転生したら蒼崎だった件 (山空裏表(元かくよ))
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番外編
もしも主人公がfgoに実装されたら


ドトウと殿下が単発で引き当てたので初投稿です。
ルドルフ強すぎ


 <クラス> フォーリナー

 

 

《真名》 蒼﨑紅

 

 

 プロフィール

 

 身長/体重:170cm・60kg 

 出典:??? 

 地域:日本

 属性:中庸・中立

 性別:男性

 基本的には優しいお兄さんといった出で立ちだが、ある一線を越えるとマスターであっても殺しにくるので注意

 

 イラストレーター・声優

 ILLUST:武内崇

 CV:福○潤(自分の好きな声優さんを当ててください)

 

 

 パラメーター

 

 筋力 D+     耐久 C+

 俊敏 C      魔力 EX    

 幸運 E──     宝具 A++

 

 キャラクター

この世界とは別の世界から迷い混んだサーヴァント 

魔術の名家「蒼崎」の生まれにして、生きる伝説。

時折髪が赤く光り、彼の切れかけていた魔力が回復する瞬間をみるが、唐辛子でも食べているのだろうか。

彼の妻を名乗る少女が8人ほど存在するが、

彼が妻を娶ったことはないらしい。

 

 保有スキル

 

 SKILL1  魔術の天才 EX

 自身のNPをすごく増やす&自身のコマンド                        カードの性能をアップ(4ターン)              

 

 SKILL2  魔性の美貌 A+

 敵全体に魅了状態を付与(1ターン)&味方の              

 攻撃力をアップ(3ターン)&味方全体のNP

 を増やす&味方の宝具使用時にチャージ段

 階を2段階分上げる  

 

 SKILL3  ◼️◼️の寵愛 ? +  

 自身に無敵貫通状態を付与(3ターン)&味方

 全体の即死成功率をアップ(4ターン)&味

 方に<蒼崎橙子>、<蒼﨑青子>、<◼️◼️◼️>

 がいる場合、彼らのスキル発動時のデメリ

 ットを無くす

 

 クラススキル

 

 陣地作成EX   自身のアーツ性能をアップ

 

 女神の寵愛EX 自身のNP獲得量をアップ&弱体耐性をアップ

         

 

 単独顕現EX  自身のクリティカル威力をアップ&即死耐性をアップ&精神異常耐性をアップ

 

 根源接続EX  自身のコマンドカードの性能をアップ

 

 ◼️◼️◼️の愛 このサーヴァントが倒れたとき一回のみ復活する。

 

《宝具》

 

 

【????・????】

 

 この情報は閲覧が許可されておりません。

 

「私の王子様の本気だもん、見るのは私だけでいいの」

「あら? あなただけのものじゃないわよ。かっこよかったなぁ、あの時の紅。私を殺した責任、とってもらうんだから」

「紅さん、かっこいいです」

 

 

《召喚時ボイス》

 

「サーヴァント、キャスター。あれ?フォーリナー?とりあえず、どうぞよろしく」

 

《特殊ボイス》

 

 星5キャスター『蒼﨑橙子』所持の場合

「おぉ、橙子もいるのか。マスター、魔術に困ったときはあいつを頼ってやれ」

 

 

 星5キャスター『蒼﨑青子』所持の場合

「えぇ、青子もいるの? 君運良すぎしゃない? ちくしょー、俺だって前世のfgoなら……」

 

『両儀式(セイバー)』所持の場合

「よかった、こっちの彼女は正常らしいな。あの子がああなるなんて、なにがいけなかったんだ……」

 

『アーキタイプ:アース』所持の場合

「ひっ、マスター、彼女もいるのかい? その、彼女が悪くないのは知っているのだが、できるだけ同じ編成はやめてくれないか?」

 




深夜テンションで書きました。次回は本編進めます。
主人公のキャラがブレブレすぎるんだよなぁ


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本編
1話 


アイデアが降ってきたので初投稿です。


 

      ー月ーー日 曇り

 

  今日から日記をつけることにする。目的としては、自分が誰なのか見失わないこと、前世の記憶から生き残る為に必要な知識を引き出すためのついでである。

 

 さて、皆さんは「転生」というものを知っているだろうか。現実、つまりこの世界で命を落とした後は別の肉体を得て新しい生活を送るという宗教的な概念である。いまや、トラックに引かれるとほぼ確実に転生することができるのだが、まさかその転生先が数あるサブカルの中でも指折りの残酷さをを誇り、親○し、凌○は当たり前の視聴者や数多くのプレーヤーに「きのこには人の心がない」と絶賛()された「型月作品」だったとは・・・詰んだな(確信)。

正直、俺としては折角型月世界に転生できたこともあるので、当面の目標は「生き残る」ことにする。絶対に生き残って見せるぞ!ジョジョォォォォォ!!

 

 

 

 

    ー月ーー日雨

 

あれ?なんか我が家の祖父毒親じゃない?なんかめっちゃ魔術の練習強要してくるんだけど。ってかわしの名字蒼崎じゃん。 

チギャウ、チギャウ、わしが想像してた転生生活とチギャウ、チギャウ。

 

 

    ーー月ーー日晴れ

 

 妹が生まれた。名前は「橙子」。そう、みんな大好き、型月界のドラえもんこと橙子さんである。いつもキレキレでなんでも知ってそうな目の橙子さんにもこんな時期があったんだなぁと思うと心がほっこりした。まさか・・・これが父性?俺がパパになるんだよ!

 

「おにい、おにい」ってよちよち歩きでずっとひっついてくる橙子ちゃんはとってもかわいいです。

 

    ーー月ーーー日曇り

 

 本日からとうとうわしと橙子が祖父によって両親から引き離され、YAMAで修行することになる。そう、みんな大好きYAMA育ちになるのである。よっしゃ、これで幻想種と殴り合えたり、多重次元屈折現象をおこすことが出来るようになるのである。え?無理?そいつはどうかな・・・やってみなきゃわかんねぇ!!

 

   ーー月ーーー日雨

 

 無理でした。できるわけないやん。あいつらが強すぎるだけだっての。なんなん?相手の弱点を露出させる拳法って。はぁーつっかえ。橙子ちゃんで癒やされよ。てか、よくよく考えたらここがどの世界線なのかわからんのよな。現在修得中の魔術である動物を洗脳する「眷族化」魔術で探ってみることにする。神様お願いします。式、式に会いたいんです。前世では10万注ぎ込んでもかすりもしなかった式をこの目で拝みたいんです。よろしくお願いしまぁぁぁす!

 

 

  ーーー月ーーー日

 

 勝ったな。碇。

 

 

 

 

 

      




スカスカすぎるんだよなぁ。


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2話

FGOのデータが吹き飛んだので初投稿です。
わしのギル・・ギルどこぉ?


  私にとって、兄は「全て」だった。

 

 私がこの世に生を受け、初めて見た光景が兄の瞳であり、その瞬間からこれを手離したくない、と思ったのを今でも覚えている。魔術師にはふさわしくない、慈愛の色が浮かんでいたあの瞳に、私は妹という立場でありながら、強く惹かれた。いや、今でも惹かれ続けている。

 

  『すごいじゃないか、橙子』

 

兄はそう言いながら、私の頭をよく撫でてくれた。私が初めて魔術を使った時、初めてその言葉を聞いた。ただ、どこにでもある、人を誉めるだけの言葉。しかし、それが私にとっては蜜よりも甘く、モナ・リザよりも耽美なものだった。その時の兄の瞳はなにか、戦隊ヒーローをみる子供のような、キラキラしたものだった。年齢の割には大人びていた兄にもそんな眼をすることがあるんだな、と思って、微笑ましくなったのを今でも覚えている。

 

私には兄がいた。兄がいてくれた。兄さえいれば良かった。

兄がいてくれれば他はどうでも良かった。

ただ、兄が目の前にいるだけで、この世界を楽しめた。

小さい頃、兄に尋ねたことがある。

 

『おにいはわたしのことすき?』

 

私らしくない質問だが、当時はそれだけが気になって、夜に眠ることができなかった。

兄に嫌われていたらどうしよう、私に無関心だったらどうしよう。そんな不安を感じながら、兄の答えを待った。

 

『うん、大好きだよ。世界で一番』

 

その日、私は涎を垂らして「おにい、おにい」と呟きながら寝たのは言うまでもない。

 

 

  

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

     ー月ーー日晴れ

 

 

ホァァァァァァァァァァァァ!!

やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

目の前に「両儀」の札があるぅぅぅぅ!

脳裏に式リリィの姿を焼き付けなければ(確信)

覚悟はいいか?俺はできてる!!(チャックの人感)

 

     

 

     ー月ーー日曇り

 

 

     キング・クリムゾン!

 

ふぅ、もう少しで蒼崎の魔術師とは思えない姿を見せてしまうところだった。危ない危ない。ん?ゲーセンで台に張り付くエクバプレーヤーのような転生者を見た?

君は何も見なかった。いいね?

 

さて、「両儀」の家を眷族化した虫たちに探らせて見つけたわけだが、ここで俺はたいへん重要なことに気がついてしまった。

あれ?たしか空の境界に出てくる橙子さんって成人済よな?今の橙子はまだ小学校の入学式を終えたばかりである。よちよち歩きからきちんと前を向いて歩けるようになった橙子さんをみて涙が流れたのは一旦置いておこう。つまり、何が言いたいのかというと、まだ式は産まれてすらいないのである。

 

なぜ俺はあんな無駄な時間を・・・

 

まぁ、式のお母さんらしき人見れたしええか!(テノヒラクルー)

 

 

 

 

 




これは橙子さんではないのでは?ボブは訝しんだ。
非力私許


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3話

雪の宿がおいしいので初投稿です。


     ーーー月ーー日 台風

 

 

 とうとう二人目の妹が産まれた。名前は「青子」。これでついに「魔法使いの夜」が始まると思うと、一人の型月ファンとしては胸にジーンとくるものがある。

それはそうとしてなんか橙子さんの様子おかしくない?なんか、こう、獲物を見つけたライオンみたいな、唐揚げを見つけた小学生男子みたいな目でこっちを見ている。

ほらこうして日記を書いている間にも、後ろから抱きついてあばばばばばば

みみみみに息がががががが

 

 

     

  

    ーーー月ーー日 晴れ

 

 

 ほんとうにやめてください死んでしまいます(不夜キャス風)。

あぶないあぶない、あともう少しで兄でありながら妹の顔を見て鼻血を出す変態になってしまうところだった。

 

 話を戻すと、魔法使いの夜時の青子の年齢が17歳だったはずであるため、原作開始までは残り17年ほどの虚無期間があることになる。

 

え?うせやろ?あと17年もあるん?ちくせう、転生の時に原作直前からって神を名乗るあのスケスケドレスの痴女神に言っとけば良かった。

まぁ、なったものは仕方ない。ここは魔術師らしく、魔術の鍛練に励むとしよう。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 私、青子にとって、兄である「青崎紅」への第一印象は〔怖い存在〕だった。姉が兄に私を近づけなかったためもあるが、一番の理由は何を見ているのかが分からなかったからだ。こちらを見ているようで、実際には私達ではなく、私達の後ろにある『何か』を常に観察しているように感じることがあった。かといって、私達を見ていない、ということはなかった。私や姉が兄の近くで遊んでいると、愛情に満ちた瞳でこちらを見ていたからだ。私はその矛盾が怖かった。それが恐ろしかった。だから、私は兄が近くにいるとき、できるだけ顔をみないようにしていた。でも、兄は私を嫌うことはなかった。

 

ある日のことだった。

私が保育所の帰り道に公園で遊んでいたときのことだ。車道に飛んだボールを取りに行った時、近くにあった車から大勢の男が出てきて私を取り囲んだ。そのまま車の中に押し込まれ、気がついた時には何処かもわからない場所に投げ出されていた。

男達は全員、私を見ると舌舐りし、襲いかかってきた。私はあまりの恐怖に震え、逃げることすらできずに、自分の最後を覚悟した。その瞬間の事だった。

 

 

『ソウェル』

 

 

 その聞きなれた声が空間に響き渡った瞬間、彼らは燃えていた(・・・・・)

 

『俺の妹に手を出したんだ。それ相応の罰は受けてもらうぞ』

 

 兄が来たとわかった瞬間、私は安心のあまり涙を流した。そこから先は圧巻だった。

彼らが兄に襲いかかるも、兄は軽くいなして呪文のようなものを発した。それだけでみるみる男達は倒れていった。そして、最後の一人になったときだった。男が私を持ち上げ、首にナイフを押し付けてきた。私は叫んだ。

 

『助けて、お兄ちゃん』

 

 男のナイフが私の首を斬るより早く、兄の呪文が発せられた。

 

『アンサズ』

 

 兄が燃え上がる男の手から私を離し、抱き抱えた。そのまま振り返り、帰り道に歩を進めた。私は、その夜の月に照らされる兄のルージュのような赤い長髪と、神に作られたように思うほど美しい横顔、その手のぬくもり、その瞳の優しさに幼いながらに、恋をしたのだ。

 

 

    




ちゃうねん。わしは普通の青子が書きたかってん。


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4話

ペルソナが面白いので初投稿です。
今回は日記形式ではありません。



 夜中布団に入って寝たと思ったらよくわからないゆ○にっきみたいな所に飛ばされていた。何をいっているのか分からねえと思うが、自分でも何をいっているのかわからない。すこし辺りを見渡してみると、目の前から道らしきものがどこかに続いていた。別に泣こうがわめこうが状況が好転するわけでもないので、とりあえず行ってみることにする。

 

 

イクゾー!(デンデンデデデン!カーン)

 

 ―――40分程歩いてみると、開けた場所に出た。その場所にはパラソルが備え付けられたテーブルと、椅子が置かれていた。 近づいてみると、テーブルの上には花が描かれた華奢なカップに入った紅茶が置かれていた。 紅茶は湯気が絶えず出ており、嗅いだものを落ち着かせる独特な香りが舞っていた。 この紅茶は入れられてからそう時間は経っていない。……つまり、近くに人が居るのかと思い振り返るが、人の気配はなかった。そうこうしている内に、足に乳酸が溜まって疲労を感じたため、2つある椅子の片方に腰かけた。椅子は座り心地がよく、この椅子は高級品なのかな、なんてことを考えていた時だった。

 

 「あら?お客さんなの?」

 

自分の後ろから声が聞こえた。中学生にも満たないであろう、幼気な少女の声が。

 

 「あぁ、失礼。眼が覚めたらここにいてね」

 

声の主にそう返しながら、右手の指にガンドを放つための魔力を集める。 

 

 「こんな所に来るなんて、変な人」

 

足音がゆっくりと近づいてくる。魔力を集めきり、後は目標に向けて指を向けるだけだ。

 

 「すまないね、すぐに出ていくさ」

 

目の前に声の主が座り、こちらを見た。その瞬間、今まで集めていた指先の魔力が四散した。

 

 「ねぇ、貴方は私の――」

 

……嘘だ。目の前に映る情報を脳が処理することが出来ない。そんなこと、あるはずがないのだ。だって、ここは空の境界の√だったたずだ。なのになぜお前が―――

 

 「王子様なの?」

 

沙条愛歌。[Fate/Prototype]の黒幕であり、[Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ]の主人公にして、全智全能の少女が、見るもの全てを魅了するような目でこちらを覗き込んでいた。

 

 

 

 

 

Q.型月界最強クラスのヤンデレと出会った一般転生者の心境を答えよ

 

A.詰んだ(確信)。助けて、セイバー!!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 あの人と出会ったのは偶然だった。

 あの日、私はいつものように夢の中で、理想の王子様について考えていた時だった。

自分の夢の中に自分以外の気配があることに気付いた。その場で消しても良かったのだが、その気配が人だと分かり、興味を持った私は、夢の中にパラソル付きのテーブルと椅子、紅茶を出しておいた。そして、その人が椅子に座ったのを確認し、その人物の元へ向かうことにした。

 

 その人の後ろ姿をみて、まず最初に目に入ったのは赤い長髪だった。そう、まるで人の血のような、鮮やかな赤色。綺麗だな、なんて私らしくない人間のようなことを思ったほど、印象的だった。

その人の前に座り、顔を見ようとして目線を向けた瞬間、私は一目惚れ(・・・・)したのだ。だって、その紅色の瞳を、その色艶のある唇をその雪のような白い肌をその全てを、欲しいと思ったから。だって、その全てを、他の人に見せたくない、って思ったから。

それを『恋』って言うんでしょ?




これで主人公男ってマ?
愛歌ちゃん好きの方、ほんとうに申し訳ございません。

*この回は誤字脱字が激しいと思われます。
申し訳ありません。


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5話

 ケータイを買い換えたので初投稿です。
 


       ーー月ーー日 曇り

 

 おそらく、私は幸運がEXぐらいあるのだと思う。なにせ、あの沙条愛歌を相手にして五体満足で生き延びることができたのだから。焦りに焦りすぎて、とっさに出てきたアンデルセンの名言である『愛は求める心。そして恋は、夢見る心だ』という言葉をぶつけたような気がする。どうやって帰ってきたのか一切記憶にないが、終わりよければすべて良しだ。

 

そういえば、夢から覚める前に、たしか愛歌が「次は私から会いに行くわ」なんて言っていた気がするが、幻聴であることを祈ろう。あいつと今度出会うことを想像すると、寒気が止まらないのだが、風邪でも引いたのだろうか?

 

 朝起きると寝汗でベッドが使い物にならなくなっていたため、シーツを洗濯機のなかにシュゥゥゥ!超!エキサイティン!した後、風呂にはいっていると橙子から祖父が明日、青崎の本家に集合するようにと言ったことを伝えられた。おそらく、明日、橙子がクソ毒祖父を殺し、ロンドンで荒那達と出会うのだろう。この事件が空の境界の橙子を作ったと思うと、あのクソジジィには申し訳ないが心が踊るな(パラド風)。

 

       

      ーーー月ーーー日 雨

 

  やっちまった。

 

 

 

      

      ーーー月ーー日 曇り

 

  死にたい。

 

 

      

      ーーー月ーー日 大雨

  

  油に飛び込むザリガニになりたい。

 

 

      

 

      ーーー月ーー日 晴れ

 

  精神が安定してきたので何があったのか書こうと思う。一言でいうのなら、ワンチャン空の境界で式さんが死ぬかも知れない。

 

まぁ、その、ね。間違えてわしが祖父殺っちゃった。

別に俺を否定するのはかまわないのだが、あのクソカス、橙子に対して「才能がない」やら「青子を見習え」やらほざいてきたので、それにぶちギレて「俺の悪口を言うのは許そう、だが肉親とは言え俺の妹を否定するのは許さん」

と言いきってルーン魔術フル活用して念入りに焼いてしまった。

 

唯一良かったのはなぜかその場所に橙子だけでなく青子もいたことだ。これによって本来殺意を向けるはずだった橙子からわしに切り替わったため、型月ファンが望んでいた仲の良い蒼崎姉妹が見れる可能性が出てきたことである。あれ?そう考えるとわしナイスアシストでは?

 

とにかく、このままではひじょーにまずい。なにせ、式さんが死んでしまうかもしれないのだ。わしのせいでもし式さんが死に、未耶ちゃんが生まれないなんてことになったら冗談抜きでマリーオルタぐらい世界を憎む。だが、幸いなことにそもそもの式さんスペックが高いので、わしが橙子の立場になればその点は心配ないだろう。

 

よし、そう決まったら早速時計塔にいくとしよう。たしか、時計塔には原作橙子さんの師であるイノライ・バリュエレータ・アトロホルムや現代最強魔術師のバルトメロイ・ローレライ達が教師として在籍していたはずだ。

イノライさんに鍛えてもらえば、橙子までとはいかなくても最悪空の境界をハッピーエンドに導くくらいはできるはずだ。早速、クソカスボケジジィの口座からパクった金を使ってロンドンに行くとしよう。

 

       ーーー月ーー日

 

 あのね、ぼくはいまとけいとうのりょうにすんでるの!

 とうことね、あおことるーむしぇあしてるの!

 いつもね、だきまくらにされてねてるの!

 

 why?????

 

 

 

 

     

 




次回、新ヒロイン出します。


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6話

トーセンジョーダンがかわいいので初投稿です。
出したいヒロインをどうやってだすのか難産でした。
今回も日記形式ではありません。


 私はあの日、私の運命(Fate)に出会いました。あの人にあって初めて、私は自分が生きていていい、って思うことができるようになったんです。あの人が死ねというのなら、喜んで死にましょう。あの人が私に殺せというのなら、恩情なく殺しましょう。あの人が許してくださるのであれば、私はあの人の障害を穿つ矛となり、あの人の敵からあの人を守る盾になりたいのです。あの人は私に、化け物だったわたしに、人として、家族として愛情を与えてくれました。

心を教えてくれました。生きるための知識を施してくれました。だから、私は、あの人がいるのなら、この世界で生きていたいと、そう思うのです。カレーですか?大好きですよ。だって、あの人がくれた最初の【愛情】ですからね。

 

 ------------------

 

 その日、俺はロンドンを散歩していた。青子と橙子は魔術協会に足を運び、自分達と俺の編入について、話をつけてくるらしい。「「お兄ちゃん(紅)はこの部屋から出ないで」」

と念押しに言われたが、わしがゲームもない部屋に何時間もいれるはずがなく、暇潰しがてら外に出よう、と思い付いたからだ。型月世界といっても、あまり現実のロンドンと変わりはしない。しいて違いを言うのであれば、ところどころに魔力を発している人がちらほらいるぐらいだ。そいつらも、昼間は人目があるからか、お互いに睨み合うだけで、その場所から動こうとはしなかった。ただ散歩するにも飽きてきたので、こうなったらロンドンの観光地でも歩き回ることにしよう。

 

 

 

 「ほぇ~、すっごい」

 バッキンガム宮殿を目の当たりにすると、あまりのすごさに感嘆の声がでた。べ、別に芸術に興味がなくて、なにがすごいのか分からないなんて、そんなんじゃないんだからね!

ほらあの~あれだ、な、なんか白いのがすごい!

 

 

 ぐうぅぅぅぅ~

 

 

 お腹がなったので腕時計をみれば、時計の針は12時を指していた。辺りを見渡せば、近くに屋台が出ていたので、そこで食べることにしよう。屋台には人が並んでおらず、すぐにでも注文したものが出てきそうだった。メニュー表をみるとかそこには『curry rice』とあったので、それを注文した。

出てきたのは、日本のように茶色いものではなく、少し白っぽいルーがかけられていた。そのスパイスの聞いた香ばしい匂いが食欲を刺激し、見ているだけでよだれが溢れそうになる。さっそく、近くにあるベンチに座り、食すとしよう。

 

 ベンチに座り、ご飯にカレーをかけ、口に含もうとしたその瞬間、後方から視線を感じた。振り返ってみると、そこには赤い汚れが付着したボロボロな服を着た青髪の少女(・・・・・)が 朧気な目でこちらを見ていた。

 

 「あの、お願いします。少しでいいので、それを分けていただけませんか」

 

 今にも消えてしまいそうな声を聞いた俺は、持っていたカレーを少女に渡すと、近くにあった自販機で水を購入し、少女に与えた。

 

 「こんなに・・・ありがとうございます」

 

 ほんの少しだけ、その少女の瞳に光が戻った気がした。




有馬のエアグルーヴ強すぎて草


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7話

カレンチャンを引いたので初投稿です。


 目の前の少女は、涙を流しながらカレーを食べ続ける。

 

 「ほんとうに、ありがとうございます」

 

 その姿はまるで、人に拾われた野良犬のようなものだった。7分ほど経つと、カレーを食べることですこし落ち着いたようで、水を飲みながら遠くを見つめていた。

 

 「お嬢さん、名前は?」

 

 そう彼女に問いかけた。この世界で青髪といって真っ先に思い付くのは、世界線が違うが『月姫』のシエル先輩だ。だが、直感的に彼女はシエル先輩ではない気がする。なにせ、シエル先輩と言えば『弓のシエル』と言われる程の実力の持ち主。いくら幼いとはいえ、そこらへんの魔術師相手なら引けを取らないはずだ。

 

 

 「な、名前ですか?えっと・・エレイシア(・・・・・)です」

 

 

 まだこちらを信用しきれていないのか、探り探りといった雰囲気で答えてくれる少女。たしか、シエル先輩の本名がエレイシアだったはずだ。しかし、この世界は空の境界の世界線のため、この子が《月姫》のシエル先輩である可能性はかなり低い。たしか、《月姫》と《空の境界》は設定は同じで別の世界線だったはずだ。そのため、この子はシエル先輩のそっくりさん、と捉えるのが正解のはずだ。

なら、空の境界の原作にはいないキャラクターだ、一人ぐらい助けてもいいだろう。

 

 

 

 「そうかい、エレイシア。俺は蒼﨑紅。さっきからの様子をみるに、なにか厄介事に巻き込まれてると見た。俺でよければ話を聞こう」

 

 そうして、その少女から語られたのは凄惨なものだった。ある日、突然何かに取り憑かれたこと。自分の手で知り合いを殺してしまったこと。誰かに(・・・)殺されたこと。その後、目が覚めた協会で拷問じみた研究をされ続けたこと。そこから逃げ出して、ここに辿り着いたこと。その全てを聞いたとき、涙を流しながら出来事を話す彼女を、俺は抱きしめた。

 

 「よく、生きた。生きていてくれた。大丈夫、これから先、何があっても、エレイシア、君を守ろう」

 

 そう言うと、彼女は安心したように、笑った。俺は彼女に睡眠魔術をかけた。抱きしめた時にわかったことだが、目の下にはひどい隈が出来ており、それがかなりの間、エレイシアが眠っていないことを示していた。とにかく、彼女を安全な場所まで運ばなければ、そう思い、彼女を抱き上げ、時計塔の寮までの道を歩いていたときだった。

 

 「おい、そこのお前、その子供を返してもらおう」

 

 路地裏を抜けようとした時、目の前に立ち塞がった祭服を来た神父風の男がそういった。見るからにこっち側の人間であり、殺気たっているのが肌で理解できた。

 

 「悪いが、この子は今から俺の妹だ。妹を手放す兄がどこにいる」

 

 そうか、と呟いた男は手にもった小ぶりの剣のようなものをかなりの速度で投げつけてきた。エレイシアを左手で抱え、タイミングを合わせて右手でその剣の持ち手の部分を掴む。

 

 「(これは・・黒鍵)」

 

 黒鍵は聖堂協会で使われている武器の一つであり、悪魔払いの護符の一種だ。

 

 「ほう、それを掴むとは・・貴様、かなりの強者と受け取った」

 

 男がなにか言っているが、こちらはそれどころではなかった。大切な妹を、『悪魔』なんてものと同一にされたのだ。

 

 「お前、俺の妹に手を出したな?」

 

 シエルをその場に優しく置き、男に振り抜く。

 

 「その魔力量・・・まさか貴様---------」

 

 自身の四肢全ての魔術回路を起動し、強化魔術を発動させる。構えはめちゃくちゃだが、右手に魔力を集め、黒鍵を男に投げつける。瞬間、こめた魔力が爆発し、投げられた黒鍵は音を超えた速さで男を貫いた。かつて、男がたっていた場所には、見るも無惨な肉片が転がっているだけとなった。

肉片を火炎魔術で焼き尽くし、人目につかないように処分した後、地面に置いていたエレイシアを抱き抱えて、寮に向かって走り出した。




明日から学校が始まるので、すこし更新が遅くなるかもしれません。

 ちなみに、主人公が死んだら青子と橙子が作った人形に魂が移るらしいです。


 ※この回だけ文章がめちゃくちゃになってます。作者のアホが一回書ききったあと、重大なミスに気付いて前半をその場で書き変えたからです。できるだけ訂正していますが、後ろと前で設定が食い違うところが出てくると思います。ほんとうに申し訳ございません。


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8話

学校が始まったと思ったら13まで休みだったので初投稿です。


 あの日、祖父に重要な話があると伝えられた私と紅は、屋敷の広間に集められていた。広間には本家、分家問わず大勢の人が腰を下ろしており、その間には緊迫感がただよっていた。1ヶ月程前から祖父の鍛錬が厳格になっていたため、おそらく、この場で蒼﨑の後継者が決まるんだろうな、と確信した。それから30分程経ち、なぜか青子達も連れてこられていた。なぜ自分がここいるのか分からないらしい青子は、こちらを見つけると、まっさきに紅の膝の上に座った。

そういえば、最近青子と紅の距離が近い気がする、なんて考えていると、祖父が広間の中心に立ち、老人とは思えないほどの威厳を含んだ声で述べた。

 

 「これより、蒼﨑の次期当主を発表する」

 

 瞬間、それまでの全ての音が止まり、祖父の声だけが静かな世界に響き渡る。

 

 「次期当主は青子とする」

 

 時間が止まる。意味が分からなかった。なぜ、魔術のまの字も知らない青子が選ばれたんだ。それ以前に、それまでの修行を全てこなしてきた紅の努力は一体なんだったんだ。どうして、兄ではないんだ。なぜ、なぜ--------。

疑問で頭がいっぱいだった私に、祖父はこう言った。

 

 「橙子、お前に才能はない。その点、青子の方が魔法を行使するのに向いている。青子を見習え、橙子」

 

その言葉を聞いた時、尊敬していた祖父の偉大な姿が崩れ去った気がした。なんで、どうして------。握っていた手の甲が冷たく感じ、下を向くと濡れていた。そこで初めて、私は自分が泣いていることに気づいた。自分の努力が否定されたのがたまらなく悔しかったのだ。目頭を抑え、泣くのをやめようとした。だが、涙が止まらなかった。

 

 「アンサズ!」

 

 聞きなれた声が響いた。

 

 「俺の悪口を言うのは許そう、だが、肉親とは言え俺の妹を否定するのは許さん」

 

紅が、私の兄が、自身の祖父を敵に回しても、私を、私の努力を認めてくれたのだ。それが、どれほど私の救いになっただろうか。

 

紅が放った炎の魔術に対して祖父は水の魔術を用いてかき消そうとするも、兄の方が出力が上なのか、水を全て蒸発させて祖父を包みこんだ。その場に祖父が倒れこむ。周りの人が即座に祖父に治療魔術をかけるも、祖父は既に息絶えていた。

 

 

 「すまない、橙子」

祖父が死に、私達は一度両親の元へ帰ることになった。両親が運転する車に乗り、帰り道を走っていた途中、紅がそう呟いた。魔術師の世界で肉親を殺すのはよくあることらしく、紅にはなんの咎めも無かった。しかし、紅は祖父を殺した事に少し罪悪感をもっているらしく、浮かない表情をしていた。その姿が今にも消えそうで、私はとても怖かった。

 

 翌日、目を覚まして兄の部屋に行ってみると、紅の姿が消えていた。紅がいない、その事実を確認したとき、今にも倒れそうなほどの喪失感が生まれた。紅の机の上には手紙がおいてあり、その手紙には『ほとぼりが覚めるまではロンドンの時計塔にいる』、『橙子、青子。ほんとうにすまない』との旨が書かれていた。その手紙を読んだ瞬間、私は紅からもらったペンダントと何着かの衣類、祖父の通帳を持って家を飛び出した。紅はどんな時でもとなりにいて、私を支えてくれた。なら、今度は私が紅を支える番だ。空港につくと、なぜか青子も付いて来ていた。

 

 「なぜ青子がいるんだ?」

 

私が尋ねると、青子は答えた。

 

 「お兄ちゃんのところにいくため」

 

冗談かと思ったが、その眼差しとその雰囲気から事実を言っているんだと感じられた。私は何も言わなかった。

何か言ったところで無駄だと判断したからだ。私と青子は飛行機に乗り、ロンドンに着くのを待った。

 

ロンドンについた後、紅と私の共通の友人から、紅は時計塔の寮に住んでいることが分かった。時計塔に向かい、寮の教えられた番号の部屋に向かうと、紅が部屋から出てきてくれた。よかった、紅。心配したんだぞ、なんて言葉をかけると、紅は困ったように笑った。喜びのあまり、私は紅に抱きついた。その心臓の音と、体温を感じることで、私は安堵の胸をなでおろした。その時、私は誓ったんだ。もう、何があっても絶対に(おにい)のそばから離れない、と。

 




 ちなみに、主人公は『蒼﨑紅』(あおざきこう)君です。


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9話

シービーが出ないので初投稿です。


 

    ──月───日

 

 新しい妹ができた。そう、昨日出会ったシエル先輩にそっくりのエレイシアちゃんである。寮につくと、橙子や青子はこちらを見つめて今にもぶちギレそうだったが、わしが担いでいたエレイシアを見た時の今にもエレイシアを殺しそうな目にはさすがに空いた口が塞がらなかった。

あのさ、言いつけを守らなくてキレるのは分かるよ、でもさ、本気で魔術を撃ってくるのは違うと思うんだ。

 俺が青子と橙子をなだめていると、エレイシアが目を覚まし、俺の足に引っ付いてきた。その瞬間、二人の魔力が倍増し、周りにあった紙が吹き飛んだ。俺は日本で培われた最強の魔術である『土下座』をし、エレイシアは捨て子で拾ってきたということで納得してもらえた。ふぅ、危ない危ない。あともう少しであのクソ女神のところに逆戻りするところだった。

 

 翌日、俺は橙子達に《女たらし》という称号を与えられたのだが、俺が何をしたというのだ・・・・

 

   

    ───月───日

 

 魔術たのちい。

時計塔の環境が良いのか、俺の体に魔術に対する才能があるのか分からないが、レジエレキの素早さ種族値ぐらいのスピードで魔術を習得することができている。昔から天才は1を聞いて10を知ると言われるが、わしの場合は1を聞いて1000を知るレベルだ。しかし、ここで下手に魔術を極めると協会から「お前すごいからサンプル行きね」と封印指定を受ける可能性がある。なので、できるだけ普通の学生をよそおうために時計塔に在籍している一般家庭の魔術師と同等の魔術しか使っていない。ちなみに、俺は現在学部番号13の法政科に在籍している。そう、みんな大好きバルトメロイネキが受け持つ学部だ。最初ロンドンに来たときは橙子が日本で暮らすと思っていたため、空の境界をハッピーエンドに導くために創造科に行こうとしていた。が、結局橙子がこっちに来たために俺が創造科に行く意味が消えた。そもそもが橙子の代わりに時計塔に来たため、本人がいるのなら俺が時計塔にいる必要はない。なのでとっとと退学しようと思っていたのだが、突然バルトメロイネキが現れて勧誘された。

貴族主義のために空気が合わず、辞退しようとしたが、なぜかバルトメロイネキが必死に勧誘してきたため、その誘いに了承した。最初は貴族ではないわしにクラスメイトは疑わしい目線を向けていたが、ある程度時間がたつと普通に接してくれるようになった。あれ?法政科って時計塔のなかでもトップクラスに良い学部なのでは?

青子は現代魔術科に在籍し、ドクターハートレスの元で魔術を学んでいるらしい。エレイシアも青子と一緒に学んでいるらしく、日々成長中だとか。

 

よっしゃ、これで一応は空の境界を安心してこの目で見ることができる。魔法使いの夜?なんすかそれ?知らない子ですね・・・。

 

    ───月───日

 

 今日はあらかじめバルトメロイネキに休むことを伝え、

了承を得たので時計塔内を歩き回ることした。ん?なんで休めるのかって?正直、俺も驚いている。授業中に明日休みたい、と小声で呟いてしまい、さすがにやらかしたと思ったのだが、なぜかそれが許されてしまった。なんでや?

 

 時計塔内を歩いていると、様々な学部から教鞭をとる声が聞こえた。中には少し怒っている声もあり、魔術師と言えども普通の高校生と変わらないんだな、とほっこりしている最中、子供の泣き声が聞こえた。その声は子供ながらにして声が大きくなるのを我慢しているように聞こえ、言ってみると一人の少女が廊下の真ん中でうずくまっていた。

 

 「どうしたんだい、お嬢ちゃん」

 

 できるだけ声をやわらげ、その少女に話しかけた。その子が振り向き、こちらをみると涙を我慢しながらこう言った。

 

 「おとうさんがね、どこかにいっちゃったの」

 

 どうやらその子は父親とはぐれたらしい。時計塔内ではぐれるということは、この子の父親はおそらく君主(ロード)の一人なのだろう。たしか、この時間帯はどの学部も講義があり、終わるのはかなり遅い時間だったはずだ。

 どうしようか悩んでいると、その少女の目元にはまた涙が浮かび始めた。

 

 「ほら、お嬢ちゃん。これでも食べて元気だしな」

 

 ポケットの中に入っていたいちご味の飴玉を取り出し、少女に渡した。少女はその飴玉を口にいれるとすぐに涙がとまり、いちご味が気に入ったのか、口のなかでコロコロとならひながら笑顔を浮かべた。

 

 「ありがとう、おにいさん。わたしね、おるがまりーっていうの!」

 

 あかん、やらかした。




 あの、その、ほんとうにすいませんでした。


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10話

課題が終わったので初投稿です


 

──月──日

 

 オルガマリー・アースミレイト・アニムスフィア。《Fate/Grand Order》に登場するキャラクターの一人であり、人理継続保障機関カルデアの所長である。彼女の最後は自分が信じていた人に裏切られて殺されるという、なんとも度し難いものだった。実際、わしも前世で所長が死んだ時は割とガチで3日ぐらいご飯を食べられないほどショックだった。

 

 そんな彼女が今日、わしの膝の上で飴を舐めながら鼻歌を歌っていたのである。かわいすぎて死にそうでした。

 

 さて、話を戻すと、オルガマリーに飴を渡した後、一人にするのも可哀想なので講義が終わる時間までオルガマリーに付き合った。彼女の口からは子供とは思えないほどの魔術についての意見が語られており、ついていくのがやっとだった。てか、可愛すぎて話が入ってこなかった。あかん、わしロリコンかもしれん。

 

講義が終わり、天文学科の教室にオルガマリーを連れていくと、教材の片付けをしていたマリスビリーに抱きついた。マリスビリーは娘が付いて来ていたことに気づかず、驚きながらも彼女を抱き上げてなだめていた。親子の時間に部外者がいたら気まずいので、その場から立ち去ろうとすると、オルガマリーが小さく手を振ってくれた。

 

 

 よし、俺がお兄ちゃんになる(断定)。

 

 

 というか、よくよく考えたらオルガマリーがいるってことは最低でも《ロード・エルメロイII世の事件簿》が起きることは確定してるんだよなぁ。式の実家も確認済みなので、おそらくこの世界は二次創作でよくある月姫、魔法使いの夜、空の境界、Fate、ロード・エルメロイII世の事件簿の全てが同一の世界線であると思われる。ということは、わしが拾ったエレイシアはシエル先輩、ということになる。

 

嘘やろ?魔法使いの夜と月姫に青子とシエル先輩おらんの?

 

あかん、しくじった。月姫は青子の出番が志貴に魔眼殺しを与えるだけであるためなんとかなりそうではあるが、魔法使いの夜に青子がいないのは大問題である。というか、青子と橙子が仲良くしている時点で魔法使いの夜はほぼ消えたと思ってよいだろう。ほんとうに、申し訳ない。許して草十郎君。

 

とにかく、当面の目標としては《月姫》と《空の境界》を起こさせる、ことが挙げられる。空の境界に関していえば、創造科にコルネリウス・アルバと荒耶宗蓮が在籍していることを目視で確認しているため、大きな問題はないだろう。

 

月姫に関しても、シエル先輩はいないが、アルクとは接点が存在しないので、志貴君にばれないようにアルクルートに導けば問題はない。

 

 

   よし、勝ったな。風呂はいってくる。

 

 

 

 

 

──────────────────────────────────

 

 

 

 ある日、バルトメロイネキに呼び出された俺は講義の手伝いを終えたあと、帰り道に付いていた。

 

  「(どーしてバルトメロイネキはちくいち俺をよびだすんですかね)」

 

そんなことを考えながら歩いている途中の事だった。

 

3メートルほど後方に、俺の後ろにピタリと付いてくる人の気配を感じた。振り返ることなく少し歩く速度を早めても、間隔を保ったまま追いかけてくる。気がつくと、時計塔から少し離れた空き地に追い込まれていた。

 

 

 「(!!)」

 

 

殺意を感じ、咄嗟に前に飛び出した。自分が先程まで立っていた場所には薔薇らしき植物の茨でできた玉があり、目の前で萎んで地に落ちた。もしその場から動かなければ、茨の針に刺されて大量出血で即死だっただろう。

 

 

「あらぁ、今のを避けるのね」

 

 

 どこからともなく少女らしき声が聞こえた。魔術回路を全て起動し、なにがあってもいいように備える。瞬間、目の前から先程と同じ茨が出現し、俺を叩き潰そうと振り下ろされるも、そこから左に飛んで回避する。

 

敵の魔力を感じた方向にガンドを放つと、太い茨が数本出現し壁となってガンドを防ぐ。

 

 

「うふふっ、さすがね」

 

 

茨が消失し、敵が姿を表した。そこには、薔薇を体現したかのような少女の姿があった。

 

最悪だ。なんでお前がここにいるんだ。

 

 

「貴方、───私のモノになる気はないかしら」

 

 

 『薔薇姫』リタ・ロズィーアン。死徒二十七祖の十五位にして、キアラと並ぶ変態吸血鬼である彼女が、こちらを見ながら舌なめずりをしていた。

 




 リタの情報が少ないので脳内補完しながら書いてます。
間違いがあったら感想欄にご報告いただきますようお願いします。


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11話

ペルソナ3をクリアしたので初投稿です。美鶴先輩かわいかった。

※アンケートの結果、タグに「ちょっとだけギャグ」を追加しました。アンケートに答えていただいた方、ご協力ありございました。


 「アンサズ!」

 

 リタの顔が露になった瞬間、ルーン魔術を発動させ彼女を燃やす。が、死徒二十七祖相手に半端なルーン魔術など通用するわけがない。

 

 「あら?交渉決裂かしら?それじゃあ、それ!」

 

自身の真下の地面に魔力の反応を感知し、後方に飛び退く。立っていた場所には大量の茨が発生しており、もしその場に留まっていれば怪我ではすまないだろう。

 

リタが少しずつ近づいてくる。ルーン魔術が直撃したはずだが、彼女には火傷一つおっていなかった。ダメージはあるはずだが、死徒の再生力によって負った瞬間から回復しているのだ。自己流で学んだルーン魔術なんて、彼女からしたら蚊に刺されたに等しい。最悪なことに、現在自分が扱える魔術はルーン魔術、身体強化魔術しかない。おそらく、身体強化魔術で近接戦に持ち込んでも、死徒の身体能力相手に殴り勝てるわけがない。それに、下手に近づけば『薔薇の魔眼』で精神ごと彼女の夢の中で殺されて終わりだ。

 

あまりにも勝ち筋がなさすぎる。肉体のスペックからして、差がありすぎるのだ。

 

「もうおしまいなの?それじゃあ、お眠りなさいな」

 

リタの眼が薔薇色に発光する。『薔薇の魔眼』が発動したのだ。その瞬間、目を閉じて俺の体に残っている魔力を全て使い、『薔薇の魔眼』相手に出力勝負を挑んだ。

 

 

目を開けると、リタの顔が目前にあった。

 

「貴方、今、私の『魔眼』に打ち勝ったというの?そんなの、─────最高じゃないの!ますます気に入ったわ!私は今、貴方が欲しくて、欲しくてたまらないの!」

 

自身の頬に手を当て、まるで恋する乙女のような表情を浮かべるリタ。最悪な相手に気に入られてしまった。彼女に好かれるぐらいなら、いっそのこと殺された方が良かったかもしれない。

 

興奮した表情で俺の顔に手を近づけると、彼女は爪で俺の頬を浅く切りつけた。抵抗しようにも『薔薇の魔眼』に対抗する際に魔力を全て消失したため、体が鉛のように重く、指一本でさえ動かすことができない。

 

彼女は切りつけた爪に伝わる血を飲んだ。

 

「あぁ、さいこぉぉ。やっぱり、私が思った通りね」

 

歓喜のあまり、彼女が震えた。どうやら俺の血の味がお気に召したらしく、頬に直接口を付けて血をすすり始める。

 

「はぁ、はぁ、もう我慢できないわ」

 

そう呟くと彼女が俺が来ていた魔術協会の制服に手をかけると、その細い腕に見合わない剛力で破り取った。露になった俺の体を見て、彼女の息がさらに荒くなる。

 

首筋に顔を近づけ、吸血鬼特有の尖った犬歯で肌を突き破り、血を飲み始めた。

 

「あぁ、美味しいわ。ほんとうに、ほんとうに」

 

 

彼女が血を飲み始めてから10分程経った時のことだった。

 

「その人から離れなさい!」

 

突如、かなりの強風が発生し、辺りのものを吹き飛ばす。

 

「あらあら、もう来ちゃったのね。名残惜しいけど、またいつか会いましょう」

 

リタは俺に口付けると、その場から消えるように去っていった。

 

 

「貴方達はあれを追いなさい。大丈夫ですか?紅」

 

現れた人影が部下らしき人に指令を下し、抱きかかえられる。その人影がバルトメロイと分かった時、俺は安心の余り気を失った。




ファインモーション強すぎ




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12話

今回、かなり時間が飛びます。バルトメロイネキのヒロイン√を期待していた方は申し訳ない。いつかifの世界線で書くと思います。いえ、書きます。

飛ばした理由としては、魔術協会編で出したいキャラクター(オルガマリー、バルトメロイ、リタ)を出しきったからです。

今回から型月作品の本編に入っていきますので、どうぞ、よろしくお願いいたします。


 

 1995年2月28日 

 

 今日で時計塔を卒業する。よくある感想になるが、長かったようで短かった。まぁ、在籍期間の半分以上はバルトメロイネキに気に入られてクロンの大隊に所属し、吸血種やら聖堂教会相手に戦っていたため、あまり学生らしいことはしていないのだが。

 

というか、あいつら強すぎるんだよなぁ。なぁんでわしが密かにイノライさんに教えてもらったルーン魔術ぶちこんで傷一つつかないですかねぇ。あほくさ、やめるわこのゲーム。

 

 とにかく、明日から一に鍛練、二に鍛練、三四が飛んで、五に死合を地でいく連中からようやくおさらばできるのだ。あばよ~とっつぁぁん!

 

 そして、待ちに待ちわびた《空の境界》が始まる。橙子が原作通り観布子市に事務所である『伽藍の堂』を開くらしいので、橙子に頼んで住まわせてもらうことにする。青子、エレイシアもついてくるらしく、なんにせよ原作崩壊は避けられないだろう。が、既に《魔法使いの夜》が消えているんだ。もう何も怖くない(確信)。

 

 さて、明日に備えて今日はもう寝るとしよう。

 

──────────────────────────────────

 

 「久し振りの日本は寒いな」

 

 現在時刻、3月1日の夜7時。飛行機に揺られて日本に帰ってきた俺は久々の日本の空気を吸うのとコクトーと『彼女』の馴れ初めをこの目で拝むために散歩に出ていた。差した傘には雪が積もっており、3月に見合った季節と言えるだろう。

 

観布子市の大通りに沿って歩いていると、とうとう『彼女』を見つけた。咄嗟に近くの電柱に隠れ、『彼女』の姿を見る。

 

 「(ほんとうに、どうしようもないほど綺麗だ)」

 

そんな感想しかでないほど、『彼女』に魅了される。原作では【男から見たら美女に見え、女から見ると美男に見える】顔立ちと表現されていたが、実際にその容姿を見ると、まるで芸術作品かと錯覚するほどの美しさだった。

 

「(それにしても、コクトーがいない)」

 

原作通りにいけば、既に二人は出会っているはずだ。日付を間違えたかと思ったが、天気予報によると降雪は今日で終わると言っていたため、間違えてはいない。辺りを見回すも、こちらに近づいてくる人影はない。

 

「(おかしい、なぜコクトーがこないんだ。このままじゃ《空の境界》がはじまらない)」

 

心が焦燥に駆られる。自身を中心に魔力を円形に飛ばし、半径10m程を精査するも、人はいなかった。

 

「だれ?」

 

『彼女』が呟いた。すぐにその場から立ち去ろうとするも、足元にあった小枝を踏みつけてしまい、ポキリ、と乾いた音が静寂の空間に響いた。

 

「そこにいるのは分かっているわ」

 

『彼女』が自身の隠れている電柱を見つめる。これ以上隠れたままでいれば、『彼女』に殺されてしまうだろう。

 

「あぁ、すまない。貴女のような人がどうしてこんな夜に外にでているのか気になってね」

 

電柱から姿を出し、『彼女』に答えた。

 

「あら、そうだったの。少し、考え事をしていたのよ」

 

少し遠い目をしながら『彼女』が答えた。この場から立ち去ろうにも、彼女に魅入られて、体が言うことを聞かなかった。

 

『彼女』に近づき、差していた傘を渡す。

 

「あら、ありがとう。貴方、とても優しいのね」

 

すると、『彼女』はまるで花のように笑った。

 

 




作者の初恋は『彼女』です。


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13話

今話から空の境界編の間は日記形式がなくなり、それにともないギャグもなくなります。ご了承下さい


 あの後、気がつくと、俺は『伽藍の堂』の前に立っていた。たまたま玄関から出てきたエレイシアに連れられて中に入った。どうやって帰ってきたかは一切覚えておらず、『彼女』と出会ったのは幻想かと思ったが、ここを出るときに持っていた傘が手元にないため、幻想ではないと確信した。

なら、なぜコクトーが来なかった?そもそもコクトーがあの場所で『彼女』と出会わないと、物語としての《空の境界》は破綻してしまう。たしか、あと一ヶ月程経てばコクトーと式が観上高等学園に入学するはずだ。そこに忍び込んで確かめることにしよう。

 

なぜか、心の奥底に『また、逢いましょうね』という言葉が強く残っていた。

 

─────────────────────────────────

 

 

 桜が此処彼処で咲き乱れる時期になった四月。俺は橙子に少し家を出る、と言い残して観上高等学園に向かっていた。学園に近付けば近づくほどに入学式に来ていた新入生と親の話し声が大きくなり、前世にもこんなことをしたな、なんて呟いた。クラス分けが掲示された紙をみると、二つ目の欄に『黒桐幹也』の文字があった。辺りを見渡すと、前世でよく見た眼鏡をかけた黒髪の青年の姿が目に入った。この世界線がコクトーのいないifの空の境界かと思ったが、そんなことはないらしい。ならば、なぜ───コクトーがあの場所に来なかったのか。そんなことを考えていた時だった。

 

「ねぇ、───貴方。どこかで私と会ったことがあるかしら」

 

忘れもしない、凛とした刃物のような声。しかし、雰囲気が違って、『彼女』ではない事が分かる。声を掛けられた方に向くと、その場所には──────雪のような白い生地に所々に花の刺繍を縫った着物を身に付けた、絶世の美女が立っていた。その余りの美しさに、一瞬、言葉を失った。気を取り戻すと、彼女に答える。

 

「いや、ないな。君と会ったことは」

 

嘘をついた。つきざるをえなかった。もし、この場で正直に答えてしまえば、コクトーがいないまま《空の境界》が始まってしまうからだ。彼女はそう、と答えるとそのまま何処かへ行ってしまった。一度深呼吸を行い、自身の精神を落ち着かせる。さて、ここからどう動くべきだろうか。まず、最優先事項は彼女─────式とコクトーを出会わせることだ。そうしないと、《空の境界》が始まらない。しかし、下手に式と接触してしまえば、原作とは違う《空の境界》が始まってしまう。最初に『彼女』がコクトーではなく俺と出会ってしまったからだ。とにかく、この瞬間にすべきことは、コクトーと式を出会わせる事だ。この時点で会わせないと、式が『直死の魔眼』を発現せず、《空の境界》が始まらない。そう結論を出した俺は、姿が消えたコクトーを探すためにその場から走り去った。その場所に『伽藍の堂』の名刺の一枚を落としてしまったことに気付かないまま。

 

 

 

 

彼が去ったのを見届けたあと、彼女は近くの物陰から現れた。彼が落としていった名刺を拾い上げた。

 

「蒼﨑紅。『伽藍の堂』所属────そうなのね」

 

基本、名刺には名前、社名、社名の住所が書かれている。

彼女はそれに目を通した後、行ってみるのもいいかもしれないわね、と呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




『』と織がいるときの式の違いを表すのが難しい。

※蒼﨑紅のヒミツ①
実は、蒼﨑三兄妹で一番肉弾戦が弱い。


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14話

 空の境界をもう一度読みました。やっぱり奈須はすげぇよ・・・


 

 姿を消したコクトーを探すため、街中を探し回った。が、結局見つけ出すことはできないまま、夜の六時になった。彼を探すためにかなり遠くまで来てしまったらしく、辺りの景色に見覚えがない。見回してもタクシー乗り場はなく、まだこの時代では携帯も普及していないため、今夜は野宿をするハメになるかもしれない。

 

「はぁ、ふんだりけったりだ。まったく」

 

そんな事を呟きたくなるほど、今日という日はツイてない。

式と最初に出会ってしまい、コクトーを見つけることができなかった。このままでは、《空の境界》が破綻してしまう。さて、次はどうするか───そんな事を考えていた時だった。手に冷たさを感じ、空を見上げると、小さな粒らしき物が降ってきた。

 

「最悪だ、今日は本当にツイてない」

 

近くにあったコンビニに入り、喉が渇いていたため、volvicのミネラルウォーターを買って一気に飲み干す。コンビニの窓から外の様子を伺うと、かなりの大雨になっていた。その風景を見ながら少しの間ぼんやりしていると、一人の少女が覚束無い足取りで目の前を通りすぎた。なにか悪いことでもあったのだろう、そう思っていたのだが、やけにその少女の事が気になった。コンビニの傘を買い、彼女を追いかける。

 

「お嬢さん、この雨の中を濡れて帰るのはよくない」

 

少女に追い付くと、声をかける。

 

「いいんです。私、寒くないですから」

 

少女が振り向く。やっぱり、そんな事だろうと思った。こんな雨の中、濡れて帰ろうだなんて愚行をするのは、《空の境界》でも彼女しかいないだろう。

『浅上藤乃』。原作《空の境界》において、荒耶宗蓮が用意した三つの駒の一人にして、死に接触して快楽する存在不適合者。たしか、【痛覚残留】における式の敵だったはずだ。

今日は4月10日のため、ふじのんは湊啓太とかいうゴミに○○○される前だろう。正直、できることなら彼女を救ってあげたいと思う。しかし、【空の境界】において、『浅上藤乃』というキャラクターは敵でなければならない。だから、ここで変に彼女と関わりを持つことはできない。

 

「そうだとしても、だ」

 

彼女の左手に、傘を握らせる。彼女を救うのが駄目だとしても、助けるぐらいは許されるはずだ。

 

「たとえそうだとしても、人は暖かさを求めてしまうモノなんだよ」

 

彼女の右手を両手で包み込み、自分の体温を少しでも彼女に伝える。この行為は、ただの自己満足に過ぎない。5分ほどそうした後、彼女に別れを告げてその場から歩き去る。たとえ今が辛くても、いつかその分の幸せが訪れるから、なんて願いながら。

 

───────────────────

 

どうして、なんでしょう。どうしてあの人は私に傘を渡したんでしょう。その表情は哀れみでもありませんでした。父のような嫌悪でもありませんでした。それは、言うなれば慈愛に満ちたモノでした。どうして見ず知らずの私にそんな表情を向けるのでしょう。

 

 

なぜ、あの人の手を、私は暖かい(・・・)と感じたのでしょうか。




やっぱり主人公のキャラがブレブレなんだよなぁ。
非力私許

次回、エレイシア目線書きます


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閑話 とある少女の独白

ギャグはなくなると言ったな、あれは嘘だ(本当にごめんなさい)




 あの人が吸血鬼に襲われたと聞いたとき、私の心には耐え難い怒りとどうしようもないほどの殺意が湧いた。

なぜ、あいつらはいつも私の大切なものを壊すのだろう。

私はただ、あの人と暮らしているだけで幸せなのに。

 

最初にあの人に出会ったとき、あの人はカレーをくれた。特別美味しかったわけではない、ただの屋台のカレー。しかし、私はそれを食べた時に泣いていた。私はその時からカレーが大好きになった。食べていると、あの人との出会いを思い出すからだ。

 

あの人は次に、家族をくれた。橙子姉さんと、青子姉さん。初めて会った時は今にも私を殺しそうな目線をしていたが、すぐに仲良くなれた。学校にも通わせてくれた。分からないところがあれば教えてくれた。寮から出た時、帰った時に「いってらっしゃい」「おかえり」の言葉をかけてくれた。私は初めて、自分の存在を実感することができた。「エレイシア」という人間が、この世界に確か存在するのだと。

 

あの人は人間ではなかった私に、人として生きる事を許してくれた。命をくれた。温もりをくれた。感情を思い出させてくれた。傷を癒してくれた。私に、愛を注いでくれた。

 

あの人が回復したと聞き、私はすぐにあの人の元まで走った。あの人に抱きつくと、私の好きな温度を感じられた。

私の好きな声を聞く事ができた。私の好きな色を見ることができた。鼓動を聞き、私は初めて安心のあまり涙を流した。

 

あの人は私に全てを与えてくれた。ならば、私はあの人に血を、骨を、眼球を、命を、私の全てを捧げて尽くそう。それが、私にできる恩返しであるから。

 

だから、私は努力を怠らない。少しでもあの人の役に立てるように。

 

何も心配しなくていいのです。貴方の邪魔になる物があるのなら、何をしてでも排除しましょう。貴方が川を渡りたいというのなら、私は喜んで橋になります。貴方が望むのなら、私はどんな願いも叶えましょう。貴方に頼っていただける事が、何よりの幸せなのです。貴方のために、私の全てを捧げることを許してください。貴方のために祈ることを赦してください。そして、もし叶うのならば、貴方の隣に、私は立ちたいのです。

 

 

夜の病院のとある一室にて、少女は眠る思い人の頬に口づけを落とす。彼女の姉達は講義のため、今日はこの場所にくることはない。少女と青年の二人きりの空間の中、少女はただ青年に寄り添う。ただ、それだけのことで、少女は歓喜に震えていた。

 

────────────────────────────────

 

 ──月──日

 

 病院で寝てたらなぜかエレイシアがベッドの中に潜り込んでいた件について。

お、俺は悪くねぇ!俺は悪くねぇ!





蒼﨑紅のヒミツ②
実は、最近体から薔薇の匂いを感じる。


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15話

         読者の皆様へ
前々回、前回と非常に下手くそな文書を投稿してしまい、本当に申し訳ございません。なぜいきなり日記形式ではなくなったのかというと、作者にとって《空の境界》という作品が大好きだったため、アニメネタを入れて雰囲気を壊したくない、と考えたためです。ですが、そもそもこの小説をお気に入り登録していただいている大半の皆様は序盤のギャグの方を読んでお気に入り登録をしていただけたのだと、今さらになって気付きました。ですので、今回から、また日記形式に戻したいと思います。迷走してしまい本当に申し訳ございません。そして、《空の境界》の世界観を楽しみたいと思っていただいている方については、この小説では前々回からかなり作風が変わってしまうので、お手数ですが別の作者様の作品をお探しください。本編前に長々と失礼いたしました。前回の夜からのスタートとなります。


   ──月──日 雨

 

 あかん、我ながらキモすぎて吐きそう。どの口が「人は暖かさを求めてしまうモノなんだよ」なんてほざきやがるんですかねぇ。しかも、家に帰ってから咳とくしゃみが止まらんのだが。あかん、このままではこのノートがお茶の入ったコップを倒した小学生の宿題プリントみたいになってしまう。とりあえず、とっとと風邪を治すために寝ることにする。

 

 

 

   ──月──日 晴れ

 

 今日一日、エレイシアに看病してもらった。まだ中学生程の子に看病してもらうのは大人としての沽券ががががが。

そういえば、なぜかことあるごとにエレイシアが抱きついてきた。そういうのは志貴君かアルクとやってください。

 

ちなみに、今日でわしはエレイシアよりも力が弱いことが分かった。いや、いくらシエル先輩といってもまだ中学生だぜ?その中学と組み合って一瞬でベッドに押し倒されるわしって一体・・・。腕相撲したらエミヤといい勝負になりそうだ。

 

話を戻すと、あと数ヶ月後の九月には本来であれば【殺人考察(前)】が始まるはずだ。つまり、あの数ヶ月のうちにコクトーと式を出会わせてなおかつ式がコクトーに気を許すぐらいまでは持っていかないといけない、というわけだ。

 

我ながら不可能のような気がするが、なんとかするしかない。

 

 頑張って、蒼﨑紅!ここを耐えれば、夢の未来(幹式)が待っているんだから!次回、蒼﨑紅、生きる!

 

 

 

  ──月──日 曇り

 

 

 ふぇ?な、なんでぇ?・・・・・・

 

 

 

──────────────────────────────

 

 

 ある日のことだった。俺が熱でうなされている時、ピンポーン、とチャイムがなった。あいにく、青子、橙子、エレイシアは用事で出掛けており、『伽藍の堂』には俺一人が留守番をしている、という状況だったため、悲鳴を上げる体に鞭をうちながら扉を開けた。

 

「伽藍の堂、はここで間違いないかしら。蒼﨑紅さん」

 

おおよそ、こんな廃ビルには似合わない雪のような着物を着た、彼女が立っていた。

 

「貴方、これを落としていったのよ」

 

彼女が一枚の小さな紙を差し出す。その紙は日本に帰った時に橙子が作った名刺だった。

驚きすぎてフリーズした俺に構わず、事務所内に入った彼女は来客用のソファーに座った。

 

「こんなところにあるだなんて、見つけるのに少し手こずったわね」

 

たしか、伽藍の堂には橙子が人避けの結界を張っていたはずだ。それこそ、コクトーが本気で探さないと見つからないレベルのものを。

 

それを『彼女』ではない、式が見つけるなんて。まだ式に直死の魔眼は発現していないはずだ。つまり、式は結界を殺さずにこの場にたどり着いたことになる。人避けの結界を通り抜けるなんて、それこそ遠坂凛でも不可能だろう。

 

まずいことになった。向こうから俺に接触してくるなんて。おそらく、式はコクトーではなく俺に興味を持っている。最初に会ったのが俺だったからだろう。時計をチラリと見ると、針は午後四時を指し示している。時間から考えて、放課後、コクトーと話すことなくここに来たと思われる。まずい、なんてものじゃない。ヤバい。このままじゃ本当に《空の境界》が始まらない。一体どうすれば────。

 

 

俺の焦る様子を見て、彼女はふふっ、と小さく笑った。

 




これからも頑張りたいと思っているので、どうぞよろしくお願いします。


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16話

橙子さんがかっこいいので初投稿です。
皆様、コメント欄での意見、ありがとうございます。
拙作を一人でも見てくださる方がいる限り続けようとおもっていますので、よろしくお願いします。


  ──月──日

 

 あの後、なんとか彼女に帰ってもらうことに成功した。

熱で意識があやふやになっていたため、彼女に何を言ったのか分からないが、帰る時にニコニコしていたので下手なことは言っていないと思われる。正直、わしとしては式さんに会えることは嬉しいのだが、もし彼女にでも好かれてしまえば、下手をすると《抑止力》に目を付けられる危険性がある。一体どうしようか──。

 

 せや!逃亡したろ!

 

 

このまま【伽藍の堂】が始まるまで姿をくらませればええんや!すごいでしょ、天才でしょ!(ビルド風)

 

 

 

  ──月──日

 

 さて、逃亡生活を始めてから二年程たった。橙子には魔術協会から呼び出された的な事を言ったので怪しまれることはないだろう。これでやっと幹式てぇてぇが見れるのだ。やったぜ!

 

とりあえず、まずは橙子の代わりに言語療法士と偽って式に出会うことにしよう。たしか、すでに幹也は橙子に出会っているため、わしがほんの少し誘導するだけで空の境界は始まるのだ!

 

 勝った!空の境界完!!

 

 

──────────────────────────────

 

 式が入院している病院に入ると、受付に近づく。

 

 「すいません、言語療法士の蒼﨑なんですけど」

 

そこまで言うと、受付コーナーの中にいた女性が出てきて、私に付いてきてください、と先導してくれた。

 

 「蒼﨑先生って、独身なんですか?」

 

 そんな風な軽い会話をしていると、一つの病室の前で女性が立ち止まる。

 

 「ここです、よろしくお願いしますね。先生」

 

 女性がそう言うと、その場から去っていった。

 

 中に入ると、包帯で目を強く縛った少女がベットで横になっていた。近づいても、反応がない。おそらく、事故の衝撃で俺との記憶を失っているのだろう、そう確信した俺は少女に向けて、少し笑みを隠しながら底抜けに明るそうに言った。

 

 「やぁ、元気かい?」

 

 「へぇ、やつれてるかと思ったけど、肌のつやとかはキレイなんだな。聞いたときは幽霊みたいなのを想像してあんまり気乗りしなかったけど、うん、かわいい子でラッキー!」

 

 式のとなりに座り込む。

 

はじめまして(・・・・・・)。君の失語症の回復を助けにきた言語療法士です。ここの人じゃないから証明書はないけど、見えないんだから関係ないか」

 

 

「────失語症って、誰が」

 

 食いついてきた。そのまま原作の通りに進めよう。

 

「そりゃ、そう思うよな。完全な誤診だし。芦家は君のような例外的なケースにはめっぽう弱いんだ。でも、君にも非があるさ。面倒くさがって話そうとしないから、疑いをかけられちゃうんだぜ」

 

 

原作で橙子が言ったセリフを思いだし、それを自分の言葉に変換して式に伝える。と、その瞬間、式がナースコールに手を伸ばした。あわてて彼女からナースコールを取り上げる。

 

「おまえ、医者じゃないだろ」

 

「あぁ、俺、本職は魔法使いさ」

 

あきれながら、彼女は息を吐いた。

 

「手品師に用はないよ」

 

「はははっ、確かにそうだ。君の胸にあいた穴は手品じゃ埋められない。埋められるのは『普通』の人間だけだからな」

 

式が自分の胸に手を当て、何かを確かめている。

 

 

「どうやら早すぎたみたいだ。また来るよ」

 

そう言い残し、病室から去る。

 

それにしても、式の病室に人がいたような形跡は無かったのだが、一体なぜだろうか。

 

 




最後の問答の式のセリフは原作から引用しています。不都合があれば感想にお書きください。


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17話

今回、少し長いかもしれません。


  ───月──日

 

あっれれぇ~?おっかしいぞぉぉ~?(某名探偵風)。もうすでに【伽藍の堂】が始まっているのに、なぜかコクトーの姿が見えない。橙子に聞いても、そんなやつは知らない、とのこと。

 

 見たら分かる、あかんやつやこれ。

 

おそらく、もうすでに【空の境界】は破綻してしまったと思っていいだろう。おそらく、分岐点は『彼女』と出会ってしまったところだ。病室から出た後、夜になって病院の周りを彷徨いてみたが、コクトーらしき人影はなかった。正直、コクトーがいないと何がまずいって、空の境界が終わらないことだ。原作において、式とコクトーが両思いかつ、白純里緒という壁を二人で乗り越えたためにハッピーエンドとなり、空の境界が終わるのだ。通常ならば、現時点で式が多少なりともコクトーのことが気になっていないといけない。が、残念なことに現在、式に気になっている相手は存在しないのだ。それもこれも全部俺が最初に『彼女』に出会ったせいである。

 

 

さすがに流星一条(ステラ)しないといけない案件かもしれない。

 

とりあえず、【伽藍の堂】に関しては原作の橙子のポジションに俺が入ることにする。橙子自体がかなり性格が変わっているため、下手に橙子を関わらせればさらにまずいことになるからだ。

 

よし、これでとりあえずは【痛覚残留】まではなんとかなるだろう。あとはもう知らん。寝る。

 

 

────────────────────────────────

 

 どうやら、俺はかなり疲れているらしい。日課の式への訪問を終えた後、なぜか伽藍の堂に帰らず、ぼんやりとしたままよくわからないところに来てしまった。 

 

「(えぇ・・・どこだよここ)」

 

ここからどうやって帰るかを考えていた時だった。

 

「(ん?あ、あれは・・・)」

 

目の前には『浅上藤乃』が一人、行く当てなさそうに歩いていた。学校からの帰り道だろうか。

 

「(よし、ふじのんを見て癒されよう)」

 

そう思い、ふじのんを目で追っていたときのことだった。

ふじのんが茶髪かつ青色のタンクトップを着た男に腕を捕まれ、そのまま路地裏の方に連れ去られた。

 

「(あーね、なるほど)」

 

そのまま気づかないふりをして去ろうとしたが、腕を捕まれる直前、ふじのんがこちらを見た気がした。

 

「(チッ)」

 

内心舌打ちをしながら、その場所から走り出す。なにせ、『無痛病』であるはずの彼女がこちらをみた時、瞳がほんの僅かに揺れたのだ。つまり、彼女は──『助けを求めた』。

 

路地裏を抜けると、目の前に扉があった。その扉を蹴破ると、中では想像通りの事が行われていた。制服がはだけた彼女、ズボンをおろした啓太と数人。様子からして、本番はまだ行っていないようだった。

 

「あぁ、なんだぁてめぇ」

 

啓太の仲間の一人であろう男がこちらに近づく。その手にはナイフが握られており、こちらを刺そうとしているのが一目でわかった。

 

男がナイフを付き出した瞬間、それよりも早く男の顎を殴りあげる。男の手からこぼれたナイフをつかみ、別の男の()に向かって投げつけた。ナイフは想像通り男の首に刺さり、血が吹き出す。周りにいた他の男が目の前の惨劇に気付き、悲鳴をあげる前に顔をつかみ、間合いに入って顔に膝蹴りを叩き込む。啓太の方を見ると、萎縮したのかその場に座り込んでいた。

 

「ひ、ひぃ、も、もうやんないですから、ゆ、やるしてください」

 

 

そんな風に呟く啓太に近づき、「アンサズ」と告げた。

 

ふじのんは恐怖に震えているらしく、その場から動けそうになかった。俺がその場から去ろうとすると、ふじのんの手が俺のズボンをを掴んでいることに気付いた。床に倒されていたふじのんを担ぎ上げた俺は、今度こそその場から立ち去った。




次回、ふじのん目線書きます。


主人公は魔術師よりは優しいというだけで、人は平気で○せます。


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閑話 歪曲少女

読み返していてふじのんが可愛かったので初投稿です。

誤字報告ありがとうございます。


 その人は、まるでまるで蟻を踏み潰すように、なんの躊躇もなく彼らを殺していった。あるものは拳で、あるものは蹴りで、あるものは魔法(・・)のようなものを使って、わたしを○していた彼らを、簡単に片付けていった。彼らのうちの一人の血液が吹き出し、彼の顔に付着した。その血液は、彼の頬を伝って唇に到達し、口紅のようになっていた。わたしは、その姿を────とても、綺麗だと感じたのだ。

 

「はぁ、めんどくさ」

 

その人はそう呟くと、その場から去ろうとした。その瞬間、わたしは自分でも気付かないうちに、その人のズボンを握っていた。その人はこちらを見て、少し考えるような素振りを見せた後、わたしを抱き上げ、その場所を出た。わたしは、なぜか彼に抱えられている間、安堵の感情を得ることができた。外は雨が降っていた。彼はわたしに歩けるか、と尋ねた。わたしは歩けます、と答えると、彼は自分が来ていた上着を脱ぎ、わたしにかけてくれた。雨によって彼らの血液が洗い流され、街灯に照らされた彼の姿は、わたしの心に残るには、十分なものだった。

 

普通ならば、交番に行くべきだろう。そうすれば、彼は逮捕され、すぐに刑務所にいくことになる。しかし、わたしはそうすることができるだろうか。彼はわたしのために彼らを殺したのだ。なら、わたしは彼のためにこの事を内に秘めるべきだろう。わたしがこんなことを考えるなんて、少しわたしはおかしくなったのかもしれない。それでも、わたしは彼のために全てを忘れることにした。先導して歩く彼の隣に並び、彼の手を握り締める。母さま、ごめんなさい。わたしは、藤乃はやっぱり、どこかおかしくなってしまったようです。男の人は嫌いだったはずなのに、なぜか彼だけは心から信頼できる、信頼してしまうのです。わたしにとって、これだけの感情を一人の人に向けるのは初めてなのですから。この思いだけは、決して錯覚じゃないんだから。その瞬間、またアレがやってきた。お腹が熱い。見えない手に、わたしの中身が鷲掴みにされる不快感が。痛みのあまり、その場に倒れそうになる。しかし、隣にいた彼が、わたしを優しく支えてくれた。

 

「痛いのなら、痛い、って言った方が良いぞ」

 

彼は、わたしの心を見透かしたように、そんなことを言った。わたしが欲しくて欲しくて堪らなかった言葉を。

 

「とても……とても痛いです。わたし、泣いてしまいそうで――――泣いて、いいですか」

 

わたしはそう答えると、彼は、わたしを優しく抱き締めてくれた。わたしはその日、初めて───本心から、涙を流した。




もしも荒耶宗蓮が主人公を評価したら

『死を理解して何も見出ださない完全欠落者』


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18話

日間ランキング6位、ほんとうにありがとうございます。これも読者の皆様のおかげです。これからも精進したいと思っております。


今回、少し長いです。


  六月十七日 曇り

 

 誰か、陳宮で俺を射出してくれないかなぁ。ほんっとうにやらかした。なーにが「痛いのなら、痛い、って言った方が良いぞ」だ。原作におけるコクトーの立場奪ってもうてるやんけ。ふじのんを助けるのは良いとしても、ふじのんを肯定したのはプレミ以外のなにものでもない行為だ。

原作《空の境界》において、ふじのんは自分を否定し、否定され続けることによって『浅上藤乃』という人格ができ上がった。しかし、【俺】と言う存在が彼女を肯定してしまった。誰だって、本当に辛く、本当に苦しいときに優しい言葉をかけ、隣に誰かがいてくれたとしたら、その誰かに信頼を寄せるだろう。その証拠に現在、ふじのんは『伽藍の堂』の地下にある俺の自室のベッドの上でぐっすりと眠っている。あのいつも鉄仮面で何を考えているのかわからないふじのんが、微笑みながら眠っているのだ。

あの後、浅上邸まで連れて帰ったが、なぜかふじのんがうでに抱きついたまま、「わたし、今日だけは帰りたくないんです」と懇願してきた。なんとか家に入らせようとしたものの、ふじのんが涙を流し始めたために、今日は『伽藍の堂』に泊めることになった。幸いなことに橙子、青子、エレイシアは協会関係で家にいないため、明日の朝早くに帰らせることにする。たしか、あと三日ほど経つと【伽藍の堂】が開始するはずだ。橙子のポジションに俺が入れ替わっているため、今のうちに魔よけのルーンを刻んだ石をつくっておこうと思う。

────────────────────────────

 

 二十日の朝、式の病室に入ると、自身の指先を瞳につきたてようとしている彼女の姿が見えた。

 

「まてまて、思い切りが良すぎるぞ、おまえ」

 

声に驚いたのか、彼女はこちらに意識を向ける。足音を一切たてずに彼女に近づき、ベッドの脇に座った。

 

「直死の魔眼だ。それを潰すのは少しもったいないぞ式。それに、潰したところで視えるものは視えてしまうさ。呪いの類いはな、捨てても持ち主の元へ戻ってくるものだからな」

 

「おまえは───人間か?」

 

その問いに、少し笑いを噛み殺しながら答える。

 

「俺は魔術師さ。今日はおまえに、その目の使い方を教えてやろうと思ってね」

 

どうやら、式は俺が言語療法士だと理解したらしい。

 

「この目の使い方、だって・・・?」

 

「あぁ、現在よりは少しマシになる程度だが、知っておいたほうが良い。見るだけで相手の死を見ることができる、なんて魔眼はケルト神話以来だ。捨てるにしては少々価値がありすぎる」

 

「魔眼というものはね、保持者の眼球に何かしらの付属効果をもたらす霊的手術の到達点だ。しかし、おまえの場合は独りでに現れてしまったらしい。おそらく、もともと素質があって、今回の出来事で覚醒したんだろう。調べてみると、式という子は昔から物事の奥を見つめていたそうだが」

 

魔眼の説明をすると、彼女は少し考え始める。

 

「多分、それは両儀式と言う人間が無意識に行っていた制御法さ。表面を見るな、式。万物には全てに綻びがある。完全な物などあり得ないからな。おまえの目は、その綻びが視えてしまう。霊的な視力が強すぎるんだ。死に長く触れてしまっていたおまえには、一体それは何なのかが理解できてしまう。きっと、おまえの脳は死を視て、それに触れることさえできる筈だ。おまえがその目を潰すのなら、俺に譲ってくれないか」

 

原作で橙子が話した事をなぞるように、しかし、自分の言葉で伝える。

 

「なら、目を壊す理由なんてない」

 

「あぁ、そうだな。目を覚ませ、両儀式。おまえはこちら側の人間だろう?なら、幸福に生きたいなんてユメを見るな」

 

決定的な一言を放つ。この言葉によって、式の中に<覚悟>が産まれた。

 

「生きる意思なんて───私は、持っていない」

 

「だが、死ぬのは嫌だろう?なにせ、おまえは向こうの世界を識ったんだからな。贅沢な女め。いいか、おまえの悩みは単純だ。織がいないから、式としての自分はどうすらればいいか分からない、なんて思ってるんだろう。たしかに、織と式はセットだった。その片割れがいないんだ。もうそれだけで別人だ。たとえ、おまえが式だとしても、以前とは違うのも分かる。たが、それは欠けただけの話だ。そのくせに、おまえは生きる意志がないのに死ぬのは御免だという。生きる意味がないくせに死ぬのは怖いという。生と死、どちらも選べずに境界の上で綱渡りだ。そりゃ、心がガランドウになるさ」

 

「・・・知ったような口を、よくも──」

 

式に睨み付けられる。おそらく、俺の死の線でも視たのだろう。その体が、少し震える。

 

「ほらな、隙がありすぎる。だからそれぐらいの接触で動じるんだ。おまえの体は器として最高級だ。とっとと目を覚まさないと、雑念どもに取り殺されるぞ。雑念はな、言わば死者の魂の欠片だ。意志がないから、その場にただ漂うことしかできない。だが、やつらは固まり、一つの霊となる。そこに意志なんて立派なモノは存在しない。あるのは人間に戻りたい、人としての体がほしい、という本能だけだ。あいにく、病院(ココ)には雑念が多い。おまえのような心がガランドウなやつは、格好の得物だろうさ」

 

そう伝えると、彼女は少し、諦めたような表情を浮かべた。

 

「──無様だな。こうなったら密かに病室の前に置いていたルーンも無意味だ。後は勝手にしな」

 

彼女に毒のある言葉を吐き捨てる。すまない、式。だが、君には必要なことなんだ。

 

「それにしても、だ、式。()は本当に無駄死にだったのか?」

 

ベッドから離れ、扉を開いた俺は、彼女に振り返ってそう告げた後、その場を去った。

 




 日記編と現実編で時間が飛んでいます。申し訳ございません。飛んでいる間の主人公に関しては、原作の橙子と同じ行動をしています。

次回、ほんの少しだけ、霧のような彼女に救いがあるかも知れません。


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19話

今回は日記形式ではありません。


 式の病室から出ると、伽藍の堂へは帰らず、俺は病院内のある一室を探していた。原作での描写からして、彼女は式と同じ階に入院しているはずだ。首に言語療法士であることを示す吊り下げ名札をかけているため、怪しまれずに病院内を動くことができる。

 

「ほんと、かわいそうよね」

 

「えぇ、だって、あの事故で患者さんの家族全員亡くなったんでしょ」

 

すれ違った看護婦がそんな会話をしていたため、この階にいることは間違いない。辺りを見回すと、今俺が会いたい人の名前が書かれたネームプレートを見つけた。その病室に近づき、ノックをする。応答がない。おそらく、彼女は今、ここにいないんだろう(・・・・・・・・・・)。扉を開け、中に入る。静かな病室には、彼女のかすかな息だけが響く。

『巫条霧絵』。空の境界において、彼女ほど可哀想な人はいないだろう。全てを失い、空へ憧れ、最後に堕ちてしまった少女。そんな終わりは、あまりにも儚すぎる。せめて、ほんの少しでも、救われてほしい。そんな事を願いながら、床頭台にニゲラの花束を置いた。さて、明日は【伽藍の堂】が終わりを向かえる日だ。帰って準備をすることにしよう。足音をたてず、病室から去った。

 

 

─────────────────────────────────

 

翌日の夜、俺は病院の外で待機していた。すると、式と死体が部屋から落下してくる。式は見事な運動神経で死者と自分の位置を入れ替え、地面と水平に飛んで着地の衝撃を軽減させた。

 

「驚いた。おまえの前世は猫だっただろうな」

 

式は振り向かず、痛みにこらえているように見える。

 

「おまえか、なんでこんなところにいる」

 

「監視していたからな。今晩あたりだとヤマをはっていた。連中、おまえを殺して乗り移る気だぜ」

 

「はぁ、ったく。どうせ、これもおまえのせいだろ。なんとかしろ」

 

「了解。アンサズ!」

 

死者に向け、わざと威力を弱めに調整したルーン魔術を放つ。

 

「ッチ、手持ちのルーンでは無理か」

 

炎に包まれた死体は、ゆっくりと立ち上がる。骨が折れ、むき出しになっているのに、それでもなお式に向かう。

 

「詐欺師め」

 

「まぁ、そう怒るな。死体の破壊は難しいんだ。腕やら頭やらを消し飛ばしても、おかまいなく突っ込んでくる。あいにくだが、俺の手持ちの武装であれを消すことはできん。だが───」

 

「私の眼なら、できる、と」

 

「あぁ、おそらくな」

 

「なら───、なんであろうと、殺してやる」

 

式の瞳を覆っていた包帯がほどけ、その眼が露になる。夜の闇のなか、青いその眼は、美しかった。

 

「死の塊が、私の前に立つんじゃない」

 

死者の攻撃を紙一重でかわし、見えるであろう線をなぞるようにして片手で死者を引き裂いた。右肩から左腰まで、式の爪が突き立てられる。次の瞬間、死体は地面に倒れこんだ。なんとか繋がっていた片腕を式に伸ばすも、式は躊躇なく踏み潰す。

 

「式!」

 

彼女に向かって一振りのナイフを投げる。地面に突き刺さったナイフを引き抜くと、式は死体の喉へナイフを突き刺した。が、死体から煙のようなものが飛び出した。煙は式の体内へと消えていく。式がその場に膝をつく。勝ちを確信した俺は、その場から動かず、その時を待った。

 

「これで、逃がさない」

 

式の体に力が入り、ナイフを自身の胸に突き刺した。

 

「おまえなんかに、両儀式は渡さない」

 

 

「おまえ、言ったよな。俺にこの眼の使い方を教えてやるって」

 

「あぁ、確かにそう言った」

 

「いいぜ、その話、乗ってやる」

 

式は倒れることなく、こちらに目を向ける。その目には、初めての殺しによる高揚が見て取れる。式に近づくと、手を差し出す。

 

「よろしく───両儀式」

 

すると、式は差し出した俺の手を取った。

 

「よろしく───蒼崎紅」

 

二人して、その場で笑いあった。それにしても──なぜ、式は俺の名前を知っているんだろうか。

 

 

☆☆

 

桜がひらひらと舞い落ちる、この世のどこでもない場所にて、一人の少女は嗤った。

 

「ねぇ、言ったでしょ?『また逢いましょうね』って」

 

 



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20話

学校が始まったので初投稿です。巫条視点が難しかった。


 ───月───日

 

 式の顔と声が良すぎる件について。なんなん?あの顔とあの声はチートやろ、運営ナーフしろ。

 

 

 死者との戦いが終わった後、誰もいないはずの家に帰ると、なぜかふじのんがいた。近くのテーブルには彼女が作ったであろう夕食が置かれており、一緒に食べませんか?、と言ってきた。いや、その、美味しかったんだけどさ、君のその雰囲気で料理を作ると、どうしても桜の面影が・・・。

そういえば、式といいふじのんといい、俺のプロフィールを知っているが、テレパシーでも使えるんだろうか。とにかく、この時点で原作における【痛覚残留】のエピソードは消えた、つまり、ふじのんを救うことができたのである。ん?原作崩壊だって?コクトーが入ってこないため、原作は元々から消えている、つまり、原作崩壊ではない、いいね?【痛覚残留】のエピソードが飛ぶと、次は【未来福音】だったはず。つまり、とうとう瀬尾静音が登場するのだ。ん?コクトーおらんかったら詰みでは?紅は訝しんだ。

 

────────────────────────────────

 

いつものように、空に手を伸ばして。そして──────目が覚めた。どうやら、わたしは今日も生きることができるらしい。死に直面する以外、生きている実感がないというのに。

 

「あら──?」

 

いつもは何もない床頭台の上に、なにか、紫色の物が置いてあるのが辛うじて見えた。それは少し大きく、密集していた。わたしにお見舞い品だとか、それらしいものをくれる人はもう存在しないと言うのに。もしかして、誰かが間違えて置いていってしまったのかもしれない。もしそうならば、残念なことだ。後先ないわたしには、この品に込められた思いは無意味なのだから。

 

 

「巫条さーん。入りますよー」

 

毎朝の生存確認のためにナースの人が扉を開け、病室に入り、私に近づいてくる。

 

「これって・・・良かったですね。巫条さん。花束が置いてありますよ。それも、ニゲラの。たしか、ニゲラの花言葉って、『夢の中で会いましょう』だったはずです」

 

そういえば、昨日の夜。わたしが空を飛んでいたとき、眠っているわたしの近くで人の気配を感じた。もしかして、その人が────。

 

「あれ?この薔薇の匂いって・・・」

 

ナースの女の人が、何か違和感を覚えたらしく、すんすん、と鼻を鳴らしているのが聞こえる。

 

「巫条さん、蒼崎先生ってここに来ました・・・って、分かるわけないですよね。ごめんなさい」

 

そう言えば、この部屋に嗅ぎ慣れない薔薇の香りが漂っていることに気づいた。決してキツい香りではなく、人を安らかな気持ちにさせる、そんな香りが。ナースの人によると、蒼崎、という人が、こんな香りをしているらしい。

そういえば、最近、病院の中で紅色の人を見かけたのだが、その人なのだろうか。ならば、なぜその人はわたしに花束を送ったんだろう。ナースの人が消え、わたし以外いなくなった病室で、一人、それを考えていた。

 

 




次回、静音登場・・・にできたらいいな。

Q、どうして主人公から薔薇の匂いがするの?
A、リタに血を吸われた時に気に入られたからです。好きなものに自分の物という印を付けておくのは常識だよね。


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