禪院家の夢主はさしすに嫌われている (駄々我菓子)
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1話 東京都立呪術高等専門学校に入学します。禪院チナツですッ!!

主人公:禪院チナツ(呪術高専東京校1年生)

 術式:三種影法術

 能力:三種の武器を影から取り出すことができる。影を操ることができる.
 ①弓矢
 ②???(未所持)
 ③八握剣異戒神将魔虚羅(未所持)←一応、十種影法術の派生のため、ここだけ共通している。

 等級:4級


 やぁやぁ皆の衆。私の名は禪院チナツと言う。その名の通り、御三家の一つである禪院家の人間だ。ちなみに、禪院家での扱いは下の下の下だよ~~♪!!

 私の術式がね、禪院家相伝の術式・・・・・・ではなく、()()()の三種影法術って奴だったの。それでなんか家の連中が凄くガッカリしててムカついたけど、ざまぁみろwwって感じで面白かったwww!!

 てなわけで、家にいるとストレスたまるんで”ガッコウ”に行きますッ!!

 

 

 その名は、東京都立呪術専門学校!!

 

 

 なんか、今年入学してくる同級生に、我が禪院家と犬猿の仲である五条家の金の卵である五条悟が入学してくるらしい。なんとか、六眼と無下限呪術の抱き合わせだとか・・・。それで、なんか家の連中に暗殺しろだの、任務邪魔して評判落とせだの・・色々面倒くさい事言われたんだけど全部無視しま~す!!なんでかは分かるよね??面倒くさいからですッ!!

 

 で、今その面接に向かっているんだけど、家を出る時に一個下のクソガキ、禪院直哉って奴に”「あんまり恥かいたらアカンで?ま、せいぜい笑いものになるんやな!!」”と馬鹿にされたので最高に不機嫌です・・・。

 

 なんとか、学校着く前に気持ち整えないとヤバそうだな・・。あの面接で落とされたら色々ヘコむぞー・・・。だって、学校行きたい理由が家出たいからなんだもん。あと、学校行ったことないから行って見たいしね。人生で一度は青春してみたいよねぇ~(棒)・・・。合格基準に呪術師としての才能とかあるのかな?

 

 あ・・・言い忘れてたけど、私は4級の雑魚ですよッ。どうか担任の先生様優しい人でありますように!!

 

 チナツはそう願いながら、東京の高専へと向かっていった。


 

 東京都立呪術高等専門学校に入る。面接室とやらに着いたはいいのだが、ここで問題が発生した。

 

 あれ・・・?担任の夜蛾先生って人なんかイカつくねwww?あらヤバい、すごくおっかないわぁ!!

 

「初めまして。夜蛾正道(やがまさみち)だ。では、今から面接を行う。軽く自己紹介しろ。」

 

 うす。了解です。考えてきた通りにやれば大丈夫・・大丈夫・・。

 

 チナツは一礼してから自己紹介を始めた。

 

「禪院チナツ。小中学校には通っていません。任務の経験はありません。呪力操作は履修済みです。術式は三種影法術です。」

 

「分かった。では、()()()()()()()()()()()()()

 

 夜蛾の力強い質問に、チナツは少し肩を震わせた。

 

 うわ・・・どうしよう・・。綺麗事を言った方が良いんだろうけど、恥ずかしいなぁ・・。ええい!!自分の心のままに答えよう!!

 

「家を出たかったからですッ!!!」

 

 チナツは力強くそう答えたが、夜蛾は眉間に皺を寄せた。

 

「不合格だ!!!ガッデム!!!」

 

「そ・・・そんなぁ・・。どうしてですか?」

 

 やべーー!!正直に答えたらやらかしたぁ・・!!ここは、「呪術師として多くの人の命を助けて、呪いに苦しむ人の数を少しでも減らしたいからですッ!!」とか言っておくんだったぁ・・・。

 

「不合格の理由は、呪霊に食い殺されるくらいなら、家にいた方が身のためだからだ。そんな軽い気持ちの人間に、呪術師としての任務は任せられん。」

 

 はい・・・。ド正論っすね・・。でも、私は家出がしたいッ!!我儘ごめんなちゃい、でもお願いしますよイカツイお兄さん・・・。

 

「実家に戻ったら、気持ちの悪いおじさん達に食い殺されてしまいます。それだったら呪霊に食い殺される方がマシだと()()思いますッ!!」

 

 チナツがそう言うと、夜蛾は目を丸くして狼狽えた。そして、ため息をついた。

 

「すまない・・。そのような過酷な環境で生活していたとは知らなかった。だが、家出をしたいなら呪術師以外にも何かあるだろう・・。質問を変えよう。()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「1級術師になって、家の連中に吠え面書かせてやるためですッ!!」

 

 これも間違いなく私の本音だよ!!この熱い願いよとどけッ!!軽い気持ちとか言ったらキレるよww?

 

 夜蛾はチナツの回答を思考するために頭を悩ませていた。面接とはいえ、試験管側が返答に時間をかけている。チナツはその間、端にあったかわいいぬいぐるみに目をやる。

 

 なにあれ・・・・カワイイ・・。

 

「合格だ。君の呪術高専一年生への入学を認めよう。」

 

 チナツがぬいぐるみに見とれていると、夜蛾の答えが返ってきた。

 

「えっ!!ありがとうございます!!」

 

 あんな自己中な志望動機でも合格させてくれるんだ!!案外チョロいじゃないか!!

 

 チナツが内心そう安堵するも、夜蛾は真剣な表所を崩さない。

 

「待て、まだ面接は終わっていないぞ。私がなぜ君の入学を認めたか分かるか?」

 

 うげっ・・・。いきなり質問されるとパニくるんだよなぁ・・・。ええっと・・なんでだ・・?

 

 チナツがグダグダ悩んでいると、夜蛾が先に答えを言った。

 

「他人のためにではない、自分のために戦う人材の方が、呪術師としてふさわしいと私は思う。その方が命を落とした時に誰かを呪わずに済むからな。その点、君の志望動機は理にかなっている。」

 

 おお・・。なんか真面目な話が始まったぞ・・。いや、これは真面目な面接中だったなww。確かに、私が任務で呪霊に負けて殺されても、それを誰かのせいにはしなくて済むな・・。ま、誰かのせいにしたいような人なんて一人もいませんけどねっ・・・!!悲しッ!!!

 

「よし。ではこれで面接終了だ!!ガッデム!!」

 

 夜蛾はそう言って、立ち上がる。

 

 この人って、「ガッデム」好きなんだなぁ・・。

 

「あ、もう一つ。言い忘れていたことがあった。」

 

 声のトーンを一段と落とし、夜蛾が真剣な表情でそう言いだした。思わず、チナツは身構える。

 

「今年、入学してくる生徒に五条悟がいると言うことは有名だろう?知っている通り、五条家と禪院家の仲は険悪だ。いろいろ揉め事があるだろう。だから、なるべく五条とは距離を置いて関わらないようにしろ。五条悟は幼い時から、いろいろな方面から命と遺伝子を狙われているからピリピリしているんだ。念を押すが気をつけるようにな。」

 

 五条悟・・・。かわいそうに・・・。色々今まで苦労してきたろうに・・。

 

「分かりました。では、クラスではなるべく関わらないよう気をつけます。質問ですが、今年の一年生は何人いますか?」

 

「君を含めて、"4人”だ。」

 

「は?」

 

 思わず、チナツはそう零してしまった。

 

「よ・・よ・・四人??・・四人スカ?そんなの関わらないなんて無理じゃないですか?」

 

「知らん!!!気をつけろ!!以上だ!!ガッデム!!!」

 

 夜蛾はそう言い放つと、雑に面接を終了させ、その場から立ち去ってしまった。

 

 オイオイオイオイ・・・。色々あの人も適当だなぁ・・。ま・・合格決まって家から出られるから良しとするか!!

 

 よしっ!!楽しもうぜ!!呪術高専生活!!

 

 


 入学初日。1年生の教室には、生徒4人。担任(夜蛾)一人がいた。教室はもともと数人用に設計されているため、狭い。

 

「よし。では、各々自己紹介からだな。今年は4人しかいないんだ。仲良くするためには相手のことをよく知ることが大事だ!!。ちゃんと聞くんだぞ。じゃあ、まず家入から始めろ。」

 

「は~い。」

 

 黒髪だが少し茶色っぽい色をした髪の女子が黒板の前に立った。

 

 家入さんかぁ・・・。美人だなぁ・・。女子が私以外に一人でもいて助かったよ。仲良くしたいなぁ・・。

 

「私は、家入硝子です。任務経験はあります。反転術式で負傷した人を治癒できます。だから、前線には出ません。」

 

 家入は、淡白な話し方でスムーズにそう言った。

 

「補足すると、他者への反転術式ができる人はこの国で家入しかおらん。だから、呪術界にとって貴重な存在だ。お前達も、任務で負傷した時は世話になるだろう。常日頃から体調を気遣ってやるように。」

 

 夜蛾がそう補足すると、家入は首を傾げた。

 

「いや、体調は勝手に治るんで心配なく・・。あ、でも、睡眠だけは十分とらせてもらいますからね。」

 

 家入はそう言って着席した。

 

 なんかこの子ってサバサバ系の美人だな。素敵・・・。っていうか呪術界唯一の他者への反転術式だって?!!超大物じゃん!!スゲー!!

 

「では、次。夏油傑。自己紹介しろ。」

 

 夏油傑と呼ばれた男子が黒板の前に立つ。長身で独特な髪形をしていた。

 

「初めまして。私は夏油傑です。中学時代から趣味で呪霊集めを行っていたので、任務はいつでもでれます。呪霊を使役する呪霊操術を使います。困ったときは助け合いです。日常生活でなにか困ったことがありましたらいつでも私に声をかけてください。」

 

 ん・・・あれ?モデルですかww??独特な髪形なのにすごく似合っている。めちゃくちゃモテてそう。っていくか性格まで優等生でイケメンだな。中学から趣味で呪霊集めっていろいろよく分からんけどとりあえず笑顔が素敵っ!!

 

「補足すると、夏油はすでに昇格試験を受けており、2級までストレートで合格している。このまま1級までストレートで合格するだろう。夏油は16体存在する特級呪霊の内、1体を取り込んでいるから実力は相当なものだ。任務では大いに活躍してくれるだろう。」

 

 と・・特級って1級のさらに上だよねww?凄すぎでしょ!!。ってこのクラス優秀すぎない。この後の五条悟のことは皆知ってるし、家入と夏油も優秀すぎない?あれっ・・・私は・・・・・oh my god!!!

 

「じゃあ、次。五条。一応お前も自分から自己紹介をしろ。皆知っていると思うがな。」

 

 夜蛾がそう言うと、白髪の長身の男子がポケットに手を突っ込みながら黒板の前まで歩いていく。

 

 なんか・・オラついてる?。そういえば、今までずっと顔見てなかったなって・・・・・うわ・・・・国宝級のイケメンじゃん・・。ウチの一個下のクソガキ直哉が惚れるわけだ・・。サングラスしてるから見えないけど六眼ってどんな感じなんだろう・・。見せてほしいけど、夜蛾先生に関わらない用が良いって言われたからなぁ・・。さすがに諦めるか。

 

 だが、ここでチナツは気づいた。五条悟は前に出ると、チナツの方を鋭く睨みつけていたのだ。サングラス越しだがハッキリと伝わる鋭い視線。

 

 うわ・・・。私が禪院家の人間だからめちゃくちゃ気にしてるじゃん・・。こえーーー。いや、割とガチで怖いんすけどやめてくれないすか?私の方からは干渉いたしませんので・・・。

 

「俺は五条悟だ。趣味はスイーツとラーメン巡りだ。楽しい学校生活にしたい。よろしくな。」

 

 他の人が、任務経験は術式について自己紹介をしたが、五条は自身の趣味と願望について語った。

 

 まぁ・・・・趣味の方は素敵だと思うんだけど、さっきから睨むのやめてくれないすか?明らかに私、怖がってるオーラ出してるんですけど、一向に睨むのやめてくれないのだが・・?そんなに警戒する?普通・・。まぁ・・幼い時から命を狙われてるって言ってたし、仕方ないのかなぁ・・。その内、誤解も晴れるといいな。

 

「補足だ。五条悟は遅刻癖が酷い。とにかく朝起きるのが苦手な男だ。だから、五条が任務に遅刻したりしたらお前らが責任取ってちゃんと叱るように!!」

 

「ええ??俺だけお褒めの言葉とかないんすか?家入も夏油もめっちゃ褒めてたじゃねーか。俺にもなんかあるだろ普通!!」

 

 五条は拗ねた子供のように唇と尖らせながら着席した。

 

 意外と・・可愛いところあるじゃん・・。遅刻癖は良くないけど、なんだろう・・・ギャップ・・??って言うのかな?まぁ、良いんじゃないすか?とにかく、私を睨むのは怖いからやめて欲しいんだけど直接そう言う勇気は私にはございませんッ!!

 

「よし。じゃあ最後。チナツ、自己紹介をしろ。」

 

 おっと・・。そうだった四人しかいないんだった。私の番だな。”禪院”って名字嫌いだからチナツって呼んでくれて嬉しいなぁ。夜蛾先生ってすごく気の回る人なんだなぁ・・。これは株価爆上がりですネッ!!

 

「おい。チナツ・・?お前の番だぞ?」

 

「あっ。ごめんなさい。」

 

 夜蛾先生に促され、私は黒板の前に立って3人の顔を眺めた。皆、容姿端麗、能力優秀。正直って輝いて見えた。私なんかと仲良くなってくれるだろうか・・?

 

「禪院チナツです。私は禪院家が嫌いなので、名字で呼ばずに”チナツ”って下の名前で呼んでくれると嬉しいです。任務経験はないので、色々教えていただけると助かります。よろしくお願いします。」

 

 チナツの、”禪院家が嫌い”ということばに五条がピクリと反応した。

 

「補足だ。チナツは禪院家相伝の術式が派生した三種影法術を扱う。呪術は一応実家で履修しているが、任務経験はないから、初任務の時は色々リードしてやるよう頼む。」

 

 ありがとう夜蛾先生。相変わらず・・・睨んでくるなぁ・・五条君は・・。家入さんはなんかボーッとしている。あれっ・・?夏油君なんか不機嫌な顔してない・・?なんで?

 

 チナツがそう違和感を感じていると、夏油が手を上げた。

 

「なんだ?夏油。何かあるのか?」

 

 夜蛾がそう言うと、夏油は話し出した。

 

「先ほどの()()さんの発言。あれは良くないと思います。個人的な理由で御三家である禪院家の評判を落とすという行為になります。あのような発言は今後気をつけた方がいいと私は思いました。」

 

 夏油は、強調するようにチナツを禪院と呼び、真剣な表情でそう言い切った。

 

 私は、夏油君のその言葉を聞いて、驚いたが、よく考えると正論だと思った。私は禪院家でひどい扱いを受けてきたけど、あの家には呪術界御三家としての()()がある。私の自己的な感情で家の名に泥を塗るような発言は気をつけるべきだった。もし、もっと大きい場で今のような発言をしていたらどんな目に合うか分からない。今のうちにダメなことをダメだとはっきり言ってくれる夏油君は良い人だな。

 

「ま・・まぁ夏油、そう言うな。チナツは禪院家でひどい扱いを受けていたんだ。実家に嫌悪感を抱くのも仕方ないだろう・・。」

 

 夜蛾のその言葉では、夏油には何も響いていないようだった。

 

「いえ。さっきの私の発言は撤回します。以後気をつけますので、注意していただきありがとうございました。」

 

 夜蛾はチナツをフォローしようとしたが、チナツがすぐに発言を撤回したので夜蛾は何も言えなくなってしまった。

 

「別にさぁ・・どーでもいいだろ?ゼンインがどうとか・・?ミョウジがどうとかさぁ・・?」

 

 五条悟がだるそうに天井を見上げながらそう呟いた。その声ははっきりとその場にいた全員に聞こえていた。

 

 夏油はもちろん五条のその発言に反応して横を睨めつける。五条も夏油を睨み返した。

 

「君も五条家を引っ張る御三家の人間だろう・・。ましては当主だ。そのような発言を恥ずかしいとは思わないのかい?」

 

 え・・・・喧嘩・・?喧嘩始まるの・・?なんで五条君あんなこと言ったのさ!!私、納得してたのに・・。

 

「良いじゃねえか。酷い仕打ちを受けてきたんだよなぁ?」

 

 五条君はいきなり私の方に顔を向けてそう言った。

 

「ま・・まぁ、そうだけど・・・。」

 

 チナツがそう答えると、今度は夏油が鋭い視線でチナツを睨みつける。

 

「そんなことする”禪院家”とやらに気を遣う必要とかなくね?禪院の名が汚れるのは、さっきのアイツの発言じゃなくて、そういう行動をしてきた禪院家の問題じゃねーの?」

 

「だから、このような場ではそれは心に留めておくのが正しいと私は言っているんだ。それが大人の行動というものだよ。なにより、禪院さんはさっき素直に謝ったじゃないか。」

 

 夏油が五条に言い返すと、五条は椅子を座りなおして、机に肘をついてチナツの方を見た。そして、ニヤッとしてこう言った。

 

「はい、今からチナツがさっきの発言を撤回したことを謝罪するから大丈夫!!。なぁ、もちろん謝罪するよなぁ?」

 

 五条がチナツにそう言って圧をかける。だがそれと同じぐらいの圧を夏油にも視線でかけられていた。

 

 なんか・・二人で盛り上がって喧嘩してるんだけど・・!!この場合ってどう答えたらいいの・・?絶対どっちかは怒るじゃん・・。夏油君の言う事は正しいと思うけど、個人的に五条君の言ってくれた言葉はちょっと嬉しかったなぁ・・。確かに私にあんなひどいことをした禪院家に尊厳もクソもあるかっての!!

 

「ちょっと、お前らいい加減にしろ。勝手に喧嘩を始めるな。チナツ。もう席に戻って良いぞ。」

 

 おお!!ラッキー♪。夜蛾先生ありがとサンキュー!!これで誰も怒らなくて済む。

 

「ダメだ。はっきりと答えてもらう。じゃなきゃ示しが着かない。何より私が納得できない。それはこれからの人間関係にも影響を及ぼす。違いますか?夜蛾先生。」

 

「俺も同感だ。」

 

 夜蛾のフォローを五条と夏油は叩き潰してしまった。こうなってしまっては、チナツは答えるしかないだろう。

 

 あ・・・これ・・詰みだわ・・。こうなったらもう知ーらない~( ̄▽ ̄)~*嘘をつかないで思った事を言っちゃお♪!!

 

「夏油君の意見が正しいと思いました。大人の行動を私も見習いたいです。でも、五条君の意見は私の心に響きました。心の底から嬉しかったです。ありがとうございました。」

 

 エ・・?私って天才・・?夏油君の意見を肯定しつつも、五条君の肩も立てることができた。さすが私!!

 

「ほう。よく分かっているじゃないか。」

 

 夏油は頷いて笑顔になった。

 

 しかし・・・

 

「あぁ~なるほどねぇ~。そーいうことね。そうかい分かった分かった。承知したよ。()()()()()()

 

 五条はゆっくりとそう言っているが、額に青筋が立っており、完全にブチ切れていると誰もが分かった。

 

 あ・・プッチンプリンのように・・・ブチ切れてらっしゃる・・。あっそ・・。シーらない(*゜ー゜*)。

 

 チナツは思考放棄して着席してしまった。

 

「お前らもうちょっと仲良くできるだろ。なぁ、四人しかいないんだぞ?」

 

 夜蛾は落ち込んだようにそう言うが、全員の反応が悪かったので、次の話題に行くことにした。

 

「では、これから、五条・夏油・チナツ。お前ら3人で呪術高専に来てからの初任務だ。場所は東京、六本木の廃病院だ。すぐに準備して校舎の外に集合しろ。」

 

 え・・?この雰囲気で初任務行くの・・?しかも私達3人で・・?もう嫌な予感しかしないよ~~!!

 

 ま・・・なんとかなるか・・ヾ(≧▽≦*)o




主人公:禪院チナツ(呪術高専東京校1年生)

 術式:三種影法術

 能力:三種の武器を影から取り出すことができる。影を操ることができる。
    ①弓矢
    ②???(未所持)
③八握剣異戒神将魔虚羅(未所持)←一応、十種影法術の派生のため、ここだけ共通している。

 等級:4級。


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2話 東京の廃病院にて初任務ですッ!!

主人公:禪院チナツ(呪術高専東京校1年生)

 術式:三種影法術

 能力:三種の武器を影から取り出すことができる。影を操ることができる.
 ①弓矢
 ②???(未所持)
 ③八握剣異戒神将魔虚羅(未所持)←一応、十種影法術の派生のため、ここだけ共通している。

 等級:4級


 入学初日、ホームルームで自己紹介が終わると午後から初任務だった。補助監督の方に、チナツ、五条、夏油の3人は車で送ってもらう。ちなみに、この初任務に先生は同行していない。なぜなら、それだけ危険度が低い任務だからだ。

 

「私が帳を降ろしましたら、3人はこの廃病院の中に入ってください。中に4級呪霊が多数、3級呪霊が数体、発生しています。全て殲滅してください。禪院チナツさんは今回が初任務ですね。お気をつけてください。」

 

 補助監督の方はそう言った後に帳を降ろした。

 

 さぁて!!初任務と行きますか!!

 

 五条と夏油は、自身の身に余るゴミ任務を押し付けられたとばかりにだるそうにしていた。五条はその様子を隠そうともしない。そして、夏油も少しその感情が雰囲気に漏れていた。

 

 そういえば・・・この2人って仲直りしたのかな?さっきホームルームで喧嘩してたじゃん。

 

 チナツがそう思い、2人を見ると、なんとすごく打ち解けて雑談をしていた。

 

「でさ。昨日俺のお見合いに来た奴なんだけどさ・・。それがまぁ・・・おかめ納豆のアイツに似ててさぁwwww。本当すっげえ面白かったんだわww。」

 

 五条君なんか楽しそうだな・・。お見合いってあれか・・御三家だからそう言う事もあるのね。でも、おかめ納豆はバカにしすぎでしょ。

 

 夏油は楽しそうにそう話す五条に笑顔で返している。数時間前の喧嘩が嘘のようだ。

 

「おかめ納豆かぁ・・。別にいいじゃないかい?大事なのは外見じゃなくて内面の方だよ。」

 

「マジ?じゃあ傑はどんな性格の人がタイプなわけ?ちなみに俺はキャピキャピした子が好き。」

 

「私は逆だね。むしろ大人しくて、内気な性格の子の方が好みだね。」

 

 そういう年ごろだから仕方ない・・。でも、今は私の初任務なんですけど!!いつまでもそう、関係のない話をされていては困る。

 

「あのー。任務やらないの?」

 

 チナツがそう声をかけると、五条が振り返ってチナツを睨みつけた。チナツへの怒りは収まっていないようだった。

 

「あ~あ。そうだった今任務中じゃん。じゃ、お仕事しますか~♪。傑、作戦どーする?」

 

 五条は相変わらずやる気がないが、任務に取り掛かるようだ。

 

「4級呪霊は気にせず祓っていい。だが、3級呪霊は弱らせてから私の所に連れて来てくれ。取り込みたい。」

 

「へぇ~傑って真面目だな。3級とかいらなくね?」

 

「多いことに越したことはないだろう。いくら弱くたって使い道はいくらでもあるのさ。で、禪院さんは呪霊に一人で勝てるのかい?」

 

 夏油がチナツの方を笑顔で見ながらそう言うが、その目には少なからず見下すようなニュアンスが含まれていた。

 

「勝てるよ。戦った事ないけど、一応呪術は履修済みだから。」

 

「だったら、3手に分かれればいいじゃん。それが一番早く終わる。オイ禪院。初めてだから一人じゃ心細いとか言うなよ?」

 

 おっとこれは完全に舐められてるなぁ・・・。ちょっとイライラしてきたよ。

 

「こらこら。悟ダメじゃないか?禪院さんはこれが初任務なんだ。下手したら呪霊を前に腰を抜かすかもしれないからね。そんな痛いところを突いたらだめじゃないか?」

 

 おっとおっと・・・。嫌味を言ってくれるじゃないか・・?イライラ×2だなwwww。よし決定、五条、夏油、今から君達を”君”呼びにはしない・・。呼び捨て決定!!!

 

「異論なーし!!じゃ、行ってきまーす!!」

 

 チナツはイライラを紛らわすために、すぐに2人から離れることにした。チナツがいなくなると、五条と夏油は顔を見合わせた。

 

「ククッ。ちょっとからかっただけで怒っちゃって草www。」

 

「悟。三種影法術ってどういう術式なのかい?」

 

 チナツが完全に去ると、五条と夏油はチナツの術式について話し始めた。五条は六眼を持っているため、相手の術式を見破ることができる。完全に見破れるわけではないが、おおよその能力は見ただけで理解できてしまうのだ。

 

「あぁ・・。あれは禪院家相伝の術式、十種影法術の劣化版だ。影を操るところは同じだけどさ、十種影法術の式神の代わりに、三種の呪具を影から取り出せる能力だ。ま、そこそこのそこそこだろ。」

 

 五条の評価はその程度だった。

 

「ふ~ん。つまり悟はあまり彼女に期待していないということかい?」

 

「してるわけねーだろwww。っていうかさ。この任務終わったらアイツに聞きたいことがある。御三家の話だ。傑も付き合ってくれるよな?」

 

 五条は少し口角を上げてそう言った。夏油も笑顔でそれに頷いた。

 

 ________

 

 チナツは五条と夏油から離れた後、廃病院を一人で歩き回り、呪霊を捜索していた。

 

 ほぉ・・心霊スポットになっているだけあって、雰囲気がホラーですなぁ・・。4級呪霊でも、隠れられると普通にビビりそう。

 

 チナツはまだ呪霊と戦った経験がない。だが、術式を使った事はある。家の練習場で試し打ち程度だが術式を発動させた。チナツの三種影法術の三つの呪具の内、現在一つだけ呪具を解放できている。あと2つの呪具がいつ解放されるかは、チナツ本人にも分からない。

 

 「私の武器はこれだ!!!」

 

 チナツはそう言うと、足元の影から呪具を引っ張り出した。それは、弓矢である。矢は、呪力がある限り無限に装填される仕組みになっている。

 

 一応、エイム練習はしてたからね。呪霊に当たって通用すると良いな♪。

 

 そう思っていた時、目の前に4級呪霊が現れた。正面に出てきたため、それほど恐怖は無い。チナツは冷静に弓矢を構えた。

 

「来たな!!呪いめ!!呪術師のお通りだ!!」

 

 チナツは弓矢を発射する。矢は正確に4級呪霊に命中した。すると、4級呪霊は煙のように爆散して祓われた。

 

「よっしゃ!!初討伐!!良かったぁ・・。もし矢効かなかったらどうしようかと思ったよ・・・。」

 

 チナツはそう独り言を言うが、それにはワケがあった。なぜなら、チナツは貧弱フィジカルのため、肉弾戦が苦手だったからだ。

 

 フィジカルトレーニングを積みましょうto私。そうすれば、1級術師に近づけるね♡。今日からワンパンマンのサイタマ式トレーニングでもやろっかな?

 

 呪霊を初めて討伐はしたものの、廃病院内のすべての呪霊を祓い終えるまで、この任務は終了しない。チナツは再び探索のために歩みを進めるが、同じ廃病院内で戦っている五条、夏油のすさまじい戦闘音が聞こえてきた。

 

 エッグっ!!何この音・・。スゲーな。さっきはちょっとイライラしたけど、やっぱあの2人ってすごく強いんだなぁ・・。そんな強い人達に呪術マウントとられたら、4級の私は何も言い返せないんですけど・・!!キィー!!いつか一泡吹かせてやるッ!!

 

 そんなことを考えていた。すると、廊下の角の奥から何か声が聞こえてきた。

 

「ハチノスーー!!!ハチノスーー!!!」

 

 ん・・?この声は・・呪霊か・・?さっきの呪霊よりも呪いの気配が濃い気がする・・。

 

 チナツはそう感じて弓矢を構える。その声を発した呪霊は廊下の角を曲がってチナツの前に姿を現した。裸の少年の胴体から手が数十本は生えているという外見のおぞましい呪霊だった。そして、それぞれの手にはオモチャのエアガンと思われる物を握りしめている。

 

 うっ・・!!何あれ・・エアガン呪霊!?

 

 チナツのその第一印象は当たっていた。この呪霊は、人々(主に子供)がエアガンを恐れる負の感情によって発生した3級呪霊であり、通称、”エアガン呪霊”である。

 

 バッ!!

 

 チナツは咄嗟に自身の唯一の武器である弓矢を構える。だが、エアガン呪霊がBB弾を呪力で強化したものを発砲する方が少し速かった。

 

「ハチノスー!!ハチノスー!!!」

 

 バババババババババ!!!!

 

「ぐっ!!」

 

 大量の弾がチナツに命中し、思わずそう悲鳴が漏れた。

 

 ちょちょちょちょ!!!痛い痛いって・・・BB弾とはいえ、呪力で強化されてるから普通に痛いんですけど・・・っていうか、貰ったばっかの制服ボロボロで穴開きそうなんですけど!!!ふざけんなよ!!

 

「てめっ!!やったな!!弓矢、発射!!!」

 

 チナツは弓矢を発射し、それは見事にエアガン呪霊に命中した。

 

「よっしゃ!!ハチの巣になんのはてめぇの方だよ!!」

 

 だが、エアガン呪霊は矢を受けたのにもかかわらず、少しひるんだだけで直ぐに再生してしまった。

 

 あれ・・っ??効いてない・・マジか・・!!やっぱり、3級だから4級より強いのか!?

 

 弓が効かないとなると、直に殴りに行くしかないのか!?でも、私は貧弱フィジカルだし、そもそもあの量のエアガンの攻撃をかいくぐって近づけるとは思えない。どーすっかな!!

 

 そうだ!!弓矢の攻撃に縛りを課して、威力を高めて見よう!!やってみよう!!

 

 チナツは咄嗟にそう閃いた。縛りを課すことで術式の効果が底上げされるということはすでに知っていた。知っているだけで、あまり実感が湧いていなかったものの、土壇場に来たことでその意味をようやく理解できたのだ。

 

 縛りを課す!!攻撃範囲を狭める代わりに、一部分への攻撃威力を上げてくれ!!!

 

豪烈の弓矢(ゴージャスアロー)!!」

 

 そう叫び、矢を発射した瞬間、矢が光り輝いた。瞬く間にエアガン呪霊のど真ん中を突き抜ける。エアガン呪霊は悶絶すると、握りしめていた大量のエアガンが消えていった。しかし、本体は弱り果てて今にも祓われそうだが辛うじて生き残っていた。

 

「おっ!?マジ?なんか勝ったんだけど・・・・。しゃ、しゃああ!!!」

 

 その威力に私は自分でも驚いていた。これが、縛りの力なのか・・・。もっと色々試してみたいなぁ・・。

 

 あっ!そうだった。夏油く・・・じゃなくて、夏油が3級の呪霊は弱らせて連れて来いって言ってたよね。ちょうどエアガン呪霊は弱ってるし、もう反撃してこなさそうだから連れてくか。よし、私2連勝じゃん!!制服ボロボロにされたけどね   

 

 チナツは弱っているエアガン呪霊を夏油の所まで運んで行った。

 

 _________

「お~い。3級呪霊持ってきたよ~!!」

 

 チナツが夏油を探していると、既に五条と他全ての呪霊を祓い終えていた。

 

「ふぅ・・。やっと来たか。やっと帰れるわっていうかお前なんでそんなボロボロなの?」

 

 五条が欠伸をしながらも、眉間に皺を寄せてボロボロの私をジロジロ見てくる。

 

「こいつに、やられたんだよ。このエアガン呪霊に。」

 

「は?もしかしてお前、呪力ガード知らないの?」

 

 ん?呪力ガードだって・・?あぁ・・。あの自信を呪力で覆って防御力を上げるあれか。弓矢に呪力集中させてて忘れてましたッ!!

 

「あ・・・!忘れてたわww。ま、勝ったからいいでしょ?」

 

 チナツがそう言うと、五条は呆れたようにため息をついてしまった。

 

「仕方ないだろう。実践が初めてテンパってでもいたんだろう。相手が3級の雑魚呪霊で良かったね。これがもしもエアガン呪霊じゃなくて、マシンガン呪霊だったら君は今頃死んでいただろうね。」

 

 夏油は笑顔でそう言いながら、エアガン呪霊を球状に変える。

 

 いちいち、嫌味が癪に障るなぁ・・。まだ五条みたいにはっきり言われた方がダメージ少ないわ!!夏油、それは狙って言ってんの?おま、煽ってんの?

 

「マシンガン呪霊って本当にいるの?」

 

 イライラを紛らわすために、そう聞いてみた。

 

「まぁ、1級以上特級未満ってところだろうね。・・・ゴクンッ・・ふぅ。」

 

 夏油はそう答えながら、エアガン呪霊の呪玉を飲み込んだ。飲み込んだ瞬間、夏油の眼球が充血して一瞬苦しそうな表情に変わったように見えた。

 

 へぇ・・。そうやって取り込むんだ。なんか、一瞬吐きそうな顔にならなかった?

 

「呪霊ってどんな味するの?」

 

「君には関係のない話だ。」

 

「へ?」

 

 ただの興味本位で、聞いただけだったのに。夏油からはいきなり冷たい言葉が返ってくる。

 

 何?いきなり不機嫌になってんじゃん・・。もしかして、相当不味いのかな?毎回無理して取り込んでいるとすれば、夏油って相当苦労人なのかも・・。ま、不機嫌になってそうだからもう話しかけるのはやめておこう。

 

「悟。コーラを・・・。」

 

「ほい。」

 

 夏油は五条にそう一言言うと、五条は缶コーラを投げて渡す。夏油はそれを一口飲んだ後、深呼吸していた。

 

「おい、禪院。初任務でもう分かったろ。()()()()()()()()()()()

 

 五条がいきなり私に向かってそう言ってきた。

 

「え?なんで?勝ったじゃん。」

 

「あんな雑魚呪霊にボロボロにされてちゃ話にならねえぞ?呪術師続けても死ぬだけだって言ってんだよ。」

 

 五条が睨みつけてくる。私に呪術師やめてほしい気持ちだけは本当のようだね。

 

「やめない。たとえ、今後の任務で死んだとしても自業自得だよ。だから心配しないで。」

 

「心配とかしてねーよ勘違いすんな。」

 

 ブチッ!!

 

 そのとき、私の中で堪忍袋の緒が切れた。

 

「あのさ。なんでずっと喧嘩腰なの?私の事が嫌いなら関わらなければいいじゃん。その方がストレス溜まんないでしょ?」

 

「分かった。じゃあはっきり言うわ。お前、禪院家で俺の任務邪魔して評判下げるよう命令されてるだろ?」

 

 五条がそう発した表情を見て、チナツは察した。

 

 あぁ・・なんだそういうことか。それで警戒してたんだね。確かに、自分の評判を落とすよう命令されている奴が近くに居たら排除したくなるもんだよね。ま、勘違いも甚だしいけど・・。

 

「なんか、言ってた気がするわ。そんなこと。」

 

「チッ!!」

 

 チナツがそう言うと、五条は分かりやすく舌打ちをして奥歯を噛みしめている。相当苛立っているようだ。

 

「家の連中の言う事とか聞かん。反抗期だから。知らんがな。」

 

 だが、チナツがそう言い捨てると、五条は目を丸くした。

 

「嘘つけ。俺の評判下げるの成功したらお前禪院家での扱い良くなるだろ?」

 

 実際、チナツは禅院家で五条悟の評判を下げることを成功したら優遇されることを約束されていた。まぁ・・チナツは、軽く聞き捨てていたので、全くするつもりなどなかったのだが・・。

 

「だから、やらねーっつーの・・。シツコイ。帰るッ!!」

 

 チナツはこの場に居たくなくなったので、そう言い捨てて帰ることにした。

 

 ったく・・どいつもこいつも禪院禪院って・・。なんか甘いスイーツでも食べにいこ。そうすれば全部忘れるさ。

 

_________

 外に出ると、補助監督の人がいなかった。

 

「あれ?なんでいないの?帰れないじゃん。」

 

 夏油が補助監督の人に電話をかけている。電話の時だけ声が変わる人って偶にいるよね。傍から見てるとちょっとオモロイ。

 

 電話を終えた夏油がこっちにやって来る。さっきまでの不機嫌さはもうなくなっていた。

 

「補助監督さん忙しいんだって。六本木の〇〇〇のファミレスで合流するらしいから私達3人で今から向かうよう言われたよ。」

 

「マジっ?サボりじゃねーの?普通俺達の任務終わるまでここで待ってるだろ。」

 

「悟。それは本人の前で言うなよ。私達が最強だからこの場に居なくても大丈夫だと判断したんだろう。ま、実際レベルが違いすぎる任務だしね。」

 

 特級相当2人に4級呪霊の殲滅任務。確かにレベルが違いすぎるな。ま、そのおかげで私の初任務が上手くいったからそこは感謝しないといけないかも。ま、嫌味言いかえされそうだからお礼なんて言わないけどね。

 

 ってか・・六本木のファミレスまで歩いてくのキツーッ!!ボロボロだから車移動できると思ってたのに・・。メンドクサッ。

 

 チナツは制服に着いた埃をてでパンパンと祓っている。

 

 でも、なんだかんだ言って初任務ちょっと楽しかったな。もっと強く成ればもっと楽しいかも!!

 

「オイ。あくしろよ。」

 

「大丈夫?歩く気力も残っていないのかい?救急車でも呼ぶかい?」

 

 一人で初任務を終えたことに少し感動を感じていると、五条と夏油にそう言われ、現実に引き戻された。

 

「おっと・・。歩けます!!心配していただきどーも!!」

 

 3人で六本木を歩いていく。東京で都会のため、町中人で栄えていた。だが、それが原因で数分後アクシデントに巻き込まれることを、チナツはまだ知らない。




主人公:禪院チナツ(呪術高専東京校1年生)

 術式:三種影法術

 能力:三種の武器を影から取り出すことができる。影を操ることができる.
 ①弓矢
 ②???(未所持)
 ③八握剣異戒神将魔虚羅(未所持)←一応、十種影法術の派生のため、ここだけ共通している。

 等級:4級。


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3話 私の術式って四次元ポケットで超便利じゃね?

主人公:禪院チナツ(呪術高専東京校1年生)

 術式:三種影法術

 能力:三種の武器を影から取り出すことができる。影を操ることができる.
 ①弓矢
 ②???(未所持)
 ③八握剣異戒神将魔虚羅(未所持)←一応、十種影法術の派生のため、ここだけ共通している。

 等級:4級


 初任務が無事に終わり、チナツ、五条、夏油の3人は補助監督の人と合流するため、六本木のファミレスに来ていた。

 

「あれ?補助監督いねーじゃん。」

 

 五条がイライラを露にしながらそう言う。すでに、イチゴチョコクリームパフェを注文していた。

 

「あと、10分くらいで到着するらしいよ。」

 

 そう返す夏油は、ホットコーヒーを注文していた。

 

 へぇ‥。夏油ってコーヒー飲むんだ。私あれ苦くて飲めないんだよね。コーヒー牛乳でも無理。あ!そうだった。このボロボロの制服をさっさと着替えたい。

 

「ちょ。トイレ・・。」

 

 チナツはそうとだけ言うと、席を立ちあがって女子トイレに向かった。

 

 _____

 

 ふぅ・・・。よし、誰にも見られていないな。

 

 女子トイレの個室に入ると、チナツは足元の影に手を伸ばした。影の中に手を入れる。ゴソゴソと手探りで探し、私服を取り出した。

 

 ふはははははは。どうだ!すごいだろう!!。

 

 私の三種影法術は呪具だけが能力ではない。このように影を応用することもできるのだよ。

 

 正にドラえもんの4次元ポケットだ。

 

 まぁ、入れられる物の体重を背負わなければならないという縛りはあるが、衣服を持ち運ぶなど造作もない。その内、4次元ポケット以外にも有用な使い道を編み出してやるぜ!!

 

 チナツは取り出した私服に着替えると、来ていたボロボロの制服を影の中に入れて、トイレから出て行った。

 

 ______

 

 トイレで私服に着替えて帰ってきたチナツを見て、五条と夏油は目を丸くして驚いていた。

 

「え?おま、どうしたのそれ?」

 

 五条はすでにパフェを食べ終えていた。早すぎんだろ・・・。もうちょい味わって食べなよ。

 

「私の影の中に私服を格納できるから。四次元ポケットみたいに。」

 

「マジ!?まぁ、なるほどな。」

 

 五条は六眼を持ち術式を見破ることができるが、その拡張までは想定できない。だが、チナツの説明を聞いてそれが可能であると理解したようだ。

 

「便利だな。ずりぃぞ。」

 

「フッ・・・。お目が高い。」

 

 ドヤ顔で返してやった。まぁ、ずりぃぞって言いたいのは私の方なんですけどね。あなたは無敵の能力をお持ちじゃないですか・・。

 

「他に影で何ができるのかい?」

 

 そう言った夏油は興味津々な表情だ。

 

「う~ん・・・。まだほとんど何もできないよ。影を水分みたいに変化させてあれこれしていくんだけど・・。今できるのは4次元ポケットくらいかな?」

 

「ぬかせ。お前が出せる三つの呪具を説明しろ。少しは使えるものがあるかもしれないからな。」

 

 そうだったわ。五条悟だからさすがにメインの呪具の方は知ってるか。でも、呪具の内容までは知らないようだね。教えてあげようかな?

 

 ・・・・あれっつーかなんでコイツこんな偉そうなの?腹立ってきたよ!!

 

「なんで私が教える必要が?普通、自分の奥の手までそんなベラベラ話さないでしょ。」

 

「あ”?」

 

 フッ・・・予想通りのキレ方で草。

 

「教える必要ならある。悟は特級。私は2級術師だ。本来、たいして金の足しにもならない3~4級の任務など受けるはずがないだろう・・。はっきり言って時間の無駄だ。だが、今日は同級生の君が初任務だからと言う理由であのゴミ任務を受けさせられたのだよ。少しは感謝して当然じゃないのかい?。」

 

 ぐっ・・・。そんなの私だって頼んでねーよ・・・と言いたいが、2人がいなくて、私一人であの任務を達成できたかと言われれば、呪力切れで死んでるかもね。

 

「ありがとっ。任務手伝ってくれてありがとう。感謝カンゲキ雨嵐!!」

 

「君にそんなことを言われたところでなにも嬉しくないよww。」

 

「さっさと、呪具教えろタコww。」

 

 キィイイイ!!この2人ガチでシバきたい!!クソムカつく!!仕方ねぇ・・教えてやるよ!!

 

「分かったよ。三つの呪具の内使えるのは1つだけ。それは弓矢。2つ目はいつ出てくるか分からないから内容も知らない。でも、三つめは知ってる。それは、八握剣異戒神将魔虚羅(やつかのつるぎいかいしんしょうまこら)。知ってる?」

 

「ええ!?」

 

 五条が思わず大声を上げた。知ってんの?・・・っていうかそんな驚く??

 

「悟?知っているのかい?私はあまりピンと来ないのだが。」

 

「あぁ、あれは十種影法術の切り札である式神だ。派生型の術式だからそこを引き継いだのか。過去、六眼と無下限呪術の両持ちの術師が摩虚羅と戦ってブチ殺されたらしい。もちろん調伏は必要なんだろうな?」

 

 五条のその説明を聞いて、夏油もその事実に驚いた。五条のスペックでも倒しうる可能性があるからだ。

 

「必要だよ。だから、調伏の儀を始めたら必ず私は殺されるけど、相手を道連れにできる。クソゲー始められるの面白いでしょww。」

 

 私がドヤ顔でそう言うと、空気がしらけてしまった。

 

「お前・・イカれてんな・・。」

 

「いや、いいじゃないか?呪術師ならイカている方が適正はある。何より呪いに対抗できる。」

 

 おう・・。珍しく夏油が私の事褒めたな・・。

 

「認めねーぞ。」

 

 だが、五条はあくまで険しい表情をしている。

 

「何が?」

 

「俺の方が摩虚羅より強い。」

 

「あっそ♪。がんばってねぇ~♡」

 

「ッてんめぇ!!」

 

 軽口で返してはいるが、チナツは結構マジで心を躍らせていた。

 

 よし!絶対いつか摩虚羅調伏させて、こいつらに一泡ふかしたろ!!ついでに直哉にもね!!

 

 そして、この時にやっと補助監督の人が来て私達は解散となった。

 

 ________

 後日・・・。ホームルームにて・・。

 

「前回の任務はよくやってくれた。だが、次からの任務では難度も危険度も上がっていくからな。日々修行に励むように。」

 

「はい!!」

 

 夜蛾先生のありがたい激励のお言葉だな・・。

 

「今の話に関係するんだが、4~5月は新たな生活を始める者が多い。学校での進級や、進学、就職があるからだ。そのため呪いが溜まりやすい。忙しくなるから覚悟しろよ。だが、お前達が戦うのは呪霊だけではない。」

 

「え?」

 

 え・・?呪霊だけじゃないの?だったら誰と戦うの?

 

「呪詛師・・。だろ?」

 

「正解だ。」

 

 五条が答えを当てた。ジュソシ・・?なんじゃそりゃ?

 

「呪詛師とは、呪術を悪用している者の事を言う。一般社会で呪術を使い、犯罪を起こしているものはそう少なくない。これは呪霊の討伐に匹敵する大問題なのだよ。」

 

 夏油が詳しく説明した。呪詛師かぁ・・・。呪術師の足を引っ張る犯罪者かぁ・・。そいつら呪霊祓うの手伝ってくれないのかな?

 

「2人は呪詛師と戦ったことあるの?」

 

「あるに決まってんだろ?全戦全勝だけどな!!」

 

「フューー・・・。かっこいー(棒)。」

 

 家入が棒読みでそう言った。絶対思ってないでしょwww。五条おつかれww。

 

「ここからが重要だ。最近、呪術師が呪詛師に殺害されるという事例が起こっている。ここ最近で5人の呪術師が殺害された。その中には1級術師も含まれている。犯人はまだ見つかっていないが、単独犯の可能性が高い。実力は最低1級以上だ。」

 

 空気がいきなり引き締まった。一級術師を殺す呪詛師だって・・??ガチヤバくね?

 

「その殺害された呪術師たちはどこで襲われたんですか?」

 

 夏油が真剣な表情で夜蛾に質問する。

 

 夏油でも、甘くは見られない事件ってことか。

 

「奴は非常に隠密性能が高い。襲われた状況はまばらだ。いつでもどこでも襲ってくると考えたほうが良い。そのくせ、呪力の残穢を一切残さないんだ。だから今のところ尻尾の一つでも掴めていない。」

 

「呪力の残穢を一切残さないだと・・・?本当にそれができるなら相当強いぞそいつ・・。そんなのありえるか?」

 

 五条でもそう言うってことは、それは勘違いしてるんじゃないの?呪力の残穢を消すってできるのそもそもできないんじゃね?絶対少しは残るんじゃね?

 

「その呪詛師の人は呪力を使わないんじゃない?それだったら残穢は残らないんじゃない?だから犯人は非術師とか・・?」

 

「いいや。それはあり得ないよ。一般人でも多少の呪力はある。だから絶対少しは残るはずだ。それに、一般人が一級術師に勝てるわけがないだろう?銃やナイフが通用すると思っているのかい?」

 

 あ・・・私の予想即否定された・・・。もう黙っとこ・・・。

 

 夏油にそう言い切られ、チナツはシュンとしてしまう。だが、五条はあることに閃いていた。

 

「天与呪縛・・・・。の可能性があるな。呪力を一切持たない代わりに、超人的な身体能力を持つ人間がいた記録が過去残っている。それなら呪力を一切残さないし、一級術師にも余裕で勝てる強さも持ってんだろ。」

 

 五条のその考えが、全員が一番腑に落ちる内容だった。

 

 つまり、呪詛師の能力は、()()()()()()()()()()()()()()()の可能性が高い!!

 

「五条。よく気づいたな。あと、その呪術師殺しは2級術師以上しか狙わない。だから、五条、夏油、お前達が狙われる可能性が極めて高い。気をつけるように。」

 

「ま、構わないさ。私は正直会ってみたいものだね。その天与呪縛のフィジカルギフテッドとやらに。」

 

「俺もだな。負ける気がしねー!!」

 

 五条と夏油はどうやら戦う気満々らしい。それが負けフラグに見えてしまうのは私だけだろうか?うん。私だけだろうね。だってこの2人は間違いなく呪術界の天井であるからだ。捻くれた性格の私ぐらいしか不安を感じていないだろう。

 

「と言う事で、お前達!!今日から毎日フィジカルトレーニングだ!!!ガッデム!!!」

 

 夜蛾先生が力強くそう言った。

 

 なるほどね・・・。今までの前振りは全部このためだった訳ね・・・。




テストやらかした後にようこそ実力至上主義の教室へを見ると、なんかモヤモヤする。
綾小路スペックよこせ。


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4話 すぐ強くなってやるから今に見てろよ

主人公:禪院チナツ(呪術高専東京校1年生)

 術式:三種影法術

 能力:三種の武器を影から取り出すことができる。影を操ることができる.
 ①弓矢
 ②???(未所持)
 ③八握剣異戒神将魔虚羅(未所持)←一応、十種影法術の派生のため、ここだけ共通している。

 等級:4級


「よし、今日から体術の訓練も取り入れていく。五条は夏油と、チナツはこの呪骸と組み手をしろ。俺は用事があるから18:00まではしっかりやるように。」

 

 夜蛾がそう言うと、五条が気の抜けた返事をする。夜蛾は振り返りもせずに校舎に帰って行った。五条、夏油、チナツは校庭で体術訓練をやらされているのだ。

 

 体術訓練とかしたことないんだけど。私の相手ってこのカワイイぬいぐるみ?完全にカッパやん・・。っていうか、モフモフで殴られても絶対痛くないじゃんwww。

 

 チナツは完全に甘く見ていた。だが、横から笑い声が聞こえその方向に目を見やる。

 

「はっははははwwww。クッソワロタwww。ガキのお人形遊びかよww。オイ、なにボーッとしてんだよ。早くそのカッパと組み手始めろよ。」

 

 うーわ。だrrrrっる。いきなり超煽るじゃん・・。

 

 五条が呪骸と組み手をしろと言われたチナツを小馬鹿にする。

 

「こらこら。悟、そんなに馬鹿にしてはいけないよ。赤ん坊だって最初は箸の持ち方も知らないのだよ。普通、赤ん坊はエジソン箸という補助具を使って練習をするんだ。まぁそれと同じだね。何も変な事じゃない。」

 

「うっさい!ほっとけ!」

 

 チナツはそう吐き捨てて、カッパの呪骸と向かい合うが、五条と夏油の視線は未だに感じていた。

 

 どいつもこいつも舐めやがってええ!!ええい!!ワンパンで終わらせてやるううっ!!

 

 ポカっ・・・。バゴォオオン!!!

 

 私の渾身の右ストレートは、気の抜けた音を鳴らし、それと引き換えに大きな衝撃音と共にカウンターが返ってきた。

 

「うぐっ・・!!」

 

 チナツは、カウンターの衝撃で校庭に転がる。五条と夏油はそれを見て腹を抱えて笑っていた。

 

「ギャハハハハハwww!!ネッwwwwネコパンチww」

 

「フフッww。かわいいねwww。」

 

 の・・脳が揺れるぞ・・・。クッソ・・・あのカッパ・・・良いパンチ持ってるじゃねえか!!

 

「ぶっ殺す!!」

 

 チナツは五条と夏油をフル無視して、カッパの呪骸に何度も向かっていった。しかし、そう簡単に勝てるはずがない。結局、18:00になり、訓練が終わるまで一度も勝つことはなかった。

 

 _____________

 土曜日である。本日は任務も訓練もない。完全なフリーである。

 

 くっそ~あのカッパめ・・・。ボコスカ殴りやがって・・・。体中いたいよ~(´;ω;`)。でも、分かったことがある。

 

 ”()()()()()()

 

 よし!強くなろう。ってことで、実家に帰って呪術の指南書を読みに行こう!!

 

 そう決めてから行動に移すまではマッハだった。すぐに新幹線に乗り込み、近畿地方にある禅院家の屋敷に帰った。実家の人間にはあまり気づかれないように済ませるつもりだった。特に、直哉とかいうクソガキだけには会いたくないからね。

 

 実家に着き、指南書のある本棚を目指す。呪術の指南書は何冊かあった。役立つ物がないかペラペラめくって探してみる。

 

「あった!!」

 

 丁度いい。呪術基礎の書。これだ!!

 

 チナツは、ちょうどいい本を見つけると、その場で読み始めた。

 

 えっと・・・。呪力操作は読まなくていっか。ってあれっ?このページ千切れてんだけど。この千切れ方は絶対だれか引きちぎったろ。

 

 目次を確認してみると、引きちぎられているページは天与呪縛に関するところだった。

 

 誰だよ。このページ千切った奴。まぁ私は天与呪縛じゃないから関係ないんだけどさ。お腹空いてたから齧ったのかな?いやさすがにそれは猿でもないかぎりありえないかww。

 

 チナツはその後もページをめくっていく。

 

 お?結構参考になりそうなのあるじゃん。とりあえず、十種影法術は相伝の術式だから詳しく記載されてるね。派生の私の三種影法術にも参考になるから写メッとこう。あと、落下の情(らっかのじょう)とかいうのは難しそうだからいいや。領域展開??なんかかっこいいから写メッとこう。ま、とりあえずこんなところだな。

 

 よし、誰にも会わないうちに早く出よ。

 

 チナツは本を棚に戻すと、廊下に出る。すると、ちょうど金髪の男に鉢合わせてしまった。

 

「あ?チナツちゃんやないか?いつ帰ったん?」

 

 は?だるっ・・。

 

「今。んじゃ。」

 

「帰ったんならなんか言えや。」

 

「ごめん。んじゃ。」

 

 さっさと離れよ。どうせまた面倒な事を言いだすに違いない。

 

「んじゃじゃあらへんで!!ちょっと待てや!!」

 

 通り過ぎようとした私の手を直哉が掴んできた。

 

「何やその態度?おま、いつそんなに偉くなったん?」

 

「離せ、殺すぞ?」

 

「おぉ・・怖い怖いww。これだから愛想のない女はモテへんでwww。三歩後ろを歩けへん女は背中刺されて死んだらええねん。」

 

 ほらみろ、始まったぞ。

 

「せや。俺最近、二級術師に昇格したんや。ストレートやで。マジでぬるいぬるいww。で、お前今何級やったっけ?」

 

「はい?4級ですが何か?」

 

「プっww!!いよッ!!4級術師!!」

 

 なんだそれ?歌舞伎もどきか?にしても癪に障るぜ。

 

「悟君元気やった?俺会ってみたいねんけど・・。」

 

「それはやめといた方が良いよ。禅院家嫌ってるから喧嘩になるよ。」

 

 五条も直哉も両方まだガキだからなぁ・・。仲良くできるとは思えん。

 

「なんで、俺が15なんやろなぁ・・。俺が1年早く生まれとったら悟君と同い年やったのに・・。つくづく俺の母親も無能やわぁ・・。」

 

「何言ってんの?産んでくれたお母さんに感謝しなよ。人を産むっていう苦労知らないの?」

 

「チッ・・。相変わらず、合わへんなぁ。お前は・・。そら!!お仕置きや!!」

 

 直哉がの右の掌がチナツの頬に近づく。ビンタするつもりらしい。

 

「オイ。何してんだよ。」

 

 直哉は背後から聞こえた声に反応して右手を止める。直哉の後ろには、まだ5歳の緑色の髪の女の子がいた。

 

「真希ちゃん?久しぶり。」

 

 久しぶりに真希ちゃんの顔を見れて嬉しいんだけど、こういう男に話かけちゃダメだって前教えたよねぇ!?

 

「何やガキコラ?空気読めやカス。失せろや。」

 

 う~わ。まじで、こいつ切腹だわ。いくらなんでも5歳相手に口悪すぎるでしょ。変な言葉覚えちゃうからやめて欲しいんだけど。

 

「チナツ姉ちゃんは私の親友なの。だからなんか手だしたら許さねえぞ?」

 

 真希は小さな顔についている小さな目で直哉を睨めつけている。私はその顔が可愛いと思ってしまった。

 

 真希ちゃんすごい肝が据わってるなぁ・・。これは将来有望だぁ・・じゃなくて!!直哉にそんなこと言ったらダメだって!!

 

「チッ・・。本当に最近の女子は躾がなっとらんやん。しゃあない。俺が代わりに躾たるわ。」

 

 直哉が真希の方に振り返る。その瞬間、チナツは動き出していた。

 

「お前は!!!いい加減に!!!しろ!!!」

 

「うっ!!!」

 

 両手で直哉の脇の下の服を掴んで、思いっきり庭側に投げる。なんかやったことないけどうまくいった。直哉のことを庭の草原の上に投げ飛ばしてやった。

 

「ペッペッ!!クッソなにすんや!!ざけんなや!!何か葉っぱが口に入ってもうたやないか!!」

 

「チナツ姉ちゃんナイス!!もっとボコボコにしちゃえ!!」

 

 真希ちゃんがウッキウキで私にそう言うが、私は戦闘力的には直哉の10分の1くらいなんですが・・・。

 

「もういい!!ぶっ殺したる!!」

 

 やべー!!ブチ切れてる!!直哉の攻撃は速すぎて避けられないんだよね。ひじょーにやばい!!

 

 ピコンッ!!

 

 突然、チナツの脳裏にあることが閃いた。

 

 そういえば、さっき写メった本の十種影法術の記述の所に、影を操るって書いてたよね?そうだ!!落とし穴つくってやろww!!

 

「くらえ!!!最高速度でぶち抜いたる!!!」

 

「はまれ!!!落とし穴だよ!!」

 

 直哉は投射呪法を扱う。その術式は、事前に1秒間に24分割した動きを作ることで、高速移動ができるというものである。しかし、その動き通りに動けなかった場合、1秒間フリーズしてしまうという弱点がある。

 

 ズボッ!!

 

 直哉はチナツが呪術を覚え始めていることを知らない。だから、急に現れた影の落とし穴に気付かずに無様に足をはめてしまった。体制を崩して動きをミスってしまう。そのまま1秒間フリーズに入ってしまった。

 

「なっ!!!」

 

「よっしゃ!!!チャーンス!!!真希ちゃん!!行くよ!!」

 

「あいよ!!」

 

 直哉がフリーズしている間に、真希ちゃんと私で直哉に勢いよくぶつかって吹っ飛ばした。直哉は吹き飛び、庭の池にポチャンと落ちていった。

 

____________

 なんていい日なんだろう!!実家に帰るのに心配事が多かったが、あんなに楽しい経験は滅多にないぞ!!結局、あの後直哉は「寒い・・寒い・・・誰か・・助けてやぁ・・」と情けない声をあげて家の者に保護されていた。あれは傑作だったね。

 

 真衣ちゃんには会えなかったけど、真希ちゃんは元気そうで良かった。良くあの家であんな元気に育ったなぁ・・。素が強い子なんだろうなぁ・・。

 

 チナツは夕方になって寮に帰って行った。だが、そこで携帯が鳴った。

 

 ん?・・・・あぁ、ガッテムからだ。

 

「もしもし?」

 

「あぁ、チナツ。済まないが明日は日曜日だが任務が入った。単独任務だ。3級昇格試験が掛かっている。必ず行け。詳細はまた後で送る。」

 

「へ?マ・・マジですk___」

 

「プツン_____ツー・・ツー・・。」

 

 まじかよーーー。単独任務かぁ・・・ちょっと緊張するなぁ・・。まぁすぐ3級に上がりたかったから別にいっか♪。 




読んでくれてありがとう!!次回も頼む!!


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5話 目覚める領域

主人公:禪院チナツ(呪術高専東京校1年生)

 術式:三種影法術

 能力:三種の武器を影から取り出すことができる。影を操ることができる.
 ①弓矢
 ②???(未所持)
 ③八握剣異戒神将魔虚羅(未所持)←一応、十種影法術の派生のため、ここだけ共通している。

 等級:4級


 場所:東京都〇〇区〇〇小学校

 時間:10:00

 

「この廃校と化した小学校には3級呪霊が発生しています。単独任務ですが、あなたの実力なら大丈夫でしょう。では、お気をつけて。」

 

「分かりました。行ってきます。」

 

 補助監督の方が下した帳の中に入って行く。帳を超えるとまるで夜みたいに暗い。こえーからさっさと終わらすぞ。3級呪霊一体だって??チョロいチョロい。

 

 校舎の廊下を進むと、遠くの教室から3級呪霊だと思われる声が聞こえてきた。

 

「キィイイイ!!!キィイイイ!!!キィイイイイイケエエエエエ!!!!」

 

 うるせえなぁ・・・。まぁ、探す手間が省けたね。

 

呪霊の声がした教室のドアを蹴り破って中に進む。黒板の前に堂々とその呪霊はいた。人型の呪霊だった。髪が長く、顔がすべて髪で覆いつくされていた。眼鏡がこめかみから生えてる。眼鏡も超デカい。眼鏡レンズはグルグルだった。

 

「何か分かんなけど・・・。超キメーー!!」

 

「キィイイイケエエエエエエエ!!!!!!ハナシヲキィイイイイイケエエエエエ!!!!」

 

「話を聞けだって??そんな大声なら聞こえてる____」

 

 ブスッ!!!

 

 気が付いた時には、左肩に鋭い痛みが走っていた。反射的に傷口に目をやる。左肩を何かが貫通していた。形状は見えないが、銃の弾丸のようなものだろう・・。

 

「い”っ!!いってええ!!!」

 

 蹴破った教室の扉をその呪霊に投げつける。呪力強化をしているため、扉を投げつけることは容易い。しかし、呪いは呪いでしか祓えないため、ただの時間稼ぎに過ぎない攻撃だ。その稼いだ時間で廊下に逃げる。一旦立て直さないとヤバい状況だ。

 

 血が滴る。超痛い。前のエアガン呪霊の時とは訳が違う。本当に同じ3級か??・・・・同じ3級だろうな。

 

 前に五条に言われた。「お前呪力ガード知らねえの?」って・・。やらかしたな。また呪力ガードを忘れていた。そのせいで、左肩をやられた。どーすんだこれ?出血止まんねえぞ?

 

 ドゴォ!!   ドゴォ!!!!

 

 あの呪霊の攻撃で廊下の壁が貫通した。運良くチナツには当たらなかったが、このままではいずれ当たるだろう。

 

 連射できないっぽいけど、威力だけならやっぱりエアガン呪霊以上だな。今からでも呪力ガードをしておこう。

 

 チナツは、壁を貫通させた物の正体を目にする。それは、チョークだった。だが、ただのチョークではない。呪力で強化してあるチョークだ。それは、チナツの左肩、壁を貫通させる硬度だ。決して侮れない。

 

「なるほどね・・・。チョーク呪霊か・・。学校に出そうな呪霊だな・・。」

 

 足元の影から包帯を取り出す。それを左肩に巻き付けて簡易的な止血をする。ひとまず、これで失血死することはないだろう。

 

 やりやがったなあの呪霊。でも、私は指南書を読み込んだことで術式の解釈を広げた。今は2つ目の武器が使えるんだよ。その武器はあのチョーク呪霊と相性が良いだろう。

 

 チナツは立ち上がると、再び教室の中に入って行った。

 

「キィイイイ!!ケエエエエ!!!」

 

 チナツが目に入ると、チョーク呪霊は再び高音で吠えた。そして再びチョークを投げつけてくる。

 

「バリア展開!!!」

 

 チナツは手のひらをチョーク呪霊に向ける。すると、そこに薄い水色のバリアが出現する。それが、チナツの2つ目の武器である”盾”だった。この武器は、手のひらを向けている方向の攻撃を防ぐという能力を持つ。限界はもちろんあるよ。

 

 チョーク呪霊のチョークはチナツのバリアに当たると、白い煙となって蒸発した。

 

「よし!!オッケーオッケー」

 

 このバリアには術式が組み込まれている。その順転の能力は、相手の攻撃を吸収し、それを私の呪力へと変換するものだ。つまり、チョーク呪霊が私にチョークを投げつければ投げつけるほど私の呪力に変換できるんだよ!!

 

「キィイイイ・・・・・」

 

 チョーク呪霊はチョーク攻撃がチナツに通じないと察すると、たじろぐ。そして、教卓の影に身を潜めた。

 

 なるほど・・・。3級呪霊ほどになると、回避・防御行動にも頭が回るのか・・。まぁ、そこに隠れるのは命取りだよ。

 

豪烈の弓矢(ゴージャスアロー)!!」

 

 教卓もろともチョーク呪霊を破壊した。呪霊の消失反応が起こっているため、任務達成だろう。だが、すぐに左肩の痛みが襲ってきた。

 

 くっそ・・。やらかした・・意外に出血が酷かったんだな。早く帰ろう・・。

 

 チナツは、左肩を押さえながら、校舎を出て校庭に向かう。だが、ここで違和感を覚えた。

 

「帳なんで上げてくれないんですか・・・・?補助監督の人・・・見てます・・?」

 

 独り言でそう呟くが、内心結構焦っていた。左肩の傷が痛ましく、早急に手当てを受けたかったからだ。

 

 しかし、その時だった。

 

 背後から何者かがナイフを振り下ろしていると私の本能が教えてくれた。咄嗟に傷を負っている左腕を出していた。

 

 ナイフが左腕に突き刺さる。だが、首を斬られずに済んだ。ナイフを振り下ろした犯人は次にチナツを蹴り飛ばした。脚力が強く、校庭のサッカーゴールまで吹っ飛び、無事にゴールしてしまった。

 

「ぐっ・・!!誰だてめえ!!死ぬほど痛えーぞ!!!」

 

 どんな顔してんだ犯人は!?・・・・おぉ・・白髪じじい!!貴様か!!

 

「てめえ!!夜蛾先生の言っていた呪術師殺しか!?」

 

 左腕の感覚はすでに無くなっていた。もはや、包帯を巻く時間も無ければ巻いたところで意味もないだろう。私が助かるためには、早急にこの白髪じじいを倒してこの帳から出ることだ。

 

「ほっほっほ。やめてくれよ。ワシは呪術師殺しではない。そう見えたのなら光栄じゃがな。」

 

 このじじい。ナイフ以外にも銃を持ってやがる。等級は・・?術式は・・?今の私で勝てるか?

 

「呪術師殺し・・・の事を知っているのか・・?」

 

 頭がクラクラしてきた。話している時に不意打ちかまして。一撃で仕留めるしかない。

 

「あぁ・・。あれはワシら呪詛師の中では都市伝説みたいな物じゃからな。実物を見たことはないぞ。」

 

「そうかよ!!豪烈の弓矢(ゴージャスアロー)!!」

 

 不意打ちで弓矢を放つ。左腕を根性で動かして放った一撃。しかし、白髪じじいは避けやがった。

 

「おっと・・。危ないのう。最近の若者は老人をいたわらんかい。心配しなくても、助けならこないぞ?ワシがお嬢ちゃんの仲間の内側に二重に帳を張っておるからな。」

 

 そういうこともできるのか・・・・。じゃあ、どっちみちこいつを倒さないとな。出血の事はひとまず忘れろ。豪烈の弓矢(ゴージャスアロー)は範囲が狭すぎて当てるのは難しいだろう。

 

「お嬢ちゃん。傷を負っている女子(おなご)も悪くないのう。ほっほっほ。」

 

「そう思うなら。見逃せよ。こっちはまだ4級術師なんだ。弱い者いじめして楽しいですか?」

 

 なに煽ってんだ私は・・・。自分の立場を弁え____

 

 バン!!

 

 白髪じじいが発砲。チナツは咄嗟に手のひらを向けてバリアを展開する。しかし、銃弾はいきなり軌道を変化させ、バリアの横からチナツに迫っていく。

 

「マジっ!?」

 

 咄嗟に回避を試みるも、右足の太ももをぶち抜かれた。呪力ガードはしていたはず・・・。それなのに・・銃弾は簡単に私の右足に貫通していた。

 

「くっ・・・・ッつうう・・。」

 

 痛みで声が出ない。校庭の上でうずくまる。足をやられたおかげでもう身動きは取れないだろう・・。完全にやられた・・。

 

「ワシは2級呪詛師じゃよ。銃弾にもそれなりの呪力を込めておる。だからこうなる。」

 

「おのれ・・・・」

 

「あ・・。そうじゃ。特別に教えてあげよう。ワシの術式は銃弾の軌道を操作できるのじゃ。どうじゃった?すごかったじゃろ?ワシの攻撃。お嬢ちゃんのバリア無駄じゃったね♪。」

 

 うわぁ・・・くそうぜえ・・。けど、それよりもガチで死ぬなこれ・・。2級かよあのじじい・・。格上だったのかよ・・。

 

「さっき弱い者いじめしてて楽しいかどうか聞いておったな??あぁ!!楽しいぞ!!ワシは死ぬまで弱者を蹂躙する!!楽しいぜ!!」

 

 ()()()()()()()

 

 ゲスめ・・!!!あぁ分かったよ!!私の負けさ!!だが、こいつは死んでも呪ってやるからな!!じじい!!

 

「布留部由良由良・・・・」

 

 チナツはせめてこの2級呪詛師を道連れにしようと。調伏の儀を始めようとする。だが、その時の禍々しい呪力で呪詛師の男も何かを察したようだった。

 

「なっ!?なんじゃ!!!そんなことは聞いておらんぞ!!!!そんな()()()()()()!!!!恥さらしめ!!!」

 

 呪詛師の男は、悪い予感を察し、尻尾を巻いて逃げようとする。チナツはもう身動きが取れない状況だった。

 

「ま・・待て・・・。」

 

 あんにゃろう・・。だが、今からでも間に合うわ!!お前も道連れに・・・・。ん?ちょっと待て・・あのじじい今私の事みっともないって言わなかった?どの口が言ってんだ?アイツマジで・・・()()()()()()()

 

「じじい・・・。やめといてやるよ・・。かかってこい・・」

 

「いや、どのみち嬢ちゃんは死ぬじゃろ。さっさと死ね。気色悪い・・。」

 

 呪詛師の男はそう吐き捨てて立ち去ろうとする。確かに、チナツは自力で帳の外まで歩いていけないだろう。放っておけば勝手に死ぬのだ。

 

 私は、ただ強く呪った。この男を逃すまいと。囲う・・・囲んで捕らえる・・。捕まえて・・・当てる・・・。当てて殺す。それだけを想った。

 

「領域展開。神器影星(じんぎえいせい)

 

 呪詛師の男とチナツを囲うように、バリアが4方向に展開される。また、それは地上、空中にも展開され、箱のように2人を囲んでいた。そこから、現実と切り離されたように視界が黒い影に沈む。呪詛師の男の目に最初に移ったのは、黒い空間に星々が光る情景だった。

 

 五条と夏油は未だ破れるどころか生命を危ぶまれる敵と出会った事がない。それ故に自身の持つ潜在能力(ポテンシャル)は未だに未知数。だが、チナツはこの段階で生と死を彷徨い、新たなステージへと足を踏み入れていた。

 

「貴様!!何をした!!」

 

「雑魚なりの長所だよ!!成長が早いってな!!」

 

 この領域内で呪詛師の男が最初に感じたのは、足元の違和感だった。地面が沼のように男を引きずり込む。その下がどうなっているかは知るよしもない。だが、足を呪力で強化することで沈むことは免れたようだ。

 

「なぜ!!!貴様のようなクソ雑魚に!!」

 

「てめえ!!逃げられねえからな!!!」

 

 呪詛師の男の等級は2級術師。領域展開が存在することは知っていたが、それに出会った事はなかった。また、今後もそれを出してくる敵を襲う事はないと思っていただろう。だが、それと出会ってしまったのだ。

 

「ワシは死ぬまで弱者を蹂躙する!!!認めんぞお前はああ!!!」

 

 呪詛師の男が唯一知る領域の情報。それは、術式が必中するということ。そのため、男は必中攻撃がくるまえに銃を発砲した。

 

 広げろ。自由に。術式の解釈を!!

 

 空中で盾が出現する。チナツは手のひらを向けていない。

 

 ノーモーションで出現したバリアに銃弾は吸収され、白い煙と化す。

 

「くっ!!何が起こっている!?」

 

パチンッ!!

 

 呪詛師の男が混乱する中、チナツが右腕の指を鳴らすと呪詛師の男が体内から発光して、()()した。

 

「ぐああああああ!!!!」

 

 領域が崩壊する。呪詛師の男は白髪がすべて燃え尽きていた。また倒れたまま動かなくなり、帳も下ろされた。

 

「へへ・・。ざまーみろ・・。」

 

 チナツもそこで力尽き、校庭で気を失った。




読んでくれてありがとう。次回も頼む!!


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6話 家入は冷たく乾いていたよ

主人公:禪院チナツ(呪術高専東京校1年生)

 術式:三種影法術

 能力:三種の武器を影から取り出すことができる。影を操ることができる.
 ①弓矢(呪力で矢を生成し放つ)
 ②盾(手のひらを向けている方向の攻撃を吸収し、自身の呪力へと変換する)
 ③八握剣異戒神将魔虚羅(未所持)←一応、十種影法術の派生のため、ここだけ共通している。

 等級:3級

 領域展開:神器影星(じんぎえいせい)(黒い空間に無数の星が輝いている情景。)


 目が覚めると、保健室のベッドだった。

 

 そういえば・・・。私はあの任務であの白髪じじい(2級呪詛師)に領域を展開して倒した後、力尽きたんだった。体の傷どうなってんだろう・・。

 

 チョーク呪霊に左肩を貫通させられた後、白髪じじいにナイフで左腕を切られ、右足大腿部を銃弾でぶち抜かれた。出血も酷かったし、生きてるのまじでありがてえ!!!

 

 自身の体を見ると、すでに傷は塞がっているようだった。だが、包帯が巻いてある。何より体調がすこぶる悪い。

 

 自身の体の現状を知ったところで、カーテンがシャーと開き、家入が顔を出した。

 

「どう?体の具合は?」

 

 か・・・神様・・?

 

「家入ちゃんありがとー!!まじで死ぬかと思ったよー!!」

 

「そんな大きい声出さないで。」

 

「はい、すみません。」

 

 家入はチナツのおでこに触れて熱がないか確認している。

 

「まだ少しあるな。反転術式後は体温が上がりやすいんだ。もう少し寝てなさい。」

 

「は・・ハンテンジュツシキ?」

 

「説明めんどいから簡単に言うと、呪力操作で体治せんの。」

 

 まじ・・?予想もできないくらいすごいんだけど・・・。全くできる気がしねぇ・・。夜蛾先生も他人を直せる日本で唯一の存在って言ってたし、ガチですごいんだろうなぁ・・。

 

「あぁ、アンタが倒したあの2級呪詛師。無事に高専が捕まえたから。心配しないでね。」

 

 ほぉ・・・。なるほど・・(_´Д`)ノ~~オツカレー。グッバイじじい。

 

「アンタすごいね。2級の奴に勝てるなんて・・。」

 

「そ・・そんなことないよ~。」

 

「フッ・・。顔赤いよ?熱上がった?」

 

 やばい・・褒められることには慣れてないんだ・・。超照れる//。

 

「じゃあ、熱下がるまで安静に寝てなよ。下がったら勝手に戻って良いからね。あと、治療台でアンタの任務報酬から7割頂いとくからね。よろしく~。」

 

 へ・・?ちょちょちょ待って・・。ナナワリですか・・!?七割は多くないっすか・・?そりゃぁ・・あなたは私の命の恩人ですが・・私もその・・結構頑張ったじゃないですか・・?せめて・・5割・・5:5でウィンウィンでいきましょうよ!!

 

「家入さん・・?7は多くないっすか・・?」

 

「大丈夫大丈夫。じゃあね。3級術師昇格おめでとう様。」

 

 いや大丈夫じゃねーよ!!あっ・・そうか。私もう3級術師か。

 

 家入はそう言うと、保健室から出て行ってしまった。

 

 _________

 後日。体調が治った私は教室で五条&夏油に煽られていた。

 

「は~い。また雑魚任務で負傷してやんの~。」

 

「こらこら。悟そんな言い方は良くないよ。ただでさえ、3級呪霊に瀕死の重傷を負わされ、己の実力不足に絶望しているところなんだから。もっとデリケートに接してあげないとね。」

 

 だから、そういう言い方が一番癪に障るんだよ。

 

「お前・・。さては摩虚羅出そうとしたな?呪力の痕跡残ってんぞ・・?」

 

 はっ!?おまっ!?それはアカンよ!!

 

「ちょっ!!やめてって・・。出してないんだからっ!!夜蛾先生に聞かれたら___」

 

「なんだとチナツ??なんだそれは!!ガッデム!!」

 

 クソが・・。夜蛾先生にバレたじゃないか?死にそうになったので自殺して道連れにしようとしましたなんて、言えないだろ・・。説明するの・・大変だぞ・・・。おのれ・・六眼・・いや、五条悟・・。

 

「そうだ。チナツ。お前にはこれを書いて提出してもらう。」

 

 夜蛾先生が私の机の上にプリントを置く。そこには、”任務後報告書”と書かれていた。

 

「あれ?こういうの、前ありました?」

 

 前回の初任務ではなかったような・・・。

 

「前回は、代表して夏油が提出してくれた。」

 

 えっ?そうだったの?私知らなかったよ・・。

 

「あぁ・・・。夏油・・ありがとう・・。」

 

「礼はいらないよ。強者は弱者を守るためにあって______」

 

 はいはい。聞きませーん 。でも、聞かないと不機嫌になるから聞いてる演技しま~す。すぐ怒るのが、五条。怒らせたらやばいのが夏油だからね。

 

「では、私は出かけてくる。家入は休暇だ。今日、お前ら3人は自習だ。夏油と五条はプリントがあるからそれを解け。チナツは先に、報告書を書いておけ。」

 

「は~い。」

 

 夜蛾先生が教室を出て行く。よし、じゃあこの報告書を片付けますか・・。

 

 だが、報告書を書いていると五条と夏油が後ろから覗き込んで見ているのが分かった。

 

「おお!3級術師になったんでちゅねぇww」

 

「すごいでちゅ。すごいでちゅww。」

 

 だrrrrrっる。

 

「っるさい!!プリントやってろ!!」

 

「さては、お前、2級呪詛師に襲われたらしいな。」

 

 え?いきなりガチトーンじゃん。どしたの五条?

 

「どうやって倒した?」

 

「あぁ・・り・・・。いや、普通に勝った。」

 

 危ない危ない・・・。領域のことはまだ隠しておきたい。どうせ面倒なことになるから。

 

「傑、信じられるか?」

 

「うん。うそつきな子だね。」

 

「はぁ”?(まぁ、嘘ついてるけど・・)」

 

「ありえねぇだろ・・。お前が2級呪詛師に勝てるわけがねぇ・・。どんなイカサマを使ったんだ?」

 

 五条が眉間に皺を寄せて、睨んでくる。本当に私の事嫌いなんだな。

 

「なんでもいいでしょ?雑魚が雑魚に勝っただけなんだから。あなたにとってわね。」

 

「チッ。」

 

 チナツの言葉に、五条は舌打ちで返す。彼なりにそこそこ警戒していたんだろう。

 

「悟。そう警戒する必要はないよ。禪院さんがどれだけ強くなろうと、悟に届くことはない。また、悟を貶めようとする勇気もないだろうね。」

 

 夏油が自然にそう言う。

 

「はい。そーゆー事です。」

 

 そこからは特に詮索してくることはなかった。ひとまず、領域の事は隠せて良かった。安心してよ。私の攻撃が五条に必中したって、痒い程度で済むだろうからさ。

 

 ________

 あれから、私は寮の自室で、部屋を空間の枠組みと見立てて何度も領域を試した。すると、色々分かったことがある。

 

 まず、領域内の広さは、現実の広さとは異なるということである。部屋内で領域を展開しても、中では黒い空間に星々が輝いている情景が地平線状に続いていた。

 

 また、領域内の時間経過は現実の時間経過の一瞬の時間にすぎないという事も分かった。領域展開できる時間を伸ばそうと、10分近く耐えていたのに、現実世界に戻れば、1分も時計の針が進んでいなかったのだ。

 

 そこで、私は閃いた。領域を長時間展開できれば、短時間で長時間活動できる部屋、つまりはドラゴンボールで言う”精神と時の部屋”が作れるではないか!!

 

 そして、その修行を始めた。領域は全身の呪力を酷使する。体内で呪力エネルギーが激しく循環しており、肉体の筋肉や肺活量が酷使されていた。それはまるで、マラソンのようだった。

 

 だが、長時間展開していても、それは現実では一瞬の時間なのだ。また、体内でエネルギーを循環させ、肺活量と筋肉をいじめぬくことで、フィジカルとスタミナのトレーニングにもなった。

 

 これほど効率の良いトレーニングがあるだろうか?そんなの私は知らないね!このトレーニングをやろう。

 

 チナツはひたすら繰り返した。領域展開をし、全身を酷使する。領域展開直後に術式が焼き切れている間に、プロテインなどの栄養剤を体内に詰め込んで破壊された細胞、筋繊維を修復する。術式回復後に再び領域展開。それを繰り返した。

 

 体内脂肪はみるみる燃焼されていき、栄養剤やプロテインがその分を補い、筋肉へと変わって行った。呪力量は日に日に増えていき、領域展開時間も長くなっていった。肺活量が増え、常時の心拍数が下がっていき、スタミナもついていった。

 

 そのトレーニングを、チナツ毎日続けていた。まさに精神と時の部屋だ。どれだけ長い時間トレーニングをしても、現実政界での時間進行はほとんどしていない。その状態で、チナツは1週間ほどで見違えるほど成長していた。

 

 ___________

 1週間後。鏡に映る自分の姿を見る。

 

 あれ・・?なんか私ゴツくない・・?なんかアスリートみたいな体型に変わってない・・?

 

 普段の行動からも自身の肉体の変化は気づいていた。力が良く入る。体の体重は日に日に重くなっているはずなのに、身が軽い。そして何より、肌や体調の調子がすこぶる良いではないか!。

 

 あのトレーニングは効率良いけど、飽きたしな。今の状態で外で体を動かしてみよう。

 

 チナツはそう思い、外へと出て行った。

 

 まず、100メートルを走ってみる。今の、鍛え抜かれた肉体ではどれほど走れるだろうか?もちろん、全身を呪力強化して全力で臨もう。

 

 よ~いスタート!!・・・・・・・・・・・・・・・・ゴール!!

 

 自身で持っていたストップウォッチのタイムを見る。

 

 おぉ!!”4.23”だぁ!!・・・・・・世界記録で草。

 

 次、砲丸投げ。なんか倉庫にあったから勝手に使わせてもらおう。

 

 投げ方とか知らん。野球投げでいいや。

 

 せーの!!

 

「おりゃっ!!!」

 

 6キログラムとは思えないほど軽い球をぶん投げる。投げた後に、メジャーで距離を測った。

 

 おぉ!!”38メートル”だ!!

 

 いやさぁ・・自分で言うのもあれだけどさ、ゴリラじゃん・・。私。まぁ呪術師はみんなそんなもんか。

 

 そうだ!!今の私ならあのカッパ呪骸に勝てるんじゃね?

 

________

 楽しみにしていた。体術訓練の時間がやって来た。

 

 さぁ、カッパぬいぐるみ!!成長した私と勝負だ!!

 

 この日も、夜蛾先生はどこかへ消えてしまい、五条、夏油、私になってしまった。

 

 だが、今回は五条と夏油はチナツをすぐに冷やかさない。2人とも、チナツの肉体の成長の変化に気付いたようだ。

 

「お前、ドーピングした?」

 

 五条がそう言うのも無理はない。この短期間でこれほどまでの肉体改造。普通なら考えられない。

 

「プロテインとチャージジュースなら毎日飲んでるよ。もちろん普通のご飯も食べるよ。ご飯は毎日3杯おかわりすることにしてるよ。」

 

 これは事実ね。

 

「では、見せてもらおうじゃないか?」

 

 夏油が値踏みするようにそう言う。

 

 2人が見守る中、チナツはカッパ呪骸と向き合った。

 

 カッパ呪骸が向かってくる。全身を呪力で強化。トレーニングで鍛え、前より大幅に増えた呪力量。それを身に纏うと、カッパ呪骸の動きがスローに見えた。

 

 遅いな・・・。このスピードなら・・。余裕で右ストレートを合わせられる。

 

 カッパが向かってくる。ギリギリまで引き付けてから右ストレート。を繰り出していく。最近、()()()()()()にハマりましてね。トレーニングの息抜きに、スマホで課金して全巻読ましていただいてますよ。だから、”マジ殴り”!!

 

 ドゴォオオオオ!!!

 

 凄まじい衝撃と音が校庭に響く。カッパ呪骸はチナツから70メートルほど遠くまで吹っ飛んだ。

 

「よっしゃ!!勝った!!ワンパンで!!」

 

「なっ!!」

 

「おや?これはどういうことかな?」

 

 五条と夏油の二人は唖然としていた。だが、五条はすぐに頷いて前に出る。

 

「禪院。次は俺とやるぞ?安心しろ。術式は無しだ。」

 

「は?嫌です。」

 

「どうして嫌なのかい?」

 

 五条の提案を即拒否したチナツに、夏油が笑顔でそう聞き返す。

 

「だって、聞いてないもん。」

 

「あのカッパはもう使い物にならねえ。このままサボるつもりか?」

 

 五条が真顔でそう言うため、チナツは言い返すにしぶしぶやることになってしまった。

 

 まじかよ~。実力差酷くないか?それに私嫌われてるし、フルボッコにされんじゃね?

 

 ええい!!ままよ!!

 

 チナツは右ストレートを五条の顔面に目がけて繰り出す。

 

 五条は左手でその拳を受け止めた。

 

 え?完全に衝撃が抑えられてる。っていうか手大きいな!!

 

「もっと腰に力いれろよ。」

 

 五条がそう言ったのと同時に、五条の拳がチナツに迫っていく。完全に反応できずに、反射的に目をつぶってしまう。だが、衝撃はこなかった。

 

 え?寸止め?

 

 殴ってこなかったので、回し蹴りをしようと思ったが、気づいた時には五条は背後にいた。

 

 速すぎんだろ・・。

 

 ストンッ・・。と音がして、首に弱い衝撃が走る。痛みはないが、全身から力が抜けていった。校庭に倒れる。意識はあり、体の痛みも全くない。だが、体を動かせなかった。

 

 何だ・・・?何を食らった?

 

「ハーイ俺のカチィ♪なるほどな。身体能力だけだな。体術の基礎もなっていない。」

 

「パワーとスピードは出来上がっているが、その動きだと呪力操作で相手に動きが読まれてしまうね。そんなものでは一生パンチが当たることはないだろうね。」

 

 うぐぐ・・。そりゃあだって習ったことないもん!

 

 だが、五条と夏油の言葉を聞いて分かった。筋力がついても、呪力量が増えたとしてもダメなのか。これは非常に興味深い情報だな。

 

 おっと・・。体動かせるようになった・・。

 

 時間差で体の感覚が戻り、チナツは立ち上がる。

 

「じゃあ、その体術と呪力操作について教えてくれない?」

 

「え?嫌だよ。めんどくせーもん。」

 

「1時間3000円なら構わないよ。」

 

 頼まなきゃ良かったよ!! 




読んでくれてありがとう。次回も頼む!!


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7話 五条悟はカッコよかった

主人公:禪院チナツ(呪術高専東京校1年生)

 術式:三種影法術

 能力:三種の武器を影から取り出すことができる。影を操ることができる.
 ①弓矢(呪力で矢を生成し放つ)
 ②盾(手のひらを向けている方向の攻撃を吸収し、自身の呪力へと変換する)
 ③八握剣異戒神将魔虚羅(未所持)←一応、十種影法術の派生のため、ここだけ共通している。

 等級:3級

 領域展開:神器影星(じんぎえいせい)(黒い空間に無数の星が輝いている情景。)


 チナツが3級術師に昇格していた裏で、夏油傑は1級昇格をかけた単独任務を成功させ、無事に昇格を果たしていた。そして、五条、夏油、禪院での2回目の合同任務が行われることになった。

 

 爽やかな風、セミの鳴き声、木々の葉っぱが揺れる音。そう、ここは森林を深く進んだ場所だ。ちなみに、今任務中ね。なんか長野県の心霊スポットになっている廃墟に2級以上の呪霊が多数発生しているらしくて、私と五条、夏油の3人でそれらを殲滅しなけれならないらしい。

 

「終わってんな。補助監督さんよぉ・・。今回は着いてきさえ、しねぇじゃねえか?。」

 

 五条がこの場にいない補助監督の悪口を言いながら、森林を踏み歩き進んでいる。

 

「仕方ないよ。この道は、車では通れないからね。それに、帳なら私達でも簡単に下ろせるからね。補助監督の人がいなくたってなんの問題はないさ。あれはいてもいなくても変わらないさ。」

 

 いや夏油、それは地味に補助監督の存在意義ありませんって言ってるでしょ。この場に補助監督の人いなくて良かったね。っていうか・・。水っ・・。水をくれぃ・・。夏が近づいてきたな。すっげえ暑いや。

 

 チナツは、足元の影から水筒を取り出そうとしている。

 

「ん?あれっ?すぐに出てこねえ・・・。」

 

 だが、探っているのに水筒がすぐ手に当たらない。思わず立ち止まってしまった。

 

「オイ、お前何してんの?あくしろよ。」

 

「ちょっと先行ってて。2分で追いつく。」

 

 五条が振り返って、チナツを怪訝そうな目で見ている。チナツは先に行かせることにした。なぜなら、喉が渇いたので水が飲みたいからだ。

 

「なるほどね・・・。あ~りぃ!!!!」

 

 五条はそう言ったのとほぼ同時に高速移動してチナツの足元の影に手を突っ込む。それに驚いてチナツは後ろに尻餅をついてしまった。

 

「っしゃ!!も~らぃ。」

 

 五条はチナツの影の中から水筒を先に取り出したのだ。そしてそれを勝手に飲み始めた。

 

「ゴクゴクゴクッ!!・・・うっ・・まっず・・。ナニコレ、プロテインかよ!!」

 

「フッ・・。私意識高いんで。・・・じゃねえよ!!なんで先に取るんだよ!!返せ!!」

 

 五条め!!貴重な水分を奪いやがって、手ぶらで来たくせにぃ!!

 

「六眼で影の内側まで見え見えだっつーの。不味かったから返すわ。こうやって横取りされたくなかったら今度から任務が重なったら仮病を使うんだな。ケッ!!」

 

 五条は水筒をチナツに投げ返すと、そう言って先に進んでしまう。

 

「はは。禪院さん。気にしないでね。もし、気にしちゃう様なら、私からも仮病を使う事をおすすめするよ。じゃあ、先に行ってるからね。」

 

 夏油がいつもの作り笑顔でそう言う。そして、何事もなかったかのように歩いていってしまった。

 

 何この露骨な嫌がらせ・・・。そんなに私が任務にいたら嫌なの?まぁ、実力差的に邪魔だと思われてるかもしれないけどさ。あいつらなんなんまじで?最近、直哉の方が可愛く見えてきたわww。

 

「帰らねーつーの。今回は2級昇格がかかってるんだから・・・。」

 

 チナツはそう独り言を呟いて2人の後を追って歩き出した。

 

 この任務を無事に達成させれば、2級術師に昇格できる。そうすれば、少なくとも直哉にデカい顔されなくて済む。それと、私は今回の任務で目標がある。それは、絶対に負傷しないことだ。なぜなら、もし負傷してしまい、家入の世話になるようなことになれば、任務報酬から7割引かれるからだ。この損害は非常に大きい。

 

 後、今回の任務は2級以上の呪霊が発生すると聞いているが、私は3級の実力だ。だから、必然的に五条、夏油の力を借りなければならないと()()は思った。だが、私にもプライドというものがあってだね。借りんぞ。絶対借りんからな。私は2級呪霊をボコボコにした2級呪詛師をボコボコにしました。だから必要ない。

 

 そう決心を固め、チナツは森の中を深く深く進んでいった。

 

 _______

 スマホはとっくに県外、グーグルマップで見ても分からないくらい深くまで来ている。ようやく森の奥にある心霊スポットの廃墟に到着した。

 

 使われなくなった別荘だろうか?階数はおよそ3階まである。小規模な小学校ほどの大きさの別荘だ。心霊スポットと言われるだけあってホラーな雰囲気がある。中には呪霊がたくさんいそうだ。

 

 夏油が帳を下ろして任務が始まった。いざ始まると緊張するもんだな。

 

「では、禪院。俺がお前に任務を与える。拒否権は無い。」

 

「え?どしたの急に・・。」

 

 五条が廃墟に入る前にいきなりそう言いだしたので耳を疑った。

 

「この帳内に呪詛師が侵入してくるかもしれない。だから、お前はここで見張っていろ。以上、簡単な任務だ。」

 

「プッ・・。」

 

 傍で夏油が吹き出したのを見て、私は五条が私を省こうとしているのだと分かった。

 

「嫌だね。こんな森林奥深くに呪詛師など来るわけがない。私も任務に参加する。」

 

「足手まといだ。勝手に死なれたら俺達の経歴が汚れる。分かるだろ?」

 

 上から見下してくる五条の目を下から睨み返す。今更だけど、身長高すぎだろ・・。

 

「チクるよ?いいの?」

 

「あ?」

 

 私、学校いったことないけどさ。よくいるじゃん。クラスですぐ先生にチクる腹立つ女子。そっちがその気なら私はそれになってやるぜ!!へっへっへ。

 

「おっと。悟。それは禪院さんが可哀そうだよ。仲間外れはやめてあげよう。」

 

 ()()()と言った傍から夏油が手のひらを返してきた。相変わらずだな。性格よさそうに見えて、実際夏油の方が悪質なんだよなぁ・・。まぁ、チクるという発想が浮かんだ私はそれ以上に性悪なんだろうけどさ。

 

「チッ・・。勝手に死んだら殺すからな。」

 

「へいへい。」

 

「・・・はぁ・・。傑、作戦はどうする?」

 

「3つに分かれよう。それが一番効率が良い。」

 

 五条は夏油に質問をしたはずだった。だが、先にチナツがそう答えてしまった。

 

「は?俺、傑に聞いたんだけど・・。」

 

「良いんじゃないかい?彼女自ら一人で行くと言っているんだ。よほど自信があるんだろう。まぁ、危なくなったら助けてあげればいいだけのことさ。」

 

 そうそう・・。邪魔がられるくらいなら、一人の方がマシだからな。何よりその方が平和的だ。

 

「あっそ。勝手にしろ。一人で死んでも知らねーからな。」

 

 チナツは五条のその言葉を無視して先に廃墟へ入って行った。五条と夏油もその後に続いて入って行き、すぐに各々で分かれて呪霊の探索を始めた。

 

__________

 本当のことを言えば、もっとクラスメイトと仲良くしたいです(泣)。だって、生まれて初めての学校なんだもん。五条は家柄の仲もあって嫌われるのも仕方ないと思うけどさ、夏油までなんでそんな扱いするわけ?

 

 夏油は五条と仲良いからなぁ。2人して私を嫌っているのか・・。トホホ。ひでーよ。

 

 前、休日に新宿で買い物してたら夏油がいました。重そうな荷物を持っているおばあさんを助けていました。根は良い奴なんだろうな。私にも優しくしてくれよ。

 

 家入も何かお金の付き合いみたいになっちゃったし、一治療に着き任務報酬のほとんどをガッポリいかれます。いや、税金かよって感じです。前に筋肉痛を治してくれないかって頼みに行ったら、30分1000円って言われました。いや、風俗かよって感じです。もういいです。

 

 チナツはそんなことを考えながら廃墟の中を進んでいると、大広場に出た。

 

 最初に目に入ったのは、大きな龍が体を丸めて寝ていたのだ。

 

 お?あれって呪霊だよな・・?で・・デカくね・・?あ・・?起きた!!

 

 チナツが大広場に入った瞬間、その龍は大きな目を開けた。

 

 この龍は虹龍と言われる呪霊であり、等級は1級だ。つまり、クソ強いということだ。

 

「ギュロロロロロォォォオオオ!!!!」

 

 虹龍は激しい鳴き声を上げながら体をくねらせながらチナツへ突進してくる。当然のように空中浮遊していた。

 

 やっべえ!!!来た来た!!速すぎんだろ!!!

 

 チナツは思わず、手のひらを向けてバリアを張る。

 

 メキメキメキッ!!!

 

 バリアに虹龍が衝突してからすぐにヒビが入り始めた。

 

 嘘だろっ・・!!やばい破られる!!

 

 バリアが虹龍に破られた瞬間、虹龍が大きな口を開けてチナツに食いかかろうとツッコんできた。反射的にジャンプしており、なんとか食いちぎられることは免れた。

 

 横に回避する余裕はない。とりあえずどこか掴め!!あぁ・・眉毛かよ・・。まぁしゃーない!!

 

 しかし、虹龍は眉毛を掴むチナツをよそに突進を止めない。そのまま壁を突き破りながら進んでいく。

 

 壁を突き破るたびに、チナツの背中に衝撃が襲う。だが、虹龍の眉毛を放せばもっと酷いことになるだろう。

 

 くっ・・!!なんとか体制を立て直さないとっ!!

 

 鍛えた肉体。肉体改造は無駄ではなかった。壁を突き抜けても、痛いだけで身体は壊れていない。チナツは思い切って虹龍の顔面を蹴り飛ばした。チナツはその反動で逆方向に吹っ飛んだが、パルクールの要領でバク転して、地面との衝撃を弱めて着地した。

 

 ふぅ・・。危なかった・・。さて、どうするかな?

 

 虹龍は蹴り飛ばされた先で直ぐに体制を直し、再びこっちに突っ込んでくる。ロクに考える暇を与えてくれないな。

 

 巨大な質量の突進って普通にどーすればいいんだ?本当にやめてくれよ!!

 

「領域展かっ____」

 

 ドゴォオオオオオオ!!!!

 

 印相を結ぶ前に虹龍の突進をもろに受けてしまった。チナツは、虹龍が再び噛みつくための溜めがあると思っていた。だが、虹龍は口を閉じたまま最短距離、最高速度で突っ込んできたのだ。

 

 メキッメキッ!!

 

「うぐっ・・!!」

 

 自分の肋骨が折れる音が聞こえた。どこも掴んでいないのに、前にぶつかってくる質量だけに後ろに運ばれている。もう壁を何枚突き抜けたことか、自分でもよく分からない。

 

 気づけば、視界が明るくなっていた。壁を突き抜けたまま外に出されたのだ。

 

 吹き飛ばされて、チナツは草原に転がった。

 

「おえええ・・。ゴホッ・・ゴホッ・・。」

 

 大量に吐血した。

 

 胸のあたり・・肋骨付近の内臓に異変がある・・。やられたか・・。

 

 視界がぼやけてくる。何が起こったのかもよく分からなかったが、とりあえずめちゃくちゃボコられていると言う事だけが分かった。

 

 今までの呪霊と、スピードもパワーも格が違う!!

 

「ゴホッ・・。豪烈の弓矢(ゴージャスアロー)

 

 的がデカい。チナツの最大出力の弓矢を放つ。それは虹龍の顔面に命中した。

 

 だが、固い皮膚に弾かれ、虹龍にダメージは全く入らなかった。

 

 は・・?嘘だろ・・?なるほど・・この呪霊の持つ能力は、固い皮膚だったのか・・。

 

 バギィイイイイ!!!

 

 鈍いが大きな音がした。虹龍が首を振ってチナツを弾き飛ばした音だ。

 

 チナツは、弾き飛ばされて廃墟の壁に激突する。衝撃による影響でまず聴覚を失った。

 

 な・・・何も聞こえない・・。自分が血を吐く音すら聞こえない・・・。

 

 次に、痛覚の感覚が麻痺する。全身の痛みが消えていき、力が抜けていく。その感覚は、不気味にも気持ちがいい。

 

 あ・・これ・・やばいやつだ・・。人間は痛みの上限を振り切ると、ドーパミンがでて気持ち良くなると・・本で読んだことがある・・。今の私じゃん・・・。

 

 耳が使い物にならない・・。衝撃で三半規管をやられたのか・・。目を開けろ・・。もうあの龍が突進してきているかもしれない・・。

 

 チナツは、頑張って目を開けた。すると、目の前に勢いを増した虹龍が迫って来ていた。このままぶつかれば即死だろう。だが、その動きがスローに見える。それは、死ぬ前の予兆を意味していた。

 

「古部・・・由良由良・・」

 

 無意識でそう唱えていた。理性ではなく本能的に行った行動だった。

 

 だが、摩虚羅召喚の印相を結びかけていた腕を、誰かに捕まれた。

 

「ダッセぇことしてんじゃねえよ。」

 

 耳は聞こえなかったはずなのに、その男の口パクが目に入り、脳内に声でそう再生された。

 

 だが、次の瞬間には虹龍がチナツとその男に衝突する。しかし、謎の透明な壁に阻まれてこっちまで衝撃が来ない。

 

 チナツのバリアとは全くの別物、それはどれだけ強い攻撃でも決して破ることのできない防御、()()だった。

 

 チナツは目を見開く。そして、自分がボッコボコにされた龍の呪霊を目の前にして、ポケットに手をつっこみ、欠伸をしている五条悟を見た。

 

 なんで・・そんな余裕そうなんだよ・・。

 

 だが、そこで力が抜けてしまい体制が崩れ、倒れてしまった。横になりながら前を見ていると、五条が無限バリアに向かって突進し続ける虹龍の方に向き直ったのが見えた。

 

 ドゴォオオオオ!!!

 

 五条が前蹴りを繰り出す。人間の蹴りから出されていい音ではない。あの強大な質量をサッカーボールのごとく蹴り飛ばした。虹龍は逆ベクトルに吹き飛ぶ。もうこの時点で虹龍は半殺し状態だった。

 

 五条は瞬間移動の要領で、虹龍を蹴り飛ばした先に移動し、待ち構えていた。勢いよく虹龍を踏みつぶすと、虹龍は地面に倒れてピクリとも動かなくなった。完全に祓われていはいないが、もう起き上がることはないだろう。

 

 虹龍が完全にダウンしたのを確認すると、五条はチナツの方に近づいてくる。そして、チナツを持ちあげると肩に担いで廃墟から離れた草原の上に置いた。

 

「生きてるか?」

 

 いつの間にか聴覚が戻っており、全身の痛みも戻りつつあった。そのおかげで五条の声もはっきり聞こええた。

 

「うん・・。なんとか・・。」

 

「お前さぁ・・。も・・・・・・・・・・・・・。はぁ、ここで待ってろ。」

 

 五条は何かを言いかけたが、チナツの様子を見ると別の言葉に言い換えて再び虹龍の方へ戻っていった。

 

 その時に瞬間移動を使ったので、よっぽど気まずかったのだろう。

 

 なぜなら、いかにも分かりやすくチナツがいじけていたからだ。

 

 五条は、虹龍の前に瞬間移動すると、そのまま廃墟の仲間で虹龍を片手で引きずっていった。夏油に取り込ませるつもりらしい。

 

 どういうパワーしてんだよ・・・。クソが・・・。

 

 あ~あ・・。これはいじけるわ・・。さすがに私でもいじけますよ・・。

 

 正直に言います。超カッコよかった!!なんたって私の命助けられちゃったし、私がフルボッコにされた呪霊をたったの2発でダウンでしょ?もう、ヤバいとしか言えないよ!!最後だってなんか気使われちゃったし、もう惚れてもおかしくないでしょ!!

 

 は?何言ってんの私?キモ・・・。

 

 なんにもできなかったな。後、フルベユラユラする癖どうにかした方がいいな。「ダッセぇ」って言われたよ。

 

 ここで、待ってろって言われたけどさ、まだ呪力は残ってるんだ。

 

 あれだけの、大恥かいたし、ボコられたままだし、ここまま終われないでしょ!!

 

 チナツは深呼吸して咳き込むと、再び廃墟の中に戻っていった。

 

 次は絶対領域を当ててやる。




読んでくれてありがとう。次回も頼む!!


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8話 目には目を!!領域には領域を!!

主人公:禪院チナツ(呪術高専東京校1年生)

 術式:三種影法術

 能力:三種の武器を影から取り出すことができる。影を操ることができる.
 ①弓矢(呪力で矢を生成し放つ)
 ②盾(手のひらを向けている方向の攻撃を吸収し、自身の呪力へと変換する)
 ③八握剣異戒神将魔虚羅(未所持)←一応、十種影法術の派生のため、ここだけ共通している。

 等級:3級

 領域展開:神器影星(じんぎえいせい)(黒い空間に無数の星が輝いている情景。)


 五条は、チナツを草原に置いた後、虹龍を引きづって夏油の場所まで運んだ。

 

「こいつ、取り込むだろ?」

 

「あぁ。ありがとう。」

 

 夏油が虹龍を取り込む横で、五条はチナツの事を伝えた。

 

「あれ?いじけるような子ではなかったと思っていたんだがね。」

 

 夏油は意外そうに首を傾げた。

 

「なんか言ってやろうと思ったけどさ。・・・・やめちゃったわ。」

 

「まぁ、良いんじゃないかい?ここで諦めればこれから先の任務で死ぬこともなくなるだろう。それに、今後悟の障害になることもなくなるだろうからね。」

 

 夏油は穏やかにそう言うが、五条はその様子に少し違和感を覚えていた。

 

「なんか残念そうだな。傑。」

 

「まぁ、がっかりした気持ちはあるね。あの子、メンタル強かったろう?弱かったが、時間が経つにつれ成長していた。その過程をもう少し見ていたかった気持ちはある。」

 

「ハハッ。保護者かよ。」

 

 五条はそう軽口で返すが、今まで何度もチナツに悪態をついた。それは、チナツに呪術師をやめさせようとしたためだ。禪院家に何か悪いことを吹き込まれて、自身の障害になるかもしれないという可能性もあり、目障りだと思った事もあった。

 

 だが、何度悪態をついても響いている様子が無かったので、根は強い奴だとも理解していた。だが、急にチナツがいじけたので、五条も期待外れの念を抱かずにはいられなかった。

 

「もったいねぇなぁ・・・。あんな急にいじけるとは思わなかった。つまんな。」

 

「どうしてだい?君だって禪院さんをやめさせようとしてたじゃないか?」

 

「いや、なんかモヤモヤする。あれはなかなか折れねぇって思ってたけどさ、折れる時って一瞬なんだなって思ってさ。」

 

 五条と夏油は自身の心の中に浮かんだ以前との矛盾による違和感を感じながらも、残りの呪霊を狩るために廃墟の中を進んでいった。

 

 _________

「俺の六眼によると、残りの呪霊はこの後の1体だな。まぁ、ラスボスって感じの呪霊だ。未登録の特級かもしれない。」

 

「そうかい。それは是非取り込みたいね。」

 

 五条と夏油は、奥の部屋にいる呪霊の強さを認めながらも、それを警戒する素振りは一切ない。それは、自分たちの圧倒的な実力故に起こる慢心だと言う事をまだ理解していない。

 

 五条がドアを開けると、白装束を来た女性の呪霊がいた。口が耳まで避けているため、この呪霊が人々が口裂け女恐れる呪いで発生した特級仮想怨霊であると、2人は察した。

 

「私・・・キレ_____」

 

 口裂け女が何かを発する前に、五条が飛び蹴りを食らわす。全く反応できない口裂け女は無様に後ろに弾けとんでしまう。だが、夏油がそれよりも速く後ろに回り込んでおり、サンドバックになってしまった。

 

「能力を使う前に、サンドバックになってもらおう!!!」

 

「サッカーしようぜ!!お前ボールな!!!」

 

 息の合った連携。それも、最強の2人によるものだ。口裂け女は呪術を発動させる隙が無い。ボロ雑巾のようにフルボッコにされ続けていた。

 

「ほらほら。そろそろ飯になる時間だぞ?おら!!」

 

 五条が、口裂け女の手足を引きちぎる。口裂け女は悲鳴をあげることしかできず、一瞬で戦闘不能になってしまった。

 

 しかし、

 

 キーーーーーーーーーン!!!!

 

 突然、五条と夏油の2人を耳鳴りが襲う。それは、夏油が取り込もうとした一瞬の隙に起こった物だった。耳鳴りの後、急に元の世界の色が反転した。

 

「なんだ?この色は。悟。状況が分かるかい?」

 

「あぁ。どうやら口裂け女の領域らしいな。だが、印相を結んでいないから簡易領域だろう。」

 

 少し慌てた夏油とは裏腹に、五条は一切動揺を示さない。

 

「見てみろ。」

 

 五条はそう言うと、口裂け女に近づく。口裂け女は、手足が引きちぎれたままで横になっている状態だ。五条はその口裂け女を踏みつけようとするが、寸前で止まってしまうのを夏油に見せつけた。

 

「何をしているんだ?悟?」

 

「このように、この簡易領域内では、一切の暴力行為が禁止されているらしい。もちろんそれに繋がる呪術の使用もだ。だが、それは口裂け女も同じだ。じきに何かのアクションが起こるだろう。」

 

 すると、口裂け女の口が震えながらピクピク動いた。

 

「私・・キレイ?」

 

「なるほどな。この問いに答えた瞬間、口裂け女の必中攻撃が来るんだろうな。だが、その時はこいつが呪術を使ってルールを破ってるわけだから、簡易領域が解けるだろう。」

 

「ほう。つまりは、一発攻撃を当てる領域という訳だね。」

 

 夏油も五条の説明を聞いて、すぐに理解した。

 

「どうやら、この領域内では呪霊を出すのは禁止らしい。それもルールに反するみたいだね。私は簡易領域を習得していないんだ。悟はできるかい?」

 

「ハッ!!そんな雑魚の技。必要ねーよ。口裂け女程度なら、呪力ガードで十分だ。何より、今までだってそうしてきたからな。」

 

 五条と夏油は、今までも領域持ちの呪霊と戦った事はある。夏油はその時は、手持ちの内の領域対策を持っている呪霊に対応をさせていた。五条は、今まで呪力ガードで一発耐えてからのカウンター、もしくは必中攻撃が来る前に瞬殺することで対応していた。

 

 今回の場合、五条は一発耐えてからのカウンターで仕留められると考えたようだ。2人は呪力出力をMaxにして、必中攻撃に備える。

 

「答えるぞ。死ねブサイク。」

 

 五条がそう言った瞬間、五条と夏油の2人に必中の斬撃が降りかかる。2人は呪力ガードの出力をMaxにしてそれに耐えた。皮膚の表面を切り裂かれたのみの軽傷で攻撃に耐えた。

 

「今だ!!術式順転、ア____」

 

 キーーーーーーーーーン!!!!

 

 ここで、五条の想定外の事態が起こった。口裂け女は領域を展開したにもかかわらず、術式が焼き切れていなかったのだ。それは、この領域が領域展開ではなく、簡易領域であったためである。また、簡易領域のため、印相を結ぶ必要もない。それと引き換えに、押し合い性能は弱いが、展開スピードは五条の攻撃速度を凌駕していた。

 

 簡易領域さえ会得していれば、難なく攻略できる物だった。だが、裏返せば、簡易領域、もしくは領域展開を使えない者には、無力で絶対に勝てない相手だったのである。

 

「私・・・キレイ?」

 

 ぞくぞくぞく・・・・。ざわざわざわ・・・・。

 

「チッ・・。」

 

 五条は生まれて初めての、鳥肌と冷汗を経験する。六眼での情報は正確故に残酷だ。今の自分では勝てないと五条に事実だけを伝えていた。

 

「くっそ。領域無限ループ地獄だな。このままだとジリ貧でやられるぞ。」

 

「領域を持たざる者キラーの呪霊というわけかい。だが、必ずどこかに穴があるはずだ。悟、何かないのか?」

 

 夏油は、自分よりも呪術における知識に長けている五条にそう聞く。

 

「俺が・・・、領域を使えばいいんだ。」

 

 五条はそう言うが、内心焦っていた。五条は領域の外郭を掴むのが苦手だった。五条家で何度も訓練をしてきたが、未だに成功をしたことは一度もなかった。それを他の連中に知られるのが嫌で、今まで目を逸らしてきた。また、領域を使わずとも敵を圧倒してきた。五条は、そのツケが今廻ってきたのだと理解した。

 

 片手で印相を結び、呪力を押し出していく。

 

 そうする五条を、夏油は心配そうに見守ることしかできない。領域持ちの呪霊を持っているのに、今はそれが使えずに無力な状態だった。傍から見れば、五条がどのようなメカニズムで領域を展開しようとしているのか理解できていなかった。

 

 ザシュッ!!ザッ!!ザッ!!

 

「うぐっ!!!」

 

 突然、必中の斬撃が2人を襲う。口裂け女の問いに答えていないため警戒をしておらず、さっきよりも重いダメージを負わされてしまった。

 

「ど・・どうしてだ?こいつの問いに答えてねえだろうが?」

 

 キーーーーーーーーーン!!!!!

 

 無慈悲な3度目の領域に引きずり込まれる。色が反転する。

 

「どうやら、時間制限があるらしいね。こちらに猶予を与えてくれないのか。悟、怪我はどうだ?」

 

 夏油はまた軽傷で済んでいたが、五条は肩に深い傷が入っていた。だが、夏油はそれよりも五条の様子に違和感を感じていた。

 

「悟・・・?」

 

「嘘だろ・・?俺・・・こんなところで・・・。あんな雑魚に・・・。」

 

 生まれて初めて、五条の脳裏に敗北の2文字がよぎる。五条は今まで敗北を知りたいと、自分よりも強い相手と戦いたいと願っていた。だが、これは違う。これじゃない。これであってはいけないと。そう思っていた。

 

「私・・・・キレイ・・?」

 

 呪霊は待ってくれない。あと、何十回、何百回、斬撃に耐えられるだろうか?勝のビジョンがどんどん遠ざかっていく。()が近づいてくる。

 

 だが、この現実世界との色が反転した世界、口裂け女の領域に異変が起こる。

 

 室内にもかかわらず、反転した色で青紫色に光る流れ星が流れているのが五条には見えた。

 

「何だ・・?流れ星・・?どういうことだ?」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「領域展開!!神器衛星(じんぎえいせい)!!」

 

 _____________

 追いついた!!!追いついたぞ!!とりあえず、この口裂け女みたいな呪霊の領域に入れた!!

 

 チナツは、2人の後を追ってここまでたどり着いた。球状に広がっていた領域に入ろうと試行錯誤していたが、領域に領域をぶつけることで、中和させ、中に入ることに成功していた。

 

 口裂け女は首を急に動かして、チナツの動きを捉える。流れ星と共に侵入してきた外敵をロックオンする。

 

「私・・・キレイ・・?」

 

「話しかけんな!!」

 

「バッカッ!!それに答えたら!!」

 

 五条の声虚しく、チナツは口裂け女の問いに回答してしまった。五条、夏油、チナツの3人を斬撃が襲う。だが、その斬撃は目に見える斬撃であり、必中効果を失っていた。

 

 五条と夏油はそれに反応して斬撃を弾く。だが、チナツは初見殺しでもろに斬撃を受けてしまった。

 

 ザシュッ!!ギンッ!!!

 

「は・・・?・・うぐっ・・!!!」

 

 浅い!!あぶねー!!斬撃が浅くて良かった・・まぁ血は出てるけど、とりあえず領域を削り合っているから、これを解いたら私が負けると言う事だけは分かる。

 

「必中効果が消えてる?どういうことだ?」

 

「あいつだ。あいつが領域を展開している。押し合いが起こってんだよ。色々ショックすぎて頭混乱してる!!」

 

 五条と夏油はパニックに陥るが、この機を逃せば完全に負けると言う事だけは瞬時に察した。

 

 斬撃にチナツが耐えたのを見て、口裂け女は直にチナツに迫る。片方の手でチナツの首を絞め、もう片方の手に持っていたハサミでチナツの胸部を突き刺した。

 

「うっ!!・・おぇ・・・ゴボォっ!!」

 

 体内から血が逆流し、口から吐いてしまった。胸部には生命を維持するための大事な器官がある。そこをやられてしまった。

 

 やばいやばいやばい・・。死ぬ死ぬ死ぬ死ぬって・・。コイツどこ刺してんだよ・・。っていうか・・首絞めんな・・・・。

 

 バギィイイイイ!!!!

 

 五条がチナツの首を絞め、胸部にはさみを突き刺していた口裂け女を蹴り飛ばす。もはや先ほどまでのルールは領域の中和によって無くなっていた。

 

「本当・・。屈辱だ・・。俺が命を救われるとは・・!!!」

 

 五条のその声は、チナツの耳には届かない・。意識が落ちかけていた。

 

 ギュルルルルルル!!!!

 

「なっ!!ナメクジ・・・!?」

 

 チナツは、突然後ろから損傷した胸部を強大なナメクジのような呪霊に巻き付かれたので目を見開く。だがそうしたのは夏油だった。背後から夏油の声が聞こえた。

 

「君の領域が解ければ、勝てなくなる!!このナメクジ呪霊は、傷の進行を遅らせることができる。強く巻いて締め付け、臓物が落ちないように固定する。君は領域にだけ集中しろ!!痛いけど頑張るんだ!!」

 

「は・・・はぁ?」

 

 や・・・やるしかねえ!!確かに、傷の痛みが和らいでいく気がする!!って苦しいわ・・強く巻きすぎだろ・・。そんな文句を言っている暇はないんだろうけどさ・・・。早くしてくれ!!

 

 チナツの領域が弱すぎて、簡易領域の口裂け女と拮抗していた。いや、むしろ負傷もあってか押されていた。早急に勝負をつける必要があった。

 

「ハッハッ!!攻撃さえできればこっちのもんだ!!ぶち殺してやる!!」

 

「悟!!祓うなよ!!私がやる。君はこっちを押さえてろ!!」

 

 瞬殺しようとした五条を夏油が止めてしまう。口裂け女を取り込みたいらしい。

 

 はぁ・・?夏油・・おま何言ってんの?早く五条やっちまえ・・。もう死ぬほど辛いんですけどっ!!

 

「あ?りょ。」

 

 りょ・・・。じゃねえよ!!やばっ・・!!ナメクジ緩んできた・・。また吐きそう・・。

 

 夏油が手を離し、ナメクジが緩む。だが、五条がそれを押さえた。

 

「しっかりしろ!!あとちょっとだ!!頑張れ!!これもっと強く巻いた方がいいの?」

 

「うっ・・。死ぬ・・。」

 

 なんとか、口裂け女に領域を塗り替えられる前に、夏油が口裂け女を弱らせて取り込むことに成功した。

 

「あっ。終わってるわ。」

 

 五条のその声と同時に気を失う。

 

 あれ・・・?結局今までで一番負傷してしまったじゃねーか・・・。

 

 




読んでくれてありがとう。次回も頼む!!


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