『私の相棒は猫舌でツンデレ属性である』Byファイズフォン (ボルメテウスさん)
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ケータイにも意思はある

新連載の作品。
こちらでは、主に主人公は戦いません。
サポート系の部類に入る主人公になります。
そんな彼のこれからの活躍、ぜひ応援、よろしくお願いします。
また、こちらの活動報告で、新たな募集を行っています。
皆様の応募、お待ちしています。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=292618&uid=45956


『君が信じる相棒と共に戦え』

 

 それが、私の中に僅かに刻み込まれた命令だった。

 

 なぜ、私が意思を宿したのか、その理由は未だに分からない。

 

 だが、この命令に従う。

 

 それが、私の考えだった。

 

 その点で言えば、私の現在の所有者である園田真理は、それに相応しくない。

 

 彼女の性格などは、僅かの間で知っており、どのような人物か分かる。

 

 私の中にある答えとしては、『好ましい人物』という印象はある。

 

「変身!」『ERROR』

 

 だが、彼女には、『変身する資格』がない。

 

 そういう意味では、非常に残念である。

 

 そして、私に迫っている青いジャケットの男性。

 

 その姿は、灰色の怪物。

 

 その種族の名はオルフェノク。

 

 人類の進化形であり、『変身する資格』がある者だ。

 

 しかし、駄目だ。

 

 私は、あの心を好まない。

 

 私自身、道具で、使われてしまう。

 

 その場合は、抵抗はさせて貰う。

 

 最悪、倒しても問題ないだろう。

 

 そんな考えをしていた時だった。

 

 園田真理は、変身に失敗した彼女は、自分のバックと勘違いして追いかけてきた青年にベルトを巻く。

 

 偶然で、巻き込まれてしまった彼は園田真理が私に変身コードを入力し、装填する。

 

『COMPLETE』

 

「っ」

 

 鳴り響く音に、私は驚きを隠せなかった。

 

 まさか、偶然に出会ったこの青年が、『変身する資格』を持っていたとは。

 

 同時に変身すると共に、青年に合わせるように、彼の情報が私の中に入ってくる。

 

 そこに入ってくる彼の心情。

 

 それは、どのようなものか分からない。

 

 それでも、それは確かな優しさだ。

 

 不器用で。わがまま。

 

 だけど、誰かの為に身体を張る。

 

 そんな優しさを理解できた。

 

 それによって、私は彼に『好ましい人物』だと認識させた。

 

『変身する資格』と『好ましい人物』。

 

 この2つは、おそらくは当て填まらないと思っていた。

 

 だけど、それが当て填まる人物が現れるとは。

 

「君が、私の相棒か」

 

 そう、私は驚きを隠せずに声を出す。

 

「あぁ、誰だ!」

 

 私の声に驚いた様子の青年は自分の身体に身に纏っている鎧を見る。

 

「考えるのは、後に。

 

 目の前で敵が迫って居るぞ」

 

「っ」

 

 私の言葉を聞いた青年が変身した555はすぐに目の前に迫るオルフェノクに目を向ける。

 

 オルフェノクは魚のような下半身と共に、空中から襲い掛かる。

 

 それを聞いた555は地面を蹴り上げる。

 

「はっよっと!!」

 

 雄叫びを上げながら555は拳を振りかざす。

 

 その一撃を受けたオルフェノクは衝撃を受け地面に落ちる。

 

 そしてすぐに体勢を立て直す。

 

 だが、そこにもう555の姿は無い。

 

「遅ぇ」

 

 いつの間にか背後に移動した555は腕を振るう。

 

 その拳はオルフェノクに届き、その拳はオルフェノクを蹴散らす。

 

 しかし、何時の間にか、オルフェノクの手には身の丈はあるだろう槍、トライデントを構えていた。

 

「おい、そういうのは卑怯だろって」

 

 そう、555が言う間にも、そのトライデントをこちらに向けて、薙ぎ払う。

 

 それを見た555は本能で、その攻撃を避ける。

 

「落ち着きたまえ、あの槍の攻撃範囲は長いが、隙も十分に多い」

 

「あぁ、そうかよ」

 

 そう、私の言葉を聞いた555もまた落ち着きを取り戻して、その槍を冷静に避ける。

 

 元々、戦闘技能は高いのか、確実にオルフェノクからの攻撃を避け、カウンターを決める。

 

 そして隙を見て反撃し、着実にダメージを与えていく。

 

 しかし、その動きには無駄が多いように思えた。

 

「もう少しスマートに戦えないのかい?」

 

「うるせぇ、口だけのお前に言われたくない!!」

 

 その言葉と共に、555はその槍を蹴り飛ばす。

 

 それによって、オルフェノクの攻撃手段はなくなった。

 

「一気に叩き込め!」

 

「あぁ、分かっているよ!!」

 

 その言葉と共に、555は真っ直ぐと向かって行く。

 

 オルフェノクは、その攻撃の手段が無くなった事で、戸惑いを隠せない様子だった。

 

 それが致命的な隙となり、オルフェノクは倒した。

 

 オルフェノクの死因は、ファイズの放った蹴り。

 

 その一撃が、オルフェノクの命を、灰に変えた。

 

「……、それで、お前はどこにいるんだ」

 

 オルフェノクとの戦いを終えた555はそう言いながら、周りを見る。

 

「私はここだ。

 

 君の腰にある」

 

「なに?」

 

 その言葉に、555は私を見る。

 

「携帯だよな」

 

「あぁ、その通りだ」

 

「ちょっと、どういう事」

 

 その事に、真理も気づいた様子だった。

 

 そのまま、ベルトから取り外された私の画面が、彼らの前に現れた。

 

「初めましてだな。

 

 私の名はファイズ。

 

 このファイズドライバーの全システムを管理し、君達と共に戦う存在だ」

 

 そう、私は彼らに向けて、自身の事を話した。

 

 結果的に言えば、彼らからの質問はあまりにもなかった。

 

 勿論、園田真理の方からは多くの質問があった。

 

 オルフェノクの事。

 

 父親の事。

 

 なぜ、私が送られたのか。

 

 それらの多くの疑問に対して、私が答えられるのは、オルフェノクの事に関してのみだ。

 

 私自身、意識がはっきりしたのは、変身者が555へと変身した瞬間のみだった。

 

 その後、変身者こと、乾巧は、あまり戦いには積極的ではなかった。

 

 その理由を尋ねるが

 

「なんで、俺がそんな事をしなくちゃいけないんだ」

 

 そう、はっきりと言う。

 

 彼の言う事に関して、私は否定する事はできない。

 

 彼の立場からしたら、いきなりオルフェノクの戦いに巻き込まれた。

 

 そんな彼からしたら、嫌な気分になるのは当たり前だろ。

 

 だがな。

 

「バッグの中は、確認すべきだぞ、バディ」

 

「んっ、この声は!」

 

 それと共に、ようやく気づいたバディはそのままバッグから私を取り出した。

 

「またかよ」

 

「君達は持って行く前に、きちんと確認しておくべきだ」

 

「五月蠅ぇ、たく」

 

「君は、このまま彼女を放っておいても良いと思うかい?」

 

「どういう事だよ」

 

 私は、そのまま疑問を投げかける。

 

「彼女の前では明かさなかったが、私を使用するには条件がある。

 

 その条件、それは『オルフェノク』だ。

 

 だからこそ、既に私は、君の正体を知っている」

 

「……だったら、なんだよ」

 

「だけど、私は、君と1つになって、分かっている。

 

 君は、本当は心が優しい人物だと。

 

 だからこそ、私は君をバディとして、選んだ」

 

「俺は、優しくなんてないよ」

 

 そう、私から目を逸らすが

 

「ただ、このままバッグが向こうにあるのも嫌だからな」

 

「ふふっ、そうだな。

 

 私が案内しよう。

 

 幸い、彼女が使っているバイクの位置ならば、私が知っているから」

 

「あぁ、だったら、頼むよ」

 

 その言葉と共に、私達はすぐに園田真理の元へと向かった。

 

 だが、既に園田真理は新たなオルフェノクの刺客に襲われていた。

 

 それは彼女なのか、それとも私が狙いなのか。

 

 どちらにしても、このままでは危険だ。

 

 そう判断したバディの判断は速かった。

 

 バイクを走らせ、真っ直ぐとオルフェノクに激突した。

 

「あんた」

 

 バディを見た園田真理は驚いた表情だが、それを余所に、バディは再びベルトを巻く。

 

『5・5・5』

 

『Standing by』

 

「変身!」

 

『Complete』

 

 バディがベルトを装着すると共に、その姿を再び仮面ライダー555へと変身した。

 

 バディの戦闘センスはさすがに高く、自身よりも巨体でパワーのあるオルフェノク。

 

 ゾウの特徴があるのでエレファント・オルフェノクと呼ぼう。

 

 奴を瓦礫の山に吹き飛ばす。

 

 だが、瓦礫を吹き飛ばし、格闘態の下半身が巨象の胴体と四肢に変化したケンタウロスに似た姿へと変わる。

 

 同時に、持ち前の怪力でバディを吹っ飛ばしたが、最期は園田真理を避難した車ごと圧し潰そうとしている。

 

「マジかよ、どうすれば」

 

『落ち着け、バディ。

 

 こういう場合には、アシストギアを召喚するんだ』

 

「アシストギア?」

 

『私にコードを打ち込むんだ。

 

 コードは4・1・3だ』

 

「コード?」

 

 その言葉と共に、すぐに指示されたボタンを押す。

 

 それと同時だった。

 

 上空に浮かぶ、555支援用に開発された人工衛星「イーグルサット」が私からの電波を受信。

 

 同時に眼前にとある物を転送される。

 

「これは」

 

『これこそ、アシストギア、ファイズポインターキャノンだ。

 

 ここにファイズメモリーをセットするんだ』

 

「これにか?」

 

 そう言いながら、ファイズポインターキャノンにファイズメモリーをセットする。

 

『READY』

 

 同時にファイズポインターキャノンはバラバラに分離する。

 

「……おい、これどうするんだ」

 

『すぐに装着するんだ』

 

「装着って、あぁもぅ!」

 

 そう言いながら、ファイズポインターキャノンを私の指示の元で装着していく。

 

「えっと、こっちは右で、こっちは左って、あぁもぅややこしい!」

 

『仕方ないだろ。

 

 転送は自動だが、装着は手動だからな』

 

「そこは自動にしろっ!」

 

 そう言いながらも、すぐに装着が完了する。

 

 背中には、2つに分離したファイズポインター型のキャノンが装着されている。

 

『バディ、急げ』

 

「分かっているよ」

 

 そう言いながらも、バディは慌てずに、私のENTERボタンを押す。

 

『Exceed charge』

 

 鳴り響く音声と共に、ファイズポインターキャノンは自動的に敵であるオルフェノクに銃口を合わせる。

 

 同時に、チャージが完了すると、そのまま真っ直ぐとエレファント・オルフェノクに向かって放たれる。

 

「なっ」

 

 そして、その弾丸はエレファント・オルフェノクを完全に捕らえ、拘束したポインティングマーカー。

 

 それと共に、ファイズポインターはそのまま後ろへと回る。

 

 それによって、ファイズポインターから放たれるエネルギーの噴射で、そのまま宙を飛ぶ。

 

 そして、ファイズポインターキャノンがブースターとなり、全開に加速を付けた飛び蹴りを放つ。

 

「はあぁぁぁ!!」

 

 その一撃を真っ直ぐと受ければ、エレファント・オルフェノクは瞬時に灰になる。

 

「たく、面倒な事になって」

 

 そう、面倒臭そうに言うバディ。

 

 戦いは、未だに始まったばかりだ。



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それはある意味運命の出会いだった

オルフェノクからの襲撃を受けながらも、私とバディと園田真理の旅は続く。

 

本来ならば、バディは私を園田真理に渡して、終わりだったのだが。

 

「痛い」

 

「なんだ?」

 

「さっきの、化け物にやられた。

あなたが、来るのが遅かったから。

もう、美容師になれなかったかもしれない。

子供の頃からの夢だったのに」

 

その言葉を聞いて、バディは

 

「病院まで送ってやるよ」

 

そう、答えた。

 

ある意味、無関係であるバディがそこまでする必要はないが。

 

「病院は嫌だ。

怖い」

 

「子供かよ。

俺にどうしろって言うんだよ」

 

「せめて、怪我が治るまで、一緒にいて。

心細いもん」

 

そう、園田真理が言うと、バディは呆れながらも同意した。

 

「バディ」

 

「なんだよ、携帯」

 

「携帯ではあるが、ファイズと呼んでくれ。

あまり詐欺には引っかからないように、気をつけたまえ」

 

「それって、どういう意味だ?」

 

そう、私の言葉に対して、疑問に思いながら言う。

 

実際に、今の状況で、バディと離れたくない私は、園田真理の嘘に乗るしかない。

 

それと共に、バディは園田真理と口喧嘩を行いながらも、近くで一晩過ごした。

 

「ねぇ、ファイズ」

 

「何かね?」

 

バディが寝静まったのを見計らうように、園田真理が私に話しかける。

 

「ファイズって、本当に何も知らない?

あの化け物の事とか」

 

「化け物か。

彼らの名はオルフェノクというのは知っている」

 

「本当、どういう種族なの?」

 

「彼らは君達の言う所の死から蘇った存在だ。

人として死んだが、その中でも稀にだが、生き返る事がある。

その際に、超人的な進化した種族。

それが彼ら、オルフェノクだ」

 

「そのオルフェノクはなんで、私を、というよりもファイズを狙っているの」

 

「私を含めたベルトは、ある意味オルフェノクに対抗する事ができる手段だ。

その為、オルフェノクからしたら、私の存在はある意味邪魔だからな」

 

「そうなの。

けど、なんで巧は変身できて、私にはできなかったの?」

 

「それは、ある意味、変身ができる資格がなかったとしか言えない。

555の最大の特徴であるフォトンブラッド。

これを操るには、特定の人間しか操る事ができず、素質に比例される。

その最中で、君はその素質はなく、そしてバディはその素質があった」

 

「そうなんだ。

なんか、それは少し残念」

 

「私も、君が変身できる素質があれば嬉しかったよ。

君は私にとって共に戦いたい人だから」

 

「ファイズって、なんだか硬いけど、巧よりも話しやすいね」

 

「私は、人間と共に成長する為に作られたから。

私に刻まれた最初の記憶でも、そう言っていた」

 

「そっか。

だったら、それはお父さんかもしれないね。

そういう意味だったら、私はファイズのお姉ちゃんかもね」

 

「機械と人間ではかなり違うのでは?」

 

「私もお父さんの本当の娘じゃないから。

それこそ、襲ってくる化け物と違って、ファイズは私達の味方でしょ」

 

「そうだな。

私も、それをずっと願いたい」

 

私自身、装着する人間に、資質があれば、変身してしまう。

 

だが、それでも私は彼らの味方になりたい。

 

そんな思いを考えながら、夜が明け。

 

「やってられるか」

 

そう言いながら、バディはそのまま飛び出していった。

 

「やってしまったな」

 

「あぁ、うっかりした」

 

そう言いながら、私と園田真理は置いて行かれてしまった。

 

理由としては、立ち寄ったラーメン屋で飲食していた時だった。

 

手を怪我していた理由でバディと一緒に来ていたが、思わず園田真理が料理で手を使った。

 

その手が怪我をした箇所だった為、それが嘘だと判明したバディはそのまま怒り狂って、出て行ってしまった。

 

「ファイズ、すぐに追おう」

 

「了解した。

私自身、既にバディがどこにいるのか追跡できるように設定している」

 

「さすが、ファイズ!」

 

そう言いながら、イヤホンと接続した園田真理は、私の指示に従って、バディを追う。

 

だが、その道中、道で故障している車があった。

 

「あぁ」

 

「園田真理。

バディに関しては、何時でも場所は確認できる。

気になるならば、助けたらどうだい?」

 

「そうだね、そうしよう」

 

そうしながら、その事故をした人物である菊池啓太郎に尋ねる事にした。

 

どうやら、彼が運転中に、バイクが横入りして、そのまま事故を起こしてしまったらしい。

 

その事を聞いて、私は機械なのに思わず冷や汗をかいてしまう。

 

あの道路で、私と園田真理以外に運転しているバイクに乗っている人物は1人だけ。

 

つまりはバディである。

 

「園田真理、彼を助けてあげよう。

さすがに不憫だ」

 

「そうね」

 

「そして、悪いと思うから」

 

「どういう意味?」

 

私はあえて、その先は言わなかった。

 

それと共に、園田真理は菊池啓太郎はそのまま洗濯物を届けていく。

 

クリーニングのサービスの一環として行うので、親切丁寧に行っていく。

 

そこまでは良かったのだが、なぜか途中で肉屋によって、買い物をしていた。

 

聞くと、どうやら彼はクリーニング先の知り合いに頼まれて、買い物をしていたらしい。

 

「なんで、そんな事をしているの」

 

「だって、頼まれたから」

 

「いや、それ、利用されているだけでしょ」

 

全くもって、その言葉通りだが

 

「君、変わっているね」

 

そう、菊池啓太郎は笑顔で言う。

 

「私って、変わっているの?」

 

「私としては、その買い物を行っている間にも、洗濯物を届くのを待っている他の客を蔑ろにしているようだが」

 

「そうよね」

 

私の同意を得て、少しは気が楽になった様子で頷く。

 

そのまま続けていく中で、洗濯物の1つが落ちてしまう。

 

泥がついてしまい、そのまま届ける訳にはいかず、園田真理が洗濯物をコインランドリーで洗い直そうとする。

 

「まったく、あれ」

 

「あぁ」

 

ふと、コインランドリーの1つを見てみると、見覚えのある赤いパンツ。

 

それを見た瞬間、園田真理は

 

「ファイズ、あいつはどこにいるの!!」

 

「この周辺のはずだが」

 

「探すよ!!」

 

そう言い、園田真理が走り出した。

 

何が、どうなっているのか、分からずに困惑している菊池啓太郎を置いて。



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変形と着身

乾巧の後を追った園田真理。

 

だが、そこで彼女に予想外の人物が立っていた。

 

「ベルトを寄越せ」

 

「またぁ!」

 

そう、園田真理が言っている間にも、オルフェノク。

 

おそらくは牛の特性を持っていると思われるオックスオルフェノクが園田真理を投げ飛ばした。

 

「痛っ」

 

『園田真理。

 

私にコード507を入力してくれ。

 

そして、ファイズポインター着身を許可してくれ』

 

「なんだか、分からないけど、分かったよ。

 

えっと、この番号で、着装を許可」

 

私からの言葉を聞いた、園田真理はすぐに私にコードを入力してくれた。

 

それと共に、私はそのまま変形する。

 

手足が生える感覚を確認すると共に、私はそのまま、着身を許可されたファイズポインターを瞬時に装着する。

 

手足に装着後、マルチアンテナに装着させる。

 

「着身、完了!!」

 

「ファイズ、そんな事もできたの」

 

「今は、バディを探すのが先決だ。

 

時間は私が稼ぐ」

 

その言葉と共に、私は頭に装着されているファイズポインターの狙いをオックスオルフェノクに合わせる。

 

私が姿を変えた事に驚いた様子の、オックスオルフェノクだが、その隙を狙うように、私はそのまま光線を放つ。

 

「ぐぅ!!」

 

命中はなんとか完了し、そのまま後ろに下がる。

 

だが、私自身はケータイ。

 

光線を放つ為の体重はあまり足りず、後ろに下がる。

 

「これは」

 

「巧、これを!」

 

それと共に、園田真理がバディにベルトを投げる。

 

「また、これかよ」

 

そう言いながら、バディはそのままベルトを装着してくれる。

 

あとは、どうやって、私を。

 

「んっ」

 

「ファイズ、お願いね!」

 

同時に変身コードを入力してくれる園田真理。

 

『555!スタディバイ!』

 

コードを入力されると同時に私に装着されていたファイズポインターも元の状態に戻る。

 

だが、この状況で一体。

 

まさか。

 

「受け取って、巧!!」

 

そのまさかだった。

 

真っ直ぐと、私はバディの元へと投げられる。

 

「携帯は投げる物ではなぁい!!」

 

そう叫びながらも、私はそのままバディの元に。

 

「あぁ、お前、手足が生えるのかよ!」

 

「それよりも、早くベルトに」

 

「あぁ、もぅ!変身!!」

 

『コンプリート』

 

その音声と共に、無事に555へと変身を完了した。

 

「バディ。

 

あのオックスオルフェノクは、かなりの怪力だ。

 

油断、するなっ」

 

「あぁ、分かっているよ」

 

その叫びと共に、バディはそのまま戦いを挑んだ。

 

オックスオルフェノク。

 

その見た目と同じく、かなりの怪力であり、防御力だ。

 

前回戦ったエレファントオルフェノクと同じかそれ以上の怪力で、こちらを追い詰めていく。

 

バディの戦い方を見る限りでも、どちらかと言うとスピードで次々と攻撃していく様子。

 

なので、ある意味、バディと相性の悪い相手が二回続いていると言えるだろう。

 

「あぁ、たく」

 

そうしながら、バディはそのままオックスオルフェノクに吹き飛ばされた。

 

このままでは危険。

 

そう考えていた時だった。

 

「・・・」

 

「バディ?」

 

何か考えがあったのか、バディは私を取り出す。

 

『183』

 

その番号が入力され、エンターが押される。

 

同時に、バディに向かって、襲い掛かるオックスオルフェノク。

 

それに対して、どこか余裕な様子に見える。

 

そう考えている時だった。

 

上空に落ちてくる金属。

 

それは、バディに襲い掛かろうとしたオックスオルフェノクに向かってたたき落され、その衝撃で吹き飛ばされた。

 

「バディ、まさか」

 

「へっ手動も、結構役に立つな」

 

「本来、そのような手は使わないが」

 

そう言っている間にも、バディはそのまま落ちてきた物にミッションメモリーを装填する。

 

『レディ』

 

同時に上半身のアーマーと武器となる強化アームが出てくる。

 

「あぁ、またややこしいなぁ」

 

「があぁぁあ!!」

 

それを見て、バディが困惑している間に

 

「うるせぇ!!」

 

バディはそのまま地面にある強化アームを、蹴り飛ばした。

 

まさかの出来事に、オックスオルフェノクはそのまま頭に激突し、後ろに下がる。

 

「アーマーはそのまま上から被るように装着ができるぞ」

 

「それを早く言え!」

 

叫びながら、アーマーを拾い、そのまま上から被る。

 

同時に蹴り飛ばされた強化アーマーはそのまま空を飛びながら、バディの右腕に装着される。

 

『EXCEED CHARGE』

 

鳴り響く音声と共に、右腕にある拳に力が溜まる。

 

それが必殺の一撃だと察したオックスオルフェノクもまた、すぐに攻撃を仕掛けてくる。

 

真っすぐと、接近すると共にクロスカウンター。

 

そう言える形で、懐に飛び込んだバディの拳はオックスオルフェノクを吹き飛ばした。

 

それによって、戦いは終わりを迎えた。

 

「さすがだ、バディ」

 

「お前も、動けるんだったら、それで戦えよ」

 

「私単体では、ベルトの力は十全には発揮できない。

 

私の力を発揮するには、バディの存在が必要不可欠だ」

 

そう考えている間にも、倒したオックスオルフェノクに近づく啓太郎。

 

恐る恐るという様子で、木の棒でつつくと同時に灰へと変わった。

 

「お前ビビっているわりにはよくやるな」

 

「放っておけ。

 

どうせ、また芝居だろ」

 

そう言って、バディはそのままベルトを投げる。

 

だが、見る限り、今度こそ、本当に怪我をしている様子だ。

 

「大丈夫?

 

ちょっと見せて」

 

そう、啓太郎がそのまま見る。

 

すると、今度こそ本当に怪我をしている様子だ。

 

「本当に最低だねあなた。

 

嘘つきで身勝手で猫舌でその上に人を信頼できないなんて」

 

「うわぁ」

 

まさか、そこまで言われるとは。

 

思わず、私は唖然としていた。

 

「なんで、そこまで言われなくちゃいけないんだろ!

 

第一、嘘つきはお前だろ」

 

そう言って、私を投げようとしたが、そのまま地面に置いた。

 

「まさか、お前、わざと怪我をして。

 

俺に同情を引こうと」

 

また嘘をつかれているのではないか。

 

それでも、心配そうに見るバディ。

 

しかし、園田真理のその一言に、なぜか悲しそうに見つめた後。

 

「あんたを信じようとした私が馬鹿だった。

 

どこにでも好きに行きなよ」

 

その一言で完全に切れたのか。

 

「あぁ、そうかよ」

 

それだけ言って、バディは離れようとした。

 

「よくないよ。

 

もしかしたら、折れているかもしれない。

 

病院に運ばなきゃ、手伝ってよ」

 

そう啓太郎がバディに思わず言ってしまう。

 

「バディ、すまない。

 

だが、今の園田真理は本当に怪我をしている。

 

だからこそ、本当にバディの力が必要なんだ」

 

ある意味、この場におけるバディは巻き込まれたに近い。

 

それでも。

 

「はぁ、たく」

 

そう迷惑そうにしながらも、バディはそのまま園田真理を病院へ連れていくのを手伝ってくれる。



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雨降って、地固まる

園田真理を無事に病院に届け、終え、待合席で私とバディと啓太郎は、待つ事になった。

 

啓太郎は、先程のオルフェノクに関して、気になっているのか、バディに質問をしていく。

 

それに答えるつもりはないバディに変わって、私が答えるようにしていた。

 

「それにしても、オルフェノク。

その話が本当だったら、今もどこかで人を襲っているかもしれないし」

 

「だから」

 

「だからって、なんとかしなくちゃって。

ファイズは、何か知らないの」

 

「すまないが、私も、私自身全てを知っている訳ではない。

私が知っているのは、オルフェノクに関する僅かな情報ぐらいだ」

 

「そうなんだ」

 

それと共に啓太郎は言うが。

 

「だけど、ファイズがいれば、人助けができるんだね」

 

「・・・残念ながら、私はあくまでも使用者によって、使い方が変わる。

私自身が望まなくても、変身をされてしまう可能性もあるから」

 

「そうなんだ。

けど、だったら。

それに、君も」

 

「なんで、俺がやらないといけないだよ」

 

それと共に、目線はバディへと向ける。

 

「なんで、そんな態度なの。

お腹痛いの、名前聞いても良いかな?

俺、菊池啓太郎、君の名前は?」

 

「なんで、男同士で名前を言わなくちゃいけないだよ」

 

それだけ言うと、バディは相変わらす、目から逸らす。

 

それと共に、園田真理が、診察室から出てくる。

 

「へぇ、待っててくれたんだ。

まだ、人の心は残っていたんだ」

 

そう、まだバディがいる事に対して、わざと挑発するように言う。

 

それに対しては。

 

「前に約束したからな。

お前の怪我が治るまではいるって」

 

「・・・そっか」

 

バディの素っ気なくも、約束を守ってくれるという言葉に、少なくとも笑みを浮かべる。

 

それから、近くに宿がないという事もあってか、公園で座る。

 

「なんで、平気そうなの」

 

「平気って言う訳じゃないけどね。

まぁ、何かあったら、ファイズがいるしね」

 

その日は野営。夕焼けを背にカップ麺を食す事にした。

 

そこで、バディはカップ麺を食べておらず、猫舌だという事もあるだろう。

 

「バディ、適温まで、あと3分だ」

 

「いちいち、教えなくて良い」

 

そうバディは言いながらも律儀に時計を見ている。

 

「ねぇ、やっぱり東京まで会いに行く必要があるよね」

 

「嫌だよ、なんで俺がそこまでしなくちゃいけないんだよ」

 

そう言ったバディの言葉をきっかけなのか、そのまま3人の雰囲気は、あまり良くなかった。

 

啓太郎自身は、自分の正義感に従ってか。

 

園田真理は、どこか目的の為なのか。

 

そして、バディは、何か心に抱えているのか。

 

どこか自分の事しか見ておらず、その会話は機械であるはずの私にとっては息苦しい。

 

「それではすまないが、私はスリープモードに入る。

さすがに連続での戦闘でエネルギーを消耗したから」

 

「あぁ、勝手に寝てろ」

 

そう私は告げると共に、ゆっくりとスリープモードへと入る。

 

これまでの情報を含めて、整理したい事もあり、私はそのまま人間で言う所の眠りに入った。

 

そうしている時だった。

 

『COMPLETE』

 

「むっ」

 

聞こえた音声。

 

同時に、私の意識は強制的に覚醒する。

 

周りの状況を把握する限りだと、どうやら変身をしているようだ。

 

だが、この感覚は、バディではない?

 

周りを見ると、バディに園田真理に啓太郎。

 

そして、見た事のないオルフェノク。

 

「威張りすぎなんだよ、お前」

 

そう、555に変身していると思われる人物が、オルフェノクを襲う。

 

どうやら、仲間同士だったと思われるが、そこには何の躊躇もなく、あっさりと倒す。

 

まさか、私がスリープモード中に、起きていたとは。

 

「次はお前だ」

 

これは、まずい。

 

早く、しなければ。

 

そう思うと同時に私はすぐに行動を行う。

 

しかし、スリープモードから起きた事で、僅かなタイムラグがある。

 

逃げる以外に方法がない3人だが、バディが立ち止まる。

 

「何だよなんでこんな時にあいつの寝言思い出すんだよ!」

どうやら、昨夜、何かあったらしい。

 

バディはそのままバイクで555に突撃をかけるが、そりゃもう見事なまでに殴り倒される。

 

啓太郎も、鉄パイプで殴り掛かるが、まるで話にならない。

 

「もぅ、やだよ」

 

「すまないな、待たせて」

 

「なんだ、この声は?」

 

そう、疑問に思った555だが、次の瞬間、変化が起きる。

 

555に走っていた赤いラインは消え、色が無くなった。

 

「なんだ、ぐっ!」

 

それは、555のエネルギー源となっていたフォトンブラッド。

 

それを強制的に止めた。

 

それによって、今の555はただの頑丈な鎧。

 

それもかなりの重量があるだけの物だ。

 

拘束具と変わりないそれは、邪魔でしかない。

 

そして

 

「接続完了!」

 

同時に私は先程まで接続していた機械を起動させる。

 

それは、ここまで園田真理を乗せていたバイク。

 

そのバイクはそのまま変形し、そのまま蹴り上げる。

 

その衝撃と共に、吹き飛ばされた555からベルトが外れ、私の手元に来る。

 

「えっ、バイクが」

 

「変形、完了!!」

 

「えっファイズ!

なんで、バイクから」

 

「緊急事態だったからね。

こうして、オートバジンをバトルモードへと変形させた」

 

「そんな機能があるんだったら、最初から使えよ」

 

「どちらもオートバジンから離れていたからな。

それよりも、バディ、受け取りたまえ」

 

そう言い、バディにそのままベルトを渡す。

 

「たくよぉ」

 

そのままバディは呆れながらも、私を開いて、変身コードを入力する。

 

「変身!」

 

『COMPLETE』

 

その音声と共に、今度こそ、本当の意味での555となる。

 

「おい、さっさと決めるぞ。

なんかあるか?」

 

「それならば、コード818を入力したまえ」

 

「これか?」

 

そう言いながら、コードを入力したバディ。

 

同時にこちらに向かって、飛んできたのは、掃除機だった。

 

「おい、これをどうしろって言うんだよ!!」

 

「一気に決める為のギアだ。

このギアは」

 

「あぁ、もぅ、これにこれを入れるって、どこに入れるんだよ!!」

 

「ちょっと、巧、何をしているのよ」

 

「五月蠅い、こいつがややこしいのを!!

あぁ、もぅ、お前ら、入れる箇所、探せ!!」

 

「えっちょ!!」

 

そのままバディはミッションメモリーを乱暴に渡すと、そのままオルフェノクに向かって行く。

 

「まったく、あの馬鹿は。

というよりも、あれ、これ、本当にどこに入れるの?」

 

「えぇっと、どこに入れるんだぁ?

まったく分からないよぉ」

 

そう、バディは、オルフェノク相手に圧倒している間にも、園田真理と啓太郎は、新たなギアが、どこにミッションメモリーを入れるか、悩んでいるが。

 

「園田真理に啓太郎」

 

「「なに?」」

 

「ミッションメモリーは、ここに入れるんだぞ」

 

そう言い、私はオートバジンのハンドルを外し、そのままギアにセットする。

 

同時にミッションメモリーをハンドルに挿入する事を教えると。

 

「「「そういうのは早く言え!!!」」」

 

「説明する前に、勝手に慌てたではないか」

 

それと共にミッションメモリーを挿入する事によって、巨大な刀身が現れる。

 

同時にバディはそれを手に持つ。

 

「なんだよ、これ?」

 

「ファイズストライクブレード。

ファイズエッジの切れ味を上げる事に成功した物だ。

ただし、その分、取り扱いには注意だ」

 

「そんなの、これを見たら、一発だよ」

 

そう、巨大な刀身を見ながら、呆れるバディ。

 

そう言いながら、そのまま腰に手を伸ばす。

 

『EXCEED CHARGE』

 

その音声と共に、ゆっくりと構える。

 

刀身にはエネルギーが溜まり、それをゆっくりと構える。

 

それと共に完全にエネルギーが溜まるのを感じたバディはそのまま、剣を振り下ろす。

 

振り下ろされると共に、刀身は巨大になり、そのままオルフェノクを真っ二つに斬り裂く。

 

「ふぅ」

 

それによって、戦いは終わりを迎える。

 

「それにしても、一体何があったんだよ?」

 

「後で話してやるよ。

どうせ、東京に行くしな」

 

「それって」

 

そう、どうやら私がスリープモード中に騒動があったらしいが、この雰囲気を見る限り。

 

「雨降って、地固まるか」



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ベルトの謎

こちらで新たな募集を行っています。
皆様の応募、お待ちしています。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=293070&uid=45956


東京に無事にたどり着いた私達は、さっそく園田真理が元々目的地であったスマートブレイン本社へと向かった。

 

その道中で、啓太郎がメル友の事について話していたらしい。

 

その話題に関して、バディも園田真理もあまり興味がない様子が見えた。

 

「ファイズは、気になるよね!」

 

「私は人間で言う所の恋愛感情はあまり分からないから」

 

「あぁ、うん、そのごめんね」

 

そう啓太郎が言ってくれた事はどこか心遣いがあった。

 

そうしながら、私達は無事に目的地であるスマートブレイン社にたどり着く。

 

「へぇ、ここが真理ちゃんのお父さんが務めている会社」

 

「うん、というよりも、社長なんだけどね」

 

そう言いながら、園田真理は、そのまま曖昧な言葉と共に言う。

 

だが、その時に、私は確かに感じた。

 

私はそのまま自分自身にメールを送り、そのままバディに見て貰うようにした。

 

「んっ?」

 

バディはそのまま私が奮えている事に気づき、開く。

 

そのままメールの画面が開かれると、バディはそのメッセージと共に、懐からイヤホンを取り出す。

 

そして、そのまま耳に入れる。

 

『バディ、聞こえるか。

もしも聞こえるんだったら、私を軽く握ってくれ』

 

同時に、私が握られている感触がした。

 

どうやら、こちらの意図が伝わったようだ。

 

『園田真理と啓太郎をすぐにでもここから脱出させよう。

この場所は、これまで襲ってきたオルフェノクの巣窟だ。

先程から、私達を監視するカメラの数が異常だ』

 

同時にバディは、そのまま周りを見る。

 

その個所は、私が既に発見したカメラ、そして、周りにいるオルフェノクの気配を確かに感じた。

 

『今は、ここが入口正面という事もあって、オルフェノク達も手を出してこない。

だが、このまま留まっていれば、危険だ』

 

「あぁ」

 

そのまま受付の所まで来た。

 

だが結果を言うと、園田真理の父親と会う事はできなかった。

 

その事に対して、少し残念な様子が見えたが。

 

「だったら、さっさと帰るぞ」

 

「ちょ、巧」

 

バディはそのまま強引に引っ張って行く。

 

ここまでの旅路で、バディの性格を知った園田真理からしたら、あり得そうな行動だった為に、そのまますぐに啓太郎と共に出口へと向かう。

 

「ちょっと、巧。

何をそんなに急いでいるのよ」

 

「そうだよ、何をそんなに向きになっているんだよ」

 

「あぁ、煩い。

お前達は、これでも聞いていろ!!」

 

そのまま巧は、これまで耳につけていたイヤホンを、強引に二人につけた。

 

『二人共、落ち着いて行動しろ。

先程と同様の態度で、何も喋らず』

 

私の声を聞いて、二人は首を傾げた。

 

『このスマートブレインは、オルフェノクの巣窟だ。

先程から、それに似た反応が多くある』

 

「えっ」

 

啓太郎は一瞬、驚いた声を出したが、すぐに黙った。

 

『おそらく、園田真理の父親は何か関係していると思うが、この場で留まれば、危険だ。

今はとにかく、怪しまれないように、出よう』

 

その言葉を聞くと共に、二人はそのままイヤホンを取る。

 

「巧、何よこの音楽?」

 

「そうだよ、なんだか、変な感じで、冷や汗がしたよ」

 

「悪かったな」

 

そう、3人は会話をしながら、そのままゆっくりと出ていく。

 

なるべく怪しまれないように。

 

それと共にバディはそのままイヤホンをつけながら、バイクに乗り、そのまま離れる。

 

そこから向かったのは、啓太郎の両親が経営していたというクリーニング屋へと入る。

 

「それで、ファイズ。

さっきのは、本当なの」

 

そのままクリーニング屋に入ると共に、そのまま私は3人から詰め寄るように言われる。

 

「あぁ、間違いない。

はっきり言えば、園崎真理の父親と思われる人物が生きているかどうか。

それは、私も分からない」

 

「そんな」

 

「ねぇ、どうする?

もしも、さっきの話が本当だったら、このままじゃ」

 

「どうせ、逃げても変わらないだろ。

たぶん、こいつを渡した所で、あいつらからしたら邪魔者という事で」

 

「うぅ、まさか、こんな事になるなんてぇ」

 

そう言いながら、啓太郎は落ち込むように言う。

 

「他に何か手は」

 

「…手は、あるかもしれない」

 

「えっ?」

 

「それって、本当!」

 

その言葉を聞くと二人は見つめる。

 

「あくまでも推測だが、良いか?」

 

「うん、それでも良いから!」

 

「まず最初に、私、ファイズはライダーズギア。

つまりはベルトの中の一種類だ」

 

「一種類?

それって、もしかして」

 

「あぁ、私以外にもベルトはおそらく存在する」

 

「それって、つまり、ファイズ以外にもベルトが存在する可能性はあるという事!!」

 

「あぁ、だが、それがどこにあるのか分からない。

しかし、推測はできる」

 

「推測って」

 

「園田真理は確か、孤児院出身だったはず。

ならば、その関係者が持っている可能性があるかもしれない」

 

「それは、そうか。

けど」

 

「けど?」

 

「今、他の流星塾の皆は同窓会以来、連絡がなくて」

 

「だけど、もしかしたら真理ちゃんと同じ理由で東京に来るかもしれないよ!」

 

「そうだよね!!」

 

そう、僅かな希望がある中で。

 

私は少し不安に覚える。

 

「おい、ファイズ。

少し付き合え」

 

「どうしたんだ?」

 

「少し行きたい所がある。

道案内、頼めるか?」

 

「了解した。

という事で、少しだけ出かけてくる」

 

「あぁ、もぅ、巧の奴は」

 

そう言いながら、私達はすぐに出ていく。

 

「おい、お前のようなのが、他にもあるのか」

 

「あぁ、その通りだ」

 

「そいつらにも、使うには条件はあるのか」

 

「そう考えるのが妥当だ。

しかし、おそらくはかなりリスクがある」

 

「というと?」

 

「私は開発された順番で言うと、一番最後だ。

その為か、変身者への安全を考慮と装備による拡張性を重視した設計になっている。

だが、他のベルトのコンセプトは違う。

おそらくは、私のような変身条件がない代わりに」

 

「なんかあるという訳か」

 

そう言ったバディは苦い顔をする。

 

「ベルトに必要なのはバディだ。

私とバディのように信頼できる者同志でなければならない」

 

「まったく、お前は本当に厄介な奴だよ。

それで」

 

同時にバディはこちらを見る。

 

「お前を含めて、ベルトは何本ある」

 

「私の名前はファイズ。

単純な推測だが、5本目だろう」

 

「4本のベルト。

まったく、面倒な事に巻き込まれた」



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信頼

啓太郎の家で世話になる事になった次の日。

 

私とバディ、そして園田真理はとある場所へと向かっていた。

 

「ねぇ、どこに行くのか、いい加減教えてよ」

 

「教えるも何も、お前が勝手についてきているだけだろ」

 

そう、園田真理に対して、文句を言いながら、目的地へと向かう。

 

「バディが昔、世話になったという喫茶店のマスターだ。

人柄はかなり良く、バディも彼に対しては、好感を持っていたようだ」

 

「へぇ、巧がねぇ」

 

「お前は、余計な事を言うんじゃない」

 

そうバディは呆れたように言う。

 

だが、実際に昨日、バディが久し振りで、喫茶店の場所を忘れたという事で、案内した時は驚いた。

 

実際に、バディの良い所をきちんと理解していた様子だった。

 

そう考えていた時だった。

 

「っ!

バディ、すぐに私を持って、構えろ!!」

 

「何を言って」

 

「良いから!!」

 

私は瞬時に、変形すると同時に銃へと変形する。

 

何を言っているのか、分からないバディだったが、耳を澄ませると同時に聞こえた音に気づく。

 

「まさかぁ!!」

 

バディは、ドアの窓を見る。

 

そこにはイカの特性を持っていると思われるオルフェノクがおり、その棍棒を真っすぐとマスターへと向けていた。

 

「あの野郎!!

マスターをっ!」

 

同時に、そのまま見つめた先では、オルフェノクに向けて、バディは引き金を引く。

 

窓が割れ、オルフェノクの持っていた棍棒は、砕け散る。

 

「これは、まさかファイズ!」

 

それと共に、オルフェノクはこちらの気配に気づいたのか、すぐに追いかけてくる。

 

「お前は逃げろ!

あいつは、俺達がなんとかする」

 

「なんとかって!」

 

「武器はこいつがある!

お前は啓太郎を呼んで、すぐにベルトを持ってこい!!」

 

その言葉と共に園田真理を逃がそうとしたが、既にオルフェノクはそのまま追いかけて来た。

 

そして、既にその狙いはバディと、そして園田真理に向けていた。

 

既に敵に園田真理の素性を知られている以上は危険だ。

 

それはバディも同じだったのか、彼女の手を握って、走り出す。

 

住宅街は危険だと判断し、すぐ近くの公園に飛び込み、隠れながら、すぐに牽制を行っていく。

 

「バディは、あまり射撃は得意じゃないようだな」

 

「むしろ、こんなの得意な奴は異常だろ!!」

 

「まぁ、それは確かにっ」

 

そう言いながら、オルフェノクから逃げながら、周りを見渡す。

 

おそらく、この状況でバディは一人の場合、あのオルフェノクを倒す事はできるだろう。

 

だが、それはできないのは、園田真理がいるからだ。

 

彼女には見せたくないだろう。

 

例え、自分が死ぬ事になっても。

 

そうして追いかけられながら、僅かでも体力を回復さえる為に、木の影に隠れる。

 

「啓太郎は」

 

「もうすぐたどり着く。

私の案内もあって、すぐに来るだろう」

 

「そうか」

 

そう言いながら、バディはゆっくりと腰を降ろす。

 

少しでも、体力を回復するように。

 

「マスター、無事だと良いけど」

 

「巧は、マスターの事を、信頼していたの」

 

「あぁ、けど、同時に怖かったんだ」

 

「怖い?」

 

「あぁ、あの人と親しくなっていくのが怖かったんだ」

 

「何を言っているの」

 

「俺、人と親しくなるのが怖いんだ。

人を裏切るのが怖いんじゃない。

俺が、人を裏切るのが、怖いんだ」

 

「どうして、そう思うの」

 

「…自信がないんだ。

自分に」

 

そう言った、バディの言葉は本心だろう。

 

「ファイズが、なんで巧を信用したのか、少し分かった気がする」

 

「どういう事なんだ?」

 

「普通、親しくなって、裏切られるのが怖いと言う。

けど、巧は、自分が裏切るかもしれないのを怖がっている。

それって、人の事を思っていないと、出す事ができない言葉だよ」

 

「馬鹿な事を言うなよ」

 

そう言いながらも、バディは、園崎真理と顔を見ないようにする。

 

「っ、バディ!」

 

「あぁ、もぅ!」

 

私の声を聞くと共に、園崎真理を抱えて、そのまま後ろへと振り向く。

 

それと同時に、木をなぎ倒して、現れたオルフェノクに向けて、ビームが放たれる。

 

「ぐっ」

 

ビームが当たり、後ろへと下がるオルフェノク。

 

それに対して、バディはすぐに走り出す。

 

そして、向かった先には

 

「たっくん!!」

 

啓太郎が、その手にベルトを持って、こちらに投げていた。

 

「行くぞ!」

 

「あぁ」

 

同時に私に変身コードを入力すると共に、受け取ったベルトを腰に回したバディ。

 

そして

 

「変身!」

 

その姿を、555へと変わる。



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決別

555へと変身したバディ。

 

その実力はかなり高くなっていると言えるだろう。

 

襲い掛かってきたいオルフェノクは、既に先程の一撃で武器である棍棒が失われており、素手での戦いを強いられていた。

 

それでも、任務の為か、オルフェノクはそのまま襲い掛かる。

 

だが、それに対してバディも同じく素手で圧倒した。

 

それは、怒りから来るのだろう。

 

恩人であるマスターを襲おうとしたオルフェノクに対する怒りなのか。

 

一切、反撃を許さないように。

 

襲い掛かる拳を受け止めながら、蹴り上げる。

 

「さっさと決めるぞ」

 

同時にバディはそのまま腰にあるツールを手に取る。

 

「そう言えば、これって、どう使うんだ?」

 

「他のファイズギアと同じく、ミッションメモリーをセットするんだ」

 

その言葉を聞くと共に、そのままファイズポインターにミッションメモリーをセットする。

 

『READY!』

 

「そして、足首に装着し、ENTERボタンを押す」

 

「だったら、これを最初から使わせろよ」

 

それと共にバディはそのままENTERボタンを押す。

 

『EXCEED CHARGE』

 

鳴り響く音声。

 

それと共に、バディはゆっくりと構える。

 

その足先にエネルギーが集まるのを確認するように、ゆっくりと構える。

 

やがて、十分にエネルギーが溜まるのを確認すると共に、走り出す。

 

真っ直ぐとオルフェノクに向かって。

 

そして、バディが空中にて一回転をした時に、ファイズポインターから赤い線がオルフェノクに向かって放つ。

 

それはオルフェノクの体を辿り着くと、円錐型に形を変え、そのまま逃げることを許さない。

 

迫り来るバディのキックに対する恐怖とバディの気合の入った声が同時に建物に響き渡る。

 

そして、貫き、必殺の一撃となった。

 

「やったか」

 

そう振り返ると、そこにはオルフェノクの姿はなかった。

 

「あの野郎っ」

 

「いや、おそらくは大丈夫だろう。

オルフェノクには既にとどめを刺した。

おそらく、それ程長くは保てないだろう」

 

「そうなのか?」

 

「フォトンブラッドは、毒だ。

オルフェノクにとっても、人間にとっても」

 

「それを使えるのがベルトという訳か」

 

その言葉と共に、変身を解除する。

 

「巧、大丈夫なの」

 

「あぁ、けど」

 

それと同時に、バディは、何か迷っている様子だった。

 

「バディ、機械である私が言うのもなんだが。

後悔のない方を選べば良い」

 

「何を言っているんだ」

 

「マスターと会うのが怖いんだろ。

こうして、オルフェノクの戦いに巻き込んでしまって」

 

周りをサーチしても、園田真理も啓太郎もいない。

 

本当に、私とバディだけだ。

 

「例えオルフェノクだろうと、関係ない。

オルフェノクも人間だ」

 

「だけど、怪物だろう」

 

「生物が少し進化した程度で、大きく変わらない。

姿、形が変わったとしても、大事なのは、心じゃないのか」

 

「機械のお前が言うか。

けど」

 

そう言ったバディは。

 

「けじめは、つけなきゃいけないよな。

会わないとしても、別れるにしても」

 

その言葉と共にバディは変身を解除する。

 

「来てくれるか」

 

「あぁ、勿論だ」



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先日の一件もあってか、バディは以前よりも少しすっきりとした表情だった。

 

マスターは、店を畳んだ後、東京から別の所に元々移り住む予定だったらしい。

 

だからこそ、いや、おそらくはバディとマスターは2度と会う事はない。

 

だが、それは悲しい別れではない事を、私は信じていたい。

 

そして、その日の夜、私達は夜ではあるが、クリーニング屋の仕事の為、配達に出掛けた。

 

その際、啓太郎がこんな事を話していた。

 

「俺、ただのクリーニング屋じゃ駄目だと思うんだよね。

ただ、洋服を綺麗にするんじゃなくて、もっと色んな物を綺麗にしたいんだ。

皆を幸せにしたいみたいに」

 

「お前、今、自分で良い事を言っていると思っているだろ」

 

「茶化さないでよ」

 

そう、啓太郎はバディに対して言うが

 

「いや、良い話だと思うよ。

ただ、ちょっとな」

 

それと共に啓太郎の言葉に同意しながらも、どこか別の場所を見つめていた。

 

「・・・ふむ、それは人間で言う所の夢というのか」

 

「そうだよ。

俺、それが夢だからね」

 

「夢か。

機械の私にはあまり分からない事だ」

 

「そうかな?

機械でも夢を見る事はできると思うよ。

何かやってみたい事とか」

 

「それは目的ではないのか?」

 

「う~ん、それも間違っていないと思うけど。

どう言えば良いんだろうなぁ。

改めて、考えると、夢ってなんだろうね」

 

「人間が生きる為に必要な目的。

それとは、また違うのか」

 

「ファイズは、何かないの?

こう、叶えたい目標みたいなのが」

 

「私の目標か。

今の所は、そうだな」

 

その言葉に対して、私は、夢というのは、どう考えれば良いのか、分からずに首を傾げる。

 

その最中で出たのは。

 

「私と同じライダーズギアに会いたいかもしれない。

私は、製造されて、こうした意思を持つ事ができたのは、バディが初めて変身した時だ。

知識では、確かに知っているが、彼らが実際にどういう存在なのか」

 

「それって、兄弟に会いたいという感じ?」

 

「・・・どうなんだろうな。

もしも、私以外、意識もないただの機械ならば、私の存在意義は」

 

「・・・会いたいんだったら、会えば良いんじゃないのか?」

 

「たっくん?」

 

「お前が言ったんだろ。

俺にマスターと会わせたみたいに」

 

「バディ」

 

そう言いながら、バディは窓の外を見る。

 

「俺には、そういう夢なんて、ないからな。

お前達の気持ちがあまり分からないんだ」

 

「・・・そっか。

そう考えると、夢って、本当になんだろう。

俺は、夢を追いかけるのが生き甲斐だけど、別に夢が無くても確かに生きていける」

 

そう、車内では、あまりにも重い雰囲気があった。

 

その時だった。

 

「はぁ!」

 

啓太郎は、何か驚いた表情だった。

 

見ると、そこにはオルフェノクが人間を襲っている所だった。

 

「オルフェノク!!」

 

その言葉と共に、バディはすぐにベルトを腰に巻き、飛び出す。

 

「なんだぁ?お前は」

 

オルフェノクはすぐにバディの姿に気づいたようだった。

 

バディはその問いに、すぐには答えず襲われていた男に目を向ける。

 

骨を折られたのか、首がおかしな方向に曲がったまま、男はぴくりとも動かない。

 

すでに死んでいるのは明らかだった。

 

だが、気になる部分があった。

 

「なぜ、縄を持っているんだ?」

 

オルフェノクは人知を超えた存在であり、縄は必要ない。

 

むしろ、邪魔でしかないだろ。

 

「もしかして」

 

「アルバイトさ…クリーニング屋のな!!」

 

そうバディがベルトを巻いた瞬間、オルフェノクは襲い掛かる。

 

「うわっと、ちっ!!」

 

「ばっバディ、まさかぁ!!」

 

そのままバディは、私を天高く投げた。

 

「ケータイは投げる物ではない!!!」

 

私はそう言いながらも、瞬時に変形すると共に、変身コードを入力する。

 

「なんだぁ、今の声は?」

 

疑問に思いながら、周りを見るオルフェノクとは対照的に、バディはそのまま私が墜ちてくる位置に、そのまま立つと同時に

 

「変身!」

 

その言葉と共に、私はベルトへとすぽんっと収まり、変身する。

 

『バディ、このオルフェノク。

もしかしたら、まだ、人を殺していないかもしれない』

 

「あぁ、何を言っている?」

 

その言葉と共にすぐにオルフェノクの方へと目を向ける。

 

どのような状況か、分からない。

 

それでも、オルフェノクは既に戦う気はあるだろう。

 

『仕方ないか』

 

どちらにしても、戦いは避けられない。

 

同時に、オルフェノクが襲い掛かる。

 

素手で、武器がない様子は見て、分かる。

 

次々と拳や蹴りを放っていくが、それらはバディは簡単に躱してく。

 

その様子を見るだけでも、明らかに戦闘経験はない。

 

いや、むしろ、オルフェノクになった事すら、初めてに見える。

 

そう考えをしていた時だった。

 

「ふんっ!」

 

『バディ!

後ろからもう一体、オルフェノクが来ているぞ!』

 

「なに?」

 

聞こえた声と共に、見つめた先には、剣を持つオルフェノクがいた。

 

その見た目から、馬を思わせるオルフェノクであった。

 

私の声を聞いた、バディはすぐにその攻撃を避ける。

 

だが、同時に襲い掛かった衝撃。

 

555の装甲越しでも分かる程のダメージから考えて、目の前にいるオルフェノクの強さは、これまで戦ってきたどのオルフェノクよりも強い。

 

「こいつっ一体っ」

 

『バディ、すぐにコードを』

 

『461』

 

同時に、バディはすぐにファイズフォンにコードを入力する。

 

それと同時に、目の前に襲い掛かろうとしたオルフェノクに降りてきたのは、ドラム式洗濯機だった。

 

「なっ、なんだ、これ!?」

 

それは、オルフェノクからしたら、驚きを隠せなかった。

 

「今度はこれかよ!

どうするんだよ!!」

 

「とりあえず、手に取りたまえ!」

 

「あぁ、もぅ!」

 

それと共に、その取っ手に、ミッションメモリーをセットする。

 

同時に、その手に持った丸い部分は盾に変わる。

 

それを剣で攻撃してきたオルフェノクを反撃し、そのままもう一体のオルフェノクを蹴り飛ばした。

 

「あぁ、これ、どうすれば良いんだよ!!」

 

そう言いながら、すぐにアーマーのパーツを見る。

 

だが、それは、目の前にいるオルフェノクは待ってくれない様子だった。

 

「こうなったら、一気にやる!!」

 

『待て、バディ!

アーマーを着ないで、行うのは』

 

『Exceed Charge』

 

だが、その言葉を遮って、バディはその手にある盾をファイズガードシールドにエネルギーを流し込む。

 

巨大なエネルギーの刃となり、そのまま真っ直ぐとオルフェノクに向かって、体当たりを行う。

 

その一撃に対して、オルフェノクは、なんとその剣で対抗した。

 

ファイズギアの中でも攻撃力はあまりなく、防御として使われるファイズガードシールドだが、それでも並のオルフェノクでは耐えきれない。

 

それを真正面から受け止め、さらには

 

「はあぁぁ!!!」

 

反撃し、吹き飛ばした。

 

「ぐっ」

 

それには、さすがのバディも苦い顔をする。

 

同時に変身が解除される。

 

「たっくんっ大丈夫!!」

 

「あぁ、ぐっ」

 

傷が痛むのか、顔を歪ませる。

 

「啓太郎、バディのベルトからファイズショットを取り出して、私に装着してくれ」

 

「えっ、うんっ分かった!」

 

その言葉と共に取り出したファイズショットをそのまま分離し、装着する。

 

「着装完了!!」

 

同時に、私は周りを見渡す。

 

先程の攻防で、未だにオルフェノクがいる以上、暗闇の中から襲い掛かってくる可能性がある。

 

私は、そのまま周りを見ると共に、オルフェノクを探る。

 

その最中、オルフェノクのみが残すだろう足跡が見え、見つめる。

 

「逃げた?

どうやら、オルフェノクは、この場から逃げたようだ」

 

「そうなの?

良かったぁ」

 

「安心はしない方が良い。

すぐにこの場から離れよう。

あの馬のオルフェノク、これまでのどのオルフェノクよりも強い」

 

もしかしたら、今後、対峙する可能性が高い。

 

それと共に、私達はすぐにその場から離れていった。



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夢を守る者

先日のオルフェノクとの戦いから一日が経った。

 

あの時に記録したオルフェノクに関するデータや、翌日に出た新聞などの情報をバディと共に共有していた。

 

「つまり、あのオルフェノクはどちらかと言うと、正当防衛か」

 

「あぁ、そもそも、オルフェノクが殺したならば、灰になっている。

それが行われていなかった所を見ても、おそらくは、襲われ、殺された後に、蘇った可能性がある」

 

そう言いながらも、バディはため息を吐く。

 

「まぁ、どちらにしても、襲ってきた以上は、返り討ちにするがな」

 

そう、変わらない言葉と共に、仕事を続ける。

 

「にしても、まったく」

 

そう愚痴りながら、バディは、今日の出来事を思い出すように苛立つ。

 

次の日、バディの身の回りでは、『夢』というのが大きく関わっていた。

 

啓太郎は、自分の夢を実践する為に、客の1人の悩みを聞き、その息子さんの説得をする為に向かった。

 

それに付き合わされるように向かった先で、その息子である黒田和彦はすぐに家に帰ろうとせず、両親に理解して貰える演奏をするまで家に帰らないつもりでいた。

 

そして、園田真理は、自身の夢である美容師になる為の試験に不合格になった。

 

「周りの奴らの夢のせいで、俺にはとんだ迷惑な話だ」

 

「かもしれないな。

だが、バディ」

 

「なんだぁ」

 

「私には、君が、そんな彼らを羨ましそうに見ている気がするぞ」

 

「はぁ、お前、巫山戯ているのか」

 

「巫山戯ていないさ」

 

先日の、啓太郎の話を聞いていた頃から、本格的にそう見えるようになった。

 

「・・・あぁ、もぅ、文句を言いに行くぞ」

 

「園田真理ならば、今は近くの公園だ」

 

その言葉と共に、バディはそのまま私をポケットの中に入れて、園田真理の所へと向かう。

 

向かった公園。

 

そこのベンチで1人、園田真理は泣いていた。

 

それを見て、先程まで確かな不満があったバディは、少し戸惑いながらも、近づく。

 

「おい」

 

そう、バディが声をかけると、園田真理は振り返る。

 

「やっぱり火傷したぞ、口の中」

 

そう、先程まで食べていた鍋焼きうどんの事を軽く文句を言う。

 

しかし、そこには先程までの怒りはなかった。

 

「ごめん」

 

園田真理自身も、既に自分の非を認めていたのか、素直に言う。

 

「泣くな、帰るぞ」

 

「うん」

 

互いに、少し時間を置けば素直になれる。

 

それと共に2人は、一緒に帰り道を歩く。

 

その最中。

 

「お前、なんでそんなに夢に一生懸命になれるんだ」

 

そう、私も、バディ自身と同じ疑問があった。

 

それに答えるように、園田真理は言う。

 

「夢を持つとね、時々切なくなって、時々すっごく熱くなるんだ」

 

「・・・矛盾しているな」

 

「うん、矛盾している。

だから良いんだ」

 

そう、私の言葉に対して、園田真理は答えてくれる。

 

「本当、贅沢だよ、お前」

 

「そうだよね、泣いている暇があったら、もっと練習しないとね」

 

「あぁ、そうだな」

 

そう言っていると、バディは何かに気づいて、振り返る。

 

そこには、既に何も無かった。

 

「どうしたの?」

 

「・・・なんでもない」

 

それだけ言い、バディは進む。

 

だが、同時にバディは確かめるように、私の画面を開く。

 

それと共に、私はカメラを起動させ、サーチする。

 

同時に見えたのは、物陰から確かにこちらを見つめる人影。

 

そして、さらに翌日。

 

「今日は一緒に学校に行かないの。

説得しに行かなきゃ」

 

「今日はかったるいんだよ。

なんかあったら、すぐに行ってやるからよ」

 

そうしながら、バディはそのまま園田真理に近づく。

 

すぐ近くには、充電器に繋がっている状態の私もおり、そのタイムを見る。

 

夜遅くまで、園田真理が苦手にしている部分や、それをどうすれば良いのか。

 

ファイズギア総動員で、サポートした。

 

その努力は確かに実った。

 

そして、その日、バディはずっと、園田真理を見守っていた。

 

周囲の警戒も、行いながら。

 

それと共に、彼女の努力が実った時、確かにバディは笑った気がする。

 

「夢を持つって、良い事かもな」

 

「あぁ、そうだな」

 

未だに夢が叶っていない。

 

だが、その第一歩を踏み出す事ができた。

 

それを見る事ができた気がする。

 

そして、園田真理の帰り道。

 

彼女の後ろから迫ってくる眼鏡をかけた男性。

 

その胸元にある社員証を見て、同時に確信を持つように、バディはそのまま無言で立ち塞がる。

 

「っ」

 

何が起きているのか分からない様子だ。

 

それでもバディはそのまま立つ。

 

せめて、夢の第一歩を踏む込む事ができた園田真理の為に。

 

「なんだ、お前は」

 

「おい、知っているか。

夢を持つとな、時々すごく切なくなる。

だけど、時々すごく熱くなるらしいぜ」

 

同時に、バディは、そのまま私に変身コードを入力する。

 

「俺には夢はない。

だけど、夢を守る事はできる」

 

そう、私自身も夢を持たない。

 

ただの機械だ。

 

だけど、それでも、誰かの夢を支え、守る事ができる。

 

機械であるからこそできる事。

 

「変身」

 

それと共に、バディは555へと変身する。

 

同時にオルフェノクは、その手にレイピアを手にして、襲い掛かる。

 

しかし、バディは迷わずに、コードを入力する。

 

『461』『818』

 

入力すると同時に、正面から来たオルフェノクは、上から降ってきた物をすぐに避ける。

 

「なっ」

 

そうしている間にも、既に遠隔操作で、こちらに向かっているオートバジンが牽制しながら、バディはそのままミッションメモリーをセットする。

 

まずはファイズエッジをファイズストライクブレードに。

 

次に、ファイズガードシールドを持つが。

 

「まったく、これをどうすれば」

 

「ここは、私に任せたまえ」

 

そう言うと、オートバジンでオルフェノクを多少離した後、残りのアーマーをそのままバディに装着させていく。

 

「なんだか、着替えさせられているような気分だが」

 

「着物などは着付けがあるんだ。

気にする事はない」

 

そう言いながらも、ようやく装着が完了する。

 

2つのギアを装備する事で変わった姿。

 

その姿は、まさしくナイトと呼ぶに相応しいだろう。

 

「そんな重い装備で、何ができる!!」」

 

そう言いながら、オルフェノクは、迫っていく。

 

それに対して、バディは正面から受け止める。

 

「お前の動きをいちいち見なくて済むんだよ」

 

その言葉と共にファイズストライクブレードで、斬り上げる。

 

それによって、吹き飛ばされたオルフェノクを見ながら、手に持ったファイズガードシールドを刀身に装着する。

 

それによって、ファイズガードシールドの形は変形し、巨大な斧へと変わる。

 

それと同時だった。

 

『Exceed Charge』

 

同時に、ファイズガードシールドからは巨大な斧のエネルギーが溢れ出る。

 

その場を動く事ができないオルフェノクに対して、その斧を真っ直ぐと振り下ろした。

 

それによって、オルフェノクは、完全に灰となった。

 

「よし、やったぞ、バディ」

 

「まぁな。

にしても、重いなこれ」

 

そう言いながら、ごすっと、そのまま武器を地面に降ろした。

 

それはかなり重く、簡単にアスファルトの床を壊す。

 

「「あっ」」

 

それに気づき、私達は思わず声を出す。

 

「どっどうするんだよ、これっ!!」

 

「とりあえず、バディ。

ここは、戦略的撤退だ」

 

それと共に、オートバジンをバイクモードにして、提案する。

 

「あぁ、まったく!!」

 

そう言いながら、バディはオートバジンに乗り、すぐにその場から離れていった。



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呪いを壊す者

山手音楽大学にて、木場は、とある人物を殺す為に訪れていた。

 

知り合いである海道の夢を壊した人物を、殺す為に。

 

だが、待ち受けていた木場にとっては、予想外の人物がいた。

 

「あなたは」

 

「はぁい、もぅ、そんなに殺気を立てちゃ、駄目ですよぉ」

 

そう、木場の目の前に現れたのは、スマートブレインの社員の1人であるスマートレディだった。

 

彼女が、なぜこの場にいるのか、疑問に思っていると、彼女は、その手に持っているのはアタッシュケースを渡す。

 

「これは」

 

「我が社が開発した物の1つなんですが、扱いがとっても難しいんです。

どうしても実験をしたいと社長からのお願いで、あなたに渡すように言われましたぁ」

 

「僕に?」

 

その言葉に疑問に思いながら、木場はそのアタッシュケースを開く。

 

そこには携帯が1つ、そしてベルトがあった。

 

「これって、あいつが持っていたのと」

 

「そうなんですぅ。

あなたも既に知っていると思いますけど、それを使えば、オルフェノクよりも強い力を手にする事ができます!

けど、使いこなせなければ、死んでしまいますからぁ」

 

そうしている間にも、部屋に入る音が聞こえる。

 

見れば、そこには、この音楽学園での教授だった。

 

その教授が、海道の夢を壊した張本人だった。

 

「君達は」

 

「・・・話は全部聞いた。

なぜ、海道直也の夢を壊した」

 

「ふっ、私よりも才能がある人間は潰さなければならない。

そして、最も重い罰を与えなければならない。

分かるかね、そういう人間はただ手をかけるだけでは駄目だ。

才能を潰して、惨めに生きて貰わなければならない」

 

その言葉に、木場は顔を歪める。

 

それは、自然とベルトに手を伸ばしていた。

 

それが、オルフェノクを、同胞を殺す物だと分かっていた。

 

だが、今の自分には、必要な物だと。

 

「知っているかな、夢ってのは、呪いと同じなんだ。

途中で挫折した者はずっと呪われたままらしい。

あなたの、罪は重い」

 

その言葉と共に携帯を取り出す。

 

すると、まるで、木場の言葉に応えるように、画面が明るくなる。

 

『321』

 

自然と、木場は番号を入力する。

 

「変身」

 

そのまま、木場は腰に装着したベルトに携帯を装填する。

 

『COMPLETE』

 

鳴り響く音声。

 

それと共に、光と共に包まれると同時に、その姿が変わる。

 

顔はμを思わせる記号のマスクに、黒い装甲、そして紫色のフォトンブラッドが光る。

 

「わぉ」

 

それを見て、スマートレディは笑みを浮かべる。

 

「ふんっ」

 

同時に教授もまた、オルフェノクとしての姿を現す。

 

両手に鉤爪で構えたオルフェノクは真っ直ぐと、襲い掛かる。

 

それに対して、木場は、まるで冷静に。

 

手慣れたように、腰にある武器を手に取り、ミッションメモリーを装填する。

 

『READY』

 

鳴り響く音声と共に、紫色のフォトンブラッドの刃が展開され、襲い掛かるオルフェノクを斬り上げる。

 

「ぐぅ!!」

 

火花を散らし、オルフェノクは驚きを隠せなかった。

 

武器である鉤爪が、熔けていた。

 

それに、驚きを隠せなかった。

 

だが、それは木場も同じだった。

 

(なんでだ、俺は、このベルトの使い方が分かる)

 

それと共に、自然と動く。

 

元々、オリジナルのオルフェノクとして、その素質は高かった事もあった。

 

だが、その素早い動きは、戦っているオルフェノクの反応を越える程だった。

 

素早く、斬っていく。

 

それも腕を重点的に。

 

『そのまま攻撃したら、駄目だよ』

 

それと共に、脳裏に聞こえた声に、攻撃の手が緩んだ。

 

それを見て、オルフェノクはすぐに逃げ出す。

 

「待てっ」

 

すぐに追いかけようとした。

 

だが、すぐには追いつけない。

 

『腰にある携帯のENTERボタンを押して。

そうすれば、追いつける』

 

どこから聞こえたのか、分からない。

 

それでも、木場は、今はその言葉を信じた。

 

腰にある携帯に手を伸ばす。

 

『Exceed Charge』

 

その音声と共に、その手に持った剣を構える。

 

同時に真っ直ぐとオルフェノクへと近づく。

 

それと共に、素早くΜの字を一瞬で相手に切り刻む。

 

それによって、オルフェノクは一瞬で消滅する。

 

「これは一体」

 

そう疑問に思いながら、ベルトから携帯を取る。

 

そして、変身解除する。

 

「これは一体」

 

そう疑問に感じながら、ベルトを見つめる。

 

同時にそれを観察していたスマートレディも。

 

「ふぅむ、どうやらファイズちゃんみたいにすぐには仲良しさんという事にはならないみたいですね。

やっぱり、特例中の特例という訳ですか。

けど、どうやら変身はできたみたいですねぇ」

 

そう言いながら、足下にあるもう1つのアタッシュケースも見る。

 

「無理矢理ならば、変身はできますが、それじゃ、ベルトの本来の力は発揮れませんからねぇ」

 

その言葉と共に。

 

「さて、次は誰に渡しましょう」




次回は、本編では9話から10話を飛ばし、一気に11話へと飛びます。
理由としては、本編とは違い、スマートブレインに対して怪しんでいる事もあり、本編とは違う話になると考えた為です。
突然で、本当にすいません。


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カイザの呪い

激しさが増していく戦いの中でも、日常は変わらない。

 

仕事も、今日は休みという事で、バディは雑誌を適当に読んでおり、私もまた情報を探る為にインターネットに潜っていた。

 

そんな時、園田真理の携帯にメールが届く。

 

「本日PM四時

 八景島シーパラダイズ

 メリーゴーランド前」

 

同級生の犬飼からだった。

 

「おい、これって」

 

「うんっベルトだよ、ファイズ、これ、分かる!」

 

そうすぐに私に問いかけてくる。

 

私はすぐに画面に映し出されているベルトを見る。

 

「なっ、これは、やばいかもしれない」

 

「えっやばい?」

 

その言葉に、園田真理は驚く。

 

「これはカイザのベルト。

私自身もデータ上でしか、その性能は見ていない。

これは、私よりも前に開発されたベルトだ」

 

「つまりは、お前の兄貴か姉貴という事になるな。

それで、どんな風にやばいんだ?」

 

「このベルトは、フォトンブラッドの出力が私よりも早く高く、そしてセーフティーがない」

 

「セーフティーって?」

 

「園田真理や啓太郎のように、フォトンブラッドを十分に操れない者はすぐにベルトを外すようにしている。

さらには、ここに来る前に戦ったオルフェノクのように、私が適合する者だと認めなかった場合は、出力を落とす。

そのような感じだ」

 

「なるほどね、それがないという事なのか?」

 

「あぁ、最も、それがないのは最初のセーフティーだけだ。

ベルト自身も意思があるが、ある意味、それが危険だ」

 

「どういう事なの?」

 

「このカイザのベルトは、555のフォトンブラッドの倍以上の出力を出す。

つまりは変身した人間は、死ぬ可能性が非常に高い」

 

「それじゃ、早く犬飼君の所に行かないと!」

 

「待ち合わせ場所は、どこなんだ」

 

私の言葉を聞いた2人はすぐに走り出した。

 

おそらく、いや、間違いなくベルトは使用されているだろう。

 

だが、それでも、犠牲者を少なく済む可能性がある。

 

私達はすぐに向かい、遊園地に辿り着く。

 

約束の時間まで、まだある。

 

ゆっくりと見渡す。

 

待ち合わせ場所に着く巧と真理。

 

不気味な静けさと共に、ゆっくりとチャイムが鳴る。

 

「時間だ」

 

バディのその一言と共に頷くと、後ろのメリーゴーランドが止まる。

 

そこにいたのは1人の青年だった。

 

「犬飼君」

 

それが、どうやら目的の人物だろう。

 

しかし、声をかけるのと同時だった。

 

そこで犬飼が灰化する。

 

「「っ!」」

 

「バディ、オルフェノクだ!」

 

私の声を聞いたバディは、瞬時に周りを見る。

 

それは私も同じく、周りをサーチする。

 

「バディ、あそこだっ」

 

「変身!」

 

私の言葉に合わせて、瞬時にベルトに私を装填する。

 

そして、そのオルフェノクは姿を現す。

 

強固な皮膚で覆われており、ワニの歯形状のバックラーが特徴的なオルフェノクだ。

 

「バディ、注意しろ!」

 

「あぁ、分かっている」

 

その迫力は、これまで戦った、どのオルフェノクよりも強い。

 

それは、バディも肌で分かっているようで、警戒していた。

 

同時に、走り出す。

 

バディは、真っ直ぐとオルフェノクに向けて、拳を叩きつける。

 

だが、その手に持つバックラーであっさりと受け止める。

 

それでも、瞬時にバディは殴りかかるが、まるでダメージはなかった。

 

『バディは、パワーよりもスピードを重視した戦い方をする。

この相手に、それは不利だ。

すぐに別のギアを出すんだ』

 

「あぁ!」

 

それはバディも察したのか、すぐに呼びだそうとする。

 

だが、それが隙となって、オルフェノクが殴り飛ばす。

 

「ぐっ」

 

既にこちらの情報はある程度、相手にバレている。

 

おそらく、装着する隙は与えられない。

 

ならば、ここはファイズポインターで一気にやるしかない。

 

それはバディも同じだったのか、すぐにファイズポインターを取り、そのまま脚にセットする。

 

『READY!Exceed Charge!』

 

すぐにバディは、ファイズポインターをセットし、真っ直ぐとオルフェノクに向かって、必殺の一撃を放つ。

 

だが、オルフェノクは、簡単にその一撃を破壊する。

 

「なっ、ぐぅ!」

 

そのまま地面に叩きつけられたバディ。

 

そのまま、オルフェノクは、バディに追撃する。

 

『バディ、ここは逃げるぞ』

 

「そんな隙っあるかよ!!」

 

そう言いながら、バディにオルフェノクが追撃していく。

 

このままでは。

 

そう考えていた時だった。

 

『人間はなぜ、戦う。

なぜ、死ぬと分かっていて、戦う』

 

聞こえた声。

 

それは酷く冷たい印象のある声だった。

 

同時に、バディを襲い掛かろうとしたオルフェノクの攻撃が緩んだ。

 

見ると、それは遠くからこちらを見下ろしているライダーが1人。

 

「あれは、まさか」

 

バディも、その正体を察してしまう。

 

それと同時だった。

 

そこにいたのは、カイザだった。

 

『194』

 

その音声が鳴り響き、電気式BBQグリルを思わせるアイテムだった。

 

そして、腰にあるアイテムにミッションメモリーをセットし、そのまま連結する。

 

それと共に巨大な斧へと変形し、構える。

 

そのまま、宙に飛ぶ。

 

『Exceed Charge』

 

「っ!」

 

同時に、斧から出る光の刃は巨大化する。

 

そのまま真っ直ぐと、オルフェノクに向けて、振り下ろす。

 

その一撃は、先程までまるでダメージを与えられなかったオルフェノクを、一撃で倒す。

 

「あれが、カイザ。

けど」

 

「あぁ、バディっすぐに」

 

そう、バディも私も、その変身者を助ける為に向かおうとする。

 

だが

 

『無駄だ、既に時間切れだ』

 

『まただっ』

 

聞こえてきた声。

 

同時にカイザに変身していたと思われる人物が苦しみ出す。

 

それが、何を意味するのか。

 

同時に、光と共に、その姿も消える。

 

「一体、どうなっていやがるんだ」

 

その言葉には同意する。

 

未だに、謎が多すぎる。




新たな追加事項を書いた募集を行っています。
皆様の応募、お待ちしています。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=292618&uid=45956


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カイザ

カイザとの接触したその日の夜。

 

私達の食卓は暗かった。

 

あの時、カイザに変身したと思われる人物は死んでしまった。

 

それに対して、罪悪感が強く、私もバディもどうすれば良いのか、ため息を吐いている。

 

「それで、これからどうするつもりなんだ」

 

「どうすると言われてもな。

あの時、死んだ犬飼の奴と仲の良い奴はいなかったのか?」

 

「仲の良い、もしかしたら」

 

その言葉と共に、園田真理が思い出したように、携帯を取り出しながら、連絡をする。

 

「それで、お前は何か分からないのか。

あのカイザの事について」

 

「分からない。

正直に言えば、あの時に聞こえた声が、兄弟の物なのか、疑問だが」

 

「声ねぇ」

 

そう、呟きながらも、バディはどこか窓の外を見つめていた。

 

「明日にでも会いたいって、巧、ごめんだけど」

 

「あぁ良いよ。

どうせ、暇だし」

 

その言葉のまま、翌日、私達はそのまま連絡が取れたクラスメイトである里奈と再開する。

 

その再会は、本来だったら喜ぶべき事だったが、今はそれよりも知りたい事があった。

 

「ねぇ、教えて。

カイザのベルトは、誰に送られたの」

 

「カイザの事を知っているの」

 

「えっうん。

私の所にもベルトが送られて来たから。

ファイズが」

 

そう言うと、バディはそのまま私を取り出して、見せる。

 

「そう、真理の所にも、

カイザギアは、最初は高宮君に送られて来た。

そして、カイザギアの最初に犠牲者にもなったの。

そして西田君も」

 

「たぶん、昨日の奴だろうな」

 

そう、バディも納得するように頷く。

 

「詳しい事は先生から聞いて。

皆も、真理に会いたがっているから」

 

その言葉に合わせるように、キャンピングカーが近づいた。

 

そのまま、彼女に促されるままに、キャンピングカーの中に入る。

 

見渡すと、そこには何人かの男女がおり、おそらくは園田真理の言う流星塾の生徒だろう。

 

そして、互いに事情を話した。

 

「そうか、君もオルフェノクに襲われたのか。

しかし、よく無事だったな」

 

「はい、巧とファイズのおかげですから」

 

「ファイズって、確かカイザの事だよな」

 

「うん、ここまで一緒に戦ってきてくれたんだよね」

 

「そうか、おそらくファイズギアとカイザギアでは何か違うんだろう」

 

「えっそれは、まぁ。

ファイズはフォトンブラッドでしたっけ?

それが、安定して使えて、カイザはその制限はなかったと聞きます」

 

その言葉に、周りが驚いている。

 

「真理、なんで、そこまで詳しく知っているの」

 

「えっ、いや、教えてくれたから」

 

「教えたって、誰が」

 

「ファイズが」

 

「ファイズ?

どういう事なの」

 

そんな疑問の言葉に対して、バディはそのまま私にコードを打ち込む。

 

同時に、私はそのまま変形し、立つ。

 

「えっ」

 

「携帯が立った!」

 

その事に、周りにいたメンバーが全員、驚きを隠せなかった様子だ。

 

「真理、これって、どういう事なの」

 

「えっ、カイザも同じじゃないの。

だって、ファイズのように、こういうのが備えているって」

 

「おそらくは、バディと認める人物がこれまでいなかったんだろう。

そうだろ、カイザ」

 

そう、私が問いかけると共に、カイザフォンがパカリと開く。

 

それには、周りのメンバーが驚いた様子だった。

 

「カイザ、動いた」

 

「あぁ、そうだ。

何か問題でも」

 

そう言いながら、カイザは、その画面を現す。

 

それは、黄色い瞳に、少し不気味な印象を受ける。

 

「どういう事なんだ」

 

「それよりも、喋れるんだったらっなんで、今まで、言わなかったんだっ」

 

それと共に、流星塾の生徒の1人が、そのままカイザへと詰め寄る。

 

それに対して、カイザは変わらない態度で話す。

 

「言っても、何も変わらないからだ」

 

「変わらないっだとっ」

 

それに対して、動揺を隠せない様子だった。

 

「俺が呪いのベルトだと言って、お前達は俺を使わなかったのか?

いいや、例え俺が忠告したとしても、お前達は生き残る為に使う。

それが、例え死ぬと分かっていてもな」

 

その言葉は、流星塾の生徒達は、言い返す事ができない様子だった。

 

「だったら、ファイズ。

お前は「悪いが、私が変身できると決めているのはバディだけだ」なっ」

 

「それは、私の意思でもあり、変身条件が成立しているのは、この場では、バディだけだ。

すまないが」

 

「まぁ、俺は変身はできる。

だが、その場合、死ぬ覚悟をするんだな」

 

その言葉を最後に、カイザはそのまま閉じた。

 

「こいつらは」

 

「それで、聞きたいが、ファイズに変身して、なんともないのか」

 

「えぇ、まぁ。

こいつはどうやら、そのエネルギー調整が特に上手らしいので」

 

「ならば、もしも、それがカイザにも応用できれば」

 

「だけど、こいつらを信用できるのか」

 

そう、流星塾の生徒の1人が言う。

 

「ちょっと」

 

「良いんだ。

俺は余所者だからな」

 

「巧」

 

「話がこれ以上、こじれてもあれだから、俺達は出て行くわ」

 

その言葉と共に、私達は出て行く。

 

「良かったのか」

 

「あぁ、とりあえず、あいつが無事に行けるまでな。

それで、聞くが、カイザは変身した人間は」

 

「あぁ、死ぬ」

 

「まったく、厄介な事になったな」

 

そう言いながら、巧は呆れたように言う。



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並列分散

あれから、園田真理達が乗ったキャンピングカーが離れていく。

 

それに対して、私達は追跡していた。

 

園田真理の身に危険がないように、心配しながら。

 

それと共に、真っ直ぐと走っていた時だった。

 

「おい、聞こえるか、ファイズに、ファイズの装着者」

 

「これは、カイザからの連絡だ」

 

それを聞いて、すぐにバディは見つめる。

 

「オルフェノクの襲撃があった。

合流しようとした流星塾の生徒がオルフェノクだった。

それも敵の手先だ」

 

「なっ」

 

その言葉を聞いて、すぐにアクセルを踏む。

 

見つめた先には、既にカイザに変身していると思われる人物が戦っていた。

 

前回の、クロコダイルオルフェノクを倒せたが、それでも2人で攻められている事もあってか、かなり苦戦させられていた。

 

そして、そのまま吹き飛ばされると同時にカイザのベルトが外れる。

 

そして、その装着者だと思われる人物が既に灰となっていた。

 

「間に合わなかったのかっ」

 

「後悔していても、仕方ない!

すぐにでも園田真理達を助けないと」

 

「あぁ!!」

 

バディは、そのまま真っ直ぐと、オートバジンを乗りながら、園田真理達に襲い掛かろうとした2体のオルフェノクに向かって、突っ込む。

 

「変身!」

 

その叫びと共に、バディは555へと変身し、そのままオートバジンから降り、突っ込ませる。

 

前回の戦いで既に目の前にいるワニ型のオルフェノク、クロコダイルオルフェノクの強さは既に分かっている。

 

だからこそ、まずはゴキブリの特性を持つオルフェノクであるゴキブリオルフェノクがバディが戦う。

 

ゴキブリという特性という事もあってか、その攻撃はかなり素早い。

 

バディはその動きを冷静に見ながら、その手にはオートバジンから離れる際に手にしたファイズエッジで斬り裂こうとする。

 

しかし、ゴキブリオルフェノクはそれらの軌道を読み、的確に攻撃を仕掛けてくる。

 

「ちっ」

 

思わず、舌打ちをうつバディ。

 

そうしている間にも、オルフェノク達は、その標的を私達から、園田真理へと向けようとしている。

 

現状の555では、パワーが足りない。

 

そして、すぐにコードを打ち込む暇はない為、追加武装を行う事はできない。

 

どうすれば。

 

「・・・ファイズのバディ。

使うならば、使え」

 

「なに?」

 

聞こえた声と共に、バディの手元に投げられたのは、ミッションメモリー。

 

それはおそらくはカイザのミッションメモリーだ。

 

この状況で、一体。

 

「そうかっ、バディ!

カイザのミッションメモリーを私に装填するんだ」

 

「何を言っているんだ」

 

「良いから、早く」

 

「あぁもぅ」

 

その言葉と共に、私にカイザのメモリがセットされる。

 

「「並列分散リンク」」『COMPLETE』

 

私とカイザの声に合わせるように、555に変化が起きる。

 

これまでの赤いラインが一変。

 

まるで、カイザを思わせる黄色いラインへと変わる。

 

「なんだ?」

 

その変化に、疑問に思っている間にも、襲い掛かってくるゴキブリオルフェノクをそのまま蹴り飛ばす。

 

すると、先程までは、ダメージを与える事ができなかったゴキブリオルフェノクを一瞬で吹き飛ばす事ができた。

 

「これは」

 

「ミッションメモリーを入れ替える事で、一時的だが、他のギアの特性をコピーする事ができる」

 

「その際の制御は俺達が行っている。

その為、もう片方のギアは使えないが、今は丁度良いだろ。

そのままカイザブレイガンを使え」

 

「あぁ、これか」

 

そう、カイザのベルトにセットされているカイザブレイガンを取りだし、そのまま二度目のミッションメモリーをセットする。

 

『READY』

 

鳴り響く音声と共に、バディの両手には光輝く剣がある。

 

それを両手に構えながら、ゆっくりと息を整える。

 

「行くぞ」

 

その言葉と共に、走り出す。

 

それに対して、警戒したクロコダイルオルフェノクは瞬時にその手にある大剣を振り下ろす。

 

だが、その一撃は、ファイズエッジで受け止める。

 

同時にもう片手にあるファイズエッジでゴキブリオルフェノクに向けて、カイザブレイガンのビームで吹き飛ばす。

 

そして、そのまま流れるようにカイザブレイガンで斬り裂く。

 

二刀流となった事で、攻撃と防御の両方を行う事ができる。

 

さらにはカイザブレイガンによる牽制も加わった為、隙のない攻撃が行えるようにできる。

 

それと共に、そのまま私にENTERボタンを押す。

 

『Exceed Charge』

 

鳴り響く音声と共に、カイザブレイガンをゴキブリガンに向けて、銃弾を放つ。

 

それによって、ゴキブリオルフェノクは完全に動きを止める。

 

それと同時に、ファイズエッジとカイザブレイガンの2つのエネルギーの刃が合わさる。

 

その輝きは、オレンジ色に合わさり、真っ直ぐとゴキブリオルフェノクに向かって薙ぎ払う。

 

それによって、ゴキブリオルフェノクは斬り裂かれ、砂へと変わる。

 

「次は」

 

そう、クロコダイルオルフェノクへと目を向ける。

 

しかし、既に逃げていた。

 

「・・・」

 

そのまま、変身を解除する。

 

「ぐっ」

 

「無理をするな。

カイザのベルト程の力は発揮されない分、負担は少ないが、それでも身体には疲労が蓄積されているはずだ」

 

「あぁ、大丈夫だ」

 

そう言いながらも、バディはそのまま園田真理達と合流するように、向かって行く。

 

「ふむ、なるほど。

ファイズのバディはそういう奴か。

なかなかに面白い奴だな」

 

そんなカイザの呟きが聞こえたが、気にせずに向かった。



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疑問

流星塾のメンバーの内、2人の痛ましい犠牲者は出たが、それでも無事に生き残った人物達は確かにいた。

 

それでも、確かな犠牲者がおり、何よりもカイザを扱う事ができる人物は未だにいない。

 

そして、その2人の内、先生と呼ばれた人物が残した言葉。

 

『同窓会の日、あの日、君達は』

 

そう告げる前に、その人物は死んでしまった。

 

だからこそ、謎が多く残っており、彼を知る事こそが、何かに繋がる。

 

「・・・なぁ、その同窓会って、何時やってたんだ?」

 

ふと、バディが何か気になったように、園田真理に尋ねる。

 

「んっ、一年前だよ。

それがどうしたの?」

 

「いや、なんでもない。

ただ、気になっただけだから」

 

「変なの」

 

そう言いながら、バディと共に、そのまま話を終えた。

 

しかし、その様子からして、何か知っている様子だった。

 

同時に、どうやらバディが乗っていたオートバジンが倒れていたらしく、すぐに向かった。

 

それはある意味、聞くタイミングとしては丁度良かったかもしれない。

 

「バディ」

 

「なんだ」

 

「何か、知っている様子だったが、園田真理に話さなくても良いのか?」

 

「良いも何も、俺だって、訳が分からないんだから、言っても仕方ないだろ」

 

「言っても仕方ない。

つまりは、バディは園田真理と面識があったという事になるのか?」

 

「そうかもな。

だとしても、俺はそれがまるで繋がらないんだよ」

 

「どういう事なんだ?」

 

その言葉と共にバディはポツリポツリと、周りには聞こえないように注意しながら言う。

 

その内容を聞いた瞬間、機械であるはずの私ですら、疑問が頭を埋めた。

 

「それは、確かに謎が多すぎる」

 

バディ自身が、何が起きているのか分からないのも頷ける。

 

おそらくは、バディが遭遇した悲劇は、園田真理の同窓会と大きく関係している。

 

だが、それがもしも真実だとしたら、なぜ園田真理は変身できなかった?

 

それだけではない。

 

園田真理以外の流星塾のメンバー達もまた、カイザに変身しても問題ないはず。

 

「お前も疑うか?」

 

「疑うというよりも、明らかに謎が多すぎる。

むしろ、バディが疑問に思うのは当然だ」

 

それは、あまりに謎が大きすぎる。

 

「まぁ、それも、草加雅人という奴を見つければ、解決するだけだ」

 

「そうだな」

 

バディの言葉に対して賛同するしかない。

 

そして、私とバディと共に草加雅人と会っている時に、驚きの出来事が起きていた。

 

その出来事に関しては、後に知った事である。

 

オルフェノクの中でも、力のあるオルフェノクのラッキークローバー。

 

そのラッキークローバー達が集うバーにおいて、1つのアタッシュケースが黒人に現れた。

 

「Mr.J。

災難でしたね、まさか555とカイザ。

2つのベルトが同時に使えるとは、私も想定外でした。

これは、お詫びの印です」

 

その言葉に対して、Mr.Jと呼ばれた人物は、犬を抱えながら、そのアタッシュケースを開く。

 

同時に、目を見開く。

 

「それは、まさか」

 

「えぇ、こちらで確保しているベルトの内の一本です。

それを、あなたに託そうと思います」

 

「その理由を聞いても?」

 

そう、眼鏡の男性は、アタッシュケースを渡した人物に質問をする。

 

「既に情報で聞いていると思いますが、ベルトを制御するAiは、使用者だと認めた人物にしか十全の力を発揮させません。

現在の例で言うと、ファイズのベルトを所持している青年は、高いセキュリティで保管されていた武装を使う権限まで与えられています」

 

「つまり、あれはベルトのAiに気に入られて初めて使えると。

機械に支配されるなんて、皮肉ですね」

 

「えぇ、そして、先日の木場勇治もまたベルトを使う事ができました。

彼に関しては、データ収集の為にも持って貰います。

残りの2本のベルトに関しては、回収しない限り、適正者は見つけられませんが」

 

それと共にMr.Jはそのままアタッシュケースの中にある緑色の携帯に手を取る。

 

「彼女はMr.Jを気に入ると思いますからね」

 

そう、笑みを浮かべながら言う。

 

その携帯には、Ιのマークが刻まれていた。



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イオタ

「まったく、嫌な奴だぜ!」

 

そう言いながら、オートバジンのアクセルを踏みながら、バディは舌打ちと共に走らせている。

 

その理由は、先程まで大学で探していた目的の人物である草加雅人の事である。

 

出会いは本当に偶然によるものである。

 

バディが行く先々で、様々な部に所属している草加雅人に対して、バディはそのまま突っかかる。

 

その理由としては、気に入らないと言う理由である。

 

ある意味、バディの悪い癖という訳か、それとも本当にバディと草加雅人の相性が悪いのか、結構喧嘩をしている様子が見える。

 

そうして、彼らが言い争っている間にも、流星塾のメンバーから、オルフェノクに襲われているという連絡を受ける。

 

バディは、その知らせを受けると共に、すぐに流星塾のメンバーがいる場所へと向かう。

 

急いで、バイクを走らせ、向かった先。

 

そこには、流星塾のメンバーが、追い込まれている様子が見られる。

 

しかし、メンバーが減っている様子は見られない。

 

「どういう事なんだ?」

 

疑問に思いながら、バディはそのまま、以前、現れたオルフェノクの前に立ち塞がる。

 

「・・・これでようやく戦える」

 

その言葉の意味が、どういう事なのか、疑問に思うよりも前に、オルフェノクが取り出したのは、ベルトだった。

 

「なっ」

 

「まさか、既にオルフェノク側でもベルトをっ」

 

そう驚いている間にも、オルフェノクは手元を操作する。

 

「ヘンシン」『COMPLETE』

 

鳴り響く音声と共に、私達の前に現れたのは、新たなライダーだった。

 

フォトンブラッドの色は緑色であり、黒い装甲が特徴的なライダーである。

 

「まさか、あっちもベルトかよ」

 

「あれは、イオタ。

油断するな、バディ。

スペックでは、私はほとんど全てのベルトよりも弱い。

何よりも、奴自身の強さも相まって、強敵だ」

 

「分かっているよ、変身!」『COMPLETE』

 

鳴り響く音声と共にバディは555へと変身すると同時に、瞬時にコードを入力する。

 

それは、比較的に素早く装着する事ができるファイズポインターキャノンを呼び出し、瞬時に装着する。

 

最初に比べたら、素早く行えるようになり、その銃口を真っ直ぐとイオタへと向ける。

 

『READY』

 

だが、それはイオタも同じだった。

 

リストウォッチ型のアイテムに、ミッションメモリーをセットする事で緑色のフォトンブラッドによって強固なシールドを張る。

 

それによって、ファイズポインターキャノンから放たれる攻撃を、受け止める。

 

「なっ」

 

それでも引き金を引くのを止めないバディに対して、そのまま接近したイオタは、その拳を真っ直ぐとバディに殴る。

 

「ぐっ」

 

フォトンブラッドの色の中でも、最も防御に優れた緑。

 

その緑色の強固な防御力と共に、既に戦闘を行っている事から推察できるが、あのオルフェノク自身の攻撃力はかなり高い。

 

おそらく、戦闘能力としては、シンプルに高い攻撃力だろう。

 

スピードに関しては、それ程高くないと予想できる。

 

だが、イオタの防御力が加わった事により、さらに強力な存在へと変わった。

 

シンプルな攻撃力とシンプルな防御力。

 

互いに特化した物が合わさった事によって、これ程に厄介な事になるとは。

 

「きゃぁ!!」

 

だが、そう考えている間にも、悲鳴が聞こえる。

 

見ると、合流した園田真理と流星塾のメンバーが襲われている。

 

まさか、イオタは囮で、カイザのベルトが狙いなのか。

 

「superfluous!」

 

「むっ?」

 

余計な真似?

 

どういう事なんだ?

 

それに疑問に思っていると、イオタのフォトンブラッドの光が少し弱くなっている。

 

それを見ると、イオタはすぐに変身を解除させると共にオルフェノクの姿に変えて、投げ捨てた。

 

同時に、こちらに向かって、襲い掛かる。

 

「なっ、ぐっ!!」

 

動揺を隠せないまま、襲ってくるオルフェノクの攻撃を防ぐバディ。

 

すぐにでも、バディは園田真理を助けに向かいたかったが、オルフェノクに邪魔をされて、身動きが取れない。

 

このままじゃ。

 

そう考えている時だった。

 

園田真理に襲い掛かろうとしたオルフェノクを蹴り飛ばした1人の影。

 

その、肩には、カイザが立っていた。

 

「ふむ、本当に使う気なんだな」

 

そう、カイザは警告するように言う。

 

「あぁ、協力してくれると、助かるよ」

 

その言葉を言ったのは、バディと相性が最悪な草加雅人だった。

 

「良いだろう。

今の所は、お前に使われてやろう」

 

同時にカイザはそのまま草加雅人の手元に収まる。

 

それと同時だった。

 

変身コードを入力し、そのまま構える。

 

「変身」『COMPLETE』

 

鳴り響く音声と共に、草加雅人は、カイザへと変身を完了した。




「まったく、本当に余計な事をしましたね、あのオルフェノクは」
そう言いながら、林の中に隠れていた人物は、Mr.Jが投げたベルトを拾いながら、言う。
「えぇ、本当に。
見ている限りでもかなりの強さがあったわ」
「当たり前です。
Mr.Jはラッキークローバーの一員ですから。
しかし、このベルトの使用条件は、僕達では難しいですね」
「えぇ、本当に。
まさか、近くにある限り、戦い以外で命を奪う行為を禁ずる。
そんな事、ある意味、私達には難しいわね」
「えぇ、まったく。
ですが、これで確信も持てました。
ベルトさえ手に入れば、かなりの強さを持てる。
その為にも、Mr.Jには残りのベルトを奪って貰わないとね」


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カイザの戦い

 仮面ライダーカイザへと変身した草加雅人。

 

 その姿は、これまで見た草加雅人は、まるで動揺はなかった。

 

 むしろ、その腰に装着すべきカイザブレイガンを冷静に装着する。

 

 その動作には、まるで迷いはなく、そのまま真っ直ぐと、園田真理を襲っていたオルフェノクに向かって、攻撃を仕掛ける。

 

 オルフェノクは、突然のカイザの襲撃に動揺を隠せない様子で、攻撃を受け止め、後ろに吹き飛ばされる。

 

 そのままカイザブレイガンのレバーを引いて、バディに襲い掛かっていたオルフェノクに向かって、弾丸が放たれる。

 

 弾丸を受け止めて、そのまま吹き飛ばされる。

 

 2人のオルフェノクは、カイザの攻撃で怯んでいる間に、そのまま腰にあるカイザに番号を入力する。

 

『204』

 

 その音声と共に、カイザの手元に現れたのは釣り竿、カイザロッドだった。

 

 そのカイザロッドに、ミッションメモリーをセットする事によって、カイザロッドの先端には、エネルギー状の糸が現れる。

 

 そのまま、カイザロッドをそのまま構える。

 

 カイザロッドに対して、危機感を覚えたのか、2体のオルフェノクは真っ直ぐとカイザに襲い掛かる。

 

 だが、カイザロッドから伸びた糸を、まるで鞭のように操り、オルフェノク達に向けて放つ。

 

「はぁ!」

 

 カイザロッドによる一撃を受けたオルフェノクは、そのまま壁に叩きつけられ、更に追撃として、もう1体にも攻撃を行う。

 

 しかし、カイザの攻撃を喰らったオルフェノクは、再びカイザに襲い掛かる。

 

 だが、カイザはまるで焦る事もなく、カイザブレイガンのビームを襲い掛かったオルフェノクに放つ。

 

 ビームを受けたオルフェノクは、そのまま後ろに吹き飛ぶ。

 

 そのまま、腰にあるカイザのENTERボタンを押す。

 

『Exceed Charge』

 

 鳴り響く音声と共に、その手に持つカイザロッドに流れるエネルギーが増幅される。

 

 そのまま、カイザは一気に近づく。

 

 そして、そのままカイザロッドを振るうと、オルフェノクの腹部に命中し、大きな火花が上がる。

 

 攻撃を受けたオルフェノクは、大きく後方に吹っ飛び、地面に倒れ込むと同時に敗北の証と言えるべきか。

 

 身体が灰へと変わっていく。

 

 最後の言葉を残す事なく、その命を失う。

 

 すぐに、もう一体。

 

 イオタが変身したオルフェノクの姿はいなくなっていた。

 

「まぁ良いだろう」

 

 そう、カイザはそのまま変身が解けると、草加雅人は倒れる真理に近づく

 

 そんな二人の元に、先ほどまで戦っていたカイザこと、草加雅人が近寄る。

 

「大丈夫かい?」

 

 草加雅人は、優しく声をかける。

 

「えっうん、ありがとう、草加君」

 

 その優しい表情を見て、園田真理も安堵する。

 

 だが、私は違和感を感じた。

 

 先程までの戦い。

 

 あまりにも慣れすぎた。

 

 動揺はなかった。

 

「……」

 

 それは、バディも同じだった。



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その目に

カイザの、草加雅人の最初の戦いが終わった。

 

流星塾のメンバーを始めとして、彼の仲間達は心配している様子だった。

 

これまで、幾度も無くカイザのベルトによって、仲間が死んでいた。

 

だからこそ、心配する気持ちは分かる。

 

「おい、良かった。

お前、使えるんだな、カイザのベルト!

今まで、このベルトで変身した奴は、皆」

 

「カイザのベルト?

なぁ、何がどうなっているんだ?

あの怪物は一体、さっきは君の真似とこのカイザだっけ?

彼の言葉に従って、思わず変身したけど」

 

そう、草加雅人は、バディに向けて言う。

 

それに対して、バディは、あまり目を合わせようとしない。

 

バディが、なぜ、あそこまで草加雅人を嫌うのか、分からない。

 

だが、確かに共感はできる気がする。

 

おそらく、バディは本能で、草加雅人の何かを警戒しているのだろう。

 

そして、私は、草加雅人が何かに対してを嘘を言っていることに対する態度に警戒している。

 

それは、どこか悪意があった。

 

そして、そのまま草加雅人は、私達が今住んでいる場所へと来ていた。

 

まるで、自然の流れのように。

 

そして、その夜、私は、とある人物と会っていた。

 

「それで、なぜ変身できたのか、答えてくれるか、カイザ」

 

その晩、私はバディから離れ、カイザに話しかける。

 

「さぁな、俺はただ、他の奴らと同じように行っただけ。

それで耐えられたのならば、それは奴の力としか言えないな」

 

「それじゃ、カイザ。

お前は草加雅人をバディと認めたのか?」

 

「バディ?

お前と一緒にするな。

俺は別に草加雅人を気に入った訳ではない。

だが」

 

「だが?」

 

「奴の心の底にある闇。

あれを知る事ができれば、俺にももしかしたら理解できるかもしれない。

そう思っただけだ」

 

「心の闇。

それでは、草加雅人は何か企んでいるのか」

 

「さぁな。

だが、気をつけろ。

お前も、お前のバディも、あまりにも人間の善意を信じすぎている所があるからな」

 

それだけ言って、カイザはそのまま別れた。

 

「・・・」

 

私は、そのままバディの元へと帰ろうとした時だった。

 

「こうして、君と話せるのは、初めてかな」

 

聞こえた声。

 

見上げると、そこには草加雅人がいた。

 

「草加雅人」

 

「君も、カイザと同じような力があるんだね。

これから、一緒に戦う仲だからね。

よろしく頼むよ」

 

「・・・そうだな。

そうなる事を願っているよ」

 

それを言うと共に、私はそのまま草加雅人から離れようとする。

 

それから、ふと、草加雅人に振り返りながら、問う。

 

「草加雅人、君に聞きたい事がある」

 

「なんだい?」

 

「君は、何の為に戦うんだ?」

 

「そうだね、あえて言うならば、俺は真理を守る為に戦う。

それは、本当に、嘘偽りはないよ」

 

「・・・そうか」

 

確かに、その言葉には嘘はないだろう。

 

偽りはない。

 

だけど、なぜだろうか。

 

「それでは、私はここで失礼する」

 

「あぁ、おやすみ」

 

機械であるはずだが、その目の奥にある何かに、私は恐怖していた。



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2つのベルトの出会い

 Mr.Jは、その日、日課であるチャコの散歩を行っていた。

 

 ラッキークローバーとして活動していない時以外には、生活のほとんどをチャコの世話か身体を鍛えている事に専念していた。

 

 そんな日常の最中、Mr.Jは懐から電話が鳴っている事に気づく。

 

 その電話の画面を開く。

 

「ねぇ、なんで、そんな事ばっかりするの?」

 

 そう、電話の向こう側からMr.Jを尋ねてくる女性の声。

 

 それに対して、Mr.Jはそのまま無表情のまま。

 

『それが仕事だから』

 

 普段から日本語ではなく英語だった。

 

「仕事ねぇ。

 あなたの体格だったら、他にも選択肢はあったんじゃない?」

 

 そう、携帯からの声に対して、Mr.Jはまるで昔の事を思い出すように、空を見上げる。

 

『人間は、人種が違うだけでも差別をする。

 同じ人種でも、差別をする。

 私は、人間ではなく、オルフェノクとなった事でようやく同じ人種と言える存在に巡り会う事ができ、仲間ができた。

 何よりも』

 

 そう言いながら、Mr.Jはチャコを抱き寄せながら、言う。

 

『この子の為にも』

 

「……それ程の優しさがあるのに、なんで』

 

 そう言いながらも、まるで残念そうに言う彼女の声に、Mr.Jは目を向ける事ができなかった。

 

 Mr.Jは、その日も馴染みのある店へと向かおうとした。

 

 そこのペットショップの店主は、チャコには多く世話になっており、彼がある意味、頼りにしている人物だった。

 

 すぐにいつものように店へと入る。

 

 何時もならば聞こえてくる動物達の声。

 

 だが、それとは別に、疑問に思った。

 

『?』

 

 疑問に思い、Mr.Jはそのまま店に入る。

 

 馴染みのある店主の気配もなく、気になって入ってみる。

 

 そこで見たのは、灰だった。

 

 先程まで、人だった証のように、服だけが残っていた。

 

 それには、Mr.Jも馴染みがあった。

 

『まさかっ』

 

 気づくと共に、Mr.Jはすぐに目を見開く。

 

 同時に、店の奥から出てきたのは。

 

「よぉ、やっぱりここに来たよなぁ」

 

『……』

 

 見ると、そこには青年がいた。

 

 おそらくは、この店に、Mr.Jがよく通っているのを知っている人物だろう。

 

 同時に、その正体もよく知っている。

 

「Mr.J。

 あんたを倒せば、俺もラッキークローバーの一員になれる。

 だからよぉ、死んでくれよなぁ!」

 

 それと共に青年の姿が変わる。

 

 それはオルフェノク。

 

 スミロドンの特徴を備えたオルフェノク、スミロドン・オルフェノクへと変わる。

 

 それに対して、Mr.Jは、冷静に、その手にある携帯を取り出す。

 

 今、戦闘を行えば、チャコが傷つく。

 

 小柄なチャコを地面に置けば、すぐに襲われる事は簡単に分かる。

 

 何よりも、オルフェノクの身体では、チャコを傷つける可能性がある。

 

 だからこそ、Mr.Jが選んだのは、ライダーとしてだった。

 

『この状況だったら、良いよな』

 

「えぇ、あいつは命を冒涜した」

 

 その状況はMr.Jにとっても好都合だった。

 

 だからこそ、変身コードを入力し、そのまま腰にあるベルトにセットする。

 

『変身』

 

 同時に、Mr.Jはその姿が変わる。

 

 緑色の戦士、仮面ライダーイオタへと、姿を変える。

 

「まさかっベルト! 

 へへっ、それを手に入れれば、俺だって」

 

『お前のような奴。

 オルフェノクとして、残しても不利益なだけ。

 ここで始末する』

 

 同時に、ミッションメモリーを取りだし、そのままイオタの専用武器であるイオタシールドを展開させる。

 

 それは、自分の手元にあるチャコを守る為に。

 

「ははぁ、犬を庇って、戦う気かよ!!」

 

 それと共にスミロドン・オルフェノクが襲い掛かる。

 

 同時にイオタはその片手を防がれた状況においても、冷静に拳を構える。

 

 片手を封じられている状況。

 

 だが、それでも数々の戦いを乗り越え、ラッキークローバーとして活動しているMr.J。

 

 その戦闘力と共に腕力も優れている。

 

 しかし、スミロドン・オルフェノクは、冷酷に、その狙いはチャコへと向けていた。

 

 いや、チャコだけではない。

 

 店内にいる動物達に対しても遠慮無く、攻撃を仕掛ける。

 

 知り合いであり、既に故人とはいえ、彼が大切に育てた動物達を死なせない為に、Mr.Jはなるべくその身を盾に戦う。

 

 実力も、戦闘センスも、才能も。

 

 そのほとんどがMr.Jの方が優れていた。

 

 ただ、彼が追い詰められているのは、情故だった。

 

 それをスミロドン・オルフェノクは追撃していた。

 

『ぐっ』

 

 遠慮のない攻撃に対して、顔を歪むMr.J。

 

 このままでは危険。

 

 そう考えた時だった。

 

「変身!」

 

 聞こえた声。

 

 見ると、そこにはMr.J以外の人影が。

 

 そこには、どこかイオタと似た印象があった。

 

 フォトンブラッドの色は水色で、灰色の装甲。

 

 その正体はすぐに気づいた。

 

『木場勇治っ』

 

 現在、スマートブレイン側のライダーとして一応は登録されている。

 

 だが、実際には人を襲わないという事で、ブラックリストにも記載されている人物。

 

 実戦データも兼ねて、オルフェノク達に戦って貰う狙いもあるという奇妙な人物。

 

 そんな人物が、Mr.Jを助けた事に疑問に思った。

 

「あなたは、あいつとは違うライダーなのか」

 

 そう疑問に思っている間にも、ニューズへと変身している木場が目に向けたのはイオタが手元にあるチャコだった。

 

 それを見ただけでも少なくとも、木場が戦うべき相手は既に分かった。

 

「お前は、ここから出て行け!!」

 

 同時に木場はそのままスミロドン・オルフェノクを外へと追い出す。

 

 幸い、人は少なく、動物達には当たらないように配慮して、追い出す。

 

 それを見たMr.Jはすぐにかがみ。

 

「チャコ、ここで待っていて」

 

 優しく声を出しながら、近くの既に空となっている犬のケースにチャコを入れる。

 

 同時に外へと飛び出すと同時に、これまでの鬱憤を晴らすように、スミロドン・オルフェノクへと殴るMr.J。

 

「がぁ!!」

 

 怒りを込めて、放たれたその攻撃に、そのままスミロドン・オルフェノクは吹き飛ばされる。

 

 それに合わせるように、2人のライダーは、そのままENTERボタンを押す。

 

『『Exceed Charge』』

 

 鳴り響く音声と共に、イオタの手に装着されているイオタシールドが。

 

 ミューが、事前に装備していたミューショットに光が灯る。

 

 必殺技が放つ準備が終えると同時に、そのまま2人は真っ直ぐとスミロドン・オルフェノクに向かって、殴る。

 

「があぁあぁ!!!」

 

 その一撃を食らい、スミロドン・オルフェノクは完全に灰へと変わる。

 

 同胞であるオルフェノクを倒した。

 

 それに対して、Mr.Jはそれ程、動揺はなかった。

 

「ありがとう、あなたは一体」

 

『木場勇治、君には感謝している。

 君のおかげで、チャコの命は無事だった』

 

「えっと、外国語?』

 

「キバさん。

 どうやら、あの方は、あなたに感謝しているようです」

 

「そうなのか、ミュー?」

 

 同時にベルトから飛び出た携帯はそのまま変形し、そのまま見据える。

 

「久し振りね、イオタ姉さん」

 

「ミューちゃんも久し振り!!」

 

 さらには、イオタもまた飛び出ると共に挨拶する。

 

 それと共に変身は解除される。

 

 同時に、Mr.Jは木場勇治を見つめる。

 

 Mr.Jにとって、木場勇治はいずれ殺さなければならない。

 

 だが、人格面を見れば、これまでの報告書と今回の戦いでも僅かに分かった。

 

 彼自身、Mr.Jはどこか好ましく思っていた。

 

 それは、長く行動しているラッキークローバーよりも。

 

『君と話がある』



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木場とMr.J

 あまり人目につかない、人気のない場所。そこに二人の男が立っていた。

 

「……」

 

 木場は目の前にいる男をじっと見つめていた。

 

 先程まで、ライダーに変身していた人物である黒人の男性。

 

 その人物の名はMr.J。

 

 彼がどのような人物なのか、分からず警戒している。

 

『君は、なぜオルフェノクとして、人間を襲わないんだ』

 

 そう、Mr.Jが木場に問いかける。

 

「なぜって、そんなのオルフェノクだからと言って、人間を襲って良いはずはないでしょ!」

 

 木場は、そのMr.Jの言葉に反発するかのように言う。

 

 しかし、それに対してMr.Jは冷静な口調で言う。

 

『それはどうかな? 

 

 例えば、人間が私達の正体。

 

 つまりオルフェノクだと分かれば、どうする』

 

「それは」

 

 その言葉に対して、木場はすぐに口を開く事ができない。

 

『簡単だ。殺す。それも躊躇なく』

 

 そしてMr.Jは、淡々とそう言った。

 

『それが普通なんだ。

 

 それが当たり前なんだ。君だって、自分が襲われたら抵抗せずに殺されるのか?』

 

 その問いに対して、木場は何も答えない。

 

『私達は、むしろ慈悲深い方だ。

 

 オルフェノクが人間を殺しても、その者はオルフェノクとして生き返る可能性がある。

 

 だからこそ、オルフェノク同士の差別はほとんどない』

 

「ほとんどないって」

 

 そう言いながら、Mr.Jは、その身体をオルフェノクへと変える。

 

『人間は、肌の色で差別する。人種だけで差別する。オルフェノクには、それがない。

 

 肌も全員が同じ色。姿はそもそも別々だから差別するような対象はない。人種だって、同じオルフェノクだ』

 

「それは暴論だ! 確かに、俺達は、オルフェノクは人とは違うかもしれないけど……でも!」

 

 木場は、思わず反論しようとする。

 

 だけど、そこから言葉を出す事ができなかった。

 

 木場が、オルフェノクとして覚醒した時。

 

 それは、目覚めた時の絶望だった。

 

 従兄弟と恋人を殺した。

 

 そんな自分が何を言えるのか。

 

 いや、だからこそ言えるだろう。

 

「俺達が無理矢理オルフェノクにしたら、その人は無理矢理人殺しにさせるんじゃないですか。

 

 何よりも、あなたは、あの時、ペットショップの店主の為に戦ったじゃないですか。

 

 人間のペットショップの店長を」

 

 木場は、自分の中の気持ちを整理して、そう口に出した。

 

『……』

 

「俺達がオルフェノクだというのは変わりない。

 

 だけど、だからこそ、オルフェノクと人間が歩み寄れる事を諦めちゃいけないんです」

 

『……それは綺麗事だ。

 

 人間同士でも、争いを行うのに、オルフェノク同士なら分かり合えるなんて』

 

「それでも俺は諦めたくない。

 

 オルフェノクだろうと、人間であろうと関係ない。

 

 分かり合いたいと思うからこそ戦うんだ」

 

『それでは戦いは終わらないぞ』

 

「分かっていますよ。だけど、俺は諦められない」

 

『……』

 

 木場の言葉に、Mr.Jは、無言で立ち上がる。

 

『そうか』

 

「待ってくれ、まだ」

 

 そう言おうとしたが、既にMr.Jの姿は消えていた。

 

 それに対して、木場は無言で、その場で留まるしかなかった。



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積み重ね

「さて、この状況はさすがに危険だ」

 

そう言いながら、私は、ここまでの状況を思い返す。

 

私とバディは、あれから草加雅人に対して、警戒していた。

 

その予想は当たっていたというべきか、奴は、園田真理と啓太郎が見えない所で、バディに対して敵対とも言える言動を取っていた。

 

おそらくは、カイザが言っていた心の底にある闇だろう。

 

だが、その警戒を余所に、予想外の敵と交戦した。

 

これまで戦った事のない、ロブスターオルフェノクとの戦い。

 

奴は、これまで戦ったオルフェノクとはどこか違い、555に変身していたバディをあっさりと吹き飛ばす程の力を持っている。

 

それによって、私達は河へと投げ出される。

 

その後の記憶に関しては、私は何もできなかった。

 

正直に言えば、耐水加工をしているとはいえ、下手に起動すれば、水が内部に入る可能性があった。

 

だからこそ、私は助けを呼ぶ事がすぐにはできなかった。

 

やがて、私が目を覚ますと、そこはどこかの廃墟だった。

 

「ここは?」

 

ふと、目が覚めると、そこにはバディが気絶していた。

 

近くには服があり、それを乾かしているようだが、一体。

 

「えっ、携帯が立っている」

 

それに対して、驚いた女性の声が聞こえる。

 

見れば、濡らしたハンカチがあるようだが。

 

「君がバディを助けてくれたのか?」

 

「はっはい、あなたは」

 

私の存在に対して、疑問に思ったのか、見つめる。

 

同時に私はすぐに彼女の正体が目に見えて分かった。

 

オルフェノク。

 

それも、オリジナルに該当する。

 

まさか、ここで敵と出会うとは。

 

そう思い、疑問に思ったが、同時に疑問もあった。

 

「君は、なぜバディを助けたんだ?」

 

「それは、その。

河で溺れていたので、思わず。

それで、すぐに休める場所を探して、ここで」

 

「そうだったのか」

 

その行動に、私は思わず目を見開く。

 

そう言いながら、私はすぐにバディを見る。

 

「とりあえず、今は危機を脱した。

本当に感謝する」

 

「そんな、私は、ただ、助けたくて」

 

「そうして、人間はすぐには行動できない。

とにかく、仲間にも連絡しなければな」

 

「仲間ですか」

 

それと共に彼女は少し暗い表情が見えた。

 

既に啓太郎に、こちらの場所を教えた。

 

「ここは」

 

「目が覚めたか、バディ」

 

「あぁ、なんとかな。

そっちの子は」

 

「君を助けてくれた恩人だ。

そして、オルフェノクだ」

 

「えっ、なんで、それを」

 

その言葉に、彼女は、目を見開く。

 

それと共に、その姿はオルフェノクへと変わる。

 

それを見たバディは少し目を見開くが。

 

「待ちたまえ。

私達は、君と敵対する気はない。

何よりも、バディの恩人を傷つけるような真似はしない」

 

「そうなんですか」

 

「あんたは、スマートブレインに入っているのか?」

 

「・・・違います。

私は」

 

そう言いながら、彼女は何かを思い出したように俯く。

 

「・・・良かったら、話を聞かせてくれないか。

俺達で良ければ」

 

「力になれるかもしれないな」

 

「でも」

 

「見ず知らずの人間だからこそ、言える事もあるんじゃないのか」

 

そう、ぶっきらぼうで、どこか思い出すように言う。

 

その言葉に対して、彼女はぽつりぽつりと、話し始める。

 

長田結花。

 

彼女の人生は、聞けば聞く程、その内容は信じられなかった。

 

養父母や義理の妹、さらに通っていた高校のクラスメイトからカツアゲに遭うなど陰湿ないじめを受けており、ただ一人のメル友が友達という孤独な生活をしていた。

 

そのメル友と会えるかもしれなかった矢先、歩道橋から転落し死亡、オルフェノクとして覚醒した。

 

オルフェノクとなった彼女は、ひき逃げに遭いかけた義妹の命を救ったものの、それが面白くない妹に濡れ衣を着せられて家を追い出され、ついに今まで自分をいじめていたバスケットボール部の部員を一人残らず殺害してしまう。

 

そして、そのまま養父母も後で殺害したらしい

 

行き場を失い途方にくれている所で、とある人物に助けられた。

 

その人物は、どうやらオルフェノクでありながら、人間を守りたい。

 

そんな思いで行動しているらさいい。

 

それには、私も、そしてバディも驚いた。

 

「なんというか、正直に言えば、信じられない内容だった」

 

「ごめんなさい、こんな話を言って」

 

「気にしないでくれ。

それにしても」

 

その話を聞くと共に、私が感じたのは、彼女の危うさだ。

 

今、彼女はおそらくは多くの人間を殺した。

 

確かに人間を殺したのは許してはならない事だ。

 

しかし、同時にそこまで彼女を追い詰めたのは、間違いなく周りの人物だろう。

 

彼女の、殺人衝動をここまで膨れ上げたのは、間違いなく周りの人間が起こした事だ。

 

機械の私からしたら、可笑しいかもしれないがな。

 

「・・・なぁ、聞きたい事がある」

 

「なんでしょうか」

 

「あんたは、人を殺したくて、殺しているのか」

 

「そんな事っ、ありませんっ。

私は、人を殺したくない。

人を好きになりたい。

けど」

 

おそらくは彼女の中にある長年積み重なった黒い衝動は、簡単には払えない。

 

それができるのは、まだまだ先だ。

 

「・・・だったら、約束してくれ。

もう、人を襲わないでくれ。

自分の命が危ない時以外は、やらないでくれ。

そうしてくれれば、俺は、あんたを絶対に助ける」

 

「っ」

 

その言葉と共に、彼女は走って行った。

 

それに、すぐに反応できなかったバディは、途方にくれる。

 

「俺、なんかまずい事、言ったのか」

 

「いいや、ただ、今の彼女には必要だと思う。

時間が」

 

「・・・そうだな。

俺自身もそうだからな」



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その選択は

バディが、長田が助けられた翌日。

 

それは、あまりにも突然過ぎる出来事だった。

 

バディの無事に安堵した皆の前で、長田の事をどう伝えるべきか悩むバディ。

 

そんな最中に、園田真理からの電話。

 

オルフェノクが現れたという連絡を受けたバディはすぐにでも向かった。

 

バイクを走らせ、到着した所にいたオルフェノク。

 

その反応は、既に私は知っている。

 

「まさか」

 

「どうした?」

 

「彼女は長田結花が変身したオルフェノクだ」

 

「なっ」

 

それには、バディも驚きを隠せなかった。

 

「変身!」

 

そうしている間にも、既に草加雅人はカイザへと変身し、長田に対して、攻撃をした。

 

「俺は」

 

「バディ。

私は約束を守るべきだと思う」

 

「お前」

 

「彼女は、まだ約束を破っていないはずだ。

それを信じる根拠は、機械である私は持っていない。

だが、バディは、彼女をどう思う」

 

そう、私はバディに対して尋ねる。

 

その言葉に対して、一瞬、迷っていたバディだったが。

 

「あぁ、そうだよな、変身!」

 

同時に迷いを消したように、バディはそのまま向かう。

 

既にオートバジンから取り外したファイズエッジを手に。

 

その戦う相手は、草加雅人だ。

 

「えっ、たっくん」「巧、何をしているの」

 

それには、説明を聞いていない園田真理も、啓太郎も驚きを隠せないだろう。

 

だが

 

「こいつは、倒させない。

約束をしたから」

 

「約束、何を巫山戯ているんだ、君は」

 

そう言いながら、草加雅人は、その手に持つカイザブレイガンで斬撃を放つ。

 

ファイズエッジで、その斬撃を受け止めながら、戦う。

 

本来ならば、味方同士だ。

 

互いに斬り合う中で、草加雅人は何かに気づいたのか、長田に近づく。

 

「っ」

 

同時に、そのカイザブレイガンで長田の首元に近づける。

 

それは、まさに人質を取っているような状況。

 

それに対して、バディは動く事ができなかった。

 

そして、それを狙うように草加雅人は引き金を引く。

 

放たれたビームはバディの身体に火花を散らし、そのまま後ろへと倒れる。

 

「まずは、お前からケリをつけてやる」

 

そう言いながら、長田に向けて、トドメを刺そうとする。

 

「止めろっ!」

 

そう、バディが叫ぶ。

 

その瞬間だった。

 

「っがぁ!」

 

草加雅人を吹き飛ばした影が現れる。

 

それには、その場にいた全員が、驚きを隠せなかった。

 

紫色のフォトンブラッドに、黒色の装甲。

 

そして、その仮面はμという文字が刻み込まれている。

 

「あれって、もしかして」

 

「3本目のベルト」

 

まさか、この場所で、新たなベルトを見つけるとは。

 

「あれは、ミュー」

 

「それが、あいつの名前か?」

 

「あぁ」

 

私は戸惑いを隠せない中で。

 

「お久しぶりですね、カイザにファイズ!」

 

すると、聞こえてきた声。

 

それは女性的であったが。

 

まさか、この声の持ち主が、ミューなのか。

 

「悪いけど、この子はやらせない」

 

「なるほど、オルフェノクの仲間という訳か。

だったら、そのベルト、奪わせて貰う」

 

同時に、草加雅人は、そのままカイザブレイガンで斬りかかる。

 

それに合わせるように、ミューもまた専用武器であるミューショットスライサーを取りだし、受け止める。

 

「嘘でしょ、まさか、オルフェノクの方にベルトが分かっているなんて」「巧、早く草加君を助けないと」

 

「あぁ、けど」

 

この状況になって、バディはまた迷う。

 

目の前で、行われている戦い。

 

それをどうすれば良いのか。




ある意味、どの選択をしても変わらない。
ならば、ここはあえて、天に任せる。
他人任せな部分ですが、これはこれで面白そうという事で、アンケートを行っています。


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悪意

この状況、どちらを選んでも、おそらくは変わりない。

 

それはバディも承知だった。

 

だからこそ。

 

「俺自身がやった事だ。

だったら」

 

その言葉と共に、バディはその手に持つファイズエッジを手に、真っ直ぐと走る。

 

まず、ミューに振り下ろそうとしたカイザブレイガンの刃をバディが受け止める。

 

それに合わせるように、バディは草加雅人に向かって、襲い掛かろうとしたミューの攻撃を止める。

 

「なんで、お前が止める!」

 

「むかつくけど、こいつを殺される訳にはいかないからなっ」

 

そう言いながらも、ファイズエッジでそのまま振り上げると共に、その場を離れる。

 

バディ、草加雅人、そして未だに正体が分からないミューによる三つ巴のような状況。

 

『まったく、これは一体、どういう状況な訳?』

 

「少し面倒な事になっている。

すまないが、そちらの変身者に事情を話してくれないか?」

 

『それは別にって、後ろ後ろ!!』

 

その最中、聞こえた音。

 

それに疑問に思い、全員が見た方向。

 

そこには巨大なバイクが真っ直ぐと、こちらに近づいてきた。

 

「なっなんだぁ!?」

 

驚きを隠せないバディ達を余所に、そのまま草加雅人以外が、吹き飛ばされた。

 

何が起きたのか、分からない間に、草加雅人は

 

「へぇ、そういう事か」

 

何が起きたのか、理解したように草加雅人は、そのままそれに乗り込む。

 

『あれって、サイドバッシャー!

やばいやばい!!』

 

同時に見れば、サイドバッシャーは、そのままこちらに向けて、腕を向ける。

 

そこから放たれるのはミサイルだと察したバディは、すぐに私にコードを打ち込む。

 

『461』

 

そう、打ち込まれた音声と共に、上空から来たファイズガードシールドを、そのまま装着すると共にミューの前に出る。

 

「っ!」

 

その行動に驚きを隠せない様子の中で、そのままサイドバッシャーのミサイルが、襲い掛かる。

 

既に避ける事はできないが、それでもファイズガードシールドによって、その攻撃を受け止める事ができた。

 

「がぁ!!」

 

しかし、衝撃を完全に殺す事はできず、そのままミューと一緒に吹き飛ばされる。

 

そのまま階段の下に落ち、ミューと別れる。

 

それと共に、草加雅人が、そのまま近づく。

 

「君、何を考えているのかなぁ」

 

そのまま、草加雅人は、バディの胸ぐらを掴む。

 

「まぁ、どうでも良いけど」

 

そうしている間にも。

 

「たっくん!!」「草加君!!」

 

聞こえた声。

 

それは2人がこちらに迫っている事が分かる。

 

「おら、もう1度殴ってこいよ!」

 

「ぐっ!」

 

その声と共にバディは、そのまま頭突きを喰らい、後ろへと下がる。

 

完全な挑発行為。

 

それに対して、バディは怒りで頭に血が昇っている。

 

『バディ、落ち着け。

これは草加雅人の挑発だっ!』

 

「そんなもん分かっているよ!」

 

バディはそのまま立ち上がり、攻撃を仕掛けようとする。

 

だが、私は、そのまま身体に流れるフォトンブラッドを強制的に止める。

 

「ぐっ」

 

「ふっ、少しは賢い相棒がいるようだね。

けど」

 

それを見た草加雅人はそのまま至近距離へと近づき、そのまま蹴り上げる。

 

それは、バディの盾を踏み台に、後ろへと飛ぶ行動。

 

そのまま地面へと、まるでバディが殴られたように壁にぶつかる。

 

「巧!」

 

「っ」

 

その行動が、どのような結果なのか、既に分かりきっていた。

 

「たっくん、これって一体」「巧」

 

「待ってくれ、これは「良いんだよ、ファイズ。これは俺が悪いんだから」何を」

 

私の言葉を遮るように、草加雅人が言う。

 

「俺が戦士として未熟だったからね。

言い訳はしないからね」

 

「そんな事ないよ、草加君のせいじゃないよ」

 

「そうだよ、たっくん、どういう事なの」

 

「・・・」

 

私は、草加雅人の考えがまるで分からない。



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バッティングセンター

活動報告で、ミューとイオタに関する新たな募集を行っています。
皆様の応募、お待ちしています。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=292618&uid=45956


 バディは、思い悩んでいる。

 

 自分と同じ、人間の心を持つオルフェノクがいる事を知り、戦えなくなった。

 

 その事に対して、園田真理と啓太郎が離れていく。

 

 その事を、私は目を向けていた。

 

「……本当に、どうなっているんだろうな」

 

 草加雅人は強い人間だ。

 

 戦う相手の事を考えず、自分の強さを確認するように戦う。

 

 そう、バディの前で告げた。

 

 オルフェノクではない、人間から出たとは思えない言葉に対して、戸惑いは未だに隠せない。

 

 だが、はっきりと私の中に恐怖が確かに植え付けられた。

 

 そんな鬱憤を晴らすように、バディはバッティングセンターに来ていた。

 

 自分の中の何かを吹き飛ばすように。

 

「……」

 

 園田真理や啓太郎には相談する事ができない悩み。

 

 それが、バディを悩ませている。

 

 そんな悩みに手を差し伸べるように、ハンカチが差し出される。

 

「泣いている訳じゃない」

 

 それに対して、バディは思わず突っ放す。

 

 その言葉に対して、その人物は座る。

 

 同時に何かを感じた、私は、思わず目を向ける。

 

 それは、丁度、相手の方も同じだった。

 

 いや、正確には、バディにハンカチを渡した相手ではない。

 

「「なっ」」

 

「「えっ」」

 

 重なる声。

 

 それは、バディも同じだった。

 

 携帯画面から顔が出てくる。

 

 その相手は私は知っている。

 

「ミューなのか」

 

「もしかして、ファイズなの!」

 

 私の驚きの声。

 

 それに笑みを浮かべるミュー。

 

「ミュー、もしかして、彼は」

 

「そう、私達の中で最後に生まれた末っ子のファイズだよ! 

 

 まさか、こんな偶然があるなんて」

 

 そう、感激するミュー。

 

 それと共に。

 

「じゃぁ、あんたが、あの時の」

 

「君が、ファイズ」

 

 そう、互いに驚きを隠せないように見つめ合う。

 

「……そうか、お前、あの時は彼女を護ろうと」

 

「君も、あのもう1人のライダーから護ってくれたよね。

 

 そんな君はなんで」

 

「……色々とな」

 

 そう言いながら、バディは上を向く。

 

「そうか、色々と。

 

 それじゃ、君がファイズならば聞きたい。

 

 あの夜、なんで海道を倒そうとした。

 

 やっぱり、オルフェノクだったからなのか」

 

「あの夜?」

 

「蛇のようなオルフェノクだ」

 

「……あいつか。

 

 あの時、あいつは人を殺していた」

 

「それはっ、本当なのか?」

 

 それには、向こうは驚き、目を見開く。

 

「本当だ。

 

 だけど、少し訂正するならば、彼は正当防衛だった。

 

 それは夜の闇で分からなかった」

 

「そうだったのか、いや、そういう事情だったら、仕方ないかもしれない」

 

「お前は、あの時の馬のオルフェノクか」

 

「うん」

 

「そうか、悪かったな」

 

「気にしないで、君からしたら、人を襲う怪物だったから」

 

「あぁ、けど、今はそれも分からなくなった」

 

 それには、バディは俯いた。

 

「あの子が、人殺しをしたのは今でも嫌になる。

 

 けど、それをさせたのは、周りにいた奴らだ。

 

 環境が怪物を産んだのか、元々怪物だったのか」

 

「それは、分からない。

 

 俺も」

 

 同時に何か心当たりがあるように、ミューのバディは俯く。

 

「俺も人を殺した。

 

 けど、今ではあの時を後悔している」

 

「殺したか。

 

 けど、あんたは、それを自分で許せていないようだな。

 

 いや、それを言えば、俺も同じかもな」

 

「同じ」

 

「あぁ、オルフェノクを、殺してきた。

 

 どんなに言っても、俺は人殺しだ」

 

「……そうだね、俺も同じだ」

 

 ライダーとして、変身し、戦った。

 

 それはつまり、その罪は確かにあるという事。

 

 互いに晴れない心が交差していた。

 

 そんな、バディの元に着信が。

 

 それは、啓太郎からだった。

 

「啓太郎か?」

 

 バディの代わりに、私が出る。

 

「ファイズ! 大変だよ、オルフェノクがっ」

 

「っ」

 

 それに対して、バディは一瞬、動揺する。

 

「何が」

 

「知り合いが、オルフェノクに会った」

 

 それが気になったミューのバディは聞いてきたので、簡単に私が言う。

 

「俺も行こう」

 

「いや、お前には「関係ある」っ」

 

「これは、俺にも関係しているから。

 

 オルフェノクとして」

 

 その言葉を聞いて、バディもまた頷く。

 

 それと共に、私達はすぐに現場へと向かって行く。



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罪を背負う

バディと、ミューのバディである木場勇治と共に現場へと向かった。

 

「啓太郎、無事かっ」

 

「たったっくん!それに、えっと、あなたは」

 

そう困惑を隠せない様子の啓太郎を無視して、そのまま木場は真っ直ぐと見つめる。

 

「もしかして」

 

「何か心当たりがあるのか?」

 

「あぁ、けど、あの人が」

 

それと共に動揺を隠せない様子で木場は車に乗る。

 

「バディ!」

 

「あぁ!」

 

「ちょっ、たっくん!

何がどうなっているの!!」

 

困惑を隠せない啓太郎を余所に、そのまま木場の車に一緒に乗る。

 

同時に走り出した。

 

「・・・おい、何か知っているのか」

 

木場からの様子を見る限り、それは明らかだった。

 

それに対して、懺悔するように車を運転しながら言う。

 

「俺は、オルフェノクとして目覚めたのはつい最近。

だけど、二年前、俺は交通事故で植物状態になっていた。

目が覚めたら、幸せは全てが無くなっていた」

 

「全てが」

 

「・・・あぁ、恋人は取られて、家族も死んでいた。

その時に、俺は自分の感情を抑えられなかった。

俺は、そのまま裏切った恋人を、その恋人を取った男を」

 

「そうか」

 

それに対して、バディは何も言わなかった。

 

「なんというか、オルフェノクになる奴の人生は碌なのがないな」

 

「・・・そうかもしれない」

 

それは、バディ自身も分かっていたからだ。

 

超人的な進化を果たしたオルフェノク。

 

だが、その誰もが幸せかと言うと、はっきり言って、違う。

 

その力を手に入れた瞬間から、まるで運命で決められたように、不幸が降り注ぐ。

 

やがて、辿り着いた場所。

 

そこは大学だった。

 

同時に聞こえたのはうなり声。

 

「この声はっ」

 

それに気づいた2人は真っ直ぐと走った。

 

「森下さん」

 

木場は、その人物を、オルフェノクを知っていた。

 

「見ろ、これが、チエの仇を討つ為に、神が俺に力を与えてくれた」

 

「違うんだ、止めて、チエを、チエを殺したのはっ」

 

そう、木場はその人物を止めようと、説得する。

 

だが、それを聞き入れられず、突き飛ばされる。

 

その事で動揺を隠せずにいた。

 

同時にバディの近くでふらつく男性がいた。

 

「おい」

 

バディは、その男性を受け止める。

 

だが、既にオルフェノクにやられた後。

 

それは、既に分かっていた事だった。

 

灰となって、その男性は、消え去った。

 

「あの人は、人間じゃない。

心を、人としての心を失っているっ、自分の力を楽しんでいるだけなんだっ。

だけどっ、俺にはっ」

 

そう、木場は、その状況をどうすれば良いのか分からず、悲しむ。

 

「・・・俺も分からなかった。

お前や、お前の仲間のように人間になろうとしているオルフェノクがいるのに、戦って良いのか分からなかった」

 

そうしながら、バディもまた木場に話しかける。

 

いや、この場合は、自分にも言い聞かせるように。

 

その手には、人間だった灰が、微かに。

 

「・・・だからこそ、俺はもう迷わない」

 

それに木場は

 

「迷っている内に、人が死ぬならば!」

 

同時に、決意を新たにするようにベルトを巻く。

 

「戦う事が罪ならば、俺が背負ってやるっ」

 

それと共に木場に目を向ける。

 

「お前は、どうするんだ」

 

その言葉に木場は。

 

「あぁ、その通りだ。

俺は、俺自身の罪を、不幸だと思って、どこか逃げていた。

だけど、もしも、この力が人間を、人間になろうとしているオルフェノクの為にっ」

 

同時に、それは決意だった。

 

それと共に、バディと木場は互いに見つめる。

 

それと共に私達に変身コードが入力される。

 

「「変身!」」

 

2人の声が揃って、響く。

 

それと共に2人の、本当の意味での共闘が始まる。



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大学の共闘

大学の中へと入り込んだオルフェノクを追って、バディと木場は走っていた。

 

逃げ惑う生徒達を掻き分けながら、進んだ先の教室では、既に何人かの生徒を襲っていたのか足下には僅かな灰があった。

 

「そいつから、離れろ!」

 

同時に近くには園田真理がいた事に気づき、バディはそのまま蹴り上げる。

 

オルフェノクは、その蹴りを受けて多少怯んだ様子が見え、そのままバディは園田真理の前に。

 

木場はそのままオルフェノクの正面に立つ。

 

「巧、なんでここに」

 

「お前こそ、なんでここにって」

 

そう、見つめると、雑誌の中には猫舌を治す方法と書かれたページがあった。

 

「お前なぁ、まさか」

 

「そうよ、猫舌が治れば、料理にも困らないんだから」

 

そう軽口を言い合う。

 

だが、そこからは悪感情はなかった。

 

「どけ、どかなければ、お前を殺す」

 

「どきません。

あなたは俺が止める」

 

そして、それは木場の方はまるで違った。

 

正面にいるオルフェノクは、その声で、木場だと気づく。

 

「どけ、俺はミユの仇を」

 

「仇は、目の前にいます」

 

「何を言っている」

 

「俺が、ミユを殺した」

 

そう、真っ直ぐと伝える。

 

「お前がっ殺しただとっ、貴様ああぁぁ!!!」

 

それと共にオルフェノクは、そのまま木場を引き釣りながら、壁を突き破り、外へと向かう。

 

「たっくん、もしかして」

 

「あぁ、真理を頼むぞ」

 

そう、合流した啓太郎に園田真理を預け、バディもまたすぐに外に飛び出す。

 

そこには、木場がオルフェノクの攻撃をただ正面から、受け続けている。

 

「・・・」

 

「あれは、一体」

 

「あいつは、受け止めているんだよ。

自分の罪を」

 

そうしながら、バディは確かに呟く。

 

「よくもっチエをっチエをっ」

 

「・・・俺は確かにチエを殺した。そして、チエの恋人を殺した。

その罪は、確かに受け止める。

だからこそ、あなたの拳も受け止める。

だけど」

 

それと共に、次に襲い掛かってきた大剣の攻撃に対して、そのまま掴む。

 

「あなたが、ここまで殺してきた人達の仇。

その罪を、今、ここで、あなたに償って貰う」

 

「ぐっ!!」

 

先程まで一方的に攻撃を行っていた相手の反撃。

 

それは予想外だったのか、オルフェノクは動揺する。

 

だが、そんな木場の後ろから、何者かが攻撃をした。

 

「なっ、ぐっ」

 

背後からの攻撃。

 

それは、他に隠れていたオルフェノクによる攻撃だった。

 

そこにはトビウオの特性を備えたフライングフィッシュオルフェノクが、ボウガンを構えていた。

 

そのまま真っ直ぐと木場に向かって近づく。

 

だが、それを今度はバディが蹴り上げ、邪魔をする。

 

「っ」

 

それを見た木場もまた、正面にいるアルマジロオルフェノクを殴り、そのままバディと背中合わせになる。

 

「乾君」

 

「あいつとの決着は、お前がつけろ。

その間、誰にも邪魔はさせない」『413』

 

そう、バディは、そのまま私に番号を入力し、ファイズポインターキャノンを召喚し、そのまま装着する。

 

「・・・ありがとう、乾君」『203』

 

それと共に木場の工具箱だった。

 

巨大なその工具箱の中に手が入る。

 

同時に、ミッションメモリーを装填する。

 

『READY』

 

鳴り響く音声と共に、工具箱はそのままアーマーとなる。

 

右腕だけに覆われたアーマーと共に、その手には巨大な巨大なチェーンソーだった。

 

そうして、互いに装着を完了すると共に、正面にいる敵に向かって、走り出す。

 

アルマジロオルフェノクは、その巨大な片手剣を振り下ろす。

 

それに対して、木場は手に持ったチェンソーで受け止める。

 

ぶつかり、火花が散らす。

 

しかし、チェンソーの刃は回り続ける。

 

それによって、火花はさらに激しくなる。

 

それによって、徐々に灰色の大剣は削れていき、やがて、斬り裂かれる。

 

それによって、アルマジロオルフェノクはすぐに盾を構える。

 

だが、それもまるで無意味なようにチェンソーで簡単に斬り裂く。

 

そして、バディとフライングフィッシュオルフェノクの戦いも圧倒だった。

 

放っていくボウガンによる矢の数よりも、放たれる銃弾の数が圧倒的に多いファイズポインターキャノン。

 

さらには、オルフェノクの手にある鰭やボウガンを破壊し、徐々に追い詰めていく。

 

『『Exceed Charge』』

 

同時に各々が私達にENTERボタンを押す。

 

それによって、武器にフォトンブラッドが流れ、構える。

 

「はあああぁぁ」

 

木場は、刃に紫のオーラを滾らせた斬撃、発動すると回転する刃でそのまま盾ごと、真っ二つとアルマジロオルフェノクを斬り裂く。

 

そして、バディの方もまた同じだった。

 

ファイズポインターキャノンの狙いを真っ直ぐとフライングフィッシュオルフェノクに向ける。

 

そして、その弾丸はフライングフィッシュオルフェノクを完全に捕らえ、拘束したポインティングマーカー。

 

それと共に、ファイズポインターはそのまま後ろへと回る。

 

それによって、ファイズポインターから放たれるエネルギーの噴射で、そのまま宙を飛ぶ。

 

そして、ファイズポインターキャノンがブースターとなり、全開に加速を付けた飛び蹴りを放つ。

 

「はあぁぁぁ!!」

 

その一撃を真っ直ぐと受ければ、フライングフィッシュオルフェノクは瞬時に灰になる。

 

2体のオルフェノクとの決着が終わる。

 

それと共にバディと木場は互いに見つめ合う。



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変わらない関係

 バディと木場との共闘。

 

 それは、想像よりも良く、これからは良き方向だと思う。

 

 だが、バディは木場の正体を園田真理達に話さない。

 

 それは、別に園田真理と啓太郎を信用していない訳じゃない。

 

 だが、草加雅人、彼に教えるのは危険だと判断した。

 

 理由は単純。

 

 バディが、草加雅人のオルフェノクに対する姿勢だ。

 

 オルフェノクに対しては徹底して冷徹な態度を貫き、長田結花が善意あるオルフェノク達に対してもそれは変わらない様子だ。

 

 ならば、木場と協力関係を築けるかと言えばそうではない。

 

 むしろ、その逆の可能性の方が大きいだろう。

 

 木場にその気は無くとも、結果的にそうなってしまう可能性があるのだ。

 

 バディは、木場が危険が及ばないように動く事を優先させたいと考えている。

 

 それは、木場も承諾してくれた。

 

「それにしても、まさか巧に友達ができるなんてね」

 

 そう言いながら園田真理は雑誌を見ながら、言う。

 

 木場が変身したライダーの正体については、言わない約束だと言ったら、少し不服そうな様子だったが、納得した様子であった。

 

「友達ねぇ、どうなんだろう」

 

 そんな園田真理の言葉に対して、バディは少し思い悩んでいた。

 

「あれ、たっくんの友達になったんじゃないの、あの仮面ライダーは?」

 

 バディのその言葉に対して、啓太郎は思わず問いかける。

 

 それに反応するようにバディは寝転んだまま、答える。

 

「分からねぇよ、そんなの。俺に、友達なんていた事ないから」

 

 これまで、人を遠ざけていたバディにとって、友達がどうなのか。

 

 それが分からなかった。

 

「えっ、酷いよたっくん! 

 

 俺達はもう友達じゃないか」

 

 啓太郎はそう、バディに対して言う。

 

「お前が、俺の友達? 

 

 ないな」

 

 バディはその言葉を一蹴する。

 

「ひどっ!」

 

 それを聞いて、ショックを受けている啓太郎を見る。

 

「真理ちゃんは、俺の事を友達だと思っているよね!」

 

「えっ」

 

 啓太郎は、そのまま園田真理に対して、質問してくる。

 

「あぁ、どうなんだろう。啓太郎が友達って言われると」

 

 そう、園田真理は微妙そうな顔をしていた。

 

「真理ちゃんまでぇ」

 

 そんな二人を見て、バディは呆れたような表情を浮かべて呟く。

 

「まぁ、別に友達じゃなくても良いだろ。

 

 なんだ、その、同居人としては、本当に助かっているから」

 

「あっ、それだったら、私も。啓太郎が家事とかやってくれて、本当に助かっている」

 

「えっ、そう? いやぁ、そう言われると、照れるなぁ」

 

 そう、バディと園田真理は言うが。

 

「それって、いわゆる、家政婦ではないだろうか」

 

「お前は少し、黙っていろ」

 

 そう、バディは私を小突いて来る。

 

 だが、事実なのだから仕方がないではないか。

 

 私は、そう思いながらも口をつぐむ。

 

 それにしても。

 

「……」

 

「何かあったのか?」

 

「草加雅人の事についてだ」

 

「草加君? 

 

 そう言えば、まだ帰ってきていないけど、ファイズ、何か連絡があったの?」

 

「いや、草加雅人本人からは聞いていない。

 

 だが、カイザから連絡があった」

 

「カイザから? 

 

 なんだって?」

 

 その言葉と共に、私は思い出す。

 

 カイザが、あの時に言った言葉を。

 

「……デルタが、最初のベルトが見つかった」



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運命の分岐点

 その日、Mr.Jはチャコと遊んでいた。

 

 彼にとって、チャコと共に過ごす日々こそ、癒やしだった。

 

 チャコのお気に入りのボールを投げて、遊ぶ。

 

 だが、投げたボールは、運悪くベンチの下へと飛んでしまう。

 

 それを追いかけるチャコを見て、Mr.Jは、微笑みながら見つめていた。

 

 しかし、すぐに変化に気づく。

 

 ベンチの先にいたはずのチャコの姿がいない。

 

「チャコ!?」

 

 それに気づいたMr.Jはすぐにベンチの下を潜り込んで見つめる。

 

 しかし、そこには既にチャコの姿はいなかった。

 

 それを見て、血の気が引いたMr.Jはすぐに探し始める。

 

 体格はそれ程大きくないチャコを、見つける為に追いかける。

 

 必死に探していた。

 

 そうして、探していると、見つめた先。

 

 そこにはベンチの上に座る少女がおり、その腕の中にはチャコがいた。

 

 穏やかに目を瞑っている様子を見る限りでも、少女が危害を与えている様子はなかった。

 

「チャコ、ここにいたのか」

 

 Mr.Jは、すぐに安堵の言葉と共にチャコを撫でる。

 

「チャコっていう名前なんだ」

 

「yes」

 

 そう、Mr.Jは頷く。

 

「2度と目を離しちゃ駄目だよ。

 可愛そうだから、分かった」

 

 そう、チャコをMr.Jを渡した少女。

 

「ごめんなさい」

 

 その言葉と共にチャコを撫でるMr.J。

 

 それと同時だった。

 

 少女に近づく影に気づく。

 

 そこにはピエロがおり、それを見ると、少女は怯えた様子だった。

 

 それを見たMr.Jは首を傾げる。

 

 だが、ピエロはすぐにキノコの傘をモチーフとした頭部や肩にキノコのオルフェノクだった。

 

 オルフェノクは、そのまま、真っ直ぐと少女へと向かって行く。

 

「っ」

 

「……」

 

 それに対して、Mr.Jはすぐに少女を抱えて、そのまま蹴り上げる。

 

 オルフェノクは、すぐに驚きを隠せないが、その手には鉄棍を構える。

 

 それは、既にMr.Jに対しても攻撃を仕掛けるのが分かった。

 

「……チャコを、お願い」

 

 それと共に少女を降ろして、チャコを預ける。

 

 それと共にすぐに携帯を構える。

 

「……変身」『COMPLETE』

 

 その音声と共に、Mr.Jはイオタへと変身する。

 

 その事にオルフェノクは驚きを隠せない様子だったが、鉄棍で殴りかかった。

 

 それに対して、的確な防御で、攻撃を受け流しながら、そのまま殴る。

 

 リーチは圧倒的にオルフェノクの方が有利だった。

 

 しかし、Mr.Jの戦闘センスで、それらを的確に防御しながら、その指は、ベルトにある携帯へと伸ばす。

 

『696』

 

 鳴り響く音声と共に、イオタの手元にはホイッパーだった。

 

 そのままホイッパーに、ミッションメモリーをセットする。

 

 すると、先端部分が高速回転し、フォトンブラッドのドリルが生成する。

 

 同時に鉄棍に向けて、ドリルで斬り裂く。

 

 それによって、鉄棍は簡単に砕け散る。

 

 それによって、手元から鉄棍を離す。

 

 そして

 

『Exceed Charge』

 

 鳴り響く音声と共に、ホイッパーを回転は大きくなる。

 

 そのまま、まるでフォトンブラッドの緑色の光によって巨大なドリルが、手を覆う。

 

 それと共に、真っ直ぐとオルフェノクに向けて、胴体に放つ。

 

 防御する事ができないオルフェノクは、そのまま胴体は巨大な穴が開く。

 

 同時に灰となって、その身体は崩れ墜ちる。

 

「……」

 

 それには、少女は少し怯えた様子だった。

 

 しかし、そのままMr.Jに近づく。

 

 それに対して、Mr.Jは少し戸惑う。

 

「私の、お願い、聞いてくれない」

 

「お願い?」

 

 それが、Mr.Jの運命を決定的に変える出来事になるとは、彼自身知らなかった。



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クロコダイル

Mr.Jが偶然出会った少女、倉田恵子。

 

彼女の事情をMr.Jは聞いた。

 

かつては母親と仲睦まじく暮らしていたらしい。

 

だが、そんな母親が事故に遭ってしまう。

 

その事故が原因で、母親は今でも病院で入院しており、記憶を取り戻せていない。

 

だからこそ、今はお金が必要であり、似顔絵を描いている。

 

そして、子供なのか、それとも別の何かなのか。

 

先程のピエロのように、襲われる事が多かった。

 

だからこそ、助けてくれたMr.Jにボディガードを頼んだ。

 

「・・・」

 

オルフェノクの目的は未だに分からない。

 

だが、確実にスマートブレインと関わりがある。

 

だからこそ、敵対をするべきか迷っていた所もあった。

 

「あら、刺客が殺されたと聞いたけど、まさかMr.Jだったのね」

 

「・・・」

 

それと共に聞こえた声。

 

見ると、そこには自身と同じラッキークローバーの一人である景山冴子だった。

 

「もしかして、知り合い」

 

「えぇ、そうね、さぁ、Mr.J。

悪いけど、その子をこちらに渡してくれるかしら?

村上君も、その子をとても気になっている様子なの」

 

そう、景山が言う。

 

それと共に、Mr.Jはすぐに少女を隠す。

 

「何の真似かしら?」

 

「この子は、チャコの大事な友人。

それを渡す訳にはいかない」

 

スマートブレインでの活動を知っているMr.J。

 

だからこそ、彼女を今、ここで渡せば、待ち受ける運命は既に分かりきっている。

 

「裏切るのかしら?」

 

「裏切るのではない。

私は、チャコの為に戦う」

 

そう言い、チャコを少女に渡す。

 

「そう、やりなさい」

 

同時に、景山の背後から現れたのは、まるでハリネズミを思わせるオルフェノク。

 

そのオルフェノクが現れた時には、既に少女を怯えていた。

 

しかし、それよりも早くMr.Jはすぐにベルトを腰に巻く。

 

「変身」

 

それと共に、イオタへと変身する。

 

それに合わせるように、オルフェノクは、その身体を丸めると共に、真っ直ぐとイオタに襲い掛かる。

 

しかし、オルフェノクとしては遙か各上であるMr.Jは軽々と受け止める。

 

「さすがはMr.Jね。

けど、それでは、この子ががら空きよ」

 

「ノー、既に見越している」

 

そうしている間にも、新たな番号を入力していた。

 

『393』

 

それと共に入力したコードと共に、空から降り立ったミキサーがロブスターオルフェノクの進路を遮る。

 

それと共に、掴んだオルフェノクをそのままロブスターオルフェノクに向かって投げる。

 

巨大なボールのように、ロブスターオルフェノクは吹き飛ばされる。

 

同時に、地面に突き刺さった落ちたミキサーを手に取り、そのままミッションメモリーをセットする。

 

『READY』

 

同時に、そのまま狙いをヘッジホッグオルフェノクに向ける。

 

そして、そのまま引き金を引く。

 

それによって、ヘッジホッグオルフェノクは、緑色の光線を包み込む。

 

それが、戦いの決着だった。

 

「おじさん!」

 

それと共に、Mr.Jに恵子に近づこうとした。

 

だが。

 

「へぇ、面白い玩具を持っているねぇ」

 

聞こえた声。

 

それと共にイオタの胴体が貫く。

 

それに、恵子は驚き目を見開く。

 

そうしている間にも、イオタの変身は解除され、Mr.Jはそのまま膝から倒れる。

 

「えぇ、もぅ不意打ちで死なないでよ」

 

そう言いながら、Mr.Jは後ろを見る。

 

そこにいた存在に、Mr.Jは知っている。

 

「北崎っ」

 

「やぁ、久し振り」

 

そうして、笑みを浮かべる。

 

「けど、残念だなぁ。

こんな、すぐに終わるなんて。

まぁ良いか、君が死んだから、あの子でようやく遊べるし」

 

そう、北崎の目線は、そのまま倉田へと目を向ける。

 

すると、先程の衝撃で、未だにダメージを負っているが、なんとか立ち上がる景山。

 

「北崎君、そこにいる子は殺さないでね」

 

「えぇ、仕方ないなぁ。

まぁ、今は、チャコで十分か」

 

そう北崎が手を伸ばそうとした時だった。

 

「イオタ、あの子達を、頼む」

 

微かに聞こえた声。

 

それと共に、彼女の手元にはベルトが投げられる。

 

「なに?」

 

「ガアアァァ!!」

 

それと共に、Mr.Jはオルフェノクの姿であるクロコダイルオルフェノクとなる。

 

「へぇ、僕と遊んでくれるんだぁ、楽しみだなぁ、それはぁ!」

 

それと共に北崎もまた、ドラゴンオルフェノクとしての姿で、応戦する。



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全てが灰に

「・・・」

 

私とバディは、その場所を見つめる。

 

そこには、既に何も残っていない。

 

辺りには、破壊された物も、何も残っていないように。

 

そこには、灰しか残っていない。

 

だが、その灰が何なのか、私達は知っている。

 

「これは、本当にオルフェノクがやったのか」

 

その言葉には、思わず同意する。

 

見渡す限りの灰。

 

それは、1人のオルフェノクから出る灰にしては、あまりにも多すぎる。

 

周辺全ての物を灰に変えたとしか思えないような光景であり、同時にそれは普通のオルフェノクでは不可能だ。

 

そして、それができるオルフェノクがいるとしたら、それははっきりと言えば、化け物だ。

 

「・・・J」

 

そんな光景を見て、少女に送り届けられたイオタは悲しそうに見つめる。

 

元々啓太郎が関わっていた倉田恵子は、慌てたように私達にイオタを渡した。

 

それが、イオタの現在の持ち主であり、私達の敵であるはずのオルフェノクの1人が持ち主である事は、既に私達も知っていた。

 

だからこそ、人間である倉田恵子から渡された時は驚きを隠せなかった。

 

しかし、彼女の必死な言葉に嘘はない。

 

だからこそ、私達は、その言葉を信じて、向かった。

 

けれど、辿り着いた場所には、先程の言葉通り、全てが灰となっている。

 

「この周辺に確か、カメラがあったはず。

インターネット上で、ハッキングすれば、もしかしたら」

 

それは一種の希望だった。

 

ラッキークローバーと呼ばれているオルフェノクの中でも強者と言われた人物ならば、逃げている可能性があった。

 

だからこそ、すぐに行った。

 

だが、そこに映し出されたのは、あまりにも残酷な光景だった。

 

私達がかつて戦ったクロコダイルオルフェノク。

 

その戦闘能力は既に知っていた。

 

だが、それと向き合っているオルフェノクの強さは異常だった。

 

手に持った巨大な剣を構えて、真っ直ぐとオルフェノクに向けて、振り下ろす。

 

振り下ろされ、外れた攻撃は、地面を大きな亀裂ができる程の一撃。

 

それだけでも、かなりの攻撃力があるのは分かる。

 

しかし、それに対して、まるで重厚な鎧を思わせる身体をしたオルフェノクは軽々と避けると、巨大な爪をそのままクロコダイルオルフェノクに向けて、薙ぎ払う。

 

かなり重い一撃だったのか、クロコダイルオルフェノクは、そのまま吹き飛ばされる。

 

「まったく、Mr.Jは弱いねぇ。

僕も君と戦うの、結構楽しみだったのに、これは期待外れだったかなぁ」

 

倦怠感と不気味さを感じさせるような話し方。

 

それは草加雅人とは違った恐怖があった。

 

それに対して、Mr.Jは立ち上がる。

 

「お前は、危険過ぎる。人間だけではなく、オルフェノクに対しても危険だっ」

 

「えぇ、僕達、同じラッキークローバーの仲間じゃないかぁ、そんな事を言われると、ショックだなぁ」

 

そんな言葉とは裏腹に、そのオルフェノクはまるで悲しそうに見えなかった。

 

そんなオルフェノクに対して。

 

「何時か、その態度が破滅を招くぞ」

 

「だったら、お前が先に破滅したら」

 

同時にオルフェノクは、その腕に青い炎を灯す。

 

それと共に、地面を叩きつけると同時に、カメラが揺れ、画面が消える。

 

おそらくは、この時点で、全てを灰にしたんだろう。

 

「・・・イオタ、こいつは一体何者なんだ」

 

「私も会った事はない。

けど、ラッキークローバーの1人だという事だけは分かる」

 

「そうか」

 

その言葉と共にバディは何かに気づいた様子だった。

 

「バディ、このオルフェノクを知っているのか」

 

「・・・あぁ。

ただ、言えるのは、こいつは絶対に倒さないといけない敵。

それだけだ」

 

それがどのような意味を持つのか、私は分からない。

 

だが、それは正しい覚悟だと、私は信じたい。

 

「ただ、今は」

 

「そうだな」

 

この場で、少女を、愛犬を護る為に戦った仮面ライダーの死を、祈ろう。



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戦いに勝つ為に

その日、啓太郎の帰りは遅かった。

 

それは、Mr.Jが命懸けで護った少女の願いを叶える為に行動している。

 

啓太郎の行動に対して、少し心配していたバディだが、私経由で既に木場に連絡をしていた。

 

私達が後から追ったら、すぐにバレる事もあり、もしも、あのオルフェノクが現れた時には彼らが逃げる時間稼ぎができる。

 

そして、私達もすぐに駆けつける。

 

「最も、私達が合流しても、果たして勝てるかどうか、分からないがね」

 

それ程までに、脅威なのはドラゴンオルフェノクの強さは異常だった。

 

「・・・もしも、勝てる可能性があるとしたら、全てのベルトを集めて、力を合わせる。

けど、問題はベルトが集まっても、使える奴がいるかどうかだ」

 

その言葉にイオタも同じ意見だった様子で、頷く。

 

「どういう事だ?」

 

「ベルトにも相性がある。

これは以前にも言ったと思う。

その点で言うと、私とバディの相性は良い」

 

バディの戦い方は、俊敏な動きと高いジャンプ力を持っており、私の様々なギアを瞬時に使いこなす事ができる。

 

「私とMr.Jもね。

彼はオルフェノクの中でもかなりのパワーがあったから、防御力に長けた私とも相性は良い」

 

「・・・だとして、どうするつもりだ?

はっきり言うが、俺達に協力するオルフェノクなんているのか」

 

バディの、その言葉は頷ける。

 

オルフェノクの中にも、人を襲いたくないオルフェノクがいる。

 

「そもそも、そんな奴を探し出す事なんて出来るのか?」

 

「それが、問題だ。

奴らにとって、裏切り者のオルフェノクの情報は厳重だからな」

 

「そんなに厳重なのか?」

 

「元々、オルフェノクと人間との戦いにおいて、オルフェノク側の不利な点は味方が少ない事だ。

そこで、さらに敵対しているオルフェノクの数が多くなれば」

 

「確かに、それを聞けば、情報は手に入りにくいけど、そんな情報「あるわ」えっ?」

 

その言葉と共にイオタが喋り始める。

 

「裏切り者のオルフェノクの情報、手に入れられる可能性があるわ」

 

「本当か、それはどうやって」

 

「ラッキークローバー。

Mr.Jやあのドラゴンオルフェノクと同じく、あと2人のメンバーがいる。

その2人のメンバーのどちらかが確か裏切り者の始末を行っていると、話に聞いているわ」

 

「だったら、今後はそのラッキークローバーの奴を狙っていくか。

木場の奴もそうだが、早めに草加の奴にも知らせないとな」

 

「・・・それは」

 

その言葉に、私は迷いがあった。

 

木場は共有するのは問題ない。

 

彼自身オルフェノクであり、むしろ積極的に協力してくれるだろう。

 

だが、オルフェノク相手に容赦しない草加雅人に対して、果たして共有して良いのか。

 

「お前の気持ちも分かる。

だけど、あいつもこの状況に関しては、理解してくれるはずだろ」

 

それはある程度、草加雅人の事を信頼しているだろう。

 

「・・・仕方ないな。

まったく、これでは私はバディの事は言えないな」

 

「お前、それは一体どういう意味だ」

 

そう、バディは呆れたように言う。

 

「とりあえず、私はしばらくの間は、啓太郎君か真理ちゃんと一緒にいるわ。

もしもの時の自衛ぐらいにはなるから」

 

「あぁ、頼むぞ。バディはこれでも心配性だからな」

 

「お前は余計な事を言うな」



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バイト

「裏切り者のオルフェノク。

確かに、そんな人達が味方になってくれたら、心強い」

 

先日の話で決まった事を、私達は木場に話していた。

 

その事については、木場も頷いていた。

 

「だけど、その、彼らが戦うかどうかは、彼らに任せて欲しい。

俺達のように、自分から戦いたいと思う人達ばかりだとは限らないから」

「俺達だって、戦いたくて戦っている訳じゃない。

けど、まぁ、無理を強いるのも駄目だからな」

 

木場の意見に関しても、バディも思う所もあってか、頷く。

 

「それにしても、なんで、俺達がこんな事をしなきゃいけないんだ」

「まぁ、確かに偶然が凄かったからね」

 

それは、啓太郎のいつもの人助けでピザハウスのバイトを行う事になった。

 

だが、その時になって、運が悪かったのか、バイトをしていた全員が風邪を引いてしまった。

 

だからこそ、代役として、バディと木場の2人がバイトを行っていた。

 

「それにしても、何というか」

「うん、驚きだよね」

 

それは偶然だった。

 

ピザハウスのマスター。

 

彼は、オルフェノクだった。

 

その時には警戒していたが、彼自身からは悪意はまるで感じられなかった。

 

「・・・乾君は、マスターを」

「誘う訳ないだろ、どう見ても、戦えそうに見えるか?ピザを作るのにあんな一生懸命な奴を」

「バディは、そういう夢を持つ人物が好きだからな」

「へぇ、そうなんだ、なんだか意外」

「お前らは、仕事中は黙っていろ」

 

そう、私達はマスターから見えない角度で話していると、そのままバディによって閉じられてしまう。

 

「すいません、お届け物です!」

「はーい」

 

すると、何やら宅急便が届いたらしい。

 

それに対して、疑問に思いながらも、取り出したのは木箱だった。

 

「なんだ、これは?」

「ワイン?マスターが頼んだのか?」

「そんな訳ないだろ、この店に出すとしても高すぎて出せないよ」

 

そうマスターは呆れたように笑いながら言う。

 

だが、その時、私は思い出した。

 

イオタから貰ったラッキークローバーに関する情報を。

 

「・・・とぅ!」

「なっ、おい、何をしているんだ」

「えっ、携帯が、立った!?」

 

私は客側からは見えないように変形すると同時にすぐにファイズポインターを装着し、窓の外を確認する。

 

すると、窓の外に見えたのは、車に乗った二人の男女。

 

その内の、女性には見覚えがあった。

 

「これは、危険だ」

「どういう事なんだ?」

「おい、バイト、なんだよ、その携帯は」

 

マスターはすぐに問い詰めて来るが、私はすぐに向き合う。

 

「窓の外に、ラッキークローバーがいる」

「っ」

 

同時にバディはすぐに外を見つめる。

 

「あの女は」

「それは、本当なのか」

 

そう、木場も驚きを隠せないように聞いてくる。

 

「おい、お前ら、なんで、それを」

「・・・マスター、ここでは客に聞かれたらヤバい。

何よりも、すぐにここから出よう」

「何を言っているんだ」

「このままじゃ、お客さんが、戦いに巻き込まれる」

 

それと共に、バディ達が見つめた先をマスターも目を向ける。

 

同時に、事態を察した。

 

「お前達、まさか」

「同じオルフェノクだ、だけど、人を襲いたくない」

「あなたと同じです」

「本当なのか、でも、この状況、どうすれば」

 

まさに、危機的状況なのは、マスターが感じた通りだ。

 

だけど。

 

「バディ、これは確かにピンチだが、同時にチャンスだ。

おそらくは、あのオルフェノクは」

「裏切り者のオルフェノクのデータを持っている。

だとすれば、ここで」

「だけど、それじゃ、マスターが」

 

それは、マスターの夢を潰す事に繋がるかもしれない。

 

その事に、私達の、これからの戦いに繋がるだろう。」



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「はぁはぁはぁ!!」

 

彼、青木は、必死に走っていた。

 

それは、後ろから迫っている脅威から逃げる為である。

 

死神の足音とも言える存在。

 

「少し、追いかけっこにも飽きてきましたね」

 

「なっ」

 

そんな青木の目の前に、一人の男が待ち構えていた。

 

眼鏡を持ち上げながら、不適な笑みを浮かべている男、琢磨は見つめていた。

 

「琢磨君、少し張り切り過ぎじゃないの?」

 

そんな琢磨に軽く注意をするように、青木の後ろから迫っていた女性、影山冴子は部下である大野木を連れながら言う。

 

「彼には、MrJの持っていたベルトを持っているという情報があります。

その為にも、僕としてはぜひともベルトを手に入れたいのです」

「そうね、私も、ベルトは手に入れたい所ね。

ねぇ、青木さん、いい加減、こちらについたら、どうなの?」

「いっ嫌だっ、俺は人を襲いたくないっ、俺はピザを沢山の人にっ」

「でも、ここで死んだら、それもできないわよ」

 

それと共に冴子は、その姿をロブスターオルフェノクへと変わると同時に詰め寄る。

 

「このまま死ぬか、それとも人を襲うか、どちらか選びなさい」

 

そう、詰め寄ろうとした時だった。

 

「っ、冴子さん!!」

「っ」

 

聞こえた叫び声と共に、冴子はすぐにその場から離れた。

 

それは、空から襲い掛かってきた弾丸であり、見れば、それに驚いた。

 

「まさかっ」

 

そこにいたのは、ミュー。

 

5本のベルトの内の一本が変身したライダーであり、空を飛ぶ専用バイクであるライドウィンガーで牽制していた。

 

「マスター!!」

 

その叫び声と共に、ミューは手を伸ばす。

 

それに対して青木はすぐにオルフェノクの姿に変身すると同時に、オルフェノクの姿になった事で発揮した身体能力でライドウィンガーに乗る。

 

「待ちなさい!!」

 

それと共に琢磨もまたすぐにオルフェノクへと変身し、そのエネルギー弾を真っすぐと放った。

 

しかし、そのエネルギー弾を防いだ人物がいた。

 

そのフォトンブラッドは緑色のライダー。

 

しかし、その姿はイオタではなく、ファイズだった。

 

「なっ、ファイズ、まさか」

「どうやら、当たったようだな、この賭けに」

 

そう言いながら、ファイズは、その片手にはイオタの武装であるイオタシールドを、もう片手にはファイズエッジを持ちながら、構える。

 

「…まさか、待ち伏せされていたの、私達が」

「そういう事だ」

 

同時にミューもまた地面に降り立つと、そのまま琢磨に向き合う。

 

互いに背を向け、目の前にいるオルフェノクを見つめる。

 

「そっちは任せた」

「君も、気を付けて」

 

その言葉を合図に、戦いは始まる。



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加速する本能

「ぐっ」

 

バディは眼前にいる2体のオルフェノクを相手に、苦戦を強いられている。

 

一体は、以前の戦いでバディを追い詰めたロブスターオルフェノクであり、そのフェンシングを思わせる細い剣による攻撃はかなり厄介だ。

 

そして、もう一体のオルフェノクのスコーピオンオルフェノクはフレイルによる攻撃はかなり厄介だ。

 

フレイルによる一撃を、なんとかイオタシールドで受け流す事で直接の攻撃を防ぐ事はできた。

 

しかし、ロブスターオルフェノクは、その隙間を狙うように突いていく。

 

その為、ロブスターオルフェノクの攻撃を防ごうとすれば、スコーピオンオルフェノクのフレイルによる攻撃で大きなダメージを受けてしまう。

 

イオタの能力のおかげで、決定的なダメージを受けずに済んでいるが、それでもこのままでは危険な状況だ。

 

だからと言って、木場からの救援は望めない。

 

木場が眼前に戦っているセンチピードオルフェノクの鞭による攻撃に対して、対応するのがやっとだ。

 

このままでは危険な状況。

 

その時だった。

 

何かがこちらに投げられた。

 

それは攻撃ではない事はすぐに分かった。

 

困惑を隠せないバディを余所に、投げられた方向を見る。

 

そこに立っていたのは、行方不明になっていた草加雅人だった。

 

「それを使え」

 

何時戻ってきたのか、分からず、困惑する。

 

だが、このアイテムがこの状況を打開できるのか。

 

「やってみるしかないなっ!」

 

その言葉と共にバディは一瞬の判断で、イオタシールドをそのまま投影する。

 

それによって、驚きを隠せないスコーピオンオルフェノクは、その攻撃をなんとか防ぐ。

 

同時に手に持ったファイズエッジでロブスターオルフェノクを薙ぎ払う。

 

決定的なダメージではないが、確かな隙を作る事ができた。

 

瞬時に、バディはイオタのミッションメモリーと、先程草加雅人が渡してきた時計に装着されていたミッションメモリーをセットする。

 

『COMPLETE』

 

鳴り響く音声。

 

それと共に変化する。

 

ファイズの身体に駆け巡る赤いフォトンブラッドは銀色に変わり、目の色は真っ赤に染まる。

 

同時に胸アーマーが上に上がり、装甲が剥き出しになる。

 

「これはっ」

 

同時に私に私の演算能力は急激に上昇する。

 

それと共に、バディの視界を通じて、敵のオルフェノクのラーニングする事ができた。

 

「バディ」

 

「あぁ、分かっている」

 

同時にバディは腕に装着されているファイズアクセルのスイッチを押す。

 

それと共に一瞬だっただろう。

 

「なっ、ファイズが赤くっ」

 

10秒。

 

「なっ、ファイズがっ、なぜっぐっ!?」

 

その間に、ロブスターオルフェノクとセンチピードオルフェノクに大きなダメージを与え、それと共にスコーピオンオルフェノクを倒す事に成功した。

 

それは、ファイズアクセルの力だった。

 

スタータースイッチを押すと自分の動きが10秒間だけ1000倍に加速した「アクセルモード」となった。

 

その間に、バディは手に持ったファイズエッジを使い、一気に勝負を終わらせた。

 

そして、2体のオルフェノクを生き残らせたのには訳がある。

 

「これだね」

「あぁ」

 

バディと木場は、2体のオルフェノクの近くに落ちている装置を手にする。

 

そこに書かれていたのは、確実に裏切り者のオルフェノクのリストだった。

 

「お前達、まさか最初からそれが目的でっ」

「ここは退散するしかなさそうね」

 

同時に、この状況で、不利だと判断したオルフェノク2体はすぐに逃げていった。

 

「追わないのか」

「なんだか、身体がだるい」

 

アクセルフォームは、驚異的なスピードと同時にかなり体力を消費する。

 

バディと相性の良い姿だったから、できた姿だ。

 

それと共にバディは草加雅人の方へ向こうとしたが、既にその姿はなかった。

 

「・・・あいつ、今まで、どこに行ったんだ」

 

目的は確かに達成はできたが、それでも未だに謎は多い。



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ベルト争奪戦ゲーム

「裏切り者の処刑は中止って、どういう事なの、村上君」

 

その言葉と共に景山は、真っ直ぐと裏切り者の始末を頼んだ人物である村上に問いかける。

 

「今回の一件で、我々の持つ裏切り者のオルフェノクの情報が向こうに渡ってしまいました。

そうなった以上、これからは裏切り者のオルフェノク同士が手を組み、こちらに大きな被害が出てしまう可能性がある。

だから、中止です」

 

そう、村上は目の前にいる景山に対して、返答する。

 

「このまま奴らを放っておけと?」

 

その言葉と共に、琢磨は村上に向けて、問いかける。

 

「えぇ、彼らを始末する為にも、作戦が必要です。何よりも向こうには既に5本のベルトが既に向こう側にありますから」

「5本?

向こうにあるのは4本じゃないの?」

 

5本目のベルトが既に向こう側にある事を知らなかった景山は思わず、問いかけてしまう。

 

「最後のベルトであるデルタのベルト。

あれも既に、向こう側に渡っています。

今は各地を転々としながら、その詳細な居場所は分かりません。

しかし、いずれ合流すれば、我々にとっては大きな敵になるでしょう」

「ならば、むしろ、今こそ狙うべきでは」

「そんな事をしたら、つまらないじゃないかぁ」

 

そう、琢磨が言おうとした時、聞こえた声。

 

その声を聞いた瞬間、琢磨は恐怖に怯えた表情で、声の主を見る。

 

「きっ北崎さんっ、なんで、ここに」

「僕がここにいちゃ、駄目なの?」

「そっそんな事、ないですっ」

 

そう、目の前にいる男、北崎からの質問に対して、琢磨は恐怖に怯えた表情と共に答える。

 

「北崎さんは、楽しそうですね」

「勿論だよ、普通の人達よりも強い力を持っているんだったら、僕と戦っても、すぐには壊れないよね。

だったら、とても楽しめるじゃないか」

 

そう呟く北崎の言葉に対して、村上もまた変わらない態度で頷く。

 

「では、北崎さんにはベルトの回収を頼みます。

景山さんも琢磨さんも、お手伝い、お願いしますね」

「分かったわ」

「了解しました」

「うん、それじゃ、僕はここで失礼するねぇ」

 

それだけ言うと、北崎はそのままBARから姿を消した。

 

「理由は、分かって貰いましたか。

このベルトの争奪戦。

下手な事をすれば、北崎さんが暴走する」

「それを押さえる為のゲームという訳ですか」

「えぇ、北崎さんは、確かにオルフェノクとしては上の上で、間違いありませんが、あの性格ですからね。

彼を、このゲームで満足できれば、少しの間は平和になるでしょ」

「それで、ベルト争奪戦が終わった後は、どうするの?」

「・・・その時は、始末しますよ。

彼は、あまりにも、危険過ぎるから」

 

そう、村上の言葉には、景山も、琢磨も頷くしかなかった。



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デルタの行方

草加雅人が戻ってきた。

 

本来ならば、味方が増えたという事で喜びべき事だろう。

 

だが、彼には、何か闇を感じる。

 

それは、私もそうだが、イオタもまた感じていた。

 

「それで、カイザ。

君は、本当に会ったのか、デルタに」

「あぁ、そうだ」

 

その言葉に、私達は、驚きを隠せなかった。

 

これまで見つける事ができなかった最後の5本目のベルトであるデルタが見つかった。

 

「一体どうして」

「あの時、俺と草加雅人はすぐにオルフェノクを倒しに向かった。

だが、その道中で流星塾のメンバーと出会った。

そいつからからデルタのベルトの事を教えられ、すぐに合流した。

しかし、合流した後の記憶はない」

「記憶がないだと」

「気づけば、俺達には、この新たな装備とお前の新たな装備。

そして、俺達の創造主からの言葉だ」

「創造主、まさかっ」

「花形、園田真理達が探していた男だ」

 

その言葉に、私は動揺を隠せなかった。

 

まさか、私達が知らない間に、そんな出来事が起きていたとは。

 

「言っておくが、この事を園田真理達には話さない方が良い。

それを行った場合、奴が何をするのか、分からないからな」

「・・・そうかも、しれないな」

 

合流した後も、草加雅人は、それを話そうとしなかった。

 

それが、どのような意図か、分からない。

 

それでも、園田真理達に話したら、何が起きるか分からない。

 

それも理由だった。

 

「それで、今の状況が、これか」

 

そう、私達は眼前に起きている出来事を見る。

 

そこでは、かつての流星塾のメンバー達が集まっており、1人が草加雅人に怒りを向けていた。

 

その言葉は、デルタのベルトをどこに隠したのか。

 

それと共に、事情を聞き始める。

 

それは、どうやら流星塾のメンバーの1人である木村沙耶という人物がデルタギアを持っていた。

 

最初は、その力に恐れていたらしく、戸惑っていた。

 

それを見た他のメンバー達は、デルタギアを借り、すぐに戦い始めた。

 

どうやら、デルタギアを使い、十全と戦う事ができたらしい。

 

だけど、その結果、デルタの力に溺れていた。

 

「・・・おい、何か知っているか」

「あぁ、勿論、知っている。

そして、おそらくは推測だが、良いか?」

「それでも良い」

 

そう、バディが聞いてくる。

 

「デルタギアは、他のギアとは違い、変身に対する条件はない。

だからこそ、デルタギアにはあるシステムが組み込まれている」

「システム?」

「デモンズスレート。

私達には備わっていないシステムであり、適合者ではない者を十全に戦わせる為に備わっている。

それは闘争本能を刺激するシステムだ」

「だから、あの時と比べて、凶暴な性格なのか」

 

そう、納得するようにバディは頷く。

 

「おそらくは、最初に送られた人物は適合者だと考えただろう。

私達自身が、送られた理由は未だに分からないがな」

 

そう言いながら、私は、そのままカイザに問いかける。

 

「カイザ、それでお前に聞きたい」

「なんだ?」

「デルタは、今、どこにいる」

 

その私達のやり取りを聞き、周りが戦慄する。

 

「どういう事なんだ」

「私達は互いに認識すれば、何時でも居場所が分かるシステムがある。

いわば、GPSが備わっている。

それで、接触すれば、既に居場所が分かるはずだ」

「・・・だとしたら?」

「さっさと、教えろ!

てめぇのような、呪いとは違って、デルタは」

 

そう、流星塾のメンバーが、カイザに詰め寄る。

 

「黙れ、人間。

貴様のような奴がデルタの適合者だと、笑わせるなよ、中毒者」

「なんだとっ」

「そして、お前達に教える義理はない。

いや、むしろ必要ない事だからだ」

「その通りだね、君も、君の相棒も必要ない。

これは、流星塾の問題だからね」

 

カイザの言葉に対して、草加雅人もまた同意するように言う。

 

対して、バディはそのままため息を吐きながら、そのままバイクに乗る。

 

「そうかよ、じゃあな」

 

それだけ言い、私達を連れて、そのまま帰って行く。

 

「・・・イオタ、先程の台詞」

「ファイズも気づいた?」

 

カイザの先程の言った言葉。

 

どこか、違和感がある。

 

それは、まるで。

 

「・・・デルタは、すぐ近くまで来ている」

 

そう感じる言葉であった。

 



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デルタの少女

バディと共に、店に帰ってきた私達に知らされたのは、新たなバイトを雇ったという啓太郎からの知らせだった。

 

さすがに、新しいバイトに、私達を知らせる訳もなく、バディはそのまま隠すようにしていた。

 

「むっ」

 

それと共に感じた感覚。

 

それは、誰かが呼んでいる。

 

丁度、少し離れた場所。

 

バディ達からは見えない場所。

 

そこに向かった。

 

そこに立っていたのは、一つの影。

 

その身体は、私達のような人影ではなく、犬や猫のような四足歩行を思わせる機械。

 

それが、何なのか、私は知っている。

 

「久し振りですね。

いえ、あなたには記憶はなかったんですね」

「まさか、デルタなのか、という事はっ」

 

その言葉と共に、私は思わず、新しいバイト、木村沙耶を見る。

 

まさか、あの時、カイザが言っていたのは、そういう意味だったのか。

 

「ファイズ、悪いですが、今、彼女の正体を君のバディには明かさないでください」

「それは、一体」

「彼女は、戦いが嫌になったんだ」

「そうなのか」

 

デルタの言葉に対して、私は思わず納得してしまう。

 

彼女を、この場で少し会話しただけでも、その穏やかさは伝わる。

 

「事情は理解できた。

だが、それならば、なぜわざわざバディの元に?」

「・・・始めに、彼女も流星塾のメンバーに私を貸した。オルフェノクから、仲間を守る為に行動した。それは間違いなく善意だろう。けど、善意で行った行動が必ず良い結果になるとは限らない。それは、君自身も見て、既に知っているはず」

 

その言葉に確かに頷くしかなかった。

 

あの瞬間に見た流星塾のメンバーの様子から考えても否定はできない。

 

仲間意識の高かったはずの流星塾のメンバーが、デルタを巡って争っていた。

 

「私自身、この機能は取り外したくても取り外せない。

そう、システムの奥に組み込まれており、外せば、デルタとして、戦う事も不可能となる」

「それは、確かに」

 

私達自身に組み込まれたシステムは、私達では外す事ができない。

 

だからこそ、デルタにとっては必要ないシステムでも、外せない。

 

「それで、なぜバディの元に来たんだ?」

「他の流星塾のメンバーから聞いていた。ベルトの力に飲み込まれていないという乾巧に。だからこそ、私を託すべき相手かどうか、確かめに来た」

「そうだったのか」

 

その言葉に、私自身も納得した。

 

「ならば、存分に確認してくれ。バディは、きっと君達も信頼できる相手だ」

「とても自信がある様子ですね」

「勿論だ」

 

そう、私は頷く。

 

「ならば、見させて貰います。

あなたのバディを」



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デルタの影

「・・・」

 

バディが、連絡を受けた。

 

園田真理から、草加雅人がオルフェノクと戦っているという事もあり、向かった。

 

その場では既にオルフェノクによって、流星塾のメンバーの1人が殺されていた。

 

その事に対して、バディは驚きながらも、すぐに草加雅人と合流した。

 

合流した先では、既にカイザに変身していた草加雅人が立っていた。

 

だが、その様子は明らかに何かを警戒している様子だった。

 

「オルフェノクはどうした」

 

バディはすぐに草加雅人に問いかけた。

 

しかし、草加雅人は、それには答えなかった。

 

何かに警戒するように、眼前から迫る何かを、じっと見つめる。

 

自然と、バディもまた見つめる。

 

黒い道路の先。

 

既にオルフェノクが逃げたと思われる場所。

 

嫌な緊張感が、場を支配する。

 

草加雅人は、ゆっくりとその腰にあるカイザブレイガンを、バディはファイズエッジに手を伸ばす。

 

そうしている間に、現れたのは、オルフェノク。

 

だが、そのオルフェノクは、現れると同時に、その場で崩れ墜ち、灰となる。

 

赤い炎と共に。

 

「っ」

 

これまで、幾度となく戦ってきたいバディは、その死の現象に驚きを隠せなかった。

 

それに対して、草加雅人はその状況を冷静に見ていた。

 

「デルタのベルトに倒されたオルフェノクは、赤い炎と共に死ぬ」

「デルタ、それって」

「あぁ、最後の5本目のベルトだ」

 

そう見つめた先には、確かに白い人影があった。

 

その正体がデルタである事は、バディ達は察した。

 

それと共に、デルタはバディ達を見つめた後、その場を去って行った。

 

それと共に、バディ達はすぐに園田真理達の元へと合流しようとした。

 

「・・・バディ、一つ、危険な提案をしたい」

「危険だと?」

「あぁ、バディに対して、大きな危険がある可能性がある提案だ」

「・・・その賭け、成功するのか?」

「バディ次第と言っておこう」

「そうかよ、だったら、頼む」

 

眼前で、流星塾のメンバーがまた1人死んだ。

 

私達が離れている間にも、既に1人のメンバーが死亡している。

 

なのに、目の前にいる2人の流星塾のメンバーは、デルタのベルトに固執している。

 

だからこそ、これは効くだろう。

 

同時に私はバディの肩に乗る。

 

「君達、2人では、デルタのベルトは確実に手に入らないだろう」

「あぁ、お前っ」

 

私の言葉を聞いて、すぐに睨む付ける。

 

「巫山戯ているのか、お前は」

「巫山戯ていないさ。

なんだって、この場でデルタが最も近いのは他でもないバディだからな」

「えっ、巧が?」

 

その事にその場にいた全員が驚いた。

 

「賭けって、それかよ。

そんな嘘で本当に「嘘ではない」んっ?」

「先日、デルタから教えられたよ。今の流星塾の奴らには自分を任せられない。ならば、まだバディの方が良いとな」

「それって、本当なの、巧」

「俺も知らないよ」

 

そう、バディは思わず叫んでしまう。

 

「・・・そうか、君がね、まぁ、それだったらそれでありがたいね」

「草加、どういう事だ」

「今の君達の元にあるよりはマシという訳だ。まぁ最も、今はだけど」

「てめぇ」

 

そう、言い争っている間、バディはそのままバイクを走らせて、その場から離れる。

 

「・・・さっきの話、本当か」

「あぁ、だけど、それが良い方向に行くには、バディ次第だ」

「そうかよ」

 

バディは、舌打ちをしながら、真っ直ぐと帰って行く。

 

 



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デモンズ・イデアを制御せし者は

「えっ、嘘でしょ!?」

 

その日、啓太郎は新しく来たバイトの子である木村沙耶と共に配達を行っていた。

 

だけど、その時だった。

 

「ぐっ」

「えっえぇ!?」

 

困惑に近かった。

 

配達の途中のはずが、オルフェノクと、ライダーが戦っていた。

 

それは啓太郎にとっては、三度目に見た姿であり、今は仲間だと、乾巧から聞いていた為、すぐに分かった。

 

同時にそのライダー、ミューが後ろにいる啓太郎達の存在に気づく。

 

「早く逃げて!!」

 

同時にすぐにセンチピードオルフェノクを、すぐに2人から逃がすように、突進する。

 

「あぁ、どうしよう、たっくんに、すぐに連絡をって、木村さんも、逃げてっ!」

 

そう、啓太郎はすぐに木村を逃がすと共に、乾巧に連絡しようとする。

 

その最中、3人から離れた所で、木村は迷う。

 

「あのライダーも、人を守ろうとしていた。

私は」

『木村』

「デルタ、私」

『あなたが戦いが嫌うのは分かる。

だけど、今、ミューを、啓太郎を救えるのは、あなただけよ』

「・・・分かった」

 

戦いに対して、未だに迷うはある。

 

だが、それ以上に、人を守ろうとしたライダーを失わせる訳にはいかない。

 

デルタが持って来たベルトを、そのまま腰に巻いた木村は、そのままデルタフォンを手に持つ。

 

「変身!」

 

そのままデルタフォンを、腰に巻いているベルトに装填する。

 

『COMPLETE』

 

鳴り響く音声と共に、木村の姿が変わる。

 

その姿こそが、5本のベルトの内、最後の一本。

 

それが変身した姿である、デルタだった。

 

デルタへと変身した木村は、ゆっくりと向かう。

 

そこでは、センチピードオルフェノクの姿が見え、瞬時に接近する。

 

「なっ何者っ」

 

すぐに、木村の存在に気づいたセンチピードオルフェノクは、構える。

 

だが、それよりも早く、木村は真っ直ぐと迫る。

 

センチピードオルフェノクの、その攻撃に対して、的確に避けた。

 

そして、避けると同時に腹部を殴る。

 

「っ」

 

その攻撃に、驚きを隠せないセンチピードオルフェノクに対して、次々と攻撃していく。

 

「なっなんだ、お前はっ」

 

すぐに、手に持った鞭でセンチピードオルフェノクは攻撃を仕掛ける。

 

だが、その攻撃も簡単に避ける。

 

それは、デルタのを闘争心を刺激し、凶暴化させる「デモンズ・イデア」を、彼女は完全に制御していた。

 

だからこそ、その思考は、闘争心を制御し、敵のありとあらゆる動きを予測する事ができた。

 

他のライダーと比べても、単純なスペックが高いデルタが、その未来予測に近い思考を手にすれば、まさしく無敵だった。

 

「はぁはぁはぁ!!」

 

それは、まさしく、センチピードオルフェノクにとっては、恐怖だった。

 

それと共にデルタは腰にあるデルタムーバーにセットする。

 

「チェック」『Exceed Charge』

 

鳴り響く音声と共に、その銃口は真っ直ぐと向けていた。

 

「ひっひぃぃ!!」

 

それが、処刑の音だと理解し、すぐに逃げ出す。

 

プライドもない逃走。

 

だが、それは正解だった。

 

「はぁはぁはぁはぁ」

 

ゆっくりと、その手からデルタムーバーを落とす。

 

同時に変身は解除される。

 

「はぁはぁ」

『無茶をし過ぎよ』

 

そう、デルタは木村を心配する。

 

闘争心を刺激し、未来予知に近い思考を与える。

 

だが、それは元々心優しい木村は、その予測から来る相手の死は。彼女に大きな負担があった。

 

「私、やっぱり、駄目なのかなぁ」

 

そう、涙目になりながら、木村は呟く。



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人の心

「あいつらっ、まさかここまでするのかよっ」

 

その出来事は、私達にとっては予想外の出来事だった。

 

草加雅人からの連絡を聞いた私達は、とある場所に向かって、走る。

 

その連絡の内容は、園田真理が誘拐されたという内容だった。

 

「お前が、余計な事を言うからだだろ」

「私の予測ではデルタに取り憑いた者が、バディを襲ってくると思ったが」

「あいつらが、人質を取るとはな。

お前の予測も、今は当てにならないな」

「すまない」

「気にするな、そもそも、人の心が未だに分からない俺達が言える事か」

 

その言葉は、私も、バディも、未だに人の心は完全に理解できていない。

 

機械である私と、そして彼は。

 

そう考えている間にも、辿り着いた先。

 

そこには、同時に、草加雅人もまたいた。

 

「お前がこっちに連絡するとはな」

「今、何よりも優先させるのは、真理の安全だからな」

 

草加雅人の、その言葉だけは確かに信頼できる。

 

草加雅人が、園田真理に対する強い執着心はかなり危険だ。

 

だが、それと同時に彼女を守る為の行動は確かに信頼できる。

 

そうして、私達が向かった先。

 

その時。

 

「デルタの力を得る代わりに、俺は新しい力を手に入れた。

真理の命を奪う事で、人間の心を完全に捨てる事ができる」

 

「っ」

 

その言葉を聞いた瞬間、バディは目を見開く。

 

それは、彼が、人間ではないからこそ、聞こえた耳。

 

同時に、私自身も理解できた。

 

怒りを隠せない様子のバディは、そのまま真っ直ぐと向かった。

 

その先では、既にオルフェノクが流星塾のメンバーの2人が殺されている光景だった。

 

それに対して、バディは叫ぶ。

 

「お前、なんで人の心を捨てるなんて、簡単に言えるんだ」

「へぇ、聞こえたんだ」

 

そう、その言葉に、オルフェノクはこちらに振り返る。

 

「そんな下らない力の為に」

「下らないだと?

お前に何が分かるんだ」

「あぁ、分からないね、俺には、お前の気持ちなんてな」

 

バディは、叫んだ。

 

その言葉が、どのような意味か、おそらくは周りからは別の意味に聞こえたんだろう。

 

それは、もしかしたら私自身も同じだろう。

 

幼い時から、その力を身に宿し、それが本当に人と同じ心なのかどうか。

 

それが分からないまま、バディは成長した。

 

だからこそ、今のバディは、人の心を知る為に、行動していた。

 

そんなバディの目の前にいる相手を止める為に、私を、その手で握り絞める。

 

「お前を、絶対に止める」

 

同時に変身コードを入力し、構える。

 

「変身!!」『COMPLETE』

 

鳴り響く音声と共に、バディはファイズに、草加雅人はカイザへと変身し、戦いが始まる。



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加速する迷い

眼前にいるオルフェノクに対して、すぐにバディは突っ込む。

 

そのまま力任せに、オルフェノクを壁側まで追いやると共に、声を荒げながら言う。

 

「お前が捨てようとしているのが、どれほどの価値があるのか、分かっているのか」

「お前には、関係ない話だ!」

 

それと共に、オルフェノクはすぐにバディの腹部を蹴り上げる。

 

これまで戦ってきたオルフェノクの中でも上位に位置する強さなのか。

 

私達はそのまま吹き飛ばされる。

 

だが、バディの中にある怒りがあるのか。

 

それとも執念なのか。

 

蹴り上げた足を掴みながら、そのまま頭突きをする。

 

「そうかよ、だったら、お前を倒す!」

 

その言葉と共に、迷いなく、殴る。

 

バディは、おそらく目の前にいるオルフェノクが、園田真理の友人だと知っている。

 

先程から、園田真理が、悲しそうに見つめるのが、よく伝わる。

 

それでも、バディを動かすのは、自身で誓った言葉。

 

『・・・だからこそ、俺はもう迷わない!迷っている内に、人が死ぬならば!戦う事が罪ならば、俺が背負ってやるっ』

 

その言葉が、今のバディを動かす。

 

同時にバディは、すぐに腕に装着されているファイズアクセルのミッションメモリーを、ファイズフォンに装填しながら、新たなコードを入力する。

 

『complete』『821』

 

同時に、バディの前には、ウサギを模した加湿器型のファイズギアであるファイズラビットジャンパーが降り立つ。

 

そのまま、アクセルフォームになった事で剥き出しになった部分に装着する形で、新たな姿へと変わる。

 

ファイズアクセルラビットへと姿が変わると同時に、ファイズアクセルのスイッチを押す。

 

『start up』

 

鳴り響く音声と共に、跳ぶ。

 

周囲を壁や柱を踏み台にしながら、真っ直ぐと、オルフェノクに向かって、蹴り上げる。

 

それを、目で追う事はできず、しかもウサギのような跳躍力によって、それを追う事はできない。

 

そして。

 

『EXCEED CHARGE』

 

鳴り響く音声と共に、真っ直ぐとオルフェノクに向かって、必殺の一撃を放とうとした。

 

だが

 

『巧っ止めてぇ!』

「っ!」

 

その聞こえた声に、バディは、その一撃の急所を外れる。

 

「巧っ止めてぇ!」

 

それは加速した事によって、聞こえた園田真理の未来の声だった。

 

それが、オルフェノクへの攻撃を緩めた。

 

「ぐっ」

 

オルフェノクは、すぐにその場から離れる。

 

それを見た草加雅人は、すぐに詰め寄る。

 

「お前っ、なんで、手加減をした!」

 

そう、詰め寄る。

 

「悪い」

「謝って「止めて、草加君!」真理!」

「私が、止めたから」

 

そう、悲しそうな表情をする園田真理。

 

それに対して、彼らは、どう答えれば良いのか分からず、迷う。



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受け止める重さ

その日のシフトは、バディと啓太郎の2人で回していた。

 

もうすぐ、木村が来る事もあり、忙しい様子が見えながらも待つ。

 

「木村さん、おはよう」

「おはようございます、よろしくっ」

 

そう、挨拶しようとした時、木村はその場で倒れ込む。

 

「木村さんっ」

「おいっ、どうしたんだ!大丈夫かっ」

 

そう、倒れた木村をすぐに抱え込んだバディはそのまま家のソファに寝かせる。

 

その間も、木村を心配した様子で、バディは看病を続ける。

 

「良かった、やっぱり優しい人なんですね」

「黙って、寝ろ」

 

そう、木村の言葉に対して、バディは素っ気なく言う。

 

それと共に、私はその身体状況を見て、察する事ができた。

 

「なるほど、これが戦いを避けていた事か」

「あっ、おい、お前、何、出てきているんだよ!」

 

それに対して、バディは驚きを隠せずに言う。

 

「それで、結論は、どうなんだ?」

「・・・託せると思いました。

あの戦いで、澤田君を倒さなかった。

真理の言葉を、ちゃんと聞いてくれたから」

「お前、まさか」

 

その言葉と共に、彼女のバックから出てきたデルタ。

 

それが決定的な証拠となった。

 

「お前だったのか」

 

それには、バディも驚きを隠せなかった。

 

「流星塾のメンバーから聞いていた。ファイズとして、戦っていたあなたを。そして、デルタからも、聞いた。あなたの、正体も」

「っ」

 

それには、バディも驚きを隠せなかった。

 

「だったら、分かっているだろ、俺は」

「あなたが、悩んでいるのは優しいから。そして、とても強いから。私よりも」

 

それと共に、目眩を起こしたのか、そのまま倒れ込む。

 

「おいっ」

「私では、デルタの力を使えるのは、ここまでだから」

「どういう事なんだよ」

「デルタに備わっているデモンズストレートは、人間の闘争心を強くさせる。

だが、それは過剰であれば、バディも知っての通り、力に執着する人間になる」

「反対に、この子のように優しい子だったら、制御はでき、強い力を引き出せる。けど、人を、オルフェノクを殺すというストレスは、彼女の身体に大きな負担をかける」

「・・・」

 

それは、バディ自身も理解している。

 

バディ自身が、それで悩んでいたから。

 

だからこそ、彼女の気持ちは痛い程に理解できた。

 

「俺に託して、後悔しないのか」

 

そう、告げた。

 

「後悔しない為に、来ましたから」

 

その言葉と共に、渡されたのはデルタのベルト。

 

そのベルトを受け止める重さに、バディは。

 

「重いな」

「だけど」

「あぁ、確かに受け取った」

 

その言葉と共にバディは木村に確かに頷いた。



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白いファイズ

電話を受け、向かった場所。

 

そこでは既に草加雅人とスパイダーオルフェノクこと、澤田が戦っていた。

 

その狙いは確実に園田真理だと分かっており、草加雅人は、彼女を守るように戦っていた。

 

「巧!」

 

「待たせた、すぐに止める」

「うん、だけど」

「分かっている、お前の、仲間なんだろ」

 

その言葉には、迷いはなかった。

 

「だからこそ、止めてみせる、変身!」『COMPLETE』

 

それと共に、すぐに私に変身コードを入力したバディはファイズへと変身する。

 

「力、貸して貰うぞ」

 

それと同時にデルタドライバーの一部であるデルタムーバーを、そのままファイズドライバーにあるファイズポインターと入れ替える形でセットする。

 

同時に、その手にはデルタを手に持つと同時に、そのままデルタムーバーにデルタのミッションメモリーをセットする。

 

それと同時にデルタをデルタムーバーにセットする。

 

『COMPLETE』

 

鳴り響く音声。

 

それと共にファイズの姿が大きく変わる。

 

赤いフォトンブラッドは白くなり、複眼の色は変わらない。

 

その姿は一言で言えば、白いファイズだった。

 

「デルタと、ファイズが一つに」

 

それを見た周りからの評価は、それだった。

 

「お前、それをどうして」

「お前を止める為、託された」

 

同時に、そのままデルタムーバーに、デルタをセットする。

 

その上に重ねるようにファイズポインターをセットする。

 

『READY』

 

「ちっはあぁぁあ!!」

 

それと共に、スパイダーオルフェノクが襲い掛かる。

 

高い身体能力を持っているが、それに対して、バディは素早く避けると同時に、蹴り上げる。

 

「ぐっ」「はぁ!」

 

同時にデルタムーバーの狙いをスパイダーオルフェノクの持つチャクラムに狙い、撃ち落とす。

 

正確無比な一撃に対して、スパイダーオルフェノクは、すぐに戸惑いを隠せない。

 

「こんなので、俺はぁ!」

 

スパイダーオルフェノクは、そのままバディに襲い掛かる。

 

それに対して、バディは、そのままデルタムーバーに向けて言う。

 

「チェック」『Exceed Charge』

 

鳴り響く音声と共に、そのまま、狙いをスパイダーオルフェノクに向けて、引き金を引く。

 

放たれた一撃は、白い

 

それによって、完全に拘束されるスパイダーオルフェノク。

 

「やれっ!」「巧っ!」

 

草加雅人と園田真理。

 

二人が同時に叫んだ。

 

その意味は、違うだろう。

 

「ぐっ、がっぐぅ」

 

そう、三角錐状のポインターで、拘束された。

 

「澤田、これがお前の言っていた人間の心の力だ」

「何をっ」

「これは、俺に託した奴の心が籠もっている。

それが、分かるか」

 

そう、バディは問いかけながら、その拘束を解く。

 

「ぐっ、はぁはぁはぁ」

 

それによって、スパイダーオルフェノクは、ゆっくりと倒れ込む。

 

「へぇ、面白いねぇ」

「っ」

 

聞こえた声。

 

それと共に振り返った先には、オルフェノク。

 

これまで戦ってきたラッキークローバーの二人。

 

そして、見た事のない青年。

 

「二つのベルトが合体するんだぁ。

ぜひ、見せて頂戴よ」

 

その言葉と共に、その姿が変わる。

 

それを見たバディは、目を見開く。

 

「お前はっ」

 

そこに立っていたのは、ドラゴンオルフェノクだった。



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重なる戦い

既に見た方も多くおられるかもしれませんが、仮面ライダー555の新作が発表されました!新たな555の姿が格好良く、しかもオリジナルキャストの登場!その中で、やはり気になるのは、どのようなストーリーなのかですね。テレビ本編の世界なのか、それとも映画の世界なのか。もしくは大穴で、アウトサイダーズと繋がった世界なのか。どちらにしても、楽しみで仕方ないです。そして、それはつまり私の所のファイズも新たな姿を得るので、楽しみです。


「お前は」

 

 そいつが現れた瞬間、バディがその手に持つデルタムーバーを握る力が強くなっていた。

「へぇ、僕の事を知っているの?」

「さぁな」

 

 バディは、そう言いながらも、決して、奴から目を離さない。

 

 この場にいる中で、最も危険な人物だという事を、バディは知っているから。

 

「なんだか、面白くなりそうだね」

 

 それと共に、奴の姿はすぐにドラゴン・オルフェノクの姿へと変わる。

 

 同時にバディは、園田真理の方へ、振り向く。

 

「早く、逃げろ!」

 

 その言葉と共にデルタムーバーの引き金を引く。

 

 デルタムーバーから放たれたレーザーは真っ直ぐとドラゴン・オルフェノクに当たる。

 

 だが、僅かに火花を散らす程度であり、特にダメージを受けた様子はなかった。

 

「ふぅん、結構痛いねぇ」

 

 ドラゴン・オルフェノクは、笑みを浮かべながら、すぐにバディに襲い掛かる。

 

「ぐっ……!?」

 

 一瞬で間合いに入り込んだドラゴン・オルフェノクの籠手が、デルタムーバーを持つ右腕に直撃する。

 

 そのまま殴り飛ばされたバディは地面を転がった後、何とか立ち上がろうとする。

 

「ほらほら、どうしたのかな? もう終わりかい?」

 

 ドラゴン・オルフェノクはゆっくりと近づいていく。

 

「舐めるなよっ」

 

 そのまま、左手に持ち替えると同時に、デルタムーバーを発砲させる。

 

 だが、それは先ほどと同様に全くダメージを与えられていないようだった。

 

「そんな玩具じゃ、僕には勝てないってば」

 

「黙れっ」

 

 それでも、何度も撃ち続ける。

 

 しかし、結果は同じであった。

 

 それでも、園田真理達を護るように戦い続けていた。

 

 そして、その時が訪れる。

 

「うわあああっ!!」

「あはははっ! いい声だね」

 

 ドラゴン・オルフェノクの攻撃によって、ファイズは地面に倒れ込む。

 

 そして、ファイズに向けて、ドラゴン・オルフェノクは拳を振り下ろそうとした時、

 

「……」

「真理、どうしたんだ」

 

 そう、草加雅人が、園田真理が話しかける。

 

「私、知っている。この光景を、あのオルフェノクを、巧が会う前に」

「っ」

 

 それを聞いた草加雅人が何か驚いている様子だった。

 

 だが、その間にも、バディはその引き金を引き続ける。

 

 ドラゴン・オルフェノクは、その攻撃を意にも介さずに歩み寄っていく。

 

「お疲れ様、さようなら」

 

 そして、その瞬間に、ドラゴン・オルフェノクの一撃がファイズを襲いかかろうとした。

 

 だが

 

「チェック!」『『Exceed Charge』』

 

 その懐に向けて、バディはその引き金を引く。

 

 それと同時にデルタムーバーから赤い円形と白い三角錐状の二つのポインターが重なりながら、ドラゴン・オルフェノクを拘束する。

 

「へぇ」

 

「はああぁぁぁ!!」

 

 そのまま、バディはドラゴン・オルフェノクに向かって蹴り上げる。

 

 赤と白の二つの光が、ドラゴン・オルフェノクに確実に命中していく。

 

「ぐぅっ」

 

 その衝撃で、ドラゴン・オルフェノクは後ろに吹き飛ぶ。

 

「へぇ」

 

 多少ダメージがあって、ふらついている。

 

 それでも、このまま戦闘を続けるのは危険だ。

 

『3821』

 

 それよりも早く、既にデルタがコールが鳴る。

 

 同時に、バディ達の後ろに巨大なビークルが現れる。

 

「これは」

『ジェットスライガーよ、早く乗って』

「あぁ!」

 

 それと同時にバディはすぐに乗り込む。

 

 それに気づいた他のオルフェノクは、襲い掛かろうとした。

 

 だが、それよりも早く、ジェットスライガーから無数のミサイルが放つ。

 

 それを防ぐように、攻撃する。

 

「奴らは」

「逃げられたみたいだね」

 

 後ろから、オルフェノクの声が聞こえる。

 

 既に私達は遠く離れていた。

 

「あれがベルトの力か。

 これから、とっても楽しめそうだねぇ」



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重なる言葉

「5本、全てのベルトが向こう側に揃ってしまいましたか」

 

そう村上は、尋ねるように質問する。

 

「そうだね、結構面白い事になりそうだよ」

「それは、非常に残念ですね。

おそらくは、木場君も向こう側でしょうね」

「どうするの?さすがに5本全てを相手にするのは、危険じゃない村上君」

 

景山は、村上に対して、問いかけるように言う。

 

「幸い、今の所、2本のベルトを完全に使いこなせている人物はいない。

けれど、それも時間の問題でしょう」

「えぇ、裏切り者のオルフェノクの中に、適合した者がいれば」

「へぇ、そうなんだぁ」

 

同時に北崎は笑みを浮かべる。

 

「つまり、その人達を訪ねていけば、彼にまた会えるという事なんだ。

それは、嬉しいなぁ」

 

北崎は、そう、欲しかった玩具を見つけたように笑みを浮かべる。

 

「・・・その様子、彼を知っているんですか?」

「さぁねぇ」

 

そう言いながら北崎の脳裏に浮かぶ上がったのは、とある光景。

 

つまらない仕事だと、最初は思っていた。

 

集団でいる人間を、殺していく淡々な作業。

 

そんな中で現れたのは同じオルフェノク。

 

そのオルフェノクは、どういう訳か、人間を守るように、オルフェノクを倒した。

 

たった一発の拳で。

 

それを見て、北崎は、感動すら覚えた。

 

もしかしたら、自分を満足させるかもしれないオルフェノク。

 

だからこそ、北崎は、そのオルフェノクがより本気で戦える為に、残った人間を襲った。

 

そうすれば、もっと強くなってくれる。

 

だけど、そのオルフェノクは、人間の姿となった。

 

それは、既に戦えない事を意味をする。

 

『残念、今回はここまでかぁ』

 

その言葉と共に、その場を去って行く。

 

頼まれた仕事も、その時に終わっていた。

 

起きるのを待つのも面倒だった。

 

だから、次に戦う時を待った。

 

だが、待っている間に、その記憶はなくなった。

 

ファイズと戦うまでは。

 

北崎は、ファイズと戦った時に直感的に理解した。

 

あの時に、見逃したオルフェノク。

 

そのオルフェノクが、ベルトの力と共に。

 

「さて、少し夜風を浴びようかなぁ」

 

そんな記憶を辿り終えると共に、立ち上がり、店から出て行く。

 

それは、同時刻。

 

皮肉にも、巧も同じだった。

 

全ての事情を真理達に話した。

 

託されたデルタのベルトをどうするべきか、まだ決まっていない。

 

だが、彼らがデルタのベルトを持っている事を、まだ知らせない。

 

本当の意味で、デルタに相応しい者が現れるまで。

 

そして、同時にファイズとデルタの二つを合わせた姿でも倒せなかった北崎を思い出す。

 

「・・・」

 

その時、守れなかった感情を思い出す。

 

悔しさが、巧の中に巡る。

 

そして、その拳は、真っ直ぐと向ける。

 

「「お前()は、()が倒す」」



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超加速

「それで、これから結局どうする訳」

 

 そう言いながら、話題を切り出したのは、木場と共に一緒に行動しているオルフェノクの1人である海道。

 

 木場は、彼の事を信用している事もあって、一緒に行動しているが、残念ながら、その力量はデルタとイオタを扱うには難しかった。

 

 デルタは単純なスペック、イオタは防御重視の戦い方をしている。

 

 そういう意味では、デルタが一番使いこなせる可能性はあったが、彼自身とはあまり合わなかった。

 

「でも、他の人と接触しても、やはり協力してくれませんでした」

 

 裏切り者のオルフェノク達と、その後接触した。

 

 しかし、彼らからの協力を得る事はできなかった。

 

 それは、スマートブレインの巨大さを理解しており、本格的に戦えば、死は確実だからだ。

 

「それでも、希望はある。

 乾君達が、持って来たくれたのだから」

 

 そう、木場もまた頷く。

 

 オルフェノクと人間の共存。

 

 それを達成するには、人間を襲うスマートブレインを止めなければならない。

 

 そんな決意をしながら長田はふと、屋台があったのに気づく。

 

 長田はすぐに屋台に近付き。

 

「すいません、ラムネ三本」

「はいよ」

 

 その言葉と共に屋台の店員が、そのままラムネを渡す。

 

 だが、その瞬間、ラムネは渡されなかった。

 

 直前で店員は、灰へと変わったからだ。

 

 その現象に覚えがあった木場達はすぐに構えた。

 

「悪いけど、木場、君にはここで死んで貰うよ」

 

 それと共に、現れたのは澤田が、スパイダー・オルフェノクとなって、襲い掛かる。

 

「っ変身!」

 

 襲い掛かる澤田に対抗するように2人はオルフェノクに、木場はミューへと変身する。

 

 スパイダー・オルフェノクの高い戦闘能力。

 

 それは仲間である海道と長田を簡単に倒す事ができる程の圧倒的だった。

 

『ここは、あれを使うしないわね』

 

 ミューの言葉を聞くと同時に、瞬時にミューのフォトンブラットの色は水色から紫に、装甲も灰色から黒に変化する

 

 同時に、襲い掛かってきた澤田に向かって行く。

 

 かなりの速さと共に、スパイダー・オルフェノクに攻撃を仕掛ける。

 

「ぐっ」「くっ」

 

 その加速力には、スパイダー・オルフェノクにとっては厄介だった。

 

 少し前に戦ったファイズと同様に、スピードでの戦い。

 

 ファイズ程ではなかったので、なんとか対応する事が出来たが、それでも苦戦は必須だった。

 

「はあぁあ!!」

 

 そのまま、ミューは真っ直ぐと攻撃を仕掛けようとした時だった。

 

 背後から襲い掛かる鞭。

 

 それによって、吹き飛ばされる。

 

「ぐっ」

 

 同時に発動していた超加速も解かれてしまう。

 

「あまり先走らないでください」「そうね、私達も仲間に入れて頂戴」

 

 そこに出てきたのはラッキークローバーの2人であるロブスターオルフェノクとセンチピードオルフェノクの2人だった。

 

 3体のオルフェノクを同時に相手する事になりながらも、構える。

 

 このままでは危険だと、思った時だった。

 

『StartUP』

 

「っ」

 

 鳴り響く音声と共に、3体のオルフェノクの間を擦り抜ける赤い閃光。

 

 それらが、瞬く間に3体のオルフェノクを吹き飛ばす。

 

「木場!」「乾君!」

 

 それは、木場にとっては頼もしい仲間である乾の救援だった。

 

 2人は同時に構える。

 

「油断するなよ」「勿論だ」

 

 そう言いながら、2人は構える。

 

「ファイズも出てきましたが、ですが」「えぇ、ここで始末すれば良い話ね」

 

 それに対して、まるで問題ないように呟きながら、言う。

 

 しかし。

 

「困るなぁ、僕の獲物、横取りしちゃ」

「そのっ声はっ」

 

 聞こえた声と共に見つめれば、そこには北崎がいた。

 

 それも、そこに乗っているのは、以前デルタが呼び出したジェットスライガーに乗って。



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ジェットスライガー対決

「きっ北崎さんっ?!」

 

北崎こと、ドラゴン・オルフェノクが現れた事に対して、驚いたのは、バディ達というよりも、相手側のオルフェノクだった。

 

「もぅ、皆、駄目じゃないか。

そこにいる彼は、僕の獲物なんだから」

「っ」

 

それと共に殺気を向けたのは、間違いなく、バディの方だった。

 

「ファイズ」

「あぁ、了解した」

 

バディの言葉に瞬時に了承すると同時に、自動的に入力する。

 

「さぁて、せっかく会ったし、遊ぼうよ!」

 

その言葉と同時に北崎が乗るジェットスライガーが襲い掛かる。

 

それに対して、バディが取った行動は、その場から離れる事だった。

 

同時に木場と視線が合う。

 

『頼めるか』

『分かったっ』

 

ライダー同士ならば、私達を通して、テレパシーに近い会話を行う事ができる。

 

同時に私達は、そのまま飛び出す。

 

「待ってよ、せっかく面白い事をするんだからぁ」

 

そう言いながら、ドラゴン・オルフェノクは、その腕からエネルギー弾を放つ。

 

だが、それを防ぐ巨大な影。

 

その正体は。

 

「へぇ、これも来たんだ」

『ファイズ、待たせたわね!』

 

ジェットスライガーと共に来たデルタだった。

 

バディはそのままデルタを手に取り、腰に装填する。

 

『COMPLETE』

 

鳴り響く音声と共に、すぐに乗り込む。

 

「さぁさぁ、僕を楽しませてよ!!」

 

その言葉と共に、ドラゴン・オルフェノクが襲い掛かる。

 

「この野郎っ」

『バディはその手に持ったデルタムーバーで、奴を狙え。操縦は私が』

『ならば、ジェットスライガーによる攻撃は、私に任せて』

 

その言葉と共に戦いが始まる。

 

ジェットスライガーによる高速噴射。

 

それは、オートバジンとは違う速さ。

 

まさしくジェットを操るという事で、その操作はかなり困難だった。

 

それでも、私は、ジェットスライガーの操縦で、北崎からの攻撃を避ける。

 

北崎は、純粋なオルフェノクとしての攻撃は一撃でも当たれば、負ける。

 

だから、私は避ける事に専念する。

 

「面白いよ、やっぱり君は」

 

そう、私達との戦いに対して、笑みを浮かべていた。

 

「ならばぁ!」

 

そのまま、私は、方向を変える。

 

ジェットスライガーは、独特のホイールで、そのまま海上を飛ぶ。

 

それに対して、ドラゴン・オルフェノクは驚きを隠せない様子だった。

 

『今だ!』

 

同時にデルタは、そのままジェットスライガーから無数のミサイルを放つ。

 

それに対して、すぐに避ける事ができないドラゴン・オルフェノクは、そのままミサイルの餌食になる。

 

「ふぅ、これを操るの、結構大変だったなぁ」

 

そう、玩具に飽きた子供のように呟く。

 

だけど。

 

「チェック!」『Exceed Charge』『Exceed Charge』

 

それと同時だった。

 

事前に打ち合わせたように、木場もまた既に準備していた。

 

純粋に3人分のライダーが合わさった必殺技。

 

それを、受け止めるドラゴン・オルフェノク。

 

「「はああぁぁぁ!!!」」

 

バディと木場。

 

2人の叫びが合わさり、真っ直ぐと向かう。

 

それに対して。

 

「ここまで本気を出させるなんてなぁ」

 

聞こえた声。

 

それと共に、ドラゴン・オルフェノクの姿が消える。

 

「なっ、ぐぅ!」「がぁ!」

 

それによって、バディと木場は互いの攻撃で、吹き飛んでしまう。

 

「今のはっ」「消えたっ」

 

同時に驚いている間にも、私は見えてしまった。

 

「まさかっ」

 

同時に見えたドラゴン・オルフェノクの姿は、先程までの重厚な鎧を思わせる身体から、細く、素早く移動できる身体へとなっていた。

 

それが意味するのは。

 

「アクセルフォームと同じ速さ」

「ふふっ、それじゃ第2ラウンドだよ」

 

そう、北崎は笑みを浮かべながら言う。

 

『バディ、ここは』

「くそっ」

 

悔しいが、負けてしまう。

 

さっきのが、この場における奴を倒せるチャンスだった。

 

だからこそ、ここで死んでしまってはいけない。

 

「んっ」

 

既に遠隔操作で、ジェットスライガーによるミサイルをドラゴン・オルフェノクに向けて、放っていた。

 

それに対して、ドラゴン・オルフェノクは避けたが、それが決定的な隙となった。

 

バディと木場はすぐにジェットスライガーに乗り込み、そのまま撤退した。

 

さすがの超スピードでも海の上を走る事はできなかった。

 

「くそっ」

『焦るなバディ。

少なくとも勝ち筋は僅かではあるが、見えた』

 

今回の戦いは、確かに最後は負けてしまった。

 

だが、同時に決して勝てない相手ではない。

 

何よりも、あの姿はおそらく防御力は低い。

 

その状態の奴に一斉に攻撃をすれば、勝てる。

 

『今は、耐える時だ」



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園田真理の覚悟

ドラゴン・オルフェノクからの戦いを終えた後、なんとか逃げ延びる事ができた。

 

「・・・どうしたら、良いか」

 

そう言いながら、バディは既に日課となっているアイロンがけを行っている。

 

バディと木場の2人で同時に戦ったが、結果的にドラゴン・オルフェノクを倒す事はできなかった。

 

あれ程の力を持つ相手での、現状の私達の最大のチャンスであったのは間違いない。

 

それが失敗してしまい、その対策が見つからない。

 

それに対して、迷いが見えるバディ。

 

「どうかしたの、巧、元気ないけど」

 

そう、園田真理が話しかけてくる。

 

「別に、お前の方こそ、どうしたんだ?」

 

この話に関しては、園田真理に伝える必要もないのか、バディはそのまま普段通り、話す。

 

「ここの所、色々あったみたいだからな」

 

むしろ、バディは、園田真理の方を心配していた。

 

デルタの1件で、流星塾のメンバーの多くが死んでしまった。

 

それは彼女にとっては大きなショックを与えたのは間違いないだろう。

 

それは、彼女の表情からも分かる。

 

すると、園田真理が渡したのは、折り紙だった。

 

「なんだよ、これ」

「貰ったんだ、子供の頃。

澤田君に」

 

そう、園田真理が話してくれた。

 

澤田、確か流星塾のメンバーの1人であるが、今はオルフェノクとなり、ラッキークローバーとして活動している。

 

実際に言えば、私達の敵である。

 

「まだ、信じているのか、澤田っていう奴を」

 

そう、確かめるように問いかける。

 

それに対して、園田真理は。

 

「うん、私、思うんだ、澤田君は心の底で助けを求めているんだって、もしもそうだったら、私は、澤田君を助けてあげたいんだ」

 

その言葉に、嘘偽りはなかった。

 

「・・・そうか」

 

それに対して、バディは、何かを覚悟を決めたように、見る。

 

「・・・なぁ、真理」

「どうしたの、巧?

そんな、顔をして」

「もしも、お前が澤田と話す時が来たら、俺も連れて行ってくれ」

「どうして、もしかして、澤田君を「違う」えっ?」

「俺も、話さなくちゃいけない事があるんだ。

お前達に」

 

それは、バディにとっては本気の覚悟だろう。

 

この秘密を明かせば、きっと、この居場所がなくなってしまう。

 

それでも、もしも。

 

これを知れば、澤田が変わるかもしれない。

 

それが、自分が守りたかった居場所を守れるならば。

 

例え、自分がここから立ち去る事になっても。

 

「・・・分かった。

けど、巧は、いなくならないよね」

「それは」

「だって、今はここが巧の居場所だから。

そうでしょ」

 

そう言った園田真理の言葉にバディは。

 

「あぁ、そうだな」

 

ただ答えるしかなかった。

 

「あっそれじゃ、私、配達に行ってくるから」

「おぅ」

 

そう、園田真理がそのまま出て行く。



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捨てた思い、欲しい思い

園田真理から連絡を受けたバディは、すぐに向かった。

 

園田真理が、連絡を受けた時には、近くに草加雅人がいた為、早く向かわなければ、おそらく彼によって、邪魔される。

 

そこには、確かに澤田がいた。

 

そこでの会話も、既にバディは聞こえていた。

 

「俺は、人間の心を捨てる為に、完全にオルフェノクになる為に、君を殺す」

「澤田君、何を言っているの」

 

駆けつけたバディには、確かにその言葉が聞こえた。

 

「嘘、なんでっ、そんなの嘘っ!あなたは優しい人だって!」

「嘘じゃない!」

 

その叫びと共に、園田真理の前で、スパイダー・オルフェノクへと変わった澤田の拳が襲い掛かる。

 

ファイズに変身していては、間に合わない。

 

「っ!」

 

だからこそ、バディの決断は早かった。

 

真っ直ぐと、園田真理の元に間に合う為に、

 

バディは、オルフェノクとしての姿となって、園田真理の前に立つ。

 

「えっ」「はぁ!」

 

襲い掛かってきた澤田の拳を、バディが受け止める。

 

そして、そのまま跳ね返す。

 

「なっ、お前は」「巧なの」

 

それに対して、園田真理も、澤田も驚きを隠せない様子だった。

 

「・・・そうだ、これが、俺が話さなくちゃいけない事だ」

 

その悲しい声と共に、オルフェノクとしての姿から人間への姿に戻る。

 

「何時からなの」

「幼い頃、事故で1度死んだ。

その時から、既にオルフェノクとなっていた」

「・・・オリジナルなのか、お前は」

「そのオリジナルが何かは知らないが、そうだ。

こんな力、欲しくて手に入れた訳じゃない」

 

そう、バディはその手を強く握り締める。

 

「ねぇ、ファイズ」

「何かな」

「知っていたの」

 

そう、園田真理は、私に問いかける。

 

「ファイズギアを変身する条件は特定の人間しか操る事ができない。

それは、以前も話した」

「それが、オルフェノクだったんだ」

 

それに対して、園田真理は少し納得するように頷くと共に、私に近づくと、そのままデコピンをする。

 

「あっ痛っ!?」

「だとしても、なんだか、詐欺師みたいで、少し嫌だった。

今度からは止めてよね」

「さっ最善を尽くします」

 

そう、私は、思わず頷く。

 

「だけど、少し分かった気がする」

「分かったって」

「ファイズは特定の人間しか変身する事はできないって。

それって、オルフェノクもまた人間という事なんだよね」

「なっ何を言っているんだっ」

 

澤田は、その言葉に対して、目を見開く。

 

「だって、オルフェノクでも、人間の心を持っていれば、人間なんだよ。

例え、身体が別だったとしても、人間なのは変わらない」

「そんな訳っ」

「あぁ、もう、面倒くさい!」

 

それと共に、バディは頭を掻いた。

 

「お前は、なんで、そんなに人間の心を捨てたがっているんだ!

それは、俺が、俺が一番欲しい物なのにっ」

「お前がっ」

 

その発言は、澤田にとっては驚きを隠せないだろう。

 

「何よりも、それは、お前の本当に望んでいた事なのか」

「俺が望む事」

 

そう言い、澤田は、自分の手を見つめる。

 

「だとしてもっ、俺はもぅ後戻りできないっ、俺は、沢山「だったら」っ」

 

そう言ったバディが取り出したのは、一つのベルト。

 

それを押しつけた。

 

「これで、償え。

俺には、他にどう償うのか、分からないけどな」

 

そう、渡された物を見る。

 

澤田は、それを呆然と見ていた。

 

「あら、面白いのを見れると、期待していたのに」

 

そう言って、現れたのはロブスターオルフェノクとその部下だと思われるオルフェノク。

 

まさか、これを見られていたとは。

 

「とんだ茶番を見せられたわ。

悪いけど、あなたもここで死んで貰うわ」

 

そう、ロブスターオルフェノクは、その手に持ったレイピアを、こちらに向ける。

 

「・・・俺にも、償えるのか」

「それは、お前次第だ」

 

そう、バディは呟く。

 

「・・・俺に、力を貸してくれるか」

『及第点ね。あなたが本当の意味で、その意思が硬いならば、見せて貰いましょう』

 

そう、澤田もまた、覚悟を決めるように、イオタを、腰に巻く。

 

同時に私達に変身コードが入力される。

 

「「変身」」『COMPLETE』

 

鳴り響く音声。

 

それと共に、バディはファイズに。そして澤田はイオタに変身する。



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2人のオルフェノク

バディはファイズに、澤田はイオタへと変身を完了する。

 

それを合図に、眼前にいる2体のオルフェノクは襲い掛かる。

 

ロブスターオルフェノクは、すぐにその手に持ったレイピアを澤田に向けて放つ。

 

だが、澤田は瞬時にミッションメモリーを、腕に装着されているイオタシールドを起動させると共に、防ぐ。

 

バディもまた、ロブスターオルフェノクが連れてきたもう一体のオルフェノクであるソードフィッシュオルフェノクの攻撃を避ける。

 

そのオルフェノクは、両手に持つ長剣を器用に操りながら、バディに斬りかかる。

 

「なるほど、これは結構使えるなぁ!」

 

そうしている内に、イオタシールドを、澤田はなんとソードフィッシュオルフェノクに向けて、投げる。

 

その行動に対して、敵側は完全に意表を突かれた形となって、手に持っていた二つの武器ははたき落とされる。

 

「だけどっ」

 

そう、ロブスターオルフェノクがすぐに追撃しようとしたが、スパイダー・オルフェノクとしての戦い方が備わっているのか、器用に避けると共に、すぐにイオタシールドを取る。

 

澤田が変身していたスパイダー・オルフェノクの武器が手裏剣のような武器という事もあり、かなり器用な動きが取れる。

 

「ぐっ、だがっ「あぁ、終わりだ」『Exceed Charge』なっ」

 

ソードフィッシュオルフェノクは、決定的な隙を生み出した。

 

既にバディはファイズショットを装備しており、そのまま懐に飛び込むと同時に、ソードフィッシュオルフェノクに攻撃する。

 

それが必殺の一撃となったのか、瞬く間にソードフィッシュオルフェノクは、灰となった。

 

「ちっ」

 

これにより、数の差はこちらが有利になった。

 

ロブスターオルフェノクは、すぐに両手から次々とエネルギー弾を放つ。

 

それに対して、澤田が素早くバディと園田真理の前に立つ。

 

「乾!」「あぁ」

 

それと共に、バディもまたすぐに私にコードを打ち込む。

 

『278』

 

入力された番号と共に、バディは足下に転送されたボックスを拾い上げ、そのままファイズショットごと装着する。

 

それによって、ボックスはそのまま巨大な拳へと変形する。

 

『Exceed Charge』

 

鳴り響く音声。

 

同時にバディと澤田が走り出す。

 

「くっ」

 

ロブスターオルフェノクが、バディに向けて、次々とエネルギー弾を放つ。

 

だが、澤田がその攻撃を的確に、受け流していく。

 

バディには一切当たらず、そして、それは奴にとっては完全な死角となる場所へと移動する。

 

「しまっ「はあぁぁぁ!」ぐっ」

 

強化されたファイズショットの一撃。

 

それは確実にロブスターオルフェノクを吹き飛ばす。

 

そのまま海へと吹き飛ばされていた。

 

「あれで、倒せたか」

「それはどうかな、奴はラッキークローバーだ。

生きている可能性はあるだろう」

 

それと共に、イオタの変身を解除する。

 

「澤田君」

「・・・真理、君は、あの同窓会の事を覚えているか」

「えっ同窓会?

それって、確か」

 

同時にバディの顔を見る。

 

「・・・私、少しだけど思い出した。

巧が、あの場所にいた事を。

ねぇ、巧も澤田君も、あの日、何か起きたのか、知っているの」

 

そのまま園田真理は聞いてくる。

 

「俺は、あの時、オルフェノクが襲っていた。

だから、止めようとした。

その内、一人は」

「・・・ある意味、俺達の同級生の1人を殺したのは、確かに乾だろう。

だが、そいつは最初からスマートブレイン側で、俺達を殺そうとした」

「そんな」

 

その事実に、園田真理は信じられないように見つめる。

 

「・・・既にここまで来た。

隠しても、分かってしまうだろう。

だけど、聞くとしても、覚悟がある奴だけにしてくれ」

「・・・」

 

それと共に園田真理の脳裏には、あの時、先生と呼ばれた人物は、何かを知っていた。

 

「・・・分かった。

皆の中で、話をしたい人を集める」

「そうか、だけど、雅人は呼ぶな」

「なんで」

「・・・おそらくは、邪魔をする。

確実にな」

 

それだけ言い、澤田はその場から去る。

 

「澤田君、一緒に戦ってくれるのかな」

「大丈夫だ。

何よりも、今のあいつには、相談が乗れる相棒がいる」

 

そのバディの言葉が、私とバディを重ねるように言う。

 

「けど、巧がオルフェノクかぁ」

「悪かったな」

「うぅん、巧がオルフェノクだとしても、守ってくれたのは事実だし。

それにしても、巧のオルフェノクの姿って、もしかして、狼?」

「そうだけど、なんだよ」

「狼なのに、猫舌なの」

「うっさい、それは関係ないだろ」

 

そう、バディと園田真理は軽口で言い合う。

 

最初の出会いの頃からは考えられない進展。

 

それは、これまでの戦いで、確かに紡いできた絆だろう。



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同窓会の真実

澤田が無事に合流する事ができた。

 

それと共に、流星塾のメンバーが多く集まっていた。

 

その中には、バディもいた。

 

「集まったのか」

「澤田、お前、本当にオルフェノクに」

 

そう言いながら澤田の事について尋ねるように、流星塾のメンバーの1人が尋ねる。

 

それに対する返答代わりと言わんばかりに、その身体をオルフェノクへと変える。

 

その一瞬で、流星塾のメンバーは全員が後ろに下がる。

 

だが、それは、あくまでも証拠を見せる為であり、すぐにオルフェノクから人間の姿に戻る。

 

「見ての通り、俺は確かにオルフェノクだ。

だけど、今は皆を、襲うつもりはない」

「そう、言われてもな」

「澤田君は、あの時と変わらないよ。

何よりも、オルフェノクだからって、敵じゃないんだから」

 

それに対して、澤田の前に出た園田真理が、言う。

 

多少空気は重くはあるが、それでも園田真理の言葉を信じるように、流星塾のメンバーも頷く。

 

「それで、澤田。

お前、何を話しに来たんだ」

「・・・同窓会。

あの時、何が起きたのか」

「知っているの!」

 

それに驚いたのは阿部だった。

 

「知っている。そして、それは俺がオルフェノクになった事にも、大きく関わっている」

「あの時の夜、確か、先生が」

「あぁ、何かを言いかけていた。

結局、分からなかったけど」

 

そう言いながら、メンバーはそのまま、続けていく。

 

「だが、覚悟しろ。

それを知れば、君達はさらなる地獄が待っている事を」

 

それは、まさしく真剣な目だった。

 

鋭い目。

 

それに対して、数人は悲鳴を出しそうになった。

 

「話してくれ、あの時、俺達の身に何が起きたのか」

 

そう、太田が聞く。

 

「分かった」

 

それに答えるように、澤田もまた頷く。

 

「あの日、俺達は死んだ。

1人残らず」

「えっ」

 

それは、あまりにも衝撃的すぎる事実。

 

「嘘だろ、だって、今、俺達はこうして」

「覚えていないだろう。流星塾のメンバーの中には、既にオルフェノクとして覚醒している奴がいた」

「そんな」

 

それには、衝撃を隠せないメンバーはいないだろう。

 

「そのオルフェノクに覚醒した奴は」

「・・・俺が殺した」

 

そこに、バディが出てくる。

 

「あの日、俺は偶然通りかかった。

その時、オルフェノクが人を襲っていた。

だから、止める為に、殺した」

「オルフェノクを、なんで」

「・・・」

 

それと共に、バディもまたオルフェノクの姿になった。

 

「狼の、そう言えば、確か」

 

同時に頭を抱えるメンバーがいた。

 

記憶が僅かに残っていたのかもしれない。

 

「あの時、巧は私達を助けようとした。

だけど、その時にいたオルフェノクは、そのメンバーだけじゃなかった。

龍の、オルフェノクがいた。

そいつが、残りのメンバーを殺した」

「だったら、なんで俺達は生きているんだ」

 

そう、疑問に思うのは無理はない。

 

「オルフェノクの因子。

人工的にオルフェノクを生み出す実験で、同窓会の日に死んだ俺達埋め込まれた人為的に人間を人造オルフェノク化させるオルフェノク因子だ。

その中で、俺はオルフェノクとして、覚醒した」

「それって、つまり、私達にも」

「そうか、だから、草加はカイザに変身しても、でもなんで、俺達は」

「因子の強さは人によって異なる。

それは、俺にも分からない。

多分、その事を知っているのは」

「先生と父さん」

 

謎の鍵を握る人物を知る事ができた。

 

だが、未だに分からない事ばかりである。

 

「結局、分かったのは俺達が死んだ事だけ。

それじゃ、どうやってオルフェノクと戦えば」

「戦うだけが、道なのかな」

 

それに対して、疑問に思うのは三原だった。

 

「どういう事?」

「そりゃ、今だって、オルフェノクは怖いよ。

けど、それって、人間の中にも怖い奴がいる」

「そうよね、オルフェノクだって、元は人間。

もしかしたら、協力してくれる人がいるかも」

「でも、どうやって」

「それならば、1つ手掛かりがある」

 

そう言って、私はすぐに立ち上がる。

 

同時に全員の携帯にデータを送る。

 

「これは」

「スマートブレインの裏切り者。

人間を襲うのを嫌っている奴らだ」

「人間を襲わないオルフェノク!」

「俺達だけじゃ、どうしても手が回らない。

今も、近くに住んでいる奴らとは連絡しながらやっているけど、やっぱりスマートブレインと戦うのは怖いらしい」

「そりゃ、あんな大企業を相手には」

「けど、説得すれば、なんとかできるかも、デルタのベルトも」

 

そう、デルタのベルトを見つめる。

 

「・・・紗綾は今は」

「俺の知り合いに頼んでいる。

いざとなれば、俺の所にも連絡が来る」

 

以前、バイトしていたピザ屋の店長に頼んでいた。

 

彼は信頼できる人物だと、確かに分かる。

 

その中で、澤田は真っ直ぐと見つめる。

 

「それでも、結局、デルタは、誰が」

 

そう、流星塾のメンバーが悩んでいる所で、そのまま澤田が、三原に近づく。

 

「お前が、デルタになれ」

「えっ」

 

それに対して、三原は驚き、目を見開く。

 

「三原が、なんで」

「デルタは変身した人間を好戦的に変える。つまりは戦いに消極的な人間には、それが僅かに軽減できるかもしれない」

「なっ何を言っているんだよ、俺なんか」

 

そう三原は、戸惑っている。

 

「・・・時間は、ないぞ。

おそらく、俺の裏切りは、既にスマートブレインも知っている。

そして、いずれ」

 

そう言った澤田はどこか核心を持った言葉だった。

 

そして、それを否定する者は、その場にはいなかった。



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覚悟

「なっなんで、俺が戦わなきゃいけないんだよっ!」

 

そう、三原は後ろに下がりながら、言う。

 

「デルタの特性は知っているか」

 

「デルタの、それは確か」

 

その言葉と共に、その場にいるメンバーは思い出す。

 

「デルタの力は強い。装着者を闘争心を刺激し、凶暴化させる」

 

「そのせいで」

 

流星塾のメンバーの中でも、それによって死んでいる。

 

だからこそ、デルタの力を使う事に躊躇していた。

 

「それが、なんで三原が」

 

「デルタは、その闘争心を搔き立てる。

 

それは、その闘争心が高ければ、高い程に効果がある」

 

「だけど、沙耶は」

 

「あぁ、使いこなせていたけど」

 

「答えは、簡単だ、彼女は本当に優しいから」

 

「そうだ、闘争心が他の人間よりも弱い。

 

皮肉にも、デルタとして戦いながら、人間を保つには、戦いを嫌う人間じゃないといけない」

 

それには、どんな事があっても、戦う事を嫌わない人間じゃないと駄目だった。

 

だから、彼女はデルタを使いながらも、人間のままだった。

 

だけど、……三原は違う。

 

彼は戦いを本気に怖がっている。

 

「俺はっ」

 

「・・・悪いが、躊躇している時間もない。

 

ここで、覚悟を決めろ、でないと」

 

そう言い、三原に澤田は近づく。

 

「俺達は死ぬ。奴らは躊躇なく、殺しに来る」

 

そう言った瞬間、澤田は三原に告げる。

 

「戦え、お前が生き残るために」

 

「そんなのっ、出来るわけないじゃないか」

 

「なら、そこで死にたいのか」

 

「くそぉおおおおっ!!」

 

そして、澤田の言葉に叫び声を上げ、三原は何も言えなかった。

 

「澤田君、そこまで」

 

園田真理はすぐに澤田を止める。

 

「いいや、こいつはここで殺すべきだ」

 

「何を言って、君は」

 

「こんな状態でも、三原は戦いたくないと言っているんだぞ」

 

「それはっ、確かに」

 

澤田の言葉に、真理も言葉を詰まらせる。

 

しかし、このままではいけないと思う。

 

「何よりも、俺達を殺したオルフェノクは、ラッキークローバーにいる」

 

「っ!」

 

その言葉は、全員が驚きを隠せなかった。

 

「俺達を殺した」

 

「奴は、また襲い掛かるだろう。それもただのゲーム感覚で」

 

「そんな奴が本当に」

 

「あぁ、いる」

 

その言葉を聞くと共に、僅かだが、確かに空気は変わった。

 

「今、この場で俺、澤田。

それにここにはいない草加ともう1人の協力者の4人だけじゃ、勝てない」

「・・・」

「戦わないと、殺されるだけだ。

お前はどうする」

 

それに対して、三原は、未だに震える。

震えながらも

 

「戦わないと、生き残れないんだな」

「あぁ」

 

澤田に確認するように呟く問いかけで、三原の、覚悟は確かに決まった。



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揃った5人

「覚悟は、できたようだな」

 

そう、澤田は尋ねるように言う。

それと共に澤田の発言のタイミングを見計らったように、私は気づいた。

 

「バディ!」

「っ!」

 

私の声を聞いたバディが見つめた先には、確かにオルフェノクがいた。

それも、ラッキークローバーのメンバーだと思われるセンチピードオルフェノクだった。

奴は、その手に鞭を持ち、既に攻撃を仕掛けた。

その鞭は、そのまま私達を縛り上げた。

 

「なっなにぃ!?」「嘘でしょ!?」

「ファイズ!」「イオタっ!」

 

私達は、縛られて、囚われてしまう。

 

「まったく、君達には何度も嫌な思いをさせられましたからね。

村上さんも、もうデータは十分だと言いましたからね」

「お前っ」

「裏切り共々、ここで始末させて貰うわ」

 

聞こえた声と共に見つめた先には、ロブスターオルフェノクも既に来ていた。

この場で、既にラッキークローバーのメンバーが二人いる。

それはかなり危険だ。

そうしている間にも、ロブスターオルフェノクが、真っ直ぐと、バディ達に向けて、エネルギー弾を放った。

 

「バディ!」

 

舞い上がった爆風。

それに私は思わず叫んでしまった。

だが、次の瞬間、爆風切り裂いて、飛び込んできた影。

 

「なにっ」

 

そこから飛び出たのは、オルフェノクへと変身したバディと澤田の二人だった。

 

「オルフェノクっ」

「まさか、澤田以外にも」

 

そうしている間にも、二人はそのまま殴りかかる。

そのまま、ラッキークローバーのオルフェノクに向かって、攻撃を仕掛ける。

 

「まさか、ファイズの変身者もオルフェノクだったとはな、確かに納得の理由ですね!」

「それに、この強さ、おそらくはオリジナルね!」

 

そう二人のラッキークローバーと戦う。

バディと澤田はかなり強い。

だが、それでもさすがに不利だ。

 

「ぐっ」

 

普段から、ファイズとして戦い慣れているバディにとって、オルフェノクとしての戦いは不慣れだ。

だからこそ、徐々にだが、追い詰められていく。

このままでは。

そう考えていた時だった。

 

「んっ」

 

パカラッパカラッと聞こえる馬の蹄の音。

それと共に、私達を覆う程の巨大な影。

 

「オルフェノク、まさかっラッキークローバーのっ」

 

流星塾のメンバーが叫んだ時だった。

そのままその影は、ラッキークローバーを吹き飛ばした。

 

「なっ、貴様はっ」「木場ぁ!」

 

それと共に宙を舞い上がった私達をオルフェノクに変身していた木場が受け止めてくれた。

 

「無事か」「あぁ、助かった」

 

そのまま、人間の姿へと戻った木場から二人は各々の相棒を受け止める。

 

「彼は」

「仲間だ」

 

そうしていると共に、こちらに近づくバイク。

 

「・・・これは一体、どういう状況かな」

「草加君も」

 

そう、草加雅人は、私達を見つめる。

 

「・・・隠し事か、詳しく聞きたいけど」

「酷いな、2人共、僕に黙って、こんな事をして」

 

そう、ダメージを受けていた二人はなんとか立ち上がり、その後ろからはドラゴン・オルフェノクがいた。

 

「奴は、ラッキークローバー」

「あぁ、俺達の仇だ」

「っ」

 

その言葉を聞いた草加雅人の表情はかなり鋭い。

 

「奴が」

「その様子、やはりお前も記憶があったのか」

「あぁ、だけど、今は」

「ここで、決着をつける」

 

それと共にバディを中心に5人が並ぶ。

 

『変身!』『COMPLETE』

 

鳴り響く音声。

そうして並び立つ5人。

ファイズ、カイザ、デルタ、イオタ、ミュー。

彼らが、ついに戦いが始まろうとする。



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5人の力を合わせて

一瞬の沈黙。

それはこの場にいる私達にとっては、あまりに長すぎる時間だっただろう。

だが、その沈黙をいち早く破ったのは、デルタだった。

 

「っ!」

 

デルタムーバーを持ち、引き金を引くと共に白い光線は真っ直ぐとドラゴン・オルフェノクに向けて放たれる。

放たれた光線に対して、ドラゴン・オルフェノクにとってはあまりダメージがない様子で、簡単に受け止めた。

しかし、それでも一瞬だけ視線を離す事ができた。

 

「はぁ!」「ふんっ」「たぁ!」

 

それと共にバディ、草加、木場の三人は、各々の得物を手に、真っ直ぐとドラゴン・オルフェノクに斬りかかる。

手に持った武器から出るフォトンブラッドに輝く刃は、そのままドラゴン・オルフェノクへと向けられる。

だが、ドラゴン・オルフェノクは、それに対して、特に苦にする事なく、両手の籠手で受け止める。

 

「ふんっ」

 

力任せの薙ぎ払い。

だが、ドラゴン・オルフェノクが持つ力を考えれば、十分過ぎる脅威だった。

すぐにバディ達は、それを避けるが、それに追撃するように飛び込む。

 

「やらせるかっ!」

 

それと共に身軽な動きでバディ達の前に立った澤田が、その手に持ったイオタシールドで防ぐ。

ダメージを完全に防ぐ事はできずに、後ろに吹き飛ばされるが、それでも次の攻撃に繋げる事ができた。

バディ達は、すぐにドラゴン・オルフェノクに向けて、再度攻撃を行う。

 

「へぇ、だったら次はこれはどうかな」

 

それと共に、ドラゴン・オルフェノクは、その身に纏っていた殻を脱ぎ捨て、高速で動く。

 

だが、それは既に想定済みだった。

 

『COMPLETE』『StartUP』

 

バディはアクセルフォームに、木場もまたスピード特化の姿になり、追いかける。

 

先程のドラゴン・オルフェノクに比べても、かなりスピードを誇り、追いかけるのは困難だ。

 

だが、その防御はかなり手薄になっており、バディ達の攻撃は、先程よりも確実に効いている。

 

「凄いね、僕をここまで、追い詰めるなんて。

これから楽しまないとねぇ!」

「いいや」「これで終わりだ!」

 

それと共にバディ達は同時に薙ぎ払う。

ドラゴン・オルフェノクは軽々と、それを避ける事ができた。

だが

 

「チェック」『Exceed Charge』

 

鳴り響く音声。

それと共にドラゴン・オルフェノクが見つめた先には、白と黄色と緑。

三色のフォトンブラッドが、ドラゴン・オルフェノクに襲い掛かる。

 

「なっ」

「どんなに素早い敵でも、どこに行くのか分かれば、狙う事ができる」

 

ライダーギア同士は通信を行う事ができ、連携も簡単に行う事ができる。

それと同時に、私達のアクセルフォームもまた解除されるが、瞬時にファイズポインターをセットする。

 

『Exceed Charge』

 

重なる二つの音声。

それと共に、私達は、真っ直ぐと、ドラゴン・オルフェノクに向かって、飛び込む。

 

『はあああぁぁぁ!!』

 

重なる5人の声。

それは、5人のライダーによる必殺のキック。

 

「ぐっ、この僕が、俺があぁ!!」

 

すぐに振りほどこうとした。

だが、さすがに5人のライダーによって、拘束されれば、それを振りほどく事はできない。

そのまま5人のライダーキックを受け止めたドラゴン・オルフェノク。

同時に、あっさりと、その場で膝をつく。

そして、そのまま灰となって、消えていった。

 

「倒せたのか」

「あぁ」

 

それと同時に安堵するように呟いた。

これまで、倒す事ができなかったドラゴン・オルフェノクを倒す事が出来た。

それによって、確かに安心した。

だが、それは同時に油断だった。

 

「I never thought I would go this far. As expected, President Murakami should be cautious.(まさか、ここまでやるとはね。さすがは村上社長が警戒するだけはあるね。)」

「あぁ、なんだ、今のは」

『バディ、上だ!』

 

それと共にバディ達は気づき、上を見る。

それと共に宙を飛んでいる存在。

それは、私達にとっては、驚きを隠せない存在だった。

白いボディに紫色の光。

それらの特徴は、私達ライダーギアの特徴であるのは間違いない。

 

「Good to see you, guys. Taking care of all of you...is also a part of my job.(ごきげんよう諸君。キミ達の相手をするのも、僕の仕事でね。)」

「嘘でしょ、あれって」

「6本目のベルトだと」

 

全く未知の、6人目の仮面ライダーが、現れた。



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空の帝王

「・・・お前の事は本当に信じている。だからこそ、お前に聞きたい。あいつは誰だ」

 

そう、バディは、空に飛んでいる謎のライダーの事を確かめるように言う。

 

『私も、いや、この場にいる全員が知らないライダーだ。何よりも、あのライダーが使っている携帯からは、何も意思を感じられない』

 

それは、私達意思のあるライダーギアからしたら、信じられない事実だった。

 

「当たり前です。君達に意思を与えれば、大きな問題になる。

それは既に君達との多くの戦いで知りましたから」

「あなたは、村上社長」

 

そう、木場が叫ぶ。

それは澤田も同じだったのか、構える。

まさか、この場で、スマートブレインのボスが目の前にいるとは。

 

「先代社長が何を考えて、道具に意思を与えたのか、理解はできません。ですが、その性能を見逃すのはあまりにも勿体ない。

だからこそ、この帝王のベルトを作りだしたんです」

「帝王のベルトだと」

「えぇ、貴方達とのこれまでの戦闘データ、そして私達の元にいた際のミューとイオタの二つのベルトのデータを元に開発した帝王のベルト。

それが空の帝王、サイガです」

 

その言葉と共に、サイガが背負っているジェットパックの銃口が、真っ直ぐと私達に向けられている。

 

「っ!」

 

それに気づいた澤田は瞬時に前に出て、イオタシールドを大きく展開した。

それと同時にジェットパックからフォトンブラッドの弾丸の嵐が降り注ぐ。

 

「なっ」

「とんでもないのをっ」

 

そう困惑を隠せない中で、弾丸の嵐が止む。

しかし、それは終わりではない事は、その場にいる全員が予想できた。

 

『Exceed Charge』

 

「嘘だろっ」

 

その音声が意味する事が何か、察すると同時に、私達の次の行動は既に決まっていた。

それを理解すると同時に、バディ達は瞬時に私達を抜くと同時に

 

『BURSTMODE』

 

各々のフォンを真っ直ぐとサイガに向けて、牽制する。

地上から次々と放っていくフォトンブラッドのビーム。

だが、それらはサイガは軽々と避け。

 

「GAMESET!」

 

その一言と共に、巨大なレーザーが真っ直ぐと私達に襲い掛かる。

だが、それよりも前に、私達の前にジェットスライガーが現れる。

事前にデルタがジェットスライガーを呼び出してくれたおかげで、それが目の前に現れる。

そして、それは遠隔操作で来たオートバジンを始めとしたライダーマシンも同じだった。

 

「急ぐぞ!」

 

その言葉と共にバディ達は、その場から走り出す。

迫り来る巨大なレーザーはジェットスライガーが盾になってくれたおかげで、逃れる事はできたが、その爆風は凄まじい。

しかし、同時にそれは煙幕となり、私達を逃がす道となった。

 

「やっと、あいつを倒せたと思ったら、また新しい奴かよ」

 

私達の次の世代と言うべきライダー、サイガ。

そのサイガに対して、私達は果たして、勝つ事ができるのか。



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ブラスター

「6本目のベルトって、なんだよ」

 

そう、流星塾のメンバーの1人が、思わず叫んでしまった。

先程までの戦闘が終わったばかりだが、その状況は、まさしく最悪と言っても過言ではない。

これまで戦った事のない新たな敵である仮面ライダー。

それは、これまで、オルフェノクの恐怖と戦ってきた彼らには、かなり大きい。

 

「ファイズ、あの帝王のベルトに勝つ方法は」

「はっきりと言って、現状のままでは不可能だな」

「それって、どういう事なんだ」

 

私の言葉に対して、バディは思わず、聞いてくる。

 

「敵側には、既に私達を含めた全てのベルトのデータを揃えている」

「あぁ、それによって、既に対策する手段も用意している。その上で、単純なスペックでもおそらくは上だと考えても良いだろう」

 

私以外も、その結論で異論はないのか、同じ答えを言う。

 

「それじゃ、俺達は、このままスマートブレインに殺されるだけの運命なのかよ」

 

それに対して、三原は、思わず弱気な言葉を言ってしまう。

それは、まさしく、眼前にあった希望を塗りつぶされたように。

 

「・・・んっ?」

 

だが、そんなタイミングの時だった。

私の元に着信が来る。

 

「誰からだ?」

「分からない?」

 

私も知らない番号に戸惑いを隠せず、バディはそのまま私を取る。

 

「もしもし?」

『君が、ファイズの所持者である、乾巧君か』

「誰だ、あんたは?」

 

聞いた事のない声。

それには、バディも首を傾げた。

 

『君に託したい物がある。

それを取りに、来てくれないか』

「誰だか知らない奴の言う事を聞けるか」

『サイガに勝てないようでは、この先に出てくるオーガにも、オルフェノクの王にも勝てないぞ』

「「っ」」

 

電話越しで、私達は驚きを隠せなかった。

サイガだけではない。

これまで聞いた事のないオーガという名。

そして、オルフェノクの王。

 

「あんたは一体」

『場所は、ファイズに送ってある。

君とファイズだけで取りに来るんだ』

 

その言葉を最後に、通話は切られる。

 

「どうしたの、巧?」

「正直に言うと、分からない。

罠という可能性もあるが、俺をある場所に呼ばれた」

「呼ばれたって、たっくん、それって、本当に罠じゃないの」

「俺もそう思う。

けど、このままじゃ、勝てないのは事実だ」

 

それと共に、バディは私を連れて行く。

 

「とにかく、行ってくる。

けど、もしもの時は」

「巧!」

 

そう、園田真理の言葉を背中に聞きながら、私達は目的の場所へと向かう。

それは、既に潰されているどこかの研究所。

既に長年、放置されているのか、人影が見えない。

不気味な雰囲気の中、バディは警戒しながら、前に進む。

 

「おい、要望通り、俺達だけで来たぞ!

さっさと出てきたら、どうなんだ!」

 

そうバディは叫ぶ。

周りには、人影はない。

そう思った時だった。

ガシャリと、音が聞こえる。

バディは気になり、見てみると、そこにあったのは。

 

「なんだこれ?」

「トランクボックスのようだが」

 

そう疑問に思いながら、見つめる。

すると

 

「ファイズブラスター」

「っ」

 

聞こえた声、それと共に振り返ってみると、そこには1人の男がいた。

まるで牧師を思わせる黒い衣服に包まれているその男がいた。

 

「あんたは」

「花形と言えば分かるか」

「それって、真理達の」

 

その正体に、私達は驚きを隠せなかった。

 

「なんで、ここに私達を呼んだんだ」

「これまでの戦いを見て、君達が一番可能性を感じたからだ」

「可能性?」

「オルフェノクの王を倒す可能性を。他の子達よりも確実に。真理は、よくやってくれた」

「あんた、一体何を企んでいるんだ、真理をこんな戦いに巻き込んで」

「全ては、私が引き起こした事、幾らでも攻めても良い。だが、それでも良い、君には、人類を救う為に、オルフェノクを全て滅ぼして欲しい」

「滅ぼすって」

 

それは、バディにとっては飲み込めない言葉だった。

 

「巫山戯るな!なんで、そんな事をっ」

「それが、真理達を助ける事にも繋がる。だから」

 

その言葉と共に花形は瞬く間にオルフェノクの姿に変わる。

 

「っ!?」

「その力を、使いこなせ!」

 

それと同時に襲い掛かってくる。

 

「変身!」『COMPLETE』

 

バディはすぐにファイズへと変身する。

襲い掛かってくるオルフェノクの特徴から考えても、おそらくは山羊。

だが、その戦闘能力は。

 

「がぁ!」

 

ドラゴン・オルフェノク並、いやそれ以上。

山羊を思わせる突進能力に、高速移動。

それらは、ドラゴン・オルフェノクを遙かに超えている。

 

「お前っ、いきなり何をっ」

 

そう、バディは拳で殴るが、空振りする。

花形は、一体、この状況で何を企んでいる。

 

「バディ、どうやら、あれを使うしかない」

「あれって、あんなの奴の罠の可能性があるだろう」

「だとしても、このままでは殺される!」

「ぐっ」

 

容赦なく襲い掛かる花形。

それに対して、バディは舌打ちをしながらも、ファイズブラスターを見つめる。

 

「これって、まさか、ここに」

 

そう言いながら、ファイズブラスターに私を挿入する。

 

「っファイズブラスターの全てを理解した。

バディ、ファイズブラスターに変身コードを」

「あぁ、分かった」『555・STANDING BY COMPLETE』

 

鳴り響く音声。

それと共にバディを包み込むフォトンブラッドのエネルギー量。

 

『「ぐっ?!」』

 

それは、これまでに比べても明らかに多すぎる。

だが、それでも。

 

『「はああぁぁぁ!!」』

 

それと共に、私達は叫ぶと共に、新たな姿へと変わる。

 

「やはり、私の見立は間違いではなかった。フォトンブラッドの最大量。フォトンブラッドがフォトンストリームではなくボディスーツ全体に循環する為、フォトンストリームが黒く、全身が赤くなる耐えきれる器。そして、完全にエネルギーのコントロールを熟知したAi。これら二つが合わさったそれこそが、王を倒す力」

 

同時に花形は、そのまま私達を見つめる。

 

「ファイズブラスター」



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力の重み

「これが、ブラスター」

 

それと共に、未だに困惑を隠せない様子のバディ。そんなバディとは別に私自身もまたそのスペックは機械でありながら困惑を隠せない。

私自身もそうだが、そのエネルギー量はデルタを遙かに超えている。しかも、それだけではなく、変身に使用したこのファイズブラスターも未だに未知の機能が多くある。

 

「さぁ、見せてみろ、その力を!」

「っ!」

 

それと共に、私達に向かって、花形が襲い掛かる。

未だに、スペックを全て把握する事ができないが、それでも動きを見る事ができる。

確かに、未だにアクセルフォームと同等のスピードではある。

だが、同時に私自身のスペックも上がっており、その動きの予測が可能となっている。

 

『5214』

 

自動的にコードを入力する事で、ファイズブラスターの背部にあるブラッディキャノンを展開し、その狙いを真っ直ぐと放つ。

肩にあるキャノンで、そのまま花形が向かうだろう場所に向かって、放つ。

それによって、一瞬、動きが止まる。

同時に、ファイズブラスターにある出力を瞬時だけど、調整。

 

「はぁ!」「ぐっ」

 

それによって、一瞬だが、アクセルフォームと同じスピードで、真っ直ぐと花形に向かって、蹴り上げる。

 

「まさか、そのスピードにも対応できるとは」

「いい加減、止めろ。俺はあんたと戦いたい訳じゃないんだ」

「だとしても、私は確かめないといけない。君達の可能性を!」

 

それと共に花形が取り出したのは薬。

それを自身に打ち込む。

同時に、その形は人ではなくなっていた。

徐々に巨大化していき、超巨大化していく。

 

「なっ」

 

それは、さすがに私もバディも驚きを隠せなかった。

 

「どうなっているんだっ」

「おそらくは、オルフェノクの進化を強制的に促進させたのだろう。オルフェノクとしての力を高める事で、あそこまでの力を得た。だが、そんな事をすれば、人間の理性など」

「サァミセテクレ、ワタシニオウヲタオセルチカラヲォ!!!」

 

既に理性もないその言葉と共に、周りにある建物を破壊しながら、真っ直ぐと襲い掛かる。

 

「バディ!」

「ぐっ、やるしかないのか」

 

このままでは、街に被害が出る。

同時に覚悟を決めたバディは、そのままファイズブラスターを手にコードを打ち込む。

 

『103』

 

コードを入力する事で、ファイズブラスターをフォトンバスターモードに変えて、その狙いを花形に向ける。

 

「馬鹿野郎!!」

 

その言葉と共に引き金を引く。

それは完全に暴走した花形を打ち抜き、その身体を灰へと変える。

だからこそ、オルフェノクの完全な死を意味をした。

 

「・・・真理に、あいつらにどう言えば良いんだよ」

 

それと共に、バディは何も言えなかった。

だが、そんなバディの元に何かが送られて来た。

 

「バディ、このメッセージを」

「・・・」

 

その言葉と共にバディは私を開く。

 

「このメッセージを受けているという事は、君は私を倒したのだろう」

「これは」

「おそらくは、生前に残していたメッセージだろ」

 

それには、私も驚きを隠せなかった。

 

「まずは謝らせて欲しい。だが、同時に私を倒す力がなければ、これからの戦いを勝つ事はできない。それ程までに、これからの敵は強い。だからこそ聞いて欲しい、オルフェノクの王と」

 

そこまで言うと共にバディはメッセージを止めた。

 

「バディ」

「俺は、正直に言うと、こいつの考えは分からない事が多すぎる。でも、真理達を愛していたという事だけは、信じたい」

 

それが、真実かどうか分からないけど、確かにバディの言葉通り。

信じたい。

園田真理達が好きだった花形の人物像が、同じだった事。



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ライダー同士の戦い

花形を殺した。

その事実を受け止めながらも、バディは園田真理達にその事を話すつもりでいる。

彼自身、これまで多くの隠し事をしていた。

そして、バディ自身も、既に罪を背負って生きる事を決めていた。

だからこそ、その罪を隠さずに話す事にした。

 

「お父さんが、本当に」

「・・・あぁ、俺が、殺した」

 

バディは偽りなく、話した。

それに対して、園田真理を始めとしたメンバーは信じられないように言った。

 

「オルフェノクの力を暴走させた。確かにその可能性はある。イオタ、ファイズのデータには」

「嘘偽りはないわ。偽造した形跡もないし、本当の事よ」

「・・・お父さん、なんで」

「父さんの覚悟だったんだろう、オルフェノクとしての、最後のけじめの」

 

悲しく呟く澤田。

その最中、1人だけバディに近づく。

 

「来い」

 

それは草加雅人からの誘いだった。

それが、どのような意味を持つのか、その場にいた全員が分かっていた。

 

「草加君、今はそんな事を「いや」巧」

 

それに対して、バディは、それを止める。

私達は、そのまま彼らを置いて、外に出る。

向かった先は、ここからそう遠くない広場。

誰も近づかない場所であり、そこにいるのは私達だけ。

 

「お前の行動にも納得しているし、それを否定する事はできない。

何よりも父さんが襲ってきた以上、君には何も悪くないだろう」

 

その言葉とは裏腹に、草加雅人は、既に腰にベルトを巻いていた。

同時にカイザを開き、構えていた。

 

「だけどな、それでも俺は父さんが好きだった。例えいずれ殺す相手だとしてもな。矛盾しているかもしれないながな」

「あぁ、そうだな、別に否定する気はないよ」

 

そう言いながらバディもまた、既にベルトを腰に巻き、私に変身コードを入力していた。

 

「それを抜きにしても、俺はお前の事が嫌いだ」

「あぁ、それは俺もだよ」

 

それだけ言うと共に既に構えていた。

 

「だから、ここでお前を殺す」

 

草加雅人は、そう、カイザを構えていた。

既に、草加雅人の中では、バディを、殺す相手として認識していた。

それに対して、バディは。

 

「あぁ、その喧嘩、乗ってやるよ」

 

喧嘩だと言った。

 

「「変身」」

 

その言葉と共に、バディ達は喧嘩した。

これまで、幾度もライダー同士が殺し合った。

憎しみで戦った。

そして、その中でも、バディと草加雅人の戦いは多かっただろう。

 

「さぁ、始めるぞ、戦い(殺し合い)を」

 

その言葉と共に草加雅人は、その手のカイザブレイガンを起動させる。

 

「そうだな、さっさと始めるぞ戦い(喧嘩)を」

 

それに対して、バディもまた構える。

ここから始まる、戦いが。



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赤と黄

2人の戦い。それを先に攻撃仕掛けたのは、カイザに変身した草加雅人だった。その手に持つカイザブレイガンとカイザフォンの二丁拳銃で、その銃口を真っ直ぐとバディに向けて、放っていく。

 

「あの野郎っ!」

 

襲い掛かってくる草加雅人からの嵐のようなレーザーに対して、バディは地面を踏み抜くような思い切りの良い踏み込みと共に一気に駆け出した。

そして、そのまま私を操作して、手に装着したファイズショットにベルト中央のバックル部からエネルギーを充填させていく。

 

《Exceed Charge》

 

 電子音声が鳴り響くと同時に、ファイズショットから赤のエネルギーラインが伸びていき、それがバディの右手首へと到達する。

そうして、バディは大きく振り上げていった。

すると、赤いエネルギーラインによって強化された拳から爆発的な衝撃が発生した。

発生した衝撃波は凄まじく、襲い掛かってきた草加雅人からの攻撃を全て、弾き返した。

 

「なにっ」

「はあぁあ!!」

 

そのまま、続けて、バディは真っ直ぐと草加雅人の胴体に殴る。

それに対して、草加雅人は瞬時に、その手にあるカイザブレイガンを盾に受け止める。

同時に、もう片方の手にカイザショットを装備する。

 

《Exceed Charge》

 

鳴り響くと同時に、そのままバディに向かって、殴る。

それに対して、バディもまた、対応するようにファイズショットで殴る。

互いの拳がぶつかり合った事によって、ライダーギアが破壊された。

粉々に砕けながらも、草加雅人は瞬時にカイザブレイガンを手に取る。

 

《READY》

 

鳴り響く音声と共にカイザブレイガンから黄色い光の刃が現れる。

それと共に、真っ直ぐとバディに向かって、光の刃が振り下ろされる。

しかし、その直前、バディの元に私が遠隔操作で呼んでおいたオートバジンからファイズエッジが届く。

バディはすぐにファイズエッジを手に取り、ファイズメモリーをセットする。

それによって、ファイズエッジからも赤い光の刃が現れ、それで草加雅人からの斬撃から身を守る。

 

「ぐっ!」

「死ねっ!」

 

草加雅人からの叫びと共に繰り出される斬撃の連続攻撃を、バディはファイズエッジで防ぎ続ける。

その隙に、草加雅人はカイザフォンに手を伸ばす。

 

《Exceed Charge》 

 

鳴り響く音声と同時に、カイザフォンから黄色の光が発生し、それがカイザブレイガンに流れ込んでいく。

そうして、再び、草加雅人は斬りかかる。

 

《Exceed Charge》

 

それに対して、バディもファイズエッジのエネルギーを集め、その剣を振るう。

互いに、相手の武器を受け止める。

だが、それだけでは終わらない。

バディはその勢いのまま、後ろに大きく飛ぶと同時にすぐにファイズポインターを脚に装着する。

それは、草加雅人も同じだった。

 

E()x()c()e()e()d() ()C()h()a()r()g()e()

 

鳴り響く音声。

それが、最後の必殺の一撃。

同時にバディと草加雅人が睨み合う。

 

「「はああぁぁぁ!!」」

 

それと共に、真っ直ぐと走り出す。

それと共に跳び、真っ直ぐと必殺のライダーキックを繰り出す。

赤と黄。

二色の光がぶつかり合いながら、周囲へと広がっていく。

激しい衝撃音と爆音が響き渡る中、二人は吹き飛ばされた。

そして、地面を転がった後、すぐさま起き上がる。

二人とも、満身創痍だ。

それでも、立ち上がるしかない。

何故なら、ここで倒れる訳にはいかないからだ。

大切なものを守るために。

だから、二人は立ち上がったのだ。

しかし、草加雅人の方が、ダメージが大きく、そのまま変身が解除される。

 

「ぐっ」

「もう良いだろ」

 

それと共に、草加雅人に、バディが手を伸ばす。

 

「お前っ」

「確かに、俺はお前にとっては仇かもしれない。けど、今、お前が戦う為の相手は俺が最優先なのか」

 

その言葉に対して、草加雅人は顔を歪ませる。

それに対して。

 

「・・・戦いが終わるまでだっ」

 

未だに憎しみは拭える様子はない。

それでも、この戦いが終わるまでの間、再び戦いが終わる事はないだろう。



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決戦の覚悟

バディと草加雅人との戦いが終わった。

そのまま、彼らは真っ直ぐと、園田真理達が待っている家に向かった。

 

「巧!草加君!」

 

2人の姿を見ると、心配したように2人に園田真理がすぐに駆け寄る。

 

「さっき、出て行ったから、心配にだったよ」

「・・・すまん、真理。どうしても彼と決着をつけなくちゃいけなかっったから」

 

それだけ言うと、草加雅人はそれだけ言う。

 

「それで、これからどうするんだ?」

「サイガに、オーガ、それにオルフェノクの王と戦わないといけない」

「あの時の戦いで、俺達よりも強い事は分かっているからな」

 

それは、全員が分かっていた。

 

「頼みの綱はファイズのブラスターだけという訳だが」

「・・・ならば、やる事は既に決まっているじゃないか」

 

それと共に草加雅人はまるで覚悟を決めたように言う。

 

「やる事」

「スマートブレインを直接乗り込む」

 

その提案に、その場にいた全員が驚きを隠せなかった。

 

「何を言っているんだっ、そんなの自殺行為のような行動なんだぞ!」

 

それには、さすがに反対の意見が出た。

 

「あぁ、そうだな。だな、どっちにしろ、オルフェノクの奴らに殺される。

だけど、奴らに残された戦力はあと少しだ。

だったら、ここで一気に攻めないといけないだろ」

「だけど」

「何よりも、このまま奴らに時間を与えたら、俺達と奴らの勢力は広がり続ける。

ブラスターでも、敵わない可能性もある」

 

その言葉には、説得力があった。

この場の、誰よりもオルフェノクを憎んでいる。

だからこそ、この状況を誰よりも冷静に見ていた。

 

「・・・だったら、やるしかないようだね」

 

それを聞いた木場は頷いた。

 

「これ以上、犠牲を出さない為にも、スマートブレインを倒す。

だけど、倒すとしても」

「あぁ、サイガにオーガ、それにラッキークローバーと村上にオルフェノクの王。

それが最大の敵だ」

 

それに、反対の意見は決して出なかった。

既に話し合いはできない状況で、人間とオルフェノクの共存する為には、彼らを止めなければならない。

その覚悟は、最後まで戦う覚悟は彼らにあった。

 

「ファイズ」

 

そんな私の心配と共に、呼ぶ声。

それはカイザだった。

私はすぐに向かう。

 

「どうしたんだ」

「貴様も分かっているはずだ。

これからの戦い、確実に犠牲が出る」

 

それは、これまで多くの変身者を殺してきたカイザからの言葉。

それはある意味、信用できる言葉だった。

死のデータ。

それを誰よりも計測してきたからこそ、出た答え。

 

「だからこそ、分かっているだろ」

 

それは、この場にいた私達に対して言った言葉。

 

「覚悟、決めないといけないな」



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ラッキークローバーの最後

スマートブレインとの最後の戦いを行う為に、既に行動が始まっていた。

既にイオタ達は、スマートブレインと深い関わりのあるラッキークローバーの居場所を知っている。

彼らもまた、それを知って、警戒している可能性は大きくある。

それでも、既に戦いが始まった以上、それは止められない。

私達は、そのまま真っ直ぐとラッキークローバーが経営しているバーへと向かった。

 

「ここが、本当に」

「あぁ、そのはずだ」

 

だが、そのバーはあまりにも静か過ぎた。

それは、あまりにも。

 

「・・・おそらく、この状況」

「あぁ、おそらくは」

 

その言葉を合図に周囲の建物から次々と人影が現れる。

それらは全てオルフェノクであり、おそらくは私達がここに来るのは、既に分かっていたようだ。

 

「へぇ、まさか私達の所に、一気に来るとはね」

「確かにベルトは脅威ではありますが、さすがにこの数では、どう対応できるか」

 

そう、こちらに挑発するようにロブスターオルフェノクとセンチピードオルフェノクの2体を中心に、オルフェノクがいる。

だが

 

「やるぞ」

 

その、バディの言葉を合図に、その手に私達を既に構えていた。

 

「変身」『COMPLETE』

 

鳴り響くと共に、バディ達は瞬時に仮面ライダーへと変身する。

それと同時に、すぐに私達のコードを入力する。

まず、始めに動いたのは、カイザだった。

その手にはカイザロッドを手に持ち、周囲にいるオルフェノク達に向かって、牽制する。

 

「ぐっ」

 

すぐに接近しようとしたオルフェノク達に向かってに放った。

同時に、デルタの手にはデルタガトリンガー、ミューの手にはミューミサイルボックスを持ち、離れた敵に対して、攻撃を行う。

それと共に、イオタシューターで空を飛ぶ敵に対して、攻撃を行う。

 

「この火力はっ一体」

「余所見している場合か」『COMPLETE』

 

鳴り響く音声。

それは、バディの手にあった巨大なファイズブラスター。

これまでのファイズギアであるファイズストライクブレード、ファイズボックスバスター、ファイズポインターキャノン、ファイズクラッシュスマッシャー。

それらを全て合わせる事で、誕生する巨大なファイズブラスター。

変身用ではなく、完全な武器としてのファイズブラスターの為、ブラスターフォームへと変身する事はない。

しかし、その威力はかなり高い。

ファイズブラスターを手にしたバディは、その狙いを真っ直ぐと2体のオルフェノクに向けていた。

 

『Exceed Charge』

 

鳴り響く音声、それと共にポインティングマーカーでオルフェノクを拘束する。

 

「こんなっ」「所でぇ」

 

その言葉を最後に、その引き金を引く。

すると、ファイズブラスターから放たれた巨大なレーザーが真っ直ぐと2体のオルフェノクを貫く。

それによって、ラッキークローバーは本当の意味で壊滅した。

だが、こちらに向かって、襲い掛かったフォトンブラッドの弾丸。

それによって、手に持ったファイズブラスターが爆発する。

 

「これは」

 

それと共に、空を見る。

そこには既にサイガが、こちらを見つめていた。

 

「本当の戦いはここからという訳か」

 

それと共に、バディ達は構える。



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犠牲

「サイガかっ」

 

それと共にバディ達は既に動き始めた。

サイガに対して、始めに動いたのは、イオタだった。

元々のスパイダー・オルフェノクの能力も合わさったのか、近くの建物を踏み台にして、空を飛ぶサイガに対して、飛び乗る。

 

「in the way!(邪魔だ!)」

 

サイガは、すぐにイオタを振り下ろそうと動く。

だが、既に張り付いたイオタは、そこから離れようとしない。

同時に彼らに近づく影もあった。

 

「no way(なっまさか!?)」

 

それはミュー。

彼が、既に空を飛ぶ事ができるライドウィンガーで接近していた。

空中の体制を保つ為に行っていたサイガにとっては、予想外の接近。

だからこそ、すぐにイオタを振り払おうとしたが。

 

「悪いけど、少しでも戦力を減らしたいからね!」

 

その叫びと共にイオタは、そのままフライングアタッカーから振り落とすように蹴る。

サイガも、それに対応が出来ずに、そのまま地面へと落ちていく。

 

「I can't bear to lose to people like you(お前達のような奴らに、負けてたまるか!)」

 

サイガの叫びと共に、既に彼はフライングアタッカーからトンファーエッジを手に取り、近くにある建物に突き刺す。

そのまま地上へと降り立つと同時に、すぐにサイガフォンを、2人に向けて放つ。

 

「ぐっ」「ちっ」

 

2人もまた、その攻撃を受けて、地上へと落ちていく。

だが、それに合わせるように、瞬時に武器を手に取った2人は、すぐにサイガへと接近する。

両手に持ったトンファーと高い出力。

それによって、両方から攻めてくるミューとイオタの攻撃を躱していく。

私やバディも。すぐに救援に向かいたい。

だが、それを邪魔するオルフェノクの数が、あまりにも多すぎる。

そうしている間にも、2人の腹部にトンファーが当たる。

 

「end with this(これで終わらせる!)」『Exceed Charge』

「「っ!!」」

 

それは決定的な隙。

確実な死を意味する必殺が、2人に襲い掛かる。

はずだった。

 

「イオタ!」「えぇ!」

 

それは、すぐだった。

ベルトへとセットされていたイオタとミューは、飛び出す。

それは、2人に向けて、襲おうとしていたサイガの手元に向かって、2人が蹴り上げる。

僅かな機械による一撃だったが、手元を狂わせて、2人に致命傷を与えなかった。

 

「Get in my way!(邪魔をして!)」

「止めろ!」

 

サイガのその一言で、何をするのか分かった。

地面に転がったイオタとミュー。

2人は、そのまま、サイガの脚によって、踏み潰される。

粉々に。

 

「っああぁぁぁ!!」「お前ぇ!!」

 

それは、同時だった。

木場と澤田はすぐにオルフェノクへと変身し、サイガを殴る。

その衝撃は凄まじく、サイガのベルトが転がり、落ちる。

同時に、変身が解除される。

 

「Opus(しまった)」

 

それと共に、サイガの変身者に向けて、2人は武器を振り下ろした。

オルフェノクだろうと、確実な致命傷。

それによって、サイガに勝利する事はできた。

だが。

 

「ミュー」「イオタっ」

 

犠牲はあった。

無残にも散ってしまった2機は地面に転がる。

 

「帝王のベルト一つで、ベルトを二つですか。

まぁ良いでしょう」

 

それと共に、眼を向けると、そこには村上がいた。

 

「お前っ」

「まぁ、良いでしょう。

貴方達は、ここで終わる。

王の食事には丁度良いですしね」

 

その言葉と共に村上の腰にはベルトがあった。

あれがおそらくは。

 

「変身」『COMPLETE』

 

鳴り響く音声。

それと共に現れたのは、黒いライダーだ。

黄金に輝くフォトンブラッドと共に、それはまるで王を思わせるライダー。

おそらくは、あれがオーガだろう。

 

「あぁ、そうかよ、だったら、てめぇをすぐにでも倒して、王も倒す!」『COMPLETE』

 

同時にバディもまたブラスターフォームへと変身し、真っ直ぐと向かう。



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5つの力

ブラスターフォーム。

現在、ファイズが変身する中で、最も強い力を持つ姿。

その特徴は、パワー出力・防御力・武器の火力に対して強化が施されている事。

それは、これまでのベルトと比べても、高い力を持つ。

 

「これは、驚きですね」

「っ」

 

そう、目の前で村上が変身したオーガが、その手に持った武器であるオーガストランザーとファイズブラスターの光の刃が激突する。

ファイズブラスターの武装と対抗するだけの出力を持つオーガ。

しかし、現在の私達はかなり不利である。

その理由は。

 

「最初からここで戦う事を狙っていた訳か」

 

そう言いながら、バディは周りを見る。

ここは、ラッキークローバーが経営しているバー。

その周辺にはオルフェノクは確かにいるが、一般人もいる。

だからこそ、ブラスターフォームの出力はある意味、仇となる。

しかし

 

「さぁ、どうでしょうね!」

 

その言葉と共にオーガストランザーの刀身をさらに大きくさせる。

周りの被害など考えないような攻撃。

それは、周囲にいる味方であるオルフェノクをも巻き込みながら、攻撃する。

 

「ぐっ」

 

バディはなんとか防ぐが、それでも防ぐ事が精一杯だ。

巨大な剣。

しかも、相手はそれを持っても苦を感じていない事を考えても、ほとんど重さはないだろう。

このままでは負ける。

 

「カイザ!デルタ!」「あぁ、既に完了している」「あとは任せた」

 

私は、すぐに2人に向けて叫ぶ。

 

「どういう事だ?」「草加雅人、お前の持っているカイザポインターを乾巧に」

「三原も、デルタムーバーをファイズに。それとイオタとミューの所にあるポインターも」「えっあぁ」

 

状況が分からない最中で、2人はそれに従うように、投げる。

 

「バディ、ファイズポインターを、私と一緒に、あそこに!」

「はぁ、たく!」

 

そう言いながら、バディは私をそのまま投げる。

同時に私はファイズポインターを手に、投げられた4つのアイテムを合わせる。

 

「バディ、これが逆転のギアだ!」

「っ!」

 

同時に私の声の元へと走り、そのままそれと私を手に取る。

 

「これは」

「ライダーズギアには、全ての共通して、蹴りを主体にした技がある。

それは、5つのギアを合わせる事を前提に設計されていたからだ」

 

順番としては後ろから、デルタムーバー、ミューポインター、カイザポインター、イオタポインター、ファイズポインターが合体している。

それ単体でも小さな銃と言っても過言ではない。

 

「まぁ、どちらにしても、これにかけるしかないようだな」

 

それと共に、バディは合体したポインターをそのまま脚に装着する。

 

『Exceed Charge』

「むっ、だが」『Exceed Charge』

 

私達の動きに対して、村上もまた構える。

より強固に、巨大になった剣。

それが、真っ直ぐ、私達に襲い掛かる。

それに対して、バディもまた、そのまま飛び上がり、真っ直ぐとポインターを村上に向ける。

現れたのは、巨大なポインター。

まるで、虹色を思わせる色の変化をしていくポインター。

それが、村上の剣とぶつかり合う。

 

「「はあぁぁぁ!!」」

 

叫びと共に、突撃する。

互いの光が、衝撃が、周辺の大地を揺らす。

そのあまりの強さに、周囲の建物の窓が割れる程の災害。

それまでに出しながら、勝利したのは。

 

「ばっ馬鹿なぁ!」

「はぁ!!」

 

バディだった。

バディの雄叫びと共に、剣は斬り裂かれ、村上の身体を貫く。

 

「はぁはぁ、勝てたのか」

 

それと共に見つめる。

オーガのベルトは、大きく吹き飛ばされた。

あの衝撃でも、未だに壊れない様子が見られる。

そして、ベルトに守られていたのか、僅かに動く村上。

 

「ここで、終わらせる」

 

すぐに草加雅人も動き出す。

その時だった。

こちらに向かって、歩く音。

 

「この音は」

 

見つめた先。

そこにいたのは、オルフェノクだった。

だが、これまでのオルフェノクとはどこか雰囲気は違った。

 

「王が、来たのか」

 

それに対して、村上は笑みを浮かべる。

同時にアークオルフェノクの口が開く。

 

「っ!」

 

開かれた口。

そこから発生する風は、周囲にある灰を吸い込む。

それは、オルフェノク達が死んだ灰。

同時に既に死にかけた村上もまた、同じだった。

 

「そうだ、私を喰らえ!そしてオルフェノクをぉぉ」

 

絶叫。

それと共に、奴は死んだ。



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オルフェノクの王

これまで、決して姿を現す事のなかったオルフェノクの王。

それは、まるでバッタを思わせる姿のオルフェノクであり、同時にこちらに向けて放ってくる気迫が、機械であるはずの私達に恐れを感じる。

 

「それでも、やるしかない!」

 

バディは、その一言と共に、先程、オーガを倒した技を、再度行う。

だが、それに対して奴は。

 

「なっ!」

 

軽く弾き返した。

それは、明らかにこれまでのオルフェノクとはレベルが違う。

 

「ここでっこいつをっ!!」

「草加っ!」

 

すぐに立ち上がった草加雅人が、そのまま斬りかかる。

だが、その攻撃は、まるで効いている様子はなく、軽く吹き飛ばす。

それだけではなく、三原もまた、追撃するように攻撃を仕掛けるが、まるで効いていない。

 

「どうなっているんだっ」

「あの、オルフェノクの王。先程吸い込んだオルフェノクの灰。おそらくはそれを吸い込んだ事によって、そのエネルギーを体内に取り込んだ。だからこそ、あのオルフェノクの王はかなりの強さを誇っている」

「だからといってっ、負けてられるかっ」

 

そう叫びながら、バディもまたその手にファイズブラスターを手に、真っ直ぐと向かう。

オルフェノクの王は、かなりの強さである。

これまでの戦いで、バディ自身の実力は確かに高くなっている。

むしろ、そうじゃなければ、ここまで、互角に戦う事ができない。

 

「それでもっやはりっ」

 

以前の強敵であるドラゴン・オルフェノクを相手に戦った時には5人で戦った。

だが、今は、3人だけだ。

その連携が、上手くいけない以上は。

 

「勝てないっ」

 

そう、思った瞬間だった。

オルフェノクの王が、こちらに向けて、攻撃を仕掛けようとした時だった。

オルフェノクの王に向かって、青い弾丸が襲い掛かる。

 

「なに?」

 

疑問に思う。

その弾丸には、見覚えがあった。

そして、そのままオルフェノクの王を斬り裂く黄金の刃。

それが、オルフェノクの王を吹き飛ばした。

 

「さっきのは、まさか」

 

バディは、すぐにそちらを見つめる。

そこにいたのは、私達が倒したはずのサイガとオーガの2人のライダーだった。

だが、その変身者であるはずの2人は、既に死んでいる。

そして、オルフェノクの王が攻撃したのに、疑問に思えた。

 

「ごめん、待たせたね、巧君」

「なんとか、間に合ったか」

「その声って」

 

サイガから聞こえた声は澤田。オーガからは木場の声が聞こえた。

 

「一体どうなって」

「その事情は、私達で分かるかしら」

「なにっ!?」

 

それと共に聞こえたのはミューとイオタの2人の声が聞こえる。

これは一体、どうなっているんだ?!



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相棒の復活

巧達がオルフェノクの王と戦っていた時だった。

木場達は、直前で放たれたオルフェノクの王からの攻撃をギリギリで避ける事にしていた。

だが、その身体には、力が入らない。

 

「ぐっ、これは」「オルフェノクの王の力かっ」

 

そのまま木場達はオルフェノクの姿から人間へと戻った。

そうする事によって、幾分か身体が動けるようになった。

 

「だが、どうする。このままでは」

 

そう、オルフェノクの王と巧達の戦いを見る。

状況は、巧が変身したブラスターフォームの力のおかげで戦えている状況ではあった。

しかし、完全に有利という状況ではなかった。

 

「どうしたらっ」

 

そう、木場が悩む中で、その足下に転がる物。

それは、木場の相棒であったミューの残骸。

その中で、ミッションメモリーが輝いていた。

 

「ミュー、お前がいてくれたら」

「・・・いや、もしかしたら」

 

その言葉と共に澤田もまた、イオタのミッションメモリーを手にする。

同時に地面に転がっていたサイガのベルトだった。

 

「澤田君、それを一体」

「このベルトに、イオタ達のミッションメモリーを入れて、蘇らせる」

「そんな事ができるのかっ」

「分からない」

 

それは澤田にとっても、賭けではあった。

 

「だが、このまま、あいつらを、仲間を見殺しにはできない。

そうだろ」

 

その言葉に、木場は頷く。

木場にとって、人生は悲惨であった。

家族は死に、恋人に裏切られ、その恋人を殺した。

犯してはいけない罪を背負った。

そんな、木場にとって、今も一緒に戦う仲間達。

それは、木場にとっては希望であった。

そして、これから行うのは、相棒を復活させる為であった。

 

「もう一度、いや、何度でも、俺に力を貸してくれ、ミュー!」

 

その叫びと共に、2人はミッションメモリーを、各々のベルトにセットした。

二つのミッションメモリー。

最初は、僅かな震えだった。

だが、徐々に、ベルトは各々のフォトンブラッドの色に輝き始める。

そして。

 

「これは、少し驚きだわ」「えぇ、犠牲になるつもりだったけど、まさか蘇るなんて」

「ミュー!」「イオタ!」

 

その復活は、2人にとっては驚きであった。

だが、同時にその復活に笑みを浮かべる。

 

「2人共、状況は」

「えぇ、最悪なのは分かっているわ。

このベルトにある情報で、既に把握している」

「ならば、やる事は分かっているな」

「あぁ、勿論」

 

その言葉と共に木場達は、同時にそのベルトを腰に巻く。

変身コードは既に分かっていた。

だからこそ。

 

「「変身!」」

 

叫び、それと共に、木場達の姿は変わる。

それは帝王のベルトで変身するオーガとサイガ。

 

「行こう」「あぁ!」

 

その言葉と共に、真っ直ぐと、オルフェノクの王の戦いに介入する。



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最後の戦い

5人のライダーが揃った。

それと共に、戦いが始まる。

バディ、カイザ、オーガは各々が近接武器を手に、真っ直ぐとオルフェノクの王に向かって、走る。

エネルギー刃は、確かにオルフェノクの王に当たる。

だが。

 

「ぐっ、こいつっ」

 

その力は、やはり強い。

だが、それでも、先程とは違う。

1度では倒しきれないと感じると共に3人はすぐに横に跳ぶ。

同時に上空からはサイガ、地上からはデルタによる援護射撃が行われる。

すぐにオルフェノクの王がエネルギー弾をこちらに向けて放つが、カイザがその腕に攻撃を仕掛けた事によって、阻止される。

 

「はあぁぁぁ!!」

 

同時にオーガは、真っ直ぐと切りかかる

左右同時から放たれた一撃。

それは、さすがにオルフェノクの王にとっても痛手だ。

 

「三原!」

「あぁ!!」

 

それと共に上空にいたサイガに、デルタはミッションメモリーを投げる。

そのまま、サイガもまた、自身のミッションメモリーをフライングアタッカーのソケット部分に装填する。

 

『『Exceed Charge』』

 

重なる二つの音声。

同時に白と紫がサイガのフライングアタッカーに充電され、その引き金を引く。

 

「ぐっ」

 

放たれた巨大な二つの弾丸は、真っ直ぐとオルフェノクの王に当たる。

 

「がぁ!」

 

それによって、オルフェノクの王は後ろに下がる。

だが、それだけではない。

オーガは、片手にカイザブレイガンを、オーガストライザーを持っていた。

 

『『Exceed Charge』』

 

黄色と黄金の二色のエネルギーの刃を同時に構える。

 

「はああぁぁぁ!!」

 

サイガの攻撃によって、一瞬の隙ができた。

それを利用して、オーガは、次々と斬撃を放っていく。

一撃一撃が、確かな必殺の刃。

それでも消滅しないのは、確かにオルフェノクの王である証であった。

 

「ぐっはああぁぁぁぁ!!」

 

オルフェノクの王の叫び。

それと共に、オーガは吹き飛ばされる。

最後のトドメまではいかなかった。

だが。

 

『Exceed Charge』

 

それは、私達に最後のチャンスを与えてくれた。

バディは、先程は効かなかった合体したポインターを、脚にセットした。

 

「はあああぁぁぁぁ!!」

 

それと共に走り出した。

その狙いは、オルフェノクの王。

真っ直ぐと、そのポインターの狙いはオルフェノクの王に向けた。

先程は効かなかった一撃。

だが、オーガの放った必殺の刃によって、その身体に大きな傷が出来ていた。

それに向かって、真っ直ぐとライダーキックを放った。

 

「『はああぁぁぁぁぁ!!!』」

 

私とバディの叫びが周囲を響かせる。

ここまで、決して、私とバディだけでは辿り着けなかった。

この場にいる全員が、そして、共に戦ってくれた仲間達が、作ってくれたチャンス。

それを、決して、逃さない。

そして、そのまま私達の必殺の一撃は、オルフェノクの王は、周囲を巻き込み、爆発した。



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旅人

オルフェノクの王を倒した。

 

だからと言って、全ての問題が解決したのかと言うと、違う。

 

バディを初めとしたメンバー達を襲ってくる驚異であるスマートブレインから、襲われる事が無くなったで命の危機は減っている。

 

そう、未だに根本的にオルフェノクによる驚異はなくなっていないし、オルフェノク達自身の危機もある。

 

それは人間社会の中で馴染めないオルフェノクがいる。

 

オルフェノクが人間を襲うのも、種の存続と共に人間達が、必要以上にオルフェノクを恐れ、差別するからでもある。

 

そして、オルフェノクの王は確かに倒せたが、新たな王が誕生するかもしれない。

 

オルフェノクの王の存在を、既に知っている以上は、過去にも存在したかもしれない。

 

そもそも、オルフェノク自体、なぜ死がトリガーとなって進化するのか。

 

未だに謎が多い。

 

だからこそ、現在のスマートブレインは、人間社会とオルフェノクの共存を目的に木場が中心に活動している。

 

復讐を果たした草加も、今は流星塾のメンバーと共にいる。

 

彼も、根本的には、仲間との絆を大切にしている。

 

そして、他のギア達も、様々なサポートをしている。

 

そう、元気に活動している事を聞いている。

 

「たくっ、本当にこんな所にいるのか?」

 

さて、私とバディは何をしているのかと言うと、私達は今、旅をしている。

 

オルフェノクは、東京だけではない。

 

全国各地にいるのは間違いない。

 

東京にいるだけでも、多くのオルフェノクがおり、オリジナルが誕生するのも珍しくない。

 

そうした彼らオルフェノクと人間の間の掛橋になる役割として、バディは旅をしている。

 

「それよりも、バディは園田真理には告白しないのか?」

「だから、なんでその話になるんだよ、たく」

 

バディも、多少気持ちに素直になったが、恋愛の方はまだまだの様子。

まぁ、オルフェノクの寿命に関しても、今は多くの研究を行われている。

だから、焦らなくても、良いかもしれない。

 

「それにしても、バディは旅に出た事には、後悔はないのか」

「さぁな、元々は旅をしていたからな。

けど」

 

それと共に私を見ながら言う。

 

「少なくとも、帰る場所がある。帰るのを待ってくれる奴らがいる」

 

それは、かつて火事で全てを無くしたからこそ、それがどれだけ大切なのか理解する。

 

「俺と同じ境遇で、俺と同じ夢を目指している奴がいる」

 

それは、オルフェノク故に孤独であったが、今ではバディと同じオルフェノクの仲間がいる。

 

「それがあるだけでも、以前の俺にはなかった物だ」

 

それは、確かに私が出会った頃のバディにはなかった物。

だけど、ここまでの多くの戦いで、得られた物だ。

 

「さて、行こうぜ、相棒」

「勿論だ、バディ」

 

未だに戦いは終わらない。

おそらくは、終わりが見えないだろう。

それでも、歩み続けよう。

何時か、手に取り合える日まで。




今回で、『私の相棒は猫舌でツンデレ属性である』Byファイズフォンは最終回を迎えました。最初はそんなに考えずに、投降していたですが、気づけばここまで応援してくれて、本当に感謝します。そして、来年、もしかしたら。ファイズの新作の映画に合わせて、復活するかもしれません。その時は、またファイズ達の活躍を楽しみにしてください。それでは、皆様、また次の作品で。


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