せっかく転生したのにイケメンじゃないし嫌な世界に来た (ケリュム)
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イケメンではないようです


 主が転生したのはイケメンの甚爾君ではありませんでした。


〜設定ェ〜

・自身の呪力を固めて打ち出す術式"塊打突呪法"
 (本物の術式は知らないので独創)

・膨大な呪力

・"重い"という呪力特性
 


 

 

 

 若干の劣勢を感じるものの術式を使用し攻撃範囲を広げ挫けることなく数回殴る蹴るの攻防を続けていたが俺は正面からの殴り合いでは勝てるビジョンが見えず地中に呪塊を止める。  しかしそれは簡単にバレるが俺は左右にも呪塊を作っていたのでおとうと相手の胸を狙いクロスするように拳を振り切る。

 

「それは遅すぎますよ()()()

「ガボッ、、、グハ、、っ」!!

 

 、、が、本来俺より圧倒的に身体能力を上回る弟には両手の振り抜きは遅すぎるようで呪力強化している筈の横腹を数発殴られた後顔面を正面から殴られる。鼻が痛いあと皮肉ウザい

 

 弟との殴り合いは術式ありきで若干ついていけている様なギリギリの殴り合い。 俺の拳は本体が当たることは想定しておらず範囲の増えた箇所が当たる事を想定している。

呪力強化してんのに激痛の走る腹と絶対ヒビは入ってるであろう顔面の痛さを無視し、仰け反った途端に両手を地面に着けば脚力のみのドロップキックを繰り出し蹴り飛ばす。

 

「シャ"ラァッッ!!」

 

 防がれてはいるが当たりはした。 そのおかげで結構な勢いで後方に飛んでいるが距離が空くのもマズい、足を地にふれればそいつは捉えるのが面倒な速度で襲ってくるのでそれもダメだそこで再度俺は術式を発動する。俺の生得術式、それは「塊打突(かいだつ)呪法」。

 

 呪力を固めそれを()()とし、それを四肢と連動させる術式だ。一応連動はせずとも動かせるが威力が8割減する。

 

 

フん"ッ!!

 

 俺は仰け反った姿勢を即座に戻すと地面が抉れる程度の脚力で地面を蹴り近づくとここぞとばかりに本来の自身の足と同じ大きさの呪塊を上から叩き下ろす。  コレなら呪力は圧縮され威力は何倍にもなり流石のアイツも食らう場所によって大ダメージを与えられる筈だ……それを何十と墜とす。 因みにコレが当たれば普通に呪霊も祓える威力だ。

 

 しかし戦闘中片目を瞑り一切使用しないという()()で現在俺の右目はかなり良くなりアイツをしんどいが捉えることはできる俺の目には見えた。 当たる寸断に互いの目の端にうつった木を蹴り跳びジグザグと俊敏に動き暗闇の左に入られ目視が不可能になる、ここで目を開けても縛りが消えて元の視界に戻っても本来の俺は弟を捉えることができない。

 

(何で吹き飛ばされてあんな無理な姿勢からいけんだよ!?)

 

 技を放った衝撃で陥没がいくつも出来るが当たっていないのだ。 土煙の舞うなかで死なない程度の渾身の一撃という大隙を作り出した俺は体勢を整える前に横からの衝撃に意識が途絶える。

 

 

_______________________

_____________

 

 

 

  4歳から5歳に上がった時自身の術式に加え転生なる物を経由していることを知覚した。 その時最初の感想は

 

 

「イケメンじゃねぇじゃん」



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恵まれてる?




甚壱はんの術式なんなんでしょうな。描写少なすぎでは、、まぁモブみたいなもんですしね。 だから独創で。


 

 

 俺は転生と聞くとイケメンで、最強で、ハーレムという、認識しかなかったがどうやら俺にはどれも当てはまらないらしい。 俺は眉毛が太く 目も大きくなく まつ毛も長く無い、それの代わりか毛深かった そして鼻もシュッとしていない それでも醜悪な顔では無いし甚爾のイケメンとは違う!という面だ。  まぁ、興味はないが、、、、そして俺の弟はイケてるメンずだったくそ。

 

 しかしそれが霞むくらいに甚爾は不幸だった。 

 

 知識としては知っていたがフィクションではなく現実に呪力が一ミリたりとも無く、呪術師になる事ができないことで禪院家から悪意に晒され孤立している弟を見ているのは心苦しかった。  実際のところ呪具を使えば難なくこなせるだろうが呪力のない者がそうなる事を禪院家は許さなかった。

 

 小さい頃から強い甚爾だが幼い子が反旗を翻す事など考えれもしないだろうし、流石のフィジカルギフテッドも幼い今では禪院家の強者にはまず勝てない。

 

 

 俺の授かった術式は禪院家相伝の術式でもあり、さらに生まれながらの膨大な呪力量、それだけで俺の親、、禪院家は両手を広げて受け入れる。 それに加えて転生?の特典なのか肉体年齢にしては高い知能指数で、俺は神童とまでは言わないものの期待に期待を乗せられ、もてはやされる事の多い生活だった。

 

 まぁ、その反面血反吐を吐く様なキツイ訓練が待っていた訳だが。

 

  

 

 

 

_________________________

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「ッ、、、、」

 

 ハッと目を覚まし俺は頭痛に唸るがそのまま当たりを見回すと俺の頭に飛び膝蹴りをくらわせた男が倒れた巨木に寝転がり呑気に漫画をにやにやしながら黙読をしていた。

 

 

「貴ッ様、、正面から顔を殴るのはわざとだろぅ」イテェ

「さぁなんのことか、、、」

 

 

 頭を触ると髪に砂が結構被さっており、ちらりや後ろをみると地面には引きずった跡があり気絶した俺をここまで()()()()()運んだらしい、、、俺は邪魔な上半身の衣類を脱ぎ戦闘をしていたので地面と素肌が当然擦れ、背中には細かい傷がたくさんできてて痒痛くイラっとする。 片手で難なく持ち運べるだろお前。

 

 立ち上がると同時に空を見るが太陽の進み具合を見ると数分だけ気絶してた様だ。 されど数分、実戦なら殺されてる、まだまだ改良の余地がありまくりだ、、精進しよう。

 

 

 ガキからこの年まで呪術師を続けてきているんだ、食らった瞬間は衝撃が凄かったが完璧に呪力で防護した横腹は既に痛く無いが顔が痛い、主に鼻の骨が。  こういう時は反転術式が欲しくなる、呪力をかなり食うと聞くが殺し合いの最中、負傷を完治させれるアドバンテージは計り知れない。  両面宿儺の様に高速でボコボコと欠損を治せる程の高い技術は求めないが、、、まぁ貰えるならそのレベルも欲しい。

 

 

_____________

 

 

「何が欲しいんだ」?

 

「呪具」

 

「そればっかだなおま、、」

「を買う()

 

「!?、、、なんだ兄の選ぶ呪具では不服か」

 

「アンタ良い呪具買うの向いてねぇよ、、、金がもったいねぇ」

 

「ム 、、、失礼な」

 

「なんなら毎回アンタが呪霊退治に使うあの呪具でもいいんだぜ? アレはアンタが選んだ物で一番マシって感じだ。」

 

「それは受け入れられん、、、! アレは俺が初めて手に入れた買った記念の呪具」

 

「は〜ん」

 

「オイオイ 話を聞けよ?」

 

「まぁとえあえずたんまり金をくれ。 俺はアンタみたいに呪霊ぶっ殺しても金もらねぇんだ」

 

「本当にかわいくないなお前は」

 

「なんだぁ?愛想良くしてれば金が貰えんのか、あ"?!」

「アブッ!?ないぞ漫画を投げるな」

 

 

 着物に付いた砂をパッパと払い捲り上げ、袖に腕を通しながら俺は付き合ってくれた礼のブツを聞くがあの呪具は俺が呪霊や呪詛師の退治という任務を何度もこなして稼いだ、()()()が稼ぎそれで競り落とした俺の呪具だ。 アレはやれん。 甚爾は付ければ威力が上がる呪具とでも思ってるんだろうがあれは呪力が必要だからつかえねぇ。 わざわざ言わないが。

 

 それに欲しい物が金とはかわいくないな昔はなぁ、、、

 

 

 

15年前、、、

 

 

 

 父上と母上も誰も覚えるつもりすら無い甚爾の誕生日。

 その日の数日前、我が家は躯倶留隊(くくるたい)の者などを連れ半年に一度の強化合宿の様なものがあった。  その日やっと合宿は終わりくたくたで家に皆帰宅したのだが俺はその先で購入した真っ赤な金魚を甚爾に与えた。 大きくて生命力の特に強そうなヤツだ。 たまたま覚えており適当に買ったがあの頃はお兄様と!思春期を超える前の高い声でよばれていたのに今では「金ェ」だ。

 

 それに俺を含め皆をアンタやアンタらとしか呼ばれな、、い、、、あぁクソ

 

 

 記憶を辿ると嫌なことまで思い出いだしてしまう。

 

 

 あの金魚はシンプルに誕生日を覚えておりたまたま与えたのだが、それには情緒の捻じ曲がりそうな日々を過ごす甚爾が救いとまでは言わずとも多少ストレスを紛らわせれる様にと願った金魚でもあった、俺はその手助けもしなかったくせに、、。

 

 

 別に嫌な記憶と甚爾と関係ない、ただ俺が産まれてからこう生きていくと勝手に決めて、勝手に憂鬱になって、勝手に疲れてるだけなんだ。

 

 

 転生したという事は知覚した時の情報、それはある意味未来予知のようなもので、それが脳に記憶が混入しただけで肉体が、、そして()が、禪院甚壱本人である事実は変わらない。  何を言ってるのか伝わらんと思うが。  だから原作とかストーリーなんかは考えず目の前の惨状に幼い弟、甚爾をどうにか助けてやれないかと考えた事もあった。

 

 しかしその安易な行動でグラグラな因果を崩してしまい未来が変わってしまう事を危惧した俺は助けるという選択肢を簡単に切り捨てた。 まだ未来を変えたらできる物なのかは知らないが、本編の様にこの世界には五条悟の覚醒は必須だ。

 それに必要なのは全ての因果に囚われない()()甚爾だ。

 その事実がある限り俺は弟を邪険にはしないものの根本的に助ける事ができなかったし ()()()()()。  構い過ぎずある一定の距離を取り甚爾には禪院への恨みを育んでもらう。  家族の様に俺は否定もしない、それに居ない者としても扱わない、ただ普通に弟として構った、兄弟と考えればかなり可愛いもんだ。 その結果今の甚爾の口には俺が関与しなかったせいでそのまま進み痛々しい傷跡が付いている。 仕方のない事だが生傷だった時を思うと嫌な気分になる。

 

 

 それ以前にここは呪霊の蔓延る呪術廻戦の世界でもあり、しかも生活に呪霊を祓う事が組み込まれた禪院家に産み落とされたのだ。 だから俺は現実の面倒臭い事を忘れて目を背け、呪術に意識を向けて生活してきた。

 

 

 

・・・・・

 

 

「知ってると思うが今日は当主が家に来てる、出会えばしっかり挨拶するんだぞ」

 

「あぁするさ」

 

「やけに素直だな、、、」

 

「あの爺さんだろ刀使ってる、え、い、あ、、、?、忘れた」

「扇」

 

「そうそいつの兄貴のほうのちょび髭爺さん」

 

「当主に失礼だ」

「うるせ」

 

 

 俺は甚爾の横でガブガブと酒を飲みながら裏山を降っていく。 俺は酒に強いらしくお酒を飲むのが楽しい。 そんな俺はコロっと酒を色々飲むのが趣味になってしまった。 ついでに酔えない甚爾の目の前で楽しそうに飲むのは気分が良い。そんな事を思いながら俺達は家への帰路に着く。

 

 

 

 





 これからも主人公をゴリラにしていきます(使命感)

 ぶっちゃけあまり伏黒甚爾というキャラに自分はあんまり思い入れがないんですけど。禪院家を使って書くならあった方がいいですかね?

 


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直哉くん

 

 

 離れていく甚爾に俺は手を伸ばすがその手は触れることすらできず、見向きもせずに終わった。 

 

 

 

 

 

「うっゲツ!、、はぁアイツ容赦無さ過ぎだろォ、、ウ"っ」

 

 

 甚爾はしっかり報酬を徴収する為、渡さなくて良いならと話を逸らす俺の雑談を無視し俺の自室まで着いてくる。 目線で「はよしろ」と送られると俺の身長と同じデカい金庫を開けさせる。

 緊急事態時直ぐに運搬ができる様に俺個人の財産をアタッシュケースに分けて入れているのだが甚爾はそれを適当に二つ鷲掴むと俺の静止の声を笑いながら払い退け部屋を出て行った。 まぁ手伝ってもらったんだ、良いか、、と思いたい気持ちとなんだがくやしい気持ちでやけ酒をしていた。

 

 

「おーい、、だれかいない、?のかぁーー!!、、、、」

 

 

 俺の部屋には酒は結構備蓄できるように増築していたけれど流石に食べ物は置いていたくなかったので持ってきてもらおうと屋敷内の女中に聞こえるであろう大きな声を出すが反応がない、、、。  仕方ないと自分のふらつく足取りで厨房におつまみをとりに向かう。  その途中俺は廊下に廊下を曲がろうと進むと、自身の腰当たりの小さな物に衝突し、ソレはドタっと尻もちを立てて倒れる。

 

 

「いツツ、、前見んかい!!」

「おっ、、?すまん見えんかった」

 

 

 それは黒髪のガキで確か、、わざわざ家に来ている叔父兼禪院家当主の直毘人の息子三兄弟の末っ子だっけか。 さっきのドタドタはコイツの兄2人か?数年前に正月に会ったのが最初だったハズ。 術式は直毘人の『投射呪法(とうしゃじゅほう)を引き継いで才能もかなりある優秀なヤツだ。  俺より甘やかされているかなりの悪ガキだ。

 

 

「う"ッ、、酒臭っ、大人として昼から酒飲んで恥ずかしかないんか?」

「お前の父ちゃんも酒飲んでると思うが、、?」

 

 

 まぁコレに関しては言ってる事はグゥの根も出ないくらい正しいな。 しかし睨んでくるガキの目に俺も大人げ無く目を細め若干睨んで見て数秒経つと、俺の目の前を素早い何かが横切ると、持っていた酒が突如手から消える。

 

 

「あ?」

「いい加減な事を抜かすな、、それにしても、若造にしてはいい酒飲んどるのォ?」

 

 

 キュポッと気持ちいい音を立てコルクが抜かれるといつの間にかいた直毘人が人の酒をごくごく音を立てて飲んでいた。

 

 

「飲んでるじゃないっすか直毘人殿、、、かえして」

「父さま!」

「この旨、、小僧の分際で生意気だ、、預かっておこう」

 それ返される時絶対中身無くなったんだろ

 

 

 ヒゲを触りながら喋っている直毘人は人の酒を自分の物が如くしまうと、俺に対してピリピリした息子の手を引いて消えていく、と思うと顔をひょっこりと出す。

 

 

「おぉ、そういえば良い収穫、、忘れておったわ、甚壱おぬし昼飯の後ワシの居る部屋に来い、話がある」

「がってん承知ノ助」

「ん、酔ってるのぉ」

 

 

 

 

 今日昼食はサンマをメインに山菜のスープなどの健康的な和食であった。飯の時間は一つの大部屋に膳を人数分置いて、とるが甚爾はその部屋の端に置かれた飯を食べさせられる。 当の本人はもう気にしていないが。 客人がいれば毎度毎度、あぁは成るなよと見せしめのようにさらかなり胸糞だ。

 

 

 すると酔って気分の良くなった直毘人が皆の前で術式や呪力などを使い、型を見せる。 さすがは年の功、呪力操作はこの場にいるどの人の物より洗練されており周りはやんややんやと盛り上げ煩くなるが俺も凝視する。 ちなみにあのガキ共はあまりそれに興味が無いらしくチラチラ見ることもあるが基本黙々と食事を食べていた。 

 

 さっきぶつかったガキは名前は確か直哉、、三人の中でアイツは直毘人の型もしっかり見ていたがそれ以上に端で黙々と飯を貪る俺の弟甚爾をジロジロと他人にバレない様観察をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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優しい蘭太君様


 いやー完璧に投稿というか小説の事を忘れてました。




 

 

 

8月12日 午前9時24分

 

 

 禅院家当主直毘人の住まう本家の道場、今日(こんにち)そこは朝っぱらから騒がしかった。

 

(これはなかなかに面白いな…っ!!)

 

 

 それというのも今は俺は俺の周りをバタバタとを走り周り気を伺っては攻撃を仕掛けて来る大量のガキを放り投げ訓練をしていた。勿論俺、では無くガキ達の訓練だ。

 

 禅院家には戦闘部隊が3つある、一つ目は、一番人数が多い躯倶留隊、そこは術式を刻まれなかった者が…。 二番目に人数の多い(あかし)これは術式は保持しているものの、()1()()()()()の実力が見込めない者が。 のでこの場にいる子供は皆もう少し大きくなればまず|灯に入隊させられる。

 

 

 

「うあ"ぁああああ"〜ー!!!」

 

「相手の目線を! 頭のてっぺんから足先まで!! 呪力の流れを観察しろッ!!!ぅオ"ラ"ァ"あ"ーー ッ!!

 

「キ"ャ〜!!」

「こっち来んじゃねーよ!!? ぐぇ!」

「に"ゃ"ッ!?」

 

「俺のをっ、くッ…らエェ"ッ!!」

 

「味方が気を引いてからの遠距離はけっこう」

 

「な"ぁッ…!?」

 

「狙いの定まり 呪力の溜め、そして射出する動作がまだまだ未熟だそ"ッ"!!」

 

「うひゃあぁ"あ〜〜っ!!!?」

 

 

 そんな元気ハッスルな時期の餓鬼が24人も居るのでかなり面倒だが、それを躱すか受け流せば両手で掴み目の周りやすい様放り投げ、目を回さず一瞬で臨戦態勢に戻し戦闘に戻るという訓練をしてやっていた。

 

 此処本家に足を運び子供相手に指導をする前までは、俺はこんな事をするならば他の同級の奴に任せて自分の鍛錬に集中したいと思っていたが、練度の低い術式、されど呪霊を祓うことのできる術式の雨霰をさばくのはかなり俺の訓練にもなったので思いのほか途中から俺も本腰を入れ楽しんでいた。

 

 ちなみに二週間前会った直毘人の息子、直哉は2年前にこの訓練を受けた際その歳で、教える側の"柄"の奴を翻弄し、これ見よがしに"才"見せつけたとか。

 

 

 11時まで臨戦態勢以外の訓練を2つ行った、例えば生捕りにした3、4級呪霊を皆で祓ってもらいそこから動きを修正させたり、などなど……そこから12時になる少し前までは俺が考案した一人一人に合った筋トレ方を教えて周ったりと体作り。最後に訓練は終わった。

 

……子供達は朝から昼までほぼ休み無しで訓練を行い、ついに終わったその時身体の体温を冷やそうと速攻で水をがぶ飲みする。 床に汗と口からぼどぼどと(こぼ)す子供達の前で()()は自信ありげな表情で仁王立ちしていた。

 

 

「ふっふっふ…」

 

(ゴクゴク)

「何笑ってんの キモイよ?」

「「「あ は は は は は!!!」」」

 

「みんな甚壱さんに失礼だよ!!」

 

「蘭太くんはやさしいなァ〜……」

「グフ」

「あ"?」

 

 

 呪術師として生きていくうえで大切な事を教えてあげたのにここまで貶されるのは難しいのでは……。

 

 

「お前ら俺のことは先生と呼べ? そして敬語も使え?? あと先生はキモくないぞ」

 

「ん? キモイですよ先生」(何でそこは引き下がらない…)

 

 

 頭の足らない子供達に教えてあげる事を結構楽しんでいた俺は先生と呼ばせる、先生と呼ばれるのは気分がいいからな。 ほぼ無条件で頼まれているからこれくらいなら許される筈だ。

 

 

「ゴホンッ!!  えぇ今日先生のスパルタ訓練を頑張って完遂皆には先生()()を準備しましたァ〜! お前らァ外を見ろ!!!」

 

 

 子供時代の吐く様な訓練の時は、鞭 鞭 鞭 とアメのない過酷な訓練ばかりだった。 だから甚壱は直毘人にコレを数週間の教育係を任された時俺が教えるならキッチリする場所はは"鞭"を、それが済めば"アメ"をという教えで鍛えてやりたいと強く思っていた。

 

 のでとある物を準備をしていた。 それというのも!!

 

 夏の定番

 

「みんな大好き!! なが」

流しそうめんだぁああ!!!」

 

 

 道場を出てすぐそこにはいつでも水を流せる準備の済んだ長い竹が置かれ、その横の長机には既にゆがかれ氷水に入った麺!!。

(ちなみに水を流す半分に割った竹(かけい)?は自作した物で所謂DIY!! 買うのは金が勿体な…いや、ケチなわけなんじゃない自作出来るならしたほうがいいに決まってるだろ?。タブン  自分で竹を切って簡単に形を変えれる様に俺は作ったからその時その時で形や長さを自由変えれて楽しめるしよ……。)

 

 

 

 子供達は数分前まで暑さに晒されながら過酷な訓練をしており、すでにお腹もぺこぺこ状態…そんな可哀想な子供達に訓練時間外での発言権は甚壱には基本無い。 ので甚壱の声に被せる様に(故意に被せた訳では無い)放ったとある子供の一声で子供達は固まった甚壱をほっぽり一斉にそこへ向かうのだった。

 

 

(俺の……」

 

「甚壱さ…先生も行きましょう」

 

「お、う」(家にも、気を使える奴もいるんだな…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 いや〜投稿うんぬんの前に小説の事を忘れてましたすいません(誰も待ってない)

 調べて見たら原作で直哉って五条悟と大して年変わらないみたいですね、蘭太君も直哉よりは年下みたいやけど、そこもあんまし変わらないんですねェ〜。


 こういう小さな話や主人公の成長(ゴリラ化)とかの小さな話なんかの時間は飛ばして原作に行ったほうがいいですかね?


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友達は多くて損はない

 

 

 8月15日午前2時26分

 

 大学生男女5名がとある廃神社へ向かい、姿を消した。  そして11時56分現場へ向かった・準一級呪術師 神谷 曾野・2級呪術師 木口 相馬、相澤 享。 そして同伴した窓合わせて8名が消息を絶ったことで1級案件となった。

 

 

 そして元々少ない呪術師をこれ以上減らさまいと、上はその危険度の高い案件を安定して処理する為御三家の1級相当の呪術師を動かすよう依頼した。

 

 

 

・・・・・・・8月15日午後2時16分

 

 

 

 

 

 現場へ向かう車内、甚壱は現在進行形で後部座席2席を贅沢に使いねころがってイビキをかき眠りこける。

 

 呪術師だけに言える事ではないが、呪いを祓いに向かうというのは()()慣れようとも、緊張はするはずだ。 しかし街を走るその車内には何故かその状況にそぐわない()()、が乗車していた。

 

 

「…ショウ ……()()()()!!」

 

「んぉあ〜〜ッッ ……なんだ 」オコスナヨ

 

 

 子供は運転士の助手席座っており、後ろに体ごと後ろは向け 甚壱に話しかける。

 

 

「師匠!!躯倶留隊の皆さんは今回なんでいないんですか?」

 

 

 先生や 何々"さん"付けは気分がいい、が、"師匠"は非常にこそばがゆい、てか不快だ。

 

 

「ッ…おい待て、ここ数日思っていたがキモイから"甚壱さん"か"甚さん"にしろ()()郎」

 

「は、い 分かりました…って、蘭太ですってオレは!!郎を付けないで下さいよぉ」

 

「そんな事はどうでもいいんだよ、それとさっきの質問は単純だ。 それは俺が強いからだッ。がっははっはは!」

 

「なるほど!」

 

「おい突っ込め、恥ずかしいだろ。// それにあいつらだって術式が無いなりに必死に頑張っているんだぞ!?なんてことを言うだ貴様!!」

 

「す、すみません……!!。」

(オレ何も言ってなくない!?)

 

 

 突然の叱咤(シッタ)に困惑し咄嗟(トッサ)に謝るが解せない蘭太。

 

 

「まぁ冗談だ…今回の案件はアイツらに仕込んだコンビネーションでも厳しい相手の可能性が高いからな、アイツらをそんな危険にぶちこむ程俺は厳しくない」

 

(オレは連れてくんですね…)

「なるほど……でも、し…甚さんは十分強いですよ。あまり言いたくないんですが…父様より強いです、たぶん…。」

 

「はは、嬉しいこと言ってくれるな。 でもなお前ぐらいのチビは自分の父ちゃんが最強だと思っときゃいいんだよ。」

 

「でもオレに足りない事を埋めるには父様では無く貴方なんです、甚さん。」

 

 

 揺れる車内で蘭太の眼差しは一切揺れず甚壱を射止める。 

 

 

「……マセてんな……教えてやったガキどももだが、もっと子供らしくなれんのか」

 

「すみません、ちょっと…分かりません…」

 

(そういうとこなんだが)

 

 

______________________

 

 

「先生、オレはここにいるみんなより、よわいこと…ッ! たくさん…いっぱいいっぱい分かってるんです!。  どうかお願いせんせぇ…父様に失望されないように!!、オレに……オレに足りない物を教えてッ下さいッ…」

 

 

_____________

__________________________

 

 

(あれだけ言われたら断れんよな)

 

 

 それから数分沈黙が続く中甚壱は運転中のまど()に言う。

 

 

「そこ、右に曲がった先の駅に同行する奴が居る、拾ってくれ岩野。」

 

「は、はあ……?」

 

「なんだぁ? どの道任務は今日中に完了させる、金はたんまり受け取ったしな。 それに時間が迫っている なんて事はないだろう岩野?」

 

「えぇ、まぁ…大丈夫なのですが今回の任務に当たるのは貴方のみと聞いておりましたので……」

 

コレ(蘭太)がいるからな、それに…」

 

 

 そうやって雑談の後、車は駅の駐車場へと入る。

 

 

「この時間に来いと言ったからな……………お、来た来た!」

 

 

 車から出た甚壱はこちらへ向かってくる男に手を振る。

 

 

「岩野来たからそろそろ出す準備を。 おいお前はこっちだ蘭太」

 

「うぉあッ!!?」

 

 

 俺は相席でちょこんと座る蘭太を片手で持ち上げると後部座席に、つまり俺の隣に座らせると、同時に相席のドアが開くと大きなカバンを持ちムスッとした男が席に着く。

 

 

「よぉ正道(まさみち)元気やってるか!。」

 

「突然呼び出すな甚。」

 

「久しぶりだし小言は勘弁してくれ。」

 

「……」

 

「ん?」

 

 

 正道は細めた瞳で後部座席でニマニマする甚壱を直視するが、その斜め下で気まずそうにする人物に声を上げる。

 

 

ハァ"ッ!!? なんで子供が乗ってる?! 俺が納得する説明をしろ甚!!。」

 

「禅院蘭太だ親戚で俺の教え子。」

 

「で?」

「急かすな」汗汗

 

「危ないが強い呪霊を見ておくのは良い経験にも向上心もにも良く効くだろう?」

 

「資料は見たが今回の案件は見物させるには少々危険だろう!?」

 

「分かっている、その為の正道 君!、チミの出番なんだ。 引き受けてくれるなら()()の件俺だけならダメだが、その1人になってやらんことも無いかもしれんかもな?」

 

「どっちだそれは……」

 

 

 向上心のある準一級の術師はこれで基本落とせるか助かる。

 

 

「まぁ今日の任務でどんな感じか、にもよるけどな。 あ、来てくれんなら報酬はちゃんと払うぜ?」

 

「甚さんこの人は?」

 

「ん〜同期?知人? まぁ同じなのは年齢だけで面識を持ったのはここ2年の最近だが。あ、じゃあ友達だな。」

 

 

 夜蛾 正道(やが まさみち)、将来東京高の学長になる男。 出会ったのはお互い二級呪術師の時で、まだ"灯"にいた2年前。 2人は等級が同じだったが、同じ任務に行った際甚壱が黒閃を炸裂させ、急成長した事で一足先に1級相当、つまり"特別一級術師"なった事で昇進を、理由に時々手伝ってもらっている。

 

 しかし甚壱当人は準一級の正道が1級になるのはまだ早いかなと思っている。

 

 

 

________________

__________

 

 

 8月15日 午後3時18分

 

 

 今回、窓も巻き込まれるという、珍しいケースの案件の為、窓は現場から離れた位置に車を止め、呪術師一行はそこからは徒歩で進む。

 

 

「緊張するか? 蘭太」ニヤニヤ

 

「それは…は、い…」

 

「バカか現場が初めてで危ない案件なんだぞ、当たり前だ!。」ギャ

 

「あ〜、カバンのキーホルダー作ったやつか?可愛いな」

 

「そうだろ? 初めて意見が合うな」

 

「…………甚さんや正道さんは緊張や怖かったりなんか無いんですか?」

 

 

「俺は無いな、コイツらがいるからな。 なかなかカワイイだろ蘭太君?」

 

 

 正道はそう言うとカバンの中の呪骸に呪力を少し送って操り、カバンから上半身をだし蘭太に向けて手を振らせる。

 

 

「コイツが自作した呪骸なんだよ、結構カワイイだろ蘭太?」

 

「え、ぁあ……とてもすごくカワイイ…ですね ハイ。」

(抱き心地()いいなコレ)

 

「んー俺はちょい怖…いのか、な?。」

 

「え!? 甚さんに怖いとかいう感情あるんですね」

 

「な!? 失礼な……いや呪霊は怖くないんだが…いかんせん夜の廃墟とか森?の暗い雰囲気はシンプルに怖いな。 本能的恐怖というのか……あ〜、あと明るくてもな どんよりしたのは苦手だな…あんな感じで」

 

 

 昼間の過ぎた時間、剃ったヒゲは若干生えてきており甚壱はそれを指先でクイクイと引っ張り遊びながら答えていたがふと何かに気づき、遊んでいた指で蘭太の視線を誘導させる。

 

 

「う、ゎあ…。」

 

 

 蘭太の見た光景は至って普通、ただコンクリートが途切れた森の入り口。 砂利の林道の左右には大きな木が当然生い茂り太陽の光が草木を通り抜けていた。

 

 それは普通、田舎の方ならよく見る()()の光景の筈だが、その言葉には言い表せない、おどろおどろしいく生ぬるい空気にが漂っており、蘭太の皮膚からは脂汗が止まらない。

 

 

「コレは…やめた方がいいんじゃないか? 今からでも窓の所へ…」

 

「大丈夫だよ正みっちゃん」

 

「やめろ気色悪い」

 

 

 至ってまともな意見に甚壱はおちゃらけて返す。

 

 

「今までの経験上この感じ的には…そんな等級無いが、準特級クラスだと思うぞ?…もしもの事があっても俺が2人とも逃して呪いを託して成長を促す寸法だ。」イイダロ?

 

「ッ……!!?」

「甚…託された側はキツいのは知っているだろ…流石に勘弁してくれ…」

 

「はは…まぁ元来特別一級呪術師・柄 所属のエリート呪術師禅の院甚壱の俺1人で事足りる任務だからなァ〜。……ん? どうしたんだね蘭太郎君」??

 

「…いえ、なんでも無いです甚さん。 それと正道お兄さん。」

 

 

 正道は甚壱にアイアンクローをしながら少年を見る。

 

 

「今日会ったばっかのオレを心配してくれてありがとうございます。 でも決心は付いたので心配しないでください!!。」

 

 

 現場に出る呪術師には常日頃からあんな冗談の様な事が付きまとうということを大人2人を見て嫌でも分からせられた。 蘭太はその日決心をした。






 甚壱君の話していた"窓"岩野さんの初めて送迎した御三家の呪術師は甚壱で、初対面時はびくびくしていたが、2、3回送迎するうちに、甚壱が嫌な呪術師ではないと認知し緊張しなくなった。





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獅林



 甚壱の術式の技名の数漢字はその数だけ呪塊を打ち出すと言う事です。 のでこの術式は基本呪力量に依存する。

 甚壱の呪力量は全盛期五条悟の少し少ないレベルで莫大。 でも六眼のない甚壱は当然ゴリゴリ呪力が減る。 それに加えて術式の関係上減りが早い。
 ので確実と思った攻撃以外ではあまり使わないよう心がけている。


 

 

 (やしろ)付近にて……

 

 

「闇より出でて闇より黒く その汚れを禊ぎ祓え…。」

 

 

 明るい空はジワジワと黒に侵食される。

 

 

「う……わぁ…ッ!!  初めて見ましたオレ! 凄いですね正道お兄さんッ。」

 

「なんで産まれてから日々鍛錬をしてきた俺ができなくて。 学生になってから呪術を習ったお前が使えるんだッ!!。」

 

「ほんといい性格しているよ前は」

 

 

 ニヤつく正道に?マークを頭に浮かべて蘭太は疑問をぶつける。

 

 

「何がどうしたんですか?」

 

「この特別一級呪術師様は、帳すら下せないくらい結界術の才能が無いんだよ。」

 

「バカにするなッ!! 一級でも無いくせに!」

 

「なるほど今日は窓がついてこれないから正道お兄さんを呼んだのか……。」

(オレも結界術は習ったけど実戦も練習もまだした事ないしな)

 

 

「ハッ……気分がいいな。 なぁ蘭太君もそう思うだろう??」

 

「あはは……でもそうですね…甚さんにも欠点?みたいなものがあって、なんだか少し安心しました。 やっぱり完璧な呪術師はいないんですねぇ。」

 

「うっせ……っ!!。」

 

 

 家や私有地での訓練に明け暮れ任務に行ったことのない蘭太は空に天井ができる様を見て、心ここに在らずといった様子だ。 子供が任務に出ることは本当に滅多に無いのだが。

 

 

ガゴン

 

 

 

 

 

ガゴンッ

 

 

 

 

 

ガゴン ガゴン

 

 

 

……しかし事態は帳が完全に展開されると同時に状況は一変する。

 

 

「危ないッ!!?。」

 

 

ト"カ" コ"ン"!!!

 

 

 そんな、何かと何かが猛スピードでぶつかりあったような激突音が響き、蘭太が気づいた時にはすでに呪骸を数体出し臨戦態勢になった正道の腕の中にいた。

 

 その衝撃音の正体は察しの通り呪霊、太く筋肉質だが異様に短い足に不気味な長い胴、そこに手と思われる部位は生えておらず、その頭は獅子舞と人間の間の様な、いかにも呪霊と言う(なり)であり、正道は目の前の光景が信じられなかった。

 

 そこには甚壱が、ガタガタの大きな歯を持つ獅子舞の頭に、頭のてっぺんから腰までをガボリと咥えられた姿があり、その大きな口元には大量の赤黒い()()()()()()()()()()

 

 

(…アイツがやられる呪霊の出現…か。)

 

 

 

 目の前で起きた事に現実味が無いのか、目をかっぴらき呪霊を直視する蘭太を背後にまわす。

 

 

 

「…ハッ?」

「蘭太君、落ち着けッ!。 アレは私が祓う!! 君はアレより蠅頭を気にしてくれッ!!」

 

「も、しかして甚さんですかアレ…?」

 

「安心しろきっと-多分…いや、もしかしたら生きてるかもしれない。」

 

 

 まだ現場を見たことのない絶望する子供を見てしまい、正道はやはり連れてくる事は間違いだった。 と、分かりきっていた事を再度思い、食いしばる。 しかしそんな事を気にしている暇はないのだ、呪術師には。

 

 正道は護衛タイプの呪骸ハリネズミのガード君に呪力を込め、蘭太の隣に置くと、呪霊を睨む。

 

 

「メルヘン、大和ッ! 叩き潰せッ!!。」

 

 

 走り出したと同時に呪骸を動かす叫び声。 その裏で、正道は攻撃型の呪骸"ナックル"、"ビタニ"を背後の木を登らせ、ナックルは上空ビタニは背後へ回し奇襲を任せる。 そして己とメルヘン、そして大和は気を引く打撃を。

 

 

 甚壱を咥えた呪霊は無情にも、犬が獲物の脊髄を噛み砕き トドメを刺す様に頭を乱雑にヨダレを撒き散らし振っていたが、走り来る、呪骸と正道を終始蠢き(うごめ)続けていた二つの大きな眼で捉えた時、襲撃時のとんでもない素早さを可能にする筋肉質な2本の脚に呪霊は力を込める。

 

 

「わ" わ わァ" わ" あ"ッじョ ょヨ "い" 」

 

 

 獲物は一つ、あくまで脅威は正道では無く呪骸と認識すると、その短い脚は軽く2回りは大きく肥大し、地面を陥没させる。

 

 しかし正道と呪骸が直角に別れ両側から挟み込もうと動き、呪霊との距離7メートル。 だがその秘めた力を遺憾(いかん)なく発揮しようとした呪霊だが、その刹那……

 

 

 

「わ わ"ッし

 

 

ゴチュン!!!

 

 陥没し、ひび割れた地から足は浮き、そのスピードが発揮される事は、無かった。

 

 

「 な""ッ でィ えッ? …!」

 

「ビビらせるなッ!」

 

「は、あッ…甚さんッッ!!!?」

 

 

 呪霊は何も無かった筈の真下からの強い衝撃に混乱する。 その時、細いとは言え5メートルは超える身体が空いたのだ。 顎が砕け潰れ、紫の液体が大量に空中に散布する。

 

 正道は突然 ハ"キ"ッ という重い音と共に浮いた呪霊に足を一度止めるがその正体に気付き、ほぼ1人で祓う事を前提でいた緊張感の為固く閉じていた口を開け歯を剥き出しにやりと笑う。

 

 その正体は襲撃からずっと咥えられぶらりと浮いていた甚壱の()による蹴りから生じた事で、吹き飛ぶその呪霊の口内からは血液と大量の唾液を纏い()()かを持った甚壱が脱出する。

 

 甚壱に吹き飛ばされ無防備になった呪霊はその後も進行していたナックルとビタニによる奇襲は完璧に決まり、呪霊の身体は上半身と下半身がなき別れ。 祓われて居ないものの数十メートル吹き飛ぶ。

 

 

「大丈夫ならもっと早く脱出してくれッ……!!。」

 

 

 隣に来た甚壱に正道は言う。

 

 

「ガハハッ 心配したのか?。」ニヤニヤ

 

「本当に勘弁してくれ…マジで。」

 

「悪い悪い、コイツの生存調べに夢中だったんだ。」

 

 その両手には膝から下が噛みちぎられ溶けかけた男と、上半身が無くなった推定女の下半身を持っていた。

 

 

 俺は帳が落ちると同時にこの位置へナニかが近づいて来る事に気付いた。 そのスピードは本来の一級呪霊から逸脱しているしれない速度だったが、俺の顔よし性能よし性格悪いの弟よりは幾分か遅かったことと、手合わせしていたので多少目が慣れ、縛りを使用せずともソレを目視できた。

 

 いくら早くとも所詮は一級呪霊、ので俺()狙ってバカみてぇに一直線に突っ込んで来るときたので俺は塊打突呪法の術式を発動し呪霊が突っ込んでくる位置を予想し、ニヤリとした俺は、()()()()》ぶち込もうと拳を構えたその時。

 

 ガパリと開いた触手だらけの口内で今、本当に今、喉を通る血まみれの正気のない目の人間の顔をもしかすると(ほんの少し前まで戦闘をしていたのでは)と勘ぐり、術式を解除し飲み込まれることにした。

 

 

「安心してくれこの血は俺のじゃなくてこの呪術師と一般人達の血だ。 俺はピンピンしてる無傷だ。」

 

「なんであんな振り回されて死んでねぇんだよッ…!?」

 

「いや中は結構気持ちよかったぞ?。」

 

「そう言う事を言っているんじゃ」

 

「……蘭太、呪力による強化の凄さが分かったろ?。」

 

「え、は…いッ!。」

 

「そういう状況でも鍛えた呪力操作、それに加えて鍛え上げた己のボディは裏切らないッ!!。」

 

 甚壱は色々なものでドロドロの服越しに胸を叩き、大事だか非常に…

 

 

「甚壱ィ……(深そうでうっすいな…。)」

 

 

 薄い力説をする。

 

 

「まぁ甚壱先生の授業より今はあの呪霊を…」

 

ィタたタタ"タタ"ァッだ だ だ だだだだだだだだだだだた"た"た"ァアア"ァー!!。

 

「見た目が違うがさっきよりはだいぶ遅いな…。」

 

 

  呪霊の容姿は先程の短足胴長に獅子舞の大きな頭、という容姿でなく。 大きな鱗を持つ蛇の様な長細い身体(からだ)に何十本もの手が生えた形態に変化をしていた。

 

 森の中、そんな足をゾロゾロと使い、地鳴りを響かせこちらへ走ってきていたが、途端に森の中へ姿を消す。  流石は一級呪霊と言わざるおえない感じだ。

 

 

「お前ら見てたろ? あの呪霊、俺なら直ぐ祓える。」

 

 甚壱は立ち直した蘭太と呪骸で構える正道の間を通り後ろに戻る。

 

「正道と蘭太…やれ。  流石に死にそうになったらバックアップしてやるから。  蘭太アレやれ、失敗したらもう教えねぇ。いいな?」

 

 

 木々を掻き分け呪霊は甚壱は飛びつく…が。 

 

 俺は掌を呪塊で4塊作り出す。 すると呪霊は手の形をした呪塊張にビタんと当たる。 すると張り手の要領で押し放つ。

 

 

塊打突呪法(かいだつじゅほう)……肆掌(しめん)。」

 

ふ"ェ" ッ が  ボエッ!!?

 

ハ“ ギ"ョ"ン"ッ!!!

 

 

 呪霊は太い木を何本もへし折れ吹き飛ばされる。

 

 塊打突呪法・(めん)・は標的を祓う為で無く"吹き飛ばす"を目的に開発された呪法だ。

 

 

「ほら、な?。 今のが掌じゃなけりゃほぼ祓えてた。 いい機会だ、正道は昇級への試験。 蘭太は、俺がこれから時間を掛けて強くしてやるに足るのかの試験だ。」

 

「昇級…か。 確かにアレを祓えれば俺も呪術師として一皮剥ける気がするな…‥やろうか蘭太君」

 

「ッ!……ま、任せやがれってんだぁッ!?。」

 

 



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獅林解

 

 

 臓物が辺りに散乱した森の中、俺は呪霊の血を大量に被った正道と体力切れで呪霊の肉片と血液に顔から倒れる蘭太に拍手を送る。

 

 

「おォ‥お疲れ。」

 

「ふぅ〜。 おい、何もしてないお前がなんでそんなに服がビリビリなんだ…それにその呪術師丁重にあつかえ。」

 

 

 帯状の呪具、梟を抱っこ紐の要領で使い背中に重傷の術師を固定している甚壱に正道は言う。

 

 

「生地が良い俺の服を使って止血してやったんだよッ…!、それになんで男を抱っこしなきゃならんのだっ?!。おんぶでもいいだろ別に。」

 

「取り敢えずお前は何もしてなかったんだからな? 窓の元へ運んでこいよ。」

 

「岩野には連絡を送ったからもう時期来る、行くぞ。 それより、正道お前裏に俺がいるから落ち着いて祓えたろ。」ニヤニヤ

 

「お前のニヤケ顔はキモイ、やめたほうがいい……マジで。

 いや それよりメルヘンが……使い物にならなくなってしまった。材料代はお前が払えよ?払わなかったら訴えるッ。」マジデ

 

「当たり前よ、任せとけ! それに……関係なしに今回の報酬の4割はお前の口座に送っておくからな?。  それで直せ。結構今回の任務は報酬が凄いんだぜ?。」

 

 

 そう言って正道らは帰路につこうとするが正道の口からはため息が出る。

 

 

「今回も黒閃は出ず、だな…。」

 

「アレは殴ってりゃそのうち出るだろ気にするな。」

 

「そんな簡単なもんじゃ無いんだよバカがッ……あぁそれにしても蘭太君凄かったぞ、これからは補助として俺の任務にはついて来て欲しいくらいだ……」

 

 

「あの、甚さん…体がガタガタで動かないんです。 ホント申し訳ないんですが……。」

 

 

 甚壱は猛スピードで正道を見やるが、正道は頭を横に振る。 正道は右腕から流血し見た目通り痛めており手で押さえていた。

 

 

結ッ局男抱っこしなきダメじゃねぇか!!!?。

 

 

____________________

_____________報告

 

 

 重傷者 木口 相馬2級呪術師と判明。1週間後意識を完全に戻し、完治した後呪術師を退職。

 

 神谷 相澤 享二級呪術師は祓われた呪霊の跡地から来ていた衣類の一部が採取され呪霊に消化されたと判断し死亡と判定。

 

 

 身元不明の下半身は、破れた服と、肝試しへ向かう前に向かった店での監視カメラと参照され、〇〇大学2年の女学生と判明。

 

 その後、禅院 甚壱 特別一級呪術師と正道二級呪術師の呪霊との間で起きた戦闘で、(蘭太は、非公式に現場へ来たので含まれない。)半壊した社付近から、現在確認できるもので非術師や呪術師を16名は殺害しており、十数年前から指名手配されていた呪詛師弓握 三郎(ゆみあ さぶろう)が発見される。

 

 弓握 三郎は捕縛され、公正の余地なしと判断され呪術規定に則り処刑が決定。

 

 

 任務から4日後、夜蛾正道は禅院甚壱特別一級呪術師に推薦されそれ以前にも推薦があった事から総監部はそれを受理、夜蛾正道は準一級呪術師へと昇級。

 

 

 

  神谷 曾野(その)一級呪術師は()付近で発見、死亡が確認される。

 

 

報告終了

____________________

_________

 

 

 全員の服に染みついた呪霊の血が消滅し綺麗になった頃。

 

 

 岩野は俺の連絡で、車が来れる限界まで来ていた。

 

 俺はその相席によだれを垂らしながら気持ち良さそうに寝ている蘭太をポイと座らせ、腰あたりにある固く結んだ結び目を解き、梟をするりと取り、後部座席に重傷者を慎重に座らせる。

 

 

「禅院さんは乗らないんですか?。」

 

 岩野は正道が座った後も車内に入ろうとしない甚壱に言う。

 

 

「んー呪霊は払った、でもまだコイツしか見てない無いからな、もうちょい調査してこようと思う。  それではよしッ行こうか正道。」

 

「ふざけるな…1人で行け、こちとら血流してんだぞ。」

 

「……ちぇッ。」

 

 拳に呪具を巻き付けながら舌打ちをする。 まぁ行きとは違い、1人増えた事で俺は乗れないのは分かっていたしな。 普通に無理やり乗れる事は言わないでくれ。

 

 

 怪我が酷く事は急ぐ。新品の着物を着た後、ムクれて口を突き出した甚壱が車が浮くレベルで強く扉を閉めると車は直ぐに発進した。

 

 正道の声は無視するものとする。

 

「重傷者が乗ってんだぞッッ!!!」

 

「……」ムシ〜

 

 

__________________

_____________

 

 

 岩野に帳を再度張ってもらった俺は戦闘中壊れた社でとある違和感があった事を思い出し、再度社へ向かう。

 

 

「この布切れ見た事ないな、誰のだこの呪力?。」

 

 

 呪霊との戦闘跡で拾った小さな布切れを眺めながら俺は色褪せヒビの入った鳥居を通り過ぎる。

 

 

 呪霊が呪物を狙うのは、それを吸収するほうが動物や人間、呪術師を狙うよりも効率よく強くなれるからだ。 その点獅子舞呪霊の術式は多分、その効率が良くなる術式だったと思う。

 

 俺が体内から女と男を奪うだけである程度弱体化したからな、多分あの2本足のスピードと攻撃特化の形態は特級に片足突っ込んでいた。 今回発生してからあまり時間経っていない内に祓えて良かった。

 

 

 その呪霊との交戦で崩れた社の違和感、それは社の呪力が充満した内部で一部に呪力が一切無い箇所があった。

 

 

 腐ってぐずぐずになった床板にズレた箇所、そこは不自然な程呪力が無い。 おそらく呪術師と呪霊が交戦し崩した のにだ。 甚壱は倒壊しているので(まぁいいか。)と心の中で言い訳すると躊躇無くその板を殴り割る。 

 

 

 コ"ッォン"!!

 

 

 そんな柔くも多少硬度のある板が砕ける音が廃神社には響くと同時に土煙が上がる。

 

 

「ぉ"え"ッ ! げほッ! ガホッ こりゃッ間違えたかも!。」

 

 

 咳き込み瞬きを開いた時。

 

 

「ッ!?。」

 

 

 瞼を少し開けたその時聞き慣れた風を切る音が甚壱の耳に届くと、土煙が舞う中風を切る音が甚壱の喉を狙い迫り来る。

 

 が、甚壱は刃物は勿論様々な物を使用した模擬戦は当然何千回と繰り返していた、そのおかげか驚きで筋肉は硬直したが冷静に体は動かせ紙一重で躱す。

 

 

「おかしいな…? 確実に動脈切ったと思うたが失敗か…」

 

 

「いってェ……なッ」

 

  呪霊ならいざ知らず人間が突然、うにょって飛び出てくるな! ギョッとするのは鍛えらないんだよクソッ!!。

 

 

 そんな悪態を心の中で吐きながら数メートル退いた男を睨む、それと同時に躱した筈の首からはプシュリと温かい液体が滴れ甚壱は目を見開き咄嗟に片手で押さえる。

 

 

「正確に人間の急所狙って来る非術師はァ……居ないよな? そこのお前さん。」

 

 

 そんな甚壱の目の前では土煙の中でヨロヨロと人影が立ち上がる。

 

 

 

 






 電話の無い森で行う連絡に使用したのは、1級呪物"ヒト紙" 使用法、マーキングした者、あるいは場所へ必ず追いつく。 呪具ではなく呪物。

 ヒト紙は小さい紙なので連絡に使うには不便だが、伝えたいことを短く鉛筆で書くように甚壱は使っている。

_____________



 獅子舞呪霊君と2人の戦闘は描こうと思うとグダると思ったので、飛ばしました。 



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