転生特典を得て努力しなくて済むようになった幸せ者のお話 (水属性大好きマン)
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転生特典を得て努力しなくて済むようになった幸せ者のお話
ーーーーとある空の島の大きな神社の庭ーーそこで3人の子供達が修行をしていました。
1人は、この中で唯一の女の子でありながらも既に大人顔負けの強さを持ち、将来十二神将になることもほぼ決まっているこの神社の持ち主でもあるエルーンの少女ーーヴァジラ。
1人は、この中で最も背が高く、力だけなら少女に匹敵する強さを持ち、将来を期待されながらも日々精進する真面目で男気あふれるこの島に住むドラフの少年ーーステルク。
そしてもう1人はーー何の才……少なくとも強さに関する才を持たないながらも少女の強さに憧れたその日から2人の修行に加わり、折れる事なく修行に喰らい付き、その結果友として共に技術を磨くことになった近くの島に住むヒューマンの少年ーーグラ。
3人はそれぞれ種族も家柄も違いましたが、そんなもの関係ないと言わんばかりに仲が良く、修行以外の時もいつも一緒にいました。
現在はまだ全員が9歳という年齢ながらも『親友』としてこれから先もずっと一緒だと誓い合っていており、その約束が叶う事を全員が信じて疑っていませんでした。
ーーーーですがその幸福な日々は突然ですが終わりを告げる事となりました。
3人の中で最も才能の劣る……否、才能のない少年グラは『船』の最終便に乗るべく、いつもの様に明日も会いに来る事を2人に約束し、そしていつもの様に自分の島に向かう渡航船に乗り込みました。
……グラの家は両親が亡くなっていて叔母に育てられている事もあり、あまり裕福ではありません。
なので本来ならこう毎日船に乗る様なお金は当然持っていません。
ですが運が良いことにグラの父はかつてのこの渡航船の関係者で、仕事中に殉職した経緯もあり、隣の島に行く程度ならとタダで乗せてもらっています。
そして普段通り自分の島に着き、家に帰ったグラは叔母に今日あった事を夕食を食べながら話しつつ、明日のこともあり、早めにベットに向かって寝ることにしました。
ーー明日はグラの10歳の誕生日。
普段毎日修行を行っている3人はそれぞれの誕生日の日だけはそれを休み、盛大にその日をサプライズで祝ってきました。
今日も別れ際に不自然に明日絶対来る様に言ってきた2人の姿を思い出したグラはクスリと笑みを浮かべながら朝を早く迎えるべく眠りにつきました。早く明日が来ないかなと、と願いながらーーーー
ーーーーそして日付が変わったその瞬間、深い眠りについていたグラは夢の中で自分の初めの記憶を思い出し飛び起きました。
ーーーーて、転生特典!?
それならーーーーが欲しいです!
どうしてかって?
ーーだってその力があればどんな世界に行ったって絶対死ぬ事ないし……
ーーーー 一生努力なんてしてくて良さそうじゃないですか!!!
目が覚めたグラは眠る前とまるで違う体を堪能し、これまでにない高揚感を覚え、ふとこの力を2人にどう披露するか考えた辺りで我に帰り、
そしてーーーー 一筋の涙を零した。
その後グラはーーーーもう二度と
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〇〇回目の誕生日会
ーーーー言われてみればウチの親もいつも家族で祝ってるな。
たまに位友達同士でやればいいと思うのに何でだ?
ーーーーどうやらどんなに仲がいい友達同士でも一度途切れると自然とやらなくなるみたい
ーーーーならわし達は途切れない様にずっとやり続けよう!
大人になっても、お婆になってもだ! 約束だぞ!!
まだ眠りについているヒト達もいる早朝の犬神宮ーーそこで忙しく駆け回る二つの影があった。
「急げステルク! 早くしないとグラが島に着いてしまうぞ!」
「まだ船が来るまでには全然余裕が……ああ、わかったわかった! 急ぐから地面で引きずるのだけはやめてくれ!!」
片腕で小さな犬を抱えながらの筈なのに容易く自分を引きずる少女ーーヴァジラに少年ーーステルクは必死にそう懇願する事でようやく自分の意思で地面に立つ権利を得ることに成功した。
「全く……それで神社を飾り付けするのはいいが、今年はちゃんと長老様の許可は貰ってるのか?」
「勿論! ……去年はお爺に相談しないでやったせいで大変な目にあったからな…今年は神社の予定も空けてもらってお爺達も居ないから一日中騒ぎたい放題だぞ!」
「……伝統ある十二神将様の神社でどんちゃん騒ぎするのは気が引けるが…まあ俺とグラが気を付ければ大惨事になることはないか」
ヴァジラに聞こえない様にそう決心しながらも、ステルクは気持ちを入れ替え、グラの誕生日会の準備に取り掛かった。
自分達の中でも初めての二桁台の誕生日という事もあり、今まで以上のものにしようと張り切る2人は、普段の修行以上の頑張りでなんとかグラが来るであろう時間までには準備を終える事が出来た、
「よし! これで後はグラが来るだけだな!
最近はいつも以上に厳しい修行だったからグラも今日が自分の誕生日だって忘れてる筈だ!きっと驚くぞー!」
「……そ、そうだな」
自分やヴァジラと違い、グラに限ってそんなことはないだろうとステルクは内心思いながらもそれを口にする事は出来無かった。
(……まあアイツならいい感じに場を納めてくれるだろ)
そう答えを出したステルク自身も難しく考えることをやめ、もうすぐ始まるであろう祝いのイベントを純粋に楽しもうとその時を待った。
「まだかなーまだかなー?」
「主役が来る前からそんなふうにはしゃいでたら体力が……いや、お前に限ってそれは無いか」
「まだかなーまだかなー?」
「おかしいな、いつもならとっくに着いている筈だが。
……さてはアイツ、寝過ごして船一本乗り遅れたな……」
「……遅いな」
「……もしかしたら何らかのトラブルで船が遅れてるのかもしれないな。
ーーちょっと確認してくる! 入れ違いにならない為にもヴァジラはここで待っててくれ!」
「……船は予定通り往復出来てるんですか。
ちなみにグラはーー! ……今日は誰も見かけてない、ですか」
「………………………遅い、な……」
「……もしかしたら家族か、グラ自身が病気で来れなくなったのかもしれない。……もしそうなら仕方がない、さ」
「……………………」
「……ヴァジラ。もう今日のこの島に来る船はないそうだ。
間違いなく、やも得ない事情があったんだろう。
……明日この神社に来る人達の為にもそろそろ
片付けよう。また長老様に怒られるぞ」
「……そうだな!誕生日会は日を改め開催しよう!
その時は今日以上に凄い誕生日会にするぞー!」
そう口にしながら立ち上がったヴァジラはせっせと片付けを始めた。
ステルクもそれに続く様に誕生日会の装飾を綺麗に取り外し始めた。
次回も問題なく使える様に、と。
そんなステルクの耳にヴァジラの小さな独り言が聞こえてしまった。
「……厨房に隠してたお母に教えてもらったわしの初めての手料理、
グラに食べて欲しかったな…」
刹那げに笑う幼馴染の姿を見たステルクは少しだけ、もう1人の幼馴染を恨んだ。
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再会
ーーーーん?どうした?
ーーーーヴァ……女の子ってやっぱり才能があって強い男に惹かれるのかな?
ーーーーんーまあ世間一派的にそうかもしれないな。
…………だけど、少なくとも俺達の近くにいる誰かさんは才能で強い奴よりも努力で強くなった男の方が好みだと思うぞ?
…………まあその誰かさんは、それに加えて自分より強い奴とかの条件がありそうだけどな
ーーーーそっか…………ま、まあ別に誰かにモテたいわけじゃ無いけどね。
でも本当の意味で認められたい2人は居るんだ。
だから僕は努力を辞めたりなんてしない。
いつかーー憧れの2人と胸を張って肩を並べられる日が来るまでは
グラの誕生日以降、2人はグラが来ることを何日も待ち続けたが、グラが2人の前に姿を現すことはなかった。
だが二人が自分からグラに会いに行く事は無かった。
『神社に来なくなった者に此方から接触する事を禁ずる』
ーーこの神社には上記の決まり事があり、その為二人はグラに会いに行くことが出来なかった。
だからこそ二人は、初めこそは来れない事情があるのだと己を納得させ、普段以上に厳しい修行を行うことで気を紛らしていたが、3日4日と時間が経過する事に2人の集中力は散漫になり、特にヴァジラは通常の特訓だけに飽き足らず、長老との木刀の打ち合い中ですらふと気が抜けるという、一歩間違えれば大事故に繋がりそうになる程支障が出始めた。
そんな日々が1週間ほど経っても改善されなかった為、長老は悩んだ末、特例を出す事にした。
「……私個人としては、行くべきではないと思っている。
だがそう言ってもお前達は納得しないだろうからな…
……今回に限り特例を認めよう」
「本当か!! お爺ありがとう!!!
ーーーーよし、ステルク! 今すぐ向かうぞ!!!」
「おう!! …全く、休むなら手紙の1つでも寄越せって説教してやらないとな!」
神社の決まり事のこともあり、グラの家どころか住んでいる島すらも知らない二人だったが、グラがいつも乗ってきている渡航船の乗員にお願いし、島と家の場所を聞き出す事に成功した。
その勢いのまま二人は船に乗りグラの住む島へと渡った。
「ここがグラの住む島か……いい島だな!」
島に着いた二人は船員に描いて貰った地図を見ながら、真っ直ぐ目的地まで向かっていたが、目的地と呼ばれる場所に近付くにつれ、その足取りは少しづつゆっくりなモノへと変わっていった。
「1週間ぶりにグラに会うのかと思うと……なんだか緊張するな」
「まあ友達になってからこんなに会わなかったことないもな。
……もしかしたら留守かもしれないし、会う前からそんな様子じゃ大変だぞ」
「そ、そうだなーーーーあ! これはーーーーグラの匂いだ!!」
ヴァジラの嗅げる匂いの範囲内に入ったのか、グラの匂いを嗅ぎ取ったヴァジラは目にも止まらぬ速さで駆け出した。
「緊張してたんじゃ無かったのかよ…」
先程までとは打って変わって笑顔で駆け出したヴァジラに溜め息を吐きながらも自身も笑みを浮かべてヴァジラを追いかけた。
ーーーーそして、そんな二人が1週間ぶりに見にしたグラのは、
家から少し離れた芝生で頭の後ろで手を組んで仰向けに空を見ていた。
「……グラ?」
久々に目にした友達の姿にヴァジラは少しだけ違和感を覚えた。
『神社に来なくなった者に此方から接触する事を禁ずる』
この決まりが出来たのには二つの理由がありまして、
1つは善意で神社に寄付してくれたら方にもう一度寄付するように詰め寄る者が絶対に現れない様にする為。
もう1つは、神社で修行する上で他の者との才能の差を痛感し、鍛える道から離れる覚悟を持った者を身勝手にも連れ戻そうとする事がないようにする為に産まれました。
長老は、そもそも才能差があり過ぎる二人に無理して喰らい付いているグラをこっそり気にかけていました。
なので来なくなったのは、遂に心が折れてしまったのだろうと確信していました。
だからこそ悪気が無いとしてもグラの心を折った二人は会いに行くべきでは無いという考えを持っていましたが、才能ある二人……特に将来十二神将になる事がほぼ決まっているヴァジラがこのまま修行に集中出来ずに才能を発揮出来なくなる将来を危惧し、ヴァジラ達の才能の為にグラと接触する事を許可しました。
想定通り、グラが折れてもう来ないとヴァジラから伝えられた場合には、長老はグラに頭を下げに行く決心はしています。
…何が言いたいかと言いますと、つまり長老は悪い人じゃ無いって事です。
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3人の願い
まだ自分達しか気付けないだろう位置で、久しぶりに目にした芝生で横たわるグラの姿にヴァジラ……遅れてステルクも違和感を感じた。
普段のグラは明るく、二人以上に修行バカで、いつも空いた時間が有ればスクワットをしたりと体を鍛える事に余念を持たず、常にその茶色に近い黒の瞳に、強くなるという信念が感じられた。
だというのに、今のグラの瞳からはなんの思いも感情も感じられず、そのせいかいつも以上に黒く見える瞳でただボケっと空を見上げていた。
普段とは様子の違う友の姿にどう声を掛けるか二人は戸惑いながらも、意を決して話をすべく、1歩踏み出した所でーー想定外にもグラが反応を見せた。
「ーー神社に来なくなった者に会いに来るのは禁止されてたと思うけど?」
まるで歩み寄るのを拒むかの様に視線を空に向けたまま投げかけられた言葉に、二人は驚きを隠しきれなかったが、なんとか返答する。
「お爺から特別に許可を貰ったんだ。……本当はいけない事だが、お爺もグラだから特別に許してくれたんだと思うぞ」
「長老がそう簡単に掟を破るとは思えない。……予想よりずっと孫バカだったか」
そう呟いて溜め息を吐くグラ。
その姿にいつもの日常の片鱗を感じた二人は嬉しくなって小さく笑った。
そしてこの雰囲気が残ってる間にとステルクは質問を投げかける。
「ーーーーそれで何があったんだ? 1週間も鍛錬を休んだりして」
「別に何も無かったよ。ただ行きたくないから行かなかっただけだよ」
「……おいおい、そんな下手な嘘をつくなんてらしくないぞ?……やっぱり何かあったんだろ?」
「嘘じゃないし何も無かったよ。ーーただ、もう鍛錬する気が無くなっただけだよ」
まあ俗に言う挫折ってやつさ。
そう言葉を添えて返された返答に二人は驚愕を隠しきれなかった。
自分達よりもーー誰よりも強くなる為に努力するグラからそんな言葉が出るなんて想像も出来ないーーまだした方が無かった二人はタチの悪い冗談だとグラを注意しようとした。
……が、その言葉を発した幼馴染からはそんなふざけた感情は一切感じられなかった。
「……どうしてだよ? 1週間前まではあんなも頑張ってたのにどうして突然……!」
「ふと気付いたんだ。結局才能なんだなって。
今まで才能も無いくせに二人に付き纏って本当にごめんね。
これからはもう邪魔したりしないから二人は存分に修行して強くなって欲しい。僕の分まで
二人が大成することを一時でも一緒に修行した一人として応援してるよ。本当に」
次々に信じられない言葉を発し続けるグラは、困惑で言葉を挟めない二人を無視したまま立ち上がると、二人に背を向けて歩き始めた。
「長老にはちゃんと手紙を書いておくよ。よく考えたらあんなにも時間を割いて貰ったのに勝手に辞めるのは流石に無いね。
手紙さえ出しておけば二人もこんな場所に来る事もなかったかもしれないしね」
「ちょっと待てグラ! まだ話は!!!」
「頑張ってねステルク。君ならいつかヴァジラから1本取れるって信じてるよ」
このままじゃ本当にグラは島に来なくなると察したステルクは混乱で大して回らない頭を必死に回転させて何度もグラに呼びかけるが、グラは軽く言葉を返すだけでその歩みを止めることは無かった。
グラが遊び半分でその選択をした訳ではないとステルクは理解しながらも逃げるように去ろうとするグラをひとまず力づくで止めようと動こうとしたその時、迷いない言葉が辺りに響いた。
「そっか、わかった。お爺にはわしから言っておくから手紙は出さなくていいぞ」
「ヴァジラ!? お前何言ってーーーー」
「思えば何年も鍛錬の毎日だったからなぁ〜。グラが疲れるのも無理はないぞ」
わしも実は結構疲れてたんだ。そう呟きながらヴァジラはゆっくりと背中から芝生に倒れ込んだ。
受け身を取らずに倒れ込んだせいか、着地時に小さな悲鳴をあげながらも、そのまま大の字になって空を見上げた。
驚愕の言葉に加え突然の行動にステルクーーいつの間にかグラも立ち止まり僅かに振り向いてヴァジラを見ていた。
「うーん! 鍛錬で疲れてない体でただ芝生に寝転がるだけでこんなに気持ちなんて知らなかったぞ!
こんな気持ちいい事を知ったら鍛錬なんてする気が無くなるな! ーーーーよし決めた!」
ヴァジラは寝転んだまま足を曲げると、よっと!いう掛け声と共に足を伸ばしその勢いのまま飛び起きた。
「わしもグラと一緒に暫く鍛錬を休む事にするぞ!」
ーーーー突如その場の空気が僅かに凍ったが二人は気付かない。
「将来犬神宮の主になる為 ーー十二神将になる為ーー闘神になる為にだっていわれて今までずっと鍛錬してきた。……まあ鍛錬が楽しく無かったわけじゃ無いが、わしだって鍛錬せずにダラダラしたり、何も考えずに遊んだりしてみたいと……思ったことはある!
だからグラが休むならちょうどいいからわしも鍛錬を休むぞ!」
「そんなことしたら長老や母親に怒られるぞ?」
ステルクのツッコミにヴァジラはその未来を想像し、僅かに青ざめたが、ブンブンと首を横に張ってその想像を払った。
「お爺や……お、お母が何を言ってきても知るもんか!
わしは絶対に休みを勝ち取って見せるぞ!」
むしろ早めの反抗期を喜んでくれるかもしれないぞ?
そんなヴァジラの無理のある未来をステルクは笑いながら同意した。
「確かに孫バカの長老なら喜ぶかもしれないな!
ーーーーよし、しばらくは鍛錬を休んで子供らしく遊ぶとするか!」
「流石ステルク! 話が分かるぞ!」
2人はお互いを褒め合いながらこれからの日々どうするかを話し合い始めた。
今日はどうするか、明日は、明後日は……と二人は想像を膨らませ、そのまま1ヶ月分の予定までも想像の中で立て終わった。
「まだまだやりたい事はたくさんあるなぁ〜。
……グラ、見ての通りわし達も実は鍛錬を休みたくて仕方がなかったんだ。だから一緒に鍛錬を休んで遊ぼう! …………あ! ダラダラする毎日でも勿論構わないぞ!
だから ーーーーもしも遊び飽きて、鍛錬してもいいかなぁ〜って思うような方があったらまた一緒に鍛錬をしよう!」
「こいつはお前も知ってる通り意外と強情だからな……多分そう決めたら半年だって1年だって続けると思うぞ? まったく、お互い退屈せずにすみそうだ。そうだよな? グrーーーーーーーー
ーーーーステルクが言葉を発し終わるその刹那、突如突風が吹いたと二人が察知したその瞬間に二人の間にグラが現れた。
二人の間合いに入ったグラは、ステルクに蹴りを繰り出しながら、ヴァジラにいつの間にか持っていた木刀を振り下ろす。
ステルクはグラの攻撃に反応出来ずその蹴りで後方に吹き飛ばされ、
ヴァジラはグラの突然の行動に反応こそ出来なかったが、類稀な才能を持つ故か無意識に腰に差している木刀を取り出しグラの攻撃を防いだ。
…………が、攻撃を防いだものの、攻撃はあまりに重く、数メートル後方に飛ばされるがなんとか受け身をとった。
「くぅ……! グラ!? 突然何を!? …………そうだ! ステルク!! 大丈夫か!!?」
「…………ああ、大丈夫だ。立ち上がれないほどじゃ無い。こういう時、ドラフに生まれて良かったと思うぜ! 母さんありがとう!」
ステルクは軽口を叩いてヴァジラに問題ない事をアピールするが、内心は驚愕で何も笑えていなかった。
ーーーー見えなかった。グラの動きが何一つ。何年も一緒に修行して来たはずなのに先程の動きはグラの
一体グラに何があったのか? その疑問を投げかけようとしたその時、それを遮るようにグラが本当に何でもないように二人に殺気を放った。
だというのにその殺気はーーーー人生経験の為に向けられた現十二神将の一人に向けられた本気の殺気より遥かに死を感じた。
「一緒に鍛錬をした仲だ。二人のことを考えて多少言葉を濁して話を済ませようと思っていたけど、そっちが自分から腐ろうとするなら話は別だ。
ーーーー島に行かなかった本当の理由を話してあげる
ーーーーお前達の島に行かなかったのは鍛錬をしたく無くなったからじゃ無い。もうする必要が無いからだ」
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一生嫌いになってもいい
「「はぁぁ!っっはぁ!!!」」
闘いが始まってから早数分ーーーーヴァジラとステルクはそれぞれの木刀でグラに同時に攻撃を振るい続ける。
『二人同時に攻撃を仕掛けるなんて卑怯』ーーなどと二人は既に言っている場合じゃなかった。
「…………」
二人の攻撃は密度だけなら既に成人した戦闘要員の騎空士以上のモノだが、それをグラは息を切らすこともなく軽々と捌き続ける。
それどころか適度に防御が間に合わないタイミングで攻撃する事で二人に息を付く間を与える程余裕を見せていた。
「2人掛りで1本も取れない様ならさっさと島に帰って修行でもして来たらどう?」
「勿論島に帰ったらめいいっぱい修行するさ! ーーグラと一緒にな!」
「こんなに強い修行相手がいるならこれからもっと楽しい日常になりそうだな!!」
グラの冷たい突き放す様な言葉にもヴァジラ達は戸惑う事なく喰らい付く。2人の真っ直ぐな言葉にグラは一瞬視線を外すがすぐさま目付きを鋭くして2人を睨む。
「こんなにも差を見せつけられてまだ対等のつもりなんて本当に……そんなに一緒に島に行って欲しいなら1本取るか、せめてこの木刀くらい折ってもらいたいね」
「……木刀が折れれば今まで通りわし達と一緒に居てくれるんだな?」
「折れればね。切って貰っても良いけど。
……ただ逆に2人の武器を僕が壊したらーーーー当分はこの島に来るなよ」
グラが条件を提示してから数時間後、2人はグラから1本を取ることは勿論、武器を折ることも叶わないまま既に体力の限界間際だった。
「もう分かったでしょ? 絶対に敵わないってことが」
「……まだだ、まだ俺は…………!」
フラフラとふらつきながら木刀を振り下ろしてきたステルクにグラは溜息を吐きながらそれを木刀で受け止めると、そのまま木刀を振り抜く事もなく糸も容易くステルクの木刀を折った。
「……あっ!!!」
「……自分達で飽きらめるまで待とうと思ったけど、もう見てられない。
終わりにしてあげるよ」
グラは木刀が折られたことに涙を流すステルクから目を背けながら、ステルク以上に限界に近いヴァジラに視線を向ける。
「……修行を重ねて僕に勝てる自信が付いたらまた来たらいい。その時はお望みなら相手位にはなってあげーーーー
「ーーーー嫌だ!!!!!」
グラの言葉を心から否定する様にヴァジラは吠える。
「わしは……わし達はこれからもグラと一緒に修行するんだ!!! 島にいるガルや長老やお母と一緒にこれからもずっと一緒に居るんだ!!!」
「ーー夢を語る前に自分の姿を見て欲しい。もうそれは絶対に叶わない夢だ」
グラの言葉を確認する様にヴァジラはゆっくりと俯いて自分の姿を確認する。
……体は既にフラフラなのは勿論、手に持っている木刀も何度も全力で振るったせいか既にヒビが見る程ギリギリの状態。
それに対してグラの木刀には何度も自分やステルクの攻撃を受け止めたとは思えない程消耗が見えなかった。
この状態で攻撃を仕掛けても結果は火を見るよりも明らかだろう。
「……グラ。わしは既に体力の限界で、攻撃出来るとしてもあと1回が限界だ。それにこの手に持っている木刀ももう折れそうだ」
「そうだな」
「…………だから最後の攻撃は避けずに受け止めて欲しい。悔いを残したく無いんだ」
「……わかった。受け止めた上で終わらせてあげるよ」
グラの返答にヴァジラは短く感謝を返すと、その場で目を瞑る。そして僅かに恐怖で体を震わせた。
恐れたのはーーこの先自分がやろうとしている
だがヴァジラはそれらを受け止めた上で覚悟決め、目を見開いた。
ーーそして手に持っている木刀を投げ捨てた。
その行動にグラは勿論ステルクすらも驚愕した。だがその後にヴァジラが腰元から取り出したものを見てステルクは声を上げた。
「ヴァジラ!?お前…!」
「…………わしは十二神将の娘だからな。誰かに狙われる可能性もあるからって、お爺に護身用にと持たせてたんだ」
腰元から鞘に入った小刀を取り出しながらヴァジラは醜く微笑み、その上でこの戦いで初めての構えを取った。
その構えはまだ幼いヴァジラがとあるチカラを使用する際にとるーーーーカミオロシを行う際の構えだった。
"カミオロシ"
それは実態なき存在を自分に降しその力を振るうヴァジラの一族に宿るチカラ
このチカラ自体をヴァジラが嫌う事は無かったが、2人と居る時は自分から使うことは一度もなかった存外の力。
「カミオロシ状態のわしなら一度くらいなら限界でも動ける上に、わしにはまだ使えない"奥義"だって使える。
……それは無しなんて言わないよな?」
「…………勿論だ」
失望した言わんばかりに目を背けるグラにヴァジラは両目から大量の涙を溢れさせながらカミオロシを始めた。
「わしの事は一生嫌いになってもいい。もう二度と口を聞いてくれなくてもいい。だけどそれでもわしと……わし達と一緒に居てくれ!!!」
ーーーーカミオロシ!!
先程までの酷い表情が消え去り、感情の無くなった表情でヴァジラに入ったカミは無言で構えを取り、全身の力を闘気として高め、そして目にも止まらぬ速さでグラに迫る。
そんな行動に対してグラが取った行動はーー目を閉じる事だった。
「!?……ゆくぞ」
想定外の行動にヴァジラに宿ったカミすら驚愕を覚えたが、それを飲み込み、自身を宿した少女の願いを叶えるべく、小刀でその身に宿る未完の技を繰り出した。
「悉く天神地祇の理に伏すーー金牙神然」
未完成の身体でありながら、カミの力によって無理やり繰り出された奥義がグラの木刀に振り下ろされる。その一撃は仮に木刀によって起こされたモノだとしても木刀10数本はいともたやすく両断出来る一撃。避けるという選択肢が無い以上、グラの木刀がそれを受け止められる筈が無い。
「…………」
だというのにグラはその一撃をーー目を閉じたまま木刀で易々と受け止めた。
「バカな!?」
驚愕の言葉を漏らすカミに対しグラはゆっくりと目を開けると、特に力を込める様子もなく受け止めた小刀を木刀で折った。
そしてカミオロシが解除されかけているヴァジラに視線を向けると、何も言わないまま背を向けて歩き出した。
その姿をヴァジラは両目から涙を流しながら見つめる事しか出来なかった。
そしてそれからきっかり1年後、ヴァジラとステルクはリベンジの為という体で再びグラの家に訪れたが、そこでグラがあの戦いの後島を出たきり帰っていないという事実を知り絶望した。
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とある十二神将の日常
ガブリエル様実装おめでとうございます!!!
ーーーーいいなぁ……
ーーーーん?突然どうした?
ーーーー僕もステルクの『力』みたいな何が秀でたモノが欲しいなっと思ってね。
ーーーー憧れてくれるのは嬉しいが、どうせならヴァジラの『闘いの才能』とかの方が見栄えがいいと思うぞ?
ーーーーヴァジラの場合は大抵の事が『凄い』から逆に憧れ辛いんだよね〜
ーーーー……それ本人には言ってやるなよ?
ーーーー言ったところで出来ない奴の僻みにしかならないから言わないよ
ーーーー頼むぞ?ーーーーそれで誰かに羨まれるような秀でたモノならお前だってちゃんと持ってるぞ?
ーーーーえ!?またまた……
ーーーー嘘じゃ無い。お前は今の時点で既に誰よりも『目』が良くて、一度見た攻撃に対する対処法が俺やヴァジラよりも飛び抜けて上手い。
そんなお前がこれからも修行を続けてもしも見た事もない攻撃にすら対応出来るようなったら……!
ーーーー見えたとしても体が動かなかったら意味ないけどね……
ヴァジラとステルクがかつての幼馴染に敗北してから早4年、空の世界は表向きには大きな事件も起きず平和に存在していた。
だが平和というのはそう簡単に続くものではない。平和に見えたとしても裏では何か蠢いている可能性もあるーーそう考える組織も少なくなかった。
そんな数ある組織の1つーー星の世界と空の世界の境目を見張る役目を持つ組織『十二神将』に所属する『アニラ』は今日も役目の一環として見知らぬ土地を回っては何か困り事がないかを調査するパトロールをしており、
現在はその道中で頼まれた魔物狩に精を出していた。
「ーーーーうむ!このくらい狩れば暫くは問題無いかの?」
そう口にしながら自身の薙刀を地面に突いて辺りに散らばる十数体の魔物の死体に目を向けるアニラ。その立ち姿にはまだまだ余裕が感じられたが、その目には少なからずの疲労が見え隠れしていていた。
そんなアニラの様子を知ってか知らずか依頼主の老人はアニラの問いに満足そうに頷いた。
「えぇ! これ程の魔物を狩って頂いたのなら暫くは安静でしょ。十二神将様、この度は誠に有難う御座いました!」
「なに、これも十二神将としての役目の一環じゃ!」
アニラの言葉に老人は今一度深く頭を下げた。
魔物の討伐の礼としてこの町1番の宿を用意して貰えることになったアニラは巷で噂の温泉に思いを馳せながらも、それを表に出すことなく雑談も兼ねて依頼された時から疑問に思っていた件を老人に尋ねた。
「この町にもいくつか騎空団があるようじゃが、普段魔物のトラブルがあった際はそこ等には依頼せぬのか?」
アニラが町でそれ程小さくない規模の騎空団をいくつも見かけていた。
そうだというのに十二神将と名乗った瞬間にアニラ今回の魔物討伐の依頼が舞い込んだ。
自分で言うのはなんだが、来たばかりで何の実績もない小娘よりも町で活動している騎空士達の方が信用が有るのでは無いかと内心疑問に思っていたのだ。依頼された時にはそれを少しも表に出す事なく請け負ったが。
「基本的な依頼は彼らが解決して下さるのですが、先程のような力を持った魔物の狩りに関してはあまり積極的には動きませんね。
……彼に反感を買う事を恐れているのでしょう」
「彼?」
アニラの問いに老人は言いづらそうに返す。
「この町を拠点にしているとある男の戦士です。彼は基本的には魔物討伐以外の依頼は受けないんですが、その実力は魔物染みた強さを持っていて、噂では一晩で100を超える魔物を狩った事すらあると言われています」
「なんと一晩で100体とは!?確かにとんでもない強さじゃのぅ」
「基本的に問題を自分で起こすような方では無いんですが、手痛い報復を受けたいという噂も少なからず流れているのでこの町の者達は基本的には関わりたがりません。
なので今回のように彼が遠出してる際に魔物トラブルが起こると問題が大きくなってしまいまうのです…」
彼が悪いわけじゃ無いんですがねと、ため息を吐く老人にアニラは苦労を労ることしか出来なかった。
噂の温泉をじっくり満喫し、そろそろ横になろうかと準備をしていると、突如アニラの部屋の扉が激しく叩かれた。
最低限の身支度を整えてから扉を開けると、そこにはこの部屋を用意してくれた老人の姿があった。
「夜分の突然の訪問誠に申し訳ございません!!何卒十二神将様のお力をお貸し下さい!!」
「町の子供の1人が魔物の出る森に足を運んでしまったかもしません…
どうか十二神将様も捜索に協力して頂けませんか…?」
扉を開けるや否必死に頭を下げてこちに頼み込んでくる老人にアニラは一言勿論じゃ、と笑顔で返した。
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節穴
子供の捜索をいの一番に引き受けたアニラは、捜索班と合流して情報の照合を終えるや否、他の者達に今一度町の中の捜索を任せた上で自らは魔物の巣窟である夜の森へと駆け込んだ。
「町近辺の捜索は他の騎空士達に任せ我は兎に角、奥を捜索じゃ!」
魔物を薙刀で斬り伏せながらアニラは森の奥へと進む。
行方知らずとなっている子供の名を叫びながらアニラは走り続けるが、その声に呼応するようにどんどん魔物がアニラに襲いかかり、アニラはそれらに応戦しながら捜索を続ける。だが、子供の手掛かりすら見つける事は出来なかった。
「こんな時にヴァジラか、アンチラがいてくれたらのぅ……えぇい!何弱気になってるのじゃ我は!」
ヴァジラの鼻があらば子供の匂いを追え、アンチラの分身が有ればより広範囲を範囲を同時に捜索する事が出来る。
自身よりも探索能力が高い仲間の顔が脳裏に浮かぶが、今この場にいない者を考えても仕方ないと思考を切り替え自らを必死に鼓舞する。
……ただでさえ強力な魔物が数多い上、現在は魔物の世界と呼べる夜の時間。アニラの脳裏に僅かながら子供の生存が絶望的だと言う考えが浮かぶが、その考えを一刀両断してアニラは更に奥へと歩みを続ける。
そして何十体目か分からない魔物を斬り伏せた際、突如遠くの方から大人の男性と思われる悲鳴が微かに耳に入った。
まだ他にも遭難者が居たのか!?それとも捜索に出た町の者か?
兎に角助けるべき声と判断したアニラはその悲鳴の方へ駆け出した。
そしてアニラが辿り着いた場所は想定外の状況が広がっていた。
「な、なんじゃこれは!? 」
アニラの視線の先には、20を超える武装者を含む集団が地に伏す光景が広がっていた。
驚愕を抑える事が出来ないままアニラは近くに倒れていた男性1人に近づき声を掛ける。
男性は装備していたであろう鎧を何者かによって破壊されてはいたものの、外見に怪我らしいものは見られなかった。
が、男はまるで悪夢を見ているかのようにうなされた声を上げるだけで目を覚ますことは無かった。
他の者達にも同じように声を掛けたがどれも同じような反応が返ってくるだけだった。
「…これは明らかに偶発的に起きたものでは無い……それにこやつ等の正体も少し引っかかるのぅ。どうしてこのタイミングで集団でここに居たのか。……そして一番引っ掛かるのは、そもそも此奴らに危害を加えたのは一体ーー!?」
「ーーーーまだ仲間が居たのか」
言葉と共に振り下ろされた背後からの一撃をアニラはほぼ勘だけで受け止める。
受け止めたのは鈍器のような見るからに丈夫な棍棒らしき武器。
アニラは短時間でそこまで理解すると、均衡している攻撃に力を込め、勢いのまま棍棒ごと相手を吹き飛ばした。
ーーーーが、相手は難なく空中で回転する事でその勢いを逃すと、そのまま地面に座り込むように着地する。
「ーーーー大した一撃だ。これほどのモノは俺の人生でもそうは無い」
声からして大人とは呼ばぬだろう若い声をした男は、下を向いたままアニラにこれ以上無い賞賛の声を贈る。
「お主こそ、背後から攻撃するとは輩とは思えぬ一撃だったぞ。
ーーしかして、この者に手を掛けたのはお主で間違い無いかのぅ?」
確認とは呼ばぬ声色で男にそう尋ねながら武器をしっかりと構え直すアニラ。その額から1筋の汗が流れ落ちる。
ーー証言の確認など必要はなかった。必要だったのは相手に明確な敵意があるか否。そしてそれに対して相手は顔をゆっくりと上げながら返す。
「この状況で犯人探しとは……随分と場違いな強者だな、お前は」
言葉と共に顕になった男の顔は、自分よりも若い顔立ちでありながら、それを台無しにするように額から両目元にかけてクロスの傷が入った盲目の男の姿。
魔物にやられたであろう姿に一瞬同情の感情が浮き上がったが、それを一瞬で飲み込むかのような深い殺意を感じ取り、すぐさま甘い考えを捨て去ってこれまでにない程武器を握ぎる手に力を込める。
「ーー南南西の守護神、アニラ。参る!!」
手加減など出来る敵ではないと悟ったアニラは掛け声と共に全力で踏み込んで男に向かって跳ぶ。
ーー実力はおそらく相手の方が上、ならば此方が取るべき行動は、一切に妥協なき攻撃の雨。
一瞬でそう判断したアニラはすぐさま行動を起こした。
がーーーー
「ーー南南西の守護神? まさかーーーー」
対して男はというと、アニラの言葉があまりに想定外のモノだったのか、数瞬隙だらけの棒立ちとなるが、何かに気付いたのか慌てるように棍棒を手放すと、そのまま自分に振るわれた薙刀の一撃を片手で摘んで止めた。
「……な!?」
あまりに信じられない光景にアニラから驚愕を隠しきれない声が漏れるが、その光景を作り出した男は逆に考え込むように目を閉じたままアニラの方をじっと見つめていた。
そして今まで強気の声とは違う声でアニラに尋ねた。
「……もしかして、貴方は『十二神将』様、だったりしますか?」
「…………そうじゃと言ったらどうするのじゃ?」
アニラの問いに男は答えるように薙刀を掴んだ手を離すと、
その場に片膝をついて跪くと、そのまま謝罪するように頭を下げた。
「……………………申し訳無い。盗賊達が雇った用心棒と勘違いしました」
想定外の出来事が立て続けに起きすぎたアニラの脳内はひっそりと羊が回っていた。
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