戦車道告白録 第1話 ある車長と装填手の場合 (通りすがりの戦車乗り)
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戦車道告白録 第1話 ある車長と装填手の場合

オレンジペコちゃん可愛い。
pixivに同じもの上がってます。


明日は大洗女子学園の学園艦の寄港日だ、寄港日になると西住みほは普段は戦車道で同じ戦車に乗るあんこうチームのみんなと一緒に行動するのだが他の四人はそれぞれの用事があり今回はバラバラになった。

 

他のチームの人たちと行動しようかと自室で考えてたとき、みほのスマホに着信が鳴る、相手は誰かと確認すると聖グロリアーナ女学院の戦車道隊長のダージリンだった。

 

慌てて通話ボタンを押すとダージリンの声がみほの耳に入ってきた。

「ごきげんよう、お久しぶりですわねみほさん。」

「こ、こんばんは!ダージリンさん!」

いきなりダージリンに声を掛けられて思わず声が裏返ってしまう。

 

「夜分遅くごめんなさい、今大丈夫かしら?」

「は、はい!大丈夫です!」

「あら?それならちょうどよかったわ、明日聖グロリアーナの学園艦も大洗と寄港日が被りますの、それでうちのペコが貴女と二人っきりで話しがしたいと言っているのですけど……。」

「ふえっ!?私ですか?」

「そうなのよ……駄目かしら?」

「いえそんなことないです!で、でも何でオレンジペコさんが……」

「さあ?私は何も聞いてませんからわかりませんわ」

ダージリンから明日のこの時間に喫茶店でオレンジペコが待ってるから来てほしいと言われる。

 

電話を切るとみほはベッドの上で頭を抱えて考え込んだ、何故オレンジペコさんが私と話したいのか不思議でしょうがなかったのだ。

(なんだろう?まさか知らないうちになにか失礼なことをしてたのかな?)

 

結局いくら考えても答えが出るはずもなく明日になればわかることだと思って考えることを止めた、みほは枕元にあるボコぐるみを抱きながら眠りについたのであった。

 

翌日、失礼がないよう待ち合わせの時間よりも少し早くみほは喫茶店に着いた。

店の外から覗いてみると一番奥の席にオレンジペコの姿が見えた。

店に入り彼女と合流しようとした。しかし……

 

「あれって大洗の西住みほ選手じゃない!?」

「西住さんファンです、サインお願いします!握手してもらえませんか?」

「一緒に写真を撮っていただけないでしょうか!?」

途端周りにいた女性達が一斉にみほに集まり始めた。

サインや握手を求められたり、写真を撮りたいと言われたりしてパニックになる。

が、不器用な彼女なりに精一杯笑顔で対応し握手やサインに応じる。

こんな自分を応援としてくれる人がいることにみほは感謝しつつ頑張って対応した。

 

 

ようやく落ち着いた頃には約束の時間から30分は過ぎていた。

 

 

「ご、ごめんなさい!遅くなりました……」

バツの悪そうな顔をしてみほはオレンジペコに話しかける。

「ファンの人たちは大事にしなくてはいけませんから仕方ありませんよ」

店の中から様子が見えていたのかオレンジペコは微笑みながら言った。

「はい……ありがとうございます……」

みほはテーブルを挟んでオレンジペコの向かい側に座る、紅茶を一口飲んで落ち着くとオレンジペコはみほに話しかけた。

 

「き、今日お呼びしたのは理由があるんです」

オレンジペコの言葉を聞きみほは少し緊張しながら耳を傾ける。

オレンジペコは深呼吸した後ゆっくりと言った。

 

「西住さん好きです…」

「ふえっ!?」

突然の出来事に驚き思わず変な声が出てしまった。

 

(今私告白されちゃったの!?しかもこんな人が多いところで……)

周りの視線が気になって仕方がないがとりあえず返事を返すことにする。

「あ、あのう……それはどっちの意味でですか……?」

恐る恐る聞いてみるとみほに衝撃的な言葉が返ってきた。

「も、もちろん恋愛感情として好きと申し上げたのです……」

(恋愛感情としての好き!?ということはつまり……恋人になりたいっていうこと!?)

みほの顔が一気に真っ赤に染まる。

 

みほは年頃の女の子だし(自称)恋愛マスターの武部沙織ほどではないが恋愛ごとに少し興味はあったりする。

だけど実際に告白されるなんて夢にも思ってなかったので頭が真っ白になり固まってしまうのだった。

 

それにオレンジペコとみほは交流はそんなにない。

彼女はどちらかといえばみほと同じあんこうチームでオレンジペコと同じ装填手の秋山優花里や同じ一年生の澤梓との交流の方が多い。

 

挨拶ぐらいはするが特に仲が良いというわけでもないのにいきなり呼び出されて告白されたのでみほは驚いてしまうのだった。

 

「だ、駄目ですよね?私みたいな人間と西住さんじゃ釣り合わないですもんね……。ごめんなさい、忘れてください!」

みほの表情を見て引かれていると思ったのかオレンジペコは慌てて謝った。

このままでは駄目だと気を取り直してなんとかみほは言葉を絞り出した。

 

「い、いやでもなんで私なんかを……?////」

疑問に思ったことをそのままぶつけるとみほに意外な答えが返ってくる。

 

「け、決勝戦の黒森峰との試合中ずっと見ていました!お姉さんのまほさんと戦う貴女の真剣な顔とってもかっこよかったです!」

 

(私がかっこいい?)

みほにとっては全く予想外の反応だったので思わず目を丸くする。

オレンジペコは目をキラキラ輝かせながら言った。

あまりにも恥ずかしすぎる褒められ方をされてみほは戸惑ってしまう。

「そ、そんな大げさですよ~!///」

 

「そんなことはありません!それに大学選抜チームとの試合で島田愛里寿さんと戦っている時の貴女はもっとかっこよくて胸が高鳴ってしまいました!……ってすみません私何を言ってるんだろう……!本当にごめんなさい、忘れて下さい……!」

 

みほは考えた、まさか彼女がここまで自分のことを慕ってくれてたなんて思わなかったからだ。

彼女の上目遣いや照れながら話してるところを見てると、みほはドキドキしていた。

小さな体、可愛らしい声に優しい顔、こんなにも可愛い人に慕われたら誰でも嬉しいものだ。

 

答えが出たみほは席を立ちオレンジペコの隣まで移動し彼女に話しかけた。

 

「お、オレンジペコさん、ありがとうございます……。

こんな私のことを好きだと言ってくれてとても嬉しいです。だ、だから……その……」

 

みほは俯きながら顔を赤くして小声で何か言っている。

オレンジペコは不思議そうな顔をしてみほの口元に耳を近づけた。

 

「よ、よろしくお願いします……///」

 

「えっ?」

みほは勇気を振り絞ってオレンジペコに想いを伝えた。

オレンジペコは一瞬驚いた後笑顔になって答えてくれた。

 

「こ、こちらこそよろしくお願いします!!」

こうして二人はお互いの気持ちを確認し合い交際することになったのだった。

 

それからしばらくして紅茶を飲み干し、喫茶店を出た二人は近くの公園に行きベンチに座り語り合うことにした。

 

オレンジペコはみほの手を握る。

彼女の手はとても温かく柔らかい。

みほもそれに応えるように優しく握り返す。

「あのう……一つお願いがあるんですが……いいですか?」

「な、なんですか?」

「私のことはペコって呼んでほしいんです」

「ペコ?」

「はい、それと敬語もやめてほしいんです」

「は、はい……じゃなかった、うん、わ、わかったよ」

「ありがとうございます」

「じ、じゃあ私のこともみほでいいよ」

「わかりました、みほさん!」

オレンジペコは嬉しそうに笑う。

みほも釣られて笑顔になる。

オレンジペコの可愛らしい笑顔は見ているこっちまで幸せな気分にしてくれる。

みほはオレンジペコの笑顔をもっと見たくなりある提案をする。

 

(そうだ、写真撮ろう)

みほはスマホを取り出しカメラを起動し二人の写真を撮る。

「はい、チーズ」

パシャリという音とともに撮影された一枚の写真。そこには満面の笑みのオレンジペコと少しぎこちないながらも笑顔の西住みほがいた。

みほは撮影した写真をオレンジペコに見せる。

 

「あ、可愛い♪」

「本当?良かったぁ……ペコにも送ってあげるね」

「あ、ありがとうございます……!」

 

その後しばらく談笑した後、日が暮れてきたのでみほはオレンジペコを送るために聖グロリアーナの学園艦の近くまで一緒に歩いていくのだった

 

「今日はとても楽しかったです」

「私もとっても楽しかったよ」

「あの・・・最後にもう一つだけお願いがあるんですがいいですか?」

「うん?どうしたの?」

「・・・目をつぶってもらえませんか?///」

「えっ!?えーっと・・・こ、こうかな・・・?」

みほが言われた通り目を閉じるとオレンジペコはみほの唇にキスをした。

 

突然の出来事にみほは驚いてしまう。

「ふえぇ!?//////」

「こ、恋人どうしだからこれくらい当然ですよね……?//////」

そう言いながら夕日よりも顔を真っ赤にして学園艦のタラップを登っていくオレンジペコ。

オレンジペコが見えなくなった後も同じようにみほも夕日よりも顔を真っ赤にしてその場に立ち尽くすのだった。

 

その後みほは足早に寮へと帰った。

そして帰りつくなり真っ先に自分の部屋へ行きベッドに飛び込んだ。

「はぁ~……疲れた……でも……」

今日の出来事を思い出す。

オレンジペコとのやり取り全てがまるで夢のようで。

でもスマホで撮った写真と今も感じている唇に残った彼女の温もりが夢じゃないと教えてくれる。

 

晩御飯やお風呂を済ませてそろそろ寝ようかと思ってたところでスマホにメールの着信音が鳴る。

相手はオレンジペコだ。

みほは慌ててスマホを手に取り内容を確認する。

 

「今日は本当にありがとうございました。

初めてだったので上手くできなかったかもしれませんが私はとても幸せでした。

またいつか会えることを楽しみにしています。

大好きです、愛してます、ペコより」

「私もだよ、ペコ」

みほは返事を書いて送信する。

 

すぐに返信が届く。

内容は「おやすみなさい」という一文だけだった。

みほも「おやすみ」と返して夢の中で彼女にもう一度会うため瞼を閉じるのだった。

 

 

「ペコはうまくいったかしら?」

聖グロリアーナ内のカフェテラスでダージリンとアッサム、ルクリリ、ローズヒップがお茶会をしていた。

お茶会での話題はこの場にいないオレンジペコのことだ。

 

ちゃんとみほと合流できたのか、告白はちゃんと出来たのか、そんなことを話していた。

オレンジペコは恥ずかしがり屋なのも相まって中々一歩踏み出せない性格をしている。

そんな彼女の背中を押すのは仲間である自分たちしかいないと考えていたのだ。

 

ダージリンは紅茶を一口飲んでから静かに口を開いた。

「大丈夫よ、きっとみほさんはペコを受け入れてくれるわ」

 

とは言ったものの妹みたいに可愛がっていたオレンジペコが自分から離れていくみたいで寂しいと思ってるのも事実である。

娘を取られた父親?ってこんな感じなのかしら?

私でさえ少し寂しいのにみほさんのお姉さんのまほさんがこのことを知ったらどう思うかしら……?

 

ダージリンはみほがオレンジペコの告白にOKを出したらまほにこのことを教えてやろうか、と思ったが思い留まった。

(いや、私が言うよりもみほさんに直接言われたほうが面白い反応をしそうね……)

 

(お姉ちゃん!私、大切な人ができました!!)

 

ダージリンはそのことを言われたまほの反応を想像してしまい思わず顔を背けて笑ってしまっていた。それを不思議に思った3人は首を傾げる。

「どうかしましたの?」

「い、いいえ、何でもないわ」

ダージリンは3人に気づかれないように平静を装った。

まあ、付き合いの長いアッサムはどうせろくなこと考えてないんでしょうけど、と冷めた目でダージリンを見る。

 

その時、テーブルに置かれていたダージリンのスマホにメールの着信が届いた、相手はオレンジペコだ。

 

「あら、噂をしてたら彼女からね」

「告白は上手く行きましたの!?」

ローズヒップはダージリンのスマホを掴んでオレンジペコからのメールを見ようとしたところをルクリリに制止される。

「待て待て!まずはダージリン様からだ、そもそも人のスマホ勝手にイジるじゃない!」

「いいじゃないですの!見せてくださいまし!」

「駄目だって言ってるだろうが!」

「二人とも少し落ち着きなさい」

二人が喧嘩しているところに冷静な声でアッサムが割って入る。

「ルクリリの言う通りダージリンが読んでからよ」

アッサムはローズヒップにデコピンをしスマホを取り返してダージリンに渡す。

 

彼女はスマホを受け取りオレンジペコからのメールを読む。

その内容を見た瞬間、彼女は微笑み優しい声で言った。

 

 

 

 

「良かったわね、ペコ」

 

END




みほペコもっと流行って


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戦車道告白録 第2話 ある装填手と操縦士の場合

・ダイコンウォーでゆかりんが麻子のことを麻子さんと呼んだきっかけで思いついた作品です。
・ダイコンウォー見てる前提の話です。
・チェロス食べてる麻子を笑顔で見てるゆかりんが可愛いんだこれが。
・pixivに同じもの上がってます


「でもホント大変だったよね、農業科に書類を届けるだけの筈だったのに馬に乗ったり、野宿するなんて思わなかったよ〜」

武部沙織はそう言うと大浴場で大きく伸びをした。

「あはは、そうだね、しかも大根泥棒騒動に巻き込まれるなんて思わなかったよね」

西住みほは笑って肯定する。

「そうですね。ですが無事に書類は届けられましたし、良かったんじゃないでしょうか?」

五十鈴華はそう言いながらみほの隣で微笑む。

「うん、そうだね。みんなお疲れさまでした!」

みほの言葉に二人は笑顔を浮かべた。

 

「麻子さん痒いとこありませんか?」

秋山優花里は冷泉麻子の髪を洗いながら尋ねた。

「ああ大丈夫だ……それより、早く流してくれ……」

麻子は目を瞑ったまま答えた。

「えっと、もういいですか?ではいきますよ!それーっ!」

優花里は麻子にシャワーを掛け、そのあと丁寧にシャンプーを流していった。

「よしっ終わりました!さぁ体も洗いましょうか!」

楽しげに見つめると優花里はスポンジを手に取った。

「お任せ下さい!この私が隅から隅までピッカピカにしてみせますから!」

優花里はそう言い、ボディーソープをスポンジに出し泡立て始めた。

そして麻子の体を洗い始めた。

「気持ちいいですか?」

麻子は返事の代わりに小さく頷いた。

それを見て嬉しそうに微笑むと秋山優花里はさらに体を洗っていった。

やがて麻子の全身を洗い終えると

優花里は満足そうな笑みを浮かべた。

 

「ふぅー良いお湯加減ですねぇ」

「ああ、確かに気持ち良いな」

優花里の言葉に麻子は同意すると優花里の肩に頭を乗せた。麻子の突然の行動に驚いた優花里だったがすぐに柔らかい表情になった。

 

「……ねえ、二人ともなんか少し仲良過ぎじゃない?」

二人のやり取りを見て沙織は不思議そうな顔をしていた。

「た、武部殿、そんなことないですよ!普通ですよ!」

優花里は慌てて否定した。

しかしその顔は明らかに赤くなっていた。

 

「えーっと、まあ、仲がいいならそれでいいんじゃないかな〜?」

困ったように笑いながらみほは言った。

「そ、そうですよね、西住殿!」

秋山優花里は安堵のため息をつく。

だがそれを見ていた華は優しく笑うとこう言った。

「うふふ、まるで恋人みたいですね」

華の言葉を聞いて優花里は更に真っ赤になって俯いてしまった。

 

「五十鈴殿!?何を言ってるんですか!!

私と麻子さんはそういう関係じゃなくてですね……」

必死に弁解しようとするものの言葉が出て来ず口をパクパクさせるだけであった。

 

「それだよ!」

と沙織は叫んだ。

「えっ?」

優花里は戸惑った声を上げた。

「それってどれですか?」

華が尋ねる。

 

「私や華やみぽりんは名字で呼んでるけど、麻子だけ名前呼びなんだよね!」

「ああ、言われてみればそうですね」

華は納得したような表情を見せた。

「それにあの時も!」

 

〜回想〜

「秋山さんのチェロスの方が大きい……私のと交換してくれ……」

と優花里に自分のチェロスを差し出す。

「ちょっと麻子、どれも同じでしょ!しかももうかじってるし……」

沙織は呆れた表情で麻子を嗜めた。

「私は構いませんよ、はいどうぞ」

優花里は笑顔を浮かべるとチェロスを麻子に渡し、麻子も自分のチェロスを優花里に渡した。

その光景を見た沙織は心の中で

(あ、あれ?これってもしかして間接キスになるんじゃ?)

と考えていた。

二人は沙織がそんなことを考えてるとは知らず、チェロスを仲良く食べていた。

(ま、まあ友達どうしならこれくらい普通のことなのかもね)

沙織はなんとか自分を落ち着かせた。

 

~回想終了~

 

「と、友達同士ですから全然おかしくないと思います!」

優花里は力強く断言する。

若干顔を赤らめてはいるが……

「そ、そうだよ、沙織さんだって私と華さんでお互いのアイスを食べさせ合うこととかしてたし(TVアニメ第一話参照)何もおかしいことはないと思うんだけど……」

みほは苦笑いしながら答える。

しかし沙織はそれでも納得しなかった。

それどころか何かを思い出したらしくニヤリと笑った。

「じゃあ、あれは!!」

 

〜再び回想〜

(う〜まさか野宿するなんて、最悪だよ〜)

そう言いながらも少し楽しげな顔の沙織は夜空を見上げながら寝ころんでいた。

 

ふと横を見るとみほがジェーンと何か話をしている。

沙織は耳を傾けてみるが焚き火の音でよく聞こえなかった。

隣の華や優花里はもう眠っていた。

夜型の麻子はまだ起きていたようだ。

 

すると麻子はゆっくりと立ち上がった。

寝ている沙織と優花里の間に強引に割り込むとその場で寝息を立て始めたのだ。

 

(ちょっ!なんでわざわざ間に入るかなぁ……狭いのに……)

突然の出来事に困惑しつつも沙織は自然と笑みをこぼしていた。

やがて麻子の小さな寝息に誘われるようにして沙織もまた眠りに落ちていった。

 

夜中目を覚まし隣を見ると麻子は優花里を抱き枕代わりに抱きついていて、優花里は眠りながら麻子を優しく抱きしめていた。

 

(な、なんかすごく仲良いなぁ、ま、まあ友達同士だし、そういうこともあるよね。

うん、気にしない、気にしない、気にしてもしょうがないよね。おやすみ……)

沙織は自分に言い聞かせるともう一度目を閉じるのであった。

 

~回想終了~

 

沙織は得意げな表情を浮かべると優花里を指差した。

優花里は顔を赤く染め俯いてしまった。

「ああ、それで次の日に麻子さんが優花里さんの隣で寝てたんですね」

納得したように華は呟いた。

 

「で、でもそれはただ寒かったから思わず抱きしめただけかもしれませんし……」

必死に弁解しようとするがうまく言葉が出てこない様子だ。

沙織は先程から会話に入らない麻子の方に話しかけた。

 

「ねえ、麻子、さっきから黙ってるけど本当のところどうなの?」

すると麻子は小さく微笑み。

「……別に隠すつもりはなかったんだがな」と言いながら優花里の唇に口づけをした。

「!!!」

優花里はあまりの出来事に硬直してしまった。

沙織、華、みほの三人はその様子を呆然と見つめることしかできなかった。

 

麻子は固まったままの優花里をそのまま抱きしめると言った。

「私と優花里さんは付き合っている、悪かったな黙ってて」

 

「うふふ、ゆかまこもアリですね」

華はニコニコと笑っている。

「……」

みほは恥ずかしそうに頬を赤らめていた。

 

「はあ……」

と沙織は大きくため息をつく。

「あ、別に女の子同士だからとかそういうことに文句があるわけじゃないからね!友達である私達に内緒にしてたことに怒ってるだけだからね!」

沙織の言葉をで復活した優花里は申し訳なさそうにし謝った。

 

「じ、実はお付き合いを始めたのは最近でして、生徒会の仕事も忙しくてなかなか報告するタイミングがなかったんですぅ……」

そう言って麻子の方を見る。

麻子は何も言わずにコクリと小さくうなずき優花里の言葉に同意を示した。

それを見て優花里は再び沙織たちの方へと向き直った。

そして静かに深呼吸した後、ハッキリとした声で告げた。

 

「不肖秋山優花里、冷泉麻子さんと健全なお付き合をしています!どうかよろしくお願いします」

優花里は元気よく頭を下げて沙織たちに宣言した。

 

「うん、こちらこそ麻子のことよろしくね」

沙織は優花里に向かってニッコリと笑みを浮かべて言った。

「もちろんです、任せてください」

優花里も笑顔を浮かべて答える。

「二人とも幸せになってくださいね」

華は笑顔を浮かべて言った。

「お、応援するよ、がんばってね」

少し照れたような表情でみほも続いた。

 

「あ、あと麻子の遅刻もゆかりんがなんとかしてくれると助かるんだけど……いいかな……?」

沙織は冗談めかして笑いながら麻子

の代わりに優花里に頼んでみた。

 

「わかりました、私に任せてください!」

優花里は胸を叩きながら答えた。

「あ、いや、やっぱりほどほどでいいから……」

沙織は慌てて訂正しようとしたが時既に遅しであった。

 

「えっと、具体的にはどうすれば良いでしょうか?あっ、私が麻子さんのお家で寝泊まりをすれば良いですか!?それなら朝も起こせるので問題ないと思いますが、どう思いますか?麻子さん」

「さすがは優花里さん、その発想は私にはなかった、ナイスアイデアだ」

麻子は嬉しそうな顔で優花里の提案を受け入れた。

 

「ど、同棲なんてママが許しませんよ!!」

沙織は必死に抗議をする。

「いえ、泊まるだけですから、同棲というわけでは……」

「でも、同じ布団で寝るんでしょ!?」

「はい、一緒に寝ることになりますが……それが何か?」

「何か?じゃないわよ!絶対ダメなんだから!」

沙織は頑なに反対するが優花里はそんな沙織の様子に首を傾げている。

「……沙織お前変な事考えてないか?」

「そっ、そんなこと……ないもん……//」

麻子に指摘され顔を真っ赤にする沙織。

「へ、変な事……///」

「沙織さん一体何想像してるんですか?」

「ち、違うの!なんでもないの!!」

 

 

沙織の絶叫は大浴場に響くのであった。

 

 

大浴場に他の生徒たちが入ってきたので五人は湯船から上がり着替えを済ませると話の続きをするため場所を生徒会へと移した。

「ところで優花里さんと麻子さんはどのような経緯でお付き合いすることになったのでしょう」

華は不思議そうに優花里に尋ねる。

すると優花里は顔を赤くしながら答えた。

 

~回想~

麻子は午前の授業をサボってベンチで寝ていたらいつの間にか隣に優花里が座っていて自分の膝を枕代わりに貸してくれていた。

 

優花里はみほたちのクラスが調理実習で一緒にお昼が取れなかったのでどこか昼は一人で過ごそうとたまたま麻子を見つけたので隣りに座ったのだった。

起こすのも悪いと思って声をかけなかったのだが、麻子の寝相が悪くベンチから落ちそうになったので自分の膝を貸したのだった。

 

麻子はそのまま眠ったふりをして優花里の様子をこっそり観察することにした。

最初は優花里も麻子の髪に触れていたのだが、そのうち飽きたのか今度は麻子の頭を撫で始めた。

まるで猫でも愛でるかのように優しく丁寧に、何度も往復しながら撫で続ける。

正直嫌ではなかった。

むしろ心地良かったくらいだ。

 

しばらくすると優花里も眠くなってきたようで、麻子の頭を抱えたままウトウトし始めた。

そしてそのまま眠りについてしまったようだ。

(これはどうしたものか……)

麻子は考える。このまま優花里が起きるまで待つべきか、それとも無理矢理起き上がって起こすべきか。

しかし、もう少しだけこうしていたかったので結局麻子もそのまま眠りにつくことにした。

 

次に目を覚ました時には昼休みが終わる直前だった。

慌てて起きた優花里だったが、麻子の頭を抱き抱えたままでいたことに気付き慌てて麻子を揺すり起こした。麻子は照れくさそうにそっぽを向いていたがどこか満足気な表情を浮かべていた。

 

放課後になると麻子は生徒会室を沙織や他の人がいないことを確認すると優花里の元を訪れて、仕事をしながらでいいから膝を貸してほしいと頼んできたので優花里は何も言わずに麻子に膝を貸すのだった。

 

あんこうチーム五人での昼食の時間が合わないときは二人で芝生の上でご飯を食べたり寝転んで空を眺めたりした。

優花里が勉強で解らないところがあると麻子が教えたり、逆に麻子が戦車道で解らないことがあると優花里が教えてくれた。

二人きりの時間を過ごすうちに自然と麻子は優花里のことを意識するようになったがこの気持ちがなんなのかは麻子には分からなかった。

 

ある夜、麻子は家で一人でいたら突然大きな雷が鳴り停電になった。

麻子は暗闇の中で一人で震えていた。

怖くなった麻子は普段なら沙織に電話をかけて来てくれるようお願いするのだが何故か麻子は優花里に電話していた。

少しの呼び出し音の後に電話に出た麻子は涙声で助けて欲しいと優花里に言ったのだ。

 

外は真っ暗だというのにすぐに来てくれた優花里は暗闇の中震えながら涙を流している麻子を強く抱きしめると安心させるように背中をさすりながら大丈夫ですよ囁き続けてこう言った。

 

冷泉殿が寂しいなら私がいつでもそばにいてあげますよ。

だからもう泣かないでください。

優花里の言葉を聞いた途端、今まで我慢してきた不安や恐怖が消えていき心の中に温かいものが広がっていった。

麻子は顔を赤く染めながら優花里を強く抱き返した。

優花里はそんな麻子の様子を見ながらクスッと笑うと、麻子の頭を優しく撫でるのであった。

そして麻子は優花里に体を預けて静かに眠るのであった。

 

翌日、麻子はとても機嫌が良く遅刻することもなく学校に登校することが出来た。

その日の夕方、優花里は生徒会室で仕事をしながら昨夜の事を思い出していた。

 

あの時、何故冷泉殿は武部殿じゃなく私に電話をくれたんだろう?

まさか私のことを……いやいや、それはさすがに自惚れすぎか。

でも、もし仮にそうだとしたら……いや、でも……もしかしたら……いやいや、さすがにないですよね……

等々考え込んでしまい、全く仕事が進まず様子を見に来た川嶋殿にめちゃくちゃ怒られてしまいました。

 

麻子が優花里に告白したのはそれから一週間後のことであった。

「秋山さん……その……す、好きだ……」

麻子は頬を赤く染めながら今にも消えそうな小さな声で告げた。

優花里は麻子の両手をを掴み真剣な表情で答えた。

 

「冷泉殿!これからよろしくお願いします!こちらこそ、不束者ですが末永く宜しくお願いします!!」

二人は見つめ合ったまま顔を近づけていった。

 

〜回想終了〜

話を聞き終えた華は感動した様子で瞳を潤ませていた。

沙織は恥ずかしそうに耳まで真っ赤にして俯いていた。

みほは顔を真っ赤にしながらニコニコしていた。

「やだもーなにそれ、ゆかりんめっちゃ男前じゃん!!」

沙織は興奮した様子で優花里に詰め寄る。

麻子も無言でコクコクと何度もうなずいている。

「優花里さんかっこいいですね、本当に素敵です!」

華も優花里の手を取り大絶賛している。

「あ、ありがとうございます」

優花里も照れくさそうに笑顔を浮かべる。

 

「……ねえ麻子さん、ちょっといい?」

みほが麻子を連れて三人から離れる。

「どうした西住さん?」

麻子が尋ねるとみほが小声で言う。

 

みほは照れくさそうな顔をしながら。

「いやちょっと優花里さんのイケメンムーブを色々と教えてほしくて……ペコとデートするのに参考になりそうで……///」

「オレンジペコさんと上手くいってないのか?」

麻子が聞くと。

 

「だって麻子さんたちと違って毎日会えないんだよ!?メールも電話もしてるけど、やっぱり寂しいものは寂しいよぉ~」

と涙目になるみほ。

 

麻子はそんなみほを慰めるように優しく頭を撫でると

「まったくうちの車長は世話が焼けるなぁ。

わかった、参考になるかわからないけど今晩メールで送っとく」

麻子の言葉を聞いた瞬間、ぱあっと明るい表情になったみほは満面の笑みを浮かべながら麻子の両手を握りブンブンと上下に振りながらお礼を言う。

 

(西住さんは西住さんのまんまがいいと思うんだけどな)

と思いつつも口には出さない麻子なのであった。

麻子は苦笑しながらみほに両手をブンブンされ続けていた。

こうしてあんこうチームの絆は深まってゆくのであった。

 

昼間の大浴場での有言実行、明日は遅刻しないよに優花里は麻子の家に泊まり一緒の布団で寝ることになった。

優花里に頭を撫でられながら麻子は言った。

「優花里さん、私達はホント仲間に恵まれてるな。

優花里さんや沙織や五十鈴さんに西住さん、他のチームのみんなこれからもずっと一緒にいたい。

私にとって一番の幸せは戦車道に出逢えたこととこのメンバーで出逢えてこうやって過ごせるようになったことなんだ。

だから優花里さん、私の大切な人たちを守ってくれるか?私達と一緒に戦車道を続けてくれるか?」

麻子の問いかけに対して優花里は麻子の手をぎゅっと握ると、優しい声で答えた。

 

「もちろんですよ、麻子さん。

私も麻子さんと皆さんとずっと一緒にいたいんです。

麻子や皆さんの笑顔を守るためなら、私は全力で戦います。

必ず守ってみせます。

だから安心してください、麻子さん。

あなたは私が守りますからね」

そして二人は見つめ合い、唇を重ねた。二人の夜は更けてゆく。

 

「……それとおばぁといつ会ってくれる?……」

麻子は優花里に尋ねると

「あのお婆さんに挨拶ですか、中々強敵ですねぇ……でもいつか必ず……いや、今度の寄港日にでも……

いやでも……やっぱり緊張しますね……うーん……いやその前にうちの両親と……

あ!でも大丈夫ですよ麻子さん!

きっと、いや絶対大丈夫です!!なんとかなりますよ!!」

優花里が言うと麻子が笑顔を浮かべる。

 

「そっか、ありがとう。優花里さん大好きだよ……」

「私も麻子さんが好きです、愛してます……」

二人きりの夜は続いていく。

 

 

一方、その頃のみほはというと……

「麻子さんからのメール全然来ないよぉ……」

 




ゆかまこもっと流行って


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