モンハンは狩ゲー?いや死にゲー (Ωが来た!)
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一乙目、生存

 意外にも無かったので投稿してみました。荒削りなのはご愛嬌。多分そんな続かない。取り敢えず導入……誰かやってくれる人おらんかね?
 


 

 言い表すならば【不自然】。いや、自然の化身たる彼らに【不自然】と表すのもおかしな話。ただ、やはり【不自然】なのは彼らに類さないからなのか?

 

 

 

 先程まで陽気なお天気が嘘の様。太陽は突如として姿を消し、青黒い雲を渦巻かせ、光を吸い込む黒き穴なり、空は赤黒く、雷鳴轟く異界の様相を見せてるが、所詮はそんなもの。今目の前に佇むその存在によりその全てが認識から阻害される。

 

「なぜ?……。」

 

 純白。ただ一つ『純白』として表せるその鱗、その体毛。蛇睨の蛙どころの話では無い。見上げるはまさしく『龍』、紅い筈その瞳は白い神聖と禍々しさを発している。とうに砕けそうなその戦意は文字通り風前の灯……何故【コイツ】が俺の前に居るのか全く以って理解できないが、ただ行える事はただ一つ、ただ言えるのは一つ。

 

「いや俺レウス装備だから…。」

 

 そして降り注ぐ紅の雷。哀れ、構える狩人の意識は唐突に失われていた……

 

 

 

 

 一つ呼吸をするたびに、10回の落雷が辺りを焦がし、5回の落雷が身を焦がす。

 その紅の雷は確実に撃ち下ろされる。

 

「………」

 

 当たるどころか掠ることさえ許され無い。火竜の鎧はいとも容易く炭となり、その盾はまるで紙のように頼りない。

 

「…」

 

 一撃は鎧竜より重く、それでいて迅竜の様にしなやかで、その雷は火竜の息吹きより正確。

 不遜にもその純白の鱗を赤く染める。その赤は龍かはたまた狩人か。

 

「…………ッ」

 

 隙は少なく、ただ淡々。焦る事はあるのだろうか?裏をかくとも為せた気がする事はなくまさに手中。露骨に侮る事もなく、驕る事もなく、ただ淡々。弄ぶ様な気すら感じない、極めて冷静、ひょいと蚊でも潰すかの様に…。

 故に狙いは確実で分かりやすいが、やっとのことで乗り越えたその更に先を矢継ぎ早に繰り出す、更にそれ全てがほぼほぼ即死。その一撃は狩人の身も心も粉砕する。

 

「……………クソッ!」

 

 なんど繰り返したのか、数える暇すら有りはしない。一つ潜る死線の次に来るのはまた死線、これはこうか、こうなるのか、次は何だ、これじゃないのか?そうじゃない、…またダメだった。

 また予想を超えてきた、また行動が変わってしまう、また練り直し………、いや…、ただでは終われない、もう少し、もう少し、次への勝機を上げる為、だから…

 

「………………まだだッ」

 

 何度その身を焦がそうと、何度その身を裂かれようと、しかし負ける訳には行かない、諦める理由にはならない。

 

 …

 

「ッ!見えたッ、次こそは!」

 

 潜り抜けた死線も、潜り抜けられなかった死線も数知れず、それでも諦めず、抗うことを捨てなかったからこそ見つけた千載一遇、小さな勝機、

 

 ……

 

「……ッ!、イャンガルルガの…方が強い!アルビノクソトカゲッ!」

 

 !!!

 

 気の遠くなる数の落雷を避け、轟音でもはや耳は機能せず、しなる純白の尾により鎧は砕け、赤を超えて赫、口内より繰り出されるは雷の奔流、避けきれ無い電流に焼かれても、余波で飛び散る破片がめり込むとしても、激痛に耐え、盾を砕かれても、火竜の息吹を宿したその剣だけは手放さない。不意に降りるその頭。腕も、脚も、腹も、尾も、大した効き目は示さなかった。ならばその頭、その顔ッ、その瞳ッ!文字通り降ってきたその一隅に全てを賭た。

 

 突き立てるのは王の息吹を内包したその武器の名前は『コロナ』。太陽の光、その現象の名前を冠するに相応しく、今は名もなき狩人の意地矜持をと、王の誇りを燃料に、より赤く、より熱く赤熱する剣を、視界に入れるだけで神聖と禍々しさに蝕まれそうになる霊瞳に、渾身の力を込めて突き立てる!

 

 ッ!?!?

 

 声も出無い、正に予想外、反射で体を持ち上げるも未だ焼かれ続けるような痛み、否、実に焼かれているのだ!狩人は後ろへ伸びる4本の角に手を掛けしがみ付き、更に深くへ突き刺ささんと力を込める。

 

「ゔゔゔゔッ…、まだ、まだダァ!」

 

 常に雷が纏われたその剛角。故に捕まるだけでもただでは済ま無い。

 が、それでも耐える、根性で耐える。

 

「あっ。」

 

 終わりは早かった。首を一振り、狩人が命を掛けて行った一撃をいとも容易く振り解き、勢いよく吹き飛ばされる狩人、未だ落雷により焼き払われてい無い森へと高く遠くへ飛ばされて行き、木々に全身を引っ掻かれ、落ちた先で斜面を転げ落ち、一つドボンと音を立てて川へ落ちてしまった。

 

………

 

 呆気ない。実に呆気ない。いかに絶技を持ってして切り抜けようとも、その龍の瞳に一撃を入れようと、それが王の息吹を宿した決死の一撃であろうと、龍からして見ればいつかは治る程度の傷でしかないのだ。

 

 滴る血を舐め狩人が吹き飛んだ方を見続ける純白の龍。龍の預かり知らぬ所では、【祖なる者】と形容されるに相応しき絶対者。残された瞳に宿すは、怒りか、驚きか、はたまた……。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 【火竜】『リオレウス』より作られる鎧と、その武器、片手剣『コロナ』を装備した狩人。フルフェイス故に表情を窺う事はでき無いが、並々ならぬ予感、それも悪い方での予感を感じている事はその歩き方から見て取れた。

 

「………」

(おかしい)

 

 なんて事は無かった。商隊の行手を阻む【狗竜】『ドスジャギィ』の狩猟クエストを受け、狩場に向かっている

 

「………、おかしい。」

(天気は晴れ、雲もいい感じにあるし森の中だが十分明るい。コンディションは良いはずなのに…あ、あとやっぱりかなり圧縮されちゃった。)

 

 そう、おかしいのだ、依頼のドスジャギィは群れで行動する、子分であるジャギィどころか、予想される出現モンスターが軒並み居ない、何なら鳥の囀りですら聞こえ無い。

 

「?」

(ん?空が急に?、な!なんだ!)

 

 変化は唐突に、そして如実に現れた。太陽は姿を消し、曇る空は明らかに正常ではない、そして何より…

 

「……」

(おいおいおいおい!、何で【祖龍】がこんな所にいるんだよ!、ラスボスどころか裏ボスなんだから塔で大人しくしてろよ!)

 

 舞い降りるのは伝説。

 

 この世界の厄災たる現象。それも最上級の忌まわしき言葉、『ミラボレアス』を冠するこの世の禁忌たる黒龍の系譜。

 

 そもそも【黒龍】ですらお伽話レベルで有りながら、【紅龍】よりも、【煉黒龍】よりも、果てはその存在を認めることができない者達により意図的に焚書された【煌黒龍】よりも、目の前の存在はそれ以上の幻なのだ。

 だが、そんな存在と対峙しても尚、狩人は焦り散らかす事は無く、至って冷静沈着と言った風貌であり、その表情は誰が見ても余裕と言った様子であった。ただフルフェイスではあるのだが……

 

「………おかしい。」

(俺に言うのも変だがおかしいのはオマエじゃい!おかしい以外の俺の言葉はどこに行ったんですかねぇ!?)

 

 外と内の様相が真逆だが、その後の行動は完全一致。無意識に抜刀、盾を構え、いつでも行動ができる様に姿勢を整える。

 

「……………。」

(逆に落ち着いて来たぜ……、何でこんな所に居るのかは最早問題じゃない。まず逃げれるのか?絶対無理だ、言い切れる。俺はあいつから逃げられない。なら戦うか?……出来ないんじゃない、出来るまでやるんだ、『俺』にはそれが出来る!)

 

Guu………

 

 白いオーラを放つ紅瞳に映すは狩人。何を想うかわからない。伝説であり幻。御伽話になることすらない存在だ、生物の規格を超え、自然を超え、理超えたとも言えるこの存在に抗う事を強制された不運な狩人。

 

「……狩る。」

(何度だってボコされてやる。だが最後に立つのはこの俺だ。現実になったとはいえゲーム内の動作もしっかりしてくるのは履修済み!だが…戦うとは言ったが、『狩る』だなんて啖呵切った覚えないんだが?………てかルーツは雷属性やん。)

 

GuOOOooooOO!

 

「いや俺レウス装備だから…。」

(いや俺レウス装備だから…。…何気揃ったの久しぶりだな。)

 

 唸る祖龍。懸念する狩人。

 

「……。」

(あっ。)

 

 始まりは落雷から始まった。

 

 

 

  一乙

 

「!?」

(いやノータイム落雷即死!?出会って1秒で逝くとか容赦なさすぎ!何処ぞの土星人の事もう一生笑えんてこんなの!)

 

 そして始まる蹂躙の嵐、炭、挽肉、圧死、両断etc…

 

 狙いは確実。行動は緩慢にして高速、『余裕』とでもいうべきか。一挙一動が今までとは次元が違う。

 

  九乙

 

「………。」

(何で尻尾が掠るだけで逝かないといけないんですか?)

 

 存在する理不尽。術を片端から捲られる。されど諦めることすら許され無い。

 

  二七乙

 

「………。」

(これもダメ、だがそれをすると隙があるのか?)

 

 行動はメリハリが有り分かりやすい。が、

 

「グッ……。」

(威力馬鹿すぎ、余波だけで軽く終わるから大きく回避しないといけないのに次の行動への移行が早いから間に合わない!)

 

  五十八乙

 

 だめ、ダメ、駄目、また駄目だった。しかし、逃げる事も許されない。心を壊すことさえ許されない。

 

「………」

(生き残った!『根性』様々!ただじゃ駄目だ!少しでも長く生き残って次に繋げないと…。」

 

  …七十五乙

 

 フルフェイスにより表情は窺えず、されどもその奥に宿す光は増すばかり、行動を読み、文字通り『死んで』覚えて勝機を掴む。とてもじゃないが正気の沙汰ではない。

 

「……………。」

(これまで通りだ!相手が祖龍だからなんだ!デスカウントだけならあのガルルガの方がまだ上!抜かれてない!。)

 

 何でも良いから自分を奮い立たせ、何度でも立ち上がる。

 

  …八十九乙

 

「!」

(これだ!ここだ!今はもう無理だ、足が無い。だが待ってろ?『次』決めるからな…)

 

 

   暗転

 

……百二

 

 

 対峙、瞬きする間に容赦なく落ちる落雷を避ける。先に落ちる落雷をこれまた避ける、落雷は数本常に追尾してくるが基本ランダムで降り注ぐ為…

 

(自分の片手剣の間合いまで近付くのに何回乙ったか…。)

 

 接近、まさか潜り抜けられると思わなかったのか行動が遅れる祖龍。素早く右脚元に潜り込むと斬りつける訳でもなく素早く左にずれ込む。すると先ほどまでいた所に紅雷の右前脚による引っ掻きが大地を抉る。

 

(右腕スラッシュが来るからな…そして左に動くと足踏みがくるが、何故かこっちの方が反応が遅れるんだなぁ、癖かな?。 」

 

 振動、踏み鳴らされる地面を跳んで回避し尻尾の根元へ飛び込む。足踏みから流れる様に発生するしなやかな尾による薙ぎ払い。

 

(根元だからこそ尻尾の動きがよく見えて範囲も狭くて避けやすい)

 

 起点、適切なタイミングで回避。死線を確実に回避していく狩人。祖龍から繰り出される攻撃はどれも最低限の動きでこちらを消してくる。その為読みやすく、避けやすいのだが、最低限故に回避されても矢継ぎ早に攻撃が可能。だが、狩人からして見れば、やたらめったらに環境を破壊しながら結果全部範囲攻撃なるよりかは遥かにマシ。

 

(いい意味で落ち着いた戦闘になる。ただ、俺はこいつを一度も怒らせた事もなければ碌なダメージも与えた事がない……まだな。」

 

 攻防、攻め手と守り手は一切反転する事もない一方的な攻防。数分?、数時間?、もしかしたら数秒かもしてない、今回は5秒待った、次は6秒、この1秒にどれだけの努力があるかは計り知れない。

 努力は報われる。問題は、その結果に自身が満足するか。彼は……

 

「……ッ!、イャンガルルガの…方が強い!アルビノクソトカゲッ!」

 

 一瞬、その赫い口内から放たれる息吹、その後の一瞬頭が下がるその一瞬。彼は報いを見出した。

 

「ゔゔゔゔッ…、まだ、まだダァ!」

(お守り様々!!父ちゃんありがとう!)

 

 突き立てる剣は更に深くへ、角にしがみ付くだけでも全身が痺れて動けなくなる。耐えられているのは彼の持つ護石のお陰。効果は『根性』、本来、一定体力以上で即死ダメージを受けても1耐えるスキルだが、此処では死にそうになってもしぶとく耐える効果になっている様だった。

 

ッ!?!?!?

 

 突然の激痛に声も出ず、無駄にしぶとくしがみ付く狩人を一振りで吹っ飛ばす。

 

 そして次に聞こえる音は何かが水に落ちる音。

 

 人知れず発生した激戦は、実に気の抜けた音で締められた。

 

 

   狩猟失敗

 

   …一乙目

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 龍からして見れば全て気まぐれ、何となく。

 己の棲家たる塔から出たのも、眼下の森を歩く一人の狩人を見つけたのも、そして姿を現し立ち塞がったのも全て気まぐれだった。

 全て、は「そこにいたから」、だ。

 

「狩る。」

 

 ただ一言。眼下の矮小たる狩人は言い放った。事もなくさも当たり前の様に、この『我』に。大抵のものは何であれ、一つ見るだけで抗う事すらせずに項垂れていく。だが、この狩人は動じる事はなく、極めて自然に武器を出し、あろう事が睨み返して来るではないか!

 

 

 

 龍は驚愕していた。唖然としていたのはこれが初めてかも知れない。火竜の鎧を着込むあの狩人、『我』と対峙した者達から比べれば歴戦と言うことでは無い筈だった。そしてあの狩人とは今日初めて会った事は確実だ。しかし奴はその悉くを回避した。まるで己を知り尽くし何百と己と戦ったとでも言う様に、無意識に降り注ぐ落雷で圧力を加えながら逃げ道を無くし、更に狙って落とした雷を然もありなんと完璧に回避し、人間には追いつけまい的確な連撃は気味が悪いほど適切に対処され、数多さえ我の癖すら把握していたのだ!

 

「……ッ!、イャンガルルガの…方が強い!アルビノクソトカゲッ!」

 

 更にこれもまた驚愕に値する。対峙したものの多くは我を誰よりも強いと形容こそすれど、誰よりも、よりにもよってこの我を、あの狂い鳥よりも下に位置付けた奴の言葉を。

 

 不快では無い

 

 目からは焦げた匂いがする。流血は止まったが、舌で拭えば未だ血の味は残されている。

 

 ……しい

 

 ただ一つ気になる、その行動、言動。明らかに限界である筈なのに、割れ目から見えたあの瞳は光に溢れていた。下手をすれば我に挑んだ【英雄】達にすら縋り、越えるほどまで。

 

気になる

 

 

気にしてしまって仕方が無い

 

 

気になる気になる気になる気になる気になる気になる気になる気になる気になる気になる気になる気になる気になる気になる気になる気になる気になる気になる気になる気になる気になる気になる気になる気になる気になる気になる気になる気になる気になる気になる

 

 何者?我を知っている?我は知らない我が忘れているだけ?それはない、もしかして奴等か?いやあいつらはもう生きていない。人と我の時間は違う。

 

 …顕れた?

 

 全く気になって仕方がない。

 

 …だがその在り方は実に好ましい。

 

 生きているだろう、死ぬわけが無い。

 

 

 アレは間違いなくこの時代の光、【英雄】たらんモノ

 そして【証】は『我』に刻まれた。

 

 

 それは確信であり一種の信頼。【龍】に刻まれし歴史が残す狩人の証明、それ故に…

 

 

 

 

 兎にも角にも、狩人はその厄介な能力故に、厄介な存在に目をつけられてしまった。

 

 そんな不運な狩人が、正直で美しく、過酷で残酷な自然を生き抜く不敗の物語。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

狩人君

 

 主人公。実は最近リオレウスを倒したばかりの並ハン。なお、前世のPSは自称ベテランハンター。初乙は落下死。

 基本無口無表情。しかし人は外見に寄らないゾ、転生のせいか体と心がミスマッチだったのか、入力された言語と表情がちゃんと出力される事は少ない。そのせいで難儀な生活を送っている。本人は体が動いてくれるだけマシと思う様にはしている。明るく無いと死んじゃう病気に罹っている。出ないと発狂しちゃう。

 

ルーツ

 

 はぇ〜、すっごい(驚愕)、これが未来の英雄ですかぁ…君気になるなぁ、せや!暇だし地の果てまで追いかけちゃお♡

 

イャンガルルガ

 

 狩人に粘着する謎のガルルガ。負けそうになると逃げる為、遭遇するたびにデスカウントだけが増える(絶望)

 

ドスジャギィ

 

 ………こっわ(小並感)

 

 

 

 

 




 生き残れば無条件で勝者なのです!


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二乙目、勝者

 主人公の中と外の連携は終わってます。


 

 

……

………

 

「……?」

(知らない天井ですねぇ…。ただ、生き残ったのかぁ…。あと黙らないでいい加減喋ってもろて。)

 

 視界に映るのは温かみのある木の天井。薄暗い部屋を目だけ動かして様子を見、次に首を動かそうとするも、

 

「いッ!?」

(痛すぎ!、何だこれ!、身体中バキバキで動けねぇ、てか此処どこだ?声は出せる様だな…。)

 

 有刺鉄線で縛られたかの様な痛みが全身を襲い、体を動かす気力は一瞬で失せていく。声帯がやられて声が出せないのかと心配もしたが、ただ単にいつも通りだということがわかり無駄に肝を冷やしただけで済んだ。

 

「……誰だ。」

(誰か居ますか?……何でそうなるん?誰も居ないから呼んだんやろがい!アホンダラ!)

 

「……まさかそっちから呼ばれるとは、目を覚ました様ですね、看護婦さん呼びましょうか?」

 

「…………。」

(は?、え?、誰?…まっ、まあいいや、此処はお言葉に甘えて……。)

 

「……いや、それより誰だ?」

(はぁ〜つっかえ。)

 

「……しがないギルドナイトです。名前は…まぁ会うのはこれくらいでしょうからそのまま『ギルドナイト』と呼んでください。」

 

「………。」

()

 

 また喋る言葉が誤爆して出てきたと思ったら、突然扉から男が出てきて、更に勝手に看護婦の呼び出し拒否って話が進んでるこの状況。正に言葉も出ないとはこの事。起きたばかりで全身はくまなく動かず、かろうじて目だけしか動かせない所に自称ギルドナイトが入ってくる。更に『ギルドナイト』、前世では素行のよろしく無いハンターを血祭りに上げてしまう余りいい設定は聞いてない存在だ。

 

「早く本題に入れって言いたそうな顔をしてますね、それもそうですですが、その前に此処に来るまでの経緯を………貴方は、二日前川の下流域で漂着されている所を、本当に偶然通りかかったハンターに助けられ、今こうして病院に運ばれて治療を受け今ベッドにいます。発見当時の傷は酷く、防具は防具の程を成していないほどでした、それでも剣だけは治療を受ける寸前まで握っていたと聞きますから、貴方は本当に強い方なのでしょう。」

 

「………。」

(これお守りの限度超えてね?よく生きてたな、モンハン世界の人の肉体様々だな。)

 

「………では単刀直入に、貴方は【何】と戦いましたか?あの日あの時、貴方は【誰】と戦いましたか?」

 

「……。」

(そりゃルーツよ、あのクソトカゲめ…ほんとに強かった……、何で黙る必要があるんですか?)

 

「…答えられなi「白いトカゲだ」…え?」(え?)

 

「白い…トカゲだ。」

(ルーツをトカゲ扱いとかこれは大物ですわ…ざけんしゃねぇよ!)

 

 豆鉄砲を喰らった様な声を出すギルドナイト。ギリギリ視界の外で表情は窺えないが、気の抜けた顔をしている事には違いない。少しの間を開いたあたりで初めに部屋に響いたのは堪える様な笑い声だった。

 

「…ッ、…ッ、貴方はッ、フッ、あの存在と対峙して此処までの傷を負って尚、ククッ、アレをトカゲ扱い?…は〜〜。」

 

 一通り落ち着いたのか大きく息を吸い、呼吸を整えるギルドナイト。

 

「いやはや、これは大物と言うほかありませんね、個人的に貴方に味方をしたくなった、ここは【幻獣】『キリン』と運悪く鉢合わせたことにしましょう、貴方の今の評価では受けることのできないモンスターですし、天候の件もこれで納得してもらえるでしょう、所詮は籠るだけの世間知らずですし、一応レベルの確認なので、それは人手はいつだって足りてませんからね。」

 

「…………。」

(もう分からん、成る様になってくれ。あとガチで痛いから看護婦早よ。」

 

「長居は無用ですね、頑張って下さい『不敗のルーキー』さん?今夜はゆっくりお休み下さい。」

 

  ガチャリ

 

 と、扉を閉めて出ていくギルドナイト。後の対応を見るに男というよりも青年と表した方が良い気もして来たハンターだったが、そんな事よりも…

 

「………。」

(だから、看護婦早よ……。)

 

 彼の願いは虚しく、全身の痛みで休まらず、眠れない夜を過ごす羽目になった。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「それにしてもキリンに出会ったんだって?これは災難だっね?私もジンオウガの落雷に撃たれて運ばれたハンターを治したことはあれど、君の容体はそれよりも酷かった。はい、これ痛み止めと、塗り薬、説明書は読んで置いてね、くれぐれも変な使い方はしないことだ。」

 

「………わかった。」

(いい医者がこの街にいてくれてよかった。本当にありがとうございます。…何が「わかった」じゃボケっ!感謝の言葉も出せんのか?)

 

 数週間後の昼頃、晴れて退院する事ができ、久しぶりの我が家へと足を運ぶ。道中、壊れた防具の替えはどうしよう、片手剣は盾だけ無くなった場合どうするんだろ?結果あの夜の出来事は何だったのだろうか?と、様々な事が頭に浮かぶものの…

 

(ま、まずは治療で飛んだ俺のお金をどう挽回するかだな。)

 

 結局はお金だった。前世の様な保険なんてものは無い。治療費に関しては、ギルドの不備による怪我はある程度負担してくれる制度はあるものの(この場合、出現モンスターの不備)、それでもやはり元が無いのでかなりきつい。今まで倹約して来た為借金なんて事は無いものの、このままでは自分の家まで売り飛ばさなければならなくなる。

 

(防具の方はレウス以前に使ってたジャギィ防具があるし、レウス盾は余った素材がまだある筈、それを使うべきだな…。)

 

 今後の予定を練りつつドアノブに手を掛けたその瞬間、彼の有りとあらゆる感覚が激しい警笛を鳴らし始めたのだ!

 

「……ッ!」

(いる!?予感とかじゃない何がとかは分からんが兎に角「確実に居る」。どうする?開けるのか?)

 

 開けるか、開けないべきか、悩んでいても仕方がない。そもそも此処は自分の家だ、ご先祖様から代々伝わるショボくても立派な俺の『城』。片手剣を構えて入る心の準備をする。武器で人は攻撃してはいけない決まりこそあれど、脅しくらいにはなる。そのうちにステゴロで勝てばいいのだ。

 

「あの人何で構えたままドアノブ持って固まってるの?」

 

「見ちゃダメよ、ああ言うのは気にしないほうがいいの。」

 

「無表情で何してるのかしら…。」

 

 それにそろそろご近所さん達からの目線も痛くなって来た頃だ、何せ彼はその行動(不本意)から人付き合いが壊滅的なのだ、此処まで行って排斥されないのは一重に、彼が実力で示し、彼らも頼れると信用しているからなのだが、それはそれだ。好き好んで話しかけようとするものは今は殆ど居ない。ともあれ勇気を持ってドアを開ける。

 

「……ッ!だれッ……。」

(泥棒かなんざこの拳でッ!…は?)

 

  ガチャン

 

 ノータイム無言でドアを閉めるハンター。そしてそっと中を確認してまた閉める。

 

「何をしておるのだ!お前の家じゃろ!早よ入らんか!」

 

 突然ドアが開き伸びて来た白い細腕。しかしどこにそんな力があるのか抵抗虚しく顔を鷲掴みにされ家に引き摺り込まれてしまった。

 

「………お前、何故いる。」

(いきなり……何でこんな餓鬼が居るん?てかなんだこの美少女!?)

 

「ほう、やはり気付いたが、流石我のこの圧倒的存在感は姿を変えようとも絶対的なのだな!」

 

 受け身を取りつつ、侵入者を見据えてみれば、そこにはこんなところにいるはずもない謎の美少女、全体的に絹の様に白い髪と肌、病的なまでに華奢な体の割には、先程身をもって知ったあの怪力、凛とした美しい容姿だが、より目を惹くのはその紅瞳。片目は髪に隠れてよく見えないが、なんとも言えないオーラを放ち、さらには縦に伸びたその瞳孔は、彼女が只者ではないことを表していた。会った事がある的なことを言ったと思えば、話を進め勝手にふんぞりかえる始末。そしてやや興奮気味に畳み掛ける少女。

 

「『我』の、【英雄】よ、よくぞ帰った。こうして態々人の姿を取ってまで会いに来てやったのだ。人の身では会うことすら叶わないこの『我』が、なんと!2度までも!会いに来てやったのだぞ!」

 

「………。」

(は?何言ってんだこいつ早よ出てけや……待てよ?人の身?、会う?、白い肌に赤い目?…あっ(察し))

 

「ん?どうしたのだ?あ〜、我についてだな?どうだこの姿、美しいであろう!お前の『番』として振る舞っても良いのだぞ?。」

 

 やけに『我』を強調させながら畳み掛ける圧倒的美少女系不法侵入型結婚式不審者。地雷が見えているうちに此処は穏便にお引き取り願おうと口を開くと…。

 

「何を言っている、早く出て行け殺されたいか。」

(は?)

 

「そうかそうか!感激で言葉もでな……は?

 

(何言ってるんですかね?前徹底的にボコされたやろがい!古龍ミラルーツであらせられるお方に一撃かましたからって勘違いすんな!耄碌するにはまだ早いぞ俺!)

 

「勘違いするな、耄碌しすぎだフルフルめ。『次』は一撃だ。」

(あっ、死んだ。何やねんフルフルって。)

 

………ッ!

 

(表情は分からないが赤みを帯びた頬、小刻みに震える体、これは相当頭に来てますね(名推理)、ゲームでも無理だよ?裸ルーツとか、俺は自称ベテランハンターであってプロハンでは無いからな。)

 

 先程まで絹の様に美しかった肌は紅潮し、先程まで無かった頭部からは記憶に覚えしかない4本の角が生え、さらには少女の背丈以上の長さの純白の尾まで生やしていた。

 

……ダメ

 

 無駄だとわかっていながらも剣を構えた、いつでも反応できる様に神経を張り巡らせる。

 

(前の様には絶対に行かない、いかに被害を抑えられるか、今回は死ぬが、せめて人のままで居てくれるか判れば……。)

 

 張り詰めた空気、嫌と言うほど見て感じた紅雷が空間を迸る、先程の空気は何処はやら、正に一触即発の様相を醸し出す。

 

「ダメだ。いい、我は部屋に戻る。それよりも腹が減った、何が飯を持ってこい!いいな!」

 

「……?」

(え?許されたの?てか部屋ってここ俺ん家……。)

 

 あの雰囲気は何処えやら、早々に家の奥へと姿を消してしまった彼女の後を見つめながら唖然とししばらく固まってしまうハンター。

 

「……わかった。」

(はっ、はぃぃ。)

 

 これ以上の揉め事はもう経験したく無かった様で、半ば放心状態で台所を目指して歩いて行った。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「あぁ…なんて好ましいのだ…。」

 

 一人寝具の上、毛布を掴み息を吸い込む。

 

「すべてが好ましい…今までとは違うのだ…。」

 

 悩ましい声をあげ、美しい髪を乱し、凛とした顔をだらけさせ、左眼と腹に手を当て火照る体を蹲せる。お世辞にも行儀が良いとは言えないその行動、しかし世の異性を、同性ですら目を惹き虜にしてしまうほど、彼女は扇情的であり、魅力的であるのだ。

 

「あぁ…あぁ…、このままでは変身が解けてしまうぞ………だが素晴らしい…それでこそ『我』を相手取るに相応しい…疼いて疼いて仕方が無い、その行動表情その言動!、逆境に抗い自然に挑み続けるその精神!、なんて美しく…なんて…愛おしい……。」

 

 龍は人にあらず、人が龍理解する事は真に無く、それ故に龍が人を理解する事もまた真に無い。

 日輪月蝕、瞳の紅はより澱む、正気を焚べて狂気を産み、光を浴びてヤミに沈む

 

「我は知らない、楽しみともまた違う、切なくもあるこの疼きは何なのだ?この感情を宥める方法を、我は知らない…『我』の狩人よ、お前ならばコレを抑えられるのか?あぁ…その目は我だけを捉えておくれ、でないと何をするのか分からない…あぁ、分からない。自分ですら分からないが、これが執着というものか…。」

 

 彼は正しく凡の者、そうならざるおえないからこそそうなっただけであり、【英雄】などとは比べる事も烏滸がましい。

 

「我の世界を彩る【英雄】よ、我がその世界を彩れるならばそれは何とも……我に刻まれし我だけの【証】、狩人よ、我に【英雄】を…………。」

 

 であれば相応しくなればいい、凡を天にするモノを彼は持つ、持ってしまった。捨てること叶わず、活かすほかない。正しく理を超えたこの力、生きる為には死んで覚える他道は無い。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「おい、飯だ。」

(おい、飯だ。…こいつの扱いに関しては激しく同意しているらしいな。あと何で俺の部屋にいるんですかねえ?)

 

 珍しく外と内が合致したが、こんな事で、こんな所で会うくらいならもっと他の場所があっただろうと溜め息をつく。

 

「ようやく来たか『我』の【英雄】よ!どれどれ、これはなかなか良い匂いではないか!」

 

(俺が英雄とか目でも腐ってるんじゃねこいつ。)

「その目は飾りか、英雄ではない。」

 

(…は?こいつ出力するタイミング終わってね?)

 

……ッ!

 

 残念ながら死なないと学べない様だ…。寄ってくる途中ぴたりと止まるといきなり紅雷を迸らせ、再び角と尾生やすも、すぐにそれら全てを引っ込める。

 

「そんな事よりも飯じゃ、それを寄越せ!」

 

 ハンターの手に持つ料理は簡単なスープ。買い出しに行けてないので有り合わせの保存食で何とか作ったのだ。

 

「……美味いのか?」

(なんか、美味そうに食べるなぁ……いや俺が作ったんだからケチなんて言われたくはないけどな。)

 

「ッ!ごほんっ…、人の体はよく腹が減るからな、それに味覚も鋭い、お前、『生活力』が高い人間なのだな!」

 

「………。」

(結果殺されかけた奴に飯うまいって言われるこの状況って何?。」

 

 片や視界に入ったからという理不尽な理由で殺されかけた狩人。

 片や視界の片方を突き刺され更に焼かれた人の形を取る龍。

 それが今では同じ屋根の下で貧乏臭いスープを呑んでいる。狩人にはもちろんな事、龍にとっても経験した事のない異常事態。

 

「………。」

 

「…………。」

(いや喋るなら喋ってくれ。こっちから起点作りなんて出来ないからな?オートで無差別に短い定形文しか送れない、圧倒的なコミュ力弱者だから!」

 

 スープに夢中な祖龍様、無意識に無言になり話を切り出す事ができない狩人、早々にこの静寂に耐えられなくなって来たが、此処で待望の次の話題が出される。喋るだけ面倒を起こすので会話は苦手だが、この状況での無言も堪えるものがあるのだろう。

 

「そうじゃ!名前じゃ!お前の名は何じゃ?」

 

「………。」

(おっ話題きた…名前か、喋ってくれる?俺はカナクだ、名も無きハンタームーブはもういいから早く言ってくれ頼むから。)

 

「どうした?早よ名のらぬか。」

 

「ハンターだ。」

(ハァ“ア"?何をッ、よりにも寄ってそこを出力するん?頭おかしいんか?(疑問))

 

「………ッ!落ち着くのだ………名乗る名前もないとな?まぁよかろう、ハンターよ、お前にはこれからも数々の脅威が降りかかるであろう、だが心配する事はないお前の最後は『我』であるからな。」

 

「………お前は『途中』だ。」

(最後?なんか途中死刑宣告された気がする。あれ?今受諾しなかった?。」

 

〜〜〜〜ッ!!!

 

「………。」

(拙者死んだ?。拙者ルーツ様に無限なぶり殺し編始まっちゃう?)

 

「お前は本当にッ!「ルーツ。」…へ?」

 

「ルーツ。」

(何勝手にルーツ出力してんの?。)

 

「『ルーツ』、我の名か?どういう意味じゃ?」

 

(お、なんかいい感じに反らせた?なら乗るしかない、このビッグウェーブに!)

 

 正に天からの救済、自分から蒔いた種ではあるが、自身の破滅から逃げる道が見えた事に勢いづくハンター君。

 

「祖先、根源。」

(確か祖先だとか根源だったか?)

 

「ほ〜、我を見てそう感じたのじゃな?やはり我から出る『オーラ』は隠しきれないようじゃな、…気に入った!意味は兎も角、知らない言葉だが…うむ、とてもしっくり来ぞ、『ルーツ』、コレからはそう呼ぶのだ!」

 

「………。」

(一緒に暮らす事確定してない?はぁ、もういいや。抗うだけじゃ進まないからな、柔軟に生きねばな。)

 

 諦めが肝心という言葉もある通りこれ以上の面倒ごとは避けたい様で、外を見ればもう斜陽に傾きもう一日が終わろうとしていた。

 

「…もういい、此処にいろ、ベッドは好きに使え、他は触るな、下に居る。」

(もういいや、俺はコレからは下で生活するか、ベッドは使ってもいいけど防具は触らないでね……え?どうしたんめっちゃ喋るやん。)

 

 

 

 

 その夜お風呂に乱入して来たルーツに発狂し、それを面白がったルーツが更に暴れ、正に阿鼻叫喚の様になった模様。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

ハンター君

 

 名前を決めていないわけじゃないよ本当だよ!今と前がごっちゃになっている事に気づいていないだけだよ!(重症

 

ルーツ

 

 少女の姿をしてるせいで精神が引っ張られ、性格などが軟化している。

 お気にの英雄の卵が孵化する瞬間が見れてその英雄が自分に立ち向かう姿を想像して悶々としている。ただしよくわかっていないので発散方法は物理的にぶつかるしか知らない模様

 

ギルドナイト

 

 禁忌を知ってる時点でかなり上。知った上で恐ろしさも知っており、それ故に対峙したハンターの啖呵に心奪われた。あとで何とか誤魔化した模様。

 

医師

 

 凄腕、もっと中央でいい暮らしできるのにできるだけ安く地方で活動している。

 

 




次回!ハンター君!死す!(いつものこと)


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三乙目、対比

続いた。これだけでも驚き。湧いてくるうちは時間が無くてもすらすら打ち込める。


 

 翌日の早朝、彼の姿はハンターズギルドにあった。

 そう『ハンターズギルド』、モンスターの狩猟から採取、商隊の護衛から街の防衛まで、一般人どころか、軍人ですら立ち入るないし、立ち向かう事が困難な自然を、直接生活の糧とし、生業とする者たちが集う大陸共通の巨大組織の事だ。そして、ハンターたる彼もまた、この組織に所属し、依頼を斡旋させてもらっているのだ。  

 人類最大級の都市、別たれたシュレイドの双都や、開拓大都市『ミナガルデ』などに比べれば、その規模は比べるまでも無いこの街にもギルドは勿論、存在する。

 

久しぶりに見たが相変わらずだな。

 

【幻獣】にカチ会うとは運がいいのか悪いのか。」

 

『不敗のルーキー』もコレまでか、まっ、生きてりゃ勝ちってところあるからな。

 

 

「…………。」

(心配して貰ってる?いゃぁ〜人付き合い終わってるから疎まれてると思ってたけど、流石民度が高い事で知られるモンハン世界、厳しいのは自然だけだな!)

 

 自分に対する評価が低いわけではない事に内心安堵するも、肝心の外は【白猿狐】バリに鉄仮面の為、悲しきかな伝わる事はない。

 

「よ!あのキリンに会って生きて帰って来たんだって?本当に運がいいんだな!何たって、一生賭けて会えない方が多い【古龍種】だぜ!スゲェよ!お前は!」

 

「…………そうだ。」

(そうだよ!俺にはこうして話変えてくれる奴がいるじゃないか!……あれ?コレただのイキリ返答じゃね?)

 

「おっおう…。大した自信だな!それと俺と今度一狩り行かないか?是非その腕を見せて欲しいんだ、足は引っ張らないさ!レウス防具が壊れて何かしら新しいのが必要だろ?手伝わせてくれよ。」

 

「……断る。」

(なんて優しいんだ!断るわけないじゃないか!……は?(殺意))

 

「…ッ!そっそうか…。ま、ソロじゃないと本調子になれないタイプって事だろ?なら済まんかったな、下手に環境変えても命に関わる。またな!今度酒場で飯でも食おうぜ!」

 

「………。」

(いい人すぎんだろ……ほんまに、あのさぁ…。)

 

 ボウガン使いの心優しい青年ハンターの嬉しい申し出を、いつものごとく、キッパリと断ってしまい、内心絶望すると同時に自分に対する呆れても湧く。勿論周りもどよめいた。が、そんな事は我関せずとでも言う様に、そのまま受付カウンターに直進すると、受注する依頼を選ぶ。

 

「ハ、ハンターさん、本来ならば上位クエストを受ける事が可能…と言うよりも前のドスジャギィが上位クエストなのですが…流石に下位ドスジャギィ防具で上位クエストを受けられるのは、些か無謀と言いますか何と言いますか…採取クエストで鉱石系の防具を作成する事をおすすめ致します。」

 

(せやな、嬢の言う通り!この装備でリオレイアとか終わりや、それで行くで!)

「リオレイア、あるか。」

()

 

「リッリオレイアですか!で、ですが…う…止めても無駄でしょうから……かしこまりました。こちらの依頼書になります…。」

 

 受付嬢からの純粋な親切心かつあ否定する要素が何処にもない提案を、秒速で却下するハンターに周りも騒然とするが、だからどうしたと止める権利も別に無いわけで、「あいつマジかよ。」と、いう表情を皆浮かべ、受付嬢も考え直す様に提案しようとするも、冷え切ったその表情を当てられ、また、これまでの事から止めても無駄だと思い、仕方なく依頼書を出す。

 

「……成る程、いつからだ。」

(もういいわ、今に始まった事じゃ無いし、そんでこれいつ出発になるの?)

 

「はい!、午後に狩場への竜車便が出ます。駅に行けば『リオレイア』のアイコンが掲げられてるのですぐに分かります。…はい契約金を受け取りました。……くれぐれもお気を付けて…。」

 

「………当たり前だ。」

(もちろん!一番は死なない事だからな!……あれ?これ我ながら俺性格悪すぎじゃね?俺が他人なら絶対関わりたく無いわ。)

 

「あはは…。」

 

 苦笑いする受付嬢を背にして、ギルドを去り家に帰還するハンター。帰るも帰るで爆弾が待っているので、基本内心が外に漏れない筈の彼の足取りも何処か重い、そしてそれに気付いた街人は余りの珍しさに今日は矢でも降るのかと本気で思った程だ。

 

「どこに行ってたのだ!不届者め!この我を置いて出掛けるなど何たる…何たる……。」

 

「…早く起きろ。午後から居ない、面倒起こすな…待っていろ。」

(いや起きないから…、てか出掛けるから面倒とかガチ勘弁、これ以上好感度下げられない。頼むから大人しくしてくれ………え?めっちゃ普通(当社比)に出力してくれた、今日死ぬ?拙者死ぬ?)

 

 中々単純だと言う事が分かってから、ある程度の言葉遣いでビクビクする必要はないという発見は、彼の心に大きな安らぎを与えた、が、元が元なので大した意味はない。

 

「待つ?我が?……お前、我をそこらの家畜と同じに捉えてないか?我は偉大なる龍でa…〜〜〜〜ッ!ッ!ッ!」

 

「黙れ、目立つ。」

(お願いだから騒がないで下さい本当に見られたら本気で終わっちゃう!)

 

 玄関先で叫ばれては敵わない。これ以上変な噂は懲り懲りだと、口を塞いで家に入る、見るのもが見れば失神ものだがやはり人間慣れるもの、結局は死に戻る為、物理的死よりも、蘇生不可能な社会的死の方が圧倒的に怖いと言う感情が、この行動を成功させた。

 

「………なぜ黙っている。」

(ふぅ、ここ以外に新しく拠点構えるとか考えたくも無い……なんか静かだな、え"ッ!)

 

 目線を下げれば角と尻尾が生え、人化が解けつつあるルーツの姿、すぐさま手を離し距離を取って次なる行動に注意する。

 

「………、はじめてだぞ…この様な扱いは…絶対逃さないからな!」

 

 顔を赤く染め、此方を指差し乱暴に二階に上がっていくルーツを見つつ、ハンターは考えた。

 

「……留守番……。」

(結局待ってくれるん?、てか逃さないって逆に逃げられるん?あんな奴に目付けられて逃げられるなら逃げたいわ。)

 

 これ以上刺激するのもダメだと思い準備を整えてから、火竜の余った素材を持って加工屋により、駅へと向かうハンター。最後に家を見回るもののルーツの姿を見つけられず、去ったならこれ幸いと、しっかり戸締りをし、自宅を後にした。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 恐ろしく強い新人ハンターがいる。

 

 仕事でこの街に寄った時、ギルドの酒場で聞いた話だ。そこのハンター曰く、

 

 やれドスジャギィの群れを2回連続で張っ倒した、だの、

 

 やれイャンクック狩猟時に乱入して来たイャンガルルガを撃退した、だの、

 

 上位への登竜門たるあのリオレウス相手に大立ち回りで完封した、だのと、新人にしては明らかにおかしい大戦果を挙げ、更にはギルド加入後、一度も負けて帰った事は疎か、『一乙』もした事がないと言うではないか!

 

 んまぁ……結局、上位初狩猟に運がいいのか悪いのか『キリン』に出会し生死を彷徨う大怪我を負ったらしいが、正直言って、新人が古龍に出会って交戦し、生きて帰っている時点で相当な事だ。熟練だって余裕で死ねる、それが【生きる災害】を相手にするって事だからな。

 

 

 

 そんで、「昨日、例の新人が退院したらしい。」って噂を聞きつけてな、かなりの働き者らしく、今日は来るだろうと思って早朝から酒場で待ってるとちょうど奴が来た。

 

 ……正直言って、目を疑った。どんな筋肉ダルマが来るのかと思ったが、別に身長が高い訳でもなく、ガタイがいいかと言われればそう言うわけでもなさそうだった。だが、奴の表情、あれは簡単に忘れる様なものじゃない、ありゃ表情筋が逝っちまってる。氷結晶で作った彫刻の方がまだ温かみがあるくらいだった。

 

 話し掛けようとも思っていたのが吹き飛んじまった、だが、奴に話しかけたあのボウガン使いのハンター、あいつの勇気には驚いたし、あいつの結末には同情するぜ、狩りの協力を問答無用で断って、更にはあの殺気。何があいつの逆鱗に触れたのか…、そんなに怒ることでもないと思うんだが、奴にも色々あるんだろうな、その後の受付嬢の親切もぶった斬った時は「コイツマジか!」って思ったさ。

 

 …だが、奴も奴で悪い奴じゃ無いらしい。ただ…不器用なんだろうな、それでみんなそれを分かってて、その上で心配してるんだろうな、出なきゃ注意なんて居ないからな、みんなもう手の掛かる無愛想な息子くらいに思ってるんじゃないのか?生い立ちも知っているらしいし。

 

 それで?、こんな話を聞いてどうしたんだ?

 

「やっと見つけた……。」

 

 ん、何だって?道が悪くて騒音が激しくてな、よく聞こえん。

 

「いや何でもないです!独り言ですよ、あっ後最後に、そのハンターが住んでいる街ってどこですか?。」

 

 街か?結構辺境ではあるが…それなりに栄えて入るな、確か町の名前は…

 

 

 

「『カッペン』、モンスターが居ない数少ない土地故に必然的に人が集まった辺境の街、あの人の故郷…。あぁ…待ち遠しい。こんな依頼を受けてなきゃ居ますぐ飛んで行くのに……でもダメよね、第一やめるだなんて彼もそんな事は許さないはず、あぁ、ようやく近付ける…私の心が壊れたあの日、私の心を繋ぎ止めたあの人、私を必要としてくれた不器用で愛しの彼は…。」

 

 

 

私が居ないとダメなのだから……。」

 

 

 

 手を伸ばす。届かないから手を伸ばす、脆く割れた幼心は、最も容易く歪に変わる。戻る機会もなければ、戻ることも望まない。彼女は過去も含めて今を望み、貪欲に光を求めるこの姿こそが……

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 息を荒げる、瞳は紅くより赤く、雪の様だと讃えられるその肌も、まるで雪溶けかの様に水を生み、獣の様に唸りながら蹲る、疼くまる。

 

「何だ?何だ?この熱は、何を?何ぜ?これは治らない……。」

 

 未知の感覚に困惑するも、本龍は否定するだろうが、その表情は誰がどう見ても蕩けきっていた。

 

 通常であればあの様な事、誰であっても許されざる蛮行として苛烈に怒り裁きの雷を降らさて居ただろう。だが、しなかった。

 

「何故なのだ?。」

 

 それは興奮、しかし今まで【英雄】相対する度に沸いて来たモノとは似て非なるもの、左目は異常に熱を帯び、胸は苦しく締め付けられ、考えれば考えるほどに頭はどんどん茹で上がる。

 脳裏に過る出逢いの記憶、抗い挑むその姿、『我』を見据え、『我』を離さない輝く瞳……

 

「〜〜〜〜ッ!…はぁ〜〜……、お前を見たい、お前をこの身で感じたい、『瞳』では足りない、『匂い』では足りない、もっと深く、もっと多く……、ぁぁ、楽しみであるぞ、『我』にその『目』を向けて、その『刃』を持って交わる日を……。」

 

 

 

 最強の個である為に、最弱の個として生きる者達を理解出来ない。やる意味もないからだ…故に彼等彼女等の言葉を覚え、その形を取り、同じ生き方をしようとも、理解に及ぶ事はないのだろう。

 『推察』は出来ても、『理解』はない。『考え方』が違うのだから……

 

 

 手を伸ばす。届いて欲しいから手を伸ばす。古くより続く刻まれた歴史の【証】が証明する。完璧であるから不変である。崩れて仕舞えば歪むのみ、戻る事もなければ、戻る事も望まない、彼女は識ってしまったのだ、不変に宿る変化の光。見ていたい、感じていたい、そう思う事こそが……

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「…クスンッ!……?」

(ヘックション!……我慢せんといて?耳とか辛いから。)

 

 草食竜『アプトノス』に引かれる荷車に、ハンターは乗り込んでいた。狩場まで行くには時間がかかる、安全なルートもいつも安全ではない。そういった事を考慮すれば、力が強く、持久力がありおとなしい彼等は、多少の強行軍も必須なこの仕事に向いているだろう。

 

「………。」

(もうそろそろかな?、アプトノスも懐かしいよ、生肉取るのに八乙かまして先が思いやられたっけ……。)

 

 ぼーっと前を見る、視界にはアプトノスの背と、それを操るアイルーの姿。

 

「…………猫か…。」

(よくよく考えなくてもアイルーが行者やってるって凄いな……人件費って奴か?ブラックそう…でもなんかあってもアイルーならしっかり逃げられるから報告も確実なんやろか?………ん?)

 

 異変、竜車が止まり、業者のアイルーが動かそうと鞭を打つ、しかしまるで効果がない様で、辺りをしきりに見渡し遂にはあらぬ方向へ進んで行く。

 

「ハンターさん!すみませんにゃ!落ち着かせるから少し待って下さいにゃ!」

 

 申し訳なさそうに此方を見ながら、アプトノスを宥めようとする行者アイルー。

 

「…いい、逃げろ…。」

(何となくわかるし、アイルーもわかってるだろう。仕事だから言わないだけで……。)

 

「にゃ!、で、でも…。」

 

「……ここからはハンターの……仕事だ。」

(こっちもこれが仕事なんでね!)

 

 そう言うと荷台から降りて、道の際を行く。

 

「ハンターさん!気を付けてにゃ!」

 

 振り返りもしなければ、手も振らない、ただ真っ直ぐ突き進む。【獲物】は"居る"。

 

 

GUuruuuuu……

 

 

 そおら、"居た"

 

 深緑に紛れる翠の鱗、空を舞い、制するにふさわしい翼、陸を駆けるに最適である強靭な脚、太く長い、巨大な毒棘を先端に蓄えた尾、女王の領域に侵入し、数多さえその身を害そうとする不届者に、今ここに!制裁を下さんとその口腔に炎を蓄える!

 

 対するは狩人、偉大なる首領より作られた鎧を身に纏い、相対する火竜の番、【火竜】『リオレウス』から作られた王の息吹を宿す剣を構える。

 

 優勢は【雌火竜】『リオレイア』。格下の生物の皮を纏おうと、王の剣を構えようと、その鎧は容易く破られ、その炎は容易く塞がれる。しかし、狩人もそれは周知の事実、その上でやりようなどいくらでもある。

 

「……何故とは聞かん……狩る…。」

(何で狩場から離れたこんな所にいるのかは知らんが…負ける訳にはいかない!)

 

GuOOOooooo…ooooo

 

 

 脈打つ心音、ざわめく木々、獣の唸り、巨竜の咆哮、それは太古より響く自然の律動………

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

クエスト名

誰が誇りを傷付けた?

 

依頼主

近隣の若い村長

 

依頼文

 最近、リオレイアが近くで暴れている。産卵期はまだのはずなのに、どうして気が立っているのか気になるが、それよりも村人に被害が及んじゃ全て遅い。かなり昔から居座っている個体で、かなり強力だが、どうか受けてはくれないだろうか?

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

ハンター君

 心と体のギャップのおかげで死んでも客観的に物事を見れる。ただ痛いのは痛いので死にたくは無い。

 因みに現実ではハンター君はレイア初見。無意識のうちに上位加入RTAやってる。

 

ルーツ

 嗅ぐだけかいて姿を消す。変態。

 

話を聞いた女ハンター

 幼少期に何かあった模様、ハンター君孤独問題に関わる。自分がいればキリンとか言うドスケルビ倒せると思ってる。実際できる実力は持ってるから困る。

 

話をしたハンター

 この世界でガンランスとか言うゲデモノを使いこなす。そしてただのガンランサー協会の名誉会員、という名の野生のプロハン。絶賛加入者募集中。

 

話しかけたハンター

 ボウガン使い、安全に稼げそうに見えて、弾代が馬鹿にならずいつも金欠になる武器種。とにかく前向き。

 

受付嬢

 想定内ではあったが、流石に100%善意をぶった斬られてドン引きする。

 

 

 

 

 




 女王は『気高く』ありますからね。さて何乙するでしょうか。
 因みに作者はサンブレイクでは太刀とガンス使ってます。その癖してガンスは永遠にバゼル一式だけ使ってます。あれエグいです、一式揃えればスロットも完成されてるからもうやばい(語彙消失)


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四乙目、pride

 こんなご供養小説を読んでくれてありがとうございます。
 今回は純戦闘回です。上手くできた気がしない…


 

 火、それは人類を導く希望の光であり、良き相棒でありながら、しかし驕り、自惚れて仕舞えば我が身を焼く敵になり得る気の難しい隣人だ。

 

 

 黄金の双眼に狩人を写し、滾る炎を射出する。『ブレス』、多くの竜種が行う基礎動作でありながら、個性の塊たる行動だ。

 

「…………。」

(あっちぃ!、避けたのにこの熱風、本当に怪物だな……なにっ!。)

 

 避けられる事は想定内、難なく横へと身を転がす。しかし避けられると事も想定内だ、爆炎の向こうから竜の右から左への横振りの尻尾が振り向けられる。込み上げる黒煙を薙、毒棘を蓄えた一撃が……

 

「………ッ!。」

(頭を下げれば大丈夫ッ!、オラッ!そこ!。)

 

 回避、振りかぶった反動で此方に出された頭部を斬りつける!

 

 

KOoAaaa…!

 

 

 苦悶の声を上げる女王、すぐさま頭を引いて左へ振りかぶった尻尾を右へ振り払うも、これもまた脚元へ潜り込む事で回避され、甲殻どころか鱗も無い腹を斬られてしまい堪らず怯む女王。しかしやられたばかりでは彼女の誇りが許さない。

 

GOOOOOッ!

 

「………ッ!クソ!」

(え?マジ!お前この体勢で無理y。)

 

 強靭な脚力に物をいわせ、翼を器用に使いバランスを保ち、尻尾を前へ縦方向にぶん回す!直下の地面を抉り飛ばし!空中で360°の大回転!、前世でも今世でもリオレイアと言えばの代名詞『サマーソルト』が炸裂した!

 

 

 

 一乙目

 

 

 

「………意地、見せてもらった。」

(サマソルは大技だからある程度体勢が整わないといけないと思っていた…実際ゲームでも予備動作があったが……流石上位個体、意地を見せてきやがった!)

 

 再び対峙、飛び出す火球、今度は後ろに回避、そして響く地鳴り、黒煙を割って出るは女王の顎、人一人程度は余裕で収まるその口腔に、掌より大きい鋭牙を揃える自然の凶器、燃える炎を迸らせ、喰らいつかんと振り下ろす!

 

「……ぐぅ〜ッ!フン!」

(いなせ〜ッ!、くそッ!)

 

 対する狩人は右手に構える盾を女王の横っ面へ押し当て何とか攻撃を受け流し、無防備に晒された頸筋!、では無く得物を喉元へ斬り上げる!

 

KOoAaaa…!?

 

 驚く女王、その場凌ぎに刃から逃げる為に持ち上げた力を利用して、体を素早く半回転、あたりを無差別に薙ぎ払う。

 

「……グォっ!?」

(やめろ!狙いの無い攻撃が一番避けずr。)

 

 回避をしようとも狙っていない攻撃は合わせ様にも合わせられない、つまり運要素が絡みやすい。そして単純に付いていなかった…。

 

 

 

 ニ乙目

 

 

 

 火球を後ろに回避し、降り掛かる顎を受け流し、無防備の喉元を斬り上げる。ここまで順調問題なし。

 

「……、…ッ!」

(外に出ても尻尾が長いから逃げられず、その場で回避は運が絡む…ならば更に攻める!すなわち潜り込む!)

 

 逃げるのでは無く、かと言って止まる事で無く、更に懐へ飛び込むハンター、踏まれないようすぐさま脚を切り付け頭上の腹へと刃を滑らせる!

 

KOo!nGoooAaaa…!

 

 無理矢理な体勢で動いた為思う様に動けずに、更に脚を切り付けられた事で踏ん張りが効かずに大技にも移れない、それでも転倒しないのは流石だが、碌な反撃もできずに大きく仰け反る。

 

「は?」

(よっしゃ押してる!体力制じゃ無いから弱点を狙えばすぐに沈む、……は?)

 

 大きく仰け反る、確かに痛みに耐えかね仰け反っていた、その口腔に在らん限りの反撃の炎を溜めて……

 

 

 

 三乙目

 

 

「………また意地か……。」

(怯みカウンターブレスとかゴリ押しにも程がある…流石モンスターの生命力だからこそできる事だ…。)

 

 ゲームなら三乙で終了、ゲームでなくとも三乙目で危険と判断され即座に問答無用で撤退だが、多くの場合一乙で身を退く、理由は単純。生き残っただけで奇跡、そんな奇跡を棒に振る輩などいないからだ。

 

 

 

 行く度に及ぶ対峙、試行錯誤を重ねる。

 

「ッ!グボァッ!…。」

(毒棘デカすぎ!毒とか無くても死ねる。)

 

 さっきは毒棘に串刺された、毒は気にするな…。

 

 ある時は捕まり、その身を食いちぎられた、行動を更に注視しろ…。

 

 また突進に轢かれた、受け身を取ればまだ戦える、早く慣れなくては…

 

 噛みつきに炎を付与され焼かれたところを轢き潰された。範囲が広くなる。その顎を確認せねば…。

 

 度重なる死、しかしその屍の上に得た経験を持って女王を確実に、追い詰める。

 

 黄金の双眼は色褪せる、翼は破れ、鱗は剥げて肌を晒す、傷は焼き切れ激痛を生み、その動きを鈍らせる。

 

 狩人の双眼は光を灯す、防具は焦げて入るもののそれっきり、剣の血糊は焼け焦げ霧散し、的確な攻撃は刃こぼれすら起こさない。故にその切れ味が落ちる事はいまだに無く、狩人の戦意もまた落ちる事は決して無い。

 

 睨み合いのうちに初めに大地を駆けたのは狩人、反応できても回避ができない。火竜の息吹の度に喉は焼き切れる。それでも息吹を吐き続けれるのはその驚異的な再生能力によるごり押しだ。だが、疲弊し切った今、十分な再生は行われず、残されたのは巨体による突進のみ。女王は最後の抵抗とばかりに地を駆ける!

 

「………倒す。」

(最後っ屁に当たってたまるか!終わりだ!)

 

 

……

 

………

 

 閑寂、無風を乱し、接近す、

 

…………

 

 争い嗅ぎつけ飛来せし、無法者、

 

……………

 

 紅蓮に滾る誇りをぶら下げ、

 

………………

 

 飛来せし、気高く、傲慢な非道は灰を被り、空の悪漢は銀翼の下に天を焦がす。

 

 

ズドーーンッ!

 

 

KAaaaaaaOOOOOOッ!!!!

 

 

 

 響き渡る爆音は静寂に対する宿怨故に!

 

 調和こそ我が敵!支配こそ苦痛!安寧こそ仇敵!

 

 全ては翼の下に我の物。上げる雄叫びは不気味に響き、紅蓮に燃る大災難が大襲来!

 

 【極熱の爆鱗竜】『紅蓮滾るバゼルギウス』  乱入 

 

 

 

 十六乙目

 

 

「は?。」

(は?、バージーギース?(錯乱)えっ、デッカ、え?そんn)

 

 余りに一瞬、余りに呆気なく、努力は爆炎に燃やされ、理解が追い付かないハンター、しかし女王は待ってはくれなかった。

 

 

 

 十七乙目

 

 

「はッ!、しっかりしろッ!。」

(はっ!しっかりしなければ…無理だ!理解が追い付かん!バゼルギウス?それも特殊個体!?何でここにいるん?てかこっからなの!?いやおかしいって頭おかしいって!ア"ッ。)

 

 混乱する思考、雑念混じるその頭で片手間に狩りをするほどの技量は無い。

 

 

 十八乙目

 

 

 

「………いつも通りか。」

(落ち着け…、何も全て無駄になったわけでは無いんだ、リオレイアとは戦える、紅蓮バゼルが来ることもわかった。その上ですることは?狩る。狩って生き残る、いつも通りだ。)

 

 そう、結果いつも通り、この世界に生まれてこの方まともに行った事を数える方が断然楽、何しろそんな事無いからだ、思考を狩猟に向け、何とか要らない思考を隅に追いやり、再び対峙する羽目になった女王を捉える。

 

 

 

 文字通り死んで覚えたリオレイア戦、何も奇跡が起きて追い詰めたわけでは無い。全て彼の努力の賜物だ、多少のイレギュラーはあれど先程と同じ状況へと持っていく。

 

「……何処だ?」

(時間的にもう来てもおかしく無いが……。)

 

 当たりを支配する静寂、ボロボロながらもその目には生きる光を絶やさない女王の呼吸、目を離す事は許されない。視覚は向けつつ他の五感を限界まで研ぎ澄ます。

 

 

ウォ〜〜ォ〜〜…

 

 微かに、ほんの微かに聴こえる風切り音。

 

……GUO!?

 

「………。」

(流石にお前も気付くよな、……あの巨体でこんなに意識しないと聴こえないってそれはダメでしょ……。)

 

 瀕死とは言え感付く女王、不意に目線を逸らすと同時にハンターも同じ方向を視認すると、そこにはずんぐりとした巨大に、大量の赤熱した何か丸いものをぶら下げた、見るからな危険な飛竜が真っ直ぐ此方へ突っ込んでくる!

 

 

ズドーーンッ!

 

 

KAaaaaaaAOOOOOOッ!!!!

 

 

 しっかり見ていれば回避は困難では無い。何より二度もやられる程弱くあるつもりもない。

 

 突っ込んだ先はリオレイア。圧倒的な質量と爆発に押された陸の女王のその肉体は見るも無惨な肉塊へと姿を変え、それを成した爆鱗竜は次なる"敵"へと視線を向ける。

 

「………"戦い"か、受けて立つ。」

(これは狩りじゃない。あのイャンガルルガと同じ戦いだ、手加減なんてしてくれない厳しい戦いになる……。)

 

 三度その姿を観察する。成る程、リオレイアよりも一回り大きく全体的に丸くい体格に、鈍く輝く銀の鱗、空の王よりも巨大な銀翼と、陸の女王よりも筋肉質な脚を備えている、しかしそれだけだ、その爪は太いが丸く、鋭利な牙も無ければ頭部も小さく、攻撃的な棘や、甲殻の出っ張りですらない。特徴的な部位といえば、大きく横に張り出た首と尾先の下面にぶら下がる、大量の赤熱した『爆鱗』くらいであろうか。

 

 

 だだし侮っては行けない。パッと見れば愚鈍で丸っこいデカいだけの飛竜だろう。しかし目撃者は口を揃えて【危険】だと言う、それも、言いようのない不安から来る危険と言う。例えるならば空襲サイレン、聴く分にはただの音、ただの音の筈なのに言いようも無い不安と焦燥が押し寄せる、すなわちそれなのだ。

 

(こいつには本当に苦労したよ、バゼルギウスの性質も相まってな…。)

 

 『爆鱗』、鱗とついているが、実の所『爆腺』より分泌された体液が固体化したもの、人で言うところの汗に近い物、なので生成は早く途切れる事なく生えていく。

 

 

KAaaaaaaAOOOOOOッ!!!!

 

 

 明らかに尋常では無い、別の意味で身震いする咆哮を挙げながら、翼を広げて突進する。そしてバゼル種を代表するその不気味な声は、あらゆる生物を不安にさせる。

 

「………。」

(レイア程の速度では無いが、威圧が凄い…。)

 

 回避し振り返るとそこには悠々と大空を滑る様に飛ぶ爆鱗竜。不意に方向を変えるとハンターの頭上を飛び回り、大量の爆鱗を降り注ぐ。

 

「ッ!、クソ!」

(一番ダメだって!無差別爆撃とかダメだって!うおッ!)

 

 空襲、その姿は正に生ける爆撃機そのもの。最後に体重と速度にものを言わせた飛び込み攻撃!

 あたりは一瞬にして焦土と化した、バゼルギウスの代名詞。一度戦闘の気配を感じ取れば、音もなく接近し、奇襲と共に両者もろとも爆炎の渦に叩き込む!正に非道!傍迷惑!

 

 とある学者はこう言う「【金獅子】、【恐暴竜】、【爆鱗竜】、ハンター達の中では『三馬鹿』として語られるこれら【古龍級生物】たちの中で、一番タチの悪くて生態系に影響を及ぼすのは、間違いなく爆鱗竜だろう。その特殊個体にもなれば、それはそこらの古龍なんか目じゃ無いくらいの被害をもたらすだろう。」と。

 

(あたり一面真っ黒焦げだ…、一発で家が吹き飛ぶ訳だ…。)

 

 唖然とするばかりでは意味がない、恐れるばかりでは話にならない、突っ込んだ際に大きく隙を晒したその瞬間、焦げ付く地面を蹴り付け駆けるていく!一気にその距離を詰めると切先を向けて突進する!

 

 狙う部位は脚、翼は高くて狙えず、ゲームでは『性感帯』とまで言われた首や尻尾は、今では凡ゆる爆発と衝撃に耐えうる盤石な鎧と成った。故に狙うは装甲化されていない脚と腹!

 

HUOOOoon!!!

 

 情けない声を上げる爆鱗竜、巨大故に動きは鈍重、飛ぶにも助走が必要様で、肉弾戦は得意では無い、のだが……

 

「(……あっ。)」

 

BOOOON!

 

 

 十九乙目

 

 

「……クソ!」

(ファ!?、ランダムで零れ落ちる爆鱗で爆死!?回避不可だろ!ふざけるのも大概にしろよ!)

 

 

 鋭く無い爪、小さい頭部に弱い顎、棘も無く、その力を活かせる部位もない、そんなバゼルギウスを強者たらしめる爆鱗は、その行動に関わらず、勝手にボロボロと落ちていく。

 

 爆死、爆死、また爆死。少し圧死を挟んでまた爆死。

 

 尻尾を斬ればまた爆死、頭部を斬ればまた爆死、脚を斬っても、腹を斬っても爆死、爆死爆死の爆死地獄……、救いと言えばレイアがスキップされている事か?、正しく爆ぜる道を超えた先、等々刃は遂に悪漢を追い詰める。

 

 

guuuuuooooo

 

 

「………本番…。」

(蒼くなった、滾りに滾ってかた様子だな……。)

 

 蒼く輝く爆鱗をばら撒けば、大地は勿論、焦げた樹木にまで"くっ付いた"。着弾した爆鱗はその体積を数倍にまで膨らませ弾ける様に爆発する!

 

 

 

BOOON!!!

 

BOON!!!!

 

BOOOOON!!!

 

 

 

 爆発なんてお構い無し、最後に視界に映るのは、爆鱗を撒き散らしながら全てを無視して突っ込むバゼルギウスの姿であった。

 

 

 

 四十五乙目

 

 

ブルルルルル……

 

 まるでヘリコプターの様な音を立て、爆鱗を回転しながら撒き散らす飛び上がるバゼルギウス。その意味を知るハンターは急いで踵を返して逃げようとするも、そこには破裂寸前の爆鱗が!

 

「……ダメか…。」

(あっ詰んだ。)

 

 振り返れば真下へ突っ込むバゼルギウス姿が…

 

 一瞬の無音、かの炎帝の繰り出す爆発に匹敵する強烈な衝撃が走る。

 

 

 

 五十一乙目

 

 

 

 何度も見た此方へ突っ込むバゼルギウス。しかしハンターの姿が何処にもない横か?前か?はたまた後ろか?

 

「……ここだ!」

(上だボケ!)

 

 突っ込むタイミングで上へ跳び頭部にしがみ付く絶技をかます。触れた頭はほんのり暖かくもあるが、そんな事はどうでも良い、取り出す得物はハンターナイフ、取り回しが良いので多くのハンターが愛用する品であり、だからこそこの状況で輝くのだ。振りかぶって鱗の隙間目掛けて突き刺す!突き刺す!突き刺す!

 

「…静かにしろ!…フン!」

(クソ!いい加減黙っとけ!)

 

 疲弊により動きが鈍る、正に千載一遇の大チャンス。ただでさえ鈍重な動きに拍車がかかり、脚を縺れさせたのかバランスを崩す。

 

「……ッ!」

(おら!沈めッ!!!!)

 

 更に降ってきたチャンスを逃すまいと『コロナ』に持ち替えトドメを狙う。突き立てる先は狂気と怒りに満ち満ちた赤い"目"。

 

KAaaaaaaOOOOOO!!!!

 

 無敵の怪物などいやしない、全ては自然に生きるただの【生き物】であるのだ。例えそれが何であろうとも…意外にも最後は呆気ないものだ。

 

 大量の血と共に吹き上がる煙、高温の刃に触れた血は触れたそばから気化して行く。その様子はさながら、地に伏せた巨竜の魂がその肉体を捨て、天に昇って逝くかの様だった……。

 

 

 狩猟完了

 

 力尽きた回数 0

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ハンター君

 (乱入)いや〜キツいっす

 スキル根性は結構精神論。でも精神崩壊しないのはこれのおかげ。

 

リオレイア

 バゼルが侵略の兆しを見せて焦ってた。無事死亡。

 

紅蓮バゼル

 神出鬼没でかなり厄介、まだ現大陸に出現して間もないので観測隊も予想外、縄張りを求めて広範囲を飛来する。基本的にジャイアン。

 

 




 イビルとかラージャンは使い古されてたのでバゼル君に登場させてもらいました。でも一番の理由はバゼルギウスが大好きだからですね。


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五乙目、躍進

 至らない点を指摘してくれる事自体とても嬉しくい思います。調べて見ると本当に発見しかない…。
 何処まで続くのかわかりませんが時間とモチベの限り続けたいなぁ……てか誰かこう言うの書いてくれんかな。(本音&他力本願)
 て事で強化イベントです、てか少し長いです。


 

「リオレイアの狩猟中に乱入して来たから紅蓮バゼルを討伐しただって!?そんなついで感覚で片付けられる様なモンスターじゃないんだぞ!?他のニ馬鹿とは訳が違う。【大災難】、なんて言われてるからにはおっかねぇ奴なのによ…。」

 

 驚嘆の声を上げたのは、討伐したモンスターを回収する為に来た回収班のリーダー。もう二人と五匹と一頭を連れ、文字通り、狩猟ないし捕獲されたモンスターの回収するのが彼らの仕事。上位成りたての筈のハンターが、下位ジャギィ一式でリオレイアを狩猟したからと向かって見れば、そこは一面焼け野原。肝心のリオレイアは酷い有様、何があったと聞けば耳を疑った。なんとあの紅蓮滾るバゼルギウスを狩ったと言うではないか!

 

「だが、目の前のそいつは間違いなく紅蓮バゼルだ…、俺も見るのは初めてだが、死体のはずなのに身震いが止まらねぇ、…死んでもその身が巨大な爆弾だ、皆んな!気を付けてかかれ!こんなので解体中に爆死だなんてした日には、家族に合わせる顔がねぇ!」

 

「「はい!」」

「「「「「にゃぁ!」」」」」

 

「……。」

(ついで?むしろこいつが本番だったよ!っと言っても事情を知らないから仕方がないか……死に戻りしてるだなんて、信じられる訳がない、地震雷火事嵐、果てには不死身から完全生物まである世界でも、流石に死に戻りは訳分からん。)

 

 物思いにふけながら、手際よく解体していく様子を遠目に見る。出立の竜車がそのまま帰還の竜車になっているのだが、諸事情により帰してしまったので、回収者に連れて行って貰わなければならないのだ。

 

「………成る程。」

(へ〜、ゲームじゃアイコンくらいでしか分からんかったけど、爆腺ってああなってるんだ……。こいつの鱗と甲殻って何で分けているんだ?素人目じゃ同じに見えるぞ。)

 

 初めてと言いつつやはりプロ、慎重に、手際よく進めていく様は見ていて清々しい。解体現場は確かにグロテスクだ。だが、丁寧に、計画的にばらされていく様子は不思議と不快ではない。捕食で食い荒らされた物とは全然違う。ただ、捕食以外で荒らされてしまったものもある。焼き引き潰されたリオレイアの遺骸が……。

 

「ハンターさん、すまねえがリオレイアはダメだ。ああなっちゃあ自然に任せた方がいい、それに無理に漁るのはリオレイアに、そして命に失礼ってもんだ。ん?バゼルギウスはまだ余ってるぞってか?ま、命懸けで狩猟したんだその気持ちもわかるが、何事もがっつくのはお行儀が悪いって事だ。全てを育む自然に幾らかは還してやらねえとな?」

 

「…大丈夫だ。感謝は…大切だ。」

(これでも多少の裏設定は知ってるよ。「自然に感謝」、「命に感謝」、だからな。バゼルギウスはどんなもんになったか気になっただけだぞ。やましい事なんてな〜にもない。いや本当に嘘じゃない。)

 

「お?いや済まない。謝らせてくれ、やっぱり人は見かけに寄らねえな、勝手に勘違いして悪かった。さってと、全員!荷物を纏めろ!帰還の時間だ!」

 

 運び易いよう部位ごとに纏められ、竜車に積んで帰還する。ふとポーチから二つの鱗を取り出す。ゲームで言うところの『落とし物』、翠の鱗と銀の鱗だ。

 翠の鱗を注視する。なんて事はないただの鱗。刻まれた細かな傷が物語る。女王の強さと命を証明するその欠片、かつてありきたりであったが、今となっては一つだけになった、ただの鱗だ。

 

 銀の鱗を手に持ち空に掲げて見上げてみる。なんて事はないただの鱗、灰を被ったかの様な銀の鱗は、夕陽を反射し紅蓮に滾る竜の闘志を、そして誇りの証を写し続けている。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 所変わって現在、ハンターの姿は熱気と活力に満ちた工房にあった。

 『加工屋』、ハンターの武器と防具、その他諸々を作ってくれ、更には一般人にも必要な必需品も請け負う、街の最重要施設の一つだ。

 

「よう!ルーキーの癖して紅蓮バゼルを狩り飛ばしちまったんだってか?街はその話で持ちきりよ!それで!ここに来たって事はその素材を加工しに来たって事だろ!任せとけ!鍛冶屋歴1253年のこのオレが、お前にぴったりの武器と防具を見繕ってやる!…紅蓮バゼルだなんて128年ぶりだ!腕がなるぜぃ!」

 

「……。」

(流石加工屋の親方、けっ桁が違う…やはり竜人族、とんでもない長寿だ…。)

 

 事あるごとに桁の違う数字を、当たり前の様に叩き出す目の前の竜人族の加工屋、長生きとはいえかなりお年を召している様で、普通は人類と同程度の身長も、成人の腰の下までにまで縮んでいるが、その元気さはまるで歳を感じさせない。身の丈ほどのハンマーを肩にかけ、目を輝かせていた。

 『竜人族』、人類とは違う、人類と似た進化を遂げた一つの生物。気の遠く成る程の寿命を持ち、尖った耳、四本の指に、足の形もどちらかといえば竜に近い。多くのものがその寿命故に植物の様な思考の元、人から離れて日々を生きているが、人と共に暮らす事を選ぶ者も多い。長寿故に蓄えた貴重な知識と経験は、様々な分野で重宝されている。

 

 

 

「お前さんの体格はお世辞にもいいとはいえねぇな、軽装か?重装か?何処を盛って何処を削る?武器は片手剣か…、リオレウスの防具は難なく装備できたのなら限界パフォーマンスはそこまでだな、最重要部位は残しつつあとは腕の見せ所だな、武器はどうする?やっぱり片手剣か!だが、バゼルギウスの片手剣は製造されてないんだ、お前さんなら太刀か双剣が使えそうだ、どうだ?どっちにする?」

 

 

「…………。」

(装備重量は軽量か?…あれ?片手剣無かったけか?ないなら仕方がないか、うーむ、双剣はそこまで攻撃的になれないし、太刀はかっこいいし実際強いけど…俺じゃ2メートル越えの武器なんか振り回されるだけだ……、ここは無理を言って片手剣にして貰うか?どうしよう……。)

 

 何も言ってないのに言葉の濁流で攻めてくる加工屋の親方に、されるがままのハンター、話をふられて考えに考えるも答えは出ない。が、体は正直だった。

 

「片手剣だ。」

(言うべきか…は?何勝手に言ってるんですか?)

 

「済まないがバゼルギウスの片手剣は造られた事がn「片手剣だ。」……。」

 

「金ならいくらでも積む、片手剣だ。」

(親方困らせてんじゃねえよ馬鹿!例え金積もうとないものはないんだよ!…あのさぁ(諦観))

 

 

「……………。」

 

(ほらやっぱりダメだ。今からでも取りk「面白い!」は?)

 

「それはワシへの挑戦か?ワシを見込んでの注文か?まぁんな事はもうどうでも良い…面白い!それもそうだ!前例が無いなら作って仕舞えばいい!こんな事に気付かんとは…カァー!歳はとりたくない、頭が固まって仕方が無いわ!金なんて積まんでええ!通常料金で最高の一振りをお前に持たせてやる!」

 

「………軽量で、最低限だ。」

(なんか上手くいったのか?…あっあと軽量化でオナシャス!。)

 

「お?そうじゃ防具も必要だったな!武器の事で頭がいっぱいでもう忘れとったわ!採寸取らんといかんからな、あとで他のもん向かわせるからそこで待っとれ!出来次第呼ばるから明日はクエストに行くな。わかったか?よぉ〜し、久々に加工屋魂が震えてきたわい!」

 

「…………。」

(……、下手なモンスターよりも生命力に満ち溢れた爺さんだ。)

 

 

 

 そのあと来たお弟子さんに採寸を取って貰い、軽く要望を伝えた後家路に着くハンターだった。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「………。居る、閉めたはずだが。」

(体感的には懐かしの我が家なのに………侵入確定ですねはいありがとうございました出てってくれ頼むからお願いしますお願いします。)

 

 ガチャリ

 

「ようやく帰ったのか!だが、何処寄り道してたのかは聞かないでやろう、我は機嫌が良いからな!見ておったぞ?ハンターよ、流石『我』の見込んだ【英雄】じゃ!火竜の雌も極熱の爆鱗竜もお前の敵ではなかったか!」

 

「…何故居る、何故知っている、何故分かっている。」

(え?何で居るん?てか知ってるん?てか動きまで把握してるとか。え?何でこんなに喋ってくれるん?)

 

「?何故?我はお前を観なければならないのだぞ?一緒に居て、お前を把握しなければ、観るものも観れなかろうて。」

 

 飛び出る言語の全てに思わず困惑。さも当たり前の様に語ってきた自身のプライベート破壊宣言に声が出ない。

 

「お前の動きは眼を見張る!ハンターとしてはまだまだの筈のお前が、まるで狩り慣れたかの様な動きで持って動きを見切り、一方的な攻撃に持っていく。更に竜ですら気付かなかったあの奇襲を難なく感じ取り完璧に回避!予測不可能な爆発を避けて泥臭く駆け回り、雌伏を持って場を制する!特に最後の一撃!あれは我の左眼が疼いた!それに…。」

 

「観なくていい、居なくていい。…聞いてない。」

(いや観るなし居るなし、って言っても無駄か…頼んでも無いのに語り始めたよ、この祖龍系自己中美少女、何でそんなに事細かに情景を喋れるんですかね?)

 

 永遠に狩猟情景を語り続けるルーツを無視して中に入る。完全に自分の世界に入っているのか、無視しても後ろを付いて来て永遠と喋り続けるルーツ。

 

(普通に恥ずかし過ぎるし、え?なに普通に可愛いくて困る、何この下からこちらを覗きながら後ろを着いてくる生物、こいつがあの龍ってま?)

 

「……成る程可愛げがあるな。」

(は?確かに絶世の美少女とはこいつのことを言うんだろうが、それを実際に言うのは違うだろ!)

 

「竜と龍の一線を力のゴリ押しで乗り越えてくるあやつを制する……え?なんて?」

 

「何だ、今のお前には可愛げがあると言った。」

(だからち〜が〜う〜だ〜ろっ!!違うだろ!)

 

 

「かっ可愛げだと!?龍である我を?かっ仮にもお前ら人類が【禁忌】と定義し忌み嫌う存在であるのだぞ?それは確かに好かれる様な見た目は目指したが…、そもそも人間如きが我に対して上から物を言うなど、前代未聞だ!」

 

 

(ほらみろ、真っ赤になって困惑していらっしゃる(絶望)、この英雄様は肝っ玉がラオシャンロンよりも大きいらしい。あー飯でもつくろうなかぁー(現実逃避))

 

「何を固まっている、飯を作る…待っていろ。」

(祖龍をガルクみたいに扱ってますよ、やっぱ好きなんすねぇ(錯乱))

 

「なっ!なっ!…。」

 

 驚いて声も出ない。生まれてこの方、誰が相手であっても恐れられる存在であり、英雄にだってこんなに適当に扱われた事がない彼女に取ってして見れば、正に前代未聞。普通なら激怒するのであろう。しかしことハンターに対して怒りは湧かず、満更でも無い自分がいる事に激しく困惑する。形容し難い感情で胸が埋め尽くされてしまい、果てには気にもなく飯を作ると台所へ向かっていってしまった彼に、まるで理解が追いつかずフリーズしてしまう。

 

 

「……うへっ、か、かわいい?我が?……は?、はっ、いかんいかん、我ともあろうものがこれしきのことで……。そうかぁ、やっぱり?」

 

 

 その顔と声に威風は無い。彼から得られる全ての事象を楽しむみ喜ぶ彼女にして見れば、過去と未来どちらを選ぶかなど考えるまでも無いのだろうか?ただ残念と言うべきかは分からないが、彼女は変わってしまった。彼女の威厳という名の過去は日々崩れていっているのかもしれない…。

 

 

 

 夜、各家庭では1日の話に花開く団欒の時間だ。一部を除いては

 

「…………。」

 

「………。」

(なっ何だこの地獄の空気は……気不味い、その全てが気不味い!)

 

 無言の食事。互いに話どころか何もない、味のしない夕飯をひたすら口に運び、この場から離脱したい気持ちもあるが、空気が重すぎて手が思う様に進まない。

 

「……何処に寄っていたのだ。もっと早く街に戻ってたのであろう。」

 

「……加工屋に寄った。」

(え?加工屋ですが…、話した?この空気で?何か裏でも…。)

 

 まさか話を振られるとは予想しなかった。低めの声で機嫌がいいとはいえないものの、先程よりはまだマシと、何とか明るく努めるもののもちろん上手くいかない。

 

「加工屋?何故?」

 

「バゼルギウス……武器と防具の為だ…。」

(装備作成の依頼です。いゃ、とんでもなく長生きの竜人族のおっちゃんがいてな?年甲斐にもなく目を輝かせて……ってそれだけだと空気が変わらないだろ!)

 

「バゼルギウス?そんなもの使わなくても我に頼めば鱗な一枚や二枚、お前にくれてやる事もないのだぞ?」

 

「要らない。」

(祖龍素材なんかいきなり出しても困惑しかないでしょ。汎用性だってわからんのに。…いや拒絶早すぎひん?)

 

「お前など役に立たん。クンチュウの方がマシだ。」

(そこまで言ってない。絶対言ってない。お前本当に嫌いなんだな(自問自答))

 

「我が言うのもなんだが、我の鱗は多くの人間どもが喉から手が出るだのと例えるほどの素材なのだぞ!?…役立たずと言われた挙句にそれをあの虫けら以下の価値だと?遠回しに我を虫以下と貶しているも同然。お前、わかった上で言っているのか?」

 

「勿論だ。俺は寝る。お前も寝ろ。」

(言ってないんだよなぁ〜。)

 

 こうもはっきりと面と向かって貶された事のないルーツ。それもこの姿故に舐められて言われた訳でもない。本当の姿を知り、その身を殺されかけたのにも関わらず、なんの躊躇いもなく言い放ったハンターに押されてしまった。

 

「『我』が押された?誰に?『人間』に?……。」

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 昼頃

 

 

「ガハハッ!徹夜で完徹!ワシの技術が恐ろしいわい!ホラッ『バゼルアヴター』、どっかの言葉で『無法者』って意味だ、未だ製造されたことのなかったこいつには『縛り』なんて必要ねえ、それに常識破りのお前さんをピッタリお似合いだ!」

 

 中心に行くにつれて赤熱していく円形の盾と、バゼル武器の太刀バージョンを短く、太くした感じといった風貌。試しに一振り、リオレウスとは違う重みを感じる、切れ味も威力も確実に上、癖のある形をしていないので振りやすそうで、何より属性の『爆破』がとてもいい。

 

「………。」

(爆破属性。ゲーム内では取り敢えずもっとけば問題ない雑に強い状態異常。……何よりカッコいい!本当にドキドキが止まらない!)

 

「ん?気に入った様だな?取り回しやすさを追求した、お前さんみたいなやつにはピッタリだと思うってな、爆破属性については知ってるか?『コロナ』は斬りつける度に炎が噴き出るが、こいつは斬りつけるたびに爆破性の粉塵が引っ付いていくんだ、その果てに小規模な爆発が発生する。どの段階で爆破するかは色を見ろ、すぐ分かる。試しにそこのを斬ってみろ。」

 

 試しにそこの丸太を斬りつける。成る程斬る度に粉塵が飛び、それが段々赤くなっていく。そして五回目、起爆した。

 

「………っ!、なかなか……。」

(えぇ、木とはいえ木っ端微塵かよ。)

 

 爆破で剣がぶれるなんて事はなかった。起爆までタイムラグがあるらしく、何も斬った瞬間に爆発するわけではない様だ。

 

「久しぶりに見たがやっぱ爽快だ!次は防具か…ほれこいつだ、機動性重視で通常設計より軽めに作った。スキルは…『高級耳栓』と『爆破強化』と『根性』だな。そのまんまだ。」

 

「………。」

(あんまり変わってね?確かに普通のバゼル防具全然覚えてないからわからないけど、まあまあ重厚そうよ?)

 

「ん?変わってないってか?ところがどっこい、着てみりゃわかる。」

 

 促されるままジャギィ防具からバゼル防具へ変更すると、成る程確かに思ったよりも軽いではないか!皮を主軸に作られたジャギィに比べれば重いものの、リオレウスと同等かそれ以下にまで重量が抑えられ、関節部位も出来るだけ干渉のない様な作りになっている。

 

「バゼルギウスは長距離飛行に長けた飛竜種だ、見た目の重厚さの割に軽くて丈夫。衝撃に強く壊れにくい、防具としてこれ以上の物はなかなかない!」

 

「………成る程。」

(はえ〜、ありがとうございました!……、もう突っ込まんぞ、さて一旦家に帰ってギルドに寄ってクエストに行くか、試しは必要だからな。)

 

 生まれ変わっても男の子。強い物はカッコいい。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 龍は暇だった。最強の個故に暇だった。

 

 ふと龍は人を見てこう思った。

 

 面白そう。

 

 凄く弱いのに凄く強い。複雑で突拍子の無い事をして、独自の世界を生きる種族。単純な世界で生きる龍にとってしてみれば、何から何まで違う生き物だ。

 

 龍は手始めに人に成り、人に紛れて人を見た。そして人の考えは面白かった。

 

 人が作った面白いもの。

 

 人から見た自然のあれこれ。

 

 人の価値観、物事の捉え方。

 

 人が感じた『心』の表現。

 

 特に『心』と『価値観』、龍どころか自然から逸脱した独特で不思議な考え方、あの時はよくわからなかったが今なら何となくだが分かる。

 

「………今となっては【英雄】が好きなのではない。『我』を睨み喰らいつく『我』だけのハンターが好きだったのだな…好きで気になって手に入れたくて仕方が無い。みれば見るほど魅入ってしまう。」

 

 ただの人でありながら、ただの人ではない、全てが気になって仕方が無い、それに思考が埋め尽くされる、一挙一動に注目してしまう。窮地に足掻く姿を想像するだけで蕩けてしまう。

 

『可愛げがある』。自分を見てそう言った。自分に対してそう言った。自分を意識してそう言った。

 

「変わってしまったのだな、我も。だが拒否感などまるでない。」

 

 広く浅い刺激は深く狭く、彼女だけを突き詰める。

 

 気まぐれに差し伸べた手を払い、いつまでも、何処までも反抗的なその姿。思い通りにいかない事が心地よい。考え無しに信じ続けれる事が気分が良い。単純なのに表せない。自分だけとは何と良いのか。

 

 

 

 

「あぁダメだ。つくづくお前は常識破りだ……その足掻きが美しい。その瞳が眩しい。その在り方が愛おしい。這い上がるその時が姿が待ち遠しい。そしてあわよくば………その終わりが『我』であって欲しい……。」

 

 

 愛しの愛しの【英雄】よ、我の為の【英雄】よ、

 愛しの彼が傷だらけで立ち上がる姿を……見ていたい。

 愛しの彼が傷だらけで立ち向かう姿を……見ていたい。

 私は貴方の輝きに魅入ってしまったのだから…。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ハンター

 新しい装備にウッキウキ、根性が強化されてよりしぶとく死に難くなるよ!(死なないとは言ってない)

 死んだ表情筋に目が行きがちだが、別に目は死んでない。ソロ専だから気づかれてないが、戦う姿は誰よりも眩しくある。

ルーツ

 人化が続き、人に触れたせいで軟化してきている。英雄大好き厨だったのが、いつの間にかハンター大好き厨になってた事にちゃんと気付く。その上で愛しい人が地獄で足掻く姿を想像して胸を熱くする変態。

 

親方

 人間数世代分の技術を会得しているため、普通に知識の宝庫。若い頃は大人しく、何となくで生きてた為、チャレンジする発想がなかなか出ない。

 

弟子

 親方の技術に惚れ込みました!

 

回収リーダー

 ポッケナイナイとかしないから信頼されてる。板前の料理人みたいな手際の良さ。

 




 よくわかんなくなってきたから4gでミラルーツしばいて来ます。


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六乙目、今昔

い、色が付いてるだと?
ないから自給自足の精神で投稿し始めたのでめっちゃ嬉しいですね。
て事で少し過去編挟んで本編です。


 

 竜車に揺られて本を読む。内容はこの世界の生き物について。ふと後ろを見れば二台程、同じ轍を進んでいた。

 

「お?何読んでるんだ?ふ〜む、そいつはどんなモンスターなんだ?教えてくれカナク。」

 

 突然声が降り掛かり、ごつごつした大きな手が頭を押されて来る。声の主を見上げてみてもモヤがかかってよく見えない。

 

「……ドククモリ。モンスターじゃないけどとても危険。」

 

「ハンターのくせにそんな事も分からないだなんて、それじゃ貴方がやって来れるか心配ね。」

 

 わざとらしく腕を組んでそう話す女性に、心配するなと声を掛ける男性。そして何より、その光景を気にも留めずに本を読む……自分?

 よく分からないがとても懐かしい。いる事が当たり前、そんな人達だ。

 

「お子さん、本を読むんですね、私の娘にも見習わせたいくらいですよ。」

 

 そう声をかけて来たのは向かいに座るもう一つの夫婦。娘の姿は見当たらない。

 

「娘?ですが見当たりま……あっ、え?あとのアプトノスに乗っているあの子ですか!?」

 

「そうです。相当に駄々をこねて困っていた所を親切にも行者さんが乗せてくれたんです。少しだけって、それで納得してもらいましたよ。」

 

「活発な事はいい事ですよ!寧ろ私の息子が娘さんを見習って欲しいくらいです。将来は学者を目指しているのは理解してるんですけど、だからと言って一日中本の虫って訳にもいかず……。」

 

「大変ですね、お互い。」

 

 両家族からの朗らかな笑い声が、竜車を包む。少年も、無表情ではあるがこの空間がとても居心地が良かった。

 

「所で、お父さんはハンターで?感謝ですね、私達が安心して暮らしていけるのも全て、ハンター様のお陰ですから。」

 

「いやこの人はそんな物じゃないですよ。リオレウスも狩れない弱腰ハンターです。」

 

「ひどいぞカナメー、リオレウスと一口で言うがめちゃくちゃ恐ろしいんだぞ?」

 

「情けないこと言う暇あるならちょっとは勝機への道でも模索したらどうだい?ロマンで正面からやり合えだなんて一言も言ってないよ。」

 

「だけど、う〜〜ん。」

 

「はははっ、小型モンスターにですら3分も持たない私からしてみれば雲の上の話ですな!」

 

「あら、流石にそれは頼りない。娘よりも動けない父親なんて幻滅されちゃいますよ。」

 

「しかし、う〜〜ん。」

 

 大黒柱ゆえの悩みだろうか?夢を目指すのも置いてはいけない。義理を果たしたくても着いていけない。だが、それで下を向くほど彼らも軟弱ではない。それをわかってイジワルに揶揄うのだ。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 何事も一瞬。良い事も悪い事も、長く感じようが短く感じようが、実際、感覚は当てにはならない。

 

「………?」

 

「……。!!!起きたのね!良かった……。」

 

 伝わる鼓動、感じる温もり。視界に入るは優しい笑顔、読めなくとも分かる、雰囲気で分かる。抱えられた母の揺籠、世界で一番落ち着く居場所。それ故に。

 

「何があったの?」

 

 まるで違う外の様相について来られずとも落ち着いて要られた。

 

「……ちょっとモンスターが襲って来たの。でも大丈夫お父さんがモンスターを追っ払ったのよ。でも……。」

 

 不意に言葉を濁す。何か誤魔化そうとしている事は分かっていた。何が起きたかも分かっていた。でも黙っていた。黙って聞かないといけないから。

 

「竜車が壊れちゃって、ここから少し言ったところに、太陽が沈む方へ行ったところ、そこに大きい村がある。賢い貴方なら行ける。私は後から行くわ。お父さんを置いてはいけないもの。」

 

「…………………………。」

 

 一つ頷く。分かっても頷く、それしか出来ないから、何も出来ないと知っているから頷いてしまう。

 相変わらず表情は読めないが、安堵の表情だとわかる。いや、ここはそうだと知っている。

 

「…諦めないで。貴方は強い、絶対に折れない不屈の心を持っている。心配しないで、貴方を世界で一番理解している私が言うの、だから大丈夫。それと……はいこれ、お父さんが貴方に、不屈の証として贈り物。」

 

「…お父さん。」

 

「あぁもちろんお父さんも一番よ。愛する心は全く同じ、だから一緒の一番。さっ行きなさい。」

 

「……………。」

 

 振り返らない、振り返ってはいけない。僕は見てない何も見てない。お母さんは普通に歩ける。お父さんを待ってるだけ。さっき話してた家族は驚いて逃げただけ、既に村にいる。他の人だってそう。そうに決まってる。だから何も見てない。

 

 

 

 泣き声が聞こえる。人の声だ、人の領域ではない完全なる自然に不自然に響く人の声、性別は違うけど同年代、そして誰だか見当が付く。

 

 探してみよう。ほっておくなどあり得ない、わかっていながら捨てて置くなど、それは絶対許されない。

 

 

 

「……なぜ泣き続ける。泣いても無駄だ、動けるだろう。」

 

「だってっ、だってっ。」

 

 先程までの元気な声は何処へやら、泣きじゃくる少女に声を掛けるが、悲しいかな慰めるのは不得意だ。

 

「何も無い。俺は村へ行く、歩かないなら置いて行く。」

 

「うぅ〜〜。なんで!なんで冷静なの!おかしいよっ!貴方はとんでもない薄情者よ!」

 

「………。黙れ。」

 

「何よ、言い返せないから黙らすの?女だからって舐めないで!」

 

「いいから黙れ。」

 

「……ッ!あっ……。」 

 

 

 

Gya!!!

 

 

 

 この状況で泣き続けていれば然もありなん。ここは自然の領域、つまり彼らの領域なのだ。

 

「……おこぼれ狙い。遅かれ早かれだ。早く逃げろ。」

 

「え?貴方は?」

 

「ジャギィ、コイツを倒す。俺らを舐めて仲間を呼んで無い、好機だ。」

 

「でもモンスターだよ!それにあなた、碌な運動もしてないって、それに!こうなったのは私のせいなのに!……。」

 

「………悔む時間はない、さっさとしろ。」

 

「…………あぁ、やっぱり駄目な子なんだ。

 

「…………。」

 

 俯いて座り込んだまま動かない少女。表情は窺えないが子供の見せていい表情では無いのは確実だ。この状況では話が通じないどころか聞こえてすらいないだろう。

 『ジャギィ』、前世では雑魚モンスターとして序盤に立ち塞がる相手。襟巻きを持った肉食恐竜といった風貌。ゲーム内では小さく見えても、実際は2メートル越えの化け物だ。

 

 

Gya?

 

 

 話の通じないのはここにもいる。仕方なしと向き直すと、特徴的な襟巻きを窄めて構えている。

 

 もう怖くない

 恐ろしい

 

 もう慣れた

 足が震える

 

 もう一息だ

 ……勝てるのか?

 

 勇気は気力。気力は根性。攻めにも守りにだって必要な力。自分だけでは足りなかった。耐えられなかった。だから感謝する。

 

 転がってた木の棒を持つ。握りすぎて棘が刺さるが気にしない。

 

 飛び掛かるモンスター。赤い目に映る食欲。牙に滴る唾液。強靭な後ろ脚から繰り出される飛び掛かり。ただの人の子が避けられるわけが無い。

 

 

Gyau!?!?

 

 

 避けられるはずがない。ただの人の子であったらの話だが……

 

 

GyAg!?!!??!

 

 

 阿保ズラかましたその頭に渾身の一撃を叩き込む!

 棒はバキリと音を立ててへし折れて、鋭い断面を露わにする。

 

「!」

 

 脳を揺らされよろめく隙に、首を貫かんばかりに突き刺す!

 

 出血とそれにより気道が塞がり窒息死。鮮やかな連撃はまるで何回もこなして来たかの様。

 

「………。おい立て、生きてるなら動け、お前も動けるなら要る。」

 

「…………必要?私が?私はあなたを危険に晒したのに?何も出来なかったのに?」

 

「別にお前のせいじゃない。結局こうなるししょうがない。早く立て同じことを言わせるな。」

 

「……こんな私を許した上に必要としてくれるの?本当に?本当の本当の本当に?」

 

「………早く立て。」

 

「!!!ありがとうございます!!!」

 

 

 

 少女は誤魔化していた。疎まれても、仲間はずれにされても、元気に振る舞い"いつも"元気にいる事で。

 嫌な事は全て目を背けて隠してしまえ、いい事にだけ目を向けて全部誤魔化して笑っちゃえ。

 両親は優しかった。だから続けられていた。

 両親は優しかった。だから心配をかけたくなかった。

 

 

 

 突然両親はいなくなってしまった、皆んな皆んな居なくなってしまった、自分だけ逃げてしまった、とうとう逃げられなくなってしまった。自分を必要としてくれる人が居ない。自分の居場所もなくなった。感情が入り乱れ、ぐちゃぐちゃになって散々泣いた、泣いて泣いて泣いた果てに、

 

Gya!!!

 

「逃げろ。」

 

 また迷惑をかけてしまった。命の危険に晒し、晒されても何もせず、結局貴方が片付けた。あんなことを言った私を見捨てずに助けてしまった。なにより彼よりも私が動くべきだったのに。

 

「あぁ、ほんとにダメなんだ。私って。」

 

 自責の念に駆られる。全てが溢れて出て来てしまう。

 

 

 

「早く立て。」

 

 彼はこんな私を必要としてくれた。許してくれた。道標になってくれた。砕けた心を繋いでくれた。

 

 貴方といた時間は多くない。けれど貴方を知るのに時間は関係ない。

 貴方は口下手だから誤解される、それにあの時の動きが嘘みたいに運動音痴。だから私が支えていた、私の助けが役に立った、私の居場所は貴方の側。隣だなんて贅沢は言わない。せめて、一歩後ろに……。

 

  

 古い記憶に縋る日々はもう終わり

 

 もうすぐ、もうすぐです。どうかどうか

 

 お待ち下さい

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「…!!!……なぜいる。」

(ファ!?…夢?………ファ!?なんであんたがここにいるん!?)

 

 重みを感じで目線の先を向けるその先には、自室に(勝手に)住み着く人の形を取った龍。ルーツその人が跨っていた。

 

「腹が減ったのに朝飯の匂いがしないと思えば、我をほっぽり出して熟睡しておる生意気なハンターがおったのでな。起こしても起きないお前にどんな罰を下そうが考えておったら、不快な気を感じたのでな。」

 

「………もういい降りろ。十分体験した。」

(えぇ〜。もういいから早よ降りてくれ。こんなシチュ、100%人間でかつ前世で体験したかったよ。…は?)

 

「体験?……なっ!?」

 

 頭に『?』を浮かべるとはこの事か、目に見えて表情に色が付き、あっという間に赤面するも、何を思いついたのか、突然にやけて胸に手を置き目を閉じてふんぞりかえり始めるルーツ。

 

「……んふふん……お前も所詮は人の子よの、どれ、絶世の美女たる『我』に劣情を懐き、その目にしかと堪能するが良いぞ!」

 

 自信満々といった風貌。その表情は凛々しくも、若干の紅潮さが、彼女の魅力に色を付ける、なるほど確かに見れば見るほど吸い込まれる美しさ。だが、反応は期待しないほうがいいのだろう。なんせハンターだから。

 

「…………。」

(終わったと思ったけど、龍だからそこら辺ないんかな?知らんけど、まっ今のうちに退散……。)

 

 

「……?あれ?……おまえ!この『我』を無視するとは何事だ!このような機会が与えられた事自体に泣いて喜ぶのが普通であるぞ!」

 

 目を開けても期待した事は起きやしない。ステルス退出を決めたハンターに抗議の声を上げながら後をついて行く。これに限らず似たような事は日々繰り返される。もはや慣れた日常だった。

 

 

「……?」

(あれ?なんの夢見てたっけ?)

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

〜〜〜ギルド〜〜〜

 

 ハンターの姿は勿論ハンターズギルドにあり。しかしギルドはいつもと違う雰囲気だった。

 

 目に止まるは竜人族、それもかなり歳を召しているようだ。彼がこちらを見た途端、

 

「久しぶりだ!このギルドの英雄ハンター君!私が中央に呼び出されて席を外している内にここまで成長するとは……。嬉しく思う!君は我らがこのギルドの誇りだ!」

 

「誰だ。」

「え?誰?…見た事が……。」

 

「ん?あ、初めに顔を合わせたっきりだったからか仕方もないか…。改めて!私はこの『カッペンハンターズギルド』の『ギルドマスター』だ!気軽にギルマスと呼んでおくれ。」

 

「………。何様だ。」

(へぇーーー。偉い人やん。………いや言葉遣いくらいどうにかしろや!)

 

「ダハッ、相変わらずだな!いや何、ギルドマスターともあろう物が、大戦果を上げたハンター一人に労いの言葉すら送れないなど笑い話にもならん!よくぞ、あの【大災難】を振り払った。」

 

 豪快な表情から神妙な面持ちに切り替わる。

 

「あやつは【怒喰】や【激昂】とは比べ物にならん被害を出す。あやつらはその猛威こそとんでも無いが、最悪ほっておいても勝手に自滅する。しかしあやつは違う、好き勝手やって好き勝手食う。そんでどんどん強くなって遂には元から出されなかったのにさらに誰も手を出さなくなる。だからまた好き勝手する。そんな奴を、身を持って止めてくれたのだ。」

 

 心の底からの感謝と称賛。これは彼だけからのものでは無い、この街以外の人々の感謝もこもった称賛だ。

 

「………生きる為に狩ったそれだけだ。」

(言っても逃げられないから戦っただけだしなぁ。てか何そのエンジョイ竜生、食えるだけ食えば強くなって?しかも元から強者だから襲われなくて?必然的に強くなってそれも反動なしの無条件?は?コイツに転生したかったわ。)

 

 思わず嫉妬の念がほろりとごぼれる。

 

「ダハッ、それもまた理由よ!寧ろ単純で最も良いな!…それと、お主に会いたいという者が今日来ると言う。確かもうそろそろの筈だが、あいt。」

 

ドンッ!

 

 ギルドマスターのお言葉を強制終了させて響く豪快な音。

 

「ハンター様、あぁハンター様、ハンター様、ハンター様、ハンター様、ハンター様、ハンター様、ハンター様、ハンター様、ハンター様、ようやく貴方に辿り着けました…。貴方を支えて、貴方のそばにいられる様、ですからどうか私を必要として下さい。」

 

 飛び込んできたのは、背中に狩猟笛を担いだ女ハンター。防具は着ていないのか、容姿はよく見えた。艶やかな黒髪に黒い瞳。ここらの地域では珍しく、東方に位置するかの有名な温泉郷、『ユクモ』の地域に見られる特徴だ。そしてその容姿はおとなしそうでお淑やかな風貌、表情次第では子供とも、さもすれば大人とも取れる整った顔立ち。一言で言えば『美しい』の一言に尽きる。道ですれ違えれば男女を問わずして振り返り、その姿に、一言喋ればその声に、聴いて見惚れてしまうであろう。

 

「おっおやおや、これはなんともクセのある……。」

 

 ハンターの前で両膝をつきながら見上げる、期待と焦燥の表情で待機する、いかに美しいと言えど限度がある。その様子に1000年を超えて生きるギルドマスターも思わずドン引き、周りのハンターや受付嬢も、ハンターと彼女を交互に見て動いてはいるものの、実際皆、その状況故に思考が停止している事は見て明らかだった。

 

 一方のハンターはというと、

 

「……誰だ。」

(いやお前誰。)

 

 いつも通りと言うべきか?

 

 

 

 その後の荒れ様は凄まじかった。絶望の表情を浮かべ

「私を忘れてしまったのですか!?」

だと驚愕の声を上げたかと思えば、無表情で、

「…必要とされてない?」

と、急に静かになると蹲り、ぶつぶつと独り言を言う様になり、その果てには。

 

「もう意味がない……。」

 

 と、呟いたのが聞こえた辺りで外周がざわつき、流石のハンターも声を掛けたがその内容て更にざわついた。

 

「…家に来るか。」

 

「「「「「「は?」」」」」」(は?)

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「と、いう訳でこの家に暫く住ませて頂くことになりました。所で貴方はハンター様の"何"ですか?」

 

「なぁにがという訳じゃ!戯け!どうにも不愉快だと思えば今朝の奴か!お前も何故こ奴を拾って来た!はよう捨てて来んか!」

 

「心外ですね、小娘に上からこの様なことを言われる程落ちぶれては居ないと思っていたのですが…。」

 

「こっ小娘だと!お前!雌人の癖してこの我を愚弄するとは!」

 

「まっ、口が悪い事、親はどんな教育をしていたのかしら?」

 

 

「…………。」

(地獄かな?)

 

 一触即発、地獄の空気。自宅にルーツがいた時よりも、ルーツと夕飯を食べた時よりも終わっている空気に満ち満ちた我が家に戦々恐々。

 

「黙れ。」

(は?思ったけど言えとは言ってないんだよなぁ)

 

「はい!わかりました!」

 

「お前!コイツをこのまま入れるのか!」

 

「ルーツ、部屋に戻れ。」

 

「ッ!〜〜〜〜ッ!。」

 

 黙る必要はない。従う必要もない。人の話を聞いてやる事はないのに黙ってしまう。その様子を見てほくそ笑む雌人に気付くとますます顔を赤くする。ここで居座るのも場が悪い、と、渋々自室()に戻るルーツ。

 

「で、お前はなんなんだ。」

 

「忘れてしまったのですね…。でも大丈夫です!思い出して頂ければいいのですから!改めまして『シナラ』といいます。実際居場所もないですし、暫くと言わず、末長くよろしくお願いします。」

 

「………。」

(えぇ……。)

 

 

 かくしてまた一人居候が増えてしまい、(心の中で)頭を抱える羽目になったハンター。完全ニートのルーツに比べればまだマシかと考えていたが、次の一言で(心の中で)目が飛び出た。

 

「あっ、今のハンターランクは【G3】です!あっ、近々【マスター】ランクに改名される事になったとか…。要領を得ずに済みません。」

 

【G級】、もしくは【マスターランク】、大陸に、そして同じ時代に数人いるかいないかの稀代の人々。その多くが歴史に名を残し、ハンター達の憧れである、ある意味で超人。

        モンスターハンター

引いては真の意味で【英雄】と呼ばれる者達である。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ハンター君

 決別の記憶、自立の記憶。心に納めて解く事のない、大切な記憶。

 実は学者希望。別たれた双都市かミナガルデのどれかに行きたかった。

 よくわからん美女をどさくさに紛れて家に招き入れるやり手の上位ハンター。尚、やられる側の模様。

 

ルーツ

 ハンター君大好き一号(二号)人に被れて丸くなる。初日の夜に見たハンターの顔が大好きでもう一度見たいと思ってるが、相変わらずの鉄仮面。本人…龍はそれでもいいと思ってる。

 何気に龍化しなかったのは日頃の成果(意味深)の賜物。

 

シナラ

 ハンター君大好き二号(一号)隣に立つ為に頑張った結果マスターランク到達。支えて助ける事に生きることを見出す。だからこその狩猟笛。

 昔色々あってハンターに惚れ込んだ。吊り橋効果って奴かな?

 

ギルドマスター

 G級ハンターが来ると思えばとんでも無いのが来て面食らったが、こういうので変じゃないのを見た事がないのですぐに落ち着く。

 

 




 だっと行けば二、三話で終わらそうかな?本当はもっと長くなったけど流石にだから色々はぶった。行き先は何処?とか。
 頑張って最後まで行きたいな(願望)
 あと復活してほしいモンスターはアプトノスです(唐突)


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七乙目、落下

ファ!?ランキングに乗るだと!?たまげたなぁ…
誤字報告、ありがとうございます。読み返してはいるんですが、どうにもなくならないですね…。諦めるつもりもないですが。


 

「上位だ。」

 

「え?」

 

「上位だ。」

 

 これ以上に無いくらいにキョトンとした表情を浮かべ、ぶつぶつ呟きながらの百面相。

 

「え?え?どうして?上位?…いえそんな筈が…貴方様ほどの力を持ってどうして?」

 

「………。」

(なんで驚くん?寧ろお前がおかしいんだよ。)

 

 「おかしい」と、彼女は言う。追いかけてた人をいつの間にか追い抜いていた。私と貴方は同年代、私が行けたのなら彼はとっくにいってる筈だと思っていたのに。あの時の貴方の力はまぐれではない、ハンターとして生きる今、身を持ってわかるから。だからおかしい、なぜ?貴方が?

 

 「おかしい」と、彼は思う。勝手に追いかけられて、勝手に追い抜かれて、勝手におかしいと言われてる。そっくりそのままお返ししたい、その若さでG級ハンターになるなどどんなに規格外のことか、ズルをしてようやくここにいる自分とは全てが違う。だからおかしい、なんで?お前が?

 

 

「………なぜそこまで。」

(いやいや、大体同年代とはいえ俺が上位で悲鳴上げてるところなんでお前はG級なんなん?)

 

「……少しよろしいですか?畏れ多くもハンター家業はいつから?」

 

「……一年程前。」

(え?んなもん大体一年前くらい?教官が本気で厳しかったからな、死んでも戻るから結果一瞬だけど、死なずに覚えてると時間がかかるからな。)

 

 100の努力は時間的に見ても、誰が見ても100のまま、しかし死に戻りの前には100の努力も1になる。覚えが良い方ではなく、運動も別に得意ではないので、真面目にするととんでもない時間が掛かってしまう。

 

「一年!…あぁ、やはり貴方様は凄まじい。たったの一年でそこまで登り詰めていらっしゃるのですね…。私でも2年かかったこの道を半分足らずて乗り越えた…。あぁあ、この私をどうかどうか見捨てないでください、この私をどうかお許しください、一握りでも、どんな感情であっても貴方様の発言を疑ってしまった事をお許しください。」

 

 両膝をつくと、こちらを見上げて目を輝かせて恍惚の表情を浮かべる。おおよそ人前に出して良い顔でない事はハンターでも分かった

 

「………やめろ、立て。」

(やめろやめろ!そんな事するな!G級ハンターがズルして上位の雑魚ハンターにそんな事したら俺の居場所が無い!)

 

「しかし、なぜここまで遅く?貴方様ならばとっくに試験に合格してハンターになっているはず……試験……教官が悪かったのですか?貴方様の可能性を見抜けずにぐずぐずぐずぐず先延ばしにして、辞めさせようとした?そうなんですか?そうなんですよね?そうに違いない、そうだそうだそうだそうだそうだ許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない。」

 

 突然目に光が灯ったと思えば、次の瞬間には声のトーンは下がり、灯った光は消え失せる。最後に行けば行くほど声の抑揚無くなり、壊れたおもちゃの様に同じ事を繰り返す。

 

「やめろ。」

 

「今すぐにでも……え?ですが……。」

 

「やめろ、と、言った。」

 

「ッ!」

 

 余りに異様、彼の二つの人生に於いて、経験した事のない感覚。

 誰だって怖気付く、ハンターだって怖気付く。だが、今回ばかりは聞き捨てならない。

 

「……人を悪く言うのは、駄目だ。いい人だ、悪く言うなら俺だけにしろ。」

(教官はそんな人じゃない、寧ろ心配してくれた。悪く言われるのは自分だけでいい。)

 

 語らない彼は語れないだけ、悲しかったから、本音はついつい飛び出てしまう。彼は根っからのお人好し、人を嫌わず、自分を嫌う。そんな人なのだ。

 

「いえ!でも!貴方様程ならば、もうとうの昔に…。」

 

「時間など関係ない。全ては俺が不甲斐ないからだ。」

 

「不甲斐ないなど!」

 

「……言わせてしまった。感じさせてしまった。俺の責任だ。」

 

「辞めてください!」

 

 心からの叫び、聞きたくない、聴きたくない。こんな言葉望んでない、誰のせい?こうなったのは誰のせい?……私のせい。元はと言えばこうなってしまったのは私のせい?

 思ってしまえば止まらない。自責の念が込み上げる、又迷惑をかけた、隣に立つなどと思い上がった、背中を見ることすら烏滸がましい。我が身が卑しくて仕方が無い。

 

「ごべんなざい!許じで下ざい!みずでないで!」

 

 恐ろしい、恐ろしい。必要とされない事が恐ろしい。見捨てられるのが怖くて怖くて仕方がない。考えれば考えるほど涙が溢れて仕方が無い。

 

「お?お?どうした雌人よ、聞くに耐えない雑音が響いてくると思えば、随分と惨めな姿よのう?これを機に我らがこの家を出てはどうだ?お前と此奴は隣にいるべき場はない。お前の居場所はここには無い。」

 

 唐突に上から声が降ってくる。階段を降りながら聞こえるその声色は上機嫌、表情を見れば満面の笑み、先ほどの事を根に持っているのか、この状況を見て愉しんでいるご様子で、

 

「………ッ!私は!ただ!」

 

「……ルーツ。」

(頼むから引っ込んでくれ。あと俺の家な。)

 

「ん?こやつに助けなど要らん、お前のような邪な奴が、自分の欲でしか考えられないような奴が共にいていい奴ではない。」

 

「ルーツ。」

 

 正にどの口が言うか状態。欲にしか塗れてない癖してよく言えた。しかし、事情を知らない側からすればかなり効いてしまったようだ。

 

「はよう言わんか?こいつはこの物語には要らない。必要なi「ルーツ。」…なんじゃ!こやつに……ッ!!」

 

「ルーツ。部屋に。戻れ。」

 

「………。」

 

 狼狽えるルーツ。まるで見たく無いものを見たとでもいう様に目を逸らし階段を駆け登り姿を消す。素直に立ち去った事に驚くが、それは置いておいて、前世で言うところの『土下座』に近い姿のシナラを見下ろす。本人としてはそのつもりはないのだろうが、その前の姿勢が姿勢だったのだろう。

 

ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。

 

 はじめに会った彼女の覇気は見る影も無く、必死に許しを乞う幼子の様になってしまった。

 

ヒッ!!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……。

 

 肩に手を置いただけでこの有り様。放っておくなど有り得ない、ルーツに張り合うあの頃まで、少なくとも戻ってもらわねば。

 

「大丈夫か。」

(う〜〜ん、女性付き合いゼロの俺にはどうすれば良いのかまるでわからん。は?ルーツ?ノーカンだろ、それならカブトムシのメスもカウントに入れるわ。)

 

「何故責めるのかはわからん。だが、お前はそうじゃない。」

(なんでそうなったのかは知らん、ただ、似合わん。)

 

え?。」

 

「なぜ、拘り、恐れるのかはわからん、だが、ハンターなら、自然に対峙する者の頂点のお前が、崩れる事は許さない。」

(そうなった理由はわからないが、シナラがそれだと俺の立つ所が無い。取り敢えず過去でも語ってどうぞ。)

 

「………でも、私は貴方様を…。」

 

「示せ。」

(ん?湾曲するの辞めてもらっても宜しいか?)

 

「?。」

 

「お前の言うもの全てをお前が示せ。求めるなら掴め、お前にはそれが出来るはずだ。」

(かっこいい(小並感)知らんけど、もうなんでもいいや(投げやり))

 

「示す…、貴方様に見合う様に?私を、許してくれるのですか?機会を…頂けるのですか?」

 

「……そうだ。」

(おっそうだな(適当))

 

「ッ!!?!?!??……あぁ、ありがとうございますありがとうございますありがとうございますありがとうございます。機会を下さりありがとうございます。許してくださりありがとうございます。貴方に見合う様に精進させていただきます。誠心誠意、この身朽ち果て心砕けるまで、その背を、その道を……。」

 

「………勝手にしろ。……いい顔だ、似合ってるぞ。」

(もういいよ(諦観)何言っても変わらんし、いい表情になったし、後はもう一体、面倒なやつが居るからな。)

 

「え?今何と?」

 

 シナラは立ち上がる。赤みを帯びたその顔にかつての影はない。迷子の影は何処にもない。彼女は今、大人に成長した。夢から覚めて今を見る、定めた目標はいまだ高く、さりとて諦める気など何処にもない。

 

「貴方様は道を示して下さいました、これからは私が示す番です。だからだから…。」

 

 

 

どうか見ていて下さいね?カナクさま?

 

 

 

 愛は深く、憧れは深く、狙いは鋭く、意気込みは十分に。

 

 視線からは逃れられない。

 

 狩人は獲物を逃さない。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「……なんじゃ、今更謝りに来ても知らないぞ。」

 

「……面倒臭い。」

(めんどくさ。…号泣宜しいか?)

 

は?。」

 

 いつもに無く元気が無いと思ったが早くも前言撤回したくてたまらない。が、この口言いたい事は選べない癖して、勝手に話を進めるから困りものだ。

 

「お前は龍だ。」

(…龍がこれってマジ?)

 

そうだ。」

 

「お前は壁だ。理不尽に立ち塞がる壁だった。」

(理不尽な癖して扱いづらいとかやってられん、早く機嫌直してどうぞ。)

 

「……え?…だった?」

 

「今のお前は壁ではない。途中にすらなり得ない。」

 

やめろ。」

 

「意志の弱いものなど龍であっても竜に劣る。」

 

「やめろ!やめろ!黙れ!ダマレ!ダマレ!。」

 

「お前は『観てる』と言った。」

 

「………。」

 

「お前は『最後になる』と言った。」

 

「…………。」

 

「観ろ!観ると言ったのなら!俺を観ろ!」

 

「え?!?」

 

 声を上げる。ルーツですら聞いた事がないその声に混乱する。当たり前だ、戦闘中の捨て台詞以外では声を上げないし、上げた戦闘では基本死んでいるので聞こえない。

 

「お前の物語とやらも、お前の事情も知った事ではないが。」

 

「………。」

 

「俺はお前を『観てる』。立ち塞がるんだろう。不倶戴天の敵として。」

 

「…ふふ。」

 

 静寂に木霊する笑い声。

 

我も人に毒されたか、まさかお前にこんな事を言われる日が来るとはな!。」

 

 最後に見たのはいつの日か、半龍形態とでも言うべきか?

 激戦の記憶が本能が訴えかける。圧倒的、絶対的死を、本能が訴える。全ての理不尽への抵抗を、死への抗いを。

 

「………。」

(うっへ、なんか発破かけてね?やっぱり撤回します。しおらしくいてくれ!頼むからお願いします!調子に乗ってすみません!いやほんとに!)

 

 

……

…………

 

 

「ご主人様!御夕飯が出来上がりました……。やっぱりそうでしたか、ご主人様、狩りますか?」

 

面白い事を言う。知っていたのなら回りくどい事を、今すぐ灰に変えてやっても良いのだぞ?。」

 

「灰も残して下さるなんて光栄です、ところでどんな武器になりたいですか?やはり大剣ですか?ああ、片手剣はダメです。ご主人様を侮辱しかねないですから。」

 

「「は?。」」

 

「……いいから、黙れ。」

(今日黙れしか言ってない気がするし、聞いてない気がする。)

 

 

 

 愉快な1日はあっという間に終わってしまう。一緒に住むことが確定したので、物置き部屋をシナラに貸し与えたが、同じ二階なので不安要素しかない。

 

「……?」

(あれ?なんか無くね?)

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「ルーツ。部屋に。戻れ。」

(やめろ、その顔で我を観るな、その目で、我を観るな!)

 

 龍は不服であった。が、己の登場は『最後』故、無理に手を出す事も憚られた。

 

 龍は不満であった。が、己の欲が、願望が、周り巡って龍を抑えた。

 

 龍は心配であった。突然やって来た邪魔者も、来るべくして来たのだから仕方なし。だから心配だった。己が如何に叫ぼうが、否定しようが過去を好きに細かく変える事など出来やしない。そんな事をして仕舞えば最悪『今』もろとも消えかねない。

 

 ……不安であった。自分が視界から外れてしまう、外野に成り果ててしまう、意図的に外されてしまう。彼の物語を1番近くで感じているのは『我』なのに、そうでなくなってしまうことが、【恐ろしい】。興味すら無くされるのが【恐ろしい】。死ぬよりも【恐ろしい】。

 

 

 

「……なんじゃ、今更謝りに来ても知らないぞ。」

(違う。こんなのではない。)

 

「は?」

(言いたいのはこんなのではない!)

 

「お前は壁だ。理不尽に立ち塞がる壁だった。」

(え?…やめろ、言うな。)

 

「今のお前は壁ではない。途中にすらなり得ない。」

(言うのではない!…言わないでくれ…。)

 

「意志の弱いものなど龍であっても竜に劣る。」

(………。)

 

(嫌わないで…。)

 

 純粋な本音。何処まで行っても龍は龍。その行動は呆れるほど真っ直ぐで、どうしようもないくらいに不器用だった。だから、

 

「お前は『観てる』と言った。」

 

「お前は『最後になる』と言った。」

 

 

(…………。)

 

 

「観ろ!観ると言ったのなら!俺を観ろ!」

 

 清々しいほどに率直で、

 

「お前の物語とやらも、お前の事情も知った事ではないが。」

 

 清々しいほどに彼らしく、

 

「俺はお前を『観てる』。立ち塞がるんだろう。不倶戴天の敵として。」

(その様な事を言われては……。)

 

 そして、清々しいほど己に合っていた。

 

 

………

…………

 

 

「はぁ…。」

 

 溜め息が漏れてしまう。

 

 窓より差す月明かりに照らされた色白い肌はほんのり紅く、薄着の彼女を暗闇から浮かび上がらせる。先程までの憂いた顔は何処はやら、何よりも安心と信頼に満ち、愛しい相手を想って寝具に包まれる。その手には一枚の布が握られていた。

 

「『我』のもの。最後は必ず『我』のもの。今は少しばかり甘い汁を享受させてやろう。」

 

 余裕、自信。全てはそれに尽きる。

 

「逃すなどあり得ない。逃してやるなど有り得ない。我を変化させたのはお前のせい、だから……。」

 

 彼が聞けば理不尽だと嘆くだろう、だが仕方が無い。魅入られるとはそう言うことなのだ。

 

責任を取ってもらわぬとな?。」

 

 あぁ、疼いて疼いて仕方が無い。彼に貫かれた左眼が、疼いて疼いて仕方が無い。

 あぁ、熱くて熱くて仕方が無い。見つめられると思い出す、刺激的で甘味なあの一時。

 

刻みたい……。」

 

 成長が待ち遠しい、彼の全てに我を刻みたい。決して離れることの無い、『我』の【証】、消えることの無い永遠を…

 

刻まれたい……。」

 

 左眼だけでは満ち足りなく、その胸に、その角に、その全てに彼を刻みたい、『彼』の【証】、消えることの無い永遠を…

 

見ていておくれ、ハンターよ。」

 

 艶やか美しく、少女というには余りにも妖艶で、大人と言うには些か幼い彼女の魅力。それは正しく奇跡の姿、人の身では出す事は困難で、維持する事も出来ない神秘の姿。悩ましく声を上げながら寝具に皺を作る。その性は何と扇情的か、世に生きる全ての人間を魅了してやまない。そう例えられても不思議で無い。

 

「ぐへっ、今はこれでしばらく我慢じゃ。」

 

 

 今はまだ、その残り香を堪能する。茹で上がった頭は何も考えられず、ただ彼の事を思って顔は蕩ける。似つかわしく無い声を出してお愉しむ。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「上位だ。」

 

 耳を疑った。遥かさに居るはずなのにいざ会ってみれば追い抜いていた。

 何故?何故?何故?

 

 そんな筈が、え?だけど、でも、どうして?

 

「一年程前。」

 

 答えは簡単で、思わずうっとりしてしまった。彼の前でだらしない表情を晒してしまったのは反省点だが、我慢できるものでもなかった。

 

 やっぱり凄かった。疑う余地もありゃしなかった。

 

 が、納得しない。出来ない。推測できる理由はすぐに考えついた。

 

 教習所、あの無能どもの仕業か、彼の可能性を見抜けずにぐずぐずぐずぐず先延ばしにして、辞めさせようとした?そうなんですか?そうなんですよね?そうに違いない、そうだそうだそうだそうだそうだ許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない。

 

 心がドス黒く染まっていく。だけど悪い気はしなかった。貴方も為に、貴方に染まれた気がしたから。でもそれもすぐ消えた。

 

 

「……人を悪く言うのは、駄目だ。いい人だ、悪く言うなら俺だけにしろ。」

 

 そんな事言わないで下さい。自分を下卑しないで下さい、

  

 彼を責めさせたのは誰のせい?その表情は変わらずとも、その瞳が僅かに曇る、あぁいけない、美しい貴方のその瞳が曇ってしまった。誰のせい?ダレのせい?…ワタシのセイ?

 

 崩壊

 

 追い討ちをかけるかの様にあのクソトカゲの言葉、あの時の私にはとても効いた。後は何も聞きたくなかった。見たくなかった。

 

 いつの間にか居なくなった。小さくなって謝ることしかできない私、惨めで価値のない無意味な私。

 

「………。」

 

 彼の手が肩にかかる。謝った。謝って謝って謝った。 

 どんな言葉も受け入れる。…そんな覚悟はなかった。

 

「何故責めるのかはわからん。だが、お前はそうじゃない。」

 

 驚いた。彼は私を責めなかった、責められて当たり前なのに責めなかった。数多さえ私を許して機会まで与えて下さった。

 

『報いなければ、示さなければ。』

 

 あのトカゲの近くなのはいただき難いが、私の為に開けて下さった部屋。用意された部屋。それだけで…。

 

「………勝手にしろ。……いい顔だ、似合ってるぞ。」

 

 あぁぁぁ、なんと勿体無い御言葉。このシナラ、この期待に応えて見せましょう。

 

 この全て、貴方様のもの。どうかどうか

 

見ていて下さい…。」

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ハンター君

 一際饒舌だった。人を傷付けるのは嫌。ルーツであっても今は人だから適応される。

 

ルーツ

 嫌われるのが嫌で、興味を無くされるのが嫌だからなんとか気を引こうとする。健気だね。

 

シナラ

 崇拝確定

 

補足

 モンハン世界はモンスターが居るから同志撃ちしてる暇無いから、必然的に民度が高いけど、中央はモンスターを見る事なく死ぬ人も多いくらいには平和。だけど住める人はもちろん限られるから、権力主義でかなり民度が悪い。

 




最近ハンター君死んで無くね?うしっ、次○すか!
次回!ハンター君死す! さあ皆んなも?一狩り行こうぜ!

尚、貯蓄がもう無いから更新は少し滞る模様。土日になんとか…


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八乙目、狡風

 これは計画性が無いと言われても文句が言えない…ただハンターは昇天されられたから嘘は言ってない!

 所でガルルガって、本当頭おかしいですよね(唐突な罵倒)


 

「ご主人様?料理はお口に合いましたでしょうか?」

 

「……辞めてくれ、ハンターだ。」

(料理してくれるのは良いとしてその呼び方はやめてください。)

 

「では、『ハンター様』とお呼び致します。では今ひとつ、お口に合いましたでしょうか?ハンター様♪」

 

「…あぁ…。久しぶりだ。」

(もう良いや。敬語もやめてほしいけど、やめる未来が見えないし、しかしながら、よくもまぁ、これほどまでのものを……。)

 

 翌日、起きて見れば机に並べられた料理の数々。誰がやったのかは見当が付く。そもそももう一人はこんな事はしないし出来ない。ただ、そこまで在庫があったわけでも無いのにこれほどまでのものを用意する彼女の技量は目を見張るものがあった。

 

「良かったです!」

 

「よく無いが?何じゃ?これは?」

 

「あっ、お口に合いませんでしたか?『生肉』。」

 

「………。」

(抑えろ…、抑えるんだルーツ。我が家の平和をどうにか守り給え…。)

 

 『生肉』。そう、あの『生肉』だ。生焼けどころか焦げてすら無い、これがこんがりだなんて言う奴など目と頭がおかしいのだろう。

 

「……分かってやっておるのだろう?もう良い、今すぐ昨日の様に無様に我に首を垂れれば許してやる事もない、我の寛大さに泣いて喜ぶが良い。」

 

「…?あっもしかして怒ってます?すみませんルーツ様、草食竜の肉はお口に会いませんよね、ピンクレバーを御所望ですか?」

 

ブチッ

 

 別に聞こえた訳では無い。ただ、この辺りから冷や汗は間違いなく止まらなくなっている。

 

「………お前…k「ルーツ。」なんじゃ!割り込むっ…なっ!?」

 

 ルーツの前に差し出されたのはシチュー。あの女が作ったものではあるがその香りは確実に腹の虫を刺激する。

 

「誰が施しなど!お前まで我を愚弄するのか!」

 

「ハンター様!?それは貴方様の為に作った料理でございます!畏れ多くもそのトカゲにやるものではありません!」

 

「くっ!お前らは我の事を何だと思っているのだ!【祖龍】『ミラボレアス』、お前らが、お前らの言葉で!厄災を最上級の意味で表し、定義した存在であるのだぞ!」

 

「決めた人と一緒にしないで下さい。貴方にとって、私たちが虫の様に無個性で同じにに見えたとしても、私たちにはそれぞれ違うものが確実にあるんですよ。」

 

「知らん知らん知らん!我に説教垂れるな!少なくともハンター以外は全て虫ケラじゃ!もちろんお前も!むしろお前こそじゃ!」

 

「あらあらあら、躾がなっておりませんね?どうです?トカゲ小屋でも作って首輪を掛けてみます?少なくともその見栄っ張りは直ると思いますよ?」

 

 正に水掛け論、一歩も譲らず譲る気すらも無い。いい加減にしないと取り返しのつかない事になるのは火を見るよりも明らかだ。

 

「…………。」

(えぇ……。ガチでこいつらほんとに…。)

 

 ここは仲介に入るしか無いが、シナラはまだ融通が効くので我慢してもらうとして、ルーツに関しては接し方を変えてみるしか思い浮かばなかった、とどのつまりヨイショするしか方法は無かった。

 

「……ルーツ、様。」

 

「え?」

 

「は?」

 

 普段どころか人生で初めてでは無いだろうか?

 

「……献上品……で…ございます。」 

(こちら献上品でございます。どうかお納め下さい。…めちゃくちゃ歪だけど言えた…、よく出来ました!えらいえらい!俺偉い!)

 

……献上品…献上品、それもハンターからの献上品…ムフフ…。

 

「ハンター様!?」

 

「シナラ、面倒だ。」

(頼むから黙ってクレメンス。)

 

「……ハンター様がそうあると決めたのなら、畏まりました。これからは注意いたします。」

 

 出会いの日から今の今まで碌な扱いをされてこなかったルーツ。いつも上から目線で雑に扱われてきたが(本人は丁寧に扱おうとしている)為に、歪ではあるが自身を上にした言葉を使ったと言う事は新鮮であり又、それをしたと言う事実こそが、彼女の機嫌をV字回復させ、例えるならばその効果は、『いにしえの秘薬』バリの効果を示した。

 

「しょうがない、あむ、しょうがない、あむっ、献上品ならしょうがない♪」

 

 お手本の様なホクホク顔でシチューを頬張るルーツ。常識はずれの美貌を持ち、凛々しく、それでいて幼さも持ち合わせる彼女であっても、今その姿はただ美味しいものを食べて喜ぶ年相応の少女にも見えなく、龍どころか小動物の様な雰囲気ですら感じ取れた。

 

 

 

「………。」

(はぁ〜、なんで朝からこんなに心労溜めないといけないんですかね?)

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 所変わってハンターズギルド内の集会所。多くのハンターが今日も酒と飯とクエストの為に寄り、賑わう場所へと足を運ぶ。

 

お?無乙さんだ、と、例のG級ハンターも居るぞ。

 

スゲェ!G級ハンターだ。ハンターの頂点、古龍レベルで会うのが難しいとされる。」

 

あんな凄い人に縋られたハンターは何をしたんだ?。」

 

そりゃナニをしたんだろ?あいつも知らないうちに男になりやがって。」

 

女のおの字もなかったのにな。」

 

 入室早々に様々な目線がハンターに集中する。ただでさえ目立つハンターに、昨日あんなことまであったのだ。そう言うネタは田舎ゆえ、光の速さで伝達され、あらぬ誤解を生んでしまう事もしばしばだ。

 因みに『無乙』さんは、彼に対してのリスペクトを含めつつ、なんとか印象を軟化させようと努力したとあるボウガン使いの賜物だ。

 

「………。」

(は?未だに前世も含めておっぱいすら触ったことのない童貞だが?……悲しいなぁ、イケメンという気はないけどそこまで酷い顔でもないと思うんだ。)

 

 自分でもなかなか悲惨な事を言ってる事を自覚し、人知れず自傷ダメージを負うハンター。確かに酷い顔ではないが、別の意味で酷いので女性からの受けはあんまり良くない。……よくなかったと言うべきか?

 一方でもう一人の渦中の人物であり、こうなった原因であるシナラと言うと。

 

「……♪。」

 

「………。」

(なんで満更でもない表情してるんですかね?…はっ!これがG級ハンターの余裕!?)

 

 元凶である癖して動じないどころか心なしか嬉しそうとも感じられるその態度に密かに戦慄するハンター。…言うて態度を変えないハンターも側から見れば大して変わらないのだが…。

 

 毎度の如く目線を無視してカウンターに着く、が、いつもと違う様子で、受付嬢の顔は真剣そのものだった。

 

「ハンターさん…と、G級ハンターのシナラ様、ですね?ようこそカッペンハンターズギルドへ、昨日は…その…お忙しかった様で、ご挨拶もできずにすみません。」

 

 言いにくそうな顔をしつつも頭を下げる受付嬢。全て変人共のせいなので可哀想ではあるが、顔を上げたその表情は仕事の顔であった。

 

「ハンターさん、貴方宛にクエストが入って来ています。概要は『イャンガルルガ』討伐です。」

 

 受付嬢の口から出てきたモンスターの名前。【黒狼鳥】『イャンガルルガ』、清々しいほど毒々しく、棘を生やした濃紫色甲殻と、巨大なしゃくれたクチバシを持ち、喉元から首筋に掛けて覆う、狼の様な白色の鬣が特徴的なモンスターであり、強力な火炎と猛毒を扱う、鳥竜種最強とまで謳われる大型モンスターだ。

 

 とは言えども、鳥竜種自体強いグループではなく、陸でも空でもその他の種族に及ばない事が多い、キッパリ言ってしまえば下層組とされる種族なのだが…。

 

「ハンターさんもご存知の通り、異常なまでの戦闘狂、怒れば怒るほどにその思考は研ぎ澄まされ、並いる竜と肩を並べる種。多くの学者がその種の存続を疑問視するズレた欠陥生物。それも……。」

 

 そう『ズレ』ている、どの様な傷を負っても戦う事をやめないのだ。クチバシが割れようと、視力を無くそうと、翼が折れようと、治る事を待たずして戦闘に明け暮れる。そこに逃走はあれど、戦略的撤退、執拗に仕掛け、倒れるまで仕掛け倒す。

 

 ひたすらに戦い、戦い、戦って戦って戦いまくる。捕食や縄張り争いなんてものはそこには無い、生殖、捕食、生存までものリソースを戦闘力に割き。戦う為に生きて戦う純粋なまでの戦闘狂。

 『欠陥生物』、同じ様に『感嘆の悪魔』にも適用される、何故種族の存続が可能なのかがわからないモノに贈られるピッタリな称号だ。

 

「……『奴』か。」

(………………。)

 

 そう『奴』。ただのイャンガルルガではない、ハンターを幾多どなく襲撃し、その度に膨れ上がる恐怖のデスカウント、ここぞと言うときに上手く逃げ去り、新しい技を引っ提げまた戻ってくる。その戦闘力はイャンガルルガの中でもかなりの異端。【隻眼】や、【傷有り】に並び、勝ってしまうのではとまで言われる『特殊個体』、その名を、

 

「『狡巧流るるイャンガルルガ』です。竜に限らず多くの種の行動を学習、真似、そして吸収した灰色掛かったイャンガルルガです。」

 

 多くの特殊個体は己を限界まで鍛え上げた結果、ある意味で最高点に立った強者であり、とどのつまり『自分の内側』に強さを求めた結果なのだが、このイャンガルルガは、『自分の外側』に強さを求めたのだ。種自体にその傾向はあるのだが、これ程までに露骨に、大胆に、自然にモノにしてくるものは類を見ない。

 

「『狡巧流るるイャンガルルガ』、人間を見ると真っ先に襲い掛かってくる危険なモンスター。人間と因縁があるからだと噂されていたのを聞きはしてましたが、まさかハンター様だったとは…。」

 

「そしてハンターさん、貴方宛と言うことは、貴方にしか頼めないと言うことです。二桁はくだらない『狡巧流るるイャンガルルガ』の襲撃を、全て跳ね除けた貴方にしか、です。」

 

「ッ!?…あぁ…なんと、なんと………。」

 

「…えっ、えっと…。」

 

「……続けろ。」

 

 その表情は昨日と同じ恍惚の表情、公衆の面前でその顔が出来るのが凄いのか、この顔をさせるハンターが凄いのか。普通のハンターなら変人確定だが、そこはG級ハンター、既に変人なのでノーダメージ。

 

「因縁もあるとも思います。もう会いたく無いと思っているのかもしてません、ですが、貴方に掛けられた期待は、思いは本物です。あのイャンガルルガのせいで受けた被害はハンターだけに収まりません。どうか受注をおn「受ける」いしま……はい!分かりました!」

 

(俺、「受けた被害は同情するしやばいとは思うけど、トラウマだから受けるのは勘弁してください。」って言ったんだが?)

 

「…はっ!ハンター様、私も貴方の力になりたいです。貴方のために、貴方を支えて、隣に立つために、助けになりたいのです!」

 

 トリップから抜け出し、真剣に、そして必死に手伝いを申し込むシナラ、彼女の存在意義であり、彼女の目標で人生、その気持ちは並々なら無い。それにG級ハンターである彼女ならば…。

 

「シナラ様の力があれば百人力です!早速受注者欄にお名前を「いい」書きま……え?」

 

「ッ!…そんな!……どうしてッ!肉壁にでも囮でも!何でもいいのです!私をどうかお使い下さい!」

 

(俺もだよ、何なんでしょうね?(他人事)G級ハンターの助太刀があるだなんて、こんないいことは無いと思ったんだが、俺こんなSAMURAIタイプだったっけ?タイマン因縁ガチンコ対決する様な人間だったっけ?いや違う(確信)」

 

「…俺がやらねば意味がない。」

(はえ〜〜〜ッ!カッコいいですね!死んどけやカス(豹変))

 

「……食い下がっても答えは一つだけなのでしょう、何処ぞの"面倒"な奴と一緒になってしまうのも不本意です。私は支えたい、負担になりたいなど思っておりませんから…。」

 

 意外にもあっさり引いたシナラ、更に言葉を紡ぐ。

 

「自信であると信じております。蛮勇でないと、過信でないと、ましてや現実性のない浪漫ではないと。そうした志しで散って行った者たちを私は知っております、私は見ております。貴方様は違う、ハンター様は違う、そう信じて待っております。」

 

 声色は常に安定せずに絶えず震え、その心境を誤魔化しているのは明らかだが、そこに突っ込むのは野暮だろう。やはり怖い、信じていても、逢えなくなると考えただけで震えが止まらない。だから信じる。信じて待つ。

 

「……そうか。」

(ええ子やん、え?なに?めっちゃええ子やん、家事ができて強くて稼ぎが良くて顔もええ、性格は…まぁいいんだろうね…え?なんで好かれてるん?……しかしねぇ。)

 

「…はい!」

 

「ハンターさん、…わかりました。アイコンはご存知の通り、便は既にあります。神出鬼没なので…。お気を付けて。」

 

「……シナラ。」

 

「ッ!何でしょうか!」

 

「…"使う"と言うな。……心配もするな。」

(人を物のようになんて使えんぞ、そう言う雑な扱いは俺だけで十分や。)

 

「はい!」

 

 絶対勝つと信じて待つ。悔しいしさもある。けれど今私に出来ることは、それしか出来ないから……。

 

 

 

 縁は繋がるとよく言うが、何も人同士だけが縁ではない、良い事悪事全て、あらゆる物に繋がっているのだ。  

 

 断ち切るには動かねば、待とうが逃げようが晒そうが意味がない。動かねば、動いて、考えて、見据えて決めなければならない。そして初めて断ち切らねばならない。果たして、それを『決断』と言うのだろうか?

 

「…………。」

「行きたくないよぉ〜、行きたくないでござるよぉ〜、………きまひなはゆねほぬがにでぬなぱ!!!!(届かぬ発狂))

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

パンっ!

 

「………。」

(うしっ!ごねても始まらない。口は災いの元、なら降りかかる災いは自分で払わねば。多くの人に支えてもらった身、自分の因縁くらい自分で処理しなければ!頑張れ!……男カナク行きます。)

 

 両手を両頬に、気合とやる気は不十分、だがやる理由はこれ以上になく溢れている。が、怖いと分かって、痛いと分かって、辛いと分かって行くのはもちろん嫌だ。前世で見た『介錯』、あんなのが実際にあったなんて今でも信じられらない。どうせやられるなら意識外での狙撃の方が一瞬で楽なのに、今斬られる、今殺されてしまうと分かってじっとしている。正にその気持ちだ。が、

 

「……違うのは抵抗。」

(何もやられっぱなしという訳でもない。正座して見据える訳ではなく、構えて見据えれる。一太刀どころか、立ち回り次第では完封だってありえる!そうさ!今まで勝てたなら、今回も勝つだけだ!)

 

 ガタゴトガタゴトガタゴト……竜車に揺られて狩場を目指す。いつの日かの様な空気は感じられない、平和そのものの大自然。幾らモンスターが支配しているとはいえ、一歩歩けばエンカウントする程大量には居ない、強くなればなるほど、当たり前だがその個体数は減って行く。

 

 

 

「着いたにゃ!ハンターさん、頑張るにゃ!」

 

 何事も無く狩場に到着、支給品BOXを覗くと地図と松明が入っていた。

 

「………。」

(いやしっっっぶ!何これ?ギルド舐めてるん?下位ではないとは言えご指名受けてこれ?)

 

 本来、上位以降のクエストはその危険性から支給品の到着が遅れてしまう事がよくある。ハンターを送るより、支給品を送る方が大変なのだ。更に擁護するならば、本当に最近発見されたばかりという事が事態に拍車を掛けていた。ただ、どんな理由であれ、迷惑を被るのはハンターなので愚痴を言われても仕方がないのだが。

 

 

「………。」

(うわっ、こうも露骨に雰囲気が変わる物なのか?)

 

 キャンプの外。つまり人の手が加われてない"外"の領域。

 

「………居るな。」

(どこにいるかはわからんが、確実にスタンバってる。)

 

 

Kuaaa……ッ!

 

「……クッ!」

(ヱヱ!?)

 

 

ドスン!!

 

 

 一瞬、埒が空かないと少し動いたその瞬間、言葉通りに"突っ込んできた"。

 我が身を顧みず、クチバシの先から尻尾の先まで一直線。滑空の力を最大限に猛スピードで飛び込んでくる。通称『ガルルガミサイル』でお出ましだ!

 

「グボァ!?」

 

 大型モンスターの中では軽量級とは言え、その質量攻撃は人類の耐力を超えている。

 

 哀れ、貫通どころか両断。無慈悲にその人生を閉ざしてしまう……。

 

 

 一乙

 

 

 我が身を顧みず、クチバシの先から尻尾の先まで一直線。滑空の力を最大限に猛スピードで飛び込んでくる。通称『ガルルガミサイル』でお出ましだ!

 

「………。」

(やっと成功!いきなり音もなくそれはイカン!お返しどうぞ!)

 

 間一髪!動かないと飛び込んで来ない為に態と動く必要があり、回避タイミングの調整に手こずりはしたが、なんとかものにすることに成功。ここで初めて反撃に出る!

 

 

KUOOO!?

 

 

 肝心のイャンガルルガはというと、渾身の初撃を躱され地面にクチバシが突き刺さり、間抜けを晒していた。体はいまだに宙に浮き、クチバシだけが地に着いていた、と言うか突き刺さっていた。

 

「………。」

(狙うは喉元!クチバシも胴体も翼も尻尾も脚も全部ガッチガチ!此処しか斬れる場所がない!)

 

 狙う所は毎度同じ、古傷残る首元へと刃を向ける!

 

 

Kueeeee!!!

 

 

「は?」

(ちゃんと隙は隙してろ!)

 

 くぐもった鳴き声を出しながら更なる行動を見せるガルルガ。

 なんとこの体制で突っ込んだ力を利用して、そのまま尻尾を前に振ることで前方へと宙返り。反動でクチバシはすっぽ抜け、更に空中で体を捻ってそのまま着地、なんならハンターと距離も取る絶技を見せる!

 

 

KEEE!!!

 

 

「……。」

(煽ってんじゃねぇぇぇぇえッ!!!)

 

 ドスンドスンとその場で両脚で飛び跳ねるイャンガルルガ。人によっては煽りに見えなくもない…、いや実際煽っているのだろう。

 

「……余裕しかない様だ。」

(いい加減その面も見飽きた!忌々しいそのドアタマカチ割ったぁら!)

 

 

 八乙目……

 

 未だ底は見えず……

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

クエスト名

『我は流るる、流るるは我』

 

依頼者

生態観測所 所長

 

依頼文

 此度の特殊個体イャンガルルガの発見に成功した。神出鬼没故に辛酸を舐められたが、生態観測所の名にかけて奴の居場所を突き止めた。暫くは動かないとされるが、そう長くは居ないとされる。至急、腕に覚えのあるハンターを派遣し、これ以上被害が増加する前に討伐するべし!

 

 

 

ハンター君

 不本意ながらソロ討伐。泣いた。

 

シナラ

 ルーツみたいになれたらもっと距離が縮まるのではと考えてはいるが、面倒が増えて、ハンター君の負担になるのは嫌なので自重。尚。結局面倒二号な模様。

 

ルーツ

 面倒一号、少しヨイショされただけで機嫌を直す。根は単純だからねしょうがないね。

 もちろんどこかで様子を見て悶えている。

 

受付嬢

 G級ハンターの協力を蹴ったハンターの正気を疑うも、いつもの事かとまぁいいんだろうねの精神

 

イャンガルルガ

 

「クェェエwwwwwwwww。」

 




 あと二、三話?……進めて行くとあれもしたいし、これしたら自然になるかな?とか出てきてやばい(語彙消失)ただ、骨組み通りにはいけてるからヨシ!……予定通りだけど予定は未定ですね。
 ガルルガのポジションは、ライバルでラスボスの二、三歩前に立ちはだかる感じ。


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九乙目、唸狂

 唸るの音読みって『テン』らしいですね、意外でした。てっきりネンとかコウだと…


 

 人間の感情は豊かである。…何も他の生物が劣っていると言いたい訳では無いが、此処まで顕著で、複雑になった種もないだろう。……その度合いは違えど、確かに彼等彼女等は思うのだろうが、ただし、それを理解できない、だから見えない。見えないから、我々は我々を豊かだと思う事が出来るのだろうか?

 

 

 

 

kuaaaA!!

 

 

 

 狂鳥は喜びの声を上げる。嬉しくて嬉しくてたまらないとでも言うように。

 

 狂狼は抑えるように唸る。これから起こることが待ち遠しくて仕方がないとでも言うように。

 

 

『戦える!闘える!仕掛けてない!仕掛けて来た!』

 

 

 

『異常』この一言に尽きる。何せ無駄なのだから、この異常な執着は、生きるのに必要がない。常にありとあらゆる危険に晒されていると言うのに、実に呑気な事をしているものだと、我々の視点でも無駄だといえよう。

 

 

 唸る一匹狼はただひたすらに喜びを胸に構え続ける。

 

……

………

…………

 

 

Kuaaa……ッ!

 

 伝家の宝刀にして得意技。単純明快、ただ全ての筋力を発揮してただただ突っ込む!それだけで全身凶器の出来上がり!

 完全なる意識外からの攻撃、避けられるハズが……。

 

 

KUOOO!?

 

 

 『避けられた!?』

 

 思ったし考えた、焦りも確かに感じた。が、別に予想外という訳でもない。奴がこの後どうするか、何処をどう狙って来るのかは今まで経験で、何より鎧の向こうのその眼を見れば一発で分かる。だからこそ!

 

 

Kueeeee!!!

 

 

 衝撃をそのままに尻尾をさらに前へと振り回し、その反動で刺さったクチバシを引っこ抜き、奴の刃を回避しつつ、空中で半回転しながら距離を取って着地する。

 

 

「……!。」

 

 

 分かる、分かる分かる!驚いているのが一目で分かる!

 

 

『見たか!見たか!一杯食わした!面食らわせた!』

 

 

 ガルルガの声が聞こえたならば、その行動の意味を理解したならば、表すべき人の言葉はこうだろうか?…今の今まで尽く、やることなす事を最も簡単に読まれてしまう。……気付けば、いつからか"挑戦"になっていた。

 

 編み出した技、真似た技、身に付けた行動力。全て全ていなされた。何ともなさげに超えられた。『それはもう見た』と言わんばかりに軽々と。だから嬉しい、だから楽しい、通用しないし張り合えない、声の一つすら上げさせることすら出来やしないその状況が、果てしない"上"を見上げ続け、そしていかにして届くかを、考えて考えて、試行錯誤するこの状況が楽しくて仕方がない。だけどやっぱり、通用した時が一番楽しい。

 

 

「………。」

 

 

 向き合う姿はいつも通り、だけども今日はひと味違う。『来た』と言う事は"そう言う事"。

 

 

 『さあ行くぞ!この戦いは、今までで一番楽しくなる!。』

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「………。」

『余裕綽々ってか?舐めやがって、もううんざりなんだよぉ!)

 

 対峙する両者、考える事は対比に等しく、されども向かう方向は共に同じ。

 

「…………ッ!」

(ノーモーション突進!?完全にモノにして来てる!まずここは回hッ!」

 

 まずは小手調べの突進、突進と言うからには何かしらの溜めが必要だが、最速でかつ意表を突く為に編み出した技、出会うたびに上がる練度、それは完全に予備動作を無くし、隙を無くして初めに叩く!かと思いきや、

 

 

kueeeeE!!!

 

 

 突進の威力を無理矢理押し込め急停止!ほんの一瞬の硬直、からの自慢の脚力で飛び越えて後ろに回り込むと、頭だけ振り返ってハンターを確認し、瞬時に狙いを定めて勢いよく尻尾を振り下ろす!

 

「ッ!」

(何だ!気持ち悪い動きしやがって!モーションキャンセルとかテンポが崩れるんだよ!……っ!…あっ。)

 

 ガルルガの毒は尾の先端に生えた数本の棘から大量に分泌され、特殊個体ともなればその量は破格。それこそ振り下ろす衝撃が加われば、その劇毒は周囲に撒き散らす事になる。

 

 そう、ハンターは浴びてしまった。紙一重で乗り切られる程甘くは無い。

 

「………クソ!」

(……エスピナスみたいな事して来るな!…まずi)

 

 毒では死なない。死なないが、行動は遅れる。そしてその遅れはどうしようもないほどに致命的だ。

 叩きつけられた尻尾はそのまま横に薙ぎ払われ、避けること叶わずしてハンターは全身を激しく打ち、更に毒のせいで止まらない出血により視界は暗転していった…。

 

 

  九乙目

 

 

 突進を急に辞め、そこからハンターを飛び越えるガルルガ、頭だけ振り返って尻尾を振り下ろす!が、既にハンターの姿はそこには無い。では何処か?

 

「……。」

(さっきお前は"右"を向いた!つまり左は死界!)

 

 右を向けば左が見えない。当たり前だが、意表を突けたと思ったガルルガにはそんな事は考えられない。

 

 決定的な隙。今度こその反撃!

 

「は?」

(は?)

 

 そんな事を考えられない訳が無い。片脚で地面を蹴り、片脚を軸に回転し、振り上げた尻尾を振り下ろす。

 

「ッ!」

(っぶね!外に避けたら毒を浴びる、なら懐だ!首より狙いにくいが腹も弱点!斬りつけて爆破を狙えばこっちが有利!)

 

 狙いを付けたのは腹部。攻撃の起点故に差し出されることの多い頭部と違い、ババコンガの様に積極的に晒される部位では無い様狙いにくくはあるが、それに見合ったダメージは期待出来る。

 

 

kueaaaA!!!

 

 

 渾身、正に渾身の声、懐に潜り込んだハンターに対し渾身の反撃!

 自慢の脚力にものを言い、勢いよく前へと尾を振り上げる!その姿は正しく陸の女王『リオレイア』!

 

 

 十乙目

 

 

「……今度こそッ!」

 

 不意の突進を繰り出すガルルガ、突然動きを止めて飛び上がる。悠々と飛び越える事を見越して構えを取るハンターだったが、それは的外れになってしまった。

 

 

kuuuuuaaA!!!

 

 

 ドスンッ!

 

 

 直前までわからなかった。繰り出されたのは巨大なクチバシによる突き刺し!凄まじい音と共に地面を容易に穿つその一撃、間一髪で避けたものの冷や汗が止まらない。そして止まる事はない、ゲームでの行動を、そして何より身を持ってそれを知っている。彼はこれで終わらないと分かっている。だからこそ二発目に備えて回避を……。

 

「何!?」

(へぶっへ!?そんなの今までしてなかったぁ!)

 

 通常なら、今までなら、再び飛び上がりもう一度オマケに突き刺してくる筈なのだが、行って来たのはクチバシに溜めた泥をかけて来た!

 モンスター相手にはボルボロスレベルの泥でもなければ意味が無いのだが、人間相手を考えたなら話は別、いとも容易く行動を制限させられる。

 

 

 kaaaaaaA!!!

 

 泥掛けと共に飛び上がったガルルガは、そのクチバシに迸る炎を蓄えて撃ち放つ!

 

「マズイ!」

(やべ!これアレだ!『マシンガンブレス!』)

 

 ただ撃ち放つだけでは変わりが無い、その投射量は二発?かそれとも三発か?いいやそんな程度では無い、数十発に及ぶ火炎弾が怒涛の勢いで撃ち払う!

 

 

 回避の為の唯一の時間を潰されてしまったハンター。避けること叶わずに撃たれ、焼かれてしまった。

 

 

 十一乙目

 

 

「………。」

(マズイマズイマズイ!コイツ行動が変わるパターンだ!)

 

 大抵、細かな差はあれど、やって来る行動は同じだ。それは彼等彼女等が自然で生き抜く為に編み出した、最高の一手、自分に適した最高の行動だからだが、稀に『気紛れ』で動くものがいる。目の前の奴が典型的な例であり、1番相手したく無い例だ。

 

「……仕上がった訳か。」

(今までそんな事はなかった、何があったか判らないが勘弁してくれ…。)

 

 程々に参った、これからの未来に絶望しか感じないハンター。それもその筈。

 

 

〜〜〜〜〜ッ!!!!

 

 

「…効かん!………ッ!!?」

(残念!『耳栓』持ちなんだよ!なぁに!?)

 

 

 ある時はまともに聞けば鼓膜が破れてしまう程の咆哮を放って来た。『耳栓』のおかげで難を逃れたが、防具が破壊された時などは確定された死に怯えるハメになるので完全に生き地獄。

 

 

「ッ!」

(セルレギオスぶるなァ“ァァァア!!!)

 

 またある時はトリッキーな飛行軌道からの強烈な蹴りを繰り出して来た。地上も空中も隙がなく、完全にモノとしているのが感じられる。

 

 

「そんな事もか!」

(それディアの突き刺しやん!……なぁに!?!?)

 

 異常な追尾からの突き刺し!…からの無理矢理地面ごと掬い上げハンターの足場を崩して来たりとキリがなく、果てには、

 

 

「……グッ!」

(それラギアにアビオルグ!?真似るのは飛竜だけにしろ!)

 

 クチバシに炎を溜め込みながら地面を掬い上げ、燃える砂塵を撒き散らしたと思えば、尾を斜め下に振り下ろし、地面ごと弾き飛ばして来る力技も披露してきた。

 

 

「………。」

(頭使うな!禁止禁止!チーターやん!)

 

 何も力任せで解決というわけでも無い。一見、どうしようもなく隙を晒している様に見せ掛けて、ここぞという時に命を刈り取って来る場合もある。

 ただ、やはり1番ハンターを苦しめたのが、

 

「……まだか!」

(まだパターンあるの!?どんだけ行動ガチャ引かないといけないんだよ!)

 

 そう、行動パターンの多さだ。そしてこのモンスター特有の『気紛れ』が合わさり、地獄の様相を呈していた。

 

 

「………。」

(初手の行動が同じならまだしも、初手から違うから厄介だし、何より出て来るまでわからん!)

 

 通常のモンスターならば、1の行動からこちらのアクションにより大体決まった方向に進んでいくのだが、元の1が10くらいある上に、こちらのアクションガン無視で様々な行動パターンを見せて来る上に、まるでゲームの様にいきなりフェイントをめり込ませて来る為、厄介極まり無い。

 

 

 八十七乙目

 

 

「……。いい加減……。」

(あんまり舐めるなよクソ鳥。幾ら行動パターンを積もうが基本はお前。その基本を幾度と無く破って来たのは…この俺だ!)

 

 幾ら学ぼうと、幾ら真似ようと、『狡巧流るる』との名を冠しようと、結局根っこはイャンガルルガ。更に言えば、

 

「………見切れる!」

(確か前世では誰かさんと接する時は、「相手の身になって考えろ」って言われてたな?…腐る程見て来たその動き!嫌でもお前の行動がわかって来るわ!)

 

 今イャンガルルガに転生したならば、誰よりも何の不自由もなく体を動かせる自信があるだろう。今のハンターにはガルルガの動きが手に取るようにわかる。だがそれはガルルガも同じ事。よってこの勝負、

 

「どっちが互いを知ってるか!」

(どっちが互いを知ってるか!)

 

 抱く感情は正反対。その癖向かう方向は殆ど同じ、向き合う姿勢は夫婦の様。正にあべこべ意味不明な勝負。そもそもこの【勝負】、生きる為には全く必要では無い、全く無意味な戦いに、どうやらこの竜は意味を見出した様だ。『本能』で片付けられない別の意味を。

 

 無意味な事に意味を見出す。それは何とも、何とも……。

 

 

 

「なんとも【人間臭い】ではないか?…『ハンター』よ。」

 

 

 

 一つ言えるのは、付き合わされるハンターに取ってしてみれば迷惑極まりないと言う事だ。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「………仕上がった。」

(……いいとこまでいけた。新しい行動も無い、それに追い詰められると従来の行動しかしなくなっていく、その分攻撃は鋭くなるが序盤のパターンラッシュに比べれば安い安い!)

 

 

 今回のパターンは?

 

 

「滑空!」

(それやめろって言ったよなぁ!止める術が無いんだよ!)

 

 早速、言うなれば『ダメ行動』を引いてしまうハンター。回避のみを強要される為、取れる手が減るのが辛かったが、なら諦めるのかと言われればそうでは無いのがハンターだ。

 

 

「…フン!」

(逆境万歳!!全部纏めてひっくり返してやる!)

 

 脚と脚の間をギリギリですり抜け、尾に捕まる絶技を披露する。堪らないのはガルルガ本鳥、いや鳥竜だから本竜か?兎も角、速やかに着地と同時に振り払おうとするものの……

 

 

KUOOO!!??!

 

 

 爆音と共に流れるは激しい激痛。振り返れば無くなっている、ハンターも居ないがそれよりも重要な尻尾の先、毒棘の生え揃う強靭な尾が。

 

「…短期決戦!」

(チンタラしてたらこっちがバテる!多少の無茶を通して道理は引っ込んでもらう!)

 

 尻尾の裏側は多少は柔らかい。が、今までの武器では攻撃する意味がなかったが、今回は違う。素早く突き刺すと同時に離脱しながら切り裂くが、これだけでは斬り落とすにはまだ足りない。そこで爆破属性の出番だ。

 

 言い表すなら『爆ぜ斬った』。今後一生使うかどうかも怪しい言葉だ。

 

「………。」

(まだまだ!)

 

 動揺するガルルガに隙を与えない。与えたら簡単にひっくり返される。だから攻める。攻めて攻めて攻めまくる!

 

 

KaaoOO!!

 

「………。」

(どうした!動揺が抜けきってないぞ!しっかし、この武器本当に強い!適当に斬ってもダメージを出せる!)

 

 隙がなければ作ればいい。短ければ広げればいい。武器の特性上、斬れば斬るほど有利になる。

 

 あれほどまでに苦しめられた頑強な外殻に罅が!

 

 あれほどまでに恐れた翼膜は今や破れ去った!

 

 あれほどまでに健脚を謳われた脚の力が失われる!

 

 あれほどまでに血を吸ったクチバシが欠けていく!

 

 

 

「終わりだ。」

(……お前は強い、俺が千人居てもお前には敵わない。だけど、残念ながら、誠に遺憾ながら、俺は一万回繰り返してもまだ戦えるんだ。)

 

 対するハンターも無傷では無い、鎧は既に役目を終えた。次その身を守る事は決して無い。

 

 千人居ても敵わない、ならば千回、万回戦えばいいのだ。ただの数の暴力では無い、試行回数、トライアンドエラー、心が保つ限り存在する無限の残機、そしてモンスターにとって残念ながら、

 

「…………ずっと…………俺が折れる事は、ない。」

(今までも、これからも、俺が折れる事は!ない!)

 

 彼の前世を、彼の生き方を見れば特段崇高な事を考えて生きているわけではない。そもそもモンスターハンターだなんて言う家業も本来したくてした訳ではない。それを見た上で多くの人は問い掛けるだろう。

 

「何故そこまで?」

 

 簡単だ。ハンターならこう返す。

 

「生きる為。努力と奇跡を絶やさぬ為。」

 

 厳しい自然、今息をして居られるのは何故か?

 

「我々は生かされている。立っている。」

 

 自然と、その自然を生き抜き、そして関わり、支えられたすべての命に。

 

「ならばやる事は一つ、絶やさぬ様に"繋ぐ"。」

 

     助けられた

 今日誰かを糧にした。

 

     助けに

 明日誰かの糧になるかも知れない。

 

 ハンターは生きる。自分を支えた人に報いる為、自分を生かした者たちに報いる為、感謝を紡いで繋げる為に。

 

 

 

 

 時として『死灰の渦』とまで呼ばれた怪物はどこえへやら、見るものが見れば驚くだろう。「これ程までに弱々しかったのか!?」と、ただ、依然として狂気を纏いながらもその瞳には理性が確かに宿っている。例えるなら炎と氷を同じ環境に置いたはずなのに全く干渉して居ない、とでも言うべきか?

 

 

KaaaaAA!!

 

 

 飛び上がるガルルガ、一瞬の滞空の後にヒビ割れたクチバシをハンターへ向ける。その瞳は依然として光を失わず、寧ろ輝きは増す一方。

 

 

「………いいだろう。」

(………返してやんよ。)

 

 見覚えしか無いその構え、最初も最初から、今回もしてやられた『ガルルガミサイル』。

 

 

 引くのではダメだ、押していく!迫り来る致死の一撃をギリギリですり抜け回避に成功すると、すぐさま上に刃を突き立てる!

 

 

「グォォオオッ!!」

(イギギギギギギガァァァァア!)

 

 膝が、肘が、ありとあらゆる関節が持っていかれそうになるが、耐える。獣の様な声を轟かせ、ひたすらに耐える!

 

 喉に初まり、首、腹、尻尾に到達する!

 

 

 

 爆ぜる刃は容赦なく破壊する。姿は変われどその在り方は変わらない。爆ぜる道は未だ険しく、脆弱な主ですらも巻き込んで……。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 結局届かなかった。

 

 全部全部ダメだった。

 

 初めはいつも通り殺そうとした。だけどダメだった。悔しかった。

 

 いつからか楽しくなった。一杯食わせてやれるのがとっても楽しかった。負けても全然悔しく無い。

 

 攻めた、攻めた、しつこく攻めた。会いに来ないから会いに来た。

 

 

 ある日突然攻めて来た。嬉しかった。ワクワクした。

 

 驚いた顔を見た。人間はいい反応をするけどやっぱりコイツの反応は格別だ!

 

 会う度に強くなって居たけど今回は特別だった。付け替えれる刃がまた変わっていた。

 

 初めて部位が欠落した。痛かった。ドキドキした。

 

 初めて甲殻が割れてしまった。驚いた。ワクワクした。

 

 戦い方がいつもと違う。それだけでもハラハラした!

 

 重ねる傷に興奮した。いつもならもう切り上げてるけどしなかった。

 

 当たり前だ、こんなに楽しいのに辞められるわけがない!最後まで!楽しまなくちゃ!

 

 

 

 

 

『あぁあ、終わっちゃった、いっつもそう、楽しい事はすぐ終わる。もう会えないし残念。…………楽しんでくれたかな……。』

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

ハンター君

 自分のとガルルガのブツにまみれて仁王立ちして放心してる所を発見される。気が付いたら病院にいたらしい。

 

ガルルガ

 戦いに生き、戦いのみに居場所を求める。果たして他者に寄せる心が彼等彼女等にはあるのだろうか…。

 




 何とかこぎつけた…。


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十乙目、寂独

 ん?……ファ!?よくわからないけどこんな所まで行くとは……。



 

「………はぁ。…またか。」

(ん?…知ってる天井だ、出来るだけ来たくなかったんだけどなぁ、今回は俺の不手際だから自腹、報酬金はパァだ。)

 

 どの程度の怪我なのか、どのくらい眠っていたのか、さらには自分の持ち物はどうなったのか。疑問は尽きないが、ひとまず得たものよりも失ったものの方が多い事は確実だと確信し、やってられんと溜息をつく。

 

「おっと?またバレちゃった?どうする?看護師さん呼ぶ?」

 

「………。」

(ファ!?なんだコイツ!?何でいるんですか?俺何も悪いことしてないよ!…してないよね?)

 

 聞き覚えのある声に驚愕。前回と違いなんとか体は動かせるので声の方向へと顔を向ける。

 

「………。」

(あら結構若いのねイケメンじゃない。じゃあ失せろ(豹変))

 

「その無表情も変わらないね。最近も大活躍だった様で。……あっ、警戒しないでください。今日はしっかり、中央より仰せ使った感謝を述べる為に来たので。耳寄りな情報もあるので聞き逃さないでくださいね?残念ながら時間もそうないので。」

 

 意外にも整った顔立ちは笑みの表情。赤を基調とし、規律の整った服装と剣を持った彼は大袈裟な動作を取りそう言うと、最後にウィンクする、中性的な顔立ちも相待って、誰とは、何とは、言わないが"刺さる"モノがある。

 

「……。」

(は?(迫真)一応言っておくがお前のこと苦手だからな?)

 

 ハンターには無かった様だが…。兎も角、服装次第では千変万化するであろう素質を秘めていた。

 

「ん〜〜連れないですね。とっとと話せって?…それもそうですね。ゴホン!」

 

 わざとらしく咳き込み、一旦話をまとめると、聴き取りやすくよく通る、かと言って無駄に響く訳でもない、この部屋、この空間に適した声量で事を話し始めた。

 

「原文そのままでは長ったらしいので要所のみを…。ハンター君による『狡巧流るるイャンガルルガ』の討伐お見事!被害が出過ぎた為に積極的に腕に覚えのあるハンターを派遣しだが……軒並み返り討ちに合い、頭を悩ませていた所だった、本当に感謝する。……うん!やはり凄いですね!噂は耳にしてましたけど、僕じゃ絶対歯が立ちませんよ!」

 

「………。」

(近づいて来んなよ!)

 

 少し興奮気味に事を読み上げ、ジリジリとハンターに寄り始めるギルドナイト。

 

「おっと、それちゃいました。……まぁ、後の事をちゃっと話すとG級ハンターになりませんか?って話ですね。あっあと医療費全額負担。」

 

「………。………は?」

(おいおいおい適当すぎだろ、それでもエリートかよ……。は?今なんて?)

 

「ん?…おぉ!!貴方もやっぱり驚きます?いやぁ、いいですねぇ、なんか…"独り占め"って感じだ!」

 

「俺が……それはもう決まったのか。」

(マジで?え?…嘘をつく役では無いのは分かってるから本当なんだろうけど。)

 

 虚を突かれた。表情が変わった気はしないが、呆けた顔をしているのだろう。なぜなら今絶賛ニヤつきながらコチラを見ているからだ、ギルドナイトが。ハンターは彼の事を苦手ではあるが、嘘をつく存在では無いとも思っている。だから信じる。

 

「……あっさり信じるんで?こういうのもアレですけど、嘘言ってる可能性もありますよ?」

 

「お前は嘘を付かない。」

(いや嘘つく人間じゃ無いでしょ、それにギルドナイトが大嘘つきとかギルド辞めるわ。)

 

「おっと?…こりゃ反撃貰っちゃいましたか…手強いですねぇ…んっ、それで、決まったと言うよりは権利を得た感じですね。貴方が望めば、今すぐにでもギルドに行って、晴れてG級ハンター!」

 

 虚を突かれた。今度はギルドナイトの顔が呆けた顔をしたが、すぐにこりゃ取られたと笑い出し、ハンターの疑問に答えた。

 

「………G級ハンター…どの様なモノだ。」

(G級ハンターって言うけど、実際何してんだ?)

 

「慎重ですね、似合ってます♪…G級ハンター、私も会った事はあまり無いのではっきりとはわかりませんが、結構引っ張りダコらしいですよ?各地でとんでもなく強いモンスター、特に古龍とか古龍級生物が現れたら積極的に対抗馬に出される訳ですからね、とは言っても、そんなにホイホイ現れるわけでも無いですし、結構自由かも?」

 

「………。」

(え〜、なんか大変そう。)

 

「あっでも、待遇はスペシャルですよ!」

 

「……。」

(何!?)

 

 表面には出されてないが、ハンターの手のひらは180°回転して一気に話に耳を傾ける。

 

「何と!中央で悠々自適な暮らしが用意されます!」

 

「……行かないと行けないのか。」

(う〜〜ん、魅力的だが此処を離れるのもなぁ。)

 

「え?え〜と、基本は居てもらう形n「辞める。」な…る。…へ?」

 

「辞める。」

(は?)

 

「俺は此処を離れるつもりは無い。」

(お、お?え?そりゃ離れるのもなぁって思ったけどそこまでキッパリとした意思ではないぞ!?)

 

 如何にも「じゃじゃ〜ん」という風な形で紹介するものの、話を斬竜バリにぶった斬られて呆けを越えて間抜けズラを晒してしまうギルドナイト。

 

「え?そっそりゃ本拠地は中央になって、色々忙しくなるだろうけど、何もそこまで…。」

 

「…居場所は…此処だ。」

(今この状況じゃなかったら褒めてやるわ。"今"じゃなかったらな、今は罵倒しか出てこない。)

 

「……なるほどぉ…。あっ確かに貴方を取り巻く環境を見ればそうもなりますか、確かに確かに。」

 

「………。」

(………。あっ。)

 

 合点がいったとでも言うふうに頷くギルドナイト。ズレてるかもしないがこれ以上の言葉は捻れの元になるので何とか黙る事にしたハンターだったが、ある事に気付く。

 

「では、私の仕事もこれでおしまい、G級ハンターはあくまで権利、どう使うかは貴方次第。いつでも扉は貴方を待ち続けていますよ。ではまた何処かでお会いしましょう!」

 

「まて。」

 

 羽飾りのついた赤い帽子を外してお辞儀をし、背を向けようとしたギルドナイトに声を掛ける。

 

「?」

 

「名前は、また会うのだろう。」

 

「!?…不意打ちでそれはもう……貴方にはやられてばかり、敵いませんよ。僕の名前は『ジード・ハルラス』、気軽にジーくんと呼んでもいいですよ♪」

 

「……ジード。」

 

「そうなると思いました。では今度こそ!次見かけたらぜひ呼んでください、また〜。」

 

 降参とでも有用に両手を挙げてはいたものの。見るからに機嫌良く病院から出て行ったジード。最後に普段の彼を垣間見る事ができた気がする…。

 

 

「………。」

(今回は初めからやたらと責めてきたな。まだ二回目だよ?)

 

 

 ………最後どころでは無いかも知れない…。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「いゃぁあ、凄かったんだよ?運ばれた時は臭いのなんのって。それにどれだけ話しかけても何にも応答がない、完全放心状態だったからね。」

 

「………。」

(確かに、全然記憶がない。)

 

「治療の前に全身を洗う所から始まったよ。君も君なりに動いてくれたおかげで、そこまで酷い傷もなかったし、よかったよかった。」

 

「………。」

(え?体?あっ、ふぅ〜ん。)

 

 何がどうなったか、あの時何が起こったのか。聞かないし聞いてはいけない事を察した。だから看護婦さんの表情なんて気にしない。

 

「ふむ、すぐ復帰するのだろう?ハンターも大変だ。さっもう来る事がない事を祈ってるよ。」

 

「………………ありがとう。」

(何!?)

 

「?……うむ、どういたしまして。」

 

 

 受け入れた。少なからず受け入れた。自分とは何なのか?表と裏は常に乖離する。どちらが本心か分かりやしない。

 医者の顔は見ずに去った、ただ…その声色はとても懐かしく、その雰囲気はとても……とても心地の良い物である事に変わりはなかった。

 

 

 

……

………

 

 

 

「………。」

(さて、地獄の窯を開けますか。)

 

 何処とは、それは勿論我が家の前。扉に手を伸ばして…、伸ばして固まり早……数分か?それとも数十分?この台詞も何度目か分かりやしないが、いい加減踏ん切りも付く頃だ。ドアノブを握ってええい!と帰ると、中は暗くこれはまさか??と期待すると、

 

 

「…………。居るか………。」

(お?誰も……居ないわけがないですよねぇ…。)

 

……ハンター様?

 

 

 まさかは所詮まさか出会った。震えた声を出しながら、物陰から幽鬼の如く歩調で歩いて来るその姿、黒い髪により伺えない表情も相まって、まるでテレビから出てきそうな何処ぞの怪物の様。

 

あぁ…ハンター様。

 

「………。」

(いや怖すぎ、どうなってるん?これ。)

 

あぁ… ハンター様ハンター様ハンターハンター様ハンター様ハンター様ハンター様ハンター様ハンターハンター様ハンター様ハンター様ハンター様様ハンター様ハンター様ハンター様ハンター様ハンター様ハンター様様ハンター様ハンター様ハンター様ハンター様ハンター様。」

 

「……。」

(え?え?え?俺殺される?呪い殺されるの?何があったんマジで。)

 

 実の所、本気で怖がっているが体が動かないので何も出来ない。出来るならハンター様連呼しながら近付いて来るシナラから逃げたいが、逃げられない。

 

ハンター様!

 

 思わず視線を上に向けてしまう。

 

「………ッ。………?」

(ん?……何も?……おっと。)

 

「ハンター様、お帰りなさいませ。このシナラ、帰りをずっとずっと待っておりました。信じておりました。」

 

 

 ハンターの胸に飛び込んでくるシナラ。その声色は心底安心しているとでも言う様に、先程までの様相はまるで嘘、ただひたすらにハンターの身を案じる姿がそこにはあった。

 

「………。」

(なんか……ごめん。)

 

 怖かったのも真実ではあるが、こうも熱心に、そして真摯な姿を見ると何とも、申し訳なく思ってしまう、そして彼女に掛けるべき言葉も自ずと導き出される。

 

「…………………ありがとう。」

(ん〜、ありがとうございます!…。)

 

「いえ、当たり前の事です……。すみません、もう少しこのまま……。」

 

「……。」

(え?どっう!?どっ!?はっひ?あっあっあっ。)

 

 こんな経験した事がない、何ならもちろん耐性もない、耐性の無い彼の取る行動は一つ。激しく動揺するのみ。自分からはもう何も切り出せない、救世主が来る事を祈りつつ、固まるけど固まらせてはならないチキチキレースが始まった。

 

「………。」

 

「………。」

(あっあっあっあっあっ。)

 

 

「おぉ、帰っておったか『我のハンター』よ。どれ久し振りにそのか…お……、おい雌人、何をしておる?気安くベタ付ける存在では無いぞ。」

 

 

 救世主は現れた。ただそれを演じる役はどうにかならなかったのか。

 

 

「あら?ルーツさん、いかがなさいましたか?」

 

 言葉だけなら相手を心配しているとも取れるのだが、その表情で言われてしまうと然もありなん。ハンターが不動なのを良い事に、更にわざとらしく体を密着させて、まるで勝ち誇るかの様にルーツを見るシナラ。そんな状況でも黙ってるのがハンター。そして黙ってないのはルーツだ。

 

「………離れろ。」

 

「ん〜〜?」

 

「離れろと言っておるのだ。」

 

「脅しですか?怖いですね!」

 

「…お前が此処で図々しくも待っている間なにをs「はい離れます!離れました!もういいですよね!」……うむ、それで良い。」

 

 始めは余裕を崩さなかったシナラだが、余程知られたく無いのか、待っている期間の状態の話を切り出した途端離れて話を捲し立てる。

 

「ナニもして居ませんとも!ええ!ナニも!」

 

「………。」

(いや何もって、なら帰ってもらうことできるか?)

 

「はい!この話はお終いです!さて!今日の夜ご飯はより豪華に行きましょう!ハンター様、少しお待ちください。このシナラ、すぐにご用意致します。」

 

 無理矢理感は否めない。実際早口ではあったが、突っ込むのも野暮だろう。気長に待つかと仮自室に向かおうとすると、今度はルーツから声を掛けられた。

 

「お前、あの狂い鳥が我よりも強かったと言っておったな。」

 

「………。」

(…そんな事言った……気がしないでも無いな。)

 

「お前は奴を下した。つまり我も容易に下せると言う事だ。」

 

「………。」

(ん?そうなるのか?…いやいやいや何そのドスヘラクレス理論!?)

 

「どうする?今やっても構わんぞ?我は寛大だからな、選択の機会をくれてやる。」

 

 

 両者に流れる空気は一気に冷え込んでいく。過去の自分の世迷言に後悔するもののもう遅い。幾ら、失言し過ぎてよくわからなくなっているハンター出会っても、これはマズイと流石に理解している。が、だから変わる訳も無かった。

 

 

「ドスヘラクレスの方が強い。」

(へ〜〜死にたいんだ。お前だけ死んでろ。)

 

 

 今更なんだと言わないが、彼が直すことは無いのだろう。少なくとも何も知らない今のうちは。

 なんとも言えない空気に包まれてしまったが、最初に響き渡ったのは笑い声。なんとも可愛らしく、この場に釣り合わない声が響いていた。

 

「ふふっ……あはははっ!…何を期待してたのか、いや期待はしてたがこう来るとは……ん?いやこうくるとも薄々は思って居たが流石に此処で来るとはな、つくづく飽きない、なんとも面白い!」

 

「………。」

(え?なんか正解選んだの?え?ドスヘラクレスが?)

 

 一人置いて話は進んでいく。何の変哲もない、いつも通りだった。

 

「おっと、忘れるところであった。此度の狂い鳥との決着。実に英雄らしくあったぞ。ハンターよ。」

 

「…………。」

(褒められてるのか?……おっおう。見てたのなら手助けくらい欲しかった。)

 

 

 

 その後、何があった訳でもない。ルーツの前に原型こんがり肉、ハンターの前には新大陸の料理長顔負けの料理が並び、一悶着があっただけ。何も全くいつも通りだ。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「我も変わった、それもこれも全てお前の所為であるのだぞ?ハンターよ。」

 

 寝具にて眠るハンターを見下ろし、そう語り掛けながらハンターに手を伸ばすルーツ。

 

「こんなにも短い期間など、今までは瞬きの如く一瞬であったのだが……お前に会ってからと言うものの、毎日が違う意味で一瞬で過ぎ去って行く、これまでなんと中身のない時間であったか思い知らされてしまう。」

 

 まず彼の頬に手を当てる。その表情は昼間の物とは全然違う。

 

「あの雌人の臭いはしない、それだけで気分が良い。あぁやはり駄目だ、腹が立ってきた。あの場で暴露しておけば良かった。」

 

 慈しみの表情が不機嫌になっていくがそれも一瞬。今度は手を掛け布団の中に差し込まれ、ハンターの腹部に当てられる。

 

「だから、お前が居ないと恐ろしい。戻る事が恐ろしい。中身のない未来など見たくも無い。………寂しいなど初めてだ。」

 

 ハンターの顔を横から見ようとしゃがみ込む。無表情とは違う、何処か穏やかなその表情。普段見せることの無い、貴重で自分だけが知る特別な顔、見ているだけでニヤケが止まらなくなる。

 

「こんなにも堅く、そして柔らかい。なんと温もりと命に満ちているのだろう。」

 

 なんと無防備。規則正しく穏やかに上下すら腹部に手を当て彼を感じているこの行為、なんという背徳感であろうか。できれば彼を全身で感じたい、感じたいがそれはいけないと感じている。理由は分からないが感じている。なんとも曖昧であろうか、それとも曖昧になってしまったのか。もう分からない。

 

 体温は確実に上がっていく。

 

「はぁ…はぁはぁ、一緒に……駄目?何故?でも駄目なのだ。」

 

 いつの間にか角が現れていた。

 

 いつの間にか尾が生えていた。

 

 今の彼女の体勢はとても褒められたものでは無い。まるで蛙のような姿勢でしゃがみながら、彼を見て感じて惚けている。

 

「今我の手中に命が委ねられている。………あぁ、我だけの温もりだ。」

 

 腹部に当てられた手はそれ以上の事はしない、出来ない。切ない気持ちもある、名残も惜しいがこれ以上は色んな意味で少々マズイ。

 

「んん……我は期待しておるぞ、お前は我のであるからな。だから、これも全然不思議な事では無い。」

 

 

 目に付けたのは寝相が悪いのかほっぽり出された枕。さも当然かの様に枕を持って退出していくのであった。

 

 

……

………

 

 後日、シナラに枕を発見されたが、シナラが洗濯をしている事を良いことに色々ブツを拝借していた事がルーツにバレ、有耶無耶になった。

 

 

 

「………?」

(あれ?枕は?てか俺の服は?)

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 翌日、ハンターの姿は加工屋にあった。目的は勿論。

 

「ガルルガを防具に?任せろ!武器は良いのか?」

 

「………良い、多くも無い。」

(う〜ん毒も強いけど爆破の汎用性高過ぎて手放せねぇ。そもそもバゼルほど多くも無いから防具が限界だな。

 

「初の特殊個体と来たならどうなるのか俺も分からねぇが、加工屋として世界初の防具製作だ。俺の全てを賭けてやる必要がある。採寸は前のやつが使えるから、気長に家で待っとけ!」

 

「わかった。」

(まっそうなるな。帰るか。)

 

「おうよ!今度は絶対壊れない様に作ってやる。お前が相手してきたのがはちゃめちゃに強いのは知ってる、お前がそれに防具を頼ってるのも、防具のお陰で生き残ってるのも知ってるが、毎度壊れちゃこっちは悔しくて仕方ねぇからな!」

 

「………ありがとう。」

(そうか、毎度渾身を壊してるのか。なんかすまねぇ、でも!お陰でミスをチャラにしてくれたりしてくれるから助かってるぜ!…なんか最近素直やな。)

 

「おん?……当たり前だ!何よりも悔しく、1番駄目なのは死なれる事だからな!その点お前さんには感謝しかねぇ、壊れた奴も本望さ!」

 

 最近防具を壊してばかり、レウス、ジャギィ、バゼルと皆んな壊れてしまった。悪い事をしたとは思うが、勿論感謝もしている、だから出て来たのは謝罪ではなく、感謝だ。

 

 オーダーを決めれば後はすることもない。大人しく帰るが、途中である事を思い出す。

 

「あっ、金。」

(あっ、金。)

 

 別に裕福ではないのは変わりは無い。そもそもただでさえ高額な武具作成だ。本来一年に一度で良いとされているのに、既に四度目。払えないなんて事は無いが、危機的な事には変わりは無い。

 

「…………。」

(頼る?だれを?シナラ?…駄目だ。頼ったらそれはもう終わりだ。なんとかやりくりせねば。)

 

 シナラは現金を持って来た訳では無く、最近は狩りもして無いので、実質二人分上乗せで彼が回している事実に今更気付く。

 

「……はぁ。」

(泣けるぜ。)

 

 

 やはり苦労は絶えない様だ。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ハンター君

 矛盾は全部蓋をしよう。住み分けも立派な選択肢。今は今が一番いい。

 ドスヘラ理論で一乙仕掛けるも、無事生存。女性に弱い素人童貞、尚ルーツは別の模様。、

 

ルーツ

 寂しさを知ってしまった。もう戻れないから後は近づくだけ。だが、まだ無理。

 

シナラ

 ハンターお祈りandナニタイム。ルーツと違って"知ってる"からね仕方ないね。

 

ジード

 個人的に仲良くしたい所ではある。と言うか普通に好きですねぇ!

 

医者

 また君かぁ、壊れるなぁもう。

 

加工屋

 世界初の防具製作!?うっひょ!?!?!

 




 ガルルガが武器になると思っていた方々、すみません防具になりました。爆破の方が強いからユルシテェ、ユルシテェ…。
 


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十一乙目、蓋を外し、喇叭が響く。

 次はどうしようかな→取り敢えず別の事を→無事忘却→更にハーメルンから一時的に離れる→思い出して復帰→投稿してみる。

 久しぶり過ぎて至らない点があるかも知れませんが、楽しんでくれたら嬉しいです。


 

「父さん、武器、何使ってるの?」

 

 なんて事は無い。ただ降って来た、言葉にしなければ消えてしまう。他の事を考えれば思い出す事すらしなくなるような質問。

 しかしながら、タイミングは良かったようだ。

 

「ん?気になるか!そうかそうか!お前もやはり男の子だからな!少し待ってろ、すぐに持ってきてやる!」

 

 目を輝かせてドタドタと自室に駆け込んでいく父親の背を見届ける少年。すると背後から呆れた声が一つ。

 

「全く落ち着きが無いのですから……これじゃどっちが子供なんだか……。」

 

「………。」

 

 首を左右に振りながらこちらに歩いてくるのは少年の母親、家事の後なのか、布で手を拭きながらその表情は呆れ顔。

 

「……いつも本ばかりに齧り付いて、武器の話どころか、お父さんの狩り話すら聞いたことがないのに、どうして唐突に武器?母さん気になって来ちゃった。」

 

「……なんとなく。それだけ。」

 

「……まっ、そんなものよね、でもそれも立派な行動理由よ、思った日がやりどきって言葉があるでしょ?何処だったかしら…ユクモとかだった気がするけど……ん?どうやら見つけたようね、私は買い物あるからしっかり父さんの話聞いてやりなさい?話す機会がなくてウズウズしてたから。」

 

 そのまま慣れた手付きで身支度を整えると外へ出ていく母親、それと同時に入れ替わりで父親が騒がしく戻ってくる。

 

「ほらコイツが自慢の片手剣だ!」

 

 自慢げに掲げられたその武器の様相は、思っていたものとは何処もかしこも違っていた。

 

「………なにこれ?」

 

 まず色だ。深く、濃い緑の刀には、赤黒くありながら、何処か緑色の色彩を持ったナニカを放ち、刀身には無造作に引き裂かれたかとも思えば何処と無く規則性を見出せそうな模様が刻まれている。

 

「盾もなんか違う。」

 

 盾も盾だ、刀身同様の有様ではあるが、一部が朽ちてしまっている事から相当古いものだという事は分かった。

 

「これ使えるの?」

 

 正直なところ、この父親がこんな訳も分からない武器を使えるのか?と言うのが本音だ。

 

「まぁ……使えん!」

 

「………。」

 

 この潔さ、こうもキッパリ言われるとどう反応すればいいのか困ってしまう。

 

「性能はいいんだろうが特化し過ぎて汎用性は全く無い。普通の武器の方がまだ良い。ただ、これには圧倒的浪漫が詰まっている!」

 

「……、名前は?」

 

「うぐっ……無視……ン"ッ。」

 

「コイツの名前は『屠龍剣【狩回門】』、これを除いて未だ発掘された事も無く、新たに製造された事もないとされる、今のところ世界に一つだけの武器だ!」

 

「屠龍剣?封龍剣じゃなくて?」

 

 『封龍剣』、【絶一門】と【滅一門】、二つの門派から打ち出された武器の事を指す、圧倒的な龍属性を秘めた武器の事だ。純粋にかっこいい名前と見た目もそうではあるが、その性質と主な入手方法が『発掘』からのただひたすらに『研磨』である点などから、知名度は高い武器である。

 

「なんで封龍剣を知って?…まあともかくだ!これはまさに我が家の家宝にするべき一品!俺もこいつに何度も助け……助け…………たすけ…られたっけ?」

 

 誇らしげな表情から一転、見る見るうちに苦虫を噛み潰したような表情に変化して行く父親。

 

「錆びてて全然使えなかった挙句に、こいつを使用可能にまで持っていくために過ごしたあの地獄の日々、挙句に普通に使えない、忘れもしないあの日々を、研磨研磨採掘採掘研磨採掘大地の結晶研磨大地の結晶………。」

 

 何やらぶつぶつと言うだけになってしまった父親、戻し方なんて知らないし、知るわけも無い。大人しく復活を待ってみる事にする。

 

「……。」

 

「………ふぅ、ま、助けられたわけだな!」

 

「……無理があるよ。」

 

 自力で戻ってきたらしく、いつもの明るい表情でそう言い放つが、流石にそれは無理がある。

 

「つまり大変だったけどそれがいい思い出になるくらいにこいつはすごいって事だ!」

 

 本当だろうか?とてもいい思い出だと思える有様ではなかったのだが、ともあれ誇らしげに語り続けた。

 

「こいつはなんと『古龍』に反応し、『古龍』に絶大な打点を誇るらしいぞ!加工屋が古龍骨に近づけた途端、龍属性が滲み出して、さらに斬ってもないのに古龍骨が変色したらしい!恐らくは存在自体がヤバい系なんだろうが、こいつは出来る。」

 

 そして最後に、まさに少年の様に純粋な目でこう言った。

 

「俺はこいつで、『古龍』を討伐するのが夢なんだ。」

 

「…無謀だよ。」

 

 まさに無謀、たがハンターならば一度は想ってならない称号『古龍討伐』の夢。無謀だと言われても憧れ、辿り着く事に思い馳せることをやめられない、ハンター達の永い夢だ。

 

 

「ははっ!案外行けるかもしれんぞ?自然の化身とも言われようと、俺たち同様、生命ある物に変わりはないからな!」

 

「なら!もうそろそろ大型モンスターの狩猟も達成できてもいいんじゃない?」

 

「げっ!…ちょっと腹が…トイレ!」

 

「……はぁ、自慢ばかりで中身がまるで追い付いてない。あぁ恥ずかし、持ち主があれじゃ、剣も作った奴も泣いてるよ、売った方が家計にも優しいんだけどね。」

 

「………。」

 

 口ではそう言うもののその表情には蔑むような表情は見られず、それどころか心なしか安堵しているような気が……しないでもなかった。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「………?そうか、休みか。」

(なんか懐かしいような………ん?あっそうか、防具がないから狩に行けない、つまり休みか。)

 

 いつもよりもゆったりとした動きで部屋を出ようと扉を開けると、食欲を掻き立てる匂いが鼻をくすぐる。

 

……

………

 

「……?」

(あれ?いつのまにか俺は飯を?)

 

 気付けば並べられている料理を食べていた、前を向けばそこにはシナラ、そして横にはルーツが……。

 

「どこ行った。」

(あいつどこ行ったん?珍しい事もあるもんだ。…てか初めてじゃん)

 

 そう言えばいないルーツの姿。

 

「ルーツ様?確かに見かけませんね、いつもなら腹が減ったとおっしゃって騒ぎ立てている頃……。」

 

「わからん。」

(考えても見当なしか、取り敢えず探してみるか?まずはじぶn………今はルーツの部屋か…。)

 

(心の中で)肩を落としつつ、「我を抜きに何勝手に食べておる!」と言われるのが目に見えた為に食事は中止、取り敢えず立ち上がり、部屋に向かおうとしたその瞬間。

 

「おや?ルーツ様?寝坊とは珍しい事で。」

 

「?……ッ!?」

(え?何がどうしてそうなった?)

 

 

 

…よ…〜ー……や。」

 

 

 

「それに…機嫌も少々損ねているご様子で。」

 

「………。」

(あっ。)

 

 怒っている。俯いてよくわからないが非常に機嫌が悪いのは見て取れた。感情によって人化が解けていないのは、彼女がこの生活に慣れたからなのかはわからない。

 ただ姿は最早関係ない、迸る赤雷は記憶のままに色褪せず、その瞳は脳裏に焼き付いたあの瞳と変わらない。今の彼女は龍だ。

 

 

まさ………ぞみか?……でも……んだぞ?……かま……からな……。」

 

 

「………。」

(え?何かした?俺何かした?え?めっちゃ逃げたいんだけど逃げられない。地味に近づいてくるのもやめて?まるで何言ってるか理解したらまずいタイプの霊現象みたいで怖いし、てか絶対こっちの方が怖い。…てかシナラ肝座り過ぎ、俺ズルしてすまし顔晒してるけどシナラそんなのないよね?普通の人ですよね?)

 

 彼女を普通の人に括ってしまうと何が普通か分からなくなる事間違いなしではあるが、龍の威圧を前にここまで構えていられるのはやはりG級。それに比べて最早言葉が止まらないハンター。

 

 

我はお前を疑いたくない。」

 

 

「……?」

(え?唐突すぎて理解が追いつかん。)

 

 

あの様なキグルイの作ったモノを我へのアテツケか?正しくアレは我のリカイ出来ぬ人のゴウ。あのようなもので我をムシバめるとでもか?そしてネクビを切るのか!?。」

 

 

「……?」

(え?何の話?)

 

 ふとシナラに目線を向けるとどうか彼女も少々困惑気味な様子で、視線に気付いたのか此方に顔を向け、結果目線が合う形になる。

 

「……。」

(こっち見ないで、何もできないから!)

 

 

何故ダマる!?何故目をソらす!?ヤめるのだ!我を見ろ!答えろ!。」

 

 

「ッ!」

(そんなん言われたって知らないものは知らない!頼むから家を壊すのだけは辞めてくれ!生きていけない!)

 

 その瞳はは赫赫と、しかし猛烈な焦燥を色濃く表す。

 その表情に余裕はない。怒りに、焦りに満ちていると言うのにその口角は狂気の笑みを浮かべている。はっきり言ってめちゃくちゃだ。

 

 

………何か……何かシャベるのだ!答えられぬのか!?アレはナンだ!。」

 

 

「……違う。落ち着け。」

(違う!喋ってくれないの!あぁどうしよどうしよう…まて…落ち着け焦って更に地雷を踏むのは良く無い。……おんおんおん?めっちゃ良い感じに出力されてね?)

 

 

ドコがだッ!コリュウをそれたらしめると同時に、コリュウに苦痛を与えしアレをッ!あろう事がこの我に、コソコソとハカるかのゴトく!。」

 

 

「………。」

(えぇっと。そんなことした記憶が全くないんだが?あれ?もしかして夢遊病でも罹ってた?もしくは俺二重人格?全然あり得るから怖いんだが。)

 

 

………………………。」

 

 

 それは突然、迸る赤雷は鳴りを潜め、龍の気迫は消え失せ一気に衰えていく。ルーツ自ら激情を収める事はこれが初めての事だった。

 

「………喋ってくれないのか。」

 

 先ほどの激情は何処へやら、打って変わってしおらしくなってしまっい、『極度に落ち込んだ様子の少女』になってしまったルーツ。再び俯きながら、ぽつりぽつりと語り始めた

 

「我はアレを使う事を否定はして無い。だが使い方は否定する。」

 

 

「……。」

(何を?)

 

 

「英雄たるお前は正面から立ち向かわなければならないと決めてある。だからこそこの様な事は許されない。申し開きはあるか、返答次第では"消す"。」

 

 

「証明する。」

(取り敢えず整理だ!部屋に何かあってそれが原因で怒ってるのか?なら話は早い、部屋に行くしかない。)

 

 決まれば早い。出来るだけ刺激しない様にゆっくりと……

 

「なっ!?」

 

「……はぇ?ハンター様?なにを??」

 

(えぇ……(困惑))

 

 ズカズカと、堂々と、さも当たり前の様にルーツを抱えて部屋に向かうハンター。言葉通りについていけてない、この場の誰一人として。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「寝床の下からか。」

(あぁなんか出てますねこれは。)

 

 明らかヤバいのが床上に水溜まりを作ってる。これ以上はほったらかしには出来ない。

 

「私が取りに行きましょう、ハンター様に大事があっては行けません。」

 

「…必要ない。」

(いやそっくりそのまま返すよその言葉。人類最強格なの自覚してくれ頼むから。俺なんかよりよっぽど大事だから。)

 

「ですが何かあっては…あっ、行けません!」

 

「我を忘れるでないぞ!訳ありなのは理解できたが納得はできておらぬぞ!」

 

 シナラが言葉を発する前にズカズカと入り込むハンター、静止しようとついて行くシナラ、色んな意味で置いてけぼりにされるのは嫌だからついて行くルーツ。

 

「……。」

(結局全員入って行くのかぁ。)

 

 寝具をどかしながらやや呆れ気味に思っていると何やら如何にもな箱が出てきた。

 

「これから滲み出てますね。これは私が開けます、ハンター様は下がってください。」

 

「はよう開けんか、中身を見せるのだ!」

 

 隠しきれない好奇心を見せる。今朝の怒りは何処へやらといきたいが、だからと言って引きずられても困る。普段から気持ちの切り替わりが激しく振り回されてきたが今回ばかりは救われた。

 

 

「……。」

(いやそう言うわけには…なんかやけに積極的な気がするって!あっっけちゃった……。)

 

「これは……片手剣?封龍シリーズにも見えなくも無いですが何か違う様な…。」

 

「見せてみよ!我も存在しか知らんのだ!……これは………なんとも悼ましき物よ……。」

 

「……。」

 

 静止虚しく箱は開けられた。中を見た反応は三者三様、一人は見知ったようで何か違う物に頭を捻り、一人は…今は一人である者は好奇心と共に悼ましき物と言う結論を出した。そして最後の一人は…。

 

 

「ハンター様?………ハンター様ッ!?」

 

「どうしたのだ?これはなんなのかさっさとはっきりさせんか。……どうしたのだ!?」

 

 

はッ、はッ、はッ、ハァアッハァア

 

 徐々に激しくなっていき掠れた声を出しながら乱れた息をする。

 

 胸に手を当て苦しそうに服を握りしめる。

 

 顔中から大粒の汗を垂らし、果てには涙まで流しているでは無いか!

 

 

ハァアッ、ハッア"ッ!

(何が起こっているんだ!?苦しいッ、頭が痛いッ、恐ろしいッ、それなのに途方もなく懐かしいッ、何がッ……。)

 

 

「どうなっているのだ!?早くなんとかするのだ!!我と戦う前に訳もわからん理由で死ぬなど許さんぞ!」

 

「分かってる!!取り敢えず横にして楽にさせて上げないと!……ハンター様!」

 

 突然の事態に早くも場がしっちゃかめっちゃかになって行く。

 

 そんな中、ハンターは急に剣に手を伸ばしその持ち手握りしめた。既に動悸は治まりはしていたものの、その表情はいつもの鉄仮面からは想像もできない様な悲痛な面持ちであった。

 

「俺はどうしようも無く、飛んだ親不孝者だ……。」

 

「ハンター様!?気を確かに!」

 

「どうしたと言うのだ!起きろ!起きろ言っておるのだ!」

 

 糸が切れたように倒れ込み気を失い、光も記憶もそこで途切れてしまった。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「お前の父親の物だったのだな……流石!英雄たる者を産みし片割れ!この様なものを持っているのだ!よほど腕の立つ強者であったのだろう!」

 

「……。」

(すみません。今の今まで蓋してた挙句に息子の厄介ごとになんか巻き込んで。)

 

 壮大な面倒ごとに父親まで巻き込んでしまった様であったが、それを解く事はハンターには出来なかった。

 

「………。」

 

「…………。」

(いや俺みたいにならんでくれよ、何か喋ってくださいよ。)

 

 好奇心の高さと余りにも珍しい事態からか積極的に話を展開していくルーツと比べて、シナラの様子は一貫して静かそのもの、今の今まで忘れていた事や、先ほどの光景に対して彼女の心に引っ掛かるものがあったのだろうか?

 

 

「………。グヘッ……」

(あぁ蓋をしてしまうほどに傷付いていただなんて、気付かなかった私が恨めしい。ふふふっ、ンフフッ、けど貴方を知れて良かった、深く深く理解できて、貴方を知れば隣に座れる、ふさわしくなれる。愛おしき弱い貴方を支えられる、強い貴方に憧れて、弱い貴方を支えられる、全て全てを見ていたい、発見したい、貴方を構成する一部となりたい、そして…あぁこのシナラに頼って欲しい、ン"ッッ!ンフフ、貴方に焼かれて焦がれてしまう!!……うふっ、ふえっ、ふへへへっ。)

 

 

 ………大いに引っ掛かったようだ。

 

「うわぁ……。」

 

 祖龍ですらドン引きしている。正直な所五十歩百歩な所はある、人の事は言えない。

 

 

「………して、あの剣はどうするのだ?今は畑に突き刺してるがあのままにして置くのも良くないのだろう?。」

 

「………、何故、今更……。」

(う〜〜ん、今更何であんな事に?もっと記憶を掘り起こしたいのに全然出てこない。)

 

 三人集まれば何とやら…とは言うものの、一人は人外、一人は脳みそが既に茹で上がっており、もう一人もコミュニケーションが終わっている。何故今更こんな事態に?あれはどうすれば良いのか?加工場に預けておくのもいいが、更に迷惑をかけるのも気が引ける。

 

「うへっ。」

 

「こやつもどうにかならんのか……。」

 

「………。」

(あの畑で龍殺しの実でも育てるか?)

 

 手詰まりと言った雰囲気が流れ始めたその時。

 

 

ドンッ!ドンッ!ドンッ!

 

 

「うへっ!?!?」

 

「何事じゃ!!??」

 

「ッ!」

(ファ!?)

 

 唐突に叩かれる玄関戸、その力加減からただごとではない事は感じ取れたハンター、すぐさま玄関へと急行すると、既に扉は開いていた。

 

「ハンターさん!大変です!出ました!出ちゃいました!とんでもないです!やばいです!このままじゃ全部終わっちゃいます!」

 

 扉の先には受付嬢、それも酷く落ち着きが無い。彼女の背後をよく周りを見れば騒がしく、大きな荷物を竜車に乗せている人も見受けられた。

 

「何が…。」

(一体何が………てか大体予想はつかんだけどなこの世界でやばいなって言ったらそれはもうあいつらしかいない。)

 

 そう言う事に限って良く当たる。まったく本能は本当に役に立つ。

 

「古龍!襲来です!対象はあの『古龍を脅かす獣牙』とも表される【滅尽龍】『ネルギガンテ』です!!!!」

 

「………?」

(出たよ古龍。…え?ネギ!?何で?現大陸だよここ!?)

 

 

 『ネルギガンテ』、古龍を喰らう古龍としてその名を轟かせ、己の身を顧みず目に付くものを片っ端から破壊していく様、なにより悪魔の様な外見も相まって非常に危険度の高い古龍種。そんな本種最大の特徴として、全身に生え揃う棘と横に生えた巨大な剛角が挙げられるが、何よりも……。

 

「古龍に良くある風とか熱波とか自然に干渉するような力はありませんし、とびっきりの巨体でまさしく歩く天災といったわけではありませんが………尋常ではない耐久力と持久力に加え、桁外れな再生能力で積極的に他者を薙ぎ倒す激ヤバ古龍です!」

 

 

 古龍はその存在故、意識して他者を攻撃する事はない。…意図せずして環境をひっくり返されるのはいい迷惑ではあるのだが、ネルギガンテは違う。それ故にもしこの街を捕捉した場合、徹底的な破壊は過去の事例を見れば目に見えていた。

 

 

「…………。」

(クシャなら嵐が過ぎ去るのを待つだけでいいが、ネギは反撃しないと本当に好き放題される、でも何で現大陸にいるんですかねぇ?)

 

 

 ゲームに置いて『新大陸』からが初登場であるネルギガンテ。ならば新大陸にのみ住んでいるかと思えばそれは違う。『古龍いる所にネルギガンテあり』いない理由なんてないのだ。

 

 

「ハンターさん!どうか力を貸してください!私達はこの場所を守る義務も確かにありますが、それだけで動く程薄情なつもりはありません!みんな本当は離れたくはありません!故郷が破壊されて良いだなんて思ってません!……でもしょうがないと割り切るしかない相手である事は事実です……。」

 

 

 台風に立ち向かう馬鹿はは居ない。地震に勝てると思ってる阿呆なんて頭がおかしい、そう言う相手が古龍種なのだ。

 

 圧倒的かつ絶対的な生命力を誇り、数千年を平気で生き、疲れを知らず、致命傷を与えられようと何事もなかったかのような復帰する、尋常の者たちとは一線を画す、正に『次元が違う』、それが古龍なのだ。

 

 とは言えど、生き物である以上腹も空けば毒も効く。傷を負えば苦痛も感じる。

 

 

「……ですが!抗えるなら抗いたいです!戦えない私が言っても何も説得力は有りません、私に出来ることは此処で待つことだけ、厚かましいのは重々承知、ですがお願いします!この街を救って下さい!」

 

「当たり前だ。………準備する。」

(いつもなら……ただ、今回は違う。俺、皆んなに救われてるしな。)

 

「……ッ!……ありがとうございます!」

 

「………。」

(え?そんな曲がるん!?柔らかッ!)

 

 ブォンと音が聞こえそうなほど勢いよく頭を下げる受付嬢。彼女の体は凄まじい柔軟性を持って二つ折りになった。

 

「……忘れられては困ります。」

 

「……。」

(忘れてはないけど……巻き込むのもアレだしそもそも俺の戦い型的に相性が悪いと言うか何と言うか……。)

 

「何と言おうと、私も参加させていただきます。本気です。参加させて下さい、生意気な事を言ってしまい誠にすみません本当に参加させて下さいお願いします。おそばに居させて下さい足は引っ張りませんから。」

 

 ハッキリと、凛々しく、堂々と言い放ったその言葉は竜頭蛇尾。次第に威勢を無くして失速して行った。

 

「シナラさん…。本当に宜しいのですか?…その……まだ日が浅いですし…いえ!協力してくれるのはありがたいですが……やっぱりその……。」

 

「懸念も承知です。が、ハンター様が想いを寄せると言う事は、十分過ぎるほどに理由たり得ます。」

 

「シナラさん…。」

 

 嬉しいやら心配やら、本当に良いのかと少々困惑気味な受付嬢、しかし、シナラはまだ話し終えていない。

 

「確かに、私がいた期間は長いとは言えないでしょう、たかだが数週間、ですが私はこの街をその数週間でまるで昔から暮らして来たかのように思っています。それはこの街に住まう人々が私を受け入れてくれたから。安心してください、心配しないでください。大丈夫ですから。…ハンター様、私の我儘、どうかお聞き入れを……。」

 

「……ッ!本当にっ……ッ!頭が上がりません!」

 

 彼女の眼は真剣そのもの、その覚悟を知っている。その覚悟を無碍にする事など……出来ない。

 

「わかった。……準備する。」

(そんな事言われたら否定出来ないやん。しゃあなし、ルーツみたいに切り替えが大切。準備するか。)

 

「ありがとうございます。ハンター様、私もすぐ準備して参ります。では、集会所で詳しい説明をよろしくお願いいたします。」

 

「わかりました!この街を、よろしくお願いします!」

 

 

 

 

 

既に破滅は来たれりて、殲滅の鐘は鳴らされた!

張り裂けるほどの喇叭の音はけたたましく響き渡り己の存在を知らしめ続ける!

 

 渇欲の龍は尽く、何を思って挑まんとす?

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ハンター君

 テレレンッ!解放!

 蓋したっていつかは開くよねって話。

 

ルーツ

 「おっ、これは熱い展開じゃのぉ!」

 

 かなり人間に被れてきた為かなり丸くなる。生きてきた年月の割に幼い。

 

シナラ

 「一人で居るなんて、居続けるなんて、たとえ貴方でも出来ない。私は知っています。誰かと共に行く事をいつも拒絶しながら、一人で行くあなたの背は…、とても寂しそうでしたから…。」

 

 初めに置いてけぼりくらって少し我を出した。

 

 実は敬語は得意じゃない。無学だからねしょうがないね。…ん?じゃあ何処で知ったって?…そりゃ…(此処からは読めない)

 

ネルギガンテ

 むむ!?膨大なエネルギー発見!!これは行くしかねえなぁ!

 

古龍級生物

「尋常の者たちとは一線を画すだって?じぁあその一線超えてやんよ!」

 





 読んでくれてありがとう!ではまたどこかで。


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十二乙目、不倶戴天

 ここまで来れた……、皆さんありがとうございます!
 そんですみません!やるとこまで行ったんですが本格的な戦闘行けませんでした……


 

「………。……?」

(と言っても出来ることは少ない、早よ相棒たちを取りに行かなくては……。加工屋すっからかんとかやめてくれよ?まじで……。)

 

 

 アイテムはともかくとして、武器防具類は全て修繕に回してある為取りに行かなければならない。何となく部屋を見渡せばこの緊急事態に似合わず、いつも通りに穏やかな日を射し続ける思わず窓に目が入ってしまう。

 

 

「……?」

(ネギだから天候は変わらんけど、これがクシャとかだったらあからさまにヤバかったんだろうか?……あっ。)

 

 

 束の間の物思いに耽るも、窓の奥、家の外。明らか異物としか言えない物に目が止まる。

 

 

「…………持ってくか。」

(相変わらずシュールだ。龍殺しの実生えて来そう……加工屋に持ち込んでみるか?)

 

 

 畑に突き刺さる親の形見。突き立った剣に盾が立て掛けてある。自分がやったわけでは無いがもっといいところは無かったのかと問い詰めたくなるのは当然か?

 

 

「……。」

(まっ、問い詰めるほど喋れないんですけどね。)

 

 

 思考はどこで一旦おしまい、これ以上は時間が惜しい。片手剣を回収し急いで加工屋へ向かう。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「よう!待ってたぜ!待ち過ぎててっきり尻尾巻いて逃げちまったかと思って荷造りするところだったぜ!」

 

 

「……冗談。」

(冗談きついで、それされたら何もできんから拙者。)

 

 

「お!?なんか心変わりでもあったか?まあそんなことはどうでもいいそれよりもな…………お前!!!そいつをいつ何処で見つけた!!!」

 

 

 突然の豹変。打って変わってその表情は普段からは想像もつかないほど、それは正に彼が普段打つ剣の様に鋭かった。

 

 

「寝具の下、今朝見つけた。なぜ………知ってる。」

 

「お前、それが何で誰のか分かってるのか…?」

 

「俺の…残った形見だ。」

(家除けば確実に残った形見の一つだろ?)

 

「ケッ、ようやくかい。親子揃って鈍い鈍い。もう何も聞かん!…おい!早く武具を持って来い!英雄様を待たせるな!」

 

「はい!!!」

 

「………!?」

(ッ!?…なんか寒気が……。)

 

 

 工房の奥からそう返事が聞こえると、見慣れた得物と見慣れない鎧が登場すると、な ぜ か 同時に謎の悪寒に襲われるが、周りは気付くことなく作業を進める。

 

 

「ほらよっ、まずはコイツ、『バゼルアヴター』だ。」

 

「……いい。」

(まるで新品じゃぁん。ネギに爆破効いたっけ?結構聞いた様な…ただ満遍なく効くのが爆破だからわかんねえや。ところでそいつは“アイツ”だよな?)

 

「お?早速気になるか?デザインは凝らすことができなかったが、東方大陸の武将が原型としてあるらしいが……俺には解らん!」

 

 何処か懐かしい中華鎧風の白い鎧。ただ白いというよりかは色褪せたとも取れるが、その褪せ方は衰えよりも今尚激戦に身を置いた故の力強い様を体現していた。

 

「何処ぞの神鳥に準えて『ガルーダ K シリーズ』に決めた。これまた時間がなかったんでな、量産名になるのは勘弁してくれ、そんでだ、お待ちかねの性能だが……『白狂の趾』、『見切り』、『逆恨み』だな。」

 

「……何だ……それは。」

(白狂の趾?聞いたことないぞ。)

 

「気になるか?これは世にも珍しい複合スキルだ。検証が足りないから詳しくは解らないが恐らく『回避性能』と『弱点特攻』、『超会心』だろうな。」

 

「成る程…。」

(おお、強そう、だけど前世でも第五弾アプデのモンスターに初期最強防具担いでた俺にはよく解らん。倒せればそれでよかったし。……ガンスとか俺ずっとバゼル一式だったからなぁ…懐かし。)

 

「知っての通り、回避性能は回避し易く、弱点特攻は弱点殴った時、適切に攻撃出来る、超会心は適切に攻撃できた時に更に力を込められる物だ。全部気休めだが無いよりマシ。何より一番はお前のその護石、『根性』の方が余程役に立つ。“護られてる”からな、無理すると親が泣くぞ?」

 

「……そうか…。」

(全然気にしてなかったけど、いや気にしない様にしてたからか?…護られてたんだな……俺厳密には死んでるけど。)

 

 軽口叩けるくらいにはなった様だ。ただこうして今生きてるならどんな死もカウントされない。

 

 

「ッ!?」

(ッ!??一体なんなんこの謎の寒気……これが武者震いって奴か?)

 

 

 相変わらず悪寒はするものの、鎌かけてる暇ではない。急いで装備し、準備を整え出立とその時、一つ忘れ事を思い出す。

 

「……。」

(おっと、どうしよこれ。……悩ましいな。)

 

 もう一振りの片手剣。龍特攻は悩ましいが、使い慣れない武器を初見の古龍戦に持っていくのは如何な物かと考えていると……。

 

 

「全く締まらない……少し貸せ!見た所保存場所は良くなかった様だからな。はぁ〜〜酷く汚れてやがる、あの馬鹿が、お前さんが戻って来るまで仕上げてやる。」

 

 

「……わかった。……ありがとうな。」

(すみませんそれ畑に刺してたからです本当にうちの馬鹿がすみません。)

 

「おん?……おうよっ!一発ぶっ飛ばしてこい!」

 

 

 改めてハンターは踵を返し、加工屋を後にしギルドへ足を向けた。

 

 

 

〜〜〜ハンターズギルド内〜〜〜

 

 

 

「ここもずいぶん寂しくなりました、ハンター様。」

 

「……ああ。」

(街で一番うるさいところもこれだからなぁ、本当に勝てんの?これ。)

 

「…この度はお越し頂き感謝します。それでは早速クエスト内容の説明を…。」

 

 

 真剣な面持ちで改めて事態を伝えていく受付嬢。

 

 

「街の人の避難は完了しつつあります。他のハンターの方々が手伝ってくださったおかげです。大勢での移動に加え、古龍襲来によってモンスター達の気が立っているので危険です。そのまま行動を共にし護衛を行なってもらっているので安心してください。」

 

 一呼吸置くと、卓上の地図を指差し話を続ける

 

「そしてネルギガンテですが、彼の龍は此処より南西、『白璧の緑林』にてその姿が観測されています。……正直私達に出来ることはあなた方を戦地へ送り、少しばかりの物資を提供するだけです。ネルギガンテは出現する事がなかなか無く、あっても極めて危険なとこから調査は難航し、情報を提供することもままなりません。」

 

 

 言い終わった彼女の表情はとても暗い。が、それは先ほど述べた自分達の無力さに対するものでは無く、また別の要因がある様にしか見えなかった。

 

 

「ハンター様、すみません。黙っていて…ごめんなさい。この戦闘事態、本来なら逃げるのが規則です。なのにこうして迎え撃とうとしているのは全てこのギルドの独断です。この街を守りたいだけで…免罪符になるだなんて思っていません……本当に身勝手な判断です。こんな土壇場で言い出したのも私が弱いせいです。……本当に宜しいのでしょうか?」

 

 

「構わない……いくぞ。」

 

「はい、ハンター様、力及ばずとも支えさせて頂きます。」

 

 

 彼女の疑問に対する答えは一つ。それ以上は何も無い。が、彼女に対してならまだ残っている。

 

 

「……弱く無い。……。」

(いや俺だったらとっくに尻尾巻いて逃げてるよ。こんな状況で他人を信じて残り続けられる人が弱い訳ない。俺も恥じない様頑張らんとな。……あとシナラ、お前で力及ばなかったら俺は居る意味ないよ。)

 

「…!?…えっと!ぁ。……。」

 

 

 黙りこくってまった受付嬢を後に、外へ出ようと扉に手をかけると先に外側から解放された。

 

 

「おや?ハンター君、そしてシナラ様、もう行かれますかな?」

 

 

 解放したその主人は声だけなら聞き覚えのある、この場所を考えるに一人しかいない。ただ、その喋り方は前回会った時とはまるで違った。

 

「遅れてすまない。街の人は全て避難させた。一部の頑固者を除いてね。」

 

「すみません……。」

 

 自分の事だと受け止めた受付嬢は少し肩を落として謝るが…。

 

「別に君に言ったわけでは無いよ、私も同類だし、そもそも二人だけというわけでも無い。」

 

「え?それって…。」

 

「さて、彼女からも聞いているだろう。私から言うことも少ない。ただ一つ、負けてもいい、生きて帰ってくるんだ。そう言う問題でないのは分かってるが言わせてくれ、何かあれば私が必ず庇う。」

 

 

 いつもと違う話し口、果たしてどちらが素なのやら、それがそれは彼なりの覚悟なのか、それがどう言う意味を表すのかは彼にしか分からない。たとえ長く生きようと、慣れることは無いのだろう。……だからこそ、抗うのかもしれない。

 

 

「……その必要はない。……行ってくる。」

 

「私達は負けませんよ。何よりハンター様がいらっしゃいます。あのお方がいれば文字通り百人力です♩」

 

 

 そう言い残すと一足先に行くハンターをシナラが追って出て行った。残る受付嬢とギルドマスター。寂しくなった街を眺めるが何も頑固者はこの2人だけでは無い。

 

 

 空は曇らず、それでいて快晴に在らず。いつも通りの空を演じ続ける。この異常事態ですら、自然の一部であり通常なのだろう。

 

 ……そして我々は時として、その通常に抗わなければならぬのだ。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「狩猟笛か、………流石だ。」

(現実で狩猟笛とか…いやぁ流石っす。G級ハンター怖っ。)

 

「いえいえ、私など、八種類の武器を振ることしか出来ない不器用な女です。なのでこうしてハンター怖を全力で支える為に、“あなた”の為にこの音色を響かせます♪……所でハンター様は?片手剣以外では見た事がありませんが……。」」

 

「全武器。」

(はっ、八種類!?俺なんか片手でヒイヒイ、普通は二種使えれば凄い方なのに八種類!?それで不器用とか全武器使える奴とかガチで居る感じか???………は”ァ“ァ“ァ“ア!?!?…キレそう(冷静)))

 

 

 まさかの即答、もう何も言えない。

 

 

「っ!?!?!あぁ………なんて素晴らしい……やはり貴方様は凄い……はっ?あぁぁすみませんハンターすみません!!!私は知らずうちに貴方様の強さを疑っていましたッ!少し考えればわかる事です…自分に一番あった物を担げばそれでいい。なのに私と来たら!ハンター様が余計な物を持っているわけが無いのに、使えると使うとでは話が違うのに!こんな簡単なことにいきつかないなんて……こんな…はッ!こんな頭の回らない愚図が来てはヤクニタタナイ?……なんて事をすみませんごめんなさいすみませんごめんなさいごめんなさいごめんなさい……。」

 

 

 彼女なりにハンターの事を思って、許せない事があったのだろうが当のハンターにして見れば…誰からの視点からでも幾ら見てくれがよかろうと突然こうもなればドン引きは必至。

 

 

「………。やめろ。」

(えぇ……勝手に自爆するのは自分だけでいいから辞めてくれよ(絶望))

 

「ッ!!…すみません……貴方様の言う通り、自分への戒めは後でできます。まずはこの身に変えてでも貴方様のお役に立ち、ネルギガンテを葬る事が先決。……私事のこんな事でハンター様を煩わせてしまった……。」

 

 

「……それで………続きは……なんだ。」

(もういいから復活してくれ……そうだ、それで武具はどうなったん?)

 

 

 なんとか軌道修正を図るために武具の話を戻して見る。そんな彼女の装備はいつか見た懐かしの陸の女王、リオレイア。ただしそのままというわけでもない様で……。

 

 

「気を取り直します。問題ありません、二度と貴方を疑うことはありません。では改めて紹介を、見た目は一般のものとはだいぶ違いますが、性能はリオレイア一式ではありません。『重ね着』を使っていますので中身は違いますよ。」

 

 

 『重ね着』、簡単にいうならば対象の防具に別の防具の見た目を付与する技術。性能はそのままに見た目だけを変えることができるが、その技能を持つ職人は少なく又、装備する方も本来無い、余計な物が付いている訳なので、誰でも使えるものでは無い。

 

 

「……重ね着を……特注………。」

(重ね着ってかなり凄い事じゃかなったか?それでその見た目からして特注だろ?…G級スゲーー…。」

 

 

 改めて聞くとなぜ自分といるのかわからなくなる。現在、彼女の装備は動きやすい様腰装備に着く特徴的な4枚の装甲板や、どう装備のフルプレートアーマなどの重厚な部位は存在せず、装甲板の代わりに翼膜であしらった膝上までの腰布に、胸部は従来通りの守りを残しつつ、腹部は鱗を連ねる事で柔軟性を確保している。

 

 その他頭や足装備など細かな変更はあるものの、全体的に無駄を省き動き易く、かと言って防御を無視した設計では無い、彼女の技量に合わせたまさに特注品だ。

 

 

「私が初めて討伐した竜種の装備、思い出もさることながら一番馴染みのある、正しく体の一部です♪」

 

 

「…………。」

(へ?今サラッと流したけど竜種初討伐って、それクック先生はどころかドス鳥竜とかもぶっ飛ばしていきなりレイア!?ってこと!?!?)

 

 

 衝撃の事実に言葉が出ない。本来ならばドスジャギィやドスランポスから始まり、イャンクックやその他飛竜未満の大型モンスターで慣れるのが本来の流れ、自分でもそうだったというのにそれをサラッと言うものだから堪らない。

 

 

「そして今回の相棒はこちら!」

 

 

 そんな混乱も知らずして、やや興奮気味で担がれた相棒を取り出す。武器紹介に熱が入るのはハンター共通。そこに性の壁は存在しないのだ。

 

「『王牙琴【雷鳴】』、そしてその改良版の『王牙琴【雷鳴】改』です!」

 

 

「……!」

(狩猟笛とか使ってるやつ見た事ないから全然わかんないけどかっこいことは伝わる!)

 

 

 取り出されたのはどう見てもギター……では無く弦が4本なのでベース。笛とは一体なんだったのだろうと思わず投げ掛けたくなるがそれは野暮。

 『王牙琴【雷鳴】改』、『雷狼竜』ジンオウガ。その中でも取り分け強力な個体から得られる素材を使用した、力強い碧色の鱗を元に、無骨な黄色の外殻で縁取り、打撃性能を上げた逸品だ。息を吹き込みながら4本の弦を弾き鳴らすことで味方に補助効果を付与できる摩訶不思議な代物だ。

 

 

「確か前読んだ図鑑によると雷が効くみたいでしたから…と言うよりもこれしか無かったのが真実ですが、なら有り合わせかと言われればそれは断じて違います。まだ強化を一つ残してはいますが私の技量がこれはまだ足りないのが原因です。しかし、しかし!絶対にこの子を使いこなして見せます!」

 

 

 普段の彼女からは想像も出来ない、容量を得たとは言い難い語り口。それでも熱く語るその様子はハンターと共に狩に行くことが原因か、はたまたハンターとして古龍に挑む事に滾る物があるのか、はたまたその両方か。

 

 

「……着くぞ。」

(おんおんおん?…白い岩壁が見えて来た。いゃ〜でかいでかい……もう直ぐか。」

 

「……はい。」

 

 

 途端に口数が減るシナラ、いつまでも騒いではいられない。その切り替えは流石だ。決戦場は目と鼻の先、雄大な自然をその身で表す巨大な白亜の絶壁とその下を覆い尽くす緑の大地、しかしよく見れば多くの場所から緑が消え、彼の龍がこれでもかと存在を表す破潰の跡が点在している。

 

 

「………。」

(こぇーよ、こぇーよ!下手したら無限にすり潰される訳だし今回は俺だけで済む話じゃない!……ただここまで来て逃げるなんてそれはない!がんば!がんば!!!)

 

 

 

〜〜〜〜キャンプ〜〜〜〜

 

 

 

 着いた頃には天候は晴れとは言い難かった。これが古龍の影響なのか、ただ単にそう言う天気の流れなのかは分からない。ただ、この地域に広がる異常さに拍車を掛ける一員であることは間違いない。

 

 

「………静かだ…。」

(前に来た時はもっと賑やかだったのに、これが古龍か……。)

 

「皆逃げたか隠れているのでしょうか、まるで嵐が過ぎ去るのを待つかの様に。」

 

 

 感傷に浸っている場合ではない。直ぐ様フィールドを周り、ネルギガンテ、又はその痕跡を探す…がそれは余りにもあからさまであった。

 

 

「………。」

 

「これは…凄まじい力です…。」

 

 

 ある所は木々が地面ごと根こそぎ抉り取られ、幹は粉砕、更に多くのハンターの目印にもなっていた巨石郡は纏めて破潰されている。

 

 

「……ッ…。」

(これは…中々の……。)

 

「くっ…並外れた凶暴性…ここまでする必要が一体どこにあると言うのですか……。」

 

 

 極め付けは見るも無惨な姿と化した大型モンスターの成れの果て。

 

 

「これは酷い……、暴風や熱波を従える様な龍とは方向性の違う脅威、明確に相手を認識して攻撃しています。」

 

 

 大小様々な棘が突き刺さり、圧倒的な力でボロ雑巾の様に打ち捨てられた遺骸、血に濡れ、骨は粉砕され、原型の推測は難しくもはや種を特定する事も儘ならない有様であった。

 

 

「………。」

 

「…………。」

 

 

 沈黙が流れる。ふとシナラの表情を見れば、その視線は遺骸に向けていた。その胸の内が何たるかは推し量れない……が、ここは“外”、もう既に彼等……いや“彼”の領域なのだ。

 

 

 

OOOOOoooo

 

 

 

 突然の咆哮、距離はまだ遠い……のか?

 

 

「……。」

(どこだ!?)

 

 

 咆哮は岩壁に反響し発生源を誤魔化していく。

 

 

 右か左か、はたまた上下か……

 

 

 

OOOOOoooooooooo

 

 

 

 再び響く大音声、距離の変化は感じられない。

 

 

 

OOOOOOOOoooo

 

 

 

 三度続く咆哮。それでも尚襲撃は無い。索敵に隙はない筈……

 

 

 

OOOOOoooo

 

 

 

 まだ来ない。いつ来るか?これだけ聞いても場所の特定すらできず、ただ待つことしかできないこの状況に焦りが見える。

 

 

 

OOOOOooooッ!!!

 

 

 

 五度目、先程と同じ……筈だった。

 

 

「ッ!??」

(へ?…マズイ!?!)

 

 

 油断した。

 

 

 僅かに陰る大地、尋常ではない、あり得ないほど急に、あり得ないほど早く小さくなるそれは確実に、“彼女”を捉えていた、

 

 

 そしてそれを察知したハンターは……。

 

 そしてそれを目の前にしたハンターは…。

 

 

「ッ!ハンター様はなr。ズドォーーーーーーン

 

 

 残酷なまでに煌びやか、声すら呑むほど凄まじく。岩石と共に飛び散る破片はまるで“金剛石”。

 

 

 ……しかしそれでも、それが起こってしまった後も尚、

 

 

「…………。」

(あっえ?……。)

 

 

 動く事が出来なかった。

 

 

 巻き起こる土煙の奥。黄金の眼光はただひたすらに冷徹だった。

 

 

 

   一乙

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ハンター君

 頑張れハンター君!撃ち破る刃を君は持っている!

 

シナラちゃん

 弱いところを見た結果、最強像にヒビが入っていたのは事実だが、疑うなんてもってのほか。弱い所があろうと、その強さは揺るぎないのに……。

 

ネルギガンテ

 岩壁の反響で場所誤魔化して、あとは再生前提の爆速不倶戴天コンボキモチェエエエエ!!!!

 

 




 ネギ以外にもクシャとかテオ、超大型も検討してたんですが、ネギが一番素直なんで採用しました。
 ここが終われば完結は近い……。


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十三乙目、古龍を脅かす

 傭兵とかしてたら気付けばもうこんなにも。
 長いです。構成を考える能力がッ!欲しい…(急降下)


 

 G級、或いはマスターランク。大陸に数えるほどしかおらず、同じ時代を生きる存在もまたごく少数。その全てが『英雄』として名を残し、讃えられ、語り継ぐべき物語として本のページを彩った。

 

 

 

 …シナラは、言うところ天才であった。どんな難関クエストであろうと五体満足で帰還しその上で見事目的を達成して見せた。

 そんな活躍を続けていれば方々から依頼が舞い込み、そしてそれを達成していく。その状況は実力と名声を着実に積み上げた。

 

 そんな彼女を更なる高みへと押し上げた『古龍防衛戦役』。

 

 ……古龍とは天災である。古龍とは災害である。古龍とは自然であり、秩序であり、循環する世界に必要である。と、されている。彼らの行動による破壊は全て、再生への一手であり、世界を回す為に必要なものなのだ。

 

 古龍に相対する、それはつまり自然を相手にする事に他ならない。簡単な事では無く、その殆どは虚しく消え去ってしまう。

 

 

 もし、そんな正真正銘の怪物に立ち向かい、渡り合えたら?

 もし、護るべきものを背にして果敢にも立ち向かったとすれば?

 もし、それらを持って、勝利したとすれば?

 

 彼女はその"もし"を現実にした。

 

 どんなに対策を練ってもその殆どは無に帰る。そんな絶望的で尚且つ絶対者を退けたとすればもうそれは『英雄』だ。

 

 これを誇らずして何を誇る?これを自信とし糧としなければ何を糧とし自信とする?

 

……だからこそ、彼女は見落とした。自身がどれほど浮かれていたのか、自身がどれほど恵まれていたのかを………。

 

 

 

 此処は街に非ず。

 

 此処は守るべき場に非ず。

 

 此処は人の領域に非ず。

 

 此処は縄張り、決して入るべからず……

 

 

 

 

 

「っ!?」

 

 

 突然腕を引かれた。

 

 

「こんな速度……いえ、ハンター様すみません…お手を煩わせてしまいました…。」

 

 

 影が落ちる。破壊の影だ。壮絶な衝撃は本当に生物から打ち出された攻撃か疑いたくなる。それはそうだ、何せあの速度で地面に突っ込めば誰だって挽肉になる。勿論、突っ込まれた方に留まらず、突っ込んだ方だって同じ事。

 

 

「……生き残ってからだ。」

 

「はい…!」

 

 

 武器を構える。眼前の土煙の向こう側。無傷で佇む黒い影。鈍く光を放つ黄金の眼光。

 

 

Ooorrrr

 

 

 しかしそんな常識が通用する相手ではない。何故なら彼等こそが……

 

 

「………死ぬな。」

 

「見苦しい姿はこれで最後です。」

 

 

 世界で、秩序なのだから。

 

 

GOooooorrrOOOO

 

 

 獣咆が響き渡った。

 

 

 

 

 

 どれ程の時が流れたのか…私には分かりません。ですが、この時間の中、嫌と言うほど理解しました。私という存在が如何にちっぽけなものであるかを。

 

 私は…私は浮かれていたのかも知れません…。いえ、意地を張るのはやめましょう。…私は浮かれていました。

 

 これまで幾度となく戦いに身を投じ、生き残った経験、古龍を撃退せしめた確かな実績。そして何より、憧れで最愛の彼と共に同じ時間同じ空間、同じ目標に向かうこの全てに。自分がどれだけ恵まれていたかを実感せず、愚かにも舞い上がった醜い私。

 

 だから、今だってほら……。

 

 

Guuu

 

 

 ほんのミス、押し潰されんばかりの圧倒的敵意と殺意に押され、一瞬遅れただけ。

 

 

RrrrooooOOO

 

 

 龍はそれを見逃さない。彼女の目の前、空を覆う巨体は今にも溜め込んだ力を叩き付けんとする。

 

 

「…………。」

 

 

 手を引かれた。その瞬間目の前では凄まじい破砕音が鳴り響く。

 

 また救われた。腕の棘があらかじめ壊れていたから助かった。そうで無ければ私は彼ごと飛び散った棘で……いえ彼はそんな失敗はしない。

 

 

 …その表情は何一つ変わらない、まるでこうして私が窮地に陥ってしまう事も、そしてその状況から復帰する為に必要な事も、達成しておくべき条件も、何もかもが手の内の様。私は彼を支える為にここに居るのに、行動しているのに、これではただの足手纏い。

 

 

「すみっ……ありがとうございます…。」

 

 

 謝罪を飲み込み感謝を述べる。それが届いて居なくとも、己の不甲斐なさがそうさせる。

 

 …謝る為に来たんじゃない。認められる為に来たんだ。今彼は何をしている?私に向けられる筈だった敵意を、殺意を、攻撃を、私を庇って引き受けて、私が体勢を立て直すのを待ってくれている。

 

 彼を支える?笑止千万。動けない自分が恨めしい。

 

 

 GOoooooOOOOッ!!!!

 

 

「………。」

 

 

 体全体を凶器とし、自壊を厭わない苛烈な攻撃を、神技とも言える体捌きと共に寸分の狂いもなく適切に回避し、攻撃を重ねていく姿に釘付けになる。その全てがその空間で完成しているかの様。しかし、その攻撃は古龍の膨大な生命力の前には余りにも不足している。事相手は肉弾持久戦に特化した古龍。ならば、ならば…。

 

 

 大地を踏み締め武器を振るい音を"集める"。

 

 

「私のするべき事はッ!コレッ!」

 

 

♩♩♩

 

 

 響き渡るは戦地に似合わぬ音色。しかしそれは志を共にする仲間には闘志をより高く燃やす稲妻の如き力強い音色、赤の旋律はは耳に届いた仲間の筋力を増大させる。

 

 

RrrrooooOOOッ!?!?

 

 

「………。」

 

 

GOAaaaaaaaA!?!?

 

 

 突然威力の増した攻撃に思わず怯む滅尽龍にすかさず盾で顔面をカチ上げると、流れるままに右前脚への切付け、更にここで蓄積された爆破やられが限界点へ、凄まじい爆発と共に遂に絶叫を上げたネルギガンテ。

 

 

「……すごい。」

 

 

 …思わず口から出てしまった。だって、余りにも全ての流れが完璧だったから、蓄積された爆破やられも、自身が得られる支援のタイミングも、相手の行動ですら全てが噛み合っていた。

 

 

「……お前のお陰だ。」

 

 

 私は貴方に合わせただけ、笛を吹いただけ、足を引っ張ったばかりじゃ居たくないから、私如きにかけるべき言葉ではない。貰うべき言葉では無い。…のにニヤケが止まらない…浅ましい自分に嫌気が刺すが、それ以上にこの高揚が、その言葉が嬉しくて堪らない…。

 

 

Urrrrr

 

 

 金剛石の様な棘は周りの細々とした棘と共にものの見事に粉砕され、外殻は欠落し、爪は折れ、肉が露出する。にも関わらず何事もなかったかの様に損傷したその前脚でしかと大地を踏み締め続けている。他の部位だって無事ではない。その筈なのに。

 

 痛くは無いのだろうか。庇う様な仕草も見られない。

 確実な損傷を受けても、未だその覇気は止まるところを知らない。

 

 …否、痛がる必要がない、萎む必要がない。

 

 この龍が後退する理由は無いのだ。

 

 

「……届かない…か…。」

 

 

「う…そ…?あれほどの損傷を受けながら!?」

 

 

 その驚愕は当然であった。

 焦げ分たれた肉は再び結合し、爆砕された棘は根元から外殻の再生と共に破壊前以上の成長を遂げる。そしてその程度に収まらず全ての部位の傷が癒えていく。

 

 時を待たずしてネルギガンテは動き出した。

 

 

OOOOOOOOOOOOOOOッ!!!!!

 

 

 高く高く雄叫びを上げる。高く高く天高くへと、二足で大地を踏み締め、翼を広げ、両前脚は在らん限りに広げられ、在らん限りに咆哮する。

 

 

 ふと、コチラを見た。怒りに満ち満ちた害悪の視線。

 

 

「…………握れ。」

 

「え?」

 

 

 唐突に差し出された手に驚くものの自分の手は何よりも早くその手を握り返していた。

 

 

rrrrr

 

 

 その手を握り返した時と同じくして、ネルギガンテは天高くへと、常識離れした瞬発力を持って飛び上がった。

 

 

 『不倶戴天』。同じ空の下で生かしておく事は出来ない。今この時より二人は真の『敵』となったのだ。

 

 

 損傷していた右前脚を振りかぶり怒りのままに急降下。これ以上に無いほど正確に落下してくる巨体を前にハンターは手を引き一歩前へ駆け出した。

 

 

 …恐ろしい粉砕音が背後しで響いた。一人なら身も氷付き、まともに動く事が出来なかった…。貴方の温もりが無ければ私は……。

 

 

 

????

 

 

 

 標的を見失い、いるはずのない方向へ首を振るネルギガンテ。その前方は彼の射出した金剛棘が至る所へ、あらゆる物を粉砕し突き刺さっていた。

 

 

RrrroOッ!?!?

 

 

 そんな隙を見逃す訳がない。すかさず追撃を加え、戦いのペースをコチラの方へと引き摺り込む。

 

 

 シナラもネルギガンテの眼前へと躍り出ると、巨大なその武器を顔面へ力の限り叩き付け、同時に閃く稲妻が迸る。

 

 

GOuGaaaaaaッ!?!?

 

 

 弱点部位を弱点属性でぶん殴られては流石のネルギガンテと言えど許容できるものではない。

 

 

 

 

 そして大胆にも敵の眼前で演奏を始めるシナラ。緑の旋律は仰け反り無効。龍の一撃は余波のみでも人程度軽く動かしてしまう。そんな些事で命を落としては笑えない。行動の幅を広げる大切な支援だ。が、そんな事をすれば格好の的以外に他ならない。

 

 

「………。」

 

 

GINyaaaaッ!!!??

 

 

 情けない悲鳴、そして続く爆発音。シナラがその視線を引き受けている間に効率よく攻撃を加えた結果、横から最後の一撃を頭部に与える事に成功した。

 

 

「フンッ!!」

 

 

 何も演奏の効果は仲間のみでは無い。勿論自分にも作用する。一発あたりの攻撃力ではシナラの持つ狩猟笛の方に軍配が上がる。そしてそれは適切な一撃が欲しい時にこそ輝く力だ。

 

 

GOooaaa!?

 

 

 太く、巨大に、頑丈に、捻れる様に横へと生えた悪魔の双角。その片割れが、粉砕された。

 

 

 このままでは反撃に移る事ができないと判断したネルギガンテは黒い翼を羽ばたかせ、風圧によって敵を吹き飛ばし体勢の立て直しを図るが、しかし、立て続けに頭を殴られたせいか脚がよろけ少しばかり羽ばたきが遅れてしまう。

 

 

「………。」

 

 

 すかさず頭部への盾による3連撃、更に強烈な振り下ろしにより強烈な一撃をくらい脳震盪による眩暈で行動が劇的に鈍化する。

 

 

 

 

 更にここで『王牙琴【雷鳴】改』に存在する全ての旋律を解放する。

 青の旋律は気絶無効。目の前のネルギガンテの様に意識が飛ぶ様な事が起きない様にする旋律ではあるが…ぶっちゃけそんな攻撃喰らった時点で終わりなのでおまけのおまけ、保険に一応と言ったら所ではある。

 

 

「………。」

 

 

 鈍化したと言えどそれは一瞬。今は自分たちのペースだからこそ上手く行ってはいるが、天秤が少しでもネルギガンテに傾けばあっという間に崩壊する。だからこそ死に物狂いで避けて、斬りつけ、殴り付けた。

 

 

 

 頭部から背中へ生え揃った金剛棘は粉砕され、荘厳な双角は破砕され、息も絶え絶え。どこからどう見ても満身創痍である筈であるのにも関わらず未だ倒れず、寧ろまだ前進しようとしているネルギガンテ。その耐久は尋常では無い。

 

 しかし。

 

 

Guooo……

 

 

 如何に再生に優れようと、如何に生命力に富んで居ようとも、こうも長時間に渡って着実に、確実に削られて行っては底が見えてしまう。

 

 弱りきった声と共に巨体が沈む。劇的なトドメは存在しない、しぶとく、泥臭く、どこまで行っても我慢比べに他ならなかった戦いには相応しいだろう。

 

 

「……終わったのですか?……信じられません。」

 

 

 そう言いながらへたり込んでしまうシナラ。空を見れば日は沈みかけていた。

 

 

「……ッ!!」

 

 

 突然ハンターの表情が驚愕に染まる。それはまるで何か大切な事を思い出したかの様な……。

 

 

「シナラ!まdGOOOOOOAAAAッ!!!

 

 

「え?」

 

 

 …消えた?どうして?あっいましたいました。驚きましたよハンター様突然眼前から消えるんですもの。……その赤い液体は何ですか?……どうしてそんなにグシャグシャ…何故ですか?…どうして…どうして私は声一つ出せないのでしょうか?

 

 

 

 

 

 …え?…いや…いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいいやいやイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤァァァアッ!?!?!

「イヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤァァァアッ!?!?!」

 

 

 

 『古龍は殺せない』…その膨大な生命力は致命傷すら癒してしまうから。と、されているものの、古龍をそこまで追い込む事は難しい。迎撃戦に於いても致命傷を負う前に撤退する為に難しく、まして自分から古龍の元へ赴き致命傷を合わせる事例自体少ないので正確な情報では定かでは無い。

 

 

 結果的に立たなくて正解だったのは運故か。もし立っていればハンター諸共、掌撃の餌食となっていただろう。

 

 

GUrrrr…

 

 

「うるさいですねハンター様。少しシズかにさせます。しばしおマチください。」

 

 

GUrrr??

 

「コロす。」

 

 

 即死の攻撃を恐怖なく、厭わず、躊躇わず、懐に潜り込む。まるで自壊を恐れぬ目の前の滅尽龍の様に…。

 

 

AAAAAAAA

 

 

「ガハッ!?」

 

 

 奮闘虚しく。

 しかし彼女には強靭な外殻も、桁外れの生命力も持ち合わせては居ない、人であった。こうして生きているのもネルギガンテの狙いが甘かったおかげ。

 

 

「…ごめんない…不甲斐ない…こんなっ…すみません…。」

 

 

 ふと見上げれば何処かで見た光景、それは体を覆う巨影。

 

 

 古龍とは世界である。滅尽龍のあらん限りの破壊も全ては自然の中に組み込まれた言わば「破壊の秩序」。今ここで彼女が死のうと、街が壊されようと、多くの命が潰え様と、それは避けられない自然の法に他ならない。ただ一人の無法者を除いて。

 

 

 …あぁ、そう言えば前もこうなって、助けてもらったっけ…本当に私は……

 

 

GINyaaaaAAAッ!!!??

 

 

 首を狙った側面からの一閃、後の爆発。切り口は浅いがその後の爆発が的確に被害を拡大させ、その巨体を再び地に伏せさせる。

 

 

 死の秩序に真っ向から争う存在は唸りを挙げて理を断する。

 

 

「え?……生きて?……よ…よっよかったぁぁあぁ"ぁ"〜。」

 

 

 安堵から零れ落ちる大粒の涙。普段の彼女からは想像もできない。非常に幼くか弱い姿。声を掛けてやりたいのは山々ではあるが…

 

 

「………。」

 

 

 その視線は絶えずネルギガンテに送られている。底が見えたと思えばそれはただ暗くて見えてなかっただけ。他の古龍でもここまでは無い。【古龍喰らい】は伊達ではない。

 

……

………

 

 

Rrrooooo…

 

 

 

「………あ"?」

 

 

 二度ある事は何とやら。三度立ち上がるネルギガンテ。正しく途方も無い。未だ衰えることの眼光には未だ底の抜けの生命力を薪とし燃えている。。

 

 

「くっ、本当にコイツは!……ハンター様?」

 

 

 泣きは何処へやら、やけにドスの効いた声と共に武器を構えるシナラだったが、ハンターに手をかざされすぐさま前進を止める。

 

 

「………。」

 

「…どうして、止めるのですか?」

 

 

GUrrr……

 

 

 一歩、一歩と後ろへ後退る。その瞳は何処か苦しげで渋々といった様子ではあったが、これ以上は意味が無いと判断を下したのか、それはネルギガンテにしか分かり得ない。暗い森は傷ついた悪魔を確実に隠して行き、その眼光も遂に見える事は無くなった。

 

 

「……帰るぞ。……家に。」

 

「………ッ!!!はいっ!みんな、待ってますものね!帰りましょう…“私達の家に”。」

 

 

 

 

 

 

「……?。」

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「こんな速度……いえ、ハンター様すみません…お手を煩わせてしまいました…。」

 

「……生き残ってからだ。」

 

「はい…!」

 

 

Ooorrrr

 

 

「………死ぬな。」

 

「見苦しい姿はこれで最後です。」

 

 

「………。」

(あっぶっないっ!取り敢えず無事やな?本当にシナラ居ないと詰むから。初手からこんなの要求されるとか頭お菓子☆(19乙))

 

 

 シナラを狙ったダイブがハンターによって外れた事により、ネルギガンテの排除の優先度がハンターへ集中する。

 

 

「………。」

(いいよぉ、俺に対してならいくらでもやりようがある。シナラはネルギガンテの圧倒的オーラのせいで初めはデバフ喰らって本領発揮できてないからな。それまでは何とか……しようとして27乙。ん?俺は?こんなの慣れたからな(8乙))

 

 

 地面を砕きながらの前脚による薙ぎ払いを行うネルギガンテ。ゲーム内では一回のみの行動ではあるが…

 

 

「……。」

(二回なんですねぇ!しかもコイツ1回目で場を荒らしてからの超ホーミングニ回目で確実に狩りに来るからギリギリで避けんと死。(6乙))

 

 

 外れた事を確認するや否やすぐさま棘の生えそろう巨大な翼を大地に擦り付けながら全てを巻き潰す突進を繰り出す。

 

 

「………。」

(これは何とわざと速度を落とす事でホーミング性能を高め、当たるタイミングで翼を広げてアッパー、カチ上げからの叩きつけデスコンボです。クソがッ!(6乙))

 

 

 これもまたギリギリまで引きつける事でアッパーを誘発、その瞬間腹部は無防備にさらされる為飛び込んで斬りつけ、即離脱。

 

 

「………丁寧に…。」

(深追いダメ絶対。(11乙)……どこいくねーん!やめろ!まだシナラ覚醒してないんだぞ!覚醒前は本当に…本当に不味いから!(24乙))

 

 

 突然ターゲットをシナラに切り替えると、素早いステップからあっという間にシナラの前に立ち塞がると左掌を構えて引っ掻き付ける。前世でいう所のネコパンチだ。

 

 

「……シッ!」

(全然シャレに何ねえんだよ!それ即死だからな?(19乙)出が早すぎなんだよ!)

 

 

 ギリギリで尻尾を切付け爆発を起こしネルギガンテを怯ませることに成功。再びヘイトがハンターへと向かう。

 

 

♫♫♫

 

 

「……!」

(おっしゃ!仰け反り無効!これで攻めに転じやすい!……攻撃欲しいなぁ!!旋律ガチャホンマ…気絶無効とか要らないから…。)

 

 

 尻尾を振り下げてからの薙ぎ払い、だが遠ざかる尻尾とは反対に前脚が土埃を上げながら迫ってくる!

 

 

「………。」

(何でそんな器用なことできるん?まずお前何で特殊個体なん?何でそんな頭良いん?泥掛けとか小細工使うなや!死ぬやろ!(死んでる))

 

 

 特殊個体『悉くを滅ぼすネルギガンテ』。プレイヤー間では「コトネギ」なんて呼ばれ方もしているが、そんな可愛いものではない。歴戦の通常種がいつの日か絶え間ない破壊と再生の中で取得した『金剛棘』を各部位に備える遥かに巨大で黒ずんだ体色を持つ個体。『金剛棘』は離別の証。その一生を戦いに身を投じる事とした覚悟の証。

 だからこそ、それは硬く、早く、より遠くへ飛散する。徹底的な殺意と共に。

 

 

「…………ここまでk。」

(ちょこのタイミングでネコパンチはっ!待って!それ王ネギの飛び込み早すぎてd。)

 

 

 また一乙を重ねる。

 

 

「…………。」

(を、避けますっと、知ってりゃ何とかなる。だから知らないの辞めて本当に計画壊れちゃぁうあうあう"〜(汚声))

 

 

 そうして時間は過ぎて行く。着実に積み重ねた死の上に、確実に積み上げられた生を支えながら。

 

 

「……。」

(ここでシナラの手を引きます。ここまで来たら後はお祈りです。シナラが覚醒するんでネギがデレてくれるのを祈ります。……長期戦は相手の方が上手だが、何と痺れを切らしたネギは行動が雑になる!これはアド!圧倒的アドバンテージッッッ!)

 

 

♩♩♩

 

 

「………!」

(ッシャオラ!攻撃アップ!待ってました!ホラホラホラホラどうした?足も足も翼もでまい(油断))

 

 

 激しい損傷を受けるものの、あっという間に再生すると本種最大の大技を披露する。

 

 

「…………握れ。」

 

「え?」

 

 

「……。」

(よかったぁ握ってくれた!…側から見れば俺キモ過ぎやろ。ママそれは置いといて(致命傷)コイツのホーミングはえげつないが、しかし、足元アンチなんだよなあ!(7乙))

 

 

 ネルギガンテからすれば突然姿が消えたも同然。辺りを見渡すその隙が決定打となった。

 

 

「………。」

(動かすな!やれ!削り切れ!凄まじい火力だ!よっしゃ両角破壊!何なら三音演奏入りました!気絶無効とかは余計やけどな。惨めだぁ…もうメスに求愛できないねぇ。コイツ雌雄同体だけど。)

 

 

 このペースを、この流れを無くせば恐らく次は無い。

 

 

「………クソg。」

(次は無いつってんだろ!ホセ!ホンマにしn。」

 

 

 また1乙を重ねる。

 

 

……

………

 

 

 このペースを、この流れを無くせば恐らく次は無い。死に物狂いで回避し、攻撃し、回避し、攻撃を続けて続けて、とうとう、その時はやって来た。

 

 

Guooo……

 

 

「………。」

(脳内ファンファーレ再生余裕でした。あ"〜疲れたよ"〜。シナラもへたり込んでらぁ、じゃお隣失礼し……何か忘れてる様な…確か…………あっ。)

 

 

…………

……

 

 

「ぐうぅぅ………ッ!」

(イッテェええええええ!!?!生きてる?俺生きてる!!気絶無効とか要らん言ってすみませんでした!靴舐めて生きてきます。はっ!シナラは!?…すっげえ大立ち回り、もっと早くそれやってほしかった。)

 

 

 それも長くは持たない。攻撃が掠り倒れ込むシナラ。急ぎ向かわなければ、彼女が死ぬ所は、何度見たって慣れない。慣れるものか、死なせてたまるか。そんなの俺だけで十分だ。

 

 

「…………。」

 

 

 …体は…何故か動く。まるで鎧が俺を動かしてるみたいだ。

 武器は…滾りに滾ってる。まるで本懐をなさんと必死になってるみたいだ。

 

 

「…良い調子だ。…これ以上に無いくらい。)

(…良い調子だ。…これ以上に無いくらい。)

 

 

 冴え渡った一撃は、それを捉えた。

 

 

……

 

「あ"?」

 

「…………。」

(こええよ。もうやめよう、な?ほらネギも逃げたがってる(多分)…ほら!逃げて!お願い!本当にしぶと過ぎ!耐久お化けはこれだから嫌なんだ!お前実質3乙しただろ!…マジ?めっちゃ渋々って感じだけど逃げは逃げ!ほら!俺らの勝ち!な?クエストクリア!終わり!おめでとう!解散!)

 

 

「……帰るぞ。……家に。」

(みんな結果報告待ち侘びてるやろし、帰還や帰還。お帰りじゃ!)

 

「………ッ!!!はいっ!みんな、待ってますものね!帰りましょう…“私達の家に”」

 

 

 

 

「……?。」

(…え?。)

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ハンター君

「え?」

 詰めが甘いことに定評がある。…今回はかなり死んだから仕方ない?

 

 

シナラちゃん

 古龍の領域内で、何なら特にヤバいやつの更にヤバい方の殺意にビビり散らかすも無事クリア。

 

悉ネギ

雑魚かぁと思ったら、負けまぁ〜したぁ。チクショォォォオ!!!

 




シナラ「私のするべき事はッ!コレッ!」

    〜気 絶 無 効〜

ハンター「(絶望)」


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十四乙目、猫の手しか無い

 モンハンと言えば、やっぱり出さないとねぇ?(今更)


 

「………。」

 

「?どうかしましたか?」

 

「…………。」

 

ガクンッ!

 

「えっ?えっ!?どうされッ!……気……絶…?……効果が?しかし今更?……こんなに続くものでも…。」

 

 

 最早精神論の領域。文字通り『根性』で立っていたのも限界が来た様だ。反応が得られず、何度か声を掛ければ突然、糸が切れたかの様に崩れ落ちてしまう。

 

 

「……えっと!…ちかっ………顔がっ!………ン〜〜〜〜ッ!。」

 

 

 地面に倒れるその前に、ハンターの肩を持ち何とか支えるシナラ。その顔と地面を交互に見る。

 

 

「………迎えもすぐに来る訳でもありません。」 

 

 

 空いた猶予をどう過ごすか……。

 

 

「……いつまでもこの体制でいる訳にも……しょうがないですよね、では失礼します…。」

 

 

 丁寧に寝そべりさせると、破損の目立つ自身の防具を外しその膝にハンターの後頭部を当てがった。言うところの膝枕であろうか。

 

 

「……装備の損傷が酷い…これでは着心地も悪く要らない負荷がかかってしまう。……せっせめて頭と胴は外さないと……。そうこれはハンター様の為。そこに私情何て…あるわけがありません。」

 

 

 まるで言い聞かせるかの様に続けてハンターの装備を外しにかかる。

 

 

「?……っ!……?おかしいですね。…外れるはずなんですが。………んっ!ほらっ、持ち主に負担掛けないでっ、………あっようやく……何だったのでしょうか?」

 

 

 果たして、内部が変形して絶妙に挟まっていたのだろうか?特別な作りで外し方が間違っていたのか?それを追求する気は更々無い様だ。

 

 

「…静か…ですね。本当に、ここには二人きりしか居ないみたいです。」

 

 

 龍の残影は未だ色濃く、虫の音すら響きやしない。空は既に熱を失い、冷たく、ただひたすらに静寂を貫いた。

 

 

「……あなたの寝顔を見るのは……いつぶりでしょうか。本当に変わりませんね…。この時だけ、私だけの独り占め。…ふふっ。安らぎの表情…その一助になれば……私も嬉しいです。」

 

 

 破壊の嵐により切り開かれた一帯に、空から降り注ぐ月光が、静かに、静かに、彼女の美しき艶のある黒髪に深みを待たせ、その面持ちをどこまでも凛々しく、どこまでも優しく、どこまでも愛しみあるものへと昇華させていく。

 

 

「……こうも無防備ですと、イタズラをしたくなります。……少しだけ……。」

 

 

「………少しだけ。」

 

 

 はじめは頬や鼻を軽くつつくくらいのものが、いつの間にか髪を解き、頬を撫で、その視線は顔だけに止まらなくなっていた。

 

 

「…ハァ……………も、もう少しだけ。」

 

 

 手はいつの間にか胸板を軽く触れはじめ、気付けば優しく撫でていた。

 

 自身の口角はいつの間にか上がっていた。

 

 自身の呼吸はいつの間にか熱を帯びていた。

 

 自身の目はいつも何か彼の口から目を離せない。

 

 自身の体温は周囲の静かさとは真反対に高揚の一途を辿っていく。

 

 

「…………こんなに無防備に………知ってましたか?…実は私、我慢は苦手なんですよ?………。」

 

 

 少し悪戯っぽく、語り掛ける。それは彼にも、そして自分にも言っているのだろうか。

 

 

「それに何と、欲深くもあるんです。貴方が認められるのは嬉しい、活躍して、皆んなの注目の的になるのは…。だけど同時に凄く嫌でもあるんです。………何故だか分かりますか?」

 

 

 返事は無い。ただ、別に欲しいわけでも無い。

 よく見たい、その全てを目に、脳に焼き付けたい。ともすれば自然に顔が近くなる。

 

 

「………………………………いえ、今そんな事をしたって意味はありません。……ありませんったらありません。」

 

 

 言葉とは裏腹に、との声色は嘘を付けない。

 

 

「……ケッ!怪我人に!……それもハンター様に!……このシナラ、そこまで堕ちたつもりはありません!」

 

 

 一人慌ただしく、時に声を裏返しながら、延長戦へと勝手に突入していくシナラ。

 

 

「…こっこう言うのはやはり面と向かって……でもこれはまたと無い……。」

 

 

………彼女の葛藤はまだ続きそうだ。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「そして今回の相棒はこちら!」

 

 

「『王牙琴【雷鳴】』、そしてその改良版の『王牙琴【雷鳴】改』です!」

 

 

「……!」

 

 

ガラガラガラガラ

 

 

 手綱を握る手はとても重い。心なしか相棒も意気消沈。………よく分かんないけど。

 

 でもハンターさん達は本当に勇敢だ。こんな状況でもいつも通りに振る舞ってる。空元気だって振るえないようなこんな状況なのに。

 

 

「…………。」

 

 

 何一つ気の利いた事を喋れない自分が恨めしい。……何よりこんな悪運に絡まれた自分が恨めしい。

 

 

 

……

………

 

 

 

「…………結局何も言えなかったにゃ………それに行ったちゃったにゃ……。本当に……。」

 

 

ブモオォォ

 

 

「ブモオじゃにゃいにゃ。この低学歴なアイルーはアプトノス語は履修してにゃいにゃ。……アイルーに学歴とかにゃいけど。……でもお前バカにしたにゃ?」

 

 

 『アイルー』…言ってしまえば二足歩行の猫。獣人族とも呼ばれる彼等彼女等は、器用な手と人の言葉を理解して話すことのできるレベルの知能を持つ。人間と暮らした方が良いことも多いため、多くのアイルーが共存の道を歩み、人もまた大いに受け入れている。

 

 ……しかしメラルーは盗みを好むので、ある意味では敵対してしまう事もしばしば。マタタビに目が無く、あれば他の物には目もくれずそれをのみを盗み、与えれば大人しくなるので一つ持っておくといいかもしれない……。

 

 

「にぁぁぁ〜〜、本当についてにぁい。こんな事ににゃるにゃら、恥を晒してでもシンドイワシなんて食べるんじゃなかったにゃ。……全部あいつらのせいにゃ!今度会ったら絶対負けにゃいなにゃ!あいつらアイルーの心にゃしにゃ!普通黙って逃げるかにゃ?」

 

 

ブオォォ

 

 

「そう考えたら負かすじゃだめにゃ!しばき倒してやるにゃ!文句なんて言わせにゃい!拳こそ正義!元とはいえオトモアイルーにゃめるにゃよ?」

 

 

ブモオオォォオ

 

 

「………生きてたらって?わかんにゃいけどどう言われた気がするにゃ。……何でお前言葉わかるんにゃ?おかしくにゃい?」

 

 

ブモオォ…

 

 

「……腹立つにゃ、全然分かんにゃいけどまたバカにされた気がするにゃ。」  

 

 

 どんな勝負かは知らないが、どうやらシンドイワシを食べた事による疲労感によって爆睡した結末置いてかれた様だ。

 

 

ブモオォォオォォオ

 

 

「お前絶対嫌われてるにゃ!性格悪過ぎにゃ!だからこんな所まで来る羽目になってるにゃ!」

 

 

ブモオォォ

 

 

「似たもの同士仲良くにゃんてお断りにゃ。それに嫌われてにゃいにゃ。普通に運が悪いだけにゃ。……にゃほほ……。」

 

 

Ooooooッ!

 

 

「ニャ!?えぐ過ぎにゃ!?ここまで聞こえてこの迫力とか頭おかしいにゃ!?……どこいくにゃ!逃げるにゃ!臆病者!置いてくにゃ!こんにゃ危険地帯で一匹とか寂しいでしょうにゃぁぁあ!!」

 

 

 大地も大気も震わして、遠く遠くへ運ばれる。野生に近しい彼らには、それでも平常心を失わせるには事足りる。

 一匹と一頭の雑談も裏切りによって打ち切られてしまった。

 

 

「………探すの嫌にゃ……でも探さないと帰れにゃい……。」

 

 

 この森を一匹で?逃げ遅れたモンスター一匹に見つかるだけでもヤバい以外に他ならない。

 

 

「ついてにゃいにゃ……。にゃほほ……。」

 

 

 全く自分が何をしたと言うのか、どうやらとことんついてないらしい。

 

 

……

………

 

 

「逃げ遅れたトロいモンスターの一匹や二匹、出くわすかと思えば全然いにゃい、近道でジャギィの巣の中とか普段なら絶対死んでるにゃ。…にゃ!卵!……だからどうしたにゃ……こんにゃ状況でお荷物にゃんて持ってられるわけにゃい。」

 

 

 近くには何もいない事は確定しているとはいえど、その天気はいつも通りの良くも悪くもない程度、風もそこそこ温度も普通。と言うのに生命の息吹が自分のみとは中々に不気味なもので…。

 

 

「他のは割れてる。……お前も置いてかれたのかにゃ……。」

 

 

 散乱する殻の破片。ポツンとその中に卵はあった。寂しさとは不思議な事で、自分の境遇も相まって、特に考えずに気付けば行動に移っていた。

 

 

「……卵でもいいにゃ、ヨイショッ……蔦で囲って背負えば…ヨシ!…暫くは話し相手にでもにゃるにゃ。」

 

 

 その後の事はどうするかなど聞いてはいけない。知能があるとはいえど、そこまで思慮深い種族でも無いのだ。

 

 

「……あの図体でどこまで行ったのにゃ?痕跡ばかりで本体が全くいにゃい。」

 

 

 居るのは一匹と一個だけ。…植物?…無いよりはマシかもしれないが……。

 

 

「…………。」

 

「ッ!?…しっ!にゃにか居るにゃ!……卵ににゃに言ったんだって話にゃね。」

 

 

 だからこそ、これ以上ない程にその精度は研ぎ澄まされていた。

 

 

「………人?」

 

 

 そう人。それもまだ幼い出立の少女がぽっと立ちながら遠くを見つめていた。迷子にでもなったのだろうか?ただ人と分かれば話は早い。

 

 

「にぁ!どうも失礼にゃ!何でこんな所にいるのか知らにゃいけどあぶにゃいにゃ!荷車に連れてくからついてくるにゃ!……あっアイツいないんだったにゃ。……唐突にだけどアプトノス知らにゃいにゃ?一応相棒でどっか言っちゃったにゃ。」

 

 

「…………いいぞぉ…流石我の英雄じゃぁ………。」

 

 

 近づいて分かったが、何かに熱中している様だ。ぶつぶつと独り言を唱えるその口から垂れた涎を仕舞う事も忘れ、蒸気した絹の様に白い肌、熱を帯び蕩けた真紅の瞳。髪は長く艶やかで美しく。

 

 ただしかし、その一連は少女という器には不相応と言った様子を受ける。が、

 

 

「?……あっあのぉ……。」

 

 

 どうしてここにいるのか、何しているのか、危険な事くらいは知っているはず。だが気にしない。深く考える種族ではないからだ。

 

 

「…にゃ…無視しないでくれると助かるにゃ…。……?生きてるにゃ?こんな所で立ちながら目開けて寝てるとかそんな訳……。」

 

 

 そんな事を考えて…声に出しつつ肩を…身長的に叩けないので仕方なしに太ももを叩くと。

 

 

「何じゃあぁぁあ!?!?!?「ニヤァァァァアァァァア!?!?!?」…誰じゃお前!!!「こっちのセリフニァ!!!」。」

 

 

 静寂は崩れ去る。一気に阿鼻叫喚の騒がしき場へと変化した。

 

 

……

………

 

 

「とにかく!ここはあぶにゃいにゃ!取り敢えず一緒に来るにゃ!」

(まだ一人でここに居るとか頭沸いてるにゃ!だけど仲間が欲しい!手も借りたい!アイルーの手じゃ足りにゃいにゃ!にゃんとしてても引き込まなくては…。)

 

 

「だから問題ないと言っておろうが!まだこれからいい所!邪魔せんとさっさと失せろ!」

(何だこのけむくじゃらは!我をガキ同然に扱いおって!…しかし暴れるのも不味いし何よりこんな事で本気になったと知られれば立場が無い!)

 

 

 基本的な絶対者の龍が、己の立場、それもたった一軒の家の中でのヒエラルキーのことを考える様になったとは、知るものが見れば自分の脳みそを疑うだろう。…今までの知識と概念故に。

 

 

「何処がにゃ!問題しかにゃいでしょうが!早くアプトノス探すの手伝うにゃ!……にゃっ…。」

(何処がにゃ!問題しかにゃいでしょうが!一人は危ないからついてくるにゃ!……にゃっ…。)

 

 

 つい本音と建前が入れ替わってしまう。知能は高くとも理性は対して優れてはいない。

 

 

「なっ!…このけむくじゃらがそんなのに我のお楽しみを後回しにさせるとな!?…………あっ。」

(なっ!…いかんいかんこんなのに熱くなっては。ここはくーるに行かなくてはな。………あっ。」

 

 

「けっけむくじゃら!?いくら何でも失礼にゃ!いつも毛並みは整えてるにゃ!それにアイルーって種族名。ボク自身には『アイー』って名前があるにゃ!」

 

 

「アイルーぅ?そんな下々の名前など知るか!…………。」

(んっといかんいかんこんな事で時間は使ってられん。えーと確か、あぷとのす…だったか?)

 

 

「あぷとのす?何じゃそれは…あぁ、あの灰色の奴か、それならあっちにいた。ほれ、早ういかんと間に合わんぞ。」

 

 

 

「本当にゃ!確かにここは見晴らしがいいにゃ、あそこかにゃ!ありがと娘さん!気を付けて帰るにゃよ!」

 

 

 どうやらここは白亜の岩璧のそのてっぺん。見晴らしはうんと良さそうだが、それを堪能する余裕は既に無く。一転清々しい程の切り替わり、次に係る声を聞く前にダッとその場から消えてしまった。

 

 

「むっ娘!?そんな事言われたのは初めてじゃぞ!?」

 

 

 普通置いてくなんてことはないのだが、彼らはそこまで深く思考はしないのだ。(n回目)

 

 

「つくづく生意気な奴じゃ…。それに変な奴じゃ、卵なんて背負うなど……。…時間は使ってられん、か。不思議なものだ。時間など腐る程あったと言うのに、今はそれが極上の宝そのもの…あっ、見逃してはならん!」

 

 

 再び目を向ける。その気配は極限まで納められ、馴染んでおり、大自然の芸術とも呼べる白亜は、彼女の存在を確と掻き消した。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「でもでもでもでも!……〜〜〜〜ッ!。」

 

 

「ハンターさん!ハンターさん!「うひゃっ!?」ウニャ!?!?ってこれさっきやったにゃ。」

 

 

 たった一人の延長戦が漸く終結した様だ。比較的最近何処かで経験した光景を追体験しながらも、そんな事よりと言わんばかりに賞賛が止まらない。

 

 

「迎えに来たにゃ!凄いにゃ!本当に凄いにゃ!英雄さんだにゃ!」

 

 

「えっえぇ。しっかりと…。ですがそれは私には相応しくありません。…賞賛はハンター様に。」

 

 

 目線は自然と下へ向く。

 

 

「生きてるのかにゃ?……今の所大丈夫そうだけど早く連れて帰った方がいいにゃね、ほら!早くこっち来るにゃ!」

 

 

ブモオォォ

 

 

「動けるかにゃ?装備とかはボクが運ぶにゃ、支えられたらいいけど流石に無理にゃ。」

 

「大丈夫ですよ、これくらい、ハンター様の傷に比べれば何ともありません。」

 

「…あまり無理はしにゃいでにゃ。」

 

 

 無理しているのは分かりきっているが、なら他の手はと言わられれば考え付かない。大人しく散乱した装備等を拾っていく。

 

 

「これはモンスターの一部にゃ?拾っといた方がいいにゃね。」

 

 

 こうして回収を進めて行くと荷車の方が何やら騒がしくなってきた。

 

 

「あっ!アイツ!」

 

 

 心当たりはありありの様で、入り口のそばに回収物を置くと急いで中に飛び込んで行く。

 

 

「あっアイルーさん!?これはどう言うことですか!?」

 

 

グキャ!ウギャ!

 

 

 ハンターを背に何やらわちゃわちゃとシナラの前で騒ぐ一匹の小さな竜。

 

 そしてシナラは何が何やらと言わんばかりに目をグルグルさせそれでもハンターは守ろうとその身一身に竜の攻撃?を受け続けていた。

 

 

 赤みがかった体色に背中は薄い青。何より特徴的な襟巻き。体は極端に小さいが。紛れも無い『狗竜』ドスジャギィの若年個体、ジャギィ、それであった。

 

 

「あ〜、新しいオトモダチ?危険性はにゃいよ!産まれたばかりだし…。にゃ、にゃはは……。」

 

 

ブモオォォ………

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ハンター君

 緊張の糸が切れちゃった。

 

 

シナラ

 誰もいないからと油断して一人の世界に入っちゃったみたい(他人事)

 

 

アイルー

 小物界の大物。

 

 

アプトノス

「俺、実はRISE発売まで皆勤賞だったんだぜ……。」

 

 

ジャギィ

グキャッ!

 

 




 ジャギィって絶対いいペットになる。


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十五乙目、挑戦状

 ルーツってボレアスの長寿個体じゃ無いですか。それでボレアスに挑む奴はそこそこいる訳で、…てことはかなり溜め込んでそう。


 

「……しらn「ハンター様!?はい!シ ナ ラはここに!」………。」

(おっおう、知らない天井っていうつもりだったんだけどなぁ、何なら全然知ってたし。)

 

 

 ルーツ戦、レイアandバゼル戦、そしてガルルカ戦も越えて、四度目か?

 

 

「………。」

(いやぁ、短い間にとことんお世話になったな。ガチで足向けてねれんな。ベッドの向き変えよ。)

 

 

 ……という事は足を向けていたという事だろうか?

 

 

「ッ!?ハンターさん、起きましたか!あっ…あのぉ〜、いきなりで悪いのですが積もる報告があります。少し待っていてください。」

 

 

「…………。」

(受付嬢はんもおったんか?…確かに色々あるのは予想つくわ。)

 

 

 慌ただしく室外へと出て行く彼女の背を見届ける。その様子から自分が何をしたのか、何を成したのか、少しずつ実感が湧いてくる。

 

 

「………俺は……成したのか……。」

(ヤベェ、今になってことの重大さに気付いた俺の心臓が爆音を轟かせている!これ聞こえてない?)

 

 

「はい!街の皆さんも無事に帰る事が出来て喜んでいます。皆んなが貴方様の功績を讃えています………。」

 

 

「…喜べ。」

(どした?なんか語尾弱いけど……。ほら喜んで喜んで!俺らがやったんだからしっかり喜んでくれよ〜。)

 

 

「え?」

 

 

 曇る彼女に知ってか知らずかの声掛け。言葉は更に続いて行く。

 

 

「これは……俺とお前の偉業だ。…お前が喜ばなければ……誇らなければ…………俺はこの賞賛を受け取れない。」

 

 

「……すみません……いえ、行けませんね…。…ありがとうございます♪私達の偉業ですものね、また身勝手にも貴方様に気を使わせてしまった。反省です♪」

 

 

「そうだ………よく似合ってる。」

 

 

「/////ッ!!?はっはひ〜〜……

 

 

「?」

 

 

「ダハハッ!お取り込み中だったか!」

 

 

「相変わらず元気ですね、ギルマスは。いい歳の取り方してます。」

 

 

「何を言っているジード殿、まだ687歳の若輩者だ。こんな様で年寄りなんて言われては加工屋のジジイに殺されちまう!」

 

 

「あはは…、流石ですね…。おっほん、ハンターさん、シナラさん、騒がしくてすみません。では、…どうされましたか?ハンターさん。……あぁ〜あ、ギルドナイトを見たのは初めてでしたか!。では!「いえ、大丈夫です。」…え?わっわかりました。……もしかしてお知り合いで?」

 

 

 最後に見た様子とは打って変わって、元の豪快な喋り方に戻っているギルドマスター。やはりこちらの方が生き生きといている分、彼的にも楽なのだろうか。

 

 

「そのようなものです。さて、病み上がり失礼だけども、事が事だからね。上の方から渡されたこの報告をしなければ。」

 

 

 そういうと、その上からの言葉が記されているであろう紙束をひらひらと振るギルドナイトの『ジード』。

 

 

「………。」

(うわぁ…面ど(直球))

 

 

「……ただ、こんなの読んでたら日が暮れるので手短に。て事でポイー。」

 

 

「え?それ捨てていいんですか!?」

 

 

「大丈夫大丈夫大丈夫、心配無用。…では本題へ、」

 

 

 本当に捨ててしまうジードに驚嘆の声を上げる受付嬢。しかし、その軽い空気は何処へやら、先ほどの態度から一転。真面目な声色で話を紡ぐ。

 

 

「規定に従わず勝手な交戦を許可した事はとても誉められるものではない。碌な防衛施設の無い場所に置いて、貴重な人材を危険極まりない地へと送り込んだ事も、許される事では無いだろう。…本来であれば。」

 

 

「………。」

 

 

「………。」

 

 

 ジードの視線はギルドマスターと受付嬢へと向けられる。ジードの顔はその中性的な様から怖いなどと言う感情は排されがちではあるが……。

 

 今、その発せられるオーラはどこまでも威圧感に満ちた判決を下す側の人間であった。…のだが……。

 

 

「………そんなのは些細な事になるくらいに君たちはとんでも無いことをしてくれた!!!喜べ!全部チャラだ!なんならお釣りが来るぞ!!!」

 

 

「「えぇ………。」」

 

 

「………。」

(さっきまでの雰囲気さんが呼吸してない。この急上昇に、俺はついていけない(過負荷))

 

 

 ギルドマスターと受付嬢は思わずズッコケそうになるのをなんとか我慢して話の続きに耳を傾ける。

 

 

「いゃ〜こちらからの攻撃で成功した事なんて本当に片手で数えるくらいしか無いんだ。それも全部甚大な被害を被ってだ。それなのに今回、誰も死んじゃいない。本当に君たちは規格外だ!」

 

 

 腕を広げてハンターとシナラを称賛し更に続けて、

 

 

「それに現場の残留物や交戦情報はとんでも無く貴重だ。ここまでの戦果を残しておきながら、撃退故に実際に得られるものは少ない。英雄に金だけポンとくれてやるのでは渋すぎる。そこでギルドから追加報酬と手厚〜い援助を約束しよう!手始めにG級…じゃなくてマスターランクへの手続きを…「断る。」」

 

 

「ええ!どうして!?」

 

 

「ハンター様!?」

 

 

「…………。」

 

 

 次々と起こる驚愕の声。間を置いてジードが言葉を紡ぐ。声のトーンは下がっていた。

 

 

「……どうしてか、理由を聞いても?」

 

 

「……まだ、始まらない。」

(そこの急降下にもついていけない。…いやまぁ俺のせいなんだけど。…ネルギガンテ戦で理解した。これG級地獄だ。そして地獄に足を突っ込むのは御免だし、こんなの二つ返事で承諾しようものなら"終わり“の始まりやね。)

 

 

「…と、言いますと???」

 

 

 純粋な疑問からか、受付嬢が返答する。が、喋った後で少し後悔した。

 

 

「俺にはやり残した事がある。故に容認できない。」

(何が?この選択に心残りがあるとでも?ねぇよ!タコ!………だからねえっていってんだろ!心当たらないから!そんなのあっても俺が容認しないから存在しません。(黙殺))

 

 

「成る程、やはり、だからこそというべきでしょうか?。…すみません皆さん、ここからは彼に対する話があります。…シナラ様もどうかお聞き入れ下さい。」

 

 

「…わかりました。これは……つまりそういう事でしょうから…。」

 

 

「では、お大事にしてください。」

 

 

「……病み上がりだ。少し休むのが一番だ。ではまた!」

 

「……。」

(え?え?え?何勝手に話進んでるの?シナラそういうことってどういうこと?お見通しって何通し?お気遣いありがとうございます。誰か教えて!?」

 

 

 ガチャン、ハンター迫真の心の声は誰に届くことも無く。静寂な空間に二人が残された。奇しくも、その状況はジード、彼と初めて出会った時、そして2回目、今回の3回目ともに、同じ配置、同じ姿勢。

 

 

「いやはや、結局この状況での再会ですね、これはもう運命の糸でしょうか?……貴方の運命は凄まじいで収まりきらないですよ。」

 

 

「…そんな事はない、もっと上が居る。俺なんて霞むほどに。」

(俺如きが烏滸がましいな、どうせ主人公が湧いてくるんやし、そいつらの人生のほうが波瀾万丈に決まってる。)

 

 

「ふふっ、貴方以上なんて想像が付きませんよ。英雄の人生はかくも波瀾万丈であるか。」

 

 

「俺は英雄などでは無い。俺などが…。」

(拙者が英雄!?そんなわけwww。ガチのやつはソロでネルギガンテ討伐まで行ってるってそれ一番言われてるから。)

 

「そう自身を下卑しないでくださいな、労ってください。これでも心配してるんですよ?」

 

 

 本気で言っているのだろう。寝具に寝込むハンターの両手をとり、穏やかな声色で語りかける。

 

 

「歳が近い知り合いは貴方くらいです。人脈の無さは残念ですが、貴方と知り合えたというだけでも計り知れない価値があります。」

 

 

 手袋越しに分かる頑張り者の手。それを感じたのは果たしてどちらか。

 

 視線を上げて互いの瞳に映し合う。

 

 

「私も中々寂しがりですからね。………仲良くしてくれると嬉しいな。」

 

 

 目を細めて遠慮しがちに柔らかな表情を浮かべる。

 

 

「………。」

(………(絶句)。)

 

 

「…よかったですね!もし本当に"私"でしたら貴方はこの労りの言葉によって惚れ込んでいたかもしれませんよ?…これは本当に自慢じゃ無いし、普通に残念というかなんというか……その、よくモテますので………。」

 

 

 次の瞬間にはいつもと呼べる態度に変わるが、その目はどこか遠くを見ていた。

 

 

「だろうな。…やはり今のお前が一番良い。」

(……えぇ……。男がそんな顔できるの?……確かにな、ガチのお前見たらそっちの軽い方が断然いいな。堅苦しいのは苦手なんや。……お前の事だぞ俺!)

 

 

「へ?良いって何が……んえ!?いえいえ、待ってください。脱線し過ぎました。…なんか崩れちゃいます。貴方といると。…ですので単刀直入に、貴方宛に特別な指名依頼が来ています。場所はフォンロンのバテュバトム樹海に浮かぶ謎多き…と言うか謎しか無い巨大な建造物『塔の秘境』のてっぺん。『頂』です。」

 

 

「…………早い様で、短かった。」

(フォンロン?…あ〜ナルガいるところね。しかし指名とな、そんなに有名人か?活動拠点ここだけなのに?…まっ、まぁあ?一応ネルギガンテボコしたわけだし?でもまっここで慢心して「はい受けます。」なんて言うほどベタにバカでも無いしな。でも話を聞いてやらん事も…。)

 

「内容はなにぶん特殊なモノで、「受ける。いつ出立だ。」………何処までも予想外というか、いえ、予想は当たっていますが…凄いですね貴方は。」

 

(本当にな、凄まじいよ(諦観))

 

 

「………いや、普通だ。皆、凄まじい。お前もだ。だから俺は、腐っていられない。」

(いや生きるために仕方なくやってるだけやし、ギルドナイトなんて役職もヒョイとなれる訳でも無いやろ?ならお前も凄いんじゃん。てかこの依頼絶対避けられたダルオォォォオ!!!)

 

「………なんか戦っているわけでも無いのに降参という言葉しか出てこないよ、たしかに"依頼人"はかなり急かしてるからね、準備はお早めに。ではまた。………貴方に、導きの蒼い星が輝くよう祈っていますよ♪」

 

 

 一礼の後に部屋から退出して行く。

 

 

「…………。」

(…………えっと、取り返しつかない?つまりこれもしかして死んだ?(いつも通り))

 

 ポツンと取り残されたハンター。その思いは残念ながらその様だ。

 

 

 

……

………

 

 

 

「ハンター様、………私は貴方についていきたい、貴方を送り出すのはとても、とても辛いから…。ですが、これはハンター様の決着、私が出る幕などありません。……ありませんのに、私は…私はッ……。」

 

 

「……。」

 

 

「ハンター様。一言、一言だけ、貴方の言葉があれば私は何処へでも、その言葉の意味が表す通りに、何処までもついて行きます。」

 

 

「…………。」

 

 

「私は貴方のモノです。分かっています。出立を前にしてこの様な真似をして、我儘の為に時間を割いてしまっている……。ですがっ!どうかっ!……どうか……どうか………。」

 

 

 その必死さとは逆さまに、今にも消えてしまいそうな声を、捻り出す。

 

 

「戻れ。」

 

 

「……えっ?…そっそれは!……。」

 

 

「先に戻れ、家に。……後から帰る。だから、待っていろ。」

 

 

「えっ?え?…はっ……はい!…腕によりをかけて、夕飯を準備しています。ですから、ですから!…どうかご無事で。」

 

 

「……付いてくるなよ。」

 

 

「はい♪わかっています。そもそも指名の依頼に勝手について行ってはいけません。これは完全に何処からどう見ても通るはずの無いわがままですから………私は信じます。信じないなどありません。……どうかお気を付けて……。」

 

 

 

………

……

 

 

 

「………。」

(フツーに連れていきたかった!あのサポートの味知ったら元の狩に戻れるか?いや戻れない。なんだよ依頼者音信不通ってそこんとこしっかりしろボケ!)

 

 

「はっハンターさん!着いたにゃ!長旅ご苦労様にゃ!」

 

 

「……(コク)」

(おっ頷いた、初めての長旅だもんなお前もそう思うか!……俺は俺に何言ってだ?(田舎))

 

 

 そうして長い長い遠征は、しかし着実にその時を迎えていた。

 

 

「……早い。」

 

 

「ボクもにゃぜんぜん襲撃がなくて驚いてるにゃ。これもハンターさんの覇気に恐れ慄いたからに違いにゃいにゃ!ジャッキーも連れてくる必要無いにゃ!」

 

 

ギャッ!?

 

 

 響く抗議の声は置いといて、その道のりは驚くほど何もなかった。陸の襲撃も、海の襲撃も。不気味な程に、凪いでいた……。

 

 

「…………。」

(屠龍剣なんて大層な名前付いてんだ。しっかり頑張ってくれよ?)

 

 

 腰に掛けた刃を見る。塔に出現するモンスターは一律して龍属性が効く。何が出るかわからない状況ならとりあえずこれでと言ったところだ。

 

 

「………。」

(あれからうんともすんとも言わない。少なくとも古龍は無し、でいいのか?)

 

 

「ボクは此処までにゃ……。お帰り、待ってるにゃ。誰が相手か知らないけど。ハンターさんならけちょんけちょんにゃ!」

 

 

「………高いな。」

(本当にな、せめて出現する可能性のある奴くらい教えてくれよ本気で。これ一応調査依頼だけど、絶対調査で済まないやつやん。新大陸よろしく調査対象ブッ調査するだけやん。調査して調和()する奴やん。……塔が高えや(現実逃避))

 

 

 この地に降り立ってから圧倒的に、天高く、最早天を貫かんと聳え立ち、その存在感を示す異様な人工物。

 

 

「………遠いな。」

(これ行くのも登るのもエグくね?……頑張るか…。)

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

!!!

 

 

 

 かの存在がほんの、僅か一瞬の微睡から……いや、永い永い眠りから目を覚ます。

 

 『時は来たれり』と。

 

 

…………………ッ!!!!!

 

 

 放たれる世界の咆哮。それは高い様でしかし低く、轟く様で、響き渡る。

 

 それは正に歓喜。待ちに待ったライブ念願の成就。

 

 それは正に興奮。これより起こる事象に対する。

 

 それは正に………

 

 

 イマならコレをアラわせる。我だけのエイユウ!あぁ、…なんとなんとアマく、クセになるなヒビきなのだ!!!

 

 

 その血その肉その全て、全て全てが我のモノ!さぁ!最後の最後まで永遠に!

 

 

 タイクツなんてさせぬ……絶対に…絶対……。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ハンター君

 ゲームならカットされてた塔登り。現実だと発狂しそうなくらいに高くて無事発狂。

 

ルーツ

 某有名少女になって住居に散らばってるゴミが金になる事に気付き、ハンターが好むであろう対戦形式に持ち込む為に頑張る。

 

シナラ

 住み着く権利を得る。今回の依頼は村クエ的な感じでソロ限なので泣く泣くお留守番。

 

ジード

 名前の語感に似合わない麗しさ。本人的にはこれに似合うゴリゴリになりたいが、周りからは常々妹の様な扱いを受け、職場な的に女性が少ない為、女装任務に行かされることも。……ダメみたいですね。

 

 

補足

 ハンター君の武具修繕はギルドがなんとかしてくれた。

 

 

 




 さて、戦闘かぁ…。


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素敵なところ

 モンハン新作だと!?…(確認)


……
………

 2025年か、なるほど…………2025!?!?


 

 

 

 大地を埋め尽くす深緑の海は、人類の知的好奇心を持ってしてもその侵入を拒み続けている。

 

 大陸最東端、テロス密林を抜け、海を越え、遥かなる大地を埋め尽くす広大な樹海『バテュバトム』そしてそれより更に北。正しく人類未到のエリアに存在したのは、ある筈のない人類の痕跡であったのだ。

 

 

 

 樹海に聳え、天を穿つ。その矛先は宙へと、月へと向けられる。

 

 

 かつて幾人もの強者が訪れてはしかし、二度と帰ることはなかったと言う塔の頂。下を見れば濃密な霧が樹海を埋め尽くし、上を見れば雲もなく夜空を埋め尽くす星々に、優しい月光が、舞台を照らす。

 

 

 そして今回もまた、新たな足跡が刻まれる。

 

 

 

 今宵、彼の地はこれより戦場。退屈などとは無縁であろう。

 

 

 

……

………

 

 

 

「…………。」

 

 

 いつ程の年月が経っているのだろうか。捲れ、ひび割れた石畳。足を取られぬ様慎重に、いつもとは何もかも違うのだから。

 

 

 

「……ッ」

 

 

 空気が変わる。空を三度見上げれば、あれよあれよとその全て、星は陰り、月は闇に蝕まれ、陰りは直様雲天井。そのあちこちか、脈動するかの様に蒼く鮮やかな光が隙間を巡り、その行先は今まさに侵食されたそうとする月へと向かって行く。

 

 

 月輪沈蝕、闇が全てを覆い尽くすその一瞬。月光が閃きそして……。

 

 

 空に開いた暗い穴。雲も蒼も光さえ…

 

 

「………!」

 

 

ーーーーッ"ッ"ッ"!!!!

 

 

 最早光と無縁の空でありながら、それは輝く白鱗と体毛に包まれ、禍々しくも神々しい壮麗な大翼を羽ばたかせ、淡く、そして煌々と輝く王冠の如き4本の角を冠する。

 

 名状し難き王の咆哮。滅びの伝説が蘇る。

 

 

「………。」

 

 

 5乙目

 

 

 一つ動けば紅の雷雨。

 

 

「………ッ!?」

 

 

 18乙目

 

 

 二つ動けば白煌の猛襲。

 

 

「………クソッ!」

 

 

 24乙目

 

 

 確かな経験。しかし足りない。何もかもが足りていない。

 

 今回もまたほら、避けられない。

 

 

32乙

 

 

「…。」

 

 

 いつか見た同じ猛撃。ではない。余念なき本気の攻撃。だからこそ付け入ることは出来ない、隙を見出せない。

 

 その落雷はかの紅蓮に滾る爆鱗竜の様に気まぐれでありながら、爆発までの時間は無く、一閃の後に命を容易く奪って行く。

 

 では肉弾戦は?此方もなかなかに厳しい物がある。その頭は遥か頭上。此方はいつも見上げる側だ。龍の一挙一動が致命傷だと言うのにも関わらず、此方は死ぬ気の一撃が精一杯。その癖狡い黒狼鳥の様に狙いは正確。

 

 そして何よりその攻撃力。防具がまるで機能し無い。致命傷を避けられたからと言ってなんだ。攻撃を受け、血を流し、痛みに悶え、行動を制限された。それは既に致命傷だ。捨て身の攻撃などもっての外。腕を代償?腕を代償にしたからと言って『次』に繋がなければ意味がない。

 

 

「………グぁッ!……。」

 

 

68乙

 

 

 無傷で完勝。それより他に道は無し。

 

 

 刃は届く。斬れば血は出る。龍属性には悶える。攻撃は避けられる。行動は分かる。ならばやることは一つ

 

 

 狩れ。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「……クソッ!持ってかれたッ………。」

(い"ってーーー!!!あのアマ俺の腕持って行きやがったな!?こんなの勝てるわけないだろ!スカポンt)

 

 

100乙

 

 

「………。」

(お願いお願いお願い!直下ブレスだけはしないでお願い死んじゃうから!懐に潜り込めたの久しぶりなんです許してお姉さん許して〜あっ(絶望))

 

 

 龍のブレスに龍が焼かれるなど笑い話にもなりはしない。

 

 

「………龍穴に入らずんばッ!」

(虎穴に入らずんばなんとやら!何度でも潜り込んでそのつら地面に引き下ろす!出なけりゃ俺が上に行く!あっ召されちゃう。……ん?)

 

 

ッ!!!!!

 

 

 不意に行動を中断し四足歩行に。かなりオーバーに腰を引きに後ろに這いずる祖龍。

 

 

「……!?…今ッ!」

(ファ!?なんだ?でもやっと下がったなタコ!これでも!…あっ。)

 

 

 確かに後退はしたが、何もただで隙を晒すわけがない、飛び込んだ先には、真紅の口腔に溢れんばかりの雷が込められていた。

 

 

「……どうなっている?」

(ン?ン?ン?一向にさっきの行動が引けない。さてはお前気まぐれ型だな?(絶望)やめてくれよ。)

 

 

 確かに、祖龍ミラボレアスともなれば最適解の行動でなくとも、適当な攻撃で相手は沈むため行動制限は受けないとも言えるが……、やはり癖はある。それも圧倒的強者なればその様な物会ってない様な物……強者で、癖を誤魔化せる奴が異常なだけだ。

 

 

「……もっと、まだ生きて次にッ。」

(まだ死ねん!隙はある!巨体故のどうしても誤魔化しの効かない決定的な隙が!悟られるな、それを知られたら対策される、必ず絶対ここぞの域で。)

 

 

180乙

 

 

「………。」

(前回戦った時よりも更に濃密な落雷と追尾性能!たかが俺一人にやりすぎるだろ……)

 

 

 その全てを紙一重で回避する。回避しなければならない。紙一重でなければ次に繋がらない。

 

 

「…ブレスッ」

(ブレス迎撃!高い精度と広範囲攻撃が厄介、しかぁし!効果範囲は着弾してからの事、なんなら着弾してから前方に炸裂するから怖じける方が死ぬ!なら玉を避けて仕舞えば問題無し!)

 

 

 ワザと突っ込み雷球を避け、着弾地点から急いで離れる。後方の炸裂音は気にしない。着実に距離を詰めて行く。

 

 

「………ッ!」

(うし!目の前!しかし此処は高確率で雷薙ぎ払いだから此処は更に突っ込む!)

 

 

 首を左右に、その後一瞬の閃光を残し、紅雷が迸る。閃光自体は耐えられる。なら場もば、その隙を逃す訳がない。

 

 

「……待たせたなッ……」

(待たせたなッ!そして此処は直様位置を確認……目の前には左脚、つまり雷足踏み!バックステップ一択!からの!)

 

 

 ズドンと岩を踏み砕き、オマケとばかりに紅が閃き、避けたハンターにすかさず紅雷を纏った右腕叩き付け、も、また潜り込む事で回避成功、すかさず胸部へ得物を滑らせる

 

 

ーーーッ!!!!!

 

 

 耳を穿つ金切り声。直様体勢を二足に移行させ、直下へ雷を放つ。

 

 

「……グぅ!!!」

(これを!死ぬ気で避ける!猶予が全然ないし、早過ぎると別の行動移るからほんとシビア!行動誘発が義務とか俺の人生後攻ばっか!)

 

 

 再び距離が空くがこれでいい、このまま続けていてはいずれこちらが力尽きる。焦ってはいけないのだ。……かと言って余裕があるわけでもないが。

 

 

ッ!!!!!

 

 

 胸に刻まれた傷を確認する祖龍。滴る赤は果たして何か、混じる黒雷は龍殺しの力、その片鱗。

 

 

「……効くらしいな……痛そうだ。」

(効いてんじゃぁあん(知ってる)流石屠龍剣。全然反応してないから戦々恐々だったけど、効くとわかった時の安心感ときたら、軽く3回は死んでたわ。)

 

 

…………

 

 

 淡く、そして煌々と輝く王冠の如き4本の角、その全てに真紅の脈動が巡り付く、各部位白に紅を重ね、余剰の力が漏れ迸る。

 

 

ーーーーッ"ッ"ッ"!!!!

 

 

「……驚くなよ。」

(さてさて第二形態!今度こそ俺の研究成果をとことん披露してやる!その目ん玉にもういっぺんぶち込んでやるからな?覚悟しとけよ〜。)

 

 

 ………?乙目

 

 

「………。」

(…ァ“(消滅))

 

 

 ……………

 

 

「………。」

(避けられるわけないだろ!いい加減にしろ!(憤怒)もう許さねえからn)

 

 

 

……

………

 

 

 

「………よし。」

(あっぶねぇ!!でも接近完了!てかなんだよ紅雷カーテンって、完全ランダム落雷軌道の合間を掻い潜れってクソゲーにも程があるゾ!それを5連波で通常落雷もしっかりあるし、ブレスが球が光線になってるし、もう尾張だ猫の龍。)

 

 

ッ"!!

 

 

 接近を確認した祖龍は直様、しなやかで長く強靭な尾による薙ぎ払いを敢行、ただ一回薙ぐのでは無く、返しで2回目、更に3回目の後に振り返り、すかさず爪撃を繰り出すも、気味が悪いほどに、いやいっそ清々しいほどに紙一重で回避されてしまう。

 

 

「……素直な奴だ。」

(確かにお前は強い、しかししかししかぁし!お前は行動が素直過ぎる!ディレイも無いし、コンボは激く一ミスも許されないのはヤバいが、適切にやればノーダメージ余裕。なんか音ゲーか、……フロンティアやってる気分だ。)

 

 

ッ!!!!!

 

 

「………ッ!」

(へ?この距離でビームっすか!?あぁ困りますお客様、それは避けらr)

 

 

 

「………ネルギガンテ程では無い。」

(奴の頭にちゃんとした一撃見舞えば何とかなる。その為にダウンか、は少なくとも四足歩行にしないといけない。その為には兎に角傷をつけて隙を作ることだ、どんなに突拍子の無いやつでも、生きてるなら傷がつけば動きが鈍る。大丈夫心配するな、ネギはどの再生はない心配するな(自己暗示))

 

 

!?!?

 

 

 今まさに攻撃を放たんとした直前、不意に行動が、一瞬だけ遅れてしまう。そして、それを見逃すほど節穴ではない。

 

 

「………!」

(千載一遇!その右!もらったぁ!)

 

 

 右後ろ足の内側その付け根、胴体と脚を繋ぐその関節、普段は絶対に狙いないその絶対領域。それを正に穿って見せたのだ!

 

 

k……K…ッ……!!!!

 

 

 

 悲鳴と共に、その巨体を支えられなくなり、強制的に四足歩行へ移行する。いや、4足どころではない。崩れたバランスは最早復元不能。右を下に、左を上に、なすすべなくして倒れ込む。

 

 

「…終わりだ!」

(終わりなんだよぉ!!!ファ!?それは聞いてない!まずいどうしよう消し炭になる!……知るか!脳筋万歳!狩れ!屠れ!立つのは俺だ!」

 

 

 何もせずに倒れるなんてありえない。倒れた瞬間に溜めは終了、相手から顔に向かってくるのなら好都合、そのまま回避不可能な接射で一泡吹かせてやろう。

 

 

 この好機を逃すなんてありえない。覚悟も構えも既に準備万端、相手から向かってくるなら好都合、ブレスが何だ、その大口ぶち抜いて終わりにしてやる。

 

 

 

ーーーーッ"ッ"ッ"!!!!

 

 

「あ"あ"あ"ア"ァ“ァァァ"ア!!!!」

 

 

 

 真紅の口腔は艶かしく、鮮血と紅雷が吹き出し、禍々しい黒と混ざり合う。

 

 

 龍殺しので龍封の力。確かにそれは効くには効くが、決定打にはなりえないあくまでオマケ。しかし、それは状況によっては致命的になるのもまた事実。例えば今の様に、その能力が発現する最も不安定なその瞬間、無意識に行われる途方もなく繊細なそれを雑に激しく中断され、対抗の属性に掻き乱されればそれは、致命傷だ。

 

 

ーーーーッ"ッ"ッ"!!!!

 

 

「あ"あ"あ"ア"ァ“ァァァ"ア!!!!」

 

 

 力の奔流が身を焦がす。反発する属性が、制御不能なその力が、臨界点を超えて、炸裂した。

 

 

 

……

………

 

 

 

「…………。」

(根性様々。本当に…見守ってくれてありがとう。)

 

 

 装着された腕輪を見る。使い込まれているのか既に劣化が激しい。所有者に『根性』のスキルを発現させる不思議なお守り。幾度となく、勝手に斬れてしまう細い細い希望の糸を、確かに補強し続けたお守り。今立っていられるのも、こいつのおかげだ。

 

 

「…………心配は、されなくなったのか。」

(まあ、確かにクソガキだったな、不本意ながらも。)

 

 

 仄かに光を宿していた水晶はすでに暗く、ふと触れれば、砕け散ってしまった。

 

 

「………終わったのか?」

(………。問題は……祖龍、やったか?……ごめんこれ思いっきしフラグだわ、撤回求ム繰り返す撤回求ム。)

 

 

 恐る恐る倒れ込む祖龍を見る。

 

 

…………

 

 

「…………。……満足したか。」

(ほら動き出したよ、え?これやり直し?自慢じゃないけど今立ってるの奇跡だからね?本当に、今武器持ってるけど持ってるだけでこれ今ただのカカシ状態だから本当にクエスト完了って事にして!頼むから撃退判定でどっか行って!そして依頼者をボコボコに……ハンターだから一般に手上げられんな……ん?武器が駄目だったけ?………何言ってるの?俺もお前も。)

 

 

 

……

 

 

 

「……依頼は、完了だ。」

(ん?そりゃそうしたいけど、俺にその決定権あるの?絶対ないやろ。どうせこいつも今すぐ立ち上がって第3ラウンドなんでしょ?)

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 負けた。完膚なきまでに叩きのめされた。この我が、だ。奢っていた訳ではない。本気だった。本気の攻撃を、しかし涼しげに容易いと言った様に悉く外していった。攻撃回数は我の方が上。攻めているのも我、先に行動しているのも全て我。

 

 

 なのに、なのになのになのになのに、なぜ?傷を負うのは我、情けない声を上げるのは我、驚くのは我、奴は余裕で我は常に追い詰められている。そして何より、今この場で伏せているのは他でもない我。何故?何故?何故?何故?

 

 

「……満足したか。」

 

 

 まんぞく?満足。あぁ、満足だ。これ以上に無いほどに、此処まで叩きのめされては、認めざる負えない。我はどこぞの紅いミラボレアスとは違う。この現実を否定するのは、我を否定するのと同義。

 

 ………だから、討たれるならばこれ以上にふさわしきものもいない。普通の武器では我を殺せない。ただその剣その刃、【龍】を殺すそれならば、我であってもまた例外では無いだろう。

 

 

「依頼は、完了だ。」

 

 

 ……なにを、言っている?これ以上に無いこの好機を!?我を討つ事が何を示しているのか!分かっているのか!?我はミラボレアス。ミラボレアスとは何を表すのか!人間にとってどれほどの意味を持つ言葉なのかを!

 

 

「俺はやるべき事が山程ある。」

 

 

 ……それは……。

 

 

「知るべき事が山程ある。」 

 

 

 …………知る…。

 

 

「俺は依頼者に、文句を言わなければならない。」

 

 

 ???何を?我に?

 

 

「帰る。だから、帰れ。」

 

 

 ………帰る。そうか…我は、まだこの世界の事を、何も知らないのか………。

 

 

 

 

 

 この英雄的出来事は、決して、後世に語り継がれることは無い。

 

 誰の何処の記録にも残らず、時代の闇に葬られるべき事象として忘れられる。

 

 人類未到の、存在しない存在に挑むなど、まして存在しない生物の討伐など、あるわけが無いのだ。

 

 だからこれまで通り、伝説は伝説に、御伽話は御伽噺として、これからも永久に、語り継がれ…………いや、あるいは、御伽話が、伝説が、蘇るその瞬間が来る、運命のその日まで。

 

 それは【運命の戦争】今や本気で信じるものはいない御伽話の怪物。

 それは『ミラボレアス』古くより伝わる忌まわしき言葉。

 

 初源の運命はまだ何も知らない。

 

 

 

 メインターゲットを達成しました!

 

 拠点へと帰還します。

 

 

 ???の達成 1/1

 

 力尽きた回数 0/1

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「凄いにゃ!本当に生還しちゃうにゃんて!…いや!信じてましたにゃよ!?ただ、心配なものは心配なもので!……そのにゃにがあっ……やっぱりいいにゃ寿命が何だか縮みそうにゃ。」

 

 

 やはり人間より鋭いのか、何かを察知して言葉を切り上げる。

 

 

「長旅になるにゃ。安全運転でしっかり休むにゃ。」

 

 

「………。」

(頼むよ、やっぱり和むなぁ、流石モンハンのマスコット。)

 

 

 竜車に揺られて帰路に着く、英雄様の凱旋だ。

 

 

 

……

………

 

 

 

「ハンター様!"私達の家"で待っているつもりでしたが、その!いても立ってもいられず!あぁ、帰って来てくださり、ありがとうございます……。」

 

 

 彼女も無意識なのだろう。此方を認めた途端にハンターの胸に飛び込んだ。一方のハンターはといえば、確かに大怪我はしたものの、最後の爆発を除けばかすり傷なので、大丈夫と言えば大丈夫だった。

 

 

「………飯は。」

(おっふ、おおお、ほほほほほ、んんんんん。スゥ、えっえっえっ……ナイス俺!意味不明だけどナイス!いやきつい!Dの者だから……。)

 

 

 中身は大丈夫では無い様だ。自分のファインプレーにより難を逃れる。

 

 

「あっ…あっあっあっあっあっあっあっあっあっ、すみません!?あっあっご飯忘れ!いや、抱きついてしまったあっあっご飯「シナラ。」はい!……材料を、買ってきます。」

 

 

 あっbotと化してしまったシナラを軌道修正しつつ、家に帰る。ギルドへの報告は明日、落ち着いてからで良いと言われているためお言葉に甘えたのだ。

 

 

 

……

………

 

 

 

「………。」

(報告どうしようかな、これ言っていい奴?禁忌でしょ?大丈夫?俺暗殺されない?あと地味に防具修繕必須なの辛い。)

 

 

 

 今後の予定を練りつつドアノブに手を掛けたその瞬間、彼の有りとあらゆる感覚が激しい警笛を鳴らし始めた!

 

「……ッ!」

(いる!?予感とかじゃない何がとかは分からんが兎に角「確実に居る」。どうする?開けるのか?)

 

 

 圧倒的な既視感。言い様な無い漠然とした不安に駆られ、恐る恐る扉を開ける。

 

 

「久しぶりですね!私の英雄s」

 

 

ガチャンッ!!!

 

 

「…………。」

(?????)

 

 

 脳が理解を拒むとはこの事か、ドアノブに手をかけたままフリーズをかましてしまう。

 

 

「なにをするのじゃあ!!折角出迎えてやったというのに!この不届きものが!」

 

 

 今度は彼方からドアを開け、目にも留まらぬ早業でハンターを自宅へと引き込んでいく。

 

 

「おっほん、改めて、久しぶりね、私の英雄様。」

 

 

「………?。」

(えぇ……、帰れとは言ったけど、此処いつの間に家判定喰らってたんですか?あと口調、どしたん?)

 

 

「何よ、私が居るのは迷惑とでも?……あっそうそう口調なんだけど、人間的にこの肉体年齢であの口調はチグハグらしいようね、私自身、そんな大した奴じゃ無い気がしたから余計にバカらしくなっちゃって、暫くは慣れないでしょうけど、まぁ、慣れるのは得意でしょ?人間って。」

 

 

「……お前が、大した事がない?」

(ほら驚愕してんじゃん。じゃあ俺は?ウンカス以下ですか?」

 

 

「あら、持ち上げてくれるのは悪い気しないけど、なんか私、生きてきた割には何も知らないし、その癖して達観してる自分が滑稽に見えちゃったのよ。だ、か、ら、貴方について行って、この世界についてもっと詳しく知りたいの。貴方と居るのは、退屈しないから。………その、駄目?」

 

 

「………。」

(ぐばっ!?何だその上目遣いは!?落ち着け!コイツは俺を殺そうとしたサイコパスだ!可愛い。)

 

 

「それに、私はもう貴方のものよ、何だってしてあげる。望むなら交b」

 

 

待ちなさいエロトカゲ!

 

 

「……………は?

 

 

 突然の乱入者、買い物から帰ったシナラが、顔を赤らめながら息を荒くしてルーツに詰め寄る。

 

 

「許しません許しません!人間様の領域にトカゲが入り込んでおりますハンター様!即刻駆除を申し上げます。」

 

 

「卑しいメスが!我がトカゲで駆除だと!?おまえ、消されたいのか?」

 

 

「…………。」

(口調戻ってて草。いや笑い事じゃねえょ。)

 

 

 どう足掻いてもいつも通り。

 

 これは特異なただの一般ハンターと、特異で希少で盲信的なG級ハンターと、英雄に脳を焼かれた禁忌の古龍が紡ぐ、正直で美しく、過酷で残酷な自然を生き抜く不敗の物語。

 

 

 

 

 

 

「うぷぷっ、事後処理は何とかしときますから、安心しておいてくださいね、ご友人。」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

ハンター君

 ノーダメージ縛りとか辞めたくなりますよ人生。

 

シナラ

 破廉恥!エッチなのは死刑!でも…わ!………死刑!

 

ルーツ

 戦闘は殆どゴリ押しか相手が逃げるだけなので実はまともな戦闘経験はあまり無い。なのでゲームで戦うとかなりメリハリがあって素直。フレーム回避が楽しいモンスターになります。

 

ジード

 有能。

 

補足

 

ガルルガ

 ガルルガも楽しんでるから怒ってません。ガルルガ族特有の怒ると冷静になるというスキルは発動してない。

 

ネギとルーツ

 ネギはルーツの事を馬鹿でかい飯としか認識していません。勝てるとかそう言う事は何も考えてないです。取り敢えず齧り付くことだけ考えてるバカです。出なきゃゾラや、ストーリーズ2ラスボスに殴りかかったりしません。

 

 

 

 




 此処まで読んで頂きありがとうございます。一旦此処で限りとさせて頂きます。本当に感謝しかありません。

 終わらせ方自体、これ投稿する前から三つくらい決めてたんですけど、この形で落ち着きました。俺たちの戦いはこれからだ!なのは許して下さい何でもしません!

 驚いたのが本当にキャラクターって生えてくるんですね。バゼルもガルルガも猫も勝手に生えてました。ルーツは言わずもがな、シナラも主人公が古龍倒せると思ってないので(え?)お助けとして出す予定でしたが、いつのまにか主人公に脳を焼かれてました。

 一応、この後のストーリー考えてはいます。しかし、それをまた完結させる自信が無い……。

 兎も角、この作品をお楽しみ頂けたのなら嬉しいですね。


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