転生したら時の魔人だった件 (仮面大佐)
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オリキャラ紹介&変身する仮面ライダー

リアム=テンペスト/仮面ライダージオウ

CV 天﨑滉平

種族 時魔人(クロノノイド)

概要

何の変哲もない高校生。交通事故により亡くなり、転スラの世界に転生する。仮面ライダージオウが好きなオタク。ヴェルドラが封印されていた洞窟で、リムルと出会い、運命が動き出す。当の本人は、魔王になる覚悟を決めているが、まだその時では無いと判断している。大らかな性格で、普段は優しいが、キレると本当に怖くなる。人から頼まれると、断りきれずに引き受ける性格。リアムは、周囲から好意を向けられている事には、気づいていない。好物は、甘いもの全般に和風的な物。ガゼル王などからは、王としての素質を見抜かれている。転生した際に、少し常磐ソウゴと似ている容姿になった。

 

銀姫/仮面ライダーツクヨミ

CV 真堂圭

種族 大鬼族→鬼人

概要

大鬼族の女性。髪は銀髪。里が豚頭族に滅ぼされた後は、後の紅丸達と共に、リアムとリムルの村の方に向かう。そこで、一頓着あるも、受け入れられ、リアムに銀姫という名前を付けてもらう。名前を貰った以降は、リアムの秘書兼護衛の役割を担う。紅丸、蒼影、紫苑とは、幼馴染の間柄。リアムに想いを寄せているが、当の本人は全くと言っていいほどに気づいていない。料理が上手く、朱菜と共同で良くスイーツを作っている。スイーツは、リアムに良く食べさせており、リアムも絶賛している。紫苑の料理の腕に関しては、諦めの境地に入っている。好物は甘い物全般。

 

蓮月/仮面ライダーシノビ

CV 草尾毅

種族 蜥蜴人族→龍人族

概要

ガビルの幼馴染。元々は、蜥蜴人族だったが、テンペストに移住して、名前をつけてもらってからは、人間に近い見た目になる。冷静な性格で、ガビルの抑え役になる事が多い。リアムから、仮面ライダーシノビの力を授かった。テンペストに移住後は、リアムの直属の部隊の1人として、活動するが、戦闘がない時は、蒼華、蒼影と共に見回りをしたり、本を嗜む。好物は、団子、蕎麦、うどん。蒼華が蒼影に好意を寄せている事に気付いており、応援している。リアムから短刀を受け取っており、腰に帯刀している。人間としての見た目は、茶髪に濃紺の瞳の青年。

 

変身する仮面ライダー

 

リアム=テンペスト/仮面ライダージオウ

 

リムル=テンペスト/仮面ライダーゲイツ

 

ウォズ/仮面ライダーウォズ

 

シズ/仮面ライダーウィザード

 

銀姫/仮面ライダーツクヨミ

 

紅丸/仮面ライダー響鬼

 

蒼影/仮面ライダー風魔

 

白老/仮面ライダー歌舞鬼

 

蓮月/仮面ライダーシノビ




今回はここまでです。
今回は、オリキャラ紹介と、変身する仮面ライダーについてです。
オリキャラは、三人だけですので、少し少ないです。
ガルドが居ますが、元は魔王ゲルドですし。
転スラのキャラを、仮面ライダーにさせていく予定ですが、誰が何の仮面ライダーになるのかは、考え中です。
変身させようかなと考えているのは、ヒナタ、ヴェルドラ、ルミナス、ミリムの4人です。
それ以外に変身して欲しいキャラが居る場合は、活動報告にて、リクエストを受け付けます。
ちなみに、ヒナタはサガ、ヴェルドラはクローズか龍騎、ルミナスはダークキバ、ミリムはディケイド激情態を考えています。
これら以外に、変身させたいというのがいれば、リクエストをお願いします。
オリキャラがある場合も、良いですよ。


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プロローグ

2022年 10月16日

 

総悟「しっかし、凄い展開になったな…………。」

 

 俺は、佐久間総悟(さくまそうご)

 何の変哲もない、大学生だ。

 まあ、仮面ライダーが大好きな大学生と言った所だ。

 つい先ほど、TTFCで配信された、アウトサイダーズを見ていた。

 王蛇とかの色んな平成ライダーがまだまだ出るんだよな。

 俺は仮面ライダーの中で、ジオウが好きなので、令和になっても、平成ライダーが出るのは、嫌いではない。

 むしろ良い。

 

総悟「やっぱり、ジオウはすごいよな……………。」

 

 俺はそう呟く。

 オーマジオウなんて、これまでのラスボス達をワンパンで倒したんだしな。

 そんな事を考えていると、叫び声が聞こえて来る。

 

???「危ない!戻ってきて!!」

総悟「!?」

 

 そんな声が聞こえ、声のした方を向くと、母親が、道路に向かって叫んでいた。

 そこには、道路に転がったボールを取りに行こうとする子供がいて、子供の目の前には、大型トラックが迫っていた。

 それを見た途端、俺は体が無意識に動いていた。

 子供を母親の方に向けて突き飛ばして、俺が轢かれ、吹っ飛び、枝に刺さる。

 すると、周囲から、悲鳴が聞こえてくる。

 

女性「キャアア!誰か轢かれたわ!」

男性「すぐに救急車を呼んでくれ!!」

 

 そんな叫び声が聞こえてくるが、徐々に掠れていく。

 

総悟(子供は…………助かったか。良かった…………。それにしても、体が熱いし、痛い。何かが突き刺さったのか………?)

 

???『確認しました。痛覚耐性を獲得。成功しました。対熱耐性を獲得。成功しました。刺突耐性を獲得。成功しました。』

 

総悟(………今度は、寒くなってきた……。)

 

???『確認しました。対寒耐性を獲得。成功しました。対熱耐性と対寒耐性を獲得した事により、スキル、熱変動耐性を獲得しました。』

 

総悟(俺、死ぬの?死ぬんだったら、せめて、ジオウに変身したかったな…………。)

 

???『確認しました。UQスキル、時之王者(ジオウ)を獲得。成功しました。』

 

総悟(死に間際に、変な声が聞こえる………。でも、ベルトやライドウォッチって、結構嵩張るんだよなぁ。何か、収納出来る何かが欲しいな…………。)

 

???『確認しました。EXスキル、無限収納を獲得。成功しました。』

 

総悟(ライドウォッチも、平成ライダーのウォッチは全部欲しいな…………。欲を言えば、ゼロワンとセイバーも。ジオウIIにジオウトリニティ、グランドジオウ、オーマジオウのウォッチも、欲しい…………。)

 

???『確認しました。個体名、佐久間総悟から、ライドウォッチに関する記憶を検索し、作成します。成功しました。平成ライダーとゼロワンとセイバーのライドウォッチの作成に成功しました。ただし、ジオウIIにジオウトリニティ、グランドジオウ、オーマジオウのライドウォッチは、条件を満たさなければ、使用不能です。』

 

総悟(あと、ジオウって、時の王者だから、時の魔人みたいなのが、良いかもな。あと、魔王だし。)

 

???『確認しました。個体名、佐久間総悟から、時の魔人みたいなのを検索。成功しました。続けて、個体名、佐久間総悟の種族を、人族から時魔人(クロロノイド)に再構築します。成功しました。』

 

総悟(あとは、これまでの平成ライダーの歴史や、これからのライダーの歴史も、教えてくれる存在が居たらな…………。)

 

???『確認しました。UQスキル、時之歴史(クロノヒストリー)を獲得しました。』

 

総悟(まだ、うるさいし………。あ………やべ。限界だ…………。)

 

 こうして、佐久間総悟の人生は、僅か20歳にて、幕を閉じる事になってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

総悟(あれ………俺、どうなった?)

 

 あれ、これ、どういう状況?

 俺、死んだんじゃ………?

 

総悟(意識ははっきりしてて、痛い所は特に無し。枝に突き刺さってたのに。)

 

 という事は、病院に運び込まれて、なんとか蘇生できたのか?

 いや、致命傷だったぞ。

 それに、床が硬い。

 ベッドじゃないし、道路とかに敷かれている石畳でも無い。

 感触としては、洞窟に居るみたいな………。

 

総悟(洞窟?)

 

 重い瞼を持ち上げると、目に入ったのは、紛れもなく洞窟だった。

 しかも、何かの草が目に入る。

 白い花だが、ユリとは違う形状の花だ。

 何だろう。

 すると、謎の声が聞こえてくる。

 

???『解、この花は、ヒポクテ草。濃い魔素が充満している場所に生えることで、魔素の影響を受けた草。成分を抽出することで、回復薬を生成することができる。』

総悟「えっ!?」

 

 俺は、二つの意味で驚いた。

 一つは、魔素という単語だ。

 そんな単語は、日本では聞いた事がない。

 もう一つは、この声は、俺が死んだ時に聞こえた声だ。

 

総悟「ええっと、誰?」

時之歴史『解。貴方が持つ、UQスキル、時之歴史(クロノヒストリー)の効果です。能力が定着したため、反応を速やかに行う事が可能になりました。』

総悟「ああ…………。(スキル………この世界に於ける能力みたいな物か。)」

 

 俺は、そう考えていた。

 気になる事があり、聞いてみる事に。

 

総悟「そういえば、無限収納って、どんな能力なんだ?」

時之歴史『解。ここには、凡ゆる物が、大きさを関係無しに、収納出来るスキルです。更に、UQスキル、時之歴史と合わせる事で、無限収納に収納された物を、自動的に解析、鑑定、調合、生成が行えます。』

総悟「なるほどな。」

 

 それを聞いた俺は、早速ヒポクテ草を大量に採って、無限収納に放り込む。

 すると、純度100%のフルポーションが完成した。

 これを作った理由としては、傷を負った時に、すぐに回復する為だ。

 その際、近くにあった水溜りを覗くと。

 

総悟「…………誰?」

 

 そこには、見知らぬ顔が。

 前世の俺の顔の面影を、ちっとも感じない。

 前世の俺の顔は、いかにもそこら辺にいる普通な顔なのだが、何というか、少し常磐ソウゴに似ている。

 すると。

 

???『クアーーーーハハハハハハハハハハハ!!』

総悟「!?」

 

 突然、大きな笑い声がしてきて、何事かと思い、声がした方へと向かっていく。

 すると、一体の巨大なドラゴンの目の前に、一匹のスライムが。

 どういう状況か分からず、呆然としていると。

 

???『…………どうやら、まだ客人が居るみたいだな。』

総悟(バレた…………!)

 

 そのドラゴンは、俺を見つけたようだ。

 俺は観念して、ドラゴンの前へと向かう。

 

???『…………ほう。見た事のない種族であるな。人間に似ているが。(それに、あやつから、魔王の気配もするな…………。)』

 

 スライムは、何かを伝えようとしていた。

 

???『そうだ、話が逸れてしてしまったな。スライムよ。見えるようにしてやろう。ただし、条件がある。それは、貴様にも該当する。』

総悟「条件?」

???『なあに、簡単な事だ。見える様になったからと言って我に怯えるな。そして、また話をしに来い。それだけだ。どうだ、悪い話ではあるまい?』

 

 それを聞いたスライムは、頷く様な仕草を見せる。

 その龍は、口を開く。

 

???『うむ。では、『魔力感知』と言うスキルがあるのだが、使えるか?』

総悟「魔力感知?」

???『周囲の『魔素』を感知するスキルだ。』

総悟「魔素?」

 

 さっきも聞いたが、魔素って何だ?

 俺が首を傾げてると、時之歴史が答えてくれた。

 

時之歴史『解、魔素とは、この世界に満ちるエネルギーで、魔物にとっては生命の元になる物です。』

総悟(なるほど。)

 

 そういう物か。

 魔物となった以上、俺も魔素は必要不可欠になったという事か。

 目を閉じながら、意識すると、周囲に漂う何かを感じ取れた。

 

時之歴史『告。EXスキル、魔力感知を獲得しました。』

総悟(随分と、あっさりだな。)

時之歴史『警告。魔力感知を発動することにより、膨大な情報が流れ込む危険性があります。情報の管理のため、時之歴史と同期させることを推奨します。』

総悟(まあ、そうだろうな。)

時之歴史『魔力感知を使用しますか?』

総悟「YES。」

 

 すると今まで薄暗かった洞窟の中が、まるで昼間のようにはっきりと見える様になった。

 周囲の状況が事細く知る事ができた。

 スライムが、はしゃいでいた。

 

スライム「お?おお!!見える!見えるぞ!」

総悟(あれ?さっきまで、スライムの声は聞こえなかったが………。)

時之歴史『解。意思の込められた言葉は、魔力感知の影響で理解できる言葉に変換されます。』

総悟(自動変換機能か。便利だな。)

 

 さて、魔力感知を習得出来たのは良いけど、あのドラゴン、どうすれば良いんだよ。

 

???『どうだ?出来たようだな。』

スライム「はい!できました。有難うございま…………っ!!」

 

 スライムの言葉が、途中で止まる。

 まあ、いきなり竜が居たら、驚くわな。

 

ヴェルドラ『では改めて自己紹介をしよう。我は暴風竜ヴェルドラ。この世に4体のみ存在する『竜種』の一体である。クァーーーーハハハハ!!』

総悟(ヴェルドラって名前なんだ。)

 

 そうして、俺とスライムは、ヴェルドラという竜と話をする事になった。




今回は、ここまでです。
転スラとジオウの小説を書きたいなと思い、書きました。
これのオリ主は、ヴェルドラが気づいていますが、最初から魔王種を持っています。
死ぬ前に、ある事を思った事がきっかけで。
全ての平成ライダーと、ついでにゼロワンとセイバーの力を、持っています。
リバイスとギーツに関しては、ライドウォッチが出ていないので、持っていません。
感想、リクエストは受け付けます。
リクエストは、目次の活動報告へのリンクから、その活動報告にお願いします。
オリ主の運命の人やら、どの仮面ライダーに、どのキャラが変身するのかとかも受け付けます。
キメラドライバーのセットと、ベイルドライバーのセットが届きましたが、凄い楽しいです。
ウォズに関しては、普通に原作ジオウと同じ存在を出そうかなと思っています。


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第1話 ゴブリン達との出会い

 こうして、俺とスライムは、暴風竜ヴェルドラの話を聞く事にした。

 見た目に反して、この竜、意外と話好きで親切だと分かった。

 

ヴェルドラ「なんと、お前ら、異世界からの転生者か。」

スライム「そうなんすよ!超大変だったんすよ!」

総悟「大変そうなのが、伝わってきます。」

 

 このスライム、前世では三上悟というらしく、ゼネコン勤務のサラリーマンらしい。

 俺は、前世では大学生だと伝えると。

 

スライム「お前、恋人とか居たのか?」

総悟「いや、彼女居ない歴=年齢ですよ。」

 

 そう伝えると、納得した様だ。

 すると、ヴェルドラが口を開く。

 

ヴェルドラ「物凄く稀な生まれ方をしたな。転生者は偶に生まれてくるし、異世界人も時たまやって来るが、異世界からの転生者は、我の知る限り、事例はない。」

総悟「そうなんですか。」

スライム「異世界人って、自分達以外にも居るんですね。」

ヴェルドラ「うむ。奴らは、こちらの世界に渡る時、望んだ能力を得られるらしいぞ。」

 

 なるほど。

 つまり、俺が仮面ライダージオウの能力を望んだから、手に入れたって事か。

 まあ、そういう理由なら、納得だな。

 

スライム「ちょっとその異世界人を探して、会ってみようかな。」

総悟「そうだな。」

ヴェルドラ「なんだ?もう行ってしまうのか?」

((露骨に寂しそうだな!))

 

 俺とスライムは、そう思う。

 ていうか、この竜、本当に人間臭いよな。

 まあ、今の俺は、見た目は人間だけど、実際には時魔人(クロロノイド)だしな。

 

スライム「え〜っと、もうちょっと此処に居ようかな?」

総悟「まあ、どうせ暇だし。」

ヴェルドラ「そうかそうか!ゆっくりしていくが良いぞ。」

 

 スライムは、気になる事があったのか、ヴェルドラに質問をする。

 

スライム「ええと………ヴェルドラさんは、ここから動けないんですか?」

ヴェルドラ「うむ。300年前に勇者に封印されて以来、このままよ。もーヒマでヒマで………。」

総悟「(勇者、居るんだ………。)どうして、封印されたんですか?」

ヴェルドラ「よくぞ聞いてくれた!300年前、ちょっとうっかり、街一つを灰にしちゃってな。」

総悟(ちょっとうっかりで済むレベルじゃないでしょ、それ。)

 

 それでうっかりとか、どうなってんだ。

 その間、ヴェルドラは語った。

 自分の目の前に勇者と名乗る人物が現れ、応戦した。

 だが、その勇者に負け、封印されたらしい。

 その勇者は強く、UQスキル・絶対切断で圧倒し、UQスキル・無限牢獄で封印したのだ。

 それ以来、300年の間ずっとこの洞窟の中で、一人でいたらしい。

 その際、一つ思った事がある。

 

総悟「もしかして、見惚れてて負けたんじゃないんですか?」

ヴェルドラ「ばっ………そんな訳なかろう!やや小柄でほっそりとしていて、白い肌に黒い髪を一つに纏めていて、深紅の小さな唇……。」

スライム(がっつり見てんじゃないすか。)

 

 分かった。

 こいつ、人間が好きなのだ。

 自分が負けた話であるのにも関わらず、楽しそうに語っている。

 それにしても、300年間一人で過ごすなんて、寂しいだろうな。

 すると、スライムが提案する。

 

スライム「…………よし。じゃあ、俺と………いや、俺達と友達にならないか?」

総悟「良いね。」

ヴェルドラ「何!?スライムと時魔人(クロロノイド)とやらの分際で、この暴風竜ヴェルドラと友達だと!?」

スライム「い、嫌なら良いんだけど………。」

ヴェルドラ「馬鹿者!誰も嫌だとは言っておらぬではないか!!」

総悟「じゃあ、どうすんの?」

ヴェルドラ「そうじゃなぁ………。どうしてもと言うのなら、考えてやっても………良いんだからね。」

((ツンデレか!!))

 

 おいおい、女の子ならまだしも、竜のツンデレなんて、今日日流行らないだろ。

 素直じゃないので、追い討ちをかける事に。

 

スライム「どうしても、だ!決定な!嫌なら絶交。二度と来ない。」

総悟「まあ、そういう事で。」

ヴェルドラ「ちょっ………!し、仕方ないであるな。友達になってやる。感謝せよ!」

スライム「素直じゃないなぁ。」

総悟「まあ、よろしくな。」

 

 そうして、ヴェルドラと友達になった。

 なったのは良いのだが、ヴェルドラの対処をどうするかだ。

 

スライム「………で、どうする?」

ヴェルドラ「ん?」

総悟「この封印だよ。………流石に、300年間一人で過ごすのは、可哀想だからな。」

ヴェルドラ「…………お前達!」

総悟(そんな、ウルウルした目で見つめないでくれ!怖い!)

 

 それはともかく、どうしたものか。

 一応、時之歴史(クロノヒストリー)に出来るかどうか、聞いてみるか。

 

蒼馬(時之歴史。無限牢獄を破る事は、出来ないか?)

時之歴史『解。このスキルでは、無限牢獄を破る事は叶いません。』

総悟(そっかぁ……………ジオウじゃ、無限牢獄を破る事なんて、出来るかもしれないけど、不確実性があるからな…………。)

 

 もし、結界を破れても、ヴェルドラに影響が出ないとは限らないのだ。

 すると、スライムが何かを思いついたのか、ヴェルドラに話しかける。

 

スライム「………俺の胃袋に入る気はないか?」

ヴェルドラ「…………。」

総悟「………すいません、説明下さい。」

スライム「おう。」

 

 スライム曰く、俺のUQスキル、時之歴史と似た様なスキル、『大賢者』というスキルがあるらしく、スライムが大賢者と捕食者というスキルで解析して、ヴェルドラも内側から破壊できないか確かめるらしい。

 スライムの胃袋の中は、隔絶された空間の為、魔力が漏れることは無いとの事。

 これなら、ヴェルドラの消滅を気にせずに、解析出来るな。

 すると、ヴェルドラは。

 

ヴェルドラ「………ククク………クハハハ………クハハハハハハハハハハ!!!」

総悟(おお、笑いの三段活用。)

ヴェルドラ「それは面白い!是非やってくれ!!お前に、我の全てを委ねる!」

 

 随分とあっさりだな。

 スライムは、戸惑った様で、ヴェルドラに尋ねる。

 

スライム「おいおい。そんなに簡単に信じて良いのか?」

ヴェルドラ「無論だ。ここでお前達の帰りを待つより、共に『無限牢獄』を破った方が面白そうだ!」

総悟「そっか………。」

 

 まあ、一人より皆の方が良いしね。

 それに、一々洞窟に戻るよりも、一緒に居た方が良いに決まってる。

 そうして、スライムはヴェルドラを捕食しようとするが、ヴェルドラが待ったをかけた。

 

ヴェルドラ「おっと、その前に。」

「「?」」

ヴェルドラ「お前達に名をやろう。そして、お前達も我らの共通の名を考えよ。」

総悟「どういう事?」

ヴェルドラ「同格である事を、魂に刻むのだ。」

 

 ヴェルドラ曰く、人間でのファミリーネームと同じで、ヴェルドラが俺たちに名前をつける事で、名持ちの魔物の仲間入りになる。

 そんなこんなで、俺とスライムは、考える。

 

総悟(暴風竜だから…………ストーム?サイクロン?ハリケーン?いや、しっくり来ないな。)

 

 俺、名付けとか苦手なんだよな。

 ゲームキャラに名前をつける場合は、大抵そのゲームキャラのデフォルトネームか、自分の名前だし。

 すると、一ついいのが思いついた。

 

総悟「(テンペスト………良いじゃん!)スライムさん、決まりました?」

スライム「ああ。」

総悟「じゃあ、同時に言いましょう。」

スライム「そうだな。」

「「テンペストはどうだ?」」

 

 どうやら、考えている事は同じみたいだな。

 すると、ヴェルドラが反応した。

 

ヴェルドラ「何いいいいい!!テンペストだとおおおおおおお!!!」

総悟「ダメでした………?」

ヴェルドラ「素晴らしい響きだあああああ!!今日から我は、ヴェルドラ=テンペストだああああああああ!!!」

スライム「気に入ったのかよ………。」

 

 一々大袈裟な竜だな。

 だけど、嫌いじゃ無い。

 すると、ヴェルドラが、まずはスライムの方に名前を付ける。

 

ヴェルドラ「そして、まずスライムのお前には、『リムル』の名を与えよう。今日から、リムル=テンペストを名乗るが良い。」

リムル「リムル………!」

ヴェルドラ「そして………確か………。」

総悟「あ、時魔人(クロロノイド)です。」

ヴェルドラ「そうか。なら、時魔人(クロロノイド)のお前には、『リアム』の名を与えよう。今日から、リアム=テンペストを名乗るが良い。」

リアム「ありがとうございます!」

 

 こうして、俺は蒼馬改め、ルークという名前を得た。

 魂に、リアム=テンペストという名前が刻まれたのだった。

 その後、リムルが『捕食者』を発動して、ヴェルドラが消えた。

 

リムル「さて、外に向かうか。」

リアム「そうだな。ヴェルドラの為にも。」

 

 俺たちは、外へと向かって歩き出す。

 ただ、暴風竜ヴェルドラの消滅は、周辺の国に大きな衝撃を与えた事を、今の俺たちは知らない。

 リムルと話している中、俺の仮面ライダーの力の話になった。

 

リムル「えっ!?リアムって、仮面ライダーになれるのか!?」

リアム「ああ。仮面ライダージオウにな。」

リムル「ちょっと、変身してくれよ。」

リアム「分かった。」

 

 リムルに頼まれ、俺は無限収納から、ジクウドライバーとジオウライドウォッチを取り出して、ジクウドライバーを腰に装着する。

 そして、ジオウライドウォッチのウェイクベルゼを回しライドオンスターターを押す。

 

ジオウ!

 

 ジオウライドウォッチを起動した後、D‘9スロットにライドウォッチをセットし、ライドオンリューザーを押す。

 背中に大小の時計が浮かび上がる。

 そして、変身ポーズを取って、叫ぶ。

 

リアム「変身!」

 

 そう言って、ジクウサーキュラーを一回転させる。

 

ライダータイム!

仮面ライダージオウ!

 

 すると、黒のボディースーツに、『グラフェニウム』という金属で形成された銀色のプロテクターが装着され、顔には、マゼンタのライダーという文字が出る。

 これが、仮面ライダージオウだ。

 すると、リムルは興奮する。

 

リムル「おおお!本当に仮面ライダーになった!」

リアム「だろ?」

 

 そう言って、俺は変身解除する。

 そうして、移動を再開する。

 ちなみに、気になって時之歴史に聞いてみた。

 

リアム『なあ、他の仮面ライダーには、変身出来るのか?』

知恵之実『解。ゲイツとツクヨミのウォッチは生成済みで、共鳴した者が変身できます。ただし、ウォズに関しては、適合者がいる為、不可能です。他の平成ライダーには、ウォッチが共鳴するか、特定の条件で変身出来ます。』

リアム「なるほど。」

 

 俺とリムルは、進んでいく。

 その際に、魔鉱石やヒポクテ草を回収したりした。

 何か、使えそうな気がしたからな。

 魔物と全く遭遇しなかったと言う訳でもなく、黒蛇(ブラック・サーペント)甲殻トカゲ(アーマーサウルス)、エビルムカデ、黒蜘蛛(ブラックスパイダー)巨大蝙蝠(ジャイアントバット)といった魔物と遭遇した。

 それらを倒して、リムルが捕食者で取り込んでいく。 

 だが。

 

リムル「キツいんだけど…………。」

リアム「大丈夫か?」

 

 リムルは、ぐったりとしていた。

 何せ、一部グロくなった状態で食わざるを得ないとなると、キツイだろうな。

 ちなみに、リムルは『超音波』というスキルを用いる事で、声を出せる様になった。

 ちなみに、リムルの方から、タメ口で良いと言われ、タメ口で接する事に。

 そんなこんなで先に進むと、巨大な扉が現れる。

 長い間放置されていたのか、全体的に錆び付いている。

 

リムル「ここが、出口か?」

リアム「多分な。」

 

 さて、どうしようかな。

 すると、扉が開いていく。

 しかも、人間の気配が三人する。

 俺とリムルは、即座に柱に隠れる。

 

盗賊「ふう、やっと開いたでやす。鍵穴も錆び付いていて、ボロボロでやすよ。」

剣士「仕方ねぇって、300年誰も入っていないんだろ?」

魔法使い「いきなり魔物に襲われたりしないですよね?………まぁ、いざという時は『強制離脱(エスケープ)』使いますけど。」

 

 そう話していた。

 話してみたいのは山々だが、今の俺は、人間みたいな見た目だけど、大丈夫か?

 

盗賊「じゃあ、アッシの技術(アーツ)、『隠密』を発動しやすよ。」

リアム(隠密?)

 

 盗賊風の男がそう言って、両手の拳を合わせると、彼らの姿が見えなくなった。

 ただ、奥へ進んでいくのは分かった。

 何せ、足跡はそのまま残っているのだから。

 

リアム「へぇ。あんなのあるんだ。」

リムル「全く、けしからん奴だ!後で友達になる必要があるな。」

リアム「………お前、何する気だよ。」

 

 俺が呆れる中、あの三人は奥へと進んでいた為、その隙に外へと出る。

 若干、勘付かれた気がするが、気のせいだろう。

 それにしても、久しぶりの外は、気持ちいい物だ。

 俺たちは、周囲の散策を行う。

 その間に、リムルは発声練習をしていた。

 俺は、周辺に生えている果物とかを食べていた。

 外に出てからは、魔物に襲われていない。

 一回だけ、魔物が来た事があるのだが。

 

リムル「カキノキ、クリノキ、カキクケコ。」

リアム「美味いな。」

 

 すると、五体の狼の魔物が来たのだ。

 

狼「グルルル………。」

リムル「あ?」

リアム「何の用だ?」

 

 そう聞くと、狼達は一目散に逃げ出す。

 何だったんだろうか。

 そんな感じに、周囲を彷徨っていると、目の前にゴブリンの一団が現れる。

 どうやら、面白おかしいエピソードを早速用意出来そうだ。

 すると、リーダーのゴブリンが話しかける。

 

ゴブリン「グガ、つ………強き者達よ、この先に何かようですか?」

リアム「強き者達?」

リムル(それって、俺たちの事か?)

 

 俺とリムルが自分を指差すと、ゴブリンは頷く。

 すると、リムルが喋ろうとする。

 

リムル「えーっと、初めまして。」

リアム「!?」

ゴブリン「ヒイイイイイイィィィ!!!」

リムル「俺はスライムの、リムルと言う……。」

リアム「リムル、ストップ!」

 

 俺は、爆音を鳴らすリムルを止める。

 ゴブリン達は、すっかり萎縮してしまった。

 

ゴブリン「貴方様の力は十分理解しました!どうかお声を鎮めてください!」

リムル「あれ?思念が強すぎたか?」

リアム「アレは、ヴェルドラ並みだったぞ。」

 

 そうして、リムルは思念を抑えて、俺と共にゴブリン達の話を聞く事に。

 曰く、どうやら強力な魔物の気配が近づいてきたから、警戒に来たようだ。

 その強力な魔物というのが、俺たちの事だろう。

 

ゴブリン「強き者達よ、貴方達を見込んでお願いしたい事があります。」

「「お願い?」」

 

 俺たちは、ゴブリン達が住む村へと案内された。

 村…………といっても、集落というのが近いが。

 ヴェルドラの鼻息だけで吹き飛びそうな気がする。

 俺たちは、村長から話を聞く事に。

 

村長「初めまして、私はこの村の村長をしています。」

リアム「初めまして。」

リムル「俺たちにお願いとは、何ですか?」

 

 リムルがそう聞くと、村長と先ほどのゴブリンが頷き合い、訳を話し始めた。

 

村長「実は最近魔物の動きが活発になっているのですが、ご存じでしょうか?」

リアム「………活発になってるのかな?」

リムル「さあ………?」

村長「我らの神が、一月程前にお姿をお隠しになったのです。その為に近隣に住む他の魔物達が、この地にちょっかいを出すようになったのです。」

リアム(あれ?何か、嫌な予感がする。その神って………ヴェルドラだよね?)

 

 アイツ、魔物除けになってたのか。

 という事は、俺たちが元凶って事になるよな。

 悪い事をしたな。

 

村長「我々も応戦をしたのですが、戦力的に厳しく………。」

ゴブリン「それで、貴方達に!」

リムル「力を貸してほしいと………。でも俺スライムなんで、期待に添えるかどうか?」

リアム「俺も、生まれたばかりだから、あまり期待出来ないですよ。」

村長「ハハハ、ご謙遜を。」

ゴブリン「ご謙遜を。」

「「ん?」」

 

 どういう事?

 俺だって、生まれたばかりだぞ。

 まあ、見た目は人間だけどな。

 すると、村長とリーダーは理由を話す。

 

村長「ただのスライムにそれだけの『覇気』は出せませんよ。さぞかし名の知れた魔物だとお見受けします。」

ゴブリン「そちらの方も、それ相応の『覇気』を感じるので、相当なお力を持った魔物とお見受けします。」

リアム「え?」

 

 気になった俺は、時之歴史に頼む。

 

ルーク(時之歴史。第三者視点に切り替え。)

時之歴史『了。』

 

 そう言って、第三者視点に切り替わると、俺とリムルから、膨大な魔素が漏れ出ている事が分かる。

 え。

 

リアム(これが原因か!通りで、洞窟を出てから、魔物に襲われないわけだ!!)

 

 これ、前世で言うところの、社会の窓を全開にして歩いている様な物だぞ!

 やっべぇ。

 すると、リムルが芝居がかった言葉を言う。

 

リムル「………フッ、さすが村長。わかるか?」

リアム「おい?」

 

 何とか、魔力を引っ込める事に成功した。

 ゴブリン達は、自分達を試していたと誤解している様だ。

 まあ、そっちの方が都合が良い。

 ていうか、あの三人は、よく俺たちに気付かなかったな。

 村長曰く、この地に牙狼族が襲ってきたのだ。

 本来、狼一匹につきゴブリンの戦士が十人がかりで相手をしても、勝てるかどうか分からない程の強さらしい。

 その戦いで多数のゴブリンの戦士が、討死した。

 この村には、名持ちの守護者のようなゴブリンがいたが、そのゴブリンも討死し村は危機に瀕している。

 

村長「牙狼族は全部で百匹程度です。」

リムル「………こっちの戦力は?」

村長「戦えるものは雌も含めて六十匹程です。」

 

 絶望的な戦力差だ。

 さて、どうしたものか。

 一つ、気になった事があるので、聞いてみる事に。

 

リアム「なあ。その名持ちのゴブリンは、勝てないと分かっていながら、戦ったのか?」

村長「いえ、牙狼族の情報は………その戦士が命懸けで知らせてくれた物なのです。その戦士は………私の息子で、これの兄でした。」

リアム「…………ごめん。少し、配慮が足りなかったよ。」

 

 勝てないと分かっていても、仲間の為に情報を集めたのか。

 家族や仲間の為に。

 すると、リムルが口を開く。

 

リムル「………村長、仮に俺達がお前達を助けるとして、見返りはなんだ?お前達は、俺達に何を差し出せる?」

「「……………。」」

リアム「リムル…………。」

 

 言いたい事は分かる。

 無償の助けは、後に俺達を苦しめてしまう事になる。

 だからこそ、体裁を整える必要があるのだ。

 すると、村長とリーダーは、口を開き、深く頭を下げる。

 

村長「…………我々の忠誠を捧げます!我らに守護をお与えください!さすれば我らは、お二人に忠誠を誓いましょう。」

ゴブリン「誓いましょう!」

リアム(…………なんだかんだ、俺はお人好しだな。)

 

 俺は、人から頼まれると、断りきれない性格だったのだ。

 それに、今の俺は、仮面ライダージオウでもあるんだ。

 困ってる民は、放ってはおけない。

 すると、狼の遠吠えが聞こえてくる。

 恐らく、件の牙狼族だろう。

 村長とリーダーは、怯える仲間達を落ち着けようとする。

 俺は、リムルに話しかける。

 

リアム「どうする?リムル。」

リムル「そうだな。」

リアム「助けるぞ。」

リムル「ああ。」

 

 俺たちは、外へと出る。

 

リムル「怯える必要はない。」

リアム「そうだよ。これから倒す相手だし。」

村長「では………!」

リムル「ああ。お前達のその願い、暴風竜ヴェルドラに代わり、このリムル=テンペストと。」

リアム「リアム=テンペストが聞き届けよう!」

 

 俺たちがそう言うと、感極まったのか、その場にいるすべてのゴブリンが、頭を深く下げる。

 

村長「我らに守護をお与え下さい!さすれば、今日より我らは、貴方様方の忠実な僕です!」

 

 そうして、俺とリムルは、ゴブリン達の守護者になる事になった。




今回はここまでです。
総悟改め、リアムは、リムルと共に、ゴブリン達の守護者となりました。
次回は、牙狼族との戦いです。
アウトサイダーズで、滅と西馬ニコが出てくるとは。
驚きですね。
滅も、デザストと同様に、財団Xによって、蘇った感じですかね。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
この小説で、アナザーライダー、タイムジャッカーを出すかどうかで悩みますね。
まあ、アナザーライダーを出すなら、アナザージオウの変身者は、リアムと関係している人にするかもですが。
どうするのかは、考えていきます。


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第2話 ゴブリン村での戦い

 こうして、ゴブリン村の守護者となった俺たちは、牙狼族の襲撃に備える事に。

 まずは、広場にゴブリン達を集めた。

 こちら側の戦力を確かめていたのだ。

 

リムル(牙狼族との戦いには、あまり期待できそうにないな。)

リアム(これが、こちら側の戦力か………。貧弱そうだし、装備もボロボロだ。)

 

 俺がそう分析する中、リムルはゴブリン達を鼓舞していた。

 次は、負傷者の元へと案内させた。

 

村長「できる限りの手当てを施したのですが………。」

 

 村長がそう言う中、俺とリムルは、ゴブリン達の容態を見る。

 全員、まるで鋭い牙や爪で引き裂かれたような傷跡が、包帯の隙間から見える。

 なら、回復薬を使うべきだろう。

 

リアム「リムル。」

リムル「ん?」

リアム「俺が半分に回復薬を使うから、もう半分は頼むわ。」

リムル「おう。」

 

 まずは、回復薬の効能を確かめる為に、一人のゴブリンにかける事にする。

 だが、取り出したのは、極薄の膜で覆われたキラキラ輝く水で、どうやってかければいいのか分からないので、時之歴史に聞いてみる。

 

リアム(時之歴史。これ、どうやってかければ良いんだ?)

時之歴史『解。そのまま、膜が破れるまで押し続けて下さい。』

リアム(分かった。)

 

 言われた通りに、目の前で横になっているゴブリンに回復薬を押しつけてみる。

 すると、膜が破れ、中身の回復薬がゴブリンに浴びせられる。

 すると、重傷だった傷が、あっという間に治っていく。

 

ゴブリン「あ………あれ?」

村長「おおお!!傷が塞がっている!?」

リムル「おー!やってみるもんだな!」

リアム「ああ。他のゴブリン達も治そう。」

 

 俺とリムルは、半分に分かれて、ゴブリン達を治していく。

 ただ、リムルは一度ゴブリン達を捕食して、自分の体内で回復薬をぶっかけて、それが終わったら体内から吐き出していたのだが。

 しかも、その吐き出し方が雑で、ゴブリン達は顔から地面にキスをするハメになるのだった。

 

リアム「リムル。流石にもうちょい丁寧に出してやれよ。」

リムル「まあ、良いじゃん。治ったんだし。」

村長「さ、流石は、リムル様にリアム様……!ハハーッ!」

 

 そう言って、ゴブリン達は、頭を下げる。

 次は、村の防備だな。

 一応、村の周囲に、柵を建てさせた。

 とはいえ、元は丸太なので、強度に若干の不安があるが、時間が無いのだ。

 仕方ない。

 その代わりに、リムルは、黒蜘蛛から手に入れたスキル『粘糸』を使い、補強する。

 俺は、作戦を立てて、皆に伝える。

 こうして、夜になるまでに、出来る限りの事はした。

 俺とリムルは、ゴブリン達に作戦を伝えた。

 その夜、遂に牙狼族が現れた。

 見張りをしていた丸顔のゴブリンが叫ぶ。

 

ゴブリン「あ!き、来たっ!来たっすよ!牙狼族っす!!」

 

 その言葉に、ゴブリン達に緊張が走る。

 

リアム「さて。リムル、行けるか?」

リムル「誰に聞いてんだ。それに、そっちこそ、仮面ライダーで行くのか?」

リアム「いや。変身しないで行く。どうにかなるだろ。」

リムル「そうだな。」

 

 そんな風に話していると、牙狼族は、柵や俺たちに気付いたのか、足を止める。

 

牙狼長「ふん!あのような柵などを作って、何になる。」

息子「親父殿、あの者達です。」

牙狼長「お前の言っていた強大な覇気を放っていた魔物か?下らん。ただのスライムと人間ではないか。」

リアム「お前ら。一度しか言わないから、耳の穴をかっぽじって良く聞け。」

リムル「………このまま引き返すなら何もしない。今直ぐここから去れ!」

 

 牙狼族に対して、俺とリムルはそう言う。

 だが、牙狼族の長は、怯まなかった。

 

牙狼長「フン!たかがスライムと人間の分際で偉そうに!あの柵を薙ぎ倒せ!ゴブリン達を血祭りに上げろ!」

 

 その声と雄叫びと共に、牙狼族が村に向かってくる。

 だが、村の入り口付近にまで辿り着くと、一匹、また一匹と見えない何かによって傷つけられていく。

 そして、ゴブリン達の矢によって、倒されていく。

 

牙狼長「何が起きている?………糸!?」

リアム「リムルのスキル『鋼糸』だ。」

牙狼長「貴様らの仕業か………!」

リムル「そうだ!」

牙狼長「矮小なる魔物の人間の分際で!捻り潰してくれる!」

息子「親父殿!」

 

 そう叫んで、牙狼族のリーダーが突っ込んできた。

 血がついたことで糸のトラップが露わになり、その鋭い牙で切り裂かれる。

 俺とリムルに襲ってくる。

 

村長「リムル様!リアム様!」

 

 村長がそう叫ぶが、こんな事は予想していた。

 あのトラップの欠点は、血やら水などの液体がが付くと糸の所在がバレてしまう事だ。

 リムルに頼んで、粘糸を周囲に配置させておいた。 

 すると、牙狼族の長は、空中に静止する。

 

牙狼長「くっ………!?これは………!?」

リアム「スキル『粘糸』さ。リムル、後は頼むぜ。」

リムル「ああ。『水刃』!」

 

 リムルが牙狼族の長に近づき、水刃を発動して、牙狼族のリーダーの首を切り裂いた。

 遅れて、切り口から血飛沫が噴き出す。

 血飛沫が収まると、首が落ちる。

 糸の拘束を解くと、体がそのまま倒れる。

 それを見た牙狼族達は、動揺していた。

 リムルが、そんな牙狼族達に問いかける。

 

リムル「聞け!牙狼族達!お前達のボスは死んだ!選ばせてやる。服従か、死か!」

リアム「リムル、選択肢に逃走を入れないと、アイツらが逃げないぞ。」

リムル「あっ。」

 

 そう、服従か死だと、逃走する事が出来ない。

 『服従するくらいなら、死を選ぶ!』とか言って襲ってきそうだしな。

 

リムル「う〜ん………。あっ!捕食!」

 

 リムルは、死んだ牙狼族の長の死体を捕食する。

 そして、死んだ牙狼族の長に擬態する。

 

リアム(おお。何か、あっちの牙狼長よりも、迫力があるなぁ。)

リムル「ククク、仕方がないな。今回は見逃してやる。我に従えぬというのなら、この場から去る事を許そう!アオオオーン!!」

 

 そう言って、咆哮を出す。

 牙狼族とゴブリン達が怯える。

 これで、逃げてくれたらありがたいんだけどな。

 だが、予想とは裏腹に、牙狼族は少しずつ近づいていく。

 これは、どうするべきかと思案していると、牙狼族は、伏せの姿勢をとる。

 

牙狼族達「我ら一同、貴方方に従います!」

「「……………え?」」

リムル(………逃げてくれてよかったのに?)

リアム(こうなるとは………。)

 

 まさかの全面降伏。

 俺とリムルは、戸惑う。

 まあ、牙狼族のリーダーがやられた時点で、戦意が大分弱くなったからな。

 村長が、戸惑う様に俺たちに聞いてくる。

 

村長「か………勝ったのですか?」

リムル「………あ〜、そうだな。」

リアム「まあ、平和的に解決したのなら、それで良いんじゃ無い?」

リムル「そうだな。」

 

 それを聞いたゴブリン達は、歓喜の声を上げる。

 こうして、呆気なく戦闘が終結したのだった。

 翌日、広場にゴブリンと牙狼族を集める。

 俺とリムルは、思念伝達で、話し合っていた。

 

リムル(なあ、どうする?)

リアム(まあ、俺たちが面倒を見るしかないだろ。)

リムル(そうだよなぁ………。どっちも、同じくらいだな。)

 

 俺は、ゴブリンと牙狼族に声をかける。

 

リアム「は〜い、注目!」

 

 その言葉に、ゴブリンと牙狼族は俺たちに注目する。

 

リムル「え〜っと、これから皆んなにはペアを組んで、一緒に過ごしてもらう。」

ゴブリン達「ペ………?」

牙狼族「ア………?」

リムル「意味は分かるか?」

村長「リムル様、リアム様、ペ、アとは何でしょう?」

リアム「まあ、簡単に言えば、二人一組で組んでくれ。」

 

 俺がそう言うと、ゴブリン達と牙狼族は、それぞれペアを組む。

 しばらくすると、ペアを組み終えた様だ。

 

リムル「昨日の敵は今日の友!これからはお互いに協力し合い、共に生きてくれ。」

リアム「誰かが困っていたら、お互いに助け合ってやれ。」

『はい!』

 

 俺とリムルの言葉に、ゴブリン達と牙狼族は頷く。

 俺たちは、これからの方針を話していく。

 

リアム「まず、これから重要になるのは、衣食住だ。」

リムル「その三つは、欠かせないからな。それじゃあ………。なあ、お前達、名前は何だ?」

 

 リムルが、村長にそう聞く。

 村長は、リムルの質問に答える。

 

村長「普通魔物に名前はありません。名前が無くとも意思の疎通は出来ますからな。」

リムル「そうか………。」

 

 まあ、それもそうか。

 だが、俺とリムルは、元々人間だ。

 名前がないと、どうも落ち着かない。

 

リムル「よし!今からお前達に名前をつけよう。」

 

 リムルがそう言うと、この場にいるゴブリンと牙狼達が、信じられないと言う感じでリムルを見てきた。

 え、何か驚く事があったか?

 村長が、驚いた様に尋ねてくる。

 

村長「名前!?よろしいのですか?」

リムル「あ、ああ………。」

 

 リムルがそう答えると、今度は歓声が上がった。

 ゴブリンの村長なんか、御老体なのに喜びを体全体で表している。

 名前をつけるだけでだ。

 

リムル『なあ。何で、名前をつけるだけで、こんなに喜んでんだ?』

リアム『さあ…………?』

 

 そうして、リムルはゴブリン達に名付けをしていく。

 まずは、村長からだ。

 

リムル「そうだな………。村長には………そう言えば、息子はなんて名前だったんだ?」

村長「リグルです。」

リムル「リグルか………。よし、村長今日からお前はリグルドだ。」

 

 村長は、リグルドという名前になって、リグルドが光った。

 これは、ヴェルドラに名前をつけてもらった時にも見た光だ。

 村長改めリグルドは、感激のあまり泣いていた。

 

リグルド「あ!有難う御座います。リグルド、感激です!」

リムル「お、おう。それで、弟のお前は、兄の名を継いでリグルを名乗れ。」

リグル「はい!」

リグルド「息子にリグルの名を継がせていただき、感謝します!」

「「ハハー!!」」

 

 リグルドとリグルは、頭を下げる。

 名前をつけるだけで、こんなになるか?

 その後も、名付けは続いていく。

 

リムル「お前は………ゴブタ。」

ゴブタ「はい!有難う御座います!」

リムル「ゴブチ………ゴブツ………ゴブテ………お前はゴブゾウな。」

 

 おい、名付けが適当になってきていないか?

 まあ、こんなに居るから、適当になってもしょうがないだろうけど。

 途中、リグルドがリムルに質問をして、離れた。

 

リムル「お前は………ハルナ。」

ハルナ「はい!」

 

 そんなこんなで、リムルは、ゴブリンの名前を付け終えた。

 次は牙狼族だが、凄い尻尾を振っている。

 

リアム(あの様子を見る限り、牙狼族は、俺たちに恨みは抱いていないみたいだな。)

 

 リムルは、牙狼族の長の息子に、『嵐牙』という名前を付けると、異変が生じる。

 

リムル「ぐ!か………体が………うごか………なく………。」

嵐牙「リムル様!」

リアム「どうした!?」

 

 皆が駆け寄る中、リムルはただのスライムとなってしまった。

 どういう事だ!?

 すると、時之歴史が教えてくれた。

 

時之歴史『解。個体名、リムル=テンペストの魔素残量が一定値を下回った事で、低位活動状態(スリープモード)へ移行した模様。完全回復の予定時刻は、三日後となります。』

リアム(どういう事!?)

時之歴史『解。魔物の名付けには、それに見合う魔素を消費します。名付けは、熟考すればするほど、魔素の消費が多くなり、直感で名付けをすると、消費する魔素は最低限で済みます。』

リアム(つまり、リムルはゴブリン達に名付けをしまくった事で、動けなくなったって事か!?)

時之歴史『是。』

 

 なるほどな………。

 悪い事をしちまったな。

 次に名付けをする事になったら、俺も手伝うとしよう。

 そうして、俺は寝る事にした。

 翌日。

 

リアム「ふわぁぁ………。よく寝た………。」

???「おはようございます!リアム様!」

リアム「ああ、おはよう…………。」

 

 誰かに声をかけられて、俺が声のした方に向きながら声をかけようとすると………ムッキムキのマッチョメンが居た。

 一瞬、誰かと思ったが、昨日のリグルドの面影が見えたので、まさかと思い、声をかける。

 

リアム「もしかして………リグルド?」

リグルド「はい!」

リアム「お前…………一体、一晩の間に何があったんだ!?」

リグルド「名前をリムル様に付けて貰ったからです!」

リアム「それだけ!?」

リグルド「名持ちの魔物になる事!それは、魔物としての格を上げ、進化する事になるのです!」

リアム「なるほど………。」

 

 ああ、だから、昨日はあんなに喜んでたんだな。

 進化する事になるからな。

 確認した所、他のゴブリンも、雄のゴブリンは『ホブゴブリン』に、雌のゴブリンは『ゴブリナ』に進化していた。

 牙狼族の方も進化していた。

 だが、名前を付けたのは、嵐牙だけの筈。

 そう思い、当の嵐牙に聞いてみると。

 

嵐牙「我々牙狼族は、『全にして個』なのです。我が新たに一族の長となり、我と同胞達の繋がりは、より強固になりました。故に、我の名が種族名のなったのです。今の我々は、牙狼族ではありません。今の我々は『嵐牙狼族(テンペストウルフ)」なのです。」

 

 つまり、嵐牙がトップになった事で、他の牙狼族も進化したという事だ。

 嵐牙の変化は凄まじく、昨日は2m程だった大きさが、今は5mくらいの大きさになっている。

 あと、頭に一本の角が生えている。

 

リアム「………こりゃ、リムルが起きたら驚きそうだな。」

 

 俺は、そう呟く。

 二日後、リムルが復活した訳だが、進化した村の住人を見て、俺と同様に驚くのだった。

 その後、今後のルールについて話す事になった。

 だが…………。

 

リアム「リムル………その付け髭は何だ?」

リムル「フッ。分かるだろう?リアム君。」

 

 リムルは、そのネタをやったが、誰も分かってくれなかったので、すぐに付け髭を外した。

 改めて、話す事に。

 

リムル「知っての通り俺たちは大所帯になった。そこでレイトと話し合いで、なるべくトラブルを避けるためルールを決めた。」

『ルール?』

リアム「ああ。そのルールは3つ。一つ、人間を襲わない事。二つ、仲間内で争わない事。三つ、進化して強くなったからと言って他種族を見下さない事。これらを最低限守って欲しい。何か質問はあるか?」

 

 その言葉に、周囲はどよめき出す。

 まあ、それもそうか。

 すると、リグルが手を上げる。

 

リグル「はい。」

リアム「どうぞ、リグル。」

リグル「何故人間を襲ってはいけないのですか?」

リグルド「リムル様とリアム様が決めたことを!」

リアム「いや、今は質問を受け付けている。リグルの疑問も、尤もだ。」

 

 リグルの言葉に、リグルドが威圧をかけるが、すぐに俺が制する。

 リグルは、俺たちの話をよく聞いていたのだからこそ、この疑問が出たのだろう。

 

リムル「その質問の答えは、俺がやるよ。簡単な理由だ。俺達が人間を好きだからだ。以上!」

リグル「成る程!理解しました!」

 

 すぐに理解するな。

 まあ、そっちの方がありがたいけど。

 

リムル「えっと、もちろんそれだけが理由じゃない。人間は集団で生活をする、襲われたら彼らも抵抗する。数で押されたら敵わないだろ?」

リアム「だから、人間には、こちらからは手出し禁止。仲良くなる方が、何かと良いしな。」

 

 その言葉に、全員が頷く。

 次に、ゴブタが手を上げる。

 

ゴブタ「はい!」

リムル「はい、ゴブタ君!」

ゴブタ「他種族を見下さない………というのは?」

リアム「ああ。君達は進化して強くなった。だからって、他種族を見下してはいけない。もし、他種族が強くなったら、手痛いしっぺ返しを受けるからな。」

ゴブタ「分かりました!」

 

 ゴブタを最後に、質問をしようとする人は出なくなった。

 全員が納得してくれたみたいだな。

 

リアム「まあ、こんなとこだ。」

リムル「村長、リグルド。お前をゴブリン・ロードに任命する。村を上手く治めるように。」

 

 すると、リグルドは涙を流し始める。

 

リグルド「ははぁ!!身命を賭してその任を引き受けさせて頂きます!」

リムル「うむ、任せたぞ。」

 

 そうして、ゴブリン達と嵐牙狼族に、役割分担をする事にした。

 村の周囲を警戒する、警備班。

 食料調達をしてもらう、狩猟班。

 村の整備や拡張などをやってもらう、整備、開拓班。

 あと、それらを纏めて報告してもらう、調停役。

 その内、警備と狩猟に関しては、特に問題が無さそうだった。

 だが、目下の問題としては、衣食住の衣と住だ。

 ゴブリン達の技術では、とてもじゃないが、家とは呼べない。

 

リムル「家と呼ぶには程遠いな。」

リグルド「お恥ずかしい話です………。」

リアム「いや、リグルド達が悪い訳じゃないから。専門の知識が無いと、こればっこりは厳しいよね。」

 

 俺は、リグルドを励ます。

 思念伝達にて、リムルとどうするのかを話し合う。

 

リアム『リムル、どうする?』

リムル『俺、前世ではゼネコン勤務だったから良し悪しは分かるが、流石に指導出来る程の技術は持ってない。』

リアム『う〜ん………。あ、そうだ。』

 

 俺は、一つ気になった事があり、リグルドに聞いてみる事に。

 

リアム「なあ、リグルド。この手の専門家に、心当たりはないか?」

リグルド「そうですな………。これまで、何度か取引した事があり、住居の事だけでなく、衣服の事についても、知ってるやもしれません。」

リアム「その取引相手は?」

リグルド「ドワルゴンに住む、ドワーフ族です。」

リムル「ドワーフ!」

 

 その単語には、聞き覚えがある。

 ドワーフとは、建築が得意な種族だ。

 確かに、ドワーフなら適任かもな。

 という事で、俺とリムルは、ドワルゴンに行った事があるというゴブタと、リグルの他数名と嵐牙狼族を連れて、ドワルゴンに向かう事にした。

 ちなみに、俺も同行する理由としては、そこまで活躍していないからだ。

 名付けはリムルに任せてしまったので、少しは手伝いたいからだ。




今回はここまでです。
嵐牙達が仲間になり、仲間が増えてきました。
まあ、この時に決めたルールが、後に自分たちを苦しめる事になるとは、思ってもいませんが。
次回は、ドワルゴンに向かいます。
ディケイドアーマー、ジオウII、ジオウトリニティ、グランドジオウ、オーマジオウ、オーマフォームは、どのタイミングで出しましょうか?
ウォズも出す予定ですが、どのタイミングで出しましょうか?
リアムの運命の人は、まだ決まっていません。
感想、リクエストは、絶賛受け付けています。
リクエストは、活動報告にて受け付けます。


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第3話 ドワーフの王国にて

 俺たちは、アメルド大河に沿って、ドワーフの王国へと向かう事になった。

 その際に、嵐牙狼族に乗り、ドワーフの王国を目指していた。

 嵐牙達のスピードは異常に速く俺はリムルと同様に『粘糸』を使って固定していた。

 そうしないと、振り落とされる恐れがあるからだ。

 一瞬ゴブタの方を見たら、顔がスゴいことになっていた。

 まあ、何とか耐えてくれ。

 ちなみに、リムルは俺の前に座っていた。

 嵐牙には、俺とリムルの二人を一緒に乗せて申し訳ないと謝った。

 嵐牙は。

 

嵐牙「いえ!お気になさらず!」

 

 そう言ってくれた。

 しばらく進んで、夕方になったので、一旦休憩する事に。

 その際、俺とリムルは気になる事があったので、リグルに質問をする。

 

リムル「なあリグル、君のお兄さんは誰に名前を貰ったんだ?」

リグル「はい!兄はゲルミュッドという魔人に名前をもらいました。」

リアム「ゲルミュッド?」

リグル「はい。魔王軍の幹部で、見どころがあるから、と。」

リアム「そのお兄さんは、進化してたのか?」

リグル「いえ、今の我々ほどの変化はありませんでした。」

 

 どうやら、名付けによって進化するのだが、それは、名付け親によっては、どの程度か変わってくるのだろう。

 それにしても、魔王軍か。

 

リアム(この世界にも存在するのか。俺たち、人間から敵視されないよな?)

 

 どっちにせよ、関わると面倒な事になりそうだな。

 極力、関わらない様にしないと。

 リムルは、嵐牙の方へと向かっていった。

 気になる事があるそうだ。

 その間、俺は考えていた。

 現状、変身出来るのは、俺だけだ。

 もしかしたら、他の仮面ライダーに変身する人が現れるかもしれない。

 翌日、再び嵐牙達に乗って、先へと進んでいく。

 その夜、俺たちが肉を食べてる中、リムルはゴブタに質問をする。

 

リムル「そういえばゴブタ、ドワーフの王国ってどんなところだ?」

ゴブタ「ハッハイッス、正式には『武装国家ドワルゴン』と言うっす。天然の大洞窟を改造した美しい都っすよ。ドワーフだけでなく、エルフや人間も多いことで有名っす。」

リムル「エルフ!」

リアム「………エルフか………。」

 

 俺が突然エルフの名前を叫んだリムルと同じ事を考えていると、ゴブタは言葉を紡ぐ。

 

ゴブタ「ドワーフ王、ガゼル・ドワルゴは、英雄王と呼ばれる人物で、国民からも慕われてるんす。」

リアム「でも、ドワルゴンって、魔物の俺たちが入っても大丈夫なのか?俺の見た目は、人間だけど。」

リグル「その心配はいりません。ドワルゴンは中立の自由貿易都市。王国内の争いは、王の名に於いて禁止されております。」

リアム「へぇ…………。」

リグル「それを可能としているのは、武装国家ドワルゴンの強大な軍事力です。この千年、ドワーフ軍は、千年無敗なんです。」

リアム「千年………。」

 

 なるほど、その軍事力があるから、ドワーフ王の不興を買おうとするアホは少ないって事なのか。

 すると、妄想から復活したリムルが、口を開く。

 

リムル「じゃあ、自分からちょっかいを出さなければ、大丈夫かな。」

ゴブタ「自分が行った時は、門の前で絡まれたっすけど………。」

リグル「トラブルなんて、起こらないですよ。」

 

 おい、今、フラグが立ったぞ。

 ものすごく嫌な予感がするぞ。

 時之歴史曰く、ライドウォッチが共鳴した人が、その仮面ライダーに変身出来るそうだ。

 ただ、ウォズに関しては、既にこの世界に居るらしい。

 まあ、使うかどうかはよく分からないが、持ってても損はないだろう。

 翌日、俺たちは、武装国家ドワルゴンへと到着した。

 本来、徒歩だと2ヶ月はかかるのだが、嵐牙達のおかげで、3日で走破した。

 その後、ドワルゴンには、俺とリムルが、案内役としてゴブタを連れていくことを言った。

 

リグル「る、留守番………ですか?」

リアム「悪いな。流石に大勢で行っちゃうと、悪目立ちするからな。」

リムル「ここから先へは、俺とリアムと案内役としてゴブタを連れて行く。」

リグル「しかし………。」

ゴブタ「大丈夫っすよ!」

嵐牙「我が主人達………。」

リアム「心配すんな。」

 

 そうして、リグル達は、俺たちを見送ってくれた。

 俺たちは、ドワルゴンに入る為の列に並ぶ。

 

リムル「ずいぶん厳しいチェックだな?」

ゴブタ「ハイっす、でも中に入った後は自由に動けますけどね。」

リアム「そうか。」

 

 すると、背後から声が聞こえてくる。

 

冒険者「おいおい!」

「「「ん?」」」

冒険者「魔物がこんな所に居るぜ。」

冒険者「まだ中じゃねぇし、殺しても良いんじゃねぇの?」

 

 うわぁ、フラグ回収しちゃったよ。

 さて、どうにかしますか。

 

リアム「ゴブタ。」

ゴブタ「はっ、はいっす!」

リアム「俺とリムルがどうにかするから、ゴブタは後ろを向いててくれ。」

ゴブタ「はいっす!」

リアム「リムル、前に出るぞ。」

リムル「ああ。」

 

 俺とリムルは、前に出る。

 少し、挑発するとするか。

 

リアム「おい、そこの三下冒険者ども。」

冒険者「さ、三下!?」

リアム「俺たちを甘く見ない方が良いぞ。」

冒険者「いや、片方スライムだろうが!」

リムル「ククク………。いつから俺がスライムだと勘違いしていた?」

冒険者「違うってんなら、さっさと正体を見せな!」

リムル「見せてやろう!この俺の真の姿(嘘)を!」

 

 すると、リムルが黒煙に包まれ、巨大な嵐牙に似た嵐牙狼族になる。

 

リアム(アレって、嵐牙狼族(テンペストウルフ)か?)

時之歴史『否。アレは、黒嵐星狼(テンペストスターウルフ)です。』

リアム(え?何か進化してるし。)

 

 冒険者は、逃げるかと思ったが、逃げなかった。

 

冒険者「どうせ、大した事ないだろ。」

冒険者「おい!お前らも来い!五人でやっちまうぞ!」

リアム(仲間増えた!)

 

 そして、その五人が、俺たちに攻撃を仕掛けてくるのだが、ダメージは無いが、ウザい。

 ちなみに、俺は躱している。

 すると、リムルがイラついたのか。

 

リムル「お前ら、良い加減にしろ!!」

 

 スキル、威圧を発動して、冒険者をビビらせて逃そうとしたが、冒険者は気絶して、後ろの方を見ると、関係ない人たちも巻き込まれていた。

 俺とリムルは、事の重大性に気付き、思念伝達で話し合う。

 

リムル『なあ、リアム。これ、やらかしちゃったかな………。』

リアム『絶対、やらかしただろ………。』

時之歴史『威圧の効果を報告します。逃走20名、錯乱74名、失神98名、失禁38名。』

リアム(いや、今は報告してる場合じゃないから………。)

兵士「こらー!そこのお前らー!!」

リアム(ゲッ………。)

 

 すると、ドワーフの兵士が、俺たちの元にやって来る。

 すぐにリムルは擬態を解除する。

 

兵士「………スライムに、人間?」

「「…………テヘペロ!」」

 

 俺たちはそんな対応をするが、投獄されてしまった。

 リムルは、スライムという理由で、樽にぶち込まれた。

 俺とリムルは、カイドウというドワーフに事情を説明する。

 

リアム「…………という訳で、俺たちは喧嘩を売ってきた奴に、その喧嘩を買っただけです。」

リムル「うるさくして、すんませんした!」

カイドウ「うん、まあ目撃者の証言と完全に一致するな。」

 

 どうやら、理解してくれた様だ。

 すると、カイドウの部下が入って来る。

 

部下「隊長、大変だ!鉱山でアーマーザウルスが出て、鉱山夫が何人も怪我を負ったそうだ!」

カイドウ「何だと!で、アーマーザウルスは?」

部下「そっちは討伐隊が向かったから大丈夫!けど怪我が酷い上に、回復薬も戦争の準備の為とかで殆ど備蓄がない!」

カイドウ「回復術師は?」

部下「それが討伐隊と一緒に行って見習いしか…………。」

カイドウ「くそ!」

 

 どうやら、大変な事になったらしいな。

 俺とリムルは、話し合う事にした。

 

リアム『なあ、どうする?』

リムル『俺たちの回復薬を提供するか。』

リアム『だな。』

 

 リムルは、牢屋から出て、カイドウに話しかける。

 ちなみに、俺はリムルが入っていた樽に、リムルから預かったのと俺が作った回復薬を入れていた。

 

リムル「旦那、旦那。」

カイドウ「あっ!おい!何勝手に出てんだお前!」

リムル「まあ、まあ、それどころじゃないんでしょ?これ、必要じゃないですかね。」

 

 リムルが、俺が入れた回復薬が入ってる樽を指差す。

 

カイドウ「それは?」

リムル「俺たちが作った回復薬だ。」

リアム「飲んで良し、かけて良しの優れものだ。」

 

 俺たちは、そう言う。

 まあ、ヒポクテ草から抽出された100%のポーションだ。

 効果はあるだろう。

 カイドウは魔物からの提供物を信じて良いのか、悩みながらみていた。

 だが、すぐに牢の中に入り、樽の蓋を勢いよく叩き閉め担いだ。

 

部下「隊長マジですか?そいつら魔物ですよ!?」

カイドウ「うるせぇ!さっさと案内しろ!お前、牢の中で大人しくしてろよ。」

リムル「ああ。」

 

 そうして、カイドウは出て行った。

 俺たちは、暇潰しをしていた。

 といっても、粘糸であやとりをしたり、いつまでも寝ているゴブタを宙吊りにしたりしただけだが。

 ていうか、ゴブタの奴、随分と図太いな。

 しばらくすると、カイドウが、三人のドワーフを連れて戻ってきた。

 

カイドウ「助かった!ありがとう!!」

リアム「いえ、当然の事をしただけです。」

ドワーフ「イヤ!あんたらがいなかったら死んでた!ありがとう!」

リムル「いえいえ!」

ドワーフ「今でも信じられんが千切れかけてた腕が治ったよ!」

リアム「良かったですね。」

ドワーフ「………ウン………ウン……ウンウン。」

((何か言えよ!))

 

 その後、俺たちは釈放され、カイドウがとある家に案内した。

 その際に、シチューとパンをご馳走になった。

 

カイドウ「それにしても、あんなすげぇ薬は初めて見たぜ。礼と言っちゃあ、何だが、俺に出来る事なら、何でも言ってくれ。」

リアム「リムル。」

リムル「ああ。それなら………。」

 

 俺たちは、食事を食べながら答える。

 それは、俺たちの村に来てくれる技術者が欲しいという事だ。

 ちなみに、その際に俺の種族が人間ではなく、時魔人(クロロノイド)という新たに生まれた種族であると話した。

 それを聞いたカイドウは。

 

カイドウ「なるほど………。そういう事なら、腕の良い鍛治師を紹介しよう!」

リムル「それは助かります!」

リアム「ありがとうございます。」

カイドウ「礼なぞ不要だ!任せとけ!」

 

 そうして、俺たちは1日泊まり、翌日、カイドウの案内の元、その鍛治師の元に。

 ちなみに、ゴブタは放置してある。

 いつまでも起きないから。

 カイドウに案内される中、俺たちはドワルゴンの風景を見ていた。

 やはり、ゴブリン村と比べても、随分と文明的だな。

 リムルは、所々に置いてある薄らと光ってる剣を指差す。

 

リムル「おいリアム。この剣光ってるぞ。」

リアム「本当だ。綺麗だな。」

カイドウ「あ、それそれ。今から会う鍛冶師がそれを打ったヤツだよ。」

 

 カイドウのから製作者を聞き、やがて紹介してくれる鍛冶師の店に着いた。

 

カイドウ「ここだよ。腕は保証するぜ。兄貴、いるか?」

「「兄貴?」」

 

 俺たちが首を傾げながら入ると、剣を打っているドワーフが居た。

 

???「カイドウか?少し待ってくれ。」

カイドウ「ああ。」

「「お邪魔しまーす。」」

カイドウ「カイジンだ。俺の兄貴だ。」

 

 おお、いかにも頑固一徹みたいな人だ。

 すると、奥から昨日助けた三兄弟が出てきた。

 ちなみに、カイドウさんが教えてくれて、長男のガルム、次男のドルド、三男のミルドだそうだ。

 

「「「あっ!」」」

「「あっ。」」

 

 その声に、カイジンも俺たちに気付いたのか、視線を向けてくる。

 

カイジン「………スライムに、人間?お前達、知り合いか?」

ガルム「カイジンさん、このスライムと人ですよ!」

ドルド「昨日、大怪我をした俺たちを助けてくれたのは!」

ミルド「ウンウン!」

カイジン「おお、そうだったのか!」

 

 カイジンはそう言うと、作業を止めて、俺たちの前に座って、頭を下げる。

 

カイジン「ありがとう。感謝する。」

リアム「いえ、当然の事をしたまでですよ。」

リムル「いやいやそれほどでもないよなーあるよなー………。ハッハッハッハッハ!」

カイジン「そこの兄ちゃんは、人間なのかい?」

リアム「ああ、時魔人(クロロノイド)っていう、ジュラの森で生まれた、新しい種族です。見た目は、人間ですけど。」

カイジン「なるほどな………。それで、何の用で?」

 

 俺たちは、事情を話した。

 それを聞いたカイジンは、難しい顔をする。

 

カイジン「話は分かった。だが、すまん。今、ちょっと立て込んでてなぁ………。どこぞのバカ大臣が無茶な注文をしてきてなぁ………。」

リアム「無茶な注文?」

カイジン「………戦争があるかもしれないって、ロングソードを20本。それを今週中に作れってなぁ………。まだ一本しか出来てないんだよ、材料が無くて。」

カイドウ「だったら、無理だって言って断ればよかったじゃねぇか。」

リムル「ご尤も。」

 

 カイドウの言葉にリムルが頷いていると、カイジンが少し口を荒げる。

 

カイジン「馬鹿野郎!俺だって言ったよ、無理だって!そしたら、クソ大臣のベスターが………!『おやおや、王国でも名高いカイジン様ともあろうお方が、この程度の仕事も出来ないのですか?』………なんてほざきやがるんだ!許せるか?」

 

 確かに、典型的な嫌な上司って感じだな。

 どこの世界も、人間関係ってのは、大変なんだな。

 

リアム「材料が無いって?」

カイジン「ああ。魔鉱石っつう、特殊な材料が必要なんだが………。」

ガルム「昨日、俺たちが掘りに行ったんだが………。」

ドルド「甲殻トカゲ(アーマーサウルス)が出てなぁ………。」

ミルド「ウンウン。」

リムル「なるほど………。」

 

 ていうか、ミルドの奴、本当に喋らないんだな。

 俺がそう思ってる中、ドワーフ三兄弟は、事情を説明する。

 

ガルム「どちらにせよ、あの鉱山は殆ど掘り尽くしてて………。」

ドルド「もう、残ってない様だ。」

ミルド「ウンウン。」

カイジン「しかもなぁ………例え材料があっても、20本打つのに、2週間はかかるんだよ!………なのに、あと五日で王に届けなければならない。国で請け負い、各職人に割り当てられた仕事だ。出来なければ、職人としての資格の剥奪もあり得る。」

カイドウ「兄貴………。」

 

 カイジンの言葉に、カイドウは呆然とする中、俺は、とある言葉が引っかかっていた。

 

リアム(あれ?魔鉱石って………。)

時之歴史『解。個体名リアム=テンペストと個体名リムル=テンペストが、洞窟にて集めていた鉱石です。』

リアム(ああ!あれか!)

 

 思いついた俺は、リムルと思念伝達で話し合う。

 

リアム『リムル!魔鉱石をカイジン達に渡すぞ!』

リムル『そっか!俺たち、集めてたもんな!』

 

 すると、リムルが笑い声を上げる。

 

リムル「ふっふっふっ………はーはっはっはっはっ!!」

カイジン「………?」

 

 カイジンが訝しげな表情を浮かべる中、俺とリムルは、魔鉱石もとい、魔鉱塊を取り出す。

 

リアム「親父さん、これら、使えます?」

 

 俺がそう言うと、カイジンは魔鉱塊を見つめる。

 すると、大声を上げる。

 

カイジン「………おいおい!おいおいおいおいおい!!こ、これ、魔鉱石じゃねぇか!しかも、純度が有り得んほど高いぞ!!」

 

 あまりにも珍しいのか、後ろのカイドウ、ドワーフ三兄弟も驚いていた。

 だが、更に驚く事になるだろうな。

 

リムル「おいおい、親父。アンタの目は、節穴かい?」

カイジン「ええっ?」

 

 カイジンは、目につけていたゴーグルを取り外す。

 すると、更に大きな声を出す。

 

カイジン「どわぁぁ!魔鉱石じゃない!既に加工された、魔鉱塊じゃねぇか!!」

リアム「正解。」

カイジン「更に強力な剣を作れるぞ!そんな………この塊全部が………!?こ、これを譲ってくれるのか?勿論、金は言い値で払うぞ!」

リムル「さて、どうしようかな。」

 

 そう言って、リムルは口笛を吹く。

 これも、駆け引きなのだ。

 

カイジン「く!何が望みだ?できることならなんでもするぞ?」

リムル「その言葉を、聞きたかった………。」

 

 リムルは、魔鉱塊の上に乗っかる。

 カイジンは、ジッとリムルを見つめる。

 

リムル「………誰か、親父さんの知り合いで、誰か、村まで来て、技術指導をしてくれる人を探して欲しい。」

カイジン「…………そんなことでいいのか?」

リアム「ああ。今の俺たちにとって、衣食住のうち、衣と住が必要不可欠だ。あと、衣類や武具の調達もお願いしたい。」

カイジン「…………お安い御用さ!」

 

 カイジンは、頼もしく胸板を叩く。

 だが、ガルム達が不安げな声を出す。

 

ガルム「だけど………。」

ドルド「今から剣を揃えようとなると……。」

ミルド「ウー………。」

リムル「間に合うのか?」

カイジン「…………まあ、出来るだけやってみるさ。さぁ!すぐ始めるぞ!」

「「おう!」」

ミルド「ウー!」

 

 確かに、材料はあるが、時間がない。

 どうしたもんか…………。

 すると、リムルが動いた。

 

リムル「なあ、さっき、一本だけ作ったとか言ってたけど、それを、見せてくれないか?」

カイジン「ああ。おい!」

 

 すると、ガルムがその剣を見せてくれた。

 店に飾ってあった剣と同様に、光って見える。

 

リアム「なんか、光ってるな!」

カイジン「ああ、魔鋼を芯に使ってるからな。」

リムル「ん?」

カイジン「簡単に言うと、使用者のイメージに添って成長する剣なのさ。」

 

 え、すげぇ!

 つまり、日本刀をイメージすれば、日本刀みたいになるって事か!

 だけど、リムルの奴、どうするつもりだ?

 ビルドのライドウォッチの力を使うか?

 すると、時之歴史が答えてくれた。

 

時之歴史『解。恐らく、個体名リムル=テンペストは、UQスキル、大賢者の力を使って、たくさん作ろうとしてるのかと。』

リアム『そういえば、そんなスキルがあるって、言ってたな。時之歴史(クロノヒストリー)さんは、出来るのか?』

時之歴史『解。余裕です。』

リアム『マジか………。』

 

 そんな風に時之歴史と話していると、リムルはその剣を取り込んで、あっという間に量産してみせた。

 

リムル「魔鉱塊のロングソード、20本完成だ!」

「「「「「えぇぇぇぇぇ!?」」」」」

 

 その工房に、四人の職人と一人の兵士の叫び声がこだました。

 その後、鞘をすぐに作って、カイジンはその20本を納めてきた。

 すると、カイジン達に飲みに誘われた。

 

「「打ち上げ?」」

カイジン「ああ!おかげさまで無事に納品できたんだからな!」

リムル「別に良いって………。」

リアム「困っている人が居たから、助けただけだよ。」

 

 俺とリムルが、やんわりと断ろうとすると。

 

ガルム「まあまあ!エルフの可愛い姉ちゃんが沢山いるから!」

リムル「エルフ!」

ドルド「そうそう!夜の蝶って言ってね!若い子から熟女まで!紳士御用達の店さ!」

リムル「蝶………。」

ミルド「ウンウン。」

「「喋れよ!」」

 

 そういうのって、前世で行った事がないんだけど………。

 何せ、そんなとこに行く余裕なんて無かったし。

 

カイジン「おいおい、旦那達が来ないと、始まらないぜ………。」

リムル「ま、まあ、そこまで言うなら………。」

リアム「まあ、お言葉に甘えて。」

 

 まあ、リムルは、エルフに釣られたんだろうけど、俺は、是非と言われたので、乗っただけだ。

 ただ、覚悟を決めないとな………。

 

エルフ「あら!カイジンさん、いらっしゃい!」

エルフ達「いらっしゃ〜い!」

リアム(やっぱりかぁ………。)

 

 やばい、彼女居ない歴=年齢の俺には、刺激が強すぎる!

 でも、まあ、前世で体験出来なかったし、これはこれで良いか。

 そんな感じになっていた。

 

エルフ「ちょっと、この子、かっこいいじゃない!」

エルフ「本当ね!」

 

 そんな風に、近寄ってくるのだが、胸が腕に当たってる………!

 これはこれで、悪くないかもな…………。

 ちなみに、リムルはエルフ達の胸に挟まれてご満悦だった。

 

カイジン「え〜と………。旦那方、楽しんでくれてるみたいで、何よりだ。」

リムル「………そ、そうか?」

リアム「あ、はい。」

 

 カイジンがそう声をかけるが、ドワーフ三兄弟も含めて、ニヤリと笑う。

 俺は、前世では全く縁の無かったこの店を楽しむ事にした。




今回はここまでです。
ドワルゴンへと到着しました。
そこで、カイジン達と出会います。
次回、リアムの運命の人が明らかになります…………と言いたいところですが、まだ、リアムの運命の人を誰にするのかは、決まってません。
誰にするのか、意見がある場合は、活動報告にてお願いします。
無論、その占いの際に、オーマジオウが一瞬見えるという感じにしますが。
ウォズは、どのタイミングで出しましょうか?
リムルはゲイツに変身しますが、大鬼族達がやってきた頃です。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
ツクヨミの変身者は、考えています。


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第4話 英雄王ガゼル・ドワルゴ

 俺たちは、打ち上げをしていた。

 その店に、カイジンの笑い声が響く。

 

カイジン「ナッハッハッハッ!しっかし、恐れ入ったよ。俺の渾身の一振りが、あっという間に量産されるとはね!」

リムル「カイジンのオリジナルが素晴らしかったからなぁ。俺はそれを解析して、魔鉱塊を使ってコピーしただけだ。」

リアム「………もしかして、余計なお世話でした………?」

 

 俺がそう言うと、カイジンは複雑そうな表情を浮かべる。

 そりゃあ、自分が苦労して作った物を、あっさりと量産されたら、嫌な気持ちになるだろ。

 

カイジン「………正直、思う所はあるが、今度は、旦那が真似出来ない様な物を作るってもんだ!腕が鳴るぜ!」

リアム「そうか。」

リムル「そうこなくっちゃ!ママさん、おかわり!」

リアム「俺も、お願いします。」

 

 俺とリムルは、カイジンの一言を聞いて、安心して、お酒のおかわりを頼む。

 ちなみに、果実酒の類の様で、結構美味しい。

 すると、リムルの向かい側に座っているエルフが話しかける。

 

エルフ「ねえねえ、スライムさんに時魔人(クロロノイド)のお兄さん、これやってみない?」

「「ん?」」

 

 そう言って、手を動かす。

 あの手の動きと、足元に置かれている硝子玉から察するに………。

 

エルフ「私これ得意なんだよ?結構すごいって評判なんだから。」

リムル「へ、へぇ………。」

リアム「もしかして、占いですか?」

エルフ「正解!」

 

 リムルの奴、何を考えていたんだ?

 それにしても、占いか。

 

エルフ「何を占う?」

リアム「そうだな………。」

エルフ「ねえねえ、折角だから、スライムさん達の『運命の人』を占ってみない?」

「「運命の人?」」

 

 運命の人ねぇ………。

 俺に、嫁なんて出来るとは思えないけどな………。

 まあ、聞くだけ聞いてみるか。

 すると、エルフが手を動かすと、硝子玉に何かが映し出される。

 それは、白い服を着たマントを羽織っており、子供達に囲まれた黒髪の女性が映っていた。

 見た目は、完全に日本人だ。

 

リアム『なあ、アレって、日本人だよな。』

リムル『だろうな………。』

 

 すると、カイジンが声を上げる。

 

カイジン「おい、その人もしかして………爆炎の支配者、シズエ・イザワじゃねえか?」

リムル「有名なのか?」

カイジン「自由組合(ギルド)の英雄で見た目は若い人間の娘さんだが、何十年も活躍してたんだ。今は引退して、どっかの国の若手を育てるって聞いたなあ。」

 

 シズエ・イザワ………。

 完全に日本人だな。

 漢字にすると、井沢静江か?

 恐らく、昭和の頃の日本人かもしれない。

 次に、俺の番になった。

 硝子玉に映ったのは、黒髪で長髪の女性だった。

 それを見たカイジンが口を開く。

 

カイジン「おぉ!中々の別嬪さんじゃねぇか!良かったな、リアムの旦那!」

リアム「ああ。」

 

 その人は、黒髪だったので、もしかしたら、日本人かもしれない。

 よく分からないけど。

 そんな中、リムルが口を開く。

 

リムル「なあ、まだ映像が続いてるぞ。」

リアム「え?」

 

 すると、その水晶に、見覚えがある姿が映し出される。

 一瞬だったが、それはオーマジオウだった。

 

リムル「今の……………何だ?リアムのジオウに少し似ている気が……………。」

 

 リムルがそう呟く中、俺は考えていた。

 

リアム(俺も、オーマジオウになる未来がある……………って事なのかな。)

 

 オーマジオウが映ったという事は、オーマジオウになる未来もあり得るという事だ。

 未来がどうなるのか、今はまだ分からない。

 それでも、オーマジオウになるのかどうかは、分からないな。

 すると、とある人物の声が聞こえてくる。

 

???「良いんですか?こんな所でのんびりとしてて。………カイジン殿?」

 

 すると、一人の男性がこちらを向いている。

 カイジンは、苦々しく口を開く。

 

カイジン「………大臣のベスターだ。」

リムル「アレが噂の………。」

リアム「いかにも、嫌な奴って感じだな。」

 

 確かに、アレは………嫌な奴だ。

 ベスターは、こちらに近寄ってくる。

 

ベスター「遊んでいる場合なのですかな?確か、ロングソードの納品の期限は………。」

カイジン「さっき、納めてきた。」

ベスター「期限に間に合わなければ………えっ?納めてきた?」

カイジン「ああ。きっちり、20本。」

ベスター「そ、そんな………。」

カイジン「納品書を確認するか?」

ベスター「うぅん!そうですか………。受けた仕事を期日内にやるのは、当たり前の事です。」

 

 やっぱり、無理だって分かって言ってきたのか。

 かなり動揺している。

 カイジンとベスターは、かなり仲が悪そうだよな。

 すると、今度は俺とリムルの方を見てくる。

 

ベスター「それよりも………それらですよ、それら。」

リムル「えっ………?」

リアム「ん?」

ベスター「いけませんなぁ………。こんな上品な店に、下等な魔物を連れ込むなんて………。気分が悪くなる。」

 

 だったら、そっちが出ていけば良いだろ。

 そう思ったが、相手は大臣だ。

 堪えろ………。

 ベスターは、店主に話しかける。

 

ベスター「おい、この店は、魔物の連れ込みを許すのか?」

店主「魔物といっても、無害そうですし………。」

ベスター「はぁ?魔物だろうが、違うのか?スライムは魔物と違うとぬかすのか?」

店主「い、いえ………そういう訳では………。まあまあ、大臣さん。一杯、いかがですか?」

 

 店主さんはそう言って、お酒を渡す。

 ベスターは、その酒を飲んだ………わけではなく。

 

ベスター「………フン。魔物には、これがお似合いよ。」

 

 そう言って、リムルにかけてきた。

 リムルに酒がかかるが、エルフの人の服は濡れていなかった。

 

エルフ「スライムさん!大丈夫?」

リムル「あぁ、大丈夫だよ。」

リアム「よかった。」

 

 正直、かなりイラついている。

 だが、相手はクソであっても、この国の大臣なのだ。

 下手に喧嘩を売って、カイジン達やこの店のエルフ達に迷惑をかける訳にはいかない。

 

時之歴史『果実酒。アルコール濃度、7%。』

リアム『いや、時之歴史(クロノヒストリー)さん。そんな情報は求めてないから。』

 

 突然、果実酒の解析をしだした時之歴史にツッコミを入れてると、落ち着いた。

 だが、カイジンがベスターを殴る。

 

ベスター「ぐはっ………!?」

カイジン「ベスター!俺の客達に舐めた真似しやがって!覚悟はできてんだろうな!」

ベスター「きっ………貴様………!私に対してその様な口を………!」

カイジン「黙れ!!」

ドルド「カイジンさん………!」

ガルム「程々にね………。」

リムル「顔はダメだよ、ボディだよ。」

リアム「あまりやりすぎちゃダメですよ。」

 

 俺たちがそんな風に言う中、カイジンはもう1発、ベスターを殴り、後ろにいた従者を巻き込んで倒れる。

 俺とリムルは、カイジンに話しかける。

 

リムル「良いの?そいつ大臣でしょ?」

リアム「面倒な事になりそうですけど……。」

カイジン「…………リムルの旦那に、リアムの旦那。腕の良い職人を探してるんだろう?……俺じゃあ、ダメかい?」

リムル「ええっ!?良いの!?」

リアム「カイジンさんが良いなら、こっちも大歓迎です!よろしくお願いします。」

カイジン「ああ!」

 

 だが、大臣を殴った事は、やっぱり、ただで済む筈が無く。

 カイドウ達がやって来て、俺たちは手錠をかけられ、リムルは鎖で拘束される。

 

カイドウ「兄貴、一体何やったんだい?」

 

 カイドウは、そんな風に呆れ顔で聞いて来た。

 

カイジン「………フン!そこのバカ大臣が、リムルの旦那とリアムの旦那に失礼なことをしやがるもんだから、ちぃとお灸を据えてやっただけよ。」

カイドウ「えぇ〜………。大臣相手にそれはまずいだろ。とにかく、こっちも仕事だから、裁判まで拘束させてもらうぜ。」

「「裁判?」」

 

 俺たちがそう首を傾げる中、俺たちは牢屋の中へと入れられた。

 そこには、ゴブタが居た。

 

「「ロングスリーパーかい!」」

 

 ていうか、寝過ぎだろ。

 一体、どれくらい寝てるんだ?

 そんな中、カイジンが口を開く。

 

カイジン「………俺が短気を起こしちまったばっかりに……お前達まで巻き込んじまったな。………すまない。」

ガルム「大丈夫。問題ないさ。」

ドルド「そうそう!親父さんが気にする事無いって。」

ミルド「ウンウン。」

「「喋れよ!」」

 

 やっぱり、こんな状況でも、喋らないのな、ミルドは。

 リムルが、カイジンに質問をする。

 

リムル「………俺たちは、裁判を受ける事になるのか?」

カイジン「そうなるな。まあでも、死刑にはならんさ。罰金くらいで済むだろ。アッハッハッハッ!」

リムル「なら、良いが………。」

リアム「それにしても、あのベスターって大臣、カイジンの事を、目の敵にしてるみたいだったけど………。」

 

 そう言うと、カイジンは理由を話し始めた。

 カイジンは、この国の王、カゼル・ドワルゴに仕えていて、7つある王宮騎士団の内の一つの総長だったらしい。

 ベスターは、その時の副官だったらしく、庶民出のカイジンが面白く無く、よく衝突してたらしい。

 そんな時、功を焦っていたベスターが当時進めていた計画の一つ、魔装兵計画が失敗した。

 カイジンは、全ての責任をカイジンになすりつけ、カイジンは軍を辞めさせられたそうだ。

 ドワーフ三兄弟は、カイジンを庇い、一緒に軍を辞めさせられたとの事。

 カイジン曰く、ベスターは悪人ではなく、ただ、王の期待に応えようと焦っただけとの事。

 そして、カイジンだけでなく、ドワーフ三兄弟もまた、俺たちの村に来てくれる事になった。

 そして、夜、カイジンとドワーフ三兄弟が眠った中、ゴブタが目を覚ます。

 

ゴブタ「あれ………リムル様、リアム様………。何かあったんすか………?」

リアム(呑気すぎるだろ………。)

リムル「俺たちは、ちょっと藪用があるから、このまま置いていって良いか?」

ゴブタ「…………えっ?」

リアム「抜け出したかったら、相棒の嵐牙狼族(テンペストウルフ)でも召喚するんだな。」

ゴブタ「えっ!?ちょっ!酷くないっすか!?」

リムル「安心しろ。用事が済んだら、すぐに迎えに来るから。」

 

 そう言って、リムルは粘糸を使って、ゴブタの口を塞ぐ。

 まあ、ゴブタは無関係だからな。

 巻き込むのは、酷だろう。

 そうして、二日後、裁判が始まった。

 

兵士「ガゼル・ドワルゴ王の、お入りである!」

 

 そう言って、武装国家ドワルゴンの王、ガゼル・ドワルゴが入ってくる。

 その存在感は、かなり強く、彼が強者だというのが、嫌でも伝わってくる。

 今の俺では、勝つのは厳しいだろう。

 というか、ガゼル王は、なんか俺をじっと見つめている。

 

裁判長「これより、裁判を始める!一同、起立!」

 

 そうして、裁判が始まった。

 武装国家ドワルゴンの裁判では、王の許しがない限り、当事者ですら発言は許されない。

 発言した瞬間、即有罪なんて当たり前らしい。

 冤罪も何もあったもんじゃない。

 おっかない事この上無い。

 日本と同じく、俺たちには弁護人が必要となる。

 なのだが…………。

 

弁護人「…………とこのように、店で酒を嗜んでいたベスター殿に対し、カイジン達は複数で暴行を加えたのです。」

リアム(おいおい。)

カイジン「…………買収されたな。」

リムル「あの野郎…………。」

 

 カイジンは、ベスターが悪人ではないと言っていたが、完全に悪人だろ!

 ていうか、ベスターの奴、そこまで重傷じゃないだろ。

 やっべぇ…………このままじゃ、罰金で済まなそうだ。

 ベスターが畳み掛ける様に、ガゼル王に進言する。

 

ベスター「王よ!どうか、この者たちに厳罰をお与えください!」

 

 その後、裁判長が木槌を叩く。

 

裁判長「これより、判決を言い渡す!主犯、カイジンには、鉱山での強制労働20年に処す。その他、共犯者には、鉱山での強制労働10年に処す。これにて、この裁判を閉廷!」

リアム『リムル、これ、やばくね?』

リムル『ああ。かなりまずい。』

 

 判決を聞き、俺とリムルが思念伝達でそう話していると。

 

ガゼル「待て。」

 

 これまでずっと黙っていた王が口を開き、その場に居る全員の視線が王に集中する。

 

ガゼル「……………久しいな、カイジン。息災か?」

カイジン「ハッ!」

 

 俺たちは、再び跪く。

 裁判長が口を開く。

 

裁判長「カイジン。答えてよろしい。」

カイジン「はっ!王におかれましては、ご健勝そうで何よりです。」

ガゼル「………カイジンよ、余の元に戻ってくる気はないか?」

ベスター「っ!」

 

 どうやら、ガゼル王は、カイジンの事を気に入っているみたいだな。

 何とか、カイジン達だけでも………。

 すると、カイジンが口を開く。

 

カイジン「…………恐れながら王よ、私はすでに新たな主達を得ました。この契りは、私にとって宝です。これは、例え王命であっても、覆ることはありません。」

兵士「無礼な!」

 

 カイジンの言葉に、周囲にいた兵士達が、武器をこちらに向ける。

 オーラを少し出して、牽制でもしようかと思ったのだが。

 

ガゼル「…………で、あるか。」

 

 ガゼルはそう言うと、周囲の兵士達に、武器を向ける事をやめさせる。

 そうして、王自ら、判決を言う。

 

ガゼル「判決を言い渡す!カイジン及びその一味は国外追放とする。今宵、日付が変わって以降、この国に滞在することは許さん。余の前より消えるが良い!」

 

 そうして、国外追放で済んだ。

 俺たちは、退室するのだが、ガゼル王の寂しそうな表情が目に入る。

 ガゼル王も、寂しいんだろうな。

 その後、俺たちは、カイジン達の荷造りを手伝う事に。

 知る由も無かったが、ベスターがガゼル王に呼び出された様だ。

 

ガゼル「さて、ベスター。何か言いたい事はあるか?」

ベスター「お、王よ………。私は………そ、その…………。」

ガゼル「…………残念だ。余は、忠実な臣を一人、失う事になった。」

ベスター「な、何を仰います………!カイジンなど…………あの様な者、王に忠誠を誓うどころか、どこの馬の骨とも知れぬスライムに、時魔人という魔人と………!」

ガゼル「ベスターよ。お前は勘違いをしている。」

ベスター「えっ…………?」

ガゼル「余が失う忠実な臣。それは…………。」

ベスター「…………ッ!?」

 

 ガゼルの沈黙に、ベスターは全てを悟った。

 それは、自分である事を。

 

ガゼル「余は、お前に期待していたのだ。ずっと待っていた。魔装兵事件の際も………真実を話してくれるのを………。」

ベスター「お、恐れ………恐れながら………。」

ガゼル「そして、今回も。それを見よ。」

 

 ガゼルがベスターに見せたのは、裁判長が持つ、一つの瓶だった。

 それを見た途端、ベスターの表情が変わる。

 

ガゼル「それが何か、分かるか?ヒポクテ草から作られた、完全回復薬、フルポーションだ!」

ベスター「そ、そんな………!ドワーフの技術の随意を集めても、98%の抽出が限界の筈………!一体………どうやって………!?」

ガゼル「それを齎したのは、あのスライムと時魔人なのだ。」

ベスター「…………ッ!」

 

 それを聞いた途端、ベスターの顔は青褪める。

 ガゼルが椅子から立ち上がる。

 

ガゼル「お前の行いが、あの魔物達との繋がりを絶った。何か言いたい事はあるか!」

ベスター「…………な、何も………ございません………王よ…………。」

 

 そう言って、ベスターは崩折れる。

 その間、ベスターは自問していた。

 なぜ自分は自身が仕える王に問い詰められているのか?

 まだ幼い日に見た、この国へ凱旋した王を見た時、自身に誓いを立てた。

 『この王に仕え、役に立つのだ。』

 そう誓いを立てたはずなのに。

 自分はいつ道を誤ったのだろうか?

 カイジンに嫉妬した時から?

 ………それとも、もっと以前から?

 

ベスター「王の期待を裏切ってしまい………申し訳ありません…………。」

ガゼル「…………ベスターよ、其方の王宮への出入りを禁止する。二度と余の前に姿を見せるな!………最後に一言、其方に言葉を送ろう。大義であった!!」

 

 ガゼルは、そう言い残して、去っていく。

 裁判所には、ベスターの泣き声が響くのであった。

 一方、俺たちは、カイドウ達に見送られる事になっていた。

 

カイドウ「兄貴、元気でな。」

カイジン「迷惑をかけたなぁ。お前も元気で。」

カイドウ「………リムルの旦那にリアムの旦那。兄貴を頼む。」

リアム「ああ。」

リムル「心配ない。こき使うだけさ。」

カイドウ「………判決に則り、カイジン及びその一味は国外追放とする。早々に立ち去れ!」

 

 そう言って、カイドウ達警備隊は、門の内側に戻り、門は閉じられた。

 

リアム「…………さて、行こう。」

リムル「森の入り口で俺の仲間が待っている。」

カイジン「…………ああ。」

 

 そうして、トラブルはあったが、最高の職人を連れて帰る事に成功した。

 そういえば、何かを忘れてる様な………。

 

ゴブタ「リムル様ーーー!リアム様ーーー!ひどいっすーーー!!」

リアム「あっ。ゴブタ忘れてた。」

 

 ゴブタを宥めるのを、リムルに任せて、俺はドワルゴンの方を見ていた。

 何か、あのガゼル王は、俺とリムルを見ていた様な気がするが、気のせいかな。

 そうして、俺たちはゴブリン村への帰路へと着いた。

 一方、ガゼル王は。

 

ガゼル「…………弁護人は捕らえたか?」

???「は!」

ガゼル「厳罰に処せ。あのスライムと時魔人とやらの動向を監視せよ。決して気取られるなよ。絶対にだ!」

???「は!」

ガゼル「…………あのスライムは、化け物だ!まるで『暴風竜ヴェルドラ』の如く!そして、あの時魔人は、特に注意せよ!まるで、魔王の如き存在だ!」

 

 そんな風に、目をつけられてしまったのは、今の俺たちは、知らなかった。

 

???「我が魔王がドワルゴンに来たのか。ならば……………。」

 

 そして、1人の青年が、どこかへと向かう。




今回はここまでです。
リアムの運命の人は、ヒナタに決定しました。
案として、クロノアにしようかなと思っていました。
やっぱり、時の勇者であるクロノアに、時の魔王であるリアムという感じで。
ただ、クロノアにはリムルが居ますし。
どうしようかなと悩んだ末、ヒナタにしました。
ガゼル王は、リアムの事は魔王の様だと認識しています。
そして、1人の青年が、リアムの後を追う。
いよいよ、シズさんが登場します。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。

追記
リアムの運命の人は、ヒナタにしていましたが、クロノアに変更しました。
いきなり変更して、申し訳ありません。


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第5話 シズ

 ある日、ブルムンド王国の自由組合の建物では、フューズという人物が、俺とリムルが洞窟内で遭遇した3人組と話していた。

 フューズは、帝国の動きに関する報告書を見ていた。

 

フューズ「…………東の帝国がジュラの大森林を越えようとする動きはない。今の所はな。」

 

 フューズはそう言って、その3人組に髪を転がす。

 

フューズ「帝国は引き続き、情報部が監視している。………………で、聞こうか。ジュラの大森林はどうだった?」

 

 フューズがそう聞くと、フューズから見て左側に座っていた男性が口を開く。

 彼はカバル。

 職業は重戦士(ファイター)だ。

 

カバル「大変だったんだぜ!よく無事に戻ってきたの一言くらいないのかよ!?」

フューズ「………………報告を聞こう。」

 

 カバルの文句に、フューズはそう言う。

 すると、3人は次々と口を開く。

 残りの2人は、真ん中に座る女性がエレン。

 職業は法術師(ソーサラー)だ。

 フューズから見て、右側に座っている男性がギド。

 職業は盗賊(シーフ)だ。

 

カバル「帰ってきたばっかりだってのに…………全くよ……………。」

エレン「早くお風呂に入りたい…………。」

ギド「大変だったのは、旦那と姉さんの口喧嘩を宥めなきゃならなかったあっしの方だと思いますがね。」

フューズ「ん?」

 

 カバルとエレンがそう言う中、ギドはそう呟き、フューズは左の眉毛を吊り上げる。

 それを見て、カバルは咳払いをして、報告する。

 

カバル「おっ……………えっと……………。ううん!洞窟では、ヴェルドラの消失を確認。その後、内部を調査したが、何も確認出来なかった。」

フューズ「………………何も?」

エレン「何も…………です。」

フューズ「う〜ん……………。洞窟については分かった。」

ギド「じゃあ、あっしらはこれで…………。」

 

 カバルの報告を聞いたフューズはそう言う。

 それを聞いた3人は、部屋から出ようとするが、フューズの言葉に驚く。

 

フューズ「三日間の休暇をやろう。」

3人「へっ?」

フューズ「今度は洞窟ではなく、森の周辺の調査だ。」

3人「えっ?」

フューズ「ヴェルドラが消えた後、魔物が活性化しているかもしれん。何でも良い。変化を見逃すな。」

3人「ああ……………!?」

フューズ「くまなく、丁寧にな。行っていいぞ。」

 

 フューズの言葉に、3人は唖然として、フューズは退出を許可する。

 その後、街の方に出ると。

 

カバル「行っていいぞじゃねえよ!!」

エレン「何ですか!?3日って!?もっとお休み下さいよ!帰ってきたばっかりなんですよ!!」

 

 カバルとエレンは、そんな風に叫ぶ。

 それを聞いていたギドは、後ろを振り返り、呟く。

 

ギド「その文句、ギルマスに直接言って欲しかったでやんすよ。」

カバル「あんのクソすかしジジイがぁぁぁぁぁ!!」

エレン「休みくらい寄越せーーーっ!!」

「「ハァァァァ……………。」」

 

 2人は文句を言っていたが、すぐに大きなため息を吐く。

 

エレン「またあの森か……………。」

カバル「おいおい。文句ばかり言うなよ。虚しくなるぜ。」

エレン「早くお風呂に……………。」

???「失礼。」

エレン「は?」

ギド「は?」

カバル「あ?」

 

 カバルとエレンがそう言う中、後ろから声をかけられる。

 そこには、仮面を被った女性と、マフラーを着けて、一冊の本を持つ男性がいた。

 

カバル「ああ?何だ?アンタら。」

???「ジュラの大森林へ向かうのでは無いだろうか?」

カバル「そうだと言ったら?」

???「森を抜けるまで、同行させて貰えないかい?」

カバル「ん……………。」

 

 カバルの質問に、最初は女性が答え、その次に男性が答える。

 カバルが警戒心を少し見せていると、エレンが口を開く。

 

エレン「良いわよ。」

カバル「は?ちょ…………お前!リーダーの俺が許可出す前に…………何なの?本当に!?」

エレン「良いじゃ無い!旅は道連れ世は情けってね。エレン。カバル。ギド。」

シズ「シズ。」

ウォズ「私はウォズと言います。」

エレン「よろしくね。シズさん、ウォズさん。」

カバル「ったく……………出発は3日後だ。それでよけりゃあ、勝手についてこい。」

シズ「感謝する。」

ウォズ「そうさせてもらうよ。」

 

 そう言って、5人は移動する。

 一方、俺とリムルは、嵐牙を連れて、ある湖に来ていた。

 

リムル「良いか、嵐牙。よぉく見てろよ。」

嵐牙「はい。」

リムル「リムル、変〜身!」

 

 そう言って、リムルは、黒嵐星狼へと姿を変えた。

 何をするのかというと、新しいスキルの試し撃ちだ。

 

リムル「からの〜黒稲妻!」

 

 黒嵐星狼となったリムルから放たれたのは、黒い稲妻だった。

 その稲妻は、湖の真ん中にあった岩をあっさり破壊して、周囲に湖の水が降り注ぐ。

 

リアム「…………リムル、これ、威力強すぎないか?」

リムル「ああ………。使い所を考えないとな………。」

嵐牙「黒稲妻………!さすがは、我が主!」

 

 その後、俺とリムルは、嵐牙の背中に乗って、村へと戻っていく。

 

リムル「ああ………平和だなぁ………。」

リアム「平和が1番だ。」

 

 俺とリムルが、ドワルゴンからカイジン達を連れ帰ってから、数週間が経った。

 カイジンは、ゴブリン達に、鍛治の技術を伝えている。

 

カイジン「鉄は熱いうちに打てってな!ガーハッハッハッ!」

 

 ドワーフ三兄弟、長男のガルムは、防具の作成方法を伝えている。

 

ガルム「なめす事で、防具の耐久性が上がるんだ。」

 

 次男のドルドは、細工の技術を伝えている。

 三男のミルドは、建物の建築技術を伝えている。

 こうして、俺たちは、新しい村を作り始めている。

 

リムル「それにしても、ドワルゴンから戻ってきた時は、驚いたよなぁ。」

リアム「確かに。あれはなぁ………。」

 

 それは、俺たちがドワルゴンにて、カイジンとドワーフ三兄弟をスカウトして、村に戻ってきたのだが………。

 

リムル「リグルド…………。」

リアム「…………これ、どういう状況なんだ?」

リグルド「リムル様とリアム様の噂を聞き、庇護を求めて、近隣のゴブリン村から集まってきたのです!」

ゴブリン達「リムル様〜!リアム様〜!お帰りなさいませ〜!」

 

 まさか、俺たちの庇護を求めて、集まってくるとはな…………。

 時之歴史(クロノヒストリー)に、聞いてみる事にする。

 

リアム『時之歴史さん、これ、一体どれくらい居るの?』

時之歴史『解。およそ、500くらいかと。』

リアム『ごっ………!?』

 

 まさか、500とは………。

 気になった俺は、時之歴史に聞いてみる。

 

リアム『時之歴史さん。これ、俺たちが断った場合は、どうなんの?』

時之歴史『現在、ヴェルドラが消失した事により、豚頭族(オーク)蜥蜴人族(リザードマン)大鬼族(オーガ)が、覇権を握ろうと動き出しています。進化前のゴブリンは、淘汰されるかと。』

リアム『そうなるよなぁ………。』

 

 俺は、リムルと思念伝達で話し合う。

 

リアム『リムル、どうする?』

リムル『これは、受け入れるしかないだろ。』

リアム『だな。』

 

 そうして、ゴブリン達には、裏切らない事を条件に住むことを許した。

 俺とリムルは、手分けして250匹のゴブリンに名前をつけた。

 リムルは、前回とは違い、低位活動状態(スリープモード)には陥らなかった。

 どうなる事かと思ったが、新たに増えたゴブリン達も、問題なく住めそうだな。

 俺たちが村に戻っている中。

 

ゴブタ「はい!じゃあ、オイラが、お手本を見せるっす!」

「「うん…………?」」

 

 ゴブタの声がしたので、俺とリムルはゴブタの方を向くと、ゴブタは、複数のゴブリン達に、何かを教えていた。

 ゴブタが力むと、ゴブタの影から、嵐牙狼族が現れる。

 

リムル「おお………!」

リアム「召喚に成功したのか。」

 

 そう、ゴブタは、いつの間にか、嵐牙狼族の召喚が出来る様になっていたのだ。

 俺たちに忘れ去られそうになっていた時に、必死に祈っていたら、嵐牙狼族の召喚に成功して、無事に脱出出来たとのこと。

 意外と天才肌なのかもしれないな。

 そう考えていると。

 

リグルド「リムル様〜!リアム様〜!」

 

 そう言って、リグルドが駆け寄ってくる。

 ちなみに、リグルドは、リムルがゴブリン・ロードから、ゴブリン・キングに昇格させた。

 他の村長の纏め役としてだ。

 リグルドを見ると、ゴブリン・キングになった事で、更に進化した様に見える。

 

リムル「どうした、リグルド?」

リアム「何かあったのか?」

リグルド「はい!リグルら警備班から、連絡がありました!森の中で、不審な者達を発見したそうです!」

リアム「魔物か?」

リグルド「いえ、人間です。」

リムル「人間………!?」

リグルド「領土拡大を狙った、どこかの国の調査隊かもしれません!」

 

 なるほどな………。

 ヴェルドラが消えた影響は、魔物だけでなく、人間にまで波及するか。

 ひとまず、確認してみるかな。

 俺とリムルは、その人間達の元へと向かう。

 しばらくすると、その人間達を発見する。

 5人いて、2人が戦闘を行なっている。

 どうやら、剣に炎の力を付与して、戦闘を行なっているようだ。

 もう1人は、蟻を手からの衝撃波で飛ばしたりして、応戦していた。

 巨大な蟻を倒して、その2人はほっと息を吐く。

 だが、巨大な蟻が一匹、倒しきれていなかった様で、その人達に襲い掛かる。

 

リアム「リムル!」

リムル「ああ!黒稲妻!」

 

 リムルが黒稲妻を発動して、その蟻を倒す。

 その際、戦闘をしていた人の仮面が飛び、リムルの頭に落ちる。

 

リアム「なあ………やっぱり、黒稲妻、威力が強すぎないか?」

リムル「ああ………こりゃ、このスキルも封印決定だな。」

 

 しばらくすると、煙が晴れて、その人間達が俺たちを見る。

 

「「「…………スライムと人間?」」」

リムル「スライムで悪いか?」

リアム「あははは……………。」

冒険者「ああ、いや………スライムが喋ったり、人間と一緒に居たりと………。」

冒険者「信じられない………。」

リムル「ほら、そこのお姉さんのだろ?悪いな、怪我、してないか?」

 

 そう言って、リムルは自分の頭(?)に乗っかった仮面を、その女性に渡す。

 すると、その人の顔は、見た事があった。

 

シズエ「ええ、大丈夫。」

 

 そう、カイジンが言っていた、爆炎の支配者、シズエ・イザワだった。

 リムルの運命の人は、随分と早く出会えたな。

 俺の場合は、どこで会えるんだろうな。

 そして、もう1人は、ウォズだった。

 その後、ゴブリン村へと案内した。

 

リアム「それで、あの5人はどうしてるんだ?」

リグルド「はい…………。」

 

 すると、テントから声がしてくる。

 

冒険者「ちょっ!それ、俺が狙ってた肉!」

冒険者「酷くないですか!?それ、私が育てていたお肉なんですけど!」

冒険者「旦那方!こと、食事においては、譲れないでやんすよ!!」

 

 そんな風に、外にまで声が漏れていた。

 どうやら、焼き肉を食べているみたいだな。

 首を傾げた俺とリムルが、リグルドを見ると。

 

リグルド「すみません………腹ペコだと言うので、食事を………。」

リムル「おお!良いじゃないか!」

リアム「困っている人を助けるのは、良い事だよ。」

リグルド「ははっ!ありがとうございます!今後とも、精進したいと存じます!」

リムル「うんうん。」

リグル「リムル様、リアム様。どうぞ。」

リアム「ありがとう。」

 

 リグルが天幕の布を上げて、俺たちが中に入ると、必死の形相で、焼き肉を食べる三人の姿が。

 ていうか、あの三人って、どこかで………。

 すると、時之歴史が答えてくれた。

 

時之歴史『解。洞窟で遭遇した三人組です。』

リアム『ああ、あの三人組か。』

 

 ていうか、必死すぎるだろ。

 リムルの運命の人の方を見ると、正座をしていて、仮面を着けているのにも関わらず、普通に食事をしていた。

 器用だな。

 ウォズはというと、黙々と食事をしていた。

 そう思っていると、リグルドが声を出す。

 

リグルド「お客人。大したもてなしは出来んが、寛いでおられますかな?改めて、ご紹介しよう!こちらが、我らが主達、リムル様とリアム様である!」

 

 リグルドがそう言うと、必死に焼き肉を食っていた三人組は、飲み込んで、口を開く。

 

「「「主!?」」」

「「主で悪いか?」」

 

 そう叫んだのに対して、俺たちは少し不機嫌気味にそう答える。

 すると、女性の冒険者の前の冒険者から口を開く。

 

冒険者「い、いや………。」

冒険者「ただのスライムではないと思っていましたが………。それに、人間が魔物と一緒に居るとは……………。」

リアム「まあ……………無理もないか。」

 

 困惑してるみたいだな。

 まあ、無理もないか。

 いきなりそんな事を言われても、信じられないのも、無理はない。

 すると、リムルが口を開く。

 

リムル「初めまして!俺はスライムのリムル!悪いスライムじゃないよ!」

 

 それって、某有名RPGのスライムのセリフだよね。

 ていうか、異世界の人に、そんなのが伝わるわけが………!

 

シズエ「ぷっ………!」

 

 すると、リムルの運命の人は、それを聞いて吹き出す。

 やっぱり、日本人なんだな。

 すると、冒険者の1人が頭を下げる。

 

冒険者「これは、失礼しました。まさか、魔物に助けられるとは、思ってもいませんでしたが………助かりました。」

冒険者「あ!お肉、ありがとうございます!とっても美味しいです!」

冒険者「どうも、助かりやした………。こんな所で、ゴブリンが、村を建設中とは、思っていませんでした。」

 

 まあ、そう思うのが普通だわな。

 井沢静江さんとウォズは、マイペースに食事を続けていた。

 一つ、気になった事があるので、聞いてみる事に。

 

リアム「それで、あなた達は、一体何をしにここに来たんだ?」

カバル「俺は、カバル。一応、このパーティーのリーダーをしている。こっちが………。」

エレン「エレンです〜!」

ギド「ギドと言いやす。お見知り置きを。」

カバル「………で、この人達は、行く方向が同じという事で、臨時パーティーになった……。」

シズ「…………シズ。」

ウォズ「初めまして。ウォズと言います。」

 

 そう名乗った。

 恐らく、あだ名とかの類だろうな。

 正体を隠す為の。

 そして、やっぱり、男の方がウォズか。

 リムルが、続きを促せた。

 

リムル「…………で?」

カバル「俺たちは、ブルムンド王国のギルドマスターから…………。」

 

 カバルは、疑う事をせず、来た理由を話してくれた。

 ジュラの大森林の周辺の国家の一つ、ブルムンド王国。

 そのブルムンド王国のギルドマスターが、三人に、この森の調査を依頼したらしい。

 やはり、ヴェルドラが消えた影響は、かなり大きいようだ。

 

リムル「なるほど………。」

リアム「俺らは、見ての通り、ただ街を作っている最中なんだが………ギルド的に、問題あるか?」

 

 俺らがそう聞くと、カバル、エレン、ギドの三人は、顔を見合わせる。

 

カバル「いや、大丈夫だろ。」

エレン「そうね………。ギルドが口を出す問題じゃないしね。国はどうなんだろ?」

ギド「うーん………。あっしには、分かり

ません。」

リアム「そっか………。」

リムル「話は分かった。今日は、ここに泊まると良い。ゆっくり、疲れを癒してくれ。」

「「「ありがとうございます!」」」

リアム「丁重に頼む。」

「「はっ!」」

 

 そうして、その5人は、泊まる事になった。

 その後、俺はリムルと共に、シズさんの元に向かう。

 

リムル「…………ちょっと、良いか?」

リアム「聞きたい事があるんだ。」

リムル「その………シズさんって………。」

シズ「スライムさん。さっきのは、ゲームの話だよね?『悪いスライムじゃないよ』って。」

 

 やっぱり、日本人だったか。

 すると、シズさんは、リムルを抱き抱える。

 

シズ「私は、やった事がないけど、同郷の子から、聞いてね。………あなた達も、日本人だよね?」

リアム「はい。あと、俺は今、時魔人(クロロノイド)っていう種族なんだ。」

 

 俺は、シズさんの質問に、そう答える。

 

シズ「そっか………。会えて嬉しいよ!スライムさんと時魔人さんは、どうして?」

リムル「いやぁ………それがさぁ、刺されて死んじゃってさ。」

シズ「刺されて………?」

リムル「気が付いたら、こんな素敵な姿に。」

リアム「俺の場合は、車に轢かれそうな子供を庇って、轢かれた。」

シズ「轢かれた………?」

リアム「で、俺は時魔人になっちゃった訳だ。」

シズ「そっか………2人は、転生者なんだね。大変だったね。」

リムル「シズさんは、違うのか?」

 

 リムルがそう質問すると、シズさんは、表情を暗くしながら答えた。

 

シズ「私は………召喚者だから。」

リムル「召喚…………。」

 

 召喚者………。

 確か、ヴェルドラが言ってたな。

 三十人以上の魔法使いで、長い日にちをかけて、異世界から呼び出す。

 兵器としての役割を期待され、召喚者は、召喚主に逆らえないように、呪いをかけられるって………。

 そんな風に考えている中、リムルはシズさんに質問する。

 

リムル「シズさんは、いつ頃、召喚されたんだい?」

シズ「…………ずっと昔。街が燃えて、炎に包まれて………。」

リムル「戦争?」

シズ「空から爆弾が降ってきて………。」

リアム「空襲か………。」

シズ「お母さんと一緒に逃げていて………。」

リムル「お母さんは?」

 

 リムルがそう聞くと、シズさんは、目を伏せる。

 やはり、名前的に、昭和頃の人だと思っていたが、太平洋戦争真っ只中の時代だったとは。

 

リムル「…………すまない。」

シズ「………うんうん。」

 

 周囲の空気が暗くなってしまう。

 リムルは、気分を変えようとしたのか、口を開く。

 

リムル「そうだ!面白い物を見せてやるよ!」

シズ「面白い物………?」

リムル「大賢者。思念伝達で、シズさんと、ついでにリアムに、俺の記憶の一部を見せたい。」

 

 そう言うと、俺とシズさんの周囲に、とある光景が映し出される。

 それは、どこかの部屋で、恐らく、生前のリムルの部屋だろう。

 すると、パソコンの画面に、何かが映っているのが見えた。

 

シズ「………エルフさん?」

リムル「うわぁぁ!違う!そうじゃない!そうじゃない!」

シズ「綺麗だったよ?」

リムル「違う、違う!こっちこっち!」

 

 おそらく、エロゲーの類だろうな。

 すると、風景が変わり、戦後の日本が、どのように復興していったのかが、映し出される。

 最終的に、東京上空の映像が映し出される。

 

シズ「凄い………!まるで絵葉書で見た、ニューヨークの摩天楼のよう。」

リムル「戦争が終わって、平和になったよ。街も経済も、発展した。」

シズ「良かった………。」

リムル「最終的には、こんな風にしたいからな。………そうだ、リアム、お前の仮面ライダーの事も、教えてやれよ。」

シズ「………仮面………ライダー………?」

リアム「分かった。じゃあ、俺の記憶から、仮面ライダーについて、見せるぞ。」

 

 俺がそう言うと、風景が変わり、俺たちの目の前に、本郷猛………仮面ライダー1号の姿が映る。

 

シズ「この人は………?」

リアム「戦争が終わって、1971年に、仮面ライダーの歴史が始まったんだ。」

 

 そこから、一文字隼人、風見志郎、結城丈二、神敬介、山本大介、城茂、筑波洋、沖一也、村雨良、南光太郎、風祭新、麻生勝、瀬川耕司、五代雄介、津上翔一、城戸真司、乾巧、剣崎一真、ヒビキ、天道総司、野上良太郎、紅渡、門矢士、左翔太郎、フィリップ、火野映司、如月弦太郎、操真晴人、葛葉紘太、泊進ノ介、天空寺タケル、宝生永夢、桐生戦兎、常磐ソウゴ、飛電或人、神山飛羽真、五十嵐一輝とバイス、そして、浮世英寿といった歴代仮面ライダーの変身者が映し出される。

 

シズ「この人たちは………?」

リアム「仮面ライダーは、ドラマとして、放送されていて、今映った人たちは、それぞれの仮面ライダーの主役だよ。」

リムル「こんなに居たんだな………。」

 

 これが、半世紀に渡って紡がれ、これからも紡がれていく仮面ライダーの歴史だからな。

 そういえば、ギーツはどんな感じになっていくんだろうな。

 気になるな。

 すると、シズさんが胸を押さえる。

 

リムル「シズさん!?」

リアム「大丈夫か?」

シズ「………ええ。多分。」

 

 そう言って、仮面を着ける。

 すると、カイジンの声が聞こえる。

 

カイジン「リムルの旦那に、リアムの旦那。ちょっと良いかな?新しく家を建てる場所の相談がしたいんだが………。」

リアム「ああ。」

リムル「じゃあ!」

シズ「じゃあ。」

 

 俺とリムルは、カイジンの元に行く。

 すると、カイジンは、俺とリムルに揶揄うように言ってくる。

 

カイジン「邪魔しちゃったか?ていうか、リアムの旦那には、運命の人が居るんじゃなかったのかい?」

リムル「うるさい。」

リアム「俺は、リムルの付き添いだ。」

カイジン「照れんなよ。」

リムル「そんなんじゃねぇし。」

カイジン「顔が赤いぞ。」

 

 そんな話をしながら、村へと戻っていく。

 だが、若干の胸騒ぎがする。

 何か、とんでもない事が起こりそうな気がする。

 そんな中、シズさんのもとに、ウォズが現れる。

 

シズ「ウォズさん……………。」

ウォズ「どうやら、時間が無いようだね。」

シズ「ええ……………。」

ウォズ「……………さて。我が魔王は、どのように動くのかな。どう動くにせよ、私はあなたを助けよう。」

 

 シズさんが苦しむ中、ウォズはそう呟く。

 果たして、何が起ころうとしているのか。




今回はここまでです。
遂に、ウォズとシズさんが登場しました。
そして次回、イフリート戦です。
リアムは、シズさんをどのように救うのか。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
紅丸達を始めとするキャラは、変身させるかどうかは、検討中です。
リアムの運命の人は、クロエことクロノアですが、リアムも、リムルとシズさんと共に、イングラシアに行かせる予定です。
リアム達のイングラシアでの行動を、どんな感じにするのか意見がある場合は、お願いします。
ツクヨミの変身者は決まっています。
ディケイドアーマー、ジオウII、ジオウトリニティ、グランドジオウ、オーマジオウ、オーマフォームに関して、どのタイミングで出して欲しいのかがあれば、お願いします。
アナザーライダーを出すかどうかは、考え中です。
まあ、出さないとは思いますが。


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第6話 爆炎の支配者

 翌日、俺とリムルと嵐牙は、丘の上で村を見ていたシズさんの元へ。

 昨夜、胸騒ぎがしたので、ライドウォッチやジクウドライバーは出せるようにしておいた。

 リムルは、シズさんに話しかける。

 

リムル「俺たちの街、気に入って貰えたかな?」

シズ「ええ。とっても!」

 

 シズさんは、仮面を頭の左側に動かしながら笑顔でそう答えた。

 

リアム「それは、よかった。」

リムル「シズさんさえ良ければ、いつまでも居て良いんだぞ。」

シズ「ありがとう。…………でも、行かなきゃ。」

リムル「そっか………。」

シズ「ここに居たら、迷惑をかけちゃうかもしれないし。」

リアム「ん?」

 

 俺とリムルが首を傾げる中、シズさんは表情を暗くして、口を開く。

 

シズ「………私の旅の目的は………。」

リムル「目的?」

シズ「私を召喚した男を見つける事。」

リアム「見つけたら、どうするんですか?」

 

 俺のその問いには、シズさんは答えなかった。

 流石に、聞きすぎたか。

 すると、リムルが明るく答える。

 

リムル「分かった!残念だけど、いつでも遊びに来てくれ!歓迎するよ!なあ、嵐牙?」

嵐牙「勿論です!」

リアム「いつでも、熱烈歓迎だよ。」

シズ「ありがとう。嵐牙もありがとう。」

 

 そう言って、シズさんは嵐牙の顔を抱える。

 その後、村へと戻り、用意をしているエレンとシズさんを待つ。

 その際、考えていたのは、シズさんを召喚した男の事だ。

 

リアム(一体………誰がシズさんを召喚したんだ?炎への耐性は、恐らく、焼夷弾の炎で焼かれた結果、身に付いた物だろうけど………。もしかして、魔王か?)

 

 恐らく、魔王の可能性が高いな。

 だが、シズさんは一体、何をしようとしているんだ…………?

 そんな風に考えていると、シズさんとエレンがやって来る。

 

リグル「お、来た来た。」

ウォズ「そのようだね。」

エレン「お待たせ〜。」

ギド「待ちくたびれたでやすんよ。」

カバル「………ったく、女は支度が遅ぇよな。全く。」

 

 そんな中、シズさんは立ち止まる。

 俺たちが首を傾げながら見ていると、突然苦しみ出す。

 

シズ「ぐっ………!グゥゥゥゥ………!」

リグルド「どうかしましたか?」

リアム「シズさん………!?」

シズ「そんな………!もう………!?」

ウォズ「時間か。」

ギド「シズさん?」

カバル「おい、どうした………?」

 

 皆が心配する中、シズさんは倒れ、絶叫する。

 

シズ「グゥゥ………!アァァァァァ!!」

 

 すると、シズさんが着けている仮面にヒビが入り、そこから赤い光が立ち上る。

 

エレン「シズさん!シズさん!!」

リアム「何が起こってるんだ………!?」

時之歴史『告。対象の魔力が増大しました。警戒してください。』

 

 魔力が増大!?

 そんな風に驚いていると、赤い光は空へと届き、周囲に黒雲が現れ、太陽の光を遮る。

 すると、シズさんが少しずつ浮かび上がり、衝撃波がこちらに来る。

 俺たちは、倒れながらも、シズさんを見上げる。

 

リアム「皆!大丈夫か!?」

カバル「何だよ、これ………!危険手当くらい上乗せしてもらわねぇと………!」

ギド「だから、それはフューズの旦那に言うでやんすよ!」

エレン「シズさん!シズさん!」

 

 エレンがそう叫ぶ中、カバルが何かに気づいた様な反応をする。

 

カバル「シズ……?シズエ・イザワ………!?」

エレン「えっ?」

ギド「シズエ・イザワって………爆炎の支配者か………!?」

ウォズ「その通り。彼女はシズエ・イザワ。爆炎の支配者さ。」

エレン「そ、それって、50年くらい前に活躍したって言う、ギルドの英雄よね!?シズさんが………!?」

ギド「爆炎の………!?」

カバル「くっ………!もう引退してんじゃなかったのか!?」

 

 やはり、カイジンが言っていたことは本当だったのか!

 俺たちは、リグルドとリグルに命令する。

 

リムル「リグルド、リグル。皆を避難させろ。」

リグルド「しかし………!」

リグル「リムル様………!リアム様………!」

リアム「このままじゃ、死人が出る!命令だ!大至急!」

リグルド「ははっ!承りました!」

 

 リグルドとリグルは、ゴブリン達やカイジン達を避難させるために動き出す。

 すると、シズさんが。

 

シズ「ハナ………レテ………。」

「「!!」」

シズ「オサエキレナイ………ワタシカラ………ハナレテ………。」

 

 シズさんは、そう言ったのだ。

 俺とリムルは、思念伝達で話し合う。

 

リアム『リムル………どうする?』

リムル『何とか、助けられないのか?』

リアム『もしかして、その召喚した男に、呪いを刻まれたんじゃ………。』

リムル『なら、どうにか、シズさんを助けないと………!』

リアム『ああ!』

 

 その為には、シズさんの内部に巣食う、何かを特定しないと………!

 すると。

 

時之歴史『告。解析の結果、個体名、シズエ・イザワには、イフリートが同化しており、現在、主導権を取り戻そうと暴走しています。』

リアム『マジか………!?なら、エグゼイドの力で、シズさんとイフリートを分離できれば………!』

 

 そう、エグゼイド系列の仮面ライダーには、レベル1ではあるが、人間とバグスターを分離する力がある。

 それを、イフリートに応用すれば………!

 ていうか、いつの間に解析してたのか。

 すると、時之歴史が、今度は絶望的な事を言う。

 

時之歴史『告。個体名、シズエ・イザワからイフリートを分離すると、命の保証はありません。』

リアム『何っ!?』

時之歴史『個体名、シズエ・イザワは、イフリートによって延命されている状態です。イフリートが居なくなれば、個体名、シズエ・イザワの命は、持って一月未満。』

リアム『そんな………!?』

 

 それでは、シズさんを助けられないのと同義ではないか。

 仮面ライダーという力があるのに、シズさんを助けられないのか………。

 そんな風に打ちひしがれていると。

 

時之歴史『告。個体名、シズエ・イザワを助ける方法は、一つだけあります。』

リアム『何っ!?』

時之歴史『それは…………。』

 

 そう言って、時之歴史は語った。

 どうすれば、シズさんを助けられるのかを。

 俺は、それを聞いて、決意した。

 絶対にシズさんを助けると。

 俺は、リムルに思念伝達で伝える。

 

リアム『リムル。シズさんを助ける方法を見つけたぞ!』

リムル『でかした!それで、どうすれば良いんだ?』

リアム『俺が、シズさんの内部に巣食うイフリートを分離する。リムルは、イフリートを食らってくれ!』

リムル『分かった!』

 

 実は、リムルには、シズさんとイフリートを分離した後、どうするのかは、まだ伝えていない。

 こればっかりは、今説明している余裕がない。

 何せ、もうシズさんは、限界なのだ。

 俺は、腰にジクウドライバーを装着する。

 

ジクウドライバー!

 

カバル「何だそれ!?」

リアム「良いから、見てろ。」

 

 俺は、ジオウライドウォッチのウェイクベルゼを回しライドオンスターターを押す。

 

ジオウ!

 

 ジオウライドウォッチを起動した後、D‘9スロットにライドウォッチをセットし、ライドオンリューザーを押す。

 背中に大小の時計が浮かび上がる。

 そして、変身ポーズを取って、叫ぶ。

 

リアム「変身!」

 

 そう言って、ジクウサーキュラーを一回転させる。

 

ライダータイム!

仮面ライダージオウ!

 

 俺は、仮面ライダージオウへと変身する。

 すると。

 

エレン「えぇぇぇ!?」

ギド「リアムの旦那の姿が………!」

カバル「変わった…………!?」

 

 カバル達は、俺の姿が変わった事に驚いていた。

 すると。

 

ウォズ「祝え!」

リムル「うわっ!?」

ウォズ「全ライダーの力を受け継ぎ、時空を越え、過去と未来をしろしめす時の王者。その名も仮面ライダージオウ!まさに生誕の瞬間である!」

 

 ウォズは、そうやって祝う。

 やっぱり、やるんだ………………。

 リムルは嵐牙に乗って、俺の隣に来る。

 

リアム「準備は良いか?」

リムル「ああ。」

リアム「分離した後の事は、戦いが終わったら話す。今は、イフリートを取り込むのに専念してくれ。」

リムル「おう。お前を信じてるぞ。」

リアム「ああ。だから、俺もお前を信じる!」

リムル「おう!シズさん、あんたの呪いは俺達が解いてやる。」

リアム「だから、もう少し頑張ってくれ!」

シズ「オ………ネ………ガ………イ………。」

 

 シズさんは、そう言う。

 すると、限界が来たのか、シズさんの姿が、イフリートになる。

 

カバル「炎の精霊……イフリート………!」

ギド「間違いないでやす。シズさんは……!」

エレン「伝説の英雄………爆炎の支配者………!あ、あんなの、どうやっても勝てないんですけど!」

ギド「無理でやす………。あっしらはここで、死ぬんでやす………。短い人生だったでやすんね………。」

 

 エレン達が弱腰になっている中、イフリートは咆哮して、そこから、精霊の類を召喚して、俺たちの村に火を放っていく。

 

リムル「ちっくしょう………!折角作ったばっかりなのに………!」

エレン「いった〜い………!」

リアム「お前ら!早く逃げろ!」

カバル「……そんな訳にもいかねぇよ………!」

 

 カバルは、そう言って、剣を抜刀する。

 カバルだけでなく、エレンもギドも、武器を構えていた。

 

カバル「あの人がなんで殺意を剥き出しにしてるのか知らねーが………。」

ギド「俺達の仲間でやんすよ。」

エレン「ほっとけないわ!」

 

 良い仲間じゃないか。

 すると。

 

ウォズ「なら、周囲のサラマンダーは、私に任せて欲しい。」

リムル「何する気だよ?」

ウォズ「こうするんです。」

 

 ウォズはそう言って、一本のドライバーを取り出す。

 

ビヨンドライバー!

 

リムル「えっ!?」

リアム「ウォズ………………。」

ウォズ「我が魔王。この戦いが終わった後、相談があるのですが……………。」

リアム「相談は乗る。頼んだぞ。」

ウォズ「はっ。」

リムル「魔王……………?」

 

 ウォズはウォズミライドウォッチを取り出して起動する。

 

ウォズ!

 

 そして、ビヨンドライバーに装填する。

 

アクション!

 

 すると、ウォズの背後に、画面が現れる。

 そして、ウォズは言う。

 

ウォズ「変身。」

 

 そう言って、ビヨンドライバーのハンドルを前に倒す。

 

投影!フューチャータイム!

スゴイ!ジダイ!ミライ!仮面ライダーウォズ!ウォズ!

 

 ウォズは、仮面ライダーウォズへと変身する。

 

リムル「凄い見た目だな……………。」

カバル「ええっ!?」

ギド「何と…………!?」

エレン「ウォズさんも変身した!?」

ウォズ「祝え!過去と未来を読み解き、正しき歴史を記す預言者…………。その名も仮面ライダーウォズ!新たなる歴史の1ページである!」

 

 ウォズは、そう宣言する。

 そして、ウォズはジカンデスピアを取り出す。

 

ジカンデスピア!ヤリスギ!

 

 俺たちは、身構える。

 リムルが、イフリートに聞く。

 

リムル「念のために聞くぞ、イフリート!お前に目的はあるか!?」

 

 リムルがそう問う中、イフリートは何も答えずに、こちらに向かって攻撃して来る。

 俺とリムルは、ステップでそれを躱す。

 リムルは、反撃で水刃を撃つが、当たる直前で蒸発してしまった。

 

リアム『………まあ、それもそうか。時之歴史。イフリートに有効打を叩き込む方法はどうすれば?』

時之歴史『解。精霊族には、爪や牙などの攻撃は通用しません。有効なのは、魔法攻撃。』

リアム「分かった!」

 

 それを聞いた俺は、ジカンギレードを取り出して、銃の状態にする。

 

ジカンギレード!ジュウ!

 

 銃の状態のジカンギレードで、イフリートを攻撃する。

 だが、あまり効いたような気配は感じられない。

 ジカンギレードじゃあ、ダメか。

 なら!

 そう思い、ウィザードライドウォッチを装填する。

 

フィニッシュタイム!

ウィザード!スレスレシューティング!

 

 俺は、ジカンギレードの銃口から、水属性の弾丸を放つ。

 イフリートに命中して、怯む。

 

リアム「よし!効いてる!」

リムル「ナイス!リアム!」

 

 やっぱり、ウィザードの力が効くな!

 だが、分離をする際には、エグゼイドの力で行く必要がある。

 とはいえ、通常のエグゼイドアーマーだと若干不安だ。

 なら、これで行くか!

 そう思い、ディケイドライドウォッチを取り出して、起動する。

 

ディ・ディ・ディ・ディケイド!

 

 ディケイドライドウォッチを起動して、ジクウドライバーのD’3スロットにライドウォッチをセットし、ライドオンリューザーを押し、ジクウサーキュラーを一回転させる。

 

ライダータイム!

仮面ライダージオウ!

アーマータイム!KAMEN RIDE!WOW!

ディケイド!ディケイド!ディケイドー!

 

 俺はジオウ・ディケイドアーマーへと変身する。

 すると、サラマンダーと戦っていたウォズが叫ぶ。

 

ウォズ「祝え!全ライダーの力を受け継ぎ、時空を越え、過去と未来をしろしめす時の王者。その名も仮面ライダージオウ・ディケイドアーマー!」

リムル「お前……………誰に向かって言ってんだよ?」

ウォズ「…………………。」

 

 リムル。

 それは突っ込まないでやれ。

 その祝福は、ウォズのアイデンティティみたいなもんだから。

 ウォズは、若干黙ったが、すぐにサラマンダーとの戦いを再開する。

 俺はライドヘイセイバーを取り出す。

 

ライドヘイセイバー!

 

 俺はライドヘイセイバーで、イフリートに攻撃する。

 攻撃した後、ヘイセイバーのハンドセレクターを時計回りで動かす。

 

ヘイ!ウィザード!

 

 ウィザードの力をセレクトして、刀身に四属性の力を貯める。

 

リアム「ハァァァァ!!」

 

ウィザード!デュアルタイムブレイク!

 

 俺はライドヘイセイバーから火水土風の斬撃を四本放つ。

 その攻撃はイフリートに命中して怯む。

 一方、ウォズはサラマンダーを圧倒していた。

 

ウォズ「他愛無いね。」

 

 ウォズは余裕を見せていた。

 一体は既に撃破され、残り二体となっていた。

 ウォズはジカンデスピアを構えて、槍モードのアイコンを押して、カメンのアイコンをタッチして、スワイプする。

 

フィニッシュタイム!

 

ウォズ「ハァァ!」

 

爆裂DEランス!

 

 ウォズはジカンデスピアの槍必殺技を発動して、サラマンダーを貫く。

 そして、ハンドルを元に戻して、もう一回倒す。

 

ビヨンドザタイム!

 

 ウォズはサラマンダーの背後にキューブ状の時計型エネルギーを配置し、駆け出す。

 すると、右足にエネルギーが収束し、キックを放つ。

 

ウォズ「はぁぁぁ!」

 

タイムエクスプロージョン!

 

 ウォズのキックで、サラマンダーはキューブ状の時計型エネルギーに叩き込み、時間差で爆発させる。

 

ウォズ「片付いたね。あとは、我が魔王の方か。」

 

 ウォズは、そう一息をつく。

 一方、俺は、エグゼイドライドウォッチを取り出して、ディケイドライドウォッチのスロットに装填する。

 

エグゼイド!

ファイナルフォームタイム!

エ・エ・エ・エグゼイド!

 

 俺は、エグゼイド・ダブルアクションゲーマーの力を宿した形態、ディケイドアーマー・エグゼイドフォームになる。

 右肩のコードインディケーターに『エグゼイド』と表示され、胸から左からにかけて『ダブルアクションXX』と表示されている。

 その際、ダブルアクションゲーマーの力が反映され、片方は『ダブルアクションXXR』、もう片方は『ダブルアクションXXL』と表示されている。

 

リムル「ええっ!?リアムが分裂した!?」

ウォズ「祝え!全ライダーの…………!」

リムル「くどいわ!」

ウォズ「……………………。」

リアム達「これなら……………行ける気がする!」

 

 俺たちは、イフリートと対峙する。

 すると、イフリートは、分身を行う。

 

リアム達「分身!?そんな事が出来んのかよ!?」

エレン「いや、リアムさんも二人に分身してるよね?」

 

 俺が驚いている中、イフリートは俺を取り囲む。

 すると。

 

リムル「水氷大魔散弾(アイシクルショット)!」

 

 リムルが魔法を放ち、イフリートの分身はあっという間に消える。

 すると、俺のそばに、リムルが来る。

 

リアムR「リムル!」

リムル「分身は俺に任せろ!お前は本体にダメージを与えろ!」

リアムL「ああ!行くぜ!」

リムル「……………なんか、変な感じだな。」

 

 俺たちはそう叫んで、ライドヘイセイバーとジカンギレードを持って、イフリートに向かっていく。

 俺たちは連携攻撃をしていく。

 すると、イフリートが弱って来ていた。

 

リアムR「一気に決めるぞ!」

リアムL「ああ!」

 

 俺たちは、ディケイドライドウォッチのスターターを押す。

 

エ・エ・エ・エグゼイド!

ファイナルアタックタイムブレイク!

 

 すると、Rの方の左足とLの方の右足にエネルギーが集まる。

 

リアム達「ハァァァァ!」

 

 俺たちは、連続攻撃を行う。

 連続攻撃を行い、レベルXの外見になり、アッパーをする。

 すると、イフリートとシズさんは分離する。

 レベルXのエグゼイドには、レベル1と同様に、人間とバグスターを分離する事が出来る機能が搭載されているからな。

 まあ、上手くいって良かった。

 そして、上空に打ち上げたイフリートに向かって、再び分裂して、キックを入れる。

 

リアム達「ハァァァァ!!」

 

 俺たちのキックはイフリートを貫通して、着地し、爆発する。

 

エレン「シズさん!」

リアム「よっと!」

 

 俺は、すぐに前のめりになって倒れるシズさんを抱える。

 そして、リムルに向かって叫ぶ。

 

リアム「リムル!今だ!!」

リムル「分かった!」

 

 リムルは、イフリートを捕食する。

 俺は、シズさんを抱えて着地に成功した。

 イフリートを捕食したリムルが寄ってくる。

 

リムル「凄いな、リアム!」

リアム「リムルも!お疲れ。」

 

 すると、シズさんが目を覚まし、俺とリムルを見てくる。

 

シズ「ありがとう………スライムさん、時魔人(クロロノイド)さん。」

 

 その言葉に、俺とリムルは、笑みを浮かべる。

 こうして、この戦いは、幕を閉じたのだった。

 一方、リムルに取り込まれたイフリートは、暗く何もない空間にいた。

 そこで炎で脱出を試みるも、ただ遠くまで飛び、消えていくだけだった。

 すると。

 

ヴェルドラ「観念せよイフリート、貴様にはこの空間を破れん。」

 

 ヴェルドラがイフリートに話しかけていた。

 イフリートは、唖然としながらヴェルドラを見上げていた。

 

ヴェルドラ「貴様の敵う相手ではないわ。リムルとリアムは、我の盟友ぞ。我は、暴風竜、ヴェルドラ=テンペスト。心ゆくまで相手をしてやろう。」

 

 イフリートが呆然とする中、ヴェルドラの高笑いが響く。




今回はここまでです。
ディケイドアーマー・エグゼイドフォームのレベルXの力を使って、イフリートとシズさんを分離しました。
そして、ウォズの祝福が炸裂しました。
ただ、シズさんの命は、風前の灯火。
果たして、どの様に救われるのか。
次回も楽しみにしてて下さい。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
色々と意見をもらい、ジオウIIはオーク戦で、ジオウトリニティはカリュブディス戦で、グランドジオウは覚醒魔王への進化後、紅蓮の絆編でオーマジオウ、帝国編でオーマフォームという感じにします。
紅蓮の絆編で、どのようにオーマジオウになるのかは、検討中ですが。
あと、イングラシアに向かうのは、リムル、リアム、シズさん、ウォズ、嵐牙にします。
そして、自由学園で、クロエはリアムにアタックを仕掛ける感じで。
自由学園でのエピソードもやる予定なので、基本的には転スラ日記のエピソードをやりますが、どういうエピソードをやって欲しいのか、教えて欲しいです。


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第7話 希望の発現

 シズさんから、暴走したイフリートを分離してから、1週間が経過した。

 だが、シズさんは、未だに目を覚まさない。

 俺とリムルは、シズさんのそばに居た。

 

リアム「まだ目を覚まさないな。」

リムル「そうだな………。それはそうと、リアム。」

リアム「ん?」

リムル「お前は言ったよな?シズさんを助ける方法があるって。」

リアム「ああ。…………丁度いい。話すよ。イフリートを分離したシズさんをどうやって助けるのか。」

 

 俺とリムルは、お互いに向き合う。

 さて、何から話すかな。

 

リアム「まず………一つ言っておくと、現在、シズさんの命は、風前の灯だ。」

リムル「どういう事だよ………!?」

リアム「イフリートが、シズさんの命を延命していたんだ。」

リムル「それじゃあ………助ける方法は無いって言うのかよ………!?」

 

 やはり、そういう反応になるよな。

 でも、助けられないことはない。

 

リアム「いや、ある。それは、とある仮面ライダーの力が必要だ。」

リムル「とある仮面ライダー……………?」

リアム「ああ。仮面ライダーウィザードだ。」

リムル「ウィザード…………。」

 

 俺は、どうやってシズさんを助けるのかを説明した。

 その為に、ウィザードライドウォッチを取り出す。

 

リムル「それは?」

リアム「ウィザードライドウォッチだ。実は、イフリートの残滓から、これが生まれたんだ。」

リムル「え……………!?」

 

 そう。

 あの戦いの後、ブランクライドウォッチの一つが、イフリートの残滓を吸収して、変化したのだ。

 時之歴史曰く、イフリートの残滓がウィザードの力に変化した模様。

 だが、ライドウォッチとしては不安定なので、時之歴史が、ウィザードの歴史を補完した結果、安定したそうだ。

 ちなみに、俺用のウィザードライドウォッチは持っている。

 

リムル「それは分かったけど、どうやって救うんだよ?」

リアム「ウィザードは、体内にファントムっていう怪物を宿す必要があるんだ。」

 

 俺は、どうやってシズさんを助けるのかを説明した。

 シズさんの体内に、イフリートの代わりに、ウィザードラゴンを宿らせる。

 そうする事で、ウィザードラゴンがイフリートの代わりになる筈だ。

 

リムル「そうすれば、シズさんは助かるのか!?」

リアム「理論上は……………な。」

リムル「どういう事だよ?」

 

 俺はそう言った理由を説明する。

 ウィザードのファントムは、人の絶望から生まれる存在であり、そのファントムを押さえ込む事に成功したゲートという存在が、ウィザードの世界で、仮面ライダーになれる。

 だが、もしシズさんが絶望に呑まれてしまったら、死亡してしまう。

 

リムル「それじゃあ、シズさんは死ぬのか!?」

リアム「まだ死ぬとは決まったわけじゃない。だが、不確実性が多すぎる。」

 

 不確実性が多すぎるので、どうしようかと思っている。

 まだゴーストの力で眼魂に移したり、バグスターにした方がまだ確率は高いのだ。

 どうした物かと考えていると。

 

シズ「………スライムさん、時魔人君。」

リムル「シズさん!」

リアム「目が覚めたんだな。」

 

 シズさんが目を覚ました事に、リムルは安堵の表情を浮かべる。

 シズさんは、微笑を浮かべる。

 

シズ「さっきの話、全部聞かせて貰ったよ。」

リアム「え?」

 

 聞いてたのか。

 俺たちが驚いている中、シズさんは、言葉を紡げる。

 

シズ「…………私が助かるその方法、お願いしていいかな………?」

リアム「良いのか?」

シズ「うん………。あなた達にお礼がしたいし、力になりたい。だから………お願い。」

 

 シズさんは、弱々しくも、どこか力強く言う。

 それを見たリムルは、俺の方を向いてくる。

 

リアム「分かった。」

 

 俺は、シズさんにイフリートの残滓から生み出されたウィザードライドウォッチを持たせて、シズさんのもう片方の手を借りて、ウェイクベルゼを回し、ライドオンスターターを押させる。

 

ウィザード!

 

 すると、ウィザードライドウォッチは粒子となって、シズさんの中に吸い込まれる。

 次の瞬間、シズさんは苦しみ出す。

 

シズ「うっ!ううっ!」

リムル「シズさん!リアム、大丈夫なんだろうな!?」

リアム「シズさんが、ウィザードラゴンの事を受け入れるかどうかだが……………。」

 

 俺とリムルは、ただ見守る事しか出来なかった。

 一方、シズさんの精神空間では、シズさんは見ていた。

 

シズ「これは……………!?」

 

 何を見ていたのかと言うと、それは、操真晴人/仮面ライダーウィザードの記憶だった。

 操真晴人は、幼少期に両親と死別してしまった。

 その時に、両親は晴人に、『晴人が生きててくれる事が、俺たちの希望だ』と語った。

 そこから、晴人は人々の希望になる事を決意して、後に仮面ライダーウィザードの力を手に入れる。

 

シズ「この人の…………記憶…………?」

???「その通りだ。」

シズ「っ!?」

 

 シズさんが驚く中、シズさんの前にドラゴンが現れる。

 ウィザードラゴンだ。

 

シズ「ウィザードラゴン……………。」

ウィザードラゴン「お前が嫌いになれなかったこの世界で、友人を手にかけ絶望したお前が勇者によって救われた。そして子供達の希望となったお前の行く末を見せてもらうぞ。」

 

 ウィザードラゴンはそう言うと、シズさんの中に突っ込む。

 一方、俺たちは、苦しんでいたシズさんが静かになったのを見ていた。

 俺は、時之歴史に聞く。

 

リアム『時之歴史さん、これ、大丈夫なの?』

時之歴史『解。個体名シズエ・イザワは、ウィザードラゴンを受け入れ、種族が属性魔人(エレメンタノイド)に進化しました。肉体は全盛期の頃に戻ったようです。』

リアム「分かった。」

 

 進化したのか。

 リムルが、シズさんに尋ねる。

 

リムル「シズさん……………大丈夫なのか?」

シズ「うん。まるで、全盛期の頃みたい。ありがとうね、時魔人君。」

リアム「いや、助かって良かった。」

 

 俺は、シズさんが助かって、ホッとする。

 助けられて良かった。

 俺は、リムルにある提案をする。

 

リアム「なあ、リムル。シズさんの体をコピーして貰えば?」

リムル「ええっ!?いや、流石にそんな事は…………。」

シズ「うん。スライムさんも、もしかしたら、人間の街に行くかもしれないから、その時に便利だよ。」

 

 リムルは渋るが、俺とシズさんの説得を受けて、シズさんを捕食して、すぐに吐き出す。

 その際、2人は若干照れ臭そうにしていた。

 そして、リムルが人間の姿になる。

 姿自体は、シズさんを幼くした様な感じだ。

 すると、外から声が聞こえてくる。

 

リグルド「おや、これは皆さんお揃いで。皆さんもお見舞いですかな?」

カバル「ええ、リグルドさんもっすか。」

リグルド「はい、シズ殿の着替えをお持ちしたところです、リムル様、リアム様、失礼します。」

 

 そう言って、リグルドが入ってくる。

 どうやら、エレン達も居るみたいだな。

 すると、皆が驚く。

 それはまあ、当然の反応だな。

 すると、嵐牙が現れる。

 

嵐牙「我が主………!」

「「「え?」」」

リグルド「その姿は………!?」

「「「えぇぇぇぇ!?」」」

カバル「そっちの小さい女の子が………リムルの旦那ぁ!?」

リアム「やぁ。………その通りだよ。そこに居るのは、リムルだ。」

 

 俺は、そう言う。

 俺たちは、事情を話す事に。

 すると。

 

シズ「み、見ないでぇぇぇ!!」

リムル「うわっ!?」

 

 シズさんはそう叫んで、リムルに布団を投げつける。

 まあ、裸だったからな。

 間接的に、自分の裸を見られたようなものだし、流石に恥ずかしいよな。

 ちなみに、俺は視線を逸らしていた。

 流石に、そんな事をしたら、変態のレッテルを貼られてしまうからな。

 そんな中、ギドが口を開く。

 

ギド「本当に………リムルの旦那でやんすか?」

リグルド「間違いありません!」

嵐牙「見くびるな!姿形が変わったくらいで、分からないと思うか!!」

カバル「ああ、いや………。そういう事じゃ無くて………何か、ちっこいシズさんぽいっつーか………。」

リアム「本当だよ、リムル。」

リムル「ああ、ホレ。」

 

 リムルがそう言うと、人間としての姿から、スライムとしての姿に戻る。

 すると、カバルとギドが驚いた様な表情を浮かべる。

 

カバル「ふへ〜………。」

ギド「見事なもんでやんすね………。」

 

 カバルとギドがそう言う中、エレンさんは、シズさんの方に向かう。

 

エレン「良かったよ〜!シズさんが助かって!」

シズ「うん。リアム君のおかげで、助かったよ。」

 

 シズさんは、泣くエレンを宥めていた。

 やっぱり、この三人は、良い人達だと確信出来るな。

 すると、ウォズが入ってくる。

 

ウォズ「我が魔王。」

リアム「ウォズ。どこに行ったたんだよ?」

ウォズ「我が魔王がシズ殿をどのように救うのかを確かめていました。」

リアム「そっか……………。」

 

 だから、ずっと顔を出してなかったのか。

 すると、リムルが聞いてくる。

 

リムル「ずっと気になってたんだけどさ、リアムの事を、何で魔王って呼んでんだ?」

ウォズ「彼は、時の王者にして魔王となる素質があるからね。」

エレン「ええっ!?」

シズ「そうなの?」

リグルド「そうなのですか!?」

リアム「あははは……………。」

 

 まあ、それがジオウだしな。

 俺が苦笑する中、ウォズは俺の目の前で跪く。

 

ウォズ「貴方に忠誠を誓おう。」

リムル「ええっ!?」

リアム「……………………。」

 

 ウォズがそう言う中、俺に視線が集中する。

 要するに、俺が決めろって事ね。

 まあ、答えは決まってるんだけどね。

 

リアム「ああ、よろしくね。あと、裏切ったらタダじゃ済まないからね。」

ウォズ「はい!」

 

 こうして、ウォズが仲間になった。

 その日は、夕方になってしまったので、エレン達は村に泊まった。

 その翌日。

 

カバル「色々と世話になったな。じゃあ、そろそろお暇するわ。」

リアム「国に帰るのか?」

カバル「ああ、ギルマスにこの森の調査報告とシズさんとウォズのことも、報告しないといけないからな。悪い様には言わない。」

エレン「リムルさん達のことも、伝えておくね。」

ギド「旦那達も何かあったら頼るといいでやすよ」

リアム「ああ、そうさせてもらうよ。」

シズ「皆、元気でね。」

エレン「シズさんも。」

カバル「リアムの旦那。シズさんを助けてくれて、ありがとうございます。」

リアム「気にすんな。俺が助けたいと思って、助けたんだから。」

 

 カバル達は、そう言って、立ち去ろうとするが、何かを思い出したのか、立ち止まる。

 

カバル「あっ………と、最後にもう一つ。シズさんに、話があります。」

シズ「どうしたの?」

 

 すると、三人は頭を下げる。

 

「「「シズさん!ありがとうございました!」」」

シズ「三人とも………。」

カバル「俺、あなた達に心配されない様なリーダーになります!」

ギド「あなた達と冒険できた事、一生の宝にしやす!」

 

 そして、エレンは、シズさんを抱きしめる。

 

エレン「ありがとう………。シズさんの事、お姉ちゃんみたいって、思ってました。」

シズ「三人も、元気でやってね。それと、いつでも会いに来て良いよ。」

 

 やっぱり、三人は良い人たちだ。

 この三人が、シズさんの仲間で、本当に良かった。

 すると、リムルが声をかける。

 

リムル「ところで、お前らの装備、ボロッボロだな。」

「「「ひどっ!」」」

 

 リムルがそう言うと、三人は装備を隠す様にして、俺は笑い、シズさんは苦笑した。

 そうして、俺たちはカイジン達が作った試作品の防具を渡す。

 

カバル「おおっ!憧れのスケイルメイル!」

エレン「スゴい!なにコレ!?軽い上に頑丈、ていうかめっちゃキレイ!」

ギド「いっ、良いんでやすか、あっしにはもったいない代物で!?牙狼の毛皮まで使用されってやっせ!?」

リムル「餞別だよ。ウチの職人の力作さ。」

ギド「職人?」

リアム「おーい。」

 

 俺が呼ぶと、カイジン達が出てくる。

 

カイジン「まっ、力作つっても、試作品だけどな。」

ガルム「着心地はどうだい?」

ドルド「細工は隆々ってね。」

ミルド「うん、うん。」

「「喋れよ!」」

 

 ミルドが喋らないのは、相変わらずみたいだな。

 気を取り直した俺は、彼らを紹介する事に。

 

リアム「紹介するよ。右から、カイジン、ガルム、ドルドにミルドだ。」

カバル「カイジン!?マジで!?」

エレン「腕利きで超有名な鍛治職人の!?」

ギド「ガルムにドルド、ミルドってあのドワーフ三兄弟!?」

カバル「ありがとうございます!これ、家宝にします!」

エレン「嬉しいです!」

ギド「夢の様でやんす!」

 

 そんな風に、三人は喜んでいた。

 やっぱり、カイジンは相当有名な鍛治職人なのだな。

 三人は、今までのことを吹き飛ばす大はしゃぎしたのち、帰って行った。

 その後、俺とリムルは、シズさんと一緒に話をするべく、テントへと向かっていた。

 だが、この時の俺は、知らなかった。

 俺とリムルを中心として、世界が激動の時代になっていく事を。

 そして…………。

 干上がった荒野に、一体の豚頭族(オーク)が歩いていたが、限界が来たのか、倒れる。

 すると、そこに一体の鳥のよいなマスクをし、白い紳士服を着ており、杖を持った者が近づいていく。

 その者が、豚頭族を見つめると。

 

???「お前に名前と食事をやろう。」

 

 その者がそう言う。

 豚頭族は、その者を見つめると、問う。

 

豚頭族「…………あなたは?」

ゲルミュッド「ゲルミュッド。俺の事は、父だと思うがいい。」

 

 そう言うと、豚頭族は、訝しげな表情を浮かべる。

 それを見たゲルミュッドは。

 

ゲルミュッド「………このまま死ぬか?」

 

 そう問う。

 それに対する豚頭族の答えは。

 

豚頭族「………名前を………そして、食事を……。」

ゲルミュッド「お前の名は、ゲルド。」

ゲルド「ゲルド…………。」

ゲルミュッド「やがて、ジュラの大森林を手中に収め、豚頭魔王(オークディザスター)となる者だ。」

 

 そう言って、ゲルミュッドは、ゲルドに肉を与え、ゲルドはその肉を食べる。

 これが、やがて大きな出来事に繋がってくる事は、誰も知らない。




今回はここまでです。
シズさんは、イフリートの代わりに、ウィザードラゴンを体内に宿して、属性魔人として進化しました。
そして、仮面ライダーウィザードに変身出来るようになりました。
ウォズもまた、リアムの部下として、活動していきます。
次回、オリジナルの大鬼族が登場する予定です。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
転スラとジオウの小説では、原作キャラも変身させる予定です。
考えているのは、紅丸は響鬼、蒼影は風魔、白老は歌舞鬼です。
他のキャラは、どうするのかは考えておきます。
蒼影が風魔なのは、忍者で二刀流なので、蒼影にはピッタリだなと思ったからです。
転スラが10周年で、3期は来年の春に放送が決定して、今年の秋には、コリウスの夢というストーリーが放送されるので、楽しみです。
私が投稿している転スラの小説でも、コリウスの夢はやる予定です。
ただし、アニメが放送してからですが。


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第8話 大鬼族の襲来

 エレン達が、俺たちの村から去った後、俺たちは、村の開発を着々と進めていた。

 カイジン達が、衣類、住居、道具作成を進めて、リグルド達、ゴブリン・ロードによって、村の統治を行う流れが出来上がっていた。

 その間、俺たちは、一つの天幕へと入っていった。

 誰も通さない様に頼んである。

 リムルは、シズさんの仮面を取り出す。

 イフリートの暴走の際に、ヒビが入っていたが、修復出来たらしい。

 

リアム「シズさんの仮面、直ったんだな。」

リムル「ああ。シズさん、直ったぜ。」

シズ「うん、ありがとうね。………それと、お願いがあるんだけど………。」

リムル「お願い?」

シズ「その仮面、スライムさんが受け取ってくれないかな?」

 

 シズさんは、リムルに対して、そう言ったのだ。

 リムルは、シズさんに聞く。

 

リムル「………それって、シズさんの大事な物なんじゃ………。」

シズ「今の私には、必要ない物だから。スライムさんに受け取って欲しいんだ。」

リアム「…………受け取ってやれ、リムル。」

リムル「ああ。受け取るよ。」

 

 リムルは、シズさんから、仮面を受け取る。

 そんな中、俺はリムルに話しかける。

 

リアム「リムル。」

リムル「何だ?」

リアム「リムルには、これを渡しておくよ。」

 

 そう言って俺が出したのは、ゲイツライドウォッチだった。

 そう。

 実は、リムルにゲイツライドウォッチが共鳴していたのだ。

 

リムル「ライドウォッチ?良いのか?」

リアム「ああ。俺が持ってても、宝の持ち腐れだしね。」

リムル「ああ。」

 

 リムルは、俺が渡したゲイツライドウォッチを受け取った。

 すると、ゲイツライドウォッチは光った。

 まるで、リムルの事を認めたかの様に。

 

リアム「リムル……………大丈夫か?」

リムル「ああ……………ちょっと、この人の記憶を見ただけだ。」

シズ「そっか………………。」

 

 シズさんも、操真晴人の記憶を見たのかな?

 その後、俺たちとウォズは、ヴェルドラが居た洞窟へと向かう事にした。

 向かう途中、リグルドが話しかけてくる。

 報告をしに来たのだ。

 

リグルド「報告は以上です。」

リムル「ああ。ありがとさん。」

リアム「報告ご苦労。」

リグルド「ああ、それと。」

「「ん?」」

リグルド「………リムル様は、今日もご食事の必要がないのでありますか?」

リムル「ああ。どうせ、スライムの体じゃあ、味なんてしない………。」

リアム「おい。今、人間の姿を得ただろ?」

リムル「あっ!リグルド!」

リグルド「はっ。」

リムル「今日から、俺も一緒に飯を食うよ!」

リグルド「なんと!では、今日は宴会ですな!」

リアム「ああ。頼む。」

リグルド「はっ!」

 

 そう言って、リグルドは去っていく。

 そう、リムルは、スライムの姿では味がしないので、これまで食事には参加しなかったのだ。

 ちなみに、俺は、味を感じる事は出来たが、流石にリムルが不憫なので、俺も食事をしていない。

 俺たちは、今日の夕飯の事を考えながら街の外へと向かうと、リグル達がいた。

 

リムル「よう、リグル。」

リグル「リムル様!リアム様!シズ殿!ウォズ殿!」

リアム「食料調達、ご苦労様。」

リグル「ありがとうございます。これから、森へ向かう所です。」

リアム「今夜は宴会だ。美味しそうな獲物を頼む。」

ゴブタ「今日は、リムル様達も食べるっすか?」

リムル「おうよ!なんせ、この体には味覚があるからな!」

ゴブタ「いっぱい食べたら、おっぱいも育つっすかね?」

 

 ゴブタがそんなセクハラ発言をすると、リムルに思いっきり蹴られる。

 まあ、自業自得だし。

 それを見たリグルは、すぐに頭を下げる。

 

リグル「すいません!ゴブタには、きっちり教育させるので!では、特上の牛鹿をご用意しましょう。」

リアム(牛鹿………牛と鹿が合体した様な動物の事か?)

リムル「おう、頼むな。」

リグル「お任せ下さい!最近は、森の奥から移動してくる魔獣が多いので、獲物は豊富なんです。」

リアム「………何かあったのか?」

リグル「いえ。環境の変化によって、魔獣の移動がありますからね。大した事は無いと思うのですが。」

 

 そういう魔獣の移動がある場合は、何か強い存在に追われて、移動するという場合があるからな。

 つまり、何か強い存在が居ると警戒した方が良さそうだ。

 すると、リムルの影から、嵐牙が現れる。

 恐らく、思念伝達で、嵐牙を呼んだのだろう。

 

嵐牙「お呼びですか?我が主。」

リムル「嵐牙。リグル達と森に同行してくれ。」

リアム「何も無いとは思いたいが、念の為に、俺からも頼む。」

嵐牙「心得ました。お任せ下さい。遠慮はいらぬ。我を連れてゆけ、リグル殿。」

 

 そう言う嵐牙。

 かっこいいのだが、尻尾をブンブンと振っていると、ただの犬にしか見えない。

 俺たちは、リグル達を見送って、ヴェルドラの洞窟へと向かう。

 封印の洞窟に到着して、俺たちは、リムルの方を見ていた。

 

シズ「ここが、ヴェルドラが封印されていた洞窟……………。」

ウォズ「それで、何をしようと言うのだい?我が魔王。」

リムル「ちょっと、俺たちが変身する仮面ライダーについて、確かめたくてな。」

リアム「まあ、流石にぶっつけ本番で行くわけにはいかないしな。」

ウォズ「なるほど。流石は我が魔王!」

 

 そういう事だ。

 そうして、リムルのゲイツ、シズさんのウィザードを確かめる。

 シズさんは、ウィザードの力を使いこなしていた。

 リムルも、ゲイツの力を使いこなしていた。

 何個か、ライドウォッチを渡した。

 その中には、ゲンムも混じっている。

 しばらくして、しばらくして、休憩がてら、シズさんに聞く。

 

リムル「なあ、シズさん。」

シズ「どうしたの?」

リムル「実は、2人の事は、占いで知ったんだけど、その時に、5人の子供が居たんだけど、何なんだ?」

 

 リムルの質問に対して、シズさんは表情を暗くして答える。

 

シズ「…………その子達は、国によって召喚されたんだけど、不完全な状態で召喚されたから、大量の魔素で死んじゃう。だから、私たちは、あの子達を助けたいの。」

 

 そう語った。

 シズさんとウォズ曰く、不完全な状態で召喚された十歳未満の子どもは、数年もしない内に大量の魔素によって死んでしまうらしい。

 それを、国は召喚したのにも関わらず、捨てたのだ。

 それは、到底許される行為ではない。

 だが、救う手段は、シズさんが知っていた。

 というより、シズさんこそが、その証拠なのだ。

 上位精霊と同化させれば、死を免れる事が出来るらしい。

 ただ、シズさんが上手く行かなかった理由としては。

 

シズ「私とイフリートは、馬が合わなかったんだと思う。イフリートは、魔王レオンへの忠誠心が強かったから。」

ウォズ「もし、シズとイフリートの息が合っていたら、暴走せずに済み、更に力を発揮出来ただろうにね。」

 

 と、語っていた。

 シズさんは、魔王の一人、レオン・クロムウェルを憎んでいたらしく、イフリートとの不一致が、寿命が縮まった結果になってしまったのだろう。

 俺としては、その子達を助けたいと思う。

 突然異世界に召喚され、捨てられたのは、余りにも不憫だ。

 だが、魔王か……………。

 そう簡単には会えないよな。

 そう思っていると。

 

嵐牙『リムル様!リアム様!』

リアム『嵐牙!?思念伝達か!』

時之歴史『個体名嵐牙からの思念伝達。声音から、救援要請と推測。』

リアム『嫌な予感が的中したか!救援に向かうぞ!』

時之歴史『了。』

 

 嵐牙からの思念伝達を聞いて、俺とリムルは立ち上がる。

 ちなみに、俺も思念伝達を習得していた。

 

リムル「シズさん、ウォズ!行くぞ!」

シズ「どうしたの?」

リアム「嵐牙達が襲われているんだ!助けに行こう!」

ウォズ「分かりました。」

リムル「リアム!一応、これをつけとけ!」

 

 リムルはそう言って、俺にシズさんの仮面を投げ渡す。

 

リアム「この仮面は?」

リムル「複製品だ!一応、お前も妖気(オーラ)を抑えとけ!」

リアム「分かった!」

 

 俺は仮面を付け、嵐牙達の元へと向かって行く。

 すると、ゴブタが転がってくる。

 

リアム「ゴブタ!大丈夫か!?」

ゴブタ「斬られたっす!超痛いっす!!」

リムル「落ち着け。傷は浅い。」

 

 周囲には、警備班が倒れており、その先には、二人の人物が。

 人間では無い事は確かで、見た所、角が生えている。

 

リアム「なんだ、お前ら?」

ゴブタ「あっ!リムル様とリアム様じゃないですか!心配で来てくれたんすね!」

リムル「そうだな。元気そうだし、回復薬はいらないな。」

ゴブタ「冗談っす!欲しいっす!」

リアム「素直にそう言えば良いのに。」

 

 俺はそう呟いて、ゴブタに回復薬をぶっかける。

 ゴブタが回復される中、嵐牙は、大槌を持った者と2本の刀を持った者と交戦していた。

 嵐牙がその二人に向かおうとした瞬間、地面から炎が立ち上り、嵐牙は怯む。

 木々の間に、桃色の髪の人物がいて、その指先から炎が出ていた事から、あの炎は、その人物による物だと思う。

 

リムル「嵐牙!」

 

 リムルは、嵐牙を呼ぶと、嵐牙はすぐに戻ってきた。

 

嵐牙「主達よ!申し訳ありません。我が居ながら、この様な………!」

 

 すると、武器をぶつけ合う音が聞こえてきて、そちらを向くと、リグルが、紫色の髪の人物と銀髪の人物と交戦していた。

 だが、リグルが劣勢になっていた。

 

リムル「戻れ、リグル!」

 

 リグルは、リムルの呼びかけにすぐに応じて、こちらに戻る。

 見た所、重傷ではないな。

 

リグル「リ、リムル様、リアム様!申し訳ありません………!」

リムル「安心しろ。あとは俺たちに任せて、ゆっくり休め。」

リグル「ありがとうございます………。」

リアム「嵐牙。倒れている者たちは、どうしたんだ?」

嵐牙「はっ。魔法によって眠らされています。あの桃色の髪の仕業です。」

 

 嵐牙が視線を向ける先には、襲撃者達が全員揃っていた。

 数は七人。

 その内、武器を持っているのは六人で、桃色の髪の人物は、魔法による支援の役割だろう。

 多分、全員が強い。

 これは、変身する事も考慮に入れるか。

 すると、リグルが口を開く。

 

リグル「面目ありません。まさか、大鬼族(オーガ)に出くわすとは………。」

リアム「大鬼族(オーガ)か………。」

ウォズ「確かに、あれは大鬼族(オーガ)の一族だね。」

 

 やはり、人間では無いな。

 それも、大鬼族(オーガ)

 だとすると、かなり厄介な事になりそうだな。

 まあ、まずは対話から。

 

リムル「おい、お前ら。事情は知らないが、うちの者が失礼したな。」

リアム「話し合いに応じる気はないか?」

 

 俺たちの問いかけに、大鬼族(オーガ)達は黙っていた。

 実力差は明白。

 だが、ゴブタとリグルの二人は致命傷ではないし、他の連中も眠らされている。

 何か、理由があるのか?

 すると、リーダー格の大鬼族(オーガ)が口を開く。

 

大鬼族「正体を現せ!邪悪な魔人どもめ!」

「「は?」」

 

 そのリーダー格の言葉に、俺たちは首を傾げる。

 

リムル「お、おいおい!ちょっと待て!俺たちが何だって!?」

リアム「どういう意味だ!?」

大鬼族「魔物を使役するなど、普通の人間に出来る芸当ではあるまい。見た目を偽り、妖気(オーラ)を抑えている様だが、甘いわ!」

大鬼族「正体を現せい!」

大鬼族「黒幕が直々に出向いてくれるとは、好都合な物。」

 

 えぇぇぇ………。

 大鬼族(オーガ)の恨みを買った覚えはないぞ!?

 ていうか、まあ、見た目を偽ってるのは、合ってるなぁ………。

 人間としての姿だけでなく、仮面ライダージオウとしての姿もあるしな。

 ていうかウォズ、殺気を抑えろ。

 

リアム「ちょっと待て………。」

大鬼族「ふん。答えを聞くまでも無い。貴様らの正体は、仮面が物語っている。」

「「仮面?」」

 

 仮面って、俺たちが持ってるこれの事か?

 ちょっと待った。

 それを聞いたシズさんが叫ぶ。

 

シズ「ちょっと待って!2人の仮面は、私たちが預けた物よ!」

ウォズ「厳密には、我が魔王の物は、複製品だがね。」

大鬼族「同胞の無念。その億分の一でも、貴様らの首で贖ってもらおう!邪悪なる豚どもの仲間め!」

 

 不味いな………戦る気満々だよ。

 ていうか、同胞の無念に邪悪なる豚どもの仲間?

 やっぱり、何か訳ありみたいだな。

 

ドライバーオン!プリーズ!

 

 俺とリムルは、腰にジクウドライバーを装着を、シズさんはウィザードライバーを、ウォズはビヨンドライバーを装着する。

 嵐牙が話しかける。

 

嵐牙「どういたしますか?」

リムル「どうって………。お前はあの桃色を相手しろ。」

嵐牙「はっ!」

リアム「殺すなよ。殺したら、更に連中の憎しみが湧きそうだ。」

嵐牙「はっ………。」

リムル「残りは、俺達でどうにかするよ。」

ルーク「シズさん、ウォズ、いけるか?」

シズ「うん。」

ウォズ「問題ないさ。」

嵐牙「しかし、たった4人で、六体の大鬼族(オーガ)を相手に………。」

リアム「問題ないさ。なんか……………行ける気がする!」

嵐牙「それでこそ、主達です!」

 

 俺たちは、変身する。

 俺、リムル、ウォズはそれぞれのライドウォッチを起動して、シズさんはウィザードライバーのシフトレバーを操作して、ハンドオーサーを左向きにした。

 

ジオウ!

ゲイツ!

ウォズ!

シャバドゥビタッチヘンシン!

シャバドゥビタッチヘンシン!

 

 俺とリムルは、D‘9スロットにライドウォッチをセットし、ライドオンリューザーを押す。

 ウォズは、ビヨンドライバーにウォズミライドウォッチを装填する。

 シズさんは、フレイムウィザードリングのバイザーを下ろす。

 

アクション!

 

 すると、俺、リムル、ウォズの背後に時計が現れる。

 俺たちは言う。

 

「「「「変身!」」」」

 

 そう言って、それぞれのドライバーを操作する。

 

ライダータイム!

仮面ライダージオウ!

仮面ライダーゲイツ!

投影!フューチャータイム!

スゴイ!ジダイ!ミライ!仮面ライダーウォズ!ウォズ!

フレイム!プリーズ!

ヒー!ヒー!ヒーヒーヒー!

 

 俺は仮面ライダージオウに、リムルは仮面ライダーゲイツに、ウォズは仮面ライダーウォズに、シズさんは仮面ライダーウィザード・フレイムスタイルに変身する。

 

大鬼族「す、姿を変えたところで何も変わらん!」

 

 そう言って、俺達に迫り、刀を振り下ろすが、俺たちはすぐに躱す。

 リムルが黒色の大鬼族の元に向かい、シズさんが紫色の大鬼族に、ウォズが青色の大鬼族の方に向かう中、俺は銀髪の大鬼族を相手にする。

 銀髪の大鬼族は、女性の様だ。

 

大鬼族「私を相手に、たった1人で挑むなんてね。舐められた物ね。」

リアム「どうかな?」

 

 俺はそう言って、その銀髪の大鬼族と戦う。

 銀髪の大鬼族は、刀を使っている様で、俺はジカンギレードで対抗する。

 ジカンギレードで対抗するが、やはり、相手の方が実力は上か。

 俺は鎧武ライドウォッチを取り出して起動する。

 リムルとウォズも、フォームチェンジする様だ。

 

鎧武!

ゲンム!

シノビ!

 

 俺、リムル、ウォズは、それぞれのライドウォッチをドライバーに装填する。

 

アクション!

 

 待機音が流れる中、俺、リムル、ウォズはドライバーを操作する。

 

ライダータイム!

仮面ライダージオウ!

仮面ライダーゲイツ!

アーマータイム!

ソイヤ!鎧武!

レベルアップ!ゲンム!

投影!フューチャータイム!

誰じゃ?俺じゃ?忍者!フューチャーリングシノビ!シノビ!

 

 俺はジオウ・鎧武アーマー、リムルはゲイツ・ゲンムアーマー、ウォズはウォズ・フューチャーリングシノビになる。

 すると。

 

ウォズ「祝え!」

リムル「始まったよ………………。」

ウォズ「全ライダーの力を受け継ぎ、時空を越え、過去と未来をしろしめす時の王者。その名も仮面ライダージオウ・鎧武アーマー!フルーツ鎧武者の力を顕現させた瞬間である!」

シズ「それ……………やる必要はあるの?」

ウォズ「これは重要な祝福なのだ!」

 

 やっぱり、やるんだ。

 一瞬、その場にいる全員が呆気に取られるが、すぐに戦闘を再開する。

 俺は大橙丸Zの二刀流で、銀髪の大鬼族と戦う。

 銀髪の大鬼族の攻撃を片方で受け止め、もう片方で攻撃するという手法を取っている。

 

大鬼族「強い……………!」

リアム「止めだ!」

 

 俺は、ジオウと鎧武のライドウォッチのスターターを押して、ジクウサーキュラーを一回転させる。

 

フィニッシュタイム!

鎧武!

スカッシュタイムブレーク!

 

リアム「ハッ!ハアッ!」

大鬼族「うわぁぁぁぁ!?」

 

 スカッシュタイムブレークを発動して、ナギナタ無双スライサーの要領で、銀髪の大鬼族をオレンジのエネルギーに閉じ込め、大橙丸Zで攻撃する。

 爆発するが、銀髪の大鬼族は、気絶してるだけだった。

 まあ、手加減したからだが。

 リムルは、ゲンムの力で、トリックフライホイールに似たエネルギー体で攻撃して、怯ませた後、麻痺吐息で気絶させる。

 ウォズは、シノビの力で青髪の大鬼族を翻弄して、倒した。

 シズさんは、ウィザードの力を使いこなしており、スリープのウィザードリングで、紫の髪の大鬼族を眠らせる。

 

リグル「おお!」

ゴブタ「流石っす!」

大鬼族「あんなに簡単に………。」

 

 リグルとゴブタは、歓声を上げ、桃色の髪の大鬼族は、驚いていた。

 俺は、リムル達と合流して、残りの二人の方を見る。

 

リアム「さて………。」

リムル「どうする?」

大鬼族「…………あの者たちは、かなりの強者ですじゃ。ご油断召されるな、若。」

 

 警戒心を抱かれたか。

 まあ、無理もないか。

 流石に、話すか。

 

リムル「なあ……ここら辺にしないか?」

リアム「そろそろ、俺達の言い分も聞いてほしいんだが………。」

大鬼族「黙れ!邪悪な魔人め!!」

リアム「ええとな………。」

 

 あれ?あの白い老人の大鬼族が居ない。

 いや、気配を感じない。

 リーダー格の大鬼族の言葉を聞きつつ、周囲を警戒する。

 

大鬼族「確かに貴様らは強い。だからこそ確信が深まった。やはり貴様らは、奴らの仲間だな!」

リアム「奴ら………?」

大鬼族「たかが豚頭族(オーク)ごときに………我ら大鬼族(オーガ)が敗れるなど、考えられぬ!」

リアム「オーク?」

 

 待って。

 それって、俺ら無関係だぞ。

 現在、村にオークなんて、誰一人居ないわけだし。

 

リムル「おい………さっきから何を………。」

大鬼族「黙れ!全ては、貴様ら魔人の仕業なのだろうが!!」

リアム「魔人?」

大鬼族「とぼけるな!」

リムル「待ってくれ………それは誤解……。」

リアム「リムル!しゃがめ!」

 

 俺たちの背後に、あの爺さんが現れ、俺たちの首を飛ばそうとしていた。

 すかさず俺は、リムルと爺さんの間に入り、2本の大橙丸Zで受け止める。

 

大鬼族「なぁ………!?気配は完全に絶っていた筈………!?」

リアム「悪いな。俺の第六感っていう感じかな?」

大鬼族「化け物どもめ………!鬼王の妖炎(オーガフレイム)!」

 

 驚いた爺さんがすぐに下がり、リーダー格が、炎の攻撃をしてくるが、俺たちには、熱変動耐性がある。

 炎の攻撃は効かない。

 俺たちが悠然と炎から出てくるのを見て、リーダー格と爺さんは唖然となった。

 

リアム「悪いな。俺たちに炎は効かない。」

リムル「どうやら、俺はお前達を侮っていた様だ。少し、本気を見せてやろう。」

 

 そう言うと、俺とリムルは、オーラを全開にする。

 それには、大鬼族も驚いていた。

 だが、真に驚くべきは、その先だった。

 何せ、黒炎がリムルの左手から上がったのだ。

 それには、シズさんも驚く。

 

リアム『………何、あれ?』

時之歴史『告。個体名リムル=テンペストが、個体名シズエ・イザワの体を取り込んだ際に得たユニークスキル、変質者を用いて獲得したスキルだと推測。』

リアム『…………なるほど。』

 

 そんなスキルを得たのかよ。

 そして、あの黒稲妻を使い、目の前にあった岩を破壊する。

 やっぱり、黒稲妻、威力高すぎるだろ。

 だが、今の状況では、役に立つ。

 

リアム「どうする?」

リムル「まだやるか?」

シズ「こっちの話を聞いて欲しいの。」

ウォズ「それとも、まだやるのかい?」

 

 そう言うと、リーダーは顔を歪める。

 ビビっている様だな。

 そのまま逃げてくれ。

 すると、あの爺さんがリーダーに話しかける。

 

大鬼族「若。姫を連れてお逃げください。ここはワシが………。」

大鬼族「黙れ、爺。………凄まじいな。悲しいが、我らでは、貴様らには遠く及ばぬようだ。だが、俺には、次期頭領として育てられた誇りがある!無念に散った同胞の無念を晴らさずして、何が頭領か!叶わぬまでも、一矢報いてくれるわ!」

大鬼族「若………。それでは、ワシもお供致しましょうぞ!」

 

 やばい、リムルの炎が逆効果になった。

 まあ、事情は分からないが、恐らく、何者かに故郷を襲われ、同胞を虐殺されたのだろう。

 どうしたもんか………。

 すると、嵐牙と交戦していた筈の桃色の髪の大鬼族が、リーダーの前に来る。

 

大鬼族「お待ち下さい、お兄様!この方達は、敵では無いかもしれません!」

大鬼族「そこを退け!」

大鬼族「いいえ!」

大鬼族「………何故だ!?里を襲った奴と同じく、仮面をつけた魔人では無いか!お前もそう言っただろう!?」

大鬼族「はい………ですが、冷静になって考えて見てください!これだけの力を持つ魔人様達が、姑息な手段を用いて、豚どもに我らの里を襲撃させたのは、不自然です!それこそ、たった4人で我らを皆殺しに出来るでしょうから!確かに、この4人は異質ではありますが、里を襲った者達とは、無関係なのではないでしょうか?」

 

 どうやら、気付いてくれたみたいだな。

 あと、もう一押しってところか。

 

リムル「少しは、人の話を聞く気になったか?」

リアム「じゃあ、その炎、さっさと始末してくれ。危なくてしょうがない。」

リムル「ああ。」

 

 リムルは、炎をしまう。

 そして、俺達は変身解除する。

 リーダーは、訝しげな声を出す。

 

大鬼族「何者なんだ、お前達は?」

リムル「俺?俺はただのスライムさ。」

ルーク「そして、俺は新たに生まれた種族、時魔人(クロロノイド)さ。」

大鬼族「スライムに時魔人?」

リムル「そう。スライムのリムルに。」

リアム「時魔人のリアムだ。」

 

 そう言って、リムルは人間としての擬態を解く。

 俺は、怪人態みたいなのは無いので、そのままにしておく。

 

大鬼族「ほ、本当に………!?」

シズ「本当よ。スライムさんが持ってる仮面は、私が託した物。」

ウォズ「何なら、我が魔王たちの仮面が、君達の里を襲った者と同じ物か、確かめても構わない。」

大鬼族「ああ………。」

 

 大鬼族は、俺たちから仮面を受け取って、それを検分する。

 

大鬼族「似ている気はするが………。」

大鬼族「これには、抗魔の力が備わっている様です。」

大鬼族「しかし、あの時の魔人は、妖気(オーラ)を隠してはおらなんだ。」

大鬼族「では………。」

 

 誤解だと気付いたリーダーは、俺たちの前に跪く。

 

大鬼族「申し訳ない。どうやら、追い詰められて、勘違いをした様だ。どうか、謝罪を受け入れて欲しい。」

リムル「うむ。苦しゅうない。」

リアム「大丈夫だ。まあ、立ち話もなんだ。一先ず、村に戻るとしよう。君たちも来てくれ。」

 

 俺の言葉を聞いたリーダーは、驚いた表情を浮かべる。

 

大鬼族「良いのか?」

リムル「色々と事情を聞きたいしな。」

大鬼族「………そちらの仲間を、傷つけてしまったが………。」

リアム「そりゃあ、俺らも、そちらの仲間を傷つけてしまったからな。お互い様さ。」

ウォズ「それに、死人が出なかったから、良しとしよう。」

リムル「それに、今日は、俺たちの村で宴会をやるんだ!」

シズ「人数が多い方が良いでしょう?」

 

 俺は、大鬼族の動けなくなった面子に回復薬を使う。

 ちなみに、爺さんは、ゴブタに謝ったが、ゴブタは爺さんに恐怖していた。

 そして、理由も分からず戦いになってしまったが、何とか終結した。

 俺たちは、村へと戻っていく。




今回はここまでです。
大鬼族達と戦いになってしまいましたが、無事に和解しました。
そして、次回には、名付けを行います。
ちなみに、ウォズの祝福に関しては、既に継承済みという事なので、継承した瞬間ではなく、顕現させた瞬間になっています。
リムルのゲイツは、2号ライダーのライドウォッチを主に使わせようかなと思っています。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
シズさんはウィザードになりましたが、インフィニティースタイルになるのは、ワルプルギスでの出来事にしようかなと思います。
かなり先になりますが。
ちなみに、リアムに好意を抱くのは、銀髪の大鬼族にクロエの予定です。
あと、精霊の棲家で、クロエに未来から来た存在が入った際に、グランドジオウとゲイツマジェスティのブランクのライドウォッチを手に入れさせる予定です。
リアムのイングラシアでの出来事で、どんなのを書いて欲しいというのがあれば、教えて下さい。
リアムとクロエって、時を司るコンビですよね。
リアムは時の魔王で、クロエは時の勇者で。
原作キャラで、このキャラはこの仮面ライダーに変身させたいというのがあれば、教えて欲しいです。
ちなみに、紅丸は響鬼、蒼影は風魔、白老は歌舞鬼にしようかなと考えています。
これからも応援の程、よろしくお願いします。


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第9話 オークロード

 ひょんな誤解から、大鬼族と戦闘になってしまった俺たちだが、誤解も解け、大鬼族を連れて、村へと戻る。

 宴が行われているが、現在、緊張感が凄まじかった。

 何せ、リムルに全員の視線が向けられていたからだ。

 

リムル「はむっ。」

 

 リムルが肉を口に入れると、全員が固唾を飲んで待っている。

 すると、リムルが震え出す。

 

リグルド「リ、リムル様………?」

リグル「お口に、合いませんでした……?」

 

 リグルドとリグルが不安そうにそう聞いてくる。

 でも、この反応なら。

 

リムル「うんっっっまぁぁい!」

 

 リムルがそう言うと、周囲から歓声が上がる。

 リムルは、人間の姿を得て、やっと味覚を得たのだ。

 それは美味いだろう。

 そこから、本当の意味で宴会ムードになっていた。

 みんな酒を飲んだり、食べ物を食べたりして大いに盛り上がる。

 俺も、焼き串を食べている。

 俺は、リムルに気を遣って、食べていなかったのだ。

 そんな中、俺は、カイジン、リグルド、リグル、シズさん、ウォズと一緒に、大鬼族のリーダーから話を聞いていた。

 大鬼族のリーダーの言葉を聞いたカイジンは、酒を吹き出す。

 

カイジン「ぶっ〜!豚頭族(オーク)が、大鬼族(オーガ)に仕掛けてきただって?そんな馬鹿な!」

大鬼族「事実だ。」

カイジン「あり得るのか?そんな事?」

リグルド「分かりません。」

リアム「分かんないけど、異常なのは確かだな。」

シズ「ええ。」

ゴブタ「そんなにおかしい事なんすか?」

 

 俺たちがそう話してる中、ゴブタが肉を食べながらこちらに来る。

 

リグル「ゴブタ。」

カイジン「当然だ。大鬼族と豚頭族じゃあ、強さの桁が違う。」

ウォズ「確かに。格下の豚頭族が仕掛ける事自体、あり得ないからね。」

 

 確かに、俺が知るゲームだと、オークとオーガでは、オーガの方が強いというのが、お約束とも言えるのだから。

 すると、リーダーは、忌々しそうに言う。

 

大鬼族「だが、奴らは来た。いきなり俺たちの里を襲撃してきた。武装し、鎧を身につけ、森を埋め尽くす程の圧倒的な戦力。あの忌まわしい豚どもに………里は蹂躙され尽くしたのだ!」

カイジン「豚頭族が鎧を?」

大鬼族「ああ。人間の着用する様な、フルプレートメイルだ。」

 

 それを聞いた俺たちは、つぶやく。

 

リアム「だとすると……。」

リグルド「やはり、オークだけで動いているとは思えませんな。」

カイジン「オークたちがそんな高価なものを大量に用意できるわけがない。不自然だ。」

大鬼族「その通りだ。軍勢の中に、仮面をつけた魔人がいた。」

リアム「仮面の魔人………。」

大鬼族「あれは上位魔人だ。間違いない。」

 

 リーダーは、そう語った。

 なるほどな。

 

リグルド「そいつとリムル様とリアム様を間違え、戦いを挑んだという訳ですな?」

大鬼族「ああ。」

ゴブタ「………………つまりどういうことっすか?」

リグル「豚頭族が誰か魔王の勢力のいずれかに与した、ということではないか?」

ゴブタ「なるほど……っす?」

 

 ゴブタは、リグルの説明を聞いても、いまいちピンと来ていない様だった。

 魔王と聞くと、シズさんが言ってた事を思い出す。

 シズさんは、魔王、レオン・クロムウェルによってこの世界に召喚された。

 無論、そいつとは限らないが。

 

カイジン「魔王か………。」

リグルド「しかし魔王が何故?」

大鬼族「分からぬ。はっきりしているのは、300人ほどいた同胞は、たった7人しか残ってないということだ。」

シズ「…………少なくとも、レオン・クロムウェルでは無さそうね。」

リムル「なるほどな。そりゃあ、悔しいわけだ。」

リアム「リムル。」

シズ「スライムさん。」

 

 リムルは、そう言いながらこちらに来る。

 

大鬼族「肉はもう良いのか?リムル殿。」

リムル「ちょっと食休み。………お前の妹、凄いな。」

大鬼族「うん?」

 

 そう言うリムルの視線の先には、ホブゴブリン達に囲まれたリーダーの妹さんだった。

 

リムル「薬草や香草に詳しくて、あっという間にゴブリン達と仲良くなった。」

大鬼族「箱入りだったからな。頼られるのが嬉しいんだろう。」

リムル「………で、お前ら、これからどうすんの?」

大鬼族「どう………とは?」

リムル「今後の方針だよ。」

リアム「確かにな。再起を図るにせよ、他の地に移り住むにせよ、仲間の命運は、君の采配にかかってるはずだろ?」

 

 ちなみに、紫色の髪の大鬼族と銀髪の大鬼族は、ゴブリンたちと一緒に踊っていて、黒の大鬼族は、肉を豪快に食べていた。

 

大鬼族「知れた事。力を蓄え、再度挑むまで。」

リムル「当てはあるのか?」

大鬼族「うっ………。」

 

 リーダーは、何も考えていないのか、リムルの問いには答えず、酒を飲む。

 思念伝達で、リムルと話し合う。

 

リアム『これ、完全にノープランだよな?』

リムル『だな………。ちょっと、提案してみるか。』

リアム『何を?』

リムル『まあ、見てろって。』

 

 リムルがそう言うと、リーダーに提案する。

 

リムル「…………提案なんだけどさ、お前たち全員、俺たちの部下になる気はあるか?」

大鬼族「なっ………部下?」

リムル「まっ、俺たちが支払うのは、衣食住の保障のみだけどな。」

リアム「拠点があるのと無いのとだと、大分違うだろ?」

大鬼族「しかし………それでは、この街を俺たちの復讐に巻き込む事に………。」

リムル「まあ、別に、お前たちの為だけって訳じゃ無い。」

リアム「数千の武装した豚頭族が攻めてきたんだろ?誰か魔王が糸を引いているかも知れない。」

 

 俺がそう言うと、リグルドが口を開く。

 

リグルド「豚頭族どもは、このジュラの大森林の支配権を狙っているやもしれませんな。」

リムル「うん。この街だって、決して安全とは言えないだろうな。」

リアム「そんな訳で、こちらとしても、戦力は多いに越したことはない。」

リムル「それに、もし、お前たちに何かあったら、俺たちも一緒に戦う。俺たちは、仲間を見捨てない。」

リアム「ああ。」

大鬼族「なるほど………。少し、考えさせてくれ。」

リアム「分かった。じっくり考えてくれ。」

リムル「さてと、俺はもう少し、肉を貰ってこようかな。」

リアム「俺も。」

ウォズ「では、私もせっかくだ。貰っておこう。」

 

 俺とリムル、ウォズは、肉を貰いに行く。

 そんな中、リーダーは森の中を歩いていて、青色の髪の大鬼族と銀髪の大鬼族が、リーダーに話しかける。

 

大鬼族「悪い話では無い。」

大鬼族「だけど、決めるのは、貴方自身だよ。我らは、貴方と姫様に従うから。」

 

 二人の大鬼族は、リーダーにそう声をかけて、リーダーは奥に向かっていく。

 その翌日、俺とリムルが居る天幕に、リーダーがやって来る。

 

リムル「………決めたのか?」

大鬼族「大鬼族の一族は戦闘種族だ。人に仕え、戦場を駆ける事に抵抗はない。主達が強者なら、尚の事喜んで仕えよう。」

リアム「ああ。」

大鬼族「契約は、豚頭族の首魁を討ち滅ぼすまでで良いか?」

リムル「その後は、自由にしてもらって構わない。」

リアム「俺たちに協力して国を作るのも良いし、旅立つのも選択肢にあるな。」

 

 俺とリムルの言葉を聞いたリーダーは、息を吐いて、その場に跪く。

 

大鬼族「昨夜の申し出、承りました。あなた様方の配下に、加わらせて頂きます。」

リムル「うむ。」

リアム「ああ。」

 

 何だか、弱味に付け込む様な形になってしまったな。

 この決断は、自分の不甲斐なさを飲んだ、一族の頭としての物だろう。

 俺たちは、人間態になる。

 

リムル「顔を上げろ。」

リアム「君達を受け入れる。皆をここに呼んでくれ。」

大鬼族「はっ。」

 

 そう言って、リーダーは、残りの大鬼族達を呼びに行った。

 俺とリムルは。

 

リアム「リムル。」

リムル「ああ。俺たちに出来る事は、あの頭の決断を、悔いなき物にしてやるだけだ。」

リアム「だな。」

 

 しばらくすると、残りの大鬼族達がやって来る。

 俺とリムルは、思念伝達で話し合う。

 

リアム『彼らにも、名前をやるか?』

リムル『だな。俺が、頭と妹と紫色と青色の奴を名付ける。

リアム『じゃあ、残りは俺がやるわ。』

リムル『頼むわ。』

 

 そんな風に話し合った後、リムルが口を開く。

 

リムル「俺たちの配下になった証に、名をやろう。」

大鬼族一同「あっ………。」

大鬼族「俺たち、全員に………?」

リムル「名前がないと不便だろ?」

大鬼族「しかし………。」

大鬼族「お待ちください。名付けとは本来、大変な危険を伴う物。それこそ、高位の………。」

リアム「大丈夫だ。」

大鬼族「ですが………。」

 

 おそらく、姫様が言いたいのは、低位活動状態(スリープモード)の事だろ?

 今回も、分担して行うから、問題ないだろ。

 

リムル「それとも、俺達に名前を付けられるのは嫌か?」

大鬼族「そういう事では………。」

大鬼族「異論などない。」

大鬼族「お兄様………。」

大鬼族「ありがたく頂戴する。」

大鬼族「若がそう言うのなら。」

リムル「うん。じゃあ、始めよう。」

リアム「君は………ああ。」

 

 俺とリムルが、大鬼族達に名付けをすると、気を失ってしまう。

 しばらくすると、声が聞こえて来る。

 

???「紫苑。そろそろ交代の時間です。」

紫苑「いいえ、姫様。リムル様のお世話は、私がします。どうぞ、お休みになってください。」

???「リアム様のお世話は、私がしましょう!」

???「紫苑に銀姫ったら、もう。」

 

 何か、女の人の声が聞こえて来る。

 目を少しずつ開けていくと、人の姿が。

 

リムル「んっ………。」

リアム「んん………。」

紫苑「あっ………。」

「「「リムル様、リアム様、おはようございます。」」」

リムル「えっと………どちら様でしたっけ……?」

 

 あれ、記憶が曖昧だ。

 確か、大鬼族達に名付けをしようとしてたら、気を失った筈………。

 すると。

 

???「お目覚めになられたか、リムル様、リアム様。」

リムル「ん?」

リアム「大鬼族の若様だよな?」

紅丸「はっ。今は進化して鬼人となり、頂戴した名の、紅丸を名乗っています。」

 

 そうだ。

 名付けをした途端、スリープモードになったんだったな。

 どういう事だ?

 ていうか、鬼人?

 大鬼族じゃなくて?

 すると、時之歴史が答える。

 

時之歴史『鬼人とは、大鬼族の中から稀に生まれる種族の事です。』

リアム『へぇ………。』

 

 俺はそう言いながら、紅丸を見る。

 体は一回り小さくなったが、うちに秘められた魔素量が増大している。

 リグルドショックの再来だな。

 すると、姫様が話す。

 

朱菜「リムル様、リアム様、朱菜です。お目覚めになられて、本当に良かった。」

 

 姫様は、更に美少女になった感じだな。

 紫色の髪の大鬼族と緑色の髪の大鬼族が俺とリムルに話しかける。

 

紫苑「紫苑です。リムル様に付けて頂いた名前、とても気に入っています。」

銀姫「銀姫(ギンキ)です。リアム様に名付けてもらったこの名前、とても気に入っています。」

 

 紫苑の方は、野生味が薄れて、知的な感じになったな。

 銀姫もまた、野生味が薄れ、知的な感じになっているな。

 ていうか、二人とも、おっぱいがでかい。

 

リアム「紅丸の後ろに控えているのは、白老だったな。リムルの首を飛ばそうとした。」

白老「ホッホ、いじめてくださいますな。一瞬で貴方に対応され、焦ったのはこちらでしたぞ。」

 

 白老は、鬼人へと進化した影響か、大分若くなった気がするな。

 で、紅丸の隣に居るのが………。

 

リアム「確か、蒼影だったな。」

蒼影「はっ。ご回復、お喜び申し上げます。リムル様、リアム様。」

 

 蒼影は、イケメンになってるよ。

 すると、時之歴史が説明する。

 

時之歴史『上位の魔物に名付けをすると、それに見合う魔素を消費します。』

リアム『そういうの、早く言って欲しかったなぁ。』

 

 俺がそう思う中、一人居ない事に気づく。

 

リムル「ん?あと1人はどうした?」

紅丸「ああ。奴は、カイジン殿の工房に入り浸ってて………。」

???「リムル様とリアム様が目覚めただべか。」

リグルド「おっ、来た様ですな。」

 

 どんな風になってるんだろうな。

 もしかして、ダンディな風になってたり。

 

???「リムル様、リアム様!」

「「ん?」」

???「元気になって、良かっただよ。」

「「おお!」」

黒兵衛「分かっかな?おら、黒兵衛だ。」

 

 普通におっさん!

 何か、ホッとするな。

 

リアム「仲良くしような、黒兵衛!」

黒兵衛「んだ!」

 

 俺たちがそうしている中、ジュラの大森林に起こった異変は、確実に侵食を続けていた。

 一方、ジュラの大森林の中央に広がるシス湖。

 その周辺には、湿地帯が広がっていて、蜥蜴人族(リザードマン)が支配する領域となっている。

 

蜥蜴人族「ほ、報告します!シス湖南方にて、豚頭族の軍勢を確認!我ら、蜥蜴人族の領域への侵攻と思われます。」

首領「豚頭族だと?戦の準備をせよ。豚ごとき、蹴散らしてくれるわ。」

親衛隊長「数はどのくらいなのだ?」

蜥蜴人族「それが………。」

副隊長「どうした?歯切れが悪いぞ。早く言え。」

蜥蜴人族「それが………豚頭族の軍勢、その数………およそ20万………。」

 

 その言葉に、親衛隊長と副隊長が叫ぶ。

 

親衛隊長「バ………バカな!?我々の20倍もの軍勢だと?」

副隊長「ちゃんと確認したのか?」

蜥蜴人族「魔力感知と熱源感知で、何度も確認しました。この命に賭けて、真実であります。」

首領「………ご苦労。下がって休むが良い。」

蜥蜴人族「はっ。」

 

 首領がそう言うと、偵察部隊は、下がっていく。

 首領は呟いた。

 

首領「20万だと………?そのバカげた数の豚どもの胃袋をどうやって、満足させる事が出来ると言うのだ?」

側近「そもそも奴らは、勝手気ままで、協調性のない連中。」

側近「20万などと言う途方もない数を、統率出来ようはずもない。」

側近「噂ですが、豚頭族の軍勢が、大鬼族の里を滅ぼしたとか。」

「「何だって!?」」

 

 側近達が、その噂に驚く。

 そんな中、首領がポツリと呟く。

 

首領「豚頭帝(オークロード)。」

部下達「あっ………。」

首領「20万もの軍勢をまとめ上げている豚頭族が居るのならば……伝説のユニークモンスター、豚頭帝の存在を疑わねばなるまい。」

親衛隊長「ん………。」

副隊長「豚頭帝………。」

 

 首領の言葉に、側近達が騒めく。

 

側近「オ………豚頭帝。」

側近「いや………しかし………。」

側近「だが、万が一そうであるなら、豚頭族どもが、大軍をまとめ上げる事ができた理由の説明はつきますな。」

側近「しかし、その目的は………?」

側近「そんな事はどうでもよろしい!問題は勝てるかどうかですぞ!」

 

 側近達がそう言う中、首領が口を開く。

 

首領「本当に豚頭帝が生まれたのだとすれば、勝利は厳しいだろう。」

 

 その言葉に、部下達が騒めく。

 首領は、言葉を紡ぐ。

 

首領「豚頭帝は、味方の恐怖の感情すらも食らう、正真正銘の化け物なのだからな。………可能性の話だ。………だが、打てる手は全て打つべきだ。」

親衛隊長「打てる手………。」

副隊長「と言いますと?」

首領「援軍を頼むべきだろうな。………息子よ!我が息子はおるか?」

 

 首領がそう叫ぶと、その息子が現れる。

 

ガビル「ここにおりますよ。………ですが、親父殿。その呼び方は、些か不粋ではありませぬか?我輩には、ガビルというゲルミュッド様から頂いた名前があるのですから。」

 

 そう、ゲルミュッドは、この蜥蜴人族にも、ガビルという名前を付けていたのだ。

 

首領「呼び方など、どうでも良かろう。」

 

 首領がそう言う中、ガビルの妹である親衛隊長とガビルが目を合わせる。

 副隊長は、ガビルの幼馴染だ。

 

首領「お前にやってもらいたい事がある。」

ガビル「………伺いましょう。」

 

 一方、俺たちは、白老とシズさんがゴブタ達をしごいているのを見ていた。

 理由は、ゴブタがお気楽に剣術を習いたいと言ったからだ。

 

白老「ほらほら!打ち返してこんか!」

シズ「皆!かかってきなさい!」

 

 そう言って、ゴブタ達を滅多打ちにする。

 まさに鬼コーチだな。

 ていうか、シズさんって、意外とスパルタなのかな。

 すると、紅丸がある話をする。

 

リムル「豚頭帝?」

リアム「何だそれ?」

紅丸「まあ、簡単に言うと………化け物です。」

リムル「本当に簡単だな。」

ウォズ「確か、数百年に一度、豚頭族の中に生まれると言われている、ユニークモンスターだったかな。」

リアム「ユニークね………。」

紅丸「ウォズの言う通りです。何でも、味方の恐怖の感情すらも食う為、異常に高い統率能力を持つんだとか。」

リムル「うへぇ………。」

紅丸「里を襲った豚頭族どもは、仲間の死にまるで怯む事が無かった。あるいは………と思いまして。」

リアム「なるほど………。」

 

 恐怖の感情すらも食うって、やばいな。

 つまり、死という恐怖に怯まない無敵の軍隊が出来るわけだ。

 やばいな。

 

紅丸「まあ、可能性で言えば、非常に低い話です。」

ウォズ「普通なら、数百年に一度しか生まれないから、そう簡単には出ません。」

リムル「ふ〜ん?」

リアム「他に、里が襲われる理由に心当たりはないか?」

紅丸「そうですね。関係あるかは分かりませんが、襲撃の少し前に、ある魔人が里にやってきて、『名をやろう。』………と言ってきたんですが、あまりに胡散臭かったので、追い返しました所、悪態をつきながら帰っていきましたね。」

 

 魔人か………。

 襲撃の際にも、魔人が居たという事は、関係ありそうだな。

 そいつが豚頭族達を、大鬼族の里に誘導したという可能性もありそうだよな。

 

リアム「魔人ね………。」

リムル「そいつから、恨みを買っているかもしれないって事か。」

紅丸「仕方ありませんよ。主に見合わなけりゃ、こっちだってごめんだ。名を付けてもらうのも、誰でも良いってわけじゃありませんからね。」

 

 紅丸のその言葉に、嵐牙とウォズも頷いていた。

 俺たちは、主に相応しいと認められたのか。

 それは嬉しいな。

 ていうか、俺はウォズに名付けしてないでしょ。

 すると、紅丸が何かを思い出そうとする。

 

紅丸「なんて名前だったかな?確か………ゲラ、ゲリ、ゲレ、ゲロ?」

嵐牙「フッ!」

紅丸「ん?」

 

 嵐牙と紅丸が背後に視線を向ける。

 すると、木の影から、蒼影が現れる。

 

蒼影「ゲルミュッドだ。」

紅丸「そう、それだ。」

リムル「ゲルミュッド………。何か、どっかで聞いた事がある名前だな。」

リアム「確か、リグルの兄貴に、名前を付けた奴だったな。」

リムル「あちこちで名前を付けてんのか?なぜ?」

リアム「分からん。」

ウォズ「何かありそうだね。」

 

 どうやら、色んな場所で、ゲルミュッドという奴が暗躍しているみたいだな。

 すると、蒼影が報告する。

 

蒼影「報告がございます。リムル様、リアム様。」

リアム「ああ。」

蒼影「蜥蜴人族の一行を目撃しました。」

リムル「蜥蜴人族?豚頭族じゃなくて?」

蒼影「はい。湿地帯を拠点とする彼らが、こんな所まで出向くのは異常ですので、取り急ぎ、ご報告をと。」

リムル「ふ〜ん。」

蒼影「何やら、近くのゴブリン村で、交渉に及んでいる様でした。ここにも、いずれ来るかもしれません。」

リアム「分かった。」

 

 蜥蜴人族も、豚頭族の襲撃に備えようとしているのか?

 俺は、白老とシズさんにコテンパンにされたゴブタ達を見ながらそう思った。

 一方、ガビル達は。

 

ガビル「全く、親父殿と来たら………。『ゴブリン村を巡り、協力を取り付けてこい。』……だと?豚頭族に恐れをなすなど、誇り高き蜥蜴人族の振る舞いとは思えぬ。昔は、あんなにも大きく偉大な男だったというのに。」

部下「ねぇねぇ、ガビル様は、いつ首領になるの?」

ガビル「む?」

 

 部下の質問に対して、ガビルが止まって答える。

 

ガビル「いやいや。少々不遜なことを言ってしまったが、我輩など、親父殿には遠く及ばんよ。」

部下「そうかな?今のガビル様なら、きっと全盛期の首領にも劣らねぇぜ。」

部下「然り。」

ガビル「いや………そんな事は………。」

部下「だって、ガビル様、名持ち(ネームド)だし。」

部下「うん。その槍捌きにおいて、右に出る者なし。」

部下「あんた、今立たないで、いつ立つんだよ?」

ガビル「えっ!?」

 

 部下達の言葉に、ガビルは満更でもない表情を浮かべる。

 

ガビル(うん………う〜ん………。えっ、何?ひょっとして………我輩ってば、結構いけてる?)

 

 そう思うガビルだった。

 ガビルは、咳払いをする。

 

ガビル「ううん!そうだな………親父殿も年だ。少々強引なやり方でも、我輩が支配者に足る力を持っている所を、お見せしよう。」

部下達「おお〜!」

ガビル「それでこそ、安心して引退していただけるという物。」

部下「じゃあ!」

ガビル「フフッ……!うむ!豚頭族の軍勢の撃退を持って、蜥蜴人族の首領の座を、受け継ぐ事にしよう!」

部下「さっすが、ガビル様だぜ!」

部下「ヒュ〜ヒュ〜!」

部下「かっくいい〜!」

部下「至極、当然。」

 

 部下達は、ガビルを煽てて、ガビルコールを始める。

 それを見て、ガビルは満更でもなさそうだった。

 

ガビル「フフフッ……。ふ〜ん。行くぞ!ふ〜ん!我輩に着いてこい!お前達の未来は明るい………ゲホッ!ゲホッ!」

部下達「おお〜!」

 

 ガビルはかっこつけた余り、咳き込んでしまうが、移動を再開する。




今回はここまでです。
銀髪の大鬼族の名前は、銀姫になりました。
銀姫が、ツクヨミとなります。
次回、ガビル達がリアム達の前に現れます。
いよいよ、オーク戦が近づいて参りました。
感想、リクエストは絶賛受け付けております。
リクエストで、オーマフォームを超えるリアムだけのフォームを出して欲しいというのがありますが、シンプルにオーマジオウライドウォッチとグランドジオウライドウォッチの同時使用で良いですかね?
フォーム名は、オーマグランドジオウという感じで。
どういうのを出して欲しいというのがあれば、活動報告にリクエストをお願いします。
あと、精霊の棲家で、グランドジオウとゲイツマジェスティのブランクライドウォッチを手に入れさせます。
そして、ワルプルギスでのクレイマン戦で、リアムはグランドジオウに、リムルはゲイツマジェスティに変身します。
ジオウIIは、豚頭帝戦で登場しますが、その際に、リアムには常磐ソウゴを接触させようと思います。
その際、どんな風に二人を話させましょうか?


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第10話 ガビル参上!

 紅丸達が仲間になってから、数日が過ぎた。

 俺は銀姫を呼び出していた。

 

銀姫「リアム様?どうしました?」

リアム「実は、君に渡したい物があってね。」

銀姫「渡したい物?」

リアム「ああ。」

 

 俺はそう言って、銀姫にツクヨミのライドウォッチを渡す。

 

銀姫「これは……………リアム様達が使ってる物ですよね?」

リアム「ああ。ツクヨミライドウォッチだ。それを使えば、仮面ライダーに変身出来る。」

銀姫「よろしいのですか?」

リアム「ああ。」

 

 実は、銀姫とツクヨミのライドウォッチが共鳴していたのだ。

 だからこそ、ツクヨミのライドウォッチは、銀姫に渡すべきだと思った。

 俺と銀姫は、朱菜の様子を見に行く事に。

 途中、リムルと紫苑と合流する。

 俺たちは、中へと入る。

 中には、朱菜、ガルム、ドルド、ミルドが居た。

 

リムル「すごいな。」

「「「「ん?」」」」

リアム「もう絹織物が出来たのか。」

朱菜「リムル様!リアム様!」

ガルム「ども。」

ドルド「こんにちは。」

ミルド「うん。」

リムル「やっぱ、喋らねぇ!」

リアム「喋らないんだ。」

 

 すると、朱菜がリムルの方へと寄っていく。

 そして、リムルを抱きしめる。

 

朱菜「いらして下さったんですね!リムル様!リアム様も!」

リアム「ああ。」

リムル「それで、どんな具合だ?」

朱菜「はい。カイジン様が作ってくださった織り機は、とても使いやすいです。」

リムル「そうか、良かった。」

リアム「この調子で、皆の衣類の製作を頼んだぞ。」

朱菜「はい!お任せ下さい!」

 

 すると、紫苑と銀姫が口を開く。

 

紫苑「では、リムル様、リアム様。参りましょう。お昼が冷めてしまいます。」

銀姫「っ!?リアム様!丁度、お昼を作ってきましたんで、食べませんか!?」

リアム「ああ。頼む。」

朱菜「あっ、紫苑、銀姫。秘書のお仕事は、ちゃんと出来ているのですか?」

紫苑「勿論です、朱菜様。」

銀姫「問題なく、行えています。」

 

 紫苑はリムルの、銀姫は俺の秘書を名乗り出た。

 現在は、お互いの秘書兼護衛役だ。

 ただ、紫苑が料理を作ったという単語に、銀姫は驚いた様な反応をしていたな。

 何か、嫌な予感がするな。

 すると、朱菜はリムルを掴む。

 

朱菜「フフフ………。私が、リムル様のお世話をしても良いのですよ?」

紫苑「いいえ、姫。それには及びません。私がきちんとお世話いたします。」

リアム「2人とも………?」

銀姫「まあ、2人は置いておいて、私たちは先に戻りましょう。」

リアム「そうだな。」

 

 俺と銀姫は、先に戻る事にした。

 それにしても、朱菜と紫苑って、リムル関連になると、張り合うんだよな。

 朱菜は、どちらかというと、リムル寄りだからな。

 まあ、気にする事はないか。

 戻ると、紅丸、蒼影、白老の三人がいた。

 

紅丸「ああ、これはリアム様。」

白老「お食事ですかな?」

リアム「ああ。俺は銀姫に、リムルは紫苑の手料理をいただくよ。」

「「「うっ………!?」」」

 

 俺は、リムルの座席の隣に座る。

 気になったので、銀姫に聞く事に。

 

リアム「なあ、何で、紫苑が手料理を作るって言うだけで、そんな反応をするんだ?」

銀姫「…………実は、紫苑の手料理は、酷いのです。」

リアム「………マジで?」

銀姫「マジです。」

 

 なるほど。

 だからか。

 でもまあ、料理が出来ないのは、仕方ないんじゃないか?

 

銀姫「では、お持ちしますね。」

リアム「ああ。」

 

 俺は、近くの椅子に座る。

 でも、銀姫の料理は酷くないよな?

 すると、リムルを連れた紫苑が戻ってくる。

 

紅丸「………ああ、これはリムル様。」

白老「………お食事ですかな?」

リムル「ああ。紫苑が手料理を作ってくれたっていうのでな。」

「「「…………。」」」

 

 予め、俺から聞いていた事もあり、そこまで驚いていなかったが、冷や汗を垂らしていた。

 

リムル「お前達やリアムも一緒にどうだ?」

リアム「いや、俺は銀姫が作ってくれたのを食べるから。」

紅丸「いや………俺は今、腹が減ってなくて………。」

白老「ええ。お茶だけで。」

蒼影「私は………。」

 

 蒼影がそう言うと、分身する。

 どうやら、分身のスキルを使えるみたいだな。

 

蒼影「村の周囲を、偵察に行って参ります!」

 

 そう言って、蒼影は逃げた。

 紅丸は冷や汗を流しまくり、白老は気配を消し始めた。

 リムルが紅丸達の反応に首を傾げる中、紫苑は料理を取りに行き、入れ替わりで銀姫がやって来る。

 そんな中、ウォズも入ってくる。

 

銀姫「お待たせしました。」

 

 そう言って、俺の目の前に置いたのは、鶏肉の肉団子と野菜がたっぷり入ったすまし汁だった。

 普通に美味そう。

 

リアム「それじゃあ、いただきます。」

銀姫「はい!」

 

 俺は箸を取り、一口食べる。

 美味しい。

 

リアム「美味しいな!」

銀姫「ありがとうございます!」

リムル「へぇぇ………美味そうだな。」

 

 すると、紫苑がやって来て。

 

紫苑「お待たせしました。さっ、召し上がれ。」

リアム(やっぱりかぁ………。)

銀姫「……………。」

ウォズ「…………………。」

 

 紫苑の料理は、料理と言っていいのか、分からない代物だった。

 それを見た銀姫は、口を抑えていた。

 ウォズは、紫苑の料理(?)を見て、ドン引きしていた。

 すると、リムルから思念伝達が来て。

 

リムル『助けてくれ!リアム!!』

リアム『ごめん………無理。』

リムル『そんな!?』

 

 リムルからの助けを、俺は断った。

 ていうか、あんなもん食ったら、無事で済まないだろ。

 俺は、銀姫の作ってくれたすまし汁を食べる。

 ていうか、紫苑の料理から、食材の怨念みたいなのが聞こえてくるぞ!

 すると、何を思ったのか、リムルは目を閉じて、スプーンを右斜め後方に突き出す。

 そこには、先程入ってきたゴブタの姿が。

 ゴブタは、スプーンを咥えると、顔を青ざめる。

 

ゴブタ「むぐっ………!?」

リムル「むぐっ………?」

ゴブタ「うっ、うぐっ………!ぐわぁぁ!!」

 

 すると、ゴブタは震えて、首を抑えながら床に倒れる。

 しかも、緑色の肌が、紫色になっていく。

 

リムル「ああっ………。」

リアム「うわぁ………。」

ゴブタ「うぐぐ………!」

銀姫「……………。」

紅丸「……………。」

白老「……………。」

ウォズ「これは………………。」

 

 それを見ていた俺たちは唖然となり、銀姫、紅丸、白老は顔を青ざめ、口を抑えていた。

 まるで、新たな犠牲者が出てしまった事に恐れながら。

 しばらくすると、ゴブタの天に伸ばした手が、床に力無く倒れる。

 この場は、静寂が包まれる。

 紫苑がつぶやく。

 

紫苑「…………あれっ?」

銀姫「紫苑………。」

リムル「紫苑。」

紫苑「は………はい!」

リムル「今後、人に出す飲食物を作る時は、紅丸の許可を得てからするように!」

 

 しれっと、紅丸が巻き込まれた。

 本当に、あれは酷い。

 食材の怨念が聞こえた気がするぞ。

 俺たちがそんな風にしている一方、蜥蜴人族(リザードマン)のガビルは、近隣のゴブリン村から、着実に協力を取り付けていた。

 尤も、豚頭族の侵略に恐れをなしたゴブリン達が、勝手に軍門に下ってるだけだが。

 

部下「う〜ん………。これで、総勢7千匹になりましたな。」

部下「さっすが、ガビル様!交渉も上手!」

ガビル「いやいや、精一杯やって、たまたま結果が出ているだけの事。」

 

 ガビルは、部下の褒めに、謙遜した態度をとる。

 すると、別の部下が、口を開く。

 

部下「謙遜すんなよ。実力だよ。」

部下「そうですよ!もっと自信を持ってくださいよ!」

部下「然り。次期、蜥蜴人族の首領なのだからな。」

ガビル「そ………そうか?」

 

 部下からそう言われたガビルは考える。

 

ガビル(やっぱり、我輩………いけてるのかもしれん!)

 

 ガビルはそんな風に思い、部下達に話しかける。

 

ガビル「あ〜。それで、次はどこに向かうのだ?この辺りに、他に村はあるのか?」

部下「もう一つ、集落があるって話ですよ。」

部下「しかし、先ほどの村の者が、おかしな事を言っておった。」

ガビル「おかしな事?」

 

 ガビルが、三人の部下の真ん中の青色の蜥蜴人族に尋ねる。

 

部下「何でも、牙狼族を操るゴブリンの集落だとか。」

ガビル「はあ?ゴブリンが牙狼を?そんな訳ないだろう。」

部下「ごもっとも。更に言えば、そのゴブリン達の親玉、スライムに人間だという。」

ガビル「はあ?」

 

 ガビルは、その言葉に耳を疑った。

 スライムは色んな魔物の食糧になり、人間がいる事に違和感を覚えていた。

 

ガビル「状況がよく分からぬが………。ならば!そのスライムとその人間を支配下に置けば、牙狼族をも支配出来るという事だな。」

部下「おおっ!」

部下「一石二鳥!」

部下「なんて奥深い考えだ!やはり、あんたについてきて良かったぜ!」

ガビル「フフッ。我輩に任せておくがいい!」

部下「いよっ!ガビル様!あっ、そ〜れ!」

『ガビル!ガビル!ガビル!ガビル!』

ガビル「フフフ………!フフフフ………!ヌア〜ハッハッハッ!!」

 

 部下達がガビルコールをして、手拍子も、ガビルが乗っている竜もする。

 それには、ガビルは高笑いを浮かべる。

 俺たちの村に向かうようだ。

 一方、俺とリムルは、カイジンと黒兵衛が話し合うのを見ていた。

 

カイジン「へぇ〜………。焼き入れんの時の温度、勘なのかい?」

黒兵衛「んだ。火の色を見れば、大体分かるだよ。」

カイジン「俺は、測るなあ………。」

黒兵衛「おらも戻しの時は、きちっと測るだよ。」

カイジン「ああ。外が寒いと、粘りが出ねぇからな。」

 

 それを見ていた俺とリムルは。

 

リムル『黒兵衛すっかりカイジンと意気投合してるよな。』

リアム『ああ。二時間も、専門的な会話が続くくらいにはな。』

黒兵衛「あっ、それだったら、おらがいい土を教えてやるだ。」

カイジン「それはありがてぇ。」

 

 そんな俺たちは、うっかり中座するタイミングを逃して、今に至る。

 すると、カイジンと黒兵衛は、こちらを見てくる。

 

カイジン「なっ?」

黒兵衛「鍛造って、面白いべ。」

リムル「おっ………おう。」

リアム「そうだな。」

 

 カイジンと黒兵衛は、そんなふうに言い、再び専門的な会話に戻る。

 すると、リグルドが入ってくる。

 

リグルド「リムル様とリアム様はいらっしゃいますかな?」

リムル「ナイスタイミング!」

リアム「どうした?リグルド。」

リグルド「リムル様、リアム様。蜥蜴人族の使者が訪ねてきました。」

 

 蜥蜴人族の使者が遂に、この村にも来たか。

 俺とリムルは、リグルドと共に使者がいる場所に向かおうとすると。

 

紅丸「リムル様、リアム様。」

ルーク「ん?」

紅丸「俺たちも同席して構わないか?蜥蜴人族の思惑が知りたい。」

リムル「勿論だ。」

リアム「ああ。」

ウォズ「私も同行しよう。」

 

 さて、蜥蜴人族は、何を考えているのか。

 敵なのか味方なのかを、見定めなければならないな。

 俺は、リムル、リグルド、紅丸、紫苑、銀姫、白老、ウォズと共に、蜥蜴人族の一団がいる場所へと向かう。

 そこには、蜥蜴人族が並んでいたが、使者が居ない。

 

リムル「どいつが使者だ?」

リアム「ん?」

 

 すると、蜥蜴人族達は、槍で地面を突く。

 すると、先頭に居た三人の後ろにいた蜥蜴人族達が、二つに分かれて、その奥から、竜みたいなのに乗った蜥蜴人族が現れる。

 随分と芝居かかった登場だな。

 すると、その使者が槍で地面を突くのをやめさせて、大きくジャンプする。

 

ガビル「我輩は、蜥蜴人族のガビルである。お前らも配下に加えてやろう。光栄に思うが良い!」

部下「よっ!ガビル様!」

部下「最高!」

部下「かっこいい!」

部下「いかしてる!」

「「「「「「「「はあ?」」」」」」」」

 

 ガビルは、部下に盾の光の反射で自分を光らせるという、少し痛い演出をする。

 ていうか、配下に加わる?

 俺たちが?

 すると、1人の蜥蜴人族の部下が口を開く。

 

部下「ご尊顔をよ〜く覚えておくがよいぞ。このお方こそ、次の蜥蜴人族の首領となられる戦士!」

ガビル「ふ〜ん!」

部下「頭が高い!」

「「「「「「「「はぁ?」」」」」」」」

 

 なんだアイツ、偉そうに。

 何様のつもりだ。

 すると、リムルの方からミシミシという音が聞こえてきた。

 

リムル「えっ………ちょ………紫苑さん、やめて!スライムボディーが、スリムボディーになっちゃう〜!!」

紫苑「うう〜………!はっ………。」

リムル「うっ………。」

紫苑「すみません、すみません!」

 

 紫苑は、リムルを潰しそうになり、紅丸にリムルを持たせて、高速で謝る。

 銀姫は、青筋を立てていた。

 一方、リグルドは、ガビルに話しかけていた。

 

リグルド「ゴホン!恐れながら、ガビル殿と申されましたかな。配下になれと突然申されましても………。」

ガビル「やれやれ。皆まで言わねば分からんか?貴様らも聞いておるだろう?」

リアム「豚頭族の侵攻に関してか?」

ガビル「どうやら、人間にしては、話が分かるみたいだな。」

リアム「それはどうも。」

 

 やっぱり、そんな所か。

 どうやら、蜥蜴人族達も、豚頭族の事を脅威に感じているみたいだな。

 ちなみに、今、俺はオーラを抑えている為、他の人からしたら、普通に人間だと認識するだろう。

 あと、ウォズさん。

 殺気を出すのはやめろって。

 

ガビル「しからば、我輩の配下に加わるが良い。このガビルが、貧弱なお前達を、豚頭族の脅威より守ってやろうではないか!貧弱な……貧弱……貧弱………ワオ〜。」

 

 ガビルは、俺たちを見ながら、そう言う。

 まあ、この村は、貧弱な奴は居ないからな。

 ちなみに、ガビルは、紫苑と銀姫のおっぱいを見て、ワオと言った。

 すると、ガビルはしゃがみ、部下達と話し合う。

 

ガビル「ゴブリンが居ないようだが………。」

部下「あれ〜?」

部下「ここは確かに、ゴブリンの村のはず………。」

部下「っていうか、貧弱な奴が誰も居ないよ。」

 

 そんな風にガビル達は話し合っていた。

 俺とリムルは、思念伝達で話し合う。

 

リアム『どう思う?リムル。』

リムル『まあ、豚頭族が攻めてくるのなら、蜥蜴人族との共闘ってのも、選択肢の一つではあるんだが………。』

リアム『アイツに背中を預けるのはなぁ………。』

リムル『真に恐れるべきは、有能な敵ではなく、無能な味方であるって………ナポレオンの言葉だっけ?』

リアム『うん。その言葉は、ナポレオンの名言だな。』

 

 そんな風に話している中、ガビルが咳払いをする。

 

ガビル「ああ〜ゴホン!聞けばここには、牙狼族を飼い慣らした者達が居るそうだな。その2人は幹部に引き立ててやる。連れてくるがいいぞ。」

 

 そんな風に言うと、紫苑が再びリムルを強く握りしめる。

 すると、紅丸が良い笑顔で。

 

紅丸「コイツ、殺して良いですか?」

リムル「フッ………良いよ。」

リアム「何許可出してんだ!ストップ!」

銀姫「リアム様。」

リアム「ど、どうした、銀姫?」

銀姫「私のツクヨミとしての力で、この者達を一掃して良いですか?」

ウォズ「私も、この愚者を粛清してもよろしいですか?」

リアム「後々面倒臭いからやめろ!」

 

 紅丸と銀姫、ウォズが、そんな風に言うもんだから、俺は必死に抑える。

 

リムル「えっと………。」

リアム「牙狼族を飼い慣らしたっていうか、仲間にしたのは、俺たちなんだけど………。」

ガビル「スライムと人間が?冗談を言うでない。」

リアム「ん………。」

リムル「嵐牙。」

嵐牙「はっ!ここに!」

 

 リムルが嵐牙の名を呼ぶと、紫苑の影から、嵐牙が現れる。

 それも、本来の大きさの。

 

リアム「お前に話があるそうだ。」

リムル「聞いて差し上げろ。」

嵐牙「御意!ふん!」

 

 嵐牙は、スキル・威圧を発動して、周囲の蜥蜴人族は威圧に怯える。

 

紅丸「あれっ?あんなにデカかったですかね?」

リムル「アレが本当の大きさなんだよ。」

リアム「まあ、威嚇するには、あのサイズの方が何かと都合が良い。」

銀姫「なるほど………。」

 

 紅丸の疑問に、俺とリムルがそう答えると、銀姫が納得する。

 嵐牙は、ガビルに話しかける。

 

嵐牙「主達より、お前の相手をする命を受けた。聞いてやるから、話すが良い。」

ガビル「…………貴殿が、牙狼族の族長殿か?」

 

 へぇ。

 他の奴が萎縮してる中、平然としているな。

 根性があるのか、鈍いかのどちらかだが。

 

ガビル「美しい毛並み。鋭い眼光。流石、威風堂々たる佇まい。しかし………主がスライムと人間とは、些か拍子抜けであるな。」

リムル「ああん?」

リアム「あ?」

 

 どうやら、後者の方だな。

 鈍い奴だ。

 嵐牙も、怒っているのか、目を細める。

 

ガビル「どうやら、貴殿は騙されておるようだ。よかろう。この我輩が、貴殿を操る不埒者を、倒して見せようではないか!」

部下「ガビル様、かっけ〜!」

部下「見せてやって下さいよ!ガビル様!」

部下「ガビル無双を!」

部下「あっ、そ〜れ!」

部下達『ガビル!ガビル!ガビル!ガビル!』

 

 部下達が、ガビルコールをして、ガビルはポーズを取る。

 すると、嵐牙が呟く。

 

嵐牙「蜥蜴風情が………!我が主達を愚弄するか………!!」

リムル(あっ、やばい。)

リアム(アイツ、死んだな。)

 

 ガビルがポーズを取る中、嵐牙は周囲から赤いオーラを出しつつ、目を光らせて、ガビルに迫っていく。

 すると、後ろから鼻歌が聞こえてくる。

 

ゴブタ「て〜ん、てってって〜ん!」

嵐牙「グワァァァ!!」

 

 嵐牙が咆哮を出す中、ゴブタが後ろから現れる。

 

ゴブタ「おお〜いっ、何やってるんっすか?」

紅丸「ゴブタ!?」

リムル「お前、生きてたのか?」

リアム「死んだかと思った。」

ウォズ「あれを食べて生きているとはね……………。」

ゴブタ「ま〜たまた、酷いっす。ちゃんと生きてるっすよ。」

 

 どういう事?

 そう首を傾げていると、時之歴史が伝える。

 

時之歴史『告。個体名紫苑の手料理に抵抗して、毒耐性を獲得したようです。』

 

 え、毒耐性?

 という事は、紫苑の料理は、毒があるのか?

 ていうか、俺とリムルは、毒耐性なんて持ってないのにな。

 そんな風に青褪めていると、嵐牙がゴブタを咥える。

 

嵐牙「いい所へ来たな。」

ゴブタ「えっ?」

 

 すると、嵐牙はゴブタに槍を持たせ、ガビルの前に置く。

 

ゴブタ「えっ?へっ?何すか、この状況!?」

嵐牙「蜥蜴。」

ゴブタ「ええっ?」

嵐牙「この者を倒せたのなら、貴様の話、一考してやろう。」

ゴブタ「な………何で?」

 

 嵐牙、意外と冷静だな。

 まあ、嵐牙が相手をすると、ガビルが死ぬからな。

 すると、ガビルがゴブタを侮ったのか、口を開く。

 

ガビル「構いませんぞ。部下にやらせれば、恥はかきませんからな。なあ、スライム殿に人間。」

リアム「ムカッ。」

 

 よし、言ったな。

 じゃあ、ゴブタには、遠慮なく行かせてあげよう。

 

リムル「ゴブタ!遠慮はいらん!やったれ!」

ゴブタ「ええっ!何なんすかもう………。」

リアム「お前が勝ったら、黒兵衛に頼んで、お前専用の武器を作ってやるよ!」

ゴブタ「ああっ!ほんとっすか?ちょっとやる気出たっす。」

リムル「負けたら、紫苑の手料理の刑な!」

ゴブタ「それだけは勘弁っす〜!」

 

俺の言葉に、ゴブタは、オーラを出してやる気になる。

 リムルの言葉に、俺、銀姫、紅丸、ウォズ、リグルドが顔を青褪め、当の本人は。

 

紫苑「何やら、非常に不愉快な会話です。」

 

 そう言われたもんだから、紫苑はリムルを捻る。

 今のは、リムルが悪い。

 ていうか、紫苑の奴、自分の料理が最悪なのを自覚してないのか!?

 ガビルは、槍を振り回す。

 

ガビル「ふ〜ん!」

部下達『ガビル様〜!』

ガビル「準備は良いかな?」

ゴブタ「おお〜!」

嵐牙「では、始めろ!ワオ〜ン!!」

 

 嵐牙は、試合開始の咆哮を出す。

 ガビルは、ゴブタを侮っていた。

 

ガビル「フッ………。偉大なるドラゴンの末裔たる我ら、蜥蜴人族が、ホブゴブリンなんぞに………。」

ゴブタ「ふ〜ん!」

ガビル「ん?」

 

 そんな事を口にする中、ゴブタは自分が持つ槍を思いっきりぶん投げる。

 

ガビル「ぬおっ!?」

 

 その槍は、ガビルには当たらずに、部下達の目の前の地面に突き刺さる。

 

ガビル「おのれ!小癪な!」

 

 ガビルはそう言って、槍をゴブタに向かって振るうが、既にゴブタは居ない。

 

ガビル「あっ………。バカな、消え………たあァァァァァ!!ァァァァ………。」

 

 ガビルは、背後に現れたゴブタの回し蹴りを頭にくらい、そのまま気絶する。

 部下の蜥蜴人族達は、呆然とする。

 まさか、ゴブタの奴、影移動を使いこなしているとはな………。

 

ゴブタ「ハァ〜………。」

嵐牙「終わりだな。勝負あり!勝者ゴブタ!」

紅丸「おっしゃ!」

リグルド「よ〜し!」

紫苑「やった!」

銀姫「ええ。」

 

 すると、嵐牙とリグルドが、ゴブタを胴上げする。

 

リグルド「わっしょい!」

ゴブタ「アハハ………!」

リグルド「わっしょい!」

ゴブタ「高いっす!」

嵐牙「さすがは、ゴブタ!我が見込んだだけの事はある!」

リグルド「ようやった!ホブゴブリンの力を、よくぞ見せつけた!」

紫苑「見直したぞ。私に対する先ほどの失礼な発言は、聞かなかったことにしてやろう。」

銀姫「お見事です。貴方は強いですね。」

紅丸「俺たちと戦った時より、強くなっている様だな。」

白老「鍛えがいのありそうな才能を持っている様ですじゃ。」

ウォズ「やるじゃないか。」

 

 どうやら、皆、ゴブタの勝利を確信してたみたいだな。

 それを見ていた俺たちは、思念伝達で話し合う。

 

リムル『まさかゴブタが勝つとは……。俺はてっきりいちゃもんつけてボコボコにするのかと。』

リアム『俺も。まあでも、良いじゃん。勝ったんだし。』

リムル『ああ。俺は空気の読める男だから、期待通りだったことにしよう。』

 

 そんな風に話し合って、俺はゴブタに声をかける。

 

リアム「よくやった!約束通り、黒兵衛に武器を頼んでおく!」

ゴブタ「やったっす!」

リムル「お前ら、勝負はゴブタの勝ちだ!」

部下達『…………ハッ!?』

 

 リムルがそう声をかけると、固まっていたガビルの部下達は、動き出す。

 

リムル「豚頭族と戦うのに協力しろという話なら、検討しておくが、配下になるのは断る。」

リアム「今日の所は、さっさとそこのソイツを連れて帰れ!」

 

 俺とリムルがそう言うと、部下達は、ガビルを抱える。

 

部下「い、いずれまた来るぜ!」

部下「然り、これで終わりではないぞ。」

部下「きっ!お………覚えてろ〜!!」

 

 そんな、三流の悪役が言うような捨て台詞を吐きながら、蜥蜴人族達は、走り去っていく。

 

リムル「さてと。」

リアム「俺たちも、今後の方針を立てないとな。」

 

 その夜、豚頭族を偵察しに行っていた蒼影、リグルド、レグルド、ログルド、リリナを始めとするゴブリン、カイジン、シズさんを加え、会議をする事に。

 蒼影の報告に、俺たちは驚く。

 

蒼影「20万の豚頭族。その本隊が、大河に沿って北上している。そして、本隊と別動隊の動きから予想できる合流地点は…………ここより東の湿地帯。」

リグルド「つまり、蜥蜴人族の支配領域、と言う事ですな?」

蒼影「うん。」

リムル「20万か………。」

リアム「かなり多いな………。それにしても、豚頭族の侵攻目的はなんだ?」

 

 その言葉に、全員が考える。

 カイジンが口を開く。

 

カイジン「う〜ん………。豚頭族はそもそも、あまり知能の高い魔物じゃねぇ。この侵攻に、本能以外の目的があるってんなら、何かしら、バックの存在を疑うべきだろうな。」

黒兵衛「バックの存在だべか?」

リムル「例えば………。」

リアム「魔王とかか?」

 

 その言葉に、全員の視線が、俺たちに向く。

 そして、シズさんは何かを考えていた。

 

リアム「紅丸達の村に来た魔族、ゲルミュッドが関係しているなら………。」

リムル「………まっ、今の所、なんの根拠も無いが。」

 

 そう言って、思念伝達で話し合う。

 何かを考え込むシズさんをチラリと見ながら。

 

リムル『魔王だとしても、そいつがシズさんを苦しめた、レオンっていう魔王だとは限らないしな。』

リアム『本当に絡んでいるかどうかは、分からないな。』

シズ『うん。』

 

 リムルと俺の言葉に、シズさんは頷く。

 すると、紅丸が口を開く。

 

紅丸「魔王が絡んでいるかどうかは、分からん。だが………。」

リムル「だが?」

紅丸「豚頭帝(オークロード)が出現した可能性は強まったと思う。」

リアム「確か、数百年に一度、豚頭族の中から生まれる、ユニークモンスターだったか?」

紅丸「はい。20万もの軍勢を、普通の豚頭族が統率出来るとは思えませんから。」

ウォズ「そう考えるのが、妥当だろうね。」

リムル「ふむ………。」

 

 紅丸の言葉を聞いていると、ルグルドが口を開く。

 

ルグルド「居ないと楽観視するよりは、警戒するべきだと思います。」

リムル「そうだな。」

リアム「じゃあ、今後の方針も、豚頭帝が居ると仮定して、進めるべきだろうな。」

ウォズ「その通りだね。」

 

 ルグルドの意見に、俺たちが頷いていると、蒼影の様子が変わる。

 

蒼影「あっ!」

リムル「どうした?」

蒼影「偵察中の分身体に、接触してきた者が居ます。」

リアム「接触?」

蒼影「リムル様とリアム様に、取り次いでもらいたいとの事。いかが致しましょう?」

リムル「誰だ?」

リアム「ガビルみたいな変な奴は、もうごめんだぞ。」

蒼影「変………ではありませんが、大変珍しい相手でして。その………樹妖精(ドライアド)なのです。」

一同『あっ………!』

リムル「樹妖精!?」

リアム「樹妖精って確か………。」

 

 ゲームだと、木の精霊みたいな存在だったな。

 そう考えていると、ウォズが話しかける。

 

ウォズ「我が魔王。」

リアム「ん?」

ウォズ「樹妖精(ドライアド)とは、森の管理者と呼ばれる存在です。」

リアム「ありがとう。」

 

 なるほど、管理者か。

 すると、周囲が騒つく。

 

リグルド「樹妖精様が最後に姿を見せたのは、数十年以上前では無かったか?」

リムル「か………構わん。」

リアム「大丈夫なら、呼んでくれ。」

蒼影「はっ。」

 

 すると机の中心に強い風が起こる。

 紫苑、朱菜、銀姫、シズさん、ウォズが俺たちの前に立つ中、蔦が伸びてきて固まり、そこから、1人の女性が現れる。

 鬼人達が俺たちの前で警戒する中、その樹妖精は口を開く。

 

トレイニー「魔物を統べる者と、時の王者の素質を持つ者、及びその従者たる皆様。突然の訪問、相すみません。私は、樹妖精のトレイニーと申します。どうぞ、お見知り置き下さい。」

リムル「俺は、リムル=テンペストです。で、そっちが………。」

リアム「リアム=テンペストです。えっと……トレイニーさん。いったい、なんの御用向きで?」

 

 俺とリムルは名乗り、俺が、トレイニーさんに用件を聞く事に。

 トレイニーさんは、口を開く。

 

トレイニー「本日は、お願いがあって、まかり越しました。」

リムル「お願い?」

ルーク「それは、何ですか?」

トレイニー「リムル=テンペスト……魔物を統べる者。リアム=テンペスト……時の王者の素質を持つ者よ。貴方方に、豚頭帝の討伐を依頼したいのです。」

 

 トレイニーさんは、そう言った。




今回はここまでです。
ガビルが現れましたが、ゴブタに返り討ちに遭いました。
そして、トレイニーさんがリアム達の前に現れて、オークロード討伐を依頼します。
オーク戦も近づいてきました。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
オーマフォームを超える強化形態は、小説仮面ライダージオウで登場したアナザーオーマジオウトリニティみたな、オーマジオウトリニティか、オーマジオウライドウォッチとグランドジオウライドウォッチを同時に使用したオーマグランドジオウのどれにしましょうか?
一応、オークロードとの戦いでジオウII、カリュブディスでジオウトリニティ、ワルプルギスでグランドジオウ、紅蓮の絆編でオーマジオウ、オーマフォームは、クロノアが暴走した時に出そうかなと思っています。
もし、オーマフォームを超える強化形態でリクエストがある場合は、活動報告にお願いします。
あと、イングラシアでの自由学園でのエピソードで、こういうのをして欲しいというのがあれば、お願いします。


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第11話 狂いゆく歯車

 突然現れた、樹妖精(ドライアド)のトレイニーさんは、俺たちに依頼をする。

 それは、俺たちに豚頭帝(オークロード)を討伐して欲しいとの事だ。

 

リムル「豚頭帝の討伐?」

リアム「ええと………俺たちがですか?」

トレイニー「ええそうです、リムル=テンペスト様、リアム=テンペスト様。」

 

 俺たちの質問に、そう答えるトレイニーさん。

 すると、紅丸が俺たちの前に出て言う。

 

リムル「ん?」

リアム「紅丸?」

紅丸「いきなり現れて………随分身勝手な物言いじゃないか。樹妖精のトレイニーとやら。なぜ、この町へ来た?ゴブリンよりも強い種族は居るだろう。」

 

 紅丸の質問に対して、トレイニーは閉じていた目を開きながら言う。

 

トレイニー「そうですわね。大鬼族(オーガ)の里が健在でしたら、そちらに出向いていたでしょう。」

鬼人達「おっ………。」

トレイニー「まあ、そうであったとしても……この方々の存在を、無視する事は、できないのですけれど。」

リムル「ん?」

リアム「……………。」

トレイニー「我々の集落が豚頭帝に狙われれば、樹妖精だけでは抵抗出来ませんの。………ですから、こうして強き者に助力を願いに来たのです。」

 

 なるほどな。

 それにしても、仮説だった豚頭帝が、実際に存在するとはな………。

 

リムル「豚頭帝が居るって事自体、俺たちの中では仮説だったんだけど………。」

リアム「よく、豚頭帝が居るって事が、分かりましたね。」

トレイニー「樹妖精は、この森で起きた事ならば、大抵把握しておりますの。……居ますよ、豚頭帝。」

 

 トレイニーさんは、そう言って、机の上に置いてあったポテチを食べる。

 それを聞いた一同は、騒めき出す。

 

リグルド「樹妖精様がお認めに………!」

カイジン「ならば、本当に………。」

 

 俺たちは、それを聞いて考え、答えを出す。

 

リアム「返事は少し待ってくれ。」

リムル「ああ。鬼人達の援護はするが、率先して、藪を突くつもりはないんだ。情報を整理してから、答えを出させてくれ。こう見えても、ここの主なんでな。」

リアム「俺は、副主です。」

トレイニー「あっ………フフッ………。」

 

 トレイニーさんも会議に参加する事になった。

 だが、リグルドとカイジンの間に座ったので、その2人が気まずそうにしている。

 

リムル「会議を続けるぞ。」

リアム「豚頭族(オーク)達の目的について、何か、意見がある人は居ないか?」

 

 俺たちがそう言うと、朱菜が声を出す。

 

朱菜「あ………。思い当たる事が一つあります。」

リムル「うん。」

リアム「何だ?」

 

 俺たちが朱菜にそう問うと、朱菜は蒼影に質問をする。

 

朱菜「蒼影。私達の里、調査してきましたか?」

蒼影「はい。」

朱菜「その様子では………やはり、無かったのですね。」

蒼影「はい。」

リムル「ん?」

蒼影「同胞の物も、豚頭族の物も、ただの一つも。」

リアム「まさか………死体か?」

蒼影「そうです。」

 

 その言葉に、俺はやはりと思った。

 少し、引っかかっていた事があったのだ。

 オークといえば、食欲旺盛なのがお約束なのだ。

 すると、紅丸が口を開く。

 

紅丸「20万もの大軍が食えるだけの食料を、どうやって賄っているのか疑問だったが……。」

リムル「それって、まさか………。」

リアム「豚頭族も、襲った種族の物も関係なく、食べてるって事だろうな。」

ウォズ「恐らく、今、進軍中の豚頭族達は。」

 

 俺とウォズがそう言うと、周囲が驚く。

 そんな中、トレイニーさんが口を開く。

 

トレイニー「ユニークスキル、飢餓者(ウエルモノ)。」

リムル「飢餓者………。」

リアム「それは、具体的には、どんなスキルなんだ?」

 

 俺の質問に、トレイニーさんが答える。

 

トレイニー「世に混乱を齎す災厄の魔物、豚頭帝が生まれながらにして保有しているスキルで、豚頭帝の支配下にある全ての物に影響を及ぼし、イナゴの様に、周囲の物を食べ尽くす。食らった相手の力や能力までも取り込み、自分の糧とするのですわ。………リムル様の捕食者と似ていますわね。」

 

 そう言いながら、俺たちを見る。

 それは、かなり厄介なスキルだな。

 確かに、リムルの捕食者と似ているスキルだな。

 ていうか、俺たちの保有しているスキルの事も知ってるのかよ。

 トレイニーさんは、話を再開する。

 

トレイニー「飢餓者の代償は、満たされる事のない飢餓感。豚頭族達は、果てしない飢えを満たし、力を得る為だけに進むのですわ。ただそれだけが、彼らの王の望み故に………。」

 

 そう言って、お茶を飲む。

 俺とリムルは、思念伝達で話し合う。

 

リアム『リムル。豚頭族達の狙いは……。』

リムル『ああ。大鬼族や蜥蜴人族(リザードマン)といった森の上位種族を滅ぼす事ではなく、その力を奪う事………か?』

リアム『そう考えるのが、妥当だろうな。』

 

 そうなると、ここも安全ではない。

 リムルが伸びをして、口を開く。

 

リムル「さて、となるとだな。うちも安全とは言い難いな。嵐牙狼族(テンペストウルフ)に鬼人、ホブゴブリン。」

リアム「確かに、味はともかく、豚頭族達の欲しがりそうな力を持った餌だらけだな。」

 

 リムルと俺がそう言うと、紅丸が苦笑しながら言う。

 

紅丸「1番、奴らの食いつきそうな餌を、忘れてやいませんか?」

リムル「あ〜?」

紅丸「居るでしょう。最強のスライムと、それと同格の魔人が。」

リアム「…………どこにだ?」

紅丸「ハハッ………。」

 

 紅丸の指摘に、俺たちは受け流す。

 そりゃあ、俺って、仮面ライダーだけど。

 でも、俺は、味はかなり不味いんじゃないか?

 そんな中、トレイニーさんが口を開く。

 

トレイニー「それに………豚頭帝誕生のきっかけとして、魔人の存在を確認しております。あなた様方は、放っておけない相手かと思いますけど。」

リムル「魔人か………。」

トレイニー「いずれかの魔王の手の者ですからね。」

リアム「うむ…………。」

 

 さっき、トレイニーさんは、森で起きた事は、大抵把握していると言っていたな。

 という事は、イフリートが暴走して、それをリムルが捕食して、俺がシズさんを助けたのを把握している事になる。

 食えない姉ちゃんだな。

 すると、トレイニーが立ち上がる。

 

トレイニー「リムル=テンペスト様。リアム=テンペスト様。改めて、豚頭帝の討伐を依頼します。暴風竜ヴェルドラの加護を受け、牙狼族を下し、鬼人を庇護するあなた様方なら、豚頭帝に後れを取ることはないでしょう。」

「「う〜ん…………。」」

 

 俺は、時之歴史に聞いてみる。

 

リアム『時之歴史、どう思う?トレイニーさんを信用して良いのか?』

時之歴史『樹妖精は、ジュラの大森林の管理者。不届きな者、森に対し害意を持つ者に対し、天罰を下す存在とも言われています。』

リアム『天罰………。でも、相手は20万だしなぁ………。』

 

 戦力差が否めないな。

 すると、紫苑と銀姫とウォズの声が聞こえる。

 

「「「当然です!!」」」

リムル「うえっ………。」

リアム「銀姫さん?ウォズさん?」

紫苑「リムル様とリアム様ならば、豚頭帝など、敵ではありません!」

銀姫「そうです!お二人ならば、豚頭帝を倒してみせるでしょう!」

ウォズ「我が魔王なら、豚頭帝など、恐るるに足らず!」

トレイニー「うわぁ!やはり、そうですよね。」

 

 この3人は、勝手に………!

 俺とリムルは、思念伝達で話し合う。

 

リアム『リムル。これは………腹を括るしかないよな。』

リムル『だな………。』

 

 リムルは、スライムとしての姿に戻り、紫苑がキャッチする。

 

リムル「分かったよ。豚頭帝の件は、俺たちが引き受ける。」

リアム「皆も、そのつもりで居てくれ。」

朱菜「はい!勿論です!リムル様、リアム様!」

紅丸「どうせ、最初からそのつもりだ。」

ウォズ「無論、私も。」

シズ「ええ。」

カイジン「俺たちゃ、旦那達を信じて着いていくだけさ。」

リグルド「その通りですぞ!我らの力を、見せつけてやりましょう!」

一同『おう!』

トレイニー「フフッ。」

 

 皆がそう盛り上がっている中、俺とリムルは、話し合っていた。

 

リムル『な〜んて、格好つけて、負けたらどうしよう………。』

リアム『もうこの際、腹を括るしかないな。』

 

 俺たちは覚悟を決めて、会議を進める。

 

リムル「豚頭族20万の軍勢を相手取るとなると………蜥蜴人族との同盟を前向きに検討したい所だが………。」

リアム「使者が、あれじゃなぁ………。」

 

 あんなアホじゃあ、不安でしかない。

 どうにか、話が通じるやつと交渉したいところなのだが………。

 すると、蒼影が立ち上がる。

 

蒼影「リムル様、リアム様。」

リムル「ん?」

リアム「どうした、蒼影?」

蒼影「蜥蜴人族の首領に、直接話をつけても宜しいですか?」

リムル「蒼影。出来るのか?」

蒼影「はい。」

リアム「なら、俺も同行して良いか?」

 

 俺がそう言うと、全員が驚く。

 

蒼影「リアム様もですか?」

リアム「同盟は、俺かリムルのどちらかを直接見ないと、結ぶのが難しいだろうからな。俺が同行すれば、手っ取り早いだろ?」

リムル「……分かった。リアム、蒼影。蜥蜴人族への使者を頼む。決戦は蜥蜴人族の支配領域である湿地帯になるだろう、これは蜥蜴人族との共同戦線が前提条件だ。頼んだぞ!」

蒼影「お任せを。リアム様、参りましょう。」

リアム「ああ。じゃあ、ちょっくら行ってくるわ!」

ウォズ「お気をつけて。」

 

 俺と蒼影は、影移動で、蜥蜴人族が支配している湿地帯へと向かう。

 一方、気絶していたガビルは、やっと目を覚ました。

 

ガビル「んっ………。うわっ!あっ、あ……。」

部下「わ〜!」

ガビル「ん?」

部下「ガビル様〜!」

ガビル「ぐわ〜!」

 

 ガビルが目を覚ますと、部下の1人が泣きながらガビルに飛びつく。

 残りの部下もやって来る。

 

部下「起きたかよ。」

部下「ガビル様〜!」

ガビル「こ………ここは?」

部下「良かったよ〜ほんと、ううっ………。」

 

 ガビルの目の前には、蜥蜴人族の部下達が集まっていた。

 1人、蜥蜴人族ではないのが混じっているが。

 ガビルは、どうしてこうなったのかを思い出した。

 

ガビル「そっ、そうだ!我輩は………。あのふざけた顔の男に………!うぬ。すっかり騙されたわ。」

部下「ど………どういう事?」

 

 ガビルの言葉に、泣きついていた部下が首を傾げる。

 ガビルは、立ち上がって説明をする。

 

ガビル「簡単な事よ。我輩を制したあの者こそ、あの村の本当の主に違いない!」

「「「なんと!」」」

 

 ガビルは、ゴブタが主だと勘違いしていた。

 その言葉に、部下達は集まって話し合う。

 

部下「あれが?」

部下「そうじゃないと、ガビル様、負けたりしないよ。」

部下「然り!」

部下「汚い!騙してガビル様の油断を誘うだなんて!」

部下「卑怯なり!」

部下「ふざけんな!」

 

 ガビルの部下達は、そんな風に話し合う。

 そんな部下達に、ガビルは話す。

 

ガビル「まあ、落ち着け。弱者なりの知恵という奴だろう。あっ………ハッ。」

部下「器の大きさ、山の如し!」

部下「流石、ガビル様!」

部下「いよっ!次期首領!」

???「いや〜かっこええなぁ、ガビルはん。」

ガビル「いやいや、我輩など、それ程でも……って、誰、なん!?」

部下「最初から居たよ、この人。」

 

 ガビルは、やっと蜥蜴人族ではない者の存在に気づいた。

 その男は、ガビルを褒め称える。

 

ラプラス「聞いた通り、偉い男前やないか。わいは、ラプラスという者です。」

ガビル「ラプラス?」

ラプラス「ゲルミュッド様の使いで、アンタに警告をしに来たんや。」

ガビル「おお!ゲルミュッド様の!」

 

 ガビルは、少しラプラスに警戒していたが、ゲルミュッドの使いと聞いて、警戒を解く。

 部下達は、話し合う。

 

部下「ゲルミュッド様って?」

部下「ガビル様に名を授けて下さったというお方だ。」

 

 部下達は、ゲルミュッドの事について話す中、ガビルは、ラプラスに労いの言葉をかける。

 

ガビル「ご足労をおかけしたな。………して、ゲルミュッド様の警告とは?」

ラプラス「これがまた、偉い事になっとるんですわ!」

ガビル「ん?」

 

 ガビルがそう言う中、ラプラスは回転しながら、ある事を伝える。

 

ラプラス「今回の豚頭族の軍勢、どうやら、本当に豚頭帝が率いてるらしいでっせ。」

部下達『豚頭帝?』

ガビル「うっ………。」

 

 ラプラスが言った、豚頭帝という単語に、周囲はどよめく。

 ラプラスは、話を再開する。

 

ラプラス「蜥蜴人族の首領は出来たお人やけど、もうかなりのお年やし………正直なとこ、お父上には、荷が重いんとちゃいます?」

ガビル「ん…………。」

 

 ラプラスの言葉に、ガビルは考え、答えを出す。

 

ガビル「豚頭族軍撃退の後に、首領の座を受け継ごうと思っていたが………それでは、間に合わん様だな!」

ラプラス「せや、せや。」

 

 ガビル達は、竜に乗り、移動を開始しようとする。

 ガビルは、ラプラスに声をかける。

 

ガビル「ラプラス殿。挨拶もそこそこだが、我輩達は…………。」

ラプラス「ええって、ええって。湿地帯に戻りはるんやろ?早、行った方がええで。」

ガビル「かたじけない!………出発するぞ〜!」

部下達「おお!」

 

 ガビル達は、湿地帯へと出発する。

 それを見ていたラプラスは。

 

ラプラス「………せいぜい頑張りや、ガビルはん。」

 

 そんな風に言う。

 ラプラスは、何を企んでいるのか。

 一方、豚頭族軍は、湿地帯を進んでいた。

 

豚頭族達「蹂躙せよ。蹂躙せよ。蹂躙せよ。蹂躙せよ。」

 

 そんな風に言いながら、湿地帯を進んでいた。

 俺たちは、そんな豚頭族達の気配を感じながら、蜥蜴人族の洞窟に到着する。

 すると、見張りが俺たちに気づく。

 

見張り「貴様ら、何者だ!?」

リアム「何。首領に会わせて欲しいだけさ。」

蒼影「そこを通してもらおう。」

 

 俺たちは、蜥蜴人族達の首領に会うべく、奥へと進んでいく。

 しばらく進んでいくと、開けた場所へと出る。

 ちなみに、俺は人間としてのオーラで来ている。

 流石に、オーラを全開で行くと、オーク達に気付かれる恐れがあるからな。

 俺たちが現れると、首領が声をかける。

 

首領「失礼。今、取り込んでおりましてな。おもてなしも出来ませぬ。」

リアム「お気になさらず。俺は、あなた方蜥蜴人族と同盟を結びに来た。」

首領「同盟?はて。そちらの事は、わしは知らんのだがね。」

リアム「無理もないです。ホブゴブリンと牙狼族と共に住んでは居ますが、街になったばかりですし。」

首領「風の噂で聞いた事がある………。その町は、本当にあるのか?」

リアム「はい。俺は、その街の主の片割れさ。」

 

 どうやら、俺たちの町は、かなり噂になっているみたいだな。

 まあ、ゴブリンと牙狼族が一緒に暮らしているという時点で、噂にはなるだろうが。

 俺の説明の続きを、蒼影が引き受けてくれた。

 

蒼影「そしてもう1人の主リムル様とともに、樹妖精より直に要請を受け、豚頭族軍の討伐を確約されている。」

 

 蒼影のその言葉に、首領のすぐ横にいる2人の蜥蜴人族が驚く。

 それは、首領も同じだった。

 

首領「森の管理者が、直接………!?」

リアム「そして、樹妖精からの情報によると、豚頭族軍を率いているのは、豚頭帝だ。」

部下「豚頭帝?」

リアム「この意味を踏まえて、よく検討して欲しい。」

首領「うう………。」

 

 首領は、驚いていた。

 どうやら、首領は豚頭帝が出現しているかもしれないと推測していた様だな。

 すると、首領の部下の1人が、声を出す。

 

部下「ふ………ふん!リムルだと?聞いた事もない!どうせ、そいつらも、豚頭帝を恐れて、我らに泣きついて来たんだろう?素直に助けてくれと言えばいい物を………。」

首領「やめろ!」

部下「えっ?」

首領「口を塞ぐのだ。」

部下「しゅ………首領!その様な態度では、舐められ………!」

 

 そこまで言うと、その部下の首に、糸が巻き付けられていた。

 蒼影だ。

 蒼影は、糸の一本を下ろそうとするが、俺が止める。

 

リアム「蒼影。そこまでやれとは言っていない。」

蒼影「………ッ!」

 

 蒼影の気持ちは分かる。

 自分の主人を馬鹿にされて、我慢出来なかったのだろう。

 だが、そんな事をしたら、同盟を結ぶのが難しくなる。

 蒼影は糸を解き、俺は首領に頭を下げる。

 

リアム「申し訳ない。対等な話し合いであるのにも関わらず、配下が無礼をしたな。」

首領「いや、今のは、こちらに非があった。お気遣い済まない。」

リアム「それと、俺は人間の様に見えるが、違う。新たに誕生した種族、時魔人(クロロノイド)だ。」

 

 俺はそう言って、オーラを少し出す。

 それを見た首領のそばにいた蜥蜴人族は。

 

部下「魔人だったのか!?」

部下「なるほど………。」

 

 そんな中、首領が口を開く。

 

首領「貴殿は魔人であったか。ジュラの大森林に暮らす魔物で、森の管理者を騙る愚か者は居ない。見た所、そなたの妖気(オーラ)は、南西に暮らす大鬼族であろう?」

蒼影「今は違う。リムル様より、蒼影の名を賜った折、鬼人となった。」

首領「鬼人?」

部下「鬼人って………!」

部下「ええ。大鬼族の中から、稀に生まれるという、上位種族………!」

リアム「それが、あと六人も居ますよ。」

首領「何だと………!?」

 

 それを聞いた首領は、何かを考え込んでいたが、しばらくすると、顔を上げる。

 

首領「リアムとやら。一つ条件がある。」

リアム「聞きましょう。」

首領「もう1人の主、リムル=テンペストと会いたい。」

リアム「分かりました。」

蒼影「では、我々は準備を整え、七日後にこちらに合流する。その時、御目通りしていただくとしよう。」

首領「うん。」

蒼影「それまでは、決して先走って、戦を仕掛ける事のないよう。」

首領「承知した。」

リアム「それと、一つ忠告があります。」

首領「何だ?」

リアム「背後には気をつけた方がよろしいですよ。」

首領「………?そうしよう。」

リアム「では、七日後に。」

 

 俺たちは、影移動で村へと戻る。

 ちなみに、先ほどの言葉の意味としては、ガビルは、豚頭帝の事を知らなそうだった。

 それに、次期首領になるとも言っていた。

 つまり、謀反を起こす可能性がある。

 そこまでするアホじゃないと良いんだけどな。

 

リアム「俺は、首領の条件を伝えに行く。蒼影は、豚頭族の動向を見張ってくれ。」

蒼影「はっ。」

 

 蒼影は、再び影移動で移動する。

 俺は、リムルの家へと向かう。

 

リアム「リムル、少し………。」

 

 俺は、その光景に絶句した。

 なぜなら、リムルが女装をしていたのだ。

 しかも、周囲には、朱菜に紫苑といった女性陣がいて、シズさんはそれを見て苦笑していた。

 

リアム「リムル………どういう状況だ?」

リムル「おお!リアム!ナイス!」

シズ「スライムさん、皆の着せ替え人形にされてたの。」

リアム「なるほどな………。あ、それと、蜥蜴人族の首領と話がついたぞ。」

リムル「本当か!?」

リアム「ああ。ただ、同盟を結ぶ際には、お前にも同行して欲しいそうだ。」

リムル「良いぜ、どうせ決戦予定は湿地帯なんだし、会っていもいない人物を信用しろってのも無理な話だ。」

リアム「会談の日は、七日後に設定したが、大丈夫か?」

リムル「ああ。」

 

 そんな風に話した。

 ただ、今度は志翠を筆頭に、俺を着せ替え人形にしようとして来たので、即座に逃げた。

 その後、ジオウのライダーズクレストが入ったパーカーを受け取った。

 一方、蜥蜴人族達は、首領が仲間を集めていた。

 

首領「豚頭族軍は既に、この地下大洞窟のそばまで迫ってきている。………だが、恐れる事はない!七日後には、強力な援軍が見込める!それまでは、我々は籠城し、戦力を温存するのだ。間違っても、攻撃に打って出ようなどと思うな!戦死すれば、餌になり、奴らの力が増すと思え!それが、豚頭帝を相手に戦うということだ!………援軍と合流した後、反撃に転じる!その時まで、耐えるのだ!誰1人、死ぬ事は許さん!」

戦士達「おお!」

 

 こうして、首領の指示により、蜥蜴人族は俺たちが来るまで、籠城する事になった。

 それから四日後。

 ある蜥蜴人族達は、侵入してきた豚頭族と交戦していた。

 三人でかかり、倒す事が出来た。

 

戦士「これが、本当に豚頭族なのか?まるで、大鬼族とでも戦っている気分だ。」

戦士「ゾッとするな………。こんな奴らが20万も居るだなんて………。」

戦士「それが、豚頭帝の能力なんだろう。あと、三日も守り通せるだろうか。」

ガビル「守ってばかりでは、疲弊するだけだ。」

戦士「おおっ、あなたは………。」

 

 そこに、ガビルが戻ってきて、首領の元に向かう。

 

ガビル「親父殿。」

「「「ん?」」」

 

 ガビルの声に、首領、親衛隊長、副隊長がガビルの方を向く。

 

首領「おお、戻ったか!………して、ゴブリンからの協力は、取り付ける事が出来たのか?」

ガビル「はっ!その総数、7千匹。待機させております。」

首領「うん。」

ガビル「しかし………豚頭族相手に籠城とは、どういうつもりなのです?とても、誇り高き蜥蜴人族の戦い方とは思えませんな。」

首領「お前が居ない間に、同盟の申し出があったのだ。その者達と合流するまでは、防衛に徹するのが最善だ。」

 

 首領の言葉を聞いたガビルは、呟く。

 

ガビル「ハァ…………老いたな、親父。」

首領「何?」

 

 ガビルがそう言うと、立ち上がり、合図を出す。

 すると、ガビルの配下達が一斉に入ってくる。

 

「「「なっ!?」」」

ガビル「天然の迷路を利用し、大軍と戦うのは、良い策かもしれん。………だが、それでは数多ある通路に戦力を分散させすぎて、戦力の集中による迎撃が出来ぬ。」

 

 そう言いながら、合図を出して、ガビルの部下が、首領に槍を向ける。

 

首領「なっ………!?」

親衛隊長「ガ………ガビル殿!」

副隊長「これは、どういうつもりだ!?」

ガビル「落ち着け!親衛隊長に副隊長。危害を加えるつもりはない。」

親衛隊長「しかし………うっ!」

ガビル「手荒な手段になってしまった事は、後で詫びる。窮屈な思いをさせるが、我輩が豚頭帝を討つまで、辛抱してくれ。」

 

 ガビルは、部下に指示を出して、首領、親衛隊長、副隊長、そして、首領の側近を拘束した。

 

首領「息子よ!勝手な真似は許さんぞ!」

親衛隊長「ガビル殿………いえ、兄上!目を覚まして下さい!」

副隊長「ガビル君!何を考えているんだ!?」

首領「ええい!放せい!放さんか!放すのだ!勝手な真似は許さん!」

 

 首領、親衛隊長、副隊長がそう叫ぶ中、彼らは、牢獄へと連れて行かれた。

 ガビルが、顔を俯かせていると、部下の1人がガビルの方にやって来る。

 

ガビル「ん?」

部下「ガビル様、これを。」

ガビル「親父殿の………。」

 

 ガビルは、部下から、首領が持っていた槍を受け取る。

 すると、槍とガビルが光り出す。

 

ガビル「こ、この力は………水渦槍(ボルテックススピア)よ。我輩を主と認めてくれるのか!」

 

 水渦槍は、ガビルを主と認めた様だ。

 その背後から、部下達が大勢やって来る。

 

部下「各部族長の掌握が完了したぜ。若い連中には、この防衛戦に疑問を抱いていた者も多かったからな。」

ガビル「そうか。」

部下「皆、アンタについていく。頼むぜ、ガビル様。」

 

 部下達は、ガビルに跪く。

 ガビルは、口を開きながら移動する。

 

ガビル「良いだろう。我輩が、蜥蜴人族の真の戦い方を見せてやろうぞ!時が来たのだ!」

部下達「おお!」

 

 こうして、ガビル達は、俺たちの合流を待たずして、動き出してしまった。

 

豚頭族達「蹂躙せよ。蹂躙せよ。蹂躙せよ。蹂躙せよ。」

 

 湿地帯を埋め尽くす豚頭族の大軍。

 その一角から、ざわめきが生じた。

 

豚頭族「ううっ………!」

 

 一体の豚頭族が、蜥蜴人族の攻撃を受けて、倒れた。

 

ガビル「豚どもを必要以上に恐れる事など無い!湿地帯は我らの領域!素早い動きで豚頭族どもを撹乱するのだ!ぬかるみに足を取られるのろまに後れは取らん!」

部下「やった!」

部下「攻撃が効いてるぜ!」

部下「然り!」

ガビル「豚頭族など、我ら蜥蜴人族の敵ではない!よし!一旦離脱!」

 

 ガビルの実力は、仲間達が認める物だった。

 だが。

 

部下「ああっ………うわぁ!」

ガビル「ん?」

 

 ガビルが、部下の悲鳴に、何事かと豚頭族の方を見ると、豚頭族が豚頭族を食べていたのだ。

 

ガビル「何だ?」

 

 ただ一つ、誤算があるとすれば、ガビルは知らなかった。

 豚頭帝の恐怖を。

 

ガビル「豚頭族が、豚頭族を食っている………!?」

 

 首領は知っていた。

 豚頭帝の恐怖を。

 その違いが今、結果となって、ガビルに牙を剥く。

 

豚頭族達「蹂躙せよ。蹂躙せよ。蹂躙せよ。食べた仲間の力を我が物に!食べた獲物の力を我が物に!」




今回はここまでです。
トレイニーが、豚頭帝の討伐を依頼しました。
いよいよ、オークロード戦が始まります。
そして、ジオウIIの力を使います。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
ギーツの話になりますが、まさかの、キャラボイスが鳴るIDコアが発売されるとは。
買おうかなと思っています。
この小説の話になりますが、カリュブディス戦にて、ゲイツリバイブとジオウトリニティを出そうと思います。
あと、イングラシアでの自由学園のエピソードで、こういうのをやって欲しいというのがあれば、受け付けます。
クロエとリアムがどんな風に絡むのかという感じですね。


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第12話 大激突

 俺たちは、準備を整え、蜥蜴人族(リザードマン)の支配領域である湿地帯へと向かっていた。

 戦闘に参加するのは、俺、リムル、シズさん、ウォズ、紅丸、紫苑、銀姫、白老、偵察中の蒼影、嵐牙、そして、狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)達だ。

 街は、リグルド達に任せた。

 俺たちが負けたら、即座に避難してもらう様にしてある。

 すると、リムルが俺に話しかけてくる。

 

リムル「リアム。」

リアム「ん?」

リムル「怖くないか?」

リアム「………怖くないって言ったら、嘘になるさ。何せ、戦争なんて初めてだしな。でも、大切な物を守る為に俺は戦う。」

リムル「そうか………。」

 

 俺の答えに、リムルはそう呟く。

 ちなみに、俺はライドストライカーに乗っていて、後ろにはウォズが乗っている。

 シズさんは、リムルと共に、嵐牙に乗っている。

 すると、偵察中の蒼影から連絡が入る。

 

蒼影『リムル様、リアム様。少し宜しいですか?』

リムル『どうした?』

蒼影『交戦中の一団を発見しました。片方は、蜥蜴人族(リザードマン)の首領の側近の2人です。相手は、豚頭族(オーク)の上位個体のようですが、いかが致しましょう?』

リアム『助けるの一択だろう。勝てるか?』

蒼影『容易い事かと。』

 

 おお、蒼影がそう言うと、本当に仕置き人みたいだな。

 

リムル『やれ。俺たちもすぐに行く。』

蒼影『御意。』

 

 リムルが蒼影に指示を出してる中、俺は、皆に指示を出す。

 

リアム「戦闘体勢を取れ!蒼影の元に向かうぞ!」

銀姫達「はっ!」

ゴブタ「やるっす!」

シズ「分かったわ。」

ウォズ「承知です。」

リムル「嵐牙!」

嵐牙「仰せのままに!」

 

 その声と共に、嵐牙は加速して、蒼影の元に向かう。

 だが、到着した頃には、豚頭族は全滅していた。

 

ゴブタ「あ………あれ?もう、終わってるっすか?」

紅丸「少しは残しといてくれよ。」

白老「ふむ………。」

銀姫「流石、蒼影という所ね。」

リアム「全滅してやがる………。」

 

 俺とリムルは、蒼影の元に。

 蒼影は、あの首領の側近の蜥蜴人族を抱えていた。

 

蒼影「共に深手を負っています。」

親衛隊長「う………うう………。」

副隊長「くっ………。」

リムル「ああ。俺は片方を回復する。リアムは、もう片方を頼む。」

リアム「ああ。」

 

 俺とリムルは、2人の蜥蜴人族に近づき、回復薬を飲ませる。

 だが、いきなり流し込まれたからか、咳き込んでしまう。

 

リムル「安心しろ。回復薬だ。」

リアム「ああ。」

 

 俺とリムルは、2人に回復薬を飲ませる。

 すると、傷があっという間に治っていく。

 2人は目を見開いて、驚く。

 

親衛隊長「えっ、き………傷が………!?」

副隊長「致命傷だった筈………!?………って、リアム殿!隣のお方は………?」

リアム「彼が、リムル=テンペストさ。」

親衛隊長「あっ!」

 

 すると、親衛隊長が突然土下座をする。

 

リムル「ん?」

親衛隊長「お願いがございます!我が父たる蜥蜴人族の首領と、兄たるガビルを、どうか、お救い下さいませ!」

リムル「ガビルの妹なのか?」

親衛隊長「はっ!」

リアム「何があったんだ?」

副隊長「それは、私が答えましょう。」

 

 俺の質問に、副隊長が答える。

 

副隊長「ガビル君が、謀反を起こして、首領を幽閉したのです。」

リアム「やっぱりかぁ………。」

副隊長「ガビル君は豚頭族軍を、自らの力で退けるつもりなんです。………だけど、彼は豚頭帝(オークロード)を甘く見ている。このままでは、蜥蜴人族は滅亡するでしょう。」

親衛隊長「父は、見張りの隙を見て、私たちを逃がしてくれました。先走らぬようにとの約定も守れず、虫の良い話であるのは、重々承知しております!しかし………力ある魔人の皆様を従えるあなた様方のその慈悲に縋りたく、何卒………!」

副隊長「僕からもお願いします。首領に同胞、そして、ガビル君を助ける為に………!」

 

 親衛隊長と副隊長は、そう言って頭を下げる。

 すると、2人の元に、紫苑と銀姫、ウォズがやって来る。

 

紫苑「よくぞ、申しました!」

銀姫「ええ。リアム様とリムル様の偉大さに気付くとは、あなた方は、見どころがありますね。」

ウォズ「我が魔王に目をつけるとは、良い事だ。」

リムル「お………おい、紫苑?」

リアム「銀姫さん?ウォズ?」

紫苑「さあ、立ちなさい。」

銀姫「あなた方の希望通り、蜥蜴人族は救われるでしょう!」

ウォズ「心配ないさ。我が魔王達に任せろ。」

親衛隊長「ありがとうございます………!」

副隊長「ありがとうございます。」

 

 銀姫と紫苑とウォズの奴、仕事を仕入れてきたよ。

 まあ、蜥蜴人族を救うのは、最初からそのつもりだったしな。

 やっぱり、ガビルの奴、豚頭帝を侮っているのか。

 

リムル「仕方ない。どうせ、豚頭帝とは戦うんだ。ええっと、君は首領の娘さんだっけ?」

親衛隊長「は……はい。仰せの通りにございます。」

リアム「なら、君を首領の代理と認める。ここで同盟を締結する事に、異論はあるか?」

親衛隊長「異論はありません。」

リムル「じゃあ、決まりだ。同盟は締結された。」

親衛隊長「ありがとう………ございます。」

リアム「蒼影。首領の所まで影移動をして、首領達を救い出してくれ。」

蒼影「御意。」

親衛隊長「ありがとうございます………。」

リムル「俺たちは進軍を続けるぞ。」

紅丸達「はっ。」

 

 俺たちは、蜥蜴人族達と同盟を結び、進軍を再開する。

 一方、湿地帯では、豚頭族と蜥蜴人族による戦闘が行われていた。

 

ガビル「豚頭族など、我ら蜥蜴人族の敵ではない!よし、一旦離脱!」

 

 ガビルの指揮のもと、戦闘は、蜥蜴人族が優勢に進んでいた。

 だが。

 

部下「ああっ………うわぁ!」

ガビル「ん?」

 

 ガビルが、部下の悲鳴に、何事かと豚頭族の方を見ると、豚頭族が豚頭族を食べていたのだ。

 

ガビル「何だ?豚頭族が、豚頭族を食っている………!?」

 

 それに、ガビルは驚愕し、蜥蜴人族の1人が後ずさると、一体の豚頭族に足を掴まれる。

 

部下「あ………うわっ!」

 

 その蜥蜴人族に、豚頭族が殺到して、食べ始める。

 

部下「た………助けて!ガ………ガビル様!」

 

 そして、その部下は、豚頭族に食べられてしまう。

 

ガビル「退却だ!急げ!退却!」

 

 ガビルは、部隊に退却命令を出す。

 だが、退却命令を出すのが、遅かった。

 

部下「あっ!ガビル様!回り込まれちゃったよ!」

ガビル「何?」

 

 そう、先ほどより動きが良くなった豚頭族の部隊に、取り囲まれる。

 

ガビル(何が起こった………!?明らかに奴らの動きが素早くなっている………!)

 

 ガビルは、豚頭族の体を見る。

 すると、本来、豚頭族には無い筈の物が、存在していた。

 鱗に、水掻きだ。

 

ガビル(バカな!?豚頭族の体に、水掻きと鱗だと!?それでは、まるで、我らと同じでは無いか!)

 

 そう、先ほどまで優勢に戦えていたのは、水掻きと鱗という、蜥蜴人族ならではの特性があったからだ。

 だが、今では、その優位性はあっという間に崩れ去った。

 部下達が、ガビルに話しかける。

 

部下「さっき、仲間が1人食われた!」

部下「然り!そこから、奴らの動きが変わった!」

ガビル「うう………!(まさか、食う事によって、我らの能力を………!)」

 

 ガビルは、漸くその事に気付いた。

 そんな中、一体の豚頭族が、ガビルに向かっていき、斧を振り下ろす。

 ガビルは、水渦槍(ボルテックススピア)で、斧を受け止める。

 

ガビル「ぐっ………!うおお!!」

 

 そして、ガビルは力を込めて、斧を弾き返す。

 

ガビル「群れ全体か………!密集隊形!ゴブリン隊を中央に、隙なく固まれ!ゴブリン隊を守りつつ、豚頭族の包囲を突破する!」

部下「おおお!!」

 

 ガビルは、咄嗟の判断で、ゴブリン達を中央に集め、密集隊系を取る。

 

ガビル(我等だけなら、逃げ切れたかもしれんが………ゴブリン達を連れてきた事が、裏目に出てしまった………!)

 

 ガビルは、そう思った。

 そう思う中でも、豚頭族達は近づいてくる。

 

豚頭族「蹂躙せよ。蹂躙せよ。仲間の力を我が物に!奴らの力を我が物に!」

ガビル「恐るな!我ら誇り高き蜥蜴人族の力を見せつけてやれ!」

部下「おおっ!」

 

 ガビルのその声に、部下達は、気合いを入れ直す。

 すると、そこに、周りの豚頭族より巨大な豚頭族が現れる。

 それには、他の蜥蜴人族達は、どよめく。

 

ガビル「な………なんという凄まじい妖気(オーラ)であるか………!」

 

 ガビルは、目の前の豚頭族のオーラの大きさに驚いていた。

 

ガビル「ふん………そこの豚頭族!貴様が豚頭帝であるな?」

 

 ガビルのその問いに、豚頭族は答えなかった。

 

ガビル「我輩は、蜥蜴人族の首領、ガビル!我輩と一騎打ちで決着を………!」

豚頭将軍「ロードではない。」

ガビル「あっ………!」

 

 ガビルがそこまで言うと、豚頭族が口を開くが、豚頭帝ではないと否定する。

 それに、ガビルは驚く。

 

豚頭将軍「我は、豚頭将軍(オークジェネラル)。豚頭帝様の足元にも及ばぬ。」

ガビル「豚頭帝ではない!?(これほどに力を持ちながら、足元にも及ばないだと………!?)」

 

 ガビルは、敵が強大な力を持っているのにも関わらず、豚頭帝では無い事に驚いた。

 驚くガビルを他所に、豚頭将軍がガビルに話しかける。

 

豚頭将軍「一騎打ちだったか。面白い。受けてやろう。」

ガビル「………感謝する!(一体………どれほどの化け物だというのだ………!本当の豚頭帝とは………!)」

 

 ガビルは、本当の豚頭帝の力の高さに、戦慄していた。

 一方、とある森では、ゲルミュッドとラプラスが、水晶玉で状況を確認していた。

 

ラプラス「よっしゃ!よっしゃ!良い感じになってきたで。なぁ、ゲルミュッド様!」

ゲルミュッド「うむ。」

ラプラス「計画の方、順調に運んどるようやなぁ。」

ゲルミュッド「我が子が森の覇権を手に入れる日も近いだろう。そうなれば、俺の野望も………!」

 

 そんな風に話していた。

 すると、緑色の光と共に、葉が流れてくる。

 

トレイニー「中々楽しそうな話をしていますね。」

ゲルミュッド「なっ!?」

 

 そこに居たのは、トレイニーだった。

 ラプラスは、トレイニーに名を聞く。

 

ラプラス「誰や!?」

トレイニー「私の名はトレイニー。この森での悪巧みは見逃せません。」

ラプラス「こりゃ、やばいで、ゲルミュッド様!森の管理者、樹妖精(ドライアド)や!」

ゲルミュッド「なんだと!?」

 

 ラプラスは、トレイニーが樹妖精である事を見抜き、戦慄する。

 

トレイニー「森を乱した罪で、あなた方を排除します。」

ゲルミュッド「はぁ!?」

トレイニー「精霊召喚、シルフィード!」

 

 トレイニーは、シルフィードを召喚した。

 それを見たラプラスは、慌てる。

 

ラプラス「待て待て待て待て!気ぃ早すぎやろ!」

トレイニー「断罪の時です。罪を悔いて祈りなさい。大気圧縮断裂(エアリアルブレード)!」

 

 トレイニーのその言葉と共に、シルフィードが歌い、風刃がゲルミュッドとラプラスを襲う。

 2人は、バリアで防ぐが、一つの風刃がラプラスの右腕に当たり、切断される。

 

ゲルミュッド「お………おい!腕!」

 

 ゲルミュッドは、ラプラスの腕が切断された事に慌てるが、当のラプラス本人は、腕が切断された事には、そこまで慌てていなかった。

 

ラプラス「無茶苦茶しよるなぁ、アンタ。問答無用かいな。………まあ、目的は達成しとるし、ワイらはお暇させて貰うわ。ほな、さいなら!」

 

 ラプラスは、そう言って、左手に出した煙幕弾を地面にぶつけ、煙幕を出す。

 煙が晴れた時には、ラプラスもゲルミュッドも居なかった。

 

トレイニー「逃げられましたか。………状況は思わしくありません。リムル=テンペスト、リアム=テンペスト。豚頭帝の討伐、信じていまよ。」

 

 トレイニーはそう言って、精霊と共に姿を消す。

 一方、ガビルの方は、一騎打ちが始まっていた。

 豚頭将軍の斧が、水渦槍ごと、ガビルを吹っ飛ばす。

 

ガビル「うわぁ!ぐっ………!」

 

 ガビルは、何とか体勢を立て直し、気合いを入れる。

 

ガビル「はあっ………!渦槍水流撃(ボルテックスクラッシュ)!」

 

 ガビルは渦槍水流撃を放つが、豚頭将軍も、斧から風の攻撃を出して、お互いの中間点で爆発する。

 

ガビル「ぐ………!あっ………!」

豚頭将軍「混沌喰(カオスイーター)!」

 

 豚頭将軍がそう叫ぶと、体からオーラが出てきて、三つの顔が出る。

 その顔は、ガビルへと向かっていく。

 ガビルは、その三つを躱す。

 

ガビル「くっ………!ふぅ………!我輩を食おうと言うのか!」

豚頭将軍「フッフッフッ………いつまで逃げ切れるかな?」

ガビル「くぅ………!」

 

 すると、ガビルの部下がガビルに声をかける。

 

部下「ガ………ガビル様!」

部下「助太刀を!」

ガビル「手を出すな!」

「「「あっ………!」」」

ガビル「これは、一騎打ちである!」

「「「ああっ………!」」」

部下「男だぜ、ガビル!」

部下「ガビル!」

部下「ガビル!」

部下達「ガビル!ガビル!」

 

 ガビルのその言葉に、部下達は泣いて、ガビルコールを始める。

 

ガビル「………はあっ!」

 

 ガビルは、少し姿勢を下げて、そのまま突撃していく。

 

豚頭将軍「ふん!」

 

 豚頭将軍は、混沌喰を再びガビルに向かわせる。

 ガビルは、水渦槍で混沌喰を斬っていく。

 だが、三つの顔の連携に、ガビルは姿勢を崩してしまう。

 止めと言わんがばかりに、三つの顔は、ガビルに向かっていく。

 

ガビル「これしき………!」

 

 ガビルはそう言って、気合いを入れ、豚頭将軍に向かっていく。

 向かってくる顔を避けたり、槍を使って受け流したりして。

 豚頭将軍は、混沌喰を解除して、斧でガビルを攻撃する。

 だが、ガビルはそれを躱して、空中に向かってジャンプする。

 

ガビル「とうっ!」

豚頭将軍「何?」

部下達「おおっ!」

ガビル「やああああっ!!」

 

 ガビルは、その声と共に豚頭将軍に攻撃する。

 だが、盾によって阻まれる。

 そして、そこに斧の攻撃を受ける。

 何とか、水渦槍で防御した事により、攻撃そのものを食らうことは避けられた。

 だが、ガビルは地面を転がる。

 

ガビル「ううっ………!」

部下「ガビル様ァァ!!」

ガビル「ぐぅ………ううっ、あっ………!」

 

 ガビルは、何とか立ちあがろうとするが、目の前には、豚頭将軍が居た。

 

豚頭将軍「蜥蜴は、地面を這いつくばっているのがお似合いだ。死ねぇ!」

部下達「ああっ!」

ガビル「くうっ………!」

 

 豚頭将軍は、ガビルにとどめを刺そうとして、部下達は慌てて、ガビルは、死を覚悟する。

 だが、その攻撃は、ガビルには届かなかった。

 なぜなら、ゴブタが豚頭将軍の斧を弾き返したからだ。

 

豚頭将軍「くっ………!」

ガビル「あっ………!き………貴殿は、あの村の真の主殿ではないか!?」

ゴブタ「え?(何言ってるっすか、この人?)」

 

 ゴブタは、ガビルのその言葉に呆れる。

 

ガビル「もしや、我々の助太刀に?」

嵐牙「あれは、狼鬼兵部隊の隊長、ゴブタだ。」

 

 ガビルがそう言う中、ガビルの隣に嵐牙がやって来る。

 

ガビル「おお………牙狼族の………!」

嵐牙「我が名は嵐牙。リムル様とリアム様の命により、助太刀に来た。」

ガビル「いかにして、ここまで………?」

嵐牙「影移動だ。学ばんのか、貴様。」

 

 ガビルのその問いに、嵐牙は呆れてそう言う。

 すると、豚頭将軍が笑う。

 

豚頭将軍「フッフッフ………!リムルにリアムだと?何処の馬の骨かは知らんが………邪魔立てするなら、容赦は………ッ!?」

 

 すると、豚頭将軍の背後で、大量の黒炎のドームが出来上がっていた。

 そこに居た豚頭族達は、蒸発していく。

 

ゴブタ「おおっと!始まったみたいっすね。」

豚頭将軍「ぬうっ………!?蜥蜴人族の大魔法か?早々に決着をつけて、大魔法を操る者を始末せねば。」

 

 豚頭将軍は、蜥蜴人族の大魔法と判断する。

 豚頭将軍がゴブタ達の方を向くと、ゴブタは、ガビルに声をかける。

 

ゴブタ「ええっと、ガビルさん………でしたっけ?さっさと、防御陣形を整えるっすよ。」

ガビル「ぬう!分かったのである!しかし……あの炎は………?」

ゴブタ「あっ。………心配いらないっす。味方の術っすから。………多分。」

 

 ゴブタは、ガビルにそう言うが、あまりの凄さに、ゴブタは多分と言う。

 一方、紅丸達は。

 

紅丸「………だから、退けと言ったろ。」

豚頭族「き………貴様ら、何者だ?」

銀姫「どうやら、覚えていない様ですね。」

紅丸「酷いな。里をあんなに食い散らかしてくれたじゃないか。………フッ。」

 

 紅丸、紫苑、白老、銀姫の4人を見た豚頭族達は。

 

豚頭族「その角………まさか、大鬼族(オーガ)か?」

紅丸「どうかな?今は、少し違うかもしれないな。」

白老「いよいよじゃな。」

銀姫「これが、今の私たちの初陣。」

紫苑「この機会を下さったリムル様とリアム様に、感謝いたします。」

紅丸「もう一度言う。道を開けろ豚ども。灰すら残さず消えたくなければな。」

 

 その声と共に、紅丸は黒炎を投げる。

 豚頭族達がどよめきながら、体を動かす。

 すると、その黒炎は、ある程度進むと、ドーム状にまで巨大になり、そこに居た豚頭族達を燃やす。

 

銀姫「さて、私も行きますか。」

 

 銀姫は、ジクウドライバーを腰に装着して、ツクヨミライドウォッチを起動する。

 

ツクヨミ!

 

 銀姫は、ツクヨミライドウォッチを起動した後、ジクウドライバーに装填する。

 すると、背後に三日月が現れて、天文時計として現れる。

 銀姫は、ジクウドライバーのロックを外して、叫ぶ。

 

銀姫「変身!」

 

 そう言って、ジクウドライバーを一回転させる。

 

ライダータイム!

仮面ライダーツクヨミ!ツクヨミ!

 

 銀姫は、仮面ライダーツクヨミに変身する。

 それを見ていた紅丸達は。

 

紅丸「それが、お前の新たな力か。」

紫苑「情け容赦は無用ですよ!」

白老「お主の力も、見せてやれ!」

銀姫「はい!」

 

 鬼人達は、銀姫にそう話しかける。

 一方、シズさんとウォズの2人は。

 

シズ「ウォズさん、行ける?」

ウォズ「問題ないさ。では、行こうではないか。」

シズ「ええ!」

 

 シズさんとウォズは、そう話すと、それぞれのドライバーを装着する。

 

ドライバーオン!プリーズ!

 

 二人はドライバーを装着した後、ウォズはウォズミライドウォッチを取り出して、シズさんはウィザードライバーのシフトレバーを操作して、ハンドオーサーを左向きにした。

 

ウォズ!

シャバドゥビタッチヘンシン!

シャバドゥビタッチヘンシン!

 

 ウォズは、ビヨンドライバーにウォズミライドウォッチを装填し、シズさんは、フレイムウィザードリングのバイザーを下ろす。

 

アクション!

 

 すると、ウォズの背後に時計が現れる。

 ウォズとシズさんは言う。

 

「「変身!」」

 

 そう言って、それぞれのドライバーを操作する。

 

投影!フューチャータイム!

スゴイ!ジダイ!ミライ!仮面ライダーウォズ!ウォズ!

フレイム!プリーズ!

ヒー!ヒー!ヒーヒーヒー!

 

 2人は変身して、豚頭族達に向かっていく。

 それを見ていた、俺とリムルは。

 

リムル「すっげぇな。」

リアム「見ろよ。あんなに居た豚頭族達が、どんどん減っていく………。」

 

 そう驚く。

 一方、ゴブタ達の方は。

 

豚頭将軍「ふん。蜥蜴共を助けに来たらしいが、無駄な事を。ゴブリンに犬畜生。どこぞの木っ端魔物の配下が加わった所で、我らの優勢は、少しも揺るがんわ!」

ゴブタ「木っ端って………!」

嵐牙「………では、見せてやろう。」

 

 ゴブタは、豚頭将軍の言葉に青筋を浮かべるが、嵐牙に気付くと、驚く。

 嵐牙は、赤いオーラに身を包んでいたからだ。

 嵐牙が唸り声を出すと、周囲に黒雲が現れる。

 

リムル「お?」

リアム「あれ?なんか、暗く………。」

 

 すると、竜巻が雷鳴と共に、地上へと向かっていく。

 

リムル「お………おお、ええっ?」

リアム「嘘だろ………!?」

 

 俺とリムルが驚く中、複数の竜巻は、豚頭族達を襲い、空へと飛ばしていく。

 俺が疑問を口にすると、時之歴史が答えてくれた。

 

リアム『何、あれ?』

時之歴史『解。個体名嵐牙の広範囲攻撃技、黒雷嵐(デスストーム)です。』

リアム『あ、そう。』

 

 あまりの凄さに、俺たちは呆然とした。

 開いた口が塞がらないとは、まさにこの事だろうな。

 

豚頭将軍「おお!ぐうっ………!おのれぇ!」

 

 豚頭将軍は、持っていた斧と盾を吹き飛ばされてしまい、身構える。

 だが、豚頭将軍に雷が直撃する。

 

豚頭将軍「ぐああああ………!」

 

 その声と共に、豚頭将軍は消滅した。

 ゴブタ達が身構える中、嵐牙は叫ぶ。

 すると、角がもう一本生えてきて、黒嵐星狼(テンペストスターウルフ)に進化する。

 

ゴブタ「ううっ………!おおっ!黒嵐星狼になったっす!」

嵐牙「よく見たか、豚頭族共よ!これが貴様らが木っ端と侮ったお方達の力の一端だ!」

ゴブタ「全部、吹っ飛んじゃったっすよ………。」

嵐牙「ああ………。」

 

 嵐牙は、豚頭族に対してそう言うが、目の前にいる豚頭族達は、吹き飛んでしまっていた。

 一方、鬼人達は。

 紅丸は、黒炎を出して、豚頭族達を倒していく。

 

紅丸「これが俺たちの新たなる門出。」

 

 白老は、豚頭族達の間を駆け抜けて、斬っていき、倒す。

 

白老「リムル様とリアム様の華々しい勝ち戦の………。」

 

 紫苑と銀姫は、背中を向かい合わせて、上空に居る俺たちを見ていた。

 

紫苑「まずは、最初の一戦目。」

銀姫「ですね。」

豚頭族「ぐっ………!調子に乗るなァァ!!」

 

 豚頭族達は、紫苑と銀姫に向かっていく。

 だが、紫苑は剛力丸という剣を構え、銀姫はツクヨミライドウォッチのスターターを押す。

 

フィニッシュタイム!

 

 銀姫は、ジクウドライバーを一回転させる。

 

タイムジャック!

 

紫苑「んっ!えいっ!」

銀姫「はあっ!」

 

 紫苑の剛力丸の斬撃が、紫苑に迫る豚頭族達を蹴散らしていき、銀姫は両腕から光球を生み出して、それをオーク達に向けて発射する。

 その2人の攻撃が放たれた跡には、大きな地割れが出来ていた。

 

紫苑「リムル様〜!」

銀姫「リアム様〜!」

リムル「お………おう。」

リアム「すげぇな。」

 

 あの2人を怒らせるのは、やめよう。

 ていうか、銀姫は、ツクヨミの力を使いこなしてるみたいだな。

 一方、シズさんとウォズは。

 

シズ「フッ!はっ!でやっ!」

 

 シズさんは、アクロバティックな動きでオーク達を倒していく。

 

シズ「私の新たな力、見せるわ!」

 

 シズさんはそう言うと、ウィザードリングのホルダーから、ウォーターウィザードリングを取り出し、バイザーを下ろして、ウィザードライバーにスキャンする。

 

ウォーター!プリーズ!

スイ〜スイースイースイ〜!

 

 シズさんはウィザード・ウォータースタイルになり、柔術を織り交ぜた攻撃でオークを倒していく。

 その次に、ハリケーンウィザードリングを取り出して、ウィザードライバーに翳す。

 

ハリケーン!プリーズ!

フー!フー!フーフー、フーフー!

 

 ハリケーンスタイルになり、風を纏いながら空を飛び、逆手に持ったウィザーソードガンで、オークを倒していく。

 そして、ランドウィザードリングを取り出して、ウィザードライバーに翳す。

 

ランド!プリーズ!

ドッドッ、ド・ド・ド・ドンッドンッ、ドッドッドン!

 

 ランドスタイルになって、パワーでオーク達を倒していく。

 一方、ウォズは。

 

ウォズ「ハアッ!フッ!」

 

 ウォズはジカンデスピアでオークを倒していく。

 シノビミライドウォッチを取り出して起動する。

 

シノビ!

 

 ウォズはシノビミライドウォッチをドライバーに装填する。

 

アクション!

 

 待機音が流れる中、ウォズはドライバーを操作する。

 

投影!フューチャータイム!

誰じゃ?俺じゃ?忍者!フューチャーリングシノビ!シノビ!

 

 ウォズは、フューチャーリングシノビになり、分身能力などを駆使して、オークを倒していく。

 次に、クイズミライドウォッチを取り出して起動する。

 

クイズ!

 

 ウォズはクイズミライドウォッチをドライバーに装填する。

 

アクション!

 

 待機音が流れる中、ウォズはドライバーを操作する。

 

投影!フューチャータイム!

パッション!ファッション!クエスチョン!フューチャーリングクイズ!クイズ!

 

 ウォズは、次にフューチャーリングクイズに変身して、オークに問いかける。

 

ウォズ「問題。」

豚頭族「な、なんだ……………!?」

ウォズ「君たちは私には勝てない。○か、×か。」

豚頭族「なに……………!?」

ウォズ「答えは……………○だ。」

 

 ウォズがそう言うと、オーク達に落雷が降り注ぐ。

 落雷を受けて、オーク達は倒れる。

 ウォズはキカイミライドウォッチを取り出して起動する。

 

キカイ!

 

 ウォズはキカイミライドウォッチをドライバーに装填する。

 

アクション!

 

 待機音が流れる中、ウォズはドライバーを操作する。

 

投影!フューチャータイム!

デカイ!ハカイ!ゴーカイ!フューチャーリングキカイ!キカイ!

 

 ウォズはフューチャーリングキカイに変身して、ドライバーを操作する。

 

ビヨンドザタイム!

フルメタルブレイク!

 

 ウォズは必殺技を発動して、オークを倒す。

 シズさんもウォズも凄いな。

 そんな風に考えていると、リムルが口を開く。

 

リムル「それにしても、圧倒的だった豚頭族軍がみるみる減っていく。」

リアム「銀姫達とは、この戦いが終わった後も、仲良くしたいな。」

リムル「だな。………蒼影もうまくやってるかな。」

 

 俺たちは、そう話す。

 一方、蒼影は。

 

豚頭族「ギャアアア!!」

蜥蜴人族「うう………助かったのか?」

親衛隊長「ああ…………。」

副隊長「ああ………。」

 

 蒼影の強さに、親衛隊長と副隊長は唖然となっていた。

 蒼影は、回復薬を取り出す。

 

蒼影「これを使え。」

副隊長「はっ、はい!」

 

 副隊長は、周囲の蜥蜴人族達を治していく。

 そうやって進んでいき、首領達が囚われている牢獄に着く。

 蒼影が扉を開けると、親衛隊長と副隊長が首領に向かっていく。

 

親衛隊長「父上!」

副隊長「首領!ご無事で………!」

首領「お………おおっ!来てくださったのか、蒼影殿。」

 

 親衛隊長と副隊長で首領の肩を支え、移動を開始する。

 首領は、蒼影に質問をする。

 

首領「しかし、何故?」

蒼影「同盟は締結された。」

首領「それは、どういう………?」

副隊長「隊長を首領の代理と認めて下さったのです。援軍が来ます!」

首領「何と………!」

親衛隊長「まだ諦める時ではありません!父上!」

首領「一族は………助かるのか………!」

 

 副隊長と親衛隊長の言葉に、首領は涙を流す。

 

豚頭将軍「フフフフッ!」

首領「ん?」

 

 突然の笑い声に、全員が前を向くと、豚頭将軍が一体居て、攻撃しようとする。

 首領は、蒼影に向かって叫ぶ。

 

首領「蒼影殿!」

蒼影「心配いらない。既に動けなくしてある。」

豚頭将軍「うう………ううっ!」

 

 蒼影は、既に豚頭将軍を動けなくしていた。

 それには、首領が驚いていた。

 

首領「ああ………!」

親衛隊長「…………そういう反応になりますよね。」

副隊長「…………気持ちは痛いほど分かります。」

首領(わ………わしの判断は、同盟を受け入れるという判断は………正解だった………!)

 

 首領は、驚きながら、自分の判断が正しかった事を悟っていた。

 蒼影が口を開く。

 

豚頭将軍「うう………ううっ………!」

蒼影「見えてるな、豚頭族を操る者よ。次は貴様の番だ。大鬼族の里を滅ぼし、鬼人を敵に回した事、せいぜい後悔するが良い。」

 

 蒼影はそう言って、一本の糸を下に下ろす。

 すると、豚頭将軍は、細切れになる。

 それを見ていた蜥蜴人族達は、唖然としていた。

 一方、水晶玉で蒼影の言葉を聞いていたゲルミュッドは、水晶玉を地面に叩きつける。

 

ゲルミュッド「クソどもが!役立たずめ!鬼人だと?ゲルドには、大鬼族共の里を襲わせたが、まさか、生き残りが進化したとでも言うのか!?それに、あの獣だ!ジュラの森にあんな化け物が居るなど、聞いてないぞ!」

 

 ゲルミュッドは、想定外の事態に狼狽えていた。

 大鬼族の生き残りが鬼人に進化して、黒嵐星狼達の存在がいた事だ。

 

ゲルミュッド「俺が知らぬ所で、一体、何が起きていると言うのだ!?まずい………!何とかしなければ………!ここまで来た計画が潰れてしまう!」

 

 ゲルミュッドは、空を飛んで、湿地帯へと向かっていく。

 

ゲルミュッド「このままでは、俺が………俺があのお方に殺されてしまう………!」

 

 ゲルミュッドが言う、あのお方とは………。

 一方、とある城では、白いタキシードに身を包んだ1人の男性が、月を眺めながらワインを飲んでいた。

 一方、俺は、豚頭帝と思われる存在を発見した。

 

リアム「おい、リムル、あれ!あの一際大きいやつ!」

リムル「あっ。」

 

 俺が指差した先には、巨大な豚頭族と、二人の豚頭将軍が居た。

 

リムル「居たぞ、豚頭帝だ。」

紅丸「はっ!」

 

 その存在感は、強かった。

 俺たちは仮面をつけ、腰にジクウドライバーを装着する。

 

リムル「豚頭帝よ。俺たちが引導を渡してやる。」

リアム「さあ、行こう!」

 

 俺たちはそう言う。

 いよいよ、決着の時が近い。




今回はここまでです。
いよいよ、オークロードとの戦いが始まります。
そして、王の凱旋もまた。
シズさんのウィザードの戦闘に関しては、平成ジェネレーションズでのウィザードの戦い方を参考にしました。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
ちなみに、リザードマンの副隊長は、変身します。
小説仮面ライダージオウで登場した、ジオウトリニティバージョン・ゲイツ&ツクヨミは、出すかどうかは検討中です。
まあ、出すとは思いますが。
オーマジオウトリニティに、オーマグランドジオウなど、色々と強化形態が多く出そうです。


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第13話 王の凱旋と全てを喰らう者

 俺たちが、豚頭帝(オークロード)と戦おうとすると、後ろから飛行音が聞こえてくる。

 

リムル「ん?」

リアム「何だ?」

 

 俺とリムルが後ろを向くと、赤い何かがこちらに向かっていた。

 あまりの早い速度に、俺たちはすぐに躱す。

 地面に激突した赤い星は、人だった。

 丁度、豚頭帝と志翠達の間に着地したようだ。

 全員が警戒する中、そこに居たのは、シルクハットを被り、鳥の様な仮面をつけた男だった。

 

リムル「魔人か?」

リアム「かもな。」

 

 リムルの呟きに、俺はそう答える。

 すると、その男が叫ぶ。

 

ゲルミュッド「どういう事だ!?このゲルミュッド様の計画を台無しにしやがって!」

リアム「ゲルミュッド?」

 

 俺がそう呟くと、時之歴史が反応する。

 

時之歴史『ゲルミュッドとは………。』

リアム『リグルドの長男に名前をつけた奴だったな。』

時之歴史『で………です。』

 

 アイツがゲルミュッドか。

 すると、当のゲルミュッドは喚き散らかす。

 

ゲルミュッド「もう少しで俺の手足となって動く、新しい魔王が誕生したというのに!」

リムル「あ…………?」

リアム「新しい………?」

紅丸「魔王?」

ゲルミュッド「そうだ!だから、名付けをしまくった!種を蒔きまくったんだ!最強の駒を生み出す為にな!」

 

 ゲルミュッドは、そう叫んだ。

 それを聞いた鬼人勢は。

 

白老「その為に………。」

蒼影「我らの村にも………!」

紫苑「来たという事か………!」

銀姫「こいつが元凶…………!」

 

 ゲルミュッドの言葉に、鬼人達は怒りを燃やしていた。

 それもそうだ。

 里を滅ぼした豚頭族を嗾けた元凶なのだから。

 すると、ガビルが叫ぶ。

 

ガビル「おおっ!これは、ゲルミュッド様!」

部下「あれが、ガビル様の名付け親の……。」

ガビル「どうして、ここに?もしかして、我輩達を助けに………。」

ゲルミュッド「役立たずの鈍間が!」

ガビル達「へ?」

 

 ガビルは、ゲルミュッドが助けに来たと思ったのか、そう声をかけるが、ゲルミュッドから突然罵られて、呆然とする。

 

ゲルミュッド「貴様もさっさと豚頭帝の糧となれ!」

ガビル「はっ!?」

部下「あの人、何を言ってるの?」

ゲルミュッド「役に立たない無能の分際で、いつまでも目障りな奴よ!豚頭帝に食われ、力となれ!俺の役に立って死ねるのだぞ。光栄に思うが良いぞ。」

ガビル「うげっ………げろ………ゲ………ゲル………!」

 

 ゲルミュッドのその言葉に、ガビルは動揺していた。

 ゲルミュッドは、豚頭帝に命令する。

 

ゲルミュッド「やれ!豚頭帝!」

 

 だが、豚頭帝は動かなかった。

 

豚頭帝「…………。」

ゲルミュッド「どうした?」

豚頭帝「…………魔王に進化とは、どういう事か?」

ゲルミュッド「チッ!本当に愚鈍な奴よ。」

 

 ゲルミュッドは、豚頭帝の言葉にそう毒づくと、口を開く。

 

ゲルミュッド「貴様が魔王、豚頭魔王(オークディザスター)になって、このジュラの森を支配するのだ!それこそが、私と、あのお方の望みだ!」

 

 ゲルミュッドのその言葉に、俺たちは。

 

リムル「あのお方?」

リアム「どうやら、ゲルミュッドを動かしてる黒幕が居るみたいだな。」

リムル「みたいだな。」

 

 なるほど。

 俺たちがそう話している中でも、豚頭帝は動かなかった。

 それを見たゲルミュッドは、苛立ちを見せていた。

 

ゲルミュッド「何をボケっとしている!豚が!!はぁ…………時間がない。手出しは厳禁だが、俺がやるしかないか………。」

 

 そう言ったゲルミュッドは、手に魔力を集める。

 それを見たガビルは動揺する。

 

ガビル「うわっ!ゲ………ゲル………!」

部下「ガビル様!」

部下「お逃げくだされ!」

ゲルミュッド「死ねぇ!!」

部下達「ガビル様!!」

 

 ゲルミュッドの攻撃に、ガビルの部下達が庇い、攻撃を受ける。

 ガビルは無事だったが、部下達は倒れていた。

 それを見たガビルは。

 

ガビル「…………ハッ!?お前達?」

部下「…………ガビル様が無事で………。」

部下「良かった…………。」

 

 そう言って、部下達は気絶した。

 それを見たガビルは、震えていた。

 

ガビル「お………おおっ………!おお…………おおおっ…………!ゲルミュッド様!!」

ゲルミュッド「豚頭帝の養分となり、俺の役に立つが良い!」

 

 それを見ていた俺たちは。

 

リムル「あっ!」

リアム「助けるぞ!」

リムル「おう!」

 

 俺たちは、急降下する。

 そして、俺たちは、ライドウォッチを起動する。

 リムルには、アギトのライドウォッチを渡しておいた。

 

ジオウ!

クウガ!

ゲイツ!

アギト!

 

 俺たちは、それぞれのライドウォッチをジクウドライバーに装填する。

 待機音が流れる中、俺達は叫ぶ。

 

「「変身!」」

 

 俺達は、ジクウドライバーを一回転させる。

 

ライダータイム!

仮面ライダージオウ!

仮面ライダーゲイツ!

アーマータイム!

(アークル音)クウガ!

(オルタリング音)アギト!

 

 俺はジオウ・クウガアーマーに、リムルはゲイツ・アギトアーマーに変身する。

 俺とリムルが、ガビルの前に向かっていると。

 

ゲルミュッド「フハハハハハ!上位魔人の強さを教えてやる!死ね!死者之行進演舞(デスマーチダンス)!」

ガビル「ゲルミュッド様〜!!」

 

 ガビルがそう叫ぶ中、俺とリムルは間に入り、リムルは捕食者でゲルミュッドの攻撃を取り込み、俺はパンチで打ち消す。

 取り込み終わると、ゲルミュッドとガビルが驚いた様な声を出す。

 

ゲルミュッド「はあ?」

ガビル「ああっ………!」

リムル「なあ、これが全力か?」

リアム「この程度じゃあ、死なないだろ。」

ゲルミュッド「き………貴様ら………!」

ガビル「あなた方は………あなた様方は………!」

「「ほれ!」」

 

 そう言うガビルに、俺たちは回復薬を渡す。

 ガビルは、慌ててそれを全部抱きしめる。

 

ガビル「わわっ!」

リムル「回復薬だ。」

リアム「部下達に使ってやれ。大事な部下なんだろう?」

ガビル「は………はい!…………しっかりしろ!我輩の為に、こんな………!」

 

 ガビルは、部下達に、回復薬を使っていく。

 

リムル「………さて。」

 

 そう言うと、リムルは粘糸を発動して、ゲルミュッドを拘束する。

 

ゲルミュッド「ああっ!?なんなんだ、これは!?」

 

 ゲルミュッドは、動けなくなる。

 すると。

 

ウォズ「祝え!」

リアム「あ。」

ウォズ「全ライダーの力を受け継ぎ、時空を越え、過去と未来をしろしめす時の王者。その名も仮面ライダージオウ・クウガアーマー!平成の始まりのライダーの力を顕現させた瞬間である!」

 

 やっぱり、やるんだ。

 それを見て、鬼人達は苦笑していた。

 俺は、リムルに話しかける。

 

リアム「さて。こいつが黒幕の様だな。」

リムル「だな。」

 

 俺とリムルは、前に出る。

 俺は、ガビルの事を気に入った。

 最初こそ、次期蜥蜴人族の首領だからという理由で持ち上げられていたと思っていたが、部下達が、本当に心の底から、ガビルの事を慕っているのが分かった。

 なら、助けるのには十分な理由だ。

 すると、ゲルミュッドが叫ぶ。

 

ゲルミュッド「き………貴様ら!この上位魔人にこんな事………!グハァッ!」

 

 ゲルミュッドの言葉が、途中で途切れたのは、リムルが腹パンしたからだ。

 

ゲルミュッド「ぐはあ………。貴様!この俺に…………!」

リアム「うるさい。」

ゲルミュッド「ぐはっ!」

 

 ゲルミュッドの喚きに、俺はそう言って、ちょっと強めのパンチを叩き込む。

 そのパンチで、糸が切れて、ゲルミュッドは腹を抱える。

 

ゲルミュッド「ああっ………ううっ!」

リムル「上位魔人とか言って、偉そうにしてても、大した事無いんだな。」

リアム「単なる小物だろ。」

ゲルミュッド「わ、分かった!仲間にしてやろう!俺はいずれ………グハッ!」

 

 そう言うゲルミュッドの言葉が再び途切れたのは、俺とリムルのキックが炸裂したからだ。

 倒れたゲルミュッドは、喚く子供みたいに手足を暴れさせる。

 

ゲルミュッド「ああっ!はあっ………!キィィィィィ!貴様ら、終わるぞ!あのお方がお前達を許さんぞ!!」

リムル「そのお方の事、詳しく聞かせてくれよ。誰が糸を引いてるのか。」

リアム「なぁに。お前が喋るのを拒否しても、死なない程度にはやるから。」

ゲルミュッド「ヒィッ!やめろ!来るなァァァ!!」

 

 ゲルミュッドはそう喚いて、豚頭帝の方へと向かう。

 

ゲルミュッド「おい、豚頭帝!俺を助けろ!」

豚頭帝「…………腹が減った。」

 

 ゲルミュッドの助けにも、豚頭帝はそう呟いただけだった。

 

ゲルミュッド「クソが!俺を助けろ、豚頭帝!いや、ゲルドよ!!」

ゲルド「…………はっ!」

 

 豚頭帝改め、ゲルドは、ゲルミュッドの言葉に、何かを思い出すかの様な動きを見せる。

 

ゲルド「ん…………。」

ゲルミュッド「貴様がさっさと魔王に進化しておれば………!」

 

 ゲルミュッドがそう言う中、ゲルドは動き出す。

 ゲルドが動いた事に、他の鬼人達も身構える。

 

ゲルミュッド「この屑が。漸く動いたか。ハハハハハッ!こいつの強さを思い知るが良い!やれ、ゲルド!この俺に歯向かった事を後悔させ………!」

 

 ゲルミュッドの言葉は、最後まで続かなかった。

 なぜなら、ゲルドは、手に持つ巨大な包丁で、ゲルミュッドの首を刎ねたのだ。

 それには、その場にいる全員が驚く。

 時之歴史が報告をする。

 

時之歴史『ゲルミュッド、生命反応を停止しました。』

リアム『見れば分かる。』

 

 俺が時之歴史にそう答えると、ゲルドが動いた。

 ゲルドは、そのゲルミュッドの死体を食べ始めたのだ。

 ゲルミュッドとしては、ガビルを生贄にするつもりだったのだろうが、ある意味因果応報の結末となったな。

 すると、ゲルドからヤバそうな気配が出てくる。

 

リアム「リムル………これ、やばくね?」

リムル「ああ。」

 

 俺の呟きに、リムルがそう答えると、時之歴史が報告する。

 

時之歴史『報告しました。豚頭帝、個体名ゲルドの魔素が増大しました。魔王種への進化を開始します。』

リアム『マジかよ………!』

 

 そうか、一応、俺たち相手には手も足も出なかったが、ゲルミュッドは上位魔人だ。

 それを食ったのならば、魔王種へと進化してもおかしく無い。

 俺たちが身構えると、ゲルドは進化した。

 

時之歴史『成功しました。個体名ゲルドは、豚頭魔王へと進化完了しました。』

 

 俺は、その報告を聞く。

 

リムル「豚頭魔王………。」

リアム「魔王、ゲルド………。」

リムル「リアム。放置する訳には行かないよな。」

リアム「だな。」

 

 俺たちがそう話してると、ゲルドは咆哮を上げる。

 

ゲルド「ウオオオオ!俺は、豚頭魔王!この世の全てを食らう者なり!名をゲルド。魔王、ゲルドである!!」

 

 こいつを放置してたら、本当の災厄が、このジュラの大森林を襲うだろうな。

 だが、勝てるのか?

 すると。

 

紅丸「紫苑!銀姫!」

紫苑「はっ!」

銀姫「承知しています!」

シズ「行くわよ!」

リアム「ウォズも行け!」

ウォズ「分かっています。」

 

 紅丸の指示を受けた紫苑と銀姫がゲルドに向かって走り出す。

 すると、シズさんは、フレイムドラゴンのウィザードリングを取り出して、スキャンする。

 

フレイムドラゴン!

ボゥー!ボゥー!ボゥーボゥーボォー!

 

 シズさんは、フレイムドラゴンにスタイルチェンジを行う。

 

リムル「おい?」

リアム「大丈夫か?」

紅丸「ここは、俺たちにお任せを。」

 

 俺とリムルの呟きに、紅丸はそう答える。

 紫苑と銀姫は、駆け出していた。

 

紫苑「薄汚い豚が!魔王だと?」

銀姫「思い上がるなァァ!!」

シズ「貴方はここで倒す!」

ウォズ「ハァァァァ!」

 

 紫苑、銀姫、シズさん、ウォズの攻撃に、ゲルドは手に持っていた包丁で受け止める。

 

紫苑「うっ………!」

銀姫「はっ!」

シズ「ふっ!」

銀姫「ふっ!」

 

 四人の攻撃をゲルドは弾き、ゲルドは四人に攻撃しようとするが、紫苑は剛力丸で、銀姫、シズさん、ウォズは回避して、距離を取る。

 四人は、再びゲルドに向かって駆け出し、ゲルドは、四人に攻撃しようとする。

 

ゲルド「ふんっ!」

 

 だが、白老がすぐそばに来ていて、首を斬り飛ばす。

 

リムル「やった!」

リアム「いや、まだだ!」

白老「ん?」

 

 リムルがそう言うが、俺はそう叫ぶ。

 なぜなら、白老が斬り飛ばした筈の首を、ゲルドが抱えていて、首の方から触手みたいなのが伸びてきて、すぐに再生する。

 

白老「なっ………!?」

リムル「凄まじい回復能力だな………!」

リアム「奴を倒すには、超火力で吹き飛ばすしか無い!」

 

 これは、ある意味では、風都探偵に登場したドーパント、トラッシュ・ドーパントと似た能力だな。

 まあ、あっちとは違って、回復力が環境に影響されないみたいだが。

 すると、蒼影がいつの間にかゲルドの後ろにいて、地面から糸が伸びてきて、ゲルドを包み込む。

 

蒼影「操糸妖縛陣!」

ゲルド「うう………。」

蒼影「やれ、紅丸!」

紅丸「これでも、食らってな!」

 

 紅丸は、黒炎獄(ヘルフレア)を発動して、ゲルドを炎に閉じ込める。

 

嵐牙「ワォーーーーーン!!」

 

 嵐牙の咆哮と共に、糸が燃え、現れたゲルドに、雷が落ちる。

 嵐牙は唸っていて、リムルが話しかける。

 

リムル「魔素切れか?」

嵐牙「面目ありません………。」

リムル「俺の影に潜ってろ。」

嵐牙「はっ!」

 

 魔素切れを起こした嵐牙を、リムルは自分の影に潜らせた。

 俺が目を凝らすと、ゲルドはそこに居た。

 

紅丸「何っ!?」

「「「「あっ!?」」」」

リムル「まさか………!?」

シズ「そんな……………!?」

ウォズ「驚いたな………………。」

リアム「無事かよ………!?」

 

 俺たちは、驚いた。

 蒼影、紅丸、嵐牙の攻撃で、あちこちが焦げているものの、無事であるゲルドに。

 

ゲルド「これが………痛みか。」

リムル「嘘だろ………!?」

リアム「致死級の連続攻撃を食らっておきながら、存命かよ………!」

 

 まじか…………………。

 俺とリムルがそう驚いていると、二人の豚頭将軍(オークジェネラル)のうち、1人が跪く。

 

豚頭将軍「王よ。この身を御身とともに。」

ゲルド「…………うむ。」

 

 豚頭将軍がそう言って、ゲルドが頷くと、その豚頭将軍を食べる。

 すると、黄緑色のオーラがゲルドを包み、回復していく。

 

リムル「…………自己再生と回復魔法か。」

リアム「厄介だな………。」

ゲルド「足りぬ。もっとだ!もっと大量に食わせろ!!」

 

 俺とリムルがそう言うと、ゲルドは手から魔力弾を発射する。

 それは、紅丸達の上空に行くと、幾つもの大量に分かれる。

 あれは、先程ゲルミュッドが使ったスキル、死者之行進演舞だろう。

 俺とリムルは、再び各々のスキルを使い、死者之行進演舞を無効化する。

 

紅丸「リムル様、リアム様。」

リムル「大丈夫だ。」

リアム「俺たちに任せろ。」

 

 俺とリムルは、ゲルドに向かって歩いていく。

 

リアム「行けるか、リムル?」

リムル「ああ。………出番だぞ、大賢者。お前に託す!さっさと敵を打ち倒せ!」

 

 リムルがそう言うと、リムルの金色の目が赤くなっていく。

 俺は、構えをとる。

 すると、ゲルドは、豚頭将軍が使っていたスキルを使う。

 

ゲルド「喰らい尽くせ!混沌喰(カオスイーター)!」

 

 そう叫ぶと、俺たちに四つの顔が飛んでくる。

 リムルはそれを躱す。

 あれは、リムルから一度聞いていて、ユニークスキル、大賢者のオートバトルモードだと。

 リムルは、黒い炎を纏った刀とジカンザックスで、ゲルドの左腕を吹き飛ばす。

 あの黒い炎は、ゲルドの左腕の上の部分にまで纏わり付き、再生を妨害している様だな。

 

リアム「ハアッ!」

 

 俺は、クウガの様に、徒手空拳でゲルドと戦っていく。

 ゲルドは、右腕だけでも、俺と戦っていく。

 俺とゲルドのパンチがぶつかり合う中、俺の視界がスパークする。

 

リアム「何だ!?」

 

 スパークが収まると、そこには、ある光景が映っていた。

 ゲルド達が住んでいた豚頭族の故郷、オービック。

 そこに飢饉による飢餓が襲い、荒れ果てた。

 ゲルドは、民達を思い、ゲルミュッドの名付けを受け入れ、今に至る。

 

リアム(これが……………ゲルドの覚悟と思いなのか……………!)

 

 同胞を思い、全ての罪を背負う覚悟。

 その姿は、まさに王と言えるだろう。

 俺は、魔王ゲルドの背負う物と覚悟に勝てるのか………………?

 すると、ジオウライドウォッチが光り出す。

 

リアム「っ!?」

 

 突然光り出した事に、腕で顔を守ると、光が収まる。

 すると、湿地帯ではなく、違う空間に居た。

 

リアム「ここは………………?」

???「君が、この世界のジオウだね?」

リアム「っ!?」

 

 そう声をかけられて、後ろを振り向くと、1人の男性が居た。

 

リアム「常磐ソウゴさん……………。」

ソウゴ「うん。俺は常磐ソウゴ。」

 

 そう。

 本家仮面ライダージオウ、常磐ソウゴが居たのだ。

 何で……………!?

 

リアム「何でここに……………!?」

ソウゴ「何でだろうね。俺にも分かんない。」

 

 オーマジオウの力が影響したのか?

 そう思っていると、ソウゴさんが話しかけてくる。

 

ソウゴ「どうしたの?」

リアム「え、いや……………。」

ソウゴ「なんか、悩んでる気がしてさ。」

 

 お見通しか。

 隠すのは無理と判断して、俺は話した。

 魔王ゲルドの同胞を思い、全ての罪を背負う覚悟。

 それを見て、俺は勝てるかどうかと迷いが生じたことを。

 

ソウゴ「なるほどね………………。」

リアム「魔王ゲルドの覚悟は凄い。勝てるのか不安になって………………。」

 

 魔王ゲルドの覚悟は、一族を思っての覚悟だ。

 俺が勝てるのか………………。

 すると、ソウゴさんが口を開き、周囲には平成ライダー、ゼロワン、セイバー、リバイスの記憶が流れる。

 

ソウゴ「そうだね……………。俺もそうだったよ。」

リアム「え?」

ソウゴ「俺も、色んな戦いをしたけど、仲間が居たから、俺は戦ってこれた。俺が強くなれたのは、皆を……………民を守りたいって思いがあったからだと思うんだ。」

リアム「ソウゴさん………………。」

 

 そう。

 常磐ソウゴさんは、ジオウの最終回にて、オーマジオウに対してこう語っていたのだ。

 

ソウゴ『………………世界を救ったのは、ゲイツや、ツクヨミや、ライダーたち皆の力だ。皆の居ない世界で、俺1人王様になっても仕方ない。』

 

 ソウゴさんは、たった1人で戦っていたわけでは無い。

 皆が居たからこそ、戦っていたのだ。

 すると、ソウゴさんは俺に言う。

 

ソウゴ「君にだって、守るべき仲間が居るだろ?」

 

 俺はそう言われて、ハッとする。

 そうだ。

 俺にも、リムル、シズさん、鬼人達、ゴブリン達を始めとする仲間達が居るのだ。

 村に居る皆も、俺たちが負けたら、避難するしか無くなってしまう。

 それを思うと、迷いが吹っ切れた。

 

リアム「ソウゴさん……………ありがとうございます!」

ソウゴ「大丈夫だよ。頑張ってね。」

リアム「はい!」

 

 俺の意識は、現実へと戻っていく。

 一方、ソウゴさんは。

 

ソウゴ「………………それで、これで良いのかな?この世界のオーマジオウ。」

オーマジオウ「助かるぞ。」

 

 ソウゴさんは、オーマジオウに話しかける。

 オーマジオウは呟く。

 

オーマジオウ「さて、見せてもらうぞ。若き日の私よ。」

 

 一方、俺が現実に戻ると、ゲルドの拳が迫っていた。

 すると、右腕が光を発して、ゲルドは吹っ飛ぶ。

 

ゲルド「なっ……………!?」

リムル「リアム……………?」

 

 俺は右手を見ると、そこには、ジオウライドウォッチIIが出現していた。

 

ウォズ「素晴らしい、我が魔王!これぞオーマジオウの力の一端!」

シズ「どういう事?」

リアム「こういう事さ。」

 

 俺はジオウライドウォッチIIを起動する。

 

ジオウ!II!

 

 起動した後、スプリットリューザーを動かして、ピクトウィンドウをずらす。

 

リアム「表と、裏。」

 

 俺はそう言うと、D‘9サイドとD‘3サイドに分離させる。

 

ジオウ!

 

リアム「過去と未来。二つの世界を統べるウォッチだ。」

リムル「リアム………………。」

 

 俺はそう言って、二つのライドウォッチを、ジクウドライバーに装填して、ジクウドライバーのロックを外す。

 すると、俺の背後に、二つのアナログ時計が左右対称の状態で現れる。

 

リアム「変身!」

 

 俺はそう言って、ジクウドライバーの本体を一回転させる。

 すると、俺の背後の時計が、同じ時間を指し、ライダーの文字が浮かぶ。

 

ライダータイム!

仮面ライダー!ライダー!ジオウ・ジオウ・ジオウ!II!

 

 俺は、仮面ライダージオウIIに変身する。

 

リアム「善も悪も、光も闇も、全て受け入れる!その力で俺は、未来を切り開く!」

銀姫「リアム様………………。」

リムル「お前………………。」

シズ「…………………。」

ゲルド「ぬぅぅ!」

ウォズ「王の凱旋である!」

 

 俺はそう宣言して、リムル達が見る中、ゲルドは俺に向かってこようとするが、ウォズが遮る。

 

ウォズ「祝え!全ライダーを凌駕し、時空を超え、過去と未来をしろしめす時の王者。その名も仮面ライダージオウII!新たな歴史の幕が開きし瞬間である!」

紅丸「何ですかね………………あれ。」

 

 紅丸、突っ込まないでやれ。

 これがウォズだ。

 

リアム「やっぱり、良いよね。」

ウォズ「では、我が魔王。存分に戦われよ。」

リアム「…………ああ!」

 

 俺がゲルドに向かうと、ゲルドは再生した左腕と新たな肉切り包丁で俺を攻撃してくる。

 俺はゲルドの攻撃を右腕で防ぎ、左手にマゼンタ色のオーラを溜めて、パンチを放つ。

 それを食らって、ゲルドは吹っ飛ぶ。

 俺はゲルドの方へと向かい、ゲルドにキックを入れる。

 

ゲルド「ぬわぁぁぁ!」

リアム「ふっ!」

 

 ゲルドは肉切り包丁を振るうが、俺はそれを躱して、右拳でパンチをする。

 すると、ジクウドライバーからライダーの文字が現れ、それが剣の形になる。

 ジオウと共に強くなっていく剣、サイキョーギレードだ。

 

リムル「あれって………………。」

シズ「顔……………だよね?」

 

 それを見て、リムルとシズさんはそう話す。

 俺はサイキョーギレードでゲルドに攻撃する。

 ゲルドが怯む中、俺はサイキョーギレードのフェイスユニットのレバーを素早く2回動かす。

 

ライダー!

ライダー斬り!

 

 ライダー斬りを発動して、刀身にピンク色の光を纏わせて、ゲルドに攻撃する。

 その際、肉切り包丁を破壊する。

 ゲルドは、反撃をしようとする。

 すると、ジオウライドウォッチIIのD’9サイドが光る。

 

リアム「お前の未来が……………見える!」

 

 俺がそう言うと、頭部のバリオンプレセデンスが回転すると、未来が見えた。

 それは、ゲルドが死者之行進演舞(デスマーチダンス)と共に攻撃する物だった。

 俺はサイキョーギレードで死者之行進演舞(デスマーチダンス)をゲルドに向けて、ゲルドが怯んだ隙に攻撃する。

 

リアム「ハアッ!」

ゲルド「ぐぅぅ……………!」

リムル「あいつ、本当に未来が見えてるのか…………!?」

シズ「凄い……………。」

紅丸「あれが……………リアム様の本気……………。」

 

 ゲルドは、再び何かをしようとする。

 再びバリオンプレセデンスが回転すると未来が見えて、混沌喰(カオスイーター)で俺を腐食させようとしたのが見えた。

 俺はサイキョーギレードで混沌喰(カオスイーター)の発動を潰す。

 その隙に、サイキョーギレードのフェイスユニットのレバーを操作して、文字を変える。

 

ジオウサイキョウー!

 

 すると、アラビアンテイストな待機音が流れてきて、トリガーを引く。

 

覇王斬り!

 

リアム「セイヤーッ!!」

 

 俺は覇王斬りを放つ。

 ゲルドに向かって、時計の文字盤を模した七色の斬撃が飛んでいく。

 ゲルドはそれを食らって爆発して、倒れ伏す。

 

ゲルド「ぐぅぅぅ……………!」

 

 ゲルドが怯んでいる隙に、サイキョーギレードを地面に突き刺し、ジカンギレードを取り出す。

 

ジカンギレード!

 

 そして、サイキョーギレードのフェイスユニットを取り外し、ジカンギレードに装填する。

 

サイキョーフィニッシュタイム!

 

 俺はサイキョーギレードのブレード部分をジカンギレードと合体させる。

 これが、サイキョージカンギレードだ。

 ゲルドが立ち上がる中、俺は叫ぶ。

 

リアム「止めだ!」

 

 切先を天に向けると、金色のエネルギーがサイキョージカンギレードから伸びて、ピンク色の『ジオウサイキョウ』と書かれた文字が浮かぶ。

 

銀姫「あれ……………何て読むの?」

紅丸「さあ……………?」

リムル「派手だな……………。」

シズ「確かに……………。」

 

 銀姫、紅丸、リムル、シズさんがそう話す中、必殺技名が出る。

 

キング!ギリギリスラッシュ!

 

リアム「うぉぉぉりやぁぁぁぁぁ!!」

ゲルド「ぐわァァァァァァ!」

 

 俺の攻撃がゲルドに命中して、ゲルドは爆発する。

 煙が晴れると、ゲルドは重傷を負いつつも無事だった。

 どうやら、再生能力で仕留め損ねたそうだな。

 

リアム「仕留め損ねたか。」

リムル「リアム。あとは任せてくれ。」

リアム「ん?ああ。」

 

 リムルは前に出る。

 すると、バリオンプレセデンスが回転して、未来が見えた。

 リムルがゲルドを捕食者で取り込んで、ゲルドが消える事を。

 俺は、それはあまり良しとはしなかった。

 ゲルドは、ゲルミュッドが言うあの方の陰謀に巻き込まれた被害者なのだ。

 俺はゴーストライドウォッチを起動する。

 

ゴースト!

 

 そんな中、リムルはゲルドと相対していた。

 ゲルドは、リムルを掴み上げる。

 

ゲルド「お前を食らってやろう!」

リムル「お前に食われる前に、俺がお前を食ってやるよ。俺は………スライムだ!」

 

 リムルは敢えて変身解除して、スライムの状態に戻る。

 食い合いの流れは、リムルが優勢だった。

 そんな中、リムルはゲルドの精神世界へと向かい、俺も向かう。

 

リムル「何だ、この光景?」

リアム「枯れ果てた大地………。」

リムル「えっ!?何でリアムまで居んの!?」

リアム「ゴーストの力で、ちょっとお邪魔したよ。」

リムル「お前、何でもありだな。」

 

 俺がそう言うと、リムルは呆れ顔でそう言う。

 すると、子供の泣き声が聞こえてくる。

 

リムル「アレは………豚頭族の子供か?」

リアム「あんなに痩せ細って………。」

 

 すると、そこに大柄な豚頭族と、その従者の豚頭族がやって来る。

 

リムル「あれは……………?」

リアム「あれが、後の魔王ゲルドさ。」

リムル「何で知ってんだよ!?」

リアム「俺は見たからな。魔王ゲルドの記憶を。」

 

 俺たちがそう話す中、後のゲルドとなる豚頭族は。

 

ゲルド「腹が減ったのか。少し、待っていなさい。」

 

 そう言うと、ゲルドは自分の左腕を千切る。

 それには、後ろの豚頭族が目を背ける。

 ゲルドは、千切った左腕を、子供達の前に置く。

 

ゲルド「さあ、食べなさい。」

 

 子供達は、一瞬躊躇ったが、一心不乱にゲルドの左腕を食べる。

 それを見て、ゲルドは。

 

ゲルド「しっかり食べて、大きくなるのだぞ。」

 

 そう優しく語りかけた。

 その後、場所を移動したゲルドは、一人の豚頭族から懇願される。

 

豚頭族「王よ。もうお辞め下さい。この大飢饉の中、王である貴方まで失ってしまっては、我ら豚頭族には、もはや絶望しかありません………。」

 

 そんな痛切な願いを聞いたゲルドは、いつの間にか再生した左腕を見ながら。

 

ゲルド「…………一昨日生まれた子が、今朝死んだ。昨日生まれた子は、虫の息だ。この身はいかに切り刻もうと再生するのに………これが既に絶望でなくて、何だと言うのだ。」

豚頭族「王よ………。」

ゲルド「森に入り、食料を探す。」

豚頭族「あ………。王よ!ジュラの森は、暴風竜の加護を受けし場所………!」

ゲルド「その暴風竜は、封印されて久しい。………少しばかりの恵みを………。」

 

 ゲルドは、その豚頭族の静止を振り切って、ジュラの森へと向かっていく。

 しばらくして、ゲルドは倒れ、ゲルミュッドと出会った。

 すると、俺とリムルの背後に、豚頭魔王、ゲルドが現れる。

 

ゲルド「あの方は教えてくれた。豚頭帝となった俺が食えば、飢餓者(ウエルモノ)の支配下にある者は死なない。………邪悪な企みの駒にされていた様だが、賭けるしかなかった。だからオレは食わねばならない。………お前が何でも食うスライムだとしてもオレは食われるわけにはいかない。」

リムル「食い合いは、俺に分がある。お前は負ける。」

 

 現実世界では、リムルに取り込まれ、溶け始めているゲルドの姿があった。

 現実世界の俺は、それを見て、仮面の下で涙を流していた。

 

ゲルド「俺は、他の魔物を食い荒らした。ゲルミュッド様を食った。同胞すら食った。同胞は飢えている。俺は負ける訳にはいかない。」

リムル「………この世は弱肉強食。お前は負けたんだ。だから、お前は死ぬ。」

ゲルド「俺は…………負ける訳にはいかない。俺が死んだら、同胞が罪を背負う。俺は罪深くとも良い。皆が飢える事のない様に、俺がこの世の飢えを引き受けるのだ。」

リアム「…………それでも、お前は負ける。だが、安心しろ。お前の罪や同胞の罪は、俺が背負ってやる。」

 

 ゲルドは、俺の言葉に驚いた。

 

ゲルド「………何だと?」

リアム「民を心から思う貴方に、敬意を表して。」

リムル「なら俺は、お前達オークの罪を食ってやる。」

ゲルド「俺の罪を………背負う?食う?」

リムル「ああ。お前だけじゃなく、お前の同胞、全ての罪も食ってやるよ。」

ゲルド「同胞も含めて………罪を?フッ。お前達は欲張りだ。」

リムル「そうだなぁ。俺は欲張りだよ。」

リアム「でも、欲張りで何が悪いんだよ?」

 

 俺とリムルがそう言うと、俺たちの足元から枯れ果てた大地が、緑豊かな草原となっていき、ゲルドも、豚頭魔王から、普通の豚頭族としての姿に戻っていく。

 ゲルドが目を開けると、そこには。

 

ゲルド「お………!おおっ…………!」

 

 そこには、自然溢れる草原が広がり、鳥の鳴き声、子供達の笑い声、川のせせらぎが溢れていた。

 それを見て、ゲルドは、膝をつき、大粒の涙を流す。

 

ゲルド「…………強欲な者達よ………俺の罪を背負いし者よ………!俺の罪を食らう者よ………!感謝する。」

リアム「魔王ゲルド。」

 

 ゲルドがそう言う中、俺は話しかける。

 

ゲルド「何だ?」

リアム「魔王……………いや、民を思う豚頭族の王よ。貴方の覚悟の強さは本物だ。そんな貴方だからこそ……………豚頭族の皆が笑顔で暮らせる姿を見届けて欲しい。俺達が貴方との約束を果たすその光景を。」

リムル「リアム……………魔王ゲルドを助けるのか?」

リアム「ああ。やっぱり、アンタには、笑顔で溢れる豚頭族達を見守ってほしいからな。」

ゲルド「…………………ふん。」

 

 そう話すと、俺は魔王ゲルドの魂をゴーストライドウォッチの力で、眼魂に移す。

 これは、心からの本音だ。

 民を思うからこそ、豚頭族達が、笑顔で暮らしている世界を見届けて欲しい。

 俺は、自分の意識が現実世界に戻った事を実感する。

 リムルは、スライムとしての姿から、人としての姿になる。

 

リムル「…………しばらく休むが良い。ゲルド。」

リアム「ああ。」

 

 俺とリムルは、そう呟く。

 豚頭帝が倒された事により、飢餓者の効果も消滅した。

 現時点を持って、豚頭族の侵攻は、終わったのだった。

 俺は変身解除して、リムルと共に振り返ると、皆が歓声を上げる。

 豚頭族達は、王を失った悲しみに暮れていた。

 そんな中、ゲルドのそばにいた豚頭将軍は呟いた。

 

豚頭将軍「王よ………。やっと………解放されたのですね。」

 

 そうして、戦いは終結した。

 その後、戦後処理の為に集まる事になって、蜥蜴人族達は、引き上げて行った。

 俺とリムルは、鬼人達に話しかける。

 

リムル「………終わったな。」

紅丸「はっ。」

リアム「豚頭帝を討ち滅ぼしたら、自由にしてもらって良いという約束だ。今までご苦労だったな。」

紅丸「リムル様、リアム様。お願いがございます。」

リムル「何だ?」

リアム「ん?」

 

 俺とリムルがそう言う中、紅丸は俺たちに話しかける。

 

紅丸「何卒、我らの忠誠をお受け取り下さい。我ら、これからもリムル様とリアム様にお仕えいたします!」

リアム「え?」

リムル「…………良いのか?」

白老「異論はござらぬ。」

蒼影「あなた様方に会えて、自分達は幸運であります!」

 

 紅丸の言葉に、俺たちはそう聞いて、白老、蒼影が答える。

 すると、紫苑はリムルの方に、銀姫は俺の方に来る。

 

紫苑「フフフフッ!」

リムル「うっ!ううっ………。」

紫苑「私は、リムル様の秘書兼護衛ですよ!絶対に離れませんからね!」

銀姫「私も、リアム様の秘書兼護衛です。離れたりなんて、しませんよ。」

リアム「そ…………そうか。」

紅丸「我らの命、果てるまで!」

リムル「う………うん。」

リアム「そ、そうか。」

 

 こうして、紅丸達鬼人は、俺たちの仲間になったのだった。

 

ウォズ「こうして、豚頭魔王は倒された。そして、この出来事で、我が魔王は魔王種を獲得した。だが、それが今後の歴史にどのように影響していくのか。それは、誰にも分からない。」




今回はここまでです。
リアムは、ジオウIIに変身して、魔王種を獲得しました。
そして、リアムが、魔王ゲルドの魂を保護しました。
これにて、豚頭族との戦いは終わりました。
次回は、ガゼル王が来るまでです。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
リアムの運命の人はクロエですが、リアムの事を好きになるのは、銀姫もです。
イングラシアでのエピソードで、どんなのをやってほしいというのがあれば、受け付けますよ。
アナザーライダーに関しては、どうしましょうか?


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第14話 ジュラの森大同盟

 魔王ゲルドを討伐したその翌日。

 それぞれの種族の代表が集まった。

 戦後処理の話し合いだ。

 ちなみに、蜥蜴人族(リザードマン)の中に、ガビルの姿は無かった。

 反逆の罪に問われているのだろう。

 だが、一つ言いたい事がある。

 

トレイニー「では、議長リムル=テンペスト、並びに、副議長リアム=テンペスト。始めてください。」

 

 そう。

 リムルが議長で、俺が副議長なのだ。

 そこは、森の管理者であるトレイニーさんが議長でしょ!?

 

リムル『なんで俺たちが議長やら副議長なんだよ!?』

リアム『仕方ない。俺もサポートするから、どうにかしよう。』

リムル『………だな。』

リアム『一応、豚頭族(オーク)の処遇は、話し合った通りにな。』

リムル『だな。』

 

 俺たちは、そう思念伝達で話し合って、リムルが口を開く。

 

リムル「えー………。こういう会議は初めてで苦手なんだ。だから思ったことだけを言う。その後皆で検討してほしい。」

 

 俺が皆に確認の合図を送るとその場にいる全員がうなずいた。

 

リムル「まず最初に明言するが、俺たちは豚頭族の罪を問う考えはない。」

豚頭将軍「え…………?」

リアム「被害が大きかった蜥蜴人族からしたら、不服だろうが、聞いて欲しい。豚頭族達が、何故侵攻をしたのかを。」

 

 俺とリムルは話した。

 豚頭族が住む地域に襲った飢饉による飢餓である事を。

 

リムル「…………同じ立場だったならば、他の種族の物であっても、同様の判断をしたかもしれない。」

リアム「まあ、これに関しては、建前なんだけどな。」

首領「…………では、本音を伺ってもよろしいかな?」

 

 首領の言葉に、俺たちは頷き、リムルが答えた。

 

リムル「豚頭族の罪は全て俺達が引き受けた。文句があるなら俺達に言え。」

 

 すると、豚頭族の代表で、生存した2人の豚頭将軍が口を開く。

 

豚頭将軍「お…………お待ちいただきたい!いくらなんでも、それでは道理が………!」

リアム「それが、魔王ゲルドと、俺たちが交わした約束だ。」

豚頭将軍「あっ………う………うう………。」

 

 俺の言葉に、2人の豚頭将軍は言葉を失い、座る。

 豚頭族は、顔を俯かせた。

 すると、蜥蜴人族の首領が口を開いた。

 

首領「なるほど………。しかし、それは少々狡いお答えですな。」

リムル『まあ、簡単には受け入れられないだろうな。』

リアム『まあ、それが普通だもんな。』

 

 俺たちがそう思念伝達で話していると、紅丸と銀姫が前に出る。

 

紅丸「魔物に共通する、唯一不変のルールがある。」

銀姫「弱肉強食。立ち向かった時点で、覚悟は出来ていたはずよ。」

リムル「………お前達も里を滅ぼされているけど、文句は無いのか?」

紅丸「ないと言えば、嘘になりますが………。次があれば、同じ無様は晒しませんよ。」

 

 紅丸の言葉に、鬼人達は頷く。

 

リアム「そっか………。」

首領「なるほど、正論ですな。………ですが、一つ、どうしても確認させていただきたい。」

リムル「何だ?」

首領「豚頭族をどうなさるのですか?」

リアム「……………。」

首領「豚頭族の罪を問わぬということは、生き残った彼ら全てを、受け入れるおつもりですか?」

 

 首領の言いたい事も分かる。

 俺とリムルは頷き合い、語り出す。

 

リアム「確かに、数は減ったとはいえ、13万の豚頭族が居る。」

リムル「それで、だ。夢物語の様に聞こえるかもしれないが、皆で協力出来ればと考えている。」

首領「協力?」

親衛隊長「………と、言いますと?」

副隊長「どういう事ですか?」

 

 俺たちがそう言うと、全員の視線が俺たちに集まる。

 

リムル「蜥蜴人族からは、良質の水資源と魚を。ゴブリンからは住む場所を。俺たちの町からは、加工品を提供する。」

リアム「………で、その見返りとして、豚頭族からは、労働力を提供して欲しい。」

豚頭族達「おおっ………!」

リムル「ジュラの大森林の各種族間で、大同盟を結び、相互に協力関係を築く。多種族共生国家とか出来たら、おもしろいと思うんだけどなぁ。」

 

 俺とリムルの言葉に驚いたのか、豚頭将軍が尋ねてくる。

 

豚頭将軍「わ………我々が………!その………同盟に参加させて貰えると言う事ですか?」

リムル「帰る場所も行く当ても無いんだろう?」

リアム「居場所を用意してあげるから、働けよ。サボるなよ。」

 

 俺たちがそう言うと、豚頭族達は、涙ぐみ、一斉に頭を下げる。

 

豚頭族達「ははっ!」

豚頭将軍「勿論!勿論ですとも!命懸けで働かせて貰います!」

リムル「うん。」

リアム「蜥蜴人族は、どうだ?」

首領「うむ。是非、協力させていただきたい。」

リムル「トレイニーさんも、良いかな?」

トレイニー「宜しいでしょう。私の守護する樹人(トレント)族からも、森の実りを提供いたしましょう。当面、豚頭族達の飢えを癒す事は、出来るかと思います。」

豚頭族達「おおっ………!」

 

 どうやら、話は纏まったみたいだな。

 すると、トレイニーさんが立ち上がる。

 それを見て、俺は嫌な予感がした。

 

トレイニー「では………森の管理者として、私、トレイニーが宣誓します。リムル様とリアム様を、ジュラの大森林の新たなる盟主として認め。」

リムル「盟主!?」

リアム「え?」

トレイニー「本来、盟主は1人なのですが、お二人とも才能をお持ちでいらっしゃるのでお二人を盟主とすることに異論はありませんね?」

 

 えぇぇぇぇ!?

 そこは、トレイニーさんじゃないの!?

 

リムル『辞退は………!』

リアム『無理だな。まあ、俺たちで頑張ろう。』

リムル『分かったよ………。』

 

 俺とリムルは、そう思念伝達で話し合い、そう結論づける。

 

リムル「わ、分かったよ!やりますよ!」

リアム「俺たちが盟主で、構わないか?」

一同「ははっ!」

 

 こうして、冷や汗が止まらない俺たちをよそに、ジュラの森大同盟は成立したのだった。

 鬼人達の元に、豚頭将軍がやって来る。

 

紅丸「何か用か?」

豚頭将軍「…………弱肉強食とは言っても、憎しみはそう簡単に割り切れるものではない。我らは………大鬼族(オーガ)の里を………!」

 

 すると、2人の豚頭将軍は、頭を下げる。

 

豚頭将軍「詫びて………詫びきれはしない。虫の良い話であるのは、重々承知している。だが………どうか、この私の首で、ご容赦願えないだろうか………!」

 

 豚頭将軍達は、死を覚悟をしていたのか、決して、顔を上げようとしなかった。

 すると、紅丸が口を開いた。

 

紅丸「…………戦いの後、今後もリムル様とリアム様の下にあり続けたいと伝えたら、俺たちに役職を下さった。」

紫苑「私と銀姫は武士(もののふ)。リムル様とリアム様の護衛役で、秘書を兼ねてます!」

銀姫「白老は指南役、蒼影は隠密。村に残ってる朱菜様と黒衛兵にも、ね。それに、白老と蒼影は、リアム様から、仮面ライダーの資格を与えられたしね。」

紅丸「………で、俺は侍大将の座と仮面ライダー響鬼の力を賜った。軍事を預かる役所だ。そんな所に就いちまった以上、有能な人材を勝手に始末するわけにはいかんだろう。」

 

 そう言って、紅丸達は出口へと向かい、豚頭将軍は、頭を上げる。

 すると、紅丸は歩みを止め、その豚頭将軍に尋ねる。

 

紅丸「………リムル様とリアム様に仇なす存在ならば、容赦はしないが、同盟に参加し、盟主と仰ぐのならば、敵では無い。」

豚頭将軍「あ………仇なすなど、滅相も………!あの方々は、我らを救って下さった。従いこそすれ、敵対など、あり得ん!」

紅丸「では、俺たちは同じ主をいただく仲間だ。せいぜい、リムル様とリアム様の役に立て。それを、詫びとして受け取っておこう。」

 

 紅丸はそう言い残して、外へと向かっていく。

 その豚頭将軍は、立ち上がり、紅丸達の背中を見つめる。

 

豚頭将軍「父王、ゲルドの名に誓って。」

 

 そう言って、頭を下げる。

 それを、影から見ていた俺達は。

 

リアム『紅丸って、器が大きいな。』

リムル『俺たちも見習わないとな。アイツらに名前をつけないとな。』

リアム『だな。新たな豚頭族の指導者として。』

 

 俺たちは、思念伝達でそう話して、豚頭将軍と魔王ゲルドを呼び出す。

 片方は俺が担当し、もう片方はリムルが担当する。

 

リムル「お前は、豚頭魔王(オークディザスター)ゲルドの遺志を継いで貰うべく、名をゲルドとする。」

リアム「お前は、そのゲルドを支えて貰うべく、名をガルドとする。」

「「ははっ!」」

リムル「2人で、豚頭族達を、しっかり導くんだぞ。」

リアム「頑張れよ。」

「「はっ!」」

 

 こうして、新しき王ゲルドは、猪人王(オークキング)へと進化し、ガルドは、魔王猪(ディザスターオーク)へと進化した。

 その後、10日かけて、俺たちは生き残った13万の豚頭族に、名前をつけた。

 何とか、低位活動状態(スリープモード)になるのは免れた。

 ちなみに、蜥蜴人族の首領にも、アビルの名をつけた。

 で、ガビルは、判決されようとしていた。

 まあ、一族の事を思っての行動だが、そうなるのも無理はなかった。

 

ガビル(我輩は死罪であろう。それで良い。そうでなければ、示しがつかん。ただ………心残りがあるとすれば………聞いてみたかった。何故、あの2人は、我輩を助けてくれたのかと。こんな………何の価値もない間抜けを。)

 

 ガビルは、そう思っていた。

 すると、アビルが口を開く。

 

アビル「顔を上げい。」

ガビル「ん………。」

アビル「判決を申し渡す。」

ガビル(せめて、堂々と、死罪を受け入れようぞ。)

 

 ガビルは、死罪を受け入れようとしていた。

 だが、アビルの口から出たのは、意外な言葉だった。

 

アビル「ガビルを破門し、追放する。二度と蜥蜴人族を名乗る事は許さぬ。」

ガビル「はっ………?」

アビル「即刻、追い払うが良い!」

ガビル「なん………だと!?」

 

 ガビルは、他の蜥蜴人族に連れられ、外へと追い出される。

 

ガビル「ぐっ………!」

護衛「忘れ物だ。ほら。」

 

 そう言って、一本の槍と荷物を渡す。

 その槍は、先ほどまで、アビルが持っていた水渦槍(ボルテックススピア)だった。

 

ガビル「あ………ああっ………!」

 

 アビルは、餞別として、水渦槍を息子に譲渡したのだった。

 ガビルは、泣きながら、頭を下げる。

 ガビルが移動していると。

 

部下「ガビル様〜!」

ガビル「ん?」 

部下「わ〜い!」

部下「ガビル様〜!」

 

 そこに現れたのは、ガビルの部下達だった。

 

部下「待ってましたよ、ガビル様!」

部下「ったく、待ちくたびれたぜ。」

部下「時は金なり。」

ガビル「な………何をしておるのだ、お前達!我輩は破門になったのだぞ!?」

部下「ガビル様が破門なら、皆、破門ですよ!」

部下「然り!」

ガビル「お前ら………バカだな。」

 

 ガビルはそう言ったが、実際には嬉しかったのだ。

 破門になったのに、自分を慕って着いてきてくれる事に。

 ガビルは、顔を背け、涙を拭うと。

 

ガビル「………しょうがない奴らであるな。分かった!まとめて面倒みてやろう。我輩に着いてくるが良い!」

部下「ヒュウ!流石だぜ。」

部下「かっくい〜!」

部下「至極、当然!」

 

 ガビルと部下達は、どこかへと向かっていく。

 一方、ある城では、白いタキシードの男性と、ラプラスが話していた。

 

ラプラス「折角お膳立てしたのに、新しい魔王が生まれへんかったんは、痛いんちゃうか?」

???「そうだな。」

 

 ラプラスの言葉に、白いタキシードの男性はそう言って、ワインを飲む。

 そして、ラプラスの方を見る。

 

???「…………しかし、面白い物が見れたよ。あのスライムに、見た事のない魔人。どうしたものかな?」

ラプラス「せいぜい頑張ってや。もし、協力が必要なら、格安で請け負うたるわ。魔王、クレイマンはん。」

 

 そう言って、ラプラスは煙と共に消えた。

 クレイマンと呼ばれた白いタキシードを着た男は。

 

クレイマン「フッ、フフ。」

 

 そう、笑う。

 一方、クレイマンという魔王に目をつけられた事を知らない俺たちは、豚頭帝(オークロード)討伐から3ヶ月経った。

 その間、豚頭族から進化した猪人族達は、カイジン達の指導の下、あっという間に技術を覚え、頼れる労力になっていた。

 ちなみに、ガルドは、相談役として、猪人族達を見守っている。

 流石に、表舞台に出すわけにはいかないからな。

 そのガルドの肉体は、ムゲン魂のライドウォッチでグレートアイに接続して、新たに用意した。

 徐々に発展していく村を、俺たちは丘の上から見ていた。

 家や服とかも出来て、上下水道や道路とかも出来てきた。

 これは、リムルの前世のゼネコン時代の知識を使ったそうだ。

 

リムル「それにしても、お前が喫茶店を作る様に頼んだんだってな?」

リアム「そういうのも、必要じゃない?」

 

 そう。

 実は、喫茶店を作るように頼んでおいた。

 店名は、モジモジ堂。

 平成ジェネレーションズFOREVERに登場した、クジゴジ堂の喫茶店としての店名が由来だ。

 こうして、安住の地、俺たちの町が出来た。

 ………のだが、そうは問屋が卸さないのだった。

 俺たちの所に、蒼影がやって来る。

 

蒼影「リムル様、リアム様。緊急事態です。」

リムル「え?」

リアム「どうした?」

 

 蒼影の報告に、俺たちは首を傾げた。

 それは、ペガサスに乗った騎士団が、この町にやって来たとの事だった。

 どうして、そうなったのか。

 それは、少し前、武装国家ドワルゴンでは、暗部からの報告を、ガゼル王が聞いていた。

 そして、その報告書を、蝋燭の炎で燃やす。

 

ドルフ「王よ、暗部は何と?」

ガゼル「…………豚頭帝は討伐され、戦争が終結したそうだ。」

 

 ガゼルのその言葉に、ドルフは驚く。

 

ドルフ「何ですと!?」

ガゼル「13万の豚頭族は、暴走する事も無く、各地に散ったらしい。しかも、猪人族に進化してな。」

ドルフ「そんな事が………!?」

 

 ガゼルの言葉に、ドルフは再び驚き、ガゼルは考えていた。

 

ガゼル(複数の上位魔人の参戦により、戦争は終結。魔人達は、例のスライムと時魔人(クロロノイド)の配下であると思われる………か。魔人を従え、魔物に進化を齎す者たち。此度の件、対応を誤れば、国が滅ぶやもしれぬ。)

 

 ガゼルは、複数の上位魔人………鬼人勢………を従えているのが、スライムと時魔人………リムルとリアム………である事を見抜き、口を開く。

 

ガゼル「あのスライムと時魔人の正体、余自ら

が見極めてやろうではないか。」

 

 そうして、ガゼル王とペガサス・ナイツは、俺たちの町に向かって来ていたのだ。

 そんな事を知る由もない俺たちは、すぐに着陸するであろう場所へと向かう。

 向かっているのは、俺、リムル、シズさん、ウォズ、紅丸、蒼影、銀姫、紫苑、リグル、リグルド、嵐牙、カイジンだ。

 俺たちは、上空を見上げると、そこには、かつて見た、ガゼル王の姿が。

 

カイジン「まさか………!」

リムル「ドワーフの英雄王………。」

リアム「ガゼル・ドワルゴ………!」

 

 何であの人が。

 すると、紅丸が質問して来る。

 

紅丸「リムル様、リアム様。いかが致しますか?」

リムル「出来れば、争うのは避けたいんだが………。」

リアム「相手の出方によるか。」

紫苑「問題ありません!蹴散らせば良いのです!」

銀姫「蹴散らしたら、面倒臭い事になりそうですけどね。」

ウォズ「もう少し考えたまえ。」

リアム「まあ、いざ戦闘になったら、住民たちを避難させる。」

リムル「その間、俺たちで時間を稼ぐぞ。」

紅丸「はっ!」

シズ「まさか、来るなんて……………。」

 

 俺たちがそう話している間、旋回していたペガサス達は、一斉に地面に降り立つ。

 カイジンは、ガゼル王の下に向かい、跪く。

 

カイジン「お久しぶりでございます。」

ガゼル「…………久しいな、カイジン。」

カイジン「はっ!」

 

 俺とリムルは、前に出る。

 ガゼル王は、俺たちを睥睨する。

 

ガゼル「スライムに時魔人か。」

リムル「最初に名乗っておく。俺の名はリムルで………。」

リアム「俺の名はリアムだ。時魔人呼ばわりはやめて欲しい。」

リムル「これでも一応、俺たちはジュラの森大同盟の盟主なんでね。」

 

 リムルはそう言って、人間としての姿になる。

 

リムル「こっちの方が、何かと話しやすいだろう?」

リアム「………で、何の用だ?」

 

 リムルの質問に対して、ガゼル王が答える。

 

ガゼル「…………単刀直入に言おう。リムル、リアム。貴様らを見極めに来たのだ。」

リムル「………見極め?」

ガゼル「俺の剣で、貴様の本性を見抜いてくれるわ。」

リムル「なるほど………。」

ガゼル「この森の盟主になったなどとホラを吹く貴様らには、分という物を教えてやらねばなるまい。その剣が飾りでないというのなら、俺の申し出を受けるが良い。」

 

 ガゼル王はそう言って、剣を抜刀しようとする。

 部下達も、驚いたのか、声をかける。

 

ドルフ「王よ、まさか………!?」

ガゼル「ふん。本気で戦ってみるのが、手っ取り早いであろう?」

リムル「よし、その申し出を受けよう。」

リアム「ホラ吹き呼ばわりした事、後悔させてやるよ。」

 

 そうして、まずはリムルとガゼル王との一騎打ちとなった。

 ガゼル王が口を開く。

 

ガゼル「俺の一連の攻撃を防ぎ切ったら、貴様の勝ちで良い。それは、後にやるお前も同じだ、リアムよ。」

リアム「ああ。リムル、負けんなよ。」

リムル「ん?ああ!」

ガゼル「ただし、この俺、剣聖ガゼル・ドワルゴの剣を甘く見ない事だ。」

リムル「分かった。」

 

 すると、風が吹いて来て、トレイニーさんが現れる。

 

リアム「トレイニーさん。」

トレイニー「それでは、立ち会いは私が行いましょう。」

ガゼル「ん?」

ドルフ「まさか、樹妖精(ドライアド)?」

 

 トレイニーさんの姿を見たガゼルは、突然鼻で笑った。

 

ガゼル「貴様らをホラ吹き呼ばわりした事は、謝罪するぞ。それに、事情も朧げながら読めたわ。」

リムル「じゃあ………!」

ガゼル「だが、貴様らの人となりを知るのは、別の話だ。」

リアム「ですよね………。」

ガゼル「立会人も決まったならば、あとは剣を交えるのみ。」

リムル「ああ、そうだな。軽く勝利して、今回の件をきっちりと説明してもらうとするわ!」

ガゼル「フフ………!俺に勝てたなら、答えてやるさ。」

 

 そうして、トレイニーさんの開始の合図と共に、リムルが駆け出す。

 最初の攻撃は防がれるが、すぐに走って、別の方向から仕掛ける。

 ガゼルは、リムルを突き飛ばすが、すぐに着地する。

 

ガゼル「貴様の力は、そんなものか、リムルよ!」

リムル「うるさい!まだ本気を出していないだけだし!慌てんな。」

 

 ガゼルの挑発に、そう答えるリムル。

 ガゼルの攻撃で、リムルは大きく下がる。

 すると、ガゼルはある構えをする。

 

リアム(あの構えは………。)

ガゼル「行くぞ、リムル!朧・地天轟雷!」

 

 そう叫ぶと、ガゼルが消え、リムルは、下からくる攻撃を躱し、上から来る攻撃を、刀で受け止める。

 

ガゼル「ふん。フフフ………ハハハ!俺の剣を受け止めおったわ!」

リムル「え?」

トレイニー「それまで!勝者、リムル=テンペスト!」

 

 トレイニーの宣言と共に、ガゼル王は、剣をリムルから退かす。

 だが、納刀はしていない。

 

ガゼル「リムルは分かった。次は、お前だ、リアムよ。」

リアム「ああ。」

 

 今度は、リムルの代わりに俺が出て、ジクウドライバーを装着する。

 そして、ジオウライドウォッチのウェイクベルゼを回しライドオンスターターを押す。

 

ジオウ!

 

 ジオウライドウォッチを起動した後、D‘9スロットにライドウォッチをセットし、ライドオンリューザーを押す。

 背中に大小の時計が浮かび上がる。

 そして、変身ポーズを取って、叫ぶ。

 

リアム「変身!」

 

 そう言って、ジクウサーキュラーを一回転させる。

 

ライダータイム!

仮面ライダージオウ!

 

 俺は、仮面ライダージオウへと変身する。

 俺の意識は、ガゼル王のみを捉えていた。

 

トレイニー「始め!」

 

 トレイニーさんのその声と共に、俺は駆け出して、ジカンギレードで攻撃する。

 ガゼル王は、剣でこれを受け止める。

 少しの間、鍔迫り合いとなり、お互いに離れる。

 

ガゼル「ほう。やるではないか。だが、それが貴様の本気か?」

リアム「うるせぇ。俺は徐々に上げていくタイプなんだよ。」

 

 ガゼル王の挑発に、俺はそう返す。

 今度はガゼル王が仕掛けて来て、俺はジカンギレードで剣を受け止める。

 そして、俺は少し離れる。

 ガゼル王は、再びあの構えをする。

 

リアム(来たか。)

ガゼル「行くぞ、リアム!朧・地天轟雷!」

 

 ガゼルは、一瞬で消え、俺は、下からくる攻撃を躱す。

 そんな中、ジカンギレードのギレードリューズを押す。

 

タイムチャージ!

5・4・3・2・1………ゼロタイム!

 

 ガゼル王の攻撃を躱す中、カウントダウンが終了する。

 

リアム「来る!上!」

 

ギリギリ斬り!

 

 ガゼル王の剣を、ギリギリ斬りで斬って、ガゼル王の首元に剣先を突きつける。

 

リアム「こんなもんかな。」

ガゼル「…………まさか!俺の剣が斬られるとはな!」

トレイニー「それまで!勝者、リアム=テンペスト!」

 

 トレイニーの声と共に、ガゼル王は、部下に剣を持たせた。

 そして、俺とリムルを見ながら言う。

 

ガゼル「剣を交えて、よく分かった。お前達は邪悪な存在ではない。」

銀姫達「うんうん。」

ウォズ「当然である。」

シズ「2人とも、お疲れ様。」

 

 ガゼル王の言葉に、銀姫達は後ろで頷く。

 

リムル「何でだよ………。」

ガゼル「それにしても、よくぞ俺の朧・地天轟雷を見切ったものよ。見事だったぞ、リムル、リアム。」

リアム「偶然だ。何せ、その技をよく使う師匠が居てな。俺もリムルも、訓練でよく打ちのめされたんだよ。」

ガゼル「なんだと?まさか、その師匠というのは………。」

 

 ガゼル王がそんな風に驚いていると、白老が前にやって来る。

 

ガゼル「ああっ………!」

リムル「お?」

リアム「白老。」

白老「ほっほっほ。お見事でしたな、リムル様、リアム様。」

ガゼル「おおっ………!剣鬼殿!」

 

 えっ?

 2人って知り合いなの!?

 俺がそう驚いていると。

 

白老「森で迷っていたあの時の小僧が、見違えましたぞ。………いや、失礼、ドワーフ王。わし以上の剣士へと成長したようで、重畳ですじゃ。」

ガゼル「剣鬼殿にそう言っていただけるとは………。」

 

 どうやら、白老が師匠って事か。

 世界って、意外と小さいもんだな。

 すると、ガゼル王が俺たちに話しかけてくる。

 

ガゼル「さあ早く案内してくれリムル、リアム。上空から見たかぎりじゃ美しい町並みだったぞ?美味い酒くらいあるのだろう?」

リムル「…………まああるけど。」

リアム「裁判の時と比べて軽すぎない?」

ガゼル「なぁに。こっちが素よ。」

 

 そんな風に話しながら、町へと戻る。

 その夜、宴をしながら、俺たちは、ガゼル王の話を聞いていた。

 

リムル「なるほど。」

リアム「豚頭帝を倒した、謎の魔物集団の調査だったと。」

ガゼル「それが敵となるか、味方となるか、見極めにな。」

 

 まあ、そうするのが、正しい判断だろう。

 すると、ガゼル王が真面目な顔で、俺たちに聞いてくる。

 

ガゼル「リムル、リアムよ。聞きたい事がある。」

リムル「おう。」

リアム「何だ?」

ガゼル「俺と盟約を結ぶつもりはあるか?」

リムル「あっ。」

ガゼル「お前達がもしも、この広大な森を全て掌中に出来たならば、我が国をも上回る富と力を手に入れる事が出来よう。その時に、後ろ盾となる国があれば、便利だぞ?」

 

 確かに。

 後ろ盾があった方が、何かと良いしな。

 

リムル「願ってもない事だが………。」

 

 リムルはそう言うと、紅丸達の方をチラリと見て、聞く。

 

リムル「良いのか?それは、俺たち魔物の集団を、国として認めると。そう言っているのと同じだぞ?」

ガゼル「無論だ。それとこの話、我らにとっても、都合が良い。」

リアム「………と、言いますと?」

ガゼル「お互いに利益があるからな。」

 

 俺とリムルは、お互いをチラリと見て、答える。

 

リアム「断る理由はないね。」

リムル「喜んで、受けたいと思う。」

ガゼル「よし。…………で、お前達の国の名前は何と言うのだ?」

リアム「………お。」

 

 ヤッベェ。

 国の名前とか、一切考えてなかった。

 豚頭帝討伐後、色々と忙しかったからな。

 すると、リムルが口を開く。

 

リムル「ジュラ・テンペスト連邦国だ。」

ガゼル「ジュラ・テンペスト連邦国。」

紅丸「おおっ!」

紫苑「さすが、リムル様です!」

銀姫「さすがです!」

リグルド「では、国の名はジュラ・テンペスト連邦国!この町の名前は、リムルと致しましょう!」

リアム「お?良いね!」

リグルド「中央都市、リムルです!」

リムル「おいおい!それはちょっと恥ずかし………。」

 

 こうして、国の名前はジュラ・テンペスト連邦国、首都は中央都市リムルに決まった。




今回はここまでです。
遂に、ジュラ・テンペスト連邦国が誕生しました。
ガゼル王を、リアムも倒しました。
次回は、ミリムが登場します。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
紅丸、蒼影、白老は、リアムから響鬼、風魔、歌舞鬼のライドウォッチを受け取っています。
他のメンツは、なんの仮面ライダーにするのかは、未定です。
次回で、蜥蜴人族の副隊長にも、名前をつけます。
その副隊長は、仮面ライダーシノビに変身させようかなと思っています。
リクエストで、アナザーセイバーを出す事が来たので、カリュブディス戦の近くで、出そうと思います。


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第15話 魔王ミリム襲来

 こうして、俺たち、ジュラ・テンペスト連邦国と、武装国家ドワルゴンとの同盟が成立したのだった。

 俺たちの魔物の国に、心強い後ろ盾が出来た。

 で、その二日後。

 

ガゼル「来てやったぞ、リムル、リアムよ。」

 

 何と、ガゼル王が再び来たのだ。

 

リアム「随分と早い再訪ですね………。」

リムル「今度は何の用だよ?」

ガゼル「お前達に土産をやろうとおもってな」

リムル「土産?」

リアム「何それ?」

 

 ガゼル王が供に合図を送ると布で簀巻きされたものを投げその拍子で表面の布がめくれると、そこに居た人に俺たちが驚く。

 

リムル「えええっ!?」

リアム「コイツってたしか!?」

カイジン「ベスターじゃねえか!?」

ベスター「うぅぅぅん………。」

 

 泡を吹いて気絶しているベスターであった。

 ガゼル王が、理由を説明する。

 

ガゼル「有能なコイツを遊ばせておくも勿体ないのでな。とはいえ、俺に仕えるのを許すわけにはいかん。好きに使え。」

カイジン「王よ、それではベスター殿の知識が我等に流出することになりますぞ!?」

ガゼル「流出していった本人が今更なにを言う。」

カイジン「それは………。」

 

 カイジンは止めようとしたがガゼル王の正論で言葉に詰まった。

 ガゼル王は、復活したベスターに声をかける。

 

ガゼル「そのための盟約よ。お前達のこの地を、まだ見ぬ技術の最先端にしてみせろ。ベスターよ。」

ベスター「はっはい!」

ガゼル「ここで思う存分、研究に励むが良い。」

ベスター「…………っ…………は!今度こそ………今度こそ、期待に応えてご覧にいれます。」

 

 ベスターはそう言うと、今度は俺たちに顔を向ける。

 

ベスター「リムル殿、リアム殿、カイジン殿すまなかった。許されるならここで働かせてほしい。」

カイジン「…………優秀な研究者が来てこっちも大助かりってもんだ。旦那方。何かあったら、俺が責任を取ります。ここは俺を信じて、こいつを許してやって下さい。」

ベスター「カイジン殿………。」

 

 まあ、ベスターも、ガゼル王の期待に応えようとして、焦ったからな。

 俺たちは、頷いて、答える。

 

リムル「カイジンがそれで良いなら、俺たちに文句はないよ。」

リアム「ベスター。これからよろしく頼む。」

ベスター「ははっ!不肖ながら、精一杯努めさせていただきます!」

ガゼル「…………では、さらばだ!」

 

 ガゼル王はそう言って、去っていく。

 周囲の面子が拍手する中、その中に混じっていた奴らに声をかける。

 

リムル「はぁ………さてと。」

リアム「お前ら、何してんの?」

 

 俺とリムルの視線の先には、ガビル達が居た。

 いつの間にここに来たのか。

 

ガビル「あっ………いやあ、ハハハ!このガビル!リムル殿とリアム殿のお力になりたく、馳せ参じましたぞ!」

部下「ガビル様、かっこい〜!」

部下「当然である。」

 

 それを聞いた紫苑と銀姫は。

 

紫苑「では、斬りますね。」

銀姫「始末しましょう。」

 

 そう言って紫苑は剛力丸を、銀姫はツクヨミライドウォッチを構える。

 それを見たガビルは焦った。

 

ガビル「あっ!いやいやいや………!是非とも、我輩達を配下に加えていただきたいのです!必ず、お役に立ってご覧に入れますので。何卒。」

部下たち「何卒………。」

部下「ガビル様がこう言ってますので………。」

親衛隊長「兄は反省しているのです。」

副隊長「彼に、償いの機会をお与えください。」

 

 ガビル達がそう言う中、親衛隊長と副隊長とその配下達が現れる。

 

リムル「親衛隊長と副隊長まで?」

リアム「来てたのか。」

親衛隊長「私たちは、兄と違って、勘当になった訳ではありません。」

ガビル「何!?」

副隊長「首領アビルが、見聞を広めよと、僕たちを送り出してくれたんです。」

ガビル「我輩を慕ってついて来たのでは?」

親衛隊長「違います。」

副隊長「違うよ。」

ガビル「ガーン!」

リアム「なるほどね………。」

 

 そうして、ベスター、そしてガビル達が仲間になった。

 リムルは、親衛隊長とその配下に名前を付ける中、俺は副隊長に名前をつける。

 

リアム「副隊長。君の名前は、蓮月だ。」

蓮月「ありがとうございます。」

 

 ちなみに、ガビルの配下にも、名前をつけた。

 ガビルとよく居るあの3人組は、青色の奴がカクシン、緑色の奴がヤシチ、あと一人はスケロウの名前をつけた。

 名前をつけた事により、ガビル達は、龍人族(ドラゴニュート)に進化した。

 そんな中、ウォズが俺に話しかけてくる。

 

ウォズ「我が魔王。少しよろしいか?」

リアム「どうしたの?ウォズ。」

ウォズ「実は、蓮月に、シノビの力が反応しているのですが……………。」

リアム「シノビの力が?」

 

 マジか。

 なら、与えるべきか。

 

リアム「なら、彼にシノビの力を与えても良いか?」

ウォズ「構いませんが……………。」

リアム「あ、そっか。シノビの力が使えなくなるからな。」

ウォズ「いえ。どうやら、新たなシノビのミライドウォッチが生成されたようで、彼にはそれを渡します。」

リアム「分かった。」

 

 なるほどな。

 その後、蓮月にシノビミライドウォッチを渡して、蓮月は仮面ライダーシノビに変身する事が出来るようになった。

 そんな感じで、テンペストはだんだんと大きくなっていった。

 一方、とある建物では、水晶玉を見る四人の人物が居た。

 その四人は、全員が魔王で、ピンク色の髪の女の子がミリム、背中から翼を生やした女性がフレイ、大柄な男性がカリオン、白いタキシードを着る男性がクレイマンだ。

 その水晶玉に映し出されていたのは、豚頭魔王のゲルドと、リムル、俺の戦闘時の物だ。

 

ミリム「面白い!面白いのだ!この玩具達の調査には、私が赴く!」

クレイマン「しかし、ミリム。ジュラの森には不可侵条約が………。」

ミリム「不可侵条約?そんな物、ヴェルドラが消えた今、撤廃してしまえばいいのだ。」

クレイマン「なるほど………その通りですね。」

 

 ミリムの発言に、クレイマンがそう言うが、ミリムの反論にクレイマンは頷き、カリオン、フレイも頷く。

 ミリムは口を開く。

 

ミリム「決まりなのだ!ただし、互いに手出しは厳禁!よいな?」

クレイマン「勿論です。」

ミリム「約束だ!協定は成立した。では、今から調査に行ってくる。邪魔するでないぞ、クレイマン!カリオン!フレイ!はっ!」

 

 そう言ったミリムは、窓から、ジュラ・テンペスト連邦国へと向かう。

 一方、俺は、とんでもない魔力の塊が、こちらに向かってくる事に気づいた。

 

リアム「なんか、とんでもない魔力の塊が、こっちに近づいてくる……………!?」

 

 俺はそう呟き、ある丘へと向かっていく。

 途中で、リムルと合流する。

 

リアム「リムル!」

リムル「リアム!お前も感じるか?」

リアム「ああ!とんでもない魔力の塊が、こっちに来てる!」

 

 俺たちはそう話して、丘に到着すると、ピンク色の魔力の塊が、地面に着弾する。

 俺たちは、飛ばされない様にする。

 すると、ピンク色の魔力の塊の中に居たであろう何者かが、話しかけてくる。

 

ミリム「初めまして。私はただ一人の竜魔人(ドラゴノイド)にして、破壊の暴君(デストロイ)の二つ名を持つ、魔王、ミリム・ナーヴァだぞ!」

リムル「魔王かよ?」

リアム「うそ〜ん………。」

ミリム「お前達がこの町で一番強そうだったから、挨拶に来てやったのだ。」

 

 ミリムという魔王は、そう言う。

 ていうか、何で魔王がもう来るんだよ!

 やっぱり、ゲルドの件で、目をつけられてたのか?

 すると、ミリムという魔王が苦しみだす。

 

ミリム「な、なんなのだ!?あ、頭が痛いのだ!?」

リアム「お、おい!大丈夫か!?」

リムル「どうしたんだよ!?」

ミリム「わ、私には、竜眼(ミリムアイ)というのがあってな。相手の隠している魔素の量まで、測定出来るのだ。なのだが……………お前は一体なんなのだ!?お前の魔素量がちっとも測定出来ないのだ!」

リアム「え、俺?」

 

 え、マジで?

 俺たちの解析鑑定みたいなスキルなのかな?

 というか、解析出来なかったって、どういう事なんだろ?

 俺が首を傾げる中、ミリムという魔王は、俺を指差す。

 

ミリム「そこのお前!この私と戦うのだ!」

リアム「えええ……………!?」

リムル「どうしてそうなるんだよ!?」

ミリム「お前の実力を知りたいのだ!」

 

 なんでそうなる!?

 俺は心の中でそう思う。

 だが、下手に断って、面倒な事になるのは避けたい。

 俺はため息を吐きながら言う。

 

リアム「………………分かった。」

リムル「良いのかよ!?」

リアム「下手に断って、面倒な事になるよりはマシだし。それに……………今の俺が、どのくらいまで通用するのか、知りたいし。」

リムル「………………あんまりやり過ぎんなよ。」

リアム「ああ。」

 

 俺はそう言って、ジクウドライバーを装着する。

 そして、ジオウライドウォッチIIを取り出して、起動する。

 

ジオウ!II!

 

 起動した後、スプリットリューザーを動かして、ピクトウィンドウをずらす。

 そして、D‘9サイドとD‘3サイドに分離させる。

 

ジオウ!

 

 二つのライドウォッチを、ジクウドライバーに装填して、ジクウドライバーのロックを外す。

 すると、俺の背後に、二つのアナログ時計が左右対称の状態で現れる。

 

リアム「変身!」

 

 俺はそう言って、ジクウドライバーの本体を一回転させる。

 すると、俺の背後の時計が、同じ時間を指し、ライダーの文字が浮かぶ。

 

ライダータイム!

仮面ライダー!ライダー!ジオウ・ジオウ・ジオウ!II!

 

 俺は、仮面ライダージオウIIに変身して、サイキョーギレードを持つ。

 それを見たミリムは。

 

ミリム「ほう!それがお前の本気か!」

リアム「まあね。」

ミリム「では……………行くのだ!」

 

 そう言って、俺とミリムは、お互いに駆け出して、ぶつかり合う。

 俺のサイキョーギレードとミリムのパンチがぶつかり合い、周囲に衝撃波が放たれる。

 そんな中、リムルの元に、シズさん、ウォズ、紅丸、蒼影、紫苑、銀姫が集まる。

 

紅丸「リムル様!」

リムル「紅丸!シズさん!皆も!」

銀姫「どういう状況ですか!?」

ウォズ「我が魔王と戦っているのは……………魔王ミリム!?」

シズ「えっ!?」

蒼影「なっ……………!?」

紫苑「魔王が何故!?」

リムル「分かんないけど、今、俺たちに出来ることは、あいつを信じる事だけだ。」

シズ「時魔人(クロロノイド)君…………。」

 

 リムル達は、そう話していた。

 俺とミリムは、現在進行形で戦っていた。

 言える事が、一つある。

 それは………………マジでやばい。

 

リアム(魔王って言われてるだけはあるな……………!強い……………!)

 

 俺は、なんとか白老にしごかれてた事もあって、戦えている。

 それと、ジオウIIの未来予知能力もフル活用している。

 それでも、何とか戦えているという感じだ。

 

ミリム「やるではないか!だが……………私には勝てないのだぁぁぁ!」

リアム「それでも、やれるだけやるさ。」

 

 ミリムがそう叫んでオーラを出す中、俺はジカンギレードを取り出して、サイキョーギレードのフェイスユニットのレバーを操作して、文字を変える。

 

ジオウサイキョウー!

 

 そして、サイキョーギレードのフェイスユニットを取り外し、ジカンギレードに装填する。

 

サイキョーフィニッシュタイム!

 

 俺はサイキョーギレードのブレード部分をジカンギレードと合体させて、サイキョージカンギレードにして、構える。

 待機音が流れて、金色のエネルギーがサイキョージカンギレードから伸びて、ピンク色の『ジオウサイキョウ』と書かれた文字が浮かぶ。

 

ミリム「行くのだ!」

リアム「ハァァァァ!!」

 

キング!ギリギリスラッシュ!

 

 ミリムのパンチと、キングギリギリスラッシュがぶつかり合い、周囲にこれまでとは比にならない位の衝撃波が放たれる。

 それには、俺とミリムもしばらくは耐えたが、お互いに吹っ飛ばされる。

 

ミリム「アハハハハ!右手が痺れたのは、本当に久しぶりだな……………!」

リアム「マジかよ……………。」

 

 ミリムは、高笑いしながらそう言う。

 それには、俺は引き攣った笑みを浮かべるしかなかった。

 どうやら、まだまだの様だ。

 すると、リムルがやって来る。

 

リアム「リムル。」

リムル「リアム。後は俺に任せろ。お前は少し休め。」

リアム「………………ああ。」

 

 リムルはそう言って、前に出る。

 俺は、変身解除して、一息つく。

 ミリムが口を開く。

 

ミリム「どうした?まだ遊び足りぬのか?……良いだろう。もっと遊んでやるのだ。」

紅丸「リムル様………。」

リムル「諦めたら、そこで終了だから、出来るだけやってみるさ。期待はするなよ。」

リアム「出来る限りはやれ。」

ミリム「ほう………。私に立ち向かうのか?」

リムル「自信があるのなら、俺の攻撃を受けてみるか?」

ミリム「アッハハハハ!良いだろう!面白そうなのだ!………ただし、それが通用しなかったなら、お前達は私の部下になると、約束するのだぞ。」

リムル「分かった。」

 

 そう言って、リムルはクレーターの中心にあるミリムの方へと向かう。

 リムルは、どう対処するつもりだ?

 すると、リムルが構え、リムルの右手に、金色の液体が集まる。

 

リアム(アレって確か………。)

リムル「食らえ〜〜!」

 

 俺がそう考える中、リムルは駆け出して、その金色の液体をミリムの口に突っ込む。

 しばらくの静寂の末、ミリムが叫ぶ。

 

ミリム「何なのだ、これは!こんな美味しい物、今まで食べた事が無いのだ!」

リムル「どうした?魔王ミリム。」

ミリム「えっ!?」

リムル「ここで俺の勝ちと認めるならば、更にこれをくれてやっても良いんだが?」

リアム(ああ、アレって、蜂蜜だな。)

 

 そういえば、確か、アピトって名付けた蜂から、蜂蜜を受け取ってたな。

 確かに、ミリムって、魔王だけど、幼そうに見えるもんな。

 

ミリム「欲しい………!うう………だがしかし、負けを認めるなど………!」

リムル「う〜ん!美味しい!」

ミリム「あ〜っ!!」

 

 ミリムは、魔王としてのプライドか、負けを認めようとしなかったが、リムルが追い打ちをかける様に、蜂蜜をミリムの前で食べる。

 俺たちは、それを呆然と見ていた。

 

リムル「お〜っと!そろそろ残りが少なくなってきたぞ!」

ミリム「ま………待て待て!提案がある!引き分け………!今回は引き分けでどうだ?今回の件、全て不問にするのだ!」

リムル「ほほう?」

ミリム「も………勿論、それだけではないのだ!今後、私がお前達に手出しをしないと誓おうでは無いか!」

リムル「…………良いだろう。その条件を受けよう。」

ミリム「うわぁ!」

リムル「では、今回は引き分けという事で。」

シズ「スライムさん、悪い笑みを浮かべてなかった?」

 

 そうして、リムルは若干悪い笑みを浮かべながら、ミリムに蜂蜜を渡す。

 未曾有の天災を、乗り切ったな。

 俺たちは、場所を移動して、ミリムが蜂蜜を舐めるのを見ていた。

 

ミリム「あ〜ん!う〜ん!美味しい!美味しいのだ〜!」

リアム「それは良かったな。」

 

 俺は、ミリムにそう話しかけ、リムルと思念伝達で話し合う。

 

リアム『リムル、グッジョブ!』

リムル『ああ!………それにしても、これ以上面倒な事になる前に、早く帰ってくれないかな〜。』

リアム『確かに…………。』

 

 確かに。

 これ以上、ミリムがここに居ると、面倒な事になりそうだ。

 すると、ミリムが俺たちに話しかける。

 

ミリム「なあなあ。」

「「ん?」」

ミリム「お前達は、魔王になろうとしたりしないのか?」

リムル「…………何で、そんな面倒な事しないといけないんだ。」

ミリム「えっ!?だって、魔王だぞ!?かっこいいだろ?憧れたりとかするだろ?」

リアム「しないって。」

ミリム「えっ!?」

「「えっ?」」

 

 俺の言葉に、ミリムは驚いた様な表情を浮かべる。

 えっ、何で驚くの?

 俺は、いずれ魔王になるかもだが、今はまだ早いだろう。

 リムルが、ミリムに質問をする。

 

リムル「魔王になったら、何か良い事でもあるのか?」

ミリム「強い奴が、向こうから喧嘩を売ってくるのだ。楽しいぞ。」

リアム「そういうのは、間に合ってるし、俺たちは興味もないよ。」

ミリム「ええっ!?じゃあ、何を楽しみに生きてるんだ?」

リムル「色々だよ。」

リアム「俺ら、やる事が多すぎて、かなり忙しいからさ。魔王の楽しみは、喧嘩以外には、何かあるのか?」

 

 俺の質問に、ミリムは言葉に詰まる。

 

ミリム「無いけど………。魔人や人間に威張れるのだぞ?」

リムル「退屈なんじゃ無いか?それ。」

 

 ミリムの答えに、リムルがそう言うと、ミリムは図星の態度を取る。

 まあ、魔王なんざ興味ないしな。

 魔王になって、余計なしがらみは増やしたくない。

 ていうか、退屈してんじゃねぇか。

 

リムル「じゃあ、そろそろ………。」

リアム「気をつけて帰れよ。えっ!?」

 

 俺たちがそう言うと、ミリムは俺とリムルを掴む。

 

ミリム「お前達、魔王になるより面白いことしているんだろ!?」

リムル「ええっ!」

ミリム「ずるいぞ!ずるい!ずるい!もう怒った!」

リアム「そう言われても………。」

ミリム「教えろ!そして、私を仲間に入れるのだ!村に連れて行け〜!」

 

 そう言って、ミリムは、俺とリムルを激しく揺すって、俺とリムルを締める。

 …………っていうか、限界!

 駄々っ子かよ!

 あと、ウォズさん、殺気を向けようとしないで!

 俺とリムルは、即座に脱出する。

 

リムル「分かった、分かった。」

リアム「町には連れて行く。ただし、条件がある。今度から俺たちの事は、さん付けで呼べよ。」

ミリム「ふざけるな!逆なのだ!お前達が私をミリム様と呼べ!」

リムル「………じゃあ、こうしよう。俺たちがミリムと呼ぶから、お前は俺たちを呼び捨てで呼ぶ。どうだ?」

 

 俺とリムルの提案に、ミリムはそう言う。

 リムルが、折衷案を上げると、ミリムは少し目線を逸らして、答える。

 

ミリム「…………分かった。しかし、特別なのだぞ。私をミリムと呼んで良いのは、仲間の魔王達だけなのだ。」

リアム「はいはい、ありがとうな。」

リムル「じゃあ、今日から俺たちも友達だな。」

ミリム「う………うむ。」

リアム「これから村を案内するが、俺たちの許可なく暴れるなよ。約束だ。」

ミリム「もちろんなのだ!約束するぞ、リムル、リアム!」

 

 どうにかなったみたいだな。

 それを見ていた他の人たちも、ホッとしていた。

 ミリムが高笑いしていると。

 

ガビル「おや?」

ミリム「あ?」

 

 その声がして、蒼影を除いた全員が震える。

 蒼影は、リグルドあたりに知らせに行ったのだろう。

 震えた理由は、ガビルがとんでもない事を言ったからだ。

 

ガビル「どなたですかな?このチビッ娘は?」

ミリム「えい!」

ガビル「ああぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 そんな事を言ったもんだから、ミリムに盛大に殴られ、石畳を破壊しながら、転がって行く。

 

ガビル「ああ…………。」

ミリム「誰がチビッ娘だ!ぶち殺されたいのか?」

 

 暴れるなって、言ったばかりなのに………。

 早速暴れたミリムを俺たちが呆れながら見ていると、ミリムはガビルに話しかける。

 まあ、ガビルの自業自得な面もあるけど。

 

ミリム「良いか?私は今、とても機嫌が良い!だから、これで許してやるのだ!次はないから、気をつけるのだぞ!」

ガビル「ぶははっ!我輩の親父殿が、川の向こうで手を振っているのが見えましたぞ。」

リムル「お前の親父は生きてるだろ。」

リアム「何言ってんの?」

ガビル「あっ。ところで、そちらのチビッ娘………。」

ミリム「ああ?」

 

 ガビルが、またチビッ娘って言おうとした瞬間、ミリムはガビルを睨む。

 

ガビル「おっと。お嬢様は一体………?」

リムル「こいつは、ミリム。」

リアム「魔王の一人らしいぞ。」

ガビル「魔王ですと!?」

 

 俺とリムルがそう言うと、ガビルは驚く。

 まあ、そうなるのも、無理はない。

 

リムル「あのな、ミリム。怒っていても、すぐに殴ったりしたらダメだぞ。」

ミリム「う………私を怒らせる方が悪いのだ。それに、あの位は、挨拶の内だぞ。」

リアム「殴り合いは挨拶じゃないんだぞ。それは禁止だ。」

ミリム「うう………!」

 

 俺とリムルの言葉に、ミリムは頬を膨らませる。

 そんなこんなで、村の皆に、ミリムの事を紹介する。

 

リムル「新しい仲間を紹介する。」

リアム「といっても、扱いは客人という形になるので、丁寧親切に対応して欲しい。」

ミリム「ミリム・ナーヴァだ!」

 

 ミリムがそう叫ぶと、周囲がどよめく。

 まあ、魔王の一人だからな。

 

村人「なんと!?魔王ミリム様!?」

村人「おお………!ご尊顔を初めて拝謁出来ましたぞ!」

ゴブタ「さすが、リムル様とリアム様っす!」

リグルド「あの暴君と、ああも親しげに……。これで、このテンペストも、安泰という物だ………!」

 

 ミリムって、有名な魔王なんだな。

 っていうか、リグルドは泣きすぎだろ。

 すると、ミリムがとんでもない事を言った。

 

ミリム「今日から、ここに住む事になった!よろしくな!」

「「えっ?」」

 

 ミリムの発言に、俺たちが驚いていると、周囲が歓声を上げる。

 住むなんて、聞いてないぞ!?

 ただ案内して、案内し終わったら、帰る感じじゃなかったのか!?

 リムルが、ミリムに聞く。

 

リムル「………住むって、どういう事だ?」

ミリム「そのままの意味だぞ。私もここに住む事にしたのだ。」

リアム「ああ………。ま、まあ、本人がそう言っているので、そのつもりで、対応して欲しい。」

 

 リムルの質問に、ミリムが答え、俺がそう言うと、再び歓声を上げる。

 人気なんだな。

 すると、ミリムが叫ぶ。

 

ミリム「何かあったら、私を頼ってもいいのだ!」

 

 ミリムの宣言に、村人は歓声を上げる。

 すると、リムルがつぶやく。

 

リムル「魔王と友達か………。」

ミリム「そうだな。友達は変だな………。」

リムル「あ………聞こえてた?」

リアム「聞こえてたぞ。」

ミリム「え、えっと………。友達というより………マブダチだな!」

 

 ミリムがリムルを持ち上げ、俺の腕を持ち上げながらそう言うのに、村人は、何度目かの歓声を上げる。

 俺たちは、驚く。

 

リアム「マブダチ!?」

ミリム「違うのか!?う、うぅ………。」

 

 俺の叫びに、ミリムが反応して、泣き出しそうになる。

 やっべぇ、地雷を踏んだか!?

 

リムル「マブダチ!マブダチ!皆!俺たち3人はマブダチ!」

 

 リムルがそう宣言すると、周囲の人たちが、マブダチコールを始める。

 

ミリム「だろ?お前達も、人を驚かせるのが上手いな。」 

 

 こうして、火薬庫よりも危険な魔王ミリムが、ジュラ・テンペスト連邦国の仲間入りを果たした。

 そして、温泉宿で、ミリムは温泉に入っていた。

 一方、俺たちは、和室に集まっていた。

 集まっていた面子は、俺、リムル、ウォズ、リグルド、カイジン、紅丸、蒼影、白老だ。

 集まっていた理由は、ミリムの扱いと、今後の方針だ。

 ただ、リムルが何かを考え込んでいた。

 

リアム「リムル。」

リムル「ああ、すまない。何だっけ?」

リグルド「ミリム様の件です。まさか、魔王自らやって来るとは思いませんでした。」

リムル「でもまあ、一応は許可なく暴れないと約束してくれてるし………。」

カイジン「いや、しかし、気になるのは、他の魔王達の出方じゃねえか?」

リアム「どういう意味だ?」

 

 カイジンの言葉に、紅丸達は頷き、俺は、理由を尋ねる。

 

ウォズ「魔王は何人か居るんだが………お互いが牽制し合っているんだ。」

カイジン「ウォズの言う通りだ。今回、旦那方がミリム様と友達と宣言したから、この町も、魔王ミリムの庇護下に入る事を意味する。本来なら、それは望ましい事かもしれんが………。」

白老「リムル様とリアム様は、総統という立場にありますのじゃ。つまり、このジュラの大森林が、魔王ミリムと同盟を結んだ………そういう風に、他の魔王達の目には、映るでしょうな………。」

紅丸「魔王ミリムの勢力が一気に増す事になり、魔王達のパワーバランスが崩れる。」

「「なるほど………。」」

 

 つまり、俺たちは、魔王達の勢力争いに巻き込まれるかもしれないって事か。

 面倒な事になりそうだな。

 

リグルド「しかし、実際にですぞ。魔王ミリム様を止めようとしても、無理でしょう。」

紅丸「あれは、別次元の強さだった。リムル様とリアム様がいなければ、俺たちが戦い、命を落としていただろう。」

蒼影「その通りだ。他の魔王が敵対するというのなら、そいつらを相手にする方がマシだろう。」

 

 そこまでか………。

 流石に、それは凄いな。

 しばらくの静寂の末、獅子脅しの音がすると。

 

リグルド「という事で、ミリム様のお相手は、マブダチとして、リムル様とリアム様に全てを任せるという事で………。」

「「「異議なし。」」」

「「丸投げ!?」」

 

 俺たちに丸投げしたぞ!

 俺たちが驚いている中、白老が口を開く。

 

白老「魔王ミリム様は、最強最古の魔王の一人。絶対に敵対してはならない魔王と、言われておりますしのう。今回ばかりは、リムル様とリアム様にお任せする他ありますまいて。ホッホッホッホッ。」

ウォズ「無論、私も手伝うさ。」

 

 仕方ないか………。

 俺とリムルは、そう思った。

 だが、俺たちは知らなかった。

 ミリムが巻き起こす旋風は、まだ吹き始めたばかりだという事を。

 一方、当のミリムは、シズさん、朱菜、紫苑、銀姫にお湯をかけていた。

 

ミリム「アハハハハ………!楽しいのだ!うおぉぉぉ!ハハハ………!」

朱菜「お風呂で遊んではいけませんって、言ってるでしょ!」

銀姫「やめて下さい!」

シズ「アハハハハ……………。」

紫苑「うう…………くらえ!」

 

 紫苑はそう叫んで、お湯をミリムにかける。

 

ミリム「やったな!それ!」

朱菜「良い加減にしなさーい!!」

銀姫「紫苑もやめなさい!」

シズ「結構騒がしいね……………。」

 

 女湯から、朱菜と銀姫の叫び声とシズさんの呟きが響くのだった。




今回はここまでです。
遂に、ミリムが現れました。
流石のリアムも、ミリムには勝てませんでした。
まあ、最古の魔王が相手ですし。
蓮月と名付けた副隊長は、仮面ライダーシノビに変身します。
蒼影が風魔ですので。
次回は、ユーラザニア、ブルムンド、ファルムスから、あのキャラ達がやってきます。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
リアムの運命の人は、クロエですが、どんなエピソードをやって欲しいというのがあれば、受け付けます。
あとは、少し先になりますが、ファルムス王国との戦いがどういう感じにするのかも受け付けます。


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第16話 集う者達

 ブルムンド王国では、ベルヤードが、フューズからの報告を聞いていた。

 

ベルヤード「魔物の街と………そこに住む豚頭帝(オークロード)を凌ぐスライムと、時魔人(クロロノイド)という存在………。これは、本当なのか?………いや、本当なのは分かるが………。信じられぬな………。」

 

 ベルヤードは、フューズにそう言いながら、椅子に座る。

 

ベルヤード「…………だが、信じるしかないな。我々はそのリムルという名のスライムと、リアムという名の時魔人に、救われたのだと。」

フューズ「そうだな。彼らとの関係を、今後どの様にすべきなのか、そのスライムと時魔人が善意の存在であると見做して接するか。脅威として排除を試みるか。」

ベルヤード「排除と簡単に言うが、それは、そもそも可能なのかね?」

 

 ベルヤードの言葉に、フューズはそう答え、ベルヤードは質問する。

 フューズは、しばらくの沈黙の末、答える。

 

フューズ「…………正直に答えて良いのか?」

ベルヤード「…………答えを聞くまでもないな。」

 

 ベルヤードのその言葉に、フューズはため息を吐きながら、立ち上がる。

 

フューズ「ハァ………。一度、会いに行ってみるか。俺がこの目で、リムルとリアムとやらを見極めてみるさ。」

 

 そうして、フューズは、シズさんと旅をしたエレン、カバル、ギドの3人を呼ぶ。

 

フューズ「よし、出発するぞ!お前達が会ったというスライムと時魔人に会いにな。」

「「「はぁ…………。」」」

 

 フューズの言葉に、3人はため息を吐く。

 魔王ミリム・ナーヴァが、この街に住む事になった。

 朝食は、食パン、ジャム、ミネストローネ、牛乳(牛鹿の物)だった。

 その後、ミリムは朱菜の服の工房に行き、リムルはベスターの研究室へと向かった。

 俺はというと、ゲルド達の方へと向かっていた。

 

リアム「やっほ〜!ゲルド、ガルド!」

ゲルド「うん?おお、リアム様!」

ガルド「リアム様!」

リアム「建設の様子はどうだ?」

ゲルド「はい。建設は順調です。これが終わったら、武装国家ドワルゴンへの街道の工事に着手します。」

リアム「ああ。うまくやれてるみたいだな。ガルドも、ゲルド達の助けになってやれよ。」

ガルド「はっ!」

 

 どうやら、上手くやれてるみたいで、安心したよ。

 俺は、ゲルド達に労いの言葉をかけつつ、差し入れを渡す。

 そして、俺はその場を後にする。

 すると、未来視が発動する。

 

リアム「っ!?これは!?」

 

 見えたのは、リグルドが、獣人みたいな奴にぶん殴られる未来だった。

 それと同時に、魔力探知に何か引っかかる。

 それは、四つの魔力が、この街に向かってきている事だ。

 

リアム「……………未来視が早速当たるなんてな。」

 

 俺はそう呟いて、テンペストへと向かう。

 到着すると、リグルドが対応しようとしていた。

 

リアム「リグルド。俺が対応するよ。」

リグルド「り、リアム様!?いつの間に!?」

???「リアム?お前がこの街の主か?」

リアム「厳密には、片割れだ。…………で、アンタら誰だよ?」

 

 俺がそう聞くと、その来客のリーダー格が答えた。

 

フォビオ「俺は、魔王カリオン様の三銃士、黒豹牙フォビオだ。」

リアム「リアム=テンペスト。このジュラの大森林の盟主の片割れだ。」

フォビオ「リアムね…………。ここは良い街だな。魔王カリオン様が支配するには相応しい。そうは思わんか?」

リアム「…………冗談を言いに来たのか?」

 

 俺がそう言うと、フォビオは俺に向かって殴ってきた。

 だが…………。

 

フォビオ「なっ…………!?」

ウォズ「下郎!我が魔王の事を殴ろうとするとは、笑止千万!」

リアム「ウォズ!?いつの間に…………。」

 

 そう。

 ウォズがいつの間にか現れて、フォビオのパンチをあっさり受け止めていた。

 それには、フォビオという奴も驚いていた。

 すると、後ろの方から、とんでもないオーラを感じた。

 そのオーラの発生源は、ミリムだった。

 それには、俺だけでなく、ウォズも冷や汗を流す。

 やばい、ミリムがキレてる!

 俺とウォズは、すぐにフォビオから離れる。

 

フォビオ「なっ!?魔王ミリム!?」

 

 フォビオは、ミリムに気付いて、驚愕した。

 ミリムがすぐにフォビオの方に向かうのを見て、フォビオも動く。

 

フォビオ「くっ………!豹牙爆炎掌!」

ミリム「親友(マブダチ)の手下に何するのだ〜!」

 

 ミリムのパンチで、炎の柱が上がる。

 その炎の柱は、爆発するが、周囲に被害は特になかった。

 すると、銀姫、蓮月の2人がやって来る。

 

銀姫「リアム様!」

リアム「おお、皆。」

蓮月「何か、とてつもない爆発音が聞こえましたが、大丈夫ですか!?」

リアム「俺は大丈夫だ。ただなぁ………。」

ミリム「おお!リアム!」

 

 銀姫達と話していると、ミリムが近づいて来る。

 フォビオの方を見ると、泡を噴いて気絶していた。

 

ミリム「あやつが舐めた真似をしておったから、ワタシが代わりにお仕置きしておいたのだ!」

 

 ミリムはそう言うと、褒めて欲しいと言わんがばかりに、俺を見る。

 でもなぁ…………。

 俺の為とはいえ、魔王の1人であるカリオンって奴の部下に手を出してしまった。

 流石に、褒められる物ではないな。

 そう思い、ミリムに話しかける。

 

リアム「なぁ。俺かリムルの許可無く暴れないって、約束しなかったか?」

ミリム「うぇ!?え~っと………。そ、そう!これは違うのだ!この町の者ではないからセーフ、セーフなのだ!」

リアム「ごめん。アウト。」

ミリム「えええっ!?」

リアム「…………まあ、でも。俺を思っての行動だったから、今回はお咎めなしという事にしておくよ。」

ミリム「わ、分かったのだ…………。」

 

 まあ、昼飯抜きとか言ったら、確実にフォビオに八つ当たりをしかねない。

 すると、リムルと蒼影が到着する。

 

リムル「大丈夫………っていうか、どういう状況だよ!?」

リアム「色々とあってな。そこで倒れているのは、魔王カリオンの配下だそうだ。会議室に運ぶぞ。」

リムル「あ、ああ…………。向かう途中で説明を頼むぞ。」

リアム「ああ。」

 

 俺たちは、フォビオを始めとする魔王カリオンからの従者を、会議室に案内する。

 ミリムが昼食を食べる中、俺たちは、フォビオ達と向かい合う。

 

リアム「…………それで?」

リムル「何をしに来たんだ?」

フォビオ「フンッ!下等なスライムと人間に、この俺が答えるとでも?」

「「「「あ?」」」」

 

 フォビオがそう言うと、紅丸、紫苑、銀姫、ウォズの4人がフォビオを睨む。

 

リムル「下等と言うが、お前よりは、俺たちの方が強いぞ。」

リアム「ていうか、さっき、お前のパンチをウォズが受け止めたのを、忘れたのか?」

 

 俺たちがそう言うと、フォビオは目を細めるが、気にせず会話をする。

 

リムル「俺たちは、魔王カリオンとやらを知らないし、お前の態度次第で、カリオンは、俺たちと敵対する事になるんだぞ。」

リアム「アンタの一存で、このジュラの大森林全てを敵に回すつもりなのか?」

フォビオ「ハッ!偉そうに。…………ッ!?」

 

 フォビオの言葉が途切れたのは、俺が少し抑えていたオーラを出したからだ。

 

リアム「…………俺たちは、スライムや時魔人さ。だけど、この森の3割を支配しているのは確かだ。」

リムル「リアムの言う通りだ。そちらがその気なら、戦争するのもやむを得ないと思っている。なので、よく考えて返事をする事だ。」

フォビオ「…………チッ!謎の魔人達を配下へとスカウトする様に、カリオン様より命じられてやって来たんだ。」

 

 なるほどな…………。

 どうやら、ミリムだけでなく、他の魔王達も、俺たちの戦いを見ていたという事だな。

 やっぱり、俺たちを自分たちの勢力に取り込もうとして、躍起になっているのか?

 すると、ミリムの方から、何かオーラが出たのを感じて、振り返ると、ミリムは違う方へと向く。

 

リムル「まっ、話は分かった。じゃあ、帰って良いぞ。」

フォビオ「えっ?」

紅丸「リムル様………!?」

紫苑「宜しいのですか?」

銀姫「紫苑、落ち着いて………。」

リアム「殺す訳にはいかないしな。」

リムル「魔王カリオンに伝えろ。俺たちと交渉したいなら、日時を改めて、連絡を寄越すようにと。」

 

 リムルの伝言にどこか不満があるのか、フォビオは俺達を睨みながら立ち上がり、扉の前に立つと、ジュースを飲んでいるミリムを見た。

 

フォビオ「…………きっと後悔させてやる。」

 

 そんな捨て台詞を吐きながら、フォビオ達は去っていく。

 あの様子じゃあ、伝言なんて無理だろう。

 すると、リムルがミリムに近寄る。

 

リムル「さて。魔王カリオンについて、話が聞きたい。」

ミリム「それは、リムル達にも教えられないぞ。お互い邪魔をしないと言う約束なのだ。」

 

 どうやら、秘密があるっぽいな。

 その手のやり取りは、俺よりリムルの方が適任なので、任せておく。

 俺は、思念伝達で、リムルに話しかける。

 

リアム『リムル。ミリムの交渉は、任せたぞ。』

リムル『おう。任せとけって。』

 

 俺の言葉に頷いたリムルは、ミリムに近寄る。

 

リムル「それは、魔王カリオンとの約束だけか?それとも、他の魔王も関係してるのかなぁ?」

ミリム「あ、いや………それは………。」

リムル「大丈夫だって。カリオンって奴だって、部下を使って邪魔して来たんだろ?」

ミリム「え…………。」

リムル「俺たちはマブダチなんだから、お互いに助け合うじゃん?…………だったら、俺もミリム以外の魔王の事を知っておいた方が良いと思うんだよね。」

ミリム「うう…………。」

 

 リムルの言葉に、ミリムは葛藤していた。

 ていうか、リムル。

 お前の今の顔、凄く悪い顔になってるぞ。

 

リムル「ミリムがどんな約束をしたか知っておかないと、俺が知らずに邪魔しちゃうかもしれないしさ。」

ミリム「確かに…………。でも、マブダチ…………。」

リムル「………そうだ!今度、俺が武器を作ってやるよ!やっぱり、マブダチとしては、ミリムが心配だしさ。」

ミリム「新しい武器?アハハハハ〜!そうだな〜!やはり、マブダチは一番大事なのだ!」

 

 はい、落ちた。

 チョロすぎるだろ。

 少し、ミリムの事が心配になって来るな。

 ミリムが話したのは、クレイマン、カリオン、フレイ、ミリムの4人が、ゲルミュッドを使って、傀儡となる魔王の誕生を目論んだ事だった。

 

リアム「なるほどな………。」

ミリム「単なる退屈凌ぎだったのだ。」

リムル「ミリムにとってはそうでも、それを邪魔した以上、俺たちが狙われるのは当然か。」

紅丸「…………これは、他の魔王達も絡んでくるでしょうね………。」

リグルド「なんという事を………。トレイニー様にも相談せねば…………。」

紫苑「大丈夫です!リムル様とリアム様ならば、他の魔王など、恐れるに足りません!」

銀姫「そうですね。」

ウォズ「我が魔王なら、問題ないさ。」

 

 なるほどな…………。

 これは、他の魔王達の動向にも、気をつけないといけないな。

 ファルムス王国。

 それは、西側諸国の玄関口と呼ばれている、商業の大国だ。

 ファルムス王国は、金で雇った荒くれ者達を集めて、豚頭帝(オークロード)の調査団を派遣した。

 その集団のリーダーは、ヨウムという男だ。

 ヨウム達は進んでいると、何かに気づいて、動きを止める。

 すると、地響きが起こる。

 カジルというスキンヘッドの男性が、ヨウムに話しかける。

 

カジル「カシラ。」

ヨウム「シーッ。」

 

 ヨウムは、カジルにそう言って、剣を抜刀する。

 全員が、武器を構えながら、周辺を警戒していると。

 

ギド「ちょっ!ヤバいでやす!」

エレン「でも、でも………!」

カバル「おい、お前ら………って、うおっ!危ねぇ!」

フューズ「こんな出鱈目で、今までよく生き延びてきたな、貴様ら!」

 

 ヨウムは、自身のスキルである、遠視を使って、フューズ達を見つける。

 

ヨウム「…………魔物と遭遇した人間が居るようだ。」

カジル「カシラ、どうしやす?」

ヨウム「あっ………。」

 

 カジルがそう聞く中、フューズ達が飛び出して来て、ヨウム達の一団にしれっと混じる。

 

ヨウム「来るぞ。」

 

 ヨウムの言葉通り、出てきた。

 それは、でかい蜘蛛だった。

 

ロンメル「ひっ!」

カジル「槍脚鎧蜘蛛(ナイトスパイダー)!」

ヨウム「よ〜し、お前ら。陣形を組め。負傷者はすぐに下がらせて回復。命令だ。全員生き残れ!」

部下達「おう!」

 

 ヨウムの指示で、部下達は、後衛の魔法使いを守るように配置する。

 ヨウムは、カジルとロンメルに話しかける。

 

ヨウム「カジル。指揮を取ってくれ。」

カジル「分かった。」

ヨウム「ロンメル。俺に強化魔法を。」

ロンメル「フッ!」

 

 槍脚鎧蜘蛛が迫る中、ヨウムはそう指示をして、フューズ達に話しかける。

 

ヨウム「テメェら。俺たちを巻き込んだ落とし前、後できっちり付けてもらうからな。」

 

 ヨウム達は、迫り来る槍脚鎧蜘蛛を見据えて、緊張していたが、ゴブタがカバルに声をかける。

 

ゴブタ「あれっ?カバルさんじゃないっすか?」

カバル「なっ………!?」

ゴブタ「お久しぶりっす。」

カバル「ゴブタ君!」

ヨウム「あっ?」

ゴブタ「毎回、魔物と戦ってるようっすけど、そんなに戦うのが好きなんすか?………でも、ここはオイラが。今日の晩御飯っす!」

 

 ゴブタは、小太刀を持ちながら、槍脚鎧蜘蛛に向かっていく。

 そして、あっさり倒してしまう。

 それを見たヨウム達は。

 

ヨウム「嘘だろ…………。」

ゴブタ「こいつ、滅茶苦茶美味しいんすよ〜。」

 

 ヨウム達にゴブタはそう言って、ヨウム達とフューズ達は、呆然とする。

 その後、槍脚鎧蜘蛛は、テンペストへと運ばれ、今日の晩御飯となるのだった。

 一方、フューズ達とヨウム達は、俺たちが対応する事にした。

 

リムル「俺たちがこの街というか、国というか………。ジュラ・テンペスト連邦国の代表をしている、リムル=テンペストだ。」

リアム「…………で、俺が、ジュラ・テンペスト連邦国の代表の片割れのリアム=テンペストだ。」

フューズ「本当に、スライムと時魔人が………!」

 

 俺たちがそう名乗ると、フューズというギルドマスターが、驚く。

 カバルは、俺たちに話しかける。

 

カバル「ところで、リムルの旦那にリアムの旦那。以前には、見かけなかった方がおられるようですが………。」

リムル「ああ。紅丸に紫苑、蒼影、朱菜。」

リアム「そして、銀姫。」

 

 俺たちが、鬼人達を紹介していると、扉が開き、ミリムが入って来る。

 

リムル「それと、ミリムだ。」

フューズ「あっ………!」

 

 フューズは、ミリムを驚いた表情で見ていた。

 おそらく、魔王の1人だと気づいたな。

 そんな中、シズさんとエレン達は、話していた。

 

エレン「シズさん!お久しぶり!」

シズ「エレン達も、久しぶり。」

 

 エレン達が、再会を喜んでいる中、リムルはフューズに話しかける。

 

リムル「で、ブルムンド王国と、ファルムス王国から、それぞれ、ここの調査に来たと?」

フューズ「我々は………。」

ヨウム「…………っていうか、なんでスライムに人間がそんなに偉そうにしてるんだよ。おかしいだろ?何なんだ、一体?何でお前らは納得してるんだ?」

 

 まあ、そう思うのは無理はない。

 スライムは、この世界でも弱い部類の魔物だし、人間が魔物を率いているというのは、おかしいだろうからな。

 すると、紫苑が声をかける。

 

紫苑「リムル様とリアム様に無礼ですよ。」

ヨウム「うるさい、黙ってろ、オッパイ!」

リアム「あっ。」

ヨウム「ぐあっ………!?」

 

 紫苑に対して、そんなセクハラ発言をした事で、剛力丸の納刀状態でぶっ叩かれる。

 

ロンメル「ヨウム〜!」

カジル「カシラ!」

リムル「おっ………おい。」

紫苑「あっ、つい………。」

リアム「ついじゃないよ。」

銀姫「まあ、気持ちは分かりますが………。」

シズ「アハハハハ………………。」

 

 まあ、セクハラ発言をされたら、怒るのも無理はないよな。

 そんな中、リムルがヨウムに回復薬をかける。

 

リムル「うちの紫苑がすまんな。ちょっと、我慢が足りない所があるんだ。許してやって欲しい。」

紫苑「ひどいです!これでも、忍耐力には定評があるのですよ!」

銀姫「いや、紫苑。もう少し、相手の煽りに関しては、落ち着いて下さい。」

 

 紫苑と銀姫がそう話す中、リムルはフューズ達とヨウム達に話しかける。

 

リムル「俺たちは、人間とも仲良くしたいと考えている。その内、貿易とかして、交流出来ればいいなと思ってるしさ。」

フューズ「貿易?」

リアム「ああ。実は、ドワーフ王国とも、国交を開いているしな。」

フューズ「ドワルゴンと?」

リムル「この地を経由すれば、商人達の利便性も向上すると思うけど………。どうかな?」

フューズ「いや、待って下さい。ドワルゴンが、この魔物の国を承認したというのですか?」

 

 まあ、フューズが驚くのも無理はない。

 すると、扉が開いて、ベスターが入って来る。

 

ベスター「その話、私が保証します。」

フューズ「ベスター大臣!」

ベスター「…………元、大臣です。」

フューズ「貴方ほどの人物が、どうしてここに………?」

 

 そういや、ベスターって、大臣だったな。

 エレン達が首を傾げる中、ベスターはフューズに話しかける。

 

ベスター「お久しぶりです、フューズ殿。リムル様とリアム様の仰っている事は、本当です。」

 

 ベスターはそう言うと、俺たちに頭を下げる。

 頭を下げて、すぐに上げ、説明を続ける。

 

ベスター「ガゼル王とリムル様、リアム様は、盟約を交わしておられます。」

フューズ「あっ………!」

ヨウム「ん?」

リムル「納得してくれたかな?」

 

 フューズが驚き、ヨウムが首を傾げる中、リムルが声をかける。

 

ロンメル「うん。」

フューズ「は、はぁ………。そういう事でしたら、我々としても、協力はやぶさかではありません。ただし…………あなた方が本当に人間の味方なのかどうか…………しっかりと、確かめさせて貰う事にしますが、構いませんね?」

リアム「ああ、構わない。滞在を許可する。俺たちが脅威でないと、分かって欲しいから。」

フューズ「ん…………。」

 

 まあ、分かってもらうには、身近で見て貰う方が手っ取り早いしな。

 リムルは、フューズに話しかける。

 

リムル「ところで、フューズさんとやら。豚頭帝が倒されたという情報は、既に知れ渡っているのか?」

フューズ「いや。この情報を知るのは、国王と、ごく一部の者たちのみですよ。」

リアム「なるほどな………。」

 

 なるほど、情報は規制されているのか。

 なら、もしかしたら………。

 そう思っていると、リムルがヨウムに話しかける。

 

リムル「なら………ヨウム君。俺たちと契約しない?」

ヨウム「はあ?一体何を言って………はっ!?」

 

 ヨウムは、途中で、話すのを止めた。

 なぜなら、紫苑と銀姫の2人が、ヨウムを睨んでいたからだ。

 

ヨウム「…………何を言っておられるんですか?」

リアム「確か、ファルムス王国には、金で雇われたって言ってたな?」

リムル「だったら、雇い主が変わるだけの事だ。簡単に説明するとだな………。君たちに、豚頭帝を倒した英雄となって貰いたいのだよ。」

 

 リムルがそう言うと、その場には静寂が包み込む。

 しばらくすると、ヨウム達が叫ぶ。

 

ヨウム達「はあっ!?」

リアム「俺たちは、ヨウムに協力しただけで、実際には、ヨウムが豚頭帝を倒したという風に、噂を流すって事だろ?」

リムル「そういう事だ!………そうすれば、英雄を助けた信用出来る魔物という立ち位置を、確立出来るのではないかな〜って。」

リアム「確かにな。謎の脅威的な魔物というよりも、そっちの方が親しみやすいしな。」

紅丸「なるほど…………。」

蒼影「流石です。」

リアム「どうするのかは、ヨウム自身で決めてくれ。」

ヨウム「…………そうさせて貰う。」

 

 そんな感じに、話は終わった。

 しばらくして、ヨウムの下に向かう。

 

レイト「話はまとまったか?」

ヨウム「リムル………さん。リアム………さん。これは、大した街だ。アンタ達が邪悪な存在じゃないってのは、アイツらを見て、よく分かった。それに、愛されている事もな。」

リムル「…………俺の形をした物ばかりなのが、気になるがな。」

 

 そう言うヨウムの手には、リムルを模した食べ物を持っていた。

 まあ、リムル状の物を食べて、スライムを食べた気になる為だろうな。

 ヨウムは、語り続ける。

 

ヨウム「…………俺たちは、脛に傷を持つ身だ。ずっと、自由の身になりたかった。今回の任務を受けたのは、途中で自分たちを死んだ事にして、どこか、安全な国に向かうつもりだったからだ。」

リアム「そうだったのか………。」

ヨウム「決めたぜ。俺は、アンタらを信用する。今日からは、リムルの旦那と、リアムの旦那と呼ばせて貰う。何なりと、命じて欲しい。」

リムル「ああ。宜しく頼むよ。」

 

 こうして、ヨウム達は、白老の下、修行を行う事になった。

 その前に、皆に紹介する事にした。

 

リムル「…………と、言う訳で、今日から一緒に暮らすヨウム君御一行だ。」

リアム「仲良くして欲しい。」

ヨウム「まあ………宜しく。」

 

 その後、ヨウム達を歓迎する宴が行われたのだった。

 まあ、メインの料理が、槍脚鎧蜘蛛の鍋だというのには、ヨウムも辟易していたみたいだが。

 俺たちが、ヨウム達を歓迎する宴をしている頃、魔王クレイマンは。

 

クレイマン「早かったですね。気づかれませんでしたか?ティア。」

ティア「あたいだって、中庸道化連(ちゅうようどうけれん)の一員なんだ。少しは信用してよね!」

クレイマン「アハハハハ………!貴方が無茶をしないか、私は心配なのです。」

 

 クレイマンがそう言うと、涙の表情の仮面を付けた女性が窓から入ってくる。

 

ティア「もう!いつまでも子供扱いはやめてよね!」

クレイマン「分かりましたよ。………ミュウランから報告がありました。魔王ミリムは、余程あの魔人どもを気に入った様子。」

ティア「へぇ〜。」

クレイマン「これは、思った以上に面白い展開です。愉快ですよ、全く。」

ティア「それなら良いけど、実際のとこ、どうなの?魔王ミリムが興味を持つくらい凄い魔人なの?」

 

 ティアがクレイマンの言葉に、そう質問すると、クレイマンは少し上を向きながら答える。

 

クレイマン「無視はできない………という程度でした。私の敵ではなかったですし。しかし、ラプラスがですね………。」

ティア「ラプラスが?」

クレイマン「不気味さ………とでも言うのか、何かを感じたと言うんですよ。」

ティア「ふ〜ん、そっか〜。あの小狡いラプラスが言ったたんなら、やっぱり、なんかあるんじゃない?少なくとも、魔王ミリムが興味を持った理由は、知るべきだと思うよ。」

クレイマン「確かに。もっと情報を集めて、検討しないといけませんね。」

 

 クレイマンは、ティアの言葉にそう頷く。

 クレイマンは、俺とリムルの事を侮って居た。

 

ティア「うん!それが良いよ!で、調査結果だけど………!」

クレイマン「伺いましょう。」

ティア「フレイはね、ジュラの森に関わる気はないみたい。何かを警戒している様子だった。まるで、戦争準備でもしている感じ?」

クレイマン「…………その原因は分かりましたか?」

ティア「分かったよ!なんと、びっくり!あの暴風大妖渦(カリュブディス)が復活するって、慌ててたよ〜!」

 

 ティアの暴風大妖渦という言葉に、クレイマンは目を見開く。

 

クレイマン「んっ………!暴風大妖渦………。」

 

 そう呟いたクレイマンは、椅子から立ち上がる。

 

クレイマン「なるほど………。では、ティア。次の仕事を頼みたいのですが。」

ティア「ニヒヒ!そう来ると思ってた!フットマンの奴も呼んでるから、多少の荒事も大丈夫!」

クレイマン「流石ですね、ティア。………ですが、なるべくは暴力は無しでお願いします。まずは、封印の地を探し出し、暴風大妖渦を手懐ける事が出来るかどうか。それを探って下さい。」

ティア「任せてよ、クレイマン!」

クレイマン「場所は………。」

ティア「任せてって、言ったでしょ!それじゃあ、あたいは行くね!」

 

 ティアは、クレイマンの言葉を遮り、クレイマンの前から姿を消す。

 それを見送ったクレイマンは。

 

クレイマン「暴風大妖渦………ですか。魔王に匹敵すると言われるその力。どれほどの物か、非常に楽しみですね。クククク………ハハハハハ…………!」

 

 クレイマンの居城に、笑い声が響く。

 俺たちの国に、災厄が訪れようとしていた。




今回はここまでです。
テンペストに、ユーラザニアからフォビオ達、ブルムンドからフューズ達、ファルムスからヨウム達がやって来ました。
そして、ヨウム達が協力関係となりました。
そんな中、暗躍するクレイマン。
厄災が復活しようとしています。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
次回で、リムルがゲイツリバイブの力を手に入れる予定です。
カリュブディス戦で、ジオウトリニティに変身します。
ヒナタ戦、ファルムス戦でのリクエストがあれば、受け付けます。
他にも、リクエストがあれば、受け付けます。


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第17話 忍び寄る悪意

 俺たちに、ヨウム達が仲間に加わり、宴会になっていたその頃、フォビオは、ある事を思い出していた。

 

ウォズ『下郎!我が魔王の事を殴ろうとするとは、笑止千万!』

ミリム『親友(マブダチ)に何するのだ〜!』

 

 ウォズに拳をあっさり受け止められ、ミリムにあっさり倒された事だ。

 フォビオは、焚き火を見ていたが、悔しさからか、顔を歪める。

 

フォビオ「くぅ…………!」

 

 フォビオは、手に持っていた枝を折り、焚き火に放り込む。

 

フォビオ「くそっ!許せねぇ………!」

 

 そう言うフォビオを、仲間達は不安そうに見つめていた。

 

フォビオ「俺を誰だと思ってる………!黒豹牙フォビオだぞ………!」

エンリオ「魔王ミリムが相手では、不可抗力という物です。例え、魔王カリオン様でも………。」

フォビオ「馬鹿野郎!カリオン様なら、こんな無様は晒さなかっただろうぜ。………俺が未熟だっただけの話よ。…………しかし、このまま成果なく戻るのは、俺の誇りが許さんのだ。」

 

 フォビオは、そう言いながら、焚き火を見つめる。

 そして、話を再開する。

 

フォビオ「……………あいつらは、自分達で街を作っていやがったな。下等な魔物だと侮っていたが、俺たちでも及ばぬ様な、技術を持っていやがる。」

エンリオ「全くです。配下に加えるなどと言わず、我らがユーラザニアと国交を結びたいほどですな。」

フォビオ「ああ。魔王ミリムが居なかったとしても、俺の対応は間違っていた。盟主の片割れに、攻撃するなんてな。頭ごなしに支配しても、奴らの信頼は得られなかっただろうからな。…………だが、今更だぜ。この屈辱は、怪我が癒えても、消えやしねえ。カリオン様に、迷惑をかけねえように、何とかして、復讐してやりたいんだよ。」

 

 フォビオは、自分の対応が間違っていた事は分かっていた。

 だが、自分の攻撃をあっさり受け止められ、返り討ちにされた。

 その屈辱は、あまりにも大きかった。

 仲間のエンリオが、諌めるくらいには。

 

エンリオ「………そうは申されましても………復讐など、現実的では………。」

フォビオ「分かってんだよ!頭では無理だって!…………だけど、こればっかりは、理屈じゃねぇんだよ。く…………!」

 

 ミリムへの復讐に燃えるフォビオを、仲間達は不安そうに見つめる。

 すると。

 

???「ホーホッホッホッ………!」

フォビオ「はっ!?」

 

 突然響く笑い声に、獣人達は、笑い声がしてくる方を見る。

 

エンリオ「何者だ!」

 

 エンリオがそう叫ぶと、太った男性が出てくる。

 クレイマンの仲間である中庸道化連の一員、フットマンだ。

 

フォビオ「は?」

フットマン「いやいや〜。その悔しい気持ち。この私にも、よ〜く理解出来ますね〜。ご機嫌よう、皆様。私は、フットマンと申します。」

フォビオ「……………フットマン?」

フットマン「中庸道化連が1人、アングリーピエロのフットマンとは、私の事。どうぞ、お見知り置きを。」

「「………………。」」

 

 いきなり現れたフットマンに、フォビオとエンリオは、警戒心を顕にする。

 すると、フットマンの後ろから、女の子が出てくる。

 クレイマンと話していた、ティアだ。

 

ティア「そんなに警戒しないでほしいな〜。あたいは、ティア!貴方達の敵じゃないよ!」

フォビオ「……………何の用だ?」

フットマン「ホーホッホッホッ!私はね。怒りと憎しみの感情に呼ばれて、やって来たのですよ。」

フォビオ「怒りと憎しみ?」

フットマン「上質な怒りの波動を感じました。」

フォビオ「うっ…………!」

 

 フットマンの言葉に、フォビオは言葉を詰まらせる。

 フォビオは、ミリムに、怒りと憎しみの感情を抱いていた。

 その結果、この謎の魔人を誘き寄せた事に気づいたのだ。

 フットマンは、フォビオに話しかける。

 

フットマン「何をお怒りになっているのか、是非とも、お聞かせ下さい。…………きっと、力になってご覧にいれますから。」

フォビオ「あ…………。」

 

 フォビオが、フットマンの言葉に俯くと、エンリオが前に出る。

 

エンリオ「フォビオ様。このような者どもの話を聞く必要はございません。排除してもよろしいですか?」

 

 エンリオがそう言うと、仲間の獣人達も、身構える。

 

エンリオ「我々は、魔王カリオンの獣王戦士団に属する者。野良の魔人程度が、相手になるとでも思ったか?」

フットマン「…………力が欲しいのでしょう?ございますよ。とびっきりの力が…………。当然ですが、危険も大きい。しかし、その危険に打ち勝った時、得られる力は絶大です。」

フォビオ「……………ほう。」

エンリオ「フォビオ様!?」

 

 フットマンの言葉に、フォビオは興味を示し、エンリオは驚く。

 それを見たティアは、畳み掛ける。

 

ティア「勝ちたいんだよね?魔王ミリムに!だったらさ、あんたも魔王になっちゃいなよ〜!」

フォビオ「魔………王…………!」

エンリオ「あ…………。」

 

 ティアの言葉に、獣人達は驚く。

 しばらく、静寂が訪れ、その場には、焚き火が爆ぜる音がした。

 

フォビオ「…………魔王だと?その様な戯言で、俺を騙せるなどと…………。」

フットマン「暴風大妖渦(カリュブディス)。」

フォビオ「はっ!」

 

 フォビオは、フットマンの言った言葉に驚く。

 フットマンは、話をする。

 

フットマン「ご存知ありませんか?」

フォビオ「カリュブディス…………だと?」

エンリオ「あ…………!」

ティア「あ〜あ。あの大怪魚の邪悪な力なら、魔王に匹敵するんだけどな〜。要らないんなら、他を当たるから、もう行くね。………ほら、行こ!」

フットマン「ホッホッホッ………。残念ですねぇ………。」

 

 ティアとフットマンは、その場から去ろうとする。

 そんな2人を、フォビオは呼び止める。

 

フォビオ「待て。」

「「フッ。」」

 

 フォビオが呼び止めた事に、ティアとフットマンは、ほくそ笑む。

 エンリオは、フォビオに声をかける。

 

エンリオ「なりません!フォビオ様!」

フォビオ「…………俺は、最初から面白くなかったんだ。何で、豚頭帝(オークロード)の様な雑魚が、魔王に抜擢されるんだ。………ふざけるな!新しい魔王が必要だと言うなら、俺が………!俺が強くなるなら、カリオン様だって、笑って許してくれるだろうぜ。」

エンリオ「フォビオ様…………。」

フォビオ「詳しく聞かせろ。」

 

 フォビオの言葉に、フットマンとティアは振り返る。

 

フットマン「おお〜!流石にフォビオ様ですね〜。そうでしょうとも!魔王となるのは、貴方を置いて、他には居ませんとも!」

ティア「やっぱり、強い者が魔王にならないと、間違ってるよね。あたいもそう思うよ!その点、フォビオ様なら適任だよね!」

 

 そうして、フォビオは、フットマンとティアから、話を聞く事にした。

 エンリオ達は、それを見ていた。

 

フォビオ「…………この話、てめぇらに、何の得がある?目的は何だ?」

ティア「魔王になったら、あたい達を贔屓にしてくれたらいい!当然、色々と、便宜を図ってもらいたいしね。」

フットマン「ホッホッホッ。我々だけでは、カリュブディスを従える事は、出来ませんからねぇ。」

ティア「せ〜っかく、封印された場所を見つけたけど、このままじゃ、宝の持ち腐れだし。」

フットマン「タイミングよく、フォビオ様をお見かけしましてね。」

フォビオ「…………なるほどな。だが、俺がカリュブディスを従える事が出来るかどうかは………。」

 

 ティアとフットマンの話を聞いたフォビオは、不安そうにそう言う。

 すると、フットマン達は。

 

フットマン「ホーホッホッホッ!フォビオ様なら、必ずや成功するでしょう!」

ティア「大丈夫!大丈夫!」

フォビオ「…………俺が魔王になった時に、自分達が最も役に立ったって、実績が欲しいって事か。」

 

 フットマンとティアの話を聞いたフォビオは、そう呟く。

 一考の末、出した答えは。

 

フォビオ「…………その話、引き受けようじゃねぇか。」

 

 フォビオは、引き受けてしまった。

 その先に待っているのは、傀儡となる未来だとは、気付かずに。

 フットマンとティアが、焚き火で温まる中、フォビオは、エンリオ達に声をかける。

 

フォビオ「お前達は戻れ。」

エンリオ「フォビオ様!」

フォビオ「事の顛末を伝えるのだ。」

エンリオ「しかし…………。」

フォビオ「カリオン様には、迷惑はかけられねえ。三獣士の地位を返上し、野に下るとお伝えしてくれ。…………今まで仕えてくれて、感謝する。」

エンリオ「フォビオ様…………。」

フォビオ「俺は修羅となり、俺の力を、魔王ミリムと、あのリアムって奴に認めさせてやる。」

エンリオ「あ…………。分かりました。カリオン様に、ご報告致します。………しかし、カリュブディスの力は未知数。くれぐれも、お気をつけ下さい。」

 

 そう言って、エンリオ達は、ユーラザニアへと戻っていった。

 そんな中、エンリオが思った事は。

 

エンリオ(フォビオ様は、愚かなお方ではない。本当にカリュブディスが居るんだとしても、従える事が出来るはずだ。)

 

 そう思っていた。

 エンリオ達を見送ったフォビオに、フットマン達が話しかける。

 

フットマン「では、向かうとしましょう。」

フォビオ「ああ。俺とカリュブディスの力を合わせたなら、あの魔王ミリムと、リアムの憎たらしい面を、泣きっ面に変えてやれるだろうぜ。」

フットマン「ホッホッホッ!その意気です。」

ティア「うんうん!あたいも応戦してるよ〜!」

 

 そうして、フォビオ達が動き出す。

 一方、テンペストの嵐ノ湯では。

 

ミリム「ぷは〜!」

紫苑「ぷはっ!」

朱菜「ぷは〜!」

 

 ミリム、紫苑、朱菜の3人が、潜水対決をしていた。

 それを、銀姫は呆れながら、シズさんは苦笑しながら見ていた。

 

ミリム「どうだ!私の勝ちなのだ!私の方が、長い時間潜ってられるのだ!」

紫苑「いいえ。勝ったのは私です。」

朱菜「違います。ほんの僅かの差ですが、私の勝ちです。」

銀姫「お風呂で潜水しちゃダメでしょ。」

シズ「そうだよ。」

 

 ミリム、紫苑、朱菜の3人は、そう張り合い、銀姫とシズさんがそう突っ込む。

 ミリム達は、銀姫の事を無視する。

 

ミリム「負けを認めないとは、狡いぞ!紫苑!朱菜!よ〜し!だったら、もう一回だ!決着をつけてやる!」

紫苑「良いでしょう。もう一度。」

朱菜「本来なら、お風呂に潜るのは良くない事ですが、やりましょう。」

銀姫「朱菜様も、分かっているのなら、止めてくださいよ…………。」

シズ「アハハハハ………………。」

 

 銀姫の呆れ声と共に、再び潜水する音が、俺たちが入っている男湯の反対の女湯から聞こえてきた。

 

リムル「はぁ…………。あっち、楽しそうだな〜。向こうに行けば良かったかな………。」

リアム「本音がダダ漏れだぞ。」

 

 まあ、男湯に居るのは、フューズなのだが。

 リムルは、フューズに話しかける。

 

リムル「なぁ。いつまでこの街にいるつもりだよ。」

リアム「まだ、納得してない感じですか?」

フューズ「えっ?あ…………いえ。リムル殿とリアム殿の疑いは、とっくに晴れているんですがね。」

リアム「晴れてんのかい。」

リムル「じゃあ、何でだよ。」

フューズ「いやぁ…………。ここは、実に居心地がよろしくてですな…………。ろくに休みも無かったですし、ゆっくり羽を伸ばすのも、良いのではないかと…………。」

 

 居心地良いのは、ありがたいな。

 今後、人間との取引も増えるだろうし、そう思ってもらえるのは、嬉しいもんだ。

 リムルは、呆れ顔で言う。

 

リムル「お前なぁ………。『あなた方が本当に人間の味方なのかどうか…………しっかりと、確かめさせて貰う事にします。』とか、かっこいい事言ってたくせに。」

フューズ「ふぅ…………。」

リアム「聞いてないね。」

 

 リムルの言葉に対して、フューズは息を吐きながら、お酒を飲む。

 俺が苦笑していると、リムルは、きつめにフューズに聞く。

 

リムル「おい!」

フューズ「え?」

リアム「そういえば、ヨウム達の件は、どうなってるんですか?」

リムル「そうだぞ!俺たちの代わりに英雄に仕立て上げる協力をしてくれる約束!」

フューズ「ああ………。」

リムル「ああ………じゃないって!もうヨウム達は旅立ったんだぞ。英雄として、各地で名を売る為にな。」

 

 リムルは、青筋(?)を浮かべながらそう聞くと、フューズは答える。

 

フューズ「それなら、問題ないですよ。既に仕込みは終わらせております。」

リアム「そうなのか?」

フューズ「ええ。ちゃんと、豚頭帝を倒した英雄として、名を広められる様に、根回ししてあります。そして、リムル殿とリアム殿達は、それを手伝った害のない魔物達だ………と、噂になる様に。」

リムル「そっか………なら良いや。」

 

 流石はギルドマスター。

 仕事が早いな。

 ただ、一つ懸念点があるとしたら………。

 

リアム(やっぱり、他の異世界人が、この街をどう思うかだよな………。)

 

 そう、この街は、魔物の街。

 異世界人は、人間だから、ゲームをやっている人からしたら、絶好の獲物といえるだろう。

 何せ、俺とリムルが定めた掟によって、こちら側から、仕掛ける事はないからな。

 まあ、今、そんな事を考えても意味はないか。

 すると、フューズが風呂から上がろうとする。

 ちなみに、ヨウムに、仮面ライダーオーガのライドウォッチが反応していた。

 だが、普通の人間の状態では、オーガには変身出来ないので、ジオウIIに変身して、ファイズ、カイザ、デルタ、サイガのライドウォッチの力を合わせて、ヨウムを変身できる様にした。

 その際、ヨウムはアークオルフェノクになった。

 

フューズ「さて、私はお先に…………。」

 

 フューズが上がろうとすると、リムルが声をかける。

 

リムル「ああ、そうだ。お前達のブルムンド王国へも、道を作ろうかと思ってるんだけど。」

フューズ「えっ?いや………えっ?いやいや…………。それは、ありがたい事ですが、大規模な国家事業になりますぞ。莫大な予算が…………。」

リムル「そこだよ、フューズ君。」

フューズ「く………君?リムル殿にそう呼ばれると、何だか、背中がむず痒いのだが………。」

リアム「まあ、そんな事はいいさ。要は、今後の取引の為にやるんだろ?」

リムル「ああ。当然だが、作業は、俺たちが引き受けようじゃないか。ただし。」

フューズ「ただし?」

リムル「我が国の特産品を、他の国にも売りつけたいので、諸々の相談ができる人物の紹介を頼みたい。」

フューズ「分かりました。お安い御用です。」

リアム「ありがとうございます。」

 

 すると、女湯の方から、ミリム達の声が聞こえてきて、リムルは頬を赤く染める。

 そんなリムルに、俺は呆れていた。

 俺たちも、風呂から上がる事にした。

 すると。

 

ウォズ「我が魔王、リムル殿。少しよろしいか?」

リアム「ウォズ。どうしたんだ?」

ウォズ「2人には、渡しておきたい物がありまして。」

リムル「俺にも?」

ウォズ「ああ。リムル殿。君にはこれを渡しておこう。」

 

 ウォズが現れて、そう言って渡してきたのは、ゲイツリバイブのライドウォッチだった。

 

リムル「これって……………!?」

リアム「ゲイツリバイブのライドウォッチ!?」

ウォズ「リムル殿なら、使いこなせるはずだ。そして、我が魔王には、これを。」

 

 ウォズがそう言って渡したのは、ジオウトリニティのライドウォッチだった。

 

リアム「ジオウトリニティ!?」

ウォズ「何やら、嫌な予感がするので、渡しておきます。」

リアム「分かった。」

 

 俺は、ウォズからジオウトリニティのライドウォッチを受け取る。

 一方、フォビオ達は、カリュブディスが封印されている場所に着いた。

 

フォビオ「ここに?」

ティア「そうだよ〜。」

フットマン「まだ、復活していませんが、破壊への渇望が漏れ出ています。そうした感情が大好物な我々だからこそ、発見できたのですけどね。」

フォビオ「確かに………異様な妖気を感じるな。カリュブディス………。」

 

 フォビオは、カリュブディスの妖気を感じ取っていた。

 フットマンは、フォビオに声をかける。

 

フットマン「カリュブディスの復活には、本来、大量の死体が必要です。」

フォビオ「死体?」

フットマン「カリュブディスとは、精神生命体の一種です。この世界で力を行使するには、肉体を与えてやらねばなりません。」

フォビオ「なるほど…………それで?」

フットマン「貴方の役目は…………。」

 

 フットマンは、その先を言わなかった。

 だが、フォビオは、それだけで察した。

 

フォビオ「まさか、お前………!」

フットマン「従えるとは…………つまり、カリュブディスをその身に宿し、ご自身と同一化するという事なのですよ。」

フォビオ「俺の体に………!?」

ティア「辞めるなら、今だよ。」

フォビオ「うっ………!」

ティア「でも…………。」

フォビオ「でも?」

ティア「この封印は、もう長く持たないかも………。」

 

 ティアの言葉に、フォビオが質問をする。

 

フォビオ「持たなかったら、どうなる?」

ティア「いずれ、自動的に復活しちゃう………かな?」

フォビオ「死体が必要なんだろ?」

ティア「そうだけど…………封印されてても、自分の復活に必要な魔物の死体ぐらいは、用意出来ちゃうんじゃないかな………。そうなったらあたい達は、くたびれ損になっちゃう!」

フットマン「そうですね〜。」

ティア「けど、復活しちゃったら、制御は無理だろうし、純粋な破壊の意思だから、誰の命令も聞かないだろうし………。」

 

 ティアとフットマンがそう話す中、フォビオが口を開く。

 

フォビオ「復活する前に封印を解き、その力を奪わないとダメという訳か?」

ティア「えっ?あ………うん。そういう事。」

フットマン「流石です。」

フォビオ「良いだろう。カリュブディスの力、我が物としてやろう!」

 

 そう言って、フォビオは洞窟の中へと入っていく。

 その時に、フォビオは呟く。

 

フォビオ「やってやるぜ。カリュブディスを俺の体に従えて、あの小生意気な魔王ミリムと、あのリアムって奴を………!」

 

 フォビオの決意は固かった。

 一方、フットマンとティアは。

 

フットマン「行きましたねぇ。」

ティア「行ったねぇ。」

フットマン「流石は、脳が筋肉で出来ているカリオンの部下ですねぇ。」

ティア「簡単だったねぇ。」

 

 そう言った直後、2人は高笑いする。

 フットマンは、ティアに尋ねる。

 

フットマン「これで終了ですか?」

ティア「クレイマンからは、『カリュブディスを復活させて、ミリムに向かわせろ』………としか、聞いてないよ。………あっ!」

フットマン「ん?」

ティア「用意してたレッサードラゴンの死体、要らなくなっちゃったねぇ。」

フットマン「………しかし、備えあれば憂いなしですからね。」

 

 2人は、再び高笑いをする。

 フォビオは、クレイマンの策略に利用されたのだ。

 その翌日、俺たちはテンペストに戻っていた。

 実は、ミリム、エレン、カバル、ギドに付き合って、魔物狩りをしていたのだ。

 魔物達が入った袋を台車に乗せて、動いていたギドが、息を吐きながら言う。

 

ギド「はぁぁぁ……………重かった〜〜〜。」

ミリム「ワ〜ハッハッハッハッ!今日も大量なのだ!」

リムル「ほう。」

シズ「本当に大量だね。」

エレン「ミリムちゃんは凄いんですよ。すぐに魔物を発見するので、今回も狩りが楽々でした!」

ミリム「ワッハッハっ!魔物の発見くらい、余裕なのだ〜!今夜もご馳走なのだ!」

 

 まあ、魔王だからね。

 俺も、ジオウに変身して、魔物を倒していった。

 リムルは、ギド達に労いの言葉をかける。

 

リムル「うんうん。お疲れさん、お疲れさん。」

ギド「本当、疲れやしたね〜。」

カバル「風呂入って、一杯やるか!」

ミリム「一杯やるのだ!はっはっはっ!あ?」

リアム「ん?」

 

 カバル達がそう話していると、殺気に近い気配を感じる。

 俺たちは、その方向へと向く。

 

紫苑「何者です!」

 

 その際、紫苑はリムルをミリムに渡したが、ミリムもリムルを放り投げ、シズさんがキャッチする。

 紅丸、蒼影、白老、銀姫、ウォズも現れる中、俺たちの目の前に、緑色のオーラが現れる。

 そこには、トレイニーさんに似た人がいた。

 樹妖精(ドライアド)なのは、間違い無いだろう。

 

ギド「ド……………樹妖精(ドライアド)でやす……………!」

カバル「初めて見た……………。」

 

 ギドとカバルがそう言う中、その樹妖精(ドライアド)は、口を開く。

 

トライア「私は、樹妖精(ドライアド)のトライア。トレイニーの妹です。」

リムル「妹が居たのか!?」

リアム「そこですか?………………それより、どうしたんですか?その殺気と姿は、どういう訳だ?」

 

 トライアと名乗る樹妖精(ドライアド)がそう言うと、リムルがそう叫び、俺は聞く。

 

トライア「緊急事態でございます。厄災が近づいています。」

リムル「厄災?」

トライア「厄災級魔物(カラミティモンスター)である、暴風大妖渦(カリュブディス)が復活いたしました。」

リアム「暴風大妖渦(カリュブディス)?」

 

 カラミティって言われてるって事は、かなりやばそうだな。

 それを聞いた途端、皆が顔を見合わせる。

 

トライア「魔王に匹敵する暴威であります。我が姉、トレイニーたちが足止めを行っておりますが、まるで歯が立ちません。」

リアム「マジか………………。」

トライア「そして、暴風大妖渦(カリュブディス)の目的は、この地である模様。」

リムル「なっ!?」

 

 それを聞いた俺たちは、驚愕する。

 何だって、そんなヤバい奴がここに向かってるんだ?

 そう思う中、トライアは言う。

 

トライア「天空の支配者たる暴風大妖渦(カリュブディス)に対し、地上戦力では無力。至急、防衛態勢を固め、飛行戦力を用意すべく、進言に参りました。」

 

 天空の支配者か。

 確かに、地上戦力では、限界があるな。

 俺たちは頷き合い、至急、会議室に皆を招集する。

 トライアは、暴風大妖渦(カリュブディス)がどういう存在なのかを説明する。

 

トライア「カリュブディスは、はるかなる昔に生まれ、死と再生を繰り返しております。凶暴なる天空の支配者。流石は、森の支配者にして、守護者たる、暴風竜ヴェルドラ様の申し子と言えるでしょう。」

リムル「ヴェルドラの申し子?」

リアム「どういう事だ?」

トライア「カリュブディスは、ヴェルドラ様から漏れ出た、魔素だまりから発生した魔物なのです。」

 

 じゃあ、俺とリムルとカリュブディスは、兄弟みたいなもんか?

 俺とリムルも、ヴェルドラと縁がある魔物だしな。

 すると、フューズが立ち上がる。

 

フューズ「カリュブディスが復活したのなら、魔王以上の脅威となりますよ。何しろ、魔王と違い、話が通じる相手ではないのです。」

ベスター「言ってみれば、知恵なき魔物。固有能力の魔物召喚(サモンモンスター)で、空泳巨大鮫(メガロドン)というサメ型の魔物を異界から召喚して暴れる………と、伝えられています。」

 

 メガロドンねぇ………。

 これは、豚頭帝よりも厄介な気がするな。

 トライアは悲痛な表情で、語る。

 

トライア「状況は最悪です。召喚されたメガロドンは、なぜか近くにあったレッサードラゴンの死骸を、依代にした模様。」

リアム「なぜか………?」

トライア「その数は、13。」

リムル「魔王並の化け物一体と、召喚された空飛ぶサメが13体。それは、一体何の冗談だ………。」

 

 何故か、近くにあったレッサードラゴンの死骸か…………。

 これは、何者かが、カリュブディスを復活させた可能性が高いな。

 朱菜が、俺とリムルに話しかける。

 

朱菜「リムル様、リアム様。」

リムル「ん?」

朱菜「どうなされます?」

リアム「そりゃあ、迎撃だろうな………。」

ミリム「フッフッフッ………!」

 

 すると、ミリムが笑い出す。

 

ミリム「何か、重要な事を忘れてはいないか?」

リアム「何だ?」

ミリム「カリュブディス如き………この私の敵ではない!軽く捻ってやるのだ!」

 

 ミリムはそう言って、服を脱ぎ捨てて、魔王としての服装になる。

 確かに、ミリムは強いからな。

 心強いな。

 そう思っていると。

 

紫苑「その様なわけには参りません。」

ミリム「い………!?」

銀姫「そうですね。これは、私たちの街の問題ですし。」

リアム(断るんかい。)

ミリム「えっ?だが、私はマブダチ………。」

朱菜「そうですよ。友達だから、何でも頼ろうとするのは、間違いです。リムル様とリアム様が、どうしても困った時は、是非とも、お力添えをお願い申し上げます。」

 

 朱菜がそう言うと、ミリムは露骨に落ち込む。

 

リアム「ま、まあ………俺たちを信じてくれ。」

リムル「そ、そうだぞ。」

ミリム「折角………折角………私の見せ場がやって来たと思ったのに………。」

リムル「カリュブディスを倒す!準備しろ!」

一同「はっ!」

 

 俺とリムルがそう言うと、皆はそう返す。

 全員がカリュブディスの迎撃の準備に動く中、フューズが俺たちを見る。

 

フューズ「倒すって………。あの、分かってるんですか?相手は、樹妖精族(ドライアド)でさえ、足止めできない化け物ですよ。」

リムル「盟約を結んだガゼル王の応援も期待出来るし、やるだけやってみるさ。」

リアム「ああ。この街は、絶対に守ってみせるさ。」

フューズ「…………逃げないのですか?」

リアム「…………逆に聞くけど、逃げてどうするんだ?」

リムル「俺たちが、この国で一番強い。絶対に勝てそうもないなら、すぐに逃げて、次の策を考えるけど、そうじゃないなら、正面から自分の目で、敵の強さを確かめるべきだろ?」

 

 それを聞いたフューズは、納得したかの様に笑う。

 

フューズ「…………なるほど。魔物の主達。そうでしたね。」

リムル「王を失ったら、終わりの人間とは、その辺りは違うんだよな。」

リアム「そうだな。」

フューズ「しかし、あれですな………。リムル殿とリアム殿は、我々人間の様な考え方をされるのですね。とても、魔物とは思えませんよ。」

 

 まあ、元人間だからな。

 すると、リムルが口を開く。

 

リムル「う〜ん。そうかもな。信じられないかもしれないけど、実は、俺たち、元人間なんだよ。」

リアム「…………俺たちは、シズさんと同じ異世界人だったんだ。………多分な。」

リムル「向こうで死んで、俺はスライムに、リアムは時魔人(クロロノイド)に生まれ変わったんだけどね。」

 

 そう言って、俺たちは、人間態になる。

 フューズは、シズさんに問いかける。

 

フューズ「そうなんですか?」

シズ「ええ。あの2人も、私と同じ異世界人。」

リムル「俺は、シズさんの肉体を複製させてもらった。シズさんと似てるのに、情けない真似は出来ないしな。」

リアム「そうそう。」

エレン「やっぱり、2人は信じられるよ!」

フューズ「うん。」

 

 それにしても、リムルは唐突に話すな。

 まあ、俺も話す予定だったし、別に良いか。  

 そうして、ジュラ・テンペスト連邦国首都、中央都市リムルと、武装国家ドワルゴンの中間地点で、カリュブディスとメガロドンとの戦いが始まろうとしていた。




今回はここまでです。
次回、いよいよカリュブディス戦です。
そして、次回でジオウトリニティとゲイツリバイブの初陣となります。
さらっと語られましたが、ヨウムがオーガに変身できる様になり、アークオルフェノクと同等の存在になりました。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
ヒナタは変身しますが、イクサ、イドゥン、サガの中なら、誰が良いですかね?
シズさんは、次回でフレイムドラゴンになります。


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第18話 暴風大妖渦(カリュブディス)

 厄災、暴風大妖渦(カリュブディス)が復活した。

 そいつは、空泳巨大鮫(メガロドン)という鮫型の魔物を連れて、中央都市リムルへと向かっていた。

 こちらの戦力は、紅丸達鬼人勢、ゴブタ達 狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)、ガルドとゲルド率いる猪人族(ハイオーク)部隊、ガビル率いる龍人族(ドラゴニュート)達、シズさん、ウォズだ。

 更に、ドワルゴンから、援軍として、ペガサスナイツ100騎が派遣された。

 ペガサスナイツを率いていたドルフさん曰く。

 

ガゼル「弟弟子達が困っているのなら、助けるのは当然であろう。」

 

 との事。

 あの人、兄弟子風を吹かせてくるよな。

 まあ、心強い援軍なのは、間違いないが。

 

リムル「さて…………。」

リアム「行くぞ。」

一同「おう!」

 

 こうして、俺たちとカリュブディスが激突する。

 紅丸は、一体のメガロドンへと向かっていく。

 

紅丸「食らえ!黒炎獄(ヘルフレア)

 

 紅丸の黒炎獄が、メガロドンに命中して、こんがり焦げた状態で、メガロドンが落ちていく。

 

リムル「流石、紅丸。こんがりと良く焼けた。」

リアム「だけど…………。」

朱菜「お兄様の攻撃でも消滅しないとは、驚きです。」

 

 そう。

 紅丸の黒炎獄を喰らった敵は、大抵消滅しているのにも関わらず、メガロドンは焦げただけだった。

 どういう事かと首を傾げていると。

 

時之歴史『解。カリュブディスには、エクストラスキル、魔力妨害があり、半径300メートルの範囲内は、魔素の動きが乱され、魔法の効果が低下します。』

リアム『なるほどな………。って、ちょっと待て。それって、シズさんが不利なんじゃ………。』

時之歴史『告。個体名、井沢静江(シズエ・イザワ)は、魔法が上手く発動せず、苦戦を強いられています。』

 

 まずいな………。

 それじゃあ、ウィザード系列の仮面ライダーは、苦戦を強いられるな。

 何せ、魔法の効果が低下してるから、ダメージがあまり期待出来ない。

 何とか、頑張ってくれ。

 当のシズさんは、ウィザード・フレイムドラゴンになっていたが、苦戦を強いられていた。

 

シズ「流石に、少し効いてない…………。なら、これで!」

 

コネクト!プリーズ!

 

 そう言って、ドラゴタイマーを取り出していた。

 一方、ゲルド達は。

 

ゲルド「くっ………!俺と父王が動きを止める!お前達は、攻撃しろ!」

猪人族「ゲルド様!ガルド様!」

ガルド「行くぞ!」

 

 ガルドとゲルドの2人が、メガロドンの動きを止める。

 

ゲルド「やれ〜!!」

猪人族達「うわぁぁぁぁ!!」

 

 ゲルドがメガロドンの動きを止めて、部下達が攻撃するが、メガロドンに吹き飛ばされる。

 

ゲルド(さて、どうする!仲間は動けない。コイツを攻撃するには………。)

ガビル「助太刀いたしますぞ!」

ガルド「ガビル殿!行くぞ!」

ガビル「渦槍水流撃(ボルテックスクラッシュ)!」

 

 ゲルドがメガロドンを抑える中、ガビルがやって来て、ガルドと共に、メガロドンを倒す。

 

ヤシチ「ガビル様、かっこいい!」

カクシン「然り!」

ガビル「怪我人の手当てを!」

スケロウ「任せとけ!」

 

 ガビルの指示のもと、負傷者にフル・ポーションを使う。

 ガルドとゲルドの二人が、仲間に回復薬をかけている中。

 

ガビル「ゲルド殿が動きを止めて下さったおかげで、楽に仕留める事が出来ましたぞ。」

ゲルド「助太刀感謝する、ガビル殿。」

ガルド「助かった。」

 

 ガビル達がそう話す中、メガロドンが更に一体迫ってくる。

 

ガビル「我輩達が落とす。あとは、ゲルド殿!」

ゲルド「うん!今度は、仕留めてみせる!」

ガルド「うむ!」

ガビル「はあ!」

ヤシチ「ガビル様、かっこいい!」

 

 ガビルはそう言って、メガロドンの一体へと向かっていく。

 一方、ペガサスナイツは。

 

ドルフ「我がペガサスナイツの誇りに賭け、ここで阻止するのだ!」

一同「おお!!」

 

 ドルフさんのその声と共に、メガロドンに突っ込んでいく。

 一方、ゴブタ達、 狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)は。

 

ゴブタ「でやぁぁぁ!!」

 

 叫び声を出しながら、メガロドンに突っ込んでいくが、すぐに退却行動を取る。

 

ゴブタ「一旦、退却っす!」

 

 メガロドンが地面に落ちると、他のゴブリン達が、メガロドンに攻撃していく。

 それを見ていた白老は。

 

白老「ほっほう。囮役と攻撃役。きちんと、自らの役割を見極めよ。死ぬ気でな。」

 

 そう言った。

 ちなみに、歌舞鬼に変身していた。

 それを見ていた俺たちは。

 

リムル「白老の采配、見事なもんだ。」

リアム「なんか、死ぬ気でなって、聞こえた気がするんだが………。」

紅丸「若返って、鬼教官ぶりに、磨きがかかったからな…………。」

 

 確かに、あれは本当に鬼教官と言えるだろうな。

 すると。

 

ミリム「なあ、私も一緒に遊びたい。」

リムル「あ!」

リアム「ミリム!?街で待ってた筈じゃあ………!?」

ミリム「け………見学ぐらい、良いであろう?街に居ても暇なのだ。」

 

 やっぱり。

 ミリムの性格上、絶対、街で待ってる筈が無いからな。

 カリュブディスとメガロドンを見たミリムは。

 

ミリム「なあなあ!やはり私が………!」

リムル「ダメ。」

ミリム「うぅ………。」

リアム「そんな目で見るな。」

 

 リムルにダメと言われたミリムは、目をウルウルさせながら、こちらを見てくる。

 そんな感じに見られると、罪悪感が強くなるからやめてくれ。

 一方、メガロドンの上に来た蒼華と蓮月。

 蓮月は、風の忍術で飛んでいた。

 

蒼華「蒼影様!」

蓮月「今です!」

蒼影「うむ!」

 

 蒼華の影から、風魔に変身した蒼影が現れる。

 影移動を使ったのだろう。

 すると。

 

蒼影「操妖傀儡糸!」

 

 蒼影が糸を出すと、蒼影が乗っているメガロドンが、突然、他のメガロドンに攻撃する。

 恐らく、操っているのだろう。

 

ミリム「おお〜!メガロドンを操って、同士討ちにさせているのだ!」

リムル「もう、何でもありだな、あのイケメン…………。」

リアム「凄いな…………。」

 

 蒼影って、本当に凄いよな。

 何でもありかよ。

 

蒼影「頃合いを見て、始末しろ。」

蒼華「心得ました。」

蓮月「あとは、お任せ下さい。」

 

 蒼影は、蒼華と蒼月に指示を出して、他の龍人族(ドラゴニュート)達と共に移動する。

 蒼影は、メガロドンを操って、カリュブディスに向かい、紫苑と銀姫は、嵐牙の上に乗って、他のメガロドンに向かっていた。

 しかも、嵐牙は、空を飛んでいた。

 シズさんも、オールドラゴンになって飛んで、ウォズもフューチャーリングシノビになっていた。

 

リムル「空を?」

リアム「嵐牙の奴、いつの間にあんな技を覚えたのか?」

紅丸「…………というか、いつ紫苑と銀姫と組んだんだ?」

 

 俺、リムル、紅丸がそんなふうに声を出す中。

 

紫苑「今回は何としても活躍し、目立たねばなりません。」

銀姫「そうですね。」

嵐牙「うん。我も、その意見には賛成だ。」

シズ「行くよ、ウォズさん!」

ウォズ「任されよ、シズ殿!」

 

 2体のメガロドンに迫る中、銀姫、シズさん、ウォズは必殺技を発動させる。

 

 

フィニッシュタイム!

 

 銀姫は、ジクウドライバーを一回転させる。

 

タイムジャック!

 

 ウォズは、ジカンデスピアを操作する。

 

カマシスギ!フィニッシュタイム!

一撃カマーン!

 

紫苑「はぁぁぁ!断頭鬼刃!!」

銀姫「はぁぁぁ!!」

 

 紫苑の斬撃と、銀姫の手刀によって、メガロドンが真っ二つに斬れる。

 

嵐牙「ワオーン!!」

 

 嵐牙は、黒い雷を出して、メガロドンを黒焦げにする。

 それを見ていたミリムは、俺とリムルの腕を引っ張る。

 

ミリム「私も!私も!」

リムル「ダメだって言ってるだろ。」

リアム「大丈夫だから。」

ミリム「う〜…………。」

 

 ミリムが、頬を膨らませながら、カリュブディスが居る方を向くと、メガロドンは粗方片付けられていた。

 

紫苑「はぁ…………。さて。」

銀姫「残るは…………。」

ウォズ「カリュブディスのみだね。」

シズ「そうですね。」

嵐牙「どの程度の強さなのか、見極めてやろうでは無いか。」

紫苑「それでこそ、嵐牙。」

 

 紫苑、銀姫、嵐牙、シズさん、ウォズは、そう話す。

 一方、 狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)は、メガロドンに追い詰められ、白老の眼前に、迫る。

 白老は、目を赤く光らせ、刀を抜刀して、メガロドンを細切れにする。

 そんな白老は、ゴブタに声をかける。

 

白老「不甲斐ないのう。それなりに成長しておるが、たった一匹も仕留められぬとは。修行をますます厳しくせねばならんわい。」

ゴブタ「ちょっ………!これ以上厳しくされると、死んじゃうっすよ!じじい!!」

白老「じじいじゃと?」

 

 白老がそう言う中、ゴブタは白老をじじい呼ばわりして、白老は目を赤く光らせる。

 自分の失言に気づいたが、もう時既に遅し。

 

ゴブタ「ええ………!ああ〜!!」

リムル「ん?何だ?」

リアム「どうせ、ゴブタ辺りが、白老をじじい呼ばわりしたんだろ?」

紅丸「リムル様、リアム様。」

リムル「ああ。」

 

 俺たちは、カリュブディスを見つめる。

 そんな中、蒼影は、自分が乗っていたメガロドンを始末し、カリュブディスに乗る。

 

リムル「後は、カリュブディスだけか………。」

リアム「ああ。」

紅丸「あいつの実力なら、大丈夫でしょう。それに…………。」

 

 そう。

 カリュブディスの上には、蒼影だけでなく、紫苑、嵐牙、銀姫、シズさん、ウォズも居て、その周囲を、飛行可能な者たちが取り囲む。

 そこから、一斉攻撃をする。

 だが…………。

 

リムル「全然、効いてないみたいだな。」

リアム「カリュブディスがデカすぎるから、ダメージがそこまで通ってないんだろうな。」

紅丸「…………ですね。」

 

 俺たちがそう話す中、カリュブディスの気配が変わる。

 何かを仕掛けてくるな。

 俺たちは、思念伝達で、警戒を呼びかける。

 

リムル『何か仕掛けてくるかもしれない。』

リアム『全員、油断するな。』

紫苑「了解です。」

蒼影「承知。」

銀姫「はい!」

嵐牙「心得ました、我が主たちよ!」

ウォズ「分かった。」

シズ「ええ!」

 

 俺たちの声にそう答える。

 すると、カリュブディスが唸り声を出す。

 銀姫達が警戒していると、ドルフさんが、何かに気付いたのか、大声を出す。

 

ドルフ「回避!距離を取れ!!」

 

 ドルフさんの声と共に、ペガサスナイツは、少し下がる。

 すると、カリュブディスの鱗が剥がれ、銀姫達を襲う。

 

紫苑「ああ!」

嵐牙「うわ!」

銀姫「鱗が…………!?」

蒼影「くっ…………ふん!」

ウォズ「何っ…………!?」

シズ「くっ…………!」

 

 五人と一匹は、カリュブディスから振り落とされる。

 何とか着地するが、そこに、鱗が襲いかかってくる。

 やばいな、あれ。

 すると、リムルが声をかけてくる。

 

リムル「行くぞ、リアム。」

リアム「ああ。」

 

 俺とリムルはそう話して、ジクウドライバーを装着して、それぞれのライドウォッチを起動する。

 

ジオウ!II!

ゲイツ!

ゲイツリバイブ!疾風!

 

 それぞれのライドウォッチを起動して、ジクウドライバーに装填して叫ぶ。

 

「「変身!」」

 

 そう言って、ジクウサーキュラーを回転させる。

 

ライダータイム!

仮面ライダー!ライダー!ジオウ・ジオウ・ジオウ!II!

仮面ライダーゲイツ!

リバイ!リバイ!リバイ!リバイ!リバイ!リバイ!リバイブ疾風!疾風!

 

 俺たちはそう言って、蒼影達の居る場所に向かって行く。

 一方、蒼影達は、鱗に苦戦していた。

 

蒼影「うう………避けられぬ………!」

紫苑「避ける?何を甘えた事を!」

銀姫「でも、数が多すぎる!」

嵐牙「アオーン!」

シズ「ハアッ!」

ウォズ「はっ!」

 

 嵐牙の雷、シズさんのウィザードラゴンの頭部の炎とウォズの攻撃で、鱗は一旦離れたが、全員が疲弊していた。

 そんな中、嵐牙が蒼影に話しかける。

 

嵐牙「蒼影よ。主は、影移動で逃げるが良い。我が紫苑と銀姫の盾となろう。」

紫苑「バカな………!」

銀姫「死ぬ気ですか!?」

嵐牙「フフフ…………リムル様とリアム様ならば、生き残る確率が高い方を選択されるだろう。」

蒼影「生き残る確率か………。ならば、俺も残ろう。ああ、勘違いするなよ。死ぬ前に本体は撤退するから、気にするな。」

紫苑「フフッ………蒼影らしいな。」

銀姫「ですね。」

シズ「………なら、全員で生き残りましょう!」

ウォズ「そうだね。」

 

 そう言って、銀姫達は、鱗へと向かっていく。

 だが。

 

リムル「ほんと、お前らって、バカだよな。」

リアム「こういう時は、俺たちを頼ってくれよ。」

紫苑「リムル様!」

銀姫「リアム様!」

リアム「頼んだよ、リムル!」

リムル「ああ!食らいつくせ、暴食者(グラトニー)!」

 

 リムルのこのスキルは、魔王ゲルド戦以降に進化した物だ。

 そのスキルによって、鱗があっという間に吸い込まれる。

 

紫苑「あ、あぁ………。」

蒼影「あれだけの鱗が、一瞬で………。」

銀姫「凄い…………。」

リムル「あとは、俺たちに任せろ。お前達は、一旦下がって、少し休むと良い。」

蒼影「我々は、まだお役に………。」

リアム「慌てるな。それに………あれを見ろ。」

 

 そう言って、カリュブディスに指差す。

 すると、鱗が、凄まじい速度で再生していたのだった。

 

リムル「鱗が再生を始めている。次にあれを使われた時、また守ってやれるかは分からないからな。」

リアム「しばらく、俺とリムルで相手をするから、紅丸の指示で攻撃してくれ。」

蒼影「…………ご武運を。」

紫苑「お気をつけて、リムル様。」

銀姫「リアム様も、無理をなさらぬ様に。」

嵐牙「我が主達よ。すぐに応援に戻ります!」

シズ「2人とも、気をつけて。」

ウォズ「我が魔王。ジオウトリニティを使うべきかと。」

リアム「分かった。」

リムル「ああ。」

リアム「行くぞ!」

 

 俺とリムルは、カリュブディスに向かっていく。

 すると、鱗が飛んでくる。

 

リムル「さてと。やるだけやってみるか。」

リアム「だな。」

 

 俺たちは、遠距離攻撃手段を用いて、カリュブディスに攻撃していく。

 すると、カリュブディスが、目から光線を放つ。

 俺たちは躱すが、躱した先の森から、火が出てくる。

 

リムル「あ〜あ………。」

リアム「くそっ!」

 

 俺たちは毒付く中、再び鱗が襲ってくる。

 だが、気になる事がある。

 

リムル「う〜ん………少しは痛がってる……か?」

リアム「悪いけど、どういうわけか、俺に鱗が集中するんだけど!?」

リムル「確かに、何でリアムに?というより、こいつ、もしかして、超速再生を持ってるんじゃ無いか?」

 

 リムルの疑問に、俺の方は、時之歴史が答えてくれた。

 

時之歴史『解。体組織の修復速度から判断し、個体名カリュブディスが、エクストラスキル、超速再生を所持していると考えて、間違いありません。』

リアム『鱗の再生速度は?』

時之歴史『告。鱗の再生は、超速再生により、3分程度で完了すると推測。』

リアム『3分か…………。』

 

 カップラーメンを作る感覚で、あの鱗の大量射出が出来るようになると考えると、かなり厳しいな。

 それに、本当に、俺に攻撃が集中するな。

 さてと。

 まずは、やってみますか。

 俺は、サイキョージカンギレードを取り出して、必殺技を放つ。

 

サイキョーフィニッシュタイム!

キング!ギリギリスラッシュ!

 

 俺は、キングギリギリスラッシュを発動して、カリュブディスに攻撃する。

 一方、リムルは。

 

リムル「さてと、これで行くか!」

 

 そう言って、ジカンジャックローのライドウォッチスロット根元のボタンを押す。

 

つめ連斬!

 

 リムルは、つめ連斬を発動して、カリュブディスにダメージを与える。

 すぐにカリュブディスに着地して、ゲイツリバイブライドウォッチを回転させる。

 

パワードタイム!

リ・バ・イ・ブ剛烈!剛烈!

 

 リムルは、ゲイツリバイブ剛烈になり、のこモードになったジカンジャックローのライドウォッチスロット根元のボタンを押しながら、カリュブディスに当てる。

 

リムル「食らえ!」

 

のこ切断!

 

 のこ切断により、カリュブディスにダメージが入る。

 だが、超速再生によって、傷が塞がる。

 

リムル「くそっ!これでもダメなのかよ!」

リアム「なら、これだ!」

 

 俺は、ジオウIIのライドウォッチを抜いて、ジオウライドウォッチとジオウトリニティのライドウォッチを取り出して、起動する。

 

ジオウ!

ジオウトリニティ!

 

 そして、ジクウドライバーに装填する。

 

ジオウ!

 

 その音声と共に、ジオウトリニティのドライバー拡張デバイスの『オーバーザイトクロック』が開く。

 そして、ウォッチの左側についている『ユナイトリューザー』を一段階回転させる。

 

ゲイツ!

 

 すると、リムルに光が照らされる。

 

リムル「な、何だこれ!?」

 

 リムルが動揺する中、俺はもう一段階動かす。

 すると、ウォズが照らされる。

 

ウォズ「来たか。」

シズ「ウォズさん?」

 

 俺は、ジクウサーキュラーを一回転させる。

 すると、リムルとウォズが腕時計状になって、こっちに来る。

 

リムル「えっ!?」

ウォズ「ふっ!」

 

ライダータイム!

仮面ライダージオウ!

トリニティタイム!

3つの力!仮面ライダージオウ!ゲイツ!ウォズ!トリニティ!トリニティ!

 

 俺は、ジオウトリニティに変身した。

 俺、リムル、ウォズの意識は、クロックオブザラウンドに移される。

 

リアム「やっぱ、こうなったか……………。」

リムル「マジかよ……………。」

ウォズ「まあ、それはそれで、やるべき事があるのでね。」

リアム「えっ、まさか……………。」

 

 あれをやるつもりか?

 すると、ウォズは叫ぶ。

 

ウォズ「ひれ伏せ!我こそは、仮面ライダージオウトリニティ。大魔王たるジオウとその家臣、ゲイツ、ウォズ!三位一体となって、未来を創出する時の王者である!」

 

カマシスギ!

 

 ウォズはそう叫んで、周囲は微妙な雰囲気になる。

 俺とリムルは突っ込む。

 

リアム「ちょっと!ウォズ、何なの?」

リムル「ていうか、何で俺がリアムの家臣になってんだよ。」

ウォズ「静かにしてくれないか。我が魔王の強さを、世に喧伝しなくてはならないのだ!」

リアム「恥ずかしいからやめてよ……………。」

 

 そう突っ込みながらも、カリュブディスに攻撃していく。

 

リアム「ハアッ!」

 

 サイキョージカンギレードやジカンジャックロー、ジカンデスピアなどといった武装を駆使して攻撃していく。

 すると、更に、俺の方に攻撃が集中する。

 一方、紅丸達は。

 

紅丸「全員!持てる手段を尽くして、カリュブディスを攻撃しろ!効きが悪くても良い!奴に回復の暇を与えるな!!」

一同「おおお!!」

 

 紅丸の指示と同時に、地上部隊は、カリュブディスに攻撃を集中させる。

 空からも、ペガサスナイツが攻撃する。

 戦力としては、十分以上。

 総攻撃で、一気に撃墜と思ったのだが。

 戦いは、夕方まで続いていた。

 

リムル「ふう…………。」

リアム「カリュブディスに与えられたダメージは、3割程度って所だな。」

リムル「総力戦で3割か………。」

リアム「皆もかなり損耗してる。このままじゃ、ジリ貧だぞ。」

ウォズ「困ったものだね。」

 

 そう。

 やっぱり、抵抗が激しく、仲間達もかなり損耗していた。

 どうしたものか………。

 そう思っていると。

 

カリュブディス「グ………グエ、グア………!」

「「ん?」」

カリュブディス「お…………おのれ、ミ………ミ…………ミリムとリアムめ…………!」

リムル「ミリムにリアム?そう言ったよな?」

リアム「あ…………俺、カリュブディスの依代になった奴が分かったかもしれん。」

 

 まさか、アイツか!?

 それなら、やけにリムルより俺に攻撃が集中したのも、納得がいく。

 そいつの名前を告げると。

 

リムル「………え?じゃあ、何?俺の中にヴェルドラが居るのを察知したとかじゃないの?」

リアム「じゃない。」

リムル「じゃあ、ミリムに頼って良いんじゃね?」

ウォズ「…………というより、魔王ミリムはぐっすり寝ているが?」

 

 俺が、ミリムの方に向かうと、ぐっすり寝ていた。

 

リムル「ミリム!」

ミリム「うわ〜!寝てないのだ!起きていたのだ!」

リアム「どう見ても寝てたろ?」

ミリム「瞑想していただけだ。ちゃんと、お前達を応援していたのだぞ!」

リアム「…………まあ、良いや。」

リムル「こいつ、どうやら、お前に用事があるみたいなんだけど………。」

ミリム「何!?むむ!アイツは、この前来たフォビオとやらを依代にしている様だな。」

「「やっぱりか……………。」」

ウォズ「だろうね。」

 

 やっぱり、フォビオを依代にしてたか。

 ウォズにパンチを受け止められたのが、余程気に入らなかったのか?

 そう考える中、ミリムはこっちに来る。 

 

ミリム「では、私が相手をして良いんだな!?」

リアム「ああ。遠慮なくやってくれ。俺は、少し疲れた。」

リムル「それにしても、俺たちが邪魔したみたいで、悪かったな。」

ミリム「良いのだ、気にするな、なのだ!やるのだ!」

リムル「あ、それと………。」

ミリム「はい?」

リアム「フォビオって、魔王カリオンの配下だろ?生かして、助けたいんだけど………。」

ミリム「ワッハハハ!その程度、造作もない!最近学んだ、手加減を見せてやるのだ!」

リアム「手加減ね…………。」

 

 若干、不安だが、任せるとしよう。

 ドルフさん達には、退避してもらった。

 すると、カリュブディスが再び呻き声を出す。

 

カリュブディス「ぐっ………!グガァァァ!ミリ…………ミリムめ!」

 

 カリュブディスは、ミリムに向かって、鱗を射出する。

 だが、ミリムは慌てていなかった。

 

ミリム「その技は、もう見たのだ。今度は、私が見せてやろう。」

 

 ミリムがそう言って、手を空に掲げると、鱗の動きが止まる。

 そして、手を下げると、鱗は落ちていく。

 

ミリム「これが………手加減という物だァァ!!竜星拡散爆(ドラゴ・バスター)!!」

 

 ミリムの攻撃が、カリュブディスに着弾すると、爆発する。

 それを見ていた俺たちは。

 

「「手加減って、一体…………。」」

ウォズ「凄まじいね。」

 

 そう呟いた。

 リムルが、フォビオを回収した。

 まあ、フォビオが無事な時点で、手加減と言えるだろうな。

 リムルは、カリュブディスの魔核を、フォビオから除去する作業をしていた。

 しばらくすると、リムルが腰を下ろす。

 

リムル「ふぅ…………。」

リアム「疲れた………。頼む。」

紅丸「はい。」

 

 紅丸は、フォビオに回復薬をぶっかける。

 すると、ドルフさんが話しかける。

 

ドルフ「リムル殿、リアム殿。」

リムル「ドルフさん。助力を感謝する。」

リアム「おかげで、カリュブディスを倒す事が出来ました。」

ドルフ「いえ。カリュブディスを倒したのは、我々ではなく…………。」

 

 ドルフさんがそう言うと、ミリムの方を見る。

 

ミリム「ん?」

ドルフ「説明してもらえるでしょうか?」

 

 まあ、そうなるわな。

 

リアム「いや…………その…………。」

リムル「実は、この少女は、魔王ミリムといって………ね。」

ドルフ「ん?………うん。」

ミリム「フフン!」

ドルフ「ハッハッハッ!リムル殿とリアム殿は、冗談がお好きな様だ。」

ミリム「む!」

ドルフ「あの様な高出力の魔法兵器を所持していたのなら、最初にそう申して欲しかったですぞ。」

 

 あ、信じてないな。

 いや、信じたらまずいもんな………。

 すると、ミリムが叫ぶ。

 

ミリム「冗談ではない!私は魔王なのだ!!私がカリュブディスをやったのだ!」

ドルフ「なるほど。兵器については秘密………っと。分かりますぞ。奥の手は、隠しておくに限りますからなぁ。」

ミリム「魔王だと言っておるだろう!」

ドルフ「人類にとっても、災禍となりうるカリュブディスを始末できたのは、行幸でした。私も、王への報告がありますれば、今回は、これにて失礼致します。」

ミリム「おい、こら〜!!」

リムル「本当に助かりました。」

リアム「ガゼル王に、よろしくお伝えください。」

 

 そう言って、ドルフ達ペガサスナイツは去っていった。

 そんな中、リムルはフォビオに話しかける。

 

リムル「よ、目覚めたか?」

フォビオ「ん………ぐっ………。こ………こは、どこだ?俺は………俺は一体………。」

リアム「自分が何をしたのか、覚えているか?」

 

 俺がそう声をかけると、フォビオは、すぐに土下座をした。

 

フォビオ「すみませんでした!俺は、ミリム様にとんでもない事を………。あなた方にも、迷惑をかけてしまった様で………。」

リアム「まあ、それに関しては良いけど。」

リムル「何でこんな事をした?」

トレイニー「なぜ、カリュブディスの封印場所を知っていたのですか?」

トライア「偶然見つけた、などとは言わせませんよ?」

リアム「…………だってさ。」

フォビオ「ああ………はい。それは………。」

 

 フォビオは話した。

 太った男の道化師のフットマン、小さい女の道化師のティアと名乗る者達が、接触してきた事を。

 

トレイニー「ティアと、フットマンと名乗る仮面の道化。…………こんな仮面でしたか?」

 

 そう言って、トレイニーは、笑った顔の仮面を地面に描く。

 それを見たフォビオは。

 

フォビオ「いや………。俺の前に現れたのは、涙目の仮面の少女と、怒った仮面の太った男だった。」

紅丸「あ…………。」

 

 紅丸は、その怒った仮面の太った男という単語に反応していた。

 そんな中、ガビルが口を開く。

 

ガビル「あの〜………。そのラプラス殿も………。」

リアム「ラプラス?」

ガビル「ラプラス殿は、ゲルミュッドの使いとして、我輩の前に現れた者なのですが………。今、トレイニー殿が仰った仮面を被っておりましたぞ。」

リムル「ん!」

ガビル「それに、中庸道化連(ちゅうようどうけれん)という、何でも屋の副会長だと名乗っておりましたなぁ。」

 

 中庸道化連か。

 どうやら、魔王ゲルドの一件に、今回のカリュブディスの一件。

 暗躍している奴が居るみたいだな。

 

リムル「点と点が繋がったな。」

トレイニー「なるほど。あの者の名は、ラプラスというのですね。」

紅丸「フットマンね…………。その名、覚えておくとしよう。」

朱菜「ええ。お兄様。」

リアム「その中庸道化連は、協力する体を装って、自分達の手を汚さずに、相手を利用して、目的を達成するのか………。」

リムル「厄介そうな相手だなぁ………。」

 

 リムルがそう言うと、ミリムの方を見る。

 すると、ミリムは反応する。

 

ミリム「むむ………?私は何も知らないのだ。寧ろ、そんな面白そうな奴らが居るなら、是非とも会ってみたかったのだ。」

リアム「そうか………。」

ミリム「もしかすると、ゲルミュッドではなく、クレイマンの奴が、何か企んでいたのかもしれないな。内緒で………。」

リムル「クレイマン?」

リアム「確か、魔王の一人だったか?」

ミリム「そうだぞ。奴は、そういう企みが大好きなのだ。」

 

 どうやら、クレイマンって奴が、黒幕の可能性が高いな。

 すると、フォビオが話しかける。

 

フォビオ「…………誰の企みに乗せられたといえど、今回の一件は、俺の責任だ。魔王カリオン様は関係ない。だから、俺の命一つで許して欲しい。」

 

 そう言って、フォビオは頭を下げる。

 だが、俺たちの答えは決まっている。

 

リムル「…………次からは、もっと用心して、騙されないようにしろよ。」

フォビオ「は?」

リアム「動けるなら、行っていいぞ。」

フォビオ「いや………俺は、許されないだろう。特に、貴方には…………。」

リアム「別に、お前の命は要らない。」

リムル「なあ、ミリム?」

ミリム「うむ!当然なのだ!軽く1発くらい殴ってやろうかと思っていたが、私も大人になったものだなぁ。」

リアム「殴るつもりだったんだ。」

 

 それは、まあ、進歩したな。

 来た時と比べれば。

 

ミリム「全然腹が立っていないから、許してやるぞ。」

リムル「という事だ。気にするなよ。」

ミリム「そうだぞ。…………カリオンもそれで良いだろ?」

リアム「え?」

 

 すると、ミリムが後ろを向きながらそう言ったので、振り返ると、ガタイが良い男がやって来た。

 

フォビオ「カ………カリオン様!」

カリオン「フン。気づいていたのか、ミリム。」

ミリム「当然なのだ。」

 

 どうやら、コイツが魔王カリオンか。

 すると、俺とリムルに話しかける。

 

カリオン「よう。そいつを殺さずに助けてくれた事、礼を言うぜ。」

 

 カリオンはそう言うと、目を細める。

 どうやら、俺とリムルを見極めているのだろう。

 

カリオン「…………お前達が、ゲルミュッドをやった仮面の魔人なんだろ?」

リムル「ああ、その通りだ。」

リアム「何だ?俺たちに仕返しでもしに来たのか?」

 

 それを聞いた銀姫達は、身構える。

 カリオンは、少し呆けた表情をしたが、すぐに笑みを浮かべる。

 

カリオン「フッ。いや。立て。」

フォビオ「あ…………はい。」

 

 カリオンの命令に、フォビオは立つ。

 そして、徐にフォビオに近寄ったカリオンは、フォビオを思い切り地面に叩きつける。

 カリオンは、俺たちに声をかける。

 

カリオン「…………悪かったな。」

リムル「え?」

カリオン「部下が暴走しちまった様だ。俺の監督不行き届きって事で、許してやって欲しい。」

リアム「あ、ああ…………。」

カリオン「今回の件、借りにしておく。何かあれば、俺様を頼ってくれて良い。」

リムル「それなら、俺たちの国との不可侵協定を結んでくれると、嬉しいんだが………。」

カリオン「そんな事で良いのか?」

リアム「ああ。」

カリオン「良かろう。魔王の………いや。獣王国ユーラザニア、獅子王(ビーストマスター)カリオンの名にかけて、貴様達に刃を向けぬと誓ってやる。」

リムル「ああ。」

 

 どうやら、何とかなりそうだな。

 すると、カリオンは、フォビオを抱える。

 それも、血だらけの。

 

カリオン「おら、帰んぞ。」

「「一杯血、出てますけど!?」」

カリオン「では、また会おう。リムル、リアム。」

 

 そう言って、カリオンとフォビオ、部下一人が、魔法で、転送された。

 

リムル「さてと、終わったな。」

リアム「俺たちも帰ろう。俺たちの街に!」

一同「はい!」

 

 こうして、カリュブディスとの戦いは無事に終わり、獣王国ユーラザニアとの国交を結べそうだった。




今回はここまでです。
大変長らくお待たせしました。
カリュブディス戦が始まり、ゲイツリバイブとジオウトリニティの初登場です。
どういう感じにやろうかなと考えていたら、結構時間が経っちゃいました。
次回は、アナザーセイバー関連の話をやろうかなと思っています。
リクエストが来たので。
いよいよ、リアムもイングラシアに向かいます。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
今日から、ゼロワンドライバーのハイスペックベルト帯が出てくるみたいで、欲しいですね。


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