魔法少女ほむら☆マギカ TS憑依転生人間性ガン無視ルート (伊勢村誠三)
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第一話 残念ながら夢じゃないわ Aパート

見切り発車&雑プロットのみの頼りない二次創作ですが、どうかよろしくお願いします。


「はっ!」

 

夜でも宇宙でもない、インクを塗ったくったような気色の悪い暗黒を白い学生制服のような恰好の少女が駆ける。

不規則に置かれた彫刻の様な物を足場に飛び回り、時折飛んでくるデザインナイフのような投擲物を躱し、避けて、時に左手の盾で受ける。

 

「1、2、3。1、2、3……そこ!」

 

再び飛来するデザインナイフ。

少女は足場にしていた石像から飛び出し、飛来するほぼ槍の様なサイズのデザインナイフに飛び移り、そこから更に跳躍。

右手に持ったコンバットマグナムを凱旋門のような形をした者、この不気味な退廃的芸術の異空間の起点たる怪物に向けた。

そして引き金を引く。

凄まじい衝撃と爆音が響き渡り、門の真ん中に命中する。

しかし大口径リボルバーと言えど、サイズ的に豆鉄砲。

善初当たったとしても倒せるものではない。

 

「バイバイ」

 

しかし次の瞬間、少女の姿は凱旋門の前から消えていた。

そして次いで凱旋門を盾真っ二つにするように爆炎と、世界の色とは別の黒い煙があがる。

 

「これが魔女の卵?」

 

少女は左手で凱旋門の怪物から放物線を描いて飛んできた黒い針で刺しぬかれたレリーフ付きの球の様な物を拾い上げ、右手の甲に着いた菱形の宝石に話しかけた。

 

(はい!すごいです…こんなに早く戦えるようになるなんて!

もしかしてアナタなら……)

 

(はっ!何を言ってるのよ?

あんなものに誰が何人束になろうと勝てる訳が……)

 

「いや、戦わないけど?」

 

((え?))

 

「なんでそんな災害みたいなのを態々相手にしなきゃならないのよ?」

 

一見少女が一人でつぶやき続けているように聞こえるが、彼女は宝石越しに間違いなく別人と話していた。

 

「世界も恩人も私には全部知らない人なんだけど?

そもそも今の私、厳密には見滝原中学校に在籍すらしてないし」

 

そう言って少女はコンバットマグナムをクルクルと手の中でもてあそび盾の内側に収納する。

偉業とは言え、個の存在に完全にトドメを刺した後にしては、少女は酷く落ち着いていた。

 

 

 

✿✿✿✿✿✿

 

 

 

「それじゃあ入ってきてください」

 

担任、より正確に言えば本日より俺の担任になる女性の声に少女(オレ)は一度だけ大きく息を吐いた。

ネクタイ(・・・・)を正し、スカートの裾を正し、眼鏡のブリッジを押し上げる。

 

(ううっ……やっぱり何度目でも緊張します!)

 

(皆物好きよね。転校生って言ってもただの人よ?)

 

左右の頭の片隅のうるさいのは無視してオレは教室に入った。

 

暁美(あけみ)ほむらです。よろしくお願いします」

 

 

 

✿✿✿✿✿✿

 

 

 

(オレ)の名前は暁美ほむら。

人よりちょいと視力が低い事と、艶やかな長い黒髪が特徴のどこにでもいる14歳。

もちろん義務教育期間中の中学二年生。

身長はもう少しで四捨五入160cm。

自分で言うのもなんだが、顔は良い方だと思う。

けどそれだけだ。

中学生でも親元を離れて一人暮らしてる奴はいなくはないだろうし、何か特技がある訳でもない。

 

「暁美さん、自己紹介それだけですか?」

 

「え?」

 

他に何か付け足すとすれば、そうだな……。

好きな食べ物は林檎。

嫌いな食べ物は特にない、と思ってたけどこの前バラエティ番組で見たあんかけチャーハンだけは無理だと思った。

身体が受け付けない食べ物はラム肉(主に匂い)。

けど嫌いではないんだ。

鶏肉や豚肉と同じぐらいには食べる。

なんで臭いが駄目なのに食べるのかって聞かれたら、習慣だからとしか言いようがない。

林檎が好きなのもそういう理由なんだよね。

ラムを美味しく食べれる良い林檎ソースを自分で模索している内に好きになったんだよね。

俺個人だけのことに関して喋れることはこんなところかな?

 

「それじゃあ席は、中沢君のとなりで」

 

「よろしく」

 

「よ、よろしく」

 

俺は席について早速教科書を取り出し、一時間目の準備を、、はじめたいんだがそこは転校生への質問タイムが始まってしまう。

いや、俺は別に話すことなんてないんだが……。

なんて思っていると、視界の端に桜色のツインテールの少女が映った。

 

鹿目(かなめ)さんっ!)

 

(……っ!)

 

またしても左右の片隅が喧しくなる。本当に勘弁してほしい。

知ったこっちゃないんだよ。

前世とか時間軸とか、魔法少女とか。

 

 

 

✿✿✿✿✿✿

 

 

 

「いやー、すごかったねあの転校生」

 

放課後。某ファーストフード店にて。

鹿目(かなめ)まどかは友人の美樹(みき)さやかうあ志筑(しづき)仁美(ひとみ)と共に雑談に興じていた。

話題はもっぱら、本日転校してきた暁美ほむらについてだ。

勉強に関しては授業中終始大人しくしていたので分からないが、運動面に関しては破格の一言。

走らせれば現役の運動部員をごぼう抜きにし、それでもなお速さ有り余って壁に激突する。

バスケットボールをやらせれば、ゴールの真下から反対のゴールまでの超遠距離シュートを決める。

正に超人。

何故かそう言ったスーパープレーを見せる度に、本人が一番驚いているかのような顔をしていたのは謎だが、一番謎なのは存在そのものだろう。

 

「ええ。ですが私としては彼女の性格の方が気になりましたね」

 

「そんなに変な奴かな?普通に話してたと思うけど」

 

「少しお話をさせていただきましたが、まるで大人の人と話しているような感覚がしたのです」

 

仁美の家は所謂良家で、それなりに大人と接する機会も多いからか、ほむらの話方や仕草からそういった物を感じたようだ。

 

「へー、スーパーマンみたいな身体能力に大人びた仕草と性格か。

なんか漫画のキャラクターみたいな属性の盛り方だね」

 

「属性って……」

 

なんて話していると、仁美は腕時計を見ながら立ち上がった。

 

「あら、もうこんな時間。ごめんなさい。お先に失礼しますわ」

 

「また今日も習い事?」

 

「ええ、今日はお茶のお稽古です」

 

そろそろ高校受験に向けてのアレコレも始まる次期。

お茶以外にもピアノに日本舞踊にと、そろそろ掛け持ちするのがきつくなってきたと感じ始める仁美であった。

 

「うへぇ。あたしたち、小市民でよかったぁ」

 

「それではまた明日、学校で」

 

仁美を見送ったまどかとさやかはしばらくは喋っていたが、やがて日が傾きだすかと言う頃になって、店を後にした。

向かたのはCDショップ。

どちらかが音楽にハマっているという訳ではない。

さやかは元々音楽好きだが、彼女がCDを買いたがるのは、入院している幼馴染への見舞いの品だ。

 

(助けて……)

 

「ん?」

 

さやかがCDを選んでいる間、まどかは適当に新曲の試聴でもしていようかと思っていたのだが、不意に声がした。

幼い少年の様にも少女のようにも聞こえる不思議な声だ。

 

(台詞じゃない?)

 

試しにヘッドフォンを外してみても、一度目と変わらぬ大きさで聞こえた。

 

(助けて!まどか!)

 

しかも声は切実、というか、危機感を持った物になって行く。

 

「ごめんさやかちゃん!私ちょっと行ってくる!」

 

「ま、まどか!?言ってくるって何処に!?」

 

飛び出したまどかは声の聞こえるままに走り出した。




・現在公開可能な情報

名前:暁美ほむら(?)
身長:四捨五入で160cm(自己申告)
所属:見滝原中学校二年早乙女クラス
好物:林檎
嫌物:あんかけ全般
苦手:ラム肉の臭い
得意:なし
備考:多重人格?
   料理スキルは本家より高そう


Bパートはもうしばらくお待ちください。


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第一話 残念ながら夢じゃないわ Bパート

皆様お待たせしました。
Bパートです。
ps.変わり者さん、誤字報告ありがとうございました。


(お願いします!キュウベぇを止めに行ってください!

このままだと鹿目さんが契約してしまうんです!)

 

(……まどか)

 

まどかがCDショップを飛び出したのとほぼ同じころ。

暁美ほむらは今日の夕飯の具材を買いに、まどか達が立ち寄ったCDショップもテナントとして入っている大型商業施設に寄っていた。

目当ての物は買えたようだが、その眉間には深いしわが刻まれており、心底ウンザリ、とでも言いたげな表情だ。

無理もない。

退院したあの日から、頭の片隅で叫び続ける自分のと瓜二つの声は煩わしいことこの上ないのだ。

派手に動き回っても苦しくならない体になったのは結構だが、魔力による身体強化?が上手くいってないせいで視力矯正は全然上手くいかないし、肉体はブレーキとアクセルが極端にしかかからないし、神経まで強化されるのか、触覚、痛覚が鋭敏になってるせいで味の感じ方が変だったり、手先が器用になったんだか不器用になったんだか分からないなど、不便なことの方が多い。

 

(お願いです!どうしても鹿目さんえお契約させるわけには!)

 

「あーもう!鹿目さん鹿目さんうるさい!」

 

「鹿目さん!?アンタ今鹿目さんって言った!?」

 

彼女から見たら、自分は肩を掴まれたにしては大げさすぎなぐらいに驚い矢風に見えたことだろう。

実際普段だったらもう少し大人しい反応をしたと思う。

さっきも述べたが、身体強化が上手くいってないせいで感覚が鋭敏になっているせいなのだ。

 

「えーっと、美樹さん、でよかったかしら?」

 

「そんなことはいいよ!それよりまどかを見たの!?見てないの!?」

 

「……彼女に何か?」

 

「ちょっと行ってくるって言ってどこかに行っちゃったのよ!見て無いの?」

 

「探してもいないんだったら、普通探さない様なとこにでもいるんじゃない?」

 

「普通探さないって……」

 

「例えばあっちの改装中の方とか」

 

「いやいくらなんでも……」

 

なんて話していると、ぞくり、とほむらの背筋を気味の悪い感覚が走り抜けた。

 

「最悪」

 

「え?急にどうしたの?」

 

「……オレが見てくるからそこにいて」

 

「お、俺!?」

 

ほむらはポケットから紫に金のレリーフの付いた卵型の宝石を取り出し、ながら恐らく鹿目まどかも使ったであろう隙間を通って中に入る。

 

「鹿目さん!鹿目まどかさん!いないの!?どこ!?」

 

(もう遅いわ)

 

右に比べてあんまり喋らない左側からの声に驚く間もなく、空間が趣味の悪い子供のらくがきのような模様に覆われた。

 

「最悪」

 

ほむらは手にした宝石、ソウルジェムに力を意識する。

すると一瞬だけ彼女の姿が紫色の光に包まれ、白い学生制服のようなコスチューム姿に変わる。

同時に装着された左手の盾からスミスアンドウェッソン回転式拳銃を引き抜き、周囲を警戒しながら進む。

 

「……」

 

異空間、魔女結界に入るのは二度目のほむらだが、やはりこの気持ち悪い世界は好きになれない。

別にVRゴーグルを装着した時みたいに酔うとか、ドブみたいな悪臭がするわけではないのだが、いや、臭いについては前言撤回。

前の芸術世界とでも呼ぶべき結界内は乾いたインクのにおいがまあまあした。

兎に角、理由はないが生理的嫌悪とでもいうべきものを感じて嫌な場所だ。

心筋をじかにぬるま湯に浸した使い古しの雑巾で撫でられてるような錯覚を覚える。

 

「ッ!」

 

「うわっ!ちょ、たんま!」

 

そんな一秒だって居たくない結界内で気配を感じて銃を向ければ、今さっき置き去りにしたばかりの姿があった。

 

「……待ってろって言ったよね?」

 

引き金から指を放し、銃口を上に向けながらほむらはため息をついた。

 

「なんの説明もなかったし、まさかこんなことになるとは思わなかったのよ!

てか何ココ!?アンタの格好も何!?コスプレ!?その銃本物!?」

 

「わかったわかった!説明なら鹿目さんも交えてこころゆくまでしてやるから今は何も言わずにしたがって!」

 

「したがってって、アンタに?」

 

「少なくとも今の美樹さんよりここを、、安全に歩き回れるッ!」

 

そう言ってほむらは再びさやか、の左斜め後方に銃口を向け、引き金を引いた。

合計6発の派手な爆音が響き、さやかに襲い掛かろうとしていたこれまた子供のらくがきが黒い影に乗っ取られたみたいなのが倒れ伏した。

 

「え?嘘……なにこれ?」

 

「遠い昔、遥か彼方の銀河系のアレで言う所の白い兵隊。

黒マスクに黒マントのはもう少し奥に居るはずよ」

 

空薬莢を輩出し、予備弾を詰めながら淡々と答えた。

 

「いや、いやいやいや意味わかんない。夢?夢だよね?」

 

「残念ながら夢じゃないわ。

今は意味わからなくていいから立って。死にたくないでしょ?」

 

「アンタはなんでそんな平然としてんのよ!?いくら何でも……」

 

ほむらは躊躇なく引き金を引いた。

さやかの足元を。

 

「……え?ちょっと」

 

「選びなさい。銃弾とタンゴを踊るか、私に黙ってついてくるか、あの怪物どものおやつになるか。

三つに一つださあ早く!」

 

そこまで言われてさやかはようやくほむらの表情がかなり余裕がないことに気付いた。

苛立つと頭を掻きむしる癖があるのか、後頭部の髪が少し乱れている。

 

「……どこに行くの?」

 

「ここの主のところよ。もてなしのなってないホストには鉛玉(こちそう)を直接胃袋に叩きこんでやるわ」

 

そう言って無駄に撃った一発を補充し直しながらほむらは歩き出した。

それに付いて行くさやか。

 

「ねえ転校生」

 

「暁美よ」

 

「……暁美さんは、なんで戦えるの?」

 

「さあ?」

 

「さあって、、訓練とかしてるんじゃないの?」

 

「ほぼぶっつけ本番」

 

「それなのにあんなに当たるもんなの?

小学校の頃縁日で射的とかやった時全然当たらなかったんだけど」

 

「縁日の射的って、おまちゃの銃でしょ?」

 

「だから本物の方が難しいんじゃないかと思って」

 

「……あなた、意外と考えが回るのね」

 

「な!?し、失礼な!あんたこのさやかちゃんを何だと思ってるのよ!?」

 

「他人からの評価だけど、その、直情的で人の話聞かないお調子者?」

 

「マジで誰からの評価!?あんた今日一日クラスの奴とほとんどしゃべってないよね!?」

 

(……コロコロ表情かわって話してて楽しいわね)

 

「何その表情」

 

「いや、前評判より話しやすくて少し安心したわ」

 

「銃弾とタンゴ踊らせようとした相手によく言えるね」

 

「私、図太いかしら?」

 

「図太いていうか、変わってるっていうか、ていうか呼び方俺じゃないんだ」

 

「ああ。昔はオレだったんだけど、親に矯正されて。今でもたまにぽろっと」

 

なんて話していると、さやかにも感じれるほど、大きな気配がするのが分かった。

物陰に隠れながら進んでいくと

 

「げっ!」

 

そこに居たのは緑色の泥にバラの花をつけたような頭に蝶の羽を生やした怪物がいた。

 

「あれが……」

 

「あ、いた!まどか!」

 

見ると怪物のすぐ足元に目立つ桜色のツインテールが胸元に何かを抱えて縮こまる様に蹲っている。

 

「まずいわね」

 

最悪さやかにまどかを任せて自分が囮になるべきか?

と、思いかけたほむらだったが、その決断を済ませるより早く怪物の身体を、吊るし上げる様に無数の黄色いリボンが意志を得た様に動き回って縛り上げる。

 

「な!?」

 

(あれは、マミさんの……)

 

「あら、御同業?」

 

ふり返ると、ほむらは左右の声から聴いていた通りの容姿の少女がいた。

茶色いベレー帽にコルセットなど、ほむらに比べてクラシカルな意匠のコスチュームを身に纏い、手にする武器も白いマスケット銃と、これまたほむらと対照的だ。

 

「……今奴の足元にこの子の友達がいるの。

援護するから人命救助優先でお願いできる?」

 

ほむらは武器をモーゼルM98ライフルに持ち替えながら言った。

 

「いいわ。腕前は、期待していいの?」

 

「いくら何でも化物と人影を間違えたりはしないわ」

 

軽口もそこそこに二人の魔法少女は魔女の前に躍り出た。




本作でほむらが使ってる重火器は原作とは異なります。
基本的に筆者の趣味のルパン三世シリーズ、ターミネーターシリーズ、バイオハザードシリーズからの物が多くなると思います。
自分はがっつりミリオタなどではないので、もしかしたら弾数などの描写で矛盾が生まれるかもしれません。
その時は遠慮なく誤字報告やコメントなどでお申し付けください。
ちなみに今回登場した二丁はそれぞれ

・スミスアンドウェッソン回転式拳銃
…ターミネータージェネシスにてカイル・リースがT-1000に

・モーゼルM98ライフル
…これの原型となった銃を次元大介の墓標にて次元大介がヤエル奥崎に

それぞれ使った銃になります。


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第二話 捕まえましたよ、先輩 Aパート

皆様お久しぶりです。
夏までの完結を目指して頑張って行きたいと思います。


等間隔に並んだ空き缶に、これまた等間隔に時間を置いて鉛玉が発射される。

六つ全ての空き缶が地面に落ちてカラコロと音が鳴る。

 

(そう言えば、子供の頃『カンカンのつみき』って言って、お父さんのビールの空き缶で遊んだっけ?)

 

確か暁美ほむらではない記憶を思い起こしながら、彼女は手にしたスタームルガーから空薬莢を取り出し、予備暖を詰める。

 

「だめね。4発目は缶に当たってないわ。

多分身体強化が上手くいってないのね。四発目の時だけ反動で腕が上がっていたから…」

 

後で見ていた巴先輩がカワイイ顔に似合わない辛口評価とアドバイスをくれる。

なんでこうなったかと言うと、あの日、鹿目さんと美樹さんを助けた日までさかのぼる。

 

 

 

✿✿✿✿✿✿

 

 

 

巴先輩と協力して、と言うより、ほぼ巴先輩が一人で魔女を倒した後、オレたち3人は巴先輩の家に招かれ、そこでお手製のケーキとお茶を振る舞われながら説明をされた。

 

 

 

魔女、人間に絶望を振りまき、そこから生まれる負の感情を喰らう怪物。

普段は結界の内側に閉じこもっており、そこに様々な方法で人間を呼び込み、使い魔や固有の能力を駆使して人間を絶望させる怪物。

 

「他の街に比べて行方不明者や不審死の多い街には大体魔女がいると言っても過言ではないわね」

 

そんな魔女を狩るのが魔法少女。

鹿目さんが助けた白い謎の獣、キュウベぇと契約し、固有の変身アイテム、ソウルジェムを手にした者たちが何でも一つ願いを叶えてもらえる代わりに、戦い続ける宿命を負うのだ。

 

「へー、それって美男子逆ハーレムとか満漢全席とか何でもありなんですか!?」

 

「ま、満漢全席って……」

 

「真っ先に出てくる願いがそれって幸せね」

 

「な~に~?そう言う暁美さんはどうなの?一体何を願ったの?」

 

「それはボクも気になるね。ほむら、僕は君と契約した覚えがない。

一体どうやって願いを叶えて魔法少女になったんだい?」

 

「……さあ?」

 

「さあって……」

 

「覚えてないのよ。私の魔法は時間に干渉して私以外、もっと正確に言えば私と私が触れているものの時間を遅くしたり速くしたりする魔法なんだけど、それで大規模な時間への干渉でもしようとして失敗したのか、過去の記憶が曖昧なのよ」

 

限りなく嘘は言っていない。

実際頭の片隅の2人から教えてもらってはいるが、オレ自身は覚えていなければ、その場で見ていたわけでもないのだ。

 

「なるほど。それは確かにボクが君を把握していなくても不思議じゃないね」

 

「だから調子にもムラがあるのね」

 

とりあえずキュウベぇの追及を逃れることには成功した。

今はまだ、頭の2人の事とか話すわけにはいかない。

 

「それで、魔法少女って誰でもなれる物なんですか?」

 

「いいえ。まず女の子であることと、更に適性がある必要があるわ」

 

「適正って、、」

 

「キュウベぇが見えるかどうかで判別できるわ」

 

「え?じゃあ、、」

 

「まどか、さやか。君たち二人には魔法少女に慣れる素質がある。

ボクと契約して、魔法少女になってよ!」

 

 

 

✿✿✿✿✿✿

 

 

 

才能があるとは言え、日曜朝にやってる女児向けアニメのような華やかなだけのものではない。

異形相手とは言え命の奪い合いには違いないし、心構えも、譲れない物もないままに契約を急がせるのも酷な話だ。

 

「この調子だと体験コースは来週ぐらいになるかしら?」

 

「どんまい暁美さん!前より外さなくなってるしすぐだって」

 

「だと良いんだけど」

 

そこで巴先輩が鹿目さんと美樹さんい提案したのが、魔法少女体験コース、一言で言えば巴先輩の戦いっぷりを見て決めてもらおうという事だ。

 

「それ、私も付いて行っても?」

 

「いいけど、あなたの今の実力じゃちょっと不安ね。

鹿目さんたちなら全く動かないでいてくれたら守るのも苦じゃないけど」

 

「半端に動ける方がめんどう?」

 

「ええ。言葉を選ばなくてごめんなさいね」

 

「いいですよ。実力位理解してます」

 

左右の声のアシストの無いオレは対して強くない。

使い魔相手程度ならともかく、魔女相手には大苦戦を強いられることだろう。

 

「それじゃあまずは魔法少女の戦い方の基礎からってことで、明日から暁美さんを私が訓練するっていうのはどうかしら?」

 

断る理由はない。

いい加減身体強化をミスして体の感覚が変になるのも解消したかったから丁度いいとさえいえる。

 

「鹿目さんは大丈夫?あんまり調子よくなさそうだけど」

 

「あ、あはは。やっぱり銃の音が怖くて……」

 

当然だろう。

アメリカには拳銃戦を表すスラングに『三発、三秒、三フィート』と言う言葉ある。

銃弾の応酬は三発、時間は三秒、距離は三フィート、と言う訳だ。

その理由の一つに銃声のデカさがある。

フィクションなどでは分かりずらいが、銃声とは本来耳栓をしていても普通に聞こえるぐらいの大きさで、聞こえようものならすくみ上ってしまうような物なのだ。

どこまでも平々凡々な彼女の反応が普通だろう。

 

(鹿目さんは難しそうかしら?)

 

頭に住まう者たちとは違う声がオレの頭に響く。

キュウベぇを中継局にしたテレパシーが巴先輩から送られてきた。

 

(無理に誘って死なれたら目覚め悪いしいいんじゃないですか?)

 

最も自分は目の前でぐちゃぐちゃに潰されたりしない限り翌日から普通に肉も食べれるだろうけど、と内心付け足す。

実際そうなのだ。

頭の中の2人は知らないが、自分には鹿目まどかに恩義はない。

 

「それじゃあ家こっちなんで」

 

「じゃあね、さやかちゃん」

 

「また学校で」

 

「バイバーイ」

 

美樹さん、巴先輩と分かれ、最後にオレと鹿目さんの2人になる。

距離にして三ブロックしかないのだが、この沈黙だけが苦手だ。

頭の中で騒ぐ声がうるさいからなるべく鹿目さんに喋って欲しいのだが、鹿目さんの方に苦手意識があるのか、向こうから積極的に来ない。

かと言ってオレが触れる様な話もない。

いや、一度料理の話題を振ってみたことがるのだが見事に続かなかったのだ。

 

(さて、オレも流行のマンがぐらい追った方がいいのかな?)

 

なんて思いながら最後の角を曲がろうとした時だった。

プロボクサーでもなかなか受けきれないような見事な右フックが角から飛び出た誰かに繰り出される。

 

「ぐふっ!」

 

視界に捉える事には成功したのだが、変身してないオレでは肉体が追い付かず、まともに食らってしまった。

 

「あ、暁美さん!?」

 

「弱いな。あいつの新しい相棒って言うからどんなもんかと思ったら、ド素人じゃないか」

 

『佐倉杏子……』

 

『佐倉さん……』

 

左右の声に知らされて視線をあげると、真っ赤な長い髪でポニーテールを結った少女がそこに居た。

歳は自分たちと同じぐらい。

服装はパーカーにブーツのラフな私服姿。

キャンディを舐めているのか、口の端から白い棒が覗いている。

 

「な、なんで急に」

 

「はいはい。外野はすっこんでな」

 

そう言って佐倉先輩は加えていた棒付きキャンディーをうろたえる鹿目さんの口に突っ込んで黙らせると、オレを覗き込む。

 

「お前がマミの相棒続けるんだったら、見滝原があたしの縄張りになる日もそう遠くないかね?」

 

「さあ、、どうだかね」

 

オレは左腕をかんばうように抑えながら立ち上がると、魔法少女に変身した。

変身前の腕の位置を調整したおかげですぐに取り出せたマシンピストル、MAC11を構える。

 

「遅いな!」

 

しかし向こうもすぐに変身し、銃を構えた腕を掴み上げると、二発続けて膝蹴りを叩きこみ、更に腕を捻り上げて、がら空きにした顔面に右ストレートを叩きこむ。

 

「暁美さん!」

 

「マミに伝えな。これ以上足手まとい増やすなんて無駄なことやめて自分の事だけやってなってね」

 

そう言って背を向けようとした彼女にオレは真っ直ぐ銃口を向けた。

 

「なに?まだやる気?」

 

「って言ったらどうする?」

 

へぇ、と呟いた彼女には確かな苛立ちの色があった。




今回ほむらが使った拳銃はスタームルガー回転拳銃です。
より正確に言えばセキュリティシックスと言う種類の派生のP100と呼ばれるもので、私が同じハーメルンで書いてる『人間殴ルーラーとドチートと凡夫どもが逝くFF人理修復』の主人公の一人の愛銃でもあります。
もしご興味ありましたらそちらもチェックしていただけると伊勢村が喜びます。
MAC11は極めて個人的に思い入れのある銃で、生まれて初めて買ったエアガンがこれだったので出させてみました。
お読みいただきありがとうございました!
Bパートも来週の同じ日に投下予定ですので、楽しみにお待ちください。


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