狼っぽいのになった…タスケテ (富竹14号)
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ここどこぉ(´;ω;`)


 懲りずに適当に投稿していくスタイル。


 

 

 

 …えっ…………ここどこ?

 

 

 目に入ってきた見慣れない景色を前に、俺はそう思った。

 

 天候は雷雨、一面は崖やら木やらが沢山あって、一定の感覚で雷が鳴っては近場の地面に落ちてくる。

 

 何か女の人の像…像? みたいなのはあるけど、それ以外の建築物とか特に無し、強いて言うなら紫色の雷をバチバチと鳴らしている刀が一本地面に突き刺さっているだけ。

 

 

 

 ……えぇっ…ここどこぉ?

   

 

 おかしい、俺はマイベットで寝ていたはずだ、カードゲームの中でも特に魔境染みている某青眼やら紅眼やらが活躍するヤツのインターネット版でボロ負けした挙句不貞寝していたはずだ。

 

 レモン*1を大量にS召喚しようとして…というかした後に俺は負けたくないぃぃ!! されてグォレンダァ!!! でライフ全損させられたショックで頭カイジになっていたはずだ。

 

 

 なのに…ここどこぉぉ!?

 

 

 雨は土砂降り! 雷ゴロゴロ鳴ってるしなんだったら落ちてくる! しかも割と近場に! というかそもそも外!

 

 ていうか風寒っ! 雨冷たっ! ずぶ濡れで身体も重いし、もう散々だよ俺が何したのさぁっ!?

 

 とりあえず凌げるとこ…! 雨風凌げる所に避難だぁ!! 早くしろ! 間に合わなくなっても知らんぞぉ俺ぇ!?

 

 周囲を見渡して、何処か雨風…最低でも雨を凌げる場所を探す…探すんだが………。

 

 

 

 ………土砂降りで何も見えぬぅ!!?

 

 

 驚くくらい何も見えない、マジで見えない、そのくらい雨の勢いが強い、それと雷が怖い。

 

 仕方がないからと近場のそれなりに大きな木の下に逃げ込んだ、これで多少なりとも雨を防げる、暫くここで雨が止むか弱くなるのを待ってから――

 

 

――ズガァァァン!!

 

 

 轟音が響いた、それだけなら良いんだけどそれが今俺の真後ろで鳴った気がする、なんだったらメキメキと軋む様な音が凄く近くで聞こえる、具体的には俺の後ろ。

 

 振り向くと木が真っ二つに割れていた、なんだったら燃えてるし黒焦げになっている。

 

 雨を遮る物が無くなったことで、また土砂降りの雨が俺に降りかかる。

 

 ……………………………………。

 

 

 イヤァァァァァァァァァァァァァァッ!!!?

 

 

 に、逃げるんだぁ…! (雷に)勝てるわけがない!!

 

 

 いやまぁ、逃げても無駄だけどとりあえず走るしかないよね、探すしかないよね、だって雷怖いもの(死んだ瞳)。

 

 

 どこじゃ家!? どこじゃなんか良さげな場所ぉ!? なんでもいいから避難させてくださいなんでもしますから!!

 

 走る、走るしかない、止まったら死ぬと俺の直感が囁いている*2、俺のサイドエフェクトもそう言ってる*3

 

 走って走って走って走って、土砂降りの中をただただ走り続けていると、何か石の扉? の様な物が見えた。

 

 何か赤く光ってるし、ネットでも見たことないレベルで綺麗だしで何か近づいちゃいけない気はするけど行くしかない、だって行かなきゃ俺が死にそうなんだもの(((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル。

 

 

 

 落ち着け俺ぇ、扉の上には良い雨避けがあるじゃないか、ちょうど良い…なんだ? 岩陰? 崖影? なんて言ったら良いんだこれ?

 

 …………まぁなんでもええねん! とりあえず岩陰らしき場所に避難だぁ!!

 

 

 

 

 全速力で岩陰? に駆け込んで一息つく、ようやく落ち着ける場所に辿り着けたという事実に泣きたくなる。

 

 走ってる最中に何回雷が近くに落ちたか分からない、雷が落ちてくる度に生きた心地がしなかった、何か仮面被った原住民みたいなのが雷に打たれてた気がするけど、きっと気のせいに違いない*4

 

 落ち着いたら喉が渇いてきた、水が飲みたい。

 

 もうここが何処かとかそんなのどうでもいいからとりあえず水が飲みたい、グォレンダァされてから俺は水分を一切取っていないんだ、いい加減飲みたい。

 

 雨水を飲んでも良いんだけど、飲みに出た瞬間に雷が俺に落ちてくるんじゃないかという恐怖で岩陰から外に出られない。

 

 もう嫌じゃ、わしこんなとこ居とうない、人間の子など孕みとうない(お目々ぐるぐる)。

 

 何か飲めるものがないかと辺りを見てみても何も無い、あるとしたら小さな水たまりだけで……………………………………水たまりの水って……飲めるのかな?*5

 

 よくよく考えてみれば水たまりの水を飲むって遥かにマシな行為だと思うんだ、具体的には言うと泥を食うよりかは遥かにマシだと思うんだ。

 

 見た目的には綺麗だし、多分飲んでも大丈夫だろう、大丈夫なはずだ…………うん…………飲もう!

 

 

 水たまりに顔を近づける、近づけて舌を…………………………………………???

 

 

 

(つд⊂)ゴシゴシ

 

 

 

 ( ゚д゚)

 

 

 

 

 

 ……あれれぇ………おかしいなぁ……水面に映っちゃいけないはずのものが見えてくるぞぉ??

 

 白い毛並みにガン○ムみたいな蒼く光る目、鋭そうな牙にファンタジックな狼っぽい顔………うん、格好いいね…格好いいけど、水溜りに映り込んで良い顔じゃないよねどう考えても。

 

 もう一度覗き込んで見る、映るのは普段見慣れた俺の顔、黒髪黒目の極々一般的なフツメンの俺の顔……ではなく、白い毛並みとガン○ムみたいな目が特徴的な狼っぽい生物の顔。

 

 次いで、自分の身体を見下ろしてみる、そこには何時も通りの俺の身体はどこにも無かった。

 

 白い身体、どこからどう見ても離れてるのに普通に動く手足、そして何故か浮いている俺。

 

 

 

 

 ……………………………………。

 

 

 

 もうやだぁ、なんなのさぁぁこれぇ(´;ω;`)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
レッド・デーモンズ・ドラゴンの略

キングのデュエルは以下略

*2
気のせい

*3
そんな訳が無い

*4
紛うことなき現実

*5
正気度ロール アイディア ファンブル



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あれからどしたん? オッモチカエリ~♪


 感想なんて初めてもらったぜ。


 

 

○月☓日 晴れ

 

 

 狼っぽい身体の扱いにも慣れてきたから拾ったノートで今日から日記を書くことにする。

 

 この身体の尻尾が本当に便利、人間だった頃と同じような感覚で使える、これほど嬉しいことはないぜ。

 

 

○月△日 晴れ

 

 さてさて昨日の続きだ、ちゃんと続けなきゃね?

 

 この身体になってから暫く経った、多分一週間くらい?

 

 今でこそ餌やら何やらに困らなくなってるけど、最初の頃は本当に大変だった。

 

 飯、というか獣の狩り方なんて知らなかったし、火やらの点け方だって分からなかった。

 

 住んでた場所じゃ雨は凌げても風は凌げなかったし、安心できる要素が一欠片も無かった。

 

 幸いと言っていいのか、近場には木の実があったし、水源も合ったからまだなんとかなったけど、今思い出してみてもずっと腹ぺこぺこだったよな俺。

 

 狼になったせいなのか、木の実程度じゃ慰み程度にしか腹は膨れなかったし、狼の手じゃ何も作れないしで、まぁ大変だった。

 

 まぁ、その代わりにこの身体のスペックがとんでなかったわけなんだけど。

 

 あれだもんな、そんな最初の頃とか言うけど腹ぺこぺこだったのって最初の二日だけで、後は我慢が効かなくなって自分でそこら辺の鳥やら猪やらをぶっつけ本番で狩ってたもんな俺。

 

 鳥の時とか行けると思ったら身体が勝手に動いてて何時の間にかって感じだったし、猪は突っ込んで来たところを鷲掴みにして地面に叩きつけてたものな。

 

 狼としての自分のスペックに気づいてからは本当に苦労しなくなった、だって並大抵のことは出来ちゃったし、現にそれで今日と言う日を迎えている訳だし。

 

 狼にしては細長くて鋭いこのどう考えてもモンハンで言うところの突き攻撃仕掛けてきそうな尻尾の使い道を試してるわけだし。

 

 因みに、この日記とペンは近くに設置してあったテントで見つけた…盗むのは気が引けたけど、俺もう人間じゃないから別にもう良いだろう、そういうことにしておこう。

 

 

追伸

 

 後で見に行ってみたら何かデカイハンマーとスナイパーライフルみたいなの持ってる変なのが居た。

 

 なんだアイツら?

 

 

 

○月○日 雨

 

 今日はとんでもないことが分かった、ここって割りかしファンタジーな世界だ…まぁ俺が狼っぽいナニカになってた時点でまぁまぁ察しはついていたけど、そんなことはどうでもいい。

 

 軌道修正すると、スライムみたいなのが居た、というか実際スライムだろうと思う、だってなんかぽよんぽよんしてたし。

 

 何だったら雷とか炎とか水とか色々出してた、これがファンタジーじゃないなら何と言う?

 

 因みに近づいたら体当たりされた、炎のは熱いし雷のはピリッと来た、けど何故か全然痛くなかった…なんで?

 

 とりあえず、痛くないから放っておくことにする。

 

 追伸

 

 前のデカイハンマー持った奴等以外の人間を見つけた、刀を持っていて雷とか出してた、服装…というか鎧が侍っぽかったから、もしかしたら日本みたいな場所があるのかもしれない。

 

 ちょっと見てみたいと思う、まる。

 

 

 

○月♤日 曇

 

 今日は人間と戦った。

 

 この前見つけた侍っぽいのに良く似たやつに見つかって襲われた、今度のは雷じゃなくて炎を使っていた、鎧も前の奴と違って紫じゃなくて赤色だった。

 

 他にも取り巻きはいたけど、炎を使ってきたのは赤鎧のやつだけだったから、多分使うのにそれなりの条件がいるんだと思う。

 

 因みに勝った、全員纏めて倒したよ褒めろよ。

 

 戦ってみて改めて実感した、この身体のスペックはやっぱりとんでもない。

 

 刀は爪で防げた、なんだったら炎を纏った刀も防げた、というか掴めた。

 

 全員が反応出来ない速度で動けたし、尻尾は尻尾で硬いしでお前ちょっと強すぎひん? ってツッコみたくなるレベルで高スペックだった。

 

 因みに、爪でやったら刀ごとスパッと行きそうだったから拳でぶん殴った。

 

 この身体の手ってまんま狼じゃなくてどっちかと言うと鉤爪みたいな造形してるから、握りやすいんだよね。

 

 そんな訳で、とりあえず全員殴って気絶させた。

 

 まぁ、一人は海に落っことしちゃって、拾いに行く羽目になったんだけど。

 

 

追伸

 

 そう言えば、俺の種族名が分かった、というか侍っぽい奴らが叫んでた。

 

 俺はどうにも『じゅーいき?ハウンド』と呼ばれる存在らしい。

 

 じゅーいきの部分がなんて読むのか気になる、どうにかして知れないかな?

 

 

 

○月♡日 雷

 

 今日は住処から出ないことにする、雷がトラウマって訳じゃないんだけど、なんだか嫌な予感がする。

 

 ただ、住処から見えるところで狸が雷に怯えて動けずにいたのが見えたから、暫く住処に置いておいた。

 

 上に乗られたり尻尾で遊ばれたりしたけど、まぁ楽しそうだから良いかと放置した。

 

 ………かわええなぁ〜。

 

追伸

 

 この狸喋れた、びっくりした。

 

 俺の言葉も分かるようだったから、この前から気になってたじゅーいきハウンドのじゅーいきの部分を地面に書いてもらった。

 

 そこで分かったのはここ、というかこの世界の文字は俺が全く知らない文字で、それをどういうわけか俺は理解出来るということだ。

 

 日本人が唐突に英語を理解できるようになったようなものだ、驚くよそりゃ。

 

 因みに、じゅーいきの部分は獣域と書くらしい……格好いいなぁおい。

 

 

○月◇日 晴れ

 

 雷が止んだから狸が帰った、手をブンブンと振ってサヨナラ〜と言っている姿はかわいい以外の何者でもない………かわええなぁぁ…。

 

 と、思っていたら何か地面から飛び出してきた花っぽい奴に襲われてたから急いで助けた…ここってもしかして思いの外魔境?

 

 普通に危なそうだったら、途中まで狸を送っていくことにした、因みに名前は吉次郎というらしい。

 

 ある程度まで送って、そのまま吉次郎とは別れた。

 

 

追伸

 

 何か、帰る最中に変な置物を見つけた、狸? ムジナ? どっちでも良いけどとりあけず持って帰った、だってなんか可愛いんだもの、お持ち帰えざるを得ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 





『狸? ムジナ? な置物』

 このあと全力で逃げた。

『吉次郎』

 主人公に無茶苦茶懐いた、帰って親分に白い獣域ハウンドがいることを伝え、後々それが旅人一向に伝わるというピタゴラスイッチをやらかした。


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ツギアッタラタタキノメス!!


 感想を初めて貰いましたよ、嬉しいなぁ(*´ω`*)


 

 

○月♧日 晴れ

 

 ふと思った、俺の同族を見たことがねぇ。

 

 侍っぽい奴…じゃなくて吉次郎が言うには海乱鬼だっけ? そいつが獣域ハウンド云々叫んでたから、俺以外にもいるとは思うんだけど…近場で見たことが一度も無いんだよなぁ。

 

 もしかして、俺がここにいることがおかしくて、他の奴等は特定の場所にしかいなかったりするのかな? そうだとしたら探すの面倒だなぁ〜。

 

 まぁ、正直に言ってしまうと居ても居なくても良いんだこっちとしては。

 

 だって、俺以外にもいるかどうか気になっただけなんだから。

 

 それはそれとしてだ、なんか変なロボットみたいなのが居たんだが? なんだったらビーム撃ってきたんだが?

 

 あれ何? 無人機? ファンタジーな世界に機械なんて有っていいの? とか思ったけど、よくよく考えてみれば道端で出会ってすぐに波動砲ぶっ放すラスボスよりも強い四足歩行の決戦兵器(リーサル・ウェポン)とかがさも当然の様にファンタジーな世界にいたんだから今更かと思い直した。

 

 因みに、複数体居たけど全部バラバラにした、機械相手は加減しなくて楽。

 

 ちょっと硬かったけど、そこはファンタジー出身の狼スペック様々というやつである。

 

 あんなへなちょこなんてイチコロよイチコロ。

 

 

 

○月 日 晴れ

 

 今日は前々から気になっていた砦?っぽい場所、それと遠くから割とくっきり見える城を見に行ってみた。

 

 砦には兵士らしき人間が結構な数居た、皆武器とか防具が日本のものみたいというか和風というか、所謂和風ファンタジーみたいな感じだった。

 

 ぶっちゃけ、海乱鬼とかの方がそれっぽい。

 

 遠目で見ていたからなのかどうかは知らないけど、正直見ていてそんなに面白くなかったので、すぐに城の方へと足を向けた。

 

 城の方は賑やかだった、城下町ってやつなのかな? わいわいガヤガヤとそれなりに騒がしかった、けど見ていて楽しかったから良しとする。

 

 刀打ってる人もいたし、ここの雰囲気に似合わない緑色の服を着てる受付員みたいな女の人もいた。

 

 お椀売ってる所とか、なんかカブト相撲やってる鬼っぽいのが居たりした。

 

 町に入って色々と買ってみたくなるけど、こんな身体だから入ろうものなら絶対殺られる。

 

 そんじゃそこらの奴等に負けるつもりはないけど、城の方を見てるとなんとなく嫌な予感がしてくるし、そもそもそんなことになってまで町に入る理由が無い。

 

 そういうわけで、俺は何もせず大人しく帰ることにした……ホントダヨ?

 

 追伸

 

 帰ってきたら紫色の海乱鬼+α共に住処をぐちゃぐちゃにされていたから全員纏めてぶちのめした、まる。

 

 

 

 

○月▲日 雨

 

 今日はぐちゃぐちゃにされた住処に何か彩りを加えようと思って、適当に外を探索した。

 

 まぁ、ぐちゃぐちゃって言っても俺の住処に物なんて殆ど無いんだけど…強いて挙げるとするならあの狸なのかムジナなのか良く分からないあの置物くらいだ、住処に有った物なんて。

 

 まぁ、それも何時の間にか無くなってたんだけど。

 

 ま、そういうわけで辺りを散策していたんだけど…なんと言いますか…本当に変なのが鎮座していた、具体的に言うと甲冑。

 

 鎮座というか正座というか、緑…何色だ? 緑っぽい甲冑を着込んだ海乱鬼をグレードアップさせた様なやつがそこにはいた…あとついでに後ろになんかある。

 

 降りしきる雨の中、地面に正座したままピクリとも動かない、もしかして中身が空なのか?

 

 とりあえず、かっこいいから持って帰りたいんだけど、人の物とかだったら探されて面倒だから暫く経過を見ることにする。

 

 ひとまずは、遠目から眺めておこう。

 

追伸

 

 その後にグレードアップした海乱鬼、略して『グレート海乱鬼』の周辺を探索してみたら鬼火みたいなのが浮かんでいた。

 

 もしかしてグレート海乱鬼の中身って、幽霊か何かなのでは? ボブは訝しんだ。

 

 

○月☆日 雨

 

 今日もグレート海乱鬼を見に行った、変化は無い。

 

 軽く数時間はその場に居たけどピクリとも動かない、ずっと正座したままだ。

 

 今日は後ろから見てみたけど、後ろにある青いのって鬼の顔になってるんだな、びっくりした。

 

 今日は何も無かったから、明日から近づいてみようと思う、好奇心は猫を殺すって言うけど、あれに好奇心を抱くなと言う方が無理がある。

 

 よしんば襲ってきたら……その時に考えよう。

 

 

○月★日 曇

 

 つかれた…今日はもうねる。

 

 つづきは、明日かこう。

 

 

 

○月Z日 曇

 

 昨日起こったことについて書いていこうと思う。

 

 結論から言って、俺は昨日グレート海乱鬼に襲われた。

 

 一昨日日記に書いた通り、俺は昨日グレート海乱鬼に思い切り近づいてみた。

 

 そしたら、なんかカチャカチャと音を鳴らしながら動き出した、んで斬りかかってきた。

 

 いやぁ…びっくりしたよねぇ、よしんば襲われたら…とか軽い気持ちで書いたけど、まさかマジで襲われるとは思いもしなかった、しかも強かったし。

 

 刀を振る速度も扱う技量も全部が全部海乱鬼とは比較にならない、しかも鎧硬いし。

 

 今までのやつとは違って、使ってくる不思議パワーも初めて見る緑色と透明な水色? だった、それを利用した飛ぶ斬撃はとても厄介だった。

 

 しかもある程度戦ってると分身出してきて同時攻撃仕掛けてくるし、両側挟み込んで居合の構えを取って放ってくる不思議パワーを纏った広範囲居合抜刀とか地面に突き刺して発生する緑色の衝撃波?とほぼ同時に分身が後ろに回り込んできた挙句に放ってくる緑色の飛ぶ斬撃とかもう嫌で嫌でしょうがなかった。

 

 因みに倒せなさそうだから途中で逃げた、嫌だし悔しいしで嫌だったけどこっちには決定打というかグレ海(グレート海乱鬼の更に略した)みたいな飛ぶ斬撃とか緑色のアレみたいな決定打的な攻撃技が一つも無い。

 

 あのままやってたらジリ貧になってそのまま持久戦に持ち込まれてこっちが死ぬ可能性が高かった、だからすたころさっさと逃げ出した。

 

 マジで覚えてろよアイツ、絶対何時かリベンジかましてやるからな…!!

 

 

追伸

 

 後で思ったんだけど、グレ海よりもグレ乱の方が略し方としては良い気がする、なんでかは知らんけど。

 

 

 

 

 





グレート海乱鬼

 一体何剣鬼なんだ…!

 HP三割くらいにまで追い詰められてたから、実はあのままやってたら削りきられてた。

主人公

 グレート海乱鬼と死闘を繰り広げた男。

 書かれてないだけで、実は軽く二時間くらいはぶっ続けで戦い続けてた。

 因みに、一切元素力を使っていない。


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『白狼』対『剣鬼』


 日記形式からいきなり外れていくスタイル、正直なんでも良いから戦闘描写がしたかった今日この頃。


 

 カチャカチャッと鎧の揺れる音が聞こえる。

 

 それは、唐突に動き出した。

 

 雨の中、地面に正座の体勢のままピクリとも動かなかったその甲冑武者は、『白い獣域ハウンド』が姿を表した途端に、唐突に動き出した。

 

 白い獣域ハウンド…そんな存在は見たことも聞いたこともなかった、実際に見て知ったのはその時が最初で最後だ。

 

 話を戻そう、その白い獣域ハウンドが現れてから鎧は動き出した、あの鎧が動き出す一定の距離に近づいてもいないのにだ。

 

 動き出した鎧を見て、白い獣域ハウンドは…『彼』は興味を引かれた様に鎧へと近づいていった、獣域達がする様に空を踏みしめながら。

 

 そして…鎧はそんな彼に向かって突然刀を振るった。

 

 地面を踏みしめて、一気に素早く距離を潰し、不意を打つ形で彼に刃を向けたんだ。

 

 当然知覚範囲には入っていない、『君』と戦った時みたいに近づかれるのを待つのではなく、自ら彼を己の知覚範囲に捻り混んだ。

 

 超高速で振るわれた斬撃に彼は驚いた様子だった、私から見ても突然だったのだから当然の反応なのだけど。

 

 しかし驚いたのは一瞬だけ、彼はすぐさま振るわれた斬撃を自分の爪で弾き返してみせた、ガギン! という重い金属音が辺りに響く。

 

 

 その一合を合図として、彼と鎧の戦いは始まった。

   

 

 

 鎧は弾かれた刀を弾かれた勢いのまま身体ごと反転させ、そのまま返す刀で彼に斬りかかった。

 

 上段を弾かれてからの下段からの一閃、普通なら死ぬ。

 

 しかしそれを彼はさも当然の様に身体を横に傾かせて躱し、傾かせた身体を回転させ爪を使用した連続攻撃を仕掛ける。

 

 突き進みながら放たれるまるで抉り取る様な連撃、刀を振り切りなおかつ超至近距離まで近づかれていた鎧にはそれを躱す術は無い。

 

 ガリガリギャリギャリと鉄を削り削ぐ音が辺り一体に響き渡り、その発生源では鎧に次から次へと切り傷や抉り傷が出来上がる。

 

 彼の回転速度はみるみる内に上昇し、ガリガリギャリギャリという音も何時しかバリバリッと音を変えていく。

 

 勢いは衰えず、鎧も彼の攻撃に何も出来ていない、刀を振るえる距離では無く、素手で掴もうにも弾かれるか切り刻まれるのが目に見えている。

 

 これで終わりだと、私は思った。

 

 

 

 けど…終わらなかった。

 

 鎧は風元素を纏い、それてそれを自分を中心として爆発させ、彼を吹き飛ばした。

 

 吹き飛ばされた彼は多少の驚きこそ見せても即座に落ち着き、空中で身体を数回回転させて軽やかに地面に着地してみせる。

 

 そこへ鎧は一気に突っ込み、再び刀を振るう。

 

 彼はそれを弾き、そのまま鎧の一懐に入り込んで爪を胴体へと向けて突き立てようとする。

 

 しかし鎧も馬鹿ではない、今度はそうはさせまいと突き立てられる爪を素手で掴み取り、そのまま彼を力任せに背後へと一本背負いでもするかの様に投げ捨てた。

 

 くるくるゴロゴロと回転し地面を転げる彼へ、鎧は更に遠く離れた位置から刀を連続で振るう。

 

 そうして放たれる、風元素による飛ぶ斬撃達。

 

 そのどれもが当たれば必殺の威力を誇る一撃、それら全てが地面を転がる彼へと向けられ、そして放たれている。

 

 彼もそれを理解していたのだろう、転がる勢いを殺し地面に足を踏みしめて右に跳んで一撃目を躱す。

 

 続けて襲いくるニ撃三撃を空中で身体を捻りながら斬撃の隙間を縫う様に躱し、更に自ら斬撃へと突っ込む。

 

 突っ込んだ先に待ち受ける四撃目を地面を這うようにして躱し、続く五撃目を元素すら纏っていないその爪で弾き飛ばす。

 

 弾き飛ばされ、明後日の方向へと飛ばされた風元素の斬撃は、偶然進行方向にあった巨大な岩石を斜めに通り抜けて消えた。

 

 通り抜けられた岩石には斬れ目が走り、ズズズっと音を立ててズレていく。

 

 そんな光景を尻目に彼は鎧へと肉薄し、その爪を高速を超える速度で振るっていく。

 

 そしてそれは鎧も同じで、手元の刀がブレる様な速度で振るわれる。

 

 ズガガガガガガガッと連続で響き渡る衝撃音、最早鉄がぶつかって鳴るような音ではない、まるで巨大な物質のぶつかり合いの様に感じる。

 

 片や圧倒的な手数と速度で相手を翻弄し、その鎧に幾多の傷を刻んだ存在、ただし決定打は無し。

 

 片や手数や速度でこそ劣るものの、一撃でも当たればそれだけで致命傷を与えかねない鎧の姿をした人形、ただし当てられない。

 

 彼が…『白狼』が先に鎧を削り切るか、それとも鎧が…『剣鬼』が一撃を直撃させ勝負を決するか……これはそういう戦いなのだと、私はその時理解した。

 

 

 

『………………!!』

 

 長く続いた連撃の応酬、それは『剣鬼』が彼を無理矢理弾き飛ばしたことで終わりを迎えた。

 

 『剣鬼』の鎧は既に斬り傷や破損箇所だらけで既にズタボロもいいところ、限界が近いことが察せられる。

 

 からくりでなければ、とうに倒れているだろう傷だ。

 

 

 対して彼はほぼ無傷、掠り傷等はかなり多く見受けられるが言ってしまえばその程度、体力も未だ有り余っている様に見える。

 

 しかし、それでも一撃でもまともに喰らえばそれで終わってしまう、元素を扱える者とそうでない者にはそれだけの差が存在する。

 

 片や軽装全てが命取り、片や重装既に満身創痍。

 

 有利不利は無い、どちらも状況は似通っている。

 

 状況は変わらない、先に削り切るか、先に当てるか…二つに一つ。

 

 

 

『………!!!』

 

 『剣鬼』が動いた、その身から元素を溢れさせ、一つのモノを形創る。

 

 溢れた風の元素はまず足を造り、足から続けて膝を、膝から続けて胴体を、胴体から続けて腕を、腕から続けて顔を…そして最後に、その手に持つ刀を創る。

 

 ここに、鬼がもう一匹生まれた。

 

 

「………グルぅ(嘘やん)…」

 

 

 彼は何処か唖然とした様な雰囲気で、一つ唸った。

 

 その鋭い目は何処かまん丸としているようにも見える。

 

 風元素で創られたもう一体の剣鬼は、刀をブンブンと一振り二振りすると、徐に本体と共に視線を彼へと向ける。

 

 

 瞬間、二体と彼は同時に動き出した。

 

 『剣鬼』二体は同時に飛ぶ斬撃を放つ、その数は先程までの倍近いだろう。

 

 彼はその尖い尾を地面に叩きつける、ズザァ! と土の削れる音と土煙が舞い、それが明確な武器の一つであることが分かる。

 

 向かってくる斬撃の大群、それを彼は真正面から迎え撃った。

 

 無数に襲い来る飛ぶ斬撃の一つ一つを、その両の爪で一つ残らず弾き飛ばし、二体の『剣鬼』目掛けて突っ込んでいく。

 

 突っ込んでくる彼を相手に『剣鬼』の本体は片手に氷元素の刀を出現させ、元から持っていた刀と氷元素の刀を逆手に持って勢い良く地面へと突き刺した。

 

 

 そうして巻き起こり、襲い来る白と緑、風と氷の衝撃波。

 

 暴風に吹かれ荒れる海の様に、暴風と共に迫りくる鋭く凍てつく氷の荒波。

 

 それが、真っ直ぐ『剣鬼』目掛けて突っ込んで来ていた彼にカウンター気味に放たれる。

 

 避けるには近すぎる、離れようにも止まれない。

 

 回避不可の絶対距離のタイミングで放たれたその大技は、確かに彼の命を奪い去るはずのモノ。

 

 

ガァァァァァァァァァァァ(邪魔ァァァァァァ)!!!」

 

 

 しかし、彼はそれを容易くねじ伏せる。

 

 迫ってきていた氷と暴風に対し、彼は爪を大きく下に振りかぶり、地面に爪を擦りつけるギリギリの位置から川の水を勢いを良く掬い上げる様にして、薙ぐ。

 

 それだけ…たったそれだけで二つの元素を併せ持ったそれは彼の眼前から消滅した。

 

 

 しかし、そうなることを最初から『剣鬼』は分かっていたのだろう、『この程度では殺せない』と。

 

 それを裏付ける様に、薙ぎ払われた暴風と氷の波の奥から現れる、居合の構えを取った『剣鬼』の姿。

 

 彼によって薙ぎ払われた風と氷の元素、それらの残滓が『剣鬼』の刀へと収束していき――

 

――斬!

 

 横一文字に振るわれる。

 

 居合抜きによって放たれた超高速の一閃、それは『剣鬼』の大技を薙ぎ払って突っ込んで来た彼の身体へ吸い込まれるように振るわれ、そのまま彼の肉体を両断――

 

 

――ガンッ!!

 

 することはなく、逆に『剣鬼』の頭部が何かにぶつかった様に後方に大きく仰け反った。

 

 更に仰け反りバランスを崩してしまった為、彼へと振るわれていた居合はその矛先から大きく逸れて空を斬る。

 

 そして、それを見逃す彼でもなく、仰け反った剣鬼の懐に一気に踏み込む。

 

 その手を徐に大きく振りかぶり、手を拳の形に握り締めて『剣鬼』を…正確には『剣鬼』の持っている刀、その柄を握っている『剣鬼』の手を刀の柄ごと殴り抜いた。

 

 

 殴り抜かれた彼の拳に『剣鬼』の手の中にあった刀は容易く弾き飛ばされ、つい先程斜めに切断された岩の断面に甲高い音を立てて突き刺さる。

 

 更に刀を剣鬼の手から弾き飛ばした彼はそのまま勢いに任せて『剣鬼』に掴みかかり、そのまま力任せに『剣鬼』を引きずり倒して馬乗りになって一方的に『剣鬼』を殴り始めた。

 

 上から『剣鬼』の頭の部分を殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴り続ける。

 

 『剣鬼』が何をしようが殴る、拳で反撃してこようが殴る、顔を掴み引き剥がそうとしても殴る、拳を防ごうがとにかく殴る。

 

 殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る。

 

 拳を『剣鬼』に撃つ度に、叩きつける度に速度が増し、鋭さも一段と上昇していく、拳の暴風雨とでも呼ぶべきだろうソレ。

 

 

――ガンッ!

 

 しかしそれも、何か硬い物を叩いた様な音と共に唐突に止まってしまう。

 

 彼の拳は虚空で静止していた、まるで何かに遮られた様に。

 

 

「……………」

 

 

――ガンッ!!

 

 

 彼が再び拳を振るう、しかしまた虚空で静止した。

 

 

「………」

 

――ガンッ!

 

 止まる。

 

――ガンッ!!!

 

 止まる。

 

―ガガンッ!!!

 

 また止まる、剣鬼はそれをジッと見つめている。

 

 

 

「…………………………………クゥ〜」

 

 二度三度拳を叩きつけ、その全てが虚空で静止したことを確認した彼はほんの一瞬、ほんの一瞬だけ小さく息を吸い――

 

 

 

 

 

 

――ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッッ!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 先程までの速度より更に数段上の速度で静止する虚空へと拳を叩きつけ始めた。

 

 ほんの一瞬止まっていた彼に反撃の構えを取っていた『剣鬼』は反撃の為のそれを投げ捨て、何かを押し出すように両手を振るわれる拳の嵐へと突き出す。

 

 その動作の影響なのか、彼の拳の位置がほんの僅かに押し込まれた様に動く…が――

 

 

――ドガガガがガガガがガガガがガガガがガガガがガガガがガガガがガガガガガガがガガガがッッッ!!!!!

 

 

 更に速度が跳ね上がった彼の拳によってすぐに元の位置に押し戻される。

 

 更に速度の上がった彼の拳、一秒と絶えることの無いその大嵐の様な連打は、次第にその場にある物を映し出す。

 

 それは罅、何もないはずの空間に、彼が殴り続けている場所に次第に罅割れが見え始める。

 

 それを認識したのだろう、彼は徐に拳の手を止め、握りしめていた拳を開き、罅割れている箇所に向けて両手の爪を突き刺し――

 

 

「…ガウッ(邪魔)

 

 左右に、思い切り引き裂いた。

 

 抵抗は一瞬、その一瞬の後にバリンッ! と何かが割れる、砕け散る。

 

 透明なナニカが今、そこら中に破片をばら撒きながら引き裂かれる、『剣鬼』を護っていたナニカが、無残に。

 

 

『……………!!!』

 

 

 その直後に、つい先程までの身動ぎもしなかった風元素で構成されたもう一体の『剣鬼』が動き出した。

 

 本体を助けんと風元素の飛ぶ斬撃を複数放つ。

 

 迫る風元素の刃達、それに対して彼は……徐に自分が引きずり倒した『剣鬼』の胸倉を掴み、そのまま後方に勢い良く回転しながら巴投げの要領で『剣鬼』を自分に迫る斬撃達へと向けて投げつけた。

 

 すぽーんっと投げつけられた『剣鬼』に風元素の刃が殺到する、鋭く正確なその刃は一つの例外も無く『剣鬼』へと命中し、その鎧に傷を付けていく。

 

 まさかあの状況から自分の分身が放った攻撃に向けて放り投げられるとは思ってもみなかったのだろう、『剣鬼』の反応が先程までのものより鈍く感じる。

 

 そして、そんな『剣鬼』に向かって、彼は何の容赦も無く突っ込んだ。

 

 突っ込み、肉薄し、その手で剣鬼の顔面を鷲掴みにし、地面へと叩きつけた。

 

 地面が割れる、『剣鬼』の顔が地面へと食い込む、最早私からは『剣鬼』がどうなっているのか見えない程に。

 

 更に、その状態から更に彼は加速した。

 

 加速し、その手に掴んだ地面に食い込んだままの『剣鬼』を力任せに引きずる。

 

 地面を抉り、鎧が接触したことに起こる火花と共に『剣鬼』を地面に押し付けたまま、地面を砕きながら真っ直ぐに突き進む。

 

 『剣鬼』は何の抵抗も出来ず、そのまま彼によって地面諸共削られながらその場から居なくなった。

 

 

 

 

 当時、呆然としていた私をその場に置いて。

 

 

 

 

 

 

 

     

 

 

「というのが、私が持つ『白い獣域ハウンド』に関する情報の全てだ…満足できたかい? 『旅人』さん?」

 

 

「うん、十分だよ、ありがとう」

 

 

 

 

 





主人公

 この後、『剣鬼』を海まで引きずり続けた後に日記の通りにジリ貧と感じて逃げた。

 実は引きずっている間に軽く三つくらいヒルチャールの集落を破壊している。

 実は疲れすぎて当日の天気を間違えて日記に書いている。

『剣鬼』

 正式名称『魔傀剣鬼』

 リアルなら遠距離だけじゃなくて近接も盾で防ぐだろうという作者の妄想から無茶苦茶硬い盾をヤバイ時に展開する様になった。

 実は主人公に逃げられた後、ずっと主人公が逃げた方向を見つめていた。


『私』

 偶然主人公が戦っている姿を見つけ、それを旅人に教えた存在。

 こいつが主人公を彼と呼ぶのは、主人公の姿を見た数日後辺りにナニカに襲われているところを助けられているから。


『旅人』

 冒険者協会からの依頼で『白い獣域ハウンド』の情報を集めている、この後吉次郎に全部教えてもらう。



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あ、ありのまま今起こったことを以下略


 今日は何時もより短め


 

○月○日 晴れ

 

 今日も今日とて探索だ探索ぅ!

 

 今日はなんか岩がめちゃくちゃ浮いてる山の方に行ってきた。

 

 なんか浮いてる岩とかに神社とかにありそうな…なんだろ? 社? みたいなのが結構あったから、近くに神社があるのかなと探してみたところ、本当に神社があった、しかも中々デカイ。

 

 大きな桜も咲いてたし、鳥居も沢山あったし桜道だったしTHE・和風ファンタジーって感じがして凄く良かった。

 

 中に入ってみたかったけど、人がいたから断念した…残念残念。

 

追伸

 

 神社の外から飛んで眺めてたんだけど、なんか赤っぽい色をした巫女さんが俺のこと薄笑いしながら見てた、嫌な予感がしたから逃げた。

 

 

 

○月ディケイドォ日 晴れ

 

 変な仮面集団に襲われてる人が居たから助けた。

 

 まぁこんな姿だから、助けた後にすぐトンズラしたのだけれど。

 

 それにしても本当に変なのが多いんだなぁここって。

 

 何あの仮面被った変な人型生物? スライムみたいなのと棍棒と松明振り回して殴りかかってきたんだけど…ボコブリン*1か何か? 人襲ってたからそうなんだろうなぁ〜。

 

 まぁ、とりあえず適当に追っ払っといた、なんか途中からデカイのも出てきたけど纏めて小突いて追っ払った。

 

追伸

 

 道端で見つけた兵士が話しているのが聞こえた、どうにもここ数日の間に『ヒルチャール』と呼ばれる魔物が活発化しているらしい…もしかして俺が追っ払ったのがそうなのかな?

 

 

 

△月○日 晴れ

 

 この前助けた人にまた会った、今度は前みたいに襲われてなかった。

 

 奇遇だなぁと思いながらじっと見ていたら『この前はありがとう』と声を掛けられた。

 

 お礼を言われて悪い気はしなかったから、適当に手をひらひらと振って立ち去ろうとしたら今度は『なんであの時助けてくれたんだ』と聞かれた。

 

 正直理由なんて自分でも分からないし、特に考えてもいなかったから、適当に首を竦めてそのままその場から立ち去った。

 

 その後大声で『アーシア』という名前とありがとうという言葉が聞こえてきた、嬉しかった。

 

追伸

 

 俺の家に遊びに来ていた吉次郎にアーシアのことを教えたら拗ねられた、なんで?

 

 

△月☓日 晴れ

 

 今日は良いことがあった、この前何時の間にか無くなっていたはずの狸ムジナの置物を見つけた、こんなに嬉しいことはない。

 

 また持ち帰った、今度は無くならないように抱きしめながら寝ようと思う、そこはかとなく柔らかいしこれ。

 

 

追伸

 

 あ、ありのまま…今の状況を話すぜ…!

 

 『抱きしめていたはずの置物が、何時の間にか幼女にすげ替わっていた』……何を言っているのか分からねぇと思うが俺も何を言っているのか分からなかった、幻覚とか催眠とかそんなチャチなもんじゃねぇ、もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…!!!

 

 どういうことだってばよ。

 

 

△月□日 晴れ

 

 結論から言おう、あの置物は俺が抱きしめていた幼女、『サユ』が化けていたものだった。

 

 何かてんりょうぶぎょうとかしゃぶぎょうとか良く分からん単語を口にしていたけど、とりあえず分かったのがこいつは所謂『忍者』で仕事をサボる為に適当な場所に行ってあの姿で昼寝をしていたということらしい*2

 

 とりあえず土下座したよね、幾ら変化していたとしてもやっていいことと悪いことがあるよねごめんなさい。

 

 そんな感じで土下座したら、何故か俺の毛の中にその小さな身体を預けてきて昼寝させてくれたら許すと言ってきたから、とりあえず言うとおりにした。

 

 とりあえず俺も寝ることにした。

 

 

追伸

 

 また来ると書かれた紙を一つ置いてサユが居なくなってた、外は夕焼けだった。

 

 

 

 

△月エボルトォ日 曇

 

 またサユが来た、昼寝させろと強請られた、昼寝させた。

 

 今日は何処にも行く気がなかったし、何かするというわけでもないから別に良いやと俺の身体に突っ込んでくるちびっこを見ながらそう思った。

 

 そういえばサユが寝る前に不思議なことを言っていた。

 

 『お前はビリっとしないんだな』…どういう意味だ?

 

 

追伸

 

 サユが獣域ハウンドという生き物は雷元素? という力を使うということを寝ぼけ気味に教えてくれた、サボり場を提供してくれたお礼らしい。

 

 ……俺にも使えるのかな? 雷。

 

 

 

△月チドリィ日 雷

 

 

 ………なんか身体から雷出た、しかも蒼色の。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
ゼルダの伝説 ブレスオブ・ザ・ワイルドに登場するモブエネミー、よくリンクに武器をブン盗られている

*2
無茶苦茶大雑把且つ大事な部分を全て省略して解釈しています





主人公

 幼女のお昼寝スポットになった、本人は割とどうでも良さげ。

アーシア

 金髪碧眼の美少女、『私』さん。

 容姿がモブのそれじゃねぇ。


吉次郎

 大好きな兄ちゃんに雌の匂いがついてた、いじけた。


早袖

 逃げようとしたらがっしり掴まれてて逃げられなかった、それでも逃げようとしたら主人公の毛がもふもふ過ぎて秒で昼寝の世界に旅立った。

 とりあえず危険は無さそうだからと昼寝の為の布団にする気漫々になった。




 


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ナゼミテルンデスゥッ!?


 日記の時の方が反応ええなぁ、バトルってもしかしていらないぱてぃーん?


 

□月雷日 晴れ

 

 なんか青い雷が出た、びっくりした。

 

 数日前のサユから俺の種族は雷元素を扱うのだと教えてもらったその翌日に急に使えるようになった。

 

 本当に、へぇ〜使えるんだ俺も使えるかなぁ〜ふんッ!! って感じに力込めたら…なんか出てきた。

 

 もしかして、明確に使うことを意識したから使えるようになったのかな? そうとしか考えられないというかそれしか思い浮かばんのですけど。

 

 ただ…使えるようになったのは良いんだけどなんで青色なんだろ?

 

 サユから聞いた限りじゃ、雷元素は紫色のはずなんだけどなぁ。

 

 実際に雷元素を放っている石っぽいのとか見せて貰ったけど、普通に紫色だったもんなぁ。

 

 ………まぁ、なんでいいか、とりあえず明日色々試してみようと思う。

 

 さてさて、何が出来るかなぁ?

 

 

追伸

 

 さっき吉次郎が来たんだけど、サユを見て『ボクの兄ちゃん取らんといて!!』って言いながらサユに飛びかかってた、かわええなぁ〜。

 

 

 

 

□月◎日 雨

 

 雷元素凄いわこれ、ホント凄い。

 

 今日は色々試してみようということで、ひとまず雷元素を爪に載せて斬ってみたんだけど、威力が跳ね上がった。

 

 でっかい岩とか傷跡付けるので精一杯だったのに、スパーンって斬れる様になってた。

 

 次に元素を纏ってみた、無茶苦茶動き速くなった。

 

 なんて言ったら良いか分からないけど、とりあえず動きが凄く速くなった、多分今なら霹靂一閃も行ける。

 

 その後も色々試してみたけど、やろうと思ったことは大抵出来た、これならあのグレート海乱鬼相手でも殺しきれるかもしれない。

 

 

追伸

 

 流石に『対ダオス用決戦秘奥義』*1は使えなかった、あれは威力と規模がデカすぎて俺じゃ使えん。

 

 

 

□月〇〇日 雨

 

  この前のグレート海乱鬼のところに行ってみたら誰もいなかった、俺とグレート海乱鬼が作ったクレーターとかそういうのは残ってるけど。

 

 というかグレート海乱鬼で思い出した、俺あいつと戦ってから身体の調子が無茶苦茶良い。

 

 爪は構造上まだ触った物、うっかり斬っちゃうけど、それでも人間だった頃と遜色無いレベルで動かせるようになったし、尻尾は前以上に動かしやすくなった。

 

 走る速度とかも前より上がってるし、獣域ハウンドの特性の一つを利用して空中を飛び跳ねるみたいな芸当も出来るようになった。

 

 もしかしたら、グレート海乱鬼との戦いの時に無茶苦茶身体動かしたから、本格的に俺がこの身体に馴染んだのかもしれない。

 

 思考とかも若干引っ張られてる感あるし、ちょっと気をつけないといけないかも。

 

 

追伸

 

 キツネを見つけた、近づいても逃げないから撫でた、かわええ…かわええなぁ〜〜(*´ω`*)

 

 

 

 

 

〇〇月☓日 雷

 

 ちょっと今日は大暴れした。

 

 昨日、狐は近づいても逃げないことと撫でても嫌がらないことが分かったので、ちょっと撫でまくろうと思って狐を探した。

 

 結果、狐はいなかったけど犬はいた、しかもなんか丸っこくてデカイのが。

 

 笹傘被ってるし、背中に刀背負ってるしでただの犬じゃないのが丸わかりだったけど、それはそれとして撫でたいから近づいた、拙者は癒やしに餓えているでござ候。

 

 犬の方は俺を見て最初は警戒していたのだが、暫くしたら何故かは知らんけど急に自分から近づいてきて俺の身体をペロペロと舐め始めた。

  

 可愛かったから撫でた…ヨシヨシヨシヨシヨシヨシヨシヨシヨシヨシヨシヨシ♪

 

 

 まぁ、そんな時に唐突に雷ハンマー持った例の奴に後ろから殴りかかられたせいでワンコには逃げられたんだけどね…逃げられたんだけどね(キラキラバシューン!)

 

 いやまぁあれよ? 幾らファンタジーな世界で俺の姿がアレだからと言ってもやっていいことと悪いことってのはあるわけなのよというわけだから死ね…という感じで何もさせずにぶちのめした。

 

 具体的に言うと、雷元素の通りが悪く感じたから殴って引きずり倒して川のところに引きずって行って頭を川の中に突っ込んだ。

 

 安心してほしい、多少息が出来なくなった程度じゃ人は死なん、精々気絶するか泡吹きながら一日二日目覚めなくなるだけだ。

 

 流石に犬を撫でる機会を失った程度じゃ殺さない、ただし次ハンマーで殴ってきたら両足の骨へし折る。

 

 

追伸

 

 因みに、雷ハンマーは適当に腹殴って水吐き出させてからそのまま放置した。

 

 …今更だけど、やっぱりこの身体側に性格が引っ張られてる気がする、前の俺じゃこんなこと考えなかった。

 

 もしかしたら、殺してないから分からないだけで人を殺すことにも何も感じないのかもしれない。

 

 

 

〇〇月△日 晴れ

 

 金髪美少女怖い金髪美少女怖い金髪美少女怖い金髪美少女怖い金髪美少女怖い金髪美少女怖い金髪美少女怖い金髪美少女怖い金髪美少女怖い金髪美少女怖い金髪美少女怖い金髪美少女怖い金髪美少女怖い金髪美少女怖い金髪美少女怖い金髪美少女怖い金髪美少女怖い金髪美少女怖い金髪美少女怖い金髪美少女怖い金髪美少女怖い金髪美少女怖い金髪美少女怖い金髪美少女怖い金髪美少女怖い金髪美少女怖い金髪美少女怖い金髪美少女怖い金髪美少女怖い。

 

追伸

 

 とんでもないのに出会ってしまった。

 

 

 

〇〇月〇〇日 晴れ

 

 昨日、金髪の美少女と空に浮いてる白いロリっ子に会った、全力で逃げた。

  

 白い方は問題なかったけど金髪の方がヤバイ、何がヤバイってとにかくヤバイ。

 

 戦ったわけじゃなくてただ目が合っただけだ、それだけのことのはずなのに俺はあの金髪の少女に恐怖を感じた。

 

 なんというか、後ろ方に何処か俺に良く似た姿をした幽霊みたいなのが見えて、それがこっちに手招きしてくるのだ。

 

 『こっちこいよ〜』って。

 

 それを見て、俺はすぐさま理解してしまった、あの少女がなんなのかを。

 

 『ハンター』やってたやつなら誰でも分かる、モンスターを狩って狩って狩って狩りまくってた奴なら尚更分かってしまう。

  

 尻尾の素材が無いから狩る、天鱗無いから狩る、素材が無いから手に入るまで狩る。

 

 そんなことを繰り返しに繰り返し、いつのまにか絶大な力を持った妖怪達の総称。

 

 そう、まぁ要するにあの金髪美少女は所謂――

 

 

 

『妖怪素材置いてけ』なのである。*2

 

 

 

 

 

 逃ィィげるんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!

 

追伸

 

 逃げたら無茶苦茶追いかけられた、やっぱり『素材置いてけ』じゃないか畜生。

 

 

 

*1
天光満つる処に我は在り!

*2
別名『素材枯渇真君』





主人公

 『妖怪素材置いてけ』に出くわしてビビって逃げた、なおそんなことは無い模様。

旅人(蛍)
  
 主人公を発見した、実は目が合ったと同時に逃げられたことに驚いてる。

 別に素材が枯渇してるわけじゃないし、素材置いてけなんて言ったりしない。


空飛ぶ非常食

 実は主人公のことを綺麗だなぁと思いながらガン見してた。


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オコメタベロォ!!


 ちょっと最後の部分が雑かもしれない。


 

〇月◎日 曇

 

 あの妖怪『素材置いてけ』に会って以来、俺は外に出れていない……わけがない。

 

 そんなの理由にならん、誰も空腹には勝てない、俺は腹が減ったんだよしょうがないだろ肉置いてけぇぇ!!

 

 そうして獲物を狩って帰っていた帰り道のことだ…俺は自分の飯への欲求が人間の頃とまるで変わっていないことを自覚した。

 

 帰り道の道中、偶然目の前を歩いていた一人の男性の背負っていたリュックから、非常に懐かしい匂いがしたんだ、しちゃったんだよ。 

 

 それは俺がこの姿になる前から食べていたもの、日本人ならば誰もが食べ、誰もが…かは知らないけど愛しに愛した特産中の特産。

 

 人間だった頃も、それを当たり前に食べたいが為に人間の頃に自炊していたと言っても過言ではないソウル・フードの中のソウル・フード。

 

 

 即ち……『米』の匂いである。

 

 

 ……………………………。

 

 米寄越せやぁぁぁぁぁァァァァァァァッ!!!!!

 

 

追伸

 

 ご飯は美味しく頂きました、久しぶりの肉丼はやっぱり良い(^o^)

 

 ただ、その過程でちょっとやべーことしちゃったのが傷だ…あの人探して何かしらお返ししなくちゃ。

 

 

 

〇月✚日 晴れ

 

 今日は昨日俺が衝動に任せて米を強奪してしまった男性を探して、何かしらのお返しをしようと思う。

 

 思うんだけど…何を渡せばええの?

 

 金は海乱鬼達とこの前川に沈めた雷ハンマーから奪った金があるけど、こっちでの米の定価なんて俺は知らないから全額渡すしかない。

 

 それで足りたら良いけど、問題はそれで足りなかった場合だ、米が高級品とかだと目も当てられない。

 

 とりあえず、道端で偶然手に入れた青い…どっちかと言うと蒼か? まぁとりあえずそれっぽいのを大量に手に入れたから、それをこの前雷ハンマー達の拠点からかっぱらったリュックに詰め込んであの人に渡そう。

 

 というかビックリだよな本当に、だってなんか桃色のナニカが浮いてる所に興味本位で近づいたら急に蒼いのになるんだもん、ビックリするでしょそりゃ。

 

 因みに、食ってみたら意外と美味かった、優しい甘みがした。

 

 何時かこれで何か作ってみようかな。

 

 

追伸

 

 男の人が昨日米を強奪した場所でうろうろとしていたので、ここぞとばかりに金と蒼いのと適当に拾ったりした木の実を押し付けて逃げた。 

 

 あばよお兄さ〜〜〜ん!!

 

 

 

 

 

〇月逆十字日 雷

 

 

 何? 何なの? なんで妖怪『素材置いてけ』が俺の住処辺りをうろうろしてるの? お陰様で一日物陰に隠れてなきゃいけなくなったじゃねぇかこの…この………かわいい子ちゃんめぇぇ!!*1

 

 クソぅクソぅ、どうするどうすると思いながら色々考えていると……隠れている俺の目の前に同族が現れた。

 

 黒い身体に黒い毛並み、若干先っちょが紫色っぽいけど、それ以外は件並み俺と同じ姿だ、白いか黒いかの違いでしかない。

 

 初めての同族ということで、俺以外の奴は黒いんだなぁとか思いながら見ていると…何か目の前に瞬間移動してきて爪を振るわれた。

 

 瞬間移動は言い過ぎだと思うかもしれないけど、何かそいつが居た場所に雷元素の痕跡残ってたし、俺が認識出来ないくらい速く動いたとは思えないレベルで攻撃が遅いし、居なくなる直前で何か瞬間移動っぽいエフェクト出してたしで、瞬間移動と断定した。

 

 因みに、消えて現れた瞬間に首を跳ね飛ばした、襲ってきた上に鈍いお前が悪い。

 

 んで、そんなわけで同族…というか生物を初めて殺してみたわけなんだが、いやまぁ全然何も感じないんだよなぁこれがぁ!!*2

 

 うん、今回ので確信した、俺の性格無茶苦茶身体に引っ張られてる、多分何を殺しても何も感じない。

 

 ……やっべぇな〜これ。

 

 

追伸

 

 あの同族が使ってた瞬間移動、俺にも使えるのかなとか思って使うことを意識してみると普通に使えた。

 

 多分アレだ、これ本能的にどうすれば良いのかを身体が分かってるな、雷元素の時もそうだけどあっさりと使いこなし過ぎてる。

 

 『素材置いてけ』のこともあるし、もう少し自分に何が出来るのかを知っておいた方が良いかもしれない。

 

 

 

 

〇月肉ぅ日 雨

 

 自分に出来ることを知る? 何を殺しても何も感じない?

 

 知るかぁそんなことぉぉ!! 何でも良いから美味いもん食わせろやァァァァァァッ!!!

 

 あれからずっっっっっと俺の住処の近くを『素材置いてけ』が動き回ってる、お陰で家に帰れない肉を焼けない!

 

 ふざせるなよあの……あの………美少女めぇぇ!!*3

 

 アカン、本当にどうしよう、日記帳とか以外の大事な物は全部住処に置いてある、今はまだ見つかってないから良いけど、見つかって回収でもされたりしたら俺の今まで集めてきた全てが無駄になってしまう。

 

 なんか燃えてた花で作った調理場とか凍ってた花で作った冷蔵庫モドキとかその他諸々が全て水の泡にぃぃぃ!?

 

 どうしよう…どうしようぉ( ;∀;)

 

 こ…こうなったら一か八か瞬間移動で突っ込んで回収出来るだけかいし――

 

 

 

――これ以上は焼け焦げていて見れない

 

 

 

 

 


 

 

 ……燃えた。

 

 目の前で俺が書いていた日記帳が燃えた。

 

 ……………なんで?

 

 

「いたぞ! アイツだ!!」

 

 声が聞こえる、視線を向けてみれば何時か見た雷ハンマーの仲間っぽいのが複数人居た。

 

 そいつの中の一人、赤っぽい奴の持っている銃から赤色の元素が見える、確か赤色は炎元素だったからあいつは炎元素を使ったってことだな。

 

 ………つまり、俺の日記帳燃やしたのはアイツだ。

 

 

「行け! やれ!! 今のうちに――」

 

 

 そうか、じゃあ死ね。

 

 

 一気に銃を持った男に近づき、その顔面に一発拳を叩き込み、その勢いのまま地面に叩きつける。

 

 ドクチャッという音を響かせながら、地面にクレーターを作りながら男が沈む。

 

 その姿を、それを成した俺を、周りは何処か…何処か……なんだろ?

 

 まぁ…別に何でもいいや。

 

 最近はさ、本当に我慢してたんだよ俺。

 

 妖怪のせいで家に帰れないし、吉次郎は来たかどうかも分からないし遊んでやれないし、サユはサユで来なくなったし。

 

 本当に我慢したんだ、八つ当たりするのも何もかもを我慢したんだ。

 

 けどさ…良いよね? だってお前達から来たんだから、お前達が先に手を出してきたんだから。

 

「ニック? ニック!?」

「よせ行くな!! あいつはもう――」

 

 安心してくれ、死ねとは言ったけど殺さない、こんなことじゃ殺さない。

 

 確かにあの日記帳は大事にしてたけど、その程度で殺すほど俺も鬼じゃない。

 

 だから安心してくれ、絶対に殺さないし二度と歩けないなんてこともないから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だから……ちょっとだけ……ほんのちょっとだけで良いから…………俺の八つ当たりに付き合ってよね?

 

 

 

 

*1
女の子には悪口言えないタイプ

*2
撃っちゃうんだなぁこれがぁ!!

*3
女の子に以下略





主人公

 この後、ファデュイ先遣隊全種複数体及びデッドエージェント並びにミラージュメイデン含む人員全てを相手にして全滅させる。

 更にその後、蛍ちゃんが来たから全力で逃げた。

 実は早袖や吉次郎に会えないことが予想以上にストレスになっていた為、日記帳という名の思い出を燃やされてキレた。

 逆に言えば、二人に会えてればキレなかった。



 戦闘音が聞こえて行ってみたら探してた白い獣域ハウンドがいた、次は逃げられないように速攻で行こうとしたけど主人公が瞬間移動を覚えていたので無理だった。

 
ファデュイ

 運が悪いしタイミングも悪い。


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ミモリンダァァァァァァァァ!!!


 連続で投稿できる日は出来ると知ってしまった今日この頃。


 

△月狸日 晴れ

 

 あの後、とりあえずで襲ってきた奴等全滅させた、当然全員生きてるよ? ちゃんと生きてるよ?

 

 というか、『素材置いてけ』の耳が良すぎる、なんであの距離で戦ってるのが分かるのさ、凄い勢いでこっちまで来るし、お陰で俺はまた逃げる羽目になった。

 

 因みに日記帳は、あのヘンテコ仮面集団こと『ファデュイ』の野営地からまた新しいのをかっぱらった、ペンもついでに貰った。

 

 因みになんで名前知ってるかって妖怪の隣に居た白いのが仮面共見てファデュイって口にしてたからだ、なんか妙に恨みの籠もった呼び方だったけど、何かあったのかな?

 

 まぁひとまず、新しい住処を探そうと思って今は外に居る、あそこで暴れまわっちゃったから流石に戻れない…調理場とか冷蔵庫は惜しいけど、最悪また作れば良いから。

 

 また作る……またあの熱いのと無茶苦茶冷たいの素手で運ばなきゃいけないのかぁ……辛いなぁ。

 

 

追伸

 

 とりあえず行き先は決めてある、デカイ城の反対方向にある珊瑚みたいなのがある所だ。

 

 流石に…流石にあそこに俺が行くとは思わないだろあの美少女ハンターも。

 

 

 

 

☓月✘日 晴れ

 

 良い場所見つけた、何か人工物とかあるけど普通の人間どころか多少滑空出来ないとまず来れない様な良い場所だ、しかも水が無茶苦茶ある。

 

 人工物がなんかトレジャー系統の映画に出てきそうな仕掛けありのそれに見えるけど、暮らす分には関係無いから別にええねん。

 

 あぁ、でも物を置く時は気をつけなきゃな、水に濡れたら駄目な物とかあるかもしれないし。

 

 まぁ…とりあえずは適当に飯でも獲ってくるかな。

 

 

追伸

 

 よくよく見てみたら地面に何かの紋様みたいなのが刻んである、何これ?

 

 

 

 

☓月Ⅵ日 晴れ

 

 こっちに来てから気になっていた珊瑚塗れの宮殿っぽい場所に行ってみた、速攻で兵士にバレた。

 

 いや、バレたっていうか近づく前になんか子供に見つかって構われてた所を見られた、んで兵士いっぱい呼ばれたから逃げたかったんだけど……ほら、子供を投げ捨てて逃げるわけにも、子供ごと逃げるわけにも行かないやん?

 

 まぁというわけで、ちょっとの間は大人しくしてたんだよ、だって子供が兵士に何か言われても離れようとしてくれなかったから。

 

 それで、問題はその後でお偉い方が来たらしいんだが、当時の俺の心境はそれどころじゃなかった。

 

 だってさ、声がするんだもん、多分人間だった頃に無茶苦茶聞いててこいつやべーってなってた女の人の声が。

 

 凄く具体的に言うとな、すっごい『国防仮面』*1的な声がね、しちゃったんだよ。

 

 俺知ってるよ? この声出してる人って基本的に禄なことしないんだろ? 英語とかイギリス語とか果ては和製英語とかでも耳にすれば竹槍持ち出して国防砲撃ちまくって最終的には神様も一緒に殲滅するんでしょ?

 

 そんな人の声が近くからするなら…ほら、逃げるしかないじゃない? ほんの隙に子供をサッと下ろして全力で逃げるしかないじゃない?

 

 まぁ、そういうわけだから珊瑚の宮殿らしき場所には近づかないことにしたのだ、だって下手したら『素材置いてけ』と同じくらいヤバイタイプの奴だもんあの人。

 

 

追伸

 

 なんだか凄く吉次郎に会いたい、サユにも会いたい……なんだかんだ言ってコッチに来て初めて話して触れてくれた奴等だから…やっぱりいないとちょっと寂しい。

 

 

 

 

✚月⑦日 曇

 

 外を出歩いていたら犬耳の男に会った、男っていうより少年だけど、俺も似たようなものだから男と呼ぶ。

 

 なんか弓構えられたけど、別に前のファデュイとかグレート海乱鬼みたいに何かされたって訳でもないから無視して素通りした。

 

 素通りされた時にキョトンっとしていたのがちょっと面白かったです、まる

 

 

追伸

 

 その後に無茶苦茶追っかけてきたから頭をくしゃくしゃと撫で回した。

 

 サユは幼女だったから出来なかったけどコイツは子供でもなければ女の子でもないから遠慮無しに撫でる。

 

 やめろと言って嫌がってる風にしてたけど、何処か嬉しそうに見えるのは俺の気のせいなのかな?

 

 撫で終わった後は覚えてろバーカバーカと子供の様な捨て台詞と共に何処かへ逃げていった…なんだったんだろアイツ。

 

 

 

〇月Q日 雨

 

 今日は昨日偶然見つけた滝の裏側に行ってみた…なんか……水の球体みたいな奴が居た。

 

 気になって近づいてみた、そしたらなんか例の如く動き出した…動き出したんだけど……なんというか……何もしてこなかったんだよなぁ。

 

 何ていうか、こういう類のヤツって大概襲いかかってくるのが定説というか実際襲われるはずなんだよな俺の経験則的に。

 

 でもこいつ、マジで何もしてこない…いや、何もしてないってわけじゃないんだよ、ただ俺に近づいてきて水の触手みたいなので触ってくるだけなんだよ。

 

 どうすれば良いのか分からんでしょ? 俺も分からない。

 

 ………とりあえず…帰ろう……そう思ってたらだ…何かこいつ付いてきたんですけど?

 

  何かあの滝の裏から離れようとしたら水の触手で掴んでくるし、無理矢理離れようとしたらもっと触手出してる絡めてくるし、目とか顔とかそういうの無いはずなのに涙目に見えるのはなんでだ?

 

 あまりにもグイグイと行かないでオーラ出してくるから割と悩んだんだけど、やっぱり色々とアレだったから瞬間移動で触手から抜け出して帰ろうとした。

 

 そしたらさ、後ろから付いてくるのよこいつ。

 

 ふよふよ浮きながらこっちに向かってくるのよこいつ、さも当然の様に滝の裏から出てくんのよこいつ。

 

 試しに家まで帰ってみたら俺と同じレベルでぷか〜と浮きながら俺の所まで来るのよこいつ、こんなの想定してないよどうしろっちゅうねん。

 

 付いてきたものは仕方が無いから今は俺の家に居てもらってるけど、何がしたいんだろこいつ。

 

 

追伸

 

 日記を書いてる途中には何もしてこないけど、俺が何もしてなかったりするとこいつずっと触手を俺に絡めてくるんだけど。

 

 何か食うのかなと思って試しに肉見せてみたけど何の反応も無いし野菜にも反応しない、どうしようか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
別名『東郷美森』『世界の破壊者 みもりん』





主人公

 NEWホームゲットだぜ☆

 それはそれとして、何故か水っぽいのに付いてこられてしまった、理由は不明。


『水っぽいの』

 正式名称『無相の水』、この度主人公にくっついて家まで付いてきた、理由は不明…因みになんでこうなってるのか作者にも分からない。


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オイテカナイデェ


 誰も主人公だけをめちゃくちゃにするなんて言ってない。


 

〇月〇日 雨

 

 昨日、俺に付いてきた水っぽいの――ずっと水っぽいのじゃあれだからミナと呼ぶことにする――が今外でわいのわいのとはしゃいでいる…ように見える。

 

 だって動作とかが完全にはしゃいでるんだもの、雨が降ってるのが分かったら急に身体を震わせて外に飛び出していったんだもの、はしゃいでないという方が無理がある。

 

 因みにこの後、俺の方を向いてじ〜っと見つめてきたので俺も外に出ることにした。

 

 出たらなんか無茶苦茶嬉しそうに近寄ってきてまた水の触手を絡ませてきた、しかも今度は絡ませるだけじゃなくて自分の身体? を俺に寄せて触れさせてもきた。

 

 その時に見えた三角の物体は、多分アイツのコアか何かなんだろう、触ろうとしたら嫌がられた。

 

 まぁ、何がなんだか良く分からないけど、とりあえず懐かれてるなら別に良いかと付き合うことにした……それはそれとしてなんだか可愛いなこいつ。

 

追伸

 

 寝てたらミナがなんかコア? だけの状態になって俺の所にコロコロと転がってきてグイグイと俺の懐に入り込もうとしてきた、一緒に寝たいらしい。

 

 お前遊んでた時に触ったら無茶苦茶嫌がったのになんで今はそんな無防備に近付いてくんの? 言っとくけど俺達出会ってからまだ一日と少ししか経ってないからね?

 

 

 

 

〇月水日 雷

 

 今日はぼけ〜としてた、俺もミナもずっとぽけ〜っとしていた。

 

 今日のミナは特に何をしているわけでもない、強いて言うならコアの状態で俺の足元にいる。

 

 二日過ごして分かったけど、多分ミナは物理的な食事を必要としないタイプの生き物なんだと思う、だって昨日の帰りに水から何かを吸い取っていたから。

 

 まぁ十中八九、元素吸い取ってたんだろうけど。

 

 まぁ、そんなのはどうでもいいとして…何もせずにぽわぽわと呑気に外を見ていたら、唐突にミナが何時も通りの姿になって、何やら拳大の水の塊の様な物を俺に押し付けてきた。

 

 押し付けられるがままに手に持って、暫くそうしていると急にミナがその水の塊から手を離した。

 

 ミナの手を離れた水塊は俺の手の中でぷるぷると震えていたけど、また暫く経つとゆっくりと溶けるように俺の手の中で崩れていった。

 

 俺としては訳が分からなかったけど、ミナは露骨にガーンッ! とショックを受けたように見えた、だって纏ってる水がこれでもかってくらいピキーンとトゲトゲになってんだもの。

 

 その後、暫くコア状態のまま草むらの方で何もせず活動を停止していた、大丈夫かあれ?

 

 

追伸

 

 寝ても寄って来なかった本当にショックだったらしい、マジで動かない。

 

 明日も動かないようだったら、ちょっと一人で動いてみますかね。

 

 

 

◎月◎日 晴れ

 

 

 朝になってもミナが動かなかったから、今日は一人で動いてみようと思う。

 

 とりあえずのんべんだらりとぶらぶら動き回っていたら、珊瑚のやべー奴がいる場所の向こう側に古びた神社があった。

 

 色んな所が壊れてるし、多分誰も使ってないんだろう。

 

 今の住処を見つけてなかったら、この神社を住処にしていたかもしれない。

 

 どうせだからと、金――こっちではモラと言うらしい――を賽銭箱に投げ入れてみる。

 

 因みに金はあれだ、最近編み出した新しい技で取り出している。

 

 具体的に言うと門を作って特定の場所に繋げる技だ、サユが獣域ハウンドは次元の向こう側から来るという話を聞いて考えついた技で、ぶっちゃけ瞬間移動と違って大分練習が必要になった。

 

 自分で次元ぶち破ってこっち来るのと特定の場所に行く様に次元開いて物を取り出すのとではやっぱり難易度的なそれが大幅に違う。

 

 実際問題、設定というか目印的なそれを置いた場所にしか開けないし大きさも精々俺が半分入れる程度だから大きな物とか早々入れられない、なんだったら開いていられる時間も少ない。

 

 まぁ、そういうわけで金を取りだして賽銭箱について投げて、そのまま住処に帰った。

 

 

追伸

 

 住処に帰ったらミナに飛びつかれて水の触手で抱きしめられた、いや今回のは触手というよりも腕っぽい。

 

 抱きしめられた後は俺が動けないレベルで抱きしめられた…というか雁字搦めにされた、触手じゃなくてちょっとにょろにょろとした人の手っぽいのでずっと抱きしめられた。

 

 

 

 

 

〇月✘日 晴れ

 

 ミナが全然離してくれない、昨日置いていかれたことが余程嫌だったらしい。

 

 何処に行くにもずっと引っ付いたままだし、なんだったら俺の毛にコアの状態で食い込んでるし、お陰で俺が水元素使ってるみたいになってるし。

 

 

 俺、こいつにそんなに懐かれる様なことしたかなぁ?

 

 

追伸

 

 離れてくれたけど、無茶苦茶付いてくる…夜の散歩に出かけようとしたら上記の状態を意地でも維持しようとしてくる、いやまぁ別に良いけどさぁ。

 

 俺、雷元素使うから危ないんだよ?

 

 

 

〇月△日 晴れ

 

 

 ミナが何か翼みたいなのを生やしてもの凄いスピードで何処かへ飛んでいった、速いなぁ。

 

 何をしたいのかは知らないけど、とりあえず行ったからには待っといてあげますか、一昨日はミナが待つ側だった訳だし。

 

 というわけで、今日は肉を焼きまくって食うことにしましょうそうしましょう。

 

 

追伸

 

 ミナが帰ってきた、何か雷元素バチバチさせながら。

 

 おかしいなぁ、お前雷元素使えたっけ? 水元素じゃなかったっけ? コアの色も何かアジサイっぽくなってるし、何かあった?

 

 

 

〇月✚日 晴れ

 

 アジサイっぽくなったミナが帰ってきてから一日、分かったことがある。

 

 こいつ、雷元素が効かなくなってる。

 

 俺がミナを背負った状態でミスって雷元素が纏った時、こいつ全く効いてなかった。

 

 むしろ何時も以上に俺に引っ付いてくる始末、こいつさては俺が雷元素展開しても大丈夫な様に何かしらして雷元素に対する耐性付けてきたな?

 

 出来るかどうかは知らないけど、実際こいつがやってんだからそうと受け取るしかない。

 

 まぁ、こいつ喋らないから実際どうかは知らないけど。

 

 

追伸

 

 寝ようとしたら雷元素の触手で抱きしめられた、そこから朝までずっと離してくれなかったからその状態で寝た。

 

 なんというか、アジサイっぽくなってから妙に抱きしめてくる、本当に何かあったのかな?

 

 

 





主人公
 
 ミナが来てから寂しさが和らいでいる、多分ホタルちゃんもパイモンが居なかったらこうなってる。

ミナ

 実はモンドのとある場所に行ってきた。

 感情とか無いはずの無相がなんでこんなことになっているのかはマジで作者にも分からない。


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オレハクニヲデルゾホタルゥゥゥゥゥゥ!!!!


 別の国を出したいし行かせたかったから大分雑な方法で行った、反省も後悔もしている…だが私は謝らない(キリッ)


 

〇月✘日 雨

 

 アカン、『素材置いてけ』がこっちの方にまで来てる。

 

 ミナに引っつかれながら外を出歩いていたら、見覚えのある金色と白色が見えた、俺には分かる…だって多分、俺がこっちに来てから一番最初に出会ったトラウマだから。

 

 どうしよ、流石に今の場所が見つかるとは思えないしこの前みたいなことにはならない自信はあるけど、けどあいつだもんなぁ、特有の嗅覚とかで追ってくるかもとか考えちゃうんだよなぁ〜。

 

 さてさて、どうしたものか。

 

追伸

 

 とりあえず、引っ越す場合はミナを連れて行くことにする、どうせ離れてくれないだろうし今離れたらまた寂しい思いをするのが目に見えてるし、主に俺が。

 

 

 

〇月◎日 晴れ

 

 ミナがまた水の塊を俺に持たせようとしてくる、今度は押し付けてくるんじゃなくて眼の前に差し出す形で。

 

 また前みたいに受け取ってみると、今度は俺の手の中で塊が弾けた、これどういう仕組み?

 

 ミナはミナで今度は落ち込むことなく抱きしめてくるし、あの水の塊本当になんなの?

 

 

追伸

 

 毎回ただ抱きしめられるのもアレだから、抱きしめられた時に抱きしめ返してみた…そしたらなんか………無茶苦茶雷元素放出してぶるぶる震えて何処かに飛んでいった。

 

 何あれ?

 

 

 

◎月◎日 曇

 

 今日は少し危ないことをしてみた、主に俺の命が。

 

 あの妖怪に脅かされ続けるのも正直もう嫌だったから、アイツ等の会話を盗み聞きすることにした。

 

 最近アイツ等こっち側によく来てるしあの二人目立つしで探すのには手間取らなかった。

 

 後は簡単だ、俺のスペック的に多少離れていても鮮明に声を聞き取ることが出来るから適当な位置から会話を盗み聞きするだけ。

 

 まぁ、そうして話を盗み聞きしてみると、どうにも俺を探して調査する様に冒険者協会? って所から依頼が来ているらしい……なんかそういう所から依頼が来るのってますますハンターっぽいんだけど。

 

 んでだ、その後はりーゆぇ? やらモンドやら稲妻やら何か良く分からない単語が出てきた、何の名称だ?

 

 鶏肉のハニーソテー? だとか食い物の名称を白いのが幸せそうに言っていてそれを『素材置いてけ』が呆れたように見ている………………………………………ふざけんな美味そうな名前出してんじゃねぇよ食いたくなるだろうがぁ!

 

 

追伸

 

 因みに、あの二人の名前は金髪が『蛍』で白いのが『パイモン』というらしい、覚えたぞその名前。

 

 

 

〇月☆日 晴れ

 

 今日も引き続き、妖怪『素材置いてけ』改め蛍&パイモンの会話を盗み聞きしようと思う。

 

 あの二人は昨日、俺の住処から大分離れた所で野宿をしていた、それはもう美味そうな飯を作って食いながら。

 

 んで、一度住処に帰ってからあの二人が起きる前にその野宿現場に戻ってきた。

 

 後は昨日と同じ、他愛の無い会話をしている二人の会話を俺が盗み聞きする、ただそれだけ。

 

 今の所は俺に関することは何も言っていない、ヒルチャールがどうだったとかここみ? と呼ばれる人物に会うのが楽しみだ〜とかそんな雑談だけ。

 

 …ところでだ、そのここみという名前にとてつもなく嫌な予感がする…そして俺は基本的にその嫌な予感から逃げ切れたことが一度も無い。

 

 ……どうしよう…凄く逃げたい………けど逃げたら逃げたで状況がもっと悪くなる様な予感がしたから盗み聞きを続けることにした。

 

 そうして隠れて追いかけて暫くすると、あの二人が例の珊瑚の宮殿に入っていくのが見えた。

 

 より正確に言うと、宮殿の中にある建物の外でお偉いさんらしき女の子と会話している、あの人魚姫を和風にしたらこうなるじゃないかって子がここみらしい。

 

 そうして響いてくる例のヤベーやつの声。

 

 物腰は静かで理知的だがそんなの国防仮面とかも同じだった、親友兼恋人(仮)の女の子と林間学校で別の組になった際に憎んでいたはずの敵にこれで会える! ありがとう!! と瞳のハイライトを消して言い放つレベルのヤベーやつだけど普段は物腰静かな大和撫子の体現とか言われてたヤベーやつだったのだ。

 

 それがあの妖怪と話してる、ええい珊瑚の中に入らないようにしてるせいで上手く聞こえない!

 

 あれだ、なんか何処かを指差してるのは見える……………………あれ? あっちの方向俺の住処がある場所なのでは?

 

 ちょっと待って? これリスク度外視で近づかないとヤバイやつなのでは?

 

 そう思って声が聞こえる範囲にまで近づいて、そこから聞こえてきたのは――

 

 

――以前、貴女がえんかのみやを開く際に訪れたあの洞窟に例の白い獣域ハウンドが――

 

 

 その声が聞こえてから、俺はすぐに動いた。

 

 具体的に言うと、適当な洞窟に行って扉を開いて置いてた物全部を回収した、ミナは背中に引っ付いてる。

 

 んで分解出来るだけ分解してリュックに詰め込んで、燃える花と凍る花はそこらへんにぺいっと放り捨ててすぐさま珊瑚の逆方向へ向けてダッシュ!!

 

 いやねぇじゃん、まさかあの場所把握されてるなんて思わないじゃん、あんな分かりづらい場所さも当然の様に認識されてるなんて思わないじゃん。

 

 あぁもう! また住処探しだよこんちくしょう!!

 

 

追伸

 

 次は何処を住処にしようかな〜とか考えてると、ミナに水の触手でちょいちょい突かれて、視線を向けると海の方に触手を向けてた。

 

 流石に海では過ごせないと思ったけど、何かそういう意図では無さそう…どういう意味だろ?

 

 

 

 

〇月♡日 晴れ

 

 昨日ミナがやってたことの意味が分かった、あれ多分海を越えようって意味だ。

 

 なんで分かったかって? 偶然出会ったアーシアにミナが指してたのと同じ方角を指差したら海に行きたいのか? って聞かれて首を横に振ったらりーゆぇに行きたいのか? って言われたからだよ。

 

 りーゆぇの部分で首を傾げたら、こっちの方角に進むとりーゆぇっていう国があることを教えてもらった、となるとモンドも稲妻も国の名前か。

 

 

 アーシア曰く、りーゆぇは『岩神』モラクスこと『岩王帝君』っていう神様が収めていた国らしい、因みにもう死去しているそうだ。

 

 凄く今更だけど、ファンタジー世界なだけあって神様とか居るんだなここ、ビックリだ。

 

 因みに、遠く離れた大陸にあるから、船を使うか『ワープポイント』ってやつを使わないとりーゆぇには行けないらしいんだけど…俺とミナはそもそも浮いてるから関係無いんだよね。

 

 まぁ、そういうわけだからそのりーゆぇって所に明日から行ってみようと思う、ここに居たら何時あの可愛い顔した……した………………………蛍に見つかるか分かったものじゃない。

 

 

 とりあえず、食い物探してたリュックに詰め込みますかね、海の上じゃ何を取れるか分からないし。

 

 あぁそれと、アーシアにお礼も込めてお辞儀すると、『恩返しになったかな?』ってウィンクしながら聞かれたから肯定の意味も込めて深く頷いておいた。

 

 そうかと一言言って、旅の無事を祈ると付け加えてアーシアは歩き去っていった。

 

 その後ろ姿は、何処か誇らしげだった気がする。

 

 

追伸

 

 アーシアが行った後、ミナが水の触手でペチペチと叩いてきた、その後は雷と水元素の触手で俺の背中にへばり付いて動かなくなった…と思ったらまたペチペチと叩いてきた。

 

 なんか不機嫌っぽいし、アーシアのことが気に入らなかったかな? なんで?

 

 

 

〇月♧日 晴れ

 

 りーゆぇに行く前に日記を書いておこうと思う、流石に海の上では書けないし休めないだろうからな。

 

 とりあえず、昨日は集められるだけの肉と野菜を集めて海乱鬼と『ファデュイ』の連中からぶんどった塩で+αで燻製を作った、これで腐ることはない。

 

 それと、ミナがまた変なことになってた、具体的に言うと色とか形とかは別に変わってないけどチロチロと燃えてる箇所がある。

 

 昨日、寝る前に何処かに飛んで行った後に帰ってきてからチロチロと炎っぽいのが見え隠れしていたけど、今日になってその見え隠れしてたのが普通に見えるくらいになってる…本当に何をしに行ってたのお前?

 

 ……まぁ、何でも良いか別に……どうにも、危なそうな類のものじゃなさそうだし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さてと…そろそろ行きますかね。

 

 

 次に日記を書くのは何時になることやら………うん、向こうに着いてからのお楽しみってやつかな?

 

 

 

 

 





主人公

 二箇所くらい住処見つけられた為、璃月に行こうと決意する…なお、別にそんなことしなくても蛍ちゃんに会って色々説明されればそんなことしなくても済むけど、それが分かるのは多分大分後の話。


ミナ

 主人公をペチペチした、この後半ば八つ当たり気味に燃えてる同族をベチンした。


アーシア

 主人公と別れた後に璃月行きの準備を始めた。



 主人公が璃月に行くことを知らないので、三日か五日間の間、ずっと主人公を探してた。



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執着/咆哮/飛翔/渇望


 無茶苦茶します


 

 ソレは探していた、何時か見た『白』を。

 

 ソレは探していた、何時か刃を交わした『純白』を。

 

 ソレは探していた、何時か自分に背を向けた『(けだもの)』を。

 

 

 決着がついていなかった、まだ終わりじゃなかった、それでも『狼』は己に背を向けた。

 

 あれを逃げだとは思っていない、ジリ貧になっていることは分かっていた、決め手が無いことも分かっていた、だから『狼』は引いた。

 

 逃げていない、狼は引いただけだ、あの白い狼は必ず再び己の眼の前に現れる…ソレはそう確信していた。

 

 

 そう、確信している…してはいるが、それを待っていられるかどうかは別の話なのだ。

 

 

 

「…ぐが……ががっ…!」

 

 自身の俄然でか細い唸り声を上げる巨大な黒と金の狼、

今己が踏みつけている哀れで弱小な獣。

 

 弱い、あまりに弱い…奴はこんなものではなかった、あの白い狼はこんな無様な姿を晒さなかった。

 

 奴ならば今この様な状況でもその目に絶望を宿すこと等無い、奴ならばこの状況でも反撃に討ってでる…それはそうに違いないと確信していた。

 

 故に…こいつじゃない。

 

 手に持った刀を、眼下に這いつくばる紛い物の脳天へと突き立てる。

 

 ブスリッと肉を突き裂く音と頭蓋を貫く感触が刀を通してソレへと伝わる。

 

 紛い物は小さく呻き、僅かにソレへと牙を見せながらその瞳から光を失っていく。

 

 やがて『黄金王獣』と呼ばれた獣域の王は、その名に似合わぬ程あっさりと、呆気なくこの世界から消えた。

 

 

 

「……………………」

 

 

――嗚呼、また違った……何処だ…何処にいる…?

 

 

 ソレは再び動き出す、先程まで戦っていた獣の亡骸には目もくれず、ただただ『記憶』にある白を求めて。

 

 ソレは知らない、今己が抱くそれがなんであるのか。

 

 ソレは気づかない、自分がソレを抱くことそのものが異端であることを。

 

 ソレは知らない、自分の中に渦巻くそれがどう呼ばれているのか。

 

 ただ一つのことに固執し、ただただ闇雲にそれだけをひたすらに求め続ける。

 

 

「……ド……ドコ……ダ」

 

 会話をすることに意味を見出さず、ただ剣でのみ物事を語ってきたソレは、恐らく生まれて初めて声を発する。

 

「ドコ…ダ…! ドコ…ニイル…!!」

 

 

――白狼ヨ…!!!

 

 

 その一声に、ありったけの『執着』を載せて。

 

 

 

 

 

 


 

 

 ソレは眠っていた、地の奥底で。

 

 いや、正確には眠っていたはずだった、ソレは遥か過去に眠りにつき、何かに叩き起こされでもしない限り決して目覚めぬはずだった。

 

 しかし…ソレは目覚めた。

 

 切っ掛けは些細な力の波動、それだけでは何の意味も持たないはずのそれを受けて、『龍』は目を覚ました。

 

 

――………お兄ちゃん?

 

 

 久方ぶりの目覚め、その直後に感じたのは自身が兄と慕った存在の色濃い気配。

 

 その気配に『龍』の寝ぼけ気味な意識は急激に覚醒し――

 

 

――お兄ちゃんだぁ!!

 

 

 地の底から地上に向けて高速で移動し始めた。

 

 硬い地面の奥底で眠っていたソレを覆っていた練り固まった土を『溶かし』、上へ上へと突き進む。

 

 掘る、掘る、掘る、時折何か硬い物にぶつかるがそんなの関係無いと言わんばかりに溶かし、更に上へと昇る。

 

 一分か、五分か、それとも十分か…どちらにしろそう長い時間を掛けずソレはいとも容易く――

 

 

グオォァオォォォォォォォォッ!!!!!(外だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぉっ!!!!)

 

 

 

 轟音を撒き散らしながら、地上へと躍り出た。

 

 

――……あれ!? お兄ちゃんどこぉぉ!?

 

 

 しかしすぐにキョロキョロと辺りを見回した後、その場から『龍』は走り去る。

 

 背後にある『赤熱』し、ドロドロに溶けた大穴を放ったまま。

 

 

 

 


 

 

 

 とある砂漠のとある場所、そこにソレは居た。

 

 月明かりの照らす穴の底、本来砂漠の王者が巣としているその場所に、ソレはいた。

 

 白と赤の翼、白い体毛に全身を奔る赤い光…元は聖骸赤鷲と呼ばれたソレの色彩は元のソレとは大きく異なっている……当然、その強さも。

 

 事実として、砂漠の王者は餌となった…偶然穴を見つけ、そこに居た顔無しの蛇みたいなのを見て癪に触ったから、そんなとてつもなく理不尽な理由で砂漠の王者はソレの餌になった。

 

 ソレは我が物顔で砂漠の王者を喰らう……その身に迫るどうしようもない『死』にも気づかずに。

 

 

 

 

 

 …『鳥』が来る。

 

 

 唐突に襲い来る『絶対零度』、触れるもの全ては氷漬け、ただの一つの例外も無し。

 

 当然、王者を貪り喰らっていた白鷲も同様、気づいた時には時既に遅し、喰らっていた王者ごとその身を氷の彫刻と化して絶命した。

 

 

 砂漠という過酷な環境ではあり得ない氷の世界が、今そこに生まれた。

 

 

――……………

 

 そんな世界に、一匹の鳥が舞い降りる。

 

 先程の白鷲とまるで真逆、黒い身体に黒い翼…そして翼を奔る青白い元素の光。

 

 

――…………………

 

 ソレは王者とそれを降した存在だったモノを一瞥し、月明かりの射す大穴を見つめる。

 

 

――……………見つけた……。

 

 

 それは…唐突に動き出す。

 

 翼を大きく広げ、そのまま遥か上空へ向けて羽ばたいて行く。

 

 翼をバサリと一振りする度に空気が凍る、鳥が通過した後の砂が凍って地面に落ちる。

 

 

――…今……行くね………。

 

 鳥は飛んでいく、何処ともしれぬ何処かへと。

 

 道行く全てを、氷漬けにしながら。

 

 

 

 


 

 

――対よ、対よ

 

 水面の底の更に底、その空間にある国であった場所に、ソレは一匹存在していた。

 

――対よ、何処(いずこ)に在る対よ

 

 ソレは待ち望んでいた、己の対、己の伴侶と呼ぶべき存在を、ただひたすら。

 

――対よ、対よ

 

 赤…紅…緋…朱…赫…ソレの周りにあるのはただそれだけ、全てが赤く紅く緋く朱く赫い。

 

 そうでなかったものは確かにあった、しかし何れは同じ色へと染まってしまう、今ソレの眼下でぷかぷかと水面に浮いている『使徒』と名乗った存在と同じように。

    

――早く、速く、我が元へと来てくれ対よ…来てくれぬなら…こちらから出向いてしまうぞ?

 

 故にソレもまた赫い、血のようにドス黒い赤色の体毛、暗く淀んだ紫紺の瞳、そして…奇しくも地上に生まれた『白』と同じ姿形。

 

 ソレは待ち望んでいる、渇望している…強く、一途に…己の対を。

 

――対よ、対よ……待っているぞ。

 

 

――この渇いた心が満たされる……その時を。

 




 これ書いてる時、自分の中のライドォが何してんだよ団長!? って叫び声上げてた、何でだろうね?


『執着』

 誰なんでしょうねぇ?


『咆哮』

 別に叫んでない件について

『飛翔』

 ACの新作が出ると聞いたから勢いを出した。


『渇望』

 クリムゾン・ベイルのこと考えてたら何時の間にか生まれていた。


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ヨーソロ~


 日記は書いてて楽しいんじゃ〜♪


 

〇月〇日 晴れ

 

 思いの外早く日記を書けた、というのも近くを船が通っていたからそこに(無断で)お邪魔させてもらった、当然気づかれないように。

 

 んですぐに見つかった、眼帯付けたナイスバディのお姉さんにとなんかござる口調の男に。

 

 いや、ござる口調使うやつなんて初めて見たから良いもん見れたなぁって思ったんだけどさ、お姉さんの方の…その……声がさぁ、ちょっとアレだったというか。

 

 いや、前みたいな国防仮面(仮)の時みたいなコイツヤベー的なやつじゃなくて、なんというか…多分第二次Z後編やってた人なら多分み〜んな分かっちゃう一種の憧れというか尊敬とかが溢れてくるというか…。

 

 まぁ…一言で言うなら……『輻射波動』*1は見たら誰しもが憧れるロマンで、それを使って弾けろだのなんだの叫びたがるの男の性と言いますかなんと言いますか…うん、つまりはそういうことなんだよ。

 

追伸

 

 因みに、船長のお姉さん…じゃなくて姉御さんに何故か乗っても良いと言われた、なんでも友達から色々と聞いたとかなんとか。

 

 まぁ、この船りーゆぇ行きみたいだし、別に良いか。

 

 

 

 

 

 

〇月☠日 曇

 

 船の中にいるのは良いけど、飯は自分でも獲ってくれと船長に言われた、なんでも俺のも含めたらちょっと危ないらしい。

 

 まぁ、乗せてもらえてる時点で凄く融通してもらっている訳だし、別に良いやと頷いておいた。

 

 そんな訳で、飯は俺とミナで獲った、俺は海に突っ込んで魚を爪…だとバラバラにしかねないから尻尾で一突きしてやった。

 

 ミナは飯とかいらないはずなのに何故か獲ってた、因みに方法は水の触手を海にポチャンと入れて割と広範囲に雷元素を流し込み、ぷかーと浮いてきた魚とかイカとかタコを水の触手で持った網で掬い上げてた。

 

 元素の使い方が器用だなぁってミナのこと見てたらタコとイカを渡され、代わりに俺の獲った魚を数匹持っていかれた、いや別に良いけど。

 

 あぁ、そういえば船長がミナに驚いてた、何でもミナは無相の水と呼ばれる強力な元素生物らしい、へぇそうなのか〜。

 

 何に驚いているのかは知らないけど、ミナはうちの子なんだからやらないぞって感じにミナを抱き上げて船長から

遠ざけたら『盗りゃしないよ』って笑われた、笑ってんじゃねぇよ恥ずかしいじゃないか。

 

 

追伸

 

 この後、船長の船の船員の一人が俺を撫でさせてほしいと言うので撫でさせてあげようとしたら、急にミナが水元素の腕で船員を船外まで殴り飛ばした。

 

 殴り飛びされた船員はミナによって回収されたけど、頭の上で星が回ってるんじゃないかってくらい綺麗に気絶していた。

 

 その様子を見た船長が『馬に蹴られたね』って笑ってた、いや笑いどころじゃないでしょ船長。

 

 

 

〇月ゴッドスラッシュタイフーン!日 雨

 

 何日か経つけど、あと少しでりーゆぇに着くらしい。

 

 そこまで時間が経った気はしないけど、随分と近づいてたんだな。

 

 昨日以降、俺を撫でさせてくれというあの船員さん以外出てこなかった、いやまぁあんな吹っ飛ばされる所見たら誰だってそうなるだろうけど。

 

 お陰で俺のこと…というか毛並みを触りたいなぁって感じで見てた船員達の視線がアイツヤベーという視線に変わってしまった、主にミナのせいで。 

 

 まぁ別に良いんだけど。

 

 だけどぁ、船長が触ろうとするのは何故か許すんだよなミナ、あとござる口調のヤツが触っても許す。

 

 何か基準とかあるのかな?

 

 

追伸

 

 ござる口調の男、カズハに『お主は何処から来たのでござろうなぁ』って頭撫でながら言われた、多分俺じゃなくてこの身体のことを言ってるんだろうけど、そんなの俺が知ってる訳がない。

 

 こいつはサユと同じ風元素使うらしいし、なんとなく雰囲気が好きだしで答えてやれるものなら答えてやりたいけど、俺自身がそもそも知らないし喋れないしで無理なんだよなぁ、申し訳ないけど。

 

 

 というかこいつ撫でるの上手いな…あぁ、頭がワンコになるんじゃ〜♪

 

 

 

 

 

〇月ハドロン日 晴れ

 

 港っぽいのが目視で確認出来たので、船からお暇することにした。

 

 流石に俺がこのまま中に入るのはよろしくないだろうということで、船長達にペコリと頭を下げて海に飛び込んで沖まで泳いだ。

 

 なんか無茶苦茶船が有ったし、飛んで行って見つかったら大砲とか撃たれるかもしれないからな、だから今回は海に潜ってから泳いで沖に向かった。

 

 んで沖に着いて、適当な洞窟探してたら良いの見つけたから、今はそこを住処にしてる。

 

 後はアレだ、ここを前みたいに改造するだけだ。

 

 さてさて、今回はどうしますかねぇ?

 

 

追伸

 

 熊かパンダかどうかは知らないけど、ゆるキャラっぽいのを見つけた、かわええなぁ。

 

 触ってみたらもふもふとした感触がするし、表情がコロコロ動いて面白いし、かわええなぁ〜♪

 

 周りを見渡して、飼い主らしき人間が見えないことを確認…お前さては野生のファンタジックな動物だな?

 

 よぉし! お待ち帰り〜♪

 

 

 

 

 

 

 ってな感じで、尻尾をゆる熊っぽいのに巻きつけて持って帰ろうとしたら、『グゥオパァーを返してぇ!!』と叫びながら女の子が涙目になりながら槍をぶん回してきた、ちゃんと飼い主が居たらしい。

 

 別に槍は対して痛くなかったけど、それはそれとして飼い主が居る動物を勝手にお持ち帰りするのは御法度、すぐに熊パンダを女の子に持たせ、頭を下げてからその場から去らせてもらった……ざんねん。

 

 

 因みにこの後、ミナが炎元素を使ってあの熊パンダそっくりの姿をとって俺に抱きついてきた…あたたかいわ〜。

 

 

 

 

 

 

*1
弾けろブリタニアァァッ!!!





主人公

 茶色いから熊だと思ったら見た目的にパンダにしか見えない不思議生物(かわいい)をおっ持ちぃ帰りぃぃーー♪♪しようとした、飼い主に泣かれた。



ミナ

 あのままパンダ連れ帰ってたら多分水に沈めてた。

船長
 
 友達から話を聞いて、半信半疑だったけど予想以上に友好的だった為、船に乗せた。


 ござる

 なんとなく獣に思えなかった。


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ハジメマシテ


 主人公にどうやって璃月の漢字教えるか考え中。


 

〇月66日 雨

 

 最近、小規模の地震が相次いでる。

 

 なんていうか、たまに直接俺達の下をナニカが通ってるんじゃないかってくらい近くに感じて、本当に地震なのかと疑ってしまう。

 

 こういうのが続くと、今住んでる住処が不安になってくる、だって洞窟だから崩れそうなんだもの。

 

 今の内に予備を探しといた方が良いかもしれない。

 

追伸

 

 地震の正体が分かった、なんかFFXのイフリートみたいな体勢した龍みたいなのが地面を通ってたからだった。

 

 普通に迷惑だったからぶちのめした、ちょっと硬かったし黄色い元素…岩元素を使ってきてたけど、雷元素を使えるようになった俺の敵ではないわ! いやまぁ、途中で吸収されてビックリしたけど、物理でゴリ押した。

 

 ミナがじっとその龍みたいなのが残した岩元素の残滓みたいなのを見つめてたのがちょっと不思議だったかな?

 

 

 

〇月岩日 晴れ

 

 …あの……朝起きたら岩元素を使える様になってたんですがそれは。

 

 なんで? なんで急に使える様になったの? 俺今回何も考えてないよ? 意識してないよ? 怖い、しかも雷元素の時と同じで妙に馴染むし使いやすいのが妙に怖い。

 

 えぇ…これどうしよう?

 

 

追伸

 

 俺が岩元素を使える様になったところをミナに見せると、ミナは俺が岩元素で作った柱を見つめ、暫く見つめた後に急に俺にグリグリとコア部分を押しつけてから何処かへふよふよと飛んで行った。

 

 ……これアレだな、また何かしら新しいの纏ってくるなやつだなこれ?

 

 

 

 

〇月〇日 曇 大風

 

 

 ……帰ってきたミナの後ろに……なんか………薄緑色で半透明の翼が四枚くらい生えてる……エナジーウィングじゃねぇか!!!

 

 コアの方は相変わらずアジサイみたいな色だし、水の方にも影響は無い、変化は翼だけ……いやちょっと待って色々おかしいなんで翼!?

 

 しかもお前アレだな? その色からしてさてはサユと同じ風元素だなそれ?

 

 前々から思ってはいたけど、それ何処で手に入れてきてるの? いやまぁ無理矢理聞く気はないしそもそも話せないだろうけどさ。

 

 手に入れてくるのは良いけど、危ないことはしないでくれよ心配なんだから。

 

追伸

 

 なんかミナが俺の言葉にちょくちょく反応してる気がする………もしかしてお前俺の言葉分かってる?

 

 

 

 

○月☓日 晴れ

 

 

 ミナが翼を使って空をビュンビュンと飛んでいる、エナジーウィングモドキ手に入れてから速さがとんでもなく上がっている、あれもう俺よりも速いんじゃねぇの?

 

 俺は俺で岩元素の使い方を色々と試してたけど、流砂爆流したかったけど出来なかった、残念無念。

 

 そんなことしてたら、急にミナがビュンっと俺に猛スピードで突っ込んできた、シールド貼ってなかったら痛かったかもしれない。

 

 そんなこっちの状況なぞ露知らず、ミナはコアの部分をグリグリグリグリと頬ずりでもするように押し付けてくる。

 

 昨日から、より正確に言うならば翼を手に入れてからのミナは妙に甘えん坊だ、寝るときもグリグリとコアの部分をこれでもかと押し付けてきたし、いや可愛いから良いんだけどさ。

 

 けど、それでも何かあったのかと勘繰ってしまうのが人の性というかなんというか。

 

 まぁ、悪い気はしないのでグリグリと毛にめり込んで来るミナのことを撫でてやると後ろの翼がバッサバッサと嬉しそうに動いていた、なんだよ可愛いかよ。

 

 

 

追伸

 

 なんかこの前の熊パンダをまた見つけた、また飼い主とはぐれたのかと思って尻尾で巻き付けてから飼い主ちゃんを探した。

 

 暫く進んでいるとやはりと言うべきか涙目で熊パンダことグゥオパァーの名前を呼んでいる飼い主ちゃんの姿を発見した。

 

 可愛そうだったからさっさと渡して帰った、見ていて不憫そうだったから頭を尻尾でポンポンと叩いたのは秘密である。

 

 

 

 

○月M日 晴れ

 

 そういえばこっちに来てからまともに探索していなかったことに気づいた、だからちょっとそこら辺を探索してみようと思う。

 

 まず思ったのがりーゆぇ無茶苦茶広い、多分俺等が居た所――あそこ多分稲妻だよな、名前と風習と雰囲気的に――の倍くらいあるんじゃないかってくらい広い。

 

 まぁ、稲妻は海も含めて領地だったぽいから、それを含めてみれば対して変わらないのかもしれないけど、それでもやっぱり広い。

 

 これは探索のしがいがありそうだぜぃ(ワクワク)

 

 ひとまず何処でも良いから行ってみよう…と思ったら、何か大きな穴の下に無茶苦茶デカい燃える花があるのを見つけた。

 

 なんか丸っこいし、周りには俺が調理場の材料にしていた燃える花が沢山あったから、ひとまず降りて確認してみようと思って近づいた…そしたらまた動き出した。

 

 丸まっていた花が急に動き出してよくあるファンタジー特有の人を襲う植物みたいな見た目のよくある挙動をしていた、暑い。

 

 んでまぁ、襲われるよねそりゃ。

 

 倒していいのか分からんし、よしんば倒したとしても何が起こるか分からんしで、何がとうなるのかがまるで分からなかったから手出しせずにさっさと退散しようかと思ってたら…なんかミナが水元素展開して燃える花ボコボコにし始めた。

 

 如何にも弱点ですって感じで光ってる箇所に大量の水の槍みたいなのぶち込んで、そこが壊れて弱った所を花の本体部分に向けて水のハンマーを振り下ろして爆散させてたよね、うん。

 

 けどそれで終わりじゃなくて、どう見ても死んでる花に向けて延々と追撃仕掛けてるんだよねミナ、具体的に言うと水のハンマーで頭以外の箇所を念入りにグシャグシャと潰してた。

 

 多分、俺が止めてなかったら原型無くなるまでやってたんじゃないかなあれ。

 

 ミナって強かったんだなぁと思いました、まる。

 

 

追伸

 

 なんかとんでもない人に会った。

 

 イケメンでなんか黒っぽい礼服? なんかの制服みたいな服装してる人だったんだけど、なんというオーラというかそういうのが今まで見てきた奴等に比べて桁違いに大きかった。

 

 岩元素を使ってるのか、身体から出てる元素が岩元素の黄色だったんだけど、なんかその身体から出てる岩元素が龍? 麒麟? みたいな姿してるんだからもう大変よね、だって絶対ヤバいやつだもん……けど危ない感じがしないんだよなぁ。

 

 とりあえず稲妻から持ってきてた食材使って作った飯を渡した、だってこの人絶対神様とかそういう類の人よ? 敬わない方が駄目でしょ多分。

 

 何処か戸惑いながらも受け取ってくれたし、お礼も言われたしで感触的には悪くなかったからきっと大丈夫だろうというわけで、俺はそそくさとその場から立ち去った。

 

 それにしても、かっこいい人だったよなぁ。

 

 

 

 

 





主人公
 
 璃月を観光中、実は蛍ちゃんより数段上の元素視覚を使える為、見ただけで相手が何の元素使ってくるのか分かる。
 
 最近は使いこなしかけている為、元素の反応で何処から攻撃が来るのか分かるようになった。

ミナ

 着々と全ての元素使いの天敵と化しつつある、花が主人公に何かしようとしたのを察知して殺した、念入りに殺した、殺した後も形が残ってるのが気に入らなかったから潰した。

 ヒモにビビってたけど、主人公殺す気なら多分何かもを捻じ伏せて戦う。

 
ヒモ
  
 魔物に料理渡されて驚いた、しかも美味かったからもっと驚いた。

 魔神っぽい力を感じて見に来たらそんなの全然居なくて代わりに一匹と一体が居た。
  
 あまりにも友好的且つ気配が善良的だった為、よしんばそうだとしても別に良いだろうと見逃した、料理は美味だったぞ。


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ダークネス園○コエンザイムだぁぁぁぁ!!


 今回はある伝説任務のフラグをベキベキにへし折ります、ご注意ください。
 

ヒント:蛍ちゃんはとある伝説任務の第二幕をクリアしていません。


 

○月五日 晴れ 

 

 熊パンダことグゥオパァーが俺の住処に来た、今度は女の子も一緒だった。

  

 なんか無茶苦茶ニコニコしながら俺に丸っこい手を振って、俺にぴとぴとと触れてくる、ミナの時とは別方向で好感持たれてる気がする、なんで?

 

 女の子――シャンリンと言うらしい――もその様子に警戒を解いちゃったのか触っていい? と遠慮がちに聞いてくる始末…君達もうちょっと警戒心というものを持ったほうが良いのでは?

 

 因みに、シャンリンはなんともなかったけど、グゥオパァーはミナに水元素の拳で吹き飛びされかけた…まぁグゥオパァー炎みたいなので防いでたけど。

 

 あぁ、それと帰り際にグゥオパァーに妙なことをされた。

 

 炎元素を手に纏わせて俺の手に触れてきたんだよね、しかも熱くないし何の異常も無かったから何がしたいのか分からないという。

 

 なんか妙にニコニコしてたし、何だったんだろ?

 

 

追伸

 

 毛並みの一部が若干赤くなってる気がする、ミナと同じような変化なのかなと思って炎元素を扱うことを意識してみたけど使えなかった、元素関係じゃないのかな?

 

 

 

○月X日 晴れ  

 

 

 なんかこの前の小規模地震を起こしてた奴の強化版みたいなのが地面から急に出てきた。

 

 なんとなくクローズマグマ*1みたいな感じがした、配色が黒とオレンジ色っぽいし。

 

 それで…なんか話しかけられた。

 

 いや、話しかけられたのに驚いたというかそもそもお前話せるのかよというか…しかも開口一番に出てきた言葉が『お兄ちゃん知らない?』な辺りどうしようもない。

 

 言葉が通じるかどうか分からなかった、とりあえず知らないと答えたら『そっか〜』って言いながらその場で横になり始めた。

 

 面倒くさいタイプっぽかったから、放っといて帰ることにした、だって絶対面倒なタイプなんだもの。

 

追伸  

 

 なんか住処の近くにさっきのやつが住み着いたんだけど、近くどころか住処のすぐ横で寝始めたんだけど。

 

 ……いやまぁ、何処に住むかは自由だから別に良いけどさ、頼むから地震起こさないでよぉ?

 

 

○月W日 晴れ

 

 寝て起きたら元気な声でおはようございます! って昨日のクローズマグマ(仮)が住処の中覗き込んできた。

 

 本当は入りたかったけど、身体大きいから無理だったらしい。

 

 んで、どうも一緒にお兄ちゃんを探してほしいらしい、気配を辿っても見つからないからなんでも良いから手伝ってほしいらしい…………………なんで?

 

 寝惚け…というか寝起きでそんなことを言われたら俺だって苛つく、誰だって苛つく、だって要するに休みの日に寝て起きて急にお前今日仕事しに来いって言われるようなもんだぞそれ。

 

 だからヤダと一言言って二度寝しようとしたら、泣かれた。

 

 いいじゃんいいじゃん手伝ってよ〜と泣きながら住処の中を覗き込んで言ってくる、おいバカやめろ、その懇願の仕方はドラクエ8の井戸から出られなくなったスライムを思い出すからやめろ。

 

 というかそんなギャン泣きされたらこっちも断りづらいじゃないか、ふざんけるんじゃない、手伝ってやるよコンチクショウ*2

 

 なお、手伝うと俺が言った直後に泣き止んでじゃあ行こう! って言って元気良くるんるんしながら歩き出したのは許さないからなお前。

 

追伸

 

 名前を聞かれたから人間だった頃の名前そのままで『彼方』って答えた、変な名前って言われた、ぶん殴った。

 

 逆に俺が名前を聞くとテンション高めで『ダークネス小龍(シャオロン)プロトタイプ』だぁぁ!! ってドヤ顔で叫んでた。

 

 ……………………お前ざーさん*3じゃねぇか!?

 

 

 

 

○月Z日 曇

 

 朝起きたらミナが小龍のこと無茶苦茶殴ってた。

 

 『痛っ! 痛いって! やめてよ痛いって!!』って感じで小龍凄く痛そうにしてたから流石に止めた、小龍に抱きつかれた。

 

 無茶苦茶ぶるぶる震えてるし、お前どんだけボコられたのよ。

 

 ミナはミナで何か威圧感あるし、何かあったと聞いてみてもそっぽ向いて何の反応も見せてくれないし、朝から割りと疲れた。

 

 とりあえず兄を探すということなので、小龍にその兄の特徴を聞いてみた。

 

 まず前提条件として、血の繋がった実の兄じゃなくて自分が勝手にそう呼び慕ってるだけだから、姿は全く似ていない。

 

 身体的特徴としては、金色のデカい二つの角にギンギラと照りつく赤い瞳、自分の倍以上ある大きな身体で四足歩行、岩元素と吸収した元素を使用して戦う…だそうだ。

 

 ……いや分かんねぇな、見たことないし、これは探すの苦労しそうだ。

 

 とりあえず、気配を辿れるらしいから俺は元素で探ろうと思う、なんでも凄い龍らしいから元素なりなんなり残ってるだろう。

 

 

追伸

 

 またこの前の凄い人にあった、今度は向こうが話しかけてきたから小龍にしたみたいについ言葉を返してしまった。

 

 そしたらあの人――ショウリさんと言うらしい――普通に俺の言葉に反応して返答してくれた、人の姿してるやつに言葉が通じたのは始めてだ。

 

 嬉しくなってついつい名前を教えた、なんか凄い驚かれた。

 

 『そうか、貴殿が…』って無茶苦茶意味深な台詞ボソッと言ってるし、俺の名前がどうかしたかな?

 

 とりあえず、今度はりーゆぇの食材で料理作ったからそれを食べてもらうことにした、美味と言ってもらえた、嬉しい。

 

 その後、小龍がお腹空いた〜って言いながら帰ってきて、ご飯頂戴〜と言いながら住処の中を覗き込んで、ショウリさんの姿を目にした途端に氷みたいに止まった。

 

 んで、『帝君ッ!? 帝君ナンデ!!?』って裏声前回で叫びまわってゴロゴロと後ろに転がってた、というか帝君呼びってことはやっぱりショウリさん神様だったんだなぁ、しかも『岩神』。

 

 驚かないんだなってショウリさんに言われて、いやまぁ分かってたんでって答えるとフッて薄く笑われた…なんだよかっこいいじゃねぇかイケメンめ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
ボトルバァーン!!

*2
許してくださいってかぁ? 許してやるよぉ!!

*3
花澤香菜





主人公

 疲れた
  
ミナ

 新しい同居人を殴った、何だったら殺したかったけど主人公の影響で無抵抗のままだと殺しづらいから殺さなかった。

 ……二人きりだったのに。


小龍

 クローズマグマみたいな配色したヴィシャップ、♀。

 凄くテンションの高い性格で主人公を振り回す、実は兄と慕っていた誰かを探しているのは本当だけど、それと同時にあるものを探しており、つい最近それを見つけた。


ヒモ

 意味深な言葉を吐いた後に意味深に笑った、こいつ怪しい。


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ニチジョー


 ラブコメ苦手…ラブコメなのかこれ? 僕の勘違い?


 

○月☓日 晴れ

 

 小龍の兄ちゃん見つけた、何か人間憎んでた、襲いかかってきた、倒して黙らせた、封印した、以上。

 

 いや、これ以上に何を書けばいいのか分からない、まぁ確かに無茶苦茶強かったし一人どころかミナと二人で行っても勝てたかどうか分からないけど、残念なことにこっちには小龍はともかくとして『岩神』モラクスことショウリさんがいらっしゃったわけで、あの人がバカ硬いシールド貼ってくれたお陰で勝てた。

 

 まぁ、幾らシールド貼っていようが火力が無かったら意味無いんだけど…そこはほら、小龍がなんとかしてくれた。

 

 ショウリさん曰く、アイツ一発の火力とかそういうのだけなら戦争当時の仲間達の中でも最強の無類に入るらしい、実際あいつの兄ちゃんあいつに殴られて無茶苦茶ふらついてたし。

 

 それに、なんかミナがとんでもない大技作ってたし。

 

 何あれ? メド○ーア? 雷元素と炎元素って触れたら爆発するはずなんだけど、それを半ば無理矢理一つの球体にして小龍の兄ちゃんに投げつけてた。

 

 んで、それが兄ちゃんに触れた瞬間にそこら一帯が吹き飛んだ、冗談抜きで吹き飛んだ、比喩でも過大表現でもなんでもなく文字通り吹き飛んだ。

 

 小龍の兄ちゃん生きてたけどほぼ瀕死だったし、辺りの結界みたいなのも吹き飛んでるし、なんだったら空まで見えてたしでもう凄い有様だった。

 

 お陰で、ショウリさんがまた新しく封印する場所探す羽目になった、まぁ俺としてはどうでも良いんだけど。

 

 まぁ、そんなわけで小龍の兄貴探しは終わって、ショウリさんのヨウジモ終わって一件落着だったわけだよ今日は。

 

 あぁ、疲れた〜。

 

 

追伸

 

 小龍が人間になった、なんで? それどうやってやるの? ずるい俺にも教えろ!

 

 

 

 

 

○月王日 雷

 

 昨日、小龍が人間体になってからずっと俺の背中に乗ってくる。

 

 黒い髪を短髪に……短髪の何だ? 俺は髪型にあまり詳しくないからなんて言っていいのか分からないけど、女の子らしい髪型だと思う。

 

 身長は…人間の頃の俺よりは大きいから、160くらいはあるんじゃないかな?

 

 服装は如何にも中華って感じ、色は黒一色のチャイナ服ってやつなのかな? でもなんか足元がロングのコートっぽいような気がするようなしないような。

 

 顔は美人、美少女、綺麗なオレンジ色の瞳です…以上。

 

 バスト? そんなこと書くわけないだろ書いていいわけがないだろいい加減にしろ!!

 

 

 んで、それが朝から晩までずっと俺の背中に乗ってくる、落としてもよじ登って戻ってくる、んでそこで昼寝する。

 

 なんか、昼寝するところがサユっぽいなと思った。

 

追伸

  

 ミナが小龍に水遁ぶつけてたけど、小龍が槍使って防いでた、あいつの使う武器は槍らしい。

 

 というかあいつらなんで戦ってるの?

 

  

 

 

○月A日 晴れ

 

 今日は山を登ってみた、断崖絶壁で雲の上までとは行かないかもしれないけど凄く高い山だ、登ってて楽しかった。

 

 浮いてる俺に山を登るなんて概念無いだろうとも思うかもしれないけど、ただ真っ直ぐ進むのと上に向かって進むのとでは訳が違う、上に浮くだけでも体力は使うし上に向かって進むってなると体力はもっと使う。

 

 まぁ、グレート海乱鬼の時以降、その体力消費もほぼ無いようなもんなんだけど、それでも疲れはする。

 

 結局何が言いたいかって、良い汗かけるってことだ。

 

 なんか登る途中で妙に気品のある鶴とか鹿とか鷲…なのか鷹なのかは知らんけどそれっぽい鳥を見つけたけど、興味が湧かなかったから放っておいた。

 

 んで、俺は山の頂上に辿り着いたわけだ、良い眺めだった。

 

 というか思ったんだけど、俺がこうして普通の生活日記を書くのは久しぶりじゃないか? ここ最近は蛍&パイモンから逃げたこととかミナが色んな元素使えるようになったとか小龍とその兄探し+ショウリさんとかみたいなファンタジー特有の非日常的なそれしか書いてなかった気がする。

 

 それ考えると、なんか本来のそれに戻った気がして晴れやかな気分になってくる、山の頂上に辿り着いた時と同じ感覚だ。

 

 こういうのだよ、俺はこういうのをしたかったんだよ(涙)

 

 『素材置いてけ』に追いかけられることもなく、グレート海乱鬼+αみたいな奴に襲われることもなく、ただその日にあった平和な一日を日記に書くっていう日々を送りたかったんだよ。

 

 その時はミナも心なしかはしゃいでた気がするし、やっぱりみんな望むものは一緒なんだなと再確認した。

 

 明日は何しよっかな〜♪

 

 

追伸

 

 寝る前、小龍に瞳のハイライトオフにして詰め寄られた。

 

 どこ行ってたの? なんで私連れて行ってくれなかったの? 私のこと嫌いなの? と無表情で淡々と問い詰められた。

 

 お前が気持ちよさそうに寝ていたからと言ったら次からは起こして、起こして私も連れてって、私を一人にしないでと言って小龍は寝た…俺に抱きついたまま。

 

 寂しがり屋なのか別のナニカなのかは知らないけど、普通に怖かったから次からは起こそうと思う、というか明日からだな。

 

 それにしても、随分と懐かれた気がする…ミナの時もそうだったけど、俺ってもしかしてそういうの引き寄せる体質なのかな?

 

 

 

 

 

○月B日 晴れ

 

 今日は遺跡っぽいとこに行ってみようと思う…因みにちゃんと小龍は起こして連れていった。

 

 何が嬉しいのか小龍はずっとニコニコしていた、ミナは昨日と違ってはしゃいでいなかったけど、それでも何処か上機嫌だった。

 

 この前まで小龍居たら不機嫌で、一緒に居たらほぼ一方的に小龍殴ってたのに、どうしたんだろ?

 

 遺跡には像やら何やら色々あった、建物みたいなのもあったしデッカイ木もあった、というか全体的に風景が綺麗だった。

 

 ここでこれならショウリ…鐘離さんの言ってたりーゆぇこう…じゃなくて『璃月港』だったな鐘離さん曰く…名前も名称も教えられてたけど疲れすぎて忘れてた。

 

 小龍も良いところって言ってたし、ちょっと見てみたい…まぁ、稲妻の時と同じで遠くから眺めるだけなんだけど。

 

 ただ、旨い料理とかは行けると思う、だってこっちには人間と遜色無い小龍が居る、こいつに金渡して頼めば料理くらいは持ち帰ってくれるでしょうしとも。

 

 あぁ、楽しみだなぁ♪

 

 

追伸

 

 寝る前に小龍がなんか何時もと毛色の違う笑顔で『今度はずっと一緒に居てね? 』と俺の頭を撫でながら言ってきた…今度も何も俺達会ってそんなに経ってないだろうに。

 

 とりあえず居たいなら居れば良いんじゃないかって言ったら……なんか………額の部分にキスされた。

 

 

 

 

 

 本当に……なんで皆、俺に対してこう……好意的なんだろ? 初対面で出会い方に運命もクソも無かったはずなのに。

 

 不思議だ。

 

 

 

 

 

 

 

 





主人公

 山に登って、普通に日記書けることに喜びを感じた男。

 実は人間だった頃は中学生で14か15歳程度だった、言動が妙に大人びて…アレなのは兄の影響。

 ちゃっかり前話で人間だった頃の名前が『彼方』であることが明かされているが、書いてる当の本入である作者が忘れていた為、今ここで書いてる…アホの極み。


ミナ
 
 主人公と二人きりで山に行けて嬉しかった、無自覚ではあるけどデートみたいな感覚でいる、だから次の日に部外者居ても別に怒らない…ほんとだよ?


小龍

 誰も初対面だなんて言ってないし、時間が経ってないなんて言ってない。

 因みにミナが居なかったらこいつが旅の同行者だった、というか当初のプロットだとこいつと一緒になってミナを倒すはずだった…なんでこうなってるんだろ?


お兄ちゃん

 妹(自称)にぶん殴られた、実は当の本人もちゃんと妹と認識していた。






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ココロガオドル


 これだけはどうしてもやりたかった、なんと言われようがこの展開だけはどうしても入れたかったんや…ユルセサスケ。


 

○月C日 晴れ

 

 今日は璃月港を見に行こうと思います! ついでに小龍には美味いものを買ってきてもらおうと思います!(ヨダレダラダラ)

 

 小龍曰く夜の璃月港が一番綺麗らしいから夜に行ってみようと思います! 行きました!!

 

 いやぁ、綺麗だったよなぁ璃月港…きっとこの光景を初めて見た人は感動でいっぱいになるに違いない*1

 

 まぁ、風景に感動した後は美味い食い物が鉄則というわけで、早速小龍に美味いものを買ってきてもらいに璃月港内に行ってきて貰ったんだが……なんかその間に変な…じゃないな別に、妙な人に会った。

 

 なんていうか、仮面を頭に付けてて好戦的な笑顔を見せながら近づいてきただけなんだけど…何が妙って水元素使いのはずなのにその中に雷が混じってること。

 

 いや、それだけならミナもそうだろというかそれ以上だろとか色々あるけどそういう意味じゃなくて、なんというか他の奴等みたいな純粋な元素力じゃなくて人工的な感じがするというか…他の人達のそれと違って何処か濁った感じがしてしょうがなかった。

 

 でも…何処かで見たことがあるような気がするんだよなぁこいつの雷元素…何処だったかな?

 

 とか考えてたら…いきなり斬り掛かってきた。

 

 水元素で作った二つの剣、長さ的に双剣に当たる剣が俺へと振るわれ、それを俺は爪で受け止めた。

 

 その際にそいつが言ってたんだけど、なんでもそいつの組織内で俺は噂になってるらしい…いや知らんけど?

 

 いやぁ、正直噂になりそうなことなんて結構してるからどれのことか全く分からんのよこれが。

 

 海乱鬼共を蹴散らしたことかな? ファデュイを蹴散らしたことかな? 一番有力な説としては米強奪事件なんだけど、それなら組織とかそういうのじゃなくて個人が広めた噂になりそうなんだけど。 

 

 んでそいつ曰く、稲妻に途方も無く強い獣域ハウンドがいる、そいつは他の獣域ハウンドとは違って雪の様に真っ白な姿をしていて蒼い雷を纏うのだそうだ……俺じゃん。

 

 で、それを聞いたそいつは俺と戦いたくなって仕事の合間の隙を縫って稲妻に行こうとしていた、そこに俺が現れた、だから戦え今すぐ戦え俺を楽しませてくれ! …要約するとこうなる。

 

 

 ………こいつバトルジャンキーやんけ!?

 

 

 

 

 まぁそんなわけで俺はそいつと戦った、戦っている内にこいつの雷元素の濁り方が例の雷ハンマー一族ことファデュイの奴等とほぼ同じだってことが分かってあいつの使っていた雷元素に対する違和感は払拭出来たけど、その時の俺にはそんなこと気にする余裕とかなかった、だってあいつ無茶苦茶強かったんだもの。

 

 動きやら何やら今までのファデュイの奴等とはまず別格、攻撃防御身の熟し含めて全てがとてつもない練度、戦ってる内にグレート海乱鬼のこと思い出したよね。

 

 しかもこいつ俺が攻撃弾いたり反撃したりする度に目ん玉ギラギラ輝かせながら如何にも楽しいって感じの笑顔で突撃してくるからさぁ大変…お陰で俺まで楽しくなっちゃったよ。

 

 いやはやアレだな、鐘離さんが止めてくれなかったら絶対行くとこまで行ってたよな、だってアイツと戦うの楽しいもの。

 

 何か奥の手とか切り札も隠し持ってそうだったし、どうせなら全力全開で戦いたかったなぁ、こっちも最近切り札的なモノが出来たことばっかだったし。

 

 けどまぁ、すぐに会えるか、今度は最後までやろうって手を振りながら言ってたしな…鐘離さんに引きずられながらっていう格好のつかない状況でだったけどな。

 

 さて、次は何時会えるかなぁ♪

 

 

 …あ…やべっ、名前聞き忘れてた。

 

 

追伸

 

 小龍が料理を持って帰ってきた時に戦ったことを話すとアイツの特徴を聞かれた。

 

 覚えてる限りの特徴を小龍に教えてみたら、凄い笑顔で会ったら削ぎ落としてやるって怖いこと言ってた…何を削ぎ落とすの?

   

 

 

 

 

○月D日 晴れ 晴天

 

 今日は晴れ、それはもう晴れ、気温も陽射しも何もかもが丁度良いどうしょうもないくらいの晴れ…こんな日は昼寝するに限る…とは別に思ってないけど、俺は今日という一日を昼寝して過ごした。

 

 何故か? なんか可愛らしい女の人がそれはもう気持ちよさそうに草っぱの上ですやすやと寝ていたからだ。

 

 無防備に寝息を立てて時折身じろぎしたり寝返り打ったりして非常に幸せそうな表情で寝ていた…だから俺も寝た、なんだったらその美人さんの隣で寝た、理由は特に無い、強いて言うなら気持ちいい風が吹いてたから。

 

 因みに、昼寝から目覚めたら女の人が俺のすぐ近くに居た、なんだったら俺の身体を枕にしていた、二度寝した。

 

 二度寝して起きたら流石に居なくなってた、今度は家に帰って寝ようと思った、まる。

 

 

追伸

 

 ミナが久しぶりに俺の身体に突撃してきた。

 

 スリスリとコアを俺へと擦り寄せて来て、そのまま満足気に俺の毛の中に埋もれてそのまま動かなくなった。

 

 久しぶりのミナとの添い寝? は非常に気持ちよかったです……まる。

 

 

 あと小龍、お前一緒に寝たいならモジモジしてないで何時もみたいに来いよ気になるじゃないか。

 

 

 

 

○月草日 雨

 

 

 今日は…なんだか変な夢を見た…んだと思う。

 

 なんというか、暗い場所に俺が一人でぽつんと…いや違う、もう一人いたはず。

 

 俺よりも小さくて、けど雰囲気は俺よりもよっぽど大人で、でも何処か子供っぽい不思議な知らない女の子と話す夢……違う、知らない女の子じゃない…だって本当に知らない女の子なら俺が『ナーちゃん』なんてあだ名で呼ぶ訳がない、向こうが俺のことを名前で呼ぶ訳がない、久しぶりなんて言うわけがない。

 

 ましてや『久しぶりね、彼方』なんて親しげに話しかけてくるわけがない、それに俺が久しぶりなんて返す訳がない。

 

 そこで俺はナーちゃんと何かを話した、楽しそうに話してだけのはずだ、夢だから覚えてないのか? けどそれだとここまで鮮明に覚えてないはずだ。

 

 俺は何も知らない、何も分からない……知らないはずなのに…分からないはずなのに、俺は何もかもを覚えてる…いや、俺が知らないって思い込んでるだけで、俺はひょっとして本当は全部知ってるのかな?

 

 

 俺はもしかして、忘れたくないはずの大事なナニかを忘れてしまっているのか?

 

 

追伸

 

 黄緑色の元素が使えるようになってた、確か黄緑色は草元素の色だったけ?

 

 なんか、今までのと違って温かい感じがする…落ち着くなぁ。

 

 

 

 

 

*1
当時の作者はちょうど夜の時間帯に初めて見たので感動してました





主人公

 バトルジャンキーに目を付けられた、なお本人も若干そっちの道に目覚めかけている。

 実は奥の手がある。
  
 夢を見たその翌日に草元素を使えるようになってた、なんで?


バトルジャンキー

 主人公に喧嘩を売った、主人公に出会ったのは本当に偶然で璃月に居るなんて知らなかった…なお、近々稲妻に行く気満々だった模様。

 実は『魔王武装』を使いかけるレベルで主人公に追い詰められていた。


昼寝の子

 この後暫く絶好調だった。



ナーちゃん
  
 謎の幼女…手を繋ぎましょう?
 


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マイゴ~


 仙人の出し方が分からぬぅ。


 

○月H日 曇

 

 俺が草元素を使えるようになったことはすぐにミナ達にバレた。

 

 というかバラした、隠すようなことでもなかったから。

 

 ミナは特に反応してなかったけど、小龍はそれはもう驚いてた。

 

 何時目覚めたのか、身体は大丈夫なのか、何が原因でそうなったのとか色々と聞かれた。

 

 これも別に隠すようなことじゃなかったから、正直に夢で見た内容を話してそれから使えるようになったと答えた。

 

 そしたら小龍はそっかと一言言って…唐突に、本当に唐突に槍の手入れをし始めた。

 

 柄から刃に至るまでそれはもう入念に手入れをし始めた、刃をこれでもかってくらい鋭く研いでた。

 

 ミナは何も反応せずに何時も通り俺の身体に引っ付いてたけど…えっ、何? 何なの? 怖いんですけど。

 

 聞いてみたら猫を狩りに行こうと思うって言ってた…なんで猫?

 

 

追伸

 

 ミナがまた何処かに飛んでって帰ってきたと思ったら、なんか物理的に冷たくなってた。

 

 俺はそんなに冷たく感じないけど、小龍はそうでもないらしい。

 

 それと、なんか最初の頃みたいに触手で雁字搦めにされて一日中抱きしめられた、近づいてきた小龍も暫く一緒に抱きしめられてた…

本当にどうした?

 

 

 

 

○月I日 雨

 

 ミナに行かないでと言わんばかりに触手で引き止められた、なんというか本当に珍しいな、最初の時以来じゃないか? こんな風に反応するのって。

 

 昨日のことにしてもそうだけど、本当に何かあった? 大丈夫?

 

 とりあえず心配だったから今日はずっとミナと一緒にいたけど、マジで片時も離れてくれなかった。

 

 大丈夫かこいつ?

 

 

追伸

 

 昼寝をしてる時に前と同じ夢を見た、この前と同じ場所で同じようにそこにはナーちゃんが居た。

 

 ナーちゃん曰く、時間を掛けても良いから『スメール』という国に来てほしいそうだ、そこにナーちゃんは居るらしい。

 

 まぁ行かない理由なんて無いし、そもそもナーちゃんにも実際に会ってみたいしで、二つ返事で了承した。

 

 それを聞いたナーちゃんは嬉しそうにはにかみながら『ありがとう…待っているわ、私の彼方』と笑顔で言ったのを最後に俺は夢から覚めた。

 

 一つ思ったことがあるんだけど、俺は何時からナーちゃんのものになったんだろ?

 

 そう言われることに不満はないけど、少し気になるかな。

 

 

 

○月J日 晴れ

 

 ミナが喋るようになった…いや、より正確に言うと鳴くようになったの方があってるかもしれない。

 

 寝て起きて、何時も通りミナにおはようって挨拶したら、ラ〜っ…どっちかというと『Laaa』なのか? まぁとりあえずそんな音がミナから聞こえた。

 

 名前を呼ぶと同じ様にLaaaって聞こえてくるから、ミナから聞こえてくるのは間違い無い。

 

 喋ってるというよりも鳴き声…もっと言っちゃうと鳴き声っていうよりも歌声なんだけど、なんていうか所々に感情が籠もってる気がするから鳴くと定義することにする、まる。

 

 まぁ、そんなわけで、うちのミナが喋れるようになりました……嬉しぃなぁぁ…。

 

追伸

 

 俺に抱きつく時は凄く甘える様に鳴くのに、小龍に対しては無茶苦茶機械音声みたいな声で鳴く。

 

 というか一昨日抱きしめてたのが噓みたいに引っ叩いてた、まぁ何時通りの光景が戻ってきたってことで良しとしよう。

 

 

 

 

○月K日 晴れ

 

 外を出歩いてたら人間だった頃の俺と同年代くらいの男に出会った、大剣で斬りかかられたから取り上げたらデカい氷の剣叩きつけられた…いやまぁ、だから何なんだって話だけど。

 

 とりあえず、そいつから取り上げた大剣はそのまま持って帰った、返すわけにもいかないしな。

 

 それにしても、キュキュウニョリツリョウ? だっけ? 何処かで聞いたことがあるような気がするんだけど…何処だったかな?

 

 まぁ、なんでもいいや、とりあえず大剣はそこらへんに立て掛けておこう。

 

 

追伸

 

 この前、俺の身体使って昼寝してた女の人が住処の近くで寝てた、小龍曰く『甘雨』さんというらしい。

 

 凄くのんびりな雰囲気してるけど、実はめちゃくちゃ強いらしい…だから襲っちゃ駄目だよ? って言われた……俺が敵でもなんでもない女性を襲うとでも?

 

 

 

○月L日 晴れ

 

 璃月港付近の海面を飛んでいたら船に乗ってる船長に会った、カズハはいないらしかった。

 

 白いの! と笑顔で呼び止められて船長だ〜と近づいていったらワシャワシャと撫でられた、気持ちいいんじゃ〜(・∀・)

 

 その後に元気そうで何よりと言われ、今度は途中で降りずに最後まで乗って行けよと言って船長は船を指揮して何処へ行ってしまった…相変わらず姉貴だなぁ〜。

 

追伸

 

 小龍に他の雌の匂いがするって言われると同時に抱きつかれた、本人曰く匂いを上書きするらしい…なんで?

 

 

 

 

○月M日 曇

 

 大きな滝のある方向に行ってみた、変な魚みたいなのが居た。

 

 なんか湖の真ん中に天下一武道会とかにありそうな舞台みたいなのがあって、そこに行ってみたら何か出てきた。

 

 そこから四角? それとも視覚? だの水の尊さみたいなこと言って出てきた、んで俺見て止まった。

 

 暫く俺のことずっと見てきて、時折首を傾げたり真ん丸な一つ目をパチクリとしたりと色々やって、最終的にどういう結論が出たのかは知らないけど『申し訳ない、間違えた』と一言言って元の場所に戻っていった。

 

 ……何あれ?

 

 

追伸

 

 小龍に聞いてみたら純水精霊と呼ばれる元素生物らしい、知能も自我もあって話そうと思えば話せるそうだ、向こう側に話す気があればの話らしいが。

 

 意外と親しみやすく感じたけどなぁ。

 

 

 

 

○月N日 晴れ

 

 

 デカい穴の中に突撃したら出られなくなった、タスケテ。

 

 

 

 

 いや待ってくれ言い訳をさせてくれ。

 

 ちょっと探究心が湧いちゃったんだよ! だってしょうがないじゃないじゃないか!

 

 あんな如何にもここから先は危険ですと言わんばかりに兵士配置してて? なんか如何にもな封印があって? その先から漏れ出る何かヤバげな雰囲気…これもう行くしかないじゃん! 探求するしかないじゃん!? しなきゃフロムプレイヤーの名が泣いちゃうじゃん!?*1

 

 というわけで、色々やって岩元素に反応することが分かった封印(仮)を解いて、誰にもバレないように穴の中に侵入したわけであるのだ俺は。

 

 因みにミナと小龍は住処だ、今日は偶然連れてきてなかった。

 

 まぁ、そんな訳で俺は穴の中を突き進み、色んな所を見て回って……最終的に迷った。

 

 うん、迷った、盛大に迷った…けど迷っても問題無いだろうとこの時の俺は思ってた。

 

 だって、俺瞬間移動使えるもの、なんだったら入口付近に目印置いて何時でもそこに跳べる様にしてたもの。

 

 けど…迷っていざ使おうって時に気づいた…あれ? 瞬間移動使えねぇって。

 

 いや、使えはするんだよ何かを取り出す用のやつだけは…けど外に移動する為の目印が一切反応しない、うんともすんとも言わない。

 

 分かる? 入念とは言えないかもしれないけどちゃんと準備して来たのにその準備したモノがまともに動かなかった時の俺の気持ち……終わりだ…*2

 

 まぁ、そういうこともあって、今に至る……タスケテ。

 

 

 

 

追伸

 

 なんか騎士っぽい人が助けてくれた、なんか人間じゃない感じがしたけどそんなこと言ったら俺も人間じゃねぇと言うわけで、暫く厄介になることにした。

 

 何故か前に追い払った仮面集団が寝てたけど、襲ってこないから放っておくことにする。

 

 ところで騎士さん、カーンルイアって何処の名前です?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
人による

*2
イチゴォ!!





主人公

 純水精霊に会っても何故か襲われなかった、ただいま絶賛とある場所で迷子中。


ミナ

 物理的に冷たくなった、ついでに久しぶりに主人公に一緒に居てと甘えた。

 因みに、原因は全て主人公が草元素に目覚めたから…ではなく、その草元素から感じ取った別の誰かの気配を感じたからである……あげない。


小龍

 猫を狩りに行くらしい…どんな猫なんだろうなぁ…。


ナーちゃん

 主人公の周りに嫌な気配を感じ、心配になって自分が直接確認出来るスメールまで来てほしいと頼み込んだ。
 
 絶賛軟禁中。


純水精霊

 主人公に会ってこいつ倒していいのか? と自問自答した、最終的に倒さないことにした。


狂気の沙汰を繰り返すであろう女冒険者

 主人公の作った目印が機能しなくなった原因、危なそうだからと壊した。


 


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クラヤミ~


 迷子の迷子のオオカミちゃ〜ん♪


 

 

○月O日 天候不明

 

 昨日俺を保護してくれた騎士さん――本人曰くアビスの使徒らしい――は俺の言葉が分かるみたいだった。

 

 だから俺が穴の奥、『層岩巨淵』に本当に迷い込んでしまったのだということを理解してくれた。

 

 好奇心で入り込んで迷ったという部分には呆れていたが、外に出る手段が突然使えなくなったことを伝えると途端に真剣な雰囲気で相談に乗ってくれた。

 

 本人的に、自分もそういった事態に陥ったことがあるから他人事と思えないのだそうだ。

 

 道は分からないが、出口を探しに協力しようと言ってくれたし、多分良い人なんだろうなと思う。

 

 とりあえず今日は寝床を適当に改造して休んだ、まずは寝るところからだよね。

 

 

追伸

 

 時折使徒さんが何か別のモノを見ている気がする、なんでだろ?

 

 

 

○月P日 天候不明

 

 

 地下生活二日目、今日から使徒さんと一緒に出口を目指す。

 

 使徒さん曰く、この層岩巨淵は非常に広いし地図とかも無いから迷いやすい、だから今居る場所を中心にして大雑把な物でも良いから地図を作った方が良いらしい…のだが、そもそも地図を作れるような物が無くて作れていなかったそうだ。

 

 

 そこで、とりあえず俺の今使っている日記帳に簡易的な地図を描くことにした。

 

 一番良いのは使徒さんに書いてもらうことなんだけど、どうにも当の本人がやりたがらない。

 

 書けないとかじゃなくて、触れると燃えてしまうかもしれないらしい。

 

 正直なんのこっちゃとでも言いたくなるけど、使徒さんが理由を言いたくないみたいだから今はそれで良しとしておこう。

 

 これから協力していくわけだしな、仲良くしていこう。

 

 

追伸

  

 使徒さんが戦っているところを見た、どうも使徒さんは腕から元素の剣を生やすらしい。

 

 しかも使っている元素が炎元素と来た、道理で日記帳に触れたがらないわけだ、うっかり燃やすってそういうことか。

 

 時折火の玉みたいなのも撃ってるけど、基本的に剣を二刀を使用した近接戦がメイン……というか強いなあの人。

 

 

 

○月Q日 天候不明

 

 

 三日目、今日も出口を目指す。

 

 所々に人工的に作られたであろう建物みたいなのが見える、なんか工業用の建物っぽい、近くにエレベーターらしきものが有ったからそれを使って登ってみる。

 

 そうして分かったのは、この層岩巨淵と呼ばれる地下世界は俺の思っていた倍くらいの広さがあるということ、そして思っていた以上に危険な場所であるということだ。

 

 上登ってみてびっくりしたよね、だって上から見渡しても先が見えないし終わりも見えない、地上の光が届かないからってのもあるだろうけどとにかく暗い、ここにずっと居たら時間の感覚が無くなりそうだ。

 

 いやまぁ、この身体夜目も効くから見えないわけじゃないんだけどね…なんで暗いって言ったんだろ俺?

 

 それになんだあの紫色の泥みたいなの、触ってみたら身体からガクッて感じで何かが抜けていったんだけど。

 

 あと…なんだ? なんかキノコみたいな魔物と青いデカ茸があった…なにあれ同族? 斬っていいの?

 

 

追伸

 

 紫色の泥の所に鎧を着たナニカが居た、使徒さんよりも見た目騎士っぽいけどどっかというとリビングデッドみたいな感じがするから使徒さんの方が騎士っぽいと思います、まる。

 

 

 

 

 

○月S日 天候不明

 

 

 四日目、今日も今日とて出口を目指す。

 

 なんか使徒さんそっくりの奴と会った、身体の形状とかが全部同じでびっくりした。

 

 違うのは使徒さんが使っているのは剣っぽい炎元素の剣で、そっくりの方は剣っていうよりビームサーベルみたいなのを使っていて、元素は青色だったから多分水。

 

 使徒さんのこと裏切り者がどうたら言ってたから、使徒さんが元々居た所のやつなのかな? 審判やら何やら色々と言ってたけど。

 

 あ、因みにそっくりさんは使徒さんに手も足も出せずにボコボコにされた挙げ句、バラバラに斬り刻まれてた…いや弱いなおい、あれだけ偉そうなことあーだのこーだの言ってた癖に弱すぎるでしょ。

 

 とか思ってたら無茶苦茶湧いてきた、なんかチミっこいのと使徒さんにそっくりなやつとはまた別の個体…なんか魔法っぽいの撃ってくるやつとか、まぁ色々。

 

 まぁ、全部使徒さんがボッコボコしちゃったんだけど。

 

 手を出さないでほしいって言われたから手出ししなかったけど、あの人本当に強いのな、複数人相手でもまるで相手にならない。

  

 何もかもを燃やし尽くしてた、真っ黒に。

 

 いやぁ…かっこええなぁ…。

 

 

追伸

 

 あの後、私が怖くなかったかと聞かれた。

 

 なんでと聞いてみたら、自分が戦う姿を見た者は全員自分を怖がっていたからだそうだ。

 

 使徒さんも周りの目とか気にするんだなぁって思って、なんとなく俺がかっこいいと思ったこの人に卑屈になってほしくないなぁ…なんて思った……だから答えた。

 

 怖くない、寧ろ格好良かった。

 

 何もかもを燃やし尽くすあの炎も、それで作った剣もそれを振るう技術も全部格好良かった。

 

 分かるよ、あの鞭みたいに剣を伸ばして辺り一帯薙ぎ払う技使う時、こっちに気を配ってたよね? 俺に被害が行かない様にしてたよね? 守ろうとしたよね?

 

 だから怖くない、だから格好良いと思う…そう答えてみた。

 

 そしたら使徒さん、なんか呆然とした後に俺の頭を撫でてありがとうと言った。

 

 それ、こっちの台詞なんだけどなぁ。

 

 

 

 

○月T日 天候不明

 

 

 五日目、今日も張り切って行こう。

 

 今日は使徒さんが自分のことを話してくれた。

 

 どうも使徒さんは自分が誰でどういう存在なのかがまるで分からないらしい。

 

 気づいたらここにいて、姿も近くにあった装置みたいなのを鏡代わりにして確認して初めて知ったのだそうだ。

 

 暫くすると、自分と同じ姿をしている存在に出会って、そこで自分が『アビス教団』なる組織に属すナニカだってことが分かったらしい。

 

 多分その一番最初に会った同族が昨日裏切り者だなんだの言いながら襲ってきたやつなんだろう、あの時だけ使徒さんはなんだか複雑そうだった。

 

 んで、そうしてそいつに連れられて行動している内に本能的に分かったことが二つ。

 

 一つは戦い方、目の前で戦っていた同族とはまた違った戦い方だけどそれが馴染んだらしい。

 

 そしてもう一つは、ここで行われるであろうことは絶対に阻止しなくちゃいけないってこと。

 

 そうして使徒さんは『アビス教団』の奴等を襲った、何がどうととかは分からなかったけど、とりあえず片端から教団の人員を殺して回ったそうだ。

  

 だから裏切り者なのだそうだ、自分は彼等を仲間と思ったことはなかったけど、それでも彼等にとって自分は仲間だったから…それを先に知っていたならば、多分自分は何もしなかっただろうとも言った。

 

 それを聞いて、俺はそっかとしか答えなかった。

 

 だってこれ、俺が何が言えるようなそれじゃないもの。

 

 裏切り云々については分からない、だって俺は使徒さんのそれを裏切りとは思っていないから。

 

 拾われて一緒に行動しただけ、使徒さんの口振り的にそこまで長いこと行動してないだろうし、そこまで深く絆を深めた訳でもなさそうだ。

 

 だったら仕方がないでしょう、だって記憶も何も無い使徒さんのやりたいことがそれだったんだから、偶然出会えた同族を後ろから斬ってでもやりたいことがそれだったんだから。

 

 だったら仕方がないだろう…別に言いやしないけど、それがこの人のやりたいことだったんだから。

 

 

追伸

 

 名前が無いと言われたから、俺が付けることにした。

 

 今の俺にとってこの人は灯だ、迷子の俺を助けてくれて一緒に帰り道を探してくれた、だから俺にとってこの人は灯だ。

 

 だから『灯火』にすることにした、俺にとっての灯りでこの暗闇の中の道標でもあったから。

 

 名前と一緒にその意味も教えてみると笑われた、ありがとうという言葉と一緒に。

 

 

 だからそれは俺の台詞なんだってば。

 

 

 

 

 

 

 





主人公

 迷子、絶賛迷子の子、タスケテ。

 実は暗い場所で且つ危険な場所であるという自覚があるせいでちょっとシリアスになってる、だかららしくないこと凄く言っちゃう。

 実は人間だった頃、とある事情で裏切り者は扱いしてきた男子生徒複数人を文字通り殺しかけたことがある。


使徒さん

 記憶の無いアビスの使徒、自分がなんなのかは分からないけどそれでもやらなきゃならないことは覚えている。

 実は主人公の騎士さん呼びが嬉しかった。

 因みに男性。




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ドリル!?

 仕事疲れるンゴ


 

 

○月U日 天候不明

 

 六日目、今日も今日とて出口を探してドンブラコ、さぁさぁ張り切って行こう。

 

 んでそうやって張り切って行こうってなって直ぐに変な蛇に遭遇した。

 

 いや、蛇って呼んでいいのかあれ? どっちかと言うとロボットというかドリルというか、モグラ…にしては手足無いもんなぁ。

 

 なんというか、俺達が通ろうとしていた道の目の前を馬鹿みたいな音響かせながら通過していっただけだから、もしかしたら遭遇とも言えないかもしれない。

 

 というかアレ何? 灯火さんも唖然としてたから多分知らないよねアレ…えっ、何あれ?

 

 

追伸

 

 結構出口に近づいてきた……と思いたいけど……なんでかな、凄く逆走してる気がしてならない。

 

 なんか光ってたから出口かなと思って近づいてみたらなんか青い結晶みたいなのがあるし、結晶見てるとなんか嫌な予感もするし、

これまともに出れるのかな?

 

 

 

○月V日 天候不明

 

 七日目、今日は逆走日。

 

 後から考えてみたけど、どう考えてもあそこが出口なわけが無いから、一番最初の住処から逆走してみることにした。

 

 んで、逆走してたら色んな荷物背負った女の人が居た、何やら地図を書いていたから捕まえて地図を見せてもらうついでに出口が何処なのかを聞き出した…主に灯火さんが。

 

 より正確に言うなら、灯火さんに俺の言葉を翻訳してもらった、仕方ないじゃん俺言葉話せないんだから。

 

 まぁ、とりあえず俺の言葉を灯火さんに翻訳してもらって、それを女の人に伝えて話してたんだけど……俺こいつ嫌いだ。

 

 なんというか嫌いだ、とにかく嫌いだ、何が嫌いって命を懸けることに若干酔ってるっぽいところが嫌いだ。

 

 ゴホゴホ言ってるし、顔色も悪いしで端的にはよ帰って休めと言ったら神の目がどうたらとか冒険者がどうたらと話にならん。

 

 命を懸けるのも狂気の沙汰を繰り返すのも本人の自由だけど、なんかこいつのソレは俺の思うそれとは違う気がする。

 

 狂気は狂気だけど、そんなことを繰り返す自分に酔ってる気がする、俺の思い違いかもしれないけど。

 

 そういうわけで、話していて不快だったので聞き出した後は適当に一言二言言って女の人から離れた、二度と会いたくない。

 

 

追伸

 

 灯火さんに何かあったのかと心配されてしまった。

 

 悩み事があるなら相談に乗るぞと言ってくれたけど、これに関しては悩み云々じゃなくて完全にただの人の好みだから気にしなくて良いと伝えた…そしたら寝かしつけられた、なんでや。

 

 

 

 

○月W日 天候不明

 

 

 八日目、アユレディ〜ゴ〜。

 

 とてとてと進んでいると、色んな人が集まってるのが見えた、どうやら拠点らしい。

 

 何かをメモしてる人とか地図と睨みっこしてる人、それとどう考えても爆弾にしか見えないブツを弄くり回している人の姿が目に映った。

 

 試しに盗み聞きしてみると、『シセン』という名前の仲間を探しているらしい……もしかしてあいつか?

 

 単独行動やら何やら聞こえるし、容体がどうのとかも聞こえてくるしでだんだん苛ついてきた…話してる時にもしかしてとは思ってたけど、やっぱり独断行動かあいつ。

 

 ………助けるべきかなぁ、あいつはともかくあの人達は良い人っぽいし、俺昨日辺りに見つけちゃったっぽいし、盗み聞きとは言え聞いてしまったからには……ねぇ?

 

 そういうわけだから、昨日会った場所に戻って付近を探してみると案の定というべきかなんというべきか、紫色の泥の近くで希望の花を咲かしてた。

 

 一応確かめてみると普通に生きてたので、とりあえずさっき見つけた冒険者の拠点のすぐ近くに放り投げておいた。

 

 投げた後にうめき声が聞こえた気がしたけど知らない、命があるだけ良しとしなさいな。

 

 

追伸

 

 

 何か最近、上の方で凄い轟音がする、しかもそれが段々と近づいてきてる気がする、なんだろ?

 

 灯火さんも警戒してたし、何も起こらなきゃ良いけど。

 

 

 

 

 

○月X日 天候不明

 

 

 さぁて皆集まってぇ! 出口探しが始まるよぉー!!

 

 というわけで行ってみましょう出口探し、昨日クソボケからカツアゲした地図と所々で何かしてる冒険者と工事現場のおっちゃんみたいな人達を目印にし、グングンと進んでいく。

 

 

 この前と違って逆走してる感じはしないし、なんとなく外に近づいてるって感じがするし、後もう少しで外に出れそうだぜ!

 

 外に出たら何しようか? ………まぁとりあえずミナと小龍の二人に土下座せねばなるまい…何日くらい空けたのかは忘れたけど、絶対に長期間だったはずだ。

 

 それと灯火さんのことも紹介したい、命の恩人みたいなものだし思い切り自慢したい。

 

 因みに灯火さんに外に出たら何をするか聞いてみたらそもそも外に出る気は無いらしい。

 

 曰くまだ何も終わってない、外に出るのはここで起こるナニかを完全に終わらせてから…だそうだ。

 

 明確な目的がある人を連れて行くわけにもいかないから、だったらそこで一旦お別れだなって話をしたら、またすぐに会えるさと言ってまた頭を撫でられた。

 

 なんていうか…アレだな、やっぱり良い人だよな灯火さんって……兄ちゃんがここに居たら、思い切り自慢したのになぁ…。

 

 ……というか音凄いな! 出口に近づいたせいか? さっきからもうずっと地響きみたいな音がずっとな――

 

 

 

追伸

 

 ミナが降ってきた、冗談でも比喩でもなく文字通り降ってきた…上にあったはずの岩盤をぶち抜いて。

 

 いやびっくりしたよね、音がデカくなってしかも近づいてきてると思ったら上からドカーン!! だもんね、誰だってびっくりするのねそりゃ、だって灯火さんもびっくりしてたもん。

 

 いやまぁ、どうやって来たのかは大体予想出来る、というか目の前でドリルみたいなのギュルギュルと回転させられたら嫌でも分かる、しかも色的に岩元素……いや待て、なんか微妙に赤いぞこれ。

 

 

 

 

 

○月Y日 晴れ

 

 ミナと小龍に無茶苦茶抱きつかれた、そりゃもうべったりと抱きつかれた、しかも軽く三日間の間ずっと。

 

 住処に帰ってきてからとりあえず小龍とミナには土下座した、土下座するついでに迷子になったことも説明しておいた。

 

 したんだけど、そんなことはどうでもいいと言わんばかりに無言で引っ付かれた、何にも喋らねぇの本当に。

 

 ミナは延々と俺の背中で転がりまくるし、小龍は俺のことを抱き枕にしてくるし、しかも龍形態で。

 

 俺を捕まえるのは良いけど、せめて何か喋ってほしい。

 

 

追伸

 

 書き忘れてたから書くけど、灯火さんとはミナが降ってきた地点で別れた。

 

 ミナが抱きついて離れなかったてのもあるけど、地上に続く穴があるならそこを飛んで通ってしまえば俺はそれで帰れるからそこで別れた。

 

 灯火さんは最後につがいを大切にな…と俺に言って走り出していった……つがいってなに?

 

 

 

 

 

○月Z日 晴れ

  

 ミナが喋った、水の触手広げてカタコトで『ダッコ』って言ってきた…。

 

 キャァァァァァァァァァァァっ!!? シャベッタァァァァォァァァォッ!!?

 

 

 

 

 





主人公
 
 迷子から帰還、その後三日以上ずっと抱き枕にされる。

 つがい…もとい番の意味を知らない。


灯火

 主人公と別れて直感の赴くままに走り出した、ちょっと寂しいのは秘密である。


ミナ

 層岩巨淵の天井ぶち抜いてきた、ついでに喋った。

 発声機能を得る際に喋る魚をぶち殺した。

 



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オネーサーン!?


 ちょいと短め…書いてて思ったんだけど、このまま行くと設定の八割が出てこないまま終わる気がする……裏設定集とかっていりますかね?


 

○月nemo日 雨

 

 地上の空気は美味いと思いながら、雨の中を突っ切っていく…今日はそんな日だ。

 

 この前の純水精霊? の所に行ってみたら何も居なかった、前みたいに急に出てくるのかなと思って待っても出てこなかったから居ないのかもしれない。

 

 残念、ちょっと話してみたかったのに。

 

 そんなわけで、目的の人? も居なかったわけだから別の所に行こうと思って飛ぼうとしたら……とんでもない人がいた……何度目だとんでもない人って書くの、でも実際とんでもないんだから仕方がないのです。

 

 話しを戻して、そのとんでもない人とは一言で言うと女の人だ、美少女というより美人寄りの人だな、うん。

 

 で、何がとんでもないってその服装がとんでもなかった、無茶苦茶デリカシー無しで言うならエッチなのだ。

 

 何あのお肌ピッチリな服、おヘソくっきりで足…というか太腿むちぃっでお尻ボンってなってんの本当になんなの? この服考えた人頭ドスケベなんじゃねぇの?

 

 しかも何なのその胸の布みたいなの、隠してるのそれ? ふざけるなよ余計にスケベになってるじゃないかこん畜生。

 

 腰はスラァッとしてるし…ちょっと待て腰回りがエッチ過ぎませんか?

 

 書いてて思ったけど何このエッチというかドスケベという言葉を具現化したみたいな人、なんだったら雰囲気が神秘的な感じがまたドスケベさを増させているような気さえ――

 

 

――以下、出会った女性が如何にスケベであったのかが綴られている。

 

 

 

追伸

 

 夢でまたナーちゃんに会った…これ思ったんだけど、ここまではっきりと何があったのかとか話の内容を俺が覚えてて、その上で何度も何度も同じような夢に出てくるってことはさ、ナーちゃんさては鐘離さんと同じで神様かなにかだなこれ?

 

 

 そんなナーちゃんが、体育座りをして何故かその柔らかそうなほっぺたをふっくらと膨らませながら俺を睨みつけていた……容姿のせいで怖くねぇ…かわいい。

 

 どうしたのか聞いてみたらぷいっと顔を背けられた、かわいい…可愛いけどなんだかめんどくさそうな気配を感じたのでそのまま寝ることにした、ナーちゃん抱き枕にして。

 

 抱き枕にする直前にナーちゃんが何か言ってた気がするけど、そんなことはどうでもいいさ、拗ねて話してくれないなら俺も俺なりの手でいくだけだもんねぇ〜だ。

 

 

 ナーちゃんからは甘い匂いがしました、まる。

 

 

 

 

○月ネオ日 雷

 

 

 朝起きたら小龍が光の無い瞳で俺を見てた、というか俺の目の前にいた。

 

 夢見たでしょって言われたから見たって正直に答えたら槍持って何処かに行った…どしたん?

 

 

 ミナはミナで相変わらず…ではなく、起きて早々に『ダッコ』と言って甘えてきた、かわえぇ〜。

 

 なんていうか、最近ミナが凄く甘えてきてくれるから嬉しい、しかも甘え方が若干変わってきてる気がするのもなんだか嬉しい。

 

 前は何も気にせずグイグイ来る感じだったけど、今は何処となく恥ずかしそうに甘えてきてる気がする、かわいい。

 

 何がどうしてそうなったとは思いはするけど、今の今までちょくちょくやること変わってきてたんだから今更気にすることでもないだろうと思うことにした。

 

 

 あぁそうそう、そういえばミナが久しぶりにあの元素玉を渡してきた、今度のは黄色だったから多分岩元素なんだと思う。

 

 んで、その岩元素の塊を渡されてから暫くすると、今までとは違って元素の塊が俺に吸い込まれる様にして消えていった。

 

 塊が消えていくのと同時に俺の中に何かが入ってくる感覚がした、さっきの岩元素かな? とか思いもしたけど何処か違う気がする。

 

 今までに無い感覚に?マークを浮かべていると、ミナが今までにないくらい喜び始めた。

 

 凄い勢いで回転し始めて上機嫌な声色で『ヤッタ♪ ヤッタ♪』と繰り返し呟いていた、どしたの?

 

 その後、ミナは小龍が帰ってくるまでずっと回り続けて……それ目回らないの?

 

 

追伸

 

 帰ってきた小龍に顔付きが変わってるって言われた。

 

 確認してみたら、なんか毛が前よりフサフサになってたし目も大きくなってしかも表現豊かになってた。

  

 牙も大きくなってるし、耳も心なしか普通の狼っぽくなってるしでビックリした。

 

 なんで急に変わったんだろ? 成長期?

 

 

 

○月☓☓日 晴れ

  

 なんで? なんであいつら居るの? ここ璃月だよ? 海の向こう側よ? お前等稲妻に居たはずだろなんで居るんだよふざけんな。

 

 あぁもうどうしよう…! また住処変える? やだよ面倒だよ辛いよ疲れるんだよ!!

 

 仕方がない、なんとかしてバレないようにしよう、この前だって見つからずに逃げれたんだし今回だって――

 

 

 

 

 

 

追伸

 

 日記書いてる途中で見つかった、目と目があった。

 

 俺を見つけた時の蛍の顔は思いもよらないものを見つけたかの様に呆然としていた…けどそれも最初だけ、その後すぐに歓喜やら怒りやらが混ざった様な表情に変わって――

 

 

『ミツケタァァァァァァァァァァァッッ!!!!!』

 

 

 と絶叫しながら俺に向かって突っ込んできた、俺は逃げた。

 

 いやそりゃ逃げるでしょだって積年の恨みと数年ぶりに恋人と再会したみたいな歓喜の感情がごちゃまぜになったみたいな表情してたんだもの、普通に怖かったんだもの。

 

 因みに、ちゃんと逃げ切った、逃げ切ってやったよコンチクショウ。

 

 次はもっと分かりにくい場所に住もう。

 

 

 

 

 

 

 

 





主人公

 ドスケベなお姉さんに出逢って色んなものが壊れかけた。

 蛍ちゃんと二度目の遭遇、全力で逃げた。

 最近、顔付きが若干黄金王獣みたいになってきた。

 実は好きな女の子のタイプがまんま上記の女性。


ミナ

 あることが成功して大はしゃぎした、ヤッタヤッタ♪


ナーちゃん

 約一週間の間、夢に入ることも無事であること確認出来なくて凄く心配してて、いざようやく繋がったと安堵した時に真っ先に頭に入ってきた記憶がドスケベお姉さんに内心デレデレしている光景だった為、拗ねた。

 実は主人公に抱き枕にされた際、主人公が気づかないレベルで優しいキスをした。



旅人

 ヨウヤクミツケタ…!!
  


ムチムチドスケベ真君

 困惑?



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ハイッテイイデスカ~?


 イップマンが凄く面白い…デェス!


 

 

○月DMC日 晴れ

 

 今日はこの前のバトルジャンキーに会った、名前は『タルタルヤ』というらしい…なんだかタルタルソースみたいな名前だな。

 

 そして流れる様に剣を構えて『じゃあやろうか…!』と言ってすっっごいウキウキとした笑顔で斬り掛かってきた、いきなりにも程があるだろお前。

 

 あ、因みに決着はつかなかった、途中で蛍が乱入してきたから。

 

 いや、ビックリしたよね、だって急に横合いから現れてタルタルヤ蹴り飛ばすんだもん、しかも積年の敵にでも出会ったみたいな顔で。

 

 いやまぁ、その後すぐに俺に顔向けて猛ダッシュしてきたわけなんだけど。

 

 本当に何なのあの子? 俺そんな恨み買うようなことした? …いや、素材欲しいからで全て説明着くんだけどね。

 

 

追伸

 

 なんか俺の住処付近を男が彷徨いてた、絶対強いやつだよあれ。

 

 

 

 

 

○月JK日 晴れ

 

 チミっ子を発見、声が魔法少女でヤンデレで少女趣味でブラコンでオタクな人の声だった。

 

 特に害も無いだろうし、向こうが何かしてきても無視しようとチミっ子の横を通り過ぎようとしたら仙人か何かと勘違いされた。

 

 いや違うよ? ただの狼ですよ? がおー! 食ーべちゃーうーぞぉーー!! 的な感じで伝えてみても伝わらなかった。

 

 そういえば最近言葉が通じるやつに会いすぎて忘れてたけど、俺狼だから人間相手には基本的に言葉通じないんだった。

 

 とりあえず言葉通じない=面倒事という方程式が既に頭の中に敷かれていた俺はその場から逃げた…悪いかよ幼女相手に逃げて、良いじゃないか逃げるのは恥だけど役に立つんだよ。

 

 

 

追伸

 

 何あのロボットみたいなの、空飛んでるんだけど…いやまあぁ空飛んでるのは俺も同じだけど……えぇ、何あれぇ?

 

 

 

 

 

 

○月カクセイィ日 晴れ

 

 

 小龍が一緒に璃月港に入ろうと言ってきた、丁重にお断りした。

 

 いやねぇ、俺みたいなのが入ったら大騒ぎよ大騒ぎ。

 

 いや、もしかしたら鐘離さんとかその他諸々が諸事情説明してくれるかもしれないけど、そんなの他の人達が信じるわけがないじゃないですかやだぁ。

 

 それに、街中ってことは冒険者が屯してるってことだ、冒険者が屯してるっことは素材置いてけが居るってことだ…逃げるんだぁ、勝てるわけが無い…! それがベストだぁ!! 何故ベストを尽くさないのか…!?

 

 というわけで丁重に断ってみたら……泣かれましたねハイ。

 

 グスグスと泣き始めたんだよ、なんか俺の毛皮凄い力で掴んで一緒にきてよ〜って言いながら涙ボロボロで俺のこと見上げてくるのよこの人。

 

 そうなるとほら、断れないじゃん? よしんば断ったらただのクズ男じゃん?

 

 そういうわけで、今度行けそうな時に璃月港に行くことになりました、小龍は笑顔ホクホクでした。

 

 

 美少女の涙に勝てる男なんて存在しないんだよなぁ(悲)

 

 

追伸

 

 なんだあのハイテンションな女の子は?

 

 なんか周りに蝶飛んでるし、デフォルメされた幽霊みたいな白霊みたいなのぶん回してるし、炎纏った槍ぶん回して突っ込んでくるし…何あの子。

 

 なんかヒルチャールがどうとか日光浴だの月光浴だの言ってるし、なんかエクスプロージョンとか叫びそうな声してるし…もしかして大分危ない人なのか?

 

 まぁ、無視するに越したことはないかな…とか思って無視しておいた。

 

 ああいうのは、無視が一番なのですっと。

 

 

 

 

○月DX日 曇

 

 

 遂に璃月港に入った、大量の兵士に囲まれた。

 

 小龍が何が交渉してるけど無理だろうなぁとか思ってたら普通にOK通った、だから俺は璃月港をウロウロしてます。

 

 ウロウロしてると美味そうな良い匂いがしたから行ってみたらパンダが居た、結構前くらいに俺が家にお持ち帰りしかけたあの愛らしい茶色の火を吹くパンダことグゥオパァーだ。

 

 それが俺を見かけた途端にとてとてと走り寄ってきて俺をグイグイととある料理店まで引っ張って来た。

 

 料理店の名前は万民堂…読み方はばんみんどうで合ってるのかな? まぁ喋れないからどうでも良いけど。

 

 兎に角にも、俺はそこに連れて行かれて料理を食べさせられた、美味いものとかゲテモノ含めて全部食った、美味かった。

 

 ただ、ミナがグゥオパァーにちょくちょく炎元素の拳をぐさぐさと突き刺してたのがちょっと不思議、手加減してたみたいだしなんか遊んでる風に見えたけど、あんなに仲良かったかな?

 

 

 

 ん? どんなものを食べたか? 誰に料理を作ってもらったか? ………なんでそれを書かなきゃいけないの?

 

 

 

 

 因みに小龍は用事があるらしく途中から居なかった、一緒に行きたいと言った本人が居なくなるってのはどうなんだ?

 

 

追伸

 

 帰りにこの前昼寝してた女の子こと甘雨さんを見つけた、今回は起きてたし仕事っぽいことをしていた。

 

 俺を見て若干驚いてたみたいだから、もしかしたら居なくなった時に俺のことを見たのかもしれない…いやまぁ枕にされてたんだからそりゃ知ってるだろうけど。

 

 まぁ多分俺が璃月港の中に居るって事実に驚いてんだろうなぁ、俺見た目超でっかい狼ですしおすし。

 

 まぁ挨拶しないというのもアレなのでこの前作った饅頭もどきを渡してたら目をパチクリさせてた、可愛い。

 

 その後柔らかい笑顔でお礼を言われた、ふつくしい。

 

 …いやちょっと待って、書いてて思ったけど甘雨さんの服も大概マズイ類のそれだったような気がする。

 

 前の布とか薄かったし足元…というか太腿の布もピッチリだったし帰り際に見えた背中は丸出しだったような気が………これさてはスケベお姉さんの服作ったやつと同じやつが作ったな!?

 

 確信した、あの人達の服作ったやつ頭の中ピンク色だ。

 

 会ったら文句を言わなきゃ(使命感)

 

 

 

 

 

 





主人公

 スケベェお姉さんと甘雨さんの服作ったやつに説教しなくちゃ(使命感)

 それはそれとしてタルタリヤの名前を素で間違えた、かめはめ波をかめかめ波って間違えるやつみたいな間違え方した。

 実は一番好感を抱いているのがタルタリヤ(ミナとか小龍とか白菜ちゃんと言った恩人達は除く)


バトルジャンキー

 蹴飛ばされた後に追っていったら通常の三倍の速度と攻撃力を持った妖怪にぶっ飛ばされた。


小龍

 一緒に璃月行かなかったら冗談抜きでヤンデレルート突入してたんじゃないかなぁって作者に思われてる人…おかしいこの人タルタルと同じでバトルジャンキーにする予定だったのに…なんでこんなヤンデレみたいな感じになってるの?


昔太ってたらしい秘書さん

 饅頭美味しい♪ なお服装がスケベお姉さんこと妹弟子と同様に見られていることに一欠片も気づいていない。


服作ったらしき人

 その日狼らしき存在に延々と説教される夢を見た。





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おやすみ


注意:主人公がぐっすり寝るだけの話です。


 

 

 夢を見ている気がする…何時もみたいなナーちゃんが居るあの場所じゃなくて、本当の本当にただの夢を見ている気がする。

 

 場所は…多分家だ、制服を着て鞄が側に置いてあるから学校に行こうとしているのかもしれない。

 

 

 身体が俺の意志とは無関係に動き出す、どうやら学校に行く気らしい。

 

 

 部屋の扉を開けて下の階へと降りる、リビングを見ても誰もいない…どうやら今日は誰もいない日らしい。

 

 玄関に行って靴を履いて扉を開ける、眩しい日差しが瞳を擽り、その眩しさに若干目が眩む。

 

 眩んだ瞳を慣らしながら俺は再び歩き出した、スマホを取り出し時計を見てみるとあともう少しで遅刻するような時間帯だった。

 

   

 

 俺は走り出した。

 

 

 

 

 息を切らしながら教室の扉を開けて急いで中に入る、教師はまだ来ていない。

 

 スマホを見てみると定刻ギリギリ、とうやら間に合ったらしい。

 

 

『よぉ彼方! 今日はギリギリだったな!』

 

 

 声を掛けられた、男の声…というか俺の友達の声だ。

 

 名前は……なんだっけかな、思い出せない。

 

 

『お前のせいだろうが『――』、お前が俺の目覚まし持ってったからこんなことになってるんだろうが殴るぞ坊主…!』

 

 独りでに俺の口が動く、ゼェゼェと息をつきながら名前の思い出せない友人を睨みつけて毒を吐く。

 

 どうやら目の前のハゲは俺の目覚まし時計を持っていったらしい……普通に盗みなんだから殴られて然るべきでは?

 

 

『おまっ…! それ言ったら戦争だろうがよぉっ!!?』

『うるせぇ! こちとらお前に持ってかれた目覚ましがないせいで遅刻しかけたんだからそれくらい言ったって許されるわぁっ!!』

 

 

 ハゲも俺も暴言を吐く、言い争いになってそれはその内殴り合いへと発展する……だけどそこに悪意は無い、よくよくある光景だから誰も止めないし止めようともしない、皆笑ってる。

 

 …分からない、何時の光景だったかなこれ…。

 

 分からない、俺は誰と笑って、誰と泣いて、誰と一緒にこの学校生活を送っていたのか…楽しいことがいっぱい有ったはずなのに、ほんの少ししか思い出せない。

 

 ここから先の光景もまた同じ、俺は何を言われたのかどころかどんな風景でどんな光景だったのかすら覚えていない。

 

 なんで覚えてないんだろう…自分でも分かるくらい楽しい思い出のはずなのに……分からない…分からない。

 

 

 

 

 

 

『ねぇ、彼方はさ、夢とかってないの?』

 

 場面が切り替わる、夕焼け夜空が綺麗な何処か知っているはずの場所、だけど俺には分からない。

 

 俺の目の前に居るのは、綺麗な黒髪を三つ編みにした女の子…女の子だけど俺よりも背が高い……羨ましい。

 

 

『…無いかなぁ、今のところは……もしかしたら一生無いままかもしれない』

 

 

 夢はないのか…そう聞かれて、ちょっとの時間考えてから俺は答えようとした…勝手に口が動いて出来なくなったけど。

 

 さっきと同じだ、驚くことじゃないだろ。

 

 

 それはそれとして…俺は本当にこう答えただろうか? 分からない、こんなにも印象に残りそうな風景の中で夢について聞かれたら一生忘れないと思うんだけど。

 

 

『そっかぁ…無いかぁ〜』

 

 

 女の子は俺の返事を聞いて何処か悲しそうに空を見上げた、それに釣られたのかどうかは知らないけど、気付けば俺も同じように空を見上げていた。

 

 空は夕焼けからもうじき完全に夜へと変わる頃合い、所謂黄昏時…とはちょっと違うのかな? どちらにせよ綺麗な景色であることには変わりない。

 

 この風景を見てると、色んなことがどうでもよくなる…今のこの状況も俺の思い出も過去も未来も全部が全部。

 

 なんで俺が狼になったのか、なんで俺はあんなにも強いのか、なんでミナは俺に懐いたのか、なんで小龍は俺のことを知ってる風な感じなのか。

 

 神とは何か、あの場所の星空が動かないのは何故か、俺は本当は誰なのか…そんなこと全部どうでもいい。

 

 俺はこの風景を…これ等を見るために生まれてきたんだって…そう思ったから、それが今この場に在る俺の全てだから。

 

 だから…正直夢とかそんなのは――

 

 

『どうでもいい』

 

 

 口から言葉が漏れ出た、俺はこの時同じようなことを考えてそれを口に出していたらしい。

 

 

『どうてもいい…かぁ、ハハッ…そっちの方が君らしいね』

 

 そう言って、女の子は笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう彼方…良く眠れた?」

 

 

 場面が…いや、視界が切り替わる。

 

 そこは何時もの場所、何時も通りの暗い世界…そして何時通り俺の側から聞こえてくる幼い声。

 

「……ナーちゃん」

「えぇ、貴方のナーちゃんよ」

 

 

 上を見上げるとナーちゃんが居た、俺の頭を笑顔を浮かべて愛おしそうに撫でている。

 

 小さな身体に短い手足、世間一般的に幼女と呼ぶべき容貌なのに纏っている雰囲気は母性溢れる女性のソレ……いや、俺母親居ないから母性がどんなものかは知らないけどね?

 

 それでも、何かそんな気がした。

 

 

「…ナーちゃん」

「なに?」

「……忘れてる気がするんだ…大切な何かを…自分でも分からない何かを」

 

 

 だからなんだろうか、ついつい話してしまう。

 

 先程まで何を見ていたのか、誰と何を話したのかも全部。

 

 ナーちゃんは俺の頭を撫でながら、それを黙って聞いている。

 

 時折相槌を打ちながら、ただただじっと黙って笑顔を崩さずに…それが何故だかどうしようもなく嬉しかった。

 

 

 そうして全部を話し終えた後、とてつもない眠気が俺を襲う。

 

 身体に力が入らない、目元は今にも閉じてしまいそう。

 

 まだ全部話せてないのに、まだ話していたいのに、それなのに俺の身体は起きようとはしてくれない。

 

 

 

 

 …………ナーちゃん……話の途中で悪いけど…………寝てもいい?

 

 

「えぇ、もちろん………おやすみなさい、彼方」

 

 

 

 おやすみ………()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 





主人公

 スピー(-_-)zzz


ナーちゃん

 延々と撫でまくった。


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ニジイロォ


 原神のアップデート来ましたね、仕事で出来てませんよ作者(死んだ瞳)


 

 

○月草日 雨

 

 朝起きたら違和感が凄かった、何でかは知らないけど違和感が凄かった。

 

 ナーちゃんと話したのは覚えてるけど何を話したのか分からない、前のはちゃんと覚えてたのに。

 

 ミナが心配したみたいに擦り寄ってくる、みたいというか『ダイジョウブ?』って言ってたから実際心配してくれたんだろう。

 

 それと珍しく小龍が反応してなかった、俺が夢を見たら何故かそれを察知してハイライト消えた眼で詰めよって来るのに…本当に珍しい。

 

 体調が悪いとかだとあれだから、この前拾った辛そうな実とこの前璃月港に行った時に買った豆腐とその他諸々の材料で麻婆豆腐を作ってあげた、美味しそうに食べてた……満足(*゚∀゚)。

 

 あぁ、そう言えばミナがまた何処かに行った。

 

 俺が麻婆豆腐作ってる間に何時の間にか何処かに行ってて、小龍が麻婆豆腐を五か六杯くらい食った後も帰ってきてない。

 

 なんだろう、心の準備をした方が良い気がする。

 

 

追伸

 

 ミナが虹色になって帰ってきた…いや冗談無しで。

 

 えっ…何してきたの? 今までとは比べ物にならんくらい変わっとるやん。

 

 コアの色が水に映った虹みたいな感じになってるし、翼が有った所が何か虹色の月光蝶――月光蝶は最初から虹色だっけ? ――みたいなことになってるし、しかも後ろの方に見たことあるような気がする円盤みたいなの付いてるし…いや待ってその円盤なに? 既視感あり過ぎて嫌な予感しかしないよそれ?

 

 

 

○月水日 晴れ

 

 朝に小龍に叩き起こされた、しかも大声でミナが大変なことになってるって言われたから飛び起きたら何も起きてなかったから二度寝した…(-_-)zzz。

 

 二度寝して起きたら小龍に質問攻めされた、主にミナのあの状態について知っていたのかを延々と。

 

 お前が寝た後に帰ってきた、その時点でもうあの状態だったよ…ていう一文をとてつもなく雑に短縮して伝えたら冷や汗ダラダラと流してた…どしたの?

 

 

追伸

 

 夢でナーちゃんに会ったら抱きしめられた。

 

 何かあったのか〜って聞いてみると昨日のことを覚えているかと聞かれた。

 

 覚えてないと言ったら絶対に思い出さないでほしいことと、赤色の俺に良く似た奴に気をつけてほしいと言われた。

 

 何がなんだか良く分からないけど、とりあえず頷いておいた。

 

 

 

 

○月炎日 晴れ

 

 小龍と璃月港に行ってきた、兵士さん方に囲まれたけどまた小龍がなんか説得してた。

 

 今回は前みたいな用事が無いらしいから俺と一緒に璃月港を周るらしく、暫くの間ずっと俺の背中に乗ってた。

 

 そうしてフラフラ歩いてたら…露出が凄いお姉さんが話しかけてきた。

 

 なんか小龍の知り合いっぽいし話してる感じ親しそうな感じがするけどとりあえず言わせてほしい…なんで背中真っ裸なの?

 

 いやなんなのこの国の人達? なんで揃いも揃って露出とかエロスが全面的に押し出されたような服装してるの? 脇見せとかそういうのは良いと思うけど流石にその背中は許容出来ない綺麗な背中だなぁうなじ丸見えだなぁふざけんな狼になるぞ男が(迫真)

 

 とりあえず……ちゃんとした服を着ろぉぉぉぉぉぉッ!!!

 

 って感じに隙間から出した手作りの服を上からズボォって着せようとしたら小龍に拳骨されたでござる…解せぬ。

 

 因みに、お姉さん――夜蘭さんというらしい――は俺が半ば無理矢理着せようとしていた服を貰ってくれた…嬉しい。

 

 

追伸

 

 住処に鬼みたいなのが入ってきたから蹴飛ばした…なんかなんとかんとか一斗だとか天下なんたら一斗だとかべちゃくちゃと煩かったからスミレウリパニッシャー*1で黙らせた。

 

 そしたら美味い美味いと言って俺が作ったスミレウリ焼き全部食われた、稲妻から持ってきてた最後のスミレウリ達だったのに。

 

 まぁ…美味そうに食ってくれたなら良いか。

 

 

 

 

○月岩日 晴れ

 

 道を歩いてたら赤い髪の女の子がいた、生足が眩しい。

 

 なんか炎の玉みたいなのをバレーボールみたいな方法で打ってた…様な気がする。

 

 それはそれとしてあの子の声…どっかで聞いたことがあるような――

 

 

 

 

 

 

 

――腹減った! 飯食わせ!! 腹減った! 飯食わせ!!!

 

 

 

――フハハッ! 見てみろ須美! 今やアタシの方がチョモランマックスだぜぇ!!

 

 

――魂ってやつよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 ミギャァァァォァァァァァァァァァァァォァァァォァァァァォァァァァァァァァァァァァァァァァァァァォァァァォァァァァォァァァァァァァァォァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァォォォァァァォォァァァァァァッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!*2

 

 

 

 

 

 

 

 

追伸

 

 なんか日記を書いてた時の記憶が無い…なんか何かの台詞の後に

変な悲鳴みたいな文字と汚すぎて読めない文字がある……何してたの俺?

 

 それと…なんでか知らないけど今日会った赤髪の女の子…名前は聞いてないけどあの子を守護らねばと心がうるさい…マジで何があったの俺?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
料理した熱々の塩焼きスミレウリ(絶品)を全力で対象の口の中にぶち込む彼方の必殺技、危ないので真似しないようにしよう

*2
トラウマ再発





主人公

 トラウマが再発して記憶が飛んだ、見たいけど見たくなかった。


ミナ

 めでたく全元素使いの天敵と化した、多分分かる人は円盤って単語で作者が何をモチーフにして今のミナを書いたのかが分かるはず。


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ベァァ!


 コメント欄に来てるやつの大半がORTで埋めつくされてて、なんでだろうと思って調べてみたら本当に円盤背負ってた……羅針盤とか書いたほうが分かりやすかったですかね?


 

 

○月風日 晴れ

 

 今日はミナの後ろにある円盤を見せてもらった。

 

 円盤って言っても純粋な円形じゃなくて、神社…じゃなくて寺とかで見る法輪に近い形状をしてる。

 

 その法輪の所にそれぞれ七つくらい紋様のある丸の部分があって、それとは別に中心部に青っぽい虹色の光を放つ大きな丸が一つある。

 

 んで、良く見てみるとその紋様が元素のやつだってことが分かった、割りとくっきりしてた。

 

 其々が其々に対応した元素の光を放っていて、ちゃんと見てみると紋様の部分に弱くはあるけど元素の反応があった。

 

 分かったのはこの程度、これ以上は実際に戦ってる所を見てみないと分からない…分からないんだけど、今のこいつが本気で戦えるやつなんているかなぁ、大抵の敵は瞬殺しそうだし……タルタルヤに頼んでみようかなぁ。

 

 

追伸

 

 鐘離さんがお茶飲みに来たから上記のことを相談してみた、そしたら君が戦えば良いじゃないかと言われた。

 

 ………そういやそうじゃん、俺が戦えば良いじゃんミナのこと一番知ってるの俺なんだから。

 

 

 

 

 

 

○月雷日

 

 

 今日はミナと戦ってみた、勝ったぜ。

 

 

 うん、結論…ミナのやつ滅茶苦茶強ぇ!

 

 真面目に死ぬかと思ったよね実際、多分こっちに来てから初めてじゃないかな、あそこまで死を間近に感じたの。

 

 津波みたいな攻撃してきたと思ったら氷元素使って固めようとしてくるし、何時か使ったメド○ーアみたいなの撃ってくるし、近接したとこあんまり見たことなかったから近接弱いだろうと思って近づいたら無茶苦茶な速さで触手振り回してくるし、もう大変だったよ本当に、しかもこっちの使える元素全部無効化されたし。

 

 いや、最初は効いたんだよ? ただ俺が雷元素で殴ってたらミナの後ろにある法輪がガコンッて音出しながら動いたと思ったら真ん中の光が青っぽい虹色から紫っぽい虹色に変わって、そっから雷元素が効かなくなった。

 

 それからも同じ様な理由で俺の持ってる元素が無効化された、唯一救いだったのは無効化出来る元素は一つだけでその元素を無効化している間は他の元素を無効化出来ないことだった。

 

 まぁ、無効化出来なくても耐性は持ってるからどの道効きが悪いんだけど。

 

 それに加えてあの月光蝶みたいなやつ、アレもアレで本当に大変だった。

 

 だってアレ、複数の元素混ぜ合わせて作った盾だったんだもの、最後の最後まで破れなかったし、硬すぎるだろ。

 

 しかもアレ、今回は盾としてしか使ってなかったけど絶対に攻撃に転用出来るからな、だって一瞬様子が変わってその時だけ近くにあった岩が盾に触れた途端に塵になったもん。

 

 多分ある程度元素に対する耐性が無いと塵にされるだろうなぁ、だって俺その時近くに居たのになんともなかったもの。

 

 それと何? あの如何にもヤバそうな攻撃? 絶対撃たれてたら死んでたって。

 

 後ろの法輪がガチャンッって一回り大きく展開したと思ったら凄い速さでグルグルと回転し始めて、法輪の真ん中の所から辺りの元素吸い始めてデッカイ玉みたいなの作ろうとしてたからな。

 

 まぁ、途中で爆発してたけど。

 

 俺がミナに勝てたのってこれのお陰なんだよなぁ、多分これ無かったら負けてたの俺だった。

 

 というか、ミナ自体がまだあの状態に慣れてない臭いんだよなぁ、普段のより動きが鈍く感じたし。

 

 でも、慣れたら多分俺等勝てないだろうなぁ、全部の元素を使えるってのはそれだけ反則だ。

 

 ……鐘離さん相手は無理でも妖怪相手なら行けるかな?

 

 

追伸

 

 ミナがいじけた、プイってそっぽ向いてる…どしたの?

 

 

 

○月氷日 雨

 

 ミナが凄く叩いてくる、ビシバシ叩いてくる。

 

 昨日からいじけてそっぽ向かれるからとりあえずで放置してたら急にビシバシ叩き始めた。

 

 『ズルイ…ズルイ』って言いながら叩いてくることもあれば、無言で叩いてくることもある。

 

 ……なんだろ、なんか飼い主に構ってほしい小猫に見えてきた。

 

 この後構い倒した、満更でもなさそうだった。

 

 

 

追伸

 

 なんか灯火さんのこと思い出した、今元気にしてるのかな? 明日辺りに会いに行ってみよう。

 

 

 

 

 

○月虹日 天候不明

 

 

 灯火さんに会いに行った、なんか青色の結晶みたいなのの下にある青い光が眩しい穴の中に入っていくのが見えたから追った。

 

 結果…変な場所に閉じ込められちまったぜ♪ てへっ♪

 

 いやてへっ♪ なんて言ってるような状況じゃないんだけど、俺多分やろうと思えばここから抜け出せるから。

 

 なんか俺が入口開く時に感じる感触と同じ感じがするし、多分空間そのものを閉じられてるんだろう。

 

 だけど、ただ閉じてるんじゃなくて何処かに逃げ道があるような気がする、だって視てみたら何か流れみたいなのが見えるもん。

 

 ただ、ここには無い、より正確に言うなら今この空間には無い。

 

 色々探してみても入ってきてたはずの灯火さんもいないし、多分…じゃなくて十中八九別々の似たような場所に飛ばされてるはず。

 

 じゃあ後は簡単…流れを視て脆そうな所を起点に空間をぶち破れば良い、それで別の空間に移動できる。

 

 今はミナも居るし、この前みたいにそこまで時間も掛けるわけにもいかないし、ちょっと急ぎで行こうかなと思う。

 

 さてさて、灯火さんは何処に居るかなぁ?

 

 

追伸

 

 空間ぶち破ったら灯火さんと赤髪の子とこの前のなんとか一斗と背中丸出しお姉さんが居た、他にもこの前の俺の住処辺りを彷徨いてた男となんか口のとこに甲冑武者とか誉れ玄人みたいな面を付けた女の人が居た……それと素材置いてけ。

 

 

 ……………助けてクレメンス( ;∀;)

 

 

 





主人公

 超至近距離まで素材置いてけに近づいてしまったお馬鹿。 
 
 ちゃっかりミナに勝ったり次元の流れを見たりと素で化物と化し始めている。

 実は自覚が無いだけでタルタル君と同等レベルのバトルジャンキー、だから蛍とは戦って互いに生きてたら後ろのナニカをガン無視して仲良くなれたりするよ、本人に自覚無いけど。

 実はキャラのモチーフが虎杖っぽい宿儺。

 なお、作者が書いてる途中で忘れてた設定。

 


ミナ

 コメント欄でORT扱いされた子、そんな訳が無い。

 新技ならぬ秘奥義レベルの技撃とうとしたらやり過ぎて自爆した、因みに撃ってたらヒモがガチ対応することになってた。

 大技のモチーフはFFXバハムート。


妖怪素材置いてけ

 唐突に空間ぶち抜いてきた主人公にびっくり、それはそれとして依頼を達成出来るチャンスに内心ウキウキ。

 因みに本人に主人公を狩る気は一欠片もありません。




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依頼『白い獣域ハウンドの調査』①


 モンハンのアプデが来ましたね…アマツが来ましたね…アマツが来ましたね(強調)
 
 嬉しいですねぇ、自分としてもアマツは一番最初に好きになった&一目惚れしたモンスターで、こいつのお陰で今の作者のモンスター好きがあると言っても過言ではない。

 それで思ったんですけど…黄金王獣白くして風元素と雷元素と水元素使わせたらそれはもうアマツなのでは?



 

 

 それは、何気ない何時も通りの毎日から始まった。

 

 

「…白い…獣域ハウンド?」

「はい、最近たたら砂近辺で目撃されている白い獣域ハウンドの調査、それが今回の依頼になります」

 

 何時通り、冒険者協会へ依頼を受けに行った私を待っていたのは、今までに無い依頼だった。

 

 

 白い獣域ハウンド…たたら砂付近に突如として現れた獣域ハウンドの特殊個体。

 

 白い身体と体毛が特徴、戦闘能力その他諸々尽くが不明。

 

 接触した人間も殆ど居らず、よしんば接触していたとしてもそれは殆どファデュイだったり海乱鬼…しかも全員が全員ボコボコにされた後でまともに情報を持っていない。

 

 逆に言うと海乱鬼やファデュイの尖兵等では相手にならない程の強さを持つということなのだが、そこは置いておくとしよう。

 

 とりあえず、私がキャサリンに教えてもらった情報は上記の通りで、キャサリンは色々な事件や依頼を解決している私にこの依頼を受けてほしいそうだ。

 

 やることも予定と言えるモノも特に無かった私は、その依頼を引き受けることにした、報酬も良かったし私自身がその白い獣域ハウンドを見てみたかったから。

 

 

 

 

 だけど、この時の私はまだ知らなかった…このなんてことないはずの依頼が今までにないくらい長期化することになることを。

 

 

 

 

 

 

 

 ひとまず、私はその白い獣域ハウンドの情報を集めることにした、こういう類の依頼は基本的に情報が無いと話にならない。

 

 情報が少ないとは言うけど、決して無いわけではない、探していればそのうち見つかるだろうと、この時の私は高を括っていた。

 

 

 結論から言おう、目当ての情報は全くと言っていい程手に入らなかった。

 

 アーシアというモンドの女冒険者からは白い獣域ハウンドの戦闘力についての情報を入手出来たが、それ以外はからきし。

 

 白い獣域ハウンドにボコボコにされたという海乱鬼達を探し出して話を聞いてみても、偶然見つけてその素材を売れば金になると思って襲ったら返り討ちにあったという冒険者協会で聞いたことと大差無い情報しか出てこず、何処で見たのかを聞いてみればやれたたら砂で遭遇しただの、無想刃狭間で見ただのと一味全ての証言に統一性が無かった。

 

 ファデュイの人間に関してはそもそも何も話さなかった、ボコボコにした後に聞いてみても知らないの一点張り、だけど様子からして何か知ってそうなのは確かだった…まぁ結局何も教えてはくれなかったけど。

 

 私達がその一日で手に入れた情報をそれだけで、その他の聞き込みに関しては収穫は一切無し、目撃情報が少ないとは聞いていたけどここまでとは思ってなかった。

 

 とりあえず、その日はそこで打ち止めにした、日も落ちてたし何よりこれ以上は無駄だと思ったというのもある。

 

 

 パイモンも疲れていたし、その日は夕食を適当な所に泊まった。

 

 

 

 

 その次の日の朝、思いもよらないことが起こった。

 

 

 

 居たのだ、白い獣域ハウンドが。

 

 

 早朝、私はパイモンを起こしてたたら砂へと向かった。

 

 海乱鬼達が言っていた白い獣域ハウンドの出現場所はたたら砂と無限刃狭間の二つ、その二つの近辺を調査して白い獣域ハウンドの痕跡を見つけようと思った。

 

 そんな考えで行ってみたら、そこにヤツは居た。

 

 

 白よりも白い雪の様な純白の獣域ハウンド…間違いないと思った、あれがキャサリンの言っていた白い獣域ハウンドなのだと、そう確信した。

 

 パイモンも同じように驚いていた…まぁパイモンは初めて見たからというよりも、とても美しいものを目の当たりにした時の人みたいな反応だけど。

 

 それはそれとして、どうしたものかと私は悩んだ。

 

 依頼は白い獣域ハウンドの調査、調査なのだから調べなきゃいけない、主に戦闘能力や行動パターンと言った動きに関することを。

 

 だけど、行動パターンは兎も角として戦闘能力の方はどうすれば良いのだろう? と。

 

 行動パターンは協会の人員に任せれば良いとして、戦闘能力に関しては私がやるしかない、なんとなくではあるけど冒険者協会の人員では太刀打ち出来ない可能性が高いからだ…より正確に言うなら並大抵の冒険者では太刀打ち出来ないだけど、そんなことはどうでもいい。

 

 何より…私が今一番こいつに近い。

 

 

 そう考えて近づいた…近づこうとした。

 

 私が一歩踏み出した瞬間、白い獣域ハウンドが此方を向いた。

 

 目と目が合う、白い獣域ハウンドに動きはなく、ただ私の方を見ているだけ…いや、私を見た時にビクッとしてたような気がするけど、きっと気の所為だ。

  

 けど、どちらにしろ動きが無いのは好都合、このまま一気に近づいてみたら先制攻撃を――

 

 

 そんなことを考えていたのがいけなかったのか、それとも単なる偶然なのか。

 

 私が白い獣域ハウンドに向けて一歩踏み出すか出さないかの瞬間、白い獣域ハウンドは私に背を向けて駆け出した。

 

 

「…えっ?」

 

 

 思わず呆けた様な声が出る、まさか逃げ出すとは思ってもみなかったからだ。

 

 そんな私のなんて気にもせず、白い獣域ハウンドはその足を止めることなくどんどんどんどんその姿を小さくしていく。

 

 

「……あっ!?」

 

 

 呆けていた思考が正常に回り、私はその時になってようやく逃げられたということに気がついた。

 

 急いで追いかける、今持つ元素の中で最も速さの出る雷元素を使用し、それと併用して雷の種を使った高速移動も一緒に使用した…だけど――

 

 

「(ちょっ!? 速っ!?)」

 

 

 追いつけない、元素を使っているのに追いつけない、ギリギリ見失わない程度にしか食らいつけない。

 

 内心で舌を巻く、今まで出会ったどの魔物達とも一致しない圧倒的なまでの速さ、下手したらタルタルヤと同等かそれ以上…こんなのが何故昨日の今日まで発見されていなかったのかが不思議に思えてならない。

 

 

 

 

「ぜえっ、蛍…! 待っ…!」

 

 後ろからパイモンの苦しそうな声が聞こえてくる、私達を追いかけてきたのだろう、その声は何時ものただただ疲れているだけの声質ではなく、全力を振り絞った後の様な疲弊感を感じる。

 

 このまま行くと、私を追いかける最中に倒れてしまうだろう。

 

 

「(…ここで、打ち止めだね)」 

 

 

 足の回転を緩める、徐々に走る速度を落としながらゆっくりとその場に止まり、その場で完全に停止する。

 

 パイモンが後ろからひぃひぃと過呼吸気味に息継ぎをしながら私の隣へとやってきて、そのまま私の服に縋りついた。

 

 『待っ…息……できなっ…』等の言葉を話そうとしているパイモンに水筒を手渡すと、引ったくられるように取られた。

 

 ゴキュゴキュと水を飲むパイモンを尻目に、白い獣域ハウンドが走り去っていた方向を見つめ、決意する。

 

 次は絶対に逃さない…と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 ちょっとした番外編みたいなのを作りたかった、ちょっと短めかなと反省。





 我等が旅人、調査を開始してから偶然とはいえ二日そこらで主人公に会っていた人、実は若干バトルジャンキー。

 
主人公

 素でタルタリヤ並の速さを叩き出したやつ。

 蛍ちゃんに追いかけられるという恐怖展開のせいで肉体のリミッターが外れて普段の倍以上の速度を叩き出した。


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タビハミチズレヨォ!!


 ちょっとだけ原作ブレイク。


 

 

○月MR日 天候不明

 

 空間ぶち抜いてから何が起こったのかを書こうと思う。

 

 まぁまず初っ端逃げようとした俺を『素材置いてけ』こと蛍が尻尾を掴んで捕まえた。

 

 何なのあいつ、前よりも速くなってるんですけど。

 

 まぁ、そうやって捕まって何されるのかと戦々恐々していたら、大量の米が入った袋を渡された、なんでも以前俺が米を強奪した人からの贈り物らしい。

 

 いやなんで? とか思ってたら、俺が渡した金の量が多すぎたから、余った分を米にして返してくれたらしい…いや、だからなんで? まぁ嬉しいから良いけど。

 

 それと、俺が何なのかを聞かれた、より具体的に言うなら俺という存在が何なのかを聞かれた…そんな哲学的なことが俺に分かるわけないだろいい加減にしろ!

 

 とりあえず、灯火さんに通訳して貰って俺の言葉を伝えてもらった。

 

 んで、伝えたらそうとだけ答えたかと思ったら、急に鶏肉+αの食材を取り出して何かを作り始めた。

 

 カチャカチャ、グツグツ、ジュワーと美味そうな音を響かせながら香ばしさと甘い匂いがした、多分涎出てたよね俺。

 

 そうして出てきたのが、無茶苦茶美味そうなデカい鶏肉料理*1だった、無茶苦茶美味そう、多分ガン見してた。

 

 そしてそれを俺との距離が丁度半分くらいの所に肉料理を置いて、離れたところからじ〜っと俺のことを見始めた。

 

 マジでじ〜っと見てくる、目を逸らすこともなくじ〜っとだ、周りの人達も若干引くくらいじ〜っと見てた、怖いんだよやめろよ。

 

 

 まぁ、折角作ってもらったものを冷ましちゃうのは無作法だからちゃんと取って食べたけどな……美味いなこれ!?

 

 おい待て鬼ゴラァ!! それは俺の肉だ! お前のじゃねぇ!!

 

 

 

追伸

 

 そういえば、なんか鬼以外の奴等がミナにびっくりしてた、やっぱり虹色ってのは珍しいものなのかな?

 

 蛍はうずうずしてたし、ちょっと近づけないようにしなきゃ。

 

 うちの子狩る気なら死ぬ覚悟で来いよお前。

 

 

 

○月5DS日 天候不明

 

 一日の経過が分からないから、適当に書いていく。

 

 前に迷ってた時もそうだったけど、ここって本当に時間の経過が分からないな、時差ボケしそうだ。

 

 蛍とは相変わらず距離を取っている、顔を合わせる時は常に灯火さんの後ろに隠れている。

 

 今日は蛍に何故逃げるのかを聞かれた、いやそりゃ逃げるでしょ常識的に考えて、だって追いかけてくるんだもの。

 

 そう灯火さんに答えてもらうと真顔で『妖怪素材置いてけ』って何? と聞かれた、怖いんだよやめろよその顔。

 

 素材置いてけって何? って聞かれてもお前のことだよ、俺によく似た奴等とその他諸々の獲物を狩ってきたであろうお前の渾名だよ。

 

 しかもお前、また新しいの狩ったでしょ? だって増えてるもん後ろのヤツ、デカいのが増えてるもん。

 

 なんか前と違って目が光ってるし、相変わらずコッチコイヨ〜って悪霊みたいに手招きしてくるし、しかも増えてるし。

 

 そんな…様子というか状態というのかは知らんけど、近づくものも近づけない、というか近づきたくない。

 

 逃げられたくないならその後ろの奴等をどうにかしてからにしてください頼むから本当に(切実)

 

 そういうわけだから俺は逃げますサヨナラ〜。

 

 

追伸

 

 日記書いてたら白いの…パイモンが触っていいかって手をワキワキさせながら言ってきたから触らせてやる。

 

 えっ? 怖いんじゃないのかって? 俺が怖いのは後ろに亡霊みたいなのがいる蛍だけでパイモンは別に怖くないデス。

 

 俺の背中でゴロゴロしたり触ったりしてて楽しそうでした、まる。

 

 まぁ、その後ミナに叩き落されてたけど。

 

 

 

 

○月AV日 天候不明

 

 

 今日は夜蘭達の話を聞いていた。

 

 言ってることが難しくてあまり分からないけど、どうにも男…ショウで会ってるのかな? その人が道を作ろうとしているらしい、自分の命を懸けて。

 

 そのことに夜蘭さんは酷く怒っているようで、次々に言葉を捲し立てる、ショウさんもショウさんで引き下がらなかったから、お互い平行線になってた。

 

 そしたら、一斗が壁を壊した。

 

 壊した先からには道があって、夜蘭さんはそれを安定させられるかどうか確かめて来ると言っていた。

 

 一斗は仮面の人…忍さん曰く力を使い果たして気絶したらしい…なんでそういうところは鬼っぽいのかねぇこいつ。

 

 仲間割れを嫌い自己犠牲を嫌う、だけど自分は似たようなことをする、それでも決して自分が犠牲になるとは思わない、考えるよりも先に動く……うん、良いと思う、好きだよお前みたいなやつ。

 

 その後は、何をしたんだったか…あぁそうだそうだ、変な所に入ったんだ…マズイな、ボケてきた、書けるうちに書いとかなきゃ。

 

 

 えっと、確か変なデカい円盤みたいなのがあるところに出た、周りにはミナと灯火さんしか居なくて他の奴等は何処にもいない。

 

 進んでると蛍と赤髪…煙緋さんがいた、どうにも何かと戦ったらしい。

 

 そのまま進むと夜蘭さんがいて、ファデュイの奴等と戦うことになった、八つ当たりだ。

 

 夜蘭さんが言ってたけど、ここは記憶を再現するらしい…俺の時には何も来なかったんだけど、なんで?

 

 

 また同じように進むとショウさんが何かと戦っていた、手を出すなと言われたから何もせずに見ておく、口ぶり的に因縁のある相手なんだろう、フシャって言ってたし。

 

 最終的にショウさんは勝った、その顔は何処か悲しそうで懐かしそうで、ちょっと見てられなかった。

 

 だってあの顔は、爺ちゃんのことを話す時の兄ちゃんの顔に似てたから。

 

 

 

 また進むと、パイモンが書き置きを見つけた。

 

 読んでみると、千岩軍の兵士達がここに来て蛍達と同じようにここから出られなくなったらしい、しかもずっと、死ぬまで。

 

 辛かっただろうと思う、俺に帰りたいと思える場所はないけど、兄ちゃんには偶に会いたいと思う、これを書いた人達はきっとそんな俺よりも余程恋い焦がれたはずだ。

 

 それを求めながら、結局最後の最後まで見ることすら叶わずこの世を去った、それはきっととても辛いことなんだと思う…俺には分からないんだけどね。

 

 ただ、夜蘭さんが言うには先祖の一人である『伯陽』という人だけは生還しているらしい…その際に俺のことをチラッと見てきたのは謎だけど。

 

 

 そのまま先に進んでると…なんか嫌な空気がした。

 

 他の皆はアビスがどうたら言ってたけど…それとはまた別種の嫌な匂いだ。

 

 皆の言うアビスとはまた別のナニカが今そこにあると、少なくとも俺はそう感じた。

 

 その後は色々あって元の場所に戻ってきたけど、その後の記憶が殆ど無い、途中で疲れて寝てたから。

 

 夜蘭さんが何か難しい話をしてたのは覚えてる、何か小さな円盤みたいなのを使う的な話をしたのも覚えてる、そしてそれで他の人達が逃げられなかったことも。

 

 ただ、その後の記憶がまるで無い、何かに邪魔されたみたいに思い出せない…その頃辺りから嫌な気配が強くなってた気がする。

 

 何かに見られてる…そんな気がして仕方がなかった。

 

 

 

追伸

 

 ショウさんにフシャという仙人に心当たりはないかと聞かれた、知らないと答えるとそうかと言って元の場所に戻っていった。

 

 夜蘭さんにも同じようなことを聞かれた、さっきの生き残った先祖についてだ…そんな前のことなんて俺が知ってるわけないのに、なんで聞いてくるんだろ?

 

 

 

 

 

○月EX日 天候不明

 

 

 外に出られなかった、俺だけが出られなかった。

 

 ショウさんと夜蘭さんが円盤の仕掛けを発動させたまでは良かったんだけど、皆は変な影みたいなのに追っかけられた。

 

 でも俺の所にだけなんか赤いのが来た…赤い紅い俺と同じ姿をした狼が。

 

 マズイと思った、なんとなくではあるけど、アイツはそのまま置いていっちゃいけないって…そう思った。

 

 そう思ったからミナに先に行ってるように頼んで、俺は円盤中から赤い狼に向けて飛び降りた。

 

 『対ヨ、対ヨ』という言葉が聞こえて、俺を呼んでいるのが分かった。

 

 後はまぁ、戦ったよ。

 

 赤いのに近づいたら変な場所…というか血の池地獄みたいな所に連れてかれて、そこで戦った。

 

 強かったと思う、地面にある血の色をした水全てがアイツの武器だったし、津波みたいなのも起こしてた。

 

 けど勝った、流石に強くて奥の手を使わなきゃいけなかったけど、それでも勝った…逃げられたけどな。

 

 けど、どうやってここから出よう?

 

 …とりあえず寝よう、その後にまた空間ぶち破ろう。

 

 

 

 

 

○月☓日 晴れ?

 

 

 空間ぶち破ったら倒れてる人が二人も居た。

 

 一人は4本腕の鬼っぽいの、こっちはもう死んでた。

 

 もう一人はまだ生きてた、死にかけだけど死んではいなかったからこの前覚えた草元素の回復でなんとかして正常に近い状態に戻した。

 

 多分、こいつらも俺達と同じようにここに閉じ込められた人達だったんだろう、そうじゃなきゃこんなところに居るわけがない。

 

 だから、多分このまま放っとくとあの書き置きの人達みたいに死んでしまう…それは少し目覚めが悪い。

 

 そんなわけなので、この生きてる人と鬼っぽいのの遺体を一緒に連れて帰ることにしようと思う。

 

 というか忘れてたんだけど、俺そういば今回はちゃんと座標壊れないところに設置してきたから何時でも帰れたんだった、すっかり忘れてた…小龍に怒られる。

 

 

 

追伸

 

 座標使って帰ってきた後に妙に軽いなと思ったら連れて帰ってきてたはずの人と遺体が無くなってた…驚いたし、若干やるせなかった、もしかして幻覚だったのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
鶏肉のスイートフラワー漬け焼き





主人公

 空間ぶち破って帰ってきた男、最後の最後で今までの会話全てに繋がりを作ったことに気づいていない。

 因みに、生きてる人と鬼っぽいのはちゃんと座標に行きました、ただしそれが今現在の座標とは誰も言っていない。




 主人公が飛び出したことに驚いて一緒に行きかけた。

 帰ってきた後の喪失感が尋常じゃなかった、多分次会ったら何が何でも捕まえに来る。


ミナ

 層岩巨淵吹っ飛ばそうとしているのをヒモと小龍に全力で止められている。


紅い狼

 我慢出来なくて『対』の所に行ったら出迎えてくれた、嬉しくてハッスルした。


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依頼『白い獣域ハウンドの調査』②


 ネタが…ネタが尽きた……誰かぁ…! コメント欄にみんなぁ…!オラにネタをワケテクレェ!!


 

 

 

 白い獣域ハウンドとの再会は、私が思っていたよりもずっとずっと早かった。

 

 

 

 

 白い獣域ハウンドに初めて遭遇した日から何日か後、私はその日も白い獣域ハウンドを探していた。

 

 

 白い獣域ハウンドが人を襲った…そんな情報を手に入れていた私は襲われた当の本人を訪ね、そこから情報を引き出した。

 

 

 引き出したと言ってもそこまで重要なことじゃない、襲われた男性にそれが何時のどんな状況下で襲われたのか聞いただけだ。

 

 

 結果として分かったのは襲われた本人は一切の傷を負っていないこと、襲われた際に持ち物を漁られてその持ち物の中から何故か米だけが無くなっていたこと、そしてその次の日に大量のモラとスミレウリや夕暮れの実と言った木の実と青紫色の緋櫻毬が入ったリュックをその白い獣域ハウンドに渡されていたということ。

 

 どのような状況下で渡されたのかを聞くと、モラが無いから冒険者協会を頼ることが出来ない、だから自分で取り返そうとしたらしくその前日に襲われた場所に手かがりを求めて行ったらしい。

 

 そこに現れたのが、中身がパンパンなリュックを持った白い獣域ハウンドで、その手に持ったリュックを渡すと早々に何処かに行ってしまったのだそうだ。

 

 

 その話を聞いたパイモンが米が美味しかったからお礼をしてくれたんじゃないかと言った時、そんなわけがないと思う自分ともしかしたらと思う自分が居た。

 

 初めて見た時にしても情報を集めている時にしてもそうだけど、基本的にこの白い獣域ハウンドという魔物はどうにも魔物らしくないのだ。

 

 ファデュイの雷ハンマーを倒した方法が顔を水に沈めて窒息させて気絶させるという遠回しな方法だったことにしても、米を奪ったことにしても、その翌日にそのお返しと言わんばかりに物資とモラを渡していることにしても、全体的にやってることが人間のソレなのだ。

 

 そのせいで、私はパイモンが言った米が美味しかったからお返ししてくれたんじゃないか…という説を真面目に検討してしまっている。

 

 

 そして、それは多分正しいんだろう。

 

 あの獣域ハウンドはただの魔物じゃない、恐らく明確な自我と知恵を持った仙人や妖怪に限りなく近いナニカだ。

 

 私はこの時、不思議とそう確信していた。

 

 

 

 そんな時だった、近くで轟音が鳴り響いたのは。

 

 驚くパイモンを尻目に、私は音の響いた方向へと視線を向けた。

 

 視線の先では炎元素の弾丸や水元素のレーザー、更には岩元素の玉やら何処か見たことのあるハンマーやトンファーみたいな剣やらが大量に飛び交っていた。

 

 遠目に見ただけで分かる、ファデュイだ…しかもデッドエージェントやミラージュメイデンと言った精鋭が混じってる。

 

 耳を澄ませると、ガギンガギンという金属音と無数の人間の悲鳴が聞こえてくる、それと一緒に狼の様な唸り声も。

 

 間違いない、居る…そう私は確信した。

 

 

 そこからの行動は速かった、ファデュイの声が聞こえなくなるまで可能な限り気配を消して身を潜めた。

 

 声が聞こえなくなったら高所から飛び降りて風の翼で一定距離まで近づいてから地面に降りて、そこから忍び足で現場に近づき、様子を伺った。

 

 現場は、まるで嵐でも過ぎ去ったかのような状況だった。

 

 木々は薙ぎ倒され、周囲は大雨でも降ったんじゃないかというほどに水浸し、濡れていない草は黒く焼け焦げてるし、もう本当に災害でも起きたと言われても違和感の無い状況。

 

 もっと言えば、その周辺にファデュイ達があちこちでうめき声を上げながら倒れ伏しているから、災害という言葉により一層の信憑性が出てくる…まぁ違うけど。

 

 

 そんな現場の中心、そこに奴は…白い獣域ハウンドは居た。

 

 その手にボロボロに焦げ崩れた物を持って、何をするでもなくぼーっと突っ立っていた。

 

 風に靡くボロボロの何かをただジッと見つめて、何をするでもなくただただそこで隙だらけな姿を晒していた。

 

 

 そんな白い獣域ハウンドを、私は木の影からジッと見ていた。

 

 何か行動を起こすのか、ファデュイ達にトドメを刺すのか、それとも何もしないのかを、私はずっと見ていた。

 

 

 何分経ったんだろう? 一分か、五分か、それとも十分か…そんなに長い時間ではなかったのは確かだった。

 

 その間、白い獣域ハウンドは変わらずボロボロのナニカを見つめ続けていた、何をするでもなくずっと飽きることなく。

 

 そして私もまた、それを眺め続けた。

 

 

 暫く眺めていると、白い獣域ハウンドは唐突に此方を振り向いた。

 

 目と目が合う、青空の様な蒼色の瞳が私を見つめる。

 

 以前の様にビクッと反応することもなく、突然逃げ出すこともしない、ただジッと私を見つめている。

 

 

 

 

 対する私も同じだ、動かずジッと白い獣域ハウンドを見つめている……………なんてことがあるわけがない。

 

 

 

 走り出す、風元素を全力で稼働してスピードを一気に最大にまで引き上げ、そこから更に雷元素を使って元々のスピードを跳ね上げる。

 

 今度は絶対に逃さない、逃げる隙も身体を動かす時間も与えず一気に詰めて捕まえる!

 

 白い獣域ハウンドはまだ反応出来ていない、前みたいに逃げる素振りを見せていない。

 

 

 行ける…! 捕まえられる…!

 

 

 

 

 

 

 少なくとも、その時の私はそう考えていた、ある一つのことをド忘れしながら。

 

 その時の私は忘れていた、獣域ハウンドという生物は、()()()()の様なことが出来るという事実を。

 

 

 

 

 

 

 目の前から唐突に白い獣域ハウンドが姿を消し、伸ばしていた手が空を切った。

 

 

「(……あれ?)」

 

 

 疑問が頭の中を埋め尽くす。

 

 何処に行った? 何処に消えた? どうやって消えた? 何だ今のは? 今どういう状況だ?

 思考が回りに回って、ふとした時に思い出した、獣域ハウンドの瞬間移動能力のことを。

 

 奴等は唐突に消えては現れるのだ、その神出鬼没な力を使って。

 

 そしてそれには、何時も元素の軌跡が残る。

 

 故に──

 

 

「(元素視覚…!)」

 

 

 景色が切り変わる、嵐の過ぎ去った様な跡地が一瞬にして様々な色で澄み渡る半透明な景色へと変わっていく。

 

 赤に青に紫に黄色に白色、其々が其々に対応した元素の色に応じて世界を彩らせている。

 

 これが元素視覚、元素を見るということ…使える人間は少ないらしいことは聞いた。

 

 それはそれとして、先程までファデュイと白い獣域ハウンドが戦っていたからだろうか? 色の種類と量がとてつもない、ここから白い獣域ハウンドの元素を辿るのは難しいだろう。

 

 

 しかし、それでも私は見た、あの時…白い獣域ハウンドが瞬間移動を使用するほんの一瞬の瞬間、青色の元素が蠢くのが見えた。

 

 つまり、今尚活発に動いていて尚且つ今居る場所から離れた場所に繋がっている青色の元素を追っていけば白い獣域ハウンドに辿り着ける。

 

 周囲を見渡し、今尚活発に動いていてその上でこの場から離れた位置に動いている青色の元素を探す

 

 

 

 

「…見つけた…!」

 

 

 あった、周囲でただばら撒かれただけの元素の中で、ただ一つだけ真っ直ぐに外側へと向かっている青色の元素。

 

 走る、元素視覚を切らず元素の進む方角を全力で走り抜ける。

 

 急げ、急げ、早くしなきゃ逃げられるぞと思考が私に訴えかける、焦りで弾けてどうにかなりそうだった。

 

 大丈夫、間に合うと心を落ち着かせながらとにかく足を動かす、今度は逃さないと決めたからには絶対に逃さない。

 

 パイモンには背中にしがみついて貰っているから置いていくことは無い、前みたいなことにはならない。

 

 

 

「…居た!」

 

 

 

 追いついた、視界に白い影を捉えた。

 

 相変わらず速いし、追いつけるかどうか分からないけど、それでも見つけた、絶対に逃さない。

 

 

 白い獣域ハウンドも此方に気がついたのか、少し後ろを振り向いた後に一気にスピードを跳ね上げた。

 

 前とは違ってその身体には青色の元素が見える、つまり前回とは違って元素を使っているということ、そのせいなのか速さは以前と比べても明らかに速い。

 

 速い、確かに前よりも格段に速い…けどそれはこっちも同じ!!

 

 

 前は心の何処かで余裕を持たせてた、けど今度はそんなのない、最初から全力全開フルスロットルで…!

 

 

 

 

 ギリッと歯を食いしばり、雷元素と風元素を最大限まで高めていく。

 

 元素の同時使用、タルタルヤも魔物もやってたんだから私に出来ない道理なんてない、少し痛いけど…まぁその分性能は折り紙付き。

 

 さぁ初のお披露目だ、これが私の切り札こと──

 

 

 そうやって初のお披露目切り札に気を割いていたのがいけなかったんだろう、私はその時全く気がついていなかった。

 

 逃げていたはずの白い獣域ハウンドが私が切り札を展開しようとした時点で私へと突っ込んできていて、そして一定距離に到達した時点で罠を設置していたという事実に。

 

 

 そんなことに気づいていなかった私は、走りながら切り札を使おうとしていたこともあって『ソレ』を避けることも出来なかった。

 

 『ソレ』を、小規模の…言ってしまえばアビスの使徒が使っていた扉に近しいナニカに、私は止まることも出来ずに突っ込んだ。

 

 

 ほんの一瞬の浮遊、その直後に広がる見覚えの無い景色、そこに私は足を縺れさせた挙げ句、盛大に転んだ。

 

 ズシャーと頭から、まるで自分からそこに飛び込んだみたいに、それはもう綺麗な体勢でズシャーと。

 

 

 

「…ほ……蛍…? 大丈夫か?」

 

 背中のパイモンが何処か遠慮気味に心配の声を掛けてくる。

 

 それに対しては大丈夫と返し、私は起き上がった。

 

 服に付いた土や砂を手で落とし、周囲を見渡す。

 

 洞窟だ、しかも妙に生活感のある洞窟だ……いやまぁ、そんなことはどうでいい。

 

 とりあえず今は安堵すべきなんだろうと思う、だって背中から転んでたらパイモンが潰れることになってたから。

 

 パイモンが無事で本当に良かったと思ってる…けどそれはそれとしてやっぱりこんな風に撒かれたことに対する思いもあるわけで。

 

 

「………………………覚えてろ…」

 

 

 次はケチョンケチョンにしてあげるんだから。

 

 

 

 

 





蛍ちゃん

 今回も目標に逃げられちゃった我等が旅人。

 うちの蛍ちゃんはタルタリヤと同じようなことを平然とやってのけます。

 段々と依頼のことがどうでもよくなってる。



主人公

 日記の内容はあってるけどその大半を端折ってるヤツ。
 
 本人があまり重要視してないことは多分一切書かないから、多分割りと色んなことをやらかしている。

 逃げ方が結構テクニカル。


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スメールゥ!!


 日記形式を書くのが久しぶりに感じる、ネタが足りぬぅ。


 

 

○月山日 晴れ

 

 

 スメールに行ってみようと思う。

 

 もう大分前からナーちゃんにスメールに来てほしいって言われてたのに、層岩巨淵で迷子になったり次元の狭間で迷子になったりと随分時間を使ってしまった。

 

 そろそろ行かないとナーちゃん怒りそうだし、俺自身のスメールのことは気になってたし。

 

 だから、明日辺りに行ってみようと思う。

 

 その旨を小龍に伝えてみたら自分は行けないから楽しんできてと言われた、なんでも用事があるらしい。

 

 まぁ、それならそれで良いかと準備を進めておく、けどちょっと残念だなぁ。

 

 

追伸

 

 寝る前に小龍にギュ〜と抱きしめられた、痛いです。

 

 

 

 

 

○月空日 晴れ

 

 スメールに着いた…着いたんだけど…ナーちゃんって何処に居るの?

 

 適当な所に寝床作って日記書いてるけど、肝心なことをナーちゃんに聞いてなかった、居場所知らないんじゃ会いに行きようがない…どないしよう?

 

 とりあえず、目の前でテクテクと歩いてる猪を狩ってから決めよ………ねぇ待って、何こいつ? 身体にキノコ生えてんだけど…えぇ、食えるのこいつ?

 

 

 とか思いながら食ってみたら普通に食えたし普通に美味かった…なんか引いてごめんなさい。

 

 

追伸

 

 書き忘れてたから書くけど、スメールって他の国とかに比べて草とか森とかがとにかく広い。

 

 他の国も山とか森とかがあって自然豊かで雄大な感じがするけど、スメールはなんというか雄大さが別格な感じがするし、なんというか大自然の真っ只中に立っている気がする。

 

 これはアレだ、また探索しがいのある場所だ、絶対に楽しいぞ探索するの。

 

 ミナも心なしか楽しそうだし、あぁ楽しみだなぁ♪ ここには何があるのかなぁ♪

 

 

 

 

○月月日 晴れ

 

 

 なんか変なのが居た、小さい人形みたいなの。

 

 頭になんか葉っぱみたいなの被ってて、ふわふわ浮いてるて、くるくる回ったり歌? を歌ってたりしてた。

 

 生物的にはよく分からんけど、とりあえず可愛いからと眺めていたら、俺に気づいたのかビクゥッてなった後にプルプル震えてカリスマガードし始めてた。

 

 それがなんとなく面白くて食べちゃうぞ〜って脅かしたら食べないで〜! ワタシ美味しくないよ〜! って言いながら何処かに飛んでいってしまった。

 

 ちょっと脅かしすぎたかもしれない。

 

 

追伸

 

 なんか物陰からさっきの葉っぱ被った人形みたいなのとキノコ被った人形みたいなのが覗いてくるんだけど。

 

 なんかムズムズするな。

 

 

 

 

○月☓日 雨

 

 

 今日はミナが久しぶりの雨にはしゃいでいた、幾ら色んな元素使えるようになったって言っても本質は水なんだなって思って見てたらなんか水色のキノコみたいな魔物が出てきた…あれ? どっかで見たことがあるような…。

 

 …まぁ、いいか…ミナと一緒に遊んでたし、襲ってこなかったし、なんか途中からデカいのが俺の所に来たけどこいつも襲ってこなかったし、良いだろ別に。

 

 というか思ったんだけど、なんか最近こいつらみたいな魔物に襲われない気がする、ヴィシャップとか機械みたいなのには普通に襲われるのに…なんでやろ?

 

 

追伸

 

 キノコの魔物の鳴き声ってなんかミナが歌ってる時の声に似てる気がすると思う今日この頃、もしかしてミナってアイツらの仲間とかだったりするのかな?

 

 

 

 

○月茸日 曇

 

 朝起きたら尻尾の所に黄緑色の輪っかみたいのが出来てた。

 

 触ってみたらちゃんと感覚がするし、一通り動かしてみても何の違和感もないから別にいいやと放っておくことにする。

 

 あぁ、それと人の街…じゃなくて村を見つけた。

 

 璃月とかと違って家とか橋とか道とかが大抵全部木材で作られてて、石とか鉄とか殆ど無かった…んじゃないかなって思う。

 

 ちょっと見てみようと思って村の中に入ろうとしたけど、俺って小龍が色々してくれたお陰で璃月港に入れてただけで魔物であることに変わりないってことを思い出して止めた。

 

 今更だけど、なんで璃月港の人達ってあんなに受け入れられたんだろう? ちょっと謎というか怖いというか、理解出来ない。

 

 少し感覚を前の状態に戻しとかないとって思った。

 

 

 

追伸

 

 なんか寝てたら鳥とかリスとかが俺の身体で休んでた、おかしいな前はこいつらも俺には寄ってこなかったのに。

 

 キノコの魔物にしてもそうだけど、俺ってそんなに無害そうに見える? キノシシ食べてるんだよ俺?

 

 

 

 

○月耳日 晴れ

 

 

 なんかケモミミがある…こいつ男? それとも女?に会った。

 

 出会って早々に弓向けられた挙げ句に射たれたけど、まぁ俺魔物だし良いかとか思いながら全弾躱してさっさと逃げた。

 

 んでだ、逃げた先に女の子が居た、緑…っていうよりは黄緑の髪色が特徴的で妙にオドオドしていたのが印象的。

 

 まぁ、出会ってすぐに3本くらいブーメラン投げつけられたけど、しかも追いついてきたケモミミさんに挟まれて無茶苦茶矢とか射たれたけど、それでも俺はこうして元気です(( ゚∀゚ )ドヤァ)

 

 次に森を歩く時はこの二人に気をつけようと思いました、まる。

 

 

追伸

 

 なんかちょくちょくあるんだけど、この如何にもヤバそうな赤黒いのって何なの? 俺の家まで来たんだけど。

 

 何かこいつがあると近くの木の実とか枯れちゃうし、魔物は活性化するしで嫌なことしか無かったから草元素ぶつけてみたけど効果ないっぽかったし、本当になんなのこいつ?

 

 運が良いのか悪いのかは知らないけど、近くにあったなんか草の弾丸みたいなのが入ってる木から取り出した草の玉ぶつけたら消えてくれたから、とりあえずの対処方法は分かったけど、これは大変かもなぁ。

 

 

 

 

○月筍日 晴れ

 

 なんか最近、草元素の力が強くなってる気がする。

 

 元から他のと色も違うし出力も違うしで重宝していた青い雷元素と違って、俺の草元素は他とそう大差は無い…と思う。

 

 じゃあなんでそう思ったかって、明らかに出来ることが増えてきている。

 

 例えば、俺は前まで…具体的に言うならスメールに来るまで草元素を形に出来なかった、精々が回復とか爪に纏わせるとかが限界だった。

 

 それがどうだろう、スメールに来てからなんか妙に調子が良い。

 

 斬撃は飛ばせるし、なんか岩元素みたいに作って飛ばせるし、草ブレス吐ける様になったしで、成長の度合いがちょっとおかしい。

 

 もしかして、何かしらの条件でもあったのかな?

 

 

追伸

 

 なんか目隠ししてるのとそうじゃないのがいる赤い服装が特徴的な集団に会った、襲われた。

 

 なんというか、宝盗団とかよりは普通に強かったし海乱鬼達とかと同じような強さだったんだけど…こいつら倒していいのか? なんかファデュイとか盗賊(アホ)団とかよりもまともな集団に見えるんですがそれは?

 

 とりあえず、攻撃を適当に反らしてスタコラサッサした、だって倒して良い類の人達じゃなかったもん雰囲気的に。

 

 

 

 

○月野菜日

 

 なんか大きな街を見つけた、とりあえず偵察あるのみだぜ! ………って言いたいところだったんだけど……なんかアヌビスとかそういう感じの帽子…帽子? 被った奴に追いかけ回された。

 

 なんで追いかけ回されたのかは分からない、強いて言うなら道端に落ちてた妙にピカピカ光ってるカードを拾っただけなんだけど、まさかこれが理由な訳がないしなぁ。

 

 じゃあ俺が魔物だったからかって聞かれると微妙な所だ、だってそのアヌビスみたいなの『素材置いてけ』と同レベルで俺のこと追いかけてきたんだもの、怖かったよ。

 

 なんか表情も鬼気迫った感じがするし、目なんかお前を殺すとでも言わんばかりにガン開きだったし、お陰で夜まで逃げ回る羽目になった。

 

 しかも撒いた後も暫く執拗に探し回ってたし…暫くあの街には近づかないでおこう。

 

 

 因みに、カードはそこいらで拾った綺麗な箱に入れて保存しておいた。

 

 

追伸

 

 なんか盗み聞きした人の会話の中に七聖召喚なる単語が出てきた、どうやらカードゲームらしい。

 

 もしかして、あのカードがそうなのかな? 妙にピカピカしてたし多分そうだろう。

 

 後で保存方法を変えておこう、主に濡れたり汚れたり曲がったりしないように。

 

 そうしないと何か良くないことが起きると、俺の中の何かが囁いている気がしたから。

 

 

 

 





主人公

 ようやくスメールに来た狼くん、今日も今日とて歩き回るよ狼くん。

 何故かキノコンに異様に懐かれる、なんでやろね?

 因みに、本人が気づいてないだけで微量の草元素が常に垂れ流しにされている。

 実は某酒クズに会ったらほぼ確実に女の子と間違える。

ケモミミ

 割りと興味津々、どんな生態かな?


アヌビス(仮)

 (#^ω^)ビキビキ


ミナ

 実は小龍が居なくなったことが若干寂しい、それはそれとして主人公独り占め出来て嬉しい。

 
 




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キノコッノコッノコゲンキノコ♪


 マリオの映画を見てきました、なんか思ってたんと違ったけど面白かったからええねん!!

 というわけでキノコ祭り、おのれマリオ。


 

 

○月小松菜日 雷 

 

 山を探検してたら次元の裂け目みたいな所を見つけたから入ってみた。

 

 そしたらなんか…なんて言ったらいいんだろアレ?

 

 こっちに来てから今まで色んな魔物を見てきた気がするけど、こいつに関してはなんて言っていいのか分からない。

 

 二足歩行の恐竜? ラプトル? でもクチバシあるし色が羽生えてたキノコの魔物みたいな配色してるし、けどキノコの魔物には見えないし、しかも普通に格好いいし…なんて言ったら良いのこれ?

 

 というか何だお前、なんでジッと見てくるんだ、何で頬ずりしてくるんだ、何でペロペロ舐めてくるんだ……さてはお前俺のこと仲間か何かと勘違いしてるな!?

 

 おい馬鹿! やめろ馬鹿!! 俺はお前達とは別種族の魔物だぞ!?

 

 狼さんなんだぞ!? 肉食だしキノコだって好きなんだから食っちゃうぞ!?

 

 おいやめろ! 恋しそうな鳴き声を出すな! 殺せないじゃないかよ!!? 

 

追伸

 

 久しぶりに夢でナーちゃんに会ったから、今回のことを相談してみた。

 

 そしたら『貴方はもうその子と似たような状態になってしまっているから諦めなさい』って凄く良い笑顔で言われた、ちくそう。

 

 

 

 

○月白菜日 晴れ

 

 

 そこら辺ウロウロ彷徨いてたら紫色の花を見つけた、この前のデカい燃える花の魔物に良く似てる。

 

 何かしようとしたんだろうけど、初っ端でミナの新技に爆散させられてた。

 

 因みにその新技というのは水元素の中に草元素と炎元素の塊を詰め込んで作った大きな矢を敵に突き刺すというものだった。

 

 字面だけで言うなら前のメ○ローアもどきと同じだろうと思うかもしれないけど、普通に全然違う。

 

 具体的に言うと、この技は中から対象を吹き飛ばす技で、非常に怖い。

 

 まず刺さって一秒と経たない内に矢の中にある草元素の塊が溶けて反応起こすだろ? なんか草元素の花みたいなの出来るだろ? それが矢の中いっぱいに膨れ上がる。

 

 続けて炎元素の塊が溶け出すだろ? 炎元素が草元素の花に触れるだろ?

 

 そしたら身体の中でドカーンとなる…………怖っ…!?

 

 

追伸

 

 小さい花を見つけた、微妙にさっき爆散させられてたヤツと似ている気がする、しかも弱ってるし。

 

 こいつを潰すのもなんかあれだったから、元素あげたら元気になるかなぁって思って適当に雷元素を流してこんでみた。

 

 そしたら元気になって頭ブンブン振り回してたから、なんか良い気分になった…かわいい。

 

 

 なんでこの国可愛いのしかいないの?

 

 

 

○月大根日 晴れ

 

 久しぶりにキノコの魔物に襲われた…襲われたんだけど………殺しづれぇ…!!

 

 だってあんなに似たようなヤツに懐かれた後でこいつは殺しづらいってばよ、いや倒したけどね!?

 

 なんというか、これで親の敵とでも言わんばかりに襲われたらショック受けるだろうなぁ俺。

 

 やりづらいなぁ。

 

 

追伸

 

 なんかぷかぷか浮かんでるキノコの魔物が俺の頭に乗ってくる、なんか冷っこくて気持ちいいからそのままにしておいた。

 

 そしたらミナに突撃された、しかも氷の球体になった状態で…痛いし冷たいって!! けどありがとねぇ!!

 

 

 

○月人参日 雨

 

 

 なんか喋るキノコの魔物が居たんだけど、普通に話しかけてきたんだけど。

 

 女の人の声だったから雌なのかなぁって思ったら性別は無いらしい、まぁ気にしないけどさ。

 

 言ってることはあまり分からなかったけど、どうやら故郷を探しているらしい、だけどそれが何処かは分からないと言っていた。

 

 とりあえず探してみるし見つけたら教えると言ってその場では別れた、なんか側に居た小さいキノコの魔物が妙に寂しそうにしてたのが気になったけど、とりあえずで別れた。

 

 あぁ、そういえばキノコの魔物の種族名はキノコンというらしい、羽とかがあるのはマッシュロンだそうだ。

 

 ありがたい、呼び方が分かるのは良いことだからな。

 

 

 ところでさ、俺のことを『草の王の眷属』って呼ぶのは何でなの?

 

 なんかそう呼ばれるのもあれだったから、名前を教えておいた、次からはその名前で呼んでよね。

 

 

 

追伸

 

 

 ナーちゃんに草の王の眷属って言われたことを教えたら、今までにないくらい良い笑顔でそうなのねって言われた……草の王ってもしかしてナーちゃんのことかこれ?

 

 

 

○月ニラ日 晴れ

 

 

 旅人怖い旅人怖い旅人怖い旅人怖い旅人怖い旅人怖い旅人怖い旅人怖い旅人怖い旅人怖い旅人怖い旅人怖い旅人怖い旅人怖い旅人怖い旅人怖い旅人怖い旅人怖い旅人怖い旅人怖い旅人怖い旅人怖い旅人怖い旅人怖い旅人怖い旅人怖い旅人怖い旅人怖い旅人怖い旅人怖い旅人怖い旅人怖い旅人怖い旅人怖い旅人怖い旅人怖い旅人怖い旅人怖い旅人怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い旅人怖い怖い旅人怖い旅人怖い旅人怖い旅人怖い旅人怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い旅人怖い怖い旅人怖い旅人怖い旅人怖い旅人怖い旅人怖い旅人怖い旅人怖い旅人怖い怖い怖い旅人怖い旅人怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い旅人怖い───

 

 

 

──以下、暫く旅人怖いとだけ書かれている。

 

 

 

追伸

 

 なんか今までにないくらい蛍が怖かった、今までも怖かったけど今回はなんか次元が違った。

 

 いやさ、この前お互い助け合って…助け合ったかな? まぁとりあえず一緒にあの場所から脱出した中だったから、挨拶でもしようと思って近づいた。

 

 どうせスメールに来るだろうって思ってたのもあるけど、流石にあんな至近距離まで近づいたらトラウマだって多少は克服出来る、だからこそこれを機にトラウマを完全に克服しようって思ったんだけどさ……なんか雰囲気からして違ったんだよなぁ。

 

 なんか俺を見る目が無茶苦茶虚ろだったし、目に光が無いし、隣のパイモンが無茶苦茶ドン引きしてたし、なんかふらふらしてたし。

 

 そうやってふらふら俺に向かって歩いてきてたんだけど、一定距離まで近づくと一気に俺に向かって踏み込んできた、能面みたいな無表情のままで。

 

 いやビックリしたよね、逃げるよねそりゃ、けど逃げたら追いかけてくるの何時もみたいに、しかも前よりも速いし…というかなんか服装が変わってるように見えたのは俺の気の所為?

 

 というかマジで延々と追いかけてくるからマジで怖かった、多分二日間くらいずっと追いかけられてたんじゃないかなあれ?

 

 

 最終的に、逃げてる最中に偶然見かけたこの前弓射ってきたケモミミさんの背後に隠れることで事なきを得た。

 

 因みに、このケモミミさんの名前は『ティナリ』と言うらしい、蛍が名前を呼んでた。

 

 なお、その名前を呼ぶ際の言葉が『退いてティナリ、そいつ殴れない』な辺りに恐怖を感じざるを得ない、ティナリさんも若干引いてたし。

 

 あぁ、俺はちゃんと逃げ切ったよ? ミナが虹色の羽使って飛んでくれたお陰で。

 

 …どうしよ、後ろのコッチコイヨ〜って手招きしてくる奴等よりもトラウマになったかもしれない。

 

 

 

 

 





主人公

 草神の眷属扱いされた狼、実際そんなに間違ってないっていうのがこれまたどうして。

 蛍ちゃんにまた新しいトラウマを植え付けられた。


旅人

 主人公に能面みたいな顔して襲いかかった女、その内心は喜びいっぱいであることを主人公は知らない。

 一緒に窮地に立たされて、その中でほんの少しでも仲良くなれた気がした相手が急に奈落の底に落ちていって死んだと思ってたら生きててしかもなんか素知らぬ感じて来られたら誰だって怒ると思う、だからとりあえず殴らせろ。

 因みに、切り札のタルタリヤで言うところの『魔王武装』の様なモノをノータイムで使用してた。


パイモン

 ドン引きしてた


キノコン軍団

 ナカ~マ~



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サバクゥ!


 砂漠と聞いたら石田彰を思い出す作者です。


 

 

○月豆日 晴れ

 

 流石に蛍もアヌビス(仮)ももう居ないだろうと、また例の大きな街に偵察しに行ってみた。

 

 見てみた感じからして、どうやら何かの行事の日らしい、前に来た時には無かった物が沢山あるし、屋台みたいなのも見えるし、皆楽しそうだ。

 

 ただなぁ、なんか偉そうな青い服着たおじさんが見えたんだけど…なんでだろうなぁ、顔も名前も経歴も何もかもを知らないはずなのに…あのおじさんのことグチャグチャにして殺したくなってくるんだよなぁ、なんでだろうなぁ…。

 

 本格的に、魔物に成りかけてるのかなぁ…けどその割には他の奴等を殺したいって気にならないんだよなぁ…不思議だなぁ。

 

 その後、多少街に近づいて兵士っぽい人間の話を盗み聞きした結果、あの青い服のおじさんは『きょうれいいん?』とか言うところのお偉いさんらしい、大賢者…だったかな? 役職名。

 

 道理で偉そうだと思ったよ、肩で風切って歩くのは良いし自分に自信を持つのも良いけど、ああいうヤツが偉そうにしてるとロクなことにならないんだよなぁ。

 

 というかあの『きょうれいいん』ってとこがこのスメールの中心っぽいし、ナーちゃんが居るのも多分あそこだろ? どうやって近づきますかね〜。

 

 

追伸

 

 ナーちゃんに『教令院』に突撃するのは無し、もう少し待ってと止められた、何をするのか全部読まれてた、少し落ち込む。

 

 

 

 

○月ナス日 晴れ

 

 

 歩いていたら踊ってる子が居たからガン見した。

 

 服装は少し露出が多かったけど、璃月に居たドスケベ三銃士みたいな感じじゃなくてビバ!踊り子! みたいな服装だったから、多分踊り子なんだろうと思う、そういう露出は良かろうなのだ。

 

 暫く見てたら見てることに気づかれてビックリされた、可愛い。

 

 ただ、その後が問題で、なんか名前を呼ばれたんだよなぁ……『コナタ』くん? って確かめるみたいに。

 

 いやぁびっくりしたよねぇ本当に、だって俺の兄ちゃんの名前を俺に向けて使うんだもん、お陰でついつい詰め寄っちゃったし。

 

 この時ほど喋れないことに苛々したことはない、だって聞きたいことも言いたいことも何も伝えられないんだから。

 

 文字は分かるけど書けないし、伝える方法も無かったし、とりあえずその場から逃げるように俺は立ち去った。

 

 

 ミナに喋ってもらえばいいじゃないかって思うかもしれないけど、ミナの声は確認した限り俺と小龍と鐘離さんにしか聞こえないから伝えられないのだ、ちくそぉ〜。

 

 

追伸

 

 今思ったんだけど、別に文字書けなくても絵は描けるんだから、兄ちゃんの絵を描いて見せればそれで分かったのでは? ボブはそう訝しんだ。

 

 

 

 

○月ゴボウ日 雨

 

 でっかい木の上からスメールを見渡してみたら、なんか砂漠みたいな所が見えた。

 

 一面砂色、茶色なのか黄土色と言うべきか…恐らく後者。

 

 ナーちゃんにスメールに突撃しないでって言われちゃったし、まだ森いっぱいのこっちの方は探索し終えてないけど、明日辺りに行ってみようかな?

 

 どうせやることなくて暇だし、砂漠なら使わずに腐りかけてる岩元素も活躍させられそうだし、一石二鳥ってやつだな。

 

 水は…ミナに頼みますかね。

 

 さてさて、何がありますかねぇ〜?

 

 

 

追伸

 

 ウキウキしてたら蛍が居た、逃げた。

 

 

 

 

○月ジャガイモ日 晴れ

 

 早速今から砂漠へと探索に出掛ける! 後に続けミナリー!!

 

 というわけで砂漠でこざいます、ふふふ……………アチィ!!?

 

 いや待て暑い、暑いぞここ、主に俺の毛皮のせいで無茶苦茶暑いぞここ。

 

 ミナが水元素で俺の身体を覆ってなかったら早々に狼のミイラが出来上がってた、流石ミナと褒めてやりたいところだぁ。

 

 とりあえず、適当な洞窟に寝床を作った、涼しい。

 

 飯は…あのデカい鳥でいいや。

 

 

 

追伸

 

 寝てる途中で気配を感じて起きたらアヌビスが洞窟の入り口で仁王立ちしてた、相変わらず目はガン開き。

 

 多分瞬間移動が使えなかったら死んでた、そのくらい殺気がエグかった、だから怖いんだって。

 

 というか途中からなんか纏ってきて益々アヌビスって感じの形態になって追いかけてくるし、何がお前をそこまで突き動かす。

 

 しかも何が恐ろしいって、このアヌビスも大概速かったけどさ、蛍はこれの数倍速いし怖かったってことなんだよ。

 

 だから二人同時に追いかけられたら俺は多分泣く。

 

 まぁ、流石にそんなことはないとは思うけどね。

 

 

 

 

 

○月サツマイモ日 晴れ

 

 

 村っぽいのを見つけた、遠くから見るだけに留めておこうとしたら見つかったし槍ぶん投げられた。

 

 槍を投げたのは民族衣装みたいなのを着たお姉さんだった、その隣には姉貴って言いたくなるような人が居た、北斗さんとは別タイプの姉貴さんだなきっと。

 

 村に入る気とかないし、戦う気も無いしで帰ろうと思ったら……目の前に蛍とアヌビスの二人が居た、二人共揃って俺のことをガン見してた。

 

 二人共、威圧感が昨日と一昨日のそれではなく、その目は不思議と光っているように見えた。

 

 …うん、とりあえず逃げたよね、お姉さん達の居る方向に。

 

 お姉さん達が二人に意識を割いていてくれて助かった、お陰で楽に二人を突破出来た。

 

 いや、本当に村に入る気とか全く無かったんだよ? けど仕方がないじゃないかあんなの。

 

 あんなのに向かって行くくらいなら後方の怖そうなお姉さん方に突っ込んで死ぬ方がマシなんじゃい! そんな感じのヤケクソ気味の状態で村の中に突っ込んじゃった俺は、適当に走って逃げた後にそのまま村の外に飛び逃げた。

 

 だって村の物壊したら絶対に槍の方のお姉さん怒るじゃん? 絶対にあの二人みたいな感じで殺しにくるじゃん? だったらもう村の外に逃げるしかないじゃないか。

 

 …でだ、理由とか理屈は知らないけどそれが分かってたんだろうなぁ、あの二人。

 

 だって外に出たら蛍のヤツが普通に居たし、何だったら後ろからアヌビスが追いかけてきてたから挟み撃ちの形になってるし……計ったな! 計ったな○ャアァ!!

 

 だがまだだ! まだ終わらんよ!! 俺の人生…じゃなくて狼生(仮)はこんな所で終わるようなものじゃない! というか終わらせたくない!! シニタクナァ~イ!!!

 

 

 

 

 成し遂げたぜ(逃走成功)

 

 

 

追伸

 

 なんか遠目から氷元素と風元素が飛び交うのが見えた。

 

 氷元素の方はなんか飛んでるのが色々してるのが見えたけど、風元素の方は見えなかった。

 

 危なそうだから近づかないでおいた。

 

 

 

 





主人公

 遂に両名に追いかけられ始めた、大変だねw

 自分でも理由が分からない殺意をとあるクソジジイに向けている、多分止められてなかったらバラバラにしてた。


蛍&アヌビス

 主人公を追いかける際に村の家の屋根の一部を吹き飛ばしてしまった為、槍のお姉さんに無茶苦茶怒られた。


踊り子

 主人公の兄の名前を偶然出してしまった人、なんで知ってるんでしょうね?


青い服のおじさん

 その日、延々と殺され続ける夢を見た…スメール人の大人は夢を見ないはずなのにね〜。




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トリイ!!


 特に意味の無い不穏な言葉の羅列が作者を襲う。


 

 

○月ピーマン日 雨

 

 夢を見た、多分昔の夢だ。

 

 どんな夢だったのかは覚えていない、夢ってそういうものだろうと思うけど、珍しいなって思った。

 

 ただ、真っ赤だったのは覚えてる。

 

 地面が真っ赤で、壁も真っ赤で、俺の目に映る全てが真っ赤だったのは、なんとなく覚えてる、それだけは覚えてる。

 

 その光景を思い出すと、不思議と泣きたくなった。

 

 あの夢を思い出そうとすると、何故だがあの赤い狼が頭の中に浮かんでくる。

 

 暫く…赤色は見たくないかもしれない。

 

 

追伸

 

 ナーちゃんにひたすら抱きしめられた、ナーちゃんは涙を流しながら何も思い出さなくていいと言っていた。

 

 思い出さなくていいって、どれのことだろう?

 

 

 

 

○月パプリカ日 晴れ

 

 

 なんか調子が悪い気がする、外に出ようと思えない…こんなに晴れてるのになぁ。

 

 ミナにもキノコン達にも心配されちゃったし、ちょっと今日は大人しくしておこうと思う。

 

 

 

追伸

 

 爪が疼く、何かを裂きたいって震えてる。

 

 明確な目標がいることは分かってる、けど俺にはそれが何なのかが分からない、俺が何を求めているのかが…全く。

 

 おかしい、俺は一昨日辺りまで普通だったのに…なんでやろ?

 

 

 

 

○月トマト日 晴れ

 

 

 呼ばれている気がする、誰かが、何かが俺は呼んでいる…そんな気がする。

 

 その声は、俺を『対』と呼んでいた…対という言葉がどういう意味合いを持つのかを俺は知らないけど、それがなんとなく俺のことなんだってことは分かった。

 

 なんで俺を呼ぶのか、それは分からないけど…俺はそいつの所に行かなきゃならない、例えその先に何があるのだとしても、絶対にそこに行かなきゃならない…そんな気がした。

 

 いや、もしかしたら行く必要すら無いのかもしれない…きっと、俺が呼べば、奴は俺の所に来る、絶対に。

 

 

 

 

 …呼ぶのは…綺麗な満月の日…分かってる…『約束』だもんな。

 

 覚えてる、ちゃんと。

 

 

 

 

 

追伸

 

 

──赤い狼と一人の少年とも少女とも取れる子供の姿が大きな満月を背景に描かれている。

 

 

 

 

 

 

 

 

○月蓮根日 晴れ

 

 

 俺! 完・全・復・活!!

 

 いやぁ、ここ数日の間は俺らしくもなく辛気臭くなってたけど、それも今日で終わりだ終わり!

 

 というか昨日と一昨日の記憶が曖昧だったから日記読み返してみたけど…なんか自分でも意味分からないこと書いてたなぁって。

 

 いや、一昨日のはなんとなく分かるけど今日のは何? もしかして世に言うところの中二病というやつなのかこれ? ちょっと痛々しいんだけど?

 

 あぁ、そういえば昨日赤い狼に会った、多分呼べば来るっていうのはアイツのことだな、殆ど覚えてないけど。

 

 強いて言うなら対よ対よって言いながらひたすら頬擦りしてきたくらいだな、アイツのしてきたことって。

 

 なんか前会った時に比べて妙に穏やかな雰囲気になってたし、何か良いことでもあったのかなぁって思ったりする。

 

 

 

 あとは…そうだな、その赤い狼とミナの仲が死ぬほど悪いことくらいだな、お互い本気で潰しに掛かってるように見えたし。

 

 赤い狼が俺に頬擦りしてる時に横合いから唐突にこの前の中から吹き飛ばす矢を射ってきたくらいだからな、何故か知らんけど無茶苦茶アイツのことが嫌いらしい、なんでやろね?

 

 赤い狼の方もなんか赤血操術みたいなので攻撃してたし、これもう分かんねぇな。

 

 

 まぁ、そんなこんなで暫く経つと赤い狼は帰っていった、帰り際にしきりに俺の方を振り向いてたのがちょっと気になったな。

 

 

 

追伸

 

 ナーちゃんに涙目でもう大丈夫? と聞かれた、何のことかは分からなかったけど、考えるよりも先に大丈夫と答えていた。

 

 それを聞いたナーちゃんはそう、良かったわと言って俺を抱きしめた…最近凄く抱きしめられる気がする、けど悪い気はしないので良しとする。

 

 

 

 

 

○月里芋日 晴れ

 

 黒い鳥みたいなのに会った。

 

 今日はこの前見た風元素と氷元素の撃ち合いが起きていた場所に行ってみようと思った、暇だったからな。

 

 準備もしていざ行こうと思ったら、ブオンブオンと大きな風切り音を出した白い何かを纏った巨大な黒い鳥が俺目掛けて突っ込んできた、いやぁ…ビックリしたよね本気で。

 

 一度避けても上空で旋回しては何度も何度も突っ込んでくるし、何だったら氷元素の弾丸撃ってくるしで一度地面に叩き落とすまでが本当に大変だった。

 

 因みにどうやって叩き落したかって言われると…流砂爆流としか言いようがない。

 

 アレだよね、本当はハガレンの錬成岩パンチみたいなとか某初代の百手観音的なアレにするつもりだったのに、何故か流砂になったよね。

 

 というか砂って岩元素に入るのな、ビックリだよ。

 

 まぁ、そんなこんなで地面に叩き落したわけだけど…まぁ、ここからも本当に大変だった。

 

 だってこの鳥、地上戦でも無茶苦茶強かったんたもの。

 

 絶対に地上戦やり辛いだろう足の爪で足技みたいなこと平然としてくるし、かと思ったら氷元素纏わせて剣っぽくなった翼を振り回してくるし、何だったら氷元素で周囲一帯凍らせて生命活動停止させようとしてくるし…他にも色々あったけど、とにかく強かったよね、こっちも奥の手を使わされたし。

 

 因みに、前々から奥の手を奥の手って書いといて一切説明が無いってのもアレだから説明しとくと、俺の奥の手は一種の『リミッター解除』だ。

 

 100%より更に上、120とか500%とかの力を引き出す、そういった類のリミッター解除だ。

 

 俺の場合は元素の出力のリミッターを外すもので、これをすると元素関係に於ける全ての能力が向上するし純粋に出来ることが増える。

 

 其々雷元素や岩元素、草元素ごとにリミッターが設けられていて、時と場合によりけりで必要な元素のリミッターを解除したりする、本気で行く場合は全解除したりもする。

 

 因みにこのリミッター解除、時間制限とか特に無いしデメリットも特に無い、強いて言うなら疲れる。

 

 リミッター一個解除の時とかは大して疲れないけど、全解放した時とかはマジで疲れる、ついでに言うなら全解放しなきゃいけないような相手と戦うってことだからもっと疲れる。

 

 

 今回の黒い鳥に対しては一つだけ元素のリミッターを解いた、具体的に言うと雷だ。

 

 因みにだが、普段は青色の雷を放つ俺の雷元素だが、リミッターを解除した時限定で何故か紅い雷元素へと変化する、なんでやろね?

 

 まぁ、そんなこんなでバカスカバカスカと戦ってたんだけど、鳥の翼をへし折った辺りで鳥が逃げようとしてたから、逃すまいと追い打ちを掛けようとしたんたけど…なんか地面から首だけの大きな紅い狼が出てきた。

 

 いや、顔だけって言うより龍みたいや身体した狼なのかな? 日本昔話とかそういうので出てくるタイプのやつ。

 

 それが唐突に地面から飛び出してきて辺り一帯無差別に紅色のブレスみたいなの吐き出してた。

 

 無差別というわけで俺も鳥も狙われたわけだけど、まぁ普通に避けたし当たりもしなかった、狙いも雑だったしな。

 

 それでまぁ、やられたらやり返すのが世の礼儀というわけで、反撃してやろうと紅い大狼に突っ込もうとしたら…何故か稲妻に居るはずのグレート海乱鬼が紅い大狼を蹴り飛ばしてた。

 

 なんか狼もグレート海乱鬼も互いにブチギレてる様な感じがした、正直ちょっと怖い。

 

 しかもこの二体を見てる間に鳥には逃げられた、白けたから二体をそのままにして家に帰った。

 

 因みに、今日はミナは居ない、なんでも行きたいところがあるらしく、朝早くから何処かに飛んでいった。

 

 ミナが居たら、多分もうちょい楽だったかな?

 

 

追伸

 

 帰ってきたミナが俺を見てガビーンって感じにショックを受けていた、かわいい。

 

 若干震えた声で何かあったのって聞かれたから、今日の鳥のことを教えた。

 

 そしたら何処かに飛んでいこうとしていたので、ガシッと掴んで抱き寄せてそのまま寝た。

 

 相変らず気持ちいいなぁって思いました、まる。

 

 

 

 

 

 

 





主人公

 日記でちょくちょく不穏な言葉を垂れ流したやつ、特に意味は無い。

 日記では黒い鳥との戦いを軽い感じで書いているが、実際は割りかし死闘で主人公もそれなりに傷だらけである。

 なお、当の本人は別に本気は出していない模様。


黒い鳥

 仕掛けたらボコボコにやり返された鳥、しかも翼を二度と治らんレベルでへし折られた。


赤い狼

 呼びれたから喜んで来た子、ウキウキしながら来た。

 なんか小難しい口調で喋ってるけど、意訳すると寂しいから一緒に居てとしか言ってない。

 因みに、ナーちゃんの言っていた赤い狼とは別個体。


グレート海乱鬼&紅い大狼

 命オイテケヤァァァァァァァァッ!!!!



ミナ

 稲妻に行っていた子、帰り際に空の上の方に居る雷のバチバチしてた鳥をムシャムシャしてきた。

 


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番外編 ミナの一日 ぱーと1


 たまにはミナがメインの話でも書いてみようかなと思います。
 
 また無相が変な方向に進んでるよぉ…。


 

 

➀ ミナの朝の日課

 

 

 

 

 彼女、『無相の水』こと『ミナ』の朝は早い。

 

 朝…何時頃かは知らないが朝早くにパチリと起床する。

 

 元素生物に睡眠が必要なのかと問われれば多少の疑問もあるが、兎に角にとミナは寝て早く起きるのだ。

 

 起床し、周囲を見渡したミナが真っ先にすること…それは自分の隣で寝ている白い獣域ハウンドこと『彼方』の寝顔をガン見することである。

 

 鼻提灯を膨らませ、緩んだ顔で幸せそうに寝息を立てる彼方のことを、ミナは彼方が起きるその瞬間までジ〜ッと見つめる。

 

 飽きもせず、食い入る様に、ジ〜ッと見続けるのだ。

 

 それから暫くして、彼方が欠伸をしながら起き上がる。

 

 そんな起き上がった彼方に向かって、ミナは突撃する。

 

 ポスっという軽い音を鳴らしながら彼方のフサフサとした毛並みが自慢の身体に突っ込み、スリスリと身体を左右に動かす。

 

 

 そんなミナに小さく唸り声を上げて彼方は身体に入り込んでいるミナの身体…というよりもコアを撫でる。

 

 

 これが彼女の朝のルーティーン、ある日から唐突に始め、少なくとも消えるその時まで続けるであろう、彼女の朝の日課であった。

 

 

 

 

 

② ミナの悩み

 

 

 

 とある日のこと…無相の水ことミナは、あることで悩んでいた。

 

 その悩みとは何か? それは───

 

 

 

『横暴反対!!』

『ボク達ニモ身体ノ主導権ノ自由ヲー!!』

 

 

 これである。

 

 彼女のコア、その内側にて発せられるその声、これこそがミナの悩みそのものであった。

 

 

『…うるさい、却下』

 

 ミナは端的に、バッサリと声達の主張を切り捨てる、彼女からしてみれば声達の要求は論外のソレだからだ。

 

 

『何ヨ! イイジャナイ何時モ何時モ主導権握っテルンダカラタマニハ私達ニモ寄越シナサイヨ!!』

『この前渡したと思うけど…』

『タッタ半日ダケデショウガブッ殺スワヨ!?』

 

 キィヤァァァァァと喚く声に、ミナは頭が無いのに頭が痛くなったような気がした。

 

 これだ、これこそが今現在彼女の最大の悩み、自身が取り込んだ無相達、その『自我』による自分への抗議だ。

 

 やれ身体を寄越せ、やれ元素を寄越せ、やれ『お兄ちゃん』もとい『パパ』と遊ばせろだこうだとあれやこれやと難癖を付けてくる。

 

 あまりにも煩くて一度身体を渡してみれば、自分でもやったことのなかったことを彼方にされたりやったりと羨ま…傍迷惑な行動を繰り返し続ける始末。

 

 ミナからしてみれば、そんなことをされたら誰だって渡したくなくなるに決まっていると言いたい気分だった。

 

 

『ソモソモ私ハネ! マダ貴方ノコトヲ許シタ訳ジャナインダカラネ!!』

 

 トゲトゲしい言葉、そこに籠められている感情は怒りと憎しみ。

 

 ミナからしてみればなんのこっちゃと言いたくなる程に向けられる覚えの無い激情、それの矛先を『声』は彼女へと向けていた。

 

 しかし、残念ながらこれに関しては完全にミナの自業自得と言わざるを得ない。

 

 何故ならば──

 

 

『…何かした?』

『不意打チカケル時ニ私ゴト『リッチャン』ノコト潰シタデショウガァァ!!!!』

『…ボク、タダフヨフヨシテタダケナノニ……』

 

 

 そう、ミナの行った不意打ちこそが全ての原因だった。

 

 例えばそう、先程からキーキーと荒ぶっている声こと『無相の雷』は毎日一定の時間になるとやってくる珍しい斑模様のリスこと『リッチャン』を大層可愛がっていた。

 

 具体的に言うと普段のキューブの様な姿ではなく完全に無防備なコアの形態且つ普段から身体の端々でビリビリしてる雷元素を極限まで抑え込み、多少当たってもちょっとピリッとするくらいの出力まで調整していた。

 

 更にその状態で手の様な物を作り出し、その手でリッチャンを撫でたり餌をあげたりしていた。

 

 そんな彼女にリッチャンは懐いていたし、そんなリッチャンを彼女はそれはもう…それはもう大切にしていた。

 

 

 そんな時に唐突にやってきた挙げ句に全てをぶち壊したのがミナである、なんだったらリッチャンを可愛がっていた彼女に無慈悲に不意打ちかましたのもこのミナである。

 

 詳細に言うと、ミナは水の塊をとあるデカい氷の花がある場所で作って凍らせ、それを軽く六個程作った状態で無相の雷の居処に赴き、それをリッチャンを可愛がっていた彼女に向けて叩きつけた。

 

 当然、何の備えもしていなかった彼女は大ダメージを負ったし、リッチャンはプチっと潰された。

 

 その時の彼女の絶望たるや、言葉に尽くし難い。

 

 しかしミナは、そんな状態の彼女に絶望を認識する時間すらも与えなかった。

 

 一度振り下ろした際に砕け散った氷の塊と同じもの、上記に記してある通りの残り五つのそれを一斉に彼女に向けて叩きつけた。

 

 絶望の最中、思考することすらままならない状況下で、更に向けられる無慈悲で無感動な暴力の嵐、彼女はその真っ只中で何も出来ずに力尽きた。

 

 そうして力尽きた彼女を、ミナはパクリとしたわけだ……うん、これは酷い。

 

 因みに、その光景を無相の雷と非常に…ひっっっっじょょょうに仲の良かった狼少年が目撃してしまっており、それを切っ掛けとして鬼も裸足で逃げ出すレベルの殺意に目覚めてしまい、それが巡り巡って自分へと辿り着くことになることをミナは一欠片も知らないが、それはまた別の話。

 

 

『…あぁ、あの時の…忘れてた』

『アンタホントウニブチ殺スワヨォォ!!?』

 

 

 しかし当の本人はうろ覚え、流石に自分でここまでやっておいて忘れるというのは流石にドン引きせざるを得ないし誰だって怒る、作者だって怒る。

 

 

『頭キタ…! モウ容赦シテアゲナイ! 今ココデソノ自我ゴト消シ飛バシテ───』

『うるさい』

 

 バシィィンッ!! と非常に重そうな水の触手による鋭いビンタが無相の雷へと炸裂…した様な音がミナの内側で響いた。

 

 ミナ自身も中で何が起こっているのかは知らない、ただ自分がそうしたいと思ったら中でそういうことが起きるので、あまりにも煩いようだったら今の様に無相の雷を叩くというイメージをしているだけだ。

 

 実際、彼女には音の後にへぶぅっという無相の雷の悲鳴が聞こえている為、実際叩けているのだろうと考える。

 

 

『…ぐすッ…ゴメンネリッチャン…敵マタトレナカッタ……助ケテレッチャン…』

 

 

 そんな雷の言葉を煩わしく感じながら、ミナは今日も今日とて彼方に引っ付くのであった。

 

 

 なお、後に何だかんだであと四体くらい無相を取り込むことになり、その度その度に中から声が増えることを、この時のミナは知る由もないのであった。

 

 

 

 

 

 

 

『……ネェ…ボクハ…?』

 

『……花火……見タイダケナノニナァ…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





『無相の豆知識』

 『ミナ』を筆頭として、ミナがパクリと取り込んだ全ての無相には明確な自我があるが、その後に生まれた無相には自我と呼べるものは無い。



ミナ

 日々を過ごしていた無相達に不意打ちを噛まし、その力を根こそぎ奪い取って自分の物にしていた子。

 モチーフはありふれのユエ…だってやりそうじゃん?


『無相の雷』

 目の前で唐突に大切にしていたペット(仮)を自分と一緒に潰され、その絶望に浸る間もなくボロボロにされた挙げ句にパクリンチョされた子。

 キーキーと叫ぶのが特徴的で、基本的に素直じゃない。

 多分無相の中で一番ミナに意味無く叩かれる子。

 モチーフはプリコネのキャル。


『無相の炎』

 影の薄かったボクっ娘、本来の無相の炎が居た場所で何処かの花火屋の娘さんが打ち上げている花火を見ていたら背後から不意打ちを食らってパクリといかれた子。

 別に自我があるから良いし、何かを失ったわけでもないから別に良いけど…それはそれとして花火が見たい。


 因みにこの後、謎の直感を発揮した彼方が花火を再現したとある技をうろ覚えで放ったことで本格的に彼方に懐いた。



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番外編 ミナの一日 ぱーと2


 ミナ…というより無相メインの番外編第二弾、仕方ないじゃないネタが無いんだもの。

 文字数がちょっと少ないかな?


 

 

③ 唐突に投げ渡された地獄への切符

 

 

 

『ふざっっけんじゃないわよぉぉ!! この性悪水悪魔ァァァァァァ!!!!』

 

 彼女、『無相の雷』こと通称『ビビ』*1は怒り狂っていた。

 

 何故か? それは───

 

 

「モラクスゥゥゥゥゥッッッ!!!!!」

 

 

 彼女の目の前で暴れ回っている二本角のドでかい龍のせいに他ならない。

 

 岩元素のブレスを吐き出し、足を踏みしめるだけで地割れが出来たり上から洒落にならない大きさの岩が降ってくる、しかも何故か岩元素を纏った状態で。

 

 それだけじゃない、龍の大きな身体には氷元素の木に加え、身の毛も弥立つ程の水元素の濃い気配を醸し出し、それら全てが自分達を殺そうと蠢いている。

 

 地割れによって作られたひび割れた亀裂から吹き出る氷元素の刃に、龍の背中から発射される追尾してくる巨大で速い水元素の弾丸その他諸々。

 

 それら等しく全てが、自分と自分が兄と呼ぶ狼と何か何時の間にか居た変人一人と変態一匹を殺しに掛かってくる。

 

 ()()()()()()()、ミナにぷちっとやられたその時から彼女の中には殺意への恐怖というものは殆ど無いに等しいからだ。

 

 急に、こんな状況で呼び出したことも大した問題ではない、ビビからしてみれば身体の主導権が貰えるならなんであろうと同じだし、こういう風に主導権を渡されることも多かったから。

 

 では何故こんなにも怒り狂っているのか…それはミナがビビに、やられたら誰もが怒り、憎悪の感情をぶつけられても文句の言えないとてつもなくエグいことをやらかしたからだ。

 

 では、そのエグい行いとは一体何か…それは簡潔に言ってしまえば『夢』への介入である。

 

 

 実は、つい先程までビビは眠りこけていた。

 

 ミナの中で、ミナや無相の炎こと通称『ハナ』*2と最近ミナが取り込んだ無相の風こと『ハヤテ』*3が頑張って龍を相手に戦っている間、ずっと眠りこけていた。

 

 呼んでも起きない、ビンタしてみても起きない…だから彼女はぐーすかと幸せそ〜うに眠っている彼女に、幸せそうな夢を見ている彼女に、あるとんでもない劇物を放り込んだ。

 

 ビビが非常に大切にしていたリス、リッチャンが潰れる光景、ビビと呼ばれる特殊な存在唯一の絶望の光景を、夢として何度も何度もリピート再生するというとんでもない劇物を。

 

 それはまるで、トラウマと言う名の傷口に塩どころかデスソースを塗り込むが如き所業、しかもそれをしたのはそのトラウマを作り出した張本人という始末。

 

 

 彼女は起きた、トラウマ穿り返されたら誰だって起きる、神様だって起きる。

 

 そうして目覚めた彼女に、ミナは一言こう言った。

 

 

──…出番

 

 

 その言葉と共にビビは身体の主導権を明け渡され、今に至る。

 

 

 …うん、誰だって怒る、こんなことされたら誰でも怒る。

 

 因みに、ビビのミナへの罵倒した際にミナが返した言葉が──

 

 

『呼んでも起きない貴女が悪い』

 

 

 これである。

 

 この言葉を聞き、ビビは決意した、必ずこの性悪水悪魔を滅してやると心に誓った。

 

 その為には、まず目の前のこのバカデカい龍が邪魔だった。

 

 …だから───

 

 

 

『ハナ、()()()()()やるわよ』

『…アレ、そんなに好きじゃないんだけどなぁ〜』

 

 

 そう気怠げに、ハナは一つ返事をした、否定はしなかった。

 

 

『ミナ…あんなので起こしたんだからちゃんと防いでよね』

『……やることはやる…貴女がもっと早く起きてたらあんなことしなくてよかったのを忘れないで……ところでとっておきって何?』

 

 

 そう言うのと同時に、彼女の目の前に迫っていた水の弾丸が、雷元素と水元素の触手によって全て弾き飛ばされる。

 

 それはミナなりの肯定の返事であった。

 

 なお、とっておきに関しての返事はしなかったものとする。

 

 

『ハヤテは………いいわ別に、寝てて』

『オレに関してだけ扱い酷くねぇか!?』

 

 一人いらないと言われて、抗議の声を上げる無相達の黒一点ことハヤテ、だけど仕方がないのだ、何故なら彼は飛んだり速さを競うこと以外では大して役に立たないのだから。

 

 

 

『さぁてと…やりますかぁ!』

 

 

 この後、彼女は雷元素と炎元素の合わせ技…彼方の日記に書いてあるメド○ーアの様なナニカをぶっ放して龍を撃退した。

 

 久しぶりに大技をぶっ放せてスッキリしていた彼女は、その後に山を吹き飛ばすレベルの大技を何の躊躇もなくぶっ放したことに関して延々とミナに説教され、暫く身体の主導権を渡してもらえなかったそうな。

 

 

 

 

④ ヘンテコなヒルチャール

 

 

 

 それは帰り際のことであった。

 

 彼女、無相の水ことミナはつい先程ハエの如くブンブンと飛び回る自分の同族を取り込んだ帰りであった。

 

 用事も済ませていざ帰ろうとした時のこと、ミナは偶然『ソレ』を見つけた。

 

 カバンを枕にして寝そべり、寝息をぐうぐうと鳴らしている、白い髪と仮面が特徴的なヒルチャールを。

 

 幸せそうに寝ている、Zzzという文字が浮かんで見えるくらい幸せそうに寝ている、まるで何処かの同族(雷)の様に。

 

 ミナはその姿をじ〜っと見つめ、唐突に水元素の塊を生成した、どうやら水を掛けて起こそうとしているようだ、やめてやれ。

 

 ミナはヒルチャールの直ぐ側まで近づき、ふよふよ浮かび上がらせている水元素の塊をヒルチャールの頭上へと移動させる、どうやら上から落とす気らしい。

 

 ヒルチャールの顔は仮面で覆われていて見えないが、それでも幸せそうだ、口元らしき箇所から涎が垂れていることから、どうやら美味しい物を食べている夢を見ているらしい。

 

 寝言の様にぶつぶつと呟かれるその言葉も、意味は分からないが何処となく嬉しそうで非常に幸せそうである。

 

 そんなヒルチャールの姿を見たミナは、ふと思い出す…そういえば彼はヒルチャールを殺したことは一度も無かったことを。

 

 理由は分からない、分からないけど彼は、彼方はヒルチャールを殺したことが無い、何だったら意図して怪我を負わせた自体が非常に少ない。

 

 人間相手には手加減しても普通に倒すのに、ヒルチャールに限って言えば殆ど何もしていない、精々が小突いて追い払う程度。

 

 そこまで考えてから、ミナはふと思ってしまった。

 

 

 もしかして、今ここでこのヒルチャールを虐めたら、彼にきらわれてしまうんじゃないか? と。

 

 そこからは速かった、水は何処かに投げ捨て、手に入れたばかりの風元素を使って翼を生み出し、そのまま璃月にいる彼方の元へと飛んだ。

 

 不安で仕方がなかったのだろう、帰った時に彼が居ないという状況になっているかもしれない、何処かで見ていた彼が自分から離れるかもしれないという恐怖でいっぱいだった。

 

 当然そんなことにはならないのだが、未だ生まれて幼い彼女にはそんなこと分かるはずが無いのだ。

 

 

 居処に辿り着き、彼が居ることを確認した彼女はまだ彼方が居るという事実に安堵を覚え、何時も通りに彼の身体に突撃した。

 

 彼は彼女の背に風元素の翼があることに酷く驚いた様子だったが、まぁ何時ものことかとミナのことを撫で始めた。

 

 ミナの翼はバッサバッサと喜びを表すかの様に激しく動いていたという。

 

 

 

 

 因みに、ミナが投げ捨てた水元素の塊は偶然近くで寝ていたヒルチャールの王(雷)に直撃し、そのことに怒ったヒルチャールの王が飛んできた方向で寝ていたヘンテコヒルチャールを犯人と勘違いして殴りかかるという事件が発生した。

 

 当然殴られた側のヘンテコヒルチャールもそのことにキレてヒルチャールの王と敵対状態になり、夕日が沈むまで互いに殴り続けたそうな。

 

 なお、勝者はヘンテコヒルチャールであったという。

 

 

 夕日をバックに右手を突き上げる彼の姿は、何処か満足気で達成感に満ち溢れたものであったそうな。

 

 

 

 

 

*1
雷元素はビビってくるからビビ…因みに命名はミナ

*2
花火が好きだから花火の花をもじってハナ、命名はビビ

*3
無茶苦茶速いし速さを追い求める性格をしていたからハヤテ、命名はビビ





『無相の豆知識』

 彼女達は基本的に身体の主導権を持つメインとメインのサポートをするサブで分かれている。

 基本的にメインは攻撃から防御に移動まで全体的で一般的なそれを担当し、サブはそれらのサポートをする。

 完全戦闘モードの際にはそれら攻撃や防御の役割をメインとサブで完全に分担することもある、今回ミナは防御を担当した。



ビビ

 週ボス相手に四対一とはいえずっと眠りこけていたアホの子。

 トラウマを抉るようなやり方で叩き起こされ、それらの怒りを全て龍へとぶつけた子、この後ミナに怒られた。

 メド○ーアもどきをミナに内緒で作り出していた、なお後になってさも当然の様にミナにも使われた、しかも使い方が自分よりも上手かった、泣いた。


ミナ

 えげつない方法でビビを叩き起こした子、悪いと思ってるけどそれはそれとしてさっさと起きろ。

 その後、何の躊躇もなく特大の爆弾ブチかましたビビを延々と説教した、具体的に言うと山吹っ飛ばすとかふざけてるの? 的なことを延々と。

 多分彼方が居なくなったり、彼方に嫌われたりしたら本気で世界滅ぼうとする。


ヘンテコヒルチャール

 やったぜ、成し遂げたぜ…!


 


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スナアラシぃ


 リアルだと雷電将軍とかモラクス(ヒモ)は雷と岩元素の耐性ぶち抜いてきそうだと思う今日この頃。


 

 

○月キャベツ日 晴れ

 

 寝てたら急にデカい音が聞こえたから外に出て確認してみたら、未だ風元素の刃と紅い元素が飛び交っていた。

 

 よくよく見てみるとグレート海乱鬼と大狼がバチバチにやり合っていた、どちらも傷だらけだった。

 

 まだやってるのかよって思いながら見てたら…何故か蛍が乱入してきた。

 

 大声で文句らしき言葉をギャーギャーギャーギャーと叫んでから剣を構えて二体に斬り掛かって行って、それを二体が迎え撃っていた。

 

 そうしてまたドカドカと始まる大乱闘、正直とても喧しい。

 

 いや、喧しいのもやり合うのも全然構わんのだけど、とりあえず流れ弾をこっちに飛ばすのはやめてもらえません?

 

 

追伸

 

 音がしなくなったな〜とか思ったら一人と二体がバチバチと暴れ回っていた場所が焦土と化していた。

 

 いやびっくりしたよね、蛍も交じっていたとはいえここまで酷くなるものかね、あそこには池もあったはずなのに無くなってるし。

 

 というか遠目から見ても分かるけど、未だに雷元素とかがバチバチしてんだよなぁ、氷元素の余波なのかは知らんけどリスとかキツネみたいなのとかが凍ってるのが見えるし。

 

 しかも何だこの赤い雨? 匂い的に血とかじゃないのは分かるし触れても問題無さそうだけど…嫌な予感するんだよなぁ。

 

 

 

○月カボチャ日 砂嵐

 

 

 こっちと元居た場所含めて生まれて初めて砂嵐に遭遇した、目が痛いです。

 

 砂は湧き上がって視界は遮れるし、音が凄いせいで音を拾って周りの状況を判断するってことも出来ないし、匂いも辿れないしで最悪だった、多分俺にとって一番相性の悪い天気は砂嵐だ。

 

 しかも外出てる途中で遭遇したから身体中砂まみれだ、肌が痛いよこんちくしょう。

 

 もう二度と砂嵐の中は歩くまいと心に決めた。

 

 

追伸

 

 なんか砂漠の一定地帯限定で時折地面から何か緑色の虫みたいなのが飛び出してくる、何こいつ?

 

 普通にうざかったので、出てきたところを鷲掴みにして引きずり出して殺した、蛇っぽいから食えるのかなって思って焼いて食ってみたら思いの外美味しかったです、まる。

 

 

 

○月オクラ日 晴れ

 

 今日は変なヤツに会った、緑と白の服を着た男だ。

 

 何かスケッチブックみたいなのを持っていて、側にはこの前会った目隠し集団の緑色verみたいなのがいた、その顔は若干疲れているようにも見えた。

 

 んで、そいつらが俺に向けて突撃してきた、より正確に言うと緑白の服を着た男が興奮した様子で俺に突撃してきて、それを隣の緑さんが羽交い締めにしてた、まぁすぐに振り解かれてたけど…そんな細い身体の何処にそんな力があるよ。

 

 そうして俺へと突撃してきたそいつは、一定距離まで俺に近づいたと思ったら唐突に急停止し、スケッチブックを広げて何やら描き始めた、奇声を上げながら。

 

 その時のそいつの顔は恍惚としていて、正直見ていてとても気持ち悪かった。

 

 多分隣の人も俺と同じこと考えてんだと思う、だって顔がめちゃくちゃ引きつってたもの。

 

 なんか色々言ってたけど、とりあえず『七聖召喚』に関係する何かをしようとしているってことだけは分かった。

 

 途中途中でポーズとってとか元素使えるなら使ってとか色々と要求されたからとりあえず言われたこと全部やってみた、そしたらまた奇声上げて描き始めてた、引いた。

 

 俺にごめんなさいごめんなさいと言いながら平謝りする隣の男性が非常に不憫に思えたから肩をポンポンと叩いておいた…ええんやで逃げたって。

 

 

追伸

 

 葉っぱの妖精を見つけた、瞬間移動でヌッと背後に移動したら無茶苦茶驚いてた、逃げたから指先で摘んでぷらーんと浮かしたら泣き始めた、下ろした。

 

 暫く泣き止んでくれなくてわたわたしたよねホント、吉次郎を思い出す。

 

 元気にしてるかな、吉次郎のやつ。

 

 

 

 

○月タマネギ日 雨

 

 細マッチョなイケメンに会った、声が何かゴブリンをスレイヤーしてそうな声だった。

 

 出会うなり俺…というか背中に居るミナに興味を持ったのかは知らないけど、ふむって言いながらミナのこと覗き込んでた、その後ミナに秒速ビンタで岩盤に叩きつけられてた。

 

 俺が慌てて近づくとピンピンした様子で岩盤から抜け出てきて、出てきて放った言葉が『興味深い』『実に面白い』。

 

 それを聞いて、こいつもしかして某子供が苦手で自分の興味のあることにしかとことん反応を示さない無茶苦茶面倒くさい性格をした例の教授*1か何かかと思った俺はきっと悪くない、だって言動がそれなんだもの。

 

 とりあえず逃げたよね、ああいうやつは基本的に自分の興味や好奇心を満たすためならなんでもする類の人間だ、絶対色々されるし絶対面倒なことになる。

 

 だから逃げる、逃〜げるんだよォ!! スモーキィィーー!!!

 

 

追伸

 

 逃げて家に帰って寝たらナーちゃんに会った、あともう少しで会えると言っていたけど、そもそもナーちゃん何処に居るの?

 

 そう聞いてみたら『スメールシティ』と言っていた…いや待ってそこ何処?

 

 

 

○月レタス日 雷

 

 何だか今日は凄く雷が落ちてくる、しかも…何だろう、特定の場所に連続して落ちてた気がする。

 

 なんか雲の様子もおかしいし、色んな元素が集中してアヌビスと踊り子ちゃんの居た街に集まってる気もするしで、嫌な予感しかしないのだ。

 

 兎にも角にも、面倒事はごめんだ、色々と気をつけなくちゃ。

 

 とりあえず、住処の補強からだ。

 

 

追伸

 

 寝ようとしたら赤い狼が来た、あとついでに虎みたいなのも来た、二匹纏めて俺に寄り添って寝始めた、なんで?

 

 起こそうと思って揺さぶってみても起きないし、瞬間移動で逃げたら赤い狼が赤い水で捕まえてくるし、虎の方はぐるぐる鳴いてよたよたと俺に近づいてまた寝始めるし、お前等本当になんなの? 警戒心というものが無いの? 特に初対面のはずのそこの虎。

 

 

 

 

 

○月肉詰め日 晴れ

 

 ナーちゃんに助けてと言われた気がして、半ば反射的に声のする方向に突っ込んだら…何かデカいロボットと全身血塗れの紅い紅い狼と我等がトラウマが居たでござる、気配的に紅い狼は俺の知ってる赤い狼とは別種族とみた。

 

 とりあえず、蛍はナーちゃんを護ってくれてたみたいだから、俺は狼を担当した…まぁ担当したっていうよりそいつ引っ掴んで建物の外に押し出しただけなんだけどね…ここから出ていけぇぇーー!!!!

 

 それでまぁ、適当な場所まで引きずって行った後に本格的に戦い始めたんだけど…なんというか微妙だった。

 

 いや、確かに強いと言えば強かったんだよ、強かったんだけど…その、なんというか今まで戦ってきた奴等が強すぎてちょっと弱く感じた。

 

 ナーちゃんがあれだけ気をつけてって言ってくるからどれだけ強いんだろうと思って警戒してみたらそこまで強くないし、タルタルヤとかよりも強いのかなぁって思ってたら全然だし。

 

 しかも何か妙な行動が目立つというか不思議さが否めないというか…なんでアイツ俺の名前知ってた上に連呼してきたんだろ?

 

 俺だ彼方! とか俺が分からないのか!? とか帰ろう! とか言ってきたりで凄く面倒だった。

 

 初めてだよ俺、初対面の相手にあそこまで馴れ馴れしくされたの、初対面の狼相手に帰ろうってどういう神経してんだよ。

 

 まぁ、そんなわけで、この後も馴れ馴れしく帰ろうだのとか意味不明なことを凄く言ってきたから十七分割した後にブレスで消し飛ばした、すっきりだ。

 

 そういうのがしたいなら相手を選べってんだ。

 

 

追伸

 

 

 ナーちゃんに所に帰ったらナーちゃんが現実で会うのは初めてねって言いながら自分の頭をコツンっと俺の頭に合わせてきた。

 

 俺も実際に触れるのも実際に見るのも初めてだからちょっと感動して思い切り抱きついた。

 

 ナーちゃんがあぷあぷしてて可愛かったです、まる。

 

 その後にナーちゃんが世界樹? を治すと言って尋常じゃないレベルの雷元素が蓄積された何かを使って…何かがあった。

 

 何があったんだったかな…覚えてないんだよなぁ…。

 

 あぁ、ただ…『あの子のことをお願いね?』って声は聞いた気がする…あの子って誰だ?

 

 気づいたら寝床の上だったし、何があったのやら…うん、謎だ。

 

 

 

 

 

 

*1
ドラマ『ガリレオ』の主人公のこと





主人公

 スケッチされたりユニコーンしたり砂嵐に晒されたりと割りと大変な生活送っている狼くん。

 日記には行ったとしか書いてないけど、実際はナーちゃんの所に行く為にその場の天井をぶち抜いて来てる。

 自分の名前を呼ぶ存在を何の躊躇もなくぶち殺した、仕方がないね、鬱陶しいんだもの。

 世界樹を治した際の記憶が一切無い。


白と緑の男

 主人公のことをアヘアヘしながら描き切った変態。

 実は七聖召喚関係者で、新しい魔物のキャラカードを作ろうとしている最中に主人公に出会ってしまい、半ば一目惚れの様な感情の中で描き切った。

 後々、普通に販売され、猛威を振るうことになる。


紅い狼

 主人公にとって非常に重要なターニングポイント的な存在であったにも関わらず無茶苦茶ドライにぶっ殺された不憫の塊。

 冗談抜きで主人公の過去に深く関わるどころか根幹に居るような存在だったが、ナーちゃんの仕込み+主人公のドライ加減が合わさって何もすることなく殺された、哀れだね。


ゴブリンをスレイヤーしてそうな男

 知識欲を満たしたいだけ、満たしたいが為に無遠慮に近づいたら吹っ飛ばされた、実に面白い。





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ニイチャン!!


 コメント欄でみんなが紅い狼を兄呼びしてるの見て笑った。


 

○月ベーコン日 晴れ

 

 今日はナーちゃんの所に行った、抱きつかれた。

 

 紅い狼のことについて聞かれたけど、何とも言えなかった。

 

 何かなかった? とか何もされなかった? とか身体ペタペタ触りながら色々聞いてくるからちょっとむず痒かったし、どうしてそこまで聞いてくるんだろうと疑問にも思った。

 

 だってアイツそこまで強くなかったし、厄介でもなかったし、強いていうなら馴れ馴れしくて鬱陶しかったことくらいだ、ナーちゃんに心配されるようなことなんてないはずなんだけどなぁ。

 

 ナーちゃんは何もないならそれで良いのって頭撫でながら言ってたけど、本当に何かあったんだろうか? 少し心配だ。

 

 

追伸

 

 この前会った変態っぽい絵描きにカードの束と説明書の様な物を渡された、なんでもやってみてほしいらしい…俺って一応狼で魔物なんだけどなぁ。

 

 とりあえず渡された説明書とカードの束、多分デッキであろうそれを読み進めた…意外と面白そうだな七聖召喚。

 

 けど一つ言わせてほしい…なんで俺が書かれたカードがあるの? しかも見た感じキャラ用のヤツ…なんで?

 

 

 

 

○月豚肉日 晴れ

 

 今日は本当に驚いた、だって兄ちゃんが居たんだもの。

 

 いやいやマジで驚いた、後ろ姿見てもしかしてって思ったけどやっぱり兄ちゃんだった、感極まって抱きついちゃったよね。

 

 けど何より嬉しかったのが兄ちゃんが俺のことに気がついてくれたこと、もう人じゃないから気づかれないと思ってたけど案外何とかなるもんなんだな、嬉しいや。

 

 しかも言葉まで通じたからこりゃもう話すしかないなと思って今日は夜遅くまでずっと話してたし、飯も食べた。

 

 暫くしたら兄ちゃんは遠慮がちそうに用事があると言って何処かに行った、それを俺も止めることはしない、だってこっちに居るって分かったなら何処かで絶対に会えるからな、次会う時を楽しみにってやつだ。

 

 まぁ、そんなわけで今日はとても良い一日でしたよっと。

 

 …あ〜、でも変なこともあったな、兄ちゃんがミナを見て何かポカンって顔してたことにしてもそうだけど、ミナに対しては『お前は本当に無相なのか?』って言ってたのも気になった…どうしてあんなこと聞いたんだろ?

 

 

追伸

 

 忘れてたから書くけど、昨日ナーちゃんに会いに行った時にはナーちゃんから首飾りを貰った、黄緑と青が合わさった綺麗な色彩が特徴的な首飾りだ。

 

 ナーちゃんにこれを私だと思って大切にしてねと言われて手渡された、大事にしようと思った、まる。

 

 

 

○学校鶏肉日 晴れ

 

 

 アヌビス──名前はセノというらしいことをこの前知った──が七聖召喚をやっているところを遠目に見つけたから、ちょっと勝負を挑んでみた。

 

 俺を見つけるや否や全力で突撃してこようとしていたセノさん? も俺がデッキを取り出すと一瞬静止した後に『良いだろう、勝負だ…!』と言いながら無駄にスタイリッシュにデッキを取り出した……いや、俺が言うのもなんだけど、よく魔物相手にカードゲームしようと思ったよね。

 

 まぁ、その後はあぁだこうだと七聖召喚してたんだけど…うん、割りと激戦だったんじゃいかなぁって思う。

 

 何回くらいしたかな? もう十越えた辺りから数えてないんだよなぁ、お互い勝っては負けてを繰り返してたから。

 

 あぁ、因みに最後の勝負では俺が負けた、とりあえず負けたからには何か渡そうと思って、報酬というか勝者に渡せそうな物がこの前拾った綺麗なカードくらいしかなかったから、それを額縁に入れたまま渡しておいた。

 

 何か言いたげだったけどそれら一切を無視して俺は帰った、だっていらないとか言われたら傷つくもん。

 

 

追伸

 

 俺の寝床の近くで踊り子ちゃんが踊ってた、綺麗だなぁって思った…もしかして兄ちゃんの彼女さんだったりするのかな?

 

 そんなこと考えてたら、ミナに虹色の羽で思い切り引っ張られた挙げ句に紫色の羽でベシベシと叩かれた、普通に痛い。

 

 

 

○月牛肉日 雨

 

 今日は懐かしい顔に出会った、稲妻で俺とミナに璃月のことを教えてくれたアーシアだ、懐かしいなぁ。

 

 アーシアは俺を見るなり久しぶりと笑顔で挨拶し…その直後に草元素のビンタで川の方向に吹き飛ばされていた。

 

 いや、ビックリしたよね、だって急に吹き飛ばすんだから。

 

 なんで吹き飛ばしたのかミナに聞いてみたら嫌な感じがするっていう非常に曖昧な答えが帰ってきたから流石に怒った、叱るって言った方が分かりやすいのかな?

 

 因みにアーシアは無事だった、というか無傷だったし本人は服が濡れたことしか気にしてなかった、器広いなぁ。

 

 その後は色々と話して別れた、なんでも『ラナ』って人に会いに行くらしい、とりあえず前にこの赤い目隠し集団の所から拾った*1ジャマダハル? の様な物を渡しておいた、喜んでもらえた…やったぜ…!

 

 

追伸

 

 寝床に四足歩行のロボットが来た、他のと違ってなんか綺麗な気がした。

 

 そいつは俺達を襲うことはせず、その代わりに俺が道端で拾った機械のパーツを持っていこうとしていた、どうせ道端で拾った物だからと全部上げておいた、なんか喜んでる気がした……なんか行動の端々から可愛さが見えるぞこいつ。

 

 

○月軟骨日 晴れ

 

 久しぶりに砂漠に行ってみたら蛍に出くわした、逃げようとしたら何か泣き出し始めたからとりあえず近づいてみたら…捕まえたって言いながら腕を鷲掴みにされた、こいつ嘘泣きしおったな!?

 

 だが残念こっちに瞬間移動があるんだよぉ!! 逃げるんだよぉぉ!!!

 

 そうしてまたまた始まる鬼ごっこと言う名のマラソン、砂漠でそれはキツいスッよ先輩。

 

 というかお前嘘泣きはないだろ嘘泣きは!? 俺久しぶりにお前にドン引きしたよ? どんだけ俺のこと捕まえたいんだよお前!?

 

 見ろよお前、パイモンもお前のこと隣でうわーって顔しながら見てるじゃないか! ドン引きしてるじゃないか!!

 

 もう絶対にお前のこと信用しないからなコンチクショウ!!

 

 

追伸

 

 蛍から逃げ切った後に砂漠の寝床に戻ったら、なんか目隠し二人組+緑と白い服を着たやつが住み着いてた。

 

 見た感じ色々とヤバそうだったので、適当に食料と水を置いて退散させてもらった、だって俺魔物ですしおすし。

 

 …また何処かで砂漠用の寝床探さないとなぁ〜。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
強奪した





主人公

 遂に兄と再開した弟くん、嬉しい限り!

 アヌビスことセノと七聖召喚で遊びまくった、本人は十以降数えてないと言うが、実際に数えるのを止めたのは五十戦以降で計百回連続で七聖召喚で遊んでた。




 本名は『此方』と書いてコナタと読む。

 主人公が獣域ハウンドになってテイワットにやってくる前からテイワットに居た、主に居た地域は稲妻。

 主人公とは違って転生的な感じでテイワットにやってきおり、やってきた当時は子供の姿だった。
  
 弟に会った際に泣きかけていたらしい。

 実は天狗の女の子と花火屋の女の子の幼馴染がいる。


アーシア

 実は璃月辺りから主人公のことずっとストーカーしてた人、よく主人公と一緒に居た槍使いの女にボコボコにされてた。

 
四足歩行のロボット

 作者的にスメール編で一番可愛いと思っている子、早くタミミと一緒に出てきてほしいと願う今日この頃。

セノ

 こいつもしかして七聖召喚やりたかっただけなのでは? ボブはそう訝しんだ。


紅い狼

 主人公の兄ではなく父親、なお息子にその記憶は無い。

 


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ボコボコドゴォォーン!!


 ちょっとした裏設定を活動報告に投入してみました、多分逐一更新していくと思うんで興味のある方はどうぞ。


 

 

○月ウィンナー日 雨 

 

 今日は珍しくミナが外に出かけていった、何でも用事があるのだそうだ…別に珍しくもないか?

 

 雨ということですることないし、何をしようかなぁ〜と思いながらゴロゴロしてたら兄ちゃんと一緒に赤い狼が来た、暇だったから来たらしい。

 

 やって来て早々、赤い狼は俺にじゃれついてきた、前から思ってたけどじゃれつき方がうちの犬に似てるなお前?

 

 そういうわけだからわしゃわしゃ撫でてやった、無茶苦茶嬉しそうに鳴くなぁ〜このこの〜♪

 

 そうこうしていると、兄ちゃんにこいつに名前をつけてやってほしいと言われたから、安直に『遥』と名付けた、遥か彼方って言うでしょ?

 

 そんな感じで説明したら赤い狼…もとい遥はそれはもう喜んでいた、具体的に言うと宙返りを何度もするくらいには喜んでた…でもその宙返りして喜んでたところを唐突に帰ってきたミナにぶん殴られてたのは可哀想と言う他ないでござる。

 

 しかもその後大喧嘩するし、兄ちゃんは笑ってて止めてくれないしで凄く疲れた。

 

 まぁいっか、楽しいから。

 

 

追伸

 

 兄ちゃんが俺に『剣鬼』を知っているかと聞いてきた。

 

 海乱鬼は知ってるけど剣鬼は知らないと答えると、そいつが俺を探している、俺に会いたがってる、気をつけろと言われた。

 

 えぇ、そんなこと言われたら会いたくなるんですがそれは。

 

 きっと強いんだろうなぁ〜♪

 

 

 

○月目玉焼き日 晴れ

 

 今日は兄ちゃんと戦ってみた、楽しかった。

 

 兄ちゃんはどうやらそこら辺で倒した敵の武器を拾って戦うらしい、実際今回使ってた武器はファデュイのトンファーブレードみたいなやつと目隠し集団が持ってた湾曲刀だった。

 

 使用元素は風元素、主に風元素でブースト掛けてハイスピードに動いて相手を攪乱しながら削り殺すヒット&アウェイスタイル…なんだと思う、実際戦っててそう感じた…少なくとも今の武器を使っている間は多分それだ。

 

 けど、途中から撹乱するのを止めてインファイトに持ち込んだ辺り、多分そっちの方が得意なんだと思う、俺的にはそっちの方が強いって感じた。

 

 因みに決着はつかなかった、あれ最後までやったら絶対にどっちか死んでたからな、俺はやだよ? 殺すのも殺されるのも。

 

 

 

追伸

 

 後で聞いたんだけど、兄ちゃんって小龍と知り合いらしい…というかつい最近まで頻繁に襲撃されてたそうな…何をどうしたらそうなるの?

 

 

 

 

○月スペアリブ日 雷

 

 今日はちょっと砂漠に行ってきた、この前の黒い鳥をぶち殺そうと思って。

 

 そしたら…なんかもう黒い鳥がパワーアップしてた。

 

 見た感じからして前よりも氷元素の出力が上がってたし、なんだったら黒って言うよりも青っていうか…なんか某冥灯龍みたいな感じになってたし、これをパワーアップじゃないと言うならなんだと言うのか。

 

 んで、そいつがこの前の大狼を踏んづけてた、見た目的に死んでたというかバラバラにされてたというか…お前不憫だなぁ。

 

 この時、ミナを置いてきて良かったって思ったよね、だって正直自分でも抑えられそうになかったから。

 

 そうだよ? 仕掛けたよ? 今度は俺から行ったよ? だってこの前先にやられたし何だかんだで言っても楽しそうなんだもの。

 

 激闘だったんじゃないかなぁって思うよ、あの鳥との戦いは。

 

 氷元素なのに何か炎元素みたいな形してたし、速さも硬さも鋭さも何もかもが前よりも格段に上がってた、こっちも何発か良いの貰って死にそうになったし。

 

 前みたいに翼は折れない、前みたいな砂津波もまるごと凍らされて通じない、というか前に見せた手段の大半が通じなかった。

 

 もうそれが嬉しくて嬉しくて、だって何やっても死なないし何やっても通じないし、しかも途中からリミッター全開放したのにそれでも中々死なないしでそれは楽しいこと楽しいこと、本当にここまで楽しいのってこっち来てから初めてなんじゃないかなぁって思ったりもしたな。

 

 凍る炎、0度の炎、青というよりも青白い炎、喰らえば痛かったし冷たくて仕方がなかったし死ぬかとも思ったけど…何だかんだで言っても心地良かったとしか言いようがない。

 

 いやはや、俺ってどんな風にアイツ倒したのかな? 必死すぎて途中から何してたのかあまり覚えてないんだよなぁ(*´∀`*)

 

 何か無茶したのは覚えてるし、新しいのを使ったっていうのは覚えてるんたけど…何をしたんだったかなぁ〜…忘れたぁ。

 

 

追伸

 

 帰ってきたらミナに回復用の水元素(炎元素で加熱済み)をひたすらシャワーみたいにぶっ掛けられた。

 

 んでその後に凄く叩かれた、しかも割りと本気で叩かれた、どうやら心配されたらしい…まぁあんなことしてたらされるか、注意注意。

 

 

 

 

○月骨付き肉日 晴れ

 

 ミナに捕まった、無茶苦茶ガッシリと掴んで離してくれない。

 

 逃げようしたり瞬間移動を使ったら次の瞬間に水の槍と雷元素の羽とかが目の前に突き刺さったりする、びっくりするけど何よりもビックリしたのはメド○ーアみたいなのも構えてたことなんだよなぁ…いや殺す気かいな…。

 

 とりあえず、やることも無かったのでミナを撫でながら七聖召喚のデッキを弄ることにした、たまにはこういうのも良いか。

 

 

追伸

 

 ナーちゃんにひたすらハイライトの消えた瞳で見つめ続けられるという夢を見た、瞬きせずに見つめ続けられたから少し怖かったですことよ、まる。

 

 

 

 

○月手羽先肉日 晴れ

 

 兄ちゃんにミナのことで聞いてみたらため息吐きながら『相変わらずだよな、お前って』って言いながら頭を撫でられた、なんでここで頭撫でるの? 相変わらずって何?

 

 その後、兄ちゃんはお前が怪我しなけりゃ大丈夫だよと言って飯武器の手入れをし始めた…そういうものかなぁ?

 

 因みにこの後、俺は遥にじゃれられ、兄ちゃんは何故かミナに複数の元素ビームを撃たれていた、兄ちゃんは何処か呆れたような顔をしていたのが記憶に新しかった。

 

 まぁ…兄ちゃんなら良いか。

 

 

追伸

 

 日記を書いてる時に思ったんだけど、俺最近の物忘れが激しい気がする、主に俺が人間だった頃の記憶についての物忘れが。

 

 なんというか、前まで思い出せてたことがまるで思い出せなくなってきてる、例えば友達の顔とか俺が何をしてたのかとかそういうのが全部思い出せない。

 

 完全にこっちに馴染んじゃったからかな? いやまぁ俺としては別に良いんだけど。

 

 

 

○月唐揚げ日 晴れ

 

 

 『剣鬼』が何のことを指すのかがようやく分かった、グレート海乱鬼のことだ、だってグレート海乱鬼のことを兄ちゃんが『剣鬼』って言ってたもの。

 

 そうか、あいつか…あいつが俺を探してるんだ、道理で前居た場所に居なかったわけだよ、だって俺のことを探しに行ってたんだから見つかるわけがない。

 

 俺は半ば衝動的にグレート海乱鬼もとい『剣鬼』の所に近づいた。

 

 だってほら、探してくれてたんなら会いに行ってあげなきゃ失礼でしょ?

 

 まぁ、そんな軽い気持ちで会いに行ったら…なんか『白狼…仕合…決着…所望』って言いながら頭を下げられた…えぇ?

 

 その後も『万全…体制…正々堂々…所望』とか言ったり『場…時間…指定…要求』とか言いながら地図と時間帯が書かれた紙を渡してきたりとか色々あったけど、とりあえず俺と戦いたいのは分かったから頷いておいた。

 

 そしたら『感謝…圧倒的感謝』って言ってガシャンガシャンと鎧を鳴らしながら歩き去って行った…喋るんだなあいつ。

 

 

追伸

 

 行ってきます。

 

 

 

 

 

 





主人公

 兄と戦った後に黒い鳥を殺し、次は色々と進化したであろう鬼と戦うことになるやつ。

 黒い鳥戦で洒落にならない重症を負ってたけど本人的には大した怪我じゃないらしい。

 ようやく鬼と再会した。

黒い鳥

 ゼ○みたいな感じになった鳥、炎元素の様な氷元素を使用したりする、多分週ボス相当の敵。

 冗談抜きで主人公を追い詰めたが、それでも主人公に負けた上に日記に書いてないだけで骨すら残さず食い尽くされた。

 多分戦闘シーン書こうと思ったら文字数2万超えるんじゃないかってくらいの激闘を繰り広げた。


『剣鬼』

 ようやく再会出来た、これで望みが叶うと大喜びしてる鬼…こいつの番外編でも書こうかなとか思ったり。


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『狼』VS『鬼』➀



 割りと久しぶりの一人称視点、疲れますがな。


 

 

 暗い暗い雲が空を覆う昼真っ盛り、鬼は一人そこに居た。

 

 正座の体勢で、何をすることもなくただじっと身じろぎもせずにそこに居た。

 

 …後ろ姿だけしか見えないけど、何処か前とは違うように見える。

 

 割れた鎧を別の何かで補強し、それが積み重なった末に別の姿を取った様に見える黒く濁った緑色の鎧。

 

 兜から突き出た太く長く鋭い大きな黒角、まるで脈動でもしているかの様に薄く怪しく光る白色。

 

 変わっていないのは側には突き刺さっている大きな刀、無骨で鋭利で、それでいて綺麗な俺のよく知る大きな刀。

 

 あぁ、良く知ってる、何せ一番最初に俺を殺しかけた鬼だ、よく知っている。

 

 

『…来たよ』

 

 

 つい、何時もの癖で喋るように吠えてしまう…俺的には喋っているつもりでも傍から聞いたらただ鳴いてたり吠えてたりする程度にしか聞こえないのだから、嫌なものだ。

 

 

「……来タノカ」

 

 

 正座の姿勢を解かず、後ろを振り返ることもせずにその声は帰ってきた、どうやらこいつには俺の言葉が通じるらしい。

 

 前に確認するのを忘れていただけに、言葉が通じるっていう事実は俺に多少の安心を与えてくれる。

 

 まぁ、これから殺し合う相手には感じるような感情じゃないんだけどね、普通は。

 

 

「…探シテイタ、待ッテイタ、求メテイタ…コノ時ヲ…コノ時ダケヲ、ズット、ズット」

 

「貴様ト、オ前ト、オ主ト、貴殿ト…貴方ト死合コノ時ダケヲ…タダ求メテイタ」

 

 

 刀を手に持って立ち上がり、片言で振り返りもせずに捲し立てる様に言葉を紡ぐ。

 

 その言葉からは、募りに募らせた感情が見て取れた。

 

 

『…随分と喋るんだな…前は一言だって喋らなかったのに』

 

「必要ナイト思ッタ、タダ剣デノノミ語リ合ウガ望ミデアリ、我ガ存在ノ証明デアッタガ故ニ」

 

『…そういうもんか?』

 

「ソウイウモノダ」

 

 

 

 そういうものらしい。

 

 剣で語り合うこと、それだけがこいつの存在証明…だったらこいつが今から俺と戦うのもきっと自分の存在を証明するためなんだろうと思う。

 

 俺を倒して自分の存在を証明する、証明するためだけに存在する…こういうのを手段と目的が逆転してるっていうのかな?

 

 

「シカシ、貴殿ニハ『ソレ』ガ必要デアルト判断シタ…ソノ為ニ言葉ヲ覚エタ、使ウコトノナカッタコノ無駄ニ搭載サレテイル『コレ』ヲ使ッタ」

 

 

 そう言って、鬼は俺の方へと振り返った。

 

 兜の面は砕け散り、機械的な中身が顕になってしまっている。

 

 歯は無く口も無し、何処から声を発しているのかがまるで判断出来ない…スピーカでもあるのかな?

 

 翠色に輝く綺麗な二対の瞳、機械的なはずのそれには人の様に堪えきれない感情が滲み出ているかのようだった。

 

 

「貴殿ニ会ウ…ソノ為ニ幾度モノ存在ヲ斬ッタ」

 

「貴殿ニヨク似タ紛イ物ヲ」

 

「貴殿ニ似タ気配ヲ持ツモノヲ」

 

「貴殿ノ気配ガシタ地点ニ居タモノヲ」

 

「斬ッテ斬ッテ斬ッテ斬ッテ斬ッテ斬ッテ斬ッテ斬ッテ斬ッテ斬ッテ斬ッテ斬ッテ斬リ続ケタ…言葉ヲ覚エタノハソノ道中ダ」

 

「幾度デモ言オウ、当方ハ求メテイタ、貴方ト殺シ合ウ(語リ合ウ)…コノ時ヲ」

 

 

 

 その言葉を最後に、鬼は刀を構えた…どうやら問答はここで終わりらしい。

 

 姿勢も構えも何も変わっていない、変わったのは外見と雰囲気と…後は気配だけか…強くなってるんだろうなどうせ、こいつのことだから。

 

 あぁ…駄目だ……爪が疼く。

 

 

『あぁ…始めよう』

 

「イザ…尋常ニ」

 

 

──推シテ参ル…!!

 

 

 その言葉を切っ掛けに、鬼は一気に俺へと向けて踏み込んでくる、やっぱり前よりも速い…しかも俺の予想よりも更に速い。

 

 構えは上段、何をしてくるかと言われれば恐らく振り下ろし一択、避けるか防ぐかそれ以外か…避け一択に決まってるだろう防げるかバカ!!

 

 上段から振り下ろされる刀を避ける…やっぱり前よりも速いし鋭い…しかも若干ディレイ入れよったなこいつ。

 

「マダダ」

 

 悪寒、寒気、怖気…この三つが言葉が聞こえた瞬間に一気に背中を走った。

 

 防がきなゃ死ぬと、そう直感した。

 

 振り下ろされた刀を見る、本来振り下ろされた刀…剣とか斧にしてもそうだけど基本的に振り下ろされた物っていうのは地面に激突するかしないと止まらない、何処でそう聞いた。

 

 それが止まっている、地面スレスレの所でピタリと止まっている、あの大きな刀がだ。

 

 つまり…刀が返される、つまり──

 

 

──燕返し

 

 

 振り下ろされた刀が跳ね跳ぶ様に、俺へと迫る。

 

 至近距離、直撃距離、攻撃力危険地帯、致命傷の可能性大、回避は可能、しかし可能性は低い、防御は…可能。

 

 迫る致死の斬撃、当たり所は恐らく胴体、当たれば両断は免れないしよしんば浅くても多分次が来る。

 

 だったら…噛みつく。

 

 

 迫る刃、その刀身に俺は思い切り噛み付いた。

 

 胴体狙いだったのが功を奏した、胴体に辿り着くよりも先に俺の頭が、牙が刀に噛みつく方が速い。

 

 

 ガキンッと音を鳴らして刀から火花が散り、刀の勢いが収まっていく…正直凄く痛いし硬い、もう二度とやるまい。

 

 だけど…捕まえた。

 

 爪を立てて、心臓部分目掛けて貫手? を放つ。

 

 刀には無茶苦茶力入れて噛み付いてる、避けるなら刀を手放さきゃならない…こいつなら普通にするだろうけどそしたらそしたらで刀を俺が使えばいい。

 

 手放さずに避けて体勢が崩れたら五の字、崩れなかったら刀を持つ手を狙う、削ぎ斬ってやる。

 

 他にも色々と思いつくけど、こいつは何をどうするか。

 

 周りがスローモーションみたいに見える、放った貫手がゆっくりと鬼の心臓部へと突き進んでいくのが見える、鬼は何もしない。

 

 行くか? と思った…少なくとも鬼の左腕に元素が集まるのをみるまでは。

 

 集束していく、色的に風元素だ、それが鬼の左手に急速に集束していき、一つの形を作り出す。

 

 それを見て思い出した…あぁ、そういえばこいつはそういうことをするやつだったと、それに苦労させられたのだと。

 

 そして同時に思った、これは不味いと。

 

 集束が終わった鬼の手には、爛々と力強く輝く風元素の脇差みたいな刀があった…脇差しだ、通常の刀じゃない、短いから使いやすい上に取り回しも良い脇差しだ。

 

 それを認識した瞬間、俺は瞬間移動で後方へと移動していた…そのすぐ後につい先程まで俺が居た場所に振るわれる風元素の刃、通常の刀でも以前の風元素の刀とも違う速さ、多分今までで一番速い、急所斬られたら終わるな。

 

 それを認識した俺がしたことは、鬼へと突っ込むことだった。

 

 突っ込んで肉薄し、インファイトを仕掛ける。

 

 脇差みたいなの作れるんだから肉薄しても意味が無い、刀捨てて両手に脇差とかされるとインファイトの利点が殆ど潰される…そんな考え無粋なのだ。

 

 突っ切ってぶちのめす、少なくともそれが今の俺だ。

 

 右爪を横薙ぎに振るい、そこからタイミングをずらして左爪を袈裟懸けに振るう、それを高速で繰り返す。

 

 右、左、右左右左と何度も何度も繰り返す、それら全てを鬼は両手に作り出した脇差…もう小太刀でいいや分かりづらい!! それで俺の連撃を逸らして防ぐ。

 

 逸した先から反撃が飛んでくる、顔面目掛けて放たれる鋭く素早い刺突、それを顔を反らして躱し、次いで振るわれる胴体への斬撃を爪で叩き落とす。

 

 続けて仕返し代わりと言うべきか、俺は雷元素を纏わせた爪で鬼へと斬りかかる、上から振り下ろすように振るわれた俺の爪は鬼に手首を掴まれたことで止められる。

 

 その止めた腕とは逆の腕で、鬼は俺へと刺突を繰り出す、狙いは胴体にあるであろう俺の心臓…まぁ知ってた。

 

 地面から岩元素の刃が複数突き出る、それら一つ一つが意志でも持ったかのように鬼へと襲いかかる。

 

 それに鬼は、急激に自身に風元素を集束させ、開放することで全てを吹き飛ばした、前と同じだな。

 

 開放された風元素は岩の刃を容易く切り刻み、その真っ只中に居た俺にも襲いかかる。

 

 向かい来る風の刃、至近距離過ぎて瞬間移動も間に合いそうに無い、じゃあどうするか……それ以上の高出力で押し潰す。

 

 

 

『…ゥゥ…ガァァァァァァァァァァァァァッッッッ!!!!!』

 

 

 吠える、吼える、咆える。

 

 雷元素を最大出力で放出し、それを風元素の刃達…いや、全方位に向けて射出する、簡単な話がアサルトアーマー。

 

 けど、ただの最大出力だと拮抗するだけで終わりそうだから…リミッターを解除した上での最大出力で行く。

 

 蒼かった俺の雷元素が、赤く紅く染まっていく。

 

 周囲一体が紅く染まり、バチバチと帯電して地面が焼け焦げる。

 

 吹き飛ぶ、鬼も風も全部が全部俺の側に居たもの全てが。

 

 鬼は俺に吹き飛ばされた余波でズザザと足を地面に擦り付けて受け身を取っていた。

 

 これ…どころか元素を見せること自体が初めてだから、若干の驚きの感情が見える。

 

 しかし、それでこそと言わんばかりに意気揚々と立ち上がり、地面に刺さっていた刀を引き抜いて一払いする。

 

 

 

「……ヤルナ」

 

『そりゃどうも』

 

 

 その言葉と共に、俺達は再び互いに向けて突っ込んだ。

 

 





 一人称無茶苦茶難しいんですがそれは。


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『狼』VS『鬼』②


 一人称視点むじぃぃ…


 

 

 頭の上を刀が通り過ぎ、更にそこから返す刀で斬りかかられる。

 

 それを爪で弾き、そこから鬼の懐へと飛び込む…そんな俺の視界に唐突に映り込む緑色、いや膝が迫る。

 

 それを上体を大きく反らすことで躱し、そのまま後ろに一回転しながら尻尾を振るう。

 

 地面を擦り、火花を散らしながら迫る俺の尻尾を鬼は片方の手にある小太刀で難なく弾いた。

 

 そこへ更に接近、爪を握りしめて拳の形にし、それを思い切り鬼へと突き出す。

 

 突き出された俺の拳は同じく突き出されていた鬼の拳によって堰き止められ、そこからほんの僅かに押し合う…のなんて俺が一々待つわけがねぇのである。

 

 押し合いになっていた拳から力を抜いて後方へと振り払う、すると鬼の体幹が僅かに揺れ、こちら側に転ぶように近づいてくる。

 

 押し相撲と同じようなものだ、力をいきなり抜いてこっちに引き込む、よくある手法だ。

 

 そうしてこちら側に近づいてきた鬼へと向けて、俺は紅い雷元素と草元素を合わせた通称『九尾チャクラナ○トモドキパンチ』を顔面に叩き込み、そのまま鬼を殴り飛ばした。

 

 吹き飛ばされた鬼は二転三転と地面にぶつかって最終的に近場の岩場に頭から突っ込んだ。

 

 ドガァァンという音が鳴り響き、岩場の岩がガラガラと次々に崩れ落ちてくる、当然行き先は鬼が突っ込んだ場所だ。

 

 岩場に埋もれ、ピクリとも動く気配の無い鬼…これで終わりかなと思ったやつは一回バリカンで頭をハゲツルにしてきてほしい。

 

 

 岩場から風元素の刃が岩を斬り裂きながら次から次へと数えきれないくらい飛んでくる。

 

 それら一つ一つを爪やら尻尾やらで弾き弾き弾き、爪を掠めさせて軌道をずらし、時折混ざっている氷元素の刃を殴り飛ばして他の刃にぶち当てて防ぎ…そこに突っ込んできた鬼の繰り出す斬撃を瞬間移動で躱す。

 

 次いで瞬間移動で移動した先で尻尾に雷元素を集中させる、イメージは輻射波動の応用編及び某否定の意味を持つロボット。

 

 バチバチバチバチ! と音を鳴らす紅い元素がその形を変え、次第に巨大な円形のチャクラムの様な形状へと変化していく、この間役2秒弱……思ってたよりもデカいなこれ?

 

 まぁ…別にいいや…そう思いながら、尻尾が円の中心に入るような形で浮いているチャクラムをクルンクルンと尻尾を動かして回転させて──

 

 

『よいしょぉぉ!!』

 

 そのまま鬼に向かって投げつけた。

 

 キィィンとアニメの刀とかでよく鳴るSEみたいな音を鳴らしながら、チャクラムは飛んできていた刃を尽く蹴散らして鬼へと向かっていく。

 

 さて、スピードは上々、勢いや威力も恐らく上々…さてさてどうなるかな?

 

 

「…笑止」

 

 

 鬼的にはダメだったらしい、鬼は片手に持った刀を無造作に振り下ろしてチャクラムを安々と両断した…両断だ、弾いたわけじゃなくて両断だ。

 

 俺がリミッターを解除した雷元素を両断された、別に悔しくもないしショックも受けてないけど…ちょっと意外だ。

 

 あれって鳥にも効いたし何だったらアイツの翼をもぎ取った技なんだけどなぁ…相性悪かったかな?

 

 

「…狼ヨ…何故本気デ来ナイ?」

 

『? ん〜〜……様子見中だから?』

 

 

 鬼の言葉に俺がそう返答すると、鬼は風元素を使用して加速、そのまま俺へと突っ込んできた。

 

 そしてそのまま刀を俺の首筋目掛けて振るう、それを俺は避けるでも防ぐでもなく、刀が加速しきる前に懐に潜り込んで刀を掴んで止めた。

 

 刀を掴んだ俺に対し、鬼は刀を手放してから更に風元素を纏わせた拳を俺に突き出す。

 

 それを首を反らして躱した俺に向けて、両手に生成した風元素と氷元素の小太刀で俺に斬りかかる。

 

 右から左から上から斜めから、多種多様の方向から繰り出される多種多様な技を俺は持ち前の爪で迎え撃つ。

 

 一合一合ごとに鉄の音が鳴り響き、一合一合ごとに大きな火花が散り渡る、まるで花火が何かの様に。

 

 

『不満か?』

 

「不満ダ…トハ言エナイ、出シ惜シンデイルノハ此方トテ同ジコトダ」

 

『じゃ、お互い様だな』

 

「アァ、オ互イ様ダ…」

 

 

 軽い感じで、世間話でもするように互いに本気を出していないことを暴露し、その横で互いが互いに相手を捉えんと爪と刀が高速で交差し火花を散らす、ガキンガキンッと鉄の音を響かせて。

 

 

 ガキンガキンッ、ガキンガギンガキンッ、ガギギンガキンガギャンギギギキギギっと徐々に交差する感覚が短くなっていく、鬼の刀を振るう速度が上がってきている。

 

 だったら俺もと速度を跳ね上げる、今は互いにその場に止まって打ち合いを続けているせいで何時もみたいな速度は出しづらいけど、決して出せないわけじゃない。

 

 ましてや今は雷元素のリミッター解除してる状態だ、普段よりも速さを出すのが余程楽。

 

 高速で、連続で、何度も何度も何度でも、俺の爪と鬼の刀はぶつかり合っては捌き捌かれを繰り返し、その間に他愛も無い会話を互いにちらほらと語り出す。

 

 やれ中々俺のことが見つけられなかっただの、やれ俺の気配がする所に行ったらオレンジ髪の男に襲われただの、やれ金髪の女に襲われただの、あぁだのこうだのとちょっとした愚痴の言い合いと言う名の世間話を俺達は繰り広げた…爪と刀をぶつけ合いながら。

 

 自分でもおかしなことだとは思う、正直何してるんだよとは思う、けどどうにもそういう雰囲気から脱せなかった、だって何か他人って感じがしないんだものこいつ。

 

 時間にして恐らく2分か3分程度、その短いようで長い時間の間、俺と鬼は一歩も動くことなく爪と刀をぶつけ合い続け、それと同時に世間話をし続けた。

 

 まるで、果たし合いの前に過去の思い出を語り合う、友人か何かの様に。

 

 

 

「…ココマデダ」

 

 

 ふと、鬼は唐突にそう呟いた。

 

 瞬間、連撃の中で急速に速くなった一閃が俺に迫るが、それを横合いから勢いを付けてはたいて進路をずらし、その勢いのままぐるんと横合いに回転し、その遠心力諸々を載せた右拳を鬼の鳩尾目掛けて放つ。

 

 抉り取る様に、突き穿つ様にして放たれたその拳は鬼の鳩尾に深く抉り込み、そのままその絡繰りの肉体を破砕音と共に貫通した。

 

 しかしこれでは終わらない、これではきっと終わらない、そんな予感が俺の中にはあった。

 

 そして事実、それは当たっていた。

 

 

「捕マエタゾ」

 

 

 自分の傷を意に返さず、鬼は刀を俺の首へと振るった。

 

 なんとなくそういうことしてくるだろうなと予想がついていた俺はそれを尻尾で弾き、貫通した腕を引き抜こうとする。

 

 しかし抜けない、幾ら力を込めても抜けない、ガッチリと固定されているみたいに抜けない。

 

 いや、みたいというか多分ガッツリと固定されている、だって何か押さえつけられてる感じが凄いするもの。

 

 締め付けられる様な圧迫感に加えて何かが俺の中に流れ込んできてるような感覚がする。

 

 これはヤバいと瞬間移動で逃げようと思ったら…なんか出来ない、ジャミングされたみたいに元素が纏まらない、飛べない。

 

 

「捕マエタト言ッタゾ…」

 

 

 その言葉と共に、再び鬼が刀を振るう。

 

 今度は風元素と氷元素の小太刀ニ刀で首を挟み込むようにして振るわれたそれを片方は尻尾で弾き、もう片方は爪で受け止める。

 

 ギャリギャリと爪と小太刀が擦れ合う音と尻尾と小太刀がぶつかり合う音を尻目に、俺は貫通した右腕を何とか引っこ抜けないかとグイグイと引っ張る…がまるで手応え無し。

 

 だったら元素を流してこんで中から吹き飛ばしてやろうとしたらそもそも元素が流れない、多分中で何かしらして元素が流れるのを邪魔してるんだろう、じゃなきゃ元素が流れない理由も乱される理由も説明がつかない。

 

 

 えぇ…どうしよこれ。

 

 

 


 

 

 やはりだ、やはりそうだ、そうでなくては、そうこなくては。

 

 己の鳩尾を貫いた眼前の宿敵に対して、ふとそう思う。

 

 その速さ、その鋭さ、攻撃の正確さ耐久性、全てが今までのモドキとは一線を画している…その事実を心の底から喜ぶ己が居る。

 

 鳩尾を貫かれこそしたが、それを利用して右腕を固定して使えなくし、そこに攻撃を叩き込んだ…普通ならここで死ぬのだ。

 

 だが死なない、どれだけ打っても死ぬどころか傷すら負わない、掠り傷すら付けられない。

 

 死なない、決して死なない…未だ全力を出していると言えないこの状況の中でこの白狼は死んでいない、今までのモドキ達ならばこの状況で何度死んでいただろうか? …きっと数えきれないに違いない。

 

 実際、あの大きな紅いのは己がダメージを受けたフリをした際に油断してその肉体をバラバラに切断されているのだから。

 

 それに比べてどうだ? 目の前の宿敵は…油断なんて一欠片もしていない、一切の油断も驕りも慢心もしていない、だから殺しきれていない。

 

 それがどうしようもなく嬉しくて仕方がないのだ。

 

 右腕が使えない目の前の宿敵に幾ら刀を振るっても尻尾と左の爪で防がれる、ならば足でと思い蹴りを入れてみれば貫通した右腕が固定されていることを利用し、己を軸にして跳び回る、なんだったらそこから己を投げようとする。

 

 更に逃げられないのはお前も同じだとでも言わんばかりに顔を殴る蹴る等の打撃を繰り出し、腕だけで抜けないならと己を足場にして足を使って腕を引き抜こうとする。

 

 当然それを見逃す馬鹿はいないと刀を振るえば、振るった力を利用されそのまま以前の様に投げ倒された。

 

 以前と違ったのは腕を固定されていたお陰であの時の様な乱打を打たれなかったこと、そしてその代わりとでも言わんばかりに繰り出されたのが腹部への蹴りだったことだ。

 

 鎧にヒビが入り、バキバキと何かがメリ込み感触と共に激痛が腹部を駆け抜け、更に雷元素を纏っていた為かそこから元素が流れ込みほんの一瞬だけ腕の拘束が緩みかけた。

 

 もしも緩みかけていた拘束を直すのがほんの一瞬でも遅れていたら、きっと狼は即座に腕を引き抜いていたことだろう。

 

 そうなっていたら、そこからどうなったかは分からない、もしかすれば全力を出せずその場で終わる可能性もあるにはあった。

 

 その事実が、己に更なる高揚を与えた、決して消えない高揚とそれに対する渇望を。

 

 

 

 嗚呼、素晴らしきかな我が宿敵よ、愛おしきかな我が宿願よ。

 

 己が身は、我はきっと…お前に出会う為だけに、生まれてきたのだから。

 

 

 





『狼』

 某上弦の参みたいな危機的状況になってるのにそれに構わずバカスコと攻撃を繰り出したやつ、アホじゃねぇの?

 首筋斬られかけて絶体絶命の状況で出た言葉がどうしようこれ? 辺りからもうマトモじゃないと思いました、まる。


『鬼』

 カカタとタミミが無茶したんだからお前も出来るだろうと考えた結果、心臓部のある鳩尾ぶち抜いても普通に動いたやつ。

 カカタとタミミは出来たぞ? ヴァルぜライド閣下なら出来たぞ?(違う)
 


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『狼』VS『鬼』③


 仕事も一人称も一人称も難しいんじゃ…。


 

 

 もう面倒だから無理矢理引き抜こう…そう思ったのはふとした時だった。

 

 何をしても抜けないし、一瞬緩んだっぽかったから抜けるかな? とか思ってたらすぐに固まって抜けなくなったし、もう一度言うがもう面倒なのだ。

 

 だからもう無理矢理行く、乱暴する。

 

 迫る刃を地面へと叩き落し、それを岩元素で適当に固定する。

 

 続けて草元素及び岩元素のリミッターを解除し、雷元素を含めた全三元素全てを固定されている箇所へと送り込む。

 

 元素を流し込めない? 乱される? 知ったことか。

 

 流し込めないなら、堰き止められるなら止められないくらいの量を流し込めばいい、乱されるなら乱されてなお問題無いくらいの量を流し込めば良い。

 

 流し込む、固定されているであろう腕へと元素を生成した側から流し込み、更にそこから万力の力で腕を引き抜こうとする。

 

 引き抜こうとする間に鬼が俺へと小太刀を振るってくるが、それを岩元素の刃を付けた尻尾で防ぐ。

 

 舐めんなよ、さっきまでならまだしもリミッター解除した状態の岩元素なら即急で作った物でも簡単には壊れんわ!!

 

 ミチミチ、ギリギリ、バキバキと金属と木材が砕け割れる様な音が鬼の鳩尾から響いてくる、つい先程まではそんな音しなかったのにだ。

 

 つまり…方法としてはこれが正解だ!!

 

 

『いい加減にぃっ…! ぬぅけぇろぉぉぉよぉぉおぉぉ!!!!』

 

 

 更に力を込めて腕を引き抜こうと声を荒げる、その間にも鬼の刀は俺へと襲いかかり、それを尻尾で防ぐということを繰り返す。

 

 バキバキバキ! メリメリメリ! ミキミキミキ! と鉄と木材の砕け散る様な音が周囲に大きく響き渡り、そして──

 

 

 

──グチャァ…!

 

 

 何処か生々しい音と共に、俺の右腕は鬼の鳩尾からすっぽ抜けた。

 

 びちゃびちゃ、ガラガラと生々しい肉が飛び散るような音と木と鉄が砕け散る音が辺りに響く。

 

 右手に目を向ければ、毒々しい緑色がこびりつき、それは今も尚ドクンドクンと鼓動でもするかのように脈打っていた、まるで心臓みたいだ。

 

 振り払おうとしてもこびりついている為なのか振り払えず、むしろ逆に纏わりついてきて気持ち悪い。

 

 とりあえずこいつは放置するとして…問題は向こうか。

 

 

「───」

 

 鬼は、何処か呆然とした様子で俯きながら風穴の空いた鳩尾を見つめている、その様子は思ってもみなかったことが起きた時の人のようだ。

 

 はっきり言う、隙だらけだ、しかも無防備。

 

 しかし何でだろう、攻めたら手痛い反撃を食らう未来しか見えない気がするのですがそれは。

 

 

「……クク」

 

 ふと小さく響く笑い声、何処から聞こえてくるかと言われればそれは目の前の鬼からな訳で。

 

 

「ククククククク…」

 

「クヒヒヒヒヒヒヒヒリヒヒヒッ……!」

 

「アハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!」

 

 

 最初は小さく、笑っているのかどうかすら曖昧なソレは、段階を踏むごとに次第に大きく明白なソレへと変わり、最後には確信させるに足るソレへと変化した。

 

 笑っている、それはもう嬉しそうに嬉しそうに笑っている。

 

 穴の空いた鳩尾に手を当て、それを優しく撫でながら幸せそうに大笑いしている…何がそんなにおかしいのやら。

 

 

「グヒャ…! アヒャヒャハハハハハハハハハハハハハハッ!!! ………アァ…()()()()()…なんと素晴らしい」

 

 

 笑い声が鳴りを潜め、恍惚とした雰囲気を放ちながら、鬼は再びを口を開いた、先程までの片言ではなく流暢な言葉で。

 

 

「こんな痛みは初めてだ、こんな感覚は初めてだ、こんな気分は初めてだ…機能停止へと、死へと近づいているはずの我が身は、一体何に魅入られたというのか…いや分かっている、死だからこそ魅入られるのだ、死ぬからこそ魅入りられるのだ…嗚呼」

 

 

───我は今、生きている

 

 

 

 そう言うが否や、鬼の身体に変化が起きる。

 

 グチャグチャ、バキバキバキという音が鳴り響く、さっきまでの鉄と木材の砕ける音じゃない、まるで骨を砕いて肉と混ぜ合わせるかのような不快な音。

 

 腕から肩へ、肩から背中へと移動するようにビクンビクンと痙攣し、ミチミチと肉を突き破ろうとしているような音がする。

 

 いや、ようなじゃなくて実際そうなんだろう、事実正面から見ても分かる程に背中からナニカが突き出ようとしているのが見える。

 

 グイグイと引いては押し、引いては押しを繰り返し、ソレは懸命に外へと出ようとしていた。

 

 

 

 そしてそれは遂に外へと姿を現した。

 

 

 

 グチャと緑色の血の様に見える液体を撒き散らしながら、それは飛び出る…それはまるで腕のようであった。

 

 大きな鉤爪の付いた大きな手、まるで脈打つ様にドクンドクンと光る緑色の細い線が何処か不気味さを増大させている。

 

 それは目覚めの余韻を満たすように、拳を握ったり開いたりして、両の拳と拳をぶつけ合わせる、まるで何時でも行けるぞと意思表示するみたいに。

 

 

「──征くぞ、狼よ」

 

 

 地面と空気が爆ぜた、少なくともそう勘違いしてしまう程の衝撃音を響かせながら鬼は俺へと突っ込んで来る。

 

 地面を踏み鳴らしながら俺へと肉薄した鬼は、その背に生えた二対の腕をハンマーの様に俺へと振り下ろされる。

 

 受け止めるか受け流して反撃しようかと思ったが…やろうとしたら寒気がした、悪寒が走った、これは絶対に避けなきゃ不味いと本能が語りかけていた。

 

 瞬間的に俺はその場から大きく飛び退き、瞬間移動を使用して更に後方へと飛び退いた。

 

 その直後にやってくる、巨大で重厚な衝撃波。

 

 地面が砕け、その砕けた地面の先から先へと罅割れていく、しかもそこから風元素の塊というか爆流みたいなものが勢い良く吹き出してくる。

 

 離れていたから無傷で済んだけど、あれは絶対に食らったらヤバイヤツだと本能的に悟り、頬を冷や汗が伝った。

 

 

「ウオォォォォォッ!!!」

 

 

 気迫の雄叫びと共に鬼が刀を両手に再び突っ込で来る、さっきと変わらず二対の腕は元気そうにブンブンと振るわれ…ちょっと待てお前刀持ってんじゃねぇか!? 四刀は流石に聞いてないぞ!?

 

 

 そんな俺の心情なんて何のそのとでも言わんばかりに両手の刀と背中の二対が持つ刀が大上段から同時に振り下ろされる。

 

 そんなの喰らってやれるかと刀が完全に振り下ろされきる前に鬼の懐へと一気に踏み込み、そのまま拳を腹へと放つ。

 

 拳は腹へと吸い込まれ、ダガァンッ! と重い音を鳴らす…しかし───

 

 

(手応え薄っ…!?)

 

 

 まるで手応えが無い、これはアレだ、一番最初の頃にスライムをぶん殴った時みたいな感触だ…ふざけんなさっきまで普通に効いてただろうがよぉ!?

 

 こいつさっきの腕と言いこの鎧の感触と言い、何をどうしたよコンチクショウめが。

 

 

「どうした、軽いぞ狼」

 

 そんな言葉が聞こえるのと同時に、俺は掬い上げるようにしてアッパーカットを放っていた。

 

 ガンッと鬼の頭が打ち上げられ、ほんの僅かではあるが身体が揺れる。

 

 そこに飛び掛かる形で足を置き、そのまま勢いで後方に大きく跳ねるようにして蹴り飛ばした。

 

 鬼は一歩二歩程後ろにたたらを踏む、そんな鬼に向けて俺は両手に作り出した雷元素と草元素のチャクラムを思い切り投げつける。   

 

 高音を放ちながら高速で飛来するチャクラムに対し、鬼は背の腕が持つ刀でそれを容易く弾き飛ばす。

 

 その様を確認した俺は、更にチャクラムを複数作り出してそれを鬼目掛けて連続で投げ込んでいき、そしてそれを態勢を整えた鬼は手に両手と背手が持つ四刀で弾いていく。

 

 投げては投げ、その度に弾かれあらぬ方向へと飛んでいくチャクラムを横目で見て、手に残ったチャクラムを投げつける同時に鬼へと突っ込む。

 

 投げつけたチャクラムを弾くことなく首を傾けて躱した鬼は。ぐるりと踊るように回転し──

 

 

「ヌゥゥン!!」

 

 刀を大きく振るった。

 

 そうして襲い来る、懐かしいかな飛ぶ斬撃。

 

 よく知っている、最初の頃に無茶苦茶苦戦させられたし、何だったらさっきも見たような気がする。

 

 それでも問題なのが、腕が四本に増えてるから純粋に手数が倍増してるってことなわけで。

 

 

『ッ…!!!』

 

 

 鬼の方向から大量の刃…最早壁と呼んだ方がしっくりくるレベルの斬撃の塊が超高速で飛んでくる、しかも風元素と氷元素が混ざっている類の斬撃だ、俺これ苦手なんだよなぁとか思いながら斬撃の壁へと突っ込んでいく。

 

 横とか上とかに避けれはするけど、どうせ俺が避けそうな方向全部に置き撃ちしてるだろうからこのまま真っ直ぐ行った方が被害は少ない…と思いたい。

 

 まぁそんなわけでして、いっちょ行ってみますか…!

 

 

 突撃だ…!!

 

 

 


 

 

(あぁ…良い)

 

 その姿を見て、その姿に魅入られ、我はここに立っている。

 

 自らが作り出した斬撃の壁、飛ぶ質量の塊、触れればまず間違いなくミンチ以下のナニカになり果てるであろうソレ。

 

 常人ならば逃げるだろう、只人でなくとも受けようとは思わないだろう、最強の名を持つ何かでもない限り真っ向勝負とはいかないだろう。

 

 そんな技を相手に、そんな物量を相手に───

 

 

『───ッ!!!』

 

 

 あの狼は今、真正面からソレに挑み、そして()()()()()()()

 

 氷が砕け、風の弾ける音が連続して渦中の元から聞こえてくる。

 

 ズガガガガガガッと、あの時…我が喰らったあの乱打の時のソレと全く同じ音が、斬撃の砕ける音と共に聞こえてくる。

 

 此方も逐一斬撃を飛ばして塊に斬撃を追加している…しかし追いつかない、此方が増やすよりも奴が塊を砕く方が断然早い。

 

(あぁ…とても良い)

 

 そうだ、そうでなくては…この程度で終わってしまうわけがないのだ、何故なら()()()宿敵(とも)なのだから。

 

 ほら見ろ───

 

 

『ガァァアァォァォアッ!!!』

 

 やってきた。

 

 刃の塊を、元素を混ぜ合わせた暴力の荒波を、狼は簡単には踏み越えてきた。

 

 拮抗していた時間は精々が十数秒、それだけ持ったことを褒めるべきなのか、それとも恥じ入るべきなのか、狼はそんなものは知らんと言わんばかりに緑と白で彩られた斬撃の塊を突き抜け、真っ直ぐと私に迫ってきていた。

 

 

「くひっ…!」

 

 迫る狼へと向けて、四本の刀で少しずつタイミングをずらしながら連続の突きを見舞う。

 

 それに対して狼は…やはり流石と言うべきか、何事もなく対処してみせた。

 

 一撃目は顔を傾けて躱し、二撃目は爪で弾かれ、三撃目と四撃目は繰り出した私の元素刀を圧し折ることで防がれた。

 

 直ぐ様失った二刀を作り出し、四刀による無数の斬撃を狼へと繰り出していく。

 

 右から左から上から斜めから、無数の角度からフェイントを織り交ぜながら次から次へと斬撃へと組み込んでいく。

 

 速く、遅く、少し速く、少し遅く…様々速さと角度、更にはタイミングも含めてバラバラにして斬り掛かっていく。

 

 しかし当たらない、かすりはするが当たらない、紙一重の所で逃げられる、反応は出来るが追いつけない。

 

 

 それのなんと…素晴らしいことか。

 

 

 身体を捻り、上段斜めから四刀を一斉に振り下ろす。

 

 振り下ろされた刀を狼は横から軽く刀の腹を叩いて軌道を反らす、逸らされた刀は地面を斬り裂いて真一文字の傷跡を作る。

 

 そこから更には燕返しと同じ要領で四刀をV字にして跳ね上げて斬りかかるが、今度は岩元素を纏った尻尾によって元素刀の一部が手から弾き飛ばされる。

 

 そんな私の目の前で狼は爪を上から構えて、それを一気に私に向けて振り下ろした。

 

 それを背腕の持つ二本の元素刀で防ごうとするが、そんなものは無意味だと言わんばかりに元素刀ごと私を斬り裂いた。

 

 鎧の破片が宙を舞う光景を尻目に、私の思考は喜びでいっぱいだった。

 

 

 死なない、死なない死なない死なない…!!! 殺せない、殺されない、殺せる気がしない!!

 

 あぁ…やはりお前だ…お前こそが───

 

 

 

───私の(唯一)だ…!!!

 

 

 

 

 





主人公

 思考とは裏腹に基本的に強さが裏ボスのそれ。

 本人が苦戦してるなぁ〜とか思ってても傍から見たら大して苦戦しているように見えないというあるあるなタイプ。




 主人公との戦いの中でどんどん人間みたいになっていってる元傀儡、腕が四本になった。

 実は風スライムを大量に取り込んでおり、それを利用して人間の筋肉によく似た人工筋肉を作り出している。

 モチーフはコエテク発産の和風死にゲーに登場する腕四本の鬼。


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『狼』VS『鬼』④


 ありふればかり書いてたせいで原神の書き方忘れたでござる、リハビリも兼ねてるからどうか生暖かい目で見てくれると助かりマエス。


 

 

「アハハハハハハハハハハハハッ!!!」

 

 鬼が何だかおかしくなった、無茶苦茶笑い出した。

 

「素晴らしい! 素晴らしいなぁ狼よ!! 我は、私はお前に会えて本当に良かったぁ!!!」

 

 刀ぶんぶん振り回しながら歓喜の感情を隠そうともせずに鬼は俺へと言葉を紡ぐ…いやちょっと待って怖いんですけど?

 

 いや何なのお前? やめろよお前表情があったら絶対に他所様にはお見せできないような表情になってるだろお前!?

 

『うるさいんだよお前! というかちょっと気持ち悪いよお前!?』

 

 拳を顔面へと叩き込む…が鬼は止まるどころか衝撃を受けて仰け反ったところから唐突に刀を左右から振りかざしてきた。

 

『ッ!?』

 

 すんでのところでしゃがみ込む、しゃがみ込んだところに鬼の持つ四刀が振り下ろされ、俺はそれを岩元素で生成した盾でなんとかして受け止めた。

 

(重っ…!?)

 

 受け止めたは良いが、異常なまでに重い、少なくともさっき受け止めた時の数倍は重い。

 

 地面が沈み、それに続けと言わんばかりに上から伸し掛かる圧力が強くなっていく。 

 

 

「釣れないことを言ってくれるな我が唯一よ! 私は今この時が幸せで幸せで仕方がないのだから!!」

 

『ッ…! ガァァァァッ!!!』

 

 上から聞こえてくる鬼の言葉を無視して残り二つの元素のリミッターを完全に外し、それと同時に押し返すように草元素と雷元素を同時に展開し、爆発させる。

 

 激化反応に上乗せしてリミッター解除した二つの元素だ、その威力は並大抵のものじゃない。

 

 それも至近距離だ、当然受けるダメージは相応のものになる……はずなんだけどなぁ…。

 

「アッハハ!! 痛いなぁ狼よぉ!!!」

 

 まるで応えた様子の無い鬼が爆炎の中から突っ込んでくる、いやちょっと待って刀の色がおかしい──

 

「雲よ浮けぇ!!」

 

 鬼が刀を横薙ぎに振り切るのと同時に、風元素と()()()の斬撃が俺に向かって襲い来る。

 

 放たれた斬撃を躱し、そのまま鬼へと突っ込もうとした…のと同時に時間差でやってきた雷元素の刃が俺を襲う。

 

『ちょ!?』

 

 すんでのところで上体を反らして躱し、前に向き直る…が、またさっきと同じように時間差の刃が俺へと迫る。

 

 それを瞬間移動で躱し、更にそこから距離を取って様子を伺い、なんとなしでその正体に気がついた。

 

 いや、気がつくも何も丸分かりだ、だって俺はこの技を見たことがある。

 

 そう、当時璃月に向かってる途中に乗ったあの船で、偶然出会ったござる口調のあの人の技!

 

「ハハハッ!! そんな離れるなよ寂しいじゃないかぁ!!」

 

 鬼が叫びながらこっちに突っ込んでくる、しかもなんか刀がさっきの時間差の時みたいな感じになってる。

 

 刀が振り切られる、それと同時に風元素の緑と雷元素の紫色が入り混じった紅葉が辺りに吹き荒れ、それと一緒に斬撃が広範囲に広がっていく。

 

 そしてそれら全てを弾こうと爪を構えた時、吹き荒れていた紅葉達が一斉に弾けた。

 

 文字通り弾けた、具体的に言うとつい最近見つけた触れたら爆発する花の規模で弾けた…数えるだけで百を超える数の紅葉が、俺の周囲を、至近距離で。

 

(あ、やべ──)

 

 そう思う頃には既に遅く、俺の視界全域を紫と緑の爆炎が包み込んだ。

 

 

 

 


 

 爆炎が狼を包み込む、連鎖する爆発が周囲一帯を吹き飛ばす。

 

 数百数千という莫大な数の紅葉が、一斉に狼へと牙を剥く。

 

 紫と緑色の連鎖する爆炎、その様はまるで以前狼を探している最中に偶然見た花火とやらのようで非常に美しく感じる。

 

 

「………」

 

 刀を持つ手を緩めない、視線を決して狼から外さない。

 

 この程度で終わる訳がないのだ、この程度で終わってしまう訳がないのだ、この程度で死ぬわけがないのだ。

 

 いや違う、そうであってくれ、まだ死なないでおくれ、まだまだまだまだ、もっと私と語り合っておくれ。

 

 希う、私はまだお前と戦っていたい、まだお前と殺し合っていたい、まだまだ私は満たされていないのだ。

 

 だからどうか…生きていておくれ、私は心底そう願っていた。

 

 

 瞬間、悪寒が走った。

 

 

「ッ!?」

 

 直感的にその場から飛び退いた、そのすぐ後に地面から飛び出すようにして見慣れた白い爪が私が居た場所に突き出された。

 

 更にそこから爆発するように地面が吹き飛び、土煙を引き裂いて狼が突っ込んでくる。

 

 

「あははぁっ!!」

 

 無意識的に笑声を出していた私は半ば反射的に先程と同じように紅葉を辺り一帯にばら撒き起爆させようとする。

 

 …が、それよりも早く狼は私へと肉薄した。

 

『さっきのは本気で死ぬかと思ったよこんちくしょうがぁ!!』

 

 そう言葉を放ちながら、元素を纏った爪を私へ目掛けて突き出してくる。

 

 それを片手の刀でいなしながらもう片方と背中の二刀で斬り刻んでやると言わんばかりに刀を振るう…が特に危なげもなくあっさりと避けられる。

 

 それどころか狼は刀の間合いの更に奥へと急速に接近して私の顔面を掴み上げた。

 

 まずいと内心思った…何せこの状況は、以前に一度経験している。

 

 しかし、思った所でどうこう出来ないのは分かっていた、何せ一度は食らった身なのだから。

 

 間に合わないと知りつつも手を狼へと伸ばす…のと同時に轟音を掻き鳴らしながら私は地面へ叩きつけられ、そのまま削るように大地を砕きながら前へ前へと超高速で進み始めた。

 

 地面が砕ける音と共に、私の身体が削れるような音がする。

 

 否、ようなではなく実際削れている、たかが地面を砕きながら前に進んでいるだけのそれが、私の身体を削っている、つまりそれほどまでの速度だということ。

 

 火花が散り、身体が赤色に染まっていく。

 

 

「ぐぅ…!!」

 

 うめき声を出しながら咄嗟に右手の刀を狼へと振るおうとするが、その動きを見せた途端に更に深く、地面に叩きつけられた。

 

 衝撃が身体を打つ…しかしそれでも動きは止まった。

 

 

「…っ!!!」

 

 氷元素と風元素を収束させ、同時に爆発させて狼を吹き飛ばす、更にそこから再び背面の腕を生成しそのまま元素の斬撃を飛ばす。

 

 その攻撃に、空中に吹き飛ばされていた狼は瞬時に態勢を整え…唐突にその姿を消した。

 

「何っ!?」

 

 消えた、文字通り消えた、元素の痕跡もクソもない、本当にその場から消えた。

 

 多用していた瞬間移動ではない、アレには多少なりとも元素が使われる、一切発生しないなんてことはないのだ。

 

 ならば、一体何処に?

 

 

 

 

 

 

 

『こっちだよバーカ』

 

 背後から、狼の声がした。

 

 振り向くことすらせず背面の二刀を声のした方向へ振るうと同時に瞬時に振り向き手に持った二刀を横薙ぎに振るう。

 

 しかし当たらない、空を切る、振り返った先には誰もいない。

 

 

『大外れの残念賞、また頑張んな』

 

 そんな気怠げな言葉と共に、私は横合いから吹き飛ばされた。

 

 地面をゴロゴロと転がり、刀を突き刺して勢いを殺す。

 

 顔を上げれば、そこには何でもない様子の狼がそこにいる。

 

 その身体には相も変わらず傷が無い、私は未だにあの狼にまともな傷一つ与えられずにいる。

 

 その事実が、どうしようもないほど私を()()させる。

 

 あぁ、やはりそうだ、お前はそういうやつなんだと。

 

 底が見えない、さっきの仕掛けのタネは何だ? どうやって元素も使わず瞬時に背後へ移動した? あの声の正体は? …知りたいことは山程あるが、それでも分かることがある。

 

 こいつは、未だに全力に至っていないということだ。

 

 

「…キヒッ、キヒヒヒヒヒヒヒッ…!」

 

 これが喜ばずにいられようか、これが笑わずにいられようか。

 

 こいつは、この狼は、先程の危機を前にしてなおこれなのだ。

 

 私ほど頑丈ではないだろう、痛覚もあるだろう、疲れや消耗もあるだろう、私には無いそれらを持ち合わせても尚もこれだ、あぁやはりそうだお前ではなくてはならない。

 

 私が満たされるのは、私が満たすのは、私を満たすのは、やはり徹頭徹尾お前でなくてはならない…!

 

 あぁ、私はお前に何処までもついていけるだろうか?

 

 あぁ知りたい、もっとお前を知りたい、お前の全てを、お前の原初に至る全てを。

 

 知りたい、知りたい、知りたいぞ…! お前という存在を…!!

 

 

 愛しき愛しき、我が宿敵よ、我が宿願よ、我が唯一よ。

 

 どうか、おまえの全てを見せておくれ…!!!

 

 

 

 

 

 





主人公

 ずっと鬼に対してドン引きしてた。




 なんか作者的にも訳が分からん方向に向かおうとしている奴……シルヴァリオのクソ眼鏡とカグ○○さんのやつ見てたのがいけなかったんだろうか?




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『狼』VS『鬼』⑤


 軽く一ヶ月ぶりの原神…それはそれとしてこれどうやって決着つけよう?


 

 

 

「狼ぃぃ!! オオカミィィィイィィィィィッ!!!!」

 

『うっさい騒ぐな今更ァァ!!』

 

 なんだこいつ、なんなんだこいつ!?

 

 何か危ない、とにかく危ない気がする、具体的には言うと命じゃなくてもっと別の何かに対しての危険性を感じる。

 

 端的に言おう、さっきよりも気持ち悪い。

 

『来んなアホーー!!』

 

 拳を放つ、岩元素を纏わせた最高硬度の一撃、ただ硬いものをぶん殴るという括りで言えば上位の火力に位置するだろう一撃を、俺は何の躊躇もなく鬼へと叩きつける。

 

 この程度じゃ壊れんだろうという嫌な確信を抱きながらもとりあえず離れたいという思いから放たれたその一撃は、呆気ないほど綺麗に鬼の顔面へと吸い込まれた。

 

 バガゴォォン!! と山が砕けるんじゃないかってくらい大きく重々しい音が鬼の顔面を中心として響き渡る。

 

 普通ならここでゲームセット、顔面砕けて終わり……のはずなんだけどなぁ…。

 

 

「アヒャヒャヒャヒャヒャャヒャヒヒャャァァァァァァッ!!!!」

 

 拳を喰らった直後に嗤声が俺の耳に届き、そこから振り抜かれるように半透明な緑色の鉤爪が迫りくる。

 

 迫る鉤爪を岩元素の腕で抑え込み、放った拳を後ろに引いても更にもう一度拳を叩きつけんと鬼目掛けて振るう。

 

 しかしそれは叶わない、拳を振るうその直前に俺の視界が急速にブレたからだ。

 

「今度こそおぉぉ…ツカマエタァァァァァァァァッッッ!!!!!!!」

 

 鬼が手を大きく振るった姿が見えた瞬間、俺の視界が急速にブレた。

 

 グンッと勢い良く視界が上下に入れ替わり、ジェットコースターさながらのスピード感が身体にのしかかる。

 

 そしてその勢いのまま、俺は地面に叩きつけられた。

 

『ッ……!!』

 

 戦いが始まってから初めてまともに食らったダメージ、叩きつけられた影響で息が止まる、衝撃が身体中に響いてくる、痛いし苦しいしでどうしようもない。

 

 ほんの僅かの浮遊感と共に、再び急速に視界がブレる。

 

 グンッと横合いにブレていく視界を目に納めながら、何処を掴まれているのかと視線を身体へと向ける。

 

 見てみれば、先程の緑色の鉤爪が俺の尻尾の部分をガッシリと掴んでいた、尻尾の感覚は正直薄いから気づかなかったのにも納得する…そんなことを考えてる内に、再び俺の身体は打ち付けられた。

 

 岩か何かの砕ける音と共に身体に衝撃が走る、今度は悲鳴すら上がらない、息が詰まって仕方がない。

 

 再び浮遊する、今度は何処に当てる気なのか…そんなことを考えている内に無性に苛ついてきている自分が居た。

 

『舐ぁぁ…メンナァァァァァァァッッ!!!!』 

 

 爆発した、何が切っ掛けとか自分でも分からない、ただ無性に苛ついたからキレただけ…多分それだけのはず。

 

 俺は尻尾を掴んでいる鉤爪を逆に掴み取り、それをそのまま釣り上げるように思い切り引き寄せる。

 

 抵抗は一瞬、まさかあの状況から逆に引っ張られるとは思ってもみなかったのか、鬼は足を踏み締め耐えることすら無く、呆気なく鉤爪ごと俺の攻撃範囲に引きずり出された。

  

『いっったいだろうがぁぁこの変態マゾ剣鬼ィイイィィッッ!!』

 

 渾名としてはこれ以上無い程に失礼な呼び名を怒りと共に吐き出しながら、俺は引き寄せられた鬼の顔面を岩元素の拳で殴りつけ、更にそのまま吹き飛んでいった鬼に向けて突進し、激化反応を纏わせた爪で思い切り顔面…というより目玉の部分を斬りつけた。

 

 ガシャンと、今までにない音を響かせながら鬼の片目の部分が爪の形に抉り取られ、光っていた部分から光が失われた。

 

「ッッ… オォォォォォォッ!!!」

 

 それでも流石は剣鬼と言うべきか、そんなの知らんと言わんばかりに刀を振るってくる、振るわれた刀は半ば反射的にされた俺の尻尾をいとも容易く切断した。

 

 激痛が奔る、本来あったモノが無くなる痛み、普段俺が散々っぱら愛用していた俺の尻尾が斬り飛ばされ、宙を舞う。

 

『アァォァォァァァァッッ!!!』

 

 鬼を斬りつける…だからどうした?

 

 尻尾が無くなったからなんだ、そんなのとっくに覚悟していたことだろう、あの時…初めて鬼に会った時からそうなるかもしれないって分かってたんだから。

 

 痛い痛い痛い…けど死んでない、容易く動ける、たかが尻尾が斬られた程度で死ぬやつなんているものか。

 

 斬る、抉る、自慢の爪で鬼の鎧にこれでもかと深々とした傷を抉り付ける。

 

 当然鬼も黙ってはいない、俺が爪で斬りつけている間にも俺に刀を振るってくる、振るわれた刀は俺の身体を裂き、俺の身体から血が吹き出る…だからなんだ…。

 

 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い…それでも…お前だけは殺す。

 

 

『ウゥゥガァァァォァァァォォォォアァァァォァァッッッ!!!!!!!』

 

「オオォォォォォォォァァァォォォオォォッッ!!!!!!」

 

 気づけばお互い叫んでいた、気づけば互いに吼えていた。

 

 生きるか死ぬかの瀬戸際を、一緒に生きている、片や血に塗れ、片や破片と油に塗れて、互いが互いに殺すか殺されるかの世界で今生きている。

 

 それに何か思うかと言われれば何とも言えず、何も思わないと言えばそれこそ嘘になってしまう…なんとなくではあるが、今話せば仲良くなれる気がしてくるのだ、互いに生きたまま帰れる気がしてくるのだ。

 

 …しかし、しない…仲良くなれようがなれまいが関係無い、互いに生きて帰れるかなんてどうでもいい。

 

 どれだけ気が合おうが、剣鬼(お前)だけは殺すと決めている。

 

 

 


 

──あぁ…なんて、なんて恐ろしいもの(美しいもの)を向けてくれるんだ。

 

 

 私はそう思わずにはいられなかった。

 

 右から、左から、上から、縦から、真ん中から…無数の方向から襲い来る爪を弾き防ぎながら、私はただただ至福の真っ只中にいた。

 

 それもこれも、眼の前の狼から向けられる視線のせいだ。

 

 先程までは、ただ倒すという敵意だけしか感じ取れなかった…しかし今は違う、明確に私を殺すという意思を感じられる、そう狼の目が言っている。

 

 気配も変わった、つい先程までは何処か柔らかさを感じた気配が、今ではピリピリと鋭い刃物で突き刺してくるようなソレへと変わっている。

 

 それが堪らなく嬉しい、それが堪らなく愛おしい。

 

 だって目の前に存在する私の唯一が、ようやく私をちゃんと愛してくれ(殺してくれ)ようとしているのだから。

 

 

「ハハッ! 嬉しいなぁ狼よぉ! ようやく、ようやく私をちゃんと見てくれたなぁぁッ!!!」

 

『うっさいんだよ変態が! もうなんでもいいからさっさと死ねぇ!!!』

 

 売り言葉に買い言葉、私が売ってお前が買う私達の会話、その中で私はお前に刀を振り、お前が防いでまた爪を振るう…この応酬のなんと楽しいことか。

 

 刀を上段から振るい、その素っ首叩き切ってやると言わんばかりに勢い良く振り下ろす。

 

 それを狼は紙一重で避けながら、そこから更に私の懐に突っ込む…ことをせずに唐突に口を大きく開けた。

 

 瞬間、私は半ば直感的にその場から横合いに大きく飛び退いた。

 

 その数瞬後に、バチリという何かの弾ける音を鳴らしながら私の居た場所を大出力の元素の塊が通り過ぎた。

 

 いや、塊というよりも光線、赤い光線がつい先程までは私の居た場所を容赦無く抉り、消し飛ばす。

 

 当たっていればほぼ間違い無く致命傷、或いはそのまま消し飛ばされて死合終了の知らせが鳴るであろうそれを目前で見て、私は……どうしようなく興奮した。

 

 なんだ今のは? まだあんなものを隠し持っていたのか? 戦い始めてから随分経ったのに、まだそんな手札を残していたのか? と無いはずの心臓が鼓動が早まったような気がした。

 

 そんな私に、狼は牙を剥き出しにして襲い掛かってくる。

 

 その瞳から隠しようもない程に濃い殺意が満ち満ちており、今にも喰い殺してやる言わんばかりの目をしていた。

 

 そんな狼に好きにさせるかと刀を振るうが、それを両手の爪で抑え込まれ、更にその体勢のまま勢い良く身体ごとぶつかられて揉みくちゃになりながら地面を転がる。

 

 すぐさま起き上がって攻撃してようとするが、それよりも早く眼前に白が映り込み、そこから顔面に衝撃が走った。

 

 殴られたと、そう理解する前に更にもう一発、顔面に衝撃が響き、身体が後方に大きく下がる。

 

 不味いと思ったがそれはもう後の祭り、大きく後退した私に向かって幾多の打撃と斬撃が打ち込まれ始める。

 

 腹に腕に足に喉…人間で言う所の急所を中心として打ち込まれるそれらの威力は絶大で、私自身もあまりの速度の攻撃に抵抗が出来ない状態だった、速すぎて元素を展開する隙すら無い。

 

 雷元素のバチバチという音と共に、私の身体がみるみる内に砕け、削れていく…どれもが本来なら必殺のソレのはずだ、ソレに尚耐えられているのは私の身体が頑丈であることと私が痛みを感じない傀儡であるからこそだろう。

 

 故に、だからこそ、分かってしまう…このまま行けば、問答無用で削り潰されると、ここで終わってしまうと。

 

 

 

 

 

 それは…許容出来ない、それだけは駄目だ。

 

 

 

「アォァッッ!!」

 

 元素を全力で圧縮して鎧代わりにする、以前のように吹き飛ばすことはしない、意味がないからだ。

 

 鎧を纏ったことで響いてくる衝撃が若干ではあるが弱まり、ほんの僅かばかりの余裕が出来た、しかし本当に僅かだ、すぐに破られる。

 

 だからその前に、押し返す。

 

「オオカミィィィィィィッッ!!!」

 

『しっつこいなぁお前ェェ!!!』

 

 狼の乱打のスピードが跳ね上がり、雷元素の出力も同時に上がる、鎧に掛かる負荷も高くなり次から次へとヒビ割れていく。

 

 しかしそれでも、一瞬は稼いだ。

 

 元素の出力を最大値にまで引き上げ、そこから更に数値を振り切るレベルで暴走させる。

 

 最大値を振り切って暴走を開始した元素は私の体内で渦を巻くように暴れ回り、内側から私の身体を破壊していく。

 

 飛び出すように、私の身体から風元素の光が漏れ、幾度の間も置かずそれら尽くが刃となって狼へと襲い掛かる。

 

『チィッ…』

 

 舌打ちしながら狼は後方に大きく飛び退くことで、風元素の刃を危なげなく躱してみせ、更に警戒するように此方を目聡く見つめている。

  

 それを機能している方の片目に納め、私はゆらりと立ち上がった。

 

 元素は未だに体内で暴走している、そのせいなのかほんの少し動いただけで私の身体はボロボロと崩れ落ちていく。

 

 パラパラと身体の破片が地面に落ち、落ちた破片の部位を埋めるように風元素の光がそこから溢れ出してくる、何時の間にか背後の二対の腕は消えていた。

 

 刀を握る手はボロボロで、何時手放してもおかしくない、寧ろ壊れてないのが不思議なくらいだろう。

 

 それでも、まだ動けると、私は確信していた。

 

 

 

『…まだ何かあんのかよお前』

 

「こちらの台詞なのだがなぁ、それは」

 

 呆れたような狼の言葉に脊髄反射で答える…あぁそうとも、まだ私は終わらないし終わらせない、終わってたまるか。

 

 だって私は…まだまだこの時間を味わっていたいのだから。

 

 無理矢理暴走させたのだ、この身体は最早持たない、動ける時間も範囲も残り僅か…それでも構わない。

 

 

 私は自分が破損(死ぬ)その時まで、この至福の時間を堪能し続ける、私はそうしたい、私はそうして壊れたい(死にたい)

 

 勝っても負けても結末は恐らく同じだ…だから、あともう少しでだけこの壊れかけの傀儡に付き合っておくれ、我が唯一よ。

 

 その果てに私の望んだものが、きっとあるのだから。

 

 

 

 







 勝とうが負けようが壊れることが確定した人間みたいな傀儡。

 やってることは狼と一緒だが、効率も出力制御も総じて狼よりも下の為、同出力で戦っても狼には程遠い、お労しや。




 ドン引きして尻尾斬られて遂にキレて本気で殺す気になった…逆を言えば今までは倒す気はあっても半ば無意識的に遊んでた部分はあったりする。

 多分意識的な意味で本気で戦ったのは鳥とお父さんと鬼だけ。



 


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『狼』VS『鬼』⑥


 ようやっと書けた、もう完全にネタ切れだっぴ。

 AC6、発売おめでとうございます。


 

 

「アッハハハハハ!! ヒィヒャァァァァァァッッ!!!!」 

 

 狂ったような笑い声をあげながら、鬼が俺へと突っ込んでくる。

 

 その速度は先程までの比じゃない、見た目の変化は虚仮威しじゃなかったわけだ。

 

 というか…うん、やっぱり気持ち悪い。

 

 地面を砕き、風すら超えて俺へと肉薄し、その刀を大きく振りかぶって俺へと振り下ろす。

 

 振り下ろされた刀には目に見えて分かるほどに鋭く風元素が付着していた、当然喰らえば一溜りもない、多分爪で防いでも危ないかもしれない。

 

 だったら…まともにぶつかり合ってられるか。

 

「おごっ!?」

 

 草元素をフル稼働させて地面へと流し込み、地面に埋まっていた木の根を急成長させて地面を突き破らせる。

 

 地面を突き破って現れた巨大な根は槍のように鬼の腹部へと殺到し、その勢いのまま上空へと鬼を吹き飛ばす。

 

 

『そっからなら避けらんないだろ…!』

 

 更に空中へと打ち上がった鬼に向けて、俺は岩元素の塊を連続して鬼へと射出する、一発二発とかそんなちんけな数じゃなくて十発から五十発、全部が全部が岩石と呼ばれる程の大きさだ…それをまぁこいつは…。

 

「温いぞ狼ぃ!」

 

 何がどうそうさせるのか、斬撃を縦横無尽に繰り出して射出された岩石全てを粉微塵になるまで斬り刻んだ。

 

 呆れるよ、何をどうしたらそんな動き出来るだよ、しかも見たところお前壊れかけだろうに、今のでタイムリミット減ったろうに。

 

 一体何がお前をそうさせるのかと呆れた目を向けながら、俺は攻撃の手を緩めない。

 

 ただ塊を連続して射出するってのが駄目なら、今度は塊じゃなくて柱をぶつけようと、以前鐘離さんに見せてもらった岩元素の柱を無数に生成し、それを鬼へとぶつける。

 

 地面から無数に生えた柱はまるで蛇のような軌道を描きながら一斉に鬼へと向かっていく。

 

 それに対して鬼は自身に当たりそうな物だけを最小限に斬り刻みながら、向かってくる柱を逆に足場にして俺へと向かってくる。

 

 時に別の足場に飛んで柱を避け、避けられないと分かるや否や最小限の動きで柱をバラバラにして、走り込みながらまた別の柱に飛び移るという行為を尋常じゃない速度で行う…さながら八艘跳びのように。

 

『馬鹿じゃねぇのかあいつ…』

 

 不思議と言葉が漏れた、まるで呆れたように、どうしようもない馬鹿に出会った時みたいに。

 

 鬼の身体から破片が零れ落ちている、少しずつ少しずつ古びた壁の塗装が剥がれ落ちるように、少しずつ鬼の身体がパラパラと剥がれ落ちている。

 

 分かっているのか、このまま続ければ先に壊れるのは間違いなくお前だ、俺が逃げに徹すればそれだけで壊れるのが今のお前だ。

 

 何がそうさせる? 何がお前をそこまでさせる? 今にも壊れそうなのに、何がお前をそこまで駆り立てる?

 

 嬉しそうな笑い声をあげながら、俺に向かって刀を振り上げる鬼をジッと見つめて、何をするでもなくパンッと手を合わせる。

 

 瞬間、鬼の乗っていた柱が内包していた元素ごと弾け飛ぶ。

 

 ぶくりと泡立つように柱が膨れ上がり、熱膨張でも起こしたみたいにボコボコと風穴が開き、最後に一気に弾けた…時間にして数秒と満たない。

 

「ッ!?」

 

 爆風に鬼が巻き込まれる、辺りに満ちる光が俺の視界を埋め尽くした…ぶっつけ本番でやってみはしたけど…これは暫く封印だな、威力がデカ過ぎる。

 

 パラパラと降り注ぐ柱の破片とモクモクと登る煙を見ながらそう考えて…爪に雷元素を纏わせた。

 

「ォォォォォォォォオオオオオッッッ!!!」

 

 煙の奥から、鬼が咆哮と共に刀を両手で構えて接近してくる。

 

 風元素を纏った刀の上段からの振り下ろし、それに対して俺は圧縮した雷元素を纏わせた爪で迎え撃つ。

 

「ヌゥゥンッッ!!」

 

 唸り声と共に振り下ろされた刀が俺の振るった爪とぶつかる、重苦しい鉄の音と放電する雷、吹き荒れる風の音が周囲に響いた。

 

『ッッ…!』

 

 改めて受け止めてみた結果、分かったことがある…さっきの刀四本の時よりも一撃が重い。

 

 足が沈み込む、身体が軋む、咄嗟に岩元素で身体能力ブーストしてなかったらそのまま叩き切られてたかもしれないと、そう思わせられる程に重い一撃、何がおかしいってさっきまではそうでもなかったことだろう。

 

 成長している…さっきから分かっていたその事実を、改めて再確認させられた気がした。

  

「ハハハッ!! さっきの驚かされたぞ狼! まだそんな隠し玉を残しているとはな、本当に本当に…驚かされたっっ…よぉ!!」

 

 そんなこっちの心情なんて知らぬと言わんばかりに鬼は嬉しそうに俺へと言葉を叩きつけ、更には鍔迫りあっていた俺を強引に刀を振り切ることで吹き飛ばした。

 

 吹き飛ばされながら、鬼のことを見る。

 

 ボロボロだ、鎧は全身罅割れだらけで今にもボロボロと崩れてしまいそうで一部に至っては関節が剥き出しになってしまっている。

 

 更に言ってしまえば、片足が一本まるごと吹き飛んでいた、本来合ったはずの場所には何も無く、代わりに抉れた足の断面から勢い良く伸びた緑色の元素が鬼の姿勢制御の代わりをしているようだった。

 

 そんな状況で、あんなに楽しそうに笑ってるのかアイツは…気持ち悪いというか、いっそ恐ろしさすら感じてしまう。

 

 改めて分かった、今の状態の鬼相手にインファイトはもう駄目だ、こっちが斬り殺される。

 

 だったら──

 

(遠距離からチマチマと削る、隙があればガツガツ削る、チャンスがあれば───)

 

 

──一撃必殺。

 

 

 吹き飛ばされた俺を追撃しようとしている鬼に視線をくれて、爪に雷元素を纏わせる。

 

 …その時、ほんの一瞬だけ…雷が黒くなった様に見えた。

 

 

 


 

「飽きさせないなぁ、お前は」

 

 目の前の光景を見て、私はふとそう独り言を漏らした。

 

 飛んでくる紅い円盤を刀で弾き、更にその奥から飛んでくる無数の柱を身軽に躱し、更に地面から迫りくる無数の黄緑色の蔓をバラバラに斬り刻みながら、私は興奮を抑えずにはいられなかった。

 

 戦い方が変わったと、直ぐに理解出来た。

 

 あの時、私が狼の尻尾を斬ったあの時から、明確に私を殺しにきているとすぐに分かった。

 

 先程までとはまるで真逆だ、近接戦闘主体だったその戦闘スタイルは、今では遠距離を主体としたスタイルへと変わっている。

 

 引き撃ち…というやつなのだろうか、それを軸にしながら狼は私を今にも殺してやると言わんばかりの殺意溢れる瞳で私を見ている。

 

 それを見て私は…不覚にも覚えのない衝動に駆られた。

 

 それが何なのかは分からない、何せ経験したことのないそれだ、正体等分かるはずもないのだ。

 

 しかし、それでも分かっていることが一つだけある、それは──

 

「オォカァァミィィィィィッッッ!!!!!!」

 

 これをぶつける相手は、お前でなければならないということだ。

 

 後ろに引きながら、此方に幾多とも呼ぶべき攻撃を放つ狼に向けて、私は被弾も気にせずに突撃を開始した。

 

 幸いと言うべきか、私の片足は丸ごと欠損しており、そこから漏れ出る様に元素が溢れ出している、これのお陰で姿勢制御は疎か加速することすら容易だ。

 

 意図的に片足に元素を流し込み、それによって勢い良く吹き出る風元素を加速の土台とし、私は狼へと一直線に突っ込む。

 

 雷の円盤が飛んでくる、弾く。

 

 雷の槍が飛んでくる、弾く…弾ききれずに肩が吹き飛ぶ。

 

 岩の柱が、塊が、草元素の円盤が、槍が、蔓が、無数の攻撃が次から次へと片目の見えない私へ容赦無く襲い来る。

 

 それら全てを弾き、防ぎ、躱し、時には受ける。

 

 

 肩が吹き飛び、指の一部がもげる。

 

 もう片方の足の爪先が欠ける、関節が悲鳴を上げる…それでも前へ前へと進み続ける。

 

 

(あぁ…なんて、楽しい)

 

 楽しい、それ以外の言葉が浮かばないのだ。

 

 近接戦闘に於いて、私は狼に圧倒され続けた。

 

 攻撃の尽く通じず、唯一の通じたのはまぐれ当たりと言いたくなるような尻尾の切断だけ…これでどうして追いついたと言えようか、どうして一矢報いたと言えようか。

 

 遠い、未だに私は奴の影すら踏めていない。

 

 それがどうしようなく嬉しく、楽しいのだ。

 

 

「キヒヒヒヒヒヒィ…!」

 

 兜の角が千切れる、脇腹が吹き飛ぶ…知ったことか、この身は絡繰だ、そんなことで動けなくなるほど軟ではないのだ。

 

 踏みしめる、迫る柱を飛び交い避けて、その柱を足場に踏みしめ、そして跳ぶ。

 

 狙いは一つ、宿敵の眼下へ。

 

 

「オオォカァァァミィィィィィィッッ!!!!」

 

 雄叫びを上げながら迫れ迫れと踏みしめ駆ける。

 

 見えたぞお前の姿が、見えたぞお前の手が、見えたぞお前の瞳が、見えたぞお前の影が。

 

 視線の先には狼の姿がある、気づかぬ内に随分と近くまでやってきていたようだが、そんなことはどうでもいい。

 

 届く、ようやく届く、ようやく届かせられる。

 

 お前を斬る、お前を殺める、そうして初めて私はこの言いようのない心地の良い衝動に名をつけられるのだ。

 

 故に──

 

「トッタゾ狼ィィィッ!!」

 

 お前を斬るぞッッ…!!!

 

 

 刀を逆手に持ち替え、刃を握り込んで居合の形を取る。

 

 なんだかんだと言ってこれなのだ、腕四本の四刀でも元素を多重に絡ませた遅れてくる斬撃でもない、これなのだ。

 

 私が最も扱い慣れ、そして最も威力と速さを両立出来る方法は何処まで行ってもこれなのだ。

 

 知っているだろう狼よ、これがなんなのか、どういう技なのかをお前は良く知っているだろう。

 

 そして理解もしているはずだ、この距離と今の私の速度ならばお前が瞬間移動を行う前に私はお前を切り裂ける。

 

 お前が足場を爆破するよりも速く、私はお前を殺しきれる。

 

 焼き付けろ、目を見開け、見せつけられてばかりだった私とお前の戦いで、今度は私がお前に見せつける番だ。

 

 

「──斬り穿つ」

 

 加速する、加速する、加速する、鬼の眼前へと真っ直ぐと加速する。

 

 元素を放つ間など与えない、そんなことに思考等割かせない、お前の視線も思考も何もかもを、私に釘付けにしてやる。

 

 さぁ…私を見ろ。

 

 

 刀を振り抜く、握り込んでいた指達を何の容赦もなく斬り刻みながら、振り抜かれた刀はいとも容易く音を超え、狼の首へと肉薄する。

 

 目に映る全てが遅く感じる、振り抜かれた刀がゆっくりと狼の首筋へと近づいていく、ゆっくり…そうゆっくりと。

 

 何時触れるのか、何時首を斬り飛ばすのか、何時それにこの宿敵は気が付くのか…それだけで頭がいっぱいだった。

 

 刀が狼へと近づく、近づく、近づく、近づく、近づく…触れた。

 

 触れた、触れた、狼の首筋から僅かに血が滲み、それがゆらりと刀の先を伝っていく。

 

 あともう少し、もう少し、もう少しで全てが終わる…そう確信していた…少なくとも私は。

 

 

 

 しかし、それを目の前の宿敵は許さなかった。

 

 

 

 刀は狼の首筋を()()()()()()()()()()()()、肉を断ち斬る感覚も肉を裂く感覚も何も感じさせずに、あまりにも呆気なく刀は狼の首筋を通り過ぎた、まるで虚空を斬ったように。

 

(なんだ…この感覚は?)

 

 

 勝った気がしない、首を斬ったはずなのにまるで勝ったという感覚がしない、達成感が無い。

 

 何故だ? 私は今、狼の首を斬ったはずだ、時間の感覚さえ戻れば後は狼の首が落ちる瞬間を眺めればいいだけのはずだ…なのに何故こうも勝った気になれない?

 

 何かがおかしい、決定的に何かが違う、根本的なものを見落としている気がする。

 

 首を切り飛ばしたはずの狼をジッと見つめる。

 

 なんだ? 何が違う? 何を見落としている? 私はお前の何を見ていない。

 

 見る、視る、観る、覽る、流れの遅いこの場でただひたすらに狼のことだけを視界に映し、そこから違和感を探ろうとする。

 

 しかし見つからない、振り切られた刀がゆったりと私の身体を越えようとする程の時間が経ったにも関わらず、私は何も見つけられない、逆を言えばそれほどまでに違和感が見当たらない。

 

 何処にもおかしな点は無い、全てが私の勘違いでこの感覚が消えれば狼の首は落ちていると、そう思いたくなる…それでも私の直感は違和感を訴え続けている、それが酷く不気味で…恐ろしい。

 

 なんだ、何処だ、何が私に訴えかける、何が私を駆り立てる、何が…何が──

 

 

 

(……あ…)

 

 

 

 見つけた…爪の先だ。

 

 爪の先が……消えている。

 

 

 

 

 

 

 私がそれを自覚した瞬間、スローモーションに感じていたはずの時間が、急速に元の速度へと戻っていく。

 

 刀によって首を切断されたはずの狼は、その首を落とすこと無く、そこに鎮座していた。

 

 しかし、それも数秒のことだ、異変はさも当然のように私の目の前で起こり始める。

 

 先程見つけた消えていた爪を起点として、狼の姿が一瞬にして私の目の前から溶けるように消えていく、まるで幻のように。

 

 そしてその溶けるように消えた狼の更に先に…四つん這いになり、()()()()()を唸らせるように身に纏い、今にも此方に飛びかかってきそうな気配を纏った狼が、そこにいた。

 

 

(まずっ──)

 

 

 私の本能が危険を告げるが、それも最早手遅れだ、私は判断を大いに間違えた。

 

 私がそれを認識し、そして自覚したのは…私の胴体が、下半身と泣き別れした直後のことだった。

 

 

 

 

 

 

 







 上半身と下半身が泣き別れした、真っ二つになった。

 
主人公

 雷元素が黒くなった、多分元素爆発。


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『狼』VS『鬼』 幕


 内容アッサリにしたせいで文字数が少ないぜ!(建前) AC6楽しすぎるだろ(本音)


 

 

 負けた…ここまでやられてしまっては、そう認めざるを得ない。

 

 ゴロゴロと地面を転がり、仰向けになるようにして放り出された私は、雷模様の曇天を見上げながら、そう思った。

 

 やられた…原理は分からないがまさか斬ったのが本体ではなかったとは流石に思わなかった、あれをあの状況でもやられてしまえば何も出来ない。

 

 ポツリポツリと小雨が振り始める、徐々に徐々に強くなる雨が私の身体を打つ。

 

 

 …美しいと感じた、美しいと感じてしまった。

 

 あの溶けるように消えた幻の向こうから現れた、白黒の狼…黒い雷を纏うその姿を目にした時、私は危険を感じるのと同時に…ほんの一瞬見惚れてしまった。

 

 その結果が今のこの状況なのだから、馬鹿と言うしかない。

 

 

『流石に…お前もここで打ち止めか?』

 

 声が聞こえた、声の方向に視線を向けてみれば、そこには相も変わらず黒い雷元素を纏った狼がいた。

 

 身体のあちこちでパチパチと放電し、バチリバチリと弾けるその雷は、まるで私のことなんて何時でも貫けるぞと言わんばかりに音を鳴らしていた。

 

 その音がどうしようもなく、心地良い。

 

「……負けだ…私の」

 

 改めて口に出して宣言する、私の負けだと、私の敗北だと。

 

『…そっか、じゃあ…俺の勝ちか』

 

「あぁ、お前の勝ちだ」

 

 私の言葉にそっかと返した狼は、何を言うでもなくその場に腰を下ろし、辺りの風景を見渡すように首を動かした。

 

『…派手にやったね、お互い』

 

「……まぁ…な」

 

 そこは否定するまでもなくそうだろうと思う、実際派手にやった自覚はあるのだ。

 

 抉れていない箇所は少なく、周囲に存在していたはずの木々も最早無く、岩はバラバラになっていたり真一文字か縦一文字に斬り裂かれていたり、草原が妙に焦げていたりと無事な箇所を探す方が難しい。

 

 きっと、何処ぞの誰これが見ようものなら、きっとあぁだこうだと見当違いの推測を立てた後に噂としてバラ撒いて、それがあぁでもないこうでもないと歪みに歪んで国を超えて伝わっていくに違いない…少なくともそれだけの荒れ様だ。

 

 だというのに今の私達は穏やかそのものだ、つい先程まで殺し合っていたとは思えない程に私達は穏やかに言葉を交わしている。

 

「なぁ、狼」

 

『ん?』

 

 私が呼ぶと、何か? とでも言いたげに狼が首を向けてくる、その姿には先程までの絶対に殺してやるという殺意に満ちた姿は無い。

 

 あるのは犬のように座り込み、気怠げそうに私を見てくる穏やかな姿の狼だけだ…言葉にしてみるとあり得ないと思ってしまうのは殺し合ったが故なのだろうか?

 

 

「トドメは、刺さないのか?」

 

『だってお前そのままでも死ぬじゃん』

 

 だからトドメは刺してやんないと、狼はあっけからんと言い放った。

 

 その言葉に、私は一言そうかと返して、上を見上げた。

 

 そして、確かにそうだと、自分の状態を確認する。

 

 腹から下を文字通り両断され、そこから溢れ出るように流れ出す緑色の液体、所々で悲鳴を上げる関節、ノイズが奔って今にも消えてしまいそうな己の視界…なるほど、確かにこんな状況ではトドメを刺す必要性など感じられないだろうと、そう納得した。

 

 しかし、それはそれとして、目の前の宿敵の手で壊れたいと願うのは、些か我儘だろうか?

 

 霞む視界で曇天を見上げながらため息をつく、分かっていたことだが、やはり口惜しい。

 

 結局私は…こいつの()()()()()()()()()()()

 

 結局私は、自分の中で未だに熱を持つこの衝動を何と呼べばいいのか分からなかった。

 

 ようやく、ようやく入口に立てたと思ったらこれだ、幾ら何でも中途半端にも程がある。

 

 楽しんでいたのは私だけ、きっと狼は楽しんでなどいなかった、私だけが一方的に楽しんでしまった。

 

 悔しいな、出来ることなら、叶うことなら、互いに楽しんだ末に、殺されたかった。

 

 

 

 

 

 

 

『あぁ、そういやさ、お前が使ってるのって風元素で良かったんだよな?』

 

 

 

『さっき雷元素使ってたけど、アレって多分風元素で集束して撃ってたんだろ?』

 

 

『だったらさ、それと同じような感じで雷元素ごと吸収とか出来たりしない?』

 

 

『お前多分部類で言うなら()()()()()類だろ? だったら最悪鎧壊れてても元素がありゃ何度でも──』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…ん? あれ?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『おーい? 剣鬼〜?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……………………』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…………………なんだよ…これからだってのにさ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……つまんねぇの』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…トドメ、刺しときゃよかったなぁ…』

 

 

 

 

 


 

 

「やっぱ、そうなるよなぁ」

 

 白い狼と絡繰という枠組みから逸脱した剣鬼の決着を見て、俺はため息を吐きながらそう零した。

 

 眼下では、トボトボと落ち込んだ様子を隠すこともなくさらけ出した白い狼が…俺の弟が悲しげに目を擦りながら帰路についている。

 

 …なんとなくではあるが、こうなる予感はあった。

 

 何故とは言わない、こういった経験が無いことくらい見れば分かる。

 

 初めてだっただろう、あそこまで何の躊躇もなく戦えたのは。

 

 初めてだっただろう、あそこまで戦いを楽しんだのは。

 

 初めてだっただろう、闘いの中であそこまで怒ったのは。

 

 

 どれを取っても初めて尽くし、彼方のことだから半ば無意識的に好感すら抱いていただろう。

 

 だからあんなことになる、戦って自分で壊した相手に素直に治してやろうかと言えない、これから殺す相手に楽しかったと笑顔で言えない。

 

 今までにも殺すことはあっても楽しかったと心の底から言えた相手はいないだろう、よしんば居たとしてもそれは命を懸けていない時のことだ、意味が違う。

 

 だから、哀れに思う。

 

 もしも初めてでなけりゃ、アイツは何の躊躇もなく選び取れただろうから。

 

 即ち、生かすか殺すか。

 

 少なくとも選び取れていたなら、あぁはなっていないはずなのだから。

 

 

 

 

「……と、言うわけだ()、今は諦めてくれ」

 

 そう、背後で元素を迸らせる少女に、声を掛けた。

 

 

「…それで、私が止まると思う?」

 

「…まぁ、無理だろうな」

 

 

 振り返り、蛍を視界に納める。

 

 今日は雷元素かと、蛍の手にある黒色の剣…『斬岩・試作』に奔る紫色の雷を見て、そう判断する。

 

 

「じゃあ、止めなきゃな?」

 

「…君相手だと、手加減出来ないよ?」

 

「望むところ…とだけ」

 

「…そう……じゃあ──」

 

 

 

──退かすね?

 

 

 

 その言葉を合図に、曇天の下に雷音が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 







 最後の最後で主人公が本気になっただけで全力にはなっていないことに気づいてノイローゼになった、悲しい。

 結局最後の最後まで自分が抱いていた感情には気づかず、何だったら狼の心情にも気付けなかった人…人?

 最後の主人公の提案を聞くまでもなく機能停止した…一応言っておくと死んだでも壊れたでもなく機能停止である。

主人公

 多分今頃泣いてる、ミナとかナヒナヒに慰められてる。



お兄ちゃん&蛍

 曇天の元で、武器を手に戦っている…お兄ちゃんvsストーカー(仮)…ふぁい!



 それはそれとしてこの小説でやりたいこと大概やり尽くしてしまった…どうしよう?






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モンドヘゴー


 ようやく日記に漕ぎ着けた、無茶苦茶久しぶりな気がする。

 モンドの話を書いていないことに最近気がついて急いで書いた、ネタが無いとか言ってる場合じゃねぇ。


 

◯月鬼日 晴れ

 

 気分転換にモンドに行こうと思う。

 

 何故かと聞かれたら、鶏肉のハニーソテー焼きなる美味そうな名前の食い物があるらしいからとしか言えない。

 

 何がいけないってんだ…食い物一つで国を超えて何が悪いってんだ! 俺は男だよ!!*1

 

 というわけで、行くぞミナァ! 目指せモンド! 目指せ美味い食い物! 今日も今日とて美味いものが俺を呼ぶ!!

 

 

 だからナーちゃん、そのガッシリと掴んでいる手を離してほしいんだけど…えっ? 無理? ……そうかぁ…。

 

 

 

追伸

 

 何か兄ちゃんがボロボロになって帰ってきた、持ってた武器も大概壊れてたし。

 

 聞いてみたら気にしなくていいと頭を撫でられた、釈然としないけど取り敢えず聞かないでおいた。

 

 けど…なんだろう、兄ちゃんに纏わりついてた元素を見ると凄い寒気がするんだよなぁ、なんでだろ?

 

 

 

 

◯月風鬼日 晴れ

  

 やったぜ、成し遂げたぜ…疲れた。

 

 昨日モンドに行くと言った辺りから妙に俺にくっつき始めたナーちゃんを何とか説得して、俺はスメールを出た、今はモンドに向かってる途中だ。

 

 モンドに向かってる途中で何か無茶苦茶キノコン達に引っ付かれて揉みくちゃにされたり、ラプトルみたいなキノコンに無茶苦茶後ろ髪引かれるような声で泣かれたりしたけど、なんとかモンドに向かっている。

 

 因みに遥は俺の後ろをコソコソと付けてきている、岩陰に身を屈めてコソコソと俺達の様子を伺っている…なんであれでバレないと思ったんだろう? 可愛いから良いけど。

 

 

追伸

 

 寝てたら違和感を感じて起きてみたら遥が思い切り俺に抱きついてた、俺の体毛に埋まってたミナはそこら辺に放り投げられていた、あんまりだったから遥はそのままにしてミナのことは抱きしめながら寝た。

 

 

 

◯月土鬼日 晴れ

 

 起きたらミナと遥がドカドカにやりあってた、周囲は丸焦げびちゃびちゃになってた、何があったし。

 

 場所的に言えば…もう璃月なのかな? 周りを見渡してみれば見覚えのある建物がちらほら見えるし、多分そうなんだろう。

 

 このまま璃月に寄ってからモンドに行くって感じでも良いけど…なんというか今はそんな気分じゃないから一気に行こうと思う。

 

 だからねミナさんや、行きたくない行きたくないと駄々を捏ねるのはお止めなされや、子供じゃないんだから。

 

 

追伸

 

 何か遠目に岩元素同士がぶつかり合ってるのが見えた、なんか凄く嫌な予感がするんですけど…具体的に言うと妖怪の気配がプンプンする。

 

 …流石に気のせいかな?

 

 

 

 

 

◯月火鬼日 晴れ

 

 

 書くんじゃなかった! あんなフラグビンビンなこと書くんじゃなかった!!

 

 なんでいるの? ねぇなんでいるの!? お前スメールにいたよねぇ!? なんでこっちにいるの!? ねぇなんでぇぇ!!?

 

 普通無いよ? 偶然スメールを出たその二日後くらいにバッタリ出会うとか普通無いよ? だって俺わざわざお前がちゃんとスメールにいるかどうか確認したもん!!

 

 なのになんでさも当たり前のようにいるの? ここ璃月だよ? モンドまであともうちょいってところの璃月だよ? なのになんでさも当然のように道のど真ん中で仁王立ちしてるんですかねぇ!!?

 

 嫌だ!! こちとら鬼との戦い明けなんだから嫌だ! 戦いたくない!! 死にかけたくない!!

 

 というわけで…に〜げるんだよぉぉ〜〜!!!!

 

 

追伸

 

 眠い…疲れた……寝る。

 

 

 

 

◯月水鬼日 雨

 

 ようやっとモンドに着いた、本当はもうちょい余裕を持って景色を楽しみながら来たかったけど、もうアレは仕方がないか、あんなん相手に余裕を持てとか無理があるッピ。

 

 見ろこの天気を、まるで俺の気分をそのままじゃないか…マジで許さんからなあんにゃろうめ。

 

 とりあえず、寝床として偶然見つけた洞窟…の下に空間を作ってその中で日記を書いている…だってこうしないと見つかるんだもの。

 

 今日は探検する気になれないし、とりあえず雨が止んだら外に出て色々と見ようと思う。

 

 

追伸

 

 外に食い物を取りに出かけてたらなんか小さな女の子が池に爆弾投げ込んで遊んでた…怖っ。

 

 

 

 

◯月氷鬼日 晴れ

 

 変な女の子に会った、ライアー弾いてた…なんとなくだけど鐘離さんと似たような感じがする。

 

 気持ちの良い風が吹く中で、これまた静かにポロロンとライアーを奏でていた、綺麗だから最後まで聴いてしまった。

 

 演奏が終わった辺りで拍手してみると、こっちを向いてニコッと笑ってすすす〜と近づいてきた、なんだったら匂いを嗅がれた。

 

 おい、やめなされ…美少女が相応の歳した男の匂いを嗅ぐのはやめなされ、襲われますぞ。

 

 そう思ってると、うんと呟やいた後に一つ頷いて…モンドへようこそと手を広げて歓迎された。

 

 …いや…うん…お前に何の権限があってそんなこと言ってきたのかは知らないけど、新鮮ではあったからとりあえず頭を下げておいた、そしたらフンスとドヤ顔された…殴っていいかな? しないだろうけどナーちゃんとか鐘離さんにされる分には良いけどお前にされるのはなんかムカつく…………さてはお前風神だな!?

 

追伸

 

 聞いてみたら無茶苦茶あっさりそうだよ〜って肯定された…なんだろう、俺は今すぐにこいつを殴らなければならないという何かを感じる。

 

 

 

◯月草鬼日 晴れ

 

 今日は風神こと『ウェンティ』にモンドを案内してもらうことになった、色々と案内してもらった…以上。

 

 ん? 他にないのかって? 無い。

 

 強いて言うなら風龍廃墟? って所とデッカイ世界樹みたいなのが聳え立ってる場所に連れてって貰った、凄かった。

 

 けど…それはそれとして俺は絶対にこいつだけは尊敬しないし信頼も信用もしてやらない。

 

 何故か? この世界の何処に出会ってすぐのやつ、しかも魔物に酒代を奢らせようとする馬鹿がいるんだ、ましてや神だぞこいつ。

 

 鐘離さんは…まぁ仕方ないにしてもお前はないだろ、びっくりしたよいきなり街の中に連れて行こうとするんだから、しかも最終的に半ば無理矢理連れて行かれたし。

 

 なぁ分かるか、お前に半ば無理矢理街の中に連れて行かれた時に周りに変なもんを見る目で見られた俺の気持ちが、そうして真っ先に向かった先が酒場でそこのツケを俺に払って♡って言われた時の俺の気持ちが。

 

 おうお前に言っとんのだぞ俺の身体を枕にして酒瓶持ったまま爆睡してるお前に言っとんのだぞ駄目神。

 

 なんだかんだで案内してもらったからってツケを丸ごと払ってやったら次の瞬間にはもう新しいツケを量産してるのを見た時の俺の気持ちを察してみせろこの酒クズが。

 

 酒場の店主の顔を見てみろ、赤髪の如何にもなイケメンの顔が侮蔑と呆れと引き顔に歪んでるじゃないか、そこまでするかお前って顔してるじゃないか、ゴミを見るような目だぞあれは。

 

 撫でられたぞ俺は、魔物のはずなのに無茶苦茶同情したみたいな表情で優しく撫でられたぞ俺は、絶対に良い人だぞあの人は、その人にそんな顔をさせるとかお前今までに何をして──(これ以降延々とウェンティに対する悪口と愚痴が綴られている)

 

 

追伸

 

 そういえばウェンティのやつが酔ってる時に兄ちゃんのことを聞かれた。

 

 元気にしてた? とか今どこにいるのか分かる? とかそんなありきたりなことを妙にモジモジしながら聞かれた、殴った。

 

 俺は兄ちゃんが誰と付き合おうが、誰と結婚しようが別に構いやしないけど、それでもお前だけは絶対に認めんぞ。

 

 

 

*1
関係無い





 
主人公

 この度、無事にモンドへと到着したが、到着して早々に酒クズの神様に絡まれた、殴った。

 ちゃっかり雰囲気からウェンティの正体に気づいているが、今までに会った神が神なので酒飲みの神程度にしか思ってない。


酒クズ

 殴られ蹴られた我等が神、相も変わらず威厳もクソもない、少しは他の神を見習ったら?

 コナタと足をもじもじさせるような関係らしい、殴られた。
 


 


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