がっこうぐらし! 実績「二度と目覚める事のない悪夢」獲得RTA (TKB-072-1)
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いちげんめ

 おまんこぉ~^(挨拶)

 旬何か関係ねぇんだよ! やりたいからやるもう何番煎じか分からんがっこうぐらし!RTA、はぁじまぁるよー。

 本ゲームは原作「がっこうぐらし!」を元にして制作されたゲームです。作り込みが凄まじく、一時期物凄い勢いで流行りましたね。最近は静かで悲しいなぁ…(諸行無常)。

 前置きはほどほどに、では。

 

 はい、よーいスタート(棒)

 

 あ、そうだ(MUR)。飛ばせないOPをただ眺めるのもあれなので、今回走るルートについて、お話します。

 今回走るルートは、実績「二度と目覚める事のない悪夢」獲得RTAです。通称、「籠城ルート」と呼ばれていますね。条件はいたってシンプルで

 

 「最高難易度の[ナイトメア]で学校から一歩も出ず最終日まで籠城する」

 

 他に細かい条件とかは、ないです(NYN)。

 理論上はゆきちゃん化しためぐねえが一人で学校生活してようと達成出来ます。

 これだけ見ると簡単そうにみえますが、条件のナイトメアモードは即死イベ、ランダム「あめのひ」、セーブ制限やらと、確実にプレイヤーを殺しにかかってくるイベントが盛りだくさんです(白目)。

 しかも皆さんご存知の通り、このゲームアホみたいにランダム要素が馬鹿強いんですよね…(語彙力)。

 

 だがそれがなんだってんでぇい(江戸っ子)。馬鹿野郎お前俺は走るぞお前!(RTA走者の鑑)。

 

 お、そうこう駄弁っていたらOPが終わりましたね。まずは主人公君を確認しましょうか。

 今回主人公君ですが、難易度ナイトメアの仕様上キャラクリはランダムです。なのでゆきちゃんみたいな体格したショタorロリを引いた場合、即リセです(364敗)。

 闘えない事はないんですが凄まじくめんどくさい事になる上、愛嬌しかないショタだと好感度上げすぎの影響で依存されます(6敗)。何なら監禁とかされます(2敗)。

 

 ええと、名前は「鳳条典雅(ほうじょうてんが)」。聞いた事ありませんね…、後で調べます(SCP---J)

 性別男で学年は三年生の高身長ヒョロガリ。他スペックはよくも悪くも普通。スキルは[器用]以外特になし。主要キャラとの関係はめぐねえ以外無し。

 見た目はクッッッッッッッッッソイケメンの美人(名は体を表す*1)

 まるで女の子みたいだぁ(直球) セクシー…エロイ! 物の見事に男の娘ですねクォレワ…

 

 ――ってちょっと待って?ホモ君じゃないやん! どうしてくれんのこれ? あと名前が違ったらホモ君になってたのになってないやん! 分かる?この罪の重さ?

 …ママエアロ、今回は見逃したる(寛容)。えっちぃ名前してるしね。

 

 主人公君の確認も終わったので、本ゲームの要介護ことめぐねえを探しましょう。

 めぐねえもとい佐倉慈を探す理由はいつも通りですが、このナイトメアモードだと通常以上に動きが不規則なんですね。

 普通だと50%ぐらいの確率で原作とは違う動きをしますが、ナイトメアだと100%ランダムです。元々厄介なのにさらに厄介になるのか…(困惑)。

 しかも、ハードモードはアウトブレイク30分前から始まるんですよね。つまりゲーム時間30分内にめぐねえを見つけられないと、めぐねえはほぼ確実に死にます(無慈悲)。

 

 あ、ついでにお菓子を売店で買って行きましょう。初日夜に使えます。

 っとおや?こんな所に珍しいですね。嬉しい誤算だぁ(感動)

 

「あら? 鳳条さん?」

 

 めぐねえおっすおっす

 

「佐倉先生です!」

 

 か゛わ゛い゛い゛な゛ぁ゛め゛ぐ゛ね゛え゛

 

 あ、そうだ(唐突)。この辺にぃ、園芸部、来てるらしいんすよ。自分見学いいっすか~?

 

「見学? 別にいいけど…、今から?」

 

 そうだよ(便乗)じゃけん今行きましょうね~

 

 はい、めぐねえを捕まえました。これで屋上に行けばめぐねえの生存はほぼ確実です。こうするとすんなり付いてきてくれるんですよね。

 めぐねえチョッッッッロwww。出来れば普段も言う通りにしてくれよなぁ~…(切実)

 

 一応説明しておきますと、めぐねえは「私は教師だから生徒の皆を守らなきゃ(使命感)」と言うクソ強信念で皆を守ろうとするんですが…ヒヨって元生徒である[かれら]に手出し出来ずそのまま殺られます。

 稀に覚醒してシャベルゴリラことKRM姉貴に並ぶ強さを手にするんですが、本当に稀ですので…まず期待出来ません。

 しかも勝手に行動する事が非常に多いのです。

 勝手に魔導書(マニュアル)取りに行ってSAN値直葬して帰って来て幼児退行からのガチ依存とか平気でするんですよね…(7敗)。

 そんなんだから要介護なんてあだ名つくんだよォン!? あん時のゆきちゃんの困惑と哀れみと軽蔑が入り交じった顔は一生忘れんわ…。

 

 さて、屋上に着きましたね。まいどー寿司屋でーす(大嘘)

 

「あら、めぐねえと――」

 

 会話をボタン連打で飛ばしつつ畑の野菜を確認します。実はりーさんに聞かなくてもプレイヤーが目視で確認できるんですね、ここ。何の変哲もないTDN世間話を聞き流しつつ調べるとタァイムが短縮出来ます(ごり押し)。

 ルートの都合上、学校を出る事が出来ないのでここはかなり大事です。キュウリとプチトマトなんて物だった日にはリセです(4敗)。

 ええと、葉っぱの形的に育ててるのは…さつま芋とカボチャ…ですね。両方とも大当たりです。

 

 

 やったぜ。 投稿者:変態糞投稿者 (8月10日 (水) 11時4分51.4秒)

 

 

 すみません。心の糞土方が出てしまいました(熱盛)。

 

 この二つは腹持ち、メニュー、味。どれをとっても最高です。ただ、この難易度だと数日で限界まで育つなんて事は起きません。厳しスギィ!

 なので、必然的に食事は学校内にあるもので補う事になります。

 

 と、世間話を適当に聞き流してると、アウトブレイクが始る時間になりましたね。(場の空気)冷えてるかぁ~?

 

「お、おい誰か!」

 

 KRM姉貴が上がって来ました。さっさと中入れてロッカー先輩で扉塞ぎましょう。

 後はめぐねえとりーさんと一緒に扉押さえるQTEしつつゴリラの覚醒を見守るだけの楽チンチンなイベントです。

 

「先…輩?」

 

 ん?

 

「ひっ…!」

 

 ちょちょちょちょちょっと待って!?

 KRM姉貴覚醒素材に怯えて何も出来てないやん! なんなら黄金水(小便)もらしてるやん!? どうしてくれんのこれ?

 

ゲーム「僕がさっき…、(イベント発生)食べちゃいました…」

 

 食べた!? この(ゾンビパニックの)中で!? この(アウトブレイクの)中で!?

 …はぁ~(クソデカため息)、あ ほ く さ。どうしてくれんのこれ?(ホモは二度刺す)

 

ゲーム「ままそう焦んないで。パパパっと(先輩)殺って終わり! (くるみ覚醒イベ消えるだけで)ヘーキヘーキ、ヘーキだから」

 

 よかねぇんだよなぁ!?(ガチギレ)。それじゃ最高戦力のKRM姉貴が覚醒しないじゃないか…、RTAしてるこっちの身にもなってよ(棒)。

 …ええいままよ!(赤い彗星)。もう波は来ないと思うので二人で押さえきれるでしょう、いざとなればゆきちゃんもいますからね!

 

 そうと決まれば行動じゃオラァ!

 まず先輩を殴り飛ばして倒す! そしてシャベルの棒部分で口を塞ぐ!

 取り敢えずはこれでどうにかなります。あとはこの覚醒素材に止めを刺すだけなんですが…。

 

「お、おい! いきなり何すんだよ!」

 

 見て分かるだルォン!? かれら化した先輩抑えてるんですよ! 小便漏らしてる暇あったら早くバールなりスコップなり持ってきてこれ(先輩)の頭叩き潰せっつってんだYO!(虐待おじさん)

 

「ちがッ…これは…」

 

 あやっべ、そろそろスタミナ切れそう。

 典雅君身長は高いんですけどヒョロガリなんですよね…。もっと鍛えてホラ。

 

 ――これだけはやりたくなかったんですが、仕方ありません。覚悟決めろ(ヒゲクマ)。

 

「………ッ!?」

 

 工事完了です…(達成感)。いやぁ、見事に首にグサッといきましたね。

 典雅君のSAN値(正気度)は…よかった、何とか範囲内です。KRM姉貴も一応大丈夫そうですが、好感度がメガトンコイン。そりゃ(目の前で好きな人殺されたら)そう(なる)よ。

 

 しかし何でこんな所で低確率イベ引くんですかね…(物欲センサー感じるんでしたよね?)

 

「お…お前ェ!!!」

 

 KRM姉貴が鬼の形相で殴りかかって来ましたが大丈夫です。こんな時の為にゆきちゃんがいます。彼女は別名空気清浄機とも呼ばれるぐらい場を明るくしてくれるんですね。

 寄り添って話でも…ってぇ…ん? あ、あれ~可笑しいね、ゆきちゃんいないね(焦)。

 

 ――あ、そっかぁ。寄り道せずに真っ直ぐ屋上まで来たからかぁ…。

 

 グボァ! て、典雅君のHPが…。

 止めて止めて叩かないで! そんな事したら屋上から落ちちゃうだろ!

 

「恵飛須沢さん!」

 

 めぐねえナイスゥ!(建前)ナイスゥ!(本音)

 危ねえ(激ウマギャク)、もう少しで突き落とされる所でした。

 

「離せよめぐねえ! 離せよ!」

 

 あーもう(人間関係)目茶苦茶だよ…ゆきちゃんも実質消えたようなもんだし。

 

 ま、自己ベストを越えたタイムを叩き出してるので続行するんですけどね、初見さん。

 

 ブラックアウトした所で今回はここまで。ご視聴、ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 唐突、あまりにも唐突だ。最初は悲鳴、それが聞こえたかと思えば爆発音があちこちから聞こえてくる。ただ事ではないのは明らか。

 

「え…」

 

 思わず声が漏れ出る。

 下の校庭では脳が理解を拒む景色が広がっている。何せ人が人を襲う…いや、人が人を喰らう地獄が広がっていたからだ。

 

「お、おい誰か!」

 

 荒げる声と共に激しく扉が叩かれる。鳳条さんが扉を開け声の主を中に入れた。屋上に入ってきたのは恵飛須沢胡桃さん。その背中には彼女が愛する先輩が担がれていた。

 

「早くドアを! “やつら”が来る!」

 

 直後、扉の窓が突き破られ多数の“かれら”の腕が鳳条さん目掛けて伸び、彼の腕を掴んだ。彼は声にならない声を発しながら力ずくで無理矢理振りほどき、地面に座り込み扉を押さえた。

 

「だっ誰か…! 隣のロッカーを…!」

 

 必死な表情とかすれた声で訴える彼に、はっとした表情で悠里ちゃんがロッカーを移動させる。私も続きロッカーを移動させ扉を塞いだ。三人とロッカーでやっと押さえれるような強い衝撃が私達を襲う。

 これで一旦はどうにかなった。そう考えれたのも刹那。

 

「先…輩?」

 

 一難去ってまた一難。先輩が彼女を突き飛ばしたかと思えば、ゆっくり立ち上がり彼女に手を伸ばす。

 

「ひっ…!」

 

 ――同じだ。校庭に、今押さえている扉の奥にいる“かれら”と同じだ。今の先輩は“かれら”になってしまった。

 恵飛須沢さんも頭では理解しているのだろう。だが今の彼女は怯えて後退る事しか出来ていない。このままだと彼女も…!

 

「せっ…先生」

「――鳳条さん?」

「あっ後は…!」

 

 そう言うと鳳条さんはロッカーから手を離し走りだした。押さえる人が一人抜けた為か、ロッカーを押す力がより強くなる。

 一方鳳条さんは転がっているシャベルを拾い、先輩をシャベルの持ち手部分で殴り倒しすかさず柄の部分で口を塞いだ。

 

「お、おい! いきなり何すんだよ!」

「みっ見たら分かるでしょ!? もっ…漏らしてる暇あったらっ!」

「ちがッ…これは…」

「ァァア…」

「――っ!」

 

 先輩の腕が鳳条さんを押し退けようと彼の胸を押す。鳳条さんも体力の限界なのか力に負けている。

 もうダメかと思った次の瞬間、鳳条さんはシャベルを口から離し振り上げ――先輩の首に突き刺した。先輩の手は力なく倒れ、首からは血がどろどろと溢れ出る。それと同時にロッカーから加わる力が消えた。

 一連の出来事を、私はただ見ている事しか出来なかった。

 

「――ッ!? …お…お前ェ!!!」

 

 驚愕、困惑、憎悪。それらが混ざった表情をした恵飛須沢さんが、鳳条さんの左顔面に全力であろう右ストレートをぶつけた。続けて胸ぐらを掴みよろめく鳳条さんを立たせ柵まで無理矢理移動させる。

 

「待って! 恵飛須沢さん!」

 

 このままではいけない。結果がどうなるかは火を見るより明らかだ。

 

「離せよめぐねえ! 離せよ!」

 

 爆発音と悲鳴があちこちから聞こえる中、鳳条さんを屋上から突き落とそうとする恵飛須沢さんを止めようと必死に押さえる。彼女の抗議も次第に弱くなり嗚咽が混じるようになり、ついには疲れ力尽きたのか私に抱きついて咽び泣くだけとなった。…私はそんな彼女を頭を撫でてなだめる事しか出来なかった。

 ロッカーの奥の“かれら”がもっと早く諦めてくれたら私は彼女を――。…いや、違う。そんなの言い訳。本当は出来た。悠里ちゃん一人でもロッカーは押さえられた。私が目の前の恐怖に支配されまともに動けなかったのが原因だ。

 何か行動していればもっとマシな状況になったのかもしれないのに、何も出来ない自分が情けない。

 

 気付けば時間は夜になっていた。時間を切り取られ、飛ばされたかのようだ。無理もないが、皆正気を感じない。今も爆発音が何処かから聞こえてくる。街灯等の光がないからか星空はよく見える。こんな状況でなければ喜べた景色だ。

 

 …これからどうすればいいんだろう。いくら考えても結論は出てこない。

 この現象が何処まで広がっているのか、他に生存者はいるのか、そもそも助けを呼べるのか。

 ――だが確実なのは一つ、私は教師…いや大人として、まだ子供である彼ら生徒達を守らねばならない。

 

 

*1
整っていて上品に美しいさま(Google先生)



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にげんめ

 誤字報告ありがとナス!


 シャベルゴリラがシャベルゴリラしないRTA、はぁじまぁるよー。前回に続きアウトブレイクを乗り切った初日夜からスタートです。

 

「あなた、大丈夫…?」

 

 大丈夫だ、問題ない(イーノック)。

 

 前回KRM姉貴の本気右ストレートを喰らった典雅君が垂れ流していた鼻血は、ブラックアウト中にりーさんがハンカチで拭き取ってくれたようです。りーさんのハンカチとかめっちゃいい匂いしそう(こなみ)。

 あ、そうだ。ブルーシートでも引っ張り出して寝ませんか? 寝ましょうよ(提案)

 

「そう…ね」

 

 ここは別にコンクリートに直でも寝れますが、ブルーシートを使うと多少ですがSAN値が回復します。後りーさんの好感度がちょっと上がります。

 塵も積もれば山、こういう細かい所がタァイム短縮に繋がります。

 

 隅っこにいるKRM姉貴も呼ん…で……呼ん………近づけねえ(激ウマギャグ)、見えない壁がありますね。KRM姉貴に近づくと典雅君が首を振って後退ります。未覚醒ゴリラにはめぐねえが寄り添ってるので典雅君にはもう寝てもらいましょうか。もとより体力ゲージがすっからかんですので。

 

 いやあ、にしても夜空が綺麗だぁ(現実逃避)

 

 お休みなさーい。

 

オッハー!!!(激寒) オッハー!!!(大音量)

 

 はい、おはようございます。ボタン連打による一秒睡眠です。

 本日の天気は晴れ、若干風が吹くお散歩日和です。一日目から雨とか言うクソイベでなくてよかった…(1敗)。

 場の空気はお通夜ですがゲームだとよくある事なので気にせず行きましょう。

 

「…これから――」

 

 めぐねえが会話を切り出しましたが、ボタン連打ですっ飛ばします。ムービーも同様です。RTAは一分一秒を競う競技ですのでこう言った会話は基本全スキップです。当たり前だよなぁ?

 

 自由に動けるようになったら三階制圧に行きましょう、めぐねえには紐ルートにならない程度に適当に言っておけば大丈夫です。

 肝心の典雅君の体力ゲージは満タンまで回復、ですが何故か常にジリジリSAN値がすり減るスリップダメージ状態です。あぁん? なんで?(レ)

 あ、現在の典雅君のSAN値は以下の通りです。ちなみに30を切ると時たま操作を受け付けなくなり、10で幻聴や幻覚が見え、0になると完全に発狂します

 

 

 正気度:25/100

 

 

 は? 寝る前は確実60に以上はあったぞ!?(素)。

 あかんこのままやと典雅君が発狂するぅ! やば…やば…分かんないね…(原因)

 

「…鳳条君? だ、大丈夫なの? 顔色が悪いわよ?」

 

 

 正気度:23/100

 

 

 ファッ!? 何でりーさん心配して声かけてくれてる+めぐねえが手をにぎにぎしてくれてるのにSAN値下がるの!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 太陽の光が瞼を貫通して目を刺激し、意識が脳味噌の奥底から引っ張り出される。しかし不思議と目覚めは良く、意識はすんなり覚醒した。

 ブルーシートを敷いたとはいえコンクリートの床で寝ていたからだろう、体の節々が痛い。この痛みがこれが現実だと知らせる。

 

 悠里ちゃん、鳳条さんは起きてるようだが恵飛須沢さんはまだ寝ている。とても起こす気にはなれない。

 

「…これからどうしましょう…」

 

 口から漏れ出る声。弱音など守らねばならない彼らに聞かれてはならない事なのだが気づいた時には遅かった。

 

「………助けは呼べないの?」

「圏外…なの」

 

 重い沈黙が流れる。

 屋上には何もない、このままだと餓死してしまう。

 最低でも助けが呼べる環境を整えなければならない。つまり現状を変える為には校舎に入り使える物を集める必要がある。

 だが校舎に入ると言う事は――“かれら”と対峙する事を意味している。

 

 鈍い音が聞こえた。悠里ちゃんとの話とも言えない会話をしているのをよそに、鳳条さんが先輩“だったもの”を屋上から投げ落としたらしい。

 彼の手が震えている。無理もない。それに顔色も悪い。

 

 ――ここで何もしなければ昨日と同じだ。それに、子供が一人で思い詰めるのは良くない。

 

「鳳条さん…」

 

 彼の冷たく震える手を優しく握る。一瞬ビクッとしたのはただ驚いただけのようだ。

 

「一人で抱え込まなくていいのよ? 私は教師、大人なんだから何か困った事があるなら話してくれていいからね?」

「……」

 

 鳳条さんは静かに頷く。しかし彼の顔色は悪くなる上、手の震えも激しくなる。

 

「ほ、鳳条さん?」

「…鳳条君? だ、大丈夫なの? 顔色が悪いわよ?」

「――るな」

「え?」

 

「触るなあああああああぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 彼が唐突に出した大声に驚き手を離す。鳳条さんはそのままシャベルを握りロッカーを凄まじい力で蹴飛ばし、校舎内に入って行った。

 昨日とはまた違う衝撃に唖然とする。何が普段大人しい彼をあそこまで刺激したのか分からない。

 だが原因が何であれ、たった一人で校舎内に入るのは危ない。私は悠里ちゃんに恵飛須沢さんを任せるといい、彼の後を追って校舎に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しばらくしたら、頭痛がしてくるし、胃液が出口を求めて腹の中をぐるぐるしている。

 トイレのおっさんに顔突っ込みながら、典雅兄ちゃんが悶えてたら、先に典雅兄ちゃんがトイレのおっさんの口にゲロをドバーっと出して来た。

 それと同時にわしもwikiを開いたんや。もう顔中、クエスチョンマークまみれや。

 

 ――あ~、なるへそ。典雅君女性恐怖症なんですね。それも重度の。

 トラウマ(恐怖症)を持ったキャラは、一度発狂オアそれに近い状態にならないと判明しないと言う厄介な性質を持ち合わせています。さっきステータス欄に追加されたのがこれです。

 恐怖症にはランクがあり、白、青、黄、赤で影響力が表されます。

 典雅君の場合、赤色で女性恐怖症と書いてあります。このレベルだと女性キャラと一緒にいたらSAN値がスリップダメージします。だから\(・ω・\)SAN値!(/・ω・)/ピンチ!だったんですね。

 

 ………これマジ? アカンこのままやとどう足掻いても発狂するぅ! 発狂するねんこれじゃあ!

 

 リセ…かなぁ?

 

 ――いや、続行します(走者の鑑)。タァイムいいからね、しょうがないね。典雅君は犠牲になったのだ、がっこうぐらし!RTAタイムの犠牲にな…。

 

 お、典雅君落ち着いたみたいですね。一人だとある程度SAN値が回復するようです。

 よしじゃあケツ(シャベル)出せ!(パァン!)、かれら狩でレベル上&三階制圧じゃあ!

 

〈ガタッ(迫真)

 

 ん? 隣の女子トイレからですね。

 このようにトイレの個室やロッカーに隠れてるかれらもいるのでちゃんと始末しておきましょう、でないと後々悲劇が起こります(無敗)。

 

 大阪や! はよ開けんかいゴラァ!

 

 あれ開かない(予定不調和)

 すいまっへーん、木下(大嘘)ですけども~。

 

「だ、誰だよ…?」

 

 お、チョーカーさんオッスオッス!。

 

 彼女は柚村貴依、RTA界隈では通称チョーカーさんと呼ばれています。アニメにちょっとだけ出た人ですね。

 彼女をトイレから引っ張り出すにはゆきちゃんが効果的何ですが…いないんですよね。

 完全にガバッってああああああああああ!! 忘れてたあああああ!!(udk)ですので。めぐねえなら引っ張り出せるかな?

 

「貴依ちゃん…」

「大丈夫だ…大丈夫だから…」

 

 ファ!? ゆきちゃん一緒におるやん!? クオレワ…キマシタワーですね間違いない…。

 どうも俺じゃあ役不足のようだな。鳳条典雅はクールに去るぜ…

 

 (ゆきちゃん)生きてる^~↑ああ^~生きてるよぉ~!。これでチョーカーさんと合わさってSAN値管理がどちゃくそ楽になります。

 

 ちなみにこのチョーカーさんとゆきちゃんが一緒にトイレに閉じ籠ってるのはかなりのレアイベです。シャベルゴリラ覚醒失敗以上に稀です。

 

 そうと決まれば三階制圧の後でめぐねえ連れて来ましょうか。

 …めぐねえならあり得そうですが、まさか勝手に典雅君の後を追って来てる訳ない…よね?(フラグ)。一応見に行きましょうか。

 ナイトメアのかれらは結構頑丈で、トイレに着くまでの道中は殴り飛ばし蹴り飛ばしだけで倒してはいないんですよね。なので暫くすると普通に起き上がって襲いかかります。

 だから、ちゃんと首を落とす必要があるんですね(メガトン)。

 

「こっ…来ないで…」

 

 

実 家 の よ う な 安 心 感

 

 

 いつものですね、はい。はぁ~(クソデカため息)、この人また覚醒失敗してるよ…

 机の足?を持ってるのをみるに、何とかかれらに一撃喰らわすも威力不足、もう一回やろうとするも元生徒の顔を見て何も出来なくなったって所ですね。

 

 シンプルにシャベルでスパッと首を切ります。はい、これでリタイア(再起不能)です。

 

「――鳳条さん…? …私…私ぃ…!」

 

 涙でぐっちゃぐちゃになってる顔のオプション付きで女性恐怖症に抱付くのはやめろぉ!(建前)やめろぉ!(本音)。

 あぁ^~SAN値(正気度)がぴょんぴょんするんじゃぁ^~

 

かれら1「おいちっとあれどうする?」

かれら2「おぅやっちまおうぜあれ!」

かれら3「やっちまうか?」

かれら4「やっちゃいますか?」

かれら5「やっちゃいましょうよ!」

かれら6「そのための右手、右手…あとそのための拳…?」

かれら7「拳…?」

かれら8「拳はやるためにあるでしょ(至言)」

かれら9「金!暴力!SEX!」

かれら10「金暴力SEXって感じで…」

 

 ああヤバい! かれらに囲まれちゃ…ったぁ!

 めぐねえ☆HA☆NA☆SE☆。それにそんなに泣き喚めいたら音に引かれたかれらがやってて来るだろいい加減にしろ!

 

「嫌ぁ…」

 

 クゥ~ン…(子犬)、駄目みたいですね…(説得スキルなし)。

 

かれら12345678910「三人(大嘘)に勝てる訳ないだろ!」

 

 馬鹿野郎お前俺は勝つぞお前!(天下無双)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目を覚ますと青空が広がっていた。昨日のはただの悪夢ではないらしい。起きて周りを見回すとめぐねえと鳳条の二人がいない。それに先輩…だった物も。

 園芸部の奴に聞いた所二人は今校舎の中にいるとのこと。先輩は…鳳条が投げ捨てたそう。

 

 …鳳条典雅。名前は聞いた事ある。この学校でそこそこ話題に上がる奴だ。

 高い身長にパッと見女にしか見えない顔、モデルにも負けてないスラッとした体型にミステリアスな存在ときた。そりゃ人気も出る。学校外で見た奴もほとんどいないとか何とか。

 

 そして何よりあいつは…私の命の恩人で、先輩の命を奪った張本人だ。

 一体、どんな顔をしてあいつに会えばいい? 一体、どんな態度であいつに接すればいい?

 一体…今あいつに対して抱いているこの感情は――何なんだ…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 工事完了です…(達成感)

 いやぁ、何とか乗りきれましたましたね。本来KRM姉貴が持っている超スペックシャベルを使えたのも勝因でしょう。

 ちなみにこのシャベルですが、今回のようにKRM姉貴が覚醒失敗すると主人公が使えるようになります。ただしゴリラがゴリラしない為、戦力は大幅ダウンします。

 

 …あのめぐねえ、そろそろ離してもろても…。かれら大量殺戮+女性恐怖症で典雅君のSAN値が削れに削れてるんですよ…

 でも発狂してないので意外と精神は頑丈なようですね。

 

「…ごめんなさい…私…かれらを………もう少しだけ…こうさせて…」

 

 あぁ^~、たまらねえぜ(SAN値直葬)

 

 あ、そうだ(提案)、めぐねえがただ抱き付いてるのを見るのも暇なのでぇ…

 

 

そ ん な 皆 様 の た め に ~

 

 

『ぷはー 今日もいい天――「……ありがとう、落ち着いたわ…」

 

 ちっ、命拾いしたな。

 

 ではちゃちゃっとバリケード作って階段塞いじゃいましょう。

 

「バリケード…? 防火扉じゃ駄目なの?」

 

 ファ!? 防火扉イベント!?

 説明しよう! 防火扉イベントとは低確率でキャラクターが防火扉に言及する事で発生するイベントのことだ! 当然机バリケードより頑丈な上、うまく行けば“あめのひ”も完封出来るのだ!

 

 これがナイトメアで発生するなんて初めて見た…これは勝ち確ですね間違いない…。

 しかし本来脱落してたであろうゆきちゃん生存といいえらい強運だぁ…。RTAの神であり父たるbiim神が私を見かねて強運を授けてくださったのかな?

 

 防火扉も閉めてチョーカーさん&ゆきちゃんもめぐねえの力で引っ張り出したので、三人は適当に説得して先に屋上に行っててもらいましょう。こう言う時はめぐねえしか守れないんだ的な事言えばすんなり受け入れてくれます。

 それに典雅君一人じゃないとSAN値回復出来ないからね、しょうがないね。

 

 さて、ぼっちになってSAN値も一応回復したのでこれからはお掃除(意味深)の時間です。ロッカー、トイレは勿論まだ入ってない教室も隈無くさがし、かれらを始末します。死体は窓から投げ捨てましょう、放置してると空気感染します(1敗)。

 

 よし!(よし!)、教室のかれら詰め合わせセットを引く事なく三階制圧が完了しました。

 かれらのお掃除が終わったら次はモップで血を拭き取り跡地に消毒液をぶっかけます。換気は窓が割れている為心配ありません。

 これでお掃除は完了です。後は皆を呼ぶだけですね。

 

 お掃除が完了した所で今回はここまで。ご視聴、ありがとうございました。

 



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新たな日常の始まり

 血まみれの鳳条とかいう奴に追い払われ屋上で女5人のこの状況。

 普通なら何か会話でもするんだろうが…状況が状況、このお通夜と言ってもいい気まずい雰囲気で話を切り出せるのは由紀ぐらいしかいなかった。

 

 由紀も言っているが、あいつ…鳳条は一人でいいのか?

 めぐねえは鳳条の「みっ…皆を守れるのは…先生だけです…」の言葉に納得してるようだが、いくらなんでも“やつら”がうじゃうじゃいる中鳳条一人は危ない何て次元じゃない。

 誰か一緒にあいつの所に行くべきではと提案してみるものの、「鳳条さんなら大丈夫です」の一点張りで認めない。あたしに裁量権はないようで。

 

 めぐねえの赤い目元を見るに、あいつと何かあったのは分かる。一回あいつがトイレに来た後、そこそこデカイめぐねえの泣き声がトイレにまで聞こえてきたし。

 あいつの血まみれな姿から察するに、“やつら”に囲まれて…って所か。

 

 …まあこんな状況で平常でいられる方がおかしい。あたしも由紀のおかげで何とか正気を保ててたんだ、めぐねえだって誰かに頼りたかったんだろう。

 だが一人でいいってそう簡単に納得していいのか?

 

「…本当にあいつ一人でいいのか? めぐねえ」

「佐倉先生です。…彼なら大丈夫よ、私達が行ってもかえって邪魔になるわ」

 

 念押しで聞くが答えは前回と似たような物。いつもの癖なのか佐倉先生の訂正返事は早い。

 

 かえって邪魔になるは紛れもない正論だ、この中に“やつら”をヤる事が出来る精神と覚悟を持ってるのは現状、あいつしかいない。

 一人に“やつら”の相手を押し付けるのはいかがなものか。そう何度も思ったが、かといって変わりの名案もない。無理矢理だが納得する事にした。

 

「…ここにいるメンバーの自己紹介もまともにしてないけど…。めぐねえ、一ついい?」

「佐倉先生です。何? 悠里ちゃん?」

「彼、鳳条君の事なんだけども…、何か心当たりない?」

「心当たり?」

「いや彼、反応がおかしくなかった? 怯えてるというか…」

「あー…確かに、コミュ症とは違う何かだよな、あれ。掃除機にビビってる猫みたいな話し方だろ?」

「…どこか既視感感じると思ったらそれか…」

 

 パンツを手に持って自力で天日干ししてる紫髪が会話に入る。

 何故にホースの水でびょしょびしょにしたパンツを乾かしてるか、由紀が聞き出そうとしていたが「言わせんな、恥ずかしい」と一蹴されていた。多分漏らしたんだろう。

 

「今朝も触るなって叫んでロッカー蹴り飛ばして中に入っていったもの」

「めぐねえの手が汚れてたんじゃないの?」

「由紀さん、佐倉先生です。別にそうでもなかったし、彼が極度の潔癖症って訳でもなさそうだし…」

「うーん…」

「本人に聞き出すしかないんじゃないか?」

 

 ギギギ…

 

「…っ!?」

 

 扉がギシギシと音を立ててゆっくり開く。まさか“やつら”が…!?

 

 この場の全員が注目する中、少しだけ開いた隙間からは鳳条の顔がチラッと見えていた。噂をすれば影がさす、か。

 

「しっ下の…あれが…終わった…って言いたかっただけ…です。さっ先に…降りとく…ので…」

「――なぁんだぁ…驚かさないでよー」

 

 正体が鳳条だと分かると肩の力がスッと抜けた。

 由紀の言う通りだ、ホラゲみたいな演出で驚かさないでほしい。

 

「鳳条さん、大丈夫…? …ごめんなさいね…私のせいで…」

 

 扉まで近づくめぐねえ。それに対し鳳条は、勢いよく扉を閉め階段を慌てた様子で降りていった。皆が皆困惑の表情で顔を見合わせる。

 

 ――やっぱり何かおかしいな、鳳条。

 

「…ちょっとあたし追いかけてくるわ、話聞いて来る」

 

 めぐねえに何か言われて面倒事になる前に鳳条の後を追い校舎に入る。階段から廊下に出ると生徒会室に駆け込む鳳条が見えた。

 あたしも生徒会室に入ったが、鳳条は何処にもいない。

 

 隠れたのか? なら隠れられそうな場所は…、あのロッカーか。

 そっとロッカーをあけてみる。

 

「開けるなぁ!!」

 

 超スピードで内側からロッカーを閉めた。早すぎてどうなったのか一瞬分からなかったレベルだ。

 

「いやホント、どうしたんだ?」

「なっ…何でも…」

「何でもない人間は叫んでロッカーに閉じ籠ったりしないぞ。実際、ずっとこの調子のままじゃ困る。何か嫌なら言ってくれ」

「うぅ…。わっ…分かった…、話すよ…」

 

 相変わらず怯えた子供のような口調で鳳条は話を続けた。

 そして判明する衝撃の事実。なんと鳳条は女が怖いんだと。

 本人曰く男女構わず大勢の人間がいる場所なら一応大丈夫なのだが、周りに女しかいない、近くにいるような状況だと無理だそう。

 原因は不明で気付いたらこれ、強いて言うなら母親かもだそうだ。…いや絶対それじゃん。

 …てかこれ思ってた以上の地雷だ。絶対これ以上聞き出すのはやめた方がいい、地獄の釜を開けるようなものだ。

 

 後を追ってきたのか、気づけば後ろにいた4人も話を聞いていたようで、何とも言えない表情をしている。

 このままだと気まずい沈黙が訪れると考えたのか、茶髪が口を開いた。少しでも場を軽くするのが目的だろう。

 

「しかし鳳条君、だいぶ口調砕けたわね。さっきまで同世代なのに敬語で怯えてたもの」

「…壁一枚挟むとだいぶ安心するんだよ…」

「…いっそデカイ段ボールとか被せとくか?」

「それなら屋上に一応あるけど…」

 

 で、なんやかんやで茶髪が段ボールを持って来て、ロッカーからビクビクしながら出てきた鳳条に被せた。

 

「…どう?」

「まあ…うん。ロッカーと同じぐらいには一応…落ち着く…」

 

 デカデカと“みかん”と書いてある段ボール箱。踞った人間一人がやっと入れるぐらいの大きさだ。

 

「…大佐?」

「止めろ由紀、それにしか見えないだろ」

「…これ前見えてるのか?」

「持ち手部分から何とかだけど…ちゃんと見えてる」

「鳳条さんがいいならこれで進めるけど…」

「ん~、埒が明かないよ、このまま自己紹介しよ?」

 

 一人段ボール箱を被ってるシュールな光景の中、とりあえずこの場の全員で自己紹介をした。

 

 自己紹介が終わると、これからどうするかの会議が始まる。

 まず助けを呼ぶ…だが、携帯が使えない以上、ラジオも駄目だろう。

 手紙を風船で飛ばす案を由紀が出したが、鳳条が変にアピールすると他の生存者に乗り込まれるかもしれないと言い、没になった。

 こんな状況で人間同士の争い…。考えたくもないが、実際起きかねない。

 外に出て自衛隊の駐屯地まで行く案も出たが、この状況で自衛隊が機能してるのか確証がない上、外に出るのは危なすぎると言う事でこれも没。

 結果、消去法で可能な限り学校に籠城する事になった。

 

 籠城においては問題はなさそうだ。ソーラーパネルで電気も補えるし、食料は購買部まで行けばどうにかなるし、屋上の野菜もある。水の心配もない。しかもシャワールームまであったんだと。

 実際に鳳条は体を洗い流して新しい制服を着ている。ほとんど見えないが。

 

 …えらく充実してるな…?

 確かに、校歌が軍歌みたいだとか学校設備が充実しまくってるだとか、この学校入った時思った事があったが…すっかり忘れてた。

 まあこの際だ、ラッキーと思っとこう。

 

「何はともあれ前向きに行きましょ? 後ろ向きに考えてたら、何もかも駄目になるわ」

 

 めぐねえが発したその言葉は、誰かを納得させるより自分に言い聞かせる為に発せられた言葉のようだった。

 …でもそうだよな、前向いて進まなきゃなんねぇよな。立ち止まってても何も現状は変わらない。

 

「…前向きに…な」

「どしたの? くるみちゃん?」

「…何でもない。…でもなぁ、この状況で楽しく生きるような方法何て――「あ、そうだ! いい案が思い付いたよ!」…遮るなよ…」

「ごみぃ、突然のアイデアだからさ…。でも皆私のたぐいまれなる妙案に唸るよ!」

 

 えらく自信満々な由紀から飛び出たのは、斜め上の代物だった。

 

 

 

 

 

 

「学園生活部!」

 

 

 

 

 

 

 

「学園…生活部?」

「どう? いい案でしょ? めぐねえ!」

 

 学園生活部。私が顧問になり後5人が部員になる。

 内容は「学園での合宿生活によって、授業だけでは触れられない学園の様々な部署に親しむとともに、自主独立の精神を育み皆の模範となるべし」…との事だそうだが…。

 確かに胡桃さんの言った“楽しく過ごす”は達成できるだろう。だが…これはただの現実逃避に過ぎないのではないか?

 しかし前向きにと言ったのは他でもない自分で――

 

 グゥ~…

 

 腹の虫が鳴った。…私だ。

 音のせいか一気に気が抜ける。

 

「…お昼、用意しましょうか。いいわよね? めぐねえ」

「――ええ…」

 

 この件の不安感は拭えない、しかしまずは目の前の課題が先だ。

 思い返せば昨日の夜鳳条さんがくれたお菓子以外何も口にしてない。由紀さんと柚村さんにいたっては何も食べてない。

 腹が減っては戦はできぬ、と昔から言われている。ご飯もちゃんと食べなければ。

 

 鳳条さんだが…、彼は一人でいる時間が欲しいとの事。…後で朝の事謝りにいかないと。

 彼は食べる気にならないと言っていたが、何も食べないのは逆に体に悪い。急遽沸かしたお湯で作ったアルファ化米のピラフを持たせる…のは出来なかったので段ボールの上に乗せた。シュールだ。

 

 それから鳳条さんが部屋を出ていった後、色々用意をして食べる準備が整った。カレーの匂いが部屋を満たす。

 他にも缶詰の乾パンや大和煮等があったのが、まだ持ちそうなので期限が近い順番から食べる事に。その結果一発目からレトルトカレーだ。

 

 ――ふと胃もたれるのではと頭によぎってしまった。昔は全然唐揚げとか大丈夫だったのに…

 

「どうしたの? めぐねえ」

「いや、朝からカレーは太りそう…」

「…いいだろ別に、もう昼だし。…それにまだ私達“育ち盛り”で“若い”って」

「グフッ!」

「止めてやれ胡桃、クリティカルヒット叩き出してる」

「おー、見事に言葉のナイフが胸に突き刺さってるね」

「ゆ、悠里ちゃん…、私まだ若い…わよね…?」

「うーん…、27でそれはちょっとねぇ…」

「“アラサー”だね」

「グボァ!」

「止め刺すな由紀。しかし派手にずっ転けたな」

「…大丈夫か?」

「気にして…ないもん…、全然…大丈夫…だもん…。ちょっとした怪我の治りが遅いとか…友達の第二子出産とか…、全然…気にしてないもん…」

「目茶苦茶気にしてるじゃないの」

 

 悠里ちゃん達のこの余裕、これが若さか…。

 

 朝…と言うかお昼ご飯を食べ終わると、由紀さんが「学園生活部」の了承を求めてきた。

 が、即決できる物ではない。答えは明日に発表すると濁らして、その場しのぎの対応をした。どうした物か…

 その事を頭の片隅に置きながら鳳条さんに謝りに行き、ご飯を食べたら気付けば夜になっていた。時の流れが早い。

 

 寝袋の中、一人考える。

 了承…するべきだろうか…? 私が出来る最善の選択は? 守るべきは何?

 悩みに悩んだ末、私は――

 

「おほん、本日は皆さんに重大発表があります。今日からここに、学園生活部を設立します!」

「めぐねえ認めて――」

「ただし! 通常の授業も同時進行で行います!」

「えぇ~~!?」

 

 設立を認めた。

 理由はただ一つ、何の変哲もないいつもの日常、それが私達だからだ。

 現実逃避といえばそれまでだが、かと言って常に“かれら”と対峙するのを考えていても気が滅入る。

 

 そして何より、それ以外の手段がない。

 学校から出るのは危なすぎるので没。携帯はおろかラジオも使えない為助けも呼べない。それなら気長に助けを待つのが最適と、もうすでに決まったのだから。

 

 こんな状況だが、せめて私達の日常は守って行こう。

 

 …ただ…

 

「てんくん、大丈夫?」

「うぅ…」

 

 彼の女性恐怖症を…どうすればよいのか…

 

 

 

 

 

 

 

 



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よげんめ

 何で変な所で誤字するんですかね…お前の目玉は節穴かよォン!?


 親指の耐久力が試されるRTA、はぁじまぁるよー。

 

 はい、先にネタバレしますと、これから行われるのは私の親指耐久試験、別名TDN連打です。

 

 前回の会議で主要イベントは潰し、生活必需品は夜に学校中から全てかき集めて揃えました。

 

 なので現時点で発生する下の世界(意味深)に行くイベントはめぐねえのマニュアル奪取ぐらいです。ですがこれは夜にこっそり見張ってれば対策出来るので楽チンチンですね。

 クズ運だと主人公が寝た途端、下の世界に行きますが今回の私のこの調子なら全然大丈夫でしょう(慢心)。

 たとえ“あめのひ”が来ようと防火扉先輩&こっそり夜中にちまちま作った一階と二階の踊場バリケード先輩が全て防いでくれます。

 その他ランダム要素は祈祷力でどうにかします。失敗したらリセです(114514敗)。

 

 つまり、後は好感度調整(特にKRM姉貴)とミニゲームをこなしつつ、段ボール被ってる主人公を眺めながら最終日までスキップするだけになるんですね。楽勝だな!(慢心×2)

 

 はい、よーいスタート(連打耐久開始)。

 

 んぁあ仰らないで。TDN連打光景なんて何も面白くない。なので

 

 そ ん な 皆 様 の 為 に~

 

 スキルと好感度について、お話します。

 

 まずスキルですが、視聴者の皆様もお気づきの通り、ポインヨがそれなりにあるのになにも習得していません。

 これはこのモードだと“練習”が必要になるからですね。スキルを取得しても練習出来る選択肢が出現するだけです。

 考えてもみてください、ゾンビ殺しまくっても家屋の屋根の上を飛びはね移動するような身体能力何て手に入りません。そもそもそんな事、普通の人間には無理な話です。

 ナイトメアではどのスキルにおいてもそうなので、主人公の初期スキル、習得するスキル選びは慎重に行いましょう。

 

 続いて好感度ですが、これがかなりの曲者です。

 まず、パラメーターが正しく表示されない事が多々あります。表向きには普通に見えても裏で色々拗らせたヤンデレを越えたナニカになり果ててる事も珍しくありません。

 これだけならまだいいいんですがこの好感度と言う物、目茶苦茶上がりやすいのです。男主人公なら特に。極限状態で異性と一緒の生活だからですかね?

 今回のKRM姉貴みたいによっぽどの事をしない限り下がりません。

 しかも勝手に裏で上がる事も非常に多い上、止めと言わんばかりに簡単に限界突破してきます。

 なので難易度問わず誰彼構わずよかれと思って上限一杯まで上げるとか言う行為は絶対に止めましょう、鮮血の結末を迎えます(1敗)。

 あの時は若く、好感度は高ければ高いほどいいと思っていました…。

 好感度は高くても低くても駄目です。丁度いいを維持しましょう。

 

 ちなみにですが、ナイトメアだと覚醒したら好感度固定とか発狂しないとかの特典はないです。

 やっとの思いで仕立て上げたリーサルウェポンさんでも、目の前でるーちゃん&めぐねえが殺られ主人公の姉を名乗る激強ファミリーサルウェポンさんにメガシンカしたりします(1敗)。

 あん時のりーさんマジで強いし怖かった…(konami)

 

 まあなんであれ、今回の不安要素KRM姉貴はもう和解したので好感度調整の心配はないな、ヨシ!(現場猫)

 

 ん? なんで等速に戻す必要があるんですか?

 現在時刻は夜、明日は一週に一回ある確定“あめのひ”です。

 

 あるぇ? おかしいね、シャベル先輩&めぐねえがいないね。しかも防火扉先輩が少し空いてるね。

 ――あ、そっかぁ…(悟)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 吐き気が収まらない。夜に食べた物は全て吐き出してしまった。もう腹の中に胃液もろくに残ってないのに便器に顔を突っ込む。

 手にはまだ“かれら”をシャベルで潰した感覚が残っている。

 散々出したからか吐き気が収まってきた。何とか体を起こしてトイレットペーパーで口を拭き、吐き出した物と一緒に水に流す。便座を下げその上に座った。

 

 気分を落ち着かせる為に状況を振り返る。

 私は前々から気になっていた[緊急避難マニュアル]と呼ばれる物を求めて二階に降りた。

 “かれら”がちらほらいる。

 数も多くないので隠れながら目的地の職員室まで行けば良かったのだが…私は“かれら”と対峙する事にした。

 理由は、このまま鳳条さん一人に“汚れ仕事”を任せる訳にはいかないのと、あのままの“かれら”が可哀想だから。

 あんな状態で学校を徘徊するのは本人も望んでいない。…そう自分に言い聞かせて、シャベルを持って“かれら”の頭を潰した。

 そして5人、“かれら”を潰した所で限界を迎えてトイレに駆け込んだ。

 

 しかし目的だった緊急避難マニュアルは結構簡単に手に入った。鍵も持ち合わせてたからだろう。

 両手で持ちページを開く。

 何か起きた時の為にと渡されたこれ、その時にはすでに手遅れなのではと昔考えていたが、内容を読むとその意味が理解出来た。

 

 …これが全て想定された事で、地下には10人ちょっとしか入れないシェルター?

 

 手が震える。理由も分からない涙が溢れる。自分がどういう感情なのかも分からないまま嗚咽する。何も考えたくなかった。

 

 意地汚い

 

 少し落ち着いた時に最初に思い浮かんだ言葉がそれ。

 これが大人のやる事か? 子供達の未来を潰して自分達だけ?

 …卑しい…

 

「アアァ…」

「…え?」

 

 気配に感ずき顔を上げると目の前に“かれら”がいた。放心に近い精神状態でそれを理解するのはたっぷり20秒以上はかかった。

 扉も閉めずにいたので簡単にここまでこれたのだろう、しかも私の泣き声のおまけ付きだ。

 気付かれるのなんて時間の問題だったのにそれすら忘れて私は自分の世界に入っていた。

 

「ひっ…」

 

 体が動かない。何で? どうして?

 

「許して…助けてっ…」

 

 目の前の危機に本能が金切り声を上げる。動け、抵抗しろ、殺れ。このままだと死ぬ。

 しかし、体は動かない。

 

「だっ誰かっ…!」

 

 抵抗など諦め、ただ助けを求める。ここには誰もいないのに。

 

「…あ…え?」

 

 一瞬だった。

 誰かが“かれら”を私の目の前から退かした。その後トイレの窓の方面から鈍い音が聞こえた。胡桃さんの先輩だったものを鳳条さんが投げ捨てた時と同じ音だ。

 

「先生! 怪我は!?」

「ほう…じょう…さん?」

 

 今私の目の前にいるのはあの時と同じ、鳳条典雅さん。

 あの時と同じだ。出来もしないのに“かれら”と対峙して…、私はただ助けを求めて…、自分から何も出来なくて…。

 

 様々な感情が一斉に沸き上がってくる。やがて感情を押さえきれずに――

 

「こ゛わ゛か゛っ゛た゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」

「っ!?」

 

 また性懲りも無くまた彼に抱きつき、涙で彼の服を汚した。

 相手や状況などお構い無し、感情を一方的にぶつける私に対し彼は全てを受け止めてくれた。

 

 …本当は分かってる、こんな事良くない。

 ただでさえ重度の女性恐怖症の彼に抱きついた上、泣き叫ぶとか大人としても終わってる。

 それにだ、私が教師であり大人である以上、彼ら生徒を守る。そうあの時、この悪夢が始まった時誓ったではないか。

 こんな事すぐ止めてあや――

 

「…よしよし…」

「あっ…♡」

 

 感情に支配された脳味噌で必死に考えた今までの思考は、鳳条さんのナデナデで頭から一瞬で消し飛んだ。

 

 止めて♡そんな事しないで♡

 堕ちる♡

 堕ちちゃう♡

 貴方なしじゃ生きられなくなる♡

 こんなに気持ちいいの初めてなのぉ♡

 

「えへっ…♡ もっとぉ…もっとやってぇ…♡」

 

 甘ったるい声を出してただ求める。鳳条さんは何も言わず続けてくれた♡

 

 らめぇ♡

 10歳も年下の子供に頭撫でられてる♡

 背徳感で頭がおかしくなる♡

 守るべき相手なのに♡

 こんなに気持ちいいの依存しちゃう♡

 

「――ねぇ…ほうじょぉさん…♡ “おにいちゃん”って…よんでいい?♡」

 

 何の戯れでもない、私の本心から出た本音。

 今の自分で考えても相当気持ち悪いのだが、彼は頷き許可してくれた♡

 そんな私だが、しばらく彼を堪能すると流石に落ち着いた。そして今まで自分がやってた事を改めて振り返り血の気が引く。しかし、もう戻る訳にはいかなかった。

 何故なら、もうすでに「毎日夜に女の人に慣れる練習で私と一緒に予習する」と取り付けてしまっていたからだ。

 …本当はこんなのただの言い訳で私が彼の妹になりたいだけだ。

 でも…♡こんなの知ったら♡戻れる訳ないじゃない♡

 

 不幸中の幸いか、マニュアルの事は鳳条さんにバレていないようだ。いつかは分からないが、たまたま便器の裏側に落ちたらしい。しかも個室だから彼からすれば死角の上、わざわざ調べる意味もない場所だ。運がいい。

 こんなのを子供達に見せるべきではない。さっさと安全な場所に隠しておこう。

 そう考えていると早速チャンスが到来した。

 今は鳳条さんとバリケードの制作中であり、一回目の予習中なのだが、鳳条さんに上からロープを持ってきてと言われた。この隙を突いてマニュアルを三階まで移動させる。ここならバレないだろう。

 怪しまれないよう、すぐに二階に降りて鳳条さんにロープを渡した。

 

 おにいちゃん♡

 わたしがんばったよ♡

 ほめて♡ほめて♡

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 教師の姿か? これが…

 10歳年下の教え子を“おにいちゃん”と呼び

 27歳のアラサーで教え子に妹プレイをせがみ

 教師としての尊厳を捨てたのにも関わらず

 教師として教え子を予習と称し強制させる図太さ

 

 生

 き

 恥

 

 申し訳ありません、お労しい兄上が出てしまいました。

 

 ワンワンプレイ(意味深)めぐねえは見た事あるけど妹プレイ要求めぐねえは初めて見ましたね…。

 

 今のめぐねえですが、マニュアルではなくかれらを潰したのが原因でSAN値が削れたようです。

 だからって何がどうしたら頭が丸々ペシャン広になるんですかね…、いくらなんでもやり過ぎだと思うんですがそれは…(戦慄)

 ステータス上では学園生活部中映えある筋力ステータス第一位の座に輝く大の大人のめぐねえの力をナメてはいけない(戒め)

 

 一番危険なマニュアル君ですが、めぐねえがコッショリ三階に持って上がったとかもなさそうですので、奴による二次被害の心配をした所で杞憂でしょう。

 それより今はめぐねえのSAN値を安定させるのが先です。

 

 ちょっと想定外の事が発生しましたがめぐねえが制御しやすくなったので、今回はマイナスどころかむしろプラスですね。

 チャートにちゃーんと…と言いたい所さんなんですが、このゲームではこういったランダム要素の影響でチャートをちゃーんと(激ウマギャグ)立てても粉微塵に粉砕! 玉砕! 大喝采! されてしまいます。

 だから、チャートよりその場の判断が重要なんですね。今までチャートが出てきてない理由です。

 

 え? リセ?

 一応自己ベスト越えた数値出してるのにそんなのする訳ないだろいい加減にしろ!

 そんなにタァイムが気になるなら自分でやって、どうぞ(全ギレ)

 

 しかし…何でバリケード先輩壊れてるんですかね…? 防火扉先輩にいたっては歪んでるし…

 あれかな? 狂戦士君かな? でもそれにしては不自然ですね…

 まぁ異常なのはここだけで、他のバリケード先輩には問題はないですのでここを強化補強して二階のかれらを始末したら、ちゃちゃっと上に戻ってしまいましょう。

 

 年上の妹が爆誕した所で今回はここまで。ご視聴、ありがとうございました。

 

 

 

 

 



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アンビバレンツ

一ヶ月!? うせやろ!?
(期間空いて)すいません許して下さい、何でもしますから(何でもするとは言ってない)


 女性恐怖症の主人公がひたすらゲボるRTA、はぁじまぁるよー。

 現在はだだっ子のめぐねえを寝かしつけ、トイレで毎度恒例のキラキラタイムをしてる所ですね。こんな頻度で吐いてたら食道ボドボドになってそう(小並感)。よく今まで普通に生活出来てたな…(困惑)

 

 お、収まったようですね。軽く口ゆすいで寝ましょう…と言いたいんですが今もう朝っすね、はい。眩しい朝日が昇ってます。

 このまま寝ると生活リズムが狂う~^ので典雅君には徹夜で頑張って働いてもらいましょう。ちゃんとやりがいの報酬もあるのでね(ブラック企業感)。

 とは言いましたがやる事自体はいつもの日常生活。通常時は連打ゲー、夜中はめぐねえのお兄ちゃんになるだけで見所さんも特に、ないです。

 

 なので甥の木村、加速しま――え? KRM姉貴?

 

「いやっ違っ…これは…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…酷い顔…」

 

 トイレの手洗い場の鏡に自分が写る。酷い顔だ。自分で言うのも何だが、目が死んでおり生気が感じられない。そんな自分にため息が出る。

 いつも通り、左手の袖をまくり傷だらけの上腕を出す。そしてカッターで切り裂いた。手首から真っ赤な血が滴る。痛い。

 

 …またやった

 

「…もう切る場所もないのに…何やってんだよっ…私は…」

 

 自分でも分かってる、こんな事しても何の意味もない。

 毎日毎日毎日毎日毎日毎日…夜な夜な手首を切り裂いて今では両腕の上腕が傷だらけ、最初は手首だけだったのに意味もなく続けてるうちにこれだ。

 自分でも何でこんな事してるのか分からない。だがやらないと気が収まらない。

 …自己嫌悪で死にたくなる。

 

「…先輩…」

 

 先輩の事はもう気にするだけ無駄だってのは頭では分かってるつもりだ。

 優先すべきはもういない人間より今生きてる人間。当然の判断だ。

 

 …だから…だから私も何か役に立つ事をやらなくちゃいけないんだ…。

 

 めぐねえが教師をやるように、りーさんが家計簿をつけるように、ゆきとたかえが周りを励ますように、鳳条が()()()()をやるように…。

 なら私も何かしなければならないのは当然の事。一人だけ何もしないなんて…上手く言えないがそれは駄目だろう。

 だけど皆は言うんだ、何もしなくていいと。

 私を心配してくれての善意100%の言葉だろう。だが私には「お前は邪魔だ」と言われてるようにしか感じれなかった。

 

「…今日も出来なかった…な…」

 

 あの日以降、鳳条とちゃんと話して和解したいのだが未だに踏み出せないでいる。

 何なら私がウダウダしてるうちに相手から謝りに来る始末。何で私が悪いのにあいつから謝ってくるんだよ…

 

 しかもあいつの事を考えてると、両立しないはずの感情で胸がもやもやする。

 はっきり言って私は先輩を殺したあいつが憎い。だが窮地から救ってくれた恩人でもあり…大好きだ。大好きなんだ…。

 この思いも伝えたい。でも今まで機会何て全て無駄にしてきた私が今さらあいつに告白…? 無理に決まってる。

 それに普通、初対面で殴られた相手と話そう何て考える奴はいない。今回はあいつから謝って来たが、本当は…心の中で…

 

「っ!!!」

 

 邪念を無理矢理振り払うべく、腕をカッターで深く切り裂く。今までの思考は痛みで一瞬にして消し飛んだ。

 

「っ~~…!」

 

 駄目だ、これ以上あいつの事考えてると頭がおかしくなる。

 それにそろそろ掃除して片付けないと、皆が起き――

 

「くっ…くるみ?」

 

 唐突に響いた低い声。声が聞こえた方向に振り向くと、そこにはさっき聞いた低い声の持ち主とは思えない女顔をした男がいた。鳳条典雅だ。

 

「そっ…その腕…」

「いやっ違っ…これは…!」

 

 動揺してカッターを落とす。必死になって言葉を捻り出そうとするが何も出てこない。一気に血の気が引く。

 

 こんな所見られたら…これからっ…どうやって皆に顔会わせれば…。そもそも何でこいつこんな時間に…、まだっ…6時なのにっ…!?

 

「たっ…頼む…!」

 

 鳳条にすり寄り懇願する。私の腕が鳳条の腹に当たりシャツが赤く染まった。

 

「皆には…皆には言わないで…! あの時の私みたいに殴って…ストレスの捌け口にしてもいいから…! やって欲しいなら…体でも…!」

「そっ…そんな事…」

「………やっぱり私に価値がないからか…?」

「…?」

「だって…そうだろ? お前が私に何もしなくていいって言ったのは…、私が何も出来ない無能だからなんだろ!?」

「何を――「そうなんだろ!!!」

「ひっ…!」

 

 急に表情を変えた鳳条がしりもちをつき、そのまま隅まで後ずさり腕で顔を隠し丸くなった。明らかに様子がおかしい。

 あれこれと声をかけてみるが鳳条は体を震わせて怯えるだけ。誰かから殴られるのを防御するような姿勢を取り続け、ひたすら嗚咽しながら許してと繰り返している。

 ふと、これが始まった初日にこいつが言ってた事を思い出した。多分母さんが原因、と。

 おそらく…と言うか確実に私が怒鳴った事でこいつのトラウマを思い出させてしまったんだろう。

 

 …これ、もしかしてこのまま好き勝手に出来るんじゃ…

 ――いや駄目だ! 何を考えてるんだ私は…

 

 頭を振り考えを改める。それよりトラウマを反芻したこいつの対処だ。

 

「ごめん…いきなり怒鳴ったりして…、もう怒鳴ったりしないから…」

 

 謝罪と共に頭を撫でる。すると腕をどかして顔を見せてくれた。

 

「え…あ…くるみ…?。…そっか…そう…だよな…、今目の前にいるのはあいつじゃない…あいつじゃ…」

 

 自分自身に言い聞かせる鳳条。

 あいつと言う人物が気になるが、掘り返していいものではなさそうだ。

 

「…あー…あの…さ、ここじゃアレだし…場所変えて…お前と二人で話がしたいんだけど…いい?」

 

 目元が赤い鳳条は静かに頷いた。呼吸を整え震える体でゆっくりと立ち上がる。

 支えてやろうかと思ったが、こいつには逆効果にしかならなさそうなので止めた。服にはべっとりと私の血が付着している。

 

「先…行ってて…。着替えて来る…」

「あ…うん…」

 

 手洗い場を洗い流し新しい包帯を使って腕の傷を塞ぐ。それが終わり部屋まで行くと、鳳条の方が早かったのか部屋の長机の隅に座っていた。

 服もシャツを新しい物に変え上着を羽織っている。

 

「…何か…いる? 飲み物…とか…」

「…コーンスープ…まだある?」

 

 棚を開けると丁度2つだけ残ってた。ポットのお湯と共に粉を入れる。

 いい匂いと共に湯気が立つ。時間もまだ余裕があるしゆっくり出来そうだ。

 

「これ…最後…?」

「…そうだな…」

「取って来ないとな…」

「…今じゃなくていいだろ…。てかまた一人で下に行ったのか…?」

 

 あれだけめぐねえとりーさんに止められてたのに。特に最初の時何て散々詰められてたな。

 

 出来ればこんなやんわりした会話を続けていたいが、長々してる訳には行かないので本題に入る。

 

「……ごめんな、さっきは怒鳴ったりして…」

「いや…」

「…許して…欲しいんだけど…」

「別にいいよ、これぐらい。悪いのは俺だし…」

「…優しいよな…お前は…」

 

 沈黙が流れる。

 

 今だ、今言わないでいつ言うんだ…!

 何故か言おうとすると口が、体が固まる。ただ一言、お前が好きだと言うだけなのに。

 

 そんな私の内心も知らない鳳条がスープを啜り飲み干し、口を開いた。

 

「…変な言い方だけど…兄妹の仲がいいって、良いこと…だよな?」

「…?」

 

 長い沈黙を打ち破ったのは、あまりにも斜め上の質問だった。

 

「そりゃぁ…良いことだと思うけど…」

「…悪い、変な事聞いて。ちょっと…妹の事思い出してさ…」

 

 鳳条の女性恐怖症も収まったのか慣れたのか、今ではだいぶフラットに喋るようになった。まだ触られるのは嫌らしいが。

 …私のせいでリバウンドしてないといいけど、この様子なら大丈夫そうだ。

 

「――あぁ、もうこんな時間か…」

 

 何処か遠くを見た、儚げな表情をした鳳条が立ち上がる。

 

「悪いけど…これ洗ってもらっていい?」

「…うん…いいよ、それぐらい…」

「じゃあ俺…ちょっと“用事”があるから」

「…また…下に行くのか…?」

「…ちょっと…な。…じゃあ」

「あっあの…!」

「?」

「いや…その…気を付けて…って言いたかっただけ…それだけ…。…気を付けて…」

「…ありがと」

 

 薄い笑みを浮かべた鳳条が扉を閉め部屋を出ていった。

 

 …情けない、結局伝えたい事は伝えられなかった。今回何てあれだけ望んだ二人だけの空間なのに。もっと自分から喋ればいいのに…それが出来ない…。

 そんな後悔や一瞬だけ言及された鳳条の妹を考えながら食器を片付けてると、注意散漫からか食器を崩しかけた。

 幸いにも被害はないのだが、上から何か落ちてきた。雑誌…にしては薄い、パンフレット…か? 何だこれ?

 

 ええと…[緊急避難マニュアル]…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 え、ええ…(困惑)。もしかしてKRM姉貴メンヘラ化してる?

 いやでもちゃんと役目を与えてればそんな事起きないはず…

 ちゃんとかれらの対処が――あ、そっかぁ(盲点)。今回探索と掃除は全部典雅君がやってたのかぁ…

 …これどうしよ? 下手するとガチメンヘラになりますねクオレワ…。今日中に対策を考えましょう。

 と、言う事なのでゆきちゃん、KRM姉貴が何か役目が欲しいと仰有ってるのですけどどうすればいいですかね?

 

「うーん…。役目何てなくてもくるみちゃんがいてくれればそれだけで楽しいよ!」

 

 うおっ眩しっ。

 別に嘘は言ってないんですが、まさか馬鹿正直にKRM姉貴がリスカしてるのを伝える訳にもいきませんしねぇ…

 

 あ、やべ体力が

 

「? てんくんどうしたの?」

 

 さっき徹夜するとは言った物の流石に重労働の翌日に徹夜は厳しいようですね。

 それに免疫力が下がってる状態で病気になると下手すれば悪化して死ぬ事もあります。

 さっき購買部から掻っ払って来たエナジードリンクに頼り過ぎるのも良くないですし…仕方ありません、まだ昼過ぎですがもう寝ましょう。

 バリケード先輩も完璧に機能して防いでくれてるようなので。

 健康が一番、はっきりわかんだね。

 

「もう寝るの? そっか、ゆっくり休んでね」

 

 ああ^~たまらねぇぜ。もう一度やりたいぜ。明日もこの笑顔見れるなら最高や。

 

 ではお休みなさーい、からのオッ――!?。ここ…何処? 何でベッドの上で縛られてるの?

 

「…あぁ…起きたのか…」

 

 …KRM姉貴?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 薄暗い部屋の中、ベッドの上に縛り付けた鳳条がごそごそとしている。起きたか。

 私は靴と靴下を脱いでベッドの上の鳳条に馬乗りになった。

 

「って…」

 

 鳳条は寝ぼけてるのか、状況を把握しきれていないようだ。完全に意識が覚醒するには時間がかかるだろう。

 …仕方ない、これじゃあ話も出来ないな。ちょっと強引だが目を覚まさせてやろう。

 

 スパァン!

 

 鳳条の頬を全力の平手打ちで叩く。綺麗な音が鳴り、鳳条の頬には赤い痕がついた。

 

「おはよ♡」

 

 思考が追い付かないのか疑問だらけの表情。

 出来るならその疑問全てに答えてやりたいが、そんな物は後で説明すればいいか。今は私のターンだ。

 

「私、お前にずっと伝えたい事があったんだ。でも言えなくて…。悪いな、こんな形で」

「なっ…何を…? ここは――「私、お前が好きだ」――え?」

「あの時助けてくれたのが原因だろうな、ずっとお前の事考えてた。…だけどな、それと同時に…!」

 

 固く握り締めた拳を振り上げ、鳳条の腹に勢いよく振り下ろした。

 

「カハッ…!?」

「お前の事が憎いんだよ!!!」

 

 言った…、やっと…言えた…♡

 

「何だよ! 先輩の事殺しておいて! 挙句の果てには屋上から死体を投げ落として!」

 

 殴る。蹴る。感情を乗せて。

 

 やっぱりだ。こいつ、トラウマをほじくると何も抵抗しない。

 現にこいつを縛る物は衝撃でほどけ、何もないのに一切私に反撃しない。あの時と同じ、腕で顔を守って許してといい嗚咽するだけ。

 

「…アハッ♡私もうダァメだ♡ お前の事考えてたら脳味噌が壊れる♡」

 

 憎いのに大好きで♡大好きなのに憎くて♡

 もう色々押さえられない♡

 

 鳳条の腕を退かす。止めろよその顔、誘ってんのかよ♡

 そのまま後頭部を掴んで私の顔まで引き寄せ、鳳条の唇を奪う。口の中に舌を入れると唾液の味がした。

 10秒? 1分? 10分? 分からない。ただ長く…永く続いた。

 

「…っはぁ!♡」

 

 私の感情が収まって来た所で口と手を離す。鳳条は何が起きたのかようやく分かった表情をしている。

 

「お前が…お前が悪いんだぞ♡ お前のせいで…お前のせいで私の両手…こうなったんだぞ♡ ほらっ責任取れよ♡」

 

 服を全て脱ぎ捨て下着姿になり、腕の包帯も取る。

 

 そうだよ、何で私がこんな目に遭わなきゃならないんだよ。

 先輩を刺し殺して、私の心まで弄んで。全部…全部こいつが悪いんじゃないか♡

 

「フフッ♡」

 

 鳳条のズボンのベルトを引き抜く。

 

 改めて見ると、こいつもちゃんとした男なんだとよく分かる。だが全体的に細い。

 ズボン何てチャックも上のボタンも閉めてるのに腰がゆるゆる。身長的にこれしかサイズがなくベルトだけで腰を閉めてたんだろう。

 

「女の子みたいな腕してんなお前な♡」

 

 本当にその言葉通りの華奢な体だ。今まで“かれら”を相手にしていたとは到底思えない。

 

「助けを呼んだ所で無駄だからな…。お前はここで死ぬまで私のおもちゃになるんだよ♡」

 

 上では今どうなってるだろうか。この事は誰にも言ってないから大慌てかもな。

 一応、偽物の手紙で心中した事にしておいたが…、あながち嘘でもないな。この地下シェルターにある物では3日も生活出来ない、すぐに破綻する。

 まあでもどうせ…あのままでも遅かれ早かれ全滅する、いつまでも安全な学校暮らし何て出来やしない。何とか破滅を先延ばしにして現実逃避してるだけだ。

 今の私達にはそれが少し早く訪れた。それだけじゃないか。

 

 それより今はこの時間を愉しもう。

 

「覚悟…しろよ♡」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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悪天候

「いきなり暴れんなよ…。大人しくして…ろ!」

 

 オォン!(力負け)。女の子に簡単に突き飛ばされるほど典雅君が軽いのかKRM姉貴がクソ強いのかこれもうわかんねぇな…。

 

「さっきも言っただろ…、どうせ皆…このまま“かれら”に喰われて死ぬんだぞ?。誰も助けてくれやしない。…ならこれぐらいいいじゃないか…♡」

 

 ヤメロォ(建前)ヤメロォ(本音)、ふざけんな止めろ馬鹿!

 典雅君も何か言い返して、どうぞ。嗚咽してないでせめて何か言えよオォン!?

 そもそも何でこんな事するんですか(疑問)

 

「だからさっきも…。お前が好きで憎いって言いたかっただけだよ」

 

 だからってこんな事する必要ないと思うんですけど(正論)

 

「それは…正直言うと自分でもよく分からないんだ…。ただ…こうしたらいいって直感で思ってな…。結果、大正解だったよ♡」

 

 駄目だこのシャベルゴリラ(諦)。

 

「あ、怒ってるのか? ごめんなぁ、私ついカッとなる性格らしくてさ…その場の感情で行動しちゃうんだよ。だから腕もこんな風になっちゃったのかもな…、誰かのせいで♡」

 

 クオレワ紛うことなきメンヘラですね間違いない…(絶望)

 馬鹿野郎お前俺は逃げるぞお前! この距離なら全力疾走でもそうそう追い付かれ――

 

「つ・か・ま・え・た♡」

 

 速!? 何でぇ!?

 あ、そっかぁ…KRM姉貴は陸上部所属だったのかぁ…(過去形)。

 まあそらそうですよね。覚醒してなくてもゴリラはゴリラ、人一人背負ってゾンビパニックの中単独で学校の屋上まで全力ダッシュする女の子が弱い訳ないんです。

 しかもそこに主人公の女性恐怖症も追加される…と。

 もうダメだ…おしまいだぁ…、勝てる訳がないYO☆(サイヤ人の王子)

 

「いい加減大人しく――」

 

 何て言うと思ったか! この愚か者MEGA!(腹筋破壊大帝)

 お前のここが隙だったんだよ! 喰らえマン的!

 

「お…ぁ…!?」

 

 股関は女の子でも急所だからね、蹴り飛ばされたら悶えるのもしょうがないね(鬼畜)

 ヨシ!(猫)これで少しは時間が稼げるはずです、今のうちにこ↑こ↓から脱出しましょう。

 …って言ったのはいいんですがそもそもこ↑こ↓は何処なんですかね…? 多分地下シェルターだと思うんですけど(名推理)。

 ならどっかに出口君がいる――と思ってた時期が私にもありました。

 何故か出口君が、ないです。出口君は何処…ここ…?

 

「みい~つけたぁ…♡」

 

 ファ!? クゥ~ン…

 体力使いすぎたせいでロッカー先輩を蹴り飛ばした馬鹿力発揮出来てないやん! どうしてくれんのこれ?

 

「私だって…私だってか弱い乙女なんだぞ♡もっと丁寧に扱ってもらわないと♡」

 

 こんな事する女の子の何処がか弱い乙女何だよォン!?

 アカンこのままやとKRM姉貴にも捩じ伏せられるゥ! て言うかもうすでにベッドまで追い込まれてるゥ!

 

「もういい加減諦めろよ♡ 今抵抗しようが結末は変わらないんだぞ♡」

 

 オォン! アォン! KRM姉貴の力が強すぎィ!

 しかも溝尾に一発もろに喰らって体力が底をつきました(絶望)。

 

「さっきのお返しだよ♡」

 

 何も嬉しくねぇ…(素)。たまたまじゃなかっただけマシかな(錯乱)

 …で、その手に持ってるお注射は何なんですか…? そもそもいつの間に…? それ絶対ヤバい物だと思うんですがそれは…(恐怖)

 

 ええい! 動けこのポンコツが! 動けってんだよ! 動け動け動いてよ!

 ――駄目みたいですね。(駄目みたい?)ハイ…。

 アカンこのままやと高身長ヒョロガリの黒髪ロングストレートでド低音の女顔美少年男の娘が、上腕傷だらけの目が死んでる紫下着姿メンヘラ化KRM姉貴に☆O☆TIN☆TIN☆ランド開園されてミルク(意味深)を搾り取られるHシーンがダイレクトに垂れ流しになるゥ――…何て事は、ないです。

 これR15版だからね、仕方ないね♂。R18版が気になる人は買って…やろう!(ダイマ)

 

「いちいち喚くな、五月蝿い。黙れ、また殴るぞ」

 

 ヒエッ…

 

「…それでいいんだよそれで♡ そもそも、元はと言えばお前が悪いんだからな♡お前のせいで私はこんな風になったんだぞ♡責任とっておもちゃになれよ♡」

 

 何も言わずに溜め込んでたKRM姉貴が悪いと思うんですがそれは…

 

「ちょっとチクッとするぞぉ~♡」

 

 ちょちょちょっと待って下さい! 待って! 助けて! 待って下さい! お願いします! アアアアアアアア!!!(大迫真)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん…」

 

 朝…か。そう思い時計を見てみると丁度正午を指していた。寝坊何て次元ではない。当然だが、他の寝袋には誰もいない。

 しかし不思議な事にここまでの寝坊をすると逆に冷静になる。…なら昨日、もっと冷静に行動出来なかったのだろうか…。

 怠い体を起こし、とりあえずの身だしなみを整える。

 

「…鳳条さん…」

 

 …10歳も年下の子供を“おにいちゃん”と呼んで…、何をしてるんだ…私は…。

 しかしこのまま全てを投げ捨てて彼の“妹”になりたいと考えている自分がいる。そんな自分が気持ち悪くて仕方がない。

 

「私は…大人だ、まだ子供の彼らを守らなくちゃ…。正しく導く…大人でなくちゃ…」

 

 そう自分に言い聞かせる。

 …だけど…だけどやっぱり…また甘えたいな。全てを捨てて、何も考えずに。

 …だからって鳳条さんの事を“おにいちゃん”って…

 

「…いや、やめよう、あんな事」

 

 こんな事をしていては駄目だ、今からあれはなしだと鳳条さんに言いに行こう。それで終わりにするんだ。

 

「まずは目の前の課題から…か」

「あ…めぐねえ…」

「柚村さん?」

 

 部屋から出ると丁度柚村さんと鉢合わせた。彼女は暗い顔をしている。何かあったのだろうか。

 

「どうしたの?」

「…これ…」

 

 彼女から渡された一枚の三折りになった紙。どうもノートをちぎって書いた手紙のようだ。広げて中身を呼んでみた。

 

「…………え?」

 

 心臓が跳び跳ねる。上手く息が出来ない。

 

「何…これ…?」

「朝起きたらそれが机に置いてあったんだ…。…二人ともいないし…その…本物…だろうな…。

 …これ…悠里が最初に見つけたんだよ。今由紀が慰めてるんだけど…、相当精神にきたらしくて…。今…――」

 

 心…中…? あの二人が? 何が理由で? まさか…私がちゃんとしてなかったから…

 …そうだ…そうにちがいない…。私が…私が二人とも抱えてた悩みを解決出来ずに…守れずに…。

 特に鳳条さんなんて私が原因…で…。ちゃんと…二人を見てなかったから――

 

「――めぐねえ!」

 

 柚村さんの声ではっとする。

 そうだ、今は生徒の前だ。私がちゃんとしないでどうする。

 笑え、笑顔で大丈夫だと言え。私が全て解決すると宣言しろ。

 

「そう…なのね…あの二人が…。…教えてくれてありがとう、悠里ちゃんと由紀さんは?」

「…いつもの部屋だよ」

「分かったわ。この件は私が解決するから柚村さんはゆっくり休んでください」

「…“先生”、無理してない?」

「別に、そんな事ないわ」

「…そう…、なら…いいんだけど…。…じゃ、あたしは屋上にでも行って来るよ」

 

 そう言って柚村さんは去って言った。

 私はこれから悠里ちゃんの所に行かないといけない。いけないのに…何故か足が動かない。

 

「う…ぁ…」

 

 涙と声が感情に混じって漏れる。止めようと思ってるのに押さえられない。次第に決壊したダムのように、私の感情は止めどなく溢れ出る。

 気づいた時には一人、廊下で号泣していた。

 

 

 

 

 …めぐねえ、やっぱり無理してるな。表情はぎこちないし、先生と言ってもいつもなら何かしらの反応があるだろうに今回は何も反応がなかった。それに今、下からめぐねえの泣き声が漏れてる。

 めぐねえを慰める…何て、あたしには出来ない芸当か。今めぐねえの所に行っても、あたしは何も言えない。何なら逆効果になる可能性もある。

 それにあのめぐねえだ、目にゴミが入っただけと無理のある言い訳をするだろう。そしてあたしが無理矢理納得させられるのもよく見える。

 

「…?」

 

 鼻に水滴が落ちる。顔を上げると顔面に次々と水滴が降り注いだ。雨…か。

 すぐに止むかと思っていたのだが、どんどん雨は強くなる。

 一時のゲリラ豪雨…ではなさそうだ、天気が急速に悪化している。この調子だと午後は雨が確定…だな。

 

 あれこれ考えつつあたしは慌てて校舎内に入った。扉の向こうは凄い事になっている。台風かよ。

 幸い、早めに入ったおかげで体は濡れてない。この状況だ、風邪ですら命の危険がある。気を付けねば。

 

 階段を下りる。雨音が五月蝿い。

 これが一階で探索中とかじゃなくてよかった、もし探索中だと危険極まりないな…。

 これじゃあ“かれら”の声も聞こえない。まあ、ここで“かれら”と出くわす何てそんな――

 

「アァア…」

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、あ~ん♡」

 

 むーしゃむーしゃしあわせー!(現実逃避)

 

「あーあ♡ これで1日分の飯がなくなっちゃったなー♡後2日しか飯食べられないなー♡」

 

 ――は!? 私はいったいなにを…。今まで食べていたあまあまは…!?

 

 …何て、茶番は置いときまして(現実直視)。これからどうしましょうか…。

 いっそ、脱出せずに最終日まで待つと言う戦法もありますが…、それだとタァイムが伸びそうなんですよねぇ…。KRM姉貴が何してくるかも分かりませんし。

 なら脱出…なんですが、脱出しようにもそもそも出口君が見当たりません。必ず何処かにあるんですがね…。

 

 まあ脱出すると目標設定して、今はKRM姉貴の機嫌を損ねない事が最優先ですね。下手すると殴り殺されかねません(恐怖)。

 許可なく動こうとすると、手榴弾投げるのをミスった訓練兵を塹壕に慌てて引き摺り下ろす教官みたいな反応速度で対応してきます。ソコニヤツガイルゾ(^q^)

 幸い? 今のKRM姉貴の心境は「可愛さ余って憎さ百倍」ならぬ「憎さ余って可愛さ百倍」の心理らしく、典雅君を可愛がっています。

 なのでおもちゃをやっていれば殴られるような事は起きないでしょう(希望的観測)。

 

 上も恐らくですが大丈夫です。大丈夫だと思いたいです(希望的観測その2)。

 何せ皆のアイドルゆきちゃんがいますからね、めぐねえもどうにかしてくれるでしょう。

 

 籠城防衛も連続あめのひを繰り出され、かれらがバリケードを乗り越え防火扉先輩を抉じ開けるような事でもない限りは大丈夫です。

 ちなみにですが、ナイトメアにはあめのひに生け贄を捧げれば乗り越えられる何てシステムはありません。普通に人材が一人減るだけです。

 いざというときの最終手段すらないとかウッソだろお前…(絶望)

 

 後は勝手に学校の外に出る事ですね。

 グラウンドとか体育館とか、学校の敷地内は大丈夫なんですが、一歩でも外に出ると実績が取得出来ません。

 まあ、勝手に外に出る何て事はないとは思うんですが…

 

 長くなったので今回はここまで、ご視聴、ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 



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世俗的からの解放

今月中だから遅くない(言い訳)


 結局何も出来ないRTA、はぁじまぁるよー。

 

 はい、あれから何も出来ずに3日立ちました(絶望)。

 今は目が死んでるウッキウキ表情の手榴弾を胸に抱えたKRM姉貴に「心中して♡(要約)」と迫られてる所さんです。

 いや手榴弾何てどっから引っ張り出して来たんだよォン!?。馬鹿野郎お前俺は心中何て絶対しないぞお前! もし上が全滅してたらまた再走する事になるだろォン!?

 

「嫌だって言ってもやるんだよほら♡もうここに用意してあるんだからさ♡」

 

 嫌です…

 

「………何で?」

 

 ちゃんと実績取って…RTA完走したいからです…(メタ)

 典雅君もこう…ほら、KRM姉貴説得してほら(無茶振り)。今なら話聞いてくれそうだからさ。

 

「まだ…まだっ…どうにかなるかも…しれないだろ…?」

「…そこまでして必死に生きたいとも思わない。第一生き延びて何の意味がある?」

「意味は自分で見つけるんだよ…!

 どれだけ状況が悪くても…他人のせいにしてても何も変わらない…。自分から…自分から動かないと何も変わらないし変えられないじゃないか…!」

「…要は能動的に…か。確かに言ってる事は分かる、よく分かる。

 だけどこんな状況でも意味になり得たあの人は……お前が…お前が殺したんだろがぁ!!!」

 

 (まさかの逆効果に)笑っちゃうんですよね。

 溺れる! 溺れる!。首絞めるのやめちくり~(懇願)

 

「そんな可愛い顔するなよ…♡殴りたくなるじゃないか…♡」

 

 嗜虐心まで煽っちゃっ…たぁ!

 

 別に縛られてる訳じゃなんですけど、典雅君の女性恐怖症がバチバチに炸裂してて完全にではないんですけど動けないんですよね…。もうどないせいと(エセ関西)

 いっそこのまま時間稼ぎして最終日まで行きましょうかね?。あ、でも飯も水も…いや浸水してる床の水啜れば4日ぐらいどうにかなるかな…?

 

<ゴォン!(迫真)

 

「…何だ?」

 

<バゴォン!(迫真)

 

 え、何この音は…(困惑)

 

<ドゴォン!!!(大迫真)

 

「なっ…!? 肉…塊…!?」

 

 あ、君かぁ!

 知らない方の為に説明しておきますと、この肉塊は中ボス的存在のグロブスター君ですね。原作には登場しないゲームオリジナルの存在で、希にリスポーンし猛威を振います。

 ただ弱点のコアを狙えば楽に倒せる相手です。今丁度見えてる口の中にあるアレですね。

 

 え? 簡単に倒せる相手なら何も問題ないなって?

 現実的に考えてこんなの普通の高校生が相手にして勝てる訳ないだろいい加減にしろ!(難易度悪夢感)

 かと言って為す術がない訳じゃないんですねこれが。一発逆転の希望がここに一つあります。

 

「何なんだよコイツ…!?」

 

 隙あり!

 

「なっ! お前――」

 

 よし! 手榴弾投入ぅぅぅ!!! 伏せろぉ!!! 爆発するぞぉ!!!(万歳エディション)

 

<ドカァン!!!

 

 サヨナラ! 哀れグロブスターは爆発四散!。君の事は夕飯まで忘れないよ…

 はい、どうせまともに戦っても勝てないので大人しく手榴弾を口に放り込みます。タァイムが無駄に伸びるだけなのでさっさと退場してもらいましょう。

 

 あ、そうだ(唐突)。体に付着した血が気持ち悪いんで上のシャワー室に行きませんか? 行きましょうよ?

 

「………何で……何で私を庇ったんだ…?」

 

 そりゃぁお前大事な仲間だからだよ、言わせんな恥ずかしい。

 

「仲間…? 私が…?」

 

 つべこべ言わずにこいホイ!

 

 ここはKRM姉貴のペースに乗せられるとまたKRM姉貴のおもちゃ(意味深)になりかねないので無理矢理にでも連れ出します。シェルター物色は後でゆっくりやりましょう。

 隠れてた出口君はグロブスター君が開けてくれたようです、ありがたやありがたや。

 じゃあ上までイクゾー(デッデデデデ カーン デデデ)

 

 と、言う事で上の世界(意味深)に来た訳何ですが…、なぁんでかれらが山ほどいるんですかね…。

 (これ学園生活部全滅してる可能性が)濃いすか? とりあえずいつもの部屋(生徒会室)は制圧しましたけど…。

 

<ガタッ(迫真)

 

 押入から物音、これはかれらですね間違いない…

 

「え……鳳条…君…?」

 

 あ、りーさん見ーっけ。って大丈夫ですか!? 直ぐに水とご飯用意しなきゃ…(使命感)

 KRM姉貴は棚の非常水飲ませて下さい! 私は簡単な雑炊作るので!

 

「わ、分かった…」

 

 インスタントスープと予め用意しておいたチンする米を混ぜてお湯を入れるゥ! はい完成!

 

 しかしこの様子だと生存者がまだ何処かにいそうですね。早く見つけないと体力が尽きて死ぬのが目に見えます。アカンこれじゃあ学園生活部員が死ぬゥ、学園生活部員が死ぬねんこれじゃあ!

 記録的にも適度な日常イベントを挟んだ方がタァイムがいいので直ぐに助けましょう。なぁに、今の私にはbiim神のご加護があるんです。全員生存ぐらい余裕だよなぁ!?

 ――…と、思ってた時期が私にもありました。

 

 ういぃぃぃぃっす、どうもー走者でーす。えー、あれから学校中探し回ったんですけど、生存者は…誰一人…いませんでした…。誰一人いなかったですぅぅぅ…。はい、チョーカーさんはかれらになってました…。

 …いや。まだだ、まだ終わらんよ!(赤い彗星)。まだめぐねえとゆきちゃんが見つかってません。

 いるとしたらそう、まだ探索してない放送室。鍵がかかってたので探索ついでに鍵を取りに行きました。

 ノックしても反応がなかったのでだいぶ怪しいですが…、それでもこのパンドラの箱を開けなくてはなりません。もし生きてたら大惨事ですからね。

 

 恐らくですが、このなった原因は私が調子に乗りすぎたからなのでしょう。その罰としてbiim神が試練を与えたのです。

 これはbiim神からの試練を乗り越え栄光(新記録)を手に入れろという啓示なのです。多分。

 私はこの放送室にどんな阿鼻叫喚の地獄絵図が広がってても認めます。それがbiim神の試練だと言うのなら乗り越えてみせましょう。

 

 オープン!!!

 

 

 

 

 

 

 

「くっさ!? え……先…生…?」

 

 何処かで聞いた声が静寂に包まれた部屋に響く。この声は…

 

「――鳳条…さん…?」

「…何…してるんです…?」

 

 思い出したくもない事だが口にしなければ状況を説明出来ない。私は震える口でどうにか喋った。

 

「あ、私ね? 由紀さんとここに逃げて来たの。それでね、由紀さんが途中で噛まれてね、痛がってたの。それでね? それでね?

 私…、由紀さんをこれ(シャベル)で刺しちゃったの。

 ………ふふ、最低よね、私。守るって言っておきながら…そう言っておきながら……ははは……」

「こっ…こんな所いたらおかしくなるから…、とっとにかくシャワーでも浴びてっ…とにかく体を!

 いやまずは水と飯か…!?」

 

 本当に…何をやってるんだ私は…。私が卑しいと言った大人達と同じ事をしてるじゃないか…

 

「先生は大丈夫…先生は大丈夫………

 まずは水と飯! 連れてくより持って来た方が早い! 窓は開けて換気扇もつけて換気!」

 

 慌ただしく動く鳳条さん。気付けば私の体を支えて雑炊を食べさせてくれていた。美味しい。

 

「大丈夫だ…大丈夫だから…。自分の体なんだから…! ちゃんと言う事聞けよっ…!」

「もっと…これ食べていい…?」

「いくらでも食ってろ! ああもう!」

 

 鳳条さんが由紀さんだった物を窓の外に放り投げた。

 

「腐った人間ってこんな匂いするのかよ…! よく分からん病気にもなりそうだしもう…!

 先生はそれ食ったらシャワーでも浴びて体洗ってきて下さい、服も臭くてかないません…!」

「…ええ…」

 

 言われるまま、私は雑炊を食べてふらつく体でシャワー室を目指した。本当は体力的に寝ていたいが臭いと言われたのだから仕方ない。

 自分で考える気力もないなか、力を振り絞って体を洗い服を着替えた。…生徒の制服だけど…着る服があるだけよしとしよう。

 その後、放送室まで戻り鳳条さんに私は何をすればいいのかを聞いた所、大人しく寝といて下さいと言われた。そして掃除が終わり次第、会議をすると。

 その言葉に従い、私は鳳条さんが綺麗に掃除したのであろう寝室の寝袋の上に寝転がった。

 

「…先生。三階の掃除、終わりました」

 

 どうも寝ていたらしい。自分が思ってた以上に疲れていたようだ。

 

「…本物…なのね…」

 

 鳳条さんの綺麗な腕を握る。彼の華奢な体が跳び跳ねた。

 

 …よかった…死の間際に見えた幻覚ではなかった…

 

「…ごめんなさい…」

 

 彼に抱きつく。

 

「っ…」

「えへへ…♡」

 

 彼の震える手が私の頭を撫でる。今までの状況の反動だろうか、すごい安心する。

 気付けば私は本音をぶち撒けていた。

 

「…ずっと…こうしていたい…。…貴方の妹になりたい…

 …自分でも分かってる、こんな事いけないって。

 …でもこの現実から逃げたい。そんな事しても、何も変わらないのに。目の前の現実から逃げた所で酷くなるだけなのに。

 …ねえ、鳳条さん…。私は教師よね…? 皆を守らなきゃならないのよね…?」

 

 変わらず撫でられる。

 

「でも私…もう嫌なの。教師として、皆を守って正しく導くのが私の役目なのに…何も守れないし…導けない…。

 実際、由紀さんは私がこの手で……この手で………」

 

 守ると言っておきながら実際には自分の命惜しさにこれだ。自分がどうにかしなくちゃいけないのに恐怖に駆られまともな判断を下せずに由紀さんをシャベルでめった刺しにした。

 この現実が私は口だけの人間だと言ってくる。

 

 …………現…実?

 

「……そもそも…これって現実なの?」

 

 皆“かれら”になっちゃって、かいだんにバリケードをつくって学校でせいかつする。これが現…じつ…?

 …いや、ちがう。そんな訳ない。そんなはずない。ちがう。

 

「なっ…何を言って「イヤァ!」っ!?」

 

 だきしめる。つよく。すごくつよく。

 

「ちがうちがうちがうちがうちがう!!!」

 

 ちがう。こんな…こんなことがげんじつなわけないよね。いままでのはぜーんぶ、ただのわるいゆめだよ。

 だって、いまめのまえにわたしのおにいちゃんがいる。だからこれがげんじつ。そうだよね?

 

「ゆめ…だよ、ただの。…わるいゆめ」

「夢…?」

「そうだよ、いままでわたしがみてたのはゆめなんだよ。ね?」

「………………」

「わたしすっごくこわかった。だからなでてなでて♡」

 

 げんじつ。これがげんじつ。

 

「えへへ…♡」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何だこれ地獄か? いや悪夢か…(自問自答)

 

 あ、この惨状の原因ですが、恐らく…と言うか十中八九グロブスター君が原因ですね。今までバリケードに不自然な傷がついてたのもそうです。

 ホンマお前っ…なんて事を…(憤怒)。次あったら容赦しねぇからな…(掌返し)

 

 で…とりあえずめぐねえは離れようか。

 

「いや!」

 

 駄目みたいですね…(諦)

 

 めぐねえが壊れちゃった所で今回はここまで。ご視聴、ありがとうございました。

 

 

 

 



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ニヒリズム

 夕日が差し込む部屋の中でりーさんと二人でコーヒーを飲む。苦い。

 昼間は“かれら”と鳳条が死闘を繰り広げ、八つ時になると私と鳳条で三階の掃除。それが終わり今に至る訳だが…、りーさんと話す事がない。

 さすがにずっと黙ってるのも何か気まずいので私が話題を探している丁度その時、りーさんが口を開いた。

 

「…胡桃は何であんな事したの…? …鳳条君と心中だなんて…」

 

「…あー…そういやそうだったな。それに関しては実の所私にもよく分からん」

 

「分からない…?」

 

「ああ、自分でも。ただの勘だよ、勘。こうすりゃいいって思ったんだ

 りーさんにも経験あるだろ? 適当にやった方が上手く行くって事。そんな感じだよ

 それに生きてる意味もないしなーって」

 

「…何か…何か…ないの?」

 

「難しい事を聞くな…。

 そんな物はない。強いて言うなら鳳条が殺した先輩か」

 

「…でも、彼のおかげで貴女は…」

 

「分かってるよ、あいつのせいにした所で何も変わらないのは分かってる。何より過去。

 でもあいつが先輩を殺したのも、私を助けたのも事実だ。だから憎いし愛おしいんだ」

 

「…何か…新しく見つけるのは…」

 

「わがままだけど今さら希望何て持ちたくない、余計な絶望を喰らうだけだ。そうだろ?」

 

「……………」

 

「それに今さら何言ったって無駄だよ、無駄。過去の事なんてどうしようもない、そしてこれからの事もな。全部無意味だ」

 

「…無意味?」

 

「だってそうだろ? 飯もない、救助も見込めない、同じ人間さえ信用出来ない。この状況でどうやって生き延びろと? 仮に生き延びてどうしろと? 他の場所、県、国がどうなってるのかも分からないのに。

 “ランダル・コーポレーション”って世界的な企業だし、下手したら全世界がこうなってるんじゃないのか?」

 

「……ランダル・コーポレーション? 何でその会社が…?」

 

「あぁ、これ全部想定されてたらしい。生物兵器だって。

 もしかしたら企業と国とが連携して総動員でこの町を消すかも…何てな」

 

「……」

 

「まあ、今の私達にとっては全部どうでもいい。どうせ誰にも気にされずに私達は死ぬ。そうだろ?」

「…鳳条君がいれば…もしかしたら…」

 

「りーさん。現実を見ろよ、諦めろよ。

 生きる為に必要な事は全部鳳条に押し付けて何もせずに遊んでたのは他でもない私達じゃないか。

 私達が現実と言う名の“かれら”に立ち向かえないのは学園生活部とか言ってずっと現実逃避したてからじゃないか。

 自分で自分の首を絞めてたから、この結果なんじゃないのか?」

 

「……………」

 

「勿論、私もだけど…。自業自得とはこの事か。

 …はぁ…、あーあ。ほんっと…何で生きてるんだろうな、私。

 今までそんな事考えてもなかった。いや、考える必要がないぐらい恵まれてたんだな」

 

「………なら胡桃は…どうして今生きてるの?」

 

「単純だよ、一人で死にたくない。それだけ」

 

 気づけば日は沈み暗くなっていた。照明が部屋を照らす。

 

 そういや鳳条、まだ戻ってこないのか。寝室に行ってくると言ってたし…めぐねえの相手でもしているのだろうか?

 

 残ってるコーヒーに口をつけ飲み干した。苦い、これの何がいいのか。

 

 りーさんにコーヒーを用意してくれた事の感謝を伝え、様子を見てくると言って部屋を出た。

 昼には死体と血溜があったとは思えないぐらいに綺麗に掃除された廊下を歩き寝室まで行き、扉を開いた。

 中ではめぐねえが鳳条に抱きついて寝ていた。

 

 …人のモノを何を好き勝手に…、しかも私が着ようと思っていた制服じゃないのかそれ…

 

 胸から混み上がる黒い感情でめぐねえを殴り飛ばしそうになるのをどうにか抑えつつ、私は小刻みに震える鳳条からめぐねえを引き剥がして寝袋の上に寝かせた。そして上から別の寝袋を被せる。

 寝袋の数に関しては問題ない、今は四人だ。十分足りる。

 

「ほら行くぞ、りーさんが待ってる」

 

 私は鳳条の色白く細い腕を掴んで無理矢理連れ出し、りーさんの所までつれていく。部屋の机には乾パンとりーさんのメモ帳が置かれていた。

 

 りーさんが鳳条にめぐねえの事を問うと、鳳条は暗い顔で「…それは後ででいい?」と返事をした。

 鳳条の様子で察したのかりーさんは「ええ…」とだけ答える。

 

 そしてそのまま三人で、乾パンをつまみながら無価値の無意味な生存戦略を練った。

 

 まず飯と水。

 水は問題ない、学校の設備が生きてる。しかし飯に関してはまだ食える物を探すしかない、荒らされた時にお釈迦になった物が大半だ。

 四人分と考えてもせいぜい二日分の非常食だけ。これを多いと見るか少ないと見るか。

 ただ購買部の物を狙えば一週間ぐらいはいけるだろう。食堂の物は…うん、止めとこう。

 

 続いて服。

 あるにはあるし問題ない。今は大半が洗濯して干している最中だ。屋上だし匂いも問題ないだろう、雨でも降らない限りは。

 着る物が無くて私だけタオル一枚なのも今だけだ。

 

 そして生活する場所。

 三階はすでに制圧済、ロッカーから個室トイレの中までしらみつぶしに確認した。盲点はない。

 階段にも新しくバリケードをガチガチに固めた。代償として階段での移動が出来なくなったが、エレベーターで移動すればいいので大した問題ではない。

 強いて言うなら防火扉が使い物にならなくなったのが痛いな…、どんな力が加わったらああなるのやら…。

 

 まあ、この3つは大丈夫だ。理論上、一週間の生存は確約された。

 ただ…

 

「…で、それはいいとして…具体的にこれからどうするんだ? 鳳条」

 

「…具体的?」

 

「生き延びてどうするのかって話だ」

 

「それは……」

 

「ないだろ? 生きる意味。死にたくないから、それだけだろ?

 だらだらと破滅を先延ばしにしてるだけだ」

 

「胡桃…!」

 

「何が違う、りーさん。

 食える飯は理論上、一週間。理論上だ。それが出来なきゃ二日で底を尽きる。

 確かに水があれば食わずでも三週間は生きれるらしいが、そんな苦しみながら生にしがみつきたいか?」

 

「…今日はもう寝よう。時間はある、この話は明日でもいいんじゃないか…?」

 

 時計は11時を指している。確かにもう夜中も夜中だ。時間があるのも事実。

 

「………はぁ…、分かったよ…」

 

 感情が納得いとアピールするが、どうせ明日になれば忘れてるか。

 

「じゃあ、私は先に寝かしてもらう」

 

「…なあ」

 

「?」

 

「死にたいのか? 胡桃は…」

 

「りーさんにも言ったが、私は一人寂しく死にたくないだけだ」

 

 扉を閉じる。寝室に行き頭まで寝袋に入る。

 思ったよりタオルが邪魔なのでもぞもぞと脱いで外に投げ出した。

 

 …ホント、何で私生きてるんだろ…

 

 

 

 

 

 

 



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塞翁が馬

本当は5月中に完成させるはずでした…(小声)


 ここには夢がある(希望はない)RTA、はぁじまぁるよー。

 

 前回はりーさんにめぐねえの現状を伝え一日を終えました。

 今はKRM姉貴がめぐねえに全力ビンタをかましてギッスギス朝食を抜け出した所さんです。

 嗚呼、お先真っ暗な未来に対して朝日が眩しいぜ…

 

 何かアクションを起こそうにも、わんわん泣き喚くめぐねえがしがみついてるのが原因で典雅君の女性恐怖症がバチバチに発動し動けない為、りーさんに助けを求めつつ乾パンでも食いながら現状説明も含めて今生存しているメンバー紹介でもしましょうか。

 

 じゃあ早速イカれたメンバーを紹介するぜ!

 

 まず典雅君に対してアンビバレンツを拗らせニヒリズムの末に末人と化した珍しくシャベルを構えていないKRM姉貴!

 そしてメンタルも体もその他諸々もボドボドだけど何故か発狂してないりーさん!

 ぶっ壊れた(直球)めぐねえ!

 最後に高身長ド低音男の娘のメンタルが強いのか弱いのかいまいちよく分からない鳳条典雅君だ!

 

 はい、異常(以上)です。…これマジ? メンバー数の少なさに対して問題点が多すぎるだろ…

 結局の所最終日まで持ちこたえられればいいんですが、これは逆にいえば何が何でもこのメンバーで最終日まで持ちこたえなければならないと言う事でもあります。

 

 めぐねえは典雅君がよしよししておけばいいとして、りーさんもまあサイレント発狂していない事を祈りつつ役割振っておけば大丈夫でしょう。一番の問題たるKRM姉貴もどうにかなります、多分きっとおそらく()

 人間関係がちょっと崩れてるだけでヘーキヘーキ、ヘーキだから(白目)

 

 お、そうこう話してたらりーさんがめぐねえを引き剥がしてくれました。じゃあ俺、食料取りに行って来るから…

 

「…また一人で?」

 

 (問題)ないです。むしろ来た所で足手まといにしかならないので…(n敗)

 りーさんはめぐねえの面倒見オナシャス!

 

「………気をつけてね…」

 

 と、言う事で下の世界(意味深)に来た訳でございますが…、あれーおかしいね、誰もいないね。

 もっといると思ったんですけど…少ないどころかいません。ロッカーの中も空っぽです。

 クオレワ…まさかまさかの休校イベント?

 

 説明しておきますと、休校イベントとはその名の通り学校に誰もこないイベントです。本当に誰も来ません。

 かれらは勿論の事、希に来る普通の人間や太郎丸(単体)等全てのNPCが学校に丸々一日来ません。(発生確率は)1…か2くらいですね。

 

 勝ったな(ゲンドウ)。とてつもない強運だぁ…(災い転じて福となす)

 やっぱり不幸の後、諦めずに進めば必ず好運があるってはっきりわかんだね(名言感)。

 

 こうなればやりたい放題です、皆を呼んで探索しましょ――

 

「いないと思ったら…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ただぼーっとして屋上で空を眺める。今日も空は青い。

 まあ…当たり前だけど…何もないな。ただ強いて言うなら奥の方に黒い雲がある、午後に雨が降るかもしれない。

 

「…はぁ…」

 

 ため息が出る。

 

 どうせ皆“かれら”に喰われる、そう考えると何もやる気が出ない。

 人間である以上いつか死ぬのは当然だし、いつ死んでもおかしくないのは分かってる。ただこの状況で何をしろと。

 どんな状況、どんな環境でもやる奴はいくらでもやるんだろうが、私はこの状況でもがける程強くない。

 痛いのも苦しいのも嫌だ。何もしたくない。

 

「…鳳条の所にでも行くか、ちょっと相手してもらお…」

 

 階段を下り、部屋に戻って来たが鳳条の奴がいない。りーさんに聞いてみるも答えは沈黙でお前と話なんぞしたくないって表情だった。そりゃそうだよな。

 仕方ないので部屋を出て自分で探す事にした。だが何処にもいない。

 

「………あ」

 

 もしかしてと思いエレベーターの前まで来てみた。エレベーターは二階で止まっていた。

 

「はぁ……、よりによって下か…」

 

 下の階なら当然、“かれら”もいるだろう。だがそんな状況では私のシたい事も出来ない。

 でもまあ…あいつを動かすのは簡単だし、さっさと戻れば問題ないか。

 

「いないと思ったら…」

 

 エレベーターを降りると丁度目の前に鳳条がいた。

 廊下の脇に缶詰やらを置いてるのを見るに、使えそうな物をここに持ってきてるんだろう。

 

「何してるんだ?」

 

「く…胡桃?」

 

「飯でも探してるのか?」

 

「ま…まあ…」

 

「………周りには誰もいない…のか…?」

 

 不思議な事に“かれら”の気配を感じない。声の一つや二つが聞こえて来てもおかしくないはずなのだが…

 ………まあ…誰もいないならそれでいいか、それではそれで好都合だ。

 上にはりーさんがいるし、邪魔されては堪ったものじゃない。

 

「なっ何を…」

 

 鳳条に近寄る。そして腰のベルトを引き抜いた。

 

「分かってるだろ? “ストレス発散”…だよ♡

 別にいくらヤっても減る物何てないだろ?」

 

「でっ…でも…」

 

「いいから黙…れ!」

 

 鳳条を押し倒す。鳳条が持っていたシャベルが音を立てて転がった。

 

「ひっ…」

 

「そうだよなぁ…、こうなったらお前何も抵抗出来ないんだよなぁ…♡」

 

 服の隙間から鳳条の腹の中に手をいれると、普通の肌とは違う独特の感触が私の手首に伝わった。私が付けた打撲傷と、前からある火傷の跡だ。本人曰く母親に付けられたんだとか。

 思い返してみても、こいつは世界がこうなる前からずっとこの格好だった。今まで長袖長ズボンに上着を羽織っていたのはこの火傷の跡を隠す為だろう。

 

 そりゃ母親にこんな事されたら恐怖症にもなるのも納得だ。

 …まあ、今となってはありがたいが♡

 

「な……何で…」

 

「?」

 

「何で…こんな事を…わざわざ俺とやるんだよ…?

 胡桃は……先輩が…どうって…」

 

「…先輩はお前が殺したんじゃないか…。…それにムカつくんだよ、お前が他の奴といると。

 めぐねえに関しても、あれ大分押さえたんだぞ?。本当は殴りたかったよ…

 

 何より…さ、もう私は何もしたくないんだよ…。喜びも悲しみも欲しくない…

 でもお前は生きろって言う。こんな状況なのにまだどうにかなるとか言って…

 ……教えてくれよ…、お前のその気力は何処から出てくるんだ?。…私はお前ほど強くないんだよ…

 

 ………だから…さ、…少しぐらい現実を忘れさせてくれてもいいだろ…?」

 

 私は鳳条のズボンのチャックに手を掛け脱がせようとする。

 …が、何故か私の意思に反して腕は何故か後ろの方に移動した。腕を動かそうにも誰かに掴まれたかのように動かない。

 

「胡桃…! 後ろ!」

 

「あ?」

 

 瞬間、噛まれたような痛みが走った。

 反射で腕を見ると――“かれら”がいた。その内の一人が私の腕に噛みついていたんだ。

 驚く隙もなく私の腕の肉は噛み千切られた。あまりの痛みに腕を体の前まで持ってきて傷跡を手で塞ぎ悶える。

 触り心地で分かる、これは確実に骨までイってる…!

 

 痛みで周りの状況がよく分からないが鳳条に担がれている事だけは分かった。こう言う時は体動くんだなと考えていると、気づけばソファーに寝かされていた。

 鳳条は廊下にいるのだろうか、あいつの声が遠くから聞こえて来る。

 

「りーさん!」

 

「どうしたの? 吉報…じゃなさそうね…」

 

「胡桃が殺られて! 今あの部屋にいるんだけど…!

 やっぱり“かれら”にヤられたら先輩みたいになるのか…傷口がアレで…!

 地下に薬があるらしいからっ…俺はそれ取ってくるからっ…、りーさんには胡桃の面倒を見てて欲しくて…!」

 

「……分かったけど鳳条君、少し落ち着いて?」

 

「でっでも…!」

 

「大丈夫よ、私がいるから。

 別に、私の事は頼れる()とでも思ってもらってもいいのよ?」

 

「そっ…そんな…」

 

「何て、冗談よ。………………冗談よ…」

 

 いまいち何を言ってるのかよく聞こえないが、鳳条が私を助ける云々は一応聞き取れた。

 そういや、地下であいつに薬がどうとか言ってたっけ、よく覚えてるもんだ。

 

 しかし…自分で言うのも何だが、こんな事されてよく助けようなんて思えるな…。見捨てて逃げてもよかったのに…

 お前は…どうしてそこまで、身を滅ぼすレベルで周りに尽くすんだ…? 私にこんな事されても。全く理解出来ない…

 

 お前の言う、仲間…だからなのか?

 

 …あ、意識が――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そ  の    の  運  命 

 

 ビイィィィィッッムゥ!!!(熱唱)

 

 台詞連打中に検索して調べてみた所、どうも今回のは休校イベントではなくたまたま二階に誰もいなかっただけのようです。発生確率は休校イベントより低いんだとか。

 

 はぁ~…(クソデカため息)

 ガバガバどころかスカスカ、やっぱりクズ運じゃないか…(呆)。無理ぃ~もう無理…、もういっぱいいっぱい(満腹)。(そんな実力なら)やめてください!(辛辣)

 ………はぁ~…(クソデカため息)、止めたらこの仕事(RTA)?

 なぁんでこんな運がいいのか悪いのかよく分からない事が立て続けに起こるんですかね…

 

 一応、KRM姉貴が典雅君監禁時に薬の情報を喋っていたので助ける事は可能です。

 しかし今のメンヘラ状態のまま故意感染したKRM姉貴とか色んな意味で恐怖でしかないんですがそれは…(怯)

 だからといって見捨てる事はし、ないです。これ以上余計なイベントを増やされるとタァイムがクーパー靭帯みたいに延びきっちゃうからね、しょうがないね。

 破滅の引き延ばしでも何でもいいので最終日まで持ちこたえる事が最重要です。優先すべきなのはタァイムなので。

 え? その(最終日)後? しらんな。典雅君がどうにかしてくれるでしょ(鼻ホジ)

 

 と、言う事で地下まで来ましたが…、薬君は何処…? ここ…?

 押し入れ多すぎィ! 何処行きゃいいんだよ! やば…やば…分かんないね…

 じゃあ目印とかってのは…

 

ゲーム「ないですねぇ! ないですないです」

 

ゲーム「めぐねえがいないから当たり前だよなぁ?」

 

 あ、そっかぁ…………――ふざけんな!(キュッ!)

 このまま総当たりでタイムが狂う~^とりーさんがKRM姉貴の容態悪化で

 \(・ω・\)SAN値!(/・ω・)/ピンチ! \(・ω・\)SAN値!(/・ω・)/ピンチ!

 になってKRM姉貴を滅多刺しにするかもしれないだろ!(1敗)

 

ゲーム「しwらwなwいwよw」

 

 この野郎醤油瓶…。エチオピア野郎! 動物裁判だ…!(逆ギレ)

 

 ………クオレワ…総当たり…ですね。

 スウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥウウウゥウゥゥ……………

 

 クリスマスチャレンジ!!!(苦行のテーマ)

 

 ベストを尽くせば結果は出る、ベストを尽くせば結果は出る、ベストを尽くせば結果は出る、ベストを尽くせば結果は出る、ベストを尽くせば結果は出る、ベストを尽くせば結果は出る、ベストを尽くせば結果は出――――

 珍料理、大発見! 意外と早く堕ちたなぁ(嬉しい誤算)

 

 いやー、一時期はどうなるかと思いましたが無事に見つかりました。後は上の世界(意味深)に持っていくだけですね。移動もエレベーターなので戦闘の心配もありません。

 

 今回はここまで。ご視聴、ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 



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転生

期間が1ヶ月越えてて草()
本当に申し訳ない(無能博士)

あ(小林製薬)、次回で最終回の予定(未定)です。
出来れば8月までには上げたい(願望)


 静かだ…とても。学校とは思えないぐらい、とても静か。

 

 グラウンドで活動している運動部の声、吹奏楽部の練習演奏、時間を知らせるチャイムの音。

 普段ならすぐそこにある当たり前の物が、今は何一つない。

 今この世界にあるのは薄暗い空に、荒廃した町並みと“かれら”だけ。

 

 日常は、とうの昔に終わりを告げた。

 

 改めてそれを実感する。

 今まで私達は茶化し誤魔化して来たが、結局の所胡桃の言う通り現実逃避していただけなんだ。

 あの「雨の日」も、目の前の現実から逃げ続けていたからあの結果になった。

 

 ………私はもう、目の前の現実から逃げはしない。

 もう同じ轍は踏まない、ここでけりを付ける。

 鳳条君には申し訳ないけど、私はこの千載一遇の機会を逃す訳にはいかない。

 

 私は包丁を握りしめ、決意を抱いた。

 

「………胡桃を助ける…ねぇ…」

 

 鳳条君は優しい、胡桃を仲間だから助けると言った。

 …………でも…私はそう思えない。仲間だなんて、到底。

 理由は単純、現状がこうなった全ての原因が胡桃だからだ。

 

 だってそうでしょ? 胡桃のせいで全部ぐちゃぐちゃになった。

 全部…メチャクチャになった…

 

 胡桃がいる教室まで来た。

 本人はぐったりと寝ている。騒ぐ体力もないのかもしれない。

 

「…………――さようなら」

 

 震える腕で、胡桃の胸に包丁を突き刺した。

 何度も、何度も、何度も。

 気づいた頃には服も包丁もソファーも血まみれになっていた。

 普段意識もしない心臓が激しく動き存在を主張する。

 手から力が抜け、包丁を落とす。

 焦燥感で頭も体も回らない中、荒い息をと震える体を整えようとするが上手くいかない。

 

 最悪のタイミングで、不意に扉が開いた。

 振り向くとそこには鳳条君がいた、絶句した表情で唖然としている。

 

「………りー…さん?」

 

「ちがっ…これは…!」

 

 気が動転し、頭が真っ白になる。

 

「何を……して…?」

 

「私は…私はただ――!」

 

あ……痛い……鳳条……助け…………て…………

 

 死んだはずの胡桃が鳳条君に向かって腕を伸ばす。

 しかし事切れたのか、突然動きが止み腕が重力に引かれぐったりと落ちた。

 

「――なっ…何を………何をして!!!」

 

「違う! 違う違う違う違う違う違う違う!!!

 私は…! 私はただ…!!」

 

「何が違うんだよ!! 何がどうしたらこうなるんだよ!!!」

 

 鳳条君はシャベルを振り、その女の子みたいな顔とは不釣り合いな低い声を荒げた。

 

「違うの!! 私は…私はただ! 胡桃が全部悪いって…!! そう思ったから!!!

 そもそもそうよ!!! そもそも胡桃が悪いのよ!! 全部コイツが悪いんじゃないの!!!

 

 あの日! あの「雨の日」! 皆目茶苦茶になった!!

 あんな事になったのは紛れもなく胡桃が私達を乱したせいじゃないの!!!」

 

「だっ…だからって!」

 

「何が違うのよ!!! 第一貴方を軟禁したような女をどうして庇う訳!?」

 

 それから互いに感情をぶつけるだけの言い合いを続け、気づけば私は成り行きで鳳条君を押し倒していた。

 やはり女性恐怖症の影響なのだろうか、怯えた表情をしている。

 

 私の服に付着した胡桃の血が鳳条君に滴る。

 

「あ…………ごめんなさい……

 私……胡桃は生かしてはおけないって……思って…

 それで…私………」

 

 震える体を動かして立ち上がり、鳳条君の目の前から退いた――その時だった。

 

 本当に一瞬だった。

 

 鳳条君の喉から無理やり捻り出したような声にならない声が聞こえたかと思えば、お腹に強い衝撃が響き体が宙に浮いた。

 次に聞こえたのはガラスが割れる音。

 そして曇り空と雨粒が見え、次の瞬間には体全体に強い衝撃を感じ気づけば私の手はぐちょぐちょの土を握っていた。

 

 お腹から生ぬるいナニカの感触を感じる。

 辛うじて動く頭と視線で追うと、ピンク色のナニカと変な方向に折れ曲がった手足が見えた。

 

 こんな状態だが、不思議と意識は冷静に回りの物事を分析していた。

 体が死ぬ事を悟ったのだろうか、痛みも苦痛もない。

 

 まあ…でも……そうよね、突き落とされても…文句言えないわよね…

 

 …最後に……一回、一回でいいから…

 鳳条君に「お姉ちゃん」って…呼んで欲しかったな……

 

 足を捕まれ引きずられる感覚を最後に私の意識は途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 (典雅君の精神)冷えてるか~(震え声)

 お、大丈夫か大丈夫か(SAN値チェック)

 あー…………痛いですね…これは痛い…

 

 まるで淫夢の淫夢之一太刀で散々爆笑したあと「何で俺こんな何処の誰が見るか分からんホモビを切り貼りした動画で爆笑してんだろ…(賢者タイム)」ってなってるワシみたいだぁ…(直喩)

 

 りーさんを声にならない声を上げながらシャベルで突き飛ばしちゃった典雅君ですが、どうもヤバいトラウマを思いだしちゃったみたいですね。

 血が滴った時にどっかの奴隷みたいな傷跡の時の事がフラッシュバックして体が勝手に……と言った所でしょう。シチュエーションも関係してたのかな?(素朴な疑問)

 まあトラウマならしゃーないな、ここまで来て再走なんてしたくないしこれぐらいなら許したる(寛大)。

 

 正直に言って、りーさん&KRM姉貴を失ったのはかなりの痛手です。二人だけで家事等の身の回りの事全てを補わなければなりません。

 めぐねえの様子を見るに今回は典雅君が全部やる事になりそうですね…

 ですが逆に言えば、これからはめぐねえと典雅君の二人だけで生活する事になり一番厄介な対人関係の管理が楽が劇的に楽になると言う事でもあります。

 何であれ人付き合いが楽になるのはイイゾォ~これ(n敗)。

 

 そういう事なので今日はKRM姉貴の死体を処理した後にめぐねえと一緒にサンドイッチでも食べてもう寝ま――ん?

 …KRM姉貴今動いた?

 …………KRM姉貴?

 

 ――アカンこれKRM姉貴かれらになっとるゥ!!

 

 ふざけんな止めろ馬鹿!

 女の子のかれらも典雅君の女性恐怖症対象なんだから真正面から腕を捕まれたら典雅君が動けないだろいい加減にしろ!

 だから普段は後ろから回り込んで倒すのに!(泣)

 ライダー助けて!

 

 ……駄目みたいですね(諦)。普通に噛まれちゃっ…たぁ!

 

「ふえ…?」

 

 ファ!? めぐねえがどうしてこ↑こ↓に!?

 アカンこのままやとめぐねえまで殺られるゥ!

 薬は一個しかないねん! 全滅するねんこれじゃあ!

 このままだと全滅してまーた再走じゃないか…(白目)

 

「…ぁ………」

 

 ん?

 

「――アアアアアァァァァァアァアアアアア!!!!」

 

 ええ…(困惑)

 拾ったシャベル先輩でKRM姉貴を殴り飛ばした後、シャベルの平の上に足を乗せて頭を丸々潰しましたね…

 

 ――あ、そっかぁ(追想)

 あの時“かれら”の頭が丸々ペシャン広になってたのはこう言う原理だったのかぁ。

 腐ってるとは言え人の頭を踏み潰す力があるとか何それ怖い(小並感)。

 

 まぁ何であれ窮地は切り抜けました。やったぜ

 典雅君には持って来た薬を使いましたので“かれら”になる心配もありません。

 今はめぐねえが落ち着くまでよしよししててもらいましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――…あれ? 私は…何をしている…?

 

 訳が分からない、何故こんな状況に?

 何かあったと言う事は覚えているのに、肝心の中身の記憶がない。

 強烈な夢を見ていたのに、起きて少し経ったらその内容は綺麗さっぱり記憶から消えている。

 しかし強烈な夢を見ていた、それだけはちゃんと覚えているあの不思議な感覚と似ている。

 

 明らかに何もなかったでははおかしい。

 現に足元を見ればそこには血に濡れたシャベルと私の足、そのシャベルの周りには紫色の髪の毛のような細い紐のような物と赤色のリボンがある。

 

 どうして? 何を、何で、わざわざシャベルで潰したんだ?

 

 そう思い奥の方に視線を向けると、制服を着た人の体があった。

 

「え――」

 

 まさか…これ、人の…頭?

 でもっこのっ…髪の毛……まさか…恵飛須沢さんの…

 ………私が? 恵飛須沢さんを…シャベルで?

 

「――生――先生!」

 

「…………鳳条…さん…?

 私は何で…どうしてっ…こんな…」

 

「あっ…あの………その…」

 

 歯切れが悪く、ぎこちない。

 それ自体はいつも通りなのだが、今の彼は言いにくい、ではなく言ってはいけないと考えているのか難しい表情をしている。

 

「…話すと…長くなるんですが……

 …………その……胡桃が……あの………」

 

「……ゆっくりでもいいから話してもらっていい?」

 

 ああそうだ、生徒の前で何をやってるんだ私は。

 混乱は伝染する、こんな時に大人の私が取り乱しているようでは駄目だ。私が落ち着いて動けば彼も冷静になるだろう。

 

「…下の階に行った時に………一緒にいて……

 その……“かれら”に……噛まれて……」

 

「“かれら”?」

 

「……少し…、整理させてください…」

 

「え、ええ。焦らなくていいからね?」

 

 ここで焦らしても悪い方向に傾くだけだろう、無理に聞き出す意味はない。

 それに、いちいちあれこれ聞いていても効率が悪い、私も疑問を纏めよう。

 

 …しかし…、突っ掛かる。

 “かれら”が当たり前の存在だと言う前提で彼は話すが、何故だろう、私は“かれら”知らないはずなのに何処かでそれを聞いたような気がする。

 

 それに…何だ? この…違和感は…?

 ………本当に私は知らないのか?

 

 思えば、そもそも私は鳳条さんとは教師と生徒としての最低限の関係しかないし、鳳条さんも恵飛須沢さんとは何の関係もないはず。

 

 そもそも足元の()()は本当に恵飛須沢さんなのか?

 鳳条さんの様子を見るにそうらしいが…、いくらなんでも非現実すぎる。

 

 それにこの部屋もボロボロだ。

 怪物でも暴れたような傷跡が部屋中につけられており、机や椅子のだった物の残骸が部屋の隅の方に寄せられている。

 その残骸も数が少な過ぎる、椅子も机ももっとあったはずだ。

 使える物だけ何処かに移動させたのか?

 …分からない…

 

 ………こんな事を言ってはなのだが…

 そもそも、これは現実なのか? あまりにも辻褄が合わなさすぎる。

 無苦茶な展開でも夢なら納得出来るが、夢だとしても妙にリアル。

 明晰夢だろうか? 私は経験がないから分からないが……

 

 何であれ、私は何か、ナニカを忘れている。

 何故?

 

「…っ」

 

 耳鳴りがする。五月蝿い。

 

 耳に手をあて頭を下げる。

 足元の赤いリボンと紫色の髪の毛のような何かと人間の胴体が目に映ると、耳鳴りはさらに五月蝿くなった。

 

 忘れた? 何を? どうして?

 

 疑問が絶えない。

 考えが纏まらない。

 耳鳴りが五月蝿い。

 頭が痛い。

 

 記憶が、明らかに、絶対に、おかし――

 ――――――――――――

 ――――――――

 ――――

 ――

 

「あ」

 

 耳鳴りが唐突に止んだ。

 そして思い出した。

 …思い出した。

 

 そうだ、私がやった、殺ったんだ。

 あの時と同じ。由紀さんも、自分の命惜しさに。

 

 

 

 殺した。

 

 

 

「………先生? 先生!?」

 

 足の力が抜ける。倒れかけていた所を鳳条さんに優しく抱きしめられた。

 

「……あぁ…そっかぁ………

 また……私のせいなのかぁ………」

 

 本当…何をやってるんだろ…私。

 

 最初、ふわふわした夢を見てたようなのは覚えてる。それの正体は分からない。

 けど、唐突にそれが終わって………恵飛須沢さんが…“かれら”になってって……

 それを見た私が、私が恐怖心でシャベルで殴り飛ばした後に頭を踏み潰したんだ。

 

「みんなを守る……かぁ………

 ………なにも…なにも…守れてないじゃないの………」

 

「…………先生は悪くないですよ」

 

「……でも…私が…私が…」

 

 鳳条さんに頭を優しく撫でられる。そのまま誘われて彼の胸に顔を埋めた。

 鳳条さんの胸板は少し冷たいが、今の私にはどうでもいい事だった。

 

「…………気にやむ必要なんてない」

 

「でも…!」

 

「………夢だよ…夢…」

 

「夢…?」

 

「だって…そうだろ…? そもそも、こんなの現実に起こる訳ないだろ?」

 

「…そう……なの……? 夢…なの? 今まで…ぜんぶ?」

 

「…………ただの…悪夢だよ…」

 

「ほん当に…? ただのゆめ…?

 ………いや、そうだよね」

 

 あ、そっか。そうだよね、おもいだした。

 あのときみたいに、またゆめをみてたんだ。

 

「フフ…♡ そうだよね!」

 

 おにいちゃんがいうんだもん、ただしいにきまってる。

 

「なでてなでて♡」

 

「……これで…いい?」

 

「うん♡ えへへ…♡」

 

 ………あれ? おにいちゃんのおててがつめたいような?

 ……きのせいかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一瞬めぐねえが現実を認識しましたね。

 ですがここは典雅君のいもうと(10歳年上)に戻します。

 中途半端に現実を見られてもかえって厄介になると思われるで、最終日までいもうと(意味深)をやってもらいましょう。

 

 KRM姉貴&めぐねえでSAN値が削れた典雅君の久々のゲロタイムをバックに、これからの予定(未定)をお話します。

 と言っても必要な物は全て揃えエレベーター前に置いていた物資も回収しましたので、下に降りる用事ももうないです。故意感染の能力も使う機会はないでしょう。

 最終日のヘリ墜落イベントもとうの昔に潰したので後は時々ゲボる典雅君とめぐねえのボドボド日常を最終日まで見届けるだけですね。勝ったなガハハ!

 

 では最終日まで暇になりますので

 

そ ん な 皆 様 の た め に ~

 

 

 

 

 

(ずずずっずぞぞぞぞ~)

 

『ぷはー 今日もイイペンキ☆』

 

『あ、霊夢――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 学校の夜中の廊下。灯りは何一つなく真っ暗だ。

 その廊下をさ迷う存在がいた。

 普通なら警備員に見つかり追い出されるだろう。

 しかし…、今ここにいるのは“人間”ではなく“かれら”だ。

 多数の教師、生徒達で賑わっていたこの学校は今となっては“かれら”の独壇場と化していた。

 

 そんな中、“かれら”を喰らい生き存える蛇のような形をした肉の塊がいた。

 その肉塊は“かれら”を餌としか見ておらず、ヤツメウナギのような口で“かれら”を喰らっている。

 

 傍から見たら異常としか言えない光景だが、その異常性を加速させる者がいる。

 肉塊の体を辿ると“それ”はいた。

 肉塊と“それ”は融合しており、肉塊その物がまるで尻尾のようになっている。

 

 そこには――少女がいた。

 

 

 



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最終回

8月までに投稿して、次回が最終回だと言ったな。
アレは嘘だ(コマンドー)

いや遅れに遅れて本当に申し訳ないです…

ややこしいですが次回が正真正銘の最終回です。


 はい、何事もなく最終日までたどり着く事が出来ました。丁度上映会も終わりましたね。

 めぐねえが典雅君のSAN値をゴリゴリ削るのも今日が最後です。

 

 現在の時刻は朝、さっきゲロったせいか少し窶れてる典雅君とめぐねえは朝御飯を食べています。

 典雅君謹製野菜炒めを食べるめぐねえがkawaiiですね。

 

 美味しい?

 

「うん!」

 

 あぁ^~可愛いんじゃぁ^~

 

 瞳のハイライトが消えている10歳年上いもうとのめぐねえの元気な御返事が終わると共に、灰色の曇り空から雨が降ってきましたね。

 

 最終日防衛戦の始まりです。

 

 と言っても恐れる必要は、ないです。この日の為に出来る対策は全て行いました。

 一階の窓には板を打ち付けて建物の中に入れないようにし、例え中に入られても階段には机と椅子を階段に敷き詰め防火扉先輩も閉じて通行不能で、階層移動はエレベーターだけです。

 一応、壁を這って某キノコ狩りの男のような事をすれば移動は出来ますが、グロブスター君でもなければあり得ないでしょう。

 

 ちなみにナイトメアでも最終日は固定で“あめのひ”です。逃れられぬカルマ…

 

 

 パリン…!

 

 

 ん? 何の音でしょう? 下の世界(意味深)から聞こえましたが…

 

 

 ガッシャアアアアァァァァン!!!

 

 

 ファ!? 窓ガラスが!?

 

 「ミ゛ツ゛ケ゛タ゛ァ゛!!!」

 

 アイエエエ!? りーさん!? りーさんナンデ!?

 グロブスター君も一緒に登って……いやこれグロブスター君がりーさんの尻尾になっとるゥ!?

 

 ――冷静になれ………落ち着くんだ……………

 『素数』を数えて落ち着くんだ………

 2…3…5…7…11…13…17…………

 そうだまだあわてるような時間じゃない、まだあわわわわ――いや素数数えても落ち着く事何て出来ねぇよォン!?

 目の前に死んだはずのりーさんがグロブスター君と一体化して某レ級みたいな見た目になって窓ガラスぶち破って目の前に現れたら誰だって驚くだろオォン!?

 

 にしてもこのゾンビりーさんエロい…エロくない?

 僕はこのゾンりーさん、ゾンねえと同じぐらい好きですねぇ!(隙自語)

 ボドボドの制服からチラ見えするブラとおっp…おっぱいがセクシー…エロい!

 

 ってこんなこんな事してる場合じゃねぇや(賢者タイム)、早くめぐねえを避難させなきゃ(使命感)

 

 ――あっぶえ!

 めぐねえが尻尾のグロブスター君に喰われる所でした。

 何とか椅子で殴って横槍入れれましたがめぐねえの隣にあった棚が粉々ですね。

 

 背中痛ぁ!?(聖徳太子)

 

 ……ええと…一瞬で分かりませんでしたが、今のはりーさんが唐突に狙いを変更、典雅君にダイナミック壁ドンをしてドアをぶち破って廊下に叩き出されたようです。

 そして今ゾンビりーさんに本気のファミパンを決められようとしてる所ですね(白目)

 アカンいくら感染してるからって今のりーさんの本気ファミパン何て喰らったら死ぬゥ! 典雅君が死ぬねんこれじゃぁ!

 今回は運良く一緒に吹き飛んだであろうシャベル先輩でりーさんのファミパンを何とか防ぐ事が出来ましたが、こんなでっかいモノ(意味深)何回も喰らったら典雅君壊れちまうよ…

 

 体勢も立て直せたので攻勢に出て……と言いたい所さんですが尻尾のグロブスター君が本格的♂に攻撃に参戦、ガードで手一杯で廊下の突き当たりまで追い詰められました(絶望)

 何とかカウンターでりーさんの左腕を落とせましたけど…………ご覧の通り、ピンピンしてます。

 

 ん? りーさんが下がりましたねクオレワ和解ルートに――――

 

「……大人シク…シナサイ!」

 

 わーい! おしょらとんでるみた――空飛んでるゥ!?

 

 オォン!(着地)

 

 え、えぇ…(困惑)

 まさか尻尾のグロブスター君に突き飛ばされて、窓ガラスをぶち破ってそのまま体育館の屋根に落下するとは…

 感染してなければ確実に衝撃で死んでましたねクオレワ…

 

 まさかりーさんもこの距離をジャンプしては――来ますよね、そりゃ。

 典雅君を突き飛ばした時とは逆の事をするだけですし。

 

 幸いりーさんは典雅君とは別の場所に着地しました。

 床が丸いから滑り落ちないように気を付けて戦いましょう。

 カウンターで首を狙うのが一番勝率がありそうなので、作戦はそれでいきましょうか。

 

 …………何でりーさん着地したまま動かないんでしょう?

 

 バゴン!!

 

 ファ!? りーさんの足元に穴が!?

 重量で衝撃に耐えられなかったんでしょうか、そのままりーさんは落ちて生きましたが………りーさんなら反応出来るはずですし、何でそのまま落ちたんでしょう?

 

「ツカマエタ」

 

 ゑ? 背中痛ぁ!?(本日二度目)

 

 い、今のは……足元の床を崩されてそのまま体育館の中に落下したようですね…

 りーさんが受け止めてくれたおかげでダメージは殆どありませんが……その腕の触手で典雅君にナニするんですか…?(震え声)

 

「ナニッテ……弟君モ“家族”ニスルタメヨ?」

 

 やっぱりな♂

 

 流行らせコラ!(がっこうぐらしRTA)、流行らせコラ!(ホモは二度刺す)

 ムーミン野郎お前…!(精一杯の罵倒)

 馬鹿野郎お前俺は負けねぇぞお前!!!(脱出)

 じゃあオラオラ来いよオラァ!

 こっちには無敵のシャベル先輩が攻撃を防――

 

 バキン!

 

 …は? え?(思考停止)

 

 ――折れたぁ!?

 

「オ姉チャンノ言ウ事ハ………チャント聞キナ…サイ!!」

 

 ンアッー!(≧Д≦) 背中痛ぁ!?(本日三度目)

 

 やべぇよやべぇよ…唯一の武器なくなっちまった上にHPも半分切っちまったよ……

 

???「……欲しいか」

 

 ん?

 

???「力が…欲しいか?」

 

 欲しい…! 目の前の自称姉のどエロいゾンビから身を守ってこのRTAを完走する力が欲しい!

 

デザートイーグル「ならこの“力”…くれてやるッ!」

 

 あ…あそこに見えるのは……デザートイーグル先輩!? どうしてここに!?

 

 …とまぁ、茶番は置いときまして。

 真面目な解説をいたしますと体育館には床下に少し空間があるんですね、ケースに入った銃ぐらいなら隠せるぐらいの。

 そこに高確率で銃に限らず何か隠されてる事は多いんですが、体育館の床をぶち抜く等しなければまずゲット出来ません。

 一応、そんな物騒な事をせずとも整備用の通路みたいな感じで床下に入る事は出来るのですが、狭くろくな動きが出来ないのであまりお勧めはしません。

 下手すると後ろから“かれら”にガブッとイかれます(1敗)。

 

 今回はりーさん&グロブスター君が暴れたおかげでデザートイーグルが出土したようです。

 あの様子だと、衝撃で鍵も蓋も吹っ飛んでいったようですね。

 

 解説をしている間に何とか拾えました。

 装填されているのは7発、フル装填です。

 安全装置も何かに引っ掛かったのか解除されているのでそのまま発砲出来そうですね。

 

 ちなみにですが銃を手に入れても知識がない一般人が使いこなせる訳もなく、説明書をちゃーんと読まないと訳も分からず半狂乱になりながら安全装置が機能したままの銃の引き金を引く事になります(4敗)

 

 さて、強力な武器は手に入りましたが、ゾンビりーさんの対処法が分からないんですよね。

 思い付く物としては尻尾の付け根、りーさんとグロブスター君が繋がってる場所(意味深)にナニかありますのでそれを狙う……以外に方法はなさそうですね。

 あのりーさんは頭を吹き飛ばしてもピンピンしてそうなので。

 

 ではグロブスター君の攻撃を受け流し、りーさんが続けざまに来た所で倒れて股下をくぐり抜け後ろに回り込み、りーさんが振り向く前に付け根にデザートイーグルを全弾撃ち込む作戦で――

 

「ドウシテ……貴方ハ……私…ノ…………」

 

 ………と説明してたら勝っちゃいましたね。

 あ、補足情報を入れておくと白でした。

 

 ロードが入りました。

 恐らくイベントですがスキップです(無慈悲)。

 RTAだから当たり前だよなぁ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 胃袋の中身を床にぶち撒ける。

 自分でもどう言う感情なのかも分からないが涙が出る。

 俺らが体育館の中に入るまでは綺麗なままだったであろう床も傷だらけだ。

 

「はは……」

 

 渇いた笑いがゲロ臭い口から出る。

 

「何やってんだろ……俺」

 

 本当に何をやってるんだか……

 

「………やっぱり……最初っからいない方がよかったな…、俺」

 

 そうだ。

 そうなんだよ。

 俺のせいで皆死んだ。

 鳳条典雅と言う人間は最初から存在するべきではなかった。

 

 …思い返してみればずっとそうだ、周りの皆には迷惑しか掛けてこなかった。

 世界がこうなってからも、せめて皆の役には立ちたいとは思っていた。

 そう思ってたけど結果はこれ。

 しかしこうなるのも当然だ。

 誰にも何も言わず、全部俺の自分勝手でやってたんだから。

 

 咄嗟の行動で胡桃の先輩を刺し殺し、恐怖に耐えられなくてロッカーを蹴飛ばしてそのまま勝手に行動。

 仮初めとは言え、日常生活を送る学園生活部には馴染めず一人で勝手に下の階を探索する日々。

 周りには心配を掛けさせるだけだった。

 

 挙句の果てにはわざわざ手伝うとまで言った胡桃の役目を俺の勝手で奪って……それに耐えられなかった胡桃には………

 ……別に、“ああ言う事”は中学でもあったし…初めてじゃなかったけども……それでも……

 

 しかも何だ、事前に防げたはずの異変には気付けずに、結果として皆は“かれら”に喰い殺された。

 その後も何て言ったらいいのか分からなくて、仲直りでもしてるだろうと勝手に思い込んで………

 今もそうだ、丁度りーさんを殺した所だ。

 

「父さん……俺のどこが“典雅”何だ…?」

 

 典雅。

 この名前は今は亡き父さんが付けてくれた。

 意味は「正しく整い上品なこと」

 正しく……整い……上品………

 

「どこが……何処が…だよ………」

 

 強いて言うなら見た目がいいらしいが……自分じゃよく分からない。

 ただ俺でも分かる、見た目がよくても俺じゃあ何の意味もないって事ぐらい。

 

「…だけども………」

 

 まだだ。

 こんな所で死ねはしない。

 俺にはまだやらなきゃいけない事がある。

 だからりーさんを殺したんだ。

 

 銃を捨てた。もういらない。

 そもそも使い方も分からない。

 さっきのは運が良かっただけだ。

 

 冷たい己の体を動かし、いつもの所へと向かった。

 

「先生……」

 

 こんな俺ですけど……

 貴女だけ…貴女だけは……最後まで守らせて下さい……

 この身尽きるまで……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 超速で三階まで戻り、シャワーを浴びて服も着替えました。

 現在はめぐねえをなだめている所ですね。

 

 掃除や夜ご飯の下準備をしていたらそのまま何事もなく夜になりました。

 典雅君とめぐねえが寝袋に入ってロードが入った所でタイマーストップ。

 このルートは他と仕様が違う為、ここでタイマーストップです。

 記録は1時間14分51.4秒でした。

 これマジ? 114514ピッタリとはたまげたなぁ

 運命感じるんでしたよね?

 

 さて、完走した感想ですが……このRTAを完走出来た自分に驚いたんだよね(ひろゆき)

 今までリセの連続でしたので…、あぁもう狂いそう!(甦る記憶)

 いや僕もう大江千里っすね(意味不明)

 

 あ、そうだ。全員生存が見たい兄貴は自分でやって、どうぞ。

 他に言う事は……ないですね、はい(疲労困憊感)。

 

 RTAを完走した所で今回はここまで。ご視聴、ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 



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これから

 世界がこうなってから、“普通の人”は美紀以外いなかった。

 …その美紀も…私を庇って………

 

 …だから、嬉しかった。

 ここに、この世界にいるのが私だけじゃないって事が分かって。

 凄く……嬉しいんだ……

 

「――もしかして……ここ…誰かいる…!?」

 

 私は走った。

 校庭に“かれら”がいるが関係ない。

 早く……そこにいる誰かに会いたい。

 “かれら”じゃない、誰かに。

 

「ここに……この学校に…誰かいる…!」

 

 私立巡ヶ丘学院高校。私の母校だ。

 全体的にボロボロになり、板を打ち付けられ今となっては変わり果てた姿となっている。

 ここも他と同じように誰かがいた痕跡だけで、すでに何もないもぬけの殻かと最初は思った。

 しかし……学校を様子を見て確信した。ここには誰かいる、と。

 

「階段が机で……」

 

 一階にはこれでもかと板が打ち付けられている。

 バリケードを作って“かれら”の侵入を防いでいたんだろう。

 

 二階に人影が見えるが、あれは“かれら”だろう。

 気にする事は何一つない。いつもの事だ。

 

 三階は――照明が部屋を照らしており、換気扇が回っている部屋がある。

 

「他…他には……」

 

 これを見た瞬間、体が勝手に動いた。

 誰がいるかも分からないのに。

 何をされるかも分からないのに。

 頭では理解している。

 しかしもう嫌だ。

 もう孤独(ひとり)にはなりたくない。

 

「エレベーター…こんな所に…」

 

 私は限界だった。

 そこにいるのは私を喰らおうとする“かれら”だけ。

 CDプレイヤーも壊れて使えない。

 

 人は思った以上に孤独に弱い。

 さながら二度と目覚める事のない悪夢を見ているようだ。

 

 そんな中、一人で町をさ迷うのは私の精神を限界まで削るには十分だった。

 …いや、自覚がないだけでもうすでに限界以上に削れているのかもしれない。

 

「三階……三階に…!」

 

 独り言も増えた。

 しかし独り言では孤独の寂しさを誤魔化す事は不可能だ。

 

「ハァ…ハァ…ハァ……」

 

 心臓が高鳴る。緊張する。

 エレベーターの動きがやけに遅く感じた。

 

「………着いた…」

 

 よく聞くピンポンと言う音と共にエレベーターの扉が開く。

 先の空間の廊下は凄く綺麗だ。

 

 深呼吸。

 震える足を動かしてエレベーターから降りる。

 

「だっ誰か……誰か…いませんか……」

 

 廊下を歩きながら震える声で呼び掛けてみるが、返事はない。

 各教室には何もない、恐らくバリケードの為に使える物は全て使ったのだろう。

 そのまま廊下を歩き、位置的にはあの換気扇が回っている部屋であろう扉の前まで来た。

 廊下はナニカが暴れた様に傷だらけで、部屋のプレートには上から「学園生活部」と書かれているボロボロになった紙が張られている。

 

「……すっ……すみません……」

 

 扉を叩く。

 

『――はい?』

 

 返事があった。女の人の声だ。

 

「あの…その……わっ私! ここの学校の生徒で…!

 ここに…もしかしたら誰かいるかもしれないって…!」

 

『ひっ人!?』

 

 扉が勢いよく開いた。

 中から出て来たのはピンク色の髪をした紫色のワンピースを着た人だった。

 

「その制服この学校の!? あ、怪我とかしてない!?」

 

「だ…大丈夫…………です………」

 

 瞬間、足の力が抜けて倒れかけた。優しそうな人だし、安心からだろうか。

 寸前で体を支えられたから倒れる事はなかったが目の前の人にはすごく心配された。

 大事な所なのに何をやってるんだか………

 

 そのまま体を支えられて部屋の中に入り、椅子に座った。

 目の前の人はコーヒーを入れてくれるらしい。

 手伝おうかと思ったが、「疲れてるだろうし休んでていい」と言われた。

 少しすると目の前の人は湯気が立つコップを二つ机の上に置き、椅子に座った。

 

「自己紹介…まだだったわね。

 私は佐倉慈、この学校の教師です。

 貴女は?」

 

「圭…祠堂圭って言います…」

 

「圭さんね、よろしく。

 ――久しぶりね…誰かと喋るのは。圭さんもそうでしょ?」

 

「は…はい…」

 

「ふふ…気持ちは分かるけど、そんなに緊張しなくていいのよ?

 コーヒーでも飲んで落ち着いて? これ凄く美味しいのよ」

 

 カップを手に取り口につけ、コーヒーを一気に口の中に流しこんだ。

 

「――っ!?」

 

 あまりの苦さにむせ返った。

 これが大人の味…?

 

 佐倉先生はクスクスと笑っている。

 

「ごめんなさい、砂糖とミルクを忘れてたわ」

 

 先生はキッチンに隣接している棚からスティックシュガーが入った瓶と小さいミルクが入った箱を取り出した。

 砂糖とミルクを一つずつ取り、コーヒーに入れる。

 

 そしてコーヒーを飲みながら、私は話した。

 今までの事、モールでの事、美紀の事。

 

 佐倉先生も今までの事を話してくれた。

 色々あって今は一人だけになってしまったそうだ。

 今は先生のお兄さんが残していった物で細々とたまたまこの学校に迷い混んで来た犬、太郎丸と暮らしているそう。

 

「……先生は……先生はこれからどうするんですか…?」

 

「これから?」

 

「はい。話を聞いた感じ、お兄さんは行方不明なんですよね?」

 

「……ええ、必死に説得したんですけど……出ていって…そのまま……」

 

「私と一緒に探しに行きませんか?

 ここは確かに水が使えるのがメリットですけど、他の物資の蓄えはもう少ないんです。

 何かあったらまたここに戻ればいいんですし、探しに行きましょうよ」

 

「…………確かに…そうね……

 でも……怖くないの?」

 

「怖い?」

 

「外には“かれら”もいるのに……」

 

「…確かに怖いです。

 でも動かないと何も始まりません。

 どれだけ嫌でも、どれだけ面倒くさくても。

 やらないと出したい結果は絶対出ないんです、まずは行動ですよ!

 

 それに私、じっとしているのは性に合わないんです」

 

「…………分かったわ。

 持っていける物も対してないし、準備をしたら車を出して行きましょうか。

 あれも……まだ動いてくれるはずだし、思い付く所に行ってみましょうか」

 

 たまたま思い付いた事だったが、トントン拍子に進んでいった。

 まあ何でもいい、独りで生きるよりは遥かにいい。

 それに理由も説明せずに出ていったらしい先生のお兄さんも凄く気になる。

 

 後は……

 

「……………あの…」

 

「はい?」

 

「今さら……なんですけど……」

 

「はい」

 

「シャワーとかって浴びれますか…?

 後代わりの服とかも…」

 

「使えるけど……それが?」

 

「浴びて来て…………いいですか?」

 

「いいけど…どうしたの?」

 

「今気付いたんですけど…私、思い返したらまともにお風呂入ってないんですよ……

 その…生理中もハンカチを適当に川で洗った物を使ってて……

 当然……おりものも………」

 

「あっ……………思う存分、浴びて来て下さい…」

 

「…自分で言うのも何ですけど、川の水直接飲んだりしてたのによく今まで病気にもならずに生きてこれたなって…」

 

「…………やっぱりここで暮らさない?」

 

「今さらですか!?」

 

「……半分ぐらいは冗談よ」

 

「もう半分は本気何ですか!?」

 

 そんなこんな、色々あったが私がシャワーを浴びた後に話は纏まり、明日の早朝に出発する事になった。

 その間に先生は使える物を纏めて、私は地下にあるというシェルターの探索をする事になった。

 シェルターと言うぐらいだ、もしかしたら何かあるかもしれない。

 どうも床が水漏れか何かで浸水していて、わざわざ入る理由もなかった為放置状態だったらしい。

 

 長靴を履いてシェルターを捜索する。

 幸い照明は機能しているので、手にはバール一本。

 何かあったら上に上がって入れ物でも持ってくればいいだけだ。

 

 しかし……この学校にこんな場所があったなんて………

 先生に見せてもらったあのマニュアルもそうだが、全部想定されていた………

 ……まあでも、今となっては国が機能しているのかも怪しい。

 もうあの日から半年は確実に過ぎてるのに、未だにこの町には“かれら”が跋扈しているのだから。

 もしかしたらこの国その物が世界から隔離されているのか……それとも国何て組織はもうこの世に存在しないのか。

 

「元凶のランダルコーポレーションもあるか怪しいもんね……」

 

 ランダルコーポレーション。

 世界各国に支社があるグローバルな製薬大企業で、求人広告では平等に幅広い層の人間を社員として受け入れており非常に評価は高い。

 たまに噂話でとんでもないブラック企業だと囁かれていたが………

 現状を見るに、限り無くそれは証明されたのではないだろうか。

 

 まあ分からないなら確かめればいい、困る人間もいないだろうし。

 どの道明日にはここを出る。

 車を使うし行動範囲も広い。

 この町にあるランダル社にも行けるんだ、誰か生きてるなら話を聞けばいい。

 

「…………ん?」

 

 足を止めだ。

 ここだけ扉が閉じている。

 他は開いていたのに…

 

「うわっ………」

 

 思わず声が出る。

 中に入った瞬間顔をしかめた。

 だが頭がぐちゃぐちゃの人の死体何て見れば誰でもそうなるだろう。

 換気扇が回っているおかげか、臭いはあまりしないが………うん………

 

 しかし何でこんな所で死んでいるのか。

 状態的に、誰かに殺された…?

 でも普通じゃこの死に方はあり得ない、何か爆発が起きたような……

 しかもまだこれ…新しい……

 

「…………これは…?」

 

 部屋にあった机の引き出しを開くと一枚の紙が入っていた。

 書かれている文字に目を通す。

 


 

 必要な事だけ手短に書く。

 

 俺の名前は鳳条典雅(ほうじょうてんが)

 そこで転がってる死体だ。

 念のため触らない方がいいだろうと警告しておく。

 

 この地下シェルターにはもう何もない。

 物資目当てなら他を当たってくれ。

 一応銃が残っているが全て弾切れだ。

 まあ、鈍器にはなるのでまだ使えない事はないが。

 

 地下には“かれら”になるのを()()()()薬が置いてあった。

 あくまでも遅らせる物だからか、これを書いてる時点でもだいぶ体がおかしくなってる。

 先生を巻き込む訳にもいかないんで、俺は最後に残ってた一つの手榴弾を喉元に使って死んだ。

 外に出る気力ももうないからここで死ぬ。

 

 このぐらいでいいか。

 

 後詳しい理由は説明出来ないが、これを読んでいる人がいたらどうかこれと俺は佐倉先生には見せずに伝えもしないでないで欲しい。

 出来れば俺の後処理をしてくれると助かる。

 

 もっとも、これを読んでいる人間がいるかどうか分からないが………

 

 あ、そこのシャベルは使えるようなら使ってくれて結構だ。

 何故か分からないが無駄に思えるぐらい頑丈なんだ、それ。

 


 

「鳳条…典雅…?」

 

 聞いた事がある。

 何でもかなりの美人だとか噂されていたし、クラスの女子が話しかけているのを見た事がある。

 しかし典雅の名を持つ美人だと持て囃された人間の最期がこれ…か。

 

「………これ、もらいます」

 

 シャベルを手に取る。

 傷ついてる訳でもない、まだ全然使えそうだ。

 

 遺言通り、()()()もしてあげたいが……私一人では無理そうだ。

 佐倉先生に手伝ってもらえば可能かもしれないが……言うなと書いてあるし、ここはこのまま放置がベストか。

 

「それは………」

 

 エレベーターで上階まで上がり先生に戦果報告。

 といってもこのシャベルしかないが。

 しかし先生はこれに思い当たる節があるそうで、何でもお兄さんが使っていた物何だとか。

 先生のお兄さんが置いていき、そのままだった物を鳳条さんが使ってていたのだろうか?

 

 時間も過ぎ気付けばもう夜。

 先生にすすめられて先に寝る事となった私は、寝袋の中一人で考える。

 

 遺言通り、鳳条さんの事は一切伝えなかったが…本当にこれでいいのだろうか?

 だが先生のトラウマ等を思い出させない為に意図的にやっているのかもしれないし……

 ……状況を見て言うかどうか判断するしかない…か………

 

 いつの間にか寝ていたようで、目を覚ませば朝。

 時計を見ればもうすぐ出発する時間だ。

 準備は前日に済ませたので後は出るだけだ。

 

 この時間は“かれら”が少ない。

 用意した物を二人がかりで先生の車に詰め込む。

 太郎丸もちゃんと乗せて出発した。

 

 車の中、他愛もない話で盛り上がる。

 人と話す事何て、互いに久しぶりだから。

 

 次第に話題は佐倉先生のお兄さんに変わって行った。

 

「先生のお兄さんって、どう言う人何ですか?」

 

「あの人は特徴的な名前と見た目だからすぐに分かると思うわ」

 

「特徴的?」

 

「ええ。女の子みたいな顔をしてるけど、ちゃんと体は男の人の物なの。声も低い。

 でも綺麗な黒髪のストレートロングで背も高くて……」

 

「へー」

 

「でも今兄さんは名字が“鳳条”に変わってるのよね…」

 

「……鳳条?」

 

「具体的な理由は話してくれなかったけど、名字を変えてるの。

 だから今は“鳳条典雅”、その名前で生きてるのよね」

 

「……………」

 

「どうかした?」

 

「い…いえ…、何でも」

 

 ……………ただの偶然…だよね?

 ……いや何を、そもそも歳がおかしい。偶然以外の何物でもないか。

 同じ名前の人間何て、この世にごまんといる。

 

 一瞬過った不安を捨て去り、思考を入れ換える。

 

「………そういえば何だけど、私は何処に向かえばいいのかしら?」

 

「え? 先生が決めてるんじゃないんですか?」

 

「……………」

 

「……………」

 

「………ランダル社…行きましょうか」

 

「……そうですね…」

 

 どうしてこう…私は肝心な所が抜けているのか。

 

 自分に情けなさを感じている私を横目に、車はランダル社に向かってつき進む。

 

「………しかし本当、先生のお兄さんは何処にいるんでしょうねー…」

 

「案外、灯台下暗しだったりだったりするのかもしれないわね…

 探し物って、自分に近すぎて見えなかったりするから……」

 

「……そう…ですね……」

 

 灯台下暗し…か。

 

 ……まさか…ね

 

 

 

 

 

 

 

 

 END

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 以下は別に読まなくてもいい後書きです。

 

 まず、このssを読んで下さり有り難うございました。

 完全に見切り発車でしたが、何とかエタらずに完結まで持って行けました。

 投稿期間ははうんち!(せいかいのおと)の一言で、ストーリーもガバガバどころかスカスカでしたね……

 

 ストーリーですが、これ実は元々全員生存の予定だったんです。

 

 典雅君がおかしい~(ry

 ↓

 実は女性恐怖症で原因は~(ry

 ↓

 ショッピングモールで典雅君の妹と出会って~理由を聞いて~(ry

 ↓

 トラウマ克服で~なんやかんやで皆とも仲良く~(ry

 

 で、する予定だったんですが……

 

執筆中のワシ「ファ!? 外出られへんやんけ!? (過去の自分)どうしてくれんのこれ?」

 

 と自分で作った設定に見事にハマって、もう面倒だし全員殺して原作とは逆の展開でいいや……となり、結果がこれです。

 後々に向こうから学校に来ればいいのでは?(名推理)と思い付いたんですが、時既にお寿司(激ウマギャグ)と………

 

 そして折角だしラスボスを入れようとして、りーさんが選ばれました。

 理由は忘れました(鳥頭)

 

 最終決戦に体育館を選んだ理由ですが、数ある作品なのに何故か体育館君の出番が一切ない…なくない?(反語)って事で適当に選びました。

 

 出来れば全員生存RTAもやりたいんですが……予定は未定です、はい。

 もしかしたら設定を練り直して書く……かもしれないので、その時はよろしくお願いいたします。

 

 では

 

 

 

 

 

 

 



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