Angel Beats! 星屑の記憶 (刻焔)
しおりを挟む

第01話 孤独な世界

短い文章ですがどうぞ!


目が覚めるとそこは、見知らぬ教室だった。

 

「あれ、どこだここ」

 

辺りを見渡すと多くの机や椅子が並んでおり、人は誰もいなかった。

別方向を見ると窓があり、空は日が落ち星が煌めいていた。

 

「夜か、そりゃ誰もいねぇか」

 

俺は席を立ち、教室を出ようとして疑問を感じた。

 

――――そういや俺、なんで教室で寝てたんだ?

 

思考を巡らし思い出そうとするが、寝る前の記憶が一切思い出せないでいた。

 

――――なんで思い出せないんだ

 

「まぁいい、帰るか」

 

俺は止まっていた足を再び動かし始める

が、またすぐに止める事になった。

 

「……どこへ?」

 

いくら考えても答えなどでなかった。

 

――――あれ、どうしてだ、自分の家がどこにあるかわからない、この学校の名前も、地域の名前すら出てこないなんて

  なにか、なにか覚えていることは

 

全力で何かを思い出そうとして、一つだけようやく思い出せた事があった

 

「月斑 燕、俺の名前だけか」

 

自分が記憶喪失だと悟り、悔しさゆえかその場に膝をついて涙を流し始めた。

 

「くそ、くそ!なんで記憶がないんだ!なんで無くしちまったんだ!!」

 

何度も床を殴りつけ、暴れまわった。

それこそ拳から血が流れるまでに

 

そんな中、胸ポケットから一冊の手帳が滑り落ちた。

俺はその手帳を手に取り、ページをめくる。

 

特にメモは書かれておらず、新品そのものだった。

 

そして最後のページに

 

「天上学園・月斑 燕・三年F組・寮 2024号室」

 

――――俺は学生寮で暮らしてたのか、ならひとまず寮へ行ってみるべきだな

 

俺は外を目指し、走り出した。

寮の部屋に行けば記憶の手掛かりがあるかもしれない、そんな希望を抱きながら

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

どうにか学生寮に辿り着く事ができた俺を待っていたのは、絶望だった。

 

部屋は二人部屋のようだが、住んでいるのは俺一人だけらしい

それをいいことに、部屋のあちこちをひっくり返すようにあさるが、手掛かりとなる物は何一つ出てくる事はなかった。

 

「……手掛かりどころか、自分の部屋に何もないなんて」

 

この時の俺は、すべてに絶望し、孤独な部屋の中で一人、立ち尽くしていた

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

一方その頃

赤い髪をした少年が、燕と同じように目を覚ましていた。

 

「……ここは、どこだ?」

 

燕とこの少年は違う点がいくつも見られた。

一つ目は、屋外で目覚めたこと

二つ目は、そばに人が居たこと

三つ目は、ここが死後の世界だと告げられたこと

四つ目は、死ぬことができないという体験をしたことだった

 

胸を一突きされた少年は、重力に逆らうことなく

その場に倒れ、ピクリとも動かなかった。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

どれくらいの時間がたったのだろうか

俺は考えるのを止め、ベットに倒れこんだ。

 

――――そうだよ、これはきっと夢だ。

   朝起きたら何もかも思い出してる。

   思い出せないのは、思う出す必要がないからだ、これは夢だからな。

 

現実から目をそむけ、暗い部屋の中で一人、眠りについた。




さぁ始まりました。始まってしまいました。

燕「始まったはいいけど、良いのか?こんな見切り発車で」

それを言うな!不定期更新のタグはついてるから多分問題ないはずだ!

燕「失踪だけはするなよ」

はい、失踪だけはしないよう頑張りたいと思います。
それでは皆様、感想・アドバイス等がございましたら、どうぞご遠慮なくお願いします。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第02話 記憶を求めて

今回も短いですがどうぞ


目を覚ますとそこは、見知らぬ天上だった。

 

「……やっぱ現実かぁ」

 

燕はベットから腰を上げ、身支度を整える。

寝る前に思いついたことだが、学校に通っている以上友達はいるはずだ

ならばその友達に、自分がどういう人間だったかを聞けば、少しは思い出せるものもあるのではと思い至ったのだった。

 

――――自分を疑いたくはないが、友達ゼロなんてことはないよな

 

多少の不安を抱きつつも、燕は部屋を後にした。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

教室に着くと、まだ誰も登校しておらず

教室はもぬけの殻だった。

 

それもそのはず、時計の針はまだ06:48を指していた

 

「……どれだけ急いで登校してんだ俺は」

 

登校してしまった以上、今から寮に戻る気はなく

燕は教室の端でほかの生徒が登校してくるのを待つことにした。

 

――――さて、7時くらいには登校して来て欲しいものだな

 

しばらく待っていると、数人の生徒の話し声が廊下から聞こえてきた。

 

「あ、おはよう燕君。今日は早いけど、どうかしたの?」

 

教室に入ってきたのは女子生徒一人だけのようだ

どうやら話をしていた生徒は他のクラスらしい

 

「いや、ちょっと聞きたいことがあってな」

 

燕は女子生徒に近づきながら問いに答えた。

すると女子生徒は満面の笑みを浮かべ、こちらへ駆け寄ってきた

 

「え、なになに?燕君が私に聞きたいこと?いいよ何でも聞いて!」

 

何が嬉しいのかわからなかったが、燕は聞きたいことを洗いざらい話し始めた。

自分の記憶が名前以外思い出せない事

普段の自分はどのような人物だったのか

そのほかにも気になることはすべて聞いた。

 

だが、帰ってきた答えは、燕の望むそれではなかった。

 

「……ごめん、いきなり記憶がないなんて言われても、それに普段の燕君もどういう感じだったのかはあんまり覚えてないんだ、ホントにごめん!何でも聞いてって言ったのに」

 

その女子生徒は深々と頭を下げ、自分の席へと着いてしまった。

 

その後燕は、何度も登校してくる生徒に同じ質問を続けたが

結局、クラス全員が何も知らないと言ってくるばかりで、収穫はゼロだった。

 

――――参ったな、友達は多いみたいだけど、肝心の記憶の手掛かりが無しだなんて

  仕方がない、授業でも受けながら考えるとするか

 

燕は空いている席へ座り、大人しく授業を受け始めた。

 

授業を受け始めてからしばらくして、燕の耳に奇怪なものが聞こえてきた。

 

――ガシャン!うわぁああああああああ!!

 

――――……なんだ、今の叫び声は

  気になるが、調べに行くのも面倒くさいし、放課後まで寝よう

  そんで放課後になったら職員室にでも行って、俺の、個人情報でも、聞けば、いいや……

 

授業中の睡魔にやられ、燕は目蓋を閉じ、日差しの入る窓際の席で眠りについた。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

燕が眠りについた頃、音のした方では

赤い髪をした少年が二人の男子生徒に運ばれ始めていた。




燕「おい、初登場キャラがモブってどうなんだ?」

いや、新鮮味(面白味)があって良いかなっとww

燕「いや、原作キャラが空気だったじゃん!どうなんのこの小説!」

大丈夫、次回はちゃんと原作キャラ出すから、まともなセリフあるから!

燕「……その言葉、信用するぞ」

それでは皆様、また次回~


あ、次回のあとがきからゲストを登場させていくからね~
燕「はぁ?ちょ、聞いてねぇぞそんなこと!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第03話 死んだ世界戦線

放課後になり、燕は行動を開始する。

これからの行動予定としてはまず、職員室を見つける所から始まる。

そして職員の誰でもいいので、個人情報を見せてもらう、たったこれだけの簡単な事だ。

 

……簡単なはずだった。

 

――――オイオイオイ、職員室どころか、ここどこだよ。

 

燕は敷地内で迷っていた。

 

勢いよく教室を出たまでは良かったのだが、職員室の場所が分からないことに気が付いたのは学習棟を出た後だった。

その事に気が付いた時はすでに、学習棟から離れたところにある医局(閉鎖中)の前だったので、戻る事は諦めた。

 

――――流石にこの古ぼけた施設に職員室があるとはとても思えないが、一応調べてみるか

 

燕は医局の中へと足を向けた。

 

医局は現在閉鎖中らしく、人の気配がしなかった。

 

「人っ子一人いないな。ん?」

 

しばらく探索していると、一か所だけ扉の開いている部屋を見つけた。

気になり、部屋の中をのぞいてみると

 

「なっ!?」

 

見たところ普通の保健室のようだったのだが、唯一違う点があった。

床に血だまりができていた。

 

「なんだこれ、ここで何があったんだ?」

 

燕は血だまりに近寄り、指でなぞってみると

まだ乾ききっていなかったのか、指に血が付いた。

 

「何があったのかは知らないが、これだけの出血だ。すぐにニュースになるだろ」

 

その後色々と調べてみたものの、破れ血まみれのワイシャツが一枚あっただけで、目ぼしいものは見つからなかった。

仕方なく学習棟の方へ足を戻し、学習棟の隣にある四階建ての建物の中に入るが、問題が発生する。

職員室を見つけたのはいいのだが、職員が誰もいなかったのだ。

考えられるとすれば、全校集会か何かで全員がそちらの方に行っている。

もしくは、部活や個人の用事で偶然にも全員が席を外しているといったところだろう。

 

――――運がないな俺も。仕方がない、待つのも嫌だし、校長に直接聞いてみるか。

  職員室があるってことは、校長室もこの建物の中だろう

 

燕は職員室を後にし、上の階へと登っていく

 

そして三階の端でようやく校長室を見つけた。

 

「……俺の記憶の手掛かりがあるといいんだけどな」

 

ここまで全て空振りで終わっている為か、かなり不安だった。

扉の前に立ちつつ考えていても仕方がないので、とりあえず中に入ろうとドアノブに手をかける。

それと同時に天井の一部が開き、巨大なハンマーが燕の体を強打し、そのまま窓を突き破り

燕の体は宙へと投げ出された。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

バンッ、バンバンッ!

 

――は……無く………

 

何やら声が聞こえてくる。

あれ?確か俺は、校長室に入ろうとしてたんじゃ

そもそも入る瞬間に何か起こったような

 

「う、うぅ、……ここは?」

 

「あ、起きたみたいだよ」

 

燕が目を覚ますと、自分とは違う制服を着た生徒達が大勢いた。

特に特徴のなさそうな奴が、俺が起きたことを報告している。

それを聞いてベレー帽をかぶった少女が、こちらへと寄ってくる。

 

「やっと起きたのね。まぁとりあえず、ようこそ、死んだ世界戦線へ!」

 

少女はそういいながら、俺に手を差し伸べてきた。




はい、っと言うわけで第三話より、ゲストとしてゆりっぺさんにお越しいただきました!
―パァン!

燕「おいこら、何がまともなセリフがあるだ。一言しかねぇじゃねぇか」

ゆ「まったくよ、折角登場したのにこの一言だけだなんて、これじゃ何のためにゲストとしてここに来たのかわからないわ」

人の眉間を打ち抜いといてその言いぐさ、まぁいいです。
とりあえず次回の話でもしましょうか

ゆ「それもそうね、あまり長引かせるのもあれだし」

燕「次回は俺と戦線メンバーの交流で良いのか?」

あ、そのことなんですけど
本格的な交流は次々回あたりになりそうなんですよね

燕「なんでだよ!」

次回は入隊するか否か、じっくり考える描写をメインに書こうと思ってるからです。

ゆ「それって、また私たちの出番はお預けってこと?」

あ~、多分そうなりかねませんね、ただでさえ駄文な上に文字数少ないですしね。

燕「駄文なのは仕方ない、これから上達すればいいさ」

……努力します。

ゆ「さて、本来ならキャラコメみたいにコントをするところだけど、そろそろお開きかしらね」

燕「そうだな、しめに入るか」

了解です。
それでは皆様、『また次回~』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第04話 死後の世界

「ようこそ、死んだ世界戦線へ」

 

ベレー帽をかぶった少女が、こちらへと手を差し伸べてきた。

 

「……いきなり何のことだ?」

 

俺は今、何と言われた。

死んだ世界戦線?何のことだ。

戦線と言っているあたり、この学校では戦争でもやっているのだろうか

いや、それはないだろう

昼間や放課後に、そんな雰囲気は感じなかった。

ならば何と戦っているのだろうか

……いや、そんなことよりも

 

――――コイツは今、なんて言った?

  死んだ世界?どういう意味だろうか

 

「何の事って、まさかあなた、死んだ記憶がないの?」

 

「死んだ、記憶だと?どういうことだ」

 

俺はソファーから飛び起き、ベレー帽の少女へ歩み寄る。

 

「ここは天国だとでもいうのか!?だとしたら俺は、こんな世界には居たくないね!

 毎日授業に出て、放課後は部活か?そんな毎日、俺はごめんだね!」

 

俺がそこまで言い切ると同時に、ベレー帽の少女の口がニヤリと吊り上る。

 

「あなた、今言ったわね。そんな毎日はごめんだと

 なら選択肢は二つよ」

 

ベレー帽の少女は2本の指を、俺の目の前に向けてきた

 

「1つ目は、天使の言いなりになり消される事。

 2つ目は、私達と共に天使を消し去り、この世界を手に入れ自由になる事!」

 

「……なるほど、この世界での自由、それがこの戦線の目的か」

 

「そうよ、そのために戦っている」

 

俺は少し考える。

ここは本当に死後の世界なのだろうか

この世界で死ぬとどうなるのか

いや、俺はその答えを知っている。

むしろ体験したはずだ、思い出せ、この部屋に入る直前の出来事を

 

俺が部屋へ入ろうとドアノブに手をかけた瞬間

天上が開き、その穴から巨大なハンマーが飛んできた。

俺はそのハンマーによって窓の外へと吹き飛ばされ、そのまま地面へと叩きつけられた。

 

あの勢いのまま3階から地面に叩きつけられたとすれば、とてもじゃないが生きてはいないだろう

そのことから、ここでは死んでも生き返るということが、なんとなくだが分かる。

 

「……しばらく考える時間がほしい、明日の放課後、校舎の屋上で答えを言う」

 

俺は身を翻し、出口へと向かおうとしたが

目の前に巨大な斧、たしかハルバートと言ったか

その刃が俺の前に出され進路を妨げる

 

「おい貴様、黙って聞いていれば、いい気になりやがって

 入隊するか否か、今ここで決めろ!」

 

「ちょっと野田君、かまわないで良いから、彼を行かせてあげなさい」

 

ベレー帽の少女が止めに入るが、野田と呼ばれた男はやめる気配がなかった。

 

「おい、聞いてるのか!」

 

ハルバートの先を俺の喉元へ突き立て、更なる脅しをかけてくる。

が、俺は不思議と何の脅威も感じなかった。

 

「……せぇ」

 

「あ?今なんて言った」

 

「ぅるせぇって言ったんだよ!」

 

俺は野田の懐へと体を滑り込ませ、そのまま腕を取り

背負い投げの要領で野田の体を地面に叩きつけた。

 

『なっ!?』

 

その光景にその場にいた全員が驚きを隠せなかった。

俺はそれに構わず、扉を開き、校長室を後にした。




ゆ「えと、作者が居ないので、あとがきの進行は私と月斑君でやることになりました」

燕「逃げたな、ゆりの名前も俺の名前も出さなかったから粛清を受けるとわかってたんだろ」

ゆ「でしょうね、次回のあとがきで地獄を見せてあげないと」

燕「セリフだけだから分かり辛いが、目が本気だぞ」

ゆ「だってそうでしょ!お互い名前を知らないはずなのにあとがきで普通に名前呼びしてるのよ!?
  普通許されないわよ!」

燕「いやだってここ、本来はこの話の裏話をする場所だからな」

ゆ「……コント、コンビニ」

燕「いやいやいや!裏話をする場所だって今言ったばかりだろ!」

ゆ「あたしに死ねってか!」

燕「ボケないと死ぬのかよ!」

ゆ「それにしても、メンバーと交流はさせないとか言ってたくせに、しっかり交流してるじゃない」

燕「唐突のに話を戻したな、まぁいい
  交流って言っても、一方的に話を聞いて、最後は野田にケンカ売られただけだぞ」

ゆ「それも十分よ」

燕「そうか?おっと、そろそろ尺がまずいな」

ゆ「そうね、締めましょうか」

燕&ゆ『それでは、また次回~』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第05話 決断

校長室で野田とかいう奴を叩きのした後、教員棟から出た俺は

 

「……やっちまったぁ~」

 

盛大にため息をついていた。

 

――――なんか知らねぇけど頭にきて、そのまま投げちまったけど大丈夫かなあいつ

  ……それにしても、あの時なんであんなに軽快に動けたんだ?

  俺は何か格闘技でもやってたのかな

 

燕が考えに没頭していると「ぐぅ~」っと、腹の虫が誰もいない道に鳴り響いた

 

「……飯でも食うか」

 

燕は昼の内にクラスメイトからこの世界の通貨について聞いておいたので、金は事務室からすでに貰っている。

 

――――昼はラーメン食ったしなぁ、何食おうかな

 

燕は夕飯を何にするかを考えつつ、足を大食堂の方へと向けた

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

燕はカレーライスを注文し、適当な席でのんびり食事をとっていた。

食事中といっても、考え事をしながらだが

 

――――さて、戦線への入隊をどうするかだな

  別に入隊しなくとも、授業に出なければ問題はないみたいだし

  天使にさえ気を付ければ……

  …………………あれ?

  俺天使の姿なんて見たことないから気を付けようがないんじゃ

 

燕は先ほどの話を思い出すが、どんな姿をしているかまでは流石にわからなかった。

分かると言えば、天使がこの世界を統括しているらしいという事だけだった。

 

――――これは、どうするかなぁ

  姿が分からなければ注意のしようがないか

 

考え事をしている俺が残り一口のカレーを口に運んだ瞬間、突然照明が落ちた。

 

「っ!…な、なんだ?」

 

照明が落ちたかと思えば、今度は階段踊り場にあるスポットライトが点灯し音楽が鳴り響く。

 

「……………」

 

燕は何が起こっているのか理解できなかった。

そのままなにもせずぼーっと突っ立っていると周りの生徒が騒ぎ出した。

 

『おい、ガルデモだ!』

『ライブ始まったよ!』

 

次々と食堂にいた生徒たちが、踊り場の方へと集まっていく

 

「……ライブ?」

 

――――なんだよ、スゲェ楽しそうじゃねぇか

  それになんだろう、どこか懐かしい感じがする。

 

燕は懐かしさを感じつつ席に座り、一人静かにライブの曲を楽しんでいた。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

ライブも終わり、殆どの生徒が寮へ戻る中に燕の姿があった。

 

――――ライブで懐かしさを感じたのは多分、俺の記憶と関係してるんだろうな

  ……生前俺は何をしていたんだろう

 

燕は生きていた頃の自分の姿を想像してみた。

 

野田を倒した時のあの動きから推察するに、空手か柔道みたいな

相手の懐に入る格闘技を身に着けていたのだろう

そして先ほどの食堂で聞いたライブの懐かしさ

あれは音楽が好きで、どこかのバンドのライブを見に行ったりしていた。

もしくは、自分で何かしらの楽器を扱っていたのかもしれない

 

――――格闘技に音楽、何の接点も無い上自分の姿が想像できん

 

今ある情報だけではやはり、自分の姿を想像するのは困難だった。

 

――――そういえばあのバンドも、あのベレー帽と同じ制服を着てたな

 

自分や周りの生徒とは違う制服、あれが戦線の制服なのだろう

だとすればあのバンドも死んだ世界戦線のメンバーである事は間違いない

 

「俺の記憶を取り戻すためにも、入隊した方が都合がよさそうだな」

 

燕は早くも結論をだし、明日の放課後を待つことに決めた。

その後はまっすぐ寮の自分の部屋へと戻り、床に就くのだった。




はい、第05話おつかれさまでした。

燕「今回はゆりはいないのか」

登場してませんしね。
あ、でもここに来る前に制裁はされました。

燕「されたのかよ、まぁいい
  ところで今回の話で俺は入隊を決めたが、あのまま食堂に残ってたら会えてたんだよな」

そうですね、一度は食堂に残って戦線と会う話を書いてたんですけど
なんとなく面白みに欠けるなぁと思いまして、燕君の提案通りの翌日の放課後を待つことにしました。

燕「それは何か意味があるのか?」

いえいえ、ナニモアリマセンヨ?

燕「絶対何か思いついたな」

まぁそれは次回のお楽しみという事で

燕「それもそうだな、次回の話をしてもしょうがない」

そういうことです。
ではそろそろ

それでは皆様『また次回~』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第06話 懐かしさを感じる音

 

死んだ世界戦線と出会った翌日

俺は授業をサボり、校内を探索していた。

 

――――流石にある程度は把握しておかないと面倒なことになりかねないからな

  念入りに場所を覚えるとしますか

 

色々調べて回ったが、どうやらこの学習棟は三つの区画でわかれており

そのすべての棟に、約束の場所である屋上があるらしい

 

――――やっべぇなこりゃ、どの棟の屋上か言ってねぇぞ

  ……ま、どうにでもなるか

 

半ば諦め探索に戻る。

が、特に目ぼしいものは見つける事が出来なかった。

 

「はぁ、ここまで普通の学校だと退屈だな。昼寝できる教室でも探すか」

 

燕は昼寝ができる教室を求め、再び歩き出した。

しかしその直後「なにをしているの?」っと誰かに呼び止められてしまった。

 

それに驚き、燕は勢いよく振り向く

そこにいたのは、燕と同じ銀色の髪をしたまだ幼さの残る少女だった。

 

「授業はとっくに始まっているわ、早く教室に戻って」

 

「……そっちこそ、こんなところで何をしてるんだ?」

 

「私は生徒会の仕事中」

 

「そうか、俺はまだこの学校のことをよく知らないんだ

 だからこうして校内を探索してるんだ、見逃してくれないか?」

 

燕の言葉に少し考える少女だが「だめ、授業に出て」と言われてしまった。

そしてそのまま続けざまに「授業に出ていれば、いずれ報われるわ」と付け加えられた。

 

――――…………は?報われる?

  報われるって何のことだ、いやまさかコイツが天使か!?

 

「……報われるか、今はまだ、そんな気分じゃないんだ」

 

俺はその言葉だけしか言えず、そのまま天使の横を通り過ぎて行った。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

天使と遭遇した後、適当な空き教室を見つけた燕はそこで昼寝をすることにした。

 

――――天使か、とてもじゃないがあんな子がこの世界を管理しているとは到底思えないな

 

床に寝そべり天井を見上げながら、そんなことを考えていた。

授業を出ることを拒んだにも関わらず、向こうからは何もしてこなかった。

そのことだけが、燕の入隊への意思を戸惑わせていた。

 

「はぁ、考えたってしょうがねぇや、答えは出したんだ」

 

――――そう、入隊する方に答えを出したんだ。今頃になって悩んだってしょうがねぇ

 

自分にそう言い聞かせながら、燕は眠りについた。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

♪~~

 

夢の中で音楽が聞こえてくる。

 

――――なんだろう、どこかで聞いたことがある音色だな

 

燕はその音楽に耳を傾け、静かに聞き入っていた。

 

しばらく聞き入っていると、強い衝撃が頭に響いてきた。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

夢の中で強い衝撃を受けた燕は眠りから覚め、ひどい頭痛に悩まされた。

 

「ん、頭痛ぇ」

 

左手で頭を押さえつつ辺りを見渡す、しかし誰一人として人の姿はなかった。

物も落ちていなければ衣服も乱れてはいない

 

――――何の頭痛なんだこれは

 

燕は再度昼寝をしようとは思わずそのまま立ち上がる。

 

「さて時間はっと、いい感じの時間だなそろそろ屋上に――」

 

時間を確認し屋上へ向かおうとするが、何か違和感を感じた。

燕は再度教室内を見渡し、、あるものを見つけた。

それはこの教室に入った時にはなかったと思われるものだった。

 

――――見落とした?いや、でも確かになかったはずだ

 

燕は見つけたものを手に取り確かめる。

 

「……なんでギターがこんなところに」

 

今燕の手に握られているのはアコースティックギターだった。

 

――――なんか手になじむな、俺は聞くのが好きなんじゃなくて

  ギターを弾くのが好きだったのか?

 

不思議と手になじむそのギターを構え、弦を引き始めた。

 

♪~~

 

その音色は素人のものだったが、決して下手ではなかった。

 

――――記憶を無くしても、身体は覚えている。少しだけ俺の記憶に近づいたかな?

 

その後も、身体が覚えている限りの曲を約束の放課後が来るまで弾き続けた。




今回のゲストは生徒会長・立華 奏さんにお越しいただきました。

奏「……………」

燕「おい立華、何か言ったらどうなんだ?」

奏「? 何をしゃべればいいの?」

いや、今回の話について疑問に思ったことでも、今後の展開でも好きなことを

奏「じゃあ、月斑君が最後に引いた曲は何?」

お、おぉう、そこを聞いてきますか
正直何を引かせようか迷ったんですけど、アコギなので設定としては『MY SOUL FOR YOU』ですかね?

燕「……おい作者、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

はいはいなんでしょうか

燕「今いくつ?」

(21)です!

燕「うん、さりげなくリトバスネタを入れたことに関しては何も言わん
  この曲って7の曲だよな、作者の世代ならFが主流だと思うんだが」

いやだって7の曲の方がかっこいいじゃないですか
確かにFの曲もいいんですけど、こうなんて言ったらいいのか
とにかく、好みは人それぞれってことです。

燕「なんかごまかされた気分だ」

奏「ところで、次回はどうなるの?私の出番は?麻婆豆腐は出てくるの?」

いや、そんな一気に質問されても困ります。
って言うかなにサラッと麻婆豆腐の心配してるんですかあなたは

奏「麻婆豆腐は正義だから」

燕「ホント麻婆豆腐好きだよな立華は、今度おごってやるよ」

いやもう麻婆豆腐の話はいいですから
次回はついに入隊となります!

燕「第07話でようやく入隊って小説も珍しいよな」

ホントはもっと早くに入隊させようかと思ってたんですけどね――

奏「そろそろ時間」

あ、ちょっと長くなりすぎたか
なんか中途半端ですけど締めますか

それでは皆様『また次回~』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第07話 入隊、そしてこれから

ついに入隊です!
今回の話はメンバー紹介がメインとなりますので、あまり面白くないかも…



夢中になってギターを弾いていた俺は時計を見て絶句した。

 

「……ヤッベ、放課後三十分も過ぎてんじゃん」

 

俺はギターを元あった場所に置き、屋上へ向かう為急いで教室を出た。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

     ――学習棟C棟 屋上――

 

空き教室のあったC棟、その屋上へ出るための扉の前に到着した俺は少し迷いを感じていた。

本当に入隊してもいいのだろうか、別に入隊しなくてもこの世界で生き抜くのは簡単なのではと

今になって思い始めてきたからである。

 

――――いやいやいや、もう入隊すると決めたんだ。今更戸惑ってどうする!

 

俺は迷いを振り払い屋上への扉を開き、その先で待っていたのは

 

「お、俺の所が当たりだったか。それにしてもいつまで待たせるんだよ」

 

青い髪をした少年だった。

 

「あ、あぁ、悪かったな。少し寄り道してた」

 

「寄り道って、この世界のどこに寄り道するような場所があるんだよ」

 

苦笑しつつ、その少年はこちらへ近づいてきた。

そして俺の近くで立ち止まると、急に真剣な顔になり

 

「さて、入隊するのかしないのか。その答えを聞かせでもらうぜ」

 

本題の質問をしてきた。

 

「……俺は…………死んだ世界戦線に入隊するぜ」

 

「おっし、決まりだな」

 

青髪の少年は笑顔でそう答えると、制服の懐から拳銃を取り出した。

 

「オイオイ、なんで拳銃を取り出す必要があるんだ」

 

それを見た燕があわてだすと青髪の少年は「違う違う、お前を撃つために出したんじゃない」と空いた左手を左右に振りながらそう答えた。

 

「これは合図だよ」

 

青髪の少年はその拳銃を空に向けて発砲した。

 

「これで良し。さて、本部に向かうとしますか」

 

青髪の少年は付いて来いと手でジェスチャーをし、燕を対天使用作戦本部(校長室)へと案内した。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

     ――対天使用作戦本部(校長室)――

 

今回は無事に校長室の中へと入ることができた。

どうやらここの扉は合言葉を言わなければ巨大なハンマーが降ってくる仕組みになっているらしい。

 

「貴方がここに来たってことは、入隊するのね

 歓迎するわ、私は死んだ世界戦線のリーダー、ゆりよ」

 

前回会った少女がこちらへ歩み寄り、自己紹介と共に右手を差し出してきた。

俺はそれに応え、その手を握る。

 

「月斑 燕だ。こちらこそよろしく」

 

「じゃあメンバーの紹介もしておきましょうか」

 

自己紹介は割と簡単に終わった。

案内をしてもらった青髪の少年は「日向」やるときはたまにやるらしい

次に紹介されたのは俺が起きたことを報告した少年「大山」特徴がないのが特徴と、俺の第一印象そのままだった。

 

「そこのデカい体の彼は松下君、柔道が上手いから敬意を払って松下五段と呼ぶわ」

 

「よろしくな」

 

「ああ、よろしく」

 

俺は松下五段と握手を交わす

 

「で、そこの眼鏡を持ちあげてるのは高松君、見た目に騙されちゃ駄目よ馬鹿だから」

 

「は?」

 

「よろしく」

 

「お、おう」

 

眼鏡をあげながら挨拶され、燕は戸惑いがちに返事をする。

 

「目つきが悪くて木刀を持ってるのが藤巻君」

 

「藤巻だボウズ」

 

「ウゼェ、同じ学生のくせにボウズ扱いかよ」

 

「んだと!」

 

「やめなさい二人とも」

 

『ちっ!』

 

短気な二人を抑え、紹介に戻る。

 

「それでそこのデカい斧を持ってるのが野田君」

 

「ゆりっぺの命令だ、今回は何もしない。だが次ゆりっぺを侮辱してみろ

 100回死なせてやる」

 

野田はそう言って切っ先をこちらへ向けてきた

 

「ならまた投げ飛ばしてやろうか」

 

「ちょっと月斑君、野田君を挑発しないの。野田君もそれおろして」

 

「フンッ」

 

野田は渋々ハルバートをおろした。

 

「まったくこれじゃ何時まで経っても紹介終わらないじゃない」

 

ゆりが頭を抱えていると突然俺の目の前に、金髪でバンダナを巻いた少年が飛び出してきた。

 

「Come on, let's dance!」

 

「うわっ!なんだ急に」

 

「あぁ、それは彼なりの挨拶よ。みんなTKと呼んでるわ

 本名は誰も知らない謎の男よ」

 

「おい、そんなやつ入れて大丈夫なのか?」

 

燕はあきれるが、それに構わず紹介は進んでいく

 

「あそこの陰に立っているのが椎名さん、ここに座ってるのが岩沢さん、岩沢さんは音楽バンド『Girls Dead Monster』のリーダーよ」

 

「よろしく新入り二号」

 

「二号?」

 

「ここにいる人の最後ね。彼は音無君、昨日入ったばかりの新入りよ」

 

「音無だ、お前と同じで記憶喪失だ」

 

「あぁ、こちらこそよろしく。記憶喪失者同士仲良くしようぜ」

 

俺が右手を出すと、音無がそれに応え俺の手を握ってきた。

 

「一応これで主力メンバーの紹介は終わったかしらね」

 

ゆりは机に置いてあるパソコンを操作し、顎に手を当て何かを考えている。

 

「……よし月斑君、あなたを実行部隊に配属、サブに新設の『ガルデモ支援班』に配属するわ」

 

『ガルデモ支援班?』

 

俺だけでなく、その場にいた全員が首をかしげた。

 




ようやく入隊までキターーー!

燕「なんかやけにテンション高いな」

だってようやくですよ?まだ07話ですけど、謎の達成感がこみ上げてきたんですよ

燕「そうか、それで今回のゲストは?紹介されてないみたいだが」

いや、今回は諸事情によりゲストなしで進行します

燕「まぁ、メンバー紹介の話だったからな」

実際ガルデモ支援班なるものを創ったので岩沢さんに来てもらおうかとも思ったのですが
次回のネタバレが多くなりそうだったので今回はパスという処置に

燕「なるほどな、で?そのガルデモ支援班ってのは陽動部隊のことじゃないのか?」

近い存在とだけ述べておきます。詳しいことは次回にでも

燕「やっぱ次回に持ち越しか、ならそろそろ締めるぞ」

そうですね
それでは皆様、『また次回~』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第08話 ガルデモ支援班

『ガルデモ支援班?』

 

本部内に居た全員が一斉に首をかしげる

 

「って、岩沢も知らないのか!?」

 

「あぁ、初耳だ」

 

どうやらガルデモのリーダーである岩沢にさえも知らされていないものだった。

 

「おいゆりっぺ、なんで俺たちに黙ってたんだ!」

 

「だってガルデモ支援班の情報が広まったら陽動班から移動の申し建てが殺到するじゃない!

 あたしの仕事が増えるのよ!」

 

「お前が仕事してるところなんて見たことねぇぞ!」

 

日向とゆりが言い合いをしている中、燕はというと

 

――――……何の話をしてるのか全然わからねぇ、陽動班って何?ガルデモがさっき話をした音楽バンドの略って事はわかるんだが

 

一人混乱していた。

 

「あ、あのさ、そのガルデモ支援班ってなんだ?」

 

このままだと収拾がつきそうにないので、自分から話を切り出してみた。

 

「あぁそうね、説明しておかないと仕事ができないものね」

 

ゆりは部屋の電気を落とし、スクリーンに何かを映し出した。

 

「陽動班との違いは、主にガルデモと接触する機会が多いというところね」

 

その後ゆりから受けた説明を簡単にまとめるとこういう感じだ

 

支援班の主な役割を一言で言ってしまえば雑務

ガルデモの練習に必要な機材、休憩用のドリンクなどの補充

そういったガルデモに必要なものを取りそろえるのが仕事らしい

 

あとは実働部隊でもあるため、ライブでは陽動班に護衛を任せ

俺は戦闘に参加しろとのことだった。

 

「説明はこんな感じね。岩沢さん、遠慮なくこき使っていいからね」

 

「分かった、それじゃあ今日はもう遅いし、明日メンバーの紹介をするから

 C棟三階の空き教室に来て、時間はいつでもいいよ」

 

「いつでも?」

 

「あぁ、授業には出てないから。何もなければ大体そこに居るよ」

 

岩沢は「それじゃ」っと片手をあげ、そのまま本部を出て行った。

 

「さて、説明も終わったし、今日はもう解散かしらね」

 

ゆりの言葉で、帰る者もいれば本部に残り談笑する者もいた。

俺もすることがないので帰ろうとすると

 

「なぁ、月斑に制服渡さなくて良かったのか?」

 

音無が思い出したかのようにゆりに質問した。

 

「あ、忘れてた。ちょっと月斑君、制服渡すからちょっと待って」

 

その言葉でゆりは帰ろうとする燕の足を止め、机の中から戦線の制服と拳銃を取り出した。

 

「はいこれ」

 

「制服と拳銃もか」

 

燕が渡された拳銃は『SIGSAUER GSR』と呼ばれる拳銃だった。

 

「天使と戦うのならこれくらいは持っておかないとね」

 

「……銃の練習をする必要もあるのか」

 

燕は明日から待ち受けるガルデモの雑務と、その空いた時間を利用した銃の特訓のことを考えると少し憂鬱な気分になった。

 

「月斑っていったか、俺も銃の特訓を始めたばかりなんだ。よかったら一緒にやらないか?」

 

「音無だったな、そういえばお前も昨日入ったばかりって言ってたな。そうだな、二人でやった方が効率がよさそうだ」

 

燕は音無の提案に乗り、雑務の空いた時間に音無が練習をしているという、連絡橋下の川原に行くことを伝え、寮へと帰ることにした。




はい、ようやくですよ皆様!次回ガルデモメンバー登場です!

燕「おぉ、やっとか」

ヒロインが09話でようやく登場とか、ほかの作品では滅多に見ませんね

燕「普通じゃ考えられないよな」

でも登場はしますけど、本格的な絡みは10話になるんですけどねww

燕「おい、それは許されないんじゃないのか?」

仕方ないじゃないですか、ただでさえ文字数が少ないこの小説なんですから

燕「じゃあもっと文字数を増やせばいいだろ」

それができたら苦労しませんよ、なぜか1000ちょっとで予定のポイントに到達してしまうんですから

燕「…はぁ、まぁそのうち文字数も増えていくと信じるか」

善処はします。

燕「んじゃそろそろ締めるか」

それでは皆様『また次回~』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第09話 記憶の断片とガルデモ顔合わせ

 

実働部隊とガルデモ支援班に配属された俺は今

やることがないので屋上へと来ていた。

 

「……ふぅ、ここは風が気持ちいいな」

 

俺は給水塔の上に寝そべり空を見上げていた。

 

――――……この空も、この風も、全部作りものだっていうのも信じられないな

 

この世界がどういった仕組みなのかは分からない

だけど誰かによって作られた世界なのはなんとなくわかる

それが神の手によってなのか、はたまた人の手によってだろうか

そんな雲を掴むような事を考えながら、俺はは眠りについた。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

気が付くとどこかの施設の前に立っていた。

 

「……どこだ、ここ。俺は屋上で昼寝をしていた筈なんだが」

 

俺は慌てて周りを確認する。

その施設は木々に囲まれており、人里から離れたところにあるようだ。

 

「……なんだこれ」

 

俺が手に持っていたのはギターケースだった。

背中にはリュックを背負っている。

 

――――なんでキターケースなんか持ってんだ俺、背中のバックにはいったい何が

 

俺はその場でリュックの中身を確認した。

中に入っていたのは、数冊の楽譜と大量のお菓子だった。

 

「……は?」

 

正直これ以上の言葉が出てこなかった。

俺は一体この施設に何の用で、どういった目的で来たのか思い出せず混乱していた。

 

そんな時、その施設から数人の子供達がこちらへ走り寄ってきた。

 

「燕兄ちゃん、今日も来てくれたんだ!」

「いらっしゃい燕さん」

「もう、燕兄さん遅いよ」

 

突然大勢の子供に囲まれ、よけい混乱し始めた燕は

 

「お、おいお前等、いきなりなんだよ」

 

その言葉に対し子供達は

 

「何言ってんだよ兄ちゃん」

「いつもこんな感じでじゃれついてるじゃない」

 

燕の戸惑いなどお構いなしにじゃれついてきて、施設の中へと引っ張って行く

 

「ほら、早く行こうよ!」

「今日も色んな曲、聞かせてね」

 

「あ、あぁ」

 

燕は子供達に引っ張られ、施設の敷地へと足を踏み入れた。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「……ぅ!」

 

目を覚ますと、目の前には青空が広がっていた。

 

「……今のは、夢? それにしてもリアルな夢だったな」

 

無意識に額の汗をぬぐい、自分が汗だくになっていることに気が付いた。

 

――――……こりゃ、一度風呂に入らねぇとガルデモの練習部屋に行けねぇな

 

燕は起き上がり、風呂へ入るために屋上を後にした。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

風呂に入った後、C棟へと足を運んだ燕は、偶然岩沢とであった。

 

「あれ、今から練習か?」

 

「ん?あぁ、月斑か」

 

岩沢は立ち止まり、燕が追い付くのを待つ

 

「ちょうどよかった、教室まで一緒に行かないか?どこにあるか分からなかったんだ」

 

「いいよ、こっち」

 

岩沢の案内により、空き教室へとたどり着いた燕は

いつになく緊張気味だった。

 

「へぇ~以外、あんた緊張なんてしないのかと思った」

 

「俺だって緊張するさ、ましてや女子だけのバンドだったらなおさらな」

 

岩沢は笑いながら扉を開け、中にいるメンバーへと声をかけた

 

「みんな、新しいメンバーを連れてきたよ」

 

「ん?新しいメンバー?」

 

一番早く反応を示したのはポニーテールの女子だった。

 

「そ、正確には雑用係みたいだけど」

 

「ぐ、仕事の内容が内容なだけに何も言えねぇ」

 

燕は感情を抑えつつ、自己紹介をする。

 

「新設されたガルデモ支援班に配属された月斑 燕だ。仕事内容がほぼ雑務なので、用事のある方はどうぞご遠慮なく」

 

「そんじゃ早速飲み物買って来ーい!!」

 

金髪でロングヘアーの子がいきなり仕事を振ってきた。

それに対し燕は

 

「OKだ、何がいい?もちろん全員分買ってくるぞ」

 

瞬間的にメモを取り出し買い物内容をメモる準備を整えた。

 

「こら関根、今は自己紹介中だ!勝手に頼むな

 そして新入りも当然のようにメモ帳を構えるな、こっちの調子が狂う!」

 

ポニーテールの子が激しくツッコミを入れてきた。

 

「まったく、まぁいいや、あたしはひさ子

 リードギター担当だ、それからこっちから

 紫の髪をしておどおどしてるのが、ドラム担当の入江だ」

 

「い、入江です。よろしくお願いします」

 

礼儀正しくお辞儀をしてくる入江に対し燕はいつもの調子でそれに応える。

 

「おう、こちらこそよろしく」

 

「それから、自己紹介もせずいきなり注文をかけたこの金髪の子はベース担当の関根だ」

 

少々あきれ気味に紹介されつつも、関根は明るく自己紹介してきた。

 

「ベース担当の関根です。どうぞよろしく!」

 

「あ、あぁ、よろしく」

 

その勢いに押され、少し後ずさり気味な反応になってしまった。

 

「メンバー紹介はこれで終わりだな。じゃあ早速で悪いけど、さっき関根が言った飲み物の買い出し

 頼まれてくれるか?」

 

「おう、なんでも頼まれてやるぜ」

 

その後燕は、ガルデモメンバーからの注文に答える為

校内中を走り回る姿が見られたらしい





………………

燕「……おい」

はい

燕「入江が登場したのはいいけど、以前同様一言しかセリフがないってどうなんだよ」

すみません、前半部分に力入れすぎて後半のメイン部分がちょっと手抜きになってしまいました!

燕「まぁ次回に期待ということで、眼を瞑ってやるよ」

第10話は大丈夫です。予定通り入江と絡ませます!
ネタばらしになりますが、次回のゲストは入江ちゃんです!

燕「期待は裏切るなよ?」

もちろんです。
ではそろそろ締めますか

『また次回もお楽しみに~』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第10話 とんだハプニング前編

 

――パァン、パパァン!!

 

天上学園付近にある川原で、銃声が鳴り響いていた。

ただしそれは戦闘中ではなく、俺と音無が射撃訓練を行っているからだ。

 

「どうだ音無、当たるか?」

 

「俺は十発中八発ってところだな」

 

それを聞いた俺は肩を落とし、ため息をついた。

 

「マジか、俺は十発中三発なんだが」

 

俺と音無が射撃訓練を始めて数日、成果は天と地ほどの差が出ていた。

 

――――なぜだ、なぜ俺はこんなにも射撃が苦手なんだ

 

「お、おい月斑、なにもそんなに落ち込まなくても」

 

音無が励ましているようだが、上手い奴が下手な奴に対する言葉は全て逆効果だ。

 

「うるせぇ、…っとすまない、今日の練習はここまでだな」

 

「あ、時間か。何時も付き合ってもらって悪いな」

 

「いや、俺も上手くなりたいしいいよ」

 

燕は「またあとでな」っとだけ伝え、その場を後にした。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

支援班の仕事中、燕は考え事をしていて仕事に集中できていなかった。

 

――――くっそう、必ず上手くなって見返してやる。

 

「………輩、……む…先………」

 

――――しかし、俺は射撃のセンスゼロ、ここから上達するには

 

「つ………!月……輩!聞い………だ……!」

 

――――あぁクソ、いい案が出てこねぇ、いっそのこと近接戦でも極めるか?

 

「聞いてください月斑先輩!!」

 

突然聞こえてきた大声と共に、俺の意識は思考世界から戻ってきた。

それと同時に俺の背中に衝撃が走った。

 

「え?ちょっ!うわぁあああ!」

 

俺は棚の上に書類が詰まった段ボールを載せようとしていた所で考え事に没頭していた為

中途半端な格好になっていた。

 

「へ?きゃぁあああ!」

 

そんな状況下で背中に衝撃を食らえば当然バランスが崩れるわけで

燕が支えていた中途半端な段ボールは、燕の手をすり抜け

燕と声をかけてきた人物へ向かって落ちてきた。

 

「ぐっ!」

 

燕は落ちてきた段ボールを顔面で受け止め、その勢いのまま後ろへと倒れた。

 

「きゃう!」

 

倒れた瞬間何かを巻き込んだ気がするが、燕の意識はそこで途切れた。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「う、…あれ、俺なんで寝てたんだ?」

 

気が付くと、教室の天井が見えた。

 

「さてっと、今の状況は――――って身体が重い、なぜ……」

 

俺は自分の状況を見ようと、頭だけ起こし自分の身体を見ると

 

「……ぅん」

 

紫髪のロングヘアーが目に入ってきた。

 

「……えっと、なんで俺は入江と寝てるんだ?しかも俺の上で」

 

燕は思考を全力で回し、寝る前のことを思い出す。

 

――――たしか俺は支援班の仕事でこの教室に来てたよな、そこで段ボールの整理を

  って、段ボールの中身がぶちまけられてるし

 

燕は教室の周りを見渡し、状況を再度確認した。

 

片付けられている段ボールと、未だ手付かずの段ボールの山、中身が散乱して空っぽになった段ボール

俺の上で寝ている入江、その下敷きになっている俺、そしてそんな俺たちを見ている遊佐

 

「……は?おい遊佐、何時からそこに居た」

 

「……お二人が縺れ合って気絶した所からです」

 

――――俺と入江が縺れ合って気絶した?

  俺は一人で仕事をしていた筈なんだが

 

「悪い、もっと詳しく説明してくれないか?」

 

「月斑さんが段ボールを棚に載せようとしていた所を、入江さんに後ろから声をかけられそれに驚き手を滑らし、段ボールは月斑さんの顔面に直撃。そのまま倒れてしまいました」

 

「了解、多分分かった。つか思い出した」

 

――――確か段ボールを載せようとしたところで考えに没頭したんだよな

  それで急に声をかけられたもんだから驚いて、手を滑らせた

  …………そこまでは覚えてるんだけどなぁ

 

いくら考えても、入江と縺れ合って倒れた記憶がなかった。

 

「……ん、あれ?ここどこ?」

 

「あ、起きたか入江」

 

「へ?」

 

気が付いた入江は、先程の燕同様に状況を把握しようと辺りをキョロキョロし始めると

突然顔を真っ赤にし始め

 

「ふぁああああああああ!」

 

めちゃくちゃ叫びながら俺の胸に顔を埋めた。

 

「……だから、どいてくれって」

 

その後しばらく遊佐に見守られながら、そんな状況が続いた。





今回のゲストは入江ちゃんでーsパァン!

燕「ろくに登場してないじゃないか!」

入「そうですよ、折角登場できると思って張り切ってたのに!」

まさか射撃苦手な燕君が一発で眉間を打ち抜くとは
前後編で構成してるんですから勘弁してください

燕「そうだよ、なんで前後編になってるんだよ」

いやぁ、ちょっと訳ありというか何と言うか
今回のノルマまで達しなかったんでこういった形に

入「まとめようとは思わなかったんですか?」

最初はそう思った。だけど書いてるうちにこれ入れた方がいいんじゃね?っていう
ストーリーを思いついたもので
あとは急に文章が長くなるのもどうかなぁ~って

燕「まぁ確かにいつもより長くなると違和感あるしな」

入「って事は、次回も私回?」

そういうことになりますね

燕「いや、今回の話は入江回だったのか?遊佐ともいつ自己紹介したんだよ」

そこは語られなかった話の中に(要はご都合主義

燕「まぁいい、そんなことより今更だが俺のキャラ設定ってどうなってるんだ?」

入「岩沢さんと同学年って事や、銀髪っていうのは読んでたらわかることだけど
  それ以外の情報は特にないよね」

それに関しては第11話を投稿した後にキャラ設定を投稿予定ですので、そちらをお待ちください

燕「そんじゃ今回はこの辺りまでだな」

それでは皆様『次回もお楽しみに~』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第11話 とんだハプニング後編

「……はぁ、エライ目に合った」

 

入江が離れてくれるまでかなりの時間を要した。

何を話しても聞いてくれないし、顔をあげたかと思えば

何が恥ずかしいのかまた俺の胸で顔を隠す。

このやり取りを何十回か繰り返したところでようやく離れてくれた。

 

「うぅ、…ごめんなさい」

 

「いや俺が考え事に夢中で気が付かなかったのが悪いんだし

 俺に用があったんだよな、なんだ?」

 

「えっとその、新しいドラムセットが届いたから、それを運ぶのを手伝って貰いたくて」

 

「あぁあれか、分かった。この仕事が片付いたら運んどくよ」

 

新しいドラムが届いた理由、それは数日前に遡る。

いつも通り練習をしていた昼過ぎ、関根が休憩中にふざけて入江抱きついた。

そしてその反動で入江の持っていたスティックが空中に舞い、落下してきた勢いでスネアとトムに突き刺さってしまったのだ。

そもそも突き刺さる時点でおかしいのだが、消耗していたということで納得しておこう。

 

燕は段ボール整理に戻るが、いつまでたっても戻ろうとしない入江が気になって仕方がなかった。

 

「……なぁ、いつまでそこに居るんだ?急いで運んで欲しいのなら今すぐ運ぶぞ?」

 

「え?あ!いえ、……そういうつもりじゃなくて」

 

入江は少し頬を染め、動揺し始める。

 

「……ちょっと、仕事してるところが見たいなって」

 

「ん?こんなの見たって退屈だろ」

 

そういうと燕は作業に戻ると「…そんなことないです」っと小さな声で入江が答えた。

 

「え、なんか言ったか?」

 

「いえ何も、仕事が終わるまでここで待ってます」

 

「そうか、なら急いで終わらせるな。あとすこしで終わるから」

 

「はい」

 

その後燕の仕事は、あと少しと言いながら作業が終わったのは一時間後だった。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「さてと、これでセッティング完了かな?」

 

「ありがとうございます。運ぶだけじゃなくてセッティングまで」

 

燕は新しいドラムセットをまとめて荷台で運んできた後、古いドラムセットと交換ついでにセッティングまで済ませていた。

 

「好きでやってることだからな、気にしなくていいよ」

 

再度ドラムを叩いてその位置を確認する。

 

「ただ俺が叩きやすくなってそうだから、あとは自分でやってくれ」

 

「はい、わかりました」

 

燕と入れ替わり入江がドラムの前に座るが

 

「あれ?前と同じくらい叩きやすい」

 

「ん、そうか?俺用っぽくなったと思ったんだが」

 

「セッティング上手いんですね」

 

「あぁいや、多分生前音楽やってたのが効いたんだろ」

 

「記憶思い出したんですか?」

 

「……少しだけだけどな」

 

燕はこの間見た夢のことを話した。

自分がギターを弾いていたであろうと言う事

その施設の子供たちに好かれていたこと全部

 

「……それ、ホントに生前の記憶だと思います」

 

「そうか?夢なんてそうそう信じられるかよ」

 

「だって、月斑先輩がそこに居ることが不思議に思えたんですよね」

 

「あぁ」

 

「ギター弾けるんですよね」

 

「弾けるな」

 

「だったら生前の記憶だと思います」

 

入江は確信を持ったように言い放つ

 

「…ギター、聞かせてもらえませんか?」

 

突然入江がそんな申し建てをしてきた。

 

「はぁ?なんだよいきなり」

 

「ちょっと聞いてみたくなって、駄目ですか?」

 

――――いやいやいや、そんな上目遣いは反則だろ

 

燕は頭を掻きながら少し考えると

 

「……はぁ、いいよ。一曲だけ弾いてやる。ただし、歌わないからな」

 

「弾いてもらえるだけで十分ですよ」

 

燕は岩沢が使っているのとは別のアコギを取り出しギターを構えた。

 

「わぁ、意外と似合いますね」

 

「意外ってなんだよ、まぁいいさ」

 

燕は椅子に座るとギターを弾き始めた。

曲はこの世界に来て初めて弾いた『My Soul for You』ではなく『Submarine Street』を弾き始めた。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「ま、こんなもんだな」

 

ギターを弾き終わった燕の第一声はそんなそっけないものだった。

 

「こんなもんって、すごく上手じゃないですか!」

 

「いやいや、岩沢やひさ子に比べたら俺なんてまだまだ」

 

「確かにあの二人に比べれば――」

 

その言葉に燕は膝から崩れ落ちた。

 

「あ!いえ、そんなつもりで言ったんじゃ」

 

「いやいい、元々自覚してたし」

 

燕は立ち上がるとフッと窓の外に目を向けた。

 

「もう夕方か、飯食いに行くか?」

 

「……は、はい!」

 

教室を出ていく燕の後ろを小走りで追いかけ、肩を並べて食堂へ向かった。

 

 




燕「これ、本来の結末だったのか?」

入「なんか、前に見たプロットとはずいぶん違う結末でしたけど」

いやいや、なぜかこうなっちゃったんですよねww

燕「笑うな!」

まぁ、こういった結末もいいかなっと思ったんでいいじゃないですか

入「私は元の方が…」

燕「ん、なんか言ったか?」

入「いや、何も」

まぁまぁ今回使わなかった話も別の話で使う予定ですから

入「そ、そうなんですか」

燕「さて、そろそろ頃合いじゃないか?」

そうですね、ではそろそろ

『また次回もお楽しみに~』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

『月斑 燕』人物プロフィール

っというわけで今回は燕君の紹介です!

 

燕「唐突な始まりだな、こういうのは普通あとがきでやるんじゃないのか?」

 

それ思ったんですけどね。

なんかこう「キャラ紹介が載ってる話ってどれだったっけ」ってなるのが嫌なんですよ。

 

燕「あぁ、作者読んでる最中に気になったことがあったらすぐにキャラ紹介読んでるもんな」

 

そんな時によくあるんですよ、キャラ紹介どれだー!って、そうならない為の処置ですね。

 

燕「……なんかあとがきコーナーみたいな感覚がするから俺はあまり好きじゃないんだが」

 

まぁまぁ、そこは臨機応変に

 

燕「まぁ、いいや。そんじゃ俺のプロフィールを載せればいいんだな」

 

 

*ここらか先は多少のネタバレを含みます。それでも良いという方は先へ

 ネタバレが嫌いな方は注意しながら見るか、backspace推奨です。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

名前:月斑 燕

読み:つきむら つばめ

性別:男

誕生日:4月24日

年齢:18歳(高校三年生)

身長:175

体重:64

髪型:銀髪のショート(備考を見てもらえばある程度はわかると思いますが、それでも想像できないという方はBLAZBLUEのラグナを参照にしてください)

性格:普段は冷静沈着だが、仲間や大切なものが絡んでくると直ぐに熱くなる。

使用武器:太刀

     サバイバルナイフ×4

     SIGSAUER GSR

使用楽器:Fender Telecaster Custom 黒

     アコースティックギター

服装:日向と同じ格好だが、Tシャツは黒、カッターシャツとブレザーの袖を巻くって半袖の状態にしており、ブーツを履いているがズボンの裾に隠れて目立たない。戦闘の際は両手に手首まである指ぬき手袋を着用する。

備考:本作の主人公

   この世界に来た当初は記憶を失っているが、徐々に「夢」を見ながらその記憶を思い出していく。

   大雑把で口は少し悪いが根はやさしく、常に周りに気を配っている。

   髪型に関してはあまり気にしておらず、寝癖もそのままになっている。その為、一度でも寝癖を直すと別人に見られてしまう。

   銃の訓練を行っていたがあまりの命中力のなさに近接戦へ切り替えることに、その結果本人も驚くほど太刀筋が上達していくことに

   戦闘能力は椎名に匹敵するほどの力を持つ

   射撃に関しては『戦線一の下手くそ』とゆりから太鼓判を押されるほどひどい

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

燕「ま、こんな感じだな。説明補足だが、俺の記憶は夢以外でも思い出すらしい

  そこは本編を見ながら楽しみに待っていてくれ」

 

生前の頃の設定はまた後日、この話に追加する予定です。

更新を行う際はあとがきコーナーにて告知しますのでご安心を

 

燕「それにしてもこの後の話で、俺が太刀を使う事バレバレじゃねぇか」

 

ちなみにサバイバルナイフは懐に2本、右腰に2本という配置設定です。

 

燕「まだネタバレするのかよ!」

 

入「それで左腰に太刀、背腰に拳銃でしたよね」

 

燕「入江!?お前もか」

 

入「だって出番少ないんですよ!?こういうタイミングじゃないと出てこられないじゃないですか」

 

燕「それはそうかもしれないが」

 

まぁまぁ御二人さん、一応この作品は原作よりも時間は長くする予定なんですから

 

燕「どういう意味だ?」

 

正確な時間はわかりませんが原作内部の時間が約3か月程度だとしますね。

それでこの作品は約1年と少しの時間で構成するというわけです。

 

入「それってつまり、季節イベントが存在するって事?」

 

ゲーム感覚で言えばそんな感じですね

 

燕「ただ影との戦闘は最後に回るんだよな」

 

そうですね。そっちの方が何かと都合がいいですし

最後の卒業にもつなげやすいですし

 

入「季節イベントって事は…」

 

燕「おい、何考えてんだ?」

 

入「別に何も」

 

燕「……なんかこのやり取りついさっきもやったような」

 

その点についてはいろいろ考えてますからご安心を

 

まぁ会話はこの辺にして、次回の更新まで『お楽しみに~』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第12話 降下作戦開始

 

何やら報告があるとの事で、戦線主力メンバーが本部へと集められていた。

 

「武器庫からの報告です。弾薬の備蓄が残りわずかだそうです。次天使と一戦交える前に補充しておく必要があるかと」

 

「新入りも入った事だし、新しい銃もいるかもね」

 

高松が主な報告内容を述べた後、大山が補足する。

 

「そうね、分かったわ。本日のオペレーションは『ギルド降下作戦』といきましょう」

 

――――降下作戦。この世界に乗り物なんてものはない、一体どこに降下するんだ?

 

燕は独自にこの世界の事を仕事の合間に調べており、駐車場はあるものの一切車やバイクといった一般的な乗り物が存在しないことを知っている。

 

「どうした音無」

 

隣で日向が音無に声をかけるのが耳に入ってきたのでそちらに耳を傾けてみる。

 

「いや、高いのは得意じゃないっつぅか――」

 

「何言ってんのよ。空から降下じゃないわ、ここから地下へ降下するのよ」

 

「あぁなんだ地下かぁ――って地下ぁ!?」

 

音無の言葉にゆりが訂正を入れ、それにノリツッコミを入れる音無

 

――――おぉ、見事なノリツッコミだな

 

それに構わずゆりは話を続ける。

 

「あたし達はギルドと呼んでる、地下の奥深くよ。そこでは、仲間達が武器を造ってるの」

 

「地下で武器が造られてたのか」

 

「僕達と違って、武器に詳しい人たちが集まってるんだ」

 

燕のつぶやきに大山が説明してくれる。

 

「へぇ~銃以外にも何か造ってるのか?」

 

「さぁそこまでは分からないよ」

 

流石に大山でもそれ以上の事は知らないみたいだった。

 

音無とゆりの会話はその間にも進んでいたらしく、ちょうどギルドへ連絡を入れるところだった。

 

『へぇ~い』

 

「あたしだ。今夜そちらに向かう、トラップの解除を頼む」

 

『了解、今晩だな待ってるぜ』

 

それだけの短いやり取りで連絡は終了した。

 

「よし。今回は、このメンバーで行きましょ」

 

ゆりは室内を見渡しながらそう言った。

 

「あれ、ねぇ野田君は良いの?」

 

「あのバカはどうせまた単独行動してんでろ」

 

「All right let's go. 」

 

どうやら野田は不参加のようだった。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

――――体育館――――

 

「せーの!」

 

松下五段の掛け声と共にステージ下の椅子や器具を収納している台車が引っ張り出される。

 

その中にあったのは床に取り付けられた扉だった。

 

「よーし行くかぁ」

 

藤巻・椎名、続いてゆりがステージ下の空間へと潜って行き、それに続いて他のメンバーも入っていく

 

「ほら、突っ立ってないで行くぜ」

 

「この中にか?」

 

後ろで音無と日向が会話をしているがそれに構わず、燕は梯子を下りて行く

 

「ギルドに入るのも久しぶりだね」

 

梯子を下りた先で大山が感想を述べていた。

 

「滅多に来ないのか?」

 

「えぇ、ここへ来るのは今回みたいに弾薬が無くなる前くらいね」

 

「おい、誰かいるぜ」

 

藤巻が誰かの存在に気づいたらしく、持っていたライトをそちらへ向ける。

そこに居たのは

 

「…フッ」

 

「うわぁ~バカがいた」

 

ハルバートを構えた野田(バカ)がカッコつけて立っていた。

 

「音無と月斑と言ったか、俺は貴様らをまだ認めていない」

 

ハルバートの先を燕と音無の二人に向けそんなことを言ってきた。

 

燕が呆れている後ろでは

「わざわざこんな所で待ち構えてる意味が分からないよな」

「野田君はシチュエーションを重要視するみたいだよ」

「意味不明ね」

 

燕同様に戦線メンバーも呆れている様子だった。

 

「別に認められたくない」

「俺より弱い奴に認められる筋合いは無いな」

 

俺と音無は野田に挑発するようなセリフを同時に吐いた。

 

「貴様ら、百回では物足りん。千回殺して――ったはぁああ!」

 

ハルバートを両手で握り、こちらへ歩み寄ってきた野田だったが

突然横から巨大なハンマーが飛んで来た為、セリフを中断され、その身はハンマーに吹き飛ばされ

壁の方へ飛んでいく姿を、戦線メンバーは呆れ顔で見る事しかできなかった。

 

野田の身体は壁に打ち付けられるだけでなく、巨大なハンマーで叩かれ、崩れていく瓦礫と共に地面へと落ちて行った。

 

「臨戦体制っ!」

 

野田の事などお構いなしに、ゆりの掛け声と共に全員が銃を構え配置についた。

 

「トラップが解除されてねぇのか!」

 

――――おかしい、ゆりはちゃんとギルドに連絡していた。なのにトラップが解除されてないなんて

  考えられるとすれば、連絡を受けた隊員が解除を忘れたか、あるいは

 

燕がそこまで考えると同時に「天使が現れたのよ」っとゆりが断言した。

 

「この中にか」

「Just wild heaven.」

「不覚」

 

「ギルドの連中は、俺たちが来る事を知っててこんな真似をするのか」

 

その質問に対して燕が答える。

 

「おい音無、そんな質問は無駄だぜ」

 

「なぜだ」

 

「月斑君は理解しているようですが、あなたはまだ分かっていないようですね」

 

高松が割って入ってきたので、燕は黙り込む

 

「何があろうと私達は死ぬ訳じゃない。死ぬ痛みは味わいますが」

 

「そういう事だ」

 

「それが嫌なんだが…」

 

どうやら音無は、もう死ぬ痛みはこりごりのようだ。

 

「しかしギルドの所在がバレ陥落すれば、銃弾の補充などが失くなります。それでそうやって天使と戦うというのです?」

 

高松の言葉に音無が反論できないでいる中、話は進んでいた。

 

「ギルドの判断は正しい」

 

「天使を追うか?」

 

「トラップが解除されてねぇ中をかよ」

 

「天使はそのトラップで何とかなるだろ?戻ろうぜ」

 

日向の意見に音無は反対のようだが、燕はそうじゃなかった。

 

「何とかなるって言っても、掛からなかったらどうするんだよ」

 

「月斑君の言う通りね。掛かったとしても、それは一時的な足止めにしかならない

 ……追うわ、進軍よ!」

 

ゆりは進軍命令を出した。

そして燕はこの時知る由もなかった。この先に待ち構える恐ろしいトラップの数々を

 





初の2000文字超え!!

燕「うれしそうだな作者」

いやぁこのまま最後まで書けるんじゃないかと思いましたよ。

入「ついに原作第二話に突入ですね」

燕「ところで入江はこんなところで何してる?」

入江ちゃんはまたしばらく登場できないので、ゲストじゃなくあとがきコーナーの正式メンバーにしてしまおうかと

入「という訳なので、皆さんどうぞよろしく」

燕「このペースだと原作第三話まで3.4話は使いそうだからな」

入「え、そんなに先になるんですか?私の出番」

すみません、ホントすみません!
一話が短いからこんなことに

燕「あ~あ、作者が泣きながら謝り始めちまった。
  今回はこの辺で終わりだな」

入「そうですね。それでは皆さん!」

燕&入『また次回もお楽しみに~』



あ、今度ちょっとしたアンケートを取りたいと思っております。
内容に関しては次々回あたりのあとがきコーナーにて

*TKのセリフはAB!まとめWikiを参照にしています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第13話 恐怖のトラップ祭り!

――――ギルド連絡通路 B3――――

 

ゆりを先頭に戦線メンバーが警戒しながら進んでいく

 

――――一応俺も銃を構えてはいるが、正直当てれる自信がないな

 

沈黙したままここまで来たが、その沈黙を音無が破った。

 

「そういや、どんなトラップがあるんだよ」

 

「いろんなのがあるぜぇ、楽しみにしてな」

 

その質問に日向が答えた。

 

――――楽しみにって、この警戒は何のためだよ。まぁ気を紛らわせるためなら良いけどな

 

燕は音無と日向の会話に耳を傾けつつ、銃はしっかり構えていた。

 

「なぁ、この辺りにはトラップは無いのか?」

 

「う~ん、なにかあったような気がするんだけど」

 

燕の質問に大山が不吉な返答をしてきた。

 

「おいちょっと待て、なんだそn――「まずい、来るぞ!」――っ!!」

 

突然の椎名の言葉により、全員が後ろを振り向く

その瞬間地響きが起こり天井が崩れ、巨大な鉄球が落ちてきた。

 

「走れっ!!」

 

その言葉がなければ戦線メンバーは未だ硬直して動けなかっただろう

全員鉄球を背に走り始めるが、このままではいずれ押し潰されてしまうと思っていた時

先行していた椎名が退路を見つけたらしく、こちらに呼びかけている。

 

次々と戦線メンバーがその退路の中へ逃げ込んでいくが、最後尾にいた俺・音無・日向・高松の四人はまだ通路に残されていた。

 

――――このままだと退路に着く前に押し潰される。ここは一か八か!

 

燕は左の壁際へ両手両足を伸ばした状態で倒れこんだ。

その直後、目論見通りに鉄球と壁の僅かな隙間で助かることができた。

 

「うわああああぁぁぁぁぁ」

 

前方の方で高松の叫び声が聞こえてきたが、おそらくはやられたのだろう

 

「高松君以外は無事みたいね」

 

ゆりの言葉を聞いて少し後ろを見てみると、音無の上に日向が覆い被さり倒れていた。

どうやら俺は日向と同じことを考えていたらしい。

 

「いいのかよ、助けなくて」

 

「死ぬ訳じゃない、ほっといても自力で抜け出して地上に戻るさ」

 

日向が音無に覆い被さったままそんな会話をしているのを見て燕は

 

「お前らコレなのか?」

 

『違ぇよ!!』

 

――――全力で否定されてしまった。つか息ピッタリだなオイ

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

――――ギルド連絡通路 B6――――

 

「なんだか急に場違いなところに着いたな」

 

今までの通路とは違い、未来的な通路に来ていた。

通路内は下から赤いライトで照らされており、トラップのような雰囲気を漂わせていた。

 

「開く?」

 

「もち無理だぜ」

 

ゆりの質問に藤巻が即答する。

 

「おい藤巻、無理なら誰かにかわれ」

 

燕がそういった直後通路の後ろが閉鎖され、この通路に閉じ込められてしまった。

 

「あぁ!?しまった忘れてたよ。ここは閉じ込められるトラップだった!!」

 

閉じ込められた瞬間、大山がこのトラップの存在を思い出したようだった。

 

「そんな大事な事忘れるなよぉ!!」

 

大山の言葉に音無がツッコミを入れる。

 

――――もっと早く思い出してくれれば回避できたものを

 

燕が呆れ果てていると、通路内の明かりが天井の蛍光灯に切り替わった。

 

「ここからヤバイのが来るわよ!しゃがんで!」

 

ゆりの言葉に従い、全員がその場にしゃがむ

その瞬間、何かが壁にある溝を走って行った。

 

何かが通り過ぎた後、椎名は煙玉を投げた。

 

「この密閉された空間でそんなもの投げるんじゃねぇよ!ってなんだあれ」

 

燕が見たものは先程壁を走って行った物から出ている赤いセンサーだった。

 

「当たるとどうなんの?あれ…」

 

「最高の切れ味で胴体を真っ二つにしてくれるぜ」

 

「洒落にならねぇ…」

 

音無の問いに日向が答え、燕は苦笑いする。

 

「第二射来るぞ!!」

 

藤巻の声と共に赤いセンサーが一本追加され、再び壁を走り始めた。

 

「どうすればいいんだよ!?」

 

「くぐるのよ!」

 

ゆりの言葉に全員が上げていた頭を下げ、回避に成功する。

 

「第三射来るぞ!!」

 

「第三射何だっけ!?」

 

「Xだ!」

 

再び藤巻が報告する。

第三射の赤いセンサーはXの形状で、横一文字の時に比べ範囲も広そうだった。

 

「あんなのどうしろってんだよ!」

 

音無が情けない叫びをあげるが「それぞれ何とかして!」っと投げやりな答えが返ってきた。

 

次々とメンバーが避けていき、燕も飛び越えて避けることに成功する。

がしかし

 

「うぐぉぉおおお!!」

 

最後尾にいた松下五段は避けきれず、センサーの餌食になってしまった。

 

「開いたぞ、急げ!!」

 

閉じられていた扉が開くと同時に、全員が雪崩の様に一斉に飛び出した。

 

「はぁ、無事に脱出できたか」

 

燕はため息をつき後ろを振り返ると、大山が思いっきり吐いていた。

 

「…大山の奴どうしたんだ?」

 

「今度の犠牲は松下くんかぁ」

 

「あ、なるほど」

 

――――松下の断末魔と今の大山の状況、バラバラになった死体を見たんだろうな

 

燕は自分で解釈し納得する。

犠牲を出しつつもこのまま進軍するようだった。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

――――ギルド連絡通路 B8――――

 

センサートラップから移動した先に、長い梯子があった。

今までは坂道や階段が多かったのだが、梯子は入口以外では初めてのケースだった。

 

全員梯子を降り切り警戒しながら進んでいると、上から小石が落ちてきた。

気になり上を見上げると、天井が落ち始めていた。

 

「トラップが発動してるわ!」

 

「しまった忘れてたよ!ここは天井が落ちてくるトラップだったぁ!!」

 

「だからそんな大事な事忘れるなよぉおお」

 

もうだめだと思ったが、何かにぶつかる音がしただけで潰された感じはしなかった。

恐る恐る目を開けると、TKが体を張って天井を支えていた。

 

『TKッ!!!』

 

その光景に全員が叫ぶ、叫ばずにはいられなかった。

 

「Hurry up!今なら間に合う! Oh…飛んでいって抱きしめてやれェ……」

 

「ありがとう」

「じゃあな」

「達者でな」

 

ゆり・藤巻・日向の三人は呆れるほどの返答だけで先へ進んでいった。

 

「……Sorry」

「……悪い、助かった」

 

俺と音無は謝った後で天井トラップから脱出した。

 

「犠牲を無駄にしないようにね。行くわよ」

 

――――まだまだ先は長そうだ。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

――――ギルド連絡通路 B9――――

 

日向とゆりが先行して通路の確認に出る。それを確認して、残りのメンバーが通路へと出るが

 

「どうした?」

 

突然立ち止まり地面を見ていたゆりに日向が声をかけた。

 

「何か――っ!!」

 

何かに気が付いたゆりだったが、時はすでに遅く

次々と床が抜け落ちていった。

 

「しまったぁ!忘れてたよここはぁぁぁ……」

 

「だ、だから!忘れるなよぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

言い切る前に大山は奈落へと落ちていき、律儀にも音無がツッコミを入れた。

 

「ぐあぁ、肩が外れっ…ちまう!!」

 

「うぅ…!重すぎて…持たないっ!!」

 

今燕達が置かれている状況は

残った足場に椎名がつかまり、藤巻の腹にロープが巻かれ

その下に、燕・ゆり・日向・音無の順でぶら下がっている。

 

「俺と音無も落ちるか!?」

 

「ちょっと待て勝手に決めるな!」

 

日向は少しでも軽くする為、自分と音無も落ちる事を提案するが

音無が頑なに拒否した。

 

「ここで戦力を失うのは得策ではないっ!」

 

椎名も日向の意見には反対のようだった。

 

「椎名の言う通りだ!ここで人数減ったら後に響くぞ!!」

 

燕も必死に藤巻の足を掴みながら反対する。

 

「分かってるわよ!早く登んなさいよ!」

 

ゆりは下に居る音無に呼びかける。

 

「音無、いけるか!?」

 

「やるしかないだろ!」

 

音無が力を込めて登ろうとすると、体重が掛かり上に居る燕とゆりが苦しむ

それでも音無には早く上に上って貰わないといけないので文句は言わない

 

「何してんの、休んでないで早くしなさいよ!!」

 

「何処掴めばいいんだよぉ!!」

 

「何処でもいいわよ!好きにしなさいよ!」

 

今はゆりの足元に居るみたいだが、さすがに女子の身体は掴み難いらしい

 

「今そんなこと気にしてる場合か!早く登れ!!」

 

肩が限界に近づいてきた燕も今は叫ばずにはいられなかった。

 

その後音無は何とか上まで辿り着いたが

 

「きゃあぁぁ!そんなとこ持てる訳ないでっしょっ!!」

 

「うぉあ、うわぁぁああああバカぁぁぁあああああああああ!!!」

 

ゆりのどこを掴んだのかは知らないが、戦力がいるこの状況で日向は蹴り落とされてしまった。

 

そして何事も無かったかのようにゆりが登り、続けて燕も登る。

 

「ふぅ……ついに五人になっちゃったわね……」

 

「へっ、よくもまぁ、新入りのテメェらが生き残ってるもんだな」

 

「……まぁな」

 

「流石に次は死ぬかも知れないがな」

 

「その通りだ、次はテメェらの番だぜ……」

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

――――ギルド連絡通路 B13――――

 

「…………」

 

部屋の中には大量の水が流れ込んでおり、藤巻は先程溺れ死んだところだ

 

「水攻めね……」

 

「コイツ、カナヅチだったのか…」

 

「さっきのセリフはまさに死亡フラグだったからな」

 

椎名は藤巻が落ちる少し前に水の中を先行して様子を見に行ってもらっている。

 

「プハァ、…出口はコッチだ、来い!」

 

椎名が出口を見つけたようなので、潜水してついていく。

ちなみに藤巻はその場に放置したままで

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

――――ギルド連絡通路 B15――――

 

水から上がると同時に、新鮮な空気を思いっきり吸い込んだ。

 

「ハァ、ハァ、ったく長ぇっての」

 

水路は思いのほか長かったらしく、息切れを起こすには十分過ぎる程だった。

 

音無は既に対岸へと上がっており、ゆりの手を引いていた。

 

「ほら、月斑君」

 

上がったばかりのゆりも、燕へ手を差し伸べる。

 

「あぁサンキュー」

 

燕はその手を取り岸へと上がる。

 

「ゆり、こっちだ!」

 

椎名が先に進む道を見つけたようだが、そこは川を挟んだ反対側にあった。

 

椎名を除く三人は、椎名のいる場所へ向かおうとするが

川上から子犬のぬいぐるみが入った小さな段ボールが流れてくるのが目に入った。

 

「ん? 何であんなもんが?」

 

「あれは……!」

 

それを見たゆりは何かを察したらしいが、床抜けトラップの時同様に遅かった。

 

「あああぁ!子犬が流されているうぅぅぅ!!トウッ!!」

 

椎名は全速力で川へ近づきそのままジャンプ

 

「えええぇ!!?」

 

「椎名さん駄目ぇ!!!!」

 

「よく見ろ椎名ぁ!!!!」

 

燕とゆりの叫び虚しく、椎名は子犬のぬいぐるみ手にし

 

「不覚! ぬいぐるみだったああぁ……」

 

そのままぬいぐるみを腕に抱きながら滝壺へと落ちて行った。

 

「くっ…! 椎名さんまでもトラップの犠牲にっ!」

 

「あれも天使用のトラップかよッ!? ……つか、一目で気づけよ」

 

「なんであんなもん考えたんだよ。ピンポイントで椎名を狙ったろ」

 

「可愛いものに対する誤認は、彼女の弱点よ……」

 

ゆりは悔しそうに握り拳をつくっている。

 

三人になってしまったが、ゆりは先へ歩いて行く

それを見た燕と音無も後に続いて行った。

 

 





流石にトラップ全部書くのは疲れた……

燕「そのおかげで過去最高文字数を記録したけどな」

入「月斑先輩も大変でしたね」

燕「あぁ、最初は原作に無いオリジナルトラップもあったからな、アレは辛かった」

入「最初はって、なんで無くなったんですか?」

燕「書き終わる寸前にPCがフリーズ、電源を落とす羽目になったんだと」

正直スランプに落ちかけましたね。

燕「しかも自動保存の存在に気が付いたのは手直しし始めて暫くたった後だからな」

入「あ、あははは」

もうここまで書いてしまったし、オリジナルトラップもどちらかと言えば微妙だったんで復元はしなかったんですけどね。

燕「しかしまぁ、よく回復したな。電源落として再起動かけた後そのまま電源落として、布団に潜り込んで半泣きで携帯小説読み漁ってたのに」

自分でも不思議なんですよね。 なんというか今日こそは書くぞ!って気になって
一週間は寝込むかと持ってたのに

入「失踪しなくて安心しました!」

燕「なんかうれしそうだな、気のせいか?」

入「え!?そんなことありませんよ!
(まだ月斑先輩とあんまり絡んでないからとは言えないよぅ)」

まぁまぁ裏話はこのあたりにして、そろそろ締めますよ。

入「あ、はい!それでは皆さん」

『また次回もお楽しみに~』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第14話 ゆりの過去

 

――――ギルド連絡通路 B17――――

 

燕・音無・ゆりの三人は地下水路のような通路を歩いていた。

椎名がトラップに引っ掛かってからというもの、ゆりは沈黙したままギルドへ向かっていた。

 

――――なんか今のゆりに声かけづらいな

 

音無も同じ気持ちのようで、先程から一言も話していない

 

「残ったのは貴方達だけね」

 

何を話そうか悩んでいると、ゆりの方から沈黙を破ってきた。

 

「あぁ、そうみたいだな」

 

ゆりの問いに音無が答える。

 

その直後ゆりの方から鈍い音が聞こえてきたが、それは壁を殴った音だった。

 

「ホントの軍隊なら、みんな死んで全滅じゃない。 酷いリーダーね」

 

「仕方ないだろ、対天使用のトラップだ。 これぐらいじゃなきゃ意味ねぇよ」

 

壁を殴ってそのまま黙り込んだゆりに音無はそう話しかけるが、それでも返事はなかった。

 

「なぁ一つ提案があるんだがいいか?」

 

燕は片手をあげながら話し始めた。

 

「ここまでノーストップできて体力も消耗してる。 服も乾かしたいし休憩にしないか?」

 

「……そうね、少し休憩にしましょ」

 

燕の提案にゆりは同意し、三人は脇道に入った所で休憩を取ることになった。

 

「あんな連中をよく統率してられるな。 どうしてアンタがリーダーに選ばれたんだ?」

 

休憩中、音無がゆりに質問を始めた。

 

「初めに歯向かったから」

 

ゆりはそれだけ告げるとまた黙り込んでしまった。

 

「それって天使にか?」

 

「…そっ」

 

燕が続けて質問するが返事だけで終わってしまい、再び黙り込んでしまう

 

――――話が続かねぇ、気が重いな

 

話す話題が無くなったのか、音無まで黙り込んでしまった。

 

「…………兄弟がいたのよ」

 

すると今度はゆりの方から話を振ってきた。

 

「貴方達には無い記憶の話よ」

 

「この世界に来る前の、生きていた時の話か」

 

「そう――」

 

ゆりは生前の話を俺達に話してくれた。

それはとても辛い話だった。

ゆりは淡々と話をつづけ、俺達は黙って聞いていた。

 

――――もし俺も、同じ理由でここに来たんだったら……

 

燕はゆりの過去と、夢で見た施設の子供達の事を重ねると、自分が憎くなってしかたがなかった。

 

――――……いや、これ以上考えるのはよそう。 有りもしない事実を考えたってしょうがない

 

燕は考えるのをやめ、ゆりの話を黙って聞き続けた。

 

「――別にミジンコになったって構いはしないわ。 私は、本当に神がいるなら立ち向かいたいだけよ。 ……だって、理不尽すぎるじゃない。 悪いことなんて何もしていないのに、……あの日までは、立派なお姉ちゃんでいられた自身もあったのに、守りたい全てを三十分で奪われた。 そんな理不尽ってないじゃない、そんな人生なんて許せないじゃない」

 

全て言い切ったのか、ゆりは顔を伏せ黙り込んでしまった。

 

「……ゆりのその気持ち、分からない訳でもない」

 

燕の口から自然と言葉が出ていた。

 

「俺はこの間、多分だけど夢で昔の記憶を見た」

 

今度は燕がその時見た記憶の夢の事を話し始めた。

以前入江に話した時と同じように

 

「――その施設の子供達とゆりの過去を勝手に重ねちまって、あの子たちを守ることが出来なかったのなら、俺もこんな人生は許せないって思ったんだ」

 

「……そぅ」

 

ゆりはそうつぶやくとまた黙ってしまった。

 

「……強いな、お前達は」

 

不意に音無がそう言ってきた。

 

「俺の記憶がそんなのだったら、とっとと消えてしまいたくなるかもしれない。……でも、お前達は抗うんだな」

 

「そうよ」

 

「当たり前だろ、そんなの絶対に許せない」

 

ゆりは返事をすると立ち上がり、奥へ進もうとする。

 

「なぁゆり、一つ聞いていいか?」

 

「なに?」

 

「ゆりはどうして死んだんだ?」

 

それは燕も気になっていた事で、ゆりの返答を黙って聞いていた。

 

「あぁ、……馬鹿ね自殺なんかじゃないわよ。 自殺した人間が抗うわけないじゃない、それにこの世界には自殺した人間はいないわ。 さぁ、行きましょ。 貴方達は私が守るわ」

 

そう言いながらゆりは先へ進むのを再開した。

 

 





はい、予定より一日遅れで投稿です。

燕「なぁ、予定だと今回で原作第二話終了じゃなかったか?」

ちょっと予定が狂いまして、次回で原作第二話を終了させたいと思います。

燕「そうか、まぁ普段の文字数だしいいけどな」

入「いや、そこはよくないと思いますけど」

燕「……入江、そんなに出番が欲しいのか」

まぁ原作第三話に入る前に燕君と入江ちゃんの閑話を入れる予定でしたしね。

入「べ、別にそんなつもりで言ったんじゃ!」

燕「もうその話は良いよ。それよりアンケートがあるんだろ?早く発表しろ」

そんなにせかさなくてもちゃんと発表しますって、それでは入江ちゃんお願いします!」

入「え!?あ、そうか。 えっと、原作第三話では岩沢さんが成仏してしまいますが、それに対して岩沢さんが成仏しないストーリーがいいか、原作通り成仏してしまうストーリーがいいかアンケートで決めたいと思います」

燕「なるほど、岩沢の運命は読者にかかってるわけか」

入「後日活動報告でアンケートを作成するのでそちらに書き込みをお願いします。それからもう一つ、月斑先輩に関するアンケートです」

燕「え、俺に関するアンケートもあるのか」

入「月斑先輩に技術チートをつけても良いか否か」

僕的にはチートは無くても構わないんですが、一応聞いてみたかったのでアンケートに付け加えてみました。

燕「技術チートってどんなのだよ」

まぁガルデモに関する事しか出てこないんで、戦闘に対しては意味のない代物ですけどね。

入「正直チートが無くてもストーリー全体に影響は殆ど無いですしね」

それ言っちゃダメww
さて、そろそろ締めますか

入「分かりました。 それでは皆さん」

『また次回もお楽しみに~』


*アンケートは8/25 22:00頃を予定しています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第15話 ギルド到達!天使迎撃戦

 

ゆりの過去を聞いた後、燕達はトラップに引っ掛かる事無くギルドの入り口まで来ていた。

 

「この下にギルドがあるのか?」

 

燕は足元にあるギルド最深部へ繋がる扉を見ながらそう聞いた。

 

「そうよ、開けるから手伝って」

 

三人がかりで扉を開け、梯子を下りて行くと徐々に光が強くなりギルド全体が姿を現した。

 

「ここがギルドか」

 

燕は目の前の光景に驚きが隠せなかった。

音無も同じようで、声をあげて驚いていた。

 

――――ギルド最深部――――

 

「ゆりっぺだ!」

「ゆりっぺの他に二人いるぞ!」

「無事だったぁ!」

 

ゆりを先頭に梯子を降り切ると、このギルドの作業員たちが燕達の元へ集まってきた。

 

「こいつらが、ここで武器を造ってるのか」

 

燕の隣で音無がそうつぶやいた。

 

その間にも、ゆりと作業員たちの話は続いており、このギルドのリーダーだと思われる人物もその場にいた。

 

「なぁゆり、こいつは? あからさまにおっさんなんだが」

 

「ちょっと月斑君、チャーはこれでもあたし達と同じ高校生よ」

 

「これでもは余計だ。 俺の事はチャーと呼んでくれ」

 

「俺は月斑燕、こいつは音無だ」

 

お互いに自己紹介が済んだ瞬間、地響きが鳴り響く

 

「……近い」

 

「ゆりっぺ…」

 

作業員の一人が不安気な声をあげ、他のメンバーもゆりを見る

ゆりは上を見上げ沈黙していたが、意を決したようにこちらを向き

 

「ここは破棄するわ」

 

そう告げてきた。それに対し作業員たちは騒ぎ始めた。

 

「そんな、正気かゆりっぺ」

「そうだぜ武器が造れなくなってもいいのかよ!?」

 

中には反対する声もあったが、ゆりはこの決断を変えるつもりはないらしい

 

「大切なのは場所や道具じゃない、記憶よ。 貴方達それを忘れたの?」

 

「あ、いや…」

 

「記憶が大切?どういう事だゆり」

 

ゆりの言葉に疑問を持った燕が質問する。

 

「この世界では命あるものは生まれない。 けど、形だけの物なら生み出せる。 それを合成する仕組みと作り出す方法さえ知っていれば、本来何も必要ないのよ。 土塊からだって生み出せるわ」

 

「だが、いつからか効率優先となり、こんな工場でレプリカばかりを作る仕事に慣れきってしまった」

 

――――どうやって土塊を物に変えることが出来るのか気になるが、今はそれを聞いている暇はなさそうだな

 

チャーはゆりの決断に賛成のようだった。

 

「本来あたし達は形だけの物に記憶で命を吹き込んできたはずなのにね」

 

何か懐かしむようにゆりはそう言った。

 

「ならオールドギルドへ向かおう、長く捨て置いた場所だ。 あそこには何もないが

 …ただ土塊だけなら山ほどある。 あそこからなら、地上へも戻れる」

 

「ここは?」

 

「爆破だ」

 

『えぇっ!?』

 

チャーの決断に作業員たちが再び騒ぎ始める。

 

「天使はオールドギルドへは渡らせん。 あそこは俺達が帰れる唯一の場所だ」

 

「しかし――」

 

作業員の一人が何かを言おうとしたが、二度目の地響きによりさえぎられてしまう。

 

「さっきよりも近いな」

 

「持っていくべきものは記憶と、職人としてのプライド、それだけだ。

 …違うか、お前ら!!!」

 

『……はいっ!!』

 

地響きにも動じる事無く、作業員たちに活を入れた。

 

「よーし、爆薬を仕掛けるぞ。 チームワークを見せろ!!」

 

『おぉー!!』

 

チャーの指示により各自持ち場へと走って行った。

それを確認したゆりは身を翻し梯子の方へと走って行く。

 

「ゆり!?どこへ!」

 

「時間稼ぎよ!」

 

ゆりが梯子を上り始めると同時に、音無もそれについていく。

 

「……俺も行かなきゃダメかな?」

 

ちょっとめんどくさそうに二人の後を追おうとするが、視界の隅にある物が移り

燕の意識はそちらに向いた。

 

「チャー、あれ使ってもいいか?」

 

燕はそこにある物を指さしながらそう聞いた。

 

「ん?それを使うのか?別にかまわないが、うちの若い奴が造ったなまくらだぞ」

 

「…構わない、一度試してみたかったんだ」

 

燕は迷うことなくそれを取り、ゆり達を追いかけて行った。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

燕が梯子を上り終えると、既に天使との戦闘が始まっており

ゆりと天使の激しい近接戦が行われていた。

 

そしてその光景を銃を構えた音無が見ている状況だった。

 

「音無!」

 

「っ!月斑か、って何持ってるんだ」

 

「これか?さっきギルドで見つけたから借りてきた。 もちろんチャーの許可は取ってある。

 さて、…行くぜ!」

 

燕は持ってきたものを腰に構え、ゆりと天使の方へと走り始めた。

 

――――天使の奴変な動きをしてるな、だけど見えないわけじゃない

   確信があるわけじゃない、だけどいけそうな気がする。

 

燕は腰に構えた日本刀の柄を握り、一気に引き抜き

ゆりに止めを刺そうとしている天使の剣?を止めた。

 

「間一髪だな、ゆり」

 

「あ、あなたそれどうしたの!」

 

ゆりも音無と同じ質問をしてきた。

 

「今はそれ聞いてる場合じゃないだろ」

 

「…………」

 

天使は黙ったまま燕の刀を両手の剣で受け止めている。

 

――――こっちは全力だってのに、なんて涼しい顔して受け止めてんだコイツは

 

燕は一度離れ、再度刀を振り下ろすが

今度は片方の剣のみで受け流された。

 

「……くそっ」

 

そして受け流した剣とは反対の剣で反撃されるも、燕はギリギリのところで躱し

また刀を振るう

 

――――……っ!捕えた!!

 

一瞬の隙を見つけ刀を振るう

が、そこに天使の姿はなかった。

 

「なにっ!?」

 

燕は一瞬何が起こったのかわからなかったが、即座にゆりと交戦していた時の事を思い出し

即座に後ろを向き、防御の体制をとった。

 

ガキィンという鈍い音がしたが、天使からの一撃はどうにか防げたようだ。

 

――――これじゃなぶり殺しだ、どうにかして状況を変えねぇと

 

天使の連撃により、燕は防戦一方になってしまった。

だが

 

「三人ともどけぇ!!」

 

燕の後ろにある最深部入り口の方から作業員と思われる声が聞こえてきた。

その声に反応し振り向くと、巨大な大砲が鎮座していた。

 

「あんた達やれば出来るじゃない!」

 

ゆりが歓喜の声をあげ、音無を退路へ誘導する。

 

燕は二人が退路に入るのを確認し、天使の剣を弾き後ろに飛び退いて距離をとった。

そして急いで二人が入っていった退路へと非難する。

 

「総員退避!…撃てぇ!!」

 

直後洞窟内に爆音が響き渡り、砂埃がたち視界を遮られてしまった。

 

「……やったの?」

 

ゆりが辺りを確認するが、砂埃がひどく何も見えなかった。

すると砲台のあった方から声が聞こえてきた。

 

「砲台……大破……」

「ちっ、やっぱ記憶に無い物は適当には造れねぇか」

 

「適当に造るな!!」

 

何時の間に移動したのか、ゆりが作業員の腹に肘を打ち付けていた。

 

「天使が起きるぞッ!」

 

砲台が爆発した時の爆風で倒れていたらしく、天使がゆっくりと立ち上がる。

 

「お前たちっ!これでなんとかしろっ!!」

 

爆薬の設置が完了したのか、チャーがギルド最深部から出てきていた。

大量の手榴弾と共に

 

作業員達は手榴弾を手に取り、次々と天使へ投げ込んでいく

その隙にシェルターへと逃げ込んでいく作業員たち

 

燕はゆり・音無と共にチャーのすぐ傍で待機していた。

 

「全員退避完了!」

 

最後に逃げ込んできた作業員がそう報告しながら奥へと走って行った。

 

「よし、ギルドを爆破する。 いいな?」

 

「やって」

 

チャーは再度ゆりに確認を取り、ゆりは何の躊躇もなく即答した。

そして「爆破!」という掛け声と共にスイッチを入れた。

 

直後足元の方で轟音が鳴り響く。

 

燕達はそれに構わず、オールドギルドへ続く道を走り続けた。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

――――オールドギルド――――

 

「何年振りだろうな?本当に何もありゃしない」

 

オールドギルドへ着いたチャーの第一声が響く

 

「壁を突いたらどれだけでも土塊は落ちてくるわよ」

 

「ヒデェ塒だよ」

 

「また一つよろしく」

 

「あぁ」

 

ゆりとチャーの会話はそこで終了し、チャーは作業員たちに指示を出し始め仕事に取り掛かった。

そしてゆりは無線機を取出し、トラップに引っ掛かって行ったメンバー達に呼びかけ始めた。

 

「なぁ月斑」

 

「ん?」

 

ボンヤリ突っ立っていた燕の下にチャーがやってきた。

 

「何か用か?」

 

「…お前は今後もそれを使い続けるのか?」

 

チャーは燕が持っている刀を指さしながらそう聞いてきた。

 

「……あぁ、俺の銃の腕は皆無だからな」

 

少し考えるそぶりを見せるが、笑いながらそう答えた。

 

「なら、新しいヤツが出来たらすぐにお前に渡してやろう」

 

「…じゃあ太刀で頼む、流石にこれじゃ短すぎる」

 

燕が手にしていた刀は脇差程度の長さしかなかった。

 

「了解だ、すぐに準備しよう」

 

そう言ってチャーは作業に戻って行った。

 

――――もっと鍛えないとダメだな……

 

燕はそう心に決め、オールドギルド内の作業風景を見つめていた。





せ、戦闘シーンが上手く書けない

燕「ま、誰もが通る道だな(多分)」

入「月斑先輩はついに近接武器を手にしましたね」

燕「そだな、銃が苦手だから仕方ないっちゃ仕方ないけどな」

主人公に弱点は付き物、射撃を苦手にしたのはその為でもあるんですけどね

燕「傍迷惑な設定だな、そのせいで俺がどれだけ苦労する事に――」

入「ストップ!ストップです先輩!それ以上はネタバレになりかねません!!」

はいはい、これ以上しゃべらせるとまずいのでこのあたりで締めますよ。

入「は~い、それでは皆さん」

『また次回もお楽しみに~』


*アンケート回答未だなし、同票の場合の結果で構わないのだろうか


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第16話 再びギルドへ

どうしよう、オリジナル書くとどうしても文字数が…


 

「最近働き詰めだから、今日は休んでいいよ」

 

何時もの様にガルデモが練習している空き教室まで来たのだが

教室に入ると同時にそんなことを言われてしまった。

 

「え?今日仕事なし?」

 

「そ、アンタは何時も頑張りすぎなんだよ。いくら死なない世界だからって、倒れない訳じゃないんだから休め」

 

岩沢の発言に続きひさ子も、燕に休めと言ってきた。

 

「いや、俺なら別に大丈夫だ。確か飲み物がなかったよな、今から取って――」

 

『いいから休め!』

 

「……はい」

 

岩沢とひさ子に押し切られ、今日一日休むことになってしまった。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「はぁ~、暇だ。急に休めと言われてもなぁ。そういやそろそろ出来上がってる頃だろうし、オールドギルドへ向かってみるか」

 

教室を追い出されてしまった燕はチャーに頼んでおいた太刀を取りに、オールドギルドへ向かうことにした。

 

「お、月斑じゃんか、今日は走り回らなくていいのか?」

 

「日向か、今日は休めと押し切られてな」

 

「いっつも走り回ってるからな、ちょうど良いんじゃねぇか?」

 

「お前もそういうのかよ」

 

日向の言葉に燕はそんなに働き詰めだったのかと再度考えさせられることになる。

 

「俺は無理なんてしてないぜ?」

 

「お前はそうでも周りから見たら無理してるように見えんだよ」

 

「そういうもんか」

 

「そうだよ。ところでこれからどうするつもりだったんだ?」

 

その言葉で燕はオールドギルドへ向かおうとしていたことを思い出した。

 

「俺はこれからオールドギルドに行って武器を貰ってこようと思ってたところだ」

 

「武器?お前の武器はちゃんとそこにあるだろ、それに新しい銃ならゆりっぺに言えばすぐにもらえるぞ」

 

すぐにとは言うが、実際は武器庫にある武器しか貰えない事は燕も知っている。

それにガルデモの仕事ついでに武器庫に立ち寄った事があるが、その中に近接武器は置いてなかった。

 

「いや、俺が欲しいのは銃じゃなくて剣だからな」

 

「剣!?お前銃はどうするんだよ!」

 

「俺の銃の腕は知ってるだろ。…そうだな、あの空き缶狙ってやろうか」

 

燕はそういうと、ホルスターから銃を取り出し空き缶を狙って撃つ

が、しかし

 

「……なぁ、あの空き缶狙ったんだよな」

 

「……あぁ」

 

燕の撃った弾は空き缶から大きく外れ

 

「ならなんで何メートルも離れてる外灯にあたるんだよ」

 

外灯の天辺部分を打ち抜いていた。

 

「……さぁな、正直自分でもここまで外れるとは思わなかった」

 

空き缶から外灯の距離は右方向に約八mといったところか

 

「分かったろ、俺に銃は向かない。一応持ってはおくけどな」

 

「それで剣を貰いに行くのか」

 

「この間の降下作戦の時にチャーに頼んでおいたからな、そろそろ出来上がってると思うんだ」

 

「そうか、そういう事なら俺も行くぜ。ちょうど暇してたんだ」

 

日向が燕に同行しオールドギルドへ向かうことになった。





久しぶりのオリジナル展開です!

燕「久しぶりの投稿でもあるけどな」

すみません、ホントなら一日に投稿予定だったんですが、ちょっと疲れてまして

燕「何やってたんだよ」

ちょっと東京まで、ボーダーブレイクのイベントに行ってきましたww

入「…そんなに行きたかったんですか?」

王座決定戦の当日枠予選参加のために行ったんですけど、抽選で落ちたんですよね
でもま、もみーさんのサイン貰えましたし、行ったかいはありましたね

燕「それは良かったな。ところで今回のゲストの日向が何一つ喋れてないんだが」

日「月斑が振ってくれて助かったぜ、ここまま喋れないのかと思った」

入「といっても今回のあとがきコーナーはここでおしまいなんですけどね」

日「はぁ!?今回の話なにも触れてないのにいいのかよ」

燕「どうでもいい話だったな」

すみません

入「ではそろそろこの辺で」

『また次回もお楽しみに~』


日「ちょっと俺まだしゃべりたりねぇ!」

*次回も引き続き日向がゲストで来ます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第17話 ギルド入り口にて

「前回のトラップはそのままなのか」

 

それがギルド連絡通路に降りてきた第一声だった。

 

「ギルドを爆破しちまったしなぁ、わざわざ残しておく必要もないって事だろ」

 

「…それもそうか。 なら早いとこオールドギルドに行って帰るか」

 

そう言うと燕は歩きだし、付添いの日向も続いて歩き始める。

そしてその後ろから

 

「…うぅ、お化けが出そうで怖いよぉ。 月斑先輩たちは平気なんですかぁ?」

 

入江が付いてきていた。

 

「……はぁ、だからついて来るなって言っただろうが」

 

なぜ入江が付いてきているかというと、それは連絡通路への入り口に向かっている最中の出来事だった。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「なぁ、ギルドへの入り口って体育館以外にないのか?」

 

「いいや、いたるところに入り口は存在してるぜ。 ただ俺らも全部は把握してねぇ」

 

「そんなに多いのか」

 

死んだ世界戦線でも全ての入り口は把握していないらしい

なら見つかっていない入り口や通路があっても不思議ではないと考えていると、遠くの方から声が聞こえてきた。

 

「月斑せんぱ~い!!」

 

「ん?おい月斑呼ばれてるぞ」

 

遠くの方から呼んでいる声と、日向の声を無視して燕は体育館を目指して歩く速度を速めた。

 

「っておい月斑、待てよ」

 

慌てて日向は燕の肩を掴んだ。

 

「誰が待つか、今ガルデモメンバーと関わるとロクな目に合わない気がする」

 

「どんな理由だよ。呼ばれてんだから待ってやれよ」

 

「チッ、分かったよ」

 

燕はおとなしくその場に立ち止り、入江が来るのを待った。

 

「はぁ、やっと追いついた。どいですよ無視するなんて!」

 

「今日は休めと言われた直後に入江が来たんだ、どんな用事かは大体予想できるんだよ」

 

「じゃあどんな用事で来たか言ってみてください」

 

入江の質問に燕はめんどくさそうに答える。

 

「岩沢かひさ子に言われて、俺がちゃんと休むかどうかの監視だろ?」

 

「……………」

 

燕の答えに何も言わず、入江は燕から目をそらした。

 

「待てコラ、目をそらすな」

 

「……正解です」

 

しぶしぶ燕の方を向き、そう答えた。

 

「はぁ、これじゃオールドギルドに行きづれぇな」

 

「確かに、監視が付くんじゃ今日はあきらめた方が良さそうだな」

 

どうやら今回のギルド行きは諦める事になりそうだった。

だが、

 

「ギルドに行くぐらいならいいと思いますけど」

 

予想外な所からの許可が下りた。

 

「だって仕事をしなければいいんですよ? 何をするかはその人の自由じゃないですか」

 

案外まともな意見を言われ面を食らったように燕と日向が硬直した。

 

「…えっと、どうかしたんですか?」

 

「いや、入江の口からそんな言葉が出るとは思わなかったからさ。 てかオールドギルドに行ってもいいの?」

 

「危険な所なんですか?」

 

「いや、危険じゃないと思うけど」

 

「じゃあ行ってもいいです」

 

『えぇええええ!!?』

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

入江の許可が下りたということでオールドギルドへ向かうことになったのだが、監視役ということで入江もついて来るのは予想外だった。

 

「はぁ、本当について来るとは思わなかったよ」

 

「監視役なんで仕方がないじゃないですか」

 

燕が愚痴をこぼすと入江がそれに反論し始め、口喧嘩が始まってしまった。

 

その状況を見て日向は

 

「なぁ、痴話喧嘩はいいから進もうぜ」

 

『痴話喧嘩じゃない(です)!!』

 

「……息ピッタリに返さなくてもいいだろ」

 

この先が不安になる日向だった。




1週間も空いてしまいすみませんでした!

燕「何があったんだよ」

ちょっと仕事の疲れが取れなくて、ここしばらく帰って飯食ったら直ぐに寝る日々が続いてました。

燕「それはお疲れだったな」

日「てか今回もあんまし進んでねぇよな」

本来なら刀を受け取るところまで書きたかったんですが、それは次回か次々回あたりになりそうです。

入「次々回って事は道中も書くんですか?」

ここら辺で燕君と入江ちゃんの絡みを書かないと読者さんたちに怒られそうなんですよね。

日「…俺はそれを見せ付けられる事になるのかよ」

燕「日向にはユイがいるだろ」

日「まだ登場してませんからね!?」

まぁまぁユイも近いうちに出てきますから

日「そういやこのオリジナルが終わったら第3話だったな」

燕「よかったな、案外早くユイに会えるぞ」

その話はまた今度で、そろそろ締めますよ~

入「は~い、それでは皆さん」

『また次回もお楽しみに~』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第18話 迷子!?

「……なぁ、俺達どこ歩いてるか分かるか?」

 

突然日向が燕にそんな質問をしてきた。

 

「……わかってたら苦労はしねぇよ。 つか、ホントどこだよここ」

 

現在燕たち一行は、起動していなかった落とし穴トラップにはまり

別の通路へと放り出されてしまっていた。

 

――――太刀を貰って帰るだけのはずだったのに、気が付いたら迷ってるし

  日向はこの道は初めてだっていうし、入江に至っては俺の服の裾を握ったまま震えてるし

  さて、この状況をどうやって切り抜けようか

 

燕が今後の事を考えていると、突然カチッっというスイッチ音が聞こえてきた。

 

「…なぁ今のスイッチ音はなんだ?」

 

燕は先頭を歩いていた日向に話しかける。

 

「…スマン、地面にあったスイッチを踏んじまったみたいだ」

 

視線を落とし日向の足元を見ると、確かに左足部分の地面が不自然に沈んでいるのが見えた。

 

「いいか日向よく聞け、俺は一先ず入江を安全な場所に連れて行く。 それからその足のトラップをどうにかするから、しばらくそこを動くなよ」

 

「分かった。 早く戻ってきてくれよ」

 

燕は一度来た道を少し戻り、入江を安全そうな岩場で待機させる。

 

「いいか、絶対に動くなよ。 俺たちの悲鳴が聞こえても絶対に動くなよ」

 

「わ、分かりました」

 

心細いのか声に元気がなかったが、燕は日向救出に戻った。

 

「さて、この部分だよな」

 

燕は沈んだ地面を見て考える。

 

「定番としては重たい石をゆっくりずらしながら足を離すんだが」

 

「それ成功例ってなかったよな」

 

「あぁ、ないな」

 

燕は再度、なにか方法はないものかと考え始める

が、いいアイディアが思い浮かばなかったのか、とんでもないことを言い始めた。

 

「よし、いっそのこと離しちまうか」

 

「何言ってんだお前!」

 

「仮に死んでもしばらくしたら復活するんだ、我慢しろ」

 

「何気ヒデェな! あぁクソッ!離せばいいんだろ離せば!」

 

日向は諦めたのか、スイッチを踏んでいた足を思いっ切り離した。

 

すると突然壁と天井の一部が開き、そこから巨大な斧が目の前を通過していった。

 

『うおぉぉあああああ!?』

 

「あぶねぇ!!」

 

「オイオイオイ、今まではハンマーだったのにここにきて斧の登場かよ!!」

 

今二人の目の前には巨大な斧が五つ、振り子のように揺れている。

しかもそれは、それぞれがバラバラに動いているため突破が難しそうだった。

 

――――さて、こっからどうするか

 

「てかさ、これ気づかずに進んでたら俺の身体って」

 

「ものの見事に真っ二つだっただろうな」

 

その状況を思い浮かべてしまったのか、日向の顔は真っ青になっていた。

 

「おい大丈夫か?」

 

「あ、あぁ何とかな」

 

「とりあえず俺は入江を呼び戻してくるから、その間にほかのスイッチがないか調べてみてくれ」

 

「分かった探しとく」

 

燕は一度日向と別れ、入江の所まで戻った。

 

「入江、安全じゃないけどもうこっちに来ても……って、なにやってんだ?」

 

燕が見た光景は、岩の間にしゃがみこんで耳をふさいでぶるぶる震えている入江の姿だった。

 

「おい入江、聞こえてるのか?」

 

そう話しかけながら燕が入江の肩を掴むと

 

「ひゃぁああああああ!!」

 

「うぉ!?」

 

「…え?あ、月斑先輩」

 

「驚きすぎだろ、まぁいい安全じゃないけど進むしかないからな、怖いかもしれないが行くぞ」

 

燕は座り込んでいる入江に手の手を取り引っ張り起こす。

 

「…あ」

 

「ん?痛かったか?」

 

「い、いえ、大丈夫です」

 

燕はなぜか目を逸らし頬を赤らめている入江に首をかしげるが、気にせず日向の元へと足を向けた。

 

「おい日向、何か見つけたか?」

 

「いいや、何にもねぇ。 戻ろうにも道が分からないんじゃしょうがないしな。 先に進むしかないだろ」

 

日向は両手をあげ首を振り、お手上げという合図をした。

 

「仕方がない、俺が剣を使って斧を止めるから、その隙に進んでくれ」

 

「ちょっと待て、それはいくらなんでも危険すぎるぞ!」

 

「そうですよ、他の方法を考えましょうよ!」

 

燕の意見に二人は反対した。

 

「他の方法を考えてたらいつ出られるか分からないだろ。 ここは強行突破するべきだと思う」

 

――――それに休暇は今日だけだからな、今日中に出てやる

 

「おい月斑、何をあせt「行くぞ!」聞けよ!」

 

日向の言葉を遮り燕は腰の刀に手を添え、一つ目の斧へと突っ込んでいった。

 

「ハッ!」

 

ガキィンという金属のぶつかり合う音と共に斧の動きが止まる。

 

「よし行けっ!二人とも!!」

 

「行くしかねぇのかよ。 ほら入江!」

 

日向と入江は燕の後ろを通り過ぎ、それを確認した燕は受け流すように体を滑らせ、斧の先へと移動する。

 

「何とかなるもんだろ」

 

「……あぁ分かった。 もう文句は言わねぇ、あと四つこのまま進むぞ」

 

「んじゃさっさと突破するか」

 

その後三つ目を突破するまではなんの問題もなく進んだ

 

 

 

 

 

 

 

そう、三つ目までは

 

四つ目の斧を受け止めた瞬間ピシッと燕の耳に嫌な音が響いた。

 

「――っ!?ほら行け二人とも」

 

二人は燕の合図と共に四つ目の斧を通り抜け、燕も後に続く

 

――――五つ目か、この刀も限界が来てしまったみたいだし、あと一個持つかどうか

 

「月斑?どうした」

 

考え込む燕を不思議に感じたのか、日向が声をかけた。

 

「いや、なんでもない、さぁ最後行くぜ!」

 

燕はもう何も考えず最後の斧を止めに走った。

 

「セイッ!!」

 

最後の斧を受け止め、燕の後ろを二人が通り過ぎる。

ここまでは先程からの光景だった。

 

二人が通り過ぎ、自分も移動しようとした時、突然バキンという嫌な音がした。

 

「やべっ!」

 

ついに限界を超えた刀が折れてしまった。

 

『月斑(先輩)!!』

 

「くっ」

 

燕は何とか体を逸らし斧を躱そうとしたが、斧は左腕を切り裂いていった。

 

「大丈夫か!?」

 

「あぁ、何とかな。 ただ左腕の傷はヤバいな」

 

「それは大丈夫とは言わねぇぞ!」

 

日向の言葉を聞きつつ、燕はブレザーを破り傷口を縛った。

 

「この世界じゃ傷も早く治るんだろ、だったら問題ないさ」

 

「問題ないじゃねぇだろ」

 

「そうですよ。 早く地上に――あっ」

 

「地上に戻れるのならすぐにでも戻るさ、正直俺もこの傷でオールドギルドに向おうなんて思わないさ。

 だけど今は地上に戻る術がない、だったら無理してでも進むしかないだろ」

 

燕は折れてしまった刀を鞘に戻し、立ち上がった。

 

「さぁ、先は長いんだ。 早く進もうぜ」

 





投稿が一週間以上遅れてしまいすみません!

燕「今回は何があった?」

最近仕事が回らず残業が増え、その疲れのせいか風邪をひいてしまい
しばらく寝込んでました。

入「頑張るのもいいですけど、体調管理には気を付けてくださいね」

はい、今後は気を付けます。

燕「さて今回の話だが、前回出さなかったトラップの一つらしいな」

日「俺達はこんなのにぶち当たる予定だったのか」

トラップを考えたまでは良いんですけどね、どうやって突破しようかと

燕「悩んだ挙句PCがフリーズしたからお蔵入りになったんだよな」

そうなんですよね。

日「つまりちょうどいい多イニングでPCのフリーズが起こったのか」

いやぁ、だってここのトラップ微妙でしょ?
今回は状況との組み合わせで採用しましたけど、正直使いたくなかったってのが本音です。

さて、今回のあとがきコーナーはこのあたりで締めますか

入「それでは皆様!」

『また次回もお楽しみに~』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第19話 休憩所の罠

 

斧のトラップを抜けた後も数々のトラップを潜り抜けていた燕達は、大分奥深くまで進んでいた。

 

「…あの、先輩。腕の傷は大丈夫ですか?」

 

そんな中、入江が心配そうに燕に話しかけてきた。

 

「あぁ、腕も動くし問題ないだろ」

 

燕は笑って左腕を動かしながら手を開いたり閉じたりして、問題ないように見せた。

 

「無茶はしないでくださいね」

 

「無理なんてするかよっ!」

 

燕は右手で入江の頭をわしゃわしゃと撫でた。

 

「ひゃぁああ、止めてください!」

 

「コラコラ、イチャついてないで先を急ぐぞ!」

 

『イチャついてない!(ません!)』

 

――――相変わらず息ピッタリだなぁ

 

日向に呆れられつつも、燕達は先に進む

 

先ほど問題ないように見せた燕だが、実は左腕の痛みに苦しめられていた。

 

――――正直ヤベェな、さっき無理に動かした分余計痛みやがる。

   どこまで騙し通せるか…

 

二の腕の半ばを切り裂かれた燕の腕は、骨は見えないものの相当深いものだった。

 

「ん?なぁおい、あそこに扉があるぞ」

 

先行する日向が何か見つけたようで、燕達に声をかける。

 

「怪しいな、けど行ってみるしかないよな」

 

燕は今にも崩れ落ちそうな木製のドアを開け、中に入る。

 

「…なぁここって休憩所か何かか?」

 

「あぁ、鉱山の休憩所みたいな所だな」

 

ドアの先にあったのは、簡易的に作られたと思われる殺風景な休憩所だった。

 

「あ、もしかしたら」

 

入江は何か思いついたらしく、いち早く部屋の中を物色し始めた。

 

「おい入江、何があるかわかr「あった!」って聞けよ!」

 

燕の話を聞かずに部屋の中にあった棚から白い箱を燕の元へ持ってきた。

 

「はい月斑先輩、救急箱があったのでちゃんと手当ができますよ」

 

燕は勝手に部屋を物色した入江を怒ろうと思ったが、自分のためと思ってやった事で

決して悪気があったわけではない。

それだけの理由で怒らないのはどうかと思うが、入江の満面の笑みを見せられたら

誰であろうと怒ることはできないだろう。

 

「…はぁ、そうだな。ちゃんと手当しないと治りが悪いかもしれないしな

 んじゃ、手当頼めるか?」

 

「はい!」

 

入江は燕を椅子に座らせ、傷の手当てをし始めた。

その光景を見ていた日向が

 

「…やっぱイチャついてんじゃねぇかよ」

 

っと、つぶやきながら部屋に入って行った。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

傷の手当てが終わり、燕は部屋の中を探索し始めた。

 

――――部屋の中をあらかた調べてみたが、何もなかったな

  ある物と言えば、テーブルが一つ・椅子が二つ・大型の収納棚が一つだけか

 

部屋の中を見渡しても、入口以外の扉は見つからず

棚の後ろも見てみたが何もなかった。

 

――――……そうえば

 

燕はふと、自分の足元を見た。

そこには申し訳なさ程度に敷かれてあるカーペットがあった。

 

――――ここはまだ、調べていなかったな。

 

燕がカーペットをめくってみると、そこには

 

「…また扉か」

 

「いや、扉っつってもこれは小さすぎねぇか?」

 

「これじゃ人は通れませんよね」

 

床にあった扉はCDケース程の大きさのもので、とても人が通れる大きさではなかった。

 

「…開けてみるか」

 

燕は一瞬ためらったが、そのまま扉を開ける。

 

するとプツンっと糸の切れるような音がしたかと思うと

 

「――っ!?伏せろ!!」

 

日向は燕の声と共に後ろに飛び、そのまま伏せた。

それに続き、燕も入江を抱き抱え、庇うように後ろに飛びのいた。

 

その直後、小さな扉のあった位置から爆発が起こる。

そう、燕が扉を開けて見たものは手榴弾だったのだ。

 

「ぐぁっ!」

 

「先輩!?」

 

入江を庇うために飛びのくのが遅れた燕は伏せることが出来ず、爆風と飛んで来た破片が燕の背中を襲った。

 

今度はそれと同時に床に亀裂が走り、燕が床に倒れた衝撃が原因なのかは不明だが床が崩壊し

そのまま下へと落とされてしまった。





大変遅くなってしまい申し訳ありませんでした。

燕「まったく、一ヶ月以上にはならなかったから良いものの。少し間違えば失踪したと勘違いされるぞ」

スミマセン

入「今回は何があったんですか?」

会社で急な部署移動が行われまして、環境の変化のためバタバタしてたんですよ。
それでも執筆時間だけは確保しようと頑張ったんですが、持ち帰らないといけない仕事量に圧倒されてしまいまして

燕「それでも幾らかは執筆時間があったはずだが?」

家に帰ってからも仕事してるとパソコンの前に座る気力もなくなるんです。
だから最近更新された他の方の小説全然読めてませんからね。

それにほら、時間は掛かっても完結させる的なこと言いましたよね。
失踪だけはしませんから安心してください。

入「今回更新できたって事はこれからの更新は早くなるんですか?」

それがまだ分からないんですよね。
おそらくですけど、月に二本、よくて三本ペースだと思います。
場合によっては月に一本になってしまいますけどね。

燕「まぁなるべく月二本のペースを維持したいところだな、待ってくれている読者さん達の為にも」

待ってくれる人が居るのはホントに有り難い限りです。
これからも更新は安定しませんがよろしくお願いします。
それではそろそろ締めましょうか

入「は~い、それでは皆様」

『また次回もお楽しみに~』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第20話 森の中の孤児院

大変遅くなりました!
どうにか11月分の投稿です!


*16/7/6 修正
本来の設定と異なる部分があったため一部修正しました


奈落に落ちていく中、俺はまた夢を見ていた。

 

その風景は前回見たものと変わらず、森の中にひっそり建っている施設の物だった。

 

ただ一つ変わっているとすれば、今回の夢は本当に過去の記憶だと言う事だ。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「さて、今日もあいつらの所に行くか」

 

俺はいつもの様にギターやお菓子を準備し、あの施設へ向かう

 

そこには身寄りのない子供たちが大勢いる。

 

いわゆる孤児院というやつだ。

孤児院は町はずれの森の中に建っている。

 

 

「よう、遊びに来たぞ」

 

「あ、燕兄ちゃん!」

「今日も来てくれたんだ!」

「シスター、燕さんが来たよー!」

 

子供たちの声に孤児院の中から小柄な女性がでてくる。

 

「いらっしゃい燕さん、毎日ありがとうございます」

 

「いや、俺が好んで来てるだけですから」

 

シスターと呼ばれた彼女が孤児院を管理しており、子供たちの世話をしている。

彼女は町の教会の手伝いをしていることから、子供たちからシスターと呼ばれるようになったそうだ

最近では俺も、子供たちにつられてシスターと呼ぶようになってしまった。

 

俺がシスターと立ち話をしていると、後ろから服を引っ張られ

気になって後ろを向くと、そこには気の弱そうな少女が立っていた。

 

「お、真奈か、どうかしたのか?」

 

「……約束」

 

「約束? あ、次に来たときは真奈と夕飯を作るんだったな」

 

俺が約束の内容を話すと真奈は笑顔になり、抱きついてきた。

 

「あらあら、相変わらず甘えん坊ね真奈」

 

シスターは呆れているが、この光景を見た他の子供達は

 

「あ、真奈だけズルい、僕も!」

「私も~」

 

次から次へと、俺の元へと集まってきた。

 

「おいおいお前等、そんな一斉に来たら―――ってうわっ!?」

 

10数人の子供たちに押し寄せられ、バランスを崩してその場に倒れてしまった。

 

「あらまぁ」

 

シスターは終始その状況を見ているだけだった。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「~~ひーかーりーぃをーめざす限ーり♪」

 

俺が「WILD LIFE」を歌いきると、子供達は歓声を上げながら拍手をしてくれた。

するとここに来た時と同様に、後ろから服を引っ張られた。

 

振り向くと、そこにはやはり真奈がいた。

 

「…夕飯の支度」

 

「もう17時だもんな、そろそろ準備するか」

 

「…うん」

 

俺は真奈に連れられ、先にシスターがいる台所へと足を運んだ

 

「さて、今日は何を作りましょうか」

 

「…燕さんに決めてもらいたいです」

 

「俺か?」

 

この孤児院では決まった献立が無く、その日その日でメニューを決めている。

普段はシスターと真奈が相談して決めるらしいが、今日は俺も手伝うと言う事で

メニューの決定権を押し付けられてしまった。

 

「う~ん、そうだな」

 

俺はここ最近のメニューを思い出してみた。

3日前の夕飯は確か親子丼、2日前が鳥鍋、昨日が肉じゃがだったハズだ

 

「…麺類…肉うどんなんてどうだ?」

 

「…うどん、良い。みんな好き」

 

「じゃあ今日の夕飯は肉うどんで決まりですね」

 

うどんなら手軽に作れるし、何より美味いからな(*ちなみに作者はそば派です。

 

それから俺と真奈の二人でうどんを作り、皆の待つ食堂へ料理を運んだ。

 

「それじゃあみんな」

 

『いだだきま~す!』

 

「…いただきます」

 

皆大声でいただきますを言うのに対し、真奈は俺の隣で控えめな声で喋りうどんを口にし始めた。

 

その後夕飯を済ませた俺達は再び皆で遊び始め、そしていつの間にか眠りについていた。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「……ぅん」

 

目を開けるとそこはゴツゴツとした岩の天井だった。

 

「ここは…」

 

「あ、ようやく起きましたね月斑先輩」

 

首を動かし声の聞こえた方を見ると、チャー・日向・入江がこちらを見ていた。

 




入「月斑先輩!!」

燕「うわっ、なんだよいきなり」

入「今回出てきた真奈って子は誰なんですか!?」

燕「落ち着け入江、今回のあとがきは真奈の事を話すから」

あの~まずは一か月以上遅れてしまった事の謝罪をさせてもらいたいんですけど

入「今回も仕事が忙しかったのに加えて新作ゲームで遊んでたのが遅れた原因ですよね。はい、おしまい」

…………なんかいつもより酷くない?

燕「そんな事よりも入江をどうにかしてくれ、すごい剣幕で迫ってきて手が付けられないんだが」

入「早くプロフィールを見せてください!」

名前:水梨 真奈(みずなし まな)
年齢:12歳
備考:孤児院の最年長の少女
   いつも遊びに来る燕に好意を抱いているが
   引込み思案な性格の為、告白できずにいる。
   面倒見がよく、他の子供達から慕われている。

簡易的ですがこんな感じですね。

燕「まぁとりあえず真奈に関する詳しいコメントは次の過去編があった時のあとがきコーナーでな」

入「分かりました。文句は次回にとっておきます。
  それでは皆様」

『また次回もお楽しみに~』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第21話 地上への帰還

今年ラストです。
何とか間に合った…


「あ、ようやく起きましたね月斑先輩」

 

目を覚ました俺が最初に聞いた言葉がそれだった。

 

「…ここは?」

 

俺はぼんやりとした記憶を順に辿っていく

 

――――確か罠だと分かっていたトラップに引っ掛かって奈落へ落ちたところまでは覚えてるんだが

  ……いや、何か夢を見ていた気がするな。心地のいい、気分が晴れるような夢を

 

「どうしたんですか?難しい顔して」

 

考え事をしている俺を心配したのか、入江が話しかけてきた。

 

「いや、なんでもない。二人とも無事……とは言えないな」

 

燕は日向と入江の格好を見ると、無事だったんだなっとは言えなかった。

 

服はあちこち擦り切れボロボロになっていた。

 

「俺ら以上にボロボロのお前に心配されたかねぇよ」

 

日向がこちらを指をさしながらからかったように言ってくる。

 

「……それもそうだな、ははっ」

 

その後俺は起きたばかりだと言う事もあり、しばらく休ませてもらった。

 

休ませているときに聞いた話によると、あの爆発音はオールドギルドまで聞こえていたらしく

チャーと数人が爆発音の方へ様子を見に来たそうだ

そして天井には大穴、地面には俺達三人が倒れていたらしい

 

ただ疑問なのが、俺達を見つけたあたりの話をしているチャーが俺と入江を交互に見ながらニヤついていたのが気になる。

 

落ちているときに何かあったのだろうかと、日向と入江に同じことを聞いてみたところ

日向は何も知らないようだったが、入江は頬を染め

その質問以降、俺と目を合わせてくれないでいる。

 

――――入江は明らかに何か知ってそうだが話す気はなしか

 

その後俺はしばらく休憩した後、チャーの元へと向かった。

 

「チャー、この間頼んでおいた太刀は出来上がってるのか?」

 

「そうか、アレを取りにわざわざ降りてきたのか」

 

「?日向たちから聞いてないのか?」

 

「あぁ、これから聞こうと思ってた時にお前が目を覚ましたんでな」

 

「そうだったのか」

 

俺は日向と入江の方を見る。

二人は今、のんびりと椅子に座ってオールドギルドの作業風景を眺めている。

 

「それで俺の太刀はできてるのか?」

 

「あぁ、できてるぞ」

 

チャーはオールドギルドの隅の方へ行き、刀とベルトを持ってきた。

 

「これがお前の注文の品だ、それとこっちがおまけだな」

 

「おまけ?」

 

「あぁ、制服のままだと刀の装備は難しいと思ったんでね、勝手に専用のベルトを用意させてもらった」

 

「いや、助かる。俺もどうやって装備しようか悩んでたところだったからな」

 

燕は刀とベルトを受け取り、早速装着する。

 

「おぉ、なかなか様になってるじゃないか!」

 

「動き辛くない最高の出来だよ、ありがとう」

 

俺とチャーはその後、他愛もない話で盛り上がり時間が過ぎて行った。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「それじゃあ、地上まで送ってやるよ」

 

「ああ、助かる。日向に案内を任せると来る時と同じように迷いかねないしな」

 

「ひでぇ!!」

 

日向の反応を見た俺とチャーが大声で笑いだし、入江は苦笑している。

 

「お前らなぁ!!」

 

日向をいじった後、チャーの案内によって無事に地上へ戻ることが出来た。

 

外は既に夜で、空を見上げると無数の星が煌めいていた。

 

「……長い一日だったな」

 

「そうですね」

 

俺はグラウンドへ続く階段横の芝生へ寝っころがり、しばらくこの星空を見ていようと思った。

すると入江は俺の隣へ腰かけ、同じように空を見上げた。

 

「……何してるんだ?日向の様に帰らなくていいのかよ」

 

「私も、この星空を見たくなったんで。少しの間だけなので心配無用です」

 

「……そうか」

 

俺は再び空を見上げる。

ふと思い出したのが、落ちているときに見たであろう夢の事だ

 

森の奥にひっそりと建つ孤児院、そこで生活している子供達

 

――――生前の俺はなんで孤児院に行っていたんだろうか、俺も孤児だったのか?

 

そんなことを考えながら俺はまた入江の方へ視線を向けていた。

 

ぼんやりと見上げてる入江の髪を風がなびかせている。

 

「………綺麗だな」

 

「そうですね」

 

俺はハッとして星空の方を見直す、その空の星に星座なんてものはなく

ただ散りばめられているという感じだったが、俺に星座なんてものは分からない

それでも今は十分綺麗に見えた。

 

「本当に綺麗だよな」

 

さっきとは意味の違う意味の綺麗という言葉、なぜあんなセリフが出たのか

この時の俺はあまり深く考えなかった。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

後日談

 

オールドギルドへ行ってきたことを入江が岩沢とひさ子に話してしまった為に、二人から説教を食らい

ゆりからはついでだから注文してた武器も持って帰ってきてほしかったと文句を言われ

俺の疲れは普段の作業以上に溜まってしまった。

 




で、出来た。何とか出来ましたよ!

燕「えらく時間がかかったな、仕事納めは土曜日だったはずだが?」

ちょくちょく書いてはいたんですけど、会社の飲み会とか色々とすることがありまして

入「まぁ月一本が守られてるんで大目に見ましょうよ」

日「えっと作者の事情はそのあたりにして、今回でオリジナルは終了でいいんだよな」

はい、次回から原作第三話に突入します。

燕「ようやくか、こっちもこっちで時間かかりすぎだろ」

…面目ないです。

とりあえず第三話の予告的な物をするならば、今回までお預けだった燕君とガルデモの話がメインですね

日「あ、原作と言っても流石にオリジナルは混ぜるのか」

そりゃそうでしょ、そうしないと音無メインと変わりませんからね

入「そろそろ尺もありませんし、このあたりで終わりませんか?」

そうですね、ではでは今回は大晦日と言う事もあるので
ちょっと趣向を変えて

それでは皆様!
『来年もよろしくお願いします!!』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第22話 レコーディングとブリーフィング

 

ギルド通路遭難事件から数日が経ったある日

 

俺はゆりに頼み込んで、追加休日を数日貰い放送室に籠っていた。

 

「――っ! ふぅ、今日はこんなもんかな?」

 

俺は持っていたベースを立て掛け、腰を下ろした。

 

「…レコーディングも楽じゃないなぁ、しかも耳コピだし」

 

オールドギルドから戻ってきた俺はガルデモの練習を聞いてふと思ったことがあった。

ガルデモの曲を録音できないかと

 

そこで俺はゆりに頼み、今回の追加休暇を貰った。

しかしぶっつけ本番でレコーディングなんて出来るのか分からないので、俺の覚えている曲を試しにレコーディングしてみた。

 

レコーディングそのものは何とかなるが、その後のマスタリングがなかなか上手くいかず手こずっているのが現状だ。

 

「はぁ、なんだかんだで思い出した曲を含め八曲ほどレコーディングしてしまったが、完全に当初の目的から外れてしまったな」

 

俺はいつのまにかレコーディングに没頭してしまい、何の為にレコーディングテストをしているのか忘れてしまっていた。

 

俺がしばらく椅子に座ってのんびりしていると後ろから声をかけられた。

 

「レコーディングの調子はいかがですか?」

 

「うぉあ、ってなんだ遊佐か、いきなり声かけるなよな。まぁ順調っちゃ順調かな?近々ガルデモのレコーディングも出来るはずだ」

 

「そうですか。それと月斑さん、ゆりっぺさんから本部への招集がかかっています」

 

「ん?次のオペレーションか。にしても、この間のトルネードには驚かされたよ。仰々しいネーミングだから何かと思えば、拍子抜けな内容にもほどがあるぞ」

 

俺は今回の休暇を貰う前に二回ほど、オペレーショントルネードを行っている。

やはり頼れる武器が刀だけだと役立たずなのは明確だった。

射撃できる分、野田の方がマシだと自分でも思ったくらいの結果だった。

 

「まぁゆりっぺさんが付けた名前ですし」

 

「……ふっ、あっははは!ちげぇねぇや!」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

―――校長室(作戦本部)

 

本部内ではギターの音だけが鳴り響いていた。

岩沢がゆりに頼まれていた新曲を完成させ、それを披露しているからだ。

 

戦線メンバーは全員、岩沢の新曲を静かに聞いている。

そして最後まで弾き終わると、ゆりが口を開いた。

 

「なぜ新曲がバラード?」

 

「いけない?」

 

「陽動にはね」

 

どうやら戦線の陽動で使うには難しいようで、没らしい

俺としてはとてもいい曲なんだが

 

「その陽動ってのはなんなんだ?」

 

音無が手をあげ皆に質問してきた。

 

「何回もトルネードやってるのに聞いてないの?

 彼女は校内でロックバンドを組んでいて、一般生徒の人気を勝ち得ている。

 私たちは彼らに直接危害は加えないけど、時には利用したり、妨げになる時はその場から排除しなくてはならない。

 そういう時、彼女たちが陽動するの」

 

「ただゲリラライブしてた訳じゃなかったんだな。それにしてもNPCのくせにミーハーな奴らだなぁ」

 

「つまり、彼女たちのバンドにはそれだけの実力と魅力があるって事だ」

 

ゆりと日向の説明を受けて音無は納得したようだ。

 

「で?駄目なの?」

 

岩沢は今引いた曲の合否が気になるようで、話を戻した。

 

「ん~、バラードはちょっとねぇ」

 

「いいんじゃないか?別に

 外で戦闘する分バラードじゃ派手に動けなくなるのは分かるけど、隠密作戦がないわけじゃないだろ?そういう時ぐらいバラードでもいいじゃないか」

 

「月斑君の意見も一理あるけど、仮に新曲を披露したとしてその新曲があまり弾かれなかったら観客はどう思うかしら」

 

「うっそうか、そのあたりも考えないとダメなのか」

 

結局俺の意見は論破され、今回の曲は没となってしまった。

 

「さて気を取り直して、総員に通達する」

 

新曲の話が終わった所で次の議題へ移るそうだ

電気が消えスクリーンにSSSのエンブレムが映し出され、ブリーフィングが開始される。

 

「今回のオペレーションは、『天使エリア侵入作戦』のリベンジを行う。決行は三日後」

 

本部内でオォ~ッという声が上がるが、初めて聞く作戦名に俺と音無は首をかしげていた。

 

「その作戦ですか。ですが前回は――」

 

高松の言葉を遮るようにゆりが右手を前に出した。

 

「今回は彼が作戦に同行する」

 

ゆりは席をずらし、その後ろから出てきた人物は

 

「よろしく」

 

眼鏡をかけたおかっぱ頭の少年だった。

――いや、だから誰だよ

 

「椅子の後ろから」

「眼鏡かぶり」

「ゆりっぺ、何の冗談だ」

「そんな青病たんが使い物になるのかよぉ」

 

「まあまあ、そう言わないでくれる?」

 

椅子の後ろから現れた少年(とりあえず眼鏡かぶりと命名)は机の前に堂々と立っている。

 

「はっ!なら、試してやろう!」

 

野田はハルバートを以前俺に向けたときの様に、眼鏡かぶりへと突きつけた。

 

「お前友達いないだろ」

 

音無のツッコミなにも反応せず眼鏡かぶりは鼻で笑うと

 

「3.141592653589793238462643383279―――」

 

突然円周率を言いだし

 

「止めろぉ止めてくれぇ!!」

 

野田は床へと崩れ去って行った。

 

「まさか!円周率だと!?」

「眼鏡かb―――」

「止めてあげて、その人はアホなんだ」

「大山いくらなんでもそれはひどいと思うぞ、アホだけどさ」

 

高松のセリフを無視し、大山と俺がひどいことを言ったにもかかわらず、ゆりは話を続ける。

 

「そう、あたしたちの弱点はアホなこと!」

 

「リーダーが言うなよ」

「俺この戦線に入った事後悔してきた」

 

俺と音無の言葉を再度無視し話を続ける。

 

「前回の侵入作戦では、我々の頭脳の至らなさを露呈してしまった。

 しかし!今回は、天才ハッカーの名を欲しいままにした彼、ハンドルネーム・竹山君を作戦チームに登用、エリアの調査を綿密に行う!」

 

「めがn、今のは本名なのでは?」

 

「僕のことは――」

 

眼鏡かぶりがいきなりこちらを指差し

 

「クライストとお呼びください」

 

そう言ってきた。

 

「はっはは」

「みろ、カッコイイハンドルが台無しだぁ、さっすがゆりっぺだぜ」

 

――案外厨二なのかもしれないな、竹山って

 

「で?天使エリアってのは?」

 

メンバー全員が呆れていると、先程と同様に音無が疑問に思ったことを質問してきた。

その質問に日向が答える。

 

「天使の住処だ」

 

「天使の住処?」

 

音無の頭の中では、天空の城ラ〇ュタが描かれていた。

 

――天使の住みかねぇ、天使と言えば神聖なイメージが強いが

 

一方俺の頭の中では、ゼウス神殿が描かれていた。

 

――《まて、そんな所にハッカーが必要なのか?》

 

二人とも想像は違えど、結論は同じだった。

 

「中枢はコンピューターで制御されているんだよ」

 

「えぇ!!?機械仕掛けか!?」

 

この時音無の想像では、ハウ〇の動く城が描かれていた。

 

――機械仕掛けか

 

俺の想像では、ギ〇スR2に出てきたダモク〇スが描かれていた。

 

??????

 

「そのどこかに、神に通じる手段があるの」

 

「これはとんでもない作戦だ!」

 

以前のトルネード同様に大山が少々興奮気味に声を上げる。

 

「二度目ということもある、天使も前以上に警戒しているはずよ。

 ガルデモにはいっちょ派手にやってもらわないとね」

 

「了解」

 

「Get Chance&Luck!!」

 

そこで作戦会議は終わり、俺と岩沢は練習教室へ戻ろうとするとゆりに声をかけられた。

 

「月斑君、今から陽動班の手伝いに回ってもらえない?」

 

「陽動班の?」

 

「そ、校内にこのビラをあらゆる所に貼ってきてもらいたいの」

 

「陽動班ってかなりの人数がいたよな、なぜ俺に」

 

俺は素朴な疑問をゆりにきいてみた。

 

「今回のオペレーションで体育館を使うからそっちに人数回してるの。

 で、これを張る人が一人になっちゃった訳」

 

「なるほど、そいつと協力してビラを貼れと」

 

「そういう事」

 

俺は少し考え岩沢の方を見た。

すると岩沢は分かったかのように

 

「別にこっちに気を遣わなくてもいいよ、今日は特に何もないし」

 

「そうか、ならおとなしくビラ貼りやりますか」

 

俺はゆりから大量のビラを受け取り、校内に貼って回るため本部をあとにした。





新年明けましておめでとうございます!
今年も『Angel Beats! 星屑の記憶』をよろしくお願いします!

―ザシュ!

燕「おい作者、その挨拶はいくらなんでも遅すぎるだろ!」

入「そうですよ、もう一月も終わりに近いですよ」

そのセリフは斬ってから言わんでください
確かに挨拶するには遅すぎますけど、しない訳にもいかないじゃないですか

燕「いや、さすがにもう明けましてが使える日にちじゃないだろ」

まぁ挨拶の件はこのくらいにして、本題です

入「今回から原作第三話のストーリーですね」

燕「冒頭でやってたレコーディングの意味とは」

レコーディングしてた意味は三話終盤で分かりますよ
まぁどこで使うかは皆さんもうお分かりでしょうけどね…

燕「発想が浅はかだからな」

入「まぁまぁ、珍しい月斑先輩も見れるから良いじゃないですか」

ん?入江ちゃんもしかしてプロット覗いた?

入「な、ナンノコトデスカ?」

燕「分かりやすいな」

文字だと余計分かりやすいですねww

入「はい、もう尺が短いので締めましょうか!」

燕「逃げたな」

逃げましたね、まぁ良いですけど

入「それでは皆さん!」

『また次回もお楽しみに~』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第23話 ポスター貼り開始

 

俺はゆりから預かったポスターを持って学習棟へ向かった。

 

そして学習棟に入った俺が見たものは、そこらじゅうの壁に貼られた大量の告知ポスターだった。

 

「な、なんじゃこりゃ、すでに大量に貼られてるじゃねぇかよ。

 一人じゃなくて数人こっちに来たんじゃないのか?」

 

俺は周囲を見渡しながら学習棟の中へと入って行くと、奥の方から「ユイです!」っという声が聞こえ、ガルデモの事も聞こえてきた。

 

「もしかして今の声の主が、今ポスターを貼ってるっていう陽動班の奴かな?」

 

俺は声の聞こえた方へ向かい、自販機のすぐ近くにある掲示板コーナーでユイと思われる人物と音無が話を、…いや、むしろ一方的に岩沢について語られ続けている音無の姿を見つけた。

 

「何やってんだ音無」

 

「ああ月斑!ちょうどいいところに」

 

助かった!という様な顔をこちらへ向けってきたので俺は

 

「音無、ナンパも程々にな」

 

俺は音無に背を向け片腕を振りながら立ち去ろうとしてやった。

 

「ちょっとまて誤解だ!ナンパじゃない!」

 

「えぇ~、あんな情熱的に『今からお茶でもどうだい?』って誘ってくれたのはなんだったんですか!」

 

ピンク髪の少女も悪ノリで話に参加してきた。

 

「お前まで何言ってるんだ!さっさと仕事に戻れ!」

 

「あ、そうでした!ではこれで!」

 

そういうと俺が来た方向とは逆の方へ歩き始めた。

俺と音無をそれを黙って見送った。

 

「って、見送っちゃ駄目じゃねぇか!ちょっと待ったピンク頭!」

 

「ピンク頭!?」

 

ピンク頭と言われた少女は驚き足を止めた。

 

「えっと、一人でポスター貼ってる陽動班ってお前の事か?えっと名前は」

 

「ユイです!え~月斑先輩…で、あってましたか?」

 

「俺の事知ってるのか?」

 

「はい、いつもでかい斧を持って歩いてる先輩から『あいつは俺よりも弱い雑魚だ!』って言ってましたから」

 

「あの野郎そんなことを言ってんのか」

 

俺が苛立つと同時に音無も

 

「俺には『ヤツは災厄をもたらすから注意しろ』だってさ」

 

「なるほど、今度斬っとくか

 あと、俺はあいつに負けた事ないからな!デマに騙されんなよ」

 

「それは大丈夫です誰も信じてませんから、だって戦線一のアホですし」

 

ユイは野田の事をアホと言い切りやがった、しかも嘘だと思われていたと

 

「…それはそれで可哀相だな」

 

「可哀相というより、哀れだな」

 

俺は野田の事を哀れに思っていたが、それを吹き飛ばすほどの言葉がかけられた。

 

「それに月斑先輩は今陽動班ですごく話題になってますから」

 

「なに?」

 

「新入りのくせにガルデモのそばに居られるなんて生意気だ!とか、いつか死ですら生温い罰を与えてやるとか色々と」

 

俺はそれを聞いた瞬間青ざめた

 

「おい大丈夫か?月斑」

 

「…あ、あぁ、今ものすごく身の危険を感じただけだから大丈夫だ」

 

音無は俺の青ざめた表情のせいか、顔が引きつっていた。

 

「ふぅ、それよりもだ。俺はリーダーに言い渡された仕事で、ポスター貼りの手伝いに来たんだ」

 

「そうだったんですか、なら第三棟の方をお願いします。まだ貼っていないので、私は第二棟の方に行きますね」

 

そう言うとユイは走って行ってしまった。

 

「じゃあ、俺も行くな」

 

「おう、またな」

 

音無もどこかへ行ってしまったので、俺はポスターを貼りに第三棟へと向かった。

 

この時俺は、ポスターを貼り終えゆりのところへ報告へ行った時にとんでもない事を頼まれるとは思いもしなかった。





はい、ユイ登場回でした!

燕「俺は身の危険を感じた回だったな」

入「音無さんも久しぶりの登場でしたね」

燕「原作主人公なのにこの扱い、良いのか?」

だって私、そんなに音無好きじゃないですし

燕「うわ、作者の爆弾発言」

入「なんで好きじゃないんですか?」

いやキャラとしては好きなんだけど、入れ込むほど好きになれないというかなんというか

燕「うまく説明できないのは分かった」

まぁその話は良いじゃないですか

入「そういえば今回もゲストなしですね」

ユイを出してもよかったんですけど、ユイをゲストで迎えるなら球技大会かなと思ったもので

燕「確かにこのシーンだけでゲストとして呼ぶのは物足りない感があるな」

入「あはは、えっと次回は作戦開始でしたよね」

そうなりますね、本来ならガルデモと燕君の話も書きたかったんですけど
ゆりの頼まれごとのネタバレにもなってしまいそうだったので

燕「今回のラストに出てきたヤツか、ホントにするのか?」

はい、やってもらいます

燕「はぁ~」

入「まぁまぁそんなに落ち込まなくても、それより今回のあとがきはこの辺で終わりませんか?」

そうですね、いつもよりちょっとだけ長くなってしまいましたし

入「それでは皆様!」

『また次回もお楽しみに!』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第24話 天使エリア侵入作戦開始

ちょっと突貫作業で執筆したのでおかしな文章があるかもしれません
誤字脱字、文脈がつながってない所のご報告していただければ幸いです。


作戦当日、俺はゆりに呼び出され、作戦本部へ出向いていた。

 

「俺はこれでも忙しいんだが、あと数時間で作戦開始だろ?

 やることが色々あるんだけどな」

 

「そんなに時間はとらせないわ、今回のオペレーションで保険をかけておこうと思っただけよ」

 

「保険?」

 

その後俺は、ゆりから天使エリアへの侵入には来なくてよいというのと新たな作戦内容を聞かされ、反発するも無意味に終わり、いつでも実行できるよう準備させられた。

 

今でも思う、何が何でも反対しておけば良かったと

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

     ――体育館――

 

1900より開始される今回のオペレーション

それと同時に開催されるガルデモライブの会場である体育館に生徒が集まり始めていたが

 

「…少ない」

 

「確かにこれじゃ少なすぎるな」

 

俺は遊佐と共に舞台袖から客入りの様子を眺めていた。

 

今の時刻は18時52分、ライブまで十分をきったにもかかわらず、集まった生徒の数は十分の一程度でしかなかった。

しばらく様子を見ていたが、開始まで五分をきった辺りからぞろぞろと生徒たちが集まってきた。

 

「よし良いぞ、どんどん集まれ」

 

俺はふと、舞台の方に目をやる。

そこには陽動班の連中がセッティングした機材が綺麗に並べられていた。

……セッティング最中に数多くの殺気を感じたのは気のせいだと思いたい

 

ガルデモメンバーもすでに待機しており、幕が上がればいつでも演奏可能になっている。

 

「ん?岩沢、そんなところで何やってんだ?」

 

「ちょっとコイツに特等席をな」

 

アンプの陰に隠れていたが、そこには岩沢のアコースティックギターが置かれていた。

 

「なんでそんなものをステージに?」

 

「生きていた頃の事を少し思い出してね、どうしても置きたくなったんだ」

 

岩沢は懐かしむようにギタに目をやり、そう答えた。

 

――――生きていた頃か

 

まだ記憶が完全ではない為、少し羨ましい気もする。

ただ記憶がある者から見れば、記憶がないのは幸せらしい

記憶喪失である俺や音無は、早く記憶を取り戻したいところなんだがな

 

軽く岩沢と会話をしてると遊佐から、作戦開始の合図が出され、俺は急いで舞台袖へ隠れ、体育館の照明を落としステージの幕を上げた。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

ライブの盛り上がりはまずまずといったところで、生徒の数も開始時に比べればかなり増えた方だ。

 

――――会場に居るユイは少し不満そうだが

  いい感じだ、この調子でいけば生徒の数ももっと増えるだろ

 

俺が悠長に考えていると『Crow Song』がちょうど終わった。

ステージで演奏中のガルデモに目を向けると、岩沢は少し焦ってる様な顔をしていた。

 

「……杞憂に終わればいいがな」

 

「なにがです?」

 

俺のつぶやきが聞こえたらしく隣に居た遊佐が質問してきた。

 

「いや、なんでもねぇ。ただの独り言さ」

 

俺は焦った岩沢が失敗しないか不安だった。

 

そして会場には次の曲『Alchemy』が流れ始め、会場が再び盛り上がりを見せる

 

『無限に生きたい~♪』

 

焦ってはいるものの、歌っているときにの岩沢の顔は真剣だった。

 

――――さすがだな、伊達にゲリラライブをやってないって事か

 

生徒の数もどんどん増えてきている。

盛り上がっている生徒につられて、俺と遊佐もリズムにノッていた。

 

Alchemyもサビに入り、会場がさらに盛り上がり始めた瞬間

体育館に教師達が押し入ってきた。

 

そしてその後ろに天使の姿もあった。

 

「天使、出現しました」

 

隣では遊佐がゆりに連絡を取っている。

 

――――さて、俺は念のため準備しておくか

  かなり不本意なんだが…

 

俺は体育館二階にあるPAルームへ向かった。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

PAルームでゆりの用意した「プランB」の準備をしていると、突然音楽が止まり、生徒たちのざわめきが聞こえてきた。

『クッソ!ふざけんなよ!』

『止めてあげて!』

『俺達の為なんだよ!』

『放してやってくれよ!』

『彼女たちの音楽が支えになってるの!』

一人ひとりが声を上げているため何を言っているのか分からないが、ガルデモライブを再開させろみたいなことを言っているんだと思う。

 

――――やっぱやるしかないのか

 

俺は少々うんざりしながら、覗き窓から下の様子を窺う

 

岩沢とひさ子は腕を抑えられ身動きが取れず、入江と関根は近くに教師がたっているだけだ

力の弱い二人はこれで十分と判断されたためだろう

 

見ていて分かったが、どうやらジャージの教師がリーダー格の様だ

そしてそのジャージ教師はゆっくりと岩沢のアコギの方へ歩いて行き、それを手に取った。

 

それと同時に

『それに、触るなぁぁああああ!!』という岩沢の叫びが聞こえてきた。

岩沢は腕を掴んでいた教師を振り払い、ジャージ教師へ走り出した。

 

だがその行為も虚しく、入江と関根を見張っていた教師に再び取り押さえられてしまった。

 

――――これ以上はもうダメだな

  ……覚悟を決めてやるしかないのか

 

俺は覚悟を決め、指定の位置へ就き

 

セットしておいた曲が流れ始めると同時に

 

「ライブ妨害なんてくだらねぇ!俺の歌を聴けぇっ!!」

 

体育館全体に響き渡るよう叫んだ。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

     ――天使エリア――

 

『ライブ妨害なんてくだらねぇ!俺の歌を聴けぇっ!!』

 

どういう訳か校内放送で月斑君の声が聞こえてきたが、現状から考えるとガルデモメンバーの身動きが取れなくなったのだろう

 

月斑君がレコーディングすると聞いたときに思いついた作戦だったが、使われる事が無いよう祈っていた。

 

「なぁこれ、月斑の声だよな」

 

「言われてみれば確かに、でもなんで歌ってるんだ?」

 

「あたしがそう頼んだのよ」

 

日向君と音無君の会話を聞き、そう答えた。

 

「もしライブが途中で中断されるような事があれば、どうにか足止めしてって」

 

月斑君に伝えた内容とは少し違うけど、今はそれで十分だと思う。

そんな事よりも月斑君が歌いだしたと言う事はガルデモライブが中断されたと言う事だ

『ライブ妨害なんて――』とも言っていたし、現状はかなりまずいのかもしれない

 

「月斑君が時間を稼いでいる間に撤収!」

 

あたし達は侵入の痕跡を消し、天使エリアを後にした。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

     ――体育館――

 

「ライブ妨害なんてくだらねぇ!俺の歌を聴けぇっ!!」

 

そう叫びながら俺は飛び降り、その勢いのままジャージ教師を蹴り飛ばしてやった。

 

「岩沢、ギター借りるぜ!」

 

蹴り飛ばした反動で放り出されたアコギをキャッチし元の位置に戻す、そして岩沢のエレキを手に取った。

 

「さぁ行くぜ!HOLY LONELY LIGHT!

 アァァァァァァァァァォッ!!」

 

突然の一人ライブで来場は静まり返っていたが、次第にガルデモライブの時のような熱気がよみがえり始めた。

 

「先生大丈夫ですか」

 

蹴り飛ばされた教師の元へ、ガルデモメンバーを拘束していた教師たちが集まって行く

 

「このっ、教師を蹴り飛ばすとはどういう事だ貴様!」

 

ジャージ教師は胸ぐらを掴もうと手を伸ばしたが、俺はそれを起用に避け歌い続ける。

 

「目が眩みそうな♪」

 

俺は次々と取り押さえようと向かってくる教師たちを躱し歌い続ける。

 

俺がここで失敗すれば、何のために出てきたのか分からなくなってしまう

幸い天使はまだ体育館の入り口付近でこちらを見ている。

 

――――そうだ、そのまま立ち止まってろ

   俺の歌が終わるまで!

 

歌い始めた時よりも本気で歌う

その本気さが伝わったのか、ついにまばらだった歓声も全体から聞こえてくる。

 

「HEAVY LONELY NIGHT 闇の中から答を~♪

 見つけ出せ!♪」

 

俺が歌っている間に、陽動班の連中が大急ぎで機材を片付けている。

教師たちもそれに気付いてはいるが、俺が邪魔に入ったりしているので

なかなか陽動班の方へ手を付けられずにいる。

 

――――早く、もっと早く撤退してくれ

 

歌いながら教師たちの猛攻を避け、陽動班の方へ向かおうとする教師の足止めをしている俺の身体はかなり限界に来ていた。

 

実際、陽動班の方は諦めてもよかったのかもしれない

だがここで楽器を没収されてしまうと、後のオペレーションに影響が出てしまう

それを危惧したゆりがこのプランを提案した。

 

そして俺は、渋々ながらもそれに答えた。

 

答えたからには必ずやり遂げる。

 

そんなことを考えているとHOLY LONELY LIGHTを弾き終わり、次の曲が流れ始めた。

 

「POWER TO THE DREAM~♪」

 

その後も俺は必死に歌った、歌い続けた。

陽動班の作業も完了し、ガルデモメンバーも陽動班と共に撤退済みだ

 

今体育館に居る戦線メンバーは俺を除けば、観客に紛れているユイと、いつでも撤退可能な位置まで移動しゆりと連絡を取っている遊佐くらいだろう

 

――――あとは、どうやって俺も撤退するか考えないとな

 

俺は今までガルデモの代わりにライブを継続させる事しか考えていなかった為、自分の撤退の事をすっかり忘れていた。

 

今もなお、教師の猛攻を避けながら歌うというパフォーマンスを繰り広げ、会場も盛り上がっている。

 

この状況で逃げ出すのも無理な話だろう

 

そう、予想外な事が起きない限り

 

「月斑君、伏せなさい!」

 

無意識にその声に反応し、地面に伏せる。

直後、体育館内に閃光音響手榴弾が投げ込まれ、生徒や教師が混乱する。

 

「こっちよ!」

 

俺も閃光音響手榴弾の影響を受け怯んでいたが、手を引っ張られ逆らうことなくそれに付いて行った。

 





燕「疲れた……」

入「お疲れ様です月斑先輩」

収録お疲れ燕君

燕「なんで俺がライブする羽目になるんだ」

折角レコーディングしたんですから、劇中で使わないでどうするんですか

燕「あのままテストとして終了しても問題なかっただろ」

入「それだとタグ詐欺になったりしませんか?」

燕「別にライブするとは書いてないから詐欺ではないと思うぞ。劇中でもところどころ使ってるわけだし」

まぁメタイ話はこの辺にして、次回は後日談になりますね。

入「今回だけでライブ終わっちゃいましたしね」

燕「後日談って、例のアレか」

そうです。

入「ちょっと寂しいですけどね」

まぁまぁ、そうでもしないと話の流れ的に問題が出てきますから

燕「仕方がないか」

それじゃそろそろ締めますか

入「は~い、それでは皆様!」

『また次回もお楽しみに~』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第25話 ミッション終了、岩沢の決断

天使エリア侵入作戦の翌日、音無を除く作戦参加者は全員と他数名が本部に集まっていた。

 

「分かったことをまとめてくれ、ゆりっぺ」

 

日向の一言で会議が開始される。

 

「天使は自分の能力を自分で開発してた。それはくしくも、あたし達が武器を造る方法と同じだったのよ」

 

「それってどうゆう事?」

 

大山の質問にゆりは

 

「確信がないの、今はまだ言えない」

 

そう言い、窓の外を見つめたまま、何かを考えているようだった。

 

――――天使が俺達と同じ方法を取っていると言う事は、天使も人間なのか?

  いや、ゆりは確信がないと言った。何か引っかかっている点でもあるのだろう

 

 

「では、今回案件は以上と言う事でよろしいですか?」

 

俺が考え込んでいると高松が会議を終わらせようとしていた。

 

が、しかし

 

「あ、ちょっといい?」

 

岩沢が不意に声を上げ、高松の言葉を遮る。

 

「なに?岩沢さん」

 

「突然の事で申し訳ないんだけど、アタシ、しばらくガルデモから抜けさせてもらうから」

 

『…………………………』

 

本部内の誰もが驚きすぎて声を出せなかった。

 

「え、どうした?みんな口開けたまま黙り込んで」

 

「いやいやいや、お前の発言のせいだよ!何を考えて抜けるなんて言ったんだよ!」

 

「そうよ岩沢さん!急にどうしたの!?」

 

俺とゆりが同時に岩沢にツッコミを入れるが岩沢は何のことかよく分かっていない顔をしている。

 

「…とにかく、なんで急に抜けるなんて言い出したんだ?理由を教えてくれ」

 

「理由?アタシはただ、自分の曲を作りたいだけだよ」

 

「それならこれまで通り、ガルデモで作ればいいじゃない」

 

ゆりの言葉に岩沢は首を振った。

 

「多分今のままじゃ、本当に歌いたい曲なんて作れないと思う

 だから一度一人になって考える時間が欲しいと思ったんだ」

 

岩沢はアコギを構えこちらを向き話を続ける。

 

「ガルデモメンバーの了解も得てるし、問題はないと思うんだけど」

 

岩沢のその一言を口にした瞬間、ゆりがキレた。

 

「問題大有りよ!抜けたボーカルの枠はどうするのよ!」

 

ついに岩沢とゆりが口喧嘩を始めてしまった。

 

「おいどうすんだよコレ、てか最初のシリアスな空気はどこ行ったんだよ」

 

日向のいう事もごもっともである。

俺も今まで、天使は実は人間だったのではという考え事をしていた事を忘れていたぐらいだ。

 

――――って、天使がどうとかは今はどうでもいい。目の前で行われている喧嘩をどうにかするのが先決だな。

  さて、どうしたものか

  岩沢は自分探し?の為にガルデモを抜けると言っている。

  それに対しゆりはガルデモを抜けられると困ると、これをどうにかするには

 

「なぁ、新しくボーカルを募集するのはどうだろうか」

 

俺が考え付いた結果はメンバーの募集だった。

これが確実で定番の策だと思う

 

「今からメンバー募集してもロクな奴が来ないんじゃないの?」

 

ゆりはこう言うってはいるが、俺も当てがないわけじゃない

むしろあるからこそこの提案ができる。

 

「ちょっと当てがあるんだ、だから一応結果が分かるまでこの話は保留って事でだろ?」

 

「ん~~」

 

ゆりはしばらく考え、とりあえず了承してくれた。

あとは俺が心当たりに話をするだけだ

 

――――さぁて、今後のガルデモはどうなることやら





はい、今月ももう終わってしまうから突貫執筆となってしまいました。

燕「書く時間はあっただろうに…」

入「そうですね。今月は休日も多かったですし」

本当に申し訳ありませんでした。

燕「まぁ部屋の模様替えとかに時間差いてたらこうなるわな」

ちょくちょく書こうとは思ってたんですけど、部屋の片付けや車のタイヤ交換やらで忙しかったもので

燕「はぁ、それで今月投稿できなかったらどうする気だったんだ」

申し訳ありませんとしか言えません

入「まぁまぁリアル事情の話はその辺にして、次回は原作第四話に入るんですよね」

燕「ユイも登場するからな、それにしても球技大会か、ちょっと面倒だな」

入「駄目ですよ月斑先輩、球技大会の応援頑張りますね」

燕「入江は不参加だから良いよな」

不参加の代わりはちゃんと用意してありますけどね

入「え!?私何かさせられるんですか?」

ふっふっふ

燕「変な笑い声出してないでそろそろ締めるぞ」

入「う~、仕方がないです。それでは皆さま」

『また次回もお楽しみに~』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第26話 オーディション!

 

岩沢がガルデモから抜けると言い出した次の日

俺は岩沢の後釜に何そうな奴を連れて、本部へ訪れていた。

 

「よう、ガルデモのボーカル候補連れてきたぞ」

 

「こいつが岩沢の変わりだと!?」

 

「ありえねぇ」

 

俺が連れてきた奴の姿を見るなり、野田と藤巻が否定の言葉を飛ばしてきた。

 

「見た目で決めるなよ。ほれ、さっさと挨拶しろ」

 

「ユイって言います。よろしくお願いしまっす!!」

 

俺が挨拶するよう促すと、決めポーズ付で挨拶した。

 

「……誰?コイツ」

 

「お前何も聞いてなかったのか?ガルデモのニューボーカル候補だよ」

 

日向の予想外のセリフにツッコミを入れてやろうかと思ったが、音無が変わりにツッコミを入れてくれたおかげで、俺は口を挟まず話を続ける。

 

「つう訳で、このユイを岩沢の後釜にしようと思ってるんだが」

 

「月斑さん、GirlsDeadMonsterはロックバンドですよ」

「アイドルユニットにでもするつもりか」

 

今の挨拶で高松と松下五段が不満に思ったのか、ちょっと不安そうにしていた。

しかしユイは

 

「いや、ちゃんと歌えますから。どうか聞いてから判断してください!」

 

いつの間に準備したのか、ラジカセとマイクを握っていた。

 

「形だけはさまになってるな」

 

野田が見たまんまの感想を述べると、ユイはラジカセの再生ボタンを押した。

 

『目覚めては繰り返す♪』

 

ラジカセからはMy Soul,Your Beats!の音楽が流れ始め、ユイもそれに合わせて歌い始める。

 

思いのほか上手いと思ったのか、戦線メンバーはユイの歌に聞き入っていた。

が、それも歌が終わるまでだった。

 

自分の歌が好評の様子だと思い調子に乗ったユイはマイクを握ったままその場でくるりと回り、マイクスタンドの足を蹴り上げた。

 

その瞬間、マイクのケーブルが器用に首に絡まり、ユイの体が中に浮いてしまった。

 

『うわっ!』

 

「何かのパフォーマンスですか」

「デスメタルだったか」

「Crazy baby.」

 

俺を含めた戦線メンバーが驚いた直後、次々と感想を述べているがユイは必死に首に絡まったケーブルを解こうとしていた。

 

「し、死ぬ…」

 

「いや、事故のようだぞ」

 

「いやいやいや、冷静に事故だと見極めるより助けに入れよ!」

 

真っ先に救出に向かうと思っていた音無だが、他のメンバーにツッコミを入れるだけで助けに移行とはしなかった。

 

―――いや、死んでも死なない世界だからこその光景なのかも知れないな

 

俺がケーブルを外してやると、ユイはその場に倒れてしまった。

 

「とんでもないおてんば娘ね、クールビューティな岩沢さんとは正反対」

 

「確かに正反対ではあるが、コイツの実力は褒めてやってもいいんじゃないか?

 なにせガルデモの曲を全曲歌えるらしいからな」

 

「確かに歌ってはいたが、心に訴えるものがなかったな」

「ないですね」

「ねぇな」

 

俺自身ちょっとばかし同じことを思っていたので何も言えなかった。

 

「コラァ!そんな曖昧な感性で若い芽を摘み取りにかかるな!それでもお前ら先輩かぁ!!」

 

ユイが怒るのも当然である。誰だって適当な理由で批難されたくはない

 

「すでに言動に難有りだぞ」

「どうするの?」

「やる気だけはありそうね」

「単にミーハーなだけだぜ」

 

場の雰囲気的にユイは不採用になるかも知れないと思っていると、意外なところから賛成の声が上がった。

 

「あたしはユイを採用してもいいと思うよ」

 

「岩沢さん!?」

 

「ただし、ガルデモメンバー全員が認めないと不合格だからね」

 

いままで部屋の隅のほうで静かにしていた岩沢が突然そんなことを言い出した。

 

「全員が認めないとって、ガルデモメンバーの前で今みたいに何か歌わせるのか?」

 

「そうじゃなくて、……えっと確か、あったあった」

 

岩沢はギターケースの中から数枚の紙を取り出し、それをユイへ手渡した。

 

「この曲に歌詞を付けてライブをして、観衆の反応で採用するかどうか決める」

 

「ちょっと、そんな方法許すわけないじゃない!」

 

岩沢の提案にゆりは猛反対だった。

 

それもそうだろう、陽動作戦として行うライブを使っての試験だ、もし失敗すれば陽動できずに作戦は失敗してしまう

そんなリスクは犯したくないだろう

 

「まぁ良いんじゃないのか?客の前で緊張するようなら使い物にならないが、ユイなら大丈夫だろう、それに作戦が失敗しても岩沢がサブで控えてれば問題はないだろ」

 

「採用試験だしね、あたしもちゃんと歌える準備はしとくよ」

 

「まぁそれなら良いけど」

 

どうにかゆいの承諾を得た事で今回の話は、次のトルネードまで見送りということになった。

 

「はぁ、でもガルデモがこんな状況じゃ、球技大会で大々的な作戦は行えないわね」

 

「「球技大会?」」

 

ゆりのセリフに対し、俺と音無が首をかしげた

 

「死んだ世界といえどここは普通の学校なんだから、イベントの一つや二つあるに決まってるじゃない」

 

「今回はおとなしく見学か?」

 

「もちろん参加するに決まってるじゃない」

 

「参加したら消えて無くなるんじゃないのか?」

 

参加=まじめに学業に取り組むと捉えたのであろう、音無が消えるかもしれないと少し不安そうにしていた。

 

「もちろんゲリラ参加よ。いいあなた達

 それぞれメンバーを集めてチームを作りなさい」

 

突然始まったブリーフィングにメンバー(ユイを除く)がゆりの言葉に耳を傾ける。

 

「一般性とにも劣る成績を収めたチームには、……死よりも恐ろしい罰ゲームね」

 

『えぇ~』

 

一拍おいてとんでもない事を言ってきた。

 

「死よりも恐ろしい罰ゲームってなんだよ、生き返る度に苦痛を味わうのか、それとも死なない程度にいたぶられるのか。どっちにしろ受けたくないのは確かだな」

 

「そうだな」

 

俺と音無は同じ思いらしく、二人でため息をついていた。

すると後ろから肩を叩かれたのでそちらの方を向くと

 

「音無、月斑、俺にはお前たちが必要だ」

 

さわやかな笑顔でチームに勧誘してくる日向がいた。

 

「コレなのか?」

 

「ちげぇよチームの話だよ!組もうぜ音無、月斑

 負けたらエライ事になる。ゆりっぺは本気だ」

 

「で?他のメンバーの当てはあるのか?」

 

「フッフ、任せろ人望で生き抜いてきたような人間だ、最強のチームを作ってやるぜ!」

 

俺はこの時、その自信がどこから出て来るのか、本当に大丈夫なのだろうかと心配だった。





さぁいよいよ球技大会の始まりです!

燕「始まりはいいが球技大会の後はオリジナルストーリーに入る予定だから、ユイの試験ってかなり先になるよな」

入「球技大会の後はプール開きに夏休みのストーリーですからね、ユイの試験は二学期まで持ち越しになりますね」

まぁその辺はいいじゃないですか
さて、次回はメンバー集めの回となりますが、日向チームは一体どんな編成になるんでしょうかねぇ

燕「原作では一人足りなかったが今回は俺がいるからな、メンバーはぴったり九人になるのか」

それだけじゃないですよ、球技大会では入江ちゃんにもしっかりがんばってもらいますからね

入「い、一体何をやらされるのか不安なんですけど」

それは今後のお楽しみということで
さて、今回はこの辺りで終わりましょうか

入「納得いきませんが仕方ないですね。
  それでは皆様」

『また次回もお楽しみに!』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第27話 メンバー集めPart.1

 

「えぇっ!高松のチームに入っちゃったの!?」

 

「うん」

 

     ――学園大食堂――

 

日向が真っ先に向かった相手はひさ子だった。

確かにひさ子は運動も出来るし体力もあるから戦力には申し分ないだろう

だがすでに高松に先を越されてしまっていたようだ。

 

「分けわかんねぇぜ!何で待っててくんねぇの!?」

 

「あんたの誘いを待ってるほうが、分けわかんないわよ」

 

ひさ子は呆れ気味に答えた。

まぁ当たり前の反応だろうなと俺は思った

今までガルデモの仕事をしていたが、日向がひさ子に話しかけに来たことはない

戦線メンバーの人物関係がどうなってるのかは知らないが、それほど仲が良いよいう訳でもなさそうだ。

 

「それにアンタより高松のほうがマシでしょ、月斑も日向より高松のチームに来ない?

 アンタの運動神経は武器になりそうだし」

 

おっと、日向の誘いを断って俺を勧誘しにきたか

ここで高松のチームに寝返るのも面白そうだが、さすがに日向に申し訳ないのでやめておこう

 

「いや、止めとくよ。先に日向に誘われたしな」

 

「そっ、じゃあ仕方ないわね」

 

そう言ってひさ子は食堂を出て行った。

 

「はぁ、アイツ運動神経抜群なのに」

 

「すばらしい人望だな」

 

まったく同感である。

これでは先が思いやられるぞ

 

「仕方がない、ちっとばっかし卑怯だがリーダー格の松下五段をメンバーに誘おう」

 

「もう取られてるだろ」

 

「俺もそう思うぞ、今のやり取り見てたらそんな気しかしない」

 

「アイツは待っててくれてるよ。なんつーかマブダチなんだ

 ハッハハ、照れるなぁ」

 

どこにそんな根拠があるのか、ドヤ顔でそう言ってきた。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「あぁ、それなら竹山のチームに入ったぞ」

 

「はぁあああ!?」

 

     ――体育館 裏――

 

うん、まぁ予想してたことだな

 

「断る理由もなかったし、なっ!」

 

「ちょっと待てぇええ」

 

「ん?」

 

松下五段に裏切られた?のが余程予想外だったのか、日向が慌てふためいている。

……これは見てて面白いな

 

「何故だ!お前だけは信じてたのに!」

 

「いやぁ、この先肉うどんが当たった場合は全てまわしてくれるって言うから」

 

「…に、肉?」

 

……食い物で釣られたのか松下五段!それはそれでどうなんだ!?

見ろ、日向が固まってるじゃないか!

 

「…さっきコイツ『マブダチなんだ、照れるなハハッ』って言ってたぞ」

 

「バラすなよぅ!」

 

期待させた腹いせのつもりか、音無がさっき日向が口にしたセリフを暴露していた。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「くっそぉぅ、次はTKだ!TK頼むぜぇ」

 

二連続でスカッたせいで少し苛立っているな

てかTKってイニシャルだよな、何で本名じゃなくてイニシャルで呼んでるんだ?

 

「なあ、何故みんなTKって呼ぶんだ?」

 

いいタイミングで、俺が気になっていたことを音無が聞いてくれた。

 

「本人がTKっつうんだよ。本名は誰もしらねぇ謎だらけな奴だ

 だが俺もアイツの事は信用してる!」

 

日向はそう断言しているが、俺は信用できなかった。

何故かって?だって今目の前で高松とTKが握手してるし

 

「ガッテム!!」

 

あまりのショックで日向がTK化してしまった。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「くぅぅううう」

 

     ――教員棟 裏――

 

「あ、なぁそういや種目とか聞いてないんだけど」

 

日向が唸り声を上げていると思い出したかのように音無が質問してきた。

 

「野球だよ」

 

「するとメンバーは後六人、無理じゃね?」

 

「うっ……」

 

音無が痛いところを突いてきた。

 

その直後、お困りのようですな~っとどこかのRPGでも連想させる言葉をかけられ

声のしたほうを見るとユイが立っていた。

 

「お、ユイじゃないか」

 

「なんだ。悶絶パフォーマンスのデスメタルボーカルか」

 

「んなパフォーマンスするキャラに見えるか!」

 

「見えるよ十分。で?何の用だよ」

 

「メンバー足りないんでしょ?私、戦力になるよ~」

 

「戦力?…いや待てよ?」

 

手を口元へ持っていき、何かを考え始める日向

これはロクでもない事考えてやがるな

そして何か閃いたようで「当たり屋か!よっし採用!!」とユイに笑顔を向けて言っていた。

 

「お前の脳みそ、とろけて鼻からこぼれ落ちてんじゃねえのか!?」

 

「ぐはぁっ!?」

 

ユイの回し蹴りをまともに喰らい地に伏せる日向

これは日向が悪いな

 

「おま、俺先輩だかんな!」

 

「おお~と、先輩のお脳みそおとろけになって、お鼻からおこぼれになっておいででは?」

 

「なるかぁ!!」

 

悶絶する日向に、ユイは敬語っぽく言いながら手刀を落とす。

それにキレた日向はユイを思いっきり蹴り飛ばしやがった。

 

「先輩、痛いです…」

 

「俺だって痛ぇよ!」

 

「でも、運動神経は良さそうだなぁ」

 

「だな、ユイの運動神経は普通に戦力になりそうだ」

 

外野で見ていた俺と音無は、ユイの運動神経の良さを評価したが日向は

 

「音無と月斑もなに言ってんだよ!こんな頭のネジの飛んだ奴の仲間だなんて思われたくねえぜ」

 

「痛いです…」

 

日向だけはユイをメンバーに誘うのは反対のようだった。

 

「そんなこと言っても目つけてた連中、断られまくってるじゃないか」

 

「うっ……」

 

どうやら図星のようで日向は何もいえなくなってしまった。

 

「そうそう!見てましたよ。なので、ユイにゃんが加勢しにやってきたわけです」

 

痛いですと涙を流していたユイが復活した。

てかコイツ見てたのかよ、ストーカーか?

日向も癪に障るところがあったのかユイを睨み付けて、もういっぺん言ってみろとユイに促し

 

「ユイにゃん♪」

 

と、ユイが可愛げなポーズをつけながらもう一度言ってきたが

日向はユイにゃんじゃないところが気に―――

 

「そういうのが一番ムカつくんだよ!」

 

「気になったのそこかよ!!」

 

苦しんでいるユイの悲鳴と俺のツッコミが辺りに響いている中

音無だけが冷静に

 

「とっとと行くぞ~」

 

先を促していた。

 

はぁ、今からでも高松のチームに移籍しようかな…





お気に入り登録者数100人ありがとうございます!

燕「こんな駄文なのに、読んでくれてありがとな!」

入「今後も不定期ではありますが、応援よろしくお願いします!」

さぁ感謝の言葉を伝えたところで次回の話をしようか

燕「次回つっても、メンバー集めの続きだろ?そんなに話すことなんてあったか?」

次回はチーム結成まで書きますが、入江ちゃんとの絡みも入れますからね

入「え?私次回登場するんですか?」

燕「本人が知らないって…」

前回頑張ってもらうって言いましたよね。それに関することです。
ただ入江ちゃんとの絡みを追加する分メンバー勧誘シーンを多少削る予定なのでそこはご了承ください。

燕「なんで削る必要があるんだよ」

まぁまぁ細かいことは良いじゃないですか!
てなわけで今回はここまでです。

入「それじゃあ閉めますね。それでは皆様!」

『また次回もお楽しみに~』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第28話 メンバー集めPart.2

日向に任せていたらメンバーが揃いそうにないので、俺が椎名を誘ってみてはどうだろうと提案し

今は体育館倉庫に来ている。

 

 

     ――体育館 倉庫――

 

 

「椎名、椎名いるかー?」

 

「椎名っちー?」

 

俺と日向が椎名を呼びながら倉庫内に入るが、誰も呼びかけに答える者は居らず

仕方ないので倉庫から出ようとした瞬間、背後から強い殺気を感じた俺は

振り向きながら刀を抜き、飛んできたクナイを弾いた。

 

「な、なんだ!?」

 

「お前ら倉庫から出てろ!」

 

日向たちを倉庫の外へ逃がしながら次々飛んでくるクナイと手裏剣を弾く

それと同時に俺は倉庫の奥へ進む

 

「――っ!そこだ!」

 

俺は勢いよく倉庫の奥に向かってナイフを投げた。

暗闇の方へ飛んでいったナイフは突然何かに弾かれ、地面へ落ちる。

 

その瞬間、俺もその場所へ刀を振りかぶりながら突っ込んで行く。

 

刀を振り下ろし、そこにいる人を斬ろうとしたが、短刀で防がれてしまう。

 

「……まだ甘いな」

 

「そうかよ」

 

俺は後ろへ飛び、刀を鞘に納めた。

 

「今日はどうした、いつもより時間が早いようだが?」

 

「あぁ、実は今日は特訓じゃなくて勧誘に来たんだよ」

 

「勧誘?」

 

俺は剣を交えた相手―――椎名に野球の事を話した。

 

ちなみに椎名と特訓し始めたのはギルド降下作戦の直後からだ

刀をもらった俺は裏山で一人、刀の特訓をしていたが、どうにも行き詰まってしまい

近接戦の特訓なら椎名に頼もうと思い至った。

 

それからというもの、ガルデモの雑務に音無と銃の特訓、そこに椎名との近接戦の特訓まで加わった俺の日常はかなりキツイものになってしまった。

 

まぁ好きでやってるから良いんだけどな。

 

 

椎名が仲間に加わったので、ほかのメンバーを探しに行く事になった。

 

「ところで椎名、その指先の竹箒は何なんだ?」

 

「以前、新入り二人に遅れを取ってからずっと、こうして集中力を鍛え続けている」

 

「そ、そうか…」

 

俺は見慣れていたが、初見の日向たちは言葉が出なかったようだ。

当たり前の反応だよな…

 

 

     ――第二連絡橋下 河原――

 

 

「アイツを誘うヤツなんていねぇ、直情的でゆりっぺ以外には従わない」

 

「つまりあの人もアホなんですね」

 

ユイ、それはちょっとひどいと思うぞ。

……まぁアホなのは認めるけどな

 

「だがアホは利用できる!しかも見ろ、長い棒を振らせたら右に出るヤツはいない」

 

河原でハルバートを振り回している野田を見ながら、日向がそう言ってきた。

たしかにあそこまで軽々とハルバートを振り回すことが出来るのは、戦線の中では野田位だろう

 

「ヘェイッ!!」

 

「……………」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「フッ、ついに来たか。決着の時がな!」

 

俺と音無にハルバートを突きつけてきた。

 

「あぁまずは小手調べ、球技大会でお前とこいつ等、どちらの運動神経が上か見せてもらおう」

 

「なぜ?」

 

「強いだけじゃゆりっぺは振り向いてくれないぜ?」

 

沈黙。おそらく野田の脳内で俺たちとの決着とゆりが天秤に掛けられているのだろう

まぁ結果は明白だけどな

 

「…いいだろう」

 

素晴らしい笑顔で日向と握手していた。

 

「アホだ、利用されていることに気づいていない」

 

「ユイ、今回は俺も同意するぞ」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「球技大会?」

 

「あぁ、ひさ子も出るみたいだし気分転換にいいかなと思って」

 

 

     ――学習棟A棟 空き教室――

 

 

野田を仲間に加えた後、俺たちはガルデモの練習部屋へ来ていた。

 

「ほら、いつまでも作曲ばかりに気を向けてたら視野が狭くなるだろ?」

 

「んー、そうだな、気晴らしに参加してみるか」

 

「「よっしゃっ!」」

 

岩沢の勧誘に成功したことで、俺の後ろにいた日向とユイがハイタッチを交わしていた。

日向はメンバーが増えたことに対して、ユイは岩沢が仲間になった事に対してだろうけどな。

 

「それで、今のメンバーはこれだけ?」

 

「あぁ、岩沢を入れて七人だ」

 

そう言った直後、教室の外から話し声が聞こえてきた。

 

…この声、入江と関根か?丁度いい、あの二人も誘ってメンバーそろわせるか

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「――っと、言うわけなんだ二人とも、メンバーになってくれないか?」

 

「はい、私でよけr「あー!すみません先輩、私たち運動苦手でして」ちょっとしおりん!?」

 

「あれ、そうだっけ?」

 

運動が苦手と言った関根に対し、岩沢が首をかしげた。

 

「いやいや岩沢さん、何言ってるんですかー」

 

入江の口を押さえながら関根が岩沢を誤魔化そうとしている。

 

…岩沢は相変わらず首をかしげているが、俺は騙されないぞ関根

 

「おい関根、誤魔化すのもいい加減にしろ」

 

「え!?」

 

「ワザとらしく驚くんじゃない、それといい加減入江を開放してやれ」

 

口を押さえられ続けている入江は何とか関根の手を解こうと、さっきからもがいていた。

 

「~~~~~っ!!」

 

「おおっと、そいつは出来ない相談ですぜ先輩!みゆきちはこのまま私が連れて行きまーす!!」

 

「あっ!ちょっと待て関根!!」

 

入江が必死に手を伸ばしてきたが、それを掴む暇なく関根が入江を連れてどこかへ走り去ってしまった。

 

『……………』

 

あまりの勢いに、俺たちはただ黙って見ている事しか出来なかった。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「ごめんな」

 

 

     ――学習棟A棟 屋上――

 

 

いろんなところで時間を喰ってしまったせいで戦線メンバーの殆どが別のメンバーに取られている状況だった。

 

「まだ七人だぞ、どうするつもりだ」

 

「逆を言えば後二人だ、絶対何とかなる!」

 

「何を根拠に…」

 

「それを言うんじゃねぇよぉおおお!!」

 

俺の呟きが聞こえてしまった為、日向が泣きながら掴みかかって来た。

 

「うぉっ!悪い、訂正から離れろ!」

 

「はいは~い、残りのメンバーだったら私の友達を連れてきますよー」

 

「「…ん、友達?」」

 

俺と日向はそろって首をかしげていた。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「私たち、その…」

 

「ユイにゃんさんのファンってゆうか~」

 

「勝手に親衛隊ってゆうか~」

 

 

     ――学習棟C棟 廊下――

 

 

「ユイにゃんは才能に溺れる事無く、地道にストリートライブとか積み重ねて来てますから!」

 

「…たまに練習サボってると思ったら勝手にライブ開いてたのかよ」

「ミーハー女ばっかりじゃねぇかよ、こんなもん戦力になるか?」

 

俺と日向は別々に頭を抱えてしまった。

 

岩沢は後ろでユイの事感心してる様だし…

 

「で?戦力になるかは別として、彼女たちをメンバーに加えたら十人になってメンバーはそろう訳だが」

 

「…仕方ねぇ、強いメンバーがいる分ハンデだハンデ!強者と弱者がそろってバランスもいい感じだろ!」

 

「「それでホントに大丈夫なのか?」」

 

「……………」

 

俺と音無の問いに、日向は顔をこちらに向け口を開けたまま固まっていた。

 

メンバーは揃ったが、日向チームはかなりのハンデを背負った状態で球技大会に挑む羽目になってしまった。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「し、しおりん、ホントにコレ着るの?」

「モチのロンですよ。みゆきち」

「えぇ~」

 

 





メンバー集め終了です!

燕「次回から球技大会か」

上手く書ければ次回で原作第四話終了ですけど、もしかしたら二話構成になってしまうかもしれません

燕「まぁ文字数が少ない小説だからな
  ところで、今回入江はいないのか?」

入江ちゃんは関根に連れて行かれましたからね
今ここに呼ぶと次回のネタばれの話をしてしまいそうで

燕「そういう事なら別に良いが、何で入江と関根をメンバーに加えなかったのか気になるな」

それも球技大会で明らかになるので楽しみにしててください

燕「まぁいい、じゃあ今回はここまでか?」

そうですね、今回はここまでって事で

『それでは皆さん、また次回もお楽しみに~』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第29話 いざ球技大会へ

俺たち日向チームも人数が揃い、ゲリラ参戦すべく野球会場へ来ていた。

 

「おぉー、我らが戦線チームはどこも順調に勝ち残ってますよ!」

 

トーナメント表を見上げながらユイがそんなことを言ってきた。

 

俺もトーナメント表に目をやるが、ユイの言うとおり戦線チームの勝ち上がり具合が目に見えて分かった。

 

「こうしてみるといろんなチームが参加してるな」

 

軽音部や山岳部、部活チーム参加が多いが、チーム応援団にガルデモ親衛隊などどういった部活じゃない集まりも大会に参加している。

 

「コレなら別に戦線メンバー全員で大会に挑んでも良かったんじゃないのか?」

 

「メンバーの信頼の確認も兼ねてるんじゃないのか?そんな事より、俺たちもいっちょ行きますか」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「またか…」

 

NPCの生徒がうんざりしている。

NPCって言ってもホント人間にそっくりだな

 

「この次に進めるのは俺たちのチームに勝ったほうって、じゃんけんで決めてくんない?」

 

「どんどんチームが増えてきやがる」

 

「だって俺たちもこの学校の生徒だぜ?ほら、お前もお願いしろよ」

 

「本気で来いやゴラァ!」

 

日向はユイに肘を突いてお願いするよう頼んだが、ユイは思いっきりドスをきかせていた。

 

「ドスきかせてどぉすんだよ!」

 

予想外の言動にキレた日向がユイに卍固めを決めていた。

 

「関節が砕けます! ホームランが打てなくなりますぅ…」

 

「んな期待誰もしてねぇよ!」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

色々あったがようやく試合が開始されるらしい

 

「ここで負けたら罰ゲーム決定だかな、初戦は気合入れていくぞ。一番お前な」

 

日向は音無を指差し打順を教える

 

「俺はっ!」

 

一番を音無に取られたからだろうか、野田が勢いよく聞いてきた

 

「まぁまて、二番が俺で椎名が三番

 そして四番が――お前だ。走者一掃しねぇとオメェの負けだからな」

 

「フン、いいだろう。容易い事だ」

 

口車に乗せるのが上手いなと思っていると、残りのメンバーの打順も発表された。

 

一番 音無

二番 日向

三番 椎名

四番 野田

五番 ユイ

六番 岩沢

七番 月斑

八番 NPC

九番 NPC

 

っといった感じで打順が決定した。

 

「七点以上でコールドだ、天子が来る前に片付けちまおうぜ

 よしいくぞ、ファイットォオオオゥ!!」

 

「「…お、おー」」

「「「……ぉぉ、おー」」」

 

俺と音無だけが返事をし、NPCの女子がそれに続いた

 

「……驚くべき団結力の無さだな」

 

流石に今のは突然すぎたんじゃないのか?




はい、今回はここまでです。(ジャスト1000文字

燕「何でここで終了なんだよ」

キリが良かったのと他にもやることが沢山あるからです…

燕「何をやってるのかは知らないが、あんまり引っ張るのもどうかと思うぞ
  折角読んでくれてる読者さん達に申し訳ないだろ」

……そうなんですけどね

燕「まぁそんなこと話してても仕方ないか
  入江は今回も休みなんだな」

入江ちゃんは球技大会終了までお休みの予定です
ヒロインなのに申し訳ないです

燕「って事は後二話くらいか」

そうですね。一応予定では後二話で原作第四話を終わらせる予定です。
さて、今回はこの辺で閉めますか

燕「そうだな、それは皆さん」

『次回もお楽しみに~』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第30話 日向チーム出陣!

「プレイボール!」

 

炎天下の中始まった球技大会、先頭打者は音無だ

コールドを狙っているうちのチームとしては音無に塁に出てもらいたいところだ

 

そう思っている矢先、キーンッという音がなり

ボールが右中間へと抜けていた。

 

「「やったー!!」」

 

「お、幸先いい……な?」

 

ボールが飛んでいった方向に相手チームは誰もいない、そう『相手チームは』だ

 

「貴様の打球は、そんなものかっ!!」

 

「え?」

 

なんでお前がそこにいるんだよ、今までベンチに座ってただろ

いつの間にそこまで行ったんだよ!

そしてボールを打ち返すんじゃない!

 

「なんだとっ!?」

 

罵られた音無も打ち返されたボールを打ち返している。

 

「まだまだ!」

 

そのボールに対してまたも野田は打ち返す。

打っては打ち返しのループが開始されたところで審判と捕手が非難し始めた。

 

「バカかお前ら!!」

「そんな競技は存在しねぇ!!」

 

俺と日向の突っ込みが同時に発動する。

 

「…アウトー」

 

「アホですね」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

その後試合は再開され、日向と椎名は無事に出塁することが出来た。

 

そして四番なのだが

 

「……アイツ、バットを逆手に持ってるけど大丈夫か?」

 

その疑問も杞憂に終わってしまったようだ

野田は難無く打ちホームランを決めた。

 

「よし、次は私ですね!」

 

っと勢いよくバッターボックスへ向かっていったが

 

「打てませんでしたー…」

 

三振して帰ってきた。

 

「………」

 

「…岩沢、お前の番だぞ?」

 

「え?あぁ、アタシか」

 

いかにも興味無さげな岩沢がバットを逆さまに持ち、バッターボックスへ向かっていった。

 

「ってちょっと待て岩沢!逆だ逆、バットが逆だ!」

 

日向があわてて岩沢にバットの持ち方と振り方、打った後どこに走ればいいかなど

基本的なことを簡単に教え始めた。

 

「岩沢先輩のあんな姿が見られるなんて」

 

その様子を見ていた俺の隣ではユイが目に星を浮かべ、素振りしている岩沢を凝視していた。

 

「あぁ、俺も予想外だよ。普段ギター持ってるとこしか見たこと無かったから新鮮だな」

 

ユイと二人で岩沢の新鮮な姿を眺めつつ、打順が回ってくる準備をする。

 

が、ヒットを打つも二塁を目指してしまったが為にアウトになってしまった岩沢が申し訳なさそうに戻ってきた。

 

「すまない、とどくと思ったんだが無理だった」

 

「ドンマイドンマイ、この回キッチリ抑えて次でまた点取ればいいさ」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「で?何故俺がピッチャーなんだ?」

 

「野田にホームラン打たれたんだから、今度はお前が0点に抑えて巻き返すしかねぇだろ?」

 

「じゃあ打順すら回ってこなかった月斑はどうなるんだ?」

 

まったくである。

野田を誘った時の理由が、俺と音無との運動神経対決のはずなんだが

俺の見せ場がまったく無いまま一回裏になってしまった。

 

んでしかも

 

「こおぉおおおぃ!!!」

 

「何でキャッチャーが野田なんだよ!アイツ四番やっただろ、キャッチャーは普通俺じゃないのか!?」

 

「何だよウッセーなぁ」

 

俺の抗議に対し日向が煩がる。

 

「正直どうでも良いけど一応名目は運動神経対決なんだろ!?俺の見せ場無いじゃん!」

 

「安心しろ月斑、考えはある」

 

そんなドヤ顔されても不安は消えねぇよ

 

結局うやむやにされたまま試合は再開されてしまった。

 

「ストラーイク!」

 

アンダースローで投げたボールは見事にバットに当たることなく野田のミットに収まった。

 

「ぬぅっ!こんなものか!!」

 

……いやな予感はしてたが、ここでもやるのかお前らは

 

野田はキャッチしたボールを力強く音無に投げ返した。罵倒付きで

 

「こぉのっ!」

 

音無も負けじとそれを投げ返した。

その結果、先ほどのバッティング同様に無限ループが発生するわけで

 

「フォアボール」

 

ピッチャーの時に無限ループに入ってしまったらそうなるに決まってる。

 

「だからそんな競技は存在しねぇ!」

「やっぱりアホですね」

「……はぁ、何やってんだか」

 

その後もなんだかんだあったが、ついに生徒会を引きずり出した俺たちだった。




燕「ついに次回は生徒会チームとの試合か」

原作第四話もいよいよ終盤です。

燕「まぁそれはそれとして、盆休みに投稿する予定じゃなかったのか?」

あ、いやー、それがちょっと忙しかったもので…

燕「おい目をそらすなこっち向けよ」

あははは。 そうそう入江も次回ようやく登場するので乞うご期待です!
それでは今回はここまで!

また次回もお楽しみに!




燕「おいこら勝手に終わらせるな!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第31話 日向チームvs生徒会チーム!

 

生徒会チームが参戦してからというもの、我ら戦線チームは次々と潰されていった。

 

「竹山に高松のチームもやられて、俺ら以外全滅か」

 

俺はトーナメント表を眺めながら思ったことを口にした。

 

「何しみじみしてんだ!さっさと整列するぞー」

 

……ちょっとはのんびりさせてくれよ

 

なんて言ってられないな

 

さぁ、今から生徒会チーム戦だ!

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「ついに来てやったぜ」

 

整列すると同時に日向が天使に挑発する。

 

が、それを無視して生徒会チームは自分たちのベンチへ向かってしまった。

 

「ちぇ、可愛くねぇな」

 

挑発を無視されたせいか、日向が愚痴をこぼす。

 

「人間性が薄いんだから仕方ないんじゃねぇのか?」

 

「そうかもしんねぇけど、ちょっとは挑発のひとつでもしてみろって」

 

「そうですよね!アタシなら容赦なく挑発しかえしてやりますけどね!」

 

俺と日向の会話にユイが割って入る。

 

「テメェは少しは自重しろ!さっきから何回ドスきかせてんだよ!」

 

「ギブギブギブーッ!!」

 

日向がユイに卍固めを決める。

この光景も試合前には見てきたので見慣れてしまった。

 

音無も無視してバッターボックスに入っている。

 

「…まあまあ」

 

『プレイボール!』

 

そんなこんなしている内に試合が始まったようだ。

 

打順と作戦も変更無くこれまで通り、音無・日向・椎名が出塁し野田が返すというパターンだ

そして今回もこれで四点獲得した。

 

その後ユイは呆気なく三振、岩沢は内野ゴロでアウトになってしまった。

かく言う俺もヒットは出すが後続の二人がアウトになり本塁に戻れずじまいで居る

 

攻守交替し、音無が善戦するも流石野球部

あっさりボールを外野へ飛ばしていく

 

ボールが飛んだ先の外野にはNPCの女の子が守っている。

よし、これならアウトでk「キャアッ!」って避けるのかよ!

 

とっさにカバーに入り落ちたボールを投げるが

流石に間に合わず、点を取られてしまう

 

「す、すみません」

 

「いやいいよ、ドンマイドンマイ」

 

ボールを怖がってしまったNPCが誤ってくる。

しかし、センターを守っていたから良かったものの

これが続くとなるとちょっと厳しいな

 

その後何とか三点に抑え一回を終えた。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

その後、激しい点の取り合いが繰り広げられ

現在九回表、ツーアウト一・三塁

 

まさかこの場面で俺の打順が回ってくるとは

荷が重いぜまったく

 

「ここで月斑が点を取れば、勝利がグッと近づく!

 たのむぜ月斑」

 

「ああ、まかせろ」

 

俺はバットを持ち、バッターボックスへ立つ

 

…とは言ったものの、さっきから言いとこないんだよなぁ

まぁなんとしてもここで俺が出ないと負け確だからな

 

ん?なんかあのピッチャー、俺のこと睨んでないか?

 

なんか殺気立ってる感じが「―――って、うおぉ!?」

 

相手ピッチャーが投げた球が俺の頭があった位置を通っていった。

 

そしてその球をなんの疑問も無くキャッチャーが取った。

 

「きったねぇーぞ!ワザと狙いやがって!」

 

ベンチからチームメンバーが叫ぶ

 

が、審判は何も気にすることなく「ボール!」と、冷静にジャッジをしている。

 

こいつらグルか

 

しかし俺が恨まれるようなことをした覚えが無い

 

「おい」

 

そう思っているとキャッチャーから声をかけられた。

 

「ガルデモの雑用係だかなんだか知らないが、ガルデモの傍に居られるからっていい気になるなよ」

 

ああなるほど、野球部もミーハーだって事か

今まで何も仕掛けてこなかったくせに、ピンチになったらこれかよ

てか天使も何も言わないのな!って副会長と何か話しててこっち見てねぇ

 

「そんな気になってねぇから、安心しr「あ~いたいた!月斑せんぱーい!」「「っ!?」」

 

俺とキャッチャーが同時に声の方を向くと

そこにいたのはなぜかチアガールの姿をしたひさ子・入江・関根の三人だった。

 

「ホントにこの格好で応援するのかよ」

「は、恥ずかしいよぉ~」

「二人とももっとテンションあげないとダメっすよー

 ほら、日向チームファイトォー!!」

 

…………何かの見間違いだろうか

俺には三人のチアガールが俺たちのチームを応援していて

その嫉妬のせいか、相手チームの殺気が強くなっている。

 

……そしてその殺気を何故俺に向けるのだろうか

 

「…無事にベンチに帰れると思うなよ」

 

ここは戦場かよ…

 

などと思っていると、パァンッといい音を鳴らしボールがミットに収まる。

 

「流石にガルデモメンバーが見てる前じゃ、危険な球は投げられないってか

 真剣勝負できてうれしいよ」

 

俺はバットを構える

相手ピッチャーが振りかぶり、ボールを投げる。

 

「ストライークッ!!」

 

わずかに振り遅れてしまったか

 

『月斑、打てよー!』

『せんぱーい、頑張ってくださーい!』

『わたし達がついてますよー!』

 

ごめん応援はうれしいけど止めてもらえないかな?

敵の殺気が痛いんだ

 

殺気はすごいが、相手ピッチャーはデッドボールは狙っていないようだ

 

さぁもう後が無いんだ、これで打てなかったらこの試合が終わった後が怖いぞ

…主にゆりの制裁と野球部からの嫉妬の攻撃が

 

殺気が凄まじいピッチャーが大きく振りかぶり投げる。

 

なんか球威あがってねぇかっ!?

 

突然の球威の上昇に不意をつかれ反応が遅れてしまい、バットに当たりはしたものの

ピッチャーゴロになってしまった。

 

「クッソ!」

 

俺はバットを投げ一塁へ走る。

 

その間ピッチャーがボールを拾い一塁へ送球する。

 

「とどけぇえええ!!」

 

俺は一塁目掛けて飛び込んだ

それとほぼ同時にファーストのグローブにボールが収まった。

 

「……アウトッ!!」

 

きわどいタイミングだったがアウトになってしまった。

 

「くっそあと少しだったのに、すまん」

 

「いや良いって、ありゃしかたねぇ」

 

「俺がしっかり抑えるから安心しろ」

 

「お前ら…」

 

ベースに戻った俺を日向と音無が励ましてくれた。

だが、

 

「フン、あの程度のボールも打てないようでは話にならんな」

 

「おい野田!」

 

野田だけが反発してきた。

 

「あぁ、今のは俺が悪い。だから最後の守備で巻き返してやるよ」

 

「やれるものならやってみろ」

 

それだけ言うと野田はベンチを出て行った。

 

「嫌なヤツだな」

 

「あいつなりに月斑を炊きつけようとしたんじゃねぇの?」

 

「あれは素だと思うぞ」

 

後ろで音無と日向の会話が聞こえてくる。

もしそうなら不器用なヤツだな野田って

 

「なにボォっとしてるんですか先輩、早く守備につきますよ!」

 

「あぁ」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

九回裏、一点差、ツーアウト、ランナー2.3塁

あと一人抑えられたら俺たちの勝利だ。

 

そう考えていると音無がタイムをかけた。

 

日向のところへ向う

が、話しかけられた日向はどこか上の空だったので、俺も様子を見に行く。

 

「どうした?日向」

 

「…え、ああ、いや。昔、生きていた頃に似たような事があったっけなって」

 

「似たような事?」

 

「月斑?何でここに来たんだ?」

 

「なんか日向が上の空だったから、何かあったのかと思って

 で?どんな呆けるほどの事があったんだ」

 

日向はゆっくりと話し始めた。

 

 

日向は生きていた頃、野球部のメンバーで甲子園を目指していた。

それは最後の地方大会の最終回、一点差、ツーアウト、ランナー2.3塁と

今と同じ状況だったらしい。

 

日向はそのと時もセカンドを守っていたらしく、簡単なセカンドフライが上がった。

 

 

「それを取れたのか、落としちまったのか

 それだけは思い出せねぇんだ…

 …いや、きっと取れなかったんだ」

 

「……日向、ひとつ聞きたいんだが」

 

俺は日向の過去を聞いて、少し疑問に思ったことがあった。

それはゆりの時には無かった感情だ。

どうしてそう思ったのかは分からない。

 

ただなんとなくそう思った。

 

「この世界には現世で理不尽な人生を歩んだヤツが来るんだったよな」

 

「そうだけど、急に何の確認だ?」

 

「なら、もしこの世界で現世で出来なかったことが叶ったら、そいつはどうなるんだ?」

 

「え…」

 

想像したことが無かったのか、虚を突かれた表情になる。

 

音無も俺の質問を理解したのか

 

「…お前、消えるのか?」

 

俺の聞きたかった事を、代わりに聞いてくれた。

 

「この試合に勝ったら、消えるのか?」

 

「…き、消えねぇよ…ハハッ…こんな事で、消えるかよ」

 

俺と音無が見たのは不安の中、無理をする日向だった。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「音無、絶対にアウト取れよ

 センカンドフライなんて打たせたら、本当に…」

 

―――消えるかもしれない。

その言葉は口に出来なかった。

それは音無も同じで、言いたいことを汲み取ってくれたようで

 

「…ああ」

 

そう答えてくれた。

 

俺はマウンドに戻った音無に、それだけ伝えセンターへと戻る。

戻る途中「余計な事言ったんじゃねぇだろうな」と日向に言われたが

 

「気楽に行こうぜって伝えといた!」

 

そう言って誤魔化した。

 

プレイは再開され、音無がさっきより力の篭ったフォームでボールを投げた。

 

しかし

 

 

 

 

―――――キィンッ!

 

 

 

 

聞きたくなかった音が、鳴り響いた。

 

俺と音無は同時に高く舞い上がったボールに目をやり

その軌道を確認する。

 

最悪のセカンドフライだ。

 

打たせてはならなかったセカンドフライ

 

『日向ぁ!!』

 

体が勝手に日向の元へ走り出す。

 

消えてしまうかもしれない、その不安が俺と音無を走り出させた。

 

日向はゆっくりと両手を上にあげ、ボールを取る姿勢に入っている。

 

やはりセンターからでは走っても間に合いそうにない、頼みの綱の音無も届きそうに無かった。

 

もう駄目か、そう思った瞬間

 

日向の脇腹に黒い影が突っ込んでいった。

 

「隙ありぃいい!!」

 

「ぐおあぁおおっ!!」

 

影の正体はユイで、後で聞いたら「試合中ずっと隙が無いか見張ってました!」とか言ってきたので制裁を加えてやったというのは別の話。

 

「よくも卍固めにしまくってくれたなこっのぉお!」

 

ともあれ、ユイが日向の妨害に入ったため、ボールはそのまま地面に落ちた。

 

『ホームイン』

 

ただ日向が消えなくて済んだのだが、その光景に呆然としていた俺たちは

試合のことなど忘れ、ただただ呆然としかできなかった。

 

「て、テメェこんな時に……なにキレてんだよぉ!!」

 

日向がユイに反撃する。

 

「す゛み゛ま゛せ゛ん゛、次は頃合を見計ります!」

 

「知るかぁああ!」

 

一体何をしているのやらと、俺と音無が顔を見合わせため息をついた。

 

『ホームイン』

『あぁ!もうクッソー!!』

『ゲームセット!』

 

あ、試合の真っ最中だったの忘れてた。

 

「テンメェ、今のだけは絶対に許さん!このっこのっ!」

 

「落ちる!落ちるー!」

 

試合の事を覚えているのか忘れているのか知らないが、日向とユイの叫び声だけが

ゲームの終了したファールドに響き渡っていた。





正直二分割すればよかったと思ってます!

燕「一話にまとめようとするからだ」

入「そうですよ!あれだけ引っ張っておきながら私の出番ほとんど無かったじゃないですかぁ!」

それに関しては本当に申しわけないと思っています!

燕「てか、俺のセリフも少なかった気がするぞ」

いやだって、今回そんなに喋る回でもないでしょう

燕「そうかもしれないが」

入「結構重要な事は喋ってたから良いじゃないですか
  私なんてちょろっと出てきただけですよ
  これじゃ本編同様脇役扱いじゃないですか!」

いやホントに申し訳ないと思ってるんです!
次からはオリジナルストーリーなのでもっと出番は増やせるハズです!

入「ハズっていうのが気に入りませんが…」

燕「まぁまぁ、で、次は具体的にどんな話なんだ?」

次回からは夏休み編となります。
コミック「ヘブンズドア」でも行われたあのオペレーションやその他イベントが待ってますよ。

入「あのオペレーションって事は………
  っ!じ、次回も私の出番ってありませんよね!?」

何を言ってるんですか、もちろん『ある』に決まってるでしょう

入「ええぇ~!!」

燕「うわー、作者が悪い顔になっている」

次回からは入江の出番も増えていくのでご安心ください!

それじゃあ今回はここまで!


『また次回もお楽しみに!』




入「いやぁあああ!参加したくないぃいいいい!!!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

特01話 球技大会(入江視点

前回は誠に申しわけありませんでした!


 

このお話は球技大会当日より少し前の、私が月斑先輩に野球チームのメンバーに誘われたあたりのお話です。

 

 

「ちょっとしおりん、一体どこへ向ってるの?」

 

さっき月斑先輩達にメンバーに誘われたのにしおりんはソレを断り、私を連れて何処かへ移動中です。

 

「いいからいいから♪」

 

このやり取りも何回したことか…

 

そしてしおりんに連れられてやってきたのは

 

「…ここって、被服室?」

 

「おじゃましまーす!」

 

しおりんは遠慮なく扉をあけて入っていってしまった。

それに続き、私も被服室(手芸部部室)に入る。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「―――っと言うわけなので、チアガールの服を作っては頂けませんか?」

 

「まかせてください!」

「とびっきり可愛いものを作らせていただきます!」

「ガルデモのためとあらば!」

 

しおりんが大まかに説明をし、被服部の方にチアガールのコスチュームを作らせるようだけど

これってもしかして……

 

「ね、ねぇしおりん、もしかして今頼んだ服って」

 

被服室を後にした私がしおりんにある疑問を聞いてみた。

 

「……私達が着るわけじゃ…ないよね?」

 

「何言ってんのさみゆきち、私達が着るに決まってるじゃん」

 

「ええぇー!なんか嫌な予感はしてたけど、やっぱり着るの!?」

 

予想はしてたけどやっぱり嫌だよ!

 

「みゆきちは、いつも私達の為に働いてる先輩を応援してあげようという、優しい気持ちは無いのかい?」

 

「それこそメンバーになった方が良かったんじゃないの!?」

 

「じゃあみゆきちは、野球で活躍できるというんだね」

 

「え、えぇ~っと」

 

……たぶんバット振ってもボールにかする程度だと思う。

 

「やっぱり応援の方じゃないと駄目じゃないか」

 

「うぅ…」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「…はぁ~」

 

結局着るという流れになってしまった。

 

「アレ着て応援だなんて、恥ずかしいよぉ」

 

「何が恥ずかしいんだ?」

 

「うわぁあああああ!!」

 

「うおっ!何もそんなに驚かなくても良いだろ」

 

いや無理ですよ!だって今悩んでる原因の一部ですもん!

…なんて言えるわけが無い

 

声で誰かは分かってるけど、とりあえず落ち着いたから後ろを振り向き

月斑先輩がそこにいるのを確認した。

 

「だ、だって、急に話しかけられたので」

 

「それは悪かったな。

 で、何か悩んでるみたいだけど」

 

「いえいえいえ、お気になさらずに

 相談できる内容じゃありませんし…(ボソッ」

 

「ん?後ろの方、何言ったのか聞き取れなかったんだが」

 

「あ、いや、お気になさらず」

 

「そうか?」

 

月斑先輩はきょとんとした表情をしてそう言った。

心配してくれるのは嬉しいけど、相談できないし

たとえ出来たとしても恥ずかしいよ!

 

「まぁいいか、じゃあ俺は行くな。

 まだ雑務も残ってるし、またな」

 

「あ、はい、また」

 

月斑先輩はそのまま学習棟の中へ消えていった。

 

「……はぁ、ホントどうしよう」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

   ――球技大会当日

 

「みゆきちー!やっと衣装届いたぞ!」

 

「…出来ちゃったんだね」

 

間に合わなければいいなと思ってたのに

 

現在グラウンドでは球技大会決勝が行われている。

 

「で、何でアタシがここに居るんだ?」

 

「いやだなーひさ子先輩、普段お世話になってる月斑先輩ががんばってるんですよ?

 応援してあげても良いじゃないですか」

 

「いや、まぁ世話にはなってるけどさあ」

 

ひさ子先輩はかなり嫌がってる様子だ

私もできれば着たくないんだけど…

 

「…わかったよ。応援すればいいんだろ?」

 

「そうこなくっちゃ!」

 

あぁ、あのひさ子先輩がしおりんに言い負かされちゃった。

 

「では早速これ着てグラウンドへ行きましょう!」

 

一人だけなんでこんなにやる気があるんだろう…

 

そしてその勢いのままグラウンドまで来てしまった。

 

「あ~いたいた!月斑せんぱーい!」

 

月斑先輩を見つけたしおりんが大声で叫び、驚いた表情で月斑先輩がこちらを向いてきた。

 

「ここまで来て言うのもなんだけどさぁ

 ホントにこの格好で応援するのかよ」

 

ひさ子先輩がぼやいているが、私は周りからの視線が気になって仕方ないよぅ

 

「は、恥ずかしいよぉ~」

 

「二人とももっとテンションあげないとダメっすよー

 ほら、日向チームファイトォー!!」

 

もうここまできたら後には引けないと思って、バッターボックスにいる月斑先輩を応援しようと前を向くと

なにやら引きつった顔で月斑先輩がコッチを見ていた。

 

なに?何でそんな顔してるんですか!?

着かたになにか問題でもあるんですか!?

 

急に不安になって、私はひさ子先輩の後ろに隠れてしまった。

 

「ちょっ、どうしたんだ入江!?」

 

驚いたひさ子先輩が何か言ってきているが、今はそれどころじゃない

なに?どこがおかしいの!?

 

おかしなところが無いか念入りに調べたけど、特に何もなかった。

 

あの表情は一体なんだったのだろう?

 

そんなことをしている間に、月斑先輩が追い詰められていた。

 

「月斑、打てよー!」

 

「せんぱーい、頑張ってくださーい!」

 

「わたし達がついてますよー!」

 

ピッチャーが大きく振りかぶりボールを投げる。

 

『クッソ!』

 

月斑先輩の打球はピッチャーゴロになってしまい

慌てながらも月斑先輩はバットを投げて走り出した。

 

月斑先輩が一塁に飛び込むのと同時にファーストのグローブにボールが収まった。

 

「……アウトッ!!」

 

審判の判定はアウトだった。

 

「あぁ~」

 

「今のはおしかったなぁ」

 

アウトになった月斑先輩を見て、しおりんとひさ子先輩が露骨に残念そうな声を上げる。

私はアウトになった事よりも、月斑先輩のかっこいい姿が見れなくて残念だよ」

 

「ねぇしおりん、私の後ろに立って何を言っているのかな?」

 

「いやあ、みゆきちの心の声の代弁を」

 

「私そんな事思ってないから!」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「試合残念でしたね」

 

「まぁ仕方ないさ、あのまま続けても勝てるとは思えないからな」

 

私は今、月斑先輩と屋上に居る。

球技大会が終わったあと、偶然先輩に会い

屋上でのんびりするという先輩に便乗させてもらった。

 

「にしても、今日はびっくりしたよ。

 まさかみんながチアガールのコスで応援に来るなんてさ」

 

月斑先輩はいたずら的な笑みを浮かべ、そう言ってきた。

 

「そのことは忘れてください!すっごく恥ずかしかったんですからぁ!」

 

「でも結構似合ってて可愛かったぞ」

 

「ふぇっ!?」

 

突然の言葉に頭が真っ白になってしまった。

 

「ん?どうした、そんなに震えて」

 

「…あ」

 

ここから先は、何をしたのかまったく覚えていない

 

「あ?」

 

「あぁぁぁあああああああ!!」

 

「ちょっ!?いだだだだだだだ!!どっから取り出したんだそのスティック!

 てかCrowSongのリズムで殴るな!!

 っあ、やばい、意識が……」

 

私が気が付いた時には、月斑先輩がボロボロになって気絶していた。





主人公視点なら結構楽に書けるけど、既存のキャラ視点って案外難しいものだなと実感した回でした!

入「最後なんてオチを付けてくれてるんですかぁー!」

いやだって、私そんなにラブコメ系書いた事ありませんし
これでもがんばった方なんです!

入「開き直らないで下さい!」

まぁあのラストのオチもちょっとキャラコメであったネタを使いたいなーと思ってしまったのが原因なんで
そこは素直に申し訳なかったです。

ちなみにラストのシーンで私の頭の中でキスシーンが構成されてたときもありました。

入「キ、キス!?」

色々早すぎる展開になってしまうんで没にしたんですけどね

入「で、ですよね!早すぎますよね!」

なんかあせってません?

入「気のせいです!
  じゃあ今回はこの辺で終わりましょう!」

ま、まぁ丁度良い感じなんでいいですけど

入「それでは皆様!」

『また次回もお楽しみに~』



次回からは前回もお伝えした通り、オリジナルの夏休み編となります!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第32話 肝試し大会!パートナーは誰?

「肝試しをするわよ!」

 

我らがリーダー様が夏休みにいきなり召集を掛けたと思ったら

突然そんな事を言い出した。

 

「また突然だな」

 

「いえ、人間を探すために毎年行っています」

 

俺のつぶやきに高松が指摘してきた。

 

「毎年やってるのか、てか人間を探すためって

 この時期にやる必要があるのか?」

 

「あなたバカ?夏休みで帰省する生徒が多いから、必然的に学園にいる生徒数は激減する。

 つまり、残ってる生徒は人間の可能性が高いの」

 

音無の質問にゆりが答え、俺も納得する。

 

「肝試し大会を開催して参加者と不参加者の中から人間を探し出すって事か」

 

「そゆこと」

 

「じゃあ今回も俺達が色々仕掛ければいいんだな」

 

日向達戦線メンバーが立ち上がり、本部を出ようとするが

それをゆりが止めた。

 

「ちょっと待ちなさい、今回皆は参加する側に回ってもらうから」

 

『…はぁああああ!!!?』

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

ゆりの説明を聞く限り、今回は主要メンバーの肝を試すというらしい

 

ちなみに肝試しの会場設営はギルドメンバーが行うことになった。

 

それに伴い俺達は今、メンバーの組み合わせを決めるべく話し合いをしていた。

 

「ゆりっぺも無茶苦茶言うよなぁ『折角の肝試しなんだし、全員男女ペアで参加ね。あ、もちろんあたしは運営側だから除外だからね』

 なんて言ってしまいには『男共の数が多いからあぶれたら男同士でペアを組みなさいね』だってよ」

 

「文句言ってる暇があったらさっさとメンバー決めるぞ」

 

とは言っても、約一時間以上こうして話し合っているのだが、一向にメンバーが決まらない

 

野田はゆり以外とは組みたくないと駄々をこね、椎名はあさはかなりいが何も言わないし

 

遊佐も天使の動向を監視するために肝試し大会には参加しないと、意見がまとまらないでいた。

 

「なぁ、もうくじ引きで決めないか?」

 

そんな中音無の一言が部屋中に響いた。

 

「……え、なんだよこの空気」

 

『…そ、それだぁ!!』

 

「うわっ、なんだよ急に!?」

 

音無の一言は本当にこの状況を打開してくれるものだったので、俺まで叫んでしまった。

 

だがその空気をぶち壊すかのように

 

「そうなるだろうと、ゆりっぺさんからくじを預かっています」

 

『……………』

 

遊佐がどこから取り出したのか、くじ引きでよく使われる中央に腕を入れる穴が開いている箱を取り出してそう言った。

 

「遊佐、くじが用意してあるなら先に言ってくれ。この一時間が何だったのかわからなくなる…」

 

「………それは申し訳ありませんでした。 ですがゆりっぺさんにくじ引きの話が上がったらと言われていたもので」

 

ゆりのやつ完全に遊んでやがる…

 

「まぁいいや、くじがあるなら早速引かせてもらおう」

 

俺はくじを引こうと箱に手を伸ばすが、遊佐が箱を横に逃がし

箱に伸ばした俺の手は空を切った。

 

「………」

 

再度箱に伸ばすが、遊佐はまた箱を横に逃がし、俺にくじを引かせないようしてきた。

 

「おい遊佐、なぜ避ける」

 

「…月斑さんのパートナーは既に決まっていて、くじを引く理由がないからです」

 

「決まってる?」

 

遊佐が部屋の隅を指さしていたので、そちらの方を向くと

 

何やら困った顔をしている椎名がいた。

 

「え?なに、俺椎名と組むの?」

 

「…いえ、椎名さんではなく、もっと視線を下に」

 

「下に?」

 

周りも気になり始めたのか、俺と一緒に椎名の足元まで視線を落とした。

 

『……………』

 

……紫色の毛玉?

 

「その扱いは酷いです!!」

 

「人の心を読むな!」

 

どうやら椎名の足元でうずくまっていたのは入江だったようだ。

 

「あー、月斑先輩、みゆきちはお化けが苦手なんですよ」

 

見かねたのか関根がそう教えてくれた。

 

「は?もう死んでるのに?」

 

意外な事実だった。

 

この世界の住人はもう死んでるから、心霊系の類は全く気にしてないものだと思ってたのに

 

いやでも苦手なものは仕方がないか

 

「まぁ、苦手なものはどうしようもないだろ」

 

「そういうわけで月斑さんは入江さんと組んでもらいます」

 

「いやどういうわけだよ」

 

突然割り込んできた遊佐にツッコミを入れる。

 

「ガルデモ支援班なのだから、メンバーをサポートするのは当然の事だとゆりっぺさんが言っていましたが」

 

ゆりの差し金かよ、てかアイツもメンバーの事しっかり見てんだな

…殆どが遊佐からの情報だろうけどな

 

「はぁ~、分かったよ。俺は入江と組めばいいんだな」

 

「納得していただけたようで何よりです。

 ではみなさん、くじをどうぞ」

 

遊佐はメンバーの方を向きなおしてくじを引かせていった。

 

「リーダーの命令じゃしょうがねぇか、よろしくな入江」

 

「……はい」

 

観念したのか、かなりしょぼくれているが

一応肝試し大会に参加するようだ。

 

それにしてもギルドメンバーが作る肝試し会場か

嫌な予感しかしないな…




先月の更新が間に合わず申し訳ありませんでした!

残業+サービス残業+休日出勤+休日サービスのオンパレードで全く書く暇がなかったんです!

燕「言い訳するな」

入「まぁ家に帰ってすぐ寝てましたからね」

サービス残業や休日出勤はともかくサービス休日は勘弁してほしかった…

燕「その会社どうなんだ」

入「リアル事情はそのくらいにして、月斑先輩のパートナーの相手の話はいいんですか?」

『……………』

入「え、どうしたんですか?」

燕「さも当然のように話すな、もう組み合わせは決まったんだから勘弁しろよ」

入「いーやーでーすー!!」

人の苦手なものって様々ですからね

燕「それで片付けていいのか!?」

どうせ燕君と入江ちゃんが組むのは決まってますからねー

入「……………」

燕「…気絶してるぞ」

仕方がないので今回はここまでですね

燕「え、放置するのか?」

それでは皆さん!

『また次回もお楽しみに~』


*今回の話は11月分なので今月もう一本出します


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第33話 肝試し開始!

時刻は22:00を回る少し前の事

 

「なぁゆり、なんで俺たちはこんな茂みに身を潜めてるんだよ」

 

俺は今、ゆりと二人で大会のスタートポイントの近くの茂みに隠れている

 

「肝試し大会のビラを貼りまくったからよ。

 必ず天使が妨害に来るから、隠れてやり過ごすの」

 

「開始時間を記してるから無駄じゃないのか?」

 

「大丈夫よ、事前に参加者全員に開始時刻は二時間遅らせると伝えてあるから」

 

なんて用意周到な・・・

 

って!

 

「じゃあなんで俺たちはここにいるんだよ!二時間もずらしたなら大丈夫だろ」

 

「以前二時間ずらしたにも関わらず失敗したことがあるのよ

 だからここで天使が帰るのを見届けるのよ」

 

そうだとしても開始一時間前に様子を見に来るとか他に方法があると思うんだが

 

そうこうしていると天使が会場に姿を現した。

 

天使は辺りを見渡しているが、何もないせいか首をかしげている。

 

「あの様子ならすぐに帰るんじゃないのか?」

 

「どうかしらね、前回は一時間以上も粘られたから、今回はそれ以上居座るつもりかも」

 

「なんで二時間以上遅らせなかったんだよ」

 

「二時間以上待つのは辛いからよ」

 

「待つこと前提かよ!」

 

その後特に何もなく、一時間が過ぎたあたりで天使は寮へと帰っていった。

 

「よし、それじゃあ予定通り始めるわよ!

 遊佐さん、各員に通達!予定通りオペレーションゴーストゲームスタートよ!!」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「今宵は肝試し大会へようこそ」

 

開始時刻の23:00には参加者が全員そろっており、予定通り開催された。

 

「それではルールの説明を

 

 校舎の中には今日集まった皆さんの名前が書かれたお札が隠されています

 そのお札をロウソクの火が消える前に持ち帰ってください

 もしお札を持ち帰る前にロウソクの火が消えてしまうと

 名前を書かれた人が消える・・・

 

 要は死んでしまうのです

 

 ロウソクの火が消える制限時間はおよそ一時間

 それまでにお札を持ち帰れる事をただただ―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  祈 っ て お り ま す ・ ・ ・ 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まずはゆりがルール説明を行い、会場に到着した順に五分おきに校舎へと入っていくことになっている。

 

ちなみに俺達戦線メンバーには入る順番など伝えられていない

ゆりがどこかのタイミングで呼ぶことになっている。

 

「それでは最初の組の方はこちらでロウソクの火を灯し校舎へどうぞ」

 

ゆりはロウソクの火を灯しヒントの書かれた紙を手渡す、校舎へ入っていくのを見届け次のスタートまで待機する。

 

天使も今のところ戻ってきた様子もなく無事開催されたといっていいだろう

 

だけど・・・

 

「なぁ、いつまでそこでうずくまってるつもりだ?」

 

「うぅ~」

 

戦線メンバーは十分前には集合と言われ此処に集まったのだが

嫌々ここに来た入江は開始前から花壇の隙間にうずくまっていた

 

「それでは次の組の方は準備してください!」

 

次々と校舎へ入っていく生徒たち、受付である程度見極めれるとゆりや日向達は言っていたが、そんなに見分け付くものなのか?

 

まぁ音無と聞いたときにあれだけはっきりと答えられたら信じるしかないか

 

「じゃあ次は戦線メンバーの月斑組ー」

 

「さっきから気になってたが戦線メンバーの呼び方雑すぎるだろ!

 全っ然緊張感がねぇんだよ!!」

 

「文句言わずに火をつけてヒントを持っていく!」

 

ゆりは俺にヒントの紙を押し付け強引に校舎へと入れられた

 

「たくゆりの奴、ここまで強引にすることないだろ

 なぁいり・・・え?」

 

振り向こうとしたのだが、背中に強い衝撃を受け振り向くことができなかった。

 

「え、あの、入江さん?なんで俺の背中にくっ付いてるんですかね?」

 

「すみません・・・出来ればこのまま進ませて下さい」

 

・・・・・・え、マジで?

 

その後何とかくっ付くなら腕にしてくれという説得に成功はしたが、ハッキリ言ってどうしてこうなったとしか思えない・・・

 

結局入口でグダグダしていた為ゆりに怒られ先に進む事になるのだが

 

 

 

 

 

この肝試し大会であんな事が起こるなんて、この時は誰も

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  思 っ て は い な か っ た ...

 

 

 

 




今年一年お疲れ様でした!

燕「お疲れー
  しっかし、今は冬だってのに物語は夏とか・・・」

それは言わないでください!

入「投稿ペースが遅いのが原因ですよね」

だから言わないで!

これでも来年からはもう少し投稿ペース上げようと考えてはいるんですから

燕「そんな実現できなそうなことはさて置き
  この肝試しはあと何話くらい続くんだ?」

目処としては2.3話くらいですね
この先の展開にかかわる伏線も混ぜていくので

入「伏線?」

その話はまた近づいたときにでも

燕「それじゃあ今回はこの辺で終わるか」

そうですね

入「それでは皆様!」

『よいお年を~』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第34話 謎の空間

 

「さてと、ヒントに書いてあるのはっと」

 

俺はゆりに手渡されたヒントを確認するため封筒から中身を取り出す。

封筒の中には紙が二枚入っておりそこに書かれてあったのは

『天使』

『戸』

といった内容だった。

 

「これを見る限り俺と入江のお札は別々のところにあるみたいだな」

 

そう言いながら、未だに腕にしがみついている入江に目をやる

 

「そ、そうみたいですね…早く探しに行きましょう…」

 

さすがに観念したのか、結構前向きな事を言ってはいるが

足が生まれたての仔馬のようになってるんだが…

 

まぁそれはさておき、俺はもう一度ヒントを読み直す

ヒントにしては随分と手が込んでいる

このヒントに対してヒントが欲しいくらいだ

 

天使と戸か、いったい何を示してるんだ?

ゆりは校内の中にお札があると言っていたから、この学習棟の中の教室のどこかだろうが

 

『あ、あったー!』

『もう時間がないよ、急ごう!!』

 

どうやら先に入った組がお札を見つけたらしい、遠くの教室から声が聞こえてきた

 

周りを見渡すと、未だ探し回っている組も多く、隣の棟にも人影があちこちで見られる

他にも耳をすませば、ここでもないだとかそっちの状況はどうだとか色々な話声が聞こえてくる

 

これなら入江もあまり怖がらなくて済むだろ

 

『ぎゃぁぁあああああ!!!』

『うわぁあああああ!!!』

『コッチ来ないでぇえええ!!!』

 

そう思った矢先、すさまじい叫び声が響いてきた

周りの生徒も唖然とした顔で廊下の先を見ている

 

「……………」(ガタガタ

 

入江も今の悲鳴を聞いて、再び俺の腕にしがみついてしまった

…折角離れてくれたのに

 

まぁいい、今はこの肝試しを楽しもう

まずは適当に思いつくものを片っ端からあたってみるか

 

天使はともかく、戸の方からだな

簡単に思いつくとしたら下駄箱か、教室の扉の事だと思うが

 

ここから近いのは下駄箱だな

 

俺は入江を連れて下駄箱へ向かった

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

結果から言うと外れだった

 

俺と入江の下駄箱を確認したが、どちらも外れで

代りにトラップに襲われた

 

「うぅ、怖かったですぅ…」

 

そのおかげで入江がまた怯えきってしまっている

 

入江の方のトラップはまだマシな方だ

クマのぬいぐるみをお化けっぽく仮装させた物が飛び出してきただけなのだから

 

俺の方はというと

下駄箱を開けた瞬間、首めがけて鎌が飛び出してきたのだ

後ろに飛びのくのがあと少しでも遅かったら頭と体が別々に分かれていたところだった

 

戦線メンバー限定のトラップなのだろうが誰も犠牲者が出ないことを祈る

 

で、今どこにいるのかというと

俺の教室、三年F組だ

 

入江の教室は先に終わらせておいた

三年の教室に向かう前に二年の教室があるからな

一々戻るのは二度手間だろう

 

「う~ん、ここにもないか」

 

俺は教室の扉やロッカーなど、一通り調べたが何も出なかった

 

「ここじゃないとすると、あと思いつくとしたらいつも練習してる空き教室か」

 

「それだと先輩と私、二人とも被っちゃって天使の方のヒントはどうなるんですか?」

 

「それは問題ないと思うぞ、空き教室を一番利用してるのは俺じゃなくて入江だ

 支援班といっても滅多に顔を出さない俺にはあまり関係の無い所だよ」

 

そうですかと、残念そうな顔をする

 

「でもまぁ、入江の方は関係あるから行ってみるか」

 

「そうですね、行きましょうか」

 

俺と入江は教室を後にし、空き教室へ移動し始める

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

おかしい…

 

さっきから廊下を歩いているのだが、一向に階段にたどり着けない

それどころか、誰ともすれ違わないし話し声すら聞こえてこない

 

入江もこの異変に気付いて震えている

 

「ちょっと休むか、まだ時間はあるんだし」

 

俺は近くの教室へ入ろうとするが

 

「あれ、鍵かかってんのか?」

 

仕方なく隣の教室へ入ろうとしても

 

「……こっちもか」

 

仕方がなく教室のドアを破ろうと体当たりするが、ビクともしなかった

まるで扉を模した壁のように

 

ここは二階だったな、なら飛び降りることはできるか

 

そう思い俺は窓を開けようとするが

 

「っ!? フックが動かない、錆びてるわけでもないのに」

 

「あの、先輩…」

 

入江が不安そうな声を出す

 

「仕方がない

 入江、窓割るから少し離れてろ」

 

そう言って、入江を離れさせる

俺は腰の刀を鞘の付いたまま構え、上段から振り下ろす

 

が、しかし

 

ガンッ!!という音と共に、俺は窓から弾き飛ばされ壁に叩き付けられた

 

「先輩!!」

 

入江が心配して近寄ってくる

 

「痛っ!こりゃゆりとギルドが準備したものじゃないな」

 

「…それって、どういう事ですか?」

 

今の攻撃で窓ガラスが割れなかった事である程度の想定はできた

 

つまりここは―――

 

「ここはさっきまで俺達戦線メンバーやNPC生徒がいた夜の学校じゃない

 隔離された空間だ」

 





今回ヒント考えるのに相当苦労しました

燕「全くだ、暗号文のようなヒントならまだしも、漢字が一文字二文字だったからな
  あれだけで普通解けないぞ」

ぶっちゃけ『天使』の方は手を抜きまくったんですけどね

入「いや、リアルの友人にこの問題を出した時に『これだけで教室を当てろとかめんどくせぇな!』とか言ってましたよね」

でも結局解いたんですよね僕の友人は、時間はかかりましたけど
『戸』はともかく『天使』は簡単でしょう

燕「まぁ『戸』に比べたらな」

本来ならさっき燕君の言っていた暗号文のようなヒントを作りたかったのですが
あいにく頭が悪いもので、そんな難解な文は作れませんでした

入「それ自分で言っちゃうんですか…」

燕「まぁそれはともかく、俺と入江が迷い込んだあの空間は何なんだ?」

あの空間に関しては次回わかりますよ
ついでに今回の肝試しも次回で終了予定です

入「ということは原作の方に戻るんですか?」

いえ、もう一話オリジナルをやる予定です

さて、今回はここまでですね

燕「そだな、んじゃしめるか」

入「それでは皆様!」

『また次回もお楽しみに~』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第35話 進展、本部への通信

 

「………すぅ………すぅ」

 

俺と入江は今、3-Fの教室で休んでいる。

 

不思議なことにあれだけ歩いたにも関わらず、3-Fの教室に戻ろうと振り返るとそこに3-Fの教室があったのだ。

 

入江は驚いていたが、俺はこの空間では常識なんてものはないんだろうなぁと諦めた。

 

他の教室同様、扉が開かないかもしれないと思ったが、そんなことはなくすんなり開いたのは幸いだろう。

 

一応教室の中を調べたが、札を探して入った時と変わらず何もなかった。

 

それで安心してしまったのか、入江は適当な椅子に座り眠ってしまった。

 

「さて、このまま教室に籠ってても仕方ないよな」

 

俺は入江をそのままにし、教室を出た。

 

どうせ廊下は永遠と続くし戻ろうと思えばいつでも戻れるだろうと、浅はかな考えだった。

 

この行動が最悪な事態を招くことになるとは微塵も思っていなかった。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

燕のいなくなった教室では入江の寝息が響いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰かが教室内に入ってくるまでは………

 

教室に入ってきた人物はゆっくりと入江に近づいて行った。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「あれ?」

 

さっきとは逆方向へ歩いていた燕が見つけたのは、探していた階段だった。

 

「わけが分からねぇな此処は…

 まぁいい、一度戻るか」

 

俺は入江を連れてくるために来た道を戻るが、階段を探していた時同様

一向に教室にたどり着かないでいた

 

それどころか、後ろを振り向くとすぐそこに階段がある

 

「……やばいなこれは」

 

ここにきて初めて焦りを覚えた俺は、置いてきてしまった入江を心配しつつ

出口を探すため階段を下りて行った。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

一方、元の天上学園では

肝試し大会が終了しても戻ってこない月斑・入江ペアを戦線メンバーが捜索に当たっていた。

 

「遊佐さん、最後に月斑君達を見たのはどこ?」

 

『申し訳ありませんが、私が最後に見たのは校舎に入るところです』

 

「そりゃそうよね、こんな事態になるとは思わないし、特別あの二人を監視する理由もなかったしね」

 

校舎で行われる肝試し大会で行方不明者が出ると誰が予想できただろうか

 

(二人とも、一体どこに行ったの…)

 

ゆりは二人の心配しか出来ず苛立ちを感じていた。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

階段を下りている最中、一つ思い出したことがあった

 

『なぁ遊佐、ゆりの無線機の周波数を教えてもらえないか?』

 

『どうしてでしょうか』

 

『急ぎの用がある時に本部へ向かうより放送室の無線機を使った方が手っ取り早いだろ』

 

『それでしたらゆりっぺさん本人に聞けばよろしいのでは?』

 

『ゆりに聞いてもいいが、ちょっと脅かしてみたいと思ってさ』

 

『……………』

 

『側近としては嫌か』

 

『……構いませんよ、私もゆりっぺさんが驚くところを見てみたいですし』

 

そういった経緯があって遊佐からゆりの無線機の周波数を教えてもらった事があった

 

まさかこんなところで使うことになるとは思ってもみなかったが

正直聞いておいてよかったと思う

 

「放送室にはたどり着けるのか」

 

さっきから目的のところにたどり着けないでいた為、少々不安はあったが無事放送室にたどり着き、中にも入れた。

 

「さて、無線機はっと」

 

俺は無線機を探し、周波数を合わせ連絡を試みる。

 

「ゆり聞こえるか?聞こえてたら返事してくれ!」

 

『……………』

 

「…無理か」

 

諦めかけた瞬間、スピーカーから微かに声が聞こえてきた。

 

『……むら…ん!ぁなた……こにいる…!』

 

「ゆりか!よかった通じたか」

 

『ゆ……!今す………送室に…な……君たちを…わせて!』

 

途切れ途切れだが何を言っているのかは大体わかった。

だが元の天上学園の放送室に俺はいないだろう

 

「ゆり、たぶんそっちの放送室に俺はいないと思う

 それよりも現状の確認だが――」

 

俺は今起こってるすべての事をゆりに伝えた。

 

そして俺はこのとき、入江の身に何が起きているかなど微塵も考えもしなかった。

 

入江は今、3-Fの教室から姿を消していた。





大変申し訳ございませんが、今回はここまでとなります。

燕「今回で終了予定じゃなかったのか?」

そのつもりだったのですが、思いのほか考えがまとまらなくて
結局分割してしまいました。

燕「またか…」

入「最後私がどうなってるのか気になるんですけど…」

それに関しては次回判明するので、それまでお待ちください

燕「まさか考えてないとか言い出すんじゃないだろうな」

それはないです!話の流れはまとまってます!
ただ文にするのに慣れてないだけです!

入「その結果が分割ですか」

それに関してはホント申し訳ない!
なんか毎回誤ってる気がして説得力ないけど、本当に申し訳ないと思ってます!

燕「じゃあ次回でこの肝試し編は完結でいいのか?」

はい、次回で完結させます!

入「まだいろいろ気になることがありますけど今回はこの辺で終わりましょうか
  それでは皆様!」

『また次回もお楽しみに~』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第36話 黒い塊と亀裂

三か月ぶりの更新です

6/16:あとがき修正


ゆりと今後の行動について通信している時、ふと違和感を感じた。

 

「なぁ、最初に比べて通信が安定してきてないか?」

 

『確かにそうね。まだノイズ交じりだけど、はっきり聞こえるわ』

 

なぜ急に通信が安定したのだろう

こちらの世界と、元の世界が一つになろうとしているのだろうか

 

なんにせよ通信が安定したことは幸運だった

 

「じゃあ通信が安定してる今のうちに話をまとめるぞ」

 

通信が安定したとはいえ、いつまた通信状態が悪くなるかわからない

なので今のうちに話をまとめることにした

 

「――こんなところか

 それじゃあコッチでもどうにかそっちに戻れるよういろいろ探してみる」

 

『えぇお願い、コッチも引き続き校内をくまなく捜索してみるわ』

 

俺はゆりとの通信を終え、今後の行動の為にも一度入江のいる教室へと向かった

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「……入江のやつ、どこに行ったんだ?」

 

無事教室に戻ってこれたと思ったが、その教室に入江の姿はなかった

教室も3-Fで間違ってはいない

 

俺を探しに教室から出たのか?

いや、あの臆病な入江の事だ、まずありえないだろう

 

ならどこに消えた?

入江だけ元の空間へ帰れたのか

 

いや、それも違うだろうな

何も行動せず教室内にいるだけで元に戻れるとは思えない

 

ここまで考えたところで一つ、想像したくない可能性が出てきてしまった

 

そもそも入江は寝ていたはずだ、俺が放送室へ向かったのと同時に起きた可能性もあるが、それでも入江がこの空間で一人行動をとるとは思えない、かといってこの教室内でじっとしていただけで元の空間へ帰ったとも思えない

だとすれば

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第三者が入江を連れ去った可能性

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この不思議な空間だ、他の誰とも会わなかっただけで実は他にも人がいたのかもしれない

 

その人物が俺達戦線メンバーの誰かならいいが、もしコッチの空間の人だとしたら

入江の身に何が起こるか分からない

 

そう考えるのと同時に、俺は教室を飛び出していた

 

「―――っ!?」

 

だが教室を飛び出し廊下に出た瞬間、俺の体は強い衝撃を受け吹き飛ばされた

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

通信を終えたゆりは途方に暮れていた

 

二人の居場所が分かっても、そこが異世界とあっては手の出しようがない

 

戦線メンバーが全力で手掛かりの無いまま捜索を行ってくれてはいるが

 

正直なところ何か進展があるとは思っていなかった

 

「……やっぱり向こうから何かしてくれないと、コッチからは何もできないのかしら」

 

ゆりが諦めかけた時、本部の扉が勢いよく開けられた

 

「ゆりっぺ大変だ!!中庭に――」

 

本部に入ってきた戦線メンバーの説明は信じがたいものだった

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「…痛ってぇ」

 

強い衝撃を受け、俺は校舎の端の壁に叩き付けられた

 

何に吹き飛ばされたのか確認したかったが、思いのほかダメージが強く

 

なかなか起き上がれないでいた

 

「……くそ」

 

なんとか起き上がり正面を向く

 

「なん…だ……あれは」

 

俺の目の前にいたのは人ではなく、黒い塊だった

 

黒い塊といってもちゃんとした形があるのかは分からない

 

丸い形をしているようだが、固形ではなく気体の塊のといった方が正しいだろう

 

こいつが俺を吹き飛ばしたのだろうか

 

だが何のために?

 

俺は黒い塊を見ながら考えていると、そいつは突然俺に向かって腕のようなものを伸ばしてきた

 

「くっ!」

 

俺はとっさに左手で腰の刀を掴み、柄で黒い塊の攻撃を防いだ

 

「あっぶねぇな、いきなり何しやがる!」

 

椎名との特訓で変則ガードを覚えていなかったら、また壁に叩き付けられていたところだ

 

黒い塊は攻撃を防がれてもなお、両腕(?)で攻撃を仕掛けてくる

 

「チッ!入江を探すのはコイツをどうにかしてからだな」

 

俺は攻撃を避けながら刀を腰に差し、抜刀する

 

「さぁかかってこい、まっくろくろすけ!」

 

俺はそいつを連れ、中庭の方へと移動した

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「これは、一体…」

 

報告に来た戦線メンバーに連れられ中庭に来たゆりが見たものは

 

空中に浮かぶ1mほどの亀裂だった

 

亀裂の幅は50cmぐらいだろうか、亀裂の中を確認したいが中から出ている光のせいで確認できなかった

 

「ゆり、これってもしかして、向こうに繋がってるんじゃないか?」

 

音無が状況を見て推察したのだろう

 

「そうね、その可能性は高いと思う」

 

「ならこの亀裂をどうやって広げるかだな、この大きさでは誰も入れんぞ」

 

松下五段が亀裂の拡大を提案するが

 

「その亀裂の拡大方法が問題なのです」

 

高松が眼鏡を持ち上げた後、亀裂の反対側を指さした

 

そこには関節をあらぬ方向へ曲げ横たわっている野田がいた

 

「え、何で野田君があんなことになってるの?」

 

「ゆりっぺが来る前に野田君があの亀裂に攻撃したんだよ。そしたら急に吹き飛ばされて……」

 

一部始終を見ていた大山がゆりの質問に答えた

 

「なるほどね、銃は試した?」

 

「銃はまだ試してねぇ、アレを見ちまったからな…」

 

戦線メンバーは野田が吹き飛ばされた後、自分もああなりたくないと

 

亀裂には指一本触れてはいなかった

 

「全くしょうがない連中ね。死ぬわけじゃないんだから当たって砕けなさいよ」

 

「いやいくら死ななくても嫌だよ!」

 

当たって砕けろという言葉に日向が全力で否定する

 

「じゃあ全員一斉に撃つわよ、それで文句ないわね」

 

「文句あるに――」

 

バンッっとゆりが抗議する日向の顔すれすれに発砲する

 

「ん?」

 

「――なんでもありません」

 

「諦めるしかないな」

 

ゆりは戦線メンバーを配置に就かせ、射撃体勢に入る

 

「――撃てっ!」

 

ゆりの合図と共に亀裂に向かって銃撃が開始された

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

戦線メンバーが亀裂に向かって銃撃が行われ

月斑が中庭で黒い塊と戦闘を行っている同時刻

 

入江を担いだ黒い塊がゆっくりととある場所へと向かっていた

 




ようやく時間が取れたぞーー!!

燕「テンション高いなオイ」

だって先月は仕事の引継ぎ、今月は引継ぎ+新しい仕事を覚えるのに必死でしたからね
引継ぎ相手がなかなか仕事を覚えてくれなくて自分の仕事ができなかったんだよ!

入「まぁ愚痴はそのくらいで、今回の話の見返りでもしましょうよ」

燕「そうだな。つかその前に今回で肝試し編は終了のハズじゃなかったのか?」

マジでごめんなさい
プロット見直してたら『コレゆり達の描写もないとおかしくね?』と思ってしまったので
予定の倍の量になってしまいました

燕「じゃあ次回で今度こそ終わるんだな」

その予定です

燕「そうか、んで結局あの空間は何だったんだ?それとゆり達が見つけたあの亀裂も気になるな」

そのことに関しては今後のお楽しみということで
あの隔離空間は終盤でまた出てきますから

入「黒い塊に連れていかれた私はどうなるんでしょうか…」

燕「まぁそれも含めて今後のお楽しみだな」

ですね
ちょうどいいのでそろそろ終わりますか

入「それでは皆さん!」

『また次回もお楽しみに~』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第37話 帰還

黒い塊を中庭に誘導し、地の利を得た俺は椎名に鍛えられた俊敏性を生かし

四方八方から黒い塊に攻撃しているが、まるで手ごたえがない

 

当たるというよりすり抜けている

 

「――くっ!」

 

こちらからの攻撃は一切通らないが、黒い塊の攻撃だけはしっかりと俺にヒットする

 

―――ここは一度距離を置いて体制を立て直すか

 

俺は大きく後ろへジャンプするが、黒い塊がその距離を一瞬で詰めてきた

 

「――っ!?」

 

黒い塊の拳?が俺の腹にめり込み、そのまま校舎へ殴り飛ばされた

 

「痛ってぇな、……こりゃキツイな」

 

逃げるのもままならない状況では入江を探すこともできない

何度も隙を見つけて入江を探しに行こうとはしているが、コイツに邪魔され失敗している

 

まるで入江を探させないために足止めしているかのように黒い塊が立ちはだかる

 

―――なにか打開策はないか?この地形で使える戦術は、もしくはアイツの気を引けるものでもいい

なにか、何かないか!?

 

俺は辺りを見渡し打開策を考える

その中で一つ、不思議な光景を見た

 

空中に漫画やアニメでよく見るであろう、光っている亀裂を見つけた

 

さっきまで何もなかったところにいきなり現れたということは、ゆり達が元の世界の方でなにかしたのだろうか

 

だとしたらあの亀裂の先は元の世界とつながっているはずだ

 

―――あの亀裂がゆり達の仕業なら!

 

俺はナイフを数本取り出し、黒い塊へと投げつける

 

それと同時に俺は亀裂へと走り始め

黒い塊はナイフを弾き俺の方へと距離を詰め拳を振り下ろした

 

が、その拳は俺に届くことはなく

亀裂から放たれた弾幕により、黒い塊はその体に無数の風穴を作り

霧のように拡散して消えていった

 

「―――月斑君、無事!?」

 

亀裂から放たれた弾幕が終わった直後、亀裂が広がり

その中からゆりを先頭に、戦線メンバーが現れた

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「つまり入江が行方不明ってわけね」

 

ゆり達と合流出来た俺は、これまでの経緯を簡単に説明した

 

「ああ、できれば広範囲で探したいがこの空間で迷うとどうなるか分からない

 なるべく固まって行動した方がいいと思う」

 

「そうね、でもこのゲートもいつまでもつか分からないわ

 数人見張りを残して、残りのメンバーは入江の捜索に回すわ」

 

ゆりが言ったゲートとは広がった亀裂の事だ

元の世界とこちらを自由に行き来できることから呼び方が変わった

 

ついでに話すと、さっきまで俺が戦っていた黒い塊も『影』へと呼び方が変わった

 

「ゲートの見張りは松下五段とTKに任せるわ」

 

「心得た」

「All Right」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「なぁ月斑、お前はなんでここが別世界だと思ったんだ?」

 

「ガラスと生徒だよ」

 

俺は音無の質問に簡単に答えた

 

「ただの肝試しなのにわざわざガラスを交換したりしないだろ?交換したとしてもすべてのガラスの交換なんて半日で終わらない

 まぁ仮に終わっていたとして、肝試しになにかメリットはあるか?ないだろ

 だからおかしいと思ったんだよ」

 

「普通それだけじゃここが異世界なんて分からねぇだろ」

 

音無への回答に藤巻が疑問をぶつけてくる

 

「そ、それだけじゃ断定はできない

 だからこそのNPC生徒の消失が決め手になった

 あれだけ校内に悲鳴や話し声が聞こえていたのに、それが突然聞こえなくなったんだ

 疑問に思わない方がおかしい」

 

「NPCの消失と無意味なガラスの強化というヒントだけで異世界と決めつけるってのは大げさな気がするけどな」

 

「戦線メンバーまで消えたんだ、むしろ俺と入江だけ消えないのは不自然だろ?」

 

日向のつぶやきに対してもちゃんと答える

答えることができたのは、教室を出た瞬間の強烈な違和感と居心地の悪さのせいだろう

 

あの瞬間の気味悪さは今でも忘れられない

 

―――正直今でも胸のざわつきが止まらないんだけどな

 

むしろ入江の姿が見えなくなった辺りから胸のざわつきがひどくなっている

何も起こらなければいいがと、俺は強く願った

 

が、しかし

俺の気持ちを裏切るかの如く、入江を担いだ影が俺たちの目の前を横切って行った

 

「入江!?」

 

「今の影を追いかけるわよ!」

 

俺たちは影を追いかけ始めた

 

―――確かこの先って

 

影を追いかけるほど、胸のざわつきは強くなっていった

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「いたぞ!」

 

椎名が影を見つけ、後方の俺たちに教えてくれる

 

「――っ!?」

 

影を見た瞬間、蛇に睨まれた蛙のように俺の体は硬直してしまった

 

「どうした月斑」

 

俺の様子にいち早く気付いた日向が声をかけているが、その声は俺には届いていなかった

 

次第に呼吸が荒くなり頭痛や吐き気も襲ってきた

 

 

 

影がいた場所、それは焼却炉だった

 

 

 

場所だけではこうはならなかっただろう

 

今まさに影がしようとしている事、

影は焼却炉の扉を開け、火を灯していた

 

それが俺をこんな状態にしているのだろう

 

無くした記憶がよみがえろうとしているのか、耐えられないほどに頭が痛い

嫌な汗をかいているのもわかる

体も震えて脚が動いてくれない

 

はやく動いて入江を助けないといけないのに身体がいうことを聞かない

 

戦線メンバーは影に向かって発砲しているが、影にそれらしいダメージは見られない

それどころか攻撃されていないかのような感じでいる

 

影は入江を腰に抱え、焼却炉に投げ込むような仕草を見せた

 

―――動け、動いてくれ!あの中に入江が投げ込まれる前に!

もしそんな光景を見てしまったら俺はっ!

 

記憶がなくとも精神が崩壊してしまうだろう

 

こんな状況だからか、なんとなく分かる

俺の未練は火が関係している、そして俺はその事がトラウマになっている

 

―――動け、動け動け動け!!

 

俺は強引に脚を動かし、その勢いのまま駆け出した

 

その瞬間、一瞬だけ現世の光景を見た気がするが、よくは覚えていない

 

俺は腰の刀に手をかけ、入江を担いでいた影の両腕を切り裂いた

空中に投げ出された入江を見た直後、俺は気を失ってしまった

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

目を覚ますと、医療棟の保健室だった

 

「ここは」

 

「目が覚めたのね」

 

声の方を向くと、ゆりがベットの横にある椅子に座っていた

 

「どのくらい気を失ってた?」

 

「二日ね

 あなたは影の腕を切り裂いた直後に倒れて、そのまま気を失ったわ」

 

「そうか、そのあとどうなったんだ?」

 

俺はゆりから気を失った後の事を聞いた

 

俺が気を失った直後、ガラスが割れるかのように空が割れたらしい

そして影は消え、いつの間にか元の世界に戻っていたと

 

どうにも信じがたい話だが、実際起こったことを考えると信じるしかなさそうだ

 

「あなたはまだしばらく休んでなさい

 今回の騒動で調査したいこともあるから、しばらくオペレーションはないわ」

 

「そうさせてもらうよ」

 

俺はふと、窓の方に目をやる

窓から見えた空には、いくつもの星が散りばめられていた

 

―――俺のトラウマ、無くしてしまった記憶

そろそろ向き合わないといけないな

 

ゆりが帰った後そんなことをぼんやりと考えていた




ギリギリ書き終わったー!!

燕「いや、むしろアウトだろ今月分」

入「日付変更5分前の投稿を、どれだけの読者が許してくれますかね」

まだ6月だ!6月分の投稿は時間上では守れているぞ!

燕「無茶苦茶な意見だな」

その話はもういいじゃないですか
それよりもオリジナル終了です

入「肝試し怖かったです」

燕「いや、後半殆ど出番なかっただろ」

入「序盤だけで十分怖かったです!」

お化けが苦手じゃそうだろうね
さて、予想外に肝試し編が伸びてしまったおかげで書きたかった話がいくつか保留になってしまいました

燕「予想外に伸びてしまったのは自業自得だろ
肝試しの他にはプールやキャンプの話を書く予定だったんだよな」

その予定だったんですけどね
ちょっと見送りにします、そのあたりの話が見たいって方がいれば
番外編扱いで完結後に書きます

燕「…まず完結はいつになるんだよ」

どうにか今年中にはと考えてます
今の仕事、身の安全を考えてやめることになりましたし
あ、詳しくは載せませんよ

入「いえ、別にその辺の事情はどうでもいいですけど
むしろ月斑先輩が怯んでしまった事の方が気になるのですが」

燕「その話もしたいがちょっと長くなってきたから、その辺の話も含めて次回だな」

そうですね、そろそろ締めますか
それでは皆様!

『また次回もお楽しみに~』


*次回はテスト回の予定です


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第38話 燃える孤児院

はい、今回から原作第五話に入ります
が、今回は燕の過去の話が大半になってますので
本格的な五話突入は次回からとなります

告白シーンは誰にやらせようかと悪だくみ中だったり


肝試しの騒動から早数ヶ月が経った

 

結局あの騒動の後に行われた調査で得るものはなかった

 

入江は寝て以降の記憶がないため、気が付いたら元の世界に戻っていたと伝えておいた

 

そして俺は――

 

「よっと」

 

俺はゴミ箱を持ち上げ、中身を焼却炉へと放り込む

 

俺は目が覚めた後、焼却炉が怖くなると思っていた

 

だがそんなことはなく、これまで通りの業務が可能だった

 

―――焼却炉の火を見ても問題ない、トラウマは火じゃないのか?

 

いや、トラウマは火であっているはずだと、俺は考え直す

 

ここに人が加わると発作が起こると思うからだ

 

そう思うのは、騒動後に見るようになった夢が原因だ

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

俺は大急ぎで孤児院へと向かっていた

 

息が切れ、足が重い

 

雨も降っているため余計に走るのが辛い

 

本来、深夜の真っ暗な森を進むのは危険だろう

 

だが、そんなことを気にしている余裕は俺にはなかった

 

森の奥が赤く輝いている

 

その原因は孤児院が火事を起こしたらしい

 

 

らしいというのは、バイトが終了しこれから帰ろうかと思った矢先、偶々目に入ったテレビニュースで得た情報だからだ

 

それからの俺は気が狂ったかのようにバイト先を飛び出し孤児院へと走り出した

 

「みんな、……みんな!」

 

走っている最中、俺は孤児院のみんなが無事であるよう祈り続けた

 

俺の一番大切な場所、思い出が詰まってるあの場所を

 

そこに住んでいるみんなを失いたくない

 

あそこを失えば、俺はまた一人孤独になってしまう!

 

あんな寂しい思いはもう味わいたくない

 

そう思いながら、俺は孤児院へたどり着いた

 

そこには消防団や多くのマスコミ、態々町から足を運んだであろう野次馬が殺到していた

 

「邪魔だ!どいてくれ!!」

 

俺はその中をかき分け、野次馬の最前列へと出た

 

「――っ!!……みんなは」

 

俺は燃え盛る孤児院に一瞬目を奪われたが、即座に我に返り辺りを見渡す

 

が、孤児院のみんなの姿は見当たらなかった

 

「すみません!孤児院にいたシスターや子供たちは!!?」

 

俺は近くで消火活動をしていた隊員を捕まえ、みんなの行方を聞いた

 

だが、帰ってきた返答は聞きたくないものだった

 

「すまない、我々も孤児院の人たちの姿を見ていないんだ

 どこかに避難してくれている事を願うが

 ……まだこの中にいるのだとしたら」

 

そこから先の言葉はなかった

 

俺はその瞬間、頭の中が真っ白になって何も考えられなくなった

 

避難していてほしい

無事でいてほしい

 

それだけが頭の中で何度も繰り返されていた

 

俺はフラフラと孤児院へ近づき始める

 

「君っ!なにをしているんだ、危ないから離れて!!」

 

それに気が付いた隊員が俺の体を引き留める

 

「ここは我々に任せなさい!」

 

「………………るか」

 

「え?」

 

俺は隊員を振り払い、叫んだ

 

「任せられるかぁああああ!!」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

この数ヶ月、同じ夢ばかりで気が狂いそうだ

 

理不尽な人生を送ったものが、この世界へ迷い込む

 

つまり、あの孤児院にいたみんなはもう…

 

「……考えたくねぇよな、そんなこと」

 

考えたくなくとも考えてしまうことは分かってる

 

だが目をそむけていないと、正気でいられなかった

 

そんなことを考えながら支援班としての業務をこなしていると

 

突然遊佐に声をかけられた

 

「作業中スミマセン月斑さん」

 

「うおっ!ビックリした!

 相変わらず突然現れるよな、遊佐」

 

「ゆりっぺさんからの招集です。至急本部へ向かって下さい」

 

招集ってことは新たなオペレーションが開始されるのか

 

「了解だ

 遊佐、今度からは突然現れないでくれよ?」

 

「善処します」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「そろそろ中間試験の時期よ」

 

本部に全員が集まると、ゆりがそう告げた

 

「中間試験って、俺達には関係ないんじゃないのか?

 授業に出たら消えるんだろ?」

 

「えぇ、ですが天使の猛攻は始まるでしょう

 授業を受けさせるのも大事ですが、テストでいい点を取らせるのも重要ですからね

 天使にとっては」

 

「…マジか」

 

俺の質問に高松が答えてくれた

 

しかしゆりは

 

「今回天使の猛攻は起こらないわよ」

 

「どうしてだ?ゆりっぺ」

 

「今回のテストは――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦線メンバー全員に受けてもらうからよ

あ、ガルデモメンバーも含めてね」

 

…………………………

 

『………はぁああああああ!!?』

 

長い沈黙の末、我に返った戦線メンバーが一斉に悲鳴を上げた瞬間だった




はい、原作第五話突入です

燕「ようやくだな」

入「突入といっても、先輩の過去話からのスタートですけどね」

結構燕の過去が見え隠れしてきたと思います

燕「見え隠れしてきたって、まだ何かあるのか?」

音無みたいに直井の催眠術でも思い出せない部分は出てこないのでご心配なく

燕「…まだ何か出てくるのか」

あ、それはともかく肝試し編に出した問題
解けた人っているんですかね?

入「『天使』と『戸』ですね」

割と簡単だと思うんですぐに解けた人多いと思いますが
答え載せてもいいんですけど、できれば正解者が出てからでも遅くはないかなと

燕「どうなんだろうな」

入「こればっかりは自己申告ですからね」

まぁいいです。
とりあえず今回はここまでです

入「それでは皆様!」

『また次回もお楽しみに~』


*20話の内容の一部が本来の設定と異なっていた為、修正しました


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第39話 勉強会

思った以上に私生活が忙しかったので当初の予定より遅くなってしまいました
今後も忙しくなりそうですが、頑張って投稿します!


「というわけで、戦線メンバー全員がテストを受けることになった

 これはガルデモも例外ではないので、バンド練習は禁止

 テストまでの期間はテスト勉強するぞ」

 

「どういうわけだ!そして話が唐突すぎる!」

 

ゆりから受けた説明を大雑把に説明し終えたところで、ひさ子にツッコまれてしまった

 

「どうもこうも今説明したとおりだ、俺は今言った以上の事はなにも聞いてない」

 

ただ学力を図るためにテストを受ける、端的に言えばそれだけだ

ゆりの事だからテスト当日になにか天使に仕掛けるのかもしれないが

そのあたりは実行メンバーの一人に選ばれてから考えても遅くはないだろう

 

「そんな、音楽活動が禁止だなんて……」

 

ただ一人、テストを受けることになったために

ものすごいダメージを負ったやつもいることだしな

 

「月斑!どうにかゆりを説得できないか!?試験当日までまだ一週間以上あるんだぞ!」

 

岩沢に肩を掴まれたと思った瞬間、前後に揺さ振られ始めた

あぁ、頭がくらくらする

これはやばいかもしれない…

 

「おい岩沢落ち着け!ものすごい勢いで揺さぶるから月斑の顔色がすごいことになってるぞ!」

 

ひさ子が止めてくれたおかげで助かった

もう少しで出したくないものが戻って来るところだった

 

「大丈夫ですか先輩」

 

「あぁ、ひさ子のおかげでなんとかな」

 

岩沢に解放され床にへたりこんでしまった俺を入江と関根が心配して寄ってきてくれた

先輩思いな後輩ってなかなかいないよな

 

しかし、岩沢がこんなにも取り乱すなんて珍しいな

てかホントに音楽が好きなのか

 

「岩沢、俺が何とかゆりに相談しておくから

 今日のところは我慢してくれ」

 

「本当か!?ありがとう月斑!」

 

「うわっ、ちょっ!!」

 

それほどにまでうれしかったのか、岩沢が思いっきり抱き着いてきた

あぁ、なんかかなりうれしい感触が……

 

っていかんいかん

 

「うれしいのは分かるが離れろ」

 

俺は強引に岩沢を引っぺがす

 

「ああ悪い、うれしさのあまりつい」

 

「いや、いい大丈夫だ」 

 

男としてかなりうれしい状況ではあったが

他四名の視線が痛い

 

「……えー、まぁ、そういうわけだからしばらくはテスト勉強に励む事!以上!!」

 

あまりの居心地の悪さに耐え切れなかった俺は、さっさと話を切り上げて寮へ戻ることにした

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

テスト勉強を始めて数日

 

「………あー駄目だ、全っ然分かんねぇ」

 

「俺もだ、さっぱりだ」

 

「野田なんて見てみろ、もはや真っ白になってるぞ」

 

「僕はなんとかってレベルかな」

 

「このメンツじゃ大山が一番勉強できるって状況か」

 

何故か戦線メンバーの一部が俺の部屋に集まり、こうして勉強会を開いていた

 

あ、ちなみに岩沢の音楽禁止令は条件付きで撤回され、岩沢は一日のノルマである

勉強時間2時間(ひさ子監督の下)をこなした後、音楽に没頭している

 

「だからここはコッチから解かないと式が成り立たないんだって」

 

「だから何でコッチから解かなきゃならないのか聞いてんだろ!左から順に解いちゃダメなのか!?」

 

音無と藤巻のなぜ掛け算割り算からやらなくてはならないのかと言う口論を流しつつ、俺は一言つぶやいた

 

「なぜ俺の部屋で勉強会をしているんだ」

 

「発案者は俺だ!」

 

「日向、お前迷惑って言葉知ってるか?」

 

「勉強も一人でやるより皆でやった方がはかどるだろ?」

 

「そんなことを聞いてるわけじゃない、あと俺は一人の方がはかどるタイプだ」

 

「この部屋が一番遠いんだよ、皆を誘って最後にここに来たからな」

 

……だからって

 

「だからってなぁ、流石に男子寮の一人部屋にこの人数はどう考えても狭いだろ!」

 

教師役である音無は立ってるから問題ないとして、他のメンバーはどこから持ってきたのかみかん箱を半分づつ使って勉強している

 

てかベットの上やベランダまで使ってるし

 

「あぁくそ、もう我慢の限界だ、今から図書館行くぞ!狭くて集中出来ねぇ!」

 

俺は勉強道具をまとめ、全員を部屋から追い出し図書館へと連れて行った

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

図書館へ連れて来たはいいものの、さっきと現状はあまり変わっておらず

 

「なんでこんな簡単な漢字の読みを書き間違えるんだよ!」

 

「『人』と『入』って同じ字じゃないのか!?」

 

とんでもない小学生発言は置いといて、俺の部屋で起こっていた出来事と瓜二つなこの状況

 

一般生徒は授業中の為、ここまで騒いでも誰にも迷惑は掛からないが

正直頭が痛い……

 

「あ、ここなんだけど月斑君分かる?」

 

「ここの対語はこれだな」

 

「あぁなるほど、ありがとう」

 

なぜ俺まで指導役になってしまったのか

 

「月斑先輩!こっちも教えて下さーい!」

 

しかもガルデモの勉強まで見る羽目になるなんて

俺も勉強しないとヤバいんだが…

 

「ユイ、俺も勉強しないといけないからあまり頼らないでくれよ」

 

「でもなんだかんだ言って、ちゃんと見てくれてますよね」

 

「そりゃさっきアレだけ泣き憑かれたら誰だって折れるわ」

 

「文字間違ってませんか?」

 

「いや、これであってる」

 

勉強会の為に図書館へ来たはいいものの、ガルデモと鉢合わせし

そのまま合同で勉強会という流れまでは良かった

 

問題はその後だ

 

音無が教えて回っている為、どうしても待ち状態になる奴が出てくる

そこで音無ほどではないにしろ、メンバーの中で学力が高かった俺の方にユイが勉強を教えてくれとせがんで聞いた

 

もちろん断ったが、しつこく勉強を教えてくれとせがんでくるユイに軽くキレてしまった

その瞬間周りの目がひどく冷たいものになってしまい、しぶしぶ勉強を教える羽目になってしまった

そしてこれ幸いと他のメンバーまで俺に聞くようになってしまった

 

この時点で俺の勉強時間が無くなり、完全に教える側になってしまったというわけだ

 

おかげで自分の勉強ができない

こんな調子で大丈夫なんだろうか……

 

 




俺もこんな風にみんなで集まって勉強会とかしてみたかった時期がありました!

燕「唐突だな」

俺は燕君と違って一人じゃ長時間集中できないタイプなんだよ

入「勉強苦手だったんですか?」

いや、勉強そのものは苦手ではなかったけど、一人で勉強してると
どうしても他のものに目移りとかしちゃって

燕「自分から勉強会誘うなりすればよかったんじゃないか?」

俺の友達に勉強会するほど勉強好きな奴はいません

入「勉強が好きな人がまず少ないと思うんですが」

俺は結構勉強好きだけど?好きな分野だけ…

燕「英語とか悲惨だもんな」

言わないでくれ!
てか、今回はここまで
これ以上話してたら長くなるし、俺のトラウマとか出てきそう

入「勉強のトラウマって何ですか…
  えっと、それでは皆様!」

『また次回もお楽しみに~』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第40話 テストと飛行

―――テスト当日

 

俺はゆりに呼ばれて本部に来ていた

 

「今日のテストだけど、ここにいるメンバーにテストと並行してあるオペレーションを行ってもらうわ」

 

現在本部にいるのは、ゆり・俺・音無・日向・大山・竹山・岩沢の7人だ

 

「オペレーションって何やらせる気なんだ?」

 

「まぁ詳しいことは教室で話すから、全員移動」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

俺たちはゆりに連れられテストを受ける教室まで来た

 

「見ての通り、テストを受ける席はくじ引きで決められることになってる

 これで天使の近くの席を取らないと細工は一気に困難になるわ」

 

ゆりは天使の席を指さし

 

「あの席の前を引き当てなさい」

 

「んな無茶言うなよ」

 

音無があきれたように言うが、どのみち引かないといけないのでくじ引きの列に並ぶ

 

結果がどうなったのかというと、竹山が天使の前の席を獲得した

 

他のメンバーは結構バラバラの位置になった

 

因みに俺はゆりの列の一番後ろと、一番遠い位置を引いてしまった

 

これを引いた瞬間「なんてところ引き当ててんだゴラァ!」っと

飛び蹴りを食らうほどの怒りを買ってしまった

 

好きで引いたわけでもないのに……

 

「で、何をすればいいんですか?」

 

「答案用紙が配られる際、二枚持っておきなさい

 その一方を回収するときに天使の物とすり替える」

 

つまり天使の点数を全て0点にしてやろうという作戦か

 

……あまり乗り気になれない作戦だな

 

回答なしでは怪しまれるからという理由で、おかしな回答を書かせようとしてるし

 

「なぁ、なにもそこまでしなくてもいいんじゃないか?」

 

「何言ってるの、相手は天使よ?遠慮なんていらないわ!」

 

ゆりにそう言われ、何を言っても無駄かと思いしぶしぶ引き下がると

 

「あ、でも名前の欄はなんて書けばいいんでしょう?」

 

思い出したかのように竹山が質問すると、その場が凍り付いた

 

誰も天使の本名を知らなかったのか

 

「天使」

 

「アホか!」

 

高松の言葉に間髪入れず日向がツッコミを入れた

 

「生徒会長で通るんじゃないか?」

 

「天使と同様それもどうかと思うぞ、流石に名前くらいは書けるだろ」

 

「でも回答欄にイルカの飼育員って書くんだよな」

 

岩沢よ、どんなアホでも流石に名前くらいは書くと思うぞ…

 

「いやいや、流石に自分の名前が書けないとかアホすぎるだろ!

 つか、お前らが名前知らないのが驚きだよ!」

 

「知る機会なんてなかったのよ」

 

知る機会なんていくらでもあると思うんだが、少なくとも俺と音無以上に時間はあったはずだ

もう何年も此処の生徒らしいからな

 

「よく無かったな!」

 

音無も俺と同意見らしい

 

「じゃああんた調べてきてよ、職員室行って名簿見てきて」

 

「チッ、たく」

 

おいおい、今から職員室まで行ってたら流石にテストに間に合わないんじゃないか?

 

と思っていたら音無が天使に呼び止められ、数回言葉を交わした後

すぐに戻ってきた

 

「立華奏」

 

「あぁ、そんな名前だったわね」

 

「「知ってたのかよ!」」

 

「忘れてただけよ、って月斑君も同じ疑問持ってたのね」

 

「当たり前だ」

 

俺がゆりにそういうと同時に教師が入ってきた

一限目のテストでの陽動は日向が担当だったな、何をしてくれるのやら

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

思いのほかペンが進むな…

もちろん答えられない部分もあるが、これが俺の実力か

現世での記憶って孤児院に行ってるものばかりで、他の記憶が薄いんだよな

 

別に思い出せていないわけではない、ちゃんと学校にも行ってたしバイトもしてた

だけどどの記憶も楽しそうにはしていない

 

ふと周りに目をやってみると、意外そうな顔をしながらペンを走らせている音無や

頭を抱えている日向、大山はまじめに解いている様子だ

岩沢と竹山は既に解き終えたのか、のんびりしている

ゆりは俺の列の一番前にいるから何をしているのか、ここからは見えない

 

天使もまじめに解いているな

 

……あんなにまじめに答えても、これから俺たちが邪魔するせいで0点になるのか

いや、もっとひどい事にも

 

俺はちょっと複雑な気持ちになった

 

初めて天使と出会った時に感じたのは、ただの幼げな少女の印象だった

廊下で突然話しかけられたときは流石に驚いたけどな

 

ただ、あの時かけられた言葉には、どこか心配してくれているようにも感じ取れた

 

……いやいや、もう考えるな

俺はまだ、自分の記憶を取り戻していない

何が原因でここに来たのか、何が未練なのかを知らない

 

そんな状況で消えれるか!

 

 

 

 

…いや、記憶を完全に取り戻せた時、俺はどうするんだろうか

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「はい、じゃあ後ろから集めて」

 

終了のチャイムと共に教師が声を上げた

周りではその指示に従い、次々と答案用紙が前に運ばれていく

 

その中で日向は両肩を少し震わせ、何か吹っ切れたかのように立ち上がると

 

「な、なんじゃありゃあっ!?

 超巨大な竹の子がにょきにょきとぉっ!!」

 

その言葉で俺達戦線メンバーは言葉を失ったが、一般生徒と教師は何事もなかったかのように気にしている様子はなかった

 

「っくそ!」

 

悔しがりながら日向が席に着くと突然、日向の座っていた椅子から煙が上がり

日向を乗せたまま勢いよく上昇し、そのまま日向は天上へ激突した

 

断末魔を上げ落下してくる日向を、流石の一般生徒や教師、天使までもが注目せざるおえなかった

 

視界の隅で竹山が急いで天使の答案を机に隠しているのが見えた

 

 

 

その衝撃的な出来事の後、俺たちは再びゆりの下へ集まっていた

 

「あなたがミスした時のために、椅子の下に推進エンジンを積んでおいたのよ

 どうだった?ちょっとした宇宙飛行士気分は」

 

「一瞬で天井に衝突して落下したよ!

 つか、推進エンジンなんてよく作れたなぁ!」

 

「フォローしたんだから感謝なさいよ」

 

アレをフォローと言っていいのか…

正直失敗者への罰ゲームなのではないか?

 

「月斑君、何か言いたげね?」

 

「いや、何もない…」

 

いい笑顔で人の心を見透かすな

 

「作戦成功ね竹山君」

 

「ぬかりありません。あと、クライス…」

 

「じゃあ次は月斑君ね」

 

最後まで言わせてやれよ、ってか!?

 

「もしやと思っていたが、やっぱ順番制か!」

 

「あら、察しが良いわね

 そ、みんなの気を引く役、よろしくね」

 

マジかぁ……

 

「頑張って飛べ、そして天井に激突しろ」

 

打ちひしがれている俺にとどめを刺すなよ日向

 

「で、次はなんて答えましょう」

 

「あ~あ、良いよなお前は小細工するだけで、飛ばないし」

 

「何言ってるんですか

 こっちも相当のリスクを負っているんですよ」

 

「よし竹山、変わってくれ」

 

「嫌ですよっ!あとクライストです!」

 

俺の言葉に全力で拒否してきたな

 

「やっぱりそっちの方がいいじゃねーか!くじ運が良くて良かったなぁ!?」

 

「これは僕にしか出来ない神経がいる作業なんだ!そっちは飛ぶだけで頭使わないで良いじゃないですか!」

 

「んだとぉ!?こっとはバカってか、ああっ!?」

 

竹山と日向が口喧嘩を始めてしまった

これは早いとこどうにかしないと―――

 

「こっらぁあああ!!喧嘩するなぁぁああああ!!」

 

ゆりの怒号が教室に響き渡り、一瞬で教室内が静かになってしまった

その怒号を注意しようと思ったのか天使が立ち上がってこちらを見ている

 

「やばっ!」

 

ゆりはとっさに自分の口をふさぐが、天使がこちらをじっと見ている

これは怒られるな、そう思っていたが

音無が勢いよく天使のところまで行って必死に弁解をし始め、なんとか事なきを得た

 

「で、次の回答は何と答えれば」

 

「教科なんだっけ?」

 

「世界史です」

 

「じゃ、地球は宇宙人に支配されていることにして、全問答えておいて」

 

やるしかないかと、俺たちは顔を見合わせ

自分達の席へ戻って行った

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「はい、じゃあ後ろから集めて」

 

さっきと全く同じセリフを別の教師がし、答案用紙が前に運ばれていく同じ光景が目に入った

 

よし、俺も覚悟を決めるか!

 

「――テストも終わったところで、俺の歌を聞けぇええええええっ!!」

 

どこからともなく取り出したギターをかき鳴らし始めると同時に

俺の尻に強烈な衝撃が走り、気が付くと教室全体が回転し始め

最終的に俺は天上へと激突した

 

 

 

「なんで急に歌い始めるのよ」

 

「これしか思いつかなかったんだ……」

 

「私は月斑の歌聞きたかったんだが」

 

「いや、今そういう状況じゃねぇだろ」

 

流石岩沢だ、こんな状況でも音楽キチの本領を発揮するとは

 

その後もオペレーションは続き

大山が天使に告白して振られ、日向が天井にめり込み

岩沢が俺の真似をして一般生徒の注目を集めたが、天使だけは興味がないように前を向いたままだったので、俺が大空へと飛び立つ羽目になった

 




テスト回終了~

入「月斑先輩は大丈夫だったんでしょうか」

推進燃料が切れて教室内からグラウンドへ落下する様子が見れたそうです

入「あ、あの墜落したのが月斑先輩だったんですね」

燕「見てたのかよ…」

テスト回という一つの区切りも終えましたし次回以降は
戦線の行動に若干疑問を覚え始めた燕君が今後どんな行動をとるのか
そんな感じが描かれていきます

燕「確かに今回の作戦はちょっとやりすぎな感じがしたからな」

入「一体何をしてきたんですか」

まぁその辺で感じた感情も次回以降の重要部分になりますからすぐに分かりますよ

入「そのためにも更新ペース上げてくださいね
  それではそろそろこの辺で!」

『また次回もおたのしみに~』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第41話 戦線への疑問

 

テストから一週間が経過した

 

俺と音無はいつものように戦線本部へと向かっていると、職員室から出てくる天使を見かけた

 

「立華、どうした?何かあったのか?」

 

「何も」

 

音無の問いにたった一言だけ返事をし、天使はそのまま学習棟の方へと戻って行った

 

「俺達がテストのときにした事で教師に呼ばれたんじゃないか?」

 

「え?」

 

「少し考えればわかるだろ、不真面目な回答をした生徒を呼び出さない教師がどこに居る?誰かの仕業だと考えるだろうが、まずは回答者を呼び出すだろ」

 

「……弁解したのかな、立華は」

 

「さぁな、本人に聞かない事には分らないな」

 

俺と音無の会話はそこで途切れ、戦線本部まで無言のままだった

 

考えてみれば、この時から俺の中でちょっとした疑問が浮かび上がっていた

 

そしてその翌日

 

「天使の全教科0点の噂が、流れ始めたわ」

 

「マジかよ…」

 

昨日のアレはやっぱ教師に呼び出されてたのか

 

「しかも、教師をバカにしたような答えばかりだったと」

 

「そんなことまで!?」

 

それは俺も意外だった。0点はともかく、回答内容の噂まで広がってるのか

 

「でも教師は、そんなの天使自身じゃなく。誰かの仕業だって、分かるだろ」

 

「何度言わせるの?そんなの教師には分らない。生徒会長が不真面目な回答をしてきた。なら、天使自身を呼び出して るに決まってるでしょ」

 

「(月斑の仮説が当たってる)」

 

「全教科、不真面目な回答だからな。教師からしてみりゃ、一人きりの反乱ってとこだろうな」

 

昨日から考えないようにしてきたが、日向のその言葉で、俺の中で渦巻いていた物が、一層大きくなった気がした

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「おい月斑!聞いてるのか!?」

 

「え?」

 

突然声を掛けられ、俺は我に返った

 

「え?じゃないよ全く。アタシの歌、聴いてなかっただろ」

 

そう言われ、俺は今の状況を把握するべく、思考を回転させる

 

確かガルデモの雑用をしてる時に、新曲を聴いて欲しいと岩沢に呼び出されて

 

………あれ?確か空き教室に入るところまでは覚えてるんだが、その先が思い出せねぇ

 

「すまん岩沢、考え事に夢中になってた!今度はちゃんと聴くから、もう一度歌ってくれないか?」

 

「しょうがない奴だな、もう一度引いてやるからちゃんと聴けよ」

 

そう言うと岩沢は、再びギターを弾き始めようとする

 

しかし、それを邪魔する者が現れた

 

「あー!先輩こんなところに、ひさ子先輩いましたよー!」

 

「こんな所にいたのか月斑!」

「今日はユイの練習成果を確認するって自分で言ってましたよね!」

「さっさと行きますよ!」

 

ひさ子・入江・関根に引っ張られ、練習に使っている空き教室へと連行されてしまった

 

「……あの、アタシの曲は?」

 

ただ一人、岩沢だけが取り残されてしまっていた

 

そしてそれを誰も気にしないまま演奏が始まり

 

♪~~

 

岩沢ではなく、ユイがボーカル&ギターを担当するニューガルデモの演奏が終わる

 

「どうでしたか先輩!?」

 

「う~ん、まだいまいちだな。リズムがズレてる部分がまだあるぞ

 初めて合わせたから緊張もあるんだろうけな」

 

「うへぇ、まだまだって事ですか」

 

ユイは露骨に落ち込む

 

「まぁ、今の調子で練習すれば問題ないだろ

 そろそろトルネードもするはずだしな」

 

「テストまでもう少しって事ですか!?」

 

「そうなるな」

 

そういうとユイは再び練習に戻った

 

やる気があるのはいいことだ

 

そんなユイの練習風景を見ていても、俺の頭からテストの時のオペレーションが気になっていた

 

そして数日後

 

全校生徒が体育館へと集められ、全校集会で天使の生徒会長辞任が告げられた

 

「辞任じゃなく、解任ね」

 

「ゆりっぺ…」

 

「はたして一般生徒に成り下がり、大義名分を失った彼女に私達が止められるかしら

 今夜、オペレーショントルネード決行よ」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「ユイ、準備はいいか?」

 

「は、はい!」

 

緊張しまくってるじゃないか…

 

俺はユイの背中を軽く叩いてやった

 

「落ち着け、ひさ子達がしっかりフォローしてくれるから大丈夫だ」

 

ひさ子達の方を見ると、任せろと言った感じにユイに笑顔を向けていた

 

「先輩方、今日はよろしくお願いしまっす!!」

 

ユイは腰を直角に曲げ、深々とお辞儀してきた

 

「……まぁ頑張れ」

 

それだけ言って、俺はユリに指示されたポイントに移動する

 

そこにはTKと椎名がいた

 

「さて、ホントに天使は来るのか?」

 

そんなことをつぶやきながら、本心では別の事を思っていた

 

来ないでほしい

 

そう思っていたのだ

 

そう思った理由としては、テストの時の罪悪感と壇上にいた天使の表情がなんとなく悲しげに見えたからだ

 

そしてThousand Enemiesが始まて数分後、天使は現れた

 

「来ちまったか……」

 

仕方なく戦闘態勢にはいるが、屋上にいた音無からの合図で、攻撃は中止となった

 

「……何を考えてるんだ?音無」

 

俺達は天使が過ぎていくのを黙って見送り、演奏も終盤に差し掛かった辺りで食券が舞った

 

中で何があったのかは分からないが、オペレーションは成功したらしい

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「どうでしたか先輩!」

 

俺が焼肉定食を食べていると、目の前のユイが話しかけて来た

 

「いい演奏だったと思うぞ。話を聞く限り、ライブも盛況だったみたいじゃないか」

 

「まぁ初めてにしては中々だったな」

 

俺とひさ子の感想を聞き、ユイは体で喜びを表していた

 

「じゃあユイは正式採用何ですか?」

 

隣にいた入江がそう尋ねて来た

 

「このテストを発案したのは岩沢だからな、岩沢の合格が出ないとな」

 

「え?アタシが決めるのか?」

 

「は?当たり前だろ、ガルデモのリーダーが決めないでどうするんだよ」

 

岩沢はきょとんとした表情のまま

 

「いや、普段の練習もしっかり見てて、ガルデモのマネージャーである月斑が決めるんじゃないのか?」

 

とんでもない発言をしてくれた

 

コイツ今なんて言った?マネージャー?

 

どうして雑用係からマネージャーにランクアップしてるんだろうか

 

「俺はただの雑用係だぞ」

 

『えっ!?』

 

「えっじゃねぇよ!てか今、全員えって言っただろ」

 

「だって、なぁ」

 

「ですよねぇ」

 

「うん」

 

「あたしもマネージャーだと思ってました!」

 

ひさ子・関根・入江・ユイの順で肯定されてしまった

 

「お前らなぁ、俺は支援班という名の雑用係なの忘れてんのか」

 

『………あっ』

 

「あっじゃない!全く…」

 

「はぁ!?」

 

一息つこうとしたら、突然藤巻の怒声が聞こえて来た

 

「馬鹿言ってんじゃねぇぜ!これまでどれだけの仲間が奴の餌食に、…あ、いや、餌食っつうか、皆ピンピンしてっけど、どれだけ痛めつけられてきたか!」

 

「そうだそうだ!今日は大人しかったかもしれないが、何時また牙をむくか!」

 

「寝首かかれかねねぇぜ!」

 

藤巻に続き、その周辺にいた戦線メンバーも音無に向かって叫んでいた

なんて言ったのかは分からなかったが、天使がらみなのは分かった

おそらく仲間になれるかも、とか言い出したんだろうな

 

今日の攻撃を止めたのは音無だ、それくらいの事は言っててもおかしくない

 

「なんの騒ぎだろう…」

 

「気にするな、飯が冷めちまうぞ」

 

そう言って俺が食に戻ろうとした瞬間

 

大勢の一般生徒が食堂へと入ってきて、俺達戦線メンバーを囲った

 

「なんだ貴様らは!」

 

メンバーの誰かが叫んだが返答は無かった

 

「なんなんでしょうか…」

 

「分かるかよ。ただ、大人しくするしかなさそうなのは確かだ」

 

すると一般生徒の中から帽子をかぶった少年が前に出て来た

 

「そこまでだ。色々と容疑はあるが、とりあえず時間外活動の校則違反により、全員反省室に連行する」

 

アイツは確か、天使の代わりに生徒会長になった

 

「僕が生徒会長となったからには、貴様らに甘い選択はない」

 

直井文人って言ったか、どうもこいつは普通じゃない気がする

 

「…連れて行け」

 

一般生徒には手を出せない為、俺達はただ従うしかなかった





諸事情により今回からあとがきコーナーは廃止させていただきます。
身勝手な理由でまことに申し訳ありません!

今度とも本小説をお楽しみください!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第42話 孤児院での穏やかな日

 

生徒会に連行され、反省室に入れられた俺達は

一部メンバーを除いて、固く冷たい床で眠らされる事になった

 

そして俺はこの時も、生きていた時の出来事を夢に見ていた

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「シスター、燕兄ちゃんが来たよー!!」

 

俺がいつものように孤児院へ行くと、外で遊んでいた子供たちが俺が来たことを伝えにシスターの元へと向かう

 

この光景も見慣れたものだ

 

「いらっしゃい燕さん」

 

そしていつものように、俺を温かく出迎えてくれる

 

「兄さん兄さん!今日は私の勉強を見てくれるんでしょ?」

「駄目だよ、今日は俺達と遊ぶんだ!」

 

相変わらずだなぁと思っていると

 

「駄目ですよ。今日は孤児院の掃除を手伝いに来てくれたんですから」

 

シスターが子供たちにそう言った

子供たちのブーイングが酷かったが、俺もその為に来たから終わったら遊ぼうと言って分からせた

 

「相変わらず騒がしい子達でごめんなさいね」

 

「気にしなくていいですよ。子供はあれぐらい騒がしい方がいい…」

 

俺は昔の自分を思い出しながらそう言った

 

「……そうね。あなたもあれぐらいはしゃいで欲しかったわ」

 

「あ、その言い方は卑怯ですよ!」

 

俺とシスターは笑いながら、孤児院の掃除を始めた

 

外の草むしりや部屋の掃除まで、散々こき使われたが

いつの間にか、子供たちも一緒になって掃除をしていた

 

「だって早く終われば遊んでくれるんだろ?」

「私も早く勉強教えて貰いたいもん!」

「僕だって本読んでもらいたいんだよ!」

 

「人気者ね」

 

何でこんなに好かれてしまったのか分からないが、まぁ悪い気はしないな

 

それからしばらくして、孤児院の掃除が終わった

 

だが残念な事に日が暮れてしまっていた

 

「…もう帰っちゃうの?」

 

「悪いなみんな」

 

いつも俺が帰る時間を少し過ぎで掃除が終わったので、子供たちに構ってやることが出来なかった

 

名残惜しいが、帰らなければならない

 

……そう思っていたのだが

 

「………靴が無い」

 

俺は子供たちの方を見ると、全員が顔をそむけた

…あの真面目な真奈まで

 

「……お前らなぁ」

 

「仕方ないわね。燕さん、今日は泊まっていきませんか?みんなも靴を隠すほど一緒に居たいみたいですし」

 

「はぁ、仕方ないですね。じゃあ一晩だけお世話になります」

 

『やったぁあああああ!!!』

 

俺の泊りが決まると、子供たちは大喜びだった

 

それからというもの、俺は勉強を教えたり本を読んでやったり

テレビゲームなどをして遊び倒した

 

「ん?もう十時過ぎてるじゃないか、そろそろ寝るぞ」

 

「えー、もっと兄ちゃんと遊びたい!」

 

駄々をこねだす子供たち

 

「明日も休みだから、一日中相手をしてやるから大人しく寝ような」

 

そう言うと、パァっと表情を明るくし、嬉々として布団へと入っていった

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「ようやく寝たか…」

 

さっきまで俺と寝るんだ!と騒いでいた子供たちも、流石に眠気には勝てなかったらしく、静かに寝静まっている

 

さて、これをどうするか

 

俺の腕をしっかり抱きしめて放してくれない真奈がそのままの体勢で寝ていた

 

「……んぅ」

 

やはり座ったままでは寝苦しいのか、布団に倒れ込もうとする

が、それでも俺の腕を放したくないらしい真奈は、必死に倒れるのをこらえていた

 

「もうそのまま一緒に寝たらどう?」

 

後ろからシスターが、突然とんでもない事を言ってきた

 

「……………冗談ですよね」

 

「さぁ?どうかしら」

 

確実に俺の状況を楽しんでいる…

 

まぁいいやと思い、俺は話を変える為に、今まで疑問に思っていたことを聞いてみた

 

「シスターはいつから、シスターって呼ばれるようになったんですか?」

 

「んー?いつからだったかしらね、確かハロウィンパーティをした時に、私が修道女っぽくなった事が原因かしら?」

 

そう言えばそんな事もあったなと俺は思い出していた

 

この孤児院は教会でも何でもない、ただの孤児院だ

 

「シスターも大変だな、そんな格好してないのに変なあだ名付けられて」

 

「あら、私は結構気に入ってるのよ?」

 

いつの間にか俺とシスターは敬語ではなくため口で会話しだしていた

 

 

 

 

 

そう、昔のように―――

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

気が付くと俺は、固い床の上で寝ていた

 

確かシスターと話をしていた筈なのにと、眠たい目を開けながら周りを確認する

 

「……そうか、反省室に入れられたんだったな」

 

戦線メンバーはまだ寝ている様だったが、目が覚めてしまった以上、これ以上固い床で眠る気はないと思い、起きようとしたのだが

 

「……? 腕が重い?なんで……だ……」

 

「………すぅ………すぅ」

 

…………………………なんで入江が俺の腕を枕にして寝てるのかな?

 

その後何をしても起きてくれない入江をどうするか悩んでいるうちに、ガルデモメンバーが順に起き出し、からかわれる事になった

 

戦線メンバーが起きる前にどうにかなった事が唯一の救いか…



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第43話 つかの間の休息


今年中に完結させると言っておいてこの体たらく……マジでスミマセン!

あ、ヘブンズドア最終巻面白かったです(小並感
入江メインで俺得でした(笑)


 

入江に抱きつかれて寝ていた事をからかわれた数十分後

生徒会の人間の手により、ようやく反省室から解放された

 

「ようやく出られたか…」

 

戦線メンバーの後ろから俺とガルデモメンバーも続いて出る

 

「女子達はベッドを使わせてもらったけど、男どもは床で寝てたから体が痛そうだな」

 

「ああ、すげぇ痛いぞ」

 

床で寝るのは初めてではないが、好んで寝たいとは思わない

 

「にしても変ね」

 

「何がだ?」

 

「私達にこんな形で反省を強いる一般生徒なんていなかった」

 

「天使が抑止力になってたんじゃないか?」

 

俺も日向の意見が正しいと思う、戦線と関わらなかった頃に俺は一般生徒から

戦線に関して良い噂を聞いたことが無かったからだ

 

「NPCの行いは、基本的には私達のなすべき模範だけど、その感情は現実の人間と同じもの。どんな偏屈な奴がいてもおかしくないって事か」

 

「つまりは、行き過ぎた奴もいるって事か」

 

「そういう事だと思うぞ、俺も一般生徒と戦線の事で話をしたこともあるが、良い噂も悪い噂もあったからな」

 

「そしてその代表が、生徒会長代理」

 

「返り討ちが出来ない分、天使より厄介だぜ」

 

戦線は一般生徒に迷惑をかけないっていうルールが存在するからな

そのルールが無ければ、生徒会長代理を消す事もできるんだが

 

「色仕掛けいきますか!」

 

ユイが変なことを言い出した

 

「お前のどこに色気があるんだよ」

 

日向いった言葉により、ユイが日向に文句を言い始めた

 

「色仕掛けよりも音楽の方が効果的だと思うけどな」

 

岩沢まで変な事言いだしたし

 

「おい岩沢、あの堅物の生徒会長代理が音楽に魅了されると思うか?」

 

「音楽に魅了されない奴なんて、この世界にはいない!」

 

……言い切りやがったよコイツ!

 

「さすが岩沢先輩、ビックリするほどの音楽キチですね」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「で、これからの活動はどうします?」

 

「ようやく来たか」

 

本部に戻ってきてからようやく本題が上がって来た

 

現状、生徒会長代理――直井文人には手を出せないでいるからな…

今後の行動によっては、昨日みたいに反省室にぶち込まれる

 

それを回避するには、直井の行動パターンとかを見るのが手っ取り早そうだが

 

「試しにちょっと動いてみましょう。とりあえず、それぞれ好き勝手に授業を受けてみて

あ、一般生徒の邪魔はあんまりしないように」

 

動いてみると来たか、これは直井の動きはゆりに任せた方がよさそうだな

 

「以上、解散」

 

その言葉を聞いたメンバーは授業を受ける為、本部から出て行き始め

俺もそれに続いて、教室へ向かった

 

んで、大人しく授業に参加したのは良いが……

 

幹部のほとんどが同じ教室にいるってのはどうなんだ?

 

大山はポテチ食ってるし

 

「先生!トイレ」

 

「またお前か、行ってこい…」

 

……なぜユイがここにいるんだ?

 

「あいつは何をしてるんだ?」

 

「一分おきにトイレに行く生徒だとさ」

 

バカか…いや、アホなのか

 

「俺達はどうする?」

 

「こうして駄弁ってりゃいいさ。それにしても異様だな」

 

そう言うと日向は教室を見渡す

 

高松と椎名は個人的なトレーニング

麻雀までしているところもある……

 

野田に至っては机を二つ占領して昼寝している

 

迷惑かけるなって言われただろ……

 

そう思っていると、ユイがトイレから戻ってきて席に座る

 

「先生トイレ!」

 

「はい、行ってこい」

 

一分おきの速度じゃないんだが、先生も呆れ気味だし

 

「アホだ…」

 

「俺もそう思う」

 

日向に同意しつつ、教室から出ていくユイを眺めていると

ユイが開けた扉の先に直井文人がいた

 

「ひいっ!?」

 

「そこまでだ、貴様ら」

 

直井が一歩教室へ入り、そう言った

 

その言葉を聞いてからの戦線メンバーの行動は早かった

 

ユイは一目散にトイレへ走り出し、後ろで麻雀してたグループも即行で窓から逃げ出した

大山も机の中にポテチを隠していた

 

高松と椎名に至っては、いつの間にか消えてるし

 

唯一、野田だけが堂々と昼寝をしたままだった

 

「貴様、なんのつもりだ?」

 

直井が野田に話しかけるが、野田は寝ていて気付いていないのか

直井の言葉を無視していた

 

「…聞こえてない様だ。良いだろう、このまま反省室へ運べ」

 

その言葉を聞き、直井の後ろにいた二人が野田を運び出そうとする

 

が、しかし

野田がその腕を払いのけ、勢いよく飛び起きた

 

「何を反省しろというのだ!」

 

「ひゃあっ!」

 

「あ?」

 

ハルバートを構えた先がNPCの女子生徒だったのはカッコ悪かったが

 

「授業中に堂々と眠り、あまつさえ罪なき一般生徒を恫喝しておいて、よくそんな疑問が抱けますね。ある意味天晴れです」

 

悔しいが同感だ…

まぁ、そろそろヤバそうだし、野田を連れ出しに行くか

音無と日向もその気らしいからな

 

「んだと!?」

 

野田が叫ぶのと同時に、音無が上半身、日向が足を抱え、残った俺はハルバートを回収して教室から走り去った

 

「って!暴れんじゃねぇよ!」

 

「なぜ逃げるのだ!放せ!」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

はぁ、疲れた…

 

俺は授業をサボり、空き教室でのんびりしていた

 

ギター弾いたら直井にバレちまうから、する事ないってのは暇だな

 

偶にはこういう暇な時間もいいかもなと思っていると

 

誰かが入って来た

 

「あれ、月斑先輩?」

 

「入江か、授業はどうしたんだ?」

 

「ちょっと休憩に…」

 

照れくさそうに言いながら、入江は俺の隣に腰かけてきた

 

「ゆりの命令を無視するなんて、案外いい度胸してるんだな」

 

「あ、その言い方は酷いですよ!」

 

その後俺達は、この後起きる悲劇の少し前まで談笑していた

 





ヘブンズドアの書店特典目当てで二冊買ったのは俺だけではない筈


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。