お前、桃太郎なんだろ?ちょっとイギリス行って吸血“鬼”倒して来い。 (一途一)
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注:若返りの桃には様々なありがたい副作用があります。

老夫婦の名前はオリジナルです。奥さんは某皿の人とは関係ないです。


桃から生まれた桃太郎。この話を知っていない者は日本には多分居ないだろう。

 

ある老夫婦が川から流れて来た大きな桃を切ってみると、赤ん坊が出てきたというお話。

 

そして成長した桃太郎がお供と鬼ヶ島へ行き鬼を倒してグッドエンド…というのがこの話の定石である。

 

だが、この桃太郎は一味違う。

 

世にも奇妙な桃太郎(転生者)の物語、お楽しみあれ。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

ある老人はある日芝刈りに行った帰り、道端で桃を拾った。

 

このあたりには桃の木など生えていないのに何故桃が落ちているか不思議に思った老人は桃を持ち帰った。

 

帰った老人は妻と一緒に桃を食べたそうな…

 

 

 

◆◇◆◇

 

「お菊さん!この桃は美味しいのう!」

 

「そうですねぇ。私もこんな美味しい桃は食べたことが無いかもしれません。」

 

「80にもなってこんなに美味しい桃を食べることになるとは…人生も捨てたもんじゃないのう。」

 

「そうですねぇ。ああ、私はそろそろ洗濯へ行ってきます。」

 

 

儂の名前は三蔵。しがない老人じゃ。今日は芝刈りに行ったついでに大変美味な桃を拾った。

 

最近はめっきり楽しみも無くなってしまって少し辟易としていた所にこの桃が現れたのじゃ。

 

きっと神様が儂とお菊さんにもっと生きろと言っておられるのじゃろう。

 

それはそうと少し眠くなってきたのう。笠を作ろうと思ったが少し眠ってからでも罰は当たらんじゃろう。

 

なんじゃ?少し…体が熱く感じる…ような……

 

 

三刻ほど眠った後じゃろうか。目が覚めた。なんだかやけに体が軽く感じる。

 

ふと手を見てみると儂のシワシワの血管が浮き出ている手ではなく青年のような手があった。

 

慌てて顔を触ってみると妙に肌がサラサラしている…嘘じゃろ?もしかして…儂、若返ってる!?

 

急いで戸を開けてお菊さんが洗濯しているところへ向かう。

 

いつもの洗濯場に行くと、そこに居たのは長年付き添ってきた老婆ではなく若々しい少女の姿があった。

 

 

「お菊さん!?お菊さんなのか!?」

 

「え?どなたですか…って、三蔵さん?随分若返ってないですか?」

 

「それはお菊さんもじゃろう!なんか体に異変が無かったか!?」

 

「ああ、少しいつもよりも汗をかくなとは思いましたけれど…」

 

「桃を食べたからでしょうか?」

 

「そうじゃ!桃じゃよ!あの桃は儂らを若返らせてくれたんじゃ!」

 

「それは良かったですね。取り敢えず洗濯終わらせましょうか。」

 

「そ…そうじゃな。」

 

 

若返ったにも関わらずお菊さんは何も驚いた様子がない。

 

もう少し驚いてくれても良いんじゃがな…

 

儂はぼーっと見ている訳にもいかないので家に帰って笠を作ることにした。

 

 

 

実感がわかないのう…

 

 

◆◇◆◇

 

 

結局何か若返った事についてとやかく言うこともなく夜になってしまった。

 

 

「夕ご飯食べましょうか。」

 

「そうじゃな…」

 

「少し不満そうですね?」

 

「そ、そうかの?」

 

「そう見えます。折角若返ったのに私が驚かないから…ですかね?」

 

 

図星じゃ…

 

 

「これでも私、意外と驚いてるんですよ?突然水面に写っている私の顔が若くなったものですから。」

 

「そうなのか?」

 

 

思わず表情が明るくなってしまった。

 

これじゃあまるでお菊さんの手のひらで踊らされているようじゃ。

 

 

「私、今まで若返ったらやりたいことがあったんです。」

 

 

そう言って近づいてくるお菊さん。上目遣いでこちらを見てきていて、少し着物の隙間からアレが見えている。

 

これは誘われているのかの!?

 

 

「や、やりたい事って…なんなんじゃ?」

 

 

思わず唾をゴクリと飲み込んでしまう。

 

 

「それは…三蔵さんが一番分かっているんじゃないですか?」

 

 

お菊さんの顔は少し仄かに紅くなっている。

 

もうこれはいくしかないのか!?

 

 

「こ…興奮するじゃろ…」

 

「それで良いんですよ…三蔵さん。」

 

◆◇◆◇

 

 

そうして二人の長い夜は始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そういえば三蔵さんは逆転する方が燃えるとか。

 




評価、コメント、誤字の指摘よろしくおねがいします!(大々的な宣伝)

桃太郎は次回から出ます。


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転生チートなんてある訳無い。

異世界物書きたくて桃太郎に転生させました。(意味不明)


俺の名前は洲上正一(すがみしょういち)(29)、しがない会社員だ。

 

欲望センサーというものの精度にはいつも驚かされる。

 

彼女は今まで出来たこと無いし、勿論バキバキ童貞だ。

 

来年で三十歳、賢者になれるよ。やったね、俺。

 

待て、これは異世界転生フラグだ。勝手に脳内でこんな自己紹介をしてしまうなんて、

これはフラグ以外の何物でない。

 

ほら、見てみろ、横からすんごいスピードでトラックが……………あ、終わった。

 

さながら米津玄師のように綺麗にトラックに引かれた俺の意識は段々と闇に落ちていった。

 

 

◆◇◆◇

 

 

意識が戻ると、謎の白い空間に俺はいた。

 

そして目の前には阿部寛に似た如何にも神様っぽい人がいるのだが、

 

顔が顔なのでテルマエ・ロマエのあのギリシャ人にしか見えない。

 

恐る恐る話しかけてみる。

 

 

「ここは一体何処でしょうか?そしてあなたはどちら様でしょうか。」

 

「そうかしこまらんで良い。」

 

 

喋った。声まで阿部寛だ。

 

 

「そうっすか…じゃあもう一回聞くけど、ここは一体何処で、あなたは誰なんだ?」

 

「うむ…儂は神で、ここは転生する魂が行く場所を決める所じゃな。」

 

「転生?異世界転生ってことですか!?」

 

「まあそういう事になるじゃろうな。」

 

「俺は何処に転生するんですか!?」

 

「まあまあ、そう早まるな。今から決めるんじゃから。…お主、どんな所に転生したい?」

 

 

どんな所に転生したいか?そんなの万国共通、全員が同じことを言うに決まっている。

 

答えは簡単、

 

「かわいい美少女がいる所だ!!」

 

 

「まあ、そう言うと思ったぞ。」

 

「え?」

 

「日本から転生させるとなると、大体そんな感じの返事が帰ってくるんじゃよ。まあ、良いけどな…」

 

 

神様は面倒臭そうな顔をして言った。そりゃあそうだよ。日本だもん。

 

 

「ほれ、転生させるぞ。」

 

「いやー、楽しみだなー。」

 

「美少女がいるからって、思い描いていた異世界とは違うかもしれんぞ。まあ、それもまた一興じゃがな。」

 

「えっ…」

 

 

瞬間、俺の意識は再び闇に落ちた。

 

◆◇◆◇

 

 

意識が昇り始める。視界が鮮明になってきて、周りの姿がよく見えてくる。

 

手を上げてみる。小さく水分を多く含んだ手…どうやら赤ちゃんからスタートなようだ。

 

両側から二人が顔を覗いてくる。

 

 

「おお、可愛いのう。」

 

「そうですね、私達の子ですから。」

 

「それもそうじゃな、ははは。」

 

「名前…どうします?」

 

「そうじゃな…」

 

 

どうやらまだ名前を付けられていないらしい。どうせならかっこいい名前を付けて欲しいな。

 

出来るなら横文字…

 

 

「桃太郎はどうじゃ?桃のお陰で生まれたから桃太郎。」

 

 

ファッ!?

 

桃!?桃!?peach!?

 

日本語な上に桃太郎って!絶対嫌だ!

 

喋ろうと思っても赤ちゃんだからか思った通りの声が出ない。

 

代わりに全力で嫌な顔をして首を振る。

 

 

「三蔵さん、この子凄い首振ってますよ。」

 

「嫌なのか!?この名前、結構自信作じゃったんじゃが。」

 

「太郎が駄目なんじゃないですか?」

 

「じゃあ、桃吉はどうじゃ?」

 

 

は?どうしても桃入れなきゃなんないのか?

 

駄目だ。このお父さん絶望的にネーミングセンスが無い。

 

頼むそこのお母さんが名前付けてくれ。

 

 

「またこの子首振ってますよ。」

 

「儂の付ける名前そんなに嫌なのかのう……お菊さん考えてみてくれるかの?」

 

「そうですね…三蔵さんから名前を取って、桃蔵っていうのはどうですか?」

 

 

おお!良い!何で桃が必ず付くのかどうかは謎だけど、吉とか太郎よりは良い名前だ!

 

出来るだけ満面の笑みで首を縦に振る。

 

 

「凄い喜んでるのう…儂の名前そんなに駄目だったのかの?」

 

「三蔵さんの名前に関連付けて欲しかったんじゃないですか?」

 

「ああ、そういう事か!それなら納得じゃな!」

 

「ふふふ。」

 

 

俺の目の前でなんとも幸せそうな光景が広がる。こんな物を見れるのも知能を保ったまま転生したからだろうか。

 

それにしても疑問がある。一つは最初に付けられてかけた名前が『桃太郎』だったことだ。まさか桃太郎に転生とかいうことが起こっているとか?確かお父さんが桃のお陰で俺が生まれたみたいのことを言っていたような気がする……つまり俺は桃太郎に転生してしまったということか?それに両親は日本語を話していた。生まれつき翻訳スキルを持っていて異国語が日本語に翻訳されてるのなら話は別だが、本当に日本語を喋ってるのならかなり高めの確率でここは日本であるという事だということになる。周りを見回してみても旧き良き日本家屋というオーラがだだもれている。更に事実っぽくなってきた。

 

 

 

とりあえずステータスウィンドウを開けるか試してみよう。念じれば良いのか?

 

 

《ステータスウィンドウ》

 

桃蔵

 

HP:∞

 

MP:1

 

状態異常:桃の加護(体力無限、成長速度増加、)

 

スキル:言語理解

 

 

何ともまあスッキリした物だろう。だがそれ以上に気になるものがある。

 

まずHPが無限になっている。つまりは死なないってことか?次にMPが1しか無い。それに状態異常の欄に『桃の加護』とある。何か関係があるのか?成長速度増加って何が成長するんだ?スキルは言語理解だけ。今から増えるのか?

 

それにしても、なんとも周りの景色に合わないものだな。なんかしょうがないから無理やり異世界っぽいものをねじ込んだ感じだ。

 

取り敢えず今俺が桃太郎であると仮定してやらなければならないこととは?昔話の桃太郎は猿、きじ、犬を引き連れて鬼退治に行っていた。

 

俺も家来を引き下げて鬼退治に行くのか?

 

 

…だめだ。疑問しか浮かんでこない。今はまだそこまで深く考え込む時期では無いのだろうか。考えれば考えるほど思考の沼に陥っていく。

 

今は赤ちゃんらしく何も考えず過ごした方が得策かもしれない。

 

ぼーっと両親を眺めてみる。二人共美男美女だ。しかし少し違和感がある。なんでだろう。

 

ああ、眠くなってきた。日差しが暖かいからかな…ZZZ

 

 

◆◇◆◇

 

「あら、さっきまで起きてたのに眠っちゃいましたね。」

 

「きっと春の日差しが暖かくて寝てしまったんじゃろ。」

 

「やっと私達の子供が出来ましたね、三蔵さん。」

 

「そうじゃなぁ、60年前は出来なかったのに、不思議じゃのう。」

 

「やっぱりあの桃のお陰でしょうね。」

 

「それにしても…いい子に育ってほしいのう。」

 

「私達の子供ですよ、きっとすくすく育ってくれますよ。」

 

「そうじゃな。早く育ちすぎないかが心配じゃ。」

 

「ふふふ、そうですね。」

 

 

庭には春の陽気とともに夫婦の和やかな声と赤子の静かな寝息が響いていた。

 

 

確かに異世界な、だけど異世界らしくないこの世界にささやかながら祝福が訪れたような気を夫婦はやんわりと感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――その影には不穏なものも蠢いているのだが。

 




良いぞ良いぞ…異世界チートっぽくなってる…


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