キングの未来のお嫁さん!リブアル・ホワイトです!これから宜しくお願いします!」

 

アージャーさんはスマホのマナーモード並みに震えている。

 

横から装備を着ている男の人が話しかけて来た。

 

「車、持って行きますね。それとこれを、キングに。」

 

「分かった。」

 

渡されたのは、何やら重い物が入ったケースだった。

 

「それでは。」

 

輸送ヘリに車が積み終わり、ヘリのローターが回り始める。

 

「何かあったらまた仰って下さい。」

 

「私達はキングを敬っています。そして、キングの封印を解いてくれた貴方も同じぐらい感謝しております。」

 

そう言って彼は一礼し、ヘリに乗った。

 

ああ、こんな派手に来られたらここ確実に注目されるな。

 

取り敢えず白目を剥きかけてるアージャーさんを戻さないと。

 

◇◆◇◆

 

 

数日後、また輸送ヘリと攻撃ヘリの4機が来て車が届けられた。

 

車は錆が多かった薄緑色から、黒色へ、車の中は高級そうなシートへ変わっていた。

 

車の中には手紙があった。

 

『車を修繕、改良させて貰いました。

エンジンは最高品質の物を使い、最高で時速400km出す事ができます。

武装は機関銃をライトの部分に4門載せてあります。

ボディーとガラスは防弾仕様で機関銃の弾なら防ぐ事が出来ます。

車の後部からは撒菱、煙幕、手榴弾が出るようになっています。

我々が出来る限りの最高の技術で作りました。気に入って頂けたでしょうか。』

 

武装とか手榴弾とか物騒な単語がたくさん並んでいるのだが…

 

リビングに皆を集める。

 

「これ、どうなっているんだい?」

手紙を見せる。

 

「ああ、これは私が頼んだんですよ。」

 

「こんなに武装要るかい?ていうか、そもそも武装要る?」

 

「キングが言うから必要ですよ!」

 

「そうなのか?儂は余り必要には思えないんじゃが…」

 

「後々必要になります。絶対にあった方が良いですよ。」

 

 

 

 

手紙をもう一度見る。

 

 

 

 

 

 

 

「まぁ…いっか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうだったでしょうか。

アージャーとリブアルには名前に意味があります。

Raguil Azure (レグエル・アージャー)

Ribal white (リブアル・ホワイト)

レグエルは、ある天使の名前を崩したもので、アージャーはスカーレットと対になっています。

リブアルは、『復活』を英訳した物を崩した物です。
ホワイトは勿論平和の意味があります。


さて、粘着質な追っかけの新キャラが出て来ました第3話。
次回お楽しみ下さい。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

幕間 くっつくリブアルと角と蠢く不穏な陰

幕間です。


休憩です。

適当ですがお楽しみ下さい。


今日はいつもの平日、朝御飯の時間だ。

 

僕の隣には紫姫さん。その隣には貫さんが居る。

 

そして、目の前には、アージャーさんとそれにべっとりくっついているリブアルさん。

 

「キング!和食ってあんまり食べたことないけど美味しいですね!」

 

「あ、ああ。そうだね…」

 

アージャーさんは凄い疲れた顔をしている。

 

紫姫さんの話によるとどうやら昨夜ベッドで襲われかけたらしい。

苦労人だなー(遠い目)

 

紫姫さんはそれを見てニヤニヤし、

 

貫さんは黙々とご飯を食べている。

 

 

僕も食べよう。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

先週休みを有休を使って取って、車を直してもらったのだが、

凄い大掛かりに来たせいで、国際問題になりかけてるらしい。

 

ニュースとかネットは見たら絶望するから見ない様にしている。

だが、会社は行かなければならない。

 

見物人が居ないのは、国が近づかないように言っているからである。

軍用ヘリが来る様な場所なので、近づかない方が良い。と。

 

 

 

 

 

そんな感じで外からは監視されてるので、外に出るには裏口から出なければならない。

草の生い茂っている、道とは言えない場所だが。

 

 

そんな感じ家から出て、会社に向かっていると、電気屋のテレビでニュースをやっていた。

 

 

『イギリス政府は、依然としてあの軍用ヘリの所属を明らかにせず、

日本政府はイギリス政府に不信感を募らせています。』

 

 

帰ろっかな。

 

 

という訳にもいかず、しょうがなく会社へ向かう。

 

いつものデスクに座ると、田中が話して来た。

 

「有休なんて取って、一体どうしたんだ?連絡しても返って来ないし。」

 

「色々あったんだよ。」

 

「色々…?もしかして、軍用ヘリのニュースと関係が!?」

 

「ある訳ないだろ。馬鹿か?」

 

「今日はいつにも増して当たりがきついな。」

 

「それより、知ってるか?」

 

「何をだよ。」

 

「そのイギリスの軍用ヘリ、どうやらイギリスの秘密の特殊部隊だっていうか噂があるんだよ!」

 

「秘密の特殊部隊だったらあんなに派手に現れないだろ。」

 

「そうだな…そうだ!お前、あのヘリが行った洋館の近くに住んでたよな!」

 

その洋館に住んでるんだがな、と言う言葉を飲み込む。

 

「そうだが?お前の望む様な情報は無いぞ、近づけ無いんだしな。」

 

「うーん、何にも分からん!」

 

「じゃあ早く仕事しろ。」

 

そう言って話を切る。

 

こんな感じで今日からまた仕事をしなければならないと思うと頭が痛くなる。

帰りたい。

 

僕の仕事は基本デスクワークで、基本的に企画の立案などをしている。

動く事は中々無い。

 

 

 

 

僕は特にどうといった事も無く仕事を終えた。

 

 

 

そうして家に帰ると、場所が変わっただけで朝と全く同じ光景が広がっていた。

 

べっとりくっついているリブアルさんに、嫌がるアージャーさん。

 

それをニヤニヤしながら見ている紫姫さん。

 

一つ違う光景があった。

 

貫さんが寝ている。

 

寝息を立てて、ソファに横たわっていた。

 

今まで気になっていたのだが、この角、一体どうなっているのだろうか。

 

貫さんの横に座り、考える。

 

角、と言えばサイとかが角を生やしているが、あれは爪のような物質で構成されているらしい。

 

どんな感触なのだろう。

 

ちょっと触ってみたい。

 

手が自然に伸びていった。

 

 

角の先から人差し指で優しく撫でていく。

触り心地としては、滑らか。少し熱を帯びている気もする。

 

「んぬぅ…」

 

声が聞こえ、慌てて手を離す。

視線を外して、立とうとすると、そこには紫姫さんが。

 

「五能殿〜?そんな恍惚とした顔をして貫殿の角を触ってどうしたのじゃ〜?」

 

「なっなななな何も僕はしてない…」

 

「ほう…?ならばこれはどうかの?」

 

そう言って取り出したのはフィルムカメラだった。

 

誰だ。こんなん渡したの。

 

取り敢えずこのデータを消去しなければ…

 

「あっ!あんな所で二人がどえらい事に!」

 

「どえろい事じゃと!?」

 

聞き間違うとは…賭けだったのだが上手く行った。

 

そして俊速でカメラを奪い、素早くフィルムを取り出し、アージャーさんへ投げる。

 

アージャーさんは見事にキャッチし、

 

「ありがとうございます五能さん。これは後できっちり処理しておきます。」

 

「騙したな五能殿!?」

 

「人の写真を勝手に撮る方が悪いんだよ。カメラまでは奪わないから、

こんな事に使うんじゃないよ。」

 

「ぬ…」

 

少し嫌そうな顔をし、

 

「しょうがないのじゃ…もうやらぬ…」

 

渋々認めた。

 

アージャーさんはどうにかしてリブアルさんを引き剥がし、フィルムの処理へ向かった。

 

この光景を見て思う。

今までの生活もそれなりに楽しかったが、こんな特殊な生活も悪くは無いのでは…と。

 

 

 

 

だが、その陰で何かが蠢いている事に気づいている者は未だ少数であった。

 

◇◆◇◆

 

 

「安倍さん。」

 

「ん?どうしたんだ、如月君。」

 

「少し厄介な事になりました。」

 

「どういう事かな?」

 

「イギリスの“騎士団”がある洋館にて、対象と接触していた事が分かりました。

“騎士団”と言えば、世界一の特殊組織で、魔法使いや半人半妖の末裔など、

様々な者が集まっています。しかも、“騎士団”のトップが洋館に留まっているとか…」

 

「そうか。だが、それは関係ない。」

 

 

「我ら第二研究院が目的とするのは、ただ一人。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「紫姫。それだけだ。」

 

 

 

不穏な風が吹いているのに、五能はまだ気づいていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




幕間でした。

紫姫さんは過去に何をやらかしたんでしょうね?

次回は遂に第二研究院と衝突します。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

遠い昔、ついやっちゃった妖怪の姫の話と館防衛戦

今回は館が襲撃されます。


第二研究院  本部 富士山地下

 

 

「安倍さん。部隊の整列完了しました。」

 

「分かった。如月君。」

 

男は舞台に立ち、口を開く。

 

「諸君。今日は日本の運命を左右する日だ。

紀元前、日本列島にいた人間を恐怖のどん底に突き落とし、

猛威を震った妖怪の姫が再び現代へ相見えた。今こそ立ち上がり、再び封印するのだ。」

 

 

息を整え、大声で叫ぶ。

 

「厄災を取り払え!!この国を護るのだ!!」

 

 

「総員配置に着け。心して挑むのだ。」

 

それに応える様に、兵士は叫ぶ。

 

「「「「応!!」」」」

 

戦いは、刻一刻と近づいていた。

 

◇◆◇◆

 

「五能さん。少しお願いがあるのですが…」

 

「何だい?」

 

「少し私用ができてしまいまして…買い物に行って来て欲しいのですが…」

 

「何だ、そんな事かい。いいよ。ちょっくら行って来よう。」

 

「ありがとうございます。あ、これ車のキーです。」

 

「ああ、ありがとう」

 

五能さんがガレージに向かった。

これで、彼に被害が及ぶ事は無いだろう。

次に行う事は、この館の防衛だ。

 

「リブアル君。」

 

「はい。」

 

いつもはべったりくっついてくるリブアルだが、今は真面目だった。

 

「この館を防衛しなければならない。二人を呼んできてくれ、私は使う武器の準備をしてくる。」

 

「承知しました。」

 

何故かは分からないが、この館、そして私達三人が狙われている。

考えられる事とすれば再び私達を封印する事だろう。

だが、私以外の二人がどう思っているかは知らないが、私は今は封印されるわけには行かない。

私にはこの館を護る“任務”がある。

 

 

敵は正規軍並みの装備をした兵士達だ。

 

だからといって逃げれば誰かが捕まってしまうかもしれない。

 

戦え。レグエル。

 

そう心の中で叫び、拳を握り締めた。

 

◇◆◇◆

 

今回の買い出しはやけに量が多かった。

 

買うのに時間が2時間ほど掛かった。

 

荷物を後部座席に置き、運転席に座る。

 

エンジンを掛けようとすると、外で何か騒ぎが起こっていた。

 

外に出てみると、装甲車が僕の家の方向に向かっていた。中にも歩兵戦闘車も居る。

 

まさか、と思い、口に出してしまう。

 

 

「アージャーさんの言った“私用”は嘘だった?」

 

 

急いで車のエンジンを掛ける。

 

慣れる事の出来ない乗用車らしからぬエンジンの雄叫びが鳴り響く。

 

車を出し、急いで家へ向かう。

 

一体あの装甲車は何なんだ。

 

◇◆◇◆

 

 

今リビングには五能を除いた四人が集まっている。

 

紫姫、貫、レグエル、リブアルである。

 

レグエルが口を開く。

 

「今、こちらに装甲車が向かっています。中には歩兵戦闘車もいる様です。

五能さんは既に退避させました。」

 

「我々は、生命線であるこの館を護らなければいけません。」

 

 

「そして、一つ、伺っておきたい事があります。」

 

「居なければ良いのですが…」

 

 

 

 

「この中に、昔何かをしでかした人は居ますか?」

 

 

 

沈黙が場所を支配する。

 

 

 

それを破ったのは、紫姫だった。

 

 

「多分…儂じゃ。」

 

 

「そうですか…軍隊が来る程の何をしたのですか?」

 

 

「それは…」

 

その時、レグエルが何かが飛来して来る事に気づいた。そして叫ぶ。

 

「全員離れてください!」

 

言い終わったその時、それは爆発し、破片を周りに撒き散らした。

 

「大丈夫ですか!?」

 

リブアルが話しかける。

 

「ええ。大丈夫です。それより、思ったより着くのが早かった様ですね。」

 

「館の中に散って、個々で敵を対応しましょう。殺すのはやめてくださいね。」

 

そう言って、レグエルは床に落ちていたていたライフルを拾う。

 

「分かった。」

 

「分かったのじゃ。」

 

そして、戦いが始まった。

 

敵は玄関、裏口、窓から入って来る。

 

確実に防ぎ切らなければ。

 

◇◆◇◆

 

昔を思い出す。

 

儂は今から十億年程前、姫をしていた。

 

只の姫ではない。妖怪の姫じゃ。

 

その当時は、人間が途轍もない技術を持っておった。

 

だからそれに対抗する為に、自分達で国を作ったのじゃ。

 

大きさは人間の国の3倍ぐらいじゃったが、強さはそれ程でも無かった。

 

人間の技術力には敵わなかった。

 

じゃが、平和であった。

 

今と比べれば変わった者が多かったが、毎日楽しく過ごしておったのじゃ。

 

 

だがそれは、唐突に終わった。

 

一つの町が人間に襲撃されたのじゃ。

 

人間が使う武器は今とは違ってエネルギーの塊が射出される不思議な武器じゃった。

 

当然敵う事も無く、町は一つ一つ潰されて行った。

 

それで、じわじわ来るからちょーっとイライラしておったんじゃ。

 

それで本拠地に攻められた時に、『全て貫く力』で軽く殲滅してしまったんじゃ。

 

それはそれはとんでもない惨状じゃった。儂がしたんだけど。

 

それで儂は危険視されて、倒すのは不可能とされてそのまま封印されたのじゃ。

 

 

 

正当防衛だし、儂、悪くない。 うん。

 

 

◇◆◇◆

 

 

今私は玄関に向かっている。途中で既に何人かと出くわしたが、どうにか打ち負かした。

 

人の声がだんだん多くなって来る。

 

人間は銃火器を使うので私の能力は効かない。

 

私は半人半妖、人間の特性と吸血鬼の特性を受け継いだ者。

 

人間より再生力があり、吸血鬼より日光に強い。

 

やれば、出来る。

 

そう言って足を踏み出した時、目の前にフラッシュバンが落ちている事に気が付いた。

 

カランカラン…と音を立てて足元に転がって来る

 

 

終わっ

 

 

レグエル・アージャー、フラッシュバンで気絶。

 

 

◇◆◇◆

 

 

私は今戦っている。

 

自分の体に食い込む鉛玉。

 

そんな物は気にせず、敵を薙ぎ倒していく。

 

ここまで高揚するのは久しぶりだ。

 

今はこの館を護るという大義名分がある。

 

殺してはいけないと言われているが、瀕死なら大丈夫だろう。

 

 

「それ程か!人間!」

 

 

そう言った時、首筋に何かが刺された。

 

刺した奴を拳で死なない程度にぶん殴る。

 

少し眠くなって来た。

 

さっき刺された物に麻酔でも塗ってあったのか?

 

眠い。昨日眠ってなかったからさらに眠い。

 

どうせ私のこと殺せないし、寝ちゃおうかな。

 

 

貫、眠気に耐えられず戦闘中に就寝。

 

◇◆◇◆

 

今儂は逃げている。

 

後ろには封印するための札を持った敵達が追いかけて来る。

 

能力を使いたいが、殺すのは駄目だと言われているから、使えない。

 

鉛玉が偶に後ろから飛んでくる。

 

ぐるぐる回って逃げていたが、もう駄目な気がする。

 

「もう能力使っても…良いじゃろ?」

 

発動準備をする。

 

後ろにふり返り、立ち止まる。

 

「儂が逃げてばかりだと思ったら大間違いじゃ!」

 

能力を発動しようとしたその時、

 

 

車が壁を突き破って来た。

 

 

◇◆◇◆

 

アクセルを全力で踏む。

 

今は時速200km。リミッターを切れば400kmぐらい出せるが今はまだ出来ない。

 

もうすぐトンネルだ。そこを抜ければ一本道で館に着く事が出来る。

 

 

トンネルが封鎖されている。警察の車輌がトンネルを塞いでいる。

 

ここを越えなければ館に行けない。

 

しょうがない。

 

リミッターを切り、スピードを上げる。速度計の針が限界まで振れている。

 

そのまま走り、車輌を押し飛ばしてそのまま進む。

 

改造されているお陰でそこまで車体にダメージは無かった。

 

早く着かなければ。

 

 

 

トンネルを抜ると、館が見えた。館にはさっきの装甲車などが止まっている。

 

スピードを緩めず、そのまま突っ切る。そして、

 

 

 

 

館に突っ込んだ。

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 

車が館に突っ込んで来た。

 

五能殿は逃げたんじゃないのか?

 

五能殿が車から降りて来る。

 

「紫姫さん!大丈夫かい!?取り敢えず車に乗って!」

 

言われるがままに車に乗る。

 

運転席に乗った五能殿が話かけて来る。

 

「他の人達は?」

 

「今は戦っている筈じゃ。」

 

「どうしようか…一旦壁から出よう。」

 

そう言って壁から出ると、目の前には戦車らしき物が。

 

「歩兵戦闘車だ…まずいな。」

 

そういうと五能殿は機関銃のボタンを押す。

 

「行けるか?」

 

車のヘッドライトから四門の機関銃が出て来て、斉射を開始する。

 

暫く弾の発射音が鳴り響く。

 

それが止み、硝煙が晴れると、

 

傷がついていないように見える程無傷の歩兵戦闘車が。

 

「こりゃ、終わったな。」

 

その時だった。

 

上から何か飛来して来て、歩兵戦闘車を爆破した。

 

上を見てみると、いつぞやの攻撃ヘリが。

 

「助けに来たのかの?」

 

「多分そうだね。」

 

「そうか、それなら良かったのじゃ。」

 

 

「中々にスリリングだったよ。時速400kmで走って来たからね。」

 

 

「儂の方がスリリングだったわい。」

 

◇◆◇◆

 

その後、“騎士団”によって迅速に事態は収束した。

 

“騎士団”が強すぎた。

 

拘束した者に話を聞くと、紫姫さんを封印しないと日本が滅びる、と封じ山の石碑にあったらしい。

 

紫姫さんはそんな力は無く、『儂を封印した連中が封印を解かれないようにしたのじゃろう。』

 

と言っていた。

 

 

襲撃して来たのは『第二研究院』という組織で、昔陰陽師の集まりだった物が研究組織に進化したらしい。

 

それで、伝承に伝わる『紫姫』が復活した事で、動き始めたらしい。

 

こいつらは“騎士団”がキツくお仕置きして、装備は全て没収されるらしい。

 

こっちはというと…

 

「館…ボロボロですね。」

 

「しょうがないよ。ミサイル撃ち込まれたり車で突入したりしたんだから。」

 

「そうだそうだーまあ私は眠くて眠っちゃったんだけど。」

 

「キング!私遠い所にある公衆電話まで走って行ったんですよ!褒めてください!」

 

「わーすごいすごい。」

 

「本当どうしようかな〜行けるような場所は無いしねぇ。」

 

「それなら大丈夫ですよ!私達が直す人をを手配します!」

 

「おっ。それは頼もしいね。」

 

話をしていると、スマホに電話がかかっているのに気づいた。

 

スマホをポケットから出し、電話の着信画面を見る。田中からだ。

 

電話に出ると、

 

 

「おい!お前とんでもない事になってるぞ!」

 

「え?それどう言う事だよ。」

 

「いいから、今から送る動画見ろ!じゃあな!」

 

そう言って田中は電話を切った。そして送られた動画を見ると、

 

 

 

 

 

そこには、警察車輌を押し飛ばしてトンネルに突入するセドリックと運転席の僕の姿が。

 

下には、『五能廻間 重要指名手配犯 』の文字

 

 

 

 

 

 

 

「トンネルの前で煙幕でも焚けば良かった…」

 

 

 

 

 

五能廻間、25歳。指名手配犯になる(不本意)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうでしたか?

そろそろ幻想入りが近くなって来ました。

次回には館は直っている筈です。

少し忙しくなるので投稿できない日が続くも知れません。

気長にお待ち頂けると幸いです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Q.どんな所?幻想郷。A.なんか凄い既視感な場所。

遂に幻想入りです。

幻想入りした理由は、『警察から逃げるため。』

こんな理由で幻想入りするのは初めてでしょうね(ゲス顔)


指名手配から数日、僕は考えていた。

 

 

どうやったら指名手配から逃れられるのだろう。

 

僕だけ指名手配されて、他の人はされてない。

 

理不尽じゃないか?

 

「なぁ、アージャー君、」

 

「何でしょう?」

 

「外に警察車輌がいる気がするんだけど…幻覚かな?」

 

「幻覚じゃ無いですよ。現実です。」

 

今僕達は立て籠っている。外からは偶に投降する旨の声が聞こえて来る。

 

「どうすれば良いんだこれ〜?」

 

「どうしましょうか?」

 

「私達“騎士団”なら国一つは潰せますよ!」

 

「そんな怖い事を笑顔で言うで無いよ。リブアル殿。」

 

「あっ」

 

すると、貫さんが何か思いついた様だ。

 

「そうだ、幻想郷へ行かないか?」

 

「貫さん?幻想郷って何処だい?」

 

「うーん、確か妖怪の山らへんだったような…」

 

「何処なんだ。全く分からぬなぁ」

 

「もしかして私しか知らないのか。」

 

「どうやって行くんだい?そんな所。」

 

「館ごと持ってく行くんだよ。この館と、下の妖脈もな。」

 

「誰が持って行くのかい?」

 

「そりゃあ…誰かだよ。」

 

「あ、儂出来るぞい。」

 

「出来るんですか!?魔法とかで転移魔法は聞いた事はありますけど…」

 

「似たようなもんじゃな。妖力を使って術を作って、発動する。やってみると意外に簡単じゃぞ。」

 

「僕も出来るかな?」

 

「五能殿でも出来ると思うが、中々に厳しいと思うぞい?」

 

「何でなんだい?」

 

「それは、持っている妖力とそれを出す力の出る所の大きさが違うからじゃよ。

五能殿は出る所の大きさが小さ過ぎるのじゃ。暫く練習しないといけないの。」

 

「そうなのか…」

 

「そんな訳で、転移なら儂に任せろい!」

 

「じゃあ、『幻想郷』っていう所に行くので良いですね?」

 

「ああ、良いと思うぞ。私の知人も多分居るだろうしな。」

 

「じゃあ何時行くのじゃ?」

 

「するならなるべく早くしないと、警察がいつ突入して来るか分かりませんよ?」

 

「そうじゃな…それなら今からもう術を展開しようかの。」

 

そう紫姫さんが言い、術を展開し始めた。

これが何気に初めて見るファンタジー要素かも知れない。

 

三人の存在がもうファンタジーだけど。

 

「ちなみに、場所は何処なんじゃ?」

 

「うーん…場所は、ちょっと地図貸してくれないか?」

 

地図をアージャーさんが渡す。

 

「確か…ここらへんじゃないか?」

 

「そこら辺じゃな。分かったぞい。」

 

「じゃあ必要な物まとめますか?」

 

「そうしましょうか。」

 

「どれぐらい時間掛かりますか?」

 

「ほら、儂すごいから。ほんの4時間で終わらせちゃうぞい。」

 

「意外と時間掛かりますね…」

 

「普通なら一週間ぐらい掛かるんじゃぞ!儂はとんでも速いんじゃ!」

 

 

 

「そうですか。じゃあ準備が終わるまでに計画を立てますか。」

 

「そうだね。貫さんは何か幻想郷について知ってる?」

 

「そうだな…なんせ最後に話を聞いたのが何百年前だったか?確か、八雲なんとかっていう妖怪が作ろうとしている、

人間と妖怪が共存出来る幻想郷?だった筈だ。」

 

「儂の国にも人間は居たんじゃがな。」

 

「キング、幻想郷って何があるか分からないですし、、何かもっと強力な武器持っていきますか?」

 

「いや、駄目だね。攻撃力ならここの全員で十分賄えるじゃないか。」

 

「そうですね。じゃあ私はキングの羽でもさわさわして時間を潰しますかねぇ…」

 

そう言って手をわきわきさせるリブアルさん。

当然拒否された。

 

そんな事をしている内に、準備が終わった。

 

「準備、終わったぞい。」

 

「誰かに見られたらまずいですし、カーテン閉めますか。」

 

「確かに、閉めてくるよ」

 

カーテンを閉め終わり、皆が構える。

 

 

「じゃあ、飛ぶぞい!」

 

 

その時、体がふわりと浮くような感覚になった。

数秒間それが続いた後、その感覚はストンと無くなった。

 

 

 

「着いたようじゃぞ。」

 

「カーテン開けますか。」

 

「あ、そうだ。記念に皆で何か言いません?」

 

「それいいですね。一体感があって。」

 

「じゃあ…せーのっ」

 

 

 

 

 

「「「「「どんな所?げんそうきょー!」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

カーテンを勢い良く開けると、そこには青い空、

 

 

では無く、赤い霧に覆われた空に、紅い館が。

 

 

 

 

「ちょっと待ってくれ、紅い館って…」

 

「確かに“幻想”(ありえない)だけど、これは笑えないな…」

 

そう言って苦笑いする貫さん。

 

「リブアルさんは何か知らないのかい?」

 

「私が見張っている内はずっと活動していませんでしたよ。

スカーレット一派はもう壊滅されたとして処理されていましたし…まさか残党が居たとは思いませんでした…」

 

「…やっぱ帰るか。」

 

「えっ何でだい?」

 

「なんか怖くないか?遠い昔に壊滅した筈なのに幻想郷に佇んでる。恐怖じゃないか。」

 

「もしかして、貫さん幽霊とか苦手なのかい?妖怪なのに。」

 

「それとこれとは別だろ!」

 

どうやら貫さんは心霊系が苦手らしい。更に子供に見えて来た。

 

「大丈夫?アージャーさん。」

 

「ええ、私は別に変なトラウマとかはありませんから。

それにしても、この紅い空、紅魔館と何か関係がありそうです。」

 

「…ちょっと訪ねてみます?私ちょっと気になります。」

 

「えっ。辞めようよ。」

 

「そうですね。本当に紅魔館なら、やらなければいけない事もありますし…」

 

「レグエルも行くのか…」

 

「僕はやめよっかな…危険そうだし…人間だから強くないし。」

 

「五能さんは行かなくていいと思います。」

 

「じゃあ、儂とレグエルとリブアルで紅魔館に行って、其方ら二人はここで館を防衛するっていうのはどうじゃ?」

 

「おっ。それが良いな。」

 

「じゃあ決まりじゃな。」

 

「儂らは早速動こうかの。」

 

「そうですね。」

 

 

 

◇◆◇◆

 

私はこの館には初めて来ますね。

 

今までは後方支援が主だったので、中々こういう機会がなかったのです。

 

「ワクワクしますね!ねぇ紫姫さん!」

 

「あ、ああ。そうじゃな。」

 

門番は適当に蹴散らしておきました。

 

キングは別行動するらしいです。

 

私としては同行したかったのですが、駄目と言われたのでしょうがないですね!

 

それにしても、この廊下ループしてませんか?

 

「紫姫さん、ずっとここ通っている気がするんですけど?」

 

「いや、違うと思うぞい?多分同じ様な装飾の廊下が続いておるんじゃろう。」

 

元の玄関に戻ってしまいました。

 

「これでもループしてないんですか?」

 

「うぬ…」

 

その時、階段の上から声がしました。

いたのは、メイドさんです。

 

 

 

敵ですか!?

 

「初めまして、侵入者様。残念ながら、ここは通sh「初めまして!敵ですか!?敵なんですね!?」

 

「話は最後まで聞きなさいって習わなかった?」

 

「すまんな、此奴初めての幻想郷でちと興奮してるんじゃ。」

 

「そうですか…じゃなくて、とにかく、通しません。」

 

「じゃあ敵ですね!私はリブアル・ホワイト。ホワイトは平和の白です!」

 

「はあ…私の名前は十六夜咲夜。紅魔館でメイド長をしているわ。」

 

「じゃあ…始めましょうか!」

 

 

 

 

 

 

そういえば、キングの“やらなければいけない事”って何だったけ?

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

私は今、館の中を探索している。

 

所々変わっているが、面影はあの紅魔館のままだ。

 

今はもう禍々しい雰囲気はほぼ無くなっているが、未だ、それが残っている場所があった。

 

同じ様な部屋が沢山ある中の、一つの部屋。

 

そこからは、その雰囲気が感じられた。

 

 

 

扉を開けると、そこには、数百段はあろう階段が。

 

 

下には何があるのか。

 

 

予想は出来ている。

 

 

あの子を救う。

 

 

あの時、救えなかった宝石の羽の吸血鬼。

 

 

 

暫く降りると、一つの扉が。

 

 

そこを開けると、二百年前と変わらないあの子が。

 

 

「貴方は?あれ?」

 

 

「久しぶりだね。」

 

 

「また遊びにきテくれたノ!?」

 

 

 

 

 

 

「いいや。違う。君の狂気を取り除きに来た。」

 

 

 

 

 

 

「取り除ク…?まア良いワ!ワタシと遊びまショ!」

 

 

 

 

 

 

 

「かかって来なさい。私が相手してあげよう。宝石翅の吸血鬼(Jewel-winged vampires)

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回は対フランドール戦です。

決めゼリフどうでしたか!?


では、また次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。