Rocket Queen (酢味噌ニアン博物館)
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出会い
第1話 Welcome to the jungle


これはまだ俺が駆け出しのバンドマンで
ガキだった頃だ。


そう、今じゃ気が遠くなる程の昔話。


青いラインの入った快速急行に1時間ほど
揺られて着くその街は、

一度ステージに出てしまえばガキの頃憧れていた
クレイジーなギターヒーローや
ロックスターの如く何者にでもなれるし、

ある程度名声を得れば欲しい物は大体手に入る
まるで80'sのアメリカのSunset stripのような
金と欲望に塗れたジャングルのような街だった。

その名も「下北沢」。

俺は17にしてギターを肩に担ぎ
地下二階の駅のホームへ
降り、イヤホンから流れる甲高い
おどろおどろしいハイトーンの曲と共に
キャリーバッグを引きジャングルの奥へと
足を踏み入れた。



 

この日俺がここに来た理由_

 

それは下北沢にあるライブハウスで開催される

全国津々浦々の実力派の高校生バンド達の

即SOLDOUTするような大きめの

対バンイベントに出る為で

俺たちのバンドはその顔ぶれの中では

一番の新参者だった。

 

そして持ってる武器は手数の多い凄腕ドラマーと

自分のギターテクニックを信じるのと個人的に傑作といえるような自信作の曲でくんだセットリストくらいで

 

そんな僅かな武器を手に2番目の出演枠で出る

予定だった俺たちのバンドは

出演者の顔合わせの時を待っていた

 

すると俺はあることに気づいた

「財布がない_。」

 

そのときキャリーバッグから機材を出したりと準備をしていた俺はしまっておいたはずの財布が無いことに気づく。

 

「とりあえず来た道を戻って交番に財布あるか聞いてみよう。」

 

そして元来た道を戻り探したものの見つからなかったので駅前の交番に行くことにした。

 

そして交番につくと先に来ていた二人組の同い年くらいの女子が中にいて何やら警官と話しているみたいだった。

 

話を聞いていると、ライブに行く途中にどうやら"財布"を拾ったらしい。

 

俺はハッとなってそこにいた青い髪の彼女と黄色のサイドテールの彼女らに「すいません。その財布って茶色の財布ですか?」と聞いた。

 

するとサイドテールの彼女が

「そう!ひょっとして君のだったりした?」と言ってきたので、「多分そうかもしれない」と

答えて、警官に名前など諸々の情報を言い、

中身の身分証を確認してもらったところ

やはり自分のだったので、彼女らに礼を言い

先に用事があるそうなので行ってもらうことにした。

 

そうして紛失したものに関する書類を書き終え

一難あったものの、顔合わせの時間には間に合わなかったが、俺はなんとかして

ライブハウスに戻ることが出来た。

 

戻る頃にはイベントがすでに始まっていて1組目のライブが始まる前だった。

 

「ドラム全体でください」

PAの人の声とともに地鳴りのようなドラムの音が鳴り響き、次の演者である俺らが準備している間に前に出てるバンドのリハーサルが始まる。

そうしている内に一通りドラム、ベース、ギターの音量調整を終えたのだろう。

 

4カウントと共に演奏が始まったのが

ステージ裏の控え室にも聞こえた。

 

ドア越しに聞こえるバンドの演奏と観客の声で

相当盛り上がっているのは見なくても理解るほどだったし

 

そんな客を盛り上げれるようなバンドの次に新参者の俺たちが出るとかいうまるで初めて戦に出る初陣の若武者のような不安感と高揚感に駆られていた。

 

そして前のバンドの出番が終わり彼らに

控え室で互いの健闘を称えねぎらいの言葉をかけ

とうとう俺たちの出番が回ってきてしまった。

 

多分今、客はステージが暗転したライブハウスの中で闇と少しだけ香る壁に染み付いたタバコと香水のあまりに官能的な匂いに包まているのだろう。

 

そんな不安を紛らわせる為に

しょうもない思考を巡らせてつつ

ステージに上がり事務的にリハーサルを熟して、

一旦控え室に戻りステージが再び暗転するのを待った。

 

その刹那、ステージの照明が点灯し"スモーク"という名の狼煙が上がる。

いよいよ俺たちのバンド scream of revolverの

戦いが幕を開けた。

 

ギターのタッピングとドラムのかき回しが爆音で

とんでもないインパクトのあるサウンドを怪獣の鳴き声のように鳴らしまくった。

 

そしてカバー曲の一曲目から始まり

最後の曲の手前、セットリストでギターソロとなっている。

 

ドラムのフィルイン、そして鳴り響く歪に歪んた5弦7Fの

ビブラート。

 

全身全霊でやったギターソロを奏で終え客席の方を見る。

 

すると彼らは狂ったように歓声をあげ始め会場の

ボルテージは最高潮に達した。

 

でもそんな観客たちと自分は違うんだと言わんばかりに

"青い髪で琥珀色の目をしたクールな女"がギターソロを終えた自分の方をマジマジと見ていた。

 

俺はそんな彼女と目線が合い「たしかさっきの…」と俺の脳裏によぎるが、最後の曲を演奏するため今は気にしないことにした。

 

最後の曲が終わり、思いのほかライブ自体が上手くいき、

観客たちは盛大な拍手で出番を終えた俺たちを送り出してくれ、まだバンドを初めて日にちが浅いとはいえ

いい感触でスタートを切ることができた。

 

 

無事初めてのライブを終え、フロントにあるドリンクスペースのカウンター椅子に腰を掛けさっきのギターソロのときのことをふと思い出した。

 

すると丁度さっきの琥珀色の目をした青い髪染めたの彼女が隣に座ってきて

「君、さっきのバンドのギターの人だよね。すごい上手かったよ。」とシルクのような心地の良い声で話しかけてきた。

 

「ありがとう。君の名前は?」

褒めてくれた礼と気になったので彼女の名前について

俺は問いかけた。

 

すると彼女は

「人に名前聞くときは自分から言うものでしょ?」と

ごもっともな返しをされた。

 

「あぁごめんね。俺の名前は北条明也。scream of revolverでギターやってるよ。そっちは?」

 

「私は山田リョウ。はむきたすでベーシストやってる。」

と教えてくれた。

 

はむきたす、もとい

"ざ・はむきたす"といえば同じイベントにトリで出演する結構注目度の高いバンドで、彼女はそこのバンドのベースだった。

 

まさか名前自体は聞いていたがこの目の前にいる琥珀色の目をしたクールな女が山田リョウだったとは思いもしなかった。そしてこれが俺と彼女の出会いだった。

 

「北条って言いにくいからさ、ジョーって呼んでもいい?」と言ってきた。

 

「別にいいよ。そっちはなんて呼べばいい?」

 

「リョウでいいよ。ジョーは普段何聞くの?洋楽?」

 

「そうだよ。結構洋楽聞くよ。60'sのロックからLAメタルやらプログレやらサイケ、ブリティッシュPOPも聞くし他にもテクノポップとかサウジアラビアの民族音楽とか色んなやつ幅広く聞いてる。」

 

どうやら彼女も同じような音楽ジャンルが好きらしく意気投合し、このカウンターで彼女の出番が来るまで普段聞く

音楽や音楽を始めたきっかけとか作曲のインスピレーション元とか色々一緒に語りあった。

 

しばらくしてそんな他愛もない会話をしていたら

すごい琥珀色の目をした彼女とは対象的な明るい元気な声で

「リョウ〜!探したよ!ここにいたんだ!」と

 

交番でリョウの隣りにいたサイドテールの彼女が

 

「そういえば君さっき交番に居た如何にもにもバンドやってそうな人だよね!すごい話し込んでたけど、リョウと知り合いだったの?」と聞いてきた。

 

するとリョウは

 

「いや、さっき知り合ったばっかり。でも凄くギターが上手いし音楽の趣味とか色々似てるから」

 

とサイドテールの彼女に淡々と説明していた。

 

そして納得したのかその向日葵みたいな彼女も

「はじめまして!私、伊知地虹夏!下北沢高校1年でリョウとは同じクラスで友達だよ!よろしくね!虹夏って呼んでいいよ!」と丁寧に自己紹介してくれた。

 

流石に自分からも名乗らないのは礼儀に欠けるので

さっきと同じように紹介した。

 

すると虹夏は「でも珍しいねぇ。リョウが初対面の人とこんな意気投合するなんて滅多にないよ?ひょっとして君も中々の変人…?」というとリョウは

 

「嬉しくないし//」と何故か微妙に照れつつ喜んでた。

やっぱリョウは変人なのかもしれないしそんな彼女と意気投合している自分もそうなのかもしれないと色々怪しくなってきた…

 

それから数時間彼女らとカウンターでドリンクを飲んでは

喋り、タイムラインでは、はむきたすの出番はまだ全然先なので下北沢のカレー屋に昼を食べに行ったりと会って数時間なのにとても過ごしやすく心地いい時間だった。

 

日が暮れはじめて、街頭の明かりがつく頃

はむきたすの出番が近いのでライブハウスに戻ってきた。

 

するとリョウが

「私達のライブ良かったらだけどジョーも見てて」というので

俺は虹夏と客席側に行き片手にオレンジジュースを持ちライブを最前列で見ることにした。

 

#2へ続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第2話 Welcome to the jungle… リョウ編


あの日、私は
はむきたす のライブのために
地元である下北沢のライブハウスに出向いていた。
家からは数十分でつくような近場だ。

今日はライブを見に来てくれている友人の虹夏と
駅前で待ち合わせをしてから線路跡の
この見慣れた街を歩いていると、ふと
ある一つの茶色い財布が落ちているのが見えた。

この一つの拾い物がこれからの私の人生に大きく影響を与えた
偉大な友、そして私の唯一愛した男との出会いだった。



 

 

「ねぇ虹夏、あの財布さ」

 

「リョウ!中身盗っちゃ駄目だからね!」

 

「盗らないけど、どうする?交番に届ける?」

 

こういう風に困ったときは虹夏に聞くのが言いと古事記にも書いてあるのだ_

 

「届けたほうがいいとは思うけど…リョウの方はライブの時間は大丈夫なの?」

 

「バンドのみんなにロインで財布を交番に届けてくるから遅れるって連絡してみる。」

 

「まぁ大丈夫そうならまあいいか…」

 

と言うふうにちょっとした会議して駅前の交番に届けに行くことにした。

 

「すいません、落とし物なんですけど…」と

駐在していた警官さんに財布を渡し諸々の書類を書いて

交番をあとにしようとしたその時、

 

「すいません!財布の落とし物探してるんですけど…!」と

後ろから男の声が聞こえた。

 

振り返るとそこには、いかにもバンドマンというような

格好の同い年くらいの男がいた。そう彼だ。

北条 明也_。

これが彼との最初の出会いだった。

 

すると、その彼がちょうど私達の会話をたまたま聞き入れてたのか

「すいません。その財布って茶色の財布でしたか?」と聞いてきた。

 

 それに反応した虹夏が

「そう!ひょっとして君のだったりした?」と聞き返し「多分そうかもしれない」と彼は答えた

 

とりあえず彼には警官と住所などの身の上の情報を確かめてもらい、私達はライブ会場へ行くために交番を後にした。

 

そうして、そんな一難もありつつ

なんとか集合時間前にライブ会場に辿り着けたので、

私達のバンドが無事時間通りに集まることができた。

一方虹夏はここから近い自宅に荷物を起きに行ってから

後でOPENする時間になったら来るとのことだそうな。

 

「ダー山!遅かったから心配したよ!無事届けれた?」と

うちのメンバーが聞いてきたので

「ごめん遅くなった、ちゃんとパクって来てないから安心して」

「いやそういうのじゃなくて…(笑)」

 

とちょっとした駄弁を1Fのバーカウンターの前でしていたら

このイベントに出る各バンドの顔合わせ兼打ち合わせが始まった。

私は、この見ず知らずの人と顔合わせをする時間が

少しだけ苦手だった。

 

それからしばらくして、1組目のバンドがリハーサルを始める頃

1階の受付の前の入り口のドアが空いた。

 

「遅れてすまん!」とさっき聞いた覚えのある声が聞こえた。

 

そして、なんとそこに立って居たのはさっきの彼だった。

 

そんな彼は彼のバンドメンバーに遅れた事を侘びていた。

 

そして次が出番なのか、そんな事は気にすんなと自分がやったことなのに、そそくさと地下にあるステージへ向かう階段を降りていった。

 

そんな様子を見ていた私は、その彼の不思議なキャラクター性に

惹かれて、興味本位で彼のライブを見ることにした。

 

しばらくして、一組目のバンドの出番が終わり

彼らのリハーサルが始まった。

 

「ドラム全体でください」

 

PAの人の声とともに地鳴りのようなドラムの音が鳴り響き、彼のバンドのリハーサルが始まる。

 

そうしている内に一通りドラム、ベース、ギターの音量調整を終え、4カウントと共に彼ら演奏が始まった。

 

私はその刹那、今まで感じ得なかった衝撃が走り、

体に電撃を受けたが如くその繰り出される音に夢中になった。

 

ロック式トレモロのブリッジを活かしたアーミングを

駆使したスクウィール、アームダウン。

両手の指先から編み出させれる繊細で高速に動く

魔法のハンマーのようなタッピング。

日本人離れした洋楽的かつブルージーなフレーズのアプローチ。

 

私には、そんな個性的な音を超絶な技でステージの上から

私達客にギターソロを降り注がせる彼は

今はもう死んでいるに等しかった私の好きなRockみたいな

オールドなジャンルたちの新しい息吹のように私の目には写っていたのだった。

 

「す…凄い、ホンモノの"ギターヒーロー"だ…」

 

私は思わず普段言わないような言葉を驚きのあまり

口に出してしまった。

 

自分で言うのもあれかもだけど

はむきたすだって高校生バンドの中じゃ上澄みの方なのに

彼初めてのライブってMCで言ってたのにこの完成度と

盛り上がり具合…

 

「ひょっとして物凄い相手と戦うことになるのか…?」

と再び口走ってしまった。

 

 

そうして彼のギターソロが終わり、その音に聞き惚れていた

私は彼の方をずっと見ていた。すると、ふと彼と目線が合ってしまいお互いに驚いた表情をしてしまった。向こうも私を気づいたのだろう。

 

そして軽く最後の曲の紹介を終えた彼のバンドのボーカルが合図を出し4カウントで再び曲が始まった。

 

最後の曲は海外の有名バンドの名曲をカバーで

観客たちはとても大盛り上がりでボルテージは最高潮で

最初のライブなのに大成功と言える終わり方だったと

感じてしまった。

 

そうして最後の曲が終わり客たちは盛大な拍手で彼らを送り出していた。

 

私は思わず感動してしまったので平然を装いつつも

声をかけて見ることにした。

 

無事初めてのライブを終えた彼らは、フロントにあるドリンクスペースに溜まっていたが肝心の彼はというと

カウンター椅子に腰を掛けていたので隣に座り

 

「君、さっきのバンドのギターの人だよね。すごい上手かったよ。」と話しかけた。

 

 すると彼はニコッと笑い

 

「ありがとう!君の名前は?」

 

と言われたものの男の人と話すのは慣れないから

なぜか照れくさく感じてしまい

 

「人に名前聞くときは自分から言うものでしょ?」と

 

感じ悪い答え方をしてしまった。

 

すると彼再びニコッと笑い

 

 「あぁごめんね。俺の名前は北条明也。scream of revolverでギターやってるよ。そっちは?」

 

と素直に受け入れてくれたので

私も名乗らないのは気が引けるから 

 

「私は山田リョウ。はむきたすでベーシストやってる。」と

 

しっかり答えた

 

 私はそんな素直になれない私を素直に受け入れてくれている彼をもっと知りたくなって

 

また柄にもなく

 

「北条って言いにくいからさ、ジョーって呼んでもいい?」と

彼に質問した。

 

 すると彼は

 

「別にいいよ。そっちはなんて呼べばいい?」と

いうので私は自分の名前を教え、好きな音楽について聞いてみることした。

 

「リョウでいいよ。ジョーは普段何聞くの?洋楽?」

 

 

 

「そうだよ。結構洋楽聞くよ。60'sのロックからLAメタルやらプログレやらサイケ、ブリティッシュPOPも聞くし他にもテクノポップとかサウジアラビアの民族音楽とか色んなやつ幅広く聞いてる。」

 

 

 

どうやら彼も同じような音楽ジャンルが好きらしく完全に意気投合したので、

このカウンターで私の出番が来るまで普段聞く

音楽や音楽を始めたきっかけとか作曲のインスピレーション元とか色々一緒に語りあった。

 

 

 

しばらくしてそんな他愛もない会話をしていたら

 

すごい琥珀色の目をした彼女とは対象的な明るい元気な声で

 

「リョウ〜!探したよ!ここにいたんだ!」と

 

 

 

交番で財布を届けてから後で合流すると約束していた虹夏が

いつの間にか来ていた。

 

すると虹夏は彼に

 

 

「そういえば君さっき交番に居た如何にもにもバンドやってそうな人だよね!すごい話し込んでたけど、リョウと知り合いだったの?」と

 

彼聞いていたので

 

 

 「いや、さっき知り合ったばっかり。でも凄くギターが上手いし音楽の趣味とか色々似てるから」と

 

補足説明をしていた。

 

そして納得したのか虹夏までも

 

「はじめまして!私、伊知地虹夏!下北沢高校1年でリョウとは同じクラスで友達だよ!よろしくね!虹夏って呼んでいいよ!」と丁寧に自己紹介を始めた。

 

それからしばらく話していると虹夏が

 

「でも珍しいねぇ。リョウが初対面の人とこんな意気投合するなんて滅多にないよ?ひょっとして君も中々の変人…?」

 

 「嬉しくないし//」といつもの癖で照れつつ喜んでしまった。

 

 

 それから数時間彼と虹夏とカウンターでドリンクを飲んでは

喋り、タイムラインでは、はむきたすの出番はまだ全然先なので下北沢のカレー屋に昼を食べに行ったりと会って数時間なのにとても過ごしやすく心地いい時間だった。

 

 

 

日が暮れはじめて、街頭の明かりがつく頃

 

はむきたすの出番が近いのでライブハウスに戻ってきた。

 

 

私はそんな秘めたる才能を持った彼に今の私の最大の力を見てもらいたいのとライバルとして挑戦をしたくなり

 

「よかったライブ見てよ」とお願いした。

 

するとまた彼はニコッと笑って

 

「良いよ。ちゃんと見とく」と言って

地下への階段を再び降りていった

 

 

#4へ続く

 

 

 

 

 

 

 



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第3話 青

手にしたドリンクを片手に再び暗転したステージに目を向けていると、SEが流れ始め

しばらくしてステージ脇のドアが開くのが見えた。

すると虹夏が「リョウが来るよ〜!」と

タダでさえ爆音で流れるSEで何もあのバンドの音以外聞こえないのに頑張って聞こえるように教えてくれてなんとも健気にやってくれるので

なんか申し訳なかった。

 

それからリョウがステージに出てきたのは

ホント数十秒のウチだった。

 

そう、ざ・はむきたすの登場だ

 

はむきたすといえば

この若手の高校生バンドならある程度知られているような連中なのだが

その中でもリョウは他メンバーを埋もれさせるような妖麗さと儚げな雰囲気とカリスマ性に満ちていた。

 

4カウントで彼女らの曲が始まり

思わず聞き入ってしまった。

歌詞は高校生らしく青さを感じるが

そこに彼女らのうちに秘めたパワーを感じて

いつの間にかそんな青さの中に居るのに

淡々とクールに弾きこなすリョウの姿に虜になっていた。

 

(さっきまで一緒に話してたやつとは思えない…!)と心のなかで呟いていた。

 

そうこうして聞き入っているうちに最後の曲になってしまった。

そして演奏が終わり思わずデカい拍手と声援を送ってしまった。

 

するとリョウはとても驚いた顔したが

拍手と声の主が俺だと分かった瞬間ニヤリと

「してやったぜ」と言わんばかりの表情を見せた。

 

ステージでクールに弾いてるときはかっこいいんだけどなぁと思いながら笑ってしまった。

 

リョウの出番が終わったので

さっきの雑談の続きでもしようかと虹夏と

再びバーカウンターの方へ行った。

 

するとリョウと他の はむきたすのメンバーが

バーカウンターのテーブルを囲んでいたので

軽く皆に挨拶を済ませて、あっちの会話が終わるまで虹夏と二人で好きな音楽ジャンルの話しながらのリョウが来るのを待った。

 

しばらくして向こうにいる彼女らの方からあるワードが聞こえてきた

「今の路線よりもっと曲と歌詞を売れ線に寄せていこうと思うんだよね」と。

 

俺はその瞬間、

(それは多分彼女らにとってのアイデンティティの喪失になるし、

俺やリョウみたいなタイプにとってそれは

活動してても楽しいと感じられないのでは…?)と思ってリョウの方を見てみたら、頬杖をついて

浮かれない顔をしてた。

 

しばらくして話し合いが終わったらしく

リョウがこっちにきたので

「おつかれさん」と労いの言葉をかけた。

 

するとリョウは「ハァ…」と深くため息をついた。ついた理由はなんとなくさっき一緒に色々音楽に対する理念を語ったので分かっていた。

 

が、しかし次にリョウが口を開いた言葉は

予想を裏切るものだった。

 

「ごめん昼にカレー食べてお金ないからあとで近くのラーメン屋でチャーシュー麺奢って」

 

(あのさぁ…予想外過ぎるし心配して損したよ…

てかしれっと奢ってとか言われてるし…)と考えたけど

 

「リョウ!会って初日の人にラーメン奢って貰おうとしないの!」と虹夏がリョウに怒ったが

 

きっとため息をついた本音は違うし俺が考えたことの通りで

きっとブルーな気持ちなんだろうなと思ったから

 

虹夏を止めて俺は無言で首を横に振って

「いいんだよ」とジェスチャーした。

 

割と金自体は余裕があったので慰めも兼ねてリョウと虹夏にはラーメンを後で奢ってあげることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第4話 青 リョウ編

はむきたす崩壊の序曲


あれからしばらくして私達の前のバンドの出番がそろそろ終わる頃、私は舞台袖の控え室で肩からベースを下げメンバー達と

乗り気でもない円陣を組まされて

 

メンバーの一人が「今日もいつも通り頑張ろう!」と

口上を言い、それに呼応して

「おぉー」なんて柄でもないことをしていた。

 

そうして迫る時間を浪費しているうちに前のバンドのラストナンバーが終わり、ステージと繋がる控え室のドアが開き

暗転した空間の色と一緒に甘ったるい香水の匂いと煙草の匂いが

私を包むかのように、緊張で強張った体を突き刺してきた。

 

 

そう、遂に私達ざ・はむきたすの出番が来た。

 

事務的にいつも通りベースアンプとエフェクターのつまみをイジり、軽く音合わせをしてリハを済ませ

 

(怖くない…何も緊張することはない…)

 

そう心に言い聞かせ、ドラムとギターボーカルの私の3人で

合図を送り

4カウントで曲を始めた。

 

私は光が後ろから降り注ぐこの場所で

ただひたすらに私の世界に入り込み

無の境地との狭間で聞こえるドラムに合わせ

私の放つ音以外聞こえないほど集中していた。

 

ふと目を向けると私達の曲のビートに合わせてリズムに乗ってる虹夏とジョーがそこにいる

 

(さすがは我が友、よくぞ音を聞いてるな音を)

 

そんな風に二人を見ながら再び自分の世界に戻ることにした

 

そうして数曲こなし、いよいよラストナンバーになった。

 

するとうちのギタボが「ついこの間できた曲です!では聞いてください…」

と曲紹介をした。

 

そう…このライブの本当に少し前に出来た曲。そして私に初めて売れる為には?という重大な問題と挫折と絶望を与える原因となる、このバンドの崩壊の序曲となる曲だった。

 

そして、その忌々しい曲の演奏が終わりステージを降りようとしたその時、デカい拍手と声援が送られてきた。

 

私はその客からの"ウケの良さ"にとても驚いた。

そして私達のライブで終始拍手と声を上げていた主が

彼だと分かった瞬間ニヤリと

「してやったぜ」と笑ってみせた。

 

私達の出番が終わったので

さっきの雑談の続きでもしようかと虹夏と彼が来るのを

バーカウンターの前で先に待っていたら

 

メンバーの二人が「リョウ…ちょっといい?」と

机を囲み手招きをする。

 

何を言おうとしてるのか私には何となく察しがついた。

 

「さっきのライブのことなんだけどね、最後の曲あったでしょ?…」

 

「最初の2〜3曲に比べて最後の曲のほうが客のノリが良かったてしょ?」

 

「今の路線よりもっと曲と歌詞を売れ線に寄せていこうと思うんだよね」

 

「そう思ったんだけど、リョウはどう思う?」

 

案の定、そんな空虚なモノによってアイデンティティを失い

私の魂を空虚な"モノ"に売れと言われているような質問だった。

 

でも残念なことに人とコミュニケーションを取るのが苦手な私は

今まで彼女らと書いた私の好きだった

青臭い歌詞を一緒に奏でることが出来た

このバンドくらいしか寄りつけるところがなかった私は

本心とは裏腹に

 

「そうだね…そのほうが売れるならいいと思うよ」と

 

自分の心を押し殺して顔に出さず答えた。

 

そうして空虚な"モノ"の為にした会議は終わり

ふと外の方を見ると、ジョーと虹夏がいた

 

私はそんな空虚な"モノ"より、今は数少ない友人達を選ぼうと

彼らの方へ足を運んだ。

 

するとジョーと虹夏が

「おつかれさま」と優しく声を掛けてくれたので

 

 

そんな彼らの存在感に安心してしまって

 

「ハァ…」と

 

深いため息が出てしまった。

でも何故か本心を見せまいと強がってしまって

 

「ごめん昼にカレー食べてお金ないからあとで近くのラーメン屋でチャーシュー麺奢って」と

 

グスのようなお願いをしてしまった。

すると虹夏が

 

「リョウ!会って初日の人にラーメン奢って貰おうとしないの!」と

 

ごもっともなお叱りを受けてしまった。

けど、そんな虹夏を何故かジョーは首を横に振り

制止させた。

 

(あぁそうか、きっとジョーには私が今何を考えてたのかお見通しなんだろうな。)

 

 

 

#5へ続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第5話 あのバンド、このバンド。

そうしてライブイベントも終わり、出演者同士の交流も終わり

約束?通りリョウにラーメンを奢ってあげた

 

結局あの後、虹夏はどうなったかのかと言うと

 

「お姉ちゃんがそろそろ仕事が終わる頃なので

夕飯を作らなきゃ行けないから先に帰るね!またね〜!」

 

との事らしいので結局リョウと二人で行くことになった。

 

暖簾を潜り食券機で二人分の食券を買い、

カウントの内側にいるラーメン屋の大将らしき人に券を渡して

テーブル席で待つことにした。

 

しばらくして二人分のラーメンが出来て大将が

 

「へい、お待ちどおさま」とご丁寧にテーブルまで

持ってきてくれた

 

出来たてのラーメンは熱々でリョウは猫舌気味なのか

少し食べづらい様子で、口元まで運び「ふぅー」と吐息で

必死に冷ましていた。

 

ホントに腹減らしてたのか黙々とラーメンを啜るリョウに

俺は

 

「なぁ、さっきメンバーと話してたときのことだけどさ」

 

リョウは「んっ?」と麺をモグモグも口に含みながら反応する

 

「あれリョウの本心なんかじゃなかっただろ多分」と

俺はガラにもなくリョウに聞いてしまった。

 

「そうだけど…でもなんでそう思ったの?」とリョウは俺に質問を返してきた

 

「いや…なんでって言われてもなぁ」

 

「でも強いて理由をつけるなら、一番最後の曲あっただろ?」

 

「あれ、一番客のノリが良かったし他のメンバーもノリノリでやってたけど、リョウはあんまり楽しくなさそうだったからそう思った。」

 

するとリョウは図星だったのか少し驚いた表情を見せた。

 

「そうだよ。よく分かったね」

 

「実は私、あの曲好きじゃないんだ。」

 

「私、あのバンドの書く真っ直ぐな青臭い詩が好きなんだけど」

 

「それが最近急に売れ線ばっかり意識し始めて

私の好きだったバンドの個性的な部分が消えかけてるんだ」

 

「まるで時代の移り変わりに飲まれて消えてゆく昔のスピリットみたいにさ」

 

「だからあの曲は私が産んでしまった忌み子みたいなものだよ」

 

とリョウは真剣な面持ちで答えて

それから何か考えをまとめているのか

少しだけ言葉の間を開けて

 

「そういえばジョーの所の、このバンドは洋楽みたいでさ、英語で酒と金とSEXについて歌ってる事が多かったでしょ」

 

「でもそんな君のバンドは今の時代普通なら書かないしやらないようなことたくさん書いてたからさ」

 

「そんな個性的な"音楽"をするジョーのバンドを見て私さ、

少しだけ悔しかったし」

 

「君のバンドの曲と歌詞とか君の個性的なフレージングをするギタープレイとか見てて

格好良くてシびれたんだ」と

 

そういうふうにリョウは抱えていた劣等感と自分に対する憧憬を嬉しそうな反面なんだか悲しそうに、そして寂しそうな目をしながら語ってくれた。

 

そうして彼女の話を聞きながらラーメンを食べ終え

「ごちそうさまでした」と大将に礼をいい店を後にした。

 

#6へ続く

 

 



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第6話 終電

大将に礼を言ってラーメンを後にした。

 

そうしてふとスマホの時計を見ると23:30…

 

どうやら9時過ぎてから入店して2時間ほど経っていたらしい

 

(23:30?嘘だろ…確か今日の終電って22:54だったよな…)

 

俺は終電が出発して30分以上経ってからその恐ろしい事実に

気づいてしまった。

 

「やばい…終電逃した…」と

 

街頭の光と車のライト以外消えている暗闇で光々とする

文明の利器に残酷にも映される画面に目を向けながら、故郷に帰れない不安感に駆られていた。

 

すると、リョウが

 

「ねぇジョー終電逃したの?」

 

「良かったら家で泊まって行きなよ。

泊まるアテなんてどこにもないんでしょ?」と

 

相変わらずクールな表情で淡々と突拍子もないことを言う。

 

でもまぁなんというか…

ラーメン奢ってなんていうちゃっかりしてる女から発せられた

遭難した船の上から灯台のある安息地を見つけたときのような気持ちにさせる事を言われたのだから乗らない手はない

 

しかし…

 

「いいのか?でも…」と申し訳なさが先行してしまう。

 

するとリョウは

「いいよ。どうせジョーみたいな人が急に手出すとは思えないし、ラーメンと愚痴聞いてもらった例も兼ねて。あと

色々音楽とかについても喋り足りないから」と

 

俺が実はヘタレであるのを見透かしているような物言いで

リョウから泊まる許しを得た。

 

 

「そうは言うけど、リョウの家泊まらせてもらうって言ったってここから家近いん?」

 

「家、駅から歩いて数分だから結構近いよ」

 

「そうか、では有り難く泊まらせて頂くでごわす」

 

「宜しい、許して進ぜよう」と軽く茶番をし

 

茶沢通りを昼間きた方向とは逆に進み駅前の線路跡の方面を目指して歩いた。そして駅からしばらく歩いたところにオシャレなライトが並んだ歩道があり、そこを通って行くことになった。

俺はそんな街並みをぐるぐると見渡していて、

その様子を見たリョウが

 

「そういえばさ、ジョーは下北来る初めてだった?」と

 

聞いてきたので

 

「そうだよ。初めて来た街で

初めて財布落として、初めて終電逃して、

初めて女の家に止まる…」と

 

俺が言うと

 

「あ〜…それは散々だったね…ご愁傷様…」と

合掌された。

 

そしてその小洒落た路地を抜けて行くと住宅街に出た。

 

「家、もうすぐ着くから」と丁寧にも教えてくれた

 

しばらく歩いて行く大きな家の前でリョウの歩調が止まった

ふと表札を見てみると「YAMADA」と書いてある

 

「ジョー。我が居城に着いたよ」と

 

その家と言う名の居城に案内してくれた。

 

#7へ続く

 

 

 

 

 

 




こんにちは、こんばんは酢味噌ニアンです
しばらく(数日)の間多忙を極めますので次回以降から投稿頻度下がりますが
執筆の方は進めてますので気長にお待ち下さい。


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第8話 Girl gone bad(前編)

ライブのあと終電を逃した俺はリョウの家に止めてもらうことになって彼女の家まで行くことになった。


下北の駅前の線路あとからオシャレな道を通り抜けた俺達は

ある一軒の大きな邸宅に着いた。

するとリョウが

 

「ようこそ我が居城へ」と

 

その足を止めた先にあるデカイ彼女の家に招かれた。

 

そしてそのデカイ家の玄関からいざお邪魔しようとすると

玄関の奥の方から

 

「リョウちゃんおかえりなさい〜」と

 

リョウの母親と父親らしき人が玄関まで来て

 

リョウ「あ、お母さんただいま。ちょっと今日友達泊まっていくから」

 

母「あら、リョウちゃんお友達連れてくるなんて珍しいわね。」

 

ジョー「あ、お宅の娘さんにお世話になっております、

北条です」

 

と挨拶をし、リョウがお母さんに俺が泊まることになってしまった事情を説明する

 

リョウ「ジョー実は終電逃しちゃったみたいでさ」

 

父「それは大変だったね…良かったら北条くんもゆっくりして行ってね」

 

ジョー「すいません、ありがとうございます…」と

 

快く迎え入れてくれた上に

 

 

母「二人とも外寒かったでしょ、後でお風呂入っちゃいな」

 

父「ジョーくん着替えは来客用の貸してあげるからね」

 

ジョー「ホントですか!?ありがとうございます!」

 

と来客用の寝巻きまでも貸してもらえることになった。

 

ただ荷物が多いので一旦リョウの部屋にギターとエフェクターボードと衣装ケース一式を置かせてもらい、風呂の湯船が沸くまでしばらくやることが無さそうだったので、ボーッと知らない天井を見ているとリョウが

 

リョウ「ジョー先にお風呂使っていいよ。私は後で入るから」

 

ジョー「それでは行かせていだだきやす…!」

 

リョウ「宜しい、行って参れ」

 

 

と言うので先に風呂に行かせてもらうことにした。

 

頭から浴びるお湯は、

ライブ終わりの疲労が溜まり冬場の寒さで冷えた体を

暖かく包んでくれた。

 

ふとそんな風に湯の温かさに包まれながら

今日のライブの光景を思い出しては

まるでエサを食べたときに反芻を繰り返してエサを消化する

牛のようにガラにもなく思い出し笑いをしながら

その脳裏に焼き付いてしまった光景を咀嚼する。

 

ただ、そんな傍から見ると気持ち悪い上に薄気味悪い

おかしなことをしてリョウやご両親たちにこれ以上迷惑かけるのも申し訳なかったので素早くタオルで体を拭き上げ

貸してもらっている寝間着に着換え、

自分の荷物のおいてある2階のリョウの部屋へ戻る。

 

ジョー「ごめん待たせた、風呂貸してくれてありがとう。外寒かったからホント助かったよ」

 

 

リョウ「ん、じゃあ私風呂行ってくるね。なんか暇だったらそこにあるCDとレコード掛けてていいよ。それかギターでも弾いて待ってて」

 

 

ジョー「ありがとう!恩に着るよ」

 

 

リョウ「そのくらい大丈夫、気にしないで使っていいよ」

「それじゃ行ってくる」

 

ジョー「おう、いってら」

 

 

とリョウが風呂に行っている間に

本棚一杯にある、まるでレコードショップのようなCDの壁から

俺の好きな洋楽のバンドの曲を探す。

 

「Never MindかAppetite for distractionが良いな…それか

1984。」

 

この量のCDの中からそれらのアルバムを見つけるなんて

至難の業であった。

 

ジョー「1984 …1984…どこだ…?あった!」

 

なんとかして一番好きなアルバムである1984をあの数多とあるCDの中から

見つけ出し早速ぱっと見高そうなオーディオ機器で1984のアルバムをかけてみる。

 

するとシンセ独特の音からなる雰囲気で始まる1曲目と

BPM128のポップな曲たちが、リョウの洒落たセンスのある部屋を

包み始めた…

 

(後編につづく)

 




こんにちは、こんばんは酢味噌ニアンです
1週間くらいリアルが多忙でして、
しばらく投稿してなかったので
またボチボチRocket Queenの連載を再開していきます


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第8話 Girl gone bad(後編)

シンセの音が鳴り止み、激しいタッピングのイントロの曲やらブルージーでロックなリフな曲も終わる頃

ドア越しに誰かが来る足音と気配がした。

 

すると、そのドアが開いて風呂上がりの濡髪になったリョウがそこに立っていて、さっきとは違い何か少しだけ妖艶さがあった。

 

リョウ「ジョー戻ったよ」

 

ジョー「おかえりやで」

 

リョウ「1984聞いてるの?渋いね」

 

ジョー「そうそう、一番好きなアルバムなんよね」

 

リョウ「いいね、私もそれ好き。確かそういう系なら

Appetite for distractionとかDr feel goodとかNever mindも探したらあると思うよ」

 

ジョー「これ聞き終わったら探してみるよ」

 

リョウ「でも今どき、ジョーみたいにそういう曲聞く人って珍しいよね」

「ジョーは何で80'sの音楽が好きになったの?」

 

とリョウが今どきLAメタルとかいう現代の音楽しか聞かない層からしたら白亜紀の化石扱いされるような曲を聞いてる事を凄く不思議がって俺にそれが好きな理由を聞いてきた。

 

ジョー「なんでって言われてもなぁ…う〜ん…」

 

リョウ「理由とかは別にない感じなの?」

 

ジョー「ちょっと今頑張って言語化してる(笑)」

 

リョウ「そっか、では3分間待ってやる」

 

とムスカみたいなことを言うリョウに3分だけ猶予をもらって

その理由を探してみた。

 

ジョー「OK、もう言語化できたから大丈夫」

 

リョウ「では、お聞かせ願おう」

 

ジョー「多分ね俺、単純にあんまり今流行りの曲が好きじゃないんだと思う」

 

リョウ「なんで好きじゃないの?」

 

「俺的な感想だけど、なんかどれも同じような恋愛ソングの歌詞と曲調だし、聞いてて面白くない。かつてキッズ俺に電撃を走らせてくれた

Rock n Rollの魂を感じない、つまりアーティストとしての個性を感じられないんだ」

 

「なるほど、でもなんかジョーの言いたいこと分かる気がする」

 

とリョウはベッドに腰掛けて腕を組んで頷く。

 

リョウ

「私さ、さっきラーメン食べてるときにも言ったけど

はむきたすの青臭い歌詞が好きだったんだ。」

 

リョウ

「でも最近その恋愛ソングとか失恋ソングみたいな

歌詞と曲ばっかり書くから

前みたいに、あの自分たちの不平不満とか率直な思いを乗せて頃は個性的だったと思うけど、今は聞いてたり見てたりしてても

売れ線というか売れる曲ばっかり作ることを意識しすぎてて、つまらなくなっちゃったんだ。」

 

「でも売れようとして努力するのは大事な事だから分かるんだけど、でもそれで大衆に向けて受けることしか言わないんじゃ

アーティストとしての個性は死んでるのと同じだし

社会で同調圧力に潰されてるのと同じなんだよ」

 

とリョウは改めて自分の思う事をさっきより詳しく言ってくれた

 

ジョー「なるほどね…スゲェ分かるそれ。そりゃつまらなくなるよ

反骨精神がなきゃロックじゃないもん」

 

リョウ

「そう、だから…」

 

「だから最近、バンド抜けようか迷ってるんだ」

 

と唐突に彼女のバンド、そして彼女自身の今後を左右するような事柄の問題をぶつけてきた。

俺はライブハウスで彼女がメンバーと打ち合わせしてたときから

何となく心のどこかで薄々気づいてはいたが、

やはり予想は当たっていたみたいだ。

 

ジョー「そっか…そうなのね」

 

リョウ「うん」

 

ジョー

「でもリョウのやりたい事とはむきたのやりたい事の方向が

違うならそうするべきなんじゃない?俺はそう思うよ」

 

「けど決めるならよく考えてから決めてほしい。選ぶなら今のリョウが考える最良の方法、悔いのない選択をしてくれ。

もしかしたらこれが君の一生を変える選択になるから」

 

リョウ「分かった…しばらく悩んでみる」

 

ジョー「頑張ってな、いつでも相談乗るからさ」

 

リョウ「うん、ジョーありがとう」

 

ジョー「いいんだよ、って泣くなよ…」

 

リョウ「ごめん、ちょっと肩の荷が降りて安心しちゃって」と

 

こんな重大な問題を抱えて眠ってたんだから疲れていたんだろう

きっと気持ちが楽になったから解放されて泣いてしまったのだろう。

 

ジョー「そっかそっか、泣きたかったら沢山泣きな」

 

リョウ「ごめん今日だけはジョーの胸貸して…」

 

ジョー「いいよ大丈夫だよ、お前も大変だったな。よく頑張ってるよ」

 

リョウ「ジョーありがとう…ごめんね迷惑ばっかりかけて」

 

ジョー「気にすんな友達だろ?いくらでも頼ってくれ」

 

リョウ「うん…頼らせてもらう」

 

と心身に疲れを抱えきれなくなって泣いてしまったリョウを腕の中に抱えて冬の寒くて長い夜を眠くなるまで過ごした。

 

それから腕の中で泣いてるリョウを抱えながら1時間ほど経って

ようやく眠くなってきた。

 

ジョー「なぁリョウ、そろそろ寝ようぜ もう2時過ぎてるし」

 

リョウ「はっ…いつの間にそんな時間経ってたなんて」

 

ジョー「俺そこの敷いてある布団で寝るからまた明日な」

 

リョウ「分かった私も一緒に寝る」

 

ジョー「えぇ…リョウはベッドで寝ろよ狭いだろ…」

 

リョウ「ジョー、お願いだから今日だけはもう一人にさせないで。」

 

ジョー「バンド抜けた後のこと考えたら怖くなるからか?」

 

リョウ「そう、ジョーの腕の中で泣いてるときに考えてて決めたんだ。けどそれは私の居場所を失うことになるから今居られる場所に、居てもいい場所に居たいんだ」

 

ジョー「しょうがねぇなぁ、俺寝相悪いからキレるなよ?」

 

リョウ「別に大丈夫。ジョーだし」

 

ジョー「じゃあいっか。先に布団で寝てるからな、おやすみ」

 

リョウ「え、(秒で寝た…)」

 

(私…今日だけでも良いからそんな優しい君だけの女に

なりたかったな…)

 

「今日はありがとね、おやすみジョー。」

 

 

#9へ続く

 

 



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第9話 モーニング グローリー

あれから何時間たっただろう_

確か終電逃してリョウの家に泊めてもらうことになって

えっと…それから何したっけ。風呂出たあたりから眠気凄くて

半分意識なかったからなぁ…何も思い出せねぇ…

 

そんな眠りから起きようとする俺に意識のある所より遠くのほうから誰かの声、知ってる声が聞こえる。

 

「ョー……ジョー起きて…10時過ぎてる」

 

そう急かされるので目を開けて上を見てみる

 

ジョー「知らない天井だ」

 

そしてその天井の映る視界の横には青い髪の琥珀色の目をした

彼女が昨日と同じ顔つきで話しかけてくる

 

ジョー「あ、リョウおはよう」

 

リョウ

「ジョー、おはようじゃなくておそよう」

「朝ごはん作っといたから冷めないうちに食べて」

 

ジョー「マジか、ありがとう」

 

リョウ「大丈夫、昨日のお礼の意味もあるから」

 

と昨日の寝る間際のほぼ意識ない中の出来事をまだ頭の中にある眠気の靄と下の階から香って来るコーヒーとリョウがつけたであろう香水の

香りとカーテンの隙間を潜って眩しく光る青い朝の中

その彼女言う"それ"について必死に思い出そうとしていた。

 

ジョー「ちょっと顔洗ってくる」

 

リョウ「いってらっしゃい、先にリビング行って待ってる」

 

ジョー「うっす」

 

と洗面所に行って冷水を顔に当て夜に起きた出来事を

思い返してみるが、やはりピンボケする望遠鏡で遠くを見る感じがしてはっきりとは思い出せないでいた。

 

さて、顔も洗ったことだしリビングに行こうか。

 

リョウ母「ジョーくんおはよう〜よく眠れたかな?」

 

ジョー「あ、お母さんおはようございますお陰様で安眠できました」

 

リョウ母「あらそれはよかったわ、リョウちゃんがご飯作ってくれてるから食べちゃって」

 

ジョー「ありがとうございます〜そういえばお父さんはどちらに?」

 

リョウ母「お父さん病院でお勤めだからいつも朝早いのよ」

 

ジョー「そうだったんですねお父さんにもよろしくお伝えください」

 

リョウ母「よろしく伝えておくわね〜」

 

とリョウのご両親に泊めてもらったお礼を言って

リビングへ向かう

 

リョウ「お、やっときた。ジョーここ座って」

 

ジョー「すまん、おまたせ」

 

リョウ「目玉焼き作ったけど醤油か塩どっちがいい?あとご飯がいい?」

 

ジョー「そうだなぁ…醤油であとご飯がいいかな」

 

リョウ「ちょっと持ってくるから待ってて」

 

ジョー「ごめんありがと」

 

そしてリョウが目玉焼きだけ軽く焼いてくれている間

昨日のライブの様子をイソスタとトゥイッターで投稿して

周りの一緒に出た出演者たちからのリプライに返信して

ストーリーを巡回していた。

 

リョウ

「はいジョー、ウインナーとサラダと目玉焼きとご飯」

「あと醤油これね」

 

ジョー「サンキュー。では頂きます」

 

リョウ「うむ、召し上がり給え」

 

そうしてリョウの作った目玉焼きとご飯を一緒に口の中へ運ぶ

 

ジョー「うまい…!今までで一番うまい卵ご飯だよ」

 

リョウ「そっか良かった良かった」

 

と頬杖しながらこっちを見て嬉しそうな顔をしている

そこで俺はあることに気づいた

 

ジョー「ところでリョウ、なんで目腫れてるの?」

 

リョウ「え、昨日のこと覚えてないの…?」

 

ジョー「なんかあったっけ…眠気すごくて寝る少し前から記憶ないんだよ」

 

リョウ「覚えてないならいいや」

 

とリョウは何故か少しホッとして安心したような感じの雰囲気を出していた。

 

ん…?"安心"…確かリョウが昨日の夜言ってたよな

 

「ごめん、ちょっと肩の荷が降りて安心しちゃって」とか

腕の中で言ってた…腕の中!?

 

ジョー「あぁぁ!思い出した!そういえば!」

 

と安心というキーワードによって昨日の夜の記憶を

思い出して唐突に大声を出してしまった

 

リョウ

「ジョー!そんな大きい声出さないで」

「柄にもないことして恥ずかしいんだから///」と

 

そりゃ照れるなと言われるほうが無理がある一夜だったのを

俺が思い出してしまったことでお互いに妙な気まずさが流れた

別にこれと言ってやましいことなんか何も無いのに

変な雰囲気になってしまった。

 

そんなウブな俺たちをカーテンから溢れる遅めの朝の清々しい空と雲と光が優しく包み込んだ。

 

#10へ続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第10話 Home sweet home

昨日の出来事を思い出してしまいお互いに照れて

変な空気になってしまったがなんとか平然を装って

リョウの作ってくれた朝食を完食して

 

「ごちそうさま、めっちゃ美味しかったよ」と

 

俺は彼女に礼を言った。

 

リョウ「そっかそう言ってくれて良かった」

 

ジョー「また良かったら飯作ってよ」

 

リョウ「えー、今度は逆にジョーが作ってよ」

 

ジョー「そうだなぁ考えとく」

 

リョウ「それ絶対作らない人の台詞」

 

ジョー「俺の考えとくはちゃんと考える方の考えるだから」

 

リョウ「そっか、じゃあ期待しとく」

 

と食べ終えた食器をリョウが台所に持って行って

そんな他愛もない会話を交わす。

 

ふと、なんの気も無しにテレビをつけると10:40になっていた

 

(そろそろ帰らないとな)

 

そうして2階のリョウの部屋に荷物を取りに行って

帰る支度を始めて着替えてリョウの家を後にする準備を整えて

 

ジョー「昨晩はお騒がせしましたお邪魔しました」

 

リョウ母「あらもう帰るのね、また遊びにいらっしゃいね」

 

リョウのお母さんにお礼を言って家を出ようとしたその時

 

「ジョー!駅まで送っていくからちょっと待ってて」

 

と2階からリョウの声がする

 

「分かったー!下で待ってる」と返事を返して

その言葉通り玄関の外で待つことにした。

 

リョウが来るまでの間

トゥイッターのトレンドやらTLをみて暇をつぶす

 

「あぁ今日も誰かがなんかTLで炎上してんな」

 

と朝から煉獄のようなTLを見せられて気持ちにBadが入ってるとき後ろから肩を叩かれて振り向くと外着に着替えたリョウが

そこに立っていた

 

リョウ「ごめんジョー、おまたせ」

 

ジョー「わざわざ駅まで送らなくても大丈夫なのに」

 

リョウ「でも荷物多いじゃん、ほら方っぽ持つよ」

 

ジョー「すまんな、頼むわ」

 

リョウ「うむ、お預かり致す」と

 

リョウに2本持ってきていたギターのうちの1本を預けて

キャリーバッグをゴロゴロと転がして

そうして夜にライトアップされて綺麗だった

下北から見える新宿のエンパイア・ステート・ビルみたいなやつを横目にリョウの家まで向かったときに歩いたあのリロードを

再び通って駅を目指す

 

そのストリートを通り過ぎて道なりに歩き

駅の改札の目の前に着いたそのとき

リョウが口を開いた

 

リョウ「ねぇジョー」

 

ジョー「なに?どうしたの?」

 

リョウ

「昨日はありがとね、朝はお母さんが居たから

言いづらかったけどジョーのおかけで凄く気持ち楽になったし、なにより自分自身でいる事の勇気が出たよ」

 

ジョー

「そっか、これからもお互いに好きな事できるように頑張ろうな」

 

リョウ「うん、私頑張るよ」

 

ジョー「なんかあったら言ってくれよな」

 

リョウ「遠慮なく頼らせてもらう」

 

ジョー「お、おう」

 

リョウ「あ、そういえばジョーとロイン交換してなかったから

交換したいんだけど良い?」

 

ジョー「もちろん、QRコード出すから待って、ほれQRやで」

 

リョウ「北条明也っと。ジョーありがとう追加しといた」

 

ジョー「了解後でこっちからも承認しとく。

なんかあったりしたら連絡して相談乗るからさ。」

 

リョウ「分かった、あと今度よかったら遊びに行きたい」

 

ジョー「いいよ、行きたいところあったらロインで送って」

 

リョウ「まかせて、いいスポット探しておくから」

 

ジョー「楽しみにしとくよ、それじゃリョウまたね」

 

と言ってから改札にSuicaを当てて中に入る

 

するとリョウが

 

「ジョーまたね」と送ってくれた

 

そうして俺はしばらくして地下2階にくる青いラインの入った電車に揺られて下北沢から離れた

 

#11へ続く

 

 

 

 

 




こんにちは、こんばんは酢味噌ニアンです
お陰様で10話までたどり着きました。
今回10話到達記念にTwitter(@Sumisonian_btr)の方を初めましたので
フォローよろしくお願いします。
最新話等の通知などしていくので
今後ともご愛読よろしくお願いいたします。

ちなみに次回から遂に、ざ・はむきたす解散編です
基本的にリョウが中心にしばらく物語が進行します
そして、彼女の心を折る出来事の連続です
どうぞお楽しみに


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終わりの始まり
第11話 スリザー


下北沢駅の改札の機械のSuicaを押してゲートの中にいる彼に

私は改札の外から「ジョーまたね」と呼びかけた

 

するとジョーは私に向かって

 

「おう、またな」

 

と手を降って答えてくれたがさっき到着したばかりの列車から降りてきた客の人並みの奥底に姿を晦ませてしまった。

 

「ジョー行っちゃった…」

 

私は駅前の線路の空き地を背に一人で呆然と立ち尽くしながら

さっきまで改札の中にいたはずの彼の影を追いながら

 

この先、私のバンドはどこに行ってしまうのか。

 

私はどうなってしまうのか。

 

 

先行きの見えない不安に駆らている私にとって

ジョーは道標のような人だった。

とはいえ傍から見ると彼とは、まだ会ってから日はとても浅いが

今や私にとって良き理解者であることには違いはない。

 

そんな彼に昨日の夜貰った助言を胸の奥にしまい、

私の未来を掛けた選択をする決心をする。

 

「大丈夫、きっとやれる、きっと」

 

私はそう一人で呟いて再び家まで歩いて戻った。

 

リョウ「ただいまー」

 

母 「リョウちゃんおかえりなさい、ジョーくんちゃんと帰れた?」

 

リョウ「多分大丈夫だよちゃんと見送ったから」

 

母「リョウちゃんがそう言うならきっと大丈夫ね」

 

リョウ「そうだね、じゃあ私部屋戻ってるね」

 

と部屋に戻ってロインを開く。するとグループの方に

数件通知が来ていた。

 

「はむきたすのグループだ。なんのメッセージだろ」

 

と来ていた通知を見るためにグループロインを開く。

すると

 

「ちょっと急な要件で会議したいから今から駅前の大庄水産に来れる?」

 

とのことだった。

私としても脱退したいということを伝える絶好の機会だった。

 

「分かった、家出て着きそうなころにまた連絡返す」と

何の要件かも知らずにとりあえず返信する。

 

リョウ「ごめんお母さん、ちょっと急用できたから昼ご飯いらない」

 

母「分かったわ、あんまり夜遅くならないようにね」

 

リョウ「大丈夫、多分そんなに時間掛からないから」

 

母「そう?ならいいんだけど…」

 

と玄関で靴を履きながら

急用で出なきゃ行けないことを伝えて駅前の居酒屋へ向かう

 

 

しばらく歩いてさっきジョーを見送った駅前の線路跡まで来た。

もうすぐそこに目的地の大商水産がある

 

「今ついた。店の中?」

 

「そう、店の中入ってきたら席の場所分かると思う」

 

「了解今行く」

 

そうして私は、はむきたすのメンバーがいる店内へ入った

 

「いらっしゃいませ1名様でよろしいですか?」と店員が聞く。

 

「あそこの席のツレなんですけど後で合流すると彼女らに伝えてあるので」

 

「かしこまりました。ではあちらのお連れ様のいるお席にご案内しますね」とはむきたすのメンバーのいるテーブル席に案内された。

 

「ユメ、唯奈遅くなってごめん」

 

今この席にいる3人

ギターボーカル尾崎ユメ、ドラム本田唯奈、そしてベース兼リーダーの私、山田リョウが現はむきたすのメンバーだ。

 

席についてメンバーが揃ってもう幾度となくやってきた

このバンドの打ち合わせが始まる

 

リョウ「それで、今日は何について話すの?」

 

ユメ「そう、ソレなんだけどね実は…」

 

と少し間をおいてから本題に移った

 

 

 

#12へ続く

 

 

 

 




どうも酢味噌ニアンです
いよいよ今回から、はむきたす解散編です
次回もお楽しみに


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第12話 迷い

大庄水産に到着した私は彼女らのいる席に着いた。
そうしてメンバーが揃いもう幾度となくやってきた
このバンドの打ち合わせが始まる


 

リョウ「それで、今日は何について話すの?」

 

ユメ「そう、ソレなんだけどね実は…」

 

と少し間をおいてから本題に移った

 

ユメ

「とあるレコード会社って言っても大手レーベルの子会社に当たるから、まぁインディーズレーベルなんだけど、そこのプロデューサーの人が昨日のライブ見に来てくれてたみたいで、ライブの後連絡先交換したんだよね」

 

「そうしたら今朝、電話でレーベル加入のお誘い頂いちゃってさ、なるべく早くどうするか決めてほしいってお願いされたから今日急遽ここに集まってもらったっていう事なの」

 

リョウ「なるほど、それで曲の方とかの感想とか言ってた?」

 

ユメ

「それなんだけどね、前にリョウが作ったやつって言っても

ほぼリョウが作った曲ばっかりなんだけどね(笑)」

 

唯奈「今の売れ線路線も褒めてくれたけど前の路線の曲のことすごい褒めてくれててさ。」

 

リョウ

「へぇ〜、さすがはプロデューサー。目の付け所がいいね」

 

唯奈「それでどう?リョウはレーベル入ろうと思う?」

 

リョウ「私は…」

 

と私はさっき心に決めた決心が大きく揺らいで

返事が詰まってしまった。

 

確かに抜けて新しく音楽を始め直すというのも有りだが

私の曲を広められる絶好の機会なんか早々巡ってこない。

 

しかも売れ線路線より今までの素直な気持ちを歌ってた

あの曲たちの方を絶賛してくれているのだから。

 

今の私にとって、何が良くて何が悪いのか

そして今の私にとって、

どっちの選択肢のほうがメリットがあるのか

 

一瞬のうちに頭の思考回路をフルに動かして

なんとか返事を絞り出す

 

「私は…そこに入って私達の音楽ができるならいいと思う」

 

と少しだけ本音を織り交ぜて答えを返した。

 

ユメ「じゃあリーダーがそう言ってることだし決まりだね!」

 

リョウ「私その人の連絡先持ってないからユメと唯奈で仲介役頼むね」

 

ユメ&唯奈「任せて!」

 

唯奈「それじゃ今日の本題は決まったことだし後はゆっくり

ご飯でも待ちながらもう1個の議題でも話そうかな」と

 

唯奈がホッとした様子で言う。

 

そのとき鉢巻をした店員のおじさんが

 

「まぐろ切落し丼と刺身定食、へいおまち!」

 

と全員分の料理を運んできてくれた。

 

メンバー一同「頂きます」

 

リョウ「うむ、安定の味。素晴らしい」と絶賛した後

 

私達は海鮮丼やら刺身定食を食べながら次の議題に

話を進める事にした

 

唯奈「次の議題なんだけど、曲の方向性レーベルから前の作風がいい評価貰ってたからそっちの路線に戻ろうと思うの」

 

ユメ「私も賛成。そのほうが私達も好きに曲作れるしレーベル側も売り出しやすいだろうからね」

 

リョウ「私も賛成。このバンドの元々のテイストを大事にしたいからそれで思う存分できるなら戻そうよ。」

 

唯奈「私達もともとそういう曲のほうが得意だったしねぇ」

 

リョウ「じゃあそういう訳で元路線に戻るということで宜しいかな?」

 

 

ユメ&唯奈「OK!これからも頑張るぞ!!」

 

一同「おー!」

 

 

 

私達はレーベル加入と今後の楽曲の方向性について

話し合って久しぶりにいい雰囲気になって話も弾み

楽しい時間を過ごてまだ、もう少しだけこのバンドに居ても良いかなと進展した現状に淡い希望を抱いた。

 

 

しばらくして、昼ご飯の海鮮料理を各々が食べ終え店を後にし

その後私は家に戻りジョーにさっきの出来事で

まだ少しだけはむきたすで続ける事にしたと

ロインで連絡する

 

「さっき色々バンドで良い事あって抜けるのちょっと考え直した」

 

と送り、彼からの返信を待つ。

 

しばらくしてジョーから

 

「何かあったのかよくわからないけど、いい事あって続けようと思えたんならよかったじゃん!ところでその良い事って何よ気になるやん」と来た。

 

「夜時間ある?8時位に通話でもしない?出来たらその時話す」

 

「夜暇だから大丈夫。そんとき聞かせて」

 

「おけ、後でまた連絡するね」

 

「了解!じゃ後でな」

 

と約束をして夜までドタバタだった一日の疲れを癒やすために

仮眠を取ることにした

 

#13へ続く

 



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第13話 オハヨウ

「ん…眠い…そろそろ起きなきゃ…」

 

私は疲れを癒やす為に仮眠を取っていて

今丁度その仮眠から目覚めたところだ。

 

ベッドから見える窓の外の暗くなった空とそこから差す月明かりに照らされて額に腕を乗せどのくらい寝ていたのかと

眠気で回らない頭で思考を廻らす。

 

「今何時ぐらいだろう…外もう暗くなってるし

6時か7時位かな?」と

 

もう幾度となく見てきた知りに知り尽くした天井に目線を移して

独り言をつぶやいては

 

(そういえば8時位にジョーと電話する約束してたっけ…)と

 

ふと昼間急な打ち合わせの後、ロインで交わした約束を

思い出してスマホのロック画面の時計を見る

 

「げっ…22:36…約束した時間から2時間半も過ぎてる…」

 

と残酷にも約束から2時間半も過ぎた現在の時刻を

画面は映し出した。

 

「やばい、ジョー怒ってるかな…

とりあえず早く電話かけなきゃ」

 

私は急いでロインを開きジョーのアイコンをタップして

音声通話のボタンを押した

 

「プルルルル…プルルルル…」

 

月明かりと暗闇が広がっている私の自室に電子音が

スマホから鳴り響く。

 

「応答なし…か。もしかして寝てるのかな」

 

その可能性を考慮して再度私はボタンを押した。

そしてまた暗闇に電子音が虚しく鳴り響く。

 

すると途端に電子音が鳴り止み

画面には0:00と表示された。

 

そう、ジョーが通話に出たのだ。

 

リョウ「もしもし、ごめん凄い遅れた…」

 

ジョー「ん〜…?あ〜…リョウか……?」

 

リョウ「そうだよ、寝坊した。ジョー寝てたの?」

 

ジョー

「俺…?いま電話かかってきてから起きたよ。

つか寝坊って言ってたけど今何時くらい…?」

 

リョウ「今?ちょうど22:40になったところ」

 

ジョー

「え、嘘やろ!?ヤベ俺も寝坊した…

起こしてくれてありがとうさっさと起きて

こっちからもかければよかったのに…寝坊してすまんな…」

 

リョウ「大丈夫、私も疲れて寝坊したしお相こだよ」

 

ジョー「そっか、じゃあいいか。それで昼間良いことあったって

何があったの?聞かせてよ」

 

リョウ

「昼間ジョー見送ったあとで、

私のバンドの打ち合わせ急に入っちゃって駅前の大庄水産で

話し合いしてたんだけど、そのときにメンバー経由で

レーベル入らないかってそこのお偉いさんから

誘われてたらしくて、入るかどうか決めてきたんだ」

 

ジョー「なるほどな、それでどうすることにしたん?」

 

リョウ「結論から言うとレーベル入ることにした。」

 

ジョー「ほう、でも何で抜けようとしてたのにレーベルまで入って続けることにしたん?」

 

リョウ

「それなんだけど、そこのプロデューサーが前までやってた

楽曲の方向性を絶賛してくれてて、入ったら試しに最初は好きなようにやってみたら良いって言ってくれるから

路線戻して思う存分やりたい私の音楽ができるし

何より私達の作った曲を世の中に流布させられる機会なんか

滅多に巡ってこないから、そのチャンスを無駄にしたくなかったからまだバンドに留まる事にした」

 

ジョー「おーレーベルから誘い来たんだ!スゲェじゃん」

 

リョウ「ジョーはどう思う?私、選択間違えてないかな」

 

ジョー「いや、それで良いんじゃね?そんなBIGなチャンス無駄にするような事ほどアホなことないだろ?何よりリョウが出した結論だろ?自信持って進んでいって良いんじゃないか?」

 

リョウ「そっか、自信持ってやってみるよ。ありがとジョー」

 

ジョー「でも少し引っ掛かるな…」

 

リョウ「何が?何か変なとこあった?」

 

ジョー「いや、リョウがってわけじゃなくて"試しに"ってワードが引っかかる」

 

リョウ「そうかな?私も人づてで聞いたからアレだけど

別に疑う必要がある感じには思えない。」

 

ジョー「まあ確かに俺の考え過ぎかもしれないな…

とりあえずレーベル加入おめでとう!頑張ってな応援してる」

 

リョウ「ジョーありがとう。できるとこまで進んでみるよ」

 

ジョー「おう、そういや俺も別のレーベルから

誘い来てたんだよね」

 

リョウ「ジョーのとこはどうしたの?入るの?」

 

ジョー「いや、条件がマジでクソだったから蹴ったよ(笑)」

 

リョウ「蹴ったのか(笑)でもなんかジョーのバンドらしいね」

 

ジョー「そうか?俺らなんか物珍しさを瓜にして金巻き上げようっていう連中ばっかり集ってくるからそんなデケェチャンス与えてくれたレーベルに入れるチャンス無駄にすんなよ?」

 

リョウ「絶対チャンス掴んでみせるよ。」

 

ジョー「そっかそっか、もうちょい俺らは

アングラの影に潜んでるよ」

 

リョウ「うん、先にステージの光の中で待ってる」

 

私はジョーにチャンス掴んで先にステージの上で待ってると

誓った。するとジョーから突然なんの脈略もなく

 

ジョー「あ、そうだ。マジで何も関係ないことなんだけどさ

なぁリョウ、来週あたり飯食べたり観光にでも行かない?」

 

リョウ「良いけど、どこ行く?」

 

ジョー「鎌倉とか?」

 

リョウ「いいね、決まりだね」

 

ジョー「おっけ、再来週あたり予定空けとくわ。細かい日程は

後で送るね」

 

リョウ「了解、そろそろ風呂入ったりするからまたね」

 

ジョー「おう、またな」と

 

遊びに行く約束をしてこの日の通話を終わらせた。

 

しかし、この時言われたジョーの予感は

数日後見事に当たってしまい

私の選んだ選択は悲惨な結末を迎える。

 

#14へ続く



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第14話 Scammer

ジョーに電話越しに相談した日から数日が経ち、

今日はそのレーベルのプロデューサーと午後から

レーベル加入について打ち合わせが入っているので

はむきたすのメンバーと私は、

今そのレーベルの事務所の会議室のドアの前に来ている。

 

唯奈「そろそろ時間だね…緊張するなぁ」

 

リョウ「うん、私もちょっと緊張する」

 

ユメ「リョウも一応緊張とかするんだね」

 

リョウ「私も一応ちゃんと人間だから緊張くらいするよ」

 

するとその時ドアの向こうから

 

「すいません、おまたせしましたー!入ってどうぞー」と

 

 

声が聞こえてきえた。

 

 

私はノックしてドアを開けてこのバンドのリーダーとして

先陣を切って部屋に入る_

 

リョウ「失礼します。」

 

 

そうしてこの時から、私達のバンドの今後を左右する打ち合わせ

そしてこのバンドの崩壊のカウントダウンが始まった。

 

 

リョウ「ざ・はむきたすのベース兼リーダーの山田リョウです」

 

ユメ「ギターボーカル尾崎ユメです」

 

唯奈「ドラムの本田唯奈です」

 

???「ようこそいらっしゃいました。

どうぞそちらにお掛けください」

 

そうして私達は下座のソファーに腰を掛け

相手が次の行動に行くまでの一瞬で

今から始まることの心構えをして待っていた。

 

???

「はじめまして

私、Scam recordsにて当レーベルの

新人ガールズバンド発掘オーディションなどの

プロデューサーをしております、

田代 優と申します。

皆さん、本日はどうぞよろしくお願いします」

 

メンバー一同「こちらこそ本日はよろしくお願いします」

 

私はその、40代半ばくらいのオバさんプロデューサーから

今日の本題を聞かされる。

 

田代「さて、本題ですが今日皆さんに来てもらった理由ですが…」

 

田代「レーベルとして皆さんに加入していただくか否か、

その最終選考を1ヶ月後に開催される次回の発掘オーディションに参加して頂き、そこで正式に契約するかどうか返事させて頂きたく思い来ていだたきました。」

 

リョウ「分かりました。ちなみにオーディションはどのような形式で行なわれますか?」

 

田代「ライブ形式で行い、集客率、オーディエンスの反応、演奏力、パフォーマンスなどで評価させていただきます。」

 

リョウ「なるほど、分かりました。私達オーディションに出てみます」

 

田代「その返事を待っておりました…!ではここに代表者の方の参加承諾のサインをお願いします」

 

リョウ「ちなみにオーディションの場所はどちらで?」

 

田代「横浜赤レンガ倉庫の特設ステージにて行われます」

 

リョウ「分かりました。では1ヶ月後、よろしくお願いします」

 

そうして私は、この先このバンドの大願を叶える為に覚悟を決め

参加承諾のサインとして自身の名前を書き記しペンをおいた。

 

しかしこの参加の決定がむしろ仇となり

1ヶ月後このオーディションを受けたことによって

後に結束バンドを組むまで音楽から離れていた

ある理由として、ある"重大な"出来事が起き、

私の最初のバンド、ざ・はむきたすは崩壊することになる。

 

#15へ続く

 

 

 



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決意
第15話 いざ鎌倉


昨日、レーベルのプロデューサーと打ち合わせをした私は

急遽横浜の赤レンガ倉庫で行われる若手アーティストの発掘オーディションに約一ヶ月後に

出る事への重圧と責任感と緊張で気が気でならなかった。

 

「今からこんな気負いしてても本番まで持たないよな」

 

と誰もいない部屋のベッドの上で独り言をつぶやく。

 

(そうだ、気分転換にどこか外に出かけようかな…)

 

私はそう思い立ち、どこかに出かけるか考えていると

ふと、この間のジョーと鎌倉に行く約束を思い出した。

 

「あ、確かジョーと鎌倉行く約束してたっけ。急だけど今日行けるかな」

 

とまた独り言をつぶやきながら

ロインでジョーに今日鎌倉に遊びに行けるかと聞く。

 

 

(とりあえずしばらく待ってようかな)

 

 

するとスマホからロインの呼び出しコールの音が鳴ったので

確認するとジョーからだった。

 

 

リョウ「もしもし?リョウは今どこにいるの?」

 

ジョー「まだ家だけどそろそろ出るから」

 

ジョー「おけ、とりま待ち合わせどこにする?」

 

リョウ「ん〜、小田急の終点藤沢だから藤沢駅でいい?」

 

ジョー「分かった、相模大野過ぎたあたりでまた連絡して」

 

リョウ「Ok、じゃあまた後でね」

 

ジョー「うい」

 

と待ち合わせのところだけ先に決めて

出かける支度をササッと済ませて家を出る

 

リョウ「お母さん、ちょっと出かけてくる」

 

リョウ母「あら、気をつけてね」

 

リョウ「うん、行ってきます」

 

靴を履いてイヤホンをスマホに挿して好きな曲を流し

玄関を開けリロードと線路跡の空き地の道を通り下北沢駅へ向かう。

 

しばらく歩いて駅についた私は

事前に調べた鎌倉までの往復の交通費を券売機でPASMOに

チャージして改札を通って駅の中へ向かった

経由地の藤沢駅に乗換なしで直接行ける快速急行は

もうすぐ来るらしい

 

(9:37分発の快速急行があるからそれに乗ろうかな)

 

改札の入口近くの電光掲示板を確認して

地下2階の1番ホームへ長いエスカレーターで降りていく

 

アナウンス「一番ホームより快速急行藤沢行きが10両編成で参ります」

 

と地下のホームにリバーブして場内アナウンスが鳴り響き

数十秒後にホームに列車が止まって

私はその列車に乗り込んだ。

 

(さすがに休日は人多いな…)

 

休日だからか車内はいつも乗るときより混んでいて身動きを取りづらかったが幸いなことに反対サイドのドアの前のスペースが

空いていることに気づいたので椅子の仕切りを

背もたれ代わりにして車窓から流れ行く景色を見ながら

藤沢まで乗っていくことにした。

 

しばらくしてチャイムが鳴りながらドアが閉まり

列車が動き出す。

そうして走り出した列車はイヤホンから流れる曲をBGMに

代田、梅ヶ丘、豪徳寺、経堂…と途中の通過駅を通過し

そろそろ相模大野に止まる頃だ。

 

(そろそろ相模大野着くからジョーに連絡しなきゃ)

 

と私は彼の言葉通りにそろそろ相模大野に止まるとロインで

連絡した。

 

しばらくしてジョーから着信が来ていたので見てみると

 

"了解、そろそろ家出るから藤沢着いたら改札の前いるね"

 

とのことでちょうど私が藤沢につく頃にジョーも駅に着くらしい。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「終点藤沢、藤沢です」

 

ボーっと景色を眺めながら列車に揺られ、ふと気がつくと

電車が止まり改札の出口の方へ向かい歩いた。

 

改札を出た私はジョーと合流するために改札前のセブンの前で

立ち止まって探してみるものの、人混みが多くてジョーの姿を中々見つけ出せずにいると

 

「おーい」と

聞き覚えのある声がどこからか聞こえてきたので

当たりを見渡してみると階段のしたのところにあるエレベーターの前の柱の下でジョーは立っていた。

 

リョウ「ごめんお待たせ。どのくらい待った?」

 

ジョー「大丈夫だよ俺も今さっき着いたし、

割と家からすぐだし。それよりどうする?

江ノ電でいく?JRにする?」

 

リョウ「行きはJRだけど帰りは江ノ島行きたいから江ノ電で」

 

ジョー「いいけど、リョウ体力もつ?

結構江ノ島ハードだよ?(笑)」

 

リョウ「なんとかするけどギブアップしたら肩貸すか

ジョーの背中に担いで」

 

ジョー「えぇ…俺の腰死ぬよ…」

 

リョウ「む、失礼な。私はそんなに重くない」

 

ジョー「そういう問題じゃなくて…」

 

リョウ「そんなこと後でどうにでもなるから早くいこ?」

 

ジョー「そんなことって…まあいいや行くか(相変わらずリョウはマイペースだな)」

 

(相変わらずリョウはマイペースだな)

 

リョウ「いざ鎌倉」

 

ジョー「お、おう」

 

#16へ続く

 




こんばんは酢味噌です
鎌倉に遊びに行っているジョーと山田ですが
後々重要になってくる出来事と伏線を書く関係で
いつもより1話が長くなってます


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第16話 息抜き

約1ヶ月後に迫ったオーディションの重圧で
既に気疲れをしていた私は気分転換でジョーと鎌倉と
思いつきで江ノ島に行くことにした。


 

リョウ「ねぇジョー、次の電車何分くらいに来る?」

 

ジョー「10:29に高崎行きが来るらしいけど、どうする?」

 

リョウ「う〜ん、飲み物買いたいからその次のやつに乗りたい」

 

ジョー「そうだなぁ、そしたら次の次が10:41にくるね」

 

リョウ「じゃあそれ乗ろうよ」

 

ジョー「だな。とりあえずコンビニで飲み物とか買いに行くか」

 

 

 

そうして私達はコンビニで飲み物を買いJRのホームまで移動し

次の列車が来るのを待つ

 

 

 

ジョー「なぁリョウ、そういえば昼飯どうしようかね。

何か好きな食べ物とかある?」

 

リョウ「う〜ん…そう言われると悩む…」

 

ジョー「意外と"これ"が好きってものはない感じ?」

 

リョウ「そうかも、でも強いて言うならカレーと海鮮系は好き」

 

ジョー「じゃあオススメの店あるからそこ行こうぜ」

 

リョウ「そうする、ジョーのオススメの店気になるし」

 

ジョー「そっか、それじゃ決まりだな」

 

そうこうしている内に場内アナウンスが流れ列車が来た。

私は大船で乗り換えて再び鎌倉方面に向かう

列車が来るのを待つ

いつもならこういう待ち時間というのは退屈なものだったが

今日はジョーがいるからかいつもと違って

この待ち時間すら楽しいものとなっていた。

 

 

ジョー「なぁリョウ、後ろの車両行かね?ボックス席あるよ」

 

リョウ「ボックス席?なにそれ」

 

ジョー「向かい合ってる座席があるんだよ。眺めいいよアレ」

 

リョウ「へぇー、気になる。それ座ろうよ」

 

ジョー「一番後ろが空いてるからそこ行くか」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

しばらくして鎌倉方面に行く列車が来て

私達はジョーいう"ボックス席"なるものに座り

二駅先の目的地である鎌倉駅に到着した私は

小町通りを歩いて色々物色する

 

例えば

 

リョウ「ねぇジョー見てこれ、サングラス。似合う?」

 

ジョー「ブフォwなんか似合ってるのに

フレームが星の形してるせいでスゲぇシュールw」

 

リョウ「そんなにこのサングラスかけてる私おもしろい?(笑)」

 

ジョー「うんw普段クールそうなリョウがやるから余計にw」

 

みたいなしょうもないやり取りばかりしていた

 

そんなやり取りをしながら

小町通りを進んで大通りに出ると

さっき電車の中でジョーに私が行ってみたいと言った

鶴岡八幡宮にたどり着いて

そうしてそのまま境内の中に入り

大階段を登って本殿の前につく

 

ジョー「リョウ八幡宮にお参りでもするの?」

 

リョウ「うん、オーディションの願掛けでもしようかなって」

 

ジョー「オーディション?なにそれ?」

 

リョウ「あとで話すよ。話すと長くなるから」

 

ジョー「そっかそっか、じゃああとでゆっくり聞かせてよ」

 

リョウ「うん、それじゃお参りいこ?」

 

ジョー「ちょっと待って賽銭出すから」

 

 

 

とジョーが賽銭を財布から出して

私は二拝二拍手一拝でオーディション合格の祈願をする

 

 

(オーディション上手く行きますように…)

 

 

私は、実力を信じているから普段は神頼みとかはしないが

今回ばかりは神頼みしてでも合格したかった。

 

 

リョウ「ジョーも何か凄い拝んでたけど何お願いしてたの?」

 

ジョー「え、あ〜…恥ずかしいから秘密」

 

リョウ「え、言ってもいいじゃんケチ」

 

ジョー「しょうがねぇな。リョウのオーディション

上手く行くようにお願いしてたんだよ」

 

リョウ「え、ジョーありがとう。凄く嬉しい。

ちゃんと私頑張るから」

 

ジョー「そっか応援してるぜ俺。」

 

リョウ「うん、ありがとう」

 

私はジョーがわざわざ自分なんかに

願掛けしてくれたことに凄く嬉しい気持ちで溢れていた。

だから私はそんな彼の思いと私達の夢を無駄にしたくない、

それゆえこのオーディションに持てる全てを放つ事にした。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

それからしばらく私達は境内の中を散策していると12時を過ぎてしまっていたのでジョーの言うオススメの海鮮系の店に案内してもらうことにした。

 

リョウ「ねぇジョー、お腹空いた」

 

ジョー「じゃあさっき行ってた店行く?」

 

リョウ「うん、早く行きたい。さっきから凄いお腹鳴ってる…」

 

ジョー「そっか、じゃあ早く行かねぇとな(笑)」

 

 

そうしてジョー案内の元、小町通りへ行き

もと来た道を戻ってとある店の前に来た。

 

リョウ「ねぇジョー、店地下にあるの?」

 

ジョー「そうだよ。ここチェーン店なんだけどランチメニューが

美味くて安いからオススメなんだ。結構来てるよ」

 

リョウ「なんか入り口の構造ライブハウスみたいだね」

 

ジョー「ちょっと分かる気がする」

 

 

そんな風に話しながら階段を下り

私達は店の中に入った

 

 

???「いらっしゃいませーってアッキーか」

 

ジョー「よっ、守田。今日は2名でよろしく」

 

守田「なんだよお前、独り身の俺がバイトしてるときに

見せしめにでも来たか???」

 

ジョー「ちげぇよ守田。リョウは彼女じゃ…」

 

リョウ「あ、うちのが世話になってます」

 

守田「守田剛って言います。明也とは高校のクラスメイトです」

 

リョウ「山田リョウですジョーの彼女してます」

 

ジョー「おい、リョウお前変なこと言うなよ!」

 

 

「変って何よ」と私はボソッっと呟いたが

ジョーには聞こえてなかったみたいだった

 

 

守田「まあもうなんでもいいから奥のテーブルどうぞ」

 

ジョー「守田、俺いつもので。リョウは?」

 

リョウ「じゃあ私は…ジョーと同じやつで」

 

ジョー「俺丼物2つ頼むから鉄火丼かハラモの

どっちかにしときな」

 

リョウ「じゃあまぐろ鉄火丼で」

 

守田「あいよ、ちょっとじゃあ注文してくるわ」

 

ジョー「よろしく頼むわ」

 

 

そうして守田は厨房で作業に戻った

 

 

ジョー「なぁリョウ、さっきのなんだったんだよ」

 

リョウ「なんでもない、ただのネタだって」

 

ジョー「誤解されたらどうするだよ…」

 

リョウ「逆にジョーは誤解されてマズイことでもあるの?」

 

ジョー「いやないけどさ…」

 

リョウ「じゃあいいじゃん」

 

「良くはないやろ」

 

 

しばらくして鈍感なジョーを相手していると

私達の頼んだ料理が守田によって

厨房から運ばれてきた

 

 

 

守田「おーい明也、まぐろ鉄火丼でとハラモ丼持ってきたぞ」

はい、あとこれ山田さんの鉄火丼ねー」

 

リョウ「ありがとう。ていうか、え、ジョーそれ2つとも食べるの?ウソでしょ…」

 

ジョー「全然俺普通に食べれるよ。」

 

守田「あー山田さん、こいつこう見えて結構大食らいなんですよ」

 

リョウ「え、意外。あんまり食べなさそうなのに」

 

ジョー「年頃の男なんかみんなそのくらい食うだろ」

 

リョウと守田「いや食べない食べない」

 

ジョー「そんな二人共タイミング被せてまで

否定しなくてもええやろ…」

 

 

 

「頂きます」

 

 

 

私は頼んだまぐろ鉄火丼を頬張る

 

リョウ「ジョーこれ美味しいね」

 

ジョー「だろ?これ食べてみる?ハラモ」

 

リョウ「頂戴、食べてみたい」

 

ジョー「ほら皿だし…って…えぇ…」

 

リョウ「早く食べさせて」

 

ジョー「自分で食えよ…」

 

リョウ「ヤダ面倒い。ジョー食べさせて。あー」

 

ジョー「ほらよ、旨い?」

 

リョウ「おっ…おおおぉ…凄い筋っこくて

コリコリしてて美味しい…」

 

ジョー「めっちゃうまそうに食うやん」

 

リョウ「ジョーのおかげ。もう一つ頂戴」

 

ジョー「いいけどまぐろ一つ寄こせよ」

 

リョウ「しょうがないな、ほらジョー口開けて」

 

ジョー「え、あ?あー」

 

リョウ「さっきのお返し」

 

ジョー「ありがとう…?」

 

とそんな風にお互いの口に食べ物を渡すなんていう付き合ってもない男女がするようなことではないことをしながら頼んだ料理を食べ会計を終えて店をあとにする。

 

リョウ「ごちそうさまでした」

 

ジョー「守田またな」

 

守田「おう、お幸せにな」

 

ジョー「だからちげぇってしばくぞ」

 

守田「ごめんて、二人ともじゃあまたね」

 

リョウ「バイバイ」

 

ジョー「またな」

 

と私達は店に来たときに降りた階段をあがり

もと来た道を戻り鎌倉の有名なスポットと公園や雑貨屋に

行ったりして少し疲れたので、

私達はしばらく由比ヶ浜の浜辺でのんびり買った菓子と飲み物を

食べたりしながら休憩することにした

 

ジョー「あー、久々に結構歩いたからちょっと疲れたなあ」

 

リョウ「私は普段廃墟探索とか

ハードオフ巡りしてるから大丈夫」

 

ジョー「うそつけ、さっき長谷寺の階段登ったとき

少し疲れてただろ」

 

リョウ「うっ。ホントは少しだけ…」

 

ジョー「でもまあ坂とか多いから歩くと

疲れるからしゃーないよ」

 

リョウ「だよね、ジョーでも少し疲れてるんだし無理ないよね」

 

ジョー「だな。それよりさっきのオーディションって何のやつか

気になるんだけどさ…」

 

 

と聞いてきた。それは私が"後で話す"と話題だった。

 

 

リョウ「あーオーディションのやつ?」

 

ジョー「そうそう、オーディションが何とかって言ってた件。

さっき後で話すって言ってたの思い出して聞こうと思ってさ、

アレなんのオーディションなの?」

 

リョウ「レーベルのオーディション。

私達が入る予定のレーベル主催のやつだよ」

 

 

ジョー「あれ、レーベルって加入するので

決定したんじゃなかったっけ」

 

 

リョウ「そのはずだったんだけどレーベル側から

若手アーティストのオーディションに試しに出てみて、

それから最終決定したいって言われてさ。」

 

リョウ「私達にとって結構大事なオーディションなんだ。」

 

ジョー「なるほどな、それで普段あんまりしなさそうな願掛けを

八幡宮でしてたのか」

 

リョウ「うん、頼れるものにはなんでも頼りたいくらい、私

今そのオーディションが上手くいくか不安でさ」

 

ジョー「そっかそっか。きっと上手く行くよ大丈夫さ」

 

リョウ「そうかな…」

 

ジョー「あぁ。大丈夫だよリョウだし」

 

リョウ「なにそれ、理由になってない」

 

ジョー「そうか?理由かぁ…言語化するのが難しいなぁ」

 

 

そう気楽そうに話すジョーと由比ヶ浜の浜辺で

悠々と広がる海を眺めいると来たときより

日が暮れて来ていることに気がついた。

 

リョウ「ねぇジョー、それより、そろそろ江ノ島行かない?」

 

ジョー「そうだな、早く行かないと日が暮れるし」

 

リョウ「はじめての江ノ電。楽しみ」

 

そして私達は鎌倉から江ノ電で江ノ島を目指して

この街を後にして夕暮れの海岸沿いを走る

 

#17につづく

 

 

 

 

 

 

 

 



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第17話 海風と夜景と君と(前編)

【おしらせ】
16話の最後の方加筆修正しました。
それでは第17話どうぞお楽しみください



ジョーの友達がいる店で昼食として海鮮丼を食べたあと

鎌倉の街にある観光スポットを一通り散策して

由比ヶ浜で少しだけ休憩していた。

 

そうして海をボーっと眺めているうちに午後の3時半を過ぎたころ私達は次の目的地である江ノ島に行くことにした

 

リョウ「ねぇジョー、そろそろ江ノ島行かない?」

 

ジョー「そうだな、早く行かないと日が暮れるし」

 

リョウ「はじめての江ノ電。楽しみ」

 

私はよくTVでいい感じに映る江ノ電なるものが

どんな感じなのか気になったので少しだけワクワクしていた。

 

ジョー「始発のほうが前の席取りやすいし眺めいいから前行く?」

 

リョウ「そうする。今の時間帯だったら途中の

海沿いのところ景色が綺麗そうだし」

 

ジョー「じゃあ一回鎌倉駅戻るか」

 

私達は由比ヶ浜から江ノ電の始発が出る鎌倉駅の方まで

大通りを通って歩いて戻った。そしてちょうど鎌倉駅に着いて

江ノ電の駅のホームに入ったとき、ちょうど先発の列車が

駅から出発するのが見えた。

 

リョウ「行っちゃった。次のいつ来る?」

 

ジョー「16:06のやつが来るよ」

 

リョウ「とりあえず一番前でこのまま待ってようよ」

 

ジョー「そんなに景色気になる?」

 

リョウ「うん、始めて乗るから。

あと海岸沿いの景色は有名だし」

 

とホームで喋っていると6分発の列車が来て

私達の前で止まった。

 

ジョー「来たみたいだね」

 

リョウ「だね、早く乗ろう?」

 

ジョー「焦るなって、俺たち待ち順の先頭だからリョウの

見たい景色が見れる一番前の席は取られないから大丈夫だって」

 

と言いながら私達は左側にある二人がけの席で

私は窓側、ジョーは通路側の方に座った。

 

しばらくして発車のベルが鳴り扉が閉まる。

そうして私達を乗せたこの列車は古都を離れ走り出した。

 

 

 

 

「次は和田塚、和田塚です」

 

 

 

 

と車内アナウンスが鳴る

 

リョウ「江ノ島までどのくらいかかるかな」

 

ジョー「さぁな。25分位じゃない?多分」

 

リョウ「意外とかかるんだ」

 

ジョー「まぁJRとか小田急みたいに線路幅広くないし

なにしろ通るスペースが狭いからスピード出せないからね」

 

リョウ「へぇ、小田急とかと線路の大きさ違うんだ初耳」

 

ジョー「そうなんだよ。実は違うんだよ。びっくりしたでしょ」

 

 

 

とジョーは30分近い長旅の間、持ち前の知識で

私がつまらなくならないように楽しませてくれていると

それからしばらくして

海がちらほらと見え始めたので

私はそろそろ気になる海岸沿いの景色が来るのではないかなと

待ちわびていた。

 

 

リョウ「ねぇジョー、そろそろ来るかな?海沿いの景色」

 

 

ジョー「もうすぐだね、ほら来た!」

 

 

 

とジョーが言った瞬間、電車と並走する車の向こう側に

雄大に広がる青い太平洋と夕日によって茜色に照らされた空の

美しいコントラストが私の視界いっぱいに広がった。

 

 

 

「すごい綺麗…」

 

 

 

 

私は普段海を見る機会が無い、見られない。

下北沢に暮らしている以上、海とは無縁の暮らしだから。

 

 

普段私の目に映るのは人々の夢、欲望、異国の文化が

入り混じったジャングルの様な街。

 

 

そんな喧騒とした街の中で私の心を落ち着かせるのは

落ち着いた雰囲気のカフェか親友の虹夏の家ぐらいである。

 

 

だがそんな心の拠り所でもこの雄大な景色を見たことによる

感動には到底及ばなかった。

 

 

そしてこの景色が今の私には「何も気負いしなくていい」と

私の不安など、全てかき消してくれるような力さえ感じた。

 

 

 

 

まるでジョーのように_

 

 

 

 

 

リョウ「ねぇジョー、私嬉しいよ」

 

ジョー「何が?」

 

リョウ「今日色んなところ一緒に回って、ジョーと一緒に

この景色を見れたから」

 

ジョー「そっか、リョウが嬉しそうで俺も良かったよ」

 

リョウ「ねぇ、なんかこの景色、ジョーみたいで好き」

 

ジョー「意味分かんない(笑)どういうこと?」

 

リョウ「ん〜、何となく…かな」

 

 

と話してると

いつの間にか、その景色は終わってしまい

そろそろ第二の目的地の江の島に着こうとしている。

 

 

 

リョウ「ジョーそろそろ江ノ島着くみたい」

 

ジョー「お、そろそろか」

 

リョウ「だいぶ日が暮れちゃったね。

日が沈んだら灯台から夜景でも一緒に見よ?」

 

ジョー「いいね、夜になるまでなんか

お土産でも見て時間潰す??」

 

リョウ「そうしようよ、ほら江ノ島ついたよ。」

 

 

 

 

 

そうして、私達は江ノ電を降りて

江ノ電江の島駅の近くを流れる川に沿って島の方へ向かう。

 

しばらくジョーと歩調を揃えて歩いて行くと大きな国道に出た

 

ヤシの木が立ち並ぶその道は昔写真で見たことがある

ロサンゼルスの海辺のようで異国情緒が漂っていた。

 

 

 

リョウ「なんかホントにLAみたいだね」

 

ジョー「そう?アメリカ行ったことないから分からないけど」

 

リョウ「でも、こういう感じの街で育ってたらジョーが80'sの

アメリカンハードロックが好きな理由分かる気がする。」

 

ジョー「たしかにそうなのかもな、俺の周りのそういうの好きなやつ

東京よりは確かに多いかも」

 

リョウ「下北沢とかは洋楽って言っても私達の世代だと

Nirvanaとかオルタナグランジ系聞く人のほうが

圧倒的に多いからね」

 

 

ジョー「リョウもオルタナとかグランジ系が好きなの?」

 

 

リョウ「私もNirvanaも好きだけどイングヴェイとか

Deep purpleとかも結構聴くよ」

 

 

ジョー「なるほどな、つまり俺たちは

古き良き時代の生き残りってわけか」

 

 

リョウ「ふふっ、そうかもね」

 

 

 

と私達はそんなことを話しながら

異国情緒溢れる木々が海風で揺れる橋を渡り

江の島の入り口へたどり着く。

 

#18へ続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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