紅魔館に住み込みで働くことになりました。そして咲夜さんの先輩メイドです! (ライドウ)
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☆ 1~3ページ
転生1日目
日記にさっそく書き込むけれど、私はついさっき・・・うん、ついさっき、コンクリートブロックが頭に大量に落ちてきて押しつぶされた。と思ったときには、ロリータ調のふわふわドレスを着た背中にクリスタルのような羽の生えてる女の子になっていた。
転生・・・と言うより、私の場合は憑依?に近いのかもしれない。けれど、体の主導権も意識も、ほとんどが前世の私のままで、記憶なんかもこの身体の記憶の方があいまいだ。
けれど、確実に言えることは私は転生、または憑依?した。と言うこと、多分・・・前世の体は即死だろうからあまり気にする必要はないだろう。
この日記を書いている途中で思い出したのだけど、私はあの後とある人・・・いや、吸血鬼の女の子に
そのダイナミックな入り方に驚いた私は、冷静にその吸血鬼の女の子を観察していた。薄いピンク色の
しばらくお互いに見つめ合い続けていたのだが・・・しばらくたって気まずくなり、私が「大丈夫ですか?」と聞くと、レミリア(仮称)は嬉しそうに口をUの字にし、私に抱き着く。思わず、悲鳴を上げた次の瞬間にはレミリア(仮称)に抱き上げられた。(このとき、私はかなり幼いのにどこにそんなパワーが!?と驚いていた。)そしてそのまま、洞窟から連れ去られた行き先は、なんと
いきなりなことに私がオロオロしていると、レミリアが「この妖精を私の専属メイドにしていい!?」と父親に聞いた。その父親は、思わず頭を抱えてしばらく考えたのちに「きちんとお世話するなら」と言われた。私はペットかなにか!?
それで、そのレミリア父の後ろ隣に控えていた執事に一、二言いうと・・・執事はレミリアから私を取り上げてどこかに案内され、いつの間にかメイド服を着せられていた。
なってしまったものは仕方ないし、下手に怒りを買ってすぐに死ぬのも嫌だったために、渋々妖精メイドとして仕事することになる。幸い、一人暮らしをしていたおかげで家事や、仕事をしていた関係で敬語にはなれている。それに、意外といい清掃道具がそろっていたのでパパパッと掃除を始めてみた。
ちなみに、執事さんが言うに普通のメイドなら3時間かかる清掃や整頓を1時間で終わらせていたらしい。
聞かされた時、思わず執事さんに「時計の故障では?」と動揺しながら聞いてしまったことは反省している。
転生2日目(木曜日、日中:雨、夜中:曇り・おそらく三日月)
転生?憑依?まあどっちでもいいけれど、この姿になって2日目だ。昨日は、どこで寝ればいいのか執事さんから聞いていたところをレミリアお嬢様に強襲され、そのまま抱き枕として私も眠ることになった。お嬢様は私のことがとても気に入っているらしく、どこに行くにしても私が一緒ではないと今にも泣きだしそうな顔になってしまっている。その顔を見ていると、思わず抱きしめて、涙をハンカチで拭くのだが・・・もしや、母親に飢えているのだろうか。
その後、執事さんとレミリア父に抱き枕から救助され、レミリア父の書斎に連れていかれて、レミリアお嬢様の専属メイド兼この
そして、スカーレット卿の話では、すでにレミリアお嬢様とフランドールお嬢様の母親は・・・何と言うか、死んでしまったようだ。死因は、流血のし過ぎ・・・なんでもフランお嬢様が産まれる時、難産だったらしく・・・それで出血多量で死亡したのだろう。あくまで憶測でしかないが、スカーレット卿は「フランを産むとき、血を流しすぎた」と言っていたので間違いではないだろう。そしてそれが、2年前のお話。つまり、レミリアお嬢様は現在7歳、対するフランお嬢様は2歳と言うことだろう・・・原作開始までかなりの年数、この屋敷で働くみたいだ。
話を戻すと、スカーレット卿が、見ず知らずの妖精である私にそんな話をしたのかと言うと、スカーレット卿はできるだけ早めに
・・・その話を聞いて、私はなおさら引けなくなり「見習いでいいのであれば誠心誠意、お嬢様方をお守りいたします」と答えた。
転生3日目(金曜日、日中:曇り、夜中:晴・半月)
さて、昨日の夜の間に、お嬢様方と一緒にスカーレット卿とお世話になった執事さんを見送り、レミリアお嬢様とフランお嬢様、そして私の3人だけとなった
私の能力の名前は空間を操る程度の能力。つまるところを言えば、狭い部屋を広くしたりといろいろ便利な能力であることが分かった。試しに、メイド服の前掛けにあるポケットに能力を使い、そこに大きくて絶対に入らなそうな石を何個か入れてみたら、その複数個の石はすんなりとはいってしまい、まさかと思って、うねりから石を発射するイメージをすると、思い通りに石が剛速球で発射された。何もない場所に撃って幸いだったのだが、当たれば間違いなく、”痛い”ですむ威力ではなかった。
試しに、某俺様系黄金暴君のように様々な武器を無尽蔵に発射できるのかな、とウキウキしながら、「ゲー〇・オブ・バ〇ロン!」とやってみたのだけれども、残念ながら黄金のうねりが現れるだけで武器は発射されなかった。それでおかしいと思い、石を大量にポケットに入れて、同じようにやってみると、今度は石が発射され始める。しばらく試して、自分の能力の制限を理解することができたのだが、これがまた面倒くさい。
その1 私の空間を操る程度の能力は、条件付きだけれど空間を操れること。
かなり難しいのだが、中庭から
まさかと思い、キッチンを広げるイメージをすると、そのままキッチンが体育館のように大きくなり、元に戻るようイメージすると、キッチンの大きさが元に戻った。慌てて、キッチンから中庭に移動し、同じように中庭が広がるようにイメージしたが・・・さすがにそれは発動しなかった。
中庭が広がらないことにホッとしつつ、とあることを試すためにキッチンにあるフォークを手に収めるイメージをする・・・が、何も起きず。逆に視界内にあるベースボールぐらいの小石を手に収めるようにイメージすると、うねりからとても形のいいベースボールぐらいの小石が出てきて掴んでいた。
その2 うねり内空間は何も入っておらず、空間を利用した攻撃をする際は、うねり内空間の中に武器となるモノをため込む必要があること。
空中に現れるうねりは一応、攻撃にも防御にも使えることは分かったのだけれど・・・そのためには内部に武器になりそうなものをため込む必要がある。
たとえるなら、非常事態に備えて、非常食や非常水をため込むようなものだろうか。しかも、その非常時は大変多く起きるものだろう。レミリアお嬢様とフランお嬢様は吸血鬼ですし・・・ヴァンパイアハンターとか絶対来る。
痛いのも殺すのも、まだ抵抗こそあれど・・・それでも、レミリアお嬢様とフランお嬢様を守らなくてはいけない。あまり戦いたくはないけれど!!
その3 収納数は無限大。
試しに、視界内にあるちょうどよさげ・・・ベースボールぐらいの大きさの小石をすべて広い、ポケットに入れてみたのだが一向にあふれる気配はなく、それどころかふざけて入れた3m位の岩も入ってしまった。
ま、まあ・・・そのおかげで、私は荷物持ちにはちょうどいいということが分かったから気にしないでおくことにしよう。それと、ふざけて入れた3m位の岩は元の位置に戻しておいた。ベースボールぐらいの石は、念のために定期的に貯めておくけど。
上記の三つが、私の持つ空間を操る程度の能力の制限、そして使い方だ。閉鎖空間を自由に操り、視界に映っているものを引き寄せ、うねりから武器を発射したり逆にしまったり、そしてその収容数もほぼ無限。
そのかわり、視界内しか自由にできないという制限と、移動には移動する先を鮮明にイメージする必要があるので、正直言ってそこだけはかなり使い勝手が悪いと感じた。
と、能力の確認をしたところで・・・その時の空はすっかり夕方となっており、私は急いで洗濯物をしまって、クッキーの味見をして、お嬢様方が起きる準備を進める。
人手が欲しくなるような状態だったけれど、なぜか楽しく感じたのは、自分でもよくわからない。よく分からないけれど、私はレミリアお嬢様とフランお嬢様の笑顔を見るのが、とてもうれしい。
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☆ 4~7ページ
転生4日目(土曜日、日中:晴、夜中:晴・満月)
3日目が無事に終わり、4日目。
私は、昨日と同じく・・・お嬢様方にとっての朝食の下準備を行い、
さて、話を戻そう。
フランお嬢様は、その託す瞬間、つまり”パメラ・スカーレット”が息絶える瞬間をまだはっきりとしない赤ちゃんの意識でありながら、今でも鮮明に・・・記憶と心の奥底に焼き付いているのだ。それが、どうしてもフランお嬢様の眠りを妨げている。眠る時にまれに見る夢は、寝ているときに経験した出来事や行ったことを情報整理を行っている際に起きる生理的なものだ。専門家ではないため、前世のインターネットで調べただけだが、友人の悪夢を解消するために調べたことがここにきても活用された。ありがとう、前世の友人。(名前思い出せないけど!)
そんな状態、記憶と心に鮮明に焼き付いた出来事は、もちろん悪夢として夢の中で再び経験する。眠るたびに起きるのでは、どんな精神力を持つ超人でも耐えられるものではないだろう。何度も何度も、
もしかしたら原作である、
・・・たらればの話は、日記帳に書いたとしても、口で言ったとしても、二度と変えられないことで、今の私にできることは、彼女たちを守りながらお世話をし、そして自分を強くし、お二方を幸せにすることだ。
いくら、レミリアお嬢様の”お気に入り”とはいえ、4日しか関わりを持たない私にとって・・・まだ、足を踏み入れていい問題ではない。ただそれだけの話だ。
=====
転生5日目(日曜日、日中:曇り、夜中:晴・半月)
昨日も無事に、お嬢様を寝かしつけることに成功し、そしてまた昨日と同じく料理や掃除に洗濯、庭先の手入れを行い、空いた時間を使って私自身の鍛錬を怠らず。日記を書きながら、フランお嬢様の眠る様子を確認する。
今回はうなされてしまっていたので、一度起こし・・・落ち着いてから、もう一度眠らせた。二度目の悪夢は見なかったようで、静かな寝息だけが聞こえてきていた。
正直に言って、
・・・こうして書き起こして思ったのだが、
ここまで書き起こして、自分でも不思議に感じるのは、”なぜスカーレット卿は、仮にも自分の娘たちが暮らす
その疑問が、のどに刺さった魚の小骨のようにどうしても気になってしまう。
まさか、レミリアお嬢様とフランお嬢様の方が、愛人の子供・・・?
どうしよう、ほんの少しあっただけなのに、「あの当主ならやりそうだ。」と考えてしまう自分がいる。
と、ともかく、血が云々、性別が云々、妾の子が云々とかの問題は私にとっては関係ない。私は、意外と一途そうに見えて隠れて若い女性と不倫してそうなあの当主から、レミリアお嬢様とフランお嬢様のお世話を頼まれているのだ。
・・・仮に事実だったら、死ぬ覚悟で反逆してやろう。そうしよう。
=====
転生6日目(月曜日、日中:晴、夜中:晴・三日月)
レミリアお嬢様が手紙をしたためて、フクロウを呼んだと思ったら、手紙をバックに入れて、そのバックをフクロウに持たせて飛ばしていた。思わずポカーンとしていると、レミリアお嬢様から説明されてようやく、あのフクロウは手紙を届けるように訓練されたフクロウと言うことを知った。どこのハ〇ポタだよ!いや、まあ、分かるよ?吸血鬼とフクロウは夜行性だからフクロウに伝書鳩(?)させるのは、できるかなぁって考えてたら、まさか本当にできるなんて分かるか!
とりあえず、結論から言うと
今日も、完璧な家事をこなし、空いた時間で
そして、彼女たちの名前がないのも不便なので、赤髪赤目の妖精ちゃんには”ルージュ”の名前を、青髪青目の妖精ちゃんには”ブラウ”の名前を付けてあげた。私が名付けると、二人は鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をし、どこか嬉しそうに微笑んだ。私には理解できないが、多分だけれど私に似ている人は名付けをしない人だったのだろう。多分、その相手も妖精だろうけど。
ルージュとブラウに簡単な仕事をしてもらい、二人の家事能力を見せてもらったのだが・・・これがまた高かった。
ルージュは主に料理が得意で、私に作れないような料理を簡単に作り上げ、ブラウは清掃が早いようで私よりスピーディーに清掃を終わらせていた。うれしくなって思わず、二人の頭を撫でてしまい、二人を困惑させてしまったのは悪いと思っている。
けど、私は褒める時はしっかりと褒めて、叱る時はしっかりと叱るタイプなので、二人には作り置きをしておいたクッキーをごちそうしてみた。
ちなみにそのクッキーは大好評でいつの間にかレミリアお嬢様とフランお嬢様も食べるようになっていた。
簡潔なここまでの登場人物紹介
主人公
地味にハイスペック。
レミリア
7歳にして壮絶な人生を歩んでる。
フラン
産まれた瞬間に罪を背負う羽目になった。
パメラ
既に他界。悔いはないようだ。
ラウル
誓って不倫はやってません。
執事さん
ラウルの側仕え、主人公よりハイスペック。
ルージュ
料理が得意な、硬い剣を持つ妖精。
ブラウ
掃除が得意な、鎌を持った妖精。
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☆ 8~11ページ
転生7日目(火曜日、日中:曇り、夜中:雨・たぶん新月)
ルージュとブラウを
役割分担として、私が
自由時間中、ルージュが気を利かせてくれたのか私とブラウ、そしてルージュ自身の分のご飯も作ってくれて、思わず思いっきり抱きしめてしまってブラウに怒られてしまった。うれしくなると甘やかしたくなるのは、どうにかして直さないといけないなぁ。
ルージュが作ってくれたのは、オムレツ・・・しかも中身がトロトロの半熟オムレツだ。しかも、昨日のうちにパンの用意もしていたようで焼きたての美味しいパンと一緒に食べると、さらに美味しさが増していた。
こうして、誰かと一緒に食べるのが懐かしかったからかいつの間にか泣いてしまって、ルージュとブラウに心配されてしまった。でも、その心配されること自体も嬉しくて、余計に二人を心配させちゃった。
私たちの朝食を食べた後、私は再び
―――フランお嬢様が、暴走したのだ。
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転生8日目(水曜日、日中:雨、夜中:雨・多分三日月)
フランお嬢様の暴走は、ブラウの持っていた大鎌の破壊という被害のみで抑えられていた。大鎌が破壊された瞬間にルージュが、フランお嬢様を気絶させ、私が黄金のうねりの中に放り込んで暴れさせている。
どこにもつなげていない黄金のうねりの内部がどうなっているのかは私にもわからないが、少なくともいつでも引き出せるはず、と言うか、引き出せるとブラウから確証を貰ったので放り込んだ。
夜になり起床したレミリアお嬢様に、フランお嬢様が暴走したことを伝えると、ブラウが補足で能力が発現し、その反動で暴走したということだ。
レミリアお嬢様が、能力について理解していない私を見て、能力とは何なのかを説明しだす。
能力とは全員が全員、持っているようなものではないらしく、直接的な遺伝もしないとのことだ。スカーレット卿は護るだけの程度の能力を持っているが、レミリアお嬢様はまだ
つまり、フランお嬢様は産まれた時から能力が発現しやすい体質で、早めの発現で、心象風景・・・母親であるパメラ・スカーレットが力尽きる瞬間を覚えてしまっている影響で”ありとあらゆるものを破壊する程度の能力”が発現してしまった。でも、それがどうして発狂に繋がるのかが分からず首を傾げているとブラウがレミリアお嬢様に変わって説明し出す。
ブラウが教えてくれたのは2歳から5歳の間に強力な能力が発現すると、その強力な能力から与えられる情報に耐えきれずに発狂してしまう子供も多く、場合によっては、そのまま気が狂ってしまったり、短命になってしまうこともあるとの事だ。
そう考えると、私の使っている”空間を操る程度の能力”は強力な分、とんでもないデメリットがあるのは助かった・・・まあ、私自身の謎は深まったけどね。
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転生10日目(金曜日、日中:晴れ、夜中:晴れ、満月)
酷い目にあった。フランお嬢様を私の黄金のうねりの中で暴れさせていたら、いつの間にか突破されて私は倒されてしまったらしい。幸いにも粉微塵にはならなかったらしく、
詳しい話はみんなから後で聞くことにして、今喜ぶことはフランお嬢様が狂気に飲まれず
さすがに大怪我の最中に日記を書くのはやめておこう。
そろそろ腕が痛くなってきた。
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☆ 12~16ページ
(転生11日目から転生31日目まで曜日と日中と夜中の天気、月の様子だけが書かれている。)
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転生1ヵ月と1日目(土曜日、日中:晴、夜中:晴・新月)
20日と言う長いようで短い月日の間に、私の怪我は完治し、あの日何が起きたのかを聞いた。
簡単に書き記すなら、暴走中のフランお嬢様が強引に私の能力内の空間から脱出、もちろん私が発動者だからかとても間近で出現して、私が気付くことなく暴走したフランお嬢様は私を倒した。そして、その倒された際に私が吹き飛び廊下に置いてあった高そうな芸術品のツボが割れ、その音でルージュとブラウは何かあったと思いその音の元・・・つまり、暴走したフランお嬢様の元へと駆け付け、交戦。結構激しく戦ったらしく、レミリアお嬢様が目覚めてしまうほどだったとのことだ。その日のことをすっかり忘れてしまっている私だが、それを聞いて事件が起きたのは昼間と言うことを理解した。しかし、レミリアお嬢様が起きてしまったことはルージュとブラウの苦戦を強いることになったらしく、レミリアお嬢様は二人に対して頭を下げていた。
レミリアお嬢様を守りつつ、暴走したフランお嬢様と交戦し続けたルージュとブラウだけれど、暴走したフランお嬢様が止まった最後の一撃は、レミリアお嬢様のビンタだったらしい。なんでも、フランお嬢様が暴走しなくなり泣き出すまでビンタし続けたとか、どうりでフランお嬢様のほっぺたが膨れているわけだ・・・。
そんなこんなで、フランお嬢様は元に戻り、私はその日の翌日に目を覚ましたということだ。ルージュとブラウに私が動けない間、レミリアお嬢様とフランお嬢様を守ってくれたことを感謝しその日は私一人で全部の仕事をやって見せた。
その結果、レミリアお嬢様にひどく怒られてしまった。(´・ω・`)
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転生1ヵ月と2日目(日曜日、日中:晴、夜中:晴・三日月)
フランお嬢様が暴走から戻った、と言っても能力はなくなったわけではないらしい、たまに無意識に”目”を引き寄せてお部屋に飾ってある花瓶を割ってしまっている。
割られても別に使ってない空室から花瓶を持っていけばいいし、割れた花瓶は私にとっての武器にもなるので黄金のうねりの中に隠してあるのだが、毎度毎度割られてしまってはいくら
その為、フランお嬢様の能力をどうにかしようということで、全員で話し合うことになったのだが・・・これがまた難題だった。何せ”目”は、ありとあらゆるものを破壊する程度の能力を持つフランお嬢様が見えるモノだ、私たちが止めようとしても見えないためフランお嬢様に注意することができない。その為、別の考えもいくつか挙げられたのだがどれもダメだった。なにせ、結局はフランお嬢様次第と言う結果が出てしまい、フランお嬢様を含む全員が頭を抱えてしまった。
最終的には、フランお嬢様が無意識に発動しないように気を付ける。と言う話となり、フランお嬢様も無意識に花瓶の”目”を引き寄せて破壊しないように気を付けるようになった。まあ、1日で成果が出るようなものではないため今日はすでに3個ほど破壊されてしまった・・・。
朝方になると、レミリアお嬢様と、フランお嬢様は今日はお互いを抱き枕にして
お二方が深い眠りについた時間帯に、そそくさと私たち3人はそれぞれの仕事を開始、私は庭園(正門側)を清掃していると、フヨフヨと白いモコモコな毛玉が飛んできて私のメイド服に引っ付いた。一応、彼らも精霊や妖精に当たる存在で(ブラウに教えてもらった)無下に扱っても特に害はないため放り投げようとも思ったのだが、さすがにちょっと間の抜けた顔を見て、投げることができずに少しだけその毛を整えてあげて再び風に乗せて返してあげた。毛を整えてあげた毛玉は、表情は変えずともどこか嬉しそうな雰囲気のまま風に流されていった。・・・まあ、お昼に中庭の清掃を再開しようとしたら仲間(?)を引き連れて戻ってきてしまい、その全部の毛玉が私に懐いてしまい、剥がして風に乗せて流そうとしても、風に逆らって私から離れなかった。モフモフでちょっと暑苦しいけれど、まあ・・・気にしないようにしよう。
ちなみに、その様子をルージュとブラウは「毛玉マスター」と笑いながら言ってくれた。実際、毛玉は私の指示に従ってくれるので何とも言えなかった・・・。
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転生1か月と3日目(月曜日、日中:晴、夜中:曇り・多分半月)
大量の毛玉が私のペット(?)になったことは、レミリアお嬢様とフランお嬢様にも伝わり、お二方からも「毛玉マスター」と呼ばれてしまった。ルージュとブラウに言われたのと違って、割と恥ずかしかったのだが・・・やはり毛玉たちは私の指示に従ってくれるため何とも言えなかった。
さて、毛玉のことは放っておいてその日のお仕事を始めると毛玉たちも空気を呼んでくれたのか何もせず、むしろ大人しくしているばかりか、私のお手伝いをしてくれる個体も現れた。雑な作業で荒らすのかなぁ・・・と不安になっていると、むしろ丁寧な仕事ぶりで、割と役に立ったので、手伝ってくれた個体の毛を整えてあげると、整えた毛玉の表情が( ゚Д゚)から( ゚∀゚)に変わり、他の毛玉たちは(゚Д゚;)に顔を変えていた。あれ、もしかしてこの子たちって、意外と感情とかあるのかな?(なお、ルージュとブラウに聞いたらなに言ってんだコイツみたいな顔をされたので、実演したら硬直してしまった。どうやら前例はないようだ。)
・・・ともかく、その手伝ってくれた子が識別しやすいように小さいメイドプリムを作ってもらい、その子につけた・・・ら、大変なことになった。まず、その毛玉が白く光りだし厨房がまぶしくて何も見えなくなったと思いきや、急激に光が収まり、メイドプリムを付けた毛玉が居るはずの場所には、メイドプリムだけを付けた小さい妖精が女の子すわりでこちらを見上げていた。表情も、( ゚Д゚)ではなく、私たちと変わらない顔で、目をパチパチとさせては、にぱーととても可愛らしい笑顔を浮かべた。
それを見た私やルージュ、ブラウは何が起きたのか理解できずに硬直し、他の毛玉たちは(;゚Д゚)になっていた。
思わず、「毛玉って、妖精のタネなの?」と言葉をこぼすとルージュとブラウが全力で首を横に振り否定した。それはもう他の毛玉も同意していたぐらいで風がなければロクに動けなはずの毛玉が全力で体(と言うか顔)を横に振っていた。
ただでさえ、不思議な私の謎がさらに深まり、とりあえずメイドプリムだけで寒かったのか、その小さな妖精がくしゃみをしたことで、急いでメイド服を着せることになった。毛玉から妖精になった子にぴったりな服がなかったため、ブラウが大急ぎでメイド服を縫い、ルージュも混乱しながらもその子にホットミルクを差し出したり、パンケーキを与えたりしていた。毛玉たちも何が起きたのか訳が分からず、風がないはずなのに動き回ってルージュのお手伝いだったり、ブラウの裁縫の手伝いを始めていた。もしかして、あの子のようになりたいの?と手伝いをしている毛玉に聞いたら、全力で体(と言うか顔)を横に振っていたため、ただ単にあの子が心配なのだろう。
ちなみにこの騒動は私とルージュ、ブラウ、その子と毛玉たちの秘密として、レミリアお嬢様とフランお嬢様には手伝ってくれる妖精が居たけれど、まだ生まれたてなので言葉を話すことができないと説明し、メイドとして育てることを説明しておいた。
・・・多分、いつかバレてしまうかもしれないけれど、結構長い間バレないだろう。毛玉が妖精になった何て誰が信じるんだろう・・・。
そして、あの子の名前はレミリアお嬢様が名付けを行い、”オリビア”の名前が与えられた。
おまけ
暴走フラン「アアアアッ![パチン!]アアアッ?![パチン!]アアア―――[パチン!]チョッ[パチン!]いタイ[パチン!]いたイ[パチン!]いたいよぉ」
幼レミ「アナタが[パチン!]もとに[パチン!]もどるまで[パチン!]ビンタするのを[パチン!]やめない!」
フラン「ふぇえええ[パチン!]びぇええええええん!!」
幼レミ「ふらん?もどったの?ご・・・ごめんねぇえええええ!!」
ルージュ(レミリアお嬢様のビンタスナップ効いてた・・・アレは痛いだろうなぁ・・・)
ブラウ(うーん、容赦がない・・・。元に戻れたのはいいのだが、どう説明したものか・・・)
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☆ 17~19ページ
転生1か月と4日目(火曜日、日中:晴、夜中:晴・満月)
レミリアお嬢様によってオリビアの名前が与えられた、毛玉の妖精。私の頭がおかしくなったわけじゃない、私がオリビアにメイドプリムを被せたら、オリビアが毛玉から毛玉の妖精になったのだ。私にやけに詳しいブラウが言ってるんだから間違いはない。
ともかく・・・オリビアは今日、いや昨日から仕事を与えてみた・・・その仕事の内容は毛玉の統率。彼女に能力こそはないものの、元々が”毛玉”という種族と言うのもあってか自分以外の毛玉と意思疎通、そして自分以外の毛玉に風がなくても行動できる能力を与えれるらしい。そして、オリビアの教育係はブラウが受け持つことになった。言語や一般的な生活知識に一般常識を、最優先に教えて・・・合間合間に掃除や洗濯、裁縫を少しずつ教えていくらしい。意外だったのはブラウは教え上手と言うことと、オリビアは一昨日まで毛玉だったのにもかかわらず、自分から進んで私やルージュのお手伝い、ブラウには隠れて言葉を話そうとしたり、おそらく使われない客室の一つで掃除の練習を行い、空いた時間があれば、毛玉を中庭に集めて統率している。というか、昨日より毛玉が増えていたのはどうして・・・?(オリビアに尋ねるとジェスチャーで教えてくれた。なんでも、私とオリビアに引かれてどんどんと集まってきてしまうようだ。それでも毛玉はスペースをあまりとらないためかなり増えても問題はないだろう。)
さて起きた出来事は、何もオリビアのことだけではなく他にも一つか二つある。
一つ目は、レミリアお嬢様とフランお嬢様のお二方の父、スカーレット卿の手紙が届いたこと。レミリアお嬢様から許可を頂き、手紙の中身を見るとフランお嬢様の能力についての手紙だった。スカーレット卿もフランお嬢様の能力の強さに恐れを覚えており、口外しないことを強調しておりフランお嬢様には能力の制御を最優先に行うことが書かれており、またレミリアお嬢様とフランお嬢様を心配する文が綴られていた。
二つ目は、この
これだけではまだよかったものの、問題はその女性がシスター服を身にまとっていたことだ。ルージュが言うに防護魔術が組み込まれたシスター服に、認識疎外の魔術が組み込まれたクローク、ブラウが言うに2本の銀製ロングソードは聖水がこれでもかと言うほどかけられており、使い込まれた跡とかすかに感じる魔力の残滓から、かなりの数の吸血鬼やアンデッドを狩ってきたことが分かるらしい。ちなみに、私はそんな彼女のシスター服から手記を回収しておいたので、彼女の所属と名前も既に判明している。対化け物討伐組織、アンデット討伐班所属の『アンナ・ゲールマン』。それが彼女の名前だ。
しかし、残念なことにアンナはおそらく今夜持つかどうかだろう。それぐらいブラウと出会う前から流血していた。けれど、幼いレミリアお嬢様には本当のことは言わずに優しい嘘をついて騙すことにした。ルージュとブラウも私の意図を察してくれたようで、レミリアお嬢様は笑顔になり、アンナの部屋からトコトコと走り去っていき、ブラウは急いでレミリアお嬢様の後を追うのであった。
=====
転生1か月と5日目(水曜日、日中:晴、夜中:晴・半月)
あれだけの大けがをしていたのに一日ぐっすり眠っただけで全回復とかお前どこの世界の住人だよ。この言葉で片付くぐらい、アンナは一日でケロリとしていた。助けた恩義を感じているのか気さくな感じで教えてくれたのだが、アンナは生まれつき怪我をしてもすぐに治るらしく、あれぐらいの怪我なら寝るだけで治るらしい。どんな体質だよおい・・・。私だけじゃなくてルージュとブラウ、オリビアもドン引きしてんじゃないか・・・。嘘でしょ?前世だと即死でもおかしくない大怪我なんだけど・・・?手を尽くしても死んじゃうと思って止血しただけなのになんで生きてんの?
まあ、ドン引きしても始まらないため私はブラウに同伴してもらいルージュとオリビアには朝とお昼のお仕事をするように指示した。そして、私とブラウはアンナに聞きたいことが山ほどあるために質問をすることにしたのだ。命が助かったアンナは「なんでもどんとこいっす!」と言っていたのでとりあえずド直球な質問を何個か投げかけてみた。
Q.化け物討伐組織に所属してるみたいだけれど・・・
A.所属してたっすね。でももう忠義なんてないし、あっちももう死んだと思ってるんじゃないっすかね?
Q.あの大怪我はどうして負ったの?
A.上司が聖職者の癖にアタシの体が穢れてるとか抜かしてセクハラしてきて生理的に無理だったんで両手を斬り落としたら反逆罪とみなされ殺されかけただけっす。
Q.ここがどういうところなのかは理解している?
A.もちろん理解しているっす。東部ヨーロッパを支配する三大吸血鬼が一柱、”スカーレット家”の歴史ある別荘、
Q.ここの主に歯向かうか?
A.悪魔の契約したんで歯向かう気はないっす。それにもう組織には帰れないっすし。むしろどんな無茶振りされるか今からちょっと怖いっす。
・・・なんというか、人間は愚かなんだなぁ。とは、思ってしまった。
私の質問は終わったためブラウに何か質問はあるか聞いてみたところ、いきなり懐からナイフを取り出してアンナの心臓に突き立てた。あまりにスマートな殺しに一瞬だけ理解ができなかったが、アンナが死ぬのを見てブラウをにらんでしまう。が、それもすぐに困惑の目に変わった。死んだはずのアンナが「なにするんすかー!」と叫びながら生き返ったのだ。しかも、胸からナイフを抜いた状態で。
ブラウは不老不死と言うことを最初から看破していたらしく、いつ確かめようが迷っていたらしい。いや、ブラウさん、それなら私に一言頂戴?後でお説教ね?と割とガチトーンで言うと、珍しくブラウがおとなしく頷いてくれた。
そして、アンナに不老不死になった理由を聞いたところ、逃げる際にやけくそで祭壇に設置されていた聖杯に入った水を丸のみしたとのこと。そしてその聖杯は、不老不死になれる水を溜めていたものらしく、アンナはそれで不老不死になったという。(ちなみになれない方がほとんどでその場合はアンデットになるらしい。)
また、それらすべてはレミリアお嬢様に伝え、そのうえで悪魔の契約の内容をアンナに叩きつけた。
レミリア様がアンナに叩きつけた、悪魔の契約の内容はとても単純。”アンナ・ゲールマンの存在が完全に消えるその時まで
ちなみに、アンナは孤児院で家事は一通りどころかパーフェクトで、即座に副メイド長にしたが、アンナしか反論がなかったため多数決でごり押した。
とりあえず、メイド隊を全員揃えたかったために急ぎ足で展開しました。
役職分けとしてはこんな感じ
メイド長:主人公(妖精メイド?)
副メイド長:アンナ(不老不死のアンデットキラー)
副メイド長補佐:オリビア(毛玉の妖精メイド)
調理・給仕メイド長:ルージュ(赤目赤髪の妖精メイド)
清掃・洗濯メイド長:ブラウ(青目青髪の妖精メイド
リメイク元を読んでいただいた方は拒否反応を起こすかもしれませんが、オリビアちゃんはビン底メガネをかけるのでご安心ください。あと、リメイク元では割と重要な立場にいたけど影薄かったので許してあげて・・・
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△ メイド隊の、のんびり休憩タイム
「ふぅ・・・。(今日はこれぐらいにしておきましょうか)」
昨日の分の日記を書き終えて、本を閉じる。日記帳を羽ペンと一緒に閉じてから、インク瓶に蓋をして収納用の黄金のうねりに放り込む。いつもの日課だけれど、書くことも特にないためあまり書いていないが、各分だけまだいいだろう。
「メイド長はまめっすねぇ、休憩時間になったらいつの間にか日記付けてますけど・・・それ、どうしてつけてるんっすか?」
と、先週からメイドとして働いてくれているアンナが私に聞いてくる。
日記をつける意味、か・・・思えば、私が日記を書き始めたのは部屋に備え付けで置いてあった何も書かれていない本に書き始めたのが始まりだった。転生もしくは憑依してからというもの、自分の中での記憶整理のために行っているのもある。夢日記をつけるのはよくないため、夢を見たことはあまり触れたくはないのだが、何度か気になる夢の内容を書き記すこともある。
「そうね・・・これと言って、特に理由は意味はないわ。でも、割といいわよ?アンナもつけてみる?」
「うへぇ、アタシは勘弁っす。そういうのはアタシ苦手なんで・・・。」
「残念、交換日記とか互いにつけたら面白いかもって思ってたんだけれど。」
「・・・それって、メイド長の赤裸々なヒミツとか夜の運動の激しさとか分かるっすか?」
元シスターとは思えない発言をしつつニマニマとこちらを見るアンナ。とりあえず、頬を強く引っ張り泣かせておく。
「ヒィン・・・ひどいっす!横暴っす!!」
「少なくとも、自業自得だと思うよ?」
「ルージュさん!?い、いつの間にいたっすか?」
「・・・我々は最初からいたが?もしや、忘れていたとは言わないよな?」
「ぶ、ブラウさんまでっ・・・」
「・・・!」(頬を膨らませてプンプンとジェスチャーしている)
「お、オリビアちゃんも!?や、やっちまったっす!!」
本当にコイツは持ってる双剣を使い古している熟練なんだろうか・・・。しかし、アンナはすぐに切り替えて机の上に置いてある紅茶を一気飲みした。しかし、すぐさま顔を・・・と言うか口をすぼめて、じたばたとし始める。
「すっ・・・すっっっぱいっ!だ、誰っすか!アタシの紅茶をすっぱくしたの!?」
「・・・。」(どや顔をして胸を張っている。)
「お、オリビアちゃん!?ひどくないっすか!?」
「オリビアはまだ生まれたての妖精だ、いたずら心がまだあるんだろう。」
「・・・♪」(ブラウに撫でられてご満悦の表情)
彼女たちの姿を見て、思わずクスリと笑ってしまう。そんな私につられたのか、ルージュとブラウも段々と笑いをこらえきれなくなってしまっている。
オリビアはまだ笑い声は出せないもののとても大笑いしていて、アンナはすっぱいのがまだ口に残っているのか私が焼いたクッキーを頬張っていた。
「ひぃー、ひどい目にあったっすー・・・。にしても、ほんっとメイド長の焼いたお菓子は美味しいっすね!サクサクで甘いっす!!」
「うん、それには同意。」
「ああ、私もだ。優しい味のクッキーは何度食べても飽きは来ない。」
「・・・!」(嬉しそうに縦に首を振っている)
「そ、そうかしら?少なくとも、何も変なものは入れてないわよ?」
そう褒められても出せるものは同じようなクッキーしかない。
雑談をしながら、みんなとお菓子と紅茶を楽しんでいると、その部屋のドアが開く音がする。私たちはドアに目を向けると、眠たそうにうつらうつらとしながら枕を持ってこちらを見ているレミリアお嬢様が居た。
「むにゃ・・・めいどちょ~。」
「あら?レミリアお嬢様、いかがなさいましたか?」
「だっこ・・・。」
「かしこまりました。よい、しょっと・・・ごめんなさい、ちょっと行ってくるわ。」
「了解っす、さーて・・・自分も庭園の作業の続きをーっと。」
「・・・!」(アンナを手伝うためにブラウの膝から降りた。)
「ルージュ、速めに休んでおけ?」
「うん、私はそろそろ眠って夜に備えるよ。」
私がレミリアお嬢様を抱きかかえて退出するのをきっかけに、みんながみんなそれぞれやり残した作業を始める。
吸血鬼の主を持つ故、仕方のない事だけれどここ最近は寝ていないことが多い。もうちょっと人手を増やそうかなぁ・・・。
「むぅ~・・・」(寝ぼけてメイド長の胸元に頭を擦り付けている)
「もう、レミリアお嬢様ったら・・・。」
運んでいるうちに熟睡してしまったレミリアお嬢様を、起こさないように
やがて、うつらうつらと眠気が襲ってきて・・・私は、ゆっくりと眠りについた。
自話から少しだけ、時間が飛びます。
具体的にはレミリア様が100歳に、フラン様が95歳になります。
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☆ 92冊目 20~23ページ
転生93年と1か月6日目(木曜日、日中:晴、夜中:晴・満月)
私が
さて、私が転生し93年、そしてレミリアお嬢様が100歳、フランお嬢様が95歳となった節目にこれまでに何があったのかを軽く書いておこうと思う。
と言っても、ほとんど平和なものだ。まずはメイド隊から書き記してみよう。
メイド隊は私を含めて、副メイド長で不老不死系元バトルシスターのアンナ、副メイド長補佐で毛玉の大妖精になったオリビアちゃん、調理・給仕担当メイド長のルージュと、清掃・洗濯担当メイド長のブラウの5名しか相変わらず居ない。もちろん、私も何度か
さて、まずアンナだけれど最初はミスも目立って何度か取り返しのつかないミスを起こしかけたが、本人が頑張って改善し今ではどこへ出しても恥ずかしくないメイドに仕上がっている。けれど、アンナ自体があまりこの
次に、私が毛玉にメイドプリムを被せて妖精にしてしまったオリビアちゃんなのだが、93年と言う月日が流れたおかげか、最初は普通の(毛玉の)妖精だった彼女も、今では妖精としては上位の存在である(毛玉の)大妖精だ。もちろん、メイドとしての能力も十二分で天然でお調子者のアンナを見て育ったため真面目だけど柔らかい思考を持つ少女へと成長していた。言葉もしゃべりだした頃はたどたどしかったモノもハッキリとしゃべるようになり、今ではアンナのブレーキ役としても活躍している。
次にルージュだけど、ルージュもルージュで成長していた。まず、何て言うか・・・身長が伸びた。元々が156㎝台だった身長が173㎝ぐらいにまで伸びて、顔立ちはシュッとした童顔だ。残念ながらスタイルはスレンダーなままだったが、本人曰く「むしろ動きやすい」とのこと。
最後にブラウだがほとんど変わっていない、元々166㎝で少女らしい顔つきとスタイルを持ち、アンナに次ぐ胸の大きさを持つ。(少しでいいんです。私に分けてください。)けれど、強いて変わったところを挙げるとするならば、いつの間にかモフニストになっており、自分の仕事が終われば、中庭に出てオリビアちゃん配下の大毛玉をモフモフしつつブラシで毛並みを整えることが多くなった。
ちなみに私は4㎝ほど身長が伸びた!
さて、次はレミリアお嬢様とフランお嬢様についてだ。
レミリアお嬢様は100歳となり、御父上であるスカーレット卿との約束で無事この
対してフランお嬢様はそんなレミリアお嬢様を見ているからか、反面教師として素直で淑女らしく育っている。そして、フランお嬢様の悩みのタネであった『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』は完全にフランお嬢様がコントロールしていて、完全消滅~デコピンほどの痛みと言う風に威力を調整できるようになっているとのことだ。試しに、花瓶の中にある枝を折るように能力を使用してほしいと伝えると、花瓶の中にある枝を粉になるまで破壊していた。それぐらい精密使用ができるようになっている。
さらに言えば、レミリアお嬢様とフランお嬢様の仲は良好だ。一時期は、お二人とも変な性癖に目覚めてしまうのでは?と言う、否定することができない不安がメイド隊に蔓延していたのだが、結果的に言えば二人はそんな性癖の扉を開けずに、すくすくとお育ちになった。それを見てメイド隊の全員が、ホッとため息をついた。
けれど、この
まず第一に人手不足だ。今の
次に、庭園についてだ。庭園は私が手入れをし、手の空いたオリビアちゃんと(その配下の毛玉たち)でお手入れをしている。しているのだが、それでも手が足りていない。割と見えない裏手や農具を収納している倉庫の方は、背の高い雑草が生え散らかし、ときおり胴体がずんどうの蛇を見かけるぐらいだ。いま考えれば、アレはツチノコだったんだよなぁ・・・捕まえておけばよかった。
最後に食事情についてだ。レミリアお嬢様とフランお嬢様は吸血鬼、私とルージュとブラウとオリビアちゃんは妖精(もしくは精霊)、アンナは不老不死の人間で、メイド隊は、何も食べなくても動くことはできるアンナの場合は餓死しながら働くという死神も真っ青な状態になるのだろうけれど、不老不死なので問題はないだろう。
問題はレミリアお嬢様とフランお嬢様だ。妖精か精霊な私たちと、不老不死な人間のアンナとは違い、お二方は生きている吸血鬼。そう
以上の三つが今の
=====
転生93年と1か月7日目(金曜日、日中:晴、夜中:晴・半月)
今日はレミリアお嬢様のお散歩の日だ。80歳になってからというもの、レミリアお嬢様は夜中にメイド隊の誰かひとり(まあ大体は、私なのだが)を連れて散歩に行くことが趣味になっている。曜日は月曜日と金曜日に、大体1時間ほど散歩をしたら
さて、なぜそんなことを書いたのかと言うと、今日もお嬢様は落とし物を拾っていた。いや、正確には落とし”者”だったけど・・・。ともかく、落としモノを拾ってきたのだ。目を離した一瞬に林の中に飛び込み、傷だらけでボロボロの中華服を着た少女を担いで出てきたとき、思わず悲鳴を上げてしまった。レミリアお嬢様は見ず知らずなため助ける義理も損得も考えてはいなかったようだけれど、「目の前で傷ついて倒れている人を見捨てるほど私は冷血じゃない」の言葉に根負けし、その日のお散歩を中断し、私の能力で
レミリアお嬢様が見つけて拾ってきた、中華服を着た少女が倒れていた原因は傷のせいではなかった。その少女の傷はどちらかと言えば浅く、矢傷もそこまで深刻なほど深く突き刺さっていたわけでもない。けれど、彼女が倒れていたのは別の要因・・・アンナの古巣である化け物討伐組織の祝福された武器が原因のようだ。アンナが詳しく説明してくれたのだが、化け物討伐組織には人間の力を増幅させ、人外に対する力を封じ込める”祝福”があるとのことだ。アンナに実演してもらったところ、レミリアお嬢様が嫌悪感にあふれた顔で見ていたので間違いはない。私が試しに触れてみたのだが、何ともなく・・・けれど、確かに中華服の少女を蝕んでいるエネルギーと言うことが分かった。だが、アンナが言うにあくまで『封じ込める』だけであり、しばらくすれば自然に封印が解けて、彼女は起きるとのことだ。その言葉を聞いて安心した半面、アンナの古巣・・・化け物討伐組織に対して本格的に対策しなければと考えてしまう。
そして、この日はそれ以外何ともない、普通の一日だった。
=====
転生93年と1か月8日目(土曜日、日中:晴、夜中:晴・三日月)
お前もなのか!
そう叫んでしまうぐらい、中華服を着た少女は一日で目を覚ました。傷一つなく、昨日まで蝕んでいた祝福の影響まできれいさっぱりなくなっている。もちろん、私の叫びは他のメイドにも聞かれていたようで、アンナを除く全員が、アンナがすぐに目を覚ました時のように中華服を着た少女に対してドン引きしていた。
目を覚ました彼女は、普通に私たちと会話ができスムーズに話し合いが進んだ。中華服を着た少女の名前は
そのことをレミリアお嬢様にお聞きすると「あの運命はそう言うことだったのね」と仰った。どういうことかと尋ねると、「気になる運命があったから引き寄せてみた、そしたら
さて、問題の
すると、レミリアお嬢様がしばらく考えて
そんなこんなで
追記
美鈴が加入しましたね!
やったねメイド長!仕事が減るよ!!
ちなみに、91冊もの日記帳はメイド休憩室においてあるメイド長用の机の3番目の引き出しの内部空間を広げて、その内部空間に本棚を設置してその本棚にしまってあります。
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☆ 92冊目 24~27ページ
転生93年と1か月9日目(日曜日、日中:曇り、夜中:晴・新月)
ともかく
休憩時間に
ちなみに
一人でも人手が増えた事がうれしい反面、
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転生93年と1か月10日目(月曜日、日中:曇り、夜中:曇り・たぶん三日月)
今日もレミリアお嬢様のお散歩日和だ。
―――閑話休題。
ともかく、今日は月曜日・・・レミリアお嬢様のお散歩の日だ。今日もレミリアお嬢様のお散歩のお付きメイドは私だ。私は戦闘能力こそ、メイドの中ではオリビアちゃんに並ぶ強さ(強くも弱くもない)なのだが、私の持つ能力である『空間を操る程度の能力』は便利だし、そもそも私はレミリアお嬢様の専属メイドだ。レミリアお嬢様からしてみれば”連れて行かない理由”はないし、私からしてみても”ついて行かない理由”はない、メイドとしての仕事も、みんながそこそこ優秀なため、私がお散歩のお付きになれる程度には余裕ができる。アンナは今日、過労死しながら割り振られたお仕事をしてたけど・・・不老不死だから問題ないはず。
レミリアお嬢様の気分のままにある程度は舗装された道を歩き、レミリアお嬢様の気分で休憩したり何かを観察したりと・・・ここまでは普通のいつもの散歩だ。「今日は落としモノがありませんように!」と祈っていたら、それがフラグとなったのかレミリアお嬢様が落としモノを見つける。思わず心の中で「OMG!」と叫んでしまったのは内緒だ。今回、レミリアお嬢様がお拾いになったのは、『
さて、無事にレミリアお嬢様とのお散歩が終わり、
実は、お散歩の前にレミリアお嬢様に今の状態の
=====
転生93年と1か月11日目(火曜日、日中:晴、夜中:晴、半月)
今日は普通の一日だ。なんてことはない普通の一日。しいて言うならば、アンナに休日を与えて一日ゆっくり過ごしてもらったぐらいだろうか、アンナが休日になりしばらく経つと、アンナの部屋から鎌を持った少女が飛び出してきて、寝間着姿でかなり怒っていて双剣を振り回すアンナに追い回されていたのは、鎌を持った少女・・・死神が
アンナの魂を回収しに来たのだけれど、運が悪かったらしく寝ているアンナに殺気をぶつけてしまったらしい。その為、アンナの怒りが限界に達し、死神の少女を追い回すとかいう状態が発生している。ああなったアンナは誰も止められないため、死神の少女が逃げ切ることを祈った。
さて、相変わらず
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☆ 92冊目 28~30ページ
転生93年と1か月12日目(水曜日、日中:曇り、夜中:雨・たぶん満月)
さて、実はめでたいことは
なんと、メイド隊に人手が増えた。毛玉の大妖精であるオリビアちゃんだが、彼女は言葉も覚え仕事もそつなくこなし、なんなら悪い意味で目を離せないアンナのお目付け役だ。そんな彼女には、371匹の毛玉が配下としてこの
その毛玉は、オリビアちゃんの配下たちの中でも古参の方(見た目ではわからないけれど、オリビアちゃんが言ってるから間違いはない。)髪形は、オリビアちゃんが緑色の妖精らしい髪色なのに対し、元の毛玉と同じ真っ白な髪だ。そんな変化した毛玉は最初は
・・・コホン。ともかく、
こうして、
=====
転生93年と1か月13日目(木曜日、日中:雨、夜中:雨・たぶん半月)
さて、毛玉が人型になるという
人型になった毛玉・・・面倒くさいので”毛玉メイド”と表記しよう、毛玉メイドの4人をそれぞれ2人に分けて、一組をルージュの厨房組に、もう一組をブラウの清掃組にあてた。毛玉メイドたちはオリビアちゃんと同様、毛玉に指示こそ出せるものの、毛玉を移動させる力はないようで、本人たちはホッとしたような、がっかりしたような複雑な表情をしていた。多分、これで毛玉メイドが毛玉を動かせていたら、毛玉メイドも「やべぇ」みたいな感じで顔を青くしていたかもしれない。
・・・これで分かったことがあるのだが、毛玉には謎が多い。専門的な研究家がついていいほどに謎が多い。オリビアちゃん自体も毛玉のすべてを理解しているわけではないみたいで、本人たちも困っていた。
昨日から雨続きなこともあり、ブラウが「洗濯物が干せない」と愚痴をこぼしていたり、
例としては、『命の霊薬が沸く壺』・・・
=====
転生93年と1か月14日目(金曜日、日中:晴、夜中:晴・三日月)
デスヨネー。あまりにも早いフラグ回収、私でなければ見逃しちゃうね☆
さて、現実逃避はこれぐらいにして、今回レミリアお嬢様がお拾いになった物を書き記していこう。
今回、レミリアお嬢様がお拾いになられたのは、北欧神話の最高神”オーディン”が持ち、必殺必中、持ち主を必ず勝利させ、ホーミング機能を持ち、必ず手元に戻ってくる神話の槍『グングニル』をお拾いになられた。
待てや!(ペニーワ○ズ)
なんでそんなもの・・・特に最高神が使う神器がこんなところに落ちてるんです!?ここ結構、田舎の方なんですけれど!?間違いなくここは北欧じゃないから投げたよね!でもここにあるってことは武器に愛想をつかされた・・・ってこと!?いや、武器に愛想をつかされるってなに!?まさかグングニルに付喪神的なあれが・・・?いやいやいやそんなまさか・・・。(日本神話的には八百万の神々だからあながち否定できないけれど・・・。)
・・・ともかく、レミリアお嬢様が『グングニル』をお拾いになられた。
話は変わるが、
なにが言いたいのかと言うと、
しかし、私がいるこの世界では、レミリアお嬢様は本物の『グングニル』を拾ったのだ。そう、必殺必中、持ち主に必勝効果にホーミング機能に、必ず手元に戻ってくる本物の『グングニル』だ。
どこから
まあその時のことは、その時に考えよう。とにかく、レミリアお嬢様が本物の『グングニル』を拾って、お気に召してしまったので振り回さずに私室か執務室の壁に飾ることを条件にレミリアお嬢様に預けた。お喜びになる姿はとても可愛らしかったが、『グングニル』が視界に入ると気が気ではないのは内心の秘密だ。
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☆ 92冊目 30~33ページ
転生93年と1ヵ月15日目(土曜日、日中:晴、夜中:晴・新月)
昨日、グングニルをレミリアお嬢様が拾いになった日から翌日。
今日は特に何もない日だ。しいて言うならば、オリビアちゃんと毛玉メイドたちが話し合った結果、毛玉の何十匹かを毛玉メイドにしようと言うことになったらしい。人型になった原因は分からないけれど、あの日の再現をすればきっと人型になるというオリビアちゃんの提案の元、毛玉が毛玉メイドになった日をそのまま再現することになった。
・・・まあ、上手くはいかず、あの日を再現したのにもかかわらず、毛玉は人型にはならなかった。オリビアちゃんがちょっと悲しそうな顔になりポニーテールの毛玉メイドに慰められていた。どうしてオリビアちゃんが悲しそうな顔をしたのか尋ねると、理由は簡単・・・私やブラウ、そしてルージュの為だったみたいだ。
その為、人型になることを希望した30匹の毛玉が、毛玉メイドになれば人手不足も解消されるんじゃないか、とオリビアちゃんは考えてくれたみたいで、やってみて人型にはならなかったため、泣きそうになったという。その気持ちだけでもうれしかったため、オリビアちゃんを抱きしめて慰め、その後の休憩時間をゆっくりと過ごした。
すると、奇跡が起こったのか30匹のうちこの前と同じ4匹が人型になり、少しだけ毛玉メイドの数が増えた。私とオリビアちゃんは頭を抱えそうにはなるが、人手が増えることはうれしい事なので、まずは新しく人型になった毛玉にメイド服を着るように指示し、オリビアちゃんは嬉しそうにその毛玉たちを連れてメイド服が置かれているスペースへと駆け込んでいった。
さて、新しく増えた毛玉メイドだが、それぞれブラウとルージュの所の毛玉メイドの増員として送り込んだ。ブラウとルージュは、毛玉メイドが増えた途端は困惑しかけたが、人手が増えたことが分かったみたいで、嬉しそうにその毛玉メイドを受け入れていた。
少しだけ人手が増えただけで、すぐさま作業効率は上がるわけでは・・・上がったんだなぁこれが。元々、毛玉メイドになった毛玉と言うのが、オリビアちゃんのお仕事を自主的に手伝っている毛玉で、ときおりブラウとルージュも手伝いもしている毛玉だったらしい。その為、何をどうすればいいのかは理解しているようで、テキパキとまるで昔から働いていたように完璧にそれぞれ与えられた仕事を片付けていた。これにはブラウもルージュもニッコリで、ルージュに至ってはうれしさのあまりオリビアちゃんの為にホールケーキを作ってしまった。(そのホールケーキは、サボっていたアンナを除いたメイドたちの全員で美味しくいただいた。)
メイド隊の人手が増えたということは、この
=====
転生93年と1ヵ月16日目(日曜日、日中:曇り、夜中:晴・三日月)
今日は、ブラウとルージュ、そして
ちなみに、今回の模擬戦を考えたのはレミリアお嬢様だ。建前は、
さて、問題の模擬戦だけれど無事に終わった。結果と言えば、全員引き分けという結果で無事に終わっている。三人の戦いは、模擬戦という全力の殺し合いではないというところから見ても激しい戦いであった。私の場合は、何とか目で追えたのだが・・・オリビアちゃんの場合は何が何だかだったみたいで、終始頭の上にハテナマークを浮かべていた。けれど、戦った本人たちいわく強さの順としては、
そして、レミリアお嬢様は結果に満足はしていなかったものの、3人の実力が知れてその部分は満足だった模様で嬉しそうに羽をパタパタと動かして、3人にこれからも
ちなみにだけれど、私が試しに引き撃ち超高速
最初は優勢だったけれど、弾速と弾道を見切られた途端、一気に間合いを詰められてそのまま私が手を出せなくなり、そのまま死亡判定を出されてしまい、全敗してしまった。模擬戦とはいえ、3人とも怖い顔で来るものだから、泣きそうになった。(総メイド長だから泣かなかったけれど。)あの3人の中で、特に
=====
転生93年と1ヵ月17日目(月曜日、日中:晴、夜中:晴・半月)
レミリアお嬢様のお散歩の日には必ず落としモノがある。これは確実で、100%なにか落としモノをレミリアお嬢様はお拾いになる。けれども、今日は珍しくフランお嬢様がレミリアお嬢様のお散歩に同伴することとなった。さすがにお嬢様方を私一人で同伴するわけにもいかずに、アンナを捕まえて同伴させた。
フランお嬢様がお散歩についてくるのは、今回が初めてで私もレミリアお嬢様も最初は驚いていた。すると、フランお嬢様は「たまには
レミリアお嬢様とフランお嬢様が仲良く手をつないで散歩をしていると、案の定レミリアお嬢様は落としモノをお拾いになられた。それも時間差で2つもだ。
最初の一つは、なんてことはない普通のツボ。ちょっとお値段がありそうな装飾が施されたツボだ。それを見つけて、レミリアお嬢様が拾ったとき、フランお嬢様が私に「いつもこんな風に落としモノを拾うの?」とお聞きになられたので、「はい、今日は大人しい方ですけれど。」と返答した。フランお嬢様は、目を三白眼にして呆れていた。レミリアお嬢様は、もちろんその落としモノを遠慮なくもらい、私はそのツボを持ち帰り用の亜空間に放り込んだ。
問題だったのは、二つ目の落としモノだった。この前の金曜日(転生93年と1ヵ月14日目)、レミリアお嬢様が”グングニル”を拾ったのは、この日記を書いた時は新しく、またそれほど大きい出来事だった。何せ、北欧神話の主神”オーディン”が持つ必勝の神器が、落としモノとしてレミリアお嬢様に拾われる事態が起きたのだ。今現在では、危険がないように施したグングニルをレミリアお嬢様の執務室の壁に飾ってある。
そして、話は変わるが、
どうして、
(実物を見た訳じゃないけれど間違いなく)本物のレーヴァテインが、
道端の隅の小石のように落ちているんだよッ!!
ともかく、レーヴァテインが落としモノとして、レミリアお嬢様に拾われた。けれど、レミリアお嬢様はグングニルがあるからといって、レーヴァテインをフランお嬢様に渡していた。フランお嬢様は最初こそ遠慮したものの、レミリアお嬢様の説得により受け取っていた。
見た目は、何と言うか・・・曲がった時計の針の様な見た目をしているためフランお嬢様は杖のように使っていた。ときおり、レーヴァテインから火が噴き出しはじめて、発火しようとしてびっくりしたのだが、フランお嬢様がレーヴァテインを気に掛けた途端、レーヴァテインは大人しくなっていた。もしかして、このレーヴァテイン、自我あるのだろうか?神器だから否定はできないけれど、だとするとちょっと怖いのだけれど・・・。
ちなみにだけれど、お散歩が終わった後はなんてことはない普通の一日だった。
しいて言うなら、死神の女の子を、この
次回からしばらくは美鈴の日記になります。
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○
注意:この小説におけるメイド長とはいつも日記を書いている主人公であり、原作メイド長ではありません。ご注意ください。
=====
今日から日記を書くことにした。あのメイド長が書いているのを見て、私も真似をしたくなった。日記を書くと言っても、何を書いていいのか分からない。だから、まずは自分がこれまで歩んできたことを書いてみようと思う。
まず、私は東の方にある大きな国から、シルクロードと呼ばれる交易路を通して、この国へとやってきた。
故郷である東の方の大きな国では、私はそこそこ強い妖怪で、人食い妖怪ながらも人間が使う武術に興味があり、人間から武術のみで仙人になった男・・・私の師匠から、カンフーを教わった。
師匠は仙人たちの中でも変わった仙人らしく、自分のカンフーを簡単には教えてくれなかった。朝早くから、師匠のもとに赴き、師事をお願いしては追い返され、また朝早くから赴き、師事をお願いしては追い返されを繰り返していくうちに、師匠が折れ、私に師匠のカンフーを伝授することになった。
師匠のカンフーは、”気”と呼ばれるものを操り戦う珍しいモノで、
ちなみにその時に、師匠のお世話をすることになったので家事や炊事はいつの間にかできるようになった。誰に言い訳するわけでもないが、下の世話はしていない。私の身は純潔だ。
そんなこんなで、私は師匠から武者修行をするように言われて、シルクロードを通ってこの国にやってきた。
妖怪であるということを隠し、傭兵としてやっていこうとしたのだが、最初は閑古鳥だった。なにせ、伝手もなければ信用もなく、女と言うこともありなめてかかられることが多かった。まあ、仕事をこなしていくうちに、段々と
そのおかげなのか、私はその拾われて治療されてからたった1日で目を覚ましたとのことだ。なお、私はアンナさんと全く同じことをしたらしく、アンナさん以外のメイドさんたちにドン引きされ、アンナさんには笑いすぎで死んでしまうほど笑われてしまった。
その後、アンナさんのおかげで化け物討伐組織はしつこく私を追ってくるが分かり、レミリアお嬢様のご配慮のおかげで、私は
=====
目を覚ましたその日のうちから、仕事を始めた訳だけれど、意外とこの仕事は楽だ。未探索や未開拓の庭園から目をそらせばの話だけれど。
ベットは柔らかいし、ルージュさんの作るご飯は美味しいし、メイド長やアンナさん、オリビアさんにブラウさん、ルージュさんとはすぐに仲が良くなれた。けれど、レミリアお嬢様の妹君であるフランドールお嬢様だけは、私に対して警戒の色を見せていた。まあ、普通ならそうだろう。フランドールお嬢様以外が疲れでおかしくなっているだけで・・・。とにかく、フランドールお嬢様から疑われていることは承知で、私に与えられた仕事をこなすことにした。
メイド長が
さて、もちろん私に与えられたのは警備隊の隊長だけではない。私に与えられたもう一つの仕事は庭園の庭師・・・つまり、かなり広い庭園の手入れをする必要があるのだ。
庭園は、私が来る前からメイド長とオリビアさんとその配下の毛玉で
倉庫周りの雑草を気を用いて身体能力を強化しつつ、刃状にした気を飛ばして刈り取って、一か所にまとめておく。その作業を繰り返していると、胴体がずんどうの蛇がこちらを眺めていたので、気配を消してそのずんどうの蛇の視界から一度消え、背後に回ってそのずんどうの蛇を捕まえた。最初は暴れて何回か噛みつかれたのだが、気持ちを落ち着かせる気を流し込み続けるとおとなしくなり、頭をなでると一発で懐いてしまった。よく見てみればそれなりにかわいい子で、ヒンヤリとした冷たさが何だか癖になる子だ。名前は少し考えて”ロン”と言う名前を付けた。我ながらなかなかいい名づけだと思う。
ロンをペットにした後、草刈りの作業を再開すると、今度は野生の狼たちが私に近づいてきた。いつの間にか囲まれていて危険だと思いロンを頭にのせて構えを取るが、狼たちは襲い掛かってこず、ゆっくりと私に近づいてお腹をさらけ出してきた。師匠の話だと、狼に限らず、動物がお腹を見せた時は降伏のサインとのことなので、恐る恐るお腹を撫でると、他の狼たちも次々と私に撫でられたいのか手に頭を寄せてきた。結局、その日の作業はそれでおしまい。お昼を過ぎたころに、メイド長に休憩室に連れ込まれていろいろと話をした。その時に食べた、あのカップケーキが美味しくてなかなか忘れられない。また作ってくれるかなぁ・・・?
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○
=====
今日も引き続き日記を書いていく。
初日からいろいろあったのだが、まだ1日しか経過していないことに自分でも驚いている。なんでもメイド長いわく、
実際、私も日記を書いたからこそまだ2日しか経っていないと認識したわけだが、アンナさんとの雑談でアンナさんが「いやー
さて、2日目になったとしても私の仕事はあまり変わらない、ペットとなったロンと狼たちの手を借りて
フランお嬢様の要件はただ一つ、私に
まあ、そんなこんなでフランお嬢様の監視付きで庭園の手入れをすることになった。
フランお嬢様からの視線が少しだけ居心地が悪いし、それを見たロンと狼たちが威嚇しているけれど・・・
作業小屋から何とか引っ張り出した大鎌に気を纏わせて1狩り・・・思ったとおりに硬い雑草でも簡単に刈り取れる。それにこっちの方が気の消費が少なくて済むし、ちょっとした鍛錬にもなってとてもいい。確か師匠も、日常のちょっとしたことに気を使うとそれがちょっとした鍛錬になって成長につながるって言ってたなぁ・・・。
そんなこんなで、私はフランお嬢様からの監視を受けつつ、草刈りを続けていたのだが・・・ある程度草刈りが進むと、フランお嬢様が声をかけてきた。
声をかけてきた、と言っても他愛もない雑談だ。
私の話が終わり、逆にフランお嬢様の話を聞いてみることにした。私が聞いた限りでは、フランお嬢様がお生まれになった際に本当の母親は死んでしまったらしい。フランお嬢様もメイド長からの受け売りだが、レミリアお嬢様とフランお嬢様のお母上は、生まれつき血が固まりにくい体質で、フランお嬢様をご出産される際に大量の血を流してしまい・・・そのまま、亡くなられてしまったみたいだ。お二方のお母上が亡くなられてからの3年間は、お二方のお父上がこの
そして3年が経った時、レミリアお嬢様がメイド長を
フランお嬢様と昔話をしながら作業をしていると私とフランお嬢様はとんでもないものと遭遇してしまった。その遭遇してしまったものが、とんでもなく成長したマンドラゴラだった。既にマンドラゴラとして長い間、その場所に自生していたからか・・・私の知るマンドラゴラとは違い、言葉をしゃべり知能すら有していて、明らかに私たちに敵意を向けていた。しかも、そのマンドラゴラの根から別のマンドラゴラが成長しており、10体もの歩行するマンドラゴラがフランお嬢様に襲い掛かっていた。咄嗟の事でフランお嬢様は反応できず、私が間に入り庇ってフランお嬢様は事なきを得た。庇った私には少しだけ切り傷ができたものの・・・この程度ならすぐに回復する。放置して、指笛でロンと狼たちを呼び寄せる。ロンと狼たちはすぐさまその指笛を聞き駆け付け、ロンはフランお嬢様を守るように威嚇しだし、狼たちは歩行するマンドラゴラの群れに襲い掛かっていた。
その隙に私は巨大なマンドラゴラに突撃し、師匠から教えられた
結果を言えば、それで終わった。しょせんはマンドラゴラだったので、縦に真っ二つにするとすぐさま死んだ。フランお嬢様にケガはなく、私もロンも狼たちも無事。終わってみれば、庭園の地面に大穴が開くという結果を残して終わっていた。けれど、終わってびっくりしたのはフランお嬢様が、庇ったことでできた傷を心配してくれたことだ。それを見て私は、なんて優しい子なのだろうと思い、レミリアお嬢様と同じ忠誠心を彼女に誓うことにした。甘いし、後から冷静に考えれば、変なタイミングだが・・・私にとってあの時が、フランお嬢様にも忠誠を誓うべき時だったというだけなのだろう。
ちなみに、メイド長がレミリアお嬢様が、レミリアお嬢様のご趣味であるお散歩から帰ってきたころには、巨大なマンドラゴラの焼却処分は終わっていたし、私とフランお嬢様との確執はなくなっていたが・・・メイド長が能力の黄金のうねりの中からとても嫌そうな顔をして黒無地の本を出していたのはどうしてなのだろう・・・?
=====
私がフランお嬢様との確執を無くしてから、早一日。
今日はアンナさんがおやすみの様で、アンナさんは喜んでベットに飛び込んでいた。けれど、いつの間にか
とりあえず、両者を止めて事情を聴いてみたところ、
とりあえず、アンナさんには怒りを収めてもらい、死神の娘には今日は大人しく帰るように説得して事情を書いた手紙を渡して帰ってもらった。
・・・ちなみになのだが、
庭園の背の高い雑草が生い茂る場所に入ると、迷宮のように毎回毎回道が変わるらしく、狼たちも何度か迷子になってしまっている。幸い、狼たちの遠吠えコミュニケーションで無事に帰ってこれているが・・・このままでは庭園内で遭難とかもあり得そうだ。ちなみに、迷子になった狼はすごい涙目だったから、オリビアさんに手伝ってもらいながらブラッシングしてあげたらすごく喜んでいた。
そして、前回の巨大なマンドラゴラ。アレはその迷宮のザコ敵の様だったらしく、今回も似たようなマンドラゴラに襲われ返り討ちにして焼き討ちにした。そんな巨大なマンドラゴラの他に、妖怪化・・・モンスターに進化した獣や自然に生まれた
そして今日はメイド長が休憩時間にやってきたので、私が一番かわいがっている狼を紹介した。メイド長もその狼を気に入ってくれたのか、存分に撫でて仕事に戻っていった。
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○
この日記を書き始めて早5日目。
こうして日記に書いておかなければ、もうすでに3か月ほどここで暮らしていると思うほどに楽しくて充実している毎日を過ごしている。
あの時のアンナさんが、変な事を言った意味が分かった気がする。ここで働いていると、楽しくて時間が速く進んでいるように感じるのだ。それこそ、月日が変わるぐらいに。
さて、今日やった業務を先に書き記しておこう。
今日ようやく、私が預かった倉庫周りの探索が終わり、雑草を刈ったり、土地の整理をして、倉庫の隣に畑を切り拓いた。
前にルージュさんが、野菜や果物の不足に頭を悩ませていたので、真っ先に作っておきたかったものだ。(メイド長のお菓子も美味しいのだけれど、ルージュさんの作るご飯はとても美味しい。あのコンソメスープ・・・また飲みたいなぁ)
そして肝心の野菜と果物の種は、メイド長から手渡しで結構な量を手渡された。なんでも、レミリアお嬢様の
ともかく、畑を切り拓き、メイド長から(レミリアお嬢様がお拾いになられた)野菜と果物の種をまいてゆく。ここから芽が出て、育て、収穫するのが私の役目だ。少し仕事が増えたが、別にこれくらいどうってことはない。メイド長も心配して声をかけてくれたが、「メイド長たちの仕事に比べると楽ですよ。」と答えると、困った笑顔を浮かべていた。なんかごめんなさい・・・。
その後も、迷宮となっている裏庭の探索や庭木の手入れをしていると、夕方となり夕食を(レミリアお嬢様方にとっては朝食を)食べ終えた後に、メイド長から私が畑を切り拓いて、野菜と果物を育て始めた事・・・そして、オリビアさんの配下の毛玉の4匹が、何もしていないのに人型になった事が伝えられた。
私は思わず、開口せざるを得ず・・・理解が追い付かず、メイド長に指摘されるまで口を開け続けていたという。私はまだいい方で、レミリアお嬢様は笑顔が引きつっていた李、フランお嬢様はなぜか背後に宇宙を生み出していたし、アンナさんなんて笑いすぎで酸欠で死んでしまっていた(生き返ったけれど)。ルージュさんとブラウさんもそれぞれ遠い目をしていて、報告したメイド長は不思議そうな表情こそ浮かべていたもののようやく人手が増えたことがうれしいのか羽をパタパタとさせていた。
=====
今日は暇なので早めに日記を書いている。
昨日の夕方から夜にかけて降り始めた雨は、今日も降り続いている。狼たちやロンと共に、早々に屋根と壁のある場所に避難した。
雨が降っているせいで、庭園の手入れができずに暇を持て余していたので狼たちのブラッシングをしながらボーっとしていると、メイド長に見つかってしまう。思わず「叱られる」と考えてしまったが、メイド長もメイド長でにこにこと笑い、懐からクッキーが5枚入った小さな袋を手渡ししてきた。そして、右手で人差し指をたてて口に手を当ててシーッとサインをして仕事に戻ってゆく。正直、その一連の動作が色っぽくてそれが忘れられずに、しばらく赤面していると通りすがりのルージュさんにからかわれてしまった・・・。おのれ、絶対に許さんぞ、アンナめ!!
ともかく、メイド長から受け取ったお菓子を食べつつ、狼たちの手入れに精を出す。
・・・出していたのだけれど、段々と眠くなってしまったのか、私は眠っていたらしい。今は起きてこの日記を書いたけれど、起きた瞬間は狼たちが枕になっていたり、布団になっていたりとすごくモフモフしていてもう一度眠ってしまいたいと思ったほどだ。
そして、正直に書き綴ると、これ以上は何もないのでこのモフモフの寝具でもうひと眠りすることにしよう。
次回から再び、メイド長の日記!
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☆ 92冊目 34~37ページ
転生93年と1か月18日目(火曜日、日中:曇り、夜中:曇り・たぶん満月)
今日の
なんでも、化け物討伐組織の吸血鬼狩りによる攻勢が一時的に強くなり
そして手紙には、私がお世話になった執事さんと
今日の事で特に重要なことはそれぐらいだが、いいことが起きた。
ついに今日、アンナが1回のミスもせずに仕事を終えることができたのだ。今までアンナはどれだけしっかりとしつつメイドの仕事をしても、どういう訳か必ず1回ミスをすることがある。ミスと言っても私たちからしてみれば、誤差と変わらない些細なミスなのだが……本人からしてみれば、嫌な気持ちになるミスが多かった。
私たちも気にしないでいいとは伝えてはいたのだけれど、アンナは気にしていたみたいだ。ちなみにそのことはオリビアちゃんが教えてくれたので、久しぶりにクッキー以外のお菓子を作ることになる。ルージュにキッチンを使うことを伝えて、パンケーキを作る。前世でも姪っ子に作った時以来だったかな?それでも、かなり久々に作ったわけなのだが、作り方と焼き方のコツはしっかりと覚えており、ちょっと焼き方が甘かったけれど、それでも美味しそうなパンケーキが出来上がった。
そしてそれをオリビアちゃんが休憩室に連れ込んだアンナにご馳走する。アンナはどうしてパンケーキを出したのか分からないみたいだけれど、私の「頑張ったご褒美。」の言葉に心当たりがあったのかボロボロと大粒の涙を零しながらパンケーキを頬張っていた。
ちなみに、ルージュとブラウ、オリビアちゃんだけでなくメイド隊の全員とオマケに
=====
転生93年と1ヶ月19日目(水曜日、日中:曇り、夜中:曇り・たぶん半月)
今日も特に大変なことは起きない・・・雲が分厚いせいで、夜と勘違いしてレミリアお嬢様が起きてきたぐらいだけれど、普通の一日だった
しいて言うならば、今日はレミリアお嬢様とフランお嬢様がバルコニーで優雅に過ごし、その際にお試しで作ったマカロンがお気に入りになられたことだろうか。
そういえば、ここ数日・・・いや、アンナがメイド隊に所属して3週間ぐらいした時から、アンナには
《文字が途切れている》
=====
転生93年と1ヵ月20日目(木曜日、日中:雨、夜中:雨・多分三日月)
何もない普通の日と油断していたが、昨日はあの後・・・大惨事が起きた。フランお嬢様が再び暴走したわけでも、レミリアお嬢様が誤ってグングニルを投擲したわけでもない。むしろ、紅魔館の住人が起こしたわけではない。昨日、私が日記を途中まで書いて、それ以降書いていなかったのは、
さて、どうして今まで迷いの森を突破できていなかった吸血鬼狩りどもが、この紅魔館にたどり着いて襲い掛かったのか、と言う疑問が浮かぶと思うが、単純明快だった。彼らは何と、人海戦術・・・つまり人の数で迷いの森を無理やり踏破してきたのだ。今回襲ってきたのは10人チームの一番数の少ない人数合わせ・新人ばかりのチームで、一番多いのは50人程のベテランの吸血鬼狩りが迷いの森に入ったとのことだ。どうしてそのことを知っているのかと言われると、お嬢様が一番若い吸血鬼狩りの少女を下僕・・・下級の吸血鬼にして知っていることをすべて喋らせたからだ。吸血鬼狩りが吸血鬼になるのは皮肉なことだが、吸血鬼にされた吸血鬼狩りも親から身元を売られ半ば強制的に吸血鬼狩りにさせられたらしく、むしろお嬢様に絶対の忠誠を誓っていた。(その吸血鬼は、メイド隊の預かりとなりアンナの下につけて主に夜に業務をしてもらうことになった。)
レミリアお嬢様もフランお嬢様もお昼に叩き起こされてしまったからか、非常に腹が立っているご様子で、淑女らしい振る舞いと口調ではあったモノの目を煌々と赤く光らせ、吸血鬼貴族の娘らしい風格を垂れ流していた。ここまでの怒気は、今まで見たことはなかった。けれど、お二人には確かにスカーレット卿の血が流れていることがよく分かった(あんまりスカーレット卿のことは知らないけれど、私が初対面の時の風格と似ていた。)
レミリアお嬢様とフランお嬢様の話し合いの結果、徹底抗戦・・・ではなく、いのち大事に
まあ、負けるわけがなかった。
メイド隊はあまり戦闘能力のない私、完全に戦闘能力のないオリビアちゃんと毛玉メイド、さっき吸血鬼にされた子を除けば、元化け物討伐組織のシスターのアンナに、暴走したフランお嬢様からレミリアお嬢様を守りつつ互角に戦ったブラウに、そのブラウに1体1なら互角なルージュ、元から種族として最上位クラスの死神の子が揃っており、警備隊に至っては最近ブラウに不意打ちとはいえ一撃を食らわせた
ちなみに、敵の総数は150人。きっちり死体も数えたから間違いはない。
追記
1日眠って冷静になって読み返したのだけれど、お二方だけでなく、私も相当気が立っていたみたいだ・・・。まあ、だからと言ってやめる気はないけれどね。
今までほのぼのしていたけれど、いきなり闇を出してしまった()
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☆ 92冊目 38~47ページ
転生93年と1ヵ月21日目(金曜日、日中:雨、夜中:雨・多分新月)
今日はレミリア様のお散歩の日・・・だったのだが、雨が降っているということ、つい昨日襲撃を受けたということもあり、レミリアお嬢様はお散歩に行くことをあきらめた。それだけではなく、しばらくご趣味であるお散歩は控えるらしい。珍しい言葉に思わず理由を聞いてしまうが、レミリアお嬢様は意味深な笑みを浮かべるだけだった。
さて、昨日の襲撃でとらえた吸血鬼狩りの人間たちについてだけれど、まずはお嬢様方のお食事用の人間について記そうと思う。
幸いにも、今回捕まえた人間の血はお嬢様方にとっては美味しい部類らしく、このまま
次に、吸血鬼メイドの方だ。
お嬢様による吸血鬼メイド化に成功した”元”吸血鬼狩りの少女たちは、大成功が1人、成功が13人、失敗が5名という結果になった。
大成功した吸血鬼メイドは、最初に吸血鬼メイドにした子と、いつの間にかレミリアお嬢様を信奉していた子で、レミリア様に対する忠誠心が高かったからか、それとも吸血鬼としての才能を持っていたのか分からなかったが、普通の吸血鬼より強い力を持って吸血鬼になっていた。けれど、それ以外の普通に成功した吸血鬼は、この
あと失敗した奴らはそのままゾンビになって汚物をまき散らしたのでブラウがキレて肉片ごと消滅させていた。やだ、ブラウ強すぎ・・・?
ともかく、ただでさえ数の少なかったメイド隊だが、ようやく2桁の人数を揃えることができた。
しばらくは吸血鬼メイドの教育をしつつ、スカーレット卿の到着を待つばかりかな。
=====
転生93年と1ヵ月22日目(土曜日、日中:雨、夜中:曇り・多分三日月)
吸血鬼メイドの教育をスタートして早い一日、元が吸血鬼狩りと言う前提もあるからか、初日でぶっ倒れるほど貧弱と言うわけでもなかった。アンナ、ルージュ、ブラウの私を含む4人で一人ずつ家事能力を見たのだが、全員が一般的な家庭能力を持っていた。今回は全員アンナのメイド隊に配属とはなった物の、アンナは張り切って教育すると言ってくれたので、完全にお任せすることにした。
それと、人数が増えたことによりメイド隊の居住区が本館から使われていない別館に移動となった。
本来
レミリアお嬢様との話し合いにより、一時期は本館東棟の一部分・・・と決まりかけていたのだけれど、今回の増員と
移動させるのは、私の私室 兼 執務室、ブラウとルージュとオリビアちゃんの3人部屋、アンナと死神メイドの相部屋、毛玉メイドの4人部屋と、吸血鬼メイドの3人部屋、最初に吸血鬼メイドになった子・・・エリカの専用部屋の計6つ。メイド休憩室だけは、本館のキッチンの隣のままだ。あと、私の隣は
引っ越しは今日から少しづつ始める予定だったが、メイド隊も
=====
(23日~28日まで、日付、曜日、日中の天気と、夜中の天気と月の様子、そして吸血鬼メイドたちの育成状況だけが事細かに書き記されている。)
=====
転生93年と1か月29日目(金曜日、日中:曇り、夜中:晴れ・半月)
今日は久々にレミリアお嬢様のお散歩の日・・・だったのだが、ちょうど出かけようとしたその時、スカーレット卿の一団が
余りにも見計らったかのようなタイミングに、レミリアお嬢様の笑顔に血管が浮かんだが、そこは淑女・・・少しだけ血管を浮かせながら、丁寧な言葉づかいでスカーレット卿を受け入れていた。
さて、レミリアお嬢様のお散歩はさすがにキャンセル。レミリアお嬢様は、自身の執務室にスカーレット卿を招き、今まで起きた事をフランお嬢様を交えて伝えるらしい、その間私はスカーレット卿が連れて来た不夜城のメイドたちと
その為、丁寧な対応で別館の用意していた部屋に案内しようとしたのだが・・・
・・・
ちなみに、東棟のとある部屋でこの前の襲撃でとらえた偉そうなやつをアンナが拷問して殺した、いわくつきの部屋があるのは黙っておいた。
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☆ 92冊目 48~51ページ
転生93年と1ヵ月30日目(土曜日、日中:晴れ、夜中:晴れ・三日月)
スカーレット卿が
幸いにもルージュの料理はスカーレット卿の口に合ったようで、スカーレット卿はレミリアお嬢様とよく似た笑顔を浮かべながら舌鼓を打っていた。今日は味が濃い目の料理だったこともあり、デザートはサッパリ系のデザートを用意したのだが、スカーレット卿は恐る恐る一口食べるとレミリアお嬢様と同じように目をシイタケにして輝かせながらおかわりを要求してきた。なんだかそれが少しかわいくて、ちょっとだけおかわりを多く作ってしまったのは内緒だ。
さて、いい気分で日記を書けるのはそこまでだ。
それまでは私は機嫌よく一日を過ごせるとばかり思っていたのだが、レミリアお嬢様方がお眠りになった後、お嬢様方の前では大人しくしていた不夜城のエリート(笑)メイド様どもがふんぞり返った態度で、堂々と業務をサボりだした。
私だけならよかったモノの、ルージュ、ブラウ、オリビアちゃんまで下に見ていて3人は
それと、一昨日から研修が始まった吸血鬼メイドの子たちなのだけれど不夜城のエリート(笑)メイド様たちの態度を見て、何か感じるものがあったのか反抗心を持っていた子ですら大人しく指示に従うようになったとアンナとオリビアちゃんから伝えられた。どういう心変わりなのかは、分からないけれど、まあ真面目にやってくれるなら問題はないだろう。
=====
転生93年と1ヵ月31日目(日曜日、日中:雨、夜中:雨・多分半月)
今日も今日とて、不夜城のエリート(笑)メイド様は働かない。
レミリアお嬢様とフランお嬢様、スカーレット卿が起きているときはまだいい。エリート(笑)メイド様どもは、スカーレット卿が怖いのか真面目に働いている。
まあ、お休みになった途端不遜な態度を取って
それは置いといて、私はスカーレット卿と1対1で話し合う機会があった。仕事中に急に呼ばれたため、引継ぎに少し手間取ってしまったけれどスカーレット卿は笑って許してくれた。
それで、スカーレット卿が私と1対1で話したい内容と言うのが、この100年間・・・レミリアお嬢様とフランお嬢様を守り続けてきたこと、そしてこれからも守ってほしいということだった。もちろん、そんなことは百も承知、むしろ100年間忠義を尽くしたのに急に放り出されては逆に困ってしまう。
その話が終わった後は、レミリアお嬢様とフランお嬢様が自分からは言わないことをスカーレット卿に教えた。スカーレット卿は時に笑い時に驚き、時にポカーンとしながらも、楽しそうに私の話を聞いていた。その感情表現が、レミリアお嬢様とよく似ていて・・・やはり親子なのだなぁという関心と共に、どこか可愛らしさをスカーレット卿に感じていた。
ちなみに去り際に変な事を聞いてきたが、私は自然な笑みを浮かべて何も言わずに部屋から退出した。
=====
転生93年と2か月1日目(月曜日、日中:曇り、夜中:晴れ、満月)
今日はレミリアお嬢様のお散歩の日、スカーレット卿も暇らしくついてくることになった。
最初はレミリアお嬢様とスカーレット卿の親子らしい会話を見守りつつ、
いきなりのことにスカーレット卿と
ため息をついた後追いかけてみると、レミリアお嬢様を見つけた、スカーレット卿と
さて、レミリアお嬢様を見つけた訳だが、レミリアお嬢様は一人の女の子を抱えて意識を確認していた。
紫色のロングヘアにナイトキャップ、そのナイトキャップには三日月の飾りがついている。服装こそ魔女と言うならのローブ衣装ではあるものの、私は彼女に見覚えがあった。
レミリアお嬢様がこちらを見つけるよりも早く、死にかけのパチュリー(暫定)に駆け寄り脈を測る。かなり弱っているようで、弱々しい鼓動が手に伝わり、瀕死の重傷と言うことが分かる。脈を計測している間にスカーレット卿と
スカーレット卿は、パチュリー(暫定)を助けるのに対して何か文句を言うのかと思ったのだが、「
幸いにもメイド休憩室には、ブラウとアンナが居て、レミリアお嬢様がメイド休憩室の仮眠ベットにパチュリー(暫定)を寝かせたのを見てすぐさま行動に移っていた。
ブラウはパチュリー(暫定)に駆け寄って急いで服を脱がせて傷を確認し、アンナはスカーレット卿と
ブラウと協力してすぐさま治療に移り、矢やナイフを一つ抜いては傷跡をふさいでを繰り返し、腹部に空いた穴を針で縫うという大手術になったわけだが・・・幸いにも、手術には成功した。しかし、ここから回復するか、それともポックリと逝ってしまうかは、パチュリー(暫定)次第だ。あの見つけた時点で、すでに虫の息で、今でさえ危険な状況だ。それをレミリアお嬢様に伝えると、静かに頷いて治療に協力してくれた私を含むメイドに休むように指示を出した。
ブラウやアンナ、そして連れてこられた吸血鬼メイドは疲労困憊で大人しくその指示に従ったが、私はその指示は従わずにブランケットと着替え、ついでに倉庫からとある本を取り出して、レミリアお嬢様に渡した。もちろん、休むようにと怒られたけれど、レミリアお嬢様が心配だったので上手く言いくるめておいた。
・・・それにしても、パチュリー(暫定)を助けている時、部屋の外から”イモムシ女”という罵声が聞こえて来たけれど・・・レミリアお嬢様ばっちり聞いてるだろうなぁ・・・。
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☆ 92冊目 52~55ページ
転生93年と2か月2日目(火曜日、日中:曇り、夜中:晴れ・半月)
昨晩が峠だったパチュリー(暫定)は、無事に通り越した。
苦しそうだった寝息が安らかなものに変わっており、レミリアお嬢様も安心したのかヴェスバー・コーウィル氏が執筆した解説系小説『魔法使い、魔女という人々について』という本を持ったまま眠ってしまっていた。起こさないように優しく抱き上げて、
そのあとのパチュリー(暫定)はオリビアちゃんが看護することとなり、私たちは普通の業務へと戻った。
ちなみに治療中に私のことを「イモムシ女!」と叫んでいた不夜城メイドたちなのだが・・・なんと、レミリアお嬢様だけでなく雇用主であるスカーレット卿にも聞かれていたようで・・・不夜城メイドたちがメイド休憩室でふんぞり返っていたところに、スカーレット卿が登場。そのままクビを言い渡していた。彼女たちは顔を青くして許しを乞っていたみたいだけれど、スカーレット卿の道端に落ちている小石を見ている目を見た瞬間、自分にチャンスはないと理解して力なくメイド休憩室から出て行った。
そして、今まで不夜城メイドたちが業務を放棄していたこと、私に対してイモムシ女と呼んでいたこと、など私がお世話になった老執事さんだけでなく、スカーレット卿にまで頭を下げて謝られてしまった。もちろん、気にはしていたものの、彼らには何の非がないため、とりあえず試作のベリージャムの味見をしてもらった。味は少しだけ酸っぱいけれどクセになる味だ。といわれて、割と好評だった。
=====
転生93年と2か月3日目(水曜日、日中:雷雨、夜中:雷雨・多分三日月)
実に久しぶりの雷雨だ。私たちが住んでいる
今日以外で最後に起きたのは2年前のすごしやすい季節の頃だっただろうか・・・まあともかく春と夏の間ぐらいの時だ。私は100年たったとしても雷がどういうものかはしっかりと覚えているので怖くないのだが、私以外の・・・ブラウとルージュ以外のメイドたちは雷を怖がっていた。光るたびに悲鳴が上がるため、今日はできるだけ早めに業務を終わらせて怖がるメイドたちの側にいることにした。
ちなみにメイドたちの中でも一番怖がっていたのはアンナだ。なんでも昔、目の前に雷が落ちて、それ以来トラウマになっているらしい。仕方がないので目いっぱい甘やかしたら他のメイドからも同じように甘やかしてほしいと頼まれたためブラウとルージュに行くように仕向けた。
そして、雷雨はレミリアお嬢様方が起床される時間までなり続けていた。案の定、レミリアお嬢様とフランお嬢様は雷が苦手らしく、メイドたちと同じように光るたびに悲鳴を上げて”カリスマガード”の体勢になっていた。対してスカーレット卿は、身近に”雷を使う吸血鬼”がいるらしいので特段苦手でもないようだった。
雷が鳴り、いつもより雨が降っているとしても、メイドのやることは変わらない。掃除に洗濯、炊事に吸血鬼メイドの指導まで今日も右往左往に仕事をこなしていく・・・はずだったのだが、それ以上にぶっ飛んだことが2つほど起きた。
一つ目のぶっ飛んだことは毛玉メイドの数が増えた。それもこの前のように4人づつ・・・というわけではなく、一気に40人も増えた。雷が関係しているかどうかは不明だけれど、最初の4人と同じように毛玉たちが突然、毛玉メイドになったので相変わらず原因は不明だが、オリビアちゃんによると今回毛玉メイドになった毛玉たちはオリビアちゃんの手伝いを率先してやってくれていた子たちらしい。つまりはそう言うことなんだろうか・・・?
よくは分からないが即戦力が増えたことはイイことだ。
もう一つは、
なんと、その狼たちのうち12匹が、狼から
どういうこと?と、ブラウに尋ねたところ、
そう言えば
ともかく、メイド隊と警備隊の人手が増えたことは喜ばしいため、レミリアお嬢様方に報告した。
レミリアお嬢様はもうすでに慣れたのか「育成に力を入れるように」と一言だけ残し、フランお嬢様とオリビアちゃんは人型化した
=====
転生93年と2か月4日目(木曜日、日中:雨、夜中:曇り・多分新月)
特段何もない一日だったけれど、人手が増えたことでメイド隊全体に余裕が生まれたからか、珍しいことにブラウが居眠りを、ルージュが休憩中に仮眠を取ったのだ。
昨日ヒト化した毛玉メイドたちは30:10で別れてもらい30人をブラウの清掃メイド隊に、10人をルージュの調理メイド隊に振り分けた。元が長く仕事をしていた毛玉たちだったということもあり、まるで去年から働いていたといっても過言ではないほど効率的に動いてくれた。おかげで、ブラウは清掃中に壁に寄りかかって瞑想するように眠っていたし、ルージュは気持ちよさそうにメイド休憩室のベットで眠っていた。オリビアちゃんの場合は、ヒト化しブラウやルージュのもとにいるとしても、元が配下の毛玉の為か彼女たちの活躍を聞いて嬉しそうに可愛らしく胸を張っていた。やっぱりまだ幼くて可愛いわ。
そして、
人手が増えたおかげで、
ちなみに毛玉メイドたちは昨日の時点で悠長に喋っていたので必要ないのだが、狼女たちは上手く言葉がしゃべれないようだったのでオリビアちゃんが言葉を教えて、ブラウが一般常識を教えることになった。
それにしても、
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☆ 92冊目 56~60ページ
転生93年と2か月5日目(金曜日、日中:晴れ、夜中:晴れ・三日月)
今日はスカーレット卿がお帰りになる日だ。
1週間という短い間だったとはいえ、スカーレット卿は満足されたらしく。レミリアお嬢様とフランお嬢様と家族の語らいをしたのちに、私たちメイド隊と
その後、レミリアお嬢様への御前報告にて、
話を聞いていたフランお嬢様が詳しい説明を聞きたいと、おっしゃると
警備隊の業務は
警備の方は何とかなる、
問題は庭園の手入れの方らしい。
庭園は警備隊ができる前、本館から見える景色のみでもと私が手入れをしていた部分、そして警備隊ができた時に美鈴が整備した倉庫周辺以外はすべて迷宮化しており、最近だと金属でできたゴーレムがうろついているらしい。(いや、どういうこと?)
奥に進めば進むほど、強力な存在がうろついており狼たちもその迷宮の浅い所しか探索できていないらしく、
ちなみに、無駄に硬い背の高い雑草を刈り取れば迷宮化は解除されるらしく、少しづつ迷宮ではないところを広げているらしい。
話を戻して簡潔に言うと、その庭園迷宮の攻略の目途はたっていない。ということだった。
・・・その話を聞いたレミリアお嬢様が、「もう焼き払った方が早いか?」と血迷ったことをおっしゃったのでフランお嬢様が慌てて宥めていた。
あと、今日のレミリア様のお散歩では高そうな絵画をお拾いになられていました。
=====
転生93年と2か月6日目(土曜日、日中:晴れ、夜中:晴れ・半月)
ヴワル魔法図書館・・・それは
私には薄れてしまってはいるものの、前世の記憶が存在し・・・当然、ヴワル魔法図書館の存在は覚えていたのだが・・・私が、レミリアお嬢様の専属メイド、そして
それがブラウの清掃メイド隊の手によって発見された。
この報告は、私の個人的な感情を喜ばせたのだが・・・現実的な感情はといえば、頭が痛い状況だ。
なぜなら、その報告には続きがあり・・・その続きには驚くべきことが伝えられた。
庭園に続き地下室まで迷宮化しているって・・・
地下室迷宮は庭園迷宮とは違い、生息しているのはゾンビやスケルトンといったアンデット系の生き物で、何度出入りをしても迷宮の形は変わることはなかった。しかし、地下室迷宮は庭園迷宮とは違いゾンビやスケルトンには知性があり、派閥まで作っているらしい。
もう燃やせ!地下室を燃やしてしまえ!!
(以下、烈火のごとく地下室が迷宮化していることに対して怒りの文字羅列が続いている。)
p.s.
いつの間にかめちゃくちゃキレていたらしく、我に返ったときにはレミリアお嬢様とフランお嬢様と共に(棺桶の中で)眠っていた。
少しだけ狭かったけれど、久々のお二方の添い寝で心が浄化されるようだった。
=====
転生93年と2か月7日目(日曜日、日中:晴れ、夜中:晴れ・満月)
地下室・・・もとい、地下室迷宮が発見された事は私がキレていた時にレミリアお嬢様も耳にしたらしく、こめかみに指をあてて頭を悩ませていた。
地下室迷宮が発見されたことは、
そう思い、昨日のうちにレミリアお嬢様がスカーレット卿に手紙を出していたらしく、地下室迷宮対策会議中に返信が来た。
そして、レミリアお嬢様がその手紙の封を切ると、「あのクソ親父!」と叫んで机を殴りつけた。レミリアお嬢様からお手紙を受け取り、フランお嬢様と一緒に見ると・・・要約すれば『そう言えば伝えてなかったわ、ゴメン!』と書かれていた。
その直後、フランお嬢様はいい笑顔でレーヴァテインを起動して手紙を灰にして笑顔のままレーヴァテインを素振りしていた。私との約束があるので本当に振るいはしないだろうけれど、振るっても私は何も見なかったことにしよう・・・。
とにかく、手紙の一部分には『地下室を焼こうと構わないけれど、書庫とか倉庫とかあるから気を付けてね』とも書かれていたので下手に火を放つことができなくなってしまった。
さて・・・どうしたものか・・・。
=====
転生93年と2か月7日目(月曜日、日中:晴れ、夜中:晴れ・半月)
今日はレミリアお嬢様のお散歩・・・の日だったのだが、地下室迷宮の対策会議でレミリアお嬢様はそれどころではないので中止となった。
私もその対策会議に出席しようとしたのだが、さすがに働き過ぎとキレた時に相当ヤバい事を言ったらしく、しばらく休みが言い渡された。その為、私は
様子を見に来た
彼女たちが言うに、彼女たちは庭園迷宮で生まれた妖精でなんだか温かい気配を感じて、その気配に向かったところ、私が眠っていたらしく。
最初はいたずらをしようとしたのだけれど、庭園迷宮から出て来ただけで疲れてしまったらしく、同じように眠って・・・今に至るらしい。
庭園迷宮の生まれということは、相当強いのだろうか・・・確かになんとなく、かなり昔に見た妖精たちよりパワーというかオーラのような気配が強い気がする。
私が起きた事で、庭園迷宮に帰ろうとした妖精たちを私は引き留めて
最初は乗り気じゃなかった妖精たちは、お菓子や美味しい料理といった言葉を聞いた途端に目を輝かせて頷いた。あれ、この子たち大丈夫かな?
・・・ともかく、合計で48人もの妖精メイドを確保に成功した私は、「休日ぐらいは休みなさい!!」と逆にレミリアお嬢様にお叱りを受けてしまった。
ちなみに妖精メイドたちの中でも3人ほど、不思議な子がいる。
その三人は、庭園迷宮生まれの妖精の中でも特に強い気配を持っていて、容姿が他の妖精たちと違っていた子たちだ。
将来が楽しみかもしれない。
急にすまないね、作者だよ。
今回の最後に出てきた3人の妖精メイドについて少し補足があるんだ。
3人の妖精メイドは、リメイク前の「紅魔館に住み込みで働くことになりました。そして咲夜さんの先輩メイドです」の「△ 紅魔館地下室戦争の全て」に出てくる5人の古参妖精メイド5人の代わりに出す予定のネームドキャラ・・・だったのですが、残念なことに作者のネタが切れてしまいました。
と、ここで作者に一つの天啓が・・・「思いつかないのなら読者募集すればいいじゃない」と。
というわけで、この3人の妖精メイドを読者募集で決めます。
詳細と提案はこちらの活動報告へどうぞ。↓
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=300295&uid=198820
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□ 日記には載らない戦闘訓練(
これは
ちょっとした息抜きにどうぞ(本編とはあまり関係のないお話です。)
読み飛ばしていただいてもかまいません。
初戦はオリビアちゃんです(難易度 easy?)
とても短いです。
今日は、レミリアお嬢様のお散歩の日。
メイド長も外出中の
そこで、私、アンナさん、ルージュさん、ブラウさん、オリビアさんと死神メイドさんが揃っていた。
本来なら私とオリビアさんだけの戦闘訓練のはずだったのだけれど、話を聞きつけたアンナさんがルージュさんとブラウさんにも話し、全員でやることになったのだ。
「いや~、楽しみっスね!」
「どこまで、やれるのかな?」
「あまり気張らなくていい、ゆっくり確実にやるんだ。」
「はい、ブラウ様!」
「あ、あはは・・・(最初はオリビアさんだし手加減しないとなぁ・・・)」
最初の相手は、オリビアさん。
彼女も、彼女の配下の毛玉たちもやる気満々でフンスと気合を入れている。
始まる前に、私がメイド長から教えてもらったオリビアさんのプロフィールを思い出す。
オリビアさんは、アンナさんのメイド隊の副メイド長で、役職持ちメイドの中では末妹。
元々はただの毛玉で、メイド長が見分けるために毛玉用メイドプリムを被せたら人型化した毛玉妖精という種族の子だ。
元が毛玉ということであまり強くはないけれど、彼女の真価は配下の毛玉たちに号令を下し動かせることだろう。
と、私がオリビアさんについてあれこれ思い出していると、オリビアさんの準備が整ったらしい。死神メイドが私に準備オーケーかのハンドサインを送ってくるので、大丈夫の意味を込めてサムズアップをする。
「そ、それでは!
私は号令と共に長拳の構えをするが、すぐさま構えを解いて回避に専念する。
なぜなら―――
「大毛玉は一斉砲撃! 毛玉は弾幕展開! とにかくばらまいて~!」
5匹の大毛玉によるレーザー攻撃と、毛玉たちによる激しい弾幕攻撃が飛んできたからだ。
私が立っていたところは地面が赤熱化するほどレーザーが殺到し、当たれば無事ではないことがよくわかる威力だ。
弾幕の方も行動阻害の毛玉たちと確実に狙いをつけて撃ってくる毛玉たちに別れており、とても避けづらい。
彼らも張り切っているらしく、いつもはどことなく抜けている顔が、多少勇ましい顔つきになっている。
それでも当たるわけにはいかないので、回避に専念し・・・体を前倒しにして被弾面積を抑えて弾幕の中に突っ込む。
「!!」(特別翻訳 弾幕の下だ!うてぇーっ!)
「!!」(特別翻訳 悲しいけどこれ、弾幕戦なのよね!)
「!!」(特別翻訳 やってやる、やってやるぞ!!)
「!!」(特別翻訳 ホー・・・ホー・・・)
「!!」(特別翻訳 何だいまの!?)
大毛玉たちは、私が弾幕の下を通っていることに気付き、まばらにレーザーを撃ってくるが・・・咄嗟に照準を変えたために見当違いの所に着弾する。
弾幕の方も一瞬だけ、オリビアさんに一直線に行けるスペースが出来上がり、私はそのスペースを駆け抜け軽めに正拳をお腹に当たらないように突き付けた。
だが、突き付けた相手はオリビアさんではなく―――
「www」(特別翻訳 やーい、だまされてやんの~www)
オリビアさんの形にまとまった毛玉たちだった。なんだか馬鹿にされた気がするが、あまり気にせずにあたりを見渡しオリビアさんを探す・・・が、その判断がいけなかったのだろう。口の部分にレーザーを溜めた5匹の大毛玉が大量の毛玉たちと共に私を取り囲んだ。
咄嗟にガードの構えを取るが、そんなことはお構いなしに毛玉たちは私にレーザーと弾幕を浴びせる・・・
そして―――
「特大毛玉、押しつぶしちゃって!!」
「!!」(特別翻訳 マカセロー!)
上空からオリビアさんと共に落ちてきたとても大きな毛玉に押しつぶされる。
=====
「やっ、やった・・・」
と、嬉しがるオリビアさんの背後に立ち、肩に手を置き振り返らせて、そのまま抱きしめる。
咄嗟に私に向けてレーザーや弾幕を放とうとした毛玉たちの動きが止まり、発射体勢で固まっている。
「むぐむぐっ・・・め、
「んー、押しつぶされる直前に脱出して、そのまま背後に立たせてもらいました。」
「むぅー!!」
オリビアさんは勝てたと思ったのだろうけれど、まだまだだった。
最後の抵抗でぽかぽかと弱い力で叩いてくるけれど、あまりいたくないので死神メイドの子に目配せで早く終わらせるように頼む。
「そこまで!しょ、勝者・・・
死神メイドの号令に毛玉たちはしょんぼりとした顔を浮かべて、オリビアさんも大人しくなる。
オリビアさんをお姫様抱っこで持ち上げ、特大毛玉から降りて優しくオリビアさんを降ろすと、オリビアさんは少し泣きそうになっていた。
「勝てたと、思ったのにぃ~・・・」
「オリビアちゃんはよくやったっス、でも
「頑張った、とてもよかったよ。」
「指揮は悪くない、あれほどの弾幕・・・見事だったぞ。」
「正直、あの身代わりを見た時焦っちゃいました。」
オリビアさんが泣きそうなのを見て全員で慰め始める。
オリビアさんはあまり戦闘向きではないということもあるのだろうけれど、やはりみんなの妹であるということには変わりがないらしくしばらく戦闘訓練は中止となり、オリビアさんを慰めていたのであった。
・・・さて、次の相手は
「さーて、いっちょこのアタシがオリビアちゃんの仇を取ってあげるっスよ~!」
「うぅ・・・頑張ってアンナ~。」
「アンナ、すぐにやられないでよ?」
「大口をたたくんだ。やってやれ。」
「あ、あはは・・・け、怪我はさせないようにしますね?」
「なぁんでアタシが弱いみたいに言ってるんっスか!?ちょっと傷つくっス!!」
ふざけてはいるが、間違いなく実力者であることに変わりはないアンナさんだ。
気を引き締めてやらないと、大変な気がする。
はい、というわけでオリビアちゃんの戦闘方法は毛玉たちを指揮した一斉砲撃です。
毛玉の数は、毛玉メイド44名、特大毛玉が2匹、大毛玉が10匹、通常毛玉が481匹で、それなりに数が多いです。(毛玉たちが役立つとは言っていない)
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□ 日記には載らない戦闘訓練その2(
キャラの応募ありがとうございます!
今回はアンナ戦(Normal?)です。
「よーし、頑張るっすよぉ!」
「あ、アンナさん・・・元は人間なんですしあまり無茶はしない方が」
「だいじょーぶっすよ!アタシは、文字通り死なないんで!!」
躍起になっているアンナさんだけれど、私との種族差はあるはずだ。
それでもアンナさんは死神メイドの子に合図するように指示している。
「そ、それでは、
・・・もう始まってしまったので、一瞬でアンナさんの背後に回り無防備な首に向けて手刀を落とす。
ほら、やっぱり
[どこかにナイフが刺さる音。]
「・・・・・・カハッ!?(えっ!?)」
気が付いた時には、私の喉に向けてヒールで上段蹴りを繰り出しているアンナさんが・・・そして、私の喉元には一本の投げナイフが刺さっていて・・・
ーーー殺される。
「殺されるって、思ったっすね?」
アンナさんの声が聞こえて、そちらに視線を向ける。
そこで、自分の喉にナイフが刺さっていないことにようやく気付ける。
「今ので、
いま、この戦闘訓練で上位に立っているのはーーーアンナさんだ。
人間のアンナさんは私に勝てない、なんて甘い妄想を切り捨てて即座に距離を取って構える。間違いない・・・アンナさんは今まであってきた
身体中に気を巡らせて、身体能力を向上させつつ、肉体の強度を上げる。ここまでして、ようやく対等になった。
「んじゃっ、頑張って逃げ惑うがいいっす。」
その言葉を聞いた瞬間、構えもへったくれもない状態から、私の眼前に現れ双剣を突き出してくる。
頭と体を右に捻り、回避するが・・・アンナさんは体を回転させて、踵落としを放ってくる。踵落としを受け止めると、受け止めた脚とは反対側の脚で受け止めた手を蹴り上げ綺麗な放物線を描いき、途中で一回転して距離をと―――
「ッ!!」
咄嗟に、腕の硬化を高めて飛来したものを防ぐ。とんできたのは・・・
あの放物線を描いて距離を取っている最中に、こちらを見向きもせずに投げて来た・・・?
あの一瞬、何をしたのかは見えなかった。けれど、用心に越したことはないし・・・そもそも近づかなければ私は攻撃できない!
投げナイフを警戒しつつ、着地した衝撃で上手く動けていないアンナさんに向かって突撃する。
「当然、そう来るっすよね。」
アンナさんの声が聞こえて、突撃をやめて構える。
途端、構えを取った場所の足場が爆発し、私は上空に放り投げられる。
なんだ、なにが爆発した!?
「まだまだ、こんなもんじゃないっすよね?」
爆発で空中に放り投げられた私を見上げつつ、アンナさんは左脚を上げてその場で回し蹴りを放った。
直後、アンナさんの脚がキラリと光ったと思うと6本の投げナイフが飛んでくる。
そうか、分かった!
(アンナさんは、脚の遠心力でナイフを飛ばしてきてるッ!!)
普段から「脚には自信あるんっすよねぇ」と言っていたが、こういう意味だったんだ。
そんな事を考えつつ、とんできた投げナイフを硬化した拳ではじく。
「元々、アタシは蹴りで化け物を殺してきたっす。けれど教会所属になってからは”はしたない”って言われて、双剣で戦うようにはしてたっすよ?
ーーーああ、それと。爆発注意っす。」
[弾かれたナイフが爆発する音]
上手く弾いたはずのナイフが爆発し、今度は地面に叩きつけられる。さっきの爆発もこれかっ・・・。
叩きつけられた衝撃で、肺から呼吸が抜けていき・・・叩きつけられたせいで、体が一時的に言うことを聞かなくなる。それでも何とか体を動かし、ゆっくりとこちらに近づくアンナさんを見上げる。
冗談や嘘と思って聞き流していたけれど・・・アンナさんが『化け物討伐組織』の上位ハンターだったっていうのは、間違いじゃないのかもしれない。あの時、私を追いかけて来たハンターたちと比べ物にならないほど”強い”!
「さすがに、頑丈っすねぇ。」
「頑丈じゃ、なきゃ・・・傭兵は、勤まり、ませんでしたから。」
絶え絶えな息を整えつつ、どうにかして勝つイメージを見つけ出そうとする。
フラフラしている体を何とか持ち直し構えを取る・・・けれど、気が上手く練れない。呼吸器官を集中的に攻撃されたせいで普通に呼吸するのでやっとだ。
それに、まだアンナさんには双剣がある。ナイフを掻い潜って接近したとしても、アンナさんの格闘戦能力も侮れないものなことは、良く知っている。しかも、アンナさんはいまだにスピードがある。呼吸も乱れている様子もなければ、汗の一つも流していない。
対する私は、すでにダメージがかなり蓄積してしまっている。喉に蹴りを受けたのもそうだけれど、爆破を2回も受けて、さらに言えば地面に勢いよく叩きつけられたのだ。私が人間だったのなら最初の蹴りでダウンしていただろう。
「ん~・・・
「はぁ、はぁ・・・はい?」
「
「っ・・・どうしてそれを!?」
アンナさんの言う通り、私は修業中に師匠から「
「確かに、基本形でやるのはシンプルに強いっすよ?でも、実戦だと
アンナさんはニシシと笑いながら器用に双剣を回している。
・・・確かに、私が師匠のもとから去り、傭兵として仕事を開始したときから
師匠の言葉がようやく理解できた。私は、師匠にああいわれた時点で師匠に教えられたものを完璧にできていたんだ。だから師匠は、そこから私だけの
・・・身体中を巡らせている気を一度止めて、修行中に邪魔になるからと封じ込めていた妖力を解き放つ。それと同時に、知らず知らずのうちに押さえつけていたであろう人肉への渇望感があふれてくる。けれど、決してその渇望には流されず自分が思うままの構えをとる。
「ひゅぅっ、やっべぇ。ちょっと教えなきゃ良かったと思うっすねぇ・・・」
「行きますッ!」
「まあ、来るがいいっす!!」
右手に妖力を集めて、球体にして発射する。発射された球体はとても早いスピードでアンナさんに向かい、途中で爆発した。
恐らく爆発する投げナイフを当てて相殺したのだろう、その証拠に黒い煙が私とアンナさんの間に発生し、お互いの姿を見失う。けれど、私は気の力の応用でアンナさんの場所を見つける。
(まだ気づかれていない。)
音を立てないように力をコントロールし、黒い煙から回り込むようにアンナさんを目指す。
彼女は当てずっぽうにナイフを
「やっばぁっ!?」
「たぁっ!!」
咄嗟に双剣を盾にするアンナさんだが、構わず拳を突き出す。
私の突き出した拳は、盾にされた双剣とぶつかり合い、辺りに衝撃波が広がる。そのまま力の押し合いに発展するが、力押しなら私の得意分野だ。
「ちっ、厄介なッ。」
アンナさんから”っす”口調が抜ける。
アンナさんの余裕を剥がすことができたものの、そこまでで私は力がフッと抜けてしまう。
倒れ込みそうになった私をアンナさんが抱きとめてくれる。
「もう少し、もう少し粘られたら本当に危なかったわ。」
「ははは・・・どうでしょうね。」
アンナさんの余裕を剥がすことは出来ても、本気のアンナさんと戦った訳じゃない。あのまま戦っていたら間違いなくアンナさんは祝福の力を使っていただろう。そうなったら不利なのは私だ。
「そ、そこまでです!勝者、アンナ副メイド長!!」
「ニシ、どーっすかオリビアちゃん!オリビアちゃんの仇はちゃぁーんととったっすよ!」
死神メイドの子が判定を下し、私の負けが決まった。
でも、何故か清々しい気持ちだ。
「さーて、まずは休憩っすね。
「大丈夫です、休むのは大得意ですから。」
私が冗談を言うとアンナさんは一瞬ポカンとした表情を浮かべたあと笑いだした。
「この後、私とやるの?」
「きょっ、今日はさすがに無理です!」
次回、ルージュ戦。
というわけでアンナ戦でした。
そのうち出てくる咲夜とのキャラ分けの1つとして脚でナイフを
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□&△ 日記には載らない
タイトルになんかついてるって?
気のせいだよ()
今回は、ルージュです(エクストラハード)
そして
「さて、やろう。
「いやいやいやいやいや、だから無理ですってさっきのきちんと見てましたよね!?」
しばらく休憩し、3人の毛玉メイドが持ってきてくれた紅茶とお菓子を食べた後、ルージュさんが大剣を背負って構えている。
私は最初逃げようとしたものの・・・ルージュさんに無理やり連れ戻されて、戦わされようとしている。
死神メイドの子に必死にやめるように訴えるけれど、死神メイドの子は冷や汗を流しながら私を顔を合わせようとしてくれない。
いやお願い、見捨てないで!?アンナさんで勝てなかったのにルージュさんに勝てるはずがないじゃん!!
「ん、お願い。」
「あ、はーい。ではこれより、
「あの、拒否権は!?それになんか、別の言葉が聞こえたような気がするんですけれども!?」
「ない☆(清々しいほどいい笑顔)」
「そんなぁっ!?」
どうやら本当に戦うしかないようだ。
構えを取り、ルージュさんを警戒するとルージュさんは大剣を抜いて斬りかかってくる。
腕を硬化して大剣を防ごうとするけれど、いやな予感を感じ取り、避けた後のことは考えずに大きく横に飛ぶ。
[軽く振り下ろされただけなのに庭園の地面がえぐれる音・・・が、振り下ろされて3秒後に聞こえてきた。]
「・・・手加減はする。」
「それのどこが手加減なんですかーっ!?」
「大丈夫、当たっても全治3か月で済むよ。」
「それ大丈夫って言わなーーー危ないっ!?」
私がまだ喋っている途中なのに、ルージュさんは大剣を振って斬撃を
ともかく、手加減(?)してくれているのは本当のようで、私は何とか避けることに成功はしている。それも長くは続かなそうだけれど・・・ともかく、避け続けて隙を見て反撃をーーー
「どんどん、行くから。」
「アンナさん助けてッ!!」*1
とんでくる斬撃のスピードが上がったんですけれど!?
いや、ほんと、これのどこが手加減なんですか!?私の事を確実に殺す気ですよね!?私、ルージュさんを怒らせるようなことしましたっけ!?
内心で手加減(?)に対して文句を言いながら、スピードの上がった飛んでくる斬撃を避け続けては居た・・・けれど、結局体力が尽きてしまい、その場に立ち尽くしてしまう。
そして、最後は・・・
「ん、とった。」
「(あ、死んだ。)」
ルージュさんに拳を振り下ろされたところで、私の意識は闇に飲まれた。
=====
「おーい、起きるっすよ~!
「はっ・・・!?」
目を覚ました。あれ、おかしいな?昨日は
あ、申し遅れました。私の名前は、
「あーダメっすね。頭がヤバくなっちまったっす。ルージュさーん、さっきのゲンコツも一発お願いしてもいいっすか~?」
「ん、もう一回やればいいの?」
「すみませんふざけましたすぐやめて地面から出るのでそれだけはやめてくださいっ!!」
わたしは、(きょうふで、)しょうきに、もどった!
どうやら私は負けたらしい。今度こそ完膚なきまで戦えないほどに。
うん、これならもう今日の戦闘訓練は終わりだよネ!もう私ボロボロだもんネ!!これ以上戦ったら死んじゃうもんネ!!!
「休憩は十分か、
「どぉじででずがぁあ~~~~~~~~っ!!!」
「うおっ!?」「うわっ!?」「わぁっ!?」「きゃっ!?」
「も゛う゛い゛や゛でずぅ!ぎょう゛ばも゛う゛づがれ゛ま゛じだぁ~~~~~っ!!」
「ガチ泣きッす!?普通、こんなガチで泣くことなんてそうそうないっすよね!?」
「えっ、あっ・・・あっ、えっ、あっ?(どうすればいいのか分からずパニックなブラウさん)」
「・・・やり過ぎた。」
[空間が蹴り壊される音]
「あっ(察し)」
「ヒュッ」
「ん、終わった。」
~~~~~
side:メイド長
~~~~~
・・・
すると庭園には目から滝のような涙を流す
「め゛い゛どち゛ょう゛~~~~~っ!!」
私を見つけた途端に泣きついてくる
「
「ひっぐ、えっぐ・・・わたしがんばったんです。あんなさんとたたかって、まけたけど・・・がんばって。それで、きょうはおしまいかとおもったら、るーじゅさんがむりやり・・・」
「ルージュ?」
あえて恐ろしく聞こえるように、声を低くして名前を呼ぶ。
ルージュはごまかすことをあきらめたのか、両手を挙げてその場で両ひざをつく。
「それで・・・それで、じめんにうまって・・・ぬけだしたら、ぶらうさんが、つぎはわたしだって」
「ブラウ?」
同じように名前を呼ぶと。
ブラウは、そっと青白い顔を白くさせつつ両ひざをついた。
「アンナ、この二人が逃げないようにしっかりと抑えてくれない?」
「えっ・・・あ、わ、わかりました。」
収納用の空間からレミリアお嬢様から頂いたハルバードを手に取り、そのまま杖代わりにする。
「ルージュ、」
「はい。」
「ブラウ、」
「はい。」
「オハナシしましょうか?」
「「・・・・・・ハイ。」」
えっ、ブラウ戦?ねぇよんなもん。
ちなみにこの後、
それと、なぜこんな濃厚な出来事があったのに記されていないのかというと
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☆ 92冊目 61~64ページ
転生93年と2か月8日目(火曜日、日中:晴れ、夜中:晴れ・三日月)
庭園迷宮から出てきた妖精たちは、無事に
やけに妖精に詳しいブラウが言うに、生存能力には優れているからむしろ妖精として正しいとは言っていたものの、妖精メイドになったからには少しづつそれを矯正しなくてはいけない。
ほとんどの妖精メイドたちの育成はアンナ隊に担当してもらうことになり、アンナ隊の中でも料理の覚えが速かった子はルージュ隊に、掃除を遊びながらもやってのけた妖精はブラウ隊に担当してもらうことになった。
さて、昨日の時点で庭園迷宮生まれの妖精の中でも3人ほど、強い力を持っていた妖精が居たのだが、その3人は他の庭園迷宮生まれの妖精とは違い個性を持っていた。
1人ずつ書いて行こうと思う。
まず1人目は、ライラックちゃん。庭園迷宮生まれの妖精たちから”ライちゃん”と呼ばれているマイペースな子だ。
間延びした口調で私がした複数個の質問を回答してくれたので詳しいことは分かっている。
まず最初にライちゃんは転生者だ。けれど、庭園迷宮にいた際に転んで頭を打って曖昧になってしまっているみたいで、残されているのは知識だけみたい。怪我がないか確認はしたけれど、痣になっているぐらいで何ともなかった。
そして、ライちゃんの能力だが・・・働きづめのメイド隊と警備隊にとってとてもうれしい能力だった。その能力の名前は”休む程度の能力”。
試しに私に使ってもらったところ、ライちゃんからの誘いに乗ってゆっくりと休憩でき、寝ても取れなかった疲れがスッキリとなくなっていた。
けれど、本人はこの能力のせいで無気力になってしまって、自発的には動いてくれないけれどしっかりとお願いすれば頑張って動いてくれる。
そんなライちゃんは、ルージュがどうしてもと頼み込んできたので、ルージュ隊に配属になった。
後で様子を見に行ったら、ルージュがライちゃんに優しく料理の仕方を教えていた。
さて2人目は、マグノリアちゃん。ライちゃんと同じように愛称があるようで、”マグちゃん”と呼ばれて庭園妖精たちに懐かれていた。
この子も前世があるみたいだけれど、東方projectは良く知らないらしい。なんでも前世は社畜でそう言った娯楽を見る・やる事すらできないほどで、最後は通り魔に刺されて、いつの間にかこの世界に転生していたとのこと。
ちなみに、彼女の妖精の羽は珍しくドラゴンのような力強い濃い緑色の・・・どちらかと言えば翼と言うべきものだった。ブラウが教えてくれたのだが、妖精はときどき持っている程度の能力によって羽の形状が変わるとのことで、私もマグちゃんも納得してた。
そんなマグちゃんの程度の能力は”ブレスを吐ける程度の能力”。
マグちゃんはこの能力を自力でよく調べており、吐けるブレスの種類はいろいろあり、火、水、風、土、光、闇のブレスを発生させることができる。
けれど、吐けるブレスは1種類。無理に2種類以上吐くと喉を大怪我して、5日ぐらい安静にする必要があるみたい。
ブレスを吐けるということで、ルージュとブラウが目を光らせたが、ちょうど妖精メイドたちの部屋割りを終わったアンナが戻ってくると・・・マグちゃんはアンナに詰め寄って、アンナを一瞬でかわいくしてしまった。
直後、アンナは悲鳴と共に「アタシにこういうのは似合わないっす~!」と逃げてしまった。多分しばらくは使い物にならなそう・・・。
ちなみにその後、マグちゃんの強い要望でアンナ隊に所属することになった。ごめん、アンナ。慣れてくれ。
最後の3人目は、ネペタちゃん。愛称はないみたいだけれど庭園妖精たちも顔は知っていたみたいで。手を振ったりしていた。
この子は、完全に前世が無い純粋なこの世界生まれの妖精で、少し臆病で表情が次々変わるとても可愛い子だ。
そんな彼女も能力を持っているみたいで、その能力の名前は”塵を集める程度の能力”。発動条件はとても細かくて、やれることも集める事だけなのだが、ブラウがとてもうれしそうに目を輝かせていた。多分、掃除に役立つなと考えてるね。
ちなみに、ネペタちゃんが自分の衣服と支給されたメイド服に仕込んだ袋は、様々な粉末が入っていて、砂や庭園迷宮さんの花粉と粉末、阿下喜の果てには胡椒やトウガラシの粉まで入っていた。調味料が出てきた途端、ルージュがひっくり返ったけれど、これはネペタちゃんの持ち物なので諦めてもらった。ごめんね?こんどアンナに頼んで多めに買ってきてもらうから・・・。
あとそれと、臆病ということもあり・・・最初は私の背後に隠れてアンナとルージュ、ブラウを警戒していたのだけれど・・・やがてブラウが、ネペタちゃんの警戒をゆっくりと解いて肩車やおんぶをして、あっという間に懐かれていた。
その為、ネペタちゃんはそのままブラウ隊にお任せすることになった。
こうして、庭園妖精たちを
明日からの仕事が楽しみだ。
=====
転生93年と2か月9日目(水曜日、日中:晴、夜中:晴・新月)
倉庫と書庫が収められているそこには、大量のアンデッドが跋扈しており一歩足を踏み入れただけで間違いなく袋叩きに合うだろう。庭園迷宮との違いは、それだけではなく暗さもある。いっそのこと火を放って焼き討ちにした方が早いのだが、問題はその書庫だ。
その書庫は、間違いなくヴワル魔法図書館の前身だろう。というか、誰がどう考えてもそうとしか考えられない。
スカーレット卿の手紙には続きがあり、すでにあの書庫には貴重な魔術の書やスカーレット家にかかわる重要な本などもあり、使わないけれどできれば失われないように気を付けてほしいと書いてあった。マジふざけんな、なんでそんな大切なものがあるところを忘れてんだ。100年の忠義を投げ捨てるぞこの野郎。
ともかく、焼き払うことのできない地下迷宮。
蔓延るアンデッドたちからこれを取り返すには、やっぱり戦うしかないよね。ということで、レミリアお嬢様の号令のもと、
しばらくの間忙しくなりそうだ。
=====
転生93年と2か月10日目(木曜日、日中:晴、夜中:晴・三日月)
初戦は警備隊とメイド隊の連合がアンデッドの連中を圧倒・・・できずに、ジリジリと押し返されてしまった。その原因は、単純に数の差だ。
警備隊からは
途中から「エ"イ"メ"エ"ェェェェェン!!」とすっごい狂気を感じる笑顔で大暴れしていた。言っておくけれどそれ、アナタはやられる側だから。それに、途中からアンデッドたちがドン引きしていたから。
けれど、不老不死で大暴れしていたアンナも、地道にアンデッドを倒していた私たちも結局のところ”体力の限界”というものがある。
対してアンデッドはすでに死んだ存在、体力はもちろん無尽蔵だろう。(よくは知らないけれど)けれど、実際・・・私たちは体力の限界を迎えてアンデッドたちから押し出されるように撤退するしかなかった。
その際に、アンナが無理してでも突撃しようとしたので、仕方ないのでマグちゃんに頼んで意識を落として無理やりに休んでもらうことにした。
意識を落とされたアンナはオリビアちゃんとマグちゃんがメイド休憩室に連れて行ったけれど、私とルージュとブラウはまだやることもあり、疲れた体を引きずって、何とかその日の仕事を終わらせることができた。
しばらく、疲れた体を引きずる必要がありそうだから上手く休まないとなぁ・・・。
妖精メイドの応募、誠にありがとうございます!
今後、また応募企画を考えると思いますので、その際もまたよろしくお願いいたします!
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☆ 92冊目 65~69ページ
転生93年と2か月11日目(金曜日、日中:晴、夜中:大雨・多分半月)
今日はレミリアお嬢様のお散歩の日・・・ではあったのだけれど、レミリアお嬢様は「今は地下室を取り返すことが先決よ」というお言葉と共に、自分も戦うために
今日の戦力は、レミリアお嬢様、私、アンナ、狼女たち4名だ。さすがに昨日と同じ戦力を出してしまうと、
眠気を殺す私をよそに、作戦は開始されアンナが鬼気迫る表情で一番槍を手にしていた。
昨日、目を覚まし冷静さを取り戻してアンナにどうして無理しても突撃しようとしたのか、事情を聴いたのだが、実はアンナはアンデッドに両親を殺されてしまったらしい。
アンナの生まれは片田舎の村で、父親は教会の神父兼アンデッドハンターらしく、母親はそんな教会の普通のシスターだったらしい。
そんなアンナは父親の背中に憧れて、アンデッドハンターになろうと努力し、両親もそれを応援したのだが・・・とある日、その村に大量のアンデッドが襲撃し・・・父親はその中で果敢に戦って戦死。母親も、逃げている最中に自分を庇って謎のスケルトンに殺されてしまった、とのことだ。
そのせいで、アンナにとってアンデッドは親の仇で・・・見ると頭に血が上って冷静に物事を考えられなくなるようだ。
そう言った複雑な事情があるのは、理解したのだけれど・・・今のアンナは
そう言ったこともあってか、今日のアンナはハイテンションにはならずに次々とアンデッドを切り裂き、脚で飛ばしたナイフで刺殺していた。
昨日の荒々しい戦い方はどこへやら、踊りと見間違うほどに静かで美しい戦い方は、見るものすべてを魅了していた。私でさえも、ついうっかり見惚れていたのである。
・・・まあ、そんな隙があれば当然
何とか気付けた私は、レミリアお嬢様を体当たりで突き飛ばし、来るであろう痛みをこらえるために目をギュッと瞑った。けれど、来ると思っていた痛みは来ずにアンナの苦しそうな声だけが聞こえてきた。
目を開けると、レミリアお嬢様を庇った私を、さらにアンナが庇う形で割り込み、アンナは心臓にナイフを突き立てられていた。その突き立てた相手は、暗殺者のスケルトン。そしてアンナは、そのスケルトンを見るなり、昨日も見せた獰猛な笑みを浮かべ、そのままそのアンデッドの頭を素手でもぎ取ってしまった。もぎ取る前に「私の母親の仇だッ!」と叫んでいたので、あの暗殺者のスケルトンがアンナの復讐の相手だったのだろう。仇を取ったアンナはそのまま止まらずに廊下に存在してたアンデッドたちを一気に殲滅してしまった。
・・・そして、心臓にナイフを刺されそのうえで激しく動き回ったからか、アンナは倒れて意識を失ってしまった。
けれど、アンナの獅子奮迅の活躍によって
ちなみに、アンナが倒れた時しばらくは意識があったのだけれど、その時にレミリアお嬢様がおつかれさまと声をかけて、気絶したアンナを運んでいた。そしてそんなアンナは、少しだけ付き物が落ちたような表情だった。
=====
転生93年と2か月12日目(土曜日、日中:晴、夜中:晴・満月)
昨日はアンナが獅子奮迅の活躍で、地下室の廊下を制圧することに成功した。
ここから先は第2段階。まずは、倉庫の制圧を優先するようで、今日はフランお嬢様が張り切っていらっしゃった。
今日も私は参戦しようとしたものの、レミリアお嬢様にお叱りを受けてしまい休みを取ることに・・・まあ、一昨日も参戦していたし、実のところ眠気で上手く動けていなかったということもあって、遠慮なく休ませてもらうことにした。
休みを取るために私がしたことは、中庭に出てオリビアちゃんの配下である大毛玉を枕にお昼寝*1である。
あれがまた心地が良いのである。満天の星空のもとでライちゃんに能力を使ってもらい、大毛玉を枕に昼寝を・・・と思ったら、庭園迷宮から一体の巨大なドラゴンが現れ、怒りのままに
ドラゴンを追いかけるように
土壇場で進化して逆襲って、ポ○モンかなにか!?とにかく、迎撃をと思った瞬間・・・ドラゴンが私とライちゃん、
せめて、ライちゃんと
その妖精は、私たちを一見すると・・・私に向けて、にこりと笑みを浮かべ、そのままドラゴンと戦い始めた。侵入者ではあるのだが、私たちの味方ではあるためドラゴン討伐を行うことになり、戦闘が始まった。
庭園迷宮から出て来たドラゴンは、ある程度抵抗を続けていたものの
ドラゴンの死体は、そのままうろこを剥いで、お肉は解体し、腐りやすい内臓は狼たちの餌に、骨はとりあえず奪還が成功した倉庫にしまうことになった。
そして、問題の侵入者である謎の妖精だったのだが、ルージュとブラウの知り合いで・・・3人で話に花を咲かせていた。あの二人の知り合いというのなら、警戒もあまり必要ないだろうということで、レミリアお嬢様が応接室に招き詳しい話を聞くことになった。
彼女はかつてのルージュとブラウと同じように私とよく似た人の所にいたけれど、98年前に行方不明になったルージュとブラウを探しに旅してきたとのことだ。あと2年探して見つからなかったらあきらめて帰るところだったと笑いながら言っていたけれど・・・友達がいるならきちんと連絡しないと、ね?ルージュ、ブラウ。
ともかく、彼女はルージュとブラウを探しに来たということは、二人とはここでお別れなのだろうか・・・?なんて考えていると、彼女は一転して驚くべきことを口にした、私も名前が欲しいのでここでメイドとして雇ってくれと。なんて理由で就職したんだ!?まぁ、人でも少ないし、彼女の強さを見て何とか引き込みたいと考えていたレミリアお嬢様がずっこけていたから、雇うことにはなった。
・・・ちなみに彼女に”ノワール”の名前を与えて、とりあえず家事能力を見たのだけれど・・・・・・・・・。
まあ、うん。あれだけ酷かったアンナが、いまじゃ完璧にできるから・・・ノワールも頑張れば、掃除も料理もできると思うよ?
それに、整頓は完璧だからね・・・気を落とさないで?
=====
転生93年と2か月13日目(日曜日、日中:雨、夜中:雷雨・半月)
パチュリーが目を覚ました。助けてから、3~4日で目を覚ましたので逆に驚いてしまった。
目を覚ましたパチュリーは混乱してパニックになっていたのだけれど、ライちゃんの能力のおかげで落ち着きを取り戻し、そのままもう一眠りしてもらった。
なんだかライちゃんがあちらこちらで活躍していて過労死してしまいそうだ・・・ライちゃんには多めに休みを与えておこう。
ともかく、パチュリーが目を覚ましたことはうれしい事だ。今は混乱していたので眠らせたから詳しい話は聞けないけれど、彼女が冷静に話ができるようになってから聞くことにしよう。
さて、
簡単に言えば、私の能力を使って書庫においてあるものを格納、そして書庫を狭くしてアンデッドたちを集めた後に、マグちゃんの炎ブレスで一掃したのだ。
書庫の壁こそ、少しだけ焦げてしまったものの、こんなに簡単に終わったことにフランお嬢様とルージュとブラウは唖然としていた。ちなみに、その方法を考えたのはノワールだ。
これで、地下室は地下牢を残してすべて攻略・・・地下牢攻略も簡単なものになるかもしれない。
明日になれば、パチュリーも落ち着いて話が(文字が書きかけで途切れている
=====
転生93年と2か月14日目(月曜日、日中:晴、夜中:晴・新月)
ていえんめいきゅう。どらごん。しゅうげき。
れみりあさまの、ぺっと。
つかれた。ねる。
追記
庭園迷宮からまたドラゴンが襲い掛かってきた。その為、また
レミリアお嬢様も、昨日今日とドラゴンが襲撃したことにお怒りだったようで、不機嫌なオーラが駄々洩れで、怒りのまま動いていたからか、執務室に飾ってあるはずの本物のグングニルを持ち出してきたのだ。
あまりの強者のオーラ、そして怒りのオーラにグングニルが共鳴して一種の神と見間違うぐらい神々しいお姿のレミリアお嬢様にそのドラゴンは屈服したというわけである。
ちなみにだけれど、この日記を書いた時の私は能力の使い過ぎで疲れていたので、割と訳の分からない文面になっている気がする・・・。
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☆ 92冊目 70~73ページ
転生93年と2ヶ月15日目(火曜日、日中:晴れ、夜中:晴れ・三日月)
最近ドラゴンの襲撃が連続したけれど、ようやく
簡単に書き記すなら、地下牢獄に囚われてそのまま忘れ去られていた吸血鬼が死の間際に自分の遺体を魔法陣の触媒にしてほぼ無限にアンデッドを召喚していただけだった。遺体は火葬し、おそらくあまり使わないと思うので地下牢獄自体は封印することになった。
さて、昨日レミリアお嬢様がドラゴンをペットにしていたのだけれど、ノワールがドラゴンには詳しいらしく調べてもらった。結果は一日で判明したらしく、今日の御前報告会で説明してもらうことにした。
今回、レミリアお嬢様がペットにして・・・ノワールが調べた結果、あのドラゴンは庭園迷宮で生まれた新種のドラゴンらしく、少しだけヤバい目をしながらそのドラゴン・・・フランお嬢様が名付けたのだが、”ユーリ”を見ていた。
ちなみにそのユーリなのだけれど屈服させたレミリアお嬢様ではなく、フランお嬢様に懐いておりメイドの手を借りずにフランお嬢様の手ずから育てている。
新種のドラゴンであるユーリは、四足型一対翼一対巻き角のドラゴンで複数の鉱石や宝石含んだ岩石のうろこを持ちブレスも土属性のブレスを吐く。食性は雑食だが、どちらかと言えば果物や野菜を好むみたいだ。
定期的にうろこ(複数の鉱石や宝石を含んだ岩)が落ちるのでフランお嬢様には処分せずに貯めることを伝えた。フランお嬢様は最初「なんで?」とクビをかしげていたのだけれど、ユーリのうろこに鉄や金、銅などの鉱石の成分が含まれていて、うまい事すれば
まあ、鉱石を含んだ岩を集めても残念なことに加工技術を持っていない。ためておく分にはいいのだろうけれど、使い道が無ければ結局は宝の持ち腐れなのでどうにかして加工技術を手に入れなければならなくなった。
それと、ノワールには新しいメイド隊を率いてもらうことにした。ノワールが率いてもらうメイド隊の名前は、運搬メイド隊。
レミリアお嬢様の思い付きで急ではあったのだけれど、レミリアお嬢様がおっしゃった「各メイド隊でそれぞれの荷物を運ぶより、一つのメイド隊が担当して運んだ方が仕事が楽になるんじゃないかしら。」の言葉に納得をせざるを得なかった。
メイド隊からも反対意見は出ずにノワールもやる気だったようで、その役割を素直に受け取っていた。彼女のもとにつく人員は今の状態で人数がカツカツなのであまり割けなかったのだけれど、自分から手伝うことを志願した毛玉たちが率先して受け持ってくれるようになった。多分、その毛玉たちが毛玉メイドに進化(?)するのも時間の問題だろう。
毛玉メイドになったときのノワールの顔が今からでも思い浮かぶようだ・・・。
ちなみにパチュリーはいまだにこちらを警戒しており、運んだ食事にも手を付けてくれなかった。
ルージュは少し寂しそうにしながら、冷え切った食事を食べていた。仕方ないとはいえ、少しだけ複雑な気分だ。
=====
転生93年と2か月16日目(水曜日、日中:晴、夜中:晴・半月)
さっそくノワールの運搬メイド隊の毛玉たちのうち30匹が、毛玉メイドとなっていた。
いくらなんでも速すぎるとは思うだろうけれど、その30匹は元々ルージュやブラウの所でお手伝いをしていた個体だった。それもあって、運搬メイド隊になって一日で毛玉メイドに進化したのだろう。ちなみにノワールの目の前で毛玉メイドになったのだが・・・ノワールが冷静に分析した結果、毛玉が毛玉メイドになった理由が判明した。
ノワールが言うに、”毛玉が毛玉メイドになる”きっかけとなっているのはオリビアちゃんの『毛玉を自由に動かせる程度の能力』で、”毛玉が毛玉メイドになる”理由は毛玉自体の魔力が関係しているようだ。
オリビアちゃんの『毛玉を自由に動かせる程度の能力』で、毛玉たちにはある一定量の魔力が変化し、毛玉にとっての脳替わりになる。それのおかげで、普段ならマヌケ面風に乗って流れるだけの毛玉が表情を変えたり、体を動かすようになって、自主的にメイド隊の手伝いをすることにより、その脳替わりとなった魔力を使い込めばこむほど、魔力の質が高まり、やがて魔力が脳替わりの魔力と同じように、魔力が人の体のようなものに変化するらしい。
これが、毛玉が毛玉メイドになる理由のようだ。どういうわけか、困惑しているとノワールが毛玉についての補足をいれてくれた。
元々毛玉というのが、空気中に漂う魔力が集まって生まれた存在で、魔力の変化を簡単に受けやすいらしく、例えば火属性の魔力が集まりやすい場所には耐火性の毛玉が生まれるし、闇属性の魔力が集まりやすい場所では黒くて夜行性の毛玉が生まれるとのことだ。
話を戻すと、ノワールのおかげで毛玉が毛玉メイドになる理由は分かったのだが・・・これはさすがにレミリアお嬢様には伝えずにメイド隊での秘密にすることにした。
最初ノワールは首をかしげていたのだけれど、ルージュとブラウが小さな声で説明してくれたおかげで納得してくれた。
それにしても、毛玉が人型化する原因がそんな理由があった何て知りもしなかったな・・・。
今日もパチュリーは警戒しっぱなしであった。窓の外から逃げようとしていたのだけれど、残念ながらパチュリーの部屋の窓からは庭園迷宮直結の為、庭園迷宮の屈強なミノタウロスが見えてしまったのだろう。偶然、部屋に掃除に来たネペタちゃんに「あ、あれは・・・なに?」と尋ねていたみたいだ。
その一件があったからか、パチュリーの警戒心も少しだけ薄れて食事を食べてくれるようになった。これにはルージュもニッコリと笑顔を浮かべて嬉しそうにしていた。
=====
転生93年と2か月17日目(木曜日、日中:曇り、夜中:雨・多分満月)
日に日にパチュリーの警戒心が薄れて、つい昨日はルージュの作った食事を食べてくれるようになったのもあり、パチュリーの怪我はほとんどと言っていいほど治った。
パチュリー本人も、それには驚いていて・・・そして、私たちが敵ではないことを分かってくれたのか、警戒をしなくなった。
その為、ようやくパチュリーに何があったのかを聞くことができた。
まず、私の知る
基本的に本があれば幸せという引きこもりの読書家で、とある作品ではロケットを作れるほどの頭脳を持つ。能力も、主に魔法に関連した程度の能力を保有しているけれど、最終的には『魔法を使う程度の能力』に落ち着いた・・・はずだ。正直、私の記憶もあいまいなため自信はない。
さて、ここまでは、私が知っているパチュリーだが・・・残念なことに、私の生きているこの世界ではの些細な違いが存在する。
この世界のパチュリーは、何と喘息を患っていなかった。正確には、患っていたけれど自分で生活を見直して治したようだ。しかしその分、魔力は他の魔女や魔法使いと比べて平均より少ないらしく、魔道具化した本が無ければまともに魔法を行使できないらしい。
その為、この世界のパチュリーは原作と比べてアウトドアに積極的で、
さて、話を戻そう。
そんな彼女が、どうしてあの場所で死にかけていたのかというと、案の定アンナの古巣・・・対化け物討伐組織の手によるものだった。正確には対化け物討伐組織のうちの一つ・・・”魔女狩り課”に追われて殺されかけたらしい。
秘匿されていたはずの家に魔女狩り課の人間が大勢押しかけて・・・母親が惨殺され、パチュリーも拷問を受けながらもなけなしの魔力を使って死に物狂いで転移魔法を使ってあの森へ、そしてレミリアお嬢様に拾われて私が治療したという流れらしい。
話を聞いたレミリアお嬢様が、一瞬だけ対化け物討伐組織へ怒りをあらわにしていたけれど・・・深呼吸をして、自分自身を落ち着けていらっしゃった。「人間は・・・なろうと思えば、化け物より醜くなれるとは。」と小さくつぶやいていたのがやけに印象に残った。
目を覚ましたパチュリーの処遇なのだが・・・家も燃やされ、私物も家と共に消えて、今来ている服以外何も持っていないパチュリーを、このまま放り投げることをレミリアお嬢様が嫌ったので、この
パチュリーは、最初こそ遠慮がちに拒否していたものの・・・レミリアお嬢様の説得により、最後には悲しみの涙を流しながら居候になることを受け入れていた。
こうして、パチュリーはこの
・・・・・・さて、パチュリーが
1人は
問題は、
もし・・・私という存在が、
存在しているのか、
もし、もし願うのであれば・・・十六夜
いきなりですが、アンケートを募集します。
アンケートの中で一番から三番の多い順から投稿させていただきます!
追記
こちらのアンケートは終了しました!
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△ ヴワル魔法図書館の完成
アイディアが降ってこなかったんじゃ・・・すまぬぅ・・・すまぬぅ・・・
スカーレット卿が・・・というより、スカーレット家の歴代当主やその血族がご趣味で集めた魔術本や、スカーレット家にまつわる書物、売れば大金が見込めそうなほどの貴重な本が収納されている場所だ。
けれど、
ともかく、そんなヴワル魔法図書館だけれど、どうやら近いうちに完成するみたいだ。
=====
ことの始まりは、ある日のパチュリーのため息から始まった。
傷がほとんど治り、一人で歩いても問題なくなったパチュリーだったのだけれども・・・ついに我慢の限界を迎えたのだ。
「レミィ、私もそろそろ働きたいわ。」
「えっ、急にどうしたのよパチェ・・・?仕事ならちゃんと与えてるじゃない、何が不満なのよ。」
「あのね、レミィ・・・いくらなんでも、あなたの執務室で、ただ本を読むだけが仕事というはずがないのよッ!!」
どこから出しているのか疑うほど大きな声を出しパチュリーがレミリアお嬢様の執務机を叩いた。
「ふしゅー」と鼻息を荒くしてレミリアお嬢様に詰め寄るパチュリー・・・詰められているレミリアお嬢様は「ちっ、バレちゃったわ。」と言わんばかりの表情を浮かべていた。(ちなみに、この二人は相当相性がいいのか、もうすでに愛称を呼び合う間柄みたい。)
「しょ、しょうがないじゃない・・・実際、アナタだってその本・・・・えーっと、メイド長。なんて魔本だっけ?」
「
「そうそう、そう言う名前だったわね。それでパチェ、その
「ぐぅ・・・」
ぐうの音が出た。
そう、先ほどパチュリーがローテーブルに放り投げた魔本は、私が管理・保管していたあの厄ネタ満載な魔導書だ。ブラウが言うに、形状記憶の魔法が施された全世界の魔法・魔術の詳細が記載されており、世界に一冊しかない都市伝説として噂されていた魔本、そして
「いや・・・確かに、
「でもパチェ・・・アナタ、体力が人間並だからメイド隊にも警備隊にも入れないじゃない。」
「ぐぅぅぅぅぅ。」
・・・。なんでも知ってるブラウさんが言うに、普通の魔女や魔法使いなら、さすがに本物の人外には劣るものの、人間離れした身体能力や体力を持っているものらしい。けれど、パチュリーは
そんな状態では、ただでさえ人外な身体能力ぞろいのメイド隊と警備隊について行けるわけでもなく、私も
「け、怪我は一昨日に治ったから・・・だから、おねが―――」
「あっそう言えばお嬢様、昨日とあるメイド*2がお部屋で痛みに悶えるパチュリーを見たという話が・・・」
「ぐぬぬぬぬぬ・・・」
「なにが”ぐぬぬ”よ、ちゃんと安静にしてなさいよ・・・。」
強気にレミリアお嬢様に直談判していたパチュリーだけれど、段々と小さくなってゆく。
[執務室のドアのノック音]
『レミリアお嬢様~、アンナとマグちゃ・・・マグノリアっス!入室してもいいっすか~?』
「・・・いいわよ、入ってきなさい。」
「失礼するっす~」
「し、失礼しま~す。」
レミリアお嬢様とパチュリーの直談判の途中だったが、二人がレミリアお嬢様から直接の仕事を終えてレミリアお嬢様の執務室に入ってくる。見れば、随分と埃だらけでマグちゃんに関しては少しだけ疲れが見えている。(アンナは余裕そうにしている)
「例の書庫について、調査が終わったっすよ~。詳しいことは、マグノリアが報告するっす~。」
「は、はい!報告させていただきま~す!」
「よろしい、お願いするわ。」
「で、では・・・調査報告をしま~す。
そして~、肝心の本については、種類が別々に棚に収められていて~、なにがなんだか分からない状態で~す。適当に棚に入れたって感じで~した。整理整頓には時間がかかりそうで~す。それに~、長年放置されていた影響なのか、埃塗れでブラウさんたち清掃メイド隊が頭を抱えていましたよ~。以上、報告を終わりま~す!」
マグちゃんが語尾を伸ばしながらも、丁寧に報告をしてくれた。
それを聞いたレミリアお嬢様は満足そうに頷いておられ、
「・・・なるほど。アンナ、アナタの所のメイド隊で整理整頓はできるかしら?」
「やれと命令されればやりますけれど、上手くいく気がしないっす。」
「あら?」
アンナは苦笑いをしつつ、そう言う。
アンナ隊のメイドたちは夜の吸血鬼メイドたちを除けば、教育中でまだ頭の弱い妖精メイドが大半だ。ブラウの清掃メイド隊が目を光らせているとはいえ、イタズラ好きが多くてすぐに散らかすことが多い。
そうレミリアお嬢様に伝えると「うげっ」という表情を浮かべた。
「確かにそれは困るわね。だとすると・・・さすがにブラウ隊に仕事を任せるわけにもねぇ。」
「はい、ただでさえブラウ隊は広範囲の清掃を担当しているので・・・書庫もとなると暴動が起きかねないかと。」
・・・レミリアお嬢様がうんうんとうなりながら解決策を考えていると、パチュリーがソワソワとしているのを見かける。目をキラキラとさせて、気付いてほしいようだ。
「・・・パチェ、そのじゃっかん鬱陶しい動きをやめて。」
「書庫の整理と清掃、私に任せてくれないかしら!?」
「そんなに大きな声を出さなくても聞こえるわよ・・・そうねぇ。」
パチュリーの提案にレミリアお嬢様が静かに長考し始める。
確かにパチュリーなら今割り振られている仕事が
「・・・ダメかしら?」
「そうね・・・パチェがメイド隊と警備隊の手を借りずに、書庫を管理する人手を確保できるなら考えてあげ―――」
「―――
レミリアお嬢様が諦めてもらおうと、難しい条件を言った途端・・・食い気味にパチュリーがレミリアお嬢様の言葉を遮る。
無自覚なのだろうが、パチュリーから魔力が漏れておりどこか威圧感すら感じる。対するレミリアお嬢様も咄嗟のことで驚いたものの、すぐさま自身の魔力を溢れさせ、パチュリーが漏らしている魔力に対抗し始めた。
「パチェ・・・いや、パチュリー・ノーレッジ。キミはその言葉の意味、分からないというほど愚かではないはずだ。」
「ええ、レミィ。悪魔からの血筋であり、かの吸血鬼の始祖とも呼ばれる”ヴラド三世”の子孫たるスカーレット家の名前を用いた契約。破ればもちろん、私が死ぬわね。けれど、私は言うわ。―――貴女の家名を使ってでも、その約束を守ると言える?」
「クククッ・・・こんなことに使うなんて正気?」
目を細め、瞳を光らせ、威厳のある言葉で呆れ気味にレミリアお嬢様が訪ねる。
けれど、パチュリーの目は正気だ。何なら、真剣な眼差しで・・・・あ、いや、ダメそうだ。よく見たら足が小鹿のように震えてる。ダメって言われそうだから咄嗟に言ったっぽいなあれ。でも言った手前引き下がれないから度胸のみでカリスマスイッチの入ったレミリアお嬢様と対峙してる。
「・・・ええ、貴女は”私が
あれ、コレ・・・パチュリーってもしかしてレミリアお嬢様の事
何て私がふざけた思考をしていると・・・
「・・・ふふっ、そうね。家名を使ってまで誓う必要はないわ。そのかわり、約束通りメイド隊と警備隊の人手を使わずに・・・自分だけで、書庫を整理整頓する人手を確保すること。いいわね?」
「えぇ・・・そこは、家名を使って約束する流れでしょう?」
「そんなしょうもない事にいちいち家名を使って約束してたら、ご先祖様に叱られてしまうわ。」
=====
そんなこんなで、ヴワル魔法図書館は近いうちにできそうなのである。
ちなみに今日は、手伝いはしないけれどまだ怪我が完治していないため私が監視役としてパチュリーについてゆき、書庫の広間に居る。お仕事はアンナに押し付けて来たので多分大丈夫だろう。*4
「ふぅー・・・とりあえず、広間の掃除は完了ね。」
「お疲れ様パチュリー、本当に手伝わなくてよかったのかな?」
「いいの、いいの。私がレミィと約束したことなんだし、私が自分でやるわよ。」
パッパっと貸し出したメイド服からほこりを払いながら、パチュリーはテキパキと広間の整頓を進める。
本当なら手伝いたいのだけれど、レミリアお嬢様とパチュリーがした約束を破らせるわけにもいかないので、グッとこらえてパチュリーの作業を見守る。
「さて・・・広間の掃除はできたから、そろそろ人手を増やすわ。」
「・・・どうやって?」
「私は魔女よ、
なんて考えているとパチュリーは
「―――闇より出でて負を司るものどもよ。夜の魔力に導かれ、我は汝らと契約を求めん。満たせ、廻れ、そして爆ぜよ。我が声に従い、我が命を守り、我が願いと望みを叶えんために、その姿を現せ!」
血のように赤い光が、薄暗い書庫にあふれて、魔力の流れにより室内にもかかわらず暴風が吹き荒れる。パチュリーは何もないように平然と立っているけれど、私は飛ばされないようにするので精一杯だ。
やがて、光が視界を潰し、何も見えなくなった・・・。
・・・光が段々と収まり始め、魔力による暴風も収まり始める。今ので広間周辺の埃が舞い上がり・・・
「ごほっごほっ、うっ!? 傷がっ・・・・・・」
「このおバカ!ほら、はやく傷口を見せなさいッ!!」
「あっちょっと、や、やさしくしてぇ~・・・」
案の定、パチュリーがむせてそのまま傷が広がってしまった。二度とこんなことをさせないためにもわざと乱暴に扱い、メイド服を脱がせる。
その間にも光は段々と収まり、その光の中に一人の少女がというか容姿的に”小悪魔ちゃん”が立っているのが見えたが、
「はーい、木端悪魔の”グレムリン”。召喚に応じ・・・って、どういう状況!?」
「ちょっとそこの悪魔!召喚されてすぐで申し訳ないけれど今すぐ治療を手伝いなさい!!とりあえずこのおバカ魔女を抑えてッ!!」
「は、はい~!!」
「あ・・・あの大丈夫だから放し、こふっ!!(吐血)」
「大丈夫じゃないじゃないッ!あぁ、もう暴れないでっ!!」
後にパチュリーの処置が終わり、ゆっくりと自己紹介を無事に終えた小悪魔はポツリと独り言をこぼした。
「召喚に応じたの・・・早まったかなぁ・・・・・・。」
少しだけ苦笑いを浮かべて、小悪魔は
次回は、レミリアお嬢様とメイド長のイチャイチャです。
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□ 綺麗で優しい私のメイド長
今回の視点はレミリアお嬢様の視点でございます!
ほんの休日の一コマ。小説ではそんな風に描かれるであろう、良く晴れた満月の昇る空。その月が照らす私の執務室で私はメイド長と抱き合っていた。ハレンチな意味ではなく、普通にハグだ。
「ふふっ、レミリア様ったら・・・」
「今日ぐらいはイイじゃない。」
ぶぅ。と少しだけ拗ねてみると、困ったような、嬉しそうな笑みを浮かべて私の頭を撫でるメイド長。100年たって、人も増えて来たけれど・・・いまだ彼女は私の専属メイドだ。それに、親代わりでもある。こうして甘えたってかまわないはずだ。流石に、フランに見られたら恥ずかしいけれど・・・フランは最近、庭園迷宮へと足を運んでいるのでしばらくは執務室には来ないだろう。
ハグをしあうメイド長の胸に顔をうずめると、メイド長の心臓の鼓動が聞こえてくる。ずっと変わらない温かさと・・・どこか安心するほど一定な心臓の鼓動。
ほんのりと、ケーキのようなクッキーのような甘いお菓子の優しくておなかのすく匂い。
私より少し大きな手が、頭を撫でれば・・・安心感と共に少しの眠気が襲ってくる。
「ねえ、メイド長。」
「・・・はい、レミリアお嬢様・・・どうかしましたか? 」
「いつも、ありがとう。」
ときどき、こうして感謝の言葉を伝えるようにはしている。
なにせ、100年だ。100年間も、私の専属メイドをしてくれている。ずっと変わらない忠誠を、優しさをくれている。
「毎日、私たちの為に頑張ってくれて、ありがとう。」
「レミリアお嬢様・・・こちらこそ、ありがとうございます。」
「へっ? わ、私はメイド長に感謝されるようなことはしてないわよ?」
メイド長が私に感謝の言葉を述べて、私は少しだけ困惑してしまう。
なにせ、いつも困らせるようなことしかしていないはずだからである。我が儘を言ったり、変な落としモノを拾ったり、思い付きでやってメイド長の仕事を増やしてしまったことすらある。
「いえ・・・私は、レミリアお嬢様から毎日、”笑顔”という贈り物をもらっておりますから。」
「わ、私・・・そんなに笑ってた?」
「ええ、それはもう可愛らしい笑顔を。」
「~~~っ。」
そう言われると少し恥ずかしい、正直私の笑顔はフランからどちらかというと「不敵な笑み」か「怖い笑み」のどっちかしかないと言われているから、普段どんな笑顔を浮かべているのか分からない・・・それに、私自身
「ふ、フランの方が・・・かわいいと思うけれど?」
「それはそれ、これはこれですね。フラン様にはフラン様の可愛さがありますが、レミリアお嬢様はレミリアお嬢様の可愛さをお持ちですので。」
「~~~っ!」
顔が赤くなって、リンゴみたいになっているのが自分でもわかる。
その顔をメイド長に見られるのがなんとなく恥ずかしいので、メイド長の胸にぐりぐりと頭を押し付けて隠す。
「メイド長のばか。」
「うふふっ、恥ずかしがるレミリアお嬢様も愛くるしゅうございます。」
「むぅ~~~・・・」
メイド長に手玉を取られているようで、なんだか少しだけ複雑な気分だ。
ふと見上げると傷一つなく、細くきれいなメイド長の首筋が目に入る。普段は青空に似た色の髪に隠されているその首が、どうしようもなく欲情的で・・・ふと思ってしまう。
(噛みついて、血を吸ってみたい。)
どれほど、
愛しい人の、愛しい血液。メイド長は、許してくれるだろうか。
ゆっくりと口を開き、彼女の首へと牙を―――
「―――ダメですよ?レミリアお嬢様。」
パッと・・・メイド長の言葉で正気に戻り、首筋から離れる。
メイド長の視線を感じて、目線を合わせると、ゴールドオーカーの瞳がナイフのように細くなった目からこちらを見ている。
少しだけ怖い、けれどそれよりも優しさの方が感じ取れる・・・そんな瞳が、こちらを見ている。瞳に映る私は、だらしなく口を開け、牙をむき出しにして、瞳を煌々と光らせていた。
吸血鬼としては、正しい姿・・・けれど、メイド長の前では見せてはいけない愚かで醜い姿。
「ごっ・・・ごめんなさ―――」
ふと、ふわりと。メイド長の長髪と、甘いお菓子の匂いが広がった。
謝罪の言葉をふさぐように、唇には柔らかい感触があり・・・視界いっぱいに、メイド長の妖艶で美しい顔が広がっている。
「・・・今は、これでご容赦を。では、私は仕事に戻りますので。レミリアお嬢様、午後のお仕事を再開なさってくださいね?」
「あ、うん。ガンバリマス。」
メイド長が離れて、そそくさと執務室から出ていこうとする。が、何かを思い出したのかメイド長は振り返ると・・・
「今のキスは、どうかご内密に。」
妖しい笑みを浮かべて、人差し指を口元にあて、そして今度こそ退出していった。
キス。kiss。ちゅー。
触れただけの、やさしいキス。
・・・・・・・・・・。
「ッ!!!??」
ようやく、メイド長にされたイタズラを理解し、顔どころか体中が赤く、そして熱くなる。心臓の鼓動は激しくなり、手足が震えてしまう。
(き、キキキ、キスゥ!!????)
ど、どどど、どうしよう!?
こ、これって責任を取るべき!?そ、それとも責任を取らせるべき!?
い、いやそもそも私もメイド長も女の子だからそんなことはありえないだろうけれど、えぇ・・・えぇぇぇぇっ!!!!??
その後、私は午後の仕事に集中できず。何ともないメイド長にこっぴどく叱られてしまった。
それと、アンナに”アレ”や”ソレ”を教えてもらうハメになった。
「あ、レミリアお嬢様。メイド長なんっすけど、すました顔して耳が真っ赤なんで多分風邪ひいてるっす。お休みを申請するっすよ。」
「・・・・・・えっ?」
すこし短いですがこんな感じで。
ちなみに全然関係ない話ですけれどメイド長は紅魔館の中でも壁(ここから先は血と花瓶のかけらが邪魔で読めない)
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□ 記憶の中の
今回はフランお嬢様してん!
もうすぐ朝、空は明るくなり始めて、私たち吸血鬼にとっての眠る時間がやってくる。
正直、私は暗い夜よりも明るいお昼の方が好きだ。日に当たれば、灰になって死んでしまうとはいえ・・・日光浴をしながら温かな庭園でお昼寝とかもしてみたい。
そんな事を考えながら、朝日が入ってこないように分厚いカーテンを閉めて、
・・・けれど、一向に眠気が来ない。むしろ目が冴えてしまって、そのまま体を動かしたい気分だ。
どうしたものかと考えていると、私の部屋のドアがノックされる。入室許可を出すと、メイド長が入ってきた。
「まだ起きていらっしゃったのですか?」
「あはは・・・ちょっと眠れなくてね。」
私がそう言うと、メイド長はなるほどという言葉と共に何かを考え出す。
「少々、お待ちいただいてもよろしいですか?」
「へっ?う、うん、全然大丈夫だけど・・・。」
「では、しばしお待ちください。」
どうやら、メイド長に考えがあるみたいだ。
私はメイド長に任せることにして・・・とりあえずいつでも寝れるように横になって天井を眺め始めた。
~~~~~
しばらく経つと、また私の部屋のドアがノックされる。
入室許可を出せば、メイド長が私のマグカップをお盆に乗せて持ってきていた。
「お待たせしました、フランお嬢様。こちらをどうぞ。」
「これって、ホットミルク?」
手渡されたマグカップには暖められた牛乳が注がれていた。今日は少し肌寒い日というのもあってか、ホットミルクから湯気が出ているけれど・・・熱くて持てないというわけでもなく、ちょうどいい温かさだった。
一口飲んでみると・・・うん、普通にホットミルクだ。
「眠れないときは、ホットミルクを飲むと眠くなるらしいですよ。」
「ふーん・・・でも、ちょうど肌寒かったし・・・ありがとう。」
「いえいえ、眠れないフランお嬢様の為ですから。」
メイド長は笑顔を浮かべながらそばに待機してくれるのでちびちびと飲みながら、メイド長に話しかける。
「どうして、私の部屋に?」
「うなされていないか、見に来ただけですよ?」
「・・・あぁ、なるほど。」
どうやら私は、眠ろうと目を瞑ってかなり長い時間、目を瞑ったまま起きていたみたいだ。それこそメイド長がうなされていないか見に来るほどの時間だ。
つまり今の時間は、ちょうどメイドたちがお昼の休憩に入る少し前ということだろう。むしろ、その時間まで何もせずにボーっとしていた私もなかなかヤバい。
どうして眠れないんだろう、昨日は特に変な事はしていないはずだけど・・・?
「たまには、眠れない日もありますよ。」
「そっか・・・そんな日もあるよね。」
「ええ。」
なんて、たわいもない会話をしているうちにホットミルクを飲み干してしまう。
空っぽのマグカップをメイド長に渡すと、メイド長はまたそそくさと部屋を出て行こうと離れてゆく。
・・・それが、なんだか、ちょっとだけ寂しくて、メイド長のスカートのすそを掴んでしまう。
「? どうか、されましたか?」
「あっ・・・えっと、あの。ご、ごめんなさい・・・」
「・・・なるほど。」
私が謝罪の言葉を口にすると、メイド長はマグカップの乗ったお盆を部屋に備え付けられているテーブルにおいて、私の
少しだけ狭くなるけれど、メイド長はそんなことを気にせずに私にハグをした。
「えっ、あっ・・・うぅ。」
「ふふっ、まだまだ甘えん坊ですね・・・フランお嬢様も。」
よしよしと言いながら、私の頭を撫でてくれるメイド長。
優しい手つきで、ゆっくりと撫でられていると・・・胸の奥からじんわりと温かくなってゆく。
言葉では否定したくても、私でも気づかないうちに・・・メイド長に甘えたかったのは確かなようで、言葉をうまくまとめることができず、メイド長のされるがままにされる。
・・・メイド長からしたんだし、私もちょっとぐらい、いいよね。
腕を動かして、メイド長にハグをし返す。さっきより密着してメイド長のインクのにおいが一層強くなる。さっきまで書類作業をしてたのかな?でも、嫌なにおいじゃない・・・むしろ、メイド長って感じの匂いだ。
「あらあら~。」
「も、もうちょっと・・・こうさせてほしい、かな。」
「フランお嬢様が満足するまで、思う存分ハグなさってください。」
ニコニコとメイド長が笑顔を浮かべている。
しばらく、メイド長とハグしあっていると・・・思ってしまったことがある。
(・・・もし、
私が生まれた時、血の流し過ぎで死んでしまったお母様。もう、私のせいで死んだとは思っていない。アレは、不幸な事故だった。お父様もお姉さまもそうとらえて・・・私も、やっとそうとらえることができた。
そんなお母様が、血を流しすぎずに生きていたのなら・・・私とお姉さま、そしてお父様とどんな話をしていたのだろう。今のメイド長のように、眠れなかったらホットミルクを作って持ってきてくれたり、こうしてハグをしてくれたのだろうか。
・・・そんなことを考えて、顔に出ていたのかメイド長が撫でるのをやめて私を優しく・・・けれど離さないようにしっかりとハグする力を強める。
「大丈夫ですよ、フラン様。レミリアお嬢様も、私も・・・そしてスカーレット卿もいます。」
「・・・うん、そうだね。完璧、じゃないけど・・・十分な幸せだ。」
メイド長のやさしさで、ポロポロと涙がこぼれてしまう。
そして、その同時に・・・眠気がやってきた。
「わたし・・・いきてて、いいんだ。しあわせでも、いいんだ。」
「はい・・・フランお嬢様は、生きて幸せにならないといけませんよ?」
「うんっ・・・・・・ありが、とう・・・めいど、ちょう。」
そうして・・・私はメイド長の暖かさを感じながら、ゆっくりと眠りについた。
きっと、起きればいつもと変わらない日常が待っているのだろう。
(・・・しあわせ、だなぁ。)
きょうは、あくむを・・・みなかった。
次回からはまたしばらくメイド長の日記になると思います。
それにしてもメイド長は、スカーレット卿に変な事を言われたり、レミリアお嬢様をからかったり、フランお嬢様の親代わりを立派にして・・・なんていうか、スカーレット家限定の魔性の女ですね。
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☆ 92冊目 74~76ページ
転生93年と2か月18日目(金曜日、日中:晴、夜中:晴・半月)
今日は、レミリア様のお散歩の日。
ゆっくりと、いつもの散歩コースをフランお嬢様を乗せたユーリと一緒に歩いたものの、今日は珍しくレミリアお嬢様の悪癖がおとなしかった。特にこれと言った変なものは拾わずに、高そうなツボを一つだけお拾いになる程度だった。ところでこれ間違いなくドラゴンのお散歩ですよね?
なんというか、高そうなツボを一つ拾っただけとはいえ妙な安心感があった・・・けれど、後から書いてみると、なんだか不吉な予感もする。
レミリアお嬢様の悪癖は一度隣の置いといて、お散歩中に興味深い話をレミリアお嬢様からされた。
レミリアお嬢様いわく、そろそろ”庭園迷宮”の本格攻略に乗り出すそうだ。今までは警備隊にお任せをしていたものの、地下室争奪作戦の際2度のドラゴン襲撃を受け、利益よりも安全を取ることにしたらしい。
事実、”庭園迷宮”の存在はドラゴン襲撃の前日までは
第1に、庭園迷宮の巨大マンドレイクはパチュリーいわく新種のマンドレイクでこれまでの数多くの種類のマンドレイクの代用品としても使えるとのことだ。あまりに話が長かったのと専門用語ばかりで分からなかったため要約させたのだが、紅魔館の庭園迷宮に存在する巨大マンドレイクはすべてのマンドレイクの原種に近い存在らしく先祖返りや生き残りという可能性を口にしていた。しかもパチュリーいわく売れば巨額の富が手に入ること間違いなしとのことで・・・「ふふふ、研究費用ががっぽがっぽ!研究し放題キタコレ!!」と目をお金の形にしてめちゃくちゃはしゃいでいた。(小悪魔ちゃんが少しだけ引いていた。)
第2に、庭園迷宮に出現するゴーレムの存在だ。今では、ユーリというウロコが鉱石を含んだ岩石のペットドラゴンが存在するが、そのユーリのウロコ自体頻繁に落ちるというものではない。それに、そのウロコに確実に金属や宝石が含まれているかと言われると微妙でもある。ついこの前に、ユーリが
ともかく、ユーリのウロコからは確実に金属が取れるわけではないので・・・庭園迷宮に存在する金属でできたゴーレムは”確実に調達できる金属資源”として貴重というわけだ。
さらに言えば、庭園迷宮生まれの妖精メイド・・・特にマグちゃんの話によれば、そう言った金属を加工できる技術を持った妖精や、ネペタちゃんいわく胡椒や香辛料といった貴重な植物も自生していたりするそうだ。
だが、それらのメリットを帳消しするほどのデメリットが、この間のドラゴンの2連続襲撃だ。
一体目は警備隊が原因とは言え、ノワールが来てくれていなければ、私と
その為、レミリアお嬢様は庭園迷宮の本格攻略を実施なさるらしい。すでに、前々から
すぐにでも実施しないのは、レミリアお嬢様の能力”運命を操る程度の能力”でよくない運命を見たかららしく、そのよくない運命が見えなかった日に実施するとおっしゃっていた。
いったい、いつになることやら・・・
=====
転生93年と2か月19日目(土曜日、日中:晴、夜中:晴・三日月)
久々に・・・というか、転生してからは初めて風邪をひいてしまった。
流石に無理と疲れがたまっていたらしく、起きたら体がだるく扱ったためアンナに頼んで今日一日は休ませてもらうことにした。
メイド隊のみんなだけでなく、警備隊や司書隊(小悪魔ちゃんが率いている)、レミリアお嬢様とフランお嬢様もお見舞いに来てくれて、なんだか少しだけ照れくさかった。
さて、体調の悪いときに日記を書くのもあまりよくないので今日はここまでにしておこう。
追記
パチュリーが庭園迷宮の巨大マンドラゴラを使った風邪薬を飲んだのだが意外と苦くなくスッと飲めた。
そのかわりに、とてつもない眠気に襲われたけれど起きたらスッキリした。
=====
転生93年と2か月20日目(日曜日、日中:晴、夜中:晴・新月)
今日のお仕事は病み上がりということもありアンナにほとんどを任せて自分は軽めに仕事をした。
主に書類整理だけだったのだが、途中からオリビアちゃんが自主的に手伝ってくれたおかげで、思ったより早く仕事を終えることができた。
書類整理をしながらの話だったのだけれど、オリビアちゃんいわくライちゃん、マグちゃん、ネペタちゃんの元からしっかりとしていた3人を除く妖精メイドの教育は順調らしい。お菓子を餌に少しずつ教育していたからか最近ではイタズラをあまりしなくなったそう。書類を片付けながら言うオリビアちゃんはすっかり”お姉ちゃん”が板についてきたようだ。
なにしろ、アンナが忙しいときに妖精メイドの面倒を見たりライちゃん、マグちゃん、ネペタちゃんの相談役も買って出てくれているので彼女たちとの交流がオリビアちゃんにもいい影響を与えているのだろう。そう思うと、やっぱりあの時引き留めて正解だった。
そして、毛玉と毛玉メイドたちなのだが、日に日に成長している妖精たちにまけていられないと意気込んでいるらしく以前より自主的に手伝う毛玉が多くなってきているそうだ。大毛玉や特大毛玉は作業に向かないためにいつも通りらしいけれど・・・それでも
少しだけ嬉しいと思いつつ、今日はオリビアちゃんを存分に甘やかして一日を過ごしたのであった。
=====
転生93年と2か月21日目(月曜日、日中:雨、夜中:晴・三日月)
レミリアお嬢様が、人間の女の子をお拾いになった。
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☆ 92冊目 77~80ページ
転生93年と2ヶ月22日目(火曜日、日中:晴れ、夜中:晴れ・半月)
昨日はレミリアお嬢様がお拾いになった人間の治療に精一杯でほとんど何も書かなかったため、今回でレミリアお嬢様がお拾いになった人間の女の子について詳しく書き記そうと思う。
まず、最初に思ったのは(まさか、十六夜
十六夜
これらを持つ女の子は総じて十六夜
しかし、今回レミリアお嬢様がお拾いになった女の子はそれらの特徴を持ち合わせていないのだ。
その女の子の特徴として、金髪で紫の濁った瞳をしておりこちらに向ける視線も警戒しているのか鋭く、けれど怯えを感じさせるそんな瞳だ。
そんな彼女が十六夜
結果的にいれば、その確信は大当たりだった。
ボソボソと小さな声で、その女の子の口から語られたのは単純明快。彼女は奴隷だった。
生まれはほぼスラムに等しい貧民街で、母親は早死に。酒浸りの父親に虐待されながら生きていたが、金に目をくらんだ父親に売られ、馬車に乗せられていたが偶然、馬車が熊に襲われて、彼女を拘束していた鎖が壊れて命からがら逃げてきた結果、あの森に迷い込んでレミリアお嬢様がお拾いになったというわけだった。
名前も、アイーダ・トラヴェントという立派な名前もあった。さて、そんな彼女・・・アイーダだが、彼女は勇気を振り絞ってレミリアお嬢様にここで働かせてくださいと自分から言った。
もちろん、レミリアお嬢様は二つ返事で了承・・・私も
というわけで、アイーダは無事にメイド隊・・・しかも史上初となる私のメイド隊に編入となった。
アイーダには、メイド隊全体で発生する事務報告書の処理手伝いをさせたのだが・・・生まれの割には字がキレイで文字の使い方が上手くて、即戦力となり・・・私の書類作業の時間が半分になったのだった。
=====
転生93年と2か月23日目(水曜日、日中:晴れ、夜中:晴れ・満月)
さて、アイーダがメイド隊に加入し、私専属のメイドになって報告書などの処理の手伝いをさせるようになってから早1日。
彼女の事務能力は私の想像以上なのかもしれない、なにせ私が今日の分の事務作業をしようと別館に存在する私の執務室に入ったときには、すでにアイーダの手によってほとんどの書類が処理・精査されていた。
私のサインが必要なものは、私のディスクの上にまとめられており、昨日用意したばかりのアイーダのディスクには、処理済み・再提出・再精査の三つに分けられてる書類の山が出来上がっていた。正直、私が人間だったころの仕事よりめちゃくちゃ仕事ができている。
しかも本人は、この仕事が手によく馴染むようで私と会話をしながらスラスラと流れるように書類作業を続けていた。
なお、アイーダのことはメイド隊で歓迎・・・それどころか、狂喜乱舞するぐらいだった。
なんでも、私の殺人的な仕事量を見てどうにかして報告書を減らしていろいろ誤魔化していたみたいで、後になるほど重要ではないが提出した方がよかった書類がボロボロと出てくる。
私の仕事量を減らそうと試行錯誤した結果、報告書を減らしたことはいい事なのだろうけれど・・・これには、私もアイーダもぶちギレた。
=====
転生93年と2か月24日目(木曜日、日中:晴れ、夜中:曇り・多分半月)
特に書くことはないが、習慣を続けるためになんとなく書いている。
今日は本当にいつもと同じ日常で、特に変化はなかった。
アンナたちと会話は他愛もない事で、妖精メイドたちの教育状況や最近アンナ隊で流行しているもの、毛玉メイドが質素な格好ばかりするのでマグちゃんが目を輝かせて毛玉メイドを可愛く仕立て上げていること、ライちゃんのおかげでルージュが休みが上手くとれるようになって疲れが最小限になり始めたこと、ブラウいわくネペタちゃんのイタズラするぶんお仕事もちゃんとするから助かっている(それとブラウの癒しになっている)ということ。
次に司書隊なのだが・・・ここまで書いて、書くことを思い出した。
小悪魔ちゃんがめちゃくちゃ増えていた。いや、正確には小悪魔ちゃん似の20㎝2頭身の小悪魔ちゃんをデフォルメした生命体が居た。
最初はそれを見て硬直してしまったけれど、小悪魔ちゃん本人が現れて説明してくれた。なんでもデフォルメ小悪魔ちゃんは、小悪魔ちゃんが生み出した分身で、小悪魔ちゃんが、そのデフォルメ小悪魔ちゃんにやらせたいことを設定し、動いているとのこと・・・簡単に言えば
ともかく、ヴワル魔法図書館はパチュリーに
ちなみに小悪魔ちゃんいわく、デフォルメ小悪魔ちゃんは魔力さえあれば無限に召喚できるとのこと・・・チートかよ。
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☆ 92冊目 81~83ページ
転生93年と2か月25日目(金曜日、日中:晴れ、夜中:晴れ・三日月)
今日はレミリアお嬢様のお散歩の日だ。
と、言っても今日のお散歩では普通にお散歩をして普通にツボをお拾いになられただけで、特に変わったことはなかった。しいて言うのならば、庭園迷宮の攻略を来週の火曜日に予定しているというお話を聞いただけだ。
その日に決行すれば、
なにが起きるかは聞いてみたのだけれど、レミリアお嬢様いわくそこまでは見えなかったとのことだ。
ともかく、来週の火曜日に庭園迷宮の攻略が開始されるかもしれないということをしっかりと覚えておかないといけない。
そして、お散歩も終わり、
ルージュ、ブラウ、ノワール、オリビアちゃんとはまだ少しぎこちないけれども・・・アイーダは3人にも積極的に関わろうとしており、次第に仲良くなれそうだ。
えっ、アンナとはどうだって?もうすでに10年ぐらい一緒にいるような親友みたいになっている。
いくら、
ちなみに司書隊についてなのだが、パチュリーは図書館の内部に自分の魔法工房を構えたらしく最近ネペタちゃんがそこに出入りしているみたいだ。
そして図書館の整理整頓もデフォルメ小悪魔ちゃんの人海戦術により9割がた終了しており、後は禁書や危険な魔本を特別なエリアに運び出すだけとのことで、順調みたいだ。
=====
転生93年と2か月26日目(土曜日、日中:晴れ、夜中:曇り・多分新月)
今日は少しだけ嫌なことがあった。
武器や鎧や、警備隊に優先して配備しており・・・擬人化した狼女たちへと渡されるのだが、庭園迷宮の調査中に戦闘することが多く、折れたり壊れたりすることが多い。
その為、消費や消耗が激しく・・・補充のたびに庭園迷宮の調査に足止めがかかるということが起きる。
今回の場合は、武器が完全に無くなってしまったのだ。
今回は、メイド隊に配ったショートソードを一度回収し、警備隊に回ることで対処したのだが・・・メイド隊の戦力は一時的にガタ落ちしている。
メイド隊に武器なんて必要なの?とは思うだろうが、私の場合必要だと答える。
なにせ、警備隊は万全とは言え、四六時中常にすぐ対応できるわけではない。その間に、レミリアお嬢様やフランお嬢様に被害があってはたまったものではないため、メイド隊の武装は必須だ。
とはいえ、無理に戦わせるわけではなく、戦う意欲のあるメイドにだけ手渡し、それ以外のメイドには非常事態が起きたら逃げるように言ってある。
この武器のない間に、侵入者や襲撃なんてあったら・・・正直、メイド隊に死傷者と言う被害が出るだけではなく・・・レミリアお嬢様とフランお嬢様に危険が及ぶかもしれない・・・そう考えると、ゾッとしてしまった。
=====
転生93年と2か月27日目(日曜日、日中:雨、夜中:雨・多分三日月)
あぁ、なぜ・・・なぜ私は油断していたのだろう。
迷いの森が突破されたことを忘れていたせいで、油断していた。
ごめんなさい、アイーダ。
せめて、安らかに眠って。
追記
一日が経ち、私もようやく落ち着いた。
なにが起きたのかを明確に記すのなら・・・日中にヴァンパイアハンターの奇襲があり、レミリアお嬢様に危険が及んだ。
しかし、レミリアお嬢様が殺される寸前にアイーダが割り込み・・・アイーダはヴァンパイアハンターの斧の餌食になってしまった。
その一瞬の隙をついて、レミリアお嬢様の反撃でヴァンパイアハンターは死んだものの・・・アイーダは懸命の治療虚しく・・・命を落としてしまった。
アイーダの死は
なにせ、人間への悪感情が何より強いのが・・・なにを隠そう、私の主であるレミリアお嬢様だ。
このままだと、
さらに追記
アイーダがゴーストになって帰ってきたんだけど!?
アイーダがゴーストになって帰ってきたところで全然関係ありませんが、また読者公募を開始させていただきます!
今回も、活動報告にて募集させていただくため、どしどしご応募のほどよろしくお願いいたします!
↓こちらが活動報告へのリンクです!
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□
今回は
トップバッターはもちろんアンナ!
まず、アタシたちを統括しメイド隊の中でも最古参であり、レミリアお嬢様専属のメイドである”メイド長”が率いる総括メイド隊。
そして、ルージュさんが率いている調理メイド隊、ブラウさんの率いてる清掃メイド隊、ノワールさんが率いている運搬メイド隊の3つと、アタシことアンナが率いているメイド隊が存在する。
総括メイド隊以外でどこのメイド隊が一番忙しいのか、と言われると間違いなく調理メイド隊だろう。レミリアお嬢様とフランお嬢様のお食事の仕込みに、メイド隊だけでなく
次点で忙しいのはアタシの率いるメイド隊だろう。
基本的に、調理や清掃など特定業務に集中して作業をしておらず、他メイド隊のヘルプやレミリアお嬢様とフランお嬢様のお手伝いや警護、メイド隊同士の連絡手段の担当や新人メイドの教育や研修、メイド長がおやすみの日や、レミリアお嬢様のご趣味の際には統括メイド隊の代行までしているっス。
けどまあ、人数が増えてきたこともあってその多忙さも段々と少なくなり・・・今じゃ調理メイド隊が唯一苦労する部署って感じっすね~
「アンナメイド長~、清掃メイド隊から毛玉メイド小隊3つ貸してほしいって」
「わかったっす~・・・えぇーっと、いま待機中のメイド小隊は~・・・あぁ、A、C、Dのメイド小隊を向かわせてほしいっす。」
「はーい。」
「アンナさーん、調理メイド隊から差し入れが!」
「おぉ、美味しそうっすね!後でメイド隊のみんなで分けて食べるっす!」
「休憩時間に美味しくいただきましょうね!」
「アンナさん、吸血鬼メイド隊がお昼でも働きたいって声が・・・」
「無視するっすよ死神ちゃん。仕事中にうっかり日光浴しちゃって清掃メイド隊に文句言われるのは勘弁してほしいっす。」
「はーい、ブラウさんにおこられたいの?って言っときまーす。」
「アンナさ~ん!かわいくなる時間で~す!!」
「ありゃ、もうそんな時間っすか?じゃあ、今日もお願いするっすよ~。」
仕事をしつつ、今日はゆっくりと休む。
アタシは体を動かす方が好きなのだが、こうして事務作業をしないとアイーダに怒られちまうっす。ゴーストになった分、ポルターガイストで脅してくるんでシャレにならないっす・・・。
それはそれとして・・・なんとなく、メイド隊の名簿を広げてみてみる。
アタシが率いてるメイド隊のメンバーが書かれた名簿っす。これにメイド長が考案したシフト表も混ざってるんで結構便利で助かってるっす。
ぺらりとページをめくってみれば、頭痛がするほど細かくずらっと並んだ文字列ががが・・・
「うぅ・・・こういうのやっぱ苦手っす」
「えっ?」
「あぁ、違うっす!マグちゃんがやってくれるこれは好きっスから!!」
「ふふっ、わかってますよ~?」
危なかった、危うくマグちゃんを泣かせてしまうところだった。折角できた部下兼妹分を泣かせるのはアタシの性に合わないっすからね!
ともかく、苦手ながらもメイド隊の名簿を読み漁ってみる。
「・・・副メイド長のアタシ。副メイド長補佐オリビア。毛玉メイド隊リーダー、吸血鬼メイド隊リーダーのエリカとその補佐カーラ。妖精メイド隊リーダーマグノリア・・・・・・毛玉メイドたちに、吸血鬼メイド・・・妖精メイド・・・・・・」
「誰を探してるんで~す?」
「いやぁ・・・さっきクッキーの差し入れをしたメイドなんっすけど・・・おかしいっすねぇ。」
中々見つからない。そう考えながら、そのクッキーを一口食べて飲み込むと・・・
「ごふっ!?」
「きゃぁ~~~!?」
吐血した。アタシの口から飛び出した血は、ギリギリで投げた名簿にはかからずアタシのメイド服と口を押えた手にかかる。
あーなるほど、即効性のある劇毒入りクッキー・・・なるほどっす。
このやり口は教会じゃないっすね・・・となると、教会に雇われた暗殺者あたりかな・・・?
「マグちゃん、メイド隊だけじゃなく警備隊にも連絡してほしいっす。侵入者っす。」
「わ、わわわっ、わかりました~!」
吐血に驚いたマグちゃんだったものの、アタシの特性を理解しているからかあまり慌てずに緊急連絡をしに行った。
それにしても、あそこまで完璧に紛れ込めるのなら・・・どうしてもう少し調査をしなかったんっすかねぇ。すこしマヌケな奴っすねぇ。
=====
「無事に捕まえました~!」
「おぉ、お手柄っすマグちゃん!」
アタシが手についた血を落としたりメイド服を着替えていると、マグちゃんが毒入りクッキーを持ってきたメイドをボッコボコにした状態で連れて来た。
騒ぎを聞きつけたのか、あれほど大人しくしていろと言っておいた吸血鬼メイドの二人がメイド隊の休憩室にやってきてそいつに殺気をぶつけていた。
少し研修の面倒を見ただけなのに、随分と懐かれちまったものっす。まあ、悪い気はしないっすけどねぇ~。
「さーてさて、あまり抵抗せずにキリキリ吐くっすよ~?雇われたのは教会っすよねぇ?」
「・・・っ。」
「おー、反抗的な態度。」
「アンナさん、やっちゃいます?」
と、メイスをいつの間にか持ち出していた吸血鬼メイドがアタシに聞いてくる。
「ん~・・・」
聞かれたことにはすぐに答えず、毒入りクッキーを持ってきた犯人を値踏みする。
メイド長からの言伝で、美人かかわいいと思える女性は殺さずに生け捕りにしておくようにというルールが存在するのであまり殺したくはない。
コイツははたから見れば可憐な美少女っす、だけどアタシらに毒を盛った性悪女ってことは周知の事実っす。
あ、それに確か・・・
「確か、フランお嬢様の血の供給はもう間に合ってたって言ってたし、吸血鬼メイド隊の方は血の供給どうっすか?」
「・・・正直、足りてないですねぇ。」
「いいんです?結構、
ぺろりと舌なめずりをし犬歯をむき出しにして、ごちそうにありつけた犬みたいな獰猛な笑みを浮かべる吸血鬼メイド二人。
その二人の表情を見たからか、そのメイドもどきは怯えるように顔を青くした。
こいつらこれでも元ヴァンパイアハンターっす。もうすっかり、吸血鬼として板についてるっす。
「いい、言います!雇い主も言いますし、貰った前金もすべてお渡しします!!お、お願いします・・・い、いのちだけはっ。」
「おぉ~、見事な命乞いですね~。」
「マグちゃん、あんまり見ちゃダメっすよ。」
「わぁ~、見えないし聞こえない~!」
マグちゃんの目と耳をふさいで聞こえないようにする。少なくとも、この子は黒くはなってほしくないっす。このまま素直な子でいてほしいっす。
というわけで、吸血鬼メイド二人に目配せして連れて行かせる。
「いやっいやぁああっ!しにたくない、しにたくないぃいいいっ!!」
「だいじょーぶだいじょーぶ、死にはしないよ~?ちょーっと、血を吸わせてもらうだけ。」
「そうそう~、ちょっと血が抜けて気持ちよくなるだけだからぁ~。」
「・・・せめて別館の地下でヤってくれっす。」
「?」
アタシに目と耳をふさがれたまま首をかしげるマグちゃん・・・。
正直、最近少し変な性癖を開示するようになってきた吸血鬼メイドより、仕事に熱心な毛玉メイドや、純朴な妖精メイドの相手をした方が気が楽になってきているっす。
でも、あんな変なのでも仕事はできるしお嬢様方に対しては敬意を払っているし、お嬢様方の前で変な言動も行動もしていないので余計に厄介だ。
マグちゃんの目と耳をふさぐ手をそのまま降ろして、マグちゃんを抱っこする。
「はぁ~・・・癒しっす。」
「えへへ~。」
その後、アタシは無事にメイド長に侵入者を捕まえるきっかけを作ったことを褒められ、そして勝手に吸血鬼メイドに与えたことを怒られた。
多分今頃・・・別館地下はすごいことになってるんだろうなぁ・・・・・・。
アンナのメイド隊
副メイド長:アンナ
副メイド長補佐:オリビア
毛玉メイドリーダー
吸血鬼メイドリーダー:エリカ
吸血鬼メイド副リーダー:カーラ
妖精メイドリーダー:マグノリア
毛玉メイド
吸血鬼メイド
妖精メイド
がアンナのメイド隊の人数となります。
・・・毒入りクッキー持ってきた侵入者がどうなったかって?
その後のご想像は読者にお任せします!
↓そしてまだまだ募集中です!どしどしご応募ください!
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□
今回は、ルージュ率いる調理メイド隊にフォーカスを当てていきます!
普通の貴族の屋敷ならば、お抱えの料理人の一人でも存在するのだろうが・・・
血をうまく調理する料理人なんて聞いたことが無い、そもそも吸血鬼は直飲みが主流らしいので・・・私の主であるレミリアお嬢様とフランお嬢様の方が珍しいのだろう。あのお二方は、コップに注いで飲む派だ。
そんな
元々、戦うことしかできない私が趣味で始めていた料理・・・その出来をメイド長が見込んでスカウトしてくれたが、私は割とこの仕事が気に入っている。何分、かわいい部下もできたし・・・なにより、レミリアお嬢様とフランお嬢様の「おいしい」の一言が嬉しいからである。
そんな私の調理メイド隊なのだが、他の人から見れば確かに忙しそうに見えるのだろう料理の仕込みにメイドや警備隊、司書隊の食事の準備、ユーリや家畜の餌と言ったものも用意する必要があるし、食糧庫に収められている食材の管理もする必要がある。
だけど、調理メイド隊は意外と暇な時が多い。確かに、料理の仕込みや食事の準備に追われているものの、慣れてしまえばすべてお手軽にできてしまう。
「ルージュさん、今日の仕込みとお昼の食事の準備、終わりました~。」
「うん、お疲れ様。じゃあ、少し休もうか。」
「あ、その前に調理器具の手入れだけしときます~。」
毛玉メイドたちが率先して、お鍋やフライ返しなど調理器具の点検をしている。包丁を使う毛玉メイドは自分の包丁は自分で手入れをしており、こだわりを感じる。ちなみに、私は包丁で斬撃飛ばして食材を切ってるから手入れの必要はあまりないかな。
毛玉メイドたちが調理器具の点検を横目に、厨房の一角に設置されている休憩用パーソナルチェアに静かに座ると、同じスペースに設置されているソファーの上にあるブランケットに包まれた山が動き出し、そこから一人の妖精・・・調理メイド隊のマスコットでもあるライラックちゃんが出て来た。
「休憩~・・・ですか~・・・?」
「お願いできる?」
「はい~・・・では~・・・一緒に~・・・休みましょう~。」
私のお願いで、ライちゃんからの能力が私に使われる。
直後、精神操作の感覚を感じるが・・・それを受け入れる。すると、体の力が自然に抜けて何もしたくないという気持ちが高まる。
けれどもまあ、お仕事もほとんど終わったから特に何もしなくてもいいので、ライちゃんと一緒に思う存分休む。
「はぁ~・・・ゆっくり休憩できるって幸せ~・・・。」
「ルージュメイド長、それ他のメイド長に聞かれたら大変ですよ~?」
「大丈夫~・・・胃袋は掴んであるから~。」
私がそう言うと、調理器具を点検していた毛玉メイドたちがクスクスと笑い出す。
どうしてみんなが笑っているのか理解できずに首をかしげていると・・・
「へぇ、私はどうなのかしら?ルージュ。」
今の状況ではあまり聞きたくない声が聞こえて来た。
思わず、ライちゃんの能力を振り払って背筋を伸ばすほど、聞き覚えのある声・・・
壊れたゼンマイ仕掛けの人形のように後ろを振り返ると、
「なーんて、冗談よ。ルージュ。」
イタズラな笑みを浮かべているメイド長がそこにいた。
・・・というか、冗談。冗談だったの?トーンが割と低くて本気かと思ったのだけど・・・?
「や・・・やだなぁ、メイド長。いつの間に来てたの?」
「そうね・・・ライちゃんに能力の使用をお願いしているところからかしら?」
「・・・割と最初の方。」
と、メイド長がライちゃんの隣に座り、ライちゃんをそのまま膝枕した。
はたから見れば、微笑ましい小学生の姉妹の交流だが・・・片方は、私でも頭が上がらない人だ。
「メイド長~・・・?」
「よしよし、ライちゃんも頑張ってるわね。」
「えへへ~・・・。」
ライちゃんを甘やかすメイド長を見ると、小さなお母さんだなとは考えるものの、あまり邪な考えは浮かべないようにする。
メイド長は割と身長を気にしているのでむやみやたらに言ってしまうと本当にシャレにならない。メイド長の身長を小さいとバカにした侵入者がどうなったのか・・・今でもブラウと
「メイド長って、お母さんみたいですよね。」
「あら、そう見えるの?」
「ええ、まあ。」
1人の毛玉メイドが気兼ねなくそうメイド長と話しているのを見て、私は嬉しさを感じていた。
なにせメイド長は・・・・・・
・・・いや、やめておこう。
もう、ソレは過去の話・・・それも100年以上前の話だ。今更蒸し返したところで、いい事なんて一つもないだろう。
「メイド長が甘やかさない相手は、いないんじゃないんですかね?」
「・・・そうかしら?」
「そうだね。」
「ルージュ?」
照れたように私の名前を呼ぶメイド長。
照れ隠しで虹色クリスタルの羽をパタパタさせていて、とても可愛らしい姿だ。
さて、まだしばらく休憩時間はあるし・・・少しお昼寝でもしようかな。
目を覚ますとすっかり夕方で、毛玉メイドたちはすでに夕食の支度をしていた。
なんで起こしてくれなかったの?とは怒ったのだが、幸せそうに寝ていて起こすに起こせなかったと聞かれて謝った。
・・・そっか、私は今・・・幸せなんだ。
「ふふっ・・・よーし、夕食の調理始めるよ!」
「「「はい!!」」」
今日もレミリアお嬢様とフランお嬢様の「おいしい!」の一言の為に包丁をふるい始めたのであった。
調理メイド隊
調理メイド長(料理長):ルージュ
マスコット:ライラック
毛玉メイド
はたから見れば忙しそうだけど、本人たちから見れば楽っていうパターンって結構あるよね。
↓まだまだ募集中です!ご応募のほどよろしくお願いします!
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□
今回はブラウさんの清掃メイド隊にフォーカスを当てます!
清掃メイド隊の主な役割は、
警備隊は基本的に、庭園や門など外に接している場所を警備している。端的に言えば人が少ないからこそ、そうなっている。逆に清掃メイド隊は、
だが、本当の業務はあくまで清掃だ。
「ブラウ様、本館客室棟1号室から699号室まで清掃終わりました。いつも通り、700号室からは簡易的にしか行っていません。」
「わかった。清掃メイド隊に連絡して、今日はお終い。」
「了解です。」
と、長く私のもとで働いてくれている毛玉メイドが足早に去ってゆくと、入れ替わりでネペタが私に飛びついてきた。
「ブラウさまー!今日も、ネペタは頑張ったのです!ご褒美を要求するのです!!」
「ああ、さっきの毛玉メイドから聞いている。よく頑張ったな。」
「えへへ~」
飛びついてきたネペタをしっかり受け止め、要望通りに頭を撫でたり抱っこをしたりとご褒美を与える。後でメイド長の焼いたクッキーも与えよう。
ちなみにだが、ネペタは我が清掃メイド隊においてアイドルの役割を果たしている。何分、清掃メイド隊に配属される毛玉メイドのほとんどは私の影響を受けたのか表情をあまり変えない毛玉メイドが多い・・・元々毛玉という種族が表情を変えない種族だったというのもあるのだろうが、ともかく・・・清掃メイド隊は愛想がほとんどない。私も清掃メイド隊の毛玉メイドも愛想をよくしようと努力はしているもののルージュとノワールから「人を殺せそうな笑顔」、「闘争を求める悪鬼顔」と一緒くたに言われてしまい・・・ちょっとショックを受けている。
だが、ネペタは違う。清掃メイド隊の中でも子供らしく表情をころころと変えている。それがまた、何とも可愛らしくて・・・彼女の前では自然に笑えているとメイド長から言われたこともある。
「んぅ~、ちょっと眠くなってきたのです。」
「・・・眠っても、大丈夫だ。もう今日の仕事はない。」
「でも・・・せっかく、ぶらうさまと・・・・・・」
・・・今日は頑張って働いていたということもあったのだろう。やがてネペタから可愛らしい寝息が聞こえてくる。彼女を起こさないように優しく、しかししっかりと支えて他の毛玉メイドに目配せをして仕事に向かわせる。
ネペタの仕事は終わっているから、後は毛玉メイドたちの仕事だ。彼女が頑張って集めた埃を毛玉メイドたちが回収する必要がある。足早に・・・だが静かに移動する毛玉メイドたちを見つつ、私はネペタの子守りに専念する。
「・・・ふふっ、かわいいな。」
眠るネペタの頭を撫でつつ、メイド休憩室へと足を運ぶ。毛玉メイドたちもそれを分かっているのか、目配せだけで私へのねぎらいの言葉を・・・いや、私も休めという強い意志の言葉を送られていた。
・・・そう言えば、最後に私が休んだのはもう1年も前か。私よりメイド長とアンナの方が休息が必要だとは思うが・・・まあ、これ以上休まずに働いて私のメイド隊の毛玉メイドに苦言を呈されるよりも、まだ視線で訴えられている今のうちに休んでおくのもいいか。
なんて考えていると、メイド休憩室にたどり着く。ネペタを静かにベットにおろし、私は近くの壁にもたれかかり目を閉じる。
それではあまり休めないと思われるだろうが、私はこのやり方が一番休める。正直に言えば、昔からの癖で直そうにも直せないのであきらめている。
まあ、ネペタが目を覚ますまで・・・こうして・・・・・・
=====
・・・・・・
「ブラウさまー、起きてください!ブラウさまー!!」
「・・・んぅ?」
目を開けると、ネペタの可愛らしいニコニコ笑顔がそこにある。
いつの間にか天井を見上げているし、ブランケットの柔らかな感触を腹部に感じる・・・。どうやら、本当に眠ってしまっていたようだ。
しかし、どうして私はベットで寝ていたのだろう。ネペタにそれほど力があるわけでもないし、あの時間帯ではほとんどだれもメイド休憩室には入らないはずなのだが・・・。
「これ!机の上に置いてあったのです!起きたらブラウ様に見せなさいってメイド長から!!」
「・・・メイド長から?」
ネペタから手紙を受け取り、封を切って中身を改める。内封していたポストカードには、「今日からしばらく3日ほど休日よ。これはメイド長命令だから絶対、いいわね?」と書かれていた。正直、私より休んでいないメイド長からの手紙にモヤッとはしたものの・・・最近イライラすることも多かったからか、休むという考えをすっかり忘れていたのかもしれない。
それに、近いうちに庭園迷宮の攻略だってあるのだ・・・多分メイド長は、そんなことは関係ないというだろうけれど、今のうちに休めってことだろう。
「・・・ネペタ、明日は森の外にお出かけに行こう。」
「えっ、いいんですか?!」
私の言葉にネペタが驚くが、すぐに嬉しそうに目を輝かせる。
庭園迷宮生まれのネペタは庭園迷宮と
それにネペタもしっかりと休日を作って休んでるとはいえ、たまには長く休みたいとも、迷いの森やその外を見てみたいとも言っていた。
「ああ、ルージュに頼んでランチをもって、な?」
「やっ・・・やったのです!約束ですよ?絶対ですからね!!」
嬉しそうに羽をパタパタさせながら、再び私に抱き着くネペタをしっかりと受け止めしばらくはお出かけの話をするのであった。
清掃メイド隊
清掃メイド長:ブラウ
ネペタ
毛玉メイド
訳ありクールな女性と子供らしい女の子の絡みで何が尊いって言うと、女の子の笑顔で女性が自然と笑えるようになるっていう部分が一番尊いの。
↓まだまだ募集中です!ご応募のほどよろしくお願いします!
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□
今回は最近できた運搬メイド隊にフォーカスを当てていきます!
「ふむ・・・なるほど?」
私は
「ノワールさん、なにを?」
「・・・ん?あぁ、すまないね。この
「・・・はぁ。」
つい最近、この
ともかく、
「それで、なにかわかったんですか?メイド長の話だと、忙しすぎて体内時計が狂うって言ってましたけど。」
「・・・それも間違いじゃないだろうね。詳しく説明するには魔術的観点や専門用語を必要とするから簡単に言うと・・・
「興味深い話ね、聞かせてくれないかしら?」
魔術にあまり詳しくないだろう毛玉メイドの一人にそう言うと、その後ろから興味深そうに微笑を浮かべているパチュリー・ノーレッジが現れた。
その笑顔が、とある古い知り合いに似ていて口角が上がる。彼女が求めているのだ、仕方ないので説明しよう。
「キミ、忙しいだろうが私の分も頼むよ。」
「あ、はい。ごゆっくりどうぞ。」
と、私に話しかけていた毛玉メイドが私の分の仕事を引き受けてそそくさと立ち去ってゆく。
パチュリーはそれを見ると指パッチンをして、私ごとヴワル魔法図書館のテーブル前に転移させる。無言詠唱・・・そして、動作省略の高度な魔術行使。さすがは”ノーレッジの末裔”と言ったところか・・・
「さて、どこから話したものか・・・」
「そうね、まずは
「・・・これは私の推察にはなるのだが―――」
それがなぜわかったのかというと・・・
私の知る古代錬金術には、魔力を検知して赤くなる土を創り出す錬金術が存在していた。この土は、魔力が伝わると赤くなるだけでなく、ちょっとやそっとの衝撃や攻撃を防ぐようになる頑丈な材質のレンガにもなる特徴がある。この
そして、
迷いの森を生成し人間を
「…確かにそれなら、庭園迷宮と旧地下室迷宮が何でできているのかの理由はできるわね。調べてみない限り、それがそうと言い切れるものではないけれどね。」
「それはそうだ、魔術と魔法の根幹には”確かな理由による現象の再現”があるのだからな。もう少し、私の方で調べてみることにしよう。」
「・・・じゃあ、もう一つの方・・・体内時計にかかわる方をお願いするわ。」
「これも私の推察にはなるが―――」
体内時計が狂う理由付けとして、正直に言ってかなり弱いものなのだが、
正直に言って、時間魔法と次元魔法は高等魔法すぎて私にも分からないものだ。むしろ、これを分かった魔女・魔法使いはいないと思う。メイド長の能力も”空間を操る程度の能力”とは言っているものの、言い換えれば空間魔法なので、時間があればじっくりと仕組みを解析したい・・・おっと、話がそれたな。
まず結論から言うと、
「時間魔法と、次元魔法・・・・・・どっちも魔女と魔法使いのおとぎ話に出てくるヤツよね。」
「あぁ、少なくとも過去にはそれらは存在した。」
「・・・アナタ何歳なのよ。」
「ククク・・・妖精に年齢を訪ねるものではないよ?」
ジト目を向けてくるパチュリーをからかうように笑って見せる。
やっぱり、パチュリーも”ノーレッジの魔女”と言うことだ。私のよく知る”ノーレッジ”とよく似ている。
古い知り合いの顔を浮かべながら、目の前の少女と仲良くしようと・・・私は脳内の妖生設計を見直すのであった。
運搬メイド隊
運搬メイド長:ノワール
毛玉メイド
というわけで、ノワールには
↓もうすぐ締め切りです!アイディアがある方は、ぜひご応募ください!!
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☆ 92冊目 84ページ
今回は応募キャラクターが10名と多いため3つに紹介を分けて登場させたいと思います!
また注意事項として
作者が出しやすい順番で登場させます!
頂いたキャラクターの再現が完璧ではありません!
場合によって設定を加筆させていただく可能性があります!
以上の三つをご理解の上、ご協力のほどお願いいたします!
転生93年と2か月28日目(月曜日、日中:晴れ、夜中:晴れ・半月)
アイーダがゴーストになって帰ってきた翌日、レミリアお嬢様も少しだけ引きつり笑いをしていらっしゃった。ともかく、今日は月曜日。レミリアお嬢様の趣味のお散歩の日だ。
さて、今日のお散歩は大波乱だった。
落とし”物”は、高そうなツボを8個と割と大人しい・・・?いや、8個は多い方か・・・。ともかく、高そうなツボを8個ほどお拾いになったぐらいで特に問題はなかった。
だけど、問題は落とし”者”だった。
なんと、今日だけでレミリアお嬢様は”4人”もの人外をお拾いになられた。全員が全員、レミリアお嬢様の悪い癖で発見されて、1人を
一人一人書き記していこうと思う。
まず、
黒髪で紫目の昔のアニメの中の日本人ヒロインのように珍しい容姿だけれど、肩まで伸びている黒髪の一部はメッシュのように白くなっており・・・なにより、彼女の頭と腰から生えている猫耳と猫しっぽが特徴的だ。身長は、私より小さく胸元には銀色のペンダントが輝いている。
そんな彼女だが、9年前にお爺さんが無くなって、あてもなく旅をしていたとのことだ。行く当てがないと聞いた途端、レミリアお嬢様がニンマリと悪い笑みを浮かべて好条件をツラツラと言い放っては、カートちゃんをあっという間にスカウトしてしまった。
掃除が得意とのことで、あれやこれやはブラウに任せることにしよう。
次に、司書隊として雇うことになった人だ。
その人の名前は、マルガハーリーさん。人間とオーガの半鬼半人で、レミリアお嬢様いわくオーガの身体能力は”吸血鬼”を超える力があるとのことで力作業を任せるために勧誘文句を考えていたのだけれど、マルガさんの話では自分にオーガ特有の怪力はない代わりに、ドルイド魔法死霊術と錬金術が得意とのことだ。
そして、普通なら近寄りがたい迷いの森になぜいたのかというと、マルガさんの故郷のオーガの里では15歳でオーガの里に残るか自己研鑽の為に里を出るかの掟があり、マルガさんは後者を選び、魔力が満ちて修行にはちょうど良かった迷いの森に棲んでいたらしい。
そんなマルガさんは、レミリアお嬢様が気に入られたようであの手この手の交渉の末に、パチュリーの司書隊で雇うことになった。パチュリーに何も言ってないけど大丈夫かなぁ・・・。
最後に警備隊で雇うことになった二人について書き記そうと思う。
まず一人は、メリーさん。
金髪赤瞳の同顔のおっとり口調のお姉さんで、何より特徴的だったのが背中に生えた3対6枚の黒色の翼だった。
なんでも彼女は元セラフィムの堕天使で、アンナが真っ青になるほどの職場環境に嫌気がさし、管理していた2つの神器を故意で紛失し、怒りを買って堕天使にさせられたとのことだ。
ちなみに、その2つの神器について聞いてみたのだが、少なくともグングニルとレーヴァテインではなさそうだ。彼女が管理していたのは”表紙と裏紙が真っ黒の魔導書”と”絶対に壊れない大剣”の2つらしい。なんか片方を見た気がするけど気のせいだよネ!
ともかく、そんなメリーさんだがレミリアお嬢様が黒い翼に目を輝かせており、気付いた時にはレミリアお嬢様がスカウトしていた。
最後にアストレアちゃん。
銀髪赤眼で髪形はロングストレートの幼い子なのだけれど、彼女と出会った途端、レミリアお嬢様のカリスマスイッチが起動し、いつか見た少し怖いレミリアお嬢様がそこにいた。
アストレアちゃんは最初、そんなレミリアお嬢様に驚いていたのだけれど・・・レミリアお嬢様と話していくうちに、緊張の糸がほぐれたのかすっかりレミリアお嬢様に懐いてしまった。
あとで聞いた話だったのだが、彼女は”スカーレット家の血”を半分だけ引いているダンピール・・・半人反吸血鬼で、レミリアお嬢様から言えば遠い血縁の従姉妹に当たるとのことだ。どれだけ遠いのか、またどれだけ血が薄いのかは嗅覚も鋭いレミリアお嬢様がギリギリ気付ける程度の薄さとのことで、スカーレット卿やフランお嬢様は気付かないだろうと仰っていた。
ともかく、アストレアちゃんは行く当てもない上に、レミリアお嬢様も気に入られたようでそのままメイド隊で預かろうとしたのだが・・・残念なことにアストレアちゃんの自己申告で掃除や炊事は苦手で、戦うことには自信があるらしい。
その為、レミリアお嬢様とよく話し合った結果アストレアちゃんは
とまあ、
そして、これは散歩中にレミリアお嬢様が仰っていたことなのだが、
明日から、庭園迷宮の攻略を始めるとのことだ。
(登場した応募キャラクターについてご不満がある場合は、ぜひとも仰ってください!
なにも文句は言わずに、しっかりと受け止め、間違った・違和感のあるところは直します!)
ご応募してくださった皆様、誠に感謝です!素敵なキャラクターのご応募、感激の極みです!!
注意事項として、登場したキャラクターは当作品のキャラクターとなり、著作権は作者が持つことをご了承ください!(これも記載忘れです!申し訳ありません!!)
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☆ 92冊目 85ページ
転生93年と2か月29日目(火曜日、日中:晴れ、夜中:晴れ・満月)
庭園迷宮。
しかし、
ユーリが来てからというもの、ドラゴンの襲撃は予兆すら感じさせないが・・・いつまたドラゴンがおそってくるのか、それともドラゴン以上の存在が出現する可能性すらあるのを考慮し、レミリアお嬢様は庭園迷宮を攻略することを選んだみたいだ。
と言っても、メンバーは少数精鋭。
レミリアお嬢様を筆頭に、私と
普段から庭園迷宮に入っている
・・・そう。あくまで私たちが普段目にしていた庭園迷宮は、入り口に過ぎなかったのである。
庭園迷宮の第第2層・・・”廃屋敷”と名付けられたその第2層は、地中だというのに曇天が覆う薄暗い古屋敷であった。明らかに、幽霊が多く出現しそうなお屋敷に、レミリアお嬢様は少し怯えになられたのだが、攻略しない限り意味はないので攻略を開始することにした。
古屋敷の中は、ボロボロだったが・・・少し掃除や修理をおこなえば、
ホールに限っては
廃屋敷の調査を開始すると、道中でリビングアーマーに襲われるというハプニングは多々あった物の
ともかく、廃屋敷の攻略は順調に進み、廃屋敷について詳しく調べることができた。詳しいことはあまり分からなかったのだが、要約すれば古い姿の
ともかく、今回の攻略はこれぐらいにして帰ろうとしたとき・・・一人の
彼女の名前はマキシーネさん。
くすんだ緑色のボブカットで小柄で童顔な
なんでも、この廃屋敷に長い間住み着いているらしくリビングアーマーや獣をけしかけて襲わせたものの全部撃退されたから気になって会いにきたらしい。独特な言い回しと比喩用言で分かりづらかったけど、大体そんなことを言っていた。
そんなマキシーネさんと話すと、彼女はこの廃屋敷から連れ出してほしいとお願いしてきた。なんでも長い間一人でいてだいぶ退屈していたらしい。
さて、マキシーネさんが
ほとんどの探索メンバーがアレは罠だろうなと勘づいていたのかスルーしようとした途端・・・レミリアお嬢様が「宝箱!空けずにはいられない!!」とテンションを上げながらお明けになられた。様々な罠や仕掛けを警戒して、お明けになったアホレミリアお嬢様を私の能力で引き寄せたのだが・・・特に罠も仕掛けもあるというわけでもなく、何も起きずに沈黙だけが探索メンバーの中で存在した。
しばらく警戒していると、宝箱の中からもぞもぞと何かが・・・小さい妖精があくびをしながら出て来て・・・私たちを見てびっくりしてアワアワしだしていた。
・・・ともかく、敵意がないようなので私が代表して落ち着かせて話を聞くと、その子は詳しく話してくれた。
宝箱から出てきた妖精の名前は、トレスちゃん。背中にかかるぐらいのストレートヘアの銀髪とジト目なサファイアのような瞳を持つ子で、宝箱妖精*1と呼ばれる妖精でいつの間にか、この廃屋敷の宝箱から生まれたらしい。宝箱に関連しているからなのか、羽が鍵穴の形だったり、下半身が宝箱に入っているのにもかかわらず音もなく自由に宝箱に下半身を収めたまま移動したりしている。
詳しい話を聞いていると、彼女には”箱を操る程度の能力”を持っており、箱に限った話だけれど私より細かい操作のきく空間系の能力を持っていた。この能力は、ノワールが喜びそうだなと考え、彼女と話しそのままノワール隊でお仕事をしてもらうことになった。
そんなこんなで、廃屋敷を後にして庭園迷宮を歩いていると、いつの間にか探索メンバーに一人・・・いや、一体の
あまりにも自然に混ざっていたので気付かなかったのだが、混ざっていた
恐る恐る会話しようとしたのだが・・・その子は困ったように首をかしげるだけで一向に喋る気配がない。おかしいなと思い、よく観察すると体が陶器でできており口に限っては模様でしかなかった。それなら確かに声なんて出せないと反省し、収納空間からメモ帳とペンを渡して筆談してもらった。
彼女の名前はビビアン。パスタの国からやってきた、肩まで伸ばした銀髪と銀眼が特徴の背の低い女の子だ。
なぜ、いつの間に探索隊に混ざっていたか聞いてみると・・・パスタの国で製作者と喧嘩しプチ家出をしたのだけれど、方向音痴すぎて森に迷い込んでそのまま庭園迷宮に来てしまった。それでどうしようか悩んでいたら、私たちが見えてばれないように合流したとのことで・・・。なんというか、とんでもない方向音痴なんだなと思ってしまった。
とまあ、今日は庭園迷宮が思った以上に大きいということ、そして3人の新しい住人がやってきたことだ。
庭園迷宮が終わると思っていたか・・・?
残念、第2層が存在しました()
というわけで、新しく3人が
個性的なキャラクターを日記で再現するのは難しいためその内、焦点を当てたお話を掻きたいと思います!
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☆ 92冊目 86ページ
転生93年と2か月30日目(水曜日、日中:晴れ、夜中:晴れ・半月)
つい昨日、庭園迷宮には”地下”が存在し、そしてその地下には廃屋敷が存在することが判明した。過去に私が日記に書いた”ランダムダンジョン”という表現はあながち間違いではないのかもしれない。ともかく、新しい階層が存在したため、レミリアお嬢様は庭園迷宮の攻略を中止し、
それを聞いたレミリアお嬢様は、真剣な表情で悩みだし考えが纏まらないのか執務室に長い沈黙が流れ出してしまった。
見かねたフランお嬢様が解散の命令を出して、私にレミリアお嬢様のもとにライちゃんを連れてくるように言ってきた。
フランお嬢様いわく、最近は昨日はレミリアお嬢様が上手に休めていないらしく少し苛立っているとのことだ。そう言うことなら確かにライちゃんの出番だ。
というわけで、キッチンに移動しルージュに説明をしてからライちゃんをおぶってレミリアお嬢様のもとへ向かうと・・・レミリアお嬢様はフランお嬢様の手によって強制的に眠らされそうになっており*1、真剣な表情だったレミリアお嬢様は顔を青くして怯えていた。
そんな光景を見せられて、そっと扉を閉めようとも思ったのだけれど・・・レミリアお嬢様のことを考えグッとこらえて入室し、ライちゃんにレミリアお嬢様を眠らせるようにたのんだ。
ライちゃんは、私の頼みならばと引き受けてくれてレミリアお嬢様に能力を使った。レミリアお嬢様は最初抵抗なさっていたのだけれど、フランお嬢様が圧をかけてくれたおかげでゆっくりと眠った。
レミリアお嬢様が寝るのを確認してため息をついたフランお嬢様は、私にも仕事に戻るように言いどこか疲れた様子でパチュリーのいるヴワル魔法図書館へと向かっていった。
私のメイド長としての仕事を開始してほどなくすると、レミリアお嬢様の執務室から聞いたことの泣き声が聞こえて来た。思わず持っていた万年筆を落としてしまい、アイーダはびっくりして書類をぶちまけてしまったのだけれど、私が冷静に指示を出して暇なメイドにレミリアお嬢様の執務室に向かうように伝言を頼み、私は収納空間からハルバードを取り出して、一足先にレミリアお嬢様の私室に走った。
緊急事態の為、作法を無視して強引に執務室のドアを開けると・・・レミリアお嬢様は少しだけ哀愁を漂わせており、困ったような表情のライちゃんとそのライちゃんの影に隠れている初見の妖精がいた。
敵対している様子もなければ、むしろレミリアお嬢様が何かやったのかっていうぐらいその妖精はレミリアお嬢様に対して怯えていて・・・仕方なく、事情説明が出来そうなライちゃんに聞いてみた。
ライちゃんいわく、ライちゃんの影でおびえている妖精・・・クルムちゃんは、ライちゃんの妹分で生まれたばかりの臆病な妖精で、ライちゃんにだけ懐いている子。そのライちゃんにしばらく会っていないからこそ、能力の”入れ替える程度の能力”を使ってライちゃんの元・・・つまり、レミリアお嬢様の執務室に転移してきた。休まれていたレミリアお嬢様が、最初は敵と思い警戒していると・・・ライちゃんが同じような説明をレミリアお嬢様にして、レミリアお嬢様は警戒を解除なされたのだが・・・レミリアお嬢様が何か思いついた顔をした途端、クルムちゃんが大泣きしてしまいレミリアお嬢様がショックを受けてしまい
これはレミリアお嬢様も一概に悪いと言えない状況の為、とりあえずライちゃんにはクルムちゃんとレミリアお嬢様のお世話を任せた。
ちなみに、このままクルムちゃんを帰すのも憚られるのでライちゃんにお願いしクルムちゃんを説得してもらい、無事に
その帰り道に、騒ぎを聞きつけたメイドたちが折れたナイフやフライパンで武装してやってきたのだが・・・私が事情を説明して仕事に戻ってもらった。
私も、仕事に戻ろうとしたのだが・・・今度は
ともかく、彼女たちを雇うことにして一人一人自己紹介をしてもらった。
まずは、テレスちゃん。とある狼女の熱意がものすごかった子だ。
彼女は庭園迷宮が再調査され発見された廃屋敷・・・のさらに下の階層の湖のほとりに居た子で、とある狼女が偶然見つけて、偶然その会う前にあった戦闘で折れた剣を直してくれたとのことだ。
テレスちゃん自身の説明で分かったのだけれど、テレスちゃんは”形を変える程度の能力”をもっていて無機物なら何でも自由に形を変えられることができるらしい。それを聞いて、私は思わず小躍りしそうになったものの100年の中で積み上げて来たメイド長のプライドのおかげで醜態をさらさずに済んだ。(けれど、なぜか狼女たちは笑いを堪えていた。どうして?)*2
ともかく、テレスちゃんは絶対に確保した方がいいと思ったので、私の作ったクッキーでばい・・・巧みなスカウト術で雇うことに成功した。
次に、ブライニィちゃん。この子もとある狼女が絶賛してきた子だ。
その狼女は今日の夜勤務前のご飯を食べ忘れてしまったそうで、お腹を空かせたまま庭園迷宮の調査をしていたとのことだ。何回かお腹が鳴り、同僚から心配されていたもののさすがに今からルージュに頼んでしまうとちょうど休憩時間だからどんな顔されるかわかったもんじゃなく我慢していたらしい。
そんな狼女に彼女はやってきて、木の実と焼き魚をくれたらしい。それも、ブライニィちゃんの手作りで。その狼女は感謝して食べた・・・すると、味のついていないはずなのに妙においしく感じたので連れて来たとのことだ。
ブライニィちゃんに聞いてみたところ、彼女は”料理に愛情を入れる程度の能力”を持っていて、文字通りのことができるらしい。詳しいことは知らないけれど、普段より少しだけおいしく作ることができるとか・・・?
ともかく、ルージュが聞けば大喜びしそうな子だったのでこの子も同じように巧みなスカウト術で雇うことに成功した。
ここ3日ほど、雇用ラッシュが続いたわけだけれど・・・レミリアお嬢様はしばらくの間人は増やさないように指示された。
どういうわけか聞いてみると・・・スカーレット卿からの文書が手渡され、その内容を見るようにおっしゃられた。その手紙には、スカーレット家と長年敵対関係にあったミッドナイドブルー家の当主が宣戦布告してきたと書いてあり、スパイを警戒してしばらくは人を雇ったりしないように。(意訳)と書いてあった。
戦争・・・戦争かぁ。
100年も前とはいえ、人間だったころの記憶が戦争は良くない物と訴えかけている。
それに、これから先、仲間を疑うことに躊躇しそうにない自分に・・・少しだけモヤッとしてしまうなぁ・・・。
というわけで第2回キャラクター応募にて応募されたキャラクターが全員登場しました!
ご応募してくださった皆様!まことにありがとうございます!
また第3回キャラクター応募を、その内実施したいと思っていますので今回選ばれなかった皆様は、そちらでもぜひご応募お願いいたします!
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☆ 92冊目 87~91ページ
転生93年と2か月31日目(木曜日、日中:曇り、夜中:曇り・多分三日月)
レミリアお嬢様から、雇用禁止の礼が出て・・・メイド隊や警備隊、司書隊にも私にお話しなさったことをそのまま演説なさった。
最初は思うところのあったのだろう、何人かが何かを言いたげにしていたもののレミリアお嬢様の悲しそうな表情を見た途端に、グッと言葉を押し殺して頷いていた。
ともかく、これから先は、ミッドナイドブルー家のスパイや暗殺者に対して警戒をする必要がある。
メイド隊にはいつもの業務に加えてより一層の警戒を命じて、警備隊は庭園迷宮の調査を一度中止してもらい
幸いにも、メイド隊の中で上手く休めることができるので何とか回っては見ているものの・・・そう長くは続かないだろう。
アンナが頑張っていろいろな作業を肩代わりしてくれているけれども、それでも他のメイドに振り分ける仕事もブラックと言っても過言ではなくなってしまっている。
・・・さて、書類作業はアイーダに任せて私も作業をするとしよう。
せめて、私とアンナの二人で他のメイドたちの作業が楽になるといいのだけれど・・・。
=====
転生93年と3か月1日目(金曜日、日中:曇り、夜中:大雨・多分新月)
今日は珍しく、夜中に大雨が降った。
レミリアお嬢様とフランお嬢様が起床なさる16分くらい前から雨は降っていたものの、ゴウゴウと音をたてて降る雨は100年という私の妖精の一生でも見たことが無い。
さて、困ったことにこの大雨で
前者の天井の穴は、雨漏りとして
次に
この部屋は、何と言うか・・・何もない部屋だった。いや、正確には時計塔が動作するための機構と不思議な紅色の水晶が置いてあるぐらいで本当に何もなかったのだ。しかもその水晶も、ノワールは触らない方がいいと言って、やんわりと警告をしていた。前に教えてくれた、迷いの森の核が、あの水晶ということなのだろうか?
まあともかく、時計塔の部屋は担当ではないのだが魔術に関する専門的知識を持ち合わせているノワールが管理することになった。
さて、大変だったのは大雨だけではない。大雨とはいえ、メイド隊や警備隊、司書隊の仕事は変わらない。
私とアンナが死ぬ気で頑張った結果、メイド隊のお仕事がブラックではないと断言できる程度に減らせたのだけれど、その分アイーダに任せた書類作業が滞っていてアイーダから苦情が飛んできた。本来なら、その苦情に答えて人を増やして書類作業に当たりたいのだが・・・私とアイーダがしている書類作業は、
ちなみにレミリアお嬢様は今日のお散歩がよほど楽しみにだったのか、神妙な表情を浮かべて大雨が降り続けている窓の外を眺め続けていらっしゃった。
=====
転生93年と3か月2日目(土曜日、日中:雨、夜中:曇り・多分三日月)
今日のお昼まで降り続いていた大雨は、
レミリアお嬢様いわく、一点突破のアホみたいなバカ火力でもないと破れないほど強固な術式がされた壁だったらしいのだけれど・・・どうやら、倒れて来た樹が原因みたいだ。
レミリアお嬢様もフランお嬢様も「自然現象なら仕方ない」と仰られていたけれど、レミリアお嬢様が途端にカリスマスイッチを発動されて、私に特命の命令を下した。
レミリアお嬢様いわく、その自然現象のどさくさに紛れてこの
上手い事変身しているのか、馴染んでいるのか、隠れるのが上手いのか、そのどれかは分からないけれども少なくとも
私に下された特命とはその気配の持ち主を秘密裏に
私はその特命を受け、仕事をしながら怪しい人物を探し始めた。
=====
転生93年と3か月3日目(日曜日、日中:曇り、夜中:晴れ・半月)
昨日、レミリアお嬢様に特命を受け怪しい人物の捜索を開始したのだけれど、その人物の影も形も見つからない。
いや、正確にはメイド隊の何人かから見慣れないメイドが居ると教えてもらったのだけれど・・・。私の方は、その怪しいメイドと鉢合わせることはなく、お昼の業務を終えて夜の業務へと移行することになった。
夜の業務の間も、その怪しい人物の捜索をしていたのだけれど・・・やっぱりメイド隊の何人かが目撃するぐらいで私の方は会うことができない。
せめてその怪しいメイドが、アンナやブラウ、ルージュ、ノワール、マグちゃんと言ったメイド隊の中でも武闘派の面々に出会わないことを祈るばかりだ。
そう言えば、最近・・・オリビアちゃんに会っていないことを思い出し、オリビアちゃんに会いに行くとオリビアちゃんは立派に妖精メイドたちに勉強や常識を教え込んでいた。アンナからは何も聞いていなかったのだけれど、オリビアちゃんは妖精メイドの教育に力を入れていたみたいだ。
彼女の成長を嬉しく思いつつ、影から見守っているとオリビアちゃんに気付かれてしまい、そのまま妖精メイドたちの教育を手伝った。
追記
侵入者は、この日記が明日のことを書く前に始末した。中々手ごわい相手だったけれども・・・私も強くなっているみたいだ。
しばらくお休みを貰っていました!
何の前触れもなく数日間投稿しなかったこと申し訳ないです!
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☆ 92冊目 92~95ページ
転生93年と3か月4日目(月曜日、日中:曇り、夜中:晴れ・満月)
今日は、レミリアお嬢様のお散歩の日だ。
最近は何かとお散歩のできなかったことで、レミリアお嬢様もご不満だったのだけれども今日は無事にお散歩をすることができて上機嫌そうだ。普段なんかは、のんびりな足取りなのだが・・・今日は鼻歌交じりにスキップをしてお散歩なさっている。
そして、今日の拾いものは珍しいことになくて、私も少し驚いたもののレミリアお嬢様が上機嫌な様子を見て、特に気にすることなくレミリアお嬢様のお散歩の付き添いを続けて、何事もなく今日のレミリアお嬢様のお散歩は終わりを告げた。
お散歩が終わった後は、いつも通りのメイドとしての仕事で・・・特に変わり映えのしない一日だった。
=====
転生93年と3か月5日目(火曜日、日中:晴れ、夜中:晴れ・半月)
レミリアお嬢様が、珍しく風邪を患ってしまった。
昨日、あれだけ元気だったのに珍しいと思っていると・・・昨日の夜は、暑くて淑女らしからぬ格好で寝たとのこと・・・そりゃ、レミリアお嬢様でもさすがに風邪をひきますわ。
ちなみに、レミリアお嬢様が風邪をひくと、その風邪が治るまでの期間がそれなりに長い。レミリアお嬢様は風邪を拗らせやすい体質なので、仕方ないといえば仕方ない。今の時代、便利な治療法や薬は発見されていないし、開発されていないのだ。
一応、パチュリーやマルガさんに相談して、吸血鬼によく効く風邪薬を作れるかどうか聞いて、作れそうだったのでお願いはしたものの、それも3日ほどかかりそうだ。
その間の当主としてのお仕事はフランお嬢様がやることになった。
前々から、フランお嬢様は何か仕事を欲してはいらっしゃったものの、メイド隊や警備隊、司書隊の仕事を手伝っていただくわけにもいかないため、レミリアお嬢様に説得してもらい何とかしてもらっていたのだ。(最近だと、ユーリのお世話係ということもあり頻度は減っていたものの・・・)
まあともかく、今日からしばらくの間、フランお嬢様はレミリアお嬢様の代理・・・
それでもフランお嬢様は、負けじと・・・私に間違ったところは指摘するようご指示なされて、慣れない作業を少しづつ進めていった。(私の方の仕事は、アイーダとアンナに丸投げしたので問題はない。)
=====
転生93年と3か月6日(水曜日、日中:曇り、夜中:小雨・多分三日月)
フランお嬢様の当主代理2日目。
今日もフランお嬢様の当主代理のお手伝いをすることになったのだが・・・大事件が起きてしまった。
そんな私兵軍団を率いてやってきた吸血鬼は、当然だけど警備隊の(一応練習していた)入館チェックを受けてもらうために正門で止まってもらうことになったのだが・・・なんていうか、強情な奴だった。
その時、正門を担当していた狼女の一人がその入館チェックを担当したのだけれど・・・話は聞かないし、長々と訳の分からないことを唾を飛ばされながら聞かされたうえに、挙句の果てには招待状を持っていないそうだ。(そもそも
しかし、そいつは聞き入れないどころか私兵に無理やり正門を開けさせようとしたので、警備隊が総出動することになった。
この事態に、フランお嬢様は警戒を命令されメイド隊の非戦闘員はヴワル魔法図書館に退避、戦闘員はそれぞれ武装をして待機ということになった。一応、アンナにレミリアお嬢様のもとに居るように指示し、私は当主代理のフランお嬢様の後に続き・・・その吸血鬼に対応することになった。
・・・私が、フランお嬢様と正門にたどり着くと、警備隊とその吸血鬼の私兵軍団が一触即発の空気であり私兵軍団に限っては
長ったらしい礼賛が終わった跡、フランお嬢様が面倒くさそうに「それでご用件は?」と尋ねた。すると、その吸血鬼はこう答えた。
「結婚式の為に花嫁であるレミリア・スカーレット嬢を迎えに来た」
と・・・。
それを聞かされて、私もフランお嬢様も警備隊のみんなもポカーンとしてしまった。結婚、レミリアお嬢様が、この小太りな吸血鬼と・・・結婚?長年隣で公私を共にしてきた私も、私よりもレミリアお嬢様のプライベートをよく知るフランお嬢様も、そんな話してた?とお互いに顔を見合わせていた。
その吸血鬼はフフンと自慢げにしていたのだけれど・・・・・・やがて、フランお嬢様が大笑いをしだし、それにつられて私も笑い、警備隊のみんなも大笑いをしだしてしまった。
大笑いをしだした私たちを見て今度は今度は相手側がポカーンとしだしたものの・・・。やがて、激高し吸血鬼が怒鳴りだし・・・
それを見たフランお嬢様が、警備隊に迎撃命令を出し警備隊は大笑いしていたけれど、命令を下された次の瞬間には真剣な表情で武器を抜いて侵入者に襲い掛かっていった。
私も、収納空間からレミリアお嬢様から頂いた黄金のハルバートを取り出し戦闘態勢に映っておいたけれど・・・警備隊が躍起になってるし、狼たちの戦闘方法が中々にえげつないから見ているだけだった。
戦闘自体は、警備隊の圧倒的優勢のまま終わりを告げていた。
まあ・・・
・・・けれど、事件はその直後に起きた。
倒れたと思った、吸血鬼の私兵の一人がはたから見たら油断しているし弱いであろう私に向かって剣を持って突撃してきたのだ。
その程度、見えているし簡単に迎撃もできたのだけれど・・・その兵士を無力化した瞬間に、吸血鬼に撃たれてしまったのだ。持っていたのは、マキシーネさんのマッチロック式ライフルによく似たもの・・・まあ、銃であったことは間違いない。
撃たれたとはいえ、私は簡単に避けたのだけれど・・・残念なことに伸ばして三つ編みにしていた髪がちぎれてしまっていた。そしてそれが、フランお嬢様の怒りを買ってしまった。
私が、フランお嬢様の怒りに気付き、止めようとしたときにはもう遅く・・・・・・いつの間にか握られていた燃え盛るレーヴァテインでその吸血鬼の首を両断してしまったのだ。
その後、その死体は怒りのあまり狂気を再発させてしまったフランお嬢様に灰すら残らず破壊されてしまい、その姿を見た侵入者の私兵たちは我先にと逃げ出してしまった。
・・・・・・あとから、冷静になったフランお嬢様は怒りのあまり、殺しをしてしまったショックで、自分から地下牢獄に閉じこもってしまった。
これが、今日起きた大事件だ。
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☆ 92冊目 96~98ページ
転生93年と3か月7日目(木曜日、日中:曇り、夜中:曇り・多分新月)
フランお嬢様が地下牢獄に閉じこもってしまった日から翌日。
レミリアお嬢様は風邪をさらに拗らせてしまい、咳き込みが少しだけ昨日よりひどい。本当に普通の風邪だし、看病をしていればその内治ると思うのだけれど・・・。
レミリアお嬢様についてはまだいいのだけれど・・・問題はフランお嬢様だ。フランお嬢様は、昨日の一件以来、地下牢獄に自分から閉じこもってしまっている。
既に昨日のことは、私から手紙を出しスカーレット卿に伝えてある。
門番を担当してくれた狼女の子がその吸血鬼の人相書を書いてくれて、許可もなく
とりあえず、今日の当主としての仕事は溜めておくとして通常の仕事を始めるとする。
狼女の治療に一部を壊された正門の修理、その周辺の庭の整備・・・メイド隊の仕事もいっぱいだ。
=====
転生93年と3か月8日目(金曜日、日曜日:雨、夜中:雨・多分三日月)
レミリア様の病状は日に日に良くなってはいるのだけれど、本復帰には程遠い。フランお嬢様も・・・昨日は何も食べずに一睡もせずに地下牢獄に閉じこもってしまっている。
この事態が長く続くのは、正直よろしくはない。レミリアお嬢様はともかく、フランお嬢様の体調もだし・・
幸いにも今だ不安が広がっているわけでもないのだけれど、当主としての仕事はたまり続けている。
正門の修理と庭の整備は無事な警備隊のみんなに任せて、メイド隊の仕事を続けるとしよう。今日のメイド隊の仕事は平時より少し少ないぐらいだ。
ついでにこの前結構雇った人たちについて書いてみる。
まずはカートちゃん、ブラウ隊に雇用して仕事をしてくれている。
彼女の種族は、キャスパリーグと言う珍しい種族で過去のおとぎ話や伝承では厄災の獣と呼ばれる種族で、彼女はその遠い子孫らしい。古くのキャスパリーグの硬い毛皮や獰猛な性格を持ち合わせていない。
そのかわり、猫のように聴覚や嗅覚に優れていたり、猫の姿なら自由自裁に大きさを変えることができるみたいだ。
彼女と個人的にお話したのだが、語尾にニャーとつくのがかわいくてついつい頭を撫でてしまった。
そして彼女にここでやっていけそうか聞いたのだけれど、返答は素敵なものだった。
次にブライニイちゃんとテレスちゃん。
この二人は前々からのルージュとの約束で、ルージュ隊で雇用することになった子たちだ。
まずはブライニイちゃん・・・ブライニイちゃんはルージュ隊の副料理長に上り詰めておりルージュから太鼓判を押されるほど、料理の腕もよく調理スピードも悪くなく、美味しく作ることのできる貴重な人材とのことだ。ルージュは自分のことのようにブライニイちゃんの頭を撫でながら自慢していて、微笑ましい光景が広がっていた。
そしてテレスちゃん・・・テレスちゃんは下ごしらえをしたり食器を出したり洗ったりする役割で働いており、ルージュに感謝されるほど重大な仕事を任されていた。
それに、テレスちゃんの能力はこの
二人にも、ここでやっていけるのか聞いてみたのだけれど、すごくいい笑顔で答えてくれた。
今日の最後のメイドは、トレスちゃん。
運搬メイド隊・・・ノワールの隊に雇用して仕事をしてもらっている宝箱妖精という珍しい子だ。
彼女がお仕事が終わって休憩したところに、私が行ったのだけれどトレスちゃんは静かに近づいて少しだけ恥ずかしそうに抱き着いてきた。私はそれをハグし返し、甘えてくるトレスちゃんをめいっぱい可愛がってあげた。
彼女を可愛がっている間にノワールに彼女の仕事ぶりを聞いてみたら、ノワールは高く評価していた。なんでも、トレスちゃんのおかげで運搬作業の往復回数を減らせて、仕事が効率的になっているとのことだ。
トレスちゃんにも、ここでやっていけそうかを聞いてみると、慣れない敬語を使いながら嬉しい言葉を貰った。
ちなみにトレスちゃんの敬語はアンナが適当に「です」を付ければいいと適当を教えた結果らしい。あとでアンナをしばいて、オリビアちゃんに正しい敬語を教えてあげるように伝えておかないと・・・。
=====
転生93年と3か月9日目(土曜日、日中:大雨、夜中:雷雨・多分半月)
レミリアお嬢様の病状は、今日にでもよくはなるだろうけれど私が熱心に説得をした結果今日も静養を続けてもらっている。レミリアお嬢様は働きたがっていたけれども、無茶は禁物だ。
レミリアお嬢様のご様子はともかく、フランお嬢様のご様子は・・・ハッキリ言って芳しくない。アンナの必死の説得のおかげで少しだけご飯を食べてくれたものの・・・フランお嬢様は沈み切っておられるし、食べてる最中に泣き出してしまったらしい。
アンナが慰めて、何とか眠らせることに成功したのだけれど・・・しばらくアンナが付きっ切りじゃないとよろしくない。
さて、例の手紙についてなのだがついに返答が返ってきた。
スカーレット卿の文様のシーリングスタンプで封をされたその手紙は、レミリアお嬢様とフランお嬢様にあてたものではなく、私にあてたものだったので特に許可も取らずに読んだ。
返答の内容としては、例の吸血鬼はスカーレット卿の率いる吸血鬼一派の中でも重要な立ち位置の吸血鬼貴族の息子で、それを盾にやりたい放題をしていた厄介者だったらしい。おそらく、今回その吸血鬼が
けれど、それで許されるわけでもなく、その吸血鬼の父親は今回の件を受けてスカーレット卿から怒鳴りつけられるばかりか、その派閥内の権力を大きく没収、さらに
しかしそれよりスカーレット卿が心配していたのが、レミリアお嬢様とフランお嬢様のことだ。スカーレット卿に送った手紙に、レミリアお嬢様は風邪をひいてお休みしていること、フランお嬢様はショックを受けてしまい地下牢獄に閉じこもってしまったことを書いてあったのだが・・レミリアお嬢様に絶対安静するように伝言をするよう書いてあったり、フランお嬢様に対してはしばらくフランお嬢様の好きなようにさせるということが記載されていた。
とりあえず、手紙に従った方がいいので現状維持という形で進めることにした。
さて昨日から引き続き、今日は警備隊の様子を見に来た。
ちなみに
まずは、
最初に
けれど、アストレアちゃん自身が不器用ということもありパワーを完全に扱いきれず持て余してしまっているみたいだ。その為、
その次にマキシーネさんについて話し始めた。マキシーネさんは、基本敬語で仕事も熱心なのだけれど、言い回しが独特で色んな例えや皮肉を交えた言葉を口にするそうだ。
とくに初対面の際に「外面如菩薩、内面鬼夜叉。油の如し本能と清水のような理性・・・それらが紡ぐ魂、嗚呼・・・美しい。」と言われてびっくりしたとのことだ。
まあ、ともかく・・・マキシーネさんの実力は確かであり、
最後にメリーさんなのだけれど、ぶっちゃけ
それ以外の点に関しては、おっとりとしていてたまにお仕事をさぼってお昼寝しているらしい。(ここだけの話
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☆ 92冊目 99~101ページ
転生93年と3か月10日目(日曜日、日中:大雨、夜中:晴・満月)
レミリアお嬢様の風邪が治り、レミリアお嬢様が
たまりにたまった
レミリアお嬢様が、当主としてのお仕事を終えるとすぐさま地下牢獄に向かい、フランお嬢様とお話を開始する。
大扉越しにしばらくお話あっていたのだけれど・・・段々と言葉に棘が出てきて、私が静止したときには遅く、ご姉妹ともに本物の『グングニル』と『レーヴァテイン』を持ち出して壮大なケンカを開始してしまった。
もちろん、そんなことをは想定もしていないために私は投擲された際のグングニルの衝撃をモロに喰らい左腕を骨折し・・・
メイド隊や警備隊がレミリアお嬢様方の喧嘩に割り込んで仲裁しようにも、レミリアお嬢様とフランお嬢様の本気も本気に誰も割り込むことはできずに・・・最終的にブラウとルージュ、ノワールが連携してレミリアお嬢様とフランお嬢様を無力化することでご姉妹同士のケンカは終わりを告げることになった。
結果的に言えば重傷者は左腕を骨折した私だけで、あとは首を吹っ飛ばされて一度死んだアンナや避難する際に転んで擦り傷を作ったり、飛んできた小さな瓦礫が頭に当たったメイドだ。
ちなみに、今回の件でフランお嬢様は立ち直り、レミリアお嬢様もすっきりとした表情をなさっていたのだけれど・・・それはそれとして、約束を破ったし私以外のメイドもケガさせたり
P.S. 私の左腕は3週間固定したら治るとのことだ。その間、メイド隊としての仕事は書類作業以外にしないよう、アンナに釘を刺されてしまった・・・。
=====
転生93年と3か月11日目(月曜日、日中:晴れ、夜中:晴れ・半月)
左腕が骨折してたまに痛みがひどい時があるもの、メイド隊としての仕事はアンナにこってりとくぎを刺されてしまっているため、アイーダちゃんが「書類作業以外させるわけにはいかない」と監視の目を強めている。
別に、そんなに見なくたって仕事はしないよ。ただお菓子を作ったり、他のメイドたちとお話ししたりするだけだから。えっ、お菓子を作るのもダメ?そんなー・・・。
ま、まあともかく私の腕が治るまではメイド長としての仕事は副メイド長のアンナが請け負ってくれているのだけれど・・・正直、これ以上アンナが仕事したらまた死神メイドを通して死後の世界から苦情が来そうだよね・・・。
ともかく、今日はやることである書類作業は終わった為、ヴワル魔法図書館に勤める司書隊の様子を見ることにした。
司書隊はパチュリーが率いていて、その役割はヴワル魔法図書館の管理・運営。数えきれないほどの蔵書を管理し、併設した魔法工房で
そして、このヴワル魔法図書館も昨日の騒動を受けて創設前と比べるとマシなのだけれど、結構ぐちゃぐちゃになっていた。
避難中に頭に小さな瓦礫が当たったパチュリーは頭に包帯を巻いたままベンチに座って安静にしており、マルガさんが陣頭指揮を執りその指揮に従って小悪魔ちゃんやデフォルメ小悪魔ちゃん、ビビオンちゃんにクルムちゃんがヴワル魔法図書館を整頓している。
パチュリーから許可を取り、マルガさんたち一人一人に話を聞いてみることにした。
マルガさんに話しを聞いてみると、私が(一応の)上司ということもあってか仕事口調のはっきりとした言葉で天職だと伝えられた。なんでも、マルガさんの程度の能力が”魔法を操り、物を作る程度の能力”で特にドルイドの魔法と錬金術が使えて、おまけで
次にビビオンちゃん。
庭園迷宮第2層の期間中に合流した
ちなみに、司書隊はややこしいけれど一応メイドの扱いだ。本当はパチュリーに全権預けたかったのだけれど、レミリアお嬢様がそうおっしゃったので従っている。ついでに言えば警備隊に居るアストレアちゃんたちも実のところメイド扱いということだ。
ともかく、ビビオンちゃんにちょっとだけ時間を作ってもらい話を聞いてみると、筆談で機械的な会話ながらも楽しく生活ができているみたいだ。
特にパチュリーがビビオンちゃんの為に『ベシュヴェールング』解読の片手間に
最後にクルムちゃん。
生まれたばかりの幼い妖精だけれど、最近ではライちゃんと一緒でなくても泣かなくなった成長が著しい子だ。人見知りはまだまだだけれど、小悪魔ちゃんとデフォルメ小悪魔ちゃんと頑張って会話の練習をしているみたいで、そう言った面でも少しづつ成長しているみたいだ。
クルムちゃんにもお話を聞いてみると、クルムちゃんもここの生活が気に入ってくれたみたいでお休みの日にはライちゃんや他の妖精メイドの子たちと一緒に遊んだり勉強したりと、充実した毎日を過ごしているみたい。それに、小悪魔ちゃんが教えてくれたのだけれどお仕事の日は頑張ってくれているみたいで、小悪魔ちゃんからちゃんと甘やかすように言われた。仕方ないので、小悪魔ちゃんに許可を取ってからクルムちゃんをめいっぱい甘やかすことにした。
頭を撫でたりクッキーを上げたりしていると、様子を見に来たアイーダちゃんにその様子を微笑ましく見守られてしまった。
・・・まあ、悪い気はしないけどね。
ともかく、私がヴワル魔法図書館の視察(という名の様子見)を終えるとちょうどヴワル魔法図書館の整頓が終わったらしく本の山は棚にきれいに並べられて、元の図書館の様子がはっきりとわかるようになった。
ちなみに、レミリアお嬢様とフランお嬢様は昨日の反省として今日は丸一日執務室にこもりっきりで反省文を書いていらっしゃいました。
書き終わった反省文は私に提出され私がしっかりと熟読した後、ご姉妹仲良くお昼寝してしまったので、ブランケットをかけてお腹を冷やさないようにしてあげた。100年たったとはいえまだまだお二方も子供ということを、私も思い出せたいい日だった。
=====
転生93年と3か月12日目(火曜日、日中:曇り、夜中:曇り・多分三日月)
今日は、少しだけ目覚めが悪かった。
はっきりとは覚えていないけれど、悪夢を見てうなされてしまっていたようで・・・パジャマが汗でぐっしょりとしていた。
様子を見に来たアイーダがその様子を見て、今日は休むように進言してくれて・・・騒ぎを聞きつけたアンナが、休むように言ってきた。二人の言葉を受け入れて、今日は丸一日休むことにした。
お昼頃になると、妖精メイド隊の子たち・・・オリビアちゃんを筆頭に、ライちゃんやマグちゃん、ネペタちゃん、ブライニイちゃんに、クルムちゃんやテレスちゃん、トレスちゃんや教育を終えたばかりの妖精メイドの子たちが私の所に遊びに来てくれた。左腕を骨折している私が休むと聞きつけて、心配になってみんなで来てくれたみたいだ。
みんな来てくれたはいいものの、私の部屋は難しい本やこれまでのメイド隊活動書が置いてあるだけのつまらない場所であまり歓迎はできなかったものの、来てくれたみんなはそんなことは知らないと言って、遊ぶわけではなく私の部屋の掃除や整頓、ついでに棚に置いてあったクッキーを
結果的に言えば、みんなやがて眠ってしまったので私のベットの上に一人一人寝かせて風邪をひかないようにブランケットをかけてあげた。
この子たち、妖精メイドの全員が私を慕ってくれているのが・・・なんとなくうれしくて、少しだけ悪夢を忘れられた。
けれど、その悪夢では・・・どうしても引っかかることがあったのだ。
その悪夢に出て来た、一人の人間の少女が・・・どうしても頭から離れないのだ。
自分でもなんで悪夢に出て来た一人の人間の少女が気になるのか、正直分からない。
けれど・・・けれども、その少女だけはどうしても、ただの悪夢に出て来た知らない少女と切り捨てることはできなかった。
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☆ 92冊目 102ページ~105ページ
転生93年と3か月13日目(水曜日、日中:晴れ、夜中:晴れ・新月)
悪夢を見て、一日を休んでリフレッシュしたら今日の気分は最高だった。普段より多くの仕事を手早く片付けることができた。
左腕が骨折しているから私ができた作業は軽い作業だけだったけれど、みんながおそろかにすることが多い事を多くやっておいたのだ。
さて、話は変わるがレミリアお嬢様の当主としてのお仕事が劇的に低下した。
当主としての仕事が、私と
今の今までそう言った時間ができなかったという申し訳なさがあったのだけれど、仕事が減った理由はどちらかと言えば
それが、迷惑メールは届かなくなり本当にレミリアお嬢様かフランお嬢様のお手紙しか届かなくなった。
理由は不明だけれど、これまで
=====
転生93年と3か月14日目(木曜日、日中:晴れ、夜中:晴れ・三日月)
レミリアお嬢様方がご自身の時間を多く確保できるようになってからというもの、メイド隊の仕事は急激に無くなり始めた。かというのも、ようやく庭園迷宮から雇った妖精メイドたちの教育が終わりあちらこちらで人手があまり出すという、嬉しい悲鳴が上がりだした。
これまで、仕事が早く終われば次の仕事のためにわずかな時間で効率的に休むという地味に面倒でストレスの溜まる生活だったのだが・・・これほどの人手が増えたのなら、これまで寝る間も惜しんで働いていたアンナが1週間惰眠をむさぼってもかまわない程度には問題はなくなった。
そのおかげで、メイド休憩室にはお茶会や談笑だったり、部屋においてあるチェスやボードゲームを楽しむメイドが居たり、私の膝を枕にして眠るブラウすらいる。
これまで交流のなかったメイドたちとの交流も盛んになり、団結力が深まった気がする。
さて、メイド隊の余った人(またはワーカーホリックな人)ではただ遊ばせるというわけでもなく、時折警備隊と司書隊の仕事を・・・より正確に言うのであれば、警備隊が管理している畑の手伝いをするように指示してある。事実、アンナとルージュは暇をつぶすよりもそっちの手伝いを多くしていて、
と、ここまで良い事尽くめだというのに私はどうしてもいやな予感を感じていた。
例の悪夢を見たというのもそうなのだけれど・・・ここの所、いつの間にか見慣れないメイドがうろちょろしていることがあるのだ。
嫌に自然と馴染んでいるせいで、私も気づくのに時間はかかったものの特に害があるというわけでもないし、ただ他のメイドと談笑しているだけだ。
けれど、会話している内容を尋ねようとそのメイドと話していた妖精メイドや毛玉メイドと話してみても首をかしげてしまい、そんなメイドと会話した覚えはないという答えが返ってきた。
流石に、今日は私もゆっくりしたい日だ。
今日の所は、見逃すことにするけれど・・・明日、私はそのメイドと個人的な対話をする必要がある。
=====
転生93年と3か月15日目(金曜日、日中:晴れ、夜中:曇り、多分半月)
今日は、レミリアお嬢様のお散歩の日。
久々のレミリアお嬢様とのお散歩は、私も知らず知らずのうちに楽しみにしていたらしく、アホ毛が動いているとあんなに指摘されて恥ずかしい思いをしてしまった。
ともかく、久々のレミリアお嬢様とのお散歩は拾い物や拾い者をすることはなく歩き慣れた道を歩いて無事に
そう、珍しくレミリアお嬢様が拾い者や拾い物をしなかったのである。喜ばしい事ではあるものの、先日の見慣れないメイドの一件と言い珍しいことが起きると、どうも勘ぐってしまう。
そうだ、見慣れないメイドの件なのだが・・・私が話しかけられた途端、そのメイドは数少ない
何て早い逃げ足なんだろう・・・むしろ、あの戦力過剰と言われてもおかしくない警備隊からよく逃げ切ったな・・・。
そして、この一件はレミリアお嬢様に緊急会議にて報告を行い、レミリアお嬢様の号令の元
レミリアお嬢様には私と私が選んだ妖精メイドが護衛として付き、フランお嬢様にはアンナとオリビアちゃんとマグちゃんが護衛として付き、警備隊は常に武装状態の姿で警備を行い、メイド隊にも希望したメイドに武装を配るほどの厳重な警戒態勢が敷かれることになった。(一応、司書隊ももし戦闘になった際に非戦闘員の避難所となれるように準備を進め始めた。)
これで、いつでも襲撃ドンとこいと言える態勢なのだが・・・それでも、私の嫌な予感は首筋を焦がすようにくすぶるのであった。
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☆ 93冊目 1~4ページ
転生93年と3か月14日目(木曜日、日中:晴れ、夜中:晴れ・三日月)
今日から新しい日記帳だ。前々から用意していたけれど、やっとこっちの日記を使える日が来た。新しい日記に、今日の一日を書くのは、何度経験してもなぜかワクワクするというものだ。
さて、今日はというものの厳戒態勢が敷かれているからか、特段みんながピリピリしているということ以外特に書くことはない。だからと言って、新しい日記帳に一番最初にかくことがこんなに短くては意味がないので、とりあえずアンナと模擬戦したことを書こう。
今日は、私とアンナで模擬戦をしたのだけれど、結果を言えば僅差で私が負けてしまった。
惜しいところまではいったとは思うものの、私が左腕を骨折しているからアンナが手加減してくれたというのもあるだろう。もし万全だったのなら、アンナとの模擬戦は僅差にすらならないはずだ。
アンナとの模擬戦の後は、アンナとお風呂に入ることになったのだけれど・・・アンナがどこかよそよそしい態度だったので落ち着かせてから体を洗ってあげた。アンナは最初、「自分でできるっす!」とは言っていたけれど、途中から静かになって恥ずかしがりながらも私に隅々まで現れていた。(さすがにデリケートな部分は自分でやってもらったけれど。)
お風呂に入った後は、魔法図書館へと足へ運んだ。デフォルメ小悪魔ちゃんに呼ばれたのだけれど、行ってみると魔法薬を飲むことになった。
なんでもパチュリーとマルガさんの作った魔法薬で怪我が治るらしい、本来なら自然治癒で直した方がいいとのことだけれどレミリアお嬢様が作るように指示して出来たら私に飲ませるように指示していたらしい。
怪しみながら飲むことにしたのだけれど、魔法薬はとても苦くて途中で吐きそうになってしまった。けれど、何とか全部飲み干すと折れていた左腕がみるみると治っていきそのままギプス無しでも動かせるようになったので、二人にお礼を言いその後、魔法図書館を後にした。
左腕が無事に治ったことはレミリアお嬢様に報告したし、今まで苦労を掛けたみんなにもクッキーとかお菓子とかを作ってあげて労わった。
直ったばかりでそんなに動くなと、アンナとブラウとルージュとノワールに叱られてしまったけれど、心配してくれるのがうれしくてついへらへらとしてしまった。
=====
転生93年と3か月15日目(金曜日、日中:曇り、夜中:晴れ・半月)
今日はレミリアお嬢様のお散歩の日だ。以前より、ご自身の時間を確保できるようになったレミリアお嬢様なのだけれど、この時間だけは譲る気はないらしい。けれど、以前よりご自身の時間を確保できるようになったということもあり、月曜日にお散歩はしないようにするらしく金曜日にのみ、お散歩をするようだ。うれしいような・・・それはそれで、少し寂しいような。けれど、私はレミリアお嬢様の専属メイドだ。レミリアお嬢様の決定には従う。
ともかく、今日のお散歩では久しぶりに落とし物を拾うことになった。いつも通りに高そうなツボをお拾いになられたので私の能力で回収しておいた。
それにしても、レミリアお嬢様の悪癖はどういう原理で発生しているのだろう。ちょっと気になったのだけれど、私はそう言った知識に詳しくはないので何もわからなかった。それに、こんなことで頭を悩ませていると余計に大きな拾い物をする気がするので早急にやめておくことにした。
レミリアお嬢様のお散歩が終われば、今度はティータイムのお時間だ。
レミリアお嬢様とフランお嬢様はお気に入りの整備された庭園が一望できるバルコニーに移動し、少量の血を混ぜた紅茶と私の作るマカロンやカップケーキを召し上がりになる。これも、今まで日記に書くことでもないので書いていたなかったのだけれど、レミリアお嬢様がご自身の時間を確保できるようになってから行われることが多くなった。これのおかげで、基本的に警備任務だった吸血鬼メイド隊に奉仕作業が追加され彼女たちは両手を挙げて喜んでいた。
こうして、お茶会を開いている時にのフランお嬢様はとても楽しそうに笑顔を浮かべてレミリアお嬢様と歓談なさっている。私が覚えている限り
だから、こうしてこのお二方が仲良く笑顔でティータイムを楽しんでいる様子を見て、私も自然と笑みがこぼれていた。それを、死神メイドに指摘され少しだけ恥ずかしかったのは内緒だ。
=====
転生93年と3か月16日目(土曜日、日中:晴れ、夜中:晴れ・満月)
今日は、メイド隊の仕事を早めに片付けて警備隊の様子を見ることにした。
普段警備隊は庭園の整備だったり畑の手入れだったりしながら、のんびりと
警戒態勢や厳戒態勢の引いていない時の
さて、厳戒態勢でキリッとしており少しピリピリしている警備隊だけれど私が見ていた限りでは特段様子は変わっていない。
しいて言うなら、ツチノコのロンが少しだけぷっくりと太っているようだ。
私と
ロンはショックを受けた表情?を浮かべて項垂れていたが、あのまま太っていたらどうなっていたのだろう・・・。
=====
転生93年と3か月17日目(日曜日、日中:晴れ、夜中:晴れ・半月)
今日は、特に何事もなく魔法図書館の様子見に―――
(書きかけのまま終わっている)
「おい、バケモノ。そろそろだ、準備しろ。」
「・・・。」
「おい、聞いてんのか!?準備しろって言ってんだよ!!」
「ぇぅ・・・。」
「ちっ、こんなのが教会の秘蔵なのかよ。こんなガキ何の役に立つってんだ。まあいい―――
―――
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△&□ 紅魔館の戦い・前
注意
グロテスク描写注意!(主にアンナ)
コツコツコツコツ・・・
「あ、メイド長!!」
私がハルバードを手に足早に廊下を歩いていると、オリビアちゃんが駆け寄ってくる。どうやらオリビアちゃんも正門の爆発音が聞こえたのか、すでに武装を整えていた。
「状況はどうかしら?」
「は、はい!現在の状況をご報告いたします!!現在、正門がカタパルトから投射された爆弾により破壊されて、中庭ではすでに警備隊と侵入者たちと激しい戦闘が繰り広げられています!」
「メイド隊の状況は?」
「す、すでにレミリアお嬢様とフランお嬢様、そして非戦闘員は手筈通りにヴワル魔法図書館に避難なされました!で、でもお嬢様方は眠っている棺桶事運び出したので、その内騒動を聞きつけて目を覚ましてしまわれるかと!」
オリビアちゃんが報告してくれたおかげで大体のことが把握できる。
現状、戦況はいい方でも悪い方でもないだろう。紅魔館に侵入されている時点で悪いが、レミリアお嬢様方がヴワル魔法図書館に避難しているということはいいことだ。
「・・・各メイド長たちは?」
「アンナ副メイド長は本館メインホールにて戦闘中、ブラウ清掃メイド長は別館を奪還中、ルージュ調理メイド長は中庭で、ノワール運搬メイド長は地下室の防衛中です!」
既にアンナたちも行動しているようだ。これは、私が一番出遅れてしまって少し申し訳ないな。
「いたぞ!紅魔館メイド長だ!!」
「ここで奴を殺せば、メイドどもの士気もガタ落ちする!!」
「やっちまえ!!」
何人かの兵士が武器を構えて私を殺そうと、突撃してくる。
オリビアちゃんが咄嗟にショートソードを構えるけれど、私はオリビアちゃんを庇うように前に立ちハルバードを軽く構え、オリビアちゃんに別の所へ行くように手で指示する。
オリビアちゃんは最初は嫌という風に私を見上げたのだけれど、オリビアちゃんに優しく微笑みかけた。納得してくれたのか、私がやってきた方向へと飛んで逃げて行ってくれた。
これで、オリビアちゃんの前で少し暴力的になっても問題はなくなったわね。
「1人、2人、3人・・・5人ね。」
相手の人数を数えて、能力を使用する。
彼らの進行方向に、黄金のうねりを出現させ彼らが通過しようとすると同時に、うねりから高速で槍を突き出す。彼らはそれに反応できずに、何故やられたのか分かっていないマヌケ面のまま死んでいった。
だけど、息をつくまもなくすぐにフルアーマーの騎士が斬りこんできた。その騎士の一撃をハルバードで受け止めてから、魔力で筋力を強化し騎士をのけぞらせる。そして、ハルバードの斧の部分をその騎士の足元に向けて振るうとのけぞっていて避けられない騎士の脚は簡単に斬り飛ばせた。
ガシャン!と大きな音をたてて倒れた騎士の胸に、できるだけスマートにハルバードの槍の部分を2回突き刺し、とどめを刺す。
「弱いわね。」
私がソレだけ強くなったということもあるのだろう。アンナやブラウに時間を作ってもらって鍛錬に付き合ってもらってよかったわ。
と、私が感嘆に浸っているとおまけが次々とやってくる。騎士が3人、兵士が15人・・・あら、武器を持ったシスターが4人ほどいるわね。なるほど、教会の戦力も来ているというわけね。
それにしても、あのシスター随分と美形ね。それに、シスターってことはもちろん体も清いはず。そう言えば、吸血鬼メイドのエリカが吸血鬼メイドの増員が欲しいなって言ってたっけね。
そう言えば、吸血鬼メイドの子たちは大丈夫かしら。
「あぁ、心配だわ。誰かが怪我するとはいえ、だれも怪我をしていないといいのだけれど・・・。」
「我々を前に心配事とはずいぶんと余裕だな!お望みどおりに殺してや―――」
つい独り言がこぼれてしまうが、途中でフルアーマーの騎士の一人が何か言ってきてむかついたので、黄金のうねりを出現させて、そのうねりから斧を落として頭を真っ二つにした。
それにより、悲鳴が上がり・・・シスターの一人がアーメンと十字を切った。
「・・・
私が、ニッコリと笑顔を浮かべてあげると
=====
side:アンナ
=====
紅魔館の襲撃が始まったというのもつかの間、中庭から激しい戦いの音が聞こえ・・・確認する間もなく紅魔館本館のメインホールに侵入者がやってきた。見覚えのない兵士と騎士だったとはいえ、その後ろで武器を構えているシスターたちには覚えがあった。隠すも何も、あのシスター服は私が来ていたものと全く同じものだ。
厳戒態勢だった故に持っていた双剣を引き抜き、メインホールに侵入した集団に襲い掛かった。とりあえず、汗臭い兵士と騎士は斬り殺し、アタシから見ても美人ぞろいなシスターは気絶だけさせて、後から来た妖精メイドに縛らせて連れて行かせる。吸血鬼メイドのエリカが吸血鬼メイドの増員が欲しいっていってたっすからね~。
そして、次から次へとひっきりなしに突破された玄関から侵入者が入ってくる。さすがの不死身のアタシでも体は一つの為にどうしても通してしまうのは許してほしいっすねぇ・・・。
「裏切り者の葬儀屋!元人間同士のよしみだ、今投降すれば異端審問にはかけずにおいてやろう!!」
大斧を持ったブラザーの言葉を無視して双剣を逆十字に見えるように構える。
ある意味、ブラザーに対する挑発行為で・・・相手も私がしたことに気付いたのか顔を真っ赤にして、怒りだした。
「コロセェッ!我らが神に反逆した裏切り者をコロセェッ!!」
激高した指示だが、仮にも聖職者が言ったのだ。その怒りは、他のシスターや騎士、兵士に伝播し、私に対して大きな怒りの塊が叩きつけられる。この程度、ブラウやルージュと戦ったときの方が怖かった!
向けられた怒気を気にせず、双剣を構え直して敵の塊に突撃する。
一番先頭に居た兵士に双剣を突き刺し、そのまま横に薙ぐ。見事に真っ二つになった兵士にかまわずに、その右隣に居た兵士に再び剣を突き刺しそいつを軸に蹴りを繰り出し、おまけにナイフを飛ばす。
何人かの胸や眉間にナイフは刺さるものの、数人に運悪く避けられてしまい私がピンチに陥る。
軸にした兵士から剣を抜こうとするけれど剣が突き刺さった兵士は、意地と気合で剣をつかんで離さない。
そのまま私は煽ったブラザーと何人かの騎士によってめった刺しにされ・・・
「断罪だ!裏切り者め!!」
首を斧で落とされ、そのブラザーの靴底が見えたところでそのまま意識を落とした。
「ハハハハッ!裏切り者を殺してやった。次は、吸血鬼だ!!隈なく探せ!!」
アタシの首を落としたブラザーの声が聞こえた。どうやら頭を潰されたみたいで、メインホールにはアタシの
それにしても首を斬り落とされたのは、この前のレミリアお嬢様方の大げんかの時以来・・・いや、アレは頭を吹き飛ばされたのであって斬り落とされたのとは違うか・・・。
「やっぱり、頭を斬り落とされたりするのは痛いっすね~。」
「はははっ、これは祝福された武器とはいえ斧だ!斬り落とされていたくない・・・訳が・・・・・・。」
あ、やっべ・・・つい声に出しちまってたっす。
まあ、声に出してバレちまったらしかたないっす。ちょっと小芝居でも打ちましょうかねぇ。
「えーんえーん、アタシの死体が変態どもに凌辱されるっす~。気持ち悪いっす~。神がそれを許すとかやっぱり裏切って正解だったっす~。」
「な、ななな、何故貴様が生きている!?お、俺は確かにお前の頭を踏み潰したはずじゃ!?」
バッとそのブラザーがアタシの前の頭があった場所を見る。
確かにそこにはアタシの前の頭の残骸が残っているし、まだいろいろなものがドバドバと流れ出している。いやー、気持ち悪いっすねぇ。
殺したはずの人間がケロリとして話しかけている。そんな恐怖は、普段からなれている人間であっても怖いだろう。
「残念だったっすね。じゃあ、今度はお前たちが死ぬ番っすよ~♪」
「ふ、ふざけるな!お、お前ごときに俺たちが負けるものか!!」
アホのブラザーが吼えて、斧を構えるが・・・それよりもアタシは奴らの合間を縫い、男を切り捨て、女は打撃で気絶させた。
「さようなら、愚かなブラザー。」
「ばか・・・な」
さーて、次の相手は
「おチビちゃん、迷子かな?」
「・・・・・・教会の、裏切り者。葬儀屋、アンナ・ゲールマン。」
フードを深めに被った小さな女の子。
随分とかわいらしくて、フードからのぞかせる青い瞳はアタシよりも澄んだ色でわずかに見える髪色は明るい銀色だ。
アタシが教会に所属していたころでは、全然見なかった女の子。でも、敵意を向けているってことは間違いなく侵入者だ。
「できればこのまま、帰ってほしいっすねぇ。」
「・・・・・・あなたなら、私の時間を理解してくれる?」
「・・・・・・は?なにいっでぇッ!?」
一瞬で、私の喉だけでなく身体中に見覚えのあるナイフが突き刺さった。
瞬きした瞬間には、もう目の前でナイフが飛んできていた。なんだ、何をされた!?
(瞬間移動や高速投射でもない・・・それに、あの子が動いた様子もあまりない!?)
自分で首を斬り落として、仕切り直し。
「・・・こいつは、マジになった方がいいかッ。」
「・・・・・・理解してくれない、か。」
アタシは双剣を構えて、目の前の
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□ 紅魔館の戦い・中編
side:ブラウ
紅魔館が襲撃され、敷地内全体で争いが起きている中・・・私は別館へと何人かの妖精メイドを引き連れて向かっていた。
比較的早い段階で、別館は落とされてしまい・・・別館で寝ている吸血メイドたちや、休憩するために別館に戻った妖精メイドと毛玉メイド、そして別館清掃のためにネペタと数人の妖精メイドが避難しているのかどうかさえ不明だったが、命からがら別館から脱出してきた一人の妖精メイドにより、ネペタが別館に居るメイドたちを纏めて別館の一番広く、扉が頑丈に作られた部屋・・・休みのメイドたちの憩いの場となっている
その妖精メイドをヴワル魔法図書館に避難させたのち、戦うことを希望した清掃メイド隊の妖精メイドを連れて別館へと急ぐ。
(いかに頑丈な
別館にいた子達の祈りつつ、道中で騎士や兵士を斬り殺しながら急ぐ。別館の扉を蹴破り、そのまま
「ぶ、ブラウメイド長?ここまで来てなぜ泊まるのですか?」
「なにかいるぞ、警戒してくれ。」
困惑した妖精メイド達だったが、私の言葉を聞いて怖がりながらも槍を構えた。
いつも通りの別館内部ではあるものの、奪われたと言う割にはあまりに綺麗すぎる。外にはわんさか騎士や兵士に聖職者も混ざっていたというのに、ここはあまりにも静かすぎるのだ。
(嫌な予感がする。)
長年の私の勘が警鐘を鳴らしている。今すぐ部下たちを逃がせ、さもなければみんな死ぬと。
「テミア*1みんなを連れて外に出て、敵が入ってこないようにしてくれ。」
「えっ、ブラウメイド長お一人で行くのですか!?そ、そんなのあぶな―――」
「早くっ!」
少し声を荒げさせ、テミアたちを別館の外に出させる。理由はなんでも良かったけれど、少なくともテミアたちも分かってくれるはずだ。
テミアの指揮に従って私についてきた妖精メイドたちが別館から出ていく。最後の妖精メイドが別館の玄関ドアを閉めた途端、メインホールに1つの拍手がひびき始めた。
「いやはや、なんとも美しき自己犠牲精神。貴女がゲロ以下の吸血鬼のメイドでなければ思わず女神だと崇めてしまいそうですね。」
「・・・お前は誰だ?」
メインホールの柱の影から、優しそうな神父が出てくる。しかし浮かべられている柔らかな笑みの裏側にある気持ち悪いぐらいの悪意と欲望が私に向けられている。
「これはこれは失礼致しました。
「何の用だ?」
目の前の男を警戒しながら、ショートソードを構える。
アンセルと名乗った男は私の様子を気に欠けることなく、不気味なほど柔らかな笑みを浮かべ続けている。
「
「なるほど・・・神父の風上にもおけない小児性愛者か。」
「おぉっと勘違いしないでいただきたい!
―――貴女には死んでいただきたい。」
急に発狂したと思ったらいきなり冷静になり、殺意と同時にナイフを投げてきた。警戒していたのもありアンセルの攻撃をかわすことはとても簡単だ。私に当たるものだけを的確に切り払い、奴の懐に一歩で踏み込み、ショートソードを振りぬく。しかし、人を斬った手ごたえはなく、視線を向ければ残像のみが斬り裂かれていた。
(・・・超スピードか?)
後頭部狙いで飛んできたナイフを伏せてかわして、そのまま背後にショートソードを振るう。
一撃、二撃、三撃、甲高い金属音とビリビリと衝撃が手に伝わる。しかし、三撃目でアンセルに大きな隙が生まれ、その隙をついて攻撃する。だが、アンセルは人間とは思えないほどのスピードで体勢を立て直し、そのまま距離を取った。
「超スピードだな。」
「こうも早く
「・・・生憎だが、私は変態に与する気はない。」
「そうですか、残念です。死ね。」
再びアンセルがナイフを投げてくる。そのナイフをかわしつつ、アンセルの懐に飛び込みショートソードを振るうが、超スピードの程度の能力でかわされてしまう。
素早くショートソードを振るう私に対して、能力を使い優位に立つアンセル。やがて、アンセルが私に隙を見出したのだろう。ショートソードを構え直す一瞬の隙をつかれて蹴り飛ばされてしまう。
何回か床をバウンドした後、空中で体勢を立て直してショートソードを構え直す。口の中に血の味を感じ、溜まっていた唾と一緒に吐き捨てる。
「あぁ、そう言えば。この紅魔の総メイド長・・・彼女の体躯はまるで少女ですよねぇ。」
「・・・・・・何が言いたい?」
戦いの間の小休止と言わんばかりにナイフを曲芸師のようにジャグリングしつつ話し始める。
確かにメイド長の身長はメイド隊の中でも小さい方だ。妖精メイドたちと比べてもその身長は同等だったり少しだけ大きいだけだったりする。だがメイド長がメイド長たる所以は、そんなもので測れるものは何一つないはずだが・・・。
「彼女の容姿・・・実を言うと、一番
―――汚らわしい。
彼女の大人びた表情は何とも吐き気を催す。あのような少女的で可愛らしい顔は幼子のように曇りなき万遍な笑みと、子供らしい表情がよく似合うのですよォ。
ですから、貴女を殺しこの紅魔の妖精たちを保護した後・・・彼女は
彼女を妻として愛するのでしょうか、それとも自らの娘としてかわいがるのでしょうか!?あぁ妻であっても娘であっても捨てがたい!!どちらもン我が主がお与えになった幸せには間違いンなぁいでしょう!!妻であれは大きな町の教会で夫婦で毎日を穏やかに過ごし、子供を6人程作りそして町中の孤児たちを集めて
・・・自らの妄想でトリップしている
こいつは、あろうことか私たちのメイド長を汚らわしいといったばかりか・・・自分勝手な妄想を長々と垂れ流し・・・挙句の果てには、本人の意思など関係はないと言わんばかりに未来を思い描いている。
もうやめた、こんな
私は持っていたショートソードを投げ捨て、
「おや、投降なさるおつもりですか?いいでしょう、素直に首を差し出していただけるのであればせめて苦しみを与えずに殺してさし上げます。我が主も反省さえすればすべてお許しになるで―――」
「―――黙れ。」
「―――ガヒュッ!?」
一瞬で
「ガッ・・・グァ、イ、息がぁああ・・・・・・」
「・・・お前に一ついい事を教えてやろう。」
今まで、掃除の邪魔だからとしまっておいた妖精の羽を出現させる。
「私も妖精だ。」
「キ、貴様ぁ!貴様が妖精であるものかぁッ!穢すな・・・私の妖精像を穢すなぁッ!!」
「私が許可するまで喋るな。」
ギリギリと、首を掴む手の力を強めて息をさせないように脅す。
「・・・では、私はどんな妖精だと思う?」
必死に抵抗し、私の手を殴ったり引き剥がそうともがく
「や、やめて・・・やめてくださいっ!ど、どうか、どうか命だけは!!いのぢだげはぁあああ!!!」
「・・・貴様が彼女を妄想で穢した時点で、貴様が助かるわけがないだろう?」
私の持つ能力を使い、
迷いの森の内部に設置された、人間どもの拠点にでも逃げたのだろう。逃げなければ、他人に迷惑をかけずに済んだというのに・・・やはり人間は愚かだ。
「さて・・・今度の人間は何人死ぬのやら。」
そう考えると、不思議と
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□ 紅魔館の戦い・中編その2
side:ルージュ
[ズァッ!ザシュッ!!]
「ば、バカな!相手はたった一匹の妖精だぞ!?なぜ殺せない!?」
「こ、こいつ・・・俺たちの攻撃すら利用して・・・ぎゃぁッ!?」
「い、一斉にかかるな!同士討ちを狙われているぞ!!」
久しぶりに、この大剣を手にして一対多数をしているわけだけれど、全然自分の腕が衰えていないことに驚きとため息が出る。
どこまで行っても私はそうなのだということを改めて再認識してしまうけれど、中庭での戦いに集中するために頭の片隅に・・・いや、頭からその考えと思いを捨てることにした。
「クソッ、こいつだけでも厄介なのに!」
「早くこいつを殺せ!さもないと俺たちが危ないんだぞ!?」
「言われなくとも殺せるなら殺してる!!」
私が一番突出してこうして敵に囲まれているわけだけれど、この状況に関しては私は得意中の得意なので苦戦の一つもしないと思う。問題は、私たちの後から入ってきた妖精メイドたちやメイド長が採用したメイドたちだ。彼女たちは仮にもあまり戦闘経験はないは―――
「うわあああ!アントニーが首の骨を固められて折られたぁああっ!!」
「こっ、こっちの半吸血鬼は妙な格闘技を使うぞ!」
「な、ナイフの嵐が!に、逃げろぉおおおおっ!!」
「ヒィイイッ!!し、死んだ奴らがおそってきたぉおおっ!!」
「くっ、くそぉっ!小さい猫にラット卿が殺されちまった、誰か指揮を!!」
「な、なんだあの人形!?全身が武器だぞ!?」
「よ、妖精が・・・妖精が笑顔であらあら言いながら襲ってくる!!ぎゃぁあああああっ!!」
「こ、この幽霊・・・銃を持ってるのに近接でぶっ放してくるぞ!!気を付け、カヒュッ」
「け、毛玉の津波だぁああっ!」
「こ、この妖精ども連携してくる!逃げろ、アンディ!アンディーーッ!!」
「チクワダイミョウジン」
「誰だ今の!?」
あっちもあっちで中々阿鼻叫喚の様子みたい。(目を逸らしてしらんぷり)
正直、戦闘慣れをしている連中ならともかく初戦闘の妖精メイドたちもいたから心配だったけれど・・・心配は無用だったみたい。
広がっているカオス後輩や部下たちが頑張っている姿から目を離し、剣を振り上げながら突撃してきた兵士を切り捨てる。それを皮切りに、複数人の兵士が一気に私を殺そうと襲い掛かってくる。
一人を斬り捨て、二人目の首を蹴って折り、3人まとめて斬り捨てて五人目、斬られて崩れ落ちる死体に紛れて騎士が突貫してくるが、冷静に左手でグーを作って兜をそのまま殴りつける・・・威力が強すぎたのか、殴った騎士の首が吹っ飛び一人の兵士の胴体にめり込む。胴体はそのまましばらく直進し、運の悪い一人の兵士が騎士が持っていた剣に貫かれた。
大剣を担いで、私を囲む兵士を見渡す。私に見られた兵士たちは、視線が合うと顔青ざめざせ身をぶるりと震わせている。そんなに怖ければ逃げればいいのに、逃げようとはしない。教会に何か扇動されて正義のために行動していると思い込んでいるのだろう。
「はぁ・・・面倒くさいなぁ~。」
「じゃあ、抵抗するな!」
「それはまた違う話だと思うよ?誰だって、死にたくないわけだし。」
「俺らはそうだな、だがお前らは死ね!この悪魔の手先が!!」
「ひどい言いよう・・・泣いちゃいそうだ。」
騎士の一人の横暴な言葉にウソ泣きをしてみる、兵士の何人かは一瞬だけ体の動きを止めたけれどすぐに殺す覚悟を持ち直して手に持ってる武器を構え直した。あーさすがに決意は固いかぁ・・・。
出来ればこれで、諦めたりしてほしかったけれど・・・まぁそりゃそうか、なら仕方ないよね。
「皆殺しにするしかないかぁ~。」
「ッ!かかれェッ!!」
=====
かつて、メイドの数が少なくて休みが無かった頃、アンナがやけに張り切っていたことがあった。「今日のアタシは昨日のアタシとは違うっすよ~!」と意気込んで、仕事を始めたのだけれど・・・その直後に、早大に転んでドレッサーの角に頭をぶつけて死んでいた。その時のアンナを見たメイド長が「はぁ~・・・即オチ2コマね。」と、呆れながらに生き返ったアンナのぶつけたところを見ていたことがあった。
なぜ、唐突に私がそんな話をしたのかというと―――。
「こんな、ごどが・・・ゆるざれるが・・・」
「襲ってきたのはそっちなのに。」
「ばけ、ものぉ・・・・・・。」
あのうるさい騎士がこと切れる。その騎士の体から大剣を引き抜き、死体の山に加える。チラリと視線を移すと、虐殺の最中に少し移動したからかあのカオスな戦場中庭の中心から少し離れている。
相変わらず、紅魔館のメイドや毛玉が入り乱れた戦場だが紅魔館側の戦力が優勢のように見える。攻めてきた人間側が、おびえたり逃げたりしてるので多分優勢だろう。
大剣にこびりついた人間の血を払い、辺りの死体の山の様子を見る。かなりの数を斬り殺しているはずなのに、まだ騎士や兵士の数が減った気がしない。けれど、着実に数は減ってるのだろう。兵士の装備が殺気私が始末した連中と比べて少しだけ傷や汚れが少ないのが多い。
・・・いくら何でも、紅魔館一つに戦力をさきすぎなんじゃないだろうか。それに、確かに数こそ多いが、紅魔館の戦力は質がいい。妖精メイド一人も兵士5人分の力を持つと考えると、結局のところ敵方のしていることは自分の軍隊を少しづつ向かわせていることなので戦略的には大失敗ともいえる策だ。
紅魔館側の私を含めた戦力が、敵軍の予想を大きく上回っていたのか・・・それとも、紅魔館側の戦力が疲弊するほどの余力を敵が持ち合わせているのか・・・。
「・・・うーん、まだ戦いは続きそうだなぁ。」
「ルージュさま!」
・・・と、いろいろと考え事をしていると調理班の毛玉メイドの一人が駆け付けてくる。
確か彼女は、本館の防衛を任せたはずなのだけれど・・・どうしてこっちに駆け付けて来たんだろう。
「ご、ご報告です!本館が陥落、地下室通路にて激しい戦闘が起きてます!!至急、救援を!!」
「ノワールはどうしたの?」
「ノワール様は抵抗中です、ですが・・・このままでは・・・・・・。」
いくら閉所とはいえ、あのノワールがそこまで苦戦するのだろうか?
妖精で性格は割とカスだが、魔法使い・魔女としての能力はマーリンが負けを認めるレベルだ。正直、ノワールが軍団戦で負けるわけがないのだけれど・・・。
それでも、負けたということはノワールにとっての天敵が攻め込んできた人間に居たのだろう。魔法妨害能力か、魔法反射能力か・・・。
「・・・どうしますか?」
「うん、まあ・・・
報告しに来た毛玉メイドの首をめがけて大剣を振るう。しかし、その毛玉メイドはそれをかわして剣を構えた。
「な、なにを!?」
「外見模倣能力は珍しいけれど、本人を完璧に再現できるわけじゃないからね。その子は元々喋れない子だから、余計によくわかるよ。」
「・・・ッ、クソがッ!!ハズレだったのかよ!?」
私の嘘を信じた毛玉メイドが、口調を荒くしたと思うと次の瞬間には姿がぶれた。
毛玉メイドだった奴は、姿が変わって修道服を纏う男の姿になる。というか、これが奴の本体なのだろう。持っていた紅魔館印の槍を投げ捨てると、懐からナイフを大量に取り出した。
「どうやって気付いた、俺の変身は完璧だったはずだ!!」
「完璧だったよ、けれど纏ってた力が違ったからね。」
「チッ・・・だがテメェを殺せば問題はねぇ、喰らえっ!」
焦ったのだろう、分かりやすい軌道でナイフを投げてくる。
避けるまでもないので、当たるのだけを切り払うとそいつは私の肩に触れてきた。
「テメェの姿と能力、模倣させてもらうぜ!」
「・・・へぇ?」
「ハハハっ!テメェ自身の姿と能力で死・・・ねぇ・・・・・・えっ、はっ・・・な、なんだ・・・・・・こ、これ・・・は・・・!?」
段々と私の姿に変わるその男・・・しかし、様子がどうもおかしい。
私はその様子がおかしくなる理由を知っているので、ニヤニヤと悪い笑顔を作ってみる。
「どうしたの? 私の姿と能力を模倣したんでしょ?」
「あが・・・ち、ちからが・・・お、おさえられないっ・・・ちからが、ながれこんでくる!のうが、やかれる!たすけて、たすけてぇぇっ!!」
やがて幼い子のように錯乱しだしたその男。
「いやだ、いやだぁああっ!え・・・あっ、これが、ちから・・・これが、せかい?お、おれは・・・おれはぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ――――」
・・・私になりかけのその男が、水風船のようにパーンと破裂する。頭だけでなく、体も魂も模倣した私の能力に耐え切れずに破裂しただろう。
ちょっと残念だ・・・私が耐えられたんだから彼も耐えられるとは思ったんだけれど・・・。まあ、どうでもいいか。
「・・・さて、本館が落ちたのは嘘だろうから、とっとと中庭の敵を殲滅するか。」
私は大剣に自分の能力を流し込むと、大剣からは虹色の光があふれ出す。虹色の光があふれ出した大剣を構え、再び正門から入ってきた敵軍に突撃した。
ここまでブラウとルージュと来て、次はノワールかな?と思われましょうがノワールの活躍はありません!
ノワール「は?」
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□&△ 紅魔館の戦い・後
=====
side:アンナ
=====
どれぐらい……どれぐらい戦ったのだろう。
もう数えるのが嫌になるぐらい、
生き返るから死ぬことになれるのは当然だ、でも……死ぬときに感じる痛みだけはどうしても慣れない。
だからだろう、もう……私には
「ハァッ……ハァッ……。」
自決する力も、戦う力も残っていない。
自慢の脚はナイフで串刺しになって真っ赤になり、手に力が入らず愛用の双剣すら握る気力もない、ぺたんと大理石に座り込んで……目の前の小さな侵入者をにらみ続けるぐらいしか、できていない。
「やっと、諦めてくれた?」
人の形をした化け物、自然と目の前の子供のことをそう感じ取った。
アタシが人類最強だと思ったことはない、それに相手がどんなバケモノでも攻撃を当てて血を流させれば勝てると思っていた。
けれど、この目の前にいる子供は、アタシの攻撃に当たらないどころか息を切らしている様子すらない。
アタシがそこに至るには、どれだけ死ねばいいのだろう……だが、そもそも、アタシにはどうしてもこの子供に勝つことはできない。
アタシにできた事と言えば、かぶっていたフードを破いたぐらいだろうか。
「お前は、いいのか?」
息を整えながら、目の前の子供に問いかける。
子供は、きょとんとした表情を浮かべて、にらみつけている私なんて怖くないと言わんばかりに首を傾げた。
「教会の指示に従って、本当にここの住民を皆殺しにするのか?」
「…………。」
つづけた言葉に子供は、顔を背ける。
「殺してみろッ!ここのみんなを殺したら、アタシがお前を見つけ出して殺してやるッ!!」
感情に身を任せて怒鳴りつける。
もう戦う力も、自決する力もないにしろ、言葉を発する力だけはあったから……それが、子供には深く聞いたのだろう。
怯えた顔になったと思うと、大型ナイフを震わせながらアタシに向けて振り下ろそうとした。あと一回、あと一回……今から振り下ろされるナイフで頭を刺されて、もだえ苦しむような痛みと、深い水底に沈むような冷たささえ堪え切れれば、アタシはもう一回戦える……ッ!!だから、怖いだなんて考えるな……泣きそうになるな……。みんなを守りたいから、みんなと一緒に生きたいから……だからっ、だから……ッ、し、死ぬのなんて、こ……怖く…………怖くない……ッ。
「そこまで!
……聞き慣れた声の怒鳴り声が、アタシの決意を崩壊させた。
=====
side:メイド長
=====
メインホールの2階部分から見下ろす光景は、多少信じられないけれど……納得のいく光景が広がっていた。
今にも泣きそうになりながら死に怯えているアンナと、アンナの怒鳴り声でおびえてナイフを振り下ろそうとした銀髪蒼眼の少女。
嫌な予感がして、騎士や兵士の相手をあまりせず速足で向かってきたかいがあったわ。もう、アンナはしばらく戦うことはできなそうだし……何より、銀髪蒼眼の少女にトラウマが出来そうになくて一安心する。
「め、メイド……長?ど、どうして……どうして止めたんっスか?」
「アンナ、今日はもう休みなさい?あなたは早退……そうね、しばらくずっと頑張ってくれたし3年ぐらいはのんびりしてもいいわよ?」
「な、なにを言って……?
「大丈夫、後は任せなさい?」
そうアンナに向けて言った後、有無を言わさずアンナの足元にヴワル魔法図書館に転移する空間のうねりを出現させて落とす。
銀髪蒼眼の少女が咄嗟に捕まえようとするが、さすがにアンナを捕まえさせるわけにもいかないので、黄金のナイフを取り出して銀髪蒼眼の少女にもあたらないように投げつける。銀髪蒼眼の少女は、投げられたナイフに刺さらないように手を引き、私に向けて大型ナイフを構えた。
「……紅魔館の総括メイド長。」
「あら、良く知っているわね。」
ニッコリと、優しい笑顔を浮かべると、少女は少したじろぐ。どうして笑顔を浮かべたのか分からなくて、ちょっとだけ怖くなったのだろう。
階段を下りながら、その少女をよく観察する。あぁ、見れば見るほど私の中で納得がゆき、彼女がとある人物であることの確信が近づいてくる。
「ふふふっ、少し痩せているけれど。それでもしっかり食べて、元気に育てば美人になれそうね。」
「……私を、どうするつもり?」
警戒しつつ、私に対して質問するその少女。
どうするつもりと言っても何も、私は彼女をメイドにする。それも、ただのメイドではない……ゆくゆくは、私のメイド長という立場を彼女に譲り……私は、レミリアお嬢様専属メイドを専念できるようにするだろう。
「温かく歓迎しようと……ダメかしら?」
「……そう言って、だまし討ちしてきた人外が居るから、信じられない。」
「そう、残念だわ。」
なんて口では言うものの、ちっとも残念なんて思わない。むしろ、歯向かってくれて嬉しいとも思う。むしろ、ここで歯向かわずに大人しくなるのなら、私はガッカリしてただろう。
「……あなたは、ここで浄化するッ。アナタの世界は、ここでおしまい!!」
「ふふっ、私の世界は私の物よ?あなたが好きにできるものではないわ。」
少女が叫び、私がそう返すと、いつの間にか少女は私の目の前でナイフを突き出していた。まるで、瞬間移動をしたかのようなその動き……けれどその動きはアンナやルージュ、そしてブラウと比べると随分と遅かった。
突き出されたナイフを、かわし突き出した腕を掴んで優しく放り投げる。少女は驚きながらも空中で態勢を整え天井に”着地”して、そのまま私に向けて飛び込んでくる。
落下エネルギーすら利用した攻撃を、ステップでかわし続けざまの斬撃をハルバードで防ぐ。攻撃のお返しに、彼女の死角に空間のうねりを出現させてそこから黄金の槍を複数本突き出す。けれど、瞬間移動をしたかのような動きでその突き出された黄金の槍をかわしている。少女が瞬間移動をした瞬間、一瞬だけ視界から色が抜け落ちるような感覚がした。
「……手加減を、してるんです?」
ギリッと、少女が歯軋りの音をさせたと思うと、そう問いかけて来た。
手加減も何も、私にとって少女と戦っている気はない。私にとって、今の攻防はちょっとしたお遊び程度だ。
「だって、あなたじゃ私には勝てないんだもの。アンナがあなたに勝てないように、ね?」
「……その余裕、すぐに崩しますから。」
「あら、こわ~い。」
煽るように、手のひらを口に当てくすくすと笑ってみる。
少女の眉間にしわが寄り、さっきよりちょっと長く視界から色が抜け落ちる感覚を感じると、次の瞬間には切っ先を私に向けているナイフが数えきれないほど飛んできていた。
そのナイフの嵐は、的確に私の急所のみならずフェイントも混ぜらえていて普通なら、どれが当たるナイフなのか分からずにアンナのようにナイフの山になって死んでしまうだろう。
けれど、私は冷静に私の体に当たりそうなナイフだけを空間のうねりで呑みこんで、そのまま地面に捨てた。
「ッ! それならッ!!」
また、視界から色が抜け落ちていく感覚……そして、少女が一歩駆けだすのを捉えるが、次の瞬間には私の背後にナイフを構えて突き出していた。
背後でナイフを構える少女に対して、回転しながらハルバードを振るう。また、視界から色が抜け落ちていく感覚と少女が構えを解いて、私の背後に立つのを見る。
回転しながらハルバードを振るい、一瞬できた隙を見逃さず、少女はナイフで私を刺そうとするけれど、私はそんな少女に向けて後ろ蹴りを放つ。
幸いにも反射神経は良かったのだろう、刺そうとしたナイフを引っ込め……顔を狙って繰り出した後ろ蹴りを、左腕で防いで吹き飛ばされた。身体強化で力を増幅させた蹴りだ。最低でも、折れてはいるかもしれない。
「……どうして、どうして私を認識したの!?」
「そうねぇ……私が、ここの総括メイドだからかしら?」
壁にクレーターを作ってずり落ちた少女は痛むだろう左腕を庇いつつ、立ち上がった。ちょっとやり過ぎちゃったかしら。
でもしかたないと、自分で自分を納得させる。いくら私が、余裕で……そして少女に対して絶対的でも、油断をすれば殺されてしまうのはこっちだ。
私の答えに、明確に怒りの表情をあらわにした少女は、また能力を使う……。
「これで、お終いっ!!」
……視界から、色が抜け落ちてゆく感覚。
「散々、私をバカにしていたけれど……これならっ」
声が聞こえる、呼吸もできる。騙すために体を動かしていないけれど。
やっと、やっと入ることができた。
これが、
メインホールにたどり着き、一目少女を見た時。私の前世の記憶は彼女に対して、あの少女こそ十六夜
何をどう感じて、少女が十六夜
ともかく、少女が十六夜
じゃあ、十六夜
アンナはこの能力を見破ったまではいいものの、対策の方法なんて分からず無謀なやり直しを続けて限界を迎えてしまったのだろう。戦いが終わったら、ちゃんとメンタルケアしてあげないと……おっと、話がそれた。
アンナが”時を止める程度の能力”を突破できなかった理由は単純だろう、アンナはあくまでも人間で、止まった時間の中でどうやって動くかなんて知らないのだから。
じゃあ、どうして……私は時止めの世界に入りこむことができるようになったのか、それは単純明快、結局のところ時止めの世界も一つの
なんて脳内で説明をしていると、動かないふりをしているだけだというのに無防備に近づいてくる少女。
ナイフを構えて、つきだそうとしたその瞬間に、動き出して大型ナイフをハルバードで弾いてそのまま少女を抱きしめて捕まえた。
「つかま~えた。」
「えっ……?ど、どうして……せ、世界は止まってるはずなのに?」
「あら、思ったより痩せてる……人間ってホントろくでもないわね。」
時が止まった世界で私が動いたことに理解ができていないのだろう、目を見開いてポカーンとしている。そんな彼女をしっかりと抱きしめて、頭を軽く撫でてあげる。触ってみるとわかったのだけれど、彼女の髪の毛は見た目ほどサラサラしておらず…ギトギトで随分と痛んだ髪である。よく見れば、土汚れで少しくすんですらいる。
抱きしめている体も、ボロボロの汚い麻の服で隠されているが…ガリガリで骨の感触がよくわかるほどだ。臭いも正直に言って、かなりキツイ。
「よしよし、今まで……よく頑張ってきたわね。」
「な……なにを?」
「もう、頑張らなくていいわ。私が、私たちが守ってあげるから。」
訳も分からず混乱している少女に対して、優しい言葉をかけてぬくもりを与える。
でも、やがて理解が追い付いてきたのだろ、じたばたと暴れだし抵抗を始めた。
「やめろ……やめてッ、や……優しくしないでっ!」
「……。」
「も、もう……騙されたくないっ。もう、痛いのも怖いのもやだッ!!」
「……大丈夫。」
「離してっ!こんなことしないで、ただ黙って、浄化されてよッ!!」
暴れて、力づくで私を引き離そうとしても非力で貧相な体の少女ではびくともしない。少女が唯一他者を傷つけるための
「やめて……わたしに、うそはやめてよぉっ……。」
ぐすん、ぐすんと・・・少女が泣き出す。
「嘘じゃないわ。」
「……ほんとぉ?」
さっきまでのはっきりした声ではなくて、悲しみで震えた舌足らずな声。久しくは聞いていなかった子供らしい、泣き声。
「ええ、これからは……私が守ってあげる。痛いのも、怖いのも……全部、全部ね。だからもう、誰も傷つけなくていい。誰も、殺さなくていい。」
「なぐらない?」
「絶対に。」
「おこらない?」
「悪い事をしたら怒るかも?」
「たべもの、いっぱいたべていい?」
「美味しい食べ物を一杯作ってあげる。」
「きれなふく、きてもいい?」
「あなたに似合う服を、いっぱい見つける。」
「もう……ひとりじゃない?」
「もう、ひとりじゃないわ。」
やがて、メインホールには一人の少女の大きな泣き声が響いた。
外の争いの喧騒も、竜の吼える声も、遠くで聞こえる悲鳴も……少女には聞こえておらず、ただ少女はこれまでの人生で耐えて来た涙を流し続けた。
~~~~~
やがて、少女は泣き疲れて……私に抱き着いたまま眠ってしまう。穏やかな寝息を立ててはいるものの、キュッと私のメイド服を掴んで甘えてくる。そんな少女の頭を優しく撫でて、床に置いたハルバードを手に取る。
「……さて。」
抱き着く少女を片腕で支えながら、立ち上がり……玄関ドアを壊して入ってきた人間どもを見る。
「ようこそ、いらっしゃいませ……侵入者の皆々様方。」
「メイド……って、貴様っ!!そのガキはッ!?」
「大変申し訳ありませんが、その汚らしい言語を発さず、比較的速やかに何の価値もない塵芥のようなお命をお絶ちになりますよう……お願い申しますわ。」
偉そうな司祭服を着た男が何かを叫びだそうとした瞬間に、入ってきた人間どもの足元にうねりを出現させ、そのまま黄金の槍を何本も突き刺し、即座に全滅させる。
最初に私が殺した兵士たちのように、何をされたのか分からず、私に対して警戒をしていたり、不気味だと言わんばかりの表情を浮かべたまま、そのまま物言わぬ肉塊に成り果てる。
「メイド長、こっちに人間が……終わったの?」
人間たちを始末した後、血まみれのルージュが壊された玄関のドアから覗き込み、死体の山を見てからそう言う。
「ええ、外の様子はどう?」
「ほとんど終わった。後は、逃げ出してる兵士や騎士を始末するだけ。」
「……そう、あとは警備隊に任せなさい。メイド隊は、後片付けの時間よ。」
「わかった、ブラウにもそう伝えておくね。」
ルージュは、私が抱きかかえている少女を見たのにもかかわらず、何も言わずに壊された玄関から離れていく。
ようやく、紅魔館での戦いが終わり……私は、ホッと一息をついた。
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☆ 93冊目 5~8ページ
転生93年と3か月18日目(月曜日、日中:曇り、夜中:曇り・多分三日月)
人間が
昨日保護した人間の子供は、とりあえず身体を清めて美味しいご飯を食べさせ、ブラウに頼んで温かなパジャマを作り、それを着て私の部屋で匿っている。
人間の子供を私の部屋に匿っていることは、ルージュとノワール、ブラウの三人が知っており、協力してもらっている。
今は後片付けや、後処理でみんながみんな気が立っており下手に刺激すると大変なことになりそうなのだ。
特に、レミリアお嬢様とフランお嬢様のご様子がやばい。
お二人とも、棺桶事運ばれて、図書館に避難していたライちゃんによれば、途中で目を覚まして日中にも拘らずに戦おうとしていたので、避難したメイドとデフォルメ小悪魔の総出で組み付いて何とか行動を制限していたらしい。吸血鬼ということもあり、力が強く……最終的に小悪魔ちゃん(本体)が過労で風邪をひいてしまって、パチュリーが
その後、そのお怒りが収まればよかったのだけれど……メイドたちの後片付けや後処理で出される書類や、こちらの事情を知らずに送り付けられてくる迷惑メールに、常時どす黒いオーラを出しながら執務作業をしていらっしゃる。フランお嬢様も、一見すればいつも通りのように見えるけれども、心なしか人間の死体を処理する際、処理の仕方が雑のような、八つ当たりのような、そんな処理の仕方だった。
ともかく、そんな状態で人間の子供を保護しました何ていったら・・・まぁ、私であっても殺されてしまいそうだ。
人間の子供には申し訳ないのだけれど、しばらくは私の部屋で隠れてもらうしかない。
それを伝えたところ、「あなたが嬉しいのなら、何年だって隠れてるよ。」とまぶしい笑顔で行ってくれた。ごめんね……私は罪悪感でさっそく死んでしまいそうだ!!
出来るだけ早く、あなたがこの
=====
転生93年と3か月19日目(火曜日、日中:晴れ、夜中:晴れ・新月)
今日も今日とて、戦いの後片付け。昨日は、要らない死体を燃やしていたのだけれど……今日やることはどちらかというと、生かして捕まえたシスターの方をどうにかすることにした。
捕まったことに絶望して、自分で舌を噛んで死にそうだなぁとは昨日のうちに思っていたのだけれど、誰も命が惜しいのか、こちらの指示には素直に従うし、何でもすると自分から言ってくれている。
さすがにこれだけの量の人間を吸血鬼にするのは、レミリアお嬢様とフランお嬢様の負担になるなぁと思っていたのだけれど、一番簡単な方法を見つけたのである。アンナ隊の一番最初に吸血鬼メイドになり、そのまま吸血鬼メイドのリーダーのエリカなのだが、そのエリカに捕まえたシスターを吸血鬼にしてメイドにする指示したのだ。
さて話は変わるが、休憩時にノワールから吸血鬼について面白い事を教えてもらった。
ノワールいわく、吸血鬼の力の源はその血筋の古さだ。血筋が古ければ古いほど、その血筋で新たに生まれる吸血鬼は強力な吸血鬼として生まれやすいという生態的特徴がある。だからこそ、レミリアお嬢様とフランお嬢様は強力な能力を得ることになったらしいのだが……ノワールも「詳しくは調べたことが無いので知らないし、お嬢様方で知ろうとは思わない」と言っていたので、曖昧だったりする。
いきなりこんな話をしたのには理由がある。エリカのことだ。
エリカは人間の歴史の中では相当古い貴族の生まれ、そしてその貴族の中でも血が濃い存在らしい。なんでもご両親が兄妹だったとか、そう言えば中世ではそんな話は当たり前だったようなそうじゃなかったような……まあともかく、エリカの流れる血は古いものということである。では先ほどの話を踏まえて、エリカが吸血鬼になったとき……
まあ、エリカは
面白いことに、レミリアお嬢様はそんなエリカを気に入ってたりして、捕まえたシスターたちをエリカが吸血鬼にして支配する事は賛成だったりする。なんだったら、レミリアお嬢様はエリカにカーマインの家名を与えていたりする。(エリカも気に入ったらしく、元の家名を捨ててそっちに乗り換えていた)
エリカが、捕まえたシスターを吸血鬼にする光景は、私が1人で見届けることになったのだけれど……まぁーすごかったね。
最初はエリカを恐れて、なんなら血を吸われることを恐れていたシスターが吸血が始まった途端に、気持ちがよかったのか甘い声を出して顔を溶かしながらエリカに抱き着いて、吸血が終わればエリカをお姉さまと呼び慕いながらもっと吸ってと懇願していた。そんな光景を見ていて、ふとエリカが吸血したシスターたちは誰一人としてゾンビ化する様子が無かった。それを不思議に思い、吸血光景を見ながら考えていたのだけれど……そう言えば、エリカの吸血行為って割と丁寧だよね。レミリアお嬢様の時は、ヴァンパイアハンターが暴れたりして失敗していたこともあったけれど、素で失敗していた時もあった……そう言えば、そんなときはヴァンパイアハンターが痛みを訴えていたような……もしかして、吸血鬼化の条件って吸血する側の吸血の上手さが関係しているとかあるのかなぁ……?
そんな事を考えてはいたものの、休暇中のアンナの「まーた性癖の終わったやつらが増えるんっすか」という嘆きを聞いてしまい、アンナを慰める事を優先し、シスターたちをエリカに任せてその場を退出することにした。
追記
アンナの嘆きは杞憂に終わり、エリカが吸血鬼化した元シスターたちの性癖は割とまとも(?)だった。
レミリアお嬢様が吸血鬼化した元ヴァンパイアハンターたちの性癖がアレだったのか、それともレミリアお嬢様が吸血した際にナニか扉を開く機会でもあったのか疑問が増えることになった……。
アンナの「この子たちの性癖が”女の子が好き”という以外は、真面目で仕事ぶりがいいっす!」という笑顔が忘れられない……。
アンナ、あなた気付いてないけれど、その吸血鬼メイドの一人から熱い視線送られてたわよ。
=====
転生93年と3か月20日目(水曜日、日中:晴れ、夜中:晴れ・三日月)
ようやく、終わりが見えて来た戦いの後片付け。吸血鬼メイドが増えたおかげで、夜間の作業が大幅に進むようになったのがよかったのだろう。しかし、吸血鬼メイドとしての教育はまだ始まってすらいないので彼女たちのこれからに期待する。吸血鬼メイドで思い出したのだけれど、エリカの他にもう一人……強力な力を持った吸血鬼メイドが居たことを思い出した。彼女の名前は、カーラ。レミリアお嬢様を一目見た時から、レミリアお嬢様を信奉するようになった変わり者の元ヴァンパイアハンターだ。レミリアお嬢様を信奉していること以外は、普通にいい子で……アンナいわく、他の吸血鬼メイドと比べて我が強くないし性癖も終わってないとか……?ともかく、そんなカーラなのだが……元シスターの吸血鬼メイドに、レミリアお嬢様信仰を広めて、その結果……元シスターの吸血鬼メイドたちはレミリアお嬢様を信仰するようになってしまった。
元々、信仰していた宗教は、人外以外は冷遇するのもあり……そして、元シスターの吸血鬼メイドたちが支配者エリカの支配者ということもあって、信奉というより崇拝のように崇め奉っている。まあ、レミリアお嬢様はそれで気分をよろしくしているので、特段問題はない。むしろこっちからお願いしたいほどだ。
さて、カーラのことなのだがエリカほど書くことはあまりない。そもそも、カーラ自体が謎の多い人物だったりする。
真面目で素直、仕事ぶりもアンナからべた褒めされてレミリアお嬢様に名前を覚えられ、フランお嬢様からは着替えを任される程度には優秀で忠義の篤い子だ。生まれもその辺の農民の生まれと自分で言っていたし、人間だったころから能力……血を操る程度の能力を持っていたわけではない。だからと言って、先祖に人外が居た訳でもなく、ヴァンパイアハンターだった時も普通のヴァンパイアハンターと変わらない程度だ。しかし、だというのにカーラはエリカと並ぶほど強力な吸血鬼になっている。
……まあ、カーラ自身も困っていないしこの問題は放置していいような気がする。どうせしょうもない理由の気もするし、偶然そうなったっていうのが一番のような気もする。
ちなみに、カーラの能力はレミリアお嬢様とフランお嬢様用のお食事用血液を抽出する際に役立っている。何なら、血を見るだけで健康状態を把握できるらしく、
今日は本当に描くことがこれ以上本当に何もないのだけれど……とりあえず、警備隊について書いてみることにした。
そう言えば、警備隊が管理している畑なのだが……私が、最後に見た時より、随分と大きく……そして十分なほどに拡張されていて少しだけ驚いていた。
そして何より驚いたのが、畜産を始めていたのが驚きだった。イノシシやシカを捕まえて育てていたり、どこから連れて来たのか鶏や乳牛を育てたりと私が見ていない間に大きくなっていた。ちなみに厩舎に関しては、パチュリーの協力を得て騒音対策や糞尿対策を施したみたいで……どうりでメイド隊は全員気付かないわけだ。
成果が上がったら、成果と一緒にレミリアお嬢様にご報告する予定だったものの、私に見つかったことでその予定を早めるみたい。
それにしても、この光景を見たらルージュは喜びそうだし……今まで、近場の町からの買い出しを少なくできそうで私も、嬉しいわ。
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☆ 93冊目 9~12ページ
転生93年と3ヶ月21日目(木曜日、日中:晴れ、夜中:晴れ・半月)
後片付けが終わり、
私とレミリアお嬢様がやるべき事⋯⋯それは、これまでに提出された書類と報告書に目を通し、スカーレット卿に伝える仕事だ。本来ならレミリアお嬢様だけのお仕事ではあるものの、レミリアお嬢様は魔法図書館で避難なされていたので、詳しいことは報告書でしか知らない。実際に現場にいた私が補佐・補足しなければならないことがあるのだ。
一応、あのとき戦闘対応してくれたメイドたちには呼ばれたらレミリアお嬢様の執務室に来て、どう戦ったかを報告すると朝礼で言っておいたのでみんな仕事中とはいえ、しっかり引き継ぎしてから来てくれた。
そんなこんなで、戦闘対応してくれたメイドたち全員に何があったかの聞き込みが終わり、レミリアお嬢様とすり合わせをしつつスカーレット卿に手紙を送るべく、レミリアお嬢様は万年筆を手に取り、スラスラと丁寧にしたため始めた。
レミリアお嬢様のお邪魔にならないように、執務室の本棚の整理整頓をし始め、しばらくするとレミリアお嬢様が一息つき、私をジッと見つめ出していました。
それをジッと見返すと、ふとレミリアお嬢様は優しい微笑みを浮かべまた手紙に向かい、万年筆を走らせました。その行為に、首を傾げたものの、まあレミリアお嬢様だし、とも思い執務室の本棚の整理整頓を続けたのでした。
=====
転生93年と3ヶ月22日目(金曜日、日中:曇り、夜中:曇り・多分満月)
今日はレミリアお嬢様は曇りの日ではあったものの、お散歩にお出かけになりました。付き人はもちろん、私。いつもの散歩コースを歩きながら、時々立ち止まり景色を眺め……そして、今日は綺麗な大理石の彫刻品をお拾いになられていた。というか、こんなものがどうして落ちてるんだろう……。今度、ノワールに調べてもらわないとなぁ……。そんな散歩の途中、ふと、レミリアお嬢様が立ち止まり……私に向けて振り返った。
どうして振り返ったのか分からず、ボーっとしているとレミリアお嬢様がそっと抱き着いてくる。無造作に甘えてくるものの、どこか悩んでいるようなご様子だったので訳を聞いてみることにしたのだけれど……その悩みの原因は私……ひいては、私が保護した人間の子供についてだった。
思わず、バレていたことを聞いてしまうと、運命を操る程度の能力の応用で私が保護する光景を見て、そのまま部屋で匿っていることを知っていたとのことだ。今思えば、まったくもってレミリアお嬢様に対して隠し事ができないということをすっかり忘れていた。
ともかく、レミリアお嬢様はその人間の子供を匿っている私に対して、もやもやとした感情をぶつけて着ていた。
レミリアお嬢様いわく、「
レミリアお嬢様は、その言葉に安心成されたのか涙を拭って、私に再び抱き着く。しばらく、私とレミリアお嬢様はハグしあい、今日は手をつないで
=====
転生93年と3か月23日目(土曜日、日中:晴れ、夜中:晴れ・半月)
今日は、人間の少女とレミリアお嬢様の顔合わせの日となった。
昨日、レミリアお嬢様には人間の少女を匿っていることがバレた訳なのだけれど、さっそく会いたいとレミリアお嬢様がおっしゃったので、人間の少女を隠しながらレミリアお嬢様の執務室に連れていくことになった。危険と思うかもしれなけれど、人間の少女の武器は私が預かっているし、そもそも人間の少女は戦う意思がほとんどない。
結果的に言えば、人間の少女とレミリアお嬢様の顔合わせは大成功だった。むしろ、レミリアお嬢様が人間の少女を見た途端、お菓子をあげたり頭を撫でたりハグしたりとやりたい放題……結果、人間の少女も最初は警戒していたもののやがてレミリアお嬢様の甘やかしに素直に応じるようになっていた。
そしてこの顔合わせの際、一瞬ヒヤッとしたのがフランお嬢様がその光景を目撃し、姉妹間で修羅場になった事だ。ちなみに、フランお嬢様も人間の少女を見た途端、目を輝かせていたので多分受け入れてくれている。
人間の少女を本物の妹みたいに猫かわいがりしていたレミリアお嬢様に対して、フランお嬢様は絶対零度の冷たい視線をお向けになられ……レミリアお嬢様が必死に言い訳をするものの、「お姉ちゃんなんかしーらない!」という言葉と一緒に、人間の少女を可愛がり始めた。ショックを受けたレミリアお嬢様は、思わず魂が抜けて体がスライムみたいに溶けてしまったけれど……しばらくして、レミリアお嬢様とフランお嬢様は2人で人間の少女を可愛がっていた。
何度か、人間の少女が私に助けを求めていたものの、まんざらでもない表情だったために笑顔を浮かべて助けなかった。
人間の少女のことは、すぐにでも
レミリアお嬢様とフランお嬢様が、この人間の少女に好意的な感情を持っていたとしても、私以外のメイドや警備隊のみんな、そして司書隊のみんながどう反応するのかが分からない……少なくとも、アンナや
そう伝えると、レミリアお嬢様とフランお嬢様も事の重大さに気付いたのか、真剣な表情を浮かべられた……が、その日は特にいい案は浮かばずに、解散ということになった。
追記
今日は、人間の少女と一緒に眠ることになった。
教会の地下に閉じ込められていた時の恐怖があふれ出してしまい、怖がっていたので……彼女を優しく抱きしめながら、二人で眠りにつくことになった。
かなり不安げだった人間の少女だったのだけれど……頭を撫でて、即興の子守唄を歌ってあげると、やがて安らかな表情で眠りについたのであった。
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○&□ アンナの日記
思うところがあって、日記をつけてみることにした。きっと、すぐに飽きて書かなくなってしまうかもだけれど、気持ちの整理を付けたくてメモ帳の片隅にかいてみることにした。
ついこの前、紅魔館に人間たちが襲撃してきた。それは別によかったのだ、アタシが忠誠を誓った相手は吸血鬼……
あの日の契約で、この紅魔館に住み込みで働くことになり……メイド長、ブラウさん、ルージュさんにメイドとしての何たるかを教えてもらうことになった。
今の今まで、戦うことしか知らなくて、戦いにしか価値のない私だったけれど……ブラウさんとルージュさんも、そう言うタイプでメイド長には内緒で、三人で集まってはメイドとしてどうすればいいかを話し合ったこともあった。
そして、いっぱい失敗を重ねて、それでもめげずに頑張って。メイド長に本気で怒られた時、お手洗いでひっそりと泣いてしまったのも、今ではいい思い出だ。
それから、ようやくメイドとしての仕事にミスが少なくなり、美鈴がやってきて、毛玉メイドたちの部下ができて、副メイド長としての仕事も始まって。
……いろんなことがあって、襲撃前の紅魔館があった。
少しだけ忙しいけれど、それでも平和で楽しくて、なんていうか……教会に居た時よりも、いや戦場にいる時よりも満たされていた。
これが、普通の幸せなんだなって何度も思った。温かい場所があって、心許せる仲間がいて、やりがいのあることもあって……アタシは、この紅魔館が好きだ。
だからこそ、襲撃してきた元同僚や兵士たちは許せなかった。折角の居場所が奪われそうで、壊されそうで……でも結局は、弱いから大丈夫だと思っていた。
でもそれも、アタシの思い上がりだった。あの子供が、アタシを圧倒するまでは。
同じ人間を相手に、負けた。
その事実が、アタシの心をひどく締め付け痛めつける。
きっと、メインホールに居たのがブラウさんやルージュさん、美鈴やノワールさんであれば……きっと、苦戦はするけれど勝てはしたのだろう。
でも私は、負けてしまった。死に、痛みに、そして恐怖に。
それでも居場所を守ろうと、立ち上がろうとした。死んでやり直そうとした。
でも、できなかった。死ぬのが怖くなったアタシでは、勝てないと……そう思ってしまっていた。だからこそ、あの時、メイド長が声を出してくれた時、アタシは喜んだ……
メイド長は、この紅魔館の中で重要な存在だ。本人はそんなことないと否定するだろう。けれど、きっと紅魔館は……いや、スカーレット家はメイド長が居なければ簡単に没落、もしくは滅んでしまうだろう。
メイド長が死んでしまえば、まずはメイドたちが混乱する。混乱して、きっと紅魔館から逃げ出してしまうだろう。次に、レミリアお嬢様とフランお嬢様が絶望してしまうだろう。メイド長は、お二方の親代わり……それに、まだ100歳ぐらいの小さな子だ。実母が失った幼少期とは違い、今の時期で失えば…………私には、恐ろしくて続きはかけそうにない。
でも、メイド長はあの人間に勝った。苦戦する様子も、チャンスを与える暇もなく……。あの人間を受け入れて、自分の部屋に匿った。メイド長なら、そうすると決まった事だった。
あの子供が……アタシを一方的に殺すことのできる子供が、アタシたちの仲間になる。きっと、紅魔館の誰もが受け入れるだろう、これは断言すらできる。だって、あのメイド長が受け入れたのだ。誰よりも賢く、美しく、優しく、全部一人でこなすことができるあの人が、それでも私たちを信頼してくれているあの人が……だから、きっと、みんなメイド長の思いを、考えを受け入れるだろう。
アタシも……反対というわけでもない。でも、頭はそう思えても、心はどうしても受け入れることができなかった。
アタシを何度も何度も殺せたあの人間が、この紅魔館に住む。そして何より……メイド長に面倒をみられること……愛を向けられていることが、気に食わなかった。
メイド長は博愛者だ。誰にでも平等に愛を与えて、誰にでも平等に優しさを与える。けれど、失敗すれば注意をしてくれるし、間違っていれば怒ってくれる人。聖母みたいな、本当のお母さんみたいな人だ。だからあたしの持つ、独占欲は……持ってしまってもおかしくはない。きっと、アタシの他に独占欲を持ってしまっている子は多いだろう。それだけ、メイド長は温かい人だ。
その温かさが、メイド長がいまはたった一人に向けて愛情を向けている。
あぁ、ダメだ……書けば書くほど、アタシが何を書いているのか分からなくなっているし、どんどんとマイナスな方向に思考が行ってしまう。
~~~~~
「……はぁ。」
日記を書いていたメモ帳を乱暴にベットの上に放り投げて、窓の外を眺めてみる。酷く青い空で、雲一つない天気だ。部屋に閉じこもっていても、あまりいい事はないのかもしれない。そう考えた私は、着崩したメイド服を直して中庭に出ることにした。
しかし、私は開けた部屋のドアの外に立っていた人物にちょっとだけ驚いて、すぐに表情を取り繕った。
「こ、こんにちわっす、メイド長。珍しいっすね、アタシの部屋に来るだなんて……」
「アンナが心配だったの。嫌な予感がしてね。」
そう言う、メイド長はいつも通り柔らかで優しい笑みを浮かべてくれる。
「これから、散歩に出かけるところだったの?」
「よくわかったっすね!メイド長も、いっしょにどうっすか?なーんて……」
「いいわ、一緒に行きましょう?」
メイド長が手を差し伸べてくれる、アタシは……少し戸惑いながらもその手を掴む。アタシが弱々しく握っていると、メイド長は少しだけ強く握り返してくれた。
きっと、メイド長には、アタシの心情もお見通しだろう。アタシの考えは、よくメイド長に読まれていることが多かった。でも、だからだろう……きっと、メイド長はアタシの事をどう思ってるのか、よくわからなかった。
頼りになる仲間と思ってくれているのだろうか、それとも手のかかるダメダメな後輩?一つ言えることは、アタシは……迷っているのもあるのかもしれない。
気が付けば、アタシはメイド長に連れられて紅魔館の庭園を歩いていた。
メイド長の手は小さくて、手袋越しの暖かさが少しだけ荒れた心を癒してくれている。
綺麗な薔薇の生垣は、水を与えられたばかりなのだろうか……水滴でキラキラと太陽の光を反射して、宝石のように輝いて見える。遠くで聞こえる、狼女たちの掛け声や、休憩中で騒がしいメイドたちの声も……しばらく忙しかった紅魔館に、平和な日々が戻ってきたという実感と嬉しさが沸く。この中に、きっと
やがて、最近できたガゼポにたどり着きそこにメイド長が座り、私も座った。そのガゼポから見える景色は、本当にきれいで……何より、メイド長が隣で同じ景色を見ているということが、どういうわけか嬉しいと思った。
「ねえ、アンナ。」
メイド長から声をかけられ、景色から目を離しメイド長を見る。
真剣な表情を浮かべていて、けれど私には決して怒っていなくて……むしろ、安心するような気がした。
「私は、アンナのことを娘のように思ってる。」
「……へっ!?」
言われた言葉に、思わず顔を赤くしてしまう。
「ブラウやルージュとは違って、あなたのことは娘のように思ってるわ。」
「に、2回も言わなくても聞こえてるっすよ!?」
娘……私が、メイド長の娘?多分、ニュアンス的には養子とかと思っても、おかしくはないはず。
ウへへ……悪い気はしない、それどころか嬉しいぐらいだ。でも、恥ずかしくて顔が熱い……今なら、その熱さでお湯でもわかせそうだ。
「だから……私のせいで、いろいろと悩ませてしまっていること、申し訳ないと思っているわ。」
「な、なんのことっすか?」
やっぱり、メイド長にはアタシがすでにあの子のことを知っていることが分かっていたみたいだ。一応、しらばっくれてみるけれど……多分、メイド長は確信している。
違う……メイド長が悪いわけじゃない。これは、アタシの問題であって……だから
「アンナ、聞いて……私は、あなたが悩んでることを―――」
「―――やめてください!!」
思わず大声を出した。
空気がガラッと変わって、紅魔館が静かになった気がする。
メイド長の、びっくりして唖然とした表情が目に映る……あっ、あぁっ。
「あ、アタシは…………ッ!!」
メイド長に対して怒鳴ってしまい、それがどうも嫌で、逃げ出してしまう。
「あ、アンナ、待ってッ!!」
メイド長の静止の声を振り切り、庭園迷宮に……まだ攻略がされてない第3層へと逃げ込む。
「アタシは……アタシは一体、何をしてるんすかね…………。」
適当な岩場に座り込み、顔を手で覆った。やがて……静かな洞窟に響く水滴の音だけが、アタシの気持ちを代弁するかのようにただ響いていた。
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△&□ Three silver flowers that bloom on the sixteenth night
沈んだ気持ちを隠しつつ、静かにメイド休憩室の私の事務机の椅子に座る。清々しいほどの青空だったソラは、天気が急変し、今にも雷雨が落ちてきそうな曇天だ。風も、少しばかり強い。
「メイド長、少し良いか。」
「……あら、ブラウ。」
「……。この天気のことから、ノワールから注意があった。なんでも、嵐がやってくるそうだ。」
「なる、ほど……。メイド隊と警備隊に本館に避難するように伝えて? 別館に居る子たちも、避難させるように。」
「了解した、メイド長。」
そう言い、ブラウは近くにいた毛玉メイドに耳打ちし事務机の前においてあるソファーに座った。
「それで、メイド長を悩ませているのはどんな問題なんだ?」
「……何のことかしら?」
「メイド長が悩んでいる時は、少しだけ上の空になる。そして、メイド長のアホ毛が引っ込むんだ。」
ブラウにそう指摘されて、アホ毛に手を伸ばすが……確かにアホ毛が無い。ぺたんと他の髪に同化している。やっぱり、このアホ毛は早く切るべきかしら?どんなにポーカーフェイスを努めても、アホ毛でバレバレなんじゃダメだし……でも、割とこのアホ毛は私が気に入ってるし…………。
「それで、どんな悩み事が?今なら、このメイド休憩室にメイドはメイド長と私しかいない。」
「……そう、ね。ブラウになら、悩みを聞かせても、問題ないわね。」
私は、さっき起きた事をすべてブラウに吐露した。
アンナが、あの子のことで悩んでいたことは知っていた。むしろ、あれだけボロ負けしていてアンナが気にしていない方がおかしかった。
手のかかるじゃじゃ馬娘……でも、愛さずにはいられなかったアンナに、ひどく拒絶されてしまった。私が、ズケズケとアンナの心の傷を触ってしまったのが悪いのだが……。
「なるほど、メイド長は罪な女だな。」
「ぶ、ブラウ?」
「少なくとも、メイド長は少しだけ自分を理解した方がいい。自分がどれほど他者を愛して、それが愛となって帰ってきているのかをな。」
ブラウに優しい微笑みを向けられながら、そう言われる。顔がいいから様になっていて、もし私が普通に乙女だったのなら、キュンと恋に落ちていたところだろう。残念ながら、私はもう乙女というアレでもないので何ともないのだが……。
「だが、そうだな……アンナの心の傷はアンナにしか分からない。そして、その傷を癒せるのはアンナ自身と……そして、あの子だろうな。」
「……どうしてあの子が?」
「ふふっ、知らなくて当然さ……何せあの子は―――」
ブラウが、言葉を続けようとしたときメイド休憩室のドアが強引に開け放たれる。
そこに居たのは、血相を欠いた毛玉メイドの一人。確か、正門近くの掃除をしていたこのはず。
「た、大変です!メイド長、ブラウさん!!」
「ど、どうしたの?なにか、問題が??」
「アンデッドの大軍が、正門に向けて迷いの森から進攻中!!そ、その中心に……
ど、ドラゴンゾンビを確認しました!!」
―――きっと、アンナを悲しませた私に向けた罰なのだろう。
~~~~~
side:アンナ
~~~~~
庭園迷宮の……誰も踏み入れたことのない洞窟に迷い込んで、一体どのくらいの時間が過ぎたのだろう。
冷たい水滴が水面に落ち、心が洗われるような……アタシの悲しみを代弁しているかのような音が、反響していて……荒んでた心がだいぶ落ち着いた。冷静になって、アタシはとんでもないことをしてしまったと、後悔と罪悪感に押しつぶされそうに放っていたけれど……。
「やっちゃったっす……メイド長に、なんて謝ればいいんっすか?」
メイド長に対して、怒鳴ってしまった。そして、逃げ出してしまった。
メイド長が私の身と心を案じてくれているのは嬉しい、きっと今頃はアホ毛をソワソワさせながら……でも、みんなに心配をさせないためにいつも通りにふるまっているだろう。
「心配してくれたメイド長に、あんな言葉……アタシ、なんてこと言っちまったんすか!?」
うがーとうなりながら、髪形が大変になるのもかまわずに頭を掻く。だいぶボサボサになったところで、息を吸い冷静になる。ここで、ウジウジしていてもあまりいい事はないかもしれない。
でも、メイド長に合わせる顔が無くて……どうしても、洞窟から……庭園迷宮から出る勇気が出てこない。きっと、メイド長は怒ったりはしないだろう……むしろ、アタシに謝ってしまうだろう。あの人は、そう言う人だ。
「ごめんなさいって、素直に言えればいいのに……。」
ふと、言葉がこぼれた。今のアタシは……素直に、謝れそうにない。情緒が、自分でもどうなっているのか分からないんだ。今は少しだけ元に戻っているけれど、割と感情的になりやすい。こんな時、どうすればいいのかなんてアタシには分からない。
……普通に生きてたら、その方法も知ってたのかな?
「……いや、そもそも普通だったらメイド長にも会うことはないっすね。」
もし、普通に生きてたのなら……今頃アタシはとっくの昔に墓場の中だろう。
普通に生きたからこそ、今のアタシみたいに不老不死じゃなくて普通の人間として生きて、果たしてどんな人生を歩んだのやら。
父さんみたいな立派なアンデッドハンターになってたのかな、母さんみたいに父さんみたいな素敵な人を見つけられたのかな、きっと……かわいい子供や孫にかこまれていたのかな。
でも、アタシはもう普通じゃない。アタシは不老不死の人間、紅魔館副メイド長のアンナ。普通が羨ましいわけじゃない。でも、アタシには紅魔館の幸せがあるんだ。
「……よし、謝る勇気が出たっす!」
何て独り言を言ってみて、少し恥ずかしくなる。
はやく庭園迷宮を出て、メイド長に謝ろう。謝って、一杯彼女に甘えてみよう。もう、子供っていう歳でもないけれど、でも復讐だけだった子供時代を取り返すように甘えたっていいはずだ。
そう思い、出口に向けて足を踏み出した。
庭園迷宮を出て、唖然とする。
「メイド……長?」
メイド長が紅魔館の外壁にもたれかかって動かない。そんなメイド長を守るように、あの子が折れているナイフを震える腕で持っている。
ブラウさんも、ルージュさんもアンデッドの群れに阻まれて、彼女たちを助けに行けない。他のメイドたちや美鈴……警備隊のみんなも、みんな劣勢だ。
『旨そウな妖精ト、旨ソうナ子供……イっぺんニ食えルとハ幸運だ!!』
同じドラゴンであるはずのユーリを足蹴にしているドラゴンゾンビが、毒をよだれ代わりに肉のついていない口から零す。
ドラゴンゾンビが、大口を開けてメイド長たちを食べようと知るのを見て……アタシは…………。
~~~~~
side:少女
~~~~~
ドラゴンゾンビは、私とメイド長さんを食べようと大口を開けてゆっくりと迫ってきている。
どうして、ドラゴンゾンビが……アンデッドの大軍がここに襲い掛かってきたのかは、分からない。でも私は、ドラゴンゾンビによって気絶させられたメイド長さんを守りたい一心で、メイド長さんとの約束を破って、ナイフを持って飛び出した。
時止めの力を持つ私は、何にだって勝てる。その自信は、ドラゴンゾンビの体によって砕かれた。
私がナイフを投げてもドラゴンゾンビの体には刺さらずに、私が大きなナイフを振るっても傷を付けることはできずに、むしろ大きなナイフが折れてしまった。
助けに来たはずが、むしろ自分から危険な場所に飛び込んでしまった。その焦りが原因で、時止め能力もうまく使えなくなってしまう。
今まで、上手く抑えれていたはずの恐怖が、顔を出してしまう。メイド長さんに人としての普通を……そして、幸せを与えられて、生きてもいいと思ってしまったからだろうか……一度感じた死の恐怖は、私に何もさせてくれなかった。
メイド長さんに抱き着いて、痛みに備えて目を瞑る。
……いつまでも食われる感覚が、おそってこない。でも、ドラゴンゾンビの存在は感じ……怯えて、る?
恐る恐る瞑った目を開く、
「厳格な天上の主よ。どうか一度だけ、裏切り者の言葉をお許しください。」
あの人の、声がした。
「我が名は、墓守。動く屍を討ち、死者を安らかな眠りに導く者。我が名は、葬儀屋。死者を弔い、あなたのもとへと導く者。」
『な、何故だ……貴様は、貴様がなぜここに居る!?』
ドラゴンゾンビが、その人の姿を見て慌てている。当然だ……この人は、アンデッドの天敵。
「生命の掟を破り、主を裏切った私に、私の剣に。どうか今一度、死者を弔い眠らせる光をお授けください。どうか私に、家族を守る力をください。」
『お、お前たち……殺せ、こいつを殺せぇえええっ!!
ドラゴンゾンビが叫び、ゾンビの群れの一部がアンナさんに向かう。
剣が纏っている光が、一層強くなる。
その人が……アンナさんが両手に握る剣を十字状に構える。
「感謝します……我は教会の墓守人、葬送の施行執行者。」
アンナさんに襲い掛かろうとしたゾンビは、アンナさんの振るう双剣により切り伏せられ……そのまま灰になって消え去る。
「我の使命は、死の運命から逸れた者に安らかなる眠りを与えること・・・。」
真っ白に輝いて太陽の様だった光が、少しだけ優しい光になり青い光を発するようになる。
アンナさんに襲い掛かった、最後のゾンビがアンナさん自身の手で斬られ、浄化すると……アンナさんはあの時のように、双剣で十字架を作る。けれど、今回はその十字架は逆じゃなかった。
「
怒りが混じった祈りの言葉が叫ばれ、アンナさんの姿が消えた。
双剣が振るわれ、ナイフが踊るように飛び舞い、アンデッドたちが次々と灰になる。
アンデッドたちは他のメイドさんや狼女の人たちを襲うのをやめて、一斉にアンナさんに襲い掛かる。しかし、アンナさんはそんなアンデッドの軍勢を相手に一歩も引かず……むしろ、一歩前に出て戦う。
アンナさんが無双し始め、戦いの行方はだいぶ変わってゆく。
「もう少し抵抗らしい抵抗をしたらどうだ、アンデッド。」
アンデッドたちを蹴散らしながら、アンナさんの言葉だけが聞こえてくる。
「お前たちはいつもそうだな、軽々しく生者の幸せを踏みにじり、弄び、死を礼讃し、死を超越したと大口をたたく割りに、いざ自分たちが
無数のように思えたアンデッドの大軍、命を枯らす死の河はたった一人によってせき止められ、それどころか次々と消されてゆく。
「私が、そんなに怖いか?アンデッド。」
アンデッドの大軍は、たった一人……アンナさんの手によって一人残らず灰になった。
『バ、ばかナッ!?わ、我ノ無敵ノ屍兵たチガ、こ、コんナ簡単にッ!?』
ドラゴンゾンビが慌てふためき、ぶるぶるとその腐った体を震わせている。
「あぁ、思い出した。お前、不死王とか名乗ってた小物か。」
『ヒィッ!?な、なゼ……我の正体ヲッ?!』
「やり口が一緒なんだよ、雑魚が。」
アンナさんが、ツカツカとドラゴンゾンビに歩みを進めると、ドラゴンゾンビは面白いように怯えて後ずさる。足蹴にされていたドラゴンはぐったりとしてしまっているけれど、生きている。
……ふと、地面から静かにスケルトンが立ち上がり、ナイフを構えた。
アンナさんに気が付かれないように、そのスケルトンは静かにアンナさんの背後に忍び寄る。
「さあ、選べ。自ら命を絶つか、アタシの手で殺されるか」
『ククッ……甘いなぁ、勝てると思って油断したな?やれッ!!』
「っ……しまっ!?」
スケルトンがアンナさんを拘束し、そのまま殺そうとしたその瞬間に、私が時止め能力を使い割り込む。
全てが止まった灰色の冷たい世界。焦っている今だと、止められる時間には限りがある。
だから、ちょっと重いけれど、ブラウさんのショートソードを借りて、スケルトンの首に向けて横振りする。その途端に、時止め能力の限界が来て世界に色が戻り……スケルトンの首が吹き飛んだ。
「!?」
『なニ?』
私は、ショートソードをそのままドラゴンゾンビに向けて突き刺そうとするけれど、慣れない武器もあってか転びそうになる。
けど、すぐにアンナさんが支えてくれたので、膝をすりむくことはなかったのだけれど……けど、そんな隙を見逃すほど、ドラゴンゾンビも甘くはなかった。
『そノガキと一緒ニ潰レろぉオオおオオオおおッ!!』
ドラゴンゾンビが前足を振り上げ、すごい勢いで振り下ろそうとする。
咄嗟に能力を使おうとするけれど、上手く発動できず……アンナさんがギュッと
けど、それも失敗に終わる。
『グゥッ!?な、ナんダ……この、
ギシリギリシと音をたてながら、ドラゴンゾンビの体を縛っている金でできてる鎖。
ふと、アンナさんがメイド長さんの方向を見て……私もつられて、メイド長さんの方を見る。そこには、ブランさんと白色の大人な妖精さんに支えられながら、右腕を突き出しているメイド長さんの姿があった。
「……もう、終わりだ。」
最後は、アンナさんの一撃で……ドラゴンゾンビはこの世の物とは思えない金切り声をあげなら、ゆっくりと浄化されていった。
あの後、私はメイド長さんとアンナさんと無事に家族になる事が出来た。
メイド長さんはお母さんになって、アンナさんはお姉ちゃんになって……ようやく、私にとっての人生を歩みだすことができたのかもしれない。
まあでも……
「いーや、ブラウさんたちの名前よりアタシのハンナの方があの子には似合ってるっす!」
「なんだとアンナ!?そんなに私のエレカが気に入らないのか!?」
「二人ともセンス悪すぎ、私のミカの方がセンスある。」
「ルージュ、キミのセンスもいまいちだ。ここは私のエアをだな……」
「ノワールさんだって変わらないっす!ここはやっぱり、アタシのハンナの方をっす!!」
私の名前を決めるために、メイド隊がすっごい口論を起こしてるのは、ちょっとどうすればいいか分からない……かな?
「うふふ、みんな元気ね。」
「言ってる場合ですか、メイド長。」
ニコニコと楽しそうに微笑みを浮かべている
でも、私もみんなが一生懸命名前を考えてくれているのを見て……なんだかすっごくうれしい。
メイド隊のみんなが口論している中、バーンと扉が開け放たれ……格好つけて扉にもたれかかってる一人の吸血鬼が現れた。
「フッ、運命を見て感じ取ったわ。
「「「「それだっ(っす)!!」」」」
「レミリアお嬢様?その手に持ってる本はなんでしょうか?」
「えっ、あっ……これはーショノ。ひ、拾ったものじゃないわ!」
「私に内緒で拾ったものなんですね?」
「……ゴメンナサイ。」
レミリアお嬢様、かわいいな……。
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☆ 93冊目 13ページ
転生93年と5か月1日目(月曜日、日中:晴れ、夜中:晴れ・新月)
しばらく……大体2か月ぐらい静養したので日記を書いていなかったのだけれど、久しぶりに日記を書くことにしてみた。
2か月前、アンデッドの大軍との戦いの時、片付けもほどほどに
診断してくれたノワールと、アンデッドの襲撃で私を助けてくれた白い妖精……プリムの名前を与えた妖精のおかげで、傷は残らなかったけれども、レミリアお嬢様やフランお嬢様、それに
さて、そんなこんなで2か月前、アンナと
十六夜アンナと十六夜
ともかく、私の名前は十六夜マリアとなり、ようやく役職以外で呼ばれるようになったのだ。
2か月前の話はそろそろこの辺にして、私が静養中だった2か月間は様々なことが起きたみたいだ。
まず、メイド隊の話になるのだが、プリムが来たこともあり今まで各メイド隊で処理していた雑務を、彼女が率いることになった雑務メイド隊に任せることになった。これにより、今まで書類の精査も仕事だったアンナのメイド隊の仕事が大幅に減ることになり、アンナが「やっと面倒な書類作業から解放されたっスー!!」と大喜びしていた。
これにより、メイド隊は、私が率いている総括メイド隊、アンナの主力メイド隊、ブラウの清掃メイド隊、ルージュの調理メイド隊、ノワールの運搬メイド隊、プリムの雑務メイド隊とそれなりの大所帯ということもあり、一度人員の整理を行うことになった。
総括メイド隊のメイド長……そしてメイド隊全体のメイド長は相変わらず私だか、将来的に私の補佐および代行に
メイド長の私と、メイド長補佐の
それと、メイド隊に所属する特別なメイドについて、一人一人触れていこうと思う。
まずは、ライラックちゃんについて。
ライちゃんは、相変わらずルージュの調理メイド隊のマスコットで割とルージュから溺愛されている。私もよく、お菓子を作るためにキッチンに出向くのだが……最近だと、少しだけ肉付きが良くなって少しだけ身長が大きくなったような気がする。もしかしたら私の気のせいなのかもしれないけれど、よくルージュが賄いを作ってはライちゃんと一緒に食べている様子が調理メイド隊の毛玉メイドから聞いている。
ちなみにライちゃんには、私がよく怪我をしていることもありお世話になっているのだけれど、ケガをするたびに泣きそうな表情になるのですごく心苦しかったりする。
次に、マグノリアちゃんだ。
マグちゃんと言えば、アンナの主力メイド隊の中でもアンナを除いた相当な実力者の一人だ。各メイド長や
そんな彼女なのだけれど、結構前にドラゴンを倒したことは覚えているだろうか?ドラゴンを倒し、解体した結果相当量のドラゴンのお肉や骨、皮や鱗を手に入れた訳だが……そのお肉をルージュが調理する機会があった。そのお肉を使った料理をマグちゃんが食べた結果、妖精7割:ドラゴン3割だったマグちゃんが妖精5割:ドラゴン5割のちょうどいい感じに成長したとのことだ……。
それだけではなく、彼女の能力であるブレスを吐ける程度の能力が成長して、他者の傷を癒すブレスを吐けるようになり、ブレスの持続時間も成長前と比べてかなり伸びていた。さらに戦力アップと言ったところだろうか。
ちなみにマグちゃんは、どうやらアンナが気になっているらしく、彼女の恋を応援すると同時にライバルは多いことを教えて、アンナは割と初心だから慎重に進めるといいとアドバイスをした。
3人目は、ネペタちゃん。
ネペタちゃんと言えば、
そのネペタちゃんについてなのだけれど、聞いた話によれば自分から進んで他の妖精メイドたちのお悩み相談をしたり、オリビアちゃんの手伝いをして教育中の妖精メイドたちのお世話もしているみたいだ。それに関してブラウも嬉しそうに頷いていたし、間違いはないと思う。
ちなみにネペタちゃんは、ブラウの……そして何十名のメイドの推薦により、清掃メイド隊のナンバー2ポジション……つまりは、清掃メイド長補佐の立場を一時的に体験してもらっている。体験自体には乗り気だったけれど、本当に清掃メイド長補佐になるかどうかは、ネペタちゃん自身が決める事なのでとやかく言う必要はない。けれど、清掃メイド隊の毛玉メイドや妖精メイドたちの話を聞くに、悪くないとのことだ。
4人目は、カートちゃん。
カートちゃんは、ネペタちゃんと同じ武闘派の清掃メイド隊の所属だ。所属して、まだ半年ぐらいの彼女だけれど、今日までの出来事やブラウの教え方が上手いのか清掃メイド隊の中でも清掃の腕前は指折りの実力らしい。ただ、半年もの間に教会勢力の襲撃やアンデッド軍団の襲撃があったこともあり、「この場所呪われてるんじゃないんかにゃー?」と少し疲れた様子で、同じ清掃メイド隊の妖精メイドに愚痴っているのを聞いてしまった。それは私も思う。仕事しろ迷いの森。
カートちゃんについてはブラウから聞いた話でも、あまり特筆することが無い。しいて言うなら、教会勢力の襲撃とアンデッド軍団の襲撃の際に大活躍をしてレミリアお嬢様の覚えがいいぐらいだろうか……。
5人目は、ブライニイちゃん。
ブライニイちゃんは、ルージュの調理メイド隊に所属する妖精メイドで、
そんなブライニイちゃんは、私のお菓子の作り方を見て覚えたのかお菓子作りがかなり上手くなってきている。残念なことに、レミリアお嬢様とフランお嬢様がお茶会で欲しがっているお菓子は
6人目は、テレスちゃん。
テレスちゃんもルージュの調理メイド隊に所属する妖精メイドだ。けれど、彼女は今は調理メイド隊の中でも見習いの立場で、ルージュいわく他の妖精メイドや毛玉メイドと同じくお皿洗いから始めてもらってるらしい。それでも、特に用事が無いときなどに調理の手ほどきをするらしいのだが、テレスちゃんは他の見習い調理メイドの中でも成長が早い方らしい。その内、サラダやスープと言った品を任せるとルージュが言っていた。
そう言えば、テレスちゃんについて実は所属があいまいな事がある。実のところを言うと、テレスちゃんの程度の能力である形を変える程度の能力は、破損した武具や道具を直すのにとても役立つ能力だ。実際、テレスちゃんのおかげで紅魔館の武具・道具の補充数不足は大幅に改善されている。けれどそれも、テレスちゃんが毎日コツコツ、少しずつ直してくれたおかげなのだが……それでも、警備隊ではよく武器や防具の破損が発生している。メイド隊の方でも道具が壊れたりしているので、やっぱり根本的な補給数の改善にはなっていない。彼女も頑張ってくれて入るのだけれど、それでも修復した武具道具より、壊す方が少しだけ多いみたいだ……。
メイド隊の最後の特別なメイドは、トレスちゃん。
宝箱妖精という珍しい妖精種の子で、メイド隊の中でも特に妖精メイドの少ないノワールの運搬メイド隊に所属してる。ノワールいわく、「物静かないい子でまるで猫のようだ……そして、私にはまだ懐かないよ」と言いながらちょっと悲しそうな表情を浮かべていた。私には静かに近寄って体をくっつけてくれるのだけれど……流石にノワールがあれだったので言わないでおいた。
そんなトレスちゃんは、ノワールが言うに運搬メイド隊には必須な存在らしい。なんでも彼女の能力、箱を操る程度の能力がとんでもなく便利らしい。ノワールが説明してくれたのだけれど、トレスちゃんの能力で運搬用の箱の内部が拡張され、すごい量の荷物を運べるようになったとか……。
私の空間を操る程度の能力とは似ているようだけれど、トレスちゃんの方が使い勝手がいいので
ちょっとだけ羨ましいと思った。
こんな感じだろうか。
他にも、いろいろ書きたい子は多いのだけれど……流石に日記帳に書くには行が足りない。でも、メイド隊のみんなだけじゃなく、警備隊や司書隊のみんなもいい子ばかりで、嬉しい限りだ。
みんなの為にも、そしてレミリアお嬢様とフランお嬢様の為に、明日からまた頑張ろう。
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☆ 93冊目 14ページ
転生93年と5か月2日目(火曜日、日中:晴れ、夜中:晴れ・三日月)
まあ、
さて、昨日はメイド隊のみんなについていろいろと書いたので、今日は警備隊のみんなについていろいろ書こうと思う。
警備隊に特に人員の整備など、そう言ったことは起きていない。何なら、相変わらず増員要請が飛んでくるぐらいだ。けれど、妖精メイドや毛玉メイドはあまり戦闘が向かない子が多く、またメイド隊にも独自の戦力(レミリアお嬢様とフランお嬢様の護衛)が必要なので簡単に割くことができないため
警備隊のみんなもそれは分かってくれているため、反発とかは起きていないけれど……その内、過労で倒れてしまったり死んでしまったりしそうな子が出てきそうだ。早急に何とかしないと。
そう言えば
叩き起こされた
どうやら私がビンタしたことが相当心に来てしまったみたいで、泣きやませて甘えさせたらその日一日私に引っ付いて離れなくなってしまった。
これ以上書くこともないし、警備隊のみんなについて一人一人触れていこうと思う。
そんな
次に警備隊のマスコット、ツチノコのロン君だ。
庭園迷宮に迷い込んだのか、それとも庭園迷宮で生まれたのか分からない子だけれども今ではすっかり警備隊のマスコット兼、
ロン君はこの
マスコットであるロン君の次は、警備隊の中でも隊長格のみんなを記そうと思う。
最初は、
警備隊の中でも将来有望な子で、
アストレアちゃんの実力は、警備隊の中ではまだまだ。けれど、
プライベートな方は
次に、元セラフィムの堕天使なメリーさんだ。
元々、アンナが真っ青どころか聞いただけでも倒れてしまう365連勤という職場に嫌気がさし、管理していた神器(グングニルとレーヴァテインではない)を紛失したため
その為、人員が少ないため多少労働環境は悪いものの、しっかりとした休みや休憩時間を設定している今の職場が気に入っているみたいで、
本人が言っていたことらしいのだけれど、能力も堕天前の”天罰を下す程度の能力”から堕天した影響で、”ナイフを操る程度の能力”に変わったものの、変化後の能力の方がいろいろと便利だとか……?
最後は、
この人に関しては、私には心配事があった。彼女は、独特な言い回しをしながら皮肉交じりの質問をするタイプの人で、比喩や例えを織り交ぜた流れるような言葉使いが特徴的な人で……正直に言って交流や指示の伝達に難がありそうな人である。けれど、
交流時には、たしかにそう言った節はあるものの特に喧嘩になったり不満が出ているわけでもない、むしろそういう個性ということで受け入れられているみたいだ。仕事時の指示の伝達も、その時ばかりはしっかり伝達しているため伝達ミスも起きていないそうだ。
実力も申し分なく、種族も相まって夜の本館警備を任せているみたいだ。そう言えば、何回かバッタリ会ったことあったっけ……。
やっぱり、メイド隊のみんなと比べて所属が違うため、文字数が違うことになってしまっている。これは、あまりよくない事なのだけれど、お互いの立場上と仕事量に関しては文句を言っても減ることはないため今のところは、素直に諦めることにする。
その内、所属の垣根を超えて交流できるようになる様に願っておこう。
『
「メイド長のビンタ……ですか?
あぁー……えぇーっと、何て言うか痛くはないんですよ。確かにスナップは聞いていていい音はしてましたけれど、目を覚ますのにはちょうどいい一撃でした。でも、でもですね……すっごい、心に来るんです。
こう痛いと思うよりも、慈悲深いメイド長がビンタしたっていうことと、その時のメイド長の所作が……なんといいますか、『あなたには失望しました』みたいな雰囲気があってですね。
それで、『あっ捨てられる』って思ったら……お恥ずかしながら泣きました。」
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☆ 93冊目 15ページ
転生93年と5か月3日目(水曜日、日中:曇り、夜中:晴れ・半月)
久々に
そういえば、今日から
最初は清掃メイド隊のみんなの雰囲気に、気圧されて少しだけおどおどしていたけれどお仕事となるとキリっとした表情を浮かべてブラウの指導をしっかりと受けていたらしい。
ブラウが言うに総括メイド隊のメイドになるにはまだまだと言っていたので、きっと
さて、一昨日はメイド隊を、昨日は警備隊を書いたことだし、今日は司書隊を書こうと思う。
司書隊と言えば、最初は存続すら危ぶまれていたところだ。何せ、パチュリーがレミリアお嬢様を相手に、啖呵を切り、パチュリーがたった一人で司書隊を発足するための人員を集める必要があった。
当時のパチュリーは生死の境をさまよい、意識を取り戻したとはいえ人間であっても……というか、人外であっても絶対安静にするべきはずの傷を持っていたぐらいだ。今でも縫った後が残ってるんじゃないかしら。
ともかく、パチュリーは実際にたった一人で人員を集めきって見せた。というより、たった一人召喚して事足りた。それが、パチュリーの
小悪魔ちゃんはパチュリーの
小悪魔ちゃんの強さも申し分はなく、デフォルメ小悪魔ちゃんは毛玉ぐらいの強さぐらいだったけれど、本体である小悪魔ちゃんは少なくともアンナと互角に戦うぐらいには強かった。
さて、パチュリーと小悪魔ちゃんのことはこれぐらいにしておいて次は司書隊の3人の司書長について書いて行こうと思う。
パチュリーから直接聞いた話によれば、パチュリーがヴワル魔法図書館の館長であり、小悪魔ちゃん(本体)は館長補佐。そして、3人の司書長とその下に小悪魔ちゃん(デフォルメ)が居るとのことだ。
では、まず最初の司書長を書いて行こうと思う。
最初の司書長は、マルガハーリーさん。オーガのハーフであり、ドルイドと少しだけネクロマンサー、そして能力で錬金術も使えるというハイスペックな人だ。
パチュリーがこのヴワル魔法図書館の一室に作った魔法工房で主に手伝いをしていたり、デフォルメ小悪魔ちゃんを指揮して主に本の整理整頓を担当しているみたいだ。
プライベートに関しては、パチュリーはノータッチみたいだけれど私がメイドたちから聞いた話によれば問題はないみたいだ。
2人目の司書長は、ビビオンちゃん。
パワーだけなら、おそらく司書隊の誰よりもある子だ。けれど、陶器製の
ビビオンちゃんと言えば、あの戦いでも活躍していたぐらいの戦闘能力を持っていて、全身武器のビビオンちゃんを見てレミリアお嬢様が目を輝かせていたっけ。そういえば、なんでビビオンちゃんが中庭に居たんだろう?
3人目の司書長は、クルムちゃん。
おそらくこの
それに、クルムちゃんはよくメイド休憩室にも遊びに来ているため、私以外のメイド長や妖精メイドや毛玉メイドのみんなとも順調に交流が進んでいる。
ちなみにクルムちゃんは司書隊の中では小悪魔ちゃんに懐いており、パチュリーが言うに小悪魔が母性を目覚めさせていたとのこと……。
短いし、彼女たちについてあまり詳しくはかけないけれど、警備隊と同じであまり彼女たちと交流が無いので自分で自分を納得させておく。
……今日は頭も痛いし、これ以上はやめておくことにする。少し熱っぽいので、もしかしたら風邪をひいてしまったのかもしれない。
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□&△ 咲夜の見る
side:咲夜
「はぁ……はぁ……うぅっ」
お母さまの熱にうなされる声が聞こえる。
ブラウさんがお母さまの病状を見てくれている間でも、お母さまは熱にうなされて、それがひどく悲しいと感じる。
メイド長の傍らには心配そう見つめつつ、手を握るレミリアお嬢様に……私を安心させようと、後ろから抱き着いてきているアンナ姉さまも……ブラウさんの診断結果を待っていた。
「高熱が出ているのに、私の能力には反応しないだと……?一体、何が……だが少なくとも、病気ではないのか?…………いや、まさかそんな……彼女のはずがない。しかし……もしそうだとして、原因はなんだ……?」
「ブラウ……?」
「ッ……レミリアお嬢様、ご安心をメイド長はただの風邪です。パチュリーに伝えて、特製の風邪薬を処方してもらいましょう。」
「そう……。よかったぁ~」
へにゃへにゃと力なく椅子の背もたれに体重をかけるレミリアお嬢様。私もアンナ姉さまもブラウさんの風邪という言葉に安心し、お互いに笑顔を見せあう。
そのあと、ブラウさんからの説明が入る。なんでもお母さまはもとより働きすぎで、体が相当疲れておりそれでも働きづめだったから今回の風邪を拗らせ、うなされるほどの高熱を出してしまったみたいだ。確かに、お母さまが休んでいるところはあまり見ていなかった。朝もお昼も夜も、他のメイドさんたちよりも多く動いていたし、書類だって結構な量を処理していたはずだ。
「とりあえず、風邪薬を処方するためにもパチュリーに伝えてきます。レミリアお嬢様はいかがなさいますか?」
「そう……ね。しばらくはメイド長の側にいるわ。フランがユーリの散歩に行っていて、特にやることもないから。」
「かしこまりました。アンナ、そろそろ仕事に戻ろう。」
「了解っすー……咲夜ちゃんはどうするっす?」
「咲夜はメイド長の看病だ。それでいいか?」
ブラウさんが私の目を見て言ってくれる、私はそれにしっかりと頷きアンナ姉さまから離れてお母さまの側に控える。フンスと意気込んでみてみると、お母さまを除くみんなにクスリと笑われてしまう。それがちょっと恥ずかしくて、能力を使って時を止めて、水桶とタオルを取りに行った。
冷たい水の入った水桶と数枚のタオルを手にお母さまの部屋に戻ると、ブラウさんとアンナ姉さまはすでに退出しておりお母さまの眠るベットの側で椅子に座るレミリアお嬢様だけがお部屋にいらっしゃった。
「あら、お帰りなさい咲夜。」
「た、ただいま戻りました!レミリアお嬢様っ。」
「うん、元気でよろしい。」
「えへへ……」
レミリアお嬢様に褒められて少しだけ嬉しくなる……けれど、すぐに気を取り戻してお母さまが眠るベット横のテーブルに冷たい水の入った桶とタオル数枚を置く。数枚あるタオルのうち、一枚のタオルを濡らしてよく絞り小さくたたんでお母さまの額に乗せる。赤くなったお母さまの顔に手を近づけただけで、熱さが伝わり……相当な熱がお母さまを苦しめていることがわかる。
「いい手際ね、咲夜。それは誰から教えてもらったの?」
「えっと……プリムさんです!」
レミリアお嬢様のご質問に答え、私はお母さ……メイド長の側に控える。
少しだけ退屈だけれど、それでもそれが私に与えられた仕事だ。我慢してメイド長の様子をしっかりと見ておこう。
そんな事を考えながら、意気込んでいるとレミリアお嬢様がちょいちょいと手招きをした後、膝に座るようにご自身の膝をポンポンと叩く。
と、とても魅力的な提案だけれど、今の私はお仕事の途中だ。いくらレミリアお嬢様からの誘惑と言えども……
「雇い主命令よ、膝に乗りなさい?」
「はーい!」
当主命令であれば仕方がない。こればっかりは、お母さまやブラウさんでもしかりようが無いはずだ。レミリアお嬢様はお説教されるだろうけれども……。
トコトコとレミリアお嬢様に駆け寄り、負担にならないようにゆっくりとレミリアお嬢様のお膝に乗る。すると、レミリアお嬢様は私の体に腕をかけてそのまま抱きしめる。
「よしよし、咲夜は頑張り屋さんね。」
「えへへっ……でも、私なんてまだまだです。まだメイドとしては卵ですから!」
「そう……咲夜なら立派なメイドになれるわ。」
レミリアお嬢様のお優しい声がとてもうれしい。でも、レミリアお嬢様のお声は、少しだけ悲しそうだった。
「……ねえ、咲夜。咲夜には将来の夢はある?」
「将来の……夢?それは、何ですか?」
「っ……例えば、咲夜が大人になったらやりたい事とか、そう言うの。少しだけでもいいから考えてみて?」
そう聞かれて、考えてみる。
私が大人になったら、私は何をしてるんだろう。まだまだ半人前のメイドとしてみんなに扱かれているんだろうか……それとも、お母さますら驚くほどの完璧なメイドになれるのだろうか。
色々考えてみて…・・・・何も思い描くことができなくなった。仮に、完璧なメイドになってもそこから先の未来を思い描けないのだ。
「……分かりません。」
「考えてみた?」
「はい……完璧なメイドになる事を考えてみて、なった後の事も考えようとして…………なにも、思い浮かばなくって。」
私の答えがどうなのかは知らないけれど、レミリアお嬢様は少しだけ笑顔を浮かべる。
「その答えが聞けただけでも、十分だわ。」
ギュッと、レミリアお嬢様に優しく抱きしめられる。
何が何だか分からないけれども、レミリアお嬢様に抱きしめられたことがうれしくてつい笑顔を浮かべてしまう。
「大丈夫、咲夜の未来は……運命は安泰よ。」
「あん……たい?どういう意味ですか?まだ、オリビアさんの授業で習ってなくて……」
「心配ないってこと。」
「なるほどぉ……。」
そんなことを話しながら、ときどきお母さまの様子をみて……レミリアお嬢様と少しだけおしゃべりをするのであった。
~~~~~
side:メイド長
高熱の時に見る夢はたいてい不可思議で悪夢というにふさわしいほど嫌な夢を見る。
そう言った夢もまた、寝ている際に記憶の整理を行うための生理的現象なのだろう。けれど、今私が見ている夢は……それらとは当てはまらない不思議な夢だ。
白い世界で私と私に似た誰かが立っており、それ以外は何もない寂しい空間の夢を見ている。
「……あなたは、誰?」
「…………。」
私に似た誰か、私のような一人の妖精、衣服の違いこそあれど、髪の色から髪形に瞳の色までそっくりな誰か。けれど、その人物は決して声を発しない。
ただただ、私を見つめて、何もしてこない。時々思案するかのように目を瞑ることはするけれど、それだけだ。
「……ここは、どこなの?」
「…………。」
相変わらず、声を発しない。むしろ、喋る気が無いと見た。
まいった、これじゃあこの夢に囚われることになる。なんだか、血を求める人間もどきが頭をよぎるが気のせいだろう。
ともかく、私に似た誰かは私をじっと見ては、時々何かを思案するだけで何もしてこないし、何もする気が無いようだ。
「……いい加減、起きたいのだけれど?」
「…………。」
また目を瞑り、思案し始める私に似た誰か。その態度に少しだけイラっと来るものの、どういうわけかそこまで怒りが来るわけではない。
「……はぁ、降参よ降参。一体何なのよ、ここ。」
「…………お。」
……私に似た誰かは、私によく似た声でようやく言葉を発する気になったようだ。
しかし、お?”お”とはなんだろう。まさか、胸がない事を言うのだろうか。なんてやつだ!容姿が似ているし、胸も私と大差ないくせに胸をからかおうとするだなんて!
「なによっ、胸ならあなたもな―――」
「お前■、見ている。」
「――――――は?」
いま、私に似た誰かはなんて言った?
お前を見ていると言った気がする、お前と見ていると聞いた気がする、お前も見ていると感じた気がする・・・・・けれど、私の思考は私に似た誰かがどれを言ったのか特定できないでいる。
ぐるぐるぐるぐる
思考の中でその言葉が泳ぎだす。水を得た魚のように自由に動き出す。
ぐるぐるぐるぐる
泳ぎだした言葉たちが、私の脳を破壊し頭に痛みが走る。
ぐるぐるぐるぐる
咄嗟に、黄金の武器を取り出そうとして失敗する。私に似た誰かの襟元を掴もうとして、黄金の鎖に阻まれる。
「お……おまえはっ、誰だッ!!」
「…………。」
また目を閉じて思案顔。
ぐるぐるぐるぐる
白い世界が回る、コマのようにぐるぐるぐるぐる。
ぐるぐるぐるぐる
脳を壊す言葉が、増える。しない言葉が勝手に脳内に書き足される。
「なにを……私の記憶になにをしたぁぁッ!?」
頭の痛みをこらえ、黄金の鎖を引き剥がそうと悶え、私に似た誰かをにらみつける。
ぐるぐるぐるぐる
私に似た誰かは、思案顔をやめ……私のゴールドオーカーの瞳で、私を見る。
「……幸福を、見せろ。」
その言葉を最後に、私は夢から追い出された。
「ハァッ!?……はぁ……はぁ。」
目を覚ます、随分とうなされていたみたいで、寝間着が汗でびっしょりだ。
ぽとりと額から落ちたものを手に取ると、濡れて冷たいタオルで……安らかな寝息が聞こえて、その方向を見ると眠る咲夜を抱いて眠るレミリアお嬢様がそこに居た。
「……もう。」
二人の娘の微笑ましい姿を見て自然と笑みがこぼれる。その光景を見て、心を安らがせていると……やがて、自分がどんな夢を見ていたのか忘れてしまった。
高熱を出してみる夢は、たいていはしょうもなく訳の分からない悪夢だ。忘れた方が、私の身の為になる。夢を覚えていて、いい事など一つもないのだ。それでも、一つだけ……一つだけ鮮明に覚えていることがあった。
「……幸せになれ、ねぇ。」
どうしてその言葉を伝えられたのか、そして誰がその言葉を伝えたのか。まったくもって思い出せない。けれど、どういうわけか、それだけはしっかり覚えていた。
「言われなくたって、幸せになるわよ。」
そう独り言を零して、安らかにスヤスヤ眠っている娘たちを見る。
普段は立場上、絶対に娘なんて呼べないレミリアお嬢様……そして立場上娘として接する時間の少ない咲夜。二人とも、私の大切な娘だ。
レミリアお嬢様は、いつか大きくなったとき……きっとレミリアお嬢様が心から好きになった殿方と恋愛し、結婚する時が来るだろう。
咲夜は人間で、いつかは死に別れの時が来るだろう。けれど、その時まで咲夜には幸せな日々を送ってほしい。これまでつらい経験をこれまでの人生分味わってきたのだ。……熱が出ていたこともあって、考えが散らかっている。
(……寝よう。)
それになんだか、とても疲れた気分だ。
二人の娘の寝姿を堪能した後、疲れた体と頭を癒すために、再び眠りについた……。
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□ 咲夜ちゃんは(仕事中は)甘やかされたくない!
side:咲夜
……お母さまが、パチュリー様の解熱剤のおかげで苦しい熱から解放されたものの、大事を取って1週間ほど休養を取ることになった。その間、私は風邪をお母さまからもらわないようにアンナ姉さまと一緒に眠ることになったのだ。
アンナ姉さまとは、仲がいいと私は思っている。お休みの日に一緒にティータイムをしたり、一緒にお昼寝したり、時々遊んだり……夜のアンナ姉さまの絵本の読み聞かせが、最近ではひそかな楽しみになっている。
でも、その分アンナ姉さまはお仕事中だと私に厳しく接する。あくまで、見習いメイドである私と、副メイド長であるアンナ姉さまの立場をしっかりと保ちつつ、先輩メイドとして厳しいご指導を頂いている。
それは別にいいし、私も納得している。むしろアンナ姉さまが家族だからと、お仕事中でも甘やかすならお母さまはもっとひどいだろう。多分、私を部屋に監禁してると思う。うん。
……ともかく、お母さまとアンナ姉さまはプライベートでは家族として接して、仕事中では上司として接してくれている。
そして私が、なんでそんなことを話したのかというと。
~~~~~
とある日
~~~~~
私は今、清掃メイド隊の研修として、700号室の客室をたった一人で掃除するように指示された。この部屋は、ブラウ清掃メイド長いわく……めったに人が使わないから簡単な掃除しかしてないし、滅多に人が使わないから700号室からは新人練習用の部屋にしている。とのことだ。
そんなこんなで、私は清掃メイド隊の研修として700号室の客室を掃除しようと張り切り、懐からメイド隊のメイド全員に支給される伝票を取り出した。
ネペタ清掃副メイド長が、清掃メイド隊の掃除のやり方を一通り教えてくれたことを、思い出しながら準備する。
ステップ1:まずは、伝票に必要な道具を必要な数だけ書き込むこと。
「えっと……バケツと、モップに箒、あとはたきと……布拭きと。」
えんぴつを使って、伝票に必要な道具を書き込んでゆく。
お母さまとオリビア先生に字の書き方をしっかりと矯正してもらったため、もう「ミミズが這いずったような文字」なんてレミリアお嬢様とフランお嬢様に言われることはない!*1
ステップ2:書き終わった伝票は、伝票帳から外した後えんぴつで3回たたくこと。(字を書く方で叩かないこと!)
「えっと……こっちだっけね。」
書き終わった伝票を、鉛筆の書く方ではない端で軽く3回たたくと、伝票がふわりと浮かんでドアから廊下に出て行ってしまう。
あの伝票は、つい最近ノワール運搬メイド長が作ったマジックアイテムで、紙の一枚一枚にある条件付き魔法陣を起動すると、自動で運搬メイド隊の待機室にあるボードに張り付く様にしてあるらしい。
私はあまり魔術や魔法に詳しくないけれど、パチュリー様ができるだけ簡単に教えてくれたこともあって、なんとなく理解している。少なくとも、パチュリー様の説明で分かったのはノワール運搬メイド長の魔法センスはとってもすごくて、この魔法がかかった伝票帳と伝票は一般魔法使いが見たら高度過ぎて気絶してしまうほどの魔法道具らしい。
ステップ3:道具が届くまでの間、部屋の換気、ベットシーツやマクラカバーの取り外し、部屋のゴミ箱の確認をする。
「よいしょっ、わぁ……いい風。」
部屋の窓を開けて、しばらく心地のいい風に吹かれた後、ベットシーツやマクラカバーを外したり、部屋のゴミ箱の確認をする。
誰も使っていないからか、シーツやカバーは汚れていないしゴミ箱の中にはゴミなんて入っていないけれど、決められたルールはルールだ。しっかりと守るべきだし、お母さまが練習でも本番のように動きなさいと言っていたから手を抜かないと自分で決めていた。
取り外したシーツとカバーはそのまま入り口付近に置いておき、後するべきことを考え……そして、部屋の備品の確認をすることにした。
「飾り皿は大丈夫……花瓶も割れてない。家具も……うん、全然壊れてない!」
飾り皿と花瓶が割れていないか、家具が老朽化で嫌な音が鳴ったりしないかの確認をしていると。
[こん、こん、こん。]
『咲夜ちゃーん、道具持ってきたよー。』
700号室の部屋のドアがノックされ、運搬メイドの声が聞こえる。トタトタと早足気味でドアに駆け寄りノブを下げて扉を開けると、運搬メイド隊の古参毛玉メイドさんが道具を1式持ってそこに待っていてくれた。
「おまたせ咲夜ちゃん。バケツとモップ、箒にはたきに布拭きね。」
両手に抱えていた箱を床に置き、箱の中から箱の容量を無視した道具が何個か出てくる。
「ありがとう、毛玉メイドさん。」
「んふっ、こっちこそありがとうね咲夜ちゃん……あっそうだ、なんかブラウ清掃メイド長が、咲夜ちゃんに聞きたいことがあるから来て欲しいって伝言があったよ?」
「……ブラウ清掃メイド長が?」
ブラウ清掃メイド長が人を呼ぶことは結構珍しい事だ。そもそもブラウさんは他人に用事を伝える際は、自分から赴いて伝える人だ。それもしっかりと自分の仕事を終わらせてからだ。
そんな人が呼び出すと言うのは、相当な緊急事態や……もしくは粗相を?
「ど、どうしましょう……。」
「急ぎみたいだし、私が運ぼうか?」
「お願いしても大丈夫です?」
「もちろん、任せて!」
古参の毛玉メイドさんにおぶってもらい、廊下を爆走した……。
=====
咲夜が、古参の毛玉メイドに背負われブラウの元へ向かった直後、咲夜が作業するはずだった700号室に何人かの人影が飛び込み、なにか作業を始め出す。
時々小さい悲鳴と怒鳴り声が、聞こえてくるが……人通りのない700号室前の廊下に小さく響くだけであり、やがて700号室に飛び込んだ複数の人影は、何事も無かったかのようにバラバラの方向に素早く逃げていった……。
それからおおよそ10分後……古参の毛玉メイドに背負わせた咲夜が戻ってくる。その表情は疑問を浮かべたものであり、毛玉メイドもまた不思議そうな表情を浮かべていた。
「うーん、確かにブラウ清掃メイド長が咲夜ちゃんを探してたって言われたんだけどなぁ……。」
「もしや、人間たちによる策謀でも始まってるんでしょうか?」
「こわいねぇ〜……一応、後でメイド長に報告しとこうか。」
会話をしながら咲夜が700号室のドアを開けると…………。
ドアの向こうには既に綺麗に清掃と整頓のなされた部屋が広がっていた。その光景に、咲夜だけでなく古参の毛玉メイドでさえも驚いてしまう。
「……最近の人間って親切だね〜。わざわざ部屋を掃除して逃げてくれるだなんて〜……。」
「…………むぅ。」
古参の毛玉メイドが額に手を当てながら呆れ、咲夜はむすぅー。と頬を膨らませて不機嫌であることをアピールする。
=====
次の日
=====
今日の咲夜のお仕事は客室棟7階倉庫の備品確認……だが……。
「咲夜ちゃーん、プリム雑務メイド長が話があるから至急メイド休憩室に来て欲しいって。」
「……はーい!」
プリムに呼ばれたはずの咲夜だが、プリムはそんな指示を出していないと答えて、咲夜は何かを察してトボトボと作業場に戻る……。
「あれっ、もうお仕事終わ……あー、そういう訳じゃなさそうだね。」
「…………むぅ!」
案の定、既に咲夜に割り振られていたはずの倉庫は綺麗に整頓されていた……。
=====
また次の日……。
=====
今日の咲夜のお仕事は、客室棟7階のトイレ掃除。いくら700号室からは使わないとはいえ、掃除はしておいて損は無いはずだ。
「咲夜さん、アンナ副メイド長が緊急招集をなされました。急いでメイド休憩室に、ワタクシも同行します。」
「は、はいっ! すぐに行きます!!」
古参毛玉メイドの中でも、真面目で口調の硬い人が呼びに来たのだ。さすがにこの人を騙す人がいないと思うので、その古参毛玉メイドと一緒にメイド休憩室に急ぐ……。
しかし到達して、メイド休憩室でのんびりしていたアンナの話を聞くことになったのだがアンナはそんな招集をかけた覚えは無いと言われ、呆れた表情を浮かべながら古参毛玉メイドと一緒にもとのトイレの前に行く。
「……どうやら、咲夜さんの仕事が横取りされたようですね……。」
「…………むぅっ!!」
~~~~~
「もー!私をあまり仕事中に甘やかさないでください!!」
我慢の限界が来た咲夜はメイド休憩室で叫んだ。
その大声に、メイド休憩室に居たメイドたちはびっくりして硬直し、怒りながら目に涙を浮かべている咲夜をじっと見つめていた。
「そうだ〜!咲夜ちゃんから仕事を奪うな〜っ!!」
「一生懸命働いてる咲夜ちゃんに申し訳ないと思わないのかー!」
「小さいのに健気で頑張り屋さんな咲夜たそ……ぬふっ。コホン、いくらやることがないからと咲夜さんの仕事を奪うのは感心しませんね。」
咲夜の叫びに同調するように古参の毛玉メイドや妖精メイドが騒ぎ出す。
やがて……
「咲夜ちゃんはまだ子供だからトイレ掃除とかは私たちがやるべきだー!」
「倉庫整理の仕事は落下物多いから危険すぎる……咲夜ちゃんにもしものことがあると……。」
「でも700号室の部屋勝手に掃除したのは私達もわる―――もがっ。」
反対にベテランの毛玉メイドや妖精メイドが、それぞれの主張を繰り出した。
700号室の掃除はホコリっぽいから咲夜ちゃんが
客室棟7階の備品倉庫の整理をやったのは、その倉庫の棚はたてつけが悪く、よく落下物が発生しているため万が一にでも咲夜の頭に当たることを考慮し奪った。
トイレ掃除は単純に不潔だから、いつまでも綺麗にいて欲しい咲夜にはやらせられないと断固としてやらせないという意志を表明した。
今ここに、
「なるほど、みんないないと思ったらここにいたのね。」
―――していたが
「なるほどね、咲夜を仕事中でも甘やかしたいって子達と、仕事中は応援したいって子と別れてるわけね。
ひとつ言っておくわ、咲夜の教育方針についてはメイド長と私が決めるし
でも、そんなことより、あなた達?
午後の始業時間、もうとっくに過ぎているのだけれど?」
……後に、1人の古参毛玉メイドはいった。
多分、あの後すぐに仕事に行ったおかげで助かったが……言ってなければ斬られていたと。
それぐらい、アンナの目がガチだったと。
結局、『咲夜ちゃん甘やかし隊』と『咲夜ちゃん応援し隊』の派閥は残るどころかレミリアやフラン、(アンナを除く)各メイド長や警備隊と司書隊を巻き込んで、水面下の言い争いを続けるのであった。
体調不良で1ヶ月ほどお休みをいただきました
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☆ 93冊目 16~18ページ
転生93年と5か月10日目(水曜日、日中:晴れ、夜中:曇り・満月)
ちなみに、レミリアお嬢様の甘やかしはまだいい方だ。ルージュとノワールは割とシャレにならない甘やかしをする。
ルージュは元々、お気に入りの毛玉メイドや妖精メイドに対してかなり甘い。それでも、調理メイド長としてはかなり厳しいので、あまり問題視される程度ではない。しかし、その甘やかしは
次にノワールなのだが……なんというか、ノワールは魔法・魔術的な甘やかしをする。どいうわけかというと……。
ノワールは、お休みの日になるとヴワル魔法図書館にある共用魔法工房で自作のマジックアイテムを作る趣味がある。これが結構、高品質で便利なものでパチュリーとの協力で量産し、メイド隊や警備隊、司書隊に導入もされるほどのものまで存在する。実際、『インクいらずの羽ペン』は、私が今使いながら文字を書いているし、持ち歩きにも結構便利だ。
この前なんて、『魔力を流し込むと姿を消せるようになる指輪』やら『敵意があるものが近づくと自動で呪い殺す人形』とかパチュリーが聞いただけで目を血走らせて解析したいと興奮していた代物をポンポンと渡そうとする。ぶっちゃけそうなったパチュリーを鎮めるのは大変だからやめて欲しい。
ちなみに
逆に
しかも休憩中に掃除のコツだったり妖精メイドの子達と一緒に勉強したりと仕事のコツを教えたり、交流を深めたりと楽しそうだ。
フランお嬢様は、
次にブラウなのだが……なんというか憧れの人の立ち位置に収まっている。というのも、どうにも
そんなブラウは、実のところを言うと
プリムは
まあ、私的にはその二つがあってもよほど激しい喧嘩をしなければいいやと考えている。
ただ、
=====
転生93年と5か月11日目(金曜日、日中:晴れ、夜中:晴れ・半月)
久しぶり……うん、めちゃくちゃ久しぶりにレミリアお嬢様のご趣味であるお散歩にご同行することになった。ここ最近、いろいろなことがあって散歩が出来なかったり、そもそもレミリアお嬢様か私がそんな状態じゃなかったりしたので……忘れかけていた。ともかく、久々のお散歩は中々いいモノになった半月ながらに道が見えるほどの月光に照らされ、静まり返った森を歩き、時折聞こえてくるフクロウの鳴き声を聞きつつ、優雅に散歩をしていた。そして散歩をしている途中で、レミリアお嬢様と現在の
まず、メイド隊の人数について……正直なところ、仕事に慣れてきた毛玉メイドや妖精メイドがそれなりに増えてきているおかげで仕事が回り、休憩や休日ができるようにこそなってはいるものの……緊急事態や各メイドたちの体調面や精神面を考えると今の数の2~3倍は数が欲しい。そのぐらい、
次に、
今のところ、重大な問題はこの二つだろう。警備隊に関しては、
後は、庭園迷宮の調査も順調……
後は……メイド隊の練度不足や、アンナ隊の吸血鬼メイドたちの
私の言葉を聞いていたレミリアお嬢様は、少しだけ問題の多さに頭を抱えていたけれどその表情はずいぶんと明るいものだった。きっと、運命をご覧になられ……いい運命を見たのだろう。
レミリアお嬢様の「がんばりましょう、マリア。」という言葉に、私は頷きレミリアお嬢様のおそばを歩くのであった。
=====
転生93年と5か月12日目(土曜日、日中:晴れ、夜中:曇り・多分三日月?)
今日は、特に何にもない日だった。いつも通り仕事をしたぐらいで特に何もなかった。
こういう日は、書くことに困る。強いているのなら、ユーリ君とロン君が日中に庭園で身を寄せ合って昼寝をしていたことだろうか。2匹ともそれなりに大きいので(ユーリ君に限っては歩くだけで地響きがするレベル)昼寝していた場所が少しだけクレーターになっていたけれど、警備隊が頑張って元に戻していた。
本当にこれぐらいしか書くことが無い……。まあ、今日はこれでいいか。
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☆ 93冊目 19~21ページ
転生93年と5か月13日目(日曜日、日中:晴れ、夜中:晴れ・新月)
今日は、
なんと今日、
けれど、
私が見ていない間に、そして数か月という僅かな期間ながらも少しづつ成長しているようで、いつの間にかポロポロと涙をこぼしてしまった。
最近、なんだか自分が涙もろくなったなと思うようになってしまったけれど、嬉しくて出る涙は流してもいいものだ。
ちなみに、アンナにも
~~~~~
転生93年と5か月14日目(月曜日、日中:晴れ、夜中:晴れ・三日月)
ここの所、晴れが続いている。別に悪い事ではなくとてもいい事なのだ。
晴れの日は日中であれば温かく、洗濯物も乾かしやすい。夜中であれば、少し肌寒いものの
何が言いたいのかというと、平和でそれぐらいしか書くことが無いのだ。
いや、あるにはあるのだ。
まあ、ルージュは甘やかし隊の中でも軽度の方なのでまだマシなのだが……運搬メイド隊の研修の時が一番心配だ……。
~~~~~
転生93年と5か月15日目(火曜日、日中:晴れ、夜中:晴れ・半月)
今日は、
私とアンナ、そして
まずは、アンナが発見した第4層『洞窟』についての報告だった。
『洞窟』は、どうやら『湖畔』に存在する湖の真下に存在するようで岩と岩の隙間から水が滴る場所だ。それに、どうやら『洞窟』には豊富な鉱物資源が存在するらしく、金や銀……パチュリーとマルガさんの協力で判明したことだが魔法・魔術に使える希少な金属や宝石などが多く存在するようだ。
これまで金属類や宝石は『庭園』に稀に出現する鉱石を含んだゴーレムか、金属を含む岩のウロコを落とすユーリ君からでしか手に入れられない不定期な物であったが、『洞窟』には豊富に存在し、その広さも中々の広さを持つことからかなりの資源量が想定されるらしい。
しかし、『洞窟』に出現する魔物は上階3層の魔物と比べ随分と歯ごたえのある敵らしく、警備隊の中でも隊長クラスしか調査ができないみたい。それが原因で調査が遅れたことを
実のところ、
レミリアお嬢様は、その報告を受け警備隊に特別報酬と長期休暇を与えることを約束し、しばらく寝ていなかったであろう
次の次のお話で、キャラ募集をすると思います。
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☆ 93冊目 22~25ページ
転生93年と5か月16日目(水曜日、日中:晴れ、夜中:晴れ・満月)
今日は、最近お天気な中でも特にいい天気と太鼓判を押せるほどの日だ。雲一つない青空、肌寒くも熱すぎずでもない温度に、心地の良いそよ風の吹いた日。夜に関しても、すごしやすい日で、レミリアお嬢様も丸々とした青月を見上げて珍しくワインを飲まれていた。(レミリアお嬢様は一応、成人なのでお酒を飲んでいても何も問題はない。絵面はちょっとアレだが。)
私も少しだけワインを頂いたのだけれど……ほとんどぶどうジュースみたいなものだった。むしろアルコールが入ってるのだろうか?と思うぐらいだったのだけれど……後から来たアンナに飲ませてみたところ、アンナいわく「アルコール無いっすねこれ」とのこと。
つまるところレミリアお嬢様はわざわざ空のワインボトルにぶどうジュースをいれてワイングラスに注いで、私にワインということを嘘ついて格好つけて飲んでいたということになる。
これについてレミリアお嬢様の反論は、「だってそもそも
そのレミリアお嬢様の反論に、私もアンナも納得してしまった。
……あれ、そう言えばこの前ルージュがワインでフランベしてたような……?
追記
料理用の白ワインでした。
~~~~~
転生93年と5か月17日目(木曜日、日中:曇り、夜中:曇り・多分半月)
残念なことにいいお天気連続記録が途切れてしまった。けれど、自然に文句を言っても仕方ないので、気を持ち直して仕事を片付けた。
今日は、ルージュから
その問題というのを私も見て……正確には
さて、そんな
確かに、ルージュの言ったことは正しい。いつもの安定した味を求めることもなんら間違ってはいないし、何ならルージュだって飽きないように工夫してくれている。だからこそ、
きっと、今の
でもそれをルージュに伝えるのは無粋なので、私の心の奥底にしまい。ルージュに「
ルージュはもちろんと頷き、
もしかしたら、
~~~~~
転生93年と5か月18日目(金曜日、日中:晴れ、夜中:晴れ・三日月)
今日はレミリアお嬢様のお散歩の日、幸いにも昨日の曇り空から一転またもや雲一つない晴天と夜空を見ることができた。
そして、今日はレミリアお嬢様のお散歩にフランお嬢様とユーリ君、そして最近なぜか龍に進化したロン君を連れて散歩をすることになった。
ロン君が龍になった理由はあまりよくわかっていないけれど、大方
ロン君は、大きくなった体と生えて来た手足に不慣れな様子だったけれど今回、フランお嬢様がユーリ君と一緒にロン君を連れてきた理由も、ロン君に体の動かし方を教えるためだろう。
実際、お散歩の途中でロン君は段々と自分の体の動かし方を分かってきたみたいで、お腹を地面にこすったり、足がもつれて転びかけたり(転びかけた時はユーリ君が支えになった)、不用意に身体をぶつけることも少なくなっていた。さすがフランお嬢様……こうなることを見越しているとは、レミリアお嬢様以上に未来を見ておられる。
そう言えばユーリ君は竜、ロン君は龍と表記しているけれど、実際にユーリ君とロン君の体のつくりはそれぞれ違うものだ。
私がまだ人間だったころ、どこかで聞いた、もしくは見た話しなのだが、西洋に伝わるドラゴンを表す漢字は竜、一方東洋に伝わる蛇状の竜を表す漢字は龍と言ったように、ユーリ君は一般的な四足一翼なドラゴンの姿、ロン君は、巻物とか屏風絵とかに出てくる胴体の長い姿だ。あと、これは関係のない話かもしれないがユーリ君もロン君も指の数は4本だ。あとロン君は宝玉らしきものを持っていない。
まあ、この知識ももう100年近く前の人間だったころの記憶だ、正直あっているかどうかも微妙だし、どうして聞いたのか、もしくは見たのかもよく覚えていない。
あと、件の
おまけ:罰を執行中の
なんかすっごい、虫とか食べてそうな見た目なのに私を食べようとしてるんですけれど!?」
巨大ハエトリグサ「キシャー!!」
レミリア(言えない……メイド長とのお散歩で拾ってきた食虫植物を大きくなってきたから中庭に植えたらパチェが何か魔法の薬品を誤ってかけて食人植物になっただなんて言えない……。)
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△ メイド長Vs.アンナ(戦闘訓練!)
最近、平和な日々が続いている。それ自体は、いい事なのだけれど
理由は分かり切っているけれども、念のために再確認しておこう。
私たちの主、レミリアお嬢様とフランお嬢様は吸血鬼……そして、その種族の中でも最上位クラスの存在だ。
純正の人間以外を忌み嫌う人間たちにとっては、いくら可憐で幼さを残す少女の姿をしていたとしても吸血鬼は吸血鬼。親の仇のように睨み付け、あまつさえ唾を吐きかける不敬を働くことだろう。
そうならないためにも、いや……そうさせないためにも、緩みかけている気を持ち直して常在戦場の心を持たなければならない。
あとは、まあ……最近は書類作業ばっかで体重が気になってきたから、少し運動をしたいとかそう言う理由もあったりする。
「というわけで、アンナ。私と模擬戦どうかしら?」
「いいっすよー…………えっ。」
~~~~~
……メイド休憩室で言ったことが間違いだったのか、私とアンナを囲うように大勢のメイドが、私とアンナの模擬戦を観戦しようと集まっている。
私たちが居る場所がよく見えるテラス席ではレミリアお嬢様とフランお嬢様、
「いや~、大人気っすね~。ただの模擬戦なのに。」
「多分、私が戦うってことが相当珍しいんじゃないかしら。」
「まあ、メイド長は基本ディスクワークとメイド隊の戦闘指揮がメインっすからね~。」
アンナと軽口を言い合いながら、黄金のハルバードを何回か片手でブンブンと振り回してみる。うん、予想よりはなまっていないけれど、少しだけ重たいな。
「勝ったら何かくれるんっすか?」
「うーん……考えてはいなかったけれど、何か欲しい?」
「あー……聞いたはいいものの、あんまり考えてなかったっす。やっぱ、無しにするっすよ。」
まるでチェスやオセロでもするかのような雰囲気で会話を続けているが、これからすることは手加減無しの実戦形式の戦いだ。私もアンナも相手を死なせるつもりはない。そもそもアンナは死なないが……まあ、死なせる気はなくても殺す気でやるので激しい戦いになる事は間違いないだろう。
「じゃあ、そろそろ始めるっすよ?」
「ええ……オリビアちゃん。審判、お願いね。」
「えぇ~……本当にやるんですか~?」
オリビアちゃんの嫌そうな声が返ってきて、思わず私もアンナも苦笑いを浮かべてしまう。まあ、責任者の両方がこれから殺し合うのだから当然と言えば当然の反応だろう。けれど、オリビアちゃんも不承不承ながらも渋々手を掲げる。
「えーっとこ、これより、メイド長
「オリビアちゃん、私はないわよ。」
「アタシもねーっす。」
オリビアちゃんの本音がこぼれたところで、オリビアちゃんも折れたのだろう。ため息を一つついた後、真剣な表情を浮かべて私たちを見た。
「それでは、始めてください!!」
号令と共に、オリビアちゃんの手が降ろされ……それと同時に先制攻撃とお言わんばかりにナイフの雨が私に降り注いだ。でたらめに投げられたナイフの群れをよく観察すると、随分と隙が多いことに気付ける。それこそ、人一人が通り抜けられるような……。
[ガキィン!!]
危険を察知し、ハルバードの柄で振るわれたナイフを受け止める。
受け止めたナイフは、アンナがよく手に持って振るうナイフでありナイフの雨の中なのにも関わらず、アンナは鋭い目線で私を見ていた。
(なるほど、空中に浮かんだナイフの群れに不自然な隙間があったのは、ナイフの刃を足場にして空中を移動しながら私に斬りかかるためか。)
意識を集中させ、スロー化させた世界の中でそう分析し、冷静に反撃に移ろうとするが初撃が失敗に終わったアンナは再び、ナイフを足場にして安全地帯へと戻る。
いつの間にアンナは、ナイフの刃を足場にして跳躍するという曲芸を手に入れたのだろう。いくら何でも、それは達人芸が過ぎる。
反撃しようとした体勢を整え、2歩ほど先ほどの位置より右前に前進し、一度極限状態まで高めた集中力を戻す。
[ドドドドドッ]
私を襲うはずだったナイフは、そのまま豪快な音を立てて地面へと突き刺さり芝生をめちゃくちゃにする。まあ後で
―――上半身をバレエのように後ろにそらす。
[シュッ]
体のすれすれをアンナのナイフが通り過ぎた。
(2段目の上半身への攻撃はフェイント寄りの一撃、本命は足払いか。)
再び、集中力を極限まで高めてアンナの動きを逃さないようにする。
すると、私の予想が当たっていたのかナイフを逆手から持ち替え突き刺す体制になるが、私が足元への注意をおろそかにしたフリをすると、狙いすましたかのように私のくるぶしに向けて蹴りが放たれた。流石に来れは避けられないので能力を使うしかない。
私が倒れこもうとする位置に黄金のうねりを出現させ、自分の体をそのままそのうねりの内部へと放り込む。
入ったうねりは開いたままで、次はアンナの真上にうねりを出現させそのうねりからハルバードを突き出しながら出る。
[ドスン!]
しかし、ハルバードは先ほどのナイフの群れと同じように地面に突き刺さっただけで、地面の硬い感触が手に伝わった。
「あっぶね~っす。あとちょっとで串刺しとか勘弁してほしいっすよ~?」
「ふふっ、まさか避けられるだなんて思っても居なかったわ。さすがアンナ。」
「えへへ~、メイド長に褒められたっす。」
「「「「「おぉおおおおおお~~~っ!!」」」」」
一連の高速で行われた戦いは、30秒もしないというのに大激戦と思われたのだろう。観戦していたメイドたちや狼女たちから歓声の声が上がった。多分、ほとんど見えていないだろうけれどいきなりナイフが突き刺さったり、私が地面にハルバードを突き立てた様子を見て適当にあげたのかもしれない。
けれど、レミリアお嬢様や
「うっひ~……レミリアお嬢様の冷たい視線が刺さるっす~。」
「まあ、模擬戦だと言っているのに初手から初見殺しだもの。仲良く怒られましょう、アンナ。」
「メイド長がそう言うならいいっすよ~。」
地面からハルバードの槍先を抜き、軽く構えて左手を突き出し黄金のうねりを何個も出現させる。アンナもそれを予測していたのか、ナイフを放り投げて双剣を引き抜き構えた。
「さて、アンナ。私の物量に、いつまでたえられるかしら?」
「へへっ、いくら物を投げてもあたらなきゃ意味がないっすよメイド長!」
売り言葉に買い言葉、けれどまあそこまで敵意のないモノを投げつけあい、左手で指パッチンを鳴らし、黄金のうねりからこれまでため込んだ石礫を目に見えないほど拘束で投射する。何個か、観客に当たってしまうかも?と思ったのだが、狙いが大きく外れた石礫は空中で何かにぶつかったように砕けてしまった。
テラス席を見ると、パチュリーが魔法陣を展開して維持に集中している様子が見れた。なるほど、パチュリーが呼ばれたのはそう言うことね。これで、
[バババババババババシュッ!!]
今までため込んだ石礫を、嵐のように剛速球でアンナに向けて発射する。
しかし、アンナはそれを避けるどころか切り払い、あまつさえ私に向けて突っ込んできた。まあ、それが正しい判断だろう。実際、石礫を飛ばすために相手との距離がそれなりに離れている必要がある。自爆対策ということもあるが、近くに来られると投射が上手くできないという私個人の弱点もある。けれど、私もただ黙ってやられるわけにはいかないし、近づかれた際の対応策はきちんとある。
[ジャララララッ!!]
「なッ!?」
アンナの焦る声が聞こえたが、構わず黄金のうねりから出現させた
「イッタァアアアアアッ!?!?め、メイド長!?その鎖、操れるようになったんっすか!?」
「完璧に、とは言わないまでもね。休憩時間に時々練習してたのよ?それよりも、大丈夫なの?両腕、折れてるけれども……。」
「大丈夫じゃないっす!降参っす降参!!模擬戦って話はどこ行ったんすか!?」
……とまあ、少しだけやり過ぎたのか、アンナの腕が随分とグロい折れ方をしてしあっていた。表現するには少しばかりアレな怪我の仕方なのでやめておこう。
ちなみに黄金の鎖については、私の【空間を操る程度の能力】の収納空間に最初の頃からあった鎖で、あの死にかけた時に空間内にあるのを知ったのだ。
この鎖は、どうやら私の思考通りに操ることのできる魔法の鎖らしくて、パチュリーとノワールに調べてもらっても、分からないほどの高等な魔術・魔法で作られたものらしい。でも、私に害はないし、練習すれば自由に操れるということで、休み時間に少しづつ練習していたというわけである。
「そこまで!アンナ副メイド長の戦闘不能により、マリアメイド長の勝利となります!」
「本当に降参でよかったの?アンナには、アレがあったのに。」
「模擬戦で自分の首を斬り落とすバカがどこにいるんすか?」
「…………それも、そうね。」
「……メイド長が、アタシのことをどう思ってるのかよくわかったっす。けど、もう命を簡単に捨てる真似はしないっすよ。」
何て会話をしながら、観戦していたメイドたちや狼女たちの拍手や歓声を聞き流しつつ、テラス席から発せられる怒気交じりのカリスマから、どうやって逃げようか考えていた。
「……どうするっすか、めちゃくちゃキレてるっすよ?」
「うーん、さすがに私たちが悪いとはいえ逃げたくなるわね。」
「幸いにも、フランお嬢様、
「でも、【運命を操る程度の能力】で未来を見れるレミリアお嬢様から逃げられると思う?」
「…………あー、大人しく二人でお説教受けましょうっす。」
私とアンナはその場に大人しく座り込み、テラス席から飛び降り降臨なされた
とりあえず、今回はここまで!
メイド長の成長をお見せしたかったというのもありますが、レミリアお嬢様が怒ると怖いということを見せたかったというのもあります。
ちなみに『スカーレットデビル』は、原作では血を吸いきれないレミリアお嬢様の様子を見た誰かが付けた異名ですが、このお話ではぶちギレしたレミリアお嬢様を指す言葉になっています。
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△ メイド長が猫になった日 その1
最近、パチュリーが自分の魔法工房に籠ることが多くなった。小悪魔ちゃんいわく、ロンくんが進化してからというもの考えることが多くなり、やがて工房に籠りっきりになったとのこと。
幸いにも寝食はしているみたいだけれど、お風呂には入っていないらしく、それにたまに爆発音が聞こえるため小悪魔ちゃんが私に相談してきたのだ。
「メイド長さん、こっちです。」
「案内ありがと小悪魔ちゃん。後でクッキーをあげるね。」
「やったー!」
と、私のクッキーが食べられると聞いて一気にテンションが上がった小悪魔ちゃん。どうやら私のクッキーは小悪魔ちゃんも気に入ってくれたみたいだ。それにしても私のクッキーは!これまでクッキー嫌いな子でも1度食べさせればハマらせるわけなのだが、もしかして私の作るクッキーには中毒作用でもあるのだろうか……?
ともかく、小悪魔ちゃんの案内でヴワル魔法図書館を進みやがて本棚に隠されるようにある鉄の扉を発見した。鉄の扉にはパチュリーの魔法工房と書かれた札が下げられている。試しに開けてみようとしたけれど、どうやら内側から鍵がかかっているみたいだ。
「……強敵みたいね。」
「メイド長さんでもそう思います?」
「壊せればそれでおしまいだけれど、周りの本棚にも被害が及ぶからね。」
「そ、それは困ります!」
どうしたものかと考えていると、小悪魔ちゃんが何かを感じとったのか伏せてください!と警告してしゃがんだ次の瞬間、鉄の扉が吹き飛び、中から飛び出してきた煙が私に襲いかかった。
……そして、私の意識は無くなってしまった。
~~~~~
意識を取り戻すと、私の視界が随分と低い位置にあることに気づく。倒れているのだから当たり前か、と考え立ち上がっても、変わらず視界は低い位置のままだ。
「けほっけほっ、もーパチュリー様め……これで何度目よ?って、あれ?ネコちゃんがいる。」
「にゃー。(……嘘でしょ?)」
小悪魔ちゃんが私を見ながら、私のことをネコちゃんと言った。それだけで、私は私に起きたことを把握し少しだけ焦る。
「……ん?もしかして、このネコちゃん……メイド長さん?」
「にゃ!(小悪魔ちゃんよくわかったわね!?)」
「やっぱり!どこか感じたことのある魔力が―――」
小悪魔ちゃんが私がネコになったことを理解してくれたその瞬間、けたたましい館内放送が拡声魔法によって響いた。
[「館内に侵入者!館内に侵入者!!侵入者はヴワル魔法図書館に反応あり!!繰り返す、侵入者はヴワル魔法図書館に居る!!」]
「あー、これってこの前決議で言ってた魔力探知式の警報機です?」
「にゃー。(ええ、そうみたい。それにしてもこのタイミングで侵入者は間が悪いわね。)」
「そうですね……。メイド長さん、私が運ぶので避難しま―――」
[「侵入者特定!侵入者は
……拡声魔法が響かせた声に私も小悪魔ちゃんも顔を青くするしかない。というか、心当たりがありすぎて青を通り過ぎて真っ白になってるかもしれない。
「……にゃ。(小悪魔ちゃん、そういえば私の魔力はどうなってる?)」
「い、1部、変わってますね。魔法に詳しくないと分からないぐらいには……。」
「シャーッ!!(侵入者って私のことじゃない!!)」
「侵入者ってメイド長さんのこと!?」
~~~~~
「居たか!?」
「いやこっちにはいない!」
「一体どこに……あっちに行くぞ!」
「おう!」
……本棚からチラリと顔をのぞかせ、遠ざかっていく狼女の2人を見送る。パチュリーの魔法工房前から何とか移動したのだが、数分もしない間に何人もの武装した狼女たちがヴワル魔法図書館を駆け回っている。
「うぅ……いつもは頼りになる警備隊の皆さんがこんなにも怖いだなんてぇ……。」
「にゃー。(あんなふうにピリピリするのは仕方ないわ、私が敵だったら下手したらお嬢様方の命を狙うかもしれないのだし……。)」
私を優しく抱きかかえて、ヘナヘナと床に座り込む小悪魔ちゃん。
本来なら小悪魔ちゃんは、警報とはなんも関係の無いはずで、私を置いて逃げるように言ったのだが、「主のやらかしをフォローするのも使い魔の務めです!」と言って私を抱きかかえて警備隊から隠れつつヴワル魔法図書館から脱出しようとしてくれている。
「と、ともかく……早く逃げて元に戻る方法を見つけないとですね。」
「にゃー。(ええ、恐らくノワールならば元の姿に戻る方法も知ってるはずよ。)」
パチュリーですら時折魔法の相談をしている相手であるノワール。メイド隊の中でも随一の魔法使いである彼女であればあるいは……。なんて考えながら私の負担にならないように抱えてあまり体を揺らさずに、けれど急ぐ小悪魔ちゃんに身を任せる。
時々、近くで狼女の声はする者の小悪魔ちゃんしか知らない通り道だったり、時々デフォルメ小悪魔ちゃんを使って狼女たちを薄暗く見間違えやすい場所に導くなどの工作までして、ようやくヴワル魔法図書館の出入り口まで近づけたのだが。
「まだ見つからない?」
「も、申し訳ありません!」
「謝らずに報告を続けてください。」
「はっ!」
お仕事モードの
「ど、どうしよう……
「にゃー……(真面目な
私の魔力が一部だけ変わっただけなのに作動した警報器のように、
「…そう、捜索範囲をヴワル魔法図書館のすべてに変更。私は変わらず、ここで見張るわ。」
「了解ッ、直ちに伝えます……アォーーーーンッ!!」
……ダメそうだ。どうやら
けれど、
狼女がかなり遠くまで離れたぐらいに、
「はぁ……レミリアお嬢様のご指示とはいえ、部下をだますことになるだなんて気が引けるなぁ……。」
「……えっ?」
「……にゃっ?(えっ?)」
「あー……小悪魔さんと、たぶんメイド長ですね。さっきの聞いちゃいました?」
てへっと言った感じで後頭部を掻く
「も、もしかして……最初から感づいてました?」
「あー、いやっ、警報があった後レミリアお嬢様が私のもとに来て『パチェのやらかしだから、実戦的な訓練と思ってやりなさい。』と言われ……まあ、部下に嘘をついてるって感じですね。あと、お二方がそこに隠れたのは、さっきの部下が謝ったところから知ってはいましたよ?小声の独り言を聞かれるとは思えませんでしたが……」
照れくさそうにする
「こ……こわかったですぅ……。」
「あわわ、だ、大丈夫ですか!?」
まあ、小悪魔ちゃんの腰が抜けてしまってしばらく立てなくなってしまった。ただでさえ、小悪魔ちゃんは戦い慣れなんてしていないし、これまで真剣な
小悪魔ちゃんはしばらく、
まだまだこちらのふたつは募集中です!
ご応募お願いします!!
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△ メイド長が猫になった日 その2
無事に小悪魔ちゃんが泣き止んだあと
なんでも、警備隊の隊長格が目を光らせている廊下をぬけた先……
無論、各メイド長や副メイド長はもちろんの事、ライちゃんやカートちゃんと言ったメイド隊の中でも強い子達が警戒に当たっているみたい。
「そ、それじゃぁ……ぶ、ブラウさん達も!?」
「あ、いえ。ブラウさんたちもレミリアお嬢様の方から説明がされていると思いますよ?私に説明し終えたあと早足で向かってましたし。」
ということは多分大丈夫だろう。レミリアお嬢様がその手のことをミスするとは考えづらい。いや、まあ……たまにミスするけれど。
けれど、
「にゃー。(それにしても、ずいぶん迅速な対応ね
「メイド長、私はさすがにネコ語は分かりません!」
「にゃー!?(そんな迫真に言うことなの!?)」
「なんて言ってるか分かりませんけれども、とりあえずハイ!!」
「シャーッ!!(ドヤ顔で言うな、このおバカ!!)」
ベシベシと猫パンチを
「にゃー。(いい加減にしないとぶち殺すわよ?)」
「すみませんでした。」
さすがにすこし調子に乗ってるので分からせておいた。
いくら、敵はいないと言ってもレミリアお嬢様は『実戦のように挑め』と言っているのだ、ふざけすぎも良くないのだ。
爪を引っ込めて、小悪魔ちゃんに再び抱っこしてもらい
「うぅ……事実を言っただけなのにぃ……。」
「だとしてもタイミングが悪いと思いますよ?」
「こ、小悪魔ちゃんまで!?」
よよよ〜と嘘泣きをする
「部下が来ます。小悪魔ちゃん、メイド長を連れて早く行ってください。」
「ひぇっ、は、はい!」
どうやら遊びすぎたようで、狼女の子が1人こっちにやってきていたみたいだ。
真剣な表情を浮かべた
~~~~~
「はぁ……はぁ、ここまで来ればまずは一安心?」
「……にゃー。(……そうでもないみたい。)」
廊下に置いてある木箱の山の陰で一息を着いた小悪魔ちゃんだったが、私はその先にいるおっかない人たちを見ていた。
「
「……それも、仕事。」
「…………。」
そこに居たのは、アストレアちゃんとメリーさんにマキシーネさん。3人ともに警備隊の隊長格を務める実力者だ。ひとつ言えることは、猫じゃない私ならともかく、
無能力者でありつつも、
そして、
「ど……どうしましょう……流石にここだと隠れながらも無理そうですし…………。」
「……にゃー。(私に、いい考えがあるわ。)」
「ほ、本当ですか!?」
=====
「……あら~? 小悪魔さん~。」
「こ、こんにちは~。みなさんも、侵入者の対応を?」
……ぎこちない言葉ながらも小悪魔ちゃんが対応してくれる。私の考えに乗った小悪魔ちゃんも、相当怖い思いをさせてしまったけれど、これもよく襲撃される
私が考えた作戦はこうだ、小悪魔ちゃんに空き箱を一つ持ってもらい私はその中に入る。小悪魔ちゃんは私の入った箱を運び、この場を切り抜ける。誰だって考えつきそうで簡単に見破られそうだけれど、その簡単に見破られるのにやるか?という穴をつくのだ。
「その箱はなんです~?」
「これ、ですか?実は、急いで避難しないとなのにパチュリー様にこれを捨ててきてって言われてしまって、あははっ……。」
「……その、パチュリーは?」
「私も戦えるわって言って、魔法図書館にいますよ?」
小悪魔ちゃんの感じている怖さが、箱の中にいる私に震えとして伝わってくる。
相当無理しているみたいだけれど……ここを抜けないと、ノワールに会いに行くことはできない。
「まあ~大変ですね~。」
「……マイペース。」
「あははっ……じゃあ、通っても大丈夫ですか?」
「どうぞ~、気を付けてね~?」
「ここは、暗いからね。」
よし、何とか二人は騙せたみたいだ。けれど、ここまでマキシーネさんが黙っていることが不安だ。
「では、私はこれで~」
……と、再び箱が揺れだし小悪魔ちゃんが危険から脱した。
「……ボソッ」
「ッ!? し、失礼します~!!」
けれど、おそらくマキシーネさんが小悪魔ちゃんに耳打ちをした途端、箱が揺れる感覚が大きくなった。いったい、何を言われたんだろう。しばらく酷い揺れに酔いそうになりながらも耐え、ようやく小悪魔ちゃんが箱から私を出してくれた。
「な、何なんですかあの人……こ、怖すぎますよぉっ!」
「ま、マキシーネさんに何を言われたの?」
「『嗚呼、箱の中の猫は果たして生きているのか死んでいるのか、不思議なことがあるものですね。』って!!」
案の定、バレているみたいだ。けれど、マキシーネさんがアストレアちゃんとメリーさんに伝えていないということは、黙っててくれるのだろうか?いまいち、マキシーネさんの考えていることは分からないものの、しかし協力的ではあるみたいだ。正直、マキシーネさんはミステリアスすぎてその内背中を刺されそうで怖い。
「にゃー。(小悪魔ちゃん、すこし休憩して、気持ちを落ち着けましょう?)」
「は、はいぃ~……スゥー……ハァ……」
……それから、しばらくの間、私は小悪魔ちゃんの気持ちを落ち着けることに専念することにした。
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△ メイド長が猫になった日 その3
小悪魔ちゃんが落ち着いてから、すぐ……私と小悪魔ちゃんは、地下室の廊下から脱出することに成功した。幸いにも、メインホールには武装したメイドの姿は見えなかったため急いでノワールのいると思われる運搬メイド隊の執務室に向かうことにした。
運搬メイド隊の執務室は、本館倉庫(代わりの部屋)の隣に存在しており、基本的に運搬メイド以外ではめったに行くことはないのある。しかし、私は総括メイド。しっかり、運搬メイド隊の執務室の場所は把握しているし、道順もよく覚えている。
「にゃー。(この先の道を右よ、小悪魔ちゃん。)」
「はいっ……それにしても、長い廊下ですね~。」
「にゃー。(それはそうね、元々
「つまり、今は普段よりも広がってるわけです?」
「にゃー。(そう言うことになるわ、そういうことをする必要になったのは
「……メイド長さん、何でそれ今言っちゃうんです?」
「……にゃぅ(あー、なるほど。フラグだったのね。)」
「ッ!警報で言われていたネコを発見!!小悪魔さんが抱きかかえています!!」
私の道案内で、指示通りに右に曲がった小悪魔ちゃんだったのだけれど……そこに居たのは、ビン底メガネをかけた妖精……オリビアちゃんがそこに居たのである。
「ま、待ってください!こ、これには深い事情が!!」
「事情は、捕まえてからじっくり聞きます!吸血鬼メイドたちがッ!!」
「それ、実質の処刑宣告じゃないですか!?」
小悪魔ちゃんが悲鳴を上げて、私を抱えたままオリビアちゃんの反対側に向けて全力疾走をする。さすがの小悪魔ちゃんも吸血鬼メイドたちの拷問の噂を聞いたことがあるようで、逃げ足が先ほどの駆け足よりも早い。
「あっ、待ちなさい!毛玉たち、足止めをお願い!」
「!!」*1
「!!」*2
「!!」*3
「!!!」*4
「?」*5
オリビアちゃんが毛玉を放ち、小悪魔ちゃんを追いかけ始める。けれど、小悪魔ちゃんの逃げ足が速いおかげでオリビアちゃんと毛玉たちから逃げ切れる。
流石の逃げ足だなぁ、と感心していたのだけれど……
「居た~ッ!まて~ぇっ!!」
「小悪魔さん!そのネコを渡すにゃー!」
「ひぃいいいっ!な、なんでこんなところにお二人がー!?」
「にゃ、にゃー。(あー……マジかぁ。)」
よりにもよって、メイド隊の中でも実力者であるマグちゃんとカートちゃんが走ってきた。
おそらく、警報が鳴って本館の警戒に当たっていたところ、偶然小悪魔ちゃんが目の前を走ってしまったのだろうか……?それとも、オリビアちゃんが能力を使い、毛玉たちに連絡して毛玉メイドがそれを伝えたのか……。少し考えてみるけれども、普通にオリビアちゃん経由で伝わったんだろうなぁ、と考えてしまう。
まあ、見つかってしまった以上は、逃げるしかない。というわけで、小悪魔ちゃん、(死ぬ気で)頑張って!
「いやぁああああっ!私、身体能力そんな高くないんですぅーーーーーっ!!」
「逃げ足が速い~!」
「……うん? あの猫ってもしかして……?」
カートちゃんがなにか感づきそうだけれど、残念なことに私の正体が何なのか心当たりがないみたいだ……おのれ、パチュリーめっ! どうやれば私だと認識できないぐらいの変化を爆発で生じた煙で発生させられるんだ!一体あの部屋で何やってんだよっ!?
「あーもう、分かんないからとりあえず捕まえるにゃ!吸血鬼メイドたちに任せておけばそのうちはくだろうにゃ!」
「応援を呼んだから、追い込もう~!」
その言葉が聞こえた後、マグちゃんとカートちゃんの後ろから武装した毛玉メイドや妖精メイドが集団になって追いかけて来た。正直、そのせいで、ドドドドドとすごい音が廊下に響き、少し揺れているわけであり……。
「あぁああああっ!つ、ツボが倒れてきたぁッ!」
ヒョイッと小悪魔ちゃんが、倒れて来たツボをスライディングでかわしたり……
「止まれ!」
「ここは行き止まりだよー!」
「大人しく捕まりなさーい!」
「いやですぅううう!」
「と、飛んだぁ!?」
「すっごいジャンプだー!」
「6mはジャンプしてるのー!」
先回りしていた、メイドの集団をジャンプでかわしたり……
「こ、こんなところに行方不明になっていた小さい私が!!」
「にゃー!?(行方不明になっていた小さい私!?)」
小悪魔ちゃんいわく、いつの間にか行方不明になっていたデフォルメ小悪魔ちゃんを回収したりと、『小悪魔エスケープ』と名付けんばかりの逃走劇を披露していた……。
その光景が、なんか既視感があるなぁと思ったら、アレだ。デフォルメ小悪魔ちゃんを拾うという要素はあるけれど、インターネットがつながっていない時にプレイできるあのゲームだ。
なんだか懐かしいなぁ……上手くは思い出せないけれど、暇つぶしにはちょうどいいシンプルだけど奥の深い面白いゲームだった気がする。
「待ちなさーい!」
「小悪魔ちゃん、あの猫を連れて逃げるつもりだー!」
「そんなの許さないよー!!」
「来ないでくださいぃいいいいいっ!!」
……いろいろと、カオスな光景になってきたなぁ。
あの後、無事に小悪魔ちゃんはメイドの集団から逃げ切り、私をノワールのもとに送り届けてくれた。小悪魔ちゃんと、ノワールのおかげで私は猫の姿から元の妖精の姿にも戻れた。もし捕まっていたらどうなっていたことか考えてみるものの……流石に吸血鬼メイドたちが猫に発情するわけでもないし、きっとレミリアお嬢様のもとに連れていかれるところだったのかもしれない。
ちなみに後日。
私から、私が猫になった理由を聞いたレミリアお嬢様は、パチュリーを呼び出し許可のない実験の禁止を言い渡していたのだけれど、どうやらあの騒動の間にパチュリーの望みの物……生き物は完成していたようで、何と”マンティコア”のオスとメスをペットにしていたのである。それを見てしまったレミリアお嬢様は、思わず気絶をしてしまっていたのでした。
あ、もちろんお世話はパチュリーがするみたいだけれど、基本的なお世話は
ある日、『小悪魔エスケープ』の単語が浮かんで、書きたくなってメイド長を猫にした。後悔はない。
元ネタのあのゲームはオンラインでもできるみたいですし、たまにやってみるのもいいかも……?
おまけ
「…………。」(ユーリ君)
「ゴルルルル……ッ」(ロン君)
「キシャーーーーッ」(
「グルルルル……ッ」(マンティコア夫婦)
「なんで紅魔館は危険な存在ばかりペットにするんですかー!?」
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☆ 93冊目 26~27ページ
今回のお話からしばらくは、第3回キャラクター応募にて応募されたキャラクターを紹介するお話となります!
登場する順番はランダムになりますので、ご了承ください!!
転生93年と5か月19日目(土曜日、日中:晴れ、夜中:晴れ・新月)
今日は、新しい妖精が
経緯を説明すると、私が今日の午前の書類作業を終えて、息抜きの為に
セキュアちゃんいわく、セキュアちゃんは極度……というより、絶対的な方向音痴であり、能力である”安全に案内する程度の能力”を常時発動しなければ、目的地に永遠にたどり着かないどころか、遠く離れた場所に迷い込んでしまうみたいだ。
セキュアちゃん自体結構ふわふわした子の為、あくまで私の要約ではあるが大体そんな感じだろう。
そして、
なんでも、お腹が空いて果実を食べようと自分の巣穴から出てきたら、能力を使っていなかったせいで道に迷い、さらに言えばセキュアちゃんの勘の様さが働き、巡回警備をしている狼女たちの監視の目すら掻い潜って、
ともかく、このセキュアちゃん。このまま野放しにすると、たぶんまた迷子になって、最悪の場合(まあ狼女たちの目から逃れた勘の良さがあれば大丈夫だろうが)、人間に捕まってしまい、見世物や慰み物にされてしまうだろう。
その為、セキュアちゃんを妖精メイドとして
究極の方向音痴とはいえ、サポートしてくれる子が居ればそうそう迷子にはならないだろう。現に、
とまあ、セキュアちゃんが
正直な話、運搬メイド隊は仕事の内容上
~~~~~
転生93年と5か月20日目(日曜日、日中:晴れ、夜中:晴れ・三日月)
実のところ、1週間ほど前から、この紅魔館には私が知らない妖精メイドが、メイド隊で働いている。
その妖精メイドに扮した妖精に気付いたのはその1週間前の朝礼の時だ。朝礼の際、各メイド隊に整列した後……アンナ隊の妖精メイドの列、その最後尾に見覚えのない妖精がメイド服を着て並んでいたのだ。
最初は、その日のうちに声掛けをしようとしたのだけれど、なんとなくその日のうちに話しかけない方がいいと直感が訴えたというのもあるし、その日の朝の書類作業が殺人的な量だったということもあり、ここ1週間ほど放置することに決めたのだ。
そして、霊体であり自由に見えなくなることが可能なアイーダちゃんに頼んで、その妖精を
私が、その妖精に接触した途端……その妖精は、泣きながら逃げようとしたので、追いかけて抱きしめることで拘束することにした。
半狂乱になりながら暴れる妖精を何とか抑えつつ、私の執務室に連れ込み……そこで、その妖精を落ち着けることにした。優しく抱きしめ、頭を撫で、優しい言葉をかけて、ゆっくりと宥めていくと、先ほどの半狂乱はどこへやら、怯えつつも何とか私の言葉に返事をくれるようになってくれた。
そこから、その妖精のことを少しづつ聞いていった。
その妖精の名前は、フォリアちゃん。
ここからかなり離れた森で生まれ能力を使いながら平和に暮らしていたけれど、フォリアちゃんの持つ能力……”答えを知る程度の能力”、その絶大な力が人間に知られてしまい、フォリアちゃんは捕まってしまい、10年もの間暴力や虐待を受けて
けれど、ある時……その
しばらく話を聞いていると、フォリアちゃんはやがて泣きながら私に、追い出さないでと懇願しだした。どうして、私がフォリアちゃんを追い出そうと考えているのかと聞いてみると、勝手に侵入した挙句にご飯を食べたり倉庫で眠ったりと、いろいろやったかららしい。……それの何が問題なのだろうか、正直今でも分からない。
確かに
それをそのまま伝えると、フォリアちゃんはしばらくフリーズした後に私に「ここに居ても、いいんですか?」と聞いてきた。その問いには、もちろん「歓迎する」と答えた。それに、アンナは今頃、フォリアちゃんを含めたシフト表を作ろうと、専用の用紙とにらめっこをしているところだろう。きっと、しばらくはアンナは苦心するだろうな、なんて考えつつ、再び泣き出してしまったフォリアちゃんを慰めたのであった。
第3回で応募されたキャラクターが登場する日記は、二人づつ紹介させていただくので、ペースはかなりゆっくり目となります!
また、リクエストされたお話は、第3回にて応募されたキャラクターが全員紹介されたのち、そちらも一つずつ丁寧に投稿させていただくので、首を長くしてお待ちください!!
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☆ 93冊目 28~29ページ
転生93年と5か月21日目(月曜日、日中:晴れ、夜中:晴れ・半月)
昨日、一昨日と妖精メイドを新しく雇用したのをきっかけに、(どうやって広まったのかは不明だが)
その妖精のほとんどは、一般的な妖精の類いではあったのだけれど、その中に一人……名前を持ち、なおかつ能力を持った妖精が居た。
その妖精の名前は、セリアちゃん。”好みの紅茶を生み出す程度の能力”という、ひどく限定的な……しかし、この
メイドになりたいとやってきた普通の妖精たちは、とりあえずアンナとオリビアちゃんに預けて、私はセリアちゃんを執務室に案内し、
セリアちゃんと話したことで分かったことが結構あった。
まず、セリアちゃんは元々普通の妖精だったこと、
色々なところに雇われたが、雇用主がクソだったので逃げまくったという経歴を聞いて、何というか、主人運が無いんだなぁ、と少し同情してしまった。
ともかく、いろんな雇用主から逃げて、それでも誰かに使えていたいという奉仕魂を持て余しているところに我が
その際に、セリアちゃんの能力”好みの紅茶を生み出す程度の能力”を使い、私好みの紅茶を淹れてもらったわけだが、大変美味しい物で、紅茶に関しては味のうるさいノワールと、給仕係としてよく紅茶を飲んでいるアンナ、この
あと、紅茶によく合うお菓子作りの腕もあるみたいで、その腕を見込んでルージュの調理メイド隊として雇用することになった。
その後、セリアちゃんの能力をレミリアお嬢様とフランお嬢様にもお披露目、ご試飲してもらうことになった、最初はレミリアお嬢様とフランお嬢様はその能力を絶賛、紅茶の方もお二方のお好みということもあり、血入りの紅茶を飲み干しなさったのだけれど、普段のお茶会では私の紅茶を飲みたいとおっしゃった。
それを聞いたセリアちゃんは、いつか普段のお茶会でも飲まれるように働きながら能力のパワーアップをすると決意を燃やして、打倒私を目指しだしたのであった……。
~~~~~
転生93年と5か月22日目(火曜日、日中:晴れ、夜中、晴れ、満月)
警備隊の人員不足……それは、メイド隊の人員不足と同じぐらい深刻な問題だ。
警備隊とメイド隊は、今の所必要最低限の人数がその能力を最大限発揮できる職場環境でなんとか回っている状態であり、実のところを言うときちんと休めていない子が多い。もちろん、元気な子はとても元気だ。けれど、体力の回復にも個人差というものは存在するので、元気そうには見えていても体は疲れているという子もいる。そう言う子は、知らず知らずのうちに頑張り過ぎてしまい、過労で倒れてしまう。今はまだ、ライちゃんがいるおかげで休憩時間に仮眠を取ったり、休んだして最大のパフォーマンスをできるようになっているが、それもライちゃんへの負担を考えるとあまり褒められたものではない。
メイド隊に関しては、ライちゃんがいるというギリギリでセーフになっているストッパーが存在しているが、警備隊に関してはアウトだ。
警備隊は
ともかく、メイド隊に並んで警備隊にも人員は必要なのである。
それを解決するべく、私が
アンナが教会に居た時代、
その時のアンナは、一匹狼でとにかく人外を殺し回っていた時代だったため詳しくは知らないが、「教会にアンナあり、傭兵にベナミあり」という言葉ができるほどの強さらしい。そんな話をしていると、アイーダちゃんが1人の妖精を連れてやってきた。
ともかく、私、アンナ、
しかし、ベナミさんは妖精にしてはずいぶんと変わった姿だった。角が生えており、しまっている翼を出してもらうと、レミリアお嬢様と同じ蝙蝠のような悪魔羽。どちらかと言えば、妖精ではなく
さて、ベナミさんが妖精と判明した後、面接が始まる。
自己アピールに得意な事、能力を持っているのならその能力の説明や、これまでの経歴に過去にどういったことがあったのかという確認。最後のこれは、割と悲しい過去を持っている子が多いため、聞くようにしたのである。
まず、ベナミさんは戦闘に関しては自信があるとのことだ。
育ての親がシルクロードからやってきたグルカ兵で、そのグルカ兵に師事を受けていたそうだ。しかし、そのグルカ兵が寿命で人生を満足げに終えて一人の身になり、傭兵稼業を続けていたわけだがそろそろ仕えるべき場所を探すべきかと考え、妖精を優先的に雇っていると噂が広まっている
そして、能力も持ち合わせているようで、その説明もしてくれた。その能力の名前は”等価交換する程度の能力”、代償を支払うことでそれに見合ったものが受けられるという能力だ。
この能力のいい点は、代償さえ払えば(人体限定ではあるものの)欠損や大怪我を即座に治すことができるということ、さらに言えば、代償はその人に行くが他人にも付与可能とのことだ。
ベナミさんは、主に五感を代償に支払っており、そのおかげか戦闘妖精の中でもかなりの強さを持つとのことだ。ちなみに、一応ものでも行けるとのことだけれど、よっぽど希少価値の高いものではないと代償として使えないそうだ。
念のために聞いたことだったのだけれど、それで分かったこともあった。ベナミさんは自己犠牲の精神があり、過去に仲間を庇ってとても危険な戦地に飛び込んだことがあるそうだ。
そこまで聞いて、
もちろん、他の警備隊のメンバーと同じお給料と仕事条件を提示したわけだが、ベナミさんは少しだけ傭兵時代の感覚が残っているのか契約前の報酬を要求してきた。
しかし、残念なことに
その為、
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☆ 93冊目 30~31ページ
転生93年と5か月23日目(水曜日、日中:晴れ、夜中:晴れ半月)
この
このことに関して、レミリアお嬢様は、お父上であるスカーレット卿にお手紙をしたためたのだが、スカーレット卿側も近々、大きな吸血鬼派と大規模な戦争があるかもしれないとのことで、鍛冶師をこちらに回すほどの余裕はないらしい。だからと言って、テレスちゃんに無理を言って24時間体制で能力を使ってもらうなんて鬼畜なことは絶対に認められない。
どうしたものかと考えていると、マグちゃんの知り合いの鍛冶師が庭園迷宮の第4層、洞窟に居るとのことだ。マグちゃんから詳しい話を聞くと、マグちゃんや私と同じ、転生者であり家事の腕はマグちゃんが保証してくれた。その話を聞いて私は、すぐさま
マグちゃんの案内の元、私と狼女たちは薄暗い洞窟の中を進んでいると、洞窟の奥の方から金属を叩く音が聞こえて来たのだ。これまで、第4層の調査を続けていた狼女たちにとって少しだけショックな出来事だったのか、少しだけしょんぼりとしていたけれど、まあ武器防具がタダでさえ少ない状態で、かなりの時間調査をしてくれていたのだ。むしろ、彼女らが頑張ったことをたたえよう。ともかく、マグちゃんを先頭にしながら金属を叩く音の鳴る方へと向かうと、そこに居たのは一人の妖精だった。カンカンカン!と熱気と共に、高熱に熱された金属を剣の形に整えてゆく。整えられたそれを水に突っ込めば、蒸発音が響き、金槌を振るっていた妖精は私たちに気付いたのか、こっちを一瞥しマグちゃんを見て硬直していた。
マグちゃんからの紹介で、その妖精とあいさつを交わす。
マグちゃんが紹介してくれた妖精の名前は、ヘスティーナさん。転生したときからずっと鍛冶妖精であり、マグちゃんの持つグローブやブーツを作った張本人だ。
ちなみに容姿を記載しておくと、身長は170㎝ぐらい。髪は作業をするからか茶色で一本のロング結びで束ねており、小顔のボーイッシュなカッコいい系の顔だ。瞳の色は暗くてよくわからなかったものの、オッドアイになっていて右目がヒスイ色で、左目がルビー……だとおもう。肌色は自然な黒褐色であり、スタイルはなんていうかブラウに近いモデル体型で、どこがとは言わないが、ブラウに勝っているし、くびれは細く、足も健康的なスラッとした物だ。そして、彼女の羽は
マグちゃんが紹介してくれたおかげで、お互いにスムーズに自己紹介が終わり、何個かの冗談を交えて世間話をした後、本題に入る。
ヘスティーナさんに、
その後、ヘスティーナさんを連れて庭園迷宮の第4層『洞窟』から脱出し、地下にヘスティーナさんの鍛冶場を作り、さっそくこれまでに壊れてしまった武器や防具を持ち込んだ。
――――――直後、ヘスティーナさんの怒号が飛んだのであった。
追記
「どんな使い方をすりゃぁ、こんな壊し方するんじゃ!?みてみぃ、この槍なんて刃がラッパみたいに開いてるけぇ!!
それにこの剣!見事に真っ二つじゃ!!初めて見たわ、刃がぽっきり折れてるじゃのうて、縦方向にぱっくり割れとるのは!?」
と、警備隊の狼女と
ちなみに、歯がラッパみたいに開いている槍と縦に真っ二つになった剣の犯人は
~~~~~
転生93年と5か月24日目(木曜日、日中:晴れ、夜中:晴れ・三日月)
ここの所、いい天気が続いている気がする。そう思って日記を読み返すとここ一週間以上いい天気が続いていた。なんだか嵐の前の静けさみたいでいやだなぁなんて考えてみているけれど、まあ、何とかなるかとポジティブに考えてみることにした。
さて、昨日はヘスティーナさんをこの
さて、実のところを言うと今日も新しいメイドを雇うことに成功した。
その子の名前はベンジャミンさん。妖精種族のグレムリンであり、悪魔のグレムリンとはちょっと違った存在らしい。まあその辺は、ノワールが詳しく調べてくれるかもしれないしブラウが教えてくれるかもしれないと期待していたのだけれど、二人とも分からないと首を振ってしまったので真相は闇のままだ……。
けれど、パチュリーいわく悪魔のグレムリンは妖精のグレムリンのイタズラが悪魔の仕業のように見えて悪魔のグレムリンが生まれるきっかけとなったという説があるのを教えてくれたので、まあ良しとしておこう。(小悪魔ちゃんの表情が、驚いたものになっていたんだけれどあれは正解していたからあの顔だったのか、小悪魔ちゃんも初知りだったからあの顔だったのかちょっと詳しく聞きたかった)
ともかく、ベンジャミンさんをメイドとして雇うことになり雑用メイドとして雇うことにした。というのもベンジャミンさんは何とこの時代ではまだちょっと先の技術の話でもある「工学」に関連した技術者でもあるとのことで、近い未来(いつになるかは不明だが)に近代化の波が来るのも予想しての採用だ。
ちなみにベンジャミンさんは、工学だけでなく「魔法・魔術」も得意だそうで、迷いの森を形成する魔術式の修理をお願いすることにした。時間をかけてゆっくりとやってくれればいいと伝えたのだけれど、ベンジャミンさん、どうして私と話す時だけはビクビクしてしまうんだろう……?
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☆ 93冊目 32~33ページ
転生93年と5か月25日目(金曜日、日中:晴れ、夜中・晴れ・三日月)
今日はレミリアお嬢様のお散歩の日だ。けれど、先週と違う点は今日は私だけがレミリアお嬢様のお散歩に同伴しているということだろう。
実のところを言うと、今日もフランお嬢様はユーリ君とロン君、巨大ハエトリグサのユグ君と、キメラ夫婦のエメナスとローウィルを連れてついて来ようとしていたのだけれど、レミリアお嬢様は今日は頑なに連れていくことを拒んだ。そのかわり、土曜日と日曜日は目いっぱいフランとペットたちを構うと約束していたので、まあ、姉妹仲は心配しなくていいだろう。
さて、そんなレミリアお嬢様と私のお散歩は……残念なことに最悪の物になっていた。
というのも、今日のお散歩は第三者の影響でイタズラされまくり、泥まみれ土まみれの状態になってしまった。「イタズラ大成功~」と言いながら出て来た猫耳と猫しっぽを生やした妖精、名前を”イミナ・グラス”さんというらしい。イミナさんがイタズラを仕掛けていたみたいで私もレミリアお嬢様も大変な目にあったみたいだ。
……まあ、イミナさんはぶちぎれたレミリアお嬢様にボッコボコにされた後『悪魔の契約』で
正直、あの時のブラウは笑顔でも目が笑っていなかったから本当にダメな奴だった。
その日のうちの
追記
あの後、イミナさんの様子を見にブラウの所に言ったのだけれど、ブラウが厳しくしたせいなのか、ブラウに対しては軍隊口調になってしまっていた。
そして、ブラウのことがよほどトラウマになってしまっているのか少しだけ目が死んでいるような気がしたのだけれど……ブラウが居なくなった途端に、元の口調に戻った為意外とイミナさんも強いなと感じた。
ちなみに、そのあとブラウの扱きに耐えたご褒美として、クッキーをあげてみたら少しだけ距離が縮まったような気がした。
~~~~~
転生93年と5か月26日目(土曜日、日中:晴れ、夜中:晴れ・新月)
今日も、
その妖精の名前は、”クエスさん”。この前雇ったフォリアちゃんが強引(?)に連れてきたようで少しだけ息が切れていた。
フォリアちゃんに話を聞いてみたところ、クエスさんはフォリアちゃんが
フォリアちゃんにはお仕事に戻ってもらい、私はクエスさんと個人的な話をすることにしたのである。
実のところ、私とクエスさんは何度か顔を合わせたことがある。それもレミリアお嬢様の前でだ。
直接話したわけではないけれど、レミリアお嬢様とお話し中の時にお茶菓子を持っていったのである。その時に居たのがこのクエスさんというわけだ。私が入室してお茶菓子を置いていった後も何時間か話していたみたいだけれど、内容は知らない。そのあとに、警備隊に向かい
ともかく、クエスさんと話してみて……そして分かったことがある。
まず、クエスさんは私やマグちゃんたちと同じ転生者ということだ。前世はとある保育園の先生であり、溺れている幼い子を助けて代わりに溺死してしまい、そして妖精に転生したとのことだ。
妖精に転生してからしばらくして、飼い主から逃げ出したフォリアちゃんに出会い、フォリアちゃんを保護……そして、フォリアちゃんに
そこまで聞いていると、なんだかフォリアちゃんに向けて重い愛を向けているようにも思えるけれど、様子を見るにそうというわけでもない、むしろどちらかと言えば母性を向けているような感じだ。
そして、クエスさんの能力についても話をした。
クエスさんの能力は、”質問をする程度の能力”。クエスさんが質問すれば、たとえそれがクエスさんの独り言であろうと、半強制的に回答をせざるを得ないようにする能力らしい。
試しに私に使ってもらったのだけれど、私が大切に思っているもの、今までで一番うれしかったことなど根掘り葉掘り聞かれてしまった。何というか、かなり恥ずかしかった。
ちなみにクエスさんは無事に雇用できたし、ブラウ隊に配属することになった。クエスさんの気質的にブラウ隊の教育係が適任かと思い、そう言った連絡もブラウにすることにしたのであった。
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☆ 93冊目 34~35ページ
転生93年と5か月27日目(日曜日、日中:晴れ、夜中:晴れ・三日月)
ここ最近、妖精の雇用が続いているわけだけれど今日も新しい人を雇用できた。
その妖精の名前は、メディーさん。妖精にも関わらずに、狼女たちと引けを取らない身体能力を持つ人で、私との個人的な話で転生者であるらしい。
前世では、医者として働いていたらしく相手がどんな立場の人間であろうと構わず助けていた医者の鏡と言える人だったみたいだ。
けれど、上司の恨みを買ったことがありそれが原因で転生することになり、転生して妖精になったとのこと。
妖精になった後は、前世と同じようにケガ人や病人を視て回り、医療や薬学を学びながら旅をしていて、その途中で知り合ったセキュアちゃんの家に居候していたそうだ。
しかし、この数日セキュアちゃんが帰ってこないことを心配してこの
メディーさんをセキュアちゃんに合わせると、セキュアちゃんは喜んでいて、「一緒にやろう」とメディーさんを誘っていた。
メディーさんは最初、少しだけむっとしていたけれど、セキュアちゃんが諦めずに誘い続けていたことと、そのセキュアちゃんがこの
ちなみにメディーさんの希望で、ケガ人が出やすい場所に配属することになり、
これで警備隊の人たちが少しでも傷跡が残らないようになってほしいと心の中で祈るのだった。
~~~~~
転生93年と5か月28日目(月曜日、日中:晴れ、夜中:晴れ・半月)
今日は少しだけ、大変な日だった。
朝の始業時間を開始したころは、特段変わりない普通の一日……ここ最近の雇用の波の終わりかなぁと考えていたのだけれど、残念なことに雇用ピークは過ぎていなかったみたい。
今日、この
警備隊が発見したときには、ひどく疲れた様子で木にもたれて座り込んでおり、近づいても反応がなかったから保護したとのことだ。
とりあえず、その妖精を客室に連れて行き、休ませることにした。
それからしばらく経ち、ちょうどメイド隊がお昼休憩に入ったころ、その妖精が無事に目を覚ましたとの伝言が私に伝えられた。
その伝言を聞き、急いでその妖精が休んでいた客室に向かい……その妖精の話を聞くことにしたのだ。
その妖精の名前はメラルドちゃん。エメラルドから生まれた妖精であり、その羽根はエメラルドでできており、さらに言えば見る人が見れば間違いなく目を変えて捕まえようとする容姿だった。
そんなメラルドちゃんだが、何と転生者であることが分かった。前世はごく普通の女子高校生であり、家族や友達とも上手くいって順風満帆な学生生活を送っていたらしい。しかし、不幸なことに不慮の事故にあり転生……最初は、種族が変わったことに絶望してしまったとのこと。
けれど、いつまでも感傷には浸らないように各所をめぐって自分を鍛えるたびに出たそう……でも不幸なことに、その容姿や羽が原因で人間に襲われることになり、どうしたらいいのか分からず、逃げ込んだ迷いの森のあの場所で休んでいたら、いつの間にかこの部屋で寝ていた。とのことだ。
彼女が休んでいる間に
なんとか泣き止ませて、話を聞くと慰み者にしたり売り払うとか不穏な単語が飛び出た訳だが、うちは絶対にそんなことをしないと誠心誠意伝えた結果、何とか誤解は解けたようで泣き止ませることに成功した。
その後、行く当てもないそうなのでメラルドちゃんをメイドとして雇うことにして、家事や料理は一通りできるそうなので、
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☆ 93冊目 36~37ページ
転生93年と5か月29日目(火曜日、日中:晴れ、夜中:晴れ・満月)
そう言ったやつらは、迷いの森を巡回警備中の狼女たちと鉢合わせそのまま始末される。運よく、巡回警備中の狼女たちを潜り抜けても定点警備中の狼女たちに発見されたこ殴りにされ死ぬか、警備隊の隊長格であるアストレアちゃん、メリーさん、マキシーネさんによって始末される、彼女たちすら超えても
仮に武闘派のメイドたちを越えたとしても待ち構えているのは、レミリアお嬢様とフランお嬢様のお二方だ。最近だとブラウとルージュに時間を作ってもらい、鍛えているらしい。
なぜ今日、そんな話題を書き記したのかというと……実のところを言うと妖精の侵入者が居たのだ。それも警備隊の警戒網を掻い潜り、メイド隊すら突破し、執務室に居たレミリアお嬢様に会ったという侵入のプロだ。
その妖精の名前は、”ダーティ・グラス”さん。闇から生まれる闇妖精という種族の妖精であり、前世をもつ転生者だそうだ。
そんなダーティさん、前世からの忍者好きであり今世では忍者らしいことを一通りできるとのこと、レミリアお嬢様が忍者とはという感じで、ダーティさんに聞いたのだけれど。ダーティさんは、早口で忍者の説明をしだしてしまった。丁寧語で聞き取りやすいとはいえ、さっきまで口数の少なかったダーティさんの変わりようにレミリアお嬢様もたじたじだった。
しかし、ダーティさんの説明が丁寧だったこともあり、レミリアお嬢様は忍者を間者という風に結び付けた。ダーティさんは何か言いたげだったもののの、異国の地ということもありそのような物と半ばあきらめていた。
さて、ダーティさんがどうして
ダーティさんがこの
レミリアお嬢様は、ここまで侵入したダーティさんの腕、そして侵入者でありながらも堂々とした態度(多分、あまり会話になれていなくて黙っているだけかと)を気に入り、メイド隊……それも精鋭ぞろいのブラウ隊で雇うことになった。
ちなみにダーティさんには忍者としての観点から侵入しやすい箇所や問題点などをレポートとして提出してもらい、そのレポートを警備隊とメイド隊の武闘派メイドに配った。
その結果、警備隊と武闘派メイドの警備効率が格段に向上し、より一層侵入者が来ても捕縛や保護をしやすくなったのであった。
~~~~~
転生93年と5か月30日(水曜日、日中:晴れ、夜中:晴れ・半月)
妖精に詳しいブラウが言うに、闇妖精という種族は珍しい存在だ。
その理由はブラウにもよくわかっていないそうだけれど、闇から生まれる妖精はそう多くはないとのこと。100年に一度一人生まれたらいいと言われるレベルの希少性らしい。
どうしてそんなことを書き記したのかというと、今日……その闇妖精がもう一人、このメイド隊で雇うことになったからだ。
その子の名前は、ウルティマちゃん。夜の
さて、このウルティマちゃん。
レミリアお嬢様が妖精ということもあり、私のもとに連れて来たわけなのだが残念なことにウルティマちゃんは家事能力は低い方だった。育てれば一般メイドぐらいにはなるだろうけれども、残念なことにウルティマちゃんの性格を鑑みて、メイドは合わないと私の方で判断し、
幸いにもウルティマちゃんは、戦闘面は優秀だったようで
追記、
その後、ウルティマちゃんの様子を見に行ったのだけれど、
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☆ 93冊目 38~39ページ目
転生93年と5か月31日目(木曜日、日中:晴れ、夜中:晴れ・三日月)
今日は、木曜日ではあるが私は
そんなこんなで、私は迷いの森に居る妖精に見つけ次第声をかけていったのである。そんなこんなで勧誘していった結果、メイド隊の長年の悩みであった人員不足を解消できそうなほど妖精メイドを雇うことに成功した。
かなりの数を雇用したせいで、各メイド隊の教育係からクレームが飛んできたが、どこか嬉しそうだったとだけは書き記しておこう。
さて、ここ最近特別な妖精を雇うことが多いわけだか、今日もそう言った妖精を迎え入れることに成功している。
その妖精は、ブラウいわく本来なら地獄や魔界と言った特殊な環境でさらにごくまれにしか発生しない”魔眼妖精”であり最初は私も驚いていた。
その妖精の名前は、”アビー・クリムウェル”ちゃん。転生者であり、他者に対し酷い恐怖を持ってしまっている子だ。
なにせ、迷いの森の中でバッタリ私とあってしまったとき、すごい速さでナイフを投げようと構えていた。
すぐさま手をあげて敵ではないことを教えていたのだけれど、これまで相当ひどい目にあってきたのだろう、それでも警戒を解くことはなくすぐにでも攻撃できる姿勢のままだった。
何回か、言葉を交わしたのちに警戒を解いてもらい、珍しい妖精……そして、転生者であり、これまでひどい目にあってきたと考えるとどうしても放っておくことはできずに、粘り強くメイドにならないかと交渉してみた。
結果的に、私の粘り勝ちでおずおずと承諾してくれた。多分、こんな風に誘われて裏切られたこともあったのかもしれない。そう考えると少しだけ悪手だったなと反省する。
アビーちゃんを最後に
メイド隊の大体のことを説明し、家事全般が得意ということもありコミュニケーション能力の高い子たちが多いアンナ隊に所属してもらうことにした。
そして、アビーちゃんに何かがあったり、困ったことがあったら私に言うように伝えてアビーちゃんをアンナに任せてみることにした。
ちなみにアンナとオリビアちゃんには、アビーちゃんの抱えている事情を憶測ではあるものの伝え、アビーちゃんの教育はアンナが付きっ切りでするようにお願いした。
これで、アビーちゃんのトラウマが改善されることを祈るが……。
追記
アビーちゃんはどうやらさっそく小悪魔ちゃんと仲良くなったみたいだ。
小悪魔ちゃんが元々魔界出身ということもあり、さらにはアンナがアビーちゃんの事情を説明したからか、小悪魔ちゃんもアビーちゃんのメンタルケアに当たってくれるそうだ。
~~~~~
転生93年と6か月と1日目(金曜日、日中:晴れ、夜中:晴れ・新月)
今日は少し大忙しな日でもあり、少しだけ不思議な気持ちになれた日だった。
というのも、昨日はアビーちゃんと大量の妖精メイドを雇ったわけであり、雇ったメイドたちの適正能力を調べたり、本人の希望や能力の有無と言ったチェックが存在したからだ。
結果的に言えば、メイド隊の全体的バランスがとても良い具合に配属ができた訳なのだが、各メイド隊のメイド長と統括メイド長補佐の仕事の一環として参加していた
私はまだ地獄の書類デスマーチと比べるとかなり楽だったため、その日の仕事をしていたわけなのだが……夜間の休憩中、少し夜風に当たりたくなり
裸で中庭の芝生の上で寝ていることもあり、収納空間からブランケットを取り出して風邪をひかないようにしながらその子をメイド休憩室へと運んだ。
運んだ途端、私が子供を産んだと勘違いが広がり、レミリアお嬢様がキャラ崩壊を起こしながらメイド休憩室に飛び込んできたときは、そうなったかぁ。と頭を抱えた訳だが、みんなに誠心誠意伝えたおかげで何とか誤解を解くことには成功した。
けれど、”うまれた”という表現自体は間違っていなかった。妖精に詳しいブラウが教えてくれたことなのだが、この子の魔力的に、今ついさっき……私が中庭に出るちょっと前ぐらいに生まれた子らしい。ブラウの言葉に、私だけでなくメイド休憩室に居た全員が驚いたのも無理はないだろう。むしろ、そんな奇跡が起きていたこと自体が驚きをさらに強めている。
そんな事をしていると、保護した子が目を覚ましたわけだが残念なことに生まれたばかりということもあり、まったく言葉をしゃべることはできなかった。身長は4~5歳とは言えそこは妖精、生まれた瞬間からそうなのだろう。
さて、レミリアお嬢様とメイド隊のみんなで名前を考えた結果、保護した妖精の名前は”メア”に決定したわけだが、いかんせんいろいろと幼すぎることもあり、誰が育てるかという問題が上がった。私を含めたメイド長は全員多忙なこともあり交代で見ることも考えたが、レミリアお嬢様がそれを却下。レミリアお嬢様自体も、子育て経験はないため辞退、さらにいえばメイド隊のメイドたちの中でも一部を除いて子育てなんてしたことがない子がほとんどだ。
でも意外なことに
緊急の御前会議をする事にもなり、
議論に白熱し当主として使い物にならなくなったレミリアお嬢様に変わり、冷静に議論を眺めて最適な答えを提示したフランお嬢様の決定ということもあり、レミリアお嬢様以外に反論や反対はなかった。
ちなみにその後レミリアお嬢様は、フランお嬢様にジト目+正論でお説教されることになりだいぶ気まずそうな青い顔をなされていた。
というわけで、第3回キャラクター募集にて、応募されたキャラクター全員が出そろいました!
ご提案していただいた皆様に感謝の言葉をお送りしたいと思います!
誠にありがとうございます!
どうぞこれからも、「紅魔館に住み込みで働くことになりました。そして咲夜さんの先輩メイドです!」のご愛読、よろしくお願いします!!
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△ (レミリアお嬢様が)クルムちゃんと仲良くなろう!
今回から5、6話ほどリクエストされたお話を投稿いたします!
注意点として、作者のキャラクターエミュレートが完璧ではない場合がございます!それをご理解の上、お読みいただけることを願います!
またキャラクターエミュレートの影響で地の分が読みづらくなる可能性もありますので、そこもご理解いただけることを願います!!
=====
視点:ライラック
=====
こんにちは~……
私は~……この
ぽやぽやしていて~……悩みがなさそうって~……よく言われるけれど~……実は私にも~……悩みはあります~……。
「あら、クルムちゃん。今から、戻――――――」
「ピャッ!!」(近くにあった甲冑に隠れる)
「―――――る……ゴメンナサイ。」
それは~……、最初の出会いが~……最悪な出会いだった~……レミリアお嬢様と~……妹分のクルムちゃんのこと~……です~……。
こうなった原因は~……、結構前の月の話で~……、当時~……レミリアお嬢様は~……まだまだお仕事が~……大変だった時で~……お休みなる際に~……私の能力の~……”休む程度の能力”を~……受けながら~……お休みしていました~……。
その時に~……私と会えなくて~……寂しくなった~……クルムちゃんが~……、私の所に~……能力で~……瞬間移動してきて~……偶然~……レミリアお嬢様と~……会っちゃって~……、あの時の~……レミリアお嬢様は~……敵かと思って~……顔が怖くなったのですけど~……それが原因で~……クルムちゃんが怖がって~……大泣きしちゃって~……クルムちゃんは~……レミリアお嬢様に~……苦手意識を~……。
そして~……それ以来~……なんとか~……クルムちゃんの~……苦手意識を~……なくそうと~……時々~……レミリアお嬢様が~……偶然を装って~……会いに行ってるみたいですが~……。
「こんばんわ、クルムちゃんいいよ――――――」
「ピエッ!?」(能力を使って瞬間移動)
「――――――る…………ハァ、挫けそうだわ…………ううっ。」
レミリアお嬢様は~……時々無意識に~……顔が怖いときがあって~……そういう時は~……クルムちゃんは~……能力を使って~……逃げちゃうんです~……。
その結果~……、レミリアお嬢様が~……泣きそうになるので~……だいぶ見ていられないんです~……。
~~~~~
「と、言うわけなんです~……。」
「……説明ありがとう、ライちゃん。なるほど……時々レミリアお嬢様の目元が腫れていた理由はそう言うことだったのね。」
さすがに~……私一人だと~……大変だし~……、いい考えも~……浮かばなかったので~……そばにいると~……安心できて~……寝心地もいい~……メイド長に~……相談しました~……。
メイド長は~……お仕事中で~……忙しいはずなのに~……親身になって~……私の話を~……しっかりと~……聞いてくれました~……。
「それにしても、レミリアお嬢様とクルムちゃんを仲良くする方法……か。」
「難しい~……ですか~……?」
「いえ、難しいというわけではないわ。むしろ、すぐに仲良くなれるとは思う……けれど、レミリアお嬢様の顔の怖さ次第ね。レミリアお嬢様の顔の怖さは、時間によって違ってくるから……一番やわらかい顔の時にやらないと、苦手意識を悪化させることになるわ。」
「おぉ~……、さすが~……レミリアお嬢様の~……専属メイド~……吸血鬼メイドより~……よく知ってますね~……。」
「ふふっ、最初のメイドは伊達じゃないのよ?」
そんな~……話をした後~……私は~……アイーダさんに~……運ばれて~……厨房の定位置に~……戻りました~……。
帰り際に~……レミリアお嬢様の~……お顔が~……一番柔らかいときに~……私に~……声をかけると~……言ってくれたので~……その時まで~……気長に~……待つことにしました~……。
~~~~~
ついに~……レミリアお嬢様の~……お顔が~……一番柔らかいときが~……やってきました~……。
お月様は~……すっかり上って~……もしあれが~……太陽なら~……おやつどき~……っていう時間帯~……正直~……とっても眠たい~……けれど~……言い出しっぺとして~……頑張って起きて~……クルムちゃんと~……レミリアお嬢様が~……仲良くなれるところを~……見ておかないと~……。
「メイド長から呼び出されたけれど……どうしたのかしら。って、あら……く、クルムちゃん。」
「っ!…………こ、こんばんわっ。」
どうやら~……本当に~……メイド長の~……言った通りみたい~……。
いまの~……レミリアお嬢様は~……お顔が柔らかくて~……雰囲気も~……怖くない~……。あの調子なら~……クルムちゃんも~……怖がったりせず~……お話が~……できるかも~……?
「あのっ……そのっ、し、失礼しましゅっ!」
「あっ……」
あぁ~……クルムちゃんが~……緊張で~……走って~……逃げちゃった~……。
これは~……長期戦に~……なりそうかも~……
「……一歩前進ね。」
でも~……レミリアお嬢様は~……嬉しそう~……。
~~~~~
その後も~……レミリアお嬢様の~……お顔が~……怖くない時に~……何回も~……クルムちゃんと~……レミリアお嬢様を~……合わせることに~……しました~……。
二回目で~……
「く、クルムちゃん。こ、こんばんわ。」
「……こっ、こん、ばんわっ。えっと……良い夜、です……ね?」
「え、ええ……そ、そうね。」
少しだけ~……会話が~……できるようになって~……
三回目では~……
「クルムちゃんは……メイドとしての仕事は、どんな感じなのかしら?」
「あっ……えっと、そのっ。ぱ、パチュリー様……の、お、お手伝い……をしてます、です。」
回数を~……重ねるごとに~……少しずつ~……クルムちゃんと~……レミリアお嬢様の~……仲が~……深まって~……
会わせた~……回数が~……2桁になったころ~……
「あら、クルムちゃん。こんばんわ……これから戻り?」
「こ、こんばんわ、です……レミリア、お嬢様っ。あの……そ、そうです!」
クルムちゃんは~……レミリアお嬢様を~……怖がらなく~……なりました~……。
~~~~~
「これで~……私も~……安心して~……休めます~……。メイド長~……、ありがとう~……ございました~……。」
「ふふっ、こちらこそ、いつもありがとうライちゃん。また、悩みがあったらいつでもこの執務室に着て頂戴ね?もちろん、用事がなくても来ていいから。」
「はい~……、失礼~……します~……。」
ゆっくりと~……執務室からでて~……厨房に~……
うん~……やっぱり~……メイドになって~……よかったかも~……
「ただいま~……もどりました~……。」
「あ、ライちゃん。お疲れ様……試作で作ったロールケーキ食べる?」
「食べます~……!」
というわけでリクエスト一個目でした!
ご提案頂いたマスクドクラウン様!ライラックちゃんとクルムちゃんという素晴らしいキャラクターの他、今回のリクエスト話をご応募いただき、ありがとうございます!!
次回は、ハーヴァ様が応募してくださった「メイド長とアンナと咲夜だけのピクニック」を投稿したいと思います!
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