一夜の過ちから始まる (たーなひ)
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一話 酒は飲んでも

ふと浮かんでおもろそうやったから書きました。
ギャグ寄りではあるよ。


 

 

朝。

 

 

高く上った太陽の光で、微睡む間も無く意識を覚醒させられる。

 

 

(クッソ頭痛ぇ。…てかもう昼過ぎじゃねぇか)

 

 

かっこつけた導入のつもりだったが昨日の酒でも残っていたのか、もう昼過ぎだというのに時計を見るまで気付かなかった。

 

 

「ハァ……」

 

二日酔いの頭痛と二日酔いとはまた違うっぽい原因不明の気怠さで、俺は思わず重苦しい息吐いた。

 

 

 

さて、昨日は何をしていたのだったか。二日酔いで痛む頭を必死に回した。

 

確か深層の遠征から帰ってきて、帰還祝いで馬鹿ほど呑んで飲まれて……。

 

 

 

そんで…。

 

 

 

 

 

(おいおいおいおいおいおい)

 

知らず、頬を冷や汗が伝う。

 

(…そう…そうだ。流れで俺が童貞だって話になって……んで歓楽街の……)

 

そこまで考えて、俺は隣に目を向ける。

 

そこにあるのは、ちょうど人ひとり分の、呼吸によって上下する膨らみ。布団を頭までかぶっているが、はみ出した黒髪は滑らかだ。

 

 

 

「フーーーー…」

 

(よし、落ち着け俺。改めて状況を整理するんだ)

 

まず、大まかな経緯は思い出した。

 

深層への遠征を終えて帰還した俺たちは、帰還祝いのパーティーをした。

その後、酔っぱらった俺は歓楽街に繰り出し、童貞を捨てるべく道行く娼婦に声をかけた。

面白半分に付いてきた仲間たちの期待を裏切り、まさかの一人目でお相手をゲット。

驚いて声も出ない仲間たちを置き去りに、男と女は夜の街に消えた…。

 

 

(ってなんで最後三人称視点なんだよ)

 

セルフツッコミを入れるほどには落ち着いたが、ついに童貞を捨てたことに実感を持った俺は人知れず達成感に酔いしれていた。

酒の力とは恐ろしいもので、普段なら絶対に来ない歓楽街に来て、その上娼婦を引っ掛け一夜を過ごす…などといった俺にとってのある意味偉業を成し遂げた。

 

 

(…で、問題なのは、行為の内容とかどんくらいやったかは兎も角、その相手すらも覚えていないってことだ)

 

そう、そこが問題だ。

一夜の過ちだとか、お酒に任せてというのは、普通に俺の倫理観的には”BAD”だ。少なくとも、例え娼婦が相手だったとしても、朝起きて『何も覚えてません』というのは些か不義理に過ぎるだろう。

 

 

 

 

「…………。……フーーーー」

 

今日何度目かもわからぬ溜息を吐きだした。

 

(ま、まあ、やっちまったもんはしょうがない。とにかく、この子が起きる前に顔ぐらいは確認しないと…)

 

ついに、男は意を決した。

 

(そうだ。俺は冒険者だ!この程度で怯んでどうする!)

 

 

 

が、つい昨日まで童貞だった男には、この─恐らく全裸の女性がいる。しかも童貞を捧げた─布団をめくるには、経験も覚悟も、何もかもが足りていなかった。

 

 

(だ、だが…だがしかし!先にこの女性が目を覚ましたとして、そこで始めて彼女を見た俺はどうなる?

 

『あ、あ、あ、あ、あの…その…』と、気まずくなってしまうことは必須!!)

 

昨晩どのような醜態を晒したか分からない初めての女相手に、まともに話が出来る自信などあろうはずもない。

 

 

(だが、ひとまず顔を見れば……なんか覚悟の準備ができる……気が…する。それに、そう。顔を見て何か思い出す可能性もある!)

 

そうだ。色々な可能性もあるし、その方が確実にベター!

 

(勇気を出すんだ俺!階層主との戦闘に比べれば……まだマシ…だ!)

 

『正直、階層主との戦闘の方がいいなぁ…』と零す小さな俺を端へと追いやる。

 

 

これが!!俺の!!!!”冒険”だぁぁぁぁぁ!!!!!

 

 

ついに男が!!布団をめくる!!

 

 

 

 

 

(あ、なんかこれ、銀魂で見たことある気が………ん?あれ?銀魂ってなんだっけ?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「?????????」

 

絶句。

 

都市有数の冒険者であっても処理しきれない情報が流れこんだためだ。

 

 

 

 

 

艶やかな、腰ほどまであろう長い黒髪。

 

日焼けではなく、アマゾネスの種族的特徴でもある褐色の肌。

 

長い手足と、引き締まりながらも魅力的な体。

 

あとすごいでかい胸。

 

 

 

 

結論を言おう。

 

布団の下にいたのは、まごうことなく。

 

 

イシュタル・ファミリア。その主力である戦闘娼婦(バーベラ)の中でも、トップクラスの実力を持つ女傑。

L()v()()。二つ名は『麗傑(アンティアネイラ)』。

 

名は、アイシャ・ベルカ。

 

 

この女傑が隣でスースーと寝息を立てていたのだ。

 

 

 

当然、これは驚くべきことだ。

二大派閥のような規模でなければ、Lv3以上は主力であり、その名は多くの者が知っている。『麗傑』も例外ではなく、イシュタル・ファミリアの幹部を務める彼女を知らぬ者はそう居ない。

 

それが、隣で寝ている…つまり、昨晩のお相手はこの『麗傑』、アイシャ・ベルカだったわけだ。

 

 

これによって、男の脳はショート。無理もないだろう。酔って捧げた童貞のお相手が、まさかのイシュタル・ファミリアの幹部。

例えどんな経験豊富な男であっても、この状況であればパニックを禁じ得ないだろう。

 

 

 

 

…………が。

 

 

確かにこの事実が男に困惑をもたらしたことは間違いない。

 

だが、()()()()()を些事と割り切れるほどの衝撃が、男の脳内を襲っていた。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

なるほど。

 

わかりやすく言うならば、俺は転生者か、あるいは憑依かというやつなんだろう。

 

 

かつて西暦2023年を生きていた俺は、どうやら死んだらしい。

らしいというのも、俺がよく覚えていないからだ。

 

まあ、その辺はどうだっていい。

 

アニメを見て、大学に行って、友達と遊んで、サークルでサッカーをしたりといった日常の思い出が途切れ、次に記憶があるのは農村での幼少だ。ドラゴンのキーホルダー、戦隊ヒーロー、カタナに憧れる多くの少年の例に埋もれず、英雄の都オラリオに憧れた少年は、齢10歳にしてオラリオに凱旋した。

 

まあ、そこからは色々あり、現在に至る…というわけだ。

 

 

…で、なにより特筆すべきは、この世界、“ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか”、通称ダンまちの原作知識があるという点だ。

 

これらが、二日酔い+頭痛+童貞卒業(前世から続く)+アイシャという特大の衝撃によって呼び起こされた…といった感じだろうか。

 

 

まあともかくとして、晴れて…晴れて?

 

俺は前世の記憶を取り戻したのだった。

 

 

 


 

 

 

アイシャ・ベルカ。イシュタル・ファミリアの幹部であり、Lv3の戦闘娼婦(バーベラ)

周囲の団員からの信頼も厚く、面倒見のいい頼れる姉御ポジションを確立している。色欲に忠実ではあるが、彼女を知る者がその人柄を悪く言うことは無い。アマゾネスらしいサバサバした性格とまとめても良いだろう。

 

だがその人柄故に、彼女はこの上なく無様な『失態』を演じた。

たった一人の哀れな後輩を救うため、彼女は無茶をしたのだった。その代償として、Lv5による蹂躙と、『魅了』という枷をつけられた。

 

それ自体を後悔はしていない。

結果としては問題を先送りにしただけではあったが、彼女の命は先延ばしに出来たのだから。

 

 

 

…とは言ったが、全部忘れて今まで通り生きていけるか、と言われれば当然否だ。

 

骨の髄のさらに奥まで魅了されつくしたアイシャは、少し変わってしまった。

 

(はぁ……)

 

見る男見る男、全てに興味を感じない。元より誰彼構わずというわけでは無いが、自分よりも弱い男の相手をする気など欠片も起きなかった。

 

それも、当然と言えば当然だ。

美の神による魅了は、抗えぬほどの退廃的な快楽と幸福感をもたらす。それを味わった後に、満足に思える夜を過ごせるとは思えなかった。

 

 

(せめて、あたしよりも強い男でも居れば、良いんだけどね…)

 

あわよくば、あの屈辱的な快楽を忘れさせてはくれないだろうか……。

 

 

 

 

そんな折であった。

 

 

「ヘイ!そこの美女!!」

 

Lv3ともなれば感覚も常人とは比べ物にならないため、音の方向や視線を容易に感じ取る。自分に向けられた声だとすぐにわかった。

 

ナンパか……と半ば呆れながらも振り返る。

 

 

「……おや」

 

少し、驚いた。

その男は、アイシャも名を知る男だったからだ。

 

 

男の名は、ライ・レインバック。

若干19歳という若さでありながらLv4に到達した、中堅派閥デュオニュソス・ファミリアの若きエースだ。

 

 

 

「どう?今夜、俺の童貞、貰ってくれない?」

 

ムードもカッコ良さもへったくれもない、最悪の口説き文句ではあっただろう。

加えて、側から見てもわかるベロンベロンの泥酔状態。

 

だがアイシャには、それがちょうど良いぐらいの、都合の良い男に感じた。

Lvで見ても、実績で見ても自分よりも強いのは明らかである上に、伝え聞く人柄もそう悪いものはない。

加えて、ベロンベロンに酔っている訳だから、最悪自分が楽しむ演技が出来ずとも覚えてない可能性もある。

最後に。童貞など久しく食ってないし、童貞なら自分のテクニックがあればどうとでも出来る。

 

 

そう結論を出したアイシャは、妖艶な笑みを貼り付けて答えた。

 

「良いよ。アンタのハ・ジ・メ・テ。あたしが貰ってやるよ」

 

 

 

 

 

 

自身のとっておきの部屋まで連れ込んだアイシャは一、二もなく服を脱ぎ始めた。元よりアマゾネスの服装は踊り子以上に薄着で過激であるため、布など2枚か3枚程度だ。

 

それに、アマゾネスは愛の言葉を囁いたり、風呂で体を洗って清めたりといったまどろっこしいことはしない。

『オラァ!脱げぇ!勃てぇ!!行くゾォ!!酒池肉林じゃうおぉぉぉぉぉ!!』みたいな感じだ。

 

まあアマゾネスと言えども娼婦であるため、一発やってお仕舞い、なんて事にはしない。

が、とりあえずアマゾネスの交尾は全裸になる所からだ。

 

ライをベッドに押し倒し、手際よくズボンのベルトを外し、下着を破り捨てる。………破り捨てるぅ!?

 

 

 

さてさて、新進気鋭若きエースの童貞チ○○はどんなもんかな?

 

 

 

そんな、ワクワクした気持ちでソレを見たアイシャはしばし絶句した。

 

「……………、…………」

 

デ、デカァァァァァイ!!!

 

(こ、これで……童貞でこのデカさ!?まさか、ここまでとはね!)

 

経験豊富なアイシャをしてトップを争うレベルのバベルに、知らずアイシャも興が乗り始める。

 

 

「……フフ。優れた剣士だとは聞いちゃあいたが、まさか下の方もLv4……いや、Lv5並みだったとはね。驚いたよ」

 

「………まぁ、一度も鞘から抜かれた事もない、まっさらな剣なんですけどね」

 

「こんな剣の持ち主のハジメテを貰えるなんて光栄だね」

 

「お、お手柔らかに……」

 

「安心しな。あたしがちゃあんと、リードしてやるからさ…」

 

長い長い夜が始まったのだった。

 

 

 

 

 

 

一概には言えないが、こういったコトには勝敗がつく場合がある。

もちろんお互いが満足出来ればOKなのだが、先に限界に達する、あるいは気絶する、音を挙げる等々の勝敗をつける手段は存在する。

無論、決めなければならないものでもないし、考えながらヤル必要は無い。

 

 

だが、もしも今回、勝敗をつけるとしたら…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

アイシャの完敗であった!!!

 

 

 

まさに“蹂躙”!!かつて自身のファミリアの団長であるLv5にボコられた時以上に。

 

そう。Lv5─第1級冒険者─だったのはデカさだけでは無かった!体力!!精力!!技術!!あらゆる面においてLv5……いやそれ以上のポテンシャルを秘めていたのだ。

 

そして何より、()()()()()()()()()

例えるなら、フレイヤ・ファミリアのガリバー兄弟のように。まさに神レベルの相性の良さこそが、第1級冒険者を誰もまだ見ぬ頂ーLv10へと至るらしめる要因となったのだ。

 

 

 

そして、完全に、完璧に、完膚なきまでにわからされたアイシャ。

 

もはや魅了がどうだとか、相手の強さがどうだとかはどうだって良かった。何もかもを忘れて本能に付き従った。

 

男女はただ、ただひたすらに互いを求め、快楽を貪り続けた。

 

 

果たして、二人同時に互いに精魂尽き果て意識を失ったのは、アイシャの娼婦として…女としての意地だったのか、ライ(童貞)の限界だったのかは誰にも分からない。

 

 

(あぁ………この雄だ…………)

 

 

ただ、眠りに落ちるその瞬間に実感したこの事実こそが、アイシャにとって、女にとって何よりも大事な事だった。

 

 

 


 

 

 

 

 

 

目を閉じていても感じる光が少し強くなったことで、アイシャの意識が覚醒する。

 

未だ抜け切らぬ疲労感の中、瞼を開けると、そこには昨日と変わらぬ男が居た。

 

(あぁ、夢じゃ無かった。昨晩の交わりは、高鳴りは……本当だった)

 

 

こちらを見て、目があったまま固まっている男。

 

 

どうしたのだろうか。

……あぁ、そう言えば、彼は酔っ払っていたのだったか。まだ頭がボーっとしているのだろう。

 

私はただ一つ、確かなことを伝える。

朝方まで続いた長い長い闘いは、私だって事細かに覚えてはいない。

でもそれでも、愛する者と目覚めを共にしたときには。

 

昨晩声をかけられた時のような貼り付けた笑みではなく、ただ快楽を貪る笑みではなく、ただただ愛しいものへ向ける等身大の笑みを向けて。

 

 

「…おはよう」

 

 

そこにいたのは、女傑でも、娼婦でもない。

ただの、愛しい(ヒト)へとびきりの愛を向ける(オンナ)だった。

 




転生して、前世の記憶を思い出したのが今日って話ね。


童貞への偏見えぐい?気のせいよ。




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二話 こういうのって次の日に大体後悔するよね

アイシャって良いキャラよね

ちな、推しはリューさん。あと何故かわからんけどダフネちゃん好きなんよな。



 

 

 

(……OK。一旦…そう、一旦状況を整理しよう)

 

 

未だ混乱は抜けきらないが、落ち着くためにも状況の整理は必須だ。

 

まず、前世の記憶が甦ったということ。

正直、考えたいことは山ほど、山ほどあるのだが、大体のことは一旦脇に置いておく。

 

次に、今の状況。

アイシャが隣で眠っている。つまりは、俺が前世から続く童貞を捧げたのは彼女ということだ。

まあ幸いというべきか不幸というべきか、顔を見たからか昨晩の記憶も大体戻ってきた。

昨晩の互いを求めあう…控えめに言って最高の経験だったといえる。

 

(あ~…クッソ良かったなぁ…)

 

これだけ気持ち良いものだと知っていたなら、変に意地を張って童貞を貫いていたりしなかったろう。

できればもう一回……いや、永遠に味わっていたいと思う。

 

 

 

 

 

……否、やはりこの際正直に言おう。

 

 

惚れました。

 

ハイ。

いや、聞いてほしい。ワンナイトを共に過ごしただけの関係なのは充分に理解しているし、娼婦相手に本気になるなんてどうかしているという意見もわかる。俺だって、仕事で相手をしている嬢相手に貢いだり、本気で恋したりするバカな男を馬鹿にしていたわけだし。

 

しかし、しかしである。

 

そんな理性を彼方に吹き飛ばすほどに彼女との行為は素晴らしかった。

『いや童貞が何言ってんだ。一人しか経験なんてないじゃないか』って言われれば反論などできないが、しょうがないではないか。男というのは馬鹿なのだから。

 

 

一応さらに言い訳をしておく。

元々、アイシャ・ベルカというキャラは普通に好きなのだ。信頼出来るし、最初からいい人感あふれていたし、漢気あふれるいい女だし、強いし、スタイルも良いし胸もでかいと、悪い所なんて精々ちょっとえっちすぎるぐらいのもんだ。まあ、原作の描写でアイシャを嫌いになるような人はそういないだろうが、それでもキャラとして好感が持てるというのは間違いない。

 

……ちなみに、最推しはリューさんである。

いや、()()()

 

なにせ推しランキングは塗り替えられたからだ。

すでに好きな女ランキングでも推しランキングでも二位以下に圧倒的大差をつけてアイシャがトップである。

 

 

 

 

ウダウダと言い訳がましくこの恋を正当化したが、結局のところ『一発ヤって良かったからずっとヤりたい』、だ。

 

 

 

(あ~あ、アイシャも俺と同じようなこと思ってくれてれば良いんだけどなぁ~…)

 

 

 

 

「おはよう」

 

 

 

その声に、俺は意識を現実に戻した。

 

見れば、自然な微笑み(アルカイックスマイル)のアイシャが挨拶をしていた。

昨晩では見ることのなかった表情にドキリとするが、平静を取り繕う。

 

「…おはよう、って言ってももう昼過ぎだけどね」

 

「もうそんな時間か」

 

「うん。まあ…朝方までシてたわけだしね」

 

「それもそうだね。…んっ」

 

伸びをするために起き上がったことで少し声が漏れた上に、その生まれたままの上半身が露わになる。

 

さすがに俺も直視するのは気恥ずかしく、目を逸らしてしまう。

 

が。

 

 

伸びによってハァ~…と漏れ聞こえる吐息で我が愚息は反応してしまう。

頼む大人しくしてくれという俺の願いも虚しく、布団の上からでもわかるほどに膨らみ始める。

 

 

 

 

「フフ…」

 

小さな笑いが聞こえたので見れば、アイシャは俺の愚息を見ていた。

 

「や、これはちがくて!…そう!せ、生理現象だから!」

 

気づかれた恥ずかしさから、まだ何も言っていないのに言い訳らしいものを並べ立てる。

朝までシた後に起き抜けに興奮していると知られるのは何となく不味い気がしたからだ。

 

一体何が不味いと思っているのかは自分でもわかっていないが。

 

 

しかし、俺の内心を見透かしてか、アイシャは俺に寄りかかり、その豊満な胸を押し付ける。

 

「ちょ…あ、アイシャさん?」

 

今度は微笑ではなく、女の笑みで俺を見つめて。

 

「……ヤるかい?」

 

「ヤります」

 

即答だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、俺がファミリアの本拠(ホーム)に戻ってきたのは日が沈む直前のことだった。

 

あれから本当についさっきまでサカっていたが、さすがに互いに帰る必要があるということで、非常に非っっっっ常に名残惜しいが熱い口づけを交わしてから別れたのだった。

 

 

で、当の俺だが。

 

 

 

 

 

 

「あの……入れてもらってもいいでしょうか?」

 

 

「「「「無理」」」」

 

 

絶賛締め出され中であった。

 

一体何が起こってこうなっているのか……事実はこうだ。

 

 

 

 

昨晩、ライと帰還祝いをしていたディオニュソス・ファミリアのパーティメンバーの男性一行によって、泥酔していたライは歓楽街へと誘導された。

そこで、男どもに予想外の事態が起こった。

ナンパの成功。加えてその相手があの“麗傑(アンティアネイラ)”アイシャ・ベルカであったということだ。

 

あまりにも衝撃的すぎる展開の速さに酔っぱらって正常な思考を失った男どもは、呆然と夜の街に消える男女を見送ることしかできなかった。

 

そして、思考が戻ってきた男どもはこの衝撃的な事実をファミリアのメンバーに伝えんと、本拠へと即帰還した。

 

本拠に帰ってきた男どもは、先ほどの事実をファミリアメンバーに言いふらした。

 

 

ここで、ややこしいことが起きた。

 

まず、事実として。件の彼、ライ・レインバックは、同ファミリアの一人の少女から恋心を向けられていた。

だがそれも当然と言えば当然のことだ。19歳という若さでLv4に到達したファミリアのエースで、容姿もそこそこ、性格も問題無い。

加えて言えば、どうやら男どもの話を盗み聞くところ、童貞だというではないか。童貞というのは評価が分かれるところだが、このファミリアの特色でもある高潔な女達からすれば『遊び人・だらしない』よりは遥かに好印象だった。

実際、ライに好意を寄せる少女も奥手で、控えめな子だったので、童貞と聞いて少し安心した節もあった。

 

そして、少女がライを好きということは女達からすれば周知の事実であった。気づいていなかったのは本人(ライ)含めバカな男連中だけだ。

 

だが、好意に気付かなかったライ本人が悪いかと言えば、そんなことはない。

少女は奥手でそれほど積極的なアピールをしていたわけではないし、周りも無理に引っ付けようとはしていなかったのだ。

 

 

で、悲劇は起こった。

 

何も知らぬ(バカ)達によってもたらされた知らせで、件の少女は悲しみに暮れた。

例え娼婦が相手だとしても、好きな人が他人とヤるというのは少女含め女連中にとっては許されざることだったのだ。

 

 

だが、周りの女達は決して可能性を捨てなかった。

『だ、大丈夫だよ!何もせずに帰ってくる可能性だってあるし…ね?』と、わずかな希望にすがり少女を慰めていた。

いや、これは一方的な信頼の押し付けであったのだろう。彼に命を救われたことは何度もある。だから彼ならば…不可能なことでもきっとやり遂げてくれる。

 

 

 

午前3時。

まだ帰ってこない。口には出さなかったが、女達は『あぁ、もう1発ぐらいはヤっただろうなぁ』と考えていた。

 

 

 

 

午前6時。

……いや、逆に考えるんだ。聞いた限りではべろべろに酔っぱらっていたと言うのだから、何もせずに爆睡している可能性もある!

 

 

 

 

 

午前9時。

……。い、いや…だ、大丈夫……だよね?

 

 

 

午前12時。

ついに、このあたりで彼を信頼する人は皆無となった。

少女への慰めは、『きっと大丈夫だよ』から『きっと他にもいい人居るよ』にシフトしていた。

 

 

 

 

 

 

午後3時。

もはや悲しみや呆れを超えて、女たちにあるのは“怒り”であった。

 

 

 

 

 

 

午後6時。

もう日が落ちようという時間になって、彼は帰ってきた。

だが、女達は一縷の望みに賭けていた。何もせず、ただ寝ぼけていただけだったのだと、そんなふうに帰ってくることを。

 

 

だが、そんな望みは打ち砕かれた。

 

妙にツヤツヤな肌。

 

ナニかで体力でも消耗したのか、若干よろつく歩き姿。

 

そして何より、全身から漂う『俺、一皮むけちゃいました』感。

 

 

 

 

結果、女たちの怒りは爆発したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(いや知らんがな)

 

本拠の前で立ち尽くす俺は、意味の分からない女性陣の怒りに困惑を禁じ得なかった。

 

 

「いや、あの、ほんとすんません。や、ほんと」

 

「あんた、何が悪いかわかって謝ってんの?」

 

(で、出た!!『私がなんで怒ってるのかわかる?』に並ぶ世界三大答えの難しい問題!)

 

正直、ライからすれば頭から尻まで聞いても何が悪いのか一切わからない。

というのも、女たちが伝えた内容は少女の好意云々は省いているからだ。最も肝心な部分が隠された問題を解けと言われても分かるわけがないだろう。

 

 

「…や、もう、ほんと勘弁してください」

 

「は?だから何が悪くて謝ってんのって聞いてるんだけど?」

 

理不尽である。

 

「で、でも!確かに俺娼館行きましたけど、他の男連中だって普通に行ってるじゃないですか!なんで俺だけこんな責められてるんですか!」

 

「ぐっ…」

 

痛いところを突かれた女達。

極めて理不尽な怒りを向けていることは彼女たちにも自覚があるのだ。

だが、さすがにもはや冷めている少女の恋心を伝えてしまうのは不味い。

 

結果として、無意味な膠着が続いてしまっている。

 

 

 

 

 

だが、この膠着を吹き飛ばす妖精が現れる。

 

 

「あ……」

 

気付いたのは、門を挟んで通り側を見ている女達が先だった。

 

自分の後ろを見ていると気づいたライは振り返る。

 

 

「……団長か」

 

歩いてきていたのは、我らがディオニュソス・ファミリアの団長のフィルヴィス・シャリアだった。

 

 

俺たちに気付いたフィルヴィスは少し驚いたように立ち止まったが、すぐに先ほどよりも速い速度で歩き出した。

だが門は俺を入れないために閉まっているので、立ち止まらざるを得なかった。

 

 

「……何をしているんだ?」

 

不愛想に問いかけるフィルヴィスに、俺を締め出していた女達は戸惑いながらも答える。

 

「…ただ、雑談してただけ…です。だ、だよね?みんな」

 

「うん」「そうです」と続く女達を怪訝そうに見渡す。

 

だが、不躾に見られるのに不快感を覚えたのか、一人が「な、なんですか?」と聞いた。

 

「門を通りたいんだが、開けてくれないか」

 

そう言われて、女達は謝りながら即座に門を開けた。

 

「…………」

 

開けてもらったフィルヴィスだが、お礼どころか一瞥もすることもなく女達を通り過ぎて本拠へと入っていってしまった。

 

 

 

 

 

 

(空気悪っ!)

 

分かっていたことだが、団長様は相変わらず腫れ物扱いされている。

幸いなのは、あまりにも可哀そうすぎてあれだけ邪見な態度を取っても虐めとかに発展しないということだろう。

 

 

 

妙な気まずい静寂が続いたが、俺が「通って、いい?よな?」と聞くと「う、うん」と答えてくれたので、この気まずい空間を抜け出して無事本拠に帰還を果たしたのだった。




ライ「チソチソが『この雌だ』って言ってんだよね…」
アイシャ「子宮が『この雄だ』って言ってんだよね…」

圧倒的空気の悪さ。フィルヴィスさんさすがっす。

誤字報告たのんます


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三話 ディオニュソス・ファミリア

感想評価ありがとナス!

正直誤字報告がないことにびっくりしてます。んなことある?


 

 

(なぁにやってんだ俺はぁぁぁぁぁ!!!!!)

 

 

 

明くる日の朝。

俺渾身の心の叫びである。

 

色々、まあ、流れとかあるし。やっちまったもんはしょうがない。

昨日のことは切り替えていこう!

 

 

(……とか、そんなんどうでもいいんだよ!!!!!

ふざけんじゃねえよ俺!!!よりにもよって……

 

 

 

ディオニュソス・ファミリアってなんだよぉぉぉぉぉ!!!!)

 

 

 

 

 

さて。

無事前世の記憶を取り戻した俺であったが、昨日は一旦脇に除けた問題を直視するべき時が来たのだ。

 

(ディオニュソスはヤバイ。何がって、もうとにかくヤバイ)

 

あまりにもヤバすぎて語彙力の低下が起きた。

 

正直、オラリオにある数あるファミリアの中でも、屈指のハズレだ。

もしワーストランキングをつけるなら

 

一位 闇派閥(イヴィルス)全部

二位 フレイヤ

三位 ディオニュソス

 

ぐらいには入ってくる。

 

え?フレイヤの方が嫌なのかって?

そりゃそうだろう。死ぬ直前まで戦わされるなんて最悪だし、自由とか無さそうだし。

てかフレイヤ・ファミリアの利点なんてフレイヤとお近づきになれる以外には無いだろう。入りたいってやつはただのフレイヤの狂信者なんで関わらないでください。(偏見)

 

 

まあとにかく、後の展開をある程度知っている者としてディオニュソスはハズレもハズレと言わざるを得ない。

 

 

(いや、待てよ?)

 

しかし、よく考えて見れば、そこまで悪くないように思えてきた。

というのも、最後の方は確かにガチで最悪ではあるが、それまで…それこそ原作開始からそこそこ進むまでは特に問題ない。

それに、別に改宗(コンバージョン)を止めているわけではないだろうし、ヤバくなる前に改宗してしまえばいいのだ。

理想を言えば、原作開始までに改宗(コンバージョン)して、安全に行きたいところだ。

 

そう、長期的に見れば不味いが、短期的に見れば悪くない。

むしろ下手に50階層あたりの超危険階層に行ったりするようなロキと比べても優良な方………なわけねえよ。さすがに美少女達と関わることの方が約束された破滅より良いに決まっている。

 

 

 

ってなわけで、一瞬は絶望した俺だったが、まあ意外と何とかなりそうなことがわかって一安心である。

 

 

 

 

(にしても…ディオニュソス・ファミリアねぇ…)

 

思い起こされるのは、昨日の出来事だ。

 

突如現れた我らが団長、フィルヴィスによって俺たちの間にあった空気はヒエッヒエになってしまった。

だがああいった空気になったのには、どちらにも要因がある。だが大元の原因にはフィルヴィスの過去の出来事が関係している。

 

 

かつては別にそこまで人を邪見に扱ったりするような性格ではなかった。エルフらしい、ちょっと潔癖な女の子だったのだが、それが変わってしまったのは『27階層の悪夢』が起こってからだった。

 

 

『27階層の悪夢』。今から、4年ほど前になるだろうか。

未だ闇派閥(イヴィルス)の活動が活発だった時期の話だ。

 

ダンジョンの27階層で闇派閥の連中による、階層主をも巻き込んだ超大規模な怪物進呈(パス・パレード)が冒険者に対して行われたという事件だ。

この時は闇派閥の幹部の目撃情報があったために、多くの有力な冒険者が27階層に向かっていた。そのため冒険者への被害はとてつもなく大きく、後に救援に駆け付けた冒険者が言うには、広間(ルーム)から、その道まですべてが死体と、死体を貪る怪物(モンスター)に埋め尽くされていたのだとか。

 

しかし、これだけ凄惨な事件でありながらも、生存者が()()()()()()()()()()()

その唯一の生き残りこそが、フィルヴィス・シャリアだった。

 

この世の地獄を見たかのような凄惨な光景だったためか、リヴィラまでたどり着いた彼女はもはや死人のようだったという。

 

 

 

だが、悲劇はこれだけでは終わらない。

 

 

こんな事件があったとしても、彼女は冒険者であった。倒れた冒険者に報いるためか、迷宮へ潜ることをやめはしなかったのだ。

 

当然の話だが、ダンジョンに一人で潜るなんてことは自殺行為であるため、必然誰かしらとパーティを組むことになる。

 

そして、彼女の悲劇はまさにそこだった。

 

 

まるで呪われたかのように、彼女とパーティを組んだ者は全滅した。そう、組んだ者()()()だ。

しかし、彼女自身はなぜか死なずに生き残る。

 

この事実が冒険者達に広まるまでそう時間はかからなかった。

 

そして、彼女は冒険者達にこう呼ばれるに至った。

 

死妖精(バンシー)”と。

 

 

 

 

ってのが、フィルヴィス・シャリアの大まかな来歴である。

曇らせ製造機と名高いダンまち世界においても有数の過去を持つ屈指の曇らせヒロインだ。

 

こんな感じのことがあったので、彼女はあんな風に人に関わらず、関わらせないようにしているというわけだ。

なので根は優しい。悪いやつとか、嫌なやつという訳ではないのだ。

 

それ自体は知っているが故に、ファミリアからは敬遠されながらも虐められたりといった事態には発展していない。

強いて言えば副団長のアウラさんが目に見えて嫌っているような感じなぐらいだ。

 

 

 

あ、俺?俺はアレよ、別に普通よ。

今となっては色々知ってるから、『ネームドキャラだ!』って感動以外にはほぼない。

元々これまでの俺は、気に掛けながらも特に話しかけたりはしない…といった感じだったので、これまでと関わり方に変化はない。

 

 

キャラとしては普通に好きなので、原作通りの活躍をしてほしいところだ。

 

 

 

 

 

 

次に、俺のことだ。

 

 

俺、ライ・レインバックは、Lv4という都市有数の冒険者である。

原作を知る人からすれば『たかだかLv4』と思うかもしれないが、リューさんも同じLvだし、Lv5以上のキャラは超大派閥の幹部数人だけだ。

ネームドのキャラは大体Lvが高いが、それよりも遥かに多いモブキャラのほとんどはLv1だ。実際都市の冒険者の半数以上はLv1だし、Lv2は全体の3~4割を占めている。そのわずかな残りこそがLv3以上の上澄みというわけだ。それを鑑みれば、中堅派閥でありながらLv4というのは破格の強さを誇る。

 

だが正直、ダンジョンのヤバさをこの身と原作知識で実感している俺としては、Lv4では全くもって安心できない。出来ることならとっととLv6あたりになって、一人で安心して深層を闊歩できる程度の強さを手に入れたいところだ。

 

 

 

…ちなみに、俺の二つ名は銀髪からとって“銀騎士(シルヴァリエ)”。…まあ、普通にかっこいいからまだマシな方だ。ダークインフェルノ…だの、ファイヤーフレイム…だのといった中2みたいな名に比べればいくらかマシだ。欲を言えば“静寂”とか“猛者”みたいな、ルビを使わないやつの方が良かったが、そう高くは望むまい。

 

 

 

 

(……ダメだ。腹減った)

 

一応許してくれたっぽいんだが、さすがに女性陣と顔を合わせずらいので時間をずらすべく考え事をして時間を潰していたんだが、もう腹が減りすぎてしんどくなってきた。結構ずらしたから女性陣は食堂にはいないはず。

 

 

 

 

 

食堂に行くと、思った通り女性陣は朝食を食べ終えたようでもう出ていったようだった。

 

が。

 

 

 

「おや?おはよう、ライ」

 

 

 

我らが主神、ディオニュソス様がいた。

 

 

 

 

 

ディオニュソス。

神の例に埋もれず、人間離れした容姿を持っている。タイプでいえば、甘いマスクの貴公子…といったところだろう。

清廉な印象に惹かれてか、女性陣は堅めな性格が多くなっている。もちろん見た目だけでなく、性格も善神として有名であり、特にコレといって悪いところは無い。

彼の司る葡萄酒にかけては酒の神であるソーマをして『俺よりも極まっている』と言わしめるほどだ。

 

 

今の俺としてはちょっとこう……思うところが無いでもない。

とはいえ、そんなふうに思っていることを知られるわけにもいかないので、いつも通りに。

 

 

「おはようございます。ディオニュソス様」

 

「昨日は大変だったみたいだね」

 

「いやぁ、もうほんとに大変でした。俺悪くないですよね?」

 

「う~ん」

 

一応自身の眷属のことであるため、当然少女の恋心も知っているわけだから、女性陣の気持ちもわからないでもない…といった感じである。

 

「え、まさかディオニュソス様、女性陣の味方ですか?」

 

「いやいや。まあ、あの子たちにも色々あるんだよ」

 

「えぇ……」

 

(正直、誠に遺憾であります)

 

「あ、てか、ディオニュソス様も知ってるんですね。俺が歓楽街に行ったこと」

 

「うん。サムたちがあれだけ大声で言いふらしていたからね」

 

「あいつら……後で絶対殴る」

 

「…あれから女性陣にゴミのような目で見られてるし、それで許してあげなさい」

 

「あ、それであいつら昨日からずっと居ないんですね」

 

「うん。さすがに針の筵状態だと本拠にも居ずらいからね」

 

いい気味だ。あいつらのおかげで俺は訳も分からず女性陣に嫌われているのだし。

 

「で、件の女性陣は…?」

 

「あの子たちなら朝早くに揃って出かけて行ったよ」

 

「え。じゃあ俺の朝飯は…」

 

「『無し』だそうだよ」

 

「えぇ…陰湿…」

 

衝撃の事実である。

何せ、ウチでは基本的に女性陣が料理当番を交代して回している。

というのも、ウチの男どもは俺含めて揃って料理がダメダメなのである。下手に食材を無駄にさせるぐらいなら、最初から私らが作った方がマシ!とのこと。ぐうの音も出ません。

 

しかし前世の記憶を取り戻した今の俺は違う。前世では極稀に、Twitterで気になった料理を作ったりしたものだ。だから俺は料理が出来るようになった……と思ったが、この世界にCOOKPAD先生もGoogle先生もいないのだった。やっぱダメじゃん。

 

 

 

そういえば、なぜこんな仕打ちを受けても全然応えていないのか疑問な人もいるかもしれない。

その理由は、こういったことは別に珍しくはないから、だ。

ウチのファミリアは女性がほとんどである。まあこれはディオニュソスの女性人気が高いことが原因なのだが、そのせいかファミリア内では女性の方が立場が強い。

すると、ちょくちょくこんな風になることがある。

 

とはいえ、別に仲が悪いわけではない。向こうも別に悪い人ではないし、俺らも別に人道に反したことはしないから長期化するということもない。むしろこんな風に適度に言ってもらってガス抜きしてもらう方が、いきなり爆発するよりも全然良い。

こっちとしても料理だの家事だのを任せてしまっている負い目もあるし、多少は我慢しようという思いが強いのだ。

 

 

閑話休題。

 

女性陣みんなで仲睦まじいことこの上ないのは結構なのだ。

が、そんな女性陣の中でも殊更浮いた存在がいる。誰あろう。

 

 

 

「おはようございます。ディオニュソス様」

 

 

そう。我らが団長、フィルヴィス・シャリアさんだね!

 

 

「ああ、おはようフィルヴィス」

 

「おはよう、団長」

 

「………」

 

(え、俺は?)

 

え、今、目あったよね?挨拶無しマですか?…と言いたいところだが、彼女はそんなもんだ。

それこそ、まともに会話をするのなんて崇拝しているディオニュソス様だけである。

 

 

「ははは、見ろフィルヴィス。ライが『え?俺には挨拶無しですか!?』って顔をしているぞ」

 

なぜ分かるディオニュソス!"超越存在(デウスデア)め”!

 

「してないです。思ってはいましたけど」

 

見れば、フィルヴィスはしかめっ面で、『えぇぇ…』みたいな顔をしている。

これはアレか?挨拶とかしたくないけど、ディオニュソス様の言ったことだし挨拶した方が良い気がする…的な?

 

ディオニュソス様の『そろそろ仲良い人とか作った方が楽しいぞ』的な気遣いは有難いんですけど…いや、やっぱ有り難くないんで勘弁してください。

 

 

「いや、団長。ほんと、別に気にしないんで」

 

「………」

 

(いや気まず!オカンの知り合いに『ウチの娘可愛いでしょ?付き合ってみたら?』って言われた時かよ)

 

あれマジで気まずい。てかお節介過ぎるからマジでやめてほしい。

 

 

クソ気まずい沈黙が流れる食堂で、『なんでただ朝飯食いに来ただけなのに、朝飯食えない、その上気まずい団長と鉢合わせなきゃいけないんだよ』と内心で毒づく。

 

 

 

 

だが、その状況を打ち破ったのは、思いもよらぬ人間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「邪魔するよ」

 

 

「「「!!??」」」

 

 

突如響いた聞きなれない声に三者は驚いた。

 

予想外への行動が最も早かったのは、フィルヴィスだった。

 

 

「なぜお前がここにいる!!

 

麗傑(アンティアネイラ)!!」

 

 

 

 




ア「邪魔すんで~」

ふぃ「邪魔すんねやったら帰って~」

ア「あいよ~」



フランス語のシュバリエ(騎士) と シルバー(銀) で”シルヴァリエ”。我ながら中々かっこよくね?


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四話 茶番。こんなファミリアは嫌だ。

やっぱ誤字あるよね。
見つけてくれてありがとナス!


「なぜお前がここにいる!!

 

麗傑(アンティアネイラ)!!」

 

突如現れたイシュタル・ファミリアの幹部に、フィルヴィスは即座に反応した。

ファミリアによる襲撃?それとも私怨?多くの疑問はあれど、フィルヴィスは即座に主神を守るべく臨戦態勢を整えた。

 

何故侵入を許した?見張りは……そう言えば今日は女性陣が揃って出掛けているのだったか。形式だけだろうがお誘いはあったので一応知ってはいる。

だがよりにもよってこんな時に来るとは…。

 

「全く。見張りもいないなんて、不用心にも程があるんじゃないのかい?」

 

「余計なお世話だ。それより、私の質問に答えてもらおうか」

 

「せっかちだねぇ。あたしはソコの“銀騎士(シルヴァリエ)に用があるだけだよ」

 

「ライに…?悪いが、野蛮なアマゾネスと関わりのあるような団員ではない。即刻立ち去れ!」

 

……と、ここまでの状況を見て、察するところがあった男二人。

 

((あ、そういえばフィルヴィス(コイツ)、ボッチだった))

 

直近の騒ぎを知っていれば、ふんわりとではあるが状況の把握は容易いはずだ。だがしかし、誰ともコミュニケーションを取らず、騒ぎなどつゆ知らずのフィルヴィスにとってみれば、アイシャの訪問は晴天の霹靂に他ならなかった。

 

 

「あ、あの、団長……?」

 

「ライ!早くディオニュソス様を連れて離れろ!」

 

「え、や、あの……」

 

「早くしろ!!団長命令だ!!」

 

フィルヴィスの剣呑な雰囲気にヒリつき始めていたが、俺の様子を見て薄らではあるが事態を把握し始めたアイシャ。

当然アイシャも“死妖精(バンシー)”の噂は知っているため、同じファミリアであろうと人との関わりが薄いことぐらいは想像がつく。

 

「……どうすんだいこれ」

 

まさにカオス。アイシャがぼやくのも無理はない。

 

 

「ディオニュソス様、なんとかしてください」

 

もはや俺ではどうにもならぬと悟り、主神様に助けを求めた。

 

「……ああ」

 

少しの逡巡のあと、どこか悪どい笑みを浮かべながら俺に笑顔を向けた。

 

瞬間、俺は嫌な予感を感じた。

 

「フィルヴィス!」

 

「はっ!」

 

「ここはライに任せなさい」

 

「は?いや、しかし、私は団長です!守るべき団員を危険に晒すなど……」

 

「Lv3の君より、Lv4のライの方が強いのだから、彼に任せた方が良い…だろう?」

 

少し迷うが、純然たる事実としてLvが高い方が強いというのは納得せざるを得なかった。

 

「……はい」

 

「それで構わないね、ライ?」

 

「は、はい?」

 

(なんだこれ……何やってんだこの(ヒト)……何の茶番だ?)

 

俺は全く主神の行動が理解出来ず固まる。しかしフィルヴィスは主神が決めたこととなれば、即座に行動を開始する。まさに眷属の鏡である。

 

主神をつれて食堂から出て行く二人。を、呆然と見送る俺とアイシャ。

 

 

だが、食堂の出口で立ち止まり、俺を見つめるフィルヴィス。

 

何事かと思って見てみると、何やら口をパクパクとさせて言葉を探しているようだ。

 

「……お」

 

「お?」

 

 

「おはよう」

 

そう言うと、顔を真っ赤にしながら出口を出て行った。

 

 

 

(え、今?)

 

いや、さっきのやり取りの所々にも優しい所とか溢れ出てたんだけど……今更挨拶て……。

まぁ、『挨拶して欲しそうにしてた』→『団員への激励に何と言えば良いか迷った』→『ハッ!?そう言えば挨拶して欲しいって言ってた』→『おはよー!』は分かる……いや、わかんねぇよ。もしかしてディオニュソス様がなんか口出ししたのか?いや、そうに違いない。

 

ほらみろ。廊下の方からディオニュソス様の大爆笑とフィルヴィスのぷりぷり怒った声が聞こえてきた。

 

 

「…どんな茶番だよ」

 

どうやらディオニュソス様の壮大な茶番は、フィルヴィスの挨拶と照れ顔を引っ張り出すためだったらしい。あの愉快犯め……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほどね。良いファミリアじゃないか」

 

「何処がだよ……普通にディオニュソス様が説明すれば終わった話じゃねぇか」

 

あの後、俺とアイシャは本拠(ホーム)を出て、街に繰り出した。

俺が朝飯を食べていないことを知ると、『じゃあ飯でも行くか』ってことになった。

 

で、このカフェで雑談に興じているというわけだ。

 

 

「ちゃんと団長に説明してくれてるかな。帰ってから『無事だったか!?』とか言われたらクソ気不味いんだけど」

 

「フフ……これから無事じゃなくなる可能性もあるんじゃないのかい?」

 

少し舌舐めずりをして、色っぽい雰囲気を出してくるアイシャ。

 

「……こんな真っ昼間から?」

 

「時間なんて関係あるのかい?」

 

「……無いね」

 

「だろう?」

 

「……もしかして、これが目的でウチまで来たの?」

 

「男恋しさに、家まで押し掛けてくるような女は嫌いかい?」

 

「まさか。それがアイシャなら尚更ね」

 

「…嬉しいこと言ってくれるじゃないか」

 

「家まで押しかけて来た女を追い返すようなことを言う男よりは良いだろ?」

 

「違いない。それがライなら尚更さ」

 

……視線を交わし合う二人。

 

横で聞いていた一般人があまりの甘ったるさに吐き気を堪える中、まるで息を合わせたかのように突然立ち上がった二人は歓楽街の方へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日の朝。

 

「はぁ、はぁ…無事にすまなかったのは……あたしの、方だったみたいだね……」

 

「いや、俺も、もう流石に限界……」

 

二人は抱き合いながら眠りに落ちたのだった。

 

で、昼過ぎに起きて、夕方までして解散。

 

いつかのデジャヴを感じざるを得ない。

 

 

そう。

 

 

 

 

「で?こんな時間まで一体何処をほっつき歩いていたのか説明してもらおうか」

 

怒髪天を突く。仁王立ちで俺を待ち受けていたのは、ブチギレた団長、フィルヴィスであった。

 

どうやら、無事では済まなくなるかもです。

 

 

「一応聞くんですけど、ディオニュソス様から説明は……」

 

「聞いた」

 

「ですよねすんません」

 

「で?」

 

「や、ホント、あの……凄く言いにくいんですけど、所謂“お茶”とか“休憩”を……」

 

「は?」

 

「いやいや、こう、隠語的な。エルフってそういう直接的な表現とか苦手かなって…」

 

「それぐらいは知っている。ディオニュソス様と共謀して私を揶揄って楽しかったか?」

 

「うぇ!?知らん知らん!アレはディオニュソス様が勝手にやったことでしょ!?」

 

「ディオニュソス様はお前の発案だと言っていたぞ?」

 

(あんの愉快犯がぁぁぁぁぁ!!!)

 

キラキラスマイルのディオニュソスの顔が目に浮かんだ。

 

「違います!アレはディオニュソス様が……」

 

「ディオニュソス様が、私に嘘をついたと?」

 

(あ、そう言えばコイツほぼ狂信者の域なんだった)

 

「いやいやいや、そうは言ってないんですけどね!こう、あるじゃないですか」

 

「何が?」

 

「粋な計らいといいますか、ただのお茶目な冗談だったといいますか…」

 

「冗談で“麗傑”をけしかけたのか?」

 

(ああもうダーメだこりゃ)

 

もうこの狂信者には話が通じない事を遅れながらも実感した。

もはやジャパニーズ土下座をして許しを乞う以外には無いだろう。

 

 

 

「この度は、誠に申し訳ございませんでした。団長様に於かれましては、この私の土下座にて許して頂けますと幸いにございます」

 

「……なんだ?そのポーズは」

 

「極東における誠心誠意を示す最大の謝罪、土下座にございます」

 

「………」

 

「…………」

 

「あの………」

 

「………はぁ」

 

仕方無い……とでも言いたげなため息を吐くフィルヴィス。

 

 

「…頼むから、ああいったことは二度としないでくれ」

 

 

「……!」

 

元より分かっていたつもりだったが、やはり相変わらず良い人だ。

主神も守ろうとしていたし、何より俺も守ろうという意志が見えた。団長として、ファミリアを守ろうとしているのも伝わった。

 

ディオニュソスは、伝えたかったのだろうか?彼女はファミリアを嫌っているわけでは無いということを。

 

いや、別にそれぐらい俺は知ってるから余計なお世話ではあるんだけどさ。

いや〜。“良いカミサマ”だよね!ホントに。な〜んでこんなことしたのか知らねえけど。

 

 

「分かったか?」

 

「はい。二度としないです」

 

「神に……ディオニュソス様に誓えるか?」

 

「ええ。我が主神ディオニュソス様に誓って」

 

そう言うと、フィルヴィスは俺の答えに満足した様子で戻って行った。

 

 

いやぁ……。

俺もね?フィルヴィスに申し訳ないって気持ちは結構あるからね?そりゃもうああいう茶番には付き合わないようにするんだけどね?

それを誓うのが……あの神ってのがね?

こう……ねぇ?アレに誓って一体何になるのかって感じがするよね。

出来ることならヘスティアとか、ヘファイストス辺りの善神に誓いたいところだった。

 

 

(あぁー。やべ。めちゃくちゃ改宗(コンバージョン)したくなって来た!)

 

早く将来が不安になるようなこんなファミリアから抜けて、安心して過ごせるファミリアに入りたい……。

 

 

 

 

……となれば!

 

 

 

「ダンジョンしかあるまいて!」

 

「そうだ!」「俺たちの居場所は…」「ダンジョンだ!」

 

「行くぞお前ら!」

 

「「「うおおおおおお!!」」」

 

そう。やはりダンジョン!ダンジョンしかない!

ランクアップすれば、俺はレベル5!そうなればディオニュソス・ファミリアで抱え込むには大きすぎる戦力になる。となれば、ヘッドハンティング…大派閥からのお誘いもある……かもしれない!

 

 

「ランクアップするぞオラァぁぁあ!!」

 

「「「うおおおおお!!」」」

 

雄叫びを上げながら中層を突き進む、ディオニュソス・ファミリアの男四人集。

 

……なお実の所、男性陣(俺含め)は先日の騒動以降ファミリアに居づらくなったので、リヴィラに一時避難しようとしているだけである。

 

雄々しい雄叫びに反して、彼らの目には涙があったのだとか、無かったのだとか。それはまるで、反抗期の娘と妻に邪険に扱われ、居酒屋で愚痴る父親のようだったという。

 

 

(俺はいつか絶対!!こんなファミリア辞めてやるからなぁぁぁぁ!!!!)




さて、ギャグっぽい終わり方…まあ終始ほぼギャグなんですが、真面目な話を。


いつも感想評価ありがとうございます。大変励みになっております。

実はこの作品、評価を付ける際に今は20文字以上のコメントをつけてもらうようにしています。
理由としては高評価の際のモチベーションもあるんですが、どちらかと言えば、評価が低い際の理由やコメントが欲しくて、そういう設定にしています。
実際、“こういった要因で嫌いなんだな”と分かることもあります。
正直、今の所いただいてるものは「いや、ギャグやねんから別にそんな気にせんでええやん。」程度のものなのですが、まぁ普通に小説として読んだら確かにご都合主義すぎるというのも分からないでとないな、など。
後、こういう低評価って、相手に何処が悪いか伝えないと生産性が無いと思うんですよね。書き手はただ悲しくなったりイラつくだけだし、読み手も別に改善してもらえる訳ではないし。
そんな訳で、評価の際にはコメントをつけていただくようにしています。
感想の方も、評価のコメントもキチンと目を通しているので、良ければ是非付けてくださると嬉しいです。

これからもご愛顧の程よろしくお願いします。
ちな、次回はスキルなんかの能力関係をちょびっと出す予定です。


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五話 リヴィラにて誓う

感想、評価、誤字報告ありがとうございます!


評価コメントの方で、「ライくんを好きな少女って必要?」って意見がありました。私としては、ライくんの良い人アピというか、人に好かれる程度には良い男なんだぜ…的なのを出そうぐらいの感じでした。実際別にLv4ともなれば全然おかしい話でもないかな?みたいな。
ただ、確かに別にこれから名前をつけるほどのそこまで重要な役割を持つ訳ではないので、実質ただの噛ませというか、ただ可哀想な人になったというのは正にその通りだったと思います。
一応少なくとも後2回は出す予定なので、ここで使い捨てはしないです。

こんな感じで、「うわコレ答えてぇ」ってなったら答えとか書いていこうと思うので、どうしても気になれば聞いてもらっても大丈夫です!結構整合性とか、展開の正当性は大事にしてるので、大体の事には「こういう動機があるってことにしよう」みたいなのは考えてます。(それを貴方が納得出来るかは別ですが……)

先に答えておくと、アイシャ絡みの動機は「ムラっとしたから」「好きだから」「会いたくなっちゃった」「ギャグだから」「ムラっとしたから」「ムラムラしてやった。後悔はしていない」以外では殆ど無いので、返答にはあまり期待しないでください!


 

ダンジョン17階層。

 

一体どこまで続くのか不明なダンジョンにおいては、13〜24階層は中層と区分される。

上層とは比べ物にならない過酷さから最初の死線(ファーストライン)とも呼ばれており、適正がLv2へと跳ね上がる。

 

原作でベル一行は、Lv2のベル以外のヴェルフとリリがLv1という僅か三人の編成で18階層まで到達している。が、これは無謀と言わざるを得ない。

実際に自分が潜っているからこそわかるが、あんなのは自殺行為と言わざるを得ない。というか、あの状況になった時点で普通は詰みだ。

実際死に体でギリッギリでたどり着いたわけだが、一歩間違えれば死んでいただろう。アニメでもなかなかに絶望的な状況を表現できていたが、誰も死んでいない辺りベルのチート具合が伺える。

 

それでも、深層に比べればまだマシな状況だったともいえるのがベルのおかしい所だ。…いや、ホントに何であれで死なないんだよ。

 

 

とにかく、いきなりそんな感じでダンジョンっぽくなる中層ではあるが、今の俺にとってみれば上層とそう変わりはない。

なにせ俺のLvは4。中層ぐらいならステータスでのゴリ押しが十分可能だ。パーティの3人もLv2だし、中々のベテランのため油断とは無縁の存在である。

 

 

僅か5時間という時間で、俺たちは18階層の安全階層(セーフティポイント)を目前にしていた。

 

 

 

「……なんか、音聞こえないか?」

 

「音?」

 

 

Lvが上がるごとに鋭敏になる感覚器官が、異変を察知した。

 

「地響きと…雄叫び…かな?」

 

とにかく、普段のダンジョンでは経験がない異常事態(イレギュラー)であることは明確だ。

深層への遠征を経験した俺たちに慢心はない。

 

 

「どうする?」

 

「普通に考えれば蜻蛉帰りが安定ではあるが…」

 

「俺たちが出てきた意味を考えるとなぁ」

 

「「「それな」」」

 

 

そう、俺たちは本拠(ホーム)に居づらくなって出てきたのだ。

ここで蜻蛉帰りすれば針の筵に逆戻りとなる。

 

が、命よりも大事なものは無いというのも当然のこと。

 

 

「どうするよ、リーダー」

 

「言われてるぞリーダー」

 

誰の事言ってんのか知らねえけど任せたぞリーダー。

 

「いやお前のことだよLv4」

 

「え、いつの間に俺がリーダーになったんですか先輩」

 

「こういう時だけ敬語使ってんじゃねえよ」

 

「うえぇ…マジかよ」

 

うーん…。

正直、この階層なら俺は死なないだろう。単純にLvが高いし、切り札もある。

だが、この3人はLv2。信頼はもちろんあるが、“27階層の悪夢”ばりの状況になったとしたら守り切れるとは思えない。

 

でもなぁ……。

 

 

「な~んか大丈夫なやつの気がするんだよなぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

17階層、嘆きの大壁。

18階層につながる連絡路があるそこには、極大の障害がある。

 

“ゴライアス”。

迷宮の孤王(モンスターレックス)と呼ばれる中層の階層主だ。

迷宮内に1体しか存在できず、一度倒すと復活までに2週間ほどのインターバルがあることが孤王と呼ばれる所以だ。

 

ギルドの推定ではLv4。

ただ正直このLvってあてになるの?って感じだ。別にLv4なら単独で倒せるってわけでもないしなぁ。いや、確かにリューさんなら倒せる気もするが、アレはLv4の最上位だから当てにならない。

ともかく、中層で出現していいような怪物(モンスター)ではないことは確かだ。

 

その強さは、要約すれば『デカい』『強い』『パワー!」『ヤー!!』だ。

7M(メドル)の巨体と、それに見合うパワーと耐久。特殊な攻撃は精々咆哮(ハウル)ぐらいのものだが、力と耐久のごり押しは充分に脅威だ。

 

しかし、普通の冒険者がゴライアスに遭遇することはあまりない。

ロキ・ファミリアやフレイヤ・ファミリアが通る際に雑草感覚で刈り取られ。あるいは、18階層にある“リヴィラ”の冒険者総出で『邪魔じゃボケぇ!』と倒されるからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、良い所に来たな“銀騎士(シルヴァリエ)”!」

 

「ボールスさんか。なるほどね、こういうことだったのか」

 

リヴィラの元締めであるボールスが、俺たちに気付いて声をかけてきた。

 

そう。俺が聞いたあの音は、ゴライアスとリヴィラの冒険者による戦闘音だったようだ。

丁度その討伐のタイミングで出くわしたということだろう。

 

 

「後は頼んだぜLv4!援護“は”俺たちに任せろ!」

 

そう言うと、こちらの返事も聞かずに陣形を組み換えるために指示を飛ばし始めた。

 

 

「…いや、別にいいんだけどさ」

 

そりゃ、こうなっちまったらやるんだけど。人任せってのはなんか納得いかねえ。

 

確かにゴライアスは脅威だ。

リヴィラの冒険者は定期的に討伐しているため慣れてはいるだろうが、当然死傷者は出る。まともに食らえばLv4でも死にかねない攻撃を相手にしているのだから、当然と言えば当然。

ボールスとしても、元締めとして身内の死人が出るのを嫌っているのはわかる。

 

 

「でもさ…こう…言い方とか頼み方とかあるじゃんか…ねぇ?」

 

「「「良いから早く行けよLv4」」」

 

「…へいへい」

 

誰も味方は無しですか。そうですか。

てか、こいつら、絶大な信頼寄せすぎでしょ……。本気で援護全振りにしようとしてない?

 

(まあ、変に怪我とかされるよりはマシか)

 

 

どうやら冒険者たちの配置換えも完了したみたいだし、そろそろ行くとしますか。

 

 

 

剣を抜いて唱える。

 

 

「『不落要塞(シルヴァーグローリー)』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「“銀騎士”の活躍に…カンパーーーイ!!!」

 

 

「「「「うおおおおおおおお!!!!」」」」

 

 

その日の夕方。

 

俺たちは討伐に関わった冒険者みんなとリヴィラの酒場で祝勝会をしていた。

 

 

 

 

「今日は死者0!これも”銀騎士”のおかげだな!!」

 

そう、今日は死者0。

毎度死傷者0とは中々いかないゴライアス討伐だが、俺のおかげでそれが少しでも減ったなら喜ばしいことだ。

だがもちろん、それはここのみんなの協力があってこそだ。

 

 

「いえいえ、俺なんてホント、若輩者で。勝てたのは皆さんのおかげですよ」

 

「「「ひゅ~!謙虚~!」」」

 

「よくわかってるじゃねぇか!今日勝ったのはこの俺様の指揮のおかげだ。なあ?」

 

「「「「………」」」」

 

ボールスが自信満々に入ってきたが、誰一人として反応を返さない。

あれ?と思うのもつかの間、俺は机にダン!と足をのせて立ち上がる。

 

 

「バカ言ってんじゃねぇよボールスこのやろお!」

 

「えっ」

 

突然のため口!基本的に丁寧な物腰のライの暴言に、ボールスは騒然とする。

 

 

「今日はこの俺!銀騎士、ライ・レインバック様のおかげにに決まってるらろうがぁぁぁぁぁ!!」

 

「「「「うおおおおおおお!!!!!」

 

 

「銀騎士!銀騎士!」と銀騎士コールが鳴り響く中、一気飲みで場を盛り上げていく。

 

 

 

「なあ、あいつ、ついさっきまで謙遜してたよな」「しかも呂律もちょっと怪しい」「あいつ飲みすぎじゃ…あ、倒れた」

 

つい先日の出来事もあって、少しお酒を自制しているディオニュソス・ファミリアの男三人。

倒れたライに大爆笑している冒険者達を尻目に、えっほえっほと宿泊地まで運び出していく。

 

 

 

 

 

 

 

「あ、やべ。クッソ気持ち悪おえぇ」

 

「おいバカやめろきたねえな」

 

翌朝。

俺は原因不明()の吐き気にグロッキー状態だった。

一体ぜんたい、なんでなんだろー。さては毒!?おのれディオニュソス!!

 

 

「あ~死ぬ~…」

 

「コイツがこのざまだと探索なんてできないし、今日はリヴィラでゆっくりするぞ。明日はちょっと下に行って、もう一泊して帰るって感じで」

 

「「了解」」

 

「りょ~か~………うぷ」

 

全く。自由行動とは羨ましいものだ。

 

流石に地上ほどではないが、このリヴィラでは、少なくとも冒険者が欲しいと思うようなモノは大体揃う。まあ店を出しているのも冒険者だから、需要を把握しているというところはあるだろう。

ただし、やたらと高い。普通にぼったくりレベルで高い。

それでも買う人がいるのは、ダンジョン内で物資を補給することの困難さを表している。

 

 

ちなみにリヴィラとは何なのかを説明しておくと、“ダンジョン内の街”というのがわかりやすい表現だろうか。

ここ18階層では、新たな怪物は生み出されない。このような場所あるいは階層を、安全階層(セーフティポイント)と呼んでおり、ダンジョンの所々で発見されている。

とはいえダンジョンはダンジョン。異常事態は起こるし、どこかから怪物が侵入してくることもある。

そうして幾度となく壊滅した経験があるこのリヴィラだが、そのたびに作り直され、冒険者の街が出来上がる。

まあ、それだけの手間をかけてでも充分利益と需要が見込めるということだ。

 

 

出来る限りここで物資を買ったりはしない方がいいのだが、どうしようもない時もある。

 

そう、例えば二日酔いでグロッキーな俺のように。

 

 

「あ~…死ぬ~…」

 

「ほら、薬買ってきてやったから飲めよ」

 

「ありがと~…」

 

「ったくよ。いくらしたと思ってんだ」

 

「えー、500ヴァリスぐらい?」

 

「1万だよ!1万!」

 

(高っ!あと声でか!)

 

「ちょ、あの頭痛いんで…」

 

「しるかボケ!」

 

「ひぇ~…」

 

たかが1万ぽっちと思うかもしれないが、二日酔いの薬で1万だ。しかも1服用分。

これからある程度稼ぐつもりとはいえ、小さな出費でもない。

 

 

「大体てめぇが倒れるほど飲まなきゃ薬ももう一泊も必要なかったんだよ!」

 

「はい。おっしゃる通りです」

 

「大体ダンジョンの中で気緩めすぎなんだよ。お前もLv4なんだから、ファミリアの要としての自覚をだなぁ」

 

「はい。すんません。もうお酒やめます、はい」

 

「言ったな?酒やめるって」

 

「はい」

 

いやもう、ほんと頭痛いんで説教はもう勘弁してください。

お酒はもう飲まないんで…てかこんな苦しい思いをするぐらいなら酒をやめた方がマシだ。

 

「一生飲まないんだな?」

 

「いや、一生はちょっと話が違うじゃないですか!そんなの先輩だって出来るわけないでしょうが!」

 

前言撤回。

酒をやめるなんて出来るわけねえだろふざけんな!

いやさすがにしばらくは自粛するけどさ。

 

 

「なら、いつまで」

 

「えっと…一か月とか?」

 

「あ?少しは反省とかないのか?」

 

「ひえっ!じょ、冗談じゃないですか」

 

まっずい。いつになくガチだこの先輩。

全部俺のせいの自業自得とはいえ、さすがに何年間も酒を我慢出来る気がしない。

 

 

 

(なんかいい期間の目安…目標………ハッ!)

 

天啓。

 

 

「Lv5に上がるまで、禁酒します!!」ドン!(ワンピ感)




ライ君は酒自体は『普通に好き』レベルなので、毎日飲まなきゃやってらんないとかじゃないです。ただ、宴席とかではガンガンお酒を飲んで楽しむみたいなタイプ。なお別にそんなに強くはない。


魔法
『不落要塞(シルヴァーグローリー)』
・超短文
・?

効果としては1つだけ。元ネタはデュエマの『無敵城シルヴァーグローリー』とオバロの武技『不落要塞』。

多分雰囲気でチート臭くなるのを感じたかもですが、そんなに使い勝手よくないです。
安心してください。この作品はちゃんとほぼギャグです。


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六話 ダンジョンとテレパス

感想評価誤字報告いつもありがとうございます!
ランキング乗っててビビりました。

誰が喋ってるか分かりにくいところがあるかもしれませんが、その辺は別に誰の言葉か重要じゃないんで適当にお願いします。いちいち「男Aがこう言った。するとBがこう返した」みたいなの書くとテンポ悪いのでね。
ちゃんと喋る人決めたいときには分かるようにします。


 

「ふっかぁぁぁぁぁつ!!!」

 

烈海王ばりの復活を叫んだ俺、ライ・レインバック。

昨日一日寝込んでしまったが、ようやく完全復活を遂げた。

 

 

「ったくよ。今日は頼むぞ」

 

「マジ任せろ」

 

いや、ほんとに。

ゴライアス討伐の報酬は多めにもらえたがそれでも無駄遣いには違いない。

さすがに笑えないレベルの迷惑をかけたので、マジのガチで頑張る。

Lv4の力、見せちゃりますよ!

 

 

 

 

 

ダンジョン24階層。

 

ここまでが18階層より続く大樹の迷宮だが、この次の25階層からは大きく環境が変化する。

25階層以下は分類としては下層になり、危険度も跳ね上がる。

それこそ、例えLv4だろうと一人では死ぬレベルだ。

 

今回、俺たちはたった4人のパーティ。

下層を潜るには余りにも危険過ぎるため、ここまでが限界だ。

ここ24階層もLv2だけで潜るには危険なのだが、Lv4の俺がいれば探索は可能だ。もちろん、無理をすれば普通に死ぬから充分に警戒する必要はある。

 

 

 

「右からデッドリーホーネット!!」

 

「は!?またかよ!?」

 

「数は7…12…17!!」」

 

「17!?それは流石にキツい!」

 

「数をけずりながら下がるぞ!」

 

デッドリーホーネットは、22階層から24階層に出現する蜂型モンスターだ。『上級殺し』とも言われ、その恐ろしさは“数”。

全方向を取り囲まれれば全滅もあり得る恐ろしいモンスターだ。

そのため、囲まれないように位置どりながら数を減らすしかない。

また、耐久はそこまで高くないため、魔法などの広範囲攻撃で殲滅するのが常套手段となっている。

 

17という数はそこまで多くはないが、逆に言えばこれだけしかいないということはあり得ない。17匹を相手にしているうちに30、40と増えていくのが相場だ。

 

 

「これだけの数なら…近くにブラッディハイヴがあるのかもしれねぇな」

 

ブラッディハイヴとは、簡単に言えばデッドリーホーネットの巣のような設置型のモンスターだ。

希少種のモンスターではあるが、近づけば近づくほどデッドリーホーネットが増え続けるため、討伐は非常に困難となっている。

 

「ありえるな。さっきから続けて50匹ぐらいは倒した気がする」

 

「今回は絶対無理だ。大人しく離れよう」

 

「りょ……かい!」

 

下がる味方を殿で援護しながら着いて行く。

 

先輩達は流石ベテランだけあって、引き際の判断も早い。

デッドリーホーネットとの戦いは間違いなく長引くし、長引けば長引くほど他のモンスターの数も増えていく。だからなりふり構わず撤退が正解だ。

 

ただ立て続けの戦闘のせいで、一応金を稼ぎに来たのにろくにアイテムも魔石も拾えないのは悔しいものだ。これが中層以下の嫌なところでもある。そもそも敵が強いから魔石を避けて倒す余裕なんて無いし、魔石を残して倒せても次のモンスターが出てくるせいで魔石を拾う余裕が無い。

上層では魔石なんていくら拾ってもあんまり金にならないのに、いざ中層に来ると拾う余裕すら無いのだから悲しい話だ。

 

 

 

 

「ふぅ〜」

 

最後まで追って来たデッドリーホーネットを切り捨てて、ようやく一息がつけた。結局追って来たのは23体。あのまま留まっていればこの数では済まなかっただろう。

 

 

「なんとか凌いだか」

 

「いやーキツかった。流石にあの数の上級殺しは運が悪いとしか言えないだろ」

 

「それな」

 

「みんな怪我とかは無いな?」

 

「いや、全員無事だ」

 

「よし」

 

「また目的地遠くなったんじゃねぇか?」

 

「……いや、なんだかんだで後少しだ」

 

そう、俺たちは目的があって中層の一番下に来たのだ。

 

その目的地は宝石樹。

その名の通り、宝石を宿す木のことで、非常に希少価値の高いアイテムを手に入れることができる。

ただ、そう簡単にたどりつける場所ではない。

 

中層自体の難易度も当然としてもう一つ。宝材の番人(トレジャーキーパー)の存在だ。

ダンジョン内のこうした貴重な素材やお宝のもとには番人が存在し、冒険者の行く手を阻む。

 

ここ24階層の宝石樹では、木竜(グリーンドラゴン)がそれだ。

階層主を除いて中層最強のモンスターであり、実質的にはちょこっと弱めの階層主のようなものと思ってもらえればいい。

ゴライアスと同じくフィジカルモンスターで、巨体と耐久、パワーが武器だ。ただまぁ、ゴライアスに比べればパワーも耐久も全然低いので全然弱い方だが、それでもLv2のみのパーティでは勝つことは難しいだろう。

 

ちなみに、外伝で出てきた強竜(カドモス)も同じく番人だ。コイツに至っては力だけならゴライアス以上とも言われているらしいし、正直戦いたくはない。

 

 

そんなわけで、みんなある程度物資や精神力(マインド)を温存しながら宝石樹を目指しているというわけだ。

温存の必要が無いのなら、さっきのも魔法で焼き払ってもらうことも可能だったが、木竜を相手にするならそうもいかなかった。

 

 

「んじゃ、とっとと行きますか。また戦闘するのはゴメンだしな」

 

「「「了解」」」

 

 

 

 

 

あれから4度ほどの戦闘を経て、俺たちは宝石樹へと辿り着いた。まあなぜか木竜が居ない…なんてこともなく、戦闘は避けられない。

 

 

「『不落要塞(シルヴァーグローリー)』!!」

 

『グォォォォォ!!!』

 

首を鞭のようにしならせての頭でたたきつけてくる。

まともに当たれば死んでもおかしくない攻撃だが、俺からすればよける必要もない。むしろ攻撃としては『アタリ』の部類だ。

 

 

凄まじい音が響き、たたきつけをまともに食らったはずのライ。しかしパーティメンバーに動揺はかけらも見られない。

 

それもそうだった。なぜならライは吹き飛ぶどころかまるで()()()()()()()()()()()()()()()()()のだから。

 

 

「効かねえんだよ!」

 

そのまま顎に剣を突き刺しそのまま切り裂いていく。

 

頭部を傷つけられ苦しむ木竜も、当然そのままでいるはずもない。暴れ回り、ライを潰さんとしてくる。

 

 

が、一切の痛痒も与えられない。

 

どころか攻撃した部位から斬りつけられ、いたずらに傷を増やすばかり。

 

 

なぜか。

 

 

 

それはライの魔法『不落要塞(シルヴァーグローリー)』によるものだ。

 

その効果は単純。

 

()()()()()()()()()()()』だ。

 

魔法、属性、呪い(カース)付与(エンチャント)された攻撃などを除き、物理的な攻撃を完全に無効化する。

視覚効果としては光の鎧を纏っているように見え、時間がたつにつれて薄くなっていく。

この効果によって、魔法的な攻撃を持たないゴライアス、木竜などを()()()()完封できるというわけである。

 

一見チート魔法ではあるが、当然それに見合う弱みも存在する。

 

その最たるものが、圧倒的な燃費の悪さだ。

まず、Lv4のステイタスでも3回しか打てない。つまり最大でも僅か9分間しか持続しないということだ。

これはダンジョン内においては致命的である。何時間も探索や戦闘を行うダンジョンでは3分×3回では到底足りるはずもなく、使いどころは非常に限られる。

しかも一度使えば、『途中で解除してその時間分の精神力を温存しよう!』なんてこともできない。たった一度の攻撃を防ぐために使っても、3分間は強制的に発動してしまうというわけだ。

 

物理攻撃完全無効ならば、ゴライアスもソロ討伐出来るんじゃ…と思うかもしれないが、そう簡単にはいかない。

あれだけの巨体と耐久を削るには9分では全く足りないのだ。それこそ、先日のゴライアス戦のように周りの援護があってようやく削り切ることができるぐらいだ。

しかし、一応何とか一人で倒す手段も無いこともない。ただ必要なだけのアビリティ…特に魔力があれば、ゴライアスの討伐も夢ではない……はずだ。

 

 

 

閑話休題。

 

今の現状。つまり3分間とはいえ実質無敵状態で、一方的に攻撃しつつヘイトも稼げる前衛のLv4と、Lv2中後衛3人という状態であれば問題なく勝てるというわけだ。

 

 

 

 

「……っし。ちょうど3分ってとこか」

 

『不落要塞』の効果を示す光の鎧が消えるのと同時、木竜も灰になった。

 

木竜が中後衛を狙い始めるようなことがあればもっと時間がかかったろうし、木竜のサイズまで考えると、3分クッキングは上々といえる。

 

 

「相変わらずデタラメな魔法だな」

 

「自分でもそう思うよ」

 

「最初の頃はめちゃくちゃビビりながら攻撃受けてたのにな」

 

いや、そらそうよ。

物理攻撃完全無効化って言われても、最初は仕様とか分からないから「コレ大丈夫だよな!?ホントに大丈夫だよな!?いっ…たくねぇ!!スゲェコレ!」ってビビりながら確かめていくのは当然だった。

 

最初は時間管理もガバガバだったが、体に3分を覚え込ませた。

おかげで今では誰よりも正確にカップヌードルを作れる自信がある。

 

 

「さて。んじゃあ、お待ちかねの…」

 

「本命の宝石樹、頂いて帰るとしよう」

 

 

 

 

 

 

「「「かんぱーい!!」」」

 

「……乾杯」

 

18階層に帰ってきた俺たちは、今回の成果を祝っていた。

 

中層のモンスターの魔石も結構取れたし、ドロップ素材やレアアイテムもいくつかゲットできた。

僅か4人だけであることを考えれば、山分けにしてもかなりの金額を稼ぐことができたというわけだ。

 

正直、お金のことだけを考えるなら今日中に地上に戻って本拠(ホーム)に戻った方が良いに決まっているんだが、さすがに疲労もあるため、一泊してから帰ろうとなったわけだ。あと、酒場まで来て祝ってるのは財布の紐がゆるっゆるに緩んでいるというのもある。

無駄使いは…というのももっともな意見だが、冒険者なんていつ死ぬかわからない職業なんだから宵越しの金は持たない方が良い、という考えの人は多い。今回に限っては俺のせいでの出費もあるし迷惑もかけたから文句も無いし、むしろ借りを返しているぐらいの気持ちだ。

 

 

ただ……。

 

 

「いいなぁ。楽しそうで……」

 

まさかつい昨日禁酒宣言をしたところなのに、昨日の今日で宴会になるとは思わなかった。

もちろん酒を飲まなくてもそれなりに楽しいのだが、酒を飲んで楽しむことを覚えてしまった俺はひどく物足りなさを感じてしまう。

 

 

「ライは飲んだらダメだぞぉ?」

 

「言われなくてもわかってるよ」

 

「いつまでだっけ?」

 

「Lv5になるまで」

 

「おぉ、大きくでたな」

 

全くだ。Lv5というのは現在のかの“剣姫”アイズ・ヴァレンシュタインに並ぶということを指す。

オラリオのトップクラスに並び立とうというのだから、本当に大口を叩いたものだ。

誰に聞いても、数年単位ではほぼ不可能だと答えるだろう。Lv5というのはそれだけの偉業であり、第一級冒険者というのは高みの存在なのだ。

 

 

しかし、俺はこれを数年以内に達成可能なことだと確信している。

手段としては『ゴライアスの単独撃破』だ。アイズが外伝で深層の階層主ウダイオスを倒してレベルアップを果たしたように、階層主の撃破というのは偉業として数えられる。

そしてこれは、俺にとってはそう難しくない。圧倒的に有利な魔法を持っているわけだし、ステータスが足りるようになれば単独の撃破は容易だと見ている。

 

全然数年…それこそ1、2年の間に行ける可能性すらあるはずだ。

細かい季節とか日にちは覚えていないから断言はできないが、ベルがオラリオに来て原作が開始するのがおそらく2年後とかのはずだから、上手くいけばそこまでにLv5に上がれるという目算である。

 

 

(ま、最悪原作イベに介入して“偉業”でも成し遂げれば上がるっしょ)

 

それこそ、黒いゴライアスとかに介入すればさすがに上がるだろう。

そんな甘い考えを決してダンジョンは、神々は許さないということを知るのは随分と後の話になる。

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ~~~……」

 

ズルズルと、男3人を担ぎながら宿へと帰る俺。

 

 

酒が無いとそれほど気分も上がらなかったし、俺の代わりとばかりにこいつらは酔い潰れるしで、先日と状況が完全に逆転した。

 

 

上がらぬ気分を少しでも上げようと上を見上げれば、結晶が月のように美しい明りを放っており、実に幻想的な風景だ。

18階層には“迷宮の楽園(アンダーリゾート)”という呼び名もあり、その所以は天井にある大結晶群によって生み出される幻想的な光だ。

地上の時間と連動して、昼間は明るい光を放ち、夜は星空のような輝きを放つため、時間の指標にもなっている。

 

 

(アイシャに会いてぇなぁ…)

 

美しい景色を見て考えるのは、アイシャのことだった。

願わくば、アイシャも同じように地上の星空を眺めてはいないだろうか。

 

 


 

 

「…!!」

 

「あ、アイシャ?どういたの?いきなり空なんて見上げて」

 

「今、ライが呼んだ気がした」

 

「えぇ…」とドン引きするのはアイシャの同僚、レナだった。

 

先日からライとの逢瀬でファミリアの業務から外れていた影響で、アイシャの仕事はレナに元に回ってきた。

当然、また抜けられればレナの仕事は増える。のにこの女とくれば、また訳の分からないことを言い出した。

 

 

「ちょっとアイシャ?今日はダメだからね?ほんとに、今日こそはダメだからね!?」

 

さすがに普段から世話になっている姉貴分とはいえ、また仕事を増やすのは勘弁して欲しいという思いでいっぱいだった。

 

しかし、当の本人はレナの声が聞こえていないかのようである。

 

アイシャはオラリオ隅から隅まで見回したかと思えば鼻を鳴らして匂いを嗅ぎだした。

訳の分からない奇行に、レナはさらにドン引きした。

 

 

 

アイシャはしばらくそうした後、突然バベルの方へと振り向いたかと思えば、ジッとその根元のダンジョンを睨みつけた。

 

「あ、アイシャ?さっきから何してるの?」

 

「なるほどね、ライはダンジョンか。おそらくは中層……この時間なら18階層ってとこか」

 

「えっ?」

 

「なるほどね。おんなじように、美しい夜空を見上げようってハラかい。随分とロマンチストだねぇ…でも、悪くはない、か」

 

 

そういったアイシャは、ベランダに腰かけ、夜空を見上げ始めてしまった。

それはさながら、星に願いよ届けと祈る少女のようであった。

 

 

「え……えぇ………」

 

徹頭徹尾理解できないレナは、戸惑ったまま呆然としていたのだった。

 




これが!愛ん力だぁぁぁぁぁぁ!!!


一応解説しときます。
ゲーム的に言えばあくまで『無属性物理攻撃を無効化』で、属性が付いたりしたら普通に通る。
無敵じゃん!って思うかもしれないけど、対人だと時間稼がれたら終わりなので思ってるほど無敵じゃないです。



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七話 主神と、n回目の逢瀬

しばらく日常回みたいなのが続くので、展開はそこまで動かないです。銀魂で言う単発ギャグ回的な。

やからちょっと待っててな。
具体的には、話の中の時間で大体3週間分の時間が経つぐらい待ってくれ。

ん~?一体、何で3週間なんだろーなー??
わかる奴おる?



ディオニュソス・ファミリアの本拠(ホーム)、神室。

 

中層から無事帰還した俺は、ステイタス更新を受けるべく、ディオニュソスの部屋を訪れていた。

 

 

 

そもそもファミリアとは、主神である神と、その眷属のことを指す。

主神が自身の血“神血(イコル)”を下界の人間(こども)の背に垂らすことで、その人間はその神の眷属となり、神の恩恵“ステイタス”が刻まれる。

ステイタスを刻まれた人間はLv1となり、恩恵を持たない人間よりも高い能力を持つことになり、モンスターを倒す・鍛錬を積むなどによって経験値(エクセリア)が溜まるようになる。そして溜まった経験値は力・耐久・器用・敏捷・魔力の5つのパラメータの数値に反映される。あるいは、スキルや魔法の発現という形で現れる。

そして、神々ですら認める偉業を成し遂げた者には器の昇華“ランクアップ”が起こる。

 

そうして、はるか昔より下界の人間と神の関係は続いていた。

 

 

 

 

 

 

神血(イコル)を垂らすと、俺の背中に神聖文字(ヒエログリフ)で書かれた文字が光を放つ。

そして更新を終えた神は、俺たちでも読めるように、羊皮紙に共通語(コイネー)で写す。

 

 

「はい。これが今回のステイタスだよ」

 

そう言ったディオニュソスからステイタスを写した紙をもらう。

 

(ふんふん……お、力と魔力の伸びはいいね)

 

ありがてぇ。ゴライアス討伐においてこの二つは重要なステだからな。

 

ベルはバケモノみたいに合計で1,000以上上がったりしていたが、あんなのは例外中の例外だ。普通は1度で上がるのは精々50とか、ガチで死ぬレベルの無理を頑張っても100ぐらいのものだ。

 

 

でも……。

 

(んん?なんか……力と魔力以外のステが……)

 

 

「ディオニュソス様、なんか、思ってたほど伸びてない気がするんですけど」

 

ゴライアス、木竜(グリーンドラゴン)の討伐と中層の探索。

そりゃ、下層に比べれば過酷さや危険は少なかったが、それでもゴライアスと木竜を討伐したことも加味すれば力と魔力以外ももう少し上がってもいいはずだった。

 

 

「ふむ……」

 

考え込むディオニュソス。

 

 

「もしかすると……君の『不落要塞(シルヴァーグローリー)』は、経験値が貯まりにくいのかもしれないね」

 

「と、言いますと?」

 

「君の魔法の効果は、物理の完全無効化だろう?つまり、魔法の発動中は怪我もダメージも無いわけだ」

 

「ほうほう」

 

「そしてステイタス…とりわけ耐久に関しては、受けたダメージがそのまま経験値に繋がるから…」

 

「あ~、なるほど」

 

そういうことかぁ。

 

前は魔法を使える回数が少なかったから、少しぐらいの怪我をしてでも温存していた。だから、特に耐久の増えにくさを実感することは無かった。

だがLv4になってから、ステイタスでのゴリ押しが可能になったことで魔法の使用を強いられることも減った。そのうえ、魔法自体の使用可能回数も増えたことで、1回ぐらいなら割と雑に使うことが出来るようになった。

そのため、ダメージを受ける回数がかなり減ってしまったいうわけだ。

 

深層にでも行けばもっとダメージを受けることは間違い無いのだが、正直もう御免被りたい。いくらLv4でもあそこは地獄だ。少なくともウチのファミリアが潜って良いような階層ではない。あんなのはもう懲り懲りだ。

 

 

「そして器用と敏捷に関しては、魔法を使っている時は回避も受ける技術も、相手の攻撃を見切った技も必要ないから、上がりにくいというわけだ」

 

「それこそ、丁度上質な経験値が手に入るゴライアスと木竜には魔法を使ってるから猶更って感じか」

 

まさかの事実である。

魔法を使わなければ安定しない程の相手に勝っても、肝心の経験値はほぼ得られないとは。

 

(Lvが上がったことで表面化する問題もある…てコト!?)

 

内なるちいかわが出てきてしまった。

 

いや、正直舐めてた。「魔法使って攻撃受けとけば実質耐久無限に上げれんじゃん!」なんて思っていたが、考えてみればそんな楽な方法で経験値が溜まるわけが無いに決まっている。俺は馬鹿か。

でもなぁ…それでも普通に怪我とかしたくないしなぁ……。

 

ゴライアスを倒すだけなら最悪魔力さえあればなんとかなるんだが、ランクアップには必要な評定平均の下限が存在する。だからランクアップするには、ある程度満遍なくステイタスを上げておく必要もあるわけだ。理論上は力と魔力をガン上げして平均を押し上げることも出来るが、そのためにはかなりの経験値が必要になるため、現実的では無い。

 

 

経験値のことを考えるなら深層に行きたいところではあるが、ウチのファミリアでは行けないし、どうせ行くなら安心出来るパーティで行きたいものだ。

 

 

「ライ」

 

「はい?」

 

いつになく真剣な様子のディオニュソス。

 

 

「ウチのファミリアを辞める気はあるかい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「って言うんだよなぁ」

 

「そりゃまた……」

 

その日の夜。

俺はアイシャと数日ぶりに会っていた。

 

 

「ディオニュソス様が言うには、『いずれ君はLv5になるだろうけど、正直ウチにいたらいつレベルアップ出来るのかわからないだろう』だとさ」

 

いや、そりゃそうなんだけどね?確かに今のファミリアでは深層とかで上質な経験値を得られないからね?

俺もディオニュソス・ファミリア辞めたいってさんざん思ってたしね?辞めたいのは辞めたいんだけどね?

 

でもね?

 

(さすがに怪しすぎるんだよなぁ)

 

なにせあのディオニュソスだ。神にしか気付けない何かを感じ取った可能性だってある。

いくら辞めたいと思っていたとしても、別に行動には出していなかったはず。にも拘わらずこういった提案をされるのは、あまりにも俺に都合が良すぎる。

 

もちろん、善神ディオニュソスとしての思考で言えば至極まともな提案だから、俺の考えすぎということもある。

だが普通は神(あるいはファミリア)から見るなら俺が抜けることはマイナスにしかならない。単純に戦力が大幅に下がるし、他派閥を強化することにも繋がる。そうなれば暮らしのレベルもわずかに下げざるを得なくなるだろうからだ。

 

 

「確かに、アンタはあのファミリアの手に余るとはあたしも思ってたけどね」

 

「まあね。今はほぼ俺のワンマンチームだしなぁ」

 

フィルヴィスも一緒に潜ることが出来ればそんなこともないんだが、さすがに死神とダンジョンは遠慮しときます。おめぇの席ねぇから!!

 

 

「……怒らないんだね」

 

「ん?ああ、うん。そうだね」

 

普通に考えれば自分のファミリアを馬鹿にされれば怒ったりするのだろうが、俺にファミリアへの愛着は無いに等しい。

人自体への愛着はあるのだが、ファミリア自体は今の俺にとっては約束された破滅…免れえぬ終焉そのものなのだ。

 

だから、ファミリアを馬鹿にされたとしても、軽んじられても正直何も思わない。

それにまぁ、あの主神だからね……。あの主神のために怒る気にはなれないよ。

 

 

「アンタはオラリオに来た時からディオニュソス・ファミリアだろう?愛着とか無いのかい?」

 

「うーん……人自体には愛着あるんだけどね」

 

「アンタから聞いた話だと、主神も含めて良いファミリアだと思うけど…」

 

まぁ、だって今のディオニュソスは俺たちの前ではなーんにも悪い事なんてしてないからな。

それこそ、俺が真実を告げても誰にも信じられる事はないだろう程に、善神として信じられている。

 

 

「良い人ばっかりではあってもさ。ウチのレベルじゃ下まで潜れないから経験値の効率が悪いんだよなぁ…」

 

「それなら、いっそウチに来るってのはどうだい?」

 

「……本気で行こうかな」

 

「ちょっと。本気にするんじゃない。ただの冗談さ」

 

いやいや、正直完全に無しというわけでもない。

あと数年で消えるファミリアだし、あの化けガエルがいるなら深層へ行くことも可能だろう。

あくまで本当に最後に最後の手段ではあるというだけの話だ。

 

 

「分かってるって。俺もイシュタルは流石に嫌だし」

 

まあ、アイシャとしてもイシュタルと会わせたくなんて無いだろう。俺も会いたくないし、アマゾネス達に貞操を狙われるのもゴメンだ。

特にあのカエルには。今狙われたらさすがにまだ勝てない気がするしな。アレがLv5なのこの世のバグだろマジで。第一級以上はああいうバケモンみたいなやつがなれないようにしてくれ。きもくて強いのがいっちゃん最悪だから。

 

 

 

「ふうん。それって、あたしと一緒のファミリアは嫌ってことかい?」

 

「いやいやいやいやいや、そう言うわけじゃなくてだな」

 

何だこいつ可愛いな。

私とお揃いは嫌ってこと!?みたいなこと言うんじゃねえよ。可愛いな。メンヘラかよ。

 

 

(あ、今のうちに確認しとかないと)

 

 

「てか、それを言うならアイシャが抜ければいいじゃん」

 

「!!」

 

この探りは、わざと踏みに行った地雷だ。踏んで爆発する危険があっても確認できるときにした方が良いと考えたからだ。

 

原作では、アイシャは妹分の命を守るために、超大事なものぶっ壊して団長とイシュタルにガチギレされてボコされた。その上首輪として、アイシャは『魅了』によってイシュタルに逆らえなくされるのだ。

そして、俺が地雷を踏みに行ったのは、この事がもう起こったのかを確認するためだった。

 

もし事が起きた後なら問題は無い。だが起きる前だと、俺がこうして会ったりすることで、事が起きなくなる可能性があった。

 

だが、この反応ならば既に事が起こった後だと考えても間違いないだろう。

薄々そんな気もしていたが、『儀式終わってました~』とかなると原作が崩壊しちゃうからね。念のための確認は大事。

 

 

「……そうだね。いつかはね」

 

(うんうん。やっぱさすがに話してはもらえないか)

 

話してもらいたい気持ちはもちろんあるんだが、困ったことに俺は話さなくていいとも思っている。

アイシャは『アイシャ自身のことは自分の力で』『他人に依存するのは甘え』的な性格や考え方を持っている。ベルを欠いた状態でアンフィス・バエナと遭遇した時の内心のセリフに、アイシャのこうした気高さなどの魅力が詰まっていると言ってもいい。

だから、俺に相談しないアイシャを求めているが、普通の男として相談して欲しいというジレンマがあるというわけだ。

 

ほんま良い女やなぁ。

 

 

「それはそうとして、あんたは飲まないのかい?」

 

「いや、俺は禁酒してるから」

 

「へぇ…そりゃまたなんでだい?」

 

「あ、そうなんだよ、聞いてくれよ。昨日までダンジョンに行ってたんだけどさ」

 

「18階層だろう?」

 

「そうそう、それで……あれ?この話したっけ?」

 

「いいや。ただ、あたしたちは愛でつながってるから、分かったってだけの話さ」

 

「えぇ…」

 

(何それコワい)

 

なんだそりゃ。変なスキルとか出たりしてないだろうな…。

いやでも、アマゾネスの嗅覚とか直感みたいなものは馬鹿にできない。

フィンの絡んだティオネがいい例だ。あれマジ意味わからん勘の良さしてるんだよな。

 

 

「愛ってそんな機能無かった気がするんだけど…」

 

「あたしたちの愛にはあるんだよ」

 

「無敵かよお前。何でも愛で片付けそう」

 

「愛は世界を救うのさ」

 

「愛・アム・ヒーローってか?」

 

「ちょっと何言ってんのかわかんない」

 

「しばくぞお前」

 

 

 

そんな感じでしばらく話した後。

 

 

まあ結局いつも通り、愛だけでなく体で繋がった←上手いこと言ったつもり

 

 

 




ディオニュソス「ウチでは抱え切れない程の大物になっちゃったから、大派閥とかに行って活躍してね」
エニ○オ「Lv5とかは戦況ひっくり返すレベルの個になるから邪魔やしとっとと手放したい。あとフィルヴィスの曇らせに邪魔や。今ファミリアええ感じやねん。出ろ」

就活忙しすぎて全然時間取れんからしばらくゆっくりやるね、ごめんね。


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