モンハン勢がダンまち世界に迷い込むのは間違っているだろうか (H-13)
しおりを挟む

1

散歩へ行く様な手軽さで霊峰まで赴き、アマツマガツチを15分前後で斬殺する伝説のハンター。

 

オテガルキンサクとして上位素材をお供の店で売り払い金だけ巻き上げる鬼畜な所業を見せ付ける伝説のハンター。

 

絶対要らないやろとツッコミが入るだろうが武器コンプする為に下位のモンスターを片っ端から殲滅し始めた気狂いの伝説のハンター。

 

「いやぁ参った、アマツの宝玉ジンオウガの碧玉に変わらねぇかなぁ…」

 

気の抜けるBGMに包まれアイテムボックスの中身を整理しながら部屋の中をとてとて歩くさすらいの旅人風プーギーをよしよししているのがこの世界の「特異点」である。

 

名は「ヤマト」。無難オブ無難。名前が変えられないこの世界で小学生がひらがなで自らの名前を刻印すれば一生消えることは無いだろう。純粋にこの名前で良かったと思う。

 

そんなヤマトの標準装備は雑に強い「シルソル一式」である。白銀に輝くソレに付与されたスキルは「破壊王」「攻撃力UP【大】」「弱点特効」「業物」。

 

簡単に言えば、部位破壊がしやすくなり、攻撃力が上がる。弱点を見極め攻撃すると会心が跳ね上がり、斬れ味減少が半減する。

 

防御は回避に身を任せて行う完全攻撃特化装備である。

 

ヤマトは遠距離が苦手である。最強のアカム弓で下位ジンオウガを倒すのを苦戦するレベルである。

 

未来では前衛後衛の装備は統一されると夢で見た気がするが、今はそんなものは無い。防具コンプしたいなら純粋に2倍の素材が必要となる。足りない。足りないのだ。

 

伝説と呼ばれるようになっても何かしら不足は抱えているものだ。まぁ、ヤマトの不足は完全な自己満足の元に起きている事ではあるのだが。

 

ちなみに先程ボヤいていた素材であるがアマツの宝玉は206個、それに比べジンオウガの碧玉は2個である。明らかにアマツの狩り過ぎである。ジンオウガよりもアマツマガツチの攻略時間の方が短いのだから頭が可笑しいだろう。

 

今日も今日とて足りない素材を集めに行きますか、なんて。ポーチの中を確認して行く。調合の書は2冊あれば良いし…うん、うん、まぁ雑にいつも通り殴って捕獲すれば良いだけの簡単なお仕事。

 

使う得物は「漆黒爪【終焉】」。もう殆どコレしか使ってないのは内緒である。膨大な武器や装備はコレクションの如くにお留守番。鎌の様な形をした太刀カテゴリの最上武器ではあるが、一番取り回しやすいのだ。大剣も良いが一々の納刀抜刀が性に合わなかったとでも言える。

 

良し、準備完了。頼むのは…孤島の「縄張りに侵入するべからず」っと。アルバ装備だと属性やられとか楽ではあるけど全部回避すれば問題無し!ヨシ!!!!

 

お風呂入った!報酬ウマウマドリンクも飲んだ!それじゃ、『ひと狩り行こうぜ!』

 

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

 

「………着い…た…………?」

 

ヤマトが呆然とするのも無理はないだろう。いつも通りベースキャンプに着いたなと思ったのに、目の前に広がるのは孤島と言うよりも普通に広がる野原、野原────。

 

寝てて移動を、アイルーに全部任せたヤマトも悪いがいや、これは俺悪くねぇよ()

 

送ってきてくれたアイルーはもう帰っちゃったしベースキャンプらしいモノは無いし、野原に放り出されたヤマトは途方に暮れて…仕方ないと目的の無い旅を始めようとしていた。

 

留まっていても何も始まらない。完全な行き当たりばったりの考えの根底には動いた方が良いという感があった。

 

暫く無心で歩き続けること3時間少々。時偶に襲ってくる小鬼の様な不思議生物をぶち転がし…めっちゃ小さい宝石を落として消えていった事でびっくりして焦り散らかしているヤマトである。

 

ザックリと首刈り取ったのに血糊は刀身に付いていないし剥ぎ取り済んでないのに死体は消えるしなんやこの宝石は…とすんごい怖くなって走り出した。

 

一つは現実逃避。あれだけ狂ったようにモンスターを狩る生活を送っていたのに、一度も目にすることがなかった未知をこのよく分からない場所で見つけてしまったのだ。

 

「いやはやどうするかな。」

 

手持ちの中に当然こんがり肉や焼肉セットなんて入っておらず。飲み物は強走薬グレートと、回復薬グレート、秘薬にいにしえの秘薬位しか手持ちに無いのだ。

 

ちびちびと強走薬グレートを飲みながら空腹を紛らわし、走る事さらに3時間。道らしき何かを見つけて少しばかり一安心をした。馬車か何かの道だろう。2本の線がずっと続いている。

 

前か、後ろか。直感に従い其の儘真っ直ぐその道を辿って走って行く。

 

 

そこから更に3日が経過していた。

 

完全にサバイバルをしながら突き進むその姿はまさにディスカバリーチャンネルの如くである。

 

モンスター擬きモンスター擬きモンスター擬き擬きモンスター擬き野生動物モンスター擬きモンスター擬き

 

この位の確率で普通の兎や鹿が現れてくれる。嬉々として首を刈り取りに動くヤマトの姿は完全に死神の形相であったであろう。鏡もないのだからソレは誰も分からないのだが。

 

食べれそうな野草と肉、水分は回復薬等で無理矢理補給して行く強硬策。川があれば空いた瓶に水分を詰める事も忘れない。

 

身体を洗えたのはもう2日前。温泉が名残惜しい。本当に。

 

ただし、クエストが終わっていない判定なのか体力の上限は変わらず150であった。その代わりにスタミナがそろそろ50に到達する。

 

きつい。普通にキツイのだ。無理をしている訳でもないのだがそろそろ栄養の偏りが激しくなってきている。

 

「果物食べたい」

 

本当に切実な願いが口から溢れた。

 

「………ん?」

 

遠くに何か見える。巨大な岩、…壁?道が続く先に在るならば行かない選択肢は無い。

 

ゼニーならカンスト寸前まで持っているのだ。何でも買えるだろう。

 

 

ん?こんなに並ぶのか。致し方無い。もう少しで休めるぞ。

 

門番…はい?何しに来たってそりゃちょっと遭難したから道を辿ってきたんだが。

 

高位の冒険者?ファミリア?ハンターランクは6だがファミリアは分からんな…出身?名前も無い村だ、居住はユクモだがな

 

ん?この武器が禍々しいだと?そりゃアルバの武器だからな。【終焉】の銘は伊達では無いぞ?

 

そろそろ、な?腹が減って仕方がないのだ。水も尽きたし、食料もあと鹿の脚1本だ。早く入れて欲しいのだが。遭難と言っただろう。

 

顔?そのくらいなら幾らでも見せてやる。

 

 

スポンっ。シルソル一式の頭を外せば浅黒い男の顔が顕になる。長めの髪をポニテで縛った偉丈夫。イケメンかと言われたら違うが、不細工では無いソレ。

 

ん?これで大丈夫、そうかそうか。それじゃちょっと質問だ。美味い飯屋があったら教えてくれ!豊穣の女主人?あの道真っ直ぐだな?感謝するぞ!

 

 

 

こうして、ヤマトは無事美味い飯にありつけたのである。スタミナも確りと150まで回復し、いや、もう動けないとなっていたところに降ってきた言葉がコレである。

 

「会計が…7800ヴァリスだよ!良く食う男は嫌いじゃないよ!また来てくれよ!」

 

頭が真っ白になった。ヴァリス?ゼニーじゃ無いの?

 

恐る恐る自分の知る勝ちのあるお金を1万ゼニー程出して見せたが……結果はギルティ。

 

骨董品の様な価値はあるかも知れないがコレは使えないよと女主人の言葉であった。

 

ちょいまち、ちょっと待って欲しい。ゼニーだぞ?あの秘境も秘境でも使えた共通のお金じゃないか!

 

「ミア母さん、この子は嘘を言ってないよ。本気でそう信じてる。」

 

助け舟を出してくれたのは非常に顔が良い男性であった。優男と言っても良い。助かった。その一言でそのミアさんの顔が歪んだ。

 

「あんた、ファミリアは?」

 

「いや、だからファミリアとは何だ。門番にも聞かれたけど…ハンターランクなら6だがそれ以上は知らないぞ。」

 

「恩恵は?」

 

「恩恵?なんじゃそら」

 

「その装備は?」

 

「シルソルのこと?俺がマラソンして素材集めしたに決まってるじゃん。」

 

「ダンジョンは知ってるかい?」

 

「名前だけな。あれだろ?洞窟みたいなところにモンスターが出てくるんだろ?」

 

「…最後だよ、オラリオって名前は知ってるかい?」

 

「聞いた事がないね」

 

「ヘルメス!どうなんだい!」

 

「…残念ながら全部嘘を言ってないよ。だから…そうだね、名前は?」

 

「…ヤマトだ」

 

「良い名前だね。そうだね、私達で言うとすれば…彼は迷い人かも知れない。別世界、別次元からの来訪者。…そうだ、ヤマト君からの質問はあるかい?」

 

「この都市は?」

 

「オラリオ。迷宮都市オラリオさ」

 

「…嘘を見抜けるのか?本当に?」

 

「そうさ。俺は神だからね。…神も分からない?」

 

「祀ってる祠は知ってるが…ガチ…?」

 

「ガチさ。」

 

ヤマトは頭を抱えた。おかしいだろ。普通に。なんで神が闊歩しとるねん!

 

「フレンドリーで良いのか?神様が?」

 

「お、この世界の子とは違うんだね。でも根本は同じか。…そうだね、地上に降りてくる時に僕らは力を封印している。だから身体能力だけなら一般人程度になるかな?」

 

「…恩恵とはなんだ?」

 

「神との契りが分かりやすいかな。神の眷属となる変わりにソレの可能性を引き上げる。…常識的なコトだよ、この世界だとね。」

 

「……神様はそんなに沢山いるものなのか?」

 

「極東には八百万という言葉がある。そのくらいは居るんじゃないかな?」

 

いや、いや、いや。可笑しいやろ。でも、…そうであると納得するしかないか。

 

「さて、…ミア母さん。この子は善良だ。僕が保証しよう。だけど…7800ヴァリスか。どうする?」

 

「悪意の有るなしに関わらず金を払ってないのは事実だよ。今日と明日一日働いて返してもらおうかね!」

 

「そういうことさ。文字は読めるかい?」

 

「そりゃ注文してたんだから読める。」

 

明らかに知らない文字の癖にちゃんと読めて喋れるのは気持ち悪いことこの上ないが…今は有難い。

 

こうして、女9男1(ヤマト)の職場で働く事となったヤマトであった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

2

ヤマトの身長は185前後で体重が100あるか無いか位のがっちりした男です。見た目年齢は20代後半です。

久しぶりにPSPを引きずり出しました。アマツアルバ討伐行ってます。普通に楽しい。



「…あー、ヤマトだ。よろしく頼みたい。」

 

「ニャーが食い逃げしかけたヒューマンにぁ?」

 

「こら、アーニャ。初対面にそんな失礼な。」

 

「事実ニャー」

 

「ヤマトさん似合ってますよ。私はシルです。よろしくお願いしますね?」

 

「─────」

 

ヒューマンと言われても、いや、猫耳?エルフ耳?コスプレじゃ無いだろうし…いや、考えるのは止そう。

 

メイド服みたいな統一された制服を着たヤマトは一人一人挨拶に回っていた。横の繋がりが大切なハンター故にこうした挨拶回りは比較的に慣れているものであった。

 

ミア母さん改めミア・グランド

 

友好的に最初から笑顔を浮かべてくれたシル・フローヴァ

 

ずっと鋭い目を向けながら無口なのか分からないエルフ(?)のリュー・リオン。

 

にゃーにゃーとお供のように鳴くアーニャ・フローメル。

 

他にもルノア・ファウストやクロエ・ロロ。メイ、ベリル、フェイ、ロシィ。

 

一通り挨拶回りが済めば次は完全に仕事の説明であった。

 

ぽっと出の自分を厨房には入れないと事前に知らされ、当たり前だと素直に頷いた。

 

やることと言えばウェイターである。

 

席の番号、メニューの略称。それに今日のおすすめやちょっと安く提供している日替わりの賄い料理。昼はもう過ぎているためか酒の銘柄まで次々と教われば…嫌でもここが未知の場所だと突き付けられた。

 

まだ武器コンプ出来てないのに…。こんだけ貯めたゼニーが…..。

 

orzの格好をする要因はこの位である。他はまぁあんまり。心配なのはプーギーとオトモのご飯問題くらいであった。

 

そんな心の心配は忙しさからか直ぐに吹き飛んだ。

 

休む暇?そんなものはありはしない。時たま水が飲める程度でずっと駆け足である。

 

然しこの程度で疲れるようではハンターは務まらないのだ。アルバトリオンが居る場所と比べてしまえば全然楽である。危なくもなく死なないのだから当たり前であるが。

 

最初こそ戸惑いが勝っていた足取りも後半になってしまえば慣れたかのようにするすると進み、他のウェイトレスと同じ程度の働きが出来たのではないかと自負しているのだが。

 

 

 

「ふ~…。ただまぁそれにしても慣れない事やると肩こるな。」

 

「お疲れ様でした、ヤマトさん」

 

「ンあ゛、リオンさんか。お疲れ様。疲れては無いけど緊張はするね。初めてやったから。」

 

「…ヤマトさんは恩恵を持たないとミア母さんから聞いています。ですが明らかに体捌きは戦いを知ってる者のソレだ。」

 

「俺からしてみりゃ神だの恩恵だのの方が眉唾だけどなぁ?まぁ、一応は伝説のハンターとか呼ばれてたんだぜ?この頃はもっぱら龍とかよりもコレクション集めに精を出てたけどな」

 

「恩恵も無しに…龍を…?」

 

「慣れだ慣れ。あの防具はリオレウス希少種っていう飛竜の素材使ってるし、武器は…そうだな、アルバトリオン。「黒き太陽」とか呼ばれてる奴を狩って角折って作った太刀だな。コレばっか使ってるくらいには最強って言えるな。」

 

「神ヘルメスは胡散臭いですがそれでも神です。…信じましょう。貴方は埒外の冒険者の様だ。」

 

「その冒険者?とかすら分からないんだなこれが。…良かったら俺のことも話すからオラリオの事や恩恵とかについて教えてくれ。」

 

「…分かりました。常識的なことが大半ですがそれでも宜しいですか?…それに、細かく知りたい場合はギルドに足を運ぶのも一つですが。」

 

「あんまり言いふらさない様にってヘルメス様?から言われてるしな。リオンさんが良ければこのまま教えて欲しいな?」

 

 

 

こうして、ヤマトはリュー・リオンから常識を学んだ。『リュー・リオンとの関係値が一定以上に上がった。』

 

「不思議だ。ヤマトとの会話は嫌悪感の欠けらも感じない。私の様なエルフやアーニャの様な猫人も知らないようであったし…。それにしても彼の話は心が踊る様だ。…楽しかった。」

 

一人、リュー・リオンが意識的に興味を持った人物が増えた様だ。

 

 

 

二日後。なんだかんだ衣食住をしっかりと貰ってしまったから働いても働いても返せないと思っていたがミア母さんからはあっさりと出て行きなと勧告が出てしまった。

 

漸く馴染んできたのにというのはあれか。

 

2日ぶりにシルソル装備を身に纏い、【終焉】を背負った。向かう先は決めてある。ギルド。そこでまずは情報収集をする。

 

「世話になった。感謝している。ここに来なければ充実した2日間は得られなかっただろうな。」

 

差し出すのは「秘薬」。2つしかないその1つ。拒絶されたがリオンさんの手を取って握らせれば諦めたようにそっぽを向いてしまった。

 

「死んでいなければ全快してくれる薬だ。スタミナはどうにもならないが…俺からの礼だ。何かあったら使ってくれ。」

 

説明をする前からリオンさんが驚いた目で手元を見ていた。ん?あぁ、ごめんね。いきなりびっくりしたよね。

 

「ありがとう、ございます。豊穣の女主人でしっかり保管しておきます。」

 

「やばい時には使ってくれよ?それじゃなきゃ渡した意味が無い。」

 

「秘薬」という名前で貴重品という認識があったようだが素材があれば作れる消耗品でしか無い。ユクモの自室に行けば幾らでも合成出来るのだから大丈夫、大丈夫。

 

 

「じゃ、改めて。世話になった。今度はちゃんと客として来たいと思う。忙しかったら言ってくれ。暇だったら手伝える筈だ。」

 

 

こうして、ヤマトの豊穣の女主人での生活は幕を下ろしたのであった。

 

 

朝9時前後。段々とお店が開いて行く時間でもあり、冒険者達がダンジョンへと潜る為に活動する時間でもある。

 

教わった道を進めば通称「冒険者通り」が真っ直ぐに続いていた。

 

「ギルド」。簡易な地図を頼りに行けばその建物が見えた。

 

先程から突き刺さる視線が凄いことになっているがヤマトは意図的に無視していた。

 

普通だろシルソル装備くらい!と叫びたいが周りから見れば未知の素材で造られた白銀に輝く全身鎧である。全身鎧自体が少ない冒険者にとって、中身を知らなくともそもそもヤマトは見た目から異端であった。

 

「はい、次の方…ッ!?どの様な、御用でしょうか。」

 

「あー、すまない。これで良いか?俺はヤマト。先日オラリオに来たばかりでな。ファミリアにも入っていないのだ。…一通り、オラリオについての知識は入っている。こんな装備をしてはいるが冒険者では無くてね。ダンジョンの情報と…恩恵を貰えそうな神様の情報があったら教えて欲しいと思って尋ねた次第だ。」

 

完全に顔が隠れていればまたびっくりさせてしまったと、目の前のエルフに頭を下げながら、顔を晒した。

 

ファミリアに入ってない?その格好で?とびっくりされたものの、神ヘルメスや豊穣の女主人の名前を出して色々と説明したら納得して貰えた。良かった。

 

「承知しました。私はエイナ・チュール。ヤマト氏が必要としている情報の片方は恩恵が無ければ渡せないものとなっています。先に所属するファミリアを決めて頂いてからの方がスムーズかと思います。」

 

「理解した。神様やファミリアの規模の希望…か。そうだな、身軽になれる場所が良い。どちらかと言えば眷属の居ない神の方が私には合っている様に感じるな。」

 

「それでしたら…此方になります。ギルドが把握している神様に限りますがこの紙に書かれている神様は眷属を持たない神になります。」

 

「ああ、感謝する。では所属したらまた足を運ぶとしよう。それと…良い武具が売っている場所は何処か分かるか?」

 

「ヘファイストス・ファミリアがおすすめ出来ると思います。ちょうどヘファイストス・ファミリアには神ヘスティアもおいでのようですので、所属を検討をしてみてはどうでしょうか。」

 

「ああ、そうしよう。」

 

簡単な道を教えて貰い、ギルドから出たヤマトであった。うん、広すぎるのも考えものだ。ユクモ村ならちょいちょいと出来た事がこれでは時間がかかりすぎてしまうのでは無いか。

 

まぁ、嫌いでは無い。未知に溢れたこの世界をまだまだ堪能したい。その第一歩として…新しいコレクションの開拓である。

 

ヘファイストス・ファミリア。鍛治神ヘファイストスのファミリア。それだけで心が踊る。バベルと呼ばれる巨塔。その中に入っているらしいヘファイストス・ファミリアのテナント。

 

神の居住地の様な位置づけでもあるその塔の上の方から────隠す気も無い不躾な視線がこの身に注いでいることを暫く前から察知していた。誰か知らない者なのは確定しているが…10分以上も途切れる事の無いソレにそろそろ我慢も限界であった。

 

イメージするのはアカムか、アルバか。烈火の如き怒りを一点に集め咆哮の如き殺意を視線の主に向かって解き放つ。

 

途端に気持ち悪い視線が途切れてくれた。いやいや、ほんと。やめて欲しいものだよね盗撮みたいなやつは。許可ちゃんと取って欲しいよ。

 

!おお!おお!これだこれ!モンスターの素材より鉱石の作品が多いな。と思いながらはしゃぐ様にじっくり展示品を観察している。

 

こうして不躾な視線はヤマトの目の前に広がる武具の数々を前に思考の外側に押し出されて行った。

 

 

 

「───────!?!かハッ゛…!ぁ゛!…あ゛!」

 

「!?フレイヤ様!?」

 

 

「は、…はっ……。──大丈夫よオッタル。ちょっと、ちょっかいを出したら噛み付かれた様なものよ。」

 

 

彼処まで力強い魂に初めてフレイヤは出会った。輝きが強い訳では無い。それでもなおオッタルよりも強く芯を持ったモノを見た事がなかった。

 

漆黒の魂に浮かぶのは星の如き光。ヒトの身で乗り越えた偉業を偉業とも感じさせぬソレ。

 

自分に靡かないとも本能で分かってしまったけれど。欲しい。彼が欲しい。

 

「オッタル」

 

「…は。」

 

「頼み事、お願いしてもいい?」

 

「はい。」

 

『最強』が動き出す。全ては我が女神の意の儘に。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

3

ちなみに現在は原作開始時1年前前後になります。


 

「少し良いかしら?」

 

「─────ん、ああ、失礼。邪魔だったか?」

 

「こんなに長時間居るのに何も買わないから私に報告が来たのよ。」

 

「失礼。未知が溢れていて楽しくて楽しくて仕方が無くてな。…俺はヤマトと云う。貴女は…?」

 

「ヘファイストス、ここの主神よ?」

 

「あぁ、神ヘファイストスか。申し訳無いな。オラリオには3日前に来たばかりなのだ。神というものもな、あったのは貴女で2人目だ。」

 

「……そうは見えないけれど。」

 

「あまり言いふらさない方が良いとその神にも言われていてな。…話してしまっても良いと思うのだが。…あと、此処に神ヘスティアは居るか?」

 

「ヘスティアに用事なんて珍しいわね。アレなら私の部屋でゴロゴロしている筈よ。」

 

「有難い。俺はまだファミリアに所属して居なくてな。ギルドには神ヘスティアを勧められた…といった所だ。」

 

「嘘は…言っていないわね。いいわ。丁度私も貴方のソレに興味があった所だし。」

 

 

こうしてヘファイストスの事務室に脚を踏み入れる事となった。

 

「あ、ヘファイストス!すぐ帰ってきたんだね!わ!彼を迎えに行ったのかい?」

 

「迎えに行くって程じゃないけれど。まぁ連れて来たのは事実ね。ヤマト、彼女がヘスティアよ?」

 

「初めまして。神ヘスティア。俺はヤマト。よろしく頼みたい。」

 

がっちりとその柔らかな手と握手をした後に、神ヘファイストスの方を向く。

 

とりあえず武器を取り外して彼女の机に置いた。それは生命を刈り取る形をしていると言っても間違いは無い。【終焉】の銘は伊達では無いのだ。

 

次に防具。頭、胸当、篭手、垂れ、靴に分かれているソレを一つずつ外せば晒されるのはインナー姿。

 

激戦の跡を物語る傷を身体中に遺した戦士の身体。

 

「まずは俺の話をしよう。神は嘘が見抜けるのだろう?ならば話そう。と言っても簡単にだがな?」

 

ユクモ村の事、生い立ちやハンターのこと。この武器を作った過程やその素材になった黒龍の一角のコト。

 

静かに神ヘファイストスは【終焉】を観察しながら聴き入り、神ヘスティアも口を挟むこと無く聞いてくれた。

 

「このくらいだ。…嘘はあったか?」

 

「…無いわね。ヘスティアも?」

 

「あ、うん。僕も保証する。ヤマト君の話に嘘は無いよ。」

 

「は〜〜〜〜〜〜…。」

 

神ヘファイストスが極度の疲労と頭痛を抑えるように椅子に座り込んだ。

 

「こんな素材、この世界には無いもの。神界にもあるか分からない。良く討伐して加工出来たわね。私でも…アルカナムを使えない今の状態だと加工は困難よ?」

 

「そんなに凄いものなのかいヘファイストス!?」

 

「正に未知ね。それで…ヤマトって言ったかしら。ファミリアに入ってないのなら…ヘスティアは辞めておきなさい?こんな爆弾を抱え込める力は今のヘスティアには無いわよ?」

 

「え!僕の眷属になる為に来てくれたのかい!?」

 

「一応ギルドに勧められましたからね。話してみようかと思って来て見た感じです。」

 

「…ヤマトはどう考えているのかしら?」

 

「正直に言えば帰る手段を探すのが先だと思いますけどね。…未知が広がっているならしばらくはオラリオに居たいと思っていたりします。…だからこそ身軽な方がいい。」

 

「……私から大手に紹介する事も出来るわよ?」

 

「なんか悪いかなって。」

 

「善意だけって訳じゃないのよ?貴方ならば直ぐに最前線に行ける。その直感があるわ?なんなら私が貴方の専属鍛冶師になっても良い。…はっきり言ってあの装備を使っている貴方に私の子供の作る武具じゃ釣り合わないもの。」

 

「コレクションに入れていいなと思う出来のものは何個かあったんだけど?」

 

「決死の死闘の時にそのコレクションに命を預けられる?」

 

「無理だな」

 

「そういう事よ。ソレにダンジョンでその武器だけで挑むと絶対に窮屈になる。そうね…値段は良いものを見せてもらったからおまけして3000万。後払いで良いわよ?丁度手も空いているし。」

 

「有難い限りだが。良いのか?」

 

「良いのよ。私が打ちたいだけだから。」

 

「となると…双剣がよいか。短めで四肢の延長線上になる様なモノを頼みたい。」

 

「色々使えるの?」

 

「大剣、太刀、片手剣、双剣、ランス、ガンランス。あとはスラッシュアックスか。大体は使えるぞ?太刀、双剣辺りが好みではあったが。」

 

「扱えるなら良いわ。そうね…。10日もあれば出来るだろうから取りに来て?」

 

「承知した。それと、先程の申し出は申し訳無いが辞退したいと思う。神ヘスティア、良ければ私と契約を交わして貰えないだろうか。」

 

「え、ぼ、僕でいいのかいヤマト君!?」

 

「横との繋がりは大事なのは分かっているけれど俺は訳ありだからな。ソレにソロも長いから一人の方が気軽だったりする。」

 

「やった!やった!ヘファイストス!やったよ!初めての僕の眷属だ!」

 

「良かったわね。ならヘスティア、出てって貰おうかしら」

 

「……………ぇ゛」

 

「当たり前じゃない。自分の子供が出来たのに何時までもヒモで居られると思わない方が良いわよ?…ヤマトはお金を持っている?」

 

「ミア母さんから5000ヴァリス貰ったからそれだけはある。」

 

「ふぅん。そうなると。あそこかな。ヤマト、ヘスティア。ボロっちいけど、雨風は防げる場所を貸してあげる。お金を稼いだらちゃんとした場所を買いなさい?」

 

「有難い。感謝しよう。」

 

「場所は…この辺りの廃教会。その地下室よ。」

 

こうして、神ヘスティアの眷属になる事が決まり、ヘファイストスが専属鍛冶師となり。住処が決まったのであった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

4

サクサクとヘファイストスが専属鍛冶師になりましたが椿でも持て余すと武具を見た瞬間に分かったからです。それにまだまだ鍛冶師として成長の余地があると気付かせてくれたからその感謝も含んでます。ゴブニュには横取りされたくない←



 

「ヤマト君!君は一人で龍に立ち向かっていたのかい?」

 

「パーティを組む時とトントンだったがこの頃はもっぱらソロだったな。」

 

「そんな君が僕と契約してくれるなんて嬉しいよ!」

 

「まぁまぁ。俺もこの世界じゃ新参者だし…何れ帰れる様になったらユクモ村に帰るかもしれないしな。身軽な方が気が楽さ。」

 

「…そうだね。その時は君の意志を尊重するよヤマト君。欲を言えば僕もユクモ村に行ってみたいけどね!」

 

「オラリオに比べちゃ狭いとこだが良い村だ。全部紹介してやるよ。」

 

ヘファイストス・ファミリアのテナントを出て、神ヘスティアと共にその廃教会へ向かう道すがら情報交換と言うほどの事では無いが、軽く言葉を交して行く。フル装備に禍々しい鎌を背負った見るからに強そうな偉丈夫と神が並んで歩いている姿は多くの人の目線の先に居た。

 

大きな道から逸れ、裏道へ。道が間違っていなければこの辺りに…あった。

 

神ヘファイストスがボロっちいと言うだけあって見てくれはボロボロではあったがちゃんと地下室に行ってみれば生活出来るだけの広さはしっかりと保たれていた。

 

うんうん、これならちょっと掃除するだけで暮らせる。タダ宿なのだ。寒くなくて雨風に晒されないだけでヤマトにとっては花丸であった。

 

「…ん?神ヘスティア?」

 

いつの間にか、あの小さい丸っこい神様が居なくなっていた。

 

あれだけ賑やかだったのに、ヤマトの雰囲気に陰りが見えた。

 

廃教会の入口。入る時には無かった封筒が落ちていた。拾い上げ…書いてある文字を読みあげれば大体の内容は把握した。

 

バベル。その最上階。神フレイヤからの招待状。ああ、そうか。誰だかもなんの用か知らないがこの俺に喧嘩を売りに来たのか。

 

来た道をUターンする事となった。ミア母さんから貰った私生活がおくれる最低限の荷物を廃教会の地下室に置き…取り敢えずは神ヘファイストスの元へと脚を運んだ。

 

「…ヘスティアは見えないようだけれど。何か武器についての要望?」

 

ヘファイストスの質問には、封筒ごと神フレイヤから送られたであろうソレを見せた。

 

「フレイヤに目を付けられたのね…何かした?」

 

「いや?何も。先ず神フレイヤが誰か知らん。」

 

「……何もして無いの部分が嘘…というよりも無自覚で何かやった様に感じたけど?」

 

「…確かに何か不躾な視線に対して殺気を叩き付けたが。それが神フレイヤだと?」

 

「視線はこの建物の上から?」

 

「そうだ。」

 

「なら90%くらいフレイヤね。…それで…ヘスティアは?」

 

「連れ去られたのだろう。」

 

「…フレイヤは美の女神よ。魅了されて終わり、なんて呆気ない結末も有り得るわ?」

 

「忠告は有難いが…俺はヘスティアを選んだ。ソレを邪魔されたんだ、文句位は面と向かって言わないと気が済まない。」

 

「…貴方はなんだかんだ規格外だものね。…ヘスティアの事頼んだわよ?」

 

「まだ恩恵すら貰ってないんだ。ちゃんと連れて帰る。」

 

恩恵が刻まれていない部分を誠だと感じ取ったヘファイストスは引き留めようか思考を回した後に諦めた。

 

恩恵、神の助けも無しに巨龍に挑み一方的に狩る?有り得ない話が有り得る話として目の前に居るヤマトが体現していた。ならば…フレイヤに真正面から喧嘩を売りに行くのも…不可能では無いと。

 

 

 

「あら、…漸く来てくれたのね?名前、教えてくれないかしら...?」

 

「黙ってろビッチ。神ヘスティアは何処だ。」

 

「……あら、釣れないのね?貴方のコトが知りたいだけなのに。」

 

魅了を最大解放したフレイヤの神威と怒気を纏い【終焉】を既に抜刀したヤマトの殺意がぶつかり合う。

 

オッタルすら脚を踏み入れられない神の本気。下界で扱える限界値。ソレを受けながらヤマトはゆっくりと自らの攻撃範囲内にフレイヤを収めた。一振りでフレイヤの首を刎ねられる。そんな距離。

 

天空すら支配して支配下に置く天龍、マグマすら意に介さず泳ぐ黒竜。はっきり言ってそいつらの咆哮と比べてしまえば物足りず真正面から抵抗出来る程度には、目の前の美の女神は弱かった。

 

「5つ数える内に神ヘスティアを出さなければ四肢程度は貰ってゆくぞ。」

 

「…な、何故…恩恵も無いヒューマンが抗える!」

 

「コレ以上を体験してるからとしか言えんな。…最初から俺が本気で怒ってなきゃ、魅了されてたかもしれんし。紙一重だろ?」

 

オッタルの叫びともとれる問に軽く答えながらごー、よん、さん、にぃ。と無慈悲に進むヤマトのカウントダウン。

 

「…じょ、条件があるわ」

 

「なんだ。」

 

「私の、オッタルと戦って頂戴。勝ち負けに関わらずヘスティアは貴方に先に返すわ?」

 

「俺の業は対人用じゃねぇんだよ。それでも良いのか?」

 

「ええ。」

 

「そいつが死んでも?」

 

「それは…困るわね。」

 

「フレイヤ様、私が負けると…?」

 

「大切な貴方だもの。負けるのは良いけれど、死ぬのは私が許さないわ。」

 

「…ヤマト君、助かったよ。ありがとう。それにしても…フレイヤの魅了に掛からなかったのかい?僕はこうして無事だからその怖い雰囲気をどうにかしてくれないかい?」

 

目の前で神と猪人のイチャイチャを見せつけられながら解放された神ヘスティアを隣に置きながら殺意をゆっくりと収めて行く。

 

「オッタル、2人をホームへ案内してあげて?」

「?」

 

あ、戦うのはやるのね?どうしようかなぁ…コレ。




次回VSオッタル

正直アルバトリオンやアカムトロムより下界に降りてきてる神(色々封印済み)の神威が勝てる訳がないと思ってる作者です。異論は認めるけどこの作品内は認めないのでよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

5

ヤマトの正体を完全に把握しているのはヘスティア、ヘファイストス。他世界から来たとだけ把握しているのがヘルメス、ミア母さん。魂を見て欲しくなっちゃったのがフレイヤです。


 

「戦いの野」で行われている洗礼の一時中断とオッタルとヤマトの決闘の如き模擬戦。このふたつの情報はフレイヤ・ファミリア内を駆け巡った。

 

この知らせの大元はフレイヤでありソレに従わない団員は居なかった。

 

その結果として、数多のフレイヤ・ファミリアの団員が見物へとその闘技場の様な場所に詰め掛けているのも致し方ないことであろう。

 

「ルールは…そうね。死なないなら何しても良いわ?オッタルは手加減してあげて?」

 

コレである。あれ程忠告したというのに、手加減とは。

 

目の前の猪人から感じる圧は…自分の知る最上位には及ばない。知性はある為駆け引きもあるだろうが…ソレは自分が知る竜も一緒であった。

 

自分が防具にしているリオレウス希少種はリオレイア希少種、所謂番が危険な時は危機を顧みずに自らが盾となって護るような行動を良く行っていた。

 

【終焉】を両手で構える。モンスターを狩る為の武器を今初めて明確にヒトに向けようとしていた。ここに辿り着くまでにそれなりに悩み、吹っ切れた。未知への渇望と自らの歩みを邪魔する神フレイヤは───敵だ。

 

・オッタルが勝った場合ヘスティア・ファミリアはフレイヤ・ファミリアの傘下となる。ヤマトはヘスティアの眷属となる。

 

・ヤマトが勝った場合フレイヤは何でも言う事を聞く。

 

以上がヘスティアとフレイヤが決めた勝敗の景品であった。無理やりヤマトをヘスティアから引き剥がした場合フレイヤは天界に帰ることになると直感で理解したが為に、最低限の妥協はしっかりとしたのだ。

 

 

「来い、猪。突進は得意だろ?」

 

対人戦。不慣れながらもヤマトは本質を掴んでいた。モンスターも、ヒトも変わりはしない。言葉が通じるか通じないか程度であろう。

 

取り敢えず煽る。意味もなく煽る。

 

「先手はくれてやるから精々頑張ってくれや。盲信野郎」

 

ヤマトの得意な形を行動では無く口で作り出す。【終焉】を肩に担ぎ右脚に体重を掛けて踵をベッタリとつける。顔が見えなくとも、明らかに分かる其の舐めプの見本。

 

「【銀月の慈悲、黄金の原野──────】」

 

「【ヒルディス・ヴィー二】」

 

「ウオオオオオオオオオオオオオッ゛!!」

 

黄金が弾けた。そうとしか捉えられぬオッタルの魔法。貯め無しの超強化。純粋たる暴力が解き放たれ───────…オッタルの持つ無骨な大剣ごとオッタルの両腕が手首より少し下から切り離されて宙を飛ぶ。

 

ヤマトの得意な型は後の先。今のはオッタルの振り下ろしに合わせるように体を横にズラし刃をその進行方向に「置いた」だけ。バチリと赤黒い雷が走ったと思えばレベル7の防御力など関係無しにするりと刃が肉に入り、骨まで容易に断ち切って見せた。

 

「そら、愚鈍。その図体は飾りか?」

 

コレが「最強」だとヘファイストスに聞いた。それが「恩恵」などという外付けの装置有り無しでモノを判断した時には落胆を覚えたものだった。

 

そう、なにかのIFなのだろう。ヤマトが居た世界は「神」が居なかったからこそ技術を伸ばした。人類もゆっくりと進化し、何れ龍を淘汰する到達点へと辿り着くために。この世界は「異物」である神が降りてきてしまったからこそ「恩恵」が強さに直結するという前提が蔓延してしまった。その差なのだろう。

 

神フレイヤに出来なかったことをオッタルに行う。ヤマトは優しくは無いのだ。ただ、普段その意識がコレクション集めに費やされているだけで本質は「ハンター」なのだ。癖が1つ2つあるのは当たり前であろう。

 

両腕が使えなくなっても懲りずに突っ込んでくるオッタルの脚を片方ずつ膝下から切り飛ばし、付したソレの首筋に刃を突き付ける。早くしないと出血死でもするぞ?とフレイヤ自身に突きつければ漸く降参を申し出てくれた。

 

いや、良かった。マジで。人殺しになる為に業磨いてるわけじゃないんだよなほんと。まぁ綺麗に切り飛ばしたから綺麗にくっ付くと思うよ?多分。Maybe。

 

あんどふりーむにる…うん、腕のいいヒーラーが居るんだねぇ。

 

 

・フレイヤ・ファミリアはヘファイストスに3000万ヴァリスを支払う事(武具の立て替え)

 

・フレイヤ・ファミリアはヘスティア・ファミリアに2000万ヴァリスを支払う事

 

・神フレイヤ個人はヤマトの後ろ盾になる事。裏切った場合は問答無用で送還する。

 

この三つがヘスティアが、と云うよりもヤマトからフレイヤに提示し、受け入れられた契約の内容であった。

 

その代わり、「最強」の座はオッタルにあること、この決闘を口外しない事が双方に確認された。

 

オッタル以外誰も損してない良い契約であったとヤマトはホクホクであった。

 

この2000万はホームの作成費用に割り当てようと神ヘスティアと話し合い妄想を膨らませていたヤマトであった。




次回、漸くステイタスを刻みます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

6

原作風主人公紹介

【ヤマト】
所属:【ヘスティア・ファミリア】
ホーム:廃教会の地下室隠し部屋
種族:ヒューマン
職業:ハンター兼コレクター
武器:太刀
所持金:99999999z.5000ヴァリス



ステイタス

Lv1

 

《基本アビリティ》

力I39耐久I0器用I99敏捷I46魔力I0

 

《発展アビリティ》

狩人:I 剣士:I 破砕:I

 

《魔法》

【】【】

 

《スキル》

【常時狩人】

・発展アビリティ「狩人」の発現。

・発展アビリティ「剣士」の発現。

・発展アビリティ「破砕」の発現。

・逃走時、発展アビリティ「逃走」の一時発現。

 

【拠点渇望】

・「アイテムボックス」の任意設置権、任意撤去権。

・設置可能数は拠点数に依存。

・「アイテムボックス」内のアイテムは共有される。

 

【魔滅狩人】

・モンスターと戦闘時全アビリティ高補正

・モンスターと連続戦闘時全発展アビリティ高補正

・複数のモンスターと同時戦闘時全アビリティ超高補正

 

 

うんうんとヘスティアは半裸のヤマトの背中に乗って背中に刻んだ証を見ながら頭を捻る。

 

ヘスティアは初めてのステイタス刻み、ヤマトはステイタスというものも知らない別世界のハンター。そんな2人が廃教会の地下室でステイタスを刻んだらどうなるか。これが普通か異常か分からない上に発展アビリティの効果も曖昧なモノが多くて分からないのである。

 

そもそもヤマトは普通に素で竜種をぶち殺せるハンターである。それならこのステイタスは───────普通なのだろうか。

 

悩みに悩んだ末にヘスティアから頼られたヘファイストスも頭を抱えた。先ず他のファミリアの主神に自分の子のステイタスを晒すなと怒ったものの、紙を見て理由が分かったからである。

 

こんなレベル1が居ていいのか。と目の前に記載されたステイタスの写しにしっかりと目を通した。

 

Lv1で全ステイタスが想定範囲内なのは良いだろう。然しなんだこのスキル。ソレに「アイテムボックス」とは何ぞや。その答えは今ギルドにファミリア所属の報告に行っているヤマトしか知らないのである。

 

コレでダンジョンに行けるとはしゃぐハンターをヘスティアは止められなかったのである。でもヤマト君ならば危ないような事も無いと安心して送り出したヘスティアでもあった。

 

やはり、戦い慣れている。それがステイタスひとつからでも垣間見える。

 

発展アビリティはそう簡単に取得できるものでは無いのだ。なのに常時3つ、一時的取得が1つ。計4つも発現するという事はそれ相応の経験値があることを示している。

 

【魔滅狩人】もそうだ。ヘファイストスは背中を震わせる。ヤマトはどの位のモンスターを狩ってきたのだろうか。普通にしていてもこうはならないのだ。それも────死にかける程の荒行を複数回懲りずに行わない限りは…。

 

「ヘスティア、しっかりあの子を支えてあげるのよ?手遅れにならない様に。」

 

「う、うん。ヤマト君も僕のことを信用して身を預けてくれたものだしね!任せて!」

 

ただ単にコレクション集めに精を出していたことを湾曲して解釈されてしまったヤマトであった。

 

「さて、…うん。私も1歩を踏み出しますか。」

 

その日から3日3晩、ヘファイストスの部屋から金属音と炎の音が途切れることは無かったととある鍛冶神の眷属は語った。

 

 

「その武器だけでダンジョンに行くのは許可出来ないと言われたで御座る。」

 

ヘファイストスから武器を受け取るまでダンジョン禁止の通告をエイナ・チュールから突き付けられたヤマトはとぼとぼと帰路に就いていた。

 

理由は単純である。太刀がデカすぎるのだ。

 

当たり前ながら巨大なモンスターを想定して作られているソレは上層の様な比較的狭めな洞窟では完全に邪魔なものとなり得るのだから。

 

正論も正論。文句もいえずに帰ってきたヤマトのテンションを爆上げしたのは、ひとつのスキルであった。

 

「ヤマト君、そう言えばアイテムボックスって知っているかい?」

 

「俺がくっそほど素材とか武器とか防具とかぶち込んであるやつ。整理は自動でしてくれるくっそ優秀な箱。」

 

「君のスキルにさ、こんなものがあったんだよね。」

 

 

【拠点渇望】

・「アイテムボックス」の任意設置権、任意撤去権。

・設置可能数は拠点数に依存。

・「アイテムボックス」内のアイテムは共有される。

 

 

「アイテムボックス」内のアイテムは共有される。

 

「アイテムボックス」内のアイテムは共有される。

 

「アイテムボックス」内のアイテムは共有される。

 

「アイテムボックス」内のアイテムは共有される。

 

 

 

ヤマトの目が見開かれる。

 

 

震える手で部屋の隅に念を送れば、出来上がるのは木製の箱。見慣れた慣れ親しんだアイテムボックス!!!

 

恐る恐る中を開けてみれば…見慣れた光景。調合の書から始まり、膨大な数の素材や数多の武具が詰まった我が宝物庫。もう見れないと思っていた光景が目の前に広がっていた。

 

摩訶不思議な未知なる世界へ飛ばされて早7.8日。漸くヤマトの気が一気に抜けたのか、一通り狂乱したように喜んだ後に嬉し泣きをしてしまった大の大人であった。

 

 

ずんちゃ ずんちゃ ずんちゃ ずんちゃ てってれーててれてってれーててれずんちゃかずんちゃかずんちゃかちゃっちゃっちゃ! …ヤッ!<>ジョウズニヤケマシター!<>

 

「や、ヤマト君?なんだいこれ。」

 

「肉焼きセットですけど何か」

 

廃教会前、テンションぶち上げなヤマトはあの3日間のサバイバル的生活を忘れる為に本場(?)の焼肉とは何かをしっかりと神ヘスティアにも味わってもらおうとしているのであった。

 

今夜は焼肉よ!

 

そうおかんが子供たちに呼びかけ親父が肉を焼くように、生肉の山がこんがり肉の山に変わった瞬間であった。

 

食べ切れる分だけ食べて残りはアイテムボックス行きになったこんがり肉でしたとさ。




ちょっと基本アビリティが上がっているのは対オッタル戦が反映されて居ます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

7

ヤマトのアビリティやスキルはとりあえず妥当だとは思っていますが何かあればコメントください。

《発展アビリティについて》
狩人→数多のモンスターを狩った経験値
剣士→大剣太刀双剣をメインに好んで使っていた経験値。ランス、ガンランスはあんまり好きではなかった為『槍士』は発現していない。
破砕→執拗に部位破壊を狙うスタイルを元にした経験値
逃走→誰しも体力がヤバい時にはモンスターから逃走するだろう。敵から逃げる時に限りハンター誰しもに備え付けられたリミッター解除(移動速度上昇)である


誤字報告、感想、評価等ありがとうございます。モチベに繋がっています。

会話の違和感があり数度書き直しました。難産でした。



「さて…作っていたモノが出来たから来てもらったけど?ソレは何かしら?」

 

「封龍剣【超絶一門】とか呼ばれてる双剣だな。スキルのお陰で俺のアイテムボックスが使える様になったからお礼に1つあげようかと__。」

 

「…、あげる?」

 

「3本あるから1本位な?火山マラソンしてれば普通に出てくるんだが攻撃力低くて観賞用みたいなモンなんだ。古代技術が使われてるから作り方は知らないが、鍛冶神なら悪いようにはしないだろ?ま、その代わりあんたの武器がもっと欲しいんだが…。」

 

「…この武器は貴方の持つコレクションの中だとどの位の立ち位置かしら。」

 

「レアリティで言えば中の上か?まぁ武器強化が面倒臭い奴だから上の下までなら上げられるぞ?…って、いや。実践で俺が使うことは無いからな?」

 

「……そうね。それなら有難く貰っておくわ。それよりも、貴方の世界のインゴットとか素材?の方が私は興味があるけれど…あるかしら?」

 

「ん?後で持ってこようか、大量にあるぞ。俺に鍛治の技術は無いし修めるよりも頼んでしまった方が出来が良いからな。───それよりも、出来た双剣が気になっている所だが。」

 

「…貴方のソレを見せられた後ってなると見劣りがするかもしれないけれど。銘は「蒼剣」。アダマンタイトを高温で私でも扱える柔らかさにしてから極限まで叩いて鍛えたの。特別な属性を付与出来る余地が無いくらいまでね。」

 

目の前に置かれたのは実用性第一を持って考えられたシンプルな二振りの双剣。自分が知るモノより短め、分厚い刀身でありながら手に持てば絶妙な重さと重心が手に馴染む。

 

本来アダマンタイトとは黒い鉱石なのだろう。全体的に黒から紺寄りの色合いにも関わらず、縁を象る色は蒼く透けた様な独特な色合いを放っていた。鋭く研がれた刃はその色が顕著であり、銘に相応しい色をしていた。

 

順手、逆手、クルクルと数度危うくない程度に扱って見せてから満足した様に先程封龍剣が収まっていたソコに装備した。

 

「感謝する。俺からしてみればそこらの竜の剣より余程価値がある。天龍は狩れば幾らでも素材は取れるがここまでの技術は中々買えん。」

 

「私こそありがとうと言っておこうかしら。貴方の武器を見たからこそ、今のままでは満足出来なくなったんだから。」

 

ヤマトが去った後に、ヘファイストスはその双剣に触れる。高い龍属性と失われた技術で造られた高度なソレに、神としてでは無く一人の鍛冶師として成長出来ると改めて実感したようだ。

 

 

 

 

「エイナ・チュール、コレで良いだろう。ダンジョンに入れさせてくれ。」

 

ド素人の冒険者らしからぬ武具を身にまとった男性。それにしては恩恵も無くファミリアにも属していない不思議な人。

 

提示した必要なコトを全てクリアして戻ってきた彼が見せた双剣には「ヘファイストス」の刻印が。それがエイナには盗品に見えて仕方が無かった。

 

「ヤマト氏、これを何処で?」

 

「神ヘファイストスに打って貰ったんだが?いや、大丈夫。こうしてりょうしゅうしょ?を貰ってきた。ちゃんと代金も支払い済みだ。」

 

ペラリ。ヤマトが懐から取り出した紙はヘファイストス・ファミリアの領収書。紙質が最高級品の為コレを作成したのは椿・コルブランドかヘファイストス本人か。

 

額も額である。3000万ヴァリスを一括支払いと。レベル1が?頭が可笑しくなりそうだった。

 

「支払ったお金の出処は…?」

 

「神フレイヤが支払った。まぁ色々あってな。ちょうどいいから払って貰っただけだ。」

 

なんで冒険者初心者のヤマトと最大ファミリアの主神が繋がってて神ヘファイストスが自ら槌を振るったのだ。

 

「チュール!!そこまでだ。」

 

「ギルド長!然し…!」

 

「黙っていろ。…神ウラノスからの直々の呼び出しだ。付いてこい。」

 

エイナはぽかんと口を開け、頭の中を疑問符が駆け巡っているうちにロイマンはヤマトを連れて主神ウラノスが居るギルドの奥へと向かっていってしまった。

 

「─────ッ!もう、何なのよ!!!」

 

エイナの手元にはヘファイストス・ファミリアの領収書とヤマトが記載した個人の記録だけが残っていた。

 

 

「ロイマン、ご苦労。執務に戻って良いぞ。」

 

「…無礼の無いようにな!」

 

薄暗い「祈祷の間」。その奥の石椅子に座る巨神がウラノスなのだろう。

 

「良く来た。ヤマト…異界の超越者。」

 

「あー、呼ばれるような何かやったか?」

 

「【猛者】との一騎打ち、ヘファイストスの双剣。それだけでも十分にその「何か」に当てはまる。」

 

「不可抗力ってやつだ。悪いな、神…誰だっけ?」

 

「ウラノスだ。」

 

「なら神ウラノス、呼び出した理由を知りたい。」

 

「────御主は、意志を持つモンスターと会ったことはあるか?」

 

「そりゃあるだろ。龍とか意志やら知性ない方が少数だ。」

 

「なら言葉を喋るモンスターは?」

 

「あー、まぁ一応な。アイルー…二足歩行の喋る猫がいるんだがそいつらをモンスターと呼んで良いのかは分からないけど。盗みの達人だ。クソ弱いけどな。」

 

「────そうか。ならば最後だ。敵対せず友好的に接してくるモンスターがいた場合どうする?」

 

「あ?うーん、そうだなぁ。普通に?害にもならないんなら攻撃はしないな。だが警戒も怠ることは無いだろ。知性があるんだ、騙すコトを覚えてても不思議じゃない。敵対するならば…良い素材を落としてくれることに期待するね。」

 

「…質問は以上だ。時間を取らせた。…我が権限を持って汝の要望を通しておこう。明日にはスムーズにダンジョンに入れるだろう。」

 

「質問に答えただけだが…いや、よそう。有難く。感謝する。」

 

 

 

 

 

 

「フェルズ。どう見えた?」

 

「────この世界の害にはならぬだろう。むしろ黒竜を打倒する上でのひとつの切り札になり得る。…それに、異端者の中には冒険者否定派も少なくない。彼が受け身の時点で仲間に引き入れるのはやめた方が良さそうだ。」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

8

ヤマトはハンターなだけで勉強嫌いとか物覚えが悪いとかは無いです。普通にエゴが強めでとち狂ってるだけです。

また、ウラノスがヤマトの正体を知っていたのはフェルズの活躍です。

ちょっと短め。


翌日。ウラノスは嘘をついた。何がスムーズにだ。

 

御機嫌で朝ギルドに赴けば半分怒っているエイナ・チュールに捕まってしまったのだ。

 

早く試し斬りをしに行きたいヤマトであったが、彼女の出してきたモノがモノなだけに文句は出て来ないままにギルドに留まっていた。

 

『ダンジョンの正規ルート』

 

ハンターにとってこれ程までに重要で強く訴え掛けてくるワードは無いだろう。だからこそ率先してソレを暗記し、覚えて。半日もした頃には17階層までの正規ルートの地図と出てくるモンスターを丸暗記してしまった。

 

未知が広がっているから楽しかったとは本人の弁であった。エイナからしてみれば良い意味での予想外。

 

出店で買った昼飯を片手にギルドからダンジョンへと向かうヤマトを見るエイナの目は少しはマシになったと記載しておく。

 

完全に語弊が解けなかったのはギルド長から直々に降りて来た「ヤマトの深層までの攻略許可」であった。

 

それに対してエイナが取れた対応がダンジョンの正規ルート、モンスターの詳細を覚えさせること程度しか出来なかっただけである。

 

 

 

「聞くのと見るのは全然違うな。…忠告は聞いておくもんだなぁ。」

 

もうトレードマークの様にヤマトを表すシルソル装備にヘファイストスお手製の「蒼剣」を背にさせばダンジョンの正規ルートを確かめるように1層から順繰りと下に降りていった。

 

半分人型のゴブリンやコボルトに少し困惑した様な表情をしてはいたがドスジャギィよりも弱くて凄い拍子抜けをしていた。

 

6層。漸く骨のある「ウォーシャドウ」という敵が出てきたかと思えば一太刀で塵となってしまった。凄く勿体ない。なんで死体が残らない。なんで剥ぎ取り出来ない。残念に思いながら塵の中に落ちていた「ウォーシャドウの指刃」を拾い上げ、更に下へ、下へ。

 

 

 

─────────────

 

 

「霊刀ユクモ・真打」「王牙刀【伏雷】」「カラミティペイン」

 

「吼剣【地咬】」「ギガスクラッシュ」「崩鉈キクキカムルバス」

 

 

神ヘファイストスの事務室、鍛冶も出来るソコ。床に布一枚敷いた上に並べられたヤマトが持ち込んだ武器の数々。身長と変わらぬ長さの太刀に、盾付きの片手剣。

 

霊刀ユクモは置いておいたとしてもヘファイストスの思う常識的な武器とはかけ離れているモノが大多数であった。

 

ほとんどと言えるほど素材の価値を最大限引き出し、魔剣の様に属性を内包させた未知なる武器作製技術。

 

否、ヤマトの話を聞く限り魔石というモノが存在せず討伐後も死体は残る。故にモンスターの素材を存分に扱えるからこその作り方なのだろう。

 

見方によればこれらの素材は生きている。死してなおその性質を強く強く保ち、他のモンスターを害せる程のモノを持っている。

 

属性がなくとも同じ事。武器を持つだけで防御力が上がる?その代わり鈍だと言われたとしても名前にある通りに叩き付けられればそれだけで脅威である。

 

ヤマトが鍛冶師でない事が悔やまれる。致し方ないことではあるのだが。

 

オリハルコンすら鍛えるのは覚悟を持って行わなければならないただのヒトであるこの身体。

 

なれど、知識とこの身に染み付いた技術は超越存在のソレ。ならば─────コレは鍛冶師ヘファイストスとしての挑戦である。この技術を再現し、その上で超えて見せよう。

 

事務作業を自分の子供に丸投げして一日中槌を振るう主神。ちらっと見た団長の椿はソレに感化されてその下に事務作業をさらに丸投げし、工房に籠ったとか。

 

レベル5では足りぬとダンジョン攻略と鍛冶を並行しながら行いレベル6の壁に辿り着いたのはそう遠くない未来であった。

 

────────────────────

 

 

ヘファイストス→ヤマトが帰ってきたら素材の買取検討。

 

椿・コルブランド→主神がなんか面白いことをしてるけどそれより鍛冶師として成長しようとしてるのを感じ取り感化されてる。37歳。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

9

お久しぶりです。短めですがゆっくりちまちま更新していきます。



「双剣握るの久しぶりだけど、エイナの忠告聞いといて良かったな」

 

刀身に血糊が付かない違和感にも慣れてきた頃、同じ様にダンジョン特有の圧迫感にも慣れてきた。

 

素直に忠告は聞いて損は無い。何度口に出しても良い。血気盛んな新人にもちゃんと教えたい。そういやあの教官は元気かな。

 

初心者の頃は良くお世話になっていた堅物の訓練場の教官を思い出しながら壁から湧き上がるヘルハウンドを切り捨てる。

 

最終的には下着姿で上位のジンオウガをブチ殺したり、ソロでアルバトリオンに挑んで居るヤマトにもちゃんと初心者の頃はあったのだ。

 

「ん~、ソロだと片手剣がマストか?」

 

ランスやガンランスでは太刀よりも嵩張ることが確定な為、防御も最低限出来ながら手馴れた刃物を扱えるモノを頭の中で選択していく。

 

回避が出来る所が豊富な狩場とは違い一本道の様なダンジョンでは攻撃一辺倒の双剣は些かこの先不安か…。

 

撫で切りでミノタウロスすらサクサクとサイコロカットを成し遂げているヤマトであるが考え自体は真剣である。

 

慣れない環境に慢心は無く、いくら村クエのアオアシラレベルしか出て来なくとも既知では無いのだから。

 

闇夜剣【昏冥】

 

頭の中でコレクションをひっくり返しながら出てきた現状で使い勝手が良さそうなナルガクルガの片手剣である。

 

お手軽な切れ味に会心率が高く低めな攻撃力は装備でカバー出来ている。そんなに苦労せずとも作れる為コスパも良い武器の一つ。

 

まだ一回も使ってなかったけど帰ったら引っ張りだそうかな。

 

最終的に何も考えなければ煌黒剣アルスタでごり押すのも悪くは無いのだが…それではコレクションの意味が無い。

 

「必要に応じて使い分けてこその狩人である」

 

漆黒爪【終焉】ばっかり使ってたヤツが何言っとるんだとは聞かない。だってマラソン大変なんだもん。

 

 

 

ダンジョンアタック初日だとも思えぬスピードで17層まで来てしまった。えーと、あれが嘆きの大壁か。

 

折角ならゴライアスともやりたかったけれど、エイナからは「フレイヤ・ファミリア」の一人が1週間前に討伐したとの情報が入っていた。

 

また一週間後。折角だから一回は戦いたい。そう思いながら18階層の迷宮の楽園へと脚を進めた。

 

 

 

胡散臭いコトが書いてあったで御座る。

 

元々長々と居る気は無いのだ。観光の様な気分でリヴィラに入ろうとすると入口には「大歓迎」的な文字。そんなフレンドリーな謳い文句を一瞬で吹き飛ばす物価の暴力。

 

ゼニーなら山ほどあるがこっちの金銭は手持ちで1万程度。ヤマトはバックパックすら買えない冷やかし客でしか無かった。

 

然し、周りから見ればそれどころでは無い。白銀に輝く全身鎧を着た然程有名でも無い男が一人。二つ名すら付かないのならばレベル1は確定。

 

どうやってここまで来たかは関係無い。目敏い者には双剣に描かれた「ヘファイストス」の文字が見えてしまっていた。

 

法?モラル?そんなモノは此処で屯っている者達にはあってないようなもの。ヘファイストス・ファミリア製の武器など裏に持っていけば買い手は幾らでも付く。

 

ゆっくりと、レベル2を中心とした山賊ならぬダンジョン賊が徒党を組んで行く。リヴィラの中はダメだ。殺るならば…17.16層辺り。どうとでも言い訳が出来るように。悪意が動き出していた。

 

今から狩ろうとしている者が龍すら恐れず食い物にしているイカれた狩人だとは知らぬ儘に。




名も無き第三級冒険者達の死亡フラグが立ちました


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

10

書き始めたら取り敢えず続き書かないと一定期間失踪する作者です。週1更新出来たらいいなぁ。

誤字報告や感想助かります。脳死で書いてたりするので変なトコ見つけたら遠慮なく質問してくださいな



ヤマトには理解出来ぬこと。ソレはヒトがヒトから奪い合う醜い争い。

 

致し方ない事でもある。ヤマトが過ごしていた世界は余りにも人類の生存圏が狭過ぎたのだ。

 

村、集落、里。都市等出来るのは夢のまた夢。ユクモ村があれだけ穏やかで湯の秘境と呼ばれるのも奇跡の様なモノであった。

 

所属している者全員が助け合い、必死に自分の居場所を護っているのだ。

 

狩人は総じて意に敏感である。それが敵意でなく興味本位だとしても。そうでなければナルガクルガとあんな木が生い茂る中で戦えない。

 

身体に絡み付く複数の視線に自然に身体が動こうとするのを抑えながら、誘い出す。

 

明らかな敵対の色と、装備を見る下賎なソレ。自分と相手の実力差も測れぬ未熟者達。

 

身に纏う装備の大元をどうやって掻き集めたのかも想像がつかない者達である。

 

致し方無いのだろう。ヘファイストス・ファミリアを見ればソレは分かる。

 

素材の持ち込みが主流では無く、ある程度固定化された鉱石等の素材を用いて鍛治師一人一人の技量を持って武器にしている風に見えていた。冒険者は展示されたそれを見て買うだけ。

 

ならば、ボンボンが金だけ出して買った成金…成銀か。そう見えても仕方が無いのだろう。少なくとも、今背後から付いてきている者たちにはそう見えたか。

 

 

 

「よぉ兄ちゃん。さっきぶりだなァ?」

 

周囲のモンスターを一掃し、ある程度の安全が確保出来たタイミングで背後から声がかかる。

 

朝に神にはダンジョンに行ってくると言ったっきり今まで連絡らしい連絡をして居なかったのだ。

 

多少心配をしているだろうと早めに戻りたいのだ。余計な事はサッサと終わらせるに限る。

 

「目的は察している。二度とその目線を向けるな。拒むのならば相応の対応をしよう。どうだ?」

 

「おいおい、俺たちゃお前と仲良くシたいだけだ。レベルは1、それなのに18階層まで来たって噂が飛び交ってるぜ?教えてくれよ、レベル1の癖にヘファイストスのロゴ入り武器を持ってる理由…とかなぁ!」

 

「打ってもらったのは事実だが、ソレは向こうからの申し出に頷いただけだ。…さて、1人として辞めないか。俺が獲物だと?」

 

「お。良いね。ちょっと良いモノ持ってイキるなんて誰でも通る話さ。だけどな、ソレを見せ付けすぎると奪われんぜッ!」

 

リーダー格だろう。名前も知らない肉達磨が大剣を抜けばそれに呼応する様に全員の武器が抜刀される。槍、剣、杖。業物とは言い難いモノだが如何せん数だけは一丁前。

 

ヤマトにとっては狭いダンジョンの中。ならばやる事は一つ。

 

ぼふっ…!ぼふっ!

 

2つ。地面に叩き付けるのは煙玉。自分の足元と距離を詰めてこようとする奴らの足元へ。

 

「なっ!ざけんな!お前ら追え!!」

 

手馴れたモンスターから隠れる手段もそれを知らない奴らは我武者羅に前へ前へ。どうせ逃げたんだろうとガチャガチャと装備を揺らしながら霧の中を走る。

 

「ぎゃ、ッ!?」

 

「く゛か゛ッ!?!」

 

最後尾を走る者の背後から、刃が走る。脚の腱を両足ともすっぱりと切り裂かれ移動が不可能に。

 

軽い身のこなしで更に加速すればもう1人。今度は両手首。此方は双剣の斬れ味に任せて舞う様に斬り捨てる。手首から先ごと武器が宙を舞い、地面に落ちる。血が吹き出すものの、防具に掛からなければ良いとそんなコトしか考えていない。

 

煙の中での、各個撃破。正面からやり合っても勝てるのだろうが、血を被ったりはしたくないのだ。

 

ヒトの血はモンスターのソレが付着するより手入れが面倒で仕方が無いのだ。

 

煙が消えてきたら追加するように煙玉を投げること3回。あとはやる事は同じである。それだけで、追い剥ぎの如き第三級冒険者集団は全滅した。

 

両腕が無い者、片脚が付け根から切り飛ばされた者、切られた腹を押さえて蹲る者。誰1人命を落としていないものの、満足に動ける者も居ないのも事実であった。

 

自己責任。それを果たしてもらうだけである。名も知らぬ冒険者、名も知らぬファミリアが壊滅しようが敵対したのだから、ヤマトには何ら関係無いことである。

 

痛みで脂汗まで垂らすリーダー格の服で乱雑に刃に付いた血糊を拭えば、煙玉の効力が消える前にその場を離れた。

 

掃除はダンジョンがしてくれるだろう。運良く生き残れても、自分から襲って返り討ちにされたとは口が裂けても言えないだろう。嘘が見分けられる神相手には尚更だろう。

 

 

 

「帰りました〜」

 

「お帰り!初めてのダンジョンはどうだったかい?」

 

「モンスターが塵になるの勿体ないと思います。」

 

「塵にならないのかい?」

 

「逆になんで塵になるんですか?」

 

「()」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

11

なんでこんな更新まちまちなやつが日間の上に居るんすかねぇ。ありがてぇやらなんやらと。ゆるゆる書いていきますよ。よろしくお願いします。

折角なので、速攻で仕上げてみました。


 

「ヤマト君、稼ぎの方はどうだったかい?」

 

そんな事を聞かれて魔石やら何やらを換金して来るのを忘れていた。

 

もう夜も遅く、ヘスティアが用意してくれていたじゃが丸君を夕ご飯にしようとしていた時間である。

 

「初めてだったから仕方無いね。あ、そういえばヘファイストスが鉱石を持ってきて欲しいって言ってたよ。気になるから僕もついて行っちゃおうかな~。」

 

「俺は気にしないからヘファイストスの邪魔しなければ大丈夫じゃないか…?」

 

幾らカンストゼニーを持っていてもこの世界では使えないモノ。未練を斬り捨てこの世界での金策を考えなければろくにコレクション集めも捗らないだろう。

 

 

 

そんな昨日の会話から一晩。ヘファイストス・ファミリアに向かう道中にてサンドイッチとホットミルクを買ってみた。

 

クリームに果物が挟まった甘めのサンドイッチ。朝に食べるのは若干重いように感じたがこれがまたホットミルクに合うのだ。

 

朝は肌寒い。身体の芯からあっためてくれた朝食をちゃんと2人で完食してから、もうお馴染みとなったヘファイストスの事務室へ足を運んだ。

 

 

「鉄鉱石」「大地の結晶」「マカライト鉱石」

 

「ユニオン鉱石」「グラシスメタル」「紅蓮石」「カブレライト鉱石」

 

アイテムボックスの中で埋まっていた鉱石を99単位で持って来た。上記には書かなかったがあと4.5種類もポーチの中に眠っている。

 

採掘のメインは護符である。けして鉱石では無い。武器も防具もそれなりのモノは作れるが最上位になる前提であれば繋ぎの立ち位置になってしまうのは否めない性能なのだ。

 

そんなアイテムボックスを圧迫し、必要に応じて売り払ってすら居た鉱石を、ヘファイストスは価値ありと結論付けた。

 

純度は決して高くないのだ。採掘したソレを形にしたようなモノが多いのだが、この世界には無い効果を得られるモノが多いらしい。

 

一番ヘファイストスが価値をあげたものが「紅蓮石」である。

 

鉱石同士を高熱で結合することが出来る常時燃え盛る鉱石は、これまでの常識を覆せる。そんな事を言っていたが鍛冶師では無いヤマトには「そうなんだ」と頷く程度のことしか出来なかった。

 

 

鉱石は有限ではあるのだがヤマト自身が持っていてなにかに使うかと言われたら否である。

 

元々渡して武具を作ってくれていた鍛冶師はユクモ村にしか居ない。

 

折角なので、ヘファイストスに買い取って貰うことにした。

 

鉱石を眺めながら思考の海へと沈んでしまった彼女にやんわりと提案すれば即座に食い付いてきたのは言うまでもないだろう。

 

今日持って来たモノ全て納品して、端数を切り捨てて2億ヴァリス前後。鉄鉱石も含めても1個平均20万ヴァリス前後である。

 

・無限の供給は出来ず、1種類ごとに6スタック前後であること。

・仕入先が現在ヤマトしか無いこと。

 

これが価格をヘファイストス自身が適正価格として釣り上げた理由である。

 

安いと臍を曲げられてゴブニュ・ファミリアに流されるより良いと思ったかはヘファイストスしか分からぬ事であった。

 

そもヤマトは鍛冶系ファミリアはヘファイストス・ファミリアしか知らないのだからその心配は杞憂であるのだが。

 

「ヤマト君ヤマト君!…僕ちゃんとした家に住みたいなぁ?」

 

「2億もあれば家が立つか?」

 

「豪邸を建てないんなら5000万もあれば十分よ。腕の良いトコロ紹介するわよ?」

 

ヘスティアは可愛いしヘファイストスは横の繋がりをしっかりしている。良い事だ。プーギーもここに居ればな。なでなで出来たんだが。

 

「あそこの土地に立ててしまって良いのか?」

 

「今後もご贔屓にしてくれるって約束してくれるなら土地の所有権をヘスティアにあげる事も考えるわよ?」

 

「だ、そうだけど?」

 

「え?ぁ、なんでヤマト君が他人事なのさ!ヤマト君が決めるコトだ。僕はソレを尊重するぜ!」

 

「そうだな、拒否する理由が見付からないが、良いのか?」

 

「良いわよ。貴方をどっかに取られるより何倍もいいもの。」

 

「ならば頼もう。少しづつモンスターの素材も置きに来る。業務の妨げに成らない程度に弄ってくれると助かるのだが。」

 

「最優先でやるわ。でもモンスターそのものの素材…そのモンスターの生態や、見た目、戦い方とかその都度教えて貰っても良いかしら。加工するにはかなり大切な事よ?」

 

「その位なら構わない。俺が知っているモノ程度ならば教えよう」

 

「良し。ヘスティア、明日までに書類は作っておくから取りに来なさい?」

 

「分かったよ!」

 

 

こうして、ヘスティア・ファミリアのちゃんとしたホームが出来ることが確定した瞬間であった。




鉱石の価値をあんまり分かってないヤマトなので値段付けはヘファイストスが全部やりました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

12

感想が筆を動かしました。検証回


「ハチミツは置いてませんか?」

 

 

ヤマトは初めて市場の様な出店の様な場所に来ていた。

 

 

新鮮な良い野菜が食べたければデメテル・ファミリアを尋ねれば良いと教わったがハチミツはそうも行かない様だ。

 

 

回復薬グレートから始まり特別効果が良いものにはなんでも使うこととなるハチミツ。ヤマトの手持ちは56。たった56。

 

 

自分の畑の隅にあるものを細々と取りながらクエストで機会があれば採取する程度。

 

 

アルバトリオンやアカム、ウカムをソロで攻略する毎に5〜10個消費していては減る一方である。

 

 

偶に村長にアオアシラ討伐を頼みながらハチミツ狩りに出かけるのは誰しも一度はしたことがあるだろう。俺は沢山やった。

 

 

衣食住のある程度を確保できたために次に行うのは調合実験。

 

 

幸いなことに回復薬自体は10スタック程アイテムボックス内に眠っている。

 

 

オラリオのハチミツと、ユクモ村の回復薬で回復薬グレートが作れるとしたら10万ゼニー位ならお供え物として神に祀っても良かった。

 

 

やはり周りの商品よりは高め。これだけ発展した都市でも甘味は人気と言うことだろう。

 

 

小さい瓶いっぱいに詰められコルクがされた1瓶50ヴァリスのハチミツ。あるだけ32.3個を買い漁るシルソル装備の狩人は中々に周りから浮いていた事は本人だけが気が付いていなかった。

 

 

 

 

 

「へぇ、色々あるもんだな。」

 

 

一言、調合実験と言ってもオラリオ産の回復ポーションとヤマトが持つ回復薬は根本から違うモノである。

 

 

知見を広げる為に脚を運んだのはへファイストスに勧められたディアンケヒト・ファミリアである。

 

 

ピンからキリ。但し底辺が高い。質が良いものが並ぶ店内。

 

冒険者を治療する窓口に間違ってたどり着いてしまったヤマトを連れて来てくれた女性に礼を言うが、今のヤマトは完全に冷やかし客である。

 

顔が隠れた全身鎧の上にへファイストス製の武器を背負ってはいるがあの雰囲気の上位冒険者を誰も知らなかったが故に店内を彷徨く姿を不審者一歩手前の視線で監視されていた。

 

 

薬草にアオキノコのみの単純明快の回復薬とは違い色々混ぜられているのだけを確認し、手持ちでは下限のものを2個しか買えないことに気が付きそそくさとそこを後にした。

 

 

 

 

調合の書を過剰に持って、実験実験。ん、調合自体はできる様だ。

 

 

【回復薬グレート改】

 

…………ほう。説明文を見ても回復薬グレートの上位互換として成立している。回復数値としては75。MAX150の内の半分。強くないか?

 

ユクモのハチミツに切り替えて…

 

【回復薬グレート】

 

環境は関係ないとすると素材か。ハチミツを見比べては確かにユクモ村で採取したハチミツは蜂の巣がそのままくっ付いていたりする。オラリオのハチミツは濾されているのか明らかに純度が良いものであった。

 

 

面白い。ハチミツを濾し純度を上げるだけで薬としての効果が上がるのか。

 

 

ユクモ村では当たり前の様に素材そのものを調合し作ったものを使用していたが、改めて考えると戦地でも変わらず同程度の性能のモノを作る為の手間の削減と考えれば合点が行く。

 

 

新天地にて知見が広がりニコニコのヤマトであった。ただ、懐が寂しい。2億はあるが資産を切り売りした結果である。

 

 

本格的にダンジョンに潜り金を稼ぎ、帰り道の探索を始めようと考えるヤマトであった。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

13

楽しみにしてくれた方沢山いて嬉しいです。


エイナ・チュールとのダンジョン講義は深層37層まで終了していた。

 

 

下層に行くにつれて覚える範囲は広がる為初日の半日で18階層までを覚える様な無茶振りは敵わなくなっていた。

 

 

だがヤマトはハンターである。そこらの一般人とは基礎体力が違う。

 

 

寝る時間を少し削ったとしても、未知を知る行為を止めることはなかった。

 

 

ゴライアスが復活すると推定される日にダンジョンに再度潜ることを決め、合間を縫っては着々と準備を重ねていた。

 

 

一番悩むのが装備である。アイルーに頼れていたユクモと違いソロでは深くまで潜ると帰りが辛い。

 

複数日に渡っての攻略も上位ファミリアでは不思議ではないことを聞くと準備も念入りになる。

 

 

悩んだ末に決めた装備は攻撃特化のシルソル一式では無い。弱点となる属性が比較的少なく属性やられを無効にしてくれるアルバ一式である。

 

 

心配症を打ち消した上で龍の護符と装飾品で無理矢理二つのスキルを発動させたスキル一覧は以下の通りである。

 

 

・属性やられ無効

・属性攻撃強化

・回避距離UP

・溜め短縮

・砥石使用高速化

 

 

器用貧乏な一品であるが故にクエストに制限時間があるユクモではシルソル一式で装備が固定化されてからは半分コレクション化していたのは悲しき事実。

 

 

合わせるのは無論アルバ太刀こと漆黒爪【終焉】

 

長く続く鋭い切れ味と高い属性攻撃値を有し、スロットも2つ持つ最強武器。

 

 

勿論護符周回で研ぎ師+6集中+5の当たりが出たから成立する事を忘れてはいけない。

 

 

一昔前ならばキメラ装備に護符や装飾品で性能を伸ばせないか考えたものだが今はあるが儘に膨大な時間をかけて厳選した一級品の護符のゴリ押しでスキルを大量に発動させていた。

 

 

「ヤマト君これはまた雰囲気が違う防具だね!似合ってるよ。」

 

「情報だけ知っていても実際初見だとあっちの装備は怖くてな。悪くはないだろう?」

 

 

「カッコいいじゃ無いか、若干威圧感はあるけど。気をつけて行ってくるんだよ、幾ら君が強くたってダンジョンは大変な所だ。」

 

 

「おかえりと言ってくれる者が居るのは有り難いな。無事、帰ってこよう。」

 

 

それに、今回のダンジョン攻略はソロでは無いのだから。

 

 

「ははははっ!お主!何だその装備は!先に言わぬかこの戯け!」

 

 

へファイストス・ファミリア団長、椿・コルブランド

 

 

オラリオの冒険者はなぜしっかりと身を守らぬのだろうか。

 

我が主神である神ヘスティアも大層立派なモノをお持ちだが此方も良いものを持っている。

 

申し訳程度に肩当てはつけているが後は完全に布である。

 

サラシに巻かれた上でたゆたゆ揺れるソレなぞどうでも良いと言わんばかりにクルクルとヤマトの着ているアルバ一式を舐めんばかり…いや、一部舐めてるぞこれ…!?

 

「何処かで見せる時間はある。…そんなに気になるか?」

 

「当たり前だ!我が主神にも見せておらぬだろう!?儂が、儂が一番に観察出来るのだから!」

 

大きなバックパックを背負い腰に刀を差した彼女の姿。

 

 

他のファミリアの団長をサポーター擬にでもするつもりか!

 

 

とお叱りと疑問の言葉があるかもしれないので言っておこう。

 

 

その通りだ。

 

 

然し言い出したのは椿自身であるし、神へファイストスもヘスティアも了承した上でヤマトにくっ付いて来る事になったのだ。

 

椿からして見ればヤマトという存在を間近でみる事により新たなインスピレーションを得たい。

 

へファイストスとしても子の成長は喜ぶことであるし、繋がりを強くする事に異論は無かった。

 

ヘスティアは椿の熱量に押されると同時にlv5という椿の強さをヤマトの安全の補助として頷いた形。

 

ヤマトはドロップアイテムに圧殺されなくて良いと分かれば勢い良く頷いた。

 

 

椿に支払われる対価はヤマトの所有する武具の観察。ダンジョンに向かう為ギルドへ脚を運ぶ途中でも今脱げる頭装備や籠手を奪われて中の中まで見られていた。

 

前なんか見ていなく危ない為にヤマトが歩行のサポートをしていたりしなかったり…。

 

 

 

 

 

 

「ヤ〜マ〜ト〜さ〜ん?」




次回!エイナ・チュールの胃死す!デュエルスタンバイ!



ネタです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

14

椿さんの口調迷子ちゃん。修正出来る方居たらお願いします。


 

「災難だったのう。」

 

「何度かこう小言は言われている。根は優しいが融通が効かないと見えるが…エルフはみんなああなのか?」

 

「彼奴はハーフだが、そうだな。アレをもう少しキツくした上で潔癖症なのがエルフと考えていいだろうよ。」

 

「容姿はいいだけに少し残念だな。」

 

 

この世界に来て初めて知り合ったリューは異端の側だったかとヤマトが思いながらギルドからダンジョンへと向かう冒険者が2人。

 

 

ヤマトとへファイストスとの繋がりはエイナも察しては居たが、二度目のダンジョン攻略でへファイストス・ファミリアの団長を連れて来るとは想像もして居なかった。

 

 

30分程の足止めを食らってしまったが、ウラノスとロイマンの名前を出した上で椿が色々と説明をしてくれた為渋々と言う顔でOKが出された。

 

 

ヤマトが目指すのは37階層。18階層の端にテントを立ててそこを中継地点とし、日にちを掛けて攻略していく予定である。ゴライアスを倒す事も忘れてはいけない。

 

 

ちなみにエイナには伝えて居ない。小言が増えることが必至であるからだ。

 

 

 

 

 

 

「…ミノタウロスが逃げていったが…お主、何かしたか?」

 

「………心当たりはある。」

 

 

ダンジョン14階層。ただ正規ルートを歩くだけのダンジョンお散歩と化した異常な光景に流石に耐えきれず椿が沈黙を破る。

 

 

目の前の壁から産まれた産まれたてのミノタウロスはヤマトが武器を構える前にギョッとした目でヤマトを凝視した後に身体を震わせ産まれたてだとは思えぬ速度を四つ足で出しながら逃走した。

 

 

正確には凝視して居たのはヤマトでは無く着ている防具だろう。

 

 

アイテムボックスの肥やしになっては居たがエスカドラシリーズの作成難易度は最高レベル。

 

 

アルバトリオンの角が折れず何体殺したかは忘れたが最初のうちは生死を掛けて戦い、クエストリタイアも何度も行った強敵。

 

 

『闇を纏い厄災を齎す』『挑む剣はひしゃげ、噛み付く竜の牙は砕け散る』

 

 

など凄まじい説明がされて居た事を鑑みればミノタウロス程度なら本能で逃げ出すのはそれは当たり前だろう。

 

 

歩く度に独特な鈴の様な音を奏でる。それは今手に持っている漆黒爪【終焉】にも当て嵌まる。

 

日本刀の軽量化と風切音の為に付けられた「樋」と同じ効果が防具や武具自体に付与されているのかはヤマトは知らない。だが何かしらの力が込められているのは明白であった。

 

 

「刀を抜かずにここまで来たのは初めてだぞ?」

 

ダンジョンに入って1時間。ノンストップでたどり着いた17階層に椿は呆れ返り18層に入ったらその防具を早く脱げと急かしてくる。

 

「俺がゴライアスに苦戦するとは思わないのか?」

 

「ソレの元をソロで討伐する様な気狂いが?ははははッ!有り得んな。」

 

 

気狂いと言われてしまって言い返せないのはそう云うことである。恩恵という外付けのブーストでは無くヒト本来の強さ。

 

 

殴る蹴るの様な力は逸脱して居ないにも関わらず生存競争という一点であるならば黒龍すら下しあまつさえ周回を始める頭のおかしい人種。それがハンターである。

 

 

鳴るは爪の音色。相対するは推定レベル4。安全階層の番人、灰色の巨人。

 

「グオオオオオオオッ!!!」

 

魔力の籠った咆哮。されどヤマトにとっての咆哮となり得る範囲からはかなり遠め。

 

 

ヤマトに出来ることは近付いて切る事。ダッシュ、ダッシュ!ダッシュ!!

 

 

─────ゴドォ゛!!!

 

 

拳の形に地面が粉砕される。そんな中一直線に回避を織り交ぜながらたどり着いたヤマトの一閃───!

 

 

迸る黒い花火。切り飛ばされるゴライアスの右腕。返す刀で右脚の膝下辺りにすべりこませた刃からは肉体を蝕むであろう龍の気配が色濃く噴き出し敵を侵していた。

 

 

血糊が付かぬ程の斬れ味に、迸る龍属性の禍々しい輝き。

 

 

「ガアアアアァァァッ゛!!?!?!」

 

 

暴風の如き激情しか映さなかったゴライアスの瞳には恐怖がチラつく。

 

 

知性は無くとも感情があるのはモンスターである。最上位の龍以外ならば如何に強く怒りやすかろうが逃げることがあると知っているヤマトにとって当たり前のこと。

 

 

モンスターを狩る為に造られた鎌が煌めけば本能が負けを認めていたゴライアスの首元がパクリと口を開けた。

 

 

亜種の様な例外であれば再生をしたのだろうがコレは通常個体。胸をかっ捌き魔石を取り出したのならば灰に還るが定め。

 

大きめな外皮を落としたのを確認して改めてこれしか素材が落ちぬ事に少し悲しくなっているヤマトであった。




再開したら沢山の新規お気に入りと評価が貰えました。嬉しいです。モチベになってます。感想も全て読ませていただいてます。ありがとうございます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。