またしても何も知らない元スズカの同室ウマ娘 (一般通過どうした急に)
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本篇
やだ…私の元同室、ウザすぎ…?
トレセン学園、そこはウマ娘が凌ぎを削る場所。今日も勝つために各々トレーニングしている。しているはずなのだが……
「今゛日゛も゛ス゛ペ゛ち゛ゃ゛ん゛が゛つ゛め゛た゛い゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛」
なんだか限界オタクみたいな大声を発している赤栗毛のウマ娘。サイレンススズカ、本来であれば走ること以外は特に興味のない。最初は周りと険悪な雰囲気だったはずなのだが此処ではそんなわけではない。
いつもボケーッとしており、暇があれば走ることは変わらないが。それ以外はのほほんとしており、頼めば一緒に並走してくれる人として人気がある。面倒見も良い、だが寂しがり屋であるため一人ぼっちだと割とすぐにだめになる
そんなスズカにも後輩ができた…それがスペシャルウィーク。スペシャルウィークといえば人懐っこく、いつでも笑顔。そして素直な正統派美少女で有るのだが…有るのだが…
「…(舌打ち)」
それはあくまでもヒトミミ相手のお話、ウマソウルが強く出ているらしく。そのウマソウルがウマ娘嫌い、特に栗毛が大嫌いらしく同室として案内される時点でも大分難色を示していたのに相手が嫌いな栗毛、赤栗毛のスズカだったので超絶不機嫌である。誰に対しても威嚇する、とまでは今はいってないようだがかなり態度は良くない…というよりは超絶塩対応である
「………はぁ」
そんな二人を眺めているのはサイレンススズカの元同室であるセルメント、何故セルメントが同室でなかったかというと。スズカもそろそろ後輩を持ったほうが良いのではないか?という判断からである。セルメントと同室のときは
『セルメント〰ご飯ご飯〰』
『はいはい…めんどくさいなぁ』
お腹が空いたらスズカがセルメントにご飯を強請り
『走り込みですね…わかりm…セルメントー!一緒に走りましょう』!
『ちょ、おま……引っ張るな!ああああああああ!!!!!!』
授業終わりにトレーニングとなると、セルメントを発見するとチームの練習そっちのけで彼女を拿捕して走り込みに付き合わせるのだ、なおセルメントはチームどころかまだトレーナーすらついていない時期から巻き込まれている。そしてそのチームに入る予定はない(それを知ったスズカにガチ泣きされてめんどくさいことがあった)
そして休日になると
『あのさスズカ……』
『……?』
『重いんだけど………』
ずーっとべったりくっついてくるのである。後ろからぐでーっとひっついてきてはナマケモノみたいに動かない。なのでそのまま動くしか無く、さりとて引きずるわけにも行かないので四苦八苦している。なおそれを見て笑ったゴルシはダートに埋められていた
『笑っていいタイミングじゃなかったみてぇだぜ』…なんてことを言いつつ回転しながらダートから出てきたゴルシは遠い目をしていた
流石に自堕落極まるということで、スズカとセルメントは引き離されることになった。勿論スズカは猛抗議したが後輩できるぞといったらそっちの方に意識を取られて承認された
とまあそんな感じで悠々自適にスズカの同室から抜け出せた元スズカの同室ウマ娘のお話である
────朝、すがすがしい朝である。あのクソ煩いやつが居なくなったというだけなのに新天地に来たような感覚に襲われるのだ。適当にシャワーを浴びて制服に着替えていざ学園へ
そう行きたかったのだが……
「うっぜ……」
LANEにとんでもない通知が来ている、大体はスズカなのだ。あれあれがどうだとかこうだとか、まあいつものことなんだが。スペシャルウィークが来てからはどうやっても塩対応しかしてくれないという嘆きと撃沈された報告である。いやあいつ栗毛嫌いだしなんならウマ娘自体嫌いじゃん…なんてことを思いつつ目を滑らせていく
私の同期は、サイレンススズカ、タイキシャトル、マチカネフクキタル、メジロドーベル、シーキングザパールだ…スズカだけでも過食気味なのにほかも酷いというか。非常に疲れる面々しか居ない、ドーベル居なかったら早々に退学してたか時期無理やりずらしてたと思う。
タイキシャトルはBBQのお誘い、朝から早いよと返信。フクキタルはLANEでも煩いのでシンプルに煩いと送っておく。パールは…うん、世界レベルの話題過ぎてついていけ無いんだけどこれ。ドーベルからは大丈夫?って来てた。お前しかセーフティラインが居ねえ……私も後輩ほしいなーーーー
なーんて思ってると。ピコンって通知音がなる。まさかまさかのスペシャルウィークからだ
『時間ありますか』
とめっちゃ短文かつ事務的な話し方してくる。まあスペシャルウィークなら仕方ないか、なんて思いつつ指を動かす
『ん?後輩か。有るよ、トレーニング終わりでいい?』
『お願いします』
『場所は?』
『人に見られたくないので』
『じゃ、私の部屋ね』
『はい』
なんていうそっけない会話で終わる、悪いやつではないんだよなスペシャルウィーク、煙たがれることも多いけど。まあ分からんでもないし
そのまま登校して、適当に授業を受けた。煩い連中のことを適当にいなしたり、スズカとフクキタルにアイアンクローしかけて大人しくさせて。パールのディス地球されたあとにドーベルに背中を擦られた。ありがとよドーベル…まだ戦えるかもしれない……
なんてことをして。しっかりトレーニング。私も優秀な方なのでそつなくこなしておく、まだトレーナーついてないけどね。スズカとタイキはリギルというチームにはいってるらしい、あんま興味ないから良いけど
そんなこんなでそろそろスペシャルウィークが来る頃合いである
『……来ました』
「ん、いらっしゃい後輩」
ドアを開けてスペシャルウィークを迎え入れる。相変わらずぶきっちょな顔だけど、笑うと可愛いんだよねこいつ。性格も、私としては嫌いじゃないよ。嫌なもんは嫌なんだし
「で、どうした?ウマ娘の私に頼るなんて珍しいじゃん」
世間話なんてもんは相手は望んでないだろうから、椅子に座らせて話を聞く体勢に。珈琲とか飲む口じゃないだろうから適当にジュースとお菓子を置いておく
「……………」
「スズカ絡み?」
喋らないスペシャルウィークに尋ねると軽く首を動かした。別に無理して喋ろなんて言うつもりもないよ私は、嫌な奴に相談してくるなんて苦痛だろうし…それに、スズカで苦労させられてると言うなら他人事じゃないから
「…何された?」
「…ダル絡みを」
「OK、それ以上は言わなくていい」
だる絡みの一言ですべてを察する。いや私と同じようにしちゃあかんでしょ。ただでさえ苦手なのにもはや嫌いになってんじゃん完全に
「いつも、ああなんですか?あのダメウマ娘」
「ダメウマ娘」
「人のテリトリーに土足で踏み込んでくる輩をそう呼んでもなにか問題でも?」
「アッハイ」
「なんだか分からないですけど。変に絡んでくるし、煩いし、朝から走ろうと誘ってくるし、一人の時間確保しづらいと思えば変に距離作るし。離れたと思えばベッタリしてくるからめんどくさいんです」
溜まってんなー……と思いつつスペシャルウィークの愚痴を聞いてやる、これぐらいは後輩なんだからいいっしょ。実際嫌な先輩にだる絡みとか報復されても文句言えんだろうし
「あと勝手に名前短縮して呼んでくるのどうにかなりませんか?凄く不快なんですけど…」
「あー……馴れ馴れしいってこと?」
「馴れ馴れしいのは最初からなので、あきらめてます……その」
めっちゃ嫌そうな顔しつつ、歯切れの悪い言葉に時間かけていっていいよ。っていうジェスチャーしながら次の言葉を待ってあげる。ゆっくりでいいんだからね後輩
そこからしばらくした後
「おかあちゃんが、そう呼んでくれたので……」
ボソボソって話し始める。自分の生みの親は自分が生まれてすぐに亡くなってしまったこと、育ての親はヒトミミだったこと、自分の周りにウマ娘が居なかったこと。育ての親と自分が違うところに孤独を感じてたこと、だから自分はヒトミミだと思いたいけどそうはなれないからウマ娘が好きになれないこと
「…大事な。名前なんだね」
「……死んだ母親との、唯一の繋がりなので」
ゆっくり時間をかけてスペシャルウィークは話してくれた。んまあ……それなら確かにヒトミミのほうに愛想が良くなるのも分からんでもないな。ウマ娘に対してもそういう態度取っちゃうのも仕方ない、周りは仲間が居たっていうのも大きいんだろうし
「すみません、つまらないお話を」
「いいよ、話してスッキリしたかい?」
「………はい」
若干うなだれるようにしているスペシャルウィークに苦笑する、ほんとはもうちょいまともに接したいんだろうけど。反射的にそうなってしまうんだろうなっていうのが理解できるから、まあそこは飲み込んでやらんとね
ま、これからどうなるかねぇ
続かない
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ちょっとは笑えスペシャルウィーク
スペシャルと話した次の日からちょっとだけ日常が変わった。私の部屋にちょこちょこスペシャルが居るようになったのだ、まあその辺りは特段どうでも良かったりする。あの子の好きなようにすればいいさ。
だいたい来るのは昼時、授業が終わった後だったりする、カフェテリアで御飯食べるのが大体の流れなんだけど、本人は周りと会話しなきゃいけないような空気と。量を食べたくても食べられないジレンマでストレスになるっぽい
そんなわけで今日も昼時に私の部屋に来た
「…お邪魔します」
「あいよ」
そそくさと部屋に隠れるように入ってくるスペシャルに視線をよこさないまま返事をする。別に気にする必要もないのだが、本人が嫌らしい。特にスズカ絡みで、あいつどんだけ嫌われることしてんねん
「毎回思うんだけど。それだと足りなくない?」
黙々と口を動かしてるスペシャルに視線を向けつつ問いかける、ヒトミミの成人男性よりも遥かに食べるウマ娘にしては、かなり少ない。というか女子高生が食べるのより少ないかも?
「お腹は、空きます。けど…」
「沢山食べるのがウマ娘っぽくて嫌?」
「……はい」
うーん、精神的な問題だからねぇ。会長サマやタマモクロス先輩とかは元々食が細いタイプなんだけど。この子はそうじゃないだろうしなぁ
「でも倒れたりしたら私心配なんだけど」
そう言うとスペシャルはわかりやすく尻尾を垂らしてうなだれる
言われたくないだろうけど言わなきゃだめなんだよー、ごめんよスペシャル
「ごめん、なさい」
「あい、というわけで食え」
ドンってスペシャルの前にお重を叩きつける、何だよその顔は。私がスズカにどれだけ手を焼かされてると思ってるんだ。朝の走り込みで朝ご飯食いそびれてハラヘッターしてくるスズカの腹を満たしてきた私がお重ぐらい作れないとでも思ってるのか
「あの」
「良いから黙って食べろ後輩」
「ええと」
「さっきのごめんなさいは嘘?」
「違い、ます」
「でしょ?…しょうがないなぁ」
なんだかしどろもどろになってるのでじーっと見ながら頬を突っつくと視線を逸らすので強制拿捕。暴れても離さないからなスペシャルよ。膝上に乗せて腕回して逃げられないようにしつつ、口元に卵焼き持ってく。
「ほれ」
「頂きます…」
観念したように口を開けてパクっと食べてムグムグと口を動かす、こうやってるとただのウマ娘なんだけどなぁスペシャルよ。どうして普段はあんなに無愛想なんだお前は。ヒトミミは普通とか言ってたのになんだかヒトミミすら避けてるらしいじゃんよ
「もっと口開けて」
「ん」
ムグムグってして飲み込んだのを見計らってご飯を食べさせていく、なんというか餌付けしてる感覚に襲われるけど実際やってることはそういうことなんだから仕方ない。食べさせれば黙って食べる辺り本来素行は良いんだろうさ。そんなこんなで十数分ひたすら空いた口にご飯放り投げる作業を続ける。不味いとは言われてないので味は大丈夫だろう。
「ん」
次のやつ放り込もうとしたらもう空っぽになってた。すげえ食うなお前、一応念の為に4段作ってきたんだけど全部入っちゃった、本来の食欲がこれだとすると普段食べてたのは1割にも満たないかもしれないな。なんて思ってるとスペシャルの口は空いたままだった、なんだお前まだ食い足りないのか食いしん坊
「もう無いぞ」
「!?」
そういうとスペシャルはびっくりする、そりゃあんだけあったのに無くなるとは思わんよな。口拭きでゴシゴシとスペシャルの口元を綺麗にしてやる、こういうときは決まっておとなしいのでやりやすい。どっかの赤栗毛はイヤイヤしたのにこいつは偉いなぁ。
なんて思えば自然と手が頭に伸びていた。軽く触ると
「っ!?」
めっちゃびっくりされた、あー。ごめんよスペシャル、びっくりさせるつもりはなかったんだ。ただ手癖っていうのはなかなか直らないものでな。たまにドーベルにやってるんだが、それが出てしまったらしい
「あー……ごめん、後輩」
流石にびっくりしてたから仕方ないと思って手をどかそうとすると
「………」
「んー………?」
なんかスペシャルの方から恐る恐る、私の手に頭を触れさせてくる。そのたびにビクッビクッてなってるの見ると私が悪い事してるみたいで嫌なんだがスペシャルよ
「あー……後輩?」
後輩って呼んでも返事しない、それどころか尻尾でペシペシって体叩いてくる、もしかして呼び方が気に入らないのかもしれない?まあ後輩呼びだと誰のことか把握できないからだろうけど。
「……スペシャルウィーク?」
ベジベジ!!
そうじゃねえだろと言わんばかりにもっと強烈に叩いてくる、そんなに叩くんじゃないよスペシャル……んー
「じゃあ……スペシャル?」
ぺしぺし
どうやら正解に近づいたらしい、まああれは呼べないだろうから。別の呼び方なんだろうけど。スペシャルの次かぁ……うーん
「そうか、スペシャル後輩!」
合体させればいいじゃん、私天才か?
ガブっ!!
「いっっっって!?!?」
コイツ先輩の腕噛みやがったぞ!?!?!??!?お前結構野生児なのかスペシャル!?!?!?なんて脳がバグっていれば、噛んだところチロチロって舐めってくる。なんだこのコミュニケーション
ってなると一つしか無いじゃん
「……スペ?」
「……ん」
そう呼ぶと体の力を抜いたスペシャル…いやスペがもたれかかってくる。それってお前の親が呼んでた名前じゃないの?大事なんじゃなかったっけ?うーん分からん。別に私が特段なにかしたわけじゃないしなぁ。
ただスズカに拳骨入れつつ、なんか居づらそうだったから適当に時間が有る時に絡みに行ったり。一緒に飯食ったりしただけなんだけどな、全然大したことしてないし。それはスズカとか。同期の連中とか、後もう…二人か。二人だな、あのイギリスVSアメリカみたいなやつしてるの。そいつらにも同じことしてるんだがな
そんなこんなしてるとスヤスヤとスペが眠りにつく。寝てる顔は死ぬほど可愛いスペ、眉間のシワが取れてあどけない顔をしている、というか普通にしてれば正統派美少女だよなぁスペ。
「ゆっくりおやすみ」
────────
そんなこんなでその日は終わった、その後数十分どころか数時間寝ちゃったので仕方がなくスペを私の部屋の空いてるベッドに寝かしつける。寮長には事情を説明してある、まあ事情が事情だからしかたないっしょ。外泊でもないんだし
やることやって、明日の準備整えて。んでスペの頭軽く撫でてから自分のベッドにはいって眠りにつく────
「んにゅ………」
───はずだったんだけどなぁ
なんかいつの間にか背後から気配感じるなと思ったらスペが私のベッドの方に入って来てた、まじでいつ来たんだお前は。追い出すわけにもいかんから適当に放置しとく
「ん……ん…ぅ………」
そうしてるとスペのやつがめっちゃ抱きついて来る、なんなら頬ずりしてくる。どんだけスキンシップ過多なんだ……いや、違うか。今まで寂しかったんだろうか、緊張の糸が切れた反動なのかもしれない。そんなことを思いつつスペの方を向いておく
「………」
ぎゅって寝間着の裾握りしめて寝てたので此方から軽く抱き寄せるとなんかしがみつかれる。ウマ娘パワーでしがみつかれると流石に私も痛いんだがスペペペペペ
なんて思いつつも好きにさせてやる、寂しさから来るもんだろうし。ま、明日朝起きたら離れてるべ
─────翌朝
そんなことを思ってるときもありました、なんて言わんばかりにスペは引っ付いて離れないまま眠りについてる。何回か名前呼んだりほっぺた突っついても無反応。
このまま登校するわけにも行かないので寮長に電話しとくか
『やあ、おはようポニーちゃん、朝からラブコールかい?』
『おはようございます、フジキセキ寮長。残念ながらラブコールではありません。スペシャルウィークの件でご相談が』
フジキセキ寮長、なんというかこう。あんまり得意じゃない。ムーヴ的な意味で、ペース呑まれるからあまり会話はしたくないんだけどスペのためだから仕方ない
『ああ、彼女か。どうだった様子は?落ち着いてるかい?』
『落ち着き過ぎて今も夢の中ですよ』
『おや、それはいけない』
ハハハと笑うフジキセキ寮長に若干の気疲れを感じる、朝からテンション高いなぁ。なんて思っていると、挨拶も程々にというふうに寮長が切り出してくる
『その様子だと、ポニーちゃんは可愛い後輩の面倒を見るので手一杯、といったところかな?』
『ええ、まあ』
『分かった。私の方から伝えておくよ、彼女は少々事例として特殊さ。これぐらいは便宜をしてあげないとね』
『ありがとうございます』
『代わりになんだけど、後で私とも遊んでくれないかな?ポニーちゃん♪』
『気が向いたら、ですね』
『これは手厳しい…では、今日は一日かけて後輩の面倒を見ておやり』
『はい』
そう言って電話を切る、次の電話かけないと
『もしもし………朝から電話とは、珍しいなセルメント』
『ちょっと事情があるからね。エアグルーヴ』
電話をかけた先はエアグルーヴだ、私が登校しないとなると。あのバカどもが変なことを起こしかねんのだ。特にスズカ、スペも部屋に帰ってきてないからおそらく絶対めんどくさい状況になってるはず。軽くエアグルーヴに事情を話しつつ、服を引っ張ってくるスペをあやして安心させておく
『なるほど、後輩の面倒を見るために欠席か』
『申し訳ない』
『いや、寮長からも伝達済みな案件だ。仕方がないだろう、此方のことは任せておけ』
『ありがと、後で生徒会の仕事手伝うよ』
『悪いな』
『困ったときはお互い様ということで、一つ』
『了解した。ではな』
よーし、これでとりあえずは良いかな。
さて、スペと今日は一日のんびり過ごすかぁ
これ以上は続かない
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締め切り近いですよ、どぼ先生
さーて、合法的では有るがサボることになったのでとりあえず部屋から出ることはあんまりよろしくないかな。なんてことをスペの頭を撫でながら考える。うーん、暇なのはこの際しょうがないかもしれないな、まだ起きないし
「………」
規則正しいタイミングで寝息を吐くスペのことを見ながら…予定でも考えておく、何も考えつかないけど。
「ん…んん」
しばらくぼーっとしてるとスペが起きた、目をゴシゴシしながら同じようにボーッとした顔で此方を見つめてくる
「おはよう、ございます……?」
「おはよスペ」
スペが起きた後、めっちゃ謝ってきた。流石にまる半日寝てるとは思わんかったらしい。私もそう思うけど、気疲れしてたんじゃない?って言うと視線そらした。
「あのあk……いえ、あの人と一緒だと疲れます」
「分かる」
スズカと一緒だとめんどくさいよなー、なんて軽口叩きつつ朝の準備する。とりあえずスペを風呂に入れ終わったので髪を今梳かしてる、サラサラだわコイツの髪
「………」
髪を梳かしてやってるとまたうつらうつらってスペが眠りに落ちかけている。コイツもしかして、最近どころか此処に来てからちゃんと眠れてないんじゃないか?うーむ…スズカの部屋に置いといて良いもんだろうか
いや、私の部屋に置いとくとなんか自立しなさそうな気配有るんだよなスペも
「おーいスペー?」
頬を突っついてやると突っついた指に頬ずりしてくる。コイツ愛玩動物か何かか??ほんと、他のやつにもこういう風…には無理だろうけど。ある程度愛想よくしてくれると先輩は嬉しいのだが
「御飯食べるぞー?」
ツンツンって突っついてもまた寝ちゃってる。仕方ないので膝上に乗っけながらお腹撫でてあやしておく。なんかこうされるのが好きっぽい、猫かなんかか?
そんでしばらくまた暇な時間、起こすわけにもいかんのでPCに電源を入れて軽くネットでも見てるか
なーんてことしてたら昼過ぎ、まじでスペのやつ起きないんだけど。一瞬死んでる?と思ったけど口元に指近づけたら舐めて来たからそういうわけじゃないらしい
「そろそろマジで起きるぞスペー??」
the、無反応。爆睡どころか昏睡状態だよもはや、なんて思ってるとコンコンって部屋のドアがノックされる。誰だろうか、エアグルーヴなら来る前に連絡入れてくるから違う。スズカならもっとドンドンって叩いてくる。フクキタルとタイキはこの時点で煩いので論外、パールは違うかな。ドア越しでも出てくるオーラが違う
ってなると一人か
『あ、アタシ』
やっぱお前だったかドーベル。ちょいと待ちや、スペを起こさないようによかしつつドアを開ける。ほかの奴はまあドーベルなら連れてこないだろうから安心だわな。
「どしたんドーベル?寂しくなった?」
「そういうわけじゃないけど…これ、どうぞ」
そう言いつつ差し出してきたのはお弁当である、朝食分は確保してたけど昼食分は確保できてないのでありがたい
「うい、あんがと」
「…その子?後輩」
貰った弁当箱(ウマ娘基準)を机に置きながらドーベルがスペのことちょっと離れながら見てる、こいつも人見知りといえば人見知りだから仕方ない。だけど私が構ってるから気になるみたい
「ん、スペシャルウィークっていう子。根はいい子なんだけどな、ちょっと他のウマ娘好きじゃないらしい。露骨に周りと距離取ってるらしいからどうにかしたいんだけどね」
「そう……」
ゆっくりスペのこと撫で回しながらそう言うとなんかドーベルがつまんなそうな顔してる、いやコイツは後輩なんで………そういうことしても大丈夫だろ
「ドーベルもまたしてほしいの?」
「違うから…!?」
否定するドーベルのことうりうりって撫で回す。目を白黒させるけど逃げないんだよな、というかたまにされに来るし。お前は犬か
「んんっ……!」
変な声を出すな変な声を、私が変なことしてる感じになってるじゃん。まあ良いんだけどさ。そんな風にドーベルとじゃれてるとスペがモゾモゾって起きる
「おはよスペ、お寝坊さんだぞ?」
「おはよう、ございます……」
ゴシゴシって二度寝から目を覚ましたスペが体を起こしつつ、ドーベルの存在に気がつくと………
すすすす………ボフッ!
「ぐえっ」
背後に隠れて毛布にくるまりつつ、ドスドスってなんでコイツ居るんだよっていうように背中叩いてくる。あんまり邪険にするなスペぺぺぺぺぺぺ痛いんだけどぉ!?
また噛み付いてくる、なんでそんなに怒ってるんだスペぇ!?
「…はぁ」
なんでドーベルまでため息なんだ????やるか????お前を黙らせるなんて簡単だぞ!!!!????
「…私のこと、その子に教えたりした?」
あっ………してねえわ………これは凡ミスだわ。忸怩たる思いでこめかみ抑えてるとまたドーベルにため息つかれる。おう、あんまりため息つくとお前の絵本ばらまくぞ
「あー……スペ、コイツはメジロドーベル。メジロ家のご令嬢サマだ」
「ご令嬢サマってところに含み持たせないで」
「ま、こんなツンツンしてるけど良いやつだよ。お前と似てる所あるしな?」
軽口叩きながらセルメントとドーベルがお互いの気安い会話をすれば、ほんの少しだがスペシャルウィークが毛布の隙間から視線をのぞかせる
「お前は根本的にウマ娘そのものが苦手で、コイツは見知ったやつ以外が苦手。特に男な、ある程度人目には慣れてきてるところだけど。まだまだって感じ」
「概ね、あってるわ」
「実はドーベル、今もちょっと怖いだろ?」
「……そんなことないケド」
「目を見て言え目を見て」
視線をガン反らししながら会話するドーベルのほっぺたを突っつきながら問いかける、目を見て言えよドーベルよ
「ま、こういう感じだから。あんまり警戒しなくていいよ、コイツには人のデリケートな領域には踏み込まないし踏み込めない臆病なベルちゃんだからな」
「ベルちゃん呼びはやめてってば…!」
「じゃあしっかりドーベルが自己紹介しなさいよ」
「……わ、分かったわよ」
こうやってお膳立てしてやれば勢いでなんとかなるだろドーベル、頑張ってちゃんと自己紹介しろ
「………ええと、メジロドーベル………です、ヨロシク……」
「片言の外国人じゃねーか。あとちゃんともうちょいちゃんと言え」
「むぐぐ」
さっきの威勢はどうしたんだ〜???ん〜〜〜???
てな感じで絡んでるといつの間にかスペが顔を出してドーベルと私の会話を聞いていた。なんとなくだけど、ドーベルのことは大丈夫そうだな
「大丈夫そう?スペ」
「…………」
視線をスペに視線を向けるとドーベルをじーっと見ながら無言で居る、その様子にドーベルは何がなんだか分からなくてたじろぐ
「ええと……何?」
「……メジロドーベルさんって」
不意に口を開いたスペから放たれる言葉にドーベルは悶絶することになる
「セルメントさんの
「ぶっ」
「な、なんでそうなるの…!?」
ダメだ、我慢できない。くっそウケる、ドーベルのやつ。スペに
「いえ……その、なんというかこう……」
「いいよスペ、言ってやれ言ってやれ」
「な、なんというか……?」
歯切れの悪いスペに発言を促す、ドーベルがなんか顔を引き攣らせるけど構わず言ってやればいいさ。コイツ、もうちょいちゃんと絡めるようにしないとな
だが、私は忘れていた。コイツの根底にあるのは
「威厳、無いですよね。私よりコミュニケーション下手くそですし」
根っからのウマ娘近寄んじゃねえよバーカソウルだったことを─────!!!!!
次回『ドーベル(の威厳)死す』デュエルスタンバイッッッッッ!!(続かない)
なんかデイリーランキングの隅っこにいるみたいです。ありがとうございました
2/7 なんでまだデイリー上位に居座ってるんですか?
追記
なんでいきなり伸びてるんですか????????ルーキー1位?????
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あぁっ!ドーベルが死んだ!
昨日で急にお気に入り2.5倍強.UA約半分、評価が20以上入るってどうした急に(素)
「い、威厳がない…?」
スペのあまりの言葉にドーベルのやつが固まってる、いや私も固まってるんだけど言われた当人は私以上の衝撃を受けているだろう。だって…ねぇ?威厳がないだもん……
「あ、いえ。思ったことを言ってしまっただけです」
ンンンンそっちのほうが余計にダメージはいるぞスペェ!!!!ほら!ドーベル完全に固まっちゃったじゃん!!!
「す、スペ?流石にそれは……」
「でも赤栗毛はそれで喜んでましたよ?『それって親しみがあるってことよね!?』って」
「スズカァ!!何やってたんだお前ェ!!!!」
余計なことを吹き込んでんじゃねーよ馬鹿!!!!!!!!どう考えてもそれは親しみじゃなくて舐められてる証拠なんだよ!!!!お前はそもそもまともに会話してもらえてないからバグってるだけなんだよぉ!!!!!!後輩に変な知識与えんな!!!そんなんだから他のやつから
『並走以外はちょっと……』
って言われるんだぞ!!!!!まだスズカに後輩は早かったかもしれん…被害が大きすぎる………
「やっぱり駄目でしたか?」
やっぱり!?やっぱりってお前自覚有るのか!!いたずらっ子かお前も!?
「……」
視線を逸らすんじゃない!!!面がいいからってなんでも許してもらえると思うなよ!!と心のなかでさけびながらグリグリとほっぺたを突っつく、なんだか嬉しそうなスペ。なんでだよぉ!?
「………」
あ、ドーベル.exeが復帰した。多分ブルスクにでもなってたんだろうな、誰だよ内部掃除怠ったの
「……ふーん」
なんでそこでお前が機嫌悪くなるんだドベェ!?私の胃を破壊しようとするな!?あれか?前にプリファイの映画に付き合った後にお前欲しいだろって入場プレゼント押し付けたのがそんなに嫌だったんか!?
「ナカガイイノネ」
カトコトは怖いからヤメロッテ!!!そしてスペもなんか変に勝ち誇った顔をするんじゃないよバカタレ!軽く拳骨落としてやるとドヤ顔辞めてくれた
一気に疲れたわ………
「……でも、スズカはそれで喜ぶのどうかと思うわ」
ご尤もだドーベル、私もそう思う。誰だってそう思うと思うんだよ、後輩だしなスペは
「やっぱり、あの赤栗毛っておかしいですか…?」
スペの言葉に思わずドーベルと視線を合わせる。まあはっきり言ってもいいだろう、スズカだし
「並走馬鹿、これに尽きる。朝早いし、割と生活能力無いしな。あと並走馬鹿」
「まあ、そうね…悪い子では無いんだろうけど。その、距離感は少しおかしいかも。並走馬鹿なのは同じく」
私は憮然とした表情で、ドーベルは少し困り顔で。なにげにドーベルも並走に巻き込まれることが有る。というか巻き込まれに来るという方が正しいと思うんだが。
「誰にでもそうなんですか?」
「「大体は誰にでもそう。面倒くさい成分は私(セルメント)に対してがほとんど」」
異口同音の言葉にスペはなにか考えたように自分のウマホを取り出し。LANEの画面を出してきた
「私のLANEのIDです、その。愚痴があればどうぞ……」
コイツなりに心配してくれるらしい、スペはなついた相手にはそれなりにちゃんと話せるんだなやっぱり
「私も、良いの?」
というかドーベル用に出してるんだしなこれ、私は前から教えてもらってる。元同室だからスズカ対策用に最初からね
「…あの赤栗毛に苦労させられてそうなので」
なんとも言えない表情になるドーベル、まあ初対面としての繋がりがこんなんだったらちょっとあれだわな。それはそれとして交換はするみたいだけど。
そんな微妙な雰囲気の中でスペの腹の虫が盛大に鳴り響く。スペはめっちゃ恥ずかしそうにしてるけど。まあお前あれからご飯食べてねえしな
「飯にするか、一杯あるし。ドーベルもまだだよな?」
「うん、まだ」
「なら決まり、スペもそれでいい?」
スペに問いかけるとドーベルの方を見て頷く、どうやらスペの中でドーベルはイケる判定貰ったらしい。栗毛じゃないのもなんとなく要素は有るんだろう
「頂きます」
「頂きます…」
「頂きます」
ムグムグと三人で朝飯+ドーベルのお弁当を突っつく。ドーベルの弁当美味しいんだよな、スペももきゅもきゅって大人しく食べてるし
そんなこんなですっかり日が傾く三時になってしまう。まじで時間すぎるの早すぎでは?そんなことを思ってるとまたスペがお昼寝してしまう
スヤスヤって寝てるスペはやっぱり可愛いのである。
「そういやドーベルはトレーニング良いのかい?」
「今日は休みなさいって言われた」
「ドーベルも追い込み癖あるからなぁ」
自分が弱いからってオーバーワーク連発してた時期もそれなりにあった。まあ私がドーベルのチーフトレーナーに頼まれてセーブするようになったんだが
「ほれ、ドーベル。マッサージするよ」
「ん…」
スペは私の首に腕を回しておぶられながら寝ている。これが一番安心するんだと。そういうことだから前の方は開いてる、なのでマッサージでもしてやることにする
「大分無理してるなお前、こりゃ休めって言われるよ。筋肉の疲労具合もだけど、骨へのダメージも無いわけじゃないからな。過度なトレーニングで強くなれるわけじゃないんだドーベル」
「……ごめん」
「適宜休憩を取ってしっかり休むときは休む。いいな?」
「分かった、ちゃんと休むから」
小言を言えばしょんぼりドーベルになる、まあ愛のムチだと思ってくれ。オーバーワークで強くなれるんだったら誰も苦労なんてしないんだよ
「チーフトレーナーに迷惑はかけられないでしょ?」
「トレーナーには、心配されたくない」
ドーベルのところのチーフトレーナー。結構いい年してるからな、トレーナー業いつまで続けられるか分からないんだ。心労はかけるもんじゃないよ
「だろ?じゃあちゃんと行程表守れ。エアグルーヴも心配してるんだからな」
「うっ……」
エアグルーヴの名前出せばだいたいコイツは大人しくなる、ティアラ路線行くなら間違いなくぶち当たる壁だろうし、慕ってるからな。その人には迷惑かけようだなんて思うほどドーベルは嫌なやつじゃないから成り立ってることでも有る
「ほい、足のマッサージ終わり。次肩と腕な」
「うん」
言われたとおり素直にぽふっと背中を向けてくるドーベル。素直な状態だとだいぶ扱いやすいんだが…まあコイツはいっか
「ちょっと、痛いかも…っ」
「お前。相当疲れてるな……」
軽く付け根を指圧されるだけで痛がるってことは重症だよこれ。入念に時間かけてマッサージしてやるか、起こさないように時折スペを撫でて睡眠時間延長も忘れないでおこう
「絵を書くのも休み休みな?」
「分かってる」
「後で手伝うよ、絵本作り」
そういうとぱったぱたと尻尾を振っている、それが息抜きなるからそれで良いんだよドーベル。変な趣味じゃないんだしさ
そっからしばらくマッサージするとドーベルも寝ちまった。仕方ないのでエアグルーヴ召喚
「ドーベルも寝てしまっているのか?」
「まあ日頃の疲れってやつかも」
「あまり、無理はしてほしくないのだがな」
ドーベルを迎えに来たエアグルーヴにドーベルを預けながらそんな言葉を交わす。コイツはそういうこと言ってもやるときはやらかすからしょうがない
「すまないな、セルメント。後輩の相手をしていた途中だろうに」
「いいよ、ついでついで」
ケラケラ笑ってるとポフポフって撫でてくる、だから別に気にしてないってば。とは言うもののエアグルーヴはエアグルーヴでちょっと溜め込むタイプだから好きにさせておく。んで満足したら帰っていった
エアグルーヴの匂いが残ってたのかこの後めちゃくちゃスペぺぺぺぺぺぺに噛まれた。いたいんだけど
ベロちゃん要素は多分出ないまま終わりますはい
ちなみに最初はスペペペペペと関わってから次の話でクラシックまで飛んで例のアレで主人公退場して終わる予定でした
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ギャル語分かんないッピ…
「はー、つっかれた」
スペをスズカの部屋に押し返してぐったり、部屋に入るなりのけ者やだやだしたスズカを宥めつつスペを部屋に返したんだよね。まあスペの方がやだやだしてたけどまあ仕方ないんじゃないかね、明日は休みだから暇なのだがそこはそれ、これはこれである
ある程度休んだらPCのあるデスクに向かう、まあ軽い暇つぶしのようなものである。ヘッドセットを繋げて。これでいいかな、気分転換にちょっくら話すとでもしましょうかね
『こんばんはー』
軽くとりあえず挨拶しておく、挨拶は大事だからな
『おう、セルメント。こんばんわ、なんか後輩のおもりして任されたんやって?大変やなー』
『おもり?ああ……なんだっけ?スペシャルウィークだっけ?アタシも噂では聞いてる』
相手はタマモクロス先輩とゴールドシチーだ。タマ先輩は芦毛つながりで、シチーとはなんというか、割と不思議な出会いで色々と会話することになった。
『噂やとなんやえらい気性難っちゅう話やけど、ほんま?』
『ええ、まあ。そんな感じです』
『ってことは、アタシ以上に……ってことね、ご愁傷さま』
お前も難儀やなーって慰めてくれるタマ先輩と、想像して若干萎えてるシチー。シチーは自分の気性難な部分に少し辟易しつつもどうしようもないと割り切ってる部分はある。まあすぐに治るなら気性難とは言われないわけだからしゃーない
『でも気性難って色々ありそうだけど。どういう感じ?言うこと効かないとか、気分の浮き沈み激しいとか?』
『んー、セルメントが手を焼くレベルっちゅうなら、そんじょそこらのきかん坊とは訳が違いそうやなぁ』
『そうですね。はい……ええと、ウマ娘そのものが大分苦手なようで……』
そう言うと二人の言葉が途切れる、まあ多分絶句してるんだろうよ。そりゃそうだわな、私も聞いたことねえもん、基本ウマ娘は本当の意味で孤独が苦手だ、ある程度群れなきゃ生きていけないらしい。そういう意味でもだいぶ異質な方だ
『セルメント、ねえそれレースとか大丈夫?かなり扱いに困りそうだけど…』
『今ん所レースの方はなんとかなってるみたいだね、ただ模擬だからっていうのは有るかも。本番とかはちょっときつそう』
『日常生活すらままなってないやろな。相方の方も……まあ当てにならんやろうし』
『同室の子は…あー………スズカ』
『当てにならん、いやマジで』
なんていう会話を数十分続けて通話を終わる、シチーもタマ先輩もそれなりに心配してくれるみたいで申し訳なく思う、ありがたい限りだ。そんな風にして今日はこのまま寝ちまうことにしよ
「思いの外寝れなかった」
ベッドから起き上がりつつそんなことを思いながら体を動かして行く、休日とはいえ。まあだらけすぎるのも良くないのは間違いないからである
まあ、今日はのんびり…と思ってたらLANEの通知、うーん誰だろうか。そう思って開くとシチーからだった
『今日暇?』
『やることは特に無いけど、どした?』
シチーからの誘いは割と珍しい、モデルやってるから仕事とかで忙しいのもあってなかなか会うことも少ない。昨日の会話ぐらいかね。出来るのは
『ちょっと気分転換しない?アタシもちょっとストレス厳しいし』
『そういう事ならいいけど、他に誰か誘う?』
『そうだね、誰か誘うか。んー、ジョーダンとか?あ、でもセルメントはジョーダンと初対面じゃなかったっけ』
『いんや?LANE知ってるよ』
『マジ?』
『マジ、ちょいまちや』
ウマホ操作して、これをこうしてっと
『おお?なんか追加された、いきなりどうしたし』
ジョーダンを加えて3人で会話したほうが速いだろ、あいつアホの子だから伝言ゲームするとおかしなことになりかねないから。まあこっちの方が楽でいいだろ
『うい、ジョーダン』
『あ、セルメントか。いきなり過ぎてちょいビビったんだけど?』
『おはよ』
『あれ、シチー?????どういう組み合わせ?ちょいキャパ超えてる』
『ちょっとね、そういうジョーダンもセルメントと知り合いってアタシ知らなかったし』
『あれ?そだっけ、言うの忘れてた。メンゴ』
『ま。イイケド、付き合いとかもアルダロウシ』
『いきなりカタコトになってどうしたん?変換ミス?』
『そゆことにしとけ』
『??????』
レスが、レスが速い!ギャル特有のタイピングスピードっていうやつなのかこれ。私はPC派だからスマホはちょっと打ちづらいんだよね、反応ちょっと遅いし。単純に指が痛くなりやすいっていうのもなくもないんだけど
『そういうシチーこそセルメントとどやって知り合ったん?想像つかん』
『色々』
『逃げんなし?』
『べ、別になんかあったわけじゃないから。ちょっと仕事のことで』
『ふーん…???』
『な、何』
『ベツニナンデモナイケド』
『そっちもカタコトじゃん!』
『シチーだってそうだったじゃん!あたしだけに言うのは違くない!?』
なんかやり取りがおかしな方向に進んでないか?ん?私が打ち込む前に話がドンドン逸れていってるから軌道修正すらまともに行かないんだけれど。どうしたらいいの?
助けてスペ!!!って心のなかで最近コイツのほうが一番ラクなんじゃないかって思うようになった後輩のことに叫び声を心の中で叫んで見る
『………』
うわぁ!!そんなジト目で此方を見るんじゃないよスペぺぺぺぺぺぺェェ!?!?!?お前そういう視線向けてくるんかと心の中のスペがジトーっとした目で此方を見てくる幻覚を見ていれば個人の方に二人から連絡が来る
『『あとで話してもらうから』』
なんか飛び火したんだけど!?!?!?!?私まだなんも言ってないのに!言ってないのに!!!!!!助けてエアグルーヴ!!!助けてタマ先輩!!!!!あ、マルゼンスキー先輩はいいです、貴方の場合トレンディ過ぎて参考にならないのでハイ
絶対面倒くさいことになるなと思いつつ、表面上はお互いに落ち着いた。内面は大分あれなんだろうけど
『話大分飛んだけど。なんで声かけたの?』
『セルメントがちょいストレス溜め込んでそうだから。軽く出かけようかってアタシが声かけた』
『んで、私がジョーダンに声かけた』
『りょ。んー、あたしも今軽くメンブレ中だから気分転換行ってみるかー………』
というわけでとりあえず3人で外出することが決まった。ヘリオスとパーマーについては、私の方と接点がないから、今回は見送ることにする。なんでか知らんがふたりとも安心した様子だった、なんでだ
『じゃあどこ行く?メンツ的にそういうところ行く流れになりそうだけど』
『あたしはネイルの物かいてー』
『アタシはブティックかな…セルメントは?』
話を振られたけどこれと言ってどこに行きたいわけでも無いんだよねこれが、まあ暇だからついてくっていう感じのほうが強かったりしないでもないわけだから。どうすっぺ
『私はどこでも良いかなー』
『そーゆーのが一番困るんだぞー』
『まあ。確かに』
うっさいわ、私はそういうのあんまり詳しくないから行くやつに合わせるぐらいしかできないんだけど…まあだいたい合わせるしかなかったって言うべきなのかもしれないんだけどさ
『二人の行きたいところについてく』
『アタシはそれで良いんだけど…ね?』
『ぶっちゃけつまんなくない?セルメントそういうの興味なさげだし』
『それはそうだけど』
それはそうだけど、まあ私はそれで良いんだよね正直
『お前らが楽しそうにしてればそれでいいんです私は』
なんて送りつけてやるといつもの即レスが若干ラグる、どしたん?なんか落としたりした?
『……そういうやつだったわセルメント』
『そういうヤツだったね』
なんか呆れられてるけど。まあいっか、とりあえずの待ち合わせ場所を指定してさっさと行きますかね
タマとの絡みを増やしたかったけど関西弁わからないので続かない
ざっくりとしたセルメントからの印象
セルメント→スペ:大事な後輩、かわいい奴
→スズカ:めんどくさいやつ
→ドーベル:割と気安い関係?
→フジキセキ:距離が近いタラシだなぁ
→タマモ:お世話になっております……
→エアグルーヴ:胃薬代わり。助かる
→他同期:???
→シチー:お前めんどくさいやつだなぁ
→ジョーダン:お前アホの子だな……
→何処かの芦毛:共演NG芦毛の神様なので
オグリキャップ
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マ子にも衣裳?やかましいわ
シチーとジョーダンと合流後、ブティックとかネイルの店に行って時間をつぶす。ブティックに入れば
「セルメントももうちょいコーデ考えなよ」
なんてことを言われて若干きせかえ人形になった、ジョーダンは笑いつつパシャッてた。私はおめかしするようなタイプじゃないんだけどね……あんまり顔つき良くないし?
「いや、似合わないでしょそういうの」
「こういうのは似合う似合わないじゃなくて覚えとけってことじゃん?ええと……なんだっけ、あれ。なんていうんだっけ、マナーとかそういうの」
「TPO?」
「そうそれ!」
「ちなみに略称はなんだと思ってる?」
「え?分かんない…とりま、ぽっぷに、おんなのこ?」
「いやそうはならないでしょ……」
ジョーダンのおバカっぷりに思わずツッコミを入れるシチーを拝めたりとか
「セルメントは化粧水とか何使ってるの?ファンデとかはしてないっぽいけど」
「化粧水?使ったことない」
「え、マジ?クリームとかは?かさつかない?」
「それもない、いや自分には使ったこと無いっていうほうが正しいかもしれないけど」
なんてことを言うと二人に信じられないものを見るような目を向けられる、いや必要ないかなて思っただけなんだけど
なんて思ってるとジョーダンに両脇抱えられてシチーに取り押さえられる、どうした急に!?
「な、何するんだお前ら!?」
「いやちょっと聞き捨てならないこと言われちゃったから」
「流石にそれはナシ」
「な、何をするお前らーーー!?!?」
店員の生暖かい視線を受けて冷や汗が噴出する。店の中で騒がせるんじゃないよお前ら!?等というセルメントの抗議も虚しく奥に連れて行かれてしこたま物を試された
「めっちゃスースーする……」
セルメントがブティックから出てきた第一声がまずそれだ。クリームとやら化粧水やらをひたすら塗り込まれて挙げ句、きせかえ人形にされたのだから疲れに疲れたのである
「無頓着なのは知ってるけどあれはちょっと…流石に知らなさすぎ」
「同感、もっと女の子らしくしとけ?」
両手にセルメント用に買った、あるいは押し付ける物を下げてる二人が若干冷ややかな視線を見せるとセルメントは明後日の方向を向いて誤魔化す
「次ネイルの店に行く?」
「流石につかれたから休憩しよ?セルメントもそれでいい?」
「うぇーい……」
「駄目だこりゃ」
煩いよ二人共、まともにああいうところ行ったのは数回しか無いし、自分のためじゃないから仕方ないじゃんなんて愚痴を言いつつ。カフェに入る
テーブルに突っ伏して二人に適当になんか頼んどいてと告げて休む。まあ軽い軽食(ウマ娘基準)でもあればそれでいいかなって思ってるとジョーダンが話しかけてくる
「ホント大丈夫?ネイル今日行くの辞めにしない?」
「ジョーダンはそれでいいの?」
「流石にテンションダダ下がりのヤツ連れ回す程空気読めないわけじゃないし」
「さんきゅージョーダン……」
いやマジで疲れたわ、あれなんだろうな。世の中の連れ回される男たちってこういう感じなんだなって思うなどした。私は元々疲れやすい体質ではあったりするのだが
なんて馬鹿なこと思ってると珈琲とBLTサンドを持ってきたシチーが若干呆れ顔で此方を見てくる
「んー、やっぱりセルメントにはこういうの早かった?」
「たぶんねー…早かったと思う」
「語彙力死んでんじゃん、ウケる。やっぱり休ませよ」
ズズズって珈琲飲みながらBLTサンドもきゅもきゅしてると二人からそんな風に言われる。まあコイツラもそこまで無理やりするようなタイプでもないから安心安心
「あ、でもやっぱあたしネイルのやつ買わないとやばいかも。爪割れちゃってさー……」
「メンブレってそれ?」
「それ」
「それはちゃんと買っときなー………今日はこのまま帰ろうかなって思ってるし」
ぐでっとしながら言うと二人は今日は仕方ないかっていう感じになってる。まあ最初のブティックでどっちもストレス発散できたみたいだから大丈夫だろ
「二人共いてらー」
軽く手を振って見送る。ちゃんと見送ったのを
「久しぶり、名前の知らないウマ娘さん?」
「
そう言いつつ、そのウマ娘は私の前にどかっと腰掛ける。コイツが誰なのかはよくわからない
分かんないけど
多分、そんじょそこらの
生霊か?と思ったけどそうではなさそう、そもそもこいつのこと知らんから変には言えないのだが
「まあ、まだ
どっかで見たこと有るような、そんな感覚は有る。コイツはなんでか知らんけど珈琲飲んでるときにしか来ないんだよね。仲良くしてあげてる子に珈琲好きな子は居るけど
その子の名前はマンハッタンカフェ、なんだか霊障とかそういうのに関わりがあるらしく何度か関わってから仲良くなったりしてる。その時になんかお守り貰ったりとかしてたなそういえば。今も持ってる
そういえばコイツもその時からちょくちょく現れるようになった気がする。正確には、鮮明に感じ取れるようになったというべきだろうか?
それとこれとが関係有るのかはちっとも分かんないけど下手に怒らせないほうが良いのはなんとなくだけど分かる。コイツはマジでやばい類のやつだ
んでもってなんで私がコイツ呼ばわりなのかというと
「
なんだか知り合いらしいっぽいとか、胡散臭いとか、そういうもんではない。名前も知らないのも有るんだけど────
「元気そうで何よりだケドナ?」
「……何を知ってるのかはわかんないけれど、とりあえずは元気だよ」
珈琲に口をつけつつ、口元を隠していると
「───
直後に目の前のコイツに声を遮られて思わず舌打ちをしてしまう。他の連中は騙せてもコイツだけはどうヤッても騙せ無いんだいっつも、内側を見透かされてる感じがすげえ
「ウマソウル、まだ安定してねえンだロ?」
「……まあね」
そう、私のウマソウルは安定してないのだ。なんでかはしらないけど安定してない。本来の髪の色も違ったかもしれないと言われるぐらいには、だから最初は病院に行ってたりしてた。あんまり走ることへの意欲もなかった、そこはまあ。あの人のお陰で良くなったんだけど
「なあ」
「なんだよ?」
目の前のコイツからかったるそうな声を聞きながら珈琲に口をつける。冷めきった珈琲だが不思議と体を温めてくれるような気がしてくれている
「
まーた奇っ怪なことを聞いてくる、そんなもん分かるわけないんだよただのウマ娘に。コイツが問いかけてくるそれは単にそういうもん信じるかどうかの話じゃないんだろうさ。いわゆる宿命とかそういうもんだろう
「
そりゃそういうのも有るんだろうよ。どうしても変えられない流れってのは確かにあるんだろうさ。
でも、まあ
「その運命で後輩とかが悲しむなら……
そういうとそのウマ娘は、どこか嬉しそうに笑うのだった
「いい度胸だ、ソうこナくっちゃナァ?」
クックックッって笑いつつフラッと消える。毎回毎回思うのだがコイツなんなんだろうな。そんなことを思いながら外に出る
「……二人にまた付き合うかぁ」
不思議と倦怠感は消え失せていた
名前を呼んではいけないので続かない
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黒(猫)は元々幸運だってそれ
なんてことはない平日のことである。私はふつーにとくに面白くもない授業を受けているのである
「………」
とてつもなく視線を感じる、言わずもがなスズカからである。まあ、スペのことで色々あったからなんか変に思われてしまったのかもしれない。自業自得では有るが、自立するきっかけになってくれれば良い。というかスペとちゃんとコミュニケーション取れてるのか分からんな
「……えっと、大丈夫?」
「ん?……多分」
こそこそっと近寄ってくるドーベルに、若干目を反らしながら返事をする、まあ大丈夫だろうよきっと。
「そういえば、ドベのところのチーフトレーナー体調悪いって聞いたけどほんと?」
「……うん」
しょんぼりしながらドーベルが頷く。この人のチーフトレーナーは結構なお年である、トレーナー業は過酷だからとっくに辞めていてもおかしくないだろうけど。まあ人それぞれだから仕方ない
「お見舞いにでも行くか?」
「そうする」
「ドベの姿見ればちょっとは元気になるだろうしね」
「だと、いいけど」
相変わらず自己評価低いなーお前、チーフトレーナーはお前のことめっちゃ可愛がってくれてるんだからもうちょい自信持てよ
なんてドベと話してるとスズカの視線が若干では有るがまた重くなる。
授業を終えての昼休み
今日は気分転換に屋上にでも行くかな。なんて思っていると
「……こんにちは」
「ん?……珍しいね、カフェが此処に居るなんて。」
真っ黒い髪がきれいなカフェがぼーっと一人で空を見上げている。ほとんどあの実験棟で過ごしているはずの彼女が普通の校舎、まして屋上に居るなんて珍しいことも有る
「ええ、まあ…色々と有りまして」
「タキオンがまた何かした?」
「どちらかというと『お友達』が……」
一体何したっていうんだお友達よ……あそこからカフェが避難してくるってばよっぽどのことだぞ
「タキオンさんの紅茶をまかしてしまって……」
「oh……」
状況を説明すると。タキオンがいつもどおりちょっかいをかけてきたから相手をしてやると。暇してた『お友達』がうっかり紅茶をぶちまけてしまったらしい
ちなみに下手人は逃走中のようだ。何やってんだお前……
「元はと言えば、タキオンさんが悪いので…とはいえ、紅茶まみれの場所で過ごすのも」
「だから屋上に?」
「はい……」
まあタキオンにはちょうどいい薬になったと思えばいいだろうか。そんなことを思いつつ、持ってきた袋を広げる
「カフェはご飯まだ?」
「ええ、まだですが……」
「んじゃあ、一緒に食べよっか?」
飯に誘うとすんなり受け入れて横にちょこんと座る。今日はめんどくさかったのでサンドイッチを大量に作るだけの簡単なものになったが。まあいっか
もっきゅもっきゅと小さな口で食べているカフェを尻目に、階段を上がってくる気配を感じてそちらに視線を送ると
「あっ……」
スペがやってきた、ちょっとずつ交流はしてるみたいだけど。やっぱりこういう場所が好きなのかな。なんて思ってると
「…………」
私とカフェを交互に見た後、スススと私の方に寄りつつ。私の体で隠れるようにしつつ、カフェの方を見る。コイツにしては珍しく威嚇したり、露骨に距離を取ったりしないんだな。なんてことを思いながらパンを咀嚼する
「…そちらの方は?後輩の方、でしょうか?」
カフェがスペの方を見たので、肘でスペの脇腹を小突く。挨拶ぐらいは自分からできるようにならないと駄目なんだぞスペ
「スペシャルウィーク、です……」
自分の名前を言った後、また私の影に隠れてしまう。まあ前よりかは大分進捗してるから良いことにしておく
「名前はさっき聞いたとおり、中等部だから後輩だね」
「なるほど……あぁ、セルメントさんが面倒を見ていると言っていた方ですか」
カフェが少し考えるように視線をそらした後、自分も自己紹介してなかったことに気づく
「私はマンハッタンカフェと申します。お好きなように呼んでいただければと……」
軽く会釈するカフェにぎこちなく指で会釈し返すスペ。どうやらコイツの中でカフェはちょっとまた違う枠なのかもしれない。
「よっと……」
「んぇ………」
いつもどおりスペを膝上に乗せつつ、もっきゅもっきゅとサンドイッチを咀嚼していく。時折スペにも食べさせてると、興味深そうにカフェが此方を見ていた。
「スペ、ほれ」
カフェの方にスペを向けつつ、カフェにサンドイッチを渡す。両者ちょっとの間動かずに居ると、カフェが差し出したサンドイッチをスペが視線を交互に向けてからパクっと食べる。もっきゅもきゅと食べる姿は愛玩動物のそれだ
「……」
カフェも似たような感情を覚えたのか、くすっと笑いつつ。自分からスペに食べさせる。そんな風景を見てるとくいくって服をスペが引っ張ってくる
「ん?」
スペが手に持っていたのは、ちょっとぶきっちょな形のサンドイッチらしきものだ。どうやら自分の昼飯を自分で作ってみたらしい。私に食べてみてってことなんだろうか?
「…んぁん」
パクっとスペから差し出されたのを食べてみる。ちょっとしょっぱい、たまごサンドのようだ。馴れてないけど自分で頑張って作ったのは伝わってくる。なので
「ん、ちゃんと頑張ったな」
褒めてやるとパタパタって尻尾を振りながらスペが喜ぶ。カワイイ奴め〜ってうりうりって撫で回すとにへーっとする、今日もスペは可愛いなぁ。なんて思ってるとカフェの視線がこちらへ飛んでくる
手にはサンドイッチ……なるほど、そういうことか?
「ほれ、カフェもあーん」
「いえ、別にそういうわけでは……」
「あーん」
「…分かり、ました」
ちょっと恥ずかしそうにしつつ。口を開けるカフェにサンドイッチをちぎって放り込む。ムグムグって食べる姿はスペとは違った愛らしさがある。カフェもまた可愛いのだ
そんな食べさせ合いをしていれば腹も膨れて休む時間に
「カフェ、珈琲持ってきてる?」
「はい、勿論……お出ししますね」
「サンキュー」
カフェの珈琲は美味しいので時折飲みに行っている。湯気が立つ珈琲を二人して飲んでると、スペも興味を示したのかスンスンって匂いを嗅いでくる
「スペも飲んでみる?」
興味を示したスペに珈琲を近づけてみると、何回か嗅いだ後にごくっと飲む
「砂糖とミルクを入れたほうが良いと……あ」
「うぇ……」
カフェの忠告が遅かったのも有るが、スペが舌を出して苦そうにしている。カフェが砂糖とミルクをちょっと入れてあげると、大分飲みやすくなったのか。ちびちびと飲み始める
なんというか、のんびりした時間であるそんなことを思っていればスペはすやすやとお昼寝タイム、腹が膨れれば眠くなるのもやむなしである
カフェと軽く世間話をしてカフェは帰っていった。穏やかな日差しを浴びていると。ぽふっとスペが跨ってすりすりと自分の体を擦りつけてくる。
「どうしたすペペぺぺぺぺぺぺぺぺぺ」
どうしたのかと問いかける前にまたガブガブと噛んでくる、こればっかりは馴れようがないのでしょうがない。最近は腕ではなく肩の部分をひたすら噛んでくるように変わったのが全くもって分からん。幸い跡には残ってないのが救いみたいなところがある、そのあとめっちゃペロペロしてくる。指を差し出せばそのまま吸い付いてきそうなぐらいである
「相変わらずお前はほんとに……はぁ」
ため息はつくもののどうしても突き放す気にもなれない。大事な後輩であることには変わりないのが大きいというのと、まあ。なんでか知らないがスペの母親?と電話をする機会があり。よろしく頼まれてるということも大きかったりする。
「ちゃんと真っ直ぐ育たないとね、スペ」
私も昼寝すっかー…………
よくわからないが。とあるウマ娘が「先輩後輩の友愛てえてえ」と言いながらぶっ倒れて保健室に送られたらしい
タイトルに反してスズカの出番がほぼないという
それはそうと、濃厚なスズスペ誰か書いてくれない?
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お米食べろ!
「んー……なんか随分止まるな」
郊外をランニング中、妙に赤信号に引っ掛かる。帰りだからまあいいか、なんてことを思いつつ学園へと戻る。
次の日
「ありゃ?またか」
またもや赤信号に引っかかる。今度は連続でだ、微妙に間に合わないのが
さらに次の日
「んー………?」
今日は単に買い出しなのだがまた引っかかった。まあしゃーないか、なんて思いつつのんびりと部屋帰る。
なんか最近そういうことが多いんだよねーってカフェに話してみる。するとカフェからは
『どうやら、学園の中で不運を運んできやすいウマ娘が居るようです』
と教えてくれた。ちなみにだがその時カフェはおそらくそこにいるであろう『お友達』に何かプロレス技をかけていた。バンバンバンって床から音がしてるのでそうなんだろう、え?怖くないのかって?
いや、怖くないよ。だってカフェの『お友達』なんだから、当たり前では?
そんなことを聞いて今日もランニングに漕ぎ出してみる。もしかしたらそのウマ娘と遭遇するかもしれないからだ。なんてことを思ってると早々に赤信号に引っかかり始めた
「ふむ」
少し考えつつ、辺りを見回して見れば。小さなウマ娘がそこに居た、彼女も此方を見ていたようで。びっくりしたのかおどおどしてしまっている。まあ私顔つき悪いからちょっと怖いだろうね
見た感じ黒鹿毛……?と思っていると、あっちの方から近寄ってくる。トレセン学園のジャージ着てるからそういうことなんだろう。中等部…なんかなぁ、背ちっさいし?
「あ、あのっ!」
「ん?私でいいの?」
「は、はい」
めちゃくちゃ緊張してるような様子で話しかけてくる推定中等部の子をビビらせすぎないようになるべく優しい声で返事をする。するとちょっと安心したような表情を浮かべる、まあ初対面だしな私は
「その、ごめんなさい」
「……?」
なんで謝られたのか分かんなくて首を傾げる。別に目の前の子になんかされたわけじゃないんだけど、気はあんまり強くなさそうな感じがするけど。んー、どうだろ。こういう子って引かないときは絶対に引かないしな
「ライスのせいで、トレーニングの邪魔しちゃって…!」
「んー……?」
ライス?この子の名前か、なるほど。だけどライス?ちゃん?が邪魔したわけじゃないと思うのだが、赤信号だから止まってるだけだし。
「えっと、その…」
「ライス…ちゃん…でいいのかな?」
「う、うん」
「一旦深呼吸しようか」
テンパリ気味だったライスを落ち着かせて、近くにあったベンチに座りながら話をくことになった。このライスシャワーというウマ娘、なんと中等部ではなく高等部である。スペよりちっさいのはびっくりした。失礼だけど
で、例の不運を運んでくるウマ娘はどうやらライスのことらしい。生まれつき不幸なことが周りで起きやすいんだと、さっきの赤信号連発とかそういうの
自分のこと途中どもりながら言うライスに相槌を打って話し終わった時に思ったことは一つだけ
「でも、それってライスのせいなの?」
っていうと本人はめちゃくちゃ驚いていたというか。何を言われてるかわからないっていう風だった。いやそうじゃない?だって別にライスがしようとしてしてることじゃないし
「そ、そう…?ライス悪い子じゃない…?」
「どこをどう見たらそう見えるの…?」
おずおずって言ってくるライスにさらに首を傾げる。仮にそういう体質があったとして、それを誰かのせいにしたり、それを悪用してるわけでもないんだし、別に悪い子ではないのでは?
「そっか…ありがとう、セルメントさん」
「どういたしまして…?」
よく分からんが感謝されたみたいだ。まあそんなことは割とどうでもいいか
そんな事を思いつつ、ライスと一緒にトレーニング……ではなく、散歩することになった。まあ今日ぐらいはこういう日があったらいいんじゃないかな
「〜」
鼻歌交じりにライスの手を取りつつ歩く、ちょっと歩くとはぐれそうになるからこうしておくしかない。ちょっとライスは驚いてたけど。素直に着いてきてくれた、良い子である
「せ、セルメントさん」
「んー…?歩調速かった?」
「ううん、そうじゃなくて…えっと。今日はありがとう」
「別にいいよ、ライスと知り合えたし」
ライスは話してみると普通にいい子だった、普通に。引っ込み思案なところはあるけど、ちゃんと会話できるし。変なこと言わないしな
歩いてる途中は結構いろんな話をした。お互いの適正距離はどうなんだろうっていう話のこと、趣味のこと。ライスは絵本が好きらしい、結構可愛い趣味してんなって思う
そうして帰ってるときのことである
「……っ」
ちょっとライスの歩調が崩れる、もしかしてどっかくじいたのかもしれない。ウマ娘にとって足っていうのは消耗品でも有るし。生命線でも有る、そしてまだデビュー前ってこともあるので大事にしないとならんのです
「ライス、どう?歩けそう?」
「多分大丈夫だと思うけど…うう」
しょぼんてしつつちょっと泣きそうな雰囲気になってる。やめろやめろ、私が虐めてるような気がしてくるんだけど!!とはいうが、ほっとくのもあれなのでライスの前でしゃがむ
「ほれ」
「えっと…セルメントさん?」
「早くして」
「う、うん」
そのまま歩いたらもっと悪化するかもしれないんだから、しょうがないでしょ。そこで悪化したら私の責任にもなるんだし。はよ
「失礼、しまぁす……」
ゆっくりとライスが背中に乗ったのを確認すると。ゆっくり立ち上がる、初めての視線の高さにびっくりしたのかライスがしがみついてくるけどまあ気にしない気にしない。
「揺れたりしない?」
「うん、大丈夫」
「それじゃあ、レッツゴー」
「おー…?」
のんびりと学園に戻る、途中信号機に引っかかったけどライスと喋ってたので特に暇になることもなかった。本人は結構気にしてたけど
「ライスと喋る時間が増えたからいいよ」
っていったら特にそこに関しては言うことはなくなった、まあ可愛いしねライスは、もっといっぱい喋りたいのは有るから。話してて楽しいのと、あんまり関わってこなかったベクトルの人だし
そんなこんなしてるとライスがすやすやと寝てしまった。結構トレーニング頑張ってたみたいだし、まあ仕方ないんじゃないかな。寝れる時に寝ておかないとね。そして学園へ到着、美浦寮へと連れて行く。ヒシアマゾン寮長はライスをおぶっている私を見てなんかやれやれ顔だった、なんでだよ。
事情を喋ってライスのお部屋へ、同室の子がもう部屋にいるようなので。その子に預けるだけでいいかな、なんて思ってたりしたんだけれども。
「ライスシャワー連れてきたよ」
「分かりました、ありがとうございます……あれ、セルメントさん?」
「おお、ロブロイ。お前の同室だったんだ」
大きめの眼鏡をした奴が出迎える、この子の名前はゼンノロブロイ。伝記とかが好きな文系少女だ、前に図書館で本の整理してる時に。背が足りなくて上手く行ってないところに遭遇して手伝ったことがあったりする。たまに一人になりたいときは図書館に行ってロブロイと過ごすことも有る
なんというかこう、お似合いの同室だと思う。どっちも本が好きだし、大人しそうだからな。喧嘩とかもないんだろう
「ええとその、ライスさんは夢の中でしょうか…?」
「まあね、ちょっと疲れちゃったみたいなんだ。寝かせてあげよっか」
そう言って、ライスたちのお部屋に入る。やっぱり本がいっぱいだな、なんて思いつつもライスをベッドに寝かせて、軽くくじいた方の足をテーピングしておいてやる。明日ちゃんと保健室に行くようにもロブロイに伝言しといたから大丈夫だろう
そしてそそくさと退散する、あんまり人の部屋に長居するもんじゃないしな。遊びに来たわけでもないし、そう思いながらロブロイによろしくと伝えて帰る
なんでか分からないけど、帰ったらフジ寮長にめちゃくちゃ弄られたし。通りすがりのトレンディから青春ね!と言われたり。エアグルーヴからは呆れられつつ、スズカからはなんかまたすごい視線を受けたりした。なんでだよ別にいいじゃんか交友関係広げても
そしてその夜なんでかライスとロブロイと3人でめちゃくちゃ電話で話しした、なだめるの大変だったけど。今度3人で出かけることになった。まあ私は付き添いというか荷物持ちみたいな感じでちょっと遠くから離れてみてようかななんてことをカフェに言ったら。これまた半眼で見られた、今でも納得してないぞカフェ
Q.なんでクソボケムーヴみたいなことするんですか?
A.自分はあんまり良くない先輩だと思ってるからです(自己評価低め系ウマ娘)
仲良くはしたいんだけれど。それはそれとして、他のことライバルとかかけがえの無い親友ができたりするとそっと離れるタイプ(離れられるとは言っていない)
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プライベートは別に決まってるじゃん?何言ってるの?
「くぁー……眠い……」
思わず欠伸しながら起き上がる。昨日は色々と有りすぎて大変だった。いつも通りスペの相手してたらなんか突然暴走し始めるし、スズカはスズカだし。ついでにフクキタルも煩かった、3割増しにフンギャロフンギャロしてたわ。
そういえば一つ言ってなかった気がする。実は前に同期はフクキタル、ドベ、タイキ、パールさん、スズカと言ったな?あれは嘘だ。実はもうひとり居る、そいつの名前はメジロブライト、ドベと同じメジロ家の出身だ。なんで省いてたかというと、私はあいつと関わり合いがない、というか持たないようにしてる。だってズブいんだもん、そりが合わないとかじゃなく単純に面倒くさいだけ、あれとスズカが一緒だったらもう無理だね。死んじゃう死んじゃう
というわけで休日だから学園の外へと参る!!面倒くさいこと考えなくて良いね!!出ていく時に背後でエアグルーヴの悲鳴が聞こえたが仕方ない、ごめんねエアグルーヴ。後で一杯掃除していいから、あとちょっとだけだったらアレしていいから。
なんて思いつつ海岸へとやってきたのである
「ふんふー……暇なときは釣りに限る」
……と思ったのだが、どうやら今日は先客がいる様子だ。ウマ娘……ムムム
あの帽子は多分あの子だ。間違いない
「やっほ」
「うわああああああ!?」
めっちゃキョドりながら危うく竿を離しかけて慌てまくる目の前の子。相変わらずだなぁ、なんて思いつつ。クスクスって笑ってしまう。
「お、脅かさないでください…!?僕が人見知りなの知ってるくせに……」
「ごめんごめん。ついね」
帽子のつばを指で引っ張って恥ずかしそうにしてるのはシュヴァルグラン。通称シュヴァルちゃんだ、私はその時その時の気分で呼んでる。
実はこの子とはトレセンに入る前からの知り合いだったりするのだ。私と出身地が同じなので結構顔見知りになったりして。クールな性格と間違われてる内気なこの子が大好きですはい
「また居づらくなった?」
隣に座りつつ、話しかけるとコクっと頷く。この子はまあなんというか、随分内気なんだ。シュヴァルには姐が居てそっちのほうが所謂パリピなんだとか。あったこと無いんだけど、幼馴染の子はオーストラリアにいるからたまにしか電話できなかったりで。まあ随分寂しい思いをしてそうだなと思い声をかけたりしていたのだよ。
トレセンに入ったって知ったのは最近だったから、ちょっと後悔してる。入ってくるって分かれば同室になるつもりだったんだけどなー、この子はからかうじゃないけれど。話してて可愛いのだようん
「あの、えっと………」
「ゆっくりでいいんだよ?」
「うん………」
そして所謂陰のものでもあったりする、話しかけられたりとかされると露骨に挙動不審になっちゃうぐらいには。だから、急かさずゆっくり。話して良いんだよって言うと落ち着いてくれるのだ、スペへの対応とかはシュヴァルで学んだようなものなのだ
「………最近、他の人と仲がいいって聞いて」
「あー……うん、そだね」
ちょっとじとっとした視線に思わず頬をかいてしまう。この手の子はそういう状況になると自分は後要らないのかなー、もう話しかけられそうにないなーって諦めてまた独りぼっちになってしまうのだ。そうしないように時折こうして居るのだが、シュヴァルにはそれでも駄目だったみたい
「大丈夫大丈夫、シュヴァルを見捨てたりしないから」
そういうとホッとしたように尻尾を振る、可愛いんだよなぁこいつは。
「………」
そっからお互いに何も言わなくなる。シュヴァル的にもあんまり話すの上手じゃないからポンポン話題振るとテンパっちゃうのでそうしないように気をつける
いつもの喧騒とは違う、まったりとした時間。実は私はこの時間が一番好きだったりする
え、スペとかの時間はそうじゃないのかって?
まあ、はっきり言えばそうだったりする。だってあくまでもアレは「トレセン学園の高等部のセルメント」であって「プライベートのセルメント」ではないのだから。
スペは大切な後輩、だけどプライベートにはあんまり干渉してなかったりする。そこは個人の自由というかなんという。
シチーやジョーダン。前にでかけたライスとロブロイとも、大体似たような感覚で接してる。結局の所、自分でどうにかしなきゃいけない問題が立ちふさがるわけで
あくまでもサポート、あくまでも協力者の体を崩すわけにも行かないんだよね。多分私のほうが先に卒業して居なくなっちゃうだろうし。うん
だけどまあ。目の前にいるこの子はちょっとだけ私の中では違う立ち位置に居るんだ
他の子は一人で立ち上がれる子だけど、この娘は駄目。誰かがそばに居て引っ張ってあげないとずっとずっと沈んでいってしまう、そんな感じがしてしまう
だから、こうやってちゃんと会いに行ってるようにしてるんだよね。
そうしてると、ちょこんと肩に引っ付いてくる。寂しんぼだもんねシュヴァルは、そう思いつつ肩を抱いてあげると。心底安心したような表情を浮かべてくれる。可愛い
「〜…」
鼻歌交じりに背中をトントンってしてあげると、うつらうつらとしてくる。ちゃんと寝れてるのか心配だ、と思ってるとそのまま膝上に寝っ転がられる。
そのまましばらくすやすやと寝てしまったシュヴァルが目を覚ますと跳ね起きてめちゃくちゃ挙動不審に、落ち着いてってばシュヴァル。気にしないから
「ごごごごごめんなさい……」
「良いって良いって」
両手で帽子を押さえながら謝ってくるシュヴァルにこれ以上気後れさせないような声で話しかける、とにかく刺激しちゃ駄目なんだ
「なんでもぅ……うぅ……」
自分が睡魔に負けてしまったことに項垂れている様子だ、でもこれでもまだいいほうなのである。本来なら帰りたい帰りたいって連呼してるような娘なのだから
「でも、ちょっとは寝れたでしょ?」
「……うん」
「なら良かった」
そうこうしてると太陽が頭上に差し掛かる、ちょど昼頃だ。シュヴァルがもうちょっとだけ一緒に居たそうにしたのでそうしてあげる
「じゃあ、うちに行こっか」
「え?」
「早く早く」
「えっ、えええっ!?!?」
驚きに驚いてるシュヴァルの手を引っ張って自分のうち……とは言うもののただの私が借りてるアパートなんだよね
「上がって」
「お、お邪魔します……」
シュヴァルの手を引いて部屋に入り、腰掛けさせる
「またお姉さんから電話きた?」
そう言うとビクッとしつつ頷いて項垂れる。まあ家族から色々と言われやすいのは有るんだろうね、心配とかもあるんだろうけど
「……僕なんか……あう」
自虐に走りそうになるのを見ればぽふぽふって帽子の上から優しく撫でてあげる、大丈夫だよシュヴァル。まだまだこれからなんだからさ
「思うところはあると思うけど、此処に居る間は考えない。いい?できそう?」
そう言うと目を泳がせた後なんとか頷いてくれる、良い子だ。
その後台所に立って料理する、ちょくちょくアパートの方にも来るので食材は有るのだ。しばらくしてるとくいくってシュヴァルがいつの間にか背後に居る。寂しんぼめ
シュヴァルの好きにさせた後、一緒に御飯を食べた。遠慮がちにしてたけど。一緒に食べると仲良しみたいだねって言うと蒸せこんで大変だったりした
お昼が過ぎればそのままアパートで過ごす、気分転換になるかはよくわからないけど。シュヴァルがそうしたいと言ったのでそうしておく。
この娘、父親がすごい野球選手なので。それなりに野球に詳しかったりする、前はキャッチボールとかしてたんだけど今の身体能力だと危ないだろうからヤッてない
「………んぅ」
一緒に居るとはいっても、好きなことして過ごすかな。って言うはずがシュヴァルに構ってばっかりになる、本とかテレビ見てると袖引っ張ってくるし。ウマホ弄ってると視界に入ろうとしてくる。
まあ、なので脇に腕通しつつ抱っこが定位置になってる。こうするととっても安心したような表情をしながら笑ってくれるのだ、大変愛らしいと思います
そんな時にウマホが鳴る、エアグルーヴからだ。シュヴァル乗せながら電話に出る
『どうしたエアグルーヴ』
『今、手が開いてるか?少し問題が───ええい大人しくしていろ!』
エアグルーヴが喋ってる最中に怒号が聞こえる、それを聞いてシュヴァルがびっくりしたのか丸まって若干怯えている。私はそれを見て割と不機嫌に
『あぁ、すまない……ええとだな。お前の同期が問題を起こしてな……後始末に協力してくれないかという連絡だ』
アイツら……やはりバカ集団の集まりというかストッパーらしいストッパーが居ないんだよね。思わずため息をついてしまう
『連絡するってばよっぽど?』
『まあ、な………』
随分歯切れ悪いなエアグルーヴ、これはどうしたもんかな。エアグルーヴが此処まで言い切らないのは大分珍しい
そう思っていると、シュヴァルがくいくいと袖を引っ張りつつ。ボソボソって言い始める
「僕のことは、気にしないで…その、同期の人?困ってると思うから……助けてあげて、僕は大丈夫……だし」
帽子のつばを下げながら途切れ途切れに言葉を言うシュヴァル
『んー、エアグルーヴ。今回はパス』
シュヴァルが顔を上げてぎょっとした顔をする、同期とか生徒会より自分を優先するということが想像つかなかったらしい
『まあ、それも仕方ないか……そういえば、今は外か?』
『そだよ』
『そうか、なら今日は戻ってこないほうが良い。巻き込まれてしまうからな、寮長には外泊すると私から伝えておこう』
『ありがと……ちょっとまって』
一旦ウマホを遠ざけるとシュヴァルの方を向く
「シュヴァル、どうする?今日泊まってく?」
「えっ……」
動揺しすぎて目が回っているシュヴァルは数秒考えた後に……コクリと頷いた
『悪いんだけど。もうひとり外泊許可取れる?』
『ん?ああ、大丈夫だが』
『シュヴァルグランって子もよろしく…これは内緒でね』
『了解した……それにしても、毎日これを捌いていたのか』
『まあね』
『……うむ、やはり今日は此方の事は考えずに羽根を伸ばすと良い』
『ありがと、じゃあね』
『またな』
エアグルーヴとの会話を終えると、気まずそうなシュヴァルが此方を見ている。まあ気にするなってシュヴァル
「僕のことなんて、ほっといてくれても……あうっ」
またネガティブな方向に走りそうになったので今度はほっぺたをふにふにって突っつく
「私はシュヴァルと一緒に居たいんだけどなー?なー?んー?シュヴァルはそうじゃないのかなー?私は寂しいぞー????」
「うぅ………」
素直な好意をぶつけまくるとシュヴァルは顔を赤くして降参しましたというように私の胸に飛び込んできてぎゅっと抱きついてくる。よしよし
「私はシュヴァルのこと好きだからなー」
なんていうと遠慮がちにてしてしと尻尾で叩いてくる。プライベートな面でだと私はあんまり交友関係広くないんだぞー?
「……いつも、ありがとう。セルメントさん」
「ん、シュヴァルの可愛い顔が見られれば私は十分なのです」
「ほんとに、そういうところ……っ」
ぽかぽか叩いてくる姿も大変可愛らしいと思いますはい、ウマ娘、というかトレセンに居る奴は大体キャラが濃すぎるから、シュヴァルみたいなのはほんとに癒やしなんだよねぇ……かわよ……
シュヴァルグランちゃん可愛い…………可愛いな…………
皆さんCB引けましたか?私は引けました、だけどシュヴァルグランちゃんがいつ来るかで頭がいっぱいです。
Q.セルメントからシュヴァルグランを取り上げるとどうなりますか?
追記.シュヴァルグランちゃんのタグこれしかないんだけど????誰か書いて????
A.ストレスで倒れます
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お泊りさせるときはちゃんと服を用意しとけ
「というわけで今日は泊まっていってねー」
「う、うん」
ゆっくりと抱っこしながらゆらゆらと体を揺らす、シュヴァルはこうされるのが好きだったよなー、なんて思いつつしてあげる
「なにか寮に取りに行くものとかある?」
そういうとシュヴァルが持ってきてたカバンの中身を漁る、持ち物はウマホとお財布だけだった、あとは玄関に置いてる釣り竿かな
「……特に何も…あ、でも着替え」
そういえばそうだったわ、泊まるんだからそういうのも用意しとかないと。しまった、シュヴァル泊まらせる想定してなかったわ畜生、失態だわ
「んー……今から買いに行っても良いんだけどなぁ」
だけどシュヴァルとイチャイチャしてたいので外には出たくない。というかアイツラとエンカウントする可能性が無きにしも有らずの時点で却下なのだよ
「まあいいや、私の服着せればいいでしょ」
そう言うとシュヴァルが吹き出した、吹き出した。え、マジ?吹き出すぐらい嫌だった?ちょっとセルメント横になりますね………
「僕は、それでも…大丈夫です」
ごめんよシュヴァル、できれば新品のを着せてあげたいんだけれど私ので我慢してくだしいあ………
そんなこんなで3時になったからホットケーキミックスがあったからパンケーキを作った。メープルシロップがなかったのが痛手だけどシュヴァルは気にせず小さい口でもぐもぐしてた、軽く尻尾振ってるから不味くはないんだろう、良かった良かった
そう思いつつおやつが終わったのでうたた寝タイム、すやすやと眠りに落ちる
そんなセルメントをじっと黙ってシュヴァルグランは眺める
そして寝ているセルメントを尻目に過去をふと思い出す
「あの時も、こんな感じだったなぁ」
──僕には、姉がいる。活発な姉だ、僕なんかとは違う世界にいる。そんな人
──僕には、凄いお父さんがいる。ヒトミミのスポーツは廃れている、と言われてるけど。盛り上がることも有る、海外で成果を出して認められたすごい人
──だけど、僕はそうじゃない。他の皆よりも足は早くないし。どうしても姉の影がちらついてしまう、そんな心の弱さが嫌いだけれど。治すことも出来ない
今日もため息をつく、居心地が悪い学校から帰って。あんまり家に居たくなくてよく釣りに出かけて気を紛らわしていた。
釣れる釣れないとかはどうでもいい、ただただ逃げたくてそうしてるだけ。そして憧れた
ただただ泳ぎ回ってる魚に。何かに一生懸命になってる人達を。。そして憧れるけど諦めてしまう、どうやったって僕は日陰だ。日向に居るような、居て良いようなやつじゃない。そんなことは分かってる
でも、そんな僕にも。気にかけてくれる人はいる
『やっほーシューちゃん』
釣りをしてると背中から声をかけてくれる人がその人だ、名前はセルメントさん。独りぼっちでいた僕に話しかけてくれて。こうやって時々様子を見に来てくれる人
『こん、にちは』
『はーいこんにちは。駄目だぞー?あんまり独りでいると』
椅子に腰掛けてた僕の隣に肩を触れさせながら頬を突っついてくる、僕がどれだけネガティブなことを言っても側に居てくれる人。
『シューちゃんはシューちゃんだよ、お姉さんにはなれないしならなくていいよ。キミはキミなんだからさ』
そんな風に劣等感の塊みたいな僕に怒るわけでもなく、変わろうと促すわけでもなく。そのまま受け入れてくれる。なんというか…うん、優しい人だ
会話が持たないことが苦痛になる僕だけど、セルメントさんと一緒のときは特になんとも思わない。時間を共有してる、そんな感じがする
うっかり僕がちょっと寝ちゃったときは。ぎゅっと抱きしめて寝かせてくれたりしてた。恥ずかしかったけど、嬉しかった
でも、そんな日も長くは続かない
セルメントさんがトレセン学園に合格したことは、僕も知っていたし。そうだろうなって思っていた、あの人は日向に居るような人だから。僕みたいな日陰に居るような人とは違う
『ふんふー……』
以前と同じ様に二人で居ると
『はい、シューちゃんにあげる』
そういって手渡してきたのは。セルメントさんと思わしき、いわゆるぱかプチと言われてるものだ。自作したのかな?
『私がトレセン学園に行くことは知ってるよね?』
『……うん』
思わず項垂れる、また独りぼっちになるのかな。なんてことも思ってしまう
『だから、それあげる。私は多分しばらく会ってあげられないだろうし。もしかしたら、もう会えないかもしれないし』
私は居なくなっちゃうけど、私って言う人はシュヴァルグランというウマ娘を忘れないから。だから僕にもセルメントというウマ娘を忘れないで欲しい。と
嬉しかった、僕のことそんなに気にしてくれてる人が居たことに。あとは、セルメントさんは隠してるつもりなんだろうけど、所々指に跡が残ってる。頑張って作ってくれたんだろうっていうのが伝わってくる
『シューちゃん』
『………?』
そろそろ帰らなきゃいけない時になり、多分コレが最後なんだろうなって思いながら声をかけて振り向く
『私はシューちゃんのこと忘れないで置くから、シューちゃんもわたしのこと忘れないでね?あと……
セルメントさんの口癖だ、無理はしないでっていうのは。それを聞いて頷くと、最後に軽く抱きしめて名残惜しそうにしつつ去っていく
そうやって、僕とセルメントさんの関係は終わった
──なんて当時は思ってた
だけど、僕の体は僕が思っていた以上に動けたみたいで。僕もトレセン学園へ入れることになった。正直怖かったけれど、セルメントさんに会いたかったから
……だけど、勇気が出せなかった。ほんとに覚えてくれているか分からなかったし。あとなんだか前のセルメントさんとは違う雰囲気だったのも有る
そう思っていたのは僕だけだったのは最近だった、たまたま人通りがすくないばしょで再会したんだ
『んー……?』
僕のことをじーっと見てくるセルメントさんに思わず飛び腰になってしまう。もしかしたら覚えてなくて変なやつだと思われちゃったかもしれない、そうだったら多分僕は耐えられない
『んー……』
再度僕の事を見つつ首を傾げたセルメントさんにとうとう逃げ出したくなってしまう。うぅ……なにか言ってくださいよ……
『
『えっ?』
思わず声が漏れてしまう、忘れてて誰だか思い出そうといしてるんじゃ……?そんなことで頭がいっぱいだった僕を見つつセルメントはクスクスって笑う
『んー?シューちゃんは私が忘れてると思ってたのかなー?』
『あうあうあうあう』
ほっぺた突っつかないでくだしゃい、そんな願いも通じるわけもなくされるがままになっている
『忘れるわけないでしょ?《キミ》は私の友達なんだからさ』
そう言われたのを、多分僕はずっと覚えてるんだろう。そんなことを思い出していると、僕も眠くなって寝てしまう
おやすみなさい、セルメントさん………
あー…ちょっと寝すぎたかも、なんて思いつつ体を起こそうとすると。シュヴァルが上に乗っかって寝ていた、寂しんぼは相変わらずだなぁ。なんて思いつつゆっくりと抱き起こしてご飯作ろうとするとがっしり掴まれていたことにも気づく
「シュヴァルー?」
少しでも引き剥がそうとするとやだやだっていう風に体揺すってきて離れてくれない。こりゃあスペ以上に甘えん坊だ、前から知ってたけど
起きないものは起きないので、もう一回横になる。無理やり起こすのも良くないし、なんだかしあわせそうだしな
トントンって背中を撫でながら適当にウマホを弄ってると、シュヴァルがモゾモゾって動く。スペみたいにとうとう噛み付いてくるのか?なんて思ってると
ぽふっ
肩に顔を乗せつつ全身でぎゅぅぎゅ〜って抱きついてくる、可愛かよ。撫で回せばくすぐったそうにしてる
思う存分構い倒してれば、そのうちシュヴァルが目を覚ましてお顔真っ赤で恥ずかしそうにしてるけど逃さないになんなら寝てるときよりももっと激しく構い倒す。こうすると逃げることを放棄するのでたまにやる
いちゃついてるともう日が落ちる頃になってた
夜はコレといってやれることもなかったのでご飯食べて一緒にお風呂入った。何回か一緒に入った事あったはずなんだけどシュヴァルはなんだか恥ずかしそうだった
そしてお風呂上がって私の服を着せた、ちょっと大きかったのかだぼっとしちゃってるけどいいかな?パジャマが萌え袖とかしたのは別に狙ったわけではないですはい
「髪乾かすよー」
「ん……」
膝上に乗っけてドライヤーを当てていく、耳の部分は敏感なのであんまり当てないようにしつつ。手櫛で梳かすこの時点で大分うとうとしちゃってたので、今日は早めに寝るかなと思った
案の定髪を乾かす頃にはシュヴァルはすやすやと寝てしまっていた。寝る前のお風呂だったので何も問題はないのでそのまま一緒にベッドに潜り込んで寝かしつける
「おやすみ、シュヴァル」
そういうと私も寝る。じゃないと色々と不味いと思ったので寝る、別にシュヴァルの頬を撫でてたら指に吸い付いていたので危なくなったとかそういうのではない
誰かパジャマ萌え袖シュヴァルグランちゃん描いてくれ
それはそれとして、R15ってどこまで書いていいのかちょっとよくわからん…キスシーン位までだろうか
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幕間 生徒会のお手伝いさん
この話は時系列的に本編の前になります、スズカに振り回される前のお話かつシュヴァルグランに再開する前の話になりますね
「ふぅ………」
生徒会室にため息がこぼれ落ちる。ため息をこぼしたのは副会長であるエアグルーヴだ、今日も今日とて厄介事が数多く寄せられるのが生徒会である。生徒間のいざこざの仲裁やら、事務手続きやらで大忙しである。無論巡回していればトラブルに立ち会うことも有るので気の休まる時間というのは無いに等しいのだ
「さて、なんとかするしかない……ん?」
積もりに積もった書類に手をかけようとした時、ドアがノックされた。入室を促すと、見知らぬウマ娘がやってくる……確か……ああ、セルメント。と言ったか
「職務中失礼いたします、副会長。資料の方を提出致します」
「すまない、助かる」
落ち着いた表情で書類の束を机の上に置かれる。不備がないかチェックするのは骨が折れるが、仕方が有るまい。仕事なのだからな…そう思っていると
「書類の方は確認済みです。記入漏れ、表記の誤り、抜けが有るものは此方である程度弾き。突き返しているので目を通していただくだけで問題ないかと」
と言われる、ふむ………そうしてもらえるのは非常に助かる。仕事が一部だがぐっと減るのは事実だ……ん?
「その言い方だと、他の生徒の物も…?」
「私の方である程度確認を。要らぬ気遣いではあるとは思われますが、無駄な時間を使わせてしまうわけにも行きませんので」
僭越ながら言いつつセルメントが話す、今目を通す限り特に問題はない。弾いた書類の枚数と弾かれた人物も分かりやすくリスト化されている…何故か1枚白紙の紙も印刷されているが。
「そちらの方はもしお気に召されたのであれば。刷れるように作成しておきました」
とセルメントが此方が尋ねる前に補足をしてくれる…なかなかに優秀だ。皆がこう出来るわけでがないのは重々承知では有るが。求めてしまうのが性というものだ
「私は此れで失礼させていただきます。万が一精査して不備があった場合は連絡を頂けると幸いです。では」
そういうと直ぐにセルメントは此方に一礼して部屋から出ていく。これで少しは楽ができるといいが
その後リストは印刷されて各方面に配布されることになった、優秀な物は使い回すに限る
──⏰──
忙しさで時が経つのも忘れたある日、私は不覚にも起床時刻を大幅に遅れる失態を晒していた。門限までには時間が有る、だが生徒会の仕事があることを考えればあまりにも足りない。
焦燥に身を包んで生徒会室に入る、そこで待ち受けていたのは
「おはよう御座います副会長、お疲れの様ですね」
何故か生徒会の仕事をしているセルメントの姿だった、判子が必要なものは寄せており。確認だけでいいものは処理済みの棚へ。不備があるものは付箋とファイリングが施されていてとてもわかり易い
「あ、ああ……自分でも根を詰めているのを自覚していなかったようだ……いや、そうではなくだな」
「まずは、手を動かして終わらせてしまいましょうか」
「…そう、だな。そうしよう」
尋ねる前にセルメントに促されて隣に座りつつ流れ作業で書類を処理してく。此方のペースを鑑みて流してくれているのでやりやすい。私でしか処理できないものをやっている最中は別のことをしているようだ
書類が片付いた時刻は普段私がやっている時刻よりも随分と速いことを時計の針が示していた。間に合わなくなるかと一時は焦ったが、なんとかなったな。そう思っているとセルメントは寄せていた書類を片手に退室するところだった。
「此方は私が突き返しておきますので」
「あ、あぁ……」
「では、失礼いたします副会長」
そう言うと直ぐに行ってしまった。取り付く島もないというよりは、此方のことを鑑みてくれたという方が正しいような気がする、そう思いつつ後で礼でも言わないとな。等と一人心地にそう思った
そんな風にちょくちょくセルメントが生徒会の仕事の手伝いに来てくれるようになった、とは言うが。会長やブライアンが居るタイミングではなく。私が一人で仕事をしてるときだけだが…単にタイミングが悪いのだろう。負担が減ってある程度まとまった時間も取れたりするようになるのは感謝しか無い。
そんな慌ただしい毎日が過ぎていくある日
「……?」
花壇の手入れが終わり、生徒会室に戻ろうとすれば。セルメントが一人で日光浴…というよりは単に寝てしまっているのを見つける。
「セルメント?」
声をかけても反応はない。どうやら居眠りではなく本当に寝入ってしまっているようだ…ただ、このままにしておくのはどうなのだろうかとも思う、放課後故寝入ってしまっては門限もすぎる。夜になればある程度冷え込むこの季節に放置は良くないだろう………となるとどうするべきか
「ふむ」
保健室は無しだ、特に衰弱しているわけでもない。寮は…同室があれではゆっくり休めるとは言えない。無論私の方もだ。となるとどうするべきか、やはり生徒会室に行くしか無い
「……失礼する」
聞こえるわけはないが一応断りを入れてから背負って生徒会室に赴く。誰かに見られれば要らぬ噂も立つので注意しつつ……今日は会長は別件で出払っている。ブライアンは……何をしているのか分からん。今はそれはいいか
──⏰──
「…………」
吐息を立てながら寝ているセルメントを横にして書類を片付けていく、しばらくすると。セルメントが緩く起き上がる、普段の彼女からは考えられない気の抜けた表情だ。疲れているのだろうな…
「おはよう……?」
声をかけてみるが夢見心地なのかうつらうつらと寝ぼけている。半分ほどしか意識が覚醒していないのか返事らしい返事もない。他の者が相手であれば厳しい態度を取るのだろうが、相手が相手だ。流石に酷だろう
短くない時間微睡んでいると
「……む」
此方へと体を預けてくる、まだ寝たりない様子だ。まあ、寝かせておいてやる方がいいだろう、これも先日の借りを返す、ということも兼ねてな。
規則正しい吐息を立てながら眠っているセルメントは猫のように体を丸くしている、落ち着いてくれているようで。特に寝返りも打つこともない、寝相が悪くない様子なので助かる
そこからしばらく紙の擦れる音とセルメントの寝息だけが部屋にこだまする、まあ存外悪い時間でもないか…
「……んん」
大方仕事も終わったところでセルメントが起き上がろうとする、だがうまく体を起こせないようなのでそのままにさせておく。
「…もう少し休息を取る方がいい。いいな?」
そういうとセルメントは頷く代わりにそのまままた眠りにつく。雰囲気も普段と大きく変わっておとなしい、というよりかは素直な雰囲気だ。言われたことは大人しく聞く物分かりの良い子なのだろう
そしてそろそろ帰る時間になる頃になっても起きる気配もなかった。仕方ない、寮へ送り届けてやるとしようか
セルメントは年上に弱いです。
ということは……?
そういうことです。ここからはしばらく年上組との絡みが多くなってきます
ヒロインはセルメントらしいのでそうします
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午前中のヘイ彼女!、午後の自由人は流石にキツイんだけど???
ふぁー……休日も終わって学校だわ、シュヴァルとのんびり休日を終えての月曜日はとっても憂鬱である、帰ってきたらエアグルーヴが死にかけてたのでファイン殿下に預けて馬鹿どもをしばき倒してダートに埋めてきた。自業自得だから
久しぶりにアパートからの登校だからのんびり行くかな……なんて思ってると視界の橋に住所が特定されるような高級車がアパートのまえに止まってるんだけど。行かなきゃだめ?行かなきゃだめ?そっかぁ……
「おはよーございまーす……」
「おはよう!朝だからテンションアゲアゲでいかないと!」
スーパーカーことマルゼンスキー先輩である。あの、ただのアパートの前にそういう車止められると非常に困るんですよね。ヒソヒソされるんですよ、大変困ります。一回冗談かどうかわかんないけどマルゼンスキー先輩のマンションに来ないか的なこと言われたけど…先輩のご自宅ってあれですよね。カウンタック格納できるマンションですよね?めちゃくちゃセキュリティ厳重ですよね?前に遊びに行ったときに網膜認識とかありましたよね…あれ?しれっと私、生体認識取られたのか?…こ、こわひ
「隣、乗ってく?」
「あ、はい」
すごすごと隣の席に座る。カウンタックはカウンタックでも。多分これウルフだよな……めちゃ高いやつ。これお父さんのお下がりらしいけど。数十億するってことだよな此れ…そもそもカウンタック自体現存数が少ないんだし
なんてことを思ってると発進する。マルゼンスキー先輩スピード狂いらしいけど私はそれに遭遇したこと無いんだよね。なんでだろう、流石に学園に行くまでには飛ばさないことが多いんだろうか。よくたづなさんが犠牲になってることがあるらしいんだけどね。
「気分の切り替え、できた?」
「あ、はい……ん?どうして知ってるんです?」
「釣り道具持ってったの、見かけたから気分転換にでも行ったのかなって思ったのよ」
「そうでしたか…とりあえずリフレッシュできましたよ」
「それなら良かったわ、セルメントちゃん。頑張り屋さんだから」
そんなことはないと思うんですがね。スズカ以外に関してはあんまりに何もしてない気がするし、客観的に見たらそんなこと無いのかもしれないけれどね
というわけで正門近くで降ろしてもらう。というわけで登校…って思ったんだけど今日はトレーニングメインの日だからどうしよっかな。そういえばマルゼン先輩は暇なんだろうか
「そうだ、マルゼン先輩。今日時間あります?トレーニングの指導してほしいんですけど」
「わかったわ、じゃあグラウンドでね?」
「よろしくおねがいしまーす」
──⌚──
というわけでトレーニング指導してもらった、まあフォームの出来とかそういうのは比較にならんので足運びとか色々と勉強させてもらった。相変わらずはえーなーと思いつつ並走と呼んでもいいのかわからんのをやっていく
「お疲れ様、水分補給は忘れずにね?」
「ありがとうございます………」
へろへろになっているとスポーツドリンクを手渡されてちびちび飲み始める。筋肉痛はないのでアイシングはとりあえずしない、あれは一時的に痛みを抑えるためにやるから。実は今みたいに足が痛くないときにやると逆効果だったりする
「ねえ、セルメントちゃん」
「…どしました?」
なんかいつもと雰囲気違うマルゼン先輩に首を傾げる。バブリーな雰囲気がないというか、なんというか。ちょっと調子狂うのだ。
「セルメントちゃんは、その…ね?どうして私とたまにだけどトレーニングしたがるのかしら?」
「特段、理由はないですよ?ただまあ……あれですかね。なんというか、落ち着くので」
本心ではある、マルゼン先輩は大人っていうか、こう。余裕がある、最初はめちゃくちゃ気を使ってたんだけど。そうするとしょんぼりしてしまうのである程度くだけた話し方をするようにしている。
「単純にマルゼン先輩とトレーニングするのが楽しいっていうのもあるんですけど」
この人、走るとまあ楽しそうに走るんだよね。それを見てるのは私は好きだったりする、勝ち負けは当然ある世界だから甘いといえば甘いんだけどさ。それはそれ此れは此れなんだよね
「……そっか」
なんだかトレンディな雰囲気なってきたぞ。こういうのはきはずかしいからあんまりやりたくないんだよねー……って思ってるとなんか知らんが撫でられた。マルゼン先輩好きなんだろうか、撫でるの。とりあえず甘んじて受けておこうかな。
午前中のトレーニングはこれでおしまい。午後はマルゼン先輩もなんか予定あるらしいのでここでお別れ。また後で並走でも頼むかな、ほとんど並走の体を取れてないんだけど。相手がスーパーカー故致しかたない
んで午後のトレーニングはどうすっかなと思っていたんだけど
「うん、此れがいいかな?」
──どういうわけかシービー先輩に拉致られている。どういうわけかかはまったくもって不明である。この人不意に現れては連れ回してくるのでちょっとエンカウント率下げたいんだけどこういうときだとほぼほぼエンカウントする、強制エンカじゃないだけましといえばそうなんだけどさ。朝のマルゼン先輩みたいに
「ねえ、セルメントは此処でいい?」
「ん、いいですよ」
というのも近くに新しいラーメン屋ができたので下見に来たのである、シービー先輩がね。カツラギエース先輩が此方に両手を合わせて謝ってきてたけど。別に問題ないですよって手を振り返えしたらなんかずるずるってシービー先輩に引きずられて今に至る。カツラギエース先輩も大変だよな…ちょっとあの人には親近感湧くんだよね。お世話係という意味合いでだけど
「やっぱり混んでるね」
「新しくできたばかりですからね」
そんな事を言いつつ並びながら待っている。シービー先輩めちゃくちゃ目立つのでとなりにいる私にもちょっとだけ視線が来るけど気にしない気にしない。多分シービー先輩の隣りにいるから視線を向けられてるだけなんだから。
「そういえばマルゼンとトレーニングしてたらしいね?」
「まあ、はい」
情報流れるの早くない?というか私が誰とトレーニングしてるかっていう情報……いる……??需要ないでしょどう考えても。物好きなやつもいるもんだなぁ、なんてことを思いつつ返事した
「じゃあ今度はアタシと一緒に頑張ろっか?」
なして?なして!?心の中のスペペの言葉が移る、あいつ実は方言使うらしいんだけど無理して標準語に直してるらしい、それはそれで愛嬌としていいと思うんだけどそれ言うとおそらくキレられそうだから言ってない。
「マルゼンと一緒にしたんだよね?」
「はい」
「じゃあ次はアタシじゃない?」
「えぇ…??」
たぶん今の私の顔は宇宙猫になってると思う。話の流れが一切わからないからである。まあトレーニング相手がいないからいいんだけどさ。でもシービー先輩ほどのウマ娘のトレーニング相手が私だとねぇ…いやマルゼン先輩のトレーニング相手としてもクソ雑魚もいいところなんだけど。言ってて悲しくなってきたわ……
「マルゼンとはしてアタシとはしないんだ…ふーん?」
な、なんですかそのジト目は。まるで浮気相手を見るような視線はやめてくれませんかね!?ただトレーニング一緒にやっただけというか。そもそもウマ娘同士では?というへんてこな考えをしているとなんか視線が余計に重くなったのでやけくそになるしかねえ!!
「わ、わかりました。やりますよトレーニング!」
「よし、これで午後の予定決まりっと。ルドルフに小言言われなくて済むよ」
「……小言?」
「あー……まあ、色々とね。ほら、後輩の育成とかそういうの」
「あー……」
シービー先輩、多分感覚派だろうからそういうの苦手そうだしな。かと言ってそれを理由にのらりくらりやってると会長にお小言言われるから形としてだけでもヤッてますよオーラを出すと。なるほどなぁ、いや私追い込みじゃないから真似できないんだけど。マルゼン先輩?あれはもう先行でも逃げでもなくマルゼンスキーという走り方だからね、しょうがないね
「それじゃ、軽く済ませて行こうか」
……トレーニング前にラーメンなのかそうなると!?そう思ったけど今更なので抑えつつ食べようとしたんだけど。遠慮しなくていいと言われていっぱい食べさせられました。午後のトレーニング死んだなこれ………
──⌚──
「前より大分形になってきたんじゃない?」
「コテンパンにしてから言いますそれ……??」
ええまあはい。ボッコボコにされました。経験値はたくさんはいるんだけどそうじゃないって言いたいやつだね此れ。パワーレベリングとすら言えないよ、だって私が追いつけないんだもん。ぐすん
「でも。ちゃんと一緒に並走してくれたよね?」
「時間割いてもらってますからね……」
そう言いつつマッサージをする、筋肉ほぐしておかないと明日大変なことになるからなぁ。なんて思っていれば背中をグーッとおしてもらう。この人自由人だからこういう事するかと言われれば珍しい気もする。まあ気まぐれだからしょうがないな
「はー、たまにしっかり動くと気分がいいね」
「そうですね…いや毎日やったほうがいいんですけど」
「気分が乗らないとやる気起きないでしょ?」
「それはそうですけどね」
そんな事を言いつつ片付けして、お互いに着替えてグーッと背伸びする。ふふぃー、疲れるわやっぱり。自分ひとりでやるのより効率が言い分負荷はそれなりに掛かるからね。そこはしょうがないものとしておこう。
トレーニング終わったので解散、シービー先輩はなんか散歩してくるってふらーっとまたどっか行ってた。その後なんか先生がシービー先輩探してたので聞いたらどうやら授業出席数がちょっと怪しかったらしい、それを後輩の指導でちょっと大目に見るっていう約束だったらしいんだけど報告しないままだったそうだ。まあ私が指導してもらいましたよと色々と話したら納得してくれたっぽい。トレーニングしてもらったから此れぐらいはまあ。いいかな
放課後は何をしますかねぇ
マルゼンスキー→元々はそこまで交流なかったけど。トレーニング相手に一度だけなったことがありそこから交流が始まった、スーパーカーなので周りから尊敬されるけど。同時に距離感がったところに普通に接してたら仲良くなった。セルメントは「速いのはそうですけど。別に一緒に走りたくはないとはなりませんよ?自分が勝てないからって距離を置くのもね」といっただけという認識。
ミスターシービー→いつもの感じで他人を巻き込んで迷惑かけたかな、というときにセルメントも巻き込まれていたのが初対面。そこからちょくちょくエンカウントして何かに付けてトレーニング一緒にしたりご飯に連れてったりする(ちなみにシービーの奢りである。セルメントが普通に出そうとしたらなんか不機嫌そうになった(セルメント視点)のでシービーに奢られている様子)セルメントは「別に迷惑かけられたという認識もないし、シービー先輩らしいと思いますよ。シービー先輩はシービー先輩らしいままで、それが嫌じゃないからみんな周りにいるんだと思います。まあそこは私もそうなんですけどね」というだけの認識
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