一体いつからサッカーに筋肉が必要ないと錯覚していた? (リーリンリーリン)
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原作前
1.転生特典無しってマジ?


最近ブルーロックにハマって書きました。
処女作です。
どうぞ。


グゥ~

 

静寂な部屋の中腹の音が鳴り響く。

 

(・・・コンビニ行くか)

 

己の空腹を満たすべく、俺は近くのコンビニへと向かう。

こっちに引っ越してほぼ毎日通ってる。

故に毎日同じ道を飽きずに通い続ける。

 

 

「毎度っす!〜レシートは・・・要らないッスよね?」

「おう」

 

おかげでバイトの人とそれなりに仲良くなった。

たまに飲みに誘われるくらい。

 

「?ブルーロック新巻出てるじゃねぇか」

「そうっすよ!俺はもう読みましたが今回パネぇっすわ!」

 

・・・ここまで言われたら読みたくなるに決まってる。

 

「あざっした〜」

 

食品とついでにブルーロックの新巻も買ってしまった。

まぁ別に無駄使いはしてないぞ?

こいつも今の俺にとっては必需品なのだ。

新巻を楽しみに、俺はいつものようにアパートへと帰る。

それが俺の日常だ。

 

 

ォォォ

 

 

 

俺の日常だ

 

 

 

ブォォォ

 

 

俺の日常…

 

 

 

ブォォォォォォォ

 

 

 

 

だった

 

 

 

 

プップゥゥゥゥゥゥ

 

 

「え?」

 

 

けたたましいクラクションの音が俺の耳に鳴り響く。

瞬間経験したことのない衝撃が襲う。

 

 

「がっ……はッ……」

 

 

地面に激しく叩きつけられ、次に想像を絶する痛みが俺を襲った。

 

 

(痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い)

 

 

頭の中で何度もそう繰り返す。

気付けば辺りに何やら赤い液体が広がっていた。

それが自分の血だと理解するまでそれほど時間はかからなかった。

少し頭を動かすと視界にトラックの運転手が慌ててどこかへ逃げて行く姿が見えた。

まぁ普通そうだよな…

捕まって人生台無しにしたくないもんな…

そんな考えをする頃には痛みは何故か感じない・・・

きっと脳内で大量のドーパミンが溢れ出て痛みを緩和しているのだろう・・・

 

(あぁ・・・メッチャ眠みぃ・・・)

 

激しく意識が朦朧としてくる。

これはあれだ・・・

 

 

 

 

 

俺・・・死ぬんだ・・・

 

 

 

 

 

俺の意識はプツリと途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あ。きたきた〜。おーい。起きろ〜』

 

 

 

 

 

 

何とも軽い口調で俺は覚醒させられる。

 

『おはよう〜。調子はどう?』

 

良い訳あるか。

俺はさっき死んで・・・てかここどこ!?

辺りは何もない空間。

そしてこの訳の分からない頭に直接語りかけるような声。

 

「アンタ誰だ?」

『ヒミツ』

 

表情の、というより顔の全く見えないコイツはそう答える。コイツが噂に聞く神なのかそれとも悪魔なのか。

まぁ今は現状を理解するのが先だ。

 

「俺は・・・死んだのか?」

『そうだよ。君の身体はすでに消滅しちゃったね』

 

やっぱりな。

となると今の俺は魂だけの存在ってやつか・・・

 

『・・・君随分落ち着いてるね・・・』

「まぁ死んだしな・・・特に慌てる必要ないだろ?」

『ふ〜ん』

 

と気の抜けたような返事をソイツはする。

 

「俺はこれからどうなるんだ?」

『そうだねぇ〜君はこれから次なる世界で新たな生を授かるんだよ〜』

 

次なる世界?生を授かる?

 

『君達の世界で言う転生ってやつだね』

 

転生って漫画とかでよくあるあれか?

 

「ちなみにどんな世界に飛ばされるんだ?」

 

『それはお楽しみ』

 

ランダムかよ・・・

まぁ特別行きたい所もないしいいんだが・・・

おっと。転生するならあれについても聞いておこう。

 

「ちなみに転生の際のチート特典とかは?」

 

 

『そんなもんないよ。じゃあ行ってらっしゃ〜い』

 

 

 

 

は?

 

 

 

瞬間俺の視界は一気に変貌した。

 

 

 

 

 

 

 

オギャァァァァァァ

 

 

 

「あなた。生まれたわ」

 

「おう!!遂に生まれたか!!我が息子よ!!」

 

 

一人の女性と大柄な男の姿が見えた。

 

 

「しぃぃぃ。あまり大声出すと泣いちゃうわよ」

「う・・・すまん・・・」

 

俺は今世で増瑠筋夫(まするすじお)として生を受けた。

あとついで

 

 

※悲報

 

俺転生特典ゼロで転生させられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

さてどうするか・・・

 

 

ぶっちゃけるこの世界がどの世界なのか今のところ分からない。

映画か漫画、もしくは全く知らない異世界なのかも・・・

まぁけど外の様子を見る感じファンタジーの世界というのは無い。

一般的な住宅街に公園・ビルも見える。

むしろ俺がいた日本の現代社会そのものがそこにあった。

 

 

(となると剣でモンスターを倒すなどの世界ではないな。本当にただ単に記憶引き継ぎの現世に生まれ変わっただけか?)

 

近くのカレンダーを確認する。

西暦は2002年。

未来ではない。

となるとやはり限りなく前世に近い異世界に転生したという説が妥当だろう。

何はともあれ、これから第二の人生を謳歌すべく俺は・・・

 

 

 

「ふぅ・・・ふぅ・・・だぁ・・・!」

「よし!いいぞ!筋夫!まだ生後4ヶ月で腕立て伏せが出来るとは!流石は俺の息子だ!!」

 

絶賛筋トレをさせられております。いやなんで!?

筋骨隆々の父が日体大出身でもあることから俺はまだ0歳の身でありながら鍛えさせられている。

 

「けれど・・・こんな歳から筋トレなんて始めさせたら成長が阻害されないかしら?」

 

確かに。

身長伸びないんじゃ・・・

 

「心配は無用だ!!自重トレーニングであれば幼少の頃から始めても骨に影響は与えない!むしろトレーニングをすることで成長ホルモンが分泌され体はどんどん大きくなって行くぞ!!」

 

なるほど。

流石は現役スポーツトレーナーだ。

 

「まぁ!!それなら頑張って貰わなくちゃね!そのためにもいっぱい栄養を与えましょう!」

 

父の言葉に母は感化され俺はたくさん飯も食うようになった。

はっきり言ってメチャクチャしんどい・・・

俺まだ0歳やぞ?死ぬって!

前世がほぼ帰宅部だった俺にとって筋トレとは地獄に等しいものだった。 

 

 

 

 

 

 

 

そう考えてる時期が俺にもありました。

 

 

 

 

 

5年後

 

 

 

「ふっふっふっ!よし!ラスト!!」

「うぉぉぉぉ!!しゃぁぁ!」

 

父から貰ったタオルをもらい、汗を拭く。

 

「ふむ・・・その歳で自重懸垂を42回、腕立て伏せを78回、腹筋を67回、スクワットを128回もするとは。流石の俺も驚いたぞ筋夫よ」

 

自宅に貼り付けられている大きな鏡に映る自身の身体。

5歳児とは思えないほど逞しい美体がそこにあった。

 

「へへっ!いいかんじだな!」ムキッ

 

キッチリと父から教わったポージングを鏡に向けて決める。

すっかり筋トレワールドに俺はのめり込んでしまったのだ。

幼稚園児の先生が心配するほどに・・・

 

「その歳でそれほどの筋肉量を持つのだ。どうだ?何かスポーツをして見る気はないか?」

「スポーツかぁ〜。とうさんはなにがいいとおもう?」

「ふむ・・・お前の場合下半身の筋力が特に優れている。単純だが足を使うスポーツが良いと思うぞ?」

 

脚を使うか・・・

ならば

 

「おれサッカーしたい!」 

「ほう・・・サッカーか・・・確かに理に適っているな!よし!母さん!!今日から筋夫はサッカーを始めるぞ!!」

「あらサッカーね!いいじゃない!今世界的に人気のスポーツね!」

 

母さんもかなり前向きに検討してくれた。

こんなことを言うのも何だが、この二人がこの世界の親で良かった。

 

「あぁ!!()()()()()()()()()()()F()C()()()()()!そして()()()()()など最高のチームが競い合う偉大なるスポーツなのだ!!」

 

 

あれ?

そのチーム達どこかで聞いたことがあるような・・・

 

「最近だとフランスの()()()()()()?って選手が若手で有名じゃなかったかしら?」

「あぁ!ノエル・ノアはいずれ世界一のストライカーになるとされている男だな!!」

 

あ〜。

確信した。

これブルーロックの世界やん・・・

 

 

※悲報2

ブルーロックの世界で俺はサッカーを始めてしまう。

 




こんな感じの文章です。
駄文かもしれませんがこんな感じで続けて執筆していきたいと思っています。
感想なども書いてくれると凄いモチベ上ります。


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2.筋トレすれば良くね?

お気に入りが41 件も!?
ありがとうございます!!
感想もくださった方々ありがとうございます!!


 

 

俺が転生させられたのは、前世で話題を生んだサッカー漫画『ブルーロック』の世界。

18歳以下のサッカー選手300人が集い、青い監獄(ブルーロック)という施設で世界一のストライカーを生みだすという今までにない世界観のサッカー漫画だ。

そんなイカれた世界で俺はよりにもよってサッカーを始めてしまった。

 

 

(これも運命なのだろうか・・・)

 

 

 

正直に言おう。

俺はブルーロックが大好きだ。

だから事故で死ぬ直前に買った最新巻が読めなくてとても残念である・・・

好きだからこそ俺自身出来れば原作キャラ達と関わりを持ちたい。

というか俺も青い監獄(ブルーロック)に行きたい!!

 

(原作世界まで後どのくらいだったか・・・)

 

俺の記憶が正しければ原作の世界は2018年だったはず。

時期は正確には把握できないが、潔が高校選手権を終えた後ぐらいだったから多分1年の終わり頃だろう。

要するに青い監獄(ブルーロック)プロジェクト開始まで10年近くの時間がある。

その期間で俺自身が高校まである程度結果を示し、青い監獄(ブルーロック)から送られる【強化指定選手】に選ばれなければならない。

 

 

 

ここまでは良い。

 

 

 

(問題は選ばれるために何をすべきか・・・)

 

 

俺は前世でサッカーどころかスポーツもまともにやったことがない。

かと言って凪誠士郎みたいな才能は俺にはないし、何より転生時のチート能力特典がないのだ。

そんな俺がただ単にサッカーを習って人より少し練習して頑張った所でその強化指定選手に選ばれるだろうか?

 

 

 

 

 

(無理だろうな・・・)

 

 

 

彼らが選ばれたのには明確な理由がある。

純粋に個人の能力値はもちろん、ストライカーに必要とされる得点力を持つ選手たちが青い監獄(ブルーロック)に選ばれる条件なのだろう(多分)

 

 

 

 

 

「こうしちゃ居られない・・・!!」

 

 

 

原作まで時間はたくさんある。

だからと言って悠長にしている暇はない。

早い段階で自身の武器を見つけ、原作開始までにその武器を十分に使いこなせるようにならないといけない。

それが最も効率良いだろう。

 

 

 

(自分の武器か・・・)

 

 

とはいえ俺はまだ、サッカーボールに触って1週間すら経っていないヒヨッ子。

そんな簡単に己の武器など見つかるはずなかろう。

 

「はぁ・・・もっと早く気づいていればなぁ・・・」

 

 

 

今まで自分は何をしていたのかと後悔の念を抱く。

 

 

 

「この世界に来て頑張った事といえば筋トレくらいしか・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ん?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

筋トレ・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこで俺に一つの考えが浮かぶ。

 

 

 

 

 

(筋肉って確かどのスポーツでもあって損はないよな?野球や水泳、バスケや陸上競技だって筋肉量が多い選手は当然強い。ならそれはサッカーだって同じはず!)

 

スポーツ経験のない俺の頭には、こんな単調な考えが浮かぶ。

しかし普通に考えれば筋肉がある分フィジカルは上がる。それだけでなくスピードやキック力だって筋力トレーニングを重ねれば能力値は上がるはずだ。

フィジカルの強い原作キャラといえば國神(くにがみ)馬狼(ばろう)、そして時光(ときみつ)に当たる。

事実あの三人も筋肉量があっただけブルーロックランキングは上位にいた。

 

 

ということは元スポーツ経験無し+ザ平凡ステータスで転生させられた俺でも、筋肉を鍛えまくればサッカー選手として成功するのでは?

幸い俺はこの5年父から施された筋力トレーニングによって、5歳児とは思えないほどの筋肉を身に纏っている。

 

 

 

ならやることは一つだ。

 

 

 

 

 

 

ここから更にこの筋肉を鍛えあげ、この筋肉を己の武器と化させ青い監獄(ブルーロック)に選ばれるくらい強くなってやる!!

 

 

 

 

 

そう考えた時、俺はすでにスクワットを行っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日折り入って父に頼み、近くのサッカークラブに所属させてもらった。

 

 

 

 

 

「増瑠筋夫です!よろしくお願いします!!」

 

 

ここなら年齢問わずサッカーを習うことが出来る。

何より12歳までとかなり幅広い人員がいるため、いつでも格上と練習が出来るというわけだ。

 

 

 

「ふっ・・・ふっ・・・!」

 

 

まずはシュート、ドリブル、パス、トラップなど基礎練習から始める。

基礎はどの分野においても大事だ。

一流のサッカー選手はこの基礎が出来上がっている。

ミニゴールでのシュート練習、三角コーンを使ったドリブル練習、同年代の子達とのパス&トラップ練習・・・それらを練習の日以外でもひたすら繰り返す。

正直めちゃくちゃキツイ・・・

 

 

「ハッ・・・ハッ・・・ハッ・・・うぉぉぉぉぉぉ!!」

「よし!!筋夫!!残り5本だ!!」

 

 

加えて練習後は父考案の特別トレーニングを行っている。

サッカーは単に筋肉があるだけでは駄目だ。

筋力のみならず筋肉の柔軟性・伸張性(バネ)や瞬発性や持久力も必要だと指摘される。

ラダートレーニングやシャトルラントレーニングなどの他にヨガも行い、身につけた筋肉を自在に操れるようにする。

改めて父がスポーツトレーナーで良かったと心から感謝した。

 

 

 

「・・・このプラン・・・5歳の君からすれば少しハード過ぎないかな・・・?」

 

 

 

ある日コーチからこんなことを言われた。

まぁ普通に考えれば俺くらいの年齢でここまで練習してるのだ。

家がよほどのスパルタでなければ説明がつかない。

 

 

 

 

しかし俺には明確な目標がある。

 

 

 

 

 

「俺は将来一流のサッカー選手になりたいです!!だからどんな辛いことでもやり切ってみせます!!」

 

 

 

決意を込めて俺はそう返した。

 

 

 

 

 

 

 

このクラブに入って一年程経ったある日。

俺はコーチからの指示により、急遽上級生との練習に参加させてもらった。

年齢はだいたい8歳〜10歳程。

 

「よ・・・よろしく・・・」

「よろ・・しく・・・おい・・本当に6歳なのか・・・?

知らねぇよ・・・

 

上級生達は俺を何か違う物を見るかのような目で見ていた。

まぁ当然だろう。

今の俺の身体は上級生達と同じくらい、いや下手すればそれ以上に大きいかったからだ。

父も言っていたが、筋トレで成長が阻害されるというのは嘘らしい。

むしろ年を重ねるにつれ身長も筋肉量もグングン伸びていく一方だ。

 

 

 

「そっち上がったぞ!!マークしろよ!!」

「こっちだ!!パスパス!!」

 

 

基礎練習は勿論だが、上級生達は主に試合形式での練習がほとんど。

コーチ曰く高学年の子たちは中学に上がった時を想定して実戦形式を積むべきとのこと。

そんな俺ももちろんその試合形式の練習に参加させて貰っている。

 

 

「こ・・こい!!いくらデカくてもまだ6歳だろ・・!?」

 

パスを受けて始まる上級生との1on1。

相手はかなり年の離れた高学年だ。

しかしこちらも簡単に負けてやるつもりはない。

 

「ふっ!!」

「はやッ・・・!?誰かそいつをとめろ!!」

 

スクワットやハムストリングス、全力シャトルラントレーニングによって俺は強靭な脚力を身に付けた。

スピードと瞬発力はある程度身に付いている。

それに加え繰り返してきたドリブル練習によって強力な突破力を実現させる。

とにかくパワーとスピードで相手をぶっちぎる。

原作だと雪宮の【1on1皇帝戦法(エンペラースタイル)】に少し似ているかも。

 

 

「ぐッ・・・なんだコイツ・・!?」

「パワーやばすぎんだろ・・!?強すぎる・・・!!」 

 

上級生といえど彼らは鍛えてもいない()()()()()

長年筋トレに加え体幹トレーニングをしてきた俺にフィジカルで勝てるはずがない。

 

 

 

 

「でりゃぁぁ!!」

「え・・・?」

 

 

 

 

俺の打ったシュートに、キーパーは反応もできずゴールを許す。

これも今まで積み重ねてきたシュート練習の賜物だろう。

 

 

 

「すっげぇッ!!なんだよ今の!?」

「かっけぇぇッ!!」

「おまえすごいな!!」

 

 

おぉ。

なんか凄い褒められた。

小学生に褒められて何ちょっと喜んでるんだ?元大学生 って感じだが、別にいいだろう//

何よりこれまで頑張って来た基礎練習の成果が実った事に大きな喜びを抱いていた。

 

 

 

 

そして翌日

 

 

「ふっ!ふっ!」

「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「ラストぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「おりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「よし!!休憩!!」

 

 

 

 

なぜか他の練習生も筋トレをし始めた。

 

 

 

 

 

 

side コーチ in

 

 

 

私はある青少年のサッカークラブのコーチをしている。

かつては私もプロとまではいかないが、サッカー歴はそれなりに長い。

指導者として3歳〜12歳の少年達にサッカーの素晴らしさを教える。

ゆくゆくは彼らを一流のプレイヤーとして育て上げたい。

それが私の夢だ。

 

 

「まするすじおです!!よろしくおねがいします!!」

 

 

ある日このチームに新たな仲間が加わった。

礼儀正しい振る舞い、そして何より目を見開いたのは少年の肉体だ。

鍛え抜かれた鋼の如き筋肉が彼の着るスポーツウェアの上からわかる。

この歳でここまで鍛えているとは、相当なアスリート一家だと伺える。

しかも聞けばこの少年はまだ5歳と言うではないか!!

 

こんな5歳児は日本では稀に見る事もないだろう・・・

そしてこの少年はサッカーは未経験だという。

正直これほどの肉体であればどのスポーツにおいても一流になれる。

それでも彼はサッカーを選んでくれた。

それ故に私は少し微笑ましかった。

 

「ハァ・・・ハァ・・・まだまだ!!」

 

少年はサッカーにとても熱心に取り組んでいた。

基礎練習はとてつもない集中力と意欲で取り組み、練習後も彼は父親との特別練習をしているではないか!!

そしてその練習も尋常ではなかった・・・

ラダートレーニングや全力シャトルランといった高度なトレーニングをその歳で行っている。

彼の父親はかなり優秀なトレーナーなのだろう。

しかしこの歳でここまでの修練を積んでいるのだ。

心身ともに疲弊しているに違いない。

私は少年を心配していた。

 

 

「・・・このプラン・・・5歳の君からすれば少しハード過ぎないか・・・?」

 

 

少年の1日の練習プランは平均的な5歳児、いや下手をすれば小学生でもついていけぬものだった。

しかしその後少年から発せられた言葉に私は大きく息を呑み込む。

 

 

「おれはしょうらいいちりゅうのサッカーせんしゅになりたいです!!だからどんなつらいことでもやりきってみせます!!」

 

 

何と言う強い信念!!

その歳でそこまで先を見据えているとは!!

私はこの少年を完全に見誤っていた・・・

彼は己の未来のために鍛え続けているのだ!!

 

 

なら私は彼の信念に応えるべき!!

 

 

そして一年が経ち、少年の基礎がほぼ固まったと判断した私は、彼を上級生との練習に参加させた。

そして彼は上級生達との練習初日で驚くべき成果を叩き出した。

 

 

「はやッ・・!!誰かそいつをとめろ!!」

「ぐっ・・!!なんだコイツ!?」

「パワーやばすぎんだろ・・!?強すぎる・・・!!」

 

なんと!!

その肉体は強靭なフィジカルを生み出し、上級生プレイヤーにも勝る!!

何より驚いたのがそのスピードとキック力!!

単純な筋力のみならず柔軟性の高い彼の下半身から生まれるスプリンター並のスピードと突進力!!

 

 

「でりゃぁぁ!!」

「え・・・?」

 

 

そして放たれるシュート力はもはや小学生・・・・いや中学生プレイヤーにも匹敵するだろう!!

 

 

 

 

 

 

泥臭い? 

 

 

 

 

 

 

華麗なテクニック?

 

 

 

 

 

美しいフットボールスタイル?

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなもの関係ない!!

 

 

 

 

単純なフィジカルに任せた豪快なプレースタイルは男なら誰もが憧れるもの!!

現にイングランドの『マンシャイン・C』が得意とするスピード&ラッシュスタイルも彼同様フィジカルを重視するプレースタイルだ!!

 

 

 

(これでまだサッカー歴一年とは・・・なんとも恐ろしい才・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

否!!

 

 

 

 

 

 

 

筋肉!!)

 

 

 

 

 

 

翌日私は彼らのプレースタイルに感化され、他の練習生にも少し筋力トレーニングの練習を施した。

 

「ふっ!ふっ!」

「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「ラストぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「おりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「よし!!休憩!!」

 

 

彼らも少年に影響され、熱心に取り組んでいる。

素晴らしい関係だ。

いずれ彼らが一流のサッカープレイヤーとして成長する日もそう遠くないだろう・・・

 

 

 

 

side コーチ out

 

 

 

 

 




今回は割りと専門的なワードが多かった方と思いますがどうでしたか?
このワードの意味がわからない・・とかここ間違ってるよ!などがありましたら感想にバンバン書いてください!!
もちろん純粋な感想も嬉しいです!!


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3.戦場の王

いいね80超えた!!お気に入りしてくださりありがとうございます!!
感想も下さった方々ありがとうございます!!
サブタイトルにある通り今回はアイツが登場します!



 

 

 

このクラブでコーチの指導の下サッカーを始めておよそ5年が経った。

 

小学校に上がり俺の体は変わらずどんどんデカくなっている。

もう同じ小学生相手に負けるわけないと思えるくらいには。

 

「トータルフットボールはポジションに縛られなくていいな・・・・ムービングフットボールは相手の意表を突くのに良い・・・・あ・・けどゾーンディフェンスも捨てがたい・・」

 

ある程度サッカーの知識がついたおかげで、試合で勝つための有効な戦術が少しずつ理解できるようになった。

新たなことを知り、それが身につけばサッカーに対する興味も高まる。

サッカーとはこんなにも面白いものなのか・・・と俺は初めてスポーツの楽しさを理解した。

 

 

「うおりゃぁぁぁぁぁ!!」

「まじかよ!?うちで一番デカいディフェンダー選手に競り勝つなんて・・・!?」

「パワーやべぇ・・・!!本当にあれで小5か!?」

「年齢詐欺過ぎんだろ・・・」

 

 

オイ。誰がおっさんだと・・・?

まぁ精神年齢に関しては30超えた立派なオッサンであってあながち間違ってはいない。

 

そんな話は置いといて、やはり筋肉を鍛えることは間違ってなかった。

歳を重ねるごとに筋肉をつけ続ければ、どんな格上の相手にも当たり負けはしない。

なにより驚いたのが筋肉という重りをつけることで弱点になると想定していた瞬発力も脚の筋力トレーニングとラダートレーニングで損なわれることはなかった。

持久力に関しても全力シャトルラントレーニングとその他心肺機能系トレーニングを数年繰り返してきたおかげで大幅に強化された。

中学校の試合時間であれば一試合丸々走れるほど。

 

 

「ふっ!ふっ!ふっ!」

 

 

ガシャン ガシャン

 

 

「よし!!ラスト!!」

「パワァァァァァァァッ!!」

 

 

トレーニングも継続するごとに強度も上げ続け、小学生に上がる頃にはバーベルやダンベルなどの器具を使ったトレーニングも始めた。

父の勤め先のジムに入会し、トレーニングの大幅なボリュームが増えた。

サッカーに必要とされる大腿四頭筋のトレーニングはマシンでのレッグエクステンションに加え、フィジカルを高めるべくベンチプレス・バックスクワット・ショルダープレスや腹筋のエクササイズなどを週に3・4回ほど行う。

もちろんまだ小学生なので無理に重い重量は扱わず、怪我をしないよう注意が必要だ。

 

 

 

 

 

 

そして正直に言おう。

 

 

 

 

 

 

 

ジム最高。

 

 

 

 

 

 

 

そして食事も大事だ。

トレーニングで鍛え上げた筋肉に必要な栄養素をしっかり取る。

タンパク質はもちろんだが、炭水化物や脂質もエネルギーを供給するうえで大事だ。

母と父の協力の下、今の俺に最適な食事メニューを毎日考えてくれている。

他にも、学校に間食用の弁当とプロテインを持参している。

 

 

シャカシャカ

 

「ふん~♪ふんふん♪ふ~んふん♪」

「増瑠君!!今日は何味なのー?」

「今日はブルーベリーだ!!」

 

 

俺ほどの運動でエネルギーを多く消費している人はこれくらい食わないと足りない。

だから常に栄養を身体に取り込む必要があるのだ。

 

 

 

 

「ぷはぁ~!!うめぇぇ!!」

 

 

 

おかげで身体能力は更に飛躍していった。

体格はすでに並みの中学生よりも大きく、中等部と練習する機会が増えた。

いくら中学生といえど、生まれてこの方10年近く筋力トレーニングをしてきた俺に身体能力で勝てるはずがない。

 

それに俺は技術も身に着けた。

単にスピードとパワーでのゴリ押しは今では通用するも、高校ではそううまくはいかない。

俺よりも強いフィジカルを持った相手など高校に出ればいくらでも現れるはず。

 

だから俺は自身のプレースタイルに見合った応用技術をここ数年で磨いた。

まず腕を使って上手くボールをキープしたり、相手に体を寄せつけないようハンドワークを身につける。

原作だと(からす)が得意とするボールキープ法だったが、俺のやるハンドワークは俺の持つ筋肉量をフル稼働させたもの。

コーチ曰く今の俺の筋力であれば中学生相手だけでなく、高校生や大の大人からのプレッシャーにも負けないだろうと言われた。

 

俺はこれを【筋肉(マッスル)ハンドワーク】と呼んでいる。

 

そしてドリブル技術の基本であるダブルタッチシザースはサッカー初心者の俺でもすぐに身につけられ、なにより俺の持つスピードと俊敏性を最大限に活かせられる。

 

「ふっ・・!!」

「はやッ・・・」

 

これで抜けさえすればたとえ相手がついてきたとしても、筋肉ハンドワークを使えばボールを奪われる心配はない。

基本的にはこのダブルタッチ→筋肉ハンドワークかシザース→筋肉ハンドワーク、またはシザース→ダブルタッチ→筋肉ハンドワークと相手のディフェンス能力値によって上手く使い分ける。

これが身についたおかげで、俺は対人戦はほとんど負けなくなった。

 

 

 

 

そしてもうひとつ・・・

 

 

 

 

「え・・・?シュート精度を上げる練習を・・・?」

「はい。お願いします!!」

 

 

 

 

いつまでもシュート力で押し切るにもいずれ限界はある。

特に高校クラスともなるとフィールドプレイヤーよりもはるかに高い筋力を有する選手がゴロゴロいる。

そんな相手に純粋な筋力だけのシュートが通じるはずない。

だから俺はコーチにシュート精度とシュート力を同時に鍛えれるようなトレーニングを教わった。

 

(狙うは・・・ゴールの左端!!)

 

 

やり方はシンプルで、しっかりとシュートを打つとき自身が想像するゴールをイメージしながら全力で打つ。

 

 

「よし!!あと20本!!」

「ハァ・・・ハァ・・・おっす!!」

 

今までやってきたシュート練習とは違い、頭を使いながらのトレーニングは倍以上に疲れる・・・・

しかしたったこれだけの事を5年繰り返してきただけで、効果は絶大だった。

 

 

 

「でりゃぁぁぁ!!」

 

 

 

 

 

蹴ったボールは上昇した筋肉量に比例してとてつもない威力を生み出し、それは己が理想とするゴールイメージを現実世界(リアル)で実現させる。

 

 

 

 

 

「嘘だろ・・・?見えなかった・・・」

 

 

 

 

それは地区予選選抜に選ばれるほど優秀な中学生GKが反応すらできないほどに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピッピッピッーーーー

 

 

ホイッスルの笛が大きく鳴り響く。

それは同時に試合終了の合図を意味した。

 

 

「試合終了ぉぉぉ!!何ということでしょう!?中学少年サッカー大会決勝戦は掘出(ほりで)中の完勝です!!」 

「いやぁ~実に驚きです!去年の優勝校である帝旺(ていおう)中にここまで大差をつけて勝利するとは・・・今回の試合を支配(コントロール)したのは間違いなく()でしょう」

「えぇ・・・まだ1年生で・・・というより中等部であれ程のパワーとスピード、そして決定力!!」

「彼のシュート力はすでに高校レベルにも匹敵するでしょう」

「間違いありません!!そしてそれらを可能にしているのは彼のその超人的な肉体!!当初は本当に中学生なのかと一部のサッカー協会が疑問を抱いたほどです!」

「まったくもって恐るべき筋肉量ですね・・・」

 

 

 

スコア

 

堀出中 対 帝旺中 5ー0

 

 

「やったぜぇぇぇ!!やっぱり筋夫は最強だぁぁ!!」

「ちょ、先輩達一斉に飛びつかないで下さいよ!俺じゃなかったら潰れてますよ?」

「わりぃわりぃ!けど・・・まさか無名の俺達が優勝できるなんてな!!」

「まぁうち3点は増瑠の一人ゲーだったけど!!」

「何言ってんすか。先輩達のフォローがあったからこそですよ」

「くぅ〜歳下なのにこの兄貴感がたまんねぇぜ!!」

 

 

 

俺は中学に上がり即戦力としてピッチに入った。

小学生の頃から何度も格上と練習をしてきた俺にとって中学生の大会とはハッキリ言って物足りない。

それでも俺は中等部のサッカー部達と全国大会で見事優勝することができた。

 

 

 

「おい・・・10番」

「ん?」

「・・・なんでそんなに強いんだ?そして俺は・・・俺には何が足りなかった・・・?」

 

 

対戦した帝旺中の選手のうちの一人が悔しそうにそう尋ねる。

 

 

それに俺はこう答えた。

 

 

 

「筋肉だ

 

 

 

「は・・・?筋肉・・・だと?」

「あぁ。試合の中で感じたがアンタもそれなりに鍛えてはいるんだろう?」

「あぁ・・・もちろんだ・・」

 

 

 

 

 

 

「だが甘い!!」

 

 

 

「!?」

「アンタのその突進力とシュート精度は他の中学が相手なら十分通用しただろう・・・だが!!俺にとってそんなもん爽やかな風でしかない!!」

 

「なっ・・・!?なんだと!?」

 

 

悔しい気持ちを必死に抑えるような表情。

しかし彼は反論しようとしない。

 

 

 

「どうすればいい・・・どうすればお前に勝てるんだ・・?」

 

 

 

 

「最初に言ったろ?シンプルだ!!筋肉だ!!筋肉を鍛えあげろ!!」

 

 

 

「・・・」

「納得していないようだな。だからこそだ!とりあえず筋トレしてみろ!!今までアンタがやってきたフィジカルトレーニングなんぞ甘すぎるシュークリームに思えるほど!!追い込め!!そしたら色々と見えてくるぞ!」

 

俺の脳筋理論にソイツは少し理解したのか、納得の表情を見せる。

 

「筋トレか・・・確かにお前にとって俺の武器は文字通り風ほどにしかならないだろう・・・おい10番。お前の名前教えろ」

 

「俺は増瑠筋夫だ!筋肉ですべてを解決するのがモットーな男だッ!!」

 

 

「増瑠筋夫か・・・俺は馬狼照英。忘れたら殺すぞ」

 

 

 

 

 

 

ふえ?え?コイツがあの馬狼?

馬狼♪馬狼♪キュン♡

じゃなかった・・・ 戦場(フィールド)のキング馬狼なのか?

マジかよ!?頭あんまりツンツンしてないから全然気づかなったわ・・・

 

 

 

「次は俺が勝つ」

 

 

 

最後にそれだけ言い、馬狼は静かにフィールドを去った。

 

 

というかこれちょっとまずいんじゃね!?

ただでさえ原作で強かったフィジカルお化けに筋トレというアドバイスをしてしまった・・・

 

 

 

 

「・・・・まぁえっか!!」

 

 

 

 

相手は強い方がこっちも燃えるってもんだ!

なにより・・・

 

 

 

 

(この世界にきてやっと原作キャラと会えたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!)

 

 

俺はようやく原作キャラと出会えたことに大きく喜びをかみしめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

馬狼side in

 

 

俺はいつだって戦場(フィールド)の主役だった・・・

実際俺には才能があり、サッカーにおいて自分以外の人間は全員脇役だと思っていた。

 

「す・・・凄いや馬狼君は・・・」

「馬狼が仲間で俺嬉しい!」

 

そんな称賛を聞くたびに俺は思っていた。

 

(こいつら・・・脇役のくせに喜んでいる・・・何が楽しくてサッカーやってんだろう?)

 

 

 

「俺が"(キング)"だ」

 

 

 

 

この辺りで俺は他人への理解を諦めた。

そうして自身のサッカーを追求することだけを考え、ひたすら強くなる道を選んだ。

 

 

「ゴォォォォォォル!!馬狼選手ハットトリックだぁぁぁぁぁぁ!!」

「そんな・・・・!」

「あれでまだ1年なんて・・・」

「化け物めッ・・・!」

 

俺はわずか1年でありながらチームを優勝へと導いた。

所属するチームは、まぁ全国的に強豪校とは言われている。

まぁ全員俺よりヘタクソなんだが・・・

 

「よろしくな!!馬狼!!」

「ちゃんと先輩の言うことも聞けよな!」

「・・・うす」

 

 

どこだろうと俺は変わる気はない。

俺は戦場の王(フィールドのキング)として唯一無二の存在となる。

 

「すっげぇな!!馬狼最強じゃん!!」

「これで残り二年は安泰だな!!」

 

先輩達や監督はそんな腑抜けたことをぬかしやがる。

結局どこに行っても俺が(キング)であることに変わりはない。

俺は俺のためだけに、この先もサッカーをするつもりだ。

 

 

 

2年目も俺は全国大会決勝まで勝ち登った。

 

 

「では・・・決勝戦をはじめます。両チーム礼!!」

 

「「「「「よろしくお願いします!!」」」」」

 

 

くだらない。

何がよろしくお願いしますだ・・・

ここにいる全員が俺を引き立てる脇役だってのに・・・・

 

 

 

 

 

「よろしくな!!」

 

 

「・・・おう」

 

 

デカいな・・・

俺もそれなりに大柄な方ではあるが、俺と対面するソイツは俺をはるかに見下ろすほどの巨漢な男だった。

本当に中学生なのか・・・?

 

 

(気に入らねぇ・・・)

 

(キング)である俺を見下ろすとは、これはキツイお灸が必要だな。

 

 

そして早速ソイツとマッチアップする。

しかしコイツは今までやって来た雑魚とは大きく違う・・・

 

 

(!・・・隙がない・・・少しはやるようだな)

 

 

腐っても相手は決勝まで登りつめたんだったな。

 

まぁ関係ねぇ。

そんなに図体でかけりゃ俺のドリブルにはついてこれないだろう・・・

俺はいつものようにドリブルで相手を置き去りに・・・

 

 

 

 

 

「遅い」

 

 

 

 

「!?」

 

 

 

コイツ・・!!こんな巨体で俺のドリブルに平気で付いてきやがる!!

切り替えしは駄目だ・・・!だったら・・・・俺の突進力で押し通すのみ!!)

 

 

己が強くあり続けるがために磨き上げてきた俺のフィジカルで・・・!!

 

 

 

「?」

 

 

 

グググ

 

 

 

(は!?嘘だろ・・・!?ビクともしねぇ・・・つーかコイツなんつー身体してんだ・・・)

 

 

ハンドワークで野郎の体に触れた瞬間わかった。

鋼鉄のような強度の固い肉体。

そして俺はことごとくボールを取られる。

 

(クソがッ・・・!!だったらすぐに奪い返してやる!!)

 

 

認めたくないが、フィジカルでは分が悪すぎる・・・

だったらスピード勝負だ!!

中学でコイツほどの巨漢なら、きっとスピードはそこまで早くない!!

対する俺は50mを6.8秒で走れるほどの脚力。

負けるはずがない!!

 

 

 

 

 

 

しかしそんな俺の浅はかな考えは、次のワンプレーでことごとく崩れ落ちる。

 

 

 

 

「今度は俺の番だな」

 

 

 

 

!?速っ!?

いつ抜かれた!?嘘だろ・・・?

この俺が反応すらできなかった・・・!?

 

「待ちやがれッ・・・!!」

 

ファールしてでも止めようと野郎のユニフォームを引っ張る。

 

 

 

 

 

ドサッ

 

 

 

 

 

 

 

(は・・・?なんで地面が前に・・・)

 

 

 

 

 

 

ピィィィィィィぃ

 

 

次に聞こえたのはゴールのホイッスル音だった。

 

 

 

「ナイッシュ!!筋夫!!」

「やったぜ!!」

 

 

一体何が起きたのか理解できなかった。

 

 

「なんて奴だ・・・俺たちをごぼう抜きしてゴールを決めるなんて・・・!!」

「ボールがまったく見えなかった・・・・」

 

 

 

そこでようやく理解した。

俺は奴のユニフォームを引っ張りはした。

だが奴はその異常ほどいえる筋力で俺を振りほどき、俺はそのまま体勢を崩して地面へ前のめりに倒された。

そして野郎はそのままゴールをぶち込みやがったんだ。

 

 

 

 

 

そこからは完全に奴の独断場だった。

奴はほぼ一人で俺達を圧倒する。

 

 

 

「人数足りねぇ!!こっちに回ってくれ!!」

「バカ!!それじゃぁ他がフリーに・・・!!」

 

 

 

ピィィィィィ

 

 

 

 

2-0

 

 

「くッ・・・・!」

「重ッ・・・!!」

「クソが・・!!なんで3人がかりでも止められないんだよっ!?」

 

 

ピィィィィィ

 

 

 

3-0

 

 

「こんなの・・・無理だろ・・・・」

「キーパー!!止めろぉぉぉぉ!!」

 

 

 

ピィィィィィ

 

 

4-0

 

 

 

「クッソ・・・くッそぉぉぉぉぉ」

「・・・・・」

 

 

ピィィィィィ

 

 

5-0

 

 

 

 

 

(なんだ・・・これ・・・・)

 

 

 

俺はこれまでにない喪失感を感じていた。

 

 

 

 

 

 

ピッピッピッーーーー

 

 

試合終了の合図が鳴り響く。

 

 

「俺たち負けて・・・・」

「うっ・・・・ぐっ・・・・」

「クッソッ・・・・!あの化け物め・・・!」

「!」

 

 

 

 

『化け物めッ・・・!』

 

 

 

 

 

いつの日だったか、俺もそう呼ばれていた。

そこでようやく気づいた。

今までは自分がキングだと自負していたが、本当は違った・・・・

今この戦場の王(フィールドのキング)は・・・コイツなんだ。

この得体のしれない筋肉達磨が。

 

 

 

 

 

俺は初めて()()を味わった。

 

 

 

 

 

「・・・・・」

 

 

敗れた俺にはもう何も残っていない。

敗者はすぐに立ち去る。

同様に(キング)でない俺はすぐにここを去るべきだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが・・・

 

 

 

「おい・・・10番」

 

 

「ん?」

 

 

 

「なんでそんなに強い?そして俺は・・・俺には何が足りなかった・・・?」

 

 

 

気づけば俺は奴に近づきそんなくだらない質問を投げかけていた。

そんな俺の問いに奴はこう答える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「筋肉だ!!」

 

 

 

 

 

 

は?

 

 

 

筋肉だと・・・?コイツはふざけているのか?

いや・・・ふざけて質問をした俺も馬鹿だった・・・

だがこいつは今なんて言った・・・!?

 

 

 

 

 

筋肉・・・だと・・!?

 

 

 

 

「アンタもそれなりに鍛えては来たんだろう?アンタのその突進力とシュート精度は他の中学が相手なら十分通用しただろう・・・」

 

!?俺の武器をちゃんと理解してやがる・・・

悔しいが、野郎との差はその分析力だろう。

と俺は考えていた。

 

 

しかし奴は続けてこう言う。

 

 

「だが!!俺にとってそんなもん爽やかな風でしかない!!」

 

 

爽やかな・・・風だと!?

俺がこれまでやってきたをすべて否定されるような言葉だった。

 

 

「・・・」

 

俺は今日コイツに完敗した。

だからこそ何も言い返せねぇ・・・

 

(冷静に考えたら理論もクソもねぇ・・・)

 

 

コイツの強さはその異様とも言えるフィジカルに任せた豪快なプレーだった。

俺の完全上位互換のようなスタイルそのもの・・・

それを理解できたからか、少しだけ清清しい気分になった。

 

 

「どうすればお前に勝てる・・・?」

 

 

 

らしくねぇ質問に野郎はこう答える。

 

 

 

 

「最初に言ったろ?シンプルだ!!筋肉だ!!筋肉を鍛えあげろ!!」

 

 

 

また筋肉という言葉を何度も連呼する。

しかしどうやら本当のようだな。

 

(コイツに勝つためには、今まで以上に筋肉を鍛え抜いてコイツ以上の飛び抜けた筋肉(フィジカル)を手に入れなければいけない・・・ってことか・・?)

 

「・・・・」

 

少しだけ疑問を抱く。

本当にそれでいいのか?もっと他にやり方が・・・

すると野郎はこう続ける。

 

「納得していないようだな。だからこそだ!とりあえず筋トレしてみろ!!今までアンタがやってきたフィジカルトレーニングなんぞ甘すぎるシュークリームに思えるほど!!追い込め!!そしたら色々と見えてくるぞ!」

 

 

俺がこれまでやってきたことがシュークリーム程度とは・・・

まぁ・・・普段のコイツからすれば俺のやっているフィジカルトレーニングなんぞウォームアップにもなりゃぁしないだろう・・・

 

「筋トレか・・・。確かに今のお前にとって俺の武器は文字通り風ほどにしかならない・・・おい10番。お前の名前を教えろ」

 

コイツを覚えておきたい。

いつかぶっ倒すその日まで・・・

 

 

 

「俺は増瑠筋夫だ!筋肉ですべてを解決するのがモットーな男だ!」

 

 

 

こんな時も筋肉筋肉とはな・・・

だが・・・それは馬鹿にならねぇ。

 

「馬狼照英だ。忘れたら殺すぞ」

 

いいぜ!ならやってやる!

お前を遥かに凌ぐ筋肉(フィジカル)を手に入れて、俺は再び(キング)として居座ってやる!

 

だから・・・

 

 

 

 

 

 

「次は俺が勝つ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それまではテメェが()()()()に座っていろよ

 

 

 

 

 

馬狼side out

 




遂に原作キャラとのご対面!!
そして馬狼の強化フラグがぁぁぁぁぁぁ
まぁ主なら負けない・・・よね?


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4.誓い

お気に入りが320件・・・・だとッ!?
俺は夢でも見ているのか・・・?
みなさん本当にありがとぉぉぉぉぉぉございまぁぁぁぁす!!
ありがた~い感想や誤字修正もしてくださった心優しき方々に感謝!!


 

 

チュン チュン

 

朝を知らせる鳥のさえずり。

 

「ふわぁ~・・・・よく寝たぁ~」

 

目覚まし時計なしで、俺は自然と朝を迎える。

 

 

5:30 起床

 

「ゴクッ・・・ゴクッ・・・うま」

 

まず朝起きてやることは、すぐ身体に栄養素を送り込むためにアミノ酸ドリンクを飲む。

そしてヨガで身体をほぐした後、熱いシャワーを浴びる。

熱いシャワーを浴びることで交感神経が刺激され、活動モードへ切り替わるのだ。

 

「今日の味付けは照り焼き風にしようっと♪」

 

その後朝食を食べる。

毎度の食事には必ず鶏胸肉やささみが入る。

理由はタンパク質が豊富で値段も安いからだ。

しかし毎日も食べていると飽きがやってくる。

だから味付けに工夫が大切なのだ。

それに加えて卵や野菜、お米などを加えてバランスを調整する。

両親にはできるだけ朝の負担をさせぬよう、朝ご飯はいつも自分で作っている。

 

「ごちそうさまでした」

 

これらはすべて筋肉を成長させるために必要なモーニングルーティンだ。

かれこれ10年近く継続できている。

 

「行ってきます」

「行ってらっしゃい」

 

 

6:45 出発

 

 

そして自転車で学校までゴー♪

高校に入学して少し遠くはなったが俺には関係ない。

むしろチャリで脚と心肺機能を鍛えれて一石二鳥・・・いや、この場合一石三鳥だな!

というかいつの間に高校入学したんだよ!?と突っ込まれるかもしれないが、中学2年と3年は今までとほぼ変わらぬ日常だったさ。

2年目、3年目はともに全中優勝した。

唯一の誤算はまさか俺がキャプテンに選ばれるなんて思ってもみなかった事だ。

だから俺はキャプテンとして、チームを勝利へ導くために筋トレを布教することで強化に役立たせた。

世間では堀出中=フィジカル最強校ってイメージされるようになった。

まぁ小学校から何度も中学生相手と戦ってきたんだ。

俺からすればそこら辺の中学生は小さな子供みたいな感じ。

そうして中学V3を遂げて無事卒業し、今に至るというわけだ。

 

 

 

 

7:20 学校到着

 

 

「よっ!増瑠!相変わらず朝早いな!」

「おはようございます先輩!先輩も早いですね!」

「朝練だ。そっちもか?」

「はい!」

「よし!だったら一緒にやろうぜ!!」

「いいんですか!?じゃあお言葉に甘えて」

 

 

こんな感じで部活動の先輩とは良好な関係を築けている。

朝学校にきて部室に行き、シュートとドリブル練習。

加えてディフェンス練習や壁当てでのパス・トラップといった基礎練習を朝練でほぼ毎日行う。

朝こうした基礎練習を行うことで身体にいち早く覚えさせ、放課後の練習でいつでも最高のコンディションでプレーをできるようにする。

 

今日はせっかく先輩が練習にお供してくれるんだ。

対人戦の練習を行うことで客観的に分析ができる。

 

「ふぅ~・・・やっぱ強えぇな。だがこうしてお前と一対一したおかげでディフェンスがうまくなった気がするぜ!!」

「以前よりも身体の使い方旨くなりましたよね?」

「お?わかるか!お前に教わったハンドワークの使い方を勉強したんだぜ!!まぁ・・・お前相手だとほぼ無力なのだが・・・」

「そんなことないですよ。守備は俺から見ても先輩かなり上達してますし、ドリブルスピードも以前より対応しにくくなりました。それに俺自身もこうして先輩とお相手出来てととても勉強になります!」

 

綺麗事ばかり並べていると思われるかもしれないが、俺は正直な事を言ってるだけだ。

 

 

「へへッ・・・!あんがとよッ!おっと・・・もうこんな時間か」

「そうですね。そろそろ戻りましょう」

 

 

そして練習後はちゃんとプロテインとおにぎりを補給する。

 

 

8:10 朝練終了

 

 

「であるからして・・・ここの二次関数はこのようにすれば解くことができます」

 

 

「こうして海の民たちはエジプトのナイルデルタ地域まで到達したのです」

 

 

「このようにhad+過去分詞を使った分が過去完了です。受験の文法問題でよく出るので必ず覚えておくように」

 

 

諸君。

筋トレとサッカーに熱中してて頭の方はおろそかになっている。

そう思っているだろ?

けど大丈夫。

なんせ前世はFラン大学にギリギリ合格できたくらいのバカだったからな。

その反省を踏まえて今世での勉強はかなり頑張っているよ。

成績は小学校の頃から常に上位にいるくらいにはね。

 

 

 

12:00 昼食

 

「よし!!飯だ!」

「うおっ・・!?やっぱり増瑠君の弁当箱はデカいな・・・」

 

 

まぁ食事は大事だから弁当が必然的に大きくなるのは仕方ない。

友達に毎度驚かれるのにも慣れてきた。

 

 

14:30 間食

 

「モグモグ」

「毎回思うんだが、ついさっき昼食べてなんですぐ飯が食えるんだよ・・」

「育ち盛りだからなッ!!」

「関係なくね・・・?」

 

 

前回にも言ったが、俺は最低限の栄養を補充するために間食用の弁当をもう一つ持参する。

放課後の練習のエネルギー源にもなるからな。

 

 

16:40 部活

 

 

「今日は一週間後の選手権に向けて実践形式での練習を行う。まず攻撃陣と守備陣で分かれそれぞれチームを組んで貰う。練習内容は至ってシンプル。5vs5でのゲームを行う」

 

「「「「「はいッ!!」」」」」

 

俺が通う高校は廣田宝泉(ひろだほうせん)というところ。

ほぼ毎年全国大会に出場するほどの強豪校だ。

中学時代それなりに結果を出せたからか、スポーツ推薦で入学することができた。

 

「行きますよ先輩!!」

「来い増瑠!今日こそ止めて見せる!」

 

さすがは強豪校。

先輩達は歴戦の猛者達だ。

うちの最大の武器はその守備力。

生半可な攻撃じゃ崩せないほどの、鉄壁のディフェンス力を誇ることで有名だ。

 

 

 

だが俺も負けてはいられない。

 

 

「ふっ!」

「速えな!!・・・だが甘い・・」

 

俺のドリブルスピードに先輩はしっかりと対応してくる。

 

 

「これなら!」

 

(!?・・・逆を突かれたか・・・!)

 

 

 

俺はマシューズで先輩の重心の逆を突くことでかわして見せた。

このマシューズは相手DFの重心をずらして逆を突くというドリブル技の王道だ。

ボディフェイントで相手の上体をずらすことができれば、俺のスピードとフィジカルでブッちぎれる。

複雑な技巧を扱わないシンプルでかつ強力なドリブルの一つだ。

 

 

 

「1年相手に負けられるかよッ!!」

 

 

カバーでもう一人の先輩が駆け付ける。

 

「ふっ!」

 

(ロールからのドラッグシザース・・!?なんて速さだ・・・!!)

 

昔からよく使ってたシザースの応用であるドラッグシザースにロールのアレンジを加えたドリブル技だ。

ロールを加えることで相手DFのリズムを一瞬崩し、崩されたリズムの隙を俺の瞬発力で突くという手法だ。

そしてキックの振りを早くするために鍛え上げたはずの脚がまさかこのように役立つとは

脚の振りを早くすることで、蜂楽には及ばないものの高速のシザースを生み出せる。

 

 

(どっちに来る?右・・・左・・・)

 

 

「駄目ですよ先輩」

 

(マジかよ・・・!?そのままダブルタッチ!?)

 

 

 

もう一つ幼少の頃から磨き上げてきたダブルタッチは最も俺が得意とするドリブル技。

本来ダブルタッチはボールをある程度静止させて、相手を引き付けないといけない。

それも引き付けるタイミングを見誤るとファーストタッチですぐ取られてしまう。 

静止時間の間にDFに考える時間を与えて予想させやすいからだ。

しかし鍛え上げた俺の筋肉とボディバランスを駆使すれば、高スピードドリブルから連続してのダブルタッチが可能となる。

 

俺の強みはこれらの身体能力に比例して伸びるドリブル技での対人戦の強さ。

マジで高校に入ってからも一対一で負けた記憶がない。

 

 

「でりゃああああ!」

 

 

俺の蹴ったボールはイメージ通りでゴールネットを揺らす。

 

「ナイスシュート!!」

「今のコースはエグかったぞ!!増瑠!!もっと打ってこい!!」

 

「さっきの、少し出るタイミングが早かったか?」

「そうだな・・・カバーリングの距離をもう少し離せば無理に突っ込む必要がなくなるんじゃないか?」

「確かに・・・それならさっきのような高速で迫ってくるドリブラーにも対応できるな」

 

だから先輩たちは、何度も思考を重ねてDF力を強化し続けている。

 

「まぁ相手がアイツじゃあな・・・」

「ちぃィィィィ・・・ホント頼り甲斐のある後輩が来てくれたな」

「あぁ。敵だと思うとゾッとするぜ・・・」

 

 

チームの雰囲気はとてもいい。

互いが互いの強みを喰いあい、個人の能力値を上昇させて行く。

そしてその強みを理解すればするほど連携や適応力も深くなり、チームとして格段にレベルアップしてゆく。

 

 

 

「お疲れさまでした!!」

 

 

19:00 練習終了

 

 

「筋夫~!!トレーニングルーム行こうぜ!!」

「おっけ。ちなみに今日はどこを鍛えるんだ?」

「う~ん・・・当たり負けしたくないからフィジカル強化で!」

「わかった。ちょっとメニュー考えとくから先行っててくれ」

「了解っす!筋肉先生!」

 

 

時々こうして同期や先輩たちからトレーニングのアドバイスを求められる。

かれこれ11年筋力トレーニングをしてきたので専門知識はそれなりについている。

おかげでチーム全体の基礎体力が大幅に強化された。

 

 

 

「お疲れ~。また教えてくれよな!」

「あぁ!いつでも聞いてくれ」

 

 

自身のトレーニング経験がチームを強くすることに喜んでいる。

 

 

「さてと・・・俺はもう少しだけやろう・・」

 

 

20:30 トレーニング終了

 

「ふぅ~・・・肩に丸みができてきたな・・・フッ!!」

 

 

トレーニング後は鏡で自身の筋肉チェックし、プロテインを飲む。

 

 

21:10 帰宅

 

「ただいま~」

「あら筋夫おかえり。お風呂湧いているわよ」

「ありがとう母さん」

 

帰宅後はお風呂に入り一日の疲れを癒す。

その後夕食を取り、筋肉に栄養を送り込む。

 

「うっまぁぁぁぁぁぁい!!」

「ハハハ!!筋夫は本当にうまそうに食べるな!!」

 

 

夕食後は机に座って宿題を片付ける。

高校に入ってからの宿題量は半端じゃない・・・

 

 

「よし!終わった!!」

 

 

睡眠時間をできるだけ確保するため効率よくそれらを片付ける必要がある。

 

 

22:30 就寝

 

 

「おやすみなさい・・・zzzz」

 

そして一日に感謝の祈りをささげて眠りにつく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ってな感じだ。まぁ普通だろ?」

 

「いやどこがだよ・・・まぁ参考にはなったぜ」

 

 

と馬狼とカフェでのんびり会話をする俺。

 

 

「プロテインでオススメは、国産だとザボス、海外産ならyour proteinなんかがいいぜ。値段も安くて高品質で味も美味いんだ」

「ほう・・・海外産は今まで頭に無かったな・・・考えておくか。それで話変わるんだが、この前お前に教わったスクワットでな・・・」

「ふむふむ」

 

度々こうしてトレーニング法や食事・サプリ関係の話をしたりする。

原作でも自分が強くなるためによく相手の話聞いてたし。

 

「今日も助かったぜ()()。サイドメニューから何か一つ奢らせてくれ」

「マジ?じゃあ()()これお願い!」

 

 

 

 

そう。

 

つまるところ俺は馬狼と友達になったのだ。

 

この2年でお互い下の名前で呼び合うほどに。

歳は1つ上なのだが本人が「敬語なんて辞めろ気持ちわりぃ・・・」と言ってきたので仕方なくタメ語で話している。

 

普段の言動はあれだけど、根は普通に良いやつだ。

 

「そういえば筋夫は今年の選手権には出るんだろ?」

「まぁな。うちも無事県大会通過出来たし、俺も運良くスタメン入りできて良かったと思う」

「まぁ・・お前ならどこ行ってもスタメン確定じゃねえの?・・・俺は悪童学院高校だからブロックは逆だ」

「あぁ。お互い決勝まで行こうな!」

「ったりめぇだ。去年は先輩達と()の失態で決勝を逃しはしたが、今年の悪童学院は強ぇぞ?」

 

原作と大きく違うのは、今の馬狼は自身の失敗をしっかりと受け止めて、次に活かそうとしている所。

彼曰く中学時代俺に負けたのが相当悔しかったようだ。

 

潔君ゴメン・・・馬狼先に改心させちゃったテヘペロ

 

「あぁ!俺達廣田宝泉もぜってぇ決勝まで行ってやる!」

 

 

 

「まぁもっとも・・・その時勝つのは・・・

 

 

悪童学院(おれたち)だ。せいぜいご自慢の筋肉落とさないようにだけしろよ」

 

 

「当然だ!!俺の筋肉は!!永遠に不滅なり!!」

 

 

(チッ・・・・イマイチ何言ってるか理解できちまう・・・帰ったらジムでトレーニングするか)

 

 

 

「じゃあな。次会った時は・・・・」

 

 

 

 

 

 

「「決勝!!」」

 

 

 

そうしてお互い誓い立て、その場を去った。

 

 

 

 

 

 

そして遂に始まる選手権大会。

俺たち廣田宝泉は順調に勝ち上がっていく。

 

「なんだよコイツら・・!?ディフェンス固すぎる・・・」

 

 

うちの守備力はこの時すでに全国トップレベルまで仕上がっていた。

 

 

「うらぁぁぁぁ!!そんなもんかよ!!?」

「毎日毎日一杯食わされている後輩がいるもんでね・・・」

「それに比べたらお前たちの攻撃なんぞ綿飴なんだよ!!」

 

つーかマジでディフェンス強いよなうち。

正直点を奪われる気配が全くない。

その安心感が俺のプレーを緊張感のない安定なプレーへと導いている。

 

「そいつを止めろ!!まだ1年坊だ!」

「嘘だろ・・!?デカすぎんだろ!!」

「この筋肉お化けめぇ・・・!」

「くそが・・・3人がかりでマークしてもすぐに振りほどかれる・・!」

 

 

全国が相手でも俺は己の最大の武器で勝負をする。

俺にとって筋肉とは無敵だ。

 

 

「でりゃぁぁぁぁっ!!」

 

(くっ・・!?なんてシュート力と精度だ・・・!)

 

 

 

 

 

蹴ったボールはゴールをネットを激しく揺るがす。

 

 

 

 

 

 

 

「「「「うおぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」」」

 

 

 

 

彼はその超人的なフィジカルで強豪校を次々となぎ倒していく。

 

 

「すっげぇなアイツ!!まさに筋肉の化身だな・・・!!サッカーってあんなに豪快なものだったか・・?」

「それそれ!なんつーかこれまでやってきた日本の綺麗なフットボールスタイルを壊すかのような・・・」

「つーか筋肉ってなんだよ!?色々反則過ぎだろw」

「まさに無双だな」

 

 

 

後に彼はこう呼ばれる。

 

 

 

 

理を壊す者(カタストロファー)

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして俺たちは無事決勝まで勝ち上がる。

 

(おい作者ぁぁぁ!!)

 

試合シーン省略し過ぎだ馬鹿野郎って思われるかもしれないが、正直話すことなどない。

主に筋肉で相手を抜き去ってシュート決めるだけ。

相手の攻撃は先輩たちのDF力でことごとく崩れ落ちていく。

全試合こんな感じだ。

原作キャラとも誰も合わなかったのが不思議だ。

まぁアイツらは隠れた天才達だ。

今後表舞台で姿を表すことはあまり無いかもな。

 

 

 

そして決勝の相手は・・・・・

 

 

 

「ちゃんと勝ち上がってきたようだな筋夫」

「照英・・・そっちこそ無事上がってこれたな・・・」

 

そして両チームのキャプテンが向かい合う。

 

「舐めんなよ?うちは今大会最強の攻撃力って呼ばれてんだ!」

「だったらうちは最強の守備力って言われているぜ?」

 

 

今のまさに最強の矛と盾がここでぶつかろうとしていた。

 

 

「それでは悪童学院高校 対 廣田宝泉高校の決勝戦を始めます。両チーム 礼!!」

 

 

 

 

ピィィィィィィ

 

 

 

そして試合の合図の笛が決勝スタジアムに鳴り響く。

 

 

 

 

 

 

 




今回は以上となります。
自分としては選手権編書きたかったのですが、主人公が強すぎて毎回筋肉で無双するシーンしか出ないと思ったので省略させて頂きました。
ちょっと読んでみたいと思った方々申し訳ございませんでした。
まぁ本命がブルーロック内での戦いとなりますので、原作開始までしばらくお待ち下さい。
感想やご意見はバンバン書いていってください!
あとお気に入り登録忘れずに。


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5.ストライカーの存在

お気に入り400超え+まさかの赤バーだとッ・・・!?
みなさん本当に本当にありがとうございますぅぅぅぅぅ!!

※訂正箇所があります。
感想欄からのご指摘とWikipediaより、ノエル・ノアがドイツでなくフランスの選手として有名であることが発覚いたしました!!
勘違いしてごめんなさい(泣+土下座)
指摘してくださった方ありがとうございます!!



 

 

「ふっ・・・ふっ・・・!!ほっ・・・!!」

 

放課後のトレーニングルームでただ一人必死にベンチプレスをする姿。

 

「ラストぉぉぉぉぉぉぉぉッ」

 

ガチャン

 

どうやら1セットを終えたようだ。

彼の持つバーベルには片方4枚のプレートが付いている。

通常の高校生では持つことさえ出来ぬほどの高重量でのトレーニング。

彼にとってそれは、いつもと変わらぬ日常であった。

 

 

「増瑠」

「どうしたんですか?」

 

 

廣田宝泉高校サッカー部の監督が彼の名を呼び、一言こう言った。

 

 

「日本サッカー協会が君を呼んでいる。後日来て欲しいとのことだ」

 

 

 

 

 

次の日

 

 

 

突然の監督からの指令で招かれた。

俺の目の前には【日本サッカー協会】と書かれた銘板の門の前に立っている。

 

 

(やべぇ・・・めっちゃ緊張する・・・・)

 

 

いくら俺でもこのような場所で緊張は隠し切れない。

いくらサッカーで大衆の前でも平気だったとはいえ、今日ここに来たのは日本がサッカーを管理する場所だ。

 

 

「失礼します。増瑠筋夫様を連れて参りました」

 

 

案内役の人が目的地まで案内してくれた。

そして俺はその扉へと入る。

 

 

 

「やぁ増瑠君」

「待ってたよ」

 

 

あれ?

この人達見たことあるぞ?

 

「私は日本サッカー協会会長を務める不乱蔦 宏俊(ぶらつた ひろとし)と言う者だ」

「現U20監督を務める法一 保守(ほういち やすもり)だ。よろしくね」

 

ぽっちゃりしてる方は確か原作の冒頭で帝襟アンリちゃんと言い合っていたっけ?

隣の人はU20戦で糸師冴に「カスでも思いつく教科書通りのオリジナリティの欠片もない愚策だ」って言われてた監督だ。

 

 

「増瑠筋夫です。それで、このような(わたくし)にお話とは?」

 

 

指定された席に座り、自己紹介と要件を言う。

彼らのような大物が呼び出したんだ。

おおよそ見当はつく・・・

 

 

 

 

 

 

「喜びたまえ!!君は我らU20日本代表選手に選ばれたのだ!!」

 

 

 

 

 

 

「ほう・・・日本代表ですか・・・」

「そうとも!君が()()()()()()()()()()その時から我々は君に目をつけていた。君の持つその強靭的なフィジカルと豪快なプレースタイルはまさに我々が求めていたもの!!」

 

 

そう。

俺は去年の高校選手権で馬狼率いる悪童学院高校に勝利した。

悪童学院・・・というより馬狼は正直メチャクチャ強くなっていた。

そのせいで俺達の鉄壁守備からハットトリックを決めやがったんだぜ?化け物過ぎ・・・

それでも総合値ではうちが紙一重勝っていた。

延長戦まで持ち込んだ試合では俺たちのほうが運動量は多い。

悪童学院もなくはないが、俺たちは日々粘り強いディフェンスでのスタミナ強化トレーニングと俺考案の全力シャトルラントレーニングしている。

そのわずかな差が結果を生んだのだろう

 

だが後半戦までの試合は、両者がお互い譲ることなく均衡している状態。

力量はほぼ互角だった。

実際馬狼には何度も出し抜かれた場面があった。

 

まさかアイツのあれがあんな風にあぁなっていたとは・・・

 

言葉では言い表せられない程、今の馬狼は原作よりも飛び抜けて強いだろう。

 

それでも俺達は最後まで勝利に向かってプレイをし、無事優勝を捥ぎ取った。

 

そしてなぜか俺が最優秀賞(MVP)に選ばれた。

 

ハットトリックを決めた馬狼が選ばれるだろうと思っていたので当時はかなり驚いた。

それが恐らく今回俺がここに呼ばれたきっかけ。

だからある程度見当はついていた。

 

「しかし凄い筋肉だね・・!少し触ってもいいかね?」

「は・・はい・・」

「では失礼・・・!?硬いッ・・・!まるでダイヤモンドのようだ!!」

うち(U20)でもここまでの筋肉は見たことがない・・!これが高校ナンバーワンの秘訣なのか・・!?」

 

そうですよ監督。

筋肉を鍛え上げればいいんですよ。

 

「若い頃を思い出しますな法一君!」

「え・・えぇそうですねぇ・・・」

「今はこんなのだが、若い頃の私もよく鍛えていたものだ・・・あれは高校生の時だったか・・?部活で筋トレをさせられた時から・・・ペラペラペラペラペラ」

 

俺の筋肉を褒めてくれている。

嬉しいのだが、このまま不乱蔦のおじさん特有のマシンガントークが続くのは困る。

 

 

「あのう・・・」

 

「おっと・・・すまないすまない・・・話が逸れてしまっていた・・・まぁ最初に話した通りだ。君をU20日本代表として迎え入れたい」

「君には是非ともうちに来てほしい。君の持つその才能を我らU20日本代表チームで十分に尽くしてくれないだろうか?あ・・要望などがあればポジションはどこでもプレーさせてあげるよ!!」

 

どのポジションか・・・

まぁ正直GK以外ならどこでもできる。

実際選手権の何試合かはDFだったりMFもやっていた。

筋肉があれば基本ポジションに困ることはない。

 

「最近では糸師冴君という若手がいてね・・・彼はうちではないんだが、あの世界的有名チーム『レ・アール』の下部組織に加わったんだ。彼はその才能で世界中のクラブが欲するほどのMFとして注目を浴びている」

「彼のような才能ある者を我らU20日本代表は世界的スターへ導くことが使命なのだ!」

 

 

(世界的スター・・・か)

 

 

コイツらのことは原作でもよく知っている。

 

 

《サッカーを金の道具としか思っていない銭豚達(ぜにぶたたち)

 

 

アンリちゃんはそう強く罵っていたが、間違いではないだろう。

 

「我ら日本代表はこの25年でとてつもない進化を遂げておる。近年ではW杯出場常連国と知られるほどにね」

「そこに君のような才能持った若者が加われば、()()()我々はW杯で優勝をできると考えて・・・」

 

 

 

 

 

「その()()()とはいつでしょうか?」

 

 

 

 

俺は彼らへ疑問をぶつける。

 

 

「え・・・・?」

「えぇ・・・と・・・」

 

 

「確かに日本はここ数年で世界と渡り合えるほどの成長を遂げました。だけどあなた方のおっしゃるW杯優勝する日とは・・・果たしていつになったらやってくるのでしょう?」

 

実際日本サッカーはこの25年でベスト16に入れるほどの力を持つようになった。

俺も今世でのW杯は全部見てきた。

本当に惜しかった。

あと一歩。あと一歩って所で彼らは強豪国に敗北を許す。

その一歩を打ち砕くような存在が、今の日本サッカー界にはないと俺は確信している。

 

「い・・・いつかはまだわからない・・・だが!残り10年以内でその夢は実現する!!これは決して憶測なんかじゃない!」

 

「不乱蔦会長のおっしゃる通り!我々は近々必ずW杯を勝ち取る!特に今年新たに選出されたU20は強者(つわもの)揃い!主将(キャプテン)オリヴァ・愛空(あいく)君を始めとする有望な若手選手が多く出揃っている!メディアで彼らは「ダイヤモンド世代」なんて呼ばれているんだ」

 

「それだけじゃない!現在国内リーグで大活躍中の閃堂 秋人(せんどう しゅうと)君だっている!彼と君が組めば我々は近々必ず優勝できる!!」

 

 

必死に縋りつくように説得を試みる彼らに対し、俺は一言こう返事をした。

 

 

 

 

 

 

 

「だが断る」

 

 

 

 

 

「「え!?」」

 

 

二人は目を大きく丸くして大汗かきながら驚いていた。

 

 

「今・・・なんて・・・」

 

「断ると言いました」

 

「しょ・・・正気かい・・!?U20代表だよ!?こんな機会滅多にないんだよ!?」

「君の言うそれはチャンスを溝に捨てるようなものだ!」

 

確かに日本は発展途上国だ。

これから10年いや、それ以下の年でW杯を勝ち取るのは決して不可能ではない。

さっき話に出てたオリヴァ・愛空や閃堂 秋人、そして糸師 冴や新たに生まれる若手の天才達が代表に加われば可能性は十分にあるだろう・・・

 

 

だが・・・

 

 

「いずれじゃ駄目なんだ。俺のような小物が何言ってんだで感じですけど、あんたらのような甘い考えじゃいつまで経っても日本はW杯優勝は夢のまた夢のままだ」

 

 

だろう・・やかもしれない・・じゃ足りない。

W杯優勝を確証付けるほどの圧倒的な存在・・・

 

 

そう

 

 

 

ストライカー(英雄)の存在が不可欠なのだ。

 

 

 

 

「な・・・なんてことを言い出すのかね君はッ!?」

「ならば何を望むんだ!?金かッ!?それなら心配ない!!U20選手でも平均500~800万ほど稼いでいる!他にもプロリーグチームと契約を組み、スポンサー契約などをすると更に収入を得ることができるぞ!!いやそれだけではない!!日本代表クラスともなれば年俸3000~5000万!!活躍次第では1憶だって稼げるんだ!!」

 

 

まぁそれも一つの道かもな。

この世界で俺を育ててくれた両親にも早く恩返しをしたい。

そのためにも、まず早めに代表入りすることで安全に出世し、それなりに活躍して稼いで結婚して生涯を終える・・・

 

 

(まぁそれも悪くはないかもな)

 

 

 

「君なら頑張れば間違いなく日本代表になれる!!君の人生はこれから間違いなく華やかなものとなるだろう!!だからもう一度考え直して・・」

 

 

 

 

 

だが俺の答えは決まっている。

 

 

 

 

「何度言われても同じです・・・()()()が入った所で日本はW杯優勝なんかできやしない。それに・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここには俺のサッカーはない。(原作キャラ達に会いたいからやだ!)俺には俺の目指すべき所がある(俺はみんなのいる青い監獄に行くんだ!)

 

 

そうして席から立ちその場を去る。

 

 

「ま・・・・待つんだ増瑠君ッ・・!」

「もう少し話をッ・・・」

 

「あともうひとつ・・・

 

 

 

 

俺がここまで来れたのはアンタらの言う才能なんかのおかげじゃない・・・

 

 

 

 

()()()

 

 

 

 

それだけ言い残し、俺は部屋を去った。

 

 

 

 

ガチャン

 

 

(言えることはちゃんと言えた。悔いはない)

 

むしろここで無理に代表入りを選択することが間違いだったかもしれない。

どうせ俺が代表に入ったとしても、彼らは俺のやりたいプレーを日本だからという理由でやらせてはくれないだろう。

一生あいつらの金稼ぎの道具として動かされていた可能性の方が高かったかもな。

 

そうして安堵の気持ちを抱いて帰ろうしたら・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前に糸師 冴がいた。

 

 

 

 

 

「・・・・」

 

 

(うおぉぉぉぉぉぉ・・!?生糸師兄ちゃんだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!オーラやべぇぇぇぇぇぇ!!)

 

 

身長はあまり大きくないのだが、そこには強者だけが持つ圧倒的な存在感があった。

 

 

「・・・邪魔だ」

 

・・・はい」

 

 

緊張と彼の持つ圧迫感に俺はどうすることもできず、そう返すしかなかった。

 

 

 

(やべぇ・・・・緊張しすぎて何もしゃべれなかった・・・・)

 

 

向こうは恐らく俺のことなど眼中にないだろう。

向こうからすれば俺なんてまだ世界も知らぬような小物だ。

 

 

 

だけどいつかまた会ってちゃんと話をしたいな・・・

 

 

 

 

side 糸師 冴 in

 

 

 

今からくだらないゴミ共とじゃれ合う時間(ジャーナルとの取材)だ。

まさか帰るためのパスポートが切れていたとは・・・

おかげで日本サッカー協会まで呼び出された。

そしてある一室から何度も聞いてきた豚野郎(不乱蔦)の声が聞こえる。

話を聞いてみると誰かを勧誘していた。

 

 

「・・・・」

 

別にどんな奴が加わろうと今の日本サッカー界は変わらない。

それを俺はスペインで嫌というほど理解させられた。

そしてチラリと奴らの姿が見えた。

 

 

 

そこで俺は一人の男に目をつける。

 

 

 

 

 

(なんだあいつ?)

 

 

 

大きい。

体格だけで言えば今までやり合ってきたプロリーグ選手の奴らよりもデカい。

あの大きさならおそらくDFかGKか?

まぁどっちでもいい。

デカいだけでは、この先上手くはいかない。

 

 

「君には是非ともうちに来てほしい。君の持つその才能を我らU20日本代表チームで十分に尽くしてくれないだろうか?あ・・要望などがあればポジションはどこでもプレーさせてあげるよ!!」

 

 

またか。

いつもそうだ。

ああやって銭金欲してるだけのジジイ共にたぶらかされていつか潰れる。

俺はそう言った地獄を何度も見てきたんだ。

 

 

「そこに君が加われば近々優勝できる!!」

 

 

(日本も終わりだな・・・・・ああやって若い奴らがジジイ達の操りに人形にされて・・・)

 

 

 

そうしてその場を立ち去ろうとした。

 

 

 

「だが断る」

 

 

 

 

ピタリの俺の足が止まる。

 

 

(今アイツ・・・断った・・・?)

 

 

腐っても日本代表だ。

この国だと、それなりの金や人生の保証に近しい条件。

実際今いるほとんどの代表選手たちは、ほとんどその条件を飲んでいる。

 

「ならば何を望むんだ!?金かッ!?それなら心配ない!!U20選手でも平均500~800万ほど稼いでいる!他にもプロリーグチームと契約を組み、スポンサー契約などをすると更に収入を得ることができるぞ!!いやそれだけではない!!日本代表クラスともなれば年俸3000~5000万!!活躍次第では1憶だって稼げるんだ!!」

 

 

奴らは必至こいて男を説得する。

そんな金が本当にテメェらで出せんのかよ詐欺師が。

一億?ふん・・・興味ねぇよ。そんな端金・・・

そんな甘い密が目の前にあるのにも関わらず、奴は動じない心を持っていた。

 

「いずれじゃ駄目なんだ。俺のような小物が何言ってんだで感じですけど、あんたらのような甘い考えじゃいつまで経っても日本はW杯優勝は夢のまた夢のままだ」

 

 

アイツの言うそれは、いままさに日本サッカー界に足りないもの。

それを十分にわかっていた言動から、奴のサッカー選手としての大きさを十分に理解させられる。

 

しかし、後に奴が放った一言に俺は大きく目を見開く。

 

 

 

 

「ここには俺のサッカーはない。俺には俺の目指すべき所がある」

 

 

 

 

ゾクッ

 

 

 

久しぶりの感覚だ・・・

 

 

 

 

奴の中にいる()()に俺は一瞬背筋を凍らせる。

 

 

 

 

奴には確固とした信念がある。

まさかこの国(日本)で、あのような考えを持つ選手がいたとは・・・

そして奴は去り際にこう言った。

 

 

「俺がここまで来れたのはアンタらの言う才能なんかのおかげじゃない・・・

 

 

 

 

 

 

()()()

 

 

 

(は?筋肉・・・?)

 

 

 

俺は一瞬混乱した。

才能でもなんでもない。

純粋な・・・・筋肉・・・だと・・?

 

そして男は俺の前にそびえ立つ。

 

 

「・・・・」

 

身長だけじゃない。

服の上からわかるほどの高純度の肉体。

世界でやり合ってきたフィジカルモンスター級の奴らが細く見えるほどだ。

しかも話を聞くにコイツはDFやGKではない。俺と同じMF・・・いや・・・

  

 

FWだな。

 

 

 

「・・・・邪魔だ」

 

「はい」

 

 

奴は俺を前に何も言うことなく去っていった。

別に自惚れしているわけではないんだが、俺を見た奴らは大抵声をかけてくだらない会話に付き合わされたり、握手やサインなどを求められるのがほとんどだ。

 

それなのに奴は何もせずその場を去るとは・・・・

 

 

 

 

(俺なんか眼中にも無いってことか・・?ふっ。面白い奴だ)

 

 

 

 

 

奴の言う目指すべき所。それはおそらく・・・・

 

 

 

 

 

 

『世界一のストライカー』

 

 

 

 

 

かつて弟と目指した太陽のように輝かしく、そして影のように黒く覆う先の見えない儚き夢。

 

 

「おいマネージャー。誰だアイツ?」

「か・・・彼は確か増瑠筋夫君だったかな?高校サッカー界で話題の・・・」

「ふ~ん」

「相変わらず興味なさそうだね・・・しっかし彼の筋肉はすごいねぇ~」

 

 

 

 

(増瑠筋夫か・・・覚えておこう・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

いつか俺と再び会う日が来たら、その時は・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お前の目指すその()・・・俺が全力でぶっ壊してやるよ

 

 

 

 

 

side 糸師 冴 out

 

 

 

 




ということで糸師冴に興味を持たれた主人公でした。
そして主人公はU20代表ではなく、原作キャラ達に会いという一心だけで条件を蹴り、青い監獄へ行く道を選ぶのでした
ちょっと無理矢理過ぎたかもしれませんが、基彼はブルーロックを目指して筋トレを始めましたからね。
メチャ考察してくださった方々はマジですみません!
ですが自分的には、何とか綺麗に繋げられて良かったと思っています!

※あ、ちなみに今回冴君が受ける予定の取材とは原作に出たシーンではありません。
だってその頃にはブルーロックプロジェクトが発表されている最中だもんね。
ややこしくしてすみません。

そして次回いよいよ原作編突入します!!
感想やご意見または誤字報告などどんどん書きまくってください!!
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原作開始
6.想いを胸に


あ・・・ありのまま起こったことを話すぜ・・・
久しぶりに投稿をしようとサイトを開いたらお気に入りがすでに800件を超えていた・・・
そして、今この瞬間900をも超えていた・・・
何を言ってるのかわからねぇと思うが俺にも何が起きたのかわからなかった・・・
頭がどうにかなりそうだった・・・
催眠術とか超速投稿だとか・・そんなちゃちなもんじゃぁ断じてない・・・
もっと恐ろしいものを味わったぜ・・・・
みなさん本当にありがとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉございまぁぁぁぁぁぁぁす!!
感想や誤字修正もしてくださった方々もう目から鱗です・・・(泣)



季節はいよいよ春に差し掛かかる。

それはつまり、この一年共に戦ってきた先輩達との別れの時。

 

「みんな。今まで本当にありがとう。お前たちのおかげで俺たちは悲願であった選手権優勝を果たす事が出来た」

「俺たちがいなくなっても、鉄壁のディフェンスは引き継いでくれよな!」

「来年は見に行くからな!へっぽこなプレイなんかしたら承知しねぇぞ!」

 

先輩達や同期のみんな。

その別れに涙を流す者もいれば、この先未来へと進む決意を固める者もいた。

先輩達と過ごした一年は少なからず俺たちに大きな成長を与えてくれただろう。

だからこそ次は、俺たちがその役目を全うしなければならない。

彼らもこれから高校を卒業した後己の道を突き進んで行くのだろうから。

 

 

 

数ヶ月後

 

 

いつものように朝練でグラウンドへ向かう。

 

「先輩!おはようございます!」

「おはよう。朝早くから朝練なんて意識高いな」

「はい・・・俺周りより下手なんで・・・だから人一倍努力して、少しでも力になりたいんです・・・」

「・・・・わかった。なら俺も付き合おう」

「!ありがとうございます!先輩!」

 

 

多くの後輩が部に入ってくれたおかげでチームの雰囲気はまた明るくなった気がした。

強豪中学から引き抜かれたレベルの高い者もいれば、誰よりも努力を惜しまない凡才だっている。

いつだって彼らはスタメンを勝ち取るために這い上がってくるだろう。

俺も油断できない状況だ。

 

 

 

「明日からいよいよ選手権予選だ。全員が十分に力を発揮して全国V2を目指すぞ!!」

 

 

「「「「はいッ!!」」」」

 

 

あれからあっという間だった。

学校に行って勉強して練習しての繰り返しは、気が付けば冬の選手権予選まで差し掛かってた。

そして俺たちはその予選を年変わらず順調に勝ち進んでいく。

 

 

「こっちだ!!」

「はい!あ・・・すみません・・!」

「いいパスだ!!こっからは任せろ!」

「奴を止めろ!!一対一では無理でも数で押し込めば行けるはずだ!!」

「いけるかよっ!」

「クッソ・・・守備力は固い上にほぼコイツ単体の超攻撃力・・・・」

「強すぎる・・・・これが去年の王者なのか・・・」

 

先輩たちが去ったことで去年ほどの守備力はないが、強豪校にも通じる粘り強いディフェンスはいまだ健在だ。

予選程のレベルであれば難なく突破できるくらいだ。

 

それに俺がいる。

あれから更にレベルアップした俺はよりプレーに磨きがかかり、決定力は去年よりも格段に上がっていた。

 

 

「「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ」」」」」

 

「よっしゃぁぁぁ!!」

 

 

そうして無事予選を突破し、選手権出場を勝ち取る。

 

 

「やったな筋夫!!予選突破だ!!」

「・・・・・あぁ」

「どうしたんですか先輩?浮かない顔して」

 

 

「いや・・・なんでもない」

 

 

 

(そろそろだったか)

 

 

 

 

俺がこの世界に転生して早17年。

そして選手権予選が終わったんだ。

そして俺はこれまででかなりの実績も残している。

それはつまり・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お帰り筋夫。今日ポストにこんなものが届いていたわ」

 

 

 

母のその言葉を聞いて俺は恐る恐るその封筒の中身を開ける。

 

 

 

 

 

【強化指定選手に選出されました】

 

 

 

 

原作への参加券を手に入れたということだ。

 

 

 

「やっ・・・た・・・・」

 

 

 

何よりも目指していた目標。

その目標のために今まで培ってきた努力。

 

それが今この瞬間ようやく実ったのだ。

そして俺は迷わず父と母に伝える。

 

 

 

 

「父さん・・母さん・・・俺行ってくるよ」

 

 

 

だがついこの間に日本代表を蹴ったんだぞ?

それなのに今回は、『強化指定選手に選ばれました』というトレセンでも地区選抜でも何でもないような所へ行くとなると・・・

少なからず二人は疑問を抱くはずだ。

 

 

「・・・わかった。行ってこい」

「頑張ってきなさい筋夫」

 

 

しかし二人はあっさり賛成の意を表した。

 

 

「二人は何とも思わないのか?俺一応U20のオファーを蹴ってきたんだが」

「まぁさすがに驚きはしたぞ。まさかうちの息子が日本代表に選ばれたなんてな」

「そしてその日本代表を蹴った時は母さんたち更に驚いたのだけれど」

 

 

まぁそうだな。

冷静に考えたら俺結構やばいことしたんだったな・・・

 

 

「だけど私達から言うことは何もないわ。筋夫のやりたい道を進んでくれれば、母さんたちはそれで満足よ」

「そうだ!!筋夫のやりたいようにやってみろ!!己の道筋は己の筋肉で突き進むのみ!!父さんの中の哲学だ!!」

 

 

己の道筋は己の筋肉で突き進む・・・いい言葉だ。

 

 

 

 

 

「行ってこい筋夫。父さんと母さんのことを何も心配しなくていい」

「あなたはあなたのためだけに頑張ってきなさい」

 

 

 

 

あぁ・・・

 

 

本当に・・・良い親を持ったものだ・・・

 

 

 

 

「父さん・・・母さん・・・

 

 

 

 

ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

そして後日、いよいよ出発の時を迎える。

 

 

「もしかしたらしばらく帰って来られないかもしれない。だけど俺頑張ってくるよ!」

 

 

二人には一応合宿や長期遠征という形でしばらく帰ってこれないとだけ伝えておいた。

それなら青い監獄での生活中も心配をかけることはないだろう。

 

 

「いってらっしゃい筋夫。家の事は任せておきなさい」

「頑張って来い筋夫!!俺たちはいつでもお前を応援している!!」

 

 

父さんと母さん・・・

ふたりの想いを胸に俺は家を出る。

 

 

「行ってきます」

 

 

 

 

 

 

 

そして指定された場所【日本フットボール連合】までたどり着く。

 

 

 

「遅せぇぞ筋夫」

「悪い照英。けど待ち合わせの時間より早くないか?」

「15分前行動は基本中の基本だ。じゃねぇと何かあった時困るだろ?」

「相変わらず律儀だな・・・よし!俺達も入るか」

 

原作通り馬狼も強化指定選手に選ばれていた。

まぁ強豪校のエースなんだ。

選ばれないわけがない。

そして中に入ると原作同様多くの選手が集まっていた。

 

「凄い数だな・・・」

「だな・・・熊本のエース大川(おおかわ)、青森のメッシ西岡(にしおか)、高校No1身長の石狩(いしかり)・・・それなりに名の知れたFWがいやがるな」

「・・・詳しいんだな」

 

以前彼から聞いたが、少しでも気になったり危険性のある選手はキッチリと研究をしているそうだ。

相手の長点や弱点は必ずインプットしておく。

それがこれまで彼を勝利へと導いてきたのだろう。

だからこそある程度名の知れた選手も大方頭に入っているんだとか。

 

 

 

「おいおい・・・・マジかよ・・・・あれって・・」

「あぁ間違いねぇ・・・・」

「間近で見ると迫力あるな・・・デケェ・・・」

「オーラやばすぎんだろ・・・」

 

 

 

ザワザワ

 

 

「なんでこんなザワザワしてるんだろう?」

「・・さぁな」

 

 

なにやら周りが騒がしい。

凄い人でも来たのかと後ろを振り返る。

 

 

ドン

 

 

注意を払っていなかったせいで入り口から来た人とぶつかってしまう。

相手はぶつかった衝撃でお尻から転んでしまう。

 

 

「あ・・ごめん・・・大丈夫?」

「イテテ・・・いやこっちこそゴメン・・ってデカッ!?」

 

 

あれ?

 

 

コイツらって・・・・

 

 

 

「す・・すげぇ!!アンタ廣田宝泉の増瑠筋夫だろ?俺アンタのプレー好きなんだよね!」

「しかも隣にいるのは悪童学院のエース馬狼照英!?ヤベェ・・高校サッカー界のトップ二人に会えるなんて・・・」

 

 

 

 

 

 

まさかのまさか

 

 

 

 

 

吉良涼介(きらりょうすけ)潔世一(いさぎよいち)がいた。

 

 

 

 

「俺たちの事知ってんのか?」

「知ってるも何も、高校サッカー界でその名前知らない人なんていないよ!

超人的なフィジカルとシュート力で強豪校を次々と薙ぎ払っていく『理を壊す者』(カタストロファー)増瑠筋夫!!

 

そして天才的なシュート精度と高度なテクニックとフィジカルを併せ持ち、いつでもチームを勝利へと導いてきた『ストライカーの王様』(キング・オブ・ストライカー)馬狼照英!!」

「か・・・カタス・・トロファー・・?」

 

なにその呼び名・・!?

え・・?俺って巷でそんなふうに呼ばれてたの!?

やべぇ・・・・超恥ずかしい・・・

 

 

「ほう・・・悪くねぇな」

 

 

 

対する馬狼は気に入ったようだった。

 

 

「ところでさ増瑠君・・・噂なんだけどU20に選ばれたってマジなの?」

 

 

 

吉良君が俺に尋ねる

あ・・・やっぱりその話出回ってたか。

 

「え!?U20ってあの『ダイヤモンド世代』の!?」

「お前いつのまにそんなのに選ばれてたんだよ・・・」

 

 

吉良君がかなり大きめのトーンで話したせいで回りに聞こえてしまう。

 

ザワザワ

 

 

 

 

「おい聞いたか・・?」

「あぁ!すげぇ!!U20だってよ!!」

「さすが高校サッカー界のトップに君臨する男だ・・・」

 

 

 

等と称賛の声が上がる。

そんな彼らに俺は一言

 

 

 

「うん。だけど蹴った」

 

 

 

 

 

とだけ言っておいた。

 

 

 

「「「「「ふぁ!?」」」」

 

 

 

話を聞いていた全員が間抜けな声と驚きの表情を見せる。

 

 

 

「え・・・えぇと聞き間違いかな・・?今蹴ったって・・・」

「うん。蹴った」

「な・・なんで!?あのU20だよ!?高校生なら誰もが憧れるあの日本代表だよ!?」

「それを蹴るなんて・・・・」

 

 

吉良君は相当あたふためいてた。

 

 

ザワザワ

 

 

「マジかよ・・・日本代表を断った・・!?」

「アイツもしかしてとんでもない馬鹿なんじゃ・・・・?」

「ホントそれな!みんなの憧れのU20だぜ?」

「もしかして筋肉を鍛えすぎて頭まで筋肉になってしまったとか?」

「プフッ・・!!ちょやめろ・・!ウけるそれww」

 

 

 

ハハハハハハハ

 

 

 

まぁ普通そうだよな。

それは当時あまり知らなかったのだがU20日本代表とはだれもが憧れるプロへの道しるべ。

それを蹴るってことは=もう日本でサッカーをやる意味がほぼないってことなのかもな。

だけど以前言ったように悔いはない。

俺はここに来ることが人生の最大の目標だったからな。

と周りの野次馬や笑い声を無視していると

 

 

 

 

「ピーチクパーチクうるせぇよヘタクソ共!!」

 

 

 

 

 

 

 

シーン

 

 

 

 

突然の馬狼の叫びに周りは一気に静まる。

 

 

 

「あ・・・あのう・・・照英さん・・・?」

 

 

 

「わかってねぇようだから教えといてやる。だからよーく耳かっぽじって聞いとけヘタクソ共。

 

コイツは・・・増瑠筋夫は・・・()()()U()2()0()()()()にとどまる器じゃねぇってことなんだよッ!!」

 

 

 

 

え・・・ちょ・・・そういうことじゃなんですよ・・・照英さん?

やめてください・・・

なんか色々とハードル上がってしまうんで・・・・

 

 

ザワザワ

 

 

 

「う・・・・嘘だろ・・・」

「あの馬狼照英がそこまで言うってことは・・・」

「マジなのか・・・?U20よりも更に先を見据えているって・・・」

「お・・俺達とはスケールが違い過ぎる・・・」

「なんて器と筋肉だ・・・」

 

 

何納得してんのぉぉぉお前ら!?

だけど飛んできた野次馬を払ってくれたんだ。

感謝しないとな。

 

 

 

 

「なんか色々とありがと。照英」

 

 

「・・・別に・・・俺は俺の認める最大のライバルを馬鹿にされたことにムカついただけだ・・」

 

 

毎回思うんだけどコイツ本当にあの馬狼か・・・?

良い奴カッコ良よ過ぎんだろ・・・・!!

 

 

 

「凄い・・・やっぱり増瑠君は凄い人だよ!!あ・・紹介が遅れたね俺吉良涼介!よろしく!」

「お・・・俺は潔世一。よろしく増瑠君!」

 

 

そうしてお互い自己紹介を終えた時だった。

 

 

 

 

 

 

『おめでとう才能の原石共よ。お前らは俺の独断と偏見で選ばれた優秀な18歳以下のストライカー300名です。そして俺は絵心甚八。日本をW杯優勝させるために雇われた人間だ』

 

 

(遂に来たか・・・・)

 

 

舞台前方に絵心甚八(えごじんぱち)が姿を現す。

そして突然の紹介とW杯優勝という言葉に観衆はどよめく。

 

 

ザワザワ

 

 

「・・W杯優勝・・か・・」

 

 

『日本が世界一になるために必要なのはただ一つ・・・・・・革命的なストライカーの誕生です。そして俺はここにいる300人の中から世界一のストライカーを創り上げる実験を行う。これがその施設・・・・・・【青い監獄】』

 

 

そして彼はその青い監獄計画内で共同生活を送り、その監獄内で特殊なサッカーサバイバルを行うことと言い放つ。

 

 

『この青い監獄でのサバイバルを勝ち抜き299名を蹴散らして・・最後に生き残った一人の人間は・・・世界一のストライカーになれる。説明は以上。よろしく』

 

「だいぶイカれてんな・・・」

「だな」

 

原作呼んでたから知ってたけど改めて聞くとやべぇよな青い監獄(ブル―ロック)って・・・

 

 

すると隣の吉良君が反対の意を述べる。

聖人で仲間想いの性格、そして彼自身が憧れる日本代表選手を貶されたのだ。黙っていられるわけがない。

しかし絵心は言う。

 

そいつらはW杯優勝もしていないカスであると。

 

そして現在の世界一ストライカーであるノエル・ノアや史上最高のフットボーラーペレなどを例に挙げ、彼らの持つストライカーとしての要素『エゴ』について話をする。

 

 

『世界一のエゴイストでなければ、世界一のストライカーにはなれない。この国に俺はそんな人間を誕生させたい。この299名の屍の上に立つたった一人の英雄を』

 

「・・・・」

「英雄か・・・・おもしれぇ・・」

 

 

 

そして絵心は青い監獄(ブル―ロック)への扉を開ける。

 

 

 

『この先へ進め。己のゴールを何よりも喜びとし、その瞬間のためだけに生きろ・・・・それが・・・()()()()()()だろ?』

 

そして真っ先にその道へと走り出す男、潔世一の姿をとらえる。

それに続いて俺と馬狼も走り出した。

 

 

「潔君!?え・・・ちょ・・・増瑠君に馬狼君まで・・・!?」

 

 

そして次々と会場にいた選手たちが青い監獄(ブル―ロック)へと足を踏み出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・」

 

 

俺と同じ筋夫も走り出していた。

そしてふと筋夫の方へ目をやる。

 

「ハハッ・・!!」

 

(!?コイツ・・・笑っていやがる・・・)

 

 

こんな訳もわからねぇ状況で筋夫は笑っていた・・・イカれたのか・・・?

 

 

 

いや違う。

 

 

 

コイツは・・・高揚していやがる・・・

 

 

この先自分が世界一のストライカーになれるかもしれねぇって可能性にコイツは高ぶっていやがるんだ

 

 

(面白れぇ・・!!

 

 

やってやる!!)

 

 

 

「世界一のストライカーになるのはこの俺だ!!覚悟しておけよ筋夫!!」

 

 

 

 

そうして彼は世界一のストライカーになるべくその道を進んだのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方増瑠筋夫は・・・・

 

 

 

 

 

 

(ひゃっほぉぉぉい♪念願のブルーロックきたぁぁぁぁぁぁ♪)

 

 

 

 

 

馬狼の予想とは異なった高ぶりを抱いていた。

 

 

 




遂に始まる原作!!
そんな中で増瑠筋尾は念願の青い監獄へと足を運ぶ!
増瑠はこの先青い監獄を生き残れるだろうか・・・!?
ここまで読んでくださった方々本当にありがとうございます!!
感想や誤字報告などバンバン書いていってください!!
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7.正体不明の存在

お気に入りが1000件超えたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
ここまで読んでくださったみなさん本当にありがとうございます!!
感想や誤字報告などはとても心優しいものばかりでした・・・(泣)
あと感想欄での筋肉祭りが凄い・・・!!

※追記(2023/2/28 20:55)

間違えて未完成のまま投稿してしまいました。
本当に本当に申し訳ありません。
完成版は後半の部分を再度編集しておりますのでもう一度お読みになってくださいませ。



扉に入った俺達は各バスに乗せられ、山を越えたある場所へと向かっていた。

かなり田舎じみており、周りにはほとんど建物など存在しないような山道ばかり。

それまでは優雅にプロテインを飲みながら外の景色を嗜む。

 

 

 

そしてようやく見えてきた。

 

 

 

【BLUE LOCK】

 

 

大きな文字でそう書かれた巨大な施設。

そこはここにいる全員がこれから世界一のストライカーとなるべく場所でもある。

現地に着いた後、ボディスーツの配布が行われる。

確かあれにはランキングとアルファベットが書かれていたはずだ。

それはつまり、これから苦楽を共にする仲間との選別でもある。

てゆーか入り口にいる人って帝襟アンリちゃんだよな?

可愛い過ぎる・・!!

これってあれだよな?彼女からボディスーツ渡されるんだよな?超タノシミィィィィィ♪

 

と楽しみを待って列を並んでいると・・・

 

 

「増瑠筋夫選手。こちらへ」

 

「へ?」

 

 

突然隣からスタッフらしき人に呼び出され、他の部屋へと移される。

何かマズイことでもやらかしたのかと心配したが、後にスタッフからあるものを渡される。

 

 

「急に呼び出して申し訳ございません。実は・・・元々貴方の体格に見合うボディスーツがなかったものでして、突然のことですがこちらの特別製ボディスーツをお渡しします」

 

 

スタッフのその言葉に俺は唖然の表情を浮かべる。

まさか自分の身体がそこまで大きくなっていたとは・・・

 

「あ・・ありがとうございます」

 

クッソォ・・・アンリちゃんに会いたかった・・・・・

と凹みながら俺はボディスーツに知るされた数字とアルファベットを確認する。

 

 

 

そしてそこに記された数字とアルファベットは・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

事前準備作業を終えた帝襟アンリは仕事を終え報告に向かう。

 

「絵心さん。彼への専用ボディスーツの受け渡し完了しました」

「うん。ありがとうねアンリちゃん」

「はい。しかし彼とてつもなく大きいですね・・・まさか事前に用意していた伸縮性の高いボディスーツが小さすぎて入らないなんて・・・予め海外の技術開発部にも頼んでおいて良かったですね」

 

 

帝襟の言葉を聞き、絵心は一つの資料に目をつける。

 

 

「増瑠筋夫17歳 身長:198cm 体重:116kg  実績は中学全国大会3連覇、そして翌年の全国高校サッカー選手権優勝、さらに青い監獄へ来る直前まで地区予選を突破し選手権へ出場・・・・うん。凄いね彼」

 

「さすがの絵心さんも驚きますよね・・・」

「全員がまったくの見込み無しって訳じゃないよ。ただ初めて彼の身体データを見た時は俺も目を疑ったさ・・・この年齢であれ程の肉体練度とは・・・ロナウドもビックリだよ・・」

 

とジョークじみた感想を伝える絵心であった。

 

「では・・・なぜ彼を()()()()()に送ったのですか?彼ほどの実力であればもう少し上のチームに入れても良かったんじゃ」

「・・・・」

 

彼女に問いに絵心はしばらく沈黙する。

 

「しかも彼は以前に会長曰くU20のメンバーにも選ばれていた。そしてそれをなんと彼は断ったそうです」

「うん。知ってるよ。彼見かけによらずクレイジーな男だね。・・・が、同時に()()が残る」

「え?疑問・・ですか?」

 

そう言うと絵心は自身の抱く疑問の魂胆について話していく。

 

「U20代表のメンバー選考って確か去年の春前からだったよね?」

「えぇ。ちょうど増瑠君が選手権を優勝した直後会長達に呼ばれた時期でしたね」

「じゃあ俺達がこの青い監獄計画(ブルーロックプロジェクト)を立ち上げたのはいつ?」

「去年の秋頃。ちょうど日本サッカー協会と揉めたあの日でしたね」

 

「うん。それを踏まえてもう一つ質問をする。なぜ彼はU()2()0()()()()()()()()()()()()()()()()()のか?」

 

「それは・・・わかりません・・・ただ会長からの話だと、彼は『ここには自分のサッカーはない、自分には目指すべき所がある』と言って代表入りを断念したそうです」

「ふ〜ん・・・目指すべき所ねぇ・・・・」

「彼の目指すべき所とは、絵心さんの目的とする世界一のストライカーのことでしょうか?」

 

 

「・・・・いや。その可能性は低い」

 

「え?」

 

「彼のプレイはビデオで見させてもらった。その規格外のフィジカルに任せた豪快で力強いプレイ。これまでの日本の常識を壊すかの如く超攻撃的サッカースタイルだ」

 

「世間はそんな彼を『理を壊す者(カタストロファー)』と呼んでいるそうです」

「『理を壊す者(カタストロファー)』ねぇ・・・・・」

「彼の実力はすでに世界レベルに匹敵していると日本サッカー界は讃えています」

 

「うん。確かに彼は世界的に見ても逸材だ。だけどね・・・・彼のプレイからは()()()()()()()()()()()()()()()()

「え?『エゴ』・・ですか?」

 

「うん。もし彼が本当に世界一のストライカーを目指しているのであれば彼からは『エゴ』を感じさせるプレイが現れるはずなんだ。というのもこのシーンを見てくれ」

 

そう言うと絵心は彼女に一つのビデオを見せる。

 

「これは去年の高校選手権決勝の時さ。ちょうど彼が優勝した時のね」

「凄い・・・彼ボールを貰って相手のディフェンダーを引き付けてる・・・これだけDFが集まれば周りがフリーになってプレイがやりやすくなりますね。あ!味方が完全にフリーでボールを貰った!からのゴール!凄い・・・チームワークが絶妙に絡み合っていないとここまでのプレーはできないですね」

 

「その通り。彼のプレイは個人よりもチームプレイを主軸にしているってことさ」

 

「!・・・それは絵心さんの求める『エゴ』とは相反するものだと・・?」

 

「まぁ待ちなよ。話は最後まで聞こうよアンリちゃん。そう、一見フィジカルでの個人技ばかり注目されがちだが、本質はその強力なフィジカルを活かしたチームとの連携。特にゴール前でのポストプレーは彼ならではの武器に近しいもの。『One for all』を尊む日本からすれば、チームの得点にも貢献する理想的なFWと言えるだろう」

「えぇ・・・それがなぜ彼に『エゴ』がないと言い切れるんですか?」

「わかっていないようだね。このシーンもう一度よく見て」

 

「えぇ・・・と・・DFを引き付けてパスを出していますよね?それが何か・・?」

 

 

「見て欲しいところはそこじゃない。()()()()を見て」

 

「時間ですか?・・・・

 

 

 

 

延長後半・・・残り1分・・・?」

 

「そう。これはこのシーンがこの試合のほぼラストプレイであることを示す。彼程の能力なら間違いなく自分でゴール前まで持って行き得点できたはずだ。実際彼ほどの決定力であればむしろそっちの方が得点率は高い。パスを出した味方が必ずしもゴールネットを突き揺らすとは限らないからね。にも関わらず彼はそんな超重要な最終局面でも迷うことなく味方へパスを出していた。もちろんこれだけじゃない。これまでの試合でも彼は状況的不利に陥った場合必ず味方を使って効率的に試合を進めてきたんだ」

「では彼は・・個人ではなくチームとして勝利してきたということですか?」

「おそらくね。まぁそれ自体は別に悪くない。彼がこれまで積み上げて来た実績には彼の持つ勝利に対する執念があったから。が・・・それは今アンリちゃんが言った通りあくまでチームとしての話だ」

「と言うと・・?」

 

「世界一のストライカーになるということは己のためだけにゴールを追い求める『エゴイスト』になるということ・・・そんな『エゴ』も持たぬ彼が本当に世界一のストライカーを目指しているとでも?」

 

「・・・絵心さんの話は理解できます・・・・・では彼の言う『目指すべき所』とは一体・・・・?」

 

 

「これは俺の予想なんだが・・・彼の言う『目指すべき所』・・・

 

 

 

 

それはおそらく・・・・

 

 

 

 

ここ・・・青い監獄(ブルーロック)のことだろう」

 

 

 

 

「!?どういうことですか絵心さん!?」

 

 

絵心のその言葉に帝襟は慌て叫んだ。

 

 

「確信しているわけじゃない・・・ただ彼のこれまでの行動は明らかに不自然なんだ。特定の選抜チームはおろかU20代表をも断った彼が、何故今になって()()()()()()()()()()()()()()()()とだけ書いた封筒に飛びついてやって来たのか?」

 

「その・・・気まぐれ・・・とか?」

「それはあり得ない。彼の所属する廣田宝泉高校は今年も選手権に出場している。チームプレイを重んじる彼であればこの大事な時期にチームを離れられる訳がない」

 

「確かに色々と不自然です・・だけどそれはありえません!!だって彼が代表入りを断ったのは()()()()()()()()()()()()()()()ですよ!?」

 

「正解だよアンリちゃん。そこなんだよ・・・

世界一のストライカーを目指しているわけでもない彼が何故今日になってここへやってきたのか?

 

そう・・・まるでこの()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()かのように」

 

「!?い・・意味がわかりません!!じゃあ彼は一体なんなんですか絵心さん!?」

「落ち着いてよアンリちゃん。さっきも言った通りこれはあくまで予想での話。まぁ・・彼が何者なのかは僕にもわからない・・・増瑠筋夫・・・奴は正体不明の存在だ

「正体不明の存在・・・」

 

 

 

「だからこそ俺は、そんな奴の()()()()を見てみたくなった」

 

 

 

「!?彼の『エゴ』ですか・・・?」

「考えてみなよ。彼のような逸材が己以外のすべてを喰らい尽くさんとばかりの『エゴ』を持ってみろ・・・奴は間違いなく化けるだろう」

「ですが・・・それと今回彼が送り込まれた先とどう関係があるんですか?」

 

「まだわからない?『エゴ』とは人間の内に存在するある種欲求でもある・・・欲求は環境の苛烈さによって大きく力を発揮させるもの・・・まぁ今時で言う『ハングリー精神』ってやつだよ」

 

「!! じゃあ・・・絵心さんが彼を()()()()()に送った理由って・・・」

 

 

 

「そう。より過酷な環境下でこそ『エゴ』とは芽生えるもの・・・彼を()()()()()()()()()()()()()に送り込んだのも、奴の中に潜むエゴを開花させるためのものだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・289・・・・・()()()Z()・・・いやいや・・・まさかな・・・」

 

原作読んでたから知ってるけど、この五号棟って全棟チームがV〜Zで構成されてる。

それは自分達が最下層のチームだと認識させられることで、上へ上へと目指すハングリーなプレイを出させるためである。

よって俺が望んでいる彼らに100%会えるわけではない。

 

そうして指定された棟に移動し、恐る恐るチームZと書かれた部屋の俺はドアを開ける。

 

 

 

 

 

「お?来た来た・・・ってデカッ!?」

「マジか・・・!?アンタって確か・・・」

「高校サッカー界最強の男・・・」

「増瑠筋夫・・・じゃんか!」

 

 

うん。

ある程度そうではないかと予想はしていた。

 

 

 

「また会えたね増瑠君!良かったよ!知っている人がもう一人いてくれて!」

「まさかあの増留筋夫と同じ部屋だなんて・・・」

 

 

 

そこには吉良君と潔君、そして原作お馴染みのチームZの姿だった。

まさか主人公と同じチームになるとは・・・これも転生させられた事による影響か・・・?

 

 

 

ん?

 

 

 

ちょっと待て。

 

 

 

 

 

 

今村 遊大いなくね?

 

 

 

 

(オーマイガー・・・)

 

ブルーロックに入ると決めたその日から予想は出来ていた。

俺というイレギュラーがこの世界にやって来て、このブルーロックに選ばれたんだ。

なら当然そこに本来原作で選ばれるはずだった300人のうちの一人が選ばれなくなる。

が、まさか割とメインキャラの彼が不在とは思いもしなかったのだ。

 

(ゴメンよ今村君・・・学校生活では青春やら恋愛やらを楽しんでおくれ・・・)

 

まぁ何はともあれ憧れのチームZに入れたことは俺として非常にラッキーだった。

彼らの潜在能力はこれから先ブルーロックを勝ち抜くために必要だ。

てことでまず・・・

 

 

「よろしくみんな!!俺は増瑠筋夫!!筋肉ですべてを解決するのがモットーな男だ!!」

 

 

 

 

原作キャラ達とワチャワチャするぞぉぉぉぉぉ♪

 

 





はい!!ということでようやくオリ主のステータス公表+配属先はまさかのチームZ!!?
そして今村不在!❢
これは誰もが予想だにしなかったと思います。
しかしこれにはすべて理由がありますので、各チームに入った場合のパターンを下にまとめます。

①チームXの場合→馬狼との共闘でチームY、Wに勝ち越しチームZが一次セレクションを突破できない。
②チームYの場合→二子+大川に加わることで、ただでさえギリギリだったチームZが負け一次セレクションを突破できず。
③チームWの場合→同様ワニマ兄弟に加わったら久遠の裏切り+でチームZの引き分ける要素がなくなる。
④チームVの場合→天才+金持ち器用貧乏+爆速スプリンターバカに加わったらもう反則やろそんなん・・・
⑤他の練のチームの場合→馬狼が強化されているのでチームXの勝率が高くなり、チームZが一次セレクション突破できなくなる。

はい。そういうことです。
要するに筋尾がチームZ以外のチームに行ってしまうと潔含むチームZのメンツが一次セレクションを突破できなくなるんですよね・・・
チームZは原作を読んでいる方々はご存じかもしれませんが大半が終盤まで生き残り、大活躍しているメンツだらけです。
そんな彼らを当然物語からはずすことなどできません。
+絵心さんからご都合主義的により、増瑠筋尾君はチームZに所属することとなりました。

別ルートや馬狼とのコンビプレイを見たかったって人達もいたかもしれないのですが、ご期待に応えられず申し訳ございません。
ですのでこれからはチームZでの増瑠筋夫を応援してください。

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8.罰

1週間ぶりです!!
気付いたらお気に入りが2000もッ!!?
感想やお気に入りして下さった方々ありがとうございます!!
誤字報告なんかも凄い助かりました!!
改めてここまで読んでくださった方々ありがとうございます!!



奇跡的に原作チームZに加わる事が出来た俺。

とりあえず自己紹介を終えた後俺は特別性ボディスーツに着替える。

シャツを脱ぎ、半裸状態の俺・・・・

 

「すげぇな・・・俺も結構鍛え込んではいるが、これはそんなもんじゃねぇぞ・・」

「いやアンタの身体もムキムキ過ぎだろ・・・けどやっぱり増瑠君の筋肉は凄いよな・・・」

「なんだこの脚・・・・当たったら事故もんだぞこれ・・・」

「肉体美・・・・ないすばるく・・・」

「このデカさが高校No1になるための秘訣なのか・・!?だったら俺も鍛える!!寺の坊主なんか誰がやるってんだ!!」

「いやぁ・・・流石にここまでは無理じゃないかな?五十嵐君・・」

 

そんな俺の筋肉を見てある意味周りから一目置かれる存在となる。

何野郎共に見られて嬉しがってるんだ?気持悪ッって思われるかもしれないが、そんなの嬉しいに決まっている。

なんせ10数年鍛え上げ、苦楽を共にしてきたもの相棒的存在・・・

それを褒められることは、これまでの自分の努力を直接褒めらてれる感じで嬉しいさ。

そうしてほぼジャストサイズのボディスーツに着替える。

 

(うむ・・・伸縮性抜群で動きやすい)

 

筋肉も浮き上がっているし完璧だ!

確かこのスーツって電流が流れたりするんだよな・・?

怖・・・・ほぼないと思うが喧嘩だけはしないでおこう。

と着替えを終える。

 

 

 

(さて・・・ここからだな・・)

 

 

この世界に来て大きな目標だった青い監獄に入れた。それは良い。

 

問題はこの先どうするかだ。

正直なところ明確なプランが定まっていない。なんせサッカーを始めた時からずっと青い監獄(ブルーロック)に入る事だけを考えてやってきたからな。

 

要するに今俺が置かれている状況はまさに五里霧中ってわけだ。

 

つーか毎度思うんだが、俺ってかなりヤバいことしてね・・?

選抜やトレセンはおろか日本代表をも蹴って来たんだぜ?

絵心自身もなぜ俺がここへ来たのか疑問を抱いているに違いない。

 

(とりあえずは今から始まるであろう入寮テストを突破したい)

 

考えるのはそれからでいいはずだ。

誰が落ちるのか・・・いや下手すれば自分だって落ちる可能性は十分あり得る。

ここはブルーロックだ。今まで俺がやってきたサッカーとは大きく違っている。

それに必ずしも原作通りになるとも限らない。

だからこそ俺も全力で挑まなくてはならない。

今の俺のサッカーがブルーロックでどれほど通用するのか・・・

それを少しでも試したい。

 

と着替えを終え色々と考えを募らせていた時だった。

 

 

 

 

『着替えは終わりましたか才能の原石共・・・』

 

 

自室のモニターより絵心の姿が映し出される。

今ここにいるメンバーはルームメイトであり、高め合うライバル。

ボディスーツに記されている数字は彼の独断と偏見で数値化されたもので、それは日々のトレーニングや試合の結果でアップダウンする仕組み。

そしてランキング上位5名は無条件で6ヵ月後に行われるU20W杯FW登録選手になることができる。

しかしこの青い監獄で脱落した者はこの先生き残ることなどできない。

破れ帰る者は日本代表に入る権利を失ってしまう・・。

勝ち上がるのに必要なのは『エゴ』であり、今から行うそれは素質を図るための入寮テストである・・・・と

と原作とほぼ同じセリフ。

 

 

 

『さぁ。鬼ごっこの時間だ』

 

 

 

 

そしていよいよ始まる入寮テスト。

最初にボールを持ったのは原作同様イガグリだった。

 

「やってやんよ・・・恨みっこなしだぞみんな!」

 

「ちょ・・ちょっと待ってよ!本当にアイツのいう事なんて信じてるの!?どうせあんなのウソに決まっている!」

 

と本来今村が言うはずであったセリフを吉良君が焦りの声で言う。

しかしそんな言葉を耳ともせずイガグリはしっきりなしにボールを当てに行く。

 

「うぉらぁぁぁぁ南無三!!」

 

彼だって必死なはずだ。

なんせ自分のこれからのサッカー人生がかかっているのだから。

そうして死闘を繰り広げ、ボールは何度もメンバーに当たっては当てられるを繰り返す。

 

「クソがぁぁぁナンバーワンだからって関係ねぇッ!!当たっちまぇぇぇ!!」

 

と金髪の男 雷市陣吾(らいちじんご)が豪快なキックでボールをぶつけに来る。

 

 

「ふっ」

 

 

俺は上手く宙返りでボールを避ける。

 

 

「はぁ!?んだよそれ・・・!?」

「ありかよそんなのぉ~!!?」

「わぁ~・・とんだぁ~・・」

 

 

この数年間で鍛え上げてきた筋肉はパワーだけじゃない。臥牙丸(ががまる)ほどではないがヨガなどの柔軟運動でバネや瞬発力だってある程度は身に付いている。

そう易々とやられるもんか。

 

 

そうして上手く逃げていると吉良君と隣り合わせとなる。

 

 

「くっ・・・・馬鹿げているよこんなの・・!こんな遊びがトップトレーニングなんて思えない・・!」

 

「果たしてそうかな?」

 

「え・・?どういうこと増瑠君・・?」

「この部屋の大きさ・・どこかに似ていない?特にFWのポジションやってる俺らならずっとお世話になっている場所さ」

 

「え・・・・FW・・・・?・・・!まさかこれって・・・P・A(ペナルティ・エリア)・・・?」

 

「そういうことだ。この遊びはただの遊びなんかじゃない。奴は完全に俺たちがFW選手として一番仕事をする仮初のP・A(ペナルティ・エリア)内でテストをしているんだ」

「嘘だろ・・・ってことはアイツの言うことは正しいってことなのか・・!?」

 

 

原作知識を生かして吉良君に少しだけ情報を与える。

少しヒントを与えただけでも彼は的確に見極めるほどの頭脳を有している。

なんせ彼は原作中何も知らないまま脱落したからね。

ならせめて理解して上で鬼ごっこを戦ってほしいという俺の変なおせっかいが現れる。

 

「つまり・・しっかりとポジショニングして上手く駆け引きをしろって事・・・・・・ありがとう増瑠君!」

 

そうして吉良君は順調にボールを避けていく。

元々彼の能力値は高い。シュート精度やサッカーIQ・技術はどれをとっても秀才レベルだ。それが現在でも彼が【日本サッカー界の宝】と呼ばれている由縁だろう。

 

気付けば鬼は潔に代わっていた。

彼も決死の覚悟でボールを他のメンバーへ当てにいく。

が、蹴ったボールはほとんど空を切るばかり。周りの身体能力が高いというのもあるが、彼のシュート精度はお世辞にも高いとは言えない。

そんなあてずっぽで蹴ったところで当たるはずがない。

そうして時間はどんどん過ぎ去っていく。

 

「お・・おいッ!!降りろ!」

「チャンスだよーん♥」

「正々堂々とやれつってんだろうがぁ!!」

 

と國神きんに君にぶん投げられる蜂楽。投げられた彼はイガグリへ見事ストライク。

 

「あ・・・ヤベ ちょ・・・タイム・・・」

 

ぶつかった衝撃でイガグリは足を痛め上手く立ち上がる事が出来なくなった。

そこへ鬼である潔がゆっくりと近寄る。

 

「嫌だ・・・終わりたくねぇよ・・!!こんな所でぇ!!」

 

潔は呆然と彼の前に立ち伏す。

本来なら上手く動けない彼をここで当てれば彼は確実に生き残れる。

しかしイガグリの決死の叫びに躊躇する。

そして・・・・

 

 

 

「俺は・・・・・世界一になりに来てんだよ・・・」

 

 

と彼はイガグリから方向を変える。

 

 

 

「イイね君。だよね♪潰すなら一番強い奴っしょ♪」

 

 

とボールを奪取する蜂楽はドリブルを刻み込む・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ってあれ?

 

 

 

 

 

なんかこっちきて・・・

 

 

 

 

 

 

Q・B・K(急に蜂楽が来た)のだった。

 

 

 

 

「それ~♪」

 

 

(あっぶね・・ッ!?)

 

 

(そうだった・・!今回のチームZランキングトップは・・・・俺だ・・!)

 

原作を読んでいたため完全に吉良君へと放たれるだろうと思い込んでいたため油断していた。

なんでこういう時に原作知識忘れるんだよ俺・・!!

なんとか彼のシュートを避けるもボールは俺の背後に放り出される。

加えて俺は一瞬バランスを崩してしまった。

たかが一瞬・・・

 

しかしこのブル―ロックにおいてその一瞬とは自身の命を大きくえぐり取るものともなる。

 

 

 

 

「一番・・・・強い奴・・・」

 

 

 

 

 

 

 

まるで獲物を狙う肉食獣のような目・・・

 

 

 

 

 

 

 

BON(ボン)!」

 

 

 

 

 

渾身のダイレクトボレーシュートが俺へと襲い掛かる。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・」

 

 

 

 

いつだって俺はそうだった。

自分の人生がかかっているであろう大切な場面で大きな過ちを繰り返す。

勉強も頑張ってやろうともせずスポーツだって自身に運動神経が無いってだけで諦めていた。

 

 

だから今世では反省して頑張ろうと決めた・・が人間の本質とはいつであろうとそう簡単に変わることのできないもの。

いくら頑張って知恵をつけて鍛えたってすべてがうまくいくわけではない。

 

この青い監獄(ブルーロック)だってそうだ。

周りは自身の人生を賭けてきてるってのに・・・俺はなんだ・・?

原作キャラ達に会いたい・・・・?

振り返ると実にくだらない理由だった。

 

 

 

 

これはそんな愚かな決断を下した俺への()なのだろう。

 

 

 

 

これならあの時代表入りしとけばよかったかもな・・・が、いまさら後悔したって遅い。

自分の下した決断に後悔をしている時点で、俺は人間として何も変わることができなかったということだろう。

そして迫りくるボールに対し身を委ねる。躱すことはできない・・・

 

 

 

ならいっそ堂々と終わりを迎えてやろうじゃないか・・・

 

 

 

(ここで俺は終わりか・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

残り時間はおよそ1秒。

彼含む誰もが完全に直撃し、終わりを迎えるだろうと思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「破ァァァァァッ!!」

 

 

 

 

 

 

「「「「「!?」」」」」」

 

 

 

しかし放たれたシュートは彼の分厚い大胸筋によって弾かれ宙を舞う。

 

 

 

 

 

時間にしてわずか0.3秒・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

その直後だった。

 

 

 

 

「墳ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

ドォォォォォン

 

 

 

((((大・・・砲・・?))))

 

 

そう思わせるかのような凄まじい轟音。

しかし狙いなんてクソもないただひたすら全力で放った一撃。

誰かに当たるはずなんてなかった・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごばぁぁぁぁぁぁぁッ・・!!?」

 

 

 

 

しかしその強烈なシュートは無防備な()の腹部へと打ち込まれたのだった。

 

 

 

「あ・・・が・・・・」

 

 

 

 

彼はそのまま地面に倒れこむように意識を手放す。

 

 

 

プゥゥゥゥゥゥ

 

 

 

そして鳴り響くタイムアップの音。

 

 

 

 

 

 

 

ドクン

 

 

 

 

緊迫とした空気がその場を漂う。

テストは終わったというのに、そのあまりの光景にチームZのメンバーは誰一つとして声を上げることができなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「え・・・・何が・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

完全に潔からのダイレクトボレーを受けて終わりかと思っていた・・・

 

 

しかし現実はどうだ・・・?気付けば俺の前で()がうずくまっているではないか・・・・

ボールを蹴ったであろう脚のわずかな痺れ・・・それ以外は何一つ思い出せない・・・

 

 

 

一体俺は何をしたんだ・・・?

 

 

 

 

 

 

 

ドクン

 

 

 

 

 

 

 

歴史の修正力が働いたのか・・・それは誰にもわからない

 

 

 

 

 

 

ドクン

 

 

 

 

しかし()は本当にたまたまそこにいただけだった。

 

 

 

 

 

 

ドクン

 

 

 

そしてそのあまりのシュートの威力に彼・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()は地に崩れ落ちていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・今のって・・・オーバーヘッドシュート・・?」

 

「正確にはバイシクルショットだね。日本で言うオーバーヘッドとは少し違う。インパクトの瞬間逆足を地面に向けて軸足として踏み込むことで、より力強く振り下ろし反動がしっかりと生まれ蹴り足の振り上げが早くなる。・・・あの残り時間と状況からよく打ち込んだものだ。彼ほどの身体能力だったからこそ実現したものだね」

 

「凄い音でしたね・・・モニター越しまで聞こえてきました」

 

「・・・・・」

 

「どうしたんですか絵心さん?」

「・・・いや・・・なんでもない・・ちょっとおやつ用のカップ麺を取って来るよ」

「またですかぁ・・・・ほどほどにして下さいよ・・」

 

 

そうしてモニター室を出る。

そして彼はしばらくドアの前で立ち止まる。

 

 

 

(妙だ・・・()ほどの能力値ならあの状態からでも十分避けられたはずだ・・・なのになぜあのシュートを受けたのだろうか・・・?)

 

 

絵心甚八は自身の言う()に対し疑問を抱くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・うぅ・・・・ここは・・・」

 

「起きたか吉良君」

 

 

 

 




ということで無事入寮テストを合格した筋夫君でした。
吉良君がちょっと可哀そうな感じで退場してしまいましたが、その次回入寮テスト後のお話を投稿したいと思います。
ブル―ロックから脱落した吉良涼介は増瑠筋夫に対しどのような思いを抱いているのだろうか・・・
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9.決意

感想やお気に入りしてくださった方々ありがとうございます!!
何度も誤字報告をしてくださる方々本当にありがとうございます!!
毎度誤字まくってすみません・・・(泣)



眠りから意識を取り戻す彼。

あの鬼ごっこが終わった俺は急いで彼を持ち上げ、ブルーロック施設内の医務室へと運び込んだ。

そうしてスタッフに彼を預けようとしたが、どうしても彼をこのまま引き渡してはおけなかった。だからスタッフに必死に懇願し眠る彼を見守っていた。

 

 

「増瑠君・・・?え・・・?俺なんでベッドなんかに・・・」

 

 

 

困惑する吉良君。

幸いにも大きな怪我には至らなかった。

 

 

 

 

しかし彼には別の大きな()がある。

 

 

 

 

『イマイチ状況がつかめてないだろうから教えてやる。吉良涼介。お前は青い監獄入寮テスト脱落だ』

 

 

隣の小さなモニターから絵心が姿を現す。

 

「え・・・・脱・・落・・・・?」

 

 

『覚えていないか?お前は最後そこにいる増瑠筋夫の放ったシュートに直撃して意識を失っていた。同時にテストは終了した』

 

 

「!!・・・噓・・だろ・・・」

 

『残念だが事実だ吉良涼介。ここでは結果がすべて。よって敗れたお前はここから出ていけ』

 

 

とあまりにも過酷すぎる真実に大きく混乱する彼。

誰だってそうするはずだ。

 

 

『ブル―ロックで敗れた者は日本代表になる権利を失う』

 

 

それは彼のこれからのサッカー人生にとてつもない大きな傷を与えた。

 

原作でも血相を変えるほどの怒りをあらわにしていたんだ。

今回だって・・・

 

 

「ッ・・・・・・わかったよ・・・・」

 

 

が、しかし予想と反するように吉良君はしばらくして自身の敗北をすんなりと認める。

 

 

『これは意外だ。お前ほどの男ならここらで反論の一つか二つはするだろうかと思っていた』

 

「・・・・あの鬼ごっこには意味があったんだろ?俺はFWとして必要とされるべき場所で何一つ仕事を果たせなかったってことだよ・・・・アンタの言うW杯優勝ってのもどうやらただのまやかしじゃなさそうだ・・・」

 

『そこまで理解しているのなら、俺から言うことは何もない。身体の方はもう大丈夫だろう。なら早急にここを立ち去れ』

 

「・・・・はい」

 

そしてモニター画面はプツンと途切れる。

 

 

 

「・・・・」

 

 

「・・・・」

 

 

絵心がいなくなったことで漂うこの静寂な空気。

それはそうだ。

俺は彼のサッカー人生を壊した張本人。彼にとって俺は自身のサッカーを壊された憎むべき怨敵。

 

 

「吉良君・・・・すまない」

 

 

ふと俺の口からは謝罪の言葉が出た。

 

 

「!ちょ・・・ちょっと待ってよ・・・!君が謝ることなんてないよ・・・」

 

なんと彼は俺への憎しみなどなかった。その目を見るにどうやら嘘ではなさそうだ。

普通の人間ならここで一発俺の顔面に拳を突き立てるだろうに・・・・・

 

「・・確かにアイツの言う通りだった。俺はあの時君に忠告を受けたにも関わらず最後のあの瞬間まで何もできなかった・・・」

 

改めて俺は吉良涼介という男の器の大きさを理解した。

そして続けて彼はこう言う。

 

 

「正直俺さ・・色々浮かれていたんだ・・。自分には才能がある。『日本サッカー界の宝』なんて呼ばれているからこの青い監獄(ブル―ロック)だって余裕で生き残れるだろうって・・・むしろ感謝してるよ。こんな俺のくだらない妄想を断ち切ってくれたことに」

 

 

「・・・」

 

あまりにも聖人君主的な彼の言動に俺は何も言葉を発することができなかった。

 

 

「まぁ・・・日本代表にはもう成れないだろうね・・・・けど、俺もう一度イチから頑張ってみようと思う。確かに今回俺は負けた。けどこれはきっと俺にとっての大きな試練だったと思う。自分には何が足りない、自分にとってのサッカーって何なんだろうって。少しだけ気付けた気がするよ。そういう意味で俺は青い監獄(ブル―ロック)で負けて良かったと思う」

 

 

彼は笑顔で俺にそう告げた。

なんて男だ・・・常人ならもう二度と充実したサッカー人生を送ることができず、前を見ることさえできないっていうのに・・・

 

吉良涼介とは大きな挫折でさえも諦めたりなんかせずただひたすらサッカーを愛する男だったのだ。

 

それに対し俺はどうだ・・?

 

 

あの時潔からのシュートをただ眺めて諦めていたではないか・・・!

 

 

 

 

なぜ自分ではなく彼が落ちたんだ・・・

 

 

 

 

なぜ彼ではなく自分が生き残ったんだ・・・

 

 

 

 

なぜ・・・

 

 

 

 

なぜ・・・

 

 

 

 

 

そんな厭わしい感情が自分の頭をぐるぐると巡る。

 

 

 

 

 

 

ポタン

 

 

 

 

「だけどさ・・・・やっぱり・・・悔しいよ・・・・う・・・うぐっ・・・・」

 

 

 

 

吉良君は涙を流していた。

当たり前だ。表ではああ言っていたものの、道は限りなくゼロに近しいもの。

今回の青い監獄(ブル―ロック)だって少なからず彼にとっては大きなチャンスでもあっただろうに・・・・

 

 

 

 

 

「なんで・・・俺はうぐっ・・・なんにも・・・できなかった・・・・クッソ・・・・クッソ・・・・クッソ・・・!!」

 

 

 

 

と彼は自身の無念に膝を何度も強く打つ。

 

 

 

「・・・・ぐっ・・・・」

 

 

 

そんな彼へ何一つ言葉をかけられない自分に大きく腹が立った。

自分への怒りに拳を強く握る。

 

 

 

 

 

「ぐ・・・ごめんよ増瑠君・・・見苦しいところ見せちゃったね・・・君ならきっとこの先青い監獄(ブルーロック)でも生き残れる。だから・・・頑張ってね

 

 

 

最後の彼の一言・・・・・それに俺はようやく気づき口を開く。

 

 

「任せろ・・・・お前の分まで絶対生き残ってやる」

 

「ありがとう・・・増瑠君。その・・・もしよかったらこんな俺でも友達になってくれる?」

 

「!・・・あたりまえだろ・・・吉良君・・・いや、()()はもう俺のダチだ・・!」

 

 

「ふふっ・・ありがとう増瑠く・・・()()。俺はもう行くよ。じゃあ・・・またね!」

 

 

 

そうして彼は医務室の扉から出て行った。

 

 

 

 

(なんだよ・・・・この気持ち・・・・)

 

 

 

いつから俺は忘れていたんだよ・・

 

 

 

 

これまでが上手く行き過ぎていたんだ・・

 

 

 

 

試合でほぼ負けたことのない俺なんて・・挫折も知らないただのヒヨッコ同然じゃないか・・

 

 

 

 

この青い監獄(ブル―ロック)に行くと決めた時から誰かを蹴落とす覚悟くらい少しは持っていると思い上がっていた・・

 

 

 

 

しかし実際はどうだ・・?

 

 

 

 

 

涼介を蹴落としたことで俺は今何を思っている・・?

 

 

 

 

 

そんな生半可な覚悟を持つ俺が、なんで今回運なんていうクソによって生かされたんだよ・・・・

 

 

 

 

 

なんで俺よりもサッカーを愛する涼介の夢が壊されたんだよ・・・・

 

 

 

 

 

 

理不尽だ

 

 

 

 

 

この世はすべてが理不尽だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・だったら俺は・・」

 

 

 

 

 

座っていた椅子から俺は立ち上がる。

 

 

 

 

 

(今この瞬間落された涼介含む他のプレイヤー達の想いに応えるために・・・

 

 

 

彼らの無念を背負って戦い続けるために・・・・

 

 

 

 

 

この青い監獄(ブルーロック)・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

絶対生き残ってやるッ!)

 

 

 

 

そう決意を固めた俺は医務室を出て、チームZの部屋へと向かった。

 

 

 

 

 


 

 

医務室を出た彼 吉良涼介はこの青い監獄から去るべく出口へと続く長い廊下を歩いていた。

 

(筋夫・・・・・いつか君とまた一緒にサッカーしたいな・・・・)

 

 

 

そんな願望を胸に彼はひたすら廊下を歩み続ける。

 

 

 

 

 

 

「一つだけ聞かせろ。吉良涼介」

 

 

「!?なんでアンタがここに・・・」

 

 

 

 

絵心甚八が彼の前に立っていた。

 

 

 

 

「最後に彼増瑠筋夫がシュートを放つ直前までお前はちゃんとしたポジショニングと警戒態勢を持っていた。さっきの話を聞いた感じ入寮テストの意図もちゃんと理解できてたようだったな。だからたとえあのタイミング、あの密集した状況下でもお前ほどの頭脳と身体能力なら十分躱す余地はあったはずだ。にも関わらずお前はなぜあのシュートを受けた?

 

 

「・・・・そこまで気づいていたんですね・・・・確かに・・・・アンタの言う通り俺はあの瞬間・・・・動かなかった・・・・いや正しくは・・・

 

 

 

 

 

()()()()()()・・・」

 

 

「動けなかった?」

 

「はい。あの時俺は彼がシュートを打つって事は理解できてました」

 

「そうだ。実際お前はシュートを打つ瞬間まで奴の観察をし、奴がバイシクルショットを打つことさえ想定できていた。モニターからもお前が逃げの体制も作っていたのもわかった・・・そこまで理解していたお前がなぜあの瞬間動()()()()()()

 

絵心の抱く疑問に吉良涼介はこう答える。

 

「理由はわかりません・・・・ただ、彼がシュートを放つ瞬間俺の身体が震えて動けなかったんです・・・なんていうか・・・

 

 

 

増瑠君から漂う気配・・・彼の持つ()()に圧倒された感じで・・・」

 

 

 

「何か?」

 

 

「すみません。なんて言えばわからないんです・・・けど()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それはつまり、俺がまだまだ未熟だっただけの話・・・それだけです・・・」

 

「・・・・」

 

吉良の言葉に絵心は黙する。

 

 

「話は終わりですか?なら俺はもう出ます。けど・・・・・

 

 

 

俺はまだ・・・諦めてはいません・・・・」

 

 

 

「・・・・」

 

 

吉良の唐突な言葉に絵心はただひたすら沈黙を貫き通す。

 

 

 

 

「では」

 

 

 

 

そう言い放った後、吉良涼介は静かに青い監獄を去っていった。

 

 

 

 

 

(まったく・・・最近の若い連中は諦めが悪い・・・・それが・・・己の道を踏み外してしまうとも知らず・・・)

 

 

と絵心は長い廊下を進み自室へと戻るのだった。

が、彼は再びドアの前で立ち止まる。

 

(しかし・・・さっきの言葉・・・どこか引っかかる。なぜ吉良以外のプレイヤー達はあの場面で動けた?吉良涼介の身体的総合値はチームZの中でもトップに食い込む。入寮テストの意味をも理解していたんだ。頭脳だって申し分ない。にも関わらず吉良涼介だけがあのシュートを受けた。偶然か・・・?はたまた単に悪運が働いただけだったのか・・・?)

 

 

 

 

 

「・・もしくは・・・」

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()・・・?

 

 

 

 

(どちらにせよ増瑠筋夫は俺の考えてる以上に底の深い男だ・・・もう少し観察してみる必要がある・・)

 

 

 

絵心甚八の増瑠筋夫に対する謎は深まる一方だった。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

「ふっふっふっふっ」

 

このブルーロックに来てから3日ほど。ずっと「体力テスト」だけを伝えられてトレーニングをしている。

さすがはブルーロックのトレーニングだ。かなりの負荷が圧し掛かる。

 

【20km/h走】

 

「ぐわぁぁぁっ・・!」

「もう・・無理・・・」

 

「お前ら体力ショボすぎ!そんなんでよく世界一のストライカーとか言えたな!?ハッハー♪」

 

「ふっふっふっふっ」

 

「・・・・・くっ・・」

 

「ふっふっふっふっ」

 

「・・・・ハァ・・・ハァ・・・」

 

「ふっふっふっふっ」

 

「ぐっ・・・・!!クソ・・・・がぁぁぁぁぁ!!」

 

ブルーロック内で屈指のスタミナを誇る雷市でも俺にはまだ及ばない。

なんせサッカーが始まったその時から行っている全力シャトルランのおかげでスタミナにはかなり自信がある。

それでもずっと走り続けるのはしんどい・・・

 

「ふぅ・・・ふぅ・・・・・くっ・・・・・」

 

ようやく俺の心肺機能が底を尽く。

 

 

「まだいたのかよッ!?いつまで走ってんだぁッ!?もう他の奴らとっくに終わってんだぞ!?」

「・・・・マジか・・・悪い・・そこにあるボトル取ってくれないか?」

 

 

20Km/h走 記録:2時間26分

 

 

「チッ・・・おらよ。つーかなんかそのボトル色違わねぇか?」

「あぁ・・・これ俺のシェイカーだからな・・ゴクゴク・・・ぷはぁ・・・ふぅ・・やっぱトレ後のデキストリン入りプロテインは染みるな・・」

「いや・・・どっから持って来たんだよそれッ・・・!?」

 

何とかこのブルーロック内に必要最低限のサプリメントは無事持ち込めた。

持ち込みの際に色々検査を受けて見事通った。別に危ない粉とか入ってないのに・・・・

まぁ厳重体制のブルーロックならではの方針だな。

特にプロテインはタンパク質を補充するため大量に持って行っておいて正解だった。

なんせ半年以上もここで過ごすとなるとそれなりの量が必要だ。

スタッフや検査官の人たちがビックリしてたの今でも覚えているよ。

 

 

 

【ジャンピングテスト】

 

 

 

「「「せーのっ」」」

 

 

ビョーン

 

 

「「!?」」

 

(嘘だろ・・・・!?身長も高いけれどなんつー跳躍力だよ・・・!?)

 

(この人・・絶対人間じゃない・・・・)

 

ジャンプ力はそこまで自信がない。

この100kgを超える重量を飛ばすにはかなりの脚力と背筋力などのバネが必要だ。

トレーニングしてきたとは言えまだまだ伸ばしていかないといけない。

 

 

(スクワットもっと頑張らなくちゃなぁ・・・)

 

 

 

ジャンピングテスト 記録:85cm

 

 

 

【スプリント走】

 

 

「ふっ」

 

「!?はえぇぇぇ!?」

 

「あんな巨体のどこからあんなスピードが・・・」

 

 

これも同様全力シャトルラントレーニングで何度も走り、ハムストリングスやヒラメ筋・大腿四頭筋など全脚のトレーニングを十分に施して身に付けた脚力だ。

特に生まれつきバランスの良い脚は柔軟なバネも搭載しており、その速さは一流のスプリント選手レベルにも匹敵していると言われた。

 

 

(アイツ・・・俺より速いな・・・・)

 

 

スプリント走(50m) 記録:5秒72

 

 

 

 

【筋力テスト】

 

 

「うげぇぇ・・・こんなん持ち上がらない....」

「重い・・・潰れる・・・」

 

 

まさかこんな種目もあったとは・・・・

 

 

 

しかしこれに関しては誰にも負けたくはない。

 

 

俺が最も得意とする分野だからな。

 

 

「ふっ!!っしゃぁぁぁ!!」

「マジかよ!?トータル400超え!?」

「さすがは國神きんに君!!」

「んだよその呼び名・・さてと・・・・ん?なぁ。なんであそこあんなに人だかりができてんだ?」

「それが・・・」

 

体力テストの中で最終種目の筋力テスト。

テストを終えた他の練のメンバーも集まっているようだった。

高校生の中でもかなりフィジカルの強い彼 國神錬介

故に自身の筋力にはかなり自身があった。 

 

 

 

しかしそこで見た光景に彼は絶句した。

 

 

 

「うっしゃぁぁぁぁぁぁ!!」

 

ガシャン ガシャン ガシャン

 

 

咆哮とプレートの揺れる凄まじい音が響き渡る。

 

 

「・・・・・トータル・・・700・・・超え・・・!?」

「パワーリフターかよ・・・」

「他の練でも500超えたって奴いるんだけどこれはヤべぇよな・・・」

「化け物が・・・・」

 

 

 

ザワザワ

 

 

その光景に國神錬介は唖然とした表情をしていた。

 

 

(すげぇな・・・・今度アイツにトレーニング教わりに行くか・・)

 

 

筋力テスト 記録:Bench Press(195kg)Dead Lift(247.5kg)Squat(262.5kg) 計704kg

 

 

 

そうしてトレーニングを終え、俺たちは食堂へと向かっていく。

ここでの食事メニューは原作同様ランキングによってメニューが変わる。

ランキングの低い者はたくあんや納豆などの貧相な食事、逆に上位の者は餃子やレバニラ炒めなど素晴らしいご飯のお供が出される。

 

 

そんな俺の食事はというと・・・・

 

 

 

 

 

「お?なんだそれ増瑠?」

 

と國神が聞いてくる。

 

 

 

 

油淋鶏(ユーリンチー)のネギタレ添えだ」

 

 

 

「ゆ・・・油淋鶏・・?」

 

中華料理のひとつである油淋鶏は鶏肉に刻んだ長ねぎの入った甘酸っぱいタレがかかっている料理だ。

本来油淋鶏は揚げられているが、日本では揚げずに焼いて食べる場合もある。

今回出たのはそれだ。何度か料理で作ったことがあるからな。ここのタレは濃過ぎずちょうどいい味付けが毎度出される。

ご飯との相性は・・・言うまでもないだろう。

 

(しっかし・・・・ここにきても鶏肉とはな・・・・これもはや転生特典じゃないか・・?)

 

 

こんな都合良いことあるか普通?と疑問を抱きつつ俺は箸を進めパクパクと飯を食べる。

幸い白米だけは結構な量が出るんだ。

少し量は減ったものの、ブルーロック内での食事はある程度確保できたのにホッとする。

 

「ふぅ~・・・・」

 

 

そして飯を食った後はシャワーを浴びて寝る。

 

 

「・・・・」

 

 

入寮テストの出来事を何度も思い出してしまう。それゆえになかなか寝付けない。

だが俺は生き残らなくてはならない。そのためにも今だけはそれを忘れて明日に備え身体を休めよう。

そうして俺は眠りについた。

 

 


 

 

「うぅ~よく寝たぁ~」

 

朝は5時くらいに目が覚める。

これまでずっと5時起きだったせいか、ここへ来ても俺の体内時計は変わらなかった。

 

「ふっふっふっ!!でりゃぁぁぁぁ!!」

 

チームZ室内トレーニングフィールドにて行う基礎トレーニング。

ドリブルからのシュート・フットワークやステップなどの日課から一日は始まる。

こんな時間なため一人で集中できるし、グラウンドも部屋から出てすぐのところにある。

ドリブルトレーニング用のコーンやラダートレーニング器具などいくつかの設備が施されている。

ここで生き残るためにも、俺はここから更なる高みを目指して日々研鑽していかなくてはならない。

 

落ちていった彼らのためにも。

 

一時間半ほどやった後、朝食を取り部屋へと戻る。

その後アナウンスの知らせによりブルーロックランキングが変動する。

 

「お。増瑠もランキング上がってるな・・・265位・・・つーことは」

「テメェがこん中で一番ってことかッ!八ッ!まぁそっちの方が潰し甲斐があるしなァ」

 

なんか雷市が俺に対し殺気全開なんですけど・・・・

 

『やぁやぁ。お疲れ才能の原石共よ。青い監獄(ブルーロック)の生活楽しんでるかーい?』

 

突然の絵心の言葉に不満をぶつける彼ら。特にランキングが下位の者にとってこの生活は苦難だろう。

 

『環境がクソなのはお前らがサッカー下手クソだから当然だ バーカ』

 

後に絵心はこのチームZが五号棟の中でも最底辺のチームだと言う。

そしてランキング上位チームは豪華な食事と最先端のトレーニングを受けていると話す。

 

 

まぁこれは前回話したように嘘だ。

 

 

もし本当にこの順位が正しいなら、今頃他の棟にいる某毒舌弟や眼鏡副業モデルが「なぜ自分はこの順位なんだ?」って疑うはず。

ならそんな実力ある勘の良い選手やどこぞの原作知ってる奴ならこの時点で五号棟しか無いって気づくのも必然的。

自分がもっとも最下位の人間であると自覚させることで上へ上へと這い上がるハングリー精神を持たざるを得ない状況を作り出す絵心の考えたシステムだ。

 

 

 

『ここではサッカーができる奴が王様だ。いい生活をしたけりゃ勝ってのし上がれ』

 

 

「見とけよコラ おい筋肉野郎。テメェにはぜってぇ勝つからなァ?」

 

 

とやたらつっかかって来る雷市君。

 

 

 

「やってみろよスタミナお化け。俺も勝ちを譲るつもりはねぇ」

 

 

 

 

そうだ。

 

 

 

俺は誰にも負けられないんだ。

 

 

 

このブルーロックで生き残るためにも。

 

 

 

誰一人にも

 

 

 

 

 

『それではこれより青い監獄(ブルーロック)一次選考(いちじセレクション)を始めます。』

 

 

 

 

 

そしていよいよ青い監獄(ブル―ロック)での戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 




てことで吉良君となんとか打ち解けた(喧嘩はしてないよ)筋夫。
そして彼含むブルーロック脱落者達の想いを胸に増瑠筋夫はブルーロックで戦い抜くことを決意する。
なんか体力測定がヒロアカのオリ主最強みたいな感じでなっちゃってゴメン。
まぁ筋夫だしね・・・筋肉はすべてを解決するってことだよ♪
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一次選考
10.己の武器


たくさんの感想ありがとうございます!!
誤字報告もありがとうございます!!
お気に入り登録してくれた方々ありがとうございます!!
※今後アンケートを実装しようと思います!
積極的にドンドン投票して下さると幸いです!
その投票結果が今後の物語に大きく影響するかも知れませんよ・・・


いよいよ始まる一次セレクション。

それは全五号棟で行われる全五チームによるリーグ総当たり戦。

最終的にトップ2のチームが二次セレクションへと勝ち上がる事が出来る。

 

『ちなみに下位3チームは敗退。青い監獄から強制退場となり日本代表でプレイする権利を失う。ただし・・・全試合終了時点でチーム内得点王・・つまりチームで最もゴールを挙げたただ一人だけ勝ち上がれるシステムとする』

 

そう。

このシステムが存在することでここにいる選手一人一人が「よし!もし今後負けてしまうことを想定して点取りまくろう!」「自分だけでもゴールして生き残ろう!」と奪い合いが発生して泥沼化。つまり試合が始まればほとんどが自己中主義(エゴイスト)状態となる。

もしこのまま対策も無しに進むと、全員が点を取りたがる団子サッカーとなってしまうのだ。

初戦はいかにこの団子サッカーの中で多くを点を取るのか・・それが一般的な回答となりうるだろう・・・

 

しかし絵心の目的はそうではない。

 

「てゆーことはこの11人が一つのチームって訳か?全員FWなのに?」

「俺はCFだろ」

「は?俺だろ?」

「イガグリお前DFな」

「なんでだよ!?」

 

と全員がFW選手のため全員がFWをやりたがる現状。

当然だ。誰もが基FW選手であり、自身が生き残るための己がゴールを取らんとする欲望を抑え込むなんて不可能。

ストライカーしかいないブルーロックでは、高校の部活のようなチームワークなども当然無理だ。まともな試合にすることすら難しいまさに無秩序な展開となりうるだろう。

サッカーとは元来全員がストライカーであることから始まり、今回俺たちはその原点に立たされているというわけだ。

 

『お前らの頭でサッカーを0から創り直すんだよ』

 

 

これこそが一次セレクションの真の意図。

 

 

今までやってきたサッカーの常識を覆す新たな概念・・それがこのブルーロックで生き残る鍵となる。

 

(さて・・・初戦は確か馬狼率いるチームXだったな・・・戦術を練らねば・・・)

 

「第一試合は2時間後。チームZ対・・・・

 

 

 

 

 

()()()Y()だ」

 

 

 

 

 

ふぁ?

 

 

 

 

今なんて言った・・?

 

 

 

 

チームY・・・だと・・?

 

 

 

 

 

 

ベータ(原作)と違う!!って某黒髪剣士のように叫びかけそうになった。

 

 

しかしこれは好都合だった。

 

正直初戦で馬狼率いるチームXはヤバかった。

原作よりはるかに強化された馬狼率いるチームX相手はいくらイレギュラーの俺がいたとしても危うい・・・負ける可能性だって十分あり得る。

という意味で今回初戦がチームYスタートで良かったと思う。

 

「ポジションなんだけど・・」

「俺だ!!」

「いや俺だろ」

「ちょ・・ちょっと待ってよ!いったん落ち着いて・・・」

 

 

絵心のモニターが切られたと同時にチーム内が混乱し始める。

 

 

 

(問題はここからだな・・・)

 

 

初戦は重要だ。なんたって【サッカーを0から1にする】という意図を理解しようと全員がボールに群がる地獄絵図が出来上がってしまう始末。

最悪上位2チームに食い込めなくても得点王さえなれば問題はない。あのメガネめぇ・・・とことんエゴに執着しやがる・・・

 

なんとか俺の原作知識を活かして勝てるようにさえできればgoodだ。初戦は次の試合の対策を練るためにも大切な一戦。じゃんけんなんかでポジションを決めたりなんかしたらすぐ負けてしまう。

もちろん「次俺9」作戦も却下だ。あの戦法は確かにそれぞれの武器を活かすことはできるが、それはFWである唯一人だけ。全員が各ポジションごとに最大限の役割を果たせるフォーメーションが勝つために必要だ。

 

だがどうやってその意見をここにいるみんなに聞い貰い、それを実行に移せばいいのだろうか?

 

彼らだってFWだ。彼らの中にもFWとしての意地というものがあるはず。

俺がどうこう言ったところで状況は変わらないだろう。

 

 

 

(さて・・・・どうしたものか)

 

 

「・・・・・」

 

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴ

 

 

 

「「「「!??」」」」

 

 

 

増瑠は考える。ただひたすら考えているだけだった。

しかし彼の考え悩む仁王立ち姿。身長198cmととてつもない筋肉量による巨躯はその空間にいるメンバーに強烈な圧と存在感をかける。

そして何より、彼らにとって増瑠筋夫とは自分たちよりも格上の存在。

 

ゆえに誰も彼を無視することのできない状況であった。

 

「な・・なぁ!ここはNo1の増瑠君の意見を聞かないか?」

「確かに一理あるな。ここにいるが、表上は俺たち含む高校No1プレイヤーだ。少なくともここいる中で一番試合に勝ってきたんだ。いい考えは持っていそうだな」

「そうだね。増瑠君は何かいい案はないかい?」

 

と久遠達が俺に振って来た。なぜいきなり俺に来たのかは不明だが全員が俺の意見を聞こうとしている。

これはチャンスだ。

そこで俺はこう提案する。

 

「まずはここにいる全員が己の武器を知っておいた方が良いんじゃないか?」

 

「己の武器・・・?」

 

「あぁ。ただ闇雲にポジションを決めて試合に挑むのはハイリスクすぎる。じゃんけんなんてもってのほかだ。だからしっかりとお互いの武器を理解したうえでポジションを決めて挑むべきだ」

 

と本来初戦後に気づくべき点を俺は考案した。

別に難しいことなんて言ってない。

こんな簡単なことさえ彼らは自己中心主義(エゴイズム)に囚われて気づけなかったのだ。

 

「自分の武器か・・・」

「うーん武器・・武器・・・難しい・・・」

「温るい考え方だな。全員俺にボールを渡せば済む話だろ・・」

「全員でひたすら点取取りに行った方がいいんじゃねぇの?」

 

と納得する者もいれば反対の意を唱える者もいた。

当然だ。ぽっと出の俺が何言ってんだって話だ普通。

しかしこれだけはどうしても外せない案だ。

 

「少なくともじゃんけんよりは効果的だ。現に今、お前ら試合になったら自分勝手にゴール目指そうとか考えたりしてただろ?」

 

「「「「!」」」」

 

 

俺の言葉に全員はギクッとばかりの表情を浮かべる。

やはり図星だったか・・・

 

 

「そういうことだ。ここはブルーロック。ちゃんと戦術を練っておいて損はないんじゃねぇか?」

 

 

 

「・・・・チッ・・エスパーかよテメェは・・・」

「くっそぉ・・・俺の思惑がぁ・・・」

「バレちゃったかぁ・・・・」

「そこまでわかっていたんだな・・・すまん・・・正直俺も自分だけでゴール狙おうとしてた・・」

「謝る必要はない國神。幸いにも試合までまだ時間はある。今のうちにやれることをやっておこう!」

「そうだな・・・・よし!ここらでみんなの得意とするプレイを共有しておこう!」

 

と久遠の割り出しから各々の武器を話していく。

 

彼らは自身の得意とするプレイスタイルを話し、それを共有する。

 

 

 

「最後に増瑠君・・・まぁだいたいわかるけどね・・」

 

 

「俺の武器は筋肉。この筋肉から生まれるすべてのプレイが俺の持つ武器だ」

 

 

 

「おぉ・・・なんか大雑把としているな・・・」

「無茶苦茶過ぎんだろ・・・でもまぁ」

「あの体力測定の結果を見ると納得しちゃうな・・・」

 

 

「やっぱり君は人間じゃないよ・・・・さてお互いの武器は知れたけれど、ここからどうする?」

 

「その武器を知った上でポジションを決めるんだ・・・・まずは・・」

 

「FWはもちろんこの俺様だな!」

 

「いや・・・雷市にはボランチを任せたい」

「ハァ!?・・なんでだよッ!?」

 

「雷市の持つその驚異的なスタミナはまさにボランチだからこそ生きると思う。ボールへの執着心だってお前は凄いんだ。どの敵にも負けんとする雷市の信念だからこそその特性を生かしたアンカーの役割を任せたい」

「お・・・おう・・・って違う!!俺はそんな泥まみれなプレイはしねぇッ!!俺が目指すはセクシーフットボ・・」

 

「試合に勝つためなんだ。頼むよ雷市・・・この仕事はお前にしか出来ないことなんだ」

 

 

どうしてもFWをしたい気持ちはわかる。だがそんな気持ちだけでこのブルーロックを生き残れない。少し焦ってはいるが勝つための策は必然的。

 

 

「・・・・・ッチ・・・だがゴールは狙わせてもらうぞ?」

「もちろんだ。無理に守備ばかり専念しなくてもいい・・が、基本はディフェンスから攻撃へと切り替えるスイッチの役割を担ってくれ。頼んだぞスタミナお化け?」

「テメェがそれ言うと嫌味にしか聞こえねぇんだよ・・・」

 

と何とか雷市を説得することができた。

 

「次に國神なんだが・・お前はトップ下を任せてもいいか?」

「!・・・すまん・・理由を聞かせてくれ」

 

「國神の持つロングレンジのシュートは無理にFWに起用するよりも驚異的だ。そっちの方が相手の意表突けるだろ?」

「!・・言われてみればそうだな・・・わかった。どっからでも打ち込んでやる!」

 

「助かる。あと残りのボランチ二人なんだが、久遠と我牙丸。頼めるか?」

 

「「え?俺?」」

 

「あぁ。二人の身長の高さ。そして久遠のジャンプ力と我牙丸の肉弾的なバネはセカンドボールや競り合いに強力だ。中盤に二人がそろえば常にこちら側がマイボール保持できる」

 

実際この二人の身体能力はブルーロック内でも十分高い。特に臥牙丸のバネは異次元だ。

その身体能力はあのノエル・ノアでさえ評価するほど。

久遠の高身長からのジャンプ力も上手くハマれば競り合いにて最強各となりうるだろう。

 

「・・・確かにFW以外あんまりやったことなかったな・・・わかった。勝つためだ。甘んじて引き受けよう!」

「肉弾戦なら俺に任せろ」

 

「ありがとう二人とも。で・・肝心のFWなんだがまずウイングは右が蜂楽、レフトは成早、そしてCFは・・・

 

 

 

潔お前だ」

 

 

「え?俺がCF・・?」

 

「おいちょっと待て!!俺とか他の奴らは納得がいく!!だがなんでコイツがCFなんだよ!?コイツは自分の武器すらわかっていねぇへっぽこなんだぞ!?」

 

そう。やはり今回の武器共有でも潔は自身の武器を把握できていない。

 

「そうだよ・・・俺他よりも身体能力が特別高いわけじゃないし・・・」

 

本来なら二戦目のチームY戦後に千切から告げられるもの。

しかし今回はそこまで待っていられる余裕がない。

 

「確かに身体能力はあまり高くはないだろう・・・だが俺がお前をCFにするのには理由がある。お前には()があるからだ」

「え・・?眼?」

「あぁ。入寮テストの時薄々感じていたんだが、お前は空間を認識する能力に長けていると思う。入寮テストのときはキックの制度が低かったゆえに当てられなかったが、それまでの動き出しは良かった。周りがどこにいるのかしっかりと見定めて狙っていたんだろ?それゆえに潔はフィールド全体を認識する能力があると俺は踏んだ」

「マジかよ・・・お前そんなことできるのか・・?」

 

まぁこれに関しては半分嘘だ。

今回の場合、俺が原作知識を持ち込んで良い具合に理由を並べることで潔自身がその武器を理解するようになった。

彼の持つ【空間認識能力】はこれからの戦いでも必要不可欠。

欲を言えば【超越視界(メタ・ビジョン)】まで覚醒させたいんだが現段階の潔にはまだ使えこなせないだろう。

 

「・・・空間認識能力か・・・」

「あぁ・・・それに・・・あの時俺にぶち込んでくれた直撃蹴弾(ダイレクトシュート)。あれも今回お前をFWに選んだ理由の一つだ。あの瞬間はマジでビビったぜ(死ぬかと思ったが・・)」

 

「!・・・わかった!でも空間認識能力言ったって・・・具体的に何をすれば・・」

「簡単なことだ。その眼で周りを常に見続け、ゴールへの最適ルートを見極めてくれ。いきなりは難しいだろうから少しずつでいい。さっき言ったお前の直撃蹴弾(ダイレクトシュート)で得点を狙うも良し、味方への得点に貢献するも良し。その眼を活かすか殺すかはお前次第だ潔」

 

「!・・・・わかった・・・まだよくわかんないけど俺・・やってみる!」

「あぁ。それとウイング右の蜂楽は・・・まぁ言うまでもないだろ?その変幻自在なドリブル力で敵陣を突破してくれ。潔との相性もいいだろ?コンビプレイでガンガンゴールを狙ってくれ」

「にゃは♪当然♪」

「レフトの成早は死角を利用した裏サイドへの抜け出しを積極的に狙ってくれ。無理に左でプレイする必要はない。スペースがあったら狙い続けて欲しい。特に潔の持つ空間認識能力はお前の力を最大限に活かしてくれるはずだ」

「あいあいさー♪よろしく!潔!」

「お・・おう」

 

 

 

 

 

「で俺なんだが・・・・D()F()をやらせてくれ」

 

 

 

「「「!?」」」

 

 

 

「え・・・DFって・・」

「どういう冗談だ?」

「FWじゃない・・・なんで?」

 

「理由がないわけじゃない。一試合目はどんなゲームが繰り広げられるかわからない。攻撃だってここにいるほぼ全員がゴールを目指すだろう?ならその分残った所のカバーを俺が全部やって支えてやる。そっちの方が守備面でのリスクは下がるだろ?」

 

 

「マジかよ・・・・全部って・・・」

「けど増瑠のスピードとパワー・スタミナなら不可能じゃねぇかもな・・本当に任せてもいいのか?」

「そうだよ・・・君がFWをやった方が・・・」

「テメェDFなんてできんのか・・?」

「安心しろ。一時期はDFとしてプレイしてたんだ。それに俺がDFをやれば失点は確実に抑えられる。だからみんなは・・・絶対点取れよな?」

 

 

「・・・わかった。なら任せたぞ」

 

「なぁ。俺もDF固定でいいか?」

 

とDF要望の赤髪 千切豹馬

できれば彼の覚醒も今回の初戦で起こさせたい。

千切の持つ超スピードは今後のブルーロックやU20などでも活躍しかしない要素だ。

なんとかしたいところだなぁ・・・

 

「・・・わかった。あともう一人欲しいな・・・」

「・・・なら俺にやらせてくれ!」

「イガグリか・・・確かにガッツなプレイが見込めそうで合う。だがいいのか?攻撃にあまり参加できなくなるぞ?」

「本当はFWやりたい!!けど試合に勝つためなら俺はやってやる!!」

 

「ありがとう。余る形でなってしまったが伊右衛門。GK頼めるか?」

「はぁ・・・まぁNo1にそこまで言われちゃぁ断れんな・・・」

「サンキュ。大丈夫だ。伊右衛門はキーパーとしての適性もある。その大きな体でゴールを守ってくれないか?」

「わ・・わかった・・」

「だからそれお前が言うかってんだよ・・・」

 

「あと伊右衛門は後ろからのコーチングを頼む。ラインの調整はこっちで引き受けるから相手がどこを狙っているとかを正確に伝えてくれ」

「わかった。任せろ!」

「初戦のDFは俺と千切、イガグリの3人で固定させてくれ。攻撃は残りで任せていいか?」

「ったりまえだアホ!!俺のゴールのために死んでも守り切れよッ!!」

「任せろ」

 

よし。なんとか各自の武器に合った適正ポジションを配置することに成功した。

これで初戦から安定した戦いができる。

 

改めて思うんだけど原作知識って結構チート過ぎないか・・?

 

 

「もうすぐ試合時間だ。みんな!!絶対勝つぞ!!」

 

 

「「「「オォォォォォォッ!!」」」」」

 

 

 

そうしてチームが一つにまとまった。

 


 

FW:      潔

   成早       蜂楽

 

MF:      國神  

 

    久遠      我牙丸

       雷市

 

DF: 五十嵐  増瑠  千切

 

 

GK:     伊右衛門

 

 

フォーメーションは3-4-3(3-3-1-3)。中をダイヤモンド型にすることで、全体前目に人数をかけることのできる超攻撃的パスサッカーフォーメーションだ。

蜂羅のようなサイドアタッカーの役目ができる選手がいることで攻撃の幅が広がる。

パス展開が非常にスムーズにできる反面、3バックによる最終ラインのケアが難しくCBの負担が大きい。

だから今回俺はDFを選んだ。スタミナには自信がある。

攻撃法は布陣選手間が均等に配置されている為、ピッチをワイドに使い選手同士での距離間を縮めたり広げたりしてパスサッカーを展開するのが基本・・なんだが今回は己の武器が最も活きるポジションを配置しただけだ。

しかし原作の初戦よりかはマシだろう。

 

彼らに要求するのはただ一つ。

 

点を取ってもらう。

 

それだけだ。

 

 


 

 

「よし。いくぞ!!」

 

 

そうして俺たちは五号棟センターフィールドに集結する。

俺たちの方が早く着いたため各自試合へ向けてアップをする。

反対方面からチームYが現れた。

 

「あれが・・・・チームYか」

「あぁ。特に要注意すべきはアイツ。シュートテクニックがずばぬけている熊本県大会得点王 大川響鬼」

 

まぁさらに言えば二子がヤバい・・・

チームYの影の支配者って潔は言っていたがまさにその通りだろう。

身体能力はあまり高くはないが、そのブルーロック内で屈指の頭脳で奇想天外な戦術で攻撃を仕掛けてくる。彼の持つ眼と発想力はきっと初戦でも脅威となりうるだろう。

大川と二子。まずはこの二人の動きを封じる必要がある。

 

 

 

 

ピィィィィィィ

 

 

 

 

そうしていよいよブルーロック初戦の笛が鳴り響く。




はい!!ということでいよいよ初戦が始まりました!!
相手はまさかのチームY!?
原作知識を活かして筋夫はチームZを勝利へと導くことができるのだろうか!?
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11.初陣

UA数が100000超えたぁぁぁぁぁ!!

ここまでご愛読して下さった方々、そしてここまで感想やお気に入り登録してくださった方々マジでありがとうございます!!(泣)
誤字報告も何度もしてくださりありがとうございます!!・・・毎度毎度どんだけ間違えるねん!!って感じです・・・

※今回から本格的に試合が始まり、試合内容を事細かく書いています。
故に文字数が普段よりかなり多くなっておりますのでどうかご理解いただけると幸いです。


いよいよ始まるチームY戦。

 

ピィィィィ

 

 

俺含むこのフィールドにいる計22人全員が緊迫とした空気の中でその笛を聞く。

 

キックオフと同時にボールは潔からトップ下の國神へ。

 

「どけお前ら!!」

「ボールは俺が取る!!」

 

前進する國神に向かってチームYはポジション関係なく一気に向かう。やはり団子サッカー型となってしまい全員がプレスをかけて来た。

 

(多い・・なら・・)

 

 

しかし國神は落ち着いてボールを後方の雷市へ渡す。

 

 

「おっしゃぁぁぁ!!俺が決め・・」

 

 

ドリブルで前線に駆け上がろうとするがプレスが一気に数で押し寄せてくる。

この数を一人で突破するは難しい。

 

 

「こっちだ!」

 

 

雷市はそこですぐ判断し、左前線へと上がってた久遠へとボールが渡りサイドアタックを仕掛ける。

あらかじめ彼らには無理に攻めず一つ一つ慎重に行こうと伝えてある。身勝手なプレイはほぼしないだろう。自分に与えられた役割を全うしつつゴールを狙ってくれればそれで十分だ。

 

全FWとボランチ含む前線がほぼ中盤へと集中して押し寄せてきたことで久遠含むサイドにいる選手は動きやすくなっているはずだ。久遠の目前に二人のDFが押し寄せる。

 

 

(!・・・どうすれば・・・)

 

2体1の状況下で次のプレイに迷いを見せる久遠。

一つ一つ慎重に行きたいとは言ったが少し判断に後れを取ってしまう。

 

 

「こっちだ!!」

 

 

「潔!?」

 

とそこへ、CFの潔が久遠の近くへと駆け寄る。CFにしてはかなり降りてきた動き出し。

潔には一人のDFがピッタリと引っ付いている。彼のドリブル力はそこまで高くないため振り切ることは困難。久遠はもちろん潔自身もそれを理解しているはずだ。

故にここでパスを出したとしても取られてしまうのは目に見えてわかるだろう。

 

 

 

 

(ここだろ・・!成早!!)

 

 

 

しかしそれこそが彼の狙いだった。

 

 

 

「うっし!!パスパース!!」

 

 

潔は空間認識能力で自身へついているマークの数を把握し、自身を囮に成早とすれ違うようDFを誘導させ彼をオープンスペースへと走らせることに成功した。

 

 

「ナイス久遠♪」

 

そこへ久遠は彼らの頭上を超えたループパスを通す。

やはりこの二人の能力は相性が良い。空間認識能力を使ったDFのおびき寄せ、そこから死角を突いた裏への飛び出し。

身体能力があまり高くない二人であるが、組み合わさえすれば敵を欺く大きな武器へと成り替わる。

 

 

「こっちだゴラァ!!」

 

 

アンカーの役割を担っているはずの雷市がゴール前まで上がってきていた。アイツ・・・強欲過ぎるだろ・・・。

ニアサイドに向かってきた雷市へ成早はボールを繋ぐ。しかし彼にもDFが押し寄せており、彼の体向きはゴールと正反対の状態だ。

 

 

(クッソ・・・・このまま強引に・・!)

 

 

 

「雷市!!」

 

 

 

と強引に突破しようとする雷市へ潔が声をかけて近寄る。

 

 

「!」

「通させるかッ!!」

 

 

が、当然その潔にもDFはついて来ている。

ボールを渡せば確実に取られるようなポジショニング・・・更に言えばそこはボールを持つ前にDFにカットされる可能性の高い死の位置(デッドポイント)。二子だってそれを狙っているはずだ。

 

 

 

彼は判断を間違えたのか?

 

 

 

 

 

 

 

「こっちだ!」

 

 

 

潔世一にとってはそれすらも計算内であった。

 

 

「!」

 

 

 

潔がゴール前でDFを引き付けたことでP・Aから少し離れた所に出来る大きなスペース。

 

 

 

「ナイスパス」

 

 

 

そこへトップ下の國神が走り込んでいたのだ。

 

 

ゴールまでの距離およそ25m。通常ならこの距離からのシュートは威力が削られて得点率は低くなる。

よってゴール前まで持ち込んでゴールを狙った方がより確実だろう・・・チームYのDFもそう踏んでゴール前をガッチリ固めようと潔と雷市をマークしながら立ち構えている。

 

 

しかし國神はシュート体勢へ。

 

 

(は・・?シュート・・!?)

(そんなロングレンジから・・・!?)

 

 

故に誰もブロックなど飛び込んでいない。

 

 

これこそが彼をトップ下に置いた真骨頂だ。

 

 

そして放たれる左足の砲弾。ボールはゴールネットを深く突き刺した。

 

 

 

1-0

 

 

「ッしゃオラぁ!!」

「ナイッシュ!!國神!!」

「よくあんな距離から決めたな!!」

 

 

先取点を取ったことでチームのほとんどが彼を称える。

 

 

(凄いな・・・)

 

あの距離から決めた國神もだが、それまでの潔のアクションに俺は驚愕する。

久遠からボールを貰いに行くことで成早を裏サイドへ抜けやすくし、ゴール前で雷市へボールを貰いに行ったのも國神のロングレンジシュートを打たせるための布石。

 

空間認識能力・・・間近で見ると恐ろしい能力だ・・・・

 

 

ピィィィィ

 

 

試合が再スタートする。

 

「なッ!?てめぇら・・・・」

 

FWの大川がドリブルで持ち込もうとするが、相手はリードされてるせいかチームYは焦って味方同士でボールを奪い合う始末。

 

「味方同士潰し合って勝てるとでも思ったか?」

「残念だったなぁ!!ボールは俺が貰う!!」

 

國神と雷市のプレスで団子状態のボールは右サイドへと転げ落ちる。

 

「ばっちばち最高潮♪」

 

前線が一気に上がってきたことでチームYはまだ隙だらけ。

 

「くっ・・なんだコイツ!?」

 

ボールは蜂楽へと渡り、彼はその高度なドリブルテクニックでDFを1枚・・2枚・・・そして3枚とあっさり抜く。

 

彼の動きに連動するようボランチの臥牙丸と久遠もゴール前まで上がり込む。

そして蜂楽は中へセンタリングを上げる。

 

 

「うらぁぁぁぁ!!」

 

 

DFはいるものの、長身とジャンプ力を武器とする久遠には高さで誰も勝てなかった。久遠はそのまま強烈なヘディングを叩きつける。

 

「!クッソ・・・!」

 

がしかしボールは不運にもポストに弾かれてしまう。

 

「よし!クリア・・」

 

こぼれ球を相手DFはクリアしようとする。

 

 

 

「だぁッ!!」

 

 

 

と、そこへ全身バネ人間の我牙丸が決死のダイビングヘッドでゴールへと押し込んだ。

 

 

 

2-0

 

 

 

「よっしゃぁぁ!!ナイスシュー!!我牙丸!!」

 

久遠と我牙丸はお互いハイタッチする。

わぁ・・・顔面からズルズルと滑り落ちる彼はとても痛々しい・・

 

「・・・・もう一点だ・・・」

 

 

ピィィィィ

 

 

キックオフ直後もやはりチームYは味方同士でボールを奪い合う。

 

 

「残念だったなァ!!テメェらにはストライカーの資格はねぇよ!!」

 

雷市の猛プレッシャーによってボールは一気にこちら側へ。

しかし前から立て続けにプレスを仕掛けてくるチームY。

 

「雷市。くれ」

「!チッ・・・」

 

ボールは俺の元へとやってくる。

あまり満足にプレイが出来ず不満気味な彼だが、それでもいい働きをしてくれている。

 

「ここで取るぞ!!」

「指図すんじゃねぇ!!」

「おらぁぁぁぁ!!」

 

と相手のFW陣は猛プレッシャーで俺へと向かって来る。

そんな状況下でも俺は落ち着いて前線を確認する。

 

 

(3・・・・2・・・・・1!ここだ!!)

 

 

とカウントしながら俺は相手のFW陣のみならずボランチやサイドのDF陣がラインを一定ラインまで上げたタイミングでボールを一気に前線へと蹴り上げる。

 

 

「何ィ!?」

「ロングフィード!?」

「あそこからなんつーキック力だ・・!!」

 

 

ボールはそのままレフトの成早へと渡る。

 

(えっぐ・・・・あんな距離からドンピシャで俺んところ飛んできた・・・)

 

俺のキックの精度は幼少からかなり練り上げられている。

加えて鍛え上げた俺の大腿四頭筋から放たれるキック力ならシュートのみならずこうした遠距離からのロングボールでパスをするにも効果的だ。

 

そしてフリーでボールを貰った成早はそのまま中へクロスを上げる。

 

「うぉぉぉぉ!!」

「だぁッ!!」

「おらぁぁ!!」

 

久遠と我牙丸、そして國神が競り合うも、ボールは彼らと相手DF陣の丁度真ん中に放り込まれてしまう、

 

「ぐっ・・!」

「チッ・・!!」

 

大人数で競り合ったことでボールはそのままゴールとは逆方向のP・A外へとこぼれ落ちる。

 

 

「らぁぁぁぁッ!!」

 

 

そこへP・A内まで走り込んでいた雷市が低弾道でダイレクトシュートを放つ。

國神、久遠や臥牙丸、そして自陣のDFに隠れるように打たれたシュートに相手のGKは反応が遅れボールはゴールネットを揺らした。

 

 

3-0

 

 

「どうだテメェら!!雷市タイム発動だ!!オラぁ!!」

「うぉぉぉぉぉ!!ナイッシュ!!雷市!!」

「よくあの場面から決めたな!」

 

中盤守備から一気にゴール前へと走りこむ彼の運動量。

多少強引ではあるが、彼をアンカーとしておいたのは正解だった。

 

 

「おいお前!!もっと俺にボールよこせよ!!」

「あぁ!?なんだと!?」

 

大きくリードを許したチームYはかなりムードが悪くなっていた。

 

 

(クソが・・・・自由に動けねぇ・・・)

(・・・一体僕はどうすれば・・・・)

 

 

大川は味方の邪魔や俺達固定DF陣がマークについていることで満足にプレイが出来ない状態。

また二子の持つ頭脳もこのような状況下では活かすことなどできない。

仮にカウンターを仕掛けようにもDFの俺らがほとんど固定で動いてるため容易に出来ないのだ。

 

つまりチームYで主軸となるこの二人は完全に抑え込んでいるということだ。

 

 

「おらぁぁぁぁぁッ!!」

 

 

再び國神の左足が炸裂し、ゴールを突き刺す。

 

 

4-0

 

 

「そーれ♪」

 

 

ノリに乗った蜂楽がドリブルで一気に抜き去り、最後はラボーナで華麗に決める。

 

 

5-0

 

 

國神のワンゴールから風向きは完全に俺達へと向いている。

戦術を練ったのもあるが、これこそが絵心の言う【サッカーを0から1へと作り変える】からくりの正体なのだろう。

 

「ハァ・・・ハァ・・・」

「ハァ・・・これが・・・チームZ・・・・」

「強すぎる・・・・ハァ・・ハァ・・・」

 

一方のチームYはほとんどの選手が試合開始から縦横無尽に走り回っている。

いくらブルーロックに選ばれるほどの身体能力を持っているとはいえ、今回の場合彼らのスタミナはかなり消耗している。

 

 

ピッピッピィィィィ

 

 

前半終了の笛が鳴る。

俺達は指定のベンチ室へと戻り休憩を挟んだ

 

 

「すげぇな!!俺たちってこんな強かったのか!?」

「いや。相手も相手だ。俺たちもちゃんと戦術考えてなかったらああなっていただろう」

「そうだね・・・増瑠君の案がここまで上手くいくとはね・・・」

「チッ・・・悔しいがテメェの言うとおりだったぜ筋肉野郎・・」

 

なんとか俺の案が大ハマりして良かった。得点してやや上機嫌な雷市。

彼らにブルーロックでの戦い方を少し理解できたのは本当に良かった。

とりあえず前半戦は良かった・・・というか良すぎたな・・・

彼らの持つ能力はそのほとんどがバラバラだ。故にその能力を予め共有しておくことで今回のようなスムーズなゲーム展開が行えた。

というかチームZマジ強いよな・・・ここにいるほとんどがこれからのブルーロックで生き残って活躍するだろうから当然か・・。

 

「後半はどうする?」

「そうだな。特に今チームYは混乱を招いている。これはチャンスだ。体力だってこっちの方が多く残っている。畳みかけて点を取りに行くぞ。あとポジションはこのままでいいか?」

「当然だ。後10点は取ってやるッ!!」

「うん。俺もボランチでいいよ!」

「トップ下だとなんというか色々とやりやすいな・・・俺もそのままでいい」

「・・・・」

 

潔だけは少し考えを募らせている。

前半戦に得点出来なかったことに少し不安を抱いているのだろうか?

だが彼の持つ空間認識能力のおかげでここまで苦難を強いられず大差をつけられたのも事実。

後半戦の彼に俺は少し期待した。

 

 

 

 

ピィィィ

 

 

後半戦が始まる。

 

大川がFWとうまく連携を取り前線へと駆け上がっていく。

 

「チッ・・!」

「早い・・!」

 

さすが熊本県得点王に選ばれただけはある。テクニックとスピードが常人よりずば抜けている。

そのまま千切と一対一になる。

 

「遅せえよ!」

「くっ・・・」

 

やはりまだ脚の怪我を引きずっている。大川の全力に今の千切は対応しきれず突破を許してしまう。

 

「南無三!!」

「!」

 

そこへイガグリが続けて突っ込んだことで大川はボールを中央へとこぼす。

大川はそのままこぼれたボールを取ってシュートを打とうとする。

 

 

「ふッ!!」

 

 

「うぐ・・・ッ!?」

 

 

予めカバーリング出来る位置にポジショニングしていた俺はそのまま【筋肉(マッスル)ハンドワーク】で体を入れボールを奪い取った。

 

 

この時増瑠筋夫のフィジカルの強さに大川響はこう考えたのだった。

 

 

(サイにでも突っ込まれたのかと思った・・・)

 

 

そのまま大きくロングフィードへ展開する。

ボールは中盤の國神へ。

 

 

「そんなに開けて大丈夫かよ?」

 

(!しまった・・・)

(コイツはロングレンジの・・・!)

 

分かっていても止められない。

彼の位置はすでに彼の武器射程圏内。

大きく真ん中の空いた状況で國神は必殺ロングレンジのシュートを炸裂する。

それは豪快にゴールをぶっちぎった。

 

 

6-0

 

「っしゃオラぁ!!」

「うおぉぉすげぇぇぇ!!」

「マジかよ!!ハットトリックだ!!」

 

 

一気にチームの得点源へと成り代わった。

 

 

ピィィィィ

 

 

再び試合が再開される。

 

 

「いきますよ」

 

ここでDFの二子が中盤まで上がってきていた。

彼らはしっかりとしたパスワークで攻めよってくる。

 

「抜かせない!」

「何度やっても同じなんだよッ!!」

 

 

再び國神と雷市がプレスをかける。

 

 

「それはどうでしょうか?」

 

二子は味方とうまくパスをつなぎ雷市と國神、そしてサイドボランチの久遠や我牙丸をもかわす。

常にトライアングルを創り上げてからのパスワーク。こちら側がダイヤモンド型を組んでいるのに対抗すべし秘策なのだろう。

DF陣は俺と千切、そしてイガグリがいる。

 

 

「後ろだ!!狙っているぞ!!」

 

 

伊右衛門のコーチングで大川が背後へ狙っていることはわかった。

 

 

(よこせ!!前髪!!)

 

 

二子は一瞬でアイコンタクトを取り俺の裏を狙う大川へとループパスを通そうとする。

なるほど・・・前半戦後に狙っていたというわけか。

確かにこの軌道なら千切やイガグリのカバーリングは間に合わず、2対1で俺と勝負ができる。

大川は素早いステップワークで俺の背後を取ろうとする。それに合わせて二子は俺達のDFラインを確認したのちオフサイドスレスレのループパスを出した。

 

 

(よし!!貰った!)

 

 

まさに完璧なタイミング。

ボールは俺の頭上を超え・・・・

 

 

「低いな」

 

 

ず・・・俺はジャンプでそのまま胸トラップしてボールを保持する。

 

 

「なッ!?」

 

(飛びすぎだろ・・!?)

 

当たり前だ。俺のちょっと頭を超えるようなループパス程度なら俺の高さとジャンプ力で十分刈り取れる。

今回チームYが取った戦法は二子含めての完全攻撃的陣形。

故にカウンターをするには十分な数だった。

 

 

「行ってこい!!」

「!?しまった・・・!」

「戻れ!!」

 

再び俺は前線へロングボールを放り込む。

 

 

「ワオ♪えっぐいボール♪」

 

蜂楽へと渡る。前半戦で学んだのか彼の目の前にいる2人のDFは、彼からある程度距離を取って構える。

ゴール前はDFと攻撃陣で大きな密集地帯となっている。

ゆえにクロスを上げるのは難しい状況。

 

「なら・・・・ここでしょ♪」

 

が、しかしそのまま蜂楽は大きくアーリークロスを上げ、ゴール前へ。同様に我牙丸と久遠が入るも警戒されマンマークされている。國神や雷市がペナルティエリア外から狙おうとするも自陣まで戻っていた大川によってマークされている。成早もセカンドボールを狙おうとするが二子に警戒されていて動けない。

 

 

「「「!!?」」」

 

 

しかしボールはマークされてる彼らの頭上を越えてはるか後方へ。

 

 

 

 

 

「ナイスパス。蜂楽」

 

完全ドフリーでポジショニングした潔世一はそのまま大きく足を振り切り渾身の【直撃蹴弾(ダイレクトシュート)】を放つ。

 

 

ボールは綺麗に左上に突き刺さった。

 

 

 

7-0

 

 

「っしゃぁぁぁぁぁ!!」

 

「うおぉぉぉぉ潔!!」

「こんにゃろぉぉぉ美味しいところ持っていきやがって!!」

 

 

(マジかよ・・・)

 

 

まさか前半あまり目立たない動きをしなかったのはこのためだったのか・・・?

今回チームYは失点を防ごうと前半攻めていた久遠や我牙丸、雷市や國神、成早にマークが集中していた。

それを即座に理解した潔は彼らへマークが集中したところから大きく外れ、蜂楽との一瞬のアイコンタクトから空間認識能力を利用し、彼の持つ直撃蹴弾を最大限に活かせるようフリーで打てるようポジショニング。

彼自身は自分でゴールまで持っていくことにリスクを感じていた。だから潔は前半戦でゴールを目指すような目立つ動きをしないことで自身からマークを外させた。

まさにこの時を待っていたのかと思わせる彼の計画性(シナリオリティ)とサッカーIQ。

 

流石主人公だ・・・少しヒントを与えただけでこうまで化けるものなのか・・・

 

 

ピィィィ

 

試合を再開し、チームYはほとんど二子を中心に攻撃を組み立ててくる。

しかし彼らは自身の能力に応じた適切なフォーメーションを組んでいない。

不慣れなポジションはむしろ彼らの持つパフォーマンスを下げてしまうのだった。

 

「もーらい!」

 

成早がボールを奪い取り、一度國神へと預ける。

 

「國神!!」

「させるかぁぁ!!」

「おい待て行くな!!ソイツは・・・!」

 

潔のCFでのアクション。それはつまり

 

「あざっす潔!!」

「しまった・・!またやられた・・!」

 

空間認識能力×死角からの飛び出しは予想してても止めることができない。

そのまま成早はゴールへと向かいフリーでシュートを放つ。

 

「やっべ!」

 

しかしコースを狙いすぎたせいかポストに当たってしまう。

 

 

「ふんぬぅぅぅぅッ!!」

 

 

そこへスタミナお化けの雷市が詰めてゴールへと押し込んだ。

 

 

8-0

 

 

「ナイスシュ!!雷市!!」

「お前どんだけ走るんだよッ!?」

「当然だアホ!!あとチビ!!ちゃんと決めやがれッ!!」

「マジで感謝です!雷市さまぁ~!」

 

 

すげぇなアイツ。

前半戦から彼は攻守ともにすべてこなしてくれている。

ボランチとしてはかなり消耗の激しい動きのはずだが・・・彼のスタミナはまだ底が知れない。

 

 

「おらぁぁぁぁぁぁ!!」

「ナイッシュ久遠!!なんか前半より飛んでねぇか!?」

「あぁ!絶好調だ!」

 

 

9-0

 

 

続いて成早からの大きめのクロスに久遠が前半よりもはるかに高いヘディングでゴールへと叩きつける。

本来原作での初戦で彼らは敗北し、久遠は裏切りによる不安定な精神下にいた。それゆえに彼の持つ潜在能力を無意識に抑え込んでしまっていたのだろう。

しかし今回の場合はかなり点差を広げている。気持ちに余裕が出来ている。

今の彼の表情は純粋に心置きなくサッカーを楽しんでいるように見え、それは彼の持つ能力を更に高めるものへとなった。

 

 

スコアは9-0

残り時間もあとわずか。

故に勝利は無理と断念したチームY選手はチーム内得点王になろうとほぼ全員での総攻撃を仕掛けてくるだろう。

ずっとDFやボランチを担当していた二子までもがFWまで上がってくる。

 

何を仕掛けても止めて見せる。

 

 

「行きますよ大川君!」

「ちゃんとついて来いよ前髪!」

 

「!?」

「え・・!?ちょ・・・お前ら!?」」

 

とお互い合図をしたと同時に大川と二子は自陣を完全置き去りにして連携で中盤を一気に突破する。

 

「すまん!!カバー頼む!!」

「チッ・・・こいつら・・・・!!」

 

マズイな・・・大川のテクニックと二子の頭脳。ここへ来てこの二人の能力が嚙み合い始めた。

 

「南無三・・!!」

「くっ・・・!」

 

イガグリと千切が対応するも突破されてしまう。

まさかここでこの二人の息が合うとは。原作にない連携に俺は少し焦りを見せる。

 

 

「あとはアンタだけだ。No1!!」

「惨めに終わるつもりはありません。ここで一点取らせてもらいます!」

 

まさにゴールだけを狙おうとする互いの共通目的から生まれた超速連携。

 

大川&二子VS俺。ゴール前での二対一の状況は心理的にこちら側がかなり不利となってしまう。

突破されたら確実に失点してしまう。いくら伊右衛門でも即席GKだ。

なんなら俺達がDFに集中しすぎて今回彼はまだボールすら触ってすらいない。

 

「大川君!」

 

 

と声をあげ二子はドリブルしながら大川へと目をやる。

その声と同時に大川は反対側へアクションし俺と交差するように飛び出す。

このアクションだとどっちが来るかわからないランダムな状況となる。DFはどちらに対応すればいいか一瞬判断が遅れ、難なく突破される。

お互いの意思疎通ができてないと不可能なプレイだ。

 

 

まさに絶体絶命。

 

 

 

伊右衛門含むチームZの誰もがそう思った。

 

 

 

 

 

 

()()()だろ?」

 

 

 

 

 

「「!!?」」

 

しかし俺はゴールへと向かっていた()()のボールを奪い取る。

そして俺はロングボールを蹴りだし前線へとカウンターを仕掛ける。

カウンターを仕掛けたことでボールを持った國神はそのままロングレンジのシュートを打とうとする。

 

「打たせるかぁぁ!!」

 

しかし彼の武器を理解したのかDF一枚がブロックへ飛び込む。

 

「出せ!!國神!!」

 

そこへ雷市が駆け寄る。

前半から一体どれほど彼が走りこんでいるのだろうか・・・終盤になっても彼の運動量は変わらないままだった。

 

「チッ・・・」

 

そのままゴールへ向かうもチームYはほぼ全員がゴール前まで戻ってきており、守備をガチガチに固めている。

FWの潔、成早、蜂楽はもちろんボランチから上がっている久遠や我牙丸にもマークが付いている。

この状況下で点を取るのは難しい。

 

 

(なら・・・)

 

 

「「!?」」

 

二子と大川は驚く。

これまでずっとDFに専念していた()が一気に前線へと駆け上がっていた。

恐ろしく早いスピード。ものの数秒で彼ら二人を置き去りにし自陣からハーフコートをあっという間に突破。

 

 

(スペースがねぇ・・・どうすれば・・・・)

 

 

 

ガッチガチの守備に攻めの動向を伺う雷市。

 

 

「こっちだ」

 

 

「!?」

 

 

そこへ一人のストライカーが姿を現す。

 

 

雷市陣吾はそのあまりの光景に疑問を抱く。

同時に彼は迫りくる彼に思わずパスを出してしまった。

 

 

ボールを持った彼はそのまま大きく足を振りかざす。

 

 

(は・・?)

 

(何やってんだよ・・・・)

 

(パス・・・・いや!!違う!!)

 

(まさか・・・)

 

(嘘・・・だろ・・・そっから何メートルあると思って・・・・)

 

 

距離はP・Aからかなり離れた所。ほとんどセンターサークルに近い場だ。その距離・・・

 

 

 

およそ40m。

 

 

あまりにも予測できない彼のプレイに誰もが大きく目を見開く。

 

 

 

 

ドォォォォォン

 

 

 

 

グラウンド中に大きく響き渡る轟音

 

 

ストライカーの本性を曝け出すように彼・・・

 

 

 

増瑠筋夫は左足からの超ロングシュートを放つ。

 

 

 

(バケモン・・かよ・・・・)

 

 

 

超長距離射程からも届く高威力。更にそのあまりの美しい彼のシュート精度にピッチにいる誰もが魅入ってしまう。もちろんGKさえそれに反応すらできず・・・

 

 

ボールはゴールネットを大きく突き刺した。

 

 

10-0

 

 

 

ピッピッピィィィィィ

 

 

 

同時に試合終了の笛が鳴り響く。

 

 

ラストプレイの出来事。

空気は一瞬静寂なものへと包み込まれ・・・

 

 

「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」」」

 

 

しばらくしてチームZの全員が彼の元へと駆け寄った。

 

 

「すっげぇ!!ナイスシュ!!増瑠!!」

「やりやがったなこの野郎!!あんなシュートまで打てたのかよ!!?」

「さっすがはNo1だ!!」

「胴上げだぁぁ!!って重ッ!?」

「いやお前の腕力じゃ増瑠を持ち上げられるわけないだろ・・・」

「そうだった・・・俺も鍛えよう・・・」

 

 

そうしてひと段落落ち着いた俺たちチームZ。

 

 

「勝ったんだな・・・俺達・・・」

「あぁ・・・」

「まずは一勝だ」

 

 

チームZ 10-0 チームY

 

 

潔世一:1ゴール

蜂楽廻:1ゴール

國神錬介:3ゴール(ハットトリック)

雷市陣吾:2ゴール

臥牙丸吟:1ゴール

久遠渡:1ゴール

増瑠筋夫:1ゴール

 

 

まさに圧巻の勝利だった。

 

 

 

 

俺がフィールドを去る際

 

「ラストプレイ・・・どうして僕に来るとわかったんですか・・・?」

 

と二子が悔しさを握りしめながら聞いてきた。

 

 

「どっちに来たって結果は同じだ。あの場面で大川にボールが渡ったとしても俺の持つスピードと反応速度なら追いつける。まぁ・・ちょっとだけお前のゴールへの信念を信じただけだ。それに・・・たかが二対一で俺を抜けるとでも思ったか?」

 

 

 

「!」

「くっ・・・!」

 

 

それだけ言い俺達チームZはグラウンドを静かに去った。

 

 

 

「チームZ・・・次元が・・・・違いすぎる・・・・」

「あれが増瑠筋夫・・・・とんだ化け物じゃねぇか・・・」

 

 

 


 

同時刻

 

 

別フィールドにて

 

 

ピッピッピィィィィ

 

 

 

試合終了のホイッスルが鳴り響く。

 

 

「・・・・こんなもんか・・・」

 

 

「ハァ・・・ハァ・・・クッソ・・・・!」

「ふぅ・・・ふぅ・・・ふん・・・・・!」

 

 

「ちょっと連携が旨いからって調子に乗ったな。お前ら才能ねぇよ・・・・

 

 

 

あと・・・

 

 

 

 

 

()()もな」

 

 

 

 

 

フィールドへ崩れ落ちる彼らへ(キング)は静かにそう告げたのだった。

 

 

 

チームW 1-7 チームX

 

 

 

馬狼照英 7ゴール(ダブルハットトリック)

 

 

 

 

 




ということで、チームZの完勝で今回は終わりを迎えました!!
こうみるとチームZは筋夫君の原作知識でめちゃくちゃ強化されてますね・・・
まぁ強化馬狼がいるわけなんでこれくらいでちょうどいいかも?
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12.憧れのヒーロー像

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色んなご意見等が参考にもなりますのでもの凄く助かります!!
改めてここまでご愛読して下さった方々ありがとうございます!!



「チームZ第一試合勝利を祝しまして・・・・」

 

「「「「「乾杯!!」」」」」

 

第一試合でかなり得点できたため、俺達チームZは大きく祝勝会を挙げた。

少しばかりハメを外し過ぎではないか?と思われるかもしれないが、第一試合突破は俺たちにとって大きなアドバンテージとなる。

先に勝点8以上取れれば次の二次セレクションへと進める可能性が高くなる。

そういった意味で気持ちに少し余裕が出来たんだ。少しくらい贅沢したってバチは当たらないはずだ。

そうして出されていたのは原作よりもはるかに多い量のステーキやその他豪華なおかずの数々。

 

「うぉぉぉぉこれが肉ぅぅぅぅぅ!!」

「これが勝利の味!旨すぎる!!」

「うみゃうみゃ~」

 

いつも貧しい食事ばかり摂っていた彼らにとってそれはまさに至福の一時であった。

 

「しっかしよぉ~俺達初戦でかなり有利になったよな~」

「合計10得点。他のチームの得点数にもよるけどスコアはかなり稼げたはずだな」

「まぁこれも増瑠君がちゃんと戦術を組み立ててくれたおかげだ」

「俺はなにもしてねぇよ。ゴールを奪って来いって言っただけだ・・うま」

「謙虚だなぁ~流石No1の器だ~」

 

別に謙遜しているわけではない。彼らには元々一人でも得点できる大きな能力を持っていた。そんな彼らに俺はちょっとしたきっかけを与えたに過ぎない。

 

「正直俺さ~増瑠って完全な肉弾戦っぽかったじゃん?だからてっきり戦略とか何も考えず身体能力だけでプレイしていたんだと・・・」

「マジでそれ!こんないかにもパワーゴリゴリ系な見た目からは想像もつかないくらい冷静だったよな!」

 

「ハハハ・・偏見すぎだぞ。選手一人ひとりに合ったポジションとフォーメーションを練る。そしてそこから戦術を組み立てる。別に難しいものじゃないさ。基本中の基本でシンプルだぞ?」

「確かに・・・冷静になって振り返ると俺達かなり危なっかしいことしかけてたんだな・・」 

 

まぁ絵心から放たれた衝撃の事実。「負けたら終わり」というワードが彼らを焦らせていたのは言うまでもない。

原作知識が活きて良かった。まぁどっちみちチームY相手なら俺がDFすればどんな状況だろうと点を取られることはなかっただろう。

 

「ホントそれー。増瑠がいなかったらどっかのスタミナお化けさんが出しゃばって自滅してたかもな!」

「ってオイ!?それ俺の事かァッ!?・・・けどまぁ・・・チビの言う通りだ。お前が居なかったら俺たちはあの試合下手こいて勝てなかったかもしれねぇ・・そう言う意味では・・・まぁ・・・感謝してる」

 

とステーキ肉を頬張りながら感謝の意を述べる雷市。

 

「あの雷市がお礼をした・・・だとッ!?」

「明日は隕石でも降って来るのか!?」

 

そんな彼をイガグリや成早は軽くおちょくった。

 

「テメェら・・・・いい加減にしやがれぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 

「「「「「ぎゃははははははは」」」」」

 

 

チームZの控室はいつもより賑やかだった。

 

 

 

そういえばここで各チームごとの勝点をランキング順にお見せしよう↓

 


 

 

1:チームZ  勝点3  +10 (Z 10-0 Y)

2:チームX  勝点3  +6  (X 7-1 W)

3:チームV  勝点3  +3  (V 4-1 Y)

4:チームW  勝点0 -6  (W 1-7 X)

5:チームY  勝点0  -13 (Y 0-10 Z & Y 1-4 V)

 

 

見ての通りこれまで計3試合でトップに立てたのは俺達チームZ。

その次はなんと強化された馬狼率いるチームX。すげぇな・・・確か原作だと負けてたよな?

4位にはそれに敗れた鰐間兄弟率いるチームW。

そして意外だったのはチームVとチームY。まさかチームV相手にここまでチームYが喰らいついていたとは・・・初戦で俺達と戦ったことで生まれた二子&大川コンビの連携によるものだろうか?

しかしそれでもチームVは強い。天才凪や玲王 そして斬鉄のいるチームV相手に負けたチームYは2戦とも敗れたことで次の二次セレクションへと勝ち上がれる可能性が一気に下がってしまった。

やはりイレギュラーの俺が加わったことでの原作改変は馬鹿にならない。

俺自身も強くならねば・・・

 

 


 

食事からしばらく時間が経ち、日課のウェイトトレーニングへと移る。

食後2時間後はある程度食物が消化されているため、トレーニングをするには問題ない。

そんなわけでサプリメントと着替えを持っていきトレーニングルームへと行く。

 

 

「フッ!フッ!フッ・・!フゥゥゥゥ・・・・オらぁぁッ!!」

 

高校生とは思えないほどの強靭な肉体。

一人の男が先客としてスクワットをしていた。

 

 

「國神か。こんな時間になってもトレーニングか・・・」

「増瑠・・・フッ・・そういうお前もだろ?」

「まぁな。なぁ。よかったら一緒に合トレしないか?俺もちょうど脚のトレーニングをするところだったんだ」

「いいのか!?じゃあやろうぜ!!」

 

そうして俺達の互いに筋肉をいじめ合う時間が続いたのだった。

そして最後の種目でのインターバル中での時だった。

 

「フゥ・・・しっかし凄いよな増瑠は。いつからウェイトトレーニングを始めたんだ?」

「ウェイトを持ち始めたのは確か10歳くらいだったな。その前までは自重トレをやっていたんだが・・・ちょうどその頃からだったな。身体が大きくなり始めたのは」

「10歳・・!?・・そんな歳から・・・」

「まぁちょっとうちの両親が大の体育会系でな。幼少からトレーニングしていたんだ」

 

まさか生後一ヶ月目で腕立てさせられたなんて言えないがな。

 

「すげぇな・・・・俺とは段違いだ・・・」

「別に俺と比べなくてもいいだろ?國神にも強力なフィジカルとロングレンジのシュートっていうしっかりとした武器があるんだ」

 

他人と比べていつまでも自身を妬んでいては成長は出来ない。

自分は自分のやるべきことをやり続ける。そうすることで少しずつ自身の掲げる目標に着実に近くなっていく。

筋トレを始めたことで俺はそういった考えを持てるようになった。

 

「それなんだけどよぉ・・今日の試合でわかったんだ。まだこんなんじゃ足りない。同時に考えたんだ。俺の持つ武器は多分お前の下位互換でもあるんだって・・」

 

と自身の能力をさげすむ様に國神は俺へそう告げる。

確かに・・・自惚れではないが俺の持つフィジカルとシュートレンジそしてシュート力は國神より高いだろう。

 

「今のお前の持つフィジカルとロングレンジは今でも十分強力だ・・・が、もしこの先青い監獄(ブル―ロック)を戦い抜くのなら・・・それはまだ不完全だ」

 

という意味では彼の言う通り俺は國神の上位互換でもあると言えるかもしれない。

彼の武器以上の能力を俺以外にも馬狼や凛そして時光と言った一流プレイヤーは持っている。

世界クラスともなるとそれらでさえ劣って見えるだろう・・・故に彼にも成長は必然的だった。

 

「そうだよな・・・だから俺はこれまで以上に己を鍛えてその武器を更に伸ばさないといけないんだ。今よりもさらに強くなって・・・この青い監獄(ブル―ロック)で俺は・・・サッカーでスーパーヒーローになる!」

 

固く拳を握り、自身の目的とする理想像を口にする國神。

 

「スーパーヒーローか・・・・お前らしいよ。國神」

「笑わねぇのか・・・?」

「笑うなんてとんでもない。憧れ目指して頑張るのは何も悪いことじゃないしそれをわざわざ恥ずかしがる必要なんて何もない」

「増瑠・・・・」

 

誰かの夢を否定していい人間なんて存在しない。

甘ったれた理論であって、それが俺の弱さであるかもしれない。

けれど憧れてしまったものはしょうがないだろ?その憧れ目指して努力するのがソイツの道ならば、俺はソイツの背中押して応援してやるまでだ。

 

「俺もな、一時期はヒーローにかなり憧れを抱いていたんだ。特にスーパーマンやキャプテンアメリカは当時の俺がもっとも敬愛するヒーローだった」

「わかる!!あのどんな悪をも打ち倒す感ある圧倒的な感じ!!そして筋肉!!すげぇカッコイイよな!」

「筋肉と言えばマイティソーやウルヴァリンもかっこいい筋肉してたぜ!あの筋肉あるところあの強さありって感じで・・・」

「それ!!特にマーベルの作品ってヒーロー全部が集結するアベンジャーズがあって面白いよな!!けど意外だったな・・・増瑠ならてっきりハルクを目指していたのかと・・・」

「超人ハルクか・・・確かにハルクは純粋な筋肉のデカさは良い。特にあの巨体からあんなアクロバティックな動きが出来るってマジすげぇわ。けど・・当時の俺は純粋な筋力もそうだが正義感溢れる信念の強いヒーローに憧れてたんだ」

「!!俺もだ・・・あのどんな状況だろうと悪を必ず打ち倒そうとする強い精神力と強靭な身体・・・・いつか俺は・・・そんなかっこいいヒーローに・・・」

 

やはり國神のヒーローへの憧れの原点は何もサッカーだけじゃ無かったらしい。

元々は民衆を助け悪を打ち砕く輝かしいスーパーヒーローの姿に憧れ、それを自身の敬愛するサッカー選手に重ね見ていたのだ。

言葉だけ見れば子供っぽく理想ばかりの非現実主義的だと思われるかもしれない。

しかし彼の目からはそんな理想をも実現させようとする固い意志を感じ取れる。

 

 

「確かに今挙げていったスーパーヒーロー達は最終的に悪を打ち倒している・・・だけど、そんな彼らだって一度は大きな()()をしているんだ」

 

「挫折・・?」

「さっき俺が挙げたDCシリーズのスーパーマンも一度はヒーロー組織であるジャスティスリーグと敵対しているんだ。他にも愛するものを失って大きな闇を抱えたまま戦ったドクターストレンジは最終的に悪の帝王サノスに敗れた。両親を失った恨みから生まれたバットマンだってヒーローでありながらスーパーマンと敵対してただろ?時にヒーローと対々する存在となり、時に仲間を失い、時に闇落ちして堕落する。けどそんな彼らだって自身の掲げる正義を持って戦っていたんだ。そんな時にもお前や周りの人達は彼らを()()()()と呼べるだろうか?」

「・・・・」

 

 

実際原作での彼は輝かしい光溢れるヒーロー感に固執し続けたせいで、後の二次セレクションで脱落し敗者復活(ワイルドカード)戦で闇堕ちする運命にある。

 

「國神の想うヒーロー像ってのも別に悪いものじゃない。むしろ素晴らしいものだ。だけど、何でもかんでも全部を救うってことは不可能であってそれはある種の傲慢にもなりうる」

 

誰かを救いたい、そして笑顔にさせたいと願う気持ちは、自身にその能力がない、もしくは何をしていいのか分からず、結局自分自身で願望と無能力の狭間で苦しむということでもある。

 

「だけど・・・それでも俺は・・・」

「今の考え方を改めろって言ってるんじゃない。だけど、時には自分自身を壊してでも進まなきゃいけない道もいずれ現れる。自分にとっての憧れのヒーロー像ってなんなのか?真のヒーローって何なのか?それだけは頭の隅にでも置いといて欲しい」

 

そんな彼を・・俺はどうしても放っておけなかった。ホント・・我ながらおせっかいな性格だぜ・・・

 

 

「・・・・ありがとよ増瑠。まだ完璧には理解はできないだろうけど、少しだけ力になった気がするぜ」

 

いつの間にか少し吹っ切れたのか、彼の表情は少しだけ迷いのない信念ある目をしていた。

 

「フッ・・まぁあくまで俺の持論だ。あとは國神。お前自身に出来ることを探すだけだ。きっと見つかる筈さ・・・

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()ってのがな

 

 

 

「そうだな・・・うっし!サンキュー増瑠。次の試合も絶対勝つぞ!」

 

 

俺達は誓いを立てるよう拳を付け合った。

 

 

「おう!よし!最後はハックスクワットマシンで絞めるぞッ!」

「っしゃぁ!!やるぞオラぁ!!」

 

 

 

 

その後國神は増瑠との脚トレーニングに気合を入れ過ぎてしまい、後日満足に走れなかったそうだ。

 

 


 

さらに次の日・・・

 

「俺が・・・コーチに・・?」

 

「そう!もしよかったら俺たちを強化する専属トレーニングコーチになってなって欲しいんだ!」

「だって増瑠ってこのチーム内で一番強いだろ?しかも表上は高校NO1なんだし。だから強くなるためにみんなで相談したんだ」

「何が自分に足りないか・・・それを短期間で知るためには増瑠に聞いた方が早いんじゃないかって」

「お願いします!神様!仏様!増瑠様!」

 

 

俺がいないところでそんな話をしていたとは。

 

 

「本当にすまない。都合の良すぎる話だって十分分かっている!けれど・・・俺達もこの先青い監獄(ブル―ロック)を戦い抜くために強くなりたいんだ!」

 

 

と頭を下げて頼む久遠。

 

「おいおい・・頭上げろって久遠。そうだな・・・・それは別に構わない。弱点のカバーは早いに越したことはないしな。わかった。俺で良ければ引き受けよう」

「!本当かい!?」

 

これは俺にとって好都合だった。

俺の目指すこの青い監獄(ブル―ロック)で生き残るという目的を達成するためにも俺自身だけじゃ足りない。

特に強化された馬狼含むチームXや原作改変で強くなっているかもしれないチームWやチームVと戦うためにも彼らの強化は必須だ。

俺の持つ原作知識+トレーニング知識で彼らを出来る限り強化させておきたかったんだ。

そういった意味で今回久遠たちが頼み込んでくれたのはまさに好都合と言えるだろう。

 

「ただ俺自身のトレーニングもある。時間はあまり長くは取れないが良いか?」

「もちろんだ!!ありがとう増瑠君!!」

「頼む!!俺たちを鍛えてくれ!増っさん!!」

「よろしくです!増瑠コーチ!」

 

なんか色々と変な呼ばれ方しているが・・・まぁいっか♪

 

 

まずはチームZ各自で自身が伸ばしたい分野のトレーニングごとに分かれる。

主にフィジカル、スタミナ、キック力、スピード、そしてそこにバネやジャンプ力といった強化。

主に弱点強化または長所を伸ばすトレーニングをするつもりだ。

あくまで俺はトレーニング法とメニューの考案その他アドバイスを与えるだけ。

 

 

そこからは己との戦いでもある。

 

 

「久遠はやっぱりジャンプ力強化・・・あと瞬発力も強化したいな」

「瞬発力?」

「あぁ。高さはあるけれどその武器を活かすための瞬発力がまだ足りない。例えジャンプ力はあったとしても最高到達点まで達する瞬発力がなかったら結局競り負けてしまう・・・なら瞬発力とジャンプ力を両方同時に鍛えられるこのトレーニングをやってみろ。短期間でかなりの成果が得られるはずだ」

 

彼の天性のジャンプ力はまだ底が知れない。

ここから更に伸ばすことが出来れば元の高身長から今よりも更に強力な武器へと成り代わるだろう。

 

「雷市、潔、イガグリ、成早はスタミナをつけたいと・・・」

「あぁ。前の試合で眼の使い方はわかったんだけど・・・それを同時にやろうとすると体力をかなり持っていかれるんだ・・」

 

そうだったな。空間認識能力を行いながらのプレイは身体の消費と脳内の消費も同時並行に進む。

故に長時間自身の武器を活かしながらプレイするスタミナを望んでいるのだろう。

 

「俺も!!ずっと粘り強くプレイのできる体力が欲しい!!」

「俺も!身体が小さい分持久力で勝てるようになりたい!」

 

あとの三人は純粋な体力強化を望んでいる。

特にイガグリと成早は身体も小さく、フィジカルが重宝されるサッカーにおいてかなり不利かもな。

彼らにはプラスでフィジカル強化のトレーニングも進めよう。

雷市の持つスタミナは今でもかなり凶悪だ。が・・・

 

「・・悔しいがスタミナ面においてもテメェは俺より上だ。だけどテメェに負けたままじゃいられねぇッ!!」

 

どうやら本人は俺に勝つために自分の持つ長所を更に鍛え込んで欲しいのだそうだ。

正直原作での雷市は少しもったいない。せっかく持っている底なしのスタミナを活かすプレイスタイルが彼にはまだなかった。

故に彼は【セクシーフットボール】という周りを魅了する華麗なプレイスタイルを目指しているのだろう。なんとかしたい所だなぁ・・・

 

「なら普段俺がやっている全力シャトルラントレーニングだな。これなら心肺機能と同時に動き出しの加速力も高められる」

「おっしゃぁぁ!!やるぞテメェら!!」

「「おぉぉぉ!!」」

 

「あ・・・成早は少しだけ残ってくれ」

 

俺は成早だけ呼び止め残りの三人は俺の考案したメニュー通りにトレーニングを始めた。

そうして残る俺と成早。

 

「ハイ!増瑠コーチ!どうしたんでしょうか?」

 

 

「成早。お前にはもうひとつ別のトレーニングをしてもらいたい」

 

 

 

 

次は俺が最も専門とするトレーニング。

 

「我牙丸、伊右衛門、國神はフィジカル強化だな?」

 

このトレーニングに関しては生まれた瞬間からずっとやっている。

父の話を聞きながら俺のトレーニング知識、特にフィジカル分野においては専門の域を超えているだろう。

その選手の潜在能力を最大限まで引き出すためのトレーニングを俺は教える。

 

「あぁ。いざフィールドに立った時にもゴールを狙えるようにフィジカルを強くしておきたい」

「フィジカルはもちろんなんだがシュートのレンジをもっと長くしたいんだ」

「もちろん可能だ。キック力とフィジカル強化のトレーニングに関しては俺と同時並行でやろう」

「わかった。頼む」

「やってやるッ!」

 

この3人は身体も大きくフィジカルも並みの高校生よりかは強い。

しかしここは青い監獄(ブル―ロック)。生半可なパワーじゃこの先。特に時光や強化馬狼、または世界選抜の猛者達もいる。

特に國神と伊右衛門。この二人の筋肉のバランスが良い。他にも國神はロングレンジを持っているだけあって下半身の筋力がずば抜けている。伊右衛門はフィジカルこそは國神ほど高くはないが体幹部が秀ている。

俺考案のトレーニングで鍛え上げれば強力なフィジカルモンスターへと成り代わるだろう。

 

「肉弾戦をもっと強くしたい・・・あとバネの強化もできれば・・・」

「そうだな・・・」

 

俺はこれまで中高時代チームメイトのトレーニング育成を何度か監督から頼み込まれていた。

故に数十人のサッカー選手の肉体を俺は見て来た。

しかし我牙丸の肉体は俺がこれまで見て来たサッカー選手の中でもかなり異質だった。

柔軟性の高い、それでいて程よく筋力もある。彼の最大の武器であるバネの柔軟性はアマチュアの体操選手レベルにも匹敵していた。

故にどうアドバイスをすればいいか少し戸惑う。

 

「肉弾戦か・・・つまるところ全身バネの強化ってことか?なら俺がいつもやっているフィットネスヨガを取り入れてみよう。筋力と柔軟性を同時に鍛えられる。一緒にやってみるか?」

「おぉ・・・助かる・・・」

 

 

そしていよいよ最後の一人。

 

 

「足を見てくれ?」

「・・あぁ。実は過去に脚の靭帯を切ってしまって・・・・」

 

これは意外だったな・・・原作同様千切はてっきり今回も遠慮して何も話してくれないのかと・・・

 

「なるほど・・・それが心的障害・・・つまるところ()()()()になってしまい、スピードを活かすプレイができないってことか・・」

「!知っていたのか・・・?」

「ずっと脚を抑え込んでいたからな。たぶんそれがお前の武器なんだろ?にしてもよく話してくれたな」

 

「・・・・昨日潔と話したんだ」

「潔?」

「あぁ・・・自分の武器を知れたサッカーは面白いって。自分にとってサッカーってなんなんだろうって・・・俺も最初はずっと聞き入れようとはしなかった。だけどアイツの目を見ているうちにかつての自分を思い出しちまってな・・・・アイツのせいでまた熱が付いちまったよ」

 

なるほど・・・モニター室のあのシーンか・・・

元々自分の武器を理解できずにいた潔が自身の武器を知ってのサッカーに楽しさを見出したんだな。

潔の熱い情熱が完全に冷え切ろうとしていた千切の熱を再び呼び覚まさせたってわけか・・・

 

(グッチョブ潔♪)

 

なんとか試合外で千切の覚醒を促せたのはデカい。

次の試合で彼が存分に力を発揮する事が出来ればこちら側の戦力は飛躍的に上がる。

そうして俺は千切の脚を見てみた。

 

「そうだな・・・もう脚は治っているんだったな?これといった問題はない」

「あぁ・・・だけどまたいつか壊れるかもしれない・・・そんな想いがまだ頭の隅にちょっとだけあって・・・」

 

スポーツにおける心的障害は現代でも改善が難しいとされている。

それはどれだけ優秀な医師であっても心の問題とは本人の意思による回復を促さないと根本的な解決に至らないからだ。

原作での千切は〖再びサッカーをしたい〗という強い意志と肉体が連動したことで覚醒を果たした。

しかし今回の場合、千切は意志を少し回復しただけに過ぎない。

本命である肉体、つまり彼の武器である脚を使いこなすためのきかっけがまだ足りないのだ。

それに千切はいまだ脚を恐れている。

 

「・・・よし!ならよ。一度()()()()()()()()()()

 

「え・・・全力・・・でって・・・」

「スポーツにおける精神面の治療法の一つとして、一度神経の可塑性を逆に生かして直すって方法があるんだ。変化を加えるとその性質は変化したままになるんだ。例えば粘土だと、粘土の塊を指で押すと押した箇所に歪みができるだろ?そして指で押した粘土からその指を離したら、押された分だけ凹んだままになる。こうなると元の形には戻らないだろ。このような性質を「神経の可塑性」と言って・・・」

「えぇと・・・・つまり・・・?」

 

おっとマズイマズイ・・・危うく千切が俺のうんちくトークに吞まれるところだった・・・

 

「要するに今千切が不安を抱いている脚を逆に力いっぱい使ってやるんだ。思いっきり走ってみることで感覚を思い出し、かつてのスピードが蘇るはずだ」

 

「!・・・本当に・・・俺はまた走れるのか!?」

「・・・絶対とは言えない。それに時間だってかかるかもしれない。だけどもし千切自身がかつてのように早く走れるようになりたいと思うのなら・・今抱いているその()()()()・・・克服して見ろ」

「・・・わかった!サポート頼んでもいいか?」

「もちろんだ。それと上手く走れるようになったら俺に言ってくれ。なんせお前の脚・・・()()()()()()ぞ?」

「え?」

「しばらく本気で動かしていなかった筋肉を再度使うんだ。もし千切自身が今抱いているトラウマを克服してトレーニングすれば脚の筋肉の記憶(マッスルメモリー)の効果によってこれまで以上の速度を出せるはずだ」

「本当か!?わかった・・・ありがとう増瑠!」

 

そうして全員へのアドバイスを終えて各自でそのトレーニングを実装したのだった。

 

 

 

 

 

数時間後

 

 

「ハァ・・・・ハァ・・・・・」

「お前・・・ハァ・・・・こんなのいつも一人でやっているのかよ・・・ハァ」

「し・・・・しぬ・・・」

「なんとか調整されてはいるが・・・ハァ・・・それでも・・・キツイな・・・」

「トレーニングって・・・ハァ・・本当は・・・ハァ・・・過酷なものなんだな・・・ハァ」

「ゼェ・・やっぱテメェは・・・ハァ・・・筋肉オバケだ・・・クッソ・・・」

 

トレーニングメニューは一応彼らの限界を少し超えた所に調整してはある。次の試合に向けて支障を出さないためだ。

しかしいくら彼らの身体能力でも10数年以上継続している俺のトレーニングにいきなり付いて来られるわけがない。

数人はフィールドや地面に寝そべり、膝をついていた。

しかしこのトレーニングに慣れて来る頃には、より強力なレベルアップが見込めるはずだ。それまではなんとか頑張って貰いたい。

 

「お疲れみんな。今日はしっかりと休んでくれ。休息もトレーニングの一環だ」

「ゼェ・・・そうさせてもらいます・・・ゼェ・・・」

「次の試合まで疲労を残さないようにだけしないとな・・・」

「そうだな・・・飯食いに行こうぜ」

「く・・・食えねぇ・・・・」

「馬鹿野郎・・・食わなきゃ強くなれねぇんだぞッ・・!!」

 

食事と休息も大事だ。

今は無理にでも栄養を取ってもらいしっかり寝て貰おう。

 

 

 

 

 

 

「さてと・・・俺もトレーニングルーム行くか」

 

そうして全員のトレーニングが終わったところで俺も自身を鍛えるべくトレーニングルームへと足を運ぶ。

 

「ん?なんだ筋夫じゃねぇか」

 

「照英!久しぶりだな」

「ハッ・・そっちはずいぶんと快勝だったじゃねぇか」

「そっちこそ・・・試合結果見たぞ!凄いなお前ら!」

 

「当然だ。だがあの双子兄弟に失点を許しちまった・・・まだ足りねぇ・・・お前に勝つまで俺は誰にも負けられねぇんだ・・」

「フッ・・・去年俺らからハットトリック決めたくせによく言うよ・・・」

「あんなのは偶然だ。俺は俺の力だけでお前に勝つ」

 

彼の言動は謙虚であり力強く信念あるもの。故に彼が原作と違いチームWに快勝できたのだろう。

 

「上等だ。ところで今日は背中トレか?」

「あぁ。フィジカルのうち広背筋はボディバランスを担う役割を担うんだろ?ますは過重懸垂から始める。プル系種目は広背筋の中で最も当たりを強くする個所だったよな?」

「あぁ。よく覚えていたな」

「当然だ。お前と何度トレーニングの話をしたことか・・・」

「フッ。そうだったな・・・あ。実は最近調子が良いと感じた背中トレがあるんだ。もしよかったら・・」

「何!?それ・・今すぐ教えろ筋夫!」

「ちょ・・!?待て待て落ち着けって・・・!」

 

と新しいトレーニングの話を出すたびに飛びついてくる照英。元々強くなるための好奇心と意欲を彼は持っていたが、俺との出会いで筋肉に対する執着心が更に高まってしまった。

もう完全にただのトレーニーだよ・・・ま、それが照英の強みでもあるんだがな。

 

「・・わかったわかった・・・でそのトレーニング法は・・・・」

「・・・・ほう・・・そんなやり方があったとはな・・・さっそくやってみるか・・・」

 

そうしてその日は照英との合同トレーニングで一日を終えた。

 

 


 

 

数日後。

 

 

今日はいよいよ第二試合。

チームY戦からまだ日は浅い。

しかし俺の施したトレーニングによって彼らチームZは少しではあるがパワーアップできたはずだ。

 

 

「来るぞ」

 

 

次勝てば勝ち上がれる可能性がグンと高まる。それほど今回の試合は一次セレクションにおいて重要だ。

そんな俺達と対対する相手チーム・・・

 

 

「あれが・・・・チームW・・・」

 

 

チームWはゆっくりとグラウンドに姿を現した。

 

 




ということで今回は國神と筋トレをしながらヒーローについて語り合う筋夫でした。
筋夫の一言が今後國神の運命をどう左右するのか・・・・
そして筋夫から施されるトレーニングでチームZはどんな成長を遂げるのだろうか・・?
そして次の相手はチームW!!一体どんな戦いとなるのだろうか!?
感想やご意見または誤字報告等バンバン書いていってください!
お気に入り登録もお忘れずに・・・

※追記:アンケートを実装しました!!もしよければ積極的に投票していってください!!


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13.真撃

前回に引き続き感想やご意見またお気に入り登録してくださりありがとうございます!!
アンケートも積極的に参加してくれた方々ありがとうござます!!
アンケートの期限は4/10までとしますので投票はお早めにお願いします。

※2023/4/6:感想欄にてずっと気付かなかった臥牙丸→我牙丸へと修正致しました!
マジでありがとうございます!!


フィールドに現れたチームW

 

「なんというか・・・・肝が据わっているな・・」

「凄い気迫だ・・・」

 

覚悟の決まった燃え盛るような闘志。当然だ。

今回のチームWは原作とは異なり、馬狼率いるチームXに敗北している。もし仮に今回負けてしまえば次の二次セレクションへ勝ち上がる可能性が一気に下がってしまう。

故に彼らにとってこの一戦は次のステージへと上がるためのラストチャンスでもあるということだ。

 

(相手にはあの鰐間兄弟がいる。鰐間兄弟だけじゃない。他のメンバーだってこの一戦で勝つための策を講じて修練を重ねてきたはずだ・・)

 

原作よりも大幅に強くなっているのは必然的。一時も気は抜けない一戦となりうるだろう。

 

 

と考えてたまさにその時だった

 

 

「ふんッ!」

 

「!?」

 

突然兄である鰐間淳一が俺に駆け寄ってきた。

宣戦布告でもしに来たのか・・・?と俺は思っていたが・・・

 

「ふん」

 

 

スッ

 

 

「?」

 

 

なぜか握手を求めてくる彼。何が何だかよくわからない状況ではあるが、俺は一応握手を返す。

すると鰐間兄はなぜか俺の手を両手で必死に掴んで上下にブンブンと振り回す。

 

 

「感謝するぞっ!!」

 

 

 

「「「「「「!?」」」」」」」

 

 

キャァァァァァァァシャベッタァァァァァァァ

 

 

 

と突然興奮じみた声でお兄が喋り出したため、俺含むチームWのメンバー達も驚く。

 

 

「あぁぁ悪い悪いッ・・!実はよぉ・・・お兄はアンタの大ファンなんだ・・」

 

 

と弟である鰐間計助がそう言う。

俺の・・・・ファン?鰐間お兄が・・・?あまりにも突然のことで俺は戸惑う。

 

「増瑠筋夫!!アンタのその豪快なフットボールスタイルが俺は好きだ!この日本が弱点とするフィジカルでの力強いプレイは俺自身がもっとも憧れたもの!!一見身体能力でのゴリ押しと感じられるが、それは戦略的な知能に裏付けされた非常にインテリジェンスなもの!!中学時代で初めて見た時からアンタは俺の心を掴んだ!!あれはまさにNo1にふさわしい男の姿そのものだった!!」

 

と普段は無口とは考えられないほどハキハキとした声で具体的に叫びながら褒めてくる。

そういえば鰐間兄って意外と知的で分析家でもあったんだっけな・・・

まぁなんというか・・・そこまでまっすぐな目で言ってくれると照れるな・・・

 

「・・・ありがたいが今回俺は敵だ。情けはかけられないぞ?」

「当然だ!!お互い全力でやってこそ相手にとって不足無ッ!俺たちの全力を存分にぶつけさせて貰おうッ!!」

「あの・・・お兄・・・ちょっと落ち着いて・・・」

 

 

((((((なんだこれ・・・・))))))

 

 

 

他のメンバー達は完全に置いてけぼりにされた感じではあったが、ちょっとしたいざこざはすぐに終わりを迎え、試合が始まるのだった。

 

 

 

ピィィィィィ

 

 

そして試合開始の笛が鳴り響く。

 

 

 


 

 

 

試合開始の数時間前。

 

 

「今回の相手はチームW。前回の試合はチームXに大差で負けている。故に一回戦のチームY戦と違ってしっかりとした戦略を練って挑んでくるはずだ」

「ならこっちもちゃんとしたフォーメーションを決めておかないとね・・・今回もチームY戦と同じでいいんじゃないか?そっちの方が安定もするだろうし」

「そうだな。それに現状これが俺たちの持てる武器を一番に活かせるフォーメーションだ」

 

久遠の提案に潔含む数人のメンバーが納得の意を見せる。

確かにあのフォーメーションはそれぞれの武器を最大限に活かせられる。一時は俺もそれでいいかと考えていた・・・が

 

 

「いや。今回は別のポジションでやるべきだ」

 

 

「「「「!?」」」」

 

俺の発言にチームZのほとんどが驚きの表情を見せる。

 

「別のポジションって・・・」

「なんでーー?」

 

「前回のチームX戦で敗れたことで、相手は今回の試合に全力で挑んでくる。それはつまり・・・自分たちの強化はもちろん、相手チームの研究だって徹底的にやりこんできたはずだ」

 

もちろん絶対とは言い切れない。彼らがチームX戦後の反省を上手く活かさず単に自分達の強化だけに努めてくれればそれでいい。

ただ俺と言うイレギュラーが存在したことで生まれる原作改変にも備える必要がある。用意周到して損はないだろう。

 

「そういえば・・・モニタリングルームの映像って・・確か他のチームの映像も確認できるだったな・・・」

「映像による分析が可能って事か・・・」

「つまり・・・チームY戦の俺たちの動きや武器も、相手はすでに承知済みってことか?」

「そういうことだ。だから、今回は前回とは全く違ったポジション決めとフォーメーションの設定が必要なんだ」

 

相手に分析されているのならその分析から逸脱した戦略が必要だ。

でないと相手に自分たちの手の内を晒したまま戦ってしまうことになる。そうなれば即座にジ・エンド。

いくらトレーニングで強化されたチームZでも苦戦を強いることになるだろう。

 

「それで・・・肝心のポジションはどうする?」

 

と國神は尋ねる。

そうして俺は予め考えていたことを発表する。

 

「今回は前回と違って4-1-3-2のツートップにしようと思う。まずDFなんだが前回同様俺・・・そして伊右衛門」

「!俺・・?」

「今回もDFなんだーー。なんか増瑠って意外と欲が浅いというかーー」

「別に浅いわけじゃない。ただ、能力値の高い相手の攻撃陣に対応するならこの中でおそらく一番DF経験の多い俺が適任ってだけだ。伊右衛門は持ち前の高さとフィジカルを見越して置いたんだ」

「なるほどな・・・一理ある・・」

「そしてRSB(ライトサイドバック)はイガグリ、そしてLSB(レフトサイドバック)は蜂楽だ」

「サイドバックか・・・・」

「初めてやるかも・・・」

「二人は守備もしつつ、サイドから積極的にオーバーラップして攻撃の役割も担ってほしい」

 

蜂楽に関してはU20戦でLSB(レフトサイドバック)を任されていた。彼のオフェンス力は何も前線だけで活用する必要はない。

むしろ後方からの攻撃参加の方が相手にとって予測のしにくい展開を創り上げるのにうってつけだ。

イガグリもこの短期間でスタミナが向上している。この二人にはサイドバックでのDF兼ゴールを狙うスナイパーとしての役割を与えた。

 

「りょーかい♪任せてよ♪」

「おっしゃぁぁぁぁぁ点取るぞぉぉぉ南無三ッ!!」

「伊右衛門はすまない・・・もちろんチャンスがあれば攻撃に参加しては良いが極力DFに集中してくれないか?」

「フッ・・・キーパー以外なら大歓迎さ・・・それにアンタの考えなら俺は喜んで賛同するぞ」

「助かるよ。そして攻撃と守備のアンカー・同時にスイッチの役割を担うのは・・・」

 

「俺だろ?」

 

「!いいのか・・?」

「けっ!どうせ俺を指名するつもりだったんだろ?それにこんなデカい大仕事を俺以外の奴がこなせるわけねぇ。・・・勝つためだ・・・今更贅沢言ってられるかよ・・」

「雷市・・・」

 

とやけに素直でかつ自分にしかできないという意思を表明して申し立てる彼。

馬狼もそうだが、今回の雷市って凄くやわらかな感じで・・なんというか接しやすい。

 

「ありがとう・・任せたぞ。そして攻撃役(アタッカー)となるウイングはライトに千切。レフトは國神を置く」

「「!」」

「國神は前回の試合によるロングレンジ戦術がすでに研究されていて使えないだろう。利き足も兼ねて今度はそのフィジカルを活かしたサイドからの突破でゴールを狙ってくれ」

「わかった。どこだろうと打ち込んでやるまでだ」

「千切は・・・フッ。言うまでもないだろ?右は任せたぞ」

「あぁ・・任せろ!」

 

と闘志を燃やす國神と千切。

 

「そしてこれらにツートップの合わさった計4枚の攻撃役(アタッカー)をサポートするゲームメイカーとなりうる存在・・・潔。お前に任せたい」

 

「「「「!」」」」

「俺が・・・ゲームメイカー・・・?」

 

突然の指名に驚きの表情を見せる彼。

まさか自分がチームの心臓となるとは彼はもちろんここにいるメンバー誰もが思いもしなかっただろう。

 

「前回の試合でお前は眼の使い方を熟知したはずだ。この短期間で体力だって向上している。ならその眼と頭脳を使ってコイツらを得点に導いて欲しいんだ」

「!だけど・・・・本当にそんなこと俺にできるのか・・・」

 

困惑する彼。当然だ。本来その役割を担えるようになるのは完全に眼を使いこなすU20戦以降の話。

まだほんのわずかなきっかけしか与えられていない彼はいまだに能力による試行錯誤を重ねている最中。

そんな状況下で急にやれと言われる方がまず無理だろう。

 

「馬鹿かテメェは?できるできないかじゃねぇッ。やらなきゃ負けるんだよッ!」

そんな彼に雷市は近づいてそう言う。

 

「雷市・・・けど・・・」

「少なくとも俺はこの仕事・・・お前にしかできなことだと思っているぞ潔」

「お前が言ったじゃないか潔。自分の武器を理解したサッカーは楽しいって。なら今回ここで出来ないなんて言ってられるか?」

「だいじょーぶだよ♪潔なら出来るって俺信じてるから♪」

「失敗しても俺らが支えてあげるさ!自信持って行こうよ!」

「そーそー!」

 

國神に続き千切、そして蜂楽も彼の背中を押すようにそう告げた。

彼らだけでなくここにいるチームZ全員が潔のことを信頼している。そんな目をしていた。

 

「みんな・・・わかった!増瑠。このチームで勝つために俺は俺のやれることをやってみせる!」

 

 

うん。もう完全に主人公のシーンだよこれ・・・

まぁ潔にはなんというか・・・周りを引き付ける大きな力があるからな。

今回の一戦でまた更に成長を遂げてほしいところだな・・・

 

「それで・・・肝心のツートップは・・・」

 

残るは3人

 

「あぁ。今回のチームW相手に一番ゴールを狙ってもらうエースは・・・・久遠、そして成早。お前達だ」

 

「FWか・・・なんだか久しぶりな気がするよ・・」

「・・・なんだかちょっと緊張してきたな・・・」

「二人はただ単に自身の武器を活かして得点してもらうだけだ。もちろんこの二人だけじゃない。両サイドからも攻撃は仕掛ける。さっきも言ったようにチャンスがあれば俺達後方も攻撃に参加する」

 

久遠の高さと成早の裏への抜け出し。ここに俺が強化を施したことでFWとして大きく機能させることができるようになったはずだ。

 

「点取らなかったら殺すぞチビ?」

「ひ~もう完全に脅迫じゃん・・・」

「頼んだぞ久遠。お前の高さで敵陣を切り離せ」

「・・・あぁ。任せてよ。必ず点取ってみせるよ!」

 

前回はここで裏切りがあったが、今回は大丈夫そうだ。

彼の眼は純粋にゴールを取りに行かんとする熱い意志を感じ取れる。

 

「え・・?てことは・・・キーパーって・・・」

 

残るはただ一人

 

「あぁ。今回のチームZの守護神となりうる存在。GKは・・・我牙丸。お前だ」

「おー・・・俺かーー」

「理由はちゃんとある。高身長からの全身バネの特性と反射神経の高さを見て俺は判断したんだ。すまないが頼めるか?」

「そういうことかー・・・わかった。全部止めてやる」

 

我牙丸の場合少し残念であるが、これからの青い監獄(ブルーロック)そしてU20戦や新英雄対戦(ネオエゴイストリーグ)でも彼のGKとしての能力は大きく使われる。

今回を機に強化されたバネの使い方も兼ねてGKを経験させるのも悪くないはずだ。

そしてようやくチームW戦に向けてのポジションとフォーメーションが完成する。

 

 


 

FW:    成早   久遠

MF: 國神    潔     千切       

        

        雷市

DF:蜂楽          イガグリ

     増瑠  伊右衛門

 

GK:      我牙丸

 

 

フォーメーションは4-1-3-2の【パーフェクトサッカー】と呼ばれる一番よく使われるもの。

前回のDF固定型と違い、オフェンス時にかける人数の多さ、そしてセンターアタックやサイドアタックを有効に機能させるバランスもとれたフォーメーションだ。

ディフェンシブハーフである雷市とセンターバックの俺と伊右衛門を基準に守備をし、攻撃はオフェンシブハーフである潔の空間認識能力を活かしたサイドアタック・センターアタック。

多彩な攻撃方法と比較的安定、特に精度と威力の高い俺のロングフィードがあればそれはカウンターの取りやすい強力なディフェンスシステムともなりうる。

 


 

 

 

 

 

そうして俺たちは入念な対策で策を講じて試合に挑んだのだった。

万全な準備で望んだこの試合。

今回も必ず勝てる。

 

 

 

 

俺含む誰もがそう考えていた。

 

 

 

「いくぞお兄!!」

「あぁ!!蹴散らすぞッ!弟よッ!!」

 

 

 

チームWのキックオフからツートップの鰐間兄弟が一気に向かってくる。

 

「おらぁ!」

「させない!!」

 

即座に久遠と成早そして潔が対応する。

彼らにもチームWのデータは目を通させている。

特にキーマンとなる鰐間兄弟は念入りに研究済みだ。彼らの得意とするのは【以心伝心(アイコンタクト)】でのコンビネーション。それは生まれてこの方ずっと一緒だったまさに一心同体の連携プレイ。

原作だと無策のまま挑んだため容易に突破を許してしまった。しかし今回は違う。

以心伝心(アイコンタクト)】には弱点が存在する。

 

(見極めるんだ・・・お互いが()()()()を・・・)

 

以心伝心とは双方による意識の了解。本来意識の了解とは一度互いの視覚を通じて行われなければならない。

それはつまり文字通り()()()()()()()()()()()()()()()()()()という一瞬のタイムラグが存在することを意味する。

 

(まだだ・・・もっと引き付けて・・・)

 

要するにそれぞれマンマークで向かってくる二人の視覚動作を見てその一瞬を突けば、【以心伝心(アイコンタクト)】によるコンビネーションを封じることができる。

今回前線をツートップとしたのも前線・中盤・後方どこでも数によるプレスをかけやすくするためのも互いの視覚を合わせるタイミングさえわかれば怖くなどない。

完全な予測対策を練った俺にとって、まさに勝利への戦略と言えるもの・・・

 

 

 

「おいおい。()()()()()()()()()()()()()()()()()()だぁ?」

 

 

 

の、はずだった・・

 

 

「!?」

 

前線で備えていた久遠と成早そして潔はそのあまりの連携の速さに突破を許す。

 

「遅いッ!!」

「そんなもので俺たちが止めるとでも思ったかぁ!?」

 

 

予測はあくまで予測内でのシミュレーションに過ぎなかった・・・

 

 

「クッソ・・」

「早い!!誰か止めてくれ!」

「コイツら・・・()()()()ッ・・!?」

 

俺の予想の範疇を大きく超える連携(コンビネーション)

 

(まさかそんなこともできるのか・・・!?)

 

俺の中で考えうる最悪の事態に驚愕する。

あまりに想定外の動きで鰐間兄弟はたった二人で前線から中盤・・・そしていよいよ俺達DF陣営まで持ってきやがった。

 

「くっ・・・!」

「俺たちの【以心伝心(アイコンタクト)】にも弱点はある。それをNO1のアンタが知らないはずがねぇ!」

「だから俺たちは鍛錬を積んだ!!互いの呼吸や気配そして双子だからこそ備え持っている以心伝心力を更に強化したことで!」

「俺たちは()()()姿()()()()()()とも連携が可能となったんだ!」

 

なんと鰐間兄弟は互いの姿を見ずに【以心伝心(アイコンタクト)】でのコンビネーションを実現させていた。

完全予想外の事態。

見なくてもお互いの場所わかるって・・・・そんなの完全なテレパシストじゃないか・・!

 

「くっそ・・・まずい!」

 

故に俺と伊右衛門もあっという間に突破を許してしまう。

いくら身体能力があったとしても彼らほどのスピードと連携(コンビネーション)で攻め込まれたら対応はできない・・・

 

「ふんッ!」

 

そして残るはゴールただ一つのみ。鰐間淳一から放たれる利き足からのシュート。

我牙丸も超反応で対応するも・・・

 

(届か・・・ない・・・!)

 

 

彼はまだグローブをはめてまだ数時間しか経っていない初心者。故にボールまで手は届かず・・・

 

 

 

ピィィィィ

 

 

ボールはゴールを突き刺した。

 

 

 

チームZ 0-1 チームW

 

 

 

 

「そんな・・・俺たちが何もできずに・・・」

「あんなの・・・どうやって止めんだよ・・・」

 

 

完全無視覚による【以心伝心(アイコンタクト)】。それはつまり・・・まったく同じ分身二人を相手にしているって事だ。

しかもただの分身ではなく、言ってしまえば互いに意識疎通可能な分身ってわけだ。

これではマンマーク対策でも不意を突かれ、意味がなくなってしまう。

 

(まさかあの二人がここまで強くなっていたなんて・・・)

 

 

まるで二匹の龍がフィールドを次々と薙ぎ払っていくようにフィールドを戦慄する超速連携・・・

 

 

双龍一閃(デュアルドライブ)

 

 

 

 

「「世界一になるのは・・・俺達だッ!!」」

 

 

 

彼らの叫びがフィールド全体を包み込む。

 

増瑠筋夫達率いるチームZに想定外の牙が喰らいついていたのだった。

 

 

 

 




ということでまさかの失点・・・!?
鰐間兄弟の大幅な強化により筋夫は出し抜かれてしまう。
そんな彼ら相手に筋夫達はどんな戦いを繰り広げるのだろうか・・?
感想やご意見または誤字報告等お待ちしております!
お気に入り登録もお忘れずに。
あと技名ダサいのは大目に見てくれると助かります・・・


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14.予想外

前回からかなり期間が空いてしまい申し訳ございません。
ちょっと色々とありまして、なかなか手につけられなかったです。
引き続き「一体いつからサッカーに筋肉が必要ないとから錯覚していた?」をご愛読してくださると幸いです。
※新しいアンケート実装しました!
ご気軽に投票ください!


疾風怒濤の奇襲攻撃。

原作よりも遥かに厄介で早い鰐間兄弟の連携攻撃。

俺達はそのあまりの異様さに試合スタートからわずか40秒と言う早さで失点を許してしまった。

 

(侮れないな・・・原作知識を軸に考えたら駄目だ・・・!)

 

 

想定外の動きに対応が遅れてしまい、最悪負ける可能性だって十分有りうる。

俺はそう決心し、身を引き締める。

 

 

ピィィィ

 

 

試合再開の合図が鳴る。

久遠のキックオフからボールは中盤の潔へ渡る。

 

「久遠!裏サイドへ行ってくれ!國神は少しインサイドへ走ってくれ!」

「「おう!」」

 

彼は自身の武器である空間認識能力を上手く使いながら味方へ指示を出しながらボールを前線へと運び続ける。

 

(このまま一気に・・)

 

 

 

「潔世一!お前は一人じゃドリブルで持っていけないだろ!そのもやしみたいなフィジカルで何ができるってんだ!」

 

 

鰐間計助がプレスをかける。

 

 

「あぁ・・()()そうだったよ」

 

「なんだと・・・うぐっ!?」

 

 

鰐間計助の当りをものともせず潔は身体を上手く使いボールを寄せ付けそのまま突破に成功した。

 

(馬鹿な・・・コイツ・・この短期間でフィジカルを付けたってのかよ!?)

 

 


 

時間は少し遡り・・・

 

 

「身体の使い方?」

「あぁ。例えどんなに筋肉量が多くても身体の使い方次第でそれは弱点にもなり得る」

「なるほど・・・それで俺に教えたいことって・・・?」

 

「まずは【ハンドワーク】。腕と肩の力をうまく使えば筋量が少なくてもフィジカルの強い選手にもボールを取られにくくなる」

「ハンドワークか・・・確かに今まで無意識でやってきていたけど実は重要なことだったんだな」

 

短期間での筋力増強は反って筋肉と言う重りを付けさせてしまう。

故に現時点での潔の身体レベルでも取得可能な体の使い方を教えた。

 

「あぁ。そしてもう一つは・・・・・体重のかけ方

 

【シフトウェイト】ってやつだ」

「シフトウェイト・・・?ボクシングのあの?」

 

確かにボクシングでもシフトウェイトと言う物は存在する。

だが今回俺が教えるのは別物だ。

 

「うーんこれに関しては口で説明するよりも実際に見てもらった方が理解しやすい。おーいイガグリ!」

「はいはーい!!何でしょう師匠!」

 

俺考案のトレーニング最中のイガグリを呼んだ。

 

「今から俺に全力でぶつかってきてくれ。もしこのボールを取れたら今晩のステーキをご馳走するよ」

「何ぃ!?言ったなぁ!男に二言は無いぞ!」

「もちろんだ。さぁ来い」

「うぉぉぉぉぉぉ!南無三ッ!!」

 

とご褒美があると信じ、彼は言葉通り全身全霊の力で俺にぶつかってきた。

 

「ぶおぉぉぉッ!?」

 

しかし吹き飛ばされたのは突っ込んだイガグリの方だった。

 

「突っ込んだのはイガグリの方だったのに何でビクともしないんだ?」

「まぁ体重差もあるが、一番は体重をかけたことだ。インパクトの瞬間に体重を相手の向かってくる方へかけてやるんだ。当たる瞬間は・・・そうだな・・。

 

硬い鉄になった気持ちになればいい」

 

(いやもう・・・鉄とかのレベルじゃねえもはやダイヤモンドだよ・・・)

 

「潔はこの数日で【ハンドワーク】と【シフトウェイト】の2つを身に着けてもらう。練習相手は俺で十分だろ?」

(あれ?もしかして俺近々死ぬのでは・・?)

 

そうして数日間文字通り死にかけるほどの修練と指導を受けたことで、俺は筋肉量はそのままで自分よりも少し身体の大きな選手にも当たり負けをしなくなった。

 

 

「貰ったぁぁ!」

(体と体が接触するインパクトの瞬間・・・!)

 

「ふっ!」

「ぐはっ!?」

 

(体が鉄になった気持ちで相手へ「体重」をぶつける!!)

 

鋼鉄重突(アイアンチャージ)

 

 

この技術で俺は弱点であるフィジカルを少しだけ克服できるようになった。

 

 

 

 


 

 

「國神!!」

 

潔から左サイドの國神へボールが渡る。

 

「詰めていけ!!そいつはミドルもあるぞ!!」

「チッ・・・完全に研究済みか・・・」

 

やはりロングレンジのシュートを警戒されている。無理に押し込むのも悪手だ。

國神は冷静に状況を把握するように周りを見る。

 

ならば・・

 

 

 

「こっちだ~♪きんに君~♪」

 

 

 

そこへサイドバックを担っている蜂楽がオーバーラップで駆け上がる。

これには相手ディフェンスも予想外だったようで、國神から大きく外れるようにサイドアタックを仕掛ける。

 

「いっけ〜♪久遠ちゃん♪」

 

センタリングが上がる。

ボールはペナルティエリア内の久遠へと高いクロスが上がる。

 

「久遠渡!テメェの最高到達点は予め研究済みだ!俺の方が高いぜッ!」

 

 

久遠よりも高い身長を誇るチームWのディフェンダーは彼を完全にマンマークしていた。

そしてお互いほぼ同じタイミングで中を舞う。

 

「確かにそうかもね。だけど・・・俺のほうが()()()!!」

 

 

(なっ・・!?コイツ・・・!最高到達点までが早すぎる!!)

 

 

「おらぁぁッ!!」

 

 

そして久遠は彼の真上から強烈なヘディングシュートを放つ。

 

 

ボールはそのままゴールを大きく揺らした。

 

ピィィィ

 

「しゃぁぁぁぁぁ!!」

「うぉぉぉぉぉぉ久遠ナイッシュ!!」

「お前なんかまた高くなったか!?成長しすぎだろ!」

「・・・フッ」

 

久遠は笑みを浮かべた。

 

 


 

小さい頃俺はサッカーが好きだった。

好き故に全力で取り組み、いつしか俺の中でサッカーへの情熱はどんどん膨れ上がった。

だから高校でも頑張って行こうと思い、当時部活動があまりなかったことからチームメンバーを集めてサッカー部を作った。

 

「目指すは全国だ!!」

「「「「おおおおおおお!」」」」 

 

みんなも日々頑張って練習して俺達は順調に試合でも勝ち上がって行けるくらい成長できた。

 

 

このチームなら楽しく熱いサッカーができる。

 

 

俺はそう思っていた。

 

 

 

「わりぃ久遠。今日はもう帰るわ」

「!?え・・・なんで・・・一緒に全国目指そうって・・」

 

 

「いやいやマジで俺達が全国行けると思ってたのか?無理だっつーの」

 

「そもそも地区予選ベスト8になれただけでも快挙だぜ?」

「そ・・そんな・・・!あのときの言葉は嘘だったのか!?」

 

 

 

「・・・暑苦しんだよ・・・お前とサッカーやるの」

 

 

 

その言葉を聞いて俺は中で何かが崩れる音を聞いた。

自分が今までやって来たサッカーとは何だったのか?

 

チーム・・・?

 

 

チームって何だ?

 

 

俺の中で一つの疑問が浮かんだと同時に一つの結論にたどり着く。

 

 

(チームなんて必要ない。俺一人で勝てば良いだけの話)

 

 

そこから俺は周りを信じられなくなった。

信じたものもいつかは裏切られる形となる・・・結局世の全ては弱肉強食。それはサッカーだって同じだ。

どんな状況下でも俺は周りを信用せずに一人だけで勝利を捥ぎ取る。

 

そんな時だった。強化指定選手に選ばれたのは。

青い監獄(ブルーロック)

たった一人だけが生き残れるまさに弱肉強食の世界。

 

(最高じゃないか・・・!)

 

最初は全くの赤の他人同士でチームを組まされた。

例えチームを裏切ってでも勝つ。

そんな想いを胸に俺はチームZのユニフォームを来た。

 

「おらぁぁぁぁッ!!」

「負けっかよッ!!オイ!テメェら!!死んでも勝つぞ!!」

「「「おおおおおおおおお!!」」」

 

 

しかしここは違った。

ここにいるみんなも己が強くなるために自分と同じくらいの熱意でサッカーに情熱を抱いていた。 そりゃ負ければ終わりと言われたら誰しも本気になるだろう。

だがそれを抜きにして彼らはただひたすらサッカーと向き合っていた。

かつての自分のように。

 

「よっしゃぁぁぁ!!まずは初戦突破だ!」

「やったな久遠!」

「あ・・あぁ・・!」

 

俺たちは強かった。

いや。というより彼。増瑠筋夫君のおかげだろう。

流石は高校サッカー界の頂点に立つ男。存在感からまるで別格だ・・・

彼の的確な指示や戦略で俺達は一回戦で十分すぎるほどの成果を成した。 

 

「久遠にはジャンプ力と同時に瞬発力を身に着けられるこのトレーニングをお勧めするぜ」

(へぇ・・・こんなトレーニング法があったのか・・・)

 

彼から教わった「オーバーヘッド・スクワット」はかなり成果が表れた。

ジャンプ力は少しだけ上がったが、最高到達点に達するまでが格段に速くなった。

流石は筋肉を武器にするだけあってトレーニングに関する知識が凄いな・・・

 

(しかし彼の筋肉はすごいな・・・・もし本気で裏切っていたら彼に頭を握り潰されていたのではないか・・・?)

 

 

俺は今はとにかくサッカーが楽しくて仕方がない。

ここにいる選手・・・・いや・・・

 

 

【仲間】よりも更に強くなってやる!!

 

 

世界一のストライカーになるために!

 

 


 

互いに1-1のスコア。

試合が再開されると同時に鰐間兄弟の猛攻が続く。

 

「おらおらぁ!!どうしたぁ?」

「クソっ・・・やっぱり早い・・・」

 

お互いを見ずに行われるアイコンタクトでの超スピードの連携双龍一閃(デュアルドライブ)

ただでさえ対人戦の強い鰐間兄弟の突破力。仮にマンマークしてもスピードで振り切られてパスが通ってしまう。

 

「クっ・・・!!伊右衛門!同時に行くぞ!」

「わかった・・!」

 

タイミングを同時にすればボールカットできる・・・しかし

 

「残念だったなッ!()()だけじゃないぞ!!」

「おっしゃぁ!ナイスパス!鰐間兄弟!」

 

「何!?」

 

 

なんとここでチームWトップ下の選手が駆け上がってきていたのだ。完全に意表を突かれてしまった。

 

(マジかよ・・鰐間兄弟だけでも厄介だってのにここにきて他の選手との連携だと!?)

 

鰐間兄弟への同時プレスは他選手との連携もプラスされたことで予想のできない攻撃パターンを生み出す。

くっそ・・・妙にチームWはFW選手が多いと思ったら・・・!

またしても予想外の攻撃パターンに俺たちはなすすべもなく突破されてしまった。

ゴール前で鰐間計助がシュート体制へ入る。

 

「よっしゃぁ!!二点目いただきッ!!」

 

 

兄同様鋭いコースへとシュートが放たれる。

またしても得点され・・・

 

 

「うおぉぉぉぉぉぉッ!!」

 

しかしなんとキーパーの臥牙丸が大きく飛び跳ねてはじいた。

 

「何ィ!?」

「ナイスセーブ!!臥牙丸!」

 

「よっしゃ・・・止めたぞ・・!」

 

はじいたボールはラインを切る。

ゲームが一時中断され、相手のスローインからスタートされる。

 

(どうする・・・考えろ・・・)

 

鰐間兄弟の【双龍一閃(デュアルドライブ)】、それに+アルファで他のFW選手との連携。

止めるのは容易ではない。

お互いの位置が見なくてもわかるということは、ある意味お互いのフィールド領域のの空間認識も長けていると言える。

そう・・・まるで潔のような・・・・

 

 

 

!待てよ・・・!?

 

 

 

 

()!?

 

 

 

 

ボールはスローインされる。

 

「ふんぬぅぅぅぅぅッ!」

「!?金髪スタミナお化け!?」

 

そこへ雷市が強引に体を入れ替えボールを奪取する。

 

「上がれテメェらッ!!」

 

蹴られたボールは前線の潔へ。

潔は上手く教えたとおりのハンドワークでボールをキープし、右サイドの千切へと渡す。

 

 

「よぉ千切!ひっさしぶりだなぁぁ~」

「!」

 

長期間のトラウマによるプレー不可。

それは彼らの存在によってより鮮明に思い起こされるはずのものだった。

 

 

「またぶっ壊れるぞ?お前のご自慢の脚はなぁ!!」

 

 

そう言うと同時に鰐間計助は千切へ襲い掛かる。

 

 

「あぁ・・・そうかもな・・・けど・・・

 

 

 

ぶっ壊れたっていいさッ」

 

 

「!?」

 

 

「今だけは・・・・!!この滾りに従わせてくれよッ!!」

 

 

千切は自身の武器である超スピードで右サイドを一気に駆け上がる。

 

(馬鹿な・・ッ!?コイツ・・・走れたのかよ!?)

 

これにはチームWも完全に予想外の事態。

ディフェンスが駆けつけるも、千切はそのままボールを前へ蹴りだしそのボールを追いかけるように走りぬく。

 

(は・・?マジかよ・・・蹴ったボールに追いつくなんて・・・)

 

そして右サイドからペナルティエリア内まで侵入。

しかしそこへ千切えを止めようと複数のディフェンスが寄せ付ける。

シュートコースはほとんどないこの状況・・・

 

(ん・・・・こういう時は・・・・)

 

しかし千切は冷静に周囲を確認しある所へ目を向けた。

 

 

 

(出せ・・・・千切!)

 

 

ペナルティエリア外から中央のスペースへ司令塔潔が走りこんでいた。

 

 

「ったく・・・とことんエゴイストだな!」

「ナイスパス・・・」

 

潔世一はそのまま【直撃蹴弾(ダイレクトシュート)】を放とうと足を振り上げる。

 

「させぇぇぇん!!」

 

しかしそこへ鰐間淳壱が迫りよる。

 

「潔世一!!お前はチームZで最も警戒すべき選手!!だから今回もフィニッシュはお前だろうと思ったぞ!!」

 

 

 

 

彼の思考を上手く予測しての守備。

 

 

 

 

よもやFWの彼がここまで下りてきてディフェンスするとはつゆ知らず・・・

 

 

 

 

 

完全に予想外・・・・

 

 

 

「とでも思ったか?眉毛野郎?」

 

 

「!?」

 

 

 

しかしなんと潔はそのボールをスルー。

そしてその先には・・・

 

 

 

「最高だぜ。お前」

 

 

(ま・・まさか・・!俺がディフェンスへ来たことも見えていたというのか・・!?)

 

大きく左足を振りかざす國神の姿がそこにあった。

直後ダイレクトで放たれる豪弾。

 

ボールは一気にゴールへと一直線に突き刺さった。

 

ピィィィィィ

 

1-2

 

 

「っしゃぁぁぁぁぁ!!」

「おぉぉぉぉぉぉぉよくあそこから決めたな!!國神!!」

「あぁ!!ナイスパス!潔!」

「おう!ナイスシュートだったぜ!ヒーロー!」

 

彼らは互いにグータッチする。

 

 

(見つけたぜ。あの連携を止める術が・・・!)

 

 

ピッピッピィィィ

 

 

そうして前半終了の笛が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 




はいということでちょっとした潔君のチート回でありました。
しかし「眉毛野郎」はちょっとレスパ力低すぎたかな・・・
感想やご意見お待ちしております!
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15.ハント

たくさんの感想ありがとうございます。
アンケートもありがとうございます。
※今回から「あでぃしょなるたいむ」が始まるので少し本編が短くなっておりますがご了承ください。


前半戦を終えた俺達は控室にて、後半戦に向けて作戦を練る。

1点リードしているとはいえ相手は原作より強化されたチームW。

特に鰐間兄弟のお互いのノールックでの連携【デュアルドライブ】は前半戦でかなり苦しまされた。

 

「で・・どうする?向こうの攻撃に俺達はまだ対応できていない」

「あぁ・・・あの双子兄弟の攻撃・・・このまま攻略法を見つけられないと一気に逆転されてしまうぞ」

「それに奇襲攻撃だった千切のスピードと久遠のジャンプ力も後半戦になったら対策してくるはずだ・・・新しい攻撃法もみつけないと・・・」

 

とハーフタイム終了までに練らねばならない作戦が多くある現状。

チームZのメンバーは頑なに策を考えようと黙り込む。

 

 

「あの兄弟の対策法ならもうわかってるぜ」

 

 

「「「「!?」」」」

 

俺の一言にみんなは驚くようにこっちを見る。

 

「わかったのか・・・?あの攻撃を食い止める方法が・・?」

「あぁ・・・あの兄弟の連携はお互いの姿を見ない連携だよな?だがそれは必ずしも双子故の気配察知能力だけじゃない。あの二人は・・・互いの存在している周り・・・つまりゾーンポイントを理解できているんだ」

「ゾーンポイント?なぁに?それ」

 

不慣れない単語だったのか蜂楽含む全員が首を傾げていたので俺は説明した。

 

「おっとすまない・・・俺の中でゾーンポイントってのは一人の選手の周りを取り巻く空間の事を言うんだ。連携はお互いのプレイヤーの取り巻く空間「立ち位置」「敵の位置」「ポジショニング」「周囲の状況」を一度見てから行う言わばプレイの連続だ」

「プレイの連続・・・」

「難しいッ!!」

「う~ん・・・・まぁなんとなくは理解できるんだけどそれが対策法とどうつながってくるんだ?」

「プレイの連続の速さ・・・つまり連携の速さは今回話した()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()・・・」

「!待ってくれ・・じゃあ・・・あの連携って・・・」

 

「さすがは潔。気づいたか・・・そう・・・あの連携は鰐間兄弟のお互いの空間であるゾーンポイントを極限まで理解しあってこそ完成された連携・・・つまり鰐間兄弟は互いの位置を知りうることのできる()()()()()()()()()持ちだってことだ」

 

「「「「「!?」」」」」

 

「空間認識能力って・・・それじゃぁ・・・」

「潔と同じ・・・ってことか?」

「だがさっき増瑠は()()()って言ったよな?それはどういう意味だ?」

 

「空間認識能力と言っても潔ほど広範囲で認識できるわけじゃない。要はお互いのある程度囲んだ空間・・そうだな・・・前半戦を見てた感じだと半径3m~4mくらいの空間を認識してるようだ」

「なんだよぉ~ビビったぜ・・・それくらいなら・・・」

「だとしても互いの位置をほぼノールックで認識するってのはかなり厄介だ・・・元々の作戦で互いの視線を把握しての攻略法ができないこの状況・・・・」

「・・・・」

「・・・・」

 

不測の事態にメンバーは何も策はなく不安で溢れている。

 

 

「だからこそ攻略法は一つだけ存在する・・・潔。お前のその()だ」

 

「!?俺の眼・・・・?」

「そうか!潔君の空間認識能力で互いのそのゾーンポイントってのを把握すれば・・!」

「いやちょっと待てくれ・・・いくら潔の空間認識能力があっても一人じゃ止められないだろ?」

「そうだよ。それに俺とあの兄弟とじゃそもそもの能力値が違う・・・そんなんで一体どうやって止めるっていうんだ?」

 

 

その問いに俺はこう言った。

 

 

 

 

「簡単な話だ・・・・潔・・・俺達を()()

 

 

 

「・・・は?」

 

 

 

 

 

 

ピィィィィ

 

 

後半戦開始の笛が鳴り響く

キックオフは俺達チームZからのスタートだ。

 

「貰うぜぇぇぇぇ!!」

「ふん!!」

 

「うぉッ!?マジかよ!?」

 

チームWはいきなり前衛から激しいプレスを仕掛けてくる。

リードされているのはもちろんだが、彼らにボールが渡れば一撃必殺の超速連携が可能だ。

そのためチームWは前半戦と同じ4トップで仕掛けてくる。

 

 

 

「ヤバい・・・!千切!」

「任せ・・・・!?」

 

サイドへボールが渡り千切は持ち前のスピードで前進しようとするもディフェンスが複数人ある程度距離を取ってポジショニングしている。

これでは高スピードで突破したとしてもその反動でディフェンダーと衝突してしまう。

それにゴール前の久遠にも高身長のディフェンダーが二人付いている。

相手のプレッシャーにブランクと言う事があったのか、千切は焦って突破しようとしてしまう。

しかし相手は前半戦の千切の間合いをじっくり研究している。

 

 

「このタイミングならお前のその速度を活かしきれないだろッ!!」

「クッソ・・!しまった!」

 

 

そしてチームWの右サイドから中央の鰐間兄弟へ再びボールが渡る。

上手い連携だ。やはり個人のみならず全体でのコンタクトもチームWは優れている。

 

「俺たちの猛攻は誰にも止められないぜぇッ!!」

「ふんッ!」

 

怒涛の超速連携によってほぼセンターサークルから中央へ・・・・そして俺たちのディフェンスエリアまで鰐間兄弟は仕掛けに来ていた。

またしても前半戦のように安々と突破を許すのか・・・?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?なんだぁ?」

「!なぜチームの起点だった()()()()()()()()()()()をやっている・・!?」

 

 

 

想定外の事態に驚きを隠せない鰐間兄弟。

二人は俺含むディフェンダーを前に立ち止まる。

 

 

 

 

そう。すべてはこの鰐間兄弟の猛攻を食い止めるためだけのフォーメーション。

 

 

 

(任せたぞ・・・・・()()()()())

 

 

 

 

「ふぅぅぅぅぅぅぅ」

 

 

 

 

 

さぁ・・・

 

 

 

 

 

 

 

狩りの始まりだ

 

 

 

 

 


 

 

 

 

ブルーロックあでぃしょなるたいむ 

 

 

 

1話.「学生生活・・・?」

 

 

 

朝練

 

 

チームメイト「おーい増瑠!ちょっとこのゴール運ぶの手伝ってくれ!」

増瑠「わかった!」

 

 

ヒョイ

 

 

チームメイト「は?マジかよ・・・・一人で試合用のゴール持ち上げるって・・・・」

増瑠(このゴールのバー結構いいな・・・・懸垂するにはうってつけだな)

 

 

授業中

 

 

教師「では増瑠。この問題わかるか?」

増瑠「はい。答えは2です」

教師「正解だ。流石は学年トップ・・・次はこの問題を・・・・」

増瑠(この授業が終わったらサプリメントの補強とおにぎりをっと・・・・)

 

 

 

体育教師「次!増瑠!」

増瑠「はい!うぉぉぉぉぉぉッ!!」

 

ピョーン

 

 

体育「!?な・・・7m60cm・・・・!?」    ※日本記録7m70cm

生徒1「すっげぇぇ!!アイツ陸上部か?」

生徒2「いやアイツサッカー部らしいぜ」

他クラス「「「「え!?サッカー部!?」」」」

 

体育(増瑠筋夫・・・・全体筋肉量はもちろんバネも尋常じゃない・・・というかこれ日本記録に載るのでは?)

増瑠(うーん・・・昨日の脚トレであんまり飛べなかったな・・・・)

 

 

 

放課後

 

 

チームメイト1「はぁぁぁ!今日も練習疲れたなぁ!」

チームメイト2「マジでそれなー。大会も近いだろうし気合入ってるしな!あれ?増瑠今日はトレーニングしないのか?」

増瑠「あぁ。今日はオフだ。筋肉は休んでいるときの方がデカくなるしな」

チームメイト3「よっしゃぁ!なら今日はみんなでファミレスで飯食おうぜ!」

チームメイト1「いいなそれ!増瑠も行くか?」

増瑠「おっけ!俺も行く」(メニューはチキンステーキにサラダとライス大盛2だな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれ?

 

 

 

 

 

 

俺ってずっと筋肉の事しか考えて泣くね?

 

 

 

 

 

 

 

 




感想やご意見お待ちしております!
※あと今回でてきた鰐間兄弟の連携の秘訣は簡単に説明すると、お互いのいる存在感や気配を原作よりも更に感じ取ることでお互いの姿を見ずとも連携のことを言います。
要は原作強化されたアイコンタクトって感じでオーケーです!


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16.武器の使い方

かなり久しぶりです。
しばらくぶりの投稿ですがよろしくお願いします。


後半が始まって早五分。

チームWの得点源である鰐間兄弟はペナルティエリアから少し離れた位置にて目の前の異常事態に立ち止まる。

それは他でもない【潔世一】に対して・・・

 

「なぜ潔世一がDFなのかは知らんが!」

「俺たちの攻撃は誰にも止められない!」

 

一瞬考えたのち鰐間兄弟は自身の持つ武器を信頼し、俺と伊右衛門そして潔の3バックへ襲う。

センターは俺、そしてサポートを促すように伊右衛門を少し後ろへ配置しておりカバーリングに備える・・・・

 

「くっ・・・やっぱ早ぇな・・・」

 

しかしいくらポジショニングに集中したところで相手はほぼノールックでの高スピード高次元の連携【双龍一閃】

ベーシックなディフェンス方法じゃ止められるわけがない。

 

「!しまった・・・!タイミングが少し遅れて・・・!」

 

 

加えて伊右衛門はディフェンダーとしてまだ日が浅い。

安定したカバーリングの姿勢やタイミングをまだ熟知できていない。

 

 

「貰ったぁぁぁぁぁ!!」

「これで2点目!!」

 

 

あっという間に2人抜かれペナルティエリア内まで侵入。

兄鰐間淳壱が大きく足を振りかざし、シュート体制へ・・・

 

 

「・・・・」

 

 

 

彼らの猛攻を防ぐには俺達2人だけじゃピースが足りない。

 

 

 

 

だから

 

 

 

 

「ふぅぅぅぅぅぅッ!!」

 

 

 

 

備えておいたのさ

 

 

 

 

 

 

残りの1ピースを

 

 

 

「「!?」」

 

 

シュート直前に大きくスライディングでカットしたボールがサイドラインを切る。

その瞬間フィールド全体が静寂に包みこまれる。

 

 

 

「な・・・・なにぃ・・・!?」

「馬鹿な・・・!?俺達の【双龍一閃】・・・空間認知とタイミングに狂いはなかったはずだ・・・なのになぜだ・・・・なぜそこに・・・・・潔世一がいるんだ・・・!?」

 

 

よもや止められるとはつゆ知らず、鰐間兄弟は驚愕の表情を見せる。

その視線の先に・・・・

 

 

「もうお前らの好きにはさせねぇよ・・・眉グル兄弟」

 

 

ハンターは静かにそうつぶやく。

 

 

 


 

 

 

「俺たちを()()

 

「は・・・?殺せって・・・・一体どういうことだ?」

 

「まず俺達はあの超速連携馬鹿正直に真正面から迎え撃とうとしてただろ?真正面から正直に構えてカバーリング備えてたとしてもアイツらは止められない。なぜならあの兄弟にも疑似的空間認識能力の視野の広さがあるからだ」

「ただでさえ高い突破能力を持つのに視野の広さと来たら・・・」

「無理じゃん!マジでどうやって止めるんだよ!?」

「落ち着けイガグリ。さっきも言ったようにあくまで疑似的・・・単純な視野の広さと空間認識能力は潔の方が秀ている」

「だけど俺一人の身体能力じゃあの二人には追い付けないだろ?」

 

 

「だから()()を使えってわけだ」

「え・・?」

 

 

「俺と伊右衛門を使ってあの兄弟の空間認識範囲を縮める。潔からすれば俺達はあの二人へぶつける捨て駒のようなもの。あとは簡単だ。俺たち二人であの兄弟に意識を集中させる。そこで俺らはを殺される。極限まで俺たち二人に意識が集中した瞬間お前はその意識外へ外れるんだ」

「意識外へはずれるか・・・なんだかイメージが難しいな」

 

常人であれば意識の範囲外など理解できるはずがない。

俺だって無理に決まっている。

試合中・・・というか日常生活で常に前後方の360度を認知するなんて人間では不可能だ。

 

「大丈夫だ。前半戦でお前はあの兄弟にボランチで嫌というほど抜かれただろ?何度も対面したことで、すでにお前の中であの兄弟の意識範囲が理解できているはずだ」

「ぐっ・・・結構痛いとこつくよな・・・・」

 

しかし潔の空間認識の力をもってすればその不可能を可能に近づけられる。

前半戦でより多く彼らとマッチアップしてきた彼だからこそできる仕事だ。

対【双龍一閃】用ディフェンスフォーメンション。俺と伊右衛門そして少し後方センターで待ち構える潔。

 

「俺達を捨てゴマのようにぶつけて殺させ、あたかも自分だけが漁夫を得るようにあの兄弟の認識範囲外からボールを狩り取る。・・・さしずめ【ハンター潔】だな」

 

 

 

 


 

 

 

 

(すっげぇ・・・ほ・・・本当に止められた・・・!)

 

 

ボールを奪取できたことに一番驚いていたのは他でもない潔自身だった。

当然だ。

 

 

 

 

彼の空間認識能力は()()()()()()()()()()()()()()からだ。

 

 

 

 

「あんなのはまぐれだ!!どんどん攻めるぞお兄ッ!!」

「ふんッ!!」

 

 

 

そうしてしばらく鰐間兄弟の猛攻撃が続く。

ディフェンダーである俺と伊右衛門はあくまで餌。

鰐間兄弟という獰猛な獣を餌として引き付け・・・

 

 

「でぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

 

ハンターにその獣を刈り取ってもらう。

 

「クソがァ・・・!!なんで毎回コイツに止められるんだ!?」

「ぬぅ・・・・まさか潔世一をこのように使ってくるとは・・・・」

 

 

伊達にサッカー歴を進んできたわけじゃない。

相手チームはもちろん自身のチームメイトの武器を理解する。

時にはチームメイトですら気付いていない己の大きな武器の可能性を見出し、その武器を具現化させ使えるだけ使う。

銃や剣もただターゲットを倒すだけの役割だけでなく、迫りくる相手に対し向けることで威嚇し戦意を失わせることだってできる。

 

 

要するに武器の使い方は一つだけじゃない。

 

 

 

「はぁはぁ・・・くっそ・・・やべぇ・・・マジでヤベぇよお兄・・・」

「ぬぅ・・・・!」

 

 

鰐間兄弟の【双龍一閃】は確かに強力な武器であった。

改良に改良を加えて認知視野を広げられれば更なる攻撃力を生んだはずだ。

 

 

 

しかしいくら強いと言えど武器とはバリエーションだけでなく、第二の刃も備えておく必要がある。

一つ目の武器が朽ちれば、第二、第三、第四・・・と無限に近いほどの引き出しを用意する必要がある。

強力な武器でも敗れられた後に順応する更なる切り札。

 

 

 

「行け。お嬢」

 

 

 

ディフェンスラインから大きくサイドラインへ高速で走りぬく千切へロングフィードを蹴り上げる。

千切はそのまま自身の武器であるスピードで敵を置き去りにしてシュートを放つ。

 

「うらぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「ナイッシュ千切!!」

「ようやくお目覚めってか?寝坊助お嬢」

 

 

3点目

 

 

 

「次こそはッ!!」

 

 

再び兄弟の猛攻が続く。

前半戦から立て続けに攻撃をしてくるとは・・・彼らのスタミナも馬鹿にはならない。

しかし同じ手立てをいくら続けようと。

 

 

「残念だったな。そこはハンターの射程圏内だぜ?」

 

「シィィィィィィッ!もうやらせるかよ」

 

こうして潔に幾度も止められてはもはやチームWに成すすべはない。

前半戦攻めに転じて来たチームWはかなり消耗している。

しかしそれはこちらも同じだ。

 

「はぁ・・・はぁ・・・・」

「ふぅ・・・・」

 

 

幾度も【双龍一閃】を防いできた潔もかなり消耗が激しい。

俺のトレーニングでスタミナは向上したものの、度重なる脳のフル回転と集中力でかなり来ている。

 

 

「っぐ・・・・しかたねぇ・・・お前ら!全員で攻めるぞ!!」

「「「お・・おぉぉぉ!!」」」

 

 

幸いチームWもこちらを警戒し、唯一の攻撃手段である【双龍一閃】を使わずオーソドックスなチーム連携を試みる。

 

 

「!」

「やっべ・・!悪い・・!」

「マジかよ・・!?」

 

しかしチームWの大きな弱点。

それは全員での連携攻撃が出来ていない。

ここまでチームWはほとんど鰐間兄弟を中心に攻撃を築き上げてきた。

お互いの信頼と能力の熟知、タイミング、思考の共有・・・の要素が噛み合ってないなければ真の連携とは程遠い力にしか及ばない。

だからこそ全員で攻める攻撃の刃を研ぐ必要がある。

 

 

「増瑠!こっちだ!」

「行ってこい!ヒーロー!」

 

サイドの國神へ長いグラウンダーパスを出す。

國神は中央の雷市へボールを渡し、そのままゴールへ駆けあがる。

 

 

 

(そのまま行く・・・!)

 

 

と雷市はドリブルで敵陣へ突っ込む。

しかし前には2人のディフェンダーがついている。

なるほど・・・これまでの雷市の強引な突破対策をしてきたというわけか。

 

「へっ!俺様が強引に突っ込むとでも思ったか?」

「「!?」」

 

 

雷市はそのまま二人の頭を大きく超えるループパスをペナルティエリア内へ向けて出す。

 

 

「馬鹿が!そこには誰もいな・・」

 

 

そう。誰もいるはずがないスペース・・・

 

 

 

「二ヒヒ♪ナイスパス雷市様♪」

 

 

「はぁ!?」

「このチビどこから!?」

 

 

意表を突いた抜け出しでセンターバックを文字通り置き去りにした成早。

しっかりと狙いを定め、シュートを放つ。

 

 

「よっしゃぁぁぁ!ナイスパス雷市様ぁ~」

「けっ・・・!ようやく決めたなチビ・・・」

 

 

と成早のハイタッチに雷市は渋々返す。

前回の試合から俺の教えでシュート練習をコツコツして来たおかげで成早のシュート精度はかなり飛躍した。

成早自身の武器が更に磨きを増せば強力なFWとして役割を果たせる。

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・・」

「くっそ・・・・・・」

「もう無理だ・・・」

 

 

3点リードと後半終盤による精神と肉体的疲弊。

チームWの重圧はすでに限界に達していた。

 

 

 

「「諦めるんじゃねぇッ!!」」

 

 

 

大きく重なる叫び声の主。

鰐間兄弟だけは絶望的この状況で前を向いていた。

 

 

 

「ここで諦めたら俺達は確実に終わりだ!!」

「そうだぞ!たとえここで負けたって残りの二試合勝てばまだチャンスはある!」

 

確かに残りの二試合を勝てばまだチャンスはある。

俺達もしくはチームV、チームXのいずれか一敗でもすれば勝ち点で並ぶことはできる。

 

 

「そうだよな・・・悪い鰐間」

「まだ時間はある。ここらで一点くらいは取ってやろうぜ!」

「うおぉぉぉぉやってやるぞお前ら!」

 

「「「「「「おおおおおおおおおおッ!!」」」」」」」

 

あの二人の決意にチームWは火がつき士気が大きく高まる。

 

 

「油断ならねぇな」

「あぁ・・・だがこっちだって引き分けにはいかねぇ!」

 

 

互いの闘志がぶつかり合う時間が続く。

チームWは鰐間兄弟を中心にするだけでなく、チームメイト同士の連携を通じて攻撃力、守備力を強化する。

こちらも攻めては守り白熱した戦いがフィールド上で轟く。

 

 

「行けッ!」

「させねぇっぞ!」

「くっそ・・!」

 

 

 

潔もすでに限界を迎えている。俺は大丈夫だが伊右衛門も慣れないDFで結構来ている。

彼らだけじゃない。攻撃組の千切や國神、雷市、蜂楽も消耗が来ている。

 

 

「ふぅ・・・結構きついかも♪」

 

前線へオーバーラップしサイドを駆け上がる蜂楽にはディフェンスが待ち構える。

 

 

「けど俺はまだまだいけるよ~♪」

「うおっ・・!?」

「チッ・・!」

 

体力が消耗されようと、蜂楽のドリブルのキレは衰えていない。

華麗なエラシコからのルーレットターンで二人を躱しそのままセンタリングを放り込む。

 

「よし!!任せろ!!」

 

ゴール前で久遠がヘディング体制へ入る。

 

「うおぉぉぉぉぉッ!!」

「くっ・・・!!」

 

瞬発性のあるハイジャンプから久遠は豪快なヘディングシュートを叩きつける。

 

「させねぇッ!!」

「キーパーナイスセーブ!!」

 

上手くセービングではじく事でチームWは防ぐ。

ボールはそのまま鰐間兄弟へパスされる。

潔によるハンティングボール奪取ができない。

この状況はかなりマズイ。

 

「よっちはもう限界だろうよハンターさんよぉ!!」

「くっそ・・!!俺はまだ・・・ッ!!」

 

潔は力を振り絞り彼らの視野から外れようとする。

 

 

「丸見えだぜぇッ!!」

 

しかし体力が限界に近い状態で視野から外れるためのスピードが足りるはずがない。

 

「させねぇよ」

「うお!?このタイミングで付いてくるか普通!?だがまだだ!!」

 

俺が飛び出したギリギリのタイミングで鰐間計助は伊右衛門のマークをうまく振り切った鰐間淳壱」

 

 

 

やられた・・・

 

 

 

鰐間淳壱はシュートを放つ。

 

 

 

「よし!!2点目だ!!」

 

ボールは鋭いキックでゴールへ・・・

 

 

 

 

「うらぁぁぁぁぁぁ南無三ッ!!」

 

 

 

「「「「!?」」」」

 

 

とそこへなんとイガグリが飛び込んで顔面でシュートをブロックした。

 

 

「っしゃぁぁぁぁやってやったぜおらぁぁッ!!」

 

 

アイツ・・・俺らが抜かれることを読んで直前にゴール前まで飛び込みやがったな。

決死のイガグリのブロックでこぼれた球は俺へ転がる。

 

 

 

「来るぞ!ディフェンスしっかり見ておけ!」

 

 

ここまで数多くのロングボールを蹴ってきた。

チームWは各自ポジショニングしてロングボール対策に備える。

後半時間残りはあと1分足らず・・・

 

 

 

 

「!?」

「何ぃ!?」

「おま・・!?なにして・・・・」

 

 

周囲が驚くのも無理ない。

これまでずっとディフェンスに専念してきた彼が突如として自陣からゴールへ向かって来たのだから。

 

 

 

「させるかよ!」

「ここは通さん!」

 

 

鰐間兄弟のダブルチェックが付く。

当然だ。チームZにて一番警戒すべきは空間認識能力に長けた潔世一でもなければ圧倒的スピードを持つ千切豹馬でもない。

 

 

「は!?ダブルタッチ!?」

「なんてスピードだッ・・・!?」

 

 

彼はそのまま中央エリアまで到達する。

かなりの実力を持ち合わせる鰐間兄弟を一瞬で躱して見せたのだ。

チームWのディフェンスは一気に重い緊迫感に包み込まれる。

ただならぬ存在感と圧

 

 

 

そう

 

 

 

 

 

 

 

 

()()によって

 

 

 

 

「だがいくらなんでも一人じゃ無理ってもんがあるだろっ!!」

「調子に乗るなよ!!」

 

 

 

 

サッカーとは一人のみならず。

フィールド上での10対1が成り立つはずがない。

 

 

 

「どうかな?」

「え・・・」

「っぐっ!?」

 

しかし例外は存在する。

個人のみの力量で他を圧倒する超人的なサッカー技術・・・またはフィジカル。

 

(嘘だろ・・・・一人で3人のタックルに打ち勝つなんて・・・)

(意味わかんねぇ・・・・なんつー理不尽なフィジカルだ・・っ!!)

 

 

幼少より鍛えあげられたサッカー選手にも思えぬ巨大な肉体と身体能力。

100キロを超える体重に190cmを裕に越える高さ。

 

 

「ふっ」」

 

「マジかよ・・!?」

「あんなデカい図体して・・・ッ!?」

 

 

また二人躱す。

 

(早すぎるだろ・・・)

(下手すればあの千切より早いんじゃ・・・)

 

巨体を忘れさせるかの如し驚異的な脚力。

それに合わせたハイスピードのドリブルテクニック。

 

7人を一瞬で独断で突破する様子を見てチームWのディフェンスは一気に警戒心が高まる。

残り時間を考えて逆転は不可能。そんなことは彼らも承知していた。

だけどせめてこれだけは止めて見せる。

次の試合に向けてラストの一本は止めて見せる。

決意を胸に彼らは向かって来るドリブルへ備えて。

 

 

「何をしてるんだ?」

 

 

「「「「「!?」」」」」

 

まさに予想外の展開。

向かって来たソレは、まだペナルティエリア内まで十分な距離にて自身の左足を大きく振りかざす。

当然誰も予期などできず防ぐことなど不可能・・・誰もブロックに飛び込めず、ただボールが蹴り上げられる瞬間を目で追う事しかでき・・・

 

 

 

「「させっかよッ・・!!」」

 

「!」

 

 

と誰もが思った矢先、唯一予測できた二人鰐間兄弟だけが彼とゴールの間にシュートブロックへ飛び込む。

そう。チームW内で一番チームZの武器を研究し尽くしてきた彼らだからこそ成しえた事実。

 

 

(想定通り・・!)

(よし!このタイミングなら・・!!)

 

 

 

完全に脚を振り切っt・・・・

 

 

 

 

 

「いい読みだ・・・・だが惜しかったな」

 

 

 

「「!?」」

 

 

ッたかのように思えたそれは、振り切る寸前でワンタッチし、彼らを躱す。

 

 

(この状況下でシュートフェイク!?)

 

 

予想外の予想外。

度重なる不測の事態にチームWのディフェンスは唖然とする。

それが大きな隙を生むとも知らずに。

そのままなめらかなシュートフェイクタッチによる完全なるフリーゾーン。

 

「ふんッ!!」

 

放たれる砲弾にも劣らぬ左足のシュート。

 

 

 

 

ドォォォォォン

 

 

「な・・・・・」

「あ・・・ぁ・・・・・・」

 

 

 

 

 

これまでの美しい曲線とは大きくかけ離れる豪快な真っすぐ貫通する大砲が、ディフェンダーとディフェンダーの間を過ぎ去りゴールネットを深く突き刺す。

 

 

 

 

 

 

彼はこう呼ばれている。

 

 

 

 

 

理を壊す者(カタストロファー)

 

 

 

 

 

ピィィィィピッピッピィィィィィィ

 

 

ゴールと同時に試合終了の笛が鳴り響く。

 

 

 

「よっしゃぁぁぁぁぁぁ」

「ナイスシュート増瑠!!んだよあれ!お前もうチートだろ!!」

「凄いよ増瑠君!!」

 

 

 

ラストのワンゴールを称えてくれるチームメイト。

そして2回戦突破の勝利のエールをお互いに分かち合う。

1回戦と違い、ここにいる22人全員が最後まで力を振り絞って試合をしたんだ。

 

「ほらよ。立てるか潔」

「はは・・・悪い・・・・結構きついかも・・・」

「ふっ・・・お前はホント良くやってくれたよ。ほら肩貸すよ」

「助かるよ・・・」

 

今回の試合は潔が居なければ危うかった。

流石は原作の主人公だぜ・・・

 

 

 

 

 

「クッソ・・・・クッソ・・・・」

「ぐ・・・・・」

 

 

 

チームWの選手のほとんどが敗北による涙を流す。

当然だ。

もちろん前回のチームX戦に続き2連敗しているんだ。

それに・・・・

 

 

 

 

負けたら悔しいに決まっている。

 

 

 

 

 

「!」

 

 

 

ただ二人は地面へしがみ付かず、堂々とした姿で俺の前に立っている。

 

 

「増瑠筋夫・・・・良い戦いだった」

「あぁ・・・・お前達凄ぇ強かったぜ。スコアはともかくお前たちの最後までの気合・・・最高だった」

「「!!」」

「もし次会えた時は、また今日のように全力でやりあおうぜ鰐間兄弟」

「っぐ・・・うぅ・・・・あぁ!!」

「おい潔世一!!今度はテメェに勝ってやるからな!!」

「!・・・・あぁ!!次会った時も倒してやるよ!」

そうして俺と鰐間淳壱

そして潔と鰐間計助は互いに握手する。

 

 

 

「おーい二人とも!!早くいくぞ!!」

 

遠くから國神の声が聞こえる。

 

 

「わかった!今行くよ!」

 

 

 

こうして白熱したチームW戦は静かに幕を下ろしたのであった。

 

 


 

 

チームZ       5-1     チ壱ームW

 

 

久遠渡:1ゴール         鰐間淳壱:1ゴール

國神錬介:1ゴール

千切豹馬:1ゴール

成早朝日:1ゴール

増瑠筋夫:1ゴール

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モニター室にて

 

 

「凄い試合でしたね・・・私も思わず騒いでしまいました・・・」//

「うん・・・鼓膜が破れたかと思ったよ・・・」

 

両者燃え滾るチームZ対チームW戦。

絵心と同じくモニター室にて視聴していたアンリは興奮を抑えられずにいた。

 

「すみません・・・・しかし彼の最後のラストプレー・・・とんでもなかったですね・・・」

「まぁ彼なら当然だろうね。後半戦最終盤の時点でほとんどの選手が体力的に厳しい状況だった。反面ディフェンスに徹底し並外れたスタミナを兼ね備える彼ならあの終盤で一気にゴール前まで持って行くのもたやすいだろうね」

「なるほど・・・単にディフェンス力に自信があってDFを選んだわけじゃないんですね・・」

 

絵心の考えに納得する彼女。

 

「一見筋肉ばかりのフィジカル重視と思われがちだが、彼の一番の武器どんな状況下でも冷静に思考を巡らせ最適の条件で難題をクリアする頭脳。彼がなぜ世間でNo1と呼ばれているのか少しわかった気がするよ」

「えぇ。あ・・!あと最後のシュートですが、前回と違ってあんな豪快なシュートも打つんですね彼」

「・・・・」

 

アンリの言葉に絵心は一瞬黙り込む。

 

「絵心さん・・・・?」

「ねぇアンリちゃん。彼の身体データをもう一度見せてくれるかい?」

「え・・?増瑠君のデータをですか?以前お渡したコピーであれば・・・」

 

そうして一度アンリは退出し、絵心の要望通りデータが記された用紙を渡す。

 

「これです」

「・・・・」

 

絵心はある一か所だけをずっと見続ける。

 

 

「あの・・・・何かありましたか?」

 

 

と気になるアンリは後ろから絵心の顔を確認するように前へ出る。

 

 

「!」

 

 

そこには笑みを浮かべる絵心の姿があった。

今まで彼女が見たことのないような。

 

 

「ふふふ・・・・増瑠筋夫・・・・お前は本当に読めない男だな・・・」

「ど・・・どうしたんですか絵心さん!?」

 

 

アンリの問いかけに絵心はゆっくりを口を開く。

 

 

 

「驚きなよアンリちゃん・・・実は彼は()()()なんだ・・・」

 

 

 

 

 

「え・・・・?」

 

 

 

 

驚愕の空気だけがモニター室にて漂うのだった。

 

 

 


 

 

 

 

ブルーロックあでぃしょなるたいむ 

 

 

 

 

2話.「家族の時間」

 

 

 

母「筋夫ー!ご飯食べるー?」

筋夫「うん!食べる!ちなみに今日は何?」

父「今日は母さん特製チキンハンバーグだ!!あとアボガドサラダのオリーブオイル付けだ!」

筋夫「よっしゃぁ!!ちょうどジューシーなのが食いたかったんだ!」

 

モグモグ

 

 

 

母(ホントよく食べるわねこの子)

父(はっはっは!すでに父さんより大きくなって・・・りっぱに育ってくれて良かったぞ我が子よ!)

 

 

 

モグモグモグ

 

 

 

ムキムキッ

 

 

 

父母「・・・・・」

 

 

筋夫「ぷはぁ!うまかったぁぁ!ごちそうさま!!」

 

 

 

 

 

 

父母「・・・・・」

 

 

 

 

 

母「ね・・ねぇあなた・・・あの子なんか前よりさらに大きくなってない?」

父「う・・・うぅぅむ・・・確かに去年辺りで100キロ超えたとか言ってはいたが・・・我が子なら恐ろしい成長速度だ・・・」

母「ま・・・まぁ大きくなってくるのは何よりだしサッカーも順調そうで大丈夫よね!」

父「あぁ!筋夫が頑張っているんだ。俺達もあの子の応援をしてげるだけだ!」

母「そうね・・・あ!そうえばあなた来週から海外出張だったわね」

父「あぁ・・・3週間くらい向こうでの仕事だ。すまない・・・」

母「いいのよ。あの子のことは私に任せて頂戴」

父「ありがとう・・・ん?・・・増瑠?」

筋夫「悪い父さん母さん。ちょっと友達に呼ばれてジムに行ってくるよ」

 

父「ジムに友達か・・・いいな!」

母「。あまり遅くならないようにね。明日は昼から練習だったわね?」

筋夫「あぁ。だけど22時までには帰ってくるよ。じゃあ行ってきます!!」

 

 

母「ふふっ・・・あんなに楽しそうにジムへ行くなんて・・・一体誰に似たのかしら」

父「はっはっはっは!!さぁな?」

 

 

 

 




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17.執念

沢山のコメントありがとうございます!!


 

チームW戦の死闘を終えた俺達は、各自トレーニングに勤しむ。

勝てたは良い物の、やはり課題は山積み。

それを全員が実感し、本来行う予定だった勝利の祝杯さへ忘れて己を鍛えこむ。

 

 

ー練習グラウンドー

 

「うらぁぁぁぁぁぁッテメェらッ!!まだまだあんだぞ!?気合い入れろッ!!」

「りょーかいです・・!ハァハァ・・雷市たいちょー・・!」

「ハァハァ・・・あぁ!!」

「うぉぉぉぉぉ南無三!!」

「ハァ・・・クッソ・・・負けられっかよ・・!」

 

雷市を先頭に全力シャトルラン組は特に気合が入っている。

空間認識能力の併用力を高める潔と、しばくぶりに走ったことでブランクが生じてしまった千切は特に気合が入っているように見える。

確かに前回の試合の終盤はかなりの消耗戦となっていた。

これからの戦いを見越して持久力を高めて損はないだろう。

 

 

「ふぅ・・・まだまだいくっよ♪」

「来い」

 

同じく別のエリアにて俺と蜂楽は一対一のトレーニングを行っている。

蜂楽は自身のドリブル強化、そして俺は一対一のディフェンス力とオフェンス力の強化に励む。

前回の試合で俺自身にまだまだディフェンス力が足りないと考えた。

この先馬狼や凪率いるチームVはもちろん糸師凜など他の棟のドリブラーたちにも対応するためにディフェンス力は必須だ。

ただ蜂楽のドリブルは軽やかで変幻自在故に、順応してしまうと変な癖がつきそうだ。

でも彼以上のドリブラーは現段階でここにしかいない。できる範囲でやれることをやろう。

 

 

(ヤッバ・・・全然抜ける気がしない・・♪けど楽しい・・!)

 

 

相対する蜂楽自身も高揚感に包まれるのであった。

 

 

ートレーニングルームー

 

 

「ふっ・・!!ハァハァ・・・ふっ・・!!」

「うっし!伊右衛門!!次頼む!」

「あぁ・・!お?久遠また重量上がったよな・・?」

「あぁ・・・最近少しコツを掴んできたんだ。キツイけれどその分成長を実感するよ・・!」

 

フィジカル強化組は互いに高めあうように補助を入れながら鍛え上げる。

伊右衛門と國神は己の武器であるフィジカルの強化、そして久遠は自身の得意分野である空中戦の強化に励んでいる。

しっかりと鍛えこんでいるせいか、三人とも心なしか少し体が大きくなっている気がする。

 

 

ー練習グラウンドー

 

 

「うらぁぁぁぁ!!」

「ふっ!」

 

更に時間があれば國神とグラウンドでシュート力の強化をする。

國神のキック力を最大限に高めるべく俺も自身のキック力強化を兼ねて共にゴールへボールを蹴り上げる。

 

「ここだぁぁぁッ・・!」

「げっ・・!?マジかよ!?それ届くか!?」

「うっし・・・もう一本・・・!」

 

なぜか自分からキーパーの練習もさせてくれと頼み込んできた臥我丸。

どうやら前回のチームW戦で少しだけキーパーの楽しさを知ったようだ。

「次の試合もキーパーをやらせてくれ」と本人から頼まれたこともあり俺達のシュート練習と併用して行っている。

以外にもこの練習は彼にとってうってつけだ。

いくらフィットネスヨガでバネを強化したところで実践してみないと効力が薄れる。

 

「ふっ・・!ふぅ・・・・まだまだ俺は飛べっぞ・・!」

 

故にこうして飛んできたボールに反応して飛び跳ね続けることでバネの強化に結び付くというわけだ。

キーパー練習もできて自身の武器も強化できる。これ以上最適な方法はないだろう。

 

「なら・・・これはどうだ?」

「!ちょ・・・それは届か・・・・・」

 

俺が蹴り上げたボールはそのままゴールネットへ突き刺さる。

もちろん俺も日々自身のシュート精度を高めるべくトレーニングに精を出している。

 

(増瑠・・・お前やっぱバケモンだぜ・・・)

 

 


 

 

「「「「「いただきます!!」」」」

 

 

激しい練習は大事だがそれ以上に休息と栄養補給は大切だ。

心肺機能や筋線維を酷使すればそれに見合った養分が必要なのは現代のトレーニング研究において実証されている。

そしてこの青い監獄にて、おかずはランキングごとに指定されている。

試合や個人の能力アップによってランキングは日々更新され続ける・・・故に・・

 

「旨い・・・これが肉の味か・・・」

「よっしゃぁぁぁやっとたくあんから解放されたぜぇぇ!!」

「うぅ・・・今までのサラダ生活からやっとおさらばできた・・・」

 

特に下位にいた潔とイガグリ、成早は新しいご飯のおともに喜びをかみしめる。

俺達チームZが全ての試合に勝利しているのはもちろん、上記の三人は日々劇的な身体的成長を遂げている。

 

「おらよチビ。食えよテメェは小っせぇから食いまくれってんだ」

「あぁぁ・・・雷市様~一生ついていきます!」

 

以前の試合で感じていたが成早と雷市は関係がかなり良好のようだ。

試合中成早のミスを何度も雷市がカバーしてたり、成早自身全力シャトルラントレーニングに頑張って雷市についていこうとしてる。

彼にとっての目標でもあるのだろうと俺はひそかに考える。

 

「そういえば次はどこのチームとやるんだ?」

 

と話の最中にイガグリがご飯の茶碗を持ちながら問いかける。

そう次の試合相手・・・

 

 

 

()()()V()だ」

 

 

 

最初のチームX戦をの覗いて原作順にチームが回っている。

しかも最後は戦友である馬狼率いるチームXとなっている。

一体神様は何を思ってこのような順番にしたのやら・・・・

 

「飯食い終わったらチームの分析に入ろうぜ」

「そうだな・・・またどんな強敵かもわからない」

「だな。それにこの仕合戦績を見ればわかるがチームVの連中もここまで全勝だ。しっかり対策しておこう」

 

俺は更新されたチームごとの勝ち点ランキング盤に目を向ける。

 

 


 

 

1.チームZ 勝点6 +14 (Z 10-0 Y) (Z 5-1 W)

2.チームX 勝点6 +10 (X 7-1 W) (X 6-2 Y)

3.チームV 勝点6 +7 (V 4-1 Y) (V 7-3 W)

4.チームW 勝点0 -13 (W 1-7 X) (W 1-5 Z) (W 3-6 V)

5.チームY 勝点0 -17 (Y 0-10 Z) (Y 1-4 V) (Y 2-6 X)

 

残り試合数もすでに半分に差し掛かっている。

結果を見てもらえばわかると思うが、色々と面白くなってきた。

原作通りチームYとチームWの勝ち抜きはなくなった。チーム内で一番点を多くとった者だけが2次セレクションへ勝ち上がれる。

原作では堂々の1位だったチームVが得失点差でランキング3位となっている。

やはり強化された馬狼が率いているからか・・・チームXは原作よりも格段に強力だ。

俺達チームZは言うまでもないだろう。なんせ原作知識を持っている俺が半分率いて率先しているからな。

 


 

(となるとこれチームVマズくないか・・・?凪、怜王、斬鉄達大丈夫か・・・)

 

おっと・・・俺はいつから他のチームの心配なんかできるようになったことやら・・・・

まぁあまり深く考えても仕方がない。残りの2チームはかつてない強敵となりうるだろう・・・

だけど俺達は負けない・・・いや負けられないんだ。

散っていったアイツらの為にも・・・!

 

 

と考えていた時だった。

 

「あ・・・アンタたちがチームZ?」

 

と同じ食卓に座っている俺達へ長身の男が駆け寄る。

 

「ねぇ玲王・・・この人たちに負けたら俺達終わりなの?」

「・・・あぁ・・・勝ち点は同じでも得失点差はかなり差が開いている・・・勝たなきゃ終わりだ」

 

静かに闘志を宿しながら俺達へ目を向ける。

他でもない・・・チームVのダブルエース凪誠士郎と御影玲王によって

 

「!アンタらもしかしてチームVの選手?」

「んだぁ・・テメェら?ハッ!まさか俺達に負けてくれとでも言うのかッ?」

 

と雷市が挑発じみて返す。

 

「は?馬鹿なこと言ってんじゃねぇよ・・!俺達はテメェらに死んでも勝つ!」

 

確かに現状は俺達チームZが優位に立っている。

向こうは残り二試合で1敗でもすれば次のセレクションへの切符を失う。

原作ではかなり余裕の意気でステーキ食べながら潔達とバチバチしてた。

しかし今回彼らの勝利に対する執念は原作のそれを大きく上回る。

故にめんどくさがりで有名な凪も今回ばかりは闘志を宿しているように見える。

 

 

 

まぁもちろん・・・

 

 

「俺達もそう易々と負けるつもりはねぇぜ?」

 

 

俺は静かに立ち上がりそう返す。

 

「うおっ・・・・!?」

「デっか・・・俺も一応190はあるのに・・・」

 

驚くのも無理ない。

凪と玲王は共に185cm以上。日本人の平均身長よりも遥かに高く決して線が細いわけではない。

しかし二人の目の前に立つ男は195cm全身が服の上からでもわかるほどの高純度の筋肉組織。

御影玲王はもちろん普段はあまり驚きもしない凪もこればかりには目を大きく見開く。

 

「なるほど・・・アンタが噂のNo1ってわけか・・・おもしれぇ・・」

「えこの人が・・?じゃあ倒せば俺達が実質高校最強じゃん・・・」

 

共にサッカー歴半年で負けをつゆ知らぬ天才故か・・・

まるでゲームのラスボスを倒した時に得られる達成感を想像するかのように凪は目を光らせる。

随分と舐められたものだな。

 

「残念だがコイツだけじゃねぇよ」

「俺達のことも忘れてもらっちゃ困るぜ?」

 

と俺の隣に並び立つチームZの仲間達。

 

「勝つのは・・・「「「「俺達だ」」」」」

 

全員が彼ら同様闘志のまなざしを向ける。

 

「へぇ・・・どうやらここまでアンタだけの力で勝ってきたわけじゃなさそうだな・・・ほら凪行くぞ。馬鹿斬鉄がまた迷子になったりでもしたら大変だ」

「あーそれは困るね・・・あ!ねぇ・・君の名前を教えてよ」

 

と興味を持ったのか去り際に凪は俺へ名を問う。

 

 

「増瑠筋夫・・・『筋肉ですべてを解決する』のが俺のモットーだ!!」

 

 

「え・・・き・・・筋肉・・・?」

 

 

と困惑しながらも凪はそのまま玲王の後ろへ着いていくのだった。

その後食事を済ませ、シャワーでさせを流した俺達は、チームVの研究をすべくモニタールームへ作戦を練るべく向かうのであった。

 

 


 

チームVの部屋へ向かうべく玲王と凪は長い廊下を歩き続ける。

 

「ねぇ玲王・・・」

「あぁ・・・わかっている・・・ここが俺達の正念場だ・!!」

「うん・・・俺でもわかる・・・あの増瑠って奴・・・俺より強いよ・・・」

 

天才と言われる凪誠士郎の目からも、増瑠筋夫と言う男の強者としての存在感をハッキリ感じ取った。

彼へ興味を抱き名を聞いたのもそれが理由の一つとなっている。

 

「そりゃ高校No1プレイヤーだ・・・が正直俺も驚いたぜ・・まさかあそこまで迫力あったとは・・・」

「凄い筋肉だったね・・・よくゲームに出てくる()()みたいだったよ」

「そうだな・・・・だったらよぉ」

 

玲王は静かに口角を上げてこう告げる。

 

「怪獣は俺達で退()()しなくちゃなぁッ・・・!」

 

 

「玲王・・・・そうだね。だけど何か勝算とかあるの?正直今のままじゃ勝てるイメージわかないんだけど・・・」

「なーに言ってんだ凪」ガシッ

「!」

 

玲王は自身を胸に凪の逆肩へ腕を回す。

 

「最初お前と会った時から俺は決めたんだ。凪。お前は俺の宝だ『欲しいモノは全部自分で手に入れる』。なら当然勝つに決まってんだろ!」

 

己の決心・・・そして次なる強敵へ対する勝利への執念を目に玲王は凪へ告げる。

 

「・・・・その様子だと何かあるんだよね?いいよ。俺はずっと玲王についていくからね」

「あぁ・・・だがこれにはアイツらの協力もいる。次の試合までまだ時間はあるし、俺達も練習して備えなきゃな!」

「う~ん・・・練習はキツイからいやだけど・・・負けるのはもっと嫌だしね」

「よし!そうと決めればさっそく今から練習行くぞ凪!」

 

と面倒に感じながらも凪はそのままグラウンドへ向かうのであった。

 

 


 

 

 

 

 

ブルーロックあでぃしょなるたいむ 

 

 

 

 

3話.「忘れ事・・?」

 

 

 

ーチームV練習グラウンドー

 

 

凪「そういえば玲王何か忘れてない・・・?」

玲王「?別に何もないだろ・・・?ほら次の連携行くぞ!」

凪(なんだったっけ・・・だけど考えるのもめんどくさいしいいか・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこは人知れぬ長い廊下。

 

 

スタスタ

 

??「!」

 

 

男はようやく見つけた案内図を見てこう呟く。

 

 

「ふむ・・・・つまりこのルートは俺にとってミステイクだったというわけか・・・」

 

 

彼らと同じくエースの役割を担う剣城斬鉄は、広大な青い監獄内のマップをいまだ覚えられず今日も迷い続けるのであった

 

 

 




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