オリ主とエレンの『道』での話し (全智一皆)
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ただの雑談
■ ■
第104期訓練兵団が一人「アレン・ウォーカー」は、非常に優秀な兵士だったと、他の同期は言う。
彼はシガンシナ区の生まれであり、巨人の襲撃によって両親を失った子供だったそうだ。
鎧の巨人という特異な存在の特攻にして壁が破壊され、その落石によって彼の両親は潰されてしまったらしい。
子供である彼だけが生き残り、船に乗った。そして、ある少年の一言を聞き入れた。
『駆逐してやる……この世から、一匹残らず……!』
巨人をこの世界から、一匹残らず駆逐する。涙を流しながら、そう言った少年に幼き彼は感化されたそうだ。
鎧の巨人を必ず殺す。その為に、死ぬ気で努力を続ける事を、幼き彼は誓った。
訓練兵時代から、彼の実力は高かった。
模擬巨人の討伐訓練から集団訓練まで、彼の優秀さは際立たっていた。
一人ではなく多数での行動において、他者を纏め上げる稀有な才能を持っていたと、訓練兵団の師であるキース・シャーディスは語った。
また、彼は友人が非常に多かった。
エレン・イェーガー。同じく家族を巨人に奪われた者同士、通じるものがあったのだろう。互いに、よく頼り合っていたそうだ。
ミカサ・アッカーマン。口下手かつエレンに気を向ける事が多い彼女だが、彼を他の同期よりもかなり信頼していたらしい。エレンと同じく、彼を頼る事は多かったようだ。
アルミン・アルレルト。体力があまり無い事を気にしていたアルミンに、一緒に鍛えようと言っていつも自主訓練を共にしていたらしい。体力や雑学など、互いに頼っていたようだ。
ジャン・キルシュタイン。立体機動の特訓などを共にし、彼はジャンを素直に尊敬していたという。ジャンもまた、彼を信頼し、その強さを尊敬していたようだ。
コニー・スプリンガー。頭が悪い彼に雑学を教えたり、共に特訓をするなど他の同期より仲が良かったようだ。
サシャ・ブラウス。彼女は彼の事を誰よりも信頼しており、同期の中で最も仲が良いのは誰かと問われれば真っ先に彼の名を上げる程だ。
クリスタ・レンズ。彼女もまた彼の事を強く信頼しており、互いに助け助けられる関係であったらしい。また、彼の強さと性格を尊敬もしていたようだ。
ユミル。彼女にとって、彼は悪友だったという。もしも自分が居ない時、クリスタを任せる事が出来る唯一の友であったとも。
ライナー・ブラウン。立体機動の自主訓練の際に体制を崩した彼をベルトルトと共に助け、以降友好関係を築いていたらしい。ライナーにとって、彼は良い友だったようだ。
ベルトルト・フーバー。ライナーと共に彼を助け、以降同じ様に友好関係を築いていたらしい。ベルトルトにとって、彼は私情を挟む程に尊敬し、本当の友だと思える人物だったようだ。
アニ・レオンハート。彼女はよく対人訓練で彼を投げ飛ばしていたようだが、しかし彼にとってアニの対人格闘技術は素晴らしい技術だったようだ。彼女は、彼にそれを教える程度には信頼していたらしい。
この他にも数多くの友好関係を持っていた者達が居り、人類最強の兵士であるリヴァイ兵士長も彼と友好関係を築いていたようだ。
だが―――彼は、既にこの世を去っている。
エレン・イェーガーと同期の皆を守る為、一人で巨人の群れに立ち向かい、そのまま戦死したとされている。
彼らが彼の死を目の当たりにした訳ではないが、しかし生存の確立はゼロに等しい。
何より、それから彼が戻ってくる事が無かったのだから。
彼の死は、必要な犠牲だった。エレン・イェーガーは、そう言った。
□ □
時間の概念など無い、『道』の真ん中。
其処で―――アレン・ウォーカーは座り込んでいた。
「……」
此処が何処か、など彼には分からない。
何もないこの場所に、何故か死んだ仲間が何人も居た。
一緒に学び合ったトーマスとミーナが居た。
壁の穴を塞ぐ為の犠牲になったマルコが居た。
そして―――裏切り者だと罵った、ベルトルトが居た。
此処が死後の世界か。そう、彼は思っていた。
「よぉ…久しぶりだな、アレン。」
久しく聞く事がなかった声が、後ろから掛けられる。
後ろを振り返り、
「あぁ。久しぶりだな―――“エレン”。」
同期にして友人―――エレン・イェーガーと数十年振りの邂逅を果たした。
エレンは彼の隣に座り込み、彼と共に空を見詰めていた。
「…なぁ、エレン。」
「……なんだ?」
「外は、どうだった。自由は―――どうだった?」
気さくな笑みを浮かべながら、アレンはエレンにそう問い掛けた。
壁の外は。そして、其処に有る自由は、どうだった? と。
「ッ」
目を見開いて、すぐにエレンは顔を顰め、俯いた。
だが、アレンは続ける。
「俺は最期まで…自由を得られなかったよ。何とか生きようと頑張ってみたが、不甲斐なく食われちまった。」
生きて帰る、なんて言ったのにな。皆に恥ずかしい事しちゃったよ。
困ったように、アレンは頬をかく。
エレンは、顔を上げない。
「此処には皆が居た。お前と会う前に、ベルトルトと会ったよ。一発ぶん殴ってやった。」
「…ベルトルトは、なんて言ったよ。」
「ごめん、だってさ。それから、色々と話しを聞いた。マーレとかエルディアとか、俺にはさっぱり分からなかったが…ベルトルトは、俺が思っていたよりも俺の事を友達だと思ってくれていたらしい。それが、嬉しかったよ。」
今度は照れ臭そうに、笑う。
ぎり…と、エレンが歯を軋ませる。
「お前はどうだった? ずっと求めてた自由は、」
「ごめん……」
「ごめん…ごめん…っ! 俺は…おれは……!」
エレンは、涙を流していた。
それは、罪悪感。
ミカサやアルミンに次いで、最も仲良くしていた友人を“殺してしまった”事への、罪悪感だった。
エレンは、崩壊したダムのように全てを吐き出した。
地ならしという絶望を発生させた事。
多くの人間を一斉に殺害した事。
仲間を突き放した事。それが仲間を英雄にする為である事。
母親は自分が殺したも同然である事。
お前を殺したのも自分である事。
とにかく多くの事を、一気に吐き出した。
「……そうか。」
アレンはそれを全て聞いて、しかし声を荒らげなかった。
だが―――
「なぁ、エレン。」
「うっ……な、なんだ…?」
「泣いてる所、本当に悪いんだが……一発だけ、殴っていいか?」
青筋が走っていながらも、晴れ空のような笑顔を浮かべながら立ち上がり、拳をエレンへと振り上げた。
振り抜かれた拳は見事にエレンの頬を捉え、エレンを突き飛ばした。
「ふぅ…殴るっていうのは、痛いな、やっぱり。殴る側も、殴られる側も。」
右手の拳を握って開いてを繰り返し、殴る事の痛さを改めて痛感するアレン。
殴り飛ばされたエレンは、驚いた顔でアレンを見ていた。一発殴るだけで、満足なのか? と。
「あーあ! そうかそうか! お互いに想い人にちゃんと気持ちを伝えられないまま死んだか!」
「へ…?」
「お前、ミカサが好きなくせして嫌いなんて言ったんだろ? 突き放す為とはいえ、それは酷いだろ。」
「だ、だって…ミカサを突き放すには、あれくらい言わないと…」
「それはあれか! 自分はミカサに好かれているからっていう惚気か! はー、良いねぇ幼馴染っていうのは! あーあ、俺だってサシャに気持ち伝えたかったなー!」
「え、お前サシャが好きだったのか!?」
「そうだよ、悪いか!」
「いや、悪くはねぇけど…俺はてっきり、クリスタが好きなんだと…」
「んー、クリスタはどっちかと言えば妹みたいな感じだったからな。異性としてはサシャが好きだったよ、俺。サシャの色んな表情が好きだった。」
それから、沢山の事を話した。
色んな事を話した。他愛もない話しを、沢山。
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プロフィール
アレン・ウォーカー(なもないえいゆう)
アレン・ウォーカーとは、名も無い英雄である。
【概要】
第104期訓練兵団の一人にして、調査兵団の一人だった英雄と呼ばれた男。
同期の訓練兵のみならず、駐屯兵団や憲兵団、更には上層部や市長といった多くの人物と友好的な関係を持っていた事が確認されている、誰からも好かれた立派な英雄。
統率力や戦闘力、知識力など様々な分野が秀でており、後に恩師であったキース・シャーディスから「最高の兵士」と言われる事となった。
【人物像】
短い白髪に緑色の瞳を持ち、他の兵士達よりも浮く容姿をしていた。だが、彼を信頼し、友人となった者達は数多かった。
冷静だが温厚的で、しかし誰にも負ける事のない鎧の巨人に対する殺意と憎悪を持った男。また、常に日記を書いていた。
他を纏め上げ、勢いを上げて一気に上位に組み込ませる高い統率力と信頼性を持っており、それを同期の殆どが彼と友人であったという言葉が証明している。
同期の中では、ライナー・ブラウンやベルトルト・フーバーの二人と仲が良く、それは彼等が敵である事を知るまで続いていた。
また、非常に高い実力と技術を持っており、他者の技術を取り入れて高いレベルで再現する事が出来る。
人類最強の兵士と呼ばれるリヴァイが扱う『回転斬り』すらも模倣し、本人を驚かせてみせた。
【最期】
鎧の巨人と超大型巨人、そして獣の巨人が率いた軍勢を何とか撤退させる事が出来た調査兵団。
エレン・イェーガーにミカサ・アッカーマン、アルミン・アルレルトやコニー・スプリンガー達もまた、馬車に乗って壁の中へと撤退しようとするのだが、アニ・レオンハートという氷塊を載せた馬車の速度では追ってくる巨人にいつか追い付かれる。
ガスも刃も心許なく、追い付かれてしまえば全員が危険になる。
エレンが死ねば人類に未来はない。そして、仲間を死なせたくない。そんな想いを手帳に託し、それをエレンに預けた。
ミカサ・アッカーマンは問い掛けた。「何をするつもりなの…!?」と。
彼は何も言わなかった。何も言わず、刃を抜いて巨人の群れへと立ち向かったのだ。
彼は立派な死を遂げた。最期に、仲間を護る事が出来たのだから。
彼が最期の最期まで足掻いた証拠は、数多くの騒動が収まって、外を見た帰りの事だった。
「おい……あれ……」
コニー・スプリンガーは、崖の上を指差した。
全員が、彼が指差した崖の上を見た。
「あれは…」
ハンジは目を見開いた。
「……」
リヴァイは見届けた。
「そ、そんな……」
サシャは口を覆った。
「嘘だろ…おい……」
ジャンは俯いた。
「っ……!」
アルミンは涙を流した。
「あぁ……!」
ミカサは顔を覆った。
「……あぁ………最期まで、戦ったんだな……ありがとう」
エレンは、泣いて、泣いて。しかし、泣きながら、感謝した。
崖の上には、自由の翼が刻まれた緑色のマントが被さった一本のブレードが突き刺さっていた。
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