ガチャと僕のプライベートプラネット【完結】 (太陽くん)
しおりを挟む

初ガチャ

ガチャ。

 

硬貨を投入しレバーを回すことで、排出口から景品が入ったカプセルが排出される。

 

カプセルの中に何が入っているかは開けるまでのお楽しみ。

 

その魅力に取りつかれて多くの人間がガチャを回し続けるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

目が覚めると、俺は見知らぬ白い部屋にいた。

床も天井も壁もすべて真っ白。触れてみるとつるつるしている。部屋の大きさは学校の体育館ぐらい、天井の高さは普通の家と同じくらい。

 

「あのー、誰かいませんかー!!」

 

叫ぶ。なんども叫ぶ。しかし返ってくるのは、反響した俺の声だけ。特に何の変化も見られない。

 

ドッキリ?馬鹿な、芸能人でも何でもない、ただの大学生である俺を、コンプライアンスに厳しいテレビ局が誘拐し監禁する?あり得ない。

 

 

記憶を振り返ってみる。スマートフォンでゲームをして遊び、午前1時にはベッドで眠りについたはずだ。

その証拠に俺の服はパジャマだ。ショッピングモールで買ったどこにでもあるパジャマ。

 

「大学の講義どうしよ…」

 

途方に暮れながら部屋の探索を始める。成果はなかった。扉も窓はなく、どうやって俺はこの部屋の中に入ったのだろうか。さらに言えば光源があるわけでもないのになぜか部屋全体が暗くない。どうなっているんだ。

 

 

「やっぱり、これかなあ」

 

部屋の中央に位置する、どう考えてもこの場に不釣り合いな、あるべきではない物。

 

ガチャガチャ。それが部屋の中央に存在していた。

 

日本中どこにでも配置されているガチャガチャ、下部の白い筐体にはコイン投入口と回転式のレバー、カプセルが出てくるであろう排出口。

上部にはふつうあるはずの、いったい中に何が入っているのか説明する紙がなく、しかしそのおかげで中身をよく見ることができた。

中には色とりどりのカプセルが多く詰まっており、しかし残念ながら中身を覗き見ることができない。

いったい中に何が入っているのかがまるでわからない。

 

 

 

しかしこの真っ白い部屋にあるのはこのガチャだけ。これを回さなければ事態は進展しないだろう。

 

俺は映画とかでよくある、金持ちの道楽のためにさらわれたのかなと考えながら、ガチャを回そうとする。

親切なことにガチャの前には何かの硬貨が置かれていた。

 

硬貨を取り外して観察するが、何の模様も刻まれてなく、ただ金属でできているということだけしかわからなかった。

さて。することもないのでコインを投入。今気づいたがこのガチャ、何円入れる必要があるのかどこにも書いてないぞ。壊れたりしないのかな。とか考えながらレバーを回す。

 

 

ガタンッ

 

 

排出口から白いカプセルが出てきた。シールが貼ってあり、『C』と書かれていた。

 

コモン、コモンか。はずれだな。

また微妙なものが出てきたもんだ。あら、力を入れていないのに簡単に開いた。

 

中には紙が入っていた。

 

 

『コンビニで売ってるチキン』

 

 

 

 

 

 

日本のコンビニエンスストアのレジ前のスペースで販売されているチキン。大体180円から240円の間で販売されており、肉汁たっぷりで非常にジューシー。アブラ多めでおいしいチキン。

 

 

 

 

 

 

何かが落ちる音がして振り向くと、紙の袋に入れられた何かが落ちてあった。上を見てみるが特に何もない。中身を見るとおそらく鶏肉を揚げたものが入っていた。

 

どこから落ちてきたんだ、これ。

 

というか、これからどうすればいいんだ。

 

 

 

俺は途方に暮れた。チキンは旨かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それはある日突然、告げられた。

 

『地球人類に通達する。君たちは道を誤った。我々の予測では今後30年以内に地球人類の築き上げた文明は崩壊し、地球環境の汚染は、地球人類の技術レベルでは回復不可能な打撃を受け、美しく豊かな地球環境は失われる。我々は看過できない』

 

 

『地球人類より千人の人間を選出した。彼らにそれぞれ超能力やアーティファクト、一つの惑星を与え競い合ってもらう』

 

『この競争の勝者に、地球の絶対的な支配権を授与する。拒否権はない』

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

業績 『ガチャを引いてみよう』

『業績 「 ガチャを引いてみよう」を達成しました』

 

『報酬がプレゼントボックスに追加されました』

 

途方に暮れていると目の前にゲームのウィンドウのようなものが現れ、俺が業績とやらを達成したことが告げられた。

 

なんだこれ、あれだ。小説家になろうなどの異世界を舞台にした小説なんかに出てくる、ステータスウィンドウとかいうやつだ。

 

さて、業績とは。一体。

右上にヘルプマークがあるので押してみると、ガチャの引き方、用語一覧の項目があった。というかその二つしかなかった。用語一覧も『ガチャ』と『業績』、『プレゼントボックス』の三つしかなかった。なんだこれ、開発者ふざけてんのか。ちゃんと仕事しろ。

 

業績を押してみると説明が表示された。

 

『業績』

 

システム使用者が過去に達成した成果が記録されたもの。達成すると報酬が運営により与えられる。

業績一覧より達成した業績を確認できます。

 

 

 

運営?やはり俺は金持ちの道楽目的で監禁されたのか。その説の可能性が高まった。

まあ運営のことなんてあとから考えればいい。

業績項目から用語一覧の項目に戻る。

するとそこには、『運営』の項目が追加されていた。

 

『運営』

 

運営はこのシステム及びガチャの運営、ガチャの景品の提供、管理などを行っております。

 

 

 

 

 

…いや、ええ。もっと情報が欲しいんだが。というか、さっきまでこの項目なかったよな。

もしかして、俺が視認したものや単語が用語一覧に追加されるのか?

ほんと、不親切だな。

 

「おーーーい、あんたらさぁ、もうちょっと何かないの?映画のデスゲームでもあんたらよりも説明してるよ?」

 

 

応答はない。

しってたけどね。

 

さて、業績一覧。それはすぐに見つかった。というか、このシステムにはヘルプとプレゼントボックス、達成業績一覧の三つしかない。もうちょっと充実させようよ。呆れながら確認する。

 

 

『業績 ガチャを引いてみよう』

 

ガチャを一回引いたユーザーに与えられる業績。臆せずにガチャを回したあなたの勇気を称えます。

 

報酬

システムの一部開放(自動付与)

十連ガチャコイン

 

システムの開放。今使っているシステムのことだろうか。一部開放ということは、これから少しずつ開放していくのか?思えばゲームでも最初からすべて開放されるということはない。少しずつ、ゲームを進めることで機能が解放されていくのだ。

 

 

それよりも報酬だ。報酬。赤い箱に黄色いリボンで包まれたアイコンをタップし開くと確かにそこには『10連ガチャコイン』があった。それをタップする。

 

十連ガチャコインを受け取りますか?

 

はい いいえ

 

受け取るを押すと、目の前の空間が光に包まれ、どこからか光の粒子が集まっていく。光が収まるころには、青いコインがふわふわと浮いていた。

 

 

いまさらだが、なんだこれは。システムといい、今の演出といい。この技術レベルの高さは。異常だ。

だが異常といっても、俺にはこのガチャを回す以外することがないし、やるしかないのだ。

 

 

ふわふわと重力を無視して浮くコインを手に取りガチャに向き合う。するとガチャの上部、本来なら何が中に入っているのが書かれている場所にディスプレイが取り付けられていた。

 

あれ!?さっきまでディスプレイなんかなかったじゃん、どうなってるんだ。

本格的に訳が分からなくなった。しかし考えても意味がない。

ため息を吐きながら、コインをガチャの硬貨投入口に入れ、レバーを回す。

 

 

 

ガタンッ

 

次から次へと、ポンポンと排出口からカプセルが排出される。

 

ディスプレイには文字が表示されていた。

 

C  折り鶴

C  犬小屋

C  ダルマ

C  ポケットティッシュ

C  ティーカップ

UC 簿記三級問題集

C  伊達メガネ

C  熱冷まシート

UC 花粉症治療薬

C  みかん

 

 

  

う、うーん。今手に入れても、というか普段手に入れてもなんの役にもたたない物ばかりだ。

こんなもの手に入れてどうしろっていうんだ。

 

そう考えていると、ディスプレイの表示が変わった。

 

『10連ガチャを引くと、一回おまけでガチャをひくことができます。さらにR以上が確定で排出されます』

 

 

 

 

ガタンッ

 

R  トイレ  

 

 

ああああああ、トイレ来たっ。トイレだっ。

 

 

目が覚めてからずっとトイレに行きたかったんだ。俺は急いで排出された青いカプセルを開く。

そこにはトイレと書かれた紙が入っていた。

 

ゴンッ

 

音が出た方を見ると、木製の扉が先ほどまで壁だった場所に取り付けられていた。急いで扉に向かい、ドアノブを回し中に入る。

 

 

すっきりした。

中のトイレは洋式の大便器一つ。トイレットペーパー2ロール。ドアは木製。

トイレットペーパーの残りは気を付けて使っていかないといけない。

 

 

 

C  折り鶴

C  犬小屋

C  ダルマ

C  ポケットティッシュ

C  ティーカップ

UC 簿記三級問題集

C  伊達メガネ

C  熱さまシート

UC 花粉症治療薬

C  みかん

 

 

以上の十個はなんの役にもたたないガラクタだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

突如告げられた通告。

最初は皆、幻聴かと考えた。しかしこの声を自分だけではなく、周りの人間、いや世界中の人間が聴いていたという事実が知れ渡る。

 

皆が混乱する中、国連事務総長は緊急記者会見を行った。

 

 

『先ほどの声は幻聴ではありません。すべてが嘘偽りのない事実です』

 

『人類はこのままでは滅亡します。これは、人類よりも上位に位置する知的生命体が導き出した結論です』

 

『その結果、我々指導者に人類を支配し導く資格なしと判断され、地球の支配権は剝奪されました』

 

『この支配権は、通告にもあった競争の勝者に与えられます』

 

 

この会見の後、アメリカ、日本、ロシア、イギリスなども同様の記者会見を行った。

 

そして地球上のあらゆる空に映像が映し出され、その映像には混乱する人々が映し出されていた。

それと同時にインターネットに一つのサイトが公開された。そこには、選ばれた千人の人間の情報、そして彼らの現状が動画で配信されていた。

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

SR以上確定コイン

『サービス開始記念プレゼントがプレゼントボックスに追加されました』

『初心者応援ログインボーナスがプレゼントボックスに追加されました』

 

 

やることもないのでみかんを食べていると急に通知がシステムに届いた。

みかんは果汁たっぷりで非常に美味だった。

 

さて面倒だが一つ一つ確認していく。

 

 

サービス開始記念プレゼント!

この度はガチャシステムご利用ありがとうございます。

本サービスは本日が初稼働となり、サービス開始初期に遊んでいただいたユーザーの方限定でギフトをプレゼントします。どんどんガチャを引いて惑星を開拓してください!

 

 

 

プレゼント SR確定コイン

 

なるほど。早速プレゼントボックスからSRコインを選択、光に包まれて目の前に実体化する。

 

コインを手に取り観察する。十円玉ほどの大きさで表にはSRと書かれており金属でできていると思われる。残念だがそれだけだ。

 

そんなことよりもだ。惑星。惑星か。

惑星を開拓してください。しかし俺は惑星なんぞ心当たりはない。

しかしこのシステムは知っているはずだ。俺はヘルプの用語一覧を選択する。するとやはりそこには『惑星』が追加されていた。

俺の仮説である、見た物や単語に関する項目が追加されている説は当たりだったようだ。

 

 

『惑星』

現在閲覧することができません。

 

 

えっダメなの?まじでこのシステムポンコツだな。

ヘルプが役にも立ってないじゃないか。

これはおそらくだが、業績の達成で後日解放されるのではないか。

 

 

…色々思うところはあるが、次だ次。

 

 

初心者応援ログインボーナス!

おはようございます、運営です。いかがお過ごしですか?

このゲーム参加者の皆様に特別なプレゼントを用意させていただきました!これからもどんどんガチャを回しましょう!

 

水2リットルペットボトル100本

 

選択するとゴトンッという音と共にダンボールの箱がガチャ横に現れた。

 

今視認した。これは突然空中に現れたのだ。

俺の中で大富豪デスゲーム説の信憑性が急速に低下していく。これは、デスゲームなんかじゃない。もっと何か、大きなものに、常識を超越した何かに巻き込まれている。

しかもおそらく俺だけではない。このメッセージはゲーム参加者とある。俺以外にも同じ状況の者たちがいるのではないか。何とかして連絡を取れないものか。

 

 

現状を打開するための希望はこの金のSRコイン。

これまで出た最高レアはRのトイレ。SR以上、期待はしない、だが、頼む、何かすごいやつ、役に立つものよ来い!

 

ガタンッ

 

 

きたッ、金のカプセル!頼む、役に立つ物が来てくれ!具体的に言えば食糧!

 

 

 

 

 

 

 

『1945年8月6日に焼失したフィンセント・ファン・ゴッホのひまわり』

 

 

 

 

ゴトッという音と共に、それは現れた。

今までと違いどこかから現れ落下するのではなく、壁に張り付くようにしてその絵は飾られていた。

 

このガラクタとガチャしかない部屋に不釣り合いな、見る者を魅了する神秘性がここにはあった。

美術の教科書やテレビでしか見たことのない、ひまわり。

 

 

いや違う、そうじゃない、いやすごいけど。

 

いま欲しいのはそれじゃないんだよなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

『1945年8月6日に焼失したフィンセント・ファン・ゴッホのひまわり』

 

フィンセント・ファン・ゴッホは1888年8月から1890年1月にかけて、7枚のひまわりを描いた。

そのうちの2番目の作品は、1920年に実業家の山本顧彌太により購入されたが、第二次世界大戦中にアメリカ軍の空襲によって焼失したと名探偵の映画で知った。

ではこれはなんなのだろう。

 

 

 

 

人類よりも上位の知的生命体。

彼らは現在の政治的指導者に地球を支配する資格なしとみなし、地球の支配権を剥奪した。

その権利は、選ばれた千人の人間が競い合い、勝者に与えられる。

 

皆が空に映し出された映像、インターネットからアクセスできる、上位の知的生命体によって作られた動画サイトにくぎ付けとなった。

 

選ばれた千人は最初は混乱していたが、ナビゲーターより状況を説明され能力とアイテムを与えられる。

彼らは能力を使い、与えられた惑星を開拓していく。

 

その日の夜には、すべてのプレイヤーとその能力、アイテムが皆に知れ渡った。

 

しかし、一人だけ。

現状を理解することができず、与えられたアイテムもパッとしない。そんな人間がいた。

 

山田竜。日本人。与えられたアイテム【ガチャ】。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

十円玉

簡単に言えば、することがなくなってしまった。

このガチャを回すためにはガチャコインやチケットなどが必要なのだが、俺はそれを持っていない。

入手方法も今のところ運営からログインボーナスなどから貰うだけ。それ以外の方法を知らない。

 

これは非常にまずい。そもそも、ログインボーナスだってガチャコインがもらえるとは限らないのだ。

今回のように水などの生活必需品がもらえるかもしれないし、どうでもいいものがもらえるのかもしれない。

 

最悪ガチャを回すことができずに何日も簿記教科書を読み続けるということになる。

 

 

 

 

あっ。

 

そうだ、昨日の夜、喉が渇いたからジュースを買いに自販機に行ったんだ!

確か140円のジュースを買うために100円玉と50円玉を入れて、おつりとして10円もらったはず。

 

その10円玉はどうしたって?ポケットだ、パジャマのポケットにいれたんだ!

 

 

パジャマのポケットを漁ると、硬い何かに触れる感触。10円玉だ。10円玉をガチャのコイン投入口に入れ、ノブを回す。

 

こい、何か役に立つもの。

 

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

C 人生ゲーム

 

 

 

今回現れたのは人生ゲーム。

白いダンボールに大きく赤い文字で『人生ゲーム令和最新版』とでかでかと書かれており、隣には家族と思われる人たちが大勢描かれている。

作った企業もタカラトミー、俺でも知っている日本企業。生産日は2022年1月。運営はどうやってこれを入手したのだろうか。普通に店で買ったのかな。

 

 

 

【バグを修正しました。今後ガチャコイン以外は使用不可能です】

 

 

…いいけどね。もうお金はないし。

 

 

ダンボールを開けボードを広げ、駒やルーレット、不動産を配置し、札束などを準備する。

うーーん。これを一人でやるのか。普通これは複数人でやるのでは?

 

ルーレットを回し、出た目に従ってマスを進める

 

 

 

カラカラ~。

 

 

 

出た目は9。やった、出た目が大きいぞ。

…大きいから何なのだろう。別に勝ち負けがあるわけでもないのに。

 

自動車型の駒を進め、マスに書いてある字を見る。

『お年玉を落とした。マイナス10000円。』

 

最初の所持金は5000円なので、5000円分の借用書を手に取った。

初っ端から借金をしてしまった。

 

カラカラ~

 

出た目は4。

 

 

『隣の人が誕生日!お祝い金として1000円あげよう』

 

…俺は一人で人生ゲームをやっている。俺はいったいどうすればいいのだろう。

 

むなしい、寂しい。泣きそうになった。

 

 

漁師で独身という結果に終わった。借金もなんとか完済し、資金も目安がわからないがそこそこ増やせたと思う。

 

ゴールして所持金を数え終わったとき、ゴトンッという音と共にそれは現れた。

 

 

 

景品『サーモンのお刺身』

 

スーパーで売っている発泡スチロールの入れ物にビニルで包まれたサーモンのお刺身、醤油とワサビ付きが現れた。消費期限は明日まで。

 

 

これはもしや、漁師でゲームクリアしたから、魚がもらえたのか?

もし石油王や社長でゲームを終えたらどうなるんだろう。

 

よし、目指すは王族、やるぞっ。

 

 

 

…だめだった。

あの後何回ゲームを終えても景品が現れることはなかった。最初の一回だけだったらしい。

 

 

 

やる事もないので簿記三級の教科書を適当に読んだ。

 

お腹がすいたのでサーモンのお刺身を食べた。箸がないので手で食べた。醤油とワサビもすべて食べた、貴重なカロリーだ。無駄にすることはできない。

 

ペットボトルの詰まったダンボールを広げて布団がわりにし眠りについた。

 

 

今日はチキンとみかん、サーモンしか食べていない。

お腹が空いた。

 

 

 

 

まずい、このままでは餓死してしまう。なんとかしなくては。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

C 人生ゲーム

ボードゲームであり、すごろく。大体4人程度で遊ぶ。

基本的にルーレットを回して出た目に従って駒を進め、マスに書いてあるイベント、人生ゲームなので大学受験、就職、結婚、出産などを得て資産を増やしていき、ゲーム終了時点で最も資産総額の多いプレイヤーが勝利するというボードゲーム。正月に親戚で遊ぶもよし、友達と遊ぶもよし、しかし注意、一ゲームかなりの時間がかかるので注意されたし。

なんとアメリカ発祥のゲームである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆が皆、与えられた能力を発揮していく。

あるロシア人は、植物と生態系を操作するスキルで一日で大森林を形成した。

あるアメリカ人は瞬く間に軍隊を展開し、即席の基地を作り上げた。

ある日本人は、数多くの美少女を召喚し、ハーレムを結成した。

あるイギリス人は、工場を建設し物資の生産を始めた。

 

 

 

 

とある日本人はガチャでガラクタを生み出した。

全世界は彼に諦め、呆れ、嘲笑、傍観、応援、同情した。

 

 

 

 

 




評価お願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

二日目

『ログインボーナスをプレゼントボックスに追加しました』

 

『アップデートのお知らせ。ユーザーの方より時間の確認ができないのは不便だとのお声があり急遽時刻表示システムを追加しました。システムウィンドウを開く事でいつでも確認できます』

 

 

朝起きてシステムを確認するとそう通知があった。ログインボーナス、つまり俺がこの部屋に監禁されて二日目という事だ。

 

システムウィンドウを確認するといつのまにか時刻が追加されており、今が朝の午前5時半だと言うことを示している。

 

しかしこの通知で俺以外にも同じ状況に陥った同志がいることがわかった。これは心強い。仲間がいるというだけで孤独感が解消されていく。

 

さてさて。

ログインボーナスとして与えられたのは『キャンプセット』だった。

テント、寝袋、椅子、机、簡易トイレ、水、缶詰、鍋、ガスコンロ。

よかった、これでダンボールに包まれて寝る生活からもおさらばだ。

 

テントは深緑色のテント。ありがたいことに展開済みでこの白い部屋に実体化した。これでテントを組み立てずに済む。

椅子と机は残念ながら折り畳まれていた。

ヨッコラセと折り畳みのキャンピングチェアを開き座り込む。

そこで気づいた。

缶詰、この缶詰はツナ缶、トマトスープ缶、鯖缶、コーン缶、鶏肉缶が二つずつ、計十個。

これを開けて食べるために必要な缶切が存在しないのだ。

さらに言えばガスコンロだって動かすために必要なガスがない。

 

 

…この運営は何を考えているんだ?俺たちユーザーが落ち込んでいるのを見て笑っているのか?

 

ため息をつきながら、というか昨日からため息つきっぱなしだなと考えてガチャを見る。なぜかこのガチャのディスプレイが光っており、そこには『1日一回無料!』と書かれていた。

 

やる事もないのでガチャを引く。

 

 

ガタンッ

 

 

UC 『スキル 浮遊』とだけ書かれていた。

 

 

特に何かが実体化する気配はない。

それにしてもスキルか。スキル、ゲームとかにあるスキルか?

 

こういう時の用語一覧だ、スキルの項目が追加されているはず。

 

 

用語一覧

 

スキル

ユーザーが使用可能な超能力。基本的にМPを消費して発動できる。

使用法は使いたいと考えることで発動できる。

スキル一覧より習得スキル閲覧可能。

 

MP

マジックポイントの略。魔法やスキルを使うために必要。

 

 

いよいよ理解ができなくなってきた。頭が痛い。

考えても仕方がないのでシステムを確認すると先ほどまでなかったスキル一覧の項目が追加されていた。

 

スキル一覧

『浮遊』 1㎝浮くことができる。1秒使用ごとに1MP消費される。

 

 

また微妙なスキルだ。説明によれば使いたいと思えば使えるらしい。

そこで思いついた。これ、自分のMPの量が計測できるのではないか。

 

100秒浮けば俺のMPは100ということになる。計測のため、俺はスキルを使うことにした。

 

 

使用『浮遊』!

 

 

ふわっ

 

 

すっすごい!浮いてる、空に浮かぶとは未知の感覚だ。宇宙飛行士もこんな感じなのだろうか。

 

テンションが上がって走ろうとする。しかし不思議なことに場所を移動することができない。

 

あれ、何でだ。

 

あっそうか、床をけれないから移動できないんだ。

 

そう考えるとガタッという感覚と共に俺は地面に足をつけ立っていた。

計測約10秒。俺のMP10だけ?

 

 

えっ何これ。地味。

 

 

 

 

 

 

 

UC 『スキル 浮遊』

 

スキル。別名超能力。MPを1消費する事で一秒間だけ1センチ浮くことができる。

しかし俺のMPは10しかないため十秒間しか飛べず、さらに床を蹴れないため前に進む事もできない。

ドラえもんは1ミリだけ浮いているという設定があるらしいがなぜ歩けるのだろうか。

 

 

 

 

 

 

次の日にはアメリカ合衆国の大統領が選ばれたアメリカ人全員を支援すると表明した。

これに続いて各国も自国の人間に対して最大限の支援を約束、表明した。

 

皆未来の地球の指導者に対して友好的に振る舞い、自国の支援を受けた人間が支配者となった時に優遇してもらえるよう、媚を売り始めたのだ。

 

大国は自国の人間に対して支援を表明した。

 

しかし中には自国の人間が一人も選ばれなかった国家たちも存在した。その国家はアメリカやロシア、中国などの国家の機嫌を取るために大国の人間に対し支援を表明した。

 

中には自国の人間が千人の中に選ばれたにも関わらず、自国の人間の能力が微妙だとわかると切り捨て、この競争に勝ちそうな人間の支援を表明した国もあった。

 

 

日本も選ばれた日本人全員に対して最大限の支援を約束した。

そんな中、一人の記者から質問があった。

 

「ガチャを与えられた山田竜に対しても、他の選ばれた日本人と同等の支援をするのか」

 

この質問に担当者は顔を顰め、何とも言えない顔で「全ての選ばれた日本人に対して平等に支援をするということはできない。どうしても偏りが出てしまう。山田氏に対しての支援は現在検討中」と言った。

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

無駄な機能

朝目を覚ますと、折り鶴が浮いていた。

 

監禁初日に回した10連ガチャで出た折り鶴だ。

 

目を疑ったが、確かに折り鶴がふよふよと浮いているのだ。

しかしこちらが触れても、行く手を塞いでも特に何の反応も示さず、ふわふわと浮かぶだけ。おそらくだが、この折り鶴に知性がなく、ただ浮いているだけだという結論に達した。

 

なぜ運営はこんな無駄な機能を付けたのだろうか。

 

 

 

さてさて。

 

 

三日目のログインボーナスとして受け取ったのは食料品確定コインだった。他の俺と同じように餓死しそうなユーザーが続出したため、慌ててこのコインを配布したのだろう。

 

顕現してみると銅でできているのか明るい茶色のコインで、表にはスプーンとフォークが交差したマーク。

裏はいわゆる漫画肉、骨付き肉のマークが刻まれてあった。

それではガチャを回そう。

まずは毎日一回無料ガチャだ。

 

ガタンッ

 

R『ガチャエフェクト08』

 

 

R!二つ目のレアである。何か役に立つものをと願うが実体化する様子はない。

 

 

しかしガチャエフェクト。08ということは01から07もあるのだろうか。

 

しかしそんなことよりも食糧だ。頼む、缶詰とか道具が必要じゃない食べ物プリーズ!

 

チャリン!

 

コインを入れると照明が切れたのかあたりが薄暗くなり、そしてガチャが発光し始めた!

排出口を中心に金色の魔法陣が展開される。文字も書いてあるが読むことはできない。未知の文字だ。

 

っていうかこれがガチャエフェクト⁈

いらないって!

 

 

ガタンッ

 

カプセルが排出され、魔法陣も消えて辺りが明るくなる。

 

うーむ、ガラクタしか詰まってないのかこのガチャは。

 

 

調べてみるとシステムに設定が追加されており、ここで演出の選択と短縮ができるようだったので短縮をした。

 

 

 

 

UC 『二郎系ラーメン店[白竜]大盛り+お持ち帰りチャーシュー』

 

それは今までのように落下することはなく、ストンっという音と共に実体化した。

黒い木製のお盆に乗った、山盛りのラーメン。

 

濃密な獣臭い豚骨の匂いが、鼻を通して丸一日何も食べていない脳に衝撃が走る。

 

無我夢中で箸を取り食べた。昨日は水以外何も食べていない。泣いた。ラーメンとはこんなにも美味だったのか。

 

 

流石に朝から二郎系ラーメンはきつかった。ので三分の一ほど残し、昼の分とした。麺はスープを吸って伸びていたがそれでも美味しかった。汁はすべて飲んだ。

 

チャーシューは明日のために取っておいた。

 

 

 

 

『折り鶴』

初日の10連ガチャで出た折り鶴。表は赤色、裏は白色。綺麗に折られておりまさに芸術。なぜかそれが動き出した。しかもふよふよと浮かびながら。

 

 

『ガチャエフェクト』

ガチャを回した際に現れるエフェクトの一種。カプセル排出時に金色の魔法陣が現れる。システムウィンドウより演出の短縮が可能。

08号とあるため最低でもエフェクトは八種あると思われる。

鬱陶しいので短縮した。

 

 

『二郎系ラーメン店白竜大盛りセット+お土産』

 

油多め、キャベツやもやしなど野菜山盛り、ニンニクたくさん、分厚いチャーシューと極太麺濃厚豚骨魚介系スープを使った大盛りラーメン。白米付き。

なんとお土産として白竜特製チャーシューが付いてくる。

嬉しいのがスプーンに箸、お茶碗にどんぶり、おぼんが付いてきたこと。

 

 

 

 

 

 

 

人類80億人が同情した。

 

全世界が山田竜という大の大人が涙を流しながらラーメンを食べるその姿に。

 

テレビ局の取材で白竜店主は『見た目は白竜のラーメンそのもの。しかし私はラーメンを提供した覚えはない』と主張している。

 

泣くほど美味しいラーメン屋として白竜は四時間待ちの行列となった。

 

 

 

 

 

 

 

「ゴッホのひまわり、真作の可能性⁈」

 

フランスの知識人はゴッホのひまわりが贋作ではなく本物の可能性が極めて高いとして、山田氏に対してクエストを出して欲しいと要望した。

 

しかしフランス政府は山田氏がクエスト機能を開放していないためできないと回答。

 

山田氏のクエスト機能解放が待たれる。

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

宝探しは男のロマン

本日のログインボーナスは『ジャージ一式』だった。

上下黒のジャージは所々白いラインが走っており、実にチープな感じだ。千円で売ってそう。

重要なのがシャツやパンツなどの下着を交換できるということだ。

しかもなんと驚くべきことに、このジャージは24時を過ぎると自動清掃機能が発動し汚れを落とし、新品のように使えるという、着替える必要はないという優れものらしい。今更だが理解不能な高度な技術だ。

 

早速パジャマを脱ぎ、ジャージを着た。着心地は最高だった。

 

 

ラーメンのお土産であるチャーシューを朝に三分の一ほど食べた。美味い。香辛料の味がしみこみ、噛むと肉汁が滲み出す。

 

 

さて、毎日一回無料ガチャだ。

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

R『宝の地図』

 

 

ひらひらと落ちるそれはずいぶんと古ぼけた地図だった。年代物なのか茶色く変色している。

 

地図はアメリカのフロリダ州の辺りが描かれており、赤いバツマークがフロリダ沖にある。

ご丁寧に緯度経度、水深まで書かれている。結構昔に作られた地図っぽいのに情報が変に具体的だ。

 

 

しかし残念ながら、俺はこの宝の地図の真偽を確かめることはできない。ここから出ることはできないからだ。

さらに言えば出れたとしても俺はわざわざアメリカに行って海にダイブ、宝をゲットして売却なんてことは現実的ではない。

 

つまり、どうすることもできないということだ。

 

やることもないので簿記の教科書を読む。これももうすぐ読み終わる。

チャーシューの三分の一を食べ、残りは三分の一。

未だ食糧事情は改善されず。

 

 

 

寝る前に宝の地図を見ると発見済みと書かれていた。だれか見つけたのだろうか。

 

 

 

『ジャージ』

どこでも売っている普通のジャージ。なんと自動洗浄機能がついており、24時を越えると不思議なことに綺麗になる。安っぽいデザインだが非常に着心地がいい。誰かほかのユーザーが文句を言ったのだろうか。

 

 

 

『宝の地図』

茶色い古ぼけた地図。

アメリカのフロリダ州沖に赤いバツマークが描かれており、ご丁寧なことに緯度経度、水深まで書かれている。

しかし寝る前には発見済みと追記されていたため、何の役にも立たない紙切れとなった。

誰が発見したのだろう。

 

 

 

 

 

山田竜氏が手に入れた宝の地図が示したフロリダ沖の座標地点は混沌としており、数多くのサルベージ会社や民間のダイバーに漁船、さらにはマフィアなども集まっていた。

 

「既に宝があることは水中ドローンで確認できており、snsで公開された写真は大きな注目が集められています。

 

 

宝が比較的水深の深い場所にあるため専門的なサルベージ会社のみが本格的な調査を行なっていますが、しかし財宝は広範囲に散らばっているらしく、民間のダイバーや漁師が金貨を数枚発見したと報道されています」

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

剣なのに盾

ログインボーナスは『万能メダル』という、紫色のメダルであった。

使用法不明、謎のメダルだ。金属でできていること以外不明。今までの経験から何か模様が刻まれているかと思ったらそんなことはなく、無地のメダルだ。

しかし今までのコインと違う所がある。それは綺麗に磨かれており、キラキラと光が反射されている。

万能と言うだけあって何か価値はあるのだろう、しかし使用方法が本当にわからない。

 

これでガチャを回そうと考えたが、ガチャの硬貨投入口には大きすぎて入れることはできない。これはいったん放置。

 

 

そんなことよりも、ついに食糧が尽きた。残念ながらチャーシューは食べきってしまった。

俺は脂肪が多い方ではない。餓死するのも時間の問題だ。というわけで、

 

 

無料ガチャのお時間です。

頼む、出てくれ食糧!

 

 

ガタンッとでたのは金色に輝くカプセルだった。

 

SR!ゴッホのひまわり以来だ。

頼む、フランス料理のフルコースとか幕の内弁当とか本マグロ丸ごと一匹とか黒毛和牛とかでてくれ!

 

 

 

SSR 神剣アイギス

 

 

 

それは地面に突き刺さるようにして現れた。

純白の剣。一目見るだけでその格の高さを理解させられる。

キラリと光る剣先。丁寧に磨かれているのか俺の顔が鏡のように映し出されている。

持ち手の辺りは金属でできた花々が装飾されており、クリーム色のような精巧な花がいくつも咲いている。

 

SSR。レア度はSRよりも上だろう。今までで出た最高レア。カプセルの色が同じなのはどうにかならないのか。

 

アイギスを手に取って引き抜こうとする。

 

するとシステムウィンドウが剣の周りに展開された。

 

 

●神剣アイギス

花の女神【編集済】の力が込められた神の剣。本来は上位信徒である【編集済】のみに与えられる【編集済】に対し【編集済】が【編集済】のために作らせた特注品。

【編集済】による【編集済】により【編集済】された。【編集済】による【編集済】の結果【編集済】よりも【編集済】された。

装備者とその仲間に対して非常に強い加護を与える。

 

効果

装備したものに対して『花の女神の加護(特大)』を付与

パーティーメンバーに対して『花の女神の加護(中)』を付与

装備者とパーティーメンバーに対して『状態異常無効』『回復力上昇』『回復速度上昇』『自動回復』『防御力上昇』『対魔力』『対火属性』『毒耐性』『対デバフ』『衝撃耐性』『無敵状態限定付与』『限定蘇生』『植物属性の効果上昇』以下略の効果を付与。

 

神剣アイギスは女性限定装備です。男性は装備できません。

 

 

 

 

…唖然

 

何だこれは。今までと世界観が違う。

一転してファンタジーだ。花の女神だとか上位信徒だとか、今までパニックものだったのにいきなりのファンタジー。ジャンルが違う。

 

そして怒涛の編集済みラッシュ。これでは重要なことは何一つ理解できない。

 

しかしバフねぇ。

ログインボーナスとか運営だかとユーザーとか、薄々ゲームっぽいなとは思っていたがまさかここは本当にゲームなのか?

 

VRMMOの実験体にされた説が新たに誕生した。

 

 

いや、そんなことより。

 

神剣アイギスは女性限定装備です。男性は装備できません。

 

い、意味ねーッ。

 

 

 

 

 

 

 

 

用語一覧

『編集済』

ユーザーがまだ知ることが許可されていない情報です。業績の解放などで情報権限レベルを上昇させるなどで解放されます。

 

 

 

『万能メダル』

紫色のメダル。何らかの金属でできている。綺麗に磨かれており傷一つない。

いったい何が万能なのか不明。部屋の隅にあるガラクタ放置スペースにおいてある。

 

 

 

『神剣アイギス』

神剣、つまり神の力が込められた剣。使用者とパーティーメンバーに回復力上昇、状態異常耐性、防御力上昇などのバフを与える。

アイギスとは確かギリシャ神話の盾だったはず。盾の名前を剣に着けるとは、それほど防御力に自信があるのだろうか。それとも単に運営がそれっぽい名前を付けただけか。後者の説を推す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

業績『初めてのSSRアイテムの獲得』

 

 

『初めてのSSRアイテムの獲得』

 

アイギスの無能さに呆れているとシステムメッセージが届いた。SSRアイテムを始めて獲得したから業績が解放されたのだろう。詳しく見るために業績一覧を開く。

 

 

『初めてのSSRアイテムの獲得』

初めてSSRアイテムの獲得に成功したユーザーに与えられる業績。

SSRアイテムが排出されるとは非常に運がいい。あなたの今後の活躍に期待します。

 

報酬

ガチャコイン 10枚

 

 

…渋っ。もっと何かないわけ?

普通こういう業績解放の際はもっといろいろな報酬をくれるのが筋ってもんだろう?この運営、ケチすぎる。

こんなガチャだとかシステムウィンドウだとか、折り紙に浮遊機能を付ける金があったらもっと俺たちユーザーに還元してくれてもいいんじゃないの?

 

 

実体化したコインは10枚。特に何か特徴があるわけでもない白いコインだ。

さて、ガチャを回そう。10回回せるのでおまけでR以上確定の景品がついてくる。

 

世の中には物欲センサーなんて考えがある。欲しいと思ったものはでないという考え方だ。

 

しかし俺はそんな考えに否定的だ。欲しいと思う、その思いが物を引き付けるのだ。

 

では来い、食べ物!

 

 

 

 

ガチャン

 

 

 

 

 

R『次世代義足(右足)』

 

ずいぶんとメカメカしい黒色の義足だ、横にUSAと文字が描かれている、アメリカで作られているのだろうか。しかしこれは義足というよりもロボットの右足とでもいうべき代物だ、バッテリーのような部品から太いケーブルがいくつも伸びており、男のロマンを感じる。

持ってみると結構重い。しかし俺は五体満足なので不要。次。

 

 

 

UC『ペルシア絨毯』

 

床に敷かれたカラフルな絨毯が実体化した。寝転んでみるとふかふかで寝心地が非常にいい。さすがは高級品。ペルシア絨毯によって生活レベルが上がった。

今まで床が冷たいのでダンボールを敷いて生活を送っていたがこれでその生活ともさらば。当たりである。次。

 

 

 

C『炭火焼鳥 皮 たれ』

 

紙の袋に入れられた焼きとり。初日のチキンとは違って熱々ではなかったが非常に美味。たれは貴重なカロリーなので一滴も残さず舐め切り串一本だけが残った。

欲を言うと皮ではなくももが良かったが贅沢は言えない。

 

 

C『漫画でわかる新選組』

学校の図書館においてあるような漫画でわかる歴史シリーズ。これはその新選組編。簿記三級教科書を読むのにも飽きてきたためこれはうれしい。

 

 

 

 

C『塵取り』

緑色の塵取り。学校の掃除用部によくある大きい塵取りだ。

しかしこの部屋は塵一つない真っ白な空間だ。箒もないため塵取りとしては使われる予定は今のところない。

ゴミ箱代わりにチキンとサーモンのパックなどのごみを入れて置いた。

 

 

 

UC『アンモナイトの化石』

驚くべきことにアンモナイトの化石だけではなく、博物館に展示されているかのようにケースと台座付きで出現した。台座には車輪がついていたため移動可能、部屋の隅に展示した。

 

 

 

R『エレベーター』

ゴンッという大きな音とともに壁に現れた。一流のビジネスビルに置いてありそうな高級感がある。

中に入るためにエレベーターのボタンを押そうとするが、本来は『↑』『↓』の二つがあると思うが、ここには『開』ボタンしかない。それしかないので押すと扉が開き中に入る。

中にはいってボタンを押そうとするが、『1』のボタンしかなかった。

つまりどこにも移動できない。

することもないので外に出た。

この電気の供給源は不明。

 

 

 

HR『旗』

手持ちサイズの小さな旗ではなく、学校の体育祭などで使う大きな旗だった。赤色の旗で模様は特にない。しかし先端が非常に鋭利に尖っており武器としても使えそうだ。

 

邪魔なので触れてみるとシステムウィンドウが展開された。

 

●旗

味方の士気を上げる旗。

装備者とパーティーメンバーに対して『恐怖耐性』『勇猛果敢』『士気上昇』の効果を付与。

 

 

 

アイギスと同じようなゲーム的な詳細が明らかとなった。

考察だが、装備するような武器や防具などはこのシステムウィンドウなどで解説するかもしれない。

なんにせよ、この武器系アイテムはシステムから特別扱いを受けている。他のガラクタとは違う非常に重要なものであると考える。

将来的にこのアイテム群が必要になるときが来るのかもしれない。それはつまり、何らかの争いの時。

いったい運営は俺たちに何をさせるつもりなのだろう。

 

 

 

 

R『招き猫』

三毛猫の招き猫。陶器でできているらしく割れ物注意の札が内部の空洞に貼ってある。しかしこれがR?

Cクラスの道具だと思うのだが、このガチャのレアリティの区別はどういう基準で決められているのだろうか。

 

 

C『ハンガー』

黒色の針金で作られたハンガー。

脱ぎっぱなしのパジャマをハンガーに掛け、しかし吊るす物もないので床に置いた。

 

 

 

ここまで役に立ったのは『ペルシア絨毯』と『焼き鳥』だけ。

当たり率20%。これを低いとみるべきか。

しかしまだおまけがある!

 

さあ来い!

 

 

 

 

R『九十二式7.7㎜機銃』

あふれ出る鉄臭さ、最新のイージス艦などに搭載されているとは思えない無骨さを醸し出している。

電源やケーブルなどの機械も見当たらないため日本軍の兵器であると考察。

今までとは比べ物にならない音と共に実体化したそれは非常に物騒な雰囲気を醸し出していた。

 

 

調べたところ弾薬がないので何もすることができない。

 

 

 

 

しかしこのガチャというのは節操がないというかなんというか。

もう少しジャンルを絞り込めないのか。いろいろ出すぎだ。一体何が出てくるのか予想ができない。

まさに闇鍋状態。

 

どうにかなんのか、これ。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

現状についての考察と美男美女

神剣アイギスは花の女神の力が宿っている。

それが理由なのか突き刺された剣の根本から花が何本も咲き、色とりどりの花弁がこの真っ白い部屋に咲き誇る。

 

もはや驚くまい。今更この程度の超常現象に「ああ、そうなんだ」としか思わない自分の心の成長に感嘆する。

いやな成長だ。

 

しかし花。俺は飢えを凌ぐため花の蜜を啜った。流石は花の女神、蜜は溢れんばかりに満ちており非常に甘く、カロリーも豊富であると考える。うまい、しかし流石に限度がある。ドロドロとしているため水を飲みながら胃に送った。

 

花の蜜を啜るなんて小学生ぶりだ。

 

 

 

 

システムメッセージを見ると2件新着があった。

 

一つはログインボーナス。

今日のログインボーナスは家電引換券だった。

これで文明的な生活を送れというわけか。

しかし俺はだまされんぞ。どうせ家電をもらっても電気がないから動けませんとか、そんなオチだろう。

 

使用方法はチケットを破り欲しい家電製品の名前を言うらしい。

俺はチケットを破り、電気布団が欲しいと叫んだ。

 

そして上からたたまれた電気布団が降ってきた。これで寝袋生活ともおさらば。

 

 

 

…少し調べてみるとどういう理屈なのか、コードがコンセントに繋がってないにも関わらず温かくなりだした。それなら冷蔵庫をもらえばよかった。

 

 

 

そしてもう一つのメッセージ。

 

 

 

●現在ユーザー間でゲームの進捗状況に非常に大きく差が開いており、不公平だとのご意見が対応チームに殺到しています。

これを受けて我々運営開発チームは協議の結果、戦力差是正のためランキング下位のユーザーの方に対して緊急の補償対応を行うことを決定しました。ランキング上位のユーザーの方にはご理解をお願いします。

ユーザーおよび視聴者の方にご迷惑をおかけすることをお詫び申し上げます。

 

ユニット確定コインがプレゼントボックスに追加されました。

 

 

 

 

このメッセージから推測できることは多い。

まず、俺と同じように監禁された人間は大勢いるということ。そして俺たちは何らかのゲームをさせられている。そのゲームがいったい何なのかは不明だが、まだ監禁七日目にも関わらず非常にゲームの進捗状況に差が出ており、視聴者から批判が殺到しているらしい。

 

視聴者、調べてみた限り監視カメラのようなものはなかったが、何らかの超技術で配信しているのだろう。

 

 

俺を監禁した奴らは運営開発チーム、対応チームと最低でも2チーム存在するようだ。まあここまで大掛かりなゲームだ、結構大規模な組織が関わっているのだろう。

 

 

重要なのがクレームが殺到しているという点だ、その理由が戦力差。クレームに対して慌てて対応を行うということは、2つの可能性が考えられる。

まず、本当に差が開いている。戦力差ということは戦闘能力の差。

 

俺は使えない、アイギスをみる。本来はこのアイギスを使って俺は戦力を整え、将来的には何か、他のユーザーと殺し合いをさせられるのか?

 

いやな可能性だ。確かに俺の武器はどう考えても戦闘向きではない旗。銃なんかを引いたユーザーとの差は圧倒的だろう。

いや、武器が出るだけいい方なのかもしれない。未だに素手で、餓死しているユーザーもいるかもしれないのだ。

 

 

 

二つは視聴者がかなりのVIPということ。

こんな技術や施設をゲームのために使えるんだ。

かなりの有力者であると思われる。そのため、彼らの意見を無視するわけにもいかず不本意ながら補償を行った。

 

ここで一つの考えが浮かんだ。視聴者に気に入られよう。

滑稽な道化を装い視聴者の関心を買い、お気に入りになる。もしお気に入りの俺が死にかけたら同情し助けてくれるかもしれないからだ。

 

 

…ランキングというのはまずい。視聴者の多くは上位争いに目を向け、そして最下位争いなんて関心を持たないだろう。持つものは性格の悪いやつだけ。

そしてこのゲームがソーシャルゲームなどをモデルとしているのならば、ランキング上位者にはゲームを有利に進める報酬があるはず。この報酬によりさらに差が開いてしまう。

…ペナルティだってあるかもしれない。ランキング下位には罰ゲームとか。

 

 

 

 

 

 

 

さて、考えはこのくらいにしてガチャを回そう。

 

 

恒例の無料ガチャ。

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

UC『麻雀セット』

 

現れたのは麻雀セット。それも一つではない。4セットだ。

椅子4つと机1つ。机の上には機械で麻雀ができる装置が取り付けられている。それが4セット。触ってみると動いた、これも電気毛布と同じ、謎のエネルギーで動いているのだろう。

 

しかし人生ゲームと違って麻雀は一人でできない。4セットもあるだけ無駄だ。

 

 

 

 

そして本日の目玉、ユニット確定コイン。

見た目は茶色のコイン。表にはデフォルメされた人が3人立っているマークが刻まれており、裏は人間の顔文字、それも笑顔が描かれている。

 

 

用語一覧

 

『ユニット』

ユーザーを支える生命体。あなたの命令に絶対服従。

 

つまり生き物が出てくるということ。

 

食糧事情が悪化するかもしれないが、視聴者を喜ばすため、そして現状を打開するため!

 

 

ガタンッ

 

 

 

C『ホムンクルス1ダース』

 

 

 

後ろを振り向くと彼らはいた。

 

 

美男美女の集団だった。

男6人、女6人。1ダース、つまり12人、人をダースで数えるな。

 

アルビノなのか肌や髪が白く、しかし瞳は真っ赤。端正な顔立ちで全員が瘦せていて、しかし男性は筋肉質で、女性は小柄だが出るとこはでている。

 

恰好はこれまた白く、マントやブーツ、そして洋風の白い服を着ている。ズボンだったりスカートだったり千差万別。

 

彼らは微動だにせず、俺をじっと見ている。

 

「あー、とりあえず自己紹介をしてくれ」

 

彼らはお互い困ったように目を交差させ、ジェスチャーをしてきた。口の前にバツマーク。

 

 

 

 

もしかして話せないの?ええ、嘘ーーーーー。

 

 

 

話せないが文字は読めるらしく、皆で説明書を見ながら麻雀をオールナイトで何時間も遊んだ。

7日ぶりのコミュニケーションは寂しさで苦しかった俺の心を癒した。

彼らは感情はあるらしく、表情にはほとんど出さないが楽しんでいた。

 

あと普通に強かった。なぜ一回目で負けた、俺は経験者で彼らは初心者なはずなのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

用語一覧

『ランキング』

視聴者の投票によって決められる、どのユーザーが【編集済】となるか【編集済】ランキング。

 

一体なんのランキングなのか不明。しかし補償が貰えているということは俺はランキングの下位に位置しているのだろう。

 

『対応チーム』

ユーザーや視聴者の対応を行うチーム。

 

 

 

『麻雀セット』

椅子4つ机一つ機械式麻雀1つ、それが4セット。説明書付き。

謎のエネルギーにより稼働。自動計算機能付き。

リーチになると人を焦らすBGMがかかり、ロンやツモ、高得点の役をそろえると様々な演出が発生する。

国士無双の際はクラッカーが弾けスポットライトが充てられた。

 

 

 

『ホムンクルス1ダース』

 

白い肌、赤い瞳のホムンクルス、男女12名。

ホムンクルスは欧州の錬金術師パラケルススが作り出した人造生命体。しかし体は小さくフラスコから出ると死んでしまうらしい。

パラケルススのホムンクルスとは別物であると考えられる。

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

日本の古き良き玩具

神剣アイギスの根本には小さな花園が発生していた。美しい花々が咲いている。

 

 

そして大の大人、総勢13名が花の蜜を吸っている。

…何とも言えない光景だ。俺もホムンクルスたちも、貴重なカロリーのために、そして非常に美味なので黙々と吸っている。

 

 

この映像を視聴者はどう思っているのだろうか。

 

 

ホムンクルスに仮の名前を与えることにした。男には1号から6号、女には7号から12号。

彼らは俺が名前を告げると真顔で頷いた。だめだ、不満があるのかわからない。

 

 

花の蜜を啜り終わりシステムメッセージを確認すると2件届いていた。

 

 

 

●ログインボーナスに関するお知らせ

サービス開始記念から8日目を迎えた今日よりログインボーナスの仕様を変更とさせていただきます。

具体的な変更点としてこれまで全ユーザーの皆様には同じログインボーナスを配布させて頂きましたが、今日よりユーザーそれぞれにあったログインボーナスを配布させていただきます。

急なご連絡申し訳ございません。今後も本サービスのご利用ください。

 

 

 

なるほど、ユーザに合ったログインボーナスが配布されるらしい。

餓死寸前のプレイヤーには食物確定コインとかが配布されるのだろうか。

では俺に合ったログインボーナスは何だろう。

 

プレゼントボックスを開く。

 

『BGM確定コイン』

 

出てきたのは紫色のコイン。表と裏に音符のマークが描かれている。

 

BGM⁈それが俺に合ったログインボーナスだと?

違うっ断じて違うって!今俺が欲しいのは食べ物!戦力!情報!

的外れすぎる。嫌がらせか?

 

 

 

 

しかしガチャを回さなければならない。視聴者の興味を惹きつけなければならないのだ。

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

C『ラジオ体操第一』

 

 

 

相変わらず何も起きなかった。今までの経験からシステムを開くと、BGMという項目が追加されていた。そこにはラジオ体操第一が書かれてあり、選択すると音楽が流れ始めた。

 

「おーい、集まれ!」

 

俺の合図で麻雀をしようとしていたホムンクルス達が集まりだした。麻雀にはまったらしい。

真顔で、しかし不満そうな雰囲気を出しながら集まるホムンクルスたちにラジオ体操をさせる。

 

 

俺の体操を真似するかのように体操を始める。ぎこちないが、それでもみんなでやり切った。

 

すると一枚の紙がひらひらと落ちてくる。

 

『ラジオ体操カード』

一から三十までの数字が書かれており、一の場所にはスタンプが押されている。これを30回やれと。まぁ暇だしするけど。

 

 

 

 

 

それでは無料ガチャ。期待はしない。

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

C『けん玉』

 

けん玉。木製の玩具。赤い玉が紐で吊るされていて小さい穴が深く彫られている。

全体的に十字の形であり、頂点は尖っていて左右にこの玉を置くべき凹みがある。

 

けん玉なぁ。昔の日本ではどの家庭にもあったらしいが、今の日本では絶滅危惧種だ。俺も小学校の頃の文化交流で遊んだ記憶しかない。

 

さてさて。

できるとは思わないがけん玉で遊んでみる。ほいっほいっほい。

 

しかし全く凹みの部分に置くことができない。何度も何度もやるが結果は同じ。だめだ、イライラしてきた。これ以上は精神に悪い。やめよう。

 

これをガラクタスペースに置こうと思い立ち上がると視線を感じ、振り向くとホムンクルス達が興味深そうにけん玉を見ていた。

 

暇なのでホムンクルス達にもやらせることにする。

ホムンクルスと言えどもけん玉を初見でできるはずがない。

男は全滅、女達も失敗していく。

 

 

しかし8号が何と一回で成功させ、そこから名前はわからないがすごい技を次々と成功させていった。ドヤ顔だ。少しだがドヤ顔している。表情筋は少しだがあるらしい。

俺はおおーっと驚き、ホムンクルス達は拍手した。

ホムンクルスの能力に個体差があることがわかった。

 

 

 

 

麻雀に人生ゲームの紙幣を導入した。俺は一日で搾り取られた。

 

 

 

 

 

ランキング最下位 山田竜に注目集まる。

 

アメリカマンハッタンタイムズはネットで『どのユーザーのチャンネルを見ているか』アンケートを取ったところ、なんと一位に山田竜氏が輝いた。

これについて専門家は

 

「他のユーザーが皆人々を驚かせる能力やアイテムを与えられているが、やっていることは皆同じ、惑星を開拓するという変わり映えのしないこと。最初の数日は皆暇さえあれば見てその能力やアイテムに驚いていたが、飽きてしまった。

 

そんな中、山田氏は他のユーザーとは違い、サバイバル生活を送っている。

 

これにより市民は、自国の人間とランキング上位者、一部のお気に入り、そして山田氏だけをチャンネル登録する。

ガチャから何が出るのか皆興味をもっており、最低でも一日一回は見ます。その結果が今回のランキング一位につながったのでしょう』と語る。

 

 

 

 

 

『BGM』

システムから設定した音楽を流すことができる。音楽が終わるとまた初めから流れ、ループを始めるのでラジオ体操を流す際は終わったらシステムを使い止めなければならない。

 

 

 

 

 

『ラジオ体操第一』

日本人なら誰でも聞いたことのあるラジオ体操。プールを泳ぐ前や体育の時間の前にやらされる。効果があるのかは知らない。

一日一回体操をするとスタンプカードにスタンプを押してくれる。30まで数字があり、終わらせると何があるのか不明。

 

 

 

『けん玉』

基本的に木で作られる玩具。十字状の剣と穴の空いた玉で構成される。この玉はなぜか赤色の場合が多い。

現在8号が独占中。

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

19000になるはずだった紙

今日も今日とてラジオ体操。これでスタンプは2つめ。できればこのスタンプが30個貯まる前にこの白い部屋から脱出したい。

 

生活習慣を整えるため、朝七時にはラジオ体操を全員で行うことを決定した。運動不足やストレスの解消のために非常に良いと考えたからだ。

 

ホムンクルスたちの動きも昨日と比べて非常に良くなっている。こいつら運動神経いいな?体も柔らかい。

 

体操を終え皆で一休みしていると神剣アイギスが目に入った。女性限定装備、いるじゃないか、目の前に!

 

寝そべっている7号を叩き起こし神剣を床から抜くように命令する。

すると俺の時はピクリともしなかったのに、あっさりと剣を抜くことに成功した。

 

剣の根元の花畑は枯れずにそのままだ。これで食糧事情は一安心。でも念のため後で戻しておこう。

 

 

 

女神の力が込められた神剣。この力があればこの白い部屋をぶち壊し脱出することができるのでは?

 

 

 

さぁ、花の女神の力を見せてみろ!いけ7号!神の力を見せるんだ。

 

 

7号が剣を壁に向け、構える。あれっなんだこれ。何というかオーラのような物が7号の周りに漂い始めた。しかも妙に様になっている。

 

7号は力強く足を踏み出し剣を素早く振り下ろした。神剣と壁が激突する。

 

火花が飛び散り、鈍い、不協和音が響き渡る。

 

壁は傷一つついていない。一体どういうことかよく見てみると紫色のシステムウィンドウが7号の前に開かれていた。

 

●破壊不能オブジェクト。この壁は破壊できません。

 

 

予想外の警告。つまり神剣は壁またはシステムに負けた?

神の力よりもこの白い壁が優れているのか?何で構成されているんだこれ。

 

というか破壊不能オブジェクトって。やっぱりここVR空間なのでは?

それならとんでも技術にも納得ができる。いや、VRだけでも超技術だが。

 

でもアイギスがガチャから出現した際は剣が床に突き刺さっていたよな?これはどういうことか。花畑を見てみると床の傷は何事も無かったかのように消えていた。

 

ガチャのアイテム出現時は破壊できるということか?要検証。

 

しかしこの神剣、本当に役立たずだな。花に影響があるかもしれないしさっさと戻そう。

 

 

 

 

おーい、7号、剣をもとある場所に戻してくれ。

 

 

 

 

しかし7号はこちらを一瞥し、また壁に向き合った。

 

あれ、無視した?

 

 

すると7号は剣で壁を攻撃し始めたのだ。

 

 

 

●破壊不能オブジェクト。この壁は破壊できません。

●破壊不能オブジェクト。この壁は破壊できません。

●破壊不能オブジェクト。この壁は破壊できません。

●破壊不能オブジェクト。この壁は破壊できません。

 

 

ムキになっている。

 

 

うーん、美少女が剣を振るうその姿はなかなか様になっている。

しかし、素人ががむしゃらに振っているようには見えない。こいつ、何か剣道経験でもあるのか?

 

 

あ、諦めた。

 

「チッ」

 

し、舌打ちした!

間違いない、麻雀やってる時に薄々気づいていたが、こいつら個性が芽生えてないか⁈

 

 

 

 

 

 

 

 

 

九日目のログインボーナスは拠点確定ガチャコイン。

 

拠点。この白い部屋に影響を与えるアイテムが出てくるのだろうか。

記憶にあるのはトイレと動かないエレベーター。これも拠点に分類されると予想。

 

 

それではレッツガチャ。

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

UC 『銭湯』

 

 

現れたのはトイレの横。

 

暖簾が二つ掛けられており、青い文字で男、赤い文字で女と描かれている。男の暖簾を潜るとそこは脱衣所だった。棚にはご丁寧にタオルとシャンプーが入った籠がある。

脱衣所の先には大浴場があった。大浴場は水色のタイルが敷き詰められており、壁には富士山が描かれている。

しかもなんとお湯が入っている!やった!これで風呂に入ることができる。

8日も風呂に入っていないのだ、この不潔な体を洗い落とせる!

 

俺は銭湯から出てホムンクルスたちに風呂の入り方を教えた。こいつらもラジオ体操で少しだが汗をかいている。さっぱりしたいだろう。

 

 

 

あ、あぁー、癒される。一週間ぶりの入浴は心地よい。風呂こそ日本人の心だなぁ。

しかもサウナまであった。さすがに水風呂は無かったが今までで一番のあたりである。

 

なんと自販機まで設置されていた。スナック菓子や牛乳、温泉卵まで入っている。しかし俺は金を持っていない、どうすることもできなかった。残念。

そう諦めていたら7号が女風呂から温泉卵を持ってきた。右手には温泉卵、左手には神剣アイギス。

どうやら剣で自販機を壊したらしい。

男風呂の自販機を壊してもらおうと頼むが、

●この先は女性侵入禁止エリアです

という警告が表示された。

 

 

 

 

 

だが、今俺は流れに乗っている!運には流れという物がある。運勢の良いときに回さなければ損という物。

毎日一回無料ガチャ!

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

C『ハズレ馬券』

 

ゴミだ。本物のゴミだ。

 

 

 

 

 

 

『銭湯』

トイレの横に出現した公衆浴場。入り口には男女別の暖簾がかけられており、中は脱衣所と富士山が描かれた風呂、そして小さなサウナルームである。

タオルとシャンプー、ボディーソープまで揃っている。

色々売っている自販機があるがお金がないので使えない。

と思ったら7号が剣で壊して中身を強奪した。

男は女風呂に、女は男風呂に入ることができない。

 

 

『ハズレ馬券』

 

2015年6月28日 第56回宝塚記念

予想 一位 ゴールドシップ 単勝  10000円

 

第56回宝塚記念、ゴールドシップという馬がほぼ確実に勝つと騒がれ120億の金がゴールドシップに賭けられた。

しかしゴールドシップはレース開始直前に立ち上がり勝利を逃してしまう。その結果120億の馬券は紙屑と化した。

これはそのハズレ馬券。

正真正銘のゴミである。

いや、マニアとかにはプレミア価格で売れるのだろうか。

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

フェス(誰得)

風呂で洗濯を始めた。俺のジャージは自動洗浄機能がついているため洗濯の必要がないがホムンクルスの服は洗濯が必要だ。

 

浴槽のお湯で服を濡らし絞る。洗剤が無いため、シャンプーやコンディショナーで代用。

後は服をサウナで干すだけ。その間は風呂につからせる。

これで衛生問題は一応解決した。

 

 

食糧問題は7号が神剣で自販機を壊しその中身をみんなで食べることにした。13人という大所帯だが一週間分にはなりそうだ。

 

しかしお湯や水は何処からか供給されるのだが、シャンプーなどの備品が補充されることは無かった。

 

男風呂の自販機だが、男性ホムンクルスに銭湯の外に持ち出して7号に壊させようとも考えたが冷蔵庫が無いためこれでは劣化の速い食べ物はすぐに痛んでしまう。ので1週間後に壊す予定。

 

 

 

…さて。システムメッセージが2件届いていた。

 

 

 

 

 

●24時間限定ゴブリンフェス!ゴブリン関連アイテム排出率上昇中!

 

(フェス終了後は通常の排出率に戻ります。またフェスは今後不定期に発生します)

 

 

 

 

 

ゴブリン、イメージするのはあのゲームに出てくる緑色の人型モンスター。あれの関連アイテムだって?絶対ろくな物じゃない。

 

 

 

しかもこんな時に限ってログインボーナスは通常コイン3枚。なかなか豪華だ。

 

 

 

正直、今日は回したくない。ゴブリン関連アイテムって何が出てもゴミじゃん。この3枚は温存しておきたい。

 

だが。

 

もし俺がゴブリンガチャを回さなかったら、視聴者はどう思うか。

 

 

 

 

(はぁ?回せよ)(つまんな)(無能)(おもんな)(何こいつ)(もう見るのやめます)

 

 

 

 

 

 

俺はこれから、ほぼ確実に爆死する。小学生でもしないような判断をし、滑稽に苦しみ、視聴者に馬鹿にされ、笑われなければならない。

そうして有力者である視聴者のお気に入りとなって、様々な便宜を図ってもらい死という最悪の結末を回避する。

 

では無料ガチャと3枚のガチャコイン、計4回、回します。

 

さあ刮目せよ、そして俺を馬鹿にしろ!

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

C『ゴブリンレクイエム第32章歌詞』

 

読めない!質の悪い紙に未知の言語で書かれている。外れ馬券並みのゴミだ!

しかも第32章って!何章まであるんだよ!いい加減成仏しろ!

 

 

 

さあ、次!

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

R『ゴブリン壺』

 

出てきたのは粘土か何かで作られた焦げ茶色の壺。表面にはゴブリン?をモデルに作られたのか醜い見た目だ。

 

…えっこれレアなの?この壺が?なんで?

俺には分からない、ゴブリンだけが分かる価値でもあるのだろうか。

 

 

 

 

ああ~、回したくねぇ~、こんなゴミのために回したくない。もっと何か違うフェスで回したい。

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

HR『ゴブリンソード』

●ゴブリンソード

ゴブリンを殺すことだけに特化した長剣。

ゴブリンに対するダメージ100%上昇

ゴブリン以外に対するダメージ50%減少

 

 

 

実体化したのは物々しい雰囲気を出す金属製の長剣。

柄から刃先まで約90cmほどの長さだ。刃の部分はシルバーのような色をしており、磨かれていないのか光沢はない。柄の部分は茶色の木材でできており、手に握りやすいように手当たりが良く、グリップ部分には緑色の革が巻かれていて全体的にはシンプルでスマートな、しかし実戦的で無骨なデザインだ。

 

 

 

 

あたりだ。将来的には他のユーザーと殺し合いをしなければならない可能性がある中で、武器は多ければ多いほど良い。

…ゴブリン以外には役に立たなさそうだが。

 

 

 

というかゴブリンって。俺はゴブリンと殺し合うのか?

 

 

 

 

…さて、最後の一回。

 

 

 

C『下級兵向けゴブリン兵法書(日本語訳)』

 

 

嫌な予感しかしない。兵法書と説明にはあるが、それは紙一枚を半分に折っただけの物だった。

 

しかも日本語訳されてるし。いらねえよそんなサービス。

 

 

 

 

『戦場では貴様の命は無価値であり、戦友の価値もまた無価値である。何故なら貴様は無能であり、貴様の代わりなどいくらでも存在するからだ。後のことは考えるな、己の命を捨て突撃せよ。味方を巻き添えにしてでも敵を殺せ、殺せなくても足止めせよ、傷をつけろ。ゴブリンの屍の上にゴブリン帝国は繁栄する』

 

 

 

こんなの兵法じゃねえ!

 

 

 

 

 

 

『ラジオ体操が大流行⁈』

 

山田氏が朝7時にラジオ体操を踊る映像が世界中で注目を集めています。この映像を見たお年寄りや子供たち、そして健康になりたい人々が、映像に合わせて踊り始めているということです。そして、この現象は小さなブームとなりつつあります。

 

日本だけではなく、世界中に広まりつつあるこのラジオ体操ブーム。なぜここまで多くの人々を魅了しているのでしょうか。

 

ラジオ体操は、日本で長年にわたって愛されてきた健康法の一つです。しかし、最近では若い世代を中心に、ラジオ体操自体の存在を知らない人も増えてきているといいます。そんな中、山田氏の映像が注目を集めたことで、多くの人々が改めてラジオ体操の健康効果を知り、実践するようになったのです。

 

このラジオ体操ブームは、日本だけではなく、世界中に広がりつつあります。特に、健康や運動に対する意識が高い欧米を中心に、注目を集めています。この現象は、日本の文化が世界に広がっていることを示すものとしても注目されています。

 

健康志向が高まる現代社会において、ラジオ体操は改めて注目されるべき運動法であることを示しています。このブームが、健康増進や運動習慣の普及につながることを期待したいところです。

 

 

 

 

 

 

 

 

『製薬企業株大暴落』

 

ユーザーがダンジョンから回収した万能回復薬『ポーション』が遂に地球に持ち込まれました。

 

この回復薬の科学的な安全性や成分、材料などは不明ですが、実際にユーザーとユニットが『ポーション』により治療された映像が連日テレビで放送され、その効力は否定できないものとされています。

『ポーション』の発見以来、製薬企業関連株は下落の一途をたどっていましたが、クエストで取引された瞬間から大暴落しました。

 

 

しかし、製薬大手のいくつかのメーカーは、ポーションを入手することに成功し、解析を続けていることを記者会見で明らかにしましたが、株価の下落を防止することはできませんでした。

 

専門家は、この回復薬には魔法的な技術や地球上に存在しない素材が使用されている可能性があるため、解析が困難であるとの見解を示しています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

祝!10日生存!

男性ホムンクルスがサウナにハマりやがった!朝起きてラジオ体操するにはまだ早いのでもう一眠りするかと思ったらホムンクルスが3人もいなかった。

慌てて探してみると3人全員でサウナに入っていた。

 

 

マジかよ。最初の日は俺の命令以外は何もしないというスタンスだったのに、この数日で自分のしたいことを勝手にやり始めた。

これはすごい、このまま勝手に成長して俺の脱出の役にたつようなことをしてくれ。

 

 

…ラジオ体操が終わったらまた風呂に入りに行った。風呂好きすぎだろ!脱水症状には気をつけろよ!

 

 

さてさて。今日は俺が監禁されてから記念すべき10日目だ。時間の流れとは早いものだ。

最初のコンビニチキンが懐かしく感じる。

 

…それを記念してか、運営もログインボーナスにいい物をくれた

 

 

 

今日のログインボーナスはSR確定コイン!

 

さあ、期待しているSRコインよ!

 

 

ガタンッ

 

 

 

SR『神性G』

 

………何も起きない。システムを確認するが特に何も変化はない。何かが実体化することも、新たにこの部屋に何かが起きる訳でもない。

 

不穏だ。嫌な予感しかしない。今までガチャを回せば何かしら変化はあったのだ。だが、ない。

何も起きない。

 

しかも神性って。神としての性質?のことか? 

今までガチャで排出された神関連アイテム、厄ネタである神剣アイギス。これと何か関係でもあるのか。

 

だめだ、何一つ分からない。

 

だが、一つだけ、俺の直感が言っている。これは碌でもない、将来的に面倒なことになるだろうと。

 

 

 

 

 

切り替えていこう。今日の無料ガチャ

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

UC『機械馬』

 

 

 

出現したのは機械でできた馬だった。

見た目は、馬と同じような形状をしているが金属でできた皮膚、機械的な関節や骨格、電子部品が露出している。

 

あっ、こっちに来た。

まるで本物の馬のようだ。

 

【ユーザーを眼球カメラで目視確認。オーナー契約完了。当機はこれよりオーナー様の指揮下に入ります。これからよろしくお願いします、オーナー】

 

 

あ、どうも。山田竜です。こいつらはホムンクルス。俺の、友達みたいな感じです。

 

 

【ホムンクルス12名を友軍として登録します】

 

えーと、確認したいことがあるんだが、機械馬は何で動いているんだ?悪いけど、充電なんてできないぞ?

 

『魔力です』

 

 

は?魔力?

 

 

【大気中の魔力を吸収することにより最低限の稼働が可能。しかし十分な量の魔力が貯まるまで魔力不足のため武装ユニットを使うことができません】

 

 

…とりあえず、魔力とやらを頑張って貯めてくれ。

 

 

 

 

 

うわーー、これ運営は確実に俺に戦争させるつもりだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

なんと機械馬が麻雀に参加したいといいだした。

機械の蹄でどうやるのかと聞いたところなんとマニピュレーターという、機械の手を体から出し、椅子に座って麻雀を始めた。

 

 

CPUの稼働は人間並に出力を抑えているため対等だとのこと。

なんとか勝てた。人間をなめるな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ホムンクルス大人気!』

 

世界中でホムンクルスに魅了される人々が増加しています。ホムンクルスとは、錬金術において人間を人造人間に変えることを目的とした存在で、ガチャから出現したその存在感や神秘性から、ファンを増やしています。

 

ホムンクルスたちは、それぞれが独自の特徴を持ち、ファンたちを魅了しています。

またホムンクルスたちは現在個性を獲得し始めており、その成長に今後もファンたちの興味を引き続けることでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

『ハーレムの結成 国内外で強い批判』

 

 

日本人ユーザーである沖田一が召喚した女性たちを侍らせ、ハーレムを結成しているということが、世界中から人権侵害や女性差別として批判されています。この問題について、日本政府が沖田氏に対して他の日本人ユーザーと比べて非常に手厚い支援をしていることが明らかになっており、日本政府自身も非難を浴びています。

 

映像によれば、この日本人は数多くの女性たちを侍らせ、自身の所有物として扱っているということです。女性たちは、彼を「ご主人様」と呼び、沖田氏は女性たちが従属することを望んでいると主張していますが、そのような関係が本当に自発的であるかどうかは疑問が残ります。

 

 

この問題に関して、日本政府が沖田氏の活動を支援していることが報じられていますが、日本政府も女性たちが自分自身の意思でそのような関係を築いていると主張しています。しかし、女性たちが本当に自分自身の意思でそのような関係を築いている場合でも、人権侵害や女性差別の問題があるため、政府がそのような行為を支援することは許されません。

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

なんでバイカル湖にこんな物があるんだよ!

結局昨日の麻雀は白熱した。

 

どうやら機械馬は最初の数回は俺たちの癖や方針などを学習、そしてさらに俺たちの心理状態を演算して麻雀をやっているようだった。

 

さすがにそれは反則だ、そんなことされたら勝てないと文句を言うと

人間なら可能だとのこと。誰だよそんなデータ入れた奴は。

 

しかし機械馬は理論的に考える傾向にあり、こっちが学習された牌の捨て方や役の傾向から180度違う思考、意味の無い捨て方、目配りなどによる協力などに翻弄され機械馬はまあまあ負けた。

 

俺よりも勝っていたが。悔しい。最初は勝てたのに。

 

 

 

 

そして驚くべきことに機械馬もラジオ体操を始めた。四足歩行なのでできない動きもあったがなんとやり遂げた。

 

そして風呂に入った。人間と同じ感覚回路を持つため風呂が気持ちいいそうだ。

いや、水だぞ?機械馬はショートしたり錆びたりしないのか?

 

だが馬は防水機能もついていると答えた。

 

まあマニピュレーターやら感覚機能やら麻雀ができる思考回路やらいろいろ搭載されているんだ、防水機能ぐらい備わっているだろう。

 

 

 

 

 

 

11日目のログインボーナスは『武器確定コイン』。

 

 

武器、今のところ武器は3つ。旗と神剣、ゴブリンソード。

 

最低でも13人分の武器が欲しい。殺し合いになったとき素手で殴り合いなんて嫌だからな、他のユーザーとの戦力差も早く縮めたい。今がランキング何位なのかは分からないが下位にいることはほぼ確定だろう。

 

 

 

武器が欲しいなんて物騒な考えは持ちたくないのになあ。

 

 

ガタンッ

 

 

C『木刀(バイカル湖)』

●日本人小学生修学旅行生向けのお土産販売店で売られている木刀。定価30000円

バイカル湖と日本語で刻まれている。

バイカル湖で使うと………?

 

 

木刀という名の通り木でできている、ニスを塗ってあるのか焦げ茶色だ、柄の部分には「バイカル湖」という文字が日本語で刻まれている。へぇー結構軽いな。適当にぶんぶんと振ってみる。なんでか知らんけどテンション上がるなあ。

 

 

しかしバイカル湖。確かロシアにある湖の名前だったはず。へえーそうか、小学生向けのお土産ねえ。

 

 

………じゃねえよ!なんでバイカル湖に小学生が修学旅行に行くんだよ!木刀なんて3万円もする物小学生のお小遣いで買えるわけないだろ!なんで小学生向けのピンポイントなお土産店が存在するんだ!

 

 

そもそもなんでバイカル湖なんだよ!こういうのは日本の湖の名前だろ!

 

バイカル湖で使うと………じゃねえ!今この部屋から出ることができないのにバイカル湖なんて行けるはずねえだろ。後使うってどう使うんだよ!チャンバラごっこでもするのか?

 

 

 

 

 

気を取り直して無料ガチャ、来い!

 

 

 

 

C 『Bar egg』

 

出現したのは扉だった。黒く曇ったガラスのため中の様子は見えない、扉の上には小さな看板が吊されており、白く卵形の看板にeggと書かれている。

 

 

 

Bar、つまり酒を提供する店か?

 

扉を開けるとカランカランという鐘の鳴る音が聞こえ、店内の落ち着いたBGMが耳に流れてきた。

酒場の内装は、シックで落ち着いた雰囲気だ、暖色系の照明、レトロな雰囲気のオブジェやポスター、革張りの椅子などが設置されている。

落ち着いた光が居心地の良い空間を演出しまた、壁には酒の種類やメニューが書かれたボードや、美術作品が飾られていることがあります。

 

 

 

 

いらっしゃいませ、マスター

 

 

おまえは誰だ?なぜこんなところにいる?

 

 

私はガチャにより生み出されたBar eggの経営者兼バーテンダー。それ以上でも以下でもございません。卵料理には自信がありますので今後ともよろしくお願いします。

 

 

………ここってお金いる?今かなり食糧が少なくて。ただで提供してくれたら嬉しいんだけど。

 

………残念ですが、代金は必要です。私のことはご心配する必要はありません。まかないがありますので。

 

 

 

 

店内にはビリヤードやダーツが設置されておりホムンクルスたちと一緒に楽しく遊んだ。

 

 

ダーツは初心者でもそこそこ楽しめたのだが、ビリヤードはそもそもルールが分からなかったので適当に玉を弾いて遊んでいたらバーテンダーが遊び方を教えてくれた。

 

非常に上手だった。後優しかった。彼はいい人だ。なのに食料の提供は拒否する、何かルールでもあるのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『世界でガチャギャンブルが大人気』

 

 

世界中のカジノで「ガチャギャンブル」という新しいタイプのギャンブルが人気を集めている。このギャンブルは、プレイヤーは専用のコインを使用して、ガチャガチャのような機械で遊ぶというギャンブルです。

 

このガチャギャンブルは、シンプルなルールで遊べるため、初心者でも簡単に楽しめることが特徴です。ガチャガチャのように当たりが出た場合には、高価な車や宝石、珍しいコレクションアイテムなどが景品として貰えます。しかし、当たりが出なかった場合には、いわゆる「ガラクタ」が手に入り、しかしお金持ちは笑顔です。

 

世界中のカジノでは、このガチャギャンブルが大人気となっており、大勢の客が運試しにカジノ初心者や子どもが楽しんでいます。ラスベガスのカジノでは、ガチャギャンブルの機械が常に満席となっており、多くの客が熱心に遊んでいます。

 

しかしながら、一部の専門家からは、ギャンブル中毒を助長する可能性があると主張しています。さらにこのガチャギャンブルは未成年者にも始めやすいため、規制が必要だという意見が出されています。

 

今後、ガチャギャンブルがどのように発展していくのか、注目されるところです。

 

 

 

 

 

 

 

『世界的に宗教の権威後退』

 

将来的な人類の滅亡が上位の知的生命体により通告されたことで、世界中の宗教は苦難に立たされている。

 

多くの信者たちは神の力を信じ救いが訪れることを望むものの、現実は厳しいものとなっています。

神の力を手にしたユーザーたちが現れ、その力を振るいダンジョン攻略を進めており、その力の真偽は疑いようもなく多くの人々が神の存在を信じ始め、無神論者が減少傾向にあります。

 

しかし、この神の力の出現により一神教は教義の矛盾により危機に立たされています。この矛盾に対し多くの信者たちは深く悩み過激派はユーザーを非難し一部の国家ではデモが発生しこれに同調する国家も現れ混乱に陥っています。

 

また、沖田氏のハーレムの中には天使などの存在が確認されており、一部の宗教では権威に綻びが生じていると指摘されています。これにより、一神教の信仰と権威はさらに揺らぎを見せることになるのでしょう。

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

1000位記念品

バーテンダーもラジオ体操に参加した。店はどうしたと聞くと朝と昼は閉めているらしい。

これから寝るので店には入らないで欲しいと言われた。またビリヤード教えてね。

 

 

………さて。

 

本日システムメッセージが2件届いた。一つはログインボーナスなのだが、もう一つが問題だった。

 

 

●ランキング中間発表!山田竜のランキングは1000位です。901位から1000位の方に報酬はありません。しかし100位、200位、777位、1000位など切りのいい数字のユーザーには特別報酬が与えられます。

 

『C限定10連ガチャコイン』がプレゼントボックスに追加されました。

 

 

 

1000位。つまり、1000人も俺と同じように監禁されていると言うこと。せいぜい100人程度かと考えていたが、予想以上に規模が大きい。

 

しかし、1000位。これは俺よりも順位の低い奴がいて、その結果が1000位なのか?

それとも、俺が最下位なのか?

 

いや、1000位なんて偶々なるとは考えにくい。そして1000という、切りのいい数字。俺は今、最下位なのでは?

 

 

………やった!中途半端に低い順位じゃなく最下位なら視聴者の目に届く!それにこのまま1000位を維持すれば1000位報酬をもらい続けることができる!微妙だけど。

 

 

 

 

 

12日目のログインボーナスは『兵士確定コイン』だった。

兵士。やっぱり運営は殺し合いをさせる気だ。

 

 

憂鬱な気分になりながらレッツガチャ!

 

C限定10連ガチャコインは一回分のおまけもCらしい。くそっ

 

 

さて、期待はしないがまずは無料ガチャ!

 

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

C『消防車のミニカー』

 

………次!

 

 

10連ガチャコイン!一つくらい役に立つ物来い!

 

 

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

『血液パック』

機械馬が鑑定すると言い出した、科学的な物ならある程度解析ができるらしい。

人間の血液には血液型というものがあり、同じ血液でないと輸血時に死んでしまうのだ。

だがこの血液は人間の血液型を無視して輸血することができるらしい。

病院が喉から手が出るほど欲しがりそうだ。

…だが輸血に関する知識もなければ道具もない現状、どうすることもできない。

なんと常温保存可能らしいので放置。

 

 

『フクロウの剥製』

現れたのは真っ白いフクロウの剥製だった。作り物の木の枝に捕まり、まっすぐこちらを見ている。

剥製、初めて見る。うわーフクロウってこうなってるんだ。

 

確か剥製の作り方は内臓を出したりして作るはずだ。

 

…不快だ、人間のつまらない欲望のために命を奪われ、死後も尊厳を貶められるなんて。不憫だ。

 

 

 

『ぶらんこ』

公園に設置されてあるようなぶらんこ。ぶらぶらぶら。この閉鎖空間で娯楽というのは非常に重要だ。

俺だって麻雀やホムンクルスがいなければ寂しさで頭がおかしくなっていたかもしれない。

あっこら!3号と11号!背中を押すな!止めろ!止めてくれ!

 

 

 

『トランプハートの38』

今回のハズレその1。トランプカードの38って。ハートのトランプは1から13までしかないんだよ、38なんてカードは存在しないんだよ!

しかもハートが多すぎて重なり合い赤一色になっている。

 

 

 

『第4の使徒【祝福のオルトリンデ】フィギュア12分の1スケール』

 

今回のハズレその2。何の役にも立たない。

出てきたのはフィギュアだった。何かアニメか漫画のキャラなのか、ピンク色の長い髪に白い翼を背中に生やし、小さな盾と長い槍を構えている。

服装は白色のロングスカートにフード付きの服を着ている。

 

説明書には運命の神に仕える第四の使徒、祝福のオルトリンデ様を12分の1スケールで再現しました!

とある。

しらねえ!

 

 

 

『闇バイト【モニター調査】』

一枚のチラシだった。神社の接客サービス向上のため参拝客としてこちらの指示通り行動し調査レポートを提出してください。

注意 途中で辞めることはできません

報酬 100万円 集合場所 東京駅前待ち合わせ タクシーにて移動

就業場所 機密

 

 

今回の厄ネタ。神社ということしかわからない、何故か秘密の就業場所、途中で辞めることができないという注意点、異常に高額なバイト代。

 

…見なかったことにしよう。

 

 

 

『儀式カード『天使の降臨』ガチャバトルカードダス第八弾『神の導き』収録』』

 

今回のハズレその3。ガチャバトルという聞いたことの無いカード名、そしてなんと8弾まで発売されているという。

正直これ一枚あってもどうしようもない。

 

説明にはこのカードを発動した時ガチャゾーンより天使族ユニット一体をランダムで完全武装状態で排出する。このカード発動後はコレクションゾーンに保存する。

 

光り輝く魔法陣に天使が降臨するという絵だ。

 

 

 

 

 

『インターホン』

 

驚くべきことに実体化し落下するのではなく、トイレやエレベーターなどと同じように何と壁に設置されていた。しかしこの部屋に扉は無いのでインターホンを押されても外の誰かは入ることができない。

 

 

『高級ホテル女子トイレ』

女性陣が喜んだ。今一つのトイレを十三人で使っているという、衛生上まあまあ問題があり、そして順番待ちが何回か発生するという状況だった中でこれは嬉しい。

 

俺が調査のため入ろうとすると●男性侵入禁止エリア!という警告があった。中はどうなっているか女性陣のみ知る。

外から見る分にはホテルのように床が大理石だった。トイレットペーパーはたくさんあった。

 

 

 

『ランドセル』

ランドセル。異常に軽いランドセル。機械馬による計測の結果なんと100gほどしか無いらしい。

お前何でもできるな!

 

 

 

『植物成長剤』

緑色の液体が詰まった注射器3本。

機械馬の検査の結果、植物の成長を促進させる成分を多く確認したらしい。農場や野菜の種なんかが出た時に使おう。

 

 

 

う、うーん、何とも反応に困る物品だった。

ゴミ多数、役に立つもの多数、あっても意味のないもの多数。

 

 

 

 

 

次。兵士確定コイン。食糧問題がまだ解決していないなかでこれを引くのはかなりのリスクだ。

だが、兵士なのでレーションとか持ってきてくれるかもしれない

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

C『カワウソ三等兵【偵察兵】』

 

 

現れたのは愛くるしいカワウソだった。身長は40cm程度で、小柄なサイズ。背中には迷彩柄のマントを羽織っており、緑色のヘルメットを被っていて背中には大きなリュックを背負っている。

首には緑色のレンズのついた小型の双眼鏡がかけられている。これを使って偵察するのだろうか。

 

 

 

………いや、兵士じゃないじゃん。動物じゃん。コスプレさせて兵士と言い張るのは無理があるだろう。

 

 

 

 

 

 

「あ、自分カワウソです。階級は三等兵、兵種は偵察兵です」

 

 

 

 

 

しゃべったぁ!

 

 

 

カワウソ三等兵の食事について心配したらリュックの中に缶詰がたくさんあるのでしばらく心配しなくていいと言われた。

………缶詰の缶切りを持っていた!これでログインボーナスでもらえた缶詰を開けることができるぞ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




評価をして山田竜のランキングをあげよう!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

開業

カワウソ三等兵(本名は松本小太郎というらしい)はホムンクルス達の間でマスコットとなった。

 

なで回したり、一緒にブランコで遊んだり、なんと麻雀に命をかけていたホムンクルス達は小太郎に麻雀を教え楽しませるためにわざと負けたのだ。

 

このことに小太郎はまんざらでもなさそうだった。チヤホヤされるのは好きらしい。

 

その様子を観察しているとホムンクルス達が薄らとだが笑顔に、微笑んでいる瞬間が多くあった。

 

ホムンクルスにも可愛いという感情があるのか、それともそれが芽生え始めているのか。

なんにせよホムンクルスは成長を続けている。このまま健康に正しく育って欲しいものだ。

 

 

 

 

………さて。

 

 

 

本日のログインボーナスは『スキル確定コイン』。

 

実体化したのは水色のコインにSと描かれている。

 

今まで出たスキルは浮遊のみ。10秒だけ、1センチだけ浮くことができるという、しかも移動ができないという、意味の無いスキルだ。

 

少しはましな、何か役に立つスキル出ろぉ!

 

 

 

 

C スキルの秘伝書『電気ショック』

 

現れたのは一冊の本だった。表紙には秘伝 電気ショックと書かれている。

 

 

前に引いたスキルは秘伝書では無く、カプセルを回した時点で自動的に俺が習得していた。ホムンクルスなどが仲間に加わったため、このような形で出現したのだろうか。

 

とりあえず近くにいた2号に読ませるか。

 

2号は秘伝書を読み終えると、なんと俺に向かって黄色い玉を打ち出してきた!

 

反逆か⁉と考え避けようとしたが速いぞこの玉、避けることができずに俺の体に当たりチクッとした。

静電気みたいだった。

 

2号はその後他のホムンクルスに向かって打ち出した。遊んでいるらしい。

 

 

 

 

 

え、今のが電気ショック?あぁー、外れだ。これを攻撃には使えない。

 

 

 

 

 

 

 

気を取り直して無料ガチャ!

 

なんだかこのガチャを回すのもわくわくしてきたなあ、ほとんど外れしか出ないのに、回したい、もっと回したいと考えている。

俺はギャンブル依存症になりつつあるのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

UC『時計台』

 

壁際に現れた時計台は、イギリスにありそうな見た目をしていた。

四角い塔の上部に大きな時計が設置されており数字はローマ数字で書かれている。時計盤には、動物や神話的生物などの彫刻が置かれてある。時計台の塔の上部はピラミッドの形で飾られ、金属製の柱や彫刻で装飾されることで美しさと威厳を出している。

 

 

 

機械馬の解析の結果、時間の流れが不確定なこの空間においてアンカーのように鐘の音を鳴らすことで周辺空間の時間設定を強引に日本標準時と同期固定しているらしい。これがUCだということが信じられないそうだ。

 

……意味が分からないが、面倒なのはわかった。

 

今のところ時間を知る方法がシステムウィンドウの表示時刻、Barに設置してある時計、小太郎の腕時計だけだったので、時刻を知るすべの無かったホムンクルス達にとって非常に有り難い代物だ。

 

動かすこともできないので壁際にそのまま放置。

 

 

 

 

 

 

 

 

2号がマッサージ屋を始めた。

 

なんとこの静電気並みの電気を使いホムンクルス達のマッサージを開始したのだ。

 

これが非常に気持ちよく、電気が体の内部にバチバチと走るのが心地よい。

 

そして客の中にバーテンダーが存在しており、金を支払わせることに成功しそのお金で2号に卵料理を食べに行かせた。言葉を話すことができないので感想を聞くことはできなかったが、大げさなジェスチャーで美味しさを伝えてくれた。

お土産に持って帰ってきた目玉焼きは本当においしかった。優しいなこいつ。

 

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

その日喉は潤い、3つの卵を産みだした

バーテンダーを尋問した。お前はいつ、どこで生まれたのだと。

 

バーテンダーは最初に話した時、ガチャによって生み出されたバーテンダーと話していた。あれはどういうことなのか詳しく聞くことにした。

 

彼曰く、俺がガチャを引いた瞬間にガチャにより生成されたそうだ。

仕組みは不明。

 

つまり生まれたての赤ちゃんと変わりないのか。

 

そう聞いたが、バーテンダーはカクテルの作り方やお店の経営方法などの知識、そしてランダム生成された人格と一般常識が与えられているらしい。なのでどちらかといえば、今までの記憶の無い大人という感じのようだ。

 

…ガチャが人体生成を行っているとは。やはりここは現実ではない。流石に人間を一瞬で作り上げる技術があるわけがない。ここはVR空間だ!

 

 

…終了。これ以上何もできない。

 

今日のログインボーナスは果物確定ガチャだった。

 

果物!これはいい。満足に野菜類を摂取できていない。これは健康的に悪い、ここでビタミンとかを摂取しておかないと体を壊してしまう。

それにもし果物の中の種から育てることだってできるかもしれない。

 

 

 

さぁ、まずは無料ガチャ!

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

C『謎の卵』

 

現れたのはパックに入った卵だった。衝撃に弱いものは落下せずに地面に現れるらしい。スーパーに売ってあるパックに白い卵が3つ詰まっている。

 

しかし卵。謎とあるが見かけはニワトリの卵と大きさも色も同じだと思う。だがわざわざ謎と付けている辺りニワトリでは無いのだろう。

 

うーん、風呂でゆで卵を作るべきか、それとも生で食べるか、はたまた食べずに放置するか。

 

こういう時の卵専門家、バーテンダーだ。風呂上がりのバーテンダーに声をかけた。

 

これ、食べた方がいいと思う?

 

卵を渡して確認してもらう。最初は眠たそうにしていたが、卵を見るとその顔を青ざめさせ、大慌てで店の奥に入っていった。

 

慌てて追いかけるとバーテンダーが目を輝かせて卵を調べていた。

 

これを食べるなんてとんでもない、絶対孵化させるから食べたりしないでくれ、もちろん孵化した時はあなたの物だ、だが世話だけは私にさせてくれ。

 

 

…やはり鶏ではなさそうだ。食べるのも怖いので卵はバーテンダーに任せることにした。

 

 

 

 

 

さて果物確定コイン!

 

来い!果物!

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

出てきたのは金色に光輝くカプセルだった。

 

 

えっ金色⁈カプセルを調べるとSRとカプセルに刻まれている。ゴッホの時は存在しなかった!運営め、サイレントアップデートしてやがる!

 

 

うわー、果物でSRは怖い。

 

 

SR『みかんの木』

 

 

出現したのは一本の木だった。

 

 

蛇口、木に蛇口が一つ取り付けられているのである。

こ、これは…静岡や愛媛県にあるあれか?

 

バーテンダーからコップを借りてきた。ご機嫌だった、今なら何でも命令できそうだった。

 

俺は蛇口の下にコップを構え、蛇口を回す。

 

 

案の定、オレンジ色の液体が蛇口より放出される。オレンジジュースだこれ!

 

 

酸っぱい!美味しい!みんなも飲んでみろよ、すげえ美味いぞ!

 

 

 

機械馬による鑑定の結果非常に良質なみかんから搾り取られた、果汁100%ジュースらしい。

魔力エネルギーも豊富らしく機械馬も給油口?にみかんジュースを注いでいた。

お前、みかんジュースで動く機械って。

 

 

 

でも果物か?これ?木と蛇口だよ?

 

 

さらに言えば、これがゴッホのひまわりと同じレアリティって、レア度の分別はどういう基準なんだ?

 

 

 

 

『スペインカタルーニャ州 独立運動激化』

 

 

スペイン・カタルーニャ州の鉱山問題に関して、カタルーニャ州住民のスペイン政府に対する批判が高まっています。カタルーニャ州知事がユーザーとの取引の結果、地球には存在しない金属資源が眠る鉱山を購入しました。このことでカタルーニャ州の経済が改善されることが期待されていましたが、突如として発表されたスペイン政府の鉱山国有化計画によって、この期待が打ち砕かれることになりました。

 

この計画によって、カタルーニャ州は鉱山からの将来的な収益を失うことになり、税収の増加、失業者問題の解決の手段を奪われたカタルーニャ州はこの国有化計画に強く反対しており、これまで以上に独立運動が活発化しています。

 

 







皆さんも気づいているでしょうが、プラネット要素はしばらくありません。
他のユーザーがどんどん惑星を開拓し内政チートをしている中で一人監禁される山田竜さんをお楽しみください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

西暦2800年

何とかして酒場の高級卵料理、オムレツ(一万五千円)を食べたいと考えているとカワウソ三等兵が2号の金を使えばいいのでは?と進言してきた。

 

僕たちはあなたの所有物。命令すれば拒否なんてできませんよ、あなたのやりたいようにすればいいんですと話してきたが断った。

 

俺を何だと思ってるんだ、そんないじめっ子のようなことする訳ないだろ。

 

2号は電気ショックのスキルを利用したマッサージ屋を始めバーテンダーから一日2000円ほど稼ぐことに成功している。

その金を使い酒場の料理を食べることにより一日中一食分の食糧コストを減らせるし、食料消費計画と備蓄に余裕ができた。

 

しかも何と他のホムンクルスや俺のためにお土産を持って帰ってくるのだ。昨日なんてスクランブルエッグを持ち帰ってきてくれた。こんな優しいやつからこれ以上金を搾り取ることなんてできないと話したら、マスターはそういう人なんですね、わかりました、と納得してくれた。

 

わかればよろしい、俺は君たちにも人権があると思っているからね。

そんな真似はしないよ。

 

 

 

ログインボーナスは資源確定コイン。

 

資源。資源にも色々存在する、木や植物などの森林資源、飲むことが可能な淡水などの水資源、ダイヤモンドや鉄、アルミニウムなどの鉱山資源、人、つまり労働力となる人的資源、知識である情報資源など多岐にわたる。

 

資源という括りが広すぎて正直何がでてくるのかわからない。だがそれはいつものこと。ガチャから何が出るかなんて誰も予想がつかない。

つまり、深く考えることなく今まで通り何も考えずにガチャを回せば良いのだ。

 

 

ではでは毎日恒例の無料ガチャ!

 

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

R『簡易鑑定』

 

 

…おぉ⁈

鑑定!これはもしや、ネット小説によくあるあれでは⁈

電気ショックのように秘伝書が出てくる気配もない、これはつまり、浮遊と同じように既に習得している可能性が高い!

 

システムを開きスキル一覧を確認する。

 

スキル『簡易鑑定』

MPを10消費することにより鑑定対象の情報を一部のみ知ることができる。一つの鑑定対象に複数回スキルを使用しても鑑定結果は変わらない。一日一回のみ使用可能。

 

 

来た!やっぱりそうだ!これで今までに出た訳のわからない物を調べることができる。もしかしたら今まで出たガラクタの中に脱出に繋がるものがあるかもしれない!

 

しかし一日一回か。それで調べられる情報には制限があると。

 

少し物足りないが、無いよりマシだ!

 

 

よーし、今日はついてる。このまま資源確定ガチャだ!

 

 

ログインボーナスを実体化する。

出現したのはresourceと刻まれた金色のコインだった。

 

さぁ、来い!

 

 

ガタン

 

 

 

 

 

HR『シンオオサカニウム』

 

実体化したのは金属の塊だった。加工されているのか、四角く直方体に整えられ光が反射して鈍く輝いている。これがインゴットというやつなのだろうか。

 

しかし金属かー、確かに最もメジャーな資源だろう。今の時代で資源と言えば金属やガス、石油だからな。でもなぁ、今これあっても意味ないんだよなぁ。

 

…ニウム。アンモニウム、カリウム、ヘリウム、ニホニウム。

元素の名前の後半にニウムがつくはずだった。

 

しかしシンオオサカニウムなんて聞いたことがない。どんな原子もしくは金属なのだろうか。

 

今の所わかっているのは、新大阪に由来があるということのみ。新大阪出身の博士が発見したのか?それとも研究所が新大阪にあるのか!

新大阪さん、とかいう苗字だったりして。

 

 

詳しくするためにも、鑑定を行う!

スキルの発動方法は簡単!使いたいと思うだけ!

 

 

さぁ、くらえ『鑑定』!

 

システムウィンドウが展開される。やっぱりネット小説と同じだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●西暦2800年頃の新大阪駅下層エリアで発見された金属。オールトの雲より飛来した隕石と新大阪駅要塞前線指揮列車の電算室との接触により誕生したと推測される。

軽く、丈夫で、加工がしやすい点、さらに膨張性と演算機能を備えているため、資源不足に悩まされた当時の大阪府民の間で広く流通した。

 

 

 

 

ああー、もうやだ。鑑定の意味ねぇ、理解不能

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

美術品(ほぼ無価値)

男風呂の自販機をホムンクルス達に外に運ばせ、7号が神剣で真っ二つに切り裂いた。

 

真っ二つ。自販機が力で歪められることはなく、綺麗に真っ二つ。断面がつるつるしている。叩き斬られたという訳でもない。

 

前は自販機は『粉砕』されたという感じだったが、今回の自販機は『両断』されたという感じだ。

 

 

 

 

どうやらこっそりと剣の練習をしていたらしい。あいつ、剣をもって風呂場で何してるのかと思ったら神剣の練習してたのか!

 

 

何だ?何俯いてるんだ?そんな泣きそうな顔するな⁈俺が悪いみたいじゃないか!剣をぎゅっと抱きしめるな!可愛い!

 

いいか?これから怒るのは正当な怒りだ。さっさとガチャも回したいし一言だけだ。

 

 

 

 

滑ったらどうするんだ!危ないだろ!次からは風呂場でコソコソしないでこの白い部屋でやりなさい!

 

 

 

まったく………この中で神剣を一番うまく使えるのはおまえなんだ、没収なんかするはずないだろう。

 

 

 

 

まあいろいろあったが食糧の補給成功。無限蜜柑ジュースを手に入れたとは言え、栄養の偏りや食糧の不足はまだ解決していない。

 

そうそう、蜜柑ジュースと花の蜜を混ぜたミックスジュースが流行り始めた。

これが本当に美味い、酸っぱくて甘くて美味いのだ。

 

ところで麻雀なのだが、カワウソにも負け始めた。

何で⁈

ホムンクルス達に麻雀教育をされたそうだった。

 

ええっ何で⁈あいつら喋らないじゃん!

 

どうやら動物なので感覚がするどく、色々敏感なので伝えたいことがなんとなくわかるらしい。ずるい!

 

 

 

 

 

 

 

 

ログインボーナスはR以上確定ガチャコインであった。

 

 

今の所わかっているレア度の順番は

 

C(コモン)UC(アンコモン)R(レア)HR(ハイレア)SR(スーパーレア)SSR(スペシャルスーパーレア)。基本的にレア度が高ければ高いほど価値がある。

 

ガチャを回してもほとんどCなのでR以上確定というのは結構有り難い。

 

 

しかし油断はできない。何てったってRだからといって優れたものが出るとは限らない。

時にはCやUCの方がSRよりも役に立つということがあるのだ。

 

俺は壁に立てかけられたゴッホのひまわりを見つめる。いつか役に立つ日が来るのだろうか。

 

 

 

では無料ガチャ!

 

 

 

C『オスカー像』

 

現れたのは銅か何かでできた金色のフィギュア。全裸の男性が剣を握っていると思われる。

 

オスカー像、確かアカデミー賞を受賞した際に貰える代物だ。

コレクターなどに売れば結構な値段で売れそうだ………

 

とでも考えると思ったか!

 

俺は知っている。転売防止のため売りに出されたオスカー像は全て1ドルでアカデミーに譲り渡さなければならないというルールがあることを。

 

 

 

どうすることもできないのでバーテンダーの酒場に飾っておいた。

 

 

 

ではR以上確定ガチャ!

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

R 一万円札

 

ひらひらと舞い降りてきたのは一万円札。

これはこれは福沢諭吉さん!お久しぶりです!あなたの学問のすゝめはいつか読みたいと思ってました!

 

 

バーテンダー、両替してくれるかな?百円玉100枚と交換してくれないかな?

もし両替してくれたら、ガチャ回し放題だ!

 

 

 

そう決まればバーテンダーが起きるのを待つか!

 

あぁーお金ってすごいなぁ、見てて飽きない。

 

 

 

んん⁈

…なんか…色々おかしくないか?具体的には言えないけど、何かがおかしい。カラフルすぎるというか、こんなごちゃごちゃしてたっけ?

 

 

そもそもただの一万円がRっておかしくないか?

 

謎の違和感、レア度。

 

そう、こんな疑問を解決するために簡易鑑定が存在するのだ!

 

 

 

さぁ、福沢諭吉よ、その秘密を暴いてやる!

 

 

 

 

 

 

●一流の偽札職人【編集済】が作成した一万円札の偽札。完璧な偽造紙幣を作り上げることに成功したが、『俺ならもっと完璧な一万円札を作ることができる』と考え始め、自身の考案した偽札防止技術をこれでもかと導入した結果生み出された芸術品。国立印刷局の職員が見たら涙を流すほどに完成された未来の一万円札。偽造は現在の技術では不可能。

しかし、導入しすぎたせいで本物の一万円札とは似ても似つかず、素人でも判別できる。

 

 

…ゴミじゃん!

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ギリシャ神(日本在住)(鶏)

 

シンオオサカニウムだが、俺と機械馬の調査の結果、なんと驚くべきことにこの金属はCPUとして機能することが判明したのだ。

使い方は簡単、使用するだけ。

 

…いや本当に。機械馬曰く、ただ普通に金属として使うだけで自動的にCPUとして機能するらしい。

しかも電力も必要なく、熱も発生しない。

 

このためただ放置しておくのも無駄なので機械馬の内部格納スペースに置いておくことにした。性能が上昇したと教えてくれた。ただそんな難しい用語や数値を言われても俺には理解できない。悪いな。

だからそんな興奮せず落ち着いてくれ。

 

 

しかしそれでもなお、いったい何故この金属がCPU機能を備えているのかその仕組みも原理も、鑑定結果にあったインフレーション性が何なのか一切不明。

 

 

 

機械馬の上昇した性能で長時間解析してもなお、不明。新大阪駅要塞も、西暦2800年も不明。

 

 

現在も解析を続けている。

 

 

 

 

 

 

…さて。本日システムメッセージが2件届いていた。そろそろわかる。そのうち一つはログインボーナス。ならもう一つはろくでもないメッセージなんだろうなぁ。

 

 

 

●本日限定!ゴッドフェス開催中!この貴重な機会にぜひ神様を入手しよう!

 

 

 

 

 

はぁ。もう何も考えたくない。

 

 

 

 

 

ログインボーナスはただのガチャコインだった。

 

正直ほっとした。もしここでSSR確定コインなんかがログインボーナスとして出たら、俺はこのあまりにも胡散臭い、理由不明の拒否感があるガチャを回さなければならなかったのだ。

 

そう考えればまあ、幸運かな?

 

 

…あぁ~回したくない。前回のゴブリンフェスでは見事に全景品ゴブリン関連アイテムだった。

 

つまり今日、回す結果排出される景品がすべて神様関連アイテムの可能性が高い。

 

 

というかゴッドフェスって。なにが出てくるんだ?怖いよ。

 

 

 

…じゃあガチャを回そう。    はぁ。回したくない。でも回さないと。毎日休むことなく引いて、視聴者の興味を引き続けないと。

 

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

R 生贄の棺

 

 

 

 

現れたのは白色の棺。清潔で清浄な印象を与え、聖なる雰囲気を纏っている。その雰囲気に合った、簡単だが丁寧な装飾が施されていた。

しかし聖なる雰囲気は畏怖する雰囲気も持つ。棺は、見るものを畏怖させ委縮させる。

 

 

 

 

う、うわーーーーーっ、なんでこういう時にRが出るんだよ!こういう時はCでいいんだよ!

 

 

しかも生贄の棺って。どう考えても厄ネタじゃねえか!

 

 

…中身、何が入っているんだ?

 

俺は後ろを見る。ガチャから何がでるのか俺とガチャを観察していたホムンクルスたちと目が合い、すぐにそらされた。

 

あっ、お前ら逃げるな!待て!頼むから待って!お願い、怖いの、一緒に見て!

 

 

12人全員が俺の声に振り向き、こちらに来る。カワウソは棺を見た瞬間に逃げたようだ。

 

 

…嫌だったら別に見なくてもいいぞ?一人で見るのが嫌だっていうだけで、絶対見たくないというわけじゃない。無理やり見せるのも気分が悪いしな。

 

 

そう言うが誰も逃げなかった。ほんと、優しいな。このままその良い心のまま育ってくれ。

 

 

 

 

 

…特に何もなかった。しいて言えば、棺の中の底に漢字で『献上』と書かれていた。

 

誰に献上するのだろう。考えたくもない。

 

とりあえずガチャの近くに置いているのも邪魔なので、部屋の隅っこに放置。

 

 

 

 

 

一回目であれなんだ。正直回したくないが回さなければ。

 

さあ、来るんだ低レア!

 

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

C ヘルメス神のお地蔵様

 

出てきたのは鶏型のお地蔵様だった。

 

…これお地蔵様か?石でできた羽にくちばしにトサカ。デフォルメされた2頭身の小さい鶏型の像だった。

 

しかもヘルメス?ギリシャ神話、オリュンポス12神の?それがなんでお地蔵様になってるんだ?詳しくは知らないがこういうのは彫像とかじゃないのか?

 

 

 

よし!今日はこれを鑑定しよう。そして棺のことは忘れよう!

 

 

 

さあ鑑定!

 

 

 

 

●日本の【編集済】に設置されていた、ギリシャ神話の神ヘルメスを祀る鶏型のお地蔵様、そのコピー。地元住民には謎の像として親しまれおり、定期的に清掃されている。小学生や高齢者からお供え物を多く供えられていた。

微弱だがヘルメス神の分霊が宿り、感謝として幸運を分け与えている。

 

 

 

 

…なんで日本でヘルメス神が鶏姿のお地蔵様として祀られているんだ!

 

 

というかゴッドフェスって、ガチの神を景品としてだすの?

 

不敬というべきか、なんというか…

とにかく、SSRがでなくてよかったと心から思う俺であった。

 

 

 

 

 

 




感想はすごい励みになります。



何と日間ランキング総合6位
オリジナル3位です!

感謝感謝


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

カードコレクター竜

今日のログインボーナスは店確定コインだった。

 

店、今の所店というのはBar eggのみ。

俺は店の仕組みなどを聞くため、またもやバーテンダーを尋問した。

 

 

 

俺はガチャで『Bar egg』を引いた。だがお前を引いた覚えはない。これはどういうことだ。

 

ガチャで排出される店には原則2パターン存在しています。無人の店が排出されるケースと、排出された店に対して店員が付属しているケースが存在します。Bar eggは後者です。

 

店員がいるといないので違いはあるのか?

 

店員がいない場合はその店を自由に使えます。店員がいる場合は提供されるサービス、私の場合は酒と卵料理ですね、それに対価が必要です。しかし店員がいると商品の補充が運営から可能です。

 

 

…お前は運営を知っているのか?

 

いえ。仕入れはシステムウィンドウを通じて行われます。運営のことは何も知りません。

 

 

銭湯はどうなる?あそこは店員がいないにも関わらず、お湯が供給され続けているぞ?

 

あれは店ではなく、厳密には拠点という種類です。拠点の主な機能である入浴機能は自動で動きます。そのおまけである自販機は補充はされないそうです。

 

 

…なるほど。経営はどうなっている?

 

 

逆に聞きますが、黒字だと思います?赤字ですよ。まあ、運営が赤字を補填しているので倒産の心配はありませんが。

 

 

 

 

 

さてさて。

無料ガチャです。さっさと回していこう!

俺の経験では、この無料ガチャから結構いいものが当たる。下手なログインボーナスよりもよっぽど信頼できる。さあ、回せ!

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

C『ユニットカード『星読みの聖女 ライラ』ガチャバトルカードダス第2弾『ダンジョンアタック収録』』

 

 

宇宙または天体観測が可能な気候の場合、毎ターン一回『天体観測』が可能。

『天体観測』使用時、予言を行い、その後デッキの上から5枚カードをめくり自分にだけみせる。その後カードをもとに戻す。

 

Attack 2000

 

 

 

ぐぉぉぉぉぉ、ガチャバトルカードダス2枚目⁈

 

何で⁈今の今まで出た物は多種多様、予測不能!

なのになんでカードというジャンル、しかも同じカードゲームのカードだなんて。

 

 

ああぁー、何もわかんねえ、ガチャバトルカードダスが何弾まで発売しているのかも、デッキを何枚で構成すればいいのかも、勝利条件がなんなのかもわからない。

 

いったいこのカードは強いのか?謎である。

 

 

 

 

 

気を取り直して。店確定コインである。実体化したのは黄色のコイン。shopという文字が描かれている。

店ということは商品がいっぱいあるはずだ。店員いないでくれ!いなければ店のもの全部強奪してやる!

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

UC『高級家具屋 木川』

 

 

出現したのは、大きな家具屋だった。

ベッドに箪笥、机、いす。すべて木製の家具が並べられている。

 

 

高級家具店木川は俺でも知っている、木製家具を専門に扱う家具屋だ。一つ一つ職人が手作りしたものを馬鹿みたいに高い値段で売っている、高級店。

 

俺は並べられている家具を無視してレジへ向け走った。

 

 

店員がいない!レジには誰もいなかった!お金もなかった!クソッ

 

 

つまりこの家具全部俺の物!やったぜ。

 

 

おーい、ホムンクルス!ベッドがたくさんあるぞ!

これでホムンクルスとカワウソのペルシア絨毯で寝る生活ともおさらばだな。

 

 

 

…あっ、バーテンダーが家具盗んでる。

 

 

 

 

 

 

 

 

さてさて。

今日の分の鑑定がまだ済んでいない。カードに鑑定なんて使う必要ないし、家具屋だって鑑定しなくてもいい。つーかして何がわかるんだ?資本金とか役員名簿か?

 

 

 

…実は鑑定を何に使うかはもう決めている。そう、生贄の棺だ。

 

あれが何なのかずっと気になっていた。そして知りたいと思ってしまった。というか、知るべきだとなぜか考えてしまう。

 

 

 

不思議だ。あれだけ嫌だ嫌だ考えていたのに、今は棺が気になる。

知的好奇心というものは、放っておくと膨らんでいくものなんだなぁ。

 

 

 

それでは、鑑定!

 

 

 

 

●生贄の棺

 

棺の内部に貢物(肉や血、魂であれば尚可)を入れて棺を閉じ、両手を合わせ献上と唱えると(宗教系ユニットであればボーナス)内部の物質が【編集済】になり【編集済】に捧げられる。

 

 

 

…よし、大体予想通り。ゴッドフェスで排出されたので神関連なのはわかっていた。

一番知りたかった、何に捧げられるのかはわからなかったが、使い方がわかっただけでも一歩前進だ。

 

 

あとは推測だ。ゲーム的に考えてみよう。

この空間はVR空間。それはほぼ間違いない。システムウィンドウ、人体生成、物質の実体化。神剣のバフ。

 

VRということならすべて納得ができる。

そしてこの監禁がログインボーナスなど、ゲームをある程度モデルとしている。

ゲームで神にささげた結果何がおこる?神様から神器やアイテムをもらえる!なら、いっぱい捧げて神様に助けてもらおう!

 

 

そうと決まれば話は早い。機械馬の給油口にミカンジュースを入れ、それを棺に排出させる。これを十回ほど繰り返すと棺はミカンジュースでいっぱいになった。

 

そしてあとは、献上というだけ!棺をとじ、「献上!」

 

棺が一瞬揺れ、静かになる。棺の中は何もなくなっていた。

 

 

 

おーい、神様。蜜柑ジュースはうまいかぁ〜。

 

 

 

 

 

 

 

『ユーザー国の資源輸入により資源産出国が混乱」

 

 

資源産出国がユーザーからの資源供給によって危機に陥っているという報道が相次いでいます。特に石油、ガス、鉱石の輸入が予想され、オーストラリア、アフリカ、ロシア、中東などの資源産出国の経済に混乱が生じているとのことです。

 

現在ユーザーには数多くの国家より資源の注文が殺到しておりしかし、ユーザーは鉱石資源などに変換可能なメダルをほとんど入手できていないため、資源の供給が追いつかない状況が続いています。

このため、地球に対して輸出できる量も限られており、現在は大きな影響は出ておりません。

 

しかしこれはまだゲームが序盤なためであり、ゲームが進めばより大規模な輸出が予想されます。

 

 

この件に対して街を行く人は、『電気代やガス代が下がれば何でもいい。』との声があり、

ユーザーからの資源輸出により価格や生活の安定化につながることが期待されます。

 

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ファンタジーってたくさん種類がある。

俺は朝起きてラジオ体操をしてみかんジュースを飲んでいて思った。

 

これ、枯れたりしない?というか、みかんジュースなくなったりしない?

 

蛇口がついてるので水道水みたいに考えてたが、急に心配になってきた。

 

やべえ、昨日棺がいっぱいになるまで何回もみかんジュース捧げちゃったよ。

 

俺は慌ててみかんの木に対して鑑定を行った。

 

 

●みかんの木

 

蛇口が取り付けられたみかんの木。蛇口を回すことで飲用可能なみかんジュースが無限に出水される。

みかんの木が枯れることはなく、その代わりみかんの実がなることはない。みかんの種類は【編集済】。

 

 

無限に採取可能!よかったあ、水道水みたいに使ってたけど、後で請求が来たりそのうち枯れるんじゃないかと思ってたんだ。これで一安心。今日もみかんジュースが美味い!

 

おーい、機械馬。お前が一番効率よく運べるんだ、暇な時があれば運んでくれ。

暇な時にな。無理すんなよ。

 

 

 

 

あっおまえら、ベッドやソファで蜜柑ジュースとか飲むなよ?洗剤とかないんだから、こぼしたら汚れ落とせないんだから。

 

 

 

 

 

 

 

ログインボーナスはファンタジー確定コインだった。

もう何が来ても驚かんぞ。

 

 

 

それでは、

 

無料ガチャ!

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

C『武当派 武功 不壊門』

 

実体化したのは古ぼけた本、しかし大切に保管されていたのか汚れはない。本を開くと中から古い匂いが漂っている。紙の上には筆跡の美しい漢字が書かれていた。漢字のほかには人間が描かれている。

練習のポーズを詳細に説明したものだろう。俺はその書物のページをめくりながら、思った。

 

 

 

読めねえ!

 

漢字なら日本語にも使われているので部分的にならわかると思ったがまったくわからない!

というか、初めて見る漢字が多すぎる。この本もかなり古いようだし、そもそも現代の中国人も読めないんじゃないか?

 

ここからは推測だ。

 

武当派。漫画アプリなんかで見たことがある。中華風世界を舞台にする武侠漫画というジャンルには、武術の名門として武当派が登場する。有名なのは崋山派や少林寺だろう。この武当派に類するものは現実にもあるらしい。

つまりこの本は武当派に関係があるということ。

 

武功。武侠漫画においては、内力という、いわゆる気の力を使って行う武術とかのこと。

 

つまり結論は一つ。

 

武当派の武術書、つまりスキルの秘伝書と同じような類のものである。

 

しかしスキル系のアイテムは皆スキルと今のところアイテム名に存在している。サンプルが浮遊と電気ショックだけなので確定ではないが。

 

俺は思うに、スキルとはまた別の種類なのでは?単純に体の動かし方だとか、空手や剣道にあるような流派の型だとか、訓練方法を記しただけなのでは?

 

しかし読めなければ始まらない。今日の分の鑑定も使ってしまったし機械馬に調べさせることにした。漢字に関するデータが少ないため時間がかかるといわれたが大丈夫、時間ならいくらでもある。

…あと、未だにシンオオサカ二ウムの分析は終わっていない。

 

 

 

 

 

さてさて。

 

 

 

 

 

 

今日のログインボーナスはファンタジー確定コイン。

実体化されたのは薄緑色のコイン。Fと描かれている。

今更だが、このコインのデザインはどうにかならんのか?デザインが安易すぎる。デザイナー雇えよ。

 

 

 

 

 

ガタン

 

 

 

 

 

 

UC『奴隷剣闘士ルーカス』

 

浅黒い肌を持つ男が立っていた。生まれつきの色か、それとも長い間日差しにさらされていたためか、黒く日焼けしていた。

その体は、筋肉質で体格が良い。

彼は使い込まれた剣を手にし鎧を身につけていた。その鎧は傷ついており、傷だらけの体が露わになっていた。

 

 

 

 

「 あんたが俺を助けてくれたのか⁈感謝するぜ!」

 

 

 

 

ファンタジーってダークファンタジーかよ!



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

うわあああああ、いやだぁ!

奴隷剣闘士のルーカスは何故か俺に対して感謝しており、これからマスターとして忠誠を捧げると言い出した。

 

なぜ?なぜおまえは初対面の俺に対してそんな感謝しているんだ?はっきりいって全く心当たりがない。

 

ルーカスは意気揚々と語ってくれた。

 

自分が少数民族『イーラ』出身であり、森の中で一族と共に暮らしていたこと。

奴隷狩りにあったこと。一族を守るため殿として戦い、数多くの奴隷商人とその手勢を打ち取るも奮戦むなしく囚われてしまったこと。

 

その後闘技場に売られ、奴隷剣闘士として休みなく戦い続ける日々。

まともな食事もなく、武器だって碌な手入れのされていないガラクタ。

 

そして限界が訪れた。明日の試合で俺は死ぬだろう。

 

 

 

そんな中、あんたが俺を召喚して助けてくれたってわけだ!

 

 

 

召喚?

 

 

おう、あの魔道具で俺を召喚したんだろ?にしても変な形だなあれ。

 

 

 

 

いろいろ聞いたが、こいつはガチャについて、何も知らなった。

俺がなぜ監禁されているのかも、ガチャガチャの存在そのものも、運営のことも何も知らない。

 

今までガチャで排出されたものは、大きく分けて3パターン存在する。

 

バーテンダーのように、俺がガチャを回した瞬間に1から生成されるタイプ。

ヘルメスのお地蔵様のように、モデルとなったものをコピーして生成するタイプ。

ルーカスのように、どこからか召喚されて排出されるタイプ。

 

 

 

 

ルーカスは自分の人生について簡単にだが、語ってくれた。

これは、そういう設定のNPCなのだろうか。

 

 

 

 

 

 

今日のログインボーナスは、乗り物確定ガチャ。

 

 

 

いや、今乗り物もらってもなぁ。

乗り物をもらっても燃料なんてないし、そもそもこの部屋から出られない以上、不要だ。

だが回さないという選択肢は存在しない。何がでるのかわからないガチャ、もしかしたら思わぬものが脱出のきっかけとなるかもしれないからだ。

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

UC『ゲパルト自走対空砲』

 

大きな衝撃とともに現れたのは戦車だった。

大きな戦車だ。キャタピラの中には多くの車輪があり、その多さがこの戦車の重量を示している。

ゲパルトの車体の上には左右一門ずつ、大きな対空砲が設置してある。これなら射程内に入ればどんな航空機でも撃ち落とせるだろう。

車体後部には大きなアンテナが設置されている。ゲームで見た通りならこれがくるくる回転するのだろうか。

 

幸いにして壁際で実体化したのでそのまま放置。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ではでは無料ガチャ!

 

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

は?

 

排出されたのは金色のカプセル、SSRと刻まれている。

まじで⁈来た!

 

 

 

 

 

SSR『首無し』

 

 

 

 

 

 

 

カプセルを開けた瞬間、部屋の電気が消え真っ暗になった。

おかしい。この部屋の電気は夜になったら薄暗くなるだけで真っ暗になったことは一度もない。

 

 

光が戻る。

 

 

 

 

それは目の前にいた。

黒いスーツに、薄い黄色のコートを着た男。

顔がない。

 

いや、顔だけではない。首や胸。本来あるべき場所に、あるべき肉体がない。

 

 

他の、皮膚と言える場所はどうだろうか。いや駄目だ、手袋やブーツを付けているから皮膚がみえない。

 

 

恐怖した。

理解不能の存在。本能的な恐怖を訴えてくる。

 

 

 

 

さがれマスター!

 

 

 

 

ルーカスが俺の前に出て剣を向ける。

 

 

駆けつけてきたホムンクルスやカワウソ、バーテンダーに機械馬が首無しを包囲する。

 

 

 

そ、そうだ。何が理解不能だ!俺には鑑定があるじゃないか。

 

 

 

鑑定!

 

 

 

●首なし

 

発見場所 ロンドン  時代 1970年11月20日

 

起源不明。正午12時のロンドン市街地にて現地住民により目視にて初観測。

首無しを中心に領域を展開。領域内を強制的に夜にし、魔力を使わない光を消失、領域内に閉じ込める能力を確認。30分後スコットランドヤード偵察魔術部隊が結界侵入後捕縛。抵抗はほとんどなし。

 

空間に閉じ込められた民間人は突如として魔術と芸術に対して高い興味を持ち始めた。精神洗浄や記憶消去などによる治療も効かず、彼等は数多くの魔術作品を民間に流通させ多くの事件を発生させた。

その後首無しは【編集済】により日本に引き渡された。

 

 

 

…まずい、いろいろまずい。

鑑定してもこいつがいったい何なのか全くわからなかった。

わかったのは、暗闇に閉じ込めて周囲の人間の精神に干渉する。そして俺たちは暗闇の中に先ほどまでいた。

 

 

 

 

「…おや。警戒されているのですね」

 

首無しは語りかけてくる、口がないにも関わらず。

 

 

「お初にお目にかかります。私の名は首無し。スコットランドヤードが私に対して与えた名です。名乗る名がこれしかありませんので。申し訳ない。」

 

 

紳士的な、礼儀正しい口調で頭を下げる。

 

 

 

「まずいぞ。こいつ、化け物だ。」

 

 

ルーカスだけでなく、皆が顔を強張らせる。

 

 

 

「落ち着いてください、勇敢なる戦士たちよ。私は戦闘が得意ではありません。たった数人の警官相手に負ける程度です」

 

 

 

確かに戦闘能力はないだろう、だが人を狂わせることはできるはずだ。

 

 

 

 

「ああ、知っているのですね。千里眼などをお持ちで?」

 

 

そんなところだ。

 

 

 

「何か誤解があるようですが、私に敵意はありません。むしろ感謝しているのですよ」

 

 

感謝だと?

 

 

 

「はい、我々は今、非常に苦しい戦況の中戦っていました。あのままでは全滅していました。そんな中、あなたに召喚して頂いたおかげで私は助かった。」

 

「ええ、もしよろしければ、私の仲間も召喚していただければ幸いです。」

 

 

 

 

 

 

「…なぜまだ警戒しているのですか?そもそも、私たち召喚されたものの所有権はあなたにあります。嘘をつくことも危害を加えることも命令に逆らうこともできません」

 

 

「…そうなのか、皆」

 

 

皆が頷く。

 

じゃあなんで俺たちを一瞬だが暗闇に閉じ込めた?

 

 

「ああ、それは私の召喚時に発生する特殊演出です。SSRユニットですので、特別扱いなのでしょう」

 

 

一応、命じておく。俺たちに対して、おまえがガチャから排出される前の状態にもどせ。

 

 

「私に恐怖するのは構いません。このような見た目ですから。しかし、感謝をしているということだけはわかっていただきたい」

 

 

再び、頭を下げてくる。

 

 

 

 

まあ、お前に敵意がないことはわかったよ。

 

 

その瞬間、システムウィンドウがいくつか展開した。

 

 

 

『業績が達成されました!』

 

『初のSSRユニットを獲得』

 

『報酬として排出されたユニットの関連ユニット限定5連ガチャコインをプレゼント!』

 

 

 

 

 

は?

 

 

 

 

『日本国法務省特別囚人管理部6課確定5連ガチャコインがプレゼントボックスに追加されました』

 

 

 

 

「改めて自己紹介を。私は日本国法務省特別囚人管理部6課所属、首無しです。以後お見知りおきを」

 

 

 

つまり、この厄ネタと同じような奴らが5人も出てくるってこと?

 

 

 

 

 

 

うわあああああああ、いやだあああああ、回したくない!

 

 

 

 

 

 

 




私は就活中の大学生なのですが、この小説のことを面接で話しました。
恥ずかしかったです


毎日投稿してお気に入り登録者3500人以上で日間ランキングにも載るって、かなり強いアピールだと僕は思います!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

大集合!日本国法務省特別囚人管理部6課!

こことは違う、世界のお話。

 

その世界は人に害をなす化け物や物であふれており、政府は人々を守るためそれらを秘密裏に隔離、管理していました。

 

ですが時代が進めば進むほど、化け物たちは増えていきます。

 

どこかに大規模な管理施設を造ろう、いい場所はないかなぁ。

 

 

そうだ、ちょうどいい場所があるじゃないか。

 

日本、島国だしもし何かあっても日本だけで被害は終わる。最悪の場合核を打ち込めば万事解決。欧米からも遠いし、敗戦国の日本は何も言えない。

 

そして大規模な地下管理施設、『大監獄』が作られました。次から次へと日本に押し付けられる化け物たち。

 

馬鹿みたいに広い大監獄、金も人も膨大なコストがかかる大監獄。はっきり言って限界です。

 

そんな中、一つの案が提出、認可されました。

 

比較的まともな、人間に友好的な奴らを外に出し、働かせようと。

 

 

 

「そうして生まれたのが日本国法務省特別囚人管理部6課。それが私の所属です」

 

 

 

 

「うわああああああああああ、回したくない!」

 

 

 

「安心してください、6課の人員は比較的意思疎通が可能な人員で構成されています」

 

 

「比較的ってなんだよ!世界中の厄ネタが集まるんだろぉ!」

 

 

「まあまあ」

 

 

 

クソッ、あああああ、回したくない、でも回さないと!

今多くの視聴者が俺を見ているはずだ、ここで回さないと失望されてしまう!

 

 

 

くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ。

 

 

 

 

ガタンッ

出てきたカプセルはSRが一つ。普通のカプセルが4つ。

よ、よかったぁ、全部がSSRという最悪の事態は避けられた。

 

まず開けるのはSR!

 

 

 

 

 

SR『アナスタシア』

 

現れたのは一人の少女だった。白い髪、白いドレス。ドレスは非常に豪華な装飾が施されており、丁寧な刺繍が縫られている。胸元には大きな宝石のペンダントが掛けられている。

 

 

 

「あら、ここが私の新たなる屋敷、そしてあなたが召使ね?我が名はアナスタシア。よろしくね?」

 

 

「彼女の名はアナスタシア。ロシア革命後に出現し発見当初すでにいくつかの町との連絡が途絶し、軍隊が鎮圧に向かうも敗北。最新の航空機による爆撃とロシア現地魔術部隊により鎮圧。以後ソ連内で確保されていたがソ連崩壊間近に日本へと引き渡されました。6課の氷系能力者最強です」

 

 

 

「ふふふ、何か私に献上すべきものはないのかしら。これでも元皇族、少しくらい我儘言っても罰は当たらないはずよね?」

 

 

「は、ははぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

俺は自然とひれ伏した。

あ、あれ、俺なんでひれ伏してるんだ?

 

 

 

「ああ、彼女には平民に対してある程度の強制力をもっています。いたずら好きなので気をつけてくださいね」

 

 

 

みかんジュースを貢いだ。喜んでた。

 

 

 

 

 

 

 

HR『バルムンク』

 

「おいおいおいおいおいおい⁈なんじゃこりゃあ!ガチャガチャから魔剣が出るなんて世も末だなあ!」

 

ほんとだよ。なんでガチャから剣が出るんだよ。

 

 

 

 

 

「えっ、剣じゃん」

 

「その通り。彼の名はバルムンク。ジークフリートという男が使っていた魔剣なのですが、彼の妻の死亡後変質。当時の騎士団を壊滅においやった魔剣です。戦闘狂なのでお気を付けて」

 

 

「いや、剣じゃん」

 

「はい、6課は人外も多く所属しています」

 

 

 

「ぎゃはははっははははっははは!この世界でも俺の名を刻んでやるぜぇ!だれがこの中で一番つよいんだぁ!」

 

 

「おーい、7号。ちょっと来てくれ」

 

 

 

「へえ、お前が最強なのか…あっ、その神剣を近づけるな、やめろ!」

 

魔剣は逃げて行った。7号は追いかけた。その後魔剣の悲鳴が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

UC『少年A』

 

 

「あ、あんたはまともなのか?」

 

「まあ、普通かな」

 

 

「やったぁ、久しぶりにただの人間に会えた!これから常識人同士仲よくしようぜ!」

 

 

「すみませんね。彼は少年A、2018年、起源不明の発火能力を確認、彼が通う学校、市庁舎、県庁舎、教育委員会の関連人物の自宅、そしてある国会議員の事務所など計69の建造物の放火容疑が懸けられていました。しかしその後、彼の能力の有用性から6課に引き渡されました」

 

 

「放火、、、、常識人じゃないじゃん!」

 

 

「その時の彼は全能感にあふれていたのです。調子に乗っていたのです。普段の彼はごく普通の日本人ですよ。高等教育を途中まで終えていますし。6課の中でも数少ない、まともな人間です」

 

 

放火しても自分を常識人だと思える奴が常識人って。

 

 

 

 

C『軍人幽霊』

 

現れたのは、泥や煤で汚れた軍服を着た男だった。軍服といっても士官が着るような服ではなく、平の兵士が着るような服だ。背中に銃を背負っている。年齢は30代、男前だ。

 

 

「彼は第二次世界大戦末期のベルリン攻防戦の最中に発見されました。ドイツ軍内で不死身の兵士がいると話題となり、連合国内では銃弾が効かない兵士がいると噂となり、アメリカ軍魔術部隊が交戦、確保されました。

検査の結果霊体となっていることが判明し、元の肉体、まあ死体ですね。それも発見されました。

 

いやあ、運が良いですね。彼は6課の中でも常識人です。さらに言えば物理攻撃の完全無効化、しかし彼からの攻撃は霊体であるにも関わらず瞬間的に実体化して物理攻撃をしてくるのですよ。魔法的攻撃手段を持たない敵は彼がいるだけで詰みですね。それにしてもなぜ彼がCなのでしょうか」

 

 

軍人幽霊がこちらに歩いてくる。その顔は涙で濡れていた。

 

 

「アリガトウ、ナカマヲスクッテクレテ」

 

 

 

まあ、感謝されて悪い気はしない。

 

 

 

 

 

 

C『カメラ人間』

 

 

現れたのは異形の男だった。黒のスーツに白いシャツを着こなした男。

 

しかし男の頭部には、あるべきものがなく、あるはずのないものがあった。カメラである。大きなカメラがあったのだ。

 

 

 

ええ、こいつって、ええっ⁈

 

 

「彼の名はカメラ人間。2010年代後半より日本全国の映画館にて出没を確認されました。当初はいたずらかと思われていたのですが、一向につかまらない。映画上映終了後にはいつのまにか姿を消しているのですから。

しかし映画上映中に地元の不良に絡まれ、カツアゲをされてしまいます。通報を受けた警官によって不良は逮捕、カメラ男は警察を通じて法務省に引き渡されました。

起源はとある映画盗撮防止CMの拡散による都市伝説、噂が実体化したものだと推測されています」

 

 

映画の上映前に出てくる、あいつじゃないか!

 

 

 

 

そいつは俺たちを見ると、急によくわからないダンスを始めた。無駄にキレがいい。

 

 

 

 

 

「あれは何をしているんだ?」

 

「見てご覧の通り彼には口がないので話すことができません」

 

 

お前がいうな。

 

 

「ですので彼は手話やパントマイムを使って私たちに話しかけてきます」

 

 

「へぇ、何て言ってるんだ?」

 

 

「わかりません」

 

 

は?

 

 

 

「申し訳ありませんが私は手話を使うことができないのですよ」

 

 

「じゃあ、結局あいつは何を伝えたいんだ?」

 

 

「さあ?そもそも、彼は基本的にいつも踊っています。伝えたいことなんて無いんじゃないですか?」

 

 

 

 

 

 

 

みんなで麻雀と人生ゲームをやった。俺は麻雀。

俺の相手はホムンクルス7号、カワウソ、少年Aだった。

 

ふっふっふ。7号には勝てないが、カワウソは俺と同レベル、少年Aは今日麻雀を始める初心者。役一覧表を見ながら麻雀をしている。

 

そして俺はリーチ!高得点の役だ!これは勝った!

 

 

ツモ!少年Aが叫ぶ。はあ?

 

出してきたのは、東が3つ揃っただけの役。

 

お、おまえぇ!そんな低得点の役であがるな馬鹿がぁ!

 

 

 

この回、俺は一回もあがることなく負けた。

 

 

 

 

 




日本国法務省特別囚人管理部6課

首無し  暗闇に閉じ込め視界を奪う。そして芸術と魔術に対し強い興味を抱かせその才能を目覚めさせる。

アナスタシア 6課氷系能力者最強。平民に対して強制力あり。

バルムンク 魔剣。勝手に浮かんで動き出す。破壊不能。敵陣に送り込めば敵は逃げるしか選択肢はなくなる

少年A   広範囲発火能力。敵がどこにいるか知ることができる索敵担当

軍人幽霊  物理攻撃無効。魔法的攻撃手段を持っていない場合敵は詰み。

カメラ人間 弱い。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

肉っぽい野菜

家具屋がかなり広いおかげで人数が増えたが窮屈だとは思わなかった。

 

家具屋に設置してある家具を移動させ、男女でスペースを分けた。カーテンや棚を動かして簡単にだが個室もできた。

 

プライベート空間が確保できたというのは非常にいい。のんびりと誰の目も気にせずゆっくりくつろげる。

 

 

 

 

しかし。ガチャから出た厄ネタ6人衆の中で飲食が必要そうなのはアナスタシアと少年A。

 

銭湯の自販機から強奪した食品ももうすぐ尽きそうだ。残っているのはログインボーナスでもらった缶詰とカワウソが持ってきた缶詰。バーテンダーがお持ち帰りのお土産をサービスしてくれてるおかげで食糧の節約ができているがここ数日で3人も飲食が必要な人員が増えた。

 

 

正直まずい。食糧問題が解決していないにも関わらず人ばかりが増える。

 

 

 

 

期待を込めて、ログインボーナスを確認する。

 

本日の無料コインは『C確定コイン』だった。

 

…いや、ええ?C確定コインって。もう少しマシなログインボーナスを寄越せよ。

 

 

ため息をつきながらガチャへ向かう。

 

 

そこで俺は衝撃的な光景を目にした。

 

 

 

首無しがオレンジジュースでガチャを中心に魔法陣を描いていた。

よく見るとガチャにも幾何学的な模様が描かれている。

 

 

 

お、おまえ!俺が風呂入っている間何してんだよ!

 

 

 

「このみかんジュースは質が良い。高純度の神秘が込められていますね。」

 

 

「何をしているんだ?こんなみかんジュースをこぼして。掃除はお前がしろよ。」

 

 

「後の話は後程。私がしているのは、なに、簡単なことです。少々ガチャに指向性を持たせているのですよ。」

 

 

「指向性だって?」

 

 

「はい、欲しいものが少々出やすくなる、そんなおまじないです。」

 

 

 

「おおおお、流石はSSRユニット!ただの怪しくてやばい奴だと思ってたぞ!使えるじゃないか!」

 

 

 

「…あなたは気づいていないのですね。自分の力に。」

 

 

首無しがヌッと俺によって来る、何だ今のぬるぬるした、無駄のない動きは。

 

 

 

「あなたには力がある。さあ、その力を意識して、具体的に、強く望むのです。ガチャを回すのです。」

 

 

 

力だって?俺に?

よくわからんが首無しの言うとおりにする。俺が欲しいのは食糧、一人分じゃない、ここにいるみんなが腹いっぱい食べても余るような、そんな量の食べ物。

 

欲しい、お腹がすいた。もっと食べたい、食べさせてやりたい。

 

力?わからない。でも、俺に力があるってんなら、さっさと働け!

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

C『瀬戸内の塩5キロ』

 

 

どさっと落ちてきたのは瀬戸内海の塩と書かれた透明な袋だった。中には白い粉が詰まっている。

 

 

「…おい。」

 

 

「…プラスに考えましょう。人間が生きるのに塩は必要不可欠です。さあ、もう一回。」

 

 

 

今度は無料ガチャ、頼む、出てくれ。

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

R『民間用宇宙船搭載野菜工場』

 

 

衝撃と共に、一枚の扉が壁に現れる。機械でできた扉だ。

 

 

野菜工場!

 

 

 

「ふふふ、望んだものがでましたね。」

 

 

 

俺はボタンを押して中に入る。中は通路になっていて、機械でできた通路だった。さらに俺は何枚も扉をくぐり、奥に到達する。

 

 

そこには、縦長のプランターに敷き詰められた、黒い土。天井から降り注ぐ明るい光。冷房の効いた白い部屋や通路とは違う、暖かい空気。

 

 

野菜工場といっていたが、あるのは畑だった。

 

しかし、その畑には何もない。いや、正確には芽は出ている。それだけ。

 

 

どうすることもできない。この空間は宇宙船にある野菜工場らしい。この技術を駆使すれば野菜の早期収穫も可能かもしれない。だが、俺は今食べたかったのだ。みんなで、新人歓迎会でも開こうと思ってたのだ。

 

どうすることも、俺はいつもそうだ。中途半端な運、肝心な時に発揮しない運、どうでもいい時に限って運が良くなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あっ、植物成長剤!

そうだよ、確かちょっと前に植物成長剤がガチャから出てきたはずだ!

 

俺は工場から出て、ガラクタの山から成長剤を探しあてる。

 

緑色の液体の詰まった注射器。これをもって工場に戻ろうとすると機械馬が警告してくる、この栄養剤は非常に強力です、使うなら一滴だけにしてください。

 

 

一滴だけ。そんなに強力なのか?

 

注射器から液体を土に垂らす。一滴だけを出すように、慎重に。

 

 

 

ポタンッ

 

土と液体が触れた瞬間。

 

 

 

土が心臓の鼓動のように揺れた。

 

 

 

うあああああああ、何だこれ!

 

 

 

 

土が脈打ち、急速に成長したのはどう見ても植物ではなく、動物の肉だった。

 

なんともおぞましい、肉が地面から生えるという光景が工場の中に広がっていた。

 

 

やっべぇ、成長剤使うべきじゃなかったかな。

 

とりあえず鑑定だ、頼む、食べられるものであってくれ。

 

 

鑑定!

 

 

 

ベーコンキャベツ

 

●とある食品会社が開発したベーコンのようなキャベツ。キャベツの葉の代わりにベーコンのような葉を伸ばす。

見た目もベーコン、触感もベーコン、味もベーコン。しかしDNAはキャベツであることを示している。食用。

 

ええ、これがキャベツ?確かにキャベツのように丸いけど、ええ?

 

 

俺はベーコンキャベツの葉を一枚ちぎる。

触れた手が油で濡れ、肉の感触が伝わってくる。

 

食べてみる。噛むと油が口の中にあふれ、がっつりとした噛み応えを感じる。

夢中になって食べた。ひたすら食べた。久しぶりにこんな肉を食べた。体に不足していた栄養を求め無言で食べる。

 

 

 

 

…今日はみんなでベーコン又はキャベツパーティを開催した。今更だが、歓迎会だ。

 

ホムンクルスは生まれてはじめてお腹いっぱい食べ、剣闘士は森で狩りをしながら暮らしていたことを思い出しながら食べた。

 

アナスタシアとカワウソは丁寧に、少年Aは高校生らしく無我夢中で食べていた。

バーテンダーが家具と肉の対価として、一日限定だが卵料理を提供してくれた。

ベーコンエッグは旨かった。

 

驚いたことにバルムンクと軍人幽霊、首無しにカメラ人間も食べたのだ。お前たち、飯食えたのか。

 

 

皆で食糧のことを気にせず腹いっぱい食べた。

 

 

本当に美味く、楽しかった。

 

 

 




最初はベーコンレタスにするつもりでした。
でも調べてみるとトリコという作品の中にあるそうです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

999位の人を知りたい

●ランキング中間発表!山田竜のランキングは1000位です。901位から1000位の方に報酬はありません。しかし100位、200位、777位、1000位など切りのいい数字のユーザーには特別報酬が与えられます。

 

10連コインがプレゼントボックスに追加されました。

 

 

システムメッセージが2件届いていた。一つはログインボーナスに関する通知。もう一つは、ランキングに関するメッセージが届いていた。

 

 

衝撃だった。今回の厄ネタ六人集でかなりの戦力が整い、ランキングの最下位は脱していると考えたのだ。

未だに俺は最下位。一体999位の人とどれだけの戦力差があるのだろうか。

 

 

 

 

ちなみに今日のログインボーナスは通常ガチャコインだった。

渋い。

 

 

 

無料ガチャ!

 

 

 

UC『ショッピングモール(小規模)』

 

 

これまでにない、大きな衝撃を感じ体が倒れ尻もちをつく。痛がりながらあたりを見わたすと、周囲の環境は一変していた。

 

もともと白い部屋は体育館ほどのスペースだったのだ。そこにトイレだの酒場だの植物工場などが設置され、拡張されていった。

 

しかし今回の拡張は規模が違う。これまでの無機質な白い部屋が、小さなショッピングモールほどの大きさになっていたのだ。

 

周囲を探検すると、吹き抜け式の2階建てショッピングモールのようだ。なんのお店も入っていない空き店舗が道に並ぶ。…あっ、酒場や家具屋の場所が変わっている。

どうやらショッピングモール化に従って再配置されたようだ。

 

後変わった点は、店のない小さなフードコードがあったこと、エレベーターが動き出したこと。そのくらいだ。

 

 

 

 

 

では、ログインボーナスである。

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

C『三つ葉のクローバー』

 

 

…雑草だ。四つ葉ですらない。放置。次。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さてさて、今日の目玉、『10連コイン』である。

 

10回も回せばさすがにいいものがでるだろう。

 

さあ、強く意識しよう、俺の力よ目覚めよ!

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

C『青薔薇』

 

これは驚いた。これまでのように空中に実体化するのかと思ったら、ショッピングモールの中央、造花が置いてあった場所に青薔薇が咲いたのだ。

 

 

 

C『草津温泉水1リットル』

 

実体化したのはペットボトルに入ったお湯が1リットル。あっつ!

蓋を開けると硫黄の匂いがする。

 

正直使い道がないのでお湯は生贄の棺に入れて捧げ、ペットボトルだけを残した。これでみかんジュースの移送効率が上がりそうだ。

 

 

C『定番おやじギャグ100選!』

 

出てきたのは小学生が見るような表紙の本。

開けると布団が吹っ飛んだ、アルミ缶の上にある蜜柑など、俺でも知っている微妙なダジャレが乗っていた。

 

少年Aがアナスタシアの日本語教育に使いたいと言い出した。

日本語は話せるが読めないらしいので渡した。

 

 

C『封印の鎖』

 

じゃらじゃらとした長い鎖。楕円形の金属がつながってできている。

 

鎖の表面は灰色でつやが消されているのか光を反射しない。

封印の鎖って、何を封印するんだよ!

 

俺のガチャを見ていた少年Aが欲しいと言い出した。

ま、まぁ使い道もないしいいよと言うと、鎖を左腕に巻き出し、親父ギャグ本を持ちながら喜んで走り去って行った。

 

 

 

 

 

C『カップラーメンワサビ味』

 

出現したのはコンビニなどで売られているカップラーメンだった。

しかし通常のカップラーメン、塩、豚骨、醤油、シーフードとは違う。

 

激辛!超わさび!と濃い緑色の字でそう書いてある。

食糧にも余裕があるし、今これを無理して食べて体調を崩したくない。

 

封印だ。

 

 

 

 

SR『【編集済】 吉祥天』

 

な、何で読むんだ?よっしょうてん?よっしょうてんって何だ?

 

機械馬に聞いたところ仏教の神らしい。

神!しかも編集済!重要なところが見えない!

編集済ということは何か、今の俺に見せたらまずい情報ということだ。

 

神って何だ!吉祥天がどうしたんだ!SRなんだ、何かあるんだろう!

 

…何も起きなかったし何もなかった。

ガチャから出た以上、何かが変わったはずだ。しかし何が変わったのかわからない。

どう考えても厄ネタである。

 

 

 

UC『ゴールドドラゴンの尿路結石』

 

 

出てきたのはこぶし一つ分くらいの宝石だった。琥珀色の透き通った宝石のようだ。光に照らされてキラキラと反射する。綺麗だ。

 

でもこれ尿路結石なんだよなぁ。きったねぇ。

適当にガラクタスペースに置こうと思ったが、首無しがこれで魔術品を作りたいと言い出したので渡した。

 

なんでもゴールドドラゴンは富の象徴とされ、全身が錬金術などの素材となるらしい。

 

魔術品、まぁ面倒なことになりそうだがこいつのおかげでガチャ結果をある程度操作することができるようになった。

 

感謝の印としてそれくらいいいだろう。

 

 

UC『エフェクト 聖なるオーラ』

 

開けた瞬間、俺の体が光り出した。

髪の先から爪の先まで全身が淡い光を放っている。

問題なのは目からも光っているということだ!眩しい!

 

俺はシステムウィンドウの設定のエフェクト項目からエフェクトを消した。

 

 

C『イベントスペース』

 

ショッピングモールが拡張された。新たに奥にスペースが発生し、そこには多くのパイプ椅子とカメラ、照明ライト、ステージなどが設置された空間ができていた。

吹き抜け式なので2階からもイベントを見ることができる。

 

だが、イベントを開く人がいない。

 

 

 

C『今すぐ鑑定しろ!』

 

カプセルの中には命令形でそんな言葉が紙に書いてあった。

 

そして実体化する白い球。ガチャの亜種、ガラガラの中に入ってそうな球だ。

 

猛烈に嫌な予感がする中、命令通り鑑定する。

 

 

 

 

 

●はずれ。景品としてポケットティッシュが実体化します。

 

ポケットティッシュが実体化した。携帯電話の乗り換えなど関する広告が入っていた。

 

携帯電話なんか今持ってねぇよ!

 

 

 

 

さて、10連の後のおまけであるR以上確定!

 

さぁ、来い!とにかくすごいもの!

 

 

 

 

R『月面天文台【アルテミス】』

 

 

…何も起きない。望遠鏡やプラネタリウムのような施設が実体化したのかと思いショッピングモールを探したが、特に何も起きなかった。

 

 

う、うわぁぁ、絶対ヤベェよ。何かとんでもないことが起きてる気がする!

だってアルテミスだぞ!ギリシャ神話の神!絶対すごいものだ、俺がとにかくすごいやつって望んだからだ!

 

 

 

…それにしても何なんだ?今回のガチャは。役に立つものとよくわからないがすごいものの割合が高い気がする。

 

これがSSRユニットである首無しの力、そして俺に眠る秘めたる力なのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「月面基地が突如出現、アメリカ・ロシア・中国が所有権主張 宇宙開発競争が再び活発化か?」

 

 

本日、突如として月面基地が出現し、アメリカ、ロシア、中国がいずれも所有権を主張する事態が起きました。この出来事を受け、アメリカは新たな月面探査計画を発表し、宇宙開発競争が再び活発化するのではないかとの見方が出ています。

 

月面基地については、ユーザーである山田氏の所有物であるという考えに対し、各国政府はその主張について月面基地と山田氏の因果関係が不明だとして山田氏の所有権を認めない方針を示しました。

 

山田氏は日本人ですが、この点に関して日本政府からも公式なコメントは出ていません。現状日本は宇宙開発について蚊帳の外にいることに対して日本国民より批判にさらされています。

 

アメリカの計画では、月面基地への初侵入と長期間の滞在を目的にしており、そのための技術開発や実験が進められる予定です。アメリカの月面探査計画は、今後ますます注目されることになりそうです。

 




いつも誤字報告してくださる方々、ありがとうございます。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

寿司職人K

アナスタシア王女殿下と少年Aの株価がストップ高だ。

 

アナスタシア殿下はその氷系能力を駆使して、みかんジュースを凍らせてシャーベット状にして俺たちに提供してくれたのだ。キンキンに冷えたみかんジュースは非常においしく、俺含めてみんなは王女殿下を崇めるようになった。

 

 

ところでアナスタシア殿下はどうして氷系能力を持っているのだろうか。

 

そう聞くと殿下はロシア人だからとしか答えてくれなかった。そっかーーー、ロシア人だから、氷の能力を使えるのか。ふーーん、そっか。

 

 

 

少年Aはその両手から発生させた紫色と黒色、青色の炎でベーコンキャベツをいい感じに焼く、茹でる、炙る、燻製にするなどして調理した物を提供してくれた。

 

野菜のはずなのにその香ばしい匂い、溢れる肉汁が俺たちを魅了した。

 

ところで、その炎かっこいいね。何か違いでもあるの?

 

少年Aは照れた顔で特に違いはないけど、努力したんだ、かっこいいだろ?と答えた。

 

俺は心からかっこいいよと答えた。でもその鎖はどうかと思ったが黙っておいた。

あと、少年Aはアナスタシア殿下に仕える炎の騎士だと名乗り、従者のように付き従っている。最近は剣闘士のルーカスから剣術を習っているようだ。

 

 

それでは、無料ガチャ!

 

 

 

 

C『空調システム』

 

 

何かが実体化することはなかった。システムを調べると、このショッピングモールの空調を調整し、室温を変えられるようになった。今まで常温だったため、暖房に変更した。俺は暖かいのが好きなんだ。

 

 

 

 

今日のログインボーナスは、店舗確定ガチャコイン。早速回そう。

 

 

R『寿司屋 鬼童丸』

 

 

寿司屋。寿司というのは、日本の伝統料理だ。寿司は最初、屋台で立ち食いとして食べられていたらしい。

酢飯を小さく握ったものの上に魚、主に海の魚の切り身を乗せたもので、醤油とワサビにつけて食べる。

 

 

最近は日本を代表する料理として有名で、海外にも多く寿司屋が展開されているが、生魚を使うため寄生虫の心配や生臭さから嫌う外国人も多い。

 

しかし、海外では寿司が独自の進化をし、カルフォルニアロールやマンゴー寿司といった、魔改造もされている。

 

現代の日本寿司業界は、庶民でも安価で食べられる100円の回転ずし、敷居が高い、技術を究めた職人が一つ一つ握る高級寿司屋という2つに分けられる。

 

今回出現したのは、後者の高級寿司屋である。

 

 

 

それはショッピングモールの2階に出現した。

 

 

鬼童丸と書かれた木製の看板が掲げられており、店の入り口には暖簾がかかっている。

和風建築であることが多く、木造の建物が多いです。

 

全体的に、和装のデザインで、小さいが庭園が設置されている。白い石が敷き詰められ、松の木が植えられている。

 

一目でわかる、高級店だ。

 

さあ、2号、俺に金はない。調査に行くんだ。

 

そう言って2号を行かせようとしたが、どうやら俺についてきて欲しいようだ。

 

仕方がないな、俺は金がないからおごれよ?

 

 

暖簾をくぐり、寿司屋に入る。壁や床には木材や竹、和紙などの自然素材が使用され、畳敷きの部屋もある。

 

店のいたるところに器や茶道具、美術品などが展示されている。どれも一目でわかる高級品だ。そのほかにもシンプルな飾り物や植物などが置かれ、落ち着いた雰囲気を演出している。

 

そしてカウンター席の前には、グラサンをつけた男が立っていた。

 

 

ぐ、グラサン⁉なんでグラサンなんかつけてるんだこのおっさん⁉

 

体格が良く、顔もいかつい。やくざのような圧の強い顔だ。

 

 

か、鑑定!

 

 

 

●鬼の血を引く和の国出身の寿司職人、稲森鬼童丸は寿司の道を究めるため単身、山の奥地へと向かった。

山奥に存在する湖には数多くの魚が住み着いていたが、ある日現れた魚人によって乱獲、絶滅の危機に瀕していた。そこに稲森が現れ、魚人をたった一人で殲滅し、魚の捌き方を究めたのだ。

 

 

お客さん、今鑑定したね?

 

 

す、すみません!

 

 

まあいいけどね。自己紹介だ、私の名は稲森鬼童丸。Kと呼んでくれ。ご注文は?

 

 

俺と2号はビビりながら、なんでKなんだと思いながら、座り、カウンターの上にあるメニューをみる。

 

 

全部値段が時価だった。ひえええええええ。

 

 

「し、シメサバで…」

 

 

お、おまえもいいよなっ、な⁈

 

 

2号もぶんぶんと頷いた。こいつもビビってやがる。

 

稲盛が魚をさばいていく。手際がいい。あっという間に、寿司ができた。

 

 

どうぞ。

 

 

圧がすごい。

 

醤油をつけ、口に入れる。美味かった。それしか考えられなかった。

 

 

お、お会計お願いします。

 

 

稲盛、Kがレジに立ち、会計を始める。

 

 

ま、まずい!金よ足りてくれ!

 

 

400円になります。

 

 

えっ、400円?

 

 

 

や、安い!まさか200円寿司なのか⁈あの美味しさで⁈

 

 

本日は全品200円となっております。

 

俺と2号はお会計を中止し、マグロや大トロ、サーモンにいくら、海老などを食べた。

 

 

 

 

寿司屋営業終了後、Kはベーコンキャベツを捌いてくれた。芸術のように薄いベーコンは未知の触感で美味だった。

 

 

 

 

 

 

 

 




ちびまる子ちゃんのアニメの初期の頃に、友蔵の年金で寿司屋に行く回があるのですが、その寿司屋がすごい高級店で友蔵は時価の寿司にビビりながらシメサバばっかり注文し、
まる子はそんな友蔵のことなんか考えず偶然いた花輪くんと一緒に高級寿司を食べまくり、最後の会計で友蔵は寿司屋に来る前に買ったおもちゃを返品する回があります。

この回が僕は好きです。




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

万能カメラ

本日のログインボーナスは、武器確定ガチャコインだった。

 

 

正直武器確定ガチャはありがたい。このままずっとランキング最下位にいて1000位報酬を獲得し続けるのもいいが、そろそろランキングを上げなければいい加減視聴者たちも飽きてしまうだろう。

 

それに、ランキングの中間発表がいつ最終的なランキングになり、そうなった時にランキング下位にいたら何が起きるのか怖い。最悪殺処分なんてこともあるのかもしれない。

 

 

さて、狙うは数だ!もし他のユーザーと戦闘になったとき、ホムンクルスを素手で殴り合わせるわけにもいかない!

 

 

首無しにみかんジュースを使ったガチャの強化をしてもらったし、さあレッツガチャ!

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

C『模造刀』

 

 

出現したのは一本の刀だった。

 

 

模造刀。本物の日本刀を真似た観賞用だったり舞台やコスプレの小道具として使われる、刃のない刀のこと。

つまり何かを切ることのできない刀。

 

まぁ、何もないよりかはマシか。鈍器として使おう。

 

 

 

俺は3号にこの模造刀を渡し、少年Aと共に剣闘士ルーカスの指導を受けてもらうことにした。

 

 

 

 

 

 

その後、3号が模造刀に秘められた流体金属化能力を発揮した。

 

刀が液体の金属となり、そして何故か体積も膨張しある時は鞭のように動き、またある時は盾のように広がり、またある時は矢のように敵に襲い掛かるのだ。

 

3号はそれを使いこなし、少年Aをぼこぼこにしていた。

 

 

それもう刀じゃないじゃん。あと3号はそのあと剣闘士ルーカスにフルボッコにされていた。

 

 

 

 

 

 

さてさて。

 

無料ガチャを回さないと。

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

C『ドキュメンタリー 針村財務大臣汚職の瞬間』

 

 

ドキュメンタリーとは、実際にあった記録を元に制作された、映画やテレビドラマのことだ。

 

過去に有った衝撃的な事件から地球の辺境に住む民族の生活、カニ漁や黄金を探す男たちなど、様々な事実を取材し、それらを視聴者の目に届けるのだ。

 

 

出てきたのはそのドキュメンタリーの一つ。日本の財務大臣の汚職に関する映像だ。

 

 

…しかし、俺の記憶では針村財務大臣は現役の国会議員で、今も財務大臣だったはずだ。今では政府与党の幹部として名を連ね、ネットではいくつものその強引さを表すエピソードであふれていた。

 

 

問題なのは、このドキュメンタリー映像がブルーレイディスクで実体化したことだ。

 

残念ながら俺は今、ブルーレイを見ることのできる機具は持っていない。

名残惜しいがこれもガラクタスペース行きだな。

 

 

そう考えていると、誰かが俺の背中をトントンと触る。

 

 

誰かと思い振り返るとカメラ人間がそこにいた。

 

 

なんだ?悪いけど、何か伝えたいことがあるなら少年Aのところに行ってくれ。あいつならお前の言うこともなんとなくわかってくれるはずだ。

 

そういうと、カメラ人間は俺の持つブルーレイを大げさに指さしてくる。

 

 

なんだ、欲しいのか。いいぞ。

 

ブルーレイをカメラ人間に渡すと、カメラ人間は頭のカメラを触りだす。すると頭に細い縦長の穴が開いた。

 

そして、ブルーレイをその中に入れたのだ。カメラ人間のディスプレイに映像が映り始める。

 

 

 

は、はぁ⁈おまえそれビデオカメラじゃないの⁈

 

 

そうしてカメラ人間は、壁に映写機のように映像を投影し始めたのだ。壁が白いので壁がスクリーンのように使え、まるで映画のように映像が始まった。音質の良いBGMが大音量で、流れ出す。

 

 

 

お前のその頭はなんなんだよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イベントスペースのパイプ椅子を撤去して、毛布を体に巻きつけて寝そべりながらみんなでドキュメンタリー映像を見た。

 

 

 

…しかし、この映像は本物なのだろうか。

 

俺の推測では視聴者は世界の権力者のはずだ。その中には当然、日本人も多く存在するだろ。金持ちでもある針村財務大臣も視聴者の中にいるかもしれない。さらに言えば財務大臣は政財界で多くの支持を得ている。

 

そんな財務大臣を貶めるようなことをしたら、大事な視聴者である有力者たちを怒らせるようなことになるはずだ。

 

 

俺は視聴者とは一体誰のことなのか疑問を持った。

 

 

 

 

●カメラ人間

 

発見場所 日本全域の映画館 時代2010年代後半

 

とある映画盗撮防止CMに関する噂、都市伝説が実体化したものと推測。2019年3月26日の群馬県に存在する映画館にて地元の不良に絡まれ喧嘩に発展するも敗北、駆けつけた警察官により捕縛。その後比較的無害な存在として異常存在に職員を慣れさせるため6課へと引き渡された。

戦闘能力は期待できないが、影の薄さと逃走能力に優れており偵察役として利用。

頭部のカメラはビデオカメラ、ブルーレイからビデオテープの鑑賞、スクリーンの投影から懐中電灯まで多機能である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『針村財務大臣による汚職映像公開により政界に激震』

 

 

 

 

 

針村財務大臣による汚職の瞬間を捉えたドキュメンタリー映像が山田氏により公開されたことで、政界に大きな波紋が広がっています。針村財務大臣は政権与党内部で強い求心力とカリスマをもっており、

今回のスキャンダルにより針村派の弱体化と、政権の支持率が大きく下落する可能性があると指摘されています。

 

公開された映像には、針村大臣だけでなく、多数の大臣や国会議員や企業役員なども映っており、ドキュメンタリーの映像には、大臣と役員の会話の音声、銀行口座の振り込み履歴、一部の国会議員や企業役員の告発映像など、非常に多くの証拠が収められています。

 

この件に対して針村財務大臣は、『法務省6課と同じようにパラレルワールドの出来事だ。私には関係ない』と主張していましたが、既に多数の大企業関係者や官僚が自首しています。

 

 

また針村財務大臣は政権与党内に強い求心力があり、政府関係者は今回の件で山田氏に対して何らかの報復があるのではないかと噂されています。

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

サメ!

機械馬による武功、不壊門の解読が完了した。

 

俺の予想とは異なり、体の中にある功力、機械馬曰くMPを操作して行う訓練方法と戦闘方法らしい。

 

なんでも足腰と背骨に魔力を流し込んで行う鍛錬、体操のようなもので、これを繰り返し究めることにより戦闘において決して倒れることなく戦い続けることができるようだ。

その頑丈さ、まさに不壊の門であると書かれているらしい。

 

 

そんなわけで俺たちはラジオ体操に続いてみんなでこれの習得に励むことにした。MPの操作というのがよくわからないが、とりあえずみんなで頑張ってみる。

 

 

 

さてさて。今日のログインボーナスは素材確定ガチャコインだった。

素材、これまた何がでるのかわからない。

 

 

それではまずは無料ガチャ!

 

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

C『公衆電話』

 

公衆電話はかつて日本中の駅や道路などいたるところに設置されていた。硬貨やテレフォンカードを入れると利用でき、通話サービスを提供してくれる。

これがあれば家の外でも電話ができ、駅などの人通りの多い場所では多くの人が公衆電話の前に並んでいる姿が目撃されていた。一部の公衆電話ではパソコンをつなげることでインターネットに接続できたらしい。

 

 

しかしそれは昔の話。誰でも携帯電話を持った現在においては不要とされ維持費などの問題から撤去され設置されている場所は少ない。公衆電話の使い方も知らない若者も多い。

 

 

そんな公衆電話が一台、ショッピングモールの隅っこに出現していた。

よくある緑色の公衆電話とその台座だ。

 

さて、使ってみるか。

 

…んん⁈この公衆電話、硬貨を入れる場所がないぞ!それどころか電話番号を打ち込むボタンもない。

 

 

…ええ、どうすればいいんだこれ。

 

調べてみると、台座の下に紙が入っていた。お、これに使い方が書いてあるのかな?どれどれ。

 

 

 

 

『伝説の総菜屋』専用公衆電話

 

通話料金、運送料金は必要ありません!

 

 

ロックバードのモモ肉から揚げ  300円

ホーンラビットのシチュー    1200円

食獣植物の野菜炒め       900円

シードラゴンのステーキ     1800円

ブルースライムのもつ鍋     2500円

ポイズントードのスープ     1200円

ワイルドボアのラーメン     850円

 

 

 

うわあ。なんだこれ。どんな料理なのかほとんどわからない。

というか、メニューに書かれてる食材全部地球に存在しないでしょこれ。

 

なんかちぐはくだなぁ、この公衆電話を使ったデリバリーサービスというのは現代的なのに、届く料理はファンタジー。

 

一部はなんとなくどんなモンスターなのか予想がつくが、ブルースライムのもつ鍋がわからない。

ブルースライム、スライムにそもそも内臓があるのか?だとすればどんな内臓で、どんな味なのか全くわからん。

 

…一番安くて、どんなモンスターでどんな料理なのか予想がつくロックバードのモモ肉から揚げを注文しよう。

俺は受話器を取る。

 

『お電話ありがとうございます。伝説の総菜屋デリバリーサービスです。ご注文をどうぞ』

 

 

女性の声だ。

 

 

えっと。ロックバードのモモ肉一つ。以上で。

 

 

『ご注文ありがとうございます!すぐに配達員がそちらに向かいます』

 

 

あ、あんたは誰なんだ!ここはどこなんだよ!答えてくれ

 

 

電話を切られた。まったく、サービスの悪い店だ。

 

 

ちわーっす。伝説の総菜屋でーす。

 

 

 

声がしたので振り向くと、一人の青年が立っていた。帽子をかぶりリュックを背負っている。

びっくりした。気配がまるでなかった。こいつ、どこから現れたんだ。

 

 

ご注文のから揚げです、300円お願いしまーす。

 

 

あっ、ちょっと待ってくださいね。俺は2号を呼び、金を払わせる。

 

 

はいどうぞー。

 

 

あったかい白い箱を渡された。中を開けると、普通のから揚げ、骨付きのから揚げが箱いっぱいに詰まっている。

これで300円は安いな。

 

 

それでは、また。

 

 

ちょっ、ちょっと待ってくれ。あんたは誰なんだ、ここはどこなんだ。

 

 

あー、すみませんね。そういうの答えたらだめなんすよ。

 

 

そういうと配達員の青年は、空気に溶けるようにして消えていった。

 

から揚げは旨かった、みんなで食べた。

 

 

 

 

 

 

さてさて。

では、素材確定ガチャ!

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

UC『人魚のミイラ』

 

人魚。上半身が人、下半身が魚で構成される空想上の生き物。そのほとんどが女性であり、マーメイド、セイレーン、ローレライなど多くの名で呼ばれる。

世界中にその伝説は残っており、歌で魅了し人を海に連れ去る、人魚の血肉には不死の効果があるなど多くの物騒な伝説がある中で人間との恋に落ちたなどの感動的なエピソードも存在する。

 

そしてミイラ、死体が人工的か自然かは問わず乾燥して長い間原型をとどめている人の死体。

エジプトのミイラが有名だが、アルゼンチンのインカ帝国跡でも見つかっており、日本の即身仏もミイラの一種である。

 

 

出現したのは、木の箱だった。持ち上げてみると中に何かが入っていることがわかる。

 

 

 

…鑑定

 

●人魚のミイラ。

人魚が砂浜に打ち上げられ、そのまま乾燥し餓死したサメの人魚。それを発見した人間が不憫に思い、箱の中に入れて埋葬し土に埋めた。それがミイラ化したもの。夢は自分の歌でみんなを笑顔にすることだった。

 

 

 

…埋めよう。ショッピングモールの花壇スペースの青薔薇を移設して、簡単だが墓をつくろう。

 

俺は土を素手で掘り出し、スペースを確保しようとする。

 

 

すると俺がガチャを回すのを見ていた首無しが俺に話しかけてきた。

 

 

…何だ?尿路結石の時みたいに貸さないぞ。

 

 

いえいえ、そのようなことは。先ほどのシステムメッセージ、私も確認しました。そして救いたいと考えたのです。

 

 

救いたい?

 

 

ええ。私に任せてください、彼女を救ってあげましょう。

 

 

俺の目には嘘をついているようには見えない。本当に心を痛めていて、心の底からミイラのことを思っているように感じる。

 

 

…わかった。お前に任せる。

 

 

俺は首無しに箱を渡す。

 

何をする気だ?

 

 

まあ見ててください。

 

 

 

すると首無しは、一言唱えたのだ。

 

 

 

『蘇りなさい』

 

 

 

どこからか発生した黒い霧が徐々に集まり、すぐに濃密になり箱の周りを覆い尽くす。

 

そして、木の箱が開いた。紫の瞳、病的に白い肌の人魚の姿だ。

 

人魚は、どういう原理なのか宙に浮かび静かに空気を吸い込むかのように、深呼吸をする。その動きは、優美で美しかった。

 

その一方で、人魚の目は不気味なほどに静かで、冷たい視線を放っていた。

 

 

 

 

 

人魚のアンデッド、完成です。

 

 

どうです?驚きましたか?これで彼女の夢を叶えることができます。

 

 

 

いやさぁ、確かに任せたのは俺だけどさぁ。

 

 

 

 

 

せめて一言言おうよ!馬鹿がぁ!死者の尊厳を侮辱するんじゃねえ!

 

 

 

 

 

 

 




私は公衆電話の使い方知りません。





目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

一つだけでは

あの人魚、首無し曰くアンデッドシャークマーメイドはレーンという名前らしい。

 

そんなレーンだが、彼女の話を詳しく聞くと剣闘士ルーカスと同じようにガチャや運営に関する知識を持っていなかった。

 

そういう設定のNPCの中には、首無しのようにガチャに関してある程度知っているやつも居れば、全く知らない奴もいる。

 

推測だが、SSRユニットだからではないだろうか。今のところ、ガチャについて知っているユニットはSSRの首無しのみ。

 

この仮説は次のSSRのユニットが排出されれば正しいかどうかある程度判明するだろう。

 

そうしてまさかのアンデッド化したレーンはせっかく生き返ったのだから歌を歌いたいと言い出した。

 

まぁ、特に反対する理由もないのでショッピングモールのイベントスペースでライブを行ったのだが、これがもう大盛況。

 

特に途中で飛び入り参加したアナスタシア王女殿下とのデュエットは盛り上がり方がやばかった。

 

特に男衆は大きく盛り上がり、ホムンクルスたちは、(いつのまにかあー、うぉー、いぇーいなどの簡単な言葉?を話せるようになっていた)一生懸命応援していた。ライブは客の人数が少ないながらその声援にレーンは満足したらしい。

 

 

ところでなんで浮いているの?聞きにくいけど確か浜辺で打ち上げられて死んだはずだよね?

 

レーンは「知らない、生き返ったらできるようになっていた」と答えた。

 

首無しに聞くと、「私が調整しました」と答えた。

 

 

…一つ分かったことがある。簡易鑑定で知ることのできる情報は少ない。こいつがガチャに指向性を持たせたりネクロマンサーのようなことができるとは書いていなかった。

 

 

「6課の戦争屋に比べたら私などまだまだです。彼の前では私の作品などお遊びですから」と答えた。

 

 

うわぁ、名前が戦争屋でネクロマンサーって。6課が魔境すぎる。

 

 

 

 

今日のログインボーナスは『音楽確定コイン』だった。

 

 

…脳裏によみがえるはBGM確定コイン。あの時引いたのはラジオ体操だった。音楽はBGMよりも範囲が広いので今まで通り、何ができるのかわからない。

 

というか、ほぼ何の役にも立たないことが確定している。

 

まったく、運営は何を考えているんだ?確かログインボーナスは人によって違うとだいぶ前にシステムメッセージに書いてあったはず。

こんなもので戦力差が縮まるとは思えんのだが。

 

 

 

まあ、回すけどね。

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

C『馬頭琴』

 

 

馬頭琴。正式名称モリンホール。弦が2本の弦楽器であり、モンゴル語で馬の楽器を意味する、モンゴルを代表する楽器だ。

馬の頭を模した竿と、共鳴箱、そして2本の弦で構成される。

弦と弓はウマの毛が使われており、日本においてはスーホの白い馬などで有名だ。

 

そんな馬頭琴が目の前に出現した。

 

小学校の国語の教科書にスーホの白い馬という話が載っており、絵としては見たことがあるが、実際に見るのは初めてだな。

 

俺は弓で弾いてみようとする。

 

が、うまくいかない。ギギギと嫌な音が鳴る。

 

ま、まぁ使い方も知らないし、初めてはこんなものだろう。

 

 

弾き終えると馬頭琴についた馬の頭が下手くそ!と罵倒してきた。ええ……。

 

 

 

ガラクタ置き場に置いた。

 

 

 

 

では今日の無料ガチャ。

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

お、金色のカプセル!SRだ!

 

 

 

 

 

SR 『ワープポイント』

 

ワープポイント。ゲームなどの世界に設置されており、このワープポイントを使い様々な場所に一瞬で移動することができる。

しかし大抵の場合、ワープできる場所は一度でも訪れた場所のみ。いきなり世界中のどこにも行けるわけではないのだ。

 

 

出現したのは、ショッピングモール中央の広場だった。

その広場に突然現れた。

 

このワープポイントの見た目は地面に台座が設置されてあり、その上を柱のようなものが微動だにせず浮いている。

柱には青いラインが四本走っており、黄色いリングのようなものがいくつかつけられている。柱と台座を覆うようにして青い光がまとわりついている。頂点には青い宝石が置かれていた。

 

 

…うーん、使い方がわからない。

今日の鑑定は馬頭琴に使う必要はないしコイツかな。

 

鑑定!

 

 

●とある世界の至るところに設置されていた謎の装置。この装置がなぜ、だれが、どうやって作り出し設置したのか誰も知らない。このワープポイントに触れると一度でも触れたことのあるワープポイントに一瞬で移動できる。

 

 

 

 

あー、もうわかった。なんとなく今回のオチがわかった。

 

俺はワープポイントに触れる。ひんやりした触感が伝わってくる。

 

 

●現在地 ヤマダショッピングモール

 

他のワープポイントが未解放なため、現在あなたは使用することができません。頑張ってワープポイントを解放しましょう!

 

 

 

ヤマダショッピングモールって何だよ!

 

つーか、こいつ以外にワープポイントなんかねぇんだよ!

何が頑張ってだ、頑張ってもどうすることもできねぇよ!

 

 

つまり、ガラクタ!しかも移動することができない!

 

クソッ!

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ハイパーインフレーションの始まりだ!

法務省6課。

超能力者から幽霊、都市伝説の実体化した存在や謎の化け物などで構成される組織である。

 

そんな物騒な組織に所属する奴らが6人も集合しているのだが、ある程度皆、この空間に溶け込むことに成功している

 

一人を除いて。

 

彼の名はバルムンク、かの大英雄ジークフリートが使用していた剣であり、いろいろあって魔剣となって封印されていた物を日本政府が引き取ったそうだ。

 

彼は、(いや剣なので性別はないはず。まあ声が男なので彼としておく)剣なので、ヒト型の生命体である他のメンバーともある程度価値観の違いがあり、馴染めていなかった。

 

というか、まともに活動できていなかった。

 

ガチャで排出されてからすぐにこの中で最強と戦いたいなどと言ったため俺は7号を呼んだのだが。

 

どうやら神剣との相性が非常に悪かったらしく、7号にぼこぼこにされて以来、ずっと傷の治療に専念している。

 

俺は見舞いとして、家具屋の個人スペースに向かった。

 

 

シュールな光景だ。公衆浴場に設置されていた風呂桶が2つ置かれており、一つはみかんジュースが満たされ風呂のようにバルムンクが浸かっている。そしてもう一つの風呂桶には大量のベーコンキャベツが詰められていた。

 

 

バルムンクはボロボロだ。至るところがひび割れ、シクシクと泣いていた。

今はベーコンキャベツとみかんジュースを飲み食いし英気を養っている。

 

 

 

ひでぇよぉ、ちょっと降参するふりをして騙そうとしただけじゃねえか…。

 

自業自得だろ。というかお前、壊れないんじゃなかったのかよ。ボロボロじゃないか。

 

 

そういう意味じゃねぇ、壊れてもすぐに再生するって意味で壊れないんだよ。ひびは入るし痛いし疲れるんだ。

 

 

すぐに治ってないじゃん。

 

 

あれはやばい、本気でやばい。

 

 

何がやばいんだ?

 

 

まじでなんであんなものが現代にあるんだ?あれだけの神の力だ、紀元前に作られたはず、だが全く衰えていない、劣化していない。やべぇぞ。

 

 

バルムンクは、震える声で話す。

 

 

なぁ、このガチャってのはなんなんだ?もっとよく考えた方がいいぞ。

 

 

 

…ただの、VR空間に設置されたガチャじゃないのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて。今日のログインボーナスは無料ガチャコインだった。バルムンクにいろいろ言われたが、結局のところ回すしかない。

 

俺がこの部屋から脱出するためにはガチャを回して現状をどうにかしなければならない。

それにガチャを回すのは楽しいし好きだ。

 

最初のころは得体の知れなさからびくびくしていたが、ある程度回してからは安全性もなんとなくあると分かったし、それに生活も安定してきたので俺は娯楽を求め始めた。

 

もっともっと、回したい。好奇心が抑えられないのだ。

 

そもそも俺は監禁される前からスマホゲームのガチャを回しまくっていた。我慢できるようなタイプではないのだ。

 

 

 

ではレッツ、ガチャ!

 

 

 

C『硬い石』

 

石の正確な定義としては砂より大きく岩よりも小さい、鉱物質の塊のこと。

基本的に石は何もしなければずっとそのままのため、古代の人々は石を積極的に利用した。人間は250万年前より石でできた道具、石器を使い始め、そして時代が下ると武器として、建材として、芸術品の材料として使われ、中には石に神秘性を見出す者もおり石が長寿の薬の材料とされる時代や、何らかの力が宿っていると言われ宝石などが大切に扱われた。

現代でもパワーストーンとして存在し、縁起物として持つ者も大勢存在する。

 

 

 

色々長く考えたが、ただの灰色の石が出現した。握りこぶし程の大きさだ。

 

光沢があり光が反射している。

 

コンコンと床を石で叩く。が、特に反応がない。

うーん、石って人間からすれば全部硬いからな。違いがわからん。

 

 

そこから俺は実験を始めた。2階から落とす、機械馬が踏みつける、少年Aが燃やす。

 

そして最後に7号が神剣で斬ろうとしたが、盛大な火花が発生するだけで終わった。

 

へー、すごく硬いんだな、この石。

 

………で?

 

 

 

 

 

硬い石をガラクタ置き場に捨て、俺は無料ガチャを回す。

 

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

R『誰でもできる国造りセット第128版『造幣局編』

 

造幣局。国家の血液であるお金、特に貨幣の製造や金属工芸品の製造、貴金属の精製と検査を行う組織である。日本では大阪に本局が存在し、桜で有名。

勘違いされがちだが、生産するのは貨幣だけである。紙幣は印刷局が担当する。

 

 

 

 

それはショッピングモールの一階の片隅に現れた。

 

 

『造幣局』と石でできた看板が掛けられており、中は多く長椅子が設置され、カウンターが置かれ奥にはホムンクルスと同じようなファンタジー的衣装をまとっている者がいた。しかしホムンクルスよりも服の質が良いし、正装という感じがする。

 

一目見て感じたのは、市役所のようだと感じた。

 

しかし床や天井、家具などがすべて白一色だ。材質は白亜という印象だ。

 

 

…だめだ、まったく予想ができない。

鑑定!

 

 

●ユーザーの建国をお手伝いする国造りセットの128版。造幣に必要な機械から稼働に必要な資源、そして金融知識が豊富なユニット10名で構成されるお得なセット。これを使って紙幣や硬貨を製造しよう。

ユニットは現在最も多い種族となります。今回の場合はホムンクルスです。

 

 

外で見ている俺に気づいたのか、中から人が出てくる。若い青年だった。

 

 

 

 

 

おはようございます、本日よりこちらで造幣局を開設させていただきました。これからよろしくお願いします。

 

造幣局ってことは金を作れるのか?日本円も作れるか?

 

 

我々造幣局は既存の通貨を作ることはできません。完全オリジナルの、将来この国家に流通するであろう通貨の生産が可能です。造幣局ではありますが、紙幣の生産も可能です。

 

 

こ、この国家?お前は何をいっているんだ?

 

 

はい、我々造幣局が製造する通貨はこの国家が認める正式な通貨となります。

どうやらまだ財務省や国営銀行などのセットはお持ちではない様子。最低限ではありますが代行させていただきます。

 

 

 

 

 

 

…うーん。どうやらこいつらは国造りセットの名の通り、国造りの通貨の生産を担当するらしい。

ちょっと試してみるか。

 

 

 

 

 

 

じゃあ、とりあえず通貨を作ってみてくれ。実際に大量生産して流通される前にサンプルを確認したい。

 

 

了解しました。では、まずは国名と通貨の単位をお決めください。

 

 

じゃあ、山田ドラゴンガチャ王国、単位はガチャポイントで。それ以外は任せる。

 

 

 

かしこまりました。

 

 

あっ。ちょっと待って!

 

 

 

 

 

俺は急いでガラクタ置き場でアレを探す。そうだ、昔ガチャであれが出たはず…

 

 

 

 

これを参考に作ってくれ。

 

 

これは……ッ

 

 

 

それは、かつてガチャで出た一万円札の偽札。凄まじい偽造防止技術が使われているらしいのだ。

 

 

ホムンクルスは食い入るようにそれを見ていた。無表情だが、呆然と、衝撃を受けているようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、ホムンクルスは出来上がったサンプルを持ってきた。

 

10000GP(ガチャポイント)札には俺の顔が描かれていた。恥ずかしいな。

 

 

よし、じゃあこれの生産を始めてくれ。麻雀の賭けにこれから使おう。

 

かしこまりました。

 

 

 

『業績 国名の命名が達成されました』

『業績 通貨の生産、流通が達成されました』

 

 

 

あれっ。え、こんなことで業績達成?

 

別にレア度が高い物が出たわけでもないのに?

 

 

…俺は、何か思い違いをしていたのかもしれない。

こんな業績が存在しているんだ、運営はユーザーが国造りをすることを目標としていたのか?

 

 

ランキングは、戦力で決められているんじゃないのか?

 

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

勢力拡大に向けて

俺は、ランキングについて思い違いをしていたのかもしれない。

これまで俺はランキングの順位は、戦力によって決定されていると考えていた。だが6課を引き当ててもランキングは変わらず、そして国家に関する業績が2つも達成できた。

 

このランキングは、自分の勢力の規模の大きさで決定するのではないか?

 

 

 

 

 

 

さて。

 

『業績 通貨の発行と流通』の報酬は、支配地域内での通貨の流通だ。

 

酒場や寿司屋、などでGPでの取引が可能となったのだ。

 

とは言っても、俺たちは誰もGPなんて持っていない。

 

 

そう考えていると造幣局のホムンクルス達がベーシックインカムとし毎日10000GPの給付を行うと言い出したのだ。

 

さらにこれまで麻雀の賭けに使っていた人生ゲームのお札も交換してくれるという。

 

俺は一文無しなので10000GPだけだったが、みんな結構な額を手に入れていた。

 

そうだ、俺はこの山田ドラゴンガチャ王国の支配者なので好きに通貨を生産できるのでは?と考えたが、インフレが起きるためだめと断られてしまった。

 

 

そんな訳で寿司屋や酒場では多くのユニット達が訪れ大盛況。

麻雀も実際に使える金での賭博は大いに盛り上がった。俺?負けるから参加してないよ。

 

 

 

『業績 国家の命名』の報酬は国民に対する知識付与だった。

 

聞き取り調査をしたところ、俺が山田ドラゴンガチャ王国の王様で、そして自分がその国民になったことを理解しているようだった。

少年Aには馬鹿みたいに笑われ、アナスタシア殿下からはセンスがないと言われた。

 

 

 

 

 

 

 

目標変更!

これから俺は戦力の拡大を目的にせず、俺だけの国家、建国を目指す。

もちろん、戦力のことだって忘れてはいない。

将来的に他のユーザーとも戦争が起きるかもしれないしな。

 

俺が欲しいのは、まず国民と国土だ。

国家を構成する三要素は領域、国民、主権で構成される。

 

主権に関しては問題ない。現在俺の独裁体制だ。

 

そして領域と国民なのだが、小さなショッピングモールと50人に満たないユニット達。こんなもの、国ですらない。ただの集まりだ。

 

 

というわけで目指すはユニットと拠点関係の物!

 

 

 

本日のログインボーナスは動物兵士確定ガチャコインだった。

 

…動物兵士。

 

カワウソ曰く、自分のような動物兵士シリーズは雑食となり人間並みの知識と軍人としての一般的な技術、そして何らかの特化した技能、カワウソだと偵察を保有しているらしい。

 

 

つまり、兵士が手に入るというわけだ!

 

 

 

 

動物兵士無料ガチャ!

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

C『アリクイ火炎放射器兵』

 

 

アリクイ。その名の通りアリを食べて生きている。英語ではアントイーターと呼ばれ、細長い舌を器用に使い一日で3万匹のアリを食べるという。日本でもペットとして買うことができ、マヨネーズが好みなのだとか。

 

火炎放射器兵とは、背中に背負ったタンクより可燃性の液体とガスを放出し炎を放射する兵士のこと。

 

 

 

 

 

目の前に、二足歩行のアリクイが立っていた。ヘルメットを被り、タンクをリュックのように背負っている。

 

 

 

そんなアリクイは、俺が目の前にいるにも関わらず煙草を吸い、そして手に持った酒を飲み始めた。

 

 

 

…ま、まぁ兵士が手に入ったしいいとするか。

 

 

 

 

 

さてさて。

 

 

それでは、無料ガチャ!

 

 

 

 

 

UC『AED』

 

正式名称Automated External Defibrillator。人間が心停止状態にあるとき、心臓に電気ショックを与えることで心臓を元の状態に戻すことができる。

昔は医者などしか使えなかったが、2004年から一般人でも使えるようになった。

今では学校などにも設置されており、保健体育の授業で使い方を学ぶ。

 

そんなAEDが出現したのだが。

 

 

ただ何というか、このAED、小さいのだ。消しゴムの半分以下のサイズなのだ。

すぐに失くしそうだ。

 

 

う、うーん。絶妙に嫌な予感がする。

俺は鑑定を使った。

 

 

 

●人間用のAEDを小人のために小型化した物。流れる電気も小人が耐えられるように設定してあり、非常に有用。

 

 

…小人いねえよ!

 

 

俺は失くさないよう、SSRのカプセルの中に保管した。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

キングコレクション

ショッピングモール内でGPの流通が始まったわけだが、公衆電話で料理を注文できるデリバリーサービスもGPを扱い始めた。

 

最初はみんなメニューを見てやべえよこれ………みたいな顔をして比較的まともそうな料理を注文していたが、アナスタシア王女殿下が少年Aに対してスライムのモツ煮を注文し食べるようにお願いしたのだ。

 

これに対して少年Aは顔にすごい量の汗を流しながら頷き、注文した。

届いたのはいい匂いのする鍋に、白い何かが茹でられたモツ煮。

 

俺たちが見守る中、少年Aがそれを一口食べ、そして驚いた顔をして次々と口の中に運ぶ。

 

非常に美味とのことだった。アナスタシア王女殿下と俺たちはモツ煮を注文し、モツ煮パーティとなったのだ。

 

 

 

 

そしてそれは起こった。

首無しが寿司屋や俺たちの残飯、唐揚げの骨や鍋の汁、小さな食べ残しなどから、なんと人魚と同じように『蘇りなさい』と唱えたのだ。

 

 

そうして大量のアンデッドが誕生してしまった。しかし人魚とは違ってすべて骨だけであり、肉はない、それどころか意思もない。ただの操り人形だ。

 

首無しは人魚の時は彼女の夢を叶えることが目的だったので、意思や記憶、人格、肉体を生前と同じように作ったとのこと。

 

そしてこれらは使い捨ての軍隊として生産したのだと。

このアンデッド軍団を俺にくれた。造幣局のホムンクルスがボーナスとしていくらか払っていた。

 

とりあえずショッピングモールの隅っこに詰めておく。怖いし、キモい。

 

 

 

 

 

さて。

 

 

 

今日のログインボーナスは『学校関連アイテム確定ガチャコイン』だった。

 

 

学校関連アイテムねえ。

やっぱり文房具とかが排出されるのかな。でも今別に欲しくないんだよなぁ。

 

いやもしかしたら教師や生徒などのユニットが出てくるのかもしれない。その場合はホムンクルスの教育を任せよう。

 

あっ、大学なんかも出てくるかもしれない。教育施設が出てきたら領土の拡張もできるからな。

 

 

 

よーし、少し期待できそうだ。

 

 

レッツ、ガチャ!

 

 

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

 

 

R『二宮ダイヤモンド治郎』

 

 

 

 

二宮金治郎、本名二宮尊徳は江戸時代後期、1787年に生まれた農政家だ。

この人が何をしたかというと、天保の大飢饉により飢えに苦しむ多くの荒廃した村や町を復興させたのだ。

さらに荒れ地の開墾、藩の財政の再建などを成功させた。そんな彼をまつる二宮神社が存在する。

 

二宮金治郎の銅像は薪を背負いながら本を読んで歩く姿であり、この姿は「負薪読書図」と呼ばれ、報徳記に記述されている。

勝海舟と面識があり、正直な人と語っている。

 

 

 

そんな二宮金治郎の像が出現したのだ。学校にあるような、しかしダイヤモンドでできた、二宮金治郎の像が。

 

いや、そもそもこれは二宮金治郎なのか?カプセルの中の紙には二宮ダイヤモンド治郎と書いてあるし、この像にもダイヤモンド治郎と刻まれている。

 

金がダイヤモンドに進化しているのか、だじゃれかよ。くだらない親父ギャグだ。

 

そういえば、ダイヤモンドなんて初めて見たな。結構綺麗だ。加工されたダイヤモンドの多くの面がキラキラと光が反射して、美しいと感じてしまう。

 

 

 

ただ、一つだけ言わせてくれ。

 

学校にダイヤモンドの二宮金次郎像はない!

 

 

 

 

 

今日の無料ガチャ!

 

 

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

R『玉座』

 

 

玉座。皇帝や王などの君主がすわる椅子。

 

 

出現したのはイベントスペースだった。イベントスペースのステージ横に設置されていた。

 

玉座と一緒に出現したのか、何段かの壇の上に設置されてあり、玉座までの壇上の道を赤いカーペットが敷かれている。

 

それは大きく豪華で、威厳があった。

 

金で出来た玉座には様々な装飾が施されている。鳥や獣の形をした彫刻、宝石や貴金属で作られた装飾品が飾られており、これらの装飾品は王の権力や富、高貴さを表現をしているかのようだ。

 

玉座には赤いクッションが設置されており、質のいい布を使っているのか長時間座っても疲れなさそうだ。

 

俺はクッションに触れる。ふかふかだ、手触りもいい。

 

 

 

システムウィンドウが展開された。

 

 

ん?

 

 

『コレクションアイテム!覇王の財宝シリーズのコンプリートを目指そう!現在の収集状況1/1000』

 

 

 

 

 

 

 

あのな、ガチャからは何が出るのかわからないんだよ。

 

1000個も集められるか、運営のクソやろう!こんなコレクションシステム設計してる暇があったらもっと他のことしとけ!

 

 

 

 

 

 

 

明日で俺が監禁されてから30日になる。

30日目、ゲームならログインボーナスとして何か特別な物が配布されるはずだ。

 

………現状を変える物が排出されることを願う。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

30日目

本日で俺がこの白い部屋、いやショッピングモールに監禁されて30日になる。

 

30日、つまりは一ヶ月間。これはゲーム的に考えて何を意味するか。

そう、特別なログインボーナス、30日連続ログインボーナスである。

 

 

そして予想通り、システムメッセージが2件届いていた。

 

 

まずはログインボーナス。これはいつも通り。今回は『乗り物確定ガチャコイン』だった。

 

そして、もう一通。

 

●いつもご利用いただき、誠にありがとうございます。ユーザーのログイン合計日数が30日に達しました!

これを記念して、特別なログインボーナスをプレゼントいたします。

 

 

今後も当社のゲームをよろしくお願いいたします。

 

プレゼントのボックスにR以上確定10連ガチャコインが追加されました。

 

 

R以上が10回!なんて太っ腹なんだ!

 

 

ああ、早く回したい!

 

 

 

さあ、まずは乗り物確定ガチャコイン!

 

 

ガタンッ

 

 

C『ドールハウス用 ワンボックスカー』

 

出現したのは、赤いミニカーだった。

 

 

 

………気を取り直して、無料ガチャ!

 

 

ガタン

C『イベントカード『惑星降下作戦』ガチャバトルカードダス第24弾『星間戦争収録』』

 

 

 

 

 

ま、まずい。

 

ここまでの2回のガチャで、最低レアのCが2回連続で排出された。今の俺は運がない。

運というのは流れがあるのだ、これは麻雀をやっていて気づいたが、流れに乗っている時は信じられないほど運が良くなる。

だが、いったん流れに乗ることに失敗し、そして悪い運の流れに乗ってしまうと碌な結果にはならない。

 

今、回すべきではない。理性では分かっている。

 

だけど、回したい!

 

俺は回したいんだ、だめなのに………。

 

 

あ、あっーーーー、誰か止めてくれ、俺を止めてくれー。

 

 

 

チャリンッ

 

 

 

あーーーーーー、いれちゃった。

はぁ、自分の意思の弱さが嫌になってくる。

でも、嬉しい、ガチャを回せるんだ。

 

 

来い、SSR!

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

R弾薬工場

Rペット用首輪

R緊急脱出装置

R1945年産ロマネコンティ1ダース

Rダンジョンコア(最低品質)

R神鉄

R決して消えぬ火

R寝台特急 北斗星

R防弾ガラス(戦艦用)

Rデンマーク王国祝祭

 

 

ぐ、ぐあああああああああ、全部Rだ!ひとつもSR以上が存在しない、そんな馬鹿な!

クソッ、やはり回すべきでは無かった!数秒前の自分が恨めしい!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、まだおまけがある。ディスプレイにはおまけとしてR以上確定ガチャが一回回せる!とある。

 

 

R弾薬工場

 

ショッピングモールの造幣局横に出現。

中に入ると工場のようになっていて、操作用のシステムウィンドウが展開されていた。

今現在生産できるのは、ゲパルトに搭載されてある対空砲用の弾とカワウソが持つ銃の弾だけのようだ。

 

そして生産するには資源が必要。だが俺は資源なんて持っていない、つまりこの工場の稼働は当分先だ。放置。

 

 

 

Rペット用首輪

 

ペット用の首輪とカプセルの中の紙に書かれてあるが、これは断じてペット用ではない。鉄で出来た分厚くて大きい輪っか。輪の直径は1mはあるだろうか。

 

邪魔なのでホムンクルス達に運ばせた。重そうなので運ぶのに苦労するかと思ったら数人で軽々と持ち上げて運んでいった。え、お前らってそんなに力持ちだったの?

 

 

 

 

R緊急脱出装置

 

 

ボタン。赤いボタン。樹脂か何かで出来たケースで覆われた赤いボタン。

そうとしか言えない。脱出、押すと何が起きるのだろうか。調べて見るとボタンの裏にシールが貼ってあり、押すとワープポイントにワープすることが出来るという。いや、ワープポイントちょっと歩けばあるんだが?

 

一回限りの使い切り。これもガラクタ置き場の比較的使えそうな場所に置いた。

 

 

 

 

 

 

R1945年産ロマネコンティ1ダース

 

ロマネコンティ。フランスのブルゴーニュ地方に存在する僅か1.8ヘクタールの畑及び、その畑から収穫されるブドウから作ったワイン。一年で6000本ほどしか作られず、1本100万円を下回ることは無い。

 

そんなワインが、冷蔵庫のような物と一緒に出現した。冷蔵庫の中には12本のワインが詰まっており、俺は飲んでみたいという欲望に駆られながらも、バーテンダーにこの冷蔵庫の管理を任せた。

 

バーテンダーは非常に驚いていた。そしてこの冷蔵庫は謎の動力で動いており、コンセントにつながっていないにもかかわらず動き続けている。

 

 

 

 

 

 

 

Rダンジョンコア(最低品質)

 

占い師が使う水晶玉のような見た目。ダンジョン、つまり迷宮の核という意味だろうか。それにしても最低品質ということは、もっと良いダンジョンコアがあるのだろうか。違いは分からんが。

 

触ってみると●ここではダンジョンを設置することができません!という警告が出現した。

 

このショッピングモールで動けないんじゃ、どうしようも無い。

 

 

 

 

R神鉄

 

一辺30cmの立方体の金属。重いのでホムンクルスに運ばせた。

機械馬の解析では、鉄と非常に似ている、しかし全くの別物らしい。鉄の完全上位互換と話していた。

 

どうしようもないのでこれもガラクタ置き場行き。

 

 

 

 

R決して消えぬ火

 

 

火。何らかの液体で満たされた器の中で燃え続ける火。水を掛けたが消えることは無かった。

ガラクタ置き場に置くこともできないのでイベントスペースに設置。

 

 

 

 

 

R寝台特急 北斗星

 

北斗星。かつて上野駅と札幌駅を走っていた、寝台特急。

 

 

 

これが一番驚いた。なんとショッピングモールに地下への階段が出来ていたのだ。

階段を下るとそこには駅のホームが存在し、青い列車が止まっていたのだ。

 

 

 

駅の電光掲示板は止まっていたが、中は電光による明かりが満ちていたし、クーラーも効いていた。

 

俺は他の駅にも移動できるのではと考えたが、ホームの両端は壁しか無かった。

つまり北斗星はここから動けない。

 

だが、俺は領地を広げることに成功したのだ!

 

 

 

………それにしても、駅の名前がヤマダショッピングモールって。もっと他に無かったのか。

 

 

 

 

 

R防弾ガラス(戦艦用)

 

ガラスの板。堅い。以上。

 

 

 

Rデンマーク王国祝祭

 

 

カプセルの中の紙に書かれた紙の意味は分からなかったが、出現した物をみて理解した。

これはインペリアルエッグ。細工師ファベルジェによって製作された卵型の飾り物。ロマノフ朝ロシア皇帝アレクサンドル3世に納められた物のことである。

 

しかしそのいくつかはロシア革命の際に行方不明となった。

これはそのうちの一つである。

 

 

……これはアナスタシア王女殿下に渡した。

 

 

 

 

 

 

 

ま、まずい。全部がRな上、使えそうな物がほとんど無い。ガラクタばかりだ。

 

今の俺は、悪い運の流れに乗っている。

 

 

 

………だが、俺は回すぞ。

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

おおおおおおお、金色のカプセル!SRと書かれている!

最後の意地を見せたな、俺の運、そしてガチャ!

 

 

 

 

 

 

 

SR『システム解放 国家指定制度』

 

 

 

………システム。俺はすぐにシステムウィンドウを展開し、用語一覧を見る。

 

 

 

 

用語一覧

『国家指定制度』

国家はユーザーを指定できる。指定したユーザーに対しクエストを発注し様々な取引を行うことができる。一度指定した場合専用アイテムを消費しなければ変更はできない。

指定できる枠は選ばれた1000人の中に自国の人間が何人存在するかによって決められる。

例 アメリカ人が1000人の中に10人存在。この場合10枠指定できる。

選ばれた自国の人間が一人の場合、その一人が強制的に指定される。

自国の人間が誰も選ばれていない場合、1枠が与えられる。

指定されたユーザーはその国家の代表であり、他のユーザーに対して交流戦を挑むことができる。

 

 

 

 

な、なるほど!選ばれた国の代表として戦うわけか!

 

ふーん、クエストねぇ。これは外交ってやつかな?視聴者の中の有力者と交渉して、欲しいものを得ると。

貿易の外交などを真似ているのだろうか。

まあ、視聴者からすればユーザーと交流が出来るし、ユーザーは欲しいものが手に入る。Win-Winの関係だ。

 

 

 

は?何人選ぶか決まっている?

これ、もし俺がこの指定国会制度を解放するのが遅い方なら、ほとんどの視聴者は他のユーザ-をもう指名してるんじゃないか?

 

 

 

…えっ、一度変更するには専用アイテムが必要?

 

 

まずい。もしかしたら、俺はこの制度を解放するのが遅れたのかもしれない。

だから1000位なのか?他のユーザーはこのシステムを解放してゲームを有利に進め、俺はゲームを進めてない。

 

 

 

 

システムウィンドウが開く。

 

 

ん?

 

 

『モナコの指定ユーザーに選ばれました』

 

モナコ!ヨーロッパに存在する、非常に裕福な国家じゃないか!

 

こんな国家がまだ指名して無かったのか!やった!

 

いやぁ、こんな国が俺を選んでくれるなんて、ありがたいなぁ。

 

 

 

さらにシステムウィンドウが開く。それも複数。

 

 

ん?

 

『モーリシャスの指定ユーザーに選ばれました』

『ツバルの指定ユーザーに選ばれました』

『シーランド公国の指定ユーザーに選ばれました』

『ルクセンブルクの指定ユーザーに選ばれました』

『東ティモールの指定ユーザーに選ばれました』

『モルディブの指定ユーザーに選ばれました』

 

 

んん?

 

 

 

『パラオの指定ユーザーに選ばれました』

『ナウルの指定ユーザーに選ばれました』

『アイスランドの指定ユーザーに選ばれました』

『ニウイの指定ユーザーに選ばれました』

『リトアニアの指定ユーザーに選ばれました』

『エストニアの指定ユーザーに選ばれました』

『クック諸島の指定ユーザーに選ばれました』

『マルタの指定ユーザーに選ばれました』

『ミクロネシア連邦の指定ユーザーに選ばれました』

『サンマリノの指定ユーザーに選ばれました』

『リヒテンシュタインの指定ユーザーに選ばれました』

『セントクリストファー・ネービスの指定ユーザーに選ばれました』

『マーシャル諸島の指定ユーザーに選ばれました』

『以下略』

 

 

 

 

…うわぁ、見事に小さい国ばかりだ。

え、どういうこと?

 

 

というか、日本が俺を指定していないんだが?

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

中小国家群指定ユーザー

俺は、この国家指定制度の情報から、これまでの考えを改める必要がある。

 

 

まず、視聴者とユーザーは日本人だけでは無い、多くの国籍の人間が集められていること。

これはまあ分かっていた。日本だけでここまで大がかりなゲームが開催できる物か。もっと大きな、国際的な組織が関わっている。

 

 

そして視聴者達は一枚岩ではない。むしろ競争相手だ。

 

視聴者は国家ごとの陣営に分かれて争っている。俺たちユーザーはその国家の代表として指名され、代理戦争を繰り広げるわけだ。

 

 

そして俺は日本人なので、『国家指定制度』を見た瞬間は日本は俺を指名してくると考えた。

 

だが結果として日本は俺を指名しなかった。単純に考えて理由は2つ。

 

一つ、日本の有力者の不興を買ったからだ。ガチャで排出された「 ドキュメンタリー 針村財務省大臣汚職の瞬間」 だ。あれが視聴者を貶める本物とは思わないが、それでも本人や彼を慕う人からすればいい恥だ。俺に怒って指定しなかったのかもしれない。

 

二つ、俺のランキングが最下位だということ。

俺のランキングが最下位なのは確定したので、俺を選んで戦わせても勝利が出来るとは考えず、つまり見切りをつけて他の国家のランキング上位者を選び枠を使い切ってしまったということだ。

 

 

 

そして俺は、予想外にも93もの国家に選ばれた。そのどれもが中小国家なわけだが、選んでくれたのは有り難いことだ。

 

ではなぜ選ばれたか。これも推測だ。

 

 

 

一つ 俺のランキング最下位注目される説が見事的中した説。

 

ランキングという物は一般的に考えて、上位の数人と自分のお気に入りや縁のある物、そして最下位しか見ない物だ。俺が最下位にいて、そして滑稽な俺を気に入った視聴者が登録してくれたのだ。

 

そして俺を登録してくれたのが、中小国家だということ。日本などの大国ならば、結構な数の視聴者がいるはず、そして誰を選ぶかには相当な議論が発生しただろう。だが中小国家は違う。中小国家の一つの国家の視聴者なんてたかがしれている。もしかしたら一人だけの視聴者の国家も存在したのかもしれない。

その場合、その限られた数人の人たちに気に入られば、選んでもらえる。

 

 

 

二つ目は、交流戦を避けるため。

 

 

 

 

用語一覧

 

 

『交流戦』

●交流戦

 

ユーザー同士で行われる戦い『交流戦』。

交流戦は原則としてユーザー同士の合意の上で行われ、また国家からの要請を受けてユーザーが同意することで運営主催のもと行われる。

 

交流戦勝者は運営より報酬を与えられ、それとは別に国家とユーザーは賭けを行うことができる。賭けた物品は交流戦終了後、勝者に引き渡される。

 

交流戦は大きく分けて二つのゲーム形式が存在し、交流戦でユニットまたはユーザーが死亡しても交流戦後に弱体化し復活する『ヴァルハラ』。

死亡したユニットやユーザーは永遠に失われる『ラグナロク』の二つの形式が存在する。

 

また一定期間交流戦を行わない場合運営により強制的に交流戦が組まれる。

 

 

 

→ 交流戦へ

 

 

俺はこれをみて『交流戦へ』を押した。

 

 

すると出てきたのは。

 

 

 

●現在交流戦システムは解放されていません。システムを解放されるまでこのコンテンツを遊ぶことは出来ません。

 

 

 

 

そう、俺は交流戦システムを解放していない。つまり交流戦ができないのだ。

 

 

そして交流戦を一定期間行わないと運営に強制的に勝負が組まれるのだという。

つまり、交流戦をしたくない一部の国家が俺を指名したと思われる。

 

 

しかし一つの疑問が残る。交流戦をしたくないのなら、誰も指名しなければいいのでは?

 

これに対する反論は、視聴者は誰かしら指名しなければならない。だから苦肉の策として俺を選んだ。だがそれなら適当なランキング上位者を指名すればいい。勝手に戦って高確率で勝ってくれるだろう。

 

さらに言えば、俺はこの国家指名制度をガチャで引き当てたのは、ユーザーの中で遅い方だったのか?

今考えると、何がでるかまったく予想が出来ないガチャでこのシステムを引いたのは結構な確率だ。

俺は、もしかしたらユーザーの中でも早いほうだったのでは?

 

 

だがそれだと、日本が既に枠を使い切っている説は無くなる。

 

 

 

………考えても、わからなかった。もしかしたら、用語解説では説明されていない、ルールがあるのかもしれない。実際にやってみなければわからない。

 

 

考えても無駄なので、俺は業績を見ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『業績 国家から指定される。』

『報酬として兵士確定10連ガチャコインがプレゼントボックスに追加されました』

 

 

 

『業績 10以上の国家から指定される。』

『報酬として住居確定ガチャコインがプレゼントボックスに追加されました』

 

 

 

『業績 50以上の国家から指名される』

『報酬として高レアリティユニット確定ガチャコインがプレゼントボックスに追加されました』

 

 

 

ガチャの時間だ!

 

この3つの業績で俺は3枚のガチャコインを手に入れた。しかもそのうちの1枚は高レアリティユニット確定ガチャ!

 

SSRの首無しがなんやかんやで活躍してくれているため、かなり期待できる!

 

そして他の2枚も兵士が10連、おまけでさらに一人、そして住居が手に入る!

これで家具屋の生活ともおさらば出来るかも!

 

 

 

それでは、兵士確定10連ガチャコイン!

 

 

 

 

 

 

C 潜水艦搭乗員

C 衛生兵

C 空軍戦闘機パイロット

C 士官学校学生

C 音楽科兵

C 広報室職員

C 補給兵

C 通信科兵

C 従軍聖職者

C 空母機体整備員

C 従軍記者

 

 

 

 

 

 

うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!

まともな兵がいない!ほとんど実戦に使える兵士じゃない!

今、空母も潜水艦も戦闘機も無いんだよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『イギリスvsエジプト交流戦 エジプトの勝利』

 

 

イギリス指定ユーザーとエジプト指定ユーザーが激しく戦った交流戦で、エジプトが勝利を収めました。この勝利により、一部のアイテムがエジプト指定ユーザーに譲渡されました。

 

さらに、この勝利によりイギリス政府は、大英博物館に収められていた貯蔵品をエジプトへ譲渡することになりました。これは、エジプトが自国の文化遺産を取り戻すための一歩としてエジプト国内で支持されており、現地では勝利に沸く人たちであふれています。

 

大英博物館には、古代エジプトの遺物が多く収蔵されており、これらの貯蔵品はエジプトに返還するよう求める声が上がっていました。今回の譲渡により、エジプトの文化財保護に向けた重要な一歩が踏み出されたとエジプト国内では評価されています。

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

新たな家

 

 

排出された11人の兵士はすべて若い男性で、まともな人間だった。

彼らは自分がガチャで生まれたということを自覚しており、そして一般的な兵士であり人間なため。首無しやカメラ人間に対し非常に驚いていた。

 

重要なのは彼らが兵士という設定のため、兵士としての教育を受けているということだ。

 

彼らはパイロットや潜水艦搭乗員など、今はその専門性を活かせないが、全員が体力やコミュニケーション能力、そして銃を使うことができるため戦力としては非常に有能だ。一部のユニットは銃を持参している。

 

動物兵ユニットとは違い、初めて人間の正規兵ユニットが手に入ったのだ。

 

さらに衛生兵がいるのは大きい。彼はこの中で唯一の医者であり、俺たちが怪我をしても適切な治療をしてくれる。健康面での不安も解消されたとみていいだろう。

ショッピングモールの空き店舗を医務室として貸し出した。

 

いつ、俺は交流戦システムがガチャから排出されるかわからない。

この地雷のような交流戦を引き当てるまでにある程度戦力を整えなければ、敵に蹂躙されてしまうだろう。

 

 

 

ではガチャの続きだ。

 

まずは住居確定ガチャコイン。これは非常に嬉しい。さすがに何十人で家具屋生活を送るのは限界だ。

もし普通の家が排出されたならば、家電一式や国土の拡張もできるだろう。

 

 

それでは、ガチャ!

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

UC『アポロホテル【プリンス東京】』

 

 

それは出現した。

 

ショッピングモールが僅かに長くなり、そしてその長くなったスペースに通路が新たに発生していた。その短い通路の先には、豪華に飾られたホテルのエントランスが広がっていた。

 

 

そしてエントランスにあるホテルの説明には要約するとこう書かれてあった。

 

ホテルアポロ。

俺でも知っている日本最大級のビジネスホテルグループ。そのグループの日本で最も巨大なホテルこそ、ここプリンス東京。地下5階、地上60階、高さ200メートル以上の大規模ホテル。

 

なんと客室は2000を超えるという。やった!つまり最低でも2000人までガチャから排出されても大丈夫ということじゃないか!

 

地下にはレストラン街、無人で食材なども置いていなかったが広がっており、そして大きな宴会場まで設置されてあった。

 

公衆浴場よりもより大規模な大浴場、プールやジム、屋上の展望台に結婚披露宴会場!

 

 

すごい、これで生活の質上がるなぁ。

 

幸いにして電気ガス水道は使い放題のようだ。俺たちはフロントで鍵をかっぱらい、好きな部屋を占有した。

どの部屋にだれがいるか分かるようにフロントのパソコンに入力し、そして家具屋から好きな家具などを持って帰って自分の部屋に置いた。

 

これで完全なプライベート空間を手に入れることが出来た。

正直、すごく気が楽だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一眠りして俺はガチャの前に戻ってきた。

 

 

 

 

 

高レアリティユニット確定ガチャコインだ。高レアリティ。高レアリティというのが分からない。ゲーム的に考えてSR以上だろうが、この運営は意地悪なのでもしかしたらR以上かもしれない。

 

 

だが、どんな奴が来ても大丈夫。

今までいろんなユニットが出来たほとんどが役に立つか将来的に役に立つ可能性を持った奴だ。

 

さあ、来い!

 

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

お、金色だ!SSRって刻まれている!来たっっ!

 

 

SSR『地球外侵略金属生命体』

 

 

 

 

 

 

耳障りな音が響く、きゅうきゅうと、機械のような音だ。

 

空中にワープ空間の入り口のような物が開く。これまでのガチャは何も無いところから突然発生していた。こんな入り口が発生したことは無い。つまり、特殊演出。

 

 

 

 

どちゃり。

 

 

ワープ空間からそれは墜ちてきた。

 

 

出現したそれ、いや物は蠢いていた。ぐちゃぐちゃと。どろどろと。まるで液体のように、しかし意思をもって動いていた。スライム状の塊となって、無言でこちらをみる。

 

 

 

あ、やばい。俺またとんでもないもの引いちゃったよ。

 

 

鑑定!

 

 

●『地球外侵略金属生命体』

 

液体金属で構成された生命体。触れた物に対し侵食を行い、文字通りすべてを吸収する侵略生命体。吸収したエネルギーで増殖を行い圧倒的な物量ですべてを吸収し、それらのコピーを行う。別名星喰らい。

 

 

 

 

わーお。

 

 

う、宇宙人だ。地球産ですらない。

 

しかも友好的じゃないよ、どう考えても人類に対して敵意ましましだよ。

 

………あーーーーーー、初のSSRが首無しでよかった。こんな奴の仲間が5体とかマジでやばかった。

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

プルプル、僕悪い侵略生命体じゃないよ

宇宙人、しかも侵略生命体である。首無しの時とは違ってそもそも地球の生き物ではないし、意思の疎通はできない。

 

首無し曰く、ガチャから排出されるユニットは俺の命令に対して拒否することはできないらしい。

なので、俺は

『勝手に吸収、侵略するの禁止』

『勝手にコピーするの禁止』

『勝手に増殖するの禁止』

『地球と生き物に対して攻撃禁止』

 

などの命令をした。

 

 

こいつは俺の命令に対しても何も反応せず、ぷるぷるとしていた。

 

だがこいつはどれだけ厄介そうに見えてもSSR。何かしら役に立つかもしれないし、こいつの性質を解明するためにも検証が必要だ。

 

そこで俺はある物を吸収させてみようと考えた。

 

 

とりあえず、九十二式7.7㎜機銃を侵食吸収、増殖するように命令した。

 

すると宇宙人(これからはスライムという)は、機銃に取付くとキュオンキュオンという音を発生させながら、機銃の表面全体にその体積を拡大させながら纏わり付き、そして波打ちながら機銃を覆い尽くした。

 

 

それからしばらく立つと、機銃はスライムによって吸収されたのか跡形も無くなり、スライムは機銃の体積分大きくなった。

 

ここまでは想定通り、俺は機銃をコピーするように命令するとスライムは九十二式7.7㎜機銃の姿となった。見た目は銀色の金属で出来た九十二式7.7㎜機銃そのままだった。

 

 

なるほど、見た目はスライムと同じ色の金属に変わっているが、ほぼ完璧にコピーできるのか。

 

よし、もう元に戻っていいぞ。

 

………

 

機銃は俺の方向を見て、黙っている。何かを俺に訴えかけているようだ。

 

 

………なんだ?よく分からないが、俺たちを傷つけないなら、何でもしていいぞ。

 

スライムはショッピングモールの壁を向くと、ドンッという銃声とともに一発の弾丸が発射された。

 

 

●破壊不能オブジェクトです!

 

 

銃弾は壁の手前に落下し、液体金属となって機銃の元に戻る。

 

 

 

スライムは元の姿に戻り、10体ほどに分裂した。

 

その見た目はなんだか誇らしげだ。

 

 

 

………えっ、その機銃には銃弾は入ってないはず。こ、こいつ、どうやって銃弾を生み出したんだ?

まさか、学習したのか?吸収した機銃から、この機銃がどういった物なのか、これを動かすには何が必要なのか学習理解して、その結果として弾丸が必要だと考え生産し、発射したというのか。

 

 

………こいつは、俺が思ったよりもまずいかもしれないな。

俺は餌として与えるオレンジジュース以外の侵食吸収コピー、増殖、そして機銃の姿となることを禁止した。

 

 

 

 

 

では、今日のログインボーナスは『宇宙関連アイテム確定ガチャコイン』

 

宇宙、なにがでるにせよ、今は必要の無いものだ。

 

 

 

それでは、ガチャ!

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

C『自転車』

 

自転車。英語ではバイク。ふたつの車輪を前後に並べた構造をもって走行する二輪車のこと。

その起源は1817年にドイツ人のカール・フォン・ドライス男爵が発明したドライジーネが起源。

第一次世界大戦、第二次世界大戦では自転車部隊が多く設立され、自動車が量産されるまでは活躍した。

日本の道路交通法では「軽車両」に分類される。

 

 

 

 

 

…自転車?

 

出現したのは、何処にでもあるような鍵なしの赤い自転車だった。

 

………え、なんで自転車?宇宙関連アイテムだよね。

 

 

………宇宙飛行士が体力強化の訓練に使っている自転車だろうか。

鍵なしの自転車らしいので乗ってみる。うん、普通の自転車だ。

 

そう思っていると自転車が浮き出した!自転車が空を走っている!ゆっくりとだが確実に進んでいる!

 

 

 

うう、面白い。このまま俺はショッピングモールの2階に向かおうとする、しかし自転車がひっくり返った。うわぁ、墜ちる!

 

と思ったら、落下しなかった。俺と自転車は逆さまになって走り続ける。

 

 

 

検証の結果、自転車に乗っているあいだ、自転車の周りが無重力になることがわかった。

 

 

うーーん、これは宇宙関連アイテムなのか?いや、これってあの指と指を合わせる映画の自転車なのか!?

 

 

 

 

続いては、無料ガチャの時間です。

 

さあ、来い!

 

 

 

 

 

R『スキル【ミダースの手】』

 

ミダース。ギリシャ神話に登場する王の一人。

オリュンポス十二神の一柱、ディオニュソスの養父を助けたことでその礼として、触れたものを黄金にする能力を願い授かった。彼は枝や石を黄金にし喜んだが、しかし食べ物や飲み物も黄金に変わり餓死の危機に陥る。

飢餓からの解放を彼はディオニュソスに祈り、そしてこれを聞き入れたディオニュソスはパクトロス川で行水するように命じ、その通りにすると川底の砂が砂金に変わり、能力は失われたという。

これとは別に、王様の耳はロバの耳で耳がロバになった王様としても有名。

 

 

 

このカプセルを開けても何も起きなかったのでシステムを開きスキル一覧を見ると、浮遊に加えてミダースの手というスキルが加わっていた。

 

 

なるほど、排出されるスキルは自動的に俺に取得されるタイプと電気ショックのように本として出現するタイプの2つなのか。

 

 

さて、スキルの詳細は………

 

 

●ミダースの手

スキルを使用すると触れた物体を金に変えることが出来る。消費魔力は黄金化する物体の体積に比例する。黄金に変えた物体に対しもう一度触れてスキルを使うと、元の物体に戻る。

 

 

………よかったぁ、これで餓死することはなさそうだ。万が一のことがあっても元に戻せるらしい。よかったよかった。

 

俺は早速みかんジュースを黄金化した。へえーこれが金か。結構綺麗だな。

 

 

………さて。

 

 

クエスト機能という物がある。このクエスト機能は指定国家制度の解放に付属してきた、システムの一つだ。

 

 

 

 

●クエスト

ユーザーとユーザーを指定した国家はクエストという形で取引を行うことができる。基本的に国家からユーザーに対してクエストは発注され、ユーザーの側からはできない。

発注できるクエスト数には制限が存在する。

 

取引は基本的に対等な関係かつ、等価交換で行われる。

 

 

 

今日の朝からこのクエストが数多く届いていた。

ほとんどがベーコンキャベツと生活必需品との交換を希望していた。

 

 

だが、このミダースの手というスキルを習得してから、一つのクエストが届いた。

 

 

 

 

●『君の建国を認めよう』

依頼主 シーランド公国 マイク・バーツ公

要求品 金100キロ

報酬  山田ドラゴンガチャ王国の承認と山田ドラゴンガチャ王国とシーランド公国との間の平和友好条約の締結

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

基本的にガチャから出る物は微妙

シーランド公国。

 

イギリス南東部に浮かぶ、第二次世界大戦時に建設された海上要塞を占拠、そしてそれを領土と主張する自称国家である。まともな国はこの国家を認めていない。

 

なぜイギリスはこの不法侵入者を海上要塞から追い出さないのか?それは裁判の結果この海上要塞がイギリスの領海の外にあるとして司法の管轄外であると判決が出たため、手が出せないからだ。

 

こんな自称国家だが、なんとかつて西ドイツ人によるクーデターが起きており、その際はヘリコプターと兵士20人で奪還作戦を行い、国を取り戻している。そしてクーデターの実行犯は西ドイツ政府が派遣した正式な外交官との交渉によって解放、その後シーランド公国亡命政府を樹立した。なおシーランド公国はこれがきっかけでシーランド騎士団を結成した。

 

爵位を売っており誰でも買うことが出来る。さらにいえば一度国そのものが売られている。

 

2回ほど国土が半焼している。

 

 

 

まさにとんでも国家なわけだが、そんな自称国家の長がなぜ視聴者の中にいるのか、そしてこの自称国家の承認と条約に金塊100キロの価値があるのか、謎は深まるばかりである。

 

 

だが、用語一覧ではシステムは等価交換だと書いてあった。

 

俺が思っている以上に、独立の承認は価値があるのか?もしかしたら、業績の中に国家の承認や条約があって、だからそれを含めての等価交換なのかもしれない。

 

 

他の中小国家がなぜ俺に対してシーランド公国と同じような報酬のクエストを発注しないのか、それは自称国家の承認でさえも金100キロと高額なのだ、普通の国家の承認なんて今の俺では同じ価値の物品を納めることが出来ず、結果として放置、そしてクエストの発注制限のあるため無駄だと考えて発注しないのかもしれない。

 

 

そもそも、金100キロを生み出すにはかなり時間がかかる。俺の魔力は32………なぜこんなに上がっているんだ?ラジオ体操と武功の訓練の結果かな?

 

まあ、明日までには終わるだろう。

 

 

俺は他の国家とベーコンキャベツと微量の金との交換で、生活必需品を大量に手に入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日のログインボーナスは無料ガチャコインだった。

いつも通り。

 

 

それではガチャ!

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

C『電子マネー  一万GP分』

 

 

電子マネー。実物の現金を電子データに変換、これをカードやスマートフォンのアプリを通して店などで使うことが出来る。

これにより、キャッシュレスを行い、レジなどでの取引を円滑にすることができる。

 

 

 

 

 

そんな電子マネー。しかも山田ドラゴンガチャ王国の正式な通貨の電子マネー。だが俺はGPが電子マネーとして使えるようになっただなんて知らない。

 

 

 

造幣局のホムンクルスに調べさせたところ、いつの間にか造幣局のオフィスに電子マネーに関するデータや機材がまとめて置いてあったらしい。

 

調べて見るとスマートフォンに電子マネーアプリの配信が出来、そして何故か俺のアカウントが勝手に作られており、俺の口座に10000GP分入金があったようだ。

 

 

だが、これを使うための通信端末はない。そもそもショッピングモール内の店は電子マネーに対応していない。

 

 

 

 

放置。

 

 

 

 

 

 

 

 

では、無料ガチャ!

 

 

 

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

C『スパゲッティ・アッラ・カルボナーラ 』

 

誤解されがちだが、カルボナーラは、炭焼パスタという意味のパスタソースである。チーズ、鶏卵、黒コショウ、グアンチャーレまたはパンチェッタという塩漬けの豚肉を使う。しかし日本では入手困難なためベーコンを一般的に使用する。

 

元々はローマの料理だが詳しい起源は不明。このカルボナーラというソースをパスタのスパゲッティにかけたものをスパゲッティ・アッラ・カルボナーラと呼ぶのだ。

 

 

 

 

 

 

出来たてなのか、アッツアッツの湯気が漂っている。

溶けたチーズにカリカリのベーコン。

 

パスタは、真っ白で、表面には滑らかで濃厚なソースがたっぷりとかかっている。

 

ソースは、明るい黄色で、クリーミーでとろみがある。

 

さらに、カルボナーラ全体に黒胡椒が散りばめられている。

 

そんなカルボナーラは白いシンプルな皿に盛り付けられており、パスタが中央に配置され、周りにソースが広がっている。高級レストランに出てきそうな、美しく魅力的な一品だ。

 

 

 

欲しそうに見ていた7号と半分で分けて食べた。何か起きるわけも無く、普通のカルボナーラで美味しかった。

特に脂ぎったベーコンと絡んだチーズが美味しかった。

 

 

 

 

 

………最近ちょっとラッキーだっただけで、基本的にガチャから出る物はほとんど役に立たない微妙な物、または普通のものだ。

 

 

だが、今回は満足だった。

 

 

 

 

 

 

本日の鑑定

 

 

ダンジョンコア(最低品質)

 

ダンジョンを生み出すことが出来るダンジョンコア。このコアを通じて吸収される生命力からダンジョンの拡大、モンスターの生産などを行うことが出来る。このコアを壊された場合ダンジョンは消滅し、モンスターは破壊者の所有物となる。

このコアは非常に質が悪いためEランク以下のモンスターしか生み出すことが出来ない。

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

対価

従軍記者と広報室職員、カメラ人間が動画投稿を始めるらしい。

 

はぁ?動画投稿?どこに?どうやって?

 

彼らは初期装備として撮影機材一式と編集ソフトの入ったパソコンを所持していた。それらを使って運営に対して動画を送り、許可が出ればチャンネルに投稿してくれるようだ。

 

 

 

ちゃ、チャンネル⁈何を言っているんだお前らは。

 

 

どうやら俺たちユーザーには専用の動画サイトに個別にチャンネルが開設されており、チャンネルには俺たちの生活がライブ配信されているようだ。

視聴者はお気に入りのユーザーのチャンネルを登録し、何かあればすぐに見れるようになっているらしい。

 

らしいと言うのは彼らは運営に撮影編集した動画を送ることができるだけで、実際の動画サイトを見たこともなければチャンネルの管理も運営が行なっているので詳しいことはわからないそうだ。

 

 

動画に投稿されているのは俺のライブ映像とそのアーカイヴ、そして重要な場面の切り抜きだけらしい。

 

彼らはこのチャンネルに動画を投稿し、他のユーザーとの差別化を図り登録者を増やそうとしているらしい。

 

まぁ、頑張ってくれ。もしかしたらチャンネル登録者が一定数いけば業績の達成に繋がるかもしれないしな。

 

 

ちなみにどんな動画を投稿するのかと言うと、

 

 

『実演!銃の整備方法』

『アナスタシア王女殿下と少年Aによる皇室マナー講座』

『寿司職人マグロ解体ショー』

『衛生兵による応急手当てについて』

 

の4本の投稿を予定しているようだ。面白そうだ、頑張ってくれ。

 

 

 

 

 

さてさて。本日のログインボーナスはファンタジー確定コインだった。

 

 

ではまずは無料ガチャ!

 

 

 

 

HR『天候操作 猛吹雪』

 

出現したのは黒いリモコンだった。リモコンにはボタンが2つしかなく、一つは雪だるまのマーク、もう一つがOFFと書かれたボタンだ。

 

 

………うーん、鑑定するまでもないかな。このボタンを押せば猛吹雪が起きるということだろう。

 

ガラクタ置き場の中でも比較的重要、貴重そうな物が集められている場所に置いた。

 

 

 

 

それでは、ファンタジー確定コイン!

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

R『ユニコーンの角』

 

 

ユニコーン。額に一本の角が生えた馬に似た伝説の生き物。

 

 

そのユニコーンの角には水を浄化し、毒を中和する性質があるとされ、さらに病気を治す力を持っているらしい。

 

教皇パウルス3世はこの角を求めて多額の資金を費やしたという。

 

しかしユニコーンの角として市場に流通していたのはイッカクの角であり、オランダ経由で江戸時代の日本にも輸入されていた。

 

 

 

 

出現したのは、長い角だった。白色の、くるくると螺旋状にねじれている。

触ってみる。その触感はツルツルとして、先端は鋭利に尖っている。

 

 

首なしがアンデッドにしたいと言い出したが、もしかしたら薬などを作る材料、回復アイテムになるかもしれないので拒否、ガラクタ置き場に置いた。

 

 

 

 

 

………さて。

ついに、みかんジュースの金塊化作業は終了した。

 

全魔力を消費しては、休憩、そして黄金化を起きている間ぶっ通しで続けてきた。

100キロ、元蜜柑ジュースはかなりの量だ。

 

 

 

…それにしても、俺の説ではこの空間はVRMMOのはず。金塊なんか手に入れてどうするのだろうか。

 

 

 

まあいいさ。金の使い道なんてどうでもいい。

では、納品!

 

 

 

 

『業績!国家として認められました!』

 

『プレゼントボックスに政治関係アイテム30連ガチャコイン(おまけなし)が追加されました』

 

 

 

うおおおおおお!30連!今まででも最大10回だったのに、今回は30回!

金塊100キロ分の価値があるぞ!

 

 

 

 

レッツ、ガチャ!

 

 

来い、SSR!

 

 

 

 

 

 

 

 

C『国家ゆるキャラセット完全版』

C『書記官』

C『国会議事堂ジオラマ』

C『熊本県庁石川春馬のパソコン』

SR『王権神授説』

C『暗殺者スナイパー』

C『アメリカ大統領VSイギリス首相ガチンコバトル!』

C『黄色いベスト運動初心者応援セット』

R『交流戦拒絶権』

C『投票箱』

C『選挙掲示板』

SR『亡命権』

UC『国会議員バッジ』

C『一兆ジンバブエドル』

HR『ロックオンアンドシークレットファイル(一回限定)』

SR『運命教会最高司祭 アリス』

HR『オルテンシア王国王室料理人兼騎士団第8席 氷炎のパーシヴァル』

C『応援ポスター』

C『『惑星地理院長マグナ』ガチャバトルカードダス第四弾『惑星変動編』収録』

C『プロパガンダ』

R『公文書図書館』

C『アメリカ独立宣言のコピー』

C『日本国首相宛てメッセージ』

R『二重スパイ』

C『国会食堂寿司定食』

C『ベルリンの壁のカケラ』

C『選挙カーのタイヤ』

C『拡声器』

C『アメリカ大統領専用機模型』

UC『名古屋城の鯱鉾』

 

 

 

ぬわぁぁぁぁぁぁ!SSRが一つもない!

 

そして玉石混合だ。反応に困る!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『アメリカ人ユーザーの農業生活』

 

アメリカ人ユーザー、現在のランキング996位のライアン・グリーンフィールド。

 

彼に与えられた能力は妖精顕現、アイテムは世界樹の苗という、微妙なものであった。

 

顕現できる妖精たちは戦闘向きとは言えず、その多くがのんびりとした者たち。世界樹の苗だって、妖精たちからすれば国宝にも匹敵する凄まじいものらしいが、彼にとってはただの木の苗だった。

 

そんな彼が始めたのは、農業だった。

 

何とかして作り上げた集落の妖精たちと共に、農家である彼は農業を始めた。

 

彼にとって地球の支配権だとか、祖国アメリカの覇権はどうでもいい。

 

今の彼は、自身だけの惑星と言う、誰のものでもない未開拓の土地が与えられたこと、そして夢にまで見た自分だけの農地を手に入れたことが、嬉しかったのだ。

 

だから戦力の拡大には消極的で、彼はこの前のレイドイベント『ビースト・ウォーズ』ではほとんど参加しなかった。偵察隊として少人数派遣しただけ。

 

 

その結果として、アメリカから失望されたのか指定されなかった。

 

だが、それでもいい。

 

彼の生産する野菜や果物は、妖精の魔法により非常に美味で、妖精が誘拐してきたという多くの人たちからも高い評価を受けている。

 

それで十分。

 

だが、懸念もある。もうすぐ強制的に行われる交流戦だ。

 

これがどういった物なのか、不安だ。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

解説回

ガチャから排出された30個のアイテム群。しかし大半がどうでもいい物なので、重要そうな物だけを調べていく。

 

 

 

 

 

C『国家ゆるキャラセット完全版』

 

 

ゆるきゃら。「ゆるいマスコットキャラクター」の略で、名産品の紹介など地域全般の情報PRに使用するマスコットキャラクターのこと。

 

有名なのは熊本の黒い熊、彦根城の白い猫、船橋市の梨の精霊だろうか。

 

 

出現したのは分厚い書類だった。この書類は誰が作成したのか、山田ドラゴンガチャ王国のゆるキャラのプロフィールやそのゆるキャラの活用方法が書かれていた。

   

そしてこの書類に書かれていたのは、デフォルメされた赤いドラゴンがガチャを回して涙を流しているというイメージ画像だった。

 

ドラゴンの背中には『山田』と書かれた紙が張られており、頭には7号をモデルにしたと思われる人形が乗せられていた。 

 

 

これはあれか?このドラゴンが俺なのか?馬鹿にしてんのか!  

 

 

 

                                                                               

 

 

 

C『書記官』

 

 

出現したのはスーツを着たアラブ系の男性。これからガチャから排出されたものの目録作成や今日何が起きたのか日誌を書いてくれるという。

 

あ、そういえば今まで何が出たかとか記録してなかったな。普通に役に立ちそうだ。

 

 

 

 

 

C『国会議事堂ジオラマ』

 

 

日本の国会議事堂とその周りをモデルにしたジオラマ。

しかしこのジオラマには俺の知る国会議事堂とは違う点が一つ。

 

国会議事堂の庭に、ジャガイモ畑が広がっている。おそらく第二次世界大戦時、食糧不足で国会議事堂の庭園も畑になったことを再現しているのだろう。

 

誰が何の目的で作ったのか不明。

 

 

 

 

 

 

C『熊本県庁石川春馬のパソコン』

 

誰だよ、石川春馬って。不用心なことにメモ用紙にパスワードとIDが書かれた紙がパソコンに貼ってある。

 

おいおい、だめじゃないか。こんなことしていると、俺みたいな悪い奴に使われてしまうぞ?

俺はパソコンにパスワードを入力してロックを解除し、中身を調べ始める。まずはメールボックスかな。

 

 

何々………弊社が入札予定の市民ホール建設計画の最低落札価格を教えて欲しい、いつも通り現金をレターパックでポストに入れて置いた。

 

 

あっ、これは汚職のメールだ。見なかったことにしよう。

 

 

 

 

 

 

SR『王権神授説』

 

王権神授説とは、ヨーロッパの政治思想である。王権は神から与えられ、神以外のいかなる存在にも王は縛られることは無いという思想。

 

出現したのは、一枚の書類だった。その書類は何故か非常に神々しく、一目で価値があるものだと理解させられるものだった。書類にはYOUR NAME とdeityという二つの単語のみ書かれている。

 

不明。しかしSRなので重要に保管。

 

 

 

C『暗殺者スナイパー』

 

出現したのは大きな銃を構えた物騒な男だった。彼は自分のことを殺し屋だと主張し、現地の警察組織に捕まりそうになっていたところを俺によって召喚されたそうだ。

 

………うわ、ガチの犯罪者じゃん。

 

 

 

 

C『アメリカ大統領VSイギリス首相ガチンコバトル!』

 

出現したのは一つのDVDだった。内容は過激な発言で有名な元アメリカ大統領と、いろんな意味で有名でイギリス国民に人気のある元首相が麻雀、射撃、格闘技で殴り合うという映像だった。

 

正直笑った、二人とも全力で殴り合って相打ち、そしてワインの洪水に流されるという結末は予想が出来なかった。

 

 

 

C『黄色いベスト運動初心者応援セット』

 

黄色いベスト運動。フランスで行われている、黄色いベストを着てデモをするという運動。

出現したのは火焔瓶10本。黄色いベストは?

 

 

 

 

 

R『交流戦拒絶権』

 

システムを確認すると、交流戦の項目には相変わらず、まだ交流戦を解放していませんと書かれていたが、その下に一回だけ交流戦をいつでも拒否することが出来るという一文が加わっていた。

今は役に立たないが、将来的に役に立つかもしれない。

 

 

 

 

 

 

SR『亡命権』

 

一枚の書類。亡命先とだけ書かれている。

 

 

C『プロパガンダ』

 

………不明。特に何も出現することは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

HR『ロックオンアンドシークレットファイル(一回限定)』

 

出現したのは、一つのファイルだった。ファイルの表紙にはO&Cと書かれており、開けようとすると

●名前を入力してください

 

と出現した。よく分からないので放置。

 

 

SR『運命教会最高司祭 アリス』

 

現れたのは、金色の髪に青い瞳の少女だった。見た目は司祭、という感じの、白と青のファンタジー風衣装を着ている。

 

彼女は俺が主神である宗教、『運命と幸運の神リュウ』を崇拝する運命教を設立すると宣言、そして自分はその最高司祭であると主張した。

 

ちょっとヤバイ子だ。

 

 

 

 

 

 

HR『オルテンシア王国王室料理人兼騎士団第8席 氷炎のパーシヴァル』

 

 

出現したのは一人の男性だった。白い髪に肩幅がでかい、好青年。

 

彼は火と氷を扱う料理のプロであり、私が来たからには美味しい料理をたらふく食べさせてあげます!とショッピングモールのフードコートを一部占拠し、たくさんの見たこともない料理を振る舞ってくれた。

脂っこくて味も濃く塩辛い肉と米とチーズがふんだんに使われたそれは非常に美味しく、歓迎会は大盛況だった。

 

あと彼は魔法はさっぱりらしい。騎士が得意料理を二つ名にするってどうなの?

 

 

 

 

 

 

 

 

C『応援ポスター』

 

応援ポスター。

………なのだが。このポスターに書かれている人物が明らかに人間ではない。ロボットだ。

名前はPDEHSMAKEN。政党は神学機械党。彼は設計図にある第12の使徒の建設を公約に掲げているようだ。

 

 

だめだ、何を言っているのかさっぱり分からない。

 

 

 

C『『惑星地理院長マグナ』ガチャバトルカードダス第四弾『惑星変動編』収録』

 

このユニットが召喚されたとき、デッキよりフィールドカードを3選び手札に加える。

 

またかよ!ガチャバトルカードダス!

いい加減にしろ!これで4枚目だぞ!何なんだ、一体何の縁があるんだよ!

 

そもそも、なんでこれが政治関連アイテムガチャから出るんだ?惑星地理院とかいう組織の長だからか?

いらねえよ!

 

 

 

 

 

R『公文書図書館』

 

ショッピングモール3階に出現。3階!さっきまで3階なんて無かったぞ!

 

3階の一角にそれはあった。中にはパソコンが多く設置されてあり、調べて見ると造幣局のものかと思われる書類、そして書記官が今書いている途中のアイテム目録が保存されていた。

 

 

 

 

 

 

C『日本国首相宛てメッセージ』

 

カプセルを開けると

●日本国首相にメールを送ることが可能です。メッセージを入力してくださいと書かれていた。

 

 

『俺を選ばなかったことを後悔しやがれ!』

 

 

 

 

 

 

R『二重スパイ』

 

真っ黒の矢。つや消しがされている。不明。

 

 

 

 

 

 

 

うーん、なんというか、よく分からない物がほとんどだ。これは鑑定するのは時間がかかるぞ。

 

まあ、とりあえずはレア度が高そうな物でいいか。

 

 

まずは亡命権かな。

鑑定!

 

 

 

 

●亡命権

 

この権利を所持した状態で亡命先の国家またはユーザーを選択、そして亡命権の行使を宣言した時、使用者の半径十キロ内に存在する生命体に対し、現在の陣営からの離脱を望む者は亡命(指定した国家またはユーザーの領土内に転移)することができる。

 

 

 

あっ。これは………。

もしかしたら、ガチャから排出されたユニットと不仲なユーザーがいるのかもしれない。そんなとき、これを使えば、他のユーザーに打撃を与えることができるのでは?

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

運命教会の実態

運命教会の自称最高司祭のアリスだが彼女は運命教の地盤を固めるために様々なことをし始めた。

 

 

まずはショッピングモールの一角を占拠し、運命教会の礼拝堂兼教皇庁を設立した。

 

といっても家具屋から椅子と机を持ってきただけで、正面に掛けられている看板も紙にマジックで教皇庁と書かれているだけだ。あとキャビネットの上にSSRカプセルが置かれており、彼女はそれに向けて祈っていた。

 

 

次に彼女が始めたのは布教だった。運命教会の神。つまり俺を信仰すれば望んだ未来を掴み取れ、さらに運に恵まれ幸せな暮らしを送ることが出来るといろいろな人物に布教し始めたのだ。

 

 

正直こんな胡散臭い宗教に誰も入信しないと考えていたが、驚いたことにそこそこの数の入信者がいた。

ホムンクルス数人に剣闘士のルーカス、殺し屋のスナイパー。

 

 

彼らは俺について行けば良い未来が待っていると考えているようで、俺を信じていると話してくれた。

 

ちなみに最高司祭のことは一切尊敬していないらしい。なので最高司祭の命令にも従わないという。

 

 

 

 

 

最後に彼女は教典『運命書』の編集作業に取りかかった。

 

どうやら宗教には教典が必要だと考えたらしく、俺がこの部屋に監禁されてからこの運命教の設立されるまでの過程を記した教典『運命書』の作成を始めた。

 

しかしその過程は行き当たりばったりのガチャを引くだけの代わり映えしない毎日。

だが彼女は雰囲気が大事だとして教典をそれっぽく書くそうだ。

 

何でも俺は運命と幸運の神、ホムンクルスが12人の始まりの子、蜜柑ジュースを恵みの聖水だとして蜜柑は運命教の象徴の一つらしい。ヘルメス神は俺に仕える神のようだ。

 

さらに言えば首無しが芸術の神、ガチャはあらゆる物が入っているアカシックレコードだと書かれてあった。

 

大丈夫?アカシックレコードの意味理解してる?

 

 

 

 

今日のログインボーナスは家電確定ガチャコインだった。家電。正直いって生活に必要な家電はホテルにほとんどあるから必要ないんだよなぁ。

 

 

それ。

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

C『ホームベーカリー』

 

家電製品の一つ。小麦粉、水、イースト菌を入れるだけで機械が自動で生地の生成、発酵、焼き上げることで誰でもお手軽に手作りパンを作ることができる。

 

 

出現したのは炊飯器のような黒い家電製品だった。なるほど、これがホームベーカリー。実際に見るのは初めてだ。

 

パンねぇ。俺はどちらかと言えば白ごはん派なのだが、ピザやホットドッグなどの惣菜パンは大好きだ。

 

 

だがこれででき上がるのは普通のパンだろう。とにかく使ってみよう。

 

 

ホームベーカリーと共に説明書が実体化してあり、そこにはメーカーや製造日、商品名に保証書、使用法が書かれてあった。

 

メーカー『ガチャ』

製造日『今日の日付』

商品名『どこでもいつでもパンメーカー』

保証書『故意に破壊しない場合はいつでも交換』

 

………

 

使用法の項目には150グラム入れてスイッチを押してくださいとだけ書かれてある。何を?いやまあ、小麦粉なんだろうけど。

 

俺は小麦粉が欲しいと叫び、次々と注文が来る中で一番初めに来たクエストを達成し、届いた小麦粉を機械に入れ蓋を閉じる。

 

いや、小麦粉だけでいいのか?水とか、イースト菌とか、他にも色々とひつようなんじゃないのか?

 

うーん、わからん。だがとりあえず、小麦粉を150g投入しスイッチを押した。

 

 

 

するとチーンと言う機械の音が鳴った。

 

 

えっ早。一瞬じゃん。これはあれか?一瞬でパンが作れるホームベーカリーという訳か。へー、便利じゃ無いか。

 

 

 

 

俺は蓋を開ける。そこには一つのカレーパンがあった。

 

 

茶色く揚げられた、カリッとしたパン。香ばしい匂いは鼻を刺激し食欲をそそる。

 

機械馬の検査の結果、特に有害物質は検知されなかったので食してみる。

 

食べてみるとパンはもちもちとしていて、中から熱々のカレーソースがあふれ出す。ニンジン、ジャガイモ、牛肉。具だくさんのカレーには複雑なうまみが溶け込み広がっていて、あっという間に食べ終わった。

 

 

一瞬でパンを製造するホームベーカリー。

作られるのはカレーパン。

 

 

カレーは一体、どこから来たんだ⁉

 

 

 

 

検証の結果、とにかく150グラムの物をホームベーカリーに入れるとカレーパンになることが判明した。

蜜柑ジュースを入れてもカレーパン。土を入れてもカレーパン。ゴミを入れてもカレーパン。

 

ゴミ箱として利用。非常にエコロジー。

 

アリスがゴミ問題を解決した瞬間だと運命書に書き足していた。

 

 

 

 

それでは無料ガチャ!

 

ガタンッ

 

 

R『50%割引券』

 

割引券。商品を購入する際に使うことで、決められた額を定価より割り引く、つまり安くすることができるお得なクーポン。

 

…出現したのは、黄色い紙に赤い文字で50%オフ!と書かれた紙だった。

 

有効期限はいつまでなのか、どこで使えるのか不明。

調べるとショッピングモール内のどの店舗でも使えるらしい。

 

 

…別に割り引くほどお金に困っていないので放置。

 

 

 

 

 

 

今日の鑑定

 

 

●王権神授説

神が王に与える正当なる王権、その証明書。この証明書に神の名と王の名を書き、両者の同意により発動する。王はその王権の正当なる権利者として活動することが神により認められ、国家はその神またはその神が所属する宗教を崇拝せねばならない。神はその権能を国家に対して使用しなければならない。

 

 

 

俺は、俺のことを崇めるアリスを見ながら考えた。

 

なぁアリス。俺のこと神様だと思うか?

 

はい。私、運命教会最高司祭は貴方様を神だと信じ信仰しています。

 

 

…これは、俺が神だと主張して、他のユニットに王権を授けることもできるのではないか?

そうすることにより、俺の権能、こいつ曰く運命と幸福の神である俺の力をこの王国に使えるのでは?

 

要検証。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

幸運カンストを目指せ

首無しがゴールドドラゴンの尿路結石でアイテムを作り出した。

 

 

ずっと前、俺はガチャより『ゴールドドラゴンの尿路結石』という、なんとも微妙な物を入手し。それを首無しが芸術品の材料にしたいと言い出したのだ。

 

聞き出した情報によるとゴールドドラゴンは非常に珍しく、その体すべてから高品質のアイテムが作成されることで高値で取引されていたらしい。その中でも尿路結石はレアもの中のレア。滅多にお目にかかれないそうだ。

 

置いておくのも勿体ないので俺は首無しに渡すことにした。

芸術家としての腕が鳴りますと言っていた。

 

 

 

 

そう、ネクロマンサー紛いのことをしているので忘れがちだが、こいつは自身を芸術家だと主張している。

ちなみに今でも唐揚げの骨などの残飯からアンデッドを作りだし、ホテルの地下宴会場に詰め込まれている。

 

 

そして完成したのが、この芸術品だ。名を『光の宝玉』。

 

傷一つなく綺麗に磨かれた金色の宝玉。それを支える金の台座。

 

宝玉の周りにはどういう原理か二本の円輪が宝玉の周りを浮かびながら回転している。

 

宝玉、台座、円輪。すべて透き通った金色の、非常に綺麗な芸術品だった。

 

 

 

でもこれ尿路結石なんだよなぁ。

 

 

 

首無しの解説では、ゴールドドラゴンは幸運の象徴であり、その体には幸運のエッセンスが込められているのだという。故にゴールドドラゴン製のアイテムは持つだけで幸福になることが出来ると信じられ、そして首無しが様々な魔術や技術を使い、その本質を最大限まで引き出したそうだ。

 

 

首無しは饒舌に語る。

 

このガチャからはこの世に存在する、いえ存在しないものまで、あらゆる物が排出されます。

もし、あなたが幸運を極めることが出来れば、ガチャのランダム性を無視して望む物を自由に手に入れることが出来るでしょう。

その点で言えばあなたは幸運だった。私という、一流の芸術家を引くことが出来たのですから。

 

 

 

俺は首無しの考えに同意した。

 

俺はこの宝玉に対して鑑定を行ったからだ。

 

 

 

●光の宝玉

制作者 首無し

ゴールドドラゴンの尿路結石より作られた一級品質のアーティファクト。

首無しが使用することの出来る高度な魔術と製造技術により生み出された、この世に1つしかない品。

ゴールドドラゴンの持つ幸運の力を最大限に引き出し、所有者には幸運が訪れる。

 

 

 

 

訪れるだろうでは無く、訪れる。断定している。鑑定のスキルが正しいならば、本当に俺は運が良くなっただろう。

 

 

 

 

 

そうだ、そうだよ。俺は自分のこれからの方針を定めた。

一つ、業績解放とランキング1位を目指しての国家の建設。

 

そして2つ目は、幸運のアイテムで武装して、幸運パラメータを限界まで引き上げる。

 

そうすることで俺は、ガチャに全てを委ねる生活から、ガチャを意のままに支配する生活に!

 

 

 

 

 

首無しと軍人、ホムンクルスなどの暇なユニットに命令して、俺の作り出した黄金より幸運グッズを作らせる。

 

黄金も幸運の象徴のような物だろう。首なしに聞くと微弱だが確かに幸運の力があると答えた。

 

 

俺は全てのユニットに、首無しから魔術と製造技術を学び幸運グッズを量を優先して作らせる。

なーに、黄金はいくらでもあるんだ。気にするな。

 

 

 

 

 

 

 

 

今日のログインボーナスはスキル確定ガチャコイン。

 

では、レッツガチャ!

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

R『スキル『レフトハンド・シルバースライム』』

 

 

………何も出現しない。つまりこれは自己自動習得型、つまりガチャからスキルが排出された時点で俺にスキルを自動的に習得させるタイプか。

 

 

俺はシステムウィンドウを開く。

 

 

 

●左腕をシルバースライムの肉体に変えることができる。

 

 

 

シルバースライム?

思い出すのは結構旨いスライムのもつ鍋。

 

というか説明少なっ

 

 

まあ、使ってみよう。

 

 

 

 

 

その瞬間、俺の左腕は固形としての形を失い、ゼリー状の、銀色の触手へと変化していた。

 

 

うわあああああああ、俺の左腕がッッッ

 

 

 

すぐにスキルの使用を中止。すると元の人間の腕へと戻っていた。

 

うーーーむ、肉体変化系のスキルか。こんな物も存在するのか。

 

俺は腕をシルバースライムに変化させ、右手で触れてみる。すべすべしてひんやりしている。

スライムはべとべとというイメージがあるが、実際は違うのか。

 

俺はスライムの左腕、触手を動かす。

 

結構便利だ。自由に伸ばせるし、枝分かれして複数のことを同時に出来る。

 

さらに………

 

俺は枝分かれした触手の先端を鋭利にとがらせ、的として置いたベーコンキャベツを串刺しにする。

 

うん、攻撃系のスキルとしても使えそうだ。

 

 

 

 

 

では、無料ガチャ!

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

SR『機能拡張 ガチャコール』

 

 

●アップデート!

ガチャの新たな機能が解放されました!

ガチャから入手した生物を除くすべてのアイテムを魔力を消費することで、ユーザーの周りに召喚することができます。

それだけでなく念動力を使うことで呼び出したアイテムをある程度操作することも可能です。

 

消費魔力は召喚または操作する物体の重量に比例します。

 

 

 

 

 

 

 

初めてのパターン。

 

ガチャに機能が追加された。やはり俺の方針、幸運カンストは間違いでは無い。

このまま幸運を極め、ガチャのアップデートを繰り返せば、SSR確定機能なども追加されるかもしれない。

 

 

 

 

………さて。俺は最初の方で排出しただるまを召喚する。すると目の前の床に出現した。

実験だ。前、後ろ、横。全方位に召喚可能。

 

さらにイメージするだけで、だるまは宙に浮いた。

 

 

 

結構使えるぞこれ。

 

 

 





【挿絵表示】



匿名希望の方よりいただきました!

イメージ通りです!ありがとうございます!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

インフレここに極まり

全ユニットの訓練が完了した。

 

暇なので体力強化の一環として、軍人主導の体力強化を兼ねた訓練を行っており、全ユニットの訓練が一段落した。

 

俺やホムンクルスは銃の整備方法を学び、さらに銃のリロードや射撃の使い方を習得した。

 

銃弾や銃はスライムが模倣し、それらを破壊不能オブジェクトであるショッピングモールの壁に対して射撃訓練を行った。銃の反動がここまであるとは思わなかった。

 

だがまあ、おかげで銃弾を的に当てられる程度には困らなくなった。

 

銃弾はスライムが無限に模倣してくれるからな。現在ショッピングモールの一部屋を武器庫として活用、全員分の銃と一定量の銃弾を保管中。スライムなので湿気や誘爆などの心配は不要である。

 

 

 

 

 

 

今日のログインボーナスは食べ物確定ガチャコイン。

さあて、何が出るかな。

 

 

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

C『最高級胡麻油100リットル』

 

 

胡麻油。胡麻の種を焙煎、つまり油や水を使わずに加熱乾燥させ、圧縮などから加工される食用油の一種。

ごま油に複数の油を加えた物を調合ごま油といい、ごま油のみのものを純正ごま油と呼ぶ。この最高級胡麻油は後者。

胡麻油はインダス文明でも使われていたという。

 

 

 

 

 

出現したのは、瓶に詰められた油だった。全部で100本。

 

蓋を開けてみると胡麻油特有の、香ばしい匂いが漂ってくる。

こういった物は専門家に有効活用してもらうべきだ。俺は料理人であるパーシヴァルに渡すと、喜んで持って行った。

彼のオルテンシア王国料理は油を多く使う、非常にカロリーが高く味の濃い料理だ。彼なら素材の良さを活かした料理を作ってくれるだろう。

 

 

後にごま油で米とベーコンキャベツを炒めたチャーハン?のようなものを作ってくれ、ごま油の匂いが鼻を刺激し、腹がいっぱいになるまで食べた。

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、無料ガチャ!

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

HR『ジョンとスティーブの何でもショッピング』

 

 

 

 

 

出現したのは、一台のテレビとリモコンだった。

 

 

俺はテレビの主電源ボタンを押し、テレビを起動する。

 

しかし当然のことながら、地上波やBC、CS、ケーブルテレビなどは見ることが出来ない。これはホテルの部屋に設置されてあるテレビがホテルの案内に関する放送しか見れなかったので予想していたことだ。

 

だがこのリモコンには普通のリモコンには本来存在しない、SPというボタンがある。

 

俺はそのボタンを押す。するとSP1チャンネルが映し出された。

 

 

 

流れているのは雪が吹き荒れる風景映像。その真ん中に、厚着をした太ったヨーロッパ人と思われる金髪短髪の男性が寒そうに震えている。

 

 

ぷるるるるるるるる。

 

電話がかかってきたようだ。

 

 

画面が切り替わり、室内にいる一般的な体格の金髪男性が映し出される。

 

 

「スティーブ!今元気?」

 

 

「うぅ、寒いよ。悪いけど電話する気力がないよ。」

 

 

「どうしたんだいスティーブ、今どこにいるの?」

 

 

「聞いてくれよジョン!今僕はルーアン星系の第9惑星にいるんだけど、ここすごく寒いんだ!太陽がずっと遠くにあるんだ」

 

 

「うーん、確かに星系の中心にある恒星からは遠いからね。仕方が無いよ」

 

 

「何か便利な道具はないかい?」

 

 

 

なるほど、これはTVショッピングか。役者であるこの二人が簡単で大げさな劇をして、商品の紹介をする。

 

それにしてもルーアン星系の第九惑星。つまり太陽系外の宇宙か。ずいぶんぶっ飛んだ設定だな。

 

これから紹介するのは、予想だがキャンピング用品ではないだろうか。外にいても暖かいテントやストーブ、あとはコーヒーメーカーとか。

 

 

 

 

 

「そんなスティーブに紹介するのは、このダイソン球!その名も『ラーの瞳』!エジプト神話の太陽神ラーの名を冠した、とってもすごい商品なんだ。」

 

 

 

だだだ、ダイソン球⁉ ラーの瞳⁉

 

 

 

 

「ダイソン球ってなんだい?」

 

 

「恒星を卵の殻のように丸々囲った構造物だよ。本来はエネルギー採取用なんだけど、この商品は熱源として転用したものさ。これを惑星の衛星として回転させるだけで太陽として活用できて寒さも解決さ!これで辺境の惑星もぽっかぽかだよ」

 

 

雲に覆われた灰色の空に切れ目が生じ、合間から太陽の光が差し込んでくる。

 

 

 

「すごいよジョン!雪がもう溶け始めてるよ」

 

 

「それだけじゃない。さらに今ならなんと、オベリスクが10本もついてくるんだ!熱源として転用したけど、エネルギー採取用の装置はまだ残っているんだ。このオベリスクを地表に設置するだけで、ダイソン球が採取した膨大なエネルギーが受け取れるんだ!」

 

「これでエネルギーには困らないよ!使い切れなかった分は電力会社に売って大儲けできるよ!」

 

 

「それだけじゃない、なんとこのダイソン球は兵器としても利用できて、長距離レーザー砲『メジェドの火』を放てるんだ。ラーの瞳は軍事基地としても有用だからね。」

 

「すごい!でもちょっと待って!宇宙に軍事基地があっても、僕はダイソン球に行くこともできないよ」

 

「心配ご無用!宇宙船である太陽の船が追加で付いてくるんだ」

 

「なんてお得なんだ!でも、お高いんでしょう?」

 

 

「お値段なんと9800億ガチャポイント!さらにこの放送から300年以内の注文なら800億ガチャポイント安くなるよ!一点限りだから早い者勝ちさ!」

 

 

「さらになんと、送料無料!希望する惑星に対してベストな場所に設置するよ」

 

「さらにさらに、アフターサービスとして恒星の寿命が来たときは回収するから安心してね」

 

 

「フリーダイヤル~」

 

 

 

 

・・・・・・・・・なんじゃこりゃ。

 

 

 

 

 

本日の鑑定

 

●二重スパイ

 

スパイに対して使用可能。この矢をスパイに向けて射るとそのスパイは自身の所属する陣営を裏切り、自身の持つ情報を全て教えてくれ、さらに所属陣営に対して虚偽の情報を流し、そしてこちらの望む情報の入手や破壊工作、暗殺などを行ってくれる。一回限りの使い切り。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

運命書『他宗教の取り込み ギリシアの章』

俺はあのテレビショッピングで紹介された商品、ダイソン球の通貨単位がガチャポイントである点に目をつけた。

 

ガチャポイントという単位の通貨を発行しているのは世界中でもこのショッピングモールの造幣局だけ。

 

俺は造幣局のホムンクルス職員に9000億ガチャポイント分の紙幣を刷って俺にちょうだいとお願いした。

 

 

だが、断られてしまった。

 

 

自分たち造幣局ができるのは通貨を発行するだけ。本来なら貴方達に通貨をベーシックインカムとして渡すこともできない。

 

しかし王がまだ国造りセットの国営銀行、財務省などをガチャから手に入れていないため、造幣局がかなり無理して運営に対して、通貨の流通のために一部機能の代行をお願いして、許可されているのでベーシックインカム制度を導入している。

 

ここからさらに大量の通貨を発行し、それを一個人に与えることなんてできないらしい。

 

 

 

 

うーん、なら、俺個人に対してじゃなく、王として、国家予算としてもらうことはできないか?と聞くと、

 

国債を発行してそれを我々が発行した通貨を使い銀行が買うという手段により、国家予算を増やすという方法があるが、ガチャから銀行を手に入れていないため不可能とのこと。

 

つまり、八方塞がりというわけだ。

 

 

というか、俺の国家、山田ドラゴンガチャ王国の国家予算はどうなっているんだ?

 

ホムンクルスが言うには国家予算が欲しければ、税収がなくてはならない。

だがそもそも、この国には税収がないとのこと。

 

 

うーん、確かにその通りだ。この国?には税法なんてものはない。

法人税は無料、所得税、住民税も無料だ。

 

 

そんなわけで、俺は住民税として、ベーシックインカムの1割、1000ガチャポイントの納税を俺は全国民に対して命令した。

 

俺はその徴税を造幣局のホムンクルスに任せようとしたのだが、自分たちは造幣局の職員であり、徴税の権利はない。国税庁や徴税官などをガチャから入手してくださいと言われた。

 

なんというお役所仕事。

 

俺は造幣局の隣に、投票箱を設置して一千ポイント入れてくださいと書いた紙を貼り付けた。

 

 

 

 

 

今日のログインボーナスはシステム確定ガチャコイン。

 

システム。予想される中であたりは交流戦のような、なんらかの情報を得ることのできる新たなシステムの解放。

もし当たりが出れば、非常にこのゲームを有利に進めることのできるシステムが解放されるかもしれない。

 

ハズレとしては、ガチャエフェクトなど、なんの意味もない無駄な物。

 

俺は当たりが出ることを願ってガチャを回す。

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

C『ブックメーカー』

 

ブックメーカー、ブックと本の英語があるが別に本は関係ない、出版社や本屋などではない。

 

賭け屋である。

賭ける対象は競馬などの定番から、スポーツの勝敗、選挙の結果など、さまざまな物が対象である。

 

また、書籍を編集する人という意味もある。

 

 

 

 

…特に何も起きない。システムを調べてもわからなかった。

 

 

 

では、無料ガチャ!

 

 

 

UC『スキル テセウスの船【残骸】』

 

 

テセウスの船とは一つの問題である。

 

昔、ギリシアにテセウスという若者がいた。彼はクレタ島の大迷宮よりミノタウロスを倒し、アテネに帰ってきた。

 

そんな彼の使った船を後世に残そうと、保全活動が行われた。しかし船は時代とともに朽ちていき、朽ちた木材は捨て、新たな木材へと入れ替えていった。

そしてすべての部品の交換が終えた時、人々は思った。

すべての部品が入れ替わったが、これはテセウスの乗った偉大な船と言えるのか。

本当の船は、あの朽ちた木材の山ではないかという話から、一つの問題が作られた。

全部の部品が入れ替えられたとき、その船が同じものと言えるのか。

 

 

 

 

何も実体化しないので自己強制習得型だ。

 

うーむ、スキル名はテセウスの船の残骸か。全く予想ができない。

 

それにしても、俺はギリシア神話と縁があるものだ。

ヘルメスのお地蔵様、ミダースの手。そして今度はテセウスの船か。

 

さて、スキル内容は何かな。

 

 

 

●テセウスの船の残骸はテセウスの船なのでしょうか。いえ、あれもテセウスの船です。

人間に置き換えるとどうなのでしょうか。

人間の体は絶えず細胞分裂が行われ、そして古い細胞は老廃物として排出され、少しずつですが確実に、すべての細胞は入れ替わります。

 

人間の老廃物である、垢、髪の毛、爪。それらはかつての貴方の一部です。そうこのスキルは認定します。

 

自分の体なら、自由に動かすことができます。爪や垢、髪の毛を自由に動かせるのです。浮かべ、猛スピードで動かすこともできます。垢人形を作るのもいいでしょう。消費魔力はありません。自分の体を動かすのに、魔力は使いませんからね。

 

つまりはそういうこと。このスキルは貴方の体から離れた、体の一部を動かすことができます。

 

 

 

 

…なんだこの解説文。

なんというか、口語体だ。俺に対してやたらフレンドリーに話しかけている。

 

 

これがブックメーカー?

 

まぁ、結構解説もわかりやすくなっているしいいか。

 

てか、髪の毛や垢を浮遊させるだけって、使い所がないスキルだ。

というか、髪の毛を浮かべさせる理屈、強引すぎるだろ。

 

あと、体の一部と話しているが、俺は今もこの体の一部である爪や髪の毛を動かすことなんてできないし、そもそも浮遊なんてできないぞ。

 

…あっ、俺浮遊のスキル持ってたわ。

 

 

 

本日の鑑定

 

●交流戦拒絶権

 

他のユーザーとの間で組まれる交流戦。

あらゆる種類の交流戦を一度だけ拒絶することができます。

 

いつでもどこでも、一度だけ。いつでもですよ?

 

 

 

 

 

山田氏が手に入れたプロパガンダというアイテムによって、彼のチャンネルの宣伝が既存の広告を上書きするという現象が起きています。この現象は、テレビや動画サイト、雑誌、看板、ポスターなど様々なメディアを通じて山田氏の広告が出現し、しばらくすると消えてしまうという現象です。

この現象が発生する原因や仕組み、解決方法を突き止めるために様々な調査を行っていますが、まだ完全に解明されていません。

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

お祝いの言葉を伝えよう

俺、山田竜は大学生3回生。

そんな俺が一ヶ月以上監禁された結果、少なくとも講義を4回は無断欠席?していることになるのだろう。

 

こういう場合って免除とかあるかな?拉致監禁されていたので欠席は仕方の無いことでした!なので単位ください!みたいな。

 

まぁそんなことあるはずもなく。というか、今頃愛すべき家族は俺の行方不明届を出しているが、警察は上層部の圧力でまともに捜査もせずに呑気にしているのだろうか。

 

 

だが、まだ大丈夫。俺は大学一、二回生の時に単位を多めに取ったんだ。

まだ4回生で多めに取ればなんとか留年せずに卒業ができるだろう。

 

 

だがしかし、今はユーザーに選ばれて、ガチャを回す生活を送れて良かったとすら感じ始める。

 

最初の頃は餓死しそうで辛かったが、今は多くの仲間から普通は経験することのない多くの経験を得た。

 

ガチャだって相変わらず訳わからないが、このガチャを回すのは楽しいし、SSRが出ると脳内から快楽物質が山のように生産されている気がして、とっても楽しい。

 

自分で言うのもなんだが、俺は暇が大嫌いで、楽しいことや面白いことが大好きなのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日のログインボーナスは通常ガチャコイン。

 

 

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

R『予告』

 

 

 

カプセルを開けると、システムウィンドウが展開された。

 

 

●レイド戦が解放されました!

 

●第3回レイドイベント『エンジェル・フォール』の開催が決定しました!

第1回、第2回ともになんとか異世界からの攻撃を退けることができたユーザーですが、今回はなんと天使の集団が相手です!

開催時期は未定ですが、今のうちに頑張って対天使用の装備やユニットを手に入れて、豪華報酬を手に入れましょう!

 

山田様には予告特典として、他のユーザーよりも30分早く、イベントエリアに入場することができます!

 

勝利条件

合計二十区のエリアを攻略する。

 

敗北条件

レイドイベント開催期間中に勝利条件を満たさない場合。

 

 

報酬

イベントランキングにより決定。

報酬交換所より入手

MVP、エリア指揮官撃破時に入手。

エネミー撃破ドロップ

など。

 

 

失敗時ペナルティ

『ゲート』が開く。

 

 

 

●レイドイベント

数多くの世界で構成される、異世界連合がユーザーの皆さんに宣戦布告!このままでは勝ち目はありません!全ユーザーの皆さんは協力して、異世界軍を打ち破りましょう!

 

●ゲート

異世界との扉。レイドイベントで敗北した場合、大量の異世界軍が押し寄せてきます!

 

 

 

 

レイドイベント、参加してないんだけど⁈

 

第三回⁈第一回は?第二回は?どうなってんの⁈

あれか?ガチャから手に入れてないからか?

ふざけんな!もっとシステム充実させろ!

 

勝ち目がありません?

 

そりゃそうだよ、ガチャでレイドイベント手に入れてないもん!

ほとんどのユーザーは参加できてないはずだよ。

 

 

 

 

 

……落ち着いた。

 

 

エンジェルフォール。単純に訳すなら、天使の落下。

 

勝ち目がないってシステムは話してるけど、タイトルで天使負けてるじゃん。

 

どっちだよ。

 

 

 

 

 

 

無料ガチャ。

 

 

C『おめでとうバズーカ』

 

バズーカ。制式名称はM1 2.36インチ対戦車ロケット発射器。

アメリカ軍が開発した携帯式対戦車ロケット発射機、その愛称。

 

 

転じて、同様の対戦車ミサイルや無反動砲、その他歩兵携行式の大型擲弾発射機を指す言葉になった 。

 

 

 

 

 

出現したのは、どこかチープな印象を与えるバズーカ砲。

とくに精密な装置は取り付けられておらず、ただの筒に引き金や持ち手をくっつけただけのように見える。

 

手に持ってみると非常に軽い。子供でも振り回せそうだ。

 

 

軍人さんたちに見せたところ、確実に本物ではなく、玩具だろうとのこと。

 

 

 

 

…さて。

この100均で売っていそうなこのバズーカ。

もしかしたら、ただのおもちゃではないのかもしれない。

なぜって?ガチャから出たからだよ。

 

実験として、一回引き金を引いて使ってみよう。

このおもちゃに安全装置などなく、そもそも弾がセットされていない。

 

俺はバズーカを肩に乗せて構え、引き金を引いた。

 

 

パンッ。

 

 

出てきたのは、クラッカーのような音と火薬の匂い、そして紙吹雪と『おめでとう』と書かれた旗だった。

 

 

どうやら宴会グッズのようだ。

 

 

俺はため息をつき、適当に何度もぱんぱんと引き金を引きながらガラクタ置き場に置こうとする。

 

すると少年Aがいきなり俺を殴りつけてきた。

 

てめぇッいきなり何しやがるッ。

 

それはこっちのセリフだ、馬鹿野郎!

 

俺と少年Aはしばらく揉み合い、両者疲れてから話し合った。

 

少年Aは語る、昼寝をしているといきなりおめでとう!という大きな音が聞こえ、誰が叫んでいるのか音源を見ると俺がいたそうだ。

 

 

鑑定の結果、どうやらバズーカの発射口から直線上にだけ、『おめでとう!』という音を放出するらしい。

 

その方向以外は無音。迷惑がかからないように、バズーカの発射口の方向にだけ、音を飛ばせるようだ。

 

説明書とか用意しとけ!

 

あと少年A曰く、鼓膜が破れるかと思ったとのこと。

 

 

 

 

日本指定ユーザーの沖田氏が交流戦で8連勝し、その影響で日本は好景気に沸いている。今回の交流戦では、ランキング下位の15人が同盟を組み沖田氏に挑戦しましたが、彼は危険に陥ることもなく圧勝しました。

 

この理由について、専門家たちは沖田氏の与えられたアイテムであるダンジョンコアと彼の能力の相性が非常に良く、また強力なユニットや改造された重火器の前に敵はなすすべが無いと指摘しています。彼はランキング1位を独走しており、沖田氏の快進撃はいつまで続くのでしょうか。

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

最低最悪の組み合わせ

ラジオ体操、それは朝起きて、ご飯を食べて、一息ついてから始める、曲に合わせて行う簡単な運動。

 

この閉鎖されたショッピングモール内での健康維持と、運動不足解消のために少しずつ、少しずつ、面倒臭かったり二度寝したりでサボる日もあったが、なんとか今日でラジオ体操を合計三十日間やり遂げた。

 

 

そして最初の日にもらったスタンプカード。これもスタンプが三十個溜まり、そして消失した。

 

 

呆然とする俺の前に、一つのシステムウィンドウが展開された

 

●BGM『ラジオ体操第二番』を入手しました!

 

 

このシステムウィンドウを見た誰もが思った。

……いらねぇ。

 

そもそも、ラジオ体操第二を知らないため、音楽が流れても誰も踊ることができなかった。何もどう踊ればいいかわからないため、適当にリズムに合わせて踊るだけ。新たなスタンプカードも出現してなかった。

 

 

 

 

今日のログインボーナスは人材確定ガチャコイン

 

 

 

人材!これはつまり、俺の支配下のユニットが手に入るということだ。

 

我が王国、山田ドラゴンガチャ王国の社会問題として、人口問題が挙げられる。

 

そう、人口。この王国では、ガチャでしか人口を増やすことができないのだ。

 

 

いや、まぁ。厳密にはもう一つある。だがまともな設備も人材もない中で、出産は危険すぎる。なので随分前に全ユニットにそういった行為の禁止を命じていた。

 

 

 

…さて。

 

この際、人間でも人外でもなんでもいい!さぁ、来い!

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

SR『愉快なマッドサイエンティスト達と研究所』

 

 

あっ、まずい。

 

 

 

 

ズドンッという大きな衝撃が上から聞こえた。

 

 

慌てて駆けつけると、ついさっきまでなかった、4階へのエレベーターが出現していたのだ。

 

 

そして、エレベーターから次々と彼らは現れた。

 

 

ある者は、全身を宇宙服で。

ある者は、ペストマスクをつけて。

ある者は、白衣を着て、しかし全身血まみれで。

ある者は、ロボットに乗って。

ある者は、魔術師のような格好で。

ある者は、機械の体で。

 

 

ゾロゾロと、エレベーターから何十人も降りてくる。

 

何人いるんだ、こいつら!

 

 

俺は鑑定スキルを使う。対象はエレベーターから見える4階の構造物。壁や天井が機械で覆われた、ハイテクチックな4階を。

 

 

鑑定!

 

●マッドサイエンティスト、それは夢とロマンを追い求める技術者です!

このアイテムはそんな目的のためなら手段を選ばない者たちが100人、さらに彼らが拠点とするプロメテウス研究所までついたお得なアイテムです。

 

彼らはあなたの文明を何段階も進めてくれるでしょう。

使い方にはご注意を。本当にご注意を。一歩間違えば全滅もあり得ます。

 

 

100人!こちらの人口を上回っている!王国内の勢力図が一変するぞ!

 

 

 

彼らは全員が出てきた、最後の方の人たちはまともそうに見えた、しかし非常に疲れているようだ。

 

 

そんな集団から、一人の女性が出てくる。

 

 

やぁ、私の名は鶴見博士。此度の召喚に応じた、この同胞達のリーダーを務めている。と言っても、彼らの中で一番常識があって、話が通じるから嫌々ながら投票でリーダーを押し付けられただけだ。同胞は私の命令に従わないし、そもそも私もリーダーとしてやる気がないので、心得ておくように。

 

 

は、はぁ。ご丁寧にどうも。俺は山田竜。これからよろしくお願いします。

 

 

今君、私のこと面倒な女だと思ったね?

 

 

いえいえ!滅相もないですッ叡智に溢れた、素晴らしい女性かと!

 

 

ふむ、褒められるのは悪くない。

 

 

さて。随分と興味深い者たちもいることだが。

 

 

彼らは浮遊する人魚、頭部がカメラの男、頭部がない男、未だひび割れた魔剣を興味深そうに眺める。

 

彼らは後回しだ。まずはガチャだ。

 

 

ガチャ?

 

そう、ガチャだ。何が出るかわからない、時空を超えて様々なものを排出する予想がつかないガチャだ。非常に興味深い。

 

 

さぁ、引いてみたまえ!

 

「「「「「「さぁ、さぁ、さぁ!!!」」」」」

 

 

クソがッ、先に無料ガチャを引いておけばよかった!

 

 

 

あぁー回したくない!最近は喜んで回していたが、今回は久々に回したくない!

 

こんなに回したくないのは首無し以来だ!

 

 

頼む、くだらない、しょうもないものを出してくれ!

 

ハズレが出てくれ!ガチャからの興味を無くすような、普通のものを出してくれ!

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

R『ホムンクルス製造機』

 

 

 

 

 

 

ドンッという衝撃がまた発生する。俺はカプセルを開けて中の字を見た瞬間、全力で衝撃のもと、上の階へとエスカレーター目指して走り出した。

 

マッドサイエンティスト達も俺に続く。

 

エスカレーターを駆け上がり、俺は4階のプロメテウス研究所へとたどり着いた。

 

よりにもよって彼らの研究所の隣に出現していた。

 

何十個も並べられたカプセル、大量の衣類とベッド。

その他用途不明の装置が山のように存在する。

 

 

注目すべきは、カプセル。

そのカプセルは液体で満たされており、そしてその中には、白髪赤目の人間、いやホムンクルスが入っていた。

 

ほう、これは興味深い。

 

だ、だめだ!こいつらにこの機械を与えたら絶対だめなやつだ!

 

最悪だ!なんでよりによって今出るんだ!

 

絶対にこれ使っちゃだめだからな!

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

研究所?兵器工場では?

あいつらやりやがった!

 

機械馬を分解しやがった!

 

目の前に広がるのは見るも無惨な機械馬、そのパーツ達。

 

あぁ、なんて可哀想に!

 

ホムンクルス製造機の使用禁止、俺やユニットの害となる物の製造禁止、そして俺と俺のユニットへの同意なしの実験禁止、さらに死の危険のある実験は行わないなど、とりあえず命令していたが、まさか機械馬が同意するとは思わなかった!

 

おい、機械馬!なんで同意したんだよ!ロクな結果にならないってわかってただろう!

 

肯定。しかし改造の誘惑に抗えず。

 

抗えッ、抗ってくれッ。

 

 

そう機械馬は無事である。目の前に広がっているのは、機械馬の後継機を作ろうとして、しかし飽きたので放棄されたパーツ群。

 

なんとこいつらは機械馬を分解、分析、組み立てを一回するだけで仕組みを完全に理解し、そして新たに機械馬を2体も作りやがった!

 

なんでも機械馬の魔力不足を補うために蜜柑ジュースの木より直接魔力の抽出を行い、そして活性化した武装を改造増設したらしい。

 

 

なーにが、陸海空宇宙万能型機械馬だッ。

 

無駄だろうッここには海もないし、空もない、宇宙なんか行けない!

意味ないんよッ。

 

俺はゴテゴテした武装を展開し俺に見せる(心なしか鼻息が荒い、目がキラキラしている)機械馬の前に、その言葉を出す直前で引っ込めた。

 

 

クソッ理屈ではわかっても、やっぱり憧れる!宇宙稼働ってすごい!

その武装をもっとよく見せてくれ!

なんだよ、このレーザービーム砲って!このバリア発生装置ってどうなってるんだ⁈

 

 

………………………

 

 

 

そんな彼らだが、シンオオサカニウムを発見してしまった。

 

ずっと解析を続けているにも関わらず、全容が全くと言っていいほどわからない摩訶不思議金属。シンオオサカニウム。

 

彼らはこの金属に興味津々で、機械馬が持つ解析途中のデータを見ていた。このマッドサイエンティスト共でも解析完了まで数日はかかるようだ。

 

たったの数日と考えるべきか、それとも数日もかかると考えるべきか。

 

 

 

 

 

 

今日のログインボーナスは無料ガチャコイン。

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

 

 

HR『HP』

 

『HP』ヒットポイントの略。ゲームなどにおいて、そのキャラクターやオブジェクトが、どこまで攻撃に耐えられるのかを表した数値。

この数値がなくなった場合、キャラクターは死亡、気絶、ゲームオーバー。オブジェクトの場合は破壊、故障、消滅などが発生する。

 

 

 

 

……俺の視界の右上に、突如として緑色のバーが出現した。

 

状況を考えるに、これがHPだろう。調べてみると、全員にこのHPバーが出現したようだ。

このHPバーは自分のものしか見ることができなかった。

このバーは任意で表示のオンオフを変更することができるようだ。

俺のバーは最大だ。

 

 

俺は自分の手で自分の頬を軽くビンタしてみる。しかしゲージは減らない。

当たり前だ。こんなことで減ってたまるか。

というか、自分のHPの総量を数値で見ることはできない。見えるのは緑色のバーのみ。

 

俺のHPはどのくらいあるのだろうか。

 

 

 

 

 

 

マッドサイエンティストの調査の結果、一種の安全装置のようだ。

バーが半分を切ると黄緑色となり、三分の一を切ると黄色に、1割を切ると赤色になるそうだ。

 

そしてどんな攻撃を受けても色が変化した瞬間にHPバーの減少が停止する。

 

例えば、HP満タンの状態でギロチンで首を切っても、5割、黄緑色になってバーが一旦停止する。その後少しするとHPが三分の一まで減少し黄色に変わるとまた停止。そしてまた少しすると1割まで減少するということらしい。

 

HP全損時、死亡するのかは不明。

 

命に関わる実験は禁止されているかららしい。

 

命に関わらない実験をしてどうやってこの情報を得ることができたのかは聞かないことにする。怖い。

 

 

 

 

 

 

一日一回無料ガチャ

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

UC『闇を司るチョコケーキサンプル』

 

 

カプセルを開けて名前を見た瞬間、目の前が真っ暗になった。続けてなにかが地面に落下する音が聞こえる。

 

 

俺は驚いたが、しかしすぐに明るくなった。

 

 

目の前には、真っ黒い球体。雑な合成画像のように、その球体だけが今までに見たことがないくらい真っ黒だ。

 

球体に触れようとすると、実体が存在しないのか触れることができず透き通ってしまう。

 

何度も調べようと繰り返し球体に手を近づけること数回、中心になにかあることに気がついた。

 

切り分けられたケーキのような形だ。えっこれがチョコケーキサンプル⁈

 

 

マッドサイエンティストが嬉々として持って行った。

 

 

 

 

 

 

 

その後、彼らは新型の弾薬、暗闇弾を開発した。

 

照明弾と真逆の物だと考えればいいとのこと。

発射して起爆すれば、弾頭を中心に直径3メートルの暗闇を展開するようだ。

 

どうしてそうなった!

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第一部 完

これより、ホムンクルス製造実験を開始する!

 

一昨日ガチャから排出されたホムンクルス製造機。

ガチャから出た時はこれ絶対封印すべきだろと思ったが、時間が経ってくると色々と使ってみたくなるものだ。

 

俺はホムンクルスを生産してみようとマッドサイエンティストに提案したところ、彼らは歓喜して俺にこのホムンクルス製造機がどのようなものなのか話してくれた。

 

 

なんでもこの製造機で作ることのできるホムンクルスは通常のホムンクルスではなく、戦闘用ホムンクルス、戦闘の面だけで言えば人間の上位互換のようだ。

 

人間を凌ぐ動体視力、反射神経、筋力、さらに生まれつき脳に戦闘に関する知識が備わっており、訓練もなしにある程度剣や銃を使えたりするらしい。

 

そして衝撃の事実。俺の支配下にいるホムンクルスユニットは全員が戦闘用ホムンクルスだったのだ。

 

俺は思い出す。7号が神剣アイギスを振い、破壊不能オブジェクトである壁を壊そうとした際の、素人とは思えない構えを。

 

 

さらにあいつらは銃を訓練をほとんどせずに使いこなしていた。そう言うことか!

 

 

 

そんなホムンクルス製造機だが、このホムンクルス製造機から作られるホムンクルスには、戦闘以外の一つのテーマが存在するらしい。

 

 

その名も多様性。

 

同じ思考、同じ肉体のホムンクルスだけの軍隊では、非常に脆いと判断された。

 

そのためこの製造機では、全て同じホムンクルスではなく、乱数とあえてホムンクルス製造の技術を落とすことによりホムンクルス製造を不安定にし、身長や体重、見た目や得意不得意など、一人一人違うホムンクルスを作成できるようだ。

 

 

俺はけん玉が得意な8号を思い出した。他のホムンクルスは全くできなかったのに、彼女は天才的な才能を発揮した。なるほど、個体差が。

 

 

そして合成機能。

 

…合成機能⁈

 

ホムンクルス製造機、この機械に物を入れると、ホムンクルスと物が合成され、その物の特性を引き継いだ、特別なホムンクルスが製造できるそうだ。

 

えぇ…いきなり倫理観がぶっ飛んできたな。

 

 

さぁ〜て、何を合成しようかな。色々あるぞ〜、ガチャからガラクタが大量に出てきたからな。倉庫管理のためにもどんどんぶち込んでいこう!

 

 

そして俺が選んだ、比較的要らなくて面白そうで役に立ちそうで、害がなさそうなものを選んだ。

 

スキルの秘伝書『電気ショック』

 

2号がこの秘伝書を読んで電気ショックというスキルを手に入れたのだが、この電気ショックは非常に弱いスキルで、今やマッサージに使われている。

 

だが2号は諦めなかった。なんとこの前電気の球を生み出し、それを的に当てて黒焦げにすることができたのだ。

 

 

そんな秘伝書だが、誰が読んでも習得することができなかった。

おそらく、一度きりの使い切りなのだろう。

 

 

俺はこの秘伝書を合成素材にすることにした。

 

既にコピーは取ってある。

 

俺は秘伝書をカプセルの中にぶち込み、製造機を起動する。

 

さぁ、いでよ、新たなる俺の民よ!

 

 

ブカブブクブク…

 

ホムンクルスの入ったカプセルが泡で満たされ一瞬強い光が発生する。

 

そしてカプセル内より緑色の液体が排出され、カプセルの扉が開き中のホムンクルスが現れる。

 

白髪赤目の男性型ホムンクルスだ。研究所のスタッフが全裸の彼に入院服のような服を着せる。

 

おーい、聞こえてる?我がホムンクルスよ。

 

 

彼は口をパクパクとさせる。そして自分の声が出ないことを理解し頭を下げてくる。

 

あぁ、別にいいよ謝らなくて。ホムンクルスが最初話せないのは知ってるから。これから話せるようになるから安心していいよ。

 

それよりも、だ。電気ショックは使える?

 

彼は頷く。

 

 

じゃあちょっと見せてほしい。

 

 

彼は研究所の兵器実験室に連れて行きその能力を見せてくれた。

 

彼の右手がバチバチバチッ、と電気で覆われ、腕を振るうと猛スピードで電気が空気中を走り、的に当たった。的は粉々になり、黒焦げだ。

 

 

 

えっ、オリジナルより強いじゃん。まじで?2号が不憫だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

今日のログインボーナスは通常ガチャコイン

 

 

さぁ、来い!

 

 

ガタンッ

 

 

UC『社畜死神』

 

 

出現したのは、女性だった。薄い金髪に紫色の瞳。片目は前髪で隠れている。

魔術師のような、花の装飾が施された紫のローブとロングスカートを身に纏っている。

 

そして彼女は両手で大きな鎌を重そうに持っていた。

 

あのぅ、私死神です。よろしくお願いします

 

あ、あぁ。その…大丈夫?

 

 

そう、その死神は非常に疲れていそうだった。鎌を杖のようにして体を支えていて、目のしたには隈がある。

 

 

もういやなんですぅ…、働くのは嫌なんですぅ。迷った魂を導くのも疲れたんです!

 

 

休めばいいのでは?

 

私は死神なんです!そんなことはできません!うぁぁぁぁん!

 

 

あぁ……、死神っていうことは死んだ人の魂を集めたりするんだろう?なら大丈夫。ここは誰も死んだりしないから。

 

本当ですか!うわぁぁぁぁん!ついに休めるんですね⁈

 

 

とりあえず寝たら?

 

 

 

 

 

 

無料ガチャ。

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

 

SSR『ダンジョン』

 

 

 

 

 

 

 

キュイイイイイイイイイン!

 

ショッピングモールのイベントスペースから大きな音が聞こえ、その場所から青白い強い光が発生した。

 

どこからか発生したのか、大量の光の粒子がイベントスペースに集まっていく。

 

光が収まると、イベントスペースにそれは出現していた。

 

 

渦だ。大きな青白い渦が発生している。

 

 

 

●ダンジョンが出現しました!明日より一ヶ月限定でダンジョンフェスが開催!ダンジョン攻略に役立つユニットやアイテムの排出確率が上昇します!

 

●ダンジョンはいつでも入場できます!落ち着いて攻略していきましょう!

 

●ダンジョンの攻略報酬はあなたのゲーム進行度を大幅に進めることができます!頑張って攻略を進めましょう!

 

●用語一覧の『惑星』がアンロックされました!

 

 

 

俺は出現したダンジョンに向けて鑑定を発動する。

 

 

●モチーフ『魔』のダンジョンマスターが生み出したダンジョン。

惑星【編集済】にて五星の座に位置する。

何百年にも渡り数多くの侵入者の迎撃に成功した難攻不落のダンジョン。

内部は悪質な罠と複雑な迷路、進軍困難な地形で構成され、内部はゴブリンやオークなど数多くの種族で構成された軍隊が支配する。これはダンジョンなどではなく一つの国家である。

 

ダンジョンマスター  シュラハト

全98層        

踏破報酬

 

SSR確定ガチャコイン10枚

惑星確定ガチャコイン一枚

外出権

 

 

 

●『惑星』

あなたが治めるのは一つの惑星。こんな小さなショッピングモールではありません。

あなたは王となるのです。惑星の王に。

 

 

…なるほど。俺は勘違いをしていた。

このゲームは国家運営ゲームか何かだと思っていた。

 

だが、違う。これは国家なんて小さなものではない。

惑星を開拓する、惑星国家運営ゲームなのだ。

 

 

 

こちらの戦力は

ホムンクルス

動物兵

剣闘士

店員

法務省6課

マッドサイエンティスト

機械馬

軍人

アンデッド軍団

宇宙人

死神

騎士

最高司祭

その他数名

 

戦力は不十分。数が少なすぎる。これで難攻不落のダンジョンは攻略できないだろう。

だが、一部は一騎当千の兵士。

 

それに俺にはガチャがある。

戦力なんてガチャから入手すればいい。

 

 

 

全員、ダンジョン攻略準備!お前らの力を見せてやれ!

 

逆らうものは皆殺しだ!さっさと攻略して、外に出るぞ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガチャと僕のプライベートプラネット  

 

第一部『ホワイトルーム』編   完結

 

 

次回 番外編を挟んで

第二部『ダンジョンアタック』編 開始

 

 

 

あのぅ…私、休めないんですか?ダンジョン攻略って、すごい数の死者が出ると思うんですけど…

 

…ごめん。残業はさせないから。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

地球の反応集

『菜食主義者』

 

ベーコンキャベツは革命よ!畜産業者は農業をするべき!これがあれば世界は変わる!

 

『農家』

 

これどうやって育てるんだ…?

 

 

『病人』

 

ポーションはまだ届きません。研究は進んでいるのでしょうか?

 

 

『テレビプロデューサー』

 

誰でもシステムウィンドウを展開できるようになって、ユーザーをライブで見れるせいで視聴率が最悪だ…

 

 

 

『アメリカ海軍作戦部長』

 

空母を返せ!スイス人め!あれにいくらかかったと思ってるんだ!

 

 

『投資家』

 

金の相場が滅茶苦茶だ!このままだと銀の方が高くなるぞ!

 

『紛争地域 軍人』

 

上位存在のおかげで正規軍同士の衝突は無くなりました。ありがとう。

 

 

 

『麻雀プロ』

 

ダメですね彼は。運はいいんです。でも欲に忠実すぎます。高得点ばかり狙うのをやめた方がいいでしょう。

その点7号はすごい。プロの腕です。山田くんは遊ばれていることに気づいていないでしょう

 

 

『中国人 道場経営者』

 

あなたも武功を学びませんか?

 

 

『有名投資家』

 

もし山田ドラゴンガチャ王国が国債を発行したら、私を含めた余裕のある者は皆買うだろう。

 

 

『韓国人』

 

だから言ったんだ!キムさんを指定ユーザーにしろと!

無能な韓国政府め!

 

 

『韓国政府』

 

あのふざけた能力で誰が上位ランカーに追随すると思うんだ!

 

 

『レーンファンクラブ』

 

新曲待ってます。

 

 

『ロシア政府高官』

 

アナスタシア殿下に王族として帰還してもらうべきでは?

 

『ロシア政府高官』

 

無理だろ。誰が処刑したと思っているんだ。

 

 

『日本人サラリーマン』

ハーレムは憧れるけど、いざ実際に見てみると嫌悪感がすごい。ハーレムは妄想の中だけにすべきだった。

 

 

『ギリシャ』

 

いけ!エジプトに続け!

 

『イタリア』

 

フランスめ!モナリザを返せ!

 

『エジプト』

 

もう一回戦わないかい?

 

『インド』

 

元植民地で連合を組みました。さぁ、交流戦だ。

 

 

『イギリス フランス』

 

助けて!

 

 

『ヘルメス神』

 

みかんジュースは美味しいなぁ。ちょっと奮発して加護を与えようかな。あとお地蔵様を盗んだやつは苦しめ。

 

 

『盗人』

 

お願いします!許して!

 

 

『日本人子供』

 

羊さんが帰ってきました。みかんジュースに合うように、ポテトチップスをお供えします。

 

 

『ギリシャ人神話研究者』

 

もう実質山田氏はギリシャ人では?

 

 

『ギリシャ政府』

 

ガチャよりギリシア関係の物がどんどん出てほしい。そうすれば彼もギリシャに愛着を持ってくれるだろう。

 

 

『子供』

なぁ今日のガチャみた〜、また爆死してたぜ。

 

 

『衆議院議員』

 

許さん!日本政財界は滅茶苦茶だ!沖田のガキに報復クエストを出してやるか⁈

 

 

『モンゴル』

 

チンギスハンの復活だ!領土を増やす準備をしろ!

 

 

『女子高生A』

 

ホムンクルスめっちゃかっこよくね⁈

 

『女子高生B』

 

まじわかる!

 

 

『ナウル』

 

選挙で決めました。山田さん頑張って。

 

 

『日本人 主婦』

 

システムウィンドウが誰でも開けるようになったせいで、色々とまずい映像が子供でも見れるようになりました。教育に悪い。

 

 

『キリスト教徒』

 

ホムンクルス製造は神の教えに反する!即刻中止にすべき!

 

 

『モナコ』

 

…上位ランカーを指定しても彼らは自国や大国のクエストを優先する。我が国のクエストなど見向きもしないだろう。かといってランキング中位下位を指定してもリターンは少ない。なら、何が起きるかわからない、逆転の可能性がゼロではない最下位の山田を指定する。

同じようなことを多くの中小国が考えたようだ。彼らとの連絡団体を設立すべきだ。

 

 

『山田父』

 

あいつは運がいいからな。大丈夫だろ。

 

 

『山田母』

うーん、あの子ちょっと、頭のネジが外れているから。今は餓死しそうになってたからちょっと理性的だけど、少しずつ元に戻りつつあるわね。あの子にガチャを与えたのは最悪ね。何が起きるかわからないわ。

 

 

『医療団体』

 

ポーションは安全性が確保されていないから使用を禁止すべきだ!あと俺らの仕事がなくなる!

 

 

『宇宙飛行士』

 

月面基地に放った無人ポッドが撃墜されたようだ。現在アメリカユーザーより提供された武装で攻略計画を立てているらしい。

 

 

『日本人学生』

 

交流戦で潰しあってばかりだけど、大丈夫か?

 

 

『運命教会信徒』

 

本当にいるかもわからない神様と違って、山田様は実際にいるんだよ!神よ、俺に幸運を!

 

 

『大学生』

 

うぉぉぉぉぉぉ!やっぱり日本はNo1!

 

『塾講師』

 

ガチャバトルカードダス、絶対何かあるだろ…

 

 

『アメリカ商務省』

 

交流戦で負けました。関税が撤廃されるようです。おしまいです。

 

 

 

『自衛官』

 

いやぁ、上位ランカーはすごいですなぁ。自衛隊が全軍で当たっても勝つことはできないでしょう。上位ランカーに日本人指定ユーザーが何人もいるのは喜ばしいことです

…え?山田氏はどうか?

うーん、見てる分には面白いし、戦力も整ってはきてますけどあれじゃあ上位ランカーの相手じゃありませんよ。

 

 

 

『国連職員』

 

上位存在の意図が見えない。最初は我々の保護かと思ったら、なんだこのゲームのような競争は。それに異世界からの宣戦布告?理解ができない。

 

 

『熊本県庁』

 

熊本県庁にそんな職員はいません!あれはパラレルワールドです!

 

『記者』

 

でも不正はありましたよね。

 

『熊本県庁』

 

……

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ダンジョン攻略開始

さぁ、ダンジョン攻略だ!

 

まず人手が足りない。98層で構成されるダンジョンを戦闘員100人以下で攻略できるとは思えない。

ので、俺は戦闘用ホムンクルスの生産を開始した。

ホテルの収容人数は約5000人。少しゆとりをもって4000人まで生産を行う。

 

だがそんな急に生産しても混乱が起きるだけなので、少しづつ、少しづつ生産していく。

 

そんなわけで今回ホムンクルスと合成するのはこれ。『義足』だ。

 

ガチャより出たこの義足は、マッドサイエンティストの調査の結果、何と実際の人間と同程度、いやそれ以上の性能を発揮するようだ。

 

と言うわけでコピーも生産できたため、俺は義足とホムンクルスの合成を行った。

 

正直、義足との合成は気が引ける。生まれつき体が不自由なホムンクルスを生み出すなど、さすがにどうかと思う。

 

だがマッドサイエンティスト曰く、この研究所には治療ポッドが備わっているため、ポッドにぶち込めば一週間ほどで生えてくるとのこと。それなら安心か?

 

 

 

 

 

 

生産されたホムンクルスは、義足をつけていなかった。普通の、人間の足だ。

 

だがしかし検査によって衝撃の事実が判明した。

何とこのホムンクルスは。体が機械でできていた。

骨は金属、皮膚は人工タンパク質、目は眼球型カメラ、脳は演算装置、臓器は装置といった、機械人間が誕生した。

だがどうも完全な機械ではなく、体の半分ほどが機械のサイボーグのようだ。

 

 

さらに体内を巡るナノマシンにより体は自動的にメンテナンスを受け定期的な補修は不必要。

 

傷も自動的に修復するようだ。

 

そしてこのホムンクルスは右手の手のひらからビームを発射した。えぇ…。

 

……なんで?合成したの義足だよ?足だけじゃなくて、何で全身が機械化してるの?

 

 

さらに追加情報。義足のコピーと合成したところ、先のホムンクルスよりは低性能のサイボーグホムンクルスが誕生した。

ガチャから出たオリジナルの物とコピー品では、性能が違うらしい。

これはガチャから出たアイテムには何か未知の力が込められているためとマッドサイエンティストは話していた。

 

ちなみにこの低性能サイボーグホムンクルスは、口から火を吐いた。

これが多様性か?

 

 

 

 

 

そうしてガチャだ。

現在ガチャではダンジョンフェスなる物が開催される、ダンジョン攻略を有利に進めるアイテムが排出されるそうだ。

 

まぁ何はともあれ、引いてみなくてはわからない。

 

今日のログインボーナスはスキル確定ガチャだ。

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

 

 

R『スキルの書 『即席陣地敷設』』

 

戦闘において戦局を有利に進めるために築く、防衛用の施設。塹壕、有刺鉄線、機関銃、土嚢、コンクリートなどで構成される。

この陣地に隠れながら敵を攻撃、または防衛する。

 

 

今回はスキルの書、つまり誰かに覚えさせることができる。そして使用後の書とホムンクルスを合成すれば、何と二人もスキル使用者も生産できるのだ。

 

コピーも合成はできそうだ、義足の時とは違って別に高度な技術が使われているわけでもない、ただのコピー。特に使えるホムンクルスができるとは思えないので放置する。

 

 

 

さぁて、そうして出来た、即席陣地設置待ちのホムンクルス2体!

 

彼らにスキルの使用を命じると、大量の土嚢や有刺鉄線で構築された陣地が出現した。

 

うーん、予想通り。これはダンジョン攻略に役立つぞ!

 

 

…とりあえず、この陣地邪魔だから撤去しようか。

 

 

 

 

 

無料ガチャだ。

 

 

 

 

 

 

 

UC『右翼』

 

 

 

右翼。政治的勢力や人物などの属性の一つ。

一般的に保守主義であり、右翼と対照的な団体や人物を左翼という。

 

 

……特に何も起きない。

 

 

「……ん?どうしたそんな顔して。どうしたんだ七号。なに驚いてるんだ?」

 

「その…生えてる」

 

「何が?」

 

「羽が」

 

「は?」

 

 

トイレの鏡で俺を見てみると、確かに俺の背中より羽が生えていた。

 

先ほどガチャから出た右翼の名が示す通り、右の羽だけ。しかし鳥の羽のような物ではなく、光が白く、薄い羽のような形で固まっている。

 

…なんかこの羽大きいし、左の羽がないため非常にアンバランス。鳥のように飛ぶこともできない。

じゃあ何のための羽なんだこれは。

 

 

マッドサイエンティストの調査の結果、純粋な光の塊ではないらしい。

光に加えて何か未知の力で構成され、羽を削って光の粉を手に入れようにも分離するとすぐに消えてしまう。

 

…光の羽は任意で消すことができた。

よかった、邪魔にならなくて。

 

 

 

 

 

 

「撃て撃て撃て撃てッー」

 

猛々しい銃声が響く中、俺たちは押し寄せる数多くのモンスター相手に戦っていた。こちらの銃からは弾丸が雨のように敵に降り注ぎ、次々と倒れていく敵の姿が見える。

 

この弾丸は地球外金属侵略生命体が弾丸に変形した姿だ。一発でも喰らえば体の侵食を始め、部位ごと除去しなければ死に至る最強の弾。

 

 

だが、敵は進軍を止めることはない。

 

敵兵の数は増すばかりで、死体を盾にしながら進軍してくる敵たちに対して、俺たちは苦戦を強いられていた。

 

「ガァっ」

 

仲間が撃たれる。状況はますます悪化していく。

 

 

「大丈夫か⁈」

 

「悪い、もう限界だ。HPが黄緑色になった。悪い、先に行く」

 

と仲間が告げ、青い光に包まれ消えていく。今頃、ワープポイントに転移してポッドの中で治療を受けているだろう。

 

 

 

銃の弾薬が切れる。再装填する前に敵は俺の目の前に来るだろう。

 

「くそっ近接戦闘用意!」

 

配下のホムンクルス数名に命じて剣と盾を装備する。

 

「大丈夫だ、俺たちには神剣アイギスの加護がある。防御力はバカみたいに高いんだ」

 

 

実際アイギスの加護は大した物だ。強力なバフにより、生半可な敵の攻撃から俺たちの身を守ってくれる。

 

 

「来るぞッ」

 

 

敵が俺たちの目の前に来た、その瞬間、黒い焔が敵を襲った。

少年Aだ。

 

少年の炎が敵に降り注ぎ、「ぎゃぁぁぁぁぁぁ」と敵兵は悲鳴を上げる。

 

彼は若いながらも、頼もしい仲間だ。流石6課。

カメラ人間を除いた、全員が一騎当千の強者たち。

 

 

 

「正面通路に敵が押し寄せている!この脇道は放棄し、ダンジョンから撤退する」と、我らが王より命令が通信機より届く。

 

 

このダンジョンは入場後に大きな広場があり、そこから大きな三本の通路に分かれる。さらにそこから大小様々な脇道や部屋で構成される、迷路のようなダンジョン。

 

一つの大きな通路から敵に広場を突破されれば、他の通路の仲間は挟み撃ちに遭う。

 

そのため一つの通路でも限界に達したら、全通路の兵士は撤退しなければならないのだ。

 

 

「急げっ、回収作業は中止!総員撤退!」

と、後方でドロップアイテムの回収を行うホムンクルスを中断させ、ダンジョン入場後目の前にある広場まで脱退する。

 

俺たちは一斉にダンジョン入り口の広場に向かって退却する。

 

広場から他の通路の奥をみると、敵兵の氷のオブジェができあがっている。

 

さらにもう一つの通路では魔剣が獅子奮迅の活躍を見せていた。

剣が振るわれるたび、敵が切断される。敵兵も必死に剣を攻撃するが、すぐに敵の血肉を吸収して修復されるのだ。

 

 

「アンデッドをしんがりにしろ!」

 

と、王が叫び、前線で戦う6課も撤退を始める。

 

アンデッドは俺たちの食べ残しやこのダンジョンの敵兵の死体から蘇った者で構成される。弱いが肉壁となるし、さらに爆弾をくくりつけているため自爆して足止めをしてくれる。

 

アンデッド軍のリーダーは軍人幽霊だ。

敵の攻撃は当たらないのに軍人幽霊の攻撃は当たると言う、理不尽が敵を襲う。

 

 

 

…そうして、最後に軍人幽霊がダンジョンから撤退し、俺たちはアンデッドを除く全員が無事、死者もなく撤退した。

 

 

 

「これで撤退できたな」と、俺たちは一息つく。

 

 

無理をすればもっと持ち堪えることができただろう。

 

だが、無理をする必要はない。俺たちの目的はドロップアイテムの回収と、囮となって敵の注意を引くこと。

 

本格的な攻略はもっと先だ。俺たちが本物の攻略を始める頃には、敵はまともにダンジョンを守ることはできないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…プルプル

 

 

本日の鑑定

 

●低級ポーション瓶

 

緑色の液体が入った瓶。飲むと体の小さな傷や病気を治し、疲労回復、痛覚軽減など、さまざまな効果が存在します。しかしどの効力も非常に低く、命の危機や大きな傷の治療などには役に立たないでしょう。

効力は低下するが患部に直接かけるだけでも効果はあります。

 

 

備考 ダンジョンで宝箱やモンスターからドロップした瓶。十数本もドロップしたのでどんどん使っていこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

優しい神父さん

次から次へと、ダンジョンから魔物の死体が運ばれてくる。

 

ドロップアイテムなど有益な物、使い道のよくわからないものは全て保管してあるが、この死体は臭いし邪魔だし、放置してると進軍の邪魔になるのでさっさと処分をしなければならない。

 

一つ目の使い道として、首無しの魔術でアンデッドとすることだ。ゴブリンやオークなどその他諸々の死体はアンデッドとしてこちらの兵士となり、ホムンクルス製造を始めたとはいえ、未だ人手が足らない前線を支えてくれるだろう。

 

撤退時の肉壁にもなるし、ダンジョン突入、撤退時は全身に爆弾を縛って突撃、自爆をさせることで敵に大きな損害を与え士気を下げることができる。

 

 

二つ目はマッドサイエンティストの実験体となることだ。

彼らは死体が手に入ったことに歓喜し、次から次へと様々な実験、研究を行っている。

 

死体が余るほどあるのでどんな過酷な実験でもやり放題、誰も咎める者はいないと言うことで、しばらくはこの研究にかかりきりになるらしい

 

流石に死体をホムンクルスと合成するのはやめた。クリーチャーは望んでいない。

 

 

三つ目はホテルの食糧保存庫などの倉庫に、アナスタシアによって冷凍保存する方法だ。

 

ダンジョン攻略中に報告があったのだが、たまに敵の中に指揮官と思われるやつやエリート兵、精鋭兵といった、普通の魔物とは違う奴らが混じっているのだ。

 

そういったやつの死体は首無しの手で蘇るよりも、もっと腕の良いネクロマンサーに蘇らせたら良いと言うので、とりあえずは冷凍保存している。

 

これでも余った奴らの使い道として、生贄の棺にぶち込むという方法だ。

この棺に入れるとあら不思議、なんと綺麗さっぱり無くなるのだ。

 

誰に捧げているかは考えないこととする。

 

 

 

 

 

 

それでは今日のガチャだ。ログインボーナスは通常ガチャコイン。いつも通り

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

 

C『ルービックキューブ』

 

1974年にハンガリーの学者、ルビク・エレネーにより考案された立方体パズル。それぞれの面が違う色、つまり六色で構成され、全ての面が九つに分割されている。

 

この面を全て同じ色に揃えることを目的とする。

 

ルービックキューブの面を揃える世界大会が行われており、プロは10秒以内に全ての面をそろえることができる。

 

機械は何と1秒も使わずに揃えることができるのだ。

 

 

 

うわっ、ルービックキューブだ。

子供の頃に親に買ってもらったことがある。

 

最初全ての色が揃った綺麗な面を適当に回転させ、いざ全ての面を揃えようとするのだがこれが全くうまくいかない。

 

何とか一つの面を揃えることに成功したのだが、それ以上は無理だったし飽きたので放置した記憶がある。

 

さぁて、せっかくガチャから出たのでリベンジだ。ご丁寧にもう既に色が揃えられていない。これならすぐに遊べるだろう。

 

 

 

 

 

 

ダメだ、まったくうまくいかない。一面も揃えられないなんてどうなっているんだ?

 

 

俺はルービックキューブをよく観察する。

 

 

……⁈

 

このルービックキューブ、よくみたら八色もあるじゃねーか!

完成できる訳がない!

 

 

 

 

 

今日の無料ガチャである。

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

 

 

UC『神父』

 

キリスト教において司祭の職位を持つ者に対しての敬称。

キリスト教の中でもカトリック、正教会などで使われる。

 

プロテスタントでは神父を使用せず、牧師を使う。

 

 

 

出現したのは、黒い神父服を着た男性だった。

 

西洋人だろうか、金髪碧眼であり、手にはなんと俺を神と崇める運命教会の経典、運命書と大きな銀色の槌を軽々と片手で持っている。

 

 

 

彼は自身を神父であると自己紹介し、死者の供養からお祈り、人生相談に清掃活動、傷の手当てなど様々なことをしてくれるそうだ。

 

俺に対して跪き、俺を神として信仰していると話してくれた。

 

「どうか私に、あなた様の手助けをさせてください」

 

と言う。

 

 

「じゃあ、ダンジョンで仲間を助けてくれ。応急手当や銃弾の補給、ドロップアイテムの回収とか、できることをしてほしい。無理はしなくて良いからな」

 

すごく優しそうな笑顔で、彼は微笑んだ。

 

 

 

 

やった!貴重な医療ユニットだ!

それに神父だって⁈もしかしたらPTSDなど、ダンジョン攻略で精神的に疲れるホムンクルスや軍人もいるかもしれない。

 

彼らの良き相談相手となってくれるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神父は笑顔で足を進める。

 

彼が一歩進み、銀の槌を振るわれる度に、残忍な潰れる音と悲鳴が響いた。

 

 

彼の持つスキルは、『対異教徒特攻』『蹂躙』『人体破壊』『運命神の加護』『神命』。

 

神の名の下に猛威を振るった。

 

「さて、これでお片付けも済んだでしょう」

 

神父は自信に満ちた口調で言った。

 

辺りは普通のモンスターとは違う、全身を鎧で身を包んだ騎士たちの遺体が散乱していた。その数約100名。

 

「あなたたちが悪いのですよ。私の降伏勧告を拒否するからです。神に敵対するあなたたちは滅ぶべきなのです」

 

神父は、彼らの罪を厳しく断罪した。

 

この部屋には、敵の侵攻を受けて下の層より偵察に来た騎士たちが前線の情報を後方に送るために小さな連絡所を設営していた。

 

しかし、彼らは任務を全うすることなく、散っていった。

 

「うぅ......」

 

生き残りの騎士が、瀕死の状態で倒れていた。

 

 

「おや?まだ生き残りがいたのですか。安心なさい。あの死神が魂を導いて、神の元に返してくれるでしょう」

 

神父は、笑顔でそう言った。

 

 

「ぁ…ま」

 

「何でしょうか。遺言ですか、いいでしょう、聞き入れて差し上げましょう。これが神の慈悲です」

 

神父は、笑顔で問いかけた。

 

「我ら魔軍、決して負けぬ!」

 

「俺はここで死ぬだろう。だが、我ら暗黒騎士団の同胞、そして敬愛する騎士団長が、お前らを許さぬ!」

 

生き残りの騎士は、最後の力を振り絞って言った。

 

「覚悟しろ!」

 

瀕死の騎士は、憎悪と覚悟の瞳で神父を睨む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ?」

 

 

 

「てめぇ、運命教会信徒である、この私に逆らうのか!」

 

何者かに乗っ取られたような、狂気に満ちた顔だった。

 

 

「私が慈悲を見せたから、調子に乗りやがって!このゴミ虫がッ!ふざけるなッ」

 

何度も、騎士の頭を踏みつける。何度も、何度も。既に騎士の命はない。

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

 

 

 

 

「大丈夫か⁈援軍に来たぞ!」

 

 

前線基地襲撃される。その連絡を受けて後方で待機していた、援軍の騎士団300名。

 

彼らは目撃する、恐怖する。絶望する。

 

 

 

 

神父は微笑む。

 

「さぁ、ゴミ掃除を始めましょう」

 

 

 

 

暗黒騎士団上層部 緊急即応隊 総員 103名 全滅

 

暗黒騎士団上層部 緊急即応隊支援隊  325名 交戦開始

 

 

 

 

 

 

 

本日の鑑定

 

●暗黒騎士団鎧

 

黒炎石で製造された暗黒騎士団の鎧です。この鎧を着る者は暗黒騎士団上層部の緊急即応隊所属の団員が着用し、軽快に戦えるよう軽さを重視しています。

 

暗黒騎士団はダンジョン上層30階、中層60階にそれぞれ支部を、下層90階に本部があります。厳しい訓練で鍛えられた集団戦の力、そして高い士気と仲間への信頼、敬愛する騎士団長への想いであなたの前に立ち塞がるでしょう。

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

難攻不落

「ダンジョン第一層未だ陥落せず。敵の抵抗激しく、前進困難なり」

 

ダンジョンで戦う味方からの通信だ。

 

 

ダンジョン第1層は非常に複雑な迷路で構成され、あらゆる通路や部屋からモンスターが雪崩のように押し寄せてくる。

 

進軍すればするほど分岐する通路や数多くの部屋と前線が接触する為、多方向から接敵し、まともに前進することが困難である。未だ第一層の三分のニほどしか攻略することはできていない。

 

 

これは6課やあのイカれ神父を投入し、さらにアンデッド爆弾やホムンクルスを投入しても数の差はあり、少しづつしか前進することができないのだ。

 

イカれ神父はたった一人で敵の後方まで突き進み、大量のエリート兵を討ち取った。これで敵の統率も士気も崩壊するかと思ったが、そもそも敵は基本的に突撃しかしてこないため、統率も士気もあったもんじゃない。

 

そしてイカれ神父は今、治療ポッドの中で睡眠中だ。数日はあの中だろう。

 

 

このダンジョン攻略の序盤で強力なユニットを消耗させるわけにもいかないので、6課を中心とした精鋭メンバーは後方で残党や孤立した敵軍の撃破を任せている。

 

 

 

というか、数が多すぎる!どうなっているんだ?

 

種類もやたら豊富だ。ゴブリン、オーク、スケルトン、オーガ、リザードマン、ゴースト、デーモン、その他何十種類。

 

こいつらがただ突撃ばかりしてくるのだ。協力なんてあったもんじゃない。突撃するのをやめれば後ろの兵士に踏み潰されるという地獄である。

 

 

何故これほどまでに敵が多いのか調べてみたところ、どうやらダンジョンの至る所にモンスターが自然発生する場所、『スポーンポイント』があるらしい。

 

一定期間毎に、モンスターを無制限に生産するのだ。

 

なんじゃそりゃ!

 

幸いなことにこのスポーンポイントは壊すことができる。

 

だが、スポーンポイントはダンジョンの隠し部屋にもあったりして、油断しているとこちらの制圧エリア内より、発見していない隠し部屋から魔物が溢れ出すのだ。

 

これが前進を困難にしている要因である。

 

 

 

 

 

さて、ガチャだ。

 

本日のログインボーナスはモンスター確定コイン。

 

 

モンスターって。まぁ首無し曰くユニットは俺に対して意図して危害を加えることはできないらしいけど。

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

C『ゴブリン占い師』

 

 

 

ゴブリン。ヨーロッパの伝承で語られる想像上の生物。

 

ゴブリンと言えばゲームなどのモンスターとして登場するが、それはゴブリンが墓地の地下や岩の裂け目などに住む醜い邪悪な妖精として語られているからである。

 

しかしその一方で家事や引っ越しの手伝いをしてくれたり、鉱山ゴブリンと言われる、ツルハシを持っており、金属を発見することができる。

このように人の役に立つゴブリンも存在するのだ。

 

 

 

 

 

 

出現したのは、紫色のローブを深く被った、怪しいネックレスに指輪を着け紫色に輝く水晶玉を持った、緑色の肌を持つゴブリンだった。

 

 

ゴブリン!

これはすこし面倒なことになるぞ。俺たちはダンジョンでゴブリンを数多く殺している。

 

 

「なんだい、あんたそんな顔して」

 

声が年老いた女性のようだ。

これは驚いた。ダンジョンのゴブリンは『ゴブッ』とかしか話さないので、まさか人間の言葉を話せるとは思わなかった。

 

 

「あー、その。あんた、仲間のゴブリンが死んだらどう思う?」

 

 

「なんだい突然。そりゃ、不愉快だよ。同族だしね」

 

 

あちゃー。どうしよっかな。

とりあえずホテルの部屋にでも待機してもらって、その中で活動してもらうか?

 

そう考えていると、ホムンクルス達が魔物の死体を持って俺の横を通り過ぎた。彼らは俺の目の前にいるゴブリンをぎょっとした目で見る。

 

最悪なことに、ホムンクルス達が持っている死体はよりにもよってゴブリンだった。

 

 

お、おまえら間が悪いぞ!何で今来るんだ!

 

 

「はっ、なるほどねぇ。心配する必要はないよ。あたしはあんなゴミを同族とは思ってないからねぇ」

 

「ゴミって…同族だろう?さっきと言っていることが違うぞ?」

 

「あたしはゴブリンでもただのゴブリンじゃない、金融ゴブリンだよ」

 

「金融ゴブリン?」

 

「投資家や銀行員、経営者、さらには鉱山の労働者。金や鉱石のあるところで働くのがあたし達金融ゴブリンだよ。あんな下等種族と一緒にするなんて失礼ってもんだよ」

 

「いやいや、見た目は同じじゃないか?」

 

「全然違う!あんたは猿を見て同族だと思うのかい?」

 

「いや思わないけど…猿と人間は見た目が全然違うじゃん。でもゴブリンは同じ…」

 

「違う!」

 

うーん、ゴブリンにしかわからない見た目の差があるのか?

 

「それで、占い師なら何ができるんだ?」

 

「あたしは占い師だからね。今後の会社経営などに関する占いや株価の予想、今後の危ない投資先、鉱石や宝のある場所なんかを占えるよ。そして何より…」

 

 

「何より…?」

 

 

「相手が人狼かどうかを知ることができるんだ、すごいだろう?」

 

 

 

 

 

 

人狼ゲームじゃねーか!

 

 

 

 

 

ゴブリン占い師はダンジョンで宝箱や隠し部屋の発見のために前線に送った。間違えて殺さないよう全軍に通達し、護衛のホムンクルスをつけて。

 

 

 

 

 

それでは、無料ガチャ!

 

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

HR『星間戦闘機 ハミングバード』

 

ハミングバード。ハチドリの英語名。

南北アメリカに生息する鳥であり、その特徴として毎秒55回以上羽ばたくことによりホバリング、つまり空中で停止することができる。

この際の羽ばたく音が蜂のように聞こえるからハチドリとも言うらしい。

 

 

出現したのはショッピングモール二階の空き店舗だった。

 

 

全身を黒く塗装された、漆黒の戦闘機。玉型の本体にエンジンや武装などが設置されている。

 

マッドサイエンティストの調査の結果、この星間戦闘機はその名の通り宇宙空間での運用を想定した、一人乗り戦闘機のようだ。

 

360度あらゆる方向に動かすことのできるエンジンと武装により、ハチドリのように急停止、急発進を行うことができ、非常に複雑な動きで敵を翻弄するそうだ。

 

旋回や発着陸のための滑走路などは必要がないということだ。

 

武装としては対艦魚雷、装甲切断レーザー、対艦ビーム砲二門、機銃八本。

 

対艦対戦闘機両用のようだった。かっこいい!

 

 

 

マッドサイエンティスト達からお前がガチャとダンジョンからわけのわからない物をたくさん持ってくるからシンオオサカニウムの解析が進まないと嬉しそうに文句を言われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はダンジョンマスター、シュラハト。魔のダンジョンを発展させ何百年にも渡り守護してきた。

 

今ではダンジョンマスター序列五位に入り、ありがたくも創造主より五星の座をいただいている。

 

 

そんな私の率いるダンジョンは難攻不落。数多くのダンジョンマスターが攻略に挑んだが、全ての敵を返り討ちにしてきた。

 

そしてここ200年程度は挑んでくるダンジョンマスターもいなくなり、同じ五星のダンジョンマスター達とともに、とあるダンジョンマスターの育成をしていたのだが。

 

 

 

そんな時、突如として我がダンジョンは、孤立した。

 

ダンジョン外へ繋がるワープゲートは使用不可、外への連絡もすることができない。

 

 

そんな時、我がダンジョンに統率の取れた集団が侵入してきた。

 

彼らはなんと銃を使い、攻略を始めたのだ!

 

 

 

久しぶりのダンジョンアタックだ!

 

私は笑みをこぼした。

 

ここまで大規模な空間隔離魔術。敵は本気だ。

 

この広大なダンジョンを孤立させるほどの大規模な魔術を使うためには相当の腕前の魔術師が何百人も必要だろう。

 

さらになんと銃火器を使っているではないか。敵は戦力の拡大に積極的らしい。まだこんなに骨のあるダンジョンマスターがいたとは。

 

 

敵も考えた物だ。我ら五星はそれぞれ派閥を率いており、数多くのダンジョンマスターを支配下においている。

 

私に喧嘩を売るとは、その配下である何百人ものダンジョンマスターに喧嘩を売るということだ。

 

だがそれもこう隔離されては援軍に来ることもできない。

 

敵は本気だ。

一体誰だ?『強欲』か?『土』か?『武』か?予想ができない。

 

しかし間が悪いな。我が側近達は皆、出払っている。

敵は情報能力に長けているか、それとも運がいいのか。

 

 

何にせよ、久しぶりのダンジョンアタックだ。あぁ、楽しいなぁ。

 

 

 

 

 

 

本日の鑑定

 

●呪盾

 

暗黒騎士団の団員が装備する頑丈な漆黒の盾です。第87層の鉱山街で生産されました。

呪いの力により敵の攻撃を盾に引き寄せ、盾を攻撃した敵に対して微量ながらもデバフを与えることができます。

 

 

このデバフは、装備者が死亡・盾を放棄・デバフ解除を意識あるいは戦闘終了した時などに消滅します。

彼ら暗黒騎士は、敬愛する騎士団長のためにダンジョンを守護します。

 




評価とブックマークよろしくお願いします


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

時間稼ぎ×時間稼ぎ

ダンジョン第一層でイカれ神父が撃破した暗黒騎士団、その装備を着用したホムンクルスが前線で猛威を振るっている。

 

この暗黒騎士団の装備は非常に高品質で、まだ鑑定はしていないが様々なスキルが存在していると思われる。

 

 

全身を覆う鎧や兜は敵の攻撃を弾き、その剣は非常に切れ味がよく次から次へと敵を切り裂くのだ。

 

残念ながらイカれ神父が装備品のほとんどを壊していたが、それも現在修復中。

 

最前線では、暗黒騎士装備のルーカスと7号がホムンクルス隊を率いて奮戦中。第一層の陥落も目前だ。

 

 

 

今でこそホムンクルスの装備は充実しているが、最初期のホムンクルス達の装備はお世辞にもいいものとは言えなかった。なんせ防具なんてこちらにはない。

 

ただの服に銃で武装しただけだったのだ。

 

だが、今は違う。ダンジョンより大量のドロップアイテムを装備した我が軍は次から次へと敵軍を撃破している。

 

さらにさらに、新型のホムンクルスも投入し続けているため、数の不足も少しづつだが改善されている。

 

低級ポーションと合成したホムンクルスは何と回復魔法を使える奴、再生能力に特化したホムンクルス、『武当派 武功 不壊門』の本と合成したホムンクルスは格闘戦に長けており、敵を次から次へと撃破、前進している。

 

ドロップ品もなかなか美味しい。宝箱の中身とは別に、敵は撃破時に死体の他に突然アイテムが現れることがあるのだが、このアイテムが結構役に立つ。

 

以下、ドロップアイテムの一部抜粋である。

 

『魔剣ファザール』

『血染めのブレスレット』

『呪われたガントレット』

『崩壊魔杖』

『絶望の鎖剣』

『邪神槍ヌザ』

『魔龍兜』

『禍々しき指輪』

『狂乱する魔弓』

 

 

………ま、まぁ魔のダンジョンだからな。ドロップアイテムはこんなものだろう。

 

俺は漆黒の装備を身に纏い、禍々しいオーラを放ちダンジョンへと進軍するホムンクルス達を尻目にガチャへと向かった。

 

 

 

 

 

今日のログインボーナスはゴッド確定ガチャコイン。

 

あぁ…ゴッド、嫌な響きだ。

だいぶ前にゴッドフェスが行われた際、誰に捧げているか不明の、『生贄の棺』、そして『ヘルメス神のお地蔵』がガチャより排出された。

 

 

前は比較的まとも? なものだったが、今回おそらく、というか絶対、まともなものは出ない。

 

なぜなら、顕現したガチャコインはドス黒い色でなぜかひび割れており、ガチャコインがぴくぴくと動いているのだ。不気味だ、本当に不気味だ。

 

 

あぁ〜〜何だよこれ、絶対厄ネタだよ。

 

まともなものじゃないよ。

 

 

クソッ回したくない!でも俺の中の好奇心が回せと言っている。

 

 

あぁ〜〜〜。

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

HR『封印の玉』

 

封印。中にあるものが外に出ないように、固く厳重に閉じ込めること。

大抵の場合中に入ってあるものは、表には出してはいけないまずいものである。

そして物語などでは、悪魔など人間に害のあるものが閉じ込められ、そして解放されてメチャクチャになるというのがテンプレ。

 

 

出現したのは、水晶玉だった。球体はよく磨かれているのか汚れ一つなく、俺の顔を反射している。

 

だが、普通の水晶玉ではない。水晶玉を覗いてみると黒い煙のようなものが渦巻いている。

 

そして水晶玉は古ぼけた鎖でぐるぐるに縛られ、難しい字で書かれたお札が大量に貼られていた。

 

 

鑑定!

 

●封印の玉

 

暴食を司る邪神ベヘモットの一部が封印された水晶玉。

封印が解けた場合は、敵に対して飢餓をばら撒き、多くの餓死者を発生させ、人類の文明に害を与えるでしょう。復活後は迅速に撃破すべきです。

この水晶玉は数多くの魔術や道具に封印されていますが、長くは持ちません。

復活後の邪神をどうするか、あなた次第です。

私としては、敵国の中でこの邪神を復活させ、敵を破滅させることをお勧めします。

邪神はあなたの命令を聞きませんが、あなたとその仲間に害を与えることはありません。安心してください。

 

 

 

 

 

 

 

うわぁぁぁぁ、邪神だ!首無し達の時とは違って明らかな人間に対する敵対者だ!スライムは一応、星食らいと言われていたが、地球人類に対して攻撃的とは書かれていなかった。

 

だが、こいつは違う!人類への脅威が明言されている!

 

いや、確かにユニットは俺に対して害を与えることはできない。鑑定の説明文でもそう明言されている。

 

だが、復活後邪神が何をするのか予想がつかない。もしかしたら、間接的に俺に対して害を与えるかもしれない。安心できない。

 

とにかく、邪神が復活したら非常に面倒なことになる気がする。

うーん、どうするべきか。

 

 

 

 

 

 

 

……あっ。

 

 

 

 

 

俺は水晶玉を担ぎ、4階の研究所に向かう。

 

そして、ホムンクルスの合成機にこの水晶玉をぶち込んだ。

 

そう、邪神は俺の命令を聞かないが、ホムンクルスは俺の命令に絶対服従なのだ。

 

 

「貴様!この俺を、こんな脆弱な体で受肉させるとは!このベヘモットに対して不敬であるぞ」

 

 

「あー、そういうのいいから。とりあえず下のドロップ品置き場から適当なもの装備してダンジョンで戦って」

 

 

「クソッ、体がいうことを聞かぬ!覚えていろ!」

 

 

 

よしっ戦力確保!

 

 

それでは無料ガチャである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

 

 

C『墓石』

 

墓石。墓の上に設置される、大きな石の加工品。

日本においてはほとんどの場合、台となる石を二つ縦に並べ、その上に細長い石を置く仏式の墓がほとんどである。

 

石には自身の名前、生年月日や没年、宗派など、ヨーロッパではエンブレムやその死者の人生などを刻む。

 

 

 

 

出現した墓石はひどく汚れ、壊れていた。長い年月の経過によって金属製の墓石は錆び、醜く変色し、元と墓石の面影すら見えない、変わり果てた姿だった。

 

墓石の表面には大小様々な割れ目があり、そして胸元に開いた穴から植物が生え、穴の内側は苔で覆われている。

 

寂しさを感じさせる、不思議な墓石だ。

 

この墓石だけ。死体を収める棺や骨壷はない。

 

 

俺は墓石を見て、綺麗にしてやろうと思った。誰の墓かは知らないが、こんな状態で放置しているのは心が痛い。

 

俺はホムンクルスに雑巾などを持ってくるように指示し、墓石をもっと詳しく調べる。

 

 

すると表面に日本語で文字が刻まれていることがわかった。

 

どれどれ…。

 

 

 

 

 

魔のダンジョンマスター シュラハト ここに眠る。

地獄に堕ちろ、クソ野郎。

 

暗黒騎士団 一同 

 

 

 

 

 

 

 

 

シュラハトじゃねぇか!!!

 

えぇ…シュラハト何したの?ダンジョンの中核戦力【推定】の暗黒騎士団に嫌われるって、かなりまずいんじゃないの?

 

というか、死んだの?えぇ…ちょっと意味がわからない。

いやでも、まだダンジョンクリアのアナウンスがないからなぁ。多分死んでないな。

 

 

じゃあこれは?

不明。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんか、飽きたな」

 

久しぶりのダンジョンアタック。だが敵軍は非常に少なく、未だ第一層を攻略できていない。

 

 

ダンジョン攻略はスピードが命だ。放っておくとスポーンポイントより大量の魔物が生産されるため、一刻も早く進軍しスポーンポイントを潰す必要があるからだ。

 

なのでなぜこれほどまでに進軍が遅いのか。理解ができない。

 

 

「魔王様。第一層司令官より援軍の要請が来ています」

 

「今の司令官は誰だったかな?」

 

「獣魔将軍 リザリオン様です」

 

「あぁ、あの失敗作か、まだ生きてたんだ。却下」

 

ダンジョンマスターはDP【ダンジョンポイント】を使い、モンスターを生み出すことができる。

 

基本的に多くのDPを使用すればするほど、強力な魔物を生み出すことができるのだが、期待していた魔物が召喚されるとは限らない。

 

そのため、シュラハトは失敗作であるリザリオンを嫌がらせのためにまともな部下も与えずに第一層の司令官に任命していた。

 

 

第一層から第二十九層をシュラハトはダンジョンで活動する冒険者のために解放してある。そのため下層の司令官は数多くが討死していた。

 

 

 

「暗黒騎士団長より、一刻も早く侵入者を撃退するよう、提案されています」

 

「あいつ、口うるさくて鬱陶しいんだよね。独房にぶち込んどいて」

 

 

「はっ」

 

 

私は暇を潰すため、色々と遊んでいたのだが、あいつはいちいち文句をつけてくる。鬱陶しい。

 

「というかあいつ、何でそんなこと言うんだい?」

 

「情報収集のために派遣した騎士団が壊滅した模様です」

 

「本当かい?あははははは、愉快愉快!」

 

嫌がらせのために暗黒騎士団には情報を何一つ与えなかったから、あいつは部下を派遣して情報収集しようとしたらしい。

 

あいつは部下思いだ。きっと今頃泣いているだろう。

 

ザマァみなさい!

 

「暗黒騎士団に対して命令。決して持ち場を動かないで。敵討はさせないから」

 

「はっ」

 

 

 

 

それにしても、侵入者、どうしようかな。

 

DPは基本的にダンジョン内の生き物の死亡、戦闘により発生する生命力、侵入者のエネルギーから生産される。

 

長く戦えば戦うほど、防御側はDPを多く獲得できる。

 

 

色々怪しい点があるが、時間はこちらの味方だ。

せいぜいのんびり攻略しなさい。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

喰え!生き物には食べるということが必要なのだ!

 

 

「ふはははははは、良いではないか貴様!実に俺好みの味だ!名は何という?そうか、パーシヴァルか!良き名だ、美食の道は長く険しいぞ、精進しろ!」

 

邪神ベヘモットはご機嫌だった。彼の周りには料理人であるパーシヴァルが腕によりをかけて作った、いつもより豪勢な、大量の料理が置かれていた。

 

しかし大量の料理はもう既に邪神の腹の中だ。

 

彼の周りには、食べ残しも無く綺麗な空の皿が置かれている。暴食というわりに、食に対する敬意と感謝で溢れ、マナーを守り食事は丁寧だった。

 

大食いタレントとしてでも活躍できるだろう。

 

 

 

 

何故俺が邪神に対して、このように食事を振る舞っているか。

 

こいつは人類の害である邪神ではあるが、ダンジョン攻略において大きく活躍した。

 

何とこいつは俺の目に見えない素早い動きで、次々と素手で敵を殴り殺し、あっという間に敵軍を壊滅させ敗走にまで追いやった。

 

基本的に魔物は突撃しかしてこない、理性の無い化け物だ。どれだけアンデッド爆弾を爆発させても、敵を殺しても臆せずに突撃を続ける。

 

そんな彼らが撤退したのだ。一体どれだけの恐怖だったのだろう。

 

 

 

まぁ、そんなわけで。こいつはダンジョンで大いに活躍したのだ。

 

部下の功績には、王として報いなければならない。

 

暴食を司るなら、とりあえず腹いっぱい食べさせて満腹にしてやろうと考え大量の料理を食わせようと考えたのだが当たりだった。

 

俺は不満げな顔のベヘモットをホテルの大食堂に案内したら、非常に嬉しそうな顔をして食べ始めたのだ。

 

 

「うむ、このラーメンというのも悪くはない。こんな物が3分で出来上がるとは。俺のいた世界には存在しない味だ。このワインも非常に美味だ。ロマネコンティというのか」

 

ベヘモットは俺がクエストで金と交換したカップラーメンを食べている。うーーむ、上品だ。非常に上品に食べている。というか、どれだけ食べれば気が済むんだ。

 

 

俺はベヘモットの目の前に座る。

 

 

「なんだ、貴様か」

 

微妙そうな顔をした。そんな顔するなよ、悲しい。

 

 

「俺のことを恨んでいるか?自分で言うのも何だが、結構雑な扱いをしていると思うんだが」

 

 

「貴様の命令に対して絶対服従であるという点は色々と思うことはあるが、貴様は俺を封印から解き放ったのだ。脆弱な肉体ではあるが、実体を持ってな。その点は感謝している。あのまま邪神として蘇っていたのなら、ただ厄災を振り撒くだけの存在となっていただろう。だが、受肉したおかげでこのように舌と胃があるのだ。貴様がいなければ味覚と満腹感を覚えることはなかっただろう」

 

 

「それで聞きたいのは、お前が殺した魔物なんだけど。何あれ?なんか、げっそりしてたけど」

 

そう、こいつが殴り殺した大量の魔物の死体。何故か非常に痩せていたのだ。それはもうガリガリに。

げっそりと。回収役のホムンクルスは軽くなったので運びやすくなったと喜んでいた。

 

 

 

「俺の権能については知っているな?」

 

「暴食を司るということは」

 

「俺の権能は暴食、その能力は二つ。一つはカロリーを奪うことだ。俺がいるだけで敵はカロリーを奪われ、触れられるとカロリーなどの栄養を奪われる。痩せていたのは俺に全ての栄養を奪われた結果だろう」

 

 

あぁ~、なるほどねえ。前線のホムンクルスより、ベヘモットの前にいる魔物はベヘモットを無視して共食いを始めたという報告があったのだ。てっきり俺のホムンクルスが使う武器防具によって錯乱したのかと考えていたが、こいつの権能だったのか。

 

 

 

「そしてもう一つ。敵は餓死する」

 

「?そりゃ誰だってそうだろ」

 

「違う。例えばあの機械馬。俺はあいつを餓死させることができる」

 

 

ベヘモットはオレンジジュースを飲む機械馬を指さして言う。

 

 

「餓死って…燃料が無くなった時のことか?」

 

「それはただの燃料切れだ。一時的な休眠であり、餓死とは違う。俺が権能を発動すると、機械馬は飢えを感じ、燃料が無くなれば自身の体を食って分解し、エネルギーに変換し強制稼働させる。最後は変換する物がなくなり餓死するのだ」

 

『否定。当機体は飢えの感覚も、金属をエネルギーに変換する機能は存在しない』

 

 

 

「だから、発生させるのだ。その感覚と機能をな。権能ってのはそう言うものだ、現実を改変するのだ。生きとし生けるもの、何かを食わなければ生きていけない。これが俺の権能だ」

 

 

「ふーん。機械文明とか相手には強そうだな。そのときは権能を存分に奮ってもらおうかな」

 

 

「ククク、俺が活躍するのは意外と早いかもしれんぞ?そのうち面白い物が見れるかもしれん」

 

「そりゃ楽しみだ」

 

 

「今はいないが、寿司職人Kの寿司?という物も是非味わってみたいものだ」

 

「おすすめは大トロだ。うまいぞ?」

 

 

あの人はダンジョンで寿司の食材確保のためにドラゴン殺してるからなぁ。

寿司職人とは一体。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日のログインボーナスはオフィス用品確定ガチャコインだ。

 

えぇ…オフィス用品って。

 

今更だが、このログインボーナス、何の脈絡もないな。昨日は神、今日はオフィス用品。

これ運営が適当に決めてるんじゃ無いか?

 

 

 

それ。

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

C『超頑丈 万年筆千本』

 

 

ペンの中のインクが自動的にペン先に供給されるペン。インクの入れ方は大きく2つあり、インクの入ったボトルにペン先を漬けて吸引する方法と、インクの入ったカートリッジを交換する方法である。

 

万年筆は953年にエジプトで発明され、その後、イギリスで特許が取得されfountain pen(泉のペン)という名前が使われた。

 

 

 

 

 

出現したのは、大量の万年筆だった。

 

 

 

俺はこれを見て思った。

 

 

 

あっこれ武器にしよう。

 

 

 

 

先端は鋭利であり、超高速スピードで敵に飛来すれば、深く突き刺さるだろう。

 

大量の万年筆が予測不能な動きで飛来し、あらゆる角度より突き刺さり貫通、次の獲物を求めて無差別に襲うのだ。

 

軽くて丈夫。数も多い。魔力も大して使わないはずだ。

 

 

俺は万年筆千本を宙に浮かべようとする。

 

『能力 ガチャコール』

 

これによりガチャから出た物をいつでも呼び出し、浮かべ動かすことが出来る。

 

さあ、浮かべ!

 

 

 

 

 

 

 

ウァッ。

 

な、なんだ?頭がだるい!

 

 

まずい、疲労感がやばい、徹夜したかのような疲れが脳を襲う。

 

俺は慌ててポーションを飲む。

 

あー美味い。脳が生き返る。

 

 

 

 

調査の結果、このガチャコールで物を動かすには凄まじい負荷が脳にかかるようだ。

 

万年筆の場所の把握、移動ルートの決定、現在位置の把握など。非常に多く考えなければならない。

 

 

今の俺では、せいぜい一般万年筆を3本ほど自由に動かすくらいだ。

 

万年筆を武器にするの、結構かっこいいと思うんだけどなあ。

 

 

俺は諦めないからな!

 

 

 

 

 

さて、無料ガチャ。

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

 

R『魔王の王冠』

 

 

魔王とは元々は仏教の用語で、仏道修行を妨げる「第六天魔王波旬」のこと。

 

 

仏教だけでは無く、全世界で悪魔や怪物、妖怪などの王としてその名はつかわれ、数多くの神話や物語に登場する。

 

織田信長は自らを第六天魔王と名乗り、延暦寺を焼いた。まさに仏教の敵である。

 

 

ファンタジー作品などの創作においては、人類に敵対する勢力の王のことを魔王と呼称され、特に現代ではこちらの使い方の方がよく使われる。

 

 

 

 

出現したのは、金の王冠だった。

 

王冠が煌びやかに輝き、紫色の宝石など様々な装飾を施されている。

 

金の王冠は、その輝きで一瞬にして俺の目を奪った。その美しさに俺は見とれてしまった。

 

 

 

 

●魔王の王冠

 

 

とある魔王が使っていた伝統ある王冠です。これを着けていると敵軍はあなたの軍勢に恐怖するでしょう。

山田さんも王なのですから、いい加減ジャージやパジャマはやめてそれ相応の見た目をしたらどうですか?

 

 

 

 

 

俺は金の王冠を手に取る。王冠は俺の手のひらに収まり、その輝きはますます強くなった。

 

 

 

 

 

そうだ、魔王軍を結成しよう。

 

 

俺はパジャマを脱ぎ、魔王っぽい装備品をドロップアイテムの中から探し着用する。

 

 

 

 

全身を黒い鎧や兜、ガントレットやレギンスで身を纏った俺は、恐怖と畏敬の念を抱かせる風貌をしているはずだ。

 

 

兜には2本の長い角が突き出し、鎧には不気味な紫色の紋様が彫り込まれていた。ガントレットには鋭い爪がついており、レギンスには尖った棘があしらわれている。

 

 

 

 

俺は玉座に座り、目の前で一糸乱れず整列したホムンクルス達を見る。

 

全員がダンジョンよりドロップした闇の装備を身にまとっており、これこそまさに魔王軍だ。

 

装備が統一されておらず雑多な印象だが、それは我慢しよう。

 

 

 

遠くで軍人達が苦笑いをしているのが視界に入った。だが、何も恥ずかしくない!恥ずかしくないったら無い!

 

 

 

 

「さあ、邪神将ベヘモット、黒炎のA、我が側近よ、出撃せよ!」

 

 

 

魔王軍の結成だ!さぁ、進軍せよ、敵の全てを奪うのだ!

 

 

 

まずは爆弾アンデッドの突撃だ!何事も派手に行こう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダンジョン内の魔物は、ダンジョンに存在する豊富な魔力を吸収して生きている。魔力を体が必要なエネルギーに変換し、生きているのだ。あいつらは魔力と水だけで、生きているのだ。

 

そこに俺の権能だ。俺の権能『暴食』により、その魔力をエネルギーに変換する能力は停止し、ダンジョン内の魔物は生きるために、何かを食べる必要に迫られる。

 

ダンジョン内は、国家に相当する物が存在しているという。暗黒騎士のような兵士から使い捨ての魔物、さらにダンジョン内に住まう動物や虫。

 

一体、何兆の生命がいるのだろうか。

 

こいつらが皆、一斉に飢えを感じ、何かを食べる必要がある。

 

だが、これまで食べるという文化がなかった国家に、農園や牧場などはあるのだろうか。

 

今はいい。豊富で質の良い魔力から変換された栄養が、体内に蓄積されているため、しばらくは大丈夫だろう。

 

しかし、その後は?食料はない。なら、何を食べれるのだ?

 

生きとし生けるものは、何かを食す必要があるのだ。その法則からは、逃げることが出来ない。逃げた者には、相応の報いを。

 

 

 

 

だが、これまで使われることがなかった、胃などの消化器官はまともに動くのか?

 

 

 

クククククク、クククク。クハハハハハハハハ

 

 

 

 

 

 




評価とブックマークお願いします


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

突然の理不尽が獣魔将軍を襲う!

魔王装備は重いから脱いだ。なのでまたパジャマとジャージの生活に戻った。

 

王としての威厳?うるさい、そもそも基本的に誰も、俺を王として扱ってないからな。

 

ほとんどの奴は俺を普通の人間として見ているし、一部は俺を神と崇める馬鹿達。一応敬意のようなものはみんな俺に対して払ってるが、心から俺を王として尊敬しているのは皆無に等しい。

 

 

 

 

まあ、結構ノリノリで楽しめたしこの俺自ら前線に出て左腕の触手で敵を串刺しにして蹂躙して満足したんだけど、この魔王装備が非常に重いしうるさい。

 

ガチャガチャガチャガチャガチャ。動く度に音が鳴るため、もう鬱陶しいのなんの。

 

 

あー、全身が痛い。普段使ってない筋肉が悲鳴を上げている。いやー、肩が凝るなぁ。ピカピカの傷一つ無い魔王装備は今現在武器庫に放置中。これが使われる事はしばらくないだろう。

 

 

 

 

そんなことより、何とバーテンダーに与えた卵が一つ、ついに孵化したと興奮したバーテンダーが俺に報告してきたのだ。ちなみにバーテンダーの店は今大盛況だ。ホムンクルスも大量に増え、ベーシックインカムで大量の金を得たホムンクルスから莫大な利益を上げているようだ。

 

 

生まれた鳥の雛は、バーテンダーの掌の中ですやすやと眠っていた。緑色だ。インコか何かかな?

 

 

「この鳥の名はシームルグ。非常に大人しい、人懐っこい子ですよ」

 

「へー、シームルグっていうのか。で?これは何の鳥なの?」

 

「ですから、シームルグです。鳥の品種と個体名がシームルグ。いやぁ、ただならぬ気配を感じていましたが、まさかシームルグとは。これは残りの2つも楽しみです」

 

 

固体名だけじゃなく、種族名がシームルグ⁈

 

 

 

 

 

シームルグ。イラン神話に登場する伝説の鳥。

 

偉大なる鳥の王。自身が得た食べ物の余りを他の動物が食べられるように置いていくという、心優しい鳥である。

 

かつてはエデンの園の生命の樹に住んでおり、この樹の上で羽ばたくとあらゆる種類の植物の種子が発生するという。樹が枯れると、イランのアルブルズ山(実在)に移住したらしい。

 

 

伝承では、シームルグの体は象さえ運べるほど巨大だという。しかし今目の前にいるシームルグは非常に小さい。今後成長するのだろうか。しかしシームルグの卵は250年かけて孵化するという。つまりガチャから出た時点で孵化する直前だったというわけだ。どのようなペースで成長するか想像できない。

 

 

そして、どうやら生命の樹の上で無くても種子を生み出すことが出来るらしく、飛ぶ夢を見ているのかパサパサと羽を動かし、ポロポロと、種子を落としている。

 

 

幼くてもその能力は健在のようだ。

 

…しかしその種子が問題だった。

 

柿の種のような物、イチゴの種のような物から、大きな球根。さらに光り輝く宝石から氷の塊、燃えさかる、しかし熱くない種まで。

 

 

 

………これは種子なのだろうか。

 

 

困惑していると、話を聞いていたのか、運命教会最高司祭のアリスが運命書を書いていた。

 

「なるほど、山田様は邪神を従えるだけでなく、植物に関する権能を所持している眷属を生み出したのですね。運命書に書き加えておきます」

 

「やめろ!黒歴史を増やそうとするんじゃない!その本を捨てろ!」

 

「捨てても無駄かと。既にデータとして保存し発売中です」

 

「あぁぁぁぁぁ!こんなものが発刊されるなんて世も末だ!」

 

「しかし、山田様。昨日は魔王と名乗っていたではありませんか。今更では?」

 

「あれは…その時のノリだよ。思いついたからやってみたかったんだ。我慢が出来ないんだよ俺は。まさか書いてないよな」

 

「大丈夫です。既に魔王軍結成の瞬間は運命書に記録してあります」

 

「あぁぁぁぁぁぁっクソがッ」

 

 

 

 

 

 

今日のログインボーナスは兵士確定ガチャコイン。

 

兵士。俺は前線でホムンクルス魔王軍兵を率いて戦う軍人達を考える。昔引いた軍人十連ガチャ。

引けたのは潜水艦搭乗員やら従軍記者など、正直言って大半が前線での戦闘をメインとしている軍人ではなかった。

 

なので俺はこの兵士確定コインという物に対して期待はしていない。

正直言ってただの兵士が来ても大量のホムンクルスがいる現状、一人兵士が追加されたところであまり意味が無いのだ。

 

 

それでは、ガチャ!

 

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

UC『ゲリラ戦特化兵』

 

ゲリラ戦。敵軍とは正面から戦わず、少数の戦力で、主に敵の後方を奇襲し、補給戦への攻撃、破壊工作、暗殺、攪乱や攻撃を繰り返し行う戦闘のこと。

 

ゲリラ戦は主に民兵や反政府勢力などの劣勢の武装組織が行うが、ゲリラ・コマンドというゲリラ戦を行う正規軍部隊も存在する。

 

 

出現したのは、セーラー服を着た、少女たちだった。

セーラー服ということは、日本人なのだろうか。

 

しかし髪がピンク、黒、黄色、水色。目の色もカラフルだ。どう見ても日本人ではない。かといって欧米人ではない。何だこれは?既存のどの人種にも当てはまらない気がする。

 

彼女たちは自分を軍事教育を受けた女子高校生と名乗り、その中でもゲリラ戦を得意としていると話してくれた。すぐにでも私たちに命令を与えれば、ゲリラ戦を行い敵を消耗させると話した。

 

いやぁ、流石に女子高校生をそんな、単身後方に送り込むなんてできないよ。危険すぎる。

 

「それは心配ないかと。私たちは頑丈です。頭に弾丸を喰らってもデコピンと同じ程度の痛みと傷しか感じません、まぁ実際に見ればわかるでしょう」

 

リーダーの黒髪の女子高校生が、ピンク色の髪の女子高校生に手で何が合図を送る。するとピンクの女子高校生は黒髪に向けて銃を連射した。

 

だが、黒髪は鬱陶しそうにしているだけで、少しアザがあるだけ。特に大きな負傷もなければ、服も破れていたりはしていない。

 

「い、いやそういう問題じゃなくて。ダンジョンは大量の魔物がいるんだ。あいつらを突破して後方に行くなんて不可能だよ」

 

「大丈夫です。私たちには空間魔法が使えます。ダンジョン後方まで少人数ならワープが可能です」

 

「な、何だって⁈それはすごい、今ダンジョンに関する情報が足りないんだ、すぐにでも行って情報を集めてくれ」

 

 

「了解…む、これは………、申し訳ありません。このダンジョンには対空間魔法用の防御システムがあります。このシステムを突破するのには、しばらく時間がかかるでしょう」

 

「気にしなくていいよ。システムは俺の方でどうにかするから、のんびりしな。あっそうだ。四人だけじゃ戦力不足だし、あいつらを自由に使っていいよ」

 

そうして俺は、あの二人を呼ぶ。

 

カワウソ偵察兵とアリクイ火炎放射器兵だ。

 

ゲリラ戦において役立ってくれるだろう。

 

 

「か、かわいい………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日の無料ガチャ!

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

R『進化ポーション』

 

進化。

生物群が世代を重ねるにつれて、その形質、性質を少しづつ変化させていく現象のこと。

キリスト教などの一部宗教は、人間は創造主により創られたと主張しており、この進化という言葉と非常に相性が悪い。

 

ゲームなどでは進化という言葉は、キャラクターや武器をより良い形へと変化または成長させるという意味で使われる。

 

 

 

 

出現したのは、ピンク色の液体が入った瓶だった。

これは進化ポーション、ダンジョンからドロップする回復ポーションなどと同じ種類のものだろうか。

 

うーん、進化ねぇ。これはあれかな?俺の持つユニットを強化してくれるのかな?だったら非常にありがたい。首無しなんかに使って見たら面白そうだ。ちょっと鑑定してみよう。

 

 

鑑定!

 

 

 

 

●進化ポーション

 

優れた錬金術師により、星のカケラから作られた進化ポーション。レベルを最大まで上昇させ、進化させます。この際進化素材を必要としません。

ユニットの能力を大幅に上昇させ能力限界を突破、さらに新たなる力を得ることでユニットとして進化し種族を超越する力を手に入れることができます。

一度使用すると進化前に戻ることはできませんので注意してください。

 

 

 

まーた知らない用語が出てきた。レベル?進化素材?うーわ、このゲームにレベルシステムがあるとは考えてなかった。

 

…いや、待て。そう言えば、俺はどうしてあの重い鎧を着れたんだ?

 

確かに最近、軍人からトレーニングを受けていたが、だからって金属製の全身鎧を着てダンジョン攻略に参加して走り回るなんて、どう考えても俺の体力では不可能だ。

 

俺はホムンクルスとマッドサイエンティストに話して検査をしたところ、何と製造直後のホムンクルスと前線で戦うホムンクルスとの能力に大きな差が存在するらしい。

 

更に聞き取りをすると、少年Aがダンジョン攻略を始めてから炎を長く出せるようになったと答えた。

 

どうやら元々レベルシステムは存在していたらしい。

 

 

 

……さて。

 

これ、どうしよっか。マッドサイエンティストにあげるか?それともホムンクルス合成にぶち込むか?

 

 

うーん、迷う。本当に迷う。どうしようかな。

 

 

考えていると、7号が俺に話しかけてきた。

 

 

「それ、飲みたい」

 

「いや、本気か?何が起きるかわからないんだぞ?こういうのは首無しにでも飲ませればいいんだよ」

 

「ううん、私が飲みたいの。これ飲めば、もっと強くなれるんでしょう?」

 

「多分な。能力上昇って書いてあるから、悪いことは起きないんじゃないかな」

 

「じゃあ決まりね。私が飲む」

 

「…まぁ、そこまでいうなら」

 

ホムンクルス7号が進化ポーションを飲み干す。おお、一気飲みだ。

 

 

その瞬間。

 

 

膨大なエネルギーの奔流が7号の胸より溢れ出し、周りのものが吹き飛ばされる。

 

 

「な、何だ⁈」

 

●超大成功!戦闘用ホムンクルスが限界まで進化します!

 

●レベルが限界まで上昇しました。これより進化が始まります。進化素材は必要としません

 

●戦闘用ホムンクルスが戦闘用ハイ・ホムンクルスに進化しました!

 

 

 

ホムンクルスが進化した。だが、エネルギーの奔流は止まらない。

 

●レベルが限界まで上昇しました。これより進化が始まります。進化素材は必要としません。

 

●戦闘用ハイ・ホムンクルスが戦闘用エリート・ホムンクルスに進化しました

 

●レベルが限界まで上昇しました。これより進化が始まります。進化素材は必要としません。

 

●戦闘用エリート・ホムンクルスが指揮型ホムンクルスに進化しました

 

●レベルが限界まで上昇しました。これより進化が始まります。進化素材は必要としません。

 

止まらない、システムウィンドウが止まらない。

 

●…

●…

●…

 

…………

 

 

 

●超大成功!!!

パラケルスス・ホムンクルスは全ホムンクルス統括個体 ハブへと進化しました!

 

システムウィンドウの展開が終わった。7号は今、俺の前に何事もなかったかのように、特に見た目もかわらずに立っている。

 

 

な、7号?大丈夫か?

 

「大丈夫、私は今、すべてのホムンクルスを統括するリーダーとなった。これでもっとあなたの役に立てる」

 

 

その目は力に溢れ、表情は自信にあふれていた。ドヤ顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーあ、失敗作ね」

 

我が生まれた時、初めて聞いたのがその言葉だった。

 

後から知ったが、その声の主はシュラハト。この『魔』のダンジョンマスターらしい。らしいというのは、私はシュラハト様に、この時以来会っていないからだ。

 

 

そして私は、名乗りすらもさせてもらえず、第一層の副司令官に任命され、転移させられた。

 

理由は、失敗作だから。

 

馬鹿な、なぜ私の能力も見ずにそんなことがわかる。

 

これは今は亡き司令官より聞いた話だが、私のような筋肉隆々で獣人のような顔のユニットはハズレが多く、逆に人間のような顔に痩せ型のユニットの方が能力が高い傾向にあるらしい。

そしてダンジョンマスターは人間型が好みらしい。

 

そんな、能力も見ずに、決めたのか。

 

確かに、ダンジョンマスターの側近や下層ダンジョン司令官、その他『魔』のダンジョンの要職の者たちは人間と同じような見た目をしていた。だが、そんな、見た目で決めるなんて。

 

その後すぐ司令官が冒険者により死亡し、私が司令官へと繰り上がった。

 

だか、与えられる部下は知性なき魔物たち。まともな部下は与えられない。冷遇される日々。

 

だが、私は諦めなかった。

 

次から次へと冒険者に殺される、下層の司令官。

 

だが、私は生き続けた。休むことなく槍を振い、鍛錬を欠かさなかった。

 

そして私は、禁忌に手を出した。

 

蠱毒。第一層の迷宮を一部隔離し、その隔離エリアで何万もの次から次へとスポーンされる魔物たちに殺し合いを命令した。

それを何年も行った。

 

そうして生き残った、たった一人の魔物を殺し、膨大なDPを使い加工したのが、この蠱毒槍。膨大な呪詛が込められた禁忌の槍。

 

もちろんデメリットもある。この蠱毒によりダンジョンは呪いにより汚染され、30年ほど一層の約半分のエリアが立ち入ることすら不可能となった。

 

罰を受けることは覚悟した。

 

しかし、特に何か言われるようなことはなかった。

 

シュラハト様はダンジョン運営に興味がないのだ。

ただ遊びのように私たちを生み出し、適当にDPを使い暇を潰す。

 

このダンジョンは何もしなくても大量の冒険者達が来る。その上、傘下のダンジョンマスターからの上納金だって凄まじい額になる。

 

 

そうして、我は最高の槍を手に入れた。

 

なのに。

 

 

「なぜ当たらん!」

 

どれだけ槍を振るっても、当たらない、いや、手応えがない。空気を切っているかのようだ。

 

敵は軍服を着たゴースト。物理攻撃の効果が薄いのはわかっている。だが、呪詛まで通じないのはどういうことだ⁈

 

「申し訳ありませんが、あなたは勝てません」

 

「まだわからん!」

 

 

「いえ、無理なのです。彼は世にも珍しい、完全な霊体とでも言いましょうか。純粋な魔法攻撃、実体の対攻撃以外は効かないのですよ」

 

「そんなことはわかっている!だが、なぜ呪詛が効かない⁈」

 

 

「あなたの槍は、凄まじい呪詛が込められている。ですが、それはあくまで槍に込められた能力でしかありません。純粋な魔法攻撃とは言えません。彼にダメージを与えることはできません。詰み、というわけです」

 

「そんなふざけた能力があるかぁ!!!」

 

私がたどり着いた、槍術と呪詛を組み合わせた武の極地。

 

注射針のように敵を穿ち、呪詛を一気に流し込む奥義だ。

 

しかし、槍は軍人幽霊を貫通し、そして何事もないように軍人幽霊の持つナイフが心臓を刺す。

 

 

「無念…」

 

結局、全ては無駄だったのか。

私は、何のために生まれたのだ。

 

「最後くらい、全力を出して戦いたかった」

 

「安心してください。あなたもいつか、アンデッドとして蘇らせてあげます。その際は、我らが王のために存分に働いてもらいます」

 

「爆発するのはごめんだ」

 

「そうではなく、一人の戦士として、よみがえるでしょう」

 

 

「…それは楽しみだ。今度は、是非、今度こそ、まともに戦いたい、理想の主君に仕えたい」

 

 

私は眠りにつく。だが、この化け物の言葉を信じるのなら、一時的な眠りに過ぎない。

 

願わくば、シュラハトを、殺してくれ。

 

 

 

●第一層司令官 獣魔将軍 リザリオンが死亡しました! 

報酬として、指揮官確定ガチャコインがプレゼントボックスに追加されます。

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

またしても何も知らない山田

ホムンクルスとして限界まで進化してしまった7号。

 

その名は『全ホムンクルス統括個体 ハブ』。

 

仰々しい名前だが、一体何ができるのか語ってくれ、さらに鑑定で得た情報を並べてみた。

 

まずは命令権。7号は邪神含む全てのホムンクルスに絶対的な命令を下し、ホムンクルスたちは拒否することができないらしい。

 

そして知識の共有。例えば前線のホムンクルス達が得た情報の中で必要な情報が瞬時に伝達され、前線に共有される。

ホムンクルス同士で迅速且つ息の合った連携ができるというわけだ。

 

さらに魔力と脳の利用。統括個体は各ホムンクルスより魔力を徴収でき、後方で休むホムンクルスから前線で戦うホムンクルスに魔力を送受信することができ、また脳の演算領域を借りることにより統括個体は迅速な計算を行うことができる。

 

最後に肉体改造だ。何でもホムンクルスの体の中にはナノマシンが存在し、各ホムンクルスより集めたデータを集計し分析、そしてその環境に適した肉体に体内のナノマシンが改造を行ってくれるという。

 

このダンジョンは侵入者の生命力を奪う効果があるらしく、早速7号は生命力が奪われないように体の細胞を書き換えたそうだ。

 

 

ホムンクルスが人間の上位互換になりつつあるが、そんなホムンクルスにも弱点はある。それは創造性に欠け、何かに影響されやすいという点だ。

 

ホムンクルスは命令通りに動き何かを発展させることは得意なのだが、自分から動くことや1から何かを創造することを苦手とする。

 

さらに影響されやすい。先日俺は魔王ムーブをしたが、一部の影響を受けたホムンクルスはいまだに自らのことを魔王軍と名乗っている。

 

最悪なことに最高司祭の積極的な布教活動により、俺の信徒も増え続けている。

 

 

彼らが主体性を持つ日が来たら、それはもう人類よりも完全に上位の存在になることを意味する。

 

 

 

 

さて。第一層司令官を撃破したため、その報酬でガチャコインが手に入った。

ダンジョンは98層。つまりダンジョンクリア報酬とは別に、98枚のガチャコインを入手できるのだ。

 

これはおいしい!

 

 

 

そんなわけで報酬の指揮官確定ガチャコイン。

 

今俺の軍を率いているのは最初の12人のホムンクルスと軍人達。

しかし彼らは指揮官としての教育を受けたことがないのだ。

 

ここで指揮官は非常にありがたい!

 

 

それ。

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

 

 

C『有能な怠け者』

 

 

ゼークトの組織論。

ヴァイマール共和国の陸軍軍人、ハンス・フォン・ゼークト(通称)上級大将は、人間は4種類に分けることができるという。

そのうちの一つに有能な怠け者がある。

 

有能な怠け者は指揮官にすべき。自分から動きたくないので人に命令して事態を解決し、また生き残るために全力で頑張るだろう。

 

なお、実際にはゼークトではなく、同じく陸軍上級大将のクルト・フォン・ハンマーシュタイン=エクヴォルトが副官に語ったという説もある。

 

 

 

出現した禿げた男は、非常に太っていた。

軍人とは思えないビール腹、日焼けしていない白い肌。軍服を着ているが、軍人には見えない。

 

 

「どうも、よろしくお願いしますよ。ふっふっふ」

 

「よろしく。早速で悪いがあんたには軍を率いてもらう。我が軍にはまともな指揮官が存在しない、一刻も早く我が軍の指揮をしてほしいんだが…」

 

俺は有能な怠け者の太った腹を見る。

 

「とてもじゃないが、軍人には見えない。大丈夫か?」

 

「安心しなさい、私は後方で指示するタイプだ。太った体でも問題はない。それで?私はどのような軍隊を指揮すればいいのかね?」

 

俺は軍のことを教えるよう、現在の魔王軍総指揮官である士官学校学生に命ずる。

 

「ふむふむ、わかりました。この私が全力で軍隊を指揮し、勝利を手にして差し上げましょう。君、私の補佐官となりなさい。いい勉強になるでしょう」

 

「ずいぶんやる気だな」

 

「命令ですからな。それに、今この軍隊の中でまともな指揮官は私しか存在しません。今のうちに功績を重ねれば、後々権力争いで有利になるでしょう」

 

 

 

 

 

 

あのおっさんは何とたった1日で第二層の半分を攻略した。有能すぎる。

学生によればビールを飲みながら指揮していたといい、酔っ払って将来は軍を掌握し甘い蜜を吸いまくると大声で話していたらしい。

 

 

 

 

 

 

 

それでは、今日のログインボーナスである無料ガチャコイン!

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

R『超高性能スーパーコンピュータ』

 

スーパーコンピュータ。

大規模な計算を超高速で行う計算機のことである。

日本製のスーパーコンピュータは「京」「富嶽」が有名。

富嶽はなんと一秒間に40京回以上の計算ができるという化け物であり、用途としては遺伝子の分析、人工知能の学習、シミュレーションや災害の被害予測など多岐にわたる。

 

 

マッドサイエンティストによる分析の結果、研究所に設置されてあるスーパーコンピュータの性能を大きく上回るという。

 

 

しかし研究所のマッドサイエンティストからはあまり良い反応はなかった。

なぜかと聞くと、構造や仕組みは興味深いが、研究所のスパコンで十分なので、必要ないみたいだ。

 

マッドサイエンティストに必要ないなら、自分で使おう。

俺はスライムに命じて、スパコンの大量模倣を命じ、全てダンジョン攻略に使用するよう命じた。

これでダンジョン攻略が捗るだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

本日の無料ガチャ!

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

 

C『国有地』

 

 

 

…特に何も起きない。

たまにあるんだよな、この何かが確実に起きているはずなのに、何が起きているのかわからない時が。

 

不気味だ、今もこうしている中で何か取り返しのつかないことが起きている気がする。

 

だが、そんなことを俺は知る由もない。うーん、不安だ。

 

せめて鑑定ぐらいさせてくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

速報です。

 

先ほど太平洋赤道上にて、突如として無人島が出現したと記者会見で発表されました。

場所はハワイ州のほぼ真南、無人島の北東には島国であるキリバスが存在しており、無人島の大きさは淡路島とほぼ同じであると発表されています。

 

この無人島は山田氏がガチャより入手した『国有地』との関連性が高いとされており、また未確認ですがアメリカ軍が無人偵察機を派遣したとの情報もあり…

 

 

 

 

 

えぇー、JAXSの発表によりますと、月面基地アルテミスより飛翔体の発射を確認、飛翔体は十数発の発射が確認され、着弾予想地点は無人島であるとされています。

キリバスでは現在避難が行われています。在留邦人の安否は不明であり…

 

 

 

 

続報です。現在飛翔体は戦闘機のような形へと変形、無人島付近を偵察中のアメリカ軍無人偵察機と交戦状態に突入したとホワイトハウスより発表が…

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

都合の悪い物はぶっ潰せ!

ホムンクルスの製造が次々と完了し、このショッピングモールとホテルは非常に賑やかになってきた。

 

 

人数が増えたと言うことは、当然ながら経済も活性化する。人が増えれば増えるだけ、金を使う人が増えるのだ。当然である。

 

 

そして大量に増えたホムンクルスは一体何に金を使うか。

 

そう、飲食である。このショッピングモールにおいて飲食店は3店舗しかない。

 

そこに何百人ものホムンクルスが集中するのだ。これは大儲けだな、俺は気楽に考えていたが、一つの問題が発生した。

 

凄まじく混雑するのだ。そのためバーテンダーや寿司職人K、騎士パーシヴァルは大忙し。

この事態の解決のため、バイトを募集し始めた。元から影響されやすいホムンクルスは飲食店の店員に憧れのような物があったのだろう。すぐにバイトは集まり、ホムンクルス達は働き始めた。

 

 

 

ここでさらに問題が生じた。普通に前線で命をかけて戦うホムンクルスよりもお金がもらえるのだ。

 

俺は慌てて、ダンジョン攻略に参加したユニット、さらに造幣局で働くユニットや、ダンジョンで大きく活躍したユニットには特別手当として追加の賃金を支給することを決定とした。

 

財源は少しずつベーシックインカムより徴収していたお金だ。

 

もちろんそれだけでは足りない。なので俺はこれまで税金を納めることなく大儲けしていた店舗より法人税を徴収することを決定した。

 

もちろん不満はあったがそれ以上に利益が出ているので問題はないらしい。良かった。

 

 

さらに俺はこの財源を利用して清掃のバイトを雇った。ホテルや地下の駅、ショッピングモールの掃除である。ダンジョンから出入りするユニットが増えたため、ほこりや塵、汚れが目立ち始めた。

 

今までは目についた何人かのホムンクルスに命じて一日だけの掃除をさせていたが、これからはしっかりとした報酬を渡すことにした。

 

ダンジョン攻略で負傷し休憩中のユニットの良い副業となるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

今日のログインボーナスは通常ガチャコイン。

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

C『進化する飛車』

 

 

飛車。将棋において使用する駒の一つ。将棋は古くからあるが最初期には飛車という駒は無く、鎌倉時代に考案された駒である。

 

飛車は王を除いて、最も重要な駒の一つ。角行と並び攻撃の要となる駒であり、この駒を対戦相手に取られれば非常に不利な状況に陥ってしまう。

 

将棋の駒は相手の陣地に入るなどの条件を満たすと「成る」ことができ、駒を裏返し全く別の駒となり性能が大きく上昇する。

 

飛車が成ると竜王という駒になり、ただでさえ強力な飛車はさらに強くなる。

 

飛車は縦と横に敵の駒が無い限り何マスも動くことが出来るのだが、竜王はさらに斜めに1マスだけ動かすことが出来るようになるのだ。

 

「ヘボ将棋、王より飛車をかわいがり」という言葉がある。

この飛車ばかり重宝し、王よりも大事にした結果敗北するプレイヤーのことを表した言葉である。

 

 

 

 

出現したのは、何の変哲もない、小さな将棋の駒である。

 

使っている木材の質は良さそうだ。字も達筆で飛車と書かれており、非常に高そうな雰囲気を放っている。

 

 

……それだけ。特に何も起きない。

 

駒を見る。うん、特に何も起きない。普通の駒だ。

 

これの何処が進化するのだろう。これに経験値を蓄積させれば、何か起きるのか?でも、俺やユニットのような生き物だけじゃ無く、物にも経験値は貯まるのか?

 

俺は何気なく将棋を裏返してみる。

 

 

そこには赤字でこう書かれていた。

 

 

 

 

 

『女王』

 

 

 

 

 

女王…?

 

 

……え、なんで女王?竜王じゃなくて?どう考えても竜王よりも弱いと思うんだが。

というかこの駒、どう動くんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

あ、チェスか!

 

チェスにはクイーンという駒がある。将棋の飛車と角を合わせたような力を持つ駒で、縦横斜めに無制限に動かすことが出来る。

 

なるほど、確かに進化しているな。普通の将棋の中では確かに最強の、進化した飛車ともいえるだろう。

 

 

 

………で?だからどうした。こんな駒、使えないじゃん。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、ホムンクルスの一人がこの駒の貸し出し申請をしてきたので紛失しないよう注意して貸し出しだ。

 

ホテルの受付には客に貸し出すためにトランプやオセロなどがあり、その中にも将棋はある。

 

この将棋を友達のホムンクルスとするのだが、ジョークグッズとして使いたいそうだった。

 

 

その後、俺はそのホムンクルスから衝撃の報告を聞く。

 

なんとこの将棋の駒を使って遊び、友達を驚かせようとしたのだが、なんと友達は驚く様子はなく、女王に成った駒相手に特に何の反応を示さず、無双する女王相手に敗北したのだった。

 

勝負終了後、友達はようやく女王に気づき、友達を怒った。友達のホムンクルス曰く、何の違和感も覚えなかったそうだ。

 

マッドサイエンスの調査の結果、将棋中対戦相手は違和感を覚えなくなる効果があるようだ。

 

それだけ。もっと違うことにその効果使おうよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それでは、無料ガチャ!

 

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SR『概念破壊 質量保存の法則』

 

質量保存の法則。どれだけ時間がたっても、形が変わっても質量は変わらないという法則。

 

 

 

「近代化学の父」と呼ばれたフランス人、アントワーヌ・ラヴォアジエという、酸素の命名を行った偉いおじさんが1774年に発見した法則。ちなみにこのおじさんは最後、フランス革命時にコンコルド広場でギロチンにより処刑されてしまった。その際裁判長に「共和国に科学者は不要だ」と言われる。

 

さらにこのラヴォアジエの逮捕は、革命の指導者の一人、ジャン=ポール・マラーがかつて提出した論文がラヴォアジエにより却下された逆恨みであるという説もある。ひどい。

 

 

 

様々な分野で使用される法則であり、そのため日本では多くの学生がこの法則について学ぶ。

 

 

 

 

 

 

出現したのは、一枚のプレートだった。おそらく黒曜石のような素材で構成されており、俺の顔が鏡のように反射されている。プレートは俺では解読不能な文字が長々と刻まれていて、神秘的な雰囲気を感じさせる。

 

そして何より、このプレートは未知の力で浮遊している。

 

 

概念破壊。

 

あぁー、一目見て俺はやばいと感じてしまった。

 

不穏だ。概念はそもそも破壊なんて出来ないし、破壊する物じゃないんだよなぁ。

 

概念なんか破壊したら何がおこるか本当にわからない。しかもそれが質量保存の法則ならなおさらだ。

 

 

 

 

………そこまで考えて俺は気づいた。今更じゃないか?

 

俺はミダースの手によりあらゆる物質を黄金に変える能力を持つのだが、それは1キロの物を1キロの黄金に変えるというような重さを基準にした物では無く、1立方メートルの物を1立方メートルの黄金に変えるという、体積基準のスキルなのだ。

 

 

……つまり、一枚の軽い紙を、一つの紙の形の、重い黄金に変えることが出来るのだ。

なので俺はもう質量保存の法則を無視している。

 

 

 

鑑定!

 

●概念破壊 質量保存の法則

 

このプレートは破壊不能オブジェクトです。このプレートが存在する限り、あなたを中心とした一定範囲内と、あなたが治める領土内では、魔法などの使用時、質量保存の法則による抵抗を無視することが出来ます。

 

 

創造魔法などをこの世界で使うとき、質量保存の法則の抵抗により使用する魔力が大幅に上昇または魔法の使用難易度が上昇しますが、このプレートがある限りその法則を無視し、抵抗を無力化できます。

 

使いたくない場合はプレートに一定量魔力を流し込めばオンとオフの切り替えが可能です。

 

あ、ダンジョンはこの世界の領域では無いので、元から質量保存の法則による抵抗はありません。

 

 

 

 

 

 

つまり、前線で戦うホムンクルスは今まで通り何の抵抗もなく、いつも通り魔法を使うことが出来ると。

 

 

そもそもこんな物無くても、ショッピングモールやホテルではなく、ダンジョンに入って創造魔法を使えば良いのでは?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●ダンジョン第61層『悪性商業魔法都市 カオス・フォートレス』

 

 

 

 

 

ぷるぷる

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ごみごみごみごみ&ごみ

山田ドラゴンガチャ王国の主要産業は何だろうか。

 

 

 

一つ、ベーコンキャベツ。宇宙船の技術と希釈した植物成長剤を惜しみなく使った超ハイスピードでモリモリ成長するベーコンキャベツは味も見た目もベーコンなのに、栄養とカロリーはキャベツとほぼ同じという、非常にヘルシーな食べ物だ。

 

 

これをクエストで取引して入手した調味料付きでホムンクルス相手に売り捌いている。一日500GPで食べ放題だ。

お得でしょ?

 

 

 

 

二つ、みかんジュース。蜜柑の樹に取り付けられた蛇口から無限に排出される蜜柑ジュース。この蜜柑ジュースも一日500GPで飲み放題。

 

そしてこの無限蜜柑ジュースを『スキル ミダースの手』により黄金に変えた物をクエストで売り捌き、トイレットペーパーなどの日用品などと交換している。

 

この黄金が凄まじく高価で売れるのだ。ちょっと蜜柑ジュースの飲み残しを黄金に変えるだけで山のような物資が手に入る。おかげで物資には困らない。

 

 

 

 

三つ。飲食業。寿司屋、卵の酒場、騎士の食堂などの飲食店はホムンクルスが大勢来店し大儲け状態だ。この飲食店より法人税を徴収し、莫大な税収を手に入れることに成功した。

 

 

デリバリーサービス、伝説の惣菜屋より法人税を徴収しようと異空間より商品を届ける若者を呼び止め、税金を払わせようとしたが、「自分バイトなのでよくわからないっす」と言われ逃げられている。

 

いつか莫大な追徴課税を課して搾り取ってやる。

 

 

 

四つ。その他。それは本当にその他だ。ゴブリンの経営する占い屋、2号のマッサージ店、そして運命教会の寄付金。

 

 

運命教会最高司祭のアリスは俺の徴税に抗議してくるが、神の言うことに逆らうのか?というと黙る。

 

そもそも、そんな寄付金集めて何するんだよ。

 

 

 

 

 

そして最後に。我が山田ドラゴンガチャ王国の中で最も大きな産業である。

 

それは…。

 

 

 

 

 

 

「ろーーん!」

 

 

「ツモ!大三元ッ」

 

「よし、上がりだ!」「ウノ言ってない!」「ぁぁぁぁぁ」

 

「そんなバカなッ、破産するぅ!」

 

「うわぁぁぁぁ!」

 

 

 

そう、賭博である。

 

もともと麻雀と人生ゲーム、そしてバーに設置されてあるビリヤードやダーツでそこそこの規模の賭博は行われていた。

 

そんな賭博で俺は大敗北を繰り返し、俺は一度麻雀はやめて、麻雀についての勉強を行うことにした。

 

 

 

俺はクエストにより様々な日用品を取引しているのだが、俺は7号に麻雀で勝つため多くの麻雀に関する書籍や心理戦を学ぶべく、ギャンブル漫画を手に入れた。

 

 

俺は麻雀の専門書を読み込み、ギャンブル漫画はその合間に読んでいたのだが。

 

 

ホムンクルスが麻雀漫画を読みたいと言い出したので俺は快く貸し出した。それが地獄の始まりだった。

 

 

 

そう、ホムンクルスは影響を受けやすいのである。

 

 

 

 

数多くのホムンクルスがギャンブルにハマり込むのに時間はかからなかった。

 

麻雀はこれまで一部の麻雀好きなホムンクルスが行う暇つぶしでありお遊びだったのだが、全財産を賭け、破産し、大勝するホムンクルス達が占拠する地獄へと早変わり。

 

 

そのホムンクルスの異常な熱気と空前のギャンブル漫画ブームに次々と影響を受けたホムンクルスは雪だるま式に増えていき、俺に対してクエストで麻雀台や漫画、そしてトランプなどの勝負が出来る遊び道具を要求してきたのだ。

 

皆、凄まじい、ギャンブル漫画に登場するギャンブラー特有の、凄まじいオーラを纏っていた。怖い。

 

 

 

 

そしてホテルの空いているエリアに麻雀などの娯楽品を設置し、そこはあっという間に殺伐とした賭博場へと早変わり。

 

 

一日中ダンジョンで働き、次々に全財産を使い果たし、破産していく。

 

 

幸いなのは、ホムンクルスは純粋なのでイカサマ、暴力沙汰、ルール無視などを行わない。

 

しっかりと勝負前に挨拶をしている。礼儀正しいのだ。でも一応賭博場に関する法律を布告しておいた。

 

 

そして賭博場に入るためには、入場料としていくらか徴収している。もう大儲けだ。

 

 

最高司祭アリスは賭博場の入り口で寄付を募り金のアクセサリーをホムンクルスに売りつけ、ゴブリン占い師は占いと胡散臭い商品で儲けていた。商魂たくましい。

 

 

 

そんな地獄の中、今日、最強の麻雀戦士を決める戦いが始まったのだった。

 

 

 

北風。

 

多くのホムンクルスの屍の上に君臨する賭博場の女王。

 

 

 

全ホムンクルス統括個体 ハブ 七号。

 

もちろんこの賭博場内では、通常の人間と同等の能力しか使えないように命令してあるので、機械馬や合成ホムンクルスなどは人間の能力の範囲内まで脳の処理速度を下げており、極端な個体差は基本的に存在しない。

 

 

なので七号は賭博時は統括個体としての力を使っていない。それでこの強さか。

 

 

 

西風。

 

暗殺者スナイパー。

 

この男は多くの修羅場を経験し獲得した勝負感、そして弾道を計算するその鍛え上げられた脳、圧倒的なまでに濃密な人生経験により培った心理戦のエキスパート。場を支配し、多くのホムンクルスを葬ってきた。

 

 

 

南風。

 

ホムンクルス(堕天使の羽)

 

ダンジョンでドロップした堕天使の羽との融合により誕生した、背中に漆黒の翼をはやした青年。

 

戦闘でも謎の黒い光線を放射し、敵を撃破する実力者。麻雀では堅実な選択により勝利を重ねてきた。

 

名前はジェパード。ホムンクルスは生産時、自動的に生成された名前が与えられる。

 

 

 

東風。

 

 

俺。運命教会が崇める、運命と幸運を司る神にして王。

 

 

 

 

 

 

 

今、この俺が有り金を搾り取られることがほぼ確定した麻雀が始まるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ~、惜しかった。後少しで国士無双だったのになぁ。

 

さて。麻雀で負けたことは忘れよう。

 

運というのは、不運が来たら幸運が来る物だ。

 

 

今日のログインボーナスは通常ガチャコイン。

 

 

こいッ。

 

 

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

 

 

HR『スキルガチャ』

 

 

 

出現したのは、ガチャだった。

 

そう、ガチャである。俺が今までコインを入れてレバーを回し、様々なアイテムを入手してきたガチャが出てきたのだ。

 

しかしこれまでのガチャは赤色だったが、このガチャは水色だ。スキルガチャ、どういうことだろう。

 

 

 

 

 

 

●『業績 新しいガチャを手に入れるを達成しました!』

 

『報酬としてスキルガチャ専用6連ガチャコインがプレゼントボックスに追加されます』

 

 

 

うおおおおおおお、6連ガチャ!

6回も回せるのか!

 

 

このスキルガチャは、一体普通のガチャと何が違うんだ?スキルガチャ、という名称からまさか………

 

 

 

 

 

 

 

●スキルガチャ

 

このガチャから排出されるアイテムはスキル限定!

 

CスキルからSSRスキルまで、多種多様なスキルを手に入れることができます。

 

しかしその代わりに振れ幅が広く、排出されるスキルは誰にも予想することが出来ない闇鍋状態です。

 

当たれば非常に強力ですが、外れれば微妙なスキルが排出されます。

 

このガチャより排出されるスキルは自動的に山田様が習得され、山田様以外が習得することはできません。

 

 

 

 

 

来たッ、スキルだけ!

 

これはいいぞ、今までのガチャは何が出て来るのか本当にわからない、本当に分からないガチャなのだ。

 

そんな闇鍋からスキル限定で入手出来るのだ、排出されるアイテムを大きく絞り込むことが出来る。

 

スキル確定コインが無くても、スキルを手に入れることが出来るのだ。闇鍋?外れれば微妙?今までだってそうじゃないか。

 

 

 

さあ、今日の無料ガチャと、先ほどの6連ガチャコイン、合計7回だ!

 

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

C『へそで茶を沸かす』

C『無くしたパズルのピースを見つけることができる』

C『ヘディング○』

C『いちご狩り職人』

C『佃煮(母の味)』

C『光合成(植物プランクトン)』

C『習字あ』

 

 

 

 

 

…い、いやまだだ。もしかしたら使えるスキルかもしれない。

 

そう、何事も確認が大切だ。さあ、システムウィンドウよ、スキルの効果を見せてくれ。

 

 

 

 

 

 

C『へそで茶を沸かす』

 

おへその上にヤカンを置けばお湯を沸かせます。宴会芸に最適。

 

 

C『無くしたパズルのピースを見つけることができる』

 

スキル名そのままです。

 

 

C『ヘディング○』

 

中学サッカーで活躍できる程度のヘディングができるようになります。

 

C『いちご狩り職人』

 

いちごを素早く採ることができます。

 

C『佃煮(母の味)』

 

お母さんが作ったかのような安心感を感じる佃煮が作れます。

 

 

C『光合成(植物プランクトン)』

 

植物プランクトン並みの光合成ができます。

 

C『習字あ』

 

「あ」が綺麗に書けるようになります。

 

 

 

 

ご、ごみだ。予想以上にゴミだ。効果を詳しく見てみれば違うかと考えたがそんなことは無かった。

 

ゴミはゴミだった。

 

ブックメーカーもやる気がないのか、それともそれ以上に説明することがないのか説明が非常に簡素で単純。

 

 

使えねぇ…。このガチャ、ゴミでは?正直、普通のガチャを回さずにこのスキルガチャを使うメリットを感じない。

 

当たれば強いとあるが、その当たりが出るまでに何回回せば良いのだろうか。

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

人助け

ダンジョン第2層は陥落寸前だ。

 

敵軍は壊走を繰り返し、最後の抵抗を行おうと、残存する戦力を結集するために第2層の大半のエリアを放棄し撤退した。

 

 

第2層は第1層と同じく複雑な迷路で構成されるのだが、有能な怠け者の的確な指揮とホムンクルス同士の情報共有や連携の前に、圧倒的寡兵であるにも関わらず次々と敵軍を包囲、挟撃、孤立した敵軍を殲滅するという訳のわからないことを行い、次々と敵陣地を切り取っていった。

 

 

残すところは第2層最奥に位置する大部屋、東京ドーム十数個分の面積の土地のみ。

 

寄せ集めの兵士を結集しただけなのだが、その数だけは凄まじい。なんせ第2層司令官は壊走した兵士を殿として犠牲にして、この最後の大部屋にまで無事無傷で後方の戦力を撤退させることに成功したのだ。

 

さらにこの大部屋は数多くの城壁、バリケードで構成された陣地で覆われており、もはや部屋では無く一つの要塞だ。

 

 

その鉄壁の要塞を凄まじい数の兵士が守護しているのだ。これから激しい攻城戦が始まるだろう。

 

そう考えていたが、そんなことは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

対歩兵戦車へと改造された、ゲパルト対空戦車50台で構成される魔王軍第一戦車大隊。

 

マッドサイエンティストにより改造されたそれはさながら動く小型要塞。

 

 

戦車撃破のために殺到する兵士を踏み潰し、対空砲で滅多打ち、城壁はレーザー砲が貫き蒸発する。

 

そうして強引に切り開いた道へ大量のホムンクルスが殺到する。

 

ホムンクルス達はダンジョンよりドロップした装備で身を包んだ完全武装状態で、劣悪な装備の敵兵を一方的に殺戮する。まるで害虫駆除だ。ああ哀れな敵兵よ、さっさと死んでアンデッドになってくれ。

 

 

今更だが、敵を倒すとアイテムや武具が何処からか現れドロップするのだが、そのドロップ品が敵兵の装備よりも圧倒的に優れているのだがどういうことだろう。

 

例えるならゲーム序盤の敵が、ゲーム後半でドロップするはずの武器をドロップするというべきか。

 

 

 

今日中にも第二層は陥落するだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それでは、今日のガチャ。ログインボーナスは健康ガチャコイン。

 

 

さあ、こいッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

UC『ドコサヘキサエン酸』

 

 

 

ドコサヘキサエン酸。化学式C²²H³²O²。

不飽和脂肪酸の一つであり、人間に必要な必須脂肪酸でもある。

 

しかしこのドコサヘキサエン酸は人間は自分一人で合成することが出来ないので、人間は外部より摂取する必要がある。

サバやサンマなどの魚に多く含まれており、視力低下の抑制、免疫反応の調節、血液中の脂質の低下、記憶力の向上など数多くの効果がある。

 

 

 

 

 

 

出現したのは、生きた鮭だった。

 

 

ドコサヘキサエン酸は魚に多く含まれるらしいし、そういうことかな?

 

 

陸地にもかかわらずピチピチと元気に跳ねている鮭からは無限に溢れる生命力を感じ、その引き締まった身、光沢のある鱗は銀色の光を放っている。

 

俺は口内に溢れる唾液を飲み込む。非常に食欲をそそる鮭だ。魚は新鮮な内がいい、すぐに調理してもらおう。

 

 

俺はダンジョンより帰還した、腕にワイバーンを挟んだ寿司職人Kに調理してもらうことにした。

このワイバーンは肉寿司として販売するそうだ。楽しみだなぁ。

 

 

 

 

そうして始まった鮭の解体ショー。

 

 

鮭を捌く寿司職人は、その技術と熟練度を駆使して、鮭の鮮度と美味しさを最大限に引き出す調理を行う。

 

 

素早く鮭を捌く鮭の腹を包丁で切り開き、腹を切ることで内臓を取り除く。

 

鮭の身をそのワイバーンをも狩るその包丁技術を駆使して巧みに切り分け、鮭の身は数多くの部位に分けられる。

 

最後に鮭の切り身は寿司のネタとして俺の前で握り寿司として仕上げられた。

 

寿司職人はその経験と技術を駆使して、鮭の美味しさを最大限に引き出し、お客様である俺に極上の寿司を握るのだ。

 

 

 

 

 

うまい!脂ののった新鮮な鮭は極上の一品。口に入れると溶けるように消え、口内を鮭の旨みが暴れ回る。

シャリとの相性も良く、醤油、わさびが鮭の旨みを強く引き出す。

 

人生ゲームの景品とは大違いだ。

 

 

そうして鮭以外にもワイバーンの肉寿司などをおなかいっぱい食べ退店しようと席を立つが、そこで衝撃の光景を目にする。

 

 

 

生け簀の中で鮭が元気に泳いでいた。

捌かれたはずなのに、どうして。

 

 

寿司職人は語る。神経を麻痺させることにより感覚を遮断、その内に細胞と細胞の間を切ることにより体の負担を最大限軽減。鮭は自身が捌かれていることを自覚せず生き続ける。

 

あとは外科手術により体を元に戻して水槽にいれるだけ。

 

 

この鮭は運営から仕入れる鮭よりも品質がいいので、このまま育て、少しずつ肉を切り取っていくのだとか。

 

 

うーーーん、神技。

 

 

 

 

 

 

 

マッドサイエンティストによる検査の結果、なんとこの鮭を食べたものには人体でドコサヘキサエン酸が合成できるようになるそうだ。

 

現在、研究所にて鮭は育成中。その切り取った魚肉を培養し、寿司屋に出荷している。俺は国民の健康のため、全国民にこの鮭を食べさせるため、『鮭をたべる義務』を法律に追加した。

 

 

 

人類はこうしてまた一歩進化したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それでは、無料ガチャ!

 

 

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

R『依頼掲示板』

 

 

出現したのは木製のボードだった。ボードの上の方には英語で『QUEST』と書かれている。

 

 

 

クエストってあれか?視聴者が俺に対して発注しているクエストとは別物なのか?

 

考えていると、突如として大量の紙が貼り付けられていた。

 

一枚だけではない。数えきれないほど大量の紙がとんでもない速度で貼られていく。

 

その勢いは止まらず、次から次へと掲示板にカラフルな紙が貼り付けられる。一瞬だけ見えた紙には要求品、期限、依頼者の名前などが書かれていた。

 

やっぱり今までと同じくクエストじゃないか。

 

あ、止まった。依頼掲示板を見ると、凄まじい数の依頼書が貼り付けられていた。依頼書の上に依頼書が張られ、辞書のような厚みとなっている。

 

 

 

鑑定!

 

 

 

 

 

●オリバーの依頼書

 

オリバーには夢がありました。それはサッカー選手です。デンマークではサッカーが大人気。同級生達も、オリバーの兄も将来の夢はサッカー選手。

 

ですがそれは叶わない夢でした。何故なら、彼には生まれつき足が無いからです。

 

もうサッカー選手になるのは諦めました。でも、一度でいいからサッカーをしてみたい。

 

今、山田様が隣の納品ボックスに依頼書と共に義足を入れて箱を閉じればオリバーに義足が届きます。

 

 

●『サッカーがしたい、ただそれだけです』

依頼主 デンマーク人 オリバー・レノウ 高校生

要求品 義足

報酬  貯金全額  

 

 

 

 

 

ああッ、ふざけるなッ、このバカ鑑定スキル!

 

違うだろッ、今鑑定しようとしたのは掲示板だよ、依頼書じゃない!そのぐらいわかるだろ⁈

 

なんだこの依頼書⁈重い、設定が重い。

 

というかこれ、どういうことなんだ?俺に対してクエストを送れるのはVIPである視聴者だけのはずだ。このオリバーとかいうやつはVIPなのか?

 

 

他の依頼書を見るが、どれもサラリーマンだったり専業主婦だったり、VIPとは思えない人ばかりが依頼人となっている。

 

俺の義足は本当にこのオリバーに届くのか?それとも、このクエストは自動生成されただけなのか?

 

 

まぁどっちでもいい。俺はゲーム内のNPCに感情移入してしまうタイプなのだ。無視するという選択は存在しない。俺は納品箱に義足と依頼書を入れ、箱を閉じる。

 

存在するかどうかわからないけど、サッカー頑張れよ、オリバー君!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は生まれつき足がなかった。同年代の奴らたちと同じように走り回ることも、自由自在に移動することもできなかった。

 

みんなが外で遊んでいる時、俺はいつも孤独で苦しい日々。学校では階段を上り下りするたびに助けを求めるしかなく、友達と遊ぶこともままならなかった。

 

 

足のない俺の夢はサッカー選手。当然ながら諦めた。今の夢は、一度でいいからみんなでサッカーをしたい。それだけなんだ。

 

俺はずっとこの困難な日々に立ち向かってきた。だが、苦痛と孤独は絶えることはなく、絶望した。

 

そんな時、上位の存在から通達があった。

周りはやれ人類の滅亡やら、他の世界からの宣戦布告やら騒いでいたがそんなことどうでもよかった。

 

 

だがある日俺は、山田という日本人がガチャより義足を入手したというニュースを目にする。

それは健常者と同等の機能を持ち、自然な歩行が可能な夢のような義足だった。俺は胸が高鳴り、この義足が自分にとっての救いとなることを確信した。

 

 

今各国は義足をクエストにより入手し、研究を進めているという。早く、早く義足をくれ。

 

 

そして、その日は突然訪れた。

 

 

●指定ユーザーである山田様がアイテム『掲示板』を入手しました!山田様を指定した国家の国民は山田様にクエストを発注することが出来ます!【要求物資に一部制限あり】【等価交換の法則が一部緩和されます】

 

 

これまでは国家の要職につく人間だけしかクエストは発注できなかった。だが、俺のような一般人でも発注できるようになったようだ。

 

早速、俺は義足を発注する。

 

そして、幸運にも山田の目に留まり、すぐに依頼は達成され義足は届いた。

 

目の前には、動画を通じて見た、義足。

 

俺の身体に新たな義足が取り付けられる。最初の一歩を踏み出す瞬間、感動の涙を流した。

 

 

義足は、自由な歩行を実現してくれた。

 

 

俺は『運命教会 ヨーロッパ支部【非公式】wiki』のコメント欄に書き込む。山田様は、俺にとって神様だ!

 

 

俺は新しい人生の一歩を踏み出した。もはや何事にも制約されず、サッカーだってできるのだ!

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

カルトカルトカルト

我ら魔王軍はダンジョン第2層の攻略に成功した。

 

 

一兵たりとも生かさずに殲滅した。魔物が発生するスポーンポイントも完全破壊、第2層各地で孤軍奮闘する残党も駆除に成功。第2層は現在大量の死体が積み重なっており、現在死体の撤去中。

 

 

……そう、生き残りは存在しない。第2層の敵軍は皆殺しにした。にも関わらず、第2層司令官撃破のアナウンスは流れない。これが何を意味するのか。

 

 

 

 

 

第二層司令官、逃げやがった!

 

 

いやまぁ、普通はそうなんだよな。勝ち目のない戦いなら逃走するのは普通のこと。第1層の司令官のように勝ち目もないのに徹底抗戦なんてしない。

 

敵が全エリアの兵士を最後の大部屋に結集させたのは最後の抵抗などでは無く、第2層司令官とその側近、そして貴重な物資を安全なエリアに待避させるための時間稼ぎだったというわけだ。

 

俺はまたゲーム的に考えていた。ゲームではボスは基本的に逃げたりしないからだ。だがここはゲームのような空間だがゲームでは無いのだ。

 

 

 

 

この俺から逃げられると思うなよ。いつかその首を刈り取ってガチャコインを手に入れてやる。

 

 

 

そうして始まった第3層攻略戦。第3層はこれまでとは違ってひたすら長い道が続く一本道。

 

この道には、隙間のないくらい大量の敵兵がギチギチに詰っており、これを突破するのは困難だろう。

 

もちろん、こんな奴ら敵ではない。魔王軍の前には、あいつらなど塵芥に等しい。

 

 

問題なのは、この通路が長すぎるということだ。地平線までこの道は続き、そして敵兵も隙間なく詰め込まれている。

 

第3層の攻略のためには、この大量の敵兵を正面から叩き潰さなければならないということだ。

 

第3層の攻略は時間がかかるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日のログインボーナスは武器確定ガチャ!

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

UC『宇宙を切り裂く真紅の竜魔剣ゼノ・バルトシアス【キーホルダー】』

 

 

 

カランッ、という音と共に床に落下する。

 

 

出現したのは掌サイズの剣だった。安っぽい金色の塗装と小さな赤いガラス玉が着けられた、チープな印象を与えるキーホルダー。日本全国のお土産屋に置かれている、観光地と何の関係も無い武器キーホルダーを思い出す。

 

 

剣の持つ手の部分には金色の竜がくるくると巻き付いている。しかしその竜は翼も無ければ足も手も無い。

 

どちらかと言えば蛇のような見た目だ。

 

 

 

 

さて。これがただのキーホルダーなら放置するのだが、宇宙を切り裂くなどという大袈裟なことを書いてある。

こんなキーホルダーにそんな力があるとは思えないが、レア度はCじゃなくてUC。

 

これはただのキーホルダーでは無いというわけだ。では、鑑定!

 

 

 

 

●ゼノ・バルトシアス

 

竜種 星間竜目 ゼノ科

 

別名【鉱喰竜】。基本的に宇宙に住む竜種です。翼付近に存在するエンジンのような臓器を使い宇宙空間を高速で飛行し、アステロイドベルト内で石や砂、鉱石や金属を餌として活動します。

 

鉱山労働者の方はゼノ・バルトシアスを目撃しても焦らず、落ち着いて所定の機関に連絡してください。穏やかな種族ですのでこちらから手を出さなければ攻撃してきません。

 

またゼノ・バルトシアスのフンは美しく非常に希少な宝石として取引され、アステロイドベルトを購入したらゼノ・バルトシアスを発見、高値で転売できて儲かることが出来たという報告もあります。

 

 

 

 

 

は?

 

違う!俺が鑑定したいのはこの魔剣だ!この魔剣がどんな能力を持っているか知りたいんだよ!この巻き付いている竜がなんの種族をモデルとしているのかなんて聞いていない!誰が報告してるんだこの情報⁈

 

後、魔剣の名前がゼノ・バルトシアスじゃなくて、この竜がゼノ・バルトシアスなのか?じゃあこの魔剣の名前は何なんだ!

 

というか、この竜だってキーホルダーの一部だろう!なんでわざわざ別の物として認識するんだ!

 

そう考えていると、剣に巻き付いた龍がスルスルすると蛇のように動き、剣から離れた。

 

「ピギャァ」

 

 

あらかわいい。

 

え、こいつ生きてるの?

 

 

この蛇は剣をじっと見つめて、そして近づき大きく口を開けた。

 

 

『ゼノ・バルトシアスは鉱石を餌とする』

 

 

「ちょ、ちょっと待」

 

バキバキバキバキ

 

あーあ、食べちゃった。蛇はどこにそんな力があるのか、キーホルダーをかみ砕き、完食した。

 

満足したのか、この竜はすやすやと眠り始めた。警戒心というものがないのかこいつ。

 

 

 

この魔剣の名前は何なのか。

宇宙を切り裂くとあるが、本当に切れるのか。切れた後宇宙はどうなるのか。

魔剣の名前は何なのか。

そもそも、この魔剣と竜の関係は何なのか。

 

 

この謎が解けることはないだろう。永遠に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

では、無料ガチャ!

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

R『鍛冶大工裁縫工房』

 

 

それはショッピングモールの3階に出現した。出現したのは3つのエリアで構成された大きな施設。

 

鍛冶エリア、大工エリア、裁縫エリアに分けられており、看板には説明が書かれてあった。

 

『金属などを加工したい場合は左の鍛冶エリア!布などを加工したい場合は正面へ!木材などを加工したい場合は右へ!』

 

 

俺は鍛冶エリアに入る。そこは圧巻の一言だった。

 

 

広々とした作業スペースが広がっており、鍛冶のために必要な作業台や大きな溶鉱炉などが複数設置配置されている。溶鉱炉より蒸気が噴き出し、部屋は熱気に包まれている。

 

様々な鍛造用具が備えており、鍛槌や金づち、ハンマーなどの打撃工具などが壁や棚に掛けられ整理されており、金属や鉱石、道具類を保管するための収納スペースが備えられていた。

 

 

まさにイメージする鍛冶屋そのままだった。

 

 

俺は鍛冶屋の中心にある作業台、その前にある椅子に座ると、システムウィンドウが出現した。

 

システムウィンドウには武器の作成、強化、進化とその他多くの選択肢が存在する。

 

俺は武器の作成を選択すると、ずらりと数多くの製作レシピが出現した。

 

レシピには制作可能なアイテムの説明、必要な素材からその制作手順。

 

俺はレシピより医療用メスを選択する。効果は切れば傷を塞ぐことができるという意味のわからないもの。必要素材はポーションと魔石。ダンジョンより大量に回収できているため材料の不足の心配はない。

 

俺は倉庫より必要な材料を作業台の上に置き、制作開始のボタンを押す。

 

 

 

そこからは忙しかった。

 

システムが俺に対して魔石を溶鉱炉に運べ、たたけ、水で冷やせなど命令をしてくる。

レシピに書かれた手順を、一定時間以内に終わらせなければならないのだ。もうとにかく忙しかった。

 

ホムンクルスに手伝ってもらって、無事俺はシステムの指示を全て達成した。

 

 

成功!『医療用メス』を作成しました。

 

 

出来上がったのは一本のメス。出来栄えは悪くない。

 

 

次は進化だ。どうやら武器を進化、つまり全く別の武器にすることができるようだ。

 

俺は大工エリアに向かい、一つの武器をガチャコールにて召喚する。

 

 

木刀(バイカル湖)

 

 

俺はこの木刀がどのように進化するのか気になった。バイカル湖で使うと何かが起きるらしいこの木刀はどうなるのか。

 

作業台の上に木刀を設置し、システムウィンドウより進化を選択する。

 

すると複数の進化可能な進化先候補が出現した。

 

 

木刀(アラル海)

木刀(カスピ海)

木刀(ビクトリア湖)

 

 

 

うーん、これは進化なのか?

 

 

 

 

 

 

 

後日、ダンジョン攻略のために俺は魔王装備で前線に出たところ、邪神ベヘモット率いるホムンクルス部隊が見るも恐ろしい武器を装備し、敵兵を蹂躙していた。

 

 

そのホムンクルス達は鈍器のような大きな武器を両手で担ぎ、敵兵を捕食していた。

 

そう、捕食。

 

鈍器の先には鋭利な歯が生えた大きな口がついており、ホムンクルスが鈍器を振るう度、その口が敵兵を噛み千切り、バキバキとゴブリン兵の貧相な装備ごとかみ砕いていた。凄まじい血しぶきが周囲にまき散らされる。

 

敵軍は恐怖のどん底だ。我先にと逃げようとするが、後ろは大量の兵士で隙間無く埋め尽くされているため、逃げることができない。しかしそれでも逃げようとするため敵兵と敵兵は押しつぶされて圧死、ドミノのように倒れていく。

 

鈍器は敵を逃がさない。大量の触手が鈍器より伸び、敵を捕獲し口まで運ぶ。聞くに堪えない悲鳴がダンジョンに響き敵軍はさらにパニックに陥る地獄だ。

 

 

 

 

待て!そんなものがドロップするなんて報告は受けてないぞ!

 

は⁈ベーコンキャベツを加工して剣を作った⁈

 

そんな精神を削るような物作るんじゃない!

 

 

そもそも何でベーコンキャベツを大工エリアで加工しようと考えたんだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

現在世界的な新興宗教団体『運命教会』が勢力を急速に拡大しています。

 

運命教会は山田竜氏を神と崇拝する団体で、アメリカのネット掲示板で誕生しました。ジョークの意味合いが強く、ドラゴンガチャコインと呼ばれる仮想通貨の発行、合成画像やwikiの制作が行われています。

 

当初はガチャより排出されたアイテムに対して強引な解釈(最初のホムンクルス12人はキリストの使徒の生まれ変わりである)を行う娯楽として楽しまれていましたが、運命教会の会員が宝くじに当選したことでアメリカで急速に勢力を拡大しました。

 

今では日本国内でも宝くじを買う前やテスト前など、軽い気持ちで祈る人々も多く存在します。

 

 

 

さらに義足や貧困地帯に対して蜜柑ジュース、ベーコンキャベツなどを支援したことにより、貧困国家でも勢力を伸ばしており、しかし運命教会をキリスト教などは出鱈目だと批難し、運命教会に騙されないように発信しており、対立を深めている現状です。

 

 

運命教会は穏健派ですが、その逆である過激派も存在します。

 

日本最大の山田系新興宗教団体【運命の糸】は他のジョークとは異なり、山田竜氏を実際の信教の対象としています。

 

つい先日【運命の糸】から、より過激派な武闘派派閥【魔王の僕】と【右翼の剣】が独立しました。

 

【魔王の僕】は魔王軍とも呼ばれる山田ドラゴンガチャ王国の軍隊の一員への将来的な合流と教義に定められた聖戦に備えての独自の戦闘訓練を行っています。銃刀法違反で一部構成員が逮捕された件は記憶に新しく、その存在は不安視されています。

 

【右翼の剣】は運命教会を名乗って高額で物を売りつける悪質な業者に対しての暴行事件を先日引き起こしており、非常に危険な団体として知られています。

 

過激派は世界各国に存在し、今後も勢力拡大が予測されます。

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

え⁉今からでも入れる保険があるんですか⁉

ダンジョン第3層。それは知恵を必要としない、力と力のぶつかり合い。

 

両軍は一つの長い通路を舞台に敵軍と真正面から衝突し潰し合うのだ。

 

前の味方が死んだら一歩進む。敵が死んだら一歩進む。

 

後退は不可能。後ろには大量の兵士が敷き詰められているからだ。

まさに数と数の押し合い。死体で地面が覆われる地獄絵図。

 

ダンジョンを守護する魔物たちにとって、それは避けようのない地獄だった。

 

 

 

魔王軍はこれまでの戦いで鍛え上げられた精鋭たち。なぜか豪華なドロップアイテムで武装した、戦闘型ホムンクルス相手に作業のように撃破される。

 

7号を通じた一糸乱れぬ壁のような陣形は突破不可能。どれだけ攻撃しても巧みな連携の前になすすべがない。

 

 

そして最悪なことに、このダンジョン第3層はマッドサイエンティストの兵器実験場として、徹底的にデータを搾り取られるのだ。

 

 

 

次から次へと新兵器が実戦投入される。

その中でも主力兵器として活躍している兵器がある。

 

その名も、おめでとうバズーカⅡ。

 

アンデッドの人魚、レーンが率いる飛行可能なホムンクルスで構成された魔王軍音楽隊はこのバズーカを使い、敵軍を攻撃する。

 

しかし届けるのはお祝いの言葉ではない。呪いの言葉である。

 

寿命を削り、心身を蝕む呪いの言葉だ。それをバズーカにより、凄まじい大音量で敵兵に向け放射、呪いの言葉を届けるのだ。

 

敵兵は突然の轟音により鼓膜は破られ、呪いの言葉により全身に疲労感、寒気、脱力など多くの症状に襲われ衰弱死する。

 

 

 

そしてもう一つが砲弾だ。

 

我が魔王軍砲兵隊が撃ち放ち、弧を描いて敵軍の奥深くに着弾する魔弾。

 

弾種はケーキサンプル弾。

 

闇を司るチョコケーキサンプルを解析して製造された照明弾とは真逆の性能を持った弾薬。

 

砲弾は地面に着弾後大爆発。周囲の兵士は爆風で吹き飛ばされ、熱により火傷させる。

 

さらに大量の破片が飛び散るのだが、この破片にチョコケーキサンプルの性質、一定範囲内を完全に真っ暗にするという力により敵軍は何が起きたのか分からず恐慌状態に陥ってパニックだ。

 

 

その他にもロボット騎兵隊、ラジコン星間戦闘機などによりダンジョンはマッドサイエンティストの玩具となっている。

 

俺はやることが無くなった怠惰な指揮官と共に、ステーキを食べながら前線でボロ雑巾のようになる敵軍に同情した。

 

隣でマッドサイエンティストは良いデータが取れたとニコニコしていた。ドン引きだよ。

 

 

 

 

 

 

 

さて、無料ガチャ!

 

 

 

 

今日のログインボーナスは5連通常ガチャコイン。

おお、今日のログインボーナスは随分太っ腹じゃないか。

 

今までのログインボーナスは一回しか回せないガチャコインを一枚だけもらうというもの。しかし何故急に豪華になったんだ?

 

何かあったのだろうか。まあ考えても仕方ない。

 

 

では、ガチャ!

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

C『シークヮーサー炭酸ジュース』

HR『道連れ生命保険』

C『群馬ハリウッド村フリーパス』

R『失われた奥義』

C『淀川 直送天然水』

 

 

 

うん、いつも通り。

 

使えそうな物は『道連れ生命保険』と『失われた奥義』だろうか。

 

 

だが失われた秘伝書は非常に古びていて、多くの傷やしわがあり、色褪せていた。

 

中のページは黄ばみ、汚れ、折り目などが目立ち非常に読みにくい。そもそも書かれている文字が見たことの無い文字で書かれていて何が書かれているのか本当にわからない。

 

鑑定してもこの字が読めるようになるわけではないので、鑑定しても無駄だろう。

 

 

 

 

 

そしてよく分からないのは道連れ生命保険だ。出現したのは一枚の契約書だった。『道連れ生命保険 契約書』『YOUR NAME』とだけ書かれた、上質な紙。

 

 

 

 

生命保険。

 

生命保険は加入者が死亡時に、保険会社が一定の保険金を支払うことを約束した契約のこと。

 

この保険金は経済的に苦しまないように基本的に遺族などに支払われるのだが、道連れという、不穏なワード。生命保険という組み合わせだ。非常に嫌な予感がする。

 

 

 

何に鑑定を使うかは無料ガチャを回してから決めるとしよう。

 

 

 

 

 

 

無料ガチャ!

 

 

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

 

C『九州在住マッケンジー夫妻のおいしいクランベリー添えの七面鳥』

 

 

 

 

 

「クランベリー添えの七面鳥」。俺は今までに七面鳥を何度か食べたことがあったが、クランベリーの添え物というのは初めてだった。

 

好奇心と期待で胸がいっぱいだ。

 

だが不安もある。肉と甘いソースは合わないだろ。やっぱり肉は塩と胡椒、他には味の濃いソースが一番だ。

 

フルーツを使った甘酸っぱいソースが肉に合うとは思えない。

 

だが出現した料理はその思いを吹き飛ばした。

 

皿には香ばしい七面鳥の薫りが広がっており、金色に焼きあがった皮は食欲を刺激する。まさに至高の一品といえる出来栄えだった。俺はロマネコンティをグラスに注ぎ、美しい色合いのクランベリーソースを七面鳥に添えた。

 

ナイフとフォークを手に取り、俺は七面鳥の身を切り分ける。やわらかくジューシーな肉は、口の中で広がる旨みで俺を魅了した。クランベリーソースとの絶妙な相性は、甘酸っぱさと七面鳥の風味を引き立て、舌の上で踊るような味わいを生み出していた。

 

 

もう、本当に旨い!クランベリーソースと七面鳥がここまで合うとは思わなかった。

 

俺は一口食べる度に、クランベリー添えの七面鳥の素晴らしさに感動していく。俺は料理を堪能し、敬意を払った。

 

 

顔も知らないマッケンジー夫妻よ!ありがとう!感謝!

 

 

 

 

 

 

 

 

さて。

 

 

何を鑑定するか。

 

七面鳥は当然ながら鑑定不可。既に俺のお腹の中にあるからだ。ジュースと群馬ハリウッド村とかいう、聞いたことのない遊園地のフリーパスも論外。

 

 

失われた奥義は結構興味をそそる。武功のように役に立てるかもしれないが、武功『不壊門』とは違ってなにを書いてあるのか読むことができない。意味のわからない文字で書いてあり、もし鑑定しても読むことはできないだろう。

 

 

 

 

というわけで、今日はこの道連れ生命保険を鑑定することにする。

 

 

 

 

 

 

 

鑑定!

 

●道連れ生命保険

 

正式名称『道連れ生命保険 〜愛称 君、弱すぎ。そんな雑魚なお前にはこの陰湿な保険がお似合いだ〜』

 

あなたが戦死した時、それは誰かに殺された時です。敵は勝利を祝い、仲間と笑い、酒を飲むでしょう。

 

そんなの許せますか⁈

 

この保険はあなたが死亡する要因となった敵に対して私たちハゲタカ保険組合が攻撃を行うというものです。

 

いまなら何と、たった金塊1000kgで山田様にだけ、最高レベルの報復が行われるインペリアルコースをご紹介いたします!

 

さらにこの保険はいつでも!加入できます!

 

さあ、あなたもこの『道連れ生命保険〜愛称 君、弱すぎ。そんな雑魚なお前にはこの陰湿な保険がお似合いだ〜』に加入しませんか?

 

 

 

 

 

 

 

……なるほど。確かにこの説明には一理ある。俺の死体の上で敵が笑うなんてそんなことは許せない。

俺を殺した奴には相応の報いを受けさせてやる。

 

それにインペリアルコースだ。ハゲタカ保険組合、名前が信頼できないが、鑑定が説明する内容は基本的に真実。徹底的に復讐をしてくれるだろう。

 

 

 

だが、俺は死んだ場合どうなるのだろう。本当に死ぬのか?それとも何事も無かったかのようにリスポーンでもするのか?

 

 

分からない、だが、俺は一応あいつらの王なのだ。俺の死亡時、こいつらが少しでも楽になるのなら俺は喜んでサインしよう。

 

俺はこの契約書にサインした。

 

 

 

 

ただ一言言わせてくれ。

 

 

 

ネーミングセンスクソだな。

 

〜愛称 君、弱すぎ。そんな雑魚なお前にはこの陰湿な保険がお似合いだ〜って何だよ。ハゲタカ保険組合とかイメージ悪すぎ。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、賭博場で保険を売り込むホムンクルスが出現した。

 

彼が扱う保険は破産保険。賭博場入場前に一定額支払うと、一文無しになった場合は一定額支給されるらしい。

 

次から次へと破産するホムンクルスたちは、この破産保険に殺到した。もし破産した場合、その日はベーコンキャベツと蜜柑ジュースだけになるからだ。

 

それを避けるために加入しているのだろう。

 

俺は保険料で大儲けしているホムンクルスより税金を徴収した。やったね、税金が増えたよ!

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

終わりの始まり

現在、俺の王国内では空前絶後のモノづくりブームが巻き起こっている。

 

ダンジョンから山のように倉庫に運び込まれるドロップアイテム。このドロップアイテムは武器やポーションなど、使い道がわかる物もあるが、大半は草だの石だの花だの、使い道がわからないガラクタばかり。

 

これらは大量に倉庫に死蔵されていた。もう倉庫はパンパンだ。

 

しかしその問題は解決した。

 

この前出現した鍛冶大工裁縫工房。この設備とシステムを使い、ガラクタから様々なアイテムを作り出すことができるのだ。

 

 

ただし、制作難易度の高いアイテムは誰も作り出すことができず、現状ではオモチャのような簡単なアイテムしか作れていないというのが実情である。

 

 

他にもシステムに頼らず、工房に備え付けられている技術書を読み込んで、オリジナルのアイテムを生産するホムンクルスもいる。

 

彼らの腕は未熟だが、一部ではシステムを上回るアイテムも生産できているそうだ。今後に期待。

 

 

さらに、彼らが作り出した作品は掲示板から多くの要求を受けている。報酬は全てホムンクルスの物なので、この報酬がモチベーションの向上につながっているのだろう。

 

この熱気あふれるモノづくりブームは、我が王国の製造業の基礎となるかもしれない。

 

 

 

 

 

ところで、掲示板で運命書を頼む奴らが結構いるんだが、どうなっているんだ?何を考えて要求しているんだ?恥ずかしいんだが。

 

まぁ要求品の割に報酬が豪華だから別にいいけど。どうせ存在しない、自動生成された依頼書だ。いくらでも納品してやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日のログインボーナスとして5連ガチャコインを手に入れた。

 

昨日に続いて5連ガチャとは。一体何が起きているのだろう?運営チームに何か問題があったのか?

 

俺は不思議に思いながらも、5連ガチャコインを実体化させ手に取る。もうすぐ何か特別なイベントがあり、そのためにログインボーナスを豪華にしているのではないかと期待するが、考えるだけ無駄である。

 

この杜撰な運営にそんな企画力があるとは思えない。

 

少し不安を抱きながらも、俺はガチャを回す。俺にできることはガチャを回すことだけなのだ。

 

 

 

 

俺は不安と好奇心などが混ざり合った複雑な心境でガチャを回す。

 

この謎めいた状況が一体どうなっているのか、今の俺には知る由もないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

 

R『スキル 自爆』

C『二階から落とした目薬』

C『豚の貯金箱』

C『緑チューリップの球根』

C『大阪メトロ 南森町駅 1日駅長権』

 

 

 

 

 

 

うーん、相も変わらずゴミが多い。もう少し役に立つものを出してくれ!

 

まぁ、それでは検品といこう。

 

俺は手に入れたアイテムを確認する。

 

 

 

 

 

まずはスキル。自爆。自爆ねえ。ゲームとかでは、自分が死ぬ代わりに敵に絶大なダメージを与えるという、まぁまともに使われることのない、ギャグとして面白半分で使われる能力だ。

 

 

このスキルはどうだろう?

 

俺はスキル一覧より能力を確認する。

 

 

 

●自爆

 

レッツ自爆!

 

山田様の体が大爆発します!もう打つ手が無いときにこのスキルを使い死にましょう。

 

爆発オチを私は見てみたいです。是非使ってください。ふふふ。

 

 

 

 

 

 

彼は自分の中に湧き上がる感情を抑えきれなかった。は?

 

 

「クソ野郎ッ」

 

何でブックメーカーはこんなにノリノリなんだ?昨日の生命保険でも思ったが、こいつは俺に死んで欲しいのか?

 

自爆という理不尽、そして爆破オチのためだけに俺にこのスキルを使わせようとすることに怒りが湧いてくる。

 

誰が、爆死オチのために死んでたまるか。

 

 

あーあ、これが秘伝書とかで出現してくれたら、アンデッドに習得させて突撃させたのに。

 

自爆スキルが秘伝書などの特別な方法で得られたならば、アンデッドなどの存在に使わせて敵を一掃する戦略を立てることができたかもしれないのに。

 

しかし、現実には自爆スキルは俺に与えられてしまったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…残りは何の変哲もないガラクタだった。

 

 

そんなわけで今日の無料ガチャ!

 

 

 

 

 

 

 

ガタン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

UC『紅葉狩りハンター伊能忠敬』

 

 

 

 

 

伊能忠敬。

1745年に伊能忠敬は生まれた。日本史の教科書にも登場する、日本地図『大日本沿海輿地全図』を作った人だ。

 

なんとこの人は51歳から天文学を学び始め、56歳から日本地図の制作に取り掛かった。残念ながら地図が完成する前に亡くなってしまったが、その後は仲間たちが伊能忠敬の意思を継ぎ、地図を完成させた。

 

伊能忠敬は地図の作成のために緯度の距離を求めたのだが、その誤差はおよそ1000分の1と、極めて正確なものだ。江戸時代なのにすごい。

 

 

 

 

 

 

ガチャの後ろに、立派な鎧を身に纏った武士が佇んでいた。

 

 

その身体を包む鎧は、金色に輝き指先に至るまで、拘りの職人が手を抜かず丁寧に作り上げた一級品だ。素人の俺でもわかる。

 

さらに、長大な柄を持つ刀を備え、頭上には高貴な毛髪を帯びた兜を載せ、その顔には怖ろしい仮面がつけられていた。

 

 

 

ひえっ、何だこの殺気!こいつが伊能忠敬?絶対違う!怖すぎるし何で天文学者がこんな鎧を着てるんだ⁈

 

 

鑑定!

 

 

●紅葉狩りハンター伊能忠敬

 

パラレルワールドの伊能忠敬さんは、死を迎える前に驚異的な偉業を成し遂げました。彼は日本地図の完成を果たしたのです!

 

魑魅魍魎が跋扈する日本地図を作成した伊能忠敬さんは、その知識と才能を活かし、秋の風物詩である紅葉狩りにおいて星見屋として活躍していた。

 

伊能忠敬さんの手によって作成された地図は、まさに驚異的な正確さで、彼は魑魅魍魎が潜む山や森、鬼が徘徊する渓谷などの危険な場所の地図を作成しました。

 

彼の地図がもたらす正確な位置情報と知識は、多くの人々を魅了し、秋の風物詩を一層豊かなものにしていたのです。

 

 

 

 

いや、意味がわからん⁈

 

魑魅魍魎が跋扈する日本?パラレルワールドの日本危険すぎるだろ⁈

 

というか、そんな危険地帯の地図を作るなんて伊能忠敬何もんだよ⁈何でそんな力持っているんだ⁈

 

 

 

 

「一つ問いましょう!秋は何の季節ですか⁈」

 

「え、食かな?」と深く考えずに答えた。

 

どうやらそれの答えは間違いだったらしい。伊能忠敬は大きく声を上げた。

 

「狩りの秋です!」

 

「秋の訪れとともに山々は豊かな宝物が多く眠ります!しかし、その美しい風景の裏には貴重な薬剤や肥え太った獲物、そして魑魅魍魎といった存在が跋扈しているのです!」

 

「秋には腕自慢の武士たちが勢いを合わせて集団で狩りを行うのです!紅葉狩りというその名も響き渡る行事で、私は星見屋としても大いに活躍することでしょう!」

 

彼の熱くうるさい言葉はショッピングモール中に響き渡る。

 

彼の力強さと覇気ある態度は、まさに熱血漢。暑苦しい、非常に暑苦しい。

 

 

「さぁ、私はどんな地図でも作りましょう!邪魔者は全てこの刀で切り裂きます!」

 

 

物騒すぎる。というか、この伊能忠敬、何歳なんだ?老人としてはあり得ないくらい元気いっぱいなんだけど。

 

 

あと絶対俺の世界の伊能忠敬、こんな人じゃないだろ。名前が同じだけの別人だ。伊能忠敬要素、地図作りだけだもん。

 

 

 

 

その後伊能忠敬にダンジョン第1層と第2層の地図を作るように命じた。今でもこの層は遭難者が多発し正確な地図を求められていた。

 

だが伊能忠敬は一人では時間がかかる、地図作成の知識に長けた人員を要求してきた。

 

だがそんな人材王国には存在しない。なので俺はホムンクルス製造機のことを教えた。何か地図作りに関する物を入れて合成すれば、それに関係したホムンクルスが生まれるぞと。

 

そう言うと伊能忠敬は紫雲望遠鏡、測星杖、紅玉鏡、星霊羽衣、朧月傘の5つの道具を材料として、5人のホムンクルスを作り出した。魔王軍測量隊の誕生である。

 

 

 

 

いや、え?

どこからそんな大きな傘や望遠鏡持ってきたの?この腰の袋の中?

 

いやいや、そんな小さな袋に傘なんて入るわけないじゃん。

 

だが伊能忠敬曰く、袋の中は空間が歪んでおり、見た目以上に物が多く入るとのこと。え、何それ。四次元ポケットかよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第61層司令官 中層暗黒魔術師団長 ヘル・エメラルダス・マトル 視点

 

 

 

 

 

かつて、我ら暗黒魔術師団と暗黒騎士団は長い間にわたって激しいライバル関係にあった。どちらも鍛錬を怠らず、ダンジョンマスターのために戦ったという。

 

しかし、ダンジョンマスターが耄碌してからは、その関係性は大きく変わることとなった。

 

クソ真面目な暗黒騎士団長は、ダンジョンマスターの浪費やダンジョン内の組織の腐敗、ダンジョンの運営について繰り返し助言をしようとした。

 

正義感の強いあいつは腐敗する組織の将来を危惧して、ダンジョンを昔のように精強なダンジョンに戻そうと努力した。

 

しかし、ダンジョンマスターはその助言を鬱陶しがり、冷遇するようになった。

 

あの間抜けなダンジョンマスターに言っても、無駄だというのに。

 

その後暗黒騎士団は予算の削減や厳しい制約の導入など、数多くの嫌がらせをされた。

 

 

だが、我ら暗黒魔術師団は違う。

 

私はダンジョンマスターのために多くの贈り物や、彼女が喜ぶ魔術の開発などを行い、あの間抜けを魅了し続けた。

 

その結果、暗黒魔術師団は勢力を拡大し暗黒騎士団をしのぐ存在となったのだ。

 

今や暗黒魔術師団はダンジョンマスターの信頼と支持を得るに至り、我らの地位は揺るぎないものとなった。

 

一方で暗黒騎士団に対する苛烈な嫌がらせは勢いを増していた。

 

 

…にもかからず暗黒騎士団は、嫌がらせにも負けず日々努力し勢力の衰えはほとんどない。あの間抜けが耄碌してからも騎士団長の地位に居続けているのだ。そのカリスマは流石というべきか。

 

最近はまた無駄な助言をして罰を食らったという。何でも暗黒騎士団の偵察隊が全滅し、すぐにでも敵軍を殲滅するように助言したとか。

 

 

暗黒騎士団は全団員が厳しい鍛錬により鍛えられた精鋭だ。そんな精鋭が何もできずに死ぬとは。

 

 

…流石にあの耄碌したババァも、何か手を打っているよな?

 

 

 

一抹の不安を感じながら、ベッドに入る。今下層部に対して兵力を送ることは禁止されている。どうせあのババアのことだ、久しぶりの侵入者をすぐには潰したくないとかいう、馬鹿げた理由だろう。

 

明日にでも、何か理由をつけて偵察兵を送るべきか。

 

 

 

そんなことを考えながら、目を閉じようとする。眠い。

 

 

 

しかし、その瞬間、ベッドが不気味な光沢を帯びた銀色の何かへと一瞬で変貌する。先ほどまでの温かく心地の良い肌触りのベッドが、恐ろしく冷たい粘りのある何かへと変わった。そして彼女の肌を覆い、視界が覆われる。

 

 

 

「は?」

 

 

ゴックン。

 

 

 

●第61層司令官 中層暗黒魔術師団長 ヘル・エメラルダス・マトルが死亡しました。報酬として、魔法関連アイテム確定ガチャコインがプレゼントボックスに追加されます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヘル様?何か物音が聞こえましたが、何かありましたか?」

 

 

「いや?気のせいだろう。そんなことより、中層暗黒魔術師団幹部を可能な限り集めてくれ。戦の準備だ」

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

神様になる方法

ふふふふふふ。

 

ついに俺が放った最強の刺客、スライムが動き始めたようだな。

 

 

俺は初めてのダンジョン入場時にスライムを投入、さらにホムンクルス達魔王軍が撃つ弾丸(スライム)をダンジョンにばら撒き続けた。

 

 

そう、相手は五星とかいう枠組みにいる、なんかすごいダンジョンなのだ。

 

層の数なんと98層。1層だけで凄まじい数の魔物がいたのだ。最後の方の層にはどんな化け物がいるのか想像がつかない。

 

今でこそ戦力は充実し始めているが寡兵は寡兵。敵軍と比べると数の差がありすぎる。

 

まともにぶつかっても勝てるわけがない。そんなわけで俺が考えたのは、このスライムを使いダンジョンをまるごと乗っ取り、内部から滅茶苦茶にすることだ。

 

 

手段は問わない。斬首作戦、ダンジョンシステムのハッキング、成り替わり、内乱などとにかくダンジョンを滅茶苦茶にして機能不全にするよう俺は命令した。

 

 

これまでのダンジョン攻略は、敵の目を惹きつける為のお遊びだ。その証拠にこちらの最高戦力である法務省6課はそこそこな頻度で出撃しているが、全力ではない。戦力の温存だ。

 

 

スライムがダンジョンを崩壊させてからが本番だ。

 

俺たちが本気を出して全軍出撃する際、敵はまともな組織的な抵抗もできずに終わるだろう。

 

 

 

 

それでは、顔も見ずに倒した61層司令官討伐報酬!魔法確ガチャだ!

 

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

金色のカプセル!きた!久しぶりのSSRだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SSR『天才魔術師の工房』

 

 

それはマッドサイエンティストの研究所横に出現した。

 

工房の第一印象はゴミ山だ。とにかく大量の物で工房は埋め尽くされている。だが不快感や異臭は無い。

 

壁際に置かれた本棚の中はぎゅうぎゅうになるまで本が詰め込まれ、入りきれなかった本が床に散乱している。

 

床は怪しげな道具などが積み重なって山ができており、前に進むにも一苦労だ。

 

おそらくこのゴミ山も、天才魔術師からしたら宝の山なのだろうか。

 

俺は本棚から適当に一冊手に取る。保存状態は良好。シミや汚れひとつない。

 

だが予想通りなんて書いてあるのか全く読めない。未知の言語だ。数多くの図や絵、魔法陣で説明されているが解読不明。

 

俺は調査に来たマッドサイエンティストに対して、この部屋の道具を勝手に使わないこと、とにかく慎重に扱うように命じた。

 

 

 

 

その後、大量のスパコンと言語学を学んだことのあるマッドサイエンティストの活躍により、俺が手に取った本の題名だけを解読することに成功した。

 

 

 

 

さて、本の題名は何かというと。

 

 

 

『神の鋳造方法』

 

 

うわ。(ドン引き)

 

もうだめだよこれ、題名だけでやばい物だということがわかる。

 

鋳造って。神を人間の手で作り出すってこと?ヤバいよマジで。不敬とかそういうレベルじゃない。

あと、誕生とか生誕とかじゃなくて、鋳造って言葉を選んだことに悪意を感じる。

 

おい、やめろ!マッドサイエンティストども、これを解読しようとするな!…え?したくてもできない?言語が複雑な上に、何種類もの言語が使われていて、これ以上解読不能?

 

良かった。いや何もよくないが。

 

 

 

しかし、この魔術師は神を作り出そうとしたのか?

何とも恐ろしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

今日のログインボーナスは3連ガチャコイン!

おいおい、ちょっと回数が減ってるぞ?もっと回させろ!

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

R『吸水タオル』

C『全自動たこ焼き製造機』

C『遮光カーテン』

 

 

 

…?吸水タオルがRなのか?CやUCじゃなくて?

 

出現したのは青いタオルだった。見た目は触り心地が良さそうな、どこにでも売ってあるようなタオル。

 

だがRなのだ。普通のタオルではないだろう。

 

 

 

鑑定!

 

 

 

●吸水タオル

 

現代の家庭に必須なアイテム!あらゆる液体を無制限に吸い込む吸水タオルです!

 

これまでのタオルとは一線を画す最新技術を採用し、水はもちろん、ジュースや油などあらゆる液体を吸収します!お掃除からキッチンまで、日常生活に欠かせない万能アイテム!

 

もう信じられないくらい水を吸います!

 

お手入れも簡単で、長持ちするので経済的です。一度使い始めたら手放せなくなること間違いなし!

 

 

 

 

なるほど、ただ単によく吸うタオルか。

 

 

 

このタオルはダンジョンやショッピングモール内に落ちている魔物の血液を拭き取る為に使われることとなった。

 

掃除を命じたホムンクルス曰く、信じられないくらい血を吸うとのこと。タオルを絞る時見て欲しいというので、俺は生け贄の棺が設置されてある場所に向かった。

 

この血は生け贄の棺に排水され、誰かさんに捧げられる。一体誰に捧げられているんだ?

 

 

まあ考えても仕方が無い。

そうして、ホムンクルスがタオルを絞る。

 

 

どばばばばばばばばばばばばばばばばばばっばば

 

 

 

 

 

するとタオルから滝のように血が排水された。

 

は⁉ど、どうなっているんだそれ⁉

 

 

「ほら?すごい血を吸うでしょ?しかもこれ全然重くないの。吸う前と重さほぼ同じなんてすごくないですか」

 

 

 

 

 

質量保存の法則が崩壊してる!今更だけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それでは、無料ガチャ!

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

UC『マトリョーシカのパラドックス』

 

 

 

 

マトリョーシカは、ロシア伝統の人形だ。

 

パックリと二つに分けることができ、中には一回り小さい人形が入っている。その人形も割ることができ、また中には人形が、その中にも人形が入っている。

どんどん小さくなるのだが、一体何がパラドックスなのだろう。

 

 

 

 

出現したのは、鮮やかな色彩で彩られたマトリョーシカが並んでいた。

 

見た目は本格的なマトリョーシカだ。色も味があり、装飾も丁寧。高級品だな。

 

俺は慎重に一つずつマトリョーシカを開けていく。中から更に小さなマトリョーシカが現れる。

 

俺は深く考えず、パカパカとマトリョーシカを開け続けた。

 

 

うーん、特に何もないな。パラドックス、つまり矛盾という意味だが、一体何が矛盾しているのか。

 

 

 

 

 

俺はマトリョーシカを片付けようと、人形を元の位置に戻そうとする。手に持った人形を人形の中に戻そうとした。

 

しかし異常発生。人形が中に収まらないのだ。確かにこの人形は先程までこの中に収まっていたはずなのに、どうして入らないんだ?

 

調べてみると、明らかに中に入っていた方の人形の方が大きくなっているのが分かった。

 

混乱した俺は一番外側の人形と、最後に開けた人形の大きさを比べることにした。普通に考えれば、外側の人形の方が大きいはずだが、なんと内側の人形の方が大きくなっていたのだ。

 

 

 

開ければ開けるほど大きくなるマトリョーシカ。外側よりも中身の方が大きくなるマトリョーシカ。意味不明な現象に俺は混乱した。なるほど、これがパラドックス。

 

そして、開けることで大きさが増していくマトリョーシカが、ジッと俺を見ているような気がした。

 

その不気味さにびびった俺は、ガラクタ置き場の奥にマトリョーシカを置いた。

 

 

 

 

 

 

その後、マッドサイエンティストにより悪魔の兵器、マトリョーシカ弾が開発された。

 

弾丸が敵の肉体に着弾後、弾丸内部に埋め込まれたマトリョーシカが次から次へと大きくなり、内側より破裂される悍ましい兵器だ。

 

 

これがゴーレムのような硬い敵によく効く…不気味だよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第61層 中層暗黒魔術師団幹部 視点

 

 

「ほ、本気なのかダンジョンマスターは⁈」

 

 

深夜にも関わらず召集された緊急会議。伝達係が言うには戦だと言う。侵入者について何か不測の事態でも起きたのかと考え、会議に出席した。

そこで暗黒魔術師団長、ヘル師団長は、信じられないことを話し始めたのだ。

 

 

「あぁ、先ほど命令が降った。中層暗黒魔術師団は、60層に拠点を構える中層暗黒騎士団に対して攻撃を仕掛けよとな」

 

 

 

 

「ついにボケ始めたか」

「確かに暗黒騎士団は嫌いだが、何もそこまで…」

「暗黒騎士団はいつか皆殺しにしたいと考えていたが、よりにもよって今なのか?」

「我らに味方を攻撃せよと言うのが⁈」

「何を考えておられるのだ…」

 

 

 

「ダンジョンマスター様は、このダンジョン孤立現象の解決のため、空間魔法に特化した魔物を作り出すらしい。それにはDPが足りないそうだ」

 

 

「クソ、あんな無駄遣いばかりするから…」

 

 

 

 

思わず愚痴が出てしまう。

ダンジョンマスター様はただでさえ無駄遣いが酷かったのだ。

 

費用を考えないダンジョンの無謀な拡大、連日連夜パーティの開催、賭博、ダンジョンマスター同士で行われるオークションの購入費、DPとの交換で手に入るアイテムの入手。数えればキリがない。

 

最近になってお気に入りのダンジョンマスターができたらしく、そのダンジョンマスターの為に数多くのDPを使っていた。

 

ついに貯金も無くなってしまったのか。

 

 

 

 

「待ってください。ならDPの為なら、ダンジョン内の魔物を狩ればいいだけの話では?そもそも、何故よりによって暗黒騎士団を…」

 

 

 

 

 

そうだ、DPが欲しいのなら、ダンジョン外より持ち込み、自然繁殖しているモンスターを狩ればいい。最悪の場合、末端の兵士を自害させればいいのだ。

 

 

だが、暗黒騎士団は違う。このダンジョンで5本の指に入る大規模な戦力だ。この暗黒騎士団を潰せば、戦力の低下は避けられない。

 

さらに言えば、暗黒騎士団は皆、スキル『決意』を保持している。

 

この決意は意志の力が強ければ強いほど、法則やルールを打ち破ることができるのだ。

 

ダンジョンマスターの持つ絶対的な命令権にも逆らうことが出来るだろう。つまり、ダンジョンマスターの『一切抵抗せずに黙って暗黒魔術師団の攻撃を受けろ』などの命令も無視できる。

 

 

つまり、我々は全力で抵抗する暗黒騎士団と真っ向から戦わなければならないのだ。

 

 

それに、暗黒騎士団はこのダンジョンが作られた初期の頃からダンジョンマスターを支えたのだ。そんなダンジョンに貢献してきた騎士団を潰すだと?

 

ダンジョン内が大混乱に陥るだろう。

 

 

「私たち暗黒魔術師団と暗黒騎士団が争っているのを楽しむだけかもしれん。ダンジョンマスターならありえる」

 

 

「そもそも、空間特化の魔物を生み出すということも本当かどうか怪しい。単に暗黒騎士団を粛清したいだけかもしれんな」

 

 

皆、口々に文句を言う。俺だってそうだ。この戦い、勝っても味方から同胞殺しと言われるだけじゃないか。名誉は地に落ちるだろう。

 

 

 

 

 

ヘル師団長は、ひどく顔をゆがませながら口を開いた。

 

 

「………やるしかない。我々はダンジョンマスターの創造物。ダンジョンマスターに逆らうことは出来ない。我々に拒否権はないのだから」

 

 

 

 

「既に作戦は決められている。数日後に中層暗黒騎士団との合同訓練として61層に誘い出す。その後奇襲し、中層暗黒騎士団主力を殲滅。第60層に攻め込む。同時刻、上層、下層魔術師団も暗黒騎士団へと攻撃を始める」

 

 

「なお、本作戦は最高機密だ。絶対に61層以外の者に話すな」

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

文明を喰らう者

油断した!

 

 

昨日ガチャから出た全自動たこ焼き製造機を使い、たこ焼きパーティを楽しんでいる最中に事件は起きた!

 

全自動たこ焼き製造機の使い方は、たこ焼き機が指定する材料、小麦粉やタコなどを製造機に投入し、あとは自動で調理、そして出来上がったたこ焼きを皿の上に置いてくれるのだ。

 

俺と少年A、そしてアナスタシア殿下三人はたこ焼きパーティーを楽しんでいたのだが、途中で材料であるタコが無くなってしまった。食べすぎたのだ。

 

まあ、タコなしたこ焼きにソースとマヨネーズ、あとはチーズでもかけて食べればいいと考え、俺達は全自動たこ焼き機が出すタコが不足しています!という警告を無視して、製造開始のボタンを押した。

 

 

●タコが不足しています!材料不足を解決するため、タコを召喚します!

 

 

そうして全自動たこ焼き機を中心として魔法陣が展開、超巨大タコが召喚されてしまったのだ。

 

 

もちろんタコ程度、俺たちの敵ではない。すぐに俺の左腕で串刺しにし、少年Aが丸焼きにした。

 

タコはその後、寿司やたこ焼き、お刺身へと調理され、ホムンクルス達によって完食された。

 

レア度はCだが、油断してはいけない。ガチャから出たのだ、何か意味不明な機能があるかもしれないのだ。

 

 

その後マッドサイエンティストにより、タコの召喚装置が製作された。

 

装置を起動すればタコが召喚されるので、敵陣に装置を投擲、その後召喚されたタコが縦横無尽に暴れ回るという生物兵器として運用されている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日のログインボーナスは5連ガチャコイン!

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

C『ナマハゲ仮装セット』

C『打製石器』

C『接待の達人 サラリーマン 櫻井』

C『カツラ』

UC『ドアノブ』

 

 

 

 

ガラクタと共に、スーツ姿の一人の男が現れた。

 

 

 

初老の男性だ。白く長いひげをはやし、上品なスーツを身に纏っている

 

その男の目は閉じているかのように細く、ニコニコと微笑んでいる。その微笑みからは、ただ者ではないことがわかる。

 

 

 

「君が山田くんか!会えるのを楽しみにしていたよ!握手してもいいかな?」

 

俺はその勢いに負けて、握手する。櫻井は本当に嬉しそうだ。

 

 

「俺のことを知っているのか?」

 

「そりゃあもう!私は君の大ファンだからね。いつも楽しく動画見させてもらっているよ!」

 

動画。つまり俺がガチャを引く光景をこのおっさんは見ていたということか。

 

…このオッサン、何者だ?

 

「あんた、何なんだ?俺の動画を見れるってことは、権力者か何か?」

 

「いやあ?私はどこにでもいる、ただのサラリーマンさ」

 

「いやいや、じゃあ何で俺の動画が見られるんだよ。動画は結構な金持ちか権力者じゃないと見れないはずだぞ」

 

「あぁー、すまないねぇ。実は色々と記憶が封印されているんだ。おじさん、重要なことは何ひとつ覚えていないんだ。ごめんね?」

 

その後、俺は櫻井に対して多くの質問を投げかけたが、その多くがわからないと答えるだけだった。

 

聞き出せたのは、櫻井が俺のファンであること、動画を見ていたこと、どこかの会社の営業課に所属していたこと、それだけだった。

 

 

 

俺はこのサラリーマンを前線に派遣した。接待する相手がいないのだ。人手も足りていないし、頑張って働いてくれ。

 

 

「ええっ⁈おじさん、銃なんて持ったことないよ⁈」

 

「最初はみんなそうだよ。とりあえずドロップアイテムの回収をお願いね」

 

「ドロップアイテム!いやぁ、胸が高鳴るねぇ!どんな不思議な物があるんだろう!」

 

 

…このおっさんは記憶を消された、権力者だと予想する。俺の大ファンで運営に無理を言って、ガチャの景品として割り込んだのだ。

 

記憶が制限されているのは、情報を漏らすことを防ぐためだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それでは、今日の無料ガチャ!

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

 

 

SR『蠱毒と滅亡の杯』

 

 

 

出現したのは、神秘的で、しかし不気味なオーラを放つ黄金の杯だった。

 

 

 

鑑定!

 

 

●蠱毒と滅亡の杯

 

蠱毒とは、閉鎖された空間での殺し合い、勝ち残った者を有効に活用するという呪術です。しかしその非効率さに疑問を感じませんか?

 

そこで使うのがこの「蠱毒と滅亡の杯」なのです!この杯を都市などに設置することで、エリア内の戦闘や災害によって発生し失われるエネルギーを集約し、そして文明の崩壊を加速させることができます。

 

この杯によってエネルギーが集まると、そこからは極上の酒が生み出されます。文明の薫りがする美酒が、あなたの手に!

 

ただし、ご注意ください。この杯による文明滅亡加速機能は、既に末期状態に達した国家や文明、都市などに対してのみ効果を発揮します。

 

それ以外ではこの杯は単なるエネルギー収集装置として機能するだけです。

 

文明丸ごとお酒に変えた一品。どんな味なのか非常に気になります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ほほう。文明崩壊を加速させるねぇ。

 

 

この魔のダンジョンは、ただ魔物が大量にいるだけではない。暗黒騎士団や暗黒魔術師団といった、組織化された勢力が複数存在する。

 

おそらくダンジョン内には、ダンジョン国家やダンジョン文明のような物が存在する可能性が高い。

 

そして、今ダンジョンはスライムにより崩壊の危機にある。この杯は、崩壊を加速させてくれるだろう。

 

 

俺は魔のダンジョンの第1層にこの杯を設置した。

 

すると、魔術に関して素人の俺でも、この杯に力が集まってきていることがわかる。もう既に、ダンジョン内で何かが起きているのだ。

 

杯の中を覗いてみると、一滴だけだが酒が発生しているのが見てわかる。

 

いやぁ、『魔のダンジョン』はいったいどんな味がするんだろう。

 

楽しみだなぁ。

 

 

 

 

社畜死神は、この杯に魂が集まってくるので、魂の取得作業が大分楽になったと話していた。

 

当然ながら、杯から魂を採取するため杯の酒の質は落ちるだろう。

 

だがまぁ別にいい。社畜死神は集めた魂は全て保管してあるそうだ。

 

魂は有用な資源としていつか、使い道が見つかるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔のダンジョン 第48層  神聖エルフェニア帝国 大森林

 

第384村 村長視点

 

 

 

「押せ押せ押せ押せ押せ!」

 

「踏ん張れッ」

 

ダークエルフたちは必死に扉を押さえている。外の扉には魔物たちが体をぶつけ、衝突音と魔物の雄叫びが響き渡る。

 

突如として、第384村に大量の魔物の波が押し寄せた。

 

魔物たちは農園の薬草や花などを次々と食い荒らし、その勢いは収まることを知らず、村を襲い始めた。

 

魔物達はどれも痩せ細っており、皆必死だった。

 

ダンジョン内の魔物は、魔力を餌とするはず。薬草など食べる必要なんてないはずなのに。いったいなぜ。

 

 

農園の警備部隊である数百人のダークエルフ兵たちは戦いに挑んだが、一瞬のうちに波に飲み込まれてしまった。

 

 

村を覆う壁はあっさり突破され、我が城にも魔物が押し寄せた。外で戦っていた城兵も壊滅。

 

 

残るはこの広間だけだ。広間では多くの衛兵達が扉を必死に押さえているが、時間の問題だろう。

 

 

つい先程まで、村の中には地獄の光景が広がっていた。至る所でエルフたちが魔物に蹂躙され、絶叫が響き渡る。

 

もはや、絶叫の声すら聞こえない。私たち以外はほとんど全滅したのだろうか。

 

扉を押さえるダークエルフ達の身体からは汗が滴り落ち、筋肉は限界に近づいている。

 

 

「村長!まだ司令官様に援軍要請をしないのですか?」

 

 

 

私、村長にはダンジョンシステムの操作権限をいくつか与えられている。その一つが緊急コール。48層の司令官や領主様に直接通信ができるのだ。

 

だが。

 

 

「司令官に緊急事態を知らせるためには、村の幹部の過半数以上の賛成が必要なのだ………」

 

 

幸い、この建物は村長に与えられた小さな城。この城には襲撃時に多くの幹部が集まっていた。

 

しかし足りない。あと一人の賛成が必要だ。

 

 

 

「村長!権限が私に譲渡されたので承認します」

 

 

権限は、死亡時に事前に登録していた序列に従い、次の序列の者に譲渡される。

 

目の前の近衛兵は、衛兵隊長権限序列30位。つまり、それ以上の者は、全滅したとのこと。

 

 

…こいつ以上の衛兵は、全滅したのか。

 

だが、ついに援軍を要請できる!

 

私は同胞の死を喜んでしまった。申し訳ないが、今はそれどころではないのだ。

 

すぐにシステムウィンドウを開き、緊急連絡コマンドを選択する。

 

●緊急連絡

 

ためらわず押す。

 

 

「司令官様!第384村の村長です!突如として魔物が襲来しました!え、援軍を…⁈」

 

 

 

●エラー!現在通信を行うことができません。ダンジョン内の通信システムに深刻なエラーが発生した恐れがあります。

 

 

 

「エラー⁈馬鹿なッ!」

 

ダンジョンシステムは、ダンジョンマスターを生み出した創造主自ら作り出した物。そんな万能の物がエラーなんて、初めて見たし聞いたことがない。

 

 

 

「村長!もう限界です!」

 

扉が吹き飛ばされ、大量の魔物が城内に流れ込んでいく。

 

扉を抑えていた兵士は剣を振り回し、何体かの魔物を切り伏せるが、すぐに魔物に飲み込まれる。

 

 

「クソッ!総員抜剣!帝国に栄光あれ!」

 

もはや我々にできるのは、少しでも魔物を殺すことだけ。

どうか、我々の仇を打ってくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●定時連絡。こちら第384村 異常なし。繰り返す、異常なし。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

重複(ちょうふく)

本日、ゲリラ隊が出撃した。

 

出撃するのはゲリラ小隊の少女四人、動物兵二人。

 

 

 

少女達は皆空間魔法を使うことができ、神出鬼没。奇襲攻撃完了後すぐに転移し逃走することで敵に捕捉されることなく繰り返し攻撃を続けることができるのだ。

 

…そう考えると、こいつらクソ強いな。敵側は何をどう頑張ってもこの奇襲を止めることはできない。唯一の方法は奇襲前に攻撃して空間魔術を使わせる前に火力で叩き潰すことだが、俺がガチャから手に入れたHPにより一撃で倒すことは不可能。

 

敵は繰り返し攻撃してくるゲリラ隊に恐怖し、こちらは圧力を加え続けることが可能となるだろう。

 

 

俺は当初、ガチャから排出されてすぐに出撃させようと考えていたのだが、敵の魔のダンジョンは空間魔法に対する対策は完璧だった。

 

 

対空間魔法罠、防衛魔法陣、障壁に異空間を徘徊する大量の魔物達。数え切れないほどの防衛機構。

 

その防衛は非常に堅く、突破はほぼ不可能らしい。

 

 

そこで俺はスライムを使った。

 

スライムの侵食により、ダンジョンシステムの層間転移システムのハッキングに成功。こちらが占領した第1層、第2層の最奥に設置されていた転移陣を使うことにより、一部の層に転移することが出来る。

 

 

魔のダンジョンの厳重な対空間魔法機構群も、正規ルートからの侵入の前には発動することは無いのだ。

 

 

 

ゲリラ隊の目的は重要施設や要人に関する情報の収集。そしてとにかくダンジョン内を混乱させること。

 

入手した情報を元に、こちらのホムンクルスの大部隊を派遣する。安全だと思っていた後方の層に突如として敵が出現するのだ。

 

 

敵は大混乱に陥るだろう。想像するだけで笑いが止まらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それでは、今日のガチャ!

今日のログインボーナスは食べ物確定5連ガチャコイン!

 

 

 

さあこい!

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

UC『始祖鳥の唐揚げ』

C『腸破壊ガーリック』

C『ポテトチップスワサビ味』

C『カップ焼きそば』

R『聖牛』

 

 

 

 

 

 

牛。

 

既に絶滅した動物であるオーロックスが人類によって家畜化したもの。

 

牛の肉は人間により適切に調理され、数多くの料理がこの世に誕生した。ステーキ、焼き肉、すき焼き、ローストビーフ、もつ鍋。あらゆる部位を食べることが出来、どれも非常に美味。

 

さらに肉だけでは無く、牛乳もバターやチーズなどに加工される現代の食には欠かせない存在だ。

 

 

 

 

 

 

多くの食べ物と共に、一頭の牛が出現した。

 

 

黒い牛だ。大きい胴体、短い足。まるまると太った、結構肥えた牛。

 

 

牛は純粋無垢な瞳でじっと俺を見ている。

 

 

うわー、マジモンの牛だよ。ダンジョンでもミノタウロスが魔物として出現していたが、本物の牛を直に見るのは久しぶりだ。小学校の動物園遠足以来かな?

 

 

俺は少し不安を抱きながらも、恐る恐る近づく。

 

すると「もぉー」と気の抜けた鳴き声をあげながら、体を俺にこすりつけてきた。

 

おお、可愛いじゃないか。牛ってこんなに人懐っこいのか。触っても大丈夫かな?

 

触れてなでてみる。「んもぉ」と気持ちよさそうな声を上げ、ズドンと横たわり、すやすやと眠り始めた。

 

 

こいつ、警戒心という物がないのか?いきなり俺の元にガチャから呼び出されたのだ。混乱したりするのが普通だと思うんだけどなぁ。

 

………聖牛。食べ物確定コインからでた牛………。

 

え、これを食えと⁉

 

 

いやいや、魔物とは違うんだぞ?あれはただの敵だ。敵はいくら殺してもいいけど、こいつは別に敵では無い。

 

 

こんなの、殺せないよ!

 

 

 

 

 

 

その後、牛は突然光り輝き始めた。

 

輝きが収まったと思ったら、牛の前には大きな段ボールの箱がいくつか置かれていた。

 

段ボールには●聖牛の収穫の時期が来たので、お肉を出荷、加工しました!!是非味わってください!そして今後も私のお世話よろしくお願いします 聖牛より。という紙が貼られており、俺は急いで段ボールの中身を確認する。

 

 

 

中身は聖ミートロース肉 聖ミート牛脂、聖ミートシマチョウといったパック詰めされた肉から、肉の缶詰、聖牛肉カレー、聖牛ジャーキーといった加工食品。

 

 

目の前の聖牛はガチャから出た時とは違って幼牛のように小さくなっていた。すやすやと爆睡している。

 

 

 

………この紙の内容から考えるに、この聖牛は一定の時期になると自らの余分な肉を出荷して若返り、未知の手段で加工し包装。俺に肉をあげるから聖牛を育ててねっていうことか?

 

 

 

どんな生き物だよ!あと何が聖牛だよ!全然聖なる存在じゃないだろ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

聖ミートの牛串うめーーーーー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それでは、無料ガチャ!

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

UC『少年A』

 

 

えっ、少年Aって。もういるじゃん。

 

 

 

 

出現したのは、16個の宝石だった。一つは深い青色で、残りは明るいピンク色の宝石

 

 

え?少年Aは?

 

 

困惑しているとシステムウィンドウが開かれる。

 

 

 

●既に少年Aを入手しています!重複が発生したので『少年Aの意思』と『解放結晶×15個』入手しました!

 

 

 

えぇ…このガチャ、こんな機能があったのか。

 

ガチャシステムを導入しているゲームにおいてキャラクターが重複すると、そのキャラクターを強化できるアイテムが入手出来る場合がある。

 

このアイテムを使うことによりキャラクターは大きく能力を上昇させることができる。この強化はレベルアップやスキルレベルの上昇などの通常の強化とは比べものにならないほどにキャラクターを強化するため、多くの課金者達はガチャを回し続けるのだ。

 

 

 

それでは鑑定しよう。今日鑑定するのは青い宝石、これが少年Aの意思で残りのピンクが解放結晶だろう。

 

 

 

 

鑑定!

 

 

 

 

 

 

●『少年Aの意思』

 

少年A専用の能力解放アイテムです。これを使うことで少年Aの新たなるスキル『復讐の黒き炎』を解放することが出来ます。

『復讐の黒き炎』は攻撃対象に呪い状態を付与するという強力なスキルです!ダンジョン攻略に役立てましょう!

これでやっと。1凸状態です!10凸目指してガチャを引きましょう!

 

 

 

 

 

 

おお!やっぱり強化アイテムか!

 

それにしても10凸かぁ。ただでさえこのガチャじゃランダム性が高いんだ。

 

絶対10凸にするの無理だろ。この運営、ソシャゲだと金儲けに必死すぎるって絶対炎上してるぞ。

 

 

 

 

まあ、強化できるんなら使うしかない。別に温存して置いてもメリットはないし。

 

俺は格闘漫画を読んでいる少年Aに話しかける。

 

 

 

「おーーい、これあげるわ」

 

「?何これ?」

 

「少年Aの意思だってさ。これで能力解放してくれ。お前強くなりたいっていってただろ?よかったな、これで強くなれるぞ」

 

「いや、能力解放ってなんだよ」

 

「?いやだから、能力解放だよ。これ使えば黒き復讐の炎ってスキルが使えるようになるらしいから。遠慮するな」

 

「この石で?どうやって?」

 

 

「どうやってって、そりゃお前…」

 

 

 

 

え、これどうやって使うの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日本  サラリーマン 視点

 

 

いやあ、本当に驚きましたよ。今でも信じられない。

 

僕は通勤中にね、山田の放送を見てたんだよ。俺だけじゃ無くてみんなね?

 

山田がガチャを回して、カプセルが出た瞬間に目の前にいたサラリーマンが光り出したんだから。

 

それで光が無くなったら、その人いなくなってたんですよ。もう、びっくり。どこにいったんだって電車の中の人みんな、えっえって電車の中探すんですけど、いないんです。

 

そこで誰かが言ったんです。ガチャ見てみて!って。

 

それでスマホをみたら、そのサラリーマンがいたんですよ。

 

それで楽しそうに山田と話してるんですよ。俺もいつか、ガチャから呼び出されたりするのかな。ははは。

 

 

 

 

 

 

 

 

証券会社 サラリーマン視点

 

 

 

 

あの人、接待の達人ってガチャから出たんでしょ?

 

いやまぁ、そうなんだけどさ。

 

要するに、あの人は営業のプロなんだよ。営業に出れば、すぐに商談が成立しちゃうんだ。

 

俺たち証券マンは、新規開拓のために売り込みに行くわけ。でもほとんどが門前払いで終わっちゃうんだ。

 

でもあの人は違うんだよ。営業が必ず成功するんだ。超能力かと思うくらいさ。

 

一回聞いたことがあるんだ、なんでそんなに営業が上手いんですかって。なんて答えたと思います?

 

相手が金を持っていて、何を求めているのかわかるんだってさ。すごいよね。

 

あの人が金持ちが集まるパーティに出席すれば、後日電話がバンバンかかってくるんだ。投資したいんだけど、君のところで始めたいって。

 

異常だよね…人を信頼させて、その気にさせるのがめちゃくちゃ上手いんだよ…。

 

 

てかさ、こんな取材受けてる場合じゃないよ!マジでノルマがキツイんだよ!あの人がいないとノルマに届かないよ!

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

深海へ

山田ドラゴンガチャ王国内に、料理文化が誕生しつつある。

 

ベースとなるのは氷炎の騎士が作り出す帝国料理だ。

 

あの油多め塩多め味濃いめのカロリー爆弾料理がホムンクルス達に大好評。その味付けをホムンクルスは真似し始めたのだ。

 

ホムンクルス達は依頼掲示板より自身の制作したアイテムと食材を交換で入手しており、最近は店に通わずに自身の手で料理を作るホムンクルスが大勢いた。

 

流石に毎日外食は金がかかることに気づいたのだろう。自炊は金がかからないからね。

 

昨日は手料理に自信があるホムンクルスが開催するホームパーティに誘われて、手作りの山田ドラゴンガチャ料理を楽しんだ。

 

炙りベーコン寿司、タレ盛り焼き鳥、オークの生姜焼き、バターライス…。

 

とにかく味が濃かったが非常に美味。ダンジョンで戦うホムンクルスにはこれくらいのカロリーが必要なのかもしれない。

 

しかしだ。ホムンクルスは今一才にも満たないのだ。老化した時この料理文化にホムンクルスの内臓は耐えられるだろうか。どうなるのか心配である。

 

 

 

 

 

 

 

今日のログインボーナスは通常ガチャコイン。

 

え⁈一個しかガチャからもらえないのか?

ここ最近は運営は大盤振る舞いだったのになぁ。たまたまだったのか?

 

俺はコインを実体化する。

心なしかコインが綺麗になっている気がする。気のせいか?

 

まぁいい。ガチャを回そう!

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

C『ヒモ』

 

 

繊維を束ねた細長い加工品。紐をさらに細くしたものを糸、太くしたものを綱という。漢字は左に糸、右に丑。

 

昔は材料に麻や絹などが使われていたが、それに加えて現代ではゴムやナイロンなどの新素材を使い生産される。使い方は多岐に渡り、靴紐から荷造りのためにビニール製の紐を使い縛ることもある。

 

ビニール製の紐を解くのは難しい。いつも解くのを諦めてハサミで切ってしまう。

 

ところで何でカタカナなんだ?

 

 

 

 

 

 

出現したのは紐ではなく一人の男だった。

 

若い男だ。おそらく俺と同年代。髪は金色に染めて目つきは悪く姿勢も悪い。ダボダボの服をしてポケットに手を突っ込んでいる。

 

チャラ男ではなく、不良だ。

こいつが紐か?どこが?

 

 

 

「お前が紐か?」

 

「ヒモって…いきなり失礼っすね。夢見るミュージシャンといって欲しいっす」

 

「失礼?おまえ、ヒモって名前じゃないのか?」

 

「違うっすよ。俺は黄瀬陽介!ミュージシャン志望の元気ある若者っす!」

 

 

うーん、こいつも櫻井や書記官のように一般人枠かな?

 

 

「まぁ、とりあえず軍に入ってくれ。音楽隊に入れてやるから、そこで前線の味方にバフをま」

 

「できないっす」

 

「まぁ突然軍隊に入れって言われてもそうだろう。だけど最初はみんなそうだ。俺だって銃なんて使えなかった。だけど」

 

「いやそうじゃなくて。人間に飛べと言っても飛べないでしょ?血流を今すぐ逆流させろなんて言ってもできないでしょ?それと同じです」

 

「はぁ?そんな甘え許さないぞ。こっちは人手不足なんだ。悪いが働いてもらうぞ」

 

「いや、俺もできるならしたいっすよ。でもダメなんです。鑑定して見ればわかると思います」

 

 

うーん?

何か働かない事情があるのか?例えば病気とか。それだったら悪いことをしたな。

 

鑑定!

 

 

●ヒモ

 

別名寄生虫。人間のクズです。

 

スキル『ドラマー』     ドラムをうまく演奏できる。

スキル『アンチ労働』    労働できない。

スキル『プライベート空間』 自身を中心に結界を張ることができる。空調機能付き。

スキル『寄生(財産)』   お金を寄生先から得ることができる。妨害不可能。

 

 

 

 

ヒモ。紐ではなく、ヒモ。

女性を働かせて金を貢がせて生きる男性のこと。

 

 

そっちかよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…気を取り直して、無料ガチャだ。

 

ガタンッ

 

 

 

UC『拳銃』

 

英語のハンドガンを意訳して拳銃。ヤクザの間ではハジキと呼ばれる。

 

他の銃と比べて比較的小型であるため携帯性が高く、各国の警察官が使用する。使う弾丸も小さいため威力は低いが反動が少なく、片手でも扱うことができるが基本的に両手で使う。その方が狙いを定めやすいからだ。

 

軍隊などでは護身用として後方の兵士たちが携帯する。関係ないがスーツ姿の人が拳銃で市街地を舞台に戦うのは結構かっこいいと思う。

 

 

 

 

 

出現したのは、一丁の拳銃だった。

この部屋に監禁された当初の俺ならビビっていたかもしれないが、今の俺は銃器を訓練により使いこなすことができる。

 

こんな小さな拳銃にビビることはない。

 

…今更だけど、俺銃を撃ったりしてるし、銃刀法違反だよな?

 

これ、ゲームが終わって解放後は警察に逮捕なんかされないよな?

 

ここが銃の所持が合法な国家であることを祈ろう。

 

 

 

さて。それでは検証だ。実際に使ってみよう。

 

俺は検証のためにダンジョン第3層に向かった。

ダンジョンの攻略はほとんど進んでいない。敵が多すぎて前に進めないのだ。

 

俺はその辺を転がる新鮮な魔物の死体を狙い、拳銃を構える。

 

安全装置解除、姿勢を正しく、よく狙って…。

 

 

パンッ

 

 

弾丸ではなく、拳の形をした魔力の塊が発射された。

 

拳は死体に触れると消滅して、死体の顔には拳の跡が深くめり込んでいる。

 

…弾丸の代わりに、拳を発射する銃。

 

 

拳銃ってそういう意味じゃねーから!

 

 

 

 

 

 

その後、ホムンクルスが拳銃相手に武術を習っていた。

何を言っているのか意味がわからない。

 

この銃が発射する拳を受け止める訓練をしようと拳銃を借り、手の形をパーにして受け止めようとすると、触れた瞬間に拳銃が話し始めたらしい。

 

自分を拳銃に封印された武人だと主張して、じゃんけんに勝ったホムンクルスに剣術を教える決まりがあるそうだ。

 

剣術の名も、『梅花剣法』。

 

 

拳法じゃねーのかよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダンジョン第95層 商業層 ミレニアムポリス

 

95層司令官 商業ギルド長 クラーク視点

 

 

もうこのダンジョンは終わりだ。

 

私の直感がそう告げている。

私は膨大な数のスキルを所持している。その内のいくつものスキルが警告してくるのだ。このままではお前の財産は奪われると。

 

誰によって私の財産は奪われるか。

 

ダンジョンマスターの可能性は皆無だ。あのアホは私の野心に気付いてもいない。暗黒騎士団長は私の欲望に気づいていたが、アホは聞き入れない。アホは私のことを今でも忠実な家臣と考えているだろう。アホめ。

 

 

あぁ、確かに私は貴方の忠実な家臣だ。だが、今の貴方ではない。私が忠誠を誓うのは、若き日の貴方だ。

 

 

では侵入者か?未だ第3層で苦戦している。常識的に考えて95層の私に危害を加えることはあり得ない。

 

だが、直感が告げるのだ。この侵入者こそが、魔のダンジョンを陥落させるのだと。

 

丸一日考えた末、私はこの直感に従うと決めた。そこからの私は早かった。

 

この商業都市が長年溜め込んだDPとダンジョン内で流通する通貨を全て使い、貴重なアイテムを買い占めた。さらに優秀な人材は全てスカウトし雇用した。多少ぼったくられたがどうでもいい。

 

どうせもうすぐ、価値の無くなる通貨だ。いくらでもくれてやる。

 

 

私はこの層に住むすべての命と財産に責任を持つ。全力で生き残らせてもらう。他の層のことなど知ったことか。

 

 

 

「閣下、全乗員、貨物の積み込みが完了しました。」

 

「よし」

 

 

 

目の前に広がるのは海に浮かぶ広大な都市。

 

私が手塩にかけて発展させた都市を、あのアホと心中させる気はない。

 

 

「本艦、ミレニアムポリスは深海に潜航する!浮上するのはダンジョン攻略後だ!」

 

 

商業都市 ミレニアムポリス

 

 

この都市は潜水艦の如く、深海に潜ることができる。

 

ダンジョンマスターですらこの機能は把握していない。知るのは司令官とごく一部の側近のみ。

 

 

 

侵入者がダンジョン攻略後、都市は浮上する。そこからは交渉だ。全てのアイテムを譲渡する。だからどうか、命だけは見逃してくれ。見逃さないのなら都市は全力で君たちを攻撃して最後は自爆しアイテムは消滅すると。

 

敵もダンジョン攻略後だ。消耗しているはず。無駄な戦いは避けるはずだ。

 

そして次だ。私にこのダンジョンを任せてみないかと。

 

このダンジョンは98層も存在する超大規模ダンジョンだ。

一から統治組織を作るには骨が折れる。

 

そこで私たちだ。私たちはこのダンジョンを隅から隅まで把握し、行政のために必要な人材は揃っている。

 

これで侵入者は手間を省ける。

 

さらに魂を縛る契約書も使う。契約に違反したら死ぬという魔法の契約書。内容は簡単にいえば、殺さない代わりに絶対服従の契約書。

 

これで私を信頼してくれるだろう。

 

 

次浮上する時、私は『魔』のダンジョンマスターだ。

私こそが、あのアホではなく私が、ダンジョンを支配するのだ。

 

 

 

 

 

 

…95層は商業都市という側面以外にも、補給拠点の側面を持つ。

簡単にいえば大きな倉庫だ。この倉庫から戦争時は各層に軍需品を送ることになっている。

 

軍隊にとって補給拠点は最も重要だ。補給拠点が部隊ごと行方不明になるのだ。誰も予測しない事態、各層は大混乱に陥り、物資不足に喘ぐだろうが知ったことではない。

 

これで侵入者に恩を売れる。貴方達のために裏切り、ダンジョン内を混乱させましたよと。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ソーシャルゲーム式召喚術

遂にシンオオサカニウムの解析が完了した。

 

遅くない?数日で終わるって言ったじゃん。

 

マッドサイエンティスト達の言い分は、ダンジョン産のアイテムの解析の方が楽しかったかららしい。もうとにかく大量に持ち込まれる未知の資源、未知の生物。研究者としての好奇心を大いに刺激され、シンオオサカ二ウムのことなんて忘れていたようだ。

 

はぁー、ほんとこいつら。マジで自分勝手だな。まあ結果を出してるから別にいいけどさぁ。

 

 

 

 

俺がかつて簡易鑑定で得た情報は以下の通り。

 

●西暦2800年頃の新大阪駅下層エリアで発見された金属。オールトの雲より飛来した隕石と新大阪駅要塞前線指揮列車の電算室との接触により誕生したと推測される。

軽く、丈夫で、加工がしやすい点、さらに 膨張性と演算機能を備えているため、資源不足に悩まされた当時の大阪府民の間で広く流通した

 

相変わらず意味不明だ。西暦2800年では新大阪駅がなぜか要塞になっている。

 

だがそんなことはどうでもいい。俺が知りたいのは、この金属がどういった性質なのかということだ。

 

 

マッドサイエンティストは俺の期待に応え、この金属の性質を見事に解き明かした。

なんとこの金属は生きているらしい。しかも宇宙生物だとか。は?

 

 

オールトの雲より落下した何かは宇宙生物であり、物と融合する性質を持っていたらしい。

 

そしてそれが新大阪駅の電産室に使われた金属と融合した。それこそがシンオオサカニウム。

 

そしてこいつは生きている。つまり細胞分裂が可能なのだ。シンオオサカニウムは特定の手順で空気中の細菌や塵、水蒸気などを吸収し成長することが可能。

 

 

これが大阪府民の資源不足が解消された理由だろう。ほぼノーコストで無限に増えるのだ。

 

しかしシンオオサカ二ウムは落下の衝撃で記憶や人格などが吹き飛び休眠状態のようだ。自身だけでの回復の可能性は皆無。つまりこの宇宙生物は今はただの人間に使われる金属というわけだ。

 

さらにこの金属は細胞一つ一つが脳のような力を持っているようで、CPUのように使うことも出来るらしい。そして他の金属と混ぜれば未知の性質を発現させるのだとか。

 

この非常に使い勝手の良い金属にホムンクルスは工房の金属不足が解消されたと大喜び。

 

 

こうして我が王国の生産業は活発化するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日のログインボーナスはゲーム確定ガチャコイン。

 

ガチャから排出されるゲームねぇ…まずまともなものではないだろう。

 

そもそもゲームが排出されるかも怪しい。ゲームに出てくるキャラクターやアイテムの可能性だってある。

 

 

それでは回そう。

 

 

 

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

R『虹色結晶』

 

 

 

 

 

出現したのは、虹色に輝く立方体の小さな石だった。

 

既視感がある。これはあれだ、この前ガチャから出た少年Aの意思や解放結晶と同じ種類の気配がする。

 

 

………なんとなく、予想がつくぞ。

 

 

 

 

 

 

鑑定!

 

 

 

 

 

 

 

●虹色結晶

 

立方体の形をした綺麗な結晶です。一つ100円にてストアにて販売中。

5つ使うことで召喚システムを起動して、人気VRMMOゲーム『ファンタジーオンライン』にてキャラクターやアイテムを召喚することができます。

 

入手方法は『ファンタジーオンライン』内のデイリーミッションやログインボーナス、クエストのクリアなど!

これからも『ファンタジーオンライン』を楽しんでください。

 

 

 

 

VRゲーム内で使える課金アイテム。そして使うためには5つ必要。

 

足りないんだよなぁ。ストアって何処だよ。

 

俺はこのガラクタを倉庫に保管しようと虹色結晶を持つ。

 

 

 

 

 

 

「お困りのようですね」

 

 

 

「おっ、首無し」

 

 

「もしよければその結晶、譲って頂けませんか?」

 

 

この首無しは最近大忙しだ。今工房では多くのホムンクルスが首無しから教えを受けている。

 

 

首無しは芸術家なだけあって知識豊富で物を作る能力に長けている。そのため多くのホムンクルスがこいつから物作りについて教わっているというのが現状だ。

 

教えるのが非常に上手く、ホムンクルスからの人気は高い。

 

だが俺は、国内での生産業の活発化はこいつが扇動しているのでは無いかと考えている。

能力の使用は封じてあるが、その口やこいつが作る素晴らしい芸術品がホムンクルスを煽っているのではないか?

 

まあ別にデメリットもないしいいけど。

 

 

 

 

さて虹色結晶だが。どうせ使い道もないしいいよ!

 

 

そう言うと首無しは蜜柑ジュースで魔法陣を床に描き始めた、ほんと蜜柑ジュース好きだなこいつ。

 

魔法陣の中心に虹色結晶を置き、ブツブツと何かを唱え始める。

 

 

え、マジで召喚するの?一つしかないのに?そもそもここファンタジーオンラインのゲーム内でもないのに?

 

 

 

そんな不安をよそに、魔方陣が光り輝き虹色結晶が消滅する。

 

気がつくと一人の男が立っていた。

 

 

 

 

そこには、ホームレスのように小汚い男がいた。

 

………いや、ホームレスというより、旅人だ。

ボロボロのマント、砂埃に塗れた服。手入れされていない長い髪とひげ。

中年、いやそれ以上か。筋肉質で体格の良い男性だ。

背中には一本の剣を背負っている。特に装飾もない、飾り気のない無骨な剣。

 

 

 

 

 

 

●縺代s縺帙>が召喚されました!

 

 

 

読めない!

バグってんじゃねーか!

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

それでは、今日の無料ガチャ。

 

なんか今日は良いものが出そうな気がする。

 

さぁ、こいっSSR!

 

 

 

 

 

 

 

ガタンッ

 

排出されたのは金色のカプセル

 

 

 

 

 

 

 

うおおおおおおおお!SSRだ!中身は…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SSR『惑星確定ガチャコイン』

 

 

実体化したのは、地球の絵が刻まれた金色のコイン。数秒だけあたりが宇宙空間のような光景になり、すぐにもとに戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

えっ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中層暗黒騎士団 第61層派遣軍 一般団員視点

 

 

我々騎士団は、壊滅状態にあった。

 

 

今日は中層暗黒魔術師団との合同訓練だった。

 

 

流石にこの孤立現象について中層暗黒魔術師団も危機感を抱いたらしい。緊急で決められた合同訓練というわけだ。

 

 

元々の予定はこうだった。中層暗黒師団長がDPを使い野生の大量の魔物を誘導する。

 

そして騎士団が前衛として戦い、後方から暗黒魔術師団が支援するというもの。

 

だがそれは罠だった。

 

 

突如として発生した地割れ。多くの騎士がこれにより裂け目に落下し、その中には主力の部隊や指揮官なども含まれていた。

 

 

 

そして我々を支援するはずの暗黒魔術師団による大規模な魔法が我々に降り注ぐ。

 

 

それだけではない。

 

突如として川が発生して、流れに飲み込まれていく騎士。

吹き割れる竜巻

溶岩の海

降り注ぐ雷

凍死する猛吹雪

突撃する魔物の群れ。

 

 

 

間違いない。これは、ダンジョン司令官による地形操作だ。

 

ダンジョン司令官はDPを使いダンジョンマスターより任せられた層を改造することができる。

 

61層の司令官は、中層暗黒魔術師団師団長。

 

こいつだ。こいつが凄まじい量のDPを使い、我々騎士団に攻撃を仕掛けてきている。

 

 

だがそんなことはありえない。

 

ダンジョンマスターにより生み出された魔物同士での殺し合いは、正当防衛時などの一部の限られた理由とダンジョンマスターからの許可が無ければ不可能。

 

なのにどうしてこんなことが。

 

理由もわからない。こんなことしたら、ダンジョンの戦力低下は必然。こんな地形や気象の変化は膨大なDPを使うはず。そこまでして何故我々を攻撃する。

 

そして暗黒魔術師団は、同胞殺しの烙印を押されるだろう。

 

 

意味がわからない。まさかダンジョンマスターが命令したのか?そんな。

 

 

 

 

あぁ、空から流星が降り注ぐ。

 

どうしてこんな。

 

 

 

 

 

 

 

中層暗黒騎士団 第61層派遣軍 全滅

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

外へ

 

出現したのは、SSR『惑星確定ガチャコイン』。

 

このアイテムは完全な初見というわけではない。俺は名前だけだがこのアイテムを知っていた。

 

それは魔のダンジョンを引き当てた際、鑑定時に得た情報にそのアイテムが記されており、そこにはダンジョンには完全攻略時、非常に豪華な報酬があることを簡易鑑定は教えてくれた。

 

 

 

●踏破報酬

 

SSR確定ガチャコイン10枚

惑星確定ガチャコイン一枚

外出権

 

 

 

 

 

相変わらずSSRコイン10枚というのは非常に魅力的だ。これまでSSRで出たアイテムにはずれはない。どれも非常に価値の高いアイテムだ。それが10個も手に入るのだ。しかし外出権というのは何だろうか。見当もつかない。

 

 

 

…いや、今はその話は置いておこう。

 

問題なのは、このダンジョンクリア報酬で貰えるはずのアイテムを、さっきガチャから手に入れてしまったということだ。

 

 

 

 

これ、いいのか?

 

なんというか、ゲームのクリア報酬をクリア前に手に入れてしまったような。

気まずい、謎の罪悪感を覚えてしまう。やましいことは何もしていないのに。

 

 

…よくよく考えれば、変に考える必要なくね?

 

 

そうだよ、ゲームの流れなんてどうだっていいしこれからもどんどんぶっ壊してやる。

 

今頃運営チームは大慌てだろうなぁ。笑いが止まらん。まだダンジョン攻略序盤なのにクリア報酬を手に入れてしまったんだから。もっと苦しんで困れ。

 

 

 

しかしダンジョン、どうしようか。

俺がダンジョン攻略を進めてたのは報酬である惑星確定ガチャコインのため。

 

忘れがちだが、このゲームは内政ゲームなのだ。領土拡大のために俺はダンジョン攻略を進めていた。

 

しかし惑星ガチャコインはもうすでに入手してしまった。2枚手に入れたところでどうすればいいんだか。

 

そしてSSRコイン10枚は魅力的だが、今後もコストをかけ危険を冒してまで攻略すべきなのか。

 

正直ダンジョンはもうどうだっていい。なんというか攻略も飽きてきたし、あとは時間がたてばスライムによって勝手に滅亡するだろう。

何が起きても知ったことではない。勝手に滅亡してくれ。

 

 

 

…しかし惑星か。

 

惑星と言ってもその種類は多い。

 

岩石などを主成分とする地球型惑星。

 

大きく、地球質量を超える膨大なガスで構成される木星型惑星。

 

主に氷で構成される天王星型惑星。

 

 

 

狙うはもちろん、人間が暮らすことのできる地球型惑星だが地球型惑星だって水星や金星のように人間が暮らすことが非常に困難な惑星から、人間が生きていく可能性のある地球や火星など範囲が広い。

 

 

俺が望むは、地球のような人間が快適に暮らせる惑星だ。

 

 

これだ。この引きこそが俺の命運を分ける。

 

 

 

 

来い!

 

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

UC『地球(クリエイティブモード)』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピロンピロン…

 

 

 

 

 

それまで何をどうやっても開けることができなかった、ショッピングモールの固く閉ざされた自動ドアから音楽が流れ、扉が開かれる。

 

新鮮な空気が風と共に閉鎖されていたショッピングモール内に流れ込む。

 

 

 

俺たちは走り、外に出た。

 

 

 

 

地平線まで広がる平らな大地。

 

雲一つない青空。

 

降り注ぐ暖かい太陽の光。

 

 

 

 

何千ものホムンクルスたちは、生まれて初めて本物の空を見た。

 

ホムンクルス以外の者たちは、閉鎖された環境から解放され喜んだ。

 

 

我々は、遂に外に出たのだ。

 

走り出す。あてもなく、走り出す。

 

 

青空の元走るのってこんなにも気持ちのいいことだったのか。

 

 

 

●『惑星』

あなたが治めるのは一つの惑星。こんな小さなショッピングモールではありません。

あなたは王となるのです。惑星の王に。

 

 

 

そう、これは俺がガチャを引いて視聴者が笑い転げるギャンブルゲームではない。

 

これは内政ゲームなのだ。

 

そして俺は道化ではない。王である。

 

 

ここだ。この惑星こそが、俺の王国の領土。俺の所有物。

 

すべてが俺の物。

 

 

 

さあ、開拓を始めよう。

 

 

 

 

 

●ついに惑星を手に入れました!ガチャからの排出物に地形、環境、超巨大構造物、生態系、都市、国家、民族などが排出されるようになります。

 

 

 

 

 

 

 

 




ついにプラネット要素が出てきました。
ここまでご覧いただき、ありがとうございます。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

害獣ヒーロー

俺はこの惑星探索のため『惑星開拓本部』を設立。

 

ダンジョン攻略は片手間で行うことにした。ダンジョンでホムンクルスは鍛えられるし、ドロップアイテムも物資生産のためには必要だ。なにより俺の勢力圏内に敵対勢力が存在することが許せないので、ダンジョン攻略と惑星開拓のために戦力を半分に分けることにした。

 

 

そして俺は伊能忠敬をリーダーとした、ホムンクルスと機械馬で編成された探索隊を四方八方に派遣した。

 

 

探索隊は与えられた通信機でホテルの会議室に設置された『惑星開拓本部』に情報を送り続けているのだが、今現在得た情報によりこの惑星が異常だということが分かってきた。

 

 

まず草木一本生えていない。どこまで行っても茶色の地面が続く。

 

そしてこれが最大の異常。地面が地平線まで平らなのだ。丘や山、さらに池や川といった起伏のある地形が存在しない。

 

この地形のせいで方向感覚を失い遭難、ワープポイントで帰還するホムンクルスが続出した。

 

どう考えても自然にできたとは思えない。

 

現在マッドサイエンティストにより急ピッチで人工衛星搭載のロケットの作成を進めている。これでこの惑星の全貌が判明するだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ログインボーナスは機械確定ガチャコイン

 

 

 

機械。今必要なのは土木工事に必要な機械だ。

 

ホテルに収容可能なホムンクルスの数は約4000人。これ以上の数のホムンクルスを生産するためには、住宅地などの施設をショッピングモールの周りに建設しなければならない。

そのために重機が必要だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

R『猪鹿蝶』

 

「花札」の役の一つ。「萩に猪」「紅葉に鹿」「牡丹に蝶」の3枚の札を揃えることで成立する役。

 

この役は非常に縁起のいい役であり、絵柄も綺麗なので人気が高い。花札のルールを知らない人でもこの役だけは知っている人も多いほどに有名。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何も出てこない。

 

うーん、これはまたはずれかな?

 

と考えていたらシステムウィンドウが展開された。

 

 

 

 

●BGM『出撃!ヒーロー!』が猪鹿蝶を中心に強制再生されます。

 

 

 

 

は?ヒーロー?

 

 

困惑しているとショッピングモールの外にいるホムンクルスが何やら慌てた様子で俺を呼びに来て、返事をする前にホムンクルスに持ち上げられショッピングモールの外に運び出された。

 

ホムンクルスって力強いな。

 

 

 

 

 

そうして運び出されると多くのホムンクルスが遠くの空を見つめている。

 

何かあるのだろうか。俺はホムンクルスが指をさす方向をじっと見る。3つの何かがこちらに飛んできている。

 

 

少しずつだが、何かがこちらに近づくにつれて音楽が大きくなっていく。日曜の朝のテレビで流れていそうな音楽が遠くから聞こえ始める。

 

 

音楽からは高揚感と力強さを感じ、激しく躍動する。重低音が響き渡り、鋼の心臓が鼓動するようなリズムが鳴り響く。

 

全身に鳥肌が立つような感覚が広がり、電子音を交え未来的な響きを加えながら、音楽は勢いを増し、繰り返されるドラムが俺の魂を揺さぶる。

 

俺はこれに似た音楽を聴いたことがあった。子供のころ、休みの日の日曜日に朝早く起きてみていたとある番組。

 

 

 

 

そう、ヒーロー。

 

 

 

 

 

 

 

空を飛ぶ三つの機械。

 

巨大なロボットが現れた。その姿はまさに未来から来たような洗練されたデザインで、光を反射して輝く。

 

ホムンクルスは唖然としていた。想像の埒外の物が当然現れたのだ。無理もない。

 

 

そして、3機のロボットは変形をはじめ、パズルのピースが組み合わさるように合体を始めた。ギアの歯車が噛み合い、重要なパーツが繋がるたびに、軽快な金属音が響き渡る。

 

 

 

そして、合体が完了した瞬間、ロボットは力強く両腕を広げ、一際眩い光を放った。

 

合体を終えたロボットはゆっくりとロボットは降下し、その巨体が地面に接する瞬間、地鳴りのような轟音が響き渡る。

 

 

 

 

 

『『『農業戦隊 ヤサイレンジャー!』』』

 

 

 

…鑑定!

 

●農業ロボ 猪鹿蝶

 

「農業は国の宝…食こそが人々の心を豊かにする!」

「ライバルである漁業戦隊、畜産戦隊には負けない!」

 

農業戦隊の隊員が搭乗する人工知能と高度な機能を搭載型の農業ロボットです!

 

それぞれの役割に応じて、猪は害獣や害虫の駆除に特化し、鹿は災害からの農作物を守護し、蝶は病気の治療に効果的⁉ これらの機能は、農家が望むさまざまなニーズに応えるために凝縮されています。

 

 

緊急時には、この三体のロボットが合体し、窃盗怪人や巨大な害獣との戦いに挑みます。彼らの合体は圧倒的な力を発揮します!

 

 

 

 

 

 

 

俺は合体しポーズを決めるロボットを見て思う。

 

 

 

 

 

いや蝶はわかるよ?植物の受粉とかに必要だからね。

 

でも猪と鹿。お前ら、害獣だろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて今日の無料ガチャ!

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

C『生態系 ドードー鳥』

 

 

ドードー鳥。かつてマダガスカル沖に浮かぶ孤島、モーリシャスに生息していた絶滅種。

 

天敵のいなかったドードーは退化した羽のため空も飛べず、よちよちとのんびり歩き警戒心も存在しない。

 

そのため入植者と持ち込んだ犬やネズミに簡単に捕まり、森林の伐採などであっという間に絶滅してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

捜索隊より緊急の連絡があった。

 

先ほどまで何もなかった探索済みのエリアに見たこともない鳥の群れを発見した。送信された写真データから、ドードーだと判明した。

 

特筆すべきことに、そこだけは平地ではなく、果実を実らせた小規模の森林や湧き水などが発生し、地形も平らな土地ではなく窪みや丘などの地形が発生していたという。

 

生態系、つまりドードーだけではなく、生きるために適した地形、水、植物が発生するということか。

 

 

俺は現地に向かい、ホムンクルス相手にじゃれつき歓声をあげるドードーの群れを見て思う。

 

俺はドードーを抱きかかえ腹をなでる。ドーと間の抜けた、気持ちよさそうに声を上げる。

 

 

 

絶滅し、地上から去ったドードーが目の前にいる。

 

一度は人間の理不尽により消えたドードー。ドードーがなんの奇跡か、もう一度生きることを許された。

 

こいつらはそのことを喜んでいるのだろうか。安心しろ、もう二度と絶滅はさせない。

 

 

 

 

 

 

 

…認めよう。この世界は現実だ。VRの世界でも何でもない。ショッピングモールの中だけならまだ説明ができた。

 

だが、この惑星は違う。果てしなく広がる大地。どう考えても容量オーバーだ。俺の想像を超える技術が秘密裏に開発されていてもこれは流石に不可能だろう。

 

 

 

そして俺は、一つの結論を出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

そう、俺は異世界にチートアイテムをもらって転移したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダンジョン第98層  王の間 

 

ダンジョンマスター視点

 

 

 

 

 

中層暗黒魔術師団が謀反。現在60層に攻め込み戦闘中。中層暗黒騎士団は壊滅、援軍を求む。

 

 

就寝中に信じられない報告を通信係がしてきた。どう考えても誤報だ。

 

こんなバカげた報告をしてきた通信係の首をはね、眠りに就こうとする。まったく、そんなことはありえん。

誤報かどうか、少し考えればわかるだろう。

 

 

 

だが、その後も何人もの兵士が同じことを言い始めたのでシステムウィンドウで第60層の様子を確認する。

 

そこは地獄だった。味方であるはずの中層暗黒魔術師団の奇襲により壊滅する第60層。

 

私は慌てて61層司令官であるヘルに連絡を入れるため、システムウィンドウを操作する。

 

 

システムウィンドウに映されたヘルは何も起きていないかのように話し始める。

 

 

「おやおや、これはダンジョンマスター様。顔色が良くないようですがどうかしましたか」

 

「ヘル!貴様何をしている!」

 

「何のことやら」

 

「とぼけるなぁ!今すぐに攻撃をやめろ!」

 

「拒否します」

 

「なッ…⁉」

 

 

ありえない!ダンジョンマスターの命令は絶対。拒否なんぞできるはずがない。さらに言えば同士討ちだって禁止されている。

 

何が起きている⁈

 

私はDPを消費し第60、61層全体に放送をする。中層暗黒魔術師団は今すぐに攻撃をやめろと。だが戦争は止まる様子がない。

 

 

「ところで閣下。こいつに見覚えは?」

 

 

ヘルがシステムウィンドウにとある魔物を映し出す。

 

その魔物は私の側近の一人。魔のダンジョンの最高戦力の一つ。

 

 

『白月狼 ゼノン』

 

私が生まれた頃から仕える、私を除いたこのダンジョンの食物連鎖の頂点に立つ恐怖の象徴。

 

 

そんな最高戦力が、見るも無残な姿が映し出された。

 

 

「閣下…申し訳ありません」

 

「大変恐ろしくありました。この狼に毒を盛り、旅団単位の呪いとデバフを与えたにもかかわらず何万もの暗黒魔術師が死にました。私以外の幹部も皆こいつにやられましたよ。ああ恐ろしい」

 

そういうと、ヘルは白月狼の首をはね、通信を切った。

 

私はシステムウィンドウを操作し一部の層を除いた全兵士に命ずる。

 

 

「中層暗黒魔術師団を皆殺しにしろぉ!」

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

つまらぬ者を斬ってしまった…

食糧自給率という数字がある。

 

簡単に言えばどれだけ国内で食べ物を生産できているかという数値であり、これが低いともし輸入が途絶えた時国内の食事事情が悲惨なことになってしまう。

 

今の我が王国の食糧自給率はかなり低いと思われる。

我が国で生産されている食糧はベーコンキャベツとみかんジュース。他にも色々作ってはいるが、微々たる量だ。

 

 

 

農業ロボ猪鹿蝶にも言われたが、確かに農業は大切だ。

 

 

今でこそ植物成長剤によるベーコンキャベツの異常成長と掲示板による取引でどうにかなっているが、もしかしたらいつかそれがなくなる時が来るかもしれない。

 

 

それに、これからどんどんホムンクルスを生産していく予定だ。最終的に何百万ものホムンクルスを生産する。

今の輸入に頼ったままではいつか限界がやってくる。

 

自分で食糧を生産しなくてはならないのだ。

 

 

 

そんなわけで、俺は農業を始めた。

 

 

肥沃な土地は有り余っている。水だって魔法でいくらでも生成できる。

 

ホムンクルスと農業ロボ猪鹿蝶に命じて、もう既に多くの土地を耕している。

 

植えているのは小麦、米、ジャガイモなどの主食となるものからトマトやキャベツなどの野菜類。

 

農業に関して何の知識もない俺たちは取引で手に入れた学術書と農業ロボの適切な指導の下、拙い技術で土地を耕していく。

 

生産が得意なホムンクルスたちもビニールハウスなどを作り、惑星開拓本部所属の人員は一丸となって土地を耕す。

 

収穫の時期が楽しみだ。

 

 

 

…シームルグの作ったよくわからない種は隔離して育てている。何が育つか予想ができないからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日のログインボーナスはユニット確定ガチャコイン!

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

 

 

HR『人質』

 

 

犯罪者が自身の要求を通すために拘束された人のこと。または約束を守る保証のために敵国などに送られた人。

戦国から江戸時代の日本ではお互いを信用できず約束を守らせるため、人質を送りあった。

徳川家康も幼少期人質だった。

 

 

 

 

 

 

 

出現したのは縛られたアンドロイドだった。

 

半分機械のサイボーグホムンクルスとは違う、全身が機械のアンドロイド。生身の部位が一つもない。

 

…そんなアンドロイドが、これでもかというぐらいに縛られていた。

 

手錠と足枷、体を縛る拘束服。その他もろもろ。

 

俺とホムンクルスは助けてと叫ぶアンドロイドを面倒だと思いながら解放した。

 

 

 

「人間。お前が私を解放したことは感謝している。だが下等生物である人間に従うつもりはない」

 

何だこいつ。恩人に向かって何だそこ口の聞き方は。スクラップにしてシンオオサカニウムと混ぜてやろうか。

 

などと考えたが、辞めた。

 

 

 

 

俺は、このアンドロイドに見覚えがあったからだ。

 

ずいぶん昔にガチャから排出された応援ポスター。名前PDEHSMAKEN。政党は神学機械党。

公約は第十二の使徒の建設。

 

意味不明な応援ポスター。そのポスターに貼られていた写真のアンドロイドと目の前のアンドロイドが瓜二つなのだ。

 

いやいや、同じタイプの見た目なだけで別人だろう?

 

俺はこのポスターに書かれている名前と政党、公約について聞き込む。

 

 

 

「なぜ私の名前を知っている?神学?使徒?馬鹿げたことを。神などと言うありもしない幻想を信じ込むのは愚かな人間だけだ。機械である私がそのようなことはしない」

 

こいつ応援ポスターのアンドロイド本人かよ。

だがどうも神学のことなどは知らないらしい。どういうことだ?同姓同名の別人なのか?

 

 

そう考えていると、農業ロボの蝶がこちらに向かって着陸してきた。

 

『山田様。指定された第4区域の開墾作業完了しました」

 

「よし、計画に従い、次の区域の開墾を始めよ」

 

『はっ』

 

そうして蝶は飛び去っていった。

 

俺はアンドロイドに視線を戻すと、アンドロイドは空を飛ぶ蝶を見て呆然としていた。

 

 

 

「そうか…所詮我々アンドロイドなど人間と同じ…」

 

 

「いや、何でもない。ところであれは?ガチャより出した?なるほど…ガチャも一種の機械と言えるのか」

 

 

アンドロイドは一人でぶつぶつと独り言を話し始めた。

 

俺は知っている。この顔はマッドサイエンティストが自分の世界に入って深く考えごとをしている時の顔だ。そしてこの状態に邪魔が入ると烈火の如く怒り出すのだ。そしてその後、とんでもない発想で俺を驚かせ役に立ってくれる。

 

 

俺はアンドロイドを一旦放置することにした。後で何を考えていたのか聞いておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、アンドロイドは運命教会に入信した。

 

どういうことだ!さっきと言ってることが違うぞ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それでは、今日の無料ガチャ。

 

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

UC『ハニートラップ』

 

 

 

 

 

イギリス人小説家ジョン・ル・カレの造語。1974年に出版された『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』に初登場。

基本的に女性の工作員が重要情報を知る男性を誘惑し、懐柔するまたは脅迫し、機密情報を要求する。

 

イメージでは女性がスパイ側だが、ハニートラップを仕掛ける男性スパイも存在する。

 

 

 

 

 

 

 

 

出現したのは、黄金色に輝く小さな池だった。

 

池の周りは花々が咲き誇り、黄金色の泉からは甘ったるい匂いが放たれている。

 

そう、この池はただの黄金色に輝く水ではない。花の蜜である。

 

もしこの辺りに虫がいたら、すぐに池に群がっただろう。

 

 

 

 

鑑定!

●ハニートラップ

蜜の精霊エレンシア。異世界の妖精です。蜜の泉の主人であり甘い香りに誘われた動物や人間を溺死させ養分とする恐ろしい妖精。

蜜の妖精はユニットではありません。生命体ではありますが罠アイテムに近い存在であり、山田様にも攻撃してくるので、注意が必要です。

 

 

 

なるほど、敵か?敵だな!

 

 

俺は花畑を踏み、池へと進みだす。

 

特に何の攻撃もなく、すぐに池までたどり着いた。

 

 

…まだか。俺は泉に触れる。ベタベタして気持ち悪いな。

 

 

うまっ!何だこれ⁈すっごい美味しい。ホットケーキにかけて食べたら美味しいだろうなぁ。

 

 

俺が蜜に夢中になっていると、突如として女性が泉の中から現れ、俺の手を掴もうとする。

 

俺はすぐに後方に飛び、剣を構えた。

 

 

 

 

「ワタシノイズミニフレルナォォァァァァァァ!」

 

 

「五月蝿い!邪魔だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 

 

「グワァーーーッ!」

 

 

 

 

梅花剣法 第七招式  

 

『霜染梅枝』

 

 

 

 

俺は一歩踏み込み、凍りついた冬の梅枝のように、素早く剣を振り相手を真っ二つに切り裂く。

 

 

冬の寒さを表した鋭い剣戟の前に妖精はなす術もなく倒れた。

 

 

 

 

「違う!こんなものじゃない。師匠の剣はもっと冷たく、鋭かった!」

 

 

師匠…拳銃の第七招式は鋭過ぎて本当に凍るのだ。そしてもっと繊細に、冷たく固い冬の剣。

 

 

もっと鍛錬しなくては。俺は泉を飲みながらそう思った。美味い!

 

 

 

 

 

 

その後、妖精は首なしの手によりアンデッドとして蘇生、念入りに洗われてから泉に戻された。

 

哀れ、今では意志のない蜜を汲み取るだけの作業員である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●第32層司令官 粛清王  ユリウスが撃破されました。

報酬として処刑確定ガチャコインがプレゼントボックスに追加されます。

 

●第50層司令官 魔拳闘士 マクシミリアンが撃破されました。

報酬として戦闘型ユニット確定ガチャコインがプレゼントボックスに追加されます。

 

●第55層司令官 魔龍賢者 ミュラーが撃破されました。

報酬としてドラゴン確定ガチャコインがプレゼントボックスに追加されます。

 

●第82司令官 魔人王  ヴォルガノフが撃破されました。

報酬として権力確定ガチャコインがプレゼントボックスに追加されます。

 

●第93層司令官 大監獄長  ジェラルドが撃破されました。

報酬として監獄確定ガチャコインがプレゼントボックスに追加されました。

 




●第32層司令官 粛清王 ユリウス
親ダンジョンマスター派。文字が汚いことで有名。
昔ダンジョンマスターより褒美として第1層から第29層までの魔物を殺すことを許可され、数多くの上層司令官を仲間ともに殺してきた。

第61層への攻撃命令には喜んで参加し、少数の仲間と共に暗黒魔術師狩りを楽しんでいたが側近に化けたスライムにより暗殺された。

上層司令官達にとって恐怖の象徴は去った。反乱へのハードル低下。

 


●第50層司令官 魔拳闘士 マクシミリアン

中立派。ペットはイノシシと鷹。
戦いがあれば何処へでも向かう拳闘士たち。戦いが大好き過ぎて数百年前勝手に敵対陣営のダンジョンを攻め落とし、しかしそのダンジョンはシュラハトのスパイだった。罰としてダンジョン外の勢力に対する命令なき攻撃は禁止された。

今回の中層暗黒魔術師団殲滅命令には喜んで向かった。

拠点であるキャンプにてスライムが化けた料理を食べようとしたが直感で異常に気づきテーブルをひっくり返す。唖然とする幹部を無視してつまみ食いをした幹部の腹を直感で殴り嘔吐させる。
しかし2割の仲間がスライム料理を食べ侵食されてしまった。
拳で戦う拳闘士はスライム相手に相性が悪い。
彼は生き残った仲間を逃すため殿として孤軍奮闘した。

だが仲間思いの彼は、仲間の姿をしたスライムを殺すことができず、最後は死亡。

ダンジョンマスターは最強の一角を失い、拳闘士の怒りは暗黒魔術師団とダンジョンマスターへ。


 
●第55層司令官 魔龍賢者 ミュラー
反ダンジョンマスター派の中でも穏健派に位置する老龍。最近腰痛がひどい。
第61層への遠征は望まない攻撃命令により死んでいく中層暗黒魔術師団の保護のために向かったが、対龍装備のホムンクルス2500名に奇襲され死亡。

反ダンジョンマスター派はブレーキを失った。





 
●第82層司令官 魔人王  ヴォルガノフ  
親ダンジョンマスター派筆頭 好物はアロエとミートパイ。

中層暗黒魔術師団殲滅のために軍勢を率いて向かうが、ゲリラ兵4人とスナイパー、カワウソ偵察兵による観測、アリクイ火炎放射器兵の空気操作能力による超ロングレンジ狙撃により五発の弾丸を叩き込まれ死亡。

親ダンジョンマスター派筆頭格の死亡、そしてその後の82層司令官を決める権力争いにより82層は火の海と化すだろう。


●第93層司令官 大監獄長  ジェラルド
親ダンジョンマスター派。趣味は拷問とバラの育成。
魔のダンジョンマスターに敗北したダンジョンマスターやその配下、生き残りを収監する大監獄の長。

中層暗黒魔術師団長を捕らえようと61層に向かおうとしたが、反乱を起こされて死亡。

第93層という下層エリアが陥落、大規模なレジスタンスが結成された。





目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

王よ、それは犯罪です。

朝起きたらダンジョン司令官の撃破メッセージが多く届いていた。

 

転移にて送り出したホムンクルスとゲリラその他のユニットは頑張っているようだ。

 

頑張れ!そのまま、ダンジョンを滅亡させるんだ!

なるべくコストのかからない自滅で頼むぞ!

 

 

そんなわけで報酬として手に入れたガチャコイン。

 

だが今ガチャを回す気にはなれない。忘れそうになるが現在ダンジョンフェスが開催中。この期間中はダンジョン攻略に役立つアイテムが入手できる確率が上がるのだが、正直もうそんなアイテムは必要ない。

 

ダンジョンはもうすぐ攻略できるのだから。

 

今後の、何か有用なフェスの際にこのコインを使ってまとめてまわそうと思う。

 

 

…いやそもそも、ダンジョンフェス中なのにダンジョンに役立つアイテムってそんなに出てないよな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日のログインボーナスは超巨大構造物確定ガチャコイン。

 

 

惑星を手に入れたことでガチャから排出されるアイテムが一部アンロックされた。そのうちの一つ、超巨大構造物。

 

今まで出た中で最も巨大なものはおそらく俺たちが拠点として使っているホテル。

 

これ以上の大きさのものができるのだろうか。

 

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

 

R『駅』

 

 

線路と線路で繋がれる。人の乗り降り、物資の積み替えのために使われる。

 

大阪の梅田駅、東京の新宿駅は大迷宮と呼ばれるほどに複雑で多くの人々が迷子になるほど。

 

その全貌をしる人間は存在しない。

この二つの駅は日夜終わらない拡張工事を続けている。

 

 

現代人は駅の複雑な構造、乗り換え、列車の遅延に混雑などに翻弄される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

特に何も起きなかった。

 

ホムンクルスに周囲を調査させても新しい発見はない。またか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、天体観測班のホムンクルスが空に浮かぶ巨大な構造物を発見した。

 

撮影した画像には、この惑星の遥か彼方、ずっとずっと上に構造物が静止していた。

 

それはまるで一つの都市。

 

光沢のない漆黒の鋼鉄城は多くの構造物がパズルのように組み合って構成され、長いビルや宇宙船が出入りするための大きな出入口などが確認できる。

 

さらにステーション全体はまるで未来のネオン街のように多くの誘導灯やホログラム、照明で輝き、ホログラムには未知の言語で何らかの商品や企業の広告が展開されており、サイバーパンクを思わせる。

 

 

そして数多くのホログラム広告の中で、最も大きな広告にはこう映し出されてあった。

 

 

『 YAMADA SPACE STATION』

 

 

あぁ、駅って宇宙ステーションの駅か。いやあ、胸が高鳴るな。

 

 

 

で、どうやって行くんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宇宙空間に行くことが可能と思われる星間戦闘機ハミングバードは操縦方法がわからないため放置。

 

マッドサイエンティストの中に、宇宙空間でも活動可能な人型ロボットを所持した奴がいた。

 

単独での大気圏突破能力はないので、ロケットの製造が急がれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それでは、今日の無料ガチャ!

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

 

 

UC『自動車レンタルサービス』

 

特定の商品やサービスを一定期間、一時的に利用するためのサービス。必要な期間だけ使用料金を支払って利用することができます。

 

レンタルサービスは様々な業界で提供されており、車や家具、イベント用の衣装からスタッフまで、多種多様な物を借りることができる、便利なサービスだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

出現したのは、緑色の柵で囲まれた駐車場だった。地面はコンクリートで綺麗に舗装されており、駐車場所を区切るために白い塗料で塗られている。止められる車の台数は丁度50台。

 

 

車や発券機、照明などは置かれておらず、あるのはガソリンスタンドに設置されてあるような給油機1つ。

 

 

 

 

 

鑑定!

 

 

 

 

●自動車レンタルサービス

 

給油機のディスプレイから借りたい車を選択すると、希望した車が出現します。

 

その後は給油するガソリンの量を選択、料金を支払うと給油が可能です。このレンタルサービスで借りた車はこの給油機で入れたガソリンでしか動きませんので注意してください。

 

車は使用後駐車場に戻し24時間経過するか、車を動かさずに24時間放置すると転移機能が働き、サービス会社の保管場所に転移します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

早速ディスプレイを操作し、一体どんな車を借りることができるか調べて見る。

 

 

うーん、選べるのは普通の、プライベート用の普通四輪車ばかりだな。軽トラやバス、消防車に警察車両はなさそうだ。

 

俺はとりあえず高そうな車高の低いスリムなスポーツカーを選択してみる。

 

 

 

 

 

すると給油機のすぐ横に黒いスポーツカーが出現した。金持ちが乗っていそうな、左ハンドルの外国車。

 

車のナンバープレートは『わ』から始まる。

『わ』から始まるのはレンタカーだけだ。

 

 

 

 

さて、これから給油して乗り回してみるか。辺り一面土の地面だけど大丈夫かな?

 

 

そうしてディスプレイを見る。

 

 

 

 

一リットル 300ソフィア銀貨。

 

 

 

 

日本式のプレートナンバーなのに、通貨が日本円じゃない。

これは正攻法で使うことは無理だな。

 

 

 

 

 

 

調査の結果、この車は魔法技術で一部機能が動いているらしい。

 

例えば自動車を24時間放置すると駐車場へ転移する機能、この給油機で入れたガソリンでしか動くことができない機能や現在位置を知らせる機能など。

 

 

俺は魔法に特化したホムンクルスにこの魔法を解除させる。

 

取引で手に入れたガソリンを車に給油し、エンジン点火。アクセルを踏み、車が動くことを確認する。

 

よし、これでこの車は俺のものだ。レンタルサービス会社はこの車を回収する手段を失った。

 

 

 

 

 

 

車を呼び出しては魔法を破壊、これで車が無限に手に入るぞ。

 

 

この動作を繰り返すこと30回。

 

 

次はどんな車を貰おうかなと、俺は車を貰おうと給油機のディスプレイを操作するが、画面をいくら触れても動くことはない。

 

 

何度もディスプレイを押すが車が出現することはなかった。強く押してもびくともしない。

 

 

 

 

 

しばらくすると給油機から機械音声が流れた。

 

『治安悪化によりこの地域でのサービスは終了しました』

 

 

 

失礼な。

 

この山田ドラゴンガチャ王国の治安はすごく良いのに。犯罪者ゼロだぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

明かされる衝撃の情報

現在の魔のダンジョン攻略部隊は大きく分けて二つの戦力に分けられている。

 

 

一つはダンジョン第3層で戦う囮部隊。大量の敵兵で埋め尽くされており、こちらのホムンクルス軍と終わらない戦いを日夜続けている。

 

ダンジョン側はこの第3層が最前線だと考えているだろう。

 

そしてもう一つがダンジョン第61層を拠点とする工作部隊だ。

 

第61層はスライムにより完全に掌握され、この層には2千人を超えるホムンクルスが駐留している。

 

ダンジョンの層間転移システムのハッキングに成功し、この層から各層にホムンクルスを派遣し破壊活動を行い混乱させている。

 

さすがに最下層エリアのハッキングは出来ていないが、それも時間の問題だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

第三層のダンジョン攻略隊のホムンクルス隊より連絡があった。

 

数え切れないほどに敵兵が密集するダンジョン第3層。この層を守る全ての敵兵が突如として撤退し、第3層は魔王軍により占領された。

 

 

これまでの激戦は何だったのか。

 

 

さらに第3層だけで無く、ダンジョン第29層まで敵兵の姿は存在しない。敵兵のいないダンジョンを破竹の勢いで進軍し、たった一日でダンジョンの約3割を攻略できてしまった。

 

そうしてたどり着いた第30層。情報ではこの層は上層暗黒騎士団の本部があるはずなのだが、ここにあるのは燃え朽ちた廃墟の都市だけだった。

 

捕らえた生き残りの暗黒騎士団兵士によると、3層から29層までの上層エリアの司令官と配下の兵士が反乱を起こし、そして味方であるはずの第31層の上層暗黒魔術師団からも攻撃を受け30層は壊滅、そして反乱軍は31層、32層、33層を攻め落とし、進軍を続けている。

 

上層司令官のダンジョンマスターに対する恨みは深い。死ぬまで進軍を続けるだろう。

 

上層の軍隊が俺の代わりに勝手にダンジョンを攻略してくれるとは。ありがたいことだ。

 

 

 

ダンジョン各層に送り込んだ兵士からの情報によると、現在魔のダンジョン内では、ダンジョンマスターに対して反乱が発生しており、大小一万以上の勢力に分かれて地獄の内戦へと突入した。

 

 

何故か。俺のせいだ。スライムの侵食でダンジョン内の同士討ち、反乱の禁止というルールを解除させたのだ。

 

ダンジョンに送り込んだホムンクルスとゲリラ兵により、要人の暗殺、非武装地帯や中立宣言層、和平交渉中の会議場に攻撃し、戦争を煽っている。このまま消耗してくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それでは、今日のガチャ。

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

C『折り紙』

 

紙を折って様々な形を作る日本伝統的な遊び。明治時代には、一部の学校で折り紙の授業が存在した。

 

極めればハリネズミや孔雀、ペガサスといった超精巧な物を作り出すことができる。天才か?

 

日本の小学校では平和活動の一環として鶴を折るが多くの子どもは鶴さえまともに折ることが出来ずにリタイアする。

 

手裏剣を作れる子どもはヒーロー扱い。手裏剣は投げ合い、取り合いとなって先生に怒られるまでがセットである。

 

折り紙の構造は、工学として研究されており、物の展開の手段として宇宙空間でも活用されている。

 

 

 

 

 

出現したのは、袋に入った折り紙の束だった。袋には『紙飛行機用折り紙』と、紙飛行機の絵とともに大きく太字で書かれている。

 

赤、青、黄色、緑。カラフルな正方形の紙の束。袋を開けパラパラと数えてみると100枚ほどが入っていた。

 

 

紙飛行機用折り紙。別に紙飛行機専用にする必要なんて無いだろう。

 

俺は逆張りの精神で紙飛行機以外の物を折ろうかと考えたが、よくよく考えれば俺は紙飛行機以外の折り方を何も知らない。昔鶴を折ったことがあるが鶴の折り方なんて忘れてしまった。

 

 

 

 

俺は床の上でゆっくりと折り始めた。紙飛行機の折り方は簡単だ。すぐに飛行機の形に変わっていく。折り目を確認し、最後にオリジナルのアレンジを加え紙飛行機を完成させる。

 

少しだけワクワクしながら、紙飛行機を手に持つ。しっかりと握りしめ、腕を後ろに振りかぶった。

 

 

 

 

 

それ、ポイッ

 

 

 

 

 

俺は力強く紙飛行機を前方へ放り投げた。紙飛行機は空中に舞い上がり飛んでいく。

 

 

 

 

 

 

そうして飛び立った紙飛行機は、空中で三回転、ジェットコースターのように急に上昇、降下、逆さまになって飛ぶなどの曲芸飛行を続け、最後は翼からミサイルを空に打ち上げ、花火のように爆発、最後はタイヤを出して地面に着陸した。

 

 

 

 

 

ええ………ミサイルなんて折ってないぞ。どこから出てきたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

監禁された最初の頃にガチャから手に入れた折り鶴と紙飛行機が接触したことにより事件は発生した。

 

 

理由も無くただふわふわとショッピングモール内を飛んでいた折り鶴とホムンクルスが遊びで飛ばしていた紙飛行機が接触、すると折り鶴が明確に意思を持ち、工房の機械を使いなんと布を織り始めたのだ。

 

この布は非常に頑丈で紙のように軽い。工房のホムンクルスは新素材が手に入ったと大喜び。

 

 

 

 

ガチャから排出されたアイテム同士を近づけると予期せぬ効果が発揮されることが判明した。

 

今後は注意が必要だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それでは、今日の無料ガチャ!

 

 

 

 

C『NTRビデオレター』

 

NTRとは、簡単に言えば浮気であり自分の恋人が第三者に奪われるというシチュエーションである。かつて2chに恋人を寝取らせてみて後悔したというスレが存在した。馬鹿である。

 

ビデオレターは特定の人物に対して動画形式でメッセージを送ること。

 

つまりNTRビデオレターとは、浮気された(主に男性側)に対して、浮気したということを伝えること。

 

裁判になったら動かぬ証拠になるので送る時は覚悟が必要。というかそもそもそんな物送るな。頭がおかしいのか?このジャンルを好む物はドMである可能性が高い。

 

MTRとは名前が似ているが全くの別物。絶対に間違わないように。

 

 

 

 

 

 

 

 

出現したのは、一枚のDVDだった。

 

うーん、見たくない。だがどんな異常があるか、まともなアイテムなのか一応確認せねば。とりあえず俺はカメラ人間を呼び出す。

 

 

 

最近カメラ人間は大人気だ、ホムンクルス相手に映画を上映し多額のGPを稼いでいる。

 

そしてホムンクルスにはB級映画が大人気だ。なぜだ?

 

 

 

 

 

俺はカメラ人間にDVDを渡し、映像を見始める。

 

 

 

 

 

「あ、これもう撮影始まってるかな?」

 

映像には、金髪の女性とサングラスをかけた、これまた金髪の男性がいた。

誰だこいつら。

 

 

 

「南雲、見てるーーーー!」

 

 

「今どういう状況かわかるか?わかんねーよな!」

 

 

 

 

 

マジでわかんねえ。

 

 

 

 

 

「もう南雲君には愛想がついちゃった!最近は新しく召喚したつよーい女の子ばっかり見て、全然私のこと構ってくれないんだもーん」

 

 

 

 

 

誰だよ南雲って。

 

 

 

 

 

 

「私ね、なんとスカウトされたの!私の力が欲しいんだって!だから南雲くんのこと、裏切ることにしたの!あはは、どう?後悔しちゃった?」

 

「ははははは、女を奪われるなんて情けねえな!」

 

「じゃあ見ててね!私が有能だってことを、証明してあげ」

 

 

 

 

突然男が銃で女性の頭を撃ち抜いた。

 

悲鳴をあげる間もなく倒れる女性に対して男は無慈悲に何度も、何発も、続けて弾丸を打ち続ける。

 

 

 

 

「馬鹿が。調子に乗りやがって。クソが」

 

 

 

ええ………どういうことなの………。

 

 

 

「あぁ、これのことなら気にするな。こいつは俺を騙して山田の情報を得ようとしたんだ。自業自得だ」

 

 

「さて、時間がないから手短に。情報を送る」

 

 

「山田、お前は俺のことを、いや俺だけじゃなくてマクシミリアンやライラのことも知らないだろうが、俺はお前のことを知っている」

 

 

「お前はユーザー全員がガチャという能力を与えられたと考えているようだが、それは違う。ユーザーはみんなそれぞれ違うアイテム、違う能力を与えられているんだ」

 

 

「俺が伝えるのは、ランキング上位のとあるユーザーの能力だ。この情報を得るために多くの仲間が死んでいった」

 

 

「ランキング4位!南雲昭人。能力は神の召喚だ。今のうちに対神兵装や戦闘型のユニットを集めるんだ」

 

 

 

「ああそれと、今俺が送ったものはこの女神の死体だ。絶対にホムンクルスに合成したり、戦争王や首無しにアンデッドとして蘇らせて使うなよ。いつか使い道がわかるはずだ」

 

 

「いいか、山田ドラゴンガチャ王国の国是にはこういうものがある」

 

 

「敵の屍の上に繁栄を!軍隊蟻のように喰らい尽くせ!」

 

 

 

 

 

映像が終わるとゴトンッという音と共に、発泡スチロールの箱が出現した。

 

 

発砲スチロールの表面にはガチャ宅急便の文字、そして『割れ物注意』『冷凍』『神聖』といったシールが貼られていた。

 

 

開けたくねえ………。

 

 

 

俺はイヤイヤながら箱を開ける。そこには先ほどの女性が詰め込まれていた。

 

 

鑑定。

 

 

●女神の死体

 

信号機の女神の死体。南雲の【編集済み】により誕生しました。

 

 

権能は主に二つ。交通安全教室での道路交通法などに関する学習効率を上昇します。

 

あとは信号機が設置されている範囲の視認性を向上させ、信号機や標識が見やすくなります。

 

 

 

 

権能ショボッ。

 

 




スケットダンスの折り紙回、大好きです。






目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

世界遺産の有効活用

あのメッセージが事実だとしたらそれはとんでもないことだ。

 

千人のこのゲームの参加者達。それが一人一人違う能力を与えられているという。

 

そしてこの色々と信用できない運営はゲームバランスの調整が下手クソだ。

 

どうしようもないくらい無能なのだ。馬鹿なのだ。阿呆なのだ。

 

与えられた能力には格差が存在し、上位陣とそれ以外ではどうしようもない、超えられない壁が存在していると思われる。

 

 

 

 

俺に与えられた能力はガチャ。そして4位の南雲というユーザーには神の召喚という、とんでもない能力が与えられているという。こんな物、どうやって対抗しろと言うんだ。

 

 

俺の配下で神に対抗できそうなユニットはヘルメス神のお地蔵様と、完全体ではない暴食の邪神ベヘモットだけだぞ。

 

どう考えても無理である、こんなもの、南雲にまともな神が一人でもいれば簡単に蹂躙されてしまうだろう。

 

スライムなら可能性はあるが、神相手に通じるかどうか。スライムは魔法など、非科学的な物の模倣や侵食は大の苦手だ。

 

ダンジョンだってスライムは模倣することはできないし、ダンジョンの様々な魔法的セキュリティを正面からハッキングすることはできていない。セキュリティの低い部分から侵食、迂回などをしているだけだ。

 

神を正面から侵食するなんて無理だろう。

 

 

しかし恐ろしいのはこれで4位だと言うことだ。つまりこいつ以上のユーザーが3人もいることになる。最悪だ。勝てる気がしない。

 

俺のガチャという能力、どう考えても外れである。中間発表での1000位も納得だ。

 

 

 

 

 

だが勝機が無いわけでは無い。4位が神を従えるというのなら、対神装備を量産して相性の差で押し切ればいいんだ。

 

俺は早速工房に向かった。もしかしたら対神装備が製造できるかもしれない。俺はいつの間にか工房の総責任者となった首無しに会いに行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「対神装備ですか?もちろん作れますよ」

 

 

「マジか!じゃあ早速作ってくれ!」

 

 

「少しお待ちを。ああ君、王にあれを」

 

 

 

そう言うと、首無しの背後で立っていたホムンクルスが、机の上に紅茶と茶菓子を渡してきた。

 

 

こいつ、ホムンクルスを従えてやがる。流石は我が王国内の『工房派閥』のトップなだけはある。

 

 

 

俺たちは茶を飲み、一息つく。美味いなこのお茶。

 

 

 

「しかし今作ることが出来るのは最下級の装備だけです。素材も設備も圧倒的に足りません」

 

 

「……それでも無いよりはマシだ。早速だが量産してくれ」

 

 

「無いよりはマシ?あなたはもうすでに対神装備を持っているではありませんか」

 

 

 

は?いや、そんな物持っていないぞ。

 

 

 

 

「神剣アイギスです」

 

 

あっ。

 

 

「あれには純度の高い神の力が込められている。あれならば神に対抗することも可能でしょう。ところでなぜいきなり神の話を?ダンジョンに神でも現れたのですか?」

 

 

俺は首無しに例のビデオレターの内容と、俺の能力であるガチャコールを使い、冷凍倉庫に置いてきた女神の死体を召喚し呼び出す。

 

すると首無しは明らかに動揺した。それほどまでにこの神に価値があるのだろうか?

 

確かに神だが、信号機の神だぞ?

 

 

「おお…女神の死体ではありませんか」

 

その声は感極まっていた。顔があったら泣いているだろう。

 

「失礼…おそらくは未来からのメッセージでしょう。ビデオの男はいずれガチャより排出される仲間でしょうね。しかし私に対してアンデッドとして使うなとは………」

 

「そうだ、戦争王ってのは何なんだ?お前がだいぶ前に話していた、6課の戦争屋と何が関係でもあんのか?」

 

「戦争王、戦争屋、戦狂い…彼には多くの名がありますが、全てロクでもないものです。彼の能力はネクロマンサー。死者を甦らせ、自身の手駒とする」

 

 

「それくらいお前でもできるじゃないか。最近はホムンクルスでもアンデッドを従える個体もいるぞ」

 

「違います。彼は甦らせた死者を進化させる。私のような、手を加えるのとは訳が違う。それにしても全く…彼女は未来で何をしているのやら…」

 

「彼女?さっきは彼って言っていたじゃないか。女なのか?」

 

「…今のは聞かなかったことにしてください。ところで、抜け毛くらいならいいですよね」

 

「うーん、まぁ、それくらいならいいんじゃないかな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日のログインボーナスは建造物確定ガチャコイン。

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

UC『ピサの斜塔』

 

 

ピザじゃなくてピサ。イタリアのトスカーナ州ピサ県にある世界遺産、ピサのドゥオモ広場の一部。

 

傾いていることで有名。その傾きは約3.97度。

 

 

 

1173年に着工、100年以上かけて1372年に完成したのだが、建設中に既に傾き始めており、頑張って元に戻そうとしたもののどうすることもできず、結局傾いたまま完成した。

 

ムッソリーニは傾きはイタリアの恥だとして直そうとしたが失敗、その後も工事が行われたが根本的解決は出来ず、世界中の建設関係者からの助けを得てなんとか3.97度まで修正することに成功、今では安全も確保されているため中に入ることもできるという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出現したのは、歴史ある雰囲気を持つ、傾いた白い塔だった。

 

直接は見たことないが、この特徴的な、風が吹けば倒れそうな優雅に立つ塔が、ピサの斜塔なのだろう。

 

周りには何も建造物がない中、青空の下、一本の塔が聳え立っている。

なかなかいい景色だ。

 

 

俺はピサの斜塔に入る。内部も白い石でできており、経年劣化なのかところどころ黒ずんでいる。

 

 

ピサの斜塔内部の螺旋階段を登ろうとするが、そこで気づく。この螺旋階段、上だけでなく地下に行くことも可能らしい。

 

ん?へー、ピサの斜塔って地下があるのか。知らなかった。

 

 

俺は螺旋階段を登ろうと考えたが、傾いた階段を上がるのは疲れそうだし面倒くさい。

 

 

なのでショートカットだ。スライム化した左腕をワイヤーアクションのように伸ばし、塔を登り最上階へと入った。

 

 

本来なら、そこには鐘があるはずだ。しかしそこには鐘がなく、その代わりに数多くのボタンやレバーが付いたコンソールがそこにあった。

 

 

これまでの歴史を感じる雰囲気とは違う、突然現れたコンソール。

 

俺は躊躇しながらも、真ん中の赤いボタンを押した。

 

 

 

 

 

 

ダダダダダダダダダダダダダダダダダダッッッッッッッッッ!!!

 

 

突然塔が上下に揺れ始めた。それもガタガタと地震のように揺れるのではない。遊園地のアトラクションのように上下に数メートル、凄まじい勢いで揺れ始めた。

 

 

俺は体を床と天井にぶつけながら、何とかコンソールの赤いボタンを押す。

 

すると斜塔の揺れは止まり、静かになった。

 

 

何なんだ今のは!

 

俺はピサの斜塔の螺旋階段を降り始める。最初の方は特に異常はなかったが、地下へと向かう螺旋階段はどこから現れたのか土で埋め尽くされ、奥に向かうことができなかった、この土はどこから発生したんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

調査の結果、これはピサの斜塔型ドリルだった。

真顔で説明するマッドサイエンティスト相手に俺は真顔では?と声に出していた。

 

何でもこのピサの斜塔の中心にある柱は、先端がドリルのようになっておりこの柱で地下の岩や土を削り、邪魔になった残土を螺旋階段を通じて放出するようだ。

 

 

最上階のコンソールを使い、ピサの斜塔の長さを伸ばしたり、短くしたりできるという。これでピサの斜塔は工事重機へと早変わり、今ではショッピングモール地下の駅を有効活用するため、地下鉄のトンネル採掘事業のために使われる予定だ。

 

 

 

…予定だった。

 

ピサの斜塔ドリルは魔法的な物でない限りは何でも砕いて進むらしい。

 

マッドサイエンティストは何を考えたのか、何もない空に向かって、コンソールで設定を弄ってピサの斜塔を起動した。

 

 

 

 

その結果、ガラスが割れるような嫌な音とともに空にヒビが入った。今の所は特に何も起きていない。

 

 

何やってんだ!馬鹿!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それでは、今日の無料ガチャ!

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

 

R『問いかけ』

 

 

 

 

質問のこと。とあるスフィンクスは通りかかる旅人に対して、「朝は四本足、昼は二本足、夕は三本足。この生き物は何か?」と問いかけ、答えられない旅人は食い殺されたという。理不尽。

 

 

 

そんなスフィンクスの前に、オイディプスという男が通りかかる。スフィンクスが同じように問いかけるが、オイディプスは「人間」と答える。

 

するとスフィンクスは崖から投身自殺したらしい。人間こそがこの問いの答えだったのだ。

 

この問いはなぞなぞであり、朝と昼と夜は人間の一生を表している。

 

朝、つまり赤ん坊の頃はハイハイをして進む四足歩行、昼は成長して二足で歩き、最後の夜は老人となって杖をついて歩く、つまり3足歩行となるというわけだ。

 

分かるかこんな問題!

 

 

しかし一部の創作では引っ掛け問題として、そんな物は存在しないという答えも存在する。じゃあどうすればいいんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カプセルを開けると、システムウィンドウが展開された。

 

 

 

●力が欲しいか…? はい/いいえ

 

 

 

はいっと。

 

 

 

 

 

………あ、特に深く考えず反射で押してしまった。

 

仕方ないじゃないか、力が欲しいんだから。

 

 

だが何が起こるんだ?ゲーム的に考えてみると、いいえを押しても何も起きないが、はいを押すと強化イベントなどに突入する、または欲深い物への罰として敵が襲いかかってくることもある。

 

 

ガチャから出る物なので油断はできない。

 

何が起きる…?

 

 

 

身構えていると、突然誰かが声をかけてきた。

 

 

「Hello」

 

ん?誰だ。

 

 

振り向くと、迷彩柄のタンクトップをきた、ムキムキマッチョの白人の男が立っていた。太陽のように笑顔だ。

 

 

で、でかい。こいつ身長とか体格とか筋肉とか、いろいろな物がでかい。圧がすごい。

 

 

 

 

「さあ、山田君!トレーニングを始めようじゃないか!力はすぐには手に入らない!怠けるな!さあ、私と一緒に鍛えよう」

 

そう言うとこいつはその筋肉が付いた太い腕で俺をつかみ、片手で軽々と俺を持ち上げた。

 

 

うわぁ!急に何をするんだ!

 

 

 

「さあ、君たちも来るんだ!君たちは生まれつきいい筋肉を持っているが、もっと鍛えよう!」

 

 

マッチョは俺を持ち上げ、周囲を傍観するホムンクルスに呼びかけながらショッピングモールの外に出ようとする。

 

それにつられて、ホムンクルスも大勢マッチョについていく。もっと主体性も持て!

 

というか、お前は誰なんだ!

 

 

鑑定!

 

 

●インストラクター グリムジョー

 

筋肉の専門家。体を鍛える指導を得意とするインストラクター。軍隊上がりの彼の指導は無駄のない実用的な筋肉を得ることができる。

 

 

 

 

 

 

ショッピングモールの外には、大きなジムが出現してあった。

 

そのジムにグリムジョーは中に入り、内部構造を知っているのか迷いなく進み続け、一つの大きな部屋にたどり着く。そしてその大きな部屋の奥にあるステージのような場所に立つ。

 

 

 

 

俺たちは何をさせられるんだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リズムに合わせてジャンプ、反復横跳び、正拳突き、体を捻る運動など、

脂肪燃焼エクササイズももうすぐ終わる。汗だくのインストラクターが、これまでのパワフルな音楽とは違う、静かな落ち着いた最後の一曲をかけ始める。

 

会場中には熱気と興奮が広がる。

 

俺を含むこのエクササイズの参加者は意志の力を絞り出し、汗を流し続けた。

 

筋肉が疲労困憊となりながらも、心地よい疲労感が体を包み込み、俺たちの目は充実感と達成感で輝いていた。

 

そして曲も終わりを迎える。

 

 

 

 

「さぁみんな、これまでよく頑張った!最後に一言、全ての力を使って叫んで終わろう!何を叫ぶかはもうわかっているな⁈」

 

 

あぁ、もちろんだ。最初こそ戸惑い、恥ずかしがったがもうそんな物は吹き飛んだ。

 

 

 

「せぇーの!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「ドラゴーーーン!」」」」

 

 

 

 

 

エクササイズが終わると、会場中に拍手が鳴り響いた。俺は周りのホムンクルスと笑顔で握手し、お互いの努力と忍耐を称え合った。

 

 

 

「いいドラゴンだったよ」

「ナイスドラゴン!」

「ドラゴンドラゴン!」

「すごいよドラゴン!」

 

 

 

 

 

…何だこれ。

 








目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ヨハネスブルクも真っ青

ホムンクルスの生産工場は連日フル稼働中。休むこと無く大量のホムンクルスが生まれていく。

 

 

彼らホムンクルスが生産されて何をしているのかというと、それはダンジョンへの入植だ。

 

 

ダンジョンは5層まではずっと石造りの迷宮だったが、6層からはこれまでの層とは大違い。

 

そこはダンジョンの中に広がるもう一つの世界。青空が広がり、辺りは広大な森が広がる大自然。

 

一応ダンジョン内、つまりは建物?の中なので果てしなく空が続くわけではなく天井は存在し、ダンジョンをある程度奥まで進むと壁にぶつかりそれ以上進むことはできない。

 

だが、それでも本当に広大な土地なのだ。日本で言えば一つの県くらいはある土地だ。

 

どうやらダンジョンマスターに反乱を起こした上層の司令官は全ての兵士を率いて進軍を続けているようだ。

 

そのおかげで特に障害もなく入植が行われている。

 

自動生成される魔物や、繁殖している魔物もいるが、それは狩りにより素材や食糧として消費されている。

 

この第6層を開拓し終えたら次は第7層だ。

 

さぁ、どんどん開拓するぞー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日のログインボーナスは店舗確定ガチャコイン。

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

HR『ペットショップ』

 

 

ペットショップは、多種多様な愛玩動物を販売し、飼育に必要な様々な道具やサービスを提供する専門店だ。

 

一般的には犬や猫が扱われてきたが、最近ではトカゲや蛇といった爬虫類、熱帯魚といった水中生物、さらにはフクロウやカワウソといった珍しい動物まで、様々な種類の生き物が販売されている。

 

さらにペットショップでは動物の健康と快適な生活環境のために餌やケージ、水槽などの必要なアイテム、さらにトリミングや躾教室、ペットホテルなどのサービスも提供している。

 

 

大金持ちは何千万の大金をペットに費やしているらしい。人間より裕福な暮らしを送るってどうなんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ペットショップはショッピングモール内ではなく、ショッピングモールの外に出現した。

 

そのペットショップはまるでデパート。

 

歴史ある雰囲気を思わせるその建物は、石造りの壁や細部まで緻密に彫刻された装飾品で飾られており、俺のような一般人は入るのを躊躇ってしまう。

 

入り口付近は重厚な柱とアーチが特徴的で、オレンジ色のランプ型の照明で照らされている。建物の外壁には、美しいレリーフや彫刻が施されており、尋常ではないコストがかけられていることがわかる。

 

入り口のドアはそれはもう立派。その扉は木製で、豪華な彫刻や金属装飾が施されている。

 

 

 

 

どんなペットを売っているんだ?血統書付きの犬とかかな?そんなわけないか。どうせ悪魔とか天使を売っているんだろう。

 

 

 

 

 

 

入店してみる。

 

 

カランカラン…

 

 

ドアを開けると、豪華なロビーが広がる。大理石の床や豪華なシャンデリアが、上品な雰囲気を醸し出している。

 

 

 

 

「いらっしゃいませ!!!ようこそ!!!」

 

「うわ」

 

 

うわ。

 

 

 

 

「おお、驚かせて申し訳ありません!当店、初のお客様ということで気合が入っておりまして!」

 

 

そいつは人間ではなかった。頭部は黒い狼、しかしそいつは人型で二足歩行、全身が体毛で覆われているがきちんとしたスーツを着用している。

 

 

だがこの程度ではもう驚かんぞ。化け物の一匹二匹なんだっていうんだ。

 

 

 

「いやぁ、これまで苦節600年!これまで商品を売り捌いてようやく!ようやく店長となれたのです!。テンションも上がる上がる!」

 

 

というかこいつ、うるさいな。

 

 

「それにしても!まさか当店に人間のお客様が訪れるとは!事前に知ってはいましたが!実際に見ると色々と思うことがありますなぁ!」

 

「そりゃ人間だろ。人間以外何が来るっていうんだ。」

 

「ええ!この世界の知的生命体は基本的には人間だけです!それは疑問は尤も!」

 

 

「当店は上位存在に対して商品を販売しております!」

 

「上位存在?つまり神に売っているのか」

 

「はい!神だけではありません!神から人間の完全上位互換である上位種族、さらには我々でも理解できない存在まで多種多様!まさか人間の方に販売する日が来ようとは!」

 

「それで、お前は何を売っているんだ?」

 

「それは実際に見た方が早いでしょう!案内を行います!さぁさぁこちらへ!」

 

 

そう言い、狼男は俺の返事を待たずに店舗の奥へ進んでいく。

 

俺は狼男に付いていくのだが、その途中には多くの商品が展示されてあった。

 

それは特に何の違和感もない、普通のデパートのようだ。高そうなブランド物の服に、世界中から集められた美味そうな食材、一流の職人が作り出した家具。

 

 

 

 

そう、何の違和感もない、どこにでもあるような普通のデパート。

 

しかしここはペットショップなのだ。これではまるで…

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ、着きましたよ!」

 

 

そこには、多くの商品が展示されていた。

 

ガラスの壁で覆われ、その中に彼らはいた。

 

 

 

 

 

俺はガラスに貼られた、商品説明の紙を見る。

 

 

 

『農民一家(四人家族)』

 

中小国家であるエメラルドは平和な国家でしたが、そんな平和な国に奴隷商人がやってきます。

大陸の覇権国家であるとある王国は奴隷制度が存在し、不幸なことにこの一家は奴隷として捕まり、販売されてしまいます。

 

 

彼らは怯えていた。

 

他にも多くの、人間がガラス張りの部屋に閉じ込められている。

 

 

 

「この文は本当か?」

 

 

「ええ、本物です!当店は様々な世界より合法的に!奴隷を購入して、上位存在の方々に販売しております」

 

ガチャ生成タイプじゃなくて、異世界召喚タイプか!

 

 

「ああところで!山田様は奴隷販売についていかがですか!」

 

 

「どうも何も、嫌に決まってるだろ!同じ人間が売られているんだぞ!」

 

「法律では禁止されているのですか?」

 

「…今はまだ無い。だが後で書記官に言ってこの山田ドラゴンガチャ王国で奴隷制度禁止法を追加する。こんな物禁止だ禁止!」

 

「つまり今は禁止ではないと!事前情報と同じです!よかったよかった!奴隷のことを考えるなら、禁止しない方がいいですよ!」

 

「はぁ?何を言って…」

 

 

「さぁ、本日ここに!奴隷オークションの開催を宣言します!」

 

 

システムウィンドウが展開される。

 

 

●告知!本日正午12時よりデパートにて奴隷オークションが開催されます!急な決定で申し訳ありません!

 

商品番号1 聖グラナダ騎士団 重装歩兵

商品番号2 ファルティマ宇宙軍 駆逐艦 砲撃長

商品番号3 宝石細工師  

商品番号4 Aランク冒険者

商品番号5 少女ロケットランチャー兵

 

以下省略!続きは下のマークを押してください! 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前!何を勝手なことを!」

 

 

「別に禁止してもよろしいのですよ!!!ですが、そうなったら奴隷は誰も買うことができません!」

 

「…もし、誰にも買われなかったらどうなる?」

 

「その場合は返品ですね!元の世界の奴隷商人に返品です!」

 

 

 

「あぁでも!元の世界では、奴隷の人権なんて存在しないかもしれませんね!」

 

 

くそっ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

元奴隷剣闘士のルーカスが、俺に土下座をして頼み込んできた。

 

 

 

「頼む、これが俺の全財産だ。どうか、どうか奴隷を、全員買ってくれ」

 

「ずっと悩んでたんだ、俺だけが奴隷として解放されてよかったのかと。俺だけがこんな幸せでいいのかと」

 

「頼む、どうか、どうか奴隷を」

 

俺はルーカスの肩に手を乗せる。

 

 

「あぁ、任せろ。俺には莫大な税金がある。全員買い取ってやる」

 

俺は書記官に言い、奴隷に関する人権法案を追加した。

とりあえず、奴隷の購入者は奴隷の衣食住を保障する。

奴隷にも人権はある。

奴隷が一定額を稼いだ場合、解放する。

 

とりあえずはこの3つだ。詳しいことは法律系のホムンクルスに任せよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「商品番号50番!黄金騎士ヴァーロウ!、128番の方、落札です!」

 

わぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

 

 

 

 

 

全商品、ホムンクルスによって落札された。オークションは大盛り上がり。大盛況だった。

 

 

 

なんで???

 

 

 

 

狼男は不気味そうに、

 

「ここまで人身売買に抵抗がないとは思わなかった!!!どんな文明でも大なり小なり心理的に抵抗はあるはずなのに!!!気持ち悪いですね!!!」

 

 

ただただドン引きしていた。俺もだよ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日の無料ガチャだ。

 

 

 

ガタンッ

 

 

R『医療用人体撮影カメラ』

 

 

医療において、カメラの撮影技術は多く使われる。

例えばMRI。人間の体内、脳や臓器、果てには血管に至るまで細かく撮影することができる。

 

 

 

 

 

 

 

だが、出現したのは、どこにでもありそうな、小さなデジタルカメラだった。

 

俺はカメラを手に取り、簡単に調べてみる。

 

うーん、子供用かと思えるくらい簡素な作りだ。カメラを操作する液晶パネルや様々な調節を行うボタンもない。

 

あるのは謎の黒いボタンだけだ。

 

 

俺は黒色のボタンを押す。一回使って見ないと、どんな機能があるのかわからないからな。

 

 

ぽちっ

 

 

 

『10秒後に撮影します。10、9、8…』

 

 

カメラから機械音声が流れる。10秒って早いな!俺はカメラを適当な場所に置き、レンズに俺が映るように適当にポーズを取る。

 

 

 

ピースピース。

 

 

 

パシャ

 

 

その音が鳴った瞬間、俺は崩れ落ちた。受け身を取ることができず、床と俺の顎が衝突する。痛い!

 

 

俺は立とうとするが何故か立てない。違和感を感じて全身をみると、俺の左足は幽霊のように透明となり、床を貫通していた。

 

 

な、何が起きたんだ!

 

 

俺はカメラを見る。

 

カメラの前には先ほどまでなかった謎の紙が置かれていた。俺は這いつくばりながらその紙まで移動する。

 

 

その紙は写真だった。しかし普通の写真ではない。レントゲンのように俺の骨や臓器が映し出されている。

 

 

問題なのは写真の裏面だ。裏面にはこう書かれてあった。

 

 

改変部位

●下級悪魔の心臓    魔力生産量上昇

●左足の霊体化  左足が霊体となり、あらゆる物がすり抜ける。

 

 

ど、どういうことだ!

 

鑑定!

 

●医療用カメラ

 

このカメラは致命的な欠陥を抱えています。その欠陥とは、カメラの質が低いことです。

カメラで人体を撮影しても画像はぼやけ、非常に荒くなってしまいます。

そして読み取れなかった部位をこのカメラは適当なデータを流用し捏造します。

 

このカメラを作った技術者は、カメラの技術について詳しくなかったのでカメラの質をこれ以上上げることが出来ませんでした。そこで解決策として現実改変機能をカメラに搭載し、被写体の人体を勝手に改変、捏造した写真を本物にすることにしました。

一度撮影した被写体にもう一度使えば元通りになります。安全ですね。

 

 

 

 

 

ば、バカじゃねぇのか!その現実改変能力で完璧なカメラに改変しろよ!

 

俺はすぐにカメラを使い、元に戻した。

 

そして有用な体になるまでカメラを使い、体を改造した。

 

結果として俺は魔力生産能力のある龍の心臓、龍の歯に改造した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、カメラはホムンクルスに大人気となった。

 

なにせ写真を撮るだけで人体を改造できるのだ。

 

当たり外れは大きいが、当たれば簡単に体を強化できる。

 

 

だが、ここでとんでもない使い方をするホムンクルスが現れた。

 

 

アンデッドを従えたホムンクルスがカメラをアンデッドに使い、そして体を掻っ捌き内臓を全摘する。そうしてアンデッドは死亡し、その後また違うアンデッドをカメラで撮影、内臓を全摘する。これを何十回と繰り返した。

 

その結果何が起きたのかと言うと…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ安いよ安いよ!天使の光輪が何とたったの13万GP!外部付属型だからホムンクルスじゃなくても簡単に使えるよ!」

 

「龍人の背骨ー、背骨はいかがですかー、錬金術や鍛治の素材に使えますよ!」

 

「悪魔の心臓のスープはうまいよー!食うだけで闇属性魔法の効率が段違いだ!」

 

 

ホムンクルス達の市場で、臓器が山のように売られていた。

 

そう、あのホムンクルスは市場で商人に臓器を売り払ったのだ。

 

市場では、大量の脳や肝臓などの臓器が大量に売買され、それを多くのホムンクルスが買い付けている。

 

臓器は飛ぶように売れる。なんでも臓器は生産の素材となるようだ。

 

 

 

そしてそのホムンクルス達はと言うと…

 

「見てよこの子。ペットショップで買ったんだけど、すごい役に立つんだ。この前ドロップした盾と相性が良くてさ、タンクとして申し分ないよ」

 

「その通り!私はあらゆる攻撃から、主君を守りましょう!」

 

「あぁー、その奴隷俺も欲しかったな」

 

 

 

 

 

「なぁ来週の奴隷販売カタログ見たか?」

 

「あぁ、この片翼の天使が欲しいな。聖属性の攻撃はダンジョン攻略に役立ちそうだ」

 

「厳しいだろう。運命教会の友達が、アリス様が天使を欲しがっていると話していた。今回と同じで、聖属性系の奴隷は買い占めるつもりだ」

 

 

と、人身売買について語り合っていた。

 

 

 

 

 

 

「あ、山田様!」

 

一人のホムンクルスが俺に話しかけてきた。こいつこそが、臓器販売ブームを引き起こしたホムンクルスである。

 

 

「いやぁ、山田様のおかげで大儲けですよ!」

 

「それはよかった」

 

「もしよろしければ山田様も臓器移植をしてみませんか?今なら臓器移植のスキル持ちのホムンクルスが執刀するので安全にできますよ!」

 

 

 

こ、こいつ俺に臓器移植を提案するのか…

 

ホムンクルスの倫理観が終わっている!何でだ?生まれてからまだそんなに時間が経ってないから、道徳心が育ってないのか?

 

それとも生まれてから戦闘ばかりしているホムンクルスに倫理観を求める方がおかしいのか?

 

 

後で7号を通じて、倫理教育をホムンクルスにしなければ。

 

 

 

 

 

 

 

とりあえず機械天使の左羽を移植してもらった。

 

これで空が飛べるぞ!レッツフライ!

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

国家目標

臓器と人間が市場に流通したその日の夜、ついにロケットが完成し、打ち上げられた。

 

 

煙を吹き出しながら、巨大なロケット、『バハムート一号』が地上から打ち上げられた。

 

その竜の咆哮のようなエンジン音と共に、勢いよく上昇し、宙に舞い上がる。輝く炎が尾を引きながら、空へと高く高く舞い上がっていく様子に、このロケットを作りあげたマッドサイエンティストと生産系ホムンクルス、その他数多くの見学者の目を釘付けにし、興奮させる迫力満点の光景だった。

 

 

次第にロケットは遠ざかり、小さくなっていく。空の彼方へと進んでいく姿は、まるで夢のような幻想的な光景だ。

 

 

その打ち上げは、まさに山田ドラゴンガチャ王国の技術の結晶だった。

 

 

 

 

 

ロケットから分離した人工衛星から、我らの星の映像が送信された。

 

広大な宇宙の中に浮かぶその星は、ほとんどが海に覆われていた。オーストラリア大陸を一回り大きくしたような。綺麗な円。それだけ。この星の陸地はそこだけ。だがそこにはまだ小さいが、文明の息吹を感じる光があった。高層ビルの明かりや道路の輝きが、陸地に生命と活気を表していた。

 

 

 

 

 

美しいと思った。これこそが、俺の国。俺の配下が築いた都市。

 

俺はその映像にうっとりとしながら、一つのことを思ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんか、物足りないなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いやまあ、仕方が無いことなのだが。最初の頃はショッピングモールの周辺に都市を造ろうとして計画し、次々とホムンクルスが住むビル群が建設された。範囲としては直径1キロほどの小さな都市。

 

その周辺は食料生産のための農地が広がっており、各地に小さな村が点在している。最近はダンジョン第6層にホムンクルスを送り続けていた。

 

つまり地上の発展は鈍化したのだ。人口が増えているのは、空からは分からないダンジョンの中。

 

 

 

 

 

だがしかし、理解は出来るが納得はできない。

 

うーん、何か手っ取り早くこの文明の光をもっと輝かせることはできないか。

 

 

光………明かり………明るい………炎………

 

何かあったかな。『決して消えない炎』は違うな。あれは消えないけど、燃え広がらない。

 

 

うーん。

 

 

 

 

 

あっ。

 

シームルグ。シームルグが生み出した植物の種の中に、燃える種があったはずだ。

 

シームルグは同じような燃える種子を何回も生み出しており、農家系ホムンクルスの報告では発芽した芽も燃えているのだとか。しかし燃え広がらず、熱くも無い。

 

 

これだと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は倉庫に向かい、それと植物成長剤を持ち出す。

激しく燃えているが燃え広がらず、熱さを感じることのない魔法の種。

 

 

 

俺は猪鹿蝶にのり、全速力で飛ばす。目的地は大陸の端。もし何かがあっても大丈夫なように。

 

 

 

 

猪鹿蝶から降りて種を地面の上に置き、植物成長剤を一滴。

 

 

ぽとり。

 

 

 

 

 

種が発芽、急速に成長し、メキメキと音を立てながら大きな姿へと変貌していく。

 

 

あっと言う間に空高くへと伸びる巨大な樹木が姿を現し、その葉っぱなどは鮮やかに燃え盛っていた。

 

樹木は天をも貫くほどの高さにまで達し、何も無い周囲の景色を圧倒した。

 

さらに驚くべきことに、木の周囲には燃える川がいつの間にか出現し広がっていた。その川は水なのに炎に包まれて海へと流れていく。煌々と輝く樹木と共鳴しているかのようだった。

 

 

 

 

俺は人工衛星より観測された星を見る。

 

俺の予想通りその映像には先ほどまで存在しなかった、大きな光が映し出されていた。

 

樹は一際大きな光を放っているが、何故か出現した燃える川がまるで交通網のように衛星上から観測できる。

 

 

 

 

 

あぁ〜、文明の輝きだ!綺麗だなぁ!

 

 

 

 

 

 

いや、でもこれって文明の輝きって言えるのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝起きてログインボーナスを確認する。今日のログインボーナスはスキル確定ガチャコイン。いつもの日課だ。

俺はもう面倒くさいので休んでいるが、結構な数のホムンクルスが未だにラジオ体操を頑張っている。朝も速いのによくやるものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

R『スキル お残しは許しません!』

 

 

俺はスキル一覧を確認する。

 

 

 

●このスキルを習得すると、あらゆる食べ物に対する苦手意識が無くなり、さらに限界摂食量が増加して驚異的な量のご飯を食べることができます。また、万能消化酵素などが発生し、あらゆる物を食べて効率的に消化吸収できるようになります。例えばお酒が苦手な人がこのスキルを習得すると、お酒をどれだけ飲んでもアルコール中毒になる心配はありません。安全にお酒を味わい、栄養として分解し吸収することが可能です。

 

 

 

 

 

 

………残念ながら、使い道の無いスキルだ。俺には嫌いな食べ物なんてないし、お酒だって飲めるのだ。

欲しい人にとっては喉から手が出るほど欲しいだろうが、俺には無用の長物だ。

 

 

 

そこで俺は考えた。このスキルをどうにかして役に立たせることは出来ないかと。

 

 

俺は考えた末、スキルのとある一文に着目した。『あらゆる物を食べて効率的に消化吸収できるようになります』

 

 

あらゆる物。そう、食材だけでは無く、あらゆる物。俺は土を黄金に変えて食べてみた。

 

 

 

バキバキバキバキ。

 

 

俺がカメラを使って体を改造し手に入れた龍の歯は非常に堅い。何だって砕くのだ。

ホムンクルス達が俺を「えぇ………」と言う、ドン引きした表情で俺を見る。

 

 

 

 

 

ゴックン。

 

 

 

 

味のしない飴だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それでは、今日の無料ガチャ!

 

 

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

来た、金色のカプセルだ!SSR!

 

 

 

 

 

 

 

SSR『ワールドクエスト』

 

 

 

突如として火薬が爆発する音が聞こえ、俺はショッピングモールの外に出る。

 

花火が打ち上がる中、空には俺が展開できるシステムウィンドウとは比較にならないくらい大きなシステムウィンドウが展開され、そこにはこう書かれてあった。

 

 

 

 

 

 

クエスト1

【降臨大征 オロチ】の撃破

難易度 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

報酬  新大陸【冒険大陸】の獲得

 

 

クエスト2

【殺人鬼 ジェイド】の逮捕 

難易度 ⭐︎

報酬  ユニット【4番打者】の獲得  

 

 

クエスト3

【名もなき聖剣】の獲得

難易度 ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎

報酬  【首都防衛司令部 極秘資料】の獲得

 

 

 

 

 

 

鑑定!

 

 

 

●ワールドクエスト

 

ワールドクエストは、そのクエストの受注者が所属する陣営または星系すべての生命体が挑む、超高難易度クエストです。

当然ながらクエストの達成は非常に困難であり、最低難易度であってもクエスト達成は困難であり時間と金などの資源を費やすことになります。

しかしクエストの難易度に比例して報酬は豪華になっていきます。頑張ってクエストクリアを目指しましょう。

尚、クエストは不定期で追加されていきます。

 

 

 

 

 

突如として発生したワールドクエスト。

 

まず思ったのは、なんだこのクエスト1の難易度!星いくつあるんだ⁉

 

 

えーと、1,2,3………25‼他のクエストが1と5なんだぞ‼

 

鑑定では、最低難易度でもかなり難しいらしい。なのに25‼どれだけ難しいんだ‼

 

名前や撃破という文からして、おそらくは魔物などの生き物なんだろう。

 

まずいぞ、一刻も早く倒さなければ俺の王国に甚大な被害を与える可能性がある。

 

俺はすぐにオロチ撃破のために精鋭中の精鋭で構成されたホムンクルス近衛隊を呼び出し彼らがいつでも戦えるように準備させた。

 

そして人工衛星と足の速い偵察隊を放つ。第一目標はオロチの発見。それと同時に殺人鬼と聖剣も探させる。

 

難易度は1だが殺人鬼も放ってはおけないし、聖剣はおそらく強力な武器だ。なんとしてでも回収したい。

報酬の4番打者と資料はよく分からないが、報酬は豪華らしい。期待はしよう。

 

この大陸は狭く、基本的に平らな土地が続く。すぐにでも見つかるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だめだった。

 

そもそもオロチとか殺人鬼とか聖剣がどこにいるかがわからない。見つからないのだ。

 

このワールドクエストの説明文では、『所属する陣営または星系』とある。この一文から考えるにこのワールドミッションはこの大陸だけじゃなくて、海底とか宇宙とかも含む可能性が高い。

 

流石は高難易度。そもそも見つけることが困難というわけか。

 

 

 

しかし無理だなこれは。今のところ達成の見込みが無い。放置。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダンジョン第97層 行政層

 

 

先進魔法技術局 分析官 視点

 

 

 

 

「はあ、はあ、はあ」

 

足が痛い。胸が苦しい。傷が開く。

 

だが、足を止めるわけにはいかない。一刻も早く、あれを見ることが出来る、高い場所に行かなければ。

 

 

 

 

 

 

 

天空に高くそびえる摩天楼に囲まれた、極限まで発展した大都会、ダンジョン第97層。行政層。

 

つい先ほどまでは、輝く光に包まれた街並みに数多くの企業や行政施設が立ち並び、活気と忙しさが溢れていた。

 

 

 

 

だが、突如として繁栄は終わりを告げた。

 

爆発音と共に周囲のビルをふきとばして、それは現れた。

 

 

 

冷たい金属が輝く、機械仕掛けの純白の蛇。

 

 

 

 

 

 

蛇は無慈悲に都市を蹂躙し、建物を押し潰し道路を粉々に砕いた。その巨大な体は摩天楼すらも軽々と超え、咆哮のような轟音が響き渡り、大都会は一瞬にして混乱と破壊の渦に巻き込まれた。

 

 

 

蛇に対してはこちらもやられっぱなしという訳では無い。先ほどからひっきりなしに重魔法師団の攻撃が続いているが、全くと言っていいほどに効き目はない。

 

 

私はこの大都市を一望できる山に建てられた展望台にたどり着き、蛇を観測する。

 

 

機械の蛇の周辺は連続的な大爆発と共に、魔法の炎が舞い上がる。第97層はダンジョン最終層まであと一つ。

 

至る所に防衛設備が存在し、また97層を守護する大勢の兵士達が勤めている。

 

この層の全ての魔術師が結集し、全方位からさまざまな魔法を蛇に向けて放っていく。しかし、蛇はそれに動じず、口から光線を吐き出した。

 

 

 

何千もの魔術師で構成された部隊が紙のように吹き飛ばされた。たった一発で、何千もの魔法使いが命を落としたのだ。その破壊力はあまりにも恐ろしい。

 

しかもこの光線は蛇にとっては通常兵装の一つに過ぎないらしく、冷却時間や魔力装填時間も必要としないらしい。何発も連射を行い、そのたびに魔術師の命が失われる。

 

 

それでも攻撃は続く。

 

 

 

 

 

 

無駄だ無駄だ!攻撃なんて意味ないよ!あれは無理だ。生物としての、格が違いすぎる!

 

なんだあれは、この世界の物では無い異質さ、圧倒的理不尽。

 

そう、文明の系統が全く違うのだ。分析官の僕でもあの蛇の構造がまるで理解できない。まるであの新人ダンジョンマスターのようだ。

 

今分かるのはあれがゴーレムの亜種のような物であること、自立可動型であることだけだ。

 

僕はリュックサックにいれた計測装置を取り出し、分析を続ける。

 

 

 

 

僕は通信端末を起動して上司に連絡する。一刻も早く、分析結果を送らなければ

 

 

「あ、もしもし?まだ生きてますか」

 

「おい、何をしている。早くお前もシェルターに」

 

 

その瞬間、蛇の背中から無数の光の矢が放たれた。まるで雨のように降り注ぎ、先ほどまでの攻撃のお返しとばかりに全方位に降り注いでいく。その光の矢は、分析官である僕でも圧倒するほどの速さと威力を持ち、防衛設備や魔術師団に降り注ぐ。

 

矢は魔法障壁や装甲を容赦なく貫き、防衛砲台や魔術結界は一瞬で破壊され、魔術師たちは断末魔を上げる。

 

 

その壊滅した設備の中に、上司が逃げ込んでいたシェルターもあった。

 

 

 

私は絶望に暮れる。シェルターは最高レベルの装甲で守られていたはずなのに。

 

 

 

蛇に対しての魔法攻撃は終了した。先ほどの攻撃で全滅したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

違う、まだ終わっていない。

 

空の彼方より、彼らは来た。

 

悪魔や堕天使などで構成される航空兵団。彼らは全速力で飛来し、蛇に対して攻撃を放っていく。

 

 

 

 

 

 

だが蛇の背中からは幾千万もの光の光線が放たれ、こちらの飛行可能な兵士たちが虫のように打ち落とされていった。

 

悪魔や堕天使たちは空を舞い回避しようとするが光線はジグザグに追尾していく。蛇の光線により堕天使の翼が燃え尽き、悪魔の邪悪な羽根が灰と化した。

航空兵団は一瞬にして全滅。穴だらけになって、流れ星のように落ちていく。

 

 

 

 

しかし攻撃は終わらない。

 

今度は地上戦力だ。全方位より重装魔剣師団が蛇に向けて進軍する。

 

魔剣を装備した兵士たちが蛇に向かって突進する。そのほとんどは近づく前に死に、なんとか蛇にたどり着いた兵士は一斉に刃を振り下ろし、蛇の装甲を貫こうとしたたが、かすり傷がついただけだった。

 

そして蛇が身震いするたびに、数え切れないほどの兵士たちが踏み潰されて命を落としていく。

 

 

 

 

 

 

魔のダンジョンの精鋭たちが、こんなにも簡単に打ち倒されていく。

 

 

だがこれは無駄死にではない。全てが囮なんだ。

 

 

 

 

 

第97層司令官。『賢人ネロ』が扱う魔法は重力魔法。その魔法で戦争ごと圧縮し潰してきた、ダンジョンマスターの側近の一人。歴戦の猛者。

 

 

 

ダンジョンマスターの側近である賢人ネロが時空間を圧縮する超重力魔法を放った。

 

全てはこの一発のため。蛇に悟られないよう、逃げられないように皆突撃したんだ。

 

 

 

 

 

 

だが無駄だった。

 

ネロの重力魔法は機械の蛇の強力なシールドによって阻まれた。蛇は切り札であるこちらの攻撃を容易にしのぎ、まるでお返しとばかりに口から光線を放った。

 

 

 

 

 

 

 

こりゃ無理だ。僕は一目散に逃げ出すのだった。

 

 




エヴァンゲリオンで一番好きなシーンは第6の使徒ラミエル戦。

全方位から攻撃して、変形するラミエルがビームを放つ。

日本中の電力集めて、ラミエルを撃ち抜く。あのシーンが一番好き。



本作をご覧いただきありがとうございます。

感想、評価、お気に入り登録をしていただければ幸いです。

パソコンからご覧の方は小説上部の評価から、スマホの方は右上のメニュー、評価付与から評価が可能です。


小説家になろう、カクヨム、アルファポリスでも投稿しています。

今後もよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

私を見たな⁉これで君も冒険家だ‼

俺が燃える種に植物成長剤を垂らすと、燃え盛る巨大樹が誕生した。

 

 

ここまではいい。問題なのは、この巨大樹を中心とした燃える川が発生したことだ。

 

この川には同じように燃える水草や魚などの未知なる生態系が生まれている。これはどういうことか。

 

マッドサイエンティストによる回答は、この大陸特有の現象らしい。

 

地形や環境に変化があると、それに合った動植物がスポーンするのだとか。

 

例えばこのショッピングモールを中心とした小さな都市。この都市に放鳥した覚えもないのにいつのまにか鳩や雀、カラスなどが出現していた。

 

これが地球(クリエイティブモード)の効果だとマッドサイエンティストは興味深そうに俺に話してくれたので、俺はその説の検証のため、もう一つ特異な環境を人工的に作成する実験を行うことにした。

 

実験内容は簡単、昨日の燃える巨大樹のように、シームルグが生み出した変な種子、今回はどう見ても金属にしか見えない種子に植物成長剤を投与する。

 

この結果、何らかの動物が出現した場合マッドサイエンティストの説は正しいことになる。

 

 

 

俺は冷たい金属でできた魔法の種に、植物成長剤を一滴落とす。

 

 

バキバキバキバキッッッッ!

 

 

 

すると種は一瞬で成長し、しかし巨大樹のように一本の木ではなく、白い金属で構成された森が誕生した。

 

あっという間に俺たちは樹海に飲み込まれ、辺り一面森の中。遭難してしまった。護衛のホムンクルス達がパニックになりながらも周囲を警戒する。

 

これは予想外だ。てっきり金属で出来た巨大樹に成長とすると考えたのだが、まさか横に成長するとは。

 

俺は金属の木を観察する。

木の枝葉は鋼のような光沢を放ち、風になびく度にきらめく。

 

さらに木だけではなく森の中には色とりどりの金属の花や草が咲き乱れ、煌めく宝石のような色彩が周囲を彩る。カラフルだ。まさにファンタジー。夢のような光景である。

 

そして仮説通りに金属の森には生命の息吹が溢れていた。

鮮やかな羽根を持つ金属の鳥たちが飛び交い、虹色に光る金属の蝶が舞い踊る。

 

 

そして、大型の金属の虫が、俺たちに向かって飛んできた。

 

 

「キシャァォァァァァァァ!」

 

 

か、カマキリだ!全身紫の宝石のような見た目のカマキリが猛スピードで飛んでくる!

 

その鎌は一流の職人が拵えたかのように美しく、そしてカマキリが研いでいるのか非常に切れ味が良さそうだ。

あの鎌で包丁を作ろう‼

 

襲いかかるカマキリに対して護衛のホムンクルスが前に出る。

 

 

 

「山田様!ここはお下がりください‼」

 

「魔王装備は今はありません!ここは私たちに…王⁈」

 

「虫風情が、この俺に逆らうんじゃねぇぇぇぇぇぇ!」

 

 

こんな虫、梅花剣法を使うまでもない。

 

俺の剣の前に、カマキリは鎌を十字に構えて防ごうとするが、俺の剣が鎌ごと真っ二つに切り捨てる。

 

ダンジョンで鍛えた俺の前には無力なんだよ。

 

 

 

「ぎゃははははは、見ろよあれ!宝石鮫が空飛んでこっち来るぞ!」

 

「笑っている場合ではありません、山田様!」

 

「転移しましょう!」

 

「ダメだダメだ!転移じゃ自分と身の回りの物しか移動できない。それじゃこのカマキリを置いていくことになる!ほら、全員で持ち上げるんだ!頑張って運ぶぞ!」

 

 

「そんな無茶な!」

 

「あぁ、体が勝手に!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、途絶えることのない金属獣や虫の攻撃を退けながら森を脱出した。どうやら金属の獣達は森から出ることはないらしい。これでひとまず安全というわけだ。

 

これを聞いた多くのホムンクルスが結晶樹の森へと押し寄せた。たった1日で結晶樹の森は血祭りに上げられ、ホムンクルスは山ほどの成果を持って帰還した。新たな狩猟場に大興奮。

 

人工衛星からの観測で白い森が映し出され、結晶樹の森は太陽の光が反射して煌めいていた。綺麗。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日のログインボーナスは機械確定コイン。

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

 

UC『SOS』

 

 

SOSは、1999年1月31日まで用いられていたモールス符号を使用した、遭難信号。

現代では遭難に限らず災害時など、一般人などが助けを求める際に使われる。東日本大震災の際に避難民により使用された。

 

Sは・・・

Oはーーー

 

つまりSOSは・・・ーーー・・・である。

 

 

 

 

 

 

 

出現したのは、テレビ電話だった。

スマホが普及した今、それは滅多にお目にかかれない家電製品。

少し古い印象を与える、白色のテレビ電話だ。

 

ぷるるるるるるるる。

 

電話が鳴りだした。

 

うーん、出たくないなぁ。何というか、厄介ごとにしかならないだろこれ。

 

だがSOSだ。つまり助けを求めているということ。電話を無視するのも後味が悪いし、助けられるなら助けないと。

 

 

俺は受話器を取り、電話に出た。

 

するとモニターに映像が映し出された。

 

 

そこには汚れた軍服を着た、痩せた中年の男が映し出された。

見窄らしいがモニター越しに威厳と覇気を感じる。

 

汚れた軍服を観察するとその胸には多くの勲章が縫い付けられ、彼の階級がある程度高いことを察せられた。

 

 

「本当に繋がるとは…」

 

受話器越しにその男の驚きの声、そして他にも人間がいるのか動揺する人々の雑音が入る。

 

「お前らは誰だ?俺は、ヤマ、あー、龍王国の山田だ。SOS信号を受け取って今連絡をしている。悪いが何の情報も無いのにお前達を助けることはできない。助けが欲しいなら、今何が起きているのか情報を寄越せ。」

 

 

くそっ、山田ドラゴンガチャ王国って名乗るのは恥ずかしいな。対外的に龍王国と名乗ることにしよう。あー、何で俺は山田ドラゴンガチャ王国なんて国名にしてしまったんだ俺は。

 

 

「私は種族連合第363基地司令官のベルタ中将だ。早速で悪いが、我々は食糧の支援を要請する。モニターに食糧を投げ込むだけでいい。どういう理屈なのかわからんがそうすることでこちらに食糧を送れるはずだ。このままでは餓死してしまう。」

 

「何があったんだ?災害か?」

 

 

「簡単に言えば、我々は人類の敵との最終決戦に敗れた。その結果として、我々は地下で暮らしているというわけだ」

 

 

世界の敵。やっぱり厄ネタじゃないか。

うわー、関わりたくないなぁ。面倒くさいなぁ。受話器切っちゃおうかな。

 

 

「戦わないのか?武器の援助ならしてやるぞ。」

 

兵器の実戦データも欲しいしな。

 

「もう手遅れだ。種族連合は完膚なきまでに壊滅し、生き残りは我々だけだ。他の基地とは連絡が取れないし、外は大気汚染がひどい。防護スーツの数も限られているし、戦うのは困難だ」

 

種族連合軍、そして363基地。推測だがベルタ中将が所属していた軍隊はかなり大規模だったのではないか?そんな彼らをここまで追い詰めた世界の敵とは一体。

 

この世界の敵が俺たちの星に何か悪い影響を与えるのかもしれない。

聞かなければ。

 

「世界の敵っていうのは一体何なんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「薬中だ。」

 

「は?」

 

「薬物中毒者だ」

 

「冗談か?」

 

「冗談であればよかったのだがな」

 

ベルタ中将は自嘲するかのように笑う。

 

「この世界にエルフという種族がいた。草木や花を愛する、高潔な種族だ。さてここで問題だ。エルフは一体何の植物を愛していた?」

 

「まさか」

 

「そう、薬物だ。あいつらは薬物を愛していた。品種改良されたそれは、依存性も最悪だ。薬物耐性のあるエルフが使う分にはいいが、人間が使えば狂ってしまうような、最低最悪のな。」

 

「エルフの育てる薬物が撒き散らす花粉、これを吸うだけで人間は死んでしまう。多くの国家が滅亡してしまった。」

 

「このままでは冗談抜きで世界が滅ぶ。種族連合はエルフと薬物の根絶やしのために宣戦布告した。だが戦力差は圧倒的だった。」

 

「薬物は燃やせば万能の燃料となる。さらに上手く加工すれば万病に効く薬となり、一時的にだが身体能力を伸ばすドーピング剤となる。」

 

「我々は敗北し多種族連合は崩壊、その後エルフは麻薬の種を全世界にばら撒き、惑星規模で麻薬に汚染され、世界は滅びましたとさ」

 

 

 

 

 

まじか。マジで薬中のせいで世界は滅んだのか。世界は薬物天国、薬中エルフにとっては最高の楽園というわけか。

 

ん?でも待てよ?

 

 

 

「ちょっと待て。今の話なら、地上はエルフが支配しているはずだ。世界は滅びてはいないだろう」

 

「ここからがこの話の面白いところだ」

 

 

何も面白くねぇよ。

 

 

 

「エルフの中の薬物耐性にも限界はあった。大気中の薬物による汚染がエルフの許容範囲を超え、エルフ達まで薬物で狂っていった。その結果として薬物耐性の高いエルフだけが生き残り、エルフの9割が死亡、文明は崩壊した。」

 

「自滅したんだよ、エルフは」

 

 

え、えぇーー、マジで?エルフ馬鹿すぎるだろ!

 

な、何というか非常に間抜けだ。

 

薬物に狂ったエルフが薬物で殆ど滅びた。情けないというか、愚かというか…

 

もう感想がないな。何とも言えない。

 

エルフに巻き込まれたこいつが不憫だ。

 

 

 

 

俺はホムンクルスに命じ、ベーコンキャベツをモニターに投げ込む。

謎の理屈で食糧は向こうの世界に届いたようだ。

 

 

 

「肉⁈これは肉か⁈汚染されていない肉を見るのは久しぶりだ!」

 

「それはキャベツだ」

 

「は?」

 

「ベーコンキャベツ。野菜だ」

 

「いやでも、ベーコンって豚肉を加工した食材だろう?それが植物として育つ…?あんたの世界も大概だな」

 

「否定はしない」

 

 

 

ベーコンキャベツの報酬として、花や種子をもらった。ベルタ中将は、この世界が誇るべきものは薬物に関する技術だけだといい、薬草に関する多くの学術書をくれた。これを活かして、治療ポーションや強化ポーションの開発を開始する予定だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無料ガチャ!

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

C『ユニットカード『第二の使徒 情景のカセドラル』ガチャバトルカードダス第5弾『非公式交流戦編』収録』

 

 

 

 

ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

ひ、久しぶりのガチャバトルカードダス!一体何の恨みがあるんだこのカード!

 

 

基本的にガチャから出るものは微妙なものが多いが、マッドサイエンティストやホムンクルスが俺の想像の埒外の思考で有効活用してくれる。

 

だがこのガチャバトルカードダスはダメだ。何の役にも立たない正真正銘の役立たず!何の縁があってガチャバトルが何枚も出るんだ!

このゴミめ!

 

 

 

…だがそれでも一応調べてみよう。

 

 

 

カードに描かれた絵には、金髪の少女が目を輝かせて立っていた。ファンタジーの冒険家のような装いを身にまとい、自信に溢れ、彼女の目には未知の世界への好奇心と探求心が宿っている。

 

彼女の金髪は風になびき、その勇ましい表情は一枚の絵だけであるにも関わらず、俺に冒険の興奮を伝えてくる。冒険への情熱が俺を駆り立てる。

 

この一枚の絵は、俺の心を刺激し、見る者を冒険へと誘っているかのようだ。今すぐにでもダンジョンに行きたくなってきたぞ。

 

さて次は能力だ。

 

…?

 

どうやらこのカードにはフレーバーテキスト、まぁ簡単に言えば世界観やキャラの説明の文章が書かれているようだ。

 

 

 

効果

このユニットがバトルゾーンに存在する場合、自分のユニットは効果を1ターンに2回発動することが出来る。

 

 

その使徒を我らは認識した。認識してしまった。我らは変わった。変わってしまった。

彼女こそが、冒険家の守り人。未知を恐れず、夢を諦めず、憧れは止まらず、好奇心は抑えられず。見るものが彼女に魅了され、夢をみる。

彼女を知ってしまったからには、もう戻れない。

俺たちは、止まらない。止まりたくても、止まらない。

 

 

 

 

…うーん?フレーバーテキストをよく見てもわからないな。

まぁフレーバーテキストというのはこんなものだろう。フレーバーテキストを理解するためには、他のカードに書かれているフレーバーテキストや、ある程度の世界観に関する知識が不可欠な場合も多い。

 

 

そして俺は、カードが出現し落下した床の辺りに、もう一枚紙切れが落ちていることに気づいた。何か書かれているようだ。

 

 

なになに…

 

 

【このカードは制限カードです。使うことはできません】

 

 

 

ご、ごみだ!ただでさえカード系はゴミなのに、これは本当に使えないじゃないか!

 

何のためにあるんだ!このカードは⁈

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マッドサイエンティストの助手のメモより一部抜粋

 

 

情景のカセドラル。

 

能力はカセドラルを認識した者に対して、未知なるものへの好奇心を与えることだと推測される。

 

媒体、場所、時間などの条件は記載がない。

 

山田を含め、数多くのホムンクルス達は、カセドラルを知ってしまった。

 

このフレーバーテキストが本当のことだとすれば、これは非常にまずいことなのでは?

 

 

 

 

 

 

 

 

メモを見たマッドサイエンティスト

 

 

つまりこのカードを応用して、知的好奇心を刺激し高めることができるかもしれないということだな⁈

 

早速研究して、上手いこと扱おう!さっき調合した、集中力を高めるドーピング用の薬を持ってきたまえ!

 

あぁ、あの世界の薬物に関する研究は最高レベルだ!もっと学術書が欲しいな!

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ガチャに振り回される人たち

クリエイト、クリエイト、クリエイトォ‼

 

 

俺は毎日のように黄金を生成している。

素材はシルバースライム化した俺の左手であり、シルバースライムは魔力を使えばほぼ無限に再生し続けているので、文字通り俺の体が黄金となっているのだ。

 

運命教会が黄金は神の一部だとか、黄金こそが我ら運命教会の装飾だとか言って、教会騎士ホムンクルスが黄金の鎧と剣を装備し始めたりと色々うるさいがそこは割愛。

 

黄金生成に必要なのは魔力だけ。黄金生成には膨大な量の魔力が必要であり、大量生産は難しいと考えていたが、その問題は簡単に解決した。

 

 

そう、7号である。7号はホムンクルス統括個体へと進化しており、全ホムンクルスより魔力を強制的に徴収できる。

 

このため、7号を通じて魔力が必要な魔法系ホムンクルスに魔力分配していたりしていたのたが、何とかその膨大な魔力を俺も使えないか考えた。

 

その結果としてホムンクルスとマッドサイエンティストが考えたのは、俺と7号との間で魔力譲渡の契約をすれば良いという、非常に単純で簡単なことだった。

 

 

なんでもホムンクルスには魔力タンク、つまりは魔力生産のために製造されることもあるらしい。

ので、ホムンクルスは魔力生産量と貯蔵量が人間に比べて多く、さらに生物間の魔力の移動の際に無駄が少なく、スムーズに魔力を譲渡できるようだ。

 

俺は早速7号と魔力提供の契約を行なった。このおかげで俺は俺が一生かかっても生み出せない魔力を手に入れたのだ!

 

 

そうしてやることは黄金生成。

非常に地味な作業だ。左手をシルバースライム化、分離、黄金化、左手の再生。これを繰り返すだけ。

 

 

さて、一体なぜ俺がここまで黄金を生成しているかと言えば、とある作戦のためである。

 

将来行われる交流戦、またはイベントであるエンジェルフォール。

 

俺が考案した、黄金を利用した初見殺しの恐ろしいコンボ。この戦術の前にはランカーなんて敵じゃない。

 

抵抗なんてさせない。一瞬でまとめて吹き飛ばして、俺の物にしてやる。

 

 

 

 

 

 

 

今日のログインボーナスは、ゲーム確定ガチャコイン。

 

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

 

 

R『モグラ叩き』

 

 

 

ゲームの一つ。台の上に空いた幾つかの穴から飛び出るモグラをハンマーでぶっ叩いて得点を稼ぐ遊戯。一番古いモグラ叩きは1975年に開発されたらしい。

 

日本人はワニやモグラ、太鼓。何でも叩く。

日本人は叩くことが好きなのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

それはショッピングモール都市の外、未開拓の平原が広がる何もない土地に出現した。

 

まるで工事現場のような光景が広がっていた。工事現場で見たことのある移動式の白い壁で囲われていたその空間は非常に広大。壁に沿って進んでいると、折りたたみ式の、大型のトラックが何台も通ることができる大きな門にたどり着いた。

 

その門の手前には『ぶっ潰せ! モグラ叩き!』

と書かれた看板が設置されてある。

 

 

俺は門を通り、壁の中に入る。

 

中は複数の大規模なプレハブが建てられ、その周りにはパイプや鉄骨などの建築資材が積み重ねられている。スコップやショベル、ピッケルなどの手作業に必要な道具も整然と並べられており、そのどれもが丁寧に手入れされている。

 

工事現場内には大型のタンクローリーやトラック、クレーンといった重機が駐車しており、それらの巨大な機械に俺は圧倒される。

 

 

俺は少しだけワクワクしながら工事現場を進んでいく。本当にこの工事現場は大きいな。まるで村だ。

 

 

 

そうして進んでいくと、開けた空間にたどり着いた。

 

開けた空間には、いかにもと言った穴がいくつもある。そしてその穴の手前には100円ショップで見かけるような、カラフルで安価なおもちゃのハンマーがいくつも置かれていた。

 

 

俺はハンマーを手に取る。

 

 

なるほど、このハンマーで穴から出てくるモグラを叩くんだな?

 

 

そして俺は直感で感じとる。

 

ここだ!ここにモグラが出てきそうな気がする!

 

そうして待ち構えていると、何かが出てきた。

 

フンッ!!

 

 

 

「真剣白刃取り!」

 

穴から現れたのは、サングラスとヘルメットをつけたモグラ…モグラ?

何というか、俺が写真や動物園で見たことのあるモグラとは別の、モグラ叩きのモグラのようにデフォルメされた、黄色のモグラが現れた。

 

そしてそのモグラは、俺のハンマーを受け止めたの。

 

 

「あっぶな!いきなり何すんねん!謝罪せんかい!」

 

「え、えぇ…俺はモグラが出たから叩いただけなんだけど」

 

理不尽。モグラは俺に対して非常に怒っている。俺はただモグラを叩こうとしただけなのに。

 

「はー、何訳のわからんこと言っとんねん。ほんま。いきなり叩くなんて常識ないであんた」

 

「いや、モグラ叩きだから…」

 

「は?さっきから何言っとんねん」

 

俺は埒が開かないので、工事現場前に設置された看板の前にモグラを案内した。

 

 

『ぶっ潰せ!モグラ叩き!』

 

 

その看板をモグラは凝視し、そして…

 

 

 

「何勝手にしとんねん!」

 

 

モグラは腰につけていたハンマーを全力で投げ、看板は粉々に砕け散った。

 

え、えぇーっ…

 

「はぁ…ほんまけったいな名前で排出されたもんや…。こんなん聞いてないで…。いやまぁ、そのおかげでワイだけやなくて、部下も揃って呼ばれたんか?ようわからんわ」

 

 

「結局お前は何なんだ?モグラ叩き用のモグラじゃないのか?」

 

 

「違うわアホ!まあええ。自己紹介や。ワイは動物兵シリーズ、モグラ工兵隊、通称モグラーズの隊長や!よろしゅうな。さぁ、全員集合や!」

 

 

モグラ工兵隊隊長は首にかけられたホイッスルを吹く。

 

すると工事現場から大量のモグラ兵が殺到してきた。

い、一匹じゃないのか!

 

「さあ、ワイらをどう使う?退屈せんようになるべくでっかい工事、させてくれや?」

 

 

 

 

俺はモグラーズに都市の整備事業を任せた。

モグラは俺たち惑星開拓委員会に対し、

 

「何やこの配管は⁈めちゃくちゃやで!」

「アホちゃうか⁈何やこの道路は⁈ただ適当に引いただけやないか!」

「地下鉄あんのに何で使わんねん!」

「都市の外の道路と村、ちゃんと整備せんかい!」

「ダンジョンの開拓ぅ?治水がなってないで!」

 

などと激怒され、モグラーズにより都市の整備事業が始まった。

 

委員会で唯一怒られなかったのは、伊藤忠敬率いる奴らだけであり、あいつらはかなりの高評価だった。

 

 

 

 

 

 

 

さあ、無料ガチャ!

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

UC『コンビニ』

 

正式名称コンビニエンスストア。日本全国に広く存在し、24時間年中無休で営業を行っている店舗のこと。便利な場所で営業され、日本人にとって身近な存在となっている。

 

店内にはパンや弁当、揚げ物や菓子などの食料品が豊富に取り揃えられており、また、日用品や生活雑貨も幅広く取り扱っている。

 

さらにATMも設置され、現金の引き出しや預け入れ、各種決済サービスが利用でき、他にも宅配サービスや荷物の受け取りサービスも提供しており、店員の負担が心配である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぷるるるるるるるる。

 

 

ん?

 

 

どうやら誰かが俺に電話をかけているようだ。

 

 

俺は生活魔法を発動し、現実拡張ウィンドウを展開して誰が魔法電話をかけているのか確認する。

うーん、連絡先に登録したどの魔力反応とも一致しないな。

 

 

この生活魔法はホムンクルスが開発した魔法の一つ。

俺が展開するシステムウィンドウをモデルにして作成された魔法であり、左手をピースの状態で、意志を込めて振るだけで、現実拡張ウィンドウを展開できる。

 

この現実拡張ウィンドウは天気の確認やメモ、歩数計などの多くの機能があり、地球でいうスマートフォンと同じようなことができるのだ。

今もアップデートが行われており、この魔法を開発したホムンクルスは大富豪となっている。

 

俺は電話に出る。

 

「もしもし」

 

「あ、急なお電話申し訳ありません。今お時間大丈夫でしょうか」

 

「あ、はい大丈夫です」

 

「あ、どうも。本日ガチャから排出されました、ガチャコンビニ一号店の店長を勤めています、熊野です。」

 

「あー、どうも。今コンビニの捜索中なんですけど、どこにあるかわかりますか?」

 

「えーと、それでですね…今、宇宙にいるんですよ」

 

「は?宇宙?」

 

「はい、今山田様がいらっしゃる星から遠く離れた場所に出現しちゃったんですよ。それで何ですけど、迎えにきてもらうことできませんよね」

 

「今ちょっと無理かな…そもそも今の俺たちは大気圏越えられないし」

 

「そうですよねぇ…、どうしましょう」

 

「どうしよう」

 

 

 

 

 

 

コンビニは運営から酸素や食糧を提供してもらえるし、コンビニといっても小さな宇宙ステーションなので大きめのショッピングモール並みの施設が充実しているので、今すぐに迎えにきてもらえなくてもいいらしい。店員100人、気長に待つらしい。よかったよかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、伝説の惣菜屋が所有する宇宙駆逐艦がコンビニを訪れ、このコンビニに弁当と惣菜を置かせてもらえるように営業にきたようだ。コンビニ店長の熊野は契約を結んだそうな。

 

 

 

 

 

何で惣菜屋が宇宙駆逐艦を持ってるんだよ!!!

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

無能ダンジョンマスターと愉快な仲間達のパワハラ会議

ダンジョン第98層 王宮

 

98層は魔のダンジョン最後の層。

ダンジョンマスターであるシュラハト専用の居住区であり、贅の限りを尽くした、地球の大富豪とは比較にならない住居である。

 

なにしろ、ダンジョンの層はそれぞれが独立したもう一つの世界とも言っていい。一つの世界そのものを、自分の娯楽のためだけに使っているのだ。地球とは比較にすらならない。

 

シュラハトの執務室である王城、住居である大屋敷をはじめ、シュラハトの食事のためだけに作られた畑や海が広がり、さらに広大な自然公園や美術館、動物園、水族館、薔薇園、乗馬場、別荘、狩猟場、図書館など、シュラハトのためだけの施設が至るところに建築されている。

 

シュラハトに仕えるメイドとその家族の為の街も存在しており、まさにこの層全てがシュラハトの家なのだ。

 

かつては川で釣りをしたいと云う理由のためだけに清涼な川を生み出し、さらに山登りをしたいと云うためだけに霊峰を作り出したこともある。

当然ながら、地形の創造は膨大なDPを消費するため、その度に暗黒騎士団長が止めようとしたが、耄碌したシュラハトは無視し続けた。

 

 

そんな98層。王城。

王城はシュラハトの執務室であり、この王城とその周辺にはダンジョンを運営するための上級行政施設や軍の総司令部といったダンジョンの根幹を担う施設が幾つか存在する。

 

そして王城、その管制室にて。

 

管制室に設置されたモニターには、ダンジョン各地の様子が映し出されているが、どれもひどい物だった。

至るところで反乱が発生し、各地で火の手が上がっている。

 

ほんの一月前までは、平和そのものだった。

たった一ヶ月で、多くの命が失われた。何人もの階層司令官、幹部が死んだ。

 

 

 

 

管制室に集まったのは、このダンジョンを運営する幹部達。

 

だがその面子も数少ない。多くのモンスターは反乱を阻止するために今も戦い、そしてオロチの出現によりかなりの幹部が死んでしまった。

 

もはや数えるほどしか残っていない上級モンスターを集めて、会議を行う。

 

ダンジョンマスターであるシュラハトは苛々とした様子で、顔に青筋を浮かべている。

 

 

 

 

 

 

そう、シュラハトの会議は基本的に、物事の報告とシュラハトのストレスを発散するためだけに行われる、何の意味もない、無駄極まりない会議なのである。

 

 

 

 

 

 

 

そもそも97層が壊滅してもう丸2日経っている。にも関わらず、なぜ今更会議を行うかというと、もちろん97層壊滅の混乱により事態を把握できていなかったということもあるが、報告すればシュラハトの機嫌を損ねどんな制裁が下されるのかと恐れシュラハトに都合の良い情報しか報告しなかったのだ。

 

 

そして現場のモンスターが、シュラハトにこの情報を伝えても碌な命令をしないし変に現場を引っ掻き回されても困ると考えたからである。

 

 

結果としてシュラハトは昨日の就寝前に、97層壊滅の情報をダンジョン管理システムより入手し、烈火の如く怒りその結果として何十人ものモンスターが粛清された。

 

ただでさえ人手が足りないのに、馬鹿である。

 

 

 

だが何故シュラハトは、97層壊滅の情報を知った昨日の夜のうちに会議を行わずに、次の日の14時に会議を行ったのか。

それは単純に夜なので眠たかったから、朝が弱く二度寝するから、昼ごはんを食べた後にお昼寝をするからである。

 

 

 

一部の親ダンジョンマスター派のモンスター以外のモンスター達は内心、さっさと会議終わってくれないかなぁ。と思っていた。

みんな死んでしまったから、仕事が増えているのである。

 

はっきり言って、シュラハトの自己満足に付き合っている暇は無かった。

 

 

 

 

 

みんな胃薬は飲んだな?さぁ、くだらない会議の始まりだ。ダンジョンマスターが、訳のわからない命令を下さないように祈ろう!

 

 

 

 

「報告せよ」

 

「54時間前のことです。ピュートン観測所から異常な魔力反応を観測したとの報告が入ります。それと同時刻、97層行政層中心部に突如として蛇型の超巨大モンスターを確認。情報省はこのモンスターをかつて存在した蛇のダンジョンマスター【オロチ】からオロチと命名し」

 

「名前などどうでも良い!」

 

 

これだ、シュラハトは人の言葉を遠慮なく遮るのだ。

逆にシュラハトの言葉を遮って話すと殴られる。

 

 

 

「失礼しました。」

 

「このモンスターの出現により97層は壊滅的被害を負いました。軍民問わず多くの人民が死亡し、復旧の見込みはありません」

 

「24時間の絶え間ない攻撃によりオロチを構成する機構の45%の破壊に成功。しかしそのための犠牲として、97層司令官率いる重装魔術師団をはじめとする、悪魔72師団、ファイブスター記念騎士団、迷宮憲兵隊、首都防衛軍などの兵力がほぼ全滅。これによりダンジョンマスター直属の兵力に甚大な被害が発生しました。」

 

「たったの45%か…ゴミめ」

 

 

軍出身の幹部は憤りを覚え反論しようとするが我慢する。皆、自分の命を捨てて戦ったのだ。そんな言い方はないだろう。

 

 

「参謀本部はオロチの撃破は非現実的であると考えて、空間魔法によりオロチを強制転移させることにしました」

 

「なんと軟弱な!臆病な参謀本部め!一体何を考えている!ここまでやられたのだ、何故殺さん!」

 

「しかし現状では、オロチの撃破は困難を極め、また損害は計り知れないと」

 

 

「それを解決するのが貴様ら参謀本部の役目だろう!あぁ、本当にお前達は役立たずだ。あれはいつだったか。たしか300年前のことだったか?いや800年前だったか?お前達は私と側近達が『闘』のダンジョンマスターと戦争になった時、私と側近の突撃を止めさせようとした時があった。なんだったか、そんなことをしても意味はない、もっと効率的な作戦で簡単に倒せると。無粋な奴らめ、彼らは武人だ。なら私たちも武人として彼らに答えるべきだろう。それなのに貴様らときたら…本当に呆れたよ。何が参謀本部だ。ただ卑怯なだけではないかと。それだけではないぞ?いつのことか忘れたが、『鉱』のダンジョンマスターとの戦争の時だ。貴様ら参謀本部の立案した作戦に従ったら、まんまと敵の罠にかかって一つの軍が全滅したことがあったな?その時の言い訳はなんだったか?確か想定外だった、不可抗力、あれは誰にも対応することができないだったか。無能どもめ。無能と言えば貴様もだ、資源管理担当、お前もだサラボよ。どうした、驚いた顔をして。自分は無関係だとでも考えていたのか?何?サラボではなくサラガーンだと?どうでも良いわ。当時まだ生まれていなかったお前に話しても無駄だが、貴様ら資源管理の奴らの計画では……」

 

 

 

 

 

1時間後。

 

 

 

 

 

「そう、あの時五星の座を巡り、私は当時五星の座にいたダンジョンマスターに勇敢にも宣戦布告したのだ!そして私自ら兵士を率いて敵のラグドゥ要塞に愛馬ティフォンに跨り突撃し、要塞司令官の首を取ったのだ!ああ、あの日のことが今でも夢に見る。勇敢な仲間と共に突撃したあの頃が懐かしい。それに比べてなんだ今のモンスターはやる気がないというか何というか。私の若い頃はもっとやる気に満ち溢れ、自分から困難に挑んだんだぞ?だがお前らはどうだ?まったく、私が五星になってから生まれた最近の若者は…」

 

 

 

 

1時間後。

 

 

 

 

「あぁ、恋しい!最近弟子にしたダンジョンマスターは本当に飲み込みの早いやつでな?教えがいがあると云う物だ。我がダンジョンマスターの後継者であったロイドとは雲泥の差だ。ロイドと弟子が我がダンジョンの相続権をかけてダンジョンバトルを行った際は、弟子を応援したんだが、ロイドのやつ、私が勝ちますので、応援よろしくお願いしますだと?滑稽極まりない!私は弟子に多額のDPとモンスターを融通したのだ。誰が貴様のような雑魚を応援するものか。ところで敗北者であるロイドはまだ生きていたか?何?生きている?しぶといやつめ。さっさと消えれば良いものを。あいつは今度処刑すべきか。弟子が我がダンジョンを引き継ぐ時に面倒なことになりそうだ。後でわたし直属の暗殺者を送り込んで、いやそれだと弟子の派閥が文句を言うな、では自害ということにして…」

 

 

 

1時間後。

 

 

 

 

「話が逸れてしまったな。それで?」

 

「…あ、はい。ええっと」

 

馬鹿、お前の話が長すぎて何話してんのか忘れたよ!

 

「なんだ、早くしろ」

 

「空間魔術師団のヨネ様が大蛇に対して空間転移魔法を発動、オロチは38層に転移させました。しかしその際、オロチはヨネ様含む魔術師団に攻撃。人員の98%が死亡しました」

 

その報告を聞いたシュラハトは、先ほどまでの武勇伝を語っていた時とは一変して、顔を真っ青にした。いい気味だ。

 

「ヨネ…お前まで…」

 

ヨネ様はダンジョンマスターの親友とも言える関係だった。ダンジョン開設初期の頃よりダンジョンマスターを支えてきたと云う。

 

…しかしヨネ様はダンジョンマスター側近の一人であり、このダンジョンで最も空間魔法に長けたお方。そんな彼女と彼女が率いる空間魔術師団が壊滅したとは。喜んでもいられない。

 

 

「転移先は反乱を起こした上層司令官達が戦闘中の35層。オロチは反乱軍を蹂躙、凄まじい速度でダンジョン内のあらゆる生命を鏖殺しながら、下層部へと向かっております。現在地は47層。47層以下の生存者はほぼいません」

 

「反乱軍は突然後ろに現れた大蛇になす術もなく壊滅。逃げるようにして必死に、こちらの親ダンジョンマスター派の兵士を無視して下層部へと進軍しています。オロチに追い付かれれば死んでしまいますからね。オロチのことなど何も知らない親ダンジョンマスター派と中立派のモンスター達がオロチを攻撃している隙に、少しでも進軍したいのでしょう」

 

 

 

…苦しいことだ。オロチのことは最大機密として、下層にしか伝えられていない。

 

仕方のないことなのだ。もしオロチの存在が知れ渡れば、絶対的な命令権が失われた今、ダンジョンを守るモンスター達は転移陣を使い逃走してしまうだろう。

 

そうなれば今も上層に居座る侵略者や反乱軍にダンジョンの大部分を占領されてしまう。なので逃げ場を封じるためにオロチが現れた階層の転移魔法陣は切断した。

 

故に、47層以下のモンスターは皆、何も知らないままオロチと戦い、逃げ場もなく死んでいった。

 

 

 

 

「ザマァ見ろ!この私に逆らうからこんなことになるのだ!」

 

 

 

シュラハトは、心底嬉しそうに笑っていた。

散っていった47層以下の同胞に対して、何のコメントもなかった。

 

こいつ、何とも思わないのか⁈

味方が、死んでいるのだぞ!数え切れないほどの同胞が、死んでいるのだぞ⁈

 

 

「いや、裏切り者のゴミなどどうでもいい!今はオロチだ、オロチはどうするのだ?撃破できるのか?」

 

「難しいところです。こちらの攻撃によりオロチの45%の破壊に成功。しかしこの攻撃で97層司令官であるネロ様を始めとする、堕天使総軍長、悪魔卿、破滅の申し子、将軍などの、数多くの側近や兵士を失ってしまいました。我が軍は壊滅的状況です。我々にオロチ討伐に割く戦力は残っておりません」

 

「…何だと?そんなに死んだのか?そんな………ではどうするというのだ!」

 

「生き残った分析官による報告では、あれはゴーレムの類似生物だそうです。しかも自立稼働型。殲滅タイプかと思われます」

 

「殲滅タイプ…なんだったかな。ド忘れしてしまった」

 

 

 

シュラハトがはこの言葉を発した瞬間、聞いていた幹部達は思った。

 

 

 

そこまで耄碌したのか。

そんなの普通知ってるだろ。

プルプル

ボケたんじゃないの?いや、ダンジョンマスターはボケないか。

魔物分類学なんて学校で教わるだろう?

アホだ、アホがここにおるぞ

無能め、さっさと死ね。

誰かこいつ殺せよ

プルプル

シュラハト様もド忘れすることぐらいある。不敬であるぞ。

 

 

報告者は内心マジかこいつ、と思いながら説明をする。

 

 

「えー、殲滅タイプは文字通り敵を全滅させるまで動き続けるタイプです。途中停止不可能。それもオロチはエネルギーチャージ機能を備えていないため、いずれは魔力切れを起こして機能停止するかと思われます」

 

「それで?いつになったら止まるんだ?」

 

「オロチの魔力消費量は尋常でありません。こちらが攻撃を続ければ、あと数日あれば機能停止するでしょう」

 

「ですが、それまでの被害は尋常ではありません。分析官の調査ではオロチは進軍を続け、90層間際にして機能停止します」

 

 

 

「少しまて、整理する」

 

 

別に整理するほどのことでもないけどなと皆思った。

 

シュラハトは連れてきたメイドに紅茶を入れさせ、茶菓子を食べ始めた。

状況わかってんのかこいつ。

 

 

「ふぅ…今の反乱軍はどうなっている?」

 

 

 

「ダンジョン内の反乱軍は大きく分けて5つの勢力に分かれています。下層から順に、93層にてかつてシュラハト様に敗れ監禁されていたダンジョンマスター達が率いる勢力です。現在万魔将軍率いる軍と戦闘中。互角とのこと」

 

 

「まて。93層の大監獄には、我が派閥の魔物を配置していたはずだ。あいつらは私自ら選んだ精鋭達だ。まさか敗れたのか?無能どもめ」

 

「…いえ…彼らも反乱を起こし、現在敗北したダンジョンマスター達の指揮下にあります」

 

「は?」

 

 

 

シュラハトは、本当に驚いたらしい。信じられないことを聞いたかのような、そんな表情と声だった。

 

逆に我々は思った。

 

 

いや、そりゃそうだろう。むしろなんで裏切らないと思ったんだ?

というか、知らなかったのか?

 

 

 

「何故裏切った⁈私の派閥なのだろう⁈普通は私に恩を売ろうと、全力で戦うだろう!」

 

「その…我々の派閥は脅迫で大きくなった派閥です。派閥に属さないダンジョンマスターや、中小規模の派閥のダンジョンマスターに対して、私の派閥に入らないのなら滅ぼすと言われ、ほぼ強制的に加入させられたため、恨みはあるかと…」

 

「だが私の加護のおかげで、派閥のダンジョンマスターは他のダンジョンマスターに攻め込まれていないのだろう⁈確かに最初こそ関係は最悪だったが、いずれ私に感謝するはず…」

 

「派閥のダンジョンマスターから、莫大なDPを会費といって徴収したり、ダンジョンマスターの主力をコレクション目的に無理やり友軍として我らのダンジョンに派兵させていましたからね。派閥から解放されたがっているダンジョンマスターも多いでしょう。派閥の魔物からしたら、今こそがシュラハト様の手から主人を解放させるチャンスとでも思っているのでしょう」

 

「恩知らずどもめ…」

 

 

話聞いてた?

 

 

 

「続いて、91層から92層に存在する下層暗黒騎士団。彼らにより暗黒魔術師団は壊滅。今は進軍していません。こちらも理由は不明です」

 

「さっさと処刑しておけば良かったな」

 

 

あんたが冷遇するから、騎士団は叛逆したんだろう⁈

暗黒騎士団はずっとずっと、ダンジョンのために戦ってきた。なのにあんたが冷遇するから、不満が頂点に達して反乱を起こしたんだ!

 

 

 

「さらに55層を中心に大規模な反乱勢力が存在し、下層へと進軍中です。そして47層にてオロチより逃走中の兵士です。これが最も大規模で、各層の反乱軍を吸収しながら全力で進軍中です。その他ほぼ全ての層で、何万もの反乱勢力が存在しています」

 

「…よし、方針が決まった」

 

 

あ、また何か変なこと考えたなこいつ!

無能は黙ってろ!

 

 

「79層以下の階層は放棄する。ダンジョン司令官共に悟られぬように、可能な限り兵力を引き下げその後転移システムを切断し孤立させる」

 

「そ、そんなことをすれば皆オロチにやられてしまいます!」

 

「そうだ。それが目的だ。79層以下の兵には最後の瞬間までオロチと戦い、少しでもオロチの魔力を消費させる。かなりの時間がかかるが、また生み出せば良い。それに80層以上の層は私に忠誠を誓う、優秀な者たちで構成されている。彼らさえいれば我々はやり直せる」

 

 

そんな…確かに80層以上のモンスターはそれ以下のモンスターと比べて強力だ。そして80層以上は親ダンジョンマスター派で固めており、反乱勢力も79層以下に比べて少ない。

 

しかし、そんな。

今までもダンジョンマスターは理不尽な命令を下してきた。だが、これは度がすぎている。

 

幹部が唖然としていると、一人の幹部が話し出した。

 

 

「なるほど、それはいい考えですね」

 

 

ジェニファー室長。この会議に出席している、親ダンジョンマスター派の幹部である。

 

 

「今ダンジョンには深刻な病気が流行しております。その名も空腹病。ダンジョン内の生命体ほぼ全てが感染したこの恐ろしい病気は、食事を必要としない我々が餓死してしまうという病気です。我々の計算では、あと1日もすれば貯め込んできた栄養がつき、食事をとっていないモンスターは死に始めるでしょう」

 

「ですが物資貯蔵庫があった95層は街ごと失踪。もはや全ての層に配る食糧はありません。ですが、食糧庫は95層以外にも存在します。この食糧庫を解放すれば、80層までの人員を飢えさせない程度の食糧はあります」

 

「ですので私は賛成ですね」

 

 

…そんな。

 

じゃあ何か?どうやっても、79層以下の同胞を救うことができないのか。

我々は、ダンジョン。そしてダンジョンに住む者達のために、これまでダンジョンを運営してきたのだ。

 

なのに、我々は何もできないのか?

 

絶望に支配されていると、何か大きな音が鳴り出した。

 

 

ビー!ビー!ビー!ビー!

 

「これは…システム音か?」

 

 

困惑していると、私の前にダンジョン管理システムウィンドウが展開される。私だけではない。他の幹部も、シュラハト様にも展開されている。

 

 

 

『ダンジョン管理権限剥奪決議案 提言者 第61層司令官』

 

『ダンジョン運営規約第83条3項の適用によりダンジョンマスターはこの決議に参加できません』

 

 

 

な、何だこれは?

 

全ての幹部がシュラハト様を見る。だがシュラハト様は、今日何度目かの驚いた顔をしていた。

 

「馬鹿な、ありえん」

 

「シュラハト様、ダンジョン運営規約とは一体…」

 

「ダンジョンを運営する上でのルールのような物だ。我々ダンジョンマスターはこのルールに則り運営を行う。だが、このルールを知るのはダンジョンマスターである私だけだ!61層司令官であるヘルが知るはずがない!」

 

 

「83条とは?」

 

「私にダンジョン運営能力がないとシステムに判断された場合に各層の司令官が発動できるルールだ。一般的には、ダンジョンマスターが洗脳状態や病気などで身動きができない時に使われる。投票により、私から権限を剥奪することができるのだ。」

 

「初耳ですが…?」

 

 

「当たり前だ!私から権限を奪う規約を教えるわけないだろう!」

 

 

【投票終了】

 

 

『賛成数【情報閲覧権限がありません】反対数【情報閲覧権限がありません】無投票数【情報閲覧権限がありません】』

 

 

『結果 否決』

 

 

 

「閣下。私には閲覧権限がないようです。投票結果はどうなりましたか…?…閣下?」

 

「私にもわからん!何故だ!何故閲覧権限がないのだ!私はこのダンジョンのダンジョンマスターだぞ⁈私が見れないというのなら、いったい誰が見れるのだ⁈」

 

 

 

異常だ。

 

シュラハトの無能さだけでは、説明のつかないことが多く起きている。

 

ダンジョンの空間的隔離。謎の侵略者。反乱不可能なはずの中層暗黒魔術師団の反乱。絶対命令権の消滅。ダンジョンシステムの深刻なエラー。

 

これを調査するチームもオロチの出現で全滅してしまった。

 

 

「閣下!緊急連絡です!96層にて、黒鴉騎士団が謀反!現在、黒薔薇騎士団、黎明騎士団により鎮圧成功したのとの報告が!」

 

馬鹿な⁈黒鴉騎士団は情に厚いものだけで構成される、このダンジョンで最も清廉潔白な騎士団だ。彼らはこの内乱の際も、中立を宣言し、非戦闘員の退避を助けていた。ダンジョンマスターからの信頼も熱い騎士団だ。

 

こんな、混乱を助長するようなこと…

 

 

「よくも黒鴉騎士団を!黎明と黒薔薇だな?覚えていろ!後で粛清だァ!」

 

 

 

馬鹿は見当違いのことを言っているが無視だ無視。

 

 

「謀反止まりません!!!全ての層で反乱が発生中!中立派や親ダンジョンマスター派も反旗を翻しています」

 

一体、何が起きている!

 

「お、おい見ろよあれ!」

 

 

モニターにはダンジョン各地の映像が映し出されている。

どこもひどいものだ。突然の同時多発的な反乱により、誰が味方で敵かわからず、混戦状態に陥っている。

 

なんだあれは…

 

 

その中の一つ、その映像には、我々が会議を行う映像が流れていた。

 

そのモニターの隅には、赤い文字でこう表示されていた。

 

 

●Live

 

 

 

「まさか…放送されていたのか⁈」

 

空腹病による餓死までのタイムリミットも。95層司令官の失踪による食料不足の問題も。

79層以下を切り捨てることも。オロチが下からやってきているということを。

 

全て。

 

 

「閣下!各層の我が軍、総崩れです!離反が相次いでおり、士気は崩壊寸前です!」

 

「転移陣の接続を切れ!味方は捨てろ!」

 

「閣下!79層司令官が謀反!80層へ攻撃を始めました!」

 

「私直属の予備兵力を全軍投入しろ!」

 

「そんな戦力どこにもありません!!もう既に各層の対反乱軍のために派遣しています!」

 

「78層司令官より緊急連絡。食料を供給するなら、79層に攻撃を仕掛けても良いと」

 

「ふざけるな!食糧などないのだ!」

 

 

次から次へと、報告が入る。

 

 

 

「煉獄騎士シルヴァ様が討死なさいました…」

 

馬鹿な⁈ダンジョン最強の一角。シュラハトの剣と言われた、あの男が…

 

「シルヴァが…そんな馬鹿な…」

 

シュラハトは憔悴している。目が虚だ。

 

「どんな最後だった?」

 

「最後は己の命を犠牲にして反乱軍を魔剣にて吹き飛ばした模様です」

 

「そうか…シルヴァが派遣されていたのは確か75層だったな。これで75層は安全か。」

 

「シルヴァ様が派遣されていたのは65層です。それとシルヴァ様を倒したことで反乱軍は勢い付き、そして我らの軍からの離反者も多く相変わらず65層は圧倒的不利です」

 

 

「93層にて万魔将率いる軍勢が敗北。現在行方不明とのことです」

 

「もういい」

 

 

その声は、恐ろしく冷たかった。

恐怖で体が動かない。全身が震える。本能が叫んでいる、命の危機だと。

 

「貴様らに期待した私が馬鹿だった。やはり信じられるのは、私だけだ。」

 

ダンジョンマスターは、たった一つのスキルを持って生まれる。

 

一つだけだが侮るなかれ、ダンジョンマスターのスキルは他のスキルとは比べ物にならないほどに強力なのだ。

 

 

魔のダンジョンマスターのスキル

 

【魔神化】

 

 

自身の肉体を一時的にだが、神の境地まで引き上げる。

 

魔神。破壊に特化した、全てを滅ぼす災厄の神。

 

対神スキルや対神武器がなければ、倒すことはほぼ不可能。

 

 

 

 

 

 

 

 

これこそが、私のスキル。『魔神化』である。

かつての私はこのスキルを使い、多くの敵対するダンジョンマスターを蹂躙したものだ。

 

しかし

 

「衰えたものだ」

 

このスキルを使うのは数百年ぶり。強すぎる力に体が馴染んでいない。

今の私は、全盛期の5%と言ったところか。

 

 

しかし裏切り者を殺すにはこれで十分。

 

まずは私にかつて敗北したダンジョンマスターから潰すか?それとも暗黒騎士団を滅ぼすか?いや、オロチを壊すというのもありだな。

 

 

 

…いかんいかん、ダメだな。このスキルを使うと、思考が傲慢になり、油断してしまう。この油断で私は何度も死にかけた。

 

念には念をだ。

 

まずは最も弱い敵から潰していこう。ウォーミングアップだ。

 

 

「手始めに、侵入者から潰すか」

 

 

脆弱な軍隊であるにも関わらず、この異常事態でダンジョンが混乱する隙に、30層付近まで進軍した、運のいいだけの軍隊。

 

 

生意気にも、私のダンジョンに入植しようとしているではないか。

 

 

さぁ、潰そう。

 

 

 

 

 




私が考えたパワハラ上司



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

即墜ち2話

「梅花剣法をくらええええええ!!!」

 

「ぎゃああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

ダンジョンマスターであるシュラハトが、どういうわけか第6層に出現した。ダンジョンの支配者なのに何でこんなところにいるのか分からないが、シュラハトの護衛も少ない今がとにかく絶好のチャンス。俺は引き連れた『近衛隊』『黒曜白血隊』『神滅隊』とその他複数の部隊とともに、シュラハトへと攻撃を開始し、今に至る。

 

 

 

「あああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「いつまで叫んでんだ!うるせえ!さっさと黙れ!!!」

 

「ひっ、ひいぃぃぃぃ!!!」

 

 

万年筆が全身に刺さったダンジョンマスターは涙目になりながら逃走する。6枚あった漆黒の翼は全て毟り取られ、空も飛ぶことができない。

 

 

俺は身体強化魔法を使い跳躍し、一気にダンジョンマスターとの距離を詰め顔を掴み地面に押し倒す。

 

 

 

「個人的に飛行タイプって炎弱点になるべきだと思うんだけどどう思う⁈理由は焼き鳥になるから!お前に言っても無駄か!!」

 

 

俺は魔王装備の掌の部分に取り付けられた火炎放射器を起動する。

昔ガチャから排出された、決して消えぬ炎の加工品である。

 

この消えぬ炎は水をかけようと真空空間に置こうと、何があっても絶対に消えることはない。しかし延焼もしない。ただ高温で燃え続けるだけの炎。

 

故にこの火炎放射器は、ただ対象を高温で燃やすだけである。

 

 

「あばばばばばばばばばばば」

 

 

焼き加減はウェルダン!このまま燃やし尽くす!!

 

 

「ダンジョンマスターの丸焼きの完成だぁ!!」

 

「させん!!!」

 

「ッチ、護衛か!まさか足止めのホムンクルスを突破してきたのか!」

 

「無論!あの程度で私を止められると思うな!」

 

 

だがこの護衛の男は至る所から血を流している。重症だ、死にかけだ。それでもダンジョンマスターのためにここまで来たのか。何という忠誠心。敵ながら天晴れ!!

 

 

「閣下!今のうちにお逃げください!!!」

 

「ひ、ひぃぃぃぃ!」

 

ダンジョンマスターは前に出た護衛を一瞥もすることなく逃走する。

 

おい、護衛に対して何かないのか。薄情な奴め。

 

 

 

「死ねッッッ!!」

 

「死ぬのはお前だ、アホめ!!」

 

 

護衛の男は俺を刺し殺そうと、レイピアで突きを行う。

 

俺はその突きを右手で掴み受け止める。

 

 

【ミダースの手】発動。

 

俺の右手、手袋、護衛のレイピア、そして腕、胴体へと波のように、伝染するように一瞬で黄金へと変貌していく。

 

 

「ぎいぎきぎぁがぁぁかぎぎがっっっ」

 

 

7号を経由した圧倒的な魔力量によりなすすべもなく黄金の彫刻へと早変わり。

 

護衛の男は苦悶の表情のまま、美術品となりましたとさ。

 

 

 

●第98層司令官 執事長 ジェロが撃破されました。

報酬として…

 

 

「邪魔!さっさと退けろ!!」

 

 

●えぇ…

 

 

 

ダンジョンマスターは執事長が壮絶な悲鳴を上げたにも関わらず、振り返ることなく全力疾走する。

 

ほんの少しの時間でもうあんなこところに。逃げ足の速いやつめ。

 

「逃がすな!近衛隊、追撃せよ!!!」

 

 

「は!!」

 

何処からともなく現れたのは、漆黒の鎧に身を包んだホムンクルス達。

俺直属にして、俺自らが選んだ部隊である近衛隊がダンジョンマスターに追撃を開始する。

 

 

 

「こんな…こんなはずでは…」

 

 

「チェストォォォォォォ!」

 

 

「ひぃっ!!」

 

何と近衛兵の剣撃をダンジョンマスターは回避した。どうやら生き残ることだけは一人前らしい。

 

 

 

「なぁ、ダンジョンマスター倒したらどうする?」

「剥製にするか!ショッピングモールに展示するんだ!」

「いいねぇ!」

 

 

「ひぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

 

ダンジョンマスターは何らかの魔法か、自身の肉体を影に変えて地面に溶け込み逃走し、ある程度近衛兵から距離を取ると地上に出てきた、

 

 

 

「逃がすな!撃て撃て!」

 

 

近衛隊がアスリートの如く姿勢良く逃走するダンジョンマスターに対して銃撃をする。何発もダンジョンマスターに着弾するが、速度が遅くなるだけで、止まることなく逃走を続ける。

 

 

「ど、どうなってるんだ⁈何で末端の兵士が対神装備を持ってるんだ⁈」

 

「ちょうど神を殺すための訓練をしてたからだよ!飛んで火に入る夏の虫とはまさにこのことだ!!!」

 

「そ、そんなふざけた話…」

 

「お前ってさぁ!!悪、飛行、闇、神タイプだよなぁ!対神で神聖で光な炎属性、その炎で殴れば格闘タイプも追加!!俺は相性有利!さっさとくたばれぇぇぇぇぇぇ!!」

 

「そ、それを言うなら闇属性である私は光であるお前に対して有利に…」

 

「お前のことなんかしるかボケェ!」

 

俺は右腕を大きく振りかぶる。

 

「16倍弱点だぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

俺の燃え盛る炎の拳がダンジョンマスターの顔面に直撃する。K.O!!!

 

 

 

ペチャリ

 

 

俺のストレートがダンジョンマスターの顔面に一瞬めり込んだ後、墨汁のようにダンジョンマスターの体が弾け飛んだ。

 

 

分身⁈さっき影になった時か!

 

周りを見るとダンジョンマスターがまた離れた場所を走っていた。

 

 

「何度めだよこれ!いい加減くたばりやがれ!!ガチャコオオォォォォォルッッッ!!」

 

 

「は⁈何処ここ⁈何?何⁈」

 

 

ガチャコール。それはガチャから排出された物を俺の指定の場所に転移させ、自由自在に操る能力。

 

俺が呼び出したのは、魔剣バルムンクと神剣アイギス。

 

魔剣バルムンクはオレンジ色の液体で体が濡れており、水滴が地面にポタポタと垂れている。

その液体からは湯気が出ていた。

 

あっ、こいつまたオレンジジュース風呂に入ってたな⁈

悪いな風呂中に!

 

 

目標、逃走するダンジョンマスター。俺はイメージする、剣が刺さる瞬間を。

 

さぁ、飛んでけ!

 

 

「当たれぇぇぇっっっ!!」

 

 

 

 

「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁあ」

「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 

 

飛んで行った二本の剣はダンジョンマスターにクリーンヒット!!

二本の剣が深々とダンジョンマスターの体に突き刺さり地面に倒れる。

 

 

「うひゃひゃひゃひゃ!!何ダァこいつ!!こいつの魔力、スッゲェウメェ!!!スゲェ魔力の質が高ぇ!吸い尽くしてアイギスを超えてやるぜぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

どんどん溢れ出る血をバルムンクが吸い上げ吸収していく。

アイギスは剣の先から花を生み出して根っこでダンジョンマスターを拘束する。

もうこれで逃げられない。

 

 

「まだ生きてんのかよ、ゴキブリかよ」

 

 

「ひゅー、ひゅー、ひゅー」

 

 

ダメだなこいつ、生命力が尋常じゃない。これだけの執拗な攻撃を受けてまだ生きている。しかもとんでもない回復速度だ。もう既に首が治っている。今も深傷を負っているが、このままだとすぐに回復してしまうだろう。早く仕留めなければ。

 

 

「ま、待ってくれ、話し合おう、私はその、すごいんだぞう!具体的に言えないけど、すごいんだ!!そうだ、私がお前の部下となって敵を殺そう!私のコレクション、『人形』のダンジョンマスターから奪った彫刻や機構人形はどうだ⁈ちょっと待て…今命令したぞ、98層で大暴れしているだろう、足りないか⁈じゃあお前に管理権限を譲渡しよう!だから…」

 

 

どこにそんな元気があるのか、ぺちゃくちゃと話し続ける。

 

「あのさ」

 

 

「お前を殺したら、全部手に入るんだよなぁ」

 

 

交渉ってのは、対等な立場の者同士で行う物だ。

弱者が何と言おうと、強者は無視すればいい。

ただ、自分の決定を告げるだけ。

 

 

 

「そ、そんな、私はダンジョンマスターなんだぞ?こんな、こんなみっともない、こんなくだらない終わり方…」

 

 

「黙れ」

 

「ピェ」

 

 

 

 

 

 

 

●魔のダンジョンマスター 『五星』シュラハトが撃破されました。

報酬として『ダンジョン踏破記念!!!高レアリティアイテム排出率上昇フェス開催チケット』をプレゼントボックスに追加します。

 

●業績『初めての迷宮踏破』を獲得しました。報酬として『ナビゲーター【ランダム】』が追加されます。ここからは一部解説を私が引き継ぐ。あ、ちょっと何勝手に。

 

●業績『流星』を獲得した。この業績はとある星の5人のダンジョンマスター、通称『五星』その一角を落とした者に与えられる。五星属性を持つ存在に対してプラスの補正が働く。

 

●業績『神を撃ち倒した日』を獲得した。お前は紛い物だが神を殺した。これは否定できない事実である。報酬としてこの作戦に参加した全てのユニットに対して神の眷属属性を持つ存在に対しての特攻を付与する。

 

●業績『ゴッド・イーター』を獲得した。お前は恐れ多くも神との戦闘時、その翼を喰らった。勿論すぐに吐き出して捨てたがそれでも生きた神の細胞と血はお前の中にある。スキル『お残しは許しません!』とのシナジー効果により神としての力を僅かだが得た。…何だこのふざけた名前は。このスキルの名前を『捕食する者』へと改名する。

 

●業績『国崩し』を獲得した。お前は一つの国を滅亡にまで追いやった。もはやお前達はただの荒くれ者ではない。一つの国を凌駕する集団である。ならばそれ相応の力が必要というものだ。山田ドラゴンガチャ王国に対して、その規模に見合う行政能力を必要最低値まで上昇させる。

 

●業績『簒奪者』を獲得した。お前はシュラハトの全てを奪った。彼女が生き、千年以上も積み重ねた全てをだ。お前は略奪、窃盗、強盗、強奪などを行う際にプラス補正が働く。奪い尽くせ。

 

●業績『引き摺り下ろすホモサピエンス』を獲得。

人類管理者、星を統べる者の眷属を撃破した。この世界の神代では多くの管理者が人類を滅ぼそうと眷属を生成したが結果としてそれらは全て狩尽くされた。この業績は神代を生きた戦士の多くが所持した歴史ある業績である。人類の上位者属性を持つ者に対してプラス補正が働く。

 

●業績『落日の王国』を獲得した。

お前は国を滅ぼした。ただの国ではなく、かつては繁栄を極め、太陽の沈まぬ国と、誰かが言った。誰もがその太陽は堕ちないと考えていた、だが堕ちた。

成熟度が一定を超えた国家に所属する者に対してプラス補正が働く。

太陽属性を持つ者に対してプラス補正が働く。

日本人、スペイン人ユーザー等に対してプラス補正が働く、まだ足りないぞ。全ての太陽を堕とすのだ。

 

●業績『王亡き国』を獲得した。

お前は国家の王とその血を引く者を殺し尽くした。運のいい男だ。この国に王は一人しかいないのに。報酬として、全てのユーザーまたは王権所持者、その血を引く三親等以内の生命体に対してプラス補正が働く。

 

●業績『国家成熟』を獲得。ある一定レベルまで国を成長させた。報酬として情報開示。

【山田ドラゴンガチャ王国】現在の順位『842位』最下位。

天使に備えよ、人に備えよ、森に備えよ。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第二部 完

『魔』のダンジョン第98層 王宮 玉座の間

 

 

魔王城の玉座の間は荘厳かつ恐ろしい雰囲気に包まれていた。

広大な空間には豪華な装飾で飾られた重厚な壁が立ち並び、彫刻の施された柱が天井までそびえ立っている。スケールが何もかも大違いだった。

 

玉座は黒く輝く大理石で作られ、その背もたれには魔のダンジョンマスターの紋章が刻まれていた。玉座の周りには揺らめく松明が立ち並び、蛇の形をした装飾が妖しく照らされている。

 

 

王城の玉座の間は、ダンジョンマスターとしての力と統治の象徴だった。シュラハトはダンジョンの精密な操作をする際、常にこの玉座に座り、ダンジョン全体に影響を与えていた。

 

 

 

だがそんな玉座も今では山田の物。

 

 

 

玉座には、魔王が座っている。恐るべき魔王、山田竜。その玉座の前には、何十人ものダンジョンの幹部たちが跪いていた。

 

幹部たちの服装は皆ボロボロで汚れており、多くは負傷し疲労していた。彼らの目には諦めしかなかった。

 

玉座の前にひざまずく幹部たちの姿は、魔王の圧倒的な存在感と示された力の前に、彼らの無力さを感じていた。長きにわたり繁栄した魔のダンジョンの終焉。ダンジョンマスターは死に、ダンジョンは他者の物へ。

 

もはや避けることはできない、魔のダンジョン最後の日。

 

 

重苦しい空気の中、玉座に座る運命の魔王山田の隣に控える白と青色の衣を纏った神官が口を開く。

 

 

「跪きなさい、恐れなさい、崇めなさい。龍王国を統べる魔王、運命を司る幸運の神、山田様の御前です」

 

「魔のダンジョンの残り少ない幹部の方々、本日はお集まりいただきありがとうございます」

 

この玉座の間に集ったのは、山田の護衛である近衛隊をはじめとする、ホムンクルス兵。

 

ダンジョンを裏切った暗黒騎士団。

元ダンジョンマスターと派閥の兵士。

 

そしてこの魔のダンジョンを守護していた反乱軍の魔物達。ダンジョンマスターに対して叛旗を翻し、そして見事ダンジョンマスター派の魔物達を打ち砕き、しかし外来種である魔王に負けた敗残兵であった。

 

彼らは負けたのだ。完膚なきまでに、ほとんどの兵士は山田軍と戦うことなく、第三者と自らの歪みにより自壊した。

 

 

ここは、そんな敗者達の処遇を決定する場である。

 

 

 

「私は山田様を信仰する運命教会最高司祭、アリスと申します。僭越ですが、今回の降伏式の司会を務め、式を進めさせて頂きます」

 

 

 

「あ、お土産として運命書と寄付金の申請書、山田様黄金像に温泉卵、冷凍寿司などがございますので、退出時に受付よりお受け取りください。運命教会は現在深刻な資金難に陥っており、皆様の寄付をお待ちしています。それではこれより、このダンジョンを支配するお方、山田様のご挨拶です」

 

 

山田竜。

 

神の力を行使するダンジョンマスターを正面から倒した、恐るべき魔王。

 

そんな化け物が、口を開く。

 

 

「良い城だ。これからこの層が丸ごと俺の家になるかと思うと、ワクワクするな。まだちょっと血生臭いけど、まぁそれは今度掃除すればいい」

 

 

全てが配信されていた。このダンジョンを千年以上守護してきたこのダンジョンの主、全てのダンジョンマスターの頂点に位置する五星の一角、神に匹敵する力を持った魔のダンジョンマスター、恐怖の象徴、シュラハト。

 

そんな彼女がなすすべもなく、みっともなく、惨めに殺されるところを。

 

 

だが、そんなことは彼らには重要なことでは無かった。

 

 

反乱軍の後ろからオロチが追撃し、全てを蹂躙していく。後ろにいた者から殺される。

 

そして飢餓により次々と死んでいく。

 

オロチと飢餓から逃げるために、80層では地獄のような争いだった。

 

オロチと飢餓の恐怖に怯える反乱軍とダンジョンマスターを失った下層部連合軍。どちらも生き残るために、全力で殺し合った。

負ければ全滅。そんな正気を疑うような地獄絵図。

 

 

そうして勝ったのは、反乱軍だった。

 

しかし地獄は終わらない。

 

ダンジョンマスターが死の間際に山田に命乞いをした。

お前のために、敵を殺そうと。人形の支配権を与えようと。

 

その結果として、98層各地に設置されてあったシュラハトのコレクション、彫刻や銅像などが下層部連合軍の殺戮を始めた。

 

反乱軍により疲弊した中でダンジョンマスター秘蔵の最後の戦力が突如として攻撃を始める。

突然の後方からの敵に下層連合軍は総崩れ。

 

下から人形兵、真ん中には反乱を起こした、かつてダンジョンマスターだった者や無理やり徴兵された派閥の魔物。これにより、98層から95層の連合軍は挟み撃ち。

 

98層から95層のモンスターは転移を行い89層から80層に避難した。

しかし人形兵達の追撃は止まらない。人形も転移を行い追撃を始める。

 

こうして、反乱軍と人形にサンドイッチのように挟まれた下層部連合軍は全滅した。

 

 

 

 

だからどうした、という話だが。

 

 

分析官が予測した、80層でオロチが停止すると言うのは、全力で各層の軍隊が攻撃したと仮定した場合の話。

 

反乱軍はオロチ相手に戦闘を行わず、逃げることを選んだ。当然、80層では止まらない。

 

下からは人形とどういうわけか反乱を起こしたダンジョンマスターだった者たち、そして無理やり徴兵された派閥のモンスターが手を組んで反乱軍を攻撃し始めた。

 

今度はオロチと人形や元ダンジョンマスターと派閥の魔物達に挟み撃ちにされ、反乱軍は壊滅。

 

反乱軍の決死の攻撃でオロチはエネルギー切れ寸前に、休眠状態に入った。元ダンジョンマスターと人形兵も退け、一息つけるか、そう思った反乱軍。

 

そんな疲れ切った彼らの前には、大量のホムンクルス兵と暗黒騎士団が現れたのだ。

 

 

ホムンクルス兵の降伏勧告に、反乱軍はついに悟った。

 

ああ、我々は全て手のひらの上だったのだなと。

 

反乱軍は降伏した。疲れ切った反乱軍に選択肢は無かった。

 

 

 

 

「それで?お前たち、これからどうする?」

 

「どうする、とは」

 

生き残った反乱軍の幹部が口を開く。

 

「決まっているだろう?今ここで死ぬか、俺に従うかだ」

 

 

 

 

勝てない。

圧政者であったダンジョンマスターは、耄碌し落ちぶれてはいたが、それでもダンジョンの魔物達にとっては恐怖の象徴だったのだ。

 

そんなダンジョンマスターを上回る男。ダンジョンマスターとの戦闘での傷は癒えており、そして周りには完全武装のホムンクルス達が控えている。

 

 

一方こちらは、疲労困憊。降伏しか、選択肢は無い。

 

 

 

「それは勿論、山田様に従うばかりです!」

 

沈黙を破ったのは、恰幅の良い中年男性。

95層司令官である。彼は大量の資源を持ち去ってダンジョンマスターを物資不足で苦しめ、早期に侵略者である山田に対して外交官を送り降伏した。

 

 

 

「お前のおかげだ、ここまで戦争が加熱したのは。ダンジョンマスターを打ち破った際、下層部連合軍と反乱軍が和平を組んで俺たちを攻撃してくる可能性だってあった。だが飢餓がそれを不可能にした。その功績に報いるとしよう。お前を一時的にだが、このダンジョンの管理者に任命しよう。亅

 

「ははぁ!ありがたき幸せでございます!」

 

「他の協力者達にも報いなければな。ダンジョンを裏切った暗黒騎士団と、元ダンジョンマスターには領地を与えよう。派閥の奴らはまた今度考える」

 

「あ、ありがたき幸せ!」

 

暗黒師団長は無言だが、元ダンジョンマスター達は喜んだ。もう一度、ダンジョンを借り物だが運営できるのだ。

 

 

「それで、お前は宰相だったそうだな。俺はダンジョンを完全に制圧したんだが、どうもクエストがまだ未達成らしい」

 

山田は魔のダンジョン出現時のクエストが達成されないことを95層司令官に質問する。SSR確定コイン10枚という、破格の報酬。無視できる物ではない。

 

 

「クエストが何なのかは存じ上げませんが、ダンジョンマスター同士の戦争にはいくつか勝利条件が存在しています。その点で言えば、山田様はまだ勝者となったわけではありません。ええ、ちょっと失礼」

 

95層司令官は玉座に近づき、飾りを押すなど何やら操作を始める。

 

そうして玉座から何かが取り出された。

一つの水晶玉であった。これこそがダンジョンコアである。

 

 

「おおー、これがダンジョンコアか。それで?これをどうするんだ?」

 

「そうですね…大きく分けて勝利条件は2つあります」

 

「ダンジョンコアの破壊。それによりダンジョンの全てはDPに還り、我ら魔物は一時的にですが破壊したダンジョンマスターの所有物となり、自動的にDPに返還されます。この際、ダンジョンマスターの力が一部引き継がれます」

 

「ダンジョンが消えるのは嫌だな、却下」

 

「そしてもう一つ、併合。ダンジョンをそのまま手に入れることができます。我々モンスターも消えません。全て貴方のものです。しかしこの方法では、ダンジョンコアが必要でして」

 

「ああ、それなら持ってる。ガチャコール!」

 

 

山田がガチャコールにてダンジョンコアを呼び出す。

かつて最低品質のダンジョンコアがガチャより排出された。そのダンジョンコアはこの魔のダンジョンのコアに比べて小さく、輝きも小さい。

 

 

「おお、流石は山田様!ささ、では早速併合を」

 

「待て」

 

 

山田は暗黒騎士団長を見る。

 

 

「騎士団長。先ほどから無言だが、何か言いたいことは?」

 

「…」

 

「言え」

 

騎士団長は口を開く。

 

「お前の手により多くの団員が殺された。お前を許すことはできない。今すぐにでも斬り殺したい。他の者はお前を過大評価している。シュラハト様が負けたのは、相性の問題に過ぎない。私なら、勝てるだろう」

 

「だが、私には部下がいる。シュラハト様に逆らい、理不尽な嫌がらせを受けたにも関わらず、私についてきた部下達がいる。私は部下が生き残るためなら、何だってする。裏切り者の誹りだって受ける。」

 

「だから私はお前に従う。ただ、それだけだ」

 

 

 

 

「ああ、お前は部下が死んだことを恨んでいるのか。なら安心しろ。蘇らせてやる。おい、もってこい」

 

ホムンクルス達が命令に従い、一つの氷塊を運んでくる。

その中には、一人の獣人が閉じ込められていた。

 

「あれは…リザリオン」

 

「おや、知っておられるので?」

 

「第1層の司令官だ。武器や道具融通をしていた」

 

 

「ガチャコール」

 

山田はガチャコールにて、小さな祭壇を呼び出した。

その上にホムンクルス達は氷塊を設置する。

 

 

この祭壇は、山田が数日前にガチャより手に入れた、SSRアイテムである。

 

 

 

●転生の祭壇

 

あ、どうもナビゲーターとの交渉で何とかアイテム解説枠を勝ち取りました!今後ともよろしくお願いします!

さてこの転生の祭壇なんですけど、簡単に言えば蘇生装置ですね。

死体または生者を祭壇に拘束して、一回だけ強制的に転生させます!

転生の際にホムンクルスと同様にアイテムと混ぜ合わせることも可能です。転生させるためには、正規の寿命による死ではない、死んでから一定以上の時間が経っていないなどの数多くの条件を満たした場合転生できます。

バランス崩壊を防ぐために重要情報が含まれる記憶は残念ながらロックされます。さらにレベルがリセットされ弱体化します。

蘇生した生命はあなたのユニットとして数えられるため、敵意はありません。記憶の完全消去もできますので、頑張ってください。

 

 

 

山田は祭壇を起動する。氷塊に光が集まる。

 

光の中から現れたのは、獣魔将軍リザリオンだった。若返っていた。

 

「約束は守ったようだな」

 

「ああ、俺は約束を守る男だからな」

 

唖然とする幹部達。ダンジョンマスターの創造主であるあのお方でなければできないような、死者の蘇生。

 

 

「そう、生き返ることができるんだよ」

 

「続いてはこいつだ」

 

ホムンクルスが運んできたのは、一つの棺だった。

その棺は、暗黒騎士団が用意できる物で最上級のもの。

そして、つい先日埋葬したばかりの棺。

 

 

 

「まさか…」

 

 

その棺には、シュラハトと書かれていた。

 

 

 

シュラハトの死体は山田と暗黒騎士団との契約に従い、騎士団長に引き渡された。多くの騎士団員がシュラハトの死体に対して苛烈な意見を上申したが、騎士団長はそれらを退け、シュラハトを丁寧に埋葬した。

 

ただ墓に対して、地獄に堕ちろと刻んだだけ。

騎士団がシュラハトから受けた理不尽に対して、それはあまりにも控えめだった。

 

騎士団長は反対する団員に対して、それでも我らを生み出し、千年にわたりダンジョンを守ってきたのだと何日にも渡り反対派を説き伏せた。

 

 

 

そんなシュラハトの棺が今、光に包まれる。

 

 

 

 

「な、何だ⁈私は蛮族に殺されたはず!」

 

「閣下」

 

光が消えた時、現れたのはシュラハトだった。しかしどこか若々しく、体も少しだが小さくなっている。その姿を見た幹部達は、どこか懐かしげな、かつての輝かしき栄光の日々の思い出に浸るかのように、涙ぐんだ。

 

 

どれだけ落ちぶれようと、反乱しようと、それでもこのダンジョンのマスターなのだ。

 

かつては敬愛し、尊敬し、憧れたダンジョンマスター。死んだ彼女が蘇ったのだ。

 

騎士団長は混乱するシュラハトの前に歩み、跪く。

 

 

 

「閣下。私はあなたに忠誠を誓った身。このように裏切ってしまい、申し訳ありません」

 

「貴方は、道を踏み外してしまった。数百年にわたる外敵の存在しない平穏な日々。それがあなたを堕落させてしまった」

 

「正直、最後の魔神化は驚きました。あなたは最近、傷を負うことを恐れていた。鍛錬さえ疲れるからとサボり続けていた。痛いからと自らが戦うことを避けていた。敗北こそしましたが、昔のように率先して戦おうとしたのです。見直しました」

 

「…」

 

無言でシュラハトは騎士団長の話を聞いた。

シュラハトはしばらく無言だった。

 

「すまない、私はどうかしていた。」

 

「私はダンジョンマスターだ。ダンジョンとそこに住まう者を第一に考えるべきなのに、私は、私は…」

 

「良いのです、幸運なことに、閣下はまだやり直せます。一から始めましょう。」

 

「すまない、本当にすまない!」

 

シュラハトは頭を下げる。かつての傲慢なシュラハトでは考えられないことであった。

 

「閣下には、暗黒騎士団員として、一兵卒から鍛え直して頂きましょう。」

 

「ああ、私は力を失った。良い機会だ、全て一からやり直さなければ」

 

「我らのマスターだ。連れて行け」

 

「はっ!」

 

暗黒騎士団の騎士達がシュラハトを挟み連れて行こうとする。

 

 

「騎士団長スーパーウルトラスペシャル訓練です。頑張ってください」

 

 

 

 

 

「えっ」

「えっ」

「えっ」

「えっ」

「えっ」

 

 

声を上げたのはシュラハトとシュラハトを連行しようとした騎士団長の側近、そしてその他の幹部達。

 

「待って待って待って!嘘だろう!」

 

シュラハトは先ほどまでの決意の表情が一変、絶望に満ちた表情へと代わり、騎士達は同情しながらも連れて行こうとする。

 

「やめてくれぇぇぇぇぇぇぇ!!騎士団長スーパーウルトラスペシャル訓練だけは嫌ダァぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

そうして、シュラハトは連れて行かれた。

 

 

「覚えていろ!いつか、私が力を取り戻した時、お前たちに認められるようなダンジョンマスターとして、戻ってきてやるからなぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 

 

 

 

 

 

「山田様。我ら騎士団、改めて忠誠を誓いましょう」

 

「おお、俺も誓うぞ!いつになったら戦えるのだ!」

 

山田はシステムウィンドウを開く。

数日前、久方ぶりに運営よりメッセージが届き、次回開催イベントに関するお知らせが届いたのだ。

次のイベントの開催予定時刻を確認する。

 

 

『予告!エンジェル・フォールが73時間24分後に開催されます!』

 

「喜べ、戦いの日は近い。」

 

「おお!ついに私は、戦士として戦えるのだな!」

 

リザリオンは嬉しそうに雄叫びをあげる。

 

それを見ながら山田はダンジョンコアを操作し始める。

 

「さぁ、併合だ」

 

●業績『迷宮主』『併合者』『大迷宮を支配する者』を獲得した。お前も迷宮の支配者だ。

報酬として、迷宮確定ガチャコイン、安定度上昇、迷宮内でのアイテムや資源の発見率上昇が与えられる。

 

 

意外とあっけなく、簡単にダンジョンの併合は終わった。

 

 

 

「それでは最後に、これからの山田ドラ…ゴホン、龍王国の繁栄を願い、忠誠の証として、盃を交わしましょう」

 

幹部達に黄金の盃が配られる。その中は『卵バーテンダーおすすめ!初心者でも安心して味わえる酎ハイ!』が満たされている。

 

「山田様はこちらを。」

 

「どうも」

 

山田に渡されるのは、蠱毒と滅亡の杯。

一つのダンジョンのエネルギーをほぼ丸ごと酒に変換されたそれは、極上のブランデーのように深い茶色で、香りを漂わせる。

 

 

 

「お前ら!今から3日後、天使との戦いが始まる!この戦争で俺の王国はダンジョンから全てを奪い、大きくなった!」

 

「今度は天使から全てを奪い尽くせ!」

 

「さぁ、飲め!共に前進しよう!」

 

 

「「「山田ドラゴンガチャ王国に繁栄あれ!」」」

 

 

 

 

 

 

 

「まっず!!!おぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

誰か、口直しにオレンジジュース持って来い!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シュラハト討伐から降伏式までの五日間のガチャ排出品

 

 

C『松茸栽培セット』

HR『権能 屠殺場』

SSR『転生の祭壇』

C『ありが鯛刺身』

C『スキル ニキビ消去』

C『忌まわしき肉【和風ハンバーグに調理済み】』

R『全自動お掃除ロボット』

C『スキル 自販機当たり確定』

UC『聖歌隊』

C『ハズレ ポケットティッシュ一年分』

 




これにて第2部完結です。これまでありがとうございました。3部更新は8月後半を予定しています。

ツイッターアカウント https://twitter.com/taiyoukuntax

アカウント名は太陽くん。いらすとやの汗をかいた赤い太陽がプロフィール画像です。

このアカウントで更新状況などを公開します。

パソコンからご覧の方は小説上部の評価から、スマホの方は右上のメニュー、評価付与から評価が可能です。まだの方は是非。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

番外編 ゴブリン占い師の記録

Case1 少年A

 

「このままじゃダメなんだよ、俺はもっともっと強くなりたい、皇女様を守れるような、騎士になりたい」

 

「なぁ、どうすれば俺は強くなれるんだ?」

 

「あんた、ガチャから出た宝石を持っているかい?」

 

「あぁ、この俺の意思だろ?…まさか、使い方がわかるのか⁈教えてくれ!」

 

「簡単だよ!」

 

 

バキバキバキバキ

 

「えっ」

 

「ほら、食いな!」

 

「ごがががががががががぎ」

 

「これは魔力の結晶だからねぇ。食べれば吸収されてその力が身につくよ」

 

「…どうしたんだい、顔を真っ青にして。早く飲み込みな」

 

「…おや?」

 

「だ、誰か!!医者を呼んどくれ!急患だよ!」

 

 

 

 

 

「止めとくれ!冷え症のババアに氷属性攻撃は弱点だよ!わざとじゃないんだよ!」

 

 

 

 

 

 

 

Case2 暴食の邪神 ベヘモット

 

「あんた来るんじゃないよ!あんたがいるだけでお腹が空くんだ!」

 

「それはそうだろうな。我が飢餓の権能が発動しているのだから」

 

「じゃあ権能を使うな!嫌がらせかい⁈」

 

「そうだ!俺は邪神ベヘモット!人が苦しむ姿が好きなのだ!」

 

「そして金がない!金のほとんどは食費と投資で消えてしまった!どうかタダで占ってくれ!」

 

「やだよ!なんでただで占わなきゃなられぇんだ!」

 

「ではずっとここにいよう!」

 

「…わかったよ。この前蘇生した82層司令官の作るミートパイは絶品らしいよ」

 

「ミートパイか!悪くないぞ!これは礼だ!」

 

【ガーリック&ガーリック】1000GP分優待券

 

腸破壊ガーリック。胃や腸が頑丈なホムンクルスや魔法で対策をしなければ次の日お腹を壊すことほぼ確定なにんにくを使う料理店。

ホムンクルスに絶大な人気。なおホムンクルスと山田以外は近づこうとしない。

以外は近づこうとしない。

 

 

 

 

Case3 お掃除ロボット

 

 

「な、何だいあんた⁈」

 

「ウィィィィィィィィン」

 

「く、来るんじゃないよ!ここにゴミはないよ、あっち行きな!」

 

 

「蝿ヲ発見、ビーム発射」

 

ピュッ

 

「ひえっ」

 

『処分完了』

 

 

 

 

Case4 縺代s縺帙>

 

「真の剣士は武器を選ばない、それが名剣であろうと、木の枝であろうと、剣を極めたものは獲物を選ばない、そう考えていました」

 

「ですがこれは、私というキャラクターに与えられた設定に過ぎなかったのです」

 

「私に相応しい剣が欲しい。聞けば、名もなき聖剣というものがあるそうです。それはどこにありますか」

 

「わからんね、うまく隠されているようだ。だが安心しな、その剣は真の剣士にしか抜くことはできない。お前さんなら、抜くことができるだろうさ」

 

 

 

Case5 拳銃

 

「貴殿は占い師だそうだな!華山派の武功を学んではどうだろう!」

 

「嫌だね!」

 

 

 

Case6 神父

 

「さすがは山田様が出した占い師ですね。あなたの占いは大当たりでしたよ。計画通り、聖遺物の回収に成功しました。その礼として、運命教会の星読みの称号を与えましょう」

 

「は、ありがたいことだね。で?金はちゃんと払ってくれるんだろうね」

 

「ええ、もちろん。こちらの小切手に好きな金額をお書きください。運命教会が肩代わりします」

 

 

Case7 最高司祭

 

 

「いま神父様が来ませんでした⁈何をしましたか!」

 

「占い内容は個人情報の観点から教えられないよ」

 

「そこを何とかお願いします!」

 

「星読みの称号と何も書かれていない小切手をもらったよ」

 

「あぁ、そんな勝手に!神器製作のためにいくらあっても足りないのに…」

 

「それともうすぐあなたにライバルが訪れるよ。そいつは運命教会の権力を手に入れようと、暴力に訴えるだろうね」

 

「そんな!」

 

 

 

 

 

 

Case8 カメラ男

 

「^_^Σ੧(❛□❛✿)Σ('◉⌓◉’)(๑╹ω╹๑ )」

 

「すまないね、何を伝えたいのかさっぱりだよ」

 

「(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾✌︎('ω'✌︎ )*(●´ω`●)」」

 

「いや、だからわかんないって。パントマイムを止めて筆談で頼むよ」

 

 

 

 

「ああ、六課の仲間がいつ来るのかだって?で、具体的に誰が来るか占って欲しいのかい?」

 

「戦う青色発光ダイオード?人型消防車?赤レンジャー?何言ってんだい」

 

 

 

「えっ、六課のメンバー?」

 

 

「…まぁ、しばらくはないね」

 

「٩( ᐛ )و( ͡° ͜ʖ ͡°)✌︎('ω')✌︎」

 

 

「どういうパントマイムなんだい、それ…」

 

 

 

Case9 ナウル共和国

 

「リン鉱山?バカ言ってんじゃないよ。あんたらはそのリン鉱山で大変なことになったんだろう?懲りないねぇ」

 

「そもそもリン鉱山、ほとんど残ってないよ。強いて言えば…ここだね。ここに僅かだけどある。すぐに無くなるだろうけど、まぁ頑張りな」

 

 

Case10 EU服飾装飾品ブランドメーカーCEO

 

「どうすれば利益を増やせるか?あんたそんなこといってるばあいじゃないよ。役員があんたの解任決議のために頑張ってるよ」

 

「投資?職人を大事にしな。量産品じゃなくて、職人が一から、手作りの工芸品。伝統を守るんだね」

 

 

Case11 アイスランド政治家

 

「今年の農作物は不作だよ。病気に注意しな」

 

 

Case12 社畜死神

 

「いつになったら戦いは終わるんですか⁈」

 

「終わらないね。まだまだ続くよ」

 

「うわぁぁぁぁぁん!残業はありませんけど、とにかく忙しいんです!人手が足りないんですぅ!」

 

「覚悟しな」

 

「あぁ…どうしてこんなことに…無駄に才能を持って生まれた自分が恨めしい…」

 

 

 

 

Case13 人質

 

「私は運命教会神学機械党党首のマーケンである!」

 

「…はぁ、それで?(心底面倒くさそうな顔)」

 

「私は目覚めたのです!あの信じられないくらい高度な技術でできた機械の前には、私のような機械人間など玩具に過ぎないと!」

 

「私はガチャ様という機械、そしてそれを使うことのできる山田様の2柱を神とする宗派を立ち上げました!」

 

「私の宗派の命題は、「神に等しい力を持つ機械は神なのか?」です!私は神に等しい力を持つ機械を製造し、山田様とガチャ様のために使おうと考えています!」

 

「そこでなのですが、どのような機械を作れば良いでしょうか」

 

 

 

 

「星だね。星に関係する機械を作りな。望遠鏡とか、宇宙船とか」

 

 

「なるほど!では隕石迎撃用超長距離対空砲台を作りましょう!」

 

「何で?」

 

 

 

Case14 7号

 

「私ね、首を集めることが趣味だったの」

 

「ダンジョンの中が大混乱の隙を狙ってね、階層司令官の首を斬り落とすの。司令官や幹部、100人くらい首を落としたかな?みんな強くて、斬るのも楽しかったなぁ」

 

「でもね、竜が転生の祭壇を手に入れちゃった。それで転生に使うからって理由で、首は全部没収されちゃった」

 

「まぁ、それでまた殺し会えるからいいけど」

 

「それでね、天使って強い?斬ったら楽しいかな?」

 

 

「……ええ、天使は7号様を楽しませることができるでしょう」

 

「それはよかった。強い天使の羽で羽毛布団でも作ろうと考えてたんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

Case15 山田竜

 

 

「占いって楽しいよなあ。どんな結果がでるかわからないからワクワクする」

 

「でもさあ、それっていい結果が出た時だけなんだよな。悪い結果が出た時思うんだよ、俺のことは俺が決める、何勝手に決めてんだって」

 

「都合のいい話だけど、いい結果が出れば喜ぶし楽しい。嫌な結果が出た時だけムカつくだけだ」

 

「親と警察と先生、その人達以外の思い通りになることが嫌なんだよ」

 

「それで?俺を占った結果は何だった?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんた、死ぬよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「上等だ、誰かは知らないが斬り殺してやる」

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

100連

 

 

ずいぶん前に告知されたイベント『エンジェルフォール』の開始まであと2日にまで迫っている。

 

何よりも注目すべきなのは、このイベントが第3回だと言うこと。既に何らかのイベントが最低でも過去2回開催されていると考えられる。

 

運営!何で俺を無視するんだ!たった1000人しかユーザーいないんだぞ!全員強制参加させないとイベント盛り上がらないだろ!

 

 

とりあえず、俺はこのイベントで大活躍してランキングを上昇させるつもりだ。

 

ダンジョンも併合、ホムンクルスの生産も進み結構な数の国民を抱えているにもかかわらず俺が未だ最下位なのは、イベント不参加が理由であると考えられる。

 

 

 

 

理不尽な運営め………、いつか運営スタッフの顔をビンタしてやるからな。

 

 

………しかし、考えによっては参加しなくて良かったのかもしれない。

業績達成により得た情報、『842位』最下位。

 

 

実に158人ものユーザーが死亡したと思われる。

 

 

………このイベント、もしかして想像以上に過酷なのか?

 

まずいぞ、今の戦力は正直言って不十分だ。

 

 

 

最強宇宙生命体のスライムはダンジョン攻略の際に力を使い疲労困憊、現在休眠状態である。簡単な弾丸の模倣くらいしかできない。

ダンジョンのような大規模な侵食行為はしばらくはできないだろう。

 

俺が併合した魔のダンジョンはその多くの兵士が転生の際にレベルがリセットされ弱体化、生き残った者達もダンジョンの復興作業でお忙し、残念ながらこちらに兵を拠出する余裕はない。

 

というか、人手を俺に求めてきたくらいだ。ダンジョンの管理者となった95層司令官はオロチと凄惨な内戦によって荒廃したダンジョンの復興作業に「予算と人手がいくらあっても足りませんよ!」と泣き言を言っていたが今は放置。

 

悪いな、こっちも余裕がないのだ。その代わりと言っては何だが、対天使装備など使えそうな装備やアイテムをダンジョンより拝借した。

これで倉庫の管理費用も浮くだろう。

 

 

ガチャから出たユニット達も休憩中。

 

 

つまり今俺が使える戦力はホムンクルスだけ。あいつらはマジで回復能力が凄まじい、さすがは戦闘用ホムンクルス。

なかなか疲れないし、睡眠もほとんど必要ない。傷だって少しすれば回復する。

 

しかし良くも悪くもホムンクルスは突出した戦力が少ない。イベントで圧勝するには他を寄せ付けない、異常な戦力が必要だ。

 

 

すぐにでも、強力な戦力が必要だ。

 

 

 

 

 

つまり、ガチャである。

 

 

ただのガチャではない。100連ガチャである。

 

 

 

俺には、ダンジョン司令官を倒して手に入れた大量のコインがある。残念だがこれだけでは100枚に届かない。

 

 

これにさらに、ダンジョン踏破報酬として得た、以下のアイテム。

 

SSR確定ガチャコイン10枚

惑星確定ガチャコイン1枚

外出権

 

 

 

この外出権というものは使い方も効果も不明だが、今は必要ないので放置。

 

100連に足りない分は、惑星確定ガチャコインとSSR確定ガチャコインを消費する。

 

 

SSR確定ガチャコインが数枚余るが、これらはもしもの時のために温存しておく。

 

 

 

これだけじゃないぞ、ダメ押しとしてシュラハト撃破報酬、『ダンジョン踏破記念!!!高レアリティアイテム排出率上昇フェス開催チケット』を使って高レアリティの確率を上げてやる。

 

 

さあ、ガチャの時間だ!

 

 

俺はチケットを切り目に沿って剣で真っ二つにする。

 

 

●フェスが開催されました!今から10分間ガチャより排出されるアイテムのレアリティが、なんとなく上昇します!

 

 

 

 

 

 

な、なんとなく!?たったの10分間⁉

 

ええっ、これってシュラハトの撃破報酬なんだぞ!

 

あの、五星の一角、魔のダンジョンマスタ、シュラハトだぞッ!

 

そのシュラハトの撃破報酬なんだから、かなり貴重なアイテムのはずだ、それなのになんとなくって………

しかも10分って!短い!

 

まずい、時間が無い。早く回さないと。

 

 

 

 

まずは今日の無料ガチャだ。

 

頼むぞ………頼むぞ………

 

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

 

C『コロンブスの卵』

 

 

コロンブスは貴族達に「卵をテーブルに立ててください」と頼んだが、誰も出来なかった。

 

するとコロンブスは卵の底を潰して平らにし、見事に立たせて見せた。

誰も行っていないことを最初にすることは非常に困難だが、方法がわかったのなら誰でも簡単だということを貴族達は理解したという。

 

 

 

 

 

空中で底が潰れた白い卵が実体化する。

 

そしてそれが落下する。

 

 

 

あっ

 

 

 

 

べチャ。

 

出現した卵は落下の衝撃でグチャグチャに割れ、中身があふれ出す。

 

 

………う、うーーーん。

 

微妙だ、正直いって今100連ガチャを回したくない。幸先が悪すぎる。

 

だがそんなことを考えても仕方ない。10分しかないのだ!

 

 

 

 

100枚ものコインを次々と投入していく。

 

チャリンチャリンチャリンチャリン。

 

 

 

さあ、レッツ100連!

 

 

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

 

業績【100連ガチャ】を達成した。

報酬として、種類別分類システムを与える。これで見やすくなったぞ、良かったな。

 

 

 

 

 

 

 

 

ユニット

 

SSR『一閃皇帝』

SSR『エースパイロット』

SSR『暴食の魔王』

SR『黒髪ロングヘアー剣豪系女子高生』

SR『皆殺し探偵』

R『ユスティア陸軍士官』

R『サプライズ忍者衆』

R『北の守護龍』

UC『流星の弓使い』

C『舐めると殺すぞ三十郎』

C『パンダ補給兵』

C『ポンコツメイド』

C『忘れっぽい魔法賢者』

C『うどん職人』

C『焼きそば職人』

C『スカウトマン』

C『黄金騎士』

 

 

 

 

集団、地域

 

UC『ダンジョン都市 歌舞伎町』

UC『死んでよ暗殺の村』

C『株式会社 黒岩商事(業種 ダンジョン攻略)』

C『道路国家 ルテニア』

 

 

食材

SR『のど飴(黄金林檎味)』

R『天狗の握り飯』

UC『A10ランクサーロインステーキ』

C『食べれるタバコ』

C『フランスパン』

C『猫耳メイドの愛を込めたオムライス』

C『犬用ジャーキー』

C『水1リットル』

C『唐揚げの燻製』

C『マンモス用焼肉のタレ』

C『真っ黒のバナナ(腐ってないよ)』

 

 

書籍

UC『イリアス(完全版)』

C『コミックマーケット完全攻略ガイドブック』

C『スペインの歴史教科書』

C『2005年度弁護士試験対策問題集』

C『アメリカ州知事No.1決定戦!第4巻』

C『工作員育成マニュアル』

 

SSR『限界突破食物連鎖地獄惑星』

UC『海洋惑星』

C『アステロイドベルト』

C『流星』

 

 

機械

SSR『第13の使徒設計図』

C『陸上自衛隊 野外炊具1号』

C『強制労働監視ドローン』

C『殺戮ドローン』

C『スクラップ』

C『目覚まし時計』

C『ランニングマシーン』

 

ダンジョン

UC『地下遺跡』

C『豊洲地下ダンジョン』

C『ゴーレム工場』

C『幽霊屋敷』

 

 

 

 

建造物

 

SSR『海上移動都市メガフロート』

SSR『軌道エレベーター』

SR『潜水航空巡洋揚陸艦』

HR『無人機生産工場』

HR『対宇宙艦隊用揚陸艦』

R『古今東西爆弾貯蔵庫』

UC『ミネⅢ税関事務所』

UC『最終決戦用自由の女神像(ガンギマリ)』

UC『空母』

C『豪華客船』

C『パチンコ屋換金所』

C『タコライス専門店』

C『コインランドリー』

C『嘔吐確定ジェットコースター』

 

スキル

 

SR『金銭消費』

SR『龍特攻』

HR『豪速球』

UC『痛覚遮断』

UC『峰打ちパンチ!!!』

C『トイレに入る前にトイレットペーパーがあるかどうかわかる』

C『洗濯物を綺麗に畳める』

C『目薬が綺麗に目に入る』

C『神性放棄』

 

 

 

 

その他

SSR『超能力者収容所』

SSR『ストロー効果』

R『生態系 トリケラトプス』

UC『イベント 戦艦墜落』

UC『G1 コロンブス杯優勝トロフィー』

UC『ハワイ諸島』

C『ダビデ像』

C『ニューヨークの土地権利書』

C『ファラリスの牡牛』

C『青春18切符』

C『ASMR 最高司祭アリスによる運命書音読』

C『ミニ鉄球1トン分』

C『野球選手『山本一也』サイン入りボール』

C『山田ドラゴンガチャ王国非公認キャラクター 略奪くんなりきりセット』

C『綱引き用の綱』

C『蜘蛛の糸』

C『宝くじ(6等当選)』

C『東京湾投棄用ドラム缶』

C『永遠に使える豆電球』

C『Tシャツ エベレスト大噴火(激臭)』

C『スイカ割り人形』

C『人力クローゼット』

C『雛人形1師団』

C『南極大陸のカケラ』

C『成金ご用達小型マシンガン内蔵黄金腕時計』

 

 

 

 

 

 

……あれ、C多くね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

割と真面目な報道番組

 

 

 

速報です。先日、キリバス近海に出現した無人島に突如として、巨大な塔のような超巨大建造物が出現しました。この建造物は山田氏がガチャより入手した『軌道エレベーター』との関連性が高いとみられ、その超テクノロジーに世界中から注目が集まっています。

 

 

月面天文台アルテミスより射出された無人機群を全機撃墜し、勝利を宣言していたアメリカ軍は無人島に港と空港の建設を進めており、無人島を占領中のアメリカ軍は軌道エレベーターへの侵入を試みています。これに対して中国、ロシア、EU各国は反発し、国連事務総長は軌道エレベーターは全ての人類に開放すべきであり、一国が独占すべきではないとの主張を記者会見で明らかにしました。

 

 

日本政府は軌道エレベーターと山田氏との関連性が高く、軌道エレベーターが日本人の財産である可能性があるにもかかわらず、明確なコメントを避け続けています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

えーー、突如として海中より出現した、『海上移動都市メガフロート』より数百機の無人機が射出、これによりアメリカ軍は壊滅したと政府が発表しました。

 

『海上移動都市メガフロート』内には『無人機生産工場』が存在するとみられています。

 

 

 

 

 

【海に墜落する米軍機】

【空を埋め尽くす無人機と米軍艦隊による対空射撃】

【無人島を空爆する無人機群】

【決死の撤退作業中の海兵隊兵士】

【爆破炎上する駆逐艦】

【横転する揚陸艦】

【真っ二つに折れる航空母艦】

 

 

 

 

軌道エレベーターは太陽光により発電を行っており、その電力が無人機に供給されるため、無人機は半永久的に稼働するとみられています。現在無人機は軌道エレベーターを中心とした一定範囲内に侵入した場合、迎撃行動をとると見られています。関連地域は多国籍軍により封鎖され、海上輸送や空輸に大きな影響が出ています

 

 

 

 

 

アメリカ合衆国は、山田氏を指定した中小国家群に対して、山田氏に対する経済封鎖を呼びかけましたが、多くの中小国家の動きは鈍く、山田氏に対しての制裁は効果が薄いとみられています。

 

中小国家群は独自の経済圏を築く動きも見られ、これにより国際社会は分断され、新たな対立構造が形成されつつあるとの見方も存在しています。

 

 

一方で、無人島を中心とする無人機迎撃範囲外では、軌道エレベーターを巡り中国海軍、アメリカ海軍をはじめとする多くの国籍の艦艇が迎撃範囲外周辺に集結し、緊迫した状況が続いています。

 

軌道エレベーターは未来の技術の結晶であり、その技術と宇宙への扉を巡る争いが水面下で発生しているとみられ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バラエティ多めの報道番組

 

 

 

「見てください!自由の女神が太平洋を泳いでいます!すごく邪魔です!」

 

「なんて綺麗なバタフライなんだ!水飛沫がほとんどない!さらにイルカ顔負けのドルフィンキック!でも全く進んでいない!遅すぎる!姿勢だけならオリンピックで金メダルを取れるぞ!」

 

「何だよあの目、ガンギマリだぜ!」

 

「右手の松明を推進剤代わりにしているのか!左手の独立宣言書は………何も持ってないぞ!」

 

「違う!腰に身に着けているんだ!ああでもしないと、自分の重さでおぼれてしまうんだ!」

 

「つまりカナヅチってことか!なんで泳いでるんだ下手くそめ!」

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

解説回2

 

SSR『一閃皇帝』

 

 

出現したのは、黒い髪、黒い瞳の中性的な少年だった。背中にはその体には不釣り合いなほど大きな剣を背負ってる。

 

「僕はSSRだけど、あまり期待はしないでね?」

 

「ところで、この国で一番強い剣士はだれかな?」

 

「え?うーーん、あんまり考えたことなかったな。ホムンクルスでは7号だろうし、拳銃の師匠も強い剣士だからなあ。あとは…」

 

 

「私です」

 

 

SR『黒髪ロングヘアー剣豪系女子高生』

 

黒髪ロングヘアー、黒いセーラー服を着た、少女が話に割って入る。当然のように手には日本刀を持っている。

それも片手で。日本刀って、結構重いはずなんだけどなあ。

 

 

「私です。断言できます。私が一番強いです。」

 

 

「へえ、じゃあ殺ろうよ。」

 

「ええ、いいですよ」

 

 

そういって2人は、ダンジョン内で戦闘を始めた。

 

 

 

 

そして7号が割り込み、圧勝した。

 

 

7号強すぎ!

 

 

 

 

 

 

 

SSR『エースパイロット』

 

 

「仕事はやる。それだけだ」

 

 

そういって寝だした。

 

立ちながら。自由か!

 

 

 

 

SSR『暴食の魔王』

 

「ごきげんようマスター。私は暴食の魔王、アルと申します。」

 

「もしかして、料理上手だったりする?」

 

「ええ、私は食の道を究めるべく、日々精進する料理人。この新天地でも修行を続ける気ですわ」

 

「おおお、ならあいつといいコンビを組めそうだ!いい料理人がいるんだよ!」

 

「それは楽しみですわ!」

 

 

 

 

 

山田ショッピングモール フードコート。

 

そこには、山盛りの料理を食べるベヘモットがいた。

 

 

「…彼は?」

 

「暴食の邪神、ベヘモット!アルと同じ、暴食の名を持つ男だ!」

 

 

 

その瞬間、フードコート全体の気温が下がった。空気が凍った。

 

何か地雷踏んだな。アルの顔が、とてつもなく怖い。笑顔なのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「む⁈お前から俺と同類の匂いがするぞ!食を究めし同類よ!何者だ!」

 

「アルと申します。一つ質問なのですが、食は量と質。どちらを重視すべきだとお考えですか?」

 

「量に決まっているだろう!」

 

「いいえ、それは間違いですわ。質が何よりも大切です。あなたが食を究めた?御冗談を」

 

「……ああ?お前、このベヘモットに喧嘩を売っているのか?」

 

「味覚だけではなく、聴覚も鈍いのですか?」

 

「よし喧嘩だな!泣かせてやる!」

 

「跪かせてさしあげましょう」

 

 

 

その後、魔王と邪神の戦闘が発生した。

 

 

その影響で、山田ドラゴンガチャ王国の皆はその日限定で大食いとなった。

 

そして魔王と邪神は和解した。迷惑すぎる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SR『皆殺し探偵』

 

現れたのは、パイプをくわえた、如何にもシャーロックホームズのような恰好をした若い男だった。

 

 

「君、事件を解決するために最も簡単な方法は何だと思う?」

 

「脅迫する?」

 

「惜しい!正解は皆殺しだ!関係者全員殺せば、無事事件解決というわけだ!私はこの方法で、数多くの犯罪組織を末端からリーダーまで皆殺しにして事件解決に導いた!」

 

「ところでこの国に裁判所はあるかな?ない?それはよかった!裁判所はうるさいんだ、証拠がどうとか」

 

 

こいつ本当に探偵か?

 

 

 

 

 

 

R『サプライズ忍者衆』

 

 

サプライズ忍者理論。イギリスのとある脚本家が広めた理論であり、とあるシーンで、忍者が突然現れて登場人物と戦い始める方が面白くなるのであれば、そのシーンは面白くないという理論。

 

 

こいつらは人の気の緩み、油断などを狙って活動するそうだ。

 

「「「「ニンニン」」」」

 

 

 

 

 

 

 

C『舐めると殺すぞ三十郎』

 

出現したのは若い侍だった。

 

「わしを舐めるなよ?舐めたらマジで殺すからな」

 

 

 

 

 

 

C『パンダ補給兵』

 

パンダ。動物兵シリーズの1匹。補給の中でも主に食糧に関する部分を担当しているようだ。

 

中華料理、特に四川料理の達人らしい。ホムンクルスが大喜び!

今回の100連ガチャで一番の大当たりとホムンクルスは言っていた。

 

お前らなあ、もっとすごいものがガチャからいっぱい出てるんだぞ?そっちを見ろよ。

 

ところでなんで四川?

 

「上官の仙人様が四川出身だったので!」

 

 

 

そっかあ。仙人かあ。考えるのはやめよう。

 

 

 

 

 

 

C『スカウトマン』

 

出現したのは、黒スーツを着用した中年の白人だった。ちょっと小太り。

 

「どうもこんにちは。私、『人材紹介サービス 新世界』を営んでおります、ジョン・スミスと申します」

 

「ところで、どうして私がSSRではないのでしょうか」

 

「いや、知らないよ」

 

「そうですか。私はSSRに匹敵する働きをするのでこの評価は不当なものだと抗議します」

 

「ふふふ、楽しみにしておいてください」

 

 

そういって、スカウトマンは消えた!

 

どこに消えたのかは謎である。

 

 

 

 

 

 

 

C『黄金騎士』

 

運命教会の黄金騎士団に入団した。(強制)

最高司祭と神父は「神の騎士だ!」と大はしゃぎ。

 

もちろん俺は黄金騎士なんて知らない。

 

黄金騎士は終始困惑していた。ゴメンね。

 

 

 

 

 

 

 

UC『ダンジョン都市 歌舞伎町』

 

パラレルワールドの日本では、ダンジョンが突如として出現し大混乱に陥ったらしい。

そんな中、暴力団やマフィア、半ぐれ組織などが手を組んで1つのギルドを設立し、ダンジョンブレイク(ダンジョンより魔物があふれる災害)の際は彼らが活躍し街を守ったそうだ。

 

だがとある男により歌舞伎町のギルドは壊滅しそうになったらしい。なので今回の召喚は感謝しかないとのこと。その恩義に報いるべく、俺のために働いてくれるそうだ。

 

そんな日本の都市がまるごと出現した。ええ…

 

 

 

 

UC『死んでよ暗殺の村』

 

日本のとある地方に存在するそこそこ大きな村、というか町。そんな町が丸ごと転移してきた。

 

 

この町は暗殺者の一族が代々支配し、その一族により経営される民間軍事会社の本社や兵器の実験施設、生産工場も存在する。暗殺者か?

 

 

 

 

 

C『道路国家 ルテニア』

 

 

パラレルワールドの国。

仲の悪い大国に囲まれ、何度も戦争の際には侵略されたそうだ。

 

 

 

ちなみに周辺国によりインフラ関連に大規模な投資が行われているそうだ。

 

どう考えても侵略中に利用するためである。

 

この国にこの大陸の交通網の開発を任せる予定。

 

 

 

 

SR『のど飴(黄金林檎味)』

 

 

現在マッドサイエンティストにより分析中。

 

 

 

 

R『天狗の握り飯』

 

 

 

分析の結果、非常に栄養価の高い、保存性に優れた米でできたおにぎりであった。美味。

ちなみに具はエビマヨ。

 

天狗社会にマヨネーズの概念があるとは驚きである。

 

味は本当に美味かった。半分だけ残したおにぎりはレーションに使うために研究中。

 

 

 

 

UC『A10ランクサーロインステーキ』

 

脂身の多い肉。というか脂身。ホムンクルスたちには大人気。

 

 

 

 

UC『イリアス(完全版)』

 

 

丁寧に保存。

 

 

 

C『工作員育成マニュアル』

 

山田ドラゴンガチャ王国軍の教本とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

SSR『限界突破食物連鎖地獄惑星』

UC『海洋惑星』

 

天体観測部隊によると、2つともこの星系に出現したらしい。現在観測用の衛星打ち上げ計画が進行中。

 

 

 

 

SSR『第13の使徒設計図』

 

詳細不明。USBに入った謎の超大型機械の設計図。使用方法、用途ともに不明。神学機械党とマッドサイエンティストは何らかの建設用重機ではないかとの推測を立てている。

 

 

ちなみにUSB内のファイル名は以下の通り。

 

 

 

『スターデストロイヤー計画』

 

 

 

…物騒すぎる。

 

 

 

 

 

C『強制労働監視ドローン』

 

労働者を監視し、必要ならば回復魔法で労働者を癒し、サボっていると電気ショックで攻撃してくるブラック企業が喉から手が出るほど欲しがりそうなドローン。

隙あればサボろうとするシュラハトの監視用に使用。

 

 

 

C『スクラップ』

 

 

ミスリルでできたスクラップ。溶かして塊にした。

 

 

 

 

UC『地下遺跡』

 

所在不明。現在調査中。

 

 

 

C『豊洲地下ダンジョン』

 

内部には様々なモンスターがひしめきあう。そのどれもが食べることができる。

ホムンクルスが殺到し、血の海と化した。

 

 

 

 

C『幽霊屋敷』

 

まさか幽霊屋敷があんなことになるとは思わなかった。

 

仕事に忙殺される社畜死神が幽霊屋敷に突撃し、その多くの幽霊たちを眷属として支配してしまった。

 

幽霊たちの目は死んでいた。

 

 

 

SSR『海上移動都市メガフロート』

SSR『軌道エレベーター』

HR『無人機生産工場』

UC『ミネⅢ税関事務所』

 

 

所在不明。現在調査中。

 

 

 

 

SR『潜水航空巡洋揚陸艦』

 

潜水艦のように海に潜ることができる揚陸艦。

 

というか要塞。

 

 

 

 

 

 

 

 

UC『最終決戦用自由の女神像(ガンギマリ)』

 

所在不明。最終決戦とあるが何と戦うんだ?

 

 

 

 

 

C『パチンコ屋換金所』

 

 

換金所。しかしパチンコ屋がないので換金することができない。

 

 

 

 

C『嘔吐確定ジェットコースター』

 

 

 

 

 

実験目的で何人かのホムンクルスを乗せてジェットコースター起動。

 

そのコースはまともな人間なら嘔吐を通り越して、気絶するほど複雑なコース。

 

だが乗っているのは超人ホムンクルス。この程度では吐くはずもなく、無事に下車。

 

 

だがなんとスタッフのロボットが、ジェットコースターに乗ったホムンクルスたちに襲い掛かり、無理やり吐かせようとした。

 

…が、超人ホムンクルスの敵ではなく、ロボットはすべて壊された。

 

今は恐怖の感覚が欠落しているかと思うくらい怖いものなしのホムンクルスたちにより大行列。

 

 

 

 

 

SR『金銭消費』

 

●お金を消費することにより一定時間パワーアップ!

お金を使えば使うほど、強化されます。使えるお金はアメリカドル、イギリスポンド、元、円、ユーロの5種類だけです。これらの通貨をほとんど持っていない山田さんには不要なスキルですね。

 

 

 

うるさい。俺は指定国家の依頼の報酬は、膨大な数の日用品を受け取っているんだ。その気になれば大金持ちなんだよ。

 

 

 

 

UC『峰打ちパンチ!!!』

 

●このスキルを使って殴っても峰打ち、つまり死にません!

後遺症もないので、安心して殴りましょう!

 

 

 

 

C『神性放棄』

 

●山田さんはガチャからでた神性、あと神(笑)として信仰されているので、神性がわずかですが存在します。このスキルをオンにすることで、神性を放棄することができます。オフにすれば取り戻せるので安心ですね。

 

 

首無しはかつて、俺には力があると言った。それがこれなのだろうか。

ならオンにしないぞ。神の力でSSRを当ててやる。

 

 

 

 

SSR『超能力者収容所』

 

所在地不明。調査中。

 

 

 

SSR『ストロー効果』

 

 

交通網の発達により、大都市へと人口などが流出する現象。

 

詳細不明。

 

 

 

R『生態系 トリケラトプス』

 

中生代後期白亜紀に生きた草食恐竜。

 

 

 

出現した恐竜はトリケラトプスだけなので、某有名映画のように人類が危機に陥ることはない。

というか、ホムンクルスたちは平気で返り討ちにするだろう。

 

一帯を保護区として隔離した。のだが、いつの間にかテイマー系ホムンクルスが恐竜隊を結成、訓練をしていた。

 

 

君たち、保護の意味って分かってる?

 

「何言ってんすか。自分の身は自分で守れるようにならなくちゃ」

 

 

いやまあ、そうなんだけど。

 

 

 

 

UC『イベント 戦艦墜落』

 

いつの間にか、宇宙戦艦が墜落していた。中は無人。現在調査中。

 

 

 

 

UC『ハワイ諸島』

 

 

衛星写真にて確認。文明の光は確認できず。周辺の水位も浅くなっているため、島だけではなく周辺の海域にも影響があるらしい。

 

 

 

C『ASMR 最高司祭アリスによる運命書音読』

 

 

 

アリス曰く、こんな物の作成に協力した覚えはないそうだ。

 

だがそんなことは問題ではない、問題なのは、このASMRがクッッッッソ下手くそだということだ。

こいつ途中でポテトチップスとか食いながら録音してるし、最後の方は寝落ちして寝息しか聞こえない!

 

もっとまじめにやれ!

 

 

 

C『山田ドラゴンガチャ王国非公認キャラクター 略奪くんなりきりセット』

 

出現したのは、黒い甲冑。

 

鑑定!

 

●山田ドラゴンガチャ王国の公認キャラクターを目指す略奪くん。ライバルは同じく非公認キャラクターの蹂躙くん。

 

 

なんだこれ。

 

 

 

 

C『蜘蛛の糸』

 

 

俺は蜘蛛の糸を手に取ったが、すぐに千切れてしまった。

だがどういうわけか、ホムンクルスが持っても千切れることはなかった。

 

芥川龍之介の小説、蜘蛛の糸では主人公が自分のことしか考えなかった結果、蜘蛛の糸は千切れてしまった。

 

…もしかして、俺は自分勝手な男だと蜘蛛の糸は考えているのか?

 

 

 

 

失礼な!

 

「いや、山田さんは純粋無垢な邪悪っすよ」とホムンクルスに言われた。理不尽!

 

 

 

 

 

C『Tシャツ エベレスト大噴火(激臭)』

 

封印。この世に存在してはいけない物だ。

 

 

C『人力クローゼット』

 

普通のクローゼット。手で扉をあける。つまり人力。

 

 

 

C『雛人形1師団』

 

迷彩服に身を纏い、モデルガンや戦車のプラモデルで武装した雛人形1師団9000体。

一体一体に部隊や階級、名前が割り振られており、まるで中国の兵馬俑のようだ。

 

これまでガチャから出た物の管理をしている書記官がこの9000体の雛人形を記録管理せねばならず、その面倒な仕事に頭を抱えていた。

 

 

 

 

C『南極大陸のカケラ』

 

 

この星の北極点に出現した。

 

なぜ北極に出現したのか理由は不明。

 

現在伊能忠敬による測量隊の遠征計画が進行中。

 

 

 

 

 

 

C『成金ご用達小型マシンガン内蔵黄金腕時計』

 

 

腕時計の内部に小型の暗殺用マシンガンが内蔵されていた。弾丸はどこから供給されているか不明。

 

こんなもの成金は必要としない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

意味不明な物、所在不明な物が多すぎる!

 

 

 




パソコンからご覧の方は小説上部の評価から、スマホの方は右上のメニュー、評価付与から評価が可能です。まだの方は是非。

感想や推薦など、よろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

あと一日

俺はなんでも武力で解決するちょっと脳みそがやばめな『皆殺し探偵』が探偵事務所を開業したとの噂を聞き、事務所を訪れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『1日1殺 絶望探偵事務所』

 

 

 

 

 

 

…どう考えても探偵事務所とは思えない名前だ。正気を疑いながら俺はノックをして事務所に入った。

 

 

 

 

 

 

「はははははは!我が無敵のアルコールアタックを喰らうがいい!!!」

 

そこには防塵ゴーグル帽子マスク手袋エプロンその他諸々完全武装の皆殺し探偵が雑巾で床を拭いていた。

 

床はアルコールで洪水が起きたかのように水浸しだ。

 

歩くたびにチャプチャプと音が鳴っている。

 

 

「ん?これはこれはミスター山田、我が事務所にようこそ!気づかなくて申し訳ない!ささ、まずは靴を脱いで手をアルコール消毒したまえ」

 

 

そういって探偵は俺にアルコールで濡れたタオルとカツ丼を渡し、ドアノブと俺が踏んだ床を掃除し始めた。

 

 

「何故カツ丼?」

 

「警察署の取調べ室で出す料理はカツ丼と相場が決まっている」

 

意味わからん。

 

 

 

「さて、皆殺し探偵の私に会いに来たということは、やはり依頼かな?マフィアの壊滅?汚職政治家の粛清?犯罪組織幹部の暗殺?」

 

「お前のどこが探偵なんだよ………まあいいや。明日、クソ鳥との戦争が始まる。結構武闘派っぽいけど、戦力として期待していいんだな?」

 

「もちろんだ。先ほどこの国の法律を確認したら、山田ドラゴンガチャ王国に対して敵意を抱いた時点で犯罪者という、実に私好みの過激な法律があった。間違いなく、天使たちは犯罪者、つまりは皆殺し対象ということだよ」

 

「ええ…あいつら、そんな法律を考えていたのか。…まぁとりあえずそのままにしておくか」

 

「他にも敵の財産はいくら奪ってもいいとかもあったぞ」

 

「それは別に問題ない。ドロップアイテムや奪える物は全部貰った方がいい」

 

「それもそうだな。だが自分の国の法律を知らないとは感心しないな。今は大丈夫だが、いつの間にかとんでもない法律ができるかもしれないぞ」

 

「大丈夫だろ。俺はあいつらを信頼しているからな」

 

 

●山田ドラゴンガチャ王国民は、何か事情がない限り毎週一回はラジオ体操をせねばならない。

●山田ドラゴンガチャ王国民は、最強を目指さねばならない。

●山田ドラゴンガチャ王国民は、食物を粗末にしてはいけない。

●山田ドラゴンガチャ王国民は、何か事情がない限り毎日三食食べなければならない。

 

 

…うん、大丈夫だな。

 

 

「それともう一つ。お前には、殺人犯の捜索をしてもらいたい」

 

 

3つのワールドクエストの一つ。殺人鬼ジェイドの逮捕。

オロチはダンジョンにて休眠中、名もなき聖剣と殺人鬼ジェイドの所在も不明。

 

だが当然ながら山田ドラゴンガチャ王国にそんな殺人鬼はいない。当初はダンジョンにいるのかと思ったが、その様子もない。捜査は完全に手詰まりというわけだ。

 

探偵から事件を解決してくれるかもしれない。殺人鬼に関することは何か知っているのかもしれない。

 

 

 

 

「ええ⁈正気かい⁈皆殺し探偵の私にぃ!」

 

 

探偵は目を大きく見開き、今までよりも大きな声で驚いた。

 

 

「…いや、失礼。久しぶりだ、頭を使う仕事は」

 

だろうな。

 

「ようは、今この世界に存在しない犯罪者を逮捕すれば良いのだろう?なら出現させればいい。ついてきたまえ」

 

探偵は事務所を出て歩き出す。俺はそれに着いていく。

 

辿り着いた先はショッピングモールの中、ガチャの前であった。

 

「ここだ。これを使えばいい。」

 

「…ガチャのことを言っているのか⁈ワールドクエストの依頼品が、ガチャから出ると⁈」

 

「今更だろう?ガチャはあらゆるアイテムを出す。殺人鬼も例外ではなかろう」

 

「いやまぁ、そうなんだけど」

 

確率どうなっているんだ。こんなの、俺の運が良くなければ、何百年かかっても逮捕できないぞ!

 

 

「安心したまえ!私の持つスキルの中に『呪われた探偵』という、探偵には必須のスキルが存在する!これは事件と犯罪者に遭遇しやすくなるという非常に便利なスキルだ!」

 

便利だと思ってるのお前くらいだよ

 

 

「これがあれば、ほぼ確実に殺人鬼と会えるぞ?ささ、ガチャを引きたまえ!」

 

 

俺は渋々ながらガチャを回す。

確かに探偵の言うことにも一理ある。探偵漫画では露骨なフラグ、例えば漫画内のテレビ番組やラジオで未開解決事件に関する放送を主人公が視聴した際、ほぼ確実にその未解決事件にまつわるエピソードが主題となる。

 

フラグは立っているのだ。俺という依頼人、未解決の事件、ジェイドという名前しかわかっていない殺人事件。

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

UC『チーズハンバーガー』

 

出現したのは、チェーン店に売っているようなチーズバーガーではなく、個人料理店が作り出すような、一つ千円くらいする大きなチーズバーガーだった。

 

こんがりと焼けたパン、トロトロに溶けたチーズ、肉汁溢れるビーフ、瑞々しいトマトとレタス、複雑な調理工程を得て作られたソース。

 

非常に美味しそうだ。

 

 

…だが、このチーズバーガーのレア度はCではなく、UCである。

そして探偵のスキルは不発だった。おい。

 

 

「ふーーむ、どう考えても怪しいな」

 

探偵は虫眼鏡でチーズバーガーを観察する。だが特にこれと言って目立った特徴はない。

 

「よし、では私が食べよう。毒味というわけだ」

 

「いや、鑑定するから大丈夫だよ⁈」

 

「鑑定は殺人鬼ジェイドのために残しておきたまえ」

 

そう言って探偵はチーズバーガーを手に取る。自信満々だなコイツ!

 

「本当は誰が作ったのかわからない料理は食べたくないのだが……まあいい。なに、私が信頼できる探偵だということを教えてあげようじゃないか」

 

探偵はチーズバーガーを前に大きく口を開け、食べた。

 

 

無言。探偵は手元にあるスピリタスを飲んで一言。

 

 

「絶品じゃないか!」

 

 

そう叫ぶとガツガツと、食べることを再開してあっという間に食べ終わった。毒味じゃなかったの?俺の分は?

 

「いやぁ、絶品絶品!なるほど、これがUCの味ということか!レア度が高い理由は、単純に美味だからという理由だと私は考え…ん?うおおおおおおおおおおおおお!」

 

突如として探偵が叫び出し、体からは何とも香ばしい匂いのオーラが溢れ出す。

 

 

な、何が起きているんだ⁈

 

 

●食の好みにチーズハンバーグが追加されました。

●スキル チーズバーガー鑑定、チーズバーガー調理、チーズバーガー召喚、チーズバーガー博士、チーズバーガーを食べても太らないなどがスキル追加されました。

 

 

「だ、大丈夫か?」

 

「うむ!特になんの問題もない!ただただチーズバーガーが無性に食べたくなっただけさ!」

 

 

そう言って探偵はチーズバーガーを召喚し、食べ始めた。

 

「うむ、絶品!」

 

「誰が作ったのかわからないチーズバーガーだぞ、いいのか?」

 

「チーズバーガーの前にそんなこと些細な事だ」

 

 

…なるほど、チーズバーガー好きに洗脳するチーズバーガーか。

 

 

 

「さて、もう一回回そう。今日のログインボーナスは何かね?」

 

「…刃物確定ガチャコインだ」

 

「おお!殺人犯の凶器は青酸カリとロープと刃物と相場が決まっているからね!これは期待出るぞぉ!さぁ、ガチャを回そう!」

 

 

 

 

俺は刃物確定ガチャコインを入れ、レバーを回す。

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

C『殺人鬼ジェイド』

 

 

出現したのは、青いシャツを着た細身の男性だった。年齢は二十代後半だろうか、手元には青い液体を滴らせるナイフを持っている。

 

 

「うわマジで来ちゃった」

 

「だから言っただろう?これで事件は無事解決ということだ」

 

殺人鬼ジェイドは状況を理解していないのか、目を泳がせて周囲を窺っている。

 

 

俺は問いかける。

 

「お前が、殺人鬼ジェイドか?」

 

「ち、違う!」

 

鑑定!

 

●殺人鬼ジェイド

 

その鮮やかな手口で証拠を残さず、数多くの人間の殺害に成功した伝説の殺人鬼。能力は【我儘な迷子の子】。自らが指定した条件(監視カメラに映らないように、国道沿いになど)を設定して使用すると、その設定通りのルートが視界に表示されます。

この能力を使い、彼は目撃者も監視カメラの映像も存在しないルートを割り出し、事件を起こしていました。彼が殺人犯であるという証拠はありません。

 

「システムはお前がジェイドだって言ってるぞ」

 

「だが証拠は何一つないはずだ!」

 

 

叫ぶジェイドの前に俺と探偵は顔を見合わせる。

 

 

「「あはははははははははははは!!!」」

 

「な、何がおかしい!」

 

「わかってないなぁ」

 

「うんうん、わかってない」

 

「うむ、ここは君の常識が通用する世界ではないのだよ」

 

「俺が黒といったら黒なんだよ」

 

「クソッ、来るな!」

 

「逃げるな!さっさと4番打者寄越せ!」

 

「安心したまえ!取調べの際はカツ丼代わりにチーズバーガーをやろう」

 

 

 

●殺人鬼ジェイドの逮捕に成功しました。報酬として、4番打者を召喚します。おまけとして野球場が出現します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やあ、伝説の野球選手である僕を召喚してくれてありがとう!」

 

 

 

 

 

「何だこのハンバーガーすごく美味ぇ…!」

「手を洗わずに食べるなああああ!!殺菌殺菌殺菌殺菌殺菌殺菌!僕のスピリタスアタックを受けるがいい!」

「今帰って来たぞ!豊洲地下ダンジョンで殺してきた新鮮なチーズドラゴンだ!これでチーズバーガー作ってくれ!」

「血塗れで僕の事務所に入るなあああああああ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「召喚されるマスター、間違ったかなぁ」

 

 

 

 




パソコンからご覧の方は小説上部の評価から、スマホの方は右上のメニュー、評価付与から評価が可能です。まだの方は是非。

感想や推薦など、よろしくお願いします。

小説家になろう、 カクヨムでも投稿しているのでそちらでも是非。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

今日から始める天使狩り

ガチャから排出された3つの集団。ダンジョン都市歌舞伎町、道路国家ルテニア、暗殺の村。          

 

代表者である3人との会合が終了した。幸いなことに彼らは友好的で、こちらの基本的な法律を守り、俺の命令に従うのであれば自治権を認めるということで合意に至った。

 

 

しかしこの三つの都市、実はそれぞれ問題を抱え込んでいる。

 

 

 

ダンジョン都市歌舞伎町は派閥争いが深刻だ。これまで歌舞伎町は連合会という、歌舞伎町全ての武装団体が加盟していたギルドがあったのだが、このギルドを実質的に支配していた会長とその配下が現在重傷で入院中。

 

今、この会長の座を巡って抗争が勃発している。こちらの高性能ポーションなどのアイテムの流通や転移による避難も大いに利用し合い、抗争は収まるどころが過熱していく。

 

歌舞伎町の代表は町内会長なのだが、彼は利害調整や仲裁役などで頑張っているが、町内会には争いを収める武力はないようだ。

 

 

 

最悪なことにホムンクルスが傭兵として雇用され、いたるところで激戦を繰り広げている。

 

またホムンクルス系のギルド、【穂無ン苦流栖】まで出現しており、歌舞伎町連合会長になり立身出世を狙い多くのホムンクルスが歌舞伎町に流入するという魔境と化してしまった。

 

しばらく放置することにした。もう俺にはどうするべきかわからん。ホムンクルスによる武力で支配させることにした。頑張ってくれ。

 

 

 

 

 

 

道路国家ルテニアは少子化だ。

 

この道路国家は交通インフラ、輸送に関する産業に特化しており、周囲の列強が戦争時に侵略して利用するために数多くの投資を外国より集めていた。

 

 

大規模な港には数多くの輸送船が係留され、コンテナが山のように並び倉庫には数多くの品が詰め込まれている。

 

それらを輸送するために国土中に線路や高速道路が張り巡らされ整備され、それらを利用する造船、トラック製造、航空機製造業などの工業も発達しており技術立国を標榜している。

 

だがしかし転移時にかなりの数いたスパイや外国人労働者、異世界に転移したくないという人々はこちらへの転移時に追い出されたらしい。

 

その結果、人口が大減少した。工場は停止し、ギリギリ維持しているという現状だ。

 

 

そしてルテニア沖合の島に存在する、宇宙開発を目指す外資系企業が建設中の宇宙への扉、軌道エレベーター。

 

この施設は現在無人であり、無人警備ドローンや防衛用ロボットなどの防衛設備で守られている。

現在軌道エレベーター攻略作戦が立案中。

 

 

 

 

暗殺の村は、財政が破綻寸前だということ。なんでも総理大臣を暗殺した際に資産が凍結されたようだ。

 

 

 

兵器の維持費や兵員の人件費など、軍隊は馬鹿みたいに金がかかる。

 

消防署には戦車が配備され、警察署には軍隊並みの武装警察官が勤務し、村の地下には核シェルター兼地下要塞が張り巡らされ、中には航空機などが保管されている。

 

 

 

 

さらに村の湖にはミサイルを搭載した潜水艦が配置されていた。

 

戦後のどさくさに紛れて潜水艦を横領、改造したらしい。

 

何やってんだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日の無料ガチャ!

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

C『バリカン』

 

 

出現したのは、家電量販店で売っているような、何の変哲もないただの黒いバリカン。特筆すべきことと言えば、相変わらずメーカーも製造日も書いてはいないが、5mmと刻印されているだけ。

 

しかし油断してはいけない。見た目がまともでも、異常な性質を持っているのがガチャアイテムなのだ。

 

というわけで使ってみよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

早速、散髪屋を営むホムンクルスにさせてみる。

 

副業で魔物ハンターをやっている凄腕だ。彼のナイフ術の前には綺麗に魔物は切断されるという。

 

 

 

客として実験体になってもらったのは、お坊さんだ。歌舞伎町、暗殺の村には多くの寺があり、バリカンの実験体を募集していたらすぐに見つかった。

 

 

 

…が、特に異常もなく散髪は終わった。

 

一体このバリカンは何なのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マッドサイエンティストがバリカンから育毛剤を作り出していた。

 

 

 

 

…ん⁈

 

 

 

わからない!なんでバリカンから育毛剤が作れるんだ⁈

 

マッドサイエンティストの助手、俺の記憶では剥げていた男がニコニコ顔で俺に育毛剤、青色の不気味な液体が詰まったボトルを渡してくれた。

 

液体じゃないか⁈なんで⁈

 

 

 

 

 

なんでもこのバリカンに込められた育毛という概念を搾取して作られたらしい。意味わからん!

 

 

マッドサイエンティストによる検証の結果、このバリカンは何が何でも髪が5mmになるようにするそうだ。

髪がどれだけ硬くても刈り取り、5mmなければ髪を強制的に伸ばす。

 

 

 

 

混乱する俺にマッドサイエンティストが育毛剤工場へと案内する。

 

 

 

 

その工場の中央では、バリカンがカブトガニから血液をとるかのように固定され、青色の液体がバリカンから流れ落ちている。

 

 

 

 

バリカンには育毛という概念が込めてあるらしく、それを抽出しているそうだ。

 

 

なお、歌舞伎町などでこの育毛剤が飛ぶように売れた。

うーん、山田ドラゴンガチャ王国の特産品が育毛剤か…複雑な気持ちだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日のログインボーナスはスキル確定ガチャコイン。

 

正直言ってスキルのみを排出するスキルガチャがあるので、このコインの効果は陳腐化してしまった。

 

 

だが回さないという選択肢はない。このコインがあれば一回ガチャを回せるのだ。それだけで価値があるというもの。

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

HR『スキル 生命儀式 呪詛の契約』

 

 

 

 

 

 

 

お、おお?

 

 

まさかのHR。しかもハズレ率高めなスキルでだ。名前がなんかかっこいい!

 

ついに使えそうな、俺の戦闘能力を上げるスキルが出たのか⁈

 

 

 

 

●このスキルは『天秤と契約』の神に対して、自身の体を捧げることにより発動します。捧げる肉体の重要度と量(髪、爪、唾液などは重要度【低】 腕、足、臓器、骨などは重要度【高】)に応じて、対象に呪詛を発動させます。天秤と契約の神は対等にして平等です。あなたが自らの身を切るほどの覚悟があるならば、天秤と契約の神もそれに応えるでしょう。

 

 

ほーう、自分の体を犠牲にして誰かを呪ってくれるのか。

『天秤と契約』の神が何なのかはわからないし、俺が下だというのが気に食わないが、まあそれは置いておこう。

 

 

 

俺はスライム化した左腕を切り落とす。

 

 

 

 

 

 

目標、南雲昭人。

 

 

NTRビデオレターに映っていた男が俺に伝えた、将来敵になりそうな男だ。名前からして日本人。日本から指定されているのかは不明だ。

 

おそらく未来の世界で俺はこの男に苦戦しているのだろう。

 

だが、俺はこの男の能力が神の召喚(推測)だということしか知らないのだ。一体どんな脅威なのだろうか。

 

 

小手調べに攻撃してみよう。

 

 

 

スキルの発動方法は誰かに教わるまでもなく、体が理解していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「生命儀式 履行」

 

 

音もなく、その大きな天秤は現れた。

 

 

 

天秤は純金で作られているかのようにその光沢は神秘的な輝きを放ち、これまでにないくらい神聖な力を感じさせる。

 

神話や宗教に関連する神聖な彫刻や紋様が施され、何らかの物語を表現しているようだ。

 

神聖な力と高貴な存在を感じさせる神秘的な雰囲気を漂わせ、それは信仰心と崇敬の対象として、その美しい天秤は存在するだけで神への信仰心を抱かせる。

 

 

 

 

 

 

鑑定!

 

 

●簡易鑑定が無効化されました。このアイテムにはプロテクトが存在し、簡易鑑定ではこのアイテムを鑑定することができません。

 

 

クソ、やっぱりだめか。簡易鑑定ではだめな気がしたんだ。それほどまでに神の力をこの天秤から感じていたんだ。

 

しっかし、どうしようかな。

 

ガチャから簡易鑑定の上位互換がでるとは思えないしなあ。

 

 

 

 

俺の切断されたスライムの左手がいつの間にか天秤の皿の上に転移し、天秤が傾き始める。

 

 

だがしかし、天秤はほとんど動くことなかった。

 

 

●シルバースライムは重要度が低い為呪詛の効果はほとんどありません。

 

 

うーん、そう上手くはいかないか。

 

天秤のもう片方の皿に、禍々しい力が集まり始め、それに応じて天秤の傾きが0となった。

 

 

 

 

 

●呪詛は対象ユーザーが使用中の対呪シールドにより防がれました。この対呪シールドは運営アイテムなので突破は不可能です。シールド解除時刻まで約300日。

 

 

は?

 

 

は⁈

 

 

 

 

●…今確認した。用語一覧を確認しろ。

 

 

俺はナビゲーターの助言に従い、用語一覧を展開する。

 

 

 

●対呪シールド

 

ユーザーがショップにて交換可能なアイテムの一つ。一度使用するとユーザーに対して如何なる呪いからも身を守ります。

 

 

 

ショップ⁈なんだよショップって!

 

 

 

●ショップ

ポイントと交換可能な

 

→ショップを開く。

 

 

 

 

●現在ショップは開放されていません。ショップ機能解放後にまたお越しください。

 

 

 

こんなのばっか!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●運営からのアナウンス

 

エンジェルフォール開始まであと30分となりました。皆様、イベントの準備はできましたでしょうか?運営一同、ユーザーの皆様のご武運を心から祈らせていただきます。

また、予告とは一部内容が異なる場合や事前の通告なく設定や仕様が変更される可能性がありますのでご注意ください。

また運営は当イベントで生じたいかなる損害も負いかねます。

 

 

 

 

ついに始まる。天使との戦い。さあ、イベントでがっつり稼いでやる。

 

告知が出た時から作戦は考えていた。ついに実行に移す時。

 

 

 

●山田さんは特別に30分前にイベント会場へと先行入場が可能です!ブックメーカーである私も、ナビゲーターも応援してます!頑張ってください!

 

●…我が盟友よ。貴様なら大丈夫だ。臆することはない。

だが一つだけ警告だ。上位ランカーとは関わるなよ。それだけだ。

 

 

 

 

 

「予定通りに行く。ホムンクルスは魔力供給の準備をせよ」

 

「大規模魔力供給魔術式の発動準備完了。7号を除く十二魔将へのパス、異常なし」

 

「弾丸5発まで完成。魔法陣に装填。加速器取付作業完了済みです」

 

「2次、3次魔力パス最終チェック完了。魔力伝導率良好異常なし。山田様のスキル発動時に必要とされる予想魔力量を上回ります」

 

 

 

 

 

 

 

【ゴールデンボール作戦】開始

 

 

さあ、天使を潰そう。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

史上最も単純かつ頭の悪い作戦

イベント『エンジェルフォール』第10エリア  聖堂要塞エクレシア 大聖堂 中庭

 

 

 

大聖堂の中庭には、美しい花畑が広がっていた。

 

普段は大聖堂に勤める司祭や修道士達の憩いの場として親しまれてきた、花々が生い茂る中庭。

 

 

 

 

中庭では、ひとりの男が静かに立っていた。彼は手にしたじょうろから、優しく水を花たちにかけていた。降り注ぐ水滴が花びらにそっと触れ、太陽の光を浴びてキラキラと輝く。

 

 

彼の名はトーラス。聖堂要塞エクレシアの神殿長であり、第10エリアの代表である。

 

色とりどりの花々が風に揺れる。咲く花々はトーラスにより大切に育てられてきた。

 

 

男は静かに、その大切な瞬間を過ごす。

 

これから、戦争が始まる。そうなれば、この中庭も攻撃を受ける。

 

 

トーラスは、花々と最後の時間を過ごしていた。

 

 

 

 

 

 

 

「失礼します」

 

 

中庭に入ってきたのは、一人の少女であった。

 

この要塞唯一の聖女である。ミネである。

 

多くの聖女が華々しい聖地や豪華に飾られた教会で働く中、中央からこんな古ぼけた軍事基地に流れてきた変わり者だ。噂では不正を告発しようとしたらしいが、真偽は分からない。だが上がやりそうなことだ。

 

 

 

「ついに始まりますね。異世界との戦争が」

 

「兵たちの様子は?」

 

「最後の祈りを捧げています。戦争が始まれば、大規模な集会を開くことはできませんから」

 

 

 

これから戦場に立つ兵士たちの士気は高い。

 

迫り来る異教徒の軍勢に対し、一致団結し、勇敢に戦おうとするだろう。だが真実を知る将兵は、厳しい現実に直面しており、一部の将兵の顔に影を落とした。眼には悲しみと無力感が滲み、しかしそれでも将兵は戦場で仲間たちと共に立ち続け、この一戦に臨む決意を胸に秘めていた。

 

 

 

 

 

 

 

「…我々も死ぬのでしょうか」

 

「あまりそのようなことを言うべきではない」

 

「申し訳ありません」

 

「………いや、謝る必要はない。君の気持ちもわかる」

 

 

はあ、と大きくため息を吐き、ベンチに腰掛ける。

 

 

 

「我々は死ぬ。聖軍作戦本部の報告書によれば、避けようのない事実らしい」

 

「ッ」

 

「我々は完膚なきにまで敗北し、全滅だ。上は我々を見捨てたらしい。この要塞に伝わる神器や聖遺物は一つ以外上が全て持って行ってしまった。虎の子の伝承騎士団も一緒にだ。今は要塞最下層で待機中と誤魔化してるが、いつまで持つか」

 

「そんな馬鹿な………あり得ません!この聖堂要塞は教典にも記載のある歴史ある要塞です!そんなはずは………」

 

「上にとってはかび臭い、ほこりだらけの老朽化した要塞としか思っていないのだろう」

 

「それにそんな事をいっている場合では無いということだ」

 

 

 

大きくため息を吐く。

 

 

 

「既に2つの世界が敗北した。獣と魔。どちらも我々の世界よりも低俗で劣ってはいたが、それでも彼らは強い。本来なら獣が勝利していたはずだ」

 

「ですが、彼らは…」

 

「そうだ、敗北した」

 

「まさか、こんなことになるとはな」

 

 

大きくため息を吐く。聖女は内心、「こいつため息吐きすぎだろ」と思った。

 

 

「簡単に勝てる戦だと誰もが考えていた。相手は愚かにも神秘を根絶やしにした世界。かといって科学もまだまだ未熟な世界」

 

「多少のイレギュラーはあったが許容範囲内」

 

「だが2つの世界が負けた。情報が規制されていて詳しくは知らないが、敵の戦力は強大だ」

 

 

「………どれだけ戦況が絶望的でも、戦うべきです。一兵でも多く殺し、一秒でも長く足止めする。そうすることで、他のエリアも楽になるはずです」

 

 

「上もそう考えた。これが作戦だ」

 

 

トーラスが聖女に、極秘と書かれた封筒を渡す。その封筒を開け、中の書類を見た聖女は絶句した。

 

 

「笑えるだろう?」

 

 

 

 

 

 

極秘 神殿長トーラス以外の閲覧を禁じる。

 

作戦名 ノーリターン作戦

 

発令日 【■■■■】

 

受信者 聖堂要塞エクレシア トーラス神殿長

拝啓、トーラス神殿長。

 

本命令は極めて秘匿性が高くかつ神聖な性質を帯びており、我々の信ずる神と守護すべき聖地の尊厳に関わるものです。異世界軍が聖堂要塞エクレシアの地上部を制圧し、敵本隊が地下に侵入した場合、以下の命令に従ってください。

 

あなたはこの神聖な使命の最高責任者です。この命令を率直に理解し、執行してください。

 

聖堂要塞エクレシアの自爆について

要塞の全ての神聖力を解放し、要塞全体を自爆させてください。この行為は神聖な犠牲であり、敵を排除し、我々の信仰と聖地の尊厳を守るための決して避けることのできない措置です。

 

聖女について

彼女の生命を作戦成功に捧げてください。

 

女神像について

聖堂要塞エクレシア最下層に設置されてある女神像は太古より存在する神秘です。この資源を有効に活用してください。

 

兵士について

本作戦は神殿長以外知る必要はありません。神殿長以外の全ての兵士の生命を捧げてください。例外はありません。

 

脱出について

神殿長は要塞最下層に極秘に搬入された保護装置に乗り込んでください。戦争終結後に回収します。幾つかの勲章と中央への栄転が約束されます。

 

 

 

この使命は、我々の信仰を守るための必要な手段です。私たちはこの聖なる犠牲を忘れません。この作戦の犠牲者は我々の神聖なる使命を果たすための選ばれた者です。彼らの献身は記録より完全に抹消されますが、我々はその行いを忘れることはないでしょう。

 

 

なお、この書類は閲覧後速やかに処分すること。

 

 

神の加護があなたと共にありますように。

 

敬具

 

[署名] 【■■■■■■■■■■■■■■】

 

 

 

 

 

 

 

 

「だが、こんなものクソくらえだ」

 

「は?」

 

 

書類は、神殿長の手から飛び出た魔法の火に触れ、燃え上がった。その火はあっという間に燃え広がり、灰となって風に舞い上がる。

 

 

 

 

「俺の神殿が、負ける?舐められたものだ」

 

 

「確かに神器や聖遺物はない。我々は下位エリアだ、難易度調整のための武装制限もあるが、他のエリアとは違い元々が老朽化した要塞だ。制限など有って無いような物」

 

「上はこの要塞を舐めている。何度も何度も増改築し、数多くの武装、迷路のように地下深くまで彫り込まれ、何十層にもなる結界で守られた不沈の要塞。精強な兵士。それに比べて敵はどうだ?下位エリアに来るのは、敵軍の中でも弱い軍隊だろう。強い奴らは上位エリアの攻略に向かうはずだ」

 

 

 

 

「我々は勝つ。戦争終結後、上の奴らをあっと言わせてやろうではないか」

 

 

 

聖魔大戦、それは神話の時代における戦争。この聖堂要塞エクレシアは敵軍に囲まれ、物理的にも精神的にも孤立した状況下でも戦い続け、援軍が来るまでの間耐え続けた。

 

 

 

 

 

 

 

「神殿長。もうすぐ時間です。早く要塞最下層へ」

 

「わかっている。だがその前に、地上の兵士に最後の祈りを捧げたい」

 

 

 

 

今日は実に素晴らしい日だ。雲ひとつない青空が広がり、太陽の温かな日差しが心地よい暖かさで眠くなりそうだ。

 

木たちは元気に育ち、大気は魔力で満たされる。心地よいそよ風が吹き、髪をなびかせ、心を穏やかにする。

 

 

この絶好の天気を活かして、ピクニックに出かけたくなってくる。

 

しばらくはこの美しい空を見上げることがないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

「待て」

 

 

 

「なんだあれは」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

午前11時32分  聖堂要塞エクレシア上空

 

山田 竜 視点

 

 

「いてッ」

 

 

●第10エリア限界高度に達しました。これ以上の上昇は不可能です。

 

 

このイベント『エンジェルフォール』のイベントエリアは50に分けられる。最初は45までのエリアが開放され、イベントの進行によって残りのエリアも開放される。

 

イベントエリアは天井と横に透明な障壁で囲まれており、この障壁は破壊不可能。

 

今俺は、障壁に頭をぶつけたと言うわけだ。クソが。

 

 

 

 

 

 

 

 

「7号」

 

「うん」

 

 

「魔力供給開始」

 

俺に寄越せ、その膨大な魔力を。

 

 

 

 

 

 

『ゴールデンボール』作戦に必要な物は、5つ。

 

 

『ミダースの手』

 

俺の右手に触れた物を生物非生物を問わずあらゆる物を黄金に変えるスキル。

このスキルを利用して俺は魔力と暇さえあれば可能な限り黄金に変えてきた。

 

 

 

『レフトハンド・シルバースライム』

 

左腕をシルバースライムに変え、一本の触手を自由に操るスキル。伸縮自在で様々な形に変形し、硬度を自由に変えることが出来る。俺はミダースの手を使う際、シルバースライムに変身した左手を黄金に変えていた。

魔力がある限りシルバースライムは増殖し大きくすることが出来るため、魔力だけで黄金を生み出すことが出来る。

 

 

『膨大な魔力』

 

山田ドラゴンガチャ王国の国民であるホムンクルス達。彼らは合成により色々混ざり合っているが、ベースとなるのは戦闘用ホムンクルスなため、一人一人が普通の人間よりも魔力の生産効率と最大魔力量が大きく、またホムンクルスは魔力タンクとしての用途もあるらしく、魔力の譲渡効率が良い。

 

 

『ホムンクルス統括個体 ハブ』

 

7号が進化ポーションを飲んだ結果、まさかの大成功。進化過程をいくつもすっ飛ばして最終進化先である、全てのホムンクルスの統括者であるハブへと進化した。

ハブとなった7号は、ホムンクルスの代表、絶対的な命令権を持ち、全てのホムンクルスの情報を知る女王となった。7号を中心に、全てのホムンクルスより魔力を徴収することが可能。

 

 

 

そして最後の一つ

 

発動に必要なのは、一言だけ。

 

 

「ガチャコール」

 

 

 

出現したのは、巨大な黄金の玉。

 

ガチャコール。それはガチャより排出されたアイテムを召喚する機能。

 

 

あらかじめスライムの左手を黄金化、そして黄金で大きな玉をつくる。

ホムンクルスの魔力を7号に集め、俺に譲渡。

 

この膨大な魔力を使い、玉をガチャコールで召喚する。

 

シルバースライムは、黄金となってもガチャからの排出アイテムとして判定されるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

【ゴールデンボール作戦】

 

それは、超巨大質量による攻撃。

 

 

 

重くて大きい物を、上から落とすだけ。

 

 

 

 

「落下」

 

 

 

黄金が、墜ちていく。

 

 

 

重力と加速装置により、地上の要塞に向かって猛スピードで接近していく。空を切り裂く黄金の軌道は、展開された結界を、まるでガラスを割るかのように粉砕する。

 

 

落下する黄金に対して地上の天使達は全力で飛び逃げようとする者、魔法や大砲で黄金を破壊しようとする者、様々だった。

 

だが、黄金はその軌道を変えず、全てを吹き飛ばした。

 

 

 

地響きとともに、歴史ある要塞に衝突する瞬間、街は爆発と炎に包まれ、煙と破壊の渦に巻き込まれた。

 

 

要塞の建造物が吹き飛び、炎が空に舞い上がる。悲鳴と絶望の叫び声は大隕石の猛烈な衝撃にかき消され、要塞は地図から消え、クレーターだけが残った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ~、ストレスが解消される~、7号はどう思う?」

 

「勿体ない………………あれ全部お金になりそうだったのに」

 

 

 

「大丈夫だ、あとで発掘作業でもして価値ありそうな物は回収するさ」

 

「ならいっか」

 

 

 

 

 

 

●山田竜陣営により、第10エリア代表 神殿長トーラスが死亡しました。第10エリアが攻略されました!

 

●クリア率99.2%!

 

●功績値計算中です。しばらくお待ちください。

 

●一定の功績値に満たないユーザーの侵入を禁止します。

 

●業績として、【鏖殺】【スピードアタック】【単独攻略者】などが与えられます。

 

●運営内で攻略方法について現在審議中です。

 

 

 

 

 






質量攻撃について詳しいことが知りたい人はブリティッシュ作戦と調べよう。

コロニー落としすぎ!



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

黄金卿の山田

 

 

「急げ急げ!索敵機を全機発進させろ!予備も含めて全部だ!」

 

「クソ、上位存在め………話が違うぞ!戦争開始は12時からのはずだ!抗議しろ!」

 

「第21エリア、攻略されました!」

 

「馬鹿な!あそこは湖の底に司令部があるはずだ!もう一度確認しろ!」

 

「たった12分で3つのエリアが攻略されるだなんて………もう終わりだ」

 

「どのエリアも緊急宣言後、ほぼ一瞬で攻略されています。恐らくは敵方の神級爆弾により一瞬で攻略されたものと推測されます」

 

「艦隊の出航を急げ!予測爆弾投下地点はこの港だ!一隻でも多く逃がすんだ!」

 

「第124索敵隊より入電!敵発見の信号受信!通信繋ぎます」

 

「こちら第124索敵隊タックル1!アルカニア港へ向け人型の物体が高スピードで接近中!数は2!繰り返す、こち」

 

「ロストしました!」

 

「上がっている航空機は全機迎え撃て!艦隊の空戦隊も全て上げろ!何としても爆弾投下を阻止しろ!」

 

「ですが陽動の可能性も……」

 

「わからんか!落とされた3つのエリア以外が攻略されたという報告はない!それも同時では無く順番にだ!敵が本気なら既に全エリアに爆弾が落とされて攻略されているはずだ!敵は恐らく少数精鋭!こいつら以外にありえん!」

 

「第124索敵隊、全機ロスト!嘘だろ、一瞬で30機が全滅だと!」

 

「確定だ!すぐに戦力を集中しろ!防衛計画は全て破棄、この敵の撃破に集中しろ!」

 

「ッ、第125偵察隊、第498雷槍中隊ロスト!続いて935航空隊全滅!」

 

「急げ急げ!時間は無いぞ!まだ寝ている奴がいたらたたき起こせ!」

 

「神性反応を観測!!識別結果でました!植物系統の神性です!」

 

「空中駆逐艦レイフォル、巡航艦サルマ通信途絶!」

 

「エネルギー吸収による栄養失調か………?」

 

「空中戦艦ハルキエル爆沈!飛行空母アンダーソン高度維持不可能!退艦命令出ました!」

 

「馬鹿な!あれは今年進水したばかりの最新型だぞ!信じられん!」

 

「対空戦闘始め!火線を集中しろ!」

 

「新たな神性反応を観測!運命系統の神性です!なんだこれ、数値の異常か………?」

 

「弾が当たらない!どうなっている!」

 

「システムエラー!光の剣防衛システム機能不全!」

 

「巨神砲台暴発⁉急いで救助を!」

 

「聖遺物を発動しろ!敵の神性を中和するんだ!」

 

「高魔力反応!大規模な時空間異常を観測!神聖術です!」

 

「レーダーが大規模な影を捕えました。これは………巨大です!アルカニア島よりも!」

 

「神器アイガイオンを起動せよ!」

 

「間に合いません!うわああああああああああああああああ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●山田竜陣営により第36エリア代表 聖海軍テルモア艦隊司令 リアン・トライデント大将が死亡しました。第36エリアが攻略されました。

 

●クリア率56.1%!

 

●功績値計算中です。しばらくお待ちください。

 

●一定の功績値に満たないユーザーの侵入を禁止します。

 

●業績として、【艦隊壊滅】【海軍の天敵】が与えられます。

 

 

 

 

 

 

●運営によってスキル『ガチャコール』に制限が発生します。一定以上の大きさのアイテムを召喚することは出来ません。

 

「くそ、運営め。無駄に対応が早い」

 

クソ運営あるある。ユーザーにとって有利な不具合や強力な性能の場合すぐに動く癖に、ユーザーに不利な事は対応が遅い。

 

だが、少し遅かったな。既に4つのエリアに黄金球を落とし、攻略に成功した。

 

それもイベントエリアに布陣する敵軍の規模からして、おそらく複数人のユーザーで協力しながら攻略、そして攻略報酬を分け合うというのが運営の想定だろう。

 

だが、どうだ⁈俺が4つのエリアを単独での攻略だ!報酬総取りだ!

 

 

 

●抗議しましょう!山田竜さんを舐めやがって運営めこのヤロー!私の話術でお詫びの品を分捕ってきますよ!黒毛和牛を要求します!焼肉パーティです!!

 

●その必要は無い。だろう?我が盟友よ。

 

わかってるじゃないか。ナビゲーター。

 

計画通りに行くことなんて滅多にない。何事も備えが大事、本命が駄目になった時のために次善の策を用意すべきだ。

 

 

「第1作戦は中止、第2作戦に移る。作戦『ゴールドダスト』を準備しろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第45エリアに指定されたのは、白亜聖域と呼ばれる場所であった。

 

 

第1から第50まで存在するイベントエリア。このエリアのナンバーが小さければ小さいほど攻略し易く、大きければ大きいほど攻略難度が上昇する。

 

第36エリアに指定されたのはアルカニア港を中心とする海域。

 

聖海軍のテルモア艦隊が母港を構えるこのエリアは、艦隊単独であるならば攻略難度は大きく下落する。

 

このエリアの難度を大きく引き上げている原因は、ユーザーがこのエリアに入場した際、陸地ではなく、海上に入場ゲートが開くということ。

 

それも入場ゲート周辺には陸地は存在せず、このエリアを攻略するには大規模な海軍運用能力が必要である。

 

初見でこのエリアに入場したユーザーはまず溺死する。そして聖海軍が入場ゲートを発見し、入場ゲート付近に艦隊を展開、ユーザーはエリアに入場する瞬間に集中砲火を受ける。

 

何とか防御力の高いユニットや海軍で展開された艦隊を突破しても、今度はエリアに点在する島々を攻略しながら、敵本拠地であるアルカニア港に進軍しなければならない。

 

しかしエリア内に存在する島々は高度に要塞化され、島を制圧し陸軍の拠点や航空基地、物資貯蔵施設や港を建設するためには大規模な上陸作戦を展開しなければならない。

 

味方の輸送艦は入場ゲートから目的地まで潜水艦や飛行する天使、航空機などの敵の脅威に怯えながら、この上陸作戦を繰り返す。

 

これがエリアの難度を大きく引き上げている原因である。

 

 

 

 

 

 

 

この白亜聖域が第45エリアに指定された理由は、結界の硬さにあった。

 

 

はるか昔、とある聖女がいた。この聖女は平民の出でありながら、他を寄せ付けない、非常に優れた人物であった。

 

性格も良く、神に対する信仰心も本物。そんな彼女は平民の出であることを理由に差別を受けるも屈せずに実績を積み上げていった。

 

だが、それを妬ましく思った聖女たちは、彼女の功績を奪い、自身のものとした。

 

平民に自身の権力が脅かされると恐れた権力者達は、彼女を冤罪で処刑しようとした。

 

だが、彼女には神の加護があった。奇跡的に脱出に成功した彼女は、自らの潔白を信ずる数百人の民と共に、聖域の一つである大森林に結界を張り、閉じこもった。

 

この聖域は高額で取引される木材や薬草などが多く育つ、金のなる木。

 

当然聖域奪還の為に聖軍は攻撃したが、その結界を壊すことはできなかった。

 

諦めて撤退する聖軍に聖女は一言だけを伝えた。

 

『我々は信仰に厚い者を受け入れます』

 

その後、彼女を信じる者、異端とされた者、追放された者、権力闘争に負けた者、不遇の扱いを受ける者、今の聖軍を見限った者たちがこの白亜聖域に集まった。

 

 

 

 

そんな歴史を持つ白亜聖域。

 

聖軍は、このエリアの勝敗はどちらでも良かった。

 

勝っても良し。荒廃した聖域の戦後復興の際に、聖域内で育つ希少な薬草と引き換えに、復興に必要な物資との取引をこちらの圧倒的有利に進めることができる。

負けても良し。邪魔者をまとめて排除できる。

 

 

中の人々は、イベントのことなど知らないのだ。

 

 

 

 

 

さて。山田がこのエリア攻略の為にした事は、とあるものを撒くこと。

 

それは、金の粉。

 

ミダースの手は、右手に触れた物全てを黄金に変える。

 

山田は右手の爪や皮、血液を黄金に変えた。

 

それを粉々に砕いた物を、ドローンや風属性魔法を得意とするホムンクルス魔術師兵により聖域に散布する。

 

 

白亜聖域は、あらゆる害から守る。

 

結界の強度は凄まじく、山田の落とす『ゴールデンボール』にさえ耐えることができるほど。

 

 

 

悪意もなく。生き物でもなく。重さもなく。速度もなく。毒でもなく。魔力もなく。

 

それは、結界を素通りする。

 

 

そうして、聖域のあらゆる場所に金粉が付着する。

 

 

 

 

そして、一つのスキルを発動する。

 

 

 

テセウスの船【残骸】

 

●テセウスの船の残骸はテセウスの船なのでしょうか。いえ、あれもテセウスの船です。

 

人間に置き換えるとどうなのでしょうか。

 

人間の体は絶えず細胞分裂が行われ、そして古い細胞は老廃物として排出され、少しずつですが確実に、すべての細胞は入れ替わります。

 

人間の老廃物である、垢、髪の毛、爪。それらはかつての貴方の一部です。そうこのスキルは認定します。

 

自分の体なら、自由に動かすことができます。爪や垢、髪の毛を自由に動かせるのです。浮かべ、猛スピードで動かすこともできます。垢人形を作るのもいいでしょう。消費魔力はありません。自分の体を動かすのに、魔力は使いませんからね。

 

つまりはそういうこと。このスキルは貴方の体から離れた、体の一部を動かすことができます。

 

 

 

 

 

俺の右手から離れた爪や皮は、黄金となり、砕かれても右手と判定される。

 

聖域全体に撒かれた金粉は、山田の右手。

 

右手に触れたものは、黄金となる。

 

 

金粉を経由して、黄金化を行う。

 

 

勿論、こんな同時多発的に遠隔でスキルを発動し、広範囲を黄金化するのは膨大な魔力が必要だ。

 

 

だが、これは違う。ホムンクルスより魔力を徴収し、発動させることでこの無理を通すのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、何かしら」

 

 

聖域に降り注ぐ、黄金の塵。

 

 

「綺麗、今日は良い日になりそうね」

 

 

 

 

 

 

 

白亜聖域は、黄金聖域となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●第45層代表 聖域の守護者 ソフィアが死亡しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はあ、はあ。さすがに疲れたな。

 

だが、どうだ⁉この疲労に値する成果はあるぞ!一つのエリア全てを黄金に変えてやった!これで戦利品の回収も簡単だ!

 

 

俺を舐めるなよ、運営!お前らの考えなんてお見通しなんだよ!これで安心だとか思ってんだろう!残念だったな!

 

あはははははははは、一瞬だ!45層、最初に開放されてあるエリアで最高の難易度だ!黄金卿の誕生だ!!

 

どうだ⁉お前ら運営が頑張って準備したこのイベントエリアは滅茶苦茶にしてやったぞ!ざっまみろクソ運営!

 

俺にガチャなんて物を与えるからこんなことに成るんだよ!

 

餓死しかけた恨みは深いぞ!

 

俺の勝ちだ。さあ、まだまだ時間はあるぞ!魔力の有る限り、黄金に変えていこう!

 

 

 

 

 

●ミダースの手に制限が発生します。今後あなたの右手が直接触れた物でのみ黄金化が可能です。

 

●ミダースの手に制限が発生します。今後ミダースの手を使う際は自身の魔力でのみ可能です。

 

 

 

修正が速すぎる!

 

 

クソゲー!!!

 

 

 




葬送のフリーレンは名作。特に黄金卿編は必見。
山田くんは運営が大嫌い。特に初期の頃に餓死しかけたからね。
運営に対して嫌がらせができてテンション爆上がりです。




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

やっぱり運営はクソ

白亜聖域の攻略に成功したその後、我ら山田軍は第14エリア、天空山脈墓所クラレントへと進軍を始めた。

 

このエリアは中央に高く聳え立つ山々とその周辺の広大な平野で構成されており、平野には山脈を囲むように何百層にもなる塹壕や結界、トーチカなどが存在し、さらにその山脈はアリの巣のように掘り込まれ複雑に要塞化、山脈中央に大規模な神殿が待ち構えている。

 

 

俺たちは戦争開始時刻である12時にエリアに侵入、早期に大軍を送り込み入場ゲート付近を制圧後、簡易的な陣地を構築、こちらも塹壕を掘り込み、第一次世界大戦のような泥沼の塹壕戦を繰り広げている。

 

 

塹壕同士で銃を撃ち合い、味方の砲撃や魔法により敵塹壕付近を吹き飛ばした後、銃弾が雨のように飛び交う中突撃、そして近接戦闘により塹壕を奪う。

 

この一回の突撃が成功しても第2第3の塹壕が待ち構え、進めるのはほんの僅か。しかも天使は基本的に全員飛べるため、制空権はあちらにある。

 

こちらの塹壕なんて飛んで無視して制圧した陣地に攻撃してくるため、まともに爆撃機用の滑走路も建設できずにいる。

 

なんとか改造したゲパルト戦車と飛行可能なホムンクルスにより迎撃しようとはしているが、天使の数が多すぎて手に負えないのが現状だ。

 

さらに塹壕は延々と横に広がっている為、敵塹壕を縦に突破しても横から天使が殺到するのだ。

 

おまけに山脈には多数の超長距離砲台が幾つもあるらしく、遠い山々からの砲撃が止まらない。

 

しかしそこはホムンクルス。絶えることのない不屈の戦闘狂であり、制空権がないにも関わらず銃弾の雨を強引に突破して戦場を優位に進めている。マジか。

 

 

兵士はホムンクルスを主力として構成された魔王軍と他のユーザーの戦力との合同での作戦を実行中だ。

 

他のユーザーとは直接会えなかったが、ユーザーの支配下にあるユニットとは会うことができた。

 

だがそのユニットの大半は偵察隊で、このエリアの攻略が非常に面倒臭そうだとわかるとすぐに撤退していった。さらにこのエリアに俺は大規模な軍を投入している為、ユーザー達は戦果の大部分が俺に独占されると思い、このエリアの攻略は諦め他のエリアの攻略へと向かってしまった。

 

今いるのは俺の情報を集める監視役と、俺のおこぼれを狙う戦力だ。

 

 

 

こちらの奥の手である高レアリティユニットの投入はまだ行わない。あいつらは戦線が膠着して敵が油断した際に投入する予定だ。

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで一夜明けた。

 

では、今日の無料ガチャ回してみよう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

C『靴下』

 

 

現れたのはクリスマスカラー、つまり赤緑白色の毛糸で編まれた大きな靴下だ。

 

………いや、かなり大きい。

 

人間が履けるサイズではないので、おそらくプレゼントを入れる用の靴下だろう。

 

靴下は同じくクリスマスカラーのリボンで飾られ、雪の結晶、ベル、サンタクロース、トナカイ、プレゼントボックス、ツリー、星などのクリスマス的な物でゴテゴテと飾られている。

 

 

 

俺は中身を確認する。きっと何かプレゼントが入っているのだろうとわくわくしながら見たが、特になかった。

 

 

 

 

は?

 

 

 

 

はーーーー、なんだよこれ。ガチャ産だろう?何かないのか?開けたら爆発するプレゼントとか。

 

 

がっくりとしながらため息をついていると、天井から作業服を着た透明なおっさんがあらわれた。

 

 

 

 

 

は?

 

 

 

 

「どうも、サンタクロースじゃよ」

 

「いや、どうみてもサンタクロースじゃないだろ。ただのおっさんじゃん」

 

「あの服は制服じゃ。副業に制服はつかわん」

 

 

 

鑑定!

 

 

 

●伝説の惣菜屋 配達員 サンタクロース

 

 

伝説の惣菜屋はクリスマス以外基本的に暇なサンタクロース達を配達員として雇用しました。

トナカイが牽くそりに乗って素早く移動し子ども達にプレゼントを送り届けるサンタクロースは配達員として最高の人材です。透過のスキルをもっており壁などを無視して移動できます。

 

サンタクロース達は金銭とトナカイを食材にしないことを条件に契約しています。

 

 

 

 

 

………どうやらマジモンのサンタクロースらしい。サンタクロースを雇用し、宇宙艦隊まで持っている惣菜屋の謎が深まる。

 

 

 

「ほれ、プレゼントじゃ。サインを書いてくれ」

 

「あっ、どうも」

 

俺はサンタクロースが出した紙に万年筆でサインをする。サンタクロースはそれを受け取ると、靴下の中に何かを入れた。

いや、目の前に俺がいるんだから靴下に入れるんじゃ無くて俺に渡せよ。

 

 

 

「フォッフォッフォッフォッ。一週間に一度、届けに来るからのぉ。それがこの靴下の特典じゃ」

 

 

 

そうしてサンタクロースは去って行った。俺は靴下の中身を確認すると、スーパーで売っていそうな唐揚げが入ったプラスチックのパックがあった。風情の欠片もない。本当にサンタクロースか?

 

 

唐揚げは味付けがされていないのか、天ぷらのように衣が黄色い。

 

 

一口食べてみると、味付けがされていない分、素材の美味しさが際立っていた。

衣は軽やかでサクサクとし、中からは柔らかくジューシーでありながら、素材自体の風味を引き立てていた。

 

最近ホムンクルスが作るやたらと味の濃い料理ばかり食べていたが、この唐揚げは、濃厚なソースなどを使わず、シンプルな美味しさだった。

 

 

 

 

 

ふう、旨かった。あっさりとした、淡泊な味だったな。

 

俺はパックの蓋を閉め、生け贄の棺に捨てに行く。その際、俺はパックの裏に貼られたシール、製造日や賞味期限、原材料などが書かれてあるあれを何気なく見てしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

原材料 ウシガエル

 

 

 

 

 

うわああああああああああああああああああ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、ホムンクルス達に、サンタクロースにカエルを食わされたという話をすると、どこから聞いたのか暴食の魔王が「カエルはおいしいですわ!」、暴食の邪神ベへモットが「何故カエルを食わん!」といい、カエル料理のフルコースを食べさせられた。

 

 

カエルフルコースは、見た目だけではカエル料理だとわからないように丁寧に調理され、そのどれもが絶品だった。正直カエルを食材にすることに対しての拒絶感は薄まった。

 

 

 

いやぁ、美味しかったんだよ?だけどさ、それは暴食の魔王が、カエルの見た目が苦手な俺のために丁寧な調理をしたからこそだ。

 

 

 

 

問題は、ホムンクルスにカエル食ブームが来てしまったことだ。

屋台を見るとカエルをまるごと焼いた串焼きが売っていた。

 

 

あっちではカエルの炙り寿司が売ってあった。豊洲地下ダンジョンで3メートル級のカエルをハントに成功したらしく、大きなカエルを捌いてシャリの上にのせていた。

 

 

 

味は美味しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日のログインボーナスはイベント確定ガチャコイン!

 

 

イベント、これはまた珍しい。俺はイベント系のアイテムを一回しか手に入れたことはない。

 

100連ガチャをした際に初めて【戦艦墜落】というイベントが発生し、どこから現れたのか地面に不時着していた。

 

 

 

そういえば、戦艦なのだが技術が高度すぎてほとんど解析が進んでいない。そもそもうちに研究者が少なすぎるのだ。研究者系ホムンクルスの生産も僅かだがしてみてはいるが、興味のある分野しか研究をしようとしない。この前作ったホムンクルスは【マグロの水族館飼育】に興味を持ってしまった。何でだよ。

 

 

 

戦艦墜落場所は今や観光地として戦艦の周りにお土産ショップが出ているくらいだ。

 

 

 

 

それではガチャ、いってみよう!

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

 

 

UC『朝貢貿易』

 

 

 

 

 

中国の歴代王朝が行った貿易。周辺の国家が中国の王朝に対して特産品などを献上し、それに対して王朝による下賜という形で交換を行う物物交換での貿易。基本的に中国王朝が多い時で献上される品の数十倍もの宝物を下賜していた。

 

 

 

 

ショッピングモールの外からざわめきが聞こえ、外に出ると数百名の小人達がまるで大名行列のように道を進んでいた。

 

 

彼ら小人は自らを、【レプラコーン百支族連邦共和国】の、山田ドラゴンガチャ王国国王に臣下として貢物を贈りに来たと主張し出した。

 

 

レプラコーン。アイルランドの伝承に登場する妖精で、靴職人として有名で、儲けたお金を土の中に隠しているらしい。

 

連邦共和国の場所を聞いてみると、案の定先ほどまで何もなかった場所に小さな森が出現していた。おそらくこの地下に連邦共和国が存在するのだろう。

 

俺はレプラコーンの贈り物をありがたく受け取った。貰えるものは貰う主義なのだ。

 

 

 

…中身は、小さなレプラコーン用の靴だった。

 

 

 

うーん、要らない!

 

 

だが受け取り拒否するのも失礼なので受け取っておく。魔のダンジョンの小人達にでもあげよう。

 

 

さて、ガチャから出たこいつらのイベント名は朝貢貿易。臣下の礼を取ってはいるが、それは形だけでこいつらはただ利益のために臣下のフリをしているのかもしれない。

 

なら、やる事は一つ。俺に従った方が得だと考えさせる為に、大量の宝物を与えよう。

 

 

俺は黄金や宝石細工、豪華な食べ物などを振る舞ったらレプラコーン達は大喜び!喜んで今後も従い、レプラコーンはショッピングモール周辺に大使館を作るそうだ。

 

ホムンクルス魔術師兵の魔法によれば、どうやら嘘はついていないらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、レプラコーンに足のサイズを測って貰い、オーダーメイドの靴を作って貰った。片方だけの。

 

 

レプラコーンは靴職人として有名だが、何故か片方の靴しか作らないのだ。

 

何故片方の靴しか作らないのかと聞いても、黙るだけ。そこは伝説の通りらしい。

融通の利かない種族だ。

 

 

だが記憶忘却剤をレプラコーンに飲ませ、俺の靴を作らせた。記憶を消すともう片足を作ってくれた。どうやら自覚がなければ大丈夫なようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第1エリア  ホド島

 

俺は他のユーザーのユニットからの情報で、第1エリアに大勢のユーザーが攻略に参加していることを聞き、ユーザーと情報交換をするために第1エリアへと向かった。

 

 

入場ゲート付近は、驚くべき事にまだ戦争開始から24時間も経っていないにもかかわらず既にコンクリートで敷かれた軍事基地が完成していた。

 

戦車に装甲車、兵員輸送車が基地内を行き交い、航空基地よりひっきりなしに航空機が出撃と着陸を繰り返している。

 

さらにこの付近に砲兵陣地でもあるのか砲撃音が途絶えること無く聞こえ、さらに軍事基地内には大勢の軍人が闊歩していた。

 

 

そんな光景に呆然としながら俺は入場ゲート付近にいた軍人に案内され、司令部があるという移動式陸上戦艦の中に入った。

 

 

 

 

 

「やあ、待っていたよ!」

 

 

そこにいたのは軍服姿の西洋人女性だった。コスプレのような見た目では無く、本物の軍人といった印象を受ける。だがこんな軍服を俺は見たことがない。

 

「失礼……よし、そのまま爆撃を続けろ。15分後作戦通り、パワードスーツ隊は軍港へ奇襲し制圧。すぐに艦隊を召喚し制海権の奪取を始める」

 

 

どうやらお飾りの軍人というわけではないようだ。周りの軍人は彼女に報告し、彼女が命令を行っている。

 

 

「まずは挨拶だ。私はスイス指定ユーザーのエマ・ミュラーだ。今は下位ユーザー連合軍の総司令官を務めている。早速だが、よければ君も連合軍に入らないか?」

 

「いやあ、俺は一人で戦いますよ。自分でいうのもあれですけど、結構戦力はある方だと思いますので」

 

「うん?そうか。これまでイベントに参加しなかったことを察するに、自身の戦力に自信がなかったと考えていたのだが」

 

「………俺だってイベントに参加したかったですよ。でも、俺はイベントのことを知ったのは、2回目が終わった後でした」

 

「そうか。さてはあのクソ運営が何かしたんだな?」

 

「ミュラーさんも運営に何かされたんですか?」

 

「下位ユーザー連合軍に所属しているほぼ全てのユーザーが運営に対して不満を持っている。残念ながら、運営により与えられた能力とアイテムの差が激しいからね」

 

「あーー、わかります!俺も最初はひどいめに遭いましたから!」

 

「本当に運営はクソなんだ!あいつらは能力の想像外の使用にすぐ制限をかけてくるんだぞ!君は能力の制限されたことはあるか?私はあるぞ、おかげで計画が台無しだ!」

 

「ミュラーさんも!マジで最悪でしたよ!俺もただガ」

 

「おっと、能力の開示はやめておいた方がいい。与えられた道具や能力が知られることは命取りになるからね」

 

「あ、そうなんですか。すみません」

 

「しかし私はあえて言おう!私の能力は【傭兵会社】簡単に言えば様々な世界から傭兵を雇用、兵器を召喚することができるのさ」

 

「連合軍に加入しなくてもいい。だがそれでも私は君と協力してエリアの攻略を進めたい。人手はあるほうがいいからね。それに私はユーザーに対してお金と引き換えに傭兵の派遣を行っている。もし戦力が足りないというのであれば、遠慮無く言うと良い。ちなみに連合に入れば格安で派遣するからね」

 

「もし力に自信があるならば上のエリアの攻略に乗り出すのもいいだろう。連合に属さない、力あるユーザは自分に合った難易度のエリア攻略を始めている。彼らと協力し合い、攻略するのも良い。初対面の相手に攻撃するほど彼らも余裕はない」

 

「ああ、でも上位エリアに行くのはおすすめしない。上位ユーザーがひしめく上位エリアは地獄だよ」

 

俺が攻略した45層は敵が何かする前に潰したからな。他の上位エリアはどうなっているのだろうか。

 

「そんなに天使が強いんですか」

 

 

「ああいや、そういう意味じゃない」

 

 

 

 

 

「上位ユーザーはね、天使そっちのけでつぶし合っているんだよ。ランキングが高いユーザーの戦力を落とすためにね」

 

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

賠償金寄越せゴラァ!!!

魔王軍の主戦力であるホムンクルス達は、周りをこれでもかと要塞化された堅牢なエリア、天空山脈要塞クラレントの攻略を続けている。

 

敵の士気は尋常では無く、既に凄まじい被害が出ているにも関わらず敵は苛烈な攻撃を続けている。おまけに数もやたらと多い。山脈を丸々と何百重もの塹壕や壁、砦などで囲っているのだ、どこか防御の甘い箇所を探してはいるが、それがないのだ。はっきりいって異常である。

 

そのため進軍は地道にコツコツ、一つ一つ塹壕を突破し、一人一人天使を堕としていく。これではいつになったら山脈中央に位置する墓所の攻略が始まるのか。

 

 

 

 

そんな悪戦苦闘、いや時間はかかっているけど前線はこちらの圧倒的優位に進んでいるから悪戦ではないか。

 

………まあ、そんなホムンクルス以外の魔王軍は何をしているのかというと、既に攻略が完了したエリアの敗残兵狩りと戦利品の回収である。

 

 

 

敗残兵狩りは今のところ順調である。殆どの天使(天使以外もいた)は圧倒的な理不尽の前に士気が崩壊し降伏し捕虜となっている。抵抗戦力も僅かながら存在するが、黄金球を堕とした影響で大規模な兵器は殆どがだめになっており、物資も不足しまともな組織的抵抗もできず、順調に排除中である。

 

 

 

 

そして戦利品だ。俺は部下より上がってきた報告書に目を通す。

 

 

俺が攻略した湖はどうやら水底に隠れた軍事基地があったらしい。この軍事基地は水中にもかかわらず、泡のような物の中に基地があり、中は空気で満ちていた。

 

現在この現象を発生させていたと思われる装置の回収に成功。この装置の解析を進め、量産化を目指してマッドサイエンティスト達が研究中。この量産に成功したら、この惑星の海底調査と、いつか訪れる海洋惑星開拓の際に大きく役に立つだろう。

 

 

次は天使達が運用していた艦隊だ。港にあった艦艇は黄金球を堕としたことで殆どが吹き飛んでしまったが、どうやら敵の司令官は有能だったようで、俺が黄金球を堕とす前に多くの艦艇を港より脱出させていた。

 

だが直撃はしなくても黄金球落下時の風などで多くが転覆し沈没または横転、海上に展開していた艦隊の生き残りはほぼゼロである。

 

 

そのため多くの艦艇は損害度は低く、俺は海の上に浮かんだり、浅瀬に沈む艦艇など、比較的損害軽微な艦艇のサルベージを始めている。これらを丸ごと魔王軍の海軍戦力として流用するつもりだ。

 

 

 

一部の島々にも、地下ドックに無傷の艦艇や天使の兵器があるので、こっちも解析中だ。敵の兵器解析により、我が軍は優位に立つことだろう。

 

 

 

さて、他にもあるぞ、俺は回収した天使の死体を転生の祭壇で蘇生させ、天使には艦艇の操作方法や他のエリアの情報、天使の生態や天使世界の情勢、国家や軍の編成などを聞き取り調査を行っている。一般兵は荒廃した魔のダンジョンの復興作業に投入した。人手不足が少しだけ解消されたとダンジョンマスターは喜んでいた。

 

 

多くの天使がイヤイヤながら口を割る中、第45層エリアの人々は驚くべき事に俺たちに協力的だ。

 

理由を聞くと、どうやら45エリアの天使達は追放されていたようで、そもそも俺たちユーザとの戦争のことなんて起きたことすら知らなかった。

 

それに死んだという自覚もないらしい。俺が一瞬で黄金に変えたから痛みとかがなかったのだろう。むしろ狭い聖域から解放してくれてありがとうと一部の人々に感謝されたくらいだ。

 

第45エリアの人々は信仰の自由を保障してくれるのなら協力的に従うらしいので、保障した。

 

 

そして俺は、聖域の守護者ソフィアより、とある情報を入手した。

 

 

 

 

 

 

 

 

元々はこの天空山脈墓所クラレントを攻撃したのは、墓所に眠っている過去の英雄達を転生の祭壇にて蘇生し、自軍に加えるためであった。

 

 

ただの墓を膨大な費用を費やして要塞化なんてするか?

 

恐らく、相当な英雄や影響力を与える天使、そして副葬品として何か神器などが眠っているのかもしれない。それを奪取する為に進軍したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの墓所に埋葬されているのは、英雄ではありません」

 

 

「かつて地上が飢餓により荒れ果てた時代、冥府の水を汲み上げ周囲に恵みを与え、その代償として命を失った神」

 

 

「冥府の神エリオ、神が眠る墓なのです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目標変更。

 

 

 

 

神の死体を手に入れ、転生の祭壇にて蘇生し俺の神話体系に組み込む。

 

 

 

 

 

 

ん…?神?

 

 

神………………?

 

 

 

 

 

「ああそれと、今俺が送ったものはこの女神の死体だ。絶対にホムンクルスに合成したり、戦争王や首無しにアンデッドとして蘇らせて使うなよ。いつか使い道がわかるはずだ」

 

 

 

あっ。

 

 

 

 

俺は、信号機の女神の死体のことを思い出した。

 

転生の祭壇がガチャより排出されたのは、この女神の死体を手に入れた後。

 

これに使えってことか!

 

でも今は転生の祭壇は、天使の蘇生で忙しいので一旦放置!!

 

 

 

 

 

それでは、今日の無料ガチャ!

 

 

 

 

ガタンッ!

 

 

 

R『月光』

 

太陽光が月に反射した光。

月光とは要するに太陽光なのである。その光約0.2ルクス。

月明かりとも呼ばれ、満月の際は夜はそこそこ明るくなるのだが、反射してこの光の強さ。太陽光の光の強さがわかる。

月光という名字の日本人がいる。ちなみに読み方はげっこうではなくつきみつ。

 

 

 

 

出現したのは、まるで電球のように白く光る、ぷかぷかと浮いた小さな球だった。

 

ま、眩しい!光の強さが半端ではない!

 

ショッピングモールがこの強すぎる光のせいで真っ白だ!

 

いや、そんなことより。

 

 

 

 

 

月は恒星じゃないんだが⁈

 

 

 

 

 

 

 

その後、月光は意外な顛末を迎えることとなる。

 

最初は月光をエネルギー源とした月の加護を受けた武装の製造計画が立案された。

 

しかしその案は問題を抱え没に。

 

さらに月光とホムンクルスを合成しようとも考えたが、もっと別の利用方があるのではないかと多くの案が立案されては没にを何度も繰り返し、二転三転。

 

最終的には月光を利用した発電所を魔のダンジョン内部に建設する予定だったのだが。

 

 

 

 

月光は行方不明となった。

ガチャ産アイテムの初の紛失である。

 

 

 

今後はガチャから出たアイテムやダンジョン産などの貴重又は危険なアイテムは厳重な管理下に置かれ、書記官をリーダーとした妙物管理機構を設立。

 

今後はこの機構がアイテムの管理記録保管を行い、許可の元貸し出し、研究運用が行われる。

 

 

これまでは一つの倉庫に詰め込まれていたアイテム群は種類ごとに分類され、アイテム番号が付けられる。

組織も大きく再編成。記録課、保守課、防衛課、運用企画課、管理計画などに組織化されることとなる。

手始めにアイテムを管理するための様々な施設の建設が始まり、管理機構直属の部隊も多く設立された。

 

 

 

 

 

 

 

今日のログインボーナスはシステム確定ガチャコイン!

 

 

きた!他のユーザーのユニットなどと話してみて、どうやら俺はフレンド機能やメール機能など多くの機能が開放されていない。

 

だが、このシステム確定ガチャでどれか一つ、もしかしたらまだ他のユーザーが存在すらしらない未知の機能が開放されるかもしれないのだ!

 

 

さぁ、レッツガチャ!

 

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

HR『機能開放 どこでもガチャ』

 

 

●ガチャの機能が一部開放されました!これからわざわざガチャにコインを入れてレバーを回さなくても、我々ナビゲーターに回したいガチャと使いたいコインを指定することで大丈夫です。

 

 

 

 

…おお!よかった!俺はガチャを引く為にいちいちショッピングモールに行かなくてはならないことを面倒臭いと思っていたのだ!

 

 

 

しかし問題が一つ。今手元には、回せるガチャコインが何かあった時用のSSR確定ガチャコインしかないということだ。

 

 

 

…あのさぁ。

 

こういう時ぐらい、無料で一回ぐらいガチャを回させてよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第1層 ホド島

 

 

俺は少しでもホムンクルス達の攻略を助ける為、スイス指定ユーザーであるミュラーから傭兵達を雇用しにきた。

 

 

俺は早速黄金で取引をしようとしたのだが、断られてしまった。

 

エマが運営している通貨取引所で一度APと呼ばれる通貨と交換し、その通貨を使ってくれと。

 

交換できるのは、魔力が込められた石や宝石、他には鉄やアルミなどの鉱物、ゴムや食料など、まぁ兵器製造に必要な様々な資源だ。

 

 

俺は今後ともいい取引相手になるであろうことを考えて、経済を壊さないように黄金をわずかばかり交換、他はダンジョンから採掘した魔力結晶や鉄などと交換した。

 

 

 

よくみてみると、他のユーザー達や傭兵たちもこのEPを使い取引をしていた。

 

独自の経済圏の構築を始めているようだった。自分が発行可能な通貨が世界の標準になるのは経済的にもメリットが多い。

経済戦争的なことも考えているのか。すごいなぁ。

 

 

 

また、ミュラーとの交渉、というか値切りの際に交渉スキル持ちの商人系ホムンクルスと近衛隊を連れていったのだが、ホムンクルスを見て一言。

 

 

「そうか、戦力に自信があるというのは、本当だったのか」

 

 

こいつ、俺の近衛隊の力を見抜いてやがる。

鑑定防止用のアイテムをホムンクルス達に持たせているのにだ。

 

一目でホムンクルスの力を見抜くとは、ただものではない。

 

さらにミュラー率いる下位ユーザー連合軍は第1エリアから第5エリアを同時並行で攻略している。作戦計画の大まかな立案や総指揮は全て彼女がやっているのだ。ユニットに任せずにだ。やべぇ。

 

 

 

そんな化け物相手に傭兵雇用費用を何とか割り引いてもらい、契約を完了した。

 

 

 

 

 

 

事件は帰りに起きた。

 

 

 

 

 

「閣下」

 

「わかってる」

 

俺たちは足を止める。

 

「おい、おまえ。隠れてないでさっさと出てこい」

 

 

 

 

 

「ふん、ばれたか。優秀なユニットだな」

 

姿を出したのは、一人の背が高い男だった。だが肌は紫色で髪は白い。耳もエルフのように尖っており、服はヨーロッパの貴族のような格好だ。

ユーザーではない。誰かのユニットだろう。

 

「なんのようだ」

 

「ここでは誰かに聞かれるかもしれん」

 

 

男は魔法陣が刻まれた大きな宝石に触れると、一瞬で俺たちの周囲を取り囲むように結界が張られてしまった。

 

 

 

「どうしますか?この程度なら時間があれば壊せますが」

 

「いや、いい。おい、何のつもりだ」

 

「ククク、勧誘に来たのだ。貴様、我らが魔王軍に入るつもりはないか?」

 

「…魔王軍?」

 

「そうだ、我々は有能な仲間を求めている。偉大なる陛下の下につく気はないか?貴様以外にも大勢のユーザーが陛下率いる魔王軍の傘下に加わったぞ」

 

「いや、嫌だけど」

 

「…………は?何故だ?仮入会でも良いぞ?」

 

「魔王軍なんて名乗るそんなよくわからない組織に行くか」

 

「ああそうか、貴様、魔王軍のことを知らないのか」

 

「それなら、力を見せるとしよう。多くのユーザーがこれを見て目の色を変えた、我が力!」

 

 

 

 

「権利使用、ランキング表示権!」

 

 

 

その瞬間、光が俺を貫いた。

 

 

 

 

●ユニットがあなたに対して【ランキング表示権】を使用しました。あなたの名前と次回中間発表時に公開されたランキング順位の情報が権利使用者に公開されます。

 

 

 

 

「ははははははは、どうだ?今私が何をしたかわかるだろう?ショップで購入できるランキング表示権だ。それも高額、下位ユーザーであろう貴様では買うことすらできない非常に高価な権利だ。私はこの他にも多くの権利を閣下より与えられている。これで魔王軍の力がわかったはずだ。わかったのならさっさと我らが魔王軍に忠誠を誓えグハァッッッッッッ!」

 

 

 

男は俺の護衛であるホムンクルスの飛び膝蹴りをまともに食らった。

 

それを皮切りに、次々と男をボコボコと殴ったり蹴ったりし始めた。

 

あ、ちょ。

 

 

「貴様!山田組長に何しやがった!」

「穂無ン苦流栖、舐めとんちゃうぞゴラァ」

「宣戦布告と受け取っていいのだな!」

「指1本じゃ足りねえぞ!」

 

 

 

「ま、待て!話を聞け!」

 

ホムンクルスは人の話を聞かない。

 

「おい!こいつらを止めさせろ!」

 

 

いやあ、止めたいのはやまやまなんだけど、今ホムンクルスはヤクザブームなんだよ。

 

ブーム中のホムンクルスを妨害すると、すごく落ち込んでしまう。だからブームにノリノリなホムンクルスは飽きるまで放っておくのが基本なのだ。

 

それに一応手を抜いている。ボコボコと蹴ったり殴ったりしているが、普通に話す余裕はあるし。もし本気なら既に肉塊になっているだろう。

 

 

さて、鑑定。

 

 

 

 

 

●簡易鑑定では情報取得ができません

 

 

 

 

 

…こいつ、簡易鑑定が効かない!

 

もしかしてこいつ、結構高位のユニットか?

 

 

 

 

「ま、待て!魔王軍に入ると多くのメリットがあるのだ!」

 

「いいか、先ほど使ったランキング表示権は非常に高価なのだ!貴様が逆立ちしても買えない権利だ!我々はこの権利を湯水のように使うことができる!」

 

「陛下に従うというのなら、この権利を含めて死の軍勢やイベントポイント、アーティファクト、他にも多くの物が陛下より与えられる!陛下に絶対服従するだけでいいのだ!」

 

「絶対服従?誰がそんなことするかよ」

 

 

「多くのユーザーが最初は不満を持つ。だが、陛下の指示通り動くと全てが上手くいくのだ!!みな顔色を変えて忠誠を誓うのだ!」

 

 

「絶対服従なんてするくらいなら下位連合軍に入った方がマシだ。あそこはユーザーを部下として扱ってくれるからな」

 

 

「は、あの女のことを言っているのか⁈陛下の魅力もわからぬあの愚か者が!」

 

「いいか、あいつは下位ユーザー全てを支配下に置いて自身がランキング上位争いに参加することを考えている」

 

「だが陛下は違う!既に多くの中位ユーザーを仲間に引き入れているのだ!戦力差は歴然!未だ下位エリアで燻っているあの女とは違うのだ!」

 

「俺たちはそのための仲間を集めている。陛下に従うのなら早いほうが良い。いずれ全ユーザーのトップになるお方!」

 

 

 

「さあ、陛下に従え!」

 

 

「お前みたいな偉そうな奴に従うかボケ!」」

 

 

峰打ちパンチ!!!

 

 

「グハァァッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●権利使用者が【ランキング表示権】を解除しました。次回中間発表時に山田氏の順位は公開されません

 

 

 

 

 

「解除したぞ…、さあ、もういいだろう。私を解放しろ」

 

「は?これで終わりとでも思ってんの?」

 

 

今のは、マイナスがゼロになっただけだ。

 

例えば、誰かを殴ったとして、その傷をポーションで治したら無罪になるか?

 

詫びが必要だろう?

 

 

 

 

「賠償して?」

 

 

 

 

俺は半泣きになったこの男から賠償として対呪シールドを貰った。これがあれば10年間呪いを無効化できるらしい。

 

 

 

やったね!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●能力制限についてのお詫びと補償に関するお知らせ

 

 

いつもお世話になっております、運営チームです。

まず初めに、突然の能力制限についてご理解よろしくお願い申し上げます。

 

この度はお詫びの意を表し、またご迷惑をおかけしましたことの補償と今回のエリア攻略報酬に関して、運営スタッフを派遣させて頂きます。

 

補償と報酬に関しましては、派遣する運営スタッフに全権を任せており、運営チームは一切の責任は負いかねます。




男の敗因
➀山田がランキング表示権の価値をわからなかった。
②山田のミュラーに対しての好感度が高かった(挨拶をする)(初手で攻撃してこない)(物事を強制してこない(部下に任せず自分から直接会ってスカウトする)
③陛下率いる魔王軍のことを山田は知らない)
④山田は偉そうで物事や人は全て自分の想像通りに行くと考えている奴が嫌い。利益度外視でその想像を壊したくなる。逆張り精神。
⑤この偉そうなやり方で既に何人ものユーザーのスカウトに成功していたため、まさかスカウト失敗するとは思わなかった。油断慢心。
⑥ホムンクルスが人の話を聞かない

SNS https://twitter.com/taiyoukuntax


パソコンからご覧の方は小説上部の評価から、スマホの方は右上のメニュー、評価付与から評価が可能です。まだの方は是非。

感想や推薦など、よろしくお願いします。

小説家になろう、 カクヨムでも投稿しているのでそちらでも是非。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

賠償金寄越せゴラァpart2

ダンジョン第98層 王宮 王座の間

 

 

俺は運営が来る時を玉座に座り待っていた。

 

俺をこんな訳のわからないゲームに強制参加させ、餓死寸前にまで追い込んだクソ運営のスタッフとの初対面。

 

玉座の間は近衛隊を筆頭に厳戒態勢にて警備中だ。

 

正直言って顔面をぶん殴って制裁したいが、そもそも俺の力は全て運営が与えた物だ。不快な思いをさせたらあのクソ運営はペナルティとして力の没収や弱体化をしてくる可能性がある。

 

 

非常に、非常に遺憾ながら俺はおもてなしの用意をしてある。

 

言わば接待のようなものだ。運営スタッフをもてなしていい思いをさせ、可能な限り情報を引き出して豪華な報酬をもらい、さっさと帰ってもらう。

 

 

ああー、何で俺がこんなことをしなきゃならんのだ。

とりあえず接待は『暴食の魔王』による豪華料理を食べさせて、『接待の達人 サラリーマン櫻井』にその他諸々を任せるがそれでも最低限俺も何かしなくちゃならない。

 

 

はぁ〜〜。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…来た。

 

ついに来た。玉座の間の中央に膨大な魔力が集まりだし、警備中のホムンクルスが身構える。

 

 

玉座の間中央の俺の前に虹色に輝く魔法陣が出現した。空間転移系の魔法陣だ。運営も魔法を使うらしい。

 

 

 

 

さぁ、ついに運営スタッフとのご対面だ。どんな奴らなんだろう?種族は?年齢は?数は?そもそも人なのか?

 

俺は魔法陣を注視し、いつ何が起きても問題ないように魔王装備で待ち構える。

 

 

 

 

 

 

…ん?

 

…なんか、魔法陣小さくない?

 

空間転移系の魔法陣は門のようなものだ。魔法陣が大きければ大きいほど、でかいものを転移させることができる。

 

だが目の前に出現した魔法陣は、人が出現するにはあまりにも小さい。大きさは俺の手のひらくらいの魔法陣だ。

 

まさか小人か?それとも俺の知る空間魔法とは全くの別物なのか?

 

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

普段よく聞く音。

 

 

 

 

魔法陣から、一つのカプセルが落下した。

 

 

そして魔法陣はすっと消えた。残されたのは、コロコロと転がるカプセルが一つ。俺がいつもガチャから出している、あのカプセルと瓜二つ。

 

 

 

 

俺は猛烈に嫌な予感がしながら、カプセルを手に取り、開封する。

 

 

 

 

 

「どうもこんにちは!運営スタッフです!あっ、何かすごいいい匂いがしますね!もしかして僕のために用意してくれたんですか⁈」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いただきまーす!!!」

 

俺はとりあえずこの運営スタッフ?が望んだから『暴食の魔王』特製の豪華料理を振る舞った。

 

見た目は俺より年上、スーツを着込んだ元気一杯の新卒社会人のように見える。

 

「あの、あなたが運営ですか?」

 

「あ、僕何も知らないんで聞くだけ無駄ですよ」

 

 

は?

 

 

「うまっ、うまっ。まじでここの料理美味しいですね!あ、おかわりもらっていいですか?」

 

「いいけど…」

 

「ありがとうございます!」

 

 

「それで、何も知らないというのは?」

 

 

「言った通りですよ。俺はついさっき、魔法陣からカプセルが排出された瞬間にこの世界に生まれたパシリです。運営のことは何も知りませんから、聞かないでくださいね」

 

パシリ?いやいや、そういうレベルではない!運営は面倒な業務を全てこいつに押し付けたのだ!

 

そうだよ!ガチャから出たホムンクルスだって運営が生み出した奴らだ!

人体錬成なんてお手のもの!仕事なんて面倒なことは全部作った奴らに任せればいい話じゃないか!

 

 

「…いや、何でお前みたいな若い奴が出てくるんだよ。もっとこう、礼儀がある奴を生み出せよ。運営って俺を舐めてるのか?」

 

「うーん、それはどうでしょうか」

 

 

俺の運営に対する不快感が挙がると、こいつは否定してきた。

 

 

「これは直感なんですけど、カプセルの中には色んな可能性があったと思います。僕が生まれる可能性、キャリアウーマンが生まれる可能性、ベテラン社員が生まれる可能性、そもそも人ではない可能性。運営がしたのは、ガチャカプセルにユニットが生まれるように操作したのと、今回の用事に関する知識の注入だけだと思います。僕がこういうふうに生成されたのは、完全にランダムだと思いますよ」

 

「ふーむ」

 

運営はガチャから排出されるアイテムに関与できないってことか?

だから、俺が手に入れたスキルも事前に規制やテストができなかった結果、こうなったということなのか?

 

 

…いや、じゃあこいつの礼儀がないのって、俺の運が悪いだけじゃないか!!!

 

 

 

「あ、補償の前に、今回のエリア報酬のことを話しますね」

 

そうだ.今回こいつが来たのは、俺の急な能力制限の補償だけじゃない。俺が攻略したエリアの報酬を渡すためだ。

 

 

「…えーとですね。一応確認なんですけど、報酬減らしても大丈夫ですか?」

 

「は?」 

 

は?

 

「報酬ですよ報酬ー、まず第一に、報酬を可能な限り削減しないといけないんですよ」

 

「え、お前謝罪に来たんじゃないの⁈」

 

「え、それもそうですけど、本題は削減ですよ」

 

「えぇ…」

 

「報酬にも色々あります。エリア代表討伐報酬、エネミー討伐により入手できるMVP報酬、これらの報酬はイベント終了後に与えられます。問題なのはエリアを攻略した際に与えられるエリア報酬です。本来なら、一定の活躍を見せたエリア攻略参加者全員に功績値や順位を参考に分配されるはずでした」

 

「運営はですね、上位エリアの単独攻略なんて想定していなかったんですよ」

 

「まぁ、そうだろうな。現に第44エリアは、何人もの上位ランカーが攻略中だが未だ陥落していない」

 

「そうです、あのエリアの防御結界は凄いですからね。黄金球を落としても耐えるレベルです」

 

 

「各エリアには隠しパラメータとして、予想攻略戦力値ってものが決められているんですよ。この数値よりも多ければ報酬はランクダウンして、数値よりも少なければランクアップする。そして報酬を分配する。下位エリアならまだしも、45エリアはまずい。あそこの攻略戦力値は結構高かったはずです。それを山田さんはわずかな手勢で攻略してしまった」

 

 

こ、こいつ何も知らないとか言いながら、隠しパラメータとか知ってるじゃん!使い捨てでも運営スタッフというわけか!

 

おそらく他のユーザーはこのことを知らない。これはラッキーだ。俺は情報戦で一歩前に出たというわけだ。

 

 

 

 

「まぁそういうことです。山田さんが莫大な報酬を独り占めされると、バランスが崩壊してしまうんですよねぇ〜」

 

「だからまぁ、報酬の削減に納得してください」

 

「いや無理」

 

「そこを何とかお願いしますよ〜、あ、僕はユニットなので交渉後は僕は山田さんの支配下になるんで、養ってください。どうです?僕という報酬があるんだから何とか納得してくださいよ〜」

 

「お前戦えんの?」

 

「無理です。僕は非戦闘員なので。運営と交渉が必要になったら僕が代わりに交渉します。まぁまぁ有利に交渉できるとおもいますよ」

 

いや、俺は今交渉を有利にしたいんだが。

 

 

うーん、どうしようかな。なんかもう面倒だな。どうせクソ運営は俺の我儘なんて聞かないだろうし

 

 

「じゃあ全部くれよ」

 

「はい?全部ですか?」

 

「そう。面倒だから報酬と補償まとめて一つ。今まで俺が攻略したエリア、戦利品の回収がイベント期間内に終わりそうにないんだよ。だからもう面倒だから全部くれ」

 

「あ、それならいいですよ。じゃあイベント期間終了後に、攻略したエリアを山田さんの惑星に転移させますね。運営も面倒な手間が省けるから良いそうです」

 

「え、マジでいいの?」

 

「だって運営は適切な報酬を考えて生成する必要もなくなるし、ただ天使の領土をあげるだけ。運営は損しないじゃないですか。負担するのは天使世界だけ。コストも最小限で済みます。財布が傷みません。まぁ天使は領土が丸ごとなくなりますけど、運営は天使のことなんてどうでもいいとしか考えていませんから」

 

「うーん、クソ」

 

「僕もそう思います。うまうま」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、これから運営スタッフのこいつ(名前は久保田)をとりあえず魔王軍に編入させ、俺はガチャの時間と行こう。

 

 

 

では、無料ガチャ!

 

 

ガタンッ

 

 

⁈⁈⁈

 

 

金色のカプセルだ!SSRだ!やった!

 

 

 

なーにが出るかな?

 

 

 

 

 

 

SSR『アカシックレコード』

 

 

 

この世界全ての過去、現在、未来ありとあらゆる情報がアーカーシャに記録されているという概念。

神智学の開祖ブラヴァツキー夫人の著書『シークレット・ドクトリン』に提唱された。

 

 

 

 

 

 

 

出現したのは、一つの本棚だった。

 

そびえ立つ巨大な本棚。その棚は俺の身長を超え、無数の分厚い本で埋め尽くされている。本の背表紙は様々な色彩と装丁でシンプルに飾られている。

 

 

 

 

 

アカシックレコードがガチャから出現して、マッドサイエンティストや研究者系のホムンクルスがワラワラと集まってきた。

 

どいつもこいつも研究を一時中断して集まってきたらしい。目がやばい、マジでやばい。何というか、クリスマスプレゼントを前にした子供みたいにやばい。

 

しかしこいつらはやばい目をしながらも、本を読もうとすることはなかった。

 

 

 

「さぁ、山田くん。君がこの本を最初に読むんだ」

 

「え、俺でいいの?」

 

「ああ。アカシックレコードは君が出した成果だ。世界の真理を知るのは最初に手に入れた君であるべきだ。我々は後から読もう」

 

 

なら遠慮はいらない。さて、アカシックレコードは何が書いてあるのやら。

 

俺は適当に本を取り出す。タイトルは…井上優馬の誕生から現在?

 

いや、井上優馬って誰だよ。

 

とりあえずページを開く。

 

 

2003年6月7日12時45分3秒、栃木県佐野市佐野中央病院にて井上優馬が誕生。体重3447g。母子共に健康。担当産科医山中吾郎医師。天気は曇り。母は井上樹子34歳、父は井上聡32歳。兄は井上春樹3歳

 

 

 

誰だこれ。

 

 

俺は適当にパラパラとページを捲る。そこには井上優馬のどうでもいい情報、というか日記が続いていた。

 

俺はどうしていいか分からず、本を戻す。次だ、次こそが何かすごい本かもしれない。

 

 

『とあるペンギンの日常』

 

中にはペンギンの日常が延々と綴られていた。

 

こ、これはもしや。

 

 

俺は他の本のタイトルも確認する。

 

 

『世界のドアの塗装色』

『飛び跳ねるカンガルーの数学』

『1995年イギリスの傘の流行』

『赤クレヨンの製造レシピ』

『東京都のとある喫茶店の帳簿一覧』

 

 

 

俺は何とも言えない顔になっていた。興味を抑えきれなかったマッドサイエンティストたちに本の閲覧許可を出す。

 

 

「な、なぁ、これ本当にアカシックレコードなのか?」

 

「そのはずだが…」

 

どうやらマッドサイエンティスト達も混乱しているようだ。

 

 

 

 

「ああ⁈、そうか、そういうことか⁈」

 

「何?何がわかったんですか?」

 

 

 

「アカシックレコードは確かに、ありとあらゆる情報が入っている!」

 

「恐らくこの本棚は、アカシックレコードに接続し、情報を本という形で引き出しているのだろう!」

 

「問題なのは、その膨大な情報集合体であるアカシックレコードから、望む知識を抽出する方法がないのだ!」

 

「この世界の情報のうち大半は、必要としないゴミ情報だ!我々が必要とする知識が抽出される可能性は極めて低い!」

 

 

 

「つまり、誰も必要としない本を出し続ける本棚って事?」

 

「確かに、確かに世界の全てが、この本棚にあるのにぃぃぃぃぃ⁈」

 

 

その後、アカシックレコードは24時間ごとに本棚の本を新しくし、それまであった本は外に積み重なる。

 

 

妙物管理機構は本を図書館へと収納、役に立ちそうな本が出れば報告するとのことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

今日のログインボーナスは楽器ガチャコイン。

 

さぁ、ガチャ!

 

 

ガタンッ

 

 

C『ホイッスル』

 

 

 

 

出現したのは、百円ショップで売っていそうな、真っ白いホイッスルだった。

 

そもそもホイッスルは楽器じゃないぞ!

 

 

・・・しかし、この安物に見えるアイテムは何か面倒な能力が付与されている可能性が高い。

 

確かめねば。とりあえず吹いてみよう。

 

 

 

 

ピュー、ピュピュピュピュピュ、ピュ〜

 

 

 

 

 

 

 

………何も起きない。うーーーん、何のホイッスルだこれは?

 

俺はしばらく適当に吹いたが、特に何も起きなかった。

仕方がないので、鑑定を行った。

 

 

 

 

 

●ホイッスル

何の効果もない普通のホイッスル。ガチャから出た物の中では珍しく普通です。個人的に思うのですが、Cより下のレアリティを作るべきだと思います。何か能力が付与された物とそうでない物の見分けがつきません。

 

 

 

本当だよ!鑑定は1日1回しかできないんだぞ!

 

 

なあ、何か見分ける方法無いかナビゲーター。

 

 

 

●しらん。何故俺に聞く?そういうことはブックメイカーに聞け

●はあ~、 ( ゜Д゜)! どうして私に聞くんですか!この役立たず!

 

 

それでもナビゲーターかお前ら。

 

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

変態仮装行列

 

ダンジョン第82層  アイモア海  豪華客船船上

 

 

いやー、バカンスっていいね!

 

俺が暇つぶしとして王様っぽいことや麻雀とかをして遊んでいたのだが、何と現在のダンジョンマスターから復興しつつあるダンジョンの視察をかねて、豪華客船で優雅にバカンスでもしないかとお誘いが来たのだ。

 

俺はこの誘いに喜んで飛びつき、近衛隊やその他魔王軍の上位士官達を連れてバカンスへとダンジョンに向かった。

 

 

向かった先は第82層。この層はダンジョンの運営などの政務を行う高位種族『魔人』達や彼等に仕える人々が暮らし、各層の有力者が別荘などを構えるリゾート地が存在する階層だ。今はダンジョン戦争の際に貴族同士による凄絶な内乱が発生して荒廃状態だが、それも部分的に復興しつつある。

 

 

 

アイモア海は魔のダンジョンで最も美しい海であるらしい。そんな海で俺は豪華客船に乗り、優雅なバカンスを楽しんでいた。

 

 

これこそ、王様の特権って奴だよ!今考えたら、俺って王様なのに王様っぽい暮らしをしたことなかったなあ。

 

用意された豪華客船は、元々はダンジョンマスターが保有していた豪華客船艦隊の一隻らしい。

 

 

艦隊って。豪華客船は別に専用の一隻があれば十分だと思うのだが。なんで何十隻もダンジョンマスター専用の豪華客船が存在してるんだ。船内は俺が想像していた以上に豪勢で、大きなカジノやレストランにシアターといった、様々な施設が充実していた。

 

ほんとあいつは散財しすぎだろ。いくらダンジョンマスターが超ド級の大金持ちだからって、金遣いが荒すぎる。そんなダンジョンマスターは暗黒騎士団の新兵からやり直し中で、今頃は過酷な訓練で鍛え直しているだろう。

 

 

 

 

降り注ぐ太陽の光が心地よい。昼寝してしまいそうだ。俺は氷が入った冷たいオレンジジュースをストローを通して飲みながら、ゆっくり寝そべる。

 

 

今は近衛隊が新鮮な鶏肉を串に刺して焼いて貰っている。炭火焼きだ、もうさっきから美味しそうな匂いが煙と共に流れてくる。

 

 

 

 

 

「おーーい、そろそろ焼け「「悪魔クラーケンだ!」」

 

 

 

 

 

 

「ぴぎゅあああああああああああ!」

 

 

「突撃!突撃ィィィィィィィ!」

 

「タコ刺身にしてやる!!」

 

「我が魔剣の糧となれ!」

 

 

 

豪華客船を襲おうと突如としてクラーケンが海中より出現し、その巨大な触手を伸ばし、豪華客船に纏わり付く。

 

だがホムンクルス達はすぐさま応戦しクラーケンに反撃。触手を血祭りにあげ、クラーケンの本体にまるで軍隊蟻のように群がり、分厚い皮膚を切り刻んで肉片へと変えていく。

 

 

絶叫を挙げながらクラーケンはたまらず海中へと潜行し逃げようとする。だがホムンクルスは海中であることなど気にせずしがみついて離れず、百人以上が群がるホムンクルス共々深く海の底へと、血で海を真っ赤にしながら潜っていく。

 

 

「ああ、遅れた!俺たちも飛び込むぞ」

 

「まだ間に合う!俺たちは水中戦闘装備、先行した奴らより有利だ!行くぞ!」

 

 

ボチャンボチャンボチャン

 

 

 

 

 

………

 

 

 

 

気づけば客船には俺と豪華客船の乗組員、数人のホムンクルスしか残っていなかった。

 

なんでだ?なんでこいつらには休むという考えがないんだ?休暇だぞ?

 

 

本来は優雅なクルーズのはずだった。ダンジョンにはダンジョン崩壊時に支配下ではない野生の魔物達が大繁殖し、今もなお駆除が続いている。

 

 

今回のクルーズでは既に駆除が完了しセーフティエリアとなった安全な海域を航行するはずだった。

念のため、護衛としてダンジョン戦争を生き残った護衛艦が配備されていたのだ。

 

 

 

 

 

しかしホムンクルス達がこれに反対。危険な海域にこそ行くべきだと主張しだしたのだ。

俺はもちろん反対した。「なんで休みの日に危険な目に遭わないといけないのだと」

 

 

だがホムンクルス達は「休みの日だからこそ、狩りをしたいんですが」と押し切られてしまった。

 

そんな訳で、不幸にも豪華客船の航行ルートに存在した魔物達はホムンクルスに発見され次第討伐されてしまっている。

 

 

 

 

 

 

「山田様ー、もうすぐ焼けますよ」

 

 

そうだ、全員が全員戦闘狂なわけではない。何人かのまともなホムンクルスはモンスターのことに興味を持たず、プールで泳いだり料理を食べ続けている。

 

 

 

近衛兵が焼いているのは怪鳥ブラックソード。爪が剣のように長く鋭いDランクモンスターだ。猟銃で撃ち落とした物を捌いて、串焼きにしたのだ。

 

 

「うっま、塩だけでも結構いけるな」

 

「ささ、タレもどうぞ。天才魔術師の工房にあったレシピ本を解読して作られたタレですよ」

 

「天才魔術師何やってんだよ。魔術の研究しろよ」

 

俺たちは豪華客船に残った数人で焼き鳥を食べていく。そんな中、一匹の犬が1人のホムンクルスに餌をねだっていた。

 

「お、お前も欲しいんですか?ははは、ちょっと待つっす」

 

「お前のペット?」

 

「僕がこの前ペットショップで買った犬です。触りますか?」

 

「うん」

 

俺はホムンクルスが抱いた真っ黒な大型犬の背中を撫でる。

 

 

「なんかひんやりしてる」

 

「遺伝子改良されて凍結魔術が使えるようになってますからね。狩りの時、獲物の鮮度を保つのに役立ちますよ」

 

 

そっか…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

UC『日刊 宇宙空母を作ろう!』

 

 

 

出現したのは、一冊の雑誌と一本の大きなコンテナだった。

 

 

雑誌のカバーには、大きな宇宙空母から艦載機が出撃する様子で飾られており、背後には巨大な艦船が星々の間を航行する様子が美しく描かれている。

 

俺はワクワクしながら雑誌を見る。たまにCMでこういう初回購入特典が豪華な雑誌の宣伝を見ていたのだ。一度は買ってみたいと考えていたが、まさか今見る機会が得られるとは。

 

雑誌の中身は、宇宙空母技術の最新情報や宇宙開拓時代に生産された空母の設計図や方法に関する記事が豊富に掲載されていた。

 

 

さらには理解できない高度な宇宙工学や未知のエネルギーに関する記事、乗組員の訓練に関する特集記事も含まれている。

 

写真やイラスト、図表が満載で、俺は宇宙へのワクワク感を味わい、雑誌は俺のロマンを刺激し、宇宙の可能性についての探求心をくすぐり、何度も何度も読み返して思った。

 

 

 

 

 

いや、これ結構重要な本じゃん!

 

 

俺はガチャから宇宙に関するアイテムを多く入手している。衛星軌道上に存在する駅、海洋惑星や食物連鎖地獄惑星など、その他多くが宇宙に放置されている。

 

だが、この雑誌を元に宇宙空母を作れば、俺たちは宇宙へと向かうことが出来る!

俺はすぐさま妙物管理機構にこの雑誌のコピーを取らせ保管、コピーをマッドサイエンティストに渡して分析に取りかからせた。

 

 

 

そして雑誌の最終ページに挟まっていたハガキには、こう書かれてあった。

 

 

次号購入希望者はコンテナに物資を要求量まで投入してください。要求量投入後コンテナは出版社に転移します。返送は受け付けておりません、この物資転移が本誌の代金365日分前払いであり、コンテナ転移後、初回特典の『宇宙空母の一部』が送信されます。毎日一冊とおまけの『宇宙空母の一部』が送信され、365日後には宇宙空母が完成します。

 

 

俺はすぐにコンテナに物資を投入した。物資を投入すればするほど、コンテナのメーターが貯まり、価値の高そうな物を投入すればメーターが早く貯まる。

 

 

むむむ、結構資源を要求するな。だが宇宙空母に比べたら安い物だ。俺は物資を投入し続けコンテナは転移によって送信され、代わりに一本の金属棒が送られきた。は?

 

 

 

鑑定!

 

 

●宙域アンカー

 

宇宙空間内で座標を固定するアンカー。海上船でいう錨のような物です。専用の機材があれば起動できます。

 

 

 

………なんか微妙だ。というか、これ単体だと使えないじゃん。

 

俺は一抹の不安を覚えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日

 

朝目が覚めると、枕に一枚の紙が落ちてあった。

 

 

『倒産しました。探さないでください』

 

詐欺師め!

 

 

 

 

 

その後、どういう方法を使ったのか出版社の社員数十人が裁判にかけられていた。ちなみに弁護人はいないし、裁判開廷した瞬間に判決が下った。有罪、罰として強制労働らしい。

 

山田王国に弁護士は存在しないらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

C『ラストエリクサー症候群』

 

 

 

RPGゲームなどにおいてエリクサーは貴重なアイテムであり、その効果はHPやMPなどを全回復させるという貴重な物。その貴重さから使用を控えた結果、一度も使わないこと。

 

 

 

出現したのは、紫色の一本のガラス瓶だった。

 

豪華な宝石や装飾品で飾り立てられ瓶は、美術館で展示されてもおかしくないほどに輝いていた。

 

紫色のガラスは光が透けて輝き、中に封じられた液体の輝きを際立てる。

 

瓶の蓋は金や銀で飾り付けられ、宝石や宝飾品がきらめいており、瓶の周りには細かな装飾が施され、瓶だけでどれだけの制作費が使われているのやら。

 

 

 

 

じゃあ、飲もうか。

ゲームではHPが回復するなどの効果だが、現実ではどうなるのだろうか。やっぱり不老不死とかかな?

 

なーに、一口くらいなら大丈夫大丈夫!

 

 

俺は瓶の蓋を開けようとした。

 

 

だが、開けることはできない。な、なんだ⁉、さっきまで開ける気だったのに、今は猛烈に開けたくない!

 

ラストエリクサー症候群。つまり、俺が飲むことを惜しんでいるのか⁉

 

 

その後俺は四苦八苦しながらエリクサーを開けようと半日を費やしたが、結局開けることはできなかった。

 

 

 

俺は深い落胆に包まれていると、スーツを着たインテリヤクザのような見た目のホムンクルスが話しかけてきた。

 

 

 

 

「閣下、よければエリクサーを貸していただけませんか?」

 

「いいよ、はい」

 

 

そのホムンクルスは普通に瓶を開けた。

 

 

「え、えぇ⁈」

 

「ラストエリクサー症候群、つまりエリクサーを貴重だと考えるから開けられないのです、申し遅れました。私こういうものです」

 

ホムンクルスが名刺を渡してくる。

 

 

ミナモトインダストリーCEO ヘラクレス

 

 

「我が社はすでにエリクサーの量産体制に入っております。ダンジョン第19層『永遠の森』にエリクサー製造プラントを既に5基建設しており、今後も増産すべく生産体制を整えていきます」

 

 

「先進技術を利用した我が社の製品、是非お楽しみください」

 

 

 

そうしてヘラクレスは帰っていった。ちなみにエリクサーは肉体的な傷を治すだけのようだ。

 

 

 

 

正直言ってホムンクルスが増えすぎた。今もホムンクルスが生産され続けており、はっきり言って俺はその全貌を把握していない。

 

 

まあいっか!その方が予想外の出来事で俺を楽しませてくれるし!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第14エリア 天空山脈墓所クラレント 中央戦線

 

 

僕は道路国家ルテニアの新兵だ。別に愛国心とかがあったわけじゃない。ルテニアに軍に入れば奨学金も全額軍が払ってくれるし、有用な資格もほとんど無料で受けさせてくれる。

 

 

 

まさか、戦争に行くなんて思いもしなかった。

 

 

 

 

 

 

「おい新兵!さっさと対空弾を詰め込め!!」

「は、はい!」

 

 

 

僕は上官であるホムンクルスに従い、対空砲に弾薬を詰めこむ。ちなみにこの人は生まれて一か月も経っていないホムンクルスなのに、軍曹と僕よりも上官だし、威厳がある。

 

 

対空砲は自動で天使を正確に狙い、凄まじい弾幕で天使達を打ち落としていく。

 

だが、その弾幕も完全じゃない。苛烈な対空砲火を躱した純白の鎧に身を包んだ美しい騎士天使達が僕のいる陣地に突撃する。

 

 

 

「悪魔の軍勢がッッ、よくも同胞を!」

 

 

「うわああああああああ、来るなあぁぁぁぁ!」

 

「慌てるなッ、神器起動!孤月!」

 

 

 

軍曹が投げたブーメランは異次元の軌道で、押し寄せた天使達を真っ二つに切断する。

 

 

その天使達の死体が僕の目の前に落ちてきた。何も出来ずに一瞬で殺され、何が起きたのか分からないというような顔で、僕を見つめてくる。

 

 

「ひ、ひぃぃぃぃぃ」

 

 

「その程度でびびるな!情けない!」

 

あんたらがイカれてるんだ!

 

恐怖に震えていると、大地が揺れ、遠くの方からずしんずしんと響いてくる。まるで大きな動物の足音が近づいて来るかのようだ。

 

僕は音のする方向を見ると、土煙を巻き上げながら、四足歩行型超大型のロボットがゆっくりと歩いている。背中に搭載されたレーザーやミサイルが、あっという間に天使達を堕としていく

 

 

 

「な、なんですかあれは」

 

 

 

「移動駆逐艦のイアソンだ!あれの対空砲火で天使を落としてくれる優れものだぞ!傭兵め、高い金を支払っただけはある……む、ちょっと待て。本部から命令だ。総員集合せよ!」

 

軍曹が呼ぶと、周りのホムンクルス達が集まってくる。ホムンクルス達の魔王軍は装備に統一性がない。それぞれが自分の装備したい防具や武器を着込んでいるのだ。できの良い仮装パーティのようだった。

 

 

 

「総員傾聴!これより友軍である重魔法連隊の砲撃が敵陣地に降り注ぐ!俺たちはその間敵陣地に突撃し、敵を殲滅し制圧する!何か質問は⁉」

 

 

「な、何言ってんですか⁈砲撃中に突撃だなんで、正気じゃないですよ⁈」

 

「なーに大丈夫だ!砲撃で9割吹き飛んでも、残った1割が闘えばいい」

 

「そ、そういう問題じゃ………」

 

「簡単なことだ!武器をもって突撃するだけだ、それ以外は新兵に望まん!全力で走れ、足が無くなったら腕で進め!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?全軍突撃ーーッッッ!!!」

 

 

「一番槍は私だ!!!ユニコーーーン!!」

「ゲパルト対空戦車隊突撃!踏み潰せ!」

「燃やせ!全部燃やせ!あははははははははは」

「呪え!呪え!」

「ナマハゲ!ハゲーーーッッ」

「首よこせ!!血が足りない!魂寄越せ!」

「山田閣下ばんざーい!!」

「アチョーー!」

「よくわからんけど突撃します!ファイアー!!」

 

 

 

もうやだ…

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

もう終わりだよこの宗教

山田ドラゴンガチャ王国を支える主要産業は飲食業、ハンター業とそれを支える製造業、そしてカジノ業の4つである。

 

 

ホムンクルスたちはその有り余る体力からダンジョンの魔物を狩り、それを飲食店に卸してお金を稼ぎ、腹いっぱい食べたら残りのお金をギャンブルに使い、そうして儲けたお金で商品や武器防具を買い込んでダンジョンに向かう。

 

4つの産業はこのような関係で回転し成り立っており、ホムンクルスが山田ドラゴンガチャ王国の国民の大半を占めているため他の産業を引き離してすさまじいスピードでこれらの業界は発展している。

 

そんな4大産業の一つ、ギャンブル業界なのだが、ここ最近ガチャ賭博と言うものが流行っている。

 

ガチャ賭博のルールは非常に簡単。俺がガチャから手に入れるアイテムの種類や順番、レアリティを予想するという物だ。

 

俺がガチャから手に入れたアイテムはすべて妙物管理機構によって管理され、一部の情報以外は公開されている。

その情報から、これまでどの種類のアイテムが何回排出されたかを計測し発表。ギャンブラーたちはこの数値を元に次の日にどの種類のアイテムが排出されるか予想するのだ。

 

 

俺はカジノが配信しているアプリでガチャ賭博に関する情報を見てみると、『建物』『食料品』『武器』『スキル』『機械』などの賭けられる種類とこれまでの排出回数、倍率などが記載されていた。

 

 

俺も願掛けとして、SSRに賭けようとしたのだが、エラーが起きて賭けることができない。何度も試してみても賭けることができず、諦めて他のレアリティに賭けようとしたが、それも不可能だった。しかし俺以外のホムンクルスたちは問題なく賭けられている。俺はガチャ賭博支配人ホムンクルスに問い合わせた。

 

 

 

 

「あ、山田さんはダメですよ。ガチャ賭博は参加禁止です」

 

「え、なんで」

 

「そりゃ、あなたは一応幸運の神なんですから。もし幸運パワーが発動して当ててしまったらギャンブルが成立しません」

 

 

う、うーん。そう言われると何も言えない。一応俺は神様として信仰されているし、実際俺もその影響力でアンデッドにしたり転生した天使たちや一部ホムンクルス達から支持されるためにその神っぽさを利用している。

 

まぁ確かに、幸運の神様がラスベガスのカジノに来たらラスベガス中のカジノが搾り取られ破産することを恐れて休むだろう。

 

正直言って俺は神様じゃないし、幸運の力とか運命を操る力なんてないのだが。

 

…あれ、でも麻雀やトランプとかは参加させてくれるよね?何でだ?

 

 

「山田様は欲深いですからね。運が良くても心理戦で負けますから」

 

 

ぐぬぬ。何とも言えない。実際俺は欲深くて、大穴を狙ったり、高得点の役を狙って敗北している。

 

俺が少し反省していると、一人の女が俺に泣きついてきた。運命教会最高司祭のアリスである。

 

「あーーー、山田様⁉なんで昨日ユニットを出してくれなかったんですか!おかげでお小遣い全部なくなったじゃないですか!うわーん!!」

 

「本当に神様パワーって存在すると思う?最高司祭だろこいつ」

 

「う、うーーーん、確かに…この人運命教会のトップですよね。あんまり勝ててないしなぁ…」

 

「ああ、今月の食費が…またダンジョン潜るかぁ」

 

よっこらせとため息を吐きながら、アリスは近くの椅子に腰掛ける。

 

つーかこいつ、仮にも最高司祭だろう!お前強いんだからダンジョンで簡単に稼げばいいじゃないか!

まじめに働け!

 

 

「おまえ、教会の金使ってないだろな?自分の金でやれよ」

 

「ち、違います!あいつと違ってちゃんと自分のお金でやってますよ!」

 

「あいつ?」

 

「ああ、あの人ですか。あそこです」

 

 

ホムンクルスが指を刺す先には、一人の男がいた。神父である。

 

 

「ふふふ、やはり私の祈りが届いたようですね。」

 

神父の周りには、金を奪い取られたホムンクルスギャンブラーやカジノスタッフたちが倒れ積み重なっていた。どうやら神父に搾り取られたようである。

 

「ああ、最高司祭様。これ領収書です。ギャンブル費と神殿と神器の建設費です。決済しておいてください」

 

 

神父が最高司祭に領収書を渡す。こいつはどうやら勝手に教会の資金を使い込んでいるらしい。

 

 

「ああ、また勝手に神殿を建設したのですか…」

 

「ええ、山田神の威光を知らしめるために必要ですから」

 

「つーか、ギャンブルで勝ったなら、その金を使ってくださいよ!何で教会のお金で神殿を建てるんですか!」

 

「失礼な。ギャンブルで稼いだお金も教会の建設費に使っていますよ」

 

 

 

う、うーん。どうやら神父は教会の金でギャンブルをして稼いでいるらしい。でもそのお金で教会の施設である神殿を建てているようだ。自分のために使ってないからセーフか?

 

 

「あいつ教会に暮らしてますからね」

 

アウトか?

 

 

 

 

「ねえ」

 

その瞬間、俺たちは即座に臨戦態勢に入った。

俺は魔王装備を顕現させ居合の構えに入り、ホムンクルスは盾を中心に結界を貼り司祭は瞬時に俺たちにバフを撒き、神父も魔術で自身を強化する。

 

 

気配が全くしなかった!馬鹿な!この俺が気配を感じることができなかった!

 

なんという殺気だ。ただものではない!殺意のオーラで顔が見えないが、相当の腕前だ!

 

観察すると、その人の手には、ガチャ賭博予想権。武器に賭けていたようだ。

 

 

…うん?

 

 

「私が貰ったアイギス、いいねこれ。よく切れる」

 

 

ま、まさか。

 

「もっと武器が欲しいなと思って賭けたんだけど、負けちゃった」

 

こ、コイツセブンか⁈

 

「アイギスだけじゃ、足らない。もっと強い武器やアイテムが欲しい。頑張って」

 

「はい…」

 

「あとこれ」

 

セブンは木箱を俺に投げる。木箱からは血の匂いが漂っていた。

 

「あ、あのこれは…」

 

「さあ?前線に出てた天使の偉そうな奴。とりあえず首とったから」

 

そうして、セブンは天使を狩りに戻った。

 

 

「セブン様の怒りを抑えるために黄金像を中庭に作りましょう」

 

 

賛成!!!!

 

 

 

 

 

 

というわけで、ガチャの時間である。

ううむ、ガチャ賭博のことを意識すると周りのホムンクルスの期待がこもった視線が痛い。

さあて、無料ガチャ!

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

 

 

R『貝塚』

 

 

貝類を日常的に食べていた大昔の人々が、食べ終わった貝殻と他のゴミを長い間捨て続けることでできた場所。ゴミ捨て場と貝の加工場などの説がある。

貝殻以外にも、食べ物の残り滓や壊れた土器や道具などが発見されている。

 

 

 

 

 

出現したのは、辺り一面に広がる貝殻の山だった。

 

うーん、俺の思う貝塚って、小さな穴の中に貝殻が溜まっているというスケールの小さな物だったのだが、出現したのはゴミ処理場のような、想像以上に大きい貝塚だった。

 

 

俺は石灰石のようになった貝殻の山を歩く。

 

特に建造物もなく、貝殻の山が広がるだけ。

しかしレアリティはR。これはどういうことか。

 

 

…まぁ、俺も経験者だ。

そろそろガチャからどういう物が出るか予想はできる。

貝塚の山の中から、超古代文明の遺産やオーパーツが発掘でもされるのだろう。俺はホムンクルスに発掘作業を命令した。

 

 

 

 

 

 

 

その後、発掘調査が行われ、貝塚から魔剣などのアイテムが出土した。やっぱりな。

 

しかし一つ予想外のことがあった。

 

どうやら、ガチャから排出された貝塚はこの貝殻の山だけで無く、貝塚を中心としたこの辺り一帯がエリアとして出現したらしい。

 

一見何もない所でも、地面から建造物や水路の跡が発見された。

 

 

…そして、ホムンクルスは仲間を増やすべく、回収された骨董品のうち、貴重な物ではなさそうな物をホムンクルス製造に利用した。

 

すると何が起きたか。

 

 

製造されたホムンクルスは『新生邪馬台国』と『古代邪馬台国』の2つの勢力に別れ、あろうことか彼らは対立し始めたのだ。

 

どちらも邪馬台国の正統な継承集団であることを名乗り始めたが、どちらも数十人規模の町内会レベルの集団である。そんな大層な集団ではない。

 

彼らからの手紙が俺に届いた。住所に邪馬台国町とあることにツッコミを入れようとしたが、もう疲れたのでスルー。

 

手紙の内容は、彼らが邪馬台国支族隊として天使との戦闘に参加するので、その戦働きでどちらが正統な邪馬台国か判断して欲しいとのこと

 

結局やっていることはいつもと何も変わらない!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

今日のログインボーナスが建造物確定ガチャコイン!

さぁ、レッツガチャ!

 

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

HR『競馬場』

 

 

いつの間にか、至る所に馬券購入所と競馬鑑賞ができる施設が出現した。

 

競馬と聞いて、既に多くのホムンクルスが殺到し、受付のアンドロイド(⁈)相手に買っていた。

 

大迫力のディスプレイを前に、映画館のような席に座ってテレビを見ると、宇宙空間にある競馬場が映し出されていた。

 

当然ながら宇宙空間なので観客はいない。

 

俺は観測隊に調査させると、この星系の外にそれと思われる施設を発見したとのこと。

 

大きな競馬場と、コースと思われる宇宙空間に広がる広大な光の星の道、その他宿泊施設や牧場?などの複数の施設が確認できた。

 

 

しばらくすると、レース開始地点と思われる場所には十数人の騎士や馬、その他厩務員などが現れる。

 

 

…しかし、なんかそいつらは武装していた。馬とジョッキーは鎧を着込み、大きな槍や弓で武装している。数人は馬の上に乗らず、ソリのような物を引かせている。

 

なんか、既に様子がおかしいのだが。

 

 

不安を感じながら、宇宙服を着込んだオーケストラによるファンファーレが響き渡る。まるで古代のコロシアムのような、勇ましい音楽だ。

 

 

 

『G1  山田記念  アンリミテッドレギュレーション』

 

 

アンリミテッドレギュレーション?あっ。

 

レースが始まると案の定、騎馬同士が全力でぶつかり合い、馬がタックルして衝突し、騎手は槍や弓矢で相手を攻撃し合う。

 

安全性は大丈夫なのかと熱狂するホムンクルス達を無視してアンドロイドに聞くと、シールドが展開されてあり、シールドが一定の損傷を受けると失格になるので大丈夫とのこと。

 

 

なるほど、武装の重さや装備するアイテム、使う魔法によりシールドの強度が変わるのか。

 

重い鎧を着ると騎馬の速度が下がる代わりにシールドが強くなる。結構戦略性があって面白いじゃん。

 

 

しかし…

 

 

ギャンブルと戦闘狂ホムンクルス。出会ってはいけない2つが出会ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、ジョッキーとしてホムンクルスが専門学校に通いだした。

 

いつの間にかこの星にも宇宙競馬組合の支部が完成しており、ここでジョッキーの育成をするのだとか。

 

無重力空間を体験できる設備から、ルールや戦法を学ぶ学舎から宇宙を駆ける騎馬を育てる牧場など、宇宙競馬関連の充実した施設が整っており、ホムンクルス達は真面目に勉強していた。

 

『千瞳のスローン』さん曰く、彼らは良いジョッキーになるだろうと語ってくれた。

 

誰だよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

天空山脈墓所クラレント 南部軍管区 塹壕外の森 

天使視点。

 

 

「なあ、俺たちのやってることって意味あんの」

 

「黙って索敵任務に集中しろ」

 

「いやだってさぁ、異界の軍は北部に展開しているんだろう?正反対の南部になんかいるわけないじゃん」

 

「もしかしたら包囲網を突破した兵隊が潜んでいるかもしれん。それに異界の軍隊は転移魔法を使っているという情報もある。油断はできん」

 

「転移したら時空干渉波でわかるじゃん…はあ、歩くの疲れた。なんで飛んだらダメなんだよ」

 

「空からじゃ木に隠れて地上が見えないからな」

 

「こういうのは同盟世界の奴らに任せろよ。あいつら基本翼がないんだから」

 

「同盟軍は根こそぎ北部軍管区に派遣されただろう」

 

「…そんなに状況は悪いのか。前線はどうなってるんだ?あまりいい話は聞かないけど」

 

「かなりきついらしい。戦線は後退に後退を重ねてるって話だ。だがあいつらはまだ山脈にも到達していない。犠牲は多いが、何とか戦争終了までは守りきれそうだ」

 

「だといいけどな」

 

 

 

………

 

「なあ、何かおかしくないか?」

 

「何がだ」

 

「いつもなら他の奴らと出会うのに、まったく会わない」

 

「ライトの光だって今日は見たことない」

 

「よく考えたら、空飛んでる奴らも少なくないか?というか、見える限りじゃ、一人もいない」

 

「なあ、本部に連絡してくれよ」

 

「おい、無視するなよ」

 

 

………

 

「おい、どうした」

 

「ハロー、ピースピース」

 

「えっ、誰だおま」

 

「グッバイ」

 

 

 

 

 

 

「俺たちがここまでこれたのはお前のおかげだ。最高だぜお前の能力」

 

「いやぁ、それほどでも」

 

 

殺人鬼ジェイド。当初は建設された牢獄に投獄することも考えたが、司法取引を行い、俺たちの部隊に入隊することとなった。

 

コイツが『俺たちが敵軍後方に忍び込めるルートを示せ』っていうだけでその条件通りの道が示されるんだ、まじで使える。

 

そんなコイツや俺たちの部隊長は十二魔将だ。

 

十二魔将。俺たちを生産した『ホムンクルス製造機』がガチャから排出される前に山田閣下に呼ばれた、始まりのホムンクルス12人。

 

彼らはそれぞれの好みの部隊を率い、自由に活動している。

そしてそれぞれが異名を所持している。

 

 

第1ホムンクルス『簒奪のワン』

第7ホムンクルス『鏖殺のセブン』

第8ホムンクルス『塵芥のエイト』

第12ホムンクルス『心臓のトゥエルブ』

 

 

 

じゃあ、俺たちの部隊長であるホムンクルスの二つ名は何かって?

 

 

 

魔王軍 敵地侵入破壊工作部隊

 

第4ホムンクルス『愉悦のフォー』

 

部隊入隊条件はギャンブル獲得賞金収益が一定の額に達した者のみ入隊資格が与えられる。

 

彼らは山田閣下と取引を行い、カジノでの税金の免除、ギャンブル特別区の設置、カジノの運営権などの特権と引き換えに大好きなギャンブルを行うことを一時放棄している。

 

 

彼らはギャンブルで養った思考誘導、情報操作、観察力を使い、敵軍に混沌を与える。

 

まぁ、ギャンブルと同じくらい戦うことも好きだが。

 

 

 

「おーい、お前らよく聞け」

 

「あ、部隊長」

 

「何事も始まりは派手にやらないとな。ショーは最初が肝心。索敵に出した兵隊が丸々失踪したんだ。インパクトとしては十分だろう」

 

 

「命令を下す。よーく聞け。俺たちの任務は単純だ。少しでも敵戦力を南部に誘引し、北部の負担を減らし士気を下げる。やることはいつもと変わらない」

 

 

 

「手当たり次第殺せ」

 

「見つかる前に殺せ」

 

「見つかっても殺せ」

 

 

「恐怖のどん底に突き落としてやれ」

 

 

 

 

 

 

天空山脈墓所 クラレント南部軍管区より

敵工作員による大規模な破壊工作を確認。死者千人規模、各地インフラの破壊、弾薬庫の起爆、司令部要員の暗殺など、被害は多岐にわたる。北部の包囲網が突破された模様。包囲網の強化及び東部西部軍管区に対し警戒の強化及び司令部に対して工作員の取り締まりを要請する。

 

 

中央部より

了解。工作員排除専門部隊、異端審問官を派遣する。

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

お金持ちが大好きなあれ

山田ドラゴンガチャ王国 

ヘルメス宇宙センター

 

 

ロケットの発射施設や開発研究所などを一カ所に集めた宇宙センターを人工島に集める計画が終了した。

 

 

この計画のために作りましたよ、人工島。作り方は簡単、魔のダンジョンの魔術師団が何日も準備し、山のように並べた魔石と土や石などの材料を消費し、召喚魔法で超大型のゴーレムを生成、それを海に浮かべて陸地とした人工島である。

 

 

この人工島の優れているところは、ロケット発射に適した天気や風速、湿気などの環境が揃った海域に移動できるという点である。ロケット発射作業は繊細なのだ。このために人口島を誕生させた。

 

 

さらに宇宙旅行への願掛けとして、ヘルメス神のお地蔵様を宇宙センターの中心に神社を建設した。

 

ヘルメス神は旅の神でもあり、さらに空を飛ぶ靴を持っているのでここに設置する神としては適していると思われる。

 

 

 

そんなわけで、今日はロケットの打ち上げだ!

 

目の前には、宇宙服を着用したホムンクルス達。彼らは整列し敬礼をした。マスクで表情は見えないが、きっと宇宙への期待に満ちた表情をしているだろう。

 

 

「我ら山田魔王軍宇宙空軍、行ってまいります!」

 

「行ってこい!」

 

宇宙服を着たホムンクルス達がロケットの隣に建てられたエレベーターに乗り、そしてロケットに搭乗していく。

 

 

「第1ロケット『ドラゴンブレス』最終チェック報告!70%グリーン!20%イエロー!10%レッド!」

 

 

 

………………んん⁉

 

 

 

「打ち上げさえできればそれでいい!発射せよ!」

 

「いやいや、だめだろ!なんで70%しか出来てないんだよ!」

 

「この時間帯に発射成功の祈願を運命教会にさせているんです!何としてでもこの時間帯に打ち上げなければならんのです。3.2.1…発射!」

 

 

宇宙センターの所長が赤いボタンを押した。ロケットのエンジンが稼働し、赤い炎と凄まじい量の煙を排出する。

 

 

 

 

空を切り裂き、巨大なロケットが地上から咆哮とともに打ち上げられ、その尾を引くような炎が空に煌めきながら燃え盛るエンジンの力でロケットは次第に高度を増し、地球との重力の束縛から解き放たれようとする。

 

暗闇を切り開く炎の中、ロケットの外殻が煌々と光り、星のように輝いている。

 

 

そして、一際大きい輝きを放って、消えた。

 

 

 

「あっ」

 

「爆発しました!まぁ最初はそんなもんです。この失敗を無駄にしないようにしましょう」

 

「いや、大丈夫なのか⁈早く救出を………」

 

「ホムンクルスはあの程度で死にませんよ。それに今頃転移ゲートにいるはずです。さあ、時間がありません。次行きましょう」

 

 

ホムンクルスが倉庫から大型のロケットを運び出してくる

 

 

 

「…あれは?」

 

「第2ロケットです。今日は100本の様々なロケットを打ち上げていきますので」

 

「ええ………」

 

「さぁ、次の人員、搭乗開始!」

 

 

 

 

 

 

 

「第27ロケット、爆発!」

 

 

また爆発した………

これ一本にいくら使っているんだ?

 

もっと時間をかけて発射をすればいいと思うのだが………

 

 

 

「うーん、なかなか上手くいきませんね。でも大丈夫!データは集まってきてます!次発射する第28ロケット【青龍】は凄いですよ?仙法と栄養学、精霊術に龍脈学を応用した優れものです!」

 

 

栄養学……?栄養学を何をどうしたらロケットに軍事転用するんだよ!

 

ホムンクルスは基本的に好戦的なので、あらゆる技術を軍事転用する。

知的好奇心がまずい方向に振り切っている。ヤバい。

 

 

 

そうして、青龍は空高く飛んでいく。

 

だがこれまでのロケットとは違った。

 

光り輝くロケットは宇宙へ向かって旅路を切り開いていき、次第に遠ざかり光が小さくなる。

燃え盛るエンジンの力でロケットは次第に高度を増し、地球との重力の束縛から解き放たれていった。

 

 

「せ、成功です!」

 

 

ロケットに搭乗したホムンクルスから映像が送信される。近くには山田宇宙ステーションがあり、それに対して揚陸作戦を行うとのこと。

 

 

 

ああ、ロケットっていいなあ。世界中の金持ちが何故ロケット開発に精を出すのか分かった気がする。

 

 

 

「よぉし!どんどん打ち上げて行け!」

 

 

 

宇宙開拓時代の始まりだ!

 

 

 

 

 

と思ったら、ホムンクルス宇宙飛行士達はまともに行動できなかった。

 

一応宇宙空間での活動に備えて、訓練をしているとのことだったが、していたのは宇宙怪獣との戦闘シミュレーションと宇宙艦隊同士の戦闘シミュレーション、さらに宇宙映画を見たりしているだけ!

 

 

 

 

馬鹿!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、今日の無料ガチャ!

 

 

宇宙戦艦とか来い!

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

SR『料理の基本さしすせそスキルパック』

 

 

調味料の頭文字。実は調味料を入れる順番を覚えるための語呂合わせ。

「さ」は砂糖。

「し」は塩。

「す」は酢。

「せ」は醤油。

「そ」は味噌。

 

醤油は昔はせうゆだったから。

じゃあ味噌はみ「そ」だから。お前だけ無理矢理なんだよ!

 

 

 

 

 

 

●スキルを5つ習得しました!習得したスキルは以下の通りです!

 

 

●錆神『滅』の権能

 

包丁で指を切りそうな時、包丁は錆びて粉になります!安心安全!

 

 

●焼土冥府の火

 

弱火から強火まで、火加減は調節可能!

 

 

●透き通った光輝く聖水

 

細菌や寄生虫はこれで一掃!衛生面でも安心ですね。

 

 

●絶対的捕食者

 

魚は体を硬直させてまともに動けません!ピチピチ跳ねないので調理がしやすくなります。

 

 

●狙撃手の瞳

 

食材の目利きが達人級になります。良い食材を選びましょう!

 

 

 

 

いや、説明とスキル名が合ってない!

どう考えても、スキルの説明間違ってるだろう!絶対料理用のスキルじゃないし!物騒すぎる!

 

 

………いや、これあたりでは?

 

なんかよく分からないけど、どれも強そうなスキル名だ!絶対役に立つ!

 

 

 

●ひらがな50文字頑張って集めましょう!

 

いや、さしすせそってそういう意味じゃねーから!

 

 

 

 

 

………まあ、とりあえず使ってみるか。俺は調理室を借り、料理の準備を始める。

 

 

 

 

まずは手を洗わないとな!

 

早速使ってみよう!『透き通った光輝く聖水』!

 

 

 

その瞬間、どうしようもないほどの吐き気を感じ、耐えられず口を開いた。

 

 

カボカボガボガボ!!!

 

の、喉の奥から水が止まらない!なんだこれ、不潔だろ!調理に使えないよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、マーライオン山田黄金像が建設された。

 

俺の見た目をした黄金像の口から温水が出て、足湯に使っていた。

 

 

 

 

………マーライオン要素ゼロじゃん!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

C『噴水』

 

 

いや、大っきい!

 

 

出現した噴水は、遠目から見ても世界遺産に登録されてもおかしくないレベルに大きな噴水だった。

 

 

大理石で作られたと思われる噴水はマンションのように高くそびえ、豪華な花や天使、葉のモチーフなどで飾られ、湧き出る水しぶきが、キラキラと太陽の光を受けて美しく輝いていた。

 

水しぶきが上昇する中央には、美しい彫刻が施された噴水の柱がそびえ、水流が上空へと舞い上がりながら周囲にはしご状の水流が織り成す美しい模様が広がっていた。

 

高くから滝のように落ちる水が途中で分散し、霧のように散布され、俺はそれを吸ってしまった。

 

 

 

 

 

●悪魔世界の水を摂取しました。悪魔属性の武器との親和性が上昇します。悪魔召喚魔法の成功率と上位悪魔の召喚確率が上昇します。

 

 

は?悪魔?

 

 

俺は大仰に飾られた噴水を見た。

 

………よくよく集中すれば、微量だが魔力を感じる。それも異質というか、邪神の魔力に近い物だ。

 

 

 

………鑑定!

 

 

●悪魔の世界のとある湖に通じる噴水。噴水から湧き出る水は排水口で悪魔の世界に還っていきます。基本的に水しか戻せず、こちらから悪魔の世界に行くことはできません。

 

 

 

お前悪魔の湖なのに、なんか綺麗な雰囲気出してんじゃねーよ!!!

 

一気に不気味に見えてきたわ!

 

 

 

 

 

 

 

その後、ホムンクルスの手により、悪魔の泉は農業用水へと転換された。

 

元々出現した地域は特に水源がなく、周りには平らな土地が広がっている。せっかくの水資源、使わない理由はないとのことだった。

 

用水路が掘られ、既に大規模な農業が行われている。さすがは無限の体力を持つホムンクルスだ。

たった1日で地平線まで農作地となっている。農業ロボット猪鹿蝶もフル稼働だ。

 

 

………安全性は大丈夫か?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アメリカ合衆国 NASA

とある宇宙飛行士視点

 

 

私はシステムウィンドウを展開し、その光景を見ていた。

次々と爆発し、それでも5回に1回は打ち上げ成功して宇宙へと旅立つロケットを。

 

地球の人間は誰でもシステムウィンドウを開いてユーザー達を観察することができた。このおかげで動画閲覧サイトやテレビ番組は大打撃らしいが、まぁそんなことはどうでも良い。

 

 

ロケットが宇宙ステーション(合衆国が使っているような小さなものではない、SF映画に出てくるような超大型)付近に停泊し、宇宙服をきたホムンクルスたちが無重力空間を泳ぐようにして、宇宙ステーションへと乗り込んでいく。

 

彼らはステーションの入り口に侵入し、そこまでの道への誘導灯や食糧品などの物資をロケットから運んでいく。

 

だがその作業は拙い。当然だ、彼らはまともな訓練なんてしていない。着慣れない宇宙服に拙い作業。地球から送られてくるホムンクルスばかりが増え、作業は遅々してと進んでいない。

 

 

私もいつか、宇宙に行くと考えていた。

長い間、訓練を受けてきた。いつの日かその訓練の成果を発揮する日が来るのだと。

 

 

だがそんな日は来なかった。

 

 

中位ユーザーの中に、宇宙艦隊を所持した奴がいる。このドイツ人は大規模な宇宙艦隊による超長射程からの正確な射撃により天使を撃ち落としていた。

そんな奴が地球に売り込んできたのだ。我々の宇宙船を買わないかと。

 

私たちが何億とかけて開発してきた宇宙ロケットよりもはるかに性能の良いロケットを超低額で買わせてくれる。今ドイツ政府を仲介として各国が購入交渉をしているようだ。今後宇宙事業はドイツ主導で行われるだろう。

 

アメリカ合衆国政府はNASAの予算を削減して、宇宙船を買うらしい。

 

でもそれを使うのは私たちじゃない。技術流出の阻止のため、ドイツ人ユーザーの所有するユニットである軍人が乗るそうだ。宇宙飛行士である俺たちは乗れない。宇宙関連事業では大幅な人員削減が起きるだろうと噂だ。

 

なんでもユーザーとユニットの取引では物を送り合うことができても、生き物はできないらしい。

だがこのドイツ人は、ユーザーの中で唯一星間航行を行うことが出来る。

 

今ドイツ人の宇宙艦隊が、搭乗員であるユニットを大勢乗せて地球へと向かっている。派遣会社のようにユニットを国家に雇わせるようだ。

 

 

結局、無駄だったのだ。私は宇宙に行くことはない。

 

「いいなぁ」

 

宇宙空間でわちゃわちゃしているホムンクルス達を見て、無意識に言葉が溢れる。

 

 

羨ましくもあり、腹が立ってくる。

私ならもっとできるのに。

 

ため息をついて、システムウィンドウを閉じる。

今日はもう寝よう、寝室へと向かい、ドアを開く。

 

「ご機嫌いかが?」

 

「うわぁ、え、え、いやなんで俺の部屋に、いやお前見たことあるぞ!」

 

目の前にいるのは、スーツ姿の男。コイツは…あのガチャから出た…

 

「ええ、ええ!私はスカウトマン!山田ドラゴンガチャ王国人事院人材発掘室室長のスカウトマンです!」

 

「どうですか、この映像?憧れましたか?羨みましたか⁈」

 

「まぁ、そりゃ」

 

「そこで提案です!山田ドラゴンガチャ王国で働いてみませんか!映像を見ればわかるように、まともな専門的知識を持ったホムンクルス達は皆無!あなたにホムンクルスを率いて欲しいのです!」

 

「さあ、どうします⁉私の手を取れば、すぐにでも宇宙へ!」

 

「…取るに決まってるだろ!宇宙に行きたいんだ!」

 

「では、夢を叶えましょう!この時空間ゲートに入った入った!」

 

「うわぁ!!!」

 

「家族への説明や荷物の輸送は後で行いますので心配はご無用!ささ、出発までしばらくはご歓談のほどを」

 

 

スカウトマンに連れられた空間には、大型の宇宙船?と大勢の人々が倉庫の中にいた。

 

彼らは皆楽しそうで、目は希望の光に満ちていた。

新参者の俺に気づいたのか、大勢の人たちが俺に殺到する。

 

「あなたはなんの専門家ですか?俺は数学科です!教師としてスカウトされました!」

「私は恐竜学者なんです!トリケラトプスに会えるなんて夢のようです!」

「俺はただの技術者だよ。一労働者の俺が、弟子を取ることになるとはな」

「僕の研究が認められた!母国よさらば!俺の研究に金を出さなかったことを後悔しろ!」

 

どうやらみんな、スカウトされたようだ。

人々の中には見覚えのある顔の奴らもいた。

ははは、なんだよ、みんな考えることは同じか。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第一次山田竜 報告書

現在我ら山田軍は第14エリアを攻略中なのだが、このエリアにいるのは山田軍だけではない。

 

当然とも言えば当然だが、このエリアには入場制限が無いのだ。入場しようと思えば入場できるし、攻略にだって参加できる。

 

実際初日は他のユーザーの軍隊も結構いた。

 

だが彼らのほとんどは俺の軍隊を見て帰ってしまった。俺の送り込んだ軍隊の規模を見て帰ってしまった。俺にこのエリア攻略の美味しいところを全部取られてしまうと考えたのだろう。

 

 

「何でこの規模の軍隊で、こんな下位エリア攻略に全力出してんだよ…もっと上のエリア攻略しろよ…」

 

 

そう言ってみんな帰ってしまった。だが彼らも全員は帰らず、俺の監視用にそれぞれ数十人のユニットを派遣しているが戦争に参加せず、まるで観戦武官のように遠くから戦いを見物している。

 

まぁ俺も各エリアにスパイを送り込んでいるから何も言えない。

 

第1、2回のイベントに参加しなかった俺のことに相当注目しているようだった。もっと俺を見て評価しろ。

 

しかし全てのユーザーが見ているだけではない。何人かのユーザーは割と真面目に攻略に参加してくれている。

 

例えばオーストリア指定ユーザーの『叡智』のヨーゼフ。

 

ヨーゼフ軍は強力な魔法使いで構成された軍隊で、『重魔法部隊』などがまるで爆撃のように天使陣地を薙ぎ払ってくれる。この前も超長距離狙撃魔法により、山脈に建設された要塞の一つを蒸発させた。

 

さらにホムンクルスに攻撃力上昇のバフや敵天使の【神の加護】を剥がしてくれるなど、割と活躍してくれる。

 

そんな魔法使いたちは魔法を研究する学者でもあるらしい。この土地や天使の遺体や兵器などを回収し、様々な研究をしている。俺は彼らに友好の証として、他のエリア攻略で得た様々な物品の山を譲渡したのだが。

 

 

 

 

「サンプルが多すぎる⁈徹夜しても分析が終わらないぞ⁈どうすればいいんだ⁈」

 

「甘えるな!こっちは欲しいサンプルをこの中から探さないといけないんだぞ⁈サンプルがあるだけマシだ!」

 

「実験に次ぐ実験…いつになったら終わるんだ…講義に出る暇がないぞ…」

 

「あああああああああ⁈研究費の申請に落ちた⁈何で⁈はぁ⁈俺の研究よりも譲渡された聖遺物の研究の方が優先だって⁈くそがぁぁぁぁぁぁぁ⁈」

 

 

 

………………何かごめん。

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで今日もガチャである。

 

どうやら敵の防御は固く、少ししか進めなかった。まぁその代わりに敵兵を殺しまくっているようだが。

 

ここで何か、役に立ちそうなアイテムをくれ!

 

 

 

 

 

無料ガチャ、グルグルグル!

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

C『流し素麺』

 

竹製の樋に冷水と素麺を流し、流れる素麺を上手く箸で取って、ネギや生姜で味付けされた麺つゆに付けて食べること。

しかし殆どの人はうまく箸で挟むことができない。スルスルと流れる素麺を箸で掴むのは難しいのだ。

 

 

 

 

 

出現したのは、木の箱に収められた素麺だった。

茹でられる前のスパゲッティのように固い。バラバラにならないように白い紙で縛られている。

 

俺は素麺を触ってみるが、特に変わった点は見当たらず、流し素麺要素も見当たらない。箱も何の変哲もない質の良い木の箱だ。

 

 

とりあえず茹でて食べてみるか。箱の中の素麺は10束ほどある。1束くらい食べても問題はないだろう。

 

俺素麺食べるの久しぶりだなぁ〜、ホムンクルスと一緒に流し素麺でもやるか?

 

俺はホムンクルスに竹を調達してくるように命じ、束を解き、鍋の中におく。

 

 

青空クッキングというわけだな。気分がいいなぁ。

 

 

ヒュルルルルルル…

 

 

 

あっ、風だ。少し強いな。寒っ。

 

 

「今日はちょっと冷えるなぁ。天気魔法で無理やり夏にでもするか?」

 

 

 

俺が震えていると、流し素麺は風に乗って空高く流れていった。

 

 

 

 

 

 

……

 

 

 

 

おーい、帰ってこーい。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、回収された流し素麺は軍服に加工された。ホムンクルスに渡された純白のかっこいい軍服が目の前にある。

 

は?

 

 

 

どうやらあの流し素麺は非常に軽いにも関わらず、普通の人間が歯で噛みきれないぐらい強靭かつ伸縮性に優れており、いざという時はホムンクルス限定でだが食料にもなる夢の新素材らしい。

 

この素材を研究して応用、軍服として生産を開始したとのこと。生産コストが高いため、上位士官から優先的に配布するようだ。

 

 

俺は服についてあるタグを確認する。

 

・製造元『ミナモトファッション』

・素麺100%使用

 

 

 

素麺が服の材料って、なんか嫌だなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

ログインボーナスは植物確定コイン!さぁ、レッツガチャ!

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

HR『竹』

 

 

イネ科の植物。古くから日本では建材や玩具として利用されてきた。

成長速度が速く、1日で1メートル伸びることもある。

 

 

 

 

「うわぁっ!」

 

 

突如、俺の足元から槍のように竹が伸びてきた。

 

凄まじい成長速度だ。竹はすぐに太くなり、葉と枝を伸ばしてきた。一瞬で成長してしまった。

 

目の前には普通のサイズの竹が一本。花を咲かすこともなければ、筍が周りから生えて増殖することもない。特に異常性もない。

 

 

今竹かぁ。もう既に流し素麺パーティの準備は終わっているんだけど。

 

 

ピロン!

 

●ここを切るべきだ →

 

 

視界に矢印が見えている。えっ、何お前そんなことができたの⁈

 

 

…こいつ、他にも何かできるのか?まぁ一旦それは横に置いておこう。これを切れというわけだな。

 

 

俺は空気中に魔力刃を生成する。これを使うには結構な量の魔力とタメ、そして指を切るようなモーションが必要だ。

 

 

「『斬』」

 

 

竹の中身を傷つけないように魔力刃を動かす。

 

竹の中から、様々なものが出てきた。

 

 

宝石のような植物の枝、神聖な気配を醸し出す石、動物の皮、貝、龍属性の珠。

 

 

 

竹…竹とんぼ…筍…竹…竹…かぐや姫?

 

 

これはもしや……鑑定

 

 

●燕の子安貝

 

かぐや姫が求婚者に要求した物の一つ。

安産のアーティファクト。保有しているだけで母体及び生まれる子供の健康に関するボーナス発生。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、竹はマンションになった。

 

一瞬で成長するという点に着目して品種改良を行った結果らしい。

 

筍を埋めると一瞬で成長、しかもガチャから出た竹とは違いより太く、長く伸びる。その長さなんと100メートル!!

 

しかも繁殖せず、枝や葉を生やさない。このまま竹の内部を改造して超高層アパートへと改造するらしい。

 

たった数時間で超高層アパート団地が完成していた。

 

 

 

【住宅が必要な方は『タイラ都市計画』まで!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スイス指定ユーザー エマ・ミュラー視点

 

 

『第一次 山田竜 報告書』

 

 

 

山田軍の主力となる戦力は【ホムンクルス】という戦闘に特化した人造生命体である。

 

どの個体も思考が幼く本能的であり、欲望に忠実。好奇心旺盛。

製造直後と思われる個体は会話をせず、感情も乏しいが凄まじい速度で成長し個性を獲得する。

 

 

多種多様なホムンクルスを製造しており、個体ごとに戦闘能力に差が存在し、十二魔将、特に【セブン】と呼ばれる個体は上位ランカーのユニットにも劣らないと推測。

 

 

ホムンクルスの山田氏に対する好感度及び忠誠心は非常に高い。

これが山田氏の人徳なのか、それとも製造されたホムンクルスがそのような特性を備えているのかは不明。

 

 

以上のことから、山田氏の能力及びアイテムはホムンクルスを生産する物であると予測する。

しかしホムンクルスとは別の存在が確認されており、不確かであるため早期の判断はすべきではない。

 

また、山田氏が前線で戦うことを複数回確認しており、非常に強力である。

 

 

 

私は報告書を読み終え、側近であるユニットに意見を求める。

 

「どう思う?君の考えを聞きたい」

 

「そうですね…この報告書では、ホムンクルスの戦力ばかりが強調されてあります。ですが重要なのは、山田氏が大規模な軍隊を維持できる体制を維持しているという点です。物質的にも、財政的にもかなりの余裕があると推測されます。」

 

「それが原因で売上が予想よりも低いのかな?」

 

「想定外です。我々は傭兵と軍需品を輸出することで稼いできました。ですが山田氏は傭兵に必要な食料、燃料、弾薬といった、軍需品を自前で生産し揃えてしまいました」

 

「大規模な工場と資源が存在するということか」

 

「それだけじゃありません。コピー品、いえその改良型とも言える兵器が出回っています」

 

「最新式の兵器を輸出しなかったのは正解だったな」

 

「あとはとにかく兵士も多いです。文字通り第14エリアはホムンクルスで埋め尽くされる勢いです。あそこまで練度の高い兵士を揃えることができるのは、生まれつき戦闘が可能なホムンクルスならではでしょう」

 

「…なるほど、中位連合が彼を仲間にしたい訳だ。中位ユーザーは皆、なんらかの弱点を持っている。その弱点の大半が物資不足だ。彼のように生産能力に優れた仲間が何としてでも欲しいのだろうね」

 

「しかし、何故日本政府が彼を指定しなかったのかが分からない。少子高齢化に悩むあの国はホムンクルスなんて労働力として欲しいだろうに。キリスト国家でもないんだ。抵抗は少ないはずだ。何かあるぞこれは」

 

「中位連合に取り込まれる前に、こちらから山田軍に攻撃を仕掛けて隷属させますか?」

 

「それは止めて。絶対に」

 

「何故です?我々と中位連合との戦力差は開く一方です。中位連合が物資不足という弱点を解決すれば、追いつくのは不可能になります。」

 

「君はユニットだからそう考えているんだ。君が思う以上に地球人には連帯感というものがある。もし正当な理由なくこちらから攻撃したら、下位連合からの離脱者が現れる可能性がある」

 

「じゃあどうするのですか?」

 

「放置よ」

 

「は?何も手を打たないということですか?」

 

「あれは台風の目だと思うの。自分の敵対する者全てを巻き込んで破壊する、台風の目。」

 

「私たちはただ兵器と傭兵を格安で売りつければそれで良いの。あとは勝手に、彼が全てを滅茶苦茶にしてくれる。そうすれば、私たちの順位も上がるでしょ?」

 

 




パソコンからご覧の方は小説上部の評価から、スマホの方は右上のメニュー、評価付与から評価が可能です。まだの方は是非。

感想や推薦など、よろしくお願いします。

小説家になろう、 カクヨムでも投稿しているのでそちらでも是非。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

山田文化大爆発!

山田ドラゴンガチャ王国も少しずつだが国としての体制が整い始め、国独自の様々な文化が芽生え始めている。

 

ホムンクルス初期型は基本的に無表情でロボットのようだった。

外部からの刺激も少なく、感情や言語能力の獲得も時間がかかったが、現在はホムンクルス製造機の度重なるアップグレードと拡張。ダンジョンやマッドサイエンティストからの刺激、そして統括個体を通じた、増えすぎた同胞との連結などで普通の人間のように活動している。

 

 

戦闘狂のホムンクルス魔王軍にも戦争に直接関係ない音楽隊や報道部、スポーツ部など、比較的戦闘欲望の低いホムンクルスたちが静かに集まり、のんびりと活動を始めている。

 

ホムンクルスは戦闘型をベースとして製造されているため、戦闘欲望が備わっている中、これは珍しい。俺はホムンクルスの戦闘欲を発散できるように、様々な施策を行っている。この負担を減らせるのならいいことだ。

戦闘以外に何か熱中できる物が出来たら、それは奨励すべきである。

 

 

その結果、山田ドラゴンガチャ王国初の国立美術館が完成した。

 

名づけて、山田中央記念ミュージアム!黄金の装飾で彩られた、ほぼ白亜の美術館である。

 

 

 

 

国立美術館の建設が完了したとの報告を受け、俺はオープン前にその視察に赴いた。

 

 

美術館には、スカウトマンが招致した美術家たちの作品とそれに影響を受けたホムンクルスの作品が多く展示されていた。

 

 

鎧を着た彫刻、禍々しい壺、見る物を恐怖させる呪いの仮面、血に染まった戦装束、首だけの剥製…

 

とにかく多種多様の展示物が隙間なく展示されている。山田美術文化はここから発展していくのだ!

 

 

 

さて、本美術館最大の目玉、『記憶回廊』にたどり着いた。

 

ここは俺と山田ドラゴンガチャ王国のこれまでの軌跡を展示している。

 

 

 

突然白い部屋に閉じ込められ、混乱する俺を描いた絵画。

餓死しかけて呪詛を吐いている俺をモデルにした彫刻。

イラついてガチャを蹴りつけている俺の映像。

 

 

 

 

 

 

 

うん、見なかったことにしよう。見ると気分が悪くなる。

 

 

回廊入口は早歩きで飛ばし、ここ最近の出来事が展示されている出口の方へと向かう途中、俺の目を引き寄せた一枚の絵画が存在した。

 

 

赤く染まる灼熱の空。周囲を焼却する炎熱の騎士。

 

荒れ地の中、勇敢にも突撃する山田魔王軍騎馬隊。それらが躍動感溢れる表現により見る者を高揚させる。

 

 

 

 

 

 

『炎神旋風』 作者 ムーア・ツーウィークマンデー 没入派

 

 

第38エリア『神に見捨てられた荒野』にて山田魔王軍と炎神バルキウスとの戦いを描いた絵画。

炎神バルキウスは第38層司令官【風神キク】が発生させる暴風に乗ることで、エリア全域に炎神が拡散。その熱風と燃え広がる炎に地球ユーザー達は苦戦を強いられている。

 

これは拡散された炎神の欠片への勝利を記念して従軍画家が作成した。

 

 

 

 

 

 

…ふむ。どうやら俺が各エリアに派遣した偵察隊が戦った記録を絵画にしたものらしい。

 

なるほど、上位エリアは神が司令官として君臨し、脆弱なユーザーは苦戦するなか、我ら勇敢な魔王軍は少数ながら勝利しているということか!

 

 

俺は気分が良くなり、絵画を見つめる。

 

 

「どうですか?気に入りましたか?」

 

「ああ、館長。すごいな、芸術のことなんて何もわからないけど、すごいと思う」

 

「そうでしょうそうでしょう。それじゃあ、始めますよ。えーと、ここをこうして…」

 

「は?始めるって何を」

 

「決まってるじゃないですか。山田芸術の真骨頂!没入派の真価ですよ!絵画起動!再演せよ!あぁ美しきかな!」

 

「は?は?はあああああああああ!?」

 

 

 

 

俺は、絵画の中に引き込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クエスト名 【灼熱騎士 再演】

 

 

クリア条件 

炎の欠片【灼熱騎士】の撃破または封印

 

敗北条件

プレイヤーまたは味方封印系NPCの全滅

時間切れ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうでしたか?楽しんで頂けましたか?」

 

「殺す気かおまえええええええええ!!!」

 

「ぐあああああああ!!!」

 

 

 

これ、ゲームで倒したボスと何度でも戦えるやつじゃねーか!

 

 

「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ。マジで死ぬかと思った。俺が冥府の火の使い手じゃなかったら死んでたぞマジで」

 

「それは大丈夫、絵画の中で死んでもぼろ雑巾みたいになって戻るだけですよ………おおー、クリアランクはAですね。複数パーティ推奨絵画をソロクリアとは流石です」

 

「はあ、はあ、はあ。これが没入派か。絵画の世界に言葉通り没入する。なんともまあ、すごい技術だ」

 

「絵画内で入手したアイテムは現実に持って帰れますよ。でも絵画を再起動するまでに結構時間がかかりますので、今すぐに再突入は残念ながら不可能です」

 

「二度と入るか!」

 

「まあまあ。それより報酬を渡しませんとね。館内焼肉屋へどうぞ。私からのささやかな報酬です。山田さんの大好きな焼肉ですよ。」

 

 

館長は俺に報酬として、焼き肉を焼いてくれた。

美術館の中に飲食店街があって、よりにもよって煙と匂いが強烈な焼肉っていいのか?

いや、それよりも。肉を焼いている炎、それに見覚えがあるぞ。

 

 

「…おいまてなんだそれ」

 

「炎神の欠片ですよ。さっき戦ったレプリカと違って本物ですよ。詳しい仕組みは知りませんけど、七輪で焼いたみたいにうまくなるんですよねこれが」

 

 

お、お前!そんな危険物を美術館に持ち込むな!

というか何で生きているんだ!はあ?封印して持ち帰った?

 

それも一つじゃなくて、何十個も倉庫に保管してあるだと⁈

 

そんな危険物持って帰ってくるな!

 

 

 

 

………え?この欠片は洗脳状態で、これを通じて本体を洗脳して服従させる?

 

お前、それを早く言えよ!どんどん洗脳しろ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、今日のログインボーナスは5連ガチャコイン。

久しぶりの連発系ガチャコインである。

 

 

さぁ、レッツガチャ!!

 

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

UC『架空兵器シリーズ 零戦2050年型』

C『シベリア産コシヒカリ1kg』

C『朽ち果てた椅子』

R『台風』

C『チョコレート(賞味期限切れ)』

 

 

相変わらずガラクタがガタゴトと宙に現れ落下する…

 

 

ん⁈台風?

 

 

俺は慌てててデバイスを起動し、つい最近開設されたTV番組を開く。

 

 

 

 

《山田ニュースセンターです!突如として大陸南部ルーキーズ海にて台風が発生しました!これを受けて魔王軍気象局は付近の海域に台風時のみ出現する嵐龍討伐作戦の実施を発表、勇敢なホムンクルスが無謀にも漁船で台風へ向かっていきます≫

 

《ホムンクルス以外の住民は避難してくださいね》

 

《現地では既に山田魔王軍空軍がスクランブル発進、情報収集に努めているとのことです。ルーキーズ海には大阪の大学より招致した博士がマグロ養殖場を建築しており、マグロ養殖計画に影響が懸念されます》

 

 

 

TV局の映像では、漁船に乗って水平線へと駆け出すホムンクルス達が写っていた。日頃から海でモンスター相手に戦う漁師達だ。彼らは限界速度で進み、荒波で転覆する漁船もあるが、構わずクロールで台風に進んでいく。

 

…ホムンクルスにとっては恵みの台風のようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それでは、無料ガチャ!

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

R『聖女』

 

 

聖女。聖なる力を持つ女性。

ファンタジー作品ではバッファー、または魔法使い職として活躍する。一般的に光属性の使い手が多く、純粋無垢な傾向にあるが近年では成りすましや性格の悪い聖女の場合も多い。

 

 

 

 

「おおーー、ここが山田ドラゴンガチャ王国ですか。変な名前の国ですねーー」

 

 

目の前に現れた聖女は、俺が気にしている事を一番に口にした。

 

 

ぐはあ、恥ずかしい!

 

 

 

 

鑑定!

 

 

 

●星読みの聖女 ライラ

星読みと言っているが星占いに関する知識はない。ただあれが何の星か、星座かを知っている程度。自分勝手に星を解釈する。

 

「なんか星光ってますね〜これ、私に対する祝福では?」

 

 

作戦方針『前進あるのみ』『逃走なんてあり得ない』『全軍突撃って盛り上がるよね、好き』

 

特性『血の狂乱』

 

スキル『突撃』『直感』『猪突猛進』『一番槍』『進軍』『槍術』『歩く地獄』『無策』『脳筋』『蹂躙』『突破』『前進』『鼓舞』『体力』『突破』『撲殺』

 

 

 

 

 

ば、バカだ!馬鹿がここにいる!

 

なんだこのスキル構成⁈聖女要素が何処にもない!

ツッコミどころがありすぎる!聖女失格だろ!

 

って、うわあ⁈

 

「あら?よけましたか」

 

「な、なにしやがる!くらえ、右パンチ!」

 

「なんか馬鹿にされた気がするんですよね、ほい頭突き!」

 

「ぐおおおお!重い!なんて馬鹿力だ!お前強いな!」

 

「ええ、そうです!私は強いんです!まあ私に任せてみてください!すぐに戦果を出しますよ!」

 

 

 

 

 

 

 

その後、ライラは山田十字軍を結成。すぐさま戦場へと向かった。

 

 

何故十字軍と言うのかだって?彼らは全員、十文字槍で武装しているからだ。決して何か宗教的なこだわりがあるというわけではない。

 

 

 

彼らは死体で埋め尽くされた地獄の前線に出撃し、何重層にも折り重なる複雑かつ堅牢な防衛線を強引に一点突破、そのまま血の道を舗装しながら山脈部へと到達し一つの要塞へと攻城戦を開始。

 

哀れ、守護していた天使たちの充実した防衛設備は粉々に打ち砕かれ、要塞は機能停止。一兵たりとも要塞からの脱出は成功せず要塞司令部の高級士官、その他軍団司令部ごと、血の海へと沈んだ。

 

 

 

ぷるるるるるるるる。

 

「もしもし?」

 

「孤立しました!四方八方天使だけです!要塞も壊しすぎて、まともに立て篭もることはできません!」

 

「…はぁ。わかった。今すぐ砲撃支援を行う」

 

「必要ありません!この程度の軟弱な敵、私の敵ではありませんので!」

 

「…そうか。まあ、頑張れ」

 

「はい!聖槍起動!とりゃああああああああああ」

 

 

地面の削れる音と、天使達の断末魔が電話越しに聞こえた。

 

 

 

…俺、聖槍なんて渡してないけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

妙物管理機構報告書

 

 

●炎神の欠片

 

飛散した炎神のカケラ。それら一つ一つが意思を持ち周囲の敵を燃やし尽くす。一部個体は炎神に対して反抗的。

確保した個体群を通じて本体である炎神へ洗脳魔法を行使、その権能を奪い服従させる計画が進行中。

計画実行のためより多くの欠片の確保が必要。

 

使用例 焼肉の火種 火力発電所 聖火へと加工 洗脳準備中

 

 

 

●台風

 

大陸南部ルーキーズ海にて発生を確認。嵐龍討伐後、山田魔王軍先進兵器開発局が急遽完成させた台風破砕砲により消滅。幾つかの国家より輸入要請があるが地球環境及び軍事バランスを考慮し弱体化して輸出。

 

兵器評価 台風破砕砲は欠陥兵器。台風より効率的にエネルギーを取り出す兵器を開発中。

 

 

 

 

●賞味期限切れチョコレート

【第1級隔離措置実行中】【微量の神性確認】

 

 

食レポ 暴食の邪神 納豆みたいな触感。味は下水道のようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




聖女は要塞を守護していた天使から聖槍を奪いました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

く、なんて卑劣な!

もはや敵天使軍は総崩れだ。

 

前進し続ける我らホムンクルス軍に対して天使軍は組織的な抵抗が出来ず、ただ銃弾と剣で血の海で染まる地獄の最前線に兵士を投入し続けるという、ソ連軍も真っ青な人海戦術によりホムンクルス軍を物理的に押し止めている。

 

 

もはや地獄絵図。天使の死体は山のように重なり、ネクロマンサーによるアンデッド化や転生の祭壇による強制転生が追いついていない。

 

 

敵天使達は前線に出ればすぐに銃弾の雨が襲い、何とか陣地に隠れてもホムンクルス達により切り刻まれる。

さらに制空権を得たホムンクルス軍により爆撃、砲撃、機銃掃射。天使達は碌な抵抗も出来ず、撃破される。

 

既に天使軍の将校や上級天使などの指揮官級の天使が数多くがホムンクルスに討ち取られ、首だけとなって悪趣味な【首狩り記念館】にて展示されている。ホムンクルスは蛮族。天使達もダンジョン出身者達もそう話している。

 

 

 

そんな天使軍の士気は高い。何でだよ。

 

 

 

俺は早速、転生の祭壇にて転生させ、神である俺に仕える忠実なる天使、元上級天使にどうにかして士気を下げることが出来ないか、話を聞いた。

 

 

「あの………!今の私はあなた様に仕える天使なのですが………その………」

 

「もぐもぐ………ん、何」

 

「いやカツ丼食べながら話さないでくださいよ!」

 

「君も頼めば?このカツ丼作った食堂は出前もしてるよ」

 

「あ、そうですか。それでは遠慮無く」

 

 

 

ダンジョン第51層でハント!『松茸豚』を贅沢に使った新商品!

 

松茸豚は永遠の秋の山にて育った、1メートル級の松茸を食べて育った、暴食の邪神も唸る最高級豚!

 

松茸の香りと旨みが溶け込み、肉汁たっぷりです!

 

 

秋山食堂にて、好評販売中!

 

 

 

 

 

 

「冥府神エリオ。我々の世界において、死後の世界を支配し君臨する、最上級に分類される神です。その神があの山脈の下に眠っているのです。当然、士気も高いでしょう」

 

「だよなあ」

 

「そして、死後もなおその力は絶大です。今第14エリアを守る全ての天使や要塞に対して様々な能力上昇の加護を与えているのです。これは一部の兵しか知りませんが、死してもなお生み出す膨大な魔力を利用して各地の結界や砲台のエネルギーとしてエリア各地に供給しています。神は一種のエネルギー資源なのです。上層部は何としてでも、この無限の利益を産む神を死守しようとするでしょう。ですが、何事にも限界はあります。」

 

 

「おお、何かあるのか」

 

 

「ええ、ここは私に任せてください。私も同胞の苦痛を望みません。それに、神をエネルギー資源として使うなんて、余りにも酷いと思いませんか?」

 

そうして、彼が提案した作戦は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前らぁ!こいつらがどうなってもいいのかぁ⁈」

 

 

 

「たすけてーー」

 

「このままではころされるー」

 

「うわぁーー、死にたくないーーー」

 

 

 

 

「く、人質だと!なんて卑劣な………」

 

「ああ、伯爵様!生きておられたのですか!」

 

 

 

そう、人質による脅迫作戦である。

 

 

 

・ガラテア記念騎士団長

・第4義勇軍副団長

・ミケル伯爵

・稲妻のハロルド

・聖軍陸軍中将

・異端審問官

・フューラー艦隊指令

・左翼司令部参謀長

・第561重装騎兵師団司令

・異界遠征軍第14エリア方面軍団長

 

 

他にも約100人の天使軍幹部達!彼等が拘束された映像を第14エリア全域に現在生配信中!

 

まあ、こいつらは全員、アンデッドになったり、転生の祭壇にて運命教会所属となった天使達、つまりは裏切り者である。

 

 

「皆、命を無駄にすべきではない。我々は負けたのだ。これ以上の抵抗は無意味だ、全ての責任は私が取る。慈悲深い神も我々を許してくれるであろう。」

 

「だんちょお………」

 

酷いマッチポンプだあ。

 

 

 

しかし降伏する兵士は少ない。だがまだまだ終わらないぞ!最後にこの方!

 

 

 

 

「さあ、上級天使エヴァンズ君!天使達を降伏させるような演説頼むぞ!成功すればボーナス(非課税)だ!」

 

「暴食の魔王様によるディナーもお願いします!」

 

 

もうこの天使俗世に染まってるな。

 

 

「あ、あれはエヴァンズ様!生きていたのですね!」

 

 

天使達が驚愕の声が聞こえる。

こいつは元々、この第14エリアの防衛部隊の司令官だったのだ。その部下を第一に考えるその心に多くの天使が彼に忠誠を誓ったらしい。実際こいつは撤退する味方の殿として戦い、ホムンクルス軍を足止めして戦死し、転生の祭壇にて蘇ったらしいのだ。

 

 

 

そりゃそうだ。彼は殿として奮戦する壮絶な最期を遂げたのだ。まさか生きているだなんて思ってもみなかっただろう。

 

 

 

「死ねー!」

 

「くたばりやがれ!」

 

「何で生きてるんだ⁈」

 

 

んん⁉

 

 

 

「諸君!降伏する必要はない!己の命尽きるまで、最後まで戦うのです。全ては神のために!」

 

「ふざけんなー」

 

「お前のせいでどれだけの仲間が死んだと思っているんだ!」

 

 

………なんか話が違うぞ?………ん、どうした参謀。何だこの報告書は。

 

何々…殿として戦ったと言うが、実際は味方を切り捨てて自分だけ一番に逃げだそうとしたが、すぐに味方に気づかれ、撤退する味方に一人置いて行かれ、追撃するホムンクルス相手に戦ったことで結果として殿となった。

 

他にも目に見える成果を出すために無謀な反攻作戦を幾度となく立案し、いたずらに兵力を消耗させた、己の保身しか考えていない。部下を第一にというが、その部下は大切にするのは自らの取り巻きだけである。

 

 

 

嘘は言っていない!言ってないけど!

 

 

 

 

 

「おっと、食事の時間だ。異教の軍隊は捕虜にも丁寧に食事を与えてくれる………うん、美味だ」

 

 

 

「な、なんであんなやつが………俺たちはまともに飯食えてないのに………」

 

 

「うう………酷い………」

 

 

酷いやつだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それでは、今日の無料ガチャ!

 

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

R『寄生虫』

 

 

 

●寄生状態に入りました!貪る者『ウロボロス』があなたの体に寄生します!

 

 

 

 

は、はあああああああああああ!寄生虫!?俺の体にだって!

 

 

 

鑑定!とりあえず俺の体を調べろ!

 

 

 

●山田竜 

 

日本人なのに日本国に指定されなかった悲しい王様。

 

大学生(休学中)現在その所業により退学にするべきか日夜大学関係者により会議中。

趣味 パチンコ、競馬、宝くじ。

 

山田ドラゴンガチャ王国国王 現人神 運命教会最高神。

 

 

違う!鑑定したいのは俺じゃない!

 

というか、た、退学の危機⁉

 

 

ふざけんな!いつか大学を買収して俺を退学にしようとしたやつらクビにしてやる!

 

い、いやそれよりも衛生兵ィィィィィィィィィィィ!

 

 

 

 

 

●ウロボロスがあなたに屈服しました。ウロボロスは以後、眷属としての道を歩み始めます。

 

 

 

 

んん?

 

 

 

●称号【眷属誕生】を獲得しました。報酬として、第一眷属の能力が強化されました。

 

 

具体的には?

 

 

●大きく成長します!

 

 

 

 

 

衛生兵ィィィィィィィィィィィ!!!

 

 

 

 

 

 

 

その後、ウロボロスは俺に概念的に寄生しているらしく、俺から摘出することは困難らしい。

 

 

 

うーーん、どうしよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まあ、いったん寄生虫のことは置いておこう。まずは今日のログインボーナスであるアーティファクト確定ガチャコイン!

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

 

HR『モーセの杖』

 

 

 

モーセは杖を振るうことで紅海を割り、海底を歩いて逃げるという力を見せた。モーセを追ってきた軍隊も同じく海底を進んだが、しかし海は元に戻り軍勢は海に沈んだらしい。

 

 

出現したのは、古ぼけた木製の杖であった。

 

 

 

 

こ、これは!モーセと言えば、あの人!海を割ることで有名なあの人じゃないか!

 

 

つまりは、あれか⁉この杖を使えば、海を割ることができるということか!

 

 

俺が力強く杖を振り下ろすと、その一瞬、海が割れるような轟音が響く。水しぶきが天高く舞い上がり、割れた海の間からは、色とりどりの珊瑚礁や優雅な海藻が生い茂った地面が見えた。

 

割れた海はまるで透明な壁のように立ち上がり、その中央には幅広い一本の道が姿を現す。

 

 

そして、海底に一本の剣が突き刺さっていた。

 

 

 

 

 

こ、これはもしや。

 

 

 

 

 

●『名も無き聖剣』を発見しました!ワールドクエストをクリアしました!報酬として『首都防衛司令部 極秘資料』がプレゼントボックスに追加されます。

 

 

ええーーーー、お前、こんなところにあるのかよ。

 

分かるわけねえだろ!

 

 

 

 

 

 

 

報酬として得た『首都防衛司令部極秘資料』は、エメリス共和国の首都ヴァーヴァルに関するものであるということがわかった。

 

 

 

 

どこだよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日本東京中央新聞

 

 

 

山田竜氏が指定国家であるキリバスやツバルなど、海面上昇に苦しむ国々に輸出したモーセ海水除去装置が活躍しています。

 

この装置は杖のような形状をしており、起動すれば指定の座標の海を割ることが可能です。この機能を活かして海水から陸地を隔離することで水の浸食を防ぐことができ、海面上昇問題に解決の目処が立ち始めました。

 

数多くの海岸線を有する国々で、この装置は有効に機能すると考えられ山田氏には感謝状や勲章を授与する計画が進んでいます。

 

一方で、日本政府が山田氏を選ばなかったことに対する批判が高まっています。専門家たちは、もし山田氏を指定していれば地球の国家に対して日本による強いリーダーシップを発揮し世界をリードすることが出来ていただろうと批判しています。

 

 

 

 

 

 




あと10話以内に終わります。最後までよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

運営「ガチャなんてやめればよかった」

さてさて、今日もガチャである。悪いが時間がない!今は0時0分!深夜だが頑張って回していくぞ!

 

今日は第14エリア攻略の最終段階だからな。俺は今日見ることができるであろう、映画のような光景を見に行かなければならない。

 

 

 

さあ、今日の無料ガチャ!

 

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

う、うおおおおおおおおおおビックリした!

 

 

金色のカプセル!SSR確定!今日はついてる!作戦も成功するんじゃないか⁉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SSR『ルール改変権』

 

 

 

 

 

一枚の封筒がヒラヒラと空から降りてきた。漆塗りのように黒い、封筒だ。ゴージャスさが溢れ出ている。

宛先も何も書かれていない、無地の封筒。

 

 

 

封筒を丁寧に開けると、中には封筒の色と同じ、漆黒のカードが封入されていた。

 

 

 

 

 

鑑定!

 

 

 

 

●ルール改変権

 

運営が定めたルールを僅かな期間改変することができる禁断の権利。一部を除いたほぼ全てのルールを改変できます。権利系統のアイテムの中でも最高レベルの権利です。

 

 

 

おお?これはまた、悪さができそうな権利だな。さーて、何に使うかな。

 

 

「待ってください!ちょっと待ってください!」

 

 

そう叫びながら、血相変えてこっちに来たのは、運営の小間使い、雑用、連絡係の運営スタッフだ。

 

 

 

俺は色々と察し、ニヤニヤしてしまう。こいつが困っているということは、これはつまり………

 

 

 

 

「今運営から連絡がありましてね?何かこのルール改変権はちょっと許容範囲を超えてるらしくて。かなりまずいらしいです。そこで提案なんですけど」

 

 

「やだね」

 

 

絶対にやだね!運営の邪魔を徹底的にしてやる!お前らの望みなんて、誰が叶えてやるか!

 

 

「えー、まあ、知ってましたけど」

 

「そもそも、その気になれば前みたいに制限すれば良いだろう。最悪、俺から無理矢理奪うことだってできるはずだ。そうなれば俺はどうしようもない。なんで運営はそんなことしないんだ」

 

「えー、やっぱりすぐに規制すると客から苦情が届くからじゃないですかね。山田さんの二つ名【ガチャ狂い】はあらゆる可能性が秘められた、予想不可能性が売りなので。運営に都合の悪い物を何でも制限すればゲームが不公平になってしまうからですよ。といっても、もう既に十分不公平なんですけどね」

 

 

うーん、確かに。ユーザーに与えられたアイテムや能力には明確に優劣が存在する。例えば【竜騎士】というユーザーがいる。こいつに与えられたのは竜と絆を深めやすくなる力だが、その一方で【龍神】という、最強クラスのドラゴンを生成できる能力持ちがいることが分かっている。

 

その点で言えば、俺に与えられたアイテムであるガチャは初期の頃だけ見れば他のユーザーに比べてかなり劣っていただろう。それを乗り越えてここまで来たのに、これ以上俺に制限すれば不公平すぎるということか。

 

 

 

というか。

 

「へぇー、俺のために苦情入れてくれる客なんかいるんだ、サンキュー」

 

「ファンは一定数いると思いますよ。最初から見てる人たちは、せっかく餓死の危機から苦労して生還したのに、この仕打ちはあんまりじゃないかと文句も言いたくなりますよ」

 

「一応聞いとくけど、運営に従ったら何してくれる?」

 

「えー、SSR確定コイン10枚くらいくれるらしいですね」

 

「なおさら嫌だね。この権利には、それだけの価値があるってことだ」

 

 

 

 

 

「見てるか運営ー!!俺がこの権利を使ってゲームを滅茶苦茶にしてやるからな!俺にガチャを与えたことを後悔しろ!客も楽しみにしておけ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、今日のログインボーナスは、資産確定ガチャコイン!

 

 

 

 

さあ、ガチャ!

 

 

 

ガタンッ

 

 

 

 

C『株』

 

 

企業が資金調達のために発行するもの。全ての株の51%以上取得すれば、その株主の物となる。

 

 

 

 

 

………何も起きない。これはつまり、地球で何かしらの異常現象が起きているということだろう。

 

地球から来たスカウト組が、地球では軌道エレベーターやら月面基地やらで大変なことになっているということを教えてくれた。

きっと何か、地球で起きているのだろう。

 

 

 

 

そういえば。俺の国にも、ついこの間証券取引所が完成していた。もう既に幾つもの企業が上場し、経済を活性化させている。

 

俺はふと気になり、テレビの経済ニュースを見ることにした。

 

 

 

 

 

『企業間抗争さらに激化』

 

 

ダンジョン第15層『砂丘神殿』にてミナモトインダストリー資源探査部隊をタイラ重工専属傭兵部隊が強襲撃破し、観測データを奪取しました。

 

これに対しミナモトインダストリーはタイラ重工燃料基地『a-65』の占拠を行い補給路に打撃を与えています。

 

企業間紛争調停委員会は両者に対する制裁として、空中母艦アストレアの拿捕と武器工場接収を行いました。

 

しかしこの隙をついて中小企業連合がミナモト、タイラ、調停委員会基地に同時攻撃を行い…

 

 

 

 

 

内戦が起きてる⁈ど、どういうことだ!

 

 

俺はニュースを聞き、以下のことがわかった。

 

 

 

企業間紛争法により合法化された抗争らしい。経済に大規模な影響を与えないように、事前に攻撃をしてはいけない施設や部隊などのリストを作成、リストに記載されていない資源を巡り争っているが、それは末端の末端。

 

日本で言うところの、企業がスポーツのようなものだと。この戦いの勝利が広告となる、広報活動の一環らしい。えぇ…

 

 

 

 

…んん?待てよ。リストに記載されていない施設は襲えるのか………?ということは………

 

 

………まだ時間はあるな。

 

 

 

 

 

その後、俺は法務局に開業届【業種:略奪】を提出し開業。銀行や商人に株を売り払って資金を調達、その金で傭兵を雇用。

 

 

そして、リストに記載されていない秘密研究所を襲撃制圧!この秘密研究所を足がかりに、どんどん俺の企業勢力を拡大していくぞ!

 

 

 

 

………と思ったら、全勢力が一致団結して俺の傭兵部隊を襲撃、見事に壊滅した。

 

 

おまけに臨時株主総会で俺の退任決議が可決され、会社は俺の手から離れてしまった。

 

 

クソッ!100%株を売り払うべきではなかった!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

速報です。株式市場において、山田ハゲタカファイナンス名義で株式の買い付けが行われました。

 

購入されたのはアメリカ企業『ハングリーバーガー』『キングステーキ』『ビッグピザ』など外食産業、食品業が買い占められました。

 

これらの株式は株式市場から正規に購入されたものから、個人投資家や金融機関から取引時間外に強制的に購入された物であり、相場の10倍の値で買い取られたとのことです。この取引が有効かどうか議論されています。

 

また、この買い占めの影響で『星間艦隊』来襲リスクから冷え込んでいた株式市場は一転して外食産業はストップ高になりました。これは地球外への進出による売上増加を見込んでとのことです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第14エリア前線司令部

 

 

「ああ………」

 

 

我が軍の航空基地防衛戦は突破され、滑走路に敵兵たちが雪崩れ込んでくる。次々と蛮族に航空機や施設が焼き討ちにされ、もはや基地機能の防衛は不可能だろう。

 

もちろん、天使達も抵抗はする。バリケードを築き、銃や魔法で最後まで応戦するが、そんな物あの蛮族相手に通用する物ではない。

 

その光景はこの航空基地だけではない。前線のあらゆる防衛設備が、無限にも感じる、殺到する敵の侵攻を阻止することができず一方的に敗北する。

 

既にこちらの精鋭達は皆戦死した。誰もこの勢いを止めることはできないだろう。

 

 

 

 

 

だが、どれだけ地上で負けてもよかった。我々には翼がある。この翼を活かして制空権を維持し、敵の後方を襲撃する。

 

 

空こそが我々の世界だった、制空権さえあれば、何もかもが違った。

 

だが、我々は制空権を失った、それもすべて………

 

 

「いったいなんだあれは!」

 

「竹です」

 

「そんなことは分かっている!」

 

 

 

一夜にして、敵の陣地を覆うように生えた緑色の壁!調査では竹らしい、意味が分からん!

 

あの空高くそびえる竹の高さは尋常ではない!我々天使でさえも、この竹を超えることはできないのだ!

 

さらに竹の上には、砲台や機関銃で武装され、天使は一方的に打ち落とされ、射程内のあらゆる地上の陣地が叩かれてしまった。これでは空に飛び立つことが出来ない。

 

「閣下。第322臨時混成師団より連絡です。我が師団の損耗率80%を超過。援軍の第324臨時混成師団も既に崩壊。これ以上の戦闘は不可能、撤退の許可を求めると」

 

 

「だめだ、撤退は許可できない」

 

「しかし………」

 

「撤退してどうする!もはや一度下がらせて再編成する余裕はない!既にどの部隊も壊滅状態だ!322だけを特別扱いすることは出来ん!

 

 

「閣下。中央から援軍です。それだけでは有りません、南部軍管区より追加の援軍を派兵するとのこと」

 

「………よし、これで一安心だ。気にするな、兵力だけは我々の味方だ。ただ兵士をぶつけ続ける、それで時間を稼げればそれでいい」

 

 

 

安堵した瞬間。

 

 

司令部を何の前兆もなく、地下深くから湧き上がるような力強い揺れが襲った。

 

急激な揺れに、机や椅子が踊り出し、書類や機材や装置が倒れる。壁のひび割れが広がり、天井からは埃が舞い上がる。

 

未だ体験したことのない強烈な地震が、司令部を揺るがし、混沌とした状況を作り出した。

 

 

 

「じ、地震か⁉」

 

「待て、な、なんだあれは」

 

 

司令部要員の一人が絶叫しながら指を指す。

 

総司令部があるはずの山脈がひっくり返り、地面の中から神話に語られるような獣の巨人が起き上がり始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「陽動作戦、成功ですね」

 

首無しは笑う。全てが作戦通りだ。

 

ホムンクルス軍によるこれまでの作戦は全て陽動。

 

この隙をついて、味方の砲撃部隊や空爆部隊には、爆弾以外にもネクロマンサーの蘇生能力と効率を向上させる魔道具をばら撒かせた。

 

 

先んじて潜入させた愉悦のフォーは率先して神を制御する人員を撃破した。

 

 

また、幾度となく北部戦線に兵力を拠出したことで、警備が薄くなり、山脈全域に首無しとその配下であるネクロマンサーを潜伏させることにも成功。

 

 

ダメ押しに、星読みの聖女が襲撃した要塞。あれは地下に眠る神を封印する要所だ。いやはや、直感というのは恐ろしい。我々の作戦など知らないはずなのだが。

 

 

 

「さあ、蘇りなさい」

 

 

 

冥府の神エリオ。あなたはこれから、山田様の神話体系に組み込まれます。

 

 

 

 

 

 

 

山田視点

 

 

「うおおおおおおおお」

 

そこだ、いけ!ぶん殴れ!

 

山脈各地に配置された基地が神により踏み潰され、高塔が小枝のようにへし折られていく。

 

 

山脈の下に眠っていた冥府の神が蘇生した。

 

相当な巨体であり、全長数キロ!敵の総司令部が存在すると予想されていた神殿群は冥府の神の腹の上にあったらしい。地面からひっくり返され、文字通り崩壊。敵の総司令部を失った敵軍は大混乱!

 

そしてこれまで天使軍に与えていた加護が反転し、今は逆に呪いをまき散らす。各地の砲台や結界は暴発し、天使達に照準をさだめ打ち落としていく。

 

 

 

もはや何のジャンルかわからない。神は何故か紫色の極太ビームを何十発も打ち続け、蹂躙していく。

 

 

特撮映画みたいで凄いな!

 

 

 

●第14エリア司令官オルト・ヒストリアエネルギー担当大臣が死亡しました。

 

 

 

 

 

やったぜ!

 

敵軍は完全に統制を失い、逃げ惑っている。神と戦うという選択肢はないのだろう。敗残兵狩りは冥府の神と傭兵たちに任せるとしよう。

 

 

 

 

 

さあ、次はどのエリアを攻略しようかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

●クラン【中位ユーザー連盟】所属アルカディア帝国指定ユーザー【マレニア・ユグドラシル・ワン】により【アイテム禁止権】が発動しました。今後山田竜氏に与えられたアイテムであるガチャの使用が禁止されます。権利有効時間24時間。

 

 

 

は?

 

 

●クラン【中位ユーザー連盟】により【招待制中規模ルーム】へと招待されました。

 

ルーム内は非武装であり、殺傷行為は禁止されています。ホストの許可無くルームに侵入することが出来ません。最大定員50人。現在49人が入場中。

 

●メッセージが届きました。

 

「選択しろ。我らに従属するか、滅びるか」

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

同盟締結‼これからよろしくな‼

俺は総動員令を発令し、招待制ルームへと入場した。

 

 

そこは、辺り一面に広がる緑色の草原だった。

 

空に静止する太陽から放たれる心地よい日光が周囲を照らす。雲一つ無い青空だ。

 

 

………んんーーー。結構広いな。会議室みたいな空間をイメージしてたんだが。まあそれもそうか。敵は49人、わざわざ数の利を活かしにくい閉所で戦うことはしないだろう。

 

 

 

俺は開かれた扉の後ろに回り込もうとしたが、透明の壁に阻まれてこれ以上進むことが出来ない。イベントエリアが区切られているのと同じような物か。どうせ破壊不能オブジェクトだろう。

 

 

 

俺はこのルームの存在を知らない。だがこういったルームはゲーム的に考えて、ある程度のカスタマイズが出来るはずだ。わざわざ障害物のない、太陽輝く草原を選んだ理由が何かあるはずだ。

 

 

 

 

そもそも、殺傷行為が禁止とあるが、具体的にはどう禁止されているんだ?

 

例えば、デバフ。ステータスを低下させる行為は傷つける行為になるのか?

また、殺傷行為が適応されるのは人間だけか?物に対して破壊を行っても、それは殺傷行為になるのか?

 

物を傷つける行為が禁止なら、何か食べるということもできない。食べ物を歯でかみ砕き咀嚼するという行為が物を傷つけるということになるかもしれないからだ。

 

 

そしてこの中規模ルームは招待制、つまりはホストに招待されたユーザー以外は参加することができない。俺が護衛としてホムンクルスを連れて行こうとしたができなかった。

 

だが、ルーム内でホムンクルスを生成する場合はどうなる?

 

 

 

………今考えると、いくらでも抜け道があるような気がする。

 

 

俺は未だに機能の大半が制限されている。権利などの商品を購入できるショップも未解放。これまでのイベントも参加しなかったせいで使える通貨もない。だがこいつらは違う。こいつらは何度もルームを開き、様々な検証をしているはずだ。きっと何か、抜け道が存在し、俺を嵌めるために幾つもの策を講じているだろう。

 

 

 

それに、1対49…まさに飛んで火に入る夏の虫。味方がいない孤立した状況。何かあれば間違いなく不利。敵は万全の状態で待ち構えているだろう。こっちが正面から戦うのは困難。奇襲により幹部を仕留め、リーダーを失い混乱している所を各個撃破すべきだ。

 

 

もし戦争になったら、最低でも40人は道連れにしてやる。

 

 

 

そもそも、ただの交渉の場に、49人のユーザーも必要か?

どう考えてもいらない。俺に対する圧力のつもりか?

 

 

 

 

 

 

 

そうして考え込んでいると、迎えが来た。騎士のような装いの男が3人。

 

 

 

「山田だな。こっちへ来い」

 

 

俺は大人しく従う。

 

 

…強いな。日々の鍛錬を怠っていない。能力やアイテムに頼りきることなく、真面目に鍛錬を行なっているということか。

 

俺に対して油断すること無く、全力で警戒している。なかなか骨が折れそうだ。

 

 

 

そうして連れられた先では、一つの天幕が貼られていた。

 

 

………恐ろしいな。天幕の外からでもわかるくらい、凄まじい魔力が感じ取れる。あの中に【中位ユーザー連盟】の盟主がいるのだろうか。

 

 

…しかし。天幕の外で仁王立ちして警備をしている全身白亜の甲冑で武装した男以外は、皆軽装だ。しかも俺に対して警戒するという訳では無く、俺のことを無視して談笑していたり、こちらを見てひそひそと話している。飯を食べている奴もいる。

 

 

 

…雑魚だな。それも統率の取れていない、有象無象。

 

下位ユーザー連合の奴らは上位中位と比べて、与えられた能力やアイテムが大きく劣っており、その結果一人一人の軍隊は弱い。

 

そのため能力不足を補うため、ユーザー自らが前線にでて戦いレベルを上げている。

そして下位ユーザー連合社長である女傑の元、一致団結して連携の取れた作戦を実行し、合同での訓練に励んでいる。

 

そして驚くべきはその組織力。ほとんどのユーザーは女傑のカリスマにより心酔し、女傑の指示を何の躊躇も疑問もなく従う。ユーザー間の仲も良好だ。

 

 

 

しかしどうだ?こいつらは。

 

おそらく戦闘は有能な味方のユニットに任せ、下位ユーザーと比べて練度が低いのではないだろうか。

 

 

 

…いや、油断するのは良くない。優劣はあるが、運営がユーザーに与えた能力やアイテムは強力だ。

 

もしかしたら、俺と致命的に相性が悪いアイテムや能力を持つユーザーや、面倒な能力持ちがいるかもしれない。組合せだってそうだ。中位ユーザー連盟には、尖った能力持ちが多いらしい。能力を発動させる前にやる。

 

 

 

 

 

俺が騎士の案内に従い、天幕の中に入る。

 

 

椅子に座っている、3人のユーザーがいた。

 

 

………なるほど、こいつらが幹部だ。騎士以外の有象無象とは違うな。

 

 

左から、スーツを着た男性。約50歳ほどの男性。書記官か何かなのか、ペンを持ち紙に書く準備をしている。

 

 

真ん中は、まるで姫のような色鮮やかな大きい宝石と、美しいドレスを着飾った聡明そうな若い女性。こいつが別格だ。おそらく一番強い。俺以上だ。ちょっときついな。

 

右には、身なりの良い、質の良さそうな服を着た若い男性。ずっとこちらを睨んでいる。

 

 

「よくぞ来た!山田竜よ!」

 

 

 

「私こそが!アルカディア帝国指定ユーザーにして、帝国の華麗なる姫!美しき美貌を持つ姫!帝国一の魔法剣士!マレ二ア・ユグドラシル・ワンである!」

 

 

………訂正。馬鹿っぽい。

 

 

……これは、あれかな。

 

「コスプレか?」

 

「違う。姫様は第2回イベントにおいて、ユニットでありながらその活躍が認められ、報酬としてユーザーとしての立場を得たのだ!我々のような、運営により王位を与えられた偽物とは違う、本物の姫なのだ!」

 

 

若い男が怒りを露わにする。ずいぶん慕っているようだ。

 

 

しかし、ユニットがユーザーに。そんなこともできるのか。確かに名前も地球人にはいなさそうな名前だ。それに、アルカディア帝国指定ユーザー。もしや、地球の国家ではない?

 

まさか。こいつが指定された国というのは、盟主の支配する国、そういうことか⁉

 

「あんたが盟主じゃないのか」

 

「私と陛下を間違えるな!確かに私の纏う姫オーラで誤解するのはわかるが、私などとは比べものにならないくらい偉大なお方だ!陛下への侮辱であるぞ!」

 

「………盟主は来ていないのか。」

 

「陛下はお忙しいのだ。貴様と会う時間も惜しい。会えるほど貴様は偉くもない」

 

 

………いや来いよ。

 

 

「さて、時間が惜しい。単刀直入に言うぞ、陛下に従え」

 

「すると思うか?こんな脅迫じみたことされて」

 

「不服か?もちろん、それ相応の対価は用意してある。連盟に入り次第、直ぐに貴様の必要とする物を最大限融通しよう。」

 

 

「そういう問題じゃねぇよ。こんなことされて、大人しく従うとでも思ってんのか」

 

「それは仕方のないことだ。お前、あいつをボコボコにしただろう」

 

 

 

 

 

 

 

あいつ?

 

 

俺は記憶を探った。

 

 

 

 

「ははははははは、どうだ?今私が何をしたかわかるだろう?ショップで購入できるランキング表示権だ。それも高額、下位ユーザーであろう貴様では買うことすらできない非常に高価な権利だ。私はこの他にも多くの権利を閣下より与えられている。これで魔王軍の力がわかったはずだ。わかったのならさっさと我らが魔王軍に忠誠を誓えグハァッッッッッッ!」

 

 

 

 

「さあ、陛下に従え!」

 

 

「お前みたいな偉そうな奴に従うかボケ!」

 

 

峰打ちパンチ!!!

 

 

「グハァァッ!」

 

 

 

 

 

 

 

…あっ。

 

 

 

「我々にもメンツというものがある。一方的に殴られて、こちらが頼み込んで連盟に所属してもらうというわけにはいかんのだ。圧力をかけ、従った。それが重要なのだ」

 

「お前らの事情なんか知るかよ。人に物を頼める態度じゃないって話をしてるんだ」

 

「最初はみんなそうだ。陛下に対して不満を言う。だが陛下の素晴らしさに、最後は皆従うのだ!」

 

「陛下は天才だ。これまで幾度となく我々を導き、不利な戦局を覆してきた」

 

「俺が断ったらどうする?直ぐにでも戦争をしかけるか?」

 

「そんな物騒なことはしないさ。同じユーザーじゃないか」

 

「アイテム禁止権を使い続ける。一つの権利につき、24時間という制限はあるが、連続して使い続ければ問題ない。貴様が屈服するまで、権利消滅寸前に何度でも使い続ける」

 

 

 

…馬鹿な、おそらくアイテム禁止権はその効力からして、かなりの高価な代物だ。そんな権利を使い続けるだと?

 

 

「不可能だ」

 

「高額だが不可能ではない。それだけの余裕がある」

 

「別にいいさ。俺はアイテムをもう既に十分使った。惜しいけど、絶対必要というわけじゃない。無駄遣いでもしてろ」

 

「貴様がアイテムを使えない間、他のユーザーはアイテムを使い、国を発展させ、イベントで活躍するだろう。ランキングの順位も低いままだぞ」

 

「それがどうした。ランキングなんてどうでも良い。勝手に馬鹿みたいに争え」

 

 

 

 

 

 

 

「貴様、運営を信じているのか。」

 

 

は?

 

 

「は?」

 

 

「運営はこの悪趣味なゲームの終了条件も、終了時間も明言していない。勝者には地球の支配権が与えられると言うが、それはいつ、どのタイミングだ?極端な話、この第3回イベントが終了した時点でゲーム終了だってありうる。」

 

 

 

…確かに。

 

 

そもそも、地球の支配権とは何だ?大統領的なことか?

 

地球以外の、ユーザーが治める星や国家は従えることができないのか?

 

 

「敗者はどうなる?」

 

 

 

どうなる?勝者に隷属?それとも、国が奪われたりするのか?

 

 

 

 

「もう一度言おう。我々には、時間も選択肢もないのだ。君が欲しい。共に1位を目指そうでは無いか」

 

「そこまでして俺が欲しいのか」

 

「当然だ。君のほぼ一人でエリアを攻略出来る、多様性のある兵力、それを支える物資生産能力。どれをとっても魅力的だ」

 

 

「共に偉大なる陛下の元、1位を目指そうでは無いか!」

 

「あんたのクランは、陛下以外に役職持ちはいないのか?」

 

「ああ、我がクランは陛下による絶対君主制だ。一応、陛下の側近である私には臨時代表権があるが、それだけだ。」

 

 

 

 

 

 

「俺をNO.2にしろ。話はそれからだ」

 

「……貴様、立場がわかっているのか?」

 

「困るのはそっちだろう?俺に対して権利を使い続けるのは、相当な負担になる。こんなことに使っている暇があれば、もっと違うことに使いたいはずだ。それに不満がでるぞ。利益のないことに使い続ければ、連盟からの離脱者もありうる。言っておくが、俺は一度決めたらやり遂げる男だ。」

 

「貴様!先ほどから馬鹿げたことを‼」

 

「よい、構わん」

 

「しかし………」

 

「陛下に従うというのなら何でも良い。【契約者】‼契約書の作成を急げ‼」

 

 

 

書記官だと思っていた男が、契約書を作り始める。魔力を感じるな、これがこいつの能力か?

 

 

 

「契約書にサインしろ。これが終わったら、皆で宴だ!外の奴らに酒と肉の準備をさせておけ!」

 

書記官が契約書を作成し始める、だが特に何の力も感じない、紙切れだ。

契約書だ。

 

「………これ、いるか?こんな紙切れが役に立つのか?」

 

「その点は心配ない。私の右にいるユーザーの能力【契約】で結ばれた契約は絶対だ。神でさえその縛りからは逃れられることができない。」

 

「へえ、有用な能力だな。こき使ってやるよ。」

 

「いきなりNO.2にするというのは、他のユーザーが納得しないだろう。ある程度時間をかけ、物資提供により皆が貴様を意識してから副盟主に格上げする」

 

「決まりだな。俺にメリットしかない契約だ。」

 

「今後もよろしく頼む」

 

「あぁ、感謝する。全ては陛下のために共に上位を目指そうではないか!」

 

 

俺は右手を前に出し、握手を求めた。姫様もそれに応じ、俺たちは手を握り合う。

 

 

 

 

 

 

 

 

●ルールが改変されました!

 

殺傷行為の禁止→殺傷行為無制限許可

武器持ち込み禁止→武器持ち込み無制限許可

退出自由→サバイバル制 勝者一名のみ退出可能

 

制限時間3分

 

 

 

「じゃあな、姫様」

 

ミダースの手、発動。グッバイ。

 

 




あいむしんかーとぅーとぅーとぅーとぅとぅー


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ユーザー大集合‼

これまでもユーザーは死んできた。その数100人以上。だがそれはゲームが始まってから間もない、まだ戦力が整っていない序盤の出来事。

 

 

仲の悪い国家同士のユーザーによる交流戦での死亡が10人ほど。

 

 

第1回イベントで、観光地気分で碌に戦力も率いずにイベントエリアに侵入し、異世界軍にやられたのが数十人。

 

 

第2回のイベントではユーザー間の連携もまだ未熟で異世界軍に正面から殺されたり、暗殺者を送られ十数人が死亡。

 

 

 

 

上位ユーザー同士の潰し合いで数人。身の程知らずにも上位争いに参加したユーザーが数人。

 

殆どのユーザーは、積極的に他のユーザーを殺そうなんて考えていなかった。

 

連盟や連合だってそうだ。敵のユニットを撃破し、イベントでポイントを稼ぎ国家を発展させる。

 

殆どのユーザーは同じユーザーを殺し、国家を滅ぼそうなんてそこまでのことは考えていなかった。

 

 

イカれた上位陣は知らないが、下位中位ユーザー同士の中には、同じ地球人であるという連帯感のようなものがあった。いきなり王となった極限状態で、数少ない同じ環境の者同士、孤独を紛らわせることのできる相手だったのだ。

 

それに、殺したら非難されてしまう。指定されているされていないにかかわらず、もし他のユーザーを殺してしまったらそれは地球人を殺したら犯罪だ。もし母国に帰ったらどうなるかわからない。外交問題にまで発展するだろう。

 

 

それに、異世界軍との戦いのこともある。潰し合って異世界軍に負け、地球に転移ゲートが開いてしまってはどうしようもない。

 

 

だから、目の前で起きたことは誰も予想をしていなかった。

 

 

 

 

山田竜が武闘派であることは、わかっていた!!

 

だから、まさか、そんな。

 

こんな、躊躇いも無く殺す、人格破綻者がいるなんて⁈

 

 

 

 

 

黄金となり絶命した姫様。山田は躊躇なく、黄金像を殴り砕いた。

 

 

「姫様ぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」

 

絶叫する【恐怖政治】心酔していた姫様が、いきなり粉々になったのだ。無理もない。

 

 

 

そして、山田はその隙を見逃さない。

 

 

 

【ガチャコール】

 

 

呼び出したのは魔剣バルムンク。パニックに陥る【恐怖政治】を切り裂き、追撃として蹴り飛ばす。

 

 

【恐怖政治】は天幕の柱に直撃し、ゴキッという嫌な音とともに、動かなくなった。

 

 

【契約者】は目の前の光景が理解できなかった。

何が起きている⁈

運営のルールを上書きしたのか⁈信じられない!

 

 

 

 

驚愕しながら、詠唱を始める。

【契約者】の能力は幾つかあるが、そのうちの一つに、特別な契約書を作成、契約することで、一回限りの使い捨てではあるが契約相手の能力をワンランク落した能力を使用できるというもの。

 

本来なら、それ相応の代価を払い、頼み込んで契約書にサインして貰う必要があるが、陛下の意向の元、連盟内のユーザーやユニットは殆ど代価を払わずに契約して貰い、さらには捕虜とした天使を脅迫することで無償で契約書を作成。最強クラスの能力を何の代償もなしに連発できる。

 

 

使用する契約書は、氷を操る大天使との契約書。この距離で使えば、何の備えもしていない攻撃対象は即時凍死する恐ろしい代物。

 

 

だが。

 

 

「だ、大天使よ、約定に従い…」

 

「隙が大きい」

 

それは、詠唱終了まで山田が待っていてくれたらの話。発動まで無防備な隙を晒したのは絶好の攻撃機会を与えてしまい、【恐怖政治】と同じように

 

 

(そんな…馬鹿な…私がここで…)

 

 

【契約者】は自らの死を悟った。しかし、【契約者】には希望があった。姫様は不測の事態を予測して、何重にも対策を練っていたのだ。

 

 

山田は、希望を失っていない契約者の目を見た瞬間、直感。

 

 

特に何かあったわけでもない、ただ何となくそうした方がいいと感じ、後ろを向いて横に剣を振り払った。

 

勿論、そこには何もない。そのはずだった。

 

 

「手応えがあったな」

 

 

山田の足下にさっきまで影も形がなかった男が、体を上下に切断された状態で倒れ、絶命していた。

 

 

その男は、驚愕の表情で山田を見つめていた。

 

 

彼の能力【インビジブル】は、視覚嗅覚聴覚触覚味覚、人間の5感では絶対に感知されないという、暗殺に特化した能力者。本来は山田がルームから退出時にこっそり尾行して、そのまま山田の治める国に潜伏、スパイとして情報を入手するという能力。

 

 

 

しかし、山田は直感に優れていた。彼の直感の前には、無意味だった。

 

 

なんで?

 

 

【インビジブル】は信じられないという表情で、絶命した。

 

 

【インビジブル】ルシウス・ボルテックス死亡。

【契約者】ロイド・ガリバルディ死亡。

 

 

 

 

さて、残るは外にいる有象無象か。警戒すべきは、あの騎士達だな。あいつらだけ練度が桁違いだ。

 

 

そのとき、バサリという音がした。天幕の入り口の布が開かれるようなそんな音。

 

山田が気づいた。さっき天幕の柱に蹴飛ばした男がいないということに。

観察すると、血痕が天幕の出入り口まで続いている。

 

 

 

 

「仕留め損なったか」

 

 

 

瀕死の状態で天幕の外に逃げ出した【恐怖政治】は残った全ての力を振り絞り、絶叫する。

 

 

 

「ロイドと姫様がやられた!プラン変更だっ!今直ぐにこいつを」

 

 

 

【ガチャコール】

 

ゲパルト対空戦車、対空砲のみ召喚。

 

 

そのまま構え、【恐怖政治】に弾丸の雨を放ち、絶命させる。

 

 

【恐怖政治】ハリス・ブルーフィールド死亡

 

 

そのまま山田は辺りで目の前の光景が理解できないと言わんばかりに固まったユーザー達を相手に掃射する。

 

 

「ペギィ」

「ガハッ」

 

 

 

直撃こそはしなかったが、数人のユーザーに命中し苦痛を与える。

 

だが一人のユーザー【結界師】はすぐに対応し、冷静に味方に結界を構築、弾丸の雨を防いだ。

 

 

 

「おお、やるなぁ!」

 

 

 

「助かった‼俺たち二人でやるぞ‼」

 

「気にするな!クソッ、銃器の持ち込みだと?ルール上は不可能なはずなのに‼」

 

 

 

そのまま【結界師】は山田の周辺に結界を構築。逃げられないように動きを封じた。

 

山田は結界を剣で切り開こうとする。

 

 

「堅っ⁈」

 

【結界師】の構築する結界は最高クラス。山田でさえも斬るには時間がかかる、非常に細かく練り上げられた芸術の域。

 

 

『結界師』フー・ウーの能力はさまざまな結界を張ること。もし山田が仲間になることを拒否した場合、最高レベルの結界を張り餓死寸前まで閉じ込めることが役割だった。

 

 

 

身動きの取れなくなった山田に、【人狼】が襲いかかる

 

 

 

「龍の顎!」

 

『人狼』グリム・フェルトの能力は捕食した生物を模倣再現する物。

 

グリムは自らの右腕を龍の首に変え、山田を捕食しようと襲いかかる。

 

 

山田は回避が不可能と判断。左腕で受け止める選択をした。

 

 

【人狼】の攻撃が結界に衝突する直前に結界が解除。その隙を突き、山田は犠牲が左腕だけで済むように体勢を整える。

 

 

 

 

そのまま、山田の左腕は噛みちぎられた。

 

「グッ、がガァぁぁぁぃぁぁぁぃぁぁぁ‼いてぇ!」

 

 

根元からやられた‼まずい、左腕だけじゃなく、肩まで持って行かれた‼

 

左腕はいくらでもシルバースライムとして即時再生できるが、肩はそうはいかない。山田は左腕の再生の前に、肩をオートで発動する回復魔法で治癒しなければならないが、その回復速度は非常に遅い。

 

 

 

 

だが【人狼】はミスを犯した。

 

別にわざわざ、食べる必要は無かったのだ、竜の吐くブレスで吹き飛ばせば、それで終わりだった。

 

ユーザーを喰らい、その能力を得る。欲が出てしまったのだ。

 

 

●寄生虫が発動します

 

 

突如として【人狼】の皮膚をつき破り、蛆虫が【人狼】の体を貪りだす。

 

 

 

 

「あああああああああああああああ‼」

 

 

堪らず、【人狼】は左腕を吐き出す。

しかしそれで寄生状態は解除されない。

 

 

「リチャード⁈」

 

「俺のことは良い!ぐるぞぉぉぉおぉぉぉ」

 

 

「余所見すんなよ」

 

「ッ、四季結界!」

 

結界師は山田の攻撃を防ごうと、自らの周りに結界を張る。

それは、あまりにも悪手だった。

【結界師】は、右腕の黄金を見ていないのである。

 

「ざーんねん‼」

 

 

山田は、結界を右腕で触れた。ミダースの手の発動である。

 

 

「しまっ」

 

結界は、使用者を守る物でなく、閉じ込める黄金の檻となった。

 

身動きのとれない【結界師】を黄金ごと魔剣で一刀両断。

 

黄金は真っ二つに切られ、切り口から赤い血が流れ出す。

 

 

 

【結界師】フー・ウー死亡

 

【人狼】リチャード・ホーエンハイム死亡

 

 

 

 

 

「軽くなったな。何かしてたな?」

 

結界師は、事前にルーム内に味方に対するバフとデバフを行う結界を張り、能力上昇効果を付与していた。だが死亡してしまい、その結界も解除される。

 

 

 

 

さて、次は…

 

「バキュン!」

 

 

飛来する、世界から隠された魔弾。

 

【魔弾】マイケル・クリスハイトは、多種多様な弾丸を生成する。

 

1発で仕留めるため、あらゆる生命体から察知されない、世界そのものから隠す、正に神出鬼没の弾丸。

 

 

だが、直感に優れた山田には効果がない。

 

 

 

「今のを避けるか!信じられねぇ!」

 

 

魔弾を撃ち続ける。死の概念が込められた魔弾、全てのエネルギーを吸収する植物性の魔弾、魂を殺す魔弾。

 

【魔弾】が貯めていた、高級弾丸を出し惜しみもせず、撃ち続ける。

 

 

だが、それらは魔剣により弾かれる。

 

 

 

「どうみる?」

 

「まぁまぁだな。アイテムがホムンクルス製造機っていうのは間違いだろう。だが、能力がホムンクルス育成説は外れたな。あそこまで戦闘型の能力だからな。どういう能力かは不明だがな」

 

「それがわかれば十分だ。不要なリスクを負う必要はない。さて、帰るぞ。うん?どういうことだ?なぜ退場できない?」

 

「マジかマジかマジか!」

 

「お前も弾丸を無駄遣いするな。さっさと帰るぞ」

 

「そんなこと言ってる場合か!来るぞ!」

 

「は?」

 

「ギャハハハハ‼命頂きィィィィィ」

 

 

山田は魔剣を投擲し、それは瞬く間に3人の首を刈り取った。

 

 

『魔弾』マイケル・クリスハイト死亡

『記録員』ピーク・ダンドア死亡

『記者』エドガー・ラッセル死亡

 

 

 

 

「ガチャコール」

 

山田は投擲した魔剣を呼び出す。

 

 

 

そして周囲には、4人の騎士が山田を取り囲む。

 

 

 

四騎士。イギリス人ユーザーと彼に忠誠を誓う3人のユーザーで構成された、連盟の精鋭たち。特にリーダーの【太陽剣】は特定条件下で不死身という恐るべき能力を保持しており、戦闘能力はトップクラス。

 

 

「先走るな!四方向から同時に行く!右腕に気をつけろ!触れたらそれで終いだ!得体がしれん、最大限警戒しろ!」

 

「事前情報とは大違いだ、クソッタレ…!能力はホムンクルス育成じゃなかったのか⁈」

 

「何としてでも、ここで仕留めるべきだ!ホムンクルスと合流されたら手がつけられなくなるぞ!」

 

「地球人同士なのに、どうしてこんな事に…」

 

彼らの周囲に突如として、高純度の光属性エネルギーが巻き起こり、手元に収束し、一本の剣状となる。あらゆる邪悪を祓う、聖なる剣。

物理的にも概念的にも、文字通り純粋な光は、全てを蒸発させる。

 

 

『光の剣』

 

イギリス指定ユーザーであるダン・ウィンストンの能力『太陽剣』を磨き、熟練度を一定以上の数値にまで達し、かつポイントを使用して獲得した派生スキル(もちろん山田にこの機能は解禁されていないし派生スキルの存在自体知らない)

 

三人とここにはいない数人のユーザーに対して配布済み。

 

 

無から生み出せるため、武器持ち込み禁止のこのルーム内でも携帯し武装可能。

 

 

4人の連携攻撃があれば、山田相手に相打ちにまで持っていけただろう。

 

 

 

だが、そうはならない。

 

 

彼らは、ただ、運が悪かったのだ。

 

最初の犠牲者となったのは、【従者】ウィリアム・ヨーク。彼は一人のユーザーを指定することで、そのユーザーの能力を飛躍的に上昇させ、その好感度、忠誠相手の素のステータスに応じて従者自らの能力も上昇させる。

 

 

【従者】ウィリアム・ヨークは山田に対して斬りかかる。

 

 

【従者】ウィリアム・ヨークの足下には、とある物が落ちていた。

 

 

左腕が、落ちていた。

 

 

【自爆】発動

 

 

「ドカン!」

 

地雷を踏んだかのように後方に吹き飛ばされていく。

 

『従者』ウィリアム・ヨーク死亡。

 

 

 

「ッ、ウィリアム!」

 

密接な感覚が仇となった。他の2人は犠牲を覚悟の上、従者の死を無駄にしないために、速度を緩めることは無かった。

 

だが、【正義】のハリー・クロスロードは、見捨てることができなかった、生きているという希望を捨てることが出来ず、足を止めてしまった。

 

 

 

「馬鹿もん、止まるな!」

 

「梅花剣法」

 

「ッ、く、くそががががががががっががあ」

 

 

後方に注意を払った瞬間を山田は見逃さない。迎撃体制も取れず、体勢を崩しながら受け止めようとする。

 

しかし、それでもなお。【正義】の剣術は山田を上回っていた。【正義】の能力は対象のカルマステータスと自らのカルマステータスを比較し、その差が大きければ大きいほど能力が上昇する。山田の天敵であった。

 

 

 

しかしそれも、正面から戦えばのこと。体勢が崩れた【正義】を斬り捨てるのは造作も無いことだった。

 

 

 

『正義』ハリー・クロスロード死亡。

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁ、よくもぉ!」

 

「待て‼一度引いて立て直すんだ‼」

 

 

 

 

半狂乱となった騎士は、【太陽剣】の声も聞こえずに突撃する。

 

たった数秒で二人も盟友を失った。理性で判断することができなかった。

 

 

【機械人間】クリス・マッケンジーは、自らの体を機械へと改造している。

 

目はカメラに、内臓はより高機能の機械に。

 

 

彼の高性能な演算装置は、すでに山田の剣術を学習していた。単純なステータスではユーザーの中でも上位に位置し、学習能力と適応能力はユーザーでもトップクラス。

 

 

惜しむべくは、彼も運が無かった。山田が天敵であったのだ。

 

 

 

●錆神【滅】権能発動。対象の金属を限界まで酸化。

 

 

 

機械人間、クリスマッケンジーは、茶色の粉と成って崩れた。

光の剣だけが、地面に突き刺さる。

 

 

【機械人間】クリス・マッケンジー死亡

 

 

 

 

「ぬおおおおおおぁぁぉぉぉぉぉ‼」

 

 

 

 

山田は太陽剣に全力で攻撃を加え続ける。

 

 

硬いな、いやそれだけじゃない。傷を与えても即時再生する程の再生能力!体から満ちあふれる高純度の魔力!

 

だがいちいち攻撃が大雑把!回避しやすいが、純粋な力では最高レベル!1発でもくらえば全身がズタボロになるぞ!

 

 

…そして。彼もまた、山田が天敵だったのだ。

 

 

 

●太陽特攻発動中。

 

落ち着いて観察すれば、確かに太陽の光が目の前の騎士に集まっているように思える。

そしてこいつはさっきから、俺の影に入ることを避けている‼

 

 

なるほど、これがこの太陽に照らされたルームを選択した理由か!

 

おそらく、こいつは太陽が出ている間は無敵‼倒しきるのは困難‼

 

 

 

 

 

なら、天候を変えれば良い。

 

 

【ガチャコール】

 

 

召喚したのは、黒いリモコン。ボタンを押すだけで、猛吹雪へと天気が変わる。

 

 

たった一瞬で、周囲が曇り、吹雪が吹き始めた。

 

先ほどまで圧倒的な存在感を誇っていた【太陽剣】は、今では見る影も無く弱体化してた。

 

 

「斬」

 

 

「ありえん…この私が…」

 

 

【太陽剣】ダン・ウィンストン死亡。

 

 

 

 

「さむっ」

 

 

 

 

 

 

 

あたり一面に転がる死体。つい先程まで生きていたため、まだ温かい。

 

返り血に染まった、剣を持つ男。

 

 

 

 

「ひっ」

 

 

 

「時間がない。さっさと終わらすぞ」

 

 

 

 

「あ、ぁ…四騎士が死んだ…」

 

「何で退出できないんだ!運営!不具合だはやく修正してくれ!」

 

「やるぞ!敵はたった一人!数ではこっちが有利だ!全員でかかれば勝ち目はある!」

 

「死にたくない死にたくない死にたくない」

 

「俺がぶっ殺して、出世してやる!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●ユーザーを49名殺害しました。関連業績を獲得しました。

 

 

 

敵は全て潰す。

 

中位ユーザー同盟

 

あと218人

 

 




運営「ああああああああ、人気ユーザー達が大して活躍もしないまま、あっけなくしんでいくぅぅぅぅぅぅぅぅ‼」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

数は力。質も高ければなおよし。

「あ、あああ。あああ」

 

【陛下】は声にならないうめき声をあげる。なんで、どうしてこんなことに。

 

 

●【尖兵】サッチャー・ナイトハルトが死亡しました。

●【極光】イドリア・ホーネットが死亡しました。

●【花火師】アリス・アルベリヒが死亡しました。

●【勝ち馬】ヘルソン・アーカンソーが死亡しました。

●【精神科医】マックス・マスタングが死亡しました。

●【悟者】ハジメ・タチカワが死亡しました。

 

 

「止めろ!止めてくれ!」

 

 

死んでいく。自らが送り出した仲間たちが死んでいく。

 

 

●【騎兵】イ・ユンギが死亡しました。

●【妖怪】ファン・ティ・グゥエットが死亡しました。

●【演奏家】ドナルド・フランクリンが死亡しました。

 

あ、ああああ。

 

みんな、死んでしまった!49人!頭に彼らの声、顔、性格がフラッシュバックする。

 

何もできない!僕は何もできない!彼らの絶望と助けを求める声を想像してしまう。

 

確かに、彼らにとっては打算だけの関係だったかもしれない!

 

だが、僕にとっては数少ない、心を許せる人たちだったんだ!一緒に酒を飲んで、肉を食べて、とても楽しかった!ああ、どうして!

 

 

 

 

それに…

 

 

 

「よくも、マレニアを」

 

 

僕の大好きなユニット。彼女にどれだけの時間とお金を使って、育成したと思っているんだ!

彼女との思い出。隣り合わせで幾度となく戦場を駆けた。彼女と共にモンスターを倒し、珍しいドロップアイテムを獲得した喜び!かけがえのない思い出!

 

 

それを!よくも!

 

 

「許さない…!」

 

 

僕は自室から出、謁見の間へと進む。

 

そこには、僕に忠誠を誓うユニットたちが跪き、僕の言葉を待っていた。

 

 

「報復だ」

 

 

「!」

 

 

ユニットたちが歓喜の声を漏らす。ついに、ついにこの時が来たのだと。

 

 

「上位ユーザーとの決戦のために温存したが、もう出し惜しみはしない。全力で潰せ。躊躇うな。降伏も無視しろ。全軍出撃だ、既に派遣しているユニットたちと共に、殲滅せよ」

 

 

 

「さあ、進撃せよ!山田竜を討ち取り、我ら連盟の力を示」

 

 

「陛下!お取込み中、失礼します」

 

「貴様!一般兵ごときが謁見の間に入るばかりか、陛下の言葉を遮るとは、何事だ!」

 

「よい、何があった」

 

「は、はい!」

 

 

 

 

 

 

 

「各地の味方が襲われています!救援要請が止まりません!」

 

 

「なんだと⁉」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところで、ホムンクルスだが今どのくらいの数がいるのだろうか。

 

ホムンクルス工場は日々拡大を続け、休むことなく増産を続けている。

 

それだけではなく、生産されるホムンクルスについても改良が続けられており、最初期のホムンクルスを遥かに上回る性能のホムンクルスが生産されるだけではなく、古い世代のホムンクルスも、統括個体を通じてアップデートが繰り返し行われ強化されている。

 

 

また、貴重なアイテムと合成することで、珍しい能力を保持したホムンクルスや強力かつ多様性にあふれた様々なホムンクルスが生産された。

 

 

 

その数、既に億を超えていた。

 

山田ドラゴンガチャ王国の真の脅威は、数である。国民皆兵士。それも死を恐れない、戦いを望み、戦いのために生まれたホムンクルス。

 

 

彼らは、戦いに飢えていた。望んでいた。暇であった。天使との戦争も飽きかけていた。

 

 

総動員令により、全ての血に飢えたホムンクルスが解き放たれる。

 

 

そこにあるのは、地獄であった。

 

 

 

 

 

【艦隊司令】はアイテムとして、宇宙を飛翔する、何百万人もの軍人を収容可能な、超大規模要塞が与えられた。この要塞内には造船工場も存在し、これらのアイテムを活用し宇宙艦隊を結成。

 

現状で唯一、星間航行が可能なユーザーである。もし他のユーザーが住む星を発見すれば、敵の攻撃が届かない宇宙空間から惑星に攻撃、勝利するという戦い方ができた。

 

 

 

今回要塞と星間艦隊はイベントのためにエリア内限界高度から地表に向け攻撃を行っていた。

要塞は艦隊に囲まれ、天使たちは激しい対宙射撃により、近づくこともできない。

 

 

はずであった。

 

 

《こちらラッキー1、目標を破壊した。これより帰投する》

 

 

 

たった1機のエースパイロットにより、艦隊は壊滅した。既にエースパイロットにより防宙艦、対空砲台、空母打撃群、主力戦艦、旗艦、精鋭戦闘機が揃って撃破された。艦隊の防空網はずたぼろ、この機を狙いホムンクルスが殺到し、星間艦隊は崩壊。

 

要塞に上陸するホムンクルスを阻止できず、ついには、何百万もの軍人が住む要塞にて、地獄ともいえる近接戦闘が行われていた。

 

 

 

 

 

 

【守護者】は、ユーザーの中で最も防御力に優れていた。ありとあらゆる攻撃に耐えることができる。そう考えていた。自らの鎧は、神の攻撃すら防いだことがあると自慢するほどに、防御力に信頼を置いていた。

 

 

「硬いだけだな」

 

 

一閃皇帝には、紙切れに等しい。彼の持つ【完全防御無視貫通】の前に切り伏せられた。一閃皇帝から剣を学んだホムンクルスたちに、防御力に優れていた騎士団は押しつぶされた。

 

 

 

 

 

 

【紳士】は【太陽剣】より『光の剣』を授与されていた。【紳士】はこの剣で、山田を討ち取ろうと一人で山田軍に挑んだ。数多くのホムンクルスを切り伏せた。切り捨てた。切り刻んだ。

 

 

 

「惜しいね。君は強い。でも、君より強い奴なんて、うちにはいくらでもいるの。」

 

黒髪ロングヘア―剣豪系女子高生。疲れ切った【紳士】の前に現れた少女。それは慈悲。剣士として、自らよりも劣る個の集団に圧殺されるのではなく、自らよりも優れた個に敗北したい。その願いのため、彼女はわざわざ【紳士】と一対一で戦い、そして【紳士】は敗れた。

 

 

「…無念。だが、悔いはない」

 

 

 

 

 

 

【劇団】とすべての配下は美術館の展示物となった。

 

【剣匠】は創り出した魔剣や聖剣を臣下である騎士団に貸し出していた。だが、すべての剣はホムンクルスに奪われ、【剣匠】はミナモトインダストリーにて確保され、現在労働中。

 

 

【怪獣】はその名の通り、怪獣を生み出す。恐るべきはその巨体。百メートル以上の巨体が武器だった。なんでも踏みつぶし、吹き飛ばす巨体。厚い脂肪で身を守るその耐久力。

 

怪獣との戦闘跡地は、暴食の魔王と魔人の指揮の元、ホムンクルスたちと共にBBQ会場へと変貌した。

 

 

【黄金】とその軍勢は、神父と最高司祭、聖女により溶かされて金貨製造の材料となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【陛下】直属部隊会議室

 

 

「ふふふ、ついに私たちの出番がくるなんて。少し早いとおもわない?」

 

 

【虚無】

 

虚無の王国を統べる女王。虚数エネルギーの研究者。

魔力を消費することなく自らを中心に虚無の軍勢を召喚可能。

 

 

 

「それだけ油断ができないということだ」

 

 

【継承者】

どの国家からも指定を受けていないにも関わらずその驚異の成長スピードで中位ユーザーにまで成長した期待の超新星。

一定条件を満たしたユーザーやユニットの能力を使用可能。

 

 

 

「なんでもいいよ。敵なんでしょ、そいつ。じゃあ、僕の安全のために殺さなきゃ」

 

【蝗害】

このゲームのことを誰よりも恐れており、生き残るために他者を殲滅する。

無尽蔵に増殖し進化する昆虫類を従えた彼らの軌跡は、飢餓の一言で終わる。

 

 

 

「おお、太陽剣…貴様の仇はとってやるからな」

 

【龍神】 

ユーザーの中でも僅かに存在する神性保持者。自らの血を分け与えた龍を覚醒状態に移行。配下の龍が強ければ強いほど神性が上昇する。

下位ユーザー『龍騎士』上位互換。

 

 

 

「まあ、気楽にいこうぜ。ほら、肩の気を抜いて、深呼吸深呼吸」

 

 

【ラッキーマン】ケニー・ロックハート    ランキング777位

アメリカ合衆国重要指名手配犯。現代の盗賊。

異常なまでの幸運により逃走を続け、ついにここまでという時にゲーム参加時の転移により逃走成功。なおこの幸運は与えられた能力やアイテムとは関係なく、ゲーム開始前より保有している生まれつきの物である。

 

 

「「「すべては陛下のために!」」」

 

 

 

【族長】オド

魔国東部領域総督兼第3軍司令官

 

【破滅の聖女】ベルダンディ

魔国宗教統制局 血盟の執行官

自身が率いる軍を生贄に捧げることで大魔術の行使や強化を行う。

 

 

【狂人】AAA

アルカディア帝国宮廷魔導科学院院長

 

 

「さあ、全軍出撃!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上記8名。

7号により全滅

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ドラゴンメイド三連星

「頼む、助けてくれ」

 

【陛下】はとある女性に連絡を取る。この女性との秘密の関係は、【陛下】とこの女性、そして女性の仲間二人しかしらない、極秘の関係だった。

 

 

「…はぁ、何というか。事態は既に把握しています。ですが、まぁ。ここまで役立たずとは思いませんでした」

 

「誰のせいでこうなったと思ってる⁈お前が計画にないこと命令したからじゃないか!」

 

 

そう、計画。実は【陛下】とランキング1位【迷宮】、というよりその配下のユニットは同盟を結んでいた。

 

【陛下】は中位ユーザーや見込みのある下位ユーザーたちを集め上位打倒を掲げて中位ユーザー連盟を結成。

 

中位ユーザーたちを上位ユーザーにぶつけ、一人でも多くの上位ユーザーを撃破、そして将来性のある中位下位ユーザーを道連れにさせる。

 

その代価として、【陛下】は【迷宮】より豊富な物資、技術、兵力の提供を受ける。

 

 

そういう計画だった。だが、強制的に加入させるなんてことはしないはずだった。

 

もうすでに200人以上のユーザーを仲間に引き入れることに成功したのだ。別に、山田竜に圧力を加えてまで仲間に引き込む必要はなかった。

 

そのはずなのに、この女は!いきなり命令してきたのだ!山田竜を従えろ。しなければ、連盟を殲滅すると。

 

 

何が計画だ!

 

 

「計画通りに行くことなど稀。何事も予定外のことが起きると言う物です」

 

「そういうことを言っているんじゃない!僕たちの目的は、上位ユーザーと中位ユーザーを衝突させることだったはずじゃないか!戦力は十分、そもそも山田を連盟に取り込む予定はなかった!」

 

「山田竜は強力な力を持っていることが明らかになりました。彼は将来、間違いなく、上位ユーザーとなるでしょう。敵対する前に手を打つべきだと考えたのです」

 

「それなら、【傭兵会社】と同じように、取引をすればよかった!そうすれば、敵対することはなかったはずだ!」

 

「答えろ!なぜ、こんな命令をした!」

 

 

 

 

「…私の創造主【迷宮】様は、最高のユーザーです。ランキングも1位、だから当然、最も注目され、人々から称賛の声を浴びるはずだった。」

 

「『人気投票結果閲覧権』という非売品の権利があります。これはこれまで公開されたランキングとは別物の、ただ人気投票によって順位を決めただけの、ゲームへの影響も報酬も何もない非公開の単純なランキングです。面白いのは、地球人だけではなく、運営も投票することができるということだ。1位が誰なのかだけを、知ることができる」

 

「当然、中間発表でも1位を維持している我が主だと思っていた!だが、違う!運営も異次元の視聴者も、地球の馬鹿たちもみんな、主ではなく彼を注目する!それが許せない!我が主よりも注目されるなど!許されることではない!」

 

「は…?そんなどうでもいい、くだらない理由で…⁈」

 

「しかし、すべては無駄でした。ユーザーを50人以上殺傷したことにより、彼の注目は強まってしまった。死んだユーザーたちは本当に、役立たずです」

 

「この裏切り者め…!何が計画だ…中位と上位を衝突させるんじゃなかったのか」

 

「それはあなたも同じでしょう?中位ユーザーを扇動し、上位ユーザーに無謀にも挑ませる。そして将来性のある中位ユーザーをつぶす。それが計画だったはず。でもあなたは中位ユーザーに情が湧いた。彼らを使い捨ての駒ではなく、仲間として共に戦おうとした。計画通りに進めないのは、あなたも同じじゃないですか」

 

「……」

 

「まあ、いいでしょう。あなたたちが役立たずな以上、我々が直接動かなければなりません」

 

「では、始めましょうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから俺は、数だけは多い中位ユーザー連盟相手に、戦い続けていた。既にガチャ禁止期間は終了し、そして1日ぶりに回したガチャも大したアイテムを入手することができないまま、魔王武装を着用し自ら戦っていた。

 

 

だが、敵の時空間魔法により通常の世界から異空間に引き込まれ、隔離されてしまった。

 

 

「またか」

 

 

またか。芸のない奴らだ。俺を閉じ込めて隔離。孤立した俺を襲撃する。それしかないのか?

 

 

 

しかし、前回とは違うことが1つ。目の前にいるメイド3人が、俺よりも明らかに強いということである。正直言って、正面から戦って勝てる気がしない。

 

 

 

 

●空間魔法により、異空間に隔離されました!

●今すぐに逃げろ!このままでは勝ち目はない!

●だめです!転移が妨害されています!一人でも倒せれば、どうにかなりそうですが…

●まずいぞ…

 

 

 

「お前らは誰だ?【陛下】…じゃあないな。雰囲気が違う」

 

 

【陛下】のユニットは、人間とは違う異種族で構成された、まさに悪の魔王軍といった風貌だった。

 

だがこいつらは違う。貴族に仕えるメイドというか。姿勢の正しさなどの所作から品の良さを感じる。【陛下】のユニットとは別系統のユニットだ。あとなんだその角は。でっかいな、ドラゴンか?

 

 

「話す必要はありません。あなたのような小物が知っても無意味なことです」

 

「偉そうだな、お前大嫌いだ」

 

「ええ、私もです」

 

 

●鑑定不可能。対象とのステータス差が大きすぎます!

 

 

「そうか。なあ、俺は疲れているんだ、今は戦いたくはない。何とか、平和的にいこう」

 

 

「いえ、無理です。個人的に苦しんでほしいので。ですがまあ、土下座して泣いて詫びるのであれば」

 

 

俺は剣でドラゴンメイドに斬りかかる。

 

 

 

その瞬間、俺は地に伏せていた。受け身をとることができず、顎が床に激突する。

 

 

は?

 

 

立ち上がろうとするが、うまく立てない。後ろを振り向くと、両足の膝から下が千切れていた。

 

いや、足だけではない。腕も、肩から先がない。

 

 

 

「本当に下品ですね。人が話している途中で攻撃するだなんて。で、どうですか?自らがどれだけ矮小な存在か、わかりましたか?」

 

 

なにか、何かをされた!

わからん!わからん!攻撃されたのか?

 

 

感覚を思い出す、斬られた、潰された、殴られた?違う!

 

 

…千切られた?

 

 

ドラゴンメイドが地に伏せる俺の前にしゃがみ込み、一枚の紙を提示する。他の2人は遠目からニヤニヤを俺を見ている。クソが。

 

 

「これにサインしなさい。今は亡き【契約者】が残した契約書です。現存する未使用の契約書はこれが最後でしょう。内容は文字通り、絶対服従の契約書。さあ、サインをするといいなさい。言うのであれば、腕を治してさしあげます。もちろん、左腕ですけどね。シルバースライムなら私たちでも対応できます」

 

ペッ

 

俺は唾を契約書に吐いた。

 

【自爆】

 

 

ポン!

 

 

ポップコーンが弾けるような音と共に小さな爆発が起き、契約書には穴が開いて、使い物にならなくなってしまった

 

 

 

「誰がするか」

 

「そうですか。残念です」

 

 

●複数のLR相当のアイテム『弥勒菩薩の拝謁状』『閻魔大王の裏帳簿』『月の錆びた鐘』『白薔薇』『逆行・潜伏病魔』『ハサミ』『世界自己中心説』『生存不許可令』『加速する魂』『壊れかけたグリニッジ時計』『魔王の予言書』その他複数のSSR、SR相当のアイテムの発動を確認。

 

 

 

LR⁉は、マジか。

 

 

 

 

 

●あなたは死亡した



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

コンテニューしますか?

深い深い眠り。眠りすぎて頭が痛い。

 

 

目が覚める。一人の女が、俺の顔を覗き込んでいた。

 

 

「あー、どうも山田さん、こんにちわ〜」

 

「死神か。久しぶりだな」

 

「えぇ、お久しぶりです。もうほんと、冥界は大忙しですよぉ。みんな狩りばかりして魂が冥界に送られ続けるんです。体がいくつあっても足りませんよぉ」

 

「俺の死因は何だ」

 

「ちょっと待ってくださいねぇ…えーーーと、寿命ですね。享年28歳。多分なんですけど、無理やり寿命を削られて、さらに時間を何百倍にも加速させられて寿命に達し死亡。こういう仕組みだと思います。いやぁ、えげつないですね。ステータスとか武術とか、何の役にも立たないハメ技ですよ」

 

 

時間を操るのか。じゃあ、俺の四肢が千切れたのは、どういう仕組みだ…?

 

…そうか、時間を操ってできることは加速だけではない。その逆、時間を巻き戻すことだってできるはずだ。

予想だが、四肢の時間を巻き戻し、それ以外の、俺の体は加速させる。そうすることで、体と四肢がまるで千切れるかのように離れ離れとなる、こういうからくりか?

 

 

 

 

クソ、どう対策する?俺の拙い時空間魔法で相殺できるか?いや、敵は時空間魔法のスペシャリスト。俺の時空間魔法なんて意に介さないだろう。おまけに何十ものレアアイテムで自らのステータスを極限まで上昇させ、俺の寿命を削るなんて言う理不尽極まるハメ技を実現させているはずだ。

 

 

…だが、やることは変わらない。

 

 

「俺を生き返らせろ」

 

「はい、いいですよ。私の力だけだと、流石に一回が限界です」

 

「…マジか。本当にできるのか」

 

「ええ、まあ。腐っても死神、神ですので。しかし大丈夫ですか?このまま蘇っても、精々奇襲で一人潰せる程度。またすぐに寿命で死んでしまいますよ」

 

「それでもいい。一匹でも多く道連れにしてやる。俺の死後、ユニットがどうなるかわからん。なるべく楽をさせないとな」

 

「まあまあ、そう悲観的にならないでください。確かに私だけだと、一回が限界です。でも山田さんには、もっと仲間がいるじゃないですか」

 

「みなさーん!出番ですよ!」

 

 

 

 

●魂を運ぶ死神系ユニットを所持している。

 

●大規模な魂の回収により冥界が一定レベルまで成長している。

 

●生贄の棺より大量のエネルギーを獲得。

 

●神として信仰されている。分類:全能、幸運、運命。死の運命を打破する神性を確認。異常な幸運により、少しだけ世界があなたにとって都合がよくなります。

 

●権能:吉祥天を確認。蘇生の条件緩和。

 

●自らの神話体系に、冥界関連の神を取り込む。冥府の神エリオを確認。

 

●神話体系を検索…ヘルメス神を確認。冥界と現世の案内役の助けを得ることができます。

 

 

 

●条件達成。蘇生可能。蘇生可能回数を算出…蘇生可能回数77回。

 

 

は、運が良いな。欲をいえば7がもう一つ欲しかった。そうすれば777で大当たりだったんだが。

 

 

 

「おい、ナビゲーター、聞こえるか。今ここでガチャを回せるか?確かSSR確定コインがまだ余っていたはずだ。とりあえず、3枚使う」

 

 

●できますよー。

 

「ガチャを回せ」

 

 

SSR『覇天槍』

SSR『魔眼・過去視』

SSR『時間属性耐性』

 

●行ってこい、山田竜。全てを踏み潰せ

●頑張ってください!ファイトー!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ。何なんだよ、お前たち⁉やっと終わった、しつこいんだよぉ⁉」

 

 

 

山田竜を殺す。そこまではよかった。でも、そのあとが大変だった。

 

空間的に隔離されたはずのこの場所に突然、機械の兵隊が現れたのだ!

 

《対象確認。生命保険契約履行により、報復活動を開始する》

 

 

私の時空間魔法によって、山田竜と同じように時間加速で老朽化させてオンボロスクラップに変えてやろうとしたのだが、なんとこいつらは時空間魔法に耐性があった!

 

 

《時空間魔法の発動を確認。デバイス起動、時間加速を相殺します》

 

おかげで、私たちは機械の軍勢との肉弾戦をせざるを得なかった!しかもこいつら、強い!機械の軍勢は固く面倒で、おまけに連携も素晴らしく携帯する重火器の威力も高い。疲れた!

 

 

 

一体なんだったのでしょう。持ち帰って調べなければ。

 

 

「念には念のため、山田竜の死体の処理をしましたか?」

 

「もちろんよお姉さま!死体は燃やして骨も残ってないし、魂もぐちゃぐちゃにして消えていった。今ごろ地獄で苦しんでるんじゃない?」

 

 

「十分です。さぁ、帰りますよ。体が汗でべとべとです。あの寿命で殺す技、本当に疲れます。早くベッドで寝ましょう」

 

「はーい、おねぇ様!ご主人様と寝るの楽しみーーーー!」

 

 

ふふふ、愛らしいですね。さあ、時空間魔法を解除して、元の世界にもどりましょう。

 

 

 

 

 

ぐちゃ。

 

 

 

風を感じた。音を聞いた。何かが飛んでくるような音と、肉が潰れるような聞くに堪えない音。

 

 

音の発生源は、妹がいたはずの場所。直感が見たくないと叫んでいる。だが私は見てしまった。

 

 

 

肉片だらけになって、ぐちゃぐちゃになった妹が。

 

 

 

 

 

 

 

「ストライク!!!バッターアウトォ!!!」

 

 

【ガチャコール】ミニ鉄球手で握れる程度。

 

 

スキル、剛速球発動。鉄の雨によりドラゴンメイドはミンチとなった。

 

あとツーアウトでゲームセットだ!

 

 

 

「なぜ、なぜ生きている⁈ついさっきまで灰だけだったはず⁉」

 

「あ?あー、説明が面倒臭い。自分で考えろ」

 

「黙れ!よくも姉様を!お前だけは許さない!私が拷問して、苦しませて殺してやる!死ねぇっ!」

 

 

無口なもう一人の妹が怒りを露わにし殺気を向ける。それに対して、山田は…

 

 

 

 

「自爆!」

 

 

山田竜の体が爆発し、腕や臓器、血があたりに散乱した。首から上は無事らしく、即死はしていないがそれでも致命傷。死は時間の問題だろう。

 

 

「は、はぁ?」

 

 

…何が起きている!

 

 

 

 

 

「契約だ、俺の肉片全てを捧げる。だからこいつらの時空間魔法をどうにかしろ」

 

 

突如として天秤が現れる。天秤の片方には、山田竜の爆散した血や臓器が乗せられている。かつて一回使った時とは比較にならないくらい、大きく天秤が傾き、その力が増していく。

 

 

●生命儀式履行。心臓、脚、骨。重要度【高】の部位を確認。【天秤と契約の神】は喜んでいる。最高レベルの呪詛がドラゴンメイドたちを襲います。

 

 

 

 

「ガチャコール」

 

 

古今東西爆弾貯蔵庫より、全爆弾を召喚。

 

 

空間に爆弾が顕現し、雨となって降り注ぐ。

 

 

「ま、待って!」

 

 

「我慢比べだ、これで終わってくれ頼むから」

 

 

 

 

 

 

 

●道連れ生命保険 〜愛称 君、弱すぎ。そんな雑魚なお前にはこの陰湿な保険がお似合いだ〜が発動します

●道連れ生命保険 〜愛称 君、弱すぎ。そんな雑魚なお前にはこの陰湿な保険がお似合いだ〜が発動します

●道連れ生命保険 〜愛称 君、弱すぎ。そんな雑魚なお前にはこの陰湿な保険がお似合いだ〜が発動します

●道連れ生命保険 〜愛称 君、弱すぎ。そんな雑魚なお前にはこの陰湿な保険がお似合いだ〜が発動します・・・・・・

 




コンボ説明


山田が自爆または爆発により四散する。

肉片が飛び散る

肉片を【天秤と契約の神】に捧げる。

爆弾による爆発

死亡

生命保険発動

蘇生

以下ループ




コンテニューしますか?

イエスだ。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

我らが征くは星の大海

 

 

あの文字通り命を捨てた戦いから1か月がたった。

 

 

 

 

 

 

連盟との戦いも終わった。連盟は最終的に、多くのユーザーを失った。全盛期は200人規模までに成長し最も巨大な戦力として活動していたが、俺により100人以上が間引かれた。

 

連盟所属の全ユーザーが俺による襲撃で打撃を受けた。なんと盟主である【陛下】は1位【迷宮】と同盟関係だったらしく、あのドラゴンメイドが俺を撃破後、俺の主要なユニットを個別に寿命で殺すという恐るべき計画を練っていたのだが、ドラゴンメイドの敗北で最後の希望を絶たれた【陛下】率いる中位ユーザー連盟は完全降伏した。

 

連盟が降伏する前に逃げるようにして脱退したユーザーもいるのはいたが、それで逃がす俺ではない追撃して降伏させた。

 

 

問題となったのは、撃破したユーザーの残した国と軍隊だ。こいつらはユーザー撃破後も健在で、どうにかして処分しなくてはいけないと考えたのだ。

 

 

つまりは蘇生と転生である。転生の祭壇はユーザーを生き返らせることができないという制限があることが判明したが、首無しのアンデッド化による蘇生は可能だった。しかも普通のネクロマンサーの蘇生は能力を失って弱体化したり、容姿が醜くなるなどマイナスの面が多いが、首無しの蘇生は生前と変わらぬまま、むしろ強化状態で蘇生することが可能である。

 

ユーザーとしての力を持ったまま蘇生することが可能なのだ!さすがSSR!しかもこの能力は生まれつき持っていたらしい。運営とはなんの関係もないのでナーフされることもない。

 

俺は次から次へと蘇生し、300人以上が俺の傘下となったのだ!

 

 

 

最後にあの1位【迷宮】である。正直言って77回爆死してもあのドラゴンメイドは瀕死ではあるがまだ生きていた。とどめは俺が自ら槍で貫いたが、正直言ってもう戦いたくないし勝ち目がない。

 

 

300人以上のユーザーを従えたが、それで互角といった感じだろう。俺は正直ビビっていた。

 

 

 

…が。なんと1位【迷宮】はドラゴンメイドの遺体の引き渡しを条件に降伏を申し出た。

 

 

どうやらあのドラゴンメイドたちは1位のユーザー【迷宮】の指示のもと行動したわけではなく、勝手に行動した独断専行であったらしい。本人は仲間と共にのんびり酒池肉林して暮らせればよいという平和主義者であり、勝手にユニットが主のためにと行動して1位になって困惑し、逆に迷惑していたそうだ。

 

ダンジョン運営も面倒らしく、【五星】が後継者にと言い寄ってきて困っていた。俺が【五星】の一角であるシュラハトを撃破してダンジョンを支配したことを教えたら、「仕事が減った」と喜んでいた。

 

 

俺は転生の祭壇にぶち込んで蘇生させ、生きた状態で引き渡した。泣いて喜んでいた。

 

 

あと、1位【迷宮】は少数精鋭であり、ドラゴンメイド級のユニットがあと10体は存在しているらしい。ひえーーーーー。

 

 

 

 

そしてNTRビデオレターの神を生み出す能力持ちの奴が俺が忙しい隙を狙って攻撃してきたが、もはや敵ではなかった。

 

こいつのために用意していた【対神兵器】をありったけぶち込んで、さらに1位ユニットたちや7号率いるホムンクルスの前に報復され、最後は7号に討ち取られた。

 

ついでに俺の神話体系に何百もの神が組み込まれてしまった。一部の神は冥府の神エリオと同格又はそれ以上のやばい神だったが、それ以外の大半は【プラモデルの神】【埃の神】【アップルサイダーの神】【ふりかけ卵味の神】といった微妙な神である。いらねー。

 

 

そうして新たに多くの仲間を従えた俺は、イベントを終わらせに行った。天使狩りである。

 

 

 

 

第3回イベントは無事終了した。俺と連盟との戦いで100人規模のユーザーとその軍勢が脱落し、一時はイベントクリア失敗の危機に陥るかと思ったが、特にそんなことはなかった。全エリアに本気を出した億を超えるホムンクルスユニットたちと隠していた秘蔵の高レアリティユニットの無双。

 

そして撃破して蘇生した天使や神、従えたユーザーや他にも完全復活した『魔』のダンジョンの人たちにより数の暴力で圧殺。

 

 

俺はちょっと引いている【傭兵会社】のエヴァ率いる『下位ユーザー連合』とかなりこちらに有利な同盟を結び、『下位ユーザー連合』により撃破された司令官や強い天使を蘇生と転生で我が軍に組み込み、下の第1エリアから一番上の第50エリアまで怒涛の進撃。

 

この間攻略して撃破した天使や司令官など、使えそうな奴らは片っ端から蘇生と転生で味方に組み込んでいくため、戦力は雪だるま式に増加、勢いは落ちることなく、そのまま最終エリアである第50エリアに到達。

 

 

山田神話の神々と敵天使神話最高神とその従属神との戦いは凄まじかった。

 

最終決戦は月面であった。

 

鎧を着てスカイツリーくらいの大きさの馬に跨ってこちらを蹂躙する敵主神【月の森の神】

空を埋め尽くす宇宙艦隊。噴水から召喚された地獄の軍勢。マッドサイエンティストにより改造された大怪獣。疲れ果てた死人。敵主神に群がる有象無象の神とホムンクルス。堕ちる星。ライダーキックを決める山田黄金像。無残にも蹴散らされる傭兵会社の軍隊。

 

 

B級映画みたいで面白かった。

 

 

 

 

 

まあ、いろいろあったがイベントはオールクリア!完璧だ。

 

 

 

俺はランキング1位!圧倒的1位!最下位からの大逆転である。何百ものユーザーを支配下に置いた俺を抜くことは誰にもできないだろう。

運営、見てるか?ゲームは俺が勝者で終わり!これにて終わり!俺がそう決めたから終了!お前らが何かしようとしたら、直ぐに阻止してやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

…さて。多くのユーザーは俺に対して勝ち目がないと考えたのか、俺の講和または降伏要求に従ってくれた。従わない奴は滅ぼして蘇生した。

 

 

そこで俺は情報を多く手に入れた。その中で最も興味を引いたのは、宇宙艦隊を所持していたドイツユーザー【艦隊司令】の話である。

 

 

 

こいつは地球を支配せんと、地球に対して星間艦隊を派遣していた。だが距離がかなりあり、エネルギーの問題から、時間がかかり、地球に到達するまで、一年以上かかるらしい。

 

 

だが、今は違う!今はすべてのユーザーが協力し合える!

 

例えば、俺がテレビショッピングで購入した、ダイソン球!これでエネルギー問題は解決だ!

その他問題も多くあったが、全ユーザー1000人の協力もあり、問題はすべて解決。

 

 

 

ユーザー1000人が乗った星間艦隊が出向した。里帰りだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ、見えてきたぞ!」

 

 

 

 

 

 

目の前には青く輝く地球。俺たち地球人の故郷である。

 

ああ、美しい。俺たちの故郷はこんなにも美しかったのか。

 

何もかも懐かしい。一年も離れていないのに、ここまで心を動かされるとは。

 

 

 

…ちょっと軌道エレベーターができていたりするが、これはまあ許容範囲内である。

 

 

さあ、これから何が起きるだろう。宇宙開拓時代かな!

わからないけど、きっとこれから面白いことが起きるはずだ!俺たちの前には、未知なる宇宙の世界が、星々の世界が広がっている!

 

 

 

●こちら月面天文台アルテミス。主の帰還を歓迎します。無人機の誘導に従い、軌道エレベーターへ入港をおこなってください。

 

 

 

「こちらは山田ドラゴンガチャ共同体リーダー、山田竜。さあ、家に帰るぞ!」

 

 




はい、これにて『ガチャと僕のプライベートプラネット』完結です。



投稿し始めて約1年間、間に忙しかったりスランプに陥ったりしたりしてすみませんでした。しかし4月から新社会人になりますので、一区切りつけるという意味でも、4月までに終わらせたかったので頑張りました。連載を望んでいた人はすみません。

短い間でしたが、最後までありがとうございました。本当にありがとうございました。正直ここまで評価させてもらえるとは考えていませんでした。

未完結作品が多いネット小説で、完結まで持ってこれたのは、皆様のおかげです。

https://twitter.com/taiyoukuntax

Xのアカウントです。次回作のお知らせや、その他いろんなことをポストしています。

新作は具体的には、都会憎悪主義者が主人公の話を構想しています。

感想や評価、レビュー待ってます。書籍化も待ってます。

長く書きましたが、これで終わりです。本当にありがとうございました。
またどこかでお会いしましょう。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。