"元"G級ハンター、臆病ジャック (荒北龍)
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女の子の部屋はいい匂い
プロローグ


 

 

 

 

ハンターは、誰もが英雄になる資格がある。

巨大で、凶暴なモンスターを殺し、村を、国を、王国を、民の人々を守り、ある者は巨万の富を、ある者は未来永劫語り継がれ、ある者は英雄と崇められる。

 

彼等はその短い時の中で夢を見て走り続ける。

その命というガソリンを使い、夢という車を走らせ続けるのだ。

故に彼は英雄と呼ばれる資格がある。

 

例え死期を早める事になろうとも、彼は夢を見ながら突っ走る。

 

それが英雄でありハンターなのだ。

 

そしてそのハンターには階級がある。

 

【下位】比較的小さな集落や村等に被害が出る可能性があるモンスターを狩るハンター。

 

【上位】村、街などに甚大な被害を及ぼす極めて危険なモンスター、古龍を狩る、撃退するハンター。

 

【G級】国が対処出来ない、天変地異や災害として扱われる超危険モンスターを狩るハンター。

 

そしてそのG級こそがハンターの頂点であり、生きる英雄。

ハンターの象徴なのだ。

 

 

 

 

 

✺▲▽■▲▽✺

 

 

 

 

「ひっ··········! はっ!はっ!」

 

 

ガシャガシャと鉄と鉄がぶつかり合う音を響かせながらぬかるんだ地面と水溜まりを踏みながら走り続ける。

走りすぎて脇腹の辺りにナイフで刺されたような鋭い痛みが俺の精神に負の感情を植え付け、足の裏は熱湯を掛られたようにあつい。

「止まりたい」「休みたい」「少しくらいなら」と甘い誘惑が俺の心を揺さぶる。

しかしそんなに誘惑を跳ね除け、再びアイテムポーチから強走薬グレートを取り出し、蓋を開けて走りながら強走薬グレートとを喉に流し込んだ。

次第に脇腹の痛みと足の裏の熱が引いていく。

そして俺は走るスピードをさらに早くする。

 

自分よりもはるかに大きい、天変地異のようなモンスター達から数多の攻撃を防いでくれたジャック・ソリトゥスの愛用の防具であり、【上位】個体である赤い上鱗等に身を包み、体内にある業火袋で縄張りに入った敵を焼き殺し、飛行能力が高く、空中で他の飛龍も圧倒するその姿は『空の王』と称されるモンスター。

【火竜】リオレウス。そしてそのリオレウスの素材から作られた装備、レウスSシリーズ。

 

これ程までにモンスターと戦う時頼もしい防具は無いだろう。

しかし、こうして逃げる時、防具はただの鉄塊でしかない。

いくら強走薬グレートが一定時間スタミナを一切減らさないと言っても、身体が防具と言うなの鉄塊の重りで既に悲鳴をあげ続けている。

 

このままでは体力より先に身体が壊れてしまう。

こうまでしてジャックが逃げているモンスターは

 

「ギャッ! ギャッ、ギャウッ!」

 

【下位】のドスジャギィである。

上位装備一式の男が、下位の、しかもハンターになりたての初心者が練習として狩る比較的弱いモンスターであるドスジャギィから逃げているのだ。

 

確かに無防備な人間なら勝つことは不可能であろう。

しかし、上位のモンスターの素材から作られた防具ならまず間違いなく怪我どころか、防具に傷すら付けることは不可能だろう。

 

そしてジャックが装備している武器はまだ謎多き龍、【古龍】天廻龍シャガルマガラの幼体であり、古龍の幼体でありながら、古龍出ない存在。

白く神々しい天廻龍シャガルマガラとは正反対の黒く禍々しい体色をしたモンスター、【黒蝕竜】ゴア・マガラの素材から作られた大剣、プライドofシャドウ。

それを更に上位個体であるゴア・マガラの素材によって強化された大剣、プライドofドゥーム。

 

これらを装備するということは、そのモンスターを狩った証拠であり、証明、武勇伝なのだ。

ドスジャギィでは比べることも出来ないほど大きく、巨悪なモンスター達を鏖殺したはずのハンター。

なのにも関わらず、恥も捨てて必死に逃げ続ける様は臆病者としか言いようがない。

 

「た、助けてくれぇ··············ッ!」

 

しかも恥を捨てて上位装備の男は必死に助けを求めていた。

これ程無様で哀れなことは無い。

身に余る防具と武器を装備し、戦うことを恐れ、逃げるさまは、恥知らずという言葉がお似合いだった。

 

「あっ」

 

そこで男は小さな段差に躓いた。

そのまままるで球体を坂で転がす様に、男はゴロゴロと転がっていき、そのまま壁にぶつかって止まる。

 

「いっつぅ···············」

 

頭を強く打ったらしく、防具の上から頭を抑える。

意識が混濁し、周りの視界がぐにゃんぐにゃんと歪んでみえ、上手く周りを見ることが出来ない。

何とか視界を戻そうと、何度も瞬きし、やっと正常な視界に戻ると、目の前には5匹のジャギィがジャックを取り囲み、真後ろでドスジャギィがジャックの頭ごと喰いちぎろうとガパリと口を開けていた。

 

(あ、俺の人生終わった)

 

そうしてジャックが自身の人生の終わりを悟った。

しかし、ドスジャギィがジャックに噛み付くよりもよ速くドスジャギィの首と目玉に短剣が突き刺さる。

 

「ギャベッ!?」

 

目に刺さった短剣はすぐに引き抜かれ、首に刺された短剣は上に持ち上げられ、そのままドスジャギィの首の大動脈を切り裂き、噴水のように傷口から血液が吹き出る。

ドスジャギィは短剣を刺した者を確認しようと横を見ようとするが、すぐに体の自由が聞かなくなり、地面に倒れ、途中何度か立ち上がろうとしたが次第に動かなくなり、最後はビクンッビクンッと痙攣して動かなくなった。

ジャギィ達は群れの長を殺され、途中混乱したが、すぐに自分たちの巣へ逃げて行ってしまった。

 

「····················」

「や、やぁ···············助かったよ」

 

目の前にはケチャシリーズ一式に、下位のドスランポスの素材から造られた双剣、ランポスクロウズをを装備した140cm程の男が立っていた。

一応俺のパーティーであり、つい数ヶ月前にハンターになったばかりのハンターだ。

歳もまだ13歳と若い。

まだまだこれからと言う歳だ。俺とは10歳差で、俺がどんどん先輩として色々教えていきたいのだが····················。

 

「フンッ···············情けねぇ」

「ははっ····················すみません···············」

 

この通り先輩どころか年下で自分より遥かに小さい男の子に助けられっぱなしです。

面目丸つぶれです。

正直めっちゃ情けないし、普段も年下相手に先輩で歳上である俺がめちゃくちゃ敬語を使っている。

 

彼の名前はレーギーナ。

見た感じはマジで女の子なのだが、本人は男だと言っている。

まさに男の娘と言うべきだろう。

黒髪のボーイッシュに鋭く灰色の瞳が特徴的で、普段顔は防具で隠している。

ほとんどの駆け出しハンターは顔と名前を覚えてもらおうと顔の装備を外しがちだが、彼は普段からあまり顔を見られることを嫌っている。

 

なんでも、女と間違えられるのが嫌なのだとか。

気持ちはわからんでもない。俺も初めて会った時、完全に女だと思っていた。

 

「おい、いつまで座ってんだよおっさん」

「お、おっさん!?」

「···············なに?」

「いえ、なんでもありません」

 

防具の隙間から灰色の瞳がギラリと光る。俺に反論の余地はない。

俺は目の前でギルドのアイルー達がレーギーナの狩ったドスジャギィを木材のリアカーに乗せ、運び始める。

アイルー達がドスジャギィを木材のリアカーに乗せながら、小声で「また言われてるニャ」「情けないニャ〜」など言いながら、冷ややかな目線を送っている。

俺はそれから逃げるようにレーギーナの後について行った。



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男の娘に守られるニート

 

 

 

 

「ドスジャギィの討伐クエスト完了、お疲れ様です!こちらがお二人分の報酬となります」

 

「····················」

 

人間とは異なる竜人族の特徴である尖った耳と、4本の指。

長めの金髪とパッチリと開いた碧眼。

青いワンピースに白いフード。頭には猫のカチューシャを付け青いワンピースには猫の肉球マークがついている可愛らしい服装を着た、それに見合うほど可愛らしい少女。

まだまだ10歳代の可愛さを残しながらも、大人の立ち振る舞いと、軽い化粧が大人の女性のような美しさを出している。

 

ハンターの間でもアイドルとして大人気を誇る受付嬢、カティ。

普段はハンターにオトモアイルーの紹介などアイルーにまつわる仕事をしているのだが、最近では受付嬢の仕事を手伝ったりもしている。

そんな頑張る姿は、命のやり取りをする中で、ハンター達の緊迫した空気を和ませ、癒してくれる存在。

一部からは天使と崇められている存在であるカティちゃん。

そんな天使のようなカティちゃん。

 

俺は物凄く苦手です。

 

「どうかしましたか?」

 

「いえ、特に何も···············」

 

「····················?」

 

「······················」

 

カティはずっとぼーっとしてばかりいる俺を不思議に思い、首を傾げた。

 

「おーい、何やってんだよおっさん。早く報酬もってこい」

 

「あ、はい!ただいま!」

 

俺はすぐに我を取り戻し、2人分の報酬を受け取り、パンやソーセージにチーズを付けた、チーズフォンデュを食べているレーギーナの元へ走る。

 

「何話してたんだよ」

 

「えっと、次のクエストの事です」

 

「ふーん。戦わないお前が次のクエストの事なんて話してなんか意味あんの?」

 

「うっ···············」

 

正論なのに何故こんなにもレージーナの言葉は俺の心をこうもズタズタにするのだろう。俺じゃなかったらうつ病待ったナシだね。

 

「で、次のクエスト何にしたんだよ」

 

「えっと、次は納品クエが溜まってるからそれにしようなぁと····················」

 

「ふーん、いいんじゃね。オレは先マイハウス戻ってるから、おっさんはどうすんの?」

 

「俺はこの後····················」

 

「そう言えばさっき、あそこの2人組がおっさんのこと話してたぜ、臆病ジャックってよ。逃げ回るのもいいけど、おっさんのせいで俺まで舐められるのはゴメンだからな」

 

「····················うっす」

 

耳良すぎじゃありませんか?集会所は普段からハンター達で賑わってるのに、あそこのふたりって、結構離れた距離にいますやん、なんで聞こえんだよ。

ケチャシリーズってスキルに地獄耳着いてたっけ。

いや地獄耳はケチャワチャのG級素材か。

 

そう言ってレージーナは報酬を持ってそのまま俺の(・・)マイハウスに戻って行った。

 

俺とレージーナはある契約を交わしており、俺の家に住んで、俺が家事を全てやるという代わりに、こうして一緒にパーティーを組んでくれているのだ。

 

だが最近思うのだ。

一回りも年下の男の娘ずっと守られっぱなしってのはどうなのだ。

周りからの目も痛い。クエストを終わらせて帰ってくる度、周りから「なんであいつハンターやってんの?」「その装備は飾りかよ」「情けない」と色々言われ放題なのだ。

正直辛い。

だけど俺弱いから独りじゃ戦えない。

 

どうしよう。本当にどうしたものか····················。

 

「どうかしたんですか?ジャックさん」

 

「ぽげらぁ!?」

 

「そんなに驚いて、何か考え事ですか?」

 

するといつの間にかジャックの後ろにカティが立っていた。

 

「あ、いや特に何も!それよりこんなとこ居ていいの?仕事が忙しいんじゃ····················」

 

「いえ、今日は午前で終わりなので大丈夫です」

 

「あ、そうなんですか····················」

 

やばい、今すぐ逃げたい。

ふだんから老若男女に好かれるアイドル的存在であるカティちゃんに話しかけられれば誰もが飛び跳ねながら喜ぶだろうが、俺は正直辛い。

今すぐなにか理由をつけてこの場から逃げたい。

 

「あの、今お時間ありますか···············?」

 

「あ、えーっと···············」

 

何か、なにか逃げる理由はないだろうか。

俺がなにか逃げられる理由を探していると、カティちゃんが逃がさない様に俺の手を両手で握っていた。

 

「···············わかった。わかったから、手を離してくれ」

 

「本当ですか!」

 

「あぁ」

パァっとカティの周りに花が咲いたように見える。

何がそんなに嬉しいのか、俺は理解できない。

俺は屈んでカティに目線を合わせながら、頷いた。

 

「それじゃぁ、私の部屋で待ってますね」

 

すると、不意打ちのように、そうカティが耳元で囁いた。

そしてそう言うと、カティはそのまま自分のマイハウスに向かっていった。

 

「殺すか?」

 

「待て待て、ここではまずい。殺るな狩場で殺るぞ」

 

やめてください。

先に言っとくが、俺がカティちゃんの部屋にお呼ばれするのは皆が思うようなムフフな展開は絶対にないということだけ言っておこう。

 

これからおこることは、簡単にまとめれば地獄だ。

 

俺は覚悟を決め、カティの後に付いて行った。

 

 

 

 

 



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天使と言うより悪魔

 

 

「カティちゃん、これを受け取ってくれ!これはリオレイア希少種から取れた卵なんだ、ぜひ食べてくれ!」

 

リオレイア希少種。

リオレイアの通常種とも、亜種とも異なる黄金のリオレイア。

その黄金の体色から『黄金の月輪』とも称されるモンスター。

そしてただ黄金に輝くリオレイアと言うだけでなく、その黄金の甲殻は黄金と同じ硬さと価値を持ち、そのブレスはあまりの熱で石をも溶かす。

無論危険度もずば抜けているうえ、存在自体が希少なモンスター。

確かな実力と、ギルドからの信頼があって初めて任せられるクエストである。

 

そしてそんな希少な存在の卵は、卵の重さと同じ金の重さで取引される。

無論竜の卵はでかい。軽くても30キロはある。

 

つまり30キロ以上の金塊をこのバカは少女にプレゼントしてるのだ。

 

「私からはリオレウス希少種の逆鱗から作ったドレスをあげるわ!ぜひ着てみて!」

 

リオレウス希少種。

リオレウスの通常種とも亜種とも異なる白銀のリオレウス。

古参ハンターですら見たことがないと言われるモンスターであり、古文書や伝説上に出てくるリオレウス。

まるで本物の白銀を思わせる輝きを放つ甲殻に、触れたもの全てを溶かす業火。

その白銀の姿から銀火竜と言われ、伝説のモンスターと言われている。

 

そんな銀火竜の逆鱗を使ったドレスは、一体どれだけの価値があるのだろう。

銀火竜の逆鱗は噂で街と城を建ててもお釣りが来ると言われている。

そんなドレスをこんな少女にあげてどうすんだこのバカ。

 

こんな感じで次々次々とバサルモス亜種の涙のネックレスとか、ジエン・モーラン亜種の天鱗で作った髪飾りとか、もう頭おかしくなりそうなほど高価なものばかり送られてくる。

なんなのこのハンター達。価値観クック先生にクンチュウと一緒に食わせたか?

 

さて、一通りカティちゃんへのプレゼントを貰い終わったのだが。

 

「多いね」

 

「···············はい」

 

「これとかダマ・アマデュラの鱗酒じゃん。初めて見た」

 

一応こう見えてカティちゃんは成人している。

竜人族は成長が普通の人間と比べて著しく遅い傾向がある。故に、カティちゃんが幼く見えるが、こう見えて18歳である。

まだまだ若いね。

 

「問題はこれをどうするかだよなぁ····················」

 

「うぅ、せっかく貰ったのに、突き返すのも····················」

 

「とりあえず食べられるものだけ食べちゃおうか。腐るともったいないし」

 

「はいっ」

 

俺はこうしてよくカティちゃんに届くプレゼントを処理したり整理したりするのを手伝っている。

と言うのもあるが、実はもう1つある。

 

「やっと片付いた」

 

「あの、それじゃぁ····················」

 

「····················そうだったな」

 

実は俺とカティちゃんはとても人に言えない関係だ。

絶対に人には言っていけない、見られてはいけない関係。

 

それは

 

「ほらほら!片手剣のコンボがバラバラだぞ!」

 

「はい!」

 

「違う違う!もっと回転の力を生かせ!」

 

「はい!」

 

「片手剣使うなら盾を持ちながらアイテムを使うなんて当たり前だからな!」

 

「はい!」

 

「回復薬は苦くても飲む!死ぬぞ!」

 

「はい゛ぃ゛!」

 

カティは片手剣を構えながら、涙目になって回復薬を飲んでいるが、いまだ苦くてちゃんと全部飲みきれていない。

薬草とアオキノコは両方とも苦い。無論苦いものと苦いものを混ぜればむっちゃ苦い。

だが生死の駆け引きの中で、苦いから回復薬が飲めねぇとかバカみてぇなやつは紫毒姫のサマーソルト食らって死ねって『狩場は我が家』って言う本に書かれてた。

 

さて、なぜカティちゃんが俺の指揮の元、ハンターの訓練をしているかと言うと、俺が酔った勢いで自分の武勇伝(笑)を語ってしまい、それを聞いたカティちゃんが、俺の弟子になりたいと言ってきた。

俺もその時だいぶ酔いが回っていた為、二つ返事でOKしてしまい、今の状況に至る。

 

でもどうしよう。

 

カティちゃんのマイハウスに行く度に他のハンターの恨みを買ってしまい、狩場で隙あらば殺されそうです。

その度にレージーナが俺の事守ってくれて、正直俺が女だったら確実にレーギーナに惚れてるわ。

 

俺はカティちゃんのマイハウスの庭ことオトモ広場のベンチでカティちゃんの片手剣さばきを観察する。

 

正直筋はあるし、もうハンターとしてやっていけそうだ。

 

だからこそ不思議なんだ。

 

「·························なぁカティちゃん」

 

「はい!」

 

「別に教わるなら俺じゃなくて良くね?」

 

「·············································ぇ」

 

「だって俺の主な武器って言ったら大剣と操虫棍だよ?確かに片手剣は何度か使った事あるし、猫パンチ?で古龍もぶっ殺したことあるけどさ、カティちゃんの腕ならもっと凄腕の片手剣使いに教えてもらった方が伸び代もあるって言うか····················」

 

そこで俺は気づかなかった。

ガシャンッ!と片手剣を地面に落とし、唖然とした顔で両目からボロボロと大粒の涙を流しながら泣いているカティちゃんに。

 

「ほえ?」

 

「やっぱり、わたしじゃだめですか····················?」

 

「あの、ちょっ」

 

「やっぱり私みたいな小さな身体じゃ、ジャックさんを満足させられませんか?」

 

「ハンターとしての話だよね!?こんな小さな体じゃハンターになれないって事だよね!?」

 

「私頑張ります!今は小さいかもしれませんけど、今よりも大きくなって、絶対にジャックさんを満足させるからだになります!」

 

「カティさん!いえカティ様!俺が悪かった!だからその物凄い語弊のある言い方をやめてもらえないでしょうか!」

 

「だから、だから私を捨てないでぇ·························」

 

「あの、ですから───」

 

ドシュッ

 

「·························」

 

次の瞬間、俺の頬を貫通弾Lv3が掠め、そのまま後ろにいたマタタビでラリってるアイルーの尻の穴に思いっきり直撃して、後ろのアイルーが「にゃア゙ア゙ア゙ア゙ア゙」と断末魔をあげていた。

 

これは警告だ。

 

───次はテメェの穴だ。

 

という警告なのだ。

 

「····················これからも師弟関係を続けさせてください」

 

「··············私の事、捨てませんか?」

 

「はい」

 

「一生私の傍に居てくれますか?」

 

「待って、それは誤解を産むといいますか···············」

 

「私の事捨てるんだぁ···············」

 

次の瞬間、どこからかガチャンッとたまが装填される音が聞こえた。

 

「一生傍に居させてください」

 

「本当ですか!?やったぁ!えへへ、これからもよろしくお願いします!ジャックさん」

 

何故だろう、とても可愛らしいはずの笑顔が、とても怖い。

俺がカティちゃんが苦手な理由、わかっていただけたでしょうか。

 

「私の事、捨てないでくださいね」

 

皆が言う天使とは程遠い、妖艶な悪魔のような囁きが俺の耳に囁かれた。

 

 

 

 

 

 



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エピローグ

 

 

 

 

「た、ただいま····················」

 

「おかえり」

 

疲れた。

何故こうなってしまったんだろう。

ストレスを発散する為に飲んだお酒のせいで余計にストレスが溜まることになるなんて、誰が想像出来んだよ。

しかも相手が悪すぎる。

 

カティちゃんは龍歴院にも所属しており、今の龍歴院は長年姿を表さなかった古龍バルファルクのG級相当の個体が発見されその調査で各地を行ったり来たり。

 

そうでなくても古龍【老山龍】ラオシャンロンのG級相当個体の出現と突然防衛拠点に現れた巨大な未確認モンスター。

 

ドンドルマでは火薬庫から火薬が大量に紛失する事件と、突然のセルレギオスの大移動。

禁足地で上位相当か、それ以上と思われる【天廻龍】シャガルマガラが発見されたとの報告。

 

モガの村の方では度重なる大地震と津波の為緊急避難警告が出されたって話だ。

近くで黄金の鯨(・・・・)を見たって報告まで上がってる。

そしてその近くで"猛り爆ぜる"こと【臨界】ブラキディオスが発見されたと報告。

海の方では【冥海竜】ラギアクルス希少種が発見されたと報告。

 

バルバレの近くの大砂漠じゃG級相当の個体と思われる【豪山龍】ダレン・モーランと【霊山竜】ジエン・モーラン亜種が同時出現してバルバレにも緊急避難警告が発令されている。

 

塔の秘境ではG級相当の【月迅竜】ナルガクルガ希少種と【銀火竜】リオレウス希少種の縄張り争い。

 

デデ砂漠では十年前から数多くのハンターを殺しまくった二つ名個体と思われる【鏖魔】ディアブロスと【魔王】ディアソルテが冷戦状態となっており、この二頭が縄張り争いをした際は砂漠の環境と近隣の村に甚大な被害が予想されている

 

何よりヤバいのは古龍調査団の報告によれば、シュレイド城に再び【祖龍】が現れたらしい。

これはあくまで噂だ。

 

まるで世界崩壊1か月前のようなこの高難度クエストの嵐。

俺みたいな凡人ハンターにはなにもできない。

俺は祈ることしか出来ないのだ。頼む、どこかのG級ハンター達よ、この世界を救ってくれと。

 

「そう言えばさっき聞いたんだけどよぉ」

「あ、はい。なんでしょう」

 

「おっさんってロリコンなの?」

 

「ほぇ?」

 

突然の質問に、俺は頭の上にハテナマークを浮かべながら首を傾げてしまった。

 

「いやさ、さっき噂でおっさんが小さい女の子を襲って泣かせたとか言う話が持ち上がってたんだよ」

 

そう言うとレージーナは双剣を持ってゆっくりとこちらに歩みよる。

何故だか恐怖で体に力が入らない。

 

今のこの光景を例えるなら、蛇に睨まれた蛙という表現が正しいのだろうか。

 

「待ってくださいそれ俺じゃないっす」

 

「しかも相手はネコ嬢だって話だし」

 

ゆっくり、しかし確実に殺意を帯びながら俺に近いてくるレージーナ。

 

「ほんと待ってください。俺じゃないです、なのでその双剣を今すぐしまってください」

 

「ジャック」

 

「はい」

 

レージーナは双剣を俺の首筋、大動脈の辺りに刃を押し当てた。

少しでも動いたり、下手な真似をすれば俺の大動脈が引き裂かれ、そのまま出血多量で死んでしまう。

 

レージーナの瞳はどこまでも冷めきっていて、本気で殺す目をしている。

 

「オレのパーティーにロリコンとか言う性犯罪者がいたって侮辱されたんだが、もしそれが本当なら、俺に恥をかかせたテメェを殺して俺も死ぬ。返事かYESかはいな?」

 

「い、いえす····················」

 

「だよな!おっさんが性犯罪者なわけねぇもんなぁ!わりぃわりぃ、あんまり皆噂してっからちょっとだけ疑っちまったよ!」

 

「ハッハッハ!そんなわけないじゃないっすか!俺にそんなに度胸───」

 

ドサッ

 

 

次の瞬間、視界が反転して俺のマイハウスの天井が視界に移る。

どうやら俺はレージーナに押し倒されているらしい。

 

そして左目にはもう一つ、天井の他に、双剣の片方の刃が突き刺さるギリギリの所で寸止めされていた。

 

俺はぶわっと毛穴から一気に冷や汗と、恐怖のあまり子孫を残そうとラリったアイルー並みに下半身が興奮しまくってる。

 

「····················俺に恥かかせんなよ?」

 

「イ、イエッサー!」

 

そう言うと、レージーナは無言で双剣を納刀した。

 

すると、先程の殺気と脅しがうそだったかのようにベットに寝転がってくつろぎ始める。

 

「腹減った、早く飯作ってくれ」

 

「はい」

 

これが俺の日常です。

 

年下から命狙われて、同じハンターから命狙われて、モンスターからも命を狙われる日々。

 

でも最近はレージーナのこの脅しも、嫉妬による脅しなんじゃないかなぁっと思い始めてる。

 

そう思えばとても可愛いものである。

 

なぁーんだ、レージーナはツンデレなのかぁ。

 

とか馬鹿みたいなこと思ってないと胃が爆発する。

 

あと最近レージーナに罵倒されたり、こうやって奴隷のようにこき使われることに興奮を覚えてしまっている自分が居る。

 

「おいおっさん、早く飯」

 

今も年下にこき使われ、この冷たい目線で見られることに興奮してしまっている。

 

変態? 知ってるか、男はみんな変態なんだよ。



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おもしれー女
プロローグ


 

 

 

 

いつだってハンターの日常な非常だ。

 

昨日一緒に酒を飲んでいた奴が次の日に腕だけになってギルドに戻ってくる。

 

長年連れ添った相棒がある日突然気がついたら屍になってる。

 

格下のモンスターを狩りに行ったらそれよりも遥かに危険なモンスターに出会す。

 

それが明日の自分かもしれない。

もしかしたら今日の自分かもしれない。

それでもハンターはその短い人生と言うチケットで夢という映画を見る。今日死ぬ自分を誰かが語り継いでくれると。

 

自分の映画(ゆめ)次回作(つづき)を誰かが作成して(継いで)くれると信じて。

 

そして今日もハンター達は自分達のチケット(人生)を使って映画()を見る。

 

 

 

 

 

■□■□■□

 

 

 

 

 

「竜の卵ってマジで美味いの?」

 

「そりゃぁ絶品らしい。基本焼いて食うみたいなんだが、黄身は味付けなしでもホットケーキみたいな甘さと蜂蜜のような濃厚さらしい。白身の方は焼きたてのパンみたいにしっとりとしてて美味しいって聞くけど」

 

「·························」

 

「でもギルドの許可なくモンスターの卵を食用、密猟、売買することはギルド法で禁止されてるよ」

 

「別に食いてえなんて言ってねぇだろ!」

 

「いやヨダレ垂れてるよ」

 

「ウルッせぇッ!」

 

そう言ってレーギーナは俺のケツを蹴った。

俺たちはハンターランクをあげるためのクエストを受けるため、とあるクエストを受注した。

下位個体である飛竜種の卵の納品クエストだ。

年で変わるが、ハンターランクを上げるためのクエストを受けるにはギルドで決められた一定のクエストをする必要があり、俺とレーギーナはその一定のクエストの最後のクエストである飛竜種の卵の納品を受け、今その卵を納品中だった。

卵は役30kg近くあり、破れやすく、しかも親である飛竜種もそう安安と卵をくれるはずもなく、俺達は親であるリオレイアから逃げ、卵を狙うモンスター達から俺をレーギーナが守ってくれながら、何とか一定数の納品を終わらせ、今はギルドに帰る身支度をしている状態だ。

 

「そういや聞いたか?」

 

「何が?」

 

竜車に乗り込み、アイルーがアプトノスの手綱を握り、動き始めたと同時にレーギーナが話を振る。

 

 

「G級六位【千剣】レギオンがベルナ村に来るらしい」

 

G級ハンター。

ハンターなら誰もが憧れる存在。

普段はドンドルマでG級ハンター用に用意された超高難度のクエストで長期間村を開けることの多く、また各国の姫様や王直々のクエストなどで多難なハンター。

村に訪れると言っても殆どは急速や里帰りがほとんどだ。

 

「なんでもベルナ村のハンターから一人弟子をとるらしい」

 

 

G級ハンターの弟子。

それはG級ハンターになる為の最短ルートと言ってもいい。

G級ハンターのクエストに同行し、G級ハンターが直々に自身の経験と技を弟子に伝授する。

しかしその過酷な修行に大抵の人間は心折れるか、死ぬ。

 

「へー、レーギーナもやっぱりG級ハンターの弟子になりたいの?」

 

「んー、俺はあんまり興味ねぇんだが、G級ハンターってのがどんなやつかは気になる」

 

 

レーギーナは誰かに教えを乞うような性格ではない。

なりたい物も、欲しいものも自身で努力して手に入れる。

だからあまり今回のG級ハンターの弟子を探すという話もあまり興味がなさげだった。

 

「やっぱりG級ハンターには憧れてるんすか?」

 

「憧れっつうか、俺の憧れがG級ハンターなんだよ」

 

それは初耳だった。

 

「俺がハンターになったのもその人みたいになりたくてさ」

 

「どんなハンターだったんですか?」

 

「あー····················そんなことより次の緊急クエスト、おっさんはどうすんだよ」

 

「あ、俺はパス」

 

「まぁおっさん戦えねぇもんな」

 

今ギルドではとある問題が上がっており、それは緊急クエストなど討伐クエストを自分より格上であるハンターに任せ、クエストを受注したハンターはキャンプで待機するというものだった。

これにより実力のないハンターが上位ハンターになるという事案だ。

 

これによりハンターの質が落ち、肩書きだけのハンターが増えている。

これによりハンターズギルドは対策として緊急クエストではギルドナイトを一人派遣し、試験官としてハンターを監視するというもの。

これによりハンターの不正を事前に防止することとなっている。

 

「おっさんは俺がいない間どうすんだ?」

 

「まぁ、納品クエストをやろうかなぁと」

 

「ふーん。ま、ハンターランク2になったら改めて頼むぜ。モンスターの引きつけ役」

 

「全力で守ってくださいよ?」

 

「たりめーだろ」

 

 

 

 

 

§§§

 

 

 

 

 

「ここがベルナ村か」

 

G級装備であるレギオスXシリーズの女性はそう呟きながら竜車をおりる。

それと同時にギルドのハンター全員がその女性に視線が行く。

 

噂は真実だ。

この女性、G級六位【千剣】レギオン=リコリスは弟子を取るためにベルナ村に来た。

竜車を出てすぐベルナ村の受付嬢が出迎える。

 

「こんにちは。遠路はるばるベルナ村にお越しいただきありがとうございます」

 

「元気そうだな。ナータ」

 

「ふふ、あなたも元気そうね。リコリス」

 

元々レギオンはベルナ村出身のハンター。

そしてナータと呼ばれた受付嬢はレギオンの同期のハンターであり、ナータはかつての戦いで左脚をなくし、それからは受付嬢として活動している。

左脚の義足はその時によるものだ。

 

2人は挨拶もそこそこにナータはベルナ村の下位から上位ハンターの顔写真の貼られたこれまでの活動を書いた履歴書をレギオンに見せた。

 

「ふむ、あまり字を読むのは好きじゃないんだがな」

 

「そんなこと言っても一人一人に面接なんてしてたらもっと手間よ?」

 

「うーむ」

 

レギオンは面倒くさそうに書類をパラパラとめくり出す。

 

「ん?」

 

するととある人物の履歴書に目が止まる。

 

「あ、その人は····················」

 

「ハンターランク7なのに下位クエストばかり受けている男がいるな」

 

「そうなんだけど、しかもその人逃げるはばかりで殆どパーティーを組んでる子に全部任せてるみたいで····················」

 

「ジャックか···············。こいつは今どこに?」

 

「今はもう一人のパーティーの子と竜の卵の納品クエストに行ったわ。そっちの子は逸材ね、このまま行けば近い将来すぐに上位ハンターになるわ」

 

「そうか」

 

そう言ってレギオンは履歴書の束を受付嬢に返した。

 

「え、もう良いの?」

 

「ジャックて奴が気になる。そいつのマイハウスは何処だ?そこで待つ」

 

「えぇ!?で、弟子の件は!?」

 

「そいつが書類通りの逃げてばかりの腰抜けならもう一人の方を弟子にする。だが、もしもそいつがそうでないなら私の弟子にする」

 

「そ、そんな適当な!」

 

「適当では無い」

 

「じゃあなにを根拠に····················」

 

驚くナータにレギオンは

 

「なに、勘だ」

 

「適当じゃない!」

 

「私の男を見る目と勘は本物だ!」

 

「当てにならないわよ!」

 



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変態女

 

 

 

 

 

「んじゃ、オレは装備の新調してくる。そのついでに依頼金も貰ってくるからおっさんは先にマイハウスに帰っててくれ」

 

「了解」

 

俺達はベルナ村に着いたあと、そう言って別れた。

このままマイハウスに帰るのもいいのだが、まずは温泉にでも入ってこれからレーギーナがいない間どんな納品クエストを受けるか考えねば

その前にレーギーナの面接練習にも付き合わなければ。

 

そう思いながら、ユクモ村の風習である温泉が作られた場所まで移動する。

 

この時間帯は誰も入ってこない。

ユクモ村では混浴文化があるが、ベルナ村では男女に別れている。

可愛い女性と裸の付き合いが出来ないのは少し残念ではあるが、まぁ仕方ない。

 

「ふぅー、久々の風呂かァ。風呂に入るのなんて何時ぶりだろ」

 

思えば人前ではあまり素肌を見せることなんて全くなかった。

 

「ま、こんな薄汚ぇ体なんて誰にも見せられねぇか」

 

包帯を脱げば、身体のほとんどが黒く変色した火傷跡跡が残っている。

他にも横腹には肉が抉れた様な傷跡ができていた。

ジャックは普段から身体を洗う時はあまり人目のつかない場所、もしくは時間帯を見て風呂などで身体を清める。

よってこんな明るいうちから風呂に入れると言う初めての行為に若干テンションが上がっていた。

 

「よっしゃーッ!風呂ー!」

 

「入ってマース」

 

「失礼しましたー!」

 

しかし、風呂の扉を開けた途端、あったのは全裸で仁王立ちした金髪のナイスバディの女。

俺は勢いよく扉を占め、急いで腰に布を巻き、入口ののれんを見る。

 

「よっしゃ男湯ー!」

 

「お客様!服ッ!服忘れてるニャッ!」

 

そして再び風呂場に向かう。

 

「お、またあったな!」

 

「やっぱいるッ!」

 

「私は幽霊かなにかかよ」

 

「ギルドナイトさーんッ!変態!ここに女なのに男夜に入ってる変態がいますッ!!」

 

「はぁ?バカかよお前。そこはこんなナイスバディタダ見できたんだから崇め奉れよ」

 

「お医者さーん!頭のお医者さんいませんかああああぁぁッ!!」

 

 

 

 

 

§§§

 

 

 

 

「で、なんで男湯に女がいるんですか」

 

「あー、ここ男湯なのか」

 

「字読めないの?」

 

「字が読めねぇって言うより···············」

 

よく見れば女の目は白く濁っていた。

 

「目が見えてないんですね」

 

「そ」

 

よく目を凝らせば目の周りには薄く古傷の跡があり、体にも何か大きな爪で切り裂かれたような大小様々な傷があった。

どうやら彼女も同業者の様だ。

だがこんな金髪美人のハンターがベルナ村の集会場に居たという話は聞かないし、そもそも顔も初めて見る。

 

ベルナ村の集会場には2ヶ月以上は滞在しているが、これだけ美人なら噂の一つや二つ流れてもおかしくないと思うのだが、そう出ないということはたまたまベルナ村に立ち寄ったのだろう。

 

「そんな目になってもハンターをやめないんですね」

 

「それはお互い様だろ?」

 

「····················本当に見えてないの?」

 

「なに、目が見えなくてもそれ以外を見ればいいだけの話さ」

 

そんな不思議なことを言う彼女。

目が見えない者にはに別の世界が見えているとでも言うのか、きっと目が見えなくなれば分かるのだろうか。

 

「なぁ」

 

「はい」

 

「実は私この後納品クエストを受けたいんだが、こんな目だ。手伝ってくれないか?」

 

「それは別にいいですが、別に俺でなくてもいいのでは?」

 

「これも何かの縁てやつさ」

 

そう言って彼女はザバァと風呂から上がり、そのまま風呂場の扉に向かう。

 

「そう言えば名前がまだだったな。私はカシファ」

 

「俺はジャック。短い間だがよろしく頼みます」



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序章の幕開け



§依頼者§
・龍歴院の粘菌研究家


§依頼文§


すまないが古代林で研究用の深層シメジを集めてきてくれ。
··········そういえば各地で様々なモンスターの目撃情報が集まっている。
古代林でも何やら晴れているのに落雷が落ちてくるという情報があった。
くれぐれも油断せず、気おつけてくれ。


 

 

 

 

「このエリアのシメジはこれで最後か」

 

「こっちも回収終わりましたよ」

 

俺たちはあの後すぐにクエストを受けた。

事前にレーギーナに伝えようか迷ったが、別に伝えるまでもないだろうと思い、マイハウスに戻ることなく、今は古代林でシメジ狩りをしていた。

お互いシメジを探索する場所を決め、二手に別れながらシメジを取り続け、最後にこの古代林でも最下層、エリアの1番奥が残った。

 

「あとはこの奥のエリアだけか」

 

「あと残り3個。さっさと見つけて帰りましょう」

 

依頼書に書かれていた晴れの日でも落ちてくる落雷。

一番最初に思い浮かんだのはジンオウガだったが、ここ1年ジンオウガの目撃情報は全くない。

そもそもジンオウガは群れで行動するためか、目撃情報は直ぐに上がるはずだ。

 

「それにしても、まさか新大陸調査団の人だったとは」

 

横で共にシメジ狩りをしている盲目の女性の装備。

それは新大陸と呼ばれる未だ未開の地で生息が確認されている惨爪竜オドガロンの1式装備。

新大陸調査団と言えば、ハンターの中でもよりすぐりのエリート達しか入れない集団。

話では"G級八位"【城壁】アル=ハイゼンは第8期団の隊長として新大陸に向かったと聞く

 

「それにしても本当に見えていないんですか?先程からなんの迷いもなく深層シメジを取っていますが」

 

「まぁな。最初の頃は不便だったんだが、私の師匠がこんなことを言ってくれたんだ」

 

───モンスターは大剣でぶった切れば死ぬ。モンスターは壁をすり抜けたり、攻撃が通り抜けたりすることは無い。

 

───つまり攻撃し続けていれば死ぬわけだ。ほら、目の執拗なところなんてどこにもない。つまり目が見えなくても戦えるって訳だ。

 

「で、気づいたらこうなってた」

 

「どう言うことなの?」

 

軽々と話しているが、全く意味がわからない。

それを人は脳筋というのだ。

 

───パシュッ

 

「?」

 

「この音は··········ハンターの緊急信号だな。 ちょうどあそこは深層シメジが大量に生えてる場所だな」

 

「まじで目が見えてないんですか?」

 

ここからそう遠くない距離で1つの先端に赤い光を放ちながら1本の細い狼煙を上げていた。

近年突然のモンスターの大量発生。

そして歴戦個体や上位個体、G級個体すら多く出没するようになっている。

それ自体は今までの歴史を見ればそこまで珍しいことでは無い。

問題はそのモンスターが人里近くや、下位のクエストでも多く見られるようになってしまった事。

本当なら生息していない場所に生息していたり、中には大陸を渡って別の大陸にいるモンスター。

 

それが原因で多くのハンターが命を落とした。

ギルドは急遽対策としてハンターに救難信号を遅れる携帯用小型ボウガンを配布した。

おかげで近くにいるハンターがすぐに駆けつけることができるようになり、最初よりも死者は大きく減ることとなった。

 

カシファは狼煙が上がってる方へ歩き出す。

 

「自分戦えませんよ?」

 

「戦うことが目的じゃない」

 

「あぁ、そういう事ですね」

 

恐らくカシファが言いたいのはあくまでも今救難信号を出しているハンターの救助。

 

「じゃ、自分は竜車で向かうんで1度キャンプに戻ります。キャンプには回復薬や支給品秘薬もあるので」

 

「あぁ、頼む」

 

そう言って2人は別れる。

 

「さて、···············行くか」

 

カシファは古代林の深層に繋がる崖を飛び降りた。

 

 

 

このとき二人は知らない。

この行動が何千年も動かなかったモンスターとハンターの歴史の歯車を動かすことになるのだと。

 

 









場所〜????〜


破壊の限りを尽くされ、無人となった城。
それはかつては大国一の技術を持ち、発展していた国の跡。
しかしこの城は突如として滅んだ。

「黒き神は世を恨み、怒りて紅き神は全てを紅く染め、祖龍に至る···············。これがここに残った古文書の最後のページか?」

「いや、その古文書は全部て4つあるらしい」

「もう全部灰になってんじゃねぇか?えーっと題名は、『ルーツ』?古代の民とやらはネーミングセンスも終わってんな」


「ふざけるのはいいが、あまりはしゃぎすぎるなよ」

古城の崩れた部屋を調査する二人組。
片方は紅く黒い禍々しい装備、アカムトXシリーズを着た男。
G級4位【覇王】ダンテ=クローバー。
そして隣で本を調べる青い装備、アスリスタXシリーズを着た女。
同じくG級3位【蒼星】アルリット=エリカ。

「で、どうなんだ?」

ダンテはギラリと目を光らせながらアルリットを見た。

「何の話だ?」

「とぼけんな。このクエスト出された時点で答えたようなもんだろ」

二人の間に重々しい空気が流れる。

「G級上位の俺とお前を組ませて、禁足地指定されてるこの城の調査。誰でもわかる」


「祖龍の目撃情報」

祖龍。
おとぎ話、伝説、フィクション、聖書、古文書。
様々な物でその存在をほのめかす言葉で書かれ、しかしその存在を決定ずけることは書かれていない。
それは古代のもの達が、その存在を書くことすら恐れたからだと言う。

「ここに書いてある黒き神と怒りて紅き神はとっくに討伐されてる。···············残る祖龍。お前はどう思ってんだよ」

「······························いる」

「へぇ、お前がこんなおとぎ話信じるヤツだとは、確かに黒き神と怒りて紅き神はいたが、祖龍も居るとは───」

「居るさ。空を見な」

「───」

言われて空を見上げるダンテ。
そこにはポッカリと禍々しく、黒く、黒い、全てを飲み込む黒い穴が空いていた。

「こりゃぁ····················」

「帰るぞ」

「は?おい!これほっといていいのかよ!?」

「問題ない」

「問題ないって····················」

「奴は待っているんだ、次こそ殺してやると」

「殺すって··············誰を待ってんだよ」

「楽しみだな。もうお前は逃げられないぞ」

「無視かよ」

自然と口角が上がる。
顔を歪めながら、口が裂けそうなほど、禍々しく笑うアンリエット。

「楽しみだ、お前が戻ってくるのが。····················ジャック」


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