姫の護衛は地底人《ケガレビト》 真・女神転生オタクくんサマナー外伝 (気力♪)
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地底の少年、星空を見上げるの章
地底人(ケガレビト) の少年ジエン


 

 

「なん……で! 異界が乗っ取られてんのよ!」

 

 遠方にて、そうぼやきながら戦闘をしている少女がいた。

 

 歳の頃は20ほど。装備はとても上等なモノであり、感じるMAGからしても相当な強者であるだろう。

 

 だが、相手が悪い

 

龍神ケツアルカトルLV 67

 

 彼女が戦っている相手は竜神ケツァルコアトル。火炎と衝撃魔法を得手としている大悪魔だ。

 レベルは、デビルアナライズによると67。

 

 弱点は未だ不明、少なくとも物理と銃撃ではない。

 

現在の己のステータスを見る。レベルは59。かなりの実力者になれたモノだと自画自賛したいところだが、敵のレベルより普通に低い。

 

だが、眼前で戦っている少女のレベルは65と敵悪魔と互角だった。助勢できれば戦いは優位に進められるだろう。

 

「見捨てる理由もないな。行くぞペルセポネー」

「了解です、召喚者」

 

 ケツァルコアトルが『スマイルチャージ』、魂の励起を行ったタイミングで横から奇襲を仕掛ける。

 

 まずは『マガオン』魂の励起(ニヤリ)を抑制する魔法だ。これで隠れていた弱点*1に攻撃が当たるようになる。

 

 そこにペルセポネーの『ムドオン』が直撃した。手傷を与える程度の狙いだったが弱点にヒット。奴は少し体勢を崩した*2

 

 そして浮いた手番を使って『フォッグブレス』を放つ。吐き出した霧による魔力と目眩しで攻撃力を下げ、目を弱らせる*3

 

「手を貸す。構わないか?」

 

 と、ここまで仕掛けた上での交渉開始。あの悪魔の敵である事は示せた。互いに知らぬ相手同士ではあるけれど、使える駒である事は示せただろう。

 

「……ココ、技研の管理異界なんだけどどっから入ってきたのよアンタ」

「よその異界から流れ着いた。目的はここからの脱出だ」

「おーけー今だけは信じてあげる」

 

 そう話がついた所で少女が『ハッスルドリンコ*4』を飲む。体力を回復して敵の手番に備えるようだ。

 

「……おのれ、あなたですか虫ケラが! 我が異界に土足で踏み込んだ上に狩りの邪魔までするとは! 死にたいらしいですね!」

「そちらが己をここから出してくれるのならば討伐する気はなかった。交渉に応じなかった過去の自分を呪ってくれ」

 

 そんな雑な挑発でこちらに注目を向けるケツァルコアトル。すかさずアイコンタクト。

 

 少女は正面で敵と直接戦闘するようなタイプでは無いように思えた。目線を引くのは己がやる方が得策だろう。そういう意図であったし、それに素直に乗ってくれた。仕事ができる相手とは協働が楽でいい。

 

「焼け落ちて死になさい。アギダイン!」

「……意外と雑なのだな、お前は」

 

 怒声と共に放たれるアギダイン。火炎系上位魔法であるそれは直撃すれば大ダメージを受けるだろうが、先のフォッグブレスによって目が弱っていたそれは直撃コースから僅かに逸れていた。

 

 そんな魔法ならば、回避するのは容易だ。

 

「そこ」

 

 そして、テンポがズレた*5タイミングに仕掛けられる『闇討ち』*6敵の手番終了時に仕掛けるタイプの戦法だろう。

 

 意識の隙間から差し込まれる刃は、耐性という障壁(ガード)の隙間を抜いていく。

 

「ガハッ⁉︎」

「浅かったか……」

 

 そうしてダメージが入った事で敵の体勢が崩れる。手番が浮いている今なら多少の『試し』は通じるだろう。

 

『バインドボイス*7

 

 叫びと共に身を縛る力がケツァルコアトルに襲いかかる。そして、それはあっさりと()()()()

 

「……え、こいつ緊縛通るの?」

「試してみるモノだな」

 

 どうにも強者の気風*8を持っていない成り上がりの悪魔だったようだ。体力などは高いが肉体の守護は緩かった。

 

 それ以降、ケツァルコアトルは緊縛や眠りなどのバッドステータスを食らい続け、闇討ちの致命の一撃(即死効果)によって息絶えたのだった。

 


 

 異界の主が息絶えた事で、異界の崩壊が始まった。戦闘中は先延ばしにしていた交渉をまとめる時だろう。できればであるが、人間との殺し合いはしたくない。

 

「……で、あなたは何者なんですか?」

「俺はジエン。ハンターだ」

「ハンター? まぁ良いです。流れ着いたって話ですけど、どこから?」

「中庸の森からだ。襲撃があって異界ごと吹き飛んだが、運良く生きて流れ着いた」

「中庸の森……どこかのアリのモノですかね?」

 

 とよく分からない言葉を発する少女。『アリ』というのは昔にいた生き物の名前だったか? 幼虫ミルメコレオの下半身がそんな生物のモノだったと記憶している。

 歳の頃は己とさほど変わらない彼女は己と同じ『ケガレビト*9』だと思ったのだが……

 

「それで、撃破してしまったが代わりの主をすげ替えるアテはあるのか?」

「無いわね。まぁこの異界ガタガタになってたしぶっ壊すのが後腐れなさそうかしら」

「……ならば、同行させて貰って構わないか? 元いたシェルターに戻るための道がわからないんだ」

「……え、方向音痴?」

「否定はしない」

 

 その会話からこの辺りの土地がまだ残っている事を理解できた。それについて隠していない事も。ならば久しぶりに東京の土を踏めるのだな、と感慨に耽った所で異界が崩壊しきって

 

 

 上に広がる、青い色の何かを見た

 

 

 

 

「……なんだ、アレは⁉︎」

 

 それからは、狼狽しきりで落ち着くまでにはかなりの時間がかかった。

 

 話を聞く限りでは、上方に広がるモノは『空』であるらしい。

 

 あまりの美しさと広がり続ける広大さに驚き散らかして、彼女には酷いものを見せたモノだ。自戒せねば。

 

「……アンタ、一体全体なんだって空とかを見てビビったのよ。地下世界出身だとか? レイヴン*10なの?」

「地下……確かにそうだな。東京の上には天人の楽園があると聞いたし、天井についてはいつもいつも見ていた」

「……え、異世界人?」

「もしかすると、そうなのかもしれない」

 

 とんでもない所に来てしまったので、話を聞いてみる。

 

 この世界では25年前にできた天蓋はなく、地上は悪魔に(なぜか)制圧されておらず、人類は(不思議なことに)社会を維持できているらしい。

 

「すまないが、頭が追いつかない」

「こっちもね。空を見た事がないだけじゃなくて、色々話が噛み合ってないのがよくわかるわ」

「だが、根気強く付き合ってくれた貴女には感謝を。なんでも言ってくれ、己に可能な事ならば力になる事を約束する」

「……堅っ苦しいわね本当。それなら、ちょっと仕事を手伝ってくれない?」

「仕事というのは、異界破りか?」

「そう。最近、これまでなかったところに大規模な異界ができたって事が多くてね。それでこれまでちゃんと維持できていた所にも色々起きてるらしいのよ」

「なるほど、悪魔どもとの戦闘の可能性が大いにあるのだな。己の武力が役に立つのなら任せてくれ。まぁ、食事と寝床程度の支援があると嬉しいのだが」

「流石にタダ働きはさせないって」

「感謝する。貴女に会えて良かった」

 

 おそらく、彼女の言葉には嘘はない。しかしそれ以外にも己がナニカ悪行をしでかさないかの監視だとかの理由もあるだろう。

 

 であるのに、その中の疑心や邪推を表に出さず己の心を慮った振る舞いをしてくれた。それだけで彼女の事を信じるに値すると思えた。

 

 彼女の『仕事』それ自体が悪しき事である疑いをなくしてはいけないとは思うし、彼女すらも誰かに騙されている事もあるかもしれない。思考停止で信頼してはならないとは理解している。

 

 だが、彼女を信じたいと思えた己の感覚を信じてみようという気持ちにはなれた。

 

「改めて。人外ハンター、ランク8のジエンだ。継戦能力には自信がある。今後ともよろしく」

「私はリオ、琴葉リオよ」

 


 

 2つほど異界の調査を終えたところでひと段落を挟む。車内にてお高いコーヒーを飲む程度のモノだが気を張り続ける事も良くないだろうから。

 

「ジエンくん、君ってなんであの異界にいたんだっけ?」

「あぁ。仲間が逃げるための殿をしていて異界の崩壊から逃げ損ねた。そして気が付いたらケツァルコアトルの異界に居たという所だな」

「その仲間ってのは、『ハンター』ってのの?」

「そうだ。他には東京からの一時撤退を決めた上役と、生き延びていた女子供などが居たな」

「……他の仲間は生きてると思う?」

「己が生きていたのだ。可能性はゼロではないと信じている」

「……なら、探してみればどこかに流れ着いているかもね」

 

 そんな言葉を言うと、じーんと感動した表情のジエンくんは感謝の言葉をこれでもかと告げてきた。本当に表情豊かな子だと思う。

 

 ジエンくんは、中高生くらいの年齢に見える。本人は生まれた年を知らないそうで年齢はわからないのだとか。

 

 正直、この子がわからない。

 

 助けてくれる人もそう多くなかったのだろう事は彼の戦闘スタイルから見ても明らかだ。多種多様なバッドステータスを仕掛けるスタイルではあるが、『バインドボイス』や『パニックボイス』、『パンデミアブーム』などの広範囲に無差別で放つのを多用している。

 

 仲間のいる乱戦で使うのであればもっと効果範囲を狭めて使う。スキルの一つ一つが荒っぽいとも言えるだろう。

 

 また、定石だとかについても甘いところがある。カジャ系、ンダ系については理解していても、強敵相手にそれを優先してかける事が少ない。

 

 総じて、『独学』だ。

 

 こんな若い子が命懸けで身につけた一つ一つの知識だけを武器に戦う世界なんてのは、きっと狂っている。

 

 だから戦いしかなかった世界から離れられた今は、休んでいてほしい。

 できればだけど、学校などに行かせてあげたいとも思う。

 

 けれど、コレが辛い。

 

「己は『守りし者』として戦う。そう決めて生きている。だから己の心などを案じるのは不要だ。むしろ戦っていない時の方が何をすれば良いのかも分からないからな!」

 

 彼は、そんな悲しい言葉を笑顔で言う。

 陰りなく、心の底から、『自分が信じる道を進んでいる』というのを信じている様で。

 

 一人の大人として、なんとかしてあげたいと思う。

 

「今更疑問に思ったのだが、リオは何故に一人で行動していたのだ?」

「……え、私?」

「ああ。まぁリオほどの実力者であるのなら単独でも敵を打倒できるのは理解できる。だがそれが単独行動をする理由にはならないだろう? プログラムを持っているならば手数を補えるが、そういうわけでもないのだし」

「あー……ちょっとね」

「聞きづらい事だっただろうか?」

「そうでもないかな。いつも組んでた相棒が産休中なのよ。お腹の子は絶対に産むんだ! って意固地になってて」

「それはめでたい! ……と早合点してしまったが、良かったか?」

「ええ」

 

 彼女のお腹にいるのは、誰とも知らない男の子供だ。いつのまにか仕込まれていて、父親についても心当たりがないという。

 彼女は奔放な子だったけど、そんな無責任なコトはしないと心に決めていたというのに。

『愛されなかった子供だったから、愛さない親にならない』と言っていたのに。

 

 彼女は、自身の体に宿った命を大切にする事を選んだ。それ自体は誇らしい。けれど彼女の瞳にいつもの勇気はなく、私はそんな彼女を見たくなくて相棒から逃げ出した。

 

 そうして雑な準備で行った依頼で死にかけたというのは、まぁ当然のことだったのだろう。

 

 そんな内心を知らず……というよりあえて無視して言葉を放つジエンくん。

 

「ならば尚のこと奮戦せねばな。新しく産まれる命には良き時代を生きてほしい。己が生まれた時も大人たちは皆そうしてくれたと聞いている」

 

 そんな優しい言葉に、つい弱音が出てしまう。

 

「……戦って、どうにかなると思う? ジエンくんみたいな地獄育ちの人がこの世界の適性レベルだよ? おまけに意味不明の宇宙怪獣が沢山やってくる。いつ終わるかも分からない地獄なのよ、この世界は」

 

 そんな言葉に、思いっきりハテナマークを浮かべるジエンくん。

 

「それは、戦わない理由になるのだろうか?」

「……え?」

「個人が戦っても大勢は変わらないのは当たり前の事だ。世界とは一人が動かせるモノではない」

「それはそうだけど」

「だが、戦って何かを守れた後で食べるご飯は、美味しいではないか」

 

 そのどうでも良い言葉で、なんだか少しスッキリとした。

 

 そもそもが私が戦っていたのは我欲のため。好きな作品の続きが見たいから、好きな声優のライブに行きたいから。そんなの。

 

「うん。美味しいご飯の為ね。良いじゃない」

「あぁ。なので、最後の異界調査を終わらせてしまおう」

 

 そうして、依頼にあった最後の異界へと侵入する。

 

「うわ、コレはまた酷いね」

「……これは、マッピングで地獄を見そうだ」

 

 異界の内部は、赤黒い肉によって作られたモノへと変貌していた。元々は森林のような異界であったらしいが、見る影もない。

 

 肉に包まれた木々たちは、苦しみの声を出しているようにすら思える。

 

「これ、MAGを効率的に引き出すための仕組みが元ね」

「過剰に苦しみを与えて、ギリギリまで苦しみの声を吐き出させるというモノか。快くは思えないな」

 

 ジエンくんは悪魔を召喚して奥に進む。そうすると、すぐに入り口は閉じた。

 

 背後にあるのは、悪霊レギオンによく似た何か。レギオンの赤黒い肉のような肌のまま、たくさんの悪魔の姿形をとっている。

 

 それが、数十、もしかしたら数百にも及ぶかもしれない大軍勢として存在していた。

 

「罠にしては、ヤバいね」

「む、軍勢か」

 

 正直、私一人でここに来ていたら絶対に殺されていた自信がある。私は『闇討ち』や『鎧通し』などの技術を習得してこそいるが、対多数を相手にする技に関しては不得手だ。

 

 そういうのは、魔女であった相方に任せていたから。

 

 だから、私は幸運なのだろう。心が揺らいでいた時に出会えた子が、頼りになる力を持っているのが。

 

 大人としては、少し恥ずかしいけれど。

 

「行くよ!」

 

 まずは、鎧通し。敵は軍勢悪魔としての括りにある。技の追加効果の弱体化は『軍勢』という括りに対してかかるので、物理耐性の有無を確認しつつ、弱体化をかけられる。

 

 貫通をしたとき特有の手ごたえがあった。物理攻撃に対して耐性を持っているだろう。

 

「物理以外!」

「心得た! 『百麻痺針*11!』

 

 放たれる神速の針連射。こちらにも耐性があったようで被弾してもすこしも堪えていない。だが、麻痺の追加効果については耐性がないように思えた。只のカンだけど。

 

「バッドステータスを見ます、『パンデミアブーム*12』」

 

 ペルセポネーがスキルを放つ。『風邪』という珍しいバステを付与するスキルだ。風邪はディスポイズンで普通に治せるとのこと。

 

『軍勢』という括りに対しては全体技はだいたい3ヒット分程度の効果が現れる。それによって敵の軍勢の誰かは風邪のステータス変化に入り、即座に全体に伝染した。

 

 ついで、敵の軍勢の手番がやってくる。

 

 『丸かじり*13』シンプルな物理スキルだが、食われた肉やMAGが敵を癒す効力を持っているようだ。鎧通しで与えたダメージは一瞬で回復される。

 そして放たれた物理スキルはかなりの威力であり、2発でギリギリ、3発は確実に耐えられないというほどだった。

 

 そして放たれる2の矢『冥界波*14』。純粋に火力の高い全体物理スキルである『冥界波』は『丸かじり』によって手傷を負った自分たちの命を奪うのに十分な威力だっただろう

 

『風邪』によって攻撃力が低下していなければ*15、の話ではあるが。

 

「回復するよ、『生玉』!」

 

 以前手に入れた効果の薄いほうの生玉を使う。味方全体の体力と精神力をそれなりに回復させるモノだ。正直宝玉輪を使いたい場面であったが切らしている。

 ……本当に準備が甘かった。

 

 だが、それでジエンくんには十分だったらしい。

 

「追加でいく、『メディラマ』!」

 

 デバフやバフよりも優先して放たれる回復スキル。そこに違和感をもったが体力は全回復。次の手番で冥界波を連射されたりしなければ壊滅はないだろう。

 

 そして、ペルセポネーがあるスキルを放つ。

 

 そのスキルを食らった敵軍は信じられない程のダメージを()()()()喰らって爆発四散した。

 

「嘘でしょ一撃⁉︎メギドラオンでもぶっ放せるの⁉︎」

「己とペルセポネーはこういった手合いには滅法強い。雑魚は任せてくれ」

 

 それから起きたのはレギオン擬きの軍勢との30連戦。

 

 信じがたい事に、この異界の赤黒い肉その全てが軍勢だったのだ。

 一度に固まれる軍勢の数は3つ。合計90体の悪魔であったが、その軍勢を処理するのに使うスキルは2つだけ。

 

『パンデミアブーム』と、『悪化*16

 

 ペルセポネーの『悪化』は風邪状態の敵に着弾すると、内部の毒素を爆発させて致命傷一歩手前のダメージを与えるらしい。

 

 そして、『悪化』は全体スキル。一度で一歩手前なら、2撃目を喰らえば当然致命傷となる。*17

 

 この異界全体を覆っていたレギオンの肉片は、そんな流れ作業のような連戦によって皆殺しにされたのだ。

 

 

 そして、残ったのは1匹の悪魔だけ。

 

 普通の悪霊レギオンに、泣き出しそうな女性の顔だけがついているもの。

 

 なんとなくだけど、人から悪魔になった類の奴だろうと思えた。

 

「……大将格だな」

「けど、肉体の大部分を異界の維持に使っていたみたい。今なら楽に殺せるよ」

「任せる。軍勢の相性が奴の余波ならば、己はさほど打点は出せない」

 

 そうして起きるのは只の戦い。死闘になる事はなく、私の暗殺戦闘術が耐性を貫いて切り刻んだだけのもの。

 

 自らの血肉を使って全てを同化する。そんな異界をレギオンが作っていた理由は分からない。元々の森林型異界はぐちゃぐちゃに砕かれて、また一つ人の逃げ込んだ世界がなくなった。

 

 ただ一つ分かるのは、この世界で私が生き残った事だけだった。

 

 

 


 

「ペルセポネー、己は価値を売り込めたと思うか?」

「当然でしょう。私たちがいなければリオさんは間違いなく死んでいました。同行してからも十分に戦えることを示しましたから、『雇ってくれ』と申し出れば問題なく行けるかと」

「問題は、こちらから契約の更新を言いだせば足元を見られかねないという事だな。彼女以外にツテはないのだから、どれだけ足元を見られた契約になっても首を振るのは難しい」

「そのようなことをする方には思えませんでした。貴方もそう思ってはいるのでしょう?」

「無論だ。しかし可能性を考慮するのはやめてはならない。万が一があるからな」

 

 ペルセポネーにそんな事を言う。彼女は二つに分かれた顔で不敵に笑うが、己のこのあり方自体の否定は行っていない。

 

 宿泊施設のカーテンを開けて、光が輝く上を見る。

 

 一際大きく、丸く輝いている『月』というもの。小さく、しかし絢爛に輝いている『星』というもの。それらを阻む『雲』というもの。

 

 何一つとして見覚えはない。美しいモノであると思うが、しかし不安にもなる。

 

 何も知らない己は、この世界で生きていけるのだろうか? シェルターで次元転移した皆は、生きているのだろうか? 

 

「生きていなければ、その答えは分かりませんよ」

「だな。己は眠る。周囲の警戒は任せるぞ」

「はい、おやすみなさい」

 

 己がこの世界での暮らしを始めたのはこの日から。

 

 どんな未来になるのかは分からないが、命が続く世界になるように頑張らなければ

 

 

 ──────守れない辛さは、味わいたくないのだから

 

 

 

 

 

*1
真4Fより。ニヤリ状態の相手には弱点を突いてもプラスターン増加は発生しない

*2
弱点命中によりプラスターン増加

*3
キャラクターの自己解釈です。

*4
真4Fより、HPを大回復

*5
回避された事によるプレスターン2減少

*6
真4F トキの使用するパートナースキル。敵の手番終了時に攻撃、貫通効果(この少女の技量によって反射などは抜けない弱貫通とする)

*7
真4F 敵全体に対して緊縛状態を付与

*8
ボス耐性の事

*9
真4シリーズより。元は地下世界東京に生きる人々の事を指す言葉

*10
身体が闘争を求める方。脳は破壊されてない

*11
真4F敵複数に銃撃属性で中威力の攻撃を1~3回行う。緊縛の追加効果。

*12
敵全体を「風邪」状態にする。

*13
真4F 敵全体に物理属性で小威力の攻撃を1回行う。HP吸収

*14
敵全体に物理属性で大威力の攻撃を1回行う

*15
風邪は攻撃力25パーセント低下と回避率0になるバッドステータスである

*16
敵全体に万能属性で小威力の攻撃を1回行う。風邪状態の敵のHPを1にする追加効果。

*17
悪化はHPを1にする状態変化ではなく、風邪状態のキャラの現在HP-1のダメージを与える効果。そのダメージ量の計算は発動時に行われるので軍勢相手では合計(【HPの3倍】-3)のダメージを与えられる。2発目でしぬけど




キャラ紹介

人外ハンター ジエン
イメージ元、真4シリーズの人外ハンターの妙に生き残ってる奴ら

埠頭にて拾った悪魔召喚プログラムのある変わったスマホを使って人外ハンターをやっている少年。生まれてからずっと地底人であり、『空を知っている大人たち』の悲しみを見てきた。それ故に昔の言葉については深く話を聞かず、文脈から類推する事で解釈をしていた。なので実は日本語に怪しいところがある。
時代錯誤な堅苦しい話し方なのは『敬語』を自分の中で解釈した結果である。敬意の方は伝わっているので誰も『間違っている』とは言わなかった。

ステータスは技速型。バッドステータス付与系のスキルを得手としている。

??? 琴葉リオ

相方が敗北系のメス堕ちした事でヤケになってたデビルバスター。ガイア系暗殺術の手解きを受けており、鎧通しや闇討ちなどの貫通スキルを習得している。ただし本職の絶技には遠く及ばず貫通効果は反射を抜けないタイプ。
本人の才能の高さだけで生きてきたタイプであり、精神性が修羅の域には達していない。
推しの声優は宮野真守。結果アニメゲーム特撮にバラエティと幅広く色々見るようになった。

最近実家が落ち目になっているらしい。

■□■
一話時点での時系列はドリフターズが現れ始めた初期段階。掲示板などで噂が広がり始めたくらい?の時です。


ちなみに作者はソウルハッカーズ2をブックオフで衝動買いしたらPS5版だったのでまだ未プレイです。不良品疑惑かけて交換してもらって本当に申し訳ない……


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秀英戦国技術研究所 入社まで

タイトルに三次創作です!ってのを明示し忘れてたガバ。


「凄まじいぞ、このビデオは」

 

 手元にある細長いボタンだらけの装置『りもこん』を見る。

 

 駆動力は単4タイプバッテリー、これのボタンを押す事で壁にあるモニターの操作をすることができるようだ。

 

 そうして出てきた映像は、このホテルについて説明するテキスト。『キャンペーン』というモノをやっており、『ツイート』という事をすればなんとレトルトカレーが貰えるのだそうだ。

 

 レトルトカレーは知っている。食料探索の際の優先探索対象の一つであり、多くの栄養素が濃縮された茶色の液体だ。

 幼い頃、人外ハンター達がカレーの取り合いで刃傷沙汰を起こしたのを覚えているほどだ。『酒』や『タバコ』と同じ高級嗜好品の一つとしてカテゴライズしていた。

 

「この……ツイート? というのはどういう意味だろうか?」

 

 しかし、ツイートについては理解への取っ掛かりが掴めない。『ハンターメモ』のテキストにはツイートなるモノの情報はない。人外ハンター商会のアーカイブには存在しないもののようだ。

 

 ならば、人間社会が維持できている事によって可能である行為という事だろう。

 

「……ダメだ、実際にツイートをしている者に聞いてみるしかあるまい。文面からすると良きこと、祭事のような楽しいことに違いはないのだからな!」

 

 とりあえずリオに聞いてみる事にした。

 

 そして、己は『ホテル』というものの本当の凄まじさを知るのだった。

 

「朝ごはん行こ? ジエンくん」

「了承した。己は胃袋が頑丈なのが取り柄でもある。悪い部位がきたならば任せてくれ」

「そんな酷い食事は出ないって。ビジネスホテルだよ?」

 

 言葉の定義を再認識する。ホテルとはかつてあった宿泊施設だ。いや、社会が崩壊していないのなら今もあるか。

 ホテルは宿泊のみならず遊戯、会食などの様々な用途に使われていた所であるとハンターメモには書いてあった。どのような食料が配給されるのだろう? 

 

 

「なんと⁉︎」

 

 眼前に広がるのは、鮮やかに彩られた食料の数々。つやつやと光が反射するコメがあり、油の匂いが輝かしいウィンナーがあった。

 

 そのほかにも緑の瑞々しい『サラダ』があり、黄色く鮮やかな黄身のある目玉焼きには(なんと!)胡椒が振られているのだ! 

 

「この配給所はどれほどの人数を支えているのだ⁉︎高級品だらけだ!」

「……え、普通のビュッフェだよ」

「びっくり仰天だ。……すまないがこの配給所のルールを己は知らない。どうすれば良いのかの教示を頼む」

「えー……まぁ良いんだけど、好きに取って良いってだけだよ?」

 

 リオはそんな言葉と共に大皿を取ってそこに多くのモノを入れていっている。時には小皿を取って白いドロドロをよそい、その上に細かく刻まれたフルーツをよそっていた。

 

「己は食い意地を張っている方だと自覚している! 故に許可されているのならよそってしまうぞ! 大盛に!」

「いや、それ少ないって。若いんだからもっといっぱい食べなって」

「なんと⁉︎」

 

 リオに先導された結果、己の取り分には白米が大盛、味噌汁がひとつ、サラダという野菜の詰め合わせにドレッシングがかけられて、黄色の卵焼き、同じく黄色の目玉焼きにソーセージの詰め合わせが載せられた。

 

「……この配給は、どれほどの権利者なら受けられるモノなのだ?」

「ホテル宿泊者の朝食セットだから、5000円くらい?」

「ごせんえん……一介のハンターでなんとかなる権利レベルだろうか?」

「行ける行ける。簡単だよ」

 

 

 そして、さらに詳しくホテルについて聞く。

 昨夜は遅い時間であったためもう寝るだけしかできなかったが、『チェックアウト』、部屋の引き払い時間までならば大浴場という所にも行って良いらしい。

 

 無論、攻撃される危険性はあるので無警戒はダメらしいが。

 

「んー、念のため話つけとくね」

 

 そう言った彼女は、スマホの連絡機能を使って誰かに命令をしていた。

 曰く『ちょっとだけ男湯を好きに使わせろ』とのこと。ごせんえんの権利者はこんな大規模な施設の管理者をアゴで使えるらしい。

 

 おそるべし、ごせんえんッ! 

 


 

 そうして大浴場という水浴び? お湯浴び施設を使う事ができた。幸いにも石鹸などの基本的な使い方は変わらなかったので身綺麗にはできただろう。

 

「それじゃあ、一緒に来てね。報告しなきゃだから」

「先日の依頼の件だな。承知した。ほとんどの異界は崩さなくてはならなかったから、その原因についても詳しく話すべきなのだろう」

「面倒な話になるけど、まぁ適当にね」

 

 リオの車にて揺られながら街を見る

 この車というのは大きなモーターを使って移動、運搬を楽にするモノだろう。残骸は多く見た事があったが、動いているのを見るのは結構珍しかった。

 

 そして凄いのは、そこそこの速度で移動しているこの車たちの動きが整然としている事だ。情報に見える色付きランプの動きによってどちらの道に進む者が先に進むのかを示し合わせており、衝突や戦闘が起こっていない。

 

 このシステムを定めた人物は間違いなく傑物であると断言できるだろう。

 

「ん、着いたよ」

「月極? ここが目的地なのか?」

「そこはただの駐車場。逆だよ逆」

 

 振り返ると、年季の入ったビルがあった。

 だがそう見えるのは外見だけであり、感覚で見ると強いMAGの守りがあるように思える。

 

「ヤクザ者達の拠点か?」

「元ね。昔は秀英会って名前で、今は秀英戦国技術研究所って名乗ってる」

「戦国技術とは?」

「昔の、日本で戦争してた頃の鎧具足だとか大太刀の拵え方とか、忍術や仙術と呼ばれてる技術とか、そういうの」

「忍術は聞いた事があるな。ハンターの中に使う者がいたのを覚えている! スリケンジツなどを使うのだったな!」

「え、なんで忍殺?」

 

 己が知っている忍術とここで調べられていた忍術は違うものらしかった。早合点だ。

 

「ウチはヤクザだった頃から土地との繋がりが深くてさ。第二次世界大戦終わりあたりの時に名家の人たちの伝承書とかを引き受けてたのよ」

「スキルの指南書のようなモノか」

「古式悪魔召喚術の間違った理論書とか、どこかの誰かの封印の覚え書きとか色々あるわね。ほとんどは紛いものだけど」

「そういったモノの中から使える技を蘇らせるのかここのお仕事という訳なのだな!」

「まぁね。ヤクザの方が落ち目になったってのもあって一つの研究所としてやってるのよ。実態はただの兼業デビバスだけど」

 

 そう軽く見せるように言っているが、リオの言葉には熱があった。この仕事を誇りに思っているのだろう。

 誰かの残したものを現代に繋げるというのは、それだけで素晴らしいモノである事を己は知っている。

 

「戻ったよー」

「お帰りなさいませ! お嬢!」

「お嬢はやめなさいっての」

「姫ーその子どっからひっかけてきたの?」

「姫はもっとやめろ」

 

「む? 姫もお嬢も若く権力者の身内の女性に対しての呼称だろう? 何故に嫌に思うのだ?」

「いや、私もう25だし。四捨五入したらアラサーだよ」

「なんと⁉︎」

 

 その言葉に驚きを隠せなかった。

 身長は己と同程度だから150とかその辺り、顔は幼く瑞々しいし、短く切られた黒い髪などには艶がある。

 

「すまない、少し上程度だと思っていた」

「誰か合法ロリだこの野郎」

 

「あ、年上にはみられてたんだ」

「JCに見られてもおかしくないっすからねお嬢は」

「ぶっころすぞやろうども」

 

 そんな言葉から始まるじゃれあい。レベル20から30程度の黒服が数人とそれより低い感じの女性だが、一様にその動きにはキレと理がある。戦国技術というのを学んでいる一端だろうか? 

 

「帰ったか馬鹿娘」

 

 と、そう人員のレベルを測っていたら奥の部屋から益荒男が現れた。体躯は2メートル程度に見え、腕や足はちょっとした柱よりは太く見える。

 感じるMAGによるとレベルはリオと同様60以上、凄まじい武人のように思えた人だ。

 

 そんな益荒男がメガネをかけていることで知的さが備わって見える。これが話に聞く完璧超人(ぱーふぇくとちょうじん)だろうか? 

 

 そうして測っていると、その目を視線で咎められた。これは失礼をしてしまったかもしれん。

 

「不躾だな、小僧」

「すまぬ、ここまでの者が現れるとは思わなくてな」

「親父、この子がジエンくん。そこそこにやるサマナーだよ」

「そうか。オレは琴葉護藤(ことのはごどう)この戦技研の頭をやっている」

「ハンターをやっていたジエンだ。元のシェルターに戻れないところをリオに助けて貰っている。異界調査についての話で良いのだな?」

「そうだ」

 

 

 そうして、調査結果をまとめて話し始める。

 

 今回の仕事で回った異界は全部で4つだが、その中で大きな変化があったのは二つだけ。それ以外は外からのエネルギーが急激に増えたことで崩壊するしかなかった所だ。

 

 大きな変化のあった異界の1つはケツァルコアトルの現れた所。己が中庸の森から転げ落ちた時に流れ着いた場所で、本来は『陰陽師』という連中の系譜にある集団の作った秘術を修練するための修行場だったらしい。

 

「異界の主がすげ替わっていた理由に思い当たる点は?」

「誰かの仲魔だった悪魔が流れ着いたって感じに見てるわ。ケツァルコアトルは本来凄まじい大悪魔だったはずなのに、異界からのバックアップは薄かったし、弱かった」

「己があの異界にやってきてから最初に接触したのは奴だった。分が悪いとみて即座に逃走したが、追撃が甘かったようにも思える。手傷を負っていたか、異界を染め上げることを優先したのか、その辺りが理由だと己は見た。故に、己のサマナーの縛りから外れたのではないかと考えている」

「サマナーの縛りから抜ける悪魔か。悪魔の成長(レベルアップ)は総じて人間よりは遅い、めったな事がなきゃ縛り切れるはずなんだが……」

「滅多な事しか起きてないのが今だからね」

 

「ならば、『魔導書』のような経験(ソウル)の込められたテキストを読み込んだ可能性はないだろうか? 『おんみょうじ』という者達が修行用に残していた異界なのだろう? 力のある文章が残っている可能性などは」

「一応、異界の中に残してきた文章は全て目を通してるし、pdfで保存もしている。魔導書って事はねぇとは思うぜ」

「むぅ……己はお手上げだ」

「私も。仮説は立てられるけども物証があんまりにも無さすぎる。まぁ、余裕なくてぶっ壊したのは私なんだけど」

「どちらにしても壊す予定ではあった。資料の原本が残せるかどうか程度の違いにすぎんさ」

 

「で、なんかやばいことになってたのがレギオンが出た所。あそこって元は何だったっけ?」

「アリの巣穴だった所だ。本人は戦うことを選んだがフェグダの件で毒を受けて治療中でな。そいつの知り合いから様子を見ろと請われた」

「あ、ぶっ壊すのまずかったやつ?」

「本人と話せ。まぁそう悪いとこにはならんだろうさ。勘だが」

 

「それであの異界だが、悪霊レギオンの肉体が異界全体に広がっていたように見えていた。異界全てを一つの群体(モノ)として自己認識していたのではないだろうか?」

「あー。だからボス以外全部軍勢悪魔だったのか。『我が名はレギオン、大勢であるがゆえに』みたいな?」

「……で、そんなとんでもレギオンが現れた原因については?」

「分かんない。ぶっ壊すのに精一杯だったから」

「何やってんだお前……」

「出てくる軍勢のレベル65とかそんなだよ? 生き残れただけで儲けもんだって」

 

 そんな言葉を聞いたゴドーは頭を抑えてため息をつく。正直己も先にアナライズの確認をしていたら逃走が頭によぎって揺らいでいたと思う。実際は悪化が通るカモであったけれど

 

「……まぁ、大体把握した。映像記録はさっき出したので全部だな?」

「うん。とりあえず『異界の維持とかもう無理だろ』って感じ?」

「だな。ウチが少人数ってのもあるが、ちょっと目を離した隙にレベル60オーバーがゴロゴロ転がってくる場所なんて安全圏にも出来やしねぇ。解体して不活性MAGに変えた方がマシって奴だ」

「……話には聞いていたが、本当にレベルが狂っているのだな。シェルターの皆は大丈夫だろうか」

 

シェルターに残っていた戦力は少ない。このレベル帯の悪魔が暴れる世界では無事では済まないだろう。己のように善い人達に助けられていればよいのだが。

 

「……で、坊主はどうするんだ?」

「宿無しの異邦人一人では生きれなさそうなので、しばらくはここに身を寄せたい。足を引っ張るような実力ではないはずだ」

「正直、私一人でやるのは思ってた以上にキツかったから、人手が欲しいのは本当。ただ、ジエンくん」

「なんだ?」

「国に保護を頼めば学校の紹介とかしてくれるだろうし、働くのだって他でもできる。ウチに拘る必要は全然ないからね?」

「む、己は自ら進んでここに居たいと思ったのだが……」

「あ、そうなの」

 

どちらにしても、『くに』とやらを信用しても良いかどうかを見極めるための時間も必要だと考えている。援助してくれるというのならありがたいが、援助の代わりに奴隷となれというのであれば回避したい。

 

そのようなことをぼかして説明すると、職員(仮)としてならまぁ良いかという空気になった。

 


 

 入社手続きの書類だとかを書き終え、『戸籍』のアレコレが終われば『社員』となることになった己である。

 

「……時に、ハンターメモのようなものはあるだろうか?」

「ハンターメモ?」

「あぁ、場所の情報だとか人物についての詳細だとか、そういうのを公開する場所だ。テキストでの情報交換の場、というのだろうか?」

「んーと、ネット掲示板?」

「その感じであっている筈だ! アプリ研究者の田所さんがハンターメモのコメント欄をそう呼んでいたぞ!」

「ちょうどキリギリスで情報交換する予定だったし良いか。COMPにアドレス送るね」

「心得た」

 

 そうして、渡されたアドレスを閲覧し、パスコードを入力してもらう。

 

 そのパスコードはどうにも一問一答形式のものであり、前提知識さえあればパスコードの共有がなくても理解できるようだ。面白いセキュリティである。

 

「む? からくりサーカス?」

「ジエンくん、知ってるの?」

「漫画という奴であろう? ハンターメモに状態の良いモノが公開されていた記憶がある。迫力のある絵だった」

「んー、無断転載の香りがする」

 

 無断転載、込められている感情からしても言葉の意味合いからしても悪い事であるらしい。……なるほど。

 

「転載というのは、許可を取らなければやってはならないのか?」

「うん。それは泥棒みたいなもんだから。コンテンツを作った人に正しく利益を与えてファン(私たち)が推せるようにするために、正しい方法でモノは手に入れなきゃって事よ」

「読む事だけを考えていて、そういうのを考えたことはなかったな……ここのルールとして身に刻もう」

 

 そんな会話の後ふらりと入室したトークルームにて、初めて『キリギリス』の掲示板を見ることになる。

 


125:名無しさん@LV上げ中

 レベル上がってスキルがダイン級に切り替わったんだけど、燃費が悪すぎて2戦で限界なんだが

 

128:名無しさん@LV上げ中

 チャクラポッド使え

 

131:名無しさん@LV上げ中

 ポッドじゃねぇよポットだよ。

 

134:名無しさん@LV上げ中

 何となくで覚えてるから文字にすると間違えるよな。ラダドーム城みたく。

 

138:名無しさん@LV上げ中

 実は俺緑化会の時までデメテルのことをデルメルと勘違いしてた。

 

140:名無しさん@LV上げ中

 どういう勘違い? 

 

142:名無しさん@LV上げ中

 語感すら似てなくて草。

 

146:名無しさん@LV上げ中

 後から考えるとよくわからん勘違いってあるよな。

 

147:名無しさん@LV上げ中

 で、MP関係なら素直にアクセサリー良いのに変えて補正高めたら? *1

 

149:名無しさん@LV上げ中

 それか、ガリバーマジック*2とかで回復をケチるとか。……まぁ、回復ケチった時に限ってバックアタック起きるけどな! 

 

151:名無しさん@LV上げ中

 チャクラウォークを持った仲魔にマカトラを仕込めれば消耗は減らせるぞ。チャクラウォークはLv50のデカラビアのデビルソースにある。

 

153:名無しさん@LV上げ中

 LV50とかちょっと前までは御伽話だったよなぁ、懐かしい

 

155:名無しさん@LV上げ中

 おとぎばなしは終わりさ…俺たちの物語は、はじまったばかりなんだ…

 

157:名無しさん@LV上げ中

 …冗談じゃねえ…

 

161:名無しさん@LV上げ中

>>156

>>157

 レーラグで草

 

165:名無しさん@LV上げ中

 最近異界も広いのが多くなってきたから消耗抑えるための工夫はもっときたいよな。チャクラウォークしかし勝利のチャクラしかり

 

166:名無しさん@LV上げ中

 勝利のチャクラ……10連ガチャ……う、頭が……

 

168:名無しさん@LV上げ中

 散財して正解でした。クシミタマがストックに残ったままだけどなぁ! 

 

172:名無しさん@LV上げ中

 サマナー以外だと消耗どう抑えたら良いと思う? リボンシトロン*3以外で

 

174:名無しさん@LV上げ中

 バッグの中には整然と並べられたエナドリ缶の山が! 

 

175:名無しさん@LV上げ中

 COMP使え*4

 

178:名無しさん@LV上げ中

 道士バッジ*5とかどうよ。シャドウ系悪魔素材で作れる奴で中気功の効果付き

 

182:名無しさん@LV上げ中

>>125

 もしかしてだけど、適正外のスキルのダイン系使おうとしてない? 

 

186:名無しさん@LV上げ中

 適正外? 

 

187:名無しさん@LV上げ中

 個人個人に魔法タイプの得意不得意があって、同じスキルでも使用MPが違うとか。大体自力で覚えるスキルが適正スキルだから問題はないんだけど。

 

189:名無しさん@LV上げ中

 俺適正外スキルもってるかも。悪魔からマハブフダインのやり方教えて貰ってたし

 

 


 

「このコメント欄に書き込むのは、このようにやれば良い感じだろうか?」

「……いやいや、ちゃんとROMって空気感把握してからにしないと痛い目に合うから。何書き込もうとしてんのか見せて」

「これだな」

「……うん、名前だけ消すね。名無しさんって名前未入力の奴がなる奴だから」

「皆がこぞって名無しさんを名乗っている訳ではなかったのか」

 


 

159:名無しさん@LV上げ中

 悪魔からの教示、ウィスパーイベントは一度だけではあまり効果はないぞ。複数の悪魔からののコツを組み合わせれば己だけのやり方を身につけられる。

 適正スキルが手に馴染んだスキルのことを言うのなら、再度教示を起こせるようにするのもアリだと考える

 

163:名無しさん@LV上げ中

 マジで? ソースどこよ

 

164:名無しさん@LV上げ中

 己の経験なので情報ソースはない。だが回復、補助スキルなら5回、それ以外なら9回の最適化がウィスパーで可能だった。

 

165:名無しさん@LV上げ中

 コレ結構マジっぽい。俺の知り合いに適正を見れる奴がいたんだけど、適正は-9〜+9までの範囲だった。

 

169:名無しさん@LV上げ中

 補足すると、悪魔は火炎魔法だとかの系統に得意を持つがウィスパーされたスキルの適正は『そのスキルそのもの』にある。アギラオを手足のように使えてもアギダインやアギの適性があるわけではない感じだな。

 

172:名無しさん@LV上げ中

 んー、ちょっと雄叫びで試してみるわ。ちょうどランダマイザ持ち作れるレベルになって雄叫び浮いたし。

 

175:名無しさん@LV上げ中

 そういう時は少し弱めの悪魔にスキルを持たせてやると良いかもしれん。ウィスパーイベントが起きるのは仲魔がその召喚式に馴染みきった時だそうだから。

 

176:名無しさん@LV上げ中

 サンクス

 

178:名無しさん@LV上げ中

 ……てか、俺ウィスパーイベントとか起きた覚えないんだけど

 

182:名無しさん@LV上げ中

 個人の適正じゃね? 知らんけど

 

 

 


 

「うむ、大体やり方は理解できた」

「……もうちょい口調は雑で良かったわね」

「これ以上か? 難しい。ばーかばーかとか語尾に付けると良いだろうか」

「逆に萌えキャラになるわ」

 

「で、似たようなのってジエンくんの所にあったの?」

「ああ! このハンターメモだな!」

「へー、大百科みたいな感じなのね」

「これのコメント欄でのやり取りが先程の掲示板とよく似ていた。5割が嘘で3割誇張、2割が自慢で1割情報。のような空気感だろうか?」

「1割も情報があるとかマナー良すぎてやばいわね異世界」

 

 と、そんな時目の端に妙なタイトルが見える。

 

 それは、『ここどこ案件異世界人説』というモノだった。

 

「異世界人というのは、けっこう沢山来るモノなのか?」

「日本から異世界に行くのはいっぱいいるけど、異世界から日本に来るのはそんないない気がするわ」

 

 

 

 

 

 

 

*1
真4やSH2のようにアクセサリーによって最大MPが増加するシリーズがある。

*2
デビルサマナー シリーズ 歩くごとにHPを回復できるインストールソフト

*3
ペルソナシリーズより、自販機で買えるエナジードリンク SPが微かに回復する

*4
大量のアイテムはいったいどこにしまわれているのだろう?というRPG系永遠の謎

*5
ペルソナ4より 装備者に中気功同様のSP回復効果を付与するアクセサリー。スキルの中気功と重複する




今回のジエンくん
『ごせんえん』のことを5000円としてでなくクリアランスの名前だと勘違いしたガバ理解。今回は依頼の報告しただけで終わった

リオさん家
秀英戦国技術研究所
ヤクザ、というか土地の有力者団体の系譜。当然ガイア系列。
第二次世界大戦敗戦時にメシアンによる焚書が起きると踏んだ者達が秘伝書の写しだとかを投げ込んだ。その時のゴタゴタでどの家のどの秘伝書が残ってるのか分からなくなったが、それがかえってメシアンの目を欺いた。
現在の悩みは、自身の解読した秘伝書の中身の合体魔法の内容が既にWikiに上げられていること。権利者が生きていれば情報漏洩疑惑で法廷闘争モノだったかもしれない。

ハンターメモ
真4Fから始めるあなたのために!という感じで紹介されていたゲーム内テキスト機能。ぶっちゃけ神機能だと思う。
本編では主人公以外が利用している描写はなかったが、今作ではハンター商会を利用している全ての端末がダウンロードして使える大百科的なモノとして扱う。

これは、書き残された過去の世界の記録である。

尚、ハンターノートはモンハンライズなので間違えてはいけない。筆者はほびーさんへの連絡の時にしくじったのを執筆中に気が付いて、とても恥ずかしかった。


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目覚めた母性の琴葉リオ(25歳素人処女)

 キリギリス掲示板を少し調べてみたら所、己以外にも『異世界』からやってきた者達がいるかもしれない? くらいの話らしい。

 

「えぇ……私ネットの人とリアルで関わるの嫌なタイプなんだけど、漫画ニキとかに相談しなきゃダメ?」

「あれか、リオは『読み専』という奴なのか? 嫌われやしないか?」

「発言しなきゃ嫌われようが無くない?」

「自ら情報の発信を行わず人の情報だけを貪り食うのは、アバドン*1のものでなかろうか?」

「そんな慣用句みたく魔王の名前が飛んでくる社会やだわ。イナゴにして……いやそれも嫌だったわ」

 

 どうにもこの世界では読み専はあまり憎まれてはいないらしい。おそらく情報を書き込む者達が多いから、自発的に情報を書き込んで『流れが途絶え情報が断絶する』という危惧を抱かなくてよいのだろう。

 

「して、どうする? 個人に対してメッセージを送る手段が難しい者だったりするのだろうか?」

「まぁ、DMするだけだから難しくはないし、問題もないかな。……こんな掲示板にたむろしてる連中がまともな訳ないっていう事を除いては、問題はないよ」

「信用できる人格の持ち主であるかどうかという事か。確かに、そればかりはテキストだけで読み取れはしないか」

 

 まぁ、ものは試しとばかりにキリギリス代表の『漫画好き』と名乗る者にメッセージを送ってみる。

 

 己のアカウントならば大した失言もないのだし問題はないだろう。

 

「返信が来るまではどれくらいかかるだろうか?」

「んー……レベル100とかと日常的にやり合ってるトンデモ連中だから普通に忙しいよね。アイテムの仕入れとか」

「であれば己も訓練や武器の調達を行いたい。属性弾はどの程度の対価で入手できるだろうか?」

「属性弾ねぇ……軍属だったら仕入れが楽だって話は聞くけど、どうしよっか? ──―ねぇ黒服くん、ウチの店って属性弾仕入れてなかったよね?」

「そうですね。効果の大きい属性弾はどうしても生産が難しいらしいんですよ。火力の低い属性があるだけの弾丸なら在庫にあると思いやすが、そんなん今の環境で通用しないでしょうし」

 

 なるほど、内心で頷く。己はハンター商会のバックアップを受けるまで弾丸はサラマン弾*2やノームボム*3しか使えなかった。現在マガジンに残っているセイリュウ弾*4とはえらい違いだし、同じように扱ってはミスが起きるのは間違いない。

 

「新しい職人か生産ルート探すしかないかな? ……っと、ごめんねジエンくん。今すぐには良い弾無理そうみたい」

「承知した。そうなると己は使える属性に偏りができてしまうな。すこし前に無計画に合体したので、呪殺と氷結程度しか有効に撃てる仲魔がいないのだ」

「……んーバフデバフはどんな感じ?」

「己自身がフォッグブレスを習得している程度だな。カジャは使える仲魔は勧誘したレベルの低いヤツだけでな。魔力に乏しく、回数使うのには無理がある」

「……その辺まで計算はできてるのに、なんで手持ちぐっちゃぐちゃにしちゃったのさ」

「全ては己の不得の致すところだ。MP回復アイテムが尽きてしまって、合体を行うしかない状況になってしまったのだ」

 

 ──―本当に、よく生き残れたものである。

 

 

「……あぁ、合体で出てきた悪魔は新しい個体だから、魔力が回復してるんだっけか」

「そういうことだ。補給の無い時の最期の手段として覚えていて本当に良かった」

「じゃあ、チャクラポット仕入れられるだけ仕入れないとね。……高いんだよなぁアレ」

 

 売り込みしてる段階では隠して……というか隠せてきた事が明るみになっていく。

 

 現在、己の戦力で計画的に強化、合体してきた仲魔は()()()。先に言ったように悪魔合体に使用したからだ。ペルセポネーになるまですべての仲魔を。

 

 それも『悪魔合体ライト』という戦場で行う簡易合体でだ。

 

 そのため、合体で作り出した悪魔に使えるスキルや『プレロマ』を継承できていない。かなり致命傷ギリギリの状態である。

 

「しゃーなし。悪魔勧誘目当てで異界巡りしよっか」

「……アテはあるのか?」

「あれ、不満な感じ?」

「悪魔勧誘自体には否はない。しかし、己とリオだけではかなり穴が多いぞ。悪魔勧誘は戦力強化のためのモノで、勧誘できる悪魔より消費する資材が多ければ全体ではマイナスになってしまう」

「……ジエンくん、私の技を甘く見てるみたいだから言うけどさ」

 

 

「物理が通る悪魔には、絶対に苦戦しないよ?」

 

 リオはしれっとそんな大言壮語を放ってくる。

 

 

 

 

 

 そして、それは壮語ではなかったようだ。

 

「獲った!」

「グハァッ⁉︎」

 

妖鬼スイキレベル56*5

火炎弱点 氷結無効

 

 

「あのスイキを一撃で⁉︎」

 

 侵入した異界、どこか『和』と『滅び』の雰囲気のある迷宮にてリオが暴れ回る。

 

 出てきたスイキの三体との会戦時にいきなりぶちかました『刹那の刃』はスイキの息の根を止めた。しかも、リオは『一方的に仕留められる』タイミングで仕掛けたようで既にスイキの攻撃範囲から逃れている。

 

 驚くべき、技の冴えだ。

 

「まずは安全を確保しろ、ピシャーチャ『バインドボイス』、ペルセポネー『パンデミアブーム』」

 

 相手との交渉結果が成功と分かっていたならば安全確保は必要なかったが、ないモノねだりしてもしょうがない。

 すんなり仲魔になってくれたピシャーチャのバインドボイスと、ペルセポネーのパンデミアブームでバッドステータスを付与してから悪魔会話を開始する。

 

「スイキよ、現状は理解しているな?」

「テメェ、話をするってんのにコレはマナーが悪いにも程があるなぁオイ!」

「む、マナーを気にする類の繊細な武人には思えなかった。すまなかったな」

「……へぇ、言うじゃねぇか」

「こちらの目的は仲魔の確保だ」

「……欲しいのは仲魔であってオレじゃねぇ。なるほどな。なら580マッカ寄越せ」

「承知した」

「……まぁ、当然だがコレじゃあ首を縦には振れねぇよ。魔石を寄越せ」

「構わない。魔石にはいくらか余裕がある」

「へぇ、それじゃあ反魂香とかも余ってたりするか?」

「それは無理だ。己に持ち合わせはないし、あっても今のお前に与えるほどお前との交渉には期待できない」

「……いいやがる。なら聞くがよ、お前さんはなんだって戦いなんかをやってやがるよ? そっちの嬢ちゃん共々普通に生きてりゃ良いじゃねぇか?」

「己にとっての普通とは、戦いの中にある事だ。コレでは不満か?」

「いや、戦狂いなら悪かねぇ。オレは妖鬼スイキ、コンゴトモヨロシク」

 

 スマホの中に吸い込まれていくスイキ。情報に分解され、プログラムの中のデータ領域に仕舞われるのだと聞いている。原理の理解はできてはいないけれどもベンチに使えるのはありがたい。

 

「あぁ、一応残っている一体(ソイツ)についてはオレは関与しねぇ。好きにしな」

「テメェ⁉︎人間に尻尾振りやがった負け犬が⁉︎せめて逃がせや!」

 

「……なら、お前は自分の命を見逃す対価として何を差し出す? お前の命を散らしてMAGにすることよりも価値はあるだろうか?」

「マッカだ! マッカならくれてやる!」

「……少ないな、お前ほどの悪魔ならまだ持っているだろう」

「今はコレしか持ってねぇ、本当だ!」

「あ、そいつかなりのマッカ集めてた銭ゲバだぜ」

「クソッタレが! 持ってけ畜生!」

「……いや、まだ持っているな」

「動けねぇ奴に対してそこまでするとか、テメェには人の心ってやつがねぇのかぁ⁉︎」

「合計で2000マッカ強か、それなりだった。感謝する」

「へぇ、分かりゃ良いのさ」

 

「──―あ、殺っちゃった」

 

 そうして言葉を交わして『逃しても良いか?』という感じになった時、リオの『闇討ち』が入った(クリティカル)。スイキは何が起きたかも理解できないままに息絶えた。

 

「もうちょっと強請る所だった?」

「構わない、奴がどんなにマッカを抱えていても無限に金が落ちる貯金箱という訳ではない。一度限界までやれば十分だろう。万が一動かれても困るしな」*6

「というかごめんね。ここ元々は40レベル代の異界だったんだけど、GP上がって強くなってるみたい」

「安定してるとはいえ、出てくる悪魔がコレでは破壊した方が良くないか?」

「そうでもないみたいよ? DARK悪魔が少ないらしくて、合体素材集めに使えるらしいの」

「把握した。では早速合体といくか!」

「……え? ここで?」

「もう少し周囲の警戒ができる場所でやるべきだろうか?」

「プログラム内の悪魔合体ってそんなに良くないって聞くけど」

 

 その言葉に、頭に電流が走るような気がした。

 

「何ッ⁉︎邪教の館アプリ以外に悪魔合体をする方法があるというのか⁉︎」

「顔近い顔近い、現実世界の悪魔合体施設なら、最適な悪魔の調整とかもしてくれるらしいし、御霊合体とかデビルソース付与とか色々できるって。まぁ、その辺が面倒になってサマナー辞めた私が言うのもなんだけど」

「恐ろしく気になるぞ! 己のやり方以外に悪魔を強くできる手段があるのだな! 知っていたかスイキ!」

「普通に知ってたわ。何言ってんだお前」

「本当か! ならば信じよう! お前は『悪魔合体施設』で合体をしてみよう! きっとより強くなれるぞ!」

 

 心が躍るとはこのことだろう。『悪魔を強くする』ということは契約の対価として悪魔使いに課されている。適当に合体しても強くなれるのは確かだが、苦楽を共にするのだから仲魔にもより強くなって欲しいと思うのは人情というやつだろう。

 

「この異界、他には妖精、魔獣、鬼女とか扱いやすい所はあらかた出るし、粘ってみれば?」

「心得た!」

 

 と、意気込んだとしても時間は待ってはくれないモノ。キャンプの備えもしていない己たちでは2体ほどの悪魔を勧誘できたところでの帰還となるのだった。

 


 

「ここが、悪魔合体施設なのか?」

「んー……邪教の館近くの商業区域って感じ? レルムって呼ばれてる」

「市場のようなモノか?」

「そう。最近ちょっと悪魔関係の環境が激変しすぎて、こんな感じに合体施設近くに必要なモノを買える場所を作ったらビジネスチャンスになるんじゃないか! って悪どい連中がやってんのよ。阿修羅会とかのヤクザが」

「己の知っている阿修羅会とは違うと分かっているが、知っている名前だけで親近感が湧くぞ」

「そっちの阿修羅会は何やってたの?」

「子供の身請けだったり、対悪魔用ドラッグの作成だったりだな。作ったドラッグを用いて悪魔を誘導して地下居住区の安全を守っていたと聞いている。『ケーサツ』という仕事だと誇らしく言っていた者も多かったな」

「……絶対集めた子供使ってナニカやってる奴じゃん」

 

 ざっと出てきたその言葉にドキリとする。己の中では考え至らなかった衝撃の真実だったのだが、この世界に生きるリオはさも当たり前のように『正解』に当たりをつけた。

 己がそういった想像力が欠けているのか、リオ達この世界の人々の想像力が逞しいのかどちらだろうか? 

 

「レルムでこの程度という事は、最精鋭の『業魔館』という所ではもっと凄まじい市場ができているのか?」

「でっかい船が丸ごとこんな商業施設になってるわ。ホテルだったり武器市場だったりね。まぁ、紹介状ないと受け付けてくれないんだけど」

「そうなると、やはり『キリギリス』の使い手と接触を持つ必要はあるだろうな。『武器や防具をケチったときに失われるのは命だぜ』とは良く聞いた忠言だった」

「良い事言われてるね。師匠さんとか?」

「いや、コレを言ったのはハンターになったばかりの者たちが多いな。己は武器屋で下働きをしていた事があるのだが、その時にさまざまな者がアドバイスをくれたのだ」

「……近所の子供に格好つけるダサい奴だ」

 

 ハンターとして大切な事の多くはそういったタイミングて初めて触れる事が多かった。仲間を大切にする事、結果さえ良ければ他はどうでも良いという事、命さえあれば他は無くなってもなんとかなると言う事、様々だ。

 

「しかし、MAGの少ない者が多いな。感じ取れないように隠す呪符などが流行っているのか?」

「普通に弱いからじゃない? 最前線クラスの鉄火場に潜り続けられる『ノリの良さ』ってなかなか来るモノじゃないし」

「自力を高めている者たちが多いという感じだろうか? だとすればきっかけ一つで皆強者(つわもの)になれそうだな! 頼もしいぞ!」

「強くなった人たちが皆良い人とは限らないけどね」

「悪い者とも限らないだろう?」

「そりゃね」

 

 そうしてレルムを歩いていると、目立つ装いの一団がいた。あの頭部装備は、ドルフィンヘルムの改造品だろうか? 

 

「あの被りモノの者たちは何者なのだ? リオ達技研の者のような動きの鋭さを感じるぞ」

「アレは……うん、検証勢だわ」

「検証勢?」

「キリギリスの掲示板に流れた情報を精査して、wikiに情報を載せてる連中ね」

「素晴らしい志の者たちだな! なるほど、装いに統一感を持たせて団結力も高めているのか!」

「目をキラキラさせないの。連れてかれるよ?」

「むぅ……致し方あるまい。己の面倒すら見れぬ若輩は彼らにとっても不利益だ。次に出会った時には協力を申し出たい所だ!」

 

 と言葉にしていると検証勢の一人と目が合った気がした。レベルは己より上、技の冴えも同じく上だろうから戦えば苦戦を免れないだろう。

 

 敵意はなかったので、一つ会釈をする。向こうも普通に会釈をした。

 

「こらこら、言ってる側からアピールしないの」

「アピール?」

「盗み見られたのに反応するなんて『お前の視線はバレバレだ!』な威嚇でしょう。絡まれて時間無くなってもしらないよ? 予約時間はすぐなんだから」

「なるほど、話が弾んで時間を過ぎてしまっては大変だな」

「そういうことじゃないんだけど……まぁいっか」

 

 邪教の館への道を進んでいく。

 食事処ではハンターのように見える者たちが和気藹々と英気を育んでおり、悪魔もまた甘味をはじめとした嗜好品を楽しんでいる。

 総じて、己にとっては生きやすい空気ではありそうだ。だが己が良く知るという事はこの世界の一般的には知られていない、『平和ではない』場所なのだろう。

 

 難しい話だ。

 

 そうしていると、軽装な一人の少女が『キリギリス』について人に尋ねている場面が目に入った。

 その事で、流していた疑問を尋ねてみる気になる。

 

「リオ、今更だが『キリギリス』とはなんなのだ?」

「えっ? ……そういや何なんだろ、便利な掲示板にたむろしてる連中くらいとしか考えてなかった」

「リオも知らぬのか。とすると、なにかの深謀遠慮の一つであるのだな。まだ表層に触れただけの己には民草を守る向きの謀に見えたが、どうなのだろうな?」

「何も考えない馬鹿の集まりだと思うけど」

「であればリオも馬鹿者となってしまうぞ?」

「割とそうだけど」

「……そうは思えぬが」

 

 リオはリオで色々あるのだろう、そうとりあえず置いておく。己がこのような化け物じみたレベル(トウキョウ基準)になったのにはきちんとした理由がある。最精鋭として最前線で戦い続けた上でそれより上の限界を破らなくては死ぬ場面があっただけだ。

 

 そんな己より普通に強いリオは、己以上の地獄を見たのだろう。気軽には聞けないが、然るべき時に聞いてみたいとは思う。仲間を知ることは信頼を生むのだから。

 

「着いたわね。ここが予約取れた悪魔合体施設。ここの主は『シモン・ムーラン』、エジプト系悪魔について造詣が深い、熟練の悪魔合体士よ」

「エジプト系悪魔か! ペルセポネーの素材となった悪魔の一体はエジプトのオシリス神なのだ。これは縁があると言えるだろう!」

「ほほぅ、オシリス神を扱えるサマナーとな。顔を見てみるものじゃな」

 

 ドアを開けて現れたのは布で体の多くを隠した老術師。すこしゴワゴワした質感の布は頑丈さもさるものながら、対魔術防御も優れているだろうと思わせる。

 

「爺様、こんばんは」

「壮健でなによりですな、姫」

「姫はやめなさいっての」

「ほっほっほ、さぁ中に入りなさいな」

 

 立ちという感想を抱かせる。

 リオとの軽妙なやりとりの中には優しさと思慮深さが滲んでおり、仲魔を預けるのに不満感は今のところない。

 

 コンピュータコンソールと培養ポッド、そして魔法陣なのが敷き詰められた空間へと誘われた己は、腹を括ってこの世界流の悪魔合体に挑むことにする。

 まずは疑問の解消からだ。

 

「まず、この悪魔合体施設での合体がCOMP内蔵のモノとはどう違うのかを教えてくれないか? 最新技術に明るくないのだ」

「COMPによる合体も様々じゃ。昔はスキル継承ができんかったが、最近のプログラムじゃとできるモノもある。話に聞くシュバルツバーツ調査隊の合体システムじゃと結果からの検索合体なんてもんもできたと聞く」

「……己の召喚プログラムのモノにも最精鋭の検索合体機能がある」

「ほう? 拝見してもよろしいか?」

「ああ、コレが己のスマホだ」

 

 そう言って左手につけていた『籠手型のスマホ』を渡す。

 

 それについてリオは

 

「コレをスマホって言う世界がわっからん。ガントレット型スマートフォンって売れないでしょどう考えても」

 

 とぼやいていた。

 

「このCOMPはどのように?」

「拾ったモノだ。持ち主を探したが『所有者死亡につき新規ユーザーを登録します』とスマホに出た事と、それどころじゃなくなったので半ば勝手に使わせて貰っている」

「中にある悪魔召喚プログラム、かなり高性能なモノですが、最新型には二つほど型が落ちますの。『コマンダースキルシステム*7』や『デビルCOOPシステム*8』がありませぬ」

「なにか不都合があっただろうか?」

「いいや問題はないとも。合体施設に持ち込む場合、『悪魔契約』機能が規格に合っていれば大丈夫なんじゃよ。契約さえできればプログラムの機能に落とし込めるからの」

「なるほど。では合体の相談をしたい。現在合体に使える悪魔は『妖鬼スイキ』『妖精ヴィヴィアン』『魔獣アーマーン』と『悪霊ピシャーチャ』の四体だ」

「ふむ。スイキの契約時レベルは56、最近現れるようになったタイプの『氷龍撃』を覚えておるタイプですの。ヴィヴィアンの契約時レベルは52、成長によって3分の魔脈を覚えるタイプ、アーマーンの契約時レベルは56、雄叫びとモータルジハードを持っており、デビルソースには勝利の雄叫びの存在するの」

 

 悪魔たちのデータを見てから澱みなく情報が流れ出る。深い知識に由来するゆったりとした言葉は、その重要さを『当たり前のもの』と勘違いさせてしまいそうだ。

 

「アーマーンの『デビルソース』というものはどのように入手できるのだ?」

「悪魔がその全てを知覚された時*9か深く絆を結ぶ*10かでデビルソースは見える形となりますの。もっとも狙ってソースを抽出するのはほぼ不可能なこと、気にせずとも良いのです」

「ふむ……己のレベルはこのスマホ換算だと60*11素材になる悪魔たちのレベルがいささか高い気がするが、問題はないだろうか?」

「目的の種族だとかは決めておいでです?」

「全くない。使う属性をバラけさせて欲しいという程度だ。強いて言うなら『仲魔を安全に集めるための仲魔』が欲しいか」

「合体結果をざっと見てみるとしよう。この程度なら総当たりが可能じゃよ」

 

真4F方式 作成レベルは平均+1

ベースレベル1ベースレベル2作成レベル作成種族合体結果(予想)
妖鬼LV56魔獣LV56LV57龍王LV60 龍王ゲンブ
妖鬼LV56妖精LV52LV55 鬼女LV59 鬼女ターラカ
妖鬼LV56悪霊LV54LV56 邪鬼LV62 邪鬼ギリメカラ

 

妖精LV52悪霊LV54LV54妖鳥LV56 妖鳥タイホウ
妖精LV52魔獣LV56LV55妖鳥LV56 妖鳥タイホウ
悪霊LV54魔獣LV56LV56妖獣LV59 妖獣カブラカン

 

真3方式 作成レベルは平均+1

ベースレベル1ベースレベル2作成レベル作成種族合体結果(予想)
妖鬼LV56魔獣LV56LV57鬼女LV58 鬼女クロト
妖鬼LV56妖精LV52LV55夜魔LV56 夜魔クイーンメイブ(電撃 タルカジャ
妖精LV52魔獣LV56LV55天使LV50 天使ドミニオン

合体法則上に『悪霊』存在せず ピシャーチャ 種族適応 悪霊 → 幽鬼

ベースレベル1ベースレベル2作成レベル作成種族合体結果(予想)
幽鬼LV54妖鬼LV56LV56妖獣LV43 妖獣モスマン
幽鬼LV54魔獣LV56LV56 妖獣LV43 妖獣モスマン
幽鬼LV54妖精LV52LV54夜魔LV56夜魔クイーンメイブ

 

 

真V方式 作成レベルは平均+1

ベースレベル1ベースレベル2作成レベル作成種族合体結果(予想)
妖鬼LV56魔獣LV56LV57鬼女LV58 鬼女ラケシス マハタルカジャ
妖鬼LV56妖精LV52LV55鬼女 LV52 鬼女クロト 単体マカラカーン、ディアムリタ ヒュギエイアの杯(回復チャージ
妖精LV52魔獣LV56LV55夜魔LV56夜魔クイーンメイブ アギダイン マハザンダイン フォッグナー ハイリストア

合体法則上に『悪霊』存在せず ピシャーチャ 種族適応 悪霊 → 幽鬼

ベースレベル1ベースレベル2作成レベル作成種族合体結果(予想)
幽鬼LV54妖鬼LV56LV56外道LV33 外道ブラックウーズ
幽鬼LV54魔獣LV56LV56 妖獣LV49 妖獣ヌエ
幽鬼LV54妖精LV52LV54鬼女LV52 鬼女クロト

 

 あっさりと見せられる同じ悪魔を素材にした3種類の合体表。ピシャーチャが『悪霊』として扱われるか『幽鬼』として扱われるかの差が見える。

 

「同じ悪魔の合体だと言うのに、結果が異なることがあるのか?」

「それは合体の軸をどこに合わせるかで変わるものなんじゃよ。同じ妖精、同じ魔獣といっても細かく見れば中身は異なる。ピクシーを軸に『妖精』とするか、『ヴィヴィアン』を軸に『妖精』とするか、のようにの。今回合体法則の軸のズレを大きく受けているのはピシャーチャじゃが」

「──―これは悪魔合体士という仕事が成り立つ訳だ。幅広い知識によるアドバイスに加えて合体先の選択肢まで増えるとは」

「それで、どの合体を行うかの?」

 

 パッと見て使えそうに見えるのは夜魔クイーンメイブ。電撃属性を得手としつつも火氷電衝の4属性に耐性を持ち弱点を持たない*12という優秀な耐性を持っている。また、別の法則では衝撃に無効の耐性を持ち、アギダイン、マハザンダインの2種類の属性を扱う*13事が可能だった。

 

「まずはこの方式で、ヴィヴィアンとピシャーチャを素材としてクイーンメイブを作成したい」

「では、合体を始めようかの……」

 

 召喚したヴィヴィアンとピシャーチャと一度の別れを告げる。ヴィヴィアンからはスクカジャと暗夜剣を、ピシャーチャからは吸血とバインドボイスの継承を行おうとしたのがこの悪魔だ。

LV56夜魔 クイーンメイブ

ジオダイン タルカジャ メディラマ スクカジャ 吸血

 

「む? バインドボイスと暗夜剣は継承できなかったぞ?」

「これは、スキルの継承適正ですの。この合体方式じゃとブレスなどの口を使うスキルや武術に似たスキルなど、継承するのに悪魔側の適性が必要になるのじゃよ。クイーンメイブはなかなか作ることがないんで、口系統の継承ができんとは初めて知ったわい」

「強力な耐性に目を引かれたが、それだけではないのだな」

 

「あら、お嫌いですか?」

「いいや全く問題はない! お前のおかげで新たな学びを得ることができたのだ。その上魔法の強さには変わりがないのは見て取れる。これからよろしく頼むぞクイーンメイブ!」

「フフッ……ヴィヴィアンだった私をあんなやり方で勧誘した方だとは思えない純朴さですわね」

「手段を選ばないサマナーは、嫌いだったか?」

「いいえ全く。私はクイーンメイブ、今後ともよろしく」

 

 魅了状態の女性悪魔をスカウトすると一時は確実に成功する。ハンター商会の色恋沙汰にふしだらだったイトウさんから聞いたことであり、今なお己を助けてくれる有力な情報だ。

 しかし、魅了が解除されたときにどのような心境で仲魔を続けるかは対話が必要になる。だいたいは問題ないし、ヴィヴィアンとの話では合体に使うだけなら問題ないとは言われていた。

 ──―それはそれとして悪いことをした気分にはなるので、合体後に話すまでは少し不安であったりはするのだ。いつもの事であるが。

 

「では、スイキとアーマーンの合体はどう使う?」

「えっと……こちらの合体法則にて龍王ゲンブを作りたい。可能か?」

「それで良いのか? 何やら悩んでいるようじゃが」

「プログラムの方の悪魔全書にアーマーンとスイキの登録ができていないのだ。『登録時にエラーが発生した』と言っていてな」

「それもまた、悪魔を捉える軸の違いからじゃよ。そのプログラムの中で扱える悪魔の軸からずれておったんじゃろうよ。そのあたりはアップデートで適応できるはずじゃから、その籠手にプログラムを入れた者の修正パッチを探すんじゃな」

「心得た! 課題が沢山で心が躍るぞ!」

「え、躍るの? 嫌にならない?」

「コレをすれば改善できると言う(しるべ)なのだ。むしろ見当たらない方が辛く苦しかった! 何をどうすれば良いのかさっぱりだったからな!」

 

 まじかーと言ってるリオは、手元の……何だろうか? 一つのモニターを二つの丸いリモコン? コントローラー? のようなもので挟んでいる機械を動かしていた。

 

「姫よ、暇じゃからと悪魔が出る側でSwitchを動かすでない」

「良いじゃない、事故率0.000000001(オーナイン)の腕を信用してるのよ」

「遊びがないとも言うんじゃがなぁ……」

 

 そんなぼやきを言いながらスイキとアーマーンは合体され、どっしりと構えた龍王がその姿を表した。

 

「我は龍王ゲンブ、コンゴトモヨロシク」

「よろしく頼むぞゲンブよ!」

 

LV60龍王ゲンブ

牙折り ブフダイン モータルジハード 氷龍撃 ラクカジャ 雄叫び

 

 そうして、とりあえず有り合わせの仲魔はできた。火炎、衝撃はなく、破魔属性も居ないという体たらくではあるが、カジャ系は整い、頭数も揃えられた。

 

 コレで最低限、戦いながら仲魔を集める事はできるだろう。

 

「今日は付き合ってくれて感謝するぞリオ!」

「いいよ、ジエンくんが強いと私も楽だしね」

「……所で、その『すいっち』? というのは何なのだ?」

「ゲーム機。えっと、ゲームボーイとか分かる?」

「おお! 分かるぞ! 己はこれでも役満仙人を1プレイで撃破できたことがあるのだ!」

「わぉタイムリー。ちょうど最近Switchでゲームボーイできるようになったんだよ」

「????? ……ッ⁉︎これがゲームボーイなのか⁉︎最新式なのか⁉︎」

「大体そんな感じ……やる?」

「……よし! やらせて貰おう!」

「次の予約があるから、どっか他所やってくれの」

 

 

 そうして、己は久しぶりの知っているモノに、知らない形で触れ合えた。

 

 

 すると、何故だか楽しいのに涙が出てきた。

 指の動きに澱みはない。戦うよりも簡単だから。

 切るべき牌の選択に澱みはない。皆で競ったゲームだから

 

 1プレイ15分20マッカ。遺物集めで手に入れたマッカの、数少ない娯楽に回せる予算で、生きてた皆と遊んでいった。

 

 まだ己の世界が崩れる前で、まだほんの少しだけ人間の命が重かった時で、まだ未来に希望を持てた頃。

 

 己が戦えなかった頃の思い出だった。

 

「ジエンくん?」

「……すま……な゛い゛! 大丈夫ッ……だ!」

 

 ゲーム機を汚さないように流れる涙を拭いながら、己は牌を捨てていった。

 

「……思いっきり暴牌してる」

 

 そんな罵声が何故か優しい音に聞こえたのは、不思議だった。

 


 

 その涙を見るまで、ジエンくんは年下の皮を被ったスーパーマンに見えていた。

 凄すぎて理解できない、心の強い戦士みたいに。何となくで死地にいられた自分とは違うように見えていて

 

 けれど、ゲームをしながら流した涙を見て気付いた。

 

 

 ジエンくんは強がっていただけだった。

 強い戦士でいなければ生きていけなかったから、強い戦士を演じていただけだった子供だった。

 

 弱い事が罪でいる場所に、適応してしまった子供だったんだ。

 

 

 そう気付いたら、不思議と子宮が熱くなった。

 この子の母親《ママ》になる。そう決めた。

 

 今まで何となく戦って何となく強くなったのはこの為だったのだと、天命を得た。

 

「ジエンくん、お疲れ様」

「うむ! 12分51秒! タイム内だ!」

 

 まずはこの子を甘やかそう。そんな事を決めたのだった。

 

「って、タイム測ってたの?」

「うむ! 動画も撮ってあるぞ!」

「え、すご」

 

 黒服くんに動画投げてbiimシステム動画を作らせよう。母性とは関係なくソロゲーマーとしてそれは思った。

 

 

 

*1
魔王アバドン 真2では街一つ食べるほどの暴食悪魔 原典では奈落の底的なニュアンスであり別に大喰いではない

*2
威力47 火炎属性の弾丸

*3
威力47 電撃属性の弾丸

*4
威力117 衝撃属性の弾丸

*5
真・女神転生V出典

*6
主人公たるフリンやナナシなら無限にファンドできます。流石プロのカツアゲ士だ、レベルが違う

*7
真・女神転生DSJより出典

*8
真・女神転生SJより出典

*9
悪魔の解析ゲージ100%での入手

*10
2回目以降の入手法、レベルアップ時ランダム入手、初期レベルよりレベルが高いほど確率大

*11
勧誘時の会話経験値で上昇。みんな大好きファンドレベリングである

*12
真3のクイーンメイブ

*13
真Vのクイーンメイブ




あとがき

ジエンくんが流れ着いてから一息つくまでが終わりました。ようやくキリギリスっぽい二次元を推す性質を見せられるようになってきます。
ジエンくんもリオさんも、ゲーマー属性です。

ジエンくん
1プレイ15分の阿漕なゲーム屋の兄ちゃんにマッカを毟られていた過去を持つ。ただ、1プレイあたりの時間を気にしてプレイすることは正確な時間間隔を刻むこととに繋がり、思考速度は初戦で生き延びるための頭の回転に繋がった。
そしてプレイの動画の共有はハンターメモ共有にてそれを見ていた人たちに『名前を売ること』を成立させた。総じて、ハンターとしての第一歩を踏みしめるための力となったのである。

ただし動画を撮っていた時のスマホはキッズケータイであり、召喚プログラムを十全に扱うのには足りない。
埠頭にて足を滑らせた者の残した、謎の籠手型スマホを手にしたのはそんなときだった。


尚、現実世界での役満GBのRTAはspeedrun.com、ニコ生RTAwiki共に記録が見当たらなかった(2/20日当時)のでスイッチのNintendo Switch Onlineで完走できれば世界記録である。未来の走者さんがんばれ!


リオさん(25)
子宮がうずいてママ活の光面に目覚めた女。ジエン君が通報したら死ぬ
元々はソロゲーを黙々とやっていくタイプのゲーマーであり、『漫画が好きだぁ!』『アニメが好きだぁ!』『ガチ推しアイドルがいるんだよぉ!』というキリギリスのメインストリームに乗り切れずにいた。とはいえ世界が滅んでは新作ゲームに溺れられないので世界を守る活動をしていた。(桜井さんをはじめとしたゲームクリエイターの方々や任天堂、フロムといった企業を守ることは考慮に入れるまでもない()()として彼女の行動の中にある)
そんな彼女はごく普通に喪女であり、普通でない情報をもとに修練を積んだ無自覚な修羅だった。

ママ活に目覚める、この日までは。




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ジエン 初めてのスレ立て 他2本

 一人、また一人とビデオ会談の場に上がっていく。発言は許可制であり、己含めて皆音声を発せない。だがコメントはできるようで少しずつ

『何で皆さん集められたんです?』『第三次世界大戦(があったから)だ』『なんだってそれは本当かい?』『乾匠って奴の仕業なんだ……』『何者なのだ? その者は』『ネタにマジレス返すのやめて』

 と各々自由に発言をしていた。

 

 そうしているとメイン画面に一人の女性姿が現れる。

 

 年若く、銀の美しい髪を靡かせる彼女は、その目だけが死人のように腐っていた。人外ハンターランク4であった呉キリカのノートにその姿があった覚えがある。人外ハンター商会の礎を築き死んだ功労者だと。

 

漂流者(ドリフターズ)の皆様、この世界へようこそそそそそ』

 

 そんな巫女殿は、顔面のパーツが精神の狂乱っぷりを表してるかのようにぐちゃぐちゃになっていた。

 


 

 漂流者掲示板の『鍵』、およびキリギリス掲示板の暫定的な閲覧権限を授かった己は貸してもらった個人ブースの椅子にもたれて情報を整理する。

 

 わかっていたが、己の過ごしたトウキョウは滅んだようだ。

 

 世界は数多の滅びの中にあり、己のいたトウキョウやコメント欄にいた漂流者たちの世界は、様々な理由で崩壊したらしい。

 

 己の過ごしたトウキョウが何時崩壊したかは分からない。なので、世界の崩壊から逃げ出した『次元シェルター』が今どうなっているのかは誰にも分からない。

 

 もしかしたら、滅びた別の世界に辿り着いて、世界の崩壊に巻き込まれてしまったのかもしれない。もしかしたらシェルターそのものが崩壊して、時空の狭間で藻屑と消えたかもしれない。

 

 もしかしたら、『この世界』ではなく別の世界に向けて漂流しているのかもしれない。

 

 なんにせよ、己と同じ世界で育った人間と出会える事はもう無いのだろう。

 

「……戦わねば」

 

 巫女殿は言った。ここが滅びゆく世界の最前線であると。ならばと黙って滅びてなるものかと。

 

 自らの世界を守れなかった者たちは皆、戦う事を決意していたように見える。

 

 己も、少しの間過ごしただけでこの世界の、この日常のある社会を守りたいと心から思っている。

 使者の方が渡してくれた『ハンバーガー』は美味しかったし、『エヴァンゲリオン』などの映像作品も心が躍る素晴らしいモノだった。そんな作品が生まれたこの世界が間違いだとは言わせたくない。

 

 戦う力は、己には十分備わっている。

 

 己はかつてのハンター商会のトップ戦力であった。己の世界の最精鋭がこの世界の足切りラインの少し上というのは忸怩たるものがありはする。しかし他の漂流者の皆と違い、己は戦えるラインを超えている人間なのだ。

 

 弱さが故にすぐに戦えないという辛さを味わっている者たちが鍛えるまでの間、己は戦うべきであるだろう。

 

「うむ。やるべき事とやりたい事が一致している。迷う事はないな!」

 

 あとの問題といえば、『世界が幾度も崩壊した事』などは話すべきでないという指示をどのように守れば良いのか? という難題だけだ。

 

 リオ達に多少喋ってしまったが、まぁなんとかなるだろう。

 

「ジエンくん、ケーキ切ったよー」

「けぇき? ……思い出した。柔らかく甘いパンのようなものだな! 御相伴に預かろう!」

「良いところのチョコケーキだから、美味しすぎてほっぺた落ちるかもよ?」

「なんと⁉︎過剰なる美味しさは頬を落とす物理ダメージになってしまうのか⁉︎」

「あ、ごめん慣用句。すっごく美味しいって事」

 

 技研の皆と食べたチョコケーキ、それは重厚な甘さが脳を侵食する未知の感覚だった。確かにこれほどの感動であれば、己の頬が落ちて消えると錯覚しても無理はない。

 

 飲み物として出された少し変わった深みのある味のコーヒー*1も美味であり、良いリフレッシュになった。

 

「さて……やってみようか『スレ立て』を!」

 

 そうして、就業時間を終えた己は技研の仮眠室の一角を間借りさせて貰いながら仲間たちの情報を探してみる。まずないだろうけれど、一縷の望みを懸けて。

 

 


 

 

【専用ユーザースレッド】

【鍵】逸れた仲間を探している。情報求む【鍵】_ドリフターのみログイン可能です

 

 

1:人外ハンターランク8@仲魔集め中@LV上げ中

 こういった掲示板には不慣れであるので無作法にはお目溢し願いたい。

 

 己は人外ハンター商会所属、ランク8のハンターだった。

 だがトウキョウからの脱出戦の際にシェルターの仲間と逸れてしまった。

 このスレッドを見ている中に仲間がいるのなら、連絡を願いたい。

 

 

2:名無しの漂流者@LV上げ中

 立て乙、ランク8とか強そう

 あと名前変な事になってて草

 

3:名無しの漂流者@LV上げ中

 どーせこの狂った世界では雑魚でしょ。レベル100と戦うとかイカれてる

 

4:名無しの漂流者@LV上げ中

 疑問なんだけど、シェルターの連中は普通に死んだとは想わなかったの? 

 なんか生きてるって思えるきっかけとかあるん? 

 

5:人外ハンターランク8@LV上げ中

 コレで名前は治ったか? 

 巫女殿の説明を全て理解できたとは言わないが、世界の崩壊から異界に逃れた者なら生きている可能性があるという説明に思えた。

 己が最後にシェルターを見たのは次元ジャンプにてトウキョウから消えた時なので、崩壊に巻き込まれて死んでるとは思えないのだ。

 

6:名無しの漂流者@LV上げ中

 あれ、シェルターから置いてかれてる? 乗り遅れたの? 

 

7:人外ハンターランク8@LV上げ中

 シェルター防衛のため殿をしていた。正直何故生きているのかは己にも分からぬ。

 

8:名無しの漂流者@LV上げ中

 ここは任せて先に行け! は死亡フラグではなかったのか⁉︎

 

9:名無しの漂流者@LV上げ中

 集まってくる悪魔が雑魚だったとか? 

 

10:人外ハンターランク8@仲魔集め中

 段々と強くなっていたが、最終的にはLV50台後半の軍勢が沢山だったな

 メインは堕天使で、魔王も紛れていた化け物軍隊だったぞ

 

11:名無しの漂流者@LV上げ中

 ……この世界基準でもヤバくね? 

 

12:名無しの漂流者@LV上げ中

 MPもたないでしょ。嘘松乙

 

13:名無しの漂流者@LV上げ中

 ……何時間くらい戦ってたん? 

 

14:人外ハンターランク8@仲魔集め中

 シェルターがジャンプするまでは二日は経っていなかったはずだ。詳しい時間は記録にないので言えぬ。すまぬな。

 >>12 仲魔のMPは合体で回復させ、己は周囲からのMAG吸い上げ*2でなんとか使う分を節約していた。手持ちのMP回復アイテムは使い切ったが、意外となんとかなったぞ

 

15:名無しの漂流者@LV上げ中

 ガチもんのやべー奴な匂いがする。現在のレベルはおいくつで? 

 

16:人外ハンターランク8@仲魔集め中

 先日60になった。記録にある己の世界のランク1のレベルと数字だけなら同格になったぞ。この世界の大物のレベルが100を超えると聞いて、まだまだ先は長いと感じる所だな。

 

17:名無しの漂流者@LV上げ中

 バケモンすぎて草枯れる。ウチの世界最強よりも10レベル高い。

 

18:名無しの漂流者@LV上げ中

 何ッ⁉︎漂流者はレベル20程度でひーこら言うだけの連中ではないのか⁉︎

 

19:名無しの漂流者@LV上げ中

 >>18 レベル10台後半の奴もいるぞ

 

20:名無しの漂流者@LV上げ中

 流石にアナライズレベルのズレとかあるだろ。この世界の機械式アナライズってレベル結構高く出るし

 ……いや、それでも60はやべーわ

 

21:名無しの漂流者@LV上げ中

 シェルターにいなかったのに世界の崩壊に巻き込まれなかったの? 

 

22:人外ハンターランク8@仲魔集め中

 シェルター近隣には『中庸の森』という異界があってな。ジャンプが成功した後はそちらで籠城をしていた。

 そこが崩壊したと思ったらこの世界の異界に流れ着いていた! という流れなのだ。『山に登っていたら世界が変わっていた』という漂流者のパターンとほぼ同じだと思うぞ

 

23:名無しの漂流者@LV上げ中

 ……コレ、>>1だけがこの世界に流れ着いたってパターンでは? 

 

24:人外ハンターランク8@仲魔集め中

 己もそう思ったが、確かめなくては何も分からぬではないか。 

 と言う訳で改めて、何か知っている事があれば教えて欲しい。

 

25:名無しの漂流者@LV上げ中

 あ、それならシェルターが無事か分かる方法があるかも

 

26:名無しの漂流者@LV上げ中

 え、なんか知ってんの? 

 

27:人外ハンターランク8@仲魔集め中

 是非ともその方法を教えてくれ! 

 

28:名無しの漂流者@LV上げ中

 巫女さんが言うには、俺たちみたいな漂流者の同位体がいないらしいじゃん。

 だから、シェルターに居る人と同じ顔の人が見つからなければシェルター内部で生きてる! って事にならね? 

 

29:名無しの漂流者@LV上げ中

 あー、言ってたなそんな事

 

30:名無しの漂流者@LV上げ中

 自分の性別違いはいるぞ。実家覗いたら俺ポジがメスガキヒキニートだった。

 

31:名無しの漂流者@LV上げ中

 >>30 涙拭けよ

 

32:人外ハンターランク8@仲魔集め中

 なるほど、性別違いについては留意しよう。『男の娘』というのに注意すれば良いのだな! 

 

33:名無しの漂流者@LV上げ中

 その通りではあるけど草

 

34:名無しの漂流者@LV上げ中

 ただ、悪魔の証明だよコレ。居ないことを知るためには世界全部を見なきゃ行けないんだし

 

35:人外ハンターランク8@仲魔集め中@LV上げ中

 この世界を守り続ければそのうち分かるではないか

 

36:名無しの漂流者@LV上げ中

 覚悟ガンギマリで笑うわ。レベル60とかこんなのじゃないと無理なのか……

 

37:名無しの漂流者@LV上げ中

 そういや森での籠城ってどんくらいだったの? 

 

38:名無しの漂流者@LV上げ中

 40日くらいだな。一月半には少し足りなかった。

 

39:名無しの漂流者@LV上げ中

 ヒエッ

 

40:名無しの漂流者@LV上げ中

 漂流者だからとかこの世界のデビバスだからとかでなく、やべー奴はやべー奴なんだな

 


 

「やべー奴とは、少し酷くないだろうか?」

 

 己は確かに最精鋭の一員であった。だが精神性については日常生活を送れる程度には人間であると言うのに、何故ヤバイ奴として見られなければならないのだろうか? 

 

 と怒りを覚えているとペルセポネーの忠言が届いた。

 

「召喚主様、この世界の一般的な精神とのズレが問題であると思われます。合わせるべき所を知らねば、適応はできません」

「なるほど! で、あるならば他のスレッドだとかの閲覧が有効だな! 多くの者を知れば、ヘイキンテキも分かるだろう!」

 

 そうして、色々見てみる事にする。

 

 人格を調べるのであれば『雑談』カテゴリの方が良いだろう。

 

 その中に、少し目を引いたスレッドがあった。

 


 

【ママ活の】光のママ活勢として生きるために必要な事とは? 【闇に堕ちそう】

 

150:名無しさん@LV上げ中

 纏めると、可愛すぎて子宮がキュンキュンするショタの生殺与奪の権利握れる所まで来てるってコト? 

 

151:ママ活戦士見習い@LV上げ中

 大体合ってる。いい子過ぎて幸せになれ! っていつも思ってるわ。

 

152:名無しさん@LV上げ中

 それでやることがママ活なのか? というかママ活で良いのか? もっと人間としてやるべき事はないのか⁉︎

 

153:名無しさん@LV上げ中

 新入りショタの未来は暗い。こんな女に関わってしまったばっかりに

 

154:名無しさん@LV上げ中

 けどよぉ、高レベルの保護者がいるってのは子供にとっても悪かねぇんじゃねぇか? いや性的に喰いそうだってんなら出張ってぶっ殺してやるけどよ

 

155:ママ活戦士見習い@LV上げ中

 いや、性欲はないわ。求められたら間違いなく股開くけど。涙目上目遣いとかされたら一晩コースじゃ終わらないと思うけども

 

156:名無しさん@LV上げ中

 コイツは今仕留めておくべきだと私の勘が言っている! 

 

157:名無しさん@LV上げ中

 奇遇だな、俺もだ。子供の笑顔を汚す奴に拝ませる明日はねぇ

 

158:名無しさん@LV上げ中

 話戻すけど、異界育ちの世間知らずショタってのが問題なのよな。

 普通に学校行かせるとかじゃダメなん? 聖華学園とかの

 

159:名無しさん@LV上げ中

 せやで。自分の所に監禁して逆光源氏プロジェクト! ってんじゃないなら、外には出しとけ。

 

160:名無しさん@LV上げ中

 逆光源氏とかやってたらその首を切り落として解放するのでヨシ! (ショタの未来だけは)安心だ! 

 

161:ママ活戦士見習い@LV上げ中

 ちゃんとショタくんに見えないところでやってよね! 守れなかったトラウマとか抱かせたらぶっ殺してやるんだからね! 

 

162:名無しさん@LV上げ中

 どっちもトチ狂ってて草

 

163:名無しさん@LV上げ中

 死んだ奴が殺すのかとか言うけど>>1は最前線レベルだものな。食いしばりくらいあるわな。

 ショタ君が頑張って一回撃退しても復活するとかホラゲーのラスボスかな? 

 

164:名無しさん@LV上げ中

 というか、異界育ちのショタくんって勉強とかは大丈夫なん? 大学くらい出させてないと将来の選択肢狭いよ? 

 

165 :ママ活戦士見習い@LV上げ中

 あ、元々そのへん聞こうとしてスレ立てたんだった。

 小学校教育すら受けてない子ってどんな感じに勉強させたら良いの? ちなみに年齢も不詳です。

 

166:名無しさん@LV上げ中

 未開のジャングルからの野生児か何かで? 

 

167:漫画好き*3@LV上げ中

 聖華学園ではそのあたり慣れてる先生がいるから割と丸投げで大丈夫。京都みたいな異常環境から引き取られた子とかもいるから、そのあたりと進み具合合わせれば一人になることもないと思う。

 ただ、自宅での勉強とかは勉強するやり方がわかったないと苦痛になるから、時間作って面倒見てあげないと駄目かな

 

168:漫画好き@LV上げ中

 あと、その子の未来全部背中に背負うんだから自分が死んだ後誰に託すとかその辺りは遺書に残しておくこと。

 当然だけど唯一頼れる母親役が死ぬのはとんでもなくショックだろうから味合わせないのが一番。一人じゃないんだから、仕事はちゃんと選びなよ。

 

169:ママ活戦士見習い@LV上げ中

 ありがと漫画ニキ参考になった。まずは学校ってどうかな? って勧める所から始めてみるわ

 

170:名無しさん@LV上げ中

 で、イッチの肉欲関係はどうするよ。賭けてもいいが絶対襲うぞ。

 

171:名無しさん@LV上げ中

 自分より強い女に押し倒されて喰われるのってガチのトラウマもんだからな。今の嫁さんに10年かけて落ち着かせて貰ったけども、今でも騎乗位取られると立たんし出せん。

 

172:名無しさん@LV上げ中

 強く生き……って言おうとしたら嫁さん持ちのガチ勝ち組じゃねぇか。羨ましけしからん。

 

173:ママ活戦士見習い@LV上げ中

 やっぱ避妊手術受けるかなぁ? 

 

174:名無しさん@LV上げ中

 それはガチで止めろ。沼から引き戻れた時に本当に後悔するから

 

175:名無しさん@LV上げ中

 子供作れない人がいるのに、それは流石にねぇ……

 

176:ママ活戦士見習い@LV上げ中

 となると薬かね? コオロギむしゃむしゃするとか。

 

177:名無しさん@LV上げ中

 コオロギは流産させる用の薬にはなるけど性欲減衰効果はねぇよ

 

178:名無しさん@LV上げ中

 夜戦に突入する体力を残さなければ良いのでは? 

 

179:ママ活戦士見習い@LV上げ中

 それだ! 

 

180:名無しさん@LV上げ中

 レベル60台が疲れ果てるとか毎日どんだけ動くんだよ

 

181:名無しさん@LV上げ中

 魔法型ならワンチャン

 

182:ママ活戦士見習い@LV上げ中

 ガチガチの前衛戦士なので無呼吸状態での形稽古3周くらいなら余裕でいける。体力削り切るにはもうちょいハードなの考えないと

 

183:名無しさん@LV上げ中

 死ぬわ

 

 

「ふむ、どの名無しさんが普通なのだろうか?」

「全員普通ではないと思われます(真顔)」

 


《hr」

 

 明くる日、己は秀英戦国技術研究所の仕事を手伝わさせて頂く事になった。

 

 それが許された故は、情報価値の暴落にある。

 秘伝書に記された『封じられし悪魔』の類は伝承による弱点を突かなくても普通に殴り倒される。

 術法書に記された『悪魔召喚陣』はデジタル化されてない上出せる悪魔のレベルも低い。

 合体魔法などは使える情報であったが、何者かによって流出した情報によって秘伝以上のものが広く知らしめられた。

 

 であればこの技研の資料は無価値なものか? と誰もが問うだろう。少なくとも己は問うた。

 

 そして、それがどれだけ浅はかであったかは記された一つ一つの()()()()()()()文字が答えであろう。

 

「驚いた。熱量、情熱、文字に秘められた(ソウル)が見るだけで伝わってくる」

「やはり魔を見る感覚の強いタイプか」

「多少目がいい程度だ。目でアナライズのできるほどの凄まじさはない」

「十分だ。本格的に見鬼を必要とはいないからな。今は」

 

「それで、この資料はなんなのだ? ゴワゴワした紙に記されているが」

「俺のオヤジが方々から押し付けられたもんだ」

「本来文字に残さず口伝で伝える事だとか、そういう資料もあるみたいなんだよね。GHQの焚書で消えそうになったから死ぬ気で残した情報だから」

「……ここにあるのは技ではなくその根本。理念なのか」

「まぁ世界に喧嘩を売れるほど洗練された技は少ないよ。そういう家のものはメシアンに見つかってるから」

「それならば、先日の『おんみょーじ』の異界の事は大変だったのでは?」

「あそこに残しているのは修行場の注意書きだとか、誰とも知らん修行者のぼやきしかない。一応データには残してるから問題はないだろう」

 

 そういった断片データの中にこそ秘伝は隠されている気はするが、しかしその秘伝が有用ある可能性もないか。

 残すべきは技そのものでなく、技を導き出した精神の方なのだから。

 

「で、今回お前にここを見せた理由がコレだ」

「……む? 強力な悪魔の召喚陣か何かであるのか?」

「この召喚陣で呼び出せる悪魔は堕天使ベリス。レベルは24で使うスキルは会心剣とアギラオ程度。昔じゃそれなりだったが、今では雑魚だ」

「伝承自体はそれなりの有力な悪魔よ。ソロモン72柱の悪魔ベリトの一種として見られていて、東京封鎖では『ベル・ベリト』として暴れ回ったって話があるわ」

「……だが、それは主題ではないのだろう? 召喚陣の方からは、(ソウル)があまり感じられない。周辺のテキスト、理念の方にこそ力を感じる」

 

 素直に、感じたままの言葉を言う。

 こういった超常的な事の言語化というのは言葉の定義や尺度の違いとかで己の言語能力では難しい。己の学が偏っているのはあるが、それ以上に言葉が超常を捉えられるように出来ていないように感じている。

 

「そうだ。俺もリオも、そうだと見た」

「ジエン君がちょっと溢してたじゃん。魔導書を『力のあるテキスト』だって。ちょっと気になって文字の残留MAG濃度を数値化してみたんだよ。そしたら結構な数字が出てね」

「ではこの書物は何かとんでもないものなのか?」

「オヤジも私も、ジエン君も呼んでも体に異変はないでしょ? 書物自体はそんなにヤバいものではないと思う」

 

 なるほど、と頷く。文字を記した時、そこには情報が生まれる。その時に熱量だとか必死さがあると情報の中に感情が紛れ込むらしい。バイト単位にすら届かない、微弱なMAGの広がりが。

 

 そんな事を、命がけでマンガを描いていた一人の男を看取った時に教えられた。大切な思い出だ。

 

「だが、杏奈はコイツを見て何かの影響を受けた。誰とも知らない男の種で孕む程にな」

「杏奈……察するに、リオの相棒だった者か?」

「そう。……まぁ、杏奈が変になった理由として色々調べて最後に残ったのがこの資料室ってだけで、実際は見知らぬ悪魔だとかの影響を受けていた! ってんだったら笑い話にもならないけどね」

「杏奈は馴染みの癒術師の所に預けて検査だとかをさせている。なんの異常も見つからない以上どうにもな」

 

 二人の言葉には諦めの色が混ざっている。この資料室の事を思いつくまでに多くの事を調べたのだろう。それでも理解できない『原因』を探していた。

 

「ジエン君、なにか思いついたことはないかな? 杏奈が大丈夫だって確信が欲しいの」

「……藁をも縋る思いだとは理解している。だが、己には心当たりがない」

「そっかー。ま、そうだよね。そう都合良くはいかない訳だ」

 

 その日は資料室の簡単な掃除だとかで終わる。

 

 資料に記されていた文字達はハンターメモに残されたような『力のあるテキスト』の一種であったが、特別なところはない。本気で記された文章であるだけだ。

 特別な文字ではあるが異常な文字ではない、そう思えていた。

 

 ────今はまだ

*1
代用コーヒーしか飲んだことのない人間の感想

*2
ハンターアプリ マイMPリカバリ 一定距離歩く事によってMPを割合回復(真4シリーズ出典

*3
キリギリスの顔役、休養中の暇つぶしとして現れたスパダリ




 一話取るほどじゃないけど縦のストーリーラインのチラ見せ程度はしようとした結果が最後の蛇足です。

 文字にMAGが残るというのは独自設定です。悪魔が情報生命体ならば、情報そのものにも悪魔の種は宿るのでは?というこじつけです。

 微弱なMAGだって事で許して

-追記-
2023/11/17 ループ周りの情報について微修正しました。さも全体説明でループ発言がされた!というのはありません。並行世界的な話として言われました。という『信用できない漂流者』についての説明になるようにしました。


 今回のジエンくん。
 まな板の上の鯉を捌く相談をされていたのに自分のことだと気付かないガバ。
『スレ立て』を習得したが口調を適用できてない。
 主にMAGを感じ取る感性が高い。見つける時はだいたい視覚情報がきっかけなので目がいいと言っている。

 ママ活戦士見習いのリオさん
 スレ立てて適当に話してたら頭が茹だったママ活女であるという正体が明らかとなった。
 下半身だけで物事を考えている訳ではないが、下半身も含めて物事を考えてるので頭ピンクな方向にもかっ飛ぶ。
 ただし、ジエンくんを目の前にした時は母性強めなので、何も問題はない(大本営発表)
 キリギリスでは、『あまり発言は多くないが貫通物理持ちのイかれた女』として見られていた。これから発言は増えていく。

 ママ活って人生なのではないだろうか?と考え始めた。




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レルムのとある日 イベントは参加してこと意義がある?

 

 リオに、『ガッコウ』を試してみる事を勧められた。なんでも聖華学園というところでは己と同様に悪魔関係で被害を受けた子供達が通っており、この世界で必要な社会的スキル、将来有望な者達との人脈、そして教え導くスキルを持った先生方のサポートなどを受けられるとの事だ。

 

『社会保障』という仕組みはいまいち理解できなかったが、年若い己であればさほどの支出もなく学校に通う権利を得られるらしい。年若い者を善く育てるために生み出された仕組みなのだろう。きっと。

 

 そういう訳で学校の広報誌や契約に使う書類などを送ってもらうこととなったある日のことだ。

 

 己とリオは少し遠くの異界の様子を見て回ってから()()()()()()()へとやってきた。

 レルムとは一つの場所を指す言葉ではなく、悪魔合体施設の周辺にある商業区域の事を指す言葉らしい。なので、イメージとしては隣町の市場というのが近いだろう。

 

 このレルムではレベル70台のバスターが常駐しているとかで治安は落ち着いている。検証勢『黎明の夜明け』の者達は元気に戦い続けており、レベル上げ中の者達は情報交換しつつ英気を養っている。

 

 このレルムではリオの知り合いの『らぁめん屋』なる食事処の店主が店を構えているらしく、今日は顔見せがてら己に食事をご馳走してくれるとのことだった。

 知識として知らないわけではない。小麦だとかを練り上げて細い麺の形にして、それを味のついたスープに混ぜて食べるものだとか。ハンターとして駆け出しであった頃同行した先輩ハンターが、折れた暖簾を見て『お前にも食わせてやりたかったよ』と言った事があった。相当に美味で、温かい味のする食べ物らしい。

 

 尚、異界を回った理由はまたしてもGP上昇に由来する変化の有無を確かめるためだ。異界を管理している者達は他の異界で『想定外の悪魔』に奇襲されてしまったとかで負傷しているらしく、ツテのある技研を頼ったらしい。負傷した者達に大事なければ良い、と思うばかりだ。

 また、今回は物資調達も兼ねて探索を行った。プリンパなどで混乱状態になった悪魔は価値感がガバガバになるという習性を元に、ほぼ無償に近い形でアイテムを集めていく。魔石が集められたのは当然として、宝石類やチャクラポットも集められた。

 簡単な見回りだった為少量でしかないが、0で無くなったのはこれからの戦いの際にとても役に立つだろう。

 

 尚、貰ったチャクラポットはMPを全回復するタイプらしかった。己の知らない良質なものでびっくり仰天である。*1

 

 店の前に着くと、ガラスの扉が勝手に開いた。

 自動ドアというモノらしく、ドアの前に人が来る事をセンサーで感じ取り人が通る間だけ開くモノだ。

 押し引きする戸であれば、腕ひ武器の仕込みをしている者には開きにくかったりもするのだろう。皆に対して気持ちよくある空間にさせる『バリアフリー』という概念だろうか? 

 

 なんだか少しずれている気がするが、気配りの結果だという事には違いあるまい。

 

「姫! 来てくださったんですか!」

「うん。この子に美味しいラーメンを食べさせたい気分だったの」

 

 店主がリオの姿を見て喜びを示す。落ち目だった、とか元ヤクザでしかない、とか言う割には秀英会の影響力はそれなりに残っているようの思える。権力や財産という形ではなく、人の繋がりという意味で。

 

 ここの飯屋の店主は左腕が義手であるようだ。魔導によるものかこの世界の科学技術によるものかは分からないが、ごく自然に料理に扱えている。時に小指が折れて中から温度計が出たりするのは、ハイテックのなせる技だろう。

 

「して、コイツは? 新しい舎弟ですかい?」

「その通りだ! 己はジエン。現在はリオと共に戦っている人外ハンターだ。よろしく頼むぞ店主殿!」

「舎弟じゃないよ? 同僚とか被保護者とかだよ? 分かってる? ジエンくん」

「威勢がいいのは嫌いじゃねぇぜ? ま、無茶だけはするモンじゃねぇがな! それで、ご注文は?」

「私醤油ラーメン味玉付きで、ジエンくんは何が良い?」

「……すまないが何が良いのか検討がつかぬ。なので、店主殿のお勧めを一つ願いたい!」

「なら、黒豚骨の大盛りなんかどうよ? 腹減り盛りのガキなんだから、コレくらいはいけるだろう?」

「任せてくれ! 己はコレでも大喰らいなのだ!」

 

 と、店主がさっさと調理にかかる。

 店主の他に厨房にいるのは若い男が一人と、なんだが見覚えのない()()()()の悪魔が一体だ。

「リオ、あちらの悪魔はなんなのだ? 正確無比な動きで調理をサポートしているが」

「あれは造魔ね。ホムンクルスだとかドリーカドモンだとか、そんな感じの人工体をコアにした悪魔よ。維持が簡単らしいわ」

「なるほど、店内での荒事用だけでなく調理のサポートもさせるとは、手広く有用な悪魔なのだな」

「オホメニアズカリ、カンシャシマス」

「どういたしまして! だ」

「あれ、虚心は? *2

 

 首だけが回転して己達の方に声をかけてくる。声は口で発した音声ではなく、霊的な感覚にて聞き取れるモノだった。発声器官がないのか、あるいは調理中に唾などが飛んでしまうのを恐れて霊的なものにしたのか。後者だと思うが確証はない。しかし、料理に対しての確かな情熱と、食べる者に対しての真摯さを併せ持っているようだ。

 

「へいお待ち!」

「……うん、相変わらず良い仕事してるわ」

「うむ! 美味しそうなスープだな!」

「おうよ! たんと食いな!」

 

 リオに倣って木でできたものを取る。棒部分を開くように力を入れると上方の割れやすくなっている部分が離れて二つの棒になり、箸として使える使い捨ての食器になる。

 

「ぜいたくなモノの使い方だな」

「けど、端材を使って作ってるから材料って意味だと無駄がないみたいだよ? 建材にするのには柔らかすぎて難しいんだってさ」

「なるほど、そうなのか」 

 

 割り箸を使ってラーメンを食べようとする。しかしなかなかうまく麺を挟むことができず、食べるのが難しい。

 

「ジエンくん、箸苦手?」

「正直に言えば、素手とナイフ以外で食事を食べたことは数える程度しかないのだ。箸は以前一度使ったことがあったのだがな……」

「どんな生き方してんだよ坊主。フォーク出してやるからちょっと待ってな」

「……感謝する」

 

 少しだが、ほんの少しだが悔しい気持ちになった。

 

 なので店主が来るまでにリオの手にある箸を見る。

 親指の付け根あたりで一本の箸を固定して、そこに人差し指と中指で持った箸を動かす事で食べ物を挟んで手元に持ってくる。というのが箸の使い方のはずだ。

 

 やり方は合っているはずである。*3

 

 だが手元の割り箸をそう扱っても先端は噛み合わず、ものを挟むことはできない。

 

「要練習、だね」

「むぅ……」

「むくれんなよ。箸がうまく使えなくても飯は食える。気にすんな」

 

 渡された食器、フォークは匙の要領で使うことができ、麺を引っ掛けて口に運ぶことができるた。

 

 そして、麺を口に入れる。

 

 香りの時点で分かっていたが、芳しいものと塩などの強い味が口の中で広がっていく。そんな中で感じるのは、カラタキウワ*4を食していた時の味だ。

 

 それ以上の、なぜコレが美味しいのか? やなぜこのような味がするのか? については理解不可能だった。食している間頭の中には浮かんでいたのは異界が崩壊した時の時空の狭間のようなものが浮かび続けている。

 理解が追いついていない。

 

 

 

「……ハッ⁉︎スープの一滴すら残っていない⁉︎お椀の底に書いてある感謝の文字が見えているぞ⁉︎」

「無心で食ってて、良い食べっぷりだったぜ坊主!」

「これは新しい常連客を捕まえちゃったねぇ?」

「姫のおかげですわ本当に」

「姫とか言うなし」

 

 一緒に出されていた透明な水を飲む。すっきりとした味わいが口の中の後味を洗い流してくれた。

 ……もう少し味わっているべきだっただろうか? と水を飲んでから気付いた己は、食事を味わうという事について得手ではないのだろう。

 

「今更ながら、リオはなぜ『姫』と呼ばれるのだ? ゴドーの娘だからだろうか」

「そりゃ見た目だけは雛人形みたく可愛いからよ」

「見た目だけ言うな。内面もちゃんと褒めろ」

「リオは情熱的で苦を苦と思わず走り続けられる強い人だ! 店主殿が内面の評価を秘めた事を気にする必要はないぞ!」

「……ごめん、恥ずかしいから言わないで」

「すげえなこのガキ」

 

 と、ゆったり食後の話をしていると、少し離れた席のハンター……じゃなかった、デビルバスターがなにやら『悪い事を思いついた』という顔をしていた。

 

「む? そちらの方よ、食い逃げの算段か?」

「んなことしないっすよ常連なんですから、ら酷ぇ言い草だ」

「すまぬ。何か企みを持ったように見えたものでな」

「ちょっとした儲け話を思いついただけだ、大した事じゃねぇ」

 

 と、人外ハンターであった時のように話しかけてしまった。今の権威のない己が言ったのでは、ただの失礼ではないか! と思い至り、自省する。

 

 頭を下げ詫びを申し出ると、簡単に許してくれた。とても善い人格者であった。

 

 そう話していると、リオが何かを思い出したように言葉を紡ぐ。喉の奥の小骨が取れたかのようだった。

 

「あぁ、あんた緑化界の時ごっついラジカセ持ってきてた奴じゃない。空飛んで着いてくる奴」

「……あ、あん時の! 物理貫通のガキんちょ、元気してたか?」

「してるわよ勿論。で、アンタニヤニヤしてどうしたのさ。アイテム相場が弾けたとか?」

「……まぁ良いか。ちょいとコイツを見てくんな」

 

 男に示されたスレッドを見る。

 

 そこには、『レッドアイホークの処刑』という事が闇闘技場のイベントとして開かれるという情報が書かれていた。

 

「む? レッドアイホークとは何者なのだ?」

「あ、コイツ大丈夫なヤツか?」

「RTAやってる子だから大体キリギリスよ」

 

 え、マジで? という顔をした後に男は言葉を発する。

 

「レッドアイホークってのは、HN:漫画好きの別名だ。ちょい昔の話になるが、ヤクザだとか闘技場だとかをぶっ壊し回ってた奴さ」

「普通にほっとけば? レベル100殺せるような化け物をそこらのチンピラが殺せるわけないじゃない」

「いやいやいや、コイツは漫画好きがこれからこの裏闘技場をぶっ壊すって合図だぜ? となるとコイツはキリギリス的に言えば『好き勝手に悪い奴をぶん殴れる楽しいイベント』って事になる訳よ」

「……あ、暴れたいだけか」

「加えて言えば、暴れたい奴に道具を売るチャンスって事だよ。ちょうど正体隠匿効果のあるアクセサリーがかなり在庫にあったからな」

「なんでそんなに数あんの?」

「ガイア系組織への襲撃に使おうとしてたんだが、セプテンで潰すまでもなく壊滅しててな……」

「楽でよかったじゃない」

 

 なんとなくだが、話の流れが見えた。

 彼の目的は『キリギリスを助ける事』ではない。敵組織に与えるダメージを大きくする事だ。

 闇闘技場を仕切っているのは凶悪な組織なのだろう、自身の正体を隠さないで正面から戦えば勝ち目がないほどに。だが『漫画好き』、レッドアイホークなる人物の実力ならば正面から打ち倒すことができる。

 

 しかしそれは、組織に大きなダメージを与えられるという訳ではない。

 どんなに強い人物がいても少数であれば、同程度の数を囮にすれば逃走はできる。囮の人数が多ければ仲間の居所につながる情報を隠すこともできるし、さらに多くの仲間を逃すこともできる。

 

 一般的な話として、個人の力には限界はあるのだ。

 

「このレルムの地図は、サマナーネットに公開されているコレで合っているのか?」

「おう? ……まぁそうだぜ。工事にかける時間もなかったから秘密の地下道だとかは考えなくて良い。転移装置だとかは大量のエネルギーを使うが、設置できない訳じゃねぇから保留。数回は使えると見といて良いだろう」

「お前ら、ラーメン屋でカチコミの相談してんじゃねぇよ」

 

 支払いを終えて外に出る。そこで目につくのは修羅の気配。

 レベルではない。練度や覚悟、潜り抜けた戦いの数が磨き上げる強者の魂《ソウル》を匂わせる人物がちらほらといた。

 

 レベルこそ己と同等程度だが、戦えば死ぬのは己だろう。人間のレベルが少し高い程度で技の冴えが覆えてなるものか。

 

「耳が早い奴多いわね。アンタあの辺に売り込んでみたら?」

「流石に下見が先だっつの」

「ラジカセの人よ、己達の助力は必要か?」

「飯屋でちょいと話しただけの奴をそこまで信用するのはただの馬鹿だぜ? 俺のアカウントと隠蔽能力の高い外套を余らせてる奴が居るって伝えてくれりゃあ十分さ」

 

 そう言って足早に去っていく男。

 とはいえ襲撃が起きるまでに長い時間があるわけではないのだから、また遭遇することもあるだろう。

 

「リオはキリギリスの強者であるのだろう? 『漫画好き』殿の援護に行かないのか?」

「どっちかというと周辺被害見ときたいかな。制御無くして暴れ回る悪魔とか出てきそうだし、会場には行かないでおくよ。ジエンくんは見物行きたかった?」

「レベル100オーバーを相手取れる達人の技なのだ、見て見たさは当然にある。だが、可能なのか?」

「難しいかな。ウチ系列って表側にちょっぴり支援してる程度だから。観客席取れない」

「ならば是非はないだろう。己も周辺警戒に回るぞ!」

「……せっかくのゲリライベントなのに乗り切れないのは、私のぼっち気質なのかなぁ?」

 

 そうして、地図を片手にレルムを巡る。

 

 裏闘技場周辺には人を惑わせる結界がある。詳しい理屈は分からないが、見た感じでは迷いの森のような仕掛けだろう。特定の行き方をしなければ秘められた場所には辿り着けないが、外に出る道は多くある、のように。

 

 あの手の仕掛けは上手く使えば奇襲分断大将狩りとなんでもできるので攻め込む側としては警戒が必要だ。己は踏み込まないけれども。

 

「うん、ざっと見た感じ抑えた方が良さげなのはココとココだね。送迎車両はここから出てる筈。周囲にあるのはスポンサーの息のかかった店舗だから守りも硬そう」

「コチラのレルム外に繋がる方は抑えなくて良いのか? 手分けをすれば可能だと思うが」

「楽しいだけのイベントで無駄にリスク取るのもアレじゃない? 私たちの他に戦力が居たら相談するくらいで良いと思うわ」

「しかし、邪悪を逃してしまうのでは?」

「単純に、こっちのルート使う奴は自分の実力に自信があるレベル60から70あたりか、それ以上の化け物になりそうなの。『自力でなんとかできる』からルートの安全性を考慮しなくて良い連中のルートね。闘技場の観客のレベル帯、人数がどんなもんかの情報がゼロの今は避けたほうが良いかな」

「それは、逃げではなかろうか?」

「まぁ若干逃げよりの選択ではあるけど、安全なルートで逃げようとする連中の方が逃したら後々面倒臭いってのが理由としては大きいわ。権力者を仕留めるときは、権力が及ばないフィールドでやるべきなのよ」

 

 なるほど、と思う。

 

 言い方を変えれば『ハイエナ』、美味しいところ取りであるのだけれど、今回の場合は闘技場で楽しく暴れるのが美味しいところだから、残飯処理になるのだろうか? 

 

 まぁ、やってみればわかるだろう。

 

 

 人を人とは思わぬ外道、捕らえて懺悔させたくあるが余裕がないなら倒すで良い。

 ハンターであった頃から、その辺りはあまり変わりはないのだ。

 

 


 

 統一した格好、『かめんらいだーおうじゃ』という戦士の服装に偽装した者達や、先のラジカセ殿が売り捌いた、あるいは元々持っていた姿隠しの外套の類を使った襲撃者たちがいた。

 

 明確な参加人数などは知らない。キリギリスの掲示板に侵入ルートがいくつか載せられていた事と、『現地集合現地解散』の取り決めがされたこと。 あとはこちらに会釈してきた修羅の匂いの者達がたまに紫色の鎧を着ていたことから『そこそこの数』だとわかる程度だ。

 

「ハイエナする人は、まぁあんま居ないわね」

「乗り込み暴れたいのであろう。だが、『悪人を倒す』という行為は快感を得られてしまうからな。ヤクザ者が手下の洗脳にそういう手段を使っていたので、少し心配ではあるな」

「そのへんの自制は大丈夫でしよ。自分で考えた頭で『倒すべき悪』を決めた馬鹿しか参加してないし。その辺の感覚がズレてるヤツはとっくに邪悪に堕ちてるわ」

「なるほど」

 

 そう語りながら、遠方での乱戦を見る

 

 幾人かは闘技場外壁を破壊して侵入したようで、激しい戦闘音が聞こえてくる。遠目でしかないが、襲撃側が優位に立って居るように見てとれた。

 

 すると、幾つかの車両が闘技場内部から出ようとするのが見える。己達が敵として戦うのはあの連中であるだろう。

 

「あら?」

「む!」

 

 そう遠くを見た瞬間、横合いから現れた何者かの襲撃がやってくる。

 

 放たれたスキルは 見たことがないものだった。

 

かいてんげき*5 敵前列に大ダメージ 

 

「後詰がテメェとは豪勢な襲撃だなぁオイ姫サマよぉ!」

 

 攻撃のダメージが重い、意識の隙間に入られたが魂の高揚《ニヤリ》まではされなかった筈だが

 

 受けた衝撃で戦場を移動させられる。待ち伏せをしていたレルムの一角より、シャッターの閉まっていた店内へと。

 

「「召喚!」」

 

 互いの悪魔召喚プログラムが起動する

 

 己は『ペルセポネー』『クイーンメイブ』『ゲンブ』の三体の召喚だ。

 

 敵は見たことのない悪魔が多い。スマホの簡易アナライズによると、このように出る

 

LV41邪神ナラギリ*6
LV41堕天使ベリス*7
LV46龍神ペクヨン*8
LV49幽鬼グール*9
LV65??? ナッジアント

 

 

「リオ、大将首のナッジアントのレベル己達以上だ、気をつけろ!」

「馬鹿が! 先手を取った時点でお前らに先はねぇ! ベリス! ペクヨン! ナラギリ! やれ!」

 

 火炎→地変→マハラギオン

 アギマグナスマハラギオン

合体魔法 ロワゾー・ド・フー*10

 

「何ッ⁉︎」

 

 3種のスキルが混ざり合い、発生するのは凶悪な炎の力。見たことのないスキルであるこれは、下手をしたらマハラギダイン級の大火力*11であるように見えた。

 

 警戒状態であった己とリオは『防御』をしていたので問題はない、だが召喚したばかりの仲魔たちはガードしていない状態で被弾して、そのうえゲンブは火炎弱点故に致命傷一歩手前だ。

 

「誰も落ちねぇとかマジかよ。グール、デバフでもかけとけ」

 

 そして、追撃に放たれたのはグールの『フォッグブレス*12』攻撃力、敏捷性を減少させる霧のブレスは己達を弱らせた。

 

「普通にやるわねコイツ、ジエンくんメイン*13任せた」

「任された! 『フォッグブレス』!」

 

 口からMAGで作った霧を出して弱体化と錯乱を同時に行う。リオへの視線を切りながら先ほどの合体魔法の火力を低下させるのが狙いだ。

 

 続けてクイーンメイブが高い魔力からのメディラマ*14でダメージを癒し、ゲンブがラクカジャ*15にて防御力の上昇を試みる。

 

 そして、ペルセポネーを攻勢に出す。

 

『バインドボイス*16』 金切り声に乗せた魔力で体の動きを阻害して、緊縛の状態異常にする技だ。

 

 敵全体に効力を発揮したしたが、龍神ペクヨンは無効耐性にてそれを弾く。グールにも通らなかった。

 

「チッ! バステ使いかよ!」

「それだけじゃないよ」

 

 と、リオが己の手番と敵の手番が入れ替わるタイミング*17にて横槍を入れる。

『霞駆け*18』 複数体に攻撃を入れながら()()()()のバッドステータスを入れるスキルだ。それがナラギリ、グール、ペクヨンにヒットした。

 

「ナラギリに若干の耐性*19! グール耐性無し、ペクヨンが吸収*20! 耐性の手応えは技関係*21!」

 

『耐性の手応え』というよく分からない感覚は置いておくとして、リオの霞駆けのバステを崩しの主軸に組み込むのは難しそうだった。

 

「……宝玉輪*22を使わないとか舐めてるよなぁ! お前ら! セイギュウカイ! やれ!」

 

 敵陣背後に隠されていたセイギュウカイが姿を現す。敵は戦闘前に仕込みをしていたらしい

 

『静寂の祈り*23』 全体の補助効果を消失させる凶悪なスキルは敵陣にかかっていたフォッグブレスの影響と自陣のラクカジャの防御強化をリセットさせた。

 

 攻撃力のラインが変化したことで、ゲンブの耐久力計算が狂う! 

 

「グール、『アムリタシャワー』*24んでマカの葉*25。からのぉ!」

 

合体魔法 ロワゾー・ド・フー

 

 ベリス ペクヨン ナラギリの三体が再び合体魔法を解き放つ。

 マハラギダインクラスのダメージであるそれはダメージの完全回復ができなかったゲンブを焼き殺し、己たちに深手を与える。

 

 この時、ゲンブの弱点を突かれたことによる と敵の追加行動に備えた。

 しかし、()()()()()()()()()()()()()()()()敵は追加攻撃をして来なかった。こちらの大ダメージによって調子はズレ、付け入る隙が生まれた*26のに、だ。

 

 この瞬間、何か敵の()()が見えた気がした。

 

「キミ、サマナーとしては二流だね?」

 

 リオが敵に対して言葉を投げかける。影を薄め*27致命の一撃を狙いやすくするメリットよりも敵を揺さぶることを選んだようだ。

 

「最大戦力のゲンブを失って気が狂ったか? 悪魔を手足の如く扱えるこの俺が二流だと?」

「私も気持ちは分かるさ。仲魔とテンポ合わせるのが苦手なタイプでしょ? だから事前に与えた指示通りにしか動かしてない。まぁ、アンタみたく強い『ペルソナ使い』ならそれでも良かったんだろうけどさ」

「言ってろ雑魚が。達磨にしてから好事家に売り払ってやるから覚悟しとけや技研の姫サマよぉ!」

 

 そう吠えた敵の背後に悪魔のようなビジョンが現れる。

 多くの本を持ち、それを読み取る知識の堕天使ダンダリアン。姿こそ若干違うがそのように己には見えた。

 

 敵の攻め手を考える、合体魔法は3体の行動を連携させて放つ技だ。しかし火炎弱点のゲンブを除いてメディラマで治せないレベルのダメージを負う者はいない。弱点である者はいない上、クイーンメイブは四属性に耐性を持つ。

 

 邪神ナラギリはマハラギオンを放つ火炎使いだ。しかし物理にも強そうな気配がする。

 堕天使ベリスはアギラオを使う。騎士然とした見た目を信じるのならば物理スキルにも強い万能タイプだろう。アギラオ以外の属性魔法などを継承で獲得していてもおかしくはない。

 そして、龍神ペクヨン。見たことのない悪魔。マグナスというレアな属性を使っているのだから、他にも手があると踏んだ方が良い。だが、合体魔法としてロワゾー・ド・フーになる前のマグナスには強い力を感じなかった。魔力が低いか、適性が低いタイプと判断する。

 

 

 ──崩し方は見えた。

 

「行くぞ!」

 

 己の手番がやってくる。このとき仲魔達の合わせているテンポをあえて崩す*28。敵の調子が崩れた時に追撃ができなくなるが、今の段階ならば問題点は少ない。

 

「メディラマ!」

 

 己がウィスパーされたスキルであるメディラマ+5を放つ。これで全員の合体魔法によるダメージを治療。

 そして、敵方の動きが始まる。

 

「は! 手を緩めるとか死にたいらしいなクソガキ! 暗夜剣*29!」

 

 己に向けて放たれる物理スキル。中ダメージ2回に加えて体内の魔力の流れを断ち切る技だった。そのダメージによって己はロワードオブフーのダメージで致命傷を負うラインを下回る。若干の賭けにはなるが、問題はない。

 

「行け、ベリス! ペクヨン! ナラギ「ここね」リッ⁉︎」

 

 火炎→地変→マハラギオン

 アギマグナスマハラギオンパンデミアブーム

 

 敵が合体魔法を組み上げるその瞬間、出番を遅らせていた仲魔を動き出させる。タイミングはベリス、ペクヨンが魔法を発動したとき。

 アギラオ、マグナスは既に放たれているタイミングであるが、そこにナラギリのマハラギオンが重なり合う前の僅かな隙だ。

 

 マハラギオンが乗る前の魔法がペルセポネーのスキルの影響下に入った。さらに風邪の状態異常によって敵の動きは鈍り付け入る隙が発生する。

 

 合体に失敗し放たれたままのアギラオ、マグナスは己へと向かうが、己を庇える位置にいたクイーンメイブがその身で魔法を受けて、吸血*30の回復効果にて傷を癒した。

 

 その後放たれるナラギリのマハラギオン。それはあの合体魔法を放った者とは思えない普通の威力であり、問題はない

 流れはこちらにやってきた。

 

「チィッ!」

「あと邪魔なのはソイツね。『黒龍撃』」

 

 続いて様子を見ていたリオが呪殺属性物理スキルの黒龍撃*31にてセイギュウカイを攻撃する。セイギュウカイの動く直前にカウンター気味に命中したその一撃は、致命の一撃となりセイギュウカイを始末した。

 

「馬鹿な! 活泉持ち*32を一撃だとッ⁉︎」

 

 と、ここで崩れてくれる雑魚ならば問題はなかったのに、敵は仲魔の統率を取り直してしまった。グールに無言でアムリタシャワー*33を使わせたのがその証左だ

 こちらも追撃に入らず調子を合わせる*34

 グールを動かした関係で、先に動けるのはこちらのようだ。

 

「セイギュウカイが消えたなら! 『フォッグブレス*35!』

「緊縛無効がいるのならこちらです、『パンデミアブーム*36』」

「私は変わらずね、『吸血*37』」

 

 リオは手番を『()()』にて費やした。今この瞬間攻め込んでも得はないとの判断だろう

 

 そして、敵は動き始める。

 まず行われたのがグール*38による『アムリタシャワー』風邪を残していれば全滅させられたのでこれは間違っていない。

 

 この時、敵の手元のスマホに通知音が鳴る。耐性のアナライズをされたようだ。

 

「アナライズ完了。ペルセポネーの電撃弱点が見えてるなぁ! ナラギリ! 『マハラギオン』、ペクヨン! 『マグナス』、ベリス! 『ジオンガ』。合体魔法サンダーブラストだぁ! 俺の完全な指揮下にあるコイツらにさっきみたいな割り込みは通じねぇ! 感電でそのままぶっ殺してやるよ!」

 

 そうして、3つの魔法が放たれようとする。実際のところ『優先するべきこと』があって先ほどのマハラギオンだとかの若干のダメージが残っている。電撃属性で『ロワゾー・ド・フー』並の一撃が放たれたのなら致命傷を受けたかもしれない。

 

 火炎→地変→ジオンガ

 マハラギオンマグナスジオンガ

合体魔法 サンダーブラスト*39

 

 

 合体魔法が、成立したらの話だが。

 

 ナラギリのマハラギオンの後にペクヨンのマグナスは放たれなかった。

M()P()()()()()()()()のだ。

 

「は?」

「己の仲魔への理解が甘ければ窮地となる。よく聞く話だ」

 

 クイーンメイブのスキル『吸血*40

 これはどういう理由かわからないが、HPの他にMPも吸収する。合体師殿の話ではこのタイプの合体方式の場合に起きるエナジードレインとの混ざりだそうだ。

 

 それの集中を受けていたペクヨンは、その魔力の底をついていた。

 

 通常のサマナーであれば気付くであろうこと。しかし奴はリオの言う通りサマナーとしての技量が低い。

 パターンとして決められた行動をなぞらせているだけで、そこにあるハズの悪魔の自己判断を無視している。それでも命令を守ろうとしたペクヨンは魔法の発動に失敗したのだ。

 

 放たれるのはマハラギオンとジオンガのだけ、ジオンガもクイーンメイブに庇われたのでペルセポネーは大事ない。

 

「コレだから雑魚は使えねぇ……ッ! ダンダリアン!」

 

 そして、敵サマナーはダンダリアンに()()をさせて手番を終わらせた。

 

 

 そして、リオの絶技が始まる。

 

「喰らいなよ、千烈突き*41

 

 放たれたのは6発の抜き手。

 グールに3発命中し、内部から爆散。ベリスに2発命中し、首がねじ切れ飛んだ、そしてペクヨンに1発命中して、その動きを拘束する

 

「カジュアルから見とった麻痺追加*42、やっぱ連打技と相性良いね」

 

 そして、その全てがクリティカル。

 

『会心の眼力』を使ったその連打によって、リオは『ニヤリ』と魂を高揚させた。

 

「実質全滅だなコイツは。ナラギリ、適当にしてろ。あとは俺一人でやる」

 

 そう指示されたナラギリは通常攻撃をして、リオの反撃*43によってその体を麻痺にさせられ*44沈黙した。

 

「で、何するのよアンタ。そのペルソナを使ったらレベルが上がったみたいだけど」

「ハッ! お前ら雑魚を効率よく始末するためのスキルを『お勉強』したんだよ」

 

 それから放たれる敵本人のスキル、『暗殺拳*45

 

 警戒を怠っていなかったにも関わらず己の警戒範囲の内側に入り込み、強烈な一撃を当ててきた。ナイフでの迎撃が間に合わないッ⁉︎

 

「ガッ⁉︎」

「ナイフを抜く手が遅せぇ、悪魔に隠れて戦うことしか出来ていねぇな? だからもう一発喰らうんだよ!」

 

 クリティカルを貰ったことによる追撃が来る。ナラギリとペクヨンは動かず奴一人しか続かない。しかしそれは、奴一人で十分だという事を意味しているようだった。

 

「これでぇ! 「なんだ、その程度だったの」ッ⁉︎」

 

 しかし、2発目は放たれなかった。リオが庇った訳ではない。リオは言葉を言っただけ。

 

 己は2発目を耐える覚悟と急所の防御をしただけで、何もしていない。

 

 恐らくレベルの上昇と共に磨かれた感性がそこが死地だと断じたのだろう。敵は攻撃を踏みとどまった。

 

「……割り込みやがったのか?」

「その技はカジュアルとかこの前のセプテンとかが使うスキル『暗殺拳』。仲魔に守られた状態の相手に100%のダメージを入れる技ね。その技は忍を祖とするいくつかの流派で研鑽されていて、炎魔の所の奥義として記されていたかしら」

「……歴史の講釈?」

「技の根幹は防御の隙間に身体を潜り込ませる事、僅かな拍子の隙間を抜けて一撃を通す技でしかないから、そこに焦点を合わせていれば反撃は容易なのよ。横からはね」

 

 その言葉に冷や汗を流す男。

 

 ぺるそな? であるダンダリアンのビジョンは手元の本から何か情報を探そうとしている。臆している様子だ。

 

「うん、あなたはペルソナで何処かの誰かの経験を『魔導書』や『スキルカード』みたいに自分のモノにできる力を持っている。けど持続時間は短い。だから仲魔は自分本来の40レベルあたりのしか操れない。レベルの方にも限界があるから60ちょっとの強さにしかならない」

 

「……それが、どうした?」

 

「で、それで身につくのは技の表層だけ。技の(ルーツ)への理解がないから決まった拍子の技しかない。技術の理念(オリジン)の理解がないから、技を『必殺』にまで伸ばせない」

 

「悪魔共で合体魔法やってたのは、知ったばかりの技を試したかっただけでしょう? キリギリスからなのか、ペルソナからなのかは知らないけど。だけど仲魔の制御が緩かったから自分の強みである個人の武力を活かしきれてなかった。総じて、半端ね貴方」

 

 そう話しながらリオは距離を詰める。スマホに表示された敵のレベルは69。しかしリオは揺るがない。

 

「あなた、知識は仕入れられるけど扱う()()のない馬鹿でしょ?」

「テメェ!!!!!!」

 

 リオの『挑発*46』に乗った男は先ほどのように『暗殺拳』を解き放つ。そこにリオは未来が見えていたかのように寸前で避け、そして崩れた体勢へ追撃の『霞駆け*47』を放つ

 

 高速連打によって『めまい』に揺らいだ男は手番を握れず、続けての『霞駆け*48』によって視界を揺らされて目を惑わされた。

 

 そこまではレベルの高い男は耐え抜き、反撃の『暗夜剣』を放ったが幻惑によって命中せず、リオは『ニヤリ』と魂を震わせた。

 

「じゃあ、死んで。我流・无二打(アカシャアーツ)*49

 

 その一撃で、空気は震えなかった。

 その一撃で、音は響かなかった。

 

 ただ、一撃の破壊力を体内に受けた男は先ほどまでの力が嘘のように、息絶えていた。

 

「全然まだまだ未完成、これだから武の道なんてやってられないのよ」

 

 そうぼやいていたリオは、今の絶技にカケラも納得していないようで

 素直に『勝てない』と理解した。

 

「ジエンくん、増援なさそう?」

「あ、ああ……警戒はしていたが増援の様子はない。戦闘の音も聞こえてくる以上、他の『キリギリス』が戦闘を行ったと思われる」

「ここを通った車は無し。回り道して他の馬鹿に捕まったかな?」

 

 そんなことを言いながら、リオは掲示板を確認していた。

 

「ヘビクラ隊長ジャグラーコスで出現? 何それ超見たい」

 

 よく分からないが、良い感情に思える。きっとキリギリスの者たちが勝利したのだろう。良い事だ。

 

 と、その時敵サマナーの死体のそばにある一つの『メモ』が目についた。血濡れのように見える力強い文字で『■■■を学んでいたのなら』と記されていた。

 この男にも、何か悪さをするだけの理由があったのだろうか? と少しだけ郷愁の念のようなものを感じるのだった。

 


 

 

 後日談と言うのだろうか? 

 

 なんとなくで闇闘技場襲撃の片棒を担いだ訳である。とんでもないことをやってしまったのでは? という恐れが今更出た己である。

 

 そんな己は幾らかのアイテムの換金に成功して、『娯楽用のお金』ができた。

 

 なので、他の作り方をした『らぁめん』を食べてみようと思い立ち、リオを誘って店主殿の店のあるレルムへと赴いた。

 

 そうして店主殿の店へと歩いて行くと、店にて話した『ラジカセ』の方が店主殿と何かを話していた。

 

「おぉ! ラジカセ殿! 無事だったか!」

「あぁ、坊主達か。奇遇だな。ちょいと探していたんだ」

「む? 己達をか?」

「この前の騒ぎの話らしいぜ? 武術使いのダークサマナーの話を聞きたいんだとさ」

 

 そんな補足をする店主殿の礼を言い、ラジカセ殿の隣に座る。

 ラジカセ殿は追加で『はんちゃーはん』と言うものを頼んでいた。

 

「んで、ナッジアントはどうなった? 仕留めたのか?」

「その者は、ダンダリアンのビジョンを持つ『ぺるそな使い』であっているか? 名前が表示されていた気がするが、特に気にしていなかったのだ」

「……ペルソナ使いではある。ビジョンの形は知らんが、武術を得手としてたな」

「ならばリオが倒したぞ。どう頑張っても蘇生できそうにないほどに粉々にな!」

「マジか! アイツを仕留めるために『ロンギヌスコピー』仕入れたんだぜ俺」

「レベルは高かったけど、雑魚だったわよ。なんかの仇とかだった?」

「滅茶苦茶邪魔な奴でな。キリギリス掲示板の情報だけ抜き取ってたりで暗殺の依頼があったんだよ。俺の狙ってたマフィアの護衛に入ったらしく、ついでにと暗殺依頼を受けたんだが……この場合ってキャンセル料払うんだったかね?」

「どこ系列よ。ガイア穏健派系列なら『もう死んでた』って言えば確か問題無いはず。死亡確認できてれば報酬も受けれる筈よ」

「又聞きの死亡確認で報酬差っ引くのはやりたくねぇなぁ……ただでさえ信用ねぇのに」

「信用や信頼は一瞬で砕けるとはよく聞くな。だから積み上げる大変さが際立つのだと」

「……又聞きの蘊蓄の説得力ってどうしてこうも薄いんだろうなぁ?」

「己が確かな経験と共に語っていないからだと愚考する。幸いなことに信頼を裏切らなくてはならなかった経験はまだないのだ」

「ジエン君良い子だもんねぇ……」

 

 ほっこりした表情になるリオ。こんな様子だが己よりレベルの高い使い手を封殺する修羅の姫である。見かけによらないとはこのことか。

 

「まぁ、死んでるなら良いか。今回の襲撃は大事だったが大事はなし。世界は変わらず地獄のままにゆるりと続いていくのよな」

 

 その日は、ラジカセさんにラーメンを奢ってもらった。トッピングというメニューの範囲外の食材を加えるやり方を試す事ができたのは僥倖だろう。

 しかし、変わらず美味しすぎて夢中のままに食べ終わってしまったのは心残りである。ゆったりと味わってみたかった……

 

 

 

*1
真4Fにおいて、チャクラポットのMP回復量はたったの150。足りるかこんなん! と誰もが思うハズ

*2
造魔は性格が虚心であり、命令を100%聞くという性質を持っている(デビルサマナー シリーズより)

*3
箸を抑える薬指に目が行ってない

*4
真4にて明確に食用とされていた悪魔。だいたい喋る豚である

*5
ペルソナ1 出典

*6
真2出典

*7
真2出典

*8
真2出典

*9
真4出典

*10
火炎属性全体攻撃 威力112

*11
参考:ペルソナ2罪にてマハラギダインの威力は72

*12
攻撃力と命中率を1段階低下

*13
真4Fのパートナーシステム。パートナーは自陣営の行動終了後などのタイミングで行動する

*14
全体中回復 出典元はたくさん

*15
真4タイプのカジャ。20%の上昇率

*16
敵全体に『緊縛』のバットステータスを付与

*17
パートナーアタックの基本タイミングは自ターン終了時

*18
真4F 敵複数体に物理属性中ダメージ2~4回 めまいのバステ付与

*19
突撃属性耐性はないが剣属性に75%耐性

*20
突撃属性特技吸収

*21
霞駆けの元ネタ? のいぶきの霞駆け(ストリートファイターIII)は移動、突進系の技である。それを根拠に今回使った霞駆けは突撃属性として扱う。

*22
味方全体を全回復 当然レアアイテム

*23
敵味方全体の状態変化を解除

*24
道具の知恵・癒

*25
味方全員のHPを200回復 ペルソナ4

*26
弱点を突くことによるプレスターン0.5増加

*27
真4F 自動効果スキル『潜伏』 敵から狙われ辛くなる

*28
プレスターンバトルからターン制バトルに移行

*29
物理属性中ダメージ2回 魔封付与

*30
真3出典

*31
真V出典 呪殺属性物理攻撃中ダメージ 弱点を突いたとき確率で即死させる

*32
セイギュウカイ(真4F)はレベル30にて二分の活泉を習得する

*33
味方全体のすべての状態異常を回復 出典はたくさん

*34
プレスターンバトルシステムに戻す

*35
攻撃 命中を一段階低下

*36
敵全体に風邪を付与

*37
出典 真・女神転生3

*38
道具の知恵・癒

*39
電撃属性全体攻撃 威力術者の技(TEC)の平均値×6 感電効果

*40
真・女神転生3出典

*41
敵複数体に物理属性小ダメージ2~7回 回数は速さ依存

*42
デビルサバイバー出典 自動効果スキル 物理属性攻撃に麻痺効果を付与

*43
物理攻撃を受けた時、確率で反撃する

*44
麻痺追加の効果

*45
敵リーダー に高威力の物理攻撃 味方が存在する時の防御効果を無視する

*46
攻撃力2段階上昇、防御力2段階低下

*47
真4F 物理属性中ダメージを2〜4回 めまい付与

*48
真V 物理属性中ダメージを2〜4回 幻惑付与

*49
敵単体に物理属性大ダメージ(劣化)ニヤリ時貫通効果(劣化、反射貫通不可)




あとがき

 レルムの祭りに参加させないで他所から見るのでも良いかな?と思ってた所で合体魔法を使う敵サマナーを思いつく。なので若干の言い訳しつつの外周エリアで参戦

 敵サマナー『ナッジアント』のネーミングはフィーリング。ナッジ(知識)の後は語呂が良かったのでアリになりました。

 ダンダリアンのスキルは『魔導書作成』経験を魔導書にして作成する能力。ペルソナ使いとして普遍的無意識に接続して、経験の読み取りやすい他者の記録を取り込み、本に書き込むでレベルとスキルを記録していた。

 ただしこれはフィレモン式のペルソナ使いなら無意識にやれる『自分の可能性を重ねて達人になる』アレを頑張ってやっているだけ。レベルアップは普通に魔導書を読んだ事によるもの。戦闘のない時にせこせこ作った魔導書を一気に消費してレベルアップしているのだ。
 尚、通常であれば魔導書などでは次のレベルに上がることはできない。ナッジアントは自分とよく似た者の経験を取り込むことで魂の研鑽の閾値を超えている。

 技研の姫 琴葉リオ
 数多の秘伝書を読み込んで血肉としているやべー奴。秘伝書に書かれたスキルそのものよりも、そのスキルを身につけるための修練、理屈、魔力操作などを磨いているからこそ様々なスキルを体得し、新しく目にしたスキルの中で取り込めるものを取り込んでいる。
 
 ただしそれは、本物の達人の域まで研鑽し続ける事の難しさと直面し続ける事でもある。属性魔法の修練を放棄して物理スキルの研鑽に集中しても、彼女の技は『本物』に一歩届かない。より多くを切り捨てるべきか、それとも……

 人外ハンター ジエン
 らぁめんの美味しさに宇宙を見た


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1:名無しのハンター@勉強中

 少しばかり愚痴というモノをしてみたく思いスレ立てさせて貰った。元の世界とのカルチャーギャップの話となる。

 

2:名無しさん@LV上げ中

 立て乙

 

4:名無しさん@LV上げ中

 立て乙、お稲荷さん食べたくなる時ってあるよね、お袋の味的に

 

7:名無しのハンター@勉強中

 まず前提として己は蛮族と呼ばれても仕方のない環境で生きてきた。東京都が天蓋に覆われ、空のなくなった世界で、社会が崩壊してから生まれたものでな

 

8:名無しさん@LV上げ中

 開幕から自分で蛮族は草

 

9:名無しさん@LV上げ中

 生まれつきの環境なら仕方ないんじゃない? 卑下することはないって

 

12:名無しのハンター@勉強中

 いや、卑下ではない。暴力が優位な劣った文明の中で育ったのは事実だからな。己の世代では漫画だとかアニメだとかは断片しか残っていない壊滅状態だった。

 

13:名無しさん@LV上げ中

 重っ! 

 

14:名無しのハンター@勉強中

 だがそんな中でも、そんな中だからこそ育まれた文化はあるのだ! 食文化だ! 

 

15:名無しさん@LV上げ中

 地下世界グルメだとぉ⁉︎

 

16:名無しさん@LV上げ中

 地下で生活して出てくる食文化とか想像つかん。ウチのシェルターは普通に保存食保ったし。

 

18:名無しさん@LV上げ中

 地下だからこそ食べられるものとか、ちょっと気になる。ブタモグラみたいなの?

 

21:名無しなハンター@勉強中

 食べていたのは、主に悪魔だな! 

 

24:名無しさん@LV上げ中

 ……

 

25:名無しさん@LV上げ中

 ……

 

26:名無しさん@LV上げ中

 悪魔喰いとか引くわ。もっと美味いもん食えよ

 

27:名無しのハンター@勉強中

 ラーメンやハンバーガーを食べた今ではあまり良いものではなかったと思うが、悪魔食はあれで良いところもあるのだぞ? 栄養価の高さとか。

 

30:名無しさん@LV上げ中

 美点として上げるのが栄養価の時点で絶対まともな味じゃないゾ

 

32:名無しさん@LV上げ中

 あ、でもカタキラウワの肉はそこそこイケるって聞いたことあるわ。そんなん? 

 

33:名無しのハンター@勉強中

 カタキラウワはA級フードとして扱われていたな。一度食べると病みつきになり、餓死寸前まで節約する者が現れてから強力なバスターにしか食べさせないルールとなったな

 

34:名無しさん@LV上げ中

 地獄で草枯れる

 

37:名無しさん@LV上げ中

 じゃあ何食ってたのさ?まさかピクシーとか?

 

39:名無しのハンター@勉強中

 >>37 妖精はあまり可食部がなくて人気はなかったぞ。

 権利が乏しかった時に主に食していたのは邪龍トウビョウ*1だな。ぶつ切りにして火で炙ると良い油が出た。たまに塩が手に入った時などはご馳走だったぞ! 

 

41:名無しさん@LV上げ中

 蛇食かー

 

42:名無しさん@LV上げ中

 邪龍食ってるとかすごい環境だな。確かに栄養価は高そう。

 

43:名無しさん@LV上げ中

 ……ちょっと待て、トウビョウって四国とかその辺の逸話のだよな? 瓶に住んでる蛇みたいなの

 

44:名無しのハンター@勉強中

 その通りだ。うまく処理すれば瓶を器として使えるので一石二鳥だったぞ

 

47:名無しさん@LV上げ中

 それがどしたん? なんかヤバい逸話とか? 

 

48:名無しさん@LV上げ中

 トウビョウって基本的に人に憑く憑き物で、呪術的な攻撃に扱いやすい危険物なのよ。

 

 恨む人間に対してトウビョウを送りつけたら不幸のどん底に落ちるとか、トウビョウを粗末に扱うと不幸があるとか、その辺りの逸話があるのな。

 良く食えたな。てかよく無事だったな

 

51:名無しのハンター@勉強中

 トウビョウは扱いを不誠実なものにすると憑き主を襲いにやってきてくれるのだ。ありがたかったぞ

 

54:名無しさん@LV上げ中

 襲いに来てくれるのがありがたいってどういう事やねん

 

57:名無しさん@LV上げ中

 ……マジ? 食ったの? 

 

60:名無しのハンター@勉強中

 ああ! 

 

61:名無しさん@LV上げ中

 どゆこと? 

 

62:名無しさん@LV上げ中

 雑に扱うとトウビョウに襲われるってさ、トウビョウ捕まえて食べてる奴にはどう見える? 

 

64:名無しさん@LV上げ中

 ……鴨?

 

66:名無しさん@LV上げ中

 あ、だからうまくやったら器がいらないって言ってたんだ……

 怖ッ⁉︎

 

68:名無しさん@LV上げ中

 てか、トウビョウってレベル14とかそこそこあるよ? 一般人死なない? 

 

70:名無しさん@LV上げ中

 飢えて死ぬよりはマシだって話? 

 

72:名無しさん@LV上げ中

 いや、普通に処理の仕方とか教えられたろ

 

75:名無しのハンター@勉強中

 前線組ほど過酷ではないが、格上狩りという奴だ。破魔で倒すと食べられない事もあって氷結を使って倒すのだ。レベル上げと食料の確保が同時にできて幼い時分にはありがたかったのを覚えている

 

77:名無しさん@LV上げ中

 ば、蛮族だ……

 

79:名無しさん@LV上げ中

 これはまさしく事実としての蛮族だわ。やべー

 

81:名無しさん@LV上げ中

 でもトウビョウだけだと栄養バランス偏らね? 肉と呪いしかないじゃん。てか塩すら貴重品らしいじゃん。どうしたのさ

 

84:名無しのハンター@勉強中

 栄養学という奴だな! 良いものを食べれば強い身体ができるという訳ではないと驚いた。

 きっとトウビョウにはさまざまな栄養が備わっていたのだな!

 

86:名無しさん@LV上げ中

 マジレスすると、環境が魔界に近かったと思われる

 

88:名無しさん@LV上げ中

 魔界に? 

 

91:名無しさん@LV上げ中

 精神体に近いからMAGの影響の方が強くなるって話? 

 

94:名無しさん@LV上げ中

 >>91 そう。肉体の栄養は足りてなくても魂が栄養満点だから、そっちの状態に引っ張られて栄養満点の身体になる! みたいなイメージ*2

 異界の中だとMAGさえあれば餓死しないしね。

 

97:名無しさん@LV上げ中

 どっちかっていうとMAGの物性変化じゃね? 取り込んだ血肉を力に変えられる異能者ぐらいしか生き残れてなかったとか*3

 

99:名無しのハンター@勉強中

 己は気にした事がなかった! すまぬがわからぬ! 

 

102:名無しさん@LV上げ中

 潔くて草

 

104:名無しさん@LV上げ中

 ここまで話していて、イナリズシが全く話題に出ていないのである! 

 

105:名無しさん@LV上げ中

 お、スレタイ詐欺か? 

 

106:名無しさん@LV上げ中

 忘れていた、許せ

 

109:名無しさん@LV上げ中

 いいよ

 

112:名無しさん@LV上げ中

 やさしいせかい

 

114:名無しさん@LV上げ中

 やさいせいかつ

 

116:名無しのハンター@勉強中

 イナリズシなのだがな、ハンターメモという記録帳に残っていた情報では、肉を巻いた酢飯を油で調理したものらしいのだ。

 

117:名無しさん@LV上げ中

 俺の知ってるお稲荷さんじゃない! 

 

120:名無しさん@LV上げ中

 肉巻き握りだな。美味しそう

 

122:名無しさん@LV上げ中

 悪魔の肉だぞそれ

 

124:名無しのハンター@勉強中

 使っていたのはマメダヌキの陰嚢だな。中に酢飯を入れやすく、味も良く染みるのだそうだ

 

125:名無しさん@LV上げ中

 ……え? 

 

126:名無しさん@LV上げ中

 唐突な下ネタは止めろ

 

129:名無しさん@LV上げ中

 え、お前たぬきのキ○タマ袋喰いたいってスレ立てたの⁉︎

 

132:名無しさん@LV上げ中

 ば、蛮族……

 

134:名無しのハンター@勉強中

 うむ、実はイナリズシは己が人外ハンター……デビルバスターになったときに武器屋の店主が奢ってくれたご馳走でな。コイツを喰うために生き残って、皆を守れと己を奮い立たせてくれたのだ

 

136:名無しのハンター@勉強中

 まぁ、イナリズシを出すレストランは潰されていたので、店主のアレンジが多分にあったと思われる。しかし非常に美味でな、マメダヌキを見つけた時は陰嚢を剥いでおくことにしていたのだ。

 多い時には週3日くらいで食べれていたな。むしろ酢飯の確保の方が難しかったほどだった

 

137:名無しさん@LV上げ中

 新人デビバスの未来への一歩の中にあるマメダヌキの陰嚢の存在よ

 

138:名無しさん@LV上げ中

 いい人と出会えて良かったなぁ! って気持ちと、アレンジで玉袋に変えた稲荷寿司を他人に食わせるサイコパスとか怖すぎるって気持ちがせめぎ合ってる。

 

141:名無しさん@LV上げ中

 で、なんで喰えないの? 

 

143:名無しのハンター@勉強中

 マメダヌキが見つからぬ

 

144:名無しさん@LV上げ中

 GPの上昇がこんなところに影響を! 

 

147:名無しさん@LV上げ中

 こんな狂った世界じゃイナリズシは喰えないんだな! (別にいいです

 

150:名無しさん@LV上げ中

 悪魔全書でマメダヌキ呼び出して喰えば? 

 

152:名無しのハンター@勉強中

 金欠なのだ。

 

154:名無しさん@LV上げ中

 シンプルに草

 

156:名無しさん@LV上げ中

 金がなきゃあ良いもんは喰えないよなぁ! 

 俺もソーナノ。はたらかなきゃ

 

158:名無しさん@LV上げ中

 戦わなきゃ、現実と

 

159:名無しさん@LV上げ中

 俺たちドリフが戦える現実なんてそうそうねぇだろうが! 

 

160:名無しさん@LV上げ中

 そういや、スレ主ってどんくらいのレベルなん? 結構上澄みな感じがする。(ヤバさという意味で)

 

161:名無しのハンター@勉強中

 60だ。先日格上の強敵と戦ったのだが魂の研鑽には至らなかったようだ。

 

162:名無しさん@LV上げ中

 バケモンで草枯れる

 

163:名無しさん@LV上げ中

 あ、シェルターの仲間探してたハンターか

 

164:名無しさん@LV上げ中

 ゆうた「はちみつください」

 

167:名無しさん@LV上げ中

 それはふんたー

 

169:名無しさん@LV上げ中

 縺。縺上o螟ァ譏守・「ちくわ大明神」

 

172:名無しさん@LV上げ中

 誰だお前……って本当に誰だお前⁉︎

 

174:名無しさん@LV上げ中

 俺の端末だと対応してない文字コードあるんよな。異世界規格です

 

176:名無しさん@LV上げ中

 てか、この世界の最強グルメ食べてもまだ食べたいもんなの? イナリズシって

 

178:名無しのハンター@勉強中

 郷愁の念が故にだな。学舎という新たな環境に身を置くことを思うと、つい昔を思い出してしまったのだ

 

181:名無しさん@LV上げ中

 ……え、学生? 

 

183:名無しさん@LV上げ中

 ば、馬鹿な⁉︎こんなランボー顔負けのサバイバーが年下な訳がない! 

 

184:名無しさん@LV上げ中

 あ、慌てるな、高校なら46歳の元リーマンでも飛び級の小学生でも通えるんだ! 

 

187:名無しさん@LV上げ中

 高校生家族は打ち切りになったよバーカ! 編集部のバーカ! アンケートハガキ頑張れなかった俺のバーカ! 流れ着いてからジャンプで読んで一目惚れしたのによぉおおお! 

 

189:名無しさん@LV上げ中

 ちょいと気になったんだがDK(推定)のイッチがそこまでレベル高くなったのって、悪魔喰いが理由だったりする? MAGの取り込み効率が良いとかで

 

190:名無しさん@LV上げ中

 あー、ありそう。ていうかそうであってくれ。レベル上げしんどい。

 

193:名無しのハンター@勉強中

 レベル上げの効率には悪魔喰いより悪魔会話の方が影響は大きいぞ。体感だがな。

 

196:名無しさん@LV上げ中

 なんで悪魔会話? 悪魔とのおしゃべりしてるだけでレベル上がったら男娼やってる兄貴がレベル80とかになってるって。

 

199:名無しさん@LV上げ中

 悪魔業界の男娼か……どれだけ長持ちするかな? 

 

201:名無しさん@LV上げ中

 >>193 >>196

 悪魔会話による経験増加ですな。戦闘中の、一手違えば命が飛ぶような環境での悪魔との交渉は魂の研鑽になるケースがあるそう*4です。

 

203:名無しさん@LV上げ中

 はえー、安全な所じゃダメなんだ

 

205:名無しのハンター@勉強中

 ダメだったな! 

 

207:名無しさん@LV上げ中

 ダメだった(試した)

 

208:名無しさん@LV上げ中

 こんな修羅が学生ってマジです? 若者の人間離れが問題になるわけだわ。

 

210:名無しさん@LV上げ中

 一般学生(JK)的にも未知のエイリアンとしてしか見れませんので……

 

211:名無しさん@LV上げ中

 でも、20行かない子でもレベル高いのはいるくね? 聖華学園の『レベルホルダー』とかすごいって聞いたよ? 60後半だとか。

 

213:名無しさん@LV上げ中

 我々は漂流者なのでこんな地獄で鍛え上げられたスーパー学生とは違うのだよ! 

 ……あと2ヶ月くらい前に流れつけたらレベル50には届いてたかなぁ? 

 

214:名無しさん@LV上げ中

 そんな事実はない。諦めで現実を受け入れて、格上狩りしてレベル上げろ

 

215:名無しのハンター@勉強中

 これは私見だが、漂流者でも戦い続けられる環境があればレベル上げは問題ないと考えている。生物としての違いはない訳だからな。

 

218:名無しさん@LV上げ中

 自分ができたから、ってのは無しで頼む。スレ主の意見は一般ドリフターとは違いすぎる

 

221:名無しのハンター@勉強中

 初手一撃で殺されるような実力差でなければ、戦いにはなるのだ。格上だからと過剰に恐れるのは実力を縛るだけとなってしまう。多くのアイテムを注ぎ込めば勝敗は容易に逆転できるぞ!

 まぁ、逆に言えばアイテムが切れるときが命が尽きるときとなるが

 

224:名無しさん@LV上げ中

 アイテムの不足かぁ。確かに物反鏡とか持ってれば大分戦いは楽だもんな

 

225:名無しさん@LV上げ中

 宝玉輪、グレイトチャクラ、ソーマ、あたりの切り札は当然欲しいよな。立て直しの難度が違う。

 

226:名無しさん@LV上げ中

 アムリタソーダとかアムリタシャワーもな。

 

229:名無しさん@LV上げ中

 新人の頃、ディスポイズンを切らして死にかけた思い出ががが

 

232:名無しさん@LV上げ中

 そういや修羅勢ってガツガツアイテム使うよな。躊躇いがないってか

 

234:名無しさん@LV上げ中

 エリクサー症候群を拗らせて死んだらバカじゃん。無視しすぎて物資なくなるのも馬鹿だけど

 

237:名無しのハンター@勉強中

 返す言葉もない……

 

240:名無しさん@LV上げ中

 限界突破のためには、身銭を切らなきゃだめか。

 いや、身銭切るだけで限界突破できるならいくらでも借金するよガチで

 

242:名無しさん@LV上げ中

 え! お金でレベルを買えるんですか⁉︎(おめめぐるぐる)

 

243:名無しさん@LV上げ中

 MAG太りはできるけどレベルは上げられないゾ。鍛えて魂にレベルを慣らさなきゃ

 

245:名無しさん@LV上げ中

 MAG太りかぁ、エロエロサバト儀式で一時的にレベル底上げしてけば格上狩り楽になるかな? 

 

246:名無しさん@LV上げ中

 サバトってMAG太りできるだけの金がお前にはあるのか? 俺にはない。ドリフだもん

 

249:名無しのハンター@勉強中

 格上の悪魔とのやり合うにあたって大切なのは使える手札だ。MAG太りで上がる力は魅力だが、それをするくらいならサトミタダシでマッスルドリンコなどのアイテムを買う方が良いぞ! あれは良いものだ! しかも安い! 

 

252:名無しさん@LV上げ中

 凄いよなこの世界のサトミタダシ、普通にヒールゼリーとか売ってるもん。あれ俺の世界だと第一類医薬品*5だったんだぜ? 

 

253:名無しさん@LV上げ中

 ヒールゼリーの副作用って何さ。

 

255:名無しさん@LV上げ中

 しらん

 

256:名無しさん@LV上げ中

 無くなると絶対に困るから調べてないけどさ、薬局に地返しの玉が売られてるのはおかしいと思うんだよね

 

259:名無しさん@LV上げ中

 反魂香もあるよな。なんで薬局にお香が売られてんの? 買うけど

 

262:名無しさん@LV上げ中

 元の世界だとサトミタダシの株主優待受けられたんだけどなぁ……

 

265:名無しさん@LV上げ中

 稼いでもっかい株主になるのだ

 

266:名無しさん@LV上げ中

 夢はでっかく! 

 

269:名無しのハンター@勉強中

 薬局とは傷を治すモノを売買する店なのだから、おかしくはないのではないか? 

 

272:名無しさん@LV上げ中

 薬じゃないからかなぁ? 

 

273:名無しのハンター@勉強中

 そも、薬とはなんなのだ? ダメージや状態異常の回復ができるモノと認識していたが、異なるように見える。

 

275:名無しさん@LV上げ中

 改めて言われると、薬ってなんなんだろ? 

 

277:名無しさん@LV上げ中

 ちょっと待て、詳しい俺が教えてやる

 

278:名無しさん@LV上げ中

 何か来たぞ? 

 

279:名無しさん@LV上げ中

 医薬品(いやくひん、英: medication)とは、ヒトや動物の疾病の診断・治療・予防を行うために与える薬品。使用形態としては、飲むもの(内服薬)、塗るもの(外用薬)、注射するもの(注射剤)などがある(剤形を参照)。医師の診察によって処方および薬剤師の調剤により投与される処方箋医薬品、薬局で買える一般用医薬品がある。医薬品は治験を行って有効性が示されれば先発医薬品(新薬)として承認される。新薬の発売から20年の期間が経過したら、後発医薬品(ジェネリック医薬品)も販売される。

 だ! *6

 

281:名無しさん@LV上げ中

 Wikipediaのコピペじゃねぇか! 

 しかも薬じゃなくて医薬品についてじゃねぇか! 

 

283:名無しのハンター@勉強中

 やはり傷を治すためのアイテムのことを指すように見える。反魂香、地返しの玉も問題なさそうだぞ? 

 

286:名無しさん@LV上げ中

 ほんまや……ホンマか? 

 

289:名無しさん@LV上げ中

 悪魔喰ってる奴は目の付け所が違うぜ

 

292:名無しさん@LV上げ中

 イッチの世界のサトミタダシだとどうだったん? 

 

294:名無しのハンター@勉強中

 廃墟でしか見た事がないから分からぬな。先達のハンター達が薬欲しさに荒らしまわったのだ。

 

296:名無しさん@LV上げ中

 俺たちのサトミタダシを、許せぬ

 

297:名無しさん@LV上げ中

 あー、イッチ世界崩壊してから生まれた人だっけか。

 

300:名無しさん@LV上げ中

 そりゃ野蛮にもなるか。

 

302:名無しさん@LV上げ中

 え? 野蛮になればレベル60になれるんですか⁉︎

 

305:名無しのハンター@勉強中

 なれるぞ! 

 

308:名無しさん@LV上げ中

 ノリノリで草

 

310:名無しさん@LV上げ中

 悪魔喰いまくってレベル上げてやるぜー(バリバリ

 

312:名無しさん@LV上げ中

 悪魔喰いは戦闘中の栄養補給となる事が多くなる、ヘルメット系の装備は避けた方が良いぞ! あとはナイフは血油で使い物にならないから殴打系の武器の感覚になる! 気をつけてくれ! 

 

315:名無しさん@LV上げ中

 ……戦闘中? 

 

318:名無しさん@LV上げ中

 安全圏確保してからキャンプで食べるとかじゃ駄目? 

 

321:名無しさん@LV上げ中

 求められてる蛮族レベルが違うッ⁉︎

 

324:名無しさん@LV上げ中

 普通に考えて戦いながら飯を食う必要とか無くね? 

 

325:名無しのハンター@勉強中

 食事のできるタイミング敵の一団を倒してから次の一団が来るまでの間となる事が多い。そのためだな。ついでに多少の傷なら治ることも覚えておくと良いかもしれん*7

 

328:名無しさん@LV上げ中

 どんな地獄でのレベル上げを想定しているんですか? 

 ビビってる訳でなく、純粋な疑問として

 

329:名無しのハンター@勉強中

 自分よりレベルが高い異界での長期戦闘ではないのか? 

 

332:名無しさん@LV上げ中

 長期間は無理じゃねえかなぁ? 

 

333:名無しさん@LV上げ中

 ならば悪魔喰いは不要ではないか? 食料があるのに何故不味い方を食うのだ? 

 

334:名無しさん@LV上げ中

 裏切りのマジレスで草

 

337:サポートスタッフ@動画編集中

 横からすまん。長期間の異界滞在は避けれるなら避けた方が良いぞ。疲労困憊の時にマンハントに襲われる可能性がある。

 

339:名無しさん@LV上げ中

 あー

 

342:名無しさん@LV上げ中

 せやった、俺ら今悪人の餌なんだった。

 

345:名無しさん@LV上げ中

 レベル上げにくい理由あいつらもあったな……

 

347:名無しさん@LV上げ中

 キリギリスの連中に助けてもらわなかったら生きてないもんな、俺たち

 

350:名無しのハンター@勉強中

 すまぬ。知らずのうちに皆を死地に追いやりかけた。

 

352:名無しさん@LV上げ中

 蛮族だけど良い奴だなこいつ、蛮族だけど

 

353:名無しさん@LV上げ中

 ただレベルの上げ方の一つの択としてはアリだわな。悪魔喰らうくらいに死ぬ気で戦ってればレベル上限とか変えられるだろ。

 

354:名無しさん@LV上げ中

 キリギリスの連中に頼んでレベル上げ中の異界侵入者封鎖してもらうとかはアリかな? 

 

357:名無しさん@LV上げ中

 そんなに長期間拘束するとなると、依頼料どんくらい跳ね上がるんだろ

 

359:名無しさん@LV上げ中

 レベル70連中の相場とか知る訳ないゾ

 

361:名無しさん@LV上げ中

 検証勢に協力するって空手形でレベル上げの協力依頼受けてもらったわ。未来が怖い

 

364:名無しさん@LV上げ中

 >>361 無茶しやがって……

 

365:名無しさん@LV上げ中

 >>364 これから無茶するんだよ……

 

367:名無しさん@LV上げ中

 ところでコレ何のスレだっけ? 

 

368:名無しさん@LV上げ中

 さぁ? 

 

371:名無しさん@動画撮影中

 ちょい報告、今マメダヌキの肉でイナリズシ作って喰ってみたわ。割といける。

URL www.xxxtube.com/watch?v=xxxxxxxxxx

 

374:名無しさん@LV上げ中

 動画にしてて草

 

376:名無しさん@LV上げ中

 悪魔グルメとしてYouTuberデビューしようかな? 

 

378:名無しさん@LV上げ中

 ニッコニコの笑顔やん。

 

379:名無しのハンター@勉強中

 美味そうだ! 

 

 


 

「もうこんな時間か……これだけ多くの者がいるのだから、ミルメコレオを食した猛者のように凄い方が出てくると思ったが、まさにその通りだった! イナリズシの文化はこの世界にもつながったのだな!」

「召喚主、平和な時代に適合する努力をして下さい」

 

 ペルセポネーの言葉は冷たかった。解せぬ

 


 

 後書き

 

 ジエンくん

 掲示板機能にハマりつつある。面白いハンドルネームやアイコン画像を探そうとネットを探そうとしているが、そこに『愛』はあるのか?との声(リオからの)に目から鱗を落とす。

 まずは知識が重要なのではないか?とのことからまずは自分のよく使っている汎用アイコンを知ろうとして『ちいかわ』を読み始めた。

 

 リオさん

 今回出番なし。ジエンくんが手元のガントレットを使って掲示板をしているのを見て割と本気で将来を不安がっている。スレ内容を見てさらに絶句。美味しく正しい稲荷寿司を食べさせてあげようとまずはスーパーに油揚げを買いに行った。

 

 

以下、駄文

 

 

表機能を使って

アスキーアート名前コメント

みたくやろうとした結果tableの[]とアスキーアートの[]が干渉してよくわからないことになったです。

 

*1
真4Fにて邪龍トウビョウのレベルは14

*2
あくまで一説。キリギリスの生き字引でないので若干違う意見が出る

*3
こちらもあくまで一説。キリギリスの生き字引でないので若干違う意見が出る

*4
真4あたりの作品から

*5
副作用がある医薬品の事

*6
出典 Wikipedia 医薬品 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8C%BB%E8%96%AC%E5%93%81

*7
真4シリーズにおいて、A5デモロインなどの悪魔食糧はHP50の回復アイテム



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蛮族式入学試験(試験官の裁量が大きい面接です

 

「学ぶことが多いな! 心が躍るぞ!」

 

 己は、先日戦った相手の使った『合体魔法』とはどんなモノなのかを詳しく見る為に『シロエwiki』というものを閲覧している。このwikiとはスキルの仕様や詳細なダメージ倍率、その他さまざまなデータが載せられているデータベースだ。

 やはり大勢によって作られ残される情報は力なのだろう。

 

 などと考えている己は今、『さぼり』の真っ只中にあったりする。

 

『聖華学園』という学舎に通い技術を学ぶ、という新たな立場となるための準備時間が己には与えられている。中学生という権利ランクでの学習となるため歴史や算学、英語といった知識の予習をするべきなのだとか。ようはある程度難しいランクの学習ということだ。

 

 故に、このように関係のない情報を収集することは怠慢であるとのそしりは免れないだろう。『さぼり』とは借金のようなものらしいのだから。

 

「ふむ、合体魔法を使うにあたって鍵になるのは『地変系』『水撃系』『疾風系』の系統に加えて『癒しの調べ』と『慈愛の祈り』のスキルか? 『クラシックメロディー*1』や『魅惑のメロディー*2』があれば戦闘回避に役立つと思うが、相性が『神経』と『精神』なのだな」

 

 情報を口に出して反芻しつつぷらぷらと休ませていた右手を握る。力加減はもう少し小さい方がよいだろうか? という感覚を頭に描き、新しい鉛筆を柔らかく握り、紙に文字を書く。

 

 リオには意外に思われたが、鉛筆のような筆記用具で紙を汚してテキストを記録する手法は己の腕に馴染みがない。ナイフなどの尖ったモノで矢印を残すくらいはしたが、テキストの入力はもっぱらスマホを使っていた。

 

 手にある『鉛筆』のようなもので無事なものは己の世界には少なかった。作り上げるための工場ははるか昔に吹き飛んだ為である。記録するための紙は作れなくなり、戦闘にも役にたつスマホの生産を優先した方がシステム的に楽だったという事だったと記憶している。

 

 

 ──―またしても、鉛筆の耐久性を誤認する。

 

 力んだ事で握った指が黒鉛にて汚れ、鉛筆はその長さを半分ほどにした。

 

「……むぅ、どうしたものか」

 

 これまでに破壊した鉛筆の数は10本ほど。無事な鉛筆はもう2本しか残っていない。 ハンターメモの情報を記憶するのは得意であったから『勉強』も問題ないと踏んでいた。その甘さがこれである。

 

「いっそのこと指に黒鉛を付けて文字を記すか? 正直そちらのやり方の方が綺麗に記せるのだし」

 

 書きかけの文字を黒鉛のついた指でなぞり書き足す事で文字の形を整える。やはり指でやった方が簡単だ。

 正直、慣れない道具(ツール)にここまで翻弄されるのか? という事実に戸惑うばかりである。覚醒者になっても『道具の使い方』を知っていればそれに合わせた力の調整ができる。己も匙であれば折らずに使えるし、コップを握りつぶさない事もできる。

 

 しかし、己にとって鉛筆はかなりの未知である。紙にどれだけのパワーで押し付ければ良いのかは知らないし、鉛筆はどの程度の保持力ならば問題のない固定できるのかも分からない。知らなければ、加減のしようももない*3

 

「これは、困った」

 

 聖華学園からの参考資料は割とすぐに読み解けた。

 英語という暗号技術*4のルールは慣れたので単語さえ参照できれば意味合いは理解できる。計算術はハンターである頃に学んだやり方が通用するし、化学反応、物理現象は現象の名前を照応させられれば理解は難しくない。歴史は覚える事が多いが、悪魔共の伝承の変化の流れと組み合わせて覚えれば記憶するのも無理ではない。

 

 100パーセントの正解を出せという施設ではなく、正解を導き出すための導出過程にこそ重きを置く学舎であるという話が正しいのならば己は学舎へと参加できるだろう。

 

『鉛筆』さえ習熟できたのならば。

 

「鉛筆1ダース、12本できずぐすり一つ程度*5と聞いている。学園入学までにマッカが尽きることはないだろうが……」

 

 なにか手掛かりがないかとまたしてもネットを調べ始めてしまった己だった。

 

 漂流者の掲示板の中のカルチャーギャップに驚いている所。そこでは社会システムの違いの方にこそ重きを置いて話している傾向がある。『護国』なる連中による異常なるルールの強制、『ガイア再生機構』なる者たちによる破滅的なシステムなど様々だ。

 

 ただしその多くが変事の結果として社会システムが破壊されたモノであり、己のような社会システムが崩壊した後に生まれ育った人間というのはあまり多くない。

 システムが崩壊した後に生まれた者とて、シェルター内にて教育を受けれたと言った者もいた。

 

 つまりは皆、当たり前に鉛筆は使えるのだ。むしろ使えない己が不器用なだけかもしれない。

 

「いっそのこと何かの魔法を使ってインクや黒鉛を操るか?」

 

 思い立ったが吉日。手元にある握り砕いた黒鉛の粉をひとまとめにして、MAG放出の容量で紙に押し付けてみる。

 

 ──普通にダメだった。消しゴムを使わなくては。

 

 そして消しゴムに力を入れすぎて千切れてしまうという、割と散々事となっていた。

 


 

 昼食ということで、リオに呼ばれて食事処へと赴く。今日の昼食は『ぱすた』であるとのこと。

 

「ジエン君、手がすっごく汚れてるね」

「実のところ、道具に苦戦していてな。鉛筆がさっぱりなのだ」

「……マジかぁ、それなら呼んでよジエン君」

「もう一つ何かのコツをつかめれば問題ないと思ったのだ……許せリオ、己の未熟である」

「指導されないで何かをできるようになることは、あんまりないよ?」

「むぅ……」

 

 指導された通りにソープ石鹸(泡が出る!)と流水(なぜ水が流れるのだろう?)で手を洗い、卓について手を合わせる。

 

「「いただきます」」

 

 そう日々の糧に感謝を述べて「ぱすた』をフォークにて絡ませる。ラーメンの時とは似て非なる手触りだ。柔らかさ、麺の中の水分量が違うのだろうか? しっかりと巻き付けなければフォークからパスタが落ちてしまう。

 

 リオの食べ方を見るに、匙とフォークの両方を使って口に運ぶやり方もあるようだ。その手があったか! 

 

 匙にてパスタをソースごと口に入れると感じるのは豊かな味わいだ。ほろほろ口の中で解ける肉の味、酸っぱさと甘さが混ざっている赤い食材の味、そしてしっかりとそれらに絡んで味わいを運ぶ麺の味。

 ミートソースパスタは、合体魔法にも似たパワーの増幅をできているだろう。これは間違いない。

 

「おいしそうに食べるよね本当に、作った甲斐があるもんだよ」

「何!? リオがこれを作ったのか?」

「ホールトマトとひき肉に玉ねぎあたりを適当に炒めるお手軽版だけど」

「凄まじいとしか言えぬぞ」

「こういう簡単な料理を学ぶ『家庭科』って授業もあるって聞いたら、やる気でない?」

「出るとも!」

 

 リオの告げた情報は己を奮い立たせるのに十分なものだった。いまいち腑に落ちていなかった『社会性の獲得』が己にどう役に立つのかの一つの例示がされたのだ。これほどの料理を当然の教育として身につけさせる学習プログラム、いったいどれほどのものなのだろうか? 

 

 そう楽しみに思ったら、やる気がどんどん湧いてきた。

 

「さぁ、再び頑張るぞ!」

「ちょうどいいからココでやりなよ。見てあげるから」

「感謝する! が、ここは食堂なのだろう? 紙を黒鉛で汚す行為は衛生状態に問題はないのか?」

「大丈夫大丈夫、周囲に汚れがいかないように作ってあるから」

「そうなのか!」

「そうそう*6

 

 リオの指導のもとで鉛筆の修練を再開する。

 その際に「頑丈だから」と渡されたペンからは妖刀や魔槍と同じ気配がした。

 曰く「そんなに殺してないから大丈夫だよ」とのことらしい。

 

「ジエン君、勉強の方は本当に大丈夫みたいだね。 自信満々だったから逆に不安だったよ。ダメそうで」

「これでも己は知識を取り入れる事は得手であると自負している。多くのことを『ハンターメモ』から学んだからな!」

「ハンターメモ……大百科的な奴ね。ちょっと読んでみたいかも」

「可能だ。ハンターメモはオフライン環境下にて使うことを基本にしているのでな」

「へぇ~?」

 

 と、リオに己のスマホ*7を取り外して見せる。

 

 リオは「MAGプロジェクターじゃん」と感心しながら操作していった。

 

「あ、凄い。カタキラウワの捌き方とか載ってる」

「基本は若いハンターへの指南書となっているな。オンライン環境下ならばもう少し雑多な情報も見ることができるのだが……」

「これだけでも十分面白いよ? ……なんでゲームの最高スコアとか最速タイムが記録されてるのかはわからないけども」

「要望の結果だ。困難の中にて自らが残した記録とか超えたい壁というのは心を奮い立たせてくれるからな」

「というと、ジエン君も要望出したの?」

「もちろんだ!」

 

 そう話しながら予習プリントを解いていく。たまにプリントが切り裂かれるがペンの方は壊れない。よい道具だ。

 

 時折話したり、わからないところを質問したりしていると隣の部屋より『事務員さん』がやってきた。

 

 レベル20程の超能力者で、電子戦、システム設計の専門家と自称している。その仕事ぶりに迷いはなく、小さな身体に預けられた責任を十分に発揮できている信頼できるバックアップ要員だ。

 

「姫、それ見せてー」

「良い? ジエン君」

「もちろんだ!」

 

 事務員さんはミートソースにトースト、熱によって焦げ目をつけたパンを付けながらハンターメモのテキストを読んでいく。そんなソースの使い方もあるとは、脱帽である。

 メモの操作をして時折驚いたりしているのは、己と見ている視点が違う故だろう。

 

 そしてスマホをおもむろに取り出した。右手のペンに力を込めながら「どうしたのだ?」と問う。

 

「ちょっと気になってさ……うん、これ容量すごく軽くできてる。電子辞書とかの比じゃないよ」

「え、何で分かったのそんなこと」

「ページ全体の表示までにかかる時間とか計った。これ設計した人馬鹿だけど凄いよ」

「ハンターメモが凄いモノであるのは良くわかる。だが何故に馬鹿なのだ?」

「検索性がゴミ過ぎる」

 

「あー」と口から声が出る。リオのモノと、己のモノだ。掲示板を利用したり過去ログを調べたりしているうちに、もしかしたら? とは思い始めていた己がいたのだった。

 

「通信の断絶した異界の中でも情報を見れるように、必要な情報を早く見れるように、そんな工夫が見て取れる良いシステムだった。ゴミクズみたいな検索性を除いてね」

「ちなみに、具体的に何が悪いのだ?」

「デフォルトの50音順表示以外できないのはちょっと……」

 

 非情に悲しい話だった。

 

「てかジエン君、これコピーして提出した方が良くない? 偉い人たちに」

「……ハンターメモのコピーなど、できるのか?」

「中身はただのテキストデータの集合みたいなので、普通に行けそうですね」

「お願いできる?」

「ええ。ジエン君が良かったら」

 

 若干の逡巡を押し殺し、即座に快諾を申し出る。

 データのコピーは5分とかからずに終わり、召喚プログラムの動作などに問題はない。

 ただ、ハンターメモがスマホ以外から閲覧できるようになっただけだ。

 

「あ、ジエン君いろいろ黙秘しなきゃいけないんじゃなかったっけ?」

「言いふらしたりはしませんって。ジエン君には姫を守ってもらわないといけないんですから」

「……かたじけない」

「感謝は姫とあなたの生存で示してください」

 

 そんな温かい言葉を受けて思う。己は本当に人に恵まれていると。

 ハンターであった頃も、漂流者になった今も。

 

「で、ジエン君なんで暗器ペン*8使ってるんです? ネタとして作ったはいいものの全然売れなかったアレを」

「鉛筆握りつぶしちゃうんだって」

「……怖ッ!?」

 

 


 

 それから少しして日曜日、休養日であるらしい。聖華学園は新たな生徒を選別して受け入れる『受験』というシステムに手を割いているらしく、画一的なアーマー装備をしていない大人たちが忙しなく動いていた。

 

 そんな中、腰に刀を刺した一人の男性が己に声をかけてくる。連絡メッセージにあった顔だ。

 

「こんにちは、君がジエンくんだね?」

「うむ! 貴方が『試験官』殿か?」

「雇われ試験官の『佐瀬甚介』、よろしく」

「多忙である中で時間を割いて頂き、感謝するぞ!」

「中学生として入学って事だけど、年齢は不明なんだっけ?」

「ああ。己の正しい生年月日は知らぬ。年齢にてグループ分けをする教練システムだと中学1年度もしくは2年度になるのは聞いている。大体14だからな」

「うん、じゃあ個室に行って学力テスト受けてみよっか」

 

 佐瀬試験官に連れられて構内を歩く。

 

 ちらほらと向けられる視線に邪なものは少ない。訝しむ者はそれなりにいるが、どちらかと言えば佐瀬試験官の方を訝しんでいるようだった。たまに腰を抜かす者もいたが、その者の眼はアナライズ系の異能持ちに思えた。

 

「試験官殿は、いつもはこの学園で何をしているのだ?」

「基本は警備員かな。ただ昔に教員免許を取ったから、たまに学校側の仕事を割り振られたりするんだ。補修見たりとか、剣術の講師になったりとかさ」

「なるほど!」

 

 そう己が仕事を語る試験官殿は、なんだか疲れた目をしているように思えた。きっと日々の激務の疲労が故だろう。

 

「着いたよ。今回は生徒指導室使わせて貰う感じだから」

「うむ!」

 

 そうして着席し、紙での記述式テストが始まるのだった。

 


 

 学習能力試験の結果は上々。これ以降の時間は面接試験となる。らしい。

 

「よろしくお願いします」

「よろしく頼む!」

 

 己は改めて眼前の試験官殿を見る。ハイテックなボディアーマー装備は『デモニカスーツ』というらしく、いくらかの肉体レベルを補えるらしい。

 

「じゃあ面接を始めよう。といってもこの学園に通えることはほとんど確定してるから気楽にね」

「うむ!」

「この学校に通いたいと思った理由は?」

「多くある。強いて言えば、社会性の訓練が必要になると言われたからだな。己と同じ年の者達は普通学校に通い、訓練で身につけた能力を元に仕事をすると聞いている」

 

 リオから聞いた事、自分で調べた事をまとめるて前提条件を話す。面接であるが故に、じっくりと測られているようで少し座りが悪い。

 

「普通の生活をしたいって気持ちはないのかな?」

「普通の生活とは大多数の人間が選択する定石であると認識している。だがその定石は己には不要だ」

「それはどうして?」

「普通の人間であったなら己は既に屍を晒しているからだ。餓死が故にか、殺されるが故にかは分からぬが」

「それは元の世界の話だろう?」

「この世界でも大した違いはないと見る。戦い、悪魔を打ち破らなければ明日はないのだから」

「……君が戦う必要性はないよ?」

 

 己を侮るが故でなく、己を想うが故に口走った言の葉だ。言ってしまった瞬間に『しまった』という顔をして、しかし毅然とした試験官の顔をしたのが見えた。

 

「戦って世界を繋げたい願いがある。戦えぬ皆を守りたいという思いがある。多少足りないが、戦って生き残る力を持っている。戦う必要がなかったとしても、己はきっと戦うだろう」

「意思は固いみたいだね」

「無論、己が戦うしか知らないという事も理解している。故にこの学園に通うことを否と考えている訳ではない」

「……勉強できるなら、何処だって良かった?」

「ここが最も学ぶのに適していると聞いている。必要とはしていないが、希望はしているつもりではあるのだ」

 

「うん、ありがとう」と言葉をかけて何かを手元にメモをする。おそらく己の評価だとかだろう。それを元に己にどれほどの補修教練をするかを決めるのだろうか? といらぬ予想が頭によぎる。

 

「それじゃあ話を変えるけど、学業の方に不安はあるかな?」

「万全……とはいかないな。知識については新たに学習すればなんとでもなるだろう。しかし、筆記用具の習熟には幾らかの時間が欲しいな」

「出してくれた答案を見る限り問題なさそうに見えるけど」

「その答案を作り終えるまでに、己は鉛筆を二つ折り砕いた」

「……緊張していたとかじゃなくて?」

「そういう訳ではない。鉛筆については諦めて、頑丈なペンを使い当場を凌いだだけなのだ。修練は必要だと自覚はしている」

 

 と、手元のペンを見せる。試験官殿は『あ、欲しい』と溢していた。やはり良いものなのだろう。軽く渡してくれたがリオはとても良いものを貸し与えてくれたということにジーンとした気持ちがやってくる。

 

「元の所だとペンとかは使わなかったの?」

「ペンも紙も無事なものが少なかった。生産力は電子機器に注ぎ込んでいて、鉛筆など使ったことはなかった」

「けど、スマホは大丈夫なんだよね?」

「ああ! 慣れ親しんだ道具だからな!」

「へぇ……」

「機材があれば、メンテナンスも可能だ」

「え、すご」

 

 とはいえパーツの生産などは難しいので出来ることは画面の交換や充電ケーブルの組み立てくらいだ。世界を渡った事で己の知るスマホはあんまりなくなり、技能として特筆する事ではなくなった、と己は見ている。

 

 そのように、投げかけられた問いに対して素直に己の言葉で返していく。問題点を洗い出すための面接であるから、取り繕うのは逆に無礼であるのだとか。そう言うことをリオをはじめとした大人たちより聞いて、得心した覚えがあった。

 

「……うん。ダメだねこれは」

「なんと⁉︎」

「社会性に大きな問題はない。レベルだって高すぎるだけで悪くはない。人格的にはとても良い子に見える」

「……ならば、何故に?」

「そんな()()()()()()がレベル60になるまで生きてられる訳がない。だからマトモじゃなさを見抜けない僕がダメって事だね。僕じゃ是か非かを決められない」

「己の人間性に疑問が残るのは分かる。悪魔からの囁きに犯されすぎて己が人間なのか疑問ではあるのだから。だが試験官殿がダメだとは己には思えぬぞ! 心を砕き己を理解しようと試みてくれたその心は尊いものだ!」

「あ、うん。マトモってのは訂正するね。結構変だわ君」

「なんと⁉︎」

 

 と口に出して驚きはしたが、試験官殿が楽しそうなのでヨシ! という奴だ。

 

「よし、それじゃあ諦めた。心根を知る為なら戦った方が早いかな。訓練室行こうか」

「なるほど! 戦闘力測るのだな!」

「スパーリングだから、悪魔は無しで」

「心得た! 全身全霊をもって挑ませてもらおう!」

 

 そうして己は試験管殿と訓練戦闘を行うのだった。

 

 道中に見た生徒たちは己を処理場へ向かうフードのように見ていたが、あれは何故だろう? 腹が減ったのだろうか? 

 


 

 試験官殿と正面から相対する。使える装備はいつものナイフと訓練弾を込めた拳銃、そして己のスキルだけ。

 対して試験官殿は腰に差してた刀を構えつつも腰回りにある小道具をいつでも使えるように片手の握りは軽くしている。

 

 剣士としての練度は己より遥かに上。獲物の間合とてナイフのままでは一足分ほど負けている。

 

 いつものことだが、近接戦闘はかなりの不利である。

 

「コレが落ちたらね。

「うむ」

 

 片手からコインが弾かれる。空を舞うそれが地面に落ちる瞬間にて、己は即座にスキルを放つ。

 

バインドボイス敵全体に緊縛状態を付与

 

 身を縛る音は周囲に無差別に広がっていく。しかし、試験官殿には届かない。

 

 刀にて、空気を切って音を割ったのだ。

 想定された防ぎ方とは違ったが、防がれること自体は想定済み。バックステップで距離を放ちながら射撃スキルにて攻撃を始める。

 

ブラストアロー敵全体に銃撃属性で中威力の攻撃を1回

 

 前方に発車する矢弾の雨。個人を狙った技は容易く捌かれるだろうから、空間を丸ごと攻撃する。

 

「考えは良いけど狙いが甘すぎる。隙間だらけだよ」

 

 人一つ入るかも怪しい隙間にたん、と軽やかに滑り込まれ躱される。

 動きの流れに無駄がない。リオを含めて、達人の動きというやつにはあのような()()()がよく感じられる。

 

 この時点で理解する。己の勝ち筋は相当に細い。

 遅延戦闘にてスタミナ切れを狙うという己にとっても苦しい選択肢が第一候補に現れる程には、詰みにもっていける強い選択肢が存在しなかった。

 

 あのステップ時の動きを見るに最高速度は己より速い。速さ優勢の力、技型の戦士だろう。あの技量でありながらの魔法使いというのも考えられるが、今は頭の隅に置いておく。

 

「はい、そこ」

 

 観察に意識を割いていた己の目に、銀の煌めきが入ってくる。

 

 ドンと踏み込まれて上段からの振り下ろし、素直に己の頭を砕く軌跡であるため、ナイフにてその一撃をガードする。

 

『ミシリ』という音が聞こえた気がする。

 

 上段からの振り下ろしの衝撃を逃せなかったのが理由だろう、いくらかの力は横向きに受け流せたとはいえ、ほとんどの力を垂直にナイフで受け止めることになったのだ。骨にヒビが入る幻覚程度は見るだろう。

 

 しかし、それで終わりな気はしなかった。腕にかかる力が途中から薄れた。連撃スキルの挙動だ。

 

 その連撃を断ち切る為に体毛を変化させた針を飛ばす。悪魔からのウィスパースキル、『百麻痺針*9』だ。

 

 今回は毛髪からの射出。投擲や射撃など腕からのパワーは針に乗らないが、奇襲性は高い。

 

「ふん!」

 

 2本の針は気合いだけで弾かれてしまったが、1本は命中して首元に痺れ毒を流し込む。

 

 ダメージは少ない、耐性、あるいは強耐性の可能性がある。だが、通らない訳ではない。必殺の技としては使えないが、緊縛が通れば牽制にはなる。

 

 幸いにも今のスキルで()()()()()()

 その隙に3メートルほど距離を取る事ができ、先手を取れるように次弾の準備もできた。

 

「今度は丁寧に当ててきたね。けど俺は銃撃には耐性があるよ? どうする?」

「己には試験官殿と切り結べるほどの実力はない! 故に……隙を作らせて貰う!」

 

 放つスキルは『パンデミアブーム』MAGで作り出した病の風を広げて放つ。

 

「バステ頼りは通用しない」

 

 病の風を突っ切ってくる試験官殿、先程までと何かが違う? ……まさか⁉︎

 

「あの一瞬で耐性アクセサリーを変更したのか⁉︎」

「ただの早着替えだよ」

頑丈のピアス毒 風邪 緊縛を無効*10
 

 

 アーマーの隙間見えるアクセサリーは頑丈のピアス。身体系状態異常を無効にするアクセサリーだ。

 

 試験官殿には銃撃が通らず、状態異常も無効になる。

 

 咄嗟に悪魔召喚から戦術の組み立て直しをしかけてしまう。だが、スマホの召喚機能にロックをかけていたお陰で応答なし。反則負けはなかった。

 その異常動作が逆に己を落ち着かせた。これは試合であり、死合いではないのだ、と。

 

 ……眼前の試験官殿は仕留めてから蘇生すれば良いと考えているように思えるが、それはこちらとて同じこと。

 

「理解した──遠距離戦に勝機なし!」

「ナイフ一本でどうにかなるかい?」

 

 狙うのはアーマーの隙間から見える耳。どうせ物理にも耐性があるだろうが、全力でやれば耳の一つくらいは落とせよう。

 

 ナイフを右手で握り左手それの柄を抑える構えを取る、突き出すことしか出来ない構えだが、体格差もありどうせ突きしか有能打にならないので関係はない。

 

 踏み込んでいく。

 

 己が前に踏み出したことで己は斬撃の範囲内。脇構えから放たれる切り上げが突き出したナイフごと己の腕を断とうとしてくる。

 

 そこで、腕を引いて刀にナイフだけを当てさせる。

 

 握りを緩めたことにより己のナイフは弾かれて空を飛ぶ、砕かれていないあたり、本当に頑丈で良いナイフだ。

 

 そして、右手が押さえる左手を外して手刀を放つ。当然リーチは足りてない。刀だけが届く間合でナイフより刃の短い手刀が通る筈はない。

 

 ────それがただの、手刀であったならば、だが。

 

「……なるほど」

「届いた!」

 

 ガントレット越しに左手からMAGの矢を形成する。『麻痺針*11』を振り抜いた腕の勢いをそのままに投げ、耳に命中させる。

 

 それによって耳が吹き飛び、ピアスはその効果をなくす。

 これで、再び状態異常が通るようになった。

 

「ここからだ!」

 

 前に進む体の勢いそのままにタックルをかます。くらりと揺れる程度のチンケな衝撃だった。当たる位置は良かったが、シンプルに質量が足りない。

 

「悪手だよ? それ」

 

 上方に振り抜いたままの刀が構えられる音がする。刺突によって首を取る算段だ、とヤマを張る。

 

 刀が振り下ろされる瞬間に髪の毛にMAGを流して強化。針状に硬質化した髪は刺突の勢いを弱めて、即死から致命傷までにダメージを抑えた。

 

「小器用な」

「この距離なら、外れはない!」

 

 痛みで飛びそうになる意識を抑えながら、ゼロ距離での『バインドボイス』を解き放つ。

 口から放った咆哮が試験官殿の身体を振動させ、その動きを拘束する。

 

「やれ、ゲンブ!」

 

 その掴み取った一瞬のチャンスを掴み取る為に抜き打ちの悪魔召喚を行う。己の手持ちの中で、最も火力があるのはゲンブの『氷龍撃』。組みついた己の身体を抑えていれば首に致命打(クリティカル)を当てられる! 

 

 これで、己の勝ちだ! 

 

 その時、鳴り響くのはピーという音。

 スマホからは、『召喚システムをロックしています』という表示がある。

 

「……あ」

「──うん、やっぱり思った通り。君はそういう子なんだね」

 

 緊縛から回復した試験官殿が膝蹴りを放つ。己の腹に直撃したそれは己を中空に浮かせ、そのままの投げ技によって己の意識は飛んでいった

 

 おそらく、地面に叩きつけられて折れ曲がった首の骨と共に。

 

『死』という言葉が己の頭に浮かぶ、その冷たくも優しい世界に呑まれて眠りたくなる気持ちがある。しかし、『まだだ』

 まだ己は戦うことができる。首は折れ、己の力は通じない、なんなら試験であり蘇生してくれる可能性も高い。

 

『それがどうした』

 

 負けたくないのだ。諦めたくないのだ。己のような人間は一度でも折れ諦める事を経験したらその甘美な誘惑から逃れられなくなる。

 

 なによりも! 

 試験だという事をすっかり忘れて悪魔に頼って負けるというのは! 

 

「格好悪いではないか!」

 

食いしばりHPがゼロになったとき1度だけ1に回復

 

 折れた首を腕と気合いで繋いで距離を取る。再び意識が飛ぶ前に『メディラマ』にて首を繋いで、眼前の試験官殿を見る。

 

「……今ので諦めないって、マジか」

「うむ! 己の不甲斐なさを恥じるばかりだ!」

「──どうする? 今からでも悪魔を使う?」

「……使わぬ!」

「今迷ったね。それはどうして?」

「負けたくないからだ! だがそれは『入学試験』という場では適していない!」

「じゃあ、僕が許可したら?」

「? 許可してくれるなら是非はない。全力で相手をするつもりだ」

 

 そう言葉を発すると、試験官殿は徐に何かのメモを取った。そこに『麻痺針』を投げたが躱されてしまう。ダメか。

 

「君は混沌の環境の常識を持ってるけど、ルールは決まり事を『その理由まで理解して』守ろうとしている。だけどそれ以外はとても思考が柔らかい。ルールに反していないならば文字通り『なんでもする』強かさが君にある。たまに破るみたいだけどね」

「申し訳ない……」

「つまり、かなりChaos寄りのNeutralだ」

 

 どうにも、人物評の総評をされているらしい。上手に回る口があるなら呼吸もするだろうと『パンデミアブーム』を放ったが、普通に回避された。

 

「そして、君の中にあるその手段を選ばない事は時に倫理を超越している。根本的には自分だけで作り上げた価値観で動いているんだね。その作り上げた価値観で他者と関わり他者を認める事を是としているから、Darkまでには行ってない」

 

 アライメントというのは、その人格の価値観のカテゴライズだ。悪魔の価値観を記録するのにもよく用いられ、Darkのアライメントを持つ悪魔とは会話が通じにくいとかの方針になったりもした。

 

「君の属性はN-N。混沌も秩序も正義も悪も、属性が濃いからこそのニュートラル。だから何かのきっかけがあれば簡単に主義は変わる。うん、通りでマニュアル通りの面接だと判定が難しい訳だ。正義、悪、混沌、秩序、すべての特質を見せてた訳だからね」

 

 ―なんとも奇妙な感覚だ。ハンター商会はアライメント中庸を尊ぶ価値観であったから、己はそれに合わせて擬態していた。しかし擬態をやめたこの世界でこそ『中庸』とみなされるなどとは。きっとうまく要素を取り出せば笑い話にできるだろう。

 

「あんまり気にしなくて良いよ、どうせ人間は自分自身の道しか生きられないんだから」

「なるほど、今は置いておくとしよう! だが、折を見て試験官殿や他の者達に尋ねさせて貰うことにする!」

「それじゃ、試験はここまで。君の性質はある程度見極められた。──て言ってタダで戻るほど、君は良い子じゃないよね?」

 

 まるで、『誘いに乗ってやる』と言っているかのような台詞だ。己の方こそ武闘に誘われているのだと言うのに。

 

「召喚『ゲンブ』、『クイーンメイブ』、『ペルセポネー』。試験官殿がよろしければ、一手御指南願いたい」

「まぁね。ならここからはプライベートだ──後悔するなよ、貴公」

 

 アーマーの一部が格納され、高機動スタイルの装備へと変化した。それと同時に人が変わったかのように表情の色が変わり、言葉にあった装いが消え失せた。

 

「言の葉に迷いがなくなったな。無理をしていたのか?」

「TPOというものだ。時と場合によって言葉は使い分けねば社会に溶け込めぬ。某共のような修羅だからこそ、やらねばならぬ」

 

 そう言いながら試験官殿、否、佐瀬殿は刀を鞘に納める。あれは、『居合』であろう。鞘から刀を抜く際の加速を利用した剣技だが、実際のところは不意打ちに対しての即応技術であると使い手のハンターからかつて聞いた。

 

 こうも『必殺』の気配を漂わせられては、反撃技の意味はないだろうに。

 

「行くぞ」

「おうとも!」

 

 するりと足の動きが見えない動き方、『摺り足』によって先手を取られた。有利な距離を取っていたにも関わらず、意識の隙間に滑り込まれた。暗殺拳と同じ源流の技術だ! 

 

葦名十文字『十文字切り*12』より派生単体に物理攻撃大ダメージ 2回

 

 ペルセポネーにクリティカル一回と回、一撃で落ちた。流れに乗った佐瀬殿が続けての剣戟を放つ。

 それを、ゲンブにカバーさせる。耐性こそないが、先ほどのダメージ量ならば耐えられる! 

 

『葦名十文字』

 

 だが、ゲンブはギリギリに耐えられなかった。2発ともが致命的な場所にヒットしたからだ。

 

「2発とも致命打に⁉︎」

「斬り続けていれば、分かることもある」

「自動効果、急所を見抜くスキルか!」

 

コロシの愉悦クリティカル率上昇
ミナゴロシの愉悦クリティカル率を大幅に上昇

 

 ゲンブとペルセポネーが落とされた。故に絡め手は難しい。だが攻撃手段はいくらでもある。

 

「クイーンメイブ、合わせろ!」

電撃魔法→電撃魔法

ジオジオダイン

合体魔法 サンダーブラスト*13

 

 単体魔法の攻撃範囲では容易く回避される。ならば手数は減っても合体魔法に変化させることで攻撃範囲を拡大させて、必中にする! 

 

「見通しが甘い」

 

 サンダーブラストは雷の巨大な網を作り出す合体魔法だ。範囲は広く、確実に命中した。しかし、それは技術によっていなされた。『雷返し*14』という技らしい。

 変則的なマカラカーン、あるいは電撃反射に見えるが、あれはホムンクルス*15使用のような変わり身の術の類だ。

 

 ほんの少しだけ身体を浮かせて、電撃が体の中に通りぬける前に的として俺たちを差し替えた。耐性持ちのクイーンメイブを盾にしたことで被害は軽微にはなったが。

 

 先の『雷返し』を思う。あれはただの技術だ。粗方の原理は理解できたので己の肉体でも可能だろう、机上の論としては。

 受ける瞬間の魔法抵抗力をゼロに近づけなければ、抵抗反応によって身体にダメージが発生してしまう。その上、他のターゲットに返せなかったら無抵抗で強力な魔法を受け止めることになるという馬鹿げたリスクを負う覚悟があったならだが。

 

 ……うん、コツさえ掴めば使えそうな技術であるので、頭の中の引き出しに技をしまっておこう。今回思い出した『ジオ』のように。

 

「……さらば」

 

 そのようにふわっとした感覚のまま佐瀬殿を見る。構えは同様、力みの感覚から狙いは胴の中心、心臓狙い。取る軌跡の想定と鞘走りする前の腕の動きは寸分違わず、左手スマホの籠手部分の損耗はなし。

 葦名十文字には、人として磨き上げた技を対悪魔用にデチューンして動き辛くした形跡が見て取れる。それが技としての型となり、自由に描ける筈の軌跡を窮屈なものにしている。

 

獣の反応自動効果スキル自分の命中・回避率が上昇

 

「見切った!」

 

 それだけ分かれば、ダメージが最小になるように籠手で刃を弾ききれる。刃が煌めいた瞬間に刀の腹を6割の力で殴りつければ、十文字を描くニ撃目は籠手で斜めに逸らせば受け止められる範囲内だ。

 力が弱ければ一撃目が、力を込め過ぎればニ撃目が防げない。気を付けるべきはその程度だろうか? 

 

 クイーンメイブがメディラマで全回復を起こして、己が攻撃をする。『ジオ』を単発で放った時の『雷返し』を見るためだ。

 

 受けた雷を返すのは一瞬、攻撃直後の隙を突かれれば回避は不可能。受けるしかない。

 

 地に足を付けた佐瀬殿が『芦名十文字』を放つ。軌跡も速度も狙う場所も変えてきたが、同様にガントレットで弾いて防いで対処可能だ。

 

 そのような攻防を3度繰り返したところで、佐瀬殿は言葉を発した。

 

 

「……先日手だな」

「うむ。こちらに佐瀬殿の雷返しと銃撃耐性を破る手はなく、己が十文字斬りを見切った今クイーンメイブと己を同時に切り倒すには些かの無茶が必要だ。だがそれを取る理由が佐瀬殿にはない。己から致命打を受ける事がないのだから」

「状態異常系の攻撃を重ねるつもりは?」

「分かっているのに尋ねてくれるな。付け替えれるアクセサリーには予備があるだろうし、そもそも最初にバインドボイスが剣圧にて斬られている。有効打にはなりえん」

「しからば、某が他の技を使った場合は?」

「十文字を見切る際にその呼吸は理解した。無事では受けれないだろうが、致命打を受けるほどの重症にもなりえん。クイーンメイブが回復できる」

「……互いに、命を捨てる場面でならば打開は可能だが、試験ではな」

「どうする? そちらが秘奥の一端を晒すのであればまだ続けるが」

「招来石*16を構えていながら良くも言う。分けだな」

「うむ……敵でなく良かったという気持ちと、全身全霊なら破れたかどうかという疑問がせめぎ合って、実に気持ちが悪い」

「某も同様よ。これだから、宮仕えは辛いのだ」

 

 互いに構えを解く。

 勘が多分に混ざるが、佐瀬殿の奥の手は自己強化の類だと踏んでいる。葦名十文字は見事な技ではあったが、まだ技の余白があったように見えた。『貫く闘気』や『チャージ』あたりの強化を()()()()()()()()()でして自分だけの必殺に昇華させるのだろう。

 なお、まっとうであればとっくに使用し己を切り捨てているので考慮には入れなくて良い。

 

 己側の奥の手の一つは『悪魔合体ライト』。死亡したペルセポネーとゲンブを素材にした悪魔合体をすること。龍王と死神の合体先である悪霊であったなら作り出せるのは『悪霊ピシャーチャ』。佐瀬殿のアクセサリー耐性を抜く状態異常連打での攻め手は取れる。また、合体事故が起きた場合でも手札の差し合いをリセットする事ができる。どちらにせよ、崩せる道筋が生まれる。

 

 とはいえ己の方の奥の手は運試し、2:8程度の不利状況ではあった。

 

「不覚……」

「同じくな……」

「それじゃあ、仕事に戻らなきゃ。ジエンくん、生徒指導室にお願いね」

「心得た! だが悪魔と佐瀬殿の回復はやらせて貰うぞ!」

 

 己が覚えているリカームにて倒れた悪魔を復活させ、クイーンメイブのメディラマで全回復。幾らかのMPの消耗はあるが、それは歩きながらの『MAG吸収、分配効率化システム『パーティMPリカバリをもってすれば問題はない。

 

 生徒指導室に着き、席に着く。

 

「時に試験官殿、己の試験はどうだったのだ?」

「人間性については問題なし。悪魔汚染、社会適合性については要観察。とりあえず別室登校から始めて、夏くらいにはクラスに合流できそうだね」

「なるほど! 夏までに不足分を補強すればよいのだな!」

「ただし、学力については問題アリだ。数学で顕著に現れた結果で、途中式がおかしい。他の教科での失点も途中式や前提条件、法則の間違いが多かったからね、途中から詰め込むんじゃなくて初めから一つずつ覚えなおした方が良い。そっちの方が逆に理解は早くなる」

「む……不足分だけを学べば良いというのは早計だったのか」

「君はどうにも今まで勉強してきた環境がこっちとは違うみたいだからね。ひとつひとつ学び直して、学問と一緒にこの世界を学んでいけばいい」

「心得た! 以後よろしく頼むぞ!」

「僕は警備員が基本だから、あんまり期待しないでね」

 

 

 そうして、佐瀬殿と別れて帰路につく。

 

 今日は、良い日だった。心身強き剣客にいくつかの指南を貰えたのだから。

 

 そんなとき、ぽつりと空から何かが落ちてきた。

 

 天蓋崩れではない、トウキョウを覆う岩壁はこの世界にはないのだから

 

「『くもり』の状態だな。何だ?」

 

 ──その日、己は『雨』を知った。

 

*1
敵全体に神経属性攻撃 威力120 高確率で睡眠を付与

*2
敵全体に精神属性攻撃 威力120 高確率で魅了を付与

*3
やる夫まとめくす まとめ そのその318 【喪女は】覚醒者の婚活事情スレ【嫌だ】より。自然覚醒タイプならばパワーの最小は普通にコントロール出来る

*4
他国言語について理解がない

*5
真1において傷薬は400円

*6
この場合の比較対象はインク使うペンだとか筆とか

*7
籠手型スマホだとジエン君は信じている

*8
『あんきぱん』ではない

*9
敵複数に銃撃属性で中威力の攻撃を1~3回行う。緊縛の追加効果。

*10
真4 アクセサリー

*11
敵単体に銃撃属性で小威力の攻撃を1回行う。緊縛の追加効果。

*12
ペルソナ5 イザナギなどが使用

*13
サンダーブラスト 威力54 敵全体に術者の【技】の平均に補正をかけた電撃属性でダメージ+【感電】効果

*14
能動的に電撃属性を反射する オリジナル

*15
ペルソナ3 即死魔法を受けた時身代わりに消費される

*16
死亡状態の仲間を蘇生して召喚、消費アイテム




切り所を見失ったマンです。

ジエンくん
鉛筆を一箱握りつぶした少年、頑丈で敵の血を吸ってる万年筆(攻撃力80くらい)で勉強を始めた。勉強は嫌いじゃない。
今回の試験について一切の疑問を持っておらず、なるほどなーと思っていた。
悪魔からウィスパーイベントによって教えられたスキルとは別に、自力で習得したスキルをいくつか持っている。『獣の反応』『食いしばり』に銃撃スキルの弱い奴を用いることができるが、ウィスパーイベントを重ねて適正を上げられないので攻撃系スキルとしてはあまり使えない。基本的に使うのはウィスパーで覚えてスキルスロットに入っている『百麻痺針』だ。

強敵との戦闘するときには、基本的に長期戦にもつれ込ませる戦法を取っている。事前に情報を得ることのできない環境で戦っていたからである。なのでキリギリス掲示板、シロエwikiに関しては本気で感動し、暇を見つけては読み込んでいる。

学校に行くことによって習得できる技能『料理』などに興味深々


佐瀬甚介(試験官殿)
頭の中で『必殺』を振り回す奴を思い描いたら出てきた名前。SEKIROにおいては秘伝『雷返し』の掛け軸の前に陣取っていた居合使い。びっくりするほど十文字を振り回してくるので、弾けるととても楽しい。

教員免許を持っている警備員。免許を取った理由は教え導く仕事に興味があったから。ただし内面の殺意その他は結構頻繁に滲み出るので聖華学園以外で教鞭を取るのは無理だとは自認している。

今回使わなかった秘奥は神下ろしの類。自身の命の大半を捧げて『夜叉』を身に宿して攻撃力を増強させる。元々は必殺の奥義であった『葦名十文字』を打てるだけの身体にするための技法だったが、鍛えた身体で普通に打てるようになった今ではただの火力バフである。
デモニカを着ているのはコマンダースキル『一気通貫』が目当て、その他サポート悪魔の召喚も可能だが、サマナー適性はあまり高くない。


D2のスキルに詳しくなく、TRPGのルルブはなかったので『変わり身の術』をでっちあげられるスキルが思いつかなかった次第です。なので『雷返し』はオリジナルスキルとなりました。



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天使の梯子を見た日

『雨』というものがある。

 

 空気中の水分がほこりなどを核に固まり、水滴として空より落ちる現象だ。

 

 かつてのトウキョウにはなかった、『天候』の一つ。

 

 空を知らないケガレビトには、理解できなかったことの一つ。

 

「…………」

「ごめん遅くなった。あれ、ジエンくん?」

 

 車にてリオが迎えに来る。

 己は空から降ってくる水をぼんやりと見ていて、接近に気付くのに少し遅れた。

 

「ジエンくん、雨宿りくらいしてなって」

「……雨宿り、とは?」

「雨の当たらない所で休憩すること」

 

「ほら」と促されて学舎の方を見る。そこには屋根のある場所でスマホを見ている若者がいた。

 

 当然といえば当然だ。降ってくるのは空中にできた水滴なので屋根のある場所に行けば問題はないのだ。

 

「ジエンくん?」

「ああ、今行く。車による移動だな」

「試験で疲れたみたいだね。気疲れって奴はあるんだし」

 

 リオの車へと足を進める。車には屋根が付いており、前面がガラス状になっているため雨によって車内が濡れることはない。

 車内の温度を調整しやすくするためのものだと思っていだが、本命は雨などを防ぐためだったのだろう。

 

 車に乗って雨の日の人々を見る。

 

「リオ、あれは何だ?」

「傘だよ。雨を防ぐ為の道具、水を弾く素材の布とかビニールとか」

「雨が傘を突き破ることはないのか?」

「流石にないかな。頑丈なのもそうだし、水滴って大して重くないから」

 

 雨は、随分と身近なものだったようだ。情報で知っていたものとは桁が違いすぎて驚き戸惑っていた己を恥じる。

 

「すっごく疲れてるみたいだね、何か変わったことでもあった?」

「変わったのかは分からない。だが、得難い経験はさせて貰った。左前殿という方が試験官だったのだが、相当な使い手でな」

「……へぇ、やり合ったんだ*1

「ああ。己の手持ち悪魔の脆弱さが明白となった。耐性はクイーンメイブのもの以外頼れぬし、物理は全通しなのでな」

「ま、物理に耐性持っていても貫通付きが飛んでくるんだけどね。今の物理使いで貫通技持ってない奴は雑魚だけだし」

「うむ」

 

「故に己は、戦うための装備、戦力、そう言ったものを集めるべく今すぐに動こうと考えていた」

「……さぼりたくなっちゃった?」

「違……わないのかもしれない。どのように動くかという思考の全てが、雨で停止してしまったのだから」

 

 己から、そんなぼうっとした声が出た

 

「……やっぱり、帰りたい?」

「帰るべき場所、というものをあまり持ったことはないのだ。だから帰りたいという感覚があまりわからない」

「なら、迷子になってる気分かな?」

「……近いと、思う」

 

 迷子、確かにそうだ。

 行く道の先が分からず、足掻いてももがいてもその場から進めない。そんな感覚。

 

「そういう時は、遊ぶのが1番いいよ。疲れで気分が落ち込んでるのが原因だから、リフレッシュするの」

「……なるほど。遊ぶのか」

「お姉さんが凄いアニメとか楽しい遊びとか教えちゃうよ?」

「感謝する」

 

 その心が温かい。だが、気分があんまり乗り気にならない。

 

「ま、ちょっと待っててよ。先生の所寄って杏奈を拾っていかなきゃならないから」

「む、承知した。子を宿している方だったな」

「そうそう。どこの男に引っ掛けられたんだかね」

 

 杏奈とは、リオの相棒だった者だ。広瀬杏奈というのがフルネームだが、広瀬というのは作った偽造戸籍の都合だとか。

 今は、癒術を生業にしている者のところで妊娠初期の検査などを受けていたのだとか。

 

「ここが知り合いの癒術師のねぐらよ」

「普通の家屋に見えるな」

「実際そうらしいわ。腰を据えて設備整えると襲撃された時の被害が大きくなるから、色々工夫してるらしいの」

 

 リオは車から降り、家屋のドアの横にあるボタンを押す。こちらに鳴る『ぴんぽーん』という音声から、呼び出しチャイムの類のようだと推測できる

 

 ガチャリという音と共にドアが開く。目の前にいるのは、どこか懐かしい雰囲気のある女性だった。

 

「あれ、杏奈?」

「……今、ちょうど出ようとしていたので」

「あ、車の音とか聞いたんだ。先生は?」

「ゲームしていますね。テイオウイカ*2が強いのか弱いのかを実践の中で確かめようとしているのだとか」

「イカやってんねー。なら、邪魔しちゃ悪いか」

「ええ。お金はもう支払い終わったので、適当にしろと言われました」

「おけおけ。じゃ、車に乗ってよ。帰るよ」

「……帰る?」

「ウチの社員で私の相棒のアンタが、なんで帰るって言葉に疑問を持ってんのよ。拗ねるわよ?」

 

 リオからのその全幅の信頼のある言葉と、杏奈のぼうっとした言葉に温度差がある。感情が表に出にくい性質なのだろうか? 

 

「……この子は?」

「新人だよ」

「ジエンと申す者だ。戦うくらいしかできないが、戦う事には自信がある。まぁ、今は手持ちが半壊しているのだが」

「……失礼」

 

 そんな一声と共に、己に手を当てて『パトラ』を使われた。

 

 すると、もやもやした気持ちが一瞬にして吹き飛ぶ。いつもの感覚だ! 

 

「何と⁉︎頭の中がスッキリしたぞ! 己は何かの状態異常を被弾していたのか⁉︎」

「違う、気圧の問題」

「……きあつ?」

「空気の重さとか、そういうの。気温とか水分量とか色々要因があって変化する奴で……あぁ、自律神経が乱れたのか」

「じりつしんけい?」

「……うん、雨の日みたいな空気がいつもと違う時は、体も少し変になるの」

「そうなのか! よくわからないが覚えておくぞ!」

「素直だ」

「素直だね」

 

 杏奈を連れて車に乗る。妊婦だというが杏奈のお腹はまだ、大きくなってはいない。妊娠してから日が浅いのだろう。生まれるまでは10月と10日だったか?

 

「うむ! では帰るとしようか!」

「そうそう。ついでにお菓子とか買ってく?」

「お菓子⁉︎」

「あ、ジエンくんの目が変わった」

「可愛い子だね」

「お菓子といえば、食べるのにも悪魔交渉にも使える強力なアイテムだな! どれほどの価格なのだ? 己の給金で買える程度ならば補充しておきたいぞ!」

「はいはい」

 

 そうしてウキウキとした心の動きのまま、杏奈とリオを見る。

 

 平常心を取り繕っているようだ。リオは負い目があるようで、しかしそれを悟らせないように無理をしている。そう見える。

 

 杏奈は、なんだか本当に生きているのか疑問に思うような状態だ。存在感がふわふわしているというか、地に足が付いていないような。妊婦となったことが原因だろうか? 

 

 驚くほどに心の動きが噛み合っていない。きっかけがあれば壊れてしまうような、そんな関係性に見えてしまった。

 

 ―――まぁ、まだ壊れていないのだしどうにでもなるだろう。

 

「時に、雨の日に体調が悪くなる、というのは個人差があるのか?」

「そうだね。リオは全然大丈夫だし、私は結構ダメな方。この子はどっちになるかな?」

 

 杏奈がお腹をさすって言う。幸せそうな顔だ。

 

 その顔は、かつての世界でよく見た顔だった。多くの大人たちがしていた顔。

 

「自身に『パトラ』はかけなくてよいのか? 雨で体調が悪くなるのだろう?」

「……うん、大丈夫」

「ならば良いか……」

 

 車内でやる事でもなく、急ぎで調べなくてはならないわけでもない。それにそもそも思い過ごしの場合すらある。

 

 というか、さっき癒者の所から来たのだから薬物はないだろう。うん。

 

 

 

 スーパーマーケットというもはや恐怖を覚えるほどの物資量のお店から出て、数秒。

 

 ようやく、真っ当な思考に戻って来れたようだ。己の暴走をさせないように掴んでいた杏奈の腕がありがたい。そうでなければ物資確保のためにあらゆることを始めただろうから。

 

「……帰って、来た?」

「うむ。スーパーに圧倒されてしまったぞ」

「びっくりしたんだ」

「びっくりしたのだ」

 

 大変にびっくりした。こういった社会が守られているからこその施設は、己にとって衝撃が大きい。

 

 あれほど多くの無事な菓子や食料があり、しかも日々輸送されて陳列されている。あの馬鹿げた流通量を回し続けることの難しさを考えるとほとほと頭が下がる。護衛依頼などがあるのなら積極的に受けてみよう。

 

「杏奈、ジエンくん、行くよー」

「手荷物を持とう! ……この袋は?」

「買い物袋忘れて来ちゃってさー。買っちゃった」

「これほど薄手かつ頑丈な袋がすぐに買えるとは、恐るべしスーパーマーケット!」

 

「ジエンくんってどこから来た子? アマゾンの樹海とか?」

「だいたい合ってるかなー」

 

 リオの袋を受け取って代わりに持った己だが、なにやら奇妙なレッテルを貼られた気がする。トウキョウ生まれトウキョウ育ちだぞ己は。

 

 ゆったりと、時間が過ぎていく。

 

 楽しい楽しい、日常だった。

 


 

 杏奈が帰って来た事で、研究所の部屋割りを改めて調整することとなった。このビルは3階部分が宿泊フロアとなっており、己は来客用の部屋を一つ使わせて貰っている。

 

 杏奈の部屋は戦闘員として敵に即応できる位置にある。だが妊婦にそれは不味いという事で、そのあたりを修正しようというコトだった。

 

「うむ! 家財の交換は終わったぞ!」

「COMPがあるとこういう引越し楽だよねー」

 

 そして、簡単に終わる。棚とかそのあたりをデータとしてしまって交換するだけなのだから。

 

「と、配置は同じようにしたが、問題はないか? どこか転んでしまいそうな箇所はあるか?」

「……大丈夫、かな?」

「まぁ、覚醒者が転んだ程度でダメージ受ける事はないしね」

「では、己はこれより杏奈の部屋であった所を使わせてもらう。襲撃の際はリオと共に対応するので任せてくれ」

「……頼もしい。けど、大丈夫? 辛くない?」

「当然だ! 己が身を挺して仲間を守るのは男の誉れと信じているとも!」

「子供に守られることは大人の恥でもあるから、頑張り過ぎないでねー」

「……む、そうか」

 

 と、ぐだっとした会話を続けると、ある一つのメモリーカードが目に入った。SDカードという奴だろう。

 

「……杏奈、メモリーを裸で置いておくのは危なくないか?」

「別に大したもの入ってないし、良いよ」

「そうなの、か?」

「そう。そのメモリーは3dsに使えなかった奴。あれって32Gまでしか使えないの*3

「え、これ新品?」

「どこかで使っていた記憶はある。中のデータは、……何だっけ?」

「確認しても?」

「いいよ。写真とかだろうし」

 

 そして、メモリーカードをスマホで読み取る。だが、中のデータはタイトル以外読み取れなかった。ファイルネームが日付のようなのでおそらく何かの記録や日記のようなものだが、文字を表示することができない。文字化けしてしまっている。

 

「……何一つ読み取れぬ」

「暗号化って奴?」

「……うん、思い出した。ちょっと昔に書いてた日記。使ってたアプリが特殊だったから文字コードが変なんだ」

「なるほど、本当に日記であったか。女性の秘を探るような真似となり、申し訳なかった」

「いいよ、許可したの私だし」

「まぁ、いいじゃん。失くしても困らなさそうだけど、失くさないようにねー」

「うん」

 

 そうして、杏奈の部屋から出る。

 新しい己の部屋につき、スマホからデータで家具を出す。もともと大したものがなかったこともあって、これだけで部屋は終わりだ。充電ケーブル、予習プリント、鉛筆の残骸、たったこれだけ。

 

「ジエンくん、終わった?」

「うむ! 問題はなかったぞ!」

「……じゃあ、ちょっと話して良い?」

「構わぬ! リオは少し無理をしているのが分かったからな! 愚痴の相手程度には己でもなれるだろうよ!」

 

 

「杏奈、ちょっと変だったよね」

「そうだろうか?」

「ハピルマって程酷くなかったけど、常に幸せそうだった。アナライズでは異常なし、根拠は私の勘だけでさ……前に、勘だけで変なこと言って大喧嘩になったんだよね」

 

「喧嘩とは?」

「どう考えてもおかしいじゃん。」

 

「リオは、杏奈との喧嘩を恐れているのか?」

「まぁねぇ……大切な、友人だからね」

「その想いがあれば問題はなかろう。真心は伝わるものだ」

「そうかな」

「その通りだ! それに、時間はいくらでもある! リオも世界も、己が守って未来に繋ぐのでな!」

「……言うねぇ」

 

 リオの笑顔が、楽しそうだった。

「ありがとう」という言葉がある。だがどう考えても礼を言うのは己の方だ。

 己がこの文明圏で社会的な生活を送ることができるのは、リオからの指導があるからだ。意図的に情報を噛み砕いて、己に伝えてくれていた。

 

 それについて感謝しているつもりではあった。しかしそれではまだ足りないと気がついた。

 

 杏奈殿の件でも、戦闘でも、なんでも力になりたいと思う。

 

「ジエンくん?」

「うむ!」

「……まだまだビビってるから、もう少し私を守ってね」

「ああ! だが死ぬ時は死ぬものだ。なるべく早くする事を勧めるぞ!」

 

 すると、窓の外に一つの奇妙な色が見えた。

 多色の、何かだ。

 

 

 

「あ、エンジェルラダーじゃん」

「えんじぇるらだぁ?」

「雲の切れ間から太陽光が梯子みたいに伸びていくことだよ。綺麗でしょ」

「うむ! 誠に美しいな!」

 

 よく知らないが、このエンジェルラダーはきっと吉兆を示すものだろう。己の未来は明るいぞ! 

 

 


 

「人外ハンター、ジエン……ね」

 

 加速された時間の中で、漂流者の資料を見る。

 名前は自分で付けたハンターネームだと言っていたが、『私』の知る本名と等しい。

 

 彼が現れるのは主に『箱庭戦争』を始めとした、崩壊した世界での闘争が長く続いた時。なので現在の私ではその情報を詳しく参照することはできない。

 

 私を基準にした場合の子世代、あるいは孫世代。その中で最も早く戦いに適応する天才だった。

 

「彼の元々居た世界、天蓋に覆われた世界自体は記憶にあるわね。冬優子やライドウ のような運命に導かれた者が公の力を使って天からの脅威とトウキョウを隔離するやり方。諸外国に追い詰められて核戦争が起きた時点でのプランの一つではあったけど、今回は出来そうにないのよね」

 

 トウキョウを天蓋で覆って異界とする事。それほどの強力な儀式を行うためには公の力に加えてトウキョウそのものを素材にした巨人を作成する必要がある。

 しかし、現在の異能者のレベルによって東京の地盤の硬さはかなりのものだ。物理的に隔離するほどの異界に落とすのはレベル120とかのとんでもない力が必要になるだろう。

 

「人が弱くなかったら起こせない現象。なのにこの子のレベルは60にまで到達した。周回数によるレベル上限仮説からの外れ値かしら? ライドウや鳴神悠のような」

 

 入学テスト結果によると信じるに足る人間性をしていると書いている。高レベルになった原因は鍛え続けたからで、悪魔からのシンクロ現象はウィスパースキル《悪魔からの囁き》で身体を変容させられる程度。不快な状況に対して即座に悪魔の力に頼る傾向はあるが、それが良くない事であることも理解しており、COMPの機能なのでセーフティをかけられる知性がある。

 

 また、私の微かな記憶でも、誰かのために戦える子であると言っている(それはそれとして何でも食べる癖は最後まで直らなかったけれども)

 

「まぁ、指導が付くのなら大丈夫でしょう。所詮レベル60程度なのだし……レベル60程度って何よ本当」

 

 そうして、漂流者対策の部署に年少ドリフター社会適合のテストケースとして彼を登録する。

 

 この地獄の最前線で心が安らかになることはないだろうし、きっと戦いに向かうだろうけれども、聖華学園で学ぶことにきっと意味があると信じて。

 

「……この、未来から強い子孫がやってくるのってドラゴンボールで見たわね。一緒に人造人間とかやって来てないかしら? もう倒されているかもしれないけれど」

 

 

 

*1
クレームを入れる気マンマン

*2
Splatoon3のアップデートで追加されたスペシャルの一つ。サメライドさんに謝れ

*3
64G以上のSDカード、microSDカードは3dsさんが認識できない




あとがき
前回のアレ含めて3話にすればよかったかな?という少しの後悔。
アスキーアート導入は基本的に風景の為であり、ジエン君が見た未知への感覚を言語化するより楽しい気がしたからです。

ジエン君
雨を見たことで感じたノスタルジーはただの低気圧が理由。空から岩が振ってくるのには慣れているけど水が降るのは慣れていない。とてもびっくりしてる

リオさん
友人関係についてはヘタレている。
いろいろな本を読みこんでいるので知識はそれなりに深い。それでジエン君に尊敬の念で見られていることが気持ち良すぎてクセになりつつある。それはそれとして間違いを教えたくないのでこっそり勉強を始めた

杏奈さん
妊婦さん。ナニカサレタ空気はあるが、本人の認識にも身体にも問題は見つからなかった。
絶対にナニカあると知り合い全員が思っているが、そのナニカがわからないので警戒しかできてない。
要観察


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西東京撮影スタジオ異界化事件(1) 周辺探索ハイジャンプ 

『リモート授業』というものがある。

 教材ビデオのようなもので、教科書についての全体講義を映像に記録して、それぞれに閲覧、学習させるスタイルのものらしい。

 この授業のメリットは、現実での講義と異なって対面で授業を受けなくて良いという事、映像が故に倍速、巻き戻しなどが可能な事がある。

 デメリットとしては教員への質問が返ってくるのが遅いこと、授業内容を間違って理解していても教員からの修正を受けられない事、共に学ぶ同じ年代の者達との情報交換が難しいことなどがあげられる。

 総じて、一長一短なのだろう。

 

 個人的には、倍速再生が可能なリモート授業の方がやりやすい。思考基準を戦闘時のようにイデアに移動させれば10倍速程度なら問題なく内容の理解が可能だからだ。

 

「ジエンくん、それ大丈夫?」

「む? 何がだ?」

「サボってるって思われない?」

 

 事務室にてゆっくりと仕事をしている杏奈殿から忠言を貰う。確かに授業内容を理解していなければ『再生した』という事実だけを求め出席のみを確保するやり方と捉えられるだろう。だが、そこに問題はない。

 

「安心してくれ杏奈殿、これは去年の分の授業なのだ。出席はない」

「……自習、なんだ」

「うむ! 教員の方と話し合った結果、期日までに十分な学力を会得できていたのなら中学2年度としてクラスと合流できる制度があるらしいのだ! 己のような年齢や教育が特殊な者に対しての措置らしい!」

「へぇ……ジエンくんって、何歳?」

「12以上だな! 活動時間のカウントと検査によって確認できた肉体情報によるとだが」

「あやふやすぎ、では?」

「必要になるとは思っていなかったのだ」

「けど、そうだね。ジエンくんは13歳くらいに見えるよ」

「なるほど……」

 

 己の外見年齢をメモしておく。年齢を語らねばならない時は13とすれば違和感なく溶け込めるであろう。

 

「それで、今学校は『別室登校』だっけ?」

「そうだ。この社会での常識、規範、マナー、そのあたりの講習をメインに受けている。多くの人が効率的に動くための前提なのだそうだな」

「……そんなに考える必要ある?」

「あるとも! ルールを守ろうとせぬ輩は集団に帰属できぬ。それで生きられる世ならば良いが、己程度ではそれもできん。しからば排除されぬ程度の常識は身につけねば、屍を晒してしまうだろうて」

「……固く、考えすぎてない?」

「それは言われたが、なかなか治らぬのだ」

 

 そうしてゆるりと会話をしながらリモート授業をしていると、リオが嫌そうな顔で何かのテキストのあるタブレットを持ってきた。

 

「仕事か?」

「……うん、キリギリスに出資者からの紹介依頼だってさ。色々忙しいとかで私の所まで回ってきちゃったよ」

「して、どのような仕事なのだ? 異界破りであればありがたいのだが」

「期待通りの異界破りだよ。まぁまぁのレアケースではあるんだけど」

「レアケース?」

 

「今回異界化したのは湾岸沿いの撮影スタジオ。最近の大河*1とか特撮*2とかに使われたLEDスクリーンっていう凄い設備を導入したばかりの所で、金回りは良いらしいわ」

「ほう、LEDすくりーん……光る、幕?」

「でっかいスクリーンにCGだとかを映して撮影する手法だってさ。凄いよね技術の進歩」

「……そうか! アニメーションなどを大きく流したりできるのだな!」

「そのアニメーションとかを背景にして、人間が演技できるって話みたい。まぁ使ったことないから間違っているかもだけど」

 

「で、異界発見者の情報によると、そのLEDスクリーンのあるスタジオが中心に馬鹿強い悪魔が流れてくるようになったんだってさ」

 

「ふむ……出てくる悪魔の傾向は?」

「レベル40後半から70台まで。出てくる悪魔の種族傾向もあんまりなくて、妖精も魔王も女神も天使もよりどりみどりだそうよ」

「幅があるのは恐ろしいな。キリギリスの者達にサポートは頼むのか?」

「報告はするけど、それだけね。そもそも修羅勢だとかの手が空いてないから回ってきた話だから、増援は遅くなると思う。だから、ゆっくり慎重にね」

 

「……それで、レアケースとは?」

「悪魔の数とレベル分布。数があんまり出ないけど、GP以上の悪魔が出てるのよ」

「共食いなどで強くなったか?」

「かもね。それなら数が少ないのも理解できるし」

 

 GPとはゲートパワーの事を指す。悪魔だのの影響で魔界との門がどれほど開きやすくなるかの指標なのだとか。基本的にはGP+10程度がその異界での野良悪魔の強さ上限だ。

 己のいた世界のGPは基本的に20程度だったことを考えると、この世界の戦士達はどれほど血反吐を吐いて戦っているのだろうか? と敬意を抱かざるを得ない。

 

「……して、観測されたゲートパワーはどれほどだ?」

「GP48で発見、そこから最大50、最小46までゆらゆら動いてるわ」

「下りもするのか……奇妙だな」

「異界出来上がった後に上がりもしないんだけどね。普通は」

 

 奇妙であるが、なんとでもなるだろう。GP50以上の特級異界と想定しておけば大きく上回ることはないはずだ。

 

「して、ボスの暗殺は狙うか? そんな奇妙な異界化を起こしてまで行う企みは分からぬが、ボスを殺せれば立ち消えよう」

「微妙なのよね。GP相応ならボスは80台乗りそうってのと、ギミック系な感じがするの。LEDスクリーンなんてそれっぽいじゃない」

 

「──なら、私も行く?」

 

 デスクに座ってなにやら『テツノツツミ』なるものの調べ物を切り上げた杏奈殿がそう告げる。リオの相棒であるのだから実力は確かである。しかし、リオの返答は想像に難くない。

 

「馬鹿言ってんじゃないわよ。下半身ごと赤ちゃん吹き飛ばされたくないなら引っ込んでなさい」

「そうだ! それに杏奈殿が無理をする場面ではないぞ! あと何時間で街が滅びるという訳でもないのだからな!」

「……そっか」

「まぁ、現地見てから決めましょうか。……とジエンくん、これこれ」

「む? 腕輪に、服か?」

「呪殺無効の『鳥人の腕輪』*3に電撃吸収の防具*4よ。サイズ調整が終わったから」

「……なるほど、胸部につけるプロテクターのようなもの*5か!」

「そうそう。ただ衝撃属性に弱くなるんだけど、耐性装備買ってたよね?」

「うむ! 先日購入できた『ヤクトヘルム*6』が火炎、電撃、氷結、衝撃、呪殺、魔力、緊縛、針に75%耐性だ! 検証はまだだが、おそらく正しい。耐性の上書き*7は確認できているので衝撃弱点は隠せる筈だぞ」

「おーけー。私は『氷結吸収』のブリザードローブ*8を着て行くわ。他にもいくつか持って行くから、ボスの属性が分かって余裕があったら着替えましょ」

「うむ!」

 

「二人とも、お気をつけて」

 


 

 そうして侵入することになった異界を見る。スタジオ、というのがどういうものかはわからないが、大掛かりな倉庫のようなものがいくつかあり、その周辺に建物がある。

 

「最新技術に投資した一念発起の大冒険、無駄にさせたくはないわね」

 

 現在は人払いの結界の内側に入り込んだ所。

 外縁部に悪魔の姿はないが、異界外部のGPを測定した限りでは出て来ていてもおかしくはない。

 

 周辺封鎖をしていた者達が対処したかと思うと、頭が下がるばかりである。

 

「じゃあ、ジエンくん」

「承知した。勧誘メインで情報を探っていこう」

 

妖精ティターニアLV49地震無効 物理魔法(核熱、重力、衝撃、電撃)弱点*9

 

 まず最初に接敵した悪魔は『妖精ティターニア』シロエwikiによると地震系が無効で物理魔法に弱いだけなそうなので、マリンカリンを仕掛けてから交渉に入る。

 

「……魅了の術をかけてから会話するのが、あなたのスタンス?」

「許せとは言わないが、理解はしてほしい。貴女のような強者を相手に警戒をしないというのは無理なのだ」

「……ふふっ、てっきり私の全てを使い潰してやるとか言うと思ったのに」

「今の所欲しいのは情報なのだ。……無論、悪魔召喚士としてティターニア殿も仲魔にしたくは思うが」

「情報というと、この異界の主のこと?」

「そうだ。出現する悪魔のレベルがかなり高いと聞く。さぞ名のある悪魔が主なのだろうとな」

「……倒すつもり?」

「無論だ」

「なら、丁度いいわね。私も連れて行ってくれないかしら。アイツの事は嫌いなの」

「……良いのか?」

「ええ、魔法での魅了というのは癪だけど、あなた個人は気に入ったのよ」

「承知した! よろしく頼むぞティターニア!」

「ええ、今後ともよろしく」

 

 妖精ティターニアが仲魔になった。

 

妖精ティターニアLV49地震無効 物理魔法(核熱、重力、衝撃、電撃)弱点*10
マグナス メディラマ コンセントレイト マハガルーラ(LV49)マハブフーラ(LV51)神々の加護(LV52)氷結ハイブースタ(54)

 

 地震魔法『マグナス』を習得しているのはありがたい。『メディラマ』『コンセントレイト』などを現在覚えており、多少のレベル上げで『マハガルーラ』『マハブフーラ』を覚えるであろうという情報がシロエwikiのデータにあった。なぜかレベルが1つ高い49で仲間になったので疾風魔法を既に獲得できている。これによっって2つの合体魔法が使用可能圏内に入った。

火炎疾風火炎メガブレイズ
火炎地変マハラギオンロワゾー・ド・フー

 

 マハラギオンを使える手持ちが居ないのは、これからの交渉次第だろう。

 

「して、この異界の主とは何者なのだ?」

「『堕天使パイモン』よ。人間の欲望由来の『シャドウ』っていうのを喰らって増長して、クリエイターを気取っていたわね」

「堕天使パイモン……レベルは52*11、ディアラハンにマハ・ブフーラ、催眠術を使う悪魔がデータベースからヒットしたな。元はこれか?」

「異界の主になったことで獲得したスキルとか、シャドウを取り込んだって事で強化された特性とかある筈よ。データは参考程度にね」

「心得た。ひとまず氷結で攻撃するのを避けるのと、『子守唄』を防ぐための精神状態異常防御アクセサリーを準備だな」

 

 ストックの中にティターニアを入れる。現在召喚している仲魔はペルセポネーとクイーンメイブだけ。MAG消費を抑えるためと、全体攻撃で全滅することのリスクを鑑みてストックの中に仲魔を残しておきたいという考えからだ。控えの仲間ができたのでゲンブを召喚してもいいだろう。

 

「しかし、このティターニアは『電撃』を弱点としているのか。以前戦った相手は電撃使いだったのだが」

「最近同じ悪魔でも特殊なスキルや耐性を持ってる奴が現れるみたい。この異界レベルのGPで、魔界に近い影響下なら」

「なるほど、他の『軸』の同名悪魔が混ざっているのだな」

 

 今回の異界は発生してから時間が経っていないのもあるとはいえ、外側に対しての能動的アクションが少ない。

 

 出現する悪魔は異界の主からの命令で絶殺の意思を刻まれておらず、会話が通じるあたり魔界から迷い出ただけなのかもしれない。

 ……それにしてはレベルが高いのが気になるが。

 

「外周ぐるっと回ったけど、かなり穏やかね。アラームトラップや軍勢での奇襲、ワープトラップも見当たらない」

「……もう少し、踏み込もうか」

「そうね。キリギリスに所感を投げてから……と」

 

 まずは、と背の高い建物、『ガクヤ』の方へと進んでいく。『宝箱(トレジャー)の探索、仲魔の勧誘をメインにしつつこの異界のギミックを探るためだ。まぁ、本命と思われる撮影スタジオを避けただけなのだが。

 

 道中、依頼主より支給されたスタジオマップとは異なる道がたまに見える。迷宮化及び部屋位置のシャッフルは起きている。外周から見ただけでは配置の変化は少ないようだから、マップを参考にできるのでは? と思ったが、そう甘くはないらしい。

 

 ──扉の前に着く。鍵はなく、ドアは開く。ドアへの接触をトリガーにしたトラップはなし。ドアへのアクションを狙った奇襲はなし。外側からの奇襲可能性を一時的にカット。

 

 ドアを開け、侵入する。

 

 数秒経っても入り口が閉じる様子はなし、侵入と同時に鍵がかかって閉じ込められはしないらしい。脱出経路の一つとして記憶しつつオートマッピングにテキストでメモ。

 

「奇襲なし、トラップは見えないけど『コアシールド*12』と」

「エストマ*13はかけておくか?」

「まだいいかな。ジエンくんの手持ちをもうちょい強化したい」

「感謝する! しからば強くなった仲魔達によってリオを勝利に導くことを約束しよう!」

「死なないだけで十分だって」

 

 警戒しつつ進んでいくと、廊下を歩いている悪魔達が見える。

 

 背後を取れており、周辺から増援の気配はなし。

 

 気付かれにくいような静かな歩法によって接近して、『バインドボイス*14』を発動する。

 

「奇襲かよ⁉︎」

「最近の人間はおかしすぎない⁉︎」

「ググゥ⁉︎コシャクナ!」

 

邪龍ファフニールLV60*15
霊鳥ジャターユLV55*16
夜魔サキュバスLV47*17

 

 まず、この集団の中で最も目を引いたのはレベル60のファフニール。見た目が機械龍*18のものでなく紫色の龍のものである*19のが特徴だろうか? 耐性の傾向としては物理が通りにくい。

 

 共にいるのは47レベルのサキュバス。記録では破魔銃撃あたりが有効で、魔法攻撃が通りにくい傾向だ。

 霊鳥ジャターユはwikiでは47レベルでガン弱点破魔無効*20のものと、32レベルで電撃弱点衝撃無効*21のものの記録があった。新種か、軸のズレだろう。

 

 ファフニール、サキュバスにはバインドボイスが通ったがジャターユには効果なし。しかし、緊縛への無効耐性故ではなかった。奇襲で十分なアドバンテージを得られたという確信が、魂を『ニヤリ』と震わせた*22

 

「クイーンメイブ!」

「ええ、『ジオダイン』」

 

 続けてのジオダインがジャターユにヒット、電撃弱点はズバリだったらしい。集合知の恐ろしさだろう。弱点を突けたことで流れが乗る(プレスターン0.5増加)。また、ジャターユは弱点を受けて体勢を崩していた*23

 

「銃撃が通るなら、貫通(コレ)もじゃない?」 

 

マッドアサルト貫通属性大ダメージ ダウン状態の相手にはダメージ増加ペルソナ3

 

 そして追撃のリオの一撃。大槍の突撃を思わせるそれは、ジャターユにの胴を貫きその命を終わらせた。

 

 一体撃破。

 

 ペルセポネーは『パンデミアブーム*24』を使用。次のターンは緊縛で動かないが、その次が生まれた場合に一瞬で仕留められるように*25である。

 

 そして、己の遅らせた出番が来る。

 

「ファフニール。交渉をしよう」

「ジャターユヲアアモ簡単ニッ⁉︎」

「次は貴殿がこうなるだろう、返答次第によってはな」

「ウグゥ……何ガノゾミダ⁉︎マッカハナイゾ!」

「貴殿自身だ。その強靭なパワー、もし動かれていたら己達は窮地に陥っただろう」

「ム、ソウカ?」

「ああ! だからこそそのパワーが欲しいのだ! 無論、契約として貴殿を強くすることを約束する!」

「……イマヨリ強イ、オレ……ッ!」

「どうか?」

「キメタ! オレハ『邪龍ファフニール』、コンゴトモヨロシク』」

「ああ!」

 

スカウト+交渉成功時、レベルの低い悪魔を確立で仲魔に引き込むハンターアプリ(真4F)

 

「サキュバス。オ前モ来ルトイイ! コイツノ混沌ハ強イゾ!」

「……まぁ、身体が成長途中でも良いか。ファフニールに釣られてあげる」

「私は『夜魔サキュバス』今後ともよろしく」

「うむ! 心強いぞ!」

 

 ファフニールとサキュバスが仲魔になった。

 

邪龍*26ファフニールLV60全体的に強く破魔が無効*27
噛みつき ファイアブレス マカラカーン 毒ガスブレス モータルジハード

 

夜魔サキュバスLV47銃弱点、火炎耐性、氷結無効、破魔弱点、呪殺無効
エナジードレイン スクンダ マリンカリン マハラギオン 子守唄(48) メパトラ(49)

 

 ファフニールのステータスを確認する。見れば緊縛に対して87.5%耐性だった。緊縛が通ったのは運の上振れという奴だったようだ。

 

 その他耐性も高水準で、殆どを87.5%耐性を持っており、神経を25%の耐性かつ破魔無効。『マカラカーン』のスキルに加えて『モータルジハード』を会得している。物理スキルが単体だけと心もとないが、強靭なタフネスの壁として相当に有用である。

 

 サキュバスの方はwikiに乗っていたデータと異なるスキルを所持していた。『マハラギオン』と『マリンカリン』だ。何らかの原因で身に着けたのだろう。耐性系を身につけられていないことを祈るばかりだ。

 

「送還、『ゲンブ』。召喚、『ファフニール』」

「早速出番カ!」

「相応にMAG消費はあるが、敵に奇襲された時のリスク軽減を選ぼう」

「それに、またファフニールが出てきた時は会話対処にできるしね」

「できればスキル変異で良い全体物理を獲得して欲しいものだな」

 

 ファフニールを先頭に出して前に進んで行く、さほど小部屋を確認できた訳ではないのに、突き当たりの階段があった。他の分かれ道は全て見たので、ここが唯一の階段だろう。

 

「階段までのマッピングデータをクラウドに共有、階段自体の罠をチェック……OK」

「リオのCOMPは探索特化に仕上げているのだったか?」

「そうよ。悪魔召喚機能は最低限に、『バックアッパー*28』と『ネオクリア*29』、『百太郎*30』、『ハニー・ビー*31』、『スキャニング・ゼロ*32』なんかを仕込んでるわ」

「インストールソフトという奴だな。己の拡張アプリは悪魔会話に尖らせているので、少し目新しい」

「その拡張アプリもびっくり性能だけれどね。解析と量産できれば良かったけど」

「……たしか、『こんぱいる』というのができなかったのだな? 使っているコトバが違う故と聞いたぞ!」

「逆コンパイルっていう奴らしいわね。答えから暗号を作り出すみたいなものだから、相当に難しいんでしょ」

「スマホの外側(ガワ)は学んだが、ソフト面はさっぱりなのだ。すまぬ!」

「むしろガワ分かってるのは相当に凄いから」

 

 雑談を交えつつ、油断を装う。もし階段の周辺にて待ち構えている悪魔がいれば攻め込んでくるところだろう。

 装った油断であるとバレてまだ潜まれている可能性はあるが、クイーンメイブ、ペルセポネー、ファフニールと3体の悪魔がそれぞれの知覚によって警戒している。

 

 不意打ちには逆撃できよう。

 

「……おっけー、行こう」

「うむ! 大事なしだ!」

 

 階段のスキャニングが終わる。トラップの可能性は低い。ヨシ! 

 

「それじゃあ、こっからは落とし穴に注意して、分断されてどうにかなるほどヤワじゃないとはいえ、面倒だからね」

「万が一はある。だが考えすぎればスタミナを消耗するだけだ。普段通りに行くぞ!」

「ジエンくんはもうちょい気を抜いて良いと思うよー」

 

 ファフニールを盾にしながら先に進む。

 小部屋を開けると、誰かの忘れ物と思われる鞄などがある。軽く触れたが罠ではない。

 

「そういえば、この異界に取り残された人はいたのか?」

「全員脱出が確認されたわ。もともと資材搬入とスタジオの工事で撮影はできなかったらしいのよ。かなり大掛かりな工事になってて、騒音があったから」

「音?」

「ドラマとかの撮影でその工事の音が入ったら、興醒めじゃない?」

「そんなものか……?」

 

 リオのCOMPから警戒音が鳴る。『百太郎』だ。己の警戒より早い。己の警戒察知よりも早いあたり精度が良いことは理解できるが、100%反応するわけでないらしく頼り切りは駄目らしい。

 

魔獣ケルベロスLV64
妖鬼フウキLV63
幽鬼ヴェータラLV63

 

「めまいの方から入るよ」

 

 先手を取ったリオの放つ『霞駆け』。神速の踏み込みからの連撃が4回先制ヒットする。内訳はフウキに2回、ケルベロスに1回、ヴェータラに1回。

 

 物理反射、無効は無し。物理耐性、強耐性は見えない。

 

 wikiからの情報を反芻、ケルベロスには氷結有効で火炎に耐性、フウキは衝撃、疾風が通らない。ヴェータラは破魔弱点、呪殺無効、この辺りがメジャーな耐性だ。

 

 銃撃は待機、フウキに『めまい*33』が発生している、次ターン放置可能。優先度を下げる

 狙いをケルベロスに、氷結属性合体魔法は氷結→地変→ブフダインのアイスクラッシュが使用可能。しかし地変系を使えるティターニアは現在ストック内部。現在出しているのはクイーンメイブ、ファフニール、ペルセポネーの三体。4体目は無理すれば出せるが、今は無駄に無理をする場面ではない。

 

「ペルセポネー、『ブフダイン』!」

 

 故に、妥協。霞駆けの1発のダメージがあるのなら、ブフダインの一撃と追撃で何発か使う

 

 凍結はせず、確定撃破はなし。

 だがダメージも大きく、流れも取れた(プレスターン0.5増加)

 

「ファフニール、クイーンメイブ、やれ」

 

 力の強いファフニールの『モータルジハード*34』で瀕死になったところをクイーンメイブがトドメを刺す。蝶のような華麗なATTACKだった。

 

 これで、残る手番(プレスターンアイコン)は2手程度、フウキは『めまい』で崩れているので優先はヴェータラ。ただし無傷。

 

「……手傷を入れるか! 『百麻痺針*35』!」

 

 体毛より作り出した麻痺針を2本ヴェータラに投げつける。ダメージ軽微。

 

「ッ!? 動けん!?」

 

 ヴェータラに追加効果の緊縛が通った。プラン変更、ダメージ量を優先。

 

「ペルセポネー、氷結だ」

「はい、召喚主」

 

 己と合わせているペルセポネーが追撃に移る。今回の戦闘で最初に動けたのはリオだったが、『調子の合わせ(プレスターンの4人制限)』の関係でペルセポネーの弱点攻撃に乗れなかった。周辺警戒、横槍の対処を優先しているという役割分担でもあるので、問題はないといえばない。

 己が5人でも簡単に合わせられるような統率力を持っていたらより楽だった、というだけの話だ。

 

「ガギィッ⁉︎」

「氷結有効、『めまい』と『緊縛』で手番消滅確認、増援警戒ヨシ!」

「ジエンくん事あるごとに『ヨシ!』って言ってて可愛いなぁもう!」

 

 発端となったのが工事現場での安全を注意するための作品であったらしい可愛らしいネコの言葉『〇〇ヨシ!』がつい出てしまう。

 コメントとして使われている様しか知らないが、勢いと雰囲気で使いたくなってしまうのは魅力的だからだろう。

 

 己が警戒に回っている手番*36で、リオが『千烈突き*37』を放つ。ヴェータラとスイキに3回ずつヒットした。『マヒ追加*38』が付与されたその突きにてヴェータラに麻痺が入る。

 

 フウキには霞駆けが2回ヒットした。ヴェータラには麻痺針2本とブフダインがヒット。その上で千烈突きを3回被弾した。

 

 8割以上は削れていると判断、レベルはフウキが64と高いので()()()()()()()()()()

 

「ペルセポネー、ブフダインでヴェータラにトドメを」

 

 そう指示してから、悪魔からの囁き(ウィスパー)をきっかけに自力で使えるようになったスキルを放つ。

 

プリンパ敵単体に混乱を付与

 

 フウキに混乱が通った事を確認してからファフニールとクイーンメイブの手番をスキップに使う。ヴェータラが死亡したことによって敵はめまい状態かつ混乱したフウキのみ。無力化は成功した。

 

 なので、可能な限りを()()に使わせて貰う事にする。『混乱トレード*39』だ。

 

「フウキよ、貴公との宝を頂きたい」

「ハァ? 宝ぁ? こんなもんくらいならくれてやるよぉ!」

 

トレード+トレード成功時に追加でもう一つアイテムを獲得ハンターアプリ

 

「もう一つおまけだぁ! 魔石をくれてやる! 冥土には銭も宝もいらねぇもんなぁ!」

 

 ──己達は敵の奇襲から始まった戦闘に勝利した。

 その上で『チャクラポット』『宝玉輪』に魔石を二つほど追加で稼ぐ事ができたのだった。

 


 

 探索は順調に進んでいく。

 時折レベルの高い悪魔が現れるが、それ以外は基本的に50台あたりのレベル。百太郎が機能しない事は一度あったが、リオも己も反応できていたので奇襲は受けずに済んだ。

 

「うん、おかしいね」

「ああ! 何かしらの罠を疑うな!」

 

 つまり、『なまっちょろい』のだ。

 

 外敵からの侵入に対してのカウンターがないような異界というのは、異常だ。意図的に発生させられた異界というのならば余計に。

 

「周辺探索切り上げて本命の偵察行くけど、どうする?」

「撮影スタジオの上から見るのはどうだ? こちらのビルディングは背が高いのだし、少し跳べば屋根上にはいける」

「んー、アリだね。穴開けて内部偵察かな?」

「穴を開けるとなると、偵察中に屋根ごと魔法で抜かれるのではないか? さすれば退路のない屋内に転がり落ちる可能性もある」

「一瞬視認できれば『ハニー・ビー』と『ネオ・クリア』で確認できるから。スキルが撃たれる前に回避に移ればそう大事にはならないって」

「なるほど、探索特化COMPの力か」

「そゆこと」

 

 楽観が混ざっているので警戒は必要である。しかし一瞬見るだけで良いならリスクは最小限に抑えられよう。奇襲の類は自力とソフトで防げば良い。

 などと考えていると、探索ソフトについてのことで一つ思い出した事があった。

 

「……そういえば、『タリ報*40』だったか? 動画*41の祈り手殿が使用したアプリは使わないのか?」

「武装COMPに特化したソフトだからってのがまず一つ。あとは容量の問題だね。『バックアッパー』外せばいけそうなんだけど、これ外すのは嫌だわ」

「外部への情報送信効率化プログラム……だったか?」

「加えて、探索記録の自動記録プログラムでもあるわ。これないと探索した情報まとめるの怠くてやってられないわね。……まぁ性質上ハッキング系には弱くなるんだけど。他人からのアクセスを受け入れる道を作る訳だし」

「……ふむ、一長一短か」

 

 探索効率化のための『バックアッパー』と『タリ報』、どちらを優先するのかは好みの問題となるだろうか? 。容量をそれなりに食う事と『百太郎』との噛み合いがどうなのかを検証して見なければ答えは出せなさそうだ。

 もっとも、タリ報を持っていた所でどうせ奇襲はゼロではないだろう*42。足りない部分を自身で警戒する必要があるのには変わりない。探りながら、最適なインストールソフトの組み合わせを学んでいこう。と思うのだった。

 

「それじゃ、跳ぼうか」

「心得た」

 

 話しながら屋上まで探索し終えた『ガクヤ』ビルディングから外を見る。周辺の飛行悪魔の目は向いていない。地上の徘徊悪魔からの視線もなく、地上にいる悪魔からの射程外を確認。

 ビルディング屋上からスタジオの屋根上までの跳躍時間は3秒未満、着地後の即時戦闘を考慮に入れつつ行動開始。

 

 助走をつけて跳躍。射撃系スキルは発動待機、視界内の飛行悪魔の感知はなし。

 

 背後を気配で観る。ビルディング屋上部に新たな悪魔は見えず、背面防御用悪魔召喚リソースのカット、前方に集中

 

 1秒経過、悪魔からの反応なし。スタジオ屋上部に悪魔の存在見えず。隠形の可能性排除不可能、警戒続行。

 狙撃警戒、防御用悪魔召喚継続待機、発射音、風切り音共に確認できず、通常弾速狙撃への対処リソースをカット。超高速攻撃のみ警戒。

 

 2秒経過、地上部の悪魔がこちらを視認、敵性反応見られず、着地までの攻撃はなし。リソースをカット。

 

 着地

 

 受け身によって着地音を最小に、着地時の硬直を狙っての攻撃を警戒、即時奇襲なし。

 

 悪魔召喚にてペルセポネー、ファフニールを壁とし展開、リオの着地を援護開始。

 

 リオの跳躍から着地まで、周辺からのアクションは見られず。着地成功。

 

「……警戒網がないのか?」

「みたいね」

 

 リオが地面に向けて抜き手の構えを取る。『貫通撃*43』に似た構えだ。

 その一撃はするりと屋根を貫いた。周囲に罅は入っておらず、威力が音に変わったりしていない。力が100%貫通力に使われたことが分かる。

 ただ、コツを理解すれば己でも技の使用は可能にも思えた。練度と威力をこうまで上げるのには時間がかかるだろうが。

 

「……視界良好。LEDスクリーンは健在、スクリーンのあるスタジオにMAG溜まりとボス悪魔を視認。情報通り、堕天使パイモンね。ついでに周辺から高レベル悪魔の出現を確認。MAGの濃縮がよく起きてるわ。アレが悪魔強化のカラクリかしら?」

「見られたか?」

「微妙。無視されただけかも」

「了解した。見られたものとして警戒する。周辺に移動悪魔はない、虚空からの出現に注意だ」

「待って、ここからアナライズを仕掛けてみる」

 

 そう言うと、リオが懐から魔力の籠った眼鏡のようなものを取り出した。レルムにて売り出されていたのを覚えている。量産可能になったとかで、それなりの値段に落ち着いてきたものだ。

 

「『万里の眼鏡*44』か」

「そう、本人の視界を元にするアナライズだから、この距離でもいける筈。ダメならそれまでだけどね」

 

 そうして、堕天使パイモンのアナライズが始まる。かかったのは10秒ほど、普通に一度の手番が起こるまでだ。

 

「……痛ッ⁉︎」

 

 しかし、その眼鏡が突然に壊れる。アナライズに対してのトラップ系能力か? とリオの壁として『ゲンブ』を召喚できるように待機する。

 

「無事か⁉︎」

「問題ないわ。敵からのアクションが理由じゃなくて、『万里の眼鏡』で獲得できる情報量を超えた事が理由みたい」

「……というと?」

「あいつ、強化……というか変化してる」

 

「……悪魔合体ね、アレ」

 

 



 

「待っていて下さい、召喚主様」

 

 より適した『堕天使パイモン』になるために身体の余剰パーツを削ぎ落とす。そして足りなくなった能力を足し合わせる為に5回目の合体を行う。

 

 魔界より現れる悪魔は異界の主の支配下で、出現したてでは自我が薄い、だから容易く塗り潰せ、容易に私の血肉にできる。

 

 全ては、召喚主様を守る為。召喚主様により高い権限を、命の自由を与える為に

 

 最適化しなくてはならない。あの人だけの『()()』に

 

 

 

 

*1
どうする⁉︎家康に使われているらしい。

*2
王様戦隊キングオージャーの背景に使われている

*3
ソウルハッカーズ出典

*4
ソウルハッカーズ出典 『大天使のブラ』 プレゼントされて余ってた

*5
ゲームシステム的にも男性でもつけられるれっきとした防具である。

*6
真1出典 全属性に強い

*7
防具耐性は強いものが優先される

*8
デビルサマナー 出典 氷結吸収

*9
出典 ペルソナ1 スキルはペルソナ3のもの

*10
出典 ペルソナ1

*11
出典 ソウルハッカーズ

*12
次の満月までフロアでのダメージ床を無効 真1

*13
自身のレベル以下の悪魔の出現を無効化

*14
敵全体に緊縛属性を付与

*15
出典 真1

*16
出典 ペルソナ3

*17
出典 真4無印

*18
機械龍の見た目になったのはソウルハッカーズ以降

*19
真1においてファフニールは龍王ペンドラゴンの色違い

*20
出典 真1

*21
出典 真V

*22
真4 先制攻撃成功時に『ニヤリ』を確率で獲得

*23
ダウン状態 ペルソナ3

*24
敵全体に風邪属性を付与 真4

*25
『悪化』を所持 (敵全体に万能属性1ダメージ 風邪の異常を受けているとダメージ量は『残りHP1になる数値』に変化する)

*26

*27
ガン75 呪殺50 神経25 突撃62.5 その他87.5の耐性

*28
2Dマップでセーブを可能にする。デビルサマナーでは消費アイテム、ソウルハッカーズではインストールソフトとして登場 今作では探索データ自動記録、共有ソフト

*29
マッパーと同じように2Dダンジョンでミニマップを表示する

*30
バックアタックを確率で無効化する

*31
オートマッピングを階層別に表示可能

*32
ダークゾーンをオートマッピングに表示

*33
真4F 1回行動不能

*34
敵単体に物理属性大ダメージ

*35
敵複数体に銃撃属性中ダメージ1~3回 緊縛を付与

*36
パートナーアタック

*37
敵複数体に物理属性小ダメージ。『速』によって攻撃回数決定。最大7回

*38
デビルサバイバー 物理属性に麻痺の追加効果を付与

*39
混乱属性の悪魔に対してのトレードは無条件で成功する

*40
SH2 アロウのCOMP改造 敵から奇襲を受ける確率が低下する

*41
本スレ 【 ノンフィクション勧誘ビデオ(前線編)】

*42
ジエンくんの間違い 最高ランクの★までカスタマイズすれば奇襲確率はゼロになります SH2

*43
真V 敵単体に物理属性小ダメージ。貫通効果

*44
真V 敵単体をアナライズ




 あとがき
 2~3話程度続きそうな異界探索です。以降は省略する警戒描写をじっくり差しこんでみた。


 ジエンくん
 リモート授業の際に思考を戦闘時のように加速させるのを癖にした結果、対面授業の際に教員からは若干ビビられている。
 また、キリギリスからのミーム汚染の結果常識がなかなか定着しないという問題を抱えているがひとまず学校関係は良好である。新学期始まってすぐくらい? なので第一印象だけで見られているともいう。

 異界探索はかなり得意。警戒のリソースの優先順位、うまく気を抜いて体力を温存することなどをいつも以上に気にかけている。なので考慮できていない『リオに対する態度』はいつもより適当だったりする。

 リオさん
 新戦隊キングオージャーの推しはギラくんに決めた物理ウーマン。
 ジエンくんの『パーティMPリカバリ』にかこつけてMP消費系の物理攻撃を多用している
 COMPを探索系にしている理由の8割以上が『バックアッパーがあると報告書の作成が楽だから』だったりする。効率化に慣れすぎて元の不自由さを受け入れられないタイプ
 探索において、ジエンくんの『混乱トレード』などの様々なヤバイのを見ているが、それも含めて『ジエンくん可愛い』と受け止めている。恋は盲目、あばたもえくぼ


 堕天使パイモン
 非常食ではない。



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西東京撮影スタジオ異界化事件(2) 合体集団エンカウント 

 現在位置はスタジオの屋根上、周辺からの脅威はなし。

 

 リオが開けた屋上の穴、その向こうには堕天使パイモンがいる。合体を用いて自身の強化を図っている異界の主。

 

 推定レベルは76、悪魔合体の度にレベルは2〜3上下する。最大79、最低73だ。

 

「すまぬ、奴が何をしているのかさっぱりわからぬぞ」

「私も。正直レベルと強さがバカスカ上がってるなら今すぐ突撃する気だったけど、何これ? 結構な割合で()()なってない?」

 

 リオと共にキリギリスに情報と増援要請を投げかけて数時間。1時間半に一度程度の感覚で堕天使パイモンの悪魔合体が発生する事が分かった。

 

 ティターニアの『クリエイター気取り』という評が正しいのであれば、なにやら拘りがあるのだろう。傍目からは何がどう変わっているのかよくわからないが。

 

 また、パイモンの悪魔合体が起きるときに多くの悪魔が零れ落ちるように現れるのが見えた。どうにもレベルが高い悪魔ほど異界を動き回る性質を持たないようだ。異界のGPを大きく超えているから動き回れるMAGがないのかもしれない。少しすれば消えるように退去していった。

 

「他のデビルバスターからの増援は何時来られそうか?」

「1つのチームが8時間以内って言ってくれてるね。けど、合流を待ってたら変化は5回起きる」

「……異界のマップ埋めを優先しよう。ボスへのルートを確保するはどう転んでも有効な筈だ。探索中でのパイモンの変化を見て、それ次第か?」

「おけ。じゃあ、カメラとこいつをセットして、と」

 

 リオが懐から一つの機械を取り出す。アイテムの『バックアッパー*1』だ。記録したデータを周辺の者に共有するものであり、そこそこに頑丈であるから異界にて後続に残すメモとしても使われるらしい。

 

 これをカメラと接続すれば、即座に監視カメラの出来上がりだ。覚えておこう。

 

「じゃあ、探索再開?」

「屋根上から内部に侵入できるルートの有無も確認しておこう。裏口からの侵入ができれば上策だ」

「光を入れちゃいけない関係で窓はなさそうだから……換気口あるかな?」

 

 軽く調べたが、内部に入る入り口は見当たらなかった。

 換気口は存在したのだが開かない。一方通行の呪いがかかっているようで、内側からしか開かないという測定結果が得られたらしい。

 

「扉を壊せないか?」

「時間かければ不可能じゃない……かな? 微妙なトコ」

「承知した」

 

 ひとまず、このポイントを『トラエスト』のホームポイントにセットする。観測拠点としよう。

 

「では、探索はどこから向かう?」

「まずはスタジオの通用口から。大扉は開かないだろうし、開いてもすぐバレるから」

 

 という事で、屋根上からすとんと降りる。その際、屋根に杭とロープをセットして下から登れるようにしておいた。トラエストストーンでの帰還がメインになるだろうが、道はあって困るものではない。

 

 通用口のドアを見る。鍵はなし、封印もなし、しかしドアの向こうに道が通じているようには思えない。

 

「『ヨカンムシ*2』に反応、ワープゾーンよ」

「了解、ファフニールを先行させる。頼むぞ!」

「任セロ!」

 

 ドアの向こうのワープゾーンにファフニールを突っ込ませる。

 転送先は見覚えのないエリア。オートマッピングによると北西に存在する第2スタジオだった。

 

「別のスタジオに飛ぶのね。帰って来れる?」

「帰り道となるワープゾーンは見当たらないな」

「なら、覚悟して行きましょうか」

「おうとも!」

 

 危険だからと引いていい場面ではなくなった。時間がどれほど残っているのか分からない以上、多少のリスクは許容する。

 

「来タカ! サマナー!」

「斥候ご苦労様だったぞファフニール!」 

 

 ワープ後に敵はなし。

 

 北西にあるスタジオの様子に妙なモノがあるかは己の知識ではわからない。撮影エリアに緑色の幕が二つあり、それを囲むようにワイヤーのついた機械やロボットアームが配置されている。

 

「カメラがあるわね。点灯してる、撮影中?」

 

 撮影エリアの近くにある大型ビデオカメラに近づく、ロボットアームの上には巨大なカメラが存在しており、重そうだ。支えているロボットアームの方は動かすのに相当なパワーが必要そうで、内部に動作補助用のモーターとかあるのだうと推測する。

 

 カメラを見てみる。撮影物を確認するディスプレイには緑色のスクリーンの姿はなく、宇宙を思わせる背景に文字のような紋様や様々な図形が表示されていた。緑色の幕がカメラを通すとこのような絵に変わるのだろう。カメラを動かすと映る絵も変わるので、

 仮想空間に立体を作り、それを撮影できる仕組みのようだ。すごいぞ! 

 

「出ちゃったか謎パズル」

「……どのあたりが謎なのだ?」

「存在自体よ。なんだって異界奥への通り道にこんなギミック入れる訳? 入ってきて欲しいの? アトラクション感覚?」

「こういったその場で完結しそうな仕掛けならば構わないと思うぞ。四方八方奔走してパスワードを入力するような仕掛けでないのだし」

「……賭けてもいいけど、コレこのままじゃ絶対開かないから東奔西走する羽目になるわ」

 

 賭けられてしまった。

 報酬として渡せそうなものが『フィジカルミラー*3』程度しか思いつかない懐事情ではあまり受けたくはない気もする。

 

 だが!

 

「ならば己はそうでないと賭けよう! 挑まれた賭け事に臆するのは一流のハンターではない!」

「……ボヤいただけでジエンくんと賭けようとはしてないからね?」

「大丈夫だ! 己に問題はない!」

「私に問題があるかなー?」

 

 カメラの乗ったアームを動かして、映る映像を調整する。

 

 撮影エリアを右上から左下に写せば円形が現れそうだった。とりあえず円を作ればなにか見えるだろう。

 

「……む?」

 

 しかし、円形を作る事ができてもその内部に記された法陣は存在しない。中身はぐちゃぐちゃになっている。

 

「ジエンくん、どう?」

「……リオの言う通り、ただこのカメラを動かすだけではダメなようだ」

「……へぇ、そういうタイプか」

「む?」

「多分、うまいことモノを配置すれば、魔法陣が描けるんだと思う。周りに小物は置いてあるし」

「そうなのか?」

「うん、ゲームっぽい事を除けば理にかなってるのね。カメラ内に魔法陣が完成してなかったら転送陣が起動しない。現実世界側では物理的にモノを置くだけだからワープの術式からハッキングされる事もない」

「……というと?」

「カメラが写す背景の方を変えないとボス部屋には踏み込めない感じじゃないかな? 撮影エリアに置くべき正しいものと、カメラを置く正しい位置、そして正解の背景CGソフト。物理キー、電子キー、撮影角度の三重ロックになる訳だ」

「……そうまで面倒なロックにする必要はあるのか? 普通に結界を張れば良いだろうに」

「結界のオンオフの隙を嫌ったんじゃないかな?」

 

「なるほどなー」と理解しきれていないながらも納得をする。隔壁の上げ下げに使う電力が大きい、そんなようなものだという認識で一旦置いておく。今は深く理解する必要はないだろう。

 

「それで……己はどうすれば良いのだ?」

「とりあえずこのカメラ自体を調べてみない? ログとか残ってたら楽ちんだし」

 

 という事で、役割を交代する。

 

 カメラの側に行ったリオは、COMPを翳して内部のスキャンを始めた。己の見た限りではディスプレイ横の操作ボタンは2つだけ。撮影と、電源の二つだ。

 SDカードやUSBを挿入できそうな場所は見当たらず、悪さできそうな場所もない。

 

「あー、シャドウを被せてるのか」

「……そのカメラは悪魔の力の影響下なのか?」

「多分ね。元々あった『撮影用カメラ』っていう形の上にギミック用の仕掛けをつけたみたい。けど、杓子定規なギミックとしての役割しかないみたいだから、突然動き出したりはなさそう」

 

 一応だが魔法陣が完成したら悪魔が飛び出してくるくらいは想定していた。だが、カメラそのものが動き出すような事は想定の外だった。

 リオらこの世界で戦うモノたちは踏んでる場数の質が高いのだな、となんとなく思う。

 

 

 賭け事の勝者であるリオに『フィジカルミラー』を受け渡しつつカメラから離れて周辺の探索に移る。本人は何故か受け取ろうとしなかったが、賭け事の結果は正しく履行されねばならない。

 

 

 転移魔法陣の出現場所と思われるぽかんとあいた空間に近づく。悪魔はあまり寄り付かないらしい。異界の主がそのように指示しているのだろうか? 

 

 だが、周辺に悪魔が存在しないわけではないらしく、気配はひしひしと感じられはする。侵入者の行動によって攻撃対象かどうかを見ているようだ。

 おそらく、カメラの破壊などがトリガーだろう。

 

「あ、コレなんか使えそう」

 

 ふらりとリオが緑色のペンキを手に取った。コレを塗れば、緑色の幕のようにモノを透過させられる……ので、理解は間違ってないだろうか? 

 

 しかし、それを手に取った瞬間に悪魔たちがこちらに襲いかかってくる。正面方向からの奇襲だ。

 

『百太郎』が反応しなかったのは、奇襲が前方からだったから。己が半瞬遅れたのは、自分自身の事でなかったから。あるいは油断があったのかもしれない。

 

「あ、やべ」

 

 リオはこちらにペンキを投げ渡す。縦に回転させて遠心力を残した投げ方だった為か、中のペンキは溢れない。

 

 しかしその一手を使ったリオは敵からの攻撃をモロに受ける事になる。

 

 水撃系→地変系→ブフダイン

 アクエスマグナスブフダイン

合体魔法 アイスクラッシュ*4

 

「合体魔法ッ⁉︎」

「嘘でしょ⁉︎」

 

 ファフニールのカバー内に入った己、氷結無効のペルセポネー、そして『ブリザードローブ』という氷結吸収防具を持ったリオは無傷。ファフニールは87.5%耐性で軽傷、クイーンメイブも氷結耐性故に軽傷。ダメージは軽微だ。

 

 しかし、ファフニールとクイーンメイブが『凍結』を受けた。行動できず、攻撃されれば致命打を受けてしまう。

 

 ただ、敵方も氷結吸収は想定外のようで、動きが乱れる(プレスターン4×3減少)。それによりこちらはようやく敵の姿を見れるようになる。

鬼女クロトLV68
鬼女ラケシスLV69
鬼女アトロポスLV70

 

 強者の気風を漂わせるモイライ三女神だ。交渉は通じそうにない。中ボスというヤツだろう。

 

「不味いね、『アムリタシャワー*5』!」

 

 リオが攻撃に手番(ターン)を使わずに立て直しを行う。助かった、己の手番を使わずに済んだので反撃に移れる。

 

 三女神の情報をwikiから思い出す。基本的には魔法系のステータスで、三体を素材に特殊合体をすると女神ノルンになるという。それほどの繋がりがあるのなら合体魔法程度は放てよう。

 

 耐性に関しては参照しない。アクエス、マグナスの水撃、地変あたりの魔法を使う悪魔の報告例として三女神が上がっていないからだ。現在精査中なのか未発見なのかは知らないが。

 

「ファフニール!」

「オウ! 『マカラカーン*6』!」

 

 ファフニールが消費の軽いマカラカーン*7を貼る。

 コレでひとまずの合体魔法での凍結連打*8は防げる。次にクイーンメイブと控えのサキュバスが『チェンジ』、反射の内側に氷結無効が2枚だ。

 

 そして、サキュバスを召喚したタイミングで頭の中に閃きが生まれた。可能だという確信だ。

 

「合わせろサキュバス! 『プリンパ*9』!」

「ええ、『スクンダ*10

 

 合体魔法にはいくつかの種類がある。悪魔とサマナーのコンビネーションによって放つもの、連続する魔法の相乗効果として発生するものなどが己が見た事があるものだ。

 そして、合体魔法の中には所持スキル同士の相乗効果で発動することで発生するものがある。それが『リンケージ』だと聞いた。

 

 話に聞いていたソレを、サキュバスを召喚した瞬間に理解した*11己だった。

プリンパ→ンダ系スキル

リンケージ L-テンタラフー*12

 

 サキュバスが放ったリンケージ(合体魔法)。それは己の身に着けている『プリンパ』と『スクンダ』を共鳴させて発動させたものだ。精神への混乱と肉体の弱化を掛け合わせることでダインクラスに匹敵する破壊力*13の魔法となる。これによりクロトとアトロポスに中ダメージ、ラケシスに少しのダメージを与えた。ラケシスは混乱属性に耐性を持っていた上に混乱の入った敵は無し。使い所ではなかったようだ。

 

 ……新たなスキルに目が眩み、最適解を選び損ねた。自制せねば。

 

「『フォッグブレス*14』!」

 

 サキュバスの使用にて理解したが、リンケージはなかなかに奥が深い。

 リンケージの使用には意識を合わせる必要こそあるものの、実際の行動自体はほぼ単独で行える。故に合体魔法にスキルを回していても続けてフォッグブレスを放てる程度には小回りが利くのだ。

 リンケージで使う手番の重さ(プレスターンアイコン)は人数分であるから重いのは重いのだが、順番は自由なのだ。

 

 現在のダメージ量は軽微、マカラカーンと攻撃1段階、命中1段階のデバフ付き。

 

 敵へのダメージ量は軽微。動きを見る。

 

 敵の動きの質(プレスターンアイコン)はアトロポスが2でクロトラケシスが1ずつか? 全員が2ではないのは確か、6手動く気配はない。

 現在こちらは氷結無効2枚に吸収が1枚。リオとペルセポネーは見えているので択があるなら氷結以外の合体魔法以外が来るだろう。

 

『マカラコワース*15

 

 すると、まずアトロポスがマカラカーンを破壊するスキルを叩き込んでくる。

 

障壁破壊(コワース)系統か!」

「楽はさせてくれないね!」

 

 立ち位置を調整、氷結以外の魔法を放たれる可能性を考慮して一塊に。

 

 地変系→水撃系→地変系

 マグナスアクエスマグナス

合体魔法 クラックファング*16

 

「地変属性ッ!」

「対策し辛いのを!」

 

 3体の力を合わせた合体地変魔法が放たれる。地変属性はファフニールの87.5%耐性の対象外、先のダメージと合わせて致命傷を受けダウンした。

 

「耐久を過信したかッ!」

「ぼやかない! 立て直すよ!」

 

 87.5パー1回と、1段階弱体化の87.5パーならファフニールの耐久で耐えられると踏んでいた。先の手番にてテンタラフーを急ぐ必要はなかったのだから、本当に完全なるミステイクという事になる。

 

 つまり、『流れが悪い』

 

「『招来石*17』!」

「シクジッタナサマナー!」

「回復するよ、『宝玉輪*18』!」

 

 そう言う時には出費を躊躇ってはならない。備えとは、必要に応じて使ってこそだ。

 

 

 さて、マカラカーンを張る事でマカラコワースを誘発できる。そして現在の面子ならば使ってくるのは『クラックファング』、追加効果はない。

 

「サキュバス!」

「ええ、交代よ(『チェンジ』)ゲンブ」

「『ラクカジャ*19』ダ!」

「オレノ、『マカラカーン』ダ!」

 

 立て直しは成功、バフデバフは耐久面に一つずつ。不足はないが過剰もないので不安は残る。

 

『マカラコワース』

『クラックファング』

 放たれたのは変わらず地変属性の合体魔法。他の手はないのか、優先度が低いのかだ。敵の行動の型は見えてきている。

 

「これ、パターン入ったかな?」

「合体魔法に面食らったが、それだけだ。ダメージによって行動が変わる事に注意だな」

 

 行動順を己が先に切り替える。

 

「『メディラマ』!」

 

 ダメージを回復し最低8割程度の耐久をキープ、クラックファングのダメージは6割程であるから、必要に応じてリオが『マカの葉*20』などを使えば問題なし。

 

「『ラクカジャ』!」

 

 そして、敵がゲンブのカジャを除去する手立てを打たないのならダメージは減っていく。

 

「『マカラカーン』ダッ!」

 

 そして、ここからだ。ミスに付け込まれないように補助を先に行い、攻撃を後にする。

 

「『ムドオン』」

 

 ペルセポネーがクロトにムドオンを射出、等倍ダメージ。弱点見えず。有効。

 

「力を溜める……『会心の眼力』」

 

 そして、本命のリオは溜めを選んだ。まず1匹落とす事を優先する方針に齟齬はない。

 

 敵の攻撃が始まる。

 またしてもマカラコワースと合体魔法『クラックファング』。ワンパターン。

 一応、メディラマ一回で全回復はできないので、効果は無いわけではない。誤差レベルだが。

 

「行くよ……『百烈突き*21』!」

 

 そしてリオの攻撃が始まる。確定クリティカルの物理連打7回攻撃、魂の励起はクリティカル一度につき一回の判定が起き、弱点を突いた時よりもクリティカルの手応えの方がより心を震わせやすい*22

 

 七度のクリティカルを当てたリオの百烈突きは、どれほどの手応えを感じさせるのかはとても興味があったりする。実際、リオの魂は『ニヤリ』と笑っているのだから。

 

 そして、クリティカルで相手を乱したリオを『流れに組み込む(プレスターン0.5増加)』為にゲンブへの意識を外す。ラクカジャを打ったならば仕事はない。許せ。

 

『メディラマ』『マカラカーン』『ムドオン』と若干雑に行動を繰り返す(AUTO REPEAT)。ゲンブには待機して貰って、リオの動きが再び始まる。

 

我流・无二打(アカシャアーツ)*23!」

 

 ニヤリ状態で放たれたリオの大技。本人的には未だに納得していないらしいが傍目からは十分に絶技である。

 

 その一撃を食らったクロトは、胴体が吹き飛んで塵になった。確認するまでもなく死んだだろう。

 

「リカーム*24あるかな?」

「招来の舞踏*25かもしれぬ」

 

 残心を行いながら軽い認識の擦り合わせ。コレで崩れはしないだろう。

 

「アァ……ァアアアア!」

 

 言葉にならない怒声で吠えるアトロポス。怒りから攻撃力が上昇し、対して防御力が低下したようだ。心持ちによって強化が起きるアレ*26だろう2段階上昇なので、強化状態は攻撃に+1だ。

 

「む?」

 

 となれば当然ラケシスの方も何かある。という事でゲンブを捨てる覚悟で壁にした所、『自爆*27』を放ってきた。自爆技だ。モーショボーだとかが使うヤツを継承でもしたのだろうか? 

 

 ゲンブに特攻をブロックさせたので皆は無事だ。だが当然ゲンブは吹き飛び四散して、続けてアトロポスの放つ『メギドラオン』は防げず被弾する。ラクカジャの影響によって耐久力は足りており、全員生き延びた。

 

 そして、その必殺の一撃の後には致命的な隙が生まれる。

 

「獲った!」

 

 リオの『霞駆け*28』が4発入り2発がクリティカル。体勢がぐらりと崩れ『めまい』を起こし動けなくなり、続けてのファフニールの『モータルジハード』、ペルセポネーの『ムドオン』が命中し、アトロポスは地面に転がっていく。

 

 ちょうど、撮影エリアの中心部分だ。

 

「念の為回復だ『メディラマ』」

「おーけー!」

 

 リオが放ったスキルは『百烈突き』。

 アトロポスの特徴的な頭部をグシャグシャに整形して、もののついでに、と『丁度いい形』に整えたらしい。ついでに近くに転がっていた緑色のペンキにて彩色もしていた。動画に撮っていればさぞ絵になるスタイリッシュさだったろう。もったいない。

 

 するとカメラから音が鳴り、ぽかんと空いたスペースにどこかに繋がる転送魔法陣が現れた。

 

「む? これで良かったのか?」

 

 とはいえ分からない事はある。カギとなる適切な置物を置く必要があるのではなかったか? と。

 

「アトロポスの死体を整えて偽造しちゃった」

「ふむ?」

 

 よく分からないのでカメラ映像を見てみる。すると、アトロポスの死体、というかアトロポス頭部の円筒装飾に緑色を塗ったものが魔法陣を補完して、カメラ映像の中に魔法陣が完成していた。……余分な血飛沫などがついたモノだったが。

 

「なるほど、カメラの中に魔法陣が作成できたのならば、手段はなんでも良かったのか」

「らしいね。ダメ元だったけど」

 

 何がどうして正解の魔法陣の内容を知れたのかは分からない。しかし、完全に理解不可能な技術ではなかったので一安心だ。学べば追いつく事ができる。

 

 

 蘇生と回復をしてパーティを整える。そしてワープゾーンにファフニールを突っ込ませた所人間でも通れる場所であったので己達も進み始める。

 

 その後も二度程敵中ボス悪魔と戦闘しつつ、カメラの仕掛けを解いて行った。CGソフトはいくつか見つかり、それを用いることで新たな場所へと探索を進めていった。……撮影するエリアは一つだけでいちいち戻る必要があるので、面倒さがふつふつと湧き出てくる。

 

「次で終わってくれないかなぁ?」

「消耗は軽微だが、時を使ったな。パイモンの強化が終わってないと良いのだが」

「多分大丈夫かな? カメラ越しのアナライズだけどレベルはまだ上下してるし、身体変化は見られないよ」

「ふむ……どういう事だ?」

「こっちが知りたいって」

 

 己たちが侵入しているのだからこちらにしっかりと迎撃の手を割いてはくれないものだろうか? 見えぬタイムリミットを思っての探索には多少の焦りが生まれてしまう。疲労の溜まり具合を見誤らないようにセルフチェックをしっかりしなくては。

 

「そうだ、コレまで戦った悪魔について少し共有しておきたい」

「合体魔法使いってのはびっくりだけど、他に何かあった?」

「最初の三女神『クロト』『ラケシス』『アトロポス』は特殊合体にて『女神ノルン』の合体素材となる。2回目の『ヘカトンケイル』『フラウロス』『ヴァルキリー』の三体は『魔王スルト』で、3回目の『キンキ』『フウキ』『スイキ』は『妖鬼オンギョウキ』だ」

「合体魔法使えるほどの繋がりはありそうだね、そう聞くと」

「ここまで符合するという事は、()()という事だと推測する」

「んー、そだね。その合体素材だとどんな奴らになる?」

「クロトは回復を得手として、弱点を持たない支援型、オンギョウキは物理と召還系能力を持ち、弱点という弱点はない前衛型。スルトは言わずと知れた火炎使いだな。耐性については変化はあるだろうが、オンギョウキは物理に耐性、無効を持つ傾向がある。ノルンは破魔呪殺が通らず、スルトは火炎吸収氷結弱点、そこに電撃、呪殺耐性がたまにあったりするとの事だ」

「……オンギョウキが面倒ね。物理耐性もそうだけど。『招来の舞踏』とか『バッドカンパニー』とか使ってくるでしょ絶対」

「ならば、オンギョウキを最優先か?」

「最優先は回復役として出てくる悪魔。1匹倒して様子見かな?」

 

 若干の皮算用がありつつも方針を合わせておく。次が敵の本丸である可能性はそれなりに高い。オートマッピングで埋めていない場所はもうほとんどないからだ。

 

「いくよ」

 

 リオと共に転送魔法陣を踏み抜く。

 召喚している仲魔はファフニール、ゲンブ、ペルセポネーの3体。マカラカーンのファフニールに、氷結を扱えつつラクカジャを用いれるゲンブだ。

 スルトの火炎が弱点に刺さってしまう訳だが、そこはファフニールのマカラカーンでカバーする。

 

 ペルセポネーの枠は正直誰でも良かったので、扱いに慣れている仲魔を手癖で選択してしまった。これが悪手にならない事を願うばかりだ。

 

 一瞬の暗転

 

 視界が戻ったその時には、目の前に『堕天使パイモン』がいた。

 何かを求めて、一つずつ一つずつ積み重ねているような印象を受ける、王冠を被った貴婦人だった。

 

「……侵入、者?」

 

 パイモンが胡乱な目で己達を見る。その瞳は狂気の中にあっても、理性を完全に捨て去ってはいないらしい。交渉可能な印象を受けた。

 

「……あなたが、ここの異界の主よね」

「はい。堕天使パイモンと、申します」

「要求は一つ、今すぐこの異界から退去して。受け入れなければ……分かるわね?」

「お断りします。私には、やらなければならない事があるのです」

 

 パイモンの意思は固い。案の定として、殺し合うことになる。だが、やり合う前に多少の会話はできそうだけど。

 

「パイモン、貴女は一体何をしていたのだ? 悪魔合体で自分自身を変化させていたのは見ていたが、強さを求める訳ではないように見えた」

「……私は、私を捨てざるを得なかった主様の元に戻りたいのです。主様の『知恵』に相応しい、『悪魔の力』となることで」

 

 知恵者の『主様』というのは、人間だろう。ただの『力』ではなく『()()()力』と言った理由はそこの筈。

 

 仲魔から外した悪魔の暴走か? と考える。

 

 これほどの大悪魔をストックから外す理由はあまり浮かばない。現在パイモンのレベルは

 76、普通に考えれば主力として使うだろう。

 

「貴女の『主様』は、苦渋の決断をせねばならなかったのだな」

「ええ、そうです。一重に私が弱かったが故の事。主様の『知恵』と近しかった私よりも、ただ力が強いだけの下種を選ばれた! 戦い! 強くなる事を選ばなくてはならなかったから!」

 

 表面上の同情に食いついてきてヒートアップし始めた。幾らかの情報は取れるだろう。

 

「あぁ、主様。数多の悪魔を召喚し、導き扱う偉大なる主様! 今、パイモンが参ります! 貴方に相応しい、貴方だけに最適化された肉体として!」

「それであれだけの悪魔合体……すごいね」

「うむ、本物だな」

 

 これは所謂、愛が重いタイプの悪魔だ。やんでる? と言うのだったか。自分の世界だけで完結して暴走する。悪魔使いとしては相当に面倒な類に見える性格だ。

 悪魔と人との魔人合体だとかの邪法に選ばれなかった事がこうまで拗らせる原因と見えた。うむ、ただの1個人としては同情できない所はない訳でもないが……異界の主として現実世界を侵食する以上、狩らねばならない。

 

「聞くが、別の場所に移動するつもりはないか?」

「何故私があなた方塵芥の言葉で主様の為の行いを止めねばならないのですか?」

「理由は先ほどのリオの言葉と変わらない。ここで死ぬことになるからだ」

 

「そうですか。ならあなた方も敵ですね」

「元より敵だぞ? だが敵と言の葉を交わしてはならぬ縛りもない」

「私はあなたのような雑魚の事で私の記憶領域の1厘たりとも使いたくはありません。死んで下さい」

 

 堕天使パイモンが自分にかけていた悪魔合体の呪法切り上げたのを見た。戦闘中に耐性や能力が前触れなく変化し全回復する事はないらしい。

 

「我が名、堕天使パイモンの名の下に王と従僕よ降臨せよ」

 

堕天使パイモンLV76? 

 

 パイモンが歌うように3体の悪魔を召喚、いや作成する。悪魔合体ライトの効果と似たものによって、三体の悪魔が追加で現れる。

 

魔王スルトLV72(+7)
女神ノルンLV75(+6)
妖鬼オンギョウキLV78

 

 それぞれ生まれたばかりで、瞳に意思は見えない。しかし力は本物であり、『合体によって得られているスキル』がどうなっているのかなど考えたくもない。考えなければ死ぬだけだが。

 

 パイモンの最初の召喚は、一体の生成につき一度の手番を消費した。使ったのは3手、なので敵全員が息を合わせているのなら6回行動ということになる。吸収、反射でズラせる呼吸は4つ分、先走って足を救われないように、だ。

 

「ジエンくん!」

 

 リオが先駆けて『会心の眼力』を使う。ターゲットは女神ノルンだ。リオの動きを流れに組み込みながらファフニールにAUTOの指示を出す。使わせるのは『マカラカーン』。

 

「手堅く行くぞ、『フォッグブレス』」

「『ラクカジャ』ダッ!」

「外すと不味いからね、『パス』」

 

 攻撃に1段デバフ、防御に一段バフをかけて即死を避け、手番をリオまで回し抜く。魔王スルトの氷結弱点がそのままだったなら弱点を突きながら手番をリオまで回せるが、安定を優先。今スルトに手傷を与えても何にもならん。

 

「さぁ行くよ! 『百烈突き』!」

 

 会心の眼力で必中となった突きの7連打がノルンを襲う、『マヒ追加』での拘束が狙いだったが、なんとノルンは連打によってその身体を砕かれ絶命してしまった。

 弱い……違う、脆いのだ。敵方の、自然の悪魔として出てくる頑強な悪魔でなく、仲魔としてある程度型にハマった状態であるから、耐久力は敵である頃よりも高くない。

 

 7回の連打が全て致命打となった事でリオの魂が『ニヤリ』と震える。クリティカルの手応えだ。

 

 そして、敵の手番が始まる。

 

「レベルだけの悪魔は弱いわね……システム起動、『悪魔合体ライト』」

「悪魔召喚プログラムッ⁉︎」

「COMPにしてるのは背後のLEDスクリーン! 画面が馬鹿でかいもんだから、影響範囲も相当だよ!」

 

女神ノルンベースLV69 LV61 天使ソロネ
霊鳥ジャターユベースLV55

 

 ノルンを素材に現れたソロネは淡々と『ラスタキャンディ』で補助をかける。全段階強化1段階。差し引き防御1段階上昇。

 さらに続けてパイモンが悪魔合体ライトを起こす。

 

幽鬼ヴェータラベースLV63 LV61 妖獣フェンリル
魔獣ケルベロスベースLV64

 

「これだけの数で統率が取れているッ!?」

「7手動く*29よ!」

「さっさと、消えて」

 

 

 ──己は正直に言って、この時までこの世界が異常であるという事を実感していなかったのだと思う。多少レベルが高く、戦いの土俵に立つ事ができていたが故に。

 あぁ、勝ち目のない戦いだ。一か八かの戦いだ。

 

 楽しい楽しい、戦いだ。

 

 

*1
デビルサマナー出典 使うことでセーブすることができる消費アイテム。今作では情報の共有用アイテムとして登場

*2
出典DSJ インストールソフト 落とし穴、ワープトラップ侵入前に知らせてくれる

*3
味方全体に物理反射障壁を張る ペルソナ3出典

*4
ペルソナ2罪 術者の技(TEC)の平均値×4のダメージ+氷結

*5
味方全体の状態異常を回復 消費アイテム

*6
真1仕様 1ターンの間、敵の攻撃魔法を反射する

*7
真1のマカラは消費MP6

*8
ペルソナ2において 合体魔法での感電、凍結率は100%

*9
敵単体に混乱属性を付与

*10
命中回避を1段階弱体化(真4では20%)

*11
リンケージスキルの習得はスキルが揃った状態でのスキル所持者の手番開始時

*12
アバチュ2出典 敵全体に混乱中ダメージ&混乱効果。消費MP33 威力91

*13
アバチュ2にて単身でのダイン級の魔法威力は90。

*14
攻撃と命中を1段階弱体化 真4仕様20%

*15
敵全体のマカラカーンを無効化する

*16
術者の技(TEC)の平均値×6のダメージ

*17
死亡状態の仲魔を蘇生し召喚

*18
味方全体のHPを全回復

*19
味方全体の防御力を一段階上昇 真4仕様20%

*20
ペルソナ4 味方全体のHPを200回復

*21
敵単体に複数回攻撃 攻撃回数は速度差依存 デビルサバイバー出典

*22
弱点突いたときのニヤリ率は3割ほど。クリティカル時のニヤリはほぼ確定

*23
敵単体に物理属性大ダメージ(劣化)ニヤリ時貫通効果(劣化、反射貫通不可)

*24
味方単体を蘇生

*25
ストックの仲魔単体を蘇生し召喚

*26
ボスとのイベント会話にて強化、あるいは弱体が起きる事がある

*27
命を捨て、敵味方全体にダメージ

*28
敵複数物理属性2~4回 中ダメージ 『めまい』を付与(真4)

*29
プレスターンアイコンはパイモン3と4匹で7





あとがき

パイモンさん
ヤンデレ風味の悪魔合体モンスター。人数制限というゲーム的制約を無視できるので最大27体まで制御可能というスペック。Wikipedia見る限りだと、生贄捧げてパイモンを召喚したら2人の王と25匹の能天使を引き連れてくるかもよ?という逸話があった。
召喚したのが『二人の王』でも能天使でもないのは、悪魔合体によって肉体の性質を『知恵』の方へよ寄せようとしているから。

ジエンくん
ギミックについてとかあんまり分かってない。リオからのざっとした説明と雰囲気で『カメラを動かせば良いのだな!』とは分かったが、クロマキー合成とか理解できていないので基本的に頭の中に宇宙が広がっていた。
ミスが目立ったのはが原因なのだろうか?


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西東京撮影スタジオ異界化事件(3) 一点突破カウンター

 敵方の面子を確認する

 

 堕天使パイモン、魔王スルト、妖鬼オンギョウキ、天使ソロネ、妖獣フェンリルの5体、パイモンは2回の悪魔合体ライトを用いて二つ使ったが、あと一度動く。

 

 ソロネは出た瞬間にラスタキャンディにて自陣営の強化を行なった。己が放ったフォッグブレスと合わせて、防御に一段階強化。倍率不明、魔防に関与するか*1も不明。

 

 悪魔合体ライトにて現れたフェンリルを見る。レベルは素体となったヴェータラとケルベロスより弱いが、『ボスとしての風格』が強まっている気がする。合体を重ねた事による強化か? 素直に合体で上昇するステータスが理由だけかもしれない。

 

「ウォオオオン!!!!」 

 

 フェンリルは咆哮と共に『ペノンザッパー*2』を解き放つ。毒効果付きの全体物理、おそらく継承技で、ダメージよりも毒狙い。

 

「喰らってたまるか!」

「治療に手番は使えない!」

 

 それを、己とリオは気合いで避けた。リオは前転、己は姿勢を低くしてだ。どちらも紙一重であり、己は前髪がずばっと切られた感触がある。髪の毛から入る毒はレジストできたのでダメージはない。己は安堵の呼吸をして、リオは戦意を高揚させて『ニヤリ』と笑う。

 

 ファフニール、ゲンブ、ペルセポネーは被弾して、ファフニールが毒に侵された。ダメージ量はおおよそ200、ペルセポネーが5割強、ゲンブファフニールが6〜7割の体力が残っている。

 

 フェンリルが言葉にしないながらも動揺を起こす。己とリオが回避したからだ。これで勢いがそがれて呼吸を二つ奪った*3

 手番開始時の動きの感覚(プレスターンアイコン)はパイモン3、オンギョウキ、スルトで5つ。合体ライト2回、ラスタキャンディで手番が使われているので5つ呼吸を使った後だ。

 

 己達の動きを差し込める隙は十二分にある。

 

「『マカラカーン*4』ダ!」

 

 まずは、ファフニールにマカラカーンを使わせる。毒によってダメージを受け4割程度の体力になるが、毒の治療の手番が足りない。最悪の場合は落として招来石*5にて回復させる。

 

 して、これから取り巻きを雑魚(己よりLVが高い)を始末するにあたっての方策としてまず浮かんだのは『風邪*6』と『悪化*7』のコンボだ。しかしボスとしての覇気(ボス耐性)を持っている悪魔には、こういう即死系の技が通じない事がある。 下策として頭の隅に置く。

 

 次に浮かんだのは、緊縛や魅了などで一時無力化するというもの。動かないか、回復の手番で一つ使わせる事で攻め手を潰せる。

 

 しかしながら、『メシアライザー*8』というスキルが頭から離れない。味方全体を全回復し、ニヤリ時にはバッドステータスまで治療するもの*9だ。

 

 パイモンの手の中に、あるいは合体悪魔のどいつかに存在する可能性を考えると、バステ頼りは主軸にできない。

 

 しかし他に策が浮かばない以上、やるしかないだろう。

 

「悩むのは、動きを見てから!」

 

 魂が昂った(ニヤリ)状態のリオが先んじて行動を起こした。悩みすぎたか? と思うが眼前の状況に変化はない。思考はイデアにて行われており一瞬未満の中だ。

 

「『霞駆け*10』!」

 

 リオの放ったのは複数攻撃の霞駆け、オンギョウキに1発、ソロネに2発、フェンリルに1発の4回ヒット。ソロネが『マヒ追加*11』にて縛られた。

 

 全体的にダメージは軽微。高揚した攻撃といえどボスの耐久力の前では集中せねば無為だろうし、防御に1段階強化も入っている。

 

 加えて、オンギョウキは物理無効までであり反射ではない事がわかる。リオは反射を貫く感覚を掴めてないらしく貫通が不十分なのだから。

 

 しかし『ニヤリ』時の技の鋭さによってクリティカルが発生した事により敵の呼吸は乱れた。追撃のチャンスだ。

 

「『雄叫び*12』ダァ!」

 

 ゲンブが攻撃と防御に一段弱体をかける。そしてペルセポネーはクイーンメイブに『チェンジ』、ダメージを受けた事と、マカラカーンの付いていない仲魔を見せつける為だ。

 

「『メディアラハン』……習得できて手良かったわ」

 

 続けて、全体全回復魔法のメディアラハン。クイーンメイブがレベル57にて習得したスキルにて、ぺノンザッパーのダメージを治療する。このターンでの追撃、頭数を減らすのを不可能だと踏んで敵の攻撃に備えるためだ。

 リオの霞掛けの通り方からいって4発1体に集中すれば仕留められるダメージの感覚だ。敵の回復の動きの中に招来の舞踏*13に似た動きになる『悪魔合体ライト』が存在するので無理攻めしたところで被害が大きくなってしまう。今は攻め時ではない。

 

「弱体を重ねる! 『フォッグブレス*14』!」

 

 故に放つのはフォッグブレス。先のゲンブと合わせて敵は攻撃二段階(40%)弱体、命中一段階弱体だ。ソロネのラスタキャンディでも攻撃に一段階低下が残る。

 

「『会心の眼力*15』……」

 

 そして、リオが次のターンのためのチャージを起こして手番が敵方に移る。

 

「僕共、動きを止めるな。『メシアライザー』」

「案の定か!」

「取り巻きはワンキルしろって事ね!」

「殺したら悪魔合体の素材にされるがな!」

 

 続けてパイモンが動く。パイモンは悪魔合体ライトをした後は召喚悪魔に行動させるようだが、基本的には手番を連続させて行うようだ。

 

「『コンセントレイト*16』」

「チャージ即撃ち! 来るよ!」

「『ブフバリオン*17』」

「させぬ!」

 

 敵がコンセントレイトを使った時点で動けていたのでカバー*18は間に合った。魔法反射のかかっていないのはクイーンメイブだけだったから、狙いが絞れていたというのはある。

 

 ──心底恐ろしい魔法だった。眼前に見た氷結の魂まで凍るような冷たさは魔法反射障壁程度なら余裕で貫いてしまいそうで、被弾したら耐性持ちのクイーンメイブですら致命傷クラスのダメージになるだろうという確信があった。

 

 そんな恐怖を乗り越えた事で、『ニヤリ』と魂が励起してきたのが分かる。

 

「揺らいだ!」

「ワンマンだからだろうな!」

 

 そして、パイモンがマカラカーンで反射された強化版『ブフバリオン』のダメージを受けた事での動揺(プレスターン4つ消費)から、手番がこちらに回ってきた。

 おそらく氷結無効や吸収があったのだろう。ファフニールの『マカラカーン』は先のせぷてんとりおんに対して有効だったとらしい『耐性貫通マカラカーン*19』だ、というのは己達しか知らないのだから。

 

「流れが来てる! 『百烈突き*20』ィ!」

 

 補助役のソロネは放置、オンギョウキはあえて無視してフェンリルを殺しにかかるリオ。六度のクリティカルを受けたフェンリルは大ダメージであるが、まだ耐える。食いしばりじみたギリギリでの耐え方は、ダメージが下振れたようだ。

 

「ここで仕留めろ!」

「『モータルジハード*21』ォオ!」

 

 ゲンブがファフニールへのトドメとして物理スキルにて攻撃する。しかし、そこに割り込まれた。オンギョウキのカバーだ。

 

「ッ⁉︎」

 

 オンギョウキは物理無効、ゲンブの致命打がスカされた事で呼吸がズレる*22。残り手番は3。リオのクリティカルで浮いた分が飛んだ。

 

 だが、今現在ダメージを受けているものはいない。毒の治療ができていないファフニールくらいか。

 

「『マカラカーン』!」

 

 ファフニールが行動した事で毒ダメージを一度喰らう。約1/8と致命傷ではないが、耐久計算が狂いそうだ。

 

「『ジオダイン』」

 

 クイーンメイブがフェンリルに対して電撃を放つ、耐性チェックしていない無理撃ちなので勝算はない。フェンリルは火炎吸収も反射も弱点もあったりするブレブレ耐性*23なので、電撃に関しても若干の賭けである。

 

「グガァッ⁉︎」

「仕留めた! 次!」

「回復に一手使わせる! 『バインドボイス』!」

 

 そうして、最後の出番で放ったのはまたしても耐性チェックなしでのバインドボイス。緊縛属性の状態異常を放つもの。 賭けではあったが無効は無し、しかし弱点もなかったようで今回のバインドボイスによる緊縛者数はゼロッ! ここで無駄撃ちが重なるかッ! 

 

 手番が移るタイミングで敵を再確認、ノーダメージ、手数6、攻撃二段階命中一段階弱体化。これまではなんとかなっていたのは敵が自由に動けていなかったからだ。回避や反射などが効いていただけの幸運だから、敵のフルスペックに近い状態での攻撃は今から始まるものが初めてとなる。

 

 

 緊張の最中、スルトが動き出す。使ったのは『デクンダ*24』弱体解除にて減少していた攻撃力が元に戻る。続いて動いたのはソロネ。マカラブレイク*25か? と思えば使ったのは『ラスタキャンディ』全段階一段階能力上昇だ。

 

 そして、パイモンの手番が来る。行動は3度、召喚や回復で手番を使わないフルパワーが……来るッ! 

 

貫く氷の闘気このターンの間、味方全体の氷結属性が貫通する 真4F
コンセントレイト次の魔法攻撃の威力を2.5倍にする
ブフバリオン敵単体に氷結属性特大ダメージを与える

 

 

「しまった⁉︎」

 

 狙われたのはまさかのリオ。貫く氷の闘気によって氷結属性貫通を得たパイモンが、強化を重ねた一撃でブリザードローブ事リオの命を凍て付かせた。

 

 リオは必死に食いしばるものの、ダメージ量が桁外れのため身体を四散させない程度にしか踏みとどまれていない。死んでいる。

 

 そして、最後のオンギョウキ。これまで呼吸が噛み合わず行動できていなかった奴の行動。それは計らずも己達が適した動きをできていたという事であり。

 今、その正解ルートから外れたという事が目に見えて理解できた。

 

バッドカンパニー特殊スキル味方全体をストックに戻し、レベル高い順に()()()()()()()()()()()()悪魔を召喚する。

 

 

 パイモンの同時制御可能悪魔数は、脅威が過ぎる27。

 全体が一度ストックに戻り、そこから現在の4体から合わせて23体の『能天使(パワー)』が呼び出される。

 

 一目で分かる程度には、それぞれ姿やスキルが異なっている。アナライズで耐性全てが確認できる奴から、一度戦闘した事があったのか呪殺無効を確認できている姿、一度もまみえた事がなく何も耐性が分からない姿など様々な『パワー』が混ざっている*26

 

「やりたい放題してくれるッ!」

 

 手番の最初ゲンブに()()をさせてからリオに『反魂香』、蘇生を行なう。

 

「……すっごい数だね」

「奴はこの数を制御し切っている。『パス』を使ってくるぞ!」

「上等! 薙ぎ払う!」

「否! 足枷にするぞ!」

「ッ! 了解! 勝手に突っ込むよ!」

 

 天使パワーのレベルは最大40、弱くはあるが、雑魚として薙ぎ払える程ではない。

 

 だからこそ、リオを蘇生させた。

 

 この状況で、息を合わせて一つ一つの隙を突く戦い方をしても勝ち目はない。ならば個々のパフォーマンスを最大に活かせるような乱戦に持ち込むのだ。そのための一手を、これから放つ。

 

「『チェンジ』任せたわサキュバス」

「アハハ! ぶちかましてあげましょうよサマナー!」

 

 半手(アイコン0.5)使ってクイーンメイブはサキュバスとチェンジする。そしてサキュバスが放つのは己との合体魔法(リンケージ)

プリンパ→ンダ系スキル

リンケージ L-テンタラフー*27

 

 神経属性で、敵全体にダメージを与えつつ、混乱状態を付与するもの。

 それは整然としていた能天使の群れを混乱の最中に落とし、レベルの低い3体を仕留めすらした。

 

 混乱状態となったのは3割ほど、数字に直すとたったの6体であるが、混乱から立ち直るまでの間は己達の味方だ。肉の盾という意味で。

 

 リオがパワーの陣の中に突っ込み、続いて己が侵入する。ファフニールは指示した通り(AUTO REEPEAT)にマカラカーンを己達に放って手番が敵方に流れる。

 

「潰れて」

 

 パイモンの指示によってパワー達が攻撃を始める。読み……というか賭けであったが、敵は最初に回復を行わなかった。それはこの数の悪魔を手駒としてすら見ていない証拠、使い捨てで死んでいい駒なのだ。

 そんな捨て駒(パワー)に反撃か対応の為に思考を割いた瞬間に『パス』で呼吸をずらしてから一撃必殺を決めてくる動きだろう。どんなに鍛え上げられた達人でも意識の死角は生まれてしまうものだから

 

 パワーたちから放たれたのは『絶命剣』『地獄突き』『白龍撃』とさまざまな単体攻撃スキルの山である。ファフニールのマカラカーンを見たが故に魔法は放ってこない。

 足を止めた瞬間に、己もリオも命はないだろう。

 

 ──乱戦に踏み入る寸前に、リオの使った『フィジカルミラー*28』がなかったならば、だが。

 

 パワー達が指示通りに攻撃を重ね、リンケージのダメージで瀕死のところに反射ダメージを喰らって落ちる。これで4。リオに対しての2度めの攻撃を己が変わり受ける、これで8。

 混乱状態のパワーが手近な味方によれてぶつかる、9。それを払いのけて放ってきた物理攻撃をゲンブとサキュバスを盾にして反射する。17。

 パイモンが息を飲む音が聞こえた気がする、当然気のせいだろうが鼻を明かした気分だ。なにせ、もう敵のパワーの攻撃はすでに始まっているのだから、割り込みは不可能だ。

 

『絶命剣』 己の頭をたたき割るような振り下ろし挙動の物理攻撃

『地獄突き』 心臓を貫き破ろうとする突き攻撃

『白龍撃』 破魔属性を内包した大楯による一撃

『パワースラッシュ』 剣によって己の首を落とそうとする一撃

 

 四方からほぼ同時に攻撃が放たれる。力が強化されている様子のこの悪魔たちなら、命中させれば己の命を食い破るに足るものだろう

 

獣の反応自動効果スキル命中、回避率が上昇する

 

「見切った!」

 

 しかし、コンビネーションの劣悪なこの攻撃たちは、付け入る隙が存在する。

 

 白龍撃を無防備で受けることによって回避のための初速を確保、己は人間であるから()()()()()()()()できる。そしてその一撃の衝撃を移動速度に転換し、『地獄突き』を躱す。そして『パワースラッシュ』と『絶命剣』は攻撃の打点が交わるように、誘導してぶつけ無力化する

 

「あと、4手!」

 

 体を小さく狭めて潜り抜けたのはパワーの脇下。しかしそこは能天使包囲網の外側近くであり、待ってましたとオンギョウキが己を仕留めるべく『暗夜剣』を放とうとしている瞬間だった。

 

「サマナー!」

 

 そこに割り込むのはファフニール。能天使の集団に突入させず外周からの合流を指示していたが故に、ここに来れた。

 

 ファフニールが割り込み、残っていた物理反射障壁を使ってオンギョウキの攻撃を防ぎ姿勢を崩す。それを見た敵方は、あれほどの包囲網をノーダメージで突破されたことに動揺し呼吸が乱れ、己たちは『勝ち』に近づいた確信から『ニヤリ』と心を震わせる。

 

 手番30 崩し切ったり! 

 

「サキュバス!」

「行くよ!」

プリンパ→ンダ系スキル

リンケージ L-テンタラフー

 

 1発目のリンケージでギリギリだったパワー達は、2発目のリンケージに耐えられない。全体魔法で仕留めることができれば、多数とて所詮はただの数なのだ。

 

 また、仕留められなくてもダメージ蓄積は2発分残る。回復に手番を使われなかったが故に、オンギョウキには大きなダメージが入っているので、確定圏内

 

「その首貰った!」

我流・无ニ打(アカシャアーツ)物理スキル敵単体に物理属性大ダメージ(劣化)ニヤリ時貫通効果(劣化、反射貫通不可)

 

 フィジカルミラーでの反射が成功した事で己達は皆『ニヤリ』と魂を震わせている。そのために今のアカシャアーツもクリティカルであるし、先のリンケージもクリティカルに命中している。

 

 反撃の流れが続く! 

 

「オ前モ死ネ!」

「クタバル時ダゾ!」

 

 口調も声色も似ているゲンブとファフニールが、共に『アカシャアーツ』を放つ。ソロネはゲンブのクリティカルの一撃により吹き飛び、スルトはファフニールの打撃によって中空に打ち上げられた。

 

 今、眼前にはパイモンとスルトの二体だけ。これでようやく()()()()()()

 

「『ブラストアロー*29』!」

 

 敵全体に銃撃の雨霰を撃ちまくるスキル、ブラストアロー。ターゲットはパイモンと、スルトと、奴らの背後の輝き動くスクリーン! 

 

「そいつがお前の『スマホ』なら! 砕けば悪魔使いではなくなるな!」

「ッ⁉︎」

 

 両腕から放った弾丸が背面のスクリーンを破壊していく。次第にスルトは実体を保てなくなり、オンギョウキ達の死体すら影響されてスライムに変化していく。

 

 当然それはプログラムにて悪魔合体を受けていたパイモンにも影響されて、レベルが目に見えて低下していった。

 

「馬鹿な……私の、主様のための『力』が!」

「今際の際でもここに無き者は何もしない! 捨てられた想いを抱えて一人寂しく死んでいけ! 堕天使パイモン!」

「貴様ァァアアアア!」

 

貫く氷の闘気このターンの間、味方全体の氷結属性が貫通する 真4F
コンセントレイト次の魔法攻撃の威力を2.5倍にする
ブフバリオン敵単体に氷結属性特大ダメージを与える

 

 奴の攻撃のための三手詰め。己の言葉によって憎しみを掻き立てられたパイモンは己を狙っての必殺のコンボを放っていく。

 

 想像より手が早く、仲魔を壁にするのには間に合わない。しかし、リオが喰らうよりはマシだ。今心根が崩れているパイモンを始末するのには、必要なのは己ではなくリオなのだから。

あとは、己が反魂香を切らしているという寂しい話もあったりする

 

「耐えてみせるとも!」

 

 レベルの低下したパイモンによるコンセントレイトからのブフバリオン。肉体が消し飛ばないように心に決意を漲らせる。魂すら凍てつかせる氷が敵ならば、心を燃やして備えれば命を取るには通らない! *30 

 

食いしばり自動効果スキルHPを0にされても1戦闘中1回だけ残量1で耐える。

 

「耐えた!」

「馬鹿なッ⁉︎私の……バリオンがッ⁉︎」

「あれだね。貫通効果は%耐性を超えられないって奴。ジエンくんヤクトヘルムで氷結75%だから」

「まぁ! 食いしばる必要はあったがな!」

 

 そして、今のでパイモンの心が折れた。戦いのために張り詰められていた強者の気風が消え去り、隙が生まれた。

 

闇討ち物理スキル敵単体に敵ターン中一定確率で物理属性の攻撃を行う。即死・貫通効果*31

 

 その隙は、命が終わるのには十分なものだった。

 


 

 パイモンの死亡を確認した。リオの正面からの『闇討ち」によって即死したパイモンには、死体からの蘇生などの兆候はない。

 

 背後のLEDスクリーンを見る。

 

 ブラストアローによって破壊した画面にはチカチカと光が灯っているが、魔法陣や文章などの意味のある言葉にはなっていない。

 

 しかし起動が止まっていない以上、スマホの頭脳(CPU)を担当するコアパーツは無事なのだろう。仕損じたか。

 

「とりあえず、お疲れ」

「うむ! 完勝できてなりよりだ!」

「しかし、あれだけの召喚も制御も只事じゃないよね。パイモンが普通に強かったからかな?」

「それは理由の一つではあるだろうが、間違いなく()()はあると思うぞ」

「プログラムの出所も把握しないとねぇ……ヤタガラスとかクズノハ案件だわ」

 

 と、パイモンを仕留めた後であるが未だ異界の崩壊反応が始まらない。何かが異界をこの世界に留めている楔になっているのだろう。

 

 とすれば、考えられるのは悪魔召喚プログラムそのものだ。

 

「召喚、ティターニア」

 

 サキュバスと交代でティターニアを召喚する。ティターニアはもともと情報収集用に仲魔にした悪魔で、この異界の主パイモンと顔見知り程度であった。探索のきっかけにはなるだろう。

 

「サマナー、私を召喚しないだなんて酷いわ」

「暇がなかった。許せ」

「せめて死体でも踏み躙ってあげようかしら?」

「そうだな、念の為二、三発打ち込んでくれ」

「話が分かるサマナーは好きよ」

 

 ティターニアがふわふわと飛んでゆき、パイモンの死体に対してATTACKを行う。

 

 反応は……あった。死体の内側から何かの球体が転がり落ちた。

 

 色はドス黒い怨念と優しい薄桃色がぐちゃぐちゃに混ざったような色合いで、MAGの強さは魔石程度。

 

 だが、その色合いが見せる『情報の重さ』が他のものと桁違いに見える。破壊などの対処が必要だろうか? 

 

 そう思っていると己とリオのCOMPの通知音が鳴る、情報受信の反応で、受信したアプリケーションは『バックアッパー』

 

 共有情報の題目は文字化けして読み取れないが、情報容量はそれなりに大きい。何かのプログラムだと思える。

 

「発信元はこの球かな?」

「おそらくな」

 

 トラップを警戒して手元にあるアイテムの『バックアッパー』にて受信ファイルを開く。

 

 内部には、文字化けした文章と一枚の写真、そして圧縮されている一つのプログラムがあった。

 

 写真は、一人の好青年と()()()()()()()女性が写っているもの。仲睦まじい男女であることが表情から伝わってくる。

 

 添付されているプログラムは、悪魔召喚プログラムそのものだろう。ファイルの名前がDDS.exeとシンプルに悪魔召喚プログラムを示している。

 

「堕天使パイモンは、この球体からの情報を受け取ってこの異界を作り出したモノだと考えられるな」

「……元人間か。そりゃ悪魔合体には使われない訳だ」

「……というと?」

「純粋な悪魔じゃないと悪魔合体の術式の中でバグみたいな挙動することがあるんだ。読んだ秘伝書だと混沌か秩序に偏った魂を持つ人間と悪魔を合体させると、とてつもないランダム性のある合体ができちゃうって感じ*32に」

「合体事故とは違うのか?」

「さぁね? まぁそういう強いランダム性が生まれちゃうもんだから人間混じりの悪魔は儀式系に使うのは避けられてるんだ。パイモンが『主様』に使われなかったのはそういう理由だと思うよ」

「それを知らず……あるいは忘れていたからパイモンは暴走し、こうなったのか」

「腑に落ちない点はあるけどね。この球のこととか色々。だけどこれは、『妙な悪魔が自分の強化のために異界を作った』って流れで纏めていい話だと思うよ」

 

 

 そうリオと話すと、光球の輝きが一瞬揺らぐ。再びのデータ受信があり、内容は写真と、文字化け文書と、プログラム。

 そして、揺らいだ光球の中のMAGが減少していく。数度輝けば停止するだろう。

 

「念のため複数回サンプル取って、終わりかな?」

「うむ。破壊を試みて大事を起こす必要もなかろう」

「放置してパイモンその他が復活する感じでもなさそうだしね」

 

 そうして、いくつかのデータを収集した後に異界の崩壊が始まった。備えていた『裏ボス』、あるいは『乱入者』はなし。

 

 手元に残ったのは輝く球体だった何かの。性質としてはバックアッパーに近いもので、収集した情報を送信するものだ。

 

 光を発していたコアパーツはストーン系のような魔術的な作りになっており、素材自体はかなり安っぽそうだ。有り合わせで作られたハンドメイド、だろうか? 誰かの強い想いが込められているように感じる。

 

「……して、これはどうするのだ?」

「封印してヤタガラスに渡すよ。あちらさんなら何か知ってるかもしれないし」

「念の為に確認しておくが、こういう悪魔召喚プログラムをばら撒く物質というのは良くあるのか?」

「愉快犯がネットで流したりはあるけど、ばら撒きでこういう道具を使うのはないかな。そもそも体内に取り込まれてるし」

「……食べたのだろうか?」

「それはない」

 

「しかし、()()()()()だったぞ?」

「……うん、ジエンくんはもっといっぱい美味しいものを食べようね」

「???」

 

 と、このような流れにて西東京スタジオ異界化事件は終了した。多くの道具を消費したが、その分多くの経験や仲魔を獲得できたので収支はきっと黒字だ。

 多少のトラブルこそあれど己は敵に喰らいつける。そんな増長すら生みかねない大戦果だった。

 

 

 だが、本当に大変なのはこれからだという事を、己は知らなかった。

 

「ヤタガラスへの連絡はこの番号でやるから、覚えておいてね。研究所の場所は秘匿されてるから、直接は行かない感じで」

「ウチの報告フォーマットはこんな感じ。ここのページのテンプレ見てね」

「消費アイテムがここ、消費MAGがこの欄ね。経費計算に使うから」

「あ、アイテムの使用タイミングと『なぜそのタイミングで使ったか?』は報告書に別途記入ね。メモ書き程度でいいけど」

「で、ここが各戦闘それぞれでの報告ね」

「アイテム使用、スキル使用のタイミングが適切かどうか。敵の行動からの最適解とどれだけ離れていたか? とかメモ書きしといて」

「それからこれが今回の異界に関連してそうな技術書のリスト」

「全部読んでからそれぞれの方式と今回の異界化の相違点、類似点をレポートにまとめてあげといて。感想程度で良いからさ」

 

 

 

「じ、慈悲はないのか?」

「え?」

 

 リオの言葉から、リオの中ではこれが特別な事ではないということが伝わってくる。なるほど確かに、戦闘終了後に課題の洗い出しなどを完璧にする事ができれば次の戦闘における課題やより適した戦術の組み立て方の想定など多岐に渡って役に立つだろう! 組織の中でどんな手段が有効か、どんな手法なら被害が大きいかだとかのデータを残すことはこれからの戦いの勝機を高めることだろう! 

 

「やってやろうではないか! より強く正しい己になる為に!」

「あ、ジエンくんが弾けた」

 

 

 そう勇んだ己はこの日、この世界の人間のポテンシャルの高さと、根本的に己に足りていないモノを学んだ。

 

 足りないのは、基礎学力かッ! 

 

 

*1
一部シリーズにて魔防はラクカジャでは上がらないこともある(P2など)

*2
敵全体に物理属性中ダメージ 毒状態付与

*3
プレスターンバトルにて、攻撃を回避されたときアイコンが2つ消失する

*4
真1仕様 使用ターンの間魔法を反射する

*5
死亡状態の味方を蘇生して召喚 消費アイテム

*6
真4シリーズ状態異常 攻撃力が低下し、回避ができなくなる

*7
風邪状態の敵に対して万能属性で(HP-1)のダメージを与える

*8
味方全体のHPを全回復し、全ての状態異常を治療する

*9
真4Fにおいてはバステ回復はニヤリ時追加効果

*10
敵複数に物理属性中ダメージ 2~4回 『めまい』を付与(真4F)

*11
自動効果スキル 物理攻撃に麻痺の追加効果を付与する デビルサバイバー出典

*12
真4 敵全体の攻撃力、防御力を1段階弱体化 真4仕様(20%)

*13
死亡状態の味方を蘇生して召喚 魔法スキル

*14
敵全体の攻撃力、命中を一段階低下 真4仕様(20%)

*15
次の物理攻撃が必中となり、確定でクリティカルとなる

*16
次に使う魔法攻撃の威力を2.5倍にする ペルソナ仕様

*17
敵単体に氷結属性特大ダメージ 真V

*18
味方一人に対する攻撃を代わりに受ける

*19
真1仕様のカーンは耐性を無視する

*20
敵単体に物理属性複数回ダメージ 速度依存 最大7回 デビサバ 

*21
敵単体に物理属性大ダメージ 低命中

*22
無効相性への攻撃によってアイコン2つ減少

*23
D2においては火炎弱点 真4では火炎吸収 SJでは火炎耐性電撃吸収とかなりの変化がある

*24
味方全体の弱体化をリセットする

*25
合体元のノルン(の元のアトロポス)が所持 魔法反射障壁を破壊する

*26
別の軸の悪魔の場合アナライズ結果は異なって現れる 本スレ【鍵】最前線で戦う方法を話し合うスレ5【鍵】より

*27
アバチュ2出典 敵全体に混乱中ダメージ&混乱効果。消費MP33 威力91

*28
味方全体に一度だけの物理反射障壁を付与 ペルソナ3

*29
敵全体に銃撃属性中ダメージ

*30
プラシーボ効果です

*31
技量不足により貫通効果は反射貫通不可に劣化

*32
真1、真2における人間合体 条件内でランダムな悪魔が合体できる




あとがき ドリフの掲示板系のところでジエンくんがでたっぽいので

 ジエンくん
 実は技研に入ってからの本格的な異界探索は今回が初めて、報告書作成のタスクに心が折れそう。でもめげない。

 リオさん
 技研が技術書、秘伝書の類を扱う会社であるからか書類周りはものすごく丁寧。
 経験を文書化して後続のための資料とすること、文書から技術を学んでそれを血肉とすることは教え込まれ習慣と化している。『姫』の由来はこういう所からもある。

 ジエンくんに報告書などのタスクをさせた戦闘時の思考パターンを文書化したものという特級の弱みを握るため……などではなく、ジエンくんが社員扱いを望んでいたから。
 ジエンくんが子供として甘えたいのなら甘えて良いように逃げ道を作っているママ活成人女性(のつもり)。本人のナチュラルスパルタン思考とジエンくんの修羅適正のせいでママ活のえちえち系への進展がまるでない。


 堕天使パイモン
 勘違い系のヤンデレ 27体同時制御とかいう狂った技術のネタは(多分)次回にて


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草津温泉風湯布院にて

 先の異界踏破から一夜開け、清々しい朝がやってきた。

 

 明る過ぎて眠っていられないという感覚にはまだ慣れないが、睡眠時間を調整するのに朝日というのは役に立つ。衝動に従い起きたならばそれが正しい時間だ、というのはとても良い。

 

 という事で、散歩をしようと思い至る。

 左腕にスマホを装着し、胸部防護するインナー型装備と、足回りを保護するプロテクターを仕込んで衣服で隠す。

 

「武器防具を大っぴらにひけらかしてはならない。敵を作るだけだから……と。出来ているな!」

 

 姿見を見て簡単に確認、問題はなさそうだ。

 

 部屋を出て、仕事場に向かう。

 指紋認証でのロックを開けて、ホワイトボード掲示板に出先のメモを残す。

 

 散歩に行ってくる。と。

 

「これは上手く書けたのではないか?」

 

 水溶性のインクによってホワイトボードに文字を書くという文化。ホワイトボードはインクの染み込みを起こさないのでクリーナーで簡単に文字を拭き取り再利用ができる。素晴らしいものだ。だが、壁にかかっているものに文字を記すというのは中々に難儀であり、いつも不恰好な文字を晒していた訳だった。

 

 今回は、綺麗に書けたがな! 

 

「あ、ジエンくん。おはよう」

「今日も良い朝で何よりだな! 体に不調はないか? 杏奈よ」

「全然平気。むしろちょっと動きたいくらい」

「ふむ……己はこれより散歩に出かけるつもりなのだが、一緒に来るか?」

「ん……そうだね。行こっか」

「おうとも!」

 

 そう言うと、杏奈は手元のCOMPから装備を取り出して装着をする。

 己のとはサイズ違いの胸部装備や呪いの込められた布などを体に装備して、頑丈そうで、しかし柔らかい印象を持つ服を上に羽織った。

 

「……ジエンくん、ガッツリ見たね」

「む?」

「女性の着替えを注視するのは、ダメだよ」

「……しまった。失礼を謝罪する」

「あんまりにも邪気がなかったから着替える前に言うの忘れちゃってたよ。私もごめんね」

 

 杏奈に謝らせてしまった。悪い事ではないと言うのに。次に同じことをのないように気を付けよう。

 

 

 杏奈もホワイトボードに『散歩』と書いたのを確認してから、一緒に歩いていく。

 

「ジエンくんは、ウチに慣れた?」

「うむ! リオも皆もとても良くしてくれているからな! 心安らぐばかりで少々恐ろしく思えてきたりもするほどだ」

「わかるかも。皆優しいもんね……今の私を受け入れてるくらいに」

 

 自嘲するような表情で、杏奈は言う。皆の前では表に出さないようにしているが、皆がどう思っているかは気になるらしい。

 

「不安があるのか?」

「そりゃそうだよ。自分自身、あからさまにヤバい事言ってる自覚はあるから。誰の子とも言えない『この子』を産んで育てたい、だなんてさ」

「……そうなのか? 子を産むのは素晴らしい事だろうに?」

 

 素直にそう言えば、杏奈は優しい表情で己の頭を撫でてきた。害意はなく、優しい手触りだった。

 

「皆はさ、私のお腹に『悪魔の子供』がいるんじゃないか? とか、私自身が錯乱してるんじゃないか? とか当然疑ってるよ。ジエンくんも分かるでしょ? 母体を食い破って現れる悪魔は」

「うむ。己も最初はその類かと思っていたぞ」

「ぶっこむね」

「己は故のない嘘は吐かぬと決めているのでな」

「過剰な真実だって人を傷つけるから、ほどほどにね」

 

 小さく肩をすくめ、言葉を重ねる。

 

「そんな私を皆が私を受け入れたのは、私が『クロ』だって確証がないから。不審点があっても、行動を起こしていないから。だから私が何か変な事をしたら迷わず殺すだろうけどね」

「それは己も承知しているぞ。ゴドー殿などはあからさまだ。己や杏奈の前で心が刃から離れておらぬ。頼もしい限りだ」

「疑われてるからジエンくんも気をつけて、って言おうとしてたんだけどなぁ……私」

「むしろ信じられた方が恐ろしくないか? 己は異邦人だし杏奈はソレだぞ?」

「ちょっとくらいはわかるけど、ちょっとしか分からないかなぁ……」

 

 杏奈は若干遠い目をする。その瞳からは『あぁ、この子のリオのような化け物枠なんだなぁ……』というような思いが漏れ出している。

 リオや己が化け物枠であることは重々承知だが、あのリオと組めていたと言うだけで杏奈もおそらくその枠だぞ。

 

「む?」

 

 そんな風に話しながら歩いていると、道端にMAGの痕跡が感じられた。あれは、紙幣や硬貨を入れる用途の『財布』だろうか? 

 

「すまぬ、見てくる」

「うん」

 

 近寄って周りを見る。不意打ちの気配はなし。戦闘の痕跡も見当たらない。

 普通に誰かの落とし物であるようだ。

 

「さて、中身はどれほどかな?」

「ネコババする気満々だねジエンくん」

「……ネコババ?」

 

 話を聞く限りでは、『ネコババ』とは落とし物である金銭や物品を不正に持ち去ることを指す言葉らしい。

 

「不正ということは、『ネコババ』は悪いことなのか?」

「落としものは、本人に返さなきゃ犯罪なんだよ。一応」

「なんと⁉︎」

 

 心底びっくりした声を上げると、杏奈はその事にびっくりした様子だった。

 

「という事は、死体から装備やアイテムを拾うこと*1も犯罪なのか⁉︎困るぞ己の収入源だ!」

「ここは現代日本だよ。死体が宝箱みたくバカスカ転がってたりはしないから」

「そう……なのか……」

「まぁ、犯罪ってのは公権力にバレたらダメって事でしかないから。異界内部ではあんまり考えなくて大丈夫だからね」

「しかしここは異界ではない。また、この中の金銭がなければ己や杏奈が飢えて死ぬ訳でもない。届けねば礼を失するだろうて」

「じゃあ、交番に行こっか。近くだし」

「コウバン……確か、治安維持組織である警察の監察官が常駐している施設だったか?」

「そうそう。皆の街を巡って安心をくれるから、『お巡りさん』とも呼ばれてる人たちだよ。監察官とは呼ばないかな?」

「ほう。お巡りさん」

 

 印象が一気に優しいものになった。呼称によってこうまで変えられるとは面白いものだ。

 

 大通りに出て駅の方に歩く。

 朝早くからスーツを着用して電車に乗り込もうとする戦士達を横目に交番に向かうと、眠そうにしている男性が居た。目元に隈があり、十分な休息を取れていないようだ。

 

「どうしました?」

 

 眠さを隠せていないながらも丁寧に対応しよう気概を感じる。好人物だ。

 

「うむ、落とし物の届けに来た。こちらの財布だ」

「おや、ありがとうございます」

 

 そう感謝の言葉を述べて己と目が合う。すると、自分の目を疑うように目を擦り、メガネを付け直してまた見てきた。

 

「……なんかの冗談?」

「冗談ではないぞ。この財布が落ちていたのだ。3つ向こうの角のあたりだ」

「ああ、どうも……?」

 

 財布の中身を確認して、内部のカードを取り出して確認していた。その時に表情が変わったので、知っている人なのだろうか? 

 

「あー……えっと、一応名前とかの記入お願いできます? 落とし主からのお礼として中のお金から少し出ますので」

「……礼として金銭が出るのか⁉︎」

「あ、忘れてた」

 

 お巡りさんの言葉にびっくりした己は、その反応でお巡りさんをびっくりさせてしまった。

 と、ここで気付く。彼の眼鏡が少し妙だと。なにか情報を瞳に向けて発信しているような感じだ。

 眼鏡自体がモニター用途のモノになっているCOMPなのだろうか? そう言えば交番周辺に入った時に機械的に何かを向けられた感覚があった。あれはアナライズのセンサーなのではないか? という説が頭を過ぎる。

 

 まぁ、今現在は隠すこともないのでどうでも良いのだが。

 

「……これは、書いて良いのか?」

「ウチは普通に会社経営してるし、住所はオープンだから平気だよ」

「承知した!」

 

 書き慣れない『琴葉』という苗字の下に、片仮名という表記法で『ジエン』と記す。この国のシステムに登録している名前はこれだ。

 

 そして住所を記載して完了。報奨金が多少とはいえ出るのだ。良い気分にもなる。

 

「うむ、では失礼する。対応感謝するぞ! お巡りさん!」

「……はい、困ったことがあればいつでもどうぞ」

 

 内心にては己の強さに怯えながらも、しっかり対応してくれた彼からは、『お巡りさんの心意気』を感じることができたと思う。あのような誠実な者が多くいる組織なら、信用に足るであろう。

 まぁ、この平和な社会を保てている時点で信用など元々青天井なのだけども。

 

「杏奈、あのような交番にアナライズ機械があるのは普通のことなのか?」

「どうだろ?気にしたことなかった」

 

 ちょうど良い時間であるから、このまま社に戻ることにした。気分は上々だ。

 

 


 

「おかえりー」

「ただいまー」

「ただいま帰ったぞ!」

 

 朝食を終えた後であろうリオとばったり出くわす。手元のコーヒーの香りが鼻腔をくすぐり、食欲を増進させてくる。

 

「朝の散歩、どうだった?」

「『お巡りさん』という者を見たぞ。誠実な人物であった。あれなら皆も頼りにすると得心がいったぞ」

「へぇ」

 

 杏奈がトースターにパンを入れ、スイッチレバーを倒す。果物の砂糖漬けであるジャムはリオが使ったのがテーブルの上にまだあったので、後用意するものは特にない。

 

 さて、軽い運動の後の美味しい朝食とするとしよう。りんごのジャムは甘くて美味いのだ。

 

 

 朝食を食べ終えて、リラックスして背伸びをする。今日はこれから学校に登校する日だが、まだ時間は十分にある。

 

「あ、そうだジエンくん。今日時間ある?」

「む? ……放課後に特に要件は入れていなかったな」

「丁度良かった。知り合いのプログラマーの予定取れたから。ジエンくんの召喚プログラム見てもらおうって思って」

「ほう! 大変興味があるぞ!」

「じゃあ学校終わったら連絡してねー」

「うむ!」

 

 最近掲示板で知ったのだが、悪魔からの囁き(ウィスパー)が起きるのは召喚プログラムの使用者保護機構が弱い奴らしい。今更己がどうなるとは思えないが、見てもらった方が良いはず。

 

「して、そのプログラマーというのはどのような人物なのだ?」

「名前は由崎星空(ナサ)。銭湯に間借りしてるフリーランスで、新婚ホヤホヤの幸せ者よ。奥さんはデビバスとかって話ね」

「ふむ。どんな経緯で知り合ったのだ?」

「ウチの会社の基本システム作ったのソイツなのよ。事務のバイトとして雇ったら凄い勢いで事業の効率化とかしちゃって」

「ほう! それは心強い! あの資料検索機能を作った方なのだな!」

「そうそう」

 

 報告書を書く時にとてもとても頼りになった『テンプレート』、秘伝書の中の内容をカケラも理解できなかった己を助けてくれた研究レポートへのジャンプ機能。その手のものを作った方だと聞いた己はナサ殿に対して大変な敬意を覚えている。

 

 それが『新婚』というのだからめでたくて良い。

 

 

 という事で放課後、早速その銭湯『草津温泉風湯布院』に赴くのだった。

 

「いらっしゃい」

 

 扉とのれんを抜けた先には、赤みがかった髪の美人が一人そこにいた。気怠そうな態度だが、凛とした佇まいが隠せていない。

 歓迎の言葉とは裏腹に筋肉は程よく緩んでおり、何か仕掛けても反撃を放てそうな雰囲気がある。

 

「久しぶりだね、リオ」

「やっほー司、ナサの奴は?」

「部屋で仕事中。話は聞いてるから、入って良いよ」

「ありがと」

「……所で、その子は?」

「己はジエン。現在リオと組んでいるハンター……デビルサマナーだ」

「……ショタコンの気があるのは知ってたけど、逆光源氏は引くって」

 

 堂々と名乗った己の名前に「あぁ」と納得してから、リオに対して毒を吐いた司殿。しょたこんとは……何だっただろうか? 

 

「うっさいよ歳の差婚」

「はぁ? 司ちゃんは16歳を何回かやってるだけの16歳だから。そこ勘違いしないでね」

「何回か、とかサバ読みすぎ」

 

 リオと司という者の気安い煽り合いが続く。16歳というのは肉体年齢なのだろう。異界で長く居たのか不老の術でもかけられているのか? と思う。そんな秘伝を己にチラつかせて良いものか? とリオを見るが気にした様子はない。司殿にもそんな様子はないので、二人の中では普通の話なのだろう。

 

 まぁ今はたとえ永遠の命を得ていたとしても普通に死ぬような情勢なので、きっと誤差なのだろう。

 

「一応、アナライズをかけさせてもらうよ」

「え、アンタが?」

「何さ、私だって日々進歩してるんだよ。機械が苦手なのは過去のことだと思ってくれて良いんだよ」

 

 そう自信満々に言った彼女は、おっかなびっくりな手つきで手元の何かを動かす。タップ回数は数回なので、操作は簡易的かつ即効性の高いものになっているのだろう。

 

「え、レベル高……」

「なかなかやるでしょ、ウチのジエンくん」

「ドン引きするくらい強いんだけど、何? リオみたく見た目詐欺? 実年齢何歳?」

「うむ、年齢は13くらいだ」

「見た目年齢通り⁉︎」

 

「はぁ〜」と一息つく司殿。色々と考えることがあるのだろう。見た感じレベルは40前後。最前線には一歩二歩届いてないラインだ。

 

「若者の人間離れが深刻化してるね……」

「それは本当に思う。この前私よりレベルの高い女学生*2見たし」

「喜ばしい事だな!」

 

 その己の発言に少しほわっとする二人。稀によくあるこの視線だが、いまいちタイミングが掴めない。失言という訳ではないと思うのだが……

 

「あ、そうだ。ジエンくんって今朝財布拾ったりしなかった?」

「む? 拾って届けたな」

「ありがとね。あれだんな様の財布だったんだよ。なんかの拍子で落としてたみたいで」

「そうなのか! 大事がなくて何よりだ」

「心ばかりのお礼って事で無料券をあげよう。ここの銭湯、なかなかに凄いよ」

「ほう!」

「最近ちょっと工事したんだっけ?」

「そうそう。最近ちょっと荒っぽいのが多くなったからそれ対策にね。レルム帰りのデビバスが寄ることもあるから」

「……む?」

「この銭湯、最寄り駅からレルムへの通り道にあるのよ」

「おかげで盛況なのは良いんだけどね」

 

 なるほど、と立地を思い返す。

 最短経路からは2本ほど道を外れるが、確かに先にはレルムがある。車を使わないスタイルのサマナーなら、通ることになるだろう。

 

 それに来る時に幾つかのレンタル駐車場を見た。車でレルムにやって来ても帰り道に被ることはそれなりにありそうである。

 

 そう考えていると、奥の方から足音が聞こえてきた。つい反応してスキルの起動待機に移行しかけ、それを司殿の視線で妨げられる。申し訳ない。

 出てきたのは一人の若い男性だった。殺しの技を向けられかけた事を意に介さず、平凡な風体で眼前にやってきたのは大した度胸かもしれない。あるいは司殿がいるから大丈夫だ、という感覚なのかも。

 

「だんな様、どうしたのさ」

「話し声が聞こえたからリオさん来たのかなって」

「ごめん、話し込み過ぎてた」

 

 この男性の戦闘能力はさほど高そうでなく、立ち振る舞いも只人並み。研究者や技術者の類に見えるが、しかし内臓MAGはそれなりにある。MAG太りという奴だろうか? 

 

「初めましてだ。己はジエン。今日はプログラムを見てもらいたく参上した」

「うん。僕は由崎星空。よろしくね」

 

 銭湯の受付、番台という所で手を振る司殿とリオを尻目に奥に進む。二人は少し話があるようで、歩いている途中でも罵り合いの声がちらほら聞こえてくる。仲が良いらしい。

 

 銭湯の離れにあるという由崎夫婦の自宅は、こじんまりとしていた。とても凄腕プログラマーの拠点とは思えない。もっと凄い機械が多く必要なのではないか? と思い聞いてみると、そういう高度な計算はクラウド……遠方の大型コンピュータとリンクさせる事で行うらしい。

 

 このようにクラウド通信をする事で手元に大型マシンを置かなくても良いのだとか。覚えておこう。

 

「それで、調べたいのってジエンくんのCOMPだよね。確か悪魔情報汚染があるとかで」

「うむ。己の体調に変化はないし、プログラムの動作に変化はないとはいえ、理解を深めておきたくはあるのだ」

「じゃあ、ここに接続してみて」

「うむ!」

 

 指示された通りに簡素なコンピュータにガントレット(スマホ)を繋ぐ。そちらをコンソールにしてプログラムの解析をするらしい。

 

 カタカタカタと数個のコマンドが打ち込まれ、数秒経つと画面表示周りが変化した。

 多くの数字が出て来ている。

 

「うん、大体わかったよ」

「もうなのか⁉︎」

 

 そして、それが解析の全部らしかった。

 

「いや、召喚プログラムの診断するって話は聞いてたからね。ツールを最適化しておけばこれくらいは簡単にできるんだよ。自動化って奴」

「ふむ?」

 

 簡易コンピュータに示された数字を見ていく。多くのラベル名と測定値があり、どれがどれだかは分からない。説明を聞こう。

 

「じゃあ、まずこの値。事前に聞いてたプログラムからの情報汚染だね。危険値ギリギリの汚染が発生するようになってるから、肉体の悪魔化兆候が出て来てもおかしくないレベルだよ。けど、この籠手がその汚染にフィルターをかけていて、人間の範疇から外れるような情報をシャットアウトしてる感じかな?」

「……ふむ。この籠手以外にプログラムをコピーして使うのは危険なのだな」

「そうだね。それで、この辺りがMAG消費量と情報伝達率の比率。数字だけじゃ伝わりにくいだろうからグラフにするね」

「おお! ……ぉお?」

 

 図表で情報を示されたが、これでどうなのだろうか? 何が良くて何が悪いのかはちんぷんかんだ。

 

「このプログラムは、プログラム自体を起動するために必要とするMAGがかなり多いみたい。けどプログラムの起動さえできれば悪魔2〜3体までのの情報伝達効率が高いから、維持用、戦闘用のMAGは結構抑えられてる。強めの異界みたいなところだと周囲からのMAG回収とトントンにできそうだね」

「4体以上召喚する場合はどうなるのだ?」

「プログラム内部で扱い切れる情報量を超えるから、使用者の側に相当な負担がかかるかな。4体目はプログラムでの縛りから外れちゃうだろうから命令を聞くかも怪しくなる訳だから、奥の手としてもやるべきじゃないと僕は思う」

「うむ! 熟慮しよう!」

「……使う気だよね」

「必要とあらばな」

 

 ジトっとした目で見られてしまった。しかし不可能でないのならば奥の手の一つとしては使うべきだと思うのだ。何度かやった時の肉体的負担が相当であったので多用するべきでないとは理解できているけれども。

 

「しかし、4体目が指示を聞かないとは思わなかった。3体までの場合だと指示への強制力などはあるのか?」

「かなり強いのがあるよ。どうにもこのプログラム自体が悪魔の意思をコントロールする方向性に強いみたいでね。悪魔会話だと物物交換、金銭提供を誘導できるみたいに、使用者の情報を悪魔に対して強く押し付けられるようになってるみたい。まぁ当然酷い扱いをしたら反逆されるけど、普通にしていれば命令に沿って動いてくれるかな」

「……ほう」

 

 なんとなく、『ファンド』やら『トレード』やらについて思い返す。これらはかつてのトウキョウにて、このプログラムの拡張機能としてダウンロードしたものである。意識して行うと悪魔への『スカウト』とは違う話の流れに持っていきやすいのは、そういった情報の取り扱い方に理由があったらしい。

 なんとなく使っていたモノがどのように動いているのかとかは、けっこう面白い話だった。

 

「とりあえずはこんな所。このプログラムは起動が難しい事と専用のCOMPを使わない場合の汚染がある事がネックだけど、それを除いたから凄く良いスペックをしてる。一部の才能ある人間に最適化してるタイプだね」

「……ふむ」

「あとは……ちょっと待って、この数値おかしくない?」

 

 そう締めくくろうとしたナサ殿は、何かの部分を見て眉を顰める。数値の記されている所はメインの部分とは離れているから、何かの拡張機能についてだろうか? 

 

「なにか問題があったか?」

「……アプリ内合体システムの所、情報の参照先に欠けが生まれてるみたい。使ってて不都合はない?」

「いや……そういえば、邪教の館アプリを最近扱っていなかった。不都合はないが、使用データもないな」

「となると、コレ手直しが必要かも。この数値の参照元はコレで、悪魔合体術式の基本軸が4Fタイプになってるから数値は58番で……うん、こんなんで大丈夫かな? テストしてみて」

「承知、邪教の館アプリを起動する!」

 

「悪魔が集いし邪教の館へようこそぉぉぉ!」

 

 邪教の館の主人のプログラムは、いつも通りに大きく愉快な声を出す。

 ナサ殿はポカンとした顔になり、作業の手が少し止まっていた。

 そのびっくりした顔で、シェルター内部でコレを起動して怒られた思い出が、なんとなく思い出された。

 

「合体機能の操作に問題はなさそうだ」

「それなら全書を使って簡単な合体をしてみてくれないかな?」

「よしきた。であればとっておきのレシピを使うとしよう」

「とっておき?」

「容易く強レベルの悪魔を作成する事ができるものだな。合体の際のベースレベルを上昇させるのに便利なのだよ」

 

 

地霊スダマLV3 合体鬼神ショウキLV50*3
地母神ペレLV7

 

「俺は鬼神ショウキ。今後ともよろしく」

「よろしく頼む! 無事に合体できて何よりだ!」

 

 プログラム内部空間にて現れたショウキと契約をする。悪魔全書の悪魔2体を素材に作り出したものだから自我はまだ薄いだろうが、そのうち馴染むだろう。

 

「しかし、コレが壊れていたという事は『悪魔合体ライト』も使えなかったのでは?」

「壊れてたのは全書との共有周りだから多分使えたとは思うけど、ゾッとする話だよね」

「うむ。本当にな」

 

 まあ、生きているのでヨシ! 

 

「……うん、とりあえず大まかには説明できたかな。細かいデータとかは今纏めてるけど、プリントアウトして紙で持つ?」

「防諜は得手でない。データとしてスマホの中に送ってくれ」

「分かった。じゃあスマホのアドレスを」

「? この機械からできぬか?」

「知らないスマホに送るのは無理かなぁ」

「否、これが己のスマホだ」

 

 と、この辺りで失言に気付く。この世界では悪魔召喚プログラムを用いる機械のことをCOMPと指すのだった。

 

「すまぬ、言葉を間違えた。このCOMPの中にくれ」

「分かった。……凄い言い間違えしたね」

「直そうと思っているが、ついな」

 

 スマホ……ではなくCOMPの中にデータが共有される。先程測定したデータと、各数値の説明などが書かれているファイルだ。

 

「む? バックアッパーと同じ仕組みか?」

「あ、使ってくれてるんだ?」

「あれはナサ殿が作ったものなのか?」

「実は共同開発者の一人だったり」

「なるほど。感謝する。あのソフトにはとても世話になっている」

 

 頭を下げて感謝を述べると、少し照れたように頭を掻いていた。

 

 そんな時、足音が聞こえてきた。片方はリオのモノ。もう片方は司殿だろうか? 

 

「ごめんだんな様、話し込んでて遅くなっちゃった」

「COMPの解析は終わった感じ?」

「大体終わった所だよリオさん。司ちゃんもお疲れ様」

 

 さて。ここに来た目的は己のスマホ内部のプログラムを解析するだけではない。なにやらナサ殿からの依頼があったらしいのだ。

 

「それじゃあ確認なんだけど、この『バックアッパー』見覚えはあるよね」

 

 ナサ殿が見せたのは先日激闘の末に打倒した堕天使パイモンの体内にあったものだった。ヤタガラスが解析を頼んだ技術者というのはナサ殿のことであったらしい。

 

「うむ、己とリオで打倒した異界の核だな」

「報告できることは粗方書いて出したわよ。何か足りない所あった?」

「一応主観の情報が欲しいんだ。この球体から発した情報を見たりして、何か妙な事思わなかった? 文の内容が痒いとか、写真が美味しそうとか」

 

 質問の意図が分からない。文章は文字化けして読めなかったはずで、写真には男女の絵姿しかなかったはず。美味しそうとはならぬだろうて

 

「……文章は痒くならなくない気がするのだが」

「でもジエンくん、あの球を美味しそうだとか言ってたよね」

「言ったな。食っても腹を下さない悪魔の感覚がしたのだ。食べやすそうな形状でもあったしな」

 

 そう言えば司殿は『大丈夫かコイツ?』という目で己を見て、リオは『落ちているモノを食べちゃダメって言ったでしょ!』というような責める目で見る。

 

「……うん、ありがとう」

「どう言う事? 説明してくれなきゃ分からないわよ?」

「安心してリオ。説明された私もあんまり分かってないから」

「なんか、情報に対してのインプレッションが歪むんだよね、この球体関係の情報って」

「む?」

 

 インプレッション、印象という意味だったか? 

 

「この球体の情報量が100として、波長の合わない人間が感じ取れる情報量は2か3くらいなんだ。今回はバックアッパーが引っかかって情報が増えたみたいだけど、それでも4くらい。で、その情報は読み取れない他の情報と混ざって変になる感じ」

「読み取れない訳じゃなくて?」

「うん。『球体が存在する事』とか『どんな色のものなのか』とかは外から観測できてる訳だしね。僕からは材質すら理解できないけど、司ちゃんはこれを魔石の類だと思えてるし」

 

 つまり、見る人によって形が変わる物質なのだろうか? 特定の人間でなければ正しく中身を把握できないモノ? 

 

「……え、形の認識がブレてるの?」

「触って確かめた形状だって僕と司ちゃんで違うモノになった。3Dスキャンして見る形も方式によって違う形になったりする」

「そこにあるのにか?」

「で、4次元以上の情報を持つ構造体ってとりあえず仮定してみて色々試してみたんだよね。それで三次元にはこの球体以上の質量を持たない事と、MAGを燃料に発信する情報は大きな一つのデータの中の一部でしかない事。そのデータは何か特定の性質を持つモノならばその一部のデータから全部の情報を複合できるように繋がってる事が分かったんだ」

 

 己とリオと司殿、3人の頭の中が『?』で埋め尽くされているだろう感覚がある。ギリギリで理解できていた内容から5、6歩外に飛び出した感覚というか、説明を飛ばされたというか。

 だが、理解できた情報だけを繋ぎ合わせると見えるものは少しある。

 

「……つまり、パイモン専用のバックアッパーなのか?」

 

 え、今の長台詞分かったの⁉︎とリオと司殿が驚く。分かってはいないぞ。

 

「うん。堕天使パイモンの記憶コードのバックアップ。悪魔召喚プログラムで出たまっさらなパイモンにこの球体を渡したら、この前の異界で出たパイモンみたくなる筈……検証が必要だけどさ」

「ふむ」

 

 バックアップを完全に受信したら妙な事が起きるらしい。

 

「今回は堕天使パイモンだったけど、他のメジャーな悪魔に影響を与えたり、人間に影響を与えるようなのがあったら……」

「知らぬ間に他人になる……と。おっかない話ね」

「最悪の場合は、だけど」

 

 なるほど。悪性の思念を押し込まれたのなら邪悪の手先になりかねないが、ただの技術や情報であるのならそれは『魔導書』などでのレベル経験獲得と大差はないのか。

 

今の所邪悪の可能性が高いから、危険だと見られているだけで。

 

「ふむ、そのような最悪を防ぐために己達に何か依頼があるのだな」

「うん。リオさんにお願いしたいのはこの堕天使パイモンの追跡調査。パイモンが何処でコレを手に入れたのかって事を調べて欲しい」

「おーけー」

 

 トントン拍子で話が進む。信頼が理由だろう。料金設定などは別にやるだろうが、受ける事は決まっている訳か。

 

「で、探索の目星とかはあるの?」

「一応ね。異界のあったスタジオ周辺の影異界。まずはそこから調べて欲しいかな」

「……影異界?」

「あー、あそこの森?」

 

 うむ。影異界というのは分からないが、リオは心当たりがあるようなので後で聞こう。森である事がわかっていれば今は良いはずだ。

 

「うん。というわけで要件は終わりかな。急に呼びつけちゃってごめんね」

「それは良いわよ」

「これから、パイモンの悪魔召喚プログラムの解析にかかるのか?」

「あ、それはもう終わってる。けっこう簡単な作りだったから」

「誠か!」

「やっぱ変態だわアンタ」

「人のだんな様に酷い言い草だね。まぁ私も若干思ってるけど」

「ひどくない?」

 

 という事で、先日の戦闘で気になったところを聞いてみた。

 

「パイモンの27体召喚とは、どう言う理屈だったのだ? 可能な範囲で聞きたい。そして己が使いたい」

「使うのは無理かな。あのプログラムは複数のパイモンで共同制御していたみたい。堕天使パイモンはプログラム内部に複数いて、それを重ね合わせてより強いパイモンにするってのがパイモンの術式みたいだったから。多分戦闘時に9体くらいの堕天使パイモンが『合体待機状態』で重なってたんだと思う。で、それぞれが別々の悪魔の制御に回ってるから27体が扱い切れている。CPUを複数搭載して負荷を分散してる感じが1番近いかも」

「……ふむ。つまり己も沢山になる事ができれば複数制御が可能なのだな!」

「どうやって増えるのさ。分身の術?」

「探せばなにかはあるだろう。きっと」

 

 ふむ。己がたくさん……漂流者は過去の時代の人間なのだと聞いた。つまり過去の世界で生きた違う己達が重なり合い協力しあえば行けそうだ。霊媒系の技能について調べてみよう。いや、精神を宿すのだから降霊か? どっちも調べよう、うん。

 

「ただ、これで精神のブレから肉体が崩壊しなかった理由はちょっと分かってない。パイモンの精神力による根性だとは思いたくないしね」

 

「私根性だと思う」

「己もだ」

「司ちゃんも根性だと思います。恋する女は強いし」

「だよねぇ……」

 

 なんでも理屈の上では複数の精神が単一の肉体の中にあると『悪霊レギオン』のように精神を司るパーツ、頭部が複数発生するような形になるらしい。頭部が複数あれば後方や側面などの別の視界を元にした思考により、さらに強かったかもしれない。今回は敵の精神の屈強さに感謝しよう。

 

 

「ま、パイモンの球体はただのレアケースで、僕らの取り越し苦労ならそれが1番だから。結果が出なくても安全第一でお願いね」

「心得た」

「じゃあ一仕事終えた訳だし、お風呂いこっか」

「おお!」

 

 その日、己はこの世界の最先端の風呂の威力に震える事になる。

 マイクロバブルシャワー、ジャグジー、サウナ。

 文明とは、こういうモノなのだなー……気持ちが良い……

 

 今度掲示板でダイレクトマーケティングというのをやろう。うん。これは良いモノだ。

 

*1
道端の死体は真4無印では宝箱、真4Fではアプリポイントのお宝

*2
陸八魔アルちゃんのレベルは73です。コワイ!

*3
鬼神の最低レベルであるから、ベースレベル合計値がどれだけ低くても一番近いのがショウキになる




びっくりする位注釈が少なかった今回です。今までが多すぎたともいう

由崎夫婦
 4/7日より2期が始まるアニメ『トニカクカワイイ』より。イカれた頭脳のナサくんと不思議美少女司ちゃんが新婚夫婦をやる作品。本筋に特に絡んでないときの緩い雰囲気が個人的に大好き。

由崎星空(ナサ)
『NASAより早く高速になる男』っていう決め台詞を最近使ってないイカれ数学野郎にして歩くWikipedia。草津温泉風湯布院の経営危機を救ったことで信用され、離れを課してもらうに至った。
 今作ではすこしオカルト方面に縁ができているのでCOMPのプログラム作成だったりをしている。検証班のがんばり(すぎ)を支援する情報管理システムを作っている一人でもある。

由崎司
 謎の美少女。武術の心得がある。詳しい設定が気になるのなら原作を読むかアニメを見よう。
 今作ではデビバス復帰勢。昔は知る人ぞ知る強者だったが、引きこもっていた時期が長かったので知っている人は少ない。今では強くはあるが普通に埋もれる程度の実力者である。
 キリギリスの一員ではあるのだが、機械に弱くチャットの参加はあまりしていない。
 リオと、というか技研と縁が深く、秘伝書のうちのいくつかは彼女のツテで持ち込まれていたモノだったりする。

ジエンくん
 風呂上がりの牛乳が好きになった




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達き日の戦士達に

 

 妙に自我の薄い悪魔、倒しても取り込めないMAG、転がり落ちる漂流者、そういうのが名物である異界。

 実入りはなく、異界の主もいないので破壊もできない『よく分からないモノ』。調査もされてはいるが、優先されてはいない場所。

 

 それが、『影異界』。

 

「人物ならぬ悪魔人格プロファイリングの結果ねぇ……」

「堕天使パイモンが衝動的に行動を起こしたというのはリオも認めるところだろう?」

「で、あのスタジオ周辺でヤバめなパワーを得られた可能性が高い場所が影異界の森。アホほどにトラップの残骸が転がってるのが特徴といえば特徴なのかな?」

「ほう、トラップ」

「資料見た限りだと複雑なのはあんまりないかな。ワイヤートラップの先に攻撃系アイテムを配置してやる奴とか」

「ふむ。その手のトラップは攻撃アイテムを起動状態にしたままにするのが難しかった記憶があるな」

「へぇ……」

 

 かつての世界の最終盤。補給のない中で優先するべきはMPの回復だった。故に異界の中を逃げ回って『パーティMPリカバリ*1』を有効活用する作戦を取っており、その際徘徊する悪魔のルートが逃げ道と重なっては挟み撃ちにされてくたばるので罠を用いて敵の誘導を行っていた。

 

 無論、悪魔に有効な罠というのはそんなにあるわけではない。悪魔はダンジョンを徘徊している際に形をいくらか崩している*2事がある。女性型、獣型、鳥型などは遠くから把握できても、接敵するまで詳細を認識できない。

 

 そうして実体化の薄い状態の悪魔は純粋物理的現象による干渉が通りにくいという性質も持っている。奴らはドアを開けることすらできない代わりに、ワイヤーに引っ掛けることすらできやしない。

 

 なので、最終的には森全体にトラップを張り巡らせて、機動はニードルショット*3で手動操作をする事にしていた。

罠の作り方はハンターメモにあったが、それを作り上げられる技術は己にはなかったのだ……

 

「おーい、戻ってこーい」

「……しまった。油断が過ぎるな」

「連戦続きで疲れてない? 休む?」

「問題はない。見知った森の形状で昔を思い出してしまったのだ」

「へー、元の世界にもこの森があったの?」

「あくまで似たモノだ。己はこの目で森が砕け散るのを見ているのだから」

 

 とても良く似ている。踏みしめ道にした草花も、悪魔の血肉で穢れきった木々も。その存在感を除けば瓜二つなのだ。

 

「……そういやこの世界に来る直前の事を詳しく聞いてなかったんだけど、良い?」

「うむ。まぁ実際己はよく分かっていないのだ。詳しい話を下っ端の兵隊が知った所でどうなる訳でもないしな」

「……ジエンくんみたいなのを兵隊として使い捨てるとか、あんまり良い感じしないね」

「そう言ってくれる人もいたな。だが、どのみち護り戦うのだから大差ない、と聞く耳を持たなかったのは己なのだ。仲間達を悪く言わないでくれ」

「……外野からの言葉だから、ジエンくんも適当に流してていいんだよ?」

「気をつける」

 

 リオの気遣いを受け入れる。しかし己の過ごした戦いの日々も、丁寧に言葉にしていかなくては相互理解は得られまい。

 

「上の方針で作戦を進めていき、シェルターの防衛を続けていた。だが、守っても守っても戦況は良くならず、逆襲に出た先輩やパイセンも還らない。そういう真綿で首を絞めるような死に方をしたのだよ、己の世界の人類は」

 

 その話をしんみりと聞いたリオだったが、しかしふと妙なことに気が付いたと口調をいつものモノへと戻す。

 

「今、先輩とパイセンで分けてた?」

「先輩とは先に同じ仕事をしていた者で、パイセンとはその中で特に親しい人を指す。この世界では違うのか?」

「パイセンは若干舐めてる感じあるかなぁ……」

「なんと……」

 

 パイセンは、ダメなのか……? 

 

 いや、別に呼んでいて悪い顔はされていなかったな。うん。

 

「まぁ話を戻すが、その逆襲に全てを賭けていた人外ハンター商会は大きく弱り、以降悪魔共相手に防戦一方。すり潰される中で情報収集能力も考える頭も弱っていったのだ」

 

 今にして思えば、組織の頭が吹き飛んだ後でも手足が頑丈だったから動き続けられただけだったのかもしれない。本当は先輩方が逆襲に失敗した時点で勝ち目などなかったのに、しぶとく生き残り続けてしまっただけなのではないか? と。

 

「……そんな状況からよくもまぁシェルターで世界から脱出する! なんてやってのけたわね」

「うむ。皆で頑張ったからな!」

「……皆がジエンくんレベルで頑張ったのならできるわね、うん」

 

 そうこうしていると、影異界のある森の境界と無事に辿り着く事ができた。話は中断しよう。

 

 一応の警戒はしていたが狙撃の類は見当たらず、足元に落とし穴などのを作られた痕跡はない。普通だ。ナサ殿が己達を殺す為に偽りをしたという線は一旦置いておく、ないとは思うが。

 

 影異界の森は実際の森と地続きになっている。この森の北西部あたりが入り口らしく、その辺りからは属性がニュートラルの悪魔がボロボロ出るらしい。

 

 影異界の性質として自我のない悪魔のため悪魔会話でのスカウトは不可能らしいが、メジャー悪魔故にスキル、耐性などは良く知られている奴でそう苦戦はしない。レベルも低いし。

 

 影異界を進んでいく。不思議と見覚えのある壊れ方をしている結界を抜けて、迷う事なく先に進んでいける。

 

 そして、見覚えのある目印のあるワイヤーを見つけた。

 

「……なんと」

「どったのさジエンくん、マッカでも落ちてた?」

「これは……己が作ったトラップだ!」

「……え?」

 

 理由は想像もつかない。己が数ヶ月の間サバイバルしていた中庸の森がこの世界に転写されていた。

 

 


 

 勝手知ったる森の中をスタスタと進んでいく。出てくる悪魔は弱く、本来であれば中庸の森にはこのくらいの悪魔がいたのだなぁ……というノスタルジーを感じさせる。

 

 それはそれとしてあえてATTACKで倒す事で武器の熟練度を上げようとの試みはするのだが。

 

「……どゆこと?」

「ふむ……この異界が砕かれた時に己がこの世界に転がり落ちたのだから、異界の方も転がっていてもおかしくはない、というのはどうだ?」

「……まぁ、考えるのは後回しにしましょ。そっちのバックアッパーの反応はどう?」

「数個反応があるな。影異界の調査をしたハンターの調査メモだとタイトルにあるが、開いては居ない。大丈夫そうか?」

「こっちでも確認したよ……オヤジの混ざってるじゃん」

「ほう、ゴドー殿の探索記録か」

 

 興味をそそられたので閲覧してみる。

 

 オートマッピング結果と悪魔の情報のメモ書きが機械的に記されている。無機質だが、とても読みやすい。注釈として敵悪魔の行動方針があり、それは驚くほどに敵の行動と合致していた。

 機械的に、規則性をもって動いているのだとこうしてまとめられていると改めて理解できるというものだ。

 

「とりあえず、この記録が残された時点では何か変化はなさそうね」

「うむ。現在でもなにかの強大なパワーの痕跡は見られない。あれば感じ取れるしな、この気配の薄い異界ならば」

「だよねぇ……」

 

 オートマッピングの同期をリセットして自分の歩いた場所のみのマッピングを開始する。別にゴドー殿のマップそのままに歩いても良いのだが、どこを歩いたかを覚えておくのが面倒なので手間は省いておく。

 

「とりあえず時計回りに順繰り進んでいこっか」

「うむ。悪魔からよりも人間からの奇襲を警戒しながらな。罠が残っているのだから理解し利用する者がいるかもしれん」

「わざわざ紐を撃ち抜く奴を?」

「便利だったぞ?」

「それ他の方法と比較してないからじゃないかなぁ?」

「否、クレイモア地雷や魔導式など様々に試した結果だ。手動で起動するのが1番間違いが起きぬ」

 

 トラップを使おうと思い立ち、自分諸共吹っ飛んだことは記憶に色褪せずに残っている。命懸けで走り回ってる中で罠の場所を全て把握するのはほぼ不可能だった。少なくとも己には。

 

 スマホにメモを取って使うときだけ思い出してやれば不都合はなかったし。

 

「あ、トラップみっけ」

「あそこはデビルポイズンだった筈。今は足りているな」

「ジエンくん自前でバステ振り回せるもんね」

「適正があったのだろうな。きっかけは悪魔からの囁き(ウィスパー)であるが、己の技として記憶できている」

「そういや、ああいうポイズマとかのバステ魔法で魔力属性のダメージが発生するタイプ*4があるらしいよ」

「ほう!」

「ダメージ量は小さいけど、魔力ダメージを弱点にする悪魔もちらほらいるんだって」

「是非覚えたいな。魔力が並程度の己では威力にはならないだろうが、手数にはなる」

「ジエンくん百麻痺針*5とかのバステ付与系攻撃好きだよねぇ。グランドタック*6とか刹那五月雨撃ち*7とか覚えないの?」

「……正直どこもかしこもプレートバンダナ*8だらけの現在でただの銃撃属性が必要か? と思い始めてる己がいるのだ。あとそのような高位スキルは容易く習得はできぬ」

「火力不足で悩んでるくせに」

「それは言わないでくれ……」

 

 お手軽に使える火力が欲しいのは人類皆共通だと思うので、未来の己か他の誰かが何か思いつくだろう。今は思考を外に置く。

 

 異界前半の森林部分の踏破が終わる。ゴドー殿のマップとの差異はなく、出てくる悪魔も雑魚ばかり。ナイフを積極的に振るようにしているが熟練度が上がって威力が上昇する*9感覚はない。掲示板の情報は玉石混交だからか? 応えてくれ己のモータルナイフ! *10

 

「武器系スキルに熟練度補正乗るらしいのよねぇ……また素手から離れられない理由が増えた」

「そう言えば、リオは武装をさほど使わないな。何か理由があるのか?」

「武器の耐久力の問題……いや、私の技術の問題の方が大きいかな? 武器がダメになるのが早いのよ。新品のが戦闘中に駄目になったこともあったりでさ」

「それは不良品を掴まされただけなのでは?」

「どうかなー? 杏奈もオヤジも問題ないって太鼓判押した奴だから」

「……なんと」

「それ以来武器をサブ感覚で使ってたらいつのまにか素手だけでなんでもできちゃうリオさんになった訳なのよ」

「ふむ。リーチの問題はあるか?」

「慣れちゃった」

 

 さらっというその一言がどれだけ恐ろしい事なのかをリオは理解しているのだろうか? 

 

 1ターンをもっと細分化して見た時、攻撃を当てられる距離に近づく事にかけられる時間は4秒はない。

 敵も味方も変わる変わる攻撃を繰り返すのだから、味方の攻撃に反応して離れる事をするし、敵の攻撃に備えもするから常に攻撃できる距離で戦うというのはかなり難しい。その上近づく事に集中しすぎれば敵からの攻撃で致命打(クリティカル)を受ける事になるし、敵の牽制のせいで近寄りきれず攻撃を失敗する事も当然ある。銃撃ならば距離がある程度離れていてもなんとかなるが、こと近接ならそうはいかない。悪魔は基本的に人間よりも長いリーチの技を持っているのだから。

 

 慣れた、というのはつまり

 手の届く距離まで近づく事を当たり前に可能とし、一方的に殴られる距離からの踏み込みを常道とし、攻撃の後の隙を致命打にならないような残心を万全にしているという事。

 

 改めて、リオのような近接バスターの強さに恐れ入る。

 

「……ん?」

「敵か?」

「どうだろ? 警戒強めに、右前方から違和感」

「了解、戦闘準備」

 

 現在探索の共として出していたのはクイーンメイブ一体だけだった。

 故に追加召喚は2体、ファフニールとゲンブだ。先日の異界より使いまわしているコンビであるからセット運用は慣れつつある。体躯が大きく、敵の攻撃からの盾として非常に使い勝手が良い仲魔だ。

 

「OKだ」

 

 己の言葉に頷いたリオは先頭を進む。リオの進む先には樹木が密集した壁がある。焼いて砕けば先に進めそうな、普通の壁だ。

 

「……この先」

「隠し路か?」

「マップ見た限りじゃ迂回路はない。隠し通路があるかも」

 

 そうして調べてみると壁が薄いポイントが存在するのが分かる。人為的に作られたものではない、異界自体が作り出した隠しエリア。

 

 侵入方法は、壁の破壊がいいだろう。

 

「……しまった、火炎(アギ)使いがおらぬ」

「まぁ火龍撃でいけるでしょ」

 

 若干の不手際がありつつも壁は穿たれ道は開く。

 壁の向こうには通路があった。MAGの通り道としての役割しかなく、人や悪魔が踏み入った形跡があまり見えない獣道だ。

 

「当たりだね」

「行くか」

 

 トラップへの警戒のため『コアシールド*11』を使用する。ダメージゾーンを発生させるタイプはこれで無力化だ。

 移動系トラップ対策にリオと己の距離を詰める。先行させるのはゲンブ、殿はファフニールにして奇襲を警戒。

 

 狙撃が来る可能性は考えなくて良いだろう。道は真っ直ぐでなく曲がりくねっており、遠方には樹木による壁もできているからだ。

 

 ……それはそれとして、ヤクトヘルムのバンドが緩んでいないかを確認はしておく。問題なし。

 

「この違和感、なんなんだろ」

「己は何も感じない。故にリオにあり己にはない条件があると見る」

「近付く度に強くなってる。苦味というか……」

「これは当たりではないか? 文字が痒いのと同様の、異常なるインプレッションが故とみる」

「人を選びまくるバックアッパーか。じゃあ一応女性であるのも条件候補に追加ね」

「身体の性差は、明らかに違うものな」

 

 平常の警戒度を維持しながら情報共有。罠として純然たる殺意の元に待ち構えられている感じではない。何者かが隠れ潜んでいるかもしれない、という感覚だ。杞憂であるのならそれが良い。

 

 そんな時、スマホからアラームが鳴る。

 

「来たな」

「こっちも確認、バックアッパー」

 

 タイトルが文字化けしている共有ファイルがある。以前スタジオで受信したものとは別だ。

 

 使い捨て用途として持ち込んだスマホにて共有ファイルを開くと、悪魔召喚プログラムと思われるモノに文字化けした文章、そして写真が一枚存在した。見知らぬ顔の男性が二人の女性に挟まれている。

 

 ……見知らぬ顔だが、どこか懐かしい。

 

「読めぬか」

「他のバックアッパーだね、これは」

「とすると、研究か何かの一部なのか?」

「かもね。人間に対して使えるのなら、精神をコピペし続けれて不老不死な訳だし」

「ふむ……だが、何故に悪魔召喚プログラムを添付しているのだ? 普通に危険だろう」

「そうだよねぇ……」

 

 と、リオが不意に何かを思いついたようで、COMPで操作する。

 受信したバックアッパーだろうか? と思えばタイトルが異なっていた。化けた文字の種類が違う。

 

「あー……理解した。『技』だよ」

「技?」

 

 そう言ってリオは一つの動画を見せてくる。おそらくバックアッパーにて共有されたもの。己のモノと違うモノを受信していたらしい。

 

 その動画の中には、全身全霊の一撃を放つ男の姿があった。どことなく、リオの放つ无ニ打(アカシャアーツ)に似ていると思われる技だ。

 

「魂を昂らせての貫通効果のない、純粋に高威力のアカシャアーツだよ。文字は読めなかったけど、添付されてた動画は見れた」

「ふむ」

「で、これが添付されてた奴には()()()()()()()()()()()()()()。だからこの一撃は、悪魔召喚プログラムよりも優先させて誰かに遺したい『技』なんじゃないかな? って」

 

 ……なるほど、逆説的にそうなるのか。リオはあの動画にて誰かに技術を遺そうとしていると感じた。その感覚を真とするならば悪魔召喚プログラムの方も遺すべきモノとして見れるという事か。

 

「よっぽどの達人でないならば悪魔召喚プログラムが『技』としては最適か」

「使えば誰でも多少は戦えるからね」

「そのレベルの多少で生き死にが変わるだろうか? 今の狂いまくった環境で」

「変わるよきっと……0.01パーくらいは」

 

 そうして進んでいると、文明の痕跡と思われるものが見える。影異界由来のモノではなく、きちんとした情報量を持っている物体だ。

 

 形状は球体。技研で読んだドラゴンボールにあった個人用宇宙船を思わせるハイテックな装いで、周囲のMAGを収集していた。

 大きさは己の膝程度もなく、とても小さい。

 その内部には2個の球体が存在した。外側の機械で必要量のMAGが収集できたら一つの球体が起動し、それが回転して次の球体にMAGを溜めるという回転式弾倉を思わせる作りになっていた。

 だが外装の一角には穴が空いており、その大きさは球体が通るか通らないかというくらい。小さめの個体なら転がり落ちてしまうだろうか? というほどだ。

 

「なるほど、この機体の中に入れるための球形だったか」

「もっとスマートなやり方あるでしょ、こんな面白絡繰を作らなかったってさ」

「浪漫という奴ではないか?」

「……見た目は格好いいから否定できない」

 

 バックアッパーの方の量産の都合なのではないか? という考えが浮かぶが、まぁ真実は己の知るところではない。

 これを停止させ、持って帰れば依頼は終了となるだろう。

 

 

 

ふと、懐かしい匂いを感じた気がした

 

 機械の後ろには異界の裂け目があった。音もなく生まれていたらしい。大きさは掌が通るかどうか程度と、とても小さい。

 裂け目の向こうを見た。その向こうにあるものは己がかつて見た、ジャンプする前のシェルターの姿と重なった。

 

 だが、今にも崩れ去ってしまいそうなボロボロさで、己達を安心させてくれた頑健さは見る影もない。

 

 何事かが、あったのだろう。

 

「待ってくれ、皆!」

 

 衝動的に裂け目の向こうのシェルターに声をかける。だが、声は届かない。

 何事もないかったかのように裂け目は閉じていき、仲間たちの安否は分からない。

 

 音もなく始まっていた接続は、音もなく切断されたのだった。

 


 

 草津温泉風湯布院に帰還した己とリオ。回収した機械にMAG収集を封印する札を張って、ここまで持って帰ってきた。

 

「うん。確認したよ」

「あとはよろしくね。まぁ害意のあるプログラムじゃないみたいだけどさ」

「という事は、堕天使パイモンが強い影響を受けただけなのかな?」

 

 時間を作って対応してくれたナサ殿とリオが話している。

 己は驚きが大きく、平常心は保てていない自覚がある。会話がすんなりと頭に入ってきていない。

 

「それで、異界の裂け目からジエンくんの知ってるシェルターが見えたんだよね?」

「……うむ。己がかつていた霞ヶ関シェルターに相違ない」

「映像も残ってるよ、バックアッパー様々だね」

「役に立ってるなら良かったよ」

 

 ノートパソコンで映像を見たナサ殿は、手元にあるマシンをチェックしている。

 

「確認するけど、コレって漂流者(ドリフター)関連なんだよね?」

「なんで知って……まぁ、知ってる奴なら知ってるわよね」

「ここの銭湯、結構漂流者さんたち来るからさ。自然とね」

 

 口止めをされていた彼らが口を滑らせたのは、レルムに近いからだろうか? それともここの銭湯特有の安らぎが口を軽くしたのだろうか? 

 なんとなく、後者な気がしている。ここの雰囲気は温かい。

 

「それで、漂流者関係だとなにか問題ある感じ?」

「うん。過去の周回の誰かが残した情報だったなら、それが現在の自分自身に伝わってしまう可能性がある。この球体で共有してるのが思念データなら、自分自身との相性は最高で最悪だ。過去の自分に汚染されかねない」

「汚染……」

 

「ヤタガラスの方の調査班が、堕天使パイモンの出現記録を見つけたんだ。発生場所はあの周辺の家屋、召喚したカジュアルのサマナーを殺して自由になったんだって」

「召喚された奴が自由になって、あの異界にて『球体』の影響を受けてあの『堕天使パイモン』になった……で良い?」

「うん。だから懸念されていた『堕天使パイモンを捨てたサマナー』をは存在しなかったって事で一旦切り上げて良いと思う」

 

 とりあえず、ひと段落ついたという所だろう。ほっと一息つきたくなる。

 

「ナサくん的には、悪意でやってると思う? コレ」

 

 リオが、己が聞きたいことを話してくれた。

 もし、シェルターが今生きてるこの世界を侵略するためにバックアッパーによる精神汚染を行ったというのなら……己は、どう戦えば良いのだろう? 

 

 そう思った己の心配を他所に、ナサ殿は冷静に、普通の事として答えた。

 

「自分たちに出来る最後のこととして、技術をを未来に投げ渡そうとしてるんだと思う」

「その、根拠は?」

「写真とかが『自分たちは幸せに生きてました』って印象なのはそうだけど、それよりも球体が技術の多くを思念データで渡そうとしている所かな。遠い未来で、言葉が全く通じない相手に対しても技術を渡すために、いろんな技術が使われてる」

 

 純粋に情報データとして残すのならば、思念データの数倍の量を保存できるらしい。

 それでもそうしなかったのは、言葉の違いによって情報が遮断されないようにするため。

 自分たちのことが記録に残らなくても、技術として肉となり、命を繋ぐ糧になればと。

 

 そういう『記録』こそが、己たちの世界の戦いだった。

 

 左腕のスマホを見る。籠手の形をしたそれを使って数多のハンターメモを読んでいった。分かりにくかったり、ふざけた語り口のものもあったけれど、技術は、確かに繋がっていた。

 

「……あれは己の世界で、己が守ったシェルターだ」

「うん」

「だから、この世界に敵対する者達ではないと……信じたい」

「そうだね」

 

 二人の優しい目が、今は少し痛い。

 

 言われずとも理解している。悪意のない行動が理由だとしても、他者を害する事はある。

 誰かの未来を願っての行動が、誰かの未来を汚染する結果になるかもしれない。

 

「で、これこらジエンくんはどうするの?」

「シェルターに赴き、真意を尋ねたい。全てはそれからだ」

「……で、なんとかできる?」

 

 リオが問う。己ではなくナサ殿に。方針に迷ったのなら多くの知識を持った賢人に尋ねること。それはこの世界でも同じだ。ナサ殿の知識の広さと深さは己も感服するばかりだ。

 

「……専門外だから断言はできないけど、行けると思う」

「誠か⁉︎」

「漂流者の拠点がこの世界に出てくるパターンって、異界が座礁する感じなんだよね。物質空間じゃない所を漂っていたのに、魔界に近づいたこの世界が来たから異界が引っ掛かったって」

 

 それは巫女殿からの話で聞いていた。この世界が魔界に近づいているから起きた現象なのだと。

 

「その漂ってる空での動きはよくわからないけど、この機械を投げ込んで堕天使パイモンを発生させた時に一回、ジエンくん達が確認したときに一回、少なくとも2回はあの場所での接触が起きてる。周期的に接触が発生する動きをしてる訳だね」

「ならば、あの場所を張っていれば良いのだな!」

「それは多分意味はないよ。ジエンくんが見た次元の裂け目は開くべき最小の大きさである球体の大きさ未満だった。あの場所からは離れる動きをしてるんだ」

「……では、どうすれば?」

「もう一か所、次元の裂け目が発生したポイントを見つけて欲しい。そうすれば、この世界の座標と合わせて3点測量の要領でシェルターが次に接触する座標を割り出せる」

「……なんと」

「けど、どうやってシェルターに乗り込むのよ。座標がわかればワープできるわけじゃないわよ?」

「とりあえずはそこそこの大きさの異界を作ってこの世界に引っ掛けるプランかな? その辺は、ヤタガラスの人とかシモンさんとか異界知識に詳しい人と相談してみて」

「……うん、やれそう」

 

 リオが頷いた。ナサ殿の話は決してでまかせではないという確信が持てたからだろう。己にはさっぱり判断がつかないが、ナサ殿の見せてくれた技術の高さと、リオが信用したという事実を元に信じる事を決める。

 

「うん、私たちがやるべき事はシェルターとこの世界の接点を探す事。で、その接点探しのアテはある? なかったら影異界総当たりだけど」

「球体の思念と技術を受け止めて、ある時急に跳ね上がったタイプのデビバスを探す事かな? そのきっかけを影異界で掴んだのなら大当たり」

「……今すぐにとは、いかぬか」

「コレばっかりはね。方法をいろいろ考えては見たんだけど、向こうの『次元ジャンプ』の理屈が分からないとどうにもならなくてさ」

「……いや、感謝する。己だけでは先の影異界で待ちぼうけを喰らっていただろうからな」

「あとは……今は、ゆっくり休んで、明日から頑張って」

 

 そうして、ナサ殿からの追加依頼は終了した。

 

 これからは、己が主となり動く時だ! 頑張るぞ! 

 

 


 

 

「……あれが、ジエン」

 

 霞ヶ関シェルターの一室で、一人の女が口を開く。

 

 彼女は『人外ハンターランク8』を伝聞でしか知らない。情報としてインストールされているが、シェルターを守るために死んだ有象無象のハンターと変わりのない眼差しで、彼を見ていた。

 

「どれほどの悪性情報に穢れれば、あのように醜く悍ましくなるのでしょう」

 

 彼女は知っている。『ケガレビト』を。

 

 力のために悪魔に魂を売り渡し、悪魔の囁きにより道を踏み外す外道ども。どれだけの正義を掲げても、人外ハンターそのものが『ケガレビト』の巣窟であった事には変わらない。

 

「悪性情報を、この世界に伝播させてはならない。ケガレは滅びるべきものだ」

 

 人間が悪魔と戦えるように組み上げた、シンクロ防御システムを組み込んだ最終型悪魔召喚プログラムは、次の世界に投げ渡した。

 

 悪魔と戦えるように、至高に思えた技術は思想と共に次の世界に投げ渡した。

 

 ──ケガレビトが、そこに生きる資格はない。人が人として生きている世界なのだから、人でないもの(人外)は狩り尽くされなければならない。

 

 そんな思想が、彼女の中には存在した。 人外ハンター商会を根幹とするこのシェルターの存在だからこそ。

 

「できる事は、とても少ない。私達の世界の最強を超えているような超人に、乞い願う程度です」

 

『イデアオーブ』に思想を焼き付ける。複数個繋いでいる()()()()()からの情報を使って、誰かの思想と共鳴するように願って。

 

「……届いて下さい、どうか」

 

 彼女は祈る、滅びることを選択したシェルターの主として。

 

 彼女は想う、窮地の中の人間が人外に打ち勝ってくれることを。

 

どうか

私たちを
 
ケガレビトを

   滅ぼして

 

 

 そんな願いを込めて、彼女は動き出す。

 ゆっくりと、一つずつ丁寧に。

 

 ──次の接触地点までは、まだ遠い

 


 

 あとがき

 タイトルの片方『ケガレビト』の回収です。姫の護衛の方は書けば書くほどリオさんが修羅になったせいで姫()護衛のケガレビトになりそうで怖いです。

 

 メタ情報を出してまで敵側情報を先行公開したのは、やりあう敵のスタンスを明確にした方がジエンくんをいろいろなところで使いやすそうだからです。ジエンくんを使いたいという方は特になにか言うでもなく勝手にどうぞ。

 

 

 ジエンくん

 掲示板のアイコンを変えた。モンスターも人外なのでモンハンは実質人外ハンター!ヨシ! 肉を焼くときの音楽を口ずさむことがたまにある。

 

 地元のシェルターからの毒電波で大変! とわかっててんやわんや。

 だけど銭湯に入ってフルーツ牛乳を飲んだらだいたい元通りになる。地元シェルターがどうなっているのかを確かめるのが最優先。問題があれば助けに行きたいし、邪悪に堕ちていれば始末をつけたい。それが人外ハンターの流儀である。

 

 今作の人外ハンターは割と思想強め。「明日を生きるために人外を狩るべし」とかの洗脳はあんまりしていないけど、ハンターの背中でそれを魅せつけているのでジエンくんの世代は皆自然にそれを受け入れている。受け入れられなかった奴らは悪魔に喰われて死んだので、全員受け入れた。

 

 

 

 ジエンくんループの世界観設定

 

 なんやかんやで核戦争による終末が起き、将門様が天蓋になった世界観。

 スカイの上からフリンが降りてくることはなかった。しかし妙に強い現地人のおかげで真4と同程度の戦況を保てていたトウキョウ。だが物資の不足などはいかんともしがたく、結果旧時代の精鋭が悪魔たちに一か八かの特攻を仕掛けた。しかし『悪魔王』や『救世主』はダメージはあれど健在であった。

 そんな敗戦後あたりに孤児上がりの人外ハンタージエン(当時12歳)が登場。フリンやナナシ達ハンターに憧れた少年とか錦糸町のプロ幼女さんとかのポジション。原作では平和になったから活躍しなかった類の人物。 

 

 そのほか絶望の状況下で政治とかマヒしてるのに生きてる変な集団がジエンくん世代の人外ハンター。基本雑魚の群れだけど、メンタルはすさまじくしぶといので生きるために超がんばった。

 

『悪魔王』『救世主』が勝手に殺し合ってる中で『アリオト』の襲来を察知した上層部(の生き残り)が悪魔たちに気取られないようにしての次元脱出を試みた。悪魔たちがアリオトに殺された後で漁夫の利する作戦である(無理があるけどそれしかなかった)

 手足であるハンターは最終盤までその目的を知らされなかったので、ハンター連中は本当によくわかってない。なんか凄い! くらい。

 

 しかしシェルターの機能が完成したのと同時期にジャンプ機能が露見し、悪魔王、救世主はそれを乗っ取ろうと集団で攻めてくる。大混戦だったが、殿のジエンくんが暴れ回ったことで指揮系統がマヒし、両軍の足止めに成功。シェルターは次元ジャンプによってこの世界から離脱した。

 

 そのあと生きる目のなくなったトウキョウの悪魔とジエンくんだったが、アリオトのことなど知らぬとばかりに大混戦。天蓋がアリオトの質量攻撃で破壊されこの世界が滅びるまでジエンくんは戦い続け、漫画さんの周回の世界に漂着した。

 

 これをジエンくんの口で語らせようとしたら、「よくわからん!」が多くなって説明にならなくなったのでここに設定を書きました。ただ正直設定としてはあるけども本編の展開に関係なかったり。過去の話は過去の話なので。

 

*1
真4 ハンターアプリ 移動時に味方全員のMPを回復

*2
フィールドシンボル状態、真4の3Dフィールドでは敵パーティ代表一体を象ったシンボルで現れる

*3
敵単体に銃撃属性小ダメージ

*4
SH2の魔力属性。バステ魔法が魔力属性ダメージと確率でのバステ付与になっている。ポイズマでもマリンカリンでもドルミナーでも魔力属性

*5
敵複数体に銃撃属性中ダメージ1~3回 緊縛属性付与

*6
敵単体に銃撃属性大ダメージ

*7
敵複数に銃撃属性で攻撃を複数回攻撃を行う 中ダメージ2~4回の作品(真4)大ダメージ2~4回の作品(DSJ)小ダメージ6~8回(ペルソナQ)と作品によって回数などに微妙な違いがあるが、総じて上位のスキル

*8
銃撃属性ダメージを90%軽減する デビルサマナー

*9
真ifの隠しシステム。熟練度は最大で+15、16回ATTACKする事に一段階上昇し、威力が上昇。ダメージ上昇は一段階につき1.5パーセント程度。熟練度最大で約1.23倍

*10
真4Fの店売りナイフ 小刀 威力198×1~2回 かつての世界からずっと使い続けているのでATTACKの累計回数は240回以上ある。熟練度は最高段階

*11
消費アイテム ダメージゾーンを無効化する



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関東近辺レベリングツアー 主催【レトロゲーム同好会】

「……では、事前ミーティングを終了する」

 

 リモート会議を終了し、ぐっと背筋を伸ばす。注意点は多かったが、要約すれば『敵を殺せ』になるのはありがたい。

 

「お疲れジエンくん、どうだった?」

「うむ。基本は書面で貰った通りだったな。とはいえ己は覚えることが無くて良い。教導役ではないからな」

「ごめんね、ちょっとその日用事できちゃって」

 

 リオは、己に仕事を押し付けた事を悔いているようだ。なんでもCOMP職人の方からの緊急の依頼があったとのこと。

 

 その日に訓練用異界での護衛兼教官役の予定だったリオは、己に代打を頼んだ。それが先ほどリモート会議をしていた理由である。

 

 リオは知識量がなかなかに凄い。新人バスター達の動きを見て適したスキル、その習得の為のトレーニングなどのプラン提供をたまにしている。その伝手で新人の異界エスコート役を受けるようになったのだとか。

 

「うちの秘伝書サブスクの宣伝になるから」とはリオの談である。自身の会社の利益と教導する相手のさらなる鍛錬サポートまでするとは、流石としか言いようがあるまい。

 

「今回の主導って『レトロゲーム同好会』だよね。妙な事言われなかった?」

「妙という訳ではないが……ガンダムをプレイした事があると言ったら驚かれたな」

「あー……そっか、ジエンくんの世界レトロゲームが微妙に残ってたんだっけ」

「己が遊んだゲーム機*1は保存状態が良くなかったのかキーレスポンスが悪くてな。なかなかに難しかったぞ」

 

 なお、ガンダムというのがモビルスーツという大型マシンを用いての戦争アニメであるという事は最近知った。シリーズ最新作である所の水星の魔女というを見ての事である。

 

「それで、球体についての話は聞けた?」

「うむ。未だ見たことはないが、見つけたならば知らせてくれると言ってくれた。しからば、己もその誠意に返すべく全霊をもって頑張るとも」

「あんまり無理しないでねー」

 

 

 そんな会話の数時間後、日が落ちたくらいの時間にて己は『西川防空壕跡地』の指定された区域を歩く事となった。

 

 

 今回のレベル上げツアーでは、参加者に幾つかの課題(クエスト)を出している。不完全なマッピングからチェックポイントを探し出すというモノだったり、悪魔交渉でマッカを規定量巻き上げる事だったりだ。

 

 それは同行している『リベラマ』使いの引率役が記録し、次のステップに進めるかを確かめているとのこと。

 

 ──などというのはお題目であるだけで、実際の所は小目的もなしにレベリングするのはダレるから手軽にできそうな事を課題としてセットしているだけらしい。

 

「……またか」

 

 そして己の役回り、基本的には異界全体を周回して『リスキーエネミー』への対処である。

 

『リスキーエネミー*2』とは人間が勝手につけた名称だ。ベースレベルを上回り、特殊な耐性をしている悪魔の事を指す。

『リスキーエネミー』は非実体化状態の時でも一目で分かる。MAGの濃さが別物だからだ。だから回避自体は通る道を変えれば良いだけなので容易ではある。だが長い間異界で修練をするのであれば事故は起きる。

 

 逸れた参加者が単独で絡まれては無駄なレベルダウン(死亡)が起きてしまいかねないので、こうして始末をつけている訳である。

 

「セイリュウ、ビャッコ、ゲンブ、スザクの四体か」

 

 このリスキーエネミーはレベルが65あたり。火力が高いので削り合いになれば消耗は避けられない。

 

パンデミアブーム状態異常スキル敵全体に風邪のバッドステータスを付与

 

悪化魔法スキル敵全体に万能属性1ダメージ。風邪状態の場合ダメージ量は(現在HP-1)となる。

 

 なので、雑に即死で処理をする。

 コンボによって瀕死になったところを耐性範囲外*3らしいティターニアの『マハガルーラ』を放てば、消耗はMPだけである。

 

 そのMPも『パーティMPリカバリ*4』によって回復できるので実質ノーコスト。らくちんだ。

 

「流石リオさんの所の新人だわ。バカ強え」

 

 その戦いを見ていた引率の人と参加者達は、とんでもないモノを見た、とばかりに目を開いている。今回は風邪がたまたま全員にヒットしただけで、いつもはもう少し泥臭くなるぞー。

 

 

 すると、その参加者の中の1人が淀んだ瞳で己を見ているのを見た。

 装いは軍のソレによく似ている。刀とライフルを持ち、左腕につけたホルダーにスマホを付けている。

 顔にはツギハギのような傷があり、歴戦を思わせる所だ。

 

「む? 何か要件があるのか?」

「……いや、いい。自分の弱さに嫌気が差しているだけだ」

 

 彼は、それだけを言ってツアーの方へと戻っていくのだった。

 

 


 

 規定時間が終わり、ミニバスという中型車両に乗って次の異界へと進む。

 運転士も含めて皆が活発に話して情報を交換していた。ちらほらと聞こえる話しぶりから漂流者がそこそこに混ざっているようだが、皆なんとなくで受け入れている。

 

 あるいは、『それどころじゃない』から細かい事を無視しているだけなのかもしれない。

 

 参加者のレベルは皆20程度なのだから。

 

「野生児くん、大丈夫そう?」

「うむ。リスキーエネミーは少し手強かったが、さしたる消耗は受けていない。問題はないだろうな」

「それは良かった」

 

 その言葉と一緒に棒状のクッキーにチョコレートが付けられたモノ、ポッキーを一つ渡された。甘くて美味しいし、ぽきりと折るのがちょっぴり楽しい。

 

「リスキー連中からはトラフーリボムとかで逃げてMAG切れ霧散を待つのでも良いんだけど、レベル上げ中だとどうしてもね」

「戦闘中に割り込まれでもしたら目も当てられぬからな。一撃で死にかねん」

「ちょい前まではあんなの居なかったから常用してたんだけど、選べるなら避けた方がいいかなぁ……」

「だが、強敵からの生き残り方を学べる絶好の機会でもあるぞ?」

「心が折れなきゃ、それでいいんだけどさ」

 

 そう言う彼は、どこか遠くを見る目をしていた。

 

「仲間に、折れた者が出たのか?」

「仲間じゃなくて、俺自身。強敵とカチ合って何もできなかったトラウマでまともに戦えなくなったことがあるんだよね」

「……そうは見えないが?」

「うん。トラウマを切除して貰ったんだ。物理的に、こう」

 

 手振りで剣を振るう彼。トラウマの切除とはさっぱり想像ができないが、そう誇らしく言うのだから良い技術なのだろう。

 

「だから、身の丈に合わない敵を戦わせるってのはなるべく避けさせたいんだよね。レベル10とかの戦える範囲で格上狩りをしてって、いつか戦う強敵ともそのくらいのレベル差になって欲しいし」

「なるほど」

 

 優しく、使命感の強い男だ。

 呪い避けの為に本名は語らず、『バーガータイム』と名乗っている彼は、強い戦士の瞳をしていた。

 

「それはソレとして、ここにバーガータイムデラックス*5があるんだけど、やってみない?」

「おぉ! ゲームボーイではないか!」

 

 後で聞いた話だが、この男の偽名はちょくちょく変わるらしい。その日に推したいゲームのタイトルの名前を名乗るモノだから、『推しゲーGB』さんが通称になるのだとか。

『推しゲー』さんだと、ファミコンを愛する者達やATARI2600を布教する者達、アルカディアを崇拝する信者達など様々に波及するのでGBを外してはならない。決して。

 


 

 次の異界へと辿り着いた。『山南中学廃校跡地』だ。聖華学園のような教育機関であったが悪魔事件によって廃校になってしまったらしい。近隣にもう一つあった中学に生徒を集中させなんとかなった結果、取り壊しのタイミングを逃したのだとか。

 

 異界の主が安定している為、訓練異界として保持されている学舎である。

 

「先行した見回り組からの連絡だ。侵入者の気配はなし。いけるね」

「うむ! 己は周辺を一回りしてから巡回を始めるぞ」

 

 ミニバスから降りて、悪魔を召喚。ペルセポネー、ティターニア、ファルニールの三体だ。ティターニアは地変、疾風が通るのが強くて使っているが、基礎ステータスをもう少し補正したい所である。そろそろ合体しなければ。

 

 

 学校の外周を歩いていく。

 

 平和な道のりであるが、周囲の野良悪魔の湧きが少ない気がする。リベラマの影響範囲から離れたが故だろうか? とも思うが、どうなのだろう?

 

「……気のせいだな!」

 

 ここで、最近理解した『フラグ』という逆しまの言霊を使ってみる。『やったか』と言えば仕損じて、戦いの後の夢を語れば戦死する。ならば『気のせいだ』と言えば何か見つかるだろう。

 

「……どうしたペルセポネー。何故馬鹿を見るような目をしているのだ?」

「いえ、召喚主が良いのなら、良いのです」

「????」

 

 そのように、警戒しながら歩いていると若干MAGの味が変わっている地点に気付く。

 

 舌触りというか、苦味か? 変化はそのあたりだ。天使系統などの秩序へ傾倒している悪魔が発する味だろう。

 

 どうにも、敵襲らしい。

 

 違和感のある方に進んでいく。一階の階段下の倉庫部分だ。事前情報ではそこには物置の扉がある筈だが、存在しない。

 

 ファフニールの『モータルジハード』をぶちかまして壁を攻撃してみる。

 その一撃は弾かれて、壁は砕けない。

 しかし、偽装を解く程度の効果はあったようで、下方向に広がる空間への扉が新たに現れ出た。

 

「異界の中に異界を作っての待ち伏せか」

「召喚主、気をつけて。何者かが登ってきています」

「罠を仕掛ける時間は足りないか」

 

 コツコツコツコツと複数人が階段を登る音がする。

 スマホで主催者殿に連絡をして、戦闘エリアを確認。

 

 扉は一枚。大きさは普通サイズであり、一度に通れるのは人サイズが2体程度。

 こちら側で待ち構えられるエリアは階段下の踊り場のみ。前衛2体、後衛1人が限界か。

 

 回復援護などは多少離れても可能な為、クイーンメイブをそこに配置。後衛にサキュバスを入れることでリンケージを放てるようにしよう。

 

 残る一枚はファフニール。マカラカーンによって事故を防ぐ目的。

 

 配置を整えて敵の動きを待つ。

 足音は止まることなく近付いてきており、MAGの匂いがどんどん強くなっていく。敵レベルは50以上だろうか? 

 

 ガタンと扉が蹴り開かれる。即時に百麻痺針で拘束して蓋にしようとした所で、敵の悪魔の顔を見る。

 

 ヒト型で、その姿はどこか己自身を思わせる。

 

 要注意悪魔の一体。怪異ドッペルゲンガーが、そこにいた。

 

「チィッ! 『バインドボイス!*6』」

 

 銃撃を放とうとしていた身体の動きを気合いで押さえ込み、口だけで放てるバインドボイスにて階段の連中全体に緊縛をかけようとする。しかし通りが悪い。奥側の何体かは止まったようだが、前2体はフリーだ。仕損じた。

 

 緊縛属性の通りが思いの外悪いことを確認、外道ドッペルゲンガーは緊縛が150の弱点だった覚えがある。敵の耐性は覚えていたデータのモノではない。別種だ。

 

「サキュバス」

「はーい……リンケージ!」

プリンパ→ンダ系スキル

リンケージ L-テンタラフー

 神経属性の全体攻撃。プリンパをンダ系で共鳴させて放ったこの混乱波動は敵の神経をかき乱し、大きなダメージと混乱を与える。

 

 敵ドッペルゲンガーにダメージは等倍。ダメージ量は半分には足りていない。

 そして先頭2体は混乱の状態異常も受けなかった。無効にされた感覚はないので、純粋に運の下振れだろう。

 

「『マカラカーン*7』ダ!」

「頑張ってサマナー」

 

 ファフニールが補助をかけ、手番をサキュバスに回したクイーンメイブは声援を送ってくる。敵の動き方次第で、ドア前で踏ん張るかどうかを決める感じで良いだろう。

 

メギドラ魔法スキル敵全体に万能属性中ダメージを与える

メギドラ魔法スキル敵全体に万能属性中ダメージを与える

 

 前2体がノータイムで万能を放ってくる。ダメージは中程度、3発目を耐えられるかは微妙だ。

 

 そして、ドアを潜れていないドッペルゲンガーの動きが見える。『コンセントレイト』だ。それが、2体。

 

 扉を離れて逃げるにしても、メギドラの範囲なら背中を撃たれて殺されるッ! 

 

 そして、階段下にはまだまだ多くのドッペルゲンガーがいた。見た目に覚えがある事から、この異界に踏み込んだ人間の姿を使っているらしい。耐性が違うのかは不明。

 

 そして背後から放たれた『メディラマ』。テンタラフーのダメージは回復された。発動者はドッペルゲンガーではない。天使ドミニオンだ。

 

 ここで、敵の総数をようやく確認できた。

怪異 LV55

ドッペルゲンガー

怪異 LV55

ドッペルゲンガー

怪異 LV55

ドッペルゲンガー

怪異 LV55

ドッペルゲンガー

怪異 LV55

ドッペルゲンガー

怪異 LV55

ドッペルゲンガー

天使 ドミニオン LV50

 

 

 ドッペルゲンガーが6体とドミニオンが一体の7体編成。ドッペルゲンガーのうち一体が混乱、一体が緊縛と混乱両方。

 ドミニオンはレベル50と1番低いが指揮官のようで、レベル55のドッペルゲンガーに指示を出している。奴を始末できれば残りの悪魔は烏合の衆と化すだろう。物理反射と名高いドッペルゲンガーの壁を越えて暗殺できれば、だが。

 

 次のターンを渡せば殺される。メギドラ連打という雑だが確かな強さの戦法で。

 

「だが、無敵ではない!」

 

 目的を明確に。敵の強化メギドラを受けないことが主目的。2.5倍*8のダメージなら一撃で致命傷だ。

 その為には扉の前でもたついている今の状況をフルに利用するべき。

 

「クイーンメイブ!」

「了解。任せたわよ新入り」

「任されたぞ! 存分に我を頼るが良いサマナー!」

 

 クイーンメイブが『チェンジ』をして、ストックの中の『鬼神コウモクテン』と交代する。ナサ殿の所で作ったショウキを精霊合体でレベルアップさせたモノだ。

 

 地母神ペレ(LV7)と地母神ズェラロンズ(LV19)を素体情報だけで組み合わせたノームを二度素材にすることでマッカを抑えたコストカットモデル。ストックの空きが多い今だから使える手である。

 

 体力の高い火炎魔法、物理の両刀型。

()()()()()を実践レベルで使えるように鍛え上げた仲魔だ。

 

「カァアアアアア!」

 

 それこそが、『威圧の構え』

 

威圧の構え特殊スキル自身を対象に発動

敵ターン開始時に敵プレスターンを一つ減少させる効果を付与する

 

 敵の動き出しへの対応に全力を尽くす事で、敵の動き一手分ほどを削る変わったスキル。機械的な動きをする悪魔ほどハマりやすく、カウンターで発動するデカジャなどをスキップして行動を起こす事があったりする。

 

 今回は、シンプルに一手分削る為に使う。

 

 続いて己が『バインドボイス』を放つ。3体にヒット、コンセントレイトをかけた連中は固まった。動くのは前衛の一体と、前のターンで緊縛を喰らっていた奴らの自動回復があるかどうか。

 

 しかしそれも、前衛である2体が壁になっているので可能な事はコンセントレイトしかないだろう。

 

 ノーチャージのメギドラ1発なら、耐えられる。

 

 そして、サキュバスが『チェンジ』、クイーンメイブのメディアラハンで全体を回復。

 最後にファフニールが『チェンジ』してペルセポネーの『パンデミアブーム』

 

 密集していたことにより風邪の感染は拡大し、敵全体にヒットした。

 

「勝った!」

 

 敵の行動が始まる。まず、3体が緊縛で停止、最初のターンで被弾していた奴らは共に緊縛から自然治癒したが、混乱を受けていた片方がドミニオンのほうに倒れ込む。その結果、ドミニオンより前衛のドッペルゲンガーの手番が優先された。

 

「きさ、ま!」

「遅い!」

 

 そして、ドミニオンの動く一手は敵全体がコウモクテンに睨まれていた事で動けない。

 

 こちらのターンだ。

 

悪化魔法スキル敵全体に万能属性1ダメージ。風邪状態の場合ダメージ量は(現在HP-1)となる。

 

 万能属性の一撃により敵体内の風邪ウィルスが暴走、致命傷一歩手前のダメージを内部から受ける。そして己がトドメの為に『メギドストーン』を放る。

 

 その外部からの最後の一撃によって敵の身体は限界に陥り、消滅することとなった。

 

 

 あまりの事に耐性チェックなどカケラもできないまま万能だけで殺してしまった。

 これが開けた場所に出ていたらもう恐ろしいとかいうレベルではない。70レベルくらいの魔法型なら1ターンで塵になるぞ。

 

「……これ、他の皆は無事であろうか?」

 

 ひとまず奥に踏み込むのをやめ、その辺りに転がっていた素材を使ってバリケードを作成。

 

 メギドラの射角に入らないようにコウモクテンを待機させ、スタッフの皆と連絡を取る。

 

 すると、そちらの方でもメシア教徒との戦闘が起こっていた。

 プレートバンダナや各種の無効耐性などを持った集団が変わる変わるカバーし合う戦法で、ダメージこそないが崩せないでいるらしい。

 

「さっきの連中に背後を襲わせるための時間稼ぎではないか?」

「本命が出オチしてるとか笑うんだけど」

 

 皆は無事なそうなのでこのまま階段下に侵入。異界の主であったドミニオン(LV60)は先ほどのドッペルゲンガー部隊を解き放つのに力の大部分を消費したようで、普通にムドオン連打で倒すことができてしまった。

 

 楽で良かったが、上がり辛くなってきたレベルのためにもう少し魂を削るような死闘をしたくも思う、複雑な男心だ。

 

 

 その後も皆のレベリングをサポートし、ちょいちょいリスキーエネミーとの戦闘があったりした結果、己のレベルは63へと上昇した。

 

 まさか未来の戦士のレベル上げサポート、今の戦士との伝手の確保の二つに加えて自分自身の強化もできてしまった。

 

「この場合は、一挙両得ではないな。一挙三方得? どうなのだ?」

「一石三鳥ではありませんか? 召喚主様」

「なるほど!」

 

 今日の結果は、一石三鳥の大戦果だったというわけだろう。うん。

 


 

 

【襲撃されたが】レベリングツアーお疲れ様でした!!【出オチだった】

1:名無しさん@レベル上げ中

 お疲れ様でしたー! 

 

3:名無しさん@レベル上げ中

 お疲れ様でした! レベルが30台に乗ったぞ! ありがとうメシア教! 

 

4:名無しさん@レベル上げ中

 乙でしたー。いやー、メシアンは強敵でしたね。

 

7:名無しさん@レベル上げ中

 キリギリスに恨みのある所の残党だったみたいね。だから新規さんのレベリングツアー狙った嫌がらせしたかったんだとか

 

8:名無しさん@レベル上げ中

 恨みのあるメシアン系組織……どれだ? 

 

10:名無しさん@レベル上げ中

 あれじゃね? 改造人間作ってた所

 

13:名無しさん@レベル上げ中

 全然絞れてない件

 

14:名無しさん@レベル上げ中

 ようやくレベルが30台に上がったので前線の支援要員やります! 裏方にも意地があるんだよ! 

 

18:名無しさん@レベル上げ中

 30なら無理すんな。ワンパンされんぞ。

 

22:名無しさん@レベル上げ中

 いや、俺『黒子の歩法*9』習得してるからあんまり狙われないんよ。それに1発くらいならガードしてれば耐えられるし

 

24:名無しさん@レベル上げ中

 さてはコイツ、修羅勢のお溢れてレベル上げようとしてるな? 

 

26:名無しさん@レベル上げ中

 せやで

 

29:名無しさん@レベル上げ中

 >>26 即肯定で草。

 

30:名無しさん@レベル上げ中

 正直クソ助かるよね。アイテム補給してくれたり一般人の避難任せられたりとかできるし。

 

34:名無しさん@レベル上げ中

 ぶっちゃけ戦闘に集中しててよく分かってなかったんだけど、メシアン共何しようとしてたの? LV60ちょいのソロネ(十分ヤバい)だけで倒せるって思われてたん? 

 

35:名無しさん@レベル上げ中

 エスコートしてくれたレゲー同好会居なかったら普通に全滅してた件

 

36:名無しさん@レベル上げ中

 それな

 

38:名無しさん@レベル上げ中

 それはそれよ。Switchでバーガータイム触ってみようと思う程度には恩ができたけども

 

41:名無しさん@レベル上げ中

 あれ、メギドラぶっ放せるLV55のドッペルゲンガー(コンセ持ち)に背後から襲わせる予定だったらしいよ。巡回行ってた助っ人くんがドッペルゲンガー6体とドミニオンを仕留めたとか。

 

45:名無しさん@レベル上げ中

 メギドラ持ち6体とか怖。コンセメギドラ6連発とか誰だって死ぬわ。万能反射のテトラカーンを下さい

 

49:名無しさん@レベル上げ中

 万能だろうが無効化できるバルーンシールド*10なんてのもある(らしい)ぞ! 

 

52:名無しさん@レベル上げ中

 どっちもなかったので気合いで殺しました(本人談)

 

56:名無しさん@レベル上げ中

 やっぱ姫さんの所は違うわ。

 

60:名無しさん@レベル上げ中

 自分の子供より若い子に守られて、助けに向かうことすらできなかった。弱さは罪だなぁ……

 

61:名無しさん@レベル上げ中

 弱いのを罪だって言ってる奴はただ性根がクソなだけだゾ。

 

63:名無しさん@レベル上げ中

 弱いのに無策で最前線行ってバカをやるなら罪になるかもだけど、それってバカやった事の方が罪だよな。

 

66:名無しさん@レベル上げ中

 んだんだ。弱いのは罪ではなかよ。弱いと死ぬだけだべ。

 

69:名無しさん@レベル上げ中

 そういやあの子ツアーの引率でレベル上がったらしいぜ。才能が段違いすぎる。

 

72:名無しさん@レベル上げ中

 良い子なんだけど、メンタルがイカれた修羅だからたまにドン引く。いや、ゲームしてるトコとか年相応に笑ってたけどさ

 

75:名無しさん@レベル上げ中

 リスキーエネミーの対処をしろと言ったけど、リスキーエネミーを皆殺しにしろとは言ってないんだよなあ……

 

79:名無しさん@レベル上げ中

 皆、リスキーエネミーはちょっかいかけてからトラフーリで逃げるとMAG切れで霧散するぞ! 戦闘モードになった事でエネルギーの大部分を使うからだ! 

 

82:名無しさん@レベル上げ中

 そうなのか! (皆殺しレベリング)

 

85:名無しさん@レベル上げ中

 そういやリスキーって相対者のレベルによって実体化パターン変わる*11とかあったよね。そのせいで前に逃げた相手にリベンジできないとか。

 

88:名無しさん@レベル上げ中

 そもそも逃げるから知らないです

 

92:名無しさん@レベル上げ中

 リスキーエネミー出る異界自体が少ないし、リスキーエネミーが出るかも運だしなー。

 

95:名無しさん@レベル上げ中

『金剛皿うどん』を食った日はリスキーと会いやすくなるゾ! 

 

99:名無しさん@レベル上げ中

 なにその迷信

 

101:名無しさん@レベル上げ中

 いや、統計取った。まだ回数少ないから具体的に何パー上昇か? とかは書けないけど、上昇はしてる。

 

105:名無しさん@レベル上げ中

 なんか寿司屋でえんがわ頼んだ日は魔法威力が伸びやすいとかのに似てる。

 

107:名無しさん@レベル上げ中

 もっと良いもん食え。中トロ美味いぞ。

 

110:名無しさん@レベル上げ中

 鯖の押し寿司にガリをたくさん挟むのだ

 

111:名無しさん@レベル上げ中

 >>110 貴様、寿司ガキを読んだなッ! 

 

113:名無しさん@レベル上げ中

 >>111 ちょっと共通点見つけたら食いついて来るなんて♡発想が貧困♡

 

114:名無しさん@レベル上げ中

 読んでんじゃねぇか

 

117:名無しさん@レベル上げ中

 む? 寿司ガキとは漫画なのだな。

 

118:名無しさん@レベル上げ中

 せやで。ネットで無料で読めるで。全三話は短過ぎるけども。

 

120:名無しさん@レベル上げ中

 日常系漫画特有の永遠に続きが読みたい症候群

 

121:名無しさん@レベル上げ中

 そういや話戻るけど、レベリングツアーでスカウト来た人とか居らん? 

 

122:名無しさん@レベル上げ中

 なにそれ知らん

 

124:名無しさん@レベル上げ中

 知り合いが前線のチームに誘われたらしいのよ。嘘松かと思ったけど実際にレゲー同好会に誘われてる人見かけたから

 

125:名無しさん@レベル上げ中

 それ普通にレトロゲームマニアだから話弾んだだけでは? 

 

128:名無しさん@レベル上げ中

 その知り合いって何が出来るん? 慈愛の祈りとか? 

 

130:名無しさん@レベル上げ中

 会計ができる

 

134:名無しさん@レベル上げ中

 はい採用。ウチのチームに来て経営手伝ってー。レベル上げ手伝ってあげるから。

 

136:名無しさん@レベル上げ中

 は? 会計さんはウチのチームメイトになるんだからナマ言ってんじゃねぇよダボが

 

138:名無しさん@レベル上げ中

 実力がカケラも評価されてなくて草

 

139:名無しさん@レベル上げ中

 だが待ってほしい。悪魔も確定申告も倒せるとなると、バスターとしては2倍凄いのでは? 

 

141:名無しさん@レベル上げ中

 確定申告で2倍とか草生えるわ

 

 

 レベル80でも確定申告に勝てなくて追徴課税喰らった俺からは、100倍に見えるよ

 

145:名無しさん@レベル上げ中

 他人の悲鳴は心地がいいなぁ! みんなで一緒に地獄に落ちてる感じがするよ! 

 

148:名無しさん@レベル上げ中

 >>145 お前も落ちてる側かよ

 >>141 金はあるんだから税理士に頼め。適材適所だ

 

149:名無しさん@レベル上げ中

 レベリングツアーの話からめちゃ飛んでて草

 

153:名無しさん@レベル上げ中

 そういや、なんでツアーなん? 

 同じ異界でマラソンしてれば良くない? 

  

154:名無しさん@レベル上げ中

 魔界と繋がっていても吸い上げられるMAGの量は決まってるから、スローターし過ぎると異界が干上がるねん。

 訓練用異界としてやってるんだから、枯らしたくはないやんか。

 

158:名無しさん@レベル上げ中

 なるほど、サンガツ

 

161:名無しさん@レベル上げ中

 だけど、確かに面倒ではあるよな。

 

165:名無しさん@レベル上げ中

 魔界に行けば面倒な事はなくなるよ! MAGを吸い上げる必要なんかないからね! 

 

169:名無しさん@レベル上げ中

 死ぬわ

 

173:名無しさん@レベル上げ中

 死ぬわな

 

176:名無しさん@レベル上げ中

 新作のアニメと漫画とゲームと同人を送ってくれるなら魔界に行ってもいいんだけどなー流石になー

 

180:名無しさん@レベル上げ中

 強欲かよ

 

 

 


 

 

帰り道。掲示板や漫画を見ながら電車に乗り、地元へと帰還しているときだった。

窓の外の風景に、見覚えがない。

まさか何かの罠にかけられたか!?と周囲を見る。敵はなく、周囲には早朝の眠気を抑えられていない者たちばかり。

 

「……どういう、ことだ!?」

『どうやら、乗る電車を間違えてしまったようですね。逆方向です』

 

そのペルセポネーの言葉を聞き、己は本日学校に遅刻することを確信したのだった。

 


 

あとがき

 

ジエンくん

現代に慣れたと思ったら、ダンジョン系の駅によって煮え湯を飲まされることになった。電車内で集中しすぎてはならないという教訓である。

 

バーガータイム(仮)

レトロゲーム同好会で幹事をやりがちな男。オンライン会議するまではジエンくんに懐疑的だったが、話してみたらいい方向にやばい奴だったので気に入った。

今回持ってきたゲームボーイはゲームボーイポケット(緑色)中古で買ったときから子供の貼ったシールの跡が残っており、コレクション用途には使えない。

そのようにして積極的に外出先に持ち出された結果、実は彼のゲーム機の中でトップの稼働時間を過ごしている。

また、高レベル異能者のMAGをその身で受け続けた結果、電池がなくてもたまに起動するようになった。

 

ツギハギの顔の人

元自衛隊のドリフター。子供が戦場に立つことを良くないと思える大人。

使命感のある一般自衛隊員だったが、才能のある子供を最前線に送る上層部に負け左遷。子供たちの代わりに戦おうにも1/3の戦果も出せずにいた

そうして元の世界で子供たちが戦い死んでいくサマを見ていたものだから、戦わないで安全な場所にいて欲しいと願っている。

なのでJCビルを見たら泡吹いて倒れる。

ジエンくんが他の少年兵たちと違ってイキイキと戦っていることに違和感を覚えている。

 

リオさん

ジエンくんが『これから帰る』と連絡してきた時に口を酸っぱく何番線の何処行きの電車かを確認するべきだったと後悔した。

まだまだママ力が足りていない。

 

 

*1
ファミコンと同年に発売されたバンダイのゲーム機『アルカディア』比較するとファミコンの化け物っぷりがよく分かる

*2
ソウルハッカーズ2より。自身の少し上のレベルの強敵が現れる特殊な黒いシンボル。

*3
ソウルハッカーズ2の耐性は物理、銃撃、火炎、氷結、電撃、衝撃、魔力の7つ。疾風属性はない

*4
ハンターアプリ 歩くごとにパーティ全体のMPを回復

*5
ゲームボーイソフト。アーケードから始まっているバーガータイムの移植版。Nintendo Switch Onlineのゲームボーイで遊ぶ事ができる

*6
敵全体に緊縛属性を付与

*7
真1 1ターンの間、敵の魔法攻撃を反射する障壁を張る

*8
ソウルハッカーズ2でのコンセントレイトの倍率。真Vだと1.5倍、真4だと2.5倍である

*9
自動効果スキル 敵に狙われにくくなる

*10
あらゆる攻撃を1度だけ防ぐ 真・女神転生2

*11
ソウルハッカーズ2においてリスキーエネミーはレベル10刻みで更新されていく



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ある日の修行、ある日の銭湯のコト

 学校から帰ると、リオが机に突っ伏して口から魂を露出させていた。漫画の表現のソレでなく実際にMAGが漏れ出している。おそらく幽体離脱という奴だろう。

 

「杏奈、リオはどうしたのだ?」

「試験用の武装COMP握りつぶした修理費で依頼料吹き飛んだんだって。そのせいで新しいゲームを買えなくて、死んでる」

「なんと」

 

 リオの口からは「ばとるおぺれーしょん、せっと、いん*1……」と喚いている。よっぽど堪えているようだ。

 

「リオよ、己が建て替えようか? ゲーム一つ程度なら問題はないぞ」

 

 そう口にすると、リオは言う。

 

『ゲームの購入は、私が汗水流してやった金じゃないと敬意に、失する……ッ!』

 

 話すのは突っ伏している肉体からでなく、霊体の口から。器用な事をするものだ。

 まぁ、その口調や話し方からして未練タラタラであり、なにか一押しがあれば普通に転がりそうな雰囲気はある。

 

 杏奈を見ると、放置を決め込んでいた。面倒臭いと思ったのだろうか? 

 事務員さんを見る。他人の不幸を見てとても朗らかな顔をしていた。

 黒服をやってるタナカとサトーは目で『関わりたくねぇですよ! 罷り間違ったら嫌な絡まれ方するんですから!』と必死で訴えてくる。

 リオの信頼のされ方がよく分かる。有事には頼りになるからこそ、普段の雑さが際立ってしまうのだろう。

 

「ならば、依頼という形ではどうだ? 己に技を教えて欲しいのだ」

 

 その言葉を言うと、魂が肉体に戻ってむくりと顔が上がる。一瞬でシャンとなった。

 

「いや、報酬関係なくやるからねそれくらい。ジエン君は少し私達と距離を空けすぎてない?」

「……ならば贈答品になるな! 訓練を手伝ってくれるのならば、ゲームを己が贈ろう」

「いやだから」

「なので、金が溜まったのなら己にそのゲームを贈ってくれ。リオがそこまで望むゲームというのには興味があるのだ」

 

 そう言うと、リオは頭を悩ませる。

 皆からは『あ、布教活動にかこつけられた』と感心したような目で見てきた。割と話しながら雑に考えた策であるが、割と教えたがりであるリオならばコレは効くだろう。

 

「……分かった。訓練スペース行こっか」

「うむ!」

「で、ジエン君は何を習得したいの?」

「と、そうだった。学校の食堂で話をした先輩からの話なのだが……」

 

 と、掻い摘んで言葉を重ねる。

 

 習得したいスキルというのは、物理スキル。

 

 それも、『力』よりも『技』により強い補正を受けるスキル達*2だ。いくらかの素人検証の結果、同じスキルを持つ悪魔の方が力が高いのにスキルの威力が先輩の方が高かったそうなのだ。

 

 その理由として、スキルを振った時の技量が理由なのではないか? という結論に至ったらしい。

 

 強いところでは『奥義一閃*3』という物理系スキルがコレに当てはまるとシロエwikiで見かけた。他にもちらほら『技』での物理スキルがあると情報を得られたのだった。

 

「おけおけ。それで、欲しいスキルの目星とかある? 私割となんでも扱えるけど」

「単体物理で、できるならデバフ効果などが欲しくはある。だが、そもそも習得できるかどうかが不明なので、スキルの強度については考えていない」

「んー、じゃあ『牙折り*4』あたりかな? 簡単な方だし」

「おお! 攻撃弱体効果であるな! 好きなスキルだぞ」

 

 そう言って、事務所に作っている訓練用異界へと進んでいく。

 

 リオが突っ伏していたことから分かっていたが、仕事はひと段落させていたようだった。リオは割と真面目であるから、大きく休む前には粗方の面倒ごとを片付けていく性質がある。

 素直に見習いたいものだ。

 

「じゃ、始めるよー」

「うむ!」

「じゃあ『技量物理』の牙折りなんだけど、まぁ見てみて」

 

 リオが柱状の訓練用のターゲットにスキルを放つ。とても綺麗に放たれた一撃だった。踏み込みからの力の乗せ方が流れるようで、大した力が入っていないのにすんなりと急所に当たっているように見えた。

 

「『牙折り』の基本は普通の物理攻撃だよ。今のは技量物理スキルの打ち方。コレだとまだ弱体効果は発生しないけどね」

「ふむ……」

「弱体のさせかたは体に叩き込むから、とりあえず基本の撃ち方からね」

 

 とりあえず、やってみる。

 

 技量物理スキルは通常攻撃と異なり腕力にモノを言わせるような事をしない。敵からの妨害があると技が乱れて撃ち方が難しくなりそうだが今は訓練、基礎訓練だ。戦闘中の応用は基本ができてからでいい。

 

 見取った通りに踏み込んで、力の流れを意識し、たんっと一撃を叩き込む。

 

「お、意外とできてる」

「そうなのか?」

「そうそう。もっと力抜くくらいの方が良いかな? 力を入れるのはインパクトの一瞬だけ。それまでは脱力して柔らかく体を使う感じで」

「……一瞬だけ、力を入れる感じ」

 

 再びターゲットを捉える。

 

 踏み込みからの動きを柔らかく、力を抜いた一撃で、インパクトの瞬間に力を込める。

 リオの力の入れ方は、MAGで活性化させるような感覚だった。

 

 すると、ぱしん、としっくりくる音がきた。

 この感じだろうか? 

 

「うわっ、才能の暴力だ」

「この感じなのか」

「そうそう。それじゃあそれをとりあえず一回200本の5セットで。体に覚え込ませるよー」

「心得た!」

 

 ぱしん、ぱしんと一発一発を丁寧に。

 

 すると、次第にヒットした時の音が小さくなっていく。リオに尋ねるも、今は訓練中だと目で言われていく。

 

 ぱしん、ぱしん、ぱしんと重ねていく。

 すると、腕でなく体全体、もっと言えばMAGの方が疲労してきた。肉体の方のダメージは少ない。

 

 198、199! 

 

「にひゃ、くぅ!」

「あと50!」

「ヨシ!」

 

 ヨシと反射で言ったが、全然ヨシではない。MAG疲労が辛く、息が乱れてくる。酸欠になっていく感覚だ。

 

 無駄が多いのだと仮定。同パフォーマンスの中で魔力を小さく刻んでいく。

 

 最小量の割り出しだ。

 幸いにもMAGが辛いが脳に酸素は回っているので思考に澱みはない。撃った結果から必要量を刻んでいけ。

 

「お」

 

 リオが驚嘆の声を出してくる。刻み始めてから十八回ほど、これ以上少なくすると技の完成度が犠牲になると思考は判断した。

 

 ここを、最小量と仮定する。

 

 あとは、呼吸を意識してMAG生成を活性化する。これで回数は問題な「そこ」

 

「ガァッ⁉︎」

「回数こなすことに思考を取られすぎ、打ち込むときに悠長に呼吸なんてしたら気取られるよ」

 

 リオの放った技が己の肩に当たり、ダメージを引き起こす。放たれたのは、牙折りだ。

 

 ヒットの瞬間に敵の(武器)を折るという意思を叩き込むことで、弱体効果を発生させる技だ。

 

 綺麗に放たれたその一撃の軌跡は目の中に残っていき、一つの見本になっていく。

 

『意』を、『情報』を叩き込むこと。それがデバフ物理の感覚だったようだ。今まで沢山喰らってきたが、初めて理解できた。物理スキルの基礎しかやっていないというのに不思議なことだ。

 

 おそらく、リオはわざと隠さず見せているのだろう。実戦での撃ち方とは明確に違ったものだ。正面でこんな素直な意の込め方をされたら呼吸を読んで普通に回避、反撃に移れるのだから。

 

「じゃあ最初から、一回一回に全力で、数打ち込む事が目的じゃないよ」

「ここ、ろえたぁ!」

 

 それから、リオの見せた『牙折り』の撃ち方を模倣して、情報の撃ち込み方を意識して、訓練用ターゲットを攻撃していく。

 

 それが、158回続いた時だった。

 

 バキっと聞き慣れない音がする。

 折れたのはターゲットの根本、積み重ねたダメージが内部に積み重なっていたらしい。

 

「はい休憩5分後再開だよ」

「ハァ、ハァ……了解、した」

 

 呼吸に集中してMAGの回復を試みる。その間リオは折れたターゲットを交換していく。マットに包まれている柱のようなモノであるそれは、内部の芯が鉄筋コンクリートでできていたらしい。

 

 アレを折れたのか……と少し誇らしい気持ちになってくる。

 

 リオが備え付けの機械から柱を取り出して、力尽くで柱を変え、マットを柱に巻いていく。あのマットは見覚えがある。初日に己が眠るときに使ったやつだった。

 

 そんなどうでも良い事を考えながら呼吸を整えていくと、「時間だよ」とリオが言う。

 

 さぁ、頑張るとしよう! 

 


 

 ジエン君の鍛錬を見る。

 

 私が牙折りを叩き込んだのは一回だけ。手本は見せたけれど、あくまで私の手本。ジエン君の撃ち方じゃない。体の構造が人それぞれ違うように、スキルの撃ち方は人それぞれ違うのだから。

 

 だから、習得、習熟までには数日はかかるモノとして見ていた。ジエン君の天才性ならコレくらいだろうと。

 

「158ッ!」

 

 甘く見ていた。ジエン君を。

 この子の戦っていた環境は相当に真っ当じゃない。社会が崩壊して、師匠と呼べる人に長期間教わっていた訳でもなく、悪魔からの囁き(ウィスパー)と先人のテキストデータのみで修行をしてきたのだろう。

 

 それで、あのレベルの銃撃スキルを撃ちまくっていた事を、甘く見ていた。あれほどの召喚術を、戦闘時の呼吸の読み方、崩し方を会得していた事実を、軽んじていた。

 

 天才とは、こういう事なのだろう。

 

 ジエン君の牙折りは、58回目の時点で実戦に耐え得るレベルにまで高まっていた。それから一発ごとに最適化されていって、消費MP量の最小化までやってのけていた。

 

 そして、明らかに『技量物理』そのものに対して完璧に理解をしていた。

 

 技量物理は、スキルの型通りに力を込めて使う普通の物理とは大分違う。力の込め方が問題ではなく、MPで身体能力を活性化するのにそれのパフォーマンスを一瞬の一瞬にしか使わないという意味で。

 

 コツを掴めなければ10年経っても何も身に付かない特殊な撃ち方だ。なんならアカシャアーツなどの特大威力スキルがないから先行きも明るくないので積極的に身につけようとは思われない方式でもある。

 

「コレは……想像以上だよ」

 

 だが、相当に高められた『技』から放たれた技であれば、十分に一戦級の威力へと変貌する。

 

 今回の柱が折れたのは、174回目。

 もう、柱をサンドバッグにしたものでは意味をなさないだろう。

 

「ジエン君、柱が勿体無いからスパーリングに切り替えるよー。実戦での立ち回りも含めてやってこう」

「なんと! ……ヨシ! 近接バスターであるその胸を借りさせてもらおう!」

 

 

 それからのスパーリングにて、私は30分間で四発の直撃を貰う事になった。

 これは、将来が楽しみだ。きっと強くなる。

 

 

 けれどそうして思う修羅の心とは別に、泣き言ひとつ言わなかったジエン君の心の頑丈さが不審に思えてくる。洗脳されたような弱い精神強度ではないけれど、年齢に対して明らかに成熟しすぎている戦士の心に。

 


 

 訓練がひと段落した事で、せっかくなので気持ちよく汗を流そうと銭湯『草津温泉風湯布院』へと向かう。

 

 番頭の司殿に挨拶し、バスター用のMAG認証式ロッカーに装備を入れていく。

 

 そうして液体石鹸『ボディソープ』やら洗髪用石鹸『シャンプー』やらを使って身体を清める、初日に入った風呂では固体石鹸しか分からなかった事が非常に勿体なかったという思う訳である。気持ちが良い。

 

「おや?」

「む……少年か」

 

 湯船に入ると、ツギハギ顔の戦士がいた。

 レベルのほどは30周辺に上昇している。先日レベリングツアーで見かけた男性だった。

 

「失礼する」

「……ああ」

 

 隣に入り、ゆったりと体を休める。湯の温かさが訓練で疲れた身体をほぐしてくれる気がして、とても心地が良い。

 

 そんなとき、ツギハギ殿が声をかけてきた。

 

「少年……その習慣は、いつから?」

「習慣?」

「常に反撃できるように構えているソレだ。湯船の中でも殺し合いに心が残っている」

「むぅ、いつからだろうか? 気が付けば癖になっていた。しかし、湯浴みの場でコレはいささか礼に欠けたな」

「構わん。俺も大差はない」

 

 そう言うツギハギ殿は、掴みから湯船に押し込んで窒息させる動きを想定しているようだ。体重に負け、力は互角程度ならばレベル差関係なく組みつきからの近接戦闘の結果は己が不利だろう。

 

「しかし、何故そのような事を?」

「まぁ、知人たちと君を重ねているだけだ。戦場に心を囚われて、死地に進んで落ちていく様に思えてな」

「む、だいたい当てはまるか」

「自覚しているのか?」

「無論だ。己は戦狂いのイカレであるとはよく言われたし、己自身もそうである事を望んでいた節もある。……今は少し、違うかもしれんがな」

 

 この世界に落ちてリオに連れられてからか、あるいは他のきっかけがあったからか定かではない。ただ、戦い殺すだけの自分では不足しているような気がしている。

 

 それがハンターとして、戦士としての己の生き方を変えるものではないけれど、しかし何も考えないでそこに止まり続けて良い訳がないとは理解できているのだ。頭では、だが。

 

「……ならば、明日のことを考えると良い」

「明日の事か」

「そうだ。遠くの未来でなく、戦いの現在ではなく、明日を。明日は美味いモノを食べようだとか、アニメを見よう、ゲームをしよう、そんな雑多な希望が丁度いい」

 

 その言葉には優しさがある。己が死戦から逃れる気が無いことを理解していて、しかしその死戦を潜り抜けた先のことを考えるように、と。

 

「確かに、明日に美味いラーメンを食べる予定があったならば、死ねないな」

「そうだな」

「もっとも! 己は死ぬ気はないぞ。重ねた者と己は違う。生き残り次の戦いにも赴く事も己の課せられた勤めなのだからな!」

「それは、誰かに押し付けられた事か?」

「違うとも。己の心が、護り戦いたいと願っているのだ。人の命を、皆の未来を良いモノだと信じているのだ。故に、己は生きていて楽しいぞ!」

 

「……そう、か」

 

 それきり、会話は途切れた。しかしツギハギ殿の顔色は良くなり、瞳も柔らかい色に変わっている。

 

 温泉でゆっくりしたが故だろう。さすがナサ殿のところの温泉だ。

 

「……俺はサウナに行く、どうする?」

「さう、な?」

「知らんのか? あちらの部屋でやってる蒸し風呂だ。身体から悪いものが流れ出ていく感覚が心地が良いぞ。心身が整う」

「なんと! それは面白そうだ!」

 

 その日、己はツギハギ殿にサウナの作法を教わった。

 

 サウナそのものには長く入れはしなかったが、しかし身体の悪いものが流れ出る感覚というのは面白く、心地が良い。熱った体を水風呂で冷やすというのもなかなか面白い感覚だった。

 

 次からは、折を見て入っていこう思う次第である。

 


 

 その後ツギハギ殿(本当にそう名乗っていた)と話し、スキルの話になった。するとツギハギ殿はなんと『技量物理』の使い手であるようだった。

 

「なんと驚きだ」

「俺は悪魔からの囁き(ウィスパー)もなしに1日でスキルを習得できたという方が驚きだな。この世界の人間は末恐ろしい……」

「む? その口ぶり、まさか?」

「……知っていたか、俺もドリフという奴になる。……未だに自分がドリフターズというのは、慣れんな」

「ふむ?」

 

 なにやらドリフターズという言葉に違和感があるらしい。己は素直に受け入れられたのだが……

 

「昔のテレビスターにザ・ドリフターズという者たちがいてな。音楽もギャグコントも良いもので、昔に憧れていた」

「あぁ、8時だよ全員集合! というヤツだったな! 己はまだ見ていないが、とても良いモノだと掲示板にて拝見した」

「機会があれば見てみると良い。いささか古いが、面白さは色あせない」

 

「おや、懐かしい話をしているじゃないか」

 

 そうして絡んできたのは番頭の仕事を引き継いで自由になった司殿。その目からは『ドリフを語りたい』という欲望が駄々洩れだった。

 なんだかここにいると面倒な話題に巻き込まれそうなので退散する。

 ちょうどマッサージチェアが開いているのでゆっくりさせて貰おう。

 

「あぁぁあ! マッサージチェア取られてるぅ!」

なにごとかぁ~?」

「超気持ちよさそう!? やっぱめっちゃ良い奴じゃんここの!」

とても良いぞー夢心地だぁ~

「後……3分! わかった、次貰うからね私が! 他の人に譲らないで! 何なら私に声かけてね!」

心得た~

 

 非情に愉快な様子のデビバスも含めて、だんだんと銭湯がにぎやかになってきた。

 みな最低限の武装をして、各自の入浴セットなどを持っている。

 なんというか、愉快な場所になってきたぞ。

 

「危険物はちゃんとロッカーに入れるっすよー。あと戦闘は厳禁っすからね」

「分かってまーす」

 

 そんな中には見知った顔もちらほらと。先日のレベリングツアーの参加者だった者たちが多い。

 

 恐らく参加者の中に宣伝をした人がいたのだろう。マイクロバブルシャワーの魅力に取りつかれた亡者もいるのだろう。

 

「……もう終わってしまっのか」

 

 もう一回起動したい欲望がありつつも、先ほど声をかけてきた女性に場所を譲ろうとする。

 するとそこにはNintendo Switchで何かのゲームを見せびらかしている女性と、それを睨みつけているリオがいた。

 

「マッサージチェア終わったぞー」

「ありがとー少年、今度イイことでもしてあげようか?」

「遠慮するぞ。その手のイイことの後にはロクな目にあわないと聞いている。一時の快楽が欲しいのだったならば漫画やゲームで事足りるしな」

「残念、君を立派なRTA戦士にしてあげようと思ったのに」

「……以外に心が惹かれる話であったぞ」

 

 そんな緩さがある奇妙な場所になっているこの銭湯。これは確かに、一般客が入りづらそうである。まぁ武装用ロッカーの使用には微量のMAGが必要であり、現在MAG価格が高騰中なので儲けにはなっているのだろうとは理解できる。

 

 できるが、他のお客さんが入りやすいように己くらいは自重しようとは思う。できるだけであるが。

 

「んだとコラ、手前やんのか?」

「テメェこそふざけてんじゃねえよ。ぶっ潰されたいみたいだなぁ!」

 

 ガラの悪い男たちがにらみ合う間に入る。しかし二人は止まらずに額を付けるほどに近くなっていた。

 

「揉め事か? 武力衝突ならば介入させて貰う」

「安心しろよ坊主、殺し合いにはならねぇ」

「命よりも大切な、プライドを賭けるわけだからなぁ!」

 

 一人の腕につけられている機械式の盾のようなものと一人の腕につけられている魔術系の盾のようなものが、何かをセットされたことで展開し、羽のようになる。

 

 そして盾から5枚の札を引き抜いた二人は、高らかにこう唱えた

 

「「決闘(デュエル)!!」」

 

 すると、それぞれの手元近くに謎のフィールドが展開してきたそして、わらわらと周囲の人間が集まってくる。

 

 いつもの見世物を見る感覚であった。

 

「な、何だコレは!? 手元に悪魔の、モンスターのヴィジョンが映っているぞ! 力はないが、恐ろしい精巧さだ!?」

「フフフ、これこそが悪魔の世界で進化した新たなデュエル!」

「だがしかし、コイツは俺の魔術方式ディスクを馬鹿にしやがった! ぶっ殺す!」

「ふざけるな時代遅れの俗物が! 完全機械式を侮辱した貴様が先に謝るのが筋だろうよ!」

 

 そんな罵り合いをしながらもカードを触る手つきは丁寧で、互いのカードを触るときには常に一礼してからだった。もしかすると、この者たちは相当に仲がいいのでは? 

 

「あ、チェーン順間違えた」

「ケッ、次は許さねぇぞ!」

 

 互いに腕のモノの羽部分を押し付け合っての戦闘である。だが、腕に着けないでテーブルに置いた方が楽ではなかろうか? 現にお互いに腕がプルプルとしてきている。

 

 そしてそれぞれの盾には精巧な映像を映し出す効果のみであり、互いの盤面を跨ぐような場合にはそれぞれ相談してうまいことやっていた。

 

 熱意も技術もあるのだが、ロマンを突き詰めている結果肝心なところができていないように思えた。

 

「だが! とても格好良いぞ二人とも! 全身全霊を尽くすのだ!」

「「おうよ!」」

 

 盤面のゲームの処理は何一つわからない! だが面白いという事は分かる! 熱いという事は分かる! 

 

「あのー、隅っこか外でやってくんないっすか? 邪魔っす」

 

「「「あ、すいません」」」

 

 そうしてその日遊戯王をはじめいくつかのカードゲームを教えてもらった己だった。スキルといいサウナといい、本当に学びの多い一日だった。

 

 

 

 

 そして、こうやって紡いだ絆があれば、情報が入ってくるのも早くなる。

 

 突如として異常な技量に目覚めた人物についての興味深い話が入ってきた。

 

 チンピラ崩れのアリヅカという男が、突如としてレベルを10ほど上げて一流に踏み入れたらしい。

 それはちょうどセプテントリオン『アリオト』『フェクダ』のやってきた時期と一致する。とすればそれは漂流者がバシバシ現れる時期と同時であり、己のシェルターからの干渉がこの時あったとしてもおかしくない。

 

『アリヅカ』を調べること。それが次の手掛かりとなるだろう。さぁ、頑張ろう。

 


 

 ジエンくん

 ガチの天才。

 天才なので技量物理もパパっと覚えるし、天才なのでサウナの気持ち良さを学ぶし、天才なので決闘者に憧れる。だけどコンマイ語を習得した結果国語の成績が若干落ちた。異種言語だからね、しょうがないね。

 

 ツギハギさん

 サウナ好きのオッサン。奥義一閃を実戦レベルで振り回せるので、即死効果で格上の雑魚を狩りまくってレベルを爆上げした。気になることは多々あるけど、ジエンくんが幸せそうなので構わないかと流した。

 銭湯にドはまりしている。

 

 謎のデュエリスト2名

 デュエルディスク試作型をそれぞれ完成させて見せびらかしに持ってきたら、同日に被っていらい犬猿の仲に。それまではあんなに遊戯王の話で盛り上がっていたのに……

 それぞれ細かくアップデートしながら自分がマウント取るために頑張っている。

 大声でやり合うのは迷惑だが、それはそれとしてブラマジだのサイバースだのが動き回っているのは面白いので見世物にはなっている。なお、お互いのディスクの操作が基本的に全手動であることはあまり知られていない。

 

*1
ロックマンエグゼアドバンスドコレクション 絶賛発売中! 

*2
真4無印において、物理攻撃スキルへの影響度は『力』より『技』の方が高い。なので割と『力』が死にステになっている

*3
真4無印 敵全体に物理攻撃中ダメージ 確率で即死を付与

*4
敵単体に物理属性小ダメージ 攻撃力を1段階弱体化




ちょいと短めなお話でした。


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ホームレスと幽霊

『アリヅカ』

 

 元々は高等学校を中退してカジュアルサマナーになった人物だ。半グレだとか、ちんぴらとかの類らしい。

 

 良くも悪くもカジュアルサマナーの範疇を超えておらず、アプリを使って略奪やレベル上げを行い、アプリを維持するために人を辱めていた。

 

 ひと昔前にならどこにでもいた普通の悪人。それがアリヅカだった。

 

 だが、一度目のセプテントリオン襲来の際に仲間の大半を失った事で、状況が変わる。

 

 邪悪な行いを続けるだけの力もなく、かと言って新たなチームに参加して悪行を行うこともしない。浮駒になっていた。

 

 そして、そのままなぁなぁと時が経ち、第二のセプテントリオンが来襲。

 

 その時に起こった『ナニカ』によって大きな力に覚醒し、一線級のデビルバスターに変貌したらしい。

 

 

 しかし、現在は行方知れず。

 やくざ者からの仕事を受けていたらしいから、キリギリスの戦力とカチ合って倒されたのでは無いか? と思われる。

 

「というのが、ざっと調べて出てきたことよ」

「なるほど! 概要は分かったぞ! 感謝するぞタナカ殿! サトー殿!」

 

 黒いスーツに角刈りヘアー、いかついサングラスをかけた黒服の2人は感謝の言葉に素直に照れているようだった。正直顔も服装もMAGも全てがそっくりでどちらがタナカ殿でサトー殿か微妙であるのは秘密だ。杏奈によると、結構性格に差があるらしい。

 

「で、このアリヅカって男。その覚醒のタイミングがジエン君のシェルターから出た毒電波のせいなのか? って話だよね」

「うむ。潜在能力の覚醒というだけならば別段不思議な事ではないからな。戦いに身を投じていればそのうち勝手に強くなるし、コツを掴むこともあるだろう。だが、この者は戦線から離れていたのに覚醒したという話だ。シェルターからの干渉である可能性はあるだろう」

 

 もちろん、見知らぬ別の理由によって覚醒を果たした可能性は十分にある。しかし、現在が暗中模索の最中である以上、ここを追求するのは間違いでは無いはず。

 

「で、どういう方針にするの?」

「ひとまず手探りだな。バックアッパーの受信をオンにしながら周辺への聞き込みを行おうと思っている」

「おけ、じゃあ早速行こっか。仕事に差し支えたら怒られるし」

「支援、感謝するぞ!」

「良いの良いの。私が好きでやってるんだからね」

 

 ということで、早速車に乗っての遠出をする。

 

『アリヅカ』の活動していたエリアは都心近くにあるベッドタウン。

 都心部程の活気はないが、都心へのアクセスが良く商業施設も多くある良い街だ。

 

 だが、住む者の高年齢化は進んでいるとか、公園で『ボール遊び』なる遊戯を行うことを禁じるようになったとかの負の面は当然ある。

 

 

 廃工場区域が、カジュアルサマナー達の根城になっていた事とかも、その負の面の一つだ。

 

 

「とはいえ、こうも無惨であるとな……」

「あ、これは一体目の時のだ。連中ボーボー燃えてたし」

「情報にあった万能含めた主な属性を無効化するセプテントリオン『ドゥベ』だな。火炎属性の範囲攻撃を放っていたと聞く」

「サイズの大小でそこそこ強さにブレがあってね。全員何気に物理反射はだるかったわ。呪殺は通ったから良かったけど」

「ふむ。セプテントリオンには破魔呪殺が等倍で入りやすいのだったな」

「連中に神聖も邪悪もないんじゃないかな? って説があったりするわね」

 

 そこそこに脱線しつつ痕跡を探す。

 まぁ、ぱっと見つかることはないとは思っていると……そこにはダンボールや毛布などを用いた簡易的な寝床が存在した。

 

 住処となる場所の公的な権利を持っていない人物たち、ホームレスという奴だろう。土地や家の公的権利という制度はなかなかに馴染まない。

 その時住んでる奴が家主ではダメなのだろうか? ……ダメなのだろうなぁ、キチンとした社会の仕組みの為には。

 

「んー、レベル16くらい?」

「MAG残量的にはそのくらいだな。決して強くはない」

「けど、このレベル帯だとやーさん達に食い物にされてないのはちょっと不思議だね。生きてるMAG発生装置としての生き物って需要あるんだけど」

「……あまり認めたくはないが、人の業とは変わらぬな」

「まぁ、どんな場所でも追い詰められた人間のやる事なんて大体同じだから」

 

 こういう追い詰められて切り捨てられる弱者の気持ちというのは、己達には決して理解できないだろう。共感しようとすることはできたとしても、己達はまだ死に方を選べる程度には自由なのだから。

 

「しかし、何者だろうか?」

「探してるけど人喰いの気配はないね。まぁ人喰いだったらとっくにデビバスに狩られてるだろうけどもさ」

 

 まぁ、この暮らしぶりを見るに敵ではないだう。

 

「ば、ばけもの……ッ⁉︎」

 

 すると、小さな姿が目に入る。

 警戒網を抜けられた事にまず驚く。彼女との距離は銃撃戦を行える距離、奇襲されていればかなりの不利を取られていただろう。

 

「はじめましてだな! 己はジエンという」

「人語⁉︎え、喋れるの⁉︎」

「己程度のレベルで人外扱いというのは、流石に世間知らずではないだろうか?」

「れ、レベル70の連中が何言ってんですか⁉︎世界だって滅ぼせるでしょうに!」

 

 レベル70? という言葉を不審に思い、リオに目配せをする。と、リオは彼女の持っているCOMPを示していた。

 

 あれだ。機械式アナライズという奴か。

 

 内臓MAGに注目して強さの指標とするアナライズであり、最も広まっている方式なのでデータ参照は基本的にこの機械式アナライズによるモノを用いる。

 己のスマホのアナライズは己自身の魂の強さを測りの基準にしているので結構ズレるのが悩みどころであったりする。誤差はだいたい5レベル程度だ。

 

 今回の、レベル70と見られたのもその感じだろう。自己認識ではレベルは63である。まだ先は長い。

 

「な、なんすか? 食べるんすか?」

「肉ならば最近はアグー豚という沖縄県の豚を好んでいるな」

「ちょっと良い肉ってリピーターになりがちだよねえ」

「あ、分かるっすそれ」

 

 突如として出てきた美味なる豚肉の話に警戒が揺らいで思わず四方山話に花を咲かせ始めた目の前の女性。

 そこそこに小汚く使い込まれた衣服だ。肉は太めであり、美意識を持って整えられた肉体ではない。色事を武器にする女性ではないからだろう。

 

 野暮ったい、という最近学んだ表現が当てはまるように思う。おそらく磨けば光ると女性達は言うだろう。美を磨ける穏やかな環境まで成り上がって欲しい限りである。

 

「……あの、我が家を引っぺがす悪い人じゃないのは分かりましたけど」

「わかっちゃったかー」

「その通りだ! 己達は少し尋ねたいことがあってここに来たのだ」

「そうなんすか! 何でも聞いてください!」

 

「アレ、この子も大概だぞコレ」というリオの声を聞き流しつつ話をする事にする。

 

「知りたいのは、『アリヅカ』という男についてだ」

「アントさん? 知り合いなんですか?」

「否、知り合いではないぞ。そのアントさんという者が己の故郷の手がかりを持っているかもしれないとの情報が入ってな。確認に来たのだ」

「へぇ〜、それじゃあ聞いてみましょうか?」

「む? 連絡が取れるのか?」

「はい。あの人ちょっと身体が粉微塵にされたらしくて幽霊やってるんですよ」

「ほう?」

「幽霊、ねぇ」

「なんか三途の川で追い返されたらしいです。満杯だからって」

「冥府というのは何処も大変だな。賽の河原という己が良く流れ着いた所も人が多くて大変だった記憶がある」

「え、何それ超気になる」

「賽の河原ってアレっすよね? 石を積んでは蹴り飛ばされてって」

「うむ。3人に1人くらいの感覚で自分の仕事に疑問を覚えている鬼が当たったな。石を崩しすぎて鬼の方も参っていた」

「地獄も働き方改革が必要な時代だったりするのかな?」

 

「いやいや何仲良しこよししてんだバカトンボ!」

 

 と、話が広がっていた時に横から男性の声がした。見れば、そこにいるのは半透明の霊体だ。人魂程度の大きさであるが顔は存在し、デフォルメされた人型のような形になっている。

 

「俺をこそしてくれやがったのはこいつ等だよ!」

「む? 己達が仕留めた?」

「あー……どれだろ?」

「ナッジアント様だ! 合体魔法でお前達を追い詰めた、ペルソナ使いの!」

 

 その発言によってようやく思い出す。そういえば、そんな男もいたなぁ、と。

 

「すまぬ! その姿とあの襲撃者が結び付かなかった!」

「……乾坤一擲の奇襲が……印象に残りすらしないのかよ」

「いや、実際私たち適当にぶらついてたら知らない人に襲われただけだから」

 

 その言葉にガッツリと落ち込むアント殿。まぁ、殺し合ったのに記憶に残らないというのはそこそこに応える事だとは思う。

 互いの命を奪い合う事は極限のコミュニケーションである、なんてことを言っていた者がいたことを思い出す。知らぬうちに何処かで死んでいたハンターであったが、その感性は己にも合っていると思う。

 

 当然、ダンダリアンのペルソナ使い、合体魔法使いのナッジアントの事はしっかりと覚えていた。強敵であったから。

 

 だが……

 

「しかし、その霊体と先の襲撃者を一目で合致させるのは無理があると思うぞ。『いめちぇん』にしたってやりすぎだ」

「そりゃ殺されてるからなぁ! イメージも身体もでっかく変わるわ!」

 

「なんか……仲良いっすね!」

「目ぇ腐ってんのか⁉︎」

「うむ! 本気で命を奪い合ったのだ! その者がどんな人間なのかは良く知れた! 敵対していなければ、信を置けるとは思っているぞ」

「敵対してたら容赦なくぶっ殺すけどねー」

 

「……なんだコイツら」

 

 と、話がひと段落したところで袖の下、所謂賄賂を送っておく。

 

 今回の賄賂は、MAGが少しと柏餅だ。冷凍食品として購入した柏餅を適当にスマホの中に入れていただけであるが、他の交渉用の食品を切らしていたが故である。

 

「ん〜、美味しい!」

「バカ、俺の分を神棚に乗っけろ! そのままじゃ食えないんだよ俺は!」

 

「なんというグッドコミュニケーション」

「やはり美味いモノの力は強いな!」

 

 と、空気が緩んだところで改めてアント殿を観察する。

 肉体がない故に近接格闘系スキルは撃てないだろう。しかし呪術の類は怨霊である方が撃ちやすいという話だ、ムド系、弱体系は撃てると仮定している。

 また、幽霊のペルソナ使いがどういう理屈かは分からないので、案外自分自身の悪魔化、ペルソナ化などで肉体を偽造するかも知れない。警戒距離は近接から半歩外で。

 

 しかし、見た目上のレベルは低いためこちらに攻撃をするにはMAGの強化や魂の励起といった溜めが必要になるだろう。抜き打ちの即死技には警戒が必要だが、それくらい。

 

「あ、そういえば名乗ってなかったです。私はトンボと言いますね」

「うむ! よろしくだトンボ殿」

「トンボってハンドルネーム?」

「いえ、名前はなかったのでアントさんに付けてもらいました!」

「ほぅ! それは素晴らしいことだな! 名前を呼ばれるというのは心地いいだろう?」

「はい! とても!」

 

「なぁ、トンボとそっちのガキを話させたらまともに進まねぇと思うんだが」

「うん、私もそう思う」

 

 そんなこんなの雑談がひと段落し、ようやく本題入ろうとした時だ。強者のMAGの感覚がある。

 

 レベルのほどは60から70ほど。リオレベルの強者だ。

 

「……随分と賑やかになっているな、ナッジアント」

「……テメェか、ムラカミ」

「む? こちらの方は何者か?」

「元ファントムのサマナーだね。眼光からの一気呵成を手口にしていた奴だったなか?」

「有名税、という奴か」

「うん、掲示板に晒されてたよ」

 

 その言葉に「掲示板……」と若干落ち込んだムラカミだが、しかしすぐに戦闘体制を整える。掲示板に晒されるのは良くないことだと聞いているが、何が問題なのだろうか? と未だに理解しきれていない己である。

 

「……何度来ても答えは同じだぜ。ダンダリアンの紙片の使い方は分からん」

「いいや、それはもう問題ない。悪魔合体による知覚範囲の変化により、紙片からの情報受信は可能となった」

「へぇ、そういや悪魔人間だったなお前さん。見えねぇがな」

「なに、己もここまでコツが分かるとは驚きでな。何でも試してみるモノだ」

「……それで、紙片が関係していないなら何だってここに来たんだよ」

「決まっているだろう?」

 

「紙片の力を独占するために、貴様の存在が邪魔だからだ。消えろ雑魚幽霊」

「あ、やはり敵で良かったのか」

 

麻痺針銃撃スキル敵単体に銃撃属性小ダメージ 緊縛状態を付与

 

「銃撃など効くものか!」

 

スプリガンベスト胴装備物理攻撃を反射する*1

 

「んー、あれスプリガンベストだ。技属性反射されるから気をつけてー」

 

会心の眼力補助スキル次の物理攻撃に必中と確定クリティカルを付与する

 

「え、シームレスに戦いに繋がらないで下さいよ⁉︎私弱いんですからぁ⁉︎」

 

居飛車穴熊補助スキル防御、命中回避を3ターンの間一段階上昇*2

 

「ハン! たかがレベルが高くなった程度でなぁ!」

 

タルンダ補助スキル敵の攻撃力を1段階弱体化

 

 こちらの手番が終わる、スプリガンベストの技反射というのは確か通常攻撃で抜けた筈。掲示板などで良く話題になっていた。

 

 そして、単騎で攻めてきたということは恐らくバステ耐性も十分にあるだろう。神経属性でなく緊縛属性の術だ! とかの抜け道はあるが、そこを試すタイミングではない。

 

「俺のスピードについて来れるか、雑魚共!」

 

獣の眼光補助スキル自身の行動回数を1回増加させる状態を付与*3

アクセラレート補助スキル自身の行動回数を1回増加させる状態を付与*4

スマイルチャージ補助スキル自身にニヤリ状態を付与

 

「眼光系スキル?」

「気をつけろお前ら! 加算タイプだ! 次から3手動かれる!」

「それに、あんなに動きが良かったら致命打なんて当たりませんよ!」

 

ニヤリ状態ニヤリ状態のとき、弱点、クリティカルを受け付けなくなる

 

「いや、行ける!」

 

会心の眼力次の物理攻撃を確定で必中クリティカルに。

ニヤリ状態の相手に対してもこのクリティカルは発生する

 

 リオの物理通常攻撃が致命打として入る。物理貫通を習得しているが故にか、苛ついた感覚をしていた。おそらく耐性はあるだろう。物理通常攻撃をダメージソースにするのは避けるべき。

 

「その調子、崩させて貰う!」

 

マガオン補助スキル敵単体のニヤリ状態を解除

 

「チィッ! 味な真似を!」

「……やっぱ無理ぃ! 誰か助けてぇえええ!」

 

バッドカンパニー特殊スキルストックからレベルが高い順に限界まで召喚

 

LV62龍王ゲンブLV58夜魔クイーンメイブ
LV61邪龍ファフニールLV50妖精ティターニア
LV61死神ペルセポネーLV49夜魔サキュバス
LV50鬼神コウモクテン

 

「感謝するぞトンボ殿!」

 

 トンボ殿の連鎖召喚によってファフニール、ゲンブ、ペルセポネーが呼び出される。これは間違いなく己の尻ぬぐいだ。先手を取ったときに召喚をするべきであったのをサポートしてくれたわけである。

 

「ふん、動け悪魔」『パス』

「オオ! 『マカラカーン』ダ!」

 

 こうして出揃った段階で手番を一つ分使って陣形を調整。

 

 前衛を張るのは己、ゲンブ、ペルセポネー、リオの4人。後衛のメインサポートにファフニール、トンボ殿とアント殿はサポートのサブ、必要に応じて入れ替わったりして貰う。

 

「くたばれ、雑魚悪魔!」

 

デカジャ補助スキル敵全体の強化状態を解除

スマイルチャージ補助スキル自身にニヤリ状態を付与

殺風撃魔法スキル敵単体に衝撃属性特大ダメージ、ニヤリ時に貫通効果付与

 

「グハァッ⁉︎」

「ファフニールを一撃かッ!」

「マカラ持ちを狙った! 全体への貫通技はないよ!」

「ならば追加だ! クイーンメイブ!」

 

 先日の戦いでレベルが上がったクイーンメイブを召喚し、『マカラカーン*5』を放つ。

 

「ガァアアアア!」

「凍てつきなさい」

 

 ゲンブが『雄叫び*6』にて攻防一段弱体をかけ、ペルセポネーがブフダインを叩き込む

 

 氷結のダメージは等倍、通じるらしい。

 

 ダメージ感覚から言えばダイン級3発のダメージを同時に叩き込めれば仕留められる。ボス耐性のような異常なHPは持ち合わせていないようだ。元に宝玉を手元に取り出している。次の初手に使うつもりらしい。

 

 また、裏ではトンボ殿がファフニールに対して地返しの球にて蘇生させてくれていた。指示を出したのはアント殿だろう。これで毎ターンマカラカーンのループがMP切れまで行える。

 

『囮になれ、俺が局面を変える』

 

 アント殿が思念波によって己に要請を送る、どうにも仕留める算段を思いついたらしい。

 

『了解した。どのみち次からは己狙いしか飛んで来ぬ。好きに動いてくれ』

 

 そうして、敵の手番がやってくる。

 

スマイルチャージ補助スキル自身にニヤリ状態を付与

殺風撃魔法スキル敵単体に衝撃属性特大ダメージ、ニヤリ時に貫通効果付与

 

「お望み通り、貴様の命が最初だ!」

「ゲンブ!」

「オウ、サマナー!」

 

 ゲンブを殺風撃の盾にする。当然のように一撃で吹き飛んだ上に己にも余波が届いたが、想定内。敵の戦い方では2枚マカラカーンの動きを崩すのはできなさそうだ。

 

 そう思ったのはムラカミも同じようで、腹を括った様子だった。何かが来る

 

「だったら限界を越えれば良い! 『獣の眼光』!」

「三段階目の加速だと⁉︎」

「人間の精神で耐えられるんスか⁉︎」

「なんとでもする! 『カルメット*7』!」

 

 手元に取り出していた宝玉をしまい、攻撃アイテムを代わりに使用してきたムラカミ。

 

 万能属性のドレイン系のアイテム攻撃により己は傷を負い、ムラカミは傷を回復させた。

 

「味な真似を!」

「お互い様だろうが!」

 

 次の手番から、敵は4手動く、そうなればマカラカーンを貫通するための大技を連発できてしまう。食いしばりを使って生存しても追撃が飛んでくるだろう。

 

「ならば、こうだ!」

 

 ショウキを召喚。『威圧の構え*8』によって敵の動きの一足目を鈍らせる。

 

 4手動くのが強みならば、3手に抑えてしまえば良いだけだ。3手なら、敵は回復か追撃のどちらかしか選べない。

 

「貴様ッ!」

「よそ見は、厳禁!」

 

 リオの物理攻撃がクリティカルで入る。先程のクリティカルの一発できっちりと魂を震わせて(ニヤリして)いたらしい。確実ではないというのに、上手くやるものだ! 心強い! 

 

「チッ!」

「あと二発!」

「続けて行きます。『マカラカーン』」

「……このタイミングなら、『ブフダイン』」

 

 ペルセポネーがブフダインで追撃することで、敵の体力はイエローゾーンだ。

 

「ここだ、沈めぇ!」

 

ディアジャマ補助スキル敵単体に回復不能状態を付与 万能相性

 

「魔力、神経無効を抜けただとッ⁉︎」

「どうだムラカミィ!」

「つまらない霊体の分際でぇ!」

 

 と、ここまで追い詰めはしたがまだ崩し切れてはいない。敵はアムリタ*9から宝玉*10を使えば体力を全回復できる。そうすれば振り出しだ。

 

 MP切れを狙うような戦法に切り替えれば戦いになるだろうが、そうなれば敵の方も適宜チャクラポット*11を使えば消耗戦だ。

 

 ここいらが潮時だろう。

 

「……貴様ら、強いな」

「そちらもな。……それで、そちらの要求はアント殿の命、というより『ダンダリアンの紙片』というアーティファクトの情報の独占だな?」

「そうだ。50周辺で燻っていた私がここまで練り上げられたのは紙片の力だ。我がペルソナ『マッハ』の覚醒によってな」

「俺の『ダンダリアン』の覚醒もその影響だ。紙片は莫大な経験の集合体だからな」

 

「む、今のを言っても良かったのか? ムラカミ殿」

「元々、コレはナッジアントより伝わる事だ」

「んーと、ダンダリアンの紙片ってのはとてつもない魔導書ってコト?」

「なるほど、己達の探している球体と同様だな」

 

「……貴様らも、狙いは力か」

「否、その紙片だとかの出所が己の地元なのだ。故に情報を集めている」

「ほう?」

「己達の目的とそちらの目的は相反しない、また、己達と結んで情報を得られるようにすれば、また別の紙片を手に入れられるかもしれんぞ?」

「……証拠は?」

「ここに」

 

 スマホを操作して、先日影異界にて撮影した次元の隙間を見せる。シェルターが映るそれには、傍に転がっている球体などが写っている。

 

「……なるほどな。ダンダリアンの紙片はナッジアントが手に取るまではこのような球体だった。それにこの機械にも見覚えがある」

「……発見者はアント殿だけではなかったのか?」

「コイツと俺とで訓練していたの時に見つけたんだよ」

「日時は?」

「3月の中頃、セプテントリオンが襲来する2、3日前だ」

 

 そう答えると、己に対して、というより己の身につけているスマホを目にして何かを考え込む。確かに己のスマホはモノ珍しい。

 

「なるほど、漂流者(ドリフター)か」

「その通りだムラカミ殿」

「そちらのシェルターにはどれほどの余裕がある?」

「ほとんどないだろうな。映像で見せた通りに死にかけだ」

「……ならば遺物でなく製法の方を確保するべきだろう。了解した、そちらに協力しよう」

「うむ! よろしく頼むぞムラカミ殿!」

 

 そう結ぼうとした所にリオが待ったをかけてくる。

 

「待って、アンタのスタンスを聞いてない」

「ふん」

「アンタは球体を使ってどうするつもり? レベル90とかまでなりたいの? それとも子飼いを強くして軍団でも作るつもり?」

「後者だ。借り物の経験では本人の才覚を目覚めさせるまでにしか伸びん。だがこの球体がもたらす戦闘記録は弱卒を兵に変える。たとえそこに転がっている雑魚女だとしても、モノの役に立てるだろうよ」

「ひぃっ⁉︎私に振られたぁ⁉︎」

 

 その視線を見て、なんとなくこの人のスタンスが理解できた。先日戦ったナッジアントの生前のスタンスを考慮すると、見えてくるものがある。

 

「なるほど! 弱き者達を立ち上がらせる為に球体を使おうと言うのだな!」

「……いやそのような「分かるとも! これによって最低限のレベルと戦闘経験を積ませることができれば、あとは戦闘の才覚がモノを言う! そうなれば前線の者達も助かろうな!」」

「……違う!」

「結果としてそうなるのだから、言の葉を悪く飾った所で大差あるまい! 得心がいった! 貴公が目的を果たせるように微力を尽くそう!」

「だから、違うと「いや、コレ勘違いさせといたままの方がいいだろどう考えても」……むぅ」

「……実際、私兵組織作ったあとどうするの?」

「これほどの悪魔が蔓延る情勢だ。悪魔狩りをしているだけで英雄として見られようて」

「……あれ? これもしかしてドンピシャなの?」

「結構なアレな人ですけど、良い人なんですねこの人。アレな人ですけど」

 

 この日、二人と一体の協力者を得た。そして影異界にて球体を獲得した正確な場所時間まで確認できた以上、情報は完全に出そろった。

 

 もうすぐ、己のかつての故郷へと赴くことができるだろう。そこにどんな真実が待っていたとしても……

 

 


 

「あ、これ周期的に遠ざかっている所だ。再接近まで結構な時間かかるね」

「まことか」

「うん、まぁ今すぐすぎて引っかける異界の準備が間に合わないってよりはいいんじゃないかな?」

「まことか……」

 

 ナサ殿の導いた真実は、結構に無慈悲であった。

 うん、悪魔合体とかして過ごそう。

 

 


 

 ジエンくん

 アドリブで何とかしてるけど今回結構ガバってた。異界じゃないからと油断して仲魔を召喚しなかったのは問題だったなぁ、とかけど消費MAG馬鹿にならないよなぁとかちょっと悩みぎみ。

 新技の牙折りが早速相性で使えなかったことも地味に響き、お風呂に入るまで若干ダウナーだった。

 

 賽の河原にて確実に石を積み上げる実力者。鬼の目がない時に積み上げまくる速攻チャート、監視網を抜けられない場合にやるピラミッド工法チャートなど様々な手がある。河原の鬼はジエンくんを見ると割と恐怖に慄く。

 

 トンボさん

 死亡でのレベルダウンが重なりすぎてレベル16にまで落ち込み、稼ぎもなくなった結果思い出の場所でホームレス生活を始めた一般異能女性。ホームレス生活を始めたその日にデフォルメ幽霊を見つけて超びっくり。それがカジュアル時代につるんでいたアントさんだと知ってさらにびっくり。柏餅は美味しく食べた。

 

 アントさん

 デフォルメ幽霊になったペルソナ使い。ジエンくんリオさんについてはぶっちゃけ隙あらば殺したいと思っているが隙が無さ過ぎて実行に移せなかった。奇襲しようと思った瞬間に起きる反射的な動きの起こりを見て幾度も死を予感した。柏餅は美味しく食べた。

 

 ムラカミさん

 行動回数加算式の眼光、アクセラレートを毒電波から習得した青年。

 邪悪さが極まっているので回収した子供たちを思想教育したり少年兵にするべく訓練している。話の流れで聞いた柏餅というワードのせいで、子供たちに支給する食料に柏餅が追加した。

 子供たちにはどんな状況でも生きられるようなサバイバル能力、悪魔を相手にしたときの逃走能力などを重点的に教えている。

 

 ちなみにアライメントはLight-Neutral 邪悪は己の心を震わせるためのロールプレイ。

 

 平然としていたがジエンくんが銃撃吹っ掛けてきたときには相当驚いていて、カラダが勝手に戦闘体勢へと移ってしまった。戦闘自体がジエンくんのガバという珍しいケース

*1
デビルサマナー出典 反射するか否かはデビルサマナーでの耐性準拠。なぜか通常攻撃を反射できない

*2
ソウルハッカーズ2出典 最大1段階20% 魔晶によりターン、上昇量強化可能

*3
行動回数増加はこのターンからなので、このターンはあと1回動ける ソウルハッカーズ出典

*4
ソウルハッカーズ2出典 敵ボスサマナーが用いる

*5
味方全体を魔法反射にする 真3のクイーンメイブがLV58にて習得

*6
敵全体の攻撃力、防御力を1段階弱体化 真4仕様

*7
敵単体に万能属性中ダメージ ダメージ分HPを吸収する

*8
自身に敵ターン開始時に敵プレスターンアイコンを一つ削る状態を付与

*9
全ステータス異常を回復

*10
味方単体のHPを完全に回復

*11
味方単体のMPを全回復 たまに全回復じゃなく大きく回復のシリーズもある



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開戦前準備(戦場は邪教の館です)

「……見事な手際だな」

「そうか?」

 

 緊縛で縛ってからの『ファンド*1』をした己に向けてツギハギ殿が言う。慣れれば誰でもできるだろうに……と言おうとしたが、そういえば己のスマホの性能がそう言うことに特化していた事を思い出す。

 

「己の使っているプログラムは、なんかそう言うことに長けているらしいのだ」

「珍しく曖昧な表現だな」

「その、な……解析データを貰ったが、まだ全てを理解できてはいないのだよ。難しくてな」

「……そういう所は年相応か」

 

 そうツギハギ殿が言った所で、背後からトンボ殿が駆け寄ってくる。

 

「のほほんとしないでくださいよぉ! 私、守ってもらわないと即パト*2っすからね⁉︎」

「ガードできれば一発くらい耐えられる筈だぞ」

「修羅勢の感覚を基本にしないで欲しいっス!」

 

 そんなトンボ殿の背後からふよふよとアント殿が付いてくる。耳を抑えている事から、耳元であの声を出されるのはうるさいらしい。

 

 サイズ比からいえば、巨人が喋っているのを近くで聞いているようなものだからだろうか? ちょっと気になる。

 

「バカトンボ。ワンパンで死ぬような所に着いていくっつったのはお前だろうが。ギャーギャーわめくな」

「もうちょい介護があると思ったんすよぉ!」

「……また、敵が来たぞ。喚きすぎだ」

「目的はレベル上げなのだから良いのではないか? 己は悪魔勧誘をさせてもらうのだけれども」

 

 合体素材集めをしようと言う時に、リオはまたしてもCOMPスミスの方々にお呼ばれした。なんでも物理貫通が付与できる装備*3が完成しそうだと言う話らしい。

 

 先日呼ばれた時と同じ呼ばれ方であるので、本当に完成するかは五分だろうが、夢のある話だ。

 

 低レベル異界での合体素材集めとて、単身で行くのは危ない。故に事故回避の為にツギハギ殿を誘わせて貰った。その時たまたま近くにいたトンボ殿も『楽してレベリング!』と飛びついてきたので一緒に来て貰っている次第である。

『黒子の歩法*4』と『バッドカンパニー*5』という己が見た手札だけで相当であるのに、多様なスキルを使えるアント殿もついてくると言うのだから否と言うことはない。凄まじく便利だ。

 

「……時にナッジアント。お前はどうしてトンボに取り憑いている?」

「MAGの相性の関係だ。コイツのMAGが霊体の維持に必要なんだよ。シャーマン系の適性があるからな」

「え、そうなんすか⁉︎」

バッドカンパニー(連鎖召喚術)なんて使ってる奴が何言ってんだオイ!」

 

 戦闘中でありながらこの会話。なかなかに緩く、なかなかに油断モリモリである。どこかで事故りそうだ、うん。

 

 まぁ、眼前の敵は全て『バインドボイス*6』にて緊縛状態かつ『テンタラフー*7』により混乱状態、女性タイプの悪魔は『マリンカリン*8』からの『スカウト*9』でCOMPの中に、という半分程戦闘は終わった訳なのだけれども。

 

「うむ、せっかくだから混乱トレード*10を試してみるか? 便利だぞ?」

「え、できるんすか?」

「うむ! 会話の際に『物々交換をしよう』という意を示せば良いのだ」

「じゃあ、やってみるっスかね」

 

「ぉおオレは! マッドガッサーだぁ! 他の何でもない、マッドガッサーなんだぁ!」

「あの、ブラックウーズさん? 混乱ってここまでヘンになるものなんすか?」

「オレはマッドガッサーだぁ!」

「えぇ……?」

 

 そんな事を言いながら、ブラックウーズは体内から宝玉を渡してくる。うむ。トレードは成立だな! 

 

「あ、はい。マッドガッサーさん。ありがとうございますっス」

「おぉ!」

 

 なお、当然ながら緊縛状態も兼ねているので会話を終えて帰ろうという流れにはならない。多分あの悪魔は全体ストーンあたりを隠し持っているな。

 

「……あの娘、なかなかにやるな」

「うむ。前線でも一芸を見せられるタイプだろうな。即死しない基礎レベルがあればより強くなるだろうな!」

 

 そうして『ファンド』と『トレード』をやりつつ不要な悪魔を始末し、ついでに目当ての悪魔を探す。

 

 今回悪魔合体で作りたい悪魔は、メインアタッカーとなる悪魔と専門のサポーター。

 メインアタッカーに渡したいプレロマ、ハイプレロマは己の全書から引っ張って来れるが、サポーターに求める()()()()()()は手元にない。

 おそらくこれからの激戦においてたくさん使うので、ついでに全書に登録しておきたいのである。

 

「あ、モーショボーっス!」

「奴が目当てか?」

「正直な話、仲間にして詳細アナライズを確認するまで分からん」

「変なハナシっスよね。ブフ使いのモーショボーとか。鳥なんだからザン使うのが普通に思ってたっス」

「鳥だからって思考停止するなバカトンボ。そんなんだとカマソッソ*11に銃を撃つぞお前」

「失敬な! 銃なんて金食い虫使えるわけないじゃないっスか!」

「……どこが失敬なんだ?」

 

 という雑談をしながらマリンカリンで魅了、からの『スカウト』。

 

 確認した所、ベースレベルは15それが強化されてレベル30周辺までなったらしい。

 衝撃高揚とザンマ、マハザンマ、ディア、タルンダオート、割合ダメージの自爆を習得している*12

 

 つまり、外れである。

 悪魔のストックを開ける為に、適当な合体をしなくてはならない。タルンダオートは便利なので、いっそのこと御霊にして誰かに継承させるか? 

 

「けど、そんなに欲しいスキルなんですか? 氷結ガードキル*13って」

「うむ。氷結ガードキルの効力は3ターン。その間合体魔法で氷結でのハメが通用するようになるわけだからな」

 

 机上の空論にしてはなかなかに素敵に映るものだ。格上をハメ殺したときの安堵と達成感と開放感がごちゃ混ぜになったあの感覚を味わう為ならば多少の苦労は苦ではないとも。

 

「……合体魔法での確定氷結や確定感電というのは、正直理解を拒む」

「ケッ、よくわからん相性飛んでくる『しんけいだん*14』よかマシだ。プレートバンダナもドルフィンヘルムも貫通すんだぞアレ」

「ほう! 欲しいな!」

「俺も欲しいわ!」

「けどアントさん今銃撃てないじゃないっスか、幽霊なんスから」

「……畜生、よくも身体を粉微塵にしやがったなお前」

「引き時を見失ったならば死ぬのは普通でないのか?」

「その通りだよクソッタレ!」

 

 その後、ぶつぶつと呪詛を吐いているアント殿。うむ、ちょっとした刺激が心地よい。電気風呂のようだ。

 

「……あれは?」

 

 と、ツギハギ殿が声を発する。油断マシマシだった場の空気が一気に引き締まる。

 まずはファフニールを召喚、87.5から75%の耐性は頼りになるのか微妙だが、マカラカーンを振り回せるのはありがたい。

 

 御霊合体で活脈系スキルを仕込めないか試してみよう。3分になるか2分になるかは、財布次第であるけれど。

 

「……負傷している悪魔がいる。周辺に敵は見えん」

「悪魔同士のナワバリバトルっスすかね?」

「いや、あの悪魔レベルが高いぞ。40周辺だ。30あたりの奴らしか出ないこの異界だとMAG切れで死ぬ奴だ」

「ふむ、接触してみるか。ツギハギ殿、後方警戒を。トンボ殿は自身を守る事を優先で」

 

 スキルを構えつつ接近。

 眼前の悪魔は妖魔ヴァルキリー。いくらかスキルがカスタムされていそうな雰囲気がある。

 

「己はジエン。ハンターだ。貴女は?」

「……妖魔ヴァルキリー、この異界の敗残兵よ」

「ふむ、何者に負けたのだ?」

「魔王スルト。この異界に現れた炎の悪魔よ」

 

 話を聞く所によると、ダークサマナーという種類の者達によって召喚された魔王スルトは、この異界の主だったヴァルキリーの主人を始末したらしい。

 

 そして、この異界の掌握を始めているのだとか。

 

 ともすれば、己の目当てのモーショボーが今まで一度も見つからなかったのはそのせいかもしれない。許せぬ。

 

「この異界の主はどんな悪魔で、レベルはどの程度だった?」

「44の地母神ハリティーよ」

「魔王スルトからすれば優に仕留められるだろうな」

「つってもスルトにゃあレベル幅がある。80台に乗る奴もいれば、45程度の奴もいる。どの程度だ?」

「ハリティー様と、戦いにはなっていたわ」

 

 アント殿の言葉に答えたヴァルキリーの言葉に、ベースレベルは45*15だと推定する。そこからサマナーの手で強化されているとすると50から60の間くらいだろうか。

 

「ダークサマナーの手による異界の乗っ取りというのなら放置はできんか」

「ですけど、この異界乗っ取ってどうなるんスかね? ここキリギリスの掲示板に載ってるレベルの稼ぎ場っすから、長い事占領してたらレベル高い変な連中が襲ってくるっスよ。怒れるオタクの急襲っス」

「……やめろ」

 

 頭上に?マークを浮かべるトンボ殿。デフォルメされながらも苦虫を噛み潰したような表情のアント殿を不思議に思っていたようだ。

 

「死んだ時を思い出す故にだな。あの時もキリギリスの者達がノリと勢いでアント殿の雇い主を襲撃した*16が故と聞く」

「分かったんなら掘り返すなや! あのクソデブ金払い良かったからそれなりに守る義理はあったんだよクソが! 見捨ててりゃあ良かったなぁ!」

「む? リオを仕留めるべく来たのでは?」

「そりゃ敵方にネームドが居たら真っ先にやるだろ。護衛依頼だぞ」

 

 それもそうか、と納得する。その上初手で致命傷を与えるべく必殺の合体魔法をかましてきたのだから、矛盾もない。

 とはいえ、己が同行していない場合でも、あの程度でリオを仕留められたか?と考えると疑問であるのだが。

 

「あの、ジエン様?」

「すまぬヴァルキリー、話が脱線していた。己達はとりあえずスルト達を狩るとする。貴女はどうする?」

「……治療をしていただければ、役に立ちます」

「ならば己と契約をしてくれ。仲魔でない悪魔を治療することはしない」

「わかりました。私は妖魔ヴァルキリー、今後ともよろしくお願いいたします」

「うむ!」

 

 契約のラインが結ばれ、己達を害せない事を確認してから魔石をいくつか与える。

 

 回復したヴァルキリーは、やる気だった。

 

 アナライズを確認する。ベースレベル40のヴァルキリーであり、破魔無効に衝撃弱点というシンプルに強みの少ない耐性をしている。現在レベルは43で『セーフティ』というスキルを習得しているようだ。

 シロエwikiだと『検証中』になっていたスキルである。なんでもミスした時の立ち直りが早いらしい。

 

 攻撃スキルとしては『会心撃*17』、『雷龍撃*18』、『マハジオンガ*19』に加えて、水撃系スキル『マハアクエス*20、地変系スキル『マハマグナス*21』、疾風系スキル『マハガルーラ*22』を会得していた。

 

「この広域魔法はどうやって習得した? 珍しい属性が多い上に、ヴァルキリーとの関連性は無さそうだが」

「私は元々あるサマナーの仲魔だったのです。ストックの限界が来たという事で契約を外されてしまいましたが」

「うむ。確かにこれは中継素材のスキル設定*23だな。雑に攻撃系スキルだけを仕込んでいるあたりが」

「……そういうものなのか?」

「あぁ。こういう希少な属性魔法を合体継承する為に適当な悪魔に纏めて全書に登録したんだろうよ。だがプレロマ系スキル、耐性系スキルとの継承の兼ね合いで結局使わずストック内で放置って事じゃねえか?」

「……ハイ、その通りです。使えなかったヴァルキリーです」

「貴女程の悪魔を放棄するということは、普通にレベルが高かっただけではないか? 70から80台はあるだろう」

「あー、基礎レベルが足りてない! って奴っすね。臨時のパーティ募集に飛び込んだ時よくそれでお祈りメッセされるっス」

 

 先程までの緩かった空気のせいで、皆口が軽い。こういう口が軽さは欠点に思えるが、精神的疲労を軽くするのにとても役に立つ。

 ボスを狩る、強敵と戦う、奇襲を警戒する、そういう事をストレスに感じる人は多いらしく、緊張したままではボス戦の時に折れて使い物にならない事が多かった。

 

 元の世界の話であるからあまり当てはまらないかもしれないが、そう間違ってはいないだろう。

 

 必要なのは軽口を叩かない事でなく、軽口を叩きながらでも十分な緊張、警戒を続ける事。そして、戦闘へのスイッチを入れた時に直前までのテンションを引き摺らない事。

 

 トンボ殿はできていなさそうだが、ツギハギ殿、アント殿は慣れている。トンボ殿にはアント殿が付くのだから立ち直るのも早くなる訳で、初手でトンボ殿を暗殺される事がないように警戒をすれば大きな問題は起きないだろう。

 

 狙撃、『暗殺拳』、閉所での広範囲呪詛、この辺りを重点的に警戒する。

 

「しっかし、ジエンくんベテランみたいな動きっスね。本当に13っスか? 人生2回目とかじゃないっス?」

「うむ、死亡からの蘇生は何度も行ったので、人生は1回目ではないな」

「いやそういう事じゃねぇよ」

「……サブカルチャー的な意味だな。転生、というのは記憶、経験を持って新たに生まれ変わることを指す」

「それは奇妙で、しかも面白そうだ! 知らぬモノを知っている赤子というのは奇妙で恐ろしいモノだからな!」

「あ、ホラー系だと思われてる」

「少しショッキングな映像はあるが、アニメーションの『推しの子*24』というのにその転生が出てくるぞ」

「あー! アニメ化されたんスよね! まだ見れてないスよ私! 早く携帯テレビ買いたいっス!」

「お前はまず家を買えや」

「というかスマホが使えるのなら、サブスクリプションサービスで見れば良いのではないか?」

「いや、このスマホSIMカードないんで一般ネット繋がらないんス。サマナーネットは繋がるんであんま不自由はないんすけど」

 

 歩きながら、雑談をする。

 雑談をしながら、歩く。

 

 敵が居たので、奇襲を仕掛ける。会話で己達に気付いては居たが、先んじた己に反応しきれず攻撃が先に命中する。敵の動きをは崩れた。

 

「後方警戒!」

「来てるのは3体っス! 霊鳥スザク48、聖獣ビャッコ48! 地霊スダマ47!*25

「まずは削るぞ! 『百麻痺針*26!』」

 

 崩れている相手に先手で打ち込んだ銃撃スキル。全員に一発ずつヒット、スダマの崩れなさからして耐性、スザクは弱点、ビャッコは通常耐性だ。

 

 ただし緊縛のヒットはなし。運の下振れめぇ……

 

 続いて敵方のビャッコが動く。かなり足が速い、緊縛で止めたかった。

 

 飛んできたのは、『マハジオンガ』

 ツギハギ殿は素で耐えられるので、己とファフニールでトンボ殿とアント殿を『かばう*27』。己は胸部装備*28のおかげで電撃を吸収でき、ファフニールは87.5%の微弱な耐性と高い体力がある。

 

 こうして吸収を取った事で呼吸を奪う*29! というのがいつもの流れであるのだが、現在は戦場前列に呼吸を合わせられない者達(『ツギハギ』と『ナッジアント』)がいるのでそれは無理。半端に己の仲魔だけで動けば、味方からの攻撃を背中に受けて無様を晒す事になる。

 

 続いて動くのは、新参であるヴァルキリー。

 

「受けなさい、『マハジオンガ』!」

 

 ただし、それは負の面だけではない。電撃使いのビャッコに無効にされたとしても、調子が崩れるのはヴァルキリーだけ、全体の行動に影響はないのだ

 

 ……む? ヴァルキリーが呼吸を崩してない? 『セーフティ*30』の立ち直りが早いという奴か? 

 

 マハジオンガのダメージによってスザク、スダマがあと一撃圏内。スダマは電撃弱点が故にか、致命傷一歩手前でかつ感電状態になっていた。

 

「スザクには氷結だな」

 

 

豪氷撃 敵単体に氷結属性大ダメージ*31
 

 

 ツギハギ殿の大型銃器から氷結砲撃が放たれる。ツギハギ殿の銃は前の世界でかなり多くの武器を共食いして整備した結果、色々なスキルが付いているらしい。MP消費の属性銃撃スキルもその一つだ。

 

 スザクは弱点属性をモロに受けて、死亡。スダマは感電していて動けない。

 

「回復いくっスよ!」『魔石』

「ビャッコが邪魔だな」『ラクンダ』

「ウォオオオオ! 喰らえぇ! 『モータルジハード*32』ォ!」

 

 魔石によってファフニールを回復、ラクンダによって防御が鈍った所にファフニールの一撃が入る。

 

 ビャッコはモロに喰らって死にかける。コレで終わりだ! 

 

「マ、マテ! 悪カッタ、コノトオリダ!」

 

 と、続いての出番でブラストアローを撃とうとした己をビャッコの声が止める。『命乞い*33』のようだった。

 

「ならば、仲魔になって尽くすと誓うか?」

「誓ウ! ダカラ殺スナ!」

「……このような時、礼儀のない話し方をする奴は、果たして信用できるものかな?」

「殺サナイデクダサイ! オネガイダ! コイツモ共に行キマスカラ!」

「うむ! 誠意はしかと見た! 契約だ!」

「聖獣ビャッコダ。コンゴトモヨロシク……」

 

スカウト+ハンターアプリ悪魔のスカウトに成功した時、確率で他の悪魔も同時にスカウトできる
『』

 

「何故、私が? しかし私に問題はない。地霊スダマ、コンゴトモヨロシク」

 

「え、今の流れで着いてきてくれるんスか?」

「悪魔関係は摩訶不思議だ、本当に」

「ハン、小僧のCOMPからの勧誘思念が横にいたスダマに伝播したってだけだ。不思議な事は何もねぇ」

 

 理屈は未だにさっぱり分からないが、運の上振れで仲魔が増えたぞ! 

 そして、このスダマは当たりのスダマだ! ベースレベルが42で銃撃耐性電撃弱点衝撃無効! レベルによって『衝撃ガードキル*34』と『銃撃無効』を覚えるぞ! 

 

 ビャッコは、まぁ普通のビャッコだった。ターゲット集中かつ防御上昇の『咆哮*35』が珍しいくらいか? 

 大活脈を覚えるならば、ファフニールに喰わせる御霊はビャッコから作ろう。

 

「ひぃ、怖かったっス」

「レベル低いと全体魔法で飛ぶからな。仕方ねえ、ツギハギ、トンボ、俺らはサブに回るぞ。小僧を自由に動かさせろ」

「少年に頼り切るというのは心苦しいが、足を引っ張るよりかはマシだな。支援に回ろう」

「心得た。出現悪魔のレベルも上がった訳だからな。召喚、ペルセポネー」

 

 召喚と共に優雅に一礼するペルセポネー。そうして礼をすると、二つに分かれている身体の断面がよく見えて、すこし面白い。

 

「召喚主、ヴァルキリーを前線から下げては?」

「いや、『セーフティ』について簡単な検証をしたい。想像通りならば全書に登録して量産を試みたいレベルのスキルなのだ」

「なるほど、了解です」

「……量産されるのですか、私」

「うむ! その血肉を強くなるために使わせてもらう!」

「分かりました。私じゃないヴァルキリーが頑張るでしょう、被害を受けるのは私じゃないので許します」

 

「このヴァルキリー性格割とクソじゃないっス?」

「ニュートラル悪魔は関わる者の影響を良く受ける。ハリティーやサマナーの性格がクズだったと考えるのが正しいだろうな」

「ヴァルキリーの基本からかなりズレてるしな。忠義者には思えねぇ」

 

 たまに見かける悪魔への奇襲を繰り返しながら前に進む、MAGが強くなっていくにつれ叩いていた軽口は無くなっていく。ボス部屋が近いのだろう。

 

 少し思うところがあってファフニールを下げてティターニアを召喚する。先手一発目にやりたいことがあるからだ。

 

 ……ボス前の扉に辿り着く。

 トンボ殿が『居飛車穴熊*36』を、アント殿が『タルカジャ*37』を使った瞬間にドアを蹴破る。

 

「……ッ⁉︎早すぎるぞキリギリス!」

「狙いはギリギリスの弱体化か?」

 

 ツギハギ殿が言う言葉に『あ、そうなのか』と思いながら先手を放つ。

 

 敵は、サマナーと魔王スルトの2体だけ。魔王スルトのレベルは53ほど、サマナーのレベルもそのくらい。

 

 さて、耐性潰しはしているか? 

 水撃系→地変系→ブフダイン

 マハアクエスマグナスブフダイン

合体魔法 アイスクラッシュ*38

 

「クソッ⁉︎」

「ふん、効かぬわ! ……何ッ⁉︎」

 

 どうやらスルトには氷結耐性が付けられているらしい。アイスクラッシュのダメージ量は然程でもなかった。

 

 ただし、無効ではなかった。

 故に、氷はスルトと敵サマナーの身体を侵食して、『凍結*39』の状態異常を引き起こす。

 

 続いて己は、万一外した時のためにスルトに対して『牙折り*40』を叩き込む。

 

 凍結状態の相手に対して物理攻撃はクリティカルに入る。そして問題なく一段階の弱体化も入った。牙折りの実戦投入は問題ないと確認できた。まぁ所詮牙折りなのでダメージ量はそれなりだが、通常攻撃よりはダメージが大きい。

 

「あ、コレハマったっすね」

「氷結と電撃の耐性が重要と聞いたが、こういう事か」

 

 続けて先手に動けるヴァルキリーが『ATTACK』にてスルトを攻撃、当然クリティカルヒット。ダメージは加速する。

 

「『ラクンダ*41』……チャクラドロップでのMP管理、弱体強化のサポート、物理でのダメージ加速、それなりにやる事あんぞ、油断はすんな」

 

 サポート(後衛)のアント殿が的確に弱体を入れる。この方式の合体魔法は連鎖させるスキルのMPに変化はない*42

 

 マハアクエスの分のMP消費は、MPが若干低いヴァルキリーには厳しい。水撃系魔法への適正もないが故に。

 

 ……まぁ、MP切れの前には倒せるだろうという楽観はあるのだけれども。

 

「そんな……馬鹿な……ッ!」

「我は氷結を、克服した筈だッ! 何故、このようなッ!」

「それは! 合体でつける耐性スキルを妥協したからだ! 明日は我が身として恐ろしすぎるぞこの世界は!」

 

「……これ生前の俺が知ってたら普通にこのガキ殺せてたわ」

「智は力って奴っスね。小卒すらしてない身としては耳が痛いっス」

「……俺が使った教育のテキストであれば、貸そうか?」

「勉強嫌なんでいいっス」

「そうか。そうか……」

 

AUTO REPEAT!   死ぬまで続く

 

「うむ! 強敵だったな!」

「そうっスね。まさかHP半分になったときにあんなに恐ろしい強化を使ってくるなんて思わなかったっスよ」

「こちらの防御力を四段階、奴の攻撃力を4段階上昇させるとは、まっとうにやり合っていれば事故死しかねん。誰も火炎耐性装備をしていないからな」

「……いや、立ち回りからしてあいつ貫通系持ってるぞ。一手使う奴だろうがな*43

「ふむ。やはりあの頑丈さといい、まともにやり合う相手ではないな。恐るべきは魔王だ」

 

「……で、誰がツッコむんすか?」

「ボケなのか?」

「天然なジエン君は一旦置いといて、ツギハギさんとアントさんノリノリが過ぎません?」

「……正直、笑うしかないだろう」

 

「そもそもの話として、奴が加算式の眼光を使うタイプ*44じゃなかったらこうまでハマる事なかった訳だしな。加算式の連中には理論上の行動回数に上限は無いが、初手では一手しか動けねぇ」

「確かに、二手以上動けるのであれば一手目で凍結を溶かしてからの行動ができるだろう。そうなれば雑に振られるマハラギダインで死傷者が出かねぬ」

 

「あれ、アントさん? アントさんもボケ側っスか?」

「誰がツッコミなんて面倒な役回りになるか。死んでるんだから自由にさせろ」

「む? 死んだ程度で本人の性質が変えられるのならば苦労はなく無いか?」

「そりゃ……まぁ、そうだがな」

「というわけで、アントさん! ツッコミどうぞ!」

 

「この流れでツッコめる奴がいるか! 公開処刑だろうがそのフリは! 羞恥心で殺す気かバカトンボ!」

 

 そうこうしながらも、ツギハギ殿がこの異界の管理者に連絡を取る。上がってしまったゲートパワーを下げるには、新たな異界の主を置くしかない。

 

 どうしよう? ヴァルキリーを据えるのがベターなのだろうが、この合体魔法オーケストラを手放したいとは思えない。なんか適当な理由をつけられないだろうか? と愚考しているとツギハギ殿が頭を押さえながら口を開いた。

 

「……管理者は異界を破壊する事を決断したぞ」

「あん? どんな理由がありゃこの好条件の異界を潰すってんだ? 交通の便がそれなりで、出てくるMAGも悪かねぇのによ」

「おそらくそれが原因だ。──ダークサマナーに狙われたのは今回が16回目だそうだ。うちサマナーを仕留めたのは6回目。管理者は軽いノイローゼになっていたな」

「暇か⁉︎バカじゃねぇのかダクサマ共は⁉︎んな数失敗してんならちゃんとした対策練れや!」

「しかも追跡調査の結果全てのダークサマナーに関連性がないらしい。狙いやすい丁度いい異界としてのレッテルが貼られているようなのだ」

 

「これ、一念発起した情弱を嵌める罠として使われてないです?」

「にしたって使われ過ぎだろうがよぉ、情報回せや裏社会」

「ふむ……己達としては是非は無いのだが、大勢を見た場合この異界がなくなるとどうなる?」

「言い方は悪いが、誤差にすらならん。出てくる悪魔の種類が多いここは初心者用には使われん。中級者となれば最前線のサポート役の方でのレベリングの方が効率は良いから、中級者にも関係はないな」

「……こんな好条件の異界でそれかよ」

「世間様は様変わりしたっスねー」

 

 というわけで、異界の破壊活動を開始。レベル40代の悪魔狩りのサポートはいい経験になったらしく、ツギハギ殿のレベルはそこそこ上がっていた。トンボ殿も、20後半に差し掛かり、支援役としての動きを良くしていた。

 

 トンボ殿の強さに連動してアント殿も力をつけて行く。が、なんか元々の強さの方向性とはかけ離れていっているらしい。かつては物理型だったのが嘘のような支援魔法役である。

 

 魂の得意な性質がそちらなのだろう。それを肉体の影響で無理やり物理型をしていたからでは無いか? というのがツギハギ殿の推測だ。思えば、『ダンダリアン』という知識の悪魔をペルソナにしているののだし、その推測があっていそうではある。

 

 

 なお、氷結ガードキル持ちのモー・ショボーはGP上昇により出現がなかった。残念……

 

 

 かと思ったら、なんかビャッコが習得してくれていた。どこかのビャッコ*45と混ざった結果、電撃と氷結の二刀流になっていたらしい。レベル上昇で氷結ブースタと氷結ガードキルを覚えていた。

 

 ……ブフ系魔法を一つも持ってはいないのが、若干の哀愁を漂わせはするのだけれども。軸の混ざり、あるいは神話の混線など色々言われている奴だ。

 そんな仕様の外の動きをしていれば、たまにはこんな間違いめいた事もできるのだろう、うん。

 

「うむ! お疲れ様だ!」

「いやー、稼がせてもらったっスよ金もレベルもMAGとかも」

「……トンボ、お前は寝床などをどうするのだ?」

「いや、寝床はあるっスよ。ちょいちょい補修して住みやすくするっス」

「そういえば、何故にトンボ殿は宿無しをやっているのだ? 普通に稼げる力量はあるだろうに」

「いや、私寝床が寝れないタチなんスよ」

 

 あからさまに嘘に思える言葉を本心からを吐くトンボ殿。トンボ殿はトンボ殿でなかなかに難儀な生き方をしているようだ。まぁ難儀でない生き方をしているのならハンターにもデビルバスターにもならないとは思うけれども。

 

「……話さないなら構わん。だが、頼って来たなら力にはなる。その程度の義理はできたぞ」

「え、じゃあ6億円くれないっスか?」

「……すまんな、限度がある」

「えー」

「ふむ。6億円を稼ぐとするならば、どの程度の期間が必要になるのだろう? 今回の収入はマッカで数万ほどだが」

「今回レベルの稼ぎがそう何度もあるわきゃねぇだろうが……まぁ一月ありゃ普通に稼げるだろうな。円の価値なんざ下がりまくってんだから」

「一月後も世界が存続しているのなら、価値は残る。今のうちに円を貯めておくのも面白いか」

「おお! 投資という奴だな! だが、その手の話には詐欺が多いと聞くぞ」

「マッカを円にするだけの話に詐欺なんざあるか……ってできるわな。換金レートだとか偽札だとかで」

「あー、偽札詐欺。確かサトーさんが偽札詐欺やられて借金してたっスよね。今生きてますかねー?」

「知るか。ヤクザもんの作ったクローン兵士の外れ個体だぞ。普通に落ちぶれて死んでんだろ」

 

 という話をしながら帰路に着く。

 

 そこそこに実入りのある、良い日だった。

 

 まぁ、予想外の収入があり過ぎた結果合体に使うストック枠が潰れているという失敗もあるわけである。そのあたりは、『おりちゃー』でなんとかしよう。

 

 また、できる限り多くの悪魔のデータを魂に記録させ、アナライズを開けておく事も考慮に入れる必要がある。眼前に出た敵が初見であるかどうかは生死に直結……はしないまでも、戦闘での消耗には直結するのだから。

 

 

 ……なお、掲示板にいた識者によると、合体チャートの作成の時に考えなくてはならないのが、『悪魔合体を行うのにかかる時間』とのこと。完璧な合体経路を組み上げても時間切れになってしまえば合体施設の予約を取る所からの再挑戦となるからだ。

 

 業魔殿という船上の最強合体施設では予約を取るのも難しい為、主力を欠いたまま次の合体までの期間を過ごすことになってしまうのだとか。たいへんだ。

 

 シモン殿の合体施設も予約制に時間チケット制を取り入れているので、注意は必要だ。

 

 有志が纏めている各合体施設の作業率も合わせてチェックする必要があるだろう。

 

 うん。リオや杏奈に相談しつつまぁ色々と頑張ろう。まずは合体計画をノートに纏める所からだ! 

 

 

 なお、今回の異界探索の移動は電車である。遠方に行くときの乗り換えだとかは難解だが、アント殿の先導が正しかったおかげで己とツギハギ殿は迷わないでいられたのだった。東京ダンジョン、攻略も間近であるだろう、うん。

 


 

 合体素材を集めるだけの四方山話の注釈の数じゃない……ッ!

 

 ジエンくん

 前回ムラカミさん相手にやらかした反省から奇襲一発目に百麻痺針でなくもっとヤバイ技を持ち込んだ。

 ヴァルキリーという超便利な悪魔を仲魔にしたが、実をいうのならアクアやマグナの使い手の方がもっと欲しかった。初級スキルならウィスパーイベントでコツを掴めば自力で使える才能マンだからである。尚、比較対象に全属性のダイン級を振り回しながらラスタキャンディ使える高魔力ユニットのイザボー姉さん(現世にてメス堕ちJC化済み)がいるので、強みというほどの強みではない。ジエンくんの魔力は普通レベルである。

 

 アントさん達と別れてから乗り換えを間違えて埼玉県まで行きかけた。ダンジョン攻略はまだ遠い

 

 ツギハギさん

 誘われてレベリングの手伝いにほいほい向かった人。ジエンくんを見ると昔の仲間たちを思い出す。良い面も、悪い面も、どうでもいい面も。

 さっぱりわからない現代オタク話を理解するために勧められた、検索がやりやすい動画サイト(ニ○ニ○動画)のランキングにあったアニメを見て、カルチャーギャップにびっくりしている。コメントのネタの9割は理解できていないが、何となく楽しんでいる。

 

 ナッジアント達と別れてから自信満々に進むジエンくんの埼玉行きを止めた影の功労者。東京の駅は拠点にしていたので電車の運行ダイヤ以外は理解できている。が、知識のアップデートができていないのでだいたい遠回りになっている。

 

 トンボさん

 仕事探してレルム近辺をぶらついていた時に見つけたショタに仕事を集ったホームレス女性。ジエンくんが名前を呼ばなかったら通報されていたことを本人は知らない。アントさんは知っている。

 シャーマン系の異能者であり、召喚系スキルへの適性がある。が、COMPにその辺で拾ったスマホを使っているので仲魔契約ができない。勉強も嫌いだし現状を変えようという強い心も持っていない流されるだけの1個人……に見えて、妙にしぶとく図太く生きている。

 アントさんが霊体になって専属保護者になったため、生活が改善傾向に向かっている。

 

 アントさん

 がんばれ

 

 スルトさんとダークサマナー

 一念発起して異界制圧からのスルト超強化でのし上がってやる!という夢を抱いた儚い人たち。氷結無効のスキルを付けそこなったのは悪魔全書から引き出すマッカが足りなかったから。妥協して耐性にしたので死んだ。儚い。

 スルト的にはこのサマナーの事は好ましく思っており、自身のクソ雑魚霊基をこの作戦で何とか出来たらちょっとくらいいい目を見させてやろうと思っていた。儚い夢である。

 

 異界の管理者さん

 実はこの異界が前回襲撃されたのは一昨日。必死にGPを下げて皆のために使える異界に整備していたのにそのすべての努力が無駄になって壊れた。

 現在はもっふんに抱き着いてふて寝している。

 

*1
真4シリーズ 悪魔会話の一つ。悪魔からの融資を求めるもの。緊縛状態の相手からは無条件で限界まで引っ張れる

*2
パトる 死亡した際に見た情景を書き写すとフランダースの犬の最終シーンに酷似した状況になった事から死ぬことをそう呼ぶ。アニメーターに悪魔業界の奴が混ざりこんでいた疑惑が深まった事実である。なお、死ぬときの情景には個人差があるのでピンとこない人もいる。

*3
ソウルハッカーズ2において、主人公リンゴのコンプ改造に物理貫通を付与できるものがある。改造の1段階目で耐性を、2段階目で無効を、3段階目で吸収を貫通できる

*4
自動効果スキル 敵から狙われにくくなる

*5
特殊スキル ストックから仲魔をレベル高い順に限界まで召喚する

*6
敵全体に緊縛状態を付与

*7
敵単体に混乱状態を付与

*8
敵単体に魅了状態を付与

*9
真4シリーズ 悪魔会話の基本 仲魔にスカウトする。口調が若い女性の悪魔は魅了状態のとき、無条件で仲魔になる

*10
真4シリーズ 悪魔会話の一つ、物品を要求する交渉 混乱状態だと無条件でトレードが成立する。

*11
みんな大好き銃撃反射 羽根ついてるから!と思考停止してはならない

*12
D2と超力兵団の混ざり

*13
敵単体の氷結相性を3行動の間通常にする ソウルハッカーズ2

*14
真1 状態異常効果のある弾丸は銃撃相性じゃないナニカとして扱われる どこかの職人が手作りで作っているらしい

*15
ソウルハッカーズ2においての魔王スルトはLV45

*16
スレ民「漫画好きが暴れるみたいだから便乗しよーぜ!」

*17
敵全体に物理属性小ダメージ 会心率が高い

*18
敵単体に電撃属性中ダメージ ダメージは力依存

*19
敵全体に電撃属性中ダメージ

*20
敵全体に水撃属性中ダメージ』

*21
敵全体に地変属性中ダメージ

*22
敵全体に疾風属性中ダメージ

*23
無計画に合体をしているときに使えそうなスキルを適当に詰め込むアレ

*24
赤坂アカ×横槍メンゴのタッグが描いている大人気漫画 アニメ化もした。ヤングジャンプでの連載だが、1週間遅れでジャンプ+にて無料配信されている

*25
機械式アナライズでの測定結果 ジエンくんのレベル換算は漫画さんとだいたい同じなので、誤差は5レベル程度

*26
敵複数体に銃撃属性中ダメージ1~3回 緊縛属性を付与

*27
カバー 味方一人への攻撃を代わりに受ける

*28
大天使のブラ 胴装備 電撃吸収衝撃弱点の耐性(衝撃弱点は頭部のヤクトヘルムにて埋めている)

*29
攻撃が吸収、反射されたときプレスターンアイコンが4つ減少する

*30
真V 攻撃失敗時のアイコン減少を通常と同じにする

*31
SJ出典 銃『フロスト砲』のスキル 銃撃だが魔力依存

*32
敵単体に物理属性大ダメージ 高クリティカル率 低命中率

*33
悪魔は致命傷一歩手前の状態になると敵側から命乞いをしてくることがある。発生率を上げる『脅威のオーラ』などがあるが、このパーティに習得者はいない

*34
敵単体の衝撃属性相性を3行動の間通常にする ソウルハッカーズ2

*35
真V 3ターンの間、敵から狙われやすくなり、自身の防御力を1段階上昇させる

*36
味方の防御力、命中回避を20%上昇させる ソウルハッカーズ2

*37
味方の攻撃を1段階上昇させる

*38
ペルソナ2罪 術者の技(TEC)の平均値×4のダメージ+氷結

*39
行動不能の状態異常 かつ物理攻撃が確定クリティカルになる

*40
敵単体に物理属性小ダメージ 攻撃を1段階弱体化

*41
敵の防御力を1段階弱体化

*42
DDSATの合体魔法リンケージでは、リンケージ参加者全員がリンケージスキルのMPを消費する必要がある

*43
実際持っていたのは火炎ガードキル ソウルハッカーズ2にてスルトがLV48にて習得

*44
ソウルハッカーズ2形式の悪魔

*45
P5RにてビャッコはLV48で氷結ガードキルを習得する



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邪教の館大決戦! ガバチャーもあるよ!

 ノートに書き終えた合体ルートを見る。

 正直、美しいとは言えない。だが手持ちと相談した結果としてこの二段階に分ける合体ルートが適していると判断した。

 

 今回求める悪魔のはメインアタッカーとなり得る仲魔だ。そのために狙いを定めたのは『魔王キングフロスト』。ヒーホー族の高位悪魔にも関わらず通常合体で現れてとても驚いた*1という情報が上がっていた。

 

 氷を操るヒーホー族の習いとして、キングフロストは火炎属性が弱点だ。よって耐性を埋めるために『火炎無効』を確保する。

 そのために作るのが、女神スカアハ*2LV44。()()()()()()()()火炎無効を習得する。

 

 若干の余り気味だった妖精ティターニア*3ベースLV48と、全書の『天使ヴァーチャー*4』ベースLV41を合体させれば、『女神スカアハ』が作成可能だ。

 

合体素材妖精ティターニアLV48天使ヴァーチャーLV41
合体結果女神 ベースLV46 女神スカアハLV44

 

 このスカアハと『魔王』を合体させて高レベルの『邪神』を作り、それと龍王ゲンブを合体させる事で魔王キングフロストを作る。

 

 ゲンブはもう少しのレベルアップにて氷結ギガプレロマを習得するので、これを継承させれば火力面でも問題はない。無印プレロマも仕込みたくはあるが、御霊合体でスキルを調整する時に十分仕込むことはできる。問題はない。

 

 という事で、キングフロスト作成ルートは一区切り。

 

 続いて、妖魔ヴァルキリーのランクアップ。

 ある合体方式にて、2段階のランクアップが発生する事が確認されている*5。丁度2段階ほど低いレベル帯であるから、これを使って妖魔ヴァルキリーを『妖魔マスターテリオン』にランクアップさせたい。

 

 そうなると、マスターテリオンの弱点を埋める必要がある。この方式でのマスターテリオンの弱点は銃撃と、破魔。

 銃撃無効は今持っている地霊スダマLV42が習得でき、破魔無効は全書にある地母神ハリティーLV40*6が覚えている。

 

 ノームを作る材料は地母神2体だ。

 その際の合体素材にスダマを経由して作ったモノを使えば良いだろう。今回は全書を利用して弱い地霊を作り、精霊合体を経由する方針で行く。

 

先ほどと違うとある合体方式に精霊合体で割と自由自在にランクを変化させられるものがある*7。手持ちのスダマと全書からの地霊ドワーフLV8にて精霊アーシーズを作成。

 アーシーズと地母神ペレLV7を合体させると、地母神キクリヒメLV24が作成できる。

 

 この地母神キクリヒメと全書の地母神ハリティーを合体すれば、耐性を持ったノームがついに完成。

 

 そして、そのノームとヴァルキリーを合体させれば! 

 

妖魔マスターテリオンLV62
火炎無効 氷結無効 呪殺無効 銃撃弱点→無効 破魔弱点→無効
銃撃無効 破魔無効 アギダイン ブフダイン マハマグナス マハアクエス マハガルーラ セーフティ 

 

 まぁ、これはあくまで予定なのだけれども。

 

 

 続いて、聖獣ビャッコを使った合体。ガードキル要員がどの程度必要なのかは正直不明である。まぁ腐らないだろうという事で合体をする。

 

 ガードキルを使うシチュエーションというのはどんな場合か? という所から必要ステータス、および能力を逆算。

 ガードキルを使うタイミングはボス戦、強敵との戦闘時。全属性反射があるようなトンデモとの戦闘時、という事である程度の耐久力が必要だ。純魔法型であれば万能のダメージで消し炭になるだろう。

 

 

 また、合体素材として使いたい悪魔は夜魔サキュバスLV47。理由は、純粋に余っているから。

 聖獣ビャッコLv43と合体させると、主に天使が出来上がる

 

 50レベル周辺の天使は基本的にドミニオンになる。

 

 そのドミニオンを素材にしての悪魔合体は色々あるが、無難にランクアップ合体が良いだろう。天使は人格が信用できないことを除けば結構使いやすい悪魔なのだから。

 

 そうなれば、作成する悪魔はLV60周辺。よって天使ソロネになる。

 ソロネの弱点は氷結と呪殺だ。

 

 耐性スキルの氷結無効は、死神チェルノボグLV44がLV47にて習得。こいつはレルムにて購入可能らしい。

 

 破魔無効は、『デビルソース』というモノを使えば付与できるとの事。レベリングツアーの時に仕留めた『天使ドミニオン』が落としたモノを、『邪神パチャカマク』のデビルソースと交換してくれるという人がいた。

 破魔無効がどうしても欲しかったらしい。己も呪殺無効が欲しかったので、win-winの関係である。

 

「完璧なチャートだ……」

 

 尚、現在時刻は午前4時

 

 宿題を終わらせ、予習を済ませ、様々な調べ物や合体法則の調査をした結果いつのまにやら朝である。

 

 以前の天蓋のある世界ならば普通に仮眠を取るのだが、残念ながらお天道様がキラキラと輝く中では難しい。

 

 

 という事で、眠気を我慢しレルムに赴く。

 朝食に出してもらったバナナヨーグルトとコーヒーが己の眠気を覚ましてくれたので、気分爽快である。タナカ殿は細かい所に気がきく良き御仁なのだ。

 

 

「ほうほう。悪魔の集いし邪教の館にようこそ」

「うむ。まずはこちらの合体ルートの確認を願う」

「……どれどれ?」

 

 シモン殿が冷や汗を掻きながらノートを見る。色々と汚く方針は書きはしたが、やる事といえばスカアハの合体が1回目、スダマを素材にしたアーシーズを作るので2回目、適当な地母神にするのが3回目、地母神二体でノームを作るので4体目、ノームとヴァルキリーの合体をするので5回目。

 

 うん、おかしくはないな。

 

「……ここも業魔殿のようになってきたのぉ。ロマニくんまだ生きておるじゃろうか?」

 

 合体第一陣はつつがなく完了する。

 

 予約時間は1時間。実際かかった時間は58分26秒。

 

 有志の者達が纏めた『各地の邪教の館における合体施工の平均時間表』に基づいた合体プランであるため、可能であるとは理解していた。

 

 それはそれとして、間に合わないか? と怖くはあったけれども。

 

 という事でひと段落。返す刀で悪魔素材のレベリングを開始する。

 

 やり方は、マネーパワーによるもの。

 ある程度のレベルの悪魔であるなら、レルムにて購入できる『悪魔専用の魔導書*8』にてレベリングが可能なのだ。

 

 限界レベルはその日に魔導書を出品している者達の実力に依存するので不確定であるが、40台の悪魔なら割と簡単にいけるらしい。

 

 もっとも、掲示板情報なので信憑性は薄いけれども。

 玉石混合の石の方であると勘は言っている。自身の作った魔導書を売り出したい者の『すてま』という奴かもしれない。

 

 まぁ、『すてま』の何が悪いのかはよくわからないのだけれども。良い品物は良いのだから宣伝しても良いではないか。悪いものなら売れないだけなのだし。

 

 

 尚、今回買った魔導書の限界レベルは45だった。スカアハもチェルノボグも2レベル自力で上げる必要が起き、近場の異界に突入する羽目になったのであの宣伝をした人間がいたら一発殴ってやりたい気分になった。

 ……ハッ!これがステルスマーケティングを禁止する理由なのか!

 

 

 閑話休題

 

 

 異界にてちょうど良い()()()()もあった結果、仲魔のレベルはパパッと規定値に到達してもう一度シモン殿の所へ。

 

 4時間ぶりである。シモン殿は割とびっくらこいていた。予約を取れた己も割とびっくらこいていた。

 

 それにはどうやら新しく雇うことにしたバイト殿の尽力があったかららしい。予約のキャンセルなどのシモン殿一人では追いつかなかったところをサポートしてくれたらしい。

 レベルはさほど高くないが、深い知識と情報管理能力があってこそできること。バックアップ要因として相当に頼りになる戦士になるだろう。いつか共闘する日が楽しみだ。

 

「……こんな子供が、LV60……ッ⁉︎」

「うむ。必死で頑張ったからな」

「……失礼しました。こちらへどうぞ」

 

 という事で合体再開。火炎無効のスカアハ、氷結無効のチェルのボグを全書に登録しつつ合体をする。

 

 スカアハを魔王と合体させて邪神を作るつもりだが、少々ベースレベルが足りないので精霊合体をして誤魔化しをする。

 

 スカアハと全書の魔王バロールLV36を合体させて邪神バフォメットlv38

 バフォメットにウンディーネの精霊合体を2回行うと、邪神パチャカマクlV47から邪神トウコツLV58だ。

 

 こうしてできた邪神トウコツと龍王ゲンブを合体させれば、魔王キングフロストの完成だ! 

 

 

「ククククク、魔王ロキと申します。今後とも宜しく」

「な、何故に⁉︎ベースレベル60のキングフロストが合体結果の筈ッ!」

「まさかコヤツ! 悪魔の方から合体の軸を合わせたのか! ジエンのような面白い少年を見て楽しむために!」

「ククククク。ご安心下さい。魔力は高く、氷結は無効耐性。レベルも64と高めに持ち込めたので、戦力にはなりますよ?」

 

 レベルの自己申告に驚いて契約をチェック。きちんと縛れてはいる。だから、ひとまず殺意の刃を下げる。牙折りから百麻痺針で乱戦に持ち込むのはしないですみそうだ。

 

「ふむ? 契約で縛れているのは確認できているが、レベル差があるのだから反逆できるであろう? 己はさほどゲンブにもスカアハにも良くした覚えはない。忠誠を誓われる故はないな」

「ありますとも。貴方のその魂は面白い。その魂が混沌へと傾いてくれるのならば、より良いのですがね」

「うむ。悪魔の甘言に惑わされぬよう、心しておく」

「ククククク」

 

「ところで、その笑い方苦手なのか? 引き攣っておるぞ?」

「……つい先程まで獣だったので。まだ慣れないのです」

 

 

 なお、氷結ギガプレロマの移送は完了しており、ロキの氷結魔法適性も高かったので御霊合体でスキルを少しだけ調節して、戦力にした。

 

 魔王 ロキ LV64(p4g)

 

魔王ロキLV64
氷結吸収 呪殺無効 火炎弱点→無効
ブフダイン マグナス 氷結ギガプレロマ 火炎無効 雄叫び テトラジャ 道具の知恵・癒 身体状態異常無効

 

「ところで、これは合体事故なのだろうか?」

「うむ……結果は同じ魔王じゃからの。事故とは言い切れぬ。館のシステムが適応しきれてなかったが故に、違う軸の合体と混ざってしまったのが理由じゃろう」

「なるほど、仕様を間違えただけなのだな」

 

 これはあくまで合体事故ではない、という事になった。シモン殿の邪教の館の合体事故率が低い理由が見えたような気がしたが、まぁそれはそれ。実際に事故が起きにくいシステムなのは確かなのだろう。

 

 そして、サキュバスとビャッコを合体させて天使ドミニオンを作成。それを精霊合体でランクアップさせれば! 

 

天使ソロネLV62
火炎無効 破魔無効 呪殺弱点→無効 氷結弱点→無効
ランダマイザ 呪殺無効 氷結無効 氷結ガードキル アギダイン マハンマオン メディラマ サマリカーム 

 

「フフッ、勇者よ。貴方と共に戦えることを光栄に思います。私は天使ソロネ、今後ともよろしく」

「己は勝てる戦いしかしていない故、勇者ではない。だが、共に戦うことを望んでくれるのは有り難く思う。ジエンだ、よろしく頼む!」

 

 

 新たに仲魔となったのは3体。

 妖魔マスターテリオン、魔王ロキ、天使ソロネの3体。

 これによってゲンブ、サキュバス、ティターニア、ヴァルキリー、スダマ、ビャッコとレベルが低めの仲魔を一気に使ったが、後悔はない。

 

 

「ところでジエンよ。──支払いは本当に大丈夫なのじゃな?」

「うむ! 諸々の経費を合わせて! これが! 己の! 集めた! 30万マッカだぁ!」

 

 

 ちなみにだが、レルムでの悪魔の買い物その他諸々はどうせ使うところがシモン殿のところであるからとここに集まってくる。

 バイトの娘たちがせっせと運んでくれた悪魔やデビルソースとかの代金は、合体事故の際の賠償なども合わせる可能性を考えて一括後払い。

 ツケは効かないので、ここで払えなければ闘技場へと直行するという闇ルートが存在するという噂もあったりした。

 

 しかし! そんな事は己に全く関係はない! 

 

 この世界にやってきてからせっせと貯めていた貯金を全て解放したのだから! この程度の額(たったの30万マッカ! 程度!)

 

 どうという事はないのだぁ!!!! 

 

「目が死んでる……ッ! 噂は本当だったんだ……ッ!」

「嘘……とも言えんのじゃよなぁ。闘技場での仕事を紹介してるのは事実じゃし」

「……まぁ、実際問題として今すかんぴんになってしまったのは事実。手頃な仕事の紹介は欲しくはあるな」

「ならば、これはどうじゃ? 悪魔の作成依頼じゃ」

「……ふむ、幽鬼ムラサキカガミLV61か。カジュアル系の悪魔が故に狙っての合体は起こしにくいと。合体事故を狙うのだな」

「その通り。悪魔素材を集めて満月の日に試行錯誤じゃよ。レベル帯もジエンとちょうど合致するしの」

「うむ、受けよう! 前金でこれくらい欲しいのだが」

「そこはまからんわい。前金は報酬の2割じゃ」

「むぅ、そう上手くはいかぬか。では、己はこれにて。良き合体を、感謝するぞ」

「ほっほっほ。なぁに、ワシは合体のデータを欲しておるのじゃよ。win-winという奴じゃ」

 

 

 そうして、シモン殿の館から出る。

 

 そうしているとCOMPスミスの所にまたしても呼ばれていたリオと合流して、仕事のために移動する。

 

 己達の受け持っている討伐系依頼は最前線組が様々な理由で後回しにするものが多い。

 故に敵レベルは最前線より低いが、まぁ危険なことには変わりない。

 

 装備を整え、悪魔を調整し、頑張っていこう。

 

「……あ、ファフニールに活脈仕込むの忘れていた」

「そういうのあるから、私は悪魔召喚士できなくなったんだよねぇ。面倒くさくなっちゃってさ」

「そういえば適性はあるのだったな」

「うん。一応ね」

「へー」

 


 

【九死に一生】見え見えの罠依頼に引っかかったったw【ショタは強い】

 

1:騙されイッチ@レベル上げ中

 死にかけました、はい

 

5:名無しさん@レベル上げ中

 立て乙。罠依頼ってどんなんよ? 

 

8:名無しさん@レベル上げ中

 情弱は氏ぬから、まぁ気をつけような

 

10:騙されイッチ@レベル上げ中

 思い知ったわ本当に。俺も情弱だったし俺をハメようとしたクソも情弱だった

 

12:名無しさん@レベル上げ中

 で、何があったの? 

 

13:騙されイッチ@レベル上げ中

 まず俺のスペックから。

 現在レベル20台のサマナー。金もMAGも道具もなくてギリギリで、罠っぽいなぁとか思っても借金返すために依頼に突っ込むしかなかった。

 

 依頼の方は、異界の調査依頼。

 推奨レベル20程度の異界で、初心者でも安心安全! 報酬は全額前払い(手渡し限定)という奴。

 

15:名無しさん@レベル上げ中

 あからさまに『騙して悪いが』で草

 

19:名無しさん@レベル上げ中

 いくら困窮していても、飛び付いちゃいけない所ってあるよな。

 

21:騙されイッチ@レベル上げ中

 ほんそれ

 

25:名無しさん@レベル上げ中

 で、あからさまに罠だけど、身体分解されてMAGタンクとか苗床ルートだった? 

 

27:騙されイッチ@レベル上げ中

 多分苗床ルート。異界の主となんかの呪術的契約してたらしく、供物を捧げる事で利益を得ていたみたいな雰囲気だった。

 

32:名無しさん@レベル上げ中

 んで、どうやって助かったん? 

 

35:騙されイッチ@レベル上げ中

 途中で道を聞いてきた子供がいてさ。同じ異界目当てだったから一緒に行ったのよ。

 そしたら、依頼者がその子は俺の仲間だ! って思い込んでな。その子もレベリング目的だったらしくノコノコ着いて行ったのよ。

 

39:名無しさん@レベル上げ中

 被害者が増えた! 大変だ! 

 

40:名無しさん@レベル上げ中

 え、どのくらいの子供だったん? 高校生くらい? 

 

45:名無しさん@レベル上げ中

 男の子。背はちっちゃめだけどいちいちいろんなことに目をキラキラさせる子で、年齢は13くらいだって言ってた。

 

48:名無しさん@レベル上げ中

 DCだとぉ⁉︎

 

50:名無しさん@レベル上げ中

 おめめキラキラなショタっ子とか大好物です。貴様まさかその子を囮にしやがったのか! 

 

52:名無しさん@レベル上げ中

 は、イッチ許せぬ。今狩りに行きますねー

 

56:名無しさん@レベル上げ中

 いや流石に子供を守って死ぬ程度の覚悟はあるからな? 

 まぁ、そんなわけでマナー違反とかあるし、その子へのアナライズを俺も依頼者もコトが起きるまでしなかったわけよ

 

59:名無しさん@レベル上げ中

 なんかの悪魔だったんか? 

 

60:名無しさん@レベル上げ中

 ショタの悪魔……つよそう

 

61:騙されイッチ@レベル上げ中

 で、異界に入ってすぐ依頼者は襲ってきたのよ。一方通行のワープゾーンに踏み込んで逃げ道が無くなってたのもあって、『あ、俺死ぬんだ……』って走馬灯が起こったくらいのレベル差はあってな

 

65:騙されイッチ@レベル上げ中

 で、走馬灯走って思考が加速してたから見えたんだけど、依頼者が俺を攻撃しようとした動きのまま腕が千切れ飛んででて、一瞬後に蜂の巣になってたのよ。

 

68:名無しさん@レベル上げ中

 話の流れ的に、ショタっ子か。

 

69:騙されイッチ@レベル上げ中

 うん。裏切って奇襲を仕掛けようとしてきた男が一歩動いた段階で殺す動きに入ってた。シームレスすぎて意味わかんない。専門の殺し屋的教育を受けた子供か? とか思ったくらいに現実感なかった。

 

71:名無しさん@レベル上げ中

 あー、分かるかも。銭湯でよく見るショタがそんな感じのヤバさあったわ。

 

74:騙されイッチ@レベル上げ中

 まぁ、そんな事があって一瞬で依頼者が死んで。俺は呆然としてた訳な。で、依頼者の仲間がやってきた訳よ。

 

 LV70クラスの悪魔を召喚して一瞬で焼き払ってた訳よ。

 

78:名無しさん@レベル上げ中

 なんつーショタだ。どっかの対魔一族の生き残りかね? 一族への忠誠心とかでレベル以上の悪魔を使役してるとかの。

 

81騙されイッチ@レベル上げ中

 話聞いた限りだと、その悪魔はさっき合体で作ったらしくてな。その魔法慣れてなさすぎじゃないか? とか悪魔にダメ出ししてた。

 

85:名無しさん@レベル上げ中

 純粋に実力で使役してるのか……マジか……

 

86:名無しさん@レベル上げ中

 絶対悪い薬とか使ってるって。他にはショタコンおばさんおじさん相手におせっせしてMAG太りとかしてるでしょ。

 その年齢の子供が戦える訳ない。恐怖でメンタル崩れてぐちゃぐちゃになるのが普通だよ。

 どんなに訓練したり洗脳したりしても、魂の錬磨には根っことなる人生経験が必要だから

 

90:名無しさん@レベル上げ中

 けど人間として出来てる人ってレベル低くなりがちじゃない? 戦いで安定取るし、勝てない戦いあんましないし。

 

91:名無しさん@レベル上げ中

 >>90 勝てない戦いやったら普通死体になるんですけど

 

96:名無しさん@レベル上げ中

 強くなる人ってそういうところで生き残った経験で魂を荒く削って磨いてるのよ。万に一つの勝ち目しかないのに勝ち残るとかのさ

 

101:名無しさん@レベル上げ中

 ちなみにイッチ的にはショタっ子はどう見えた? なんかヤバげな薬でイカれてるタイプ? 

 

103:騙されイッチ@レベル上げ中

 ヤバげな薬やってるようなガキが、奇襲されたのに先手取って悪魔召喚して、その悪魔に行動させるとかできると思う? 

 

104:名無しさん@レベル上げ中

 召喚術のレベルがヤバすぎるw

 ……うん、それ俺が今授業中の技です。修行してて何度も人間の戦い方じゃない! って思ったか数えきれない程度にはイかれた思考速度が必要になるタイプの術よそれ。

 

105:名無しさん@レベル上げ中

 そのショタは人生を何倍もの密度で生きているから、精神年齢が倍とかになってたり? 

 

110:名無しさん@レベル上げ中

 ショタっ子13歳(精神年齢26歳)ってコト⁉︎

 

114:名無しさん@レベル上げ中

 人生倍速モード、これはZ世代ですわ。

 

115:名無しさん@レベル上げ中

 倍速モードの人生で完璧に動けているのなら、それはTASさんかなんかでは? 

 

116:名無しさん@レベル上げ中

 ……あ、その子もしかして野生児くんじゃね? 

 

121:名無しさん@レベル上げ中

 知ってる子なん? 

 

126:名無しさん@レベル上げ中

 詳しくは語らんが、異界生まれ異界育ちの13歳ハンターだとか。悪魔肉の食い方で美食勢とレスバしてたの覚えてるわ。栄養補給と美食のバランスの話で

 

129:名無しさん@レベル上げ中

 で、なんで野生児? 

 

133:名無しさん@レベル上げ中

 その子悪魔肉は生食派なんよ。MAGの塊だから煮ても焼いても、死んでから時間が経つだけ栄養が落ちるから! って

 

135:名無しさん@レベル上げ中

 ……生食ってか、踊り食いでは? 

 

137:名無しさん@レベル上げ中

 うん。だから最終的には生きた悪魔を煮たり焼いたり塩振ったりして調理しながら殺すのがいいんじゃないか? って話になってた。あたまおかしい

 

138:騙されイッチ@レベル上げ中

 間違いなくその子だわ。スカアハとチェルノボグに戦わせてる間に異界の主のアイラーヴィタに塩胡椒振ってたもん

 

143:名無しさん@レベル上げ中

 無垢故の、邪悪さかッ! 

 

147:名無しさん@レベル上げ中

 美食でレスバするショタは果たして無垢なのだろうか? 

 

151:名無しさん@レベル上げ中

 純粋無垢な食への渇望やな。日本人だって毒草をごちゃごちゃしてこんにゃくにしてるじゃん。同じだよ。

 

152:名無しさん@レベル上げ中

 へー。ところでイッチよ。そのショタっ子に寄生してレベルどんだけ上がった? 

 

155:騙されイッチ@レベル上げ中

 ……30が見えてきました。

 

160:名無しさん@レベル上げ中

 20後半とか超羨ましいんだが? ショタっ子に寄生して上げたレベルでそうなるとか、恥ずかしくないん? 

 

162:騙されイッチ@レベル上げ中

 恥ずかしいに決まってるやん! けど異界探索募集の下限にようやく引っかかったから嬉しくもあるんだよ! 畜生! 今度ラーメン奢る約束したから絶対稼いでやる! 

 

165:名無しさん@レベル上げ中

 ちゃっかりショタと仲良くなってて草。ええこやな。

 

166:名無しさん@レベル上げ中

 けどその子、お前が罷り間違って奇襲とかしてきた場合に備えてスキル構えてるから、言動には気をつけろよー

 

171:名無しさん@レベル上げ中

 え、怖

 

174:名無しさん@レベル上げ中

 銭湯で無意識に間合い取ってる人らと良くぶつかってるねん。一歩間違えば普通に殺し合いだから見てて面白いぞ

 

178:名無しさん@レベル上げ中

 >>174 畜生で草枯れる。ここは安全だって教えてやれよ誰か。安心させてやれって誰でもいいから。

 

179:名無しさん@レベル上げ中

 野生児くん良く湯船で蕩けてるし、気を抜いては居るんだと思うよ? 

 むしろ気を抜いてなかったら反射での攻撃とか振らなくない? 反射怖いじゃん

 

180:名無しさん@レベル上げ中

 それは……そうなのか? 

 

181:名無しさん@レベル上げ中

 最近のトレンドはスプリガンベストだから、物理スキル使いが大変なんよ

 

186:名無しさん@レベル上げ中

 量産されたスプリガンさんがベストに加工されていく! 

 

188:名無しさん@レベル上げ中

 ちなみにレルムでも流行ってるから、スプリガンを酒浸りにさせて魔晶変化させる仕事は絶賛募集中やぞ。

 サマナーさん達よろしくな。

 

191:名無しさん@レベル上げ中

 魔晶変化に必要なスプリガンLV45*9とかなんですが

 

196:名無しさん@レベル上げ中

 そのレベル帯のサマナーって前線引っ張りだこじゃね? エストマとかライトマとかマッパーとか便利スキルてんこ盛りにできる上に戦闘もできんだぜ? 

 

199:名無しさん@レベル上げ中

 異能者とサマナーの違いよなぁ。スキルの手数の幅広さは。

 

204:名無しさん@レベル上げ中

 まぁ、そんなに広い手札を使い切れるサマナーなんてそうそういないんですけどね! 

 

208:名無しさん@レベル上げ中

 時に質問なのだが、イッチ殿はあれから無事だったのか? 

 

211:騙されイッチ@レベル上げ中

 ショタくんにおんぶに抱っこだったから無事だったぞ。

 

212:名無しさん@レベル上げ中

 あの手の連中の仲間意識は強いからな。仲間の死の原因と見られるイッチ殿が闇討ちされているかと少しばかり不安だったのだ。

 無事ならば良いことだぞ! 

 

217:名無しさん@レベル上げ中

 あ

 

218:名無しさん@レベル上げ中

 

 

222:名無しさん@レベル上げ中

 

 

223:名無しさん@レベル上げ中

 イッチこれ、不味い奴では? 

 

224:騙されイッチ@レベル上げ中

 急募! ヤクザにカチコミする面子! 

 レベルが高い方が望ましいです! 

 

 

229:名無しさん@レベル上げ中

 誰だか分からん雑魚の為に危ない橋を渡る訳ないんだよなぁ。イッチの弱さ的に強い人きてくれないと負け戦じゃん。

 

232:名無しさん@レベル上げ中

 キリギリスのイベントは多々あったけど、あれ全部勝ち戦だもんな。LV90とかの精鋭が参加してるって勝算あったし。

 

234:名無しさん@レベル上げ中

 まぁ、負けたら世界が滅ぶ的なイベントもあるけどそれはそれ。勝算はあったしね。

 

238:名無しさん@レベル上げ中

 で、誰か来てくれます? 

 〇〇組なんですけど

 

242:名無しさん@レベル上げ中

 あ、〇〇組ならもう潰れてるぞー。技研の姫さんがカチコミしてたの遠目に見た。

 

246:名無しさん@レベル上げ中

 最近たまに聞くなーその名前。秘伝書サブスクしてる人だよね? 

 

249:名無しさん@レベル上げ中

 え、何その罰当たり

 

254:名無しさん@レベル上げ中

 情報価値が価値が大暴落したのもあって、秘伝書とかもう公開して良いや! ってなったらしい。値段はサーバー代とかの月額1000円な。

 姫さんってのはどの古文書について質問しても全部答えてくれる知識のモンスター。その高すぎる知性から全部殴り飛ばせば良いという結論に至った人よ。まさしく賢者。

 

257:名無しさん@レベル上げ中

 森あたりに居そうな賢者やね。

 

259:名無しさん@レベル上げ中

 ちなみにそのサブスクサービス、古文書にコメントで解説してる人とかいるので素人でもそこそこ理解できるぞ。

 スキルを鍛錬で習得するタイプの人はチェックしてな! 

 

 このサービス利益出てるか怪しいので、いつ無くなるかと不安やねん。

 

260:名無しさん@レベル上げ中

 投資してやれよ

 

265:名無しさん@レベル上げ中

 課金とかできないん? 

 

270:名無しさん@レベル上げ中

 そこになければないですね。

 

274:名無しさん@レベル上げ中

 やる気ない店員やめーや

 

 


 ジエンくん

 ステマに踊らされて若干使いにくい魔導書を余らせた。ただ、コレは優良誤認ではなく基準のレベルが機械式だったので45レベルで使用限界になったというだけである。

 ジエンくんはせっかくだからと掲示板で合体の方針を相談しようとしかけたが、技研の総力を挙げてそれは阻止した。手持ちの情報は金に等しいという事をあんまり理解できていない。

 

 今日のあらましを話したら、単身での異界突入を行ったことをものすごく怒られた。運よく倒せる相手だったから良いモノの、事故れば死ぬ可能性があったからである。

 素直に反省し、廊下でバケツを持って立つことを選択。その時発生した誰がジエンくんにそんな辱めを命じたのか?で技研内部でのにらみ合いが始まるのだった。

 

 悪魔合体師シモン・ムーラン

 レルムの発展とともに信じがたい速度で多忙になっていった。その結果として新たに合体の軸に据えられる合体法則の再現性を確認した。悪魔合体師の中で共有はしたので設備投資をする施設も出てくる頃合いである。そんなこんなで大変だったので、事務系のバイトを雇うことにしたとか。

 現金手渡しを望んでくるのは少し怪しかったがバイトたちが善良であることから、悪いことにはならないだろうと信じることにした。

 時間があれば相談にも乗ろうとは思っているが、単位時間当たりの合体効率を公表されて、合体の精度が業魔殿クラスだと知れ渡ってしまったのでそんな暇がやってくることは当分ない。有能すぎるのが悪いのだよ!

 

 騙されイッチ

 善良であるからこそ命を繋いだ愚か者。もしもあのとき、ジエンくんを盾にして逃げようと動いていたら命はなかった。

 ジエンくんは死体が宝箱に見える世界の出身なのである。

 

 

*1
ソウルハッカーズ2出典 普通に魔王の合体結果として出てくる 特殊合体はじゃあくフロストのみ

*2
ソウルハッカーズ2出典 ソウルハッカーズ2は無敵耐性のスキルが安い(割と貫通されるから?)

*3
地変魔法マグナスを軸の混ざりで習得していたティターニア ベースはペルソナ3

*4
真4f サバトマやテトラジャを習得する天使。

*5
ストレンジジャーニーの合体方式。ノーム、ウンディーネ、シルフ、サラマンダーの高位精霊は特定種族に対して2段階ランクアップを起こす

*6
基礎レベルは36 破魔無効をレベル40にて習得 真4無印出典

*7
真3方式 高位精霊が存在しないことで、アーシーズたち下位精霊の影響範囲が大きくなっている。

*8
真5やソウルハッカーズ2などにおいて、レベルアップ経験値獲得アイテムは人間、サマナー用のモノと悪魔用のモノに分けられた

*9
機械式アナライズの結果。デビルサマナーにおけるスプリガンはLV40



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天狗修練界 造魔鬼一法眼を討て!

今回ちょっと長いです。切り時を見失いました。


 今回任された依頼の共同相手として、ムラカミ殿がやってきた。

 

「フッ、早かったな」

「いや集合時間ちょうどだから。むしろアンタが遅刻ギリギリなの見たからね」

「声をかけようとしたのだが、早足で行かれてしまってな」

「……フッ」

「意味深に笑えば誤魔化せると思ってるの割とダメなところだと思うわよ?」

 

 リオがザクザクと言葉のナイフを投げつける。それを受けたムラカミ殿は若干傷ついているようで、顔が引き攣っていた。

 

「ひとまず合流は出来たわけだな。依頼内容の最終確認は車内でか? それともどこか店にでも入るか?」

「それならば、あそこのマクドナルドはどうだ?」

「え、マック行くならバーキン行きたいんだけど。一本向こうにあるじゃん」

「ハッピーセットのおもちゃを集めている」

「──ジエンくん、今日はハッピーセットでいいよね?」

「……うむ? ハッピーセットとはなんだ? ハピルマと何かのコンビネーション……ではないな、食事の話をしているのだし」

 

 そう疑問を投げかけると、ムラカミ殿はすんなりと答えてくれた。

 

「マクドナルドにおける少量のセットメニューだ。メイン一つ、サイドメニュー一つ、ドリンクのセットに加えて一つのおもちゃなどがおまけで付いてくる」

「ふむ……なるほど、子供用メニューなのだな。そして、そのおもちゃには夢や浪漫があり、大人達も買い集めているのか」

「その通りだ」

「承知した。己もハッピーセットとやらに異存はない。おもちゃの類を求めてはいないので、それも譲ろう」

「感謝する」

 

「どうでも良いけどムラカミとジエンくんの口調ってなんか時代錯誤よね。会話切り取って時代劇のワンシーンって書いたら10人くるい騙せそう」

「ハッピーセットの話題では無理があるぞ」

 

 そんな事を言いつつ、店舗の中に入る。

 

 なんでも『モバイルオーダー』というシステムがあるらしく、スマホにて注文を送信すれば並んで受付の店員殿に話す必要はないらしい。

 

「はい、3マッカ」

「二人分のセットでコレとは、円の価値の暴落は甚だしいな」

「マッカの価値が高まったのではないか? こう、円安でなくマッカ高みたいな」

「マッカの価値が高まったから、相対的に円の価値が減ったように見えたって奴ね。社会の授業でならったの?」

「いや、食堂にて話した先輩の友人に円やドルなどの海外通貨とマッカの価値の差を使って荒稼ぎしている者がいるらしくてな。少し話を聞いたのだ」

「……面白そうな話だな」

「そう思って頑張って聞いたのだが、正直ちんぷんかんぷんだったぞ。マッカが通貨として強いのはマッカ自体に価値があるからだ! というのは理解できたがな」

「うん、そういう通貨の考え方は金本位制って言うのさ。こっち業界だとマッカ本位制かな? 通貨の価値の保証を通貨で得られる物質の価値によって保証させるやり方ね」

「金本位制であれば金の量という通貨の発行限界があるが、マッカであればそれもない。マッカ本位制の経済が強い理由はそこにある」

「うむ。そこは理解できている」

 

 分からないのは、円やドルといった国だとかが発行している通貨の事である。

 国の強さが通貨の価値を決めているのだ! というなんとなくの理解であれば一ドルは一円より130倍強いという事になってしまう。大統領マイケル・ウィルソンJr.率いるアメリカ合衆国という強い集団であっても130倍のパワーの差があるとはあんまり納得できていないのだ。

 

 というのを話すと二人には笑われた。ガッツリと。

 

「一ドルってのは日本で言う所の百円玉みたいなものなんだよ。向こうではセントっていうドルの下の通貨があるんだよ……ッ!」

「130倍パワーの、通貨……ッ!」

「そこまで笑わなくても良いではないか!」

 

 そうこうしているとモバイルオーダーの注文が完了した! というのが上方のディスプレイに現れる。3人で3つのトレーを受け取り、袋に包まれたおもちゃを受け取る。

 

 袋の中に何が入っているのかは分からない。これは、ガチャというギャンブルなのだな? 

 

 黒服のサトー殿の発狂している様から、ガチャとは闘技場だとかカードだとかの賭博行為によく似ているのは知っている。のめり込みすぎて財産全てを投げ打たないように注意しなくては。

 

「おお! ミニカーだな!」

「へぇ、チープだけどよくできてる。やっぱハッピーセットは侮れないわね」

 

 袋を開けて、ちょっと遊ばせてもらってからムラカミ殿に渡す。3つのおもちゃを収集できたムラカミどのはちょっとだけホクホクとした表情になっている。

 

 どうにも、ムラカミ殿は意外と表情に出るタイプのようだ。

 

「それで、アホほど脱線したけど依頼内容分かってるわよね?」

 

 リオがCOMPを使ってささっと防諜用の結界を張る。ムラカミ殿が目を見開いたことから、実はそこそこすごいものだったらしい。

 

「じゃ、まず確認ね。蠱毒皿の在庫は?」

「6個だ」

「私が4個で」

「己は2個だ。仲魔にマハムドオンを使える者はいるが、ダメージタイプで即死はニヤリ時のみのものだな」

「……ギリギリ、足りるか?」

「ギリッギリよねぇ」

「ヤタガラスからの情報では、昔にあった四天王の館*1という異界と出現パターンが似ているとあった。ゆえに妖魔テングLV52や闘鬼ヤクシャLV52が複数体現れるとの事だな。……それだけなら問題はないが」

「いやまさか、最低がそのレベルってんだからねぇ……」

「本来の四天王の館ではLV30の闘鬼ヤクシニーどが現れたらしいが」

「うむ。闘鬼、妖鬼、邪鬼、妖魔の4種が最低52レベルで現れる異界らしいな。掲示板での話ゆえに話半分だろうが、メシア系の組織が異界を乗っ取ろうとして返り討ちにあったと聞く」

 

「あと、魔法のファストアクション*2。敵の魔法の出が早すぎて物理で対応できないとか。先手マハムドオン放ってくるギリメカラとか確認できてるそうよ」

「……それほどの異界を、フリーランスに任せるのか。ヤタガラスもギリギリだな」

「己達が信用を得られた、という考えもできるぞ。最前線に張り付いていない者共の中で、人に仇なす人間ではないと」

「普通に首が回ってないだけだと思うわよ。COMP職人やってる奴の話だと、内ゲバやってる余裕なんかねぇバーカ! って感じの声*3が通信室から響きまくってるらしいから」

「分からんでもないな。この有事において勢力を強める道は仕事を全うする中にしかない。自力だけあっても世界が滅べば無意味だし、脅威のレベルを考えればどこぞに引きこもり逃げるなど不可能だ」

「逃げ出しても次の周回とかでさらなる地獄に引っ掛けられるってのはドリフの皆が証明してくれるわけで、アリに逃げるのも意味がない。うん、こうして事実並べるとキツいことキツいこと」

「うむ。逃げれば一つ、進めば二つ、止まればオルガだったな。結局頑張るしかないのだ」

「いや、どこのネットミーム拾ってるのさ。団長はもう結構古いネタよ?」

「そうなのか?」

 

 という雑な話で話題がズレる。

 

 もきゅもきゅとサイドメニューに頼んだポテトを食べて一息。うん、美味しい。

 

「で、傾向として呪殺無効がないらしいから危険な敵は即呪う感じで方針立てたけど、そっちで追加の情報とかある?」

「異界内部に放った使い魔は、妖魔テング以外の悪魔を確認できなかった。入り口周辺はテングのテリトリーのようだな」

「ふむ、このレベル帯のテングはシバブー*4、マハザンマ*5、羽ばたき*6を用いる悪魔で緊縛と破魔に強いようだ。防具を衝撃耐性のものにするべきだろうか?」

「アクセサリーなどの切り替えが楽なもので衝撃を対策できるなら構わん。だが基本は呪殺対策をメインにしろ」

「心得た」

 

 などといいつつもできることは少ない。なにせ手持ちの装備などは粗方売り払ってしまったのだから。せいぜいがリオが買った安めのアクセサリーくらい。

 

 呪殺に関してはホムンクルス*7などの身代わりアイテムは少量あるので、それでなんとかする。

 

「まぁ、基本は私とムラカミの2トップで行くわよ。ムラカミ程度の速度域なら私は合わせられるわ」

「己の役回りは周辺警戒、支援とパーティMPリカバリ*8の起動だな。全回復とはいかないが、チャクラウォーク程度の回復量なら付与できる」

「任せろ。俺の力を見せてやる。せいぜい付いてくるといい」

 

 

「どうでも良いけど、雑魚共とか言わないのね」

「……共同相手だぞ? 貶めてどうする」

 

 


 

 集合場所から車で20分ほど。小山の中にその異界は発生した。

 異界の仮称は『天狗修練場』。主な悪魔として出てきたのはテングだかららしい。まぁ、ギリメカラだのハヌマーンだのの強敵が混ざっているのだけれども。

 

 

 森に入り、異界内部に足を踏み入れたと感じた瞬間に奇襲がやってくる。

 

 テングが6体。一瞬の躊躇いもなく放たれたマハザンマが6発。話に聞いていたが、魔法の出が異常に早い。

 

「だが、何故ダイン級でないのだ?」

「ダイン級を使えないから*9じゃない? たまに強いのに中級魔法しか使えないのいるし」

「%耐性を持っている悪魔にはその傾向が強いな」

 

 まぁ、当然に防ぐのであるが。

 

 リオと己の防ぎ方はアクセサリーを利用してのもの。『孔雀色の蝶ネクタイ*10』には衝撃、銃撃見切りのスキルが封じられており、驚くほどにマハザンマの軌道が視認できる。

 意識の外からならばともかく、敵意を感知している状態からならば最小限のダメージで済ませるのは可能だ。被弾したのは6発のうち一発。ザンマのダメージであるから、軽傷だ。

 

 ムラカミ殿は素で持っている吸収耐性で受け止めている。

 衝撃魔法の最上級を振り回せる実力者であるのだから当然ではあるが、衝撃魔法への耐性があるらしい。

 

「邪魔だよ」

「堕ちろ、雑魚ども!」

 

 そして、リオとムラカミ殿が敵方の動きの切れ目を見て高速戦闘を開始。リオの放つ『千烈突き』と『麻痺追加』が3体のテングを地面に落とし、ムラカミどのの『刹那五月雨撃ち』が2体のテングを蜂の巣にする。

 

 一体がまだ無傷で動けるような動きを見せたので、己が割り込む。

 

「ロキ、『ブフダイン』」

 

 ロキを召喚して即魔法を打ち、即時に格納。一瞬しか展開しない事により消費MAGを節約する技術だ。今回はサポーターなので、余力を残しておきたい。

 

 ロキが高い魔力と氷結ギガプレロマを重ねて放ったブフダインは、無傷だったテングに致命傷を与える。うむ、良い感じの仲魔だ。

 

 そうして残りは麻痺効果にて呻いている天狗だけ。ささっと『ファンド』にてマッカを奪おう、とした段階で次の奇襲が起きる。

 

「堕ちろニンゲン共! マハムドオン!」

 

 レベル62の『邪鬼ギリメカラ』。霊格の洗練を見るにある程度低いレベルにて顕現し、レベルが上がった類だろう。

 

 マハムドオンは死ぬ気で回避。受けたら死ぬ。

 リオとムラカミ殿がは装備の耐性で受け止めて反撃に移ろうとしているが、そこに追撃がやってくる。敵は『妖魔ハヌマーンLV64』。

 

『マハタルンダ』によって攻撃力を下げてくる。そして2体目以降のハヌマーンが放つのは『デスバウンド』。

 ハヌマーンの数は4体。デスバウンドを放ったのは3匹であり、敵方の上振れもあって全体中ダメージの物理は五発放たれる。

 

「不意打ちが連動してる! 組織戦慣れてるねコレ!」

「偵察への情報は囮だったか!」

「緊急展開! 壁になれ!」

 

 その5発のデスバウンドを、召喚して盾にしたファフニールに受け止めさせる。

 ファフニールの身体は大きく、方向がある程度定まっているのならその肉体で受け止めてくれる。しかしながら87.5%の耐性では受け止めきれず、四発目で砕け散り、五発目は己達に直撃する。

 厳しい事に、クリティカルで。

 

 しかし、追撃がない。

 

「敵悪魔は集団戦メインだよ! クリティカルに乗って来れない! 動きが速いけど重い!」

「ならば、どうとでも! 『獣の眼光』!」

 

 敵がクリティカルに乗って来ない。つまりこちらのミスに反応する動きの良さがないと分かってムラカミ殿が発動型の眼光を切る。

 

 2回分の半手の行動回数が増える。

 

「『スマイルチャージ』『マハザンダイン』!」

 

 敵全体に必中かつクリティカルの衝撃魔法が入る。

 

 ギリメカラにもハヌマーンにも命中。クリティカルヒットによって半手分リオの動きが軽くなる。そこで差し込まれたのが『風龍撃』先程のマハザンダインが等倍で入ったギリメカラに追撃をかけて撃破。続けて放った『千烈突き』にて残ったハヌマーン達も撃破。

 

 次を警戒して『メディラマ』にて消耗を回復、ソロネを召喚して『サマリカーム』にてファフニールを回復させる。

 

「第一陣は終わったか?」

「テングLV52が6体、ハヌマーンLV64が4体、ギリメカラLV61が一体と。歓迎が豪勢だね」

「死体からのアナライズが出た。弱点のないタイプのギリメカラ*11だな。衝撃、火炎が100通るだけだ。他は%耐性で75になる」

「あ、やっぱりか。破魔が37.5で呪殺75だよね。蠱毒皿対処は若干危ない感じかな?」

「バッドステータスはどうだ? 弱点はないだろうか?」

「んー、魔力神経緊縛全部100通るみたい。複数来たらジエンくんバステお願い」

「承知した」

 

 死体からのアナライズにて対処方針を練る。

 邪鬼ギリメカラに魔法弱点がない以上、奴への対策をメインに据えて動く必要がある。

 

 主力の一人であるリオは物理反射持ちがいる場合だと明らかに戦力が低下する。複数攻撃、全体攻撃の際に引っかかる為、中ダメージまでしか伸びない龍撃系*12を使うしかないからだ。

 

 ギリメカラのHPはおおよそダイン級2発程度。1体ならともかく、複数で出てくればいずれ大変な事になるだろう。

 

「うん、共同依頼で良かったよ今回」

「同意する。単身で乗り込むにはあまりにも事故率が高い」

「回復を切らさず、マハザンマ以外の先手も打たせず、丁寧に、だな」

 

 尚今回の依頼は己達からヤタガラスに言ったとか、ムラカミ殿が己達を誘ったとかではなく、完全に偶然として共同依頼の相手だったのであったりする。このレベル帯(レベル60〜70)の戦士が少ないが故の、世間の狭さという奴らしい。

 

 警戒しつつ進む。

 ソロネを召喚したことで己も消耗するようになった。それは若干のマイナスであるが全滅するよかマシである。

 と言いたいが、召喚を維持するMAGの消耗の厳しいこと厳しいこと。自力で維持はできるので緊急時に悪魔が使えないということはないが、MAG貯金が目に見えてすり減っていくのはなかなか怖いものがある。

 

 強い悪魔作った際の、当たり前のデメリットだった。

 

 正直合体で強い悪魔を作ることに考えを割きすぎて、便利な悪魔、軽い悪魔が手持ちから居なくなっていたのは痛手であった。考えなしだった。

 だが、本格的に合体をした後毎回コレを思っているのでほぼ間違いなくまたやるだろう、うん。

 

「正面にダークゾーン、右手にワープあり。やらしい作り」

「外れだろうが、ワープゾーンから行くことを提案する。オートマッピングで先の道が見えるかもしれん」

「分かった。偵察には俺の使い魔を出す。戦闘にはレベルが足りないが、足回りは良い」

 

 そう言ってムラカミ殿が召喚したのは『妖精ナジャ』。合体によってトラポート、トラエスト、トラフーリを継承しているとのこと。

 

「フフフ、よろしくねジエンくん、リオ」

「よろしく頼むぞ!」

「コイツ私のこと若干舐めてない?」

 

 転送先にナジャが行き、即座に戻ってくる。手元にはOKのサイン。なんとでもなるだろう。

 

 転送先を偵察する。四方に道があるが、進む道はない。移動床が敷き詰められているからだ。どこかで移動床を踏めば、この部屋に放り込まれてしまうらしい。

 

「懲罰部屋だね」

「周辺に道は見えたなかったが、移動床の配置は記録した。注意していくぞ」

「自前でマッパー*13使えるのはやっぱ強いよねぇ。ネオクリア*14だと情報が二次元だから」

「見晴らしの玉*15となどでの感覚らしいな。立体の情報だから迷いにくいと聞いている」

「安心しろ。マッパーがあっても迷う時は迷う。転送やらが絡むと特にな」

「それ安心できないから」

 

 すこし戻り、ダークゾーンに侵入。

 この際、一時的に全力戦闘の準備をする。不意打ちからの移動床で離れ離れというのがありうるからだ。

 

 外周には己の仲魔を配置して、主力の消耗を避ける。前にファフニール、後ろにコウモクテン、己の側にマスターテリオンだ。デカい身体で壁にするつもりであった。

 

『暗殺拳』

 

暗殺拳物理スキル敵単体に物理属性高威力攻撃。仲魔の防御効果を無視する

 

「ガハッ⁉︎」

「嘘でしょ抜けられた⁉︎」

「相変わらず役に立たんな百太郎は!」

 

 しかし、あっさりと警戒網を抜けられた。眼前に悪魔の姿形は確認できない。まだ敵を捉えられていないらしい。

 

 ダークゾーンという環境の悪さ、仲魔に警戒を任せていたという慢心、その全てが敵を見損ねるという失態をやらかした原因だろう。

 

 しかも、腕の感覚からいって何かしらの状態異常効果がありそうだった。レジストはできたが、耐性のない相性のもの。

 リオの追加系スキルと同じ感覚だった。万能属性状態異常か? 

 

 という事でデータから逆算。暗殺拳と追加効果という2つのスキルをベースにした悪魔となると限られる。

 

 敵は、『()()ヨモツイクサ』。カジュアル系のデータが欠けている悪魔をベースにしたものだろう。

 

 レベルは未確認だが、敵がヨモツイクサだと脳内で認識した瞬間に視界の中に三角頭が入り込む

 二手目動いてる最中だったなこのやろう! 

 

防御基本行動敵からのダメージを軽減する*16

 

 ガードをする事でダメージを軽減。バステの追加は発生しない。運の上振れだ! 

 

「敵はヨモツイクサ! 暗殺拳に石化付与があるぞ!」

「ディストーン、アムリタ準備!」

「奇襲がコレで終わるものか! 次が来るぞ!」

「ならば引くか⁉︎」

「一手にて殲滅する!」

 

 宣言通りに抜き打ちの『ザンダイン』が放たれた。アンノウン状態から実体が定まったヨモツイクサはモロに衝撃魔法を被弾する。しかし思いの外に耐えて見せた。通りの良さからして、弱点だったにも関わらず。

 

 アナライズでのレベルは60台だが、ベースレベルは40程度のはず。特化型70レベルの魔法を弱点で受ければ落ちるのが普通だろう。

 

 相当なステータス強化か、活泉系のスキルか、そのあたりがあると見た。

 

 だがダメージは確かにある。

 

「そこ!」

 

 弱点に被弾して体が揺らいだところにリオが『マッドアサルト』にて追撃。ヨモツイクサは胴と頭が別れて散った。

 

 そのリオに対して暗闇からハヌマーンが飛びかかる。猿のような軽快さで、リオの首を取りに。

 

「やらせんとも!」

 

 飛び出てきたハヌマーンは3体。相変わらずのダークゾーンを用いての奇襲である。ヨモツイクサの奇襲は、次の奇襲への警戒リソースを割くのに十分な効力があったらしい。

 

 ただ、リオがあえて踏み込んだ事で敵の狙いは読みやすくなった。カバーを入れる事は可能だ。ちょうど、ファフニールとコウモクテンを警戒に使っていたのだから。

 

 2体のハヌマーンから放たれたのはトンボ蹴り*17というスキル。必ずクリティカルになる恐ろしい技だ。

 

「ッ!」

 

 二人のハヌマーンがトンボ蹴りによってファフニール、コウモクテンに一撃を与える。それによって動きが止まった2体は三手目、本命からリオを守る盾にはならない。

 

ブレイブザッパー物理スキル敵単体に斬撃属性特大ダメージ ペルソナ

猛反撃自動効果スキル物理攻撃を受けた時、確率で中威力の反撃を行う

 

 リオが大技を受け、その反撃をハヌマーンに当てる。

 ダイン級の火力に思えたが、それでもまだハヌマーンは耐えてしまっている。

 

 個体差はあるだろうが、下手をすればダイン級三発でも生き延びかねない。

 

「使うぞ!」

 

 リオが頷く前にアイテム『蠱毒皿』を使用する。敵3から5体を呪い殺す呪詛のアイテム。蠱毒によって発生した濃縮された呪いの塊を使用するもので、即死タイプのムドオンの効果を持つ。

 

 そうして己がハヌマーンを呪殺した事で一瞬のインターバルができる。ムラカミ殿はスマイルチャージ、リオは宝玉輪にて全体回復。

 

 そして、次の敵が来る。

 

 妖魔テングが6体、邪鬼ギリメカラが4体。

 

 奇襲はされていないが、先手は取られた。やはりあのテングども、魔法を使う時に異常に早く動いている。

 

『マハザンマ』

 

「無効耐性まで伸ばすべきだったな!」

「全部良ければ問題ないけど、いつか事故りそう!」

 

 アクセサリーの『衝撃見切り』と戦闘経験のみで回避を続けるのは若干の無理があったか? 敵を甘く見ていたか。

 

 リオと己は1被弾。ムラカミ殿は吸収耐性で受け止めてノーダメージ。

 続いてギリメカラ達の動き。マハムドオン連打かと思いきや、まさかの物理系の動き方だった。動き出しが重たく、遅い。

 

 先手は貰った! 

 

「『パニックボイス*18』!」

 

 敵全体に対して己の声が響きその魂を乱す。

 

 ギリメカラは混乱に無耐性である。また、テングは緊縛属性*19を25%まで軽減する強い耐性を持つ。だが己の使うパニックボイスは()()()()である。

 大別すれば『精神状態異常』であるらしい己のコレは、精神でも神経でも緊縛でもなく混乱属性なのだ。

 

 よくわからいが、そういうものらしい。

 

「ヒットはテング4、ギリメカラ3!」

「無傷のギリメカラからだ! トドメは任せた!」

「このテングども、なんで衝撃に耐性ないのかしらね!」

「知るか!」

 

 ムラカミ殿が加算タイプの『獣の眼光*20』を起こしながら、マハザンダイン*21を解き放つ。先程のチャージにてニヤリ*22と魂を震わせていたが故に、威力は十分にあった。

 

「強めの万能物理が欲しいわね。バイパースマッシュ*23とかの」

 

 などとぼやきながら放たれたのは『風龍撃*24』。高い力から放たれた一発はギリメカラへ大ダメージを与える。

 

 致命打には、一つ足りないが。

 

「コウモクテン!」

『アギダイン』

 

 継承によって獲得していたコウモクテンのアギダインがギリメカラの命を奪う。75%耐性に適正+2のジオダインを放つのと、無耐性に適正0のアギダインを当てるのとどちらが良いのか、一瞬悩みはしたが。

 

 念の為カバー要員としてマスターテリオンは待機。ファフニールには『マカラカーン*25』を発動させる。毒ガスブレス*26なら有効打になるが、ムラカミ殿のマハザンダインで散らせる以上意味はあまりない。

 

 敵の動きが始まる

 

 ギリメカラは全員が全員ボーッとして手番が飛ぶ。

 

 テングの中で動けるものはいない。先程マハザンマを放ったのだから。

 

 そして、次のターンになる。

 

 混乱していないテングの2体が動き出そうとする。が、魔法でないのか動き出しが重たい。このタイミングなら差し込める

 

「動かしてなるものか!」

 

 火炎→地変→ジオダイン

 アギマハマグナスジオダイン

合体魔法 サンダーブラスト*27

 

 敵全体に電撃が迸る。

 コウモクテンの魔力、技は低いため火力自体はそれほどにならないが、ご存知の通り麻痺の追加は確定だ。

 

 テングは62.5%に軽減するし、ギリメカラは75%に軽減するのもあってまぁ火力はしょっぱい。

 

 だが、そこは問題にはならないのだ。

 

「マハザンダイン!」

 

 ムラカミ殿が放つ二発目のマハザンダインにて、敵は全滅する。どうにかなったようだ。

 

 

 このように全力戦闘を行いながら少しずつ前に進む。エンカウント率は低いが、一度のエンカウントで戦闘が連続しがちになる。なかなかに厳しい。勧誘して会話対処できるようにしようともしたが、まともな会話にならずスカウトまで繋がらない。

 

 このように苦戦しながらダークゾーンと移動床のコンボを潜り抜けたら、広い場所に出た。

 

 四方に道が伸び、それぞれが何処か新しい場所に繋がっていそうな通路にはそれぞれにテングが4体、ギリメカラが2体、ハヌマーンが2体に『邪神トウテツ』が1体いた。

 

 新顔の悪魔か? と思ったその時、信じられない距離から攻撃を仕掛けてくる。4つの通路からの射線が交わるのは、このダークゾーンからの出口。

 

 そして、ダークゾーンから出た時の道は移動床! 退路はないッ! 

 

「十字砲火だとッ!」

「やばいやばい洒落にならない! あのテング共三味線引いてやがった!」

 

 先手に動いたトウコツが発動したスキルは『貫く風の闘気*28』。味方全体の衝撃属性に貫通効果を付与するもの。

 

 トウコツそれぞれが味方のテング集に貫通効果を付与し、力を受けたテングが『マハザンダイン』を解き放つ。

 

 射程距離が明らかに長いのは、狙撃系の能力だろう。

 あれは、『混沌の息吹*29』か? 戦闘開始までの射程を4倍に増やすが、追撃や二発目が遅くなるスキル。

 

 引き込んで、反撃されない距離から、一方的に、連射する。

 

 ちょっと呆れるほどに有効な戦術が過ぎている。

 

「……ガハッ!」

「これはまずいでしょ!」

「耐性装備だったら死んでいたな!」

「実際ムラカミ死んだしね!」

 

 リオと己が被弾したマハザンダインは三発だけ。『衝撃見切り』さんが上振れまくった結果だ。

 

 16分の3発とか信じられない。もしかしたら、狙撃距離であるからというのもあるかもしれないが。

 

 リオがムラカミの死体を拾ったのを確認してから『トラフーリストーン*30』を起動。ガン逃げである。

 

 そうして射程距離から離れてからムラカミ殿を蘇生、『非常口*31』にてダンジョンからの脱出をする。

 

 脱出が成功する直前、遠距離からのマハザンダインが己達に飛んできているのが見えた。

 

 間一髪のギリギリセーフであった。

 


 

「撤退完了か?」

「ムラカミ、指とかどっか落としてない?」

「蘇生は完全に成功している。問題はない」

「……いや問題だらけでしょ。なにあの地獄の十字砲火。全部避けろっての?」

「あのタイプの貫通はマカラカーンですら防げぬからな。どうしよう」

「悪魔連中を壁にするのは?」

「4体4チームで16発のマハザンダインだ。己の仲魔では2〜3発程度しか耐えん。あの射線であるなら壁は2枚なければ全員隠れることはできないので、仲魔が最低10体は必要になる。仲魔の数も召喚速度も足りないな」

「これは、作戦を練り直す必要があるな」

「しゃーなし、一時撤退ね」

「同意する。だが、考えてどうにかなる問題か? 貫通効果のマハザンダインを防ぐとなると%耐性の仲魔を盾にする程度しか思いつかん」

 

 停めている車に戻って各々調べ物。

 キリギリスに情報を流したり、シロエwikiなどを確認したりだ。

 

 その結果として理解できたのはいくつか。

 

 アナライズのメイン画面に発生する耐性は、貫通の対象になるということ。大体の装備の耐性だとかは『何かの耐性がある』という門のようなものらしく、貫通はそれを無効がする通行権のようなものだ。

 

 だが、通行権があっても道が険しかった場合は100の力が通らない。これが数値耐性。

 

 他にも様々な説があるが、ひとまずこの説が今回は扱いやすい。

 

 要は、中身で勝負できる奴が必要なのだ。

 

「あの16連打、ヤクトシリーズの75%耐性と防御を合わせれば何発受けられる?」

「俺と琴葉の体力はそう変わらん以上、ガードに専念すれば5〜6発だろう。お前は反撃する必要があるからノーガード。何発耐えられる?」

「正直、三発いくかという所だな」

「ならば、二、三体悪魔を壁にすればいけそうだな」

「だが、そうなると集団が4つに分かれているのが厳しい。一つの集団をバステで無力化できても、他集団は無理だ」

「まぁ、今回生き残ったのは割と運の上振れだもんね。普通見切りついててもあんな数は躱せないから」

「ああ。見切りのお陰で避けやすいと思ったが、それにしたって限界はある」

 

「そうか? お前達は二人とも完全に技を見切っているように見えたぞ」

「まぁ、いつもよりなんか避けやすかった感じはあったかも。魔法の出こそ早いけどみんな同じような軌道で飛んできてたし」

「訓練を受けていたのではないか? 早撃ちのやり方を学んだが故に同じようなやり方で魔法を放つようになったとか」

「訓練か」

「んー、経験を持った悪魔を複製してて、まだ個体差が生まれてないとか?」

「悪魔の複製という線はありそうだ。出現する悪魔のレパートリーの少なさも悪魔生産ラインが限られているからとすれば納得はできる」

 

「同一のルーツを持った悪魔の異界かぁ……」

「個体差がないなら、インフルエンザで滅びそうだな。抗体の違いがない」

「インフルエンザ?」

「まぁ、ひどい風邪みたいなものかな? 感染力が高くて、一度かかって抗体を持ってる人じゃないと最悪死ぬかもしれないってくらいの」

「……風邪か」

 

 ひとつ、試してみたいことができた。

 敵悪魔の出現パターンはテング、ギリメカラ、ハヌマーンがメイン。トウコツ、ヨモツイクサが少数いたくらいだ。

 

 まぁトウコツが貫く風の闘気を持っていた以上なんらかのカスタマイズはあるかもしれんが、その時は普通に攻略すれば良いだけのこと。

 

 

 その日は、もう一度異界の中に突入して軽い偵察と仕込みをして撤退となった。

 


 

 翌日

 異界の膨張率から考えてタイムリミットはもう少しある段階である。あと二週間は大きな脅威にならないだろう。

 ムラカミ殿と交渉してファフニールを強化する御霊を譲ってもらったりもした。

 御霊にあった3分の活泉をファフニールに装填し、ムラカミ殿のアクセサリーも『衝撃見切り』の効果のあるものに変更したのを確認し、準備完了。

 

 今回の目的は十字砲火エリアより前のマッピング、および『スクカジャ最大値で突入して気合いで避けまくる作戦』のテストである。

 

 

「んじゃあ、手順確認ね。ムラカミのマハスクカジャとジエンくんとこのクイーンメイブのスクカジャ、あとは『コレ』で使える『殺気』の3種スクカジャで回避率を爆上げする。先鋒は私で次がムラカミ、ジエンくんが3番手だけど陣形よりも自分たちが自由に動けることを優先。チームプレイよりスタンドプレー寄りの動きよ」

「任せてくれ!」

「スタンドプレーの集合によるチームワークか。やはり良いスタンスだな」

「うむ!とても含蓄のある言葉だ!ハグレモノである己たちには良く似合う!」

 

 

「少年は、攻殻を、知らぬのか?」

「未履修の作品多いからねぇ。割とレゲーに流れがちだからアニメとか漫画とかはまちまちみたいよ?」

「……是非とも攻殻を進めてくれ。ハイセンスな描写の数々はきっと心を豊かにする」

 

 そこそこの準備をしつつさっそく異界内部に。

 

 天狗修練場の異界内部の空気は、昨日よりもピリついているようだ。

 前回侵入したときにテングの奇襲があった所を見ると、そこには明らかに()調()()()()()()テング達がいた。

 『風邪』のバッドステータス*32にかかっているがゆえにだ

 

 ポムズディやアムリタを持っている悪魔が混ざっていたのならこうはならなかっただろうに、という感想が出てくる。罠かもしれないが、うまくいって良かったという所だ。

 

「話には聞いていたが、風邪は体内のMAG調整で排出できない*33のか……」

「うむ。それと、風邪の悪魔を合体素材にすると事故率が高まる*34ぞ。具体的にどのくらいか? は不明だがな」

「で、近くのヤツが動いた時に伝染する可能性がある*35、と」

感染爆発(パンデミック)だな。恐ろしい」

 

 テング集、ハヌマーン部隊、ギリメカラ連隊、暗殺系ヨモツイクサが散発的に飛んでくる。

 

 魔法の早撃ちは相変わらずだが、どいつもこいつも風邪で火力が低下している*36ので火力面での脅威度が消えている。どうにもダイン級を打てるのはあの十字砲火エリアのテング達だけのようで、他のテングは『マハザンマ』のみ。普通に対処可能だ。

 

「……しかし、これほどまでの感染爆発が何故起きた?」

「敵が異界内部の悪魔行動をシステマチックにし過ぎたからかもね。お前はここで待ち伏せだーとか警備の為に歩き回れーとか。自分自身に変調が起きてもそれに対処する事ができてない。自己判断力が欠如してるからね」

「ふむ。集団を単一の方向性に訓練したが故にか?」

「……ここまで単調だと、やはり訓練ではなく複製だな。風邪状態での技の鈍り方すらパターンが見えてくる。お前や琴葉なら数日で全てのパターンを見切れるだろうよ」

「あ、ちょっと舐めてるねムラカミ。もう見切ってるよ。私もジエンくんも」

「見切れている事と回避が可能かどうかはまた別なのだ。当然だがな」

「……そんなものか」

 

 そんな会話ながらも着々と探索を続けていく。ダークゾーン前でのマッピングは完了。抜け道はなし。

 ダークゾーン内部のマッピングも完了。先に進む道は一つだけ。迂回路はなく、ハズレルートは全て懲罰部屋への移動床だった。

 

 どう足掻いても十字砲火エリアは通らなくてならないようである。

 

「補助をかけるぞ。『マハ・スクカジャ*37』!」

「お願いよ武装COMPくん! 『殺気*38』!」

「クイーンメイブ、加護を寄越せ!」『スクカジャ*39

 

 違う方式3種のカジャが己達にかかる。

 

 体が風のように軽く、軽やかだ。

 

 移動床での前進の勢いを殺さずに、突撃開始。

 

 先手のリオが踏み込んだと同時に、4体の邪神トウコツがその力を発動。『混沌の息吹』により攻撃射程が4倍に延長される。

 

 リオが狙いを定められないようにフェイントをかけつつ疾走。狙いは1番左の通路のようだ。

 

 4つの通路それぞれから狙撃チームが襲ってくる。放たれる魔法はマハザンダイン。妖魔テングの早撃ち魔法だ。

 

 まず一射目の四発。それぞれの通路から一発ずつだ。しかし、『疾風見切り』によって軌道を把握でき、乗算するという噂の『仕様違いカジャの重ねがけ』により機動力が上昇している今ならば、回避は十分に可能だった。

 

 第二射目。

 前に抜ける形で飛び出したリオを狙って面での攻撃を行おうとするテング達。しかしながら、どのポイントが着弾点なのかが非常にわかりやすく、後続を捕まえるための網にはなり得ない。

 

 第三射目

 この辺りからキツくなるだろうという感覚はあった。眼前に着弾したマハザンダインにより巻き起こる突風が己達の行動を阻害するからだ。

 

 なのでここからは壁で受け止める。ファフニールを最速で突っ込ませてマハザンダインからの壁を作る。ガードさせていたファフニールはリオが切り開き己達が走る道に着弾するものをその肉体で防ぎ、封鎖されるのを防ぐ。

 

 そして第4射目。

 

 これを凌ぎ切れば、ようやく敵集団の一つと戦闘が可能になる。

 貫通付きマハザンダインは恐ろしい範囲火力であったが、射線の関係で3グループからの攻撃は届かない。ラスト一つからの魔法は距離の関係で直撃を受けるしかないが、『風邪』が伝染していたテングからの火力は低く、致命傷にはならない。

 

 だが、見えていた部分以外にも罠はあったようだ。

 

 敵前に足を踏み入れたリオの足に絡みつく呪力がある。リオは直前でCOMP機能『ヨカンムシ』により感知したが、勢いは殺せなかったらしい。

 

「ワープ床!」

「外道が過ぎるぞこの異界!」

 

Auto MAPPING

 

 

 最前列を走るリオがワープ床に突撃する。

 分断トラップの類ではないようで、使った後でも転送床は機能している。

 

 ムラカミ殿とアイコンタクト。今回での攻略を諦め、ワープ床の先で体勢を立て直す算段だ。

 

 だが、その前にこの集団の始末だけはしておく。

 

「ファフニール、力を示せ!」

「ガァ! 『邪念の波動*40』ダ!」

 

 種族スキル、というモノがある。

 カジュアル連中が使っているアプリにて発生するスロット外スキルだ。

 敵の邪神も使ってきた射程距離を伸ばすスキルだったり、妖獣の持つ一呼吸での移動距離を伸ばすスキル*41などがある。まぁ、このスキルを発動させる場合はMAGの込め方を工夫しなければならず、『戦闘の流れ