ダンガンロンパシンフォニア〜ボクの愛と希望の法廷〜 (パルティアン)
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プロローグ 未来へと向かう乗り物の中で
プロローグ1


ここはとあるヘリコプターの中。他の仲間たちは既に先に目的地に着いているころだ。それならボクは何をしているのかと問われると、未来機関の人と共にボクと同じ目に遭った人達を迎えに寄り道をした、という状況だ。

 

「さて、君たちの話はきっと目的地でたくさん聞くことになるだろうから今のところはボクの身の上話でも聞いてもらうことにしようか。」

 

ヘリコプターとは言ったが機体はかなり大きく、中もかなり広いラウンジのようになっている。迎えた人たちは扇状にボクに視線を注いでいる。

 

「それじゃ、何から話すことにしようかな。」

 

 

プロローグ  未来へと向かう乗り物の中で

 

 

 

――――――

――――

――

 

私立希望ヶ峰学園、各分野における超一流、“超高校級”と言われる高校生をスカウトによって集めており、この学園を卒業しさえすればその後の人生の成功は約束されたも同然なんて言われたりもする超エリート校だ。数年前の超高校級の絶望によって引き起こされたコロシアイ学園生活によって多大なるダメージを負うことになったが、そこから未来機関の協力もあって見事な復活を遂げた。いや、学園の規模としてはむしろ事件以前よりも大きくなっているかもしれない。希望ヶ峰学園そのものがより大きな希望の象徴となった、という人々の精神的な面での役割の大きさはもちろん、学校組織としても東京のこれまでの敷地に存在する学校に加え、同規模のキャンパスを京都にも構えるほどにまで成長を遂げている。

なぜボクがそんな話をしているかって?それはボクがその京都キャンパス、通称“希望ヶ峰学園京都分校”の校舎の前に立っているからだ。まずは自己紹介から始めようか。ボクの名前は深見優(フカミユウ)。世間からは“超高校級の探偵”なんて呼ばれているけど、そんな大層なものじゃない。ただ旅行先とか学校とかで起こった事件をたまたま解決できただけなんだから。そう、たったそれだけのことだったはずなんだけど、何の因果かボクは希望ヶ峰学園にスカウトされ、この京都のキャンパスで学ぶことになったのだ。

最初からこんな卑屈な紹介になってしまったけれどなんだかんだで新しい生活を楽しみにしていないと言えば嘘になってしまう。だからボクは京都に向かう新幹線の中でどんな新入生が入ってくるのか、どんな仲間ができるのか調べたくらいだ。で、その調べた結果だけど、どうやら京都の方には日本No.1シューターの呼び声高いバスケットボール選手や懸賞金の懸かった難問を次々と解いてしまう天才数学者、そして若くして海外で医師免許を取得し多くの患者の命を救ってきた天才医師といったとんでもないメンバーが揃っているみたいだ。

さて、校門の前でぼーっとしていても何も始まらないのでそろそろ校舎の中に入ることにしようか。心の中に新しい生活への期待と不安を抱きながらボクは校舎への一歩を踏み出した、ハズだった。

瞬間、揺らぐ視界。ぐらぐらぐらぐら、ぐるぐるぐるぐる。おかしいな?今朝はすこぶる体調が良かった。朝ごはんもしっかり食べてきた。なんでこんなことに?自分の身に何が起きているのかも、今何が見えているのかも分からないまま視界はどんどんブレていき、そのまま突然プツッとボクの意識は途切れた。ああ、ボクはこのまま死んでしまうに違いない。まだやりたいことがたくさんあったのに。

 

 

 

次に意識が戻ったとき、ボクの視界が捉えていたのは木製の天井にそれと調和するような和風の電灯。まるで旅館の大宴会場のような一室だった。きっと某人型決戦兵器が出てくるアニメならこの状況に“見知らぬ天井”なんて題を付けるのかもしれない。

 

「ここが天国?それとも閻魔大王に会うまでの控室だったり…?」

 

そんな訳はないのだが、直前までの感覚がもう自分は死ぬのだとしか思えなかったボクはそんなあり得そうもないことを漏らす。

 

「おや、どうやら起きたみたいっすね!寝起きのボケにしては上々じゃないっすか?」

「うわぁ!」

 

どうやらさっきの独り言を聞かれていたみたいだ。ちょっと恥ずかしい。

振り向くとそこには黄土色のオシャレな造形のスーツに身を包み、リボンと蝶ネクタイの合いの子のようなタイを着けた少女がそこにいた。

 

「うわぁとは随分なあいさつっすね?ずっとここで看病してあげてたってのに。まあ、自分も変に歩き回るのが怖かっただけっすけどね!」

 

ありがたいんだかありがたくないんだかよく分からない…。

 

「っとまあ与太話はこの辺にして、まずは自己紹介をするっすね!自分は美作奏、作曲家っす!」

 

 

《超高校級の作曲家 美作奏(ミマサカカナデ)》

 

 

美作奏、その名前はボクもよく知っている。今この世界のあらゆるジャンルの音楽においてそのトップをひた走る作曲家だ。類稀なるセンスに加え、圧倒的なまでの楽器や音楽に関する知識を持ち、それらを元にクラシックやポップミュージック、アニメやドラマ、更にはゲームのBGMまでさまざまなジャンルの曲を作っている。かくいう僕も彼女がBGM作成を担当した「ジュウダンサイバン」というゲームにはかなりハマっていた。それはもうわざわざOSTのCDを買うほどだ。

 

「君があの美作さんだったんだね!ボクもよく君の作った曲を聴かせてもらってたよ!あ、ボクは深見優、探偵です。」

「へえ、探偵っすか!じゃあじっちゃんの名にかけて!とか真実はいつも一つ!とかそんな感じっすか!!かっこいいっすねぇ!!」

「そんな大層なものじゃないよ。ていうかむしろそれは色々危ないからやめて…。」

「そうっすか?ま、ずっとここにいても仕方ないっす!外に出ましょ!」

「わわっ!!」

 

そう言うと彼女はボクの手を掴んで外に連れ出した。

外に出るとどうやらそこは旅館か何かの宴会場のようだった。

 

「なるほど、だからあんなに広かったのか…。」

 

見回してみようとするけどそんな余裕もなくボクは美作さんに引っ張られてロビーまで来てしまった。

 

「ここはフロント…?」

 

そこはちょうどホテルのフロントのような感じだけど人の気配は感じられない。もしかしてボクは美作さんと一緒に誘拐でもされてしまったんだろうか?

そんな不安が過ったその時、

 

「あ!人だ!!よかったぁ!うちたった1人なのかと思ったよー…。」

 

ボクから見て奥の廊下、出てきた位置からしてさっきまでボクたちがいたのと似たような宴会場だろうか、そこから1人の少女が出てきた。ボクたちと違ってたった1人で放置されていたのだろうか、彼女は目に涙を浮かべながらこちらに走ってきてボクたち2人に抱きついてきた。

 

「わお!びっくりしたっす!」

「ちょっ!近いって…!!」

「あっ!ごめん!安心しちゃって…。」

「いいっすよー!ま、おこちゃまの深見サンは初めての女性の感触にドキドキしちゃったみたいっすけど!」

「うるさいな!」

「あ、で今紹介した通り、こっちが深見優サン、探偵っす。で、自分は美作奏、作曲家っす!」

「そう言えば自己紹介がまだだったね!うちは羽月翔子!バドミントンやってます!」

 

 

《超高校級のバドミントン選手 羽月翔子(ハツキショウコ)》

 

 

「羽月サンっすね!よろしくっす!ところでそのお顔、どこかで見たことある気がするっすね…。」

「彼女はオリンピアンだよ。」

 

この薄い茶色の髪をお団子に束ね、水色を基調としたセーラー服を着た少女は現役高校生でありながらバドミントンでオリンピックに出場、シングルスの表彰台まであと一歩というところまで行った若手最有望格のバドミントン選手だ。

 

「あー、だからっすか!自分もオリンピック見てたっすよ!」

「ほんと!?嬉しいなぁ!これからよろしくね!」

「うん、よろしく。」

「こちらこそよろしくっす!」

 

そこから3人でガヤガヤと話していると他の宴会場からも人が出てきた。

 

「おや、他にもいらっしゃったのか。」

 

まずそのうちの1人目。センター分けの髪型に後ろを長く纏めたスタイルの男子。服装は至って普通のワイシャツとズボンなのだが、そのベルトには一際目立つ黒い鞘の日本刀が差さっていた。

 

「ほおー、刀っすか!かっこいいっすねぇ!自分、大河ドラマのBGMも作ったことがあるっすよ!」

 

そんな異様な出立ちの人物にも美作さんは臆することなく話しかけていく。何でそんなにコミュ力が高いのか。ボクには到底できそうもない。

 

「ああ、これか。これはただの竹光、刃はついてござらん。」

 

刀を少しベルトから抜きつつ少年は屈託なく笑う。え、ござ…?侍…?

 

「おっとそう言えば、名も名乗らずに失礼を。某は伊達小十郎、歴史を学ぶ者の端くれでござる。」

 

 

《超高校級の歴史学者 伊達小十郎(ダテコジュウロウ)》

 

 

確かその名前は聞いたことがある。仙台出身の高校生歴史学者で、地元の有名人である伊達政宗、そしてその側近の片倉小十郎に関して新たな史料を見つけ、それを元に新たな言説を主張した、今の歴史学会を大きく揺るがしている台風の目だ。そんな存在である彼がこんな濃いキャラだったとは…。と言っても悪い人ではなさそうなので一通り自己紹介を済ませた。

 

「深見殿は探偵でござったか。事件を解決して、人を助ける、素晴らしい才能ですな!」

 

少年はニカッと笑って見せる。やっぱり彼はちょっとキャラが濃いだけで普通にいい人だ。

そんな彼に付き従うようにもう1人が同じ部屋から出てきた。その少年はビジネススーツをかっちり着こなし、髪も七三に整えられている。メガネの奥の意思の強そうな目も彼自身のしっかりとした性格を表していると言えるだろう。

 

「伊達さん、そう不用意に出ていくものではありません。」

 

どうやら伊達クンも美作さんよろしく人の気配を感じてどんどん突き進んでいってしまったらしい。後からついてきた彼は何だか疲れている感じがした。

 

「はあ、全く。紹介が遅れました。私は泊尚輝、銀行員をしております。以後お見知り置きを。」

 

 

《超高校級の銀行員 泊尚輝(トマリナオキ)》

 

 

確か彼は日本有数の巨大銀行の頭取の息子であり、将来的にはその頭取の地位を継げるよう、父親の教育方針で高校生のうちから銀行のさまざまな業務をこなしているのだという。最初のうちは行内からもその方針を非難する者が多かったが、彼はその実力で周りを黙らせた。素晴らしい観察眼と頭脳でその相手にどれくらいの融資を行うか、どこで融資を打ち切るか、という判断を完璧な塩梅で行い、そしてこれこそはという稟議を100%通してみせるプレゼン能力を持つ。彼が業務に携わるようになってからその銀行の業績は元々巨大銀行だったにも関わらず更に上がったというのだから驚きだ。

 

「貴方の顔は新聞で見たことがありますね。確か高校生にしてさまざまな事件を解決する名探偵だとか。」

 

どうやら彼はボクのことを知ってくれていたらしい。何だか気恥ずかしいな。

 

「貴方がどのような進路を取るのかは分かりませんが、もし私立探偵の事務所を開くというのであればぜひ私に相談を。損をさせない、とはお約束できかねますが、少なくとも大失敗はしないことだけはお約束しましょう。」

 

そう、彼の素晴らしいところはもし融資を打ち切ることになったとしてもその顧客が最大限リカバリーできるようなケアとアドバイスをするところ。銀行員たる者経営にも通じていなければならないとのことで幼い頃から学んできているのだという。

 

「えーっ!深見サンだけずるいっすよー!自分も融資してください!」

「貴女の場合は必要ないでしょう?まあ、個人融資が必要であれば承りますが。」

「やったっす!」

 

何がやったなのかはわからないが美作さんが嬉しいのなら放っておこう。

だんだんガヤガヤしてきたのを聞きつけて残った最後の宴会場から1人の女子生徒が出てきた。少女は濃い茶色の髪を少年と見紛うくらいの長さで切っており、赤を基調とした派手なツナギのような服装で出てきた。その釣り上がった目からは何かずっとギリギリのところで勝負を続けてきたようなハングリーさが滲み出ている。

 

「なんか外が騒がしいと思ったらアタシの他にも人がいたのか。」

 

訂正。彼女が身に纏っているのはツナギではない。確かに形状はツナギなのだが、正確にはただのツナギではなく、レーサーが着るユニフォームのようなものだった。

 

「アタシは速瀬マハ、カーレーサーをやってんだ!よろしく頼むぜ!」

 

 

《超高校級のレーサー 速瀬マハ(ハヤセマハ)》

 

 

「速瀬っていうとあの速瀬っすか!!?」

「美作さん知ってるの?」

「逆に深見サンは知らないんすか!!?この人は最年少でレーサーのライセンスを取った後、破竹の勢いでレースを勝ち続けたんす。で、日本のレースってのはあんまり賞金を公開してなかったりするんすけど、それでも日本のいわば賞金王は絶対彼女だって言われてる、そんなすごい人っすよ!!」

「なんかそんなに持ち上げられると恥ずかしいぜ…。」

 

美作さんの熱弁に対して当の速瀬さんはちょっと照れくさそうにしている。確かにカーレースって他のスポーツと比べると取り上げられないからボクも知識不足だったけど、それでも彼女がすごい人だってことは美作さんの様子からとても伝わってきた。

 

「で、アンタは?」

「あ、ボクは深見優、探偵です。」

「ほえー、頭良いんだな!」

「うーん、そうなのかなぁ…。」

 

そんなことを思って首を傾げていると、近くからグウゥ~と地鳴りのような音が聞こえてきた。

 

「あ、悪い、あたしだ。ちょっと腹減っちまって。」

 

速瀬さんだった。どうやらお腹の虫が鳴いたらしい。

 

「うーん、キッチンじゃすぐには料理ができるわけじゃないしなぁ。」

「あ、それであればさっきこちらに来るときに売店を見たでごさるよ。いわゆるコンビニという奴ですな。」

「ほんとか!!?」

「コンビニならお菓子でもパンでも何でもありそうっすね。行ってみましょう!!」

 

美作さんに引きずられるようにして向かった先のコンビニには既に先客がいた。

 

「おや、先客がいたみたいっすね!」

「お、やっぱ他にも人がいたんだな!」

 

そう言ってかがみ込んでお菓子を物色していた少年は立ち上がる。かがみ込んでいた間は気付かなかったが、その少年はとても背が高く、立っているだけで威圧感を感じるほどだった。

 

「あれ、アタシアンタの顔どこかで見たことあるぜ?」

「あ、自分もっす!」

 

そう言われてみるとボクも彼の顔には見覚えがある。うーん、どこだったかなぁ。

そして当の本人もそう言われて困惑していた。

 

「つってもオレお前達と出会ったことないぞ?」

「いやー、直接の知り合いってワケじゃないとは思うんすけど…。」

「うーん、オレ自身バスケばっかやっててそんな外を歩きまわってるわけじゃねえからなぁ…。」

 

…ん?バスケ…?

 

「あ、分かった!キミ雷文クンでしょ!!」

「え?よくオレの名前知ってたな!ってか自己紹介してねえじゃん!!オレは雷文竜!ただのバスケバカだ!!」

 

 

《超高校級のバスケットボール選手 雷文竜(ライモンリュウ)》

 

 

「あー!分かったっす!!スポーツニュースで見た人っす!!」

「ニュース?オレ何もしでかしてねえぞ?」

「そうじゃないよ。キミ、バスケットボールの全国大会で大活躍して取材されてたでしょ?」

「あー、そんなこともあったかもしれねえ。」

 

彼、雷文クンはバスケットボールの全国的な強豪校で1年生からレギュラーを張り、その高い身長と正確無比な3ポイントシュートで攻守に躍動、MVP、ベスト5,得点王と出場した大会の1人が取り得るタイトルを総ナメにし、未来の日本のバスケを担う逸材として注目度が非常に高い選手だ。たしかNBAでも彼が卒業する年のドラフト候補として複数のチームがリストアップしているという噂もある。

 

「そのテレビの取材をボク達は見ていたのさ。」

「あー、そういうことか!」

「むしろ物騒なニュースで顔を出してるのは深見サンの方っすからねぇ。」

「マジか!人は見かけによらねえなぁ。」

「誤解を生むからやめて…。」

 

その後きちんと説明をすると雷文クンは『すげぇなぁ!!』なんて言いながらバシバシボクの背中を叩いてきた。多分今ボクの背中には掌の形に赤い痕が残ってると思われる。力が強すぎるって。

 

「何か楽しそうな声が聞こえると思ったらなんでい、いつの間にか人が増えてたってワケかい!」

 

楽しく会話をしていると棚の後ろから雷文クンよりも更に大きな男がヌッと姿を現した。さすがに巨人が現れたのかと思った…。

 

「おう、竜の字ぃ!そいつらはなんでい、やっぱ希望ヶ峰の新入生かい?」

「あ、そういうことになんのか?」

「うん、そうだね。」

「それならオイラも自己紹介しねえワケにはいかねえなぁ。オイラは生まれも育ちも東京下町、若輩者ながら大工の棟梁をさせてもらってる、鷹岡筋次ってモンでい!!」

 

 

《超高校級の大工 鷹岡筋次(タカオカキンジ)》

 

 

「鷹岡サンっすね!自分は美作奏っす!よろしくッす!!」

「ボクは深見優、探偵です。」

「じゃあ、ミマの字に優の字だな!よろしく!!」

 

ちなみにこのいなせな江戸っ子口調の彼は鷹岡筋次。さっき自分でも言ってたけど、若くして大工の棟梁を務め、彼が立てた家の数は数え切れない。そして何よりその技術の高さが評価され、最近では有名人でも彼に自分の家の建築を頼む人が後を絶たないそうだ。

 

「うーんここにいるのはこの8人だけっすかね?」

 

一通り落ち着いたところで美作さんが疑問を口にする。

 

「どうだろな?」

「でも希望ヶ峰学園の入学者は東京と京都それぞれに16人ずつだったよね?だとしたらあと8人はいるはずだけど…。」

「それなら食堂はどうでござるか?」

 

いつの間にか後ろに伊達クンがいた。

 

「うわっ!!」

「うわっとは失礼でござるな。もし人が集まるなら食堂じゃないかと思って伝えにきただけでござるよ。」

「悪かったって…。」

「そんじゃ腹拵えも済んだし、食堂に行こうぜ!!」

「いつの間に…。」

 

気付いたら顔の横にパンの食べかすを付けた速瀬さんが立っていた。

 

「ってか勝手に食べて大丈夫ッすか?」

「でもここアタシらの他に人の気配しないし大丈夫じゃないか?」

「ほんとかなぁ…。」

 

色々速瀬さんの大雑把さに不安を覚えつつもボク達は食堂に向かうことにした。

 

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【新入生】

超高校級の探偵          深見優(フカミユウ)

超高校級のレーサー        速瀬マハ(ハヤセマハ)

超高校級のバスケットボール選手  雷文竜(ライモンリュウ)

超高校級のバドミントン選手    羽月翔子(ハツキショウコ)

超高校級の歴史学者        伊達小十郎(ダテコジュウロウ)

超高校級の大工          鷹岡筋次(タカオカキンジ)

超高校級の作曲家         美作奏(ミマサカカナデ)

超高校級の銀行員         泊尚輝(トマリナオキ)

 

計8人

残り8人




皆さんこんにちは!パルティアンです!前作を書き終えたその勢いで途中まで書き進めていた新作の第1話を投稿しちゃいました。ここからはまた新しい物語が始まっていきますので、どうか温かい目で見守っていただければ幸いです!
それでは『ダンガンロンパシンフォニア~ボクの愛と希望の法廷~』スタートです!!


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プロローグ2

伊達クンの提案に従ってボク達は食堂に向かうことにした。さっきまで食堂の前にいたって言うのになんでここに人がいるのかもって可能性に気付かなかったんだろう。情けない限りだ…。

そんな凹む気持ちを抱えながらボクは食堂のドアに手をかける。すると伊達クンの言った通り、後の8人がみんな揃っていた。更にはさっき一度会った羽月さんと泊クンも食堂の中でそれぞれ談笑している。誰から話しかけたものかと思っていると、

 

「あ、貴方も新入生?香奈もなんだー。」

 

クリーム色のスーツを着て栗色の髪をした少女が話しかけてきた。キリッとした目元に対して間延びした話し方をしていてそのギャップは何とも心引かれる感じがする。

 

「あ、深見サン顔赤いっすよ?」

「え、嘘!」

「ほんとっす。」

「恥ずかしいな…。ボクは深見優、探偵です。」

「深見くんだねー!よろしくねー。」

「あの、名前を教えてもらえると…。」

「あ、忘れてたー。ごめんねー。香奈はねー、言村香奈ー。数学が得意なんだよー。」

 

 

《超高校級の数学者 言村香奈(コトムラカナ)》

 

 

言村香奈、そういえば名前を聞いたことがあるな…。あ、そうだ。懸賞金の懸った超難問を何個も解いてしまったという天才数学者だ。

 

「香奈の顔に何か付いてるー?」

「あ、いやそういう訳じゃ…!」

「見惚れてたんすかー?」

「そうでもない!!」

 

全く、美作さんはすぐからかってきて困るよ…。で、話を戻すと、この言村さんはその計算力の高さから現代に蘇ったオイラーなんて言われることもあるらしい。正直、そんな天才数学者なんてどんなカッチリした子なのかと思っていたけど、まさかこんな天然ぽい子だとは思ってもみなかった。

 

「えっとじゃあー、よろしくねー。」

「あ、うん、よろしく。」

 

結局言村さんがどんな人なのかよくわからないまま別れてしまった。

さて、次は誰に話しかけようか…。

 

「たーんてーいクン!」

「うわあっ!!」

 

そんなことを考えていると後ろから誰かに脇腹を掴まれた。

 

「誰!?何するのさ!!?」

「おーいおーい、そんなにアツくなんなよぉ。ちょっとしたスキンシップだろ?スキンシップ。」

 

こんなことするのは一体誰なのかと振り返ってみるとそこにいたのは真っ白な髪に真っ白なロングTシャツ、そして隈のある目をした細身の青年が両手を頭ほどの高さに挙げてそこにいた。

 

「キミのことはよーく知ってるぜ?深見優。数々の難事件を解決してきた名探偵。こうして見るとそんな優秀なようには見えねーんだけどなぁ。」

 

そんな失礼なことを言いながら青年はその顔をボクの顔にずいっと寄せてくる。驚いて1歩下がると青年は面白がってケタケタと笑っている。

 

「おっとわりーわりー。ちょっとからかいすぎた。ま、初対面って事で自己紹介でもしときますか!俺ちんは超高校級のハッカー、クレイグ・ホワイトバーチだ。よろしくな、探偵クンもとい深見ちん。」

 

 

《超高校級のハッカー クレイグ・ホワイトバーチ》

 

 

クレイグ・ホワイトバーチ、その名前はボクもよく知っている。ボクが殺人事件や窃盗事件みたいな実際に起こる事件を得意とする探偵だとしたら、彼はサイバー犯罪に対して特化した探偵のようなもの。いわゆる"ホワイトハッカー"という奴だ。実際、彼は数々のサイバー犯罪を解決してきた敏腕ハッカーだが、まさかこんな人を食ったような態度をした人物だとは…。

 

「なんだい、そんな難しい顔してさ。腹でも痛いのかい?」

 

今もこんな感じだよ、全く。彼もボクのことは知っているとは言え、それだけで自己紹介終了というのもよくない気がしたので、一応形式的な自己紹介だけは済ませてその場を後にした。

一通りクレイグクンとの自己紹介を終えたけど何だかどっと疲れた感じがする。そんな疲れたオーラを出していると、

 

「どうした、そんな辛気くさい顔をして。」

 

追い打ちをかけるような一言が飛んできた。

 

「初対面の場だ。そこでそんな顔をしていると第一印象がよくない。」

 

え、アドバイスだったの…?そんなことを思いながら振り返ると、テレビでよく見た顔が映っていた。

 

「あ、キミは…。」

「何だ、俺の事を知っていたのか。」

「そりゃぁ…。外交に関するニュースを見てればキミの顔を知らない人なんていないよ。」

「まあ、それはお前もだろうがな。深見優。超高校級の探偵。」

 

彼もボクのことを知っていたのか。

 

「だがそれは顔と名前を知っているだけだ。知り合いというわけではない。だから一応自己紹介をしておこう。金谷秀征、外交官だ。」

 

 

《超高校級の外交官 金谷秀征(カナヤシュウセイ)》

 

 

「あ、ボクは深見優です。」

 

彼は今の自己紹介通り、外交官だ。高校生で?と思われるかも知れないけど実際そうなんだから仕方ない。彼の外交官としてのスタートは偶然だった。外交官であった両親に連れられて海外に行ったときに両親共々テロリストに捕まった。その解放に向けた交渉に当時の日本政府は奔走したが、豆腐に鎹、糠に釘。あまりよい結果は得られていなかった。しかし、そこから数日後、突然そのテロリストは金谷一家の解放を宣言した。詳しい話は分からなかったが、当時テロリスト達は『少年の勇気とよい提案に免じて』の一点張りだったという。その少年というのがこの目の前にいる金谷クンだ。その後も数々のそういった国際問題の場面に遭遇し、その場で自分の頭の回転と交渉力で切り抜けてきた。そしてその能力の高さを表して世間は彼を"超高校級の外交官"と呼ぶようになったのだ。

 

「あー、自分も見たことあるっすよ!」

「そうか。美作、お前のことも見たことがある。」

 

いつの間にか美作さんが隣に来ていた。っていうかさっきクレイグクンと話しているときはいなかったじゃないか。

 

「…いつの間に…?」

「いやぁ、さっきのクレイグサンでしたっけ?あの人苦手そうな感じがしたんでつい。」

「抜け目ないんだから。」

 

まだ他の人とも少ししか話してないけどそれでもこの美作さんに関してはだんだん分かってきた気がするよ。

 

「だけど金谷サンって思ってたイメージと違うっすね!なんか思ってたよりもシンラツっていうか。」

「ちょっと、いきなり失礼だよ!」

「こっちが素だからな。交渉の時はもう少し慇懃だ。どうせお前達とはそれなりに長く付き合うことになるんだろう?だったら隠すだけ無駄だ。」

「あ、そういうことっすか。」

 

こうして話してみると金谷クンという人はかなりいろいろな計算をしながら生活しているらしい。これが"超高校級の外交官"たる所以なんだろうけど。

金谷クンとの自己紹介を終えて少し身が空いた瞬間を見逃さなかった人がいた。

 

「少しよろしいか。」

 

古風な口調で話しかけてきた人がいた。

 

「自己紹介をしたいんだが。」

「あ、いいよ!ボクは深見優、探偵です。よろしくね。」

「よろしくお願いします。私は靏蒔由衣です。"超高校級の弓道家"などという身に余る呼び名をいただいています。」

 

 

《超高校級の弓道家 靏蒔由衣(ツルマキユイ)》

 

 

「分不相応なんてそんなー。靏蒔サンとんでもない弓道家っすよね?」

「いや、私はまだまだ修行の身。世間の方が言うほど大仰な存在ではない。」

「またまたー。」

「彼女、そんなすごい人なの?」

「深見サンも持ってる知識と持ってない知識の差が激しい人っすね。じゃ、説明してあげるっすよ!彼女、靏蒔サンはものっすごい弓道家っす!これまでの人生の中で射てきた矢は全て的中、外したことはなく、しかもその矢は全て的のど真ん中に中ってるっす。まさに読んで字のごとく、"的中"っすね!」

「あー、美作、だったか?さすがにそれは嘘だ。」

「え、そうなんすか!?」

「いくら何でもそれはありえないよ。さすがに1度だけ外したことがある。」

 

…それは大差ないというのでは?

 

「それ大差ないっすよ?」

 

美作さんも同じことを思っていたらしい。

 

「それでも間違っていることに違いはないだろう?」

「それはそうっすけど…。」

 

結局のところこの靏蒔さんという人物はとんでもない弓道の才能の持ち主だということが分かった。ま、とんでもない才能だから希望ヶ峰学園にスカウトされることになってるわけだけどね。

とそんなことを思っていると靏蒔さんが少しキョロキョロしている。

 

「あれ、どうしたの?」

「いや、実はな、中学生の時の大会で出会った中に私にも匹敵する才能の持ち主がいたんだが、後に彼女は素晴らしい漫画家でもあると聞いてな。今年は"超高校級の漫画家"もスカウトされたと風の噂で聞いたからもしかしたら、と思ったんだがさすがにそう都合よくはいかないかと思ってな。」

「もしかしたら東京の方にいるのかも知れないね。」

「ああ。」

「でも同じ希望ヶ峰学園にいるならいつか会う機会もあるかもしれないし。」

「その時を楽しみにするよ。」

 

もしかしてスタンド使いよろしく超高校級の才能を持つ者同士も惹かれ合うのだろうか、なんて事を思いながら靏蒔さんの元を離れてちょっと周りを見回してみると、近くに柔和な顔をした少年が立っていた。

 

「次は僕の番でいいのかなぁ?」

「あ、ボクは深見優、探偵です。」

「うん、よろしくねぇ。あ、僕は大地真英、世間からは"超高校級の地主"って呼ばれてるかなぁ。」

 

 

《超高校級の地主 大地真英(ダイチマサヒデ)》

 

 

大地…。あ、もしかして…!

 

「キミってもしかして大地コンツェルンの会長子息だっていう…?」

「あ、よく知ってるねぇ。」

 

大地コンツェルン。日本でも有数の巨大財閥。様々な事業を手広く手がけているという。そしてその会長子息といえば不動産経営のエキスパートとして財界では知らない人がいない有名人だ。そして個人でも地主として広大な土地を所有し、遊園地や球場など主に人々が遊ぶための場所のオーナーとして多くの場所にその名を刻んでいる。

 

「え、あの大地コンツェルンのっすか?じゃあめっちゃお金持ちじゃないっすか!!」

「ちょっと!初対面でいきなりそれは…!」

「いいよぉ。実際お金に困っていないのは事実だしねぇ。」

 

すごいな…。人間、金銭に余裕があると心にまで余裕が出てくるんだろうか。

 

「あ、そうだぁ、お近づきの印にこれぇ。」

 

そう言って彼は僕と美作さんに1枚の紙を渡してきた。

 

「これ…。え!!?これディスティニーランドのチケットじゃないか!!」

 

ディスティニーランド。日本で最も人気の遊園地、というかアミューズメントパークで、これも彼がオーナーを務めている。お値段がお高いのと単純に大人気であるので学生には中々手が出せない代物なのだがなぜそんなレア物がスッと出てくるんだ…。しかもこれ年パスじゃないか!!?

 

「これ、とんでもないものなんじゃ…。」

「そうっすよね…。」

「いやいやそんな大したものじゃないよぉ。」

「いやいや、会長ご子息の物差しで考えたらダメっすよ…。」

 

いや、これズレてるだけだな。でもまあ、ありがたく受け取っておこう。

財閥会長子息のとんでもない価値観とスケールに驚きつつ次の人のところに自己紹介に行くことにした。

すると少し離れたところから鋭い視線を感じた。

 

「これ、誰…?」

 

と悪寒を感じながらその視線の方を向くと鋭い目付きでニット帽を被り、口元までジャケットのジッパーを上げた不思議な雰囲気を持った人物がそこに立っていた。

 

「あ、えっとー、キミも、新入生…?」

「…そうだ。」

 

ぶつ切りー…。会話が続かないよー…。

 

「あ、そうだ!ボク、深見優、探偵です!」

 

それでもどうにかと元気を振り絞って会話を試みる。

 

「…そうか。」

 

一刀両断ー…。

 

「あのー…、キミの名前も教えてもらえると嬉しいかなー、なんて…。」

「…鏑木麗。…才能は、まだ言えない。」

 

 

《超高校級の??? 鏑木麗(カブラギレイ)》

 

 

「えっとー、そっかぁ…。これからよろしくね。」

「…よろしく。」

 

才能も言ってくれなかった…。鏑木クンかぁ…。

 

「美作さん分かる…?」

 

ボクの記憶にはなかったのでもしかしたらと思い少し離れたところで美作さんに話を振ってみる。

 

「うーん、自分もわかんないっすねぇ…。何者なんすかね?」

「美作さんでも分からないかぁ。」

 

結局鏑木麗という人物が一体何者なのか分かることはなかった。

 

「あら、もしかして貴方がたも新入生?」

 

今度は先ほどボクが鏑木クンにしたような質問がボクに飛んでくる。

 

「って片方は美作さんじゃないの。」

 

振り向くと深紅の衣裳に身を包んだ美しい女性が立っていた。どうやら美作さんとは知り合いのようだから音楽関係者だろうか?

 

「ああ、木田サンじゃないっすか!お久しぶりっすねぇ!」

「そちらの方は?」

「こっちは深見優サン、名探偵なんすよ!」

「まあ、それはすごいお方なのね。」

 

すごい、なんて言われてしまうと何だかすごく気恥ずかしいんだけど…。

 

「よろしくね。」

「よろしくお願い致します。わたくし、木田結弦、と申します。バイオリニストをしていますわ。」

 

 

《超高校級のバイオリニスト 木田結弦(キダユヅル)》

 

 

話し方がとても丁寧で何というか、お嬢様、って感じの人だ。でも確かに顔と名前は見たことがある気がする。

 

「まあ深見サンなら知ってるかも知れないっすけど、自分の方が長い付き合いがあるってことで自分から説明させていただくっすね!木田サンはまあ、その名の通りメチャクチャ上手いバイオリニストっす!国際的なコンクールにも何度も出ていて、というか出るだけじゃなくて何個も獲ってるっす。そんなもんだから高校生にして彼女のソロコンサートは毎回満員御礼、アイドル並みにチケットを取るのが大変なんすよ!ちなみにそのコンクール優勝のうちの何回かは自分が楽曲提供した曲だったりするっす!ま、だから面識があるんすけどね。」

 

なんか、木田さんがすごい人なのはもちろんなんだけど、それと同時にやっぱり美作さんもすごい人なんだって事を思い知らされている気がする…。それにしても何となく人気高校生バイオリニストだってのは知ってたけどそこまですごい人だったとは思いもよらなかった…。

 

「あ、木田サン。深見サンもすごいんすよお?コ○ンとか金○一みたいにいくつもの難事件を解決してるんすから!もう漫画の世界の人みたいっすよ!」

「あはは…。」

「美作さんは深見さんにご執心ですのね?一目惚れかしら?」

「えっ!?」

「ちょ、ちょっと木田サン!やだなぁそんなんじゃないっすよ!第一自分の好みはかわいい系の男の子ってより鏑木サンみたいなイケメン系っすし…。」

 

木田さんのそんなからかうような言い方に美作さんが必死に手を振って否定している。なんかそこまで必死に否定されると無性に悔しいんだけど…。

 

「あ、でも深見サンにもちゃんと素敵な女性(ひと)がいつか現れるっすよ!大丈夫っす!!」

「何か悲しくなるからそんなに必死にフォローしないでよ!!」

 

とそんな漫才みたいな会話をしている内にいつの間にか木田さんはいなくなっていた。

何だか疲れた、と思っていると、後ろから超えをかけられた。

 

「おや、どこか悪いのかい?ボクが診てあげようか?」

 

その声は何だかとても懐かしい声で、ボクが希望ヶ峰学園への入学を決めた理由の人物の声のように思われた。そして、その勘は当たっていた。

 

「や!優クン久しぶり!元気してたかい?」

 

赤い髪に純白の白衣。幼い頃に出会い、夢を叶えるために海外へと行ったその少女とボクはこのワケの分からない場所で再会していた。

 

「真理ちゃん久しぶり!そっちも元気そうで何よりだよ!」

「深見サン知り合いっすか?」

「うん。ボクのいわば幼なじみ、かな。」

「幼なじみ!良い響きっすねぇ。ロマンスの香りがするっす!」

「そんなんじゃないって。」

「オイオイ優クン、ボクにも自己紹介をさせてくれよ。」

「あ、ごめん。」

「ボクは津田真理奈、医者さ。」

 

 

《超高校級の医者 津田真理奈(ツダマリナ)》

 

 

「彼女は本当に医師免許も持っているれっきとした医者なんだ。」

「え、でも医者になるには大学を卒業する必要があるっすよね?」

「飛び級さ。と言ってもボクは若いからね。一応身分は研修医さ。」

「でも希望ヶ峰学園の入学資格の1つは"現役高校生"であること、っすよね?そっちには当てはまらないんじゃ?」

「ふふーん、実はそんなこともないのさ。ボクは既に3年くらい研修医をやっててね。本来なら研修期間は終わってる上に天才なもんだから病院じゃもう主力さ。でも多少は年相応のことも経験しておけって院長が言うもんだから強制的に日本の高校に再入学するところだったのさ。再入学だろうと何だろうと入学しちゃえば現役高校生だってことで希望ヶ峰学園からスカウトが来たのさ。」

「色々裏道がスゴいっすね…。」

「そうまでしても一緒に同じ学校に通ってみたかった人がいたってだけさ。」

 

そう言って真理ちゃんはボクに視線を向ける。

 

「かーっ!妬けちゃうっすねぇ!あー自分にもこういう幼なじみができないもんっすかねぇ。」

「いやいや、今できてもそれは幼なじみじゃないでしょ。」

「それもそっすね。忘れてください!」

 

切り替え早いな。

 

「あ、そう言えばこれで全員との自己紹介が終わった、のかな?」

「そうっすね!他のみんなも一通り終わったようっすし、ここが何なのか調べる算段を…」

 

と美作さんが言いかけたその瞬間、それは突然に始まった。

 

 

 

キーン、コーン… カーン、コーン…

 

 

 

学校のようなチャイムのあと、ブツッという音がしたので、その方向を向くとそこには謎のモニターがあり、それの電源が入ったところだった。最初のうちはその画面には砂嵐しか映っていなかったが、だんだんそれは晴れてゆき、おおよそ人とは思えないシルエットが映った。

 

「あー、あー、マイクテス、マイクテス。新入生の皆さん、至急外の噴水庭園に集合してください。」

 

そしてそこから聞こえてきたのはふざけた、聞いた人が不快になるような声だった。その声を聞いたみんなはザワザワしていたが、その時のボク達は全く気付いていなかった。まさかその放送があの惨劇の日々の始まりになるなんて…。

 

                    ・

                    ・

                    ・

 

【生存者】

超高校級の探偵          深見優(フカミユウ)

超高校級のレーサー        速瀬マハ(ハヤセマハ)

超高校級のバスケットボール選手  雷文竜(ライモンリュウ)

超高校級の外交官         金谷秀征(カナヤシュウセイ)

超高校級のバドミントン選手    羽月翔子(ハツキショウコ)

超高校級の医者          津田真理奈(ツダマリナ)

超高校級の歴史学者        伊達小十郎(ダテコジュウロウ)

超高校級の大工          鷹岡筋次(タカオカキンジ)

超高校級の数学者         言村香奈(コトムラカナ)

超高校級の作曲家         美作奏(ミマサカカナデ)

超高校級の???         鏑木麗(カブラギレイ)

超高校級の銀行員         泊尚輝(トマリナオキ)

超高校級のハッカー        クレイグ・ホワイトバーチ

超高校級の弓道家         靏蒔由衣(ツルマキユイ)

超高校級の地主          大地真英(ダイチマサヒデ)

超高校級のバイオリニスト     木田結弦(キダユヅル)

 

残り16人




はい、と言うことで第2話でございます。前作よりもしっかり色んなキャラの性格について描いていきたいなと思って2回に分けさせていただきました。どうでしたでしょうか?推せそうなキャラクターはいたでしょうか?教えていただけると幸いです!ということでこの後書きの後ろにアンケートで推し調査をしたいと思います!回答よろしくお願いします!
ということでまた次回お会いしましょう!!


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プロローグ3

突然聞こえてきたその不快な放送にボクを含めその場にいた16人は困惑することしかできなかった。ふざけた話し方にも、妙なシルエットにも、ボク達は思考をかき乱されていた。

 

「噴水庭園ってどこだ?」

 

最初に口を開いたのは雷文クン。

 

「そりゃ外じゃねえのかい?」

 

鷹岡クンがそれに応える。

 

「いやいや、その外ってのがどこだよ?」

「そりゃ分かんねえけどよ…。」

「ちょっと待ってよ、そもそも行くつもり!?」

 

外に出る前提で話をしていた2人に羽月さんが待ったをかける。確かに、こんな得体の知れない放送なんかに従って安全なのかという点に関しては甚だ疑問だ。

 

「私も危険だと思いますが。」

「つってもここにいたって何も解決しねえだろ?」

「それはそうですが…。」

 

今この食堂は放送に従う派と従わない派で分裂しようとしている。このままでは埒があかない。どうしたものかと考え込んでいると、扉の方でガチャリと音がした。そちらを見てみると今まさに美作さんが食堂の外に出ようとしているところだった。

 

「え、美作さん!!?」

「何してんだ!?」

「何って外に集合って言われたじゃないっすか。だから行こうと思って。」

「それが危ないかもって話を今してるんだよ!?」

「うーん、そうっすかねぇ?自分はそんなに気にしなくてもって思うっすよ?」

「…何でさ?」

「ほら、こういうのってとりあえず全員を集めて状況説明ってのがお約束じゃないっすか!きっと先生達が脅かそうとしてるだけっすよ!」

「そんなこと、ありえるのかなぁ?」

「そんなに心配だったら皆サンは後ろで自分が出てくとこ見ててください!もしそれで自分に何かあったらすぐにこの建物に引き籠もるっす。幸いコンビニとか厨房とか食べ物がありそうなところが何カ所かありますし、それなりの期間は籠城できるはずっす!」

「…美作さん。」

 

あっけらかんとして言う彼女にボク達はみんな呆気に取られていた。けど、

 

「それならば某も行かせてもらう。」

 

続いて伊達クンが前に出た。

 

「この時代に男が女がと言うつもりはござらんが、美作殿がこれだけの覚悟をして見せているのに、臆して隠れているなど武士の名折れ。美作殿、共に参ろうぞ。」

「わー、なんか戦に行くみたいっす!自分もテンション上がってきたっす!出陣だー!!」

 

そんな2人の様子を見ている内にだんだんみんなもその気になってきたのか、

 

「じゃあアタシも負けてらんねえな!」

「マズそうなら俺が交渉に入る。」

「ならば私も援護射撃をしよう。」

 

とどんどん扉の外に出て行ってしまう。まあ、ボクもそんな中の1人なんだけど。

そして最後まで残っていた泊クンも、

 

「あー、もう!どうなっても知りませんからね!!」

 

と息巻いて食堂から出てきた。

ロビーに出てみると、さっきまでは何かシャッターのようなものでも降りていたのか、気付かないうちに食堂とは反対側に出入り口ができていた。

 

「こんなのさっきまでなかったよな…?」

「いつの間に…。」

「言っててもしょうがない。出るぞ。」

 

その様子に困惑しつつも、雷文クン、鷹岡クン、美作さん、伊達クンの4人を先頭にボク達は建物の外へと飛び出した。

外へ出たボク達を出迎えたのは異様な光景。この建物とその敷地内からボク達を逃がさないために準備されたような巨大な鳥かごのような何かだった。更に遠くにうっすらと見える塀もかなりの高さをしているみたいだ。とりあえずこの場所からの脱出方法は後で考えるとして、まずは集合場所の噴水庭園を探すことにした。と言ってもそんなに苦労することはなく、建物の扉からまっすぐ進んでいく内に巨大な噴水のある庭園へとたどり着いた。

 

「要求通り来た。そちらも姿を見せてくれ。」

 

人垣をかき分けて金谷クンが先頭に出た。そして放送の主に対して呼びかける。すると、

 

「ぐぷぷぷぷ、じゃあ、始めるとするぜ!!」

 

噴水のてっぺんの大きな飾りから声がしたと思うとその裏から何かが飛び出してきた。そして噴水の正面、ボク達の目の前に着地した。

 

「コイツは何だ…?」

「ぬいぐるみー?」

「いや、ラジコンじゃねえかぁ?」

 

得体の知れないそれに困惑していると、突然にそれは話し始めた。

 

「オレはぬいぐるみでもラジコンでもねー!モノトラ様だ!!」

「しゃしゃしゃ、喋ったっす!!?」

「こいつぁよくできてんじゃねぇの。」

 

そういってクレイグクンが怯みもせずにモノトラと名乗るそれに向かっていく。そしてがしっと掴むと、

 

「ちっとコイツは分解して色々見てみてぇなぁ。」

「何言ってんのさ!」

「いや、こういうのって興味あんじゃんよ?」

 

とそんな緊張感のない話をしていると、

 

「その手を放すんだぜ。」

 

とさっきまでとは違う低い声でそれは話しかける。と同時にピピピピとアラートが鳴り始まる。

 

「マズいっ!その手を放すでござるっ!!」

 

伊達クンが急いで詰め寄ると腰に差した竹光を抜き払い、モノトラを空中へと撥ね飛ばす。するとそのモノトラは空中でボンと爆発した。

 

「…間一髪でござったな。」

「うへぇ…。助かったぁ…。伊達ちんありがとね。」

「礼には及ばぬ。」

「にしても今のはなんですの?爆発したって事はもういないってこと…?」

 

今の一連の現実味のない光景に対してボク達はざわつくことしかできない。すると、

 

「まだまだいるんだぜ!」

 

再び噴水の後ろからモノトラが現れた。

 

「どわぁ!!まだ生きてやがった!!」

「いや、感じからして恐らくスペアでしょう。」

「さて、オマエラには色々言いてえことはあるんだが、まずはオレへの暴力行為は禁止だぜ?」

「暴力ってちょっと分解してみようとしてみただけじゃーん。」

「人でもそれが通用すると思ってんのか?」

「ま、そりゃそうだけどさぁ?」

「今日のところは2人とも見逃してやるが、次やったらこんなモンじゃ済まさないんだぜ…。」

「2人…。某もか。」

「当たり前だぜ!そんな棒きれなんぞで叩きやがって。」

「爆発すると思って咄嗟のことでござる。」

「それでもだ。それに、後ろにも何人か血の気の多い奴がいるみてーだしな。」

 

そのモノトラの言葉に振り返ると既に雷文クン、鷹岡クン、鏑木クンの3人が戦闘態勢を取り、靏蒔さんは弓に矢を番えていた。

 

「ま、こんくらい血の気の多い奴らの方が好都合、か…。」

 

そんな彼らの様子を見てモノトラは不敵に笑う。

 

「さて、まずオマエラに質問だ。ここがどこだか分かるか?」

「分かるかよ!!」

 

ここがどこか。さっきまで僕たちがいたのは食堂。そしてその他には宴会場のような和室にコンビニ。1階にこんな施設がある建物って言うと…。

 

「ホテル、旅館、料亭、そんなところかな?」

「お、冴えてる奴がいるじゃねーか。ここはホテルシンフォニー。高級ホテルだぜ。」

「で、その高級ホテルにボク達を集めて一体何をさせたいわけ?」

「職業体験だぜ。」

「それにしては随分大仰な気もするけどね。」

「ただし、期間は一生、だけどな。」

「「「は…?」」」

「オマエラにはこのホテルで一生職業体験をしてもらうぜ!!」

「バカ言ってんじゃねえぞ?そんなことできるわけねえだろ!!」

「まあ、そんな反発が出ることは予想済みだ。ってなワケでそんなお前達に特別ルールを用意したぜ!」

「特別ルール?」

「簡単だ。」

 

まるでそれを言うのを楽しみにしていたかのようにモノトラは邪悪な笑みを浮かべる。

 

 

 

 

 

「オマエラの中の誰かを他の誰にもバレることなく殺せ。方法は問わない。殴殺撲殺刺殺斬殺毒殺絞殺轢殺焼殺射殺銃殺扼殺暗殺忙殺薬殺圧殺溺殺氷殺抹殺爆殺縊殺礫殺焚殺呪殺何でも好きなようにやってくれ。」

 

 

 

 

 

「…は?」

「もっとできるわけないでしょ!!?」

「さあ、ソイツはどうかねえ?ま、オレとしてはどっちでもいいぜ?一生このホテルの中で暮らしていくっていう絶望も、仲間を殺して生きていくっていう絶望も、どっちもオレの大好物だからな。」

「…モノちんちょっといい?」

「その呼び方は不服だがいいぜ?」

「その誰にもバレてないってのはさ、どうやって判別するわけ?」

「お、そいつは良い質問だぜ。簡単に言うと死体が見つかったあと一定時間捜査時間を設けさせてもらうぜ。そしてそこで集めた証拠を元にオマエラには"学級裁判"をしてもらう。」

「学級裁判?」

「ああ。全員が被告人、全員が検察、全員が弁護士、そして全員が裁判官のどっきどきわっくわくのシステムさ。そしてその裁判で誰か1人、犯人だと思う人物をクロとして指名してもらう。そして、その指名した人物が正しいクロ、犯人だった場合にはそのクロ1人にキツーいおしおきを受けてもらう。そして、もし間違った人物を指名してしまった場合はシロ、つまり犯人ではない全員におしおきを受けてもらい、残ったクロは晴れて脱出、という訳さ。」

「そのおしおきってさー、お尻ペンペンとかじゃないよねー?」

「人1人殺してるんだぜ?そんな生やさしいモンなわけねーだろう?言い方を変えてやろうか。処刑だ。」

 

処刑。その一言にボク達はゴクリと喉を鳴らす。ボクはこれまでもかなり色んな殺人に遭遇してきたし、その中には連続殺人犯として死刑判決を受けた人もいる。でも実際、目の前で執行されるのを見たことがあるわけじゃない。だからもしそんなことになったら、と思うと身が竦む。探偵であるボクでさえそうなんだ他のみんなに至ってはどれほどの恐怖であることか。

 

「これを名付けて"コロシアイ職業体験"、存分に楽しんでほしいんだぜ。」

 

コロシアイ…。聞いたことがある。超高校級の絶望によって引き起こされた、希望ヶ峰学園における惨事。まさかこのモノトラという奴はそれを再び、このホテルで再現しようと言うのだろうか。

 

「あ、あとコイツも渡しておかなきゃな。」

 

そう言うとモノトラはボク達1人1人に何かケータイほどの大きさの端末を渡していく。

 

「これは?」

「ソイツはこのコロシアイ職業体験の"しおり"だぜ。」

「しおり?」

「その中には色んな情報が詰まってる。カメラ機能もついてるから裁判の証拠集めにも役立つぜ?それに、"コロシアイ職業体験"のルールだって書いてある。そのルールは破ったらそっちもキツーいおしおきだからきちんと頭に入れておく方が賢明だぜ?ってなワケでじゃあな!」

 

そこまで言うとモノトラはボク達の元を去って行く。くそっ!何がコロシアイだ!!

困惑、恐怖、怒り。そんな感情がボク達を支配していく中、1人だけ冷静にその"しおり"を開いている人物がいた。

 

「美作さん、何してるの?」

「さっき言ってたルールってのを確認してるんす。わざわざ自分から人を殺そうとは思わないっすけど、でもルール違反であのぬいぐるみに殺されるのも癪っすからね。」

 

確かにそれはその通りだ。ボクもここにいる人たちが他人を殺すような人たちだとは思わないけど、それでもルール違反をしたら死ぬ可能性がある。だったらこのルールくらい確認しといて損はないはずだ。

そう思って栞を開き、その中のルールを見てみる。

 

 

1.生徒達はこのホテル内で無期限の職業体験を行う。

 

(これが最初に言っていたことかな。)

 

2.夜10時から午前7時までの時間を夜時間とし、ホテル本館における扉の付いたエリアを立入禁止とする。

(時間には気を配っておかないと危ないかも。)

 

3.故意の就寝は職員宿泊棟の自室においてのみ許可する。

(つまり寝落ちしたらマズい、ってことだよね。)

 

4.生徒間で殺人が起こった場合には一定の時間の後、全員参加が義務づけられる学級裁判が行われる。

(こんなの起こさせるわけないだろ…!)

 

5.学級裁判で正しいクロを指摘した場合、クロだけが処刑される。

(この処刑って言うのがおしおきだって話だよな…。)

 

6.正しいクロを指摘できなかった場合、ルール違反と見なし、残りの生徒は全員処刑される。

(こんなこと罷り通ってなるものか…。)

 

7.生き残ったクロは特別措置として罪は免除され、ホテル敷地内からの脱出を許可される。

(でも、もし殺人が起こってしまったら、クロはきっと必死で生き残ろうとするんだろうな…。)

 

8.3人以上の人間が死体を発見した際、それを知らせる『死体発見アナウンス』が流れる。

(そんなアナウンス聞きたくもないけどな…。)

 

9.モノトラへの暴力行為及び敷地内の監視カメラやモニターへの破壊行為を禁じる。

(そう言えばよく見たらこの敷地内、監視カメラとモニターだらけじゃないか!)

 

10.このホテル及びその敷地について調べることは自由である。特に行動に制限が課されることはない。

(ということは、早い内から調べて回ってどうにか抜け穴を見つけられればコロシアイなんかの心配なんかいらないじゃないか!)

 

また、校則は必要に応じて増える場合がある。

 

 

「…ふう。」

 

とりあえず書かれているルールはこんなところか。それにして、まだ現実味がないや。でもそれは他のみんなも一緒なようで、メンバーの中の何人かはここまでの流れ全部が学園による大がかりな歓迎のドッキリではないかと思っている人もいるようだ。すると、

 

「いやぁ、それにしても怖いよねぇ。」

 

クレイグクンが突如口を開いた。

 

「コロシアイってさぁ、アレでしょ?何年か前希望ヶ峰学園でやってた奴。もしかしたら俺ちん達の間でもおんなじ事が起こっちゃうかもなんてさ?もしかしたらもうこの中に誰かを殺そうと思ってる人がいるかもしんないってことでしょ?」

「クレイグクン何を…?」

「だってそうでしょ?もちろんルールだって気を付けなきゃなんないけどさぁ、一番気を付けなきゃなんないのは"お互い同士"でしょ?」

 

その言葉に場の全員が一気に背筋を凍らせる。モノトラの言葉には何だか現実味がなかったけど、こうして実際に仲間の1人に言葉にされてしまうと一気に現実味が増してきてしまった。

 

「え、うちやだよ、殺されるの!?」

「そんなの私だって嫌ですよ!!」

 

そしてだんだんの内にパニックが伝染していく。今すぐにでもこの場で大変な事が起こってしまいそうなくらい一触即発な緊張状態になってしまう。どうしよう、こうなってしまったらボクにはどうすることもできない…!

そう思っていると、突然、キィィィィィ!!!という何かを引っ掻くような音が耳をつんざき、その場に静寂が訪れる。

 

「…皆さん、冷静になりまして?」

 

そこには手にバイオリンを持った木田さんが立っていた。

 

「これ、弦が傷むからあまりやりたくないんですのよ?でもこのままパニックになるよりかはいいかと思いましたの。」

 

その木田さんの言葉に完全にみんなのパニック状態は収まったみたいだ。

 

「まず、クレイグさん、余計なことをおっしゃらないでくださいまし。コロシアイなんて皆さん全員で協力すれば起こるはずもないでしょう?皆さんを混乱させるようなことはおっしゃらないでください。」

「わーるかったって!ちょっとからかっただけだよぉ。俺ちんだって本気にはしちゃいないさ。」

「それに皆さんもですよ?貴方達はそれぞれの分野の超一流。そんな方々がこれだけ集まってできないことはございません。きっと必ず、脱出の方法はあります。これからそれを模索していきましょう?」

 

ボク達は木田さんのスピーチを黙って聞いていた。だけど、そのおかげでみんな冷静に、そして前向きになれたみたいだった。

 

「それなら今日のところは一旦部屋で休みましょう!」

 

みんなが前向きになったところで、と美作さんがそう提案する。

 

「みんな今日は色々あって疲れてるんす。だから変な考えも浮かぶんすよ。だから今日のところはきちんと休んで、出口探しは明日からやりましょう!だーいじょうぶ!きっと見つかるっす!」

 

そしてボク達はその提案に乗って休むことにしたのだった。

この時のボク達は本当にただただ前向きだった。必ず出口だって見つかるとそう思っていた。

 

 

だけど、そんなのはただの幻想だったんだ。

 

 

 

 

 

この生活には希望なんてない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あるのはただただ昏く深い"絶望"、それだけだったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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【生存者】

超高校級の探偵          深見優(フカミユウ)

超高校級のレーサー        速瀬マハ(ハヤセマハ)

超高校級のバスケットボール選手  雷文竜(ライモンリュウ)

超高校級の外交官         金谷秀征(カナヤシュウセイ)

超高校級のバドミントン選手    羽月翔子(ハツキショウコ)

超高校級の医者          津田真理奈(ツダマリナ)

超高校級の歴史学者        伊達小十郎(ダテコジュウロウ)

超高校級の大工          鷹岡筋次(タカオカキンジ)

超高校級の数学者         言村香奈(コトムラカナ)

超高校級の作曲家         美作奏(ミマサカカナデ)

超高校級の???         鏑木麗(カブラギレイ)

超高校級の銀行員         泊尚輝(トマリナオキ)

超高校級のハッカー        クレイグ・ホワイトバーチ

超高校級の弓道家         靏蒔由衣(ツルマキユイ)

超高校級の地主          大地真英(ダイチマサヒデ)

超高校級のバイオリニスト     木田結弦(キダユヅル)

 

残り16人




という訳で、一気にプロローグを駆け抜けて参りました。いかがでしたでしょうか?そして今回のGM訳も前回から引き続き、モノトラに任せることにしました。今回も大活躍を期待したいところです!
次回は私が独自に入手したこちらのメンバーの新入生ファイルを公開して、それから本番スタートと行きたいと思います!お楽しみに!

ということでまた次回お会いしましょう!!


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極秘資料ー希望ヶ峰学園京都分校新入生ファイルー

No.生徒名
才能
身長
体重
胸囲
血液型
誕生日
呼び方
CV
説明
セリフ

といった感じでまとめていきます。CVはイメージかつ敬称略で。
また、キャラのイメージ絵(胸から上)を上げるのですが、いかんせん画力が死んでいるので、皆様の頭の中でダンロン絵に変換しながら見ていただけると幸いです。


1.深見優(フカミユウ)

超高校級の探偵

170cm

60kg

87cm

A

1/6

ボク/男:○○クン、女:○○さん、津田は真理ちゃん

戸松遥

 

数々の難事件を解決した事によって希望ヶ峰学園にスカウトされた。基本的に穏やかで時にはボーッとしているとまで言われることもあるが、やるときはやる。また、実は格闘技を習得しており、気を張っているときにはどんな死角から攻撃しようとも迎撃態勢に入ることができる。

 

「それは違うよ!」

「これで証明するね。」

 

 

【挿絵表示】

 

 

2.速瀬マハ(ハヤセマハ)

超高校級のレーサー

172cm

57kg

83cm

B

8/21

アタシ/名前呼び捨て

巽悠衣子

 

史上最年少でレースデビューした後連戦連勝により、確実に今の賞金女王は彼女だと言われるほどの腕前を持つに至った天才レーサー。実はかなり食いしん坊で、レース直前のダイエットの時期になると野生の獣のようになるので注意が必要。

 

「アタシがぶっちぎってやんよ!!」

「その推理はクラッシュだ!!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

3.雷文竜(ライモンリュウ)

超高校級のバスケットボール選手

193cm

87kg

102cm

O

5/30

オレ/苗字呼び捨て、クレイグはクレイグ

古川慎

 

自他共に認めるバスケバカ。特に3ポイントシュートにはかなりの自信を持っており、その見た目からは想像も付かない正確な軌道は芸術とも称されることがある。その実力を以て高校バスケのタイトルを総ナメにしている。

 

「だーっ!オレは頭使うのは性に合わねえんだよ!」

「落ちるぜ、その推理。」

 

 

【挿絵表示】

 

 

4.金谷秀征(カナヤシュウセイ)

超高校級の外交官

177cm

70kg

83cm

A

1/16

俺/苗字呼び捨て

鈴木崚汰

 

素晴らしい頭の回転の速さとずば抜けた交渉術によって高校生にして数々の国際問題を解決してきた敏腕外交官。交渉の際には丁寧に対応するが、実際のところはかなり毒舌。今回の同級生にはその素を隠す気はないようだ。

 

「こんな才能(もの)なければよかったとも思うがな。」

「ネゴシエーション開始だ。」

 

 

【挿絵表示】

 

 

5.羽月翔子(ハツキショウコ)

超高校級のバドミントン選手

167cm

65kg

79cm

AB

7/8

うち/男:苗字君、女:名前ちゃん、クレイグはクレイグ君

佐倉綾音

 

高校生にしてオリンピックに出場し、メダルも獲得した若手再有望格のバドミントン選手。また、その容姿も優れているため、選手としてだけではなくアイドル的な人気も誇る。本人は至って普通の女子高校生であるため、その人気には恐縮している部分がある。

 

「コートに立ってる間、うちには羽が生えてるんだ。」

「それはフォルトだよ!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

6.津田真理奈(ツダマリナ)

超高校級の医者

156cm

50kg

70cm

O

2/4

ボク/男:苗字クン、女:名前さん、深見は優クン、クレイグはクレイグ

悠木碧

 

深見優の幼なじみで、幼くして海外へと渡り、飛び級によって医学部を卒業した天才。その能力は各分野の天才が集う希望ヶ峰学園の中でも飛び抜けており、ギフテッドであろうと推測される。また、専門は一応外科ではあるが、その他の分野においても医者としては超一流である。

 

「命を救う医者としてこれだけは容認できない。」

手術(オペ)を始めようか。」

 

 

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7.伊達小十郎(ダテコジュウロウ)

超高校級の歴史学者

183cm

75kg

92cm

A

9/5

某/苗字殿、クレイグはクレイグ殿

小西克幸

 

自身の祖先について興味を持ったことから歴史研究の道へと進んでいき、その結果として今の学会を揺るがすような新説を打ち出すこととなった。武士のような口調と腰に差した竹光は幼い頃に見たドラマに影響されたため。

 

「安心してくだされ!人殺しなどこの伊達小十郎、決して許しはせぬ!」

「斬り捨て御免!!」

 

 

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8.鷹岡筋次(タカオカキンジ)

超高校級の大工

198cm

104kg

118cm

B

10/23

オイラ/○○の字

前野智昭

 

その仕事の正確さとスピードから若くして大工の棟梁を務める。下町生まれの生粋の江戸っ子で、今時珍しいくらいのゴリゴリの江戸言葉を話す。明朗快活な性格でメンバーの兄貴分的存在になっていく。

 

「人殺しなんてどういう気持ちになりゃできんのか、オイラにゃちっとも分かんねえや。」

「ソイツは建て直しでい!」

 

 

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9.言村香奈(コトムラカナ)

超高校級の数学者

160cm

49kg

78cm

A

3/7

香奈/男:苗字くん、女:名前ちゃん、クレイグはクレイグくん

安野希世乃

 

子どもの頃からパズル感覚で難解な数式を解いてきた数学の天才。高校生になったときには遂に懸賞金の懸った問題を複数解いてしまうほどにまで至った。本人は非常にのんびりした性格をしているが、その集中力は計り知れない。

 

「香奈の計算通りー、なんちゃってー。」

「そこは計算違いだよー。」

 

 

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10.美作奏(ミマサカカナデ)

超高校級の作曲家

163cm

53kg

83cm

AB

3/19

自分/苗字サン、クレイグはクレイグサン

土師亜文

 

クラシックな音楽からゲームやアニメのBGMまでどんなジャンルの音楽でも作ってみせる作曲家。近年では彼女が曲に関わっているというだけで苦手なジャンルのゲームを飼う人もいるくらいになっている。つかみ所のない性格で、時にデリカシーに欠けた発言をしてしまうときもある。

 

「健全な生活は素晴らしい音楽から、ってのが自分のモットーっすから!」

「その推理、半音低いっすよ!」

 

 

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11.鏑木麗(カブラギレイ)

超高校級の???

173cm

65kg

87cm

O

6/19

私/苗字呼び捨て、クレイグはクレイグ

田村睦心

 

何もかもが謎に包まれている。頑なに自分の才能を話そうとしないのは忘れているのか、それとも何か後ろ暗いことがあるのか…。その寡黙な口から真実が話されることを待つしかないだろう。

 

「…私も手伝おう。」

「…それは違う…、と思う…。」

 

 

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12.泊尚輝(トマリナオキ)

超高校級の銀行員

170cm

65kg

88cm

A

10/7

私/苗字さん、クレイグはクレイグさん

遊佐浩二

 

日本有数の巨大銀行の頭取の息子。本人も親の教育方針により高校生の内から銀行員としての経験を積んでいる。最初は行内外問わず反発の声も多かったが、その実力で認められていった。かなりの慎重派であると同時に、お金に限らず貸し借りに関してはかなり口うるさい。

 

「それは貸しです。後できちんと返してもらいますからね。」

「その推理には私の命を貸せませんね。」

 

 

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13.クレイグ・ホワイトバーチ

超高校級のハッカー

187cm

64kg

80cm

B

4/6

俺ちん/苗字ちん

神谷浩史

 

数々のサイバー犯罪を解決してきたホワイトハッカー。常に人を食った態度を取って周りの不興を買うこともしばしば。自分の作業環境を整えるために自分で道具を作ることもあるので、機械工作も得意だったりする。

 

「ジョーダンだよジョーダン、マイケルさ。あんまし本気にしないでよぉ。」

「その推理、ウイルスが侵入してるぜ?」

 

 

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14.靏蒔由衣(ツルマキユイ)

超高校級の弓道家

168cm

63kg

89cm

A

9/3

私/苗字呼び捨て、クレイグはクレイグ

雨宮天

 

弓を射る姿は何よりも美しいとさえ評されるほどの弓道家。祖母の影響で弓道を始めたが、いつの間にか自分自身も弓道の魅力にはハマり今に至る。非常に真面目な性格のためクレイグとはあまり相性がよくない様子。たまに弓道関係の言葉を引用する。

 

「正射必中、正しく生きていればきちんと結果が付いてくるものだと私は思っている。」

「一射入魂、その推理、射貫く!」

 

 

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15.大地真英(ダイチマサヒデ)

超高校級の地主

165cm

67kg

93cm

O

2/24

僕/男:苗字君、女:名前さん、クレイグはクレイグ君

阪口大助

 

大地コンツェルンの会長の御曹司。様々な事業を行っている大地コンツェルンの中でも不動産事業のスペシャリストであり、遊園地や映画館、球場と言った様々な娯楽施設を経営している。お金持ちの余裕か常にゆったりしており、その人柄に癒やされる人もいるらしい。

 

「のーんびりいこうよぉ。」

「ここだけは急ごうかなぁ。」

 

 

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16.木田結弦(キダユヅル)

超高校級のバイオリニスト

164cm

53kg

86cm

AB

9/28

わたくし/苗字さん、クレイグはクレイグさん

大西沙織

 

高校生にして世界各地のコンクールの優勝をかっさらう天才バイオリニスト。そのコンクールに使う曲の関係で美作とは以前から面識があった様子。良家のお嬢様であり、その高貴さが言動の端々に出ている。

 

「リラックスには音楽が一番ですわ。一曲失礼しますわね。」

「調律が必要ですわね。」

 

 

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EX.モノトラ

超高校級の絶望によってホテルシンフォニーに送り込まれたコロシアイの首謀者。体の色が左右で白黒に分かれたトラの姿をしたぬいぐるみで、それぞれの側の色とは逆の色の縞模様が入っている。一人称は「オレ」で、生徒達を「オマエラ」と呼ぶ。傲岸不遜な話し方で生徒達をイラつかせる。笑い方は「ぐぷぷぷぷ」。

 

 

【挿絵表示】

 




と、今回のキャラクター紹介はこんな感じです!皆様のお気に入りになれそうなキャラクターはいたでしょうか?ということで次回から本編スタートとなるのでどうかお楽しみに!

p.s.もしよろしければ、見た目でも良いし、キャラ設定でもいいので、既に設置してあるアンケートにもどしどし気軽に回答お願いします!話が進む中で推し変があったら変更しても構いません!


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CHAPTER1 小さな夜の絶望
CHAPTER1 (非)日常編1


CHAPTER1 小さな夜の絶望 (非)日常編

 

キーン、コーン… カーン、コーン…

 

「おはようございます。7時です。今日も一日元気に頑張りましょう。」

 

夢、だと思いたかったけど、やっぱり昨日の出来事は現実だったみたいだ。それは今流れたモノトラの不快なアナウンスがいやというほど思い知らせてきた。昨日は結局一度部屋に戻ったっきり、みんな外に出てくることはなかった。この異常な状況に食欲も湧かず、みんなそのまま部屋で眠ってしまったみたいだ。ただやっぱり人体というのは不思議なもので、こんな異常な状況下でも一度落ち着くとお腹が空くみたいだ。

 

「…仕方ない。とりあえず、コンビニでも行こうかな。」

 

そう思って扉を開けると、扉の前には美作さんがいたようだった。

 

「ビックリしたっすねぇ!あ、深見サン、おはようございます!」

「あ、ごめん、おはよう。どうしたの?」

「いやー、不思議なもんすねぇ。こんな状況でもお腹はちゃんと空くみたいっす。なんで朝食を食べようかと思って。」

 

どうやら美作さんも同じ考えだったらしく、一緒にコンビニに向かうことにした。

ホテルのエントランスを入ると、食堂の方から何やら良い匂いがしてきた。

 

「何か良い匂いがするっすね!誰かご飯作ったんすかね?」

 

と美作さんがすすすーっと食堂へと引き寄せられていく。と言っても僕もその後ろを付いていくように引き寄せられていったんだけど。食堂の扉を開けると、テーブルの上には一日の朝ご飯とは思えないほどのごちそうが用意されていた。食堂には他に誰もいないし、モノトラが用意したんだろうか?

 

「うっはー!すごいっすねぇ!いただきまーす!!」

 

美作さんは目をキラキラさせながら料理へと走って行き、息つく間もなくその料理を食べ出した。

 

「ちょっと、美作さん!それモノトラのワナかも…!毒が入ってるかもよ…!」

「ひーんふぁいないっふよ!」

「いや、ちゃんと飲み込んでから話してよ…。」

 

美作さんは口の中に入っているものをきちんと飲み込むと、再び『しーんぱいないっすよ!』と言った。

 

「何でさ?」

「だって昨日のモノトラの言いぶりからするとモノトラは自分たちにコロシアイをさせたいんすよね?だったらモノトラ自身が手を出すのってコンセプトから外れるじゃないっすか。」

「まあ、そうだけど…。」

「そ、れ、に!今こうしてて大丈夫って事は、他の皆サンが毒を盛ってたりもして無さそうっすし、ただただおいしい朝ご飯っすよ!」

 

そう言うと美作さんはもう一度ご飯を食べ出した。その様子を見ているとボクのお腹もギュルル~と再び鳴り、ボクも我慢できなくなった。

 

「あーもう!後は野となれ山となれ。だ!ボクも食べる!!」

 

そうして2人で食事をしていると、匂いを嗅ぎつけてきた他のみんなも集まってきて、食堂で朝から大宴会、という状況になった。

一通り食べ終わってみんなが満腹になると、一息ついたところで靏蒔さんが提案があると言って立ち上がった。

 

「今日これからみんなに協力してもらいたい事があるんだがいいか?」

「そりゃ内容によるんじゃねぇかぁ?」

「それもそうだな。今日みんなで手分けしてこのホテルについて調べられないかと考えている。もしかしたらあのモノトラとやらが気付いていない抜け穴が存在するかも知れないからな。」

「ほんとにそんなもんあるのかねぇ?」

「やってみなければ分からんだろう。」

「なかったら?靏蒔ちんどう責任取ってくれんの?みんなの前で裸で逆立ちして三回回ってワン!とかかい?」

「…貴様、茶々を入れるな。そもそも貴様昨日からその態度はなんだ!?みんなを混乱させる発言ばかりして!!」

「場を和ませるためのジョークでしょうよぉ。靏蒔ちん、そんなにクソ真面目で疲れねぇの?」

「私はこれが素だ!」

 

非常にマジメな靏蒔さんと人を食った態度を取るクレイグクン、合うわけがなかった。今にも喧嘩が始まりそうな雰囲気だ。

 

「だーっ!!ストップストップ!!ケンカすんなっての!!」

 

そろそろ止めないとマズいと思っていたタイミングで雷文クンが2人の間に割って入った。こういうときに彼の恵まれた体格はうらやましい。

 

「靏蒔のきちんと調べときてえって気持ちも分かるし、そんで出口が見つからなかったらっつうクレイグの不安も分かるが、とりあえずやってみようぜ?見つかんなかったらそんときはそんときでまた考えりゃいいじゃねえか。」

 

雷文クンの言葉に2人、特に今にも大噴火を起こしそうだった靏蒔さんが矛を収める。

 

「よーし、じゃあくじ引きしようぜ!!何チームくらいに分けるよ?」

「ホテル内2,外1、職員宿泊棟1の計4チームくらいでどうでしょうか?」

「うん、それくらいがちょうどいいねぇ。」

「じゃあうちここの割り箸でくじ作るね!」

 

雷文クンの鶴の一声で一気にみんなで探索する空気が高まっていった。そしてその流れのまま探索のチーム分けと探索場所が決まった。その内訳はこんな感じだ。

 

 

1班:速瀬、伊達、美作、クレイグ→ホテル1

2班:雷文、鷹岡、言村、木田→ホテル2

3班:深見、津田、泊、靏蒔→外

4班:金谷、羽月、鏑木、大地→職員宿泊棟

 

 

「おー、優クンも一緒じゃないか。」

「よろしくね、真理ちゃん。泊クンと靏蒔さんもよろしくね!」

「ええ、よろしくお願いします。」

「よろしく頼む。」

「じゃあボク達は探索範囲が広いし早速行こうか!」

 

なぜかボクが3班の班長ということにされてしまったので、ボクの号令でみんなは探索に行くことになった。

 

 

 

まず最初に向かったのは噴水庭園。ここではモノトラが最初に現れ、ボク達にコロシアイ職業体験の開催を宣言した。モノトラが出てくるまでこの噴水に何の変哲もなかったような気がするけどどこから出てきたんだろう?

 

「これは何の変哲もない噴水ですね。」

「これのどこからあのモノトラは出てきたんだ…?」

「うん、スパイ映画みたいな仕掛けも無さそうだし、そうなるとこの噴水に出口がくっついている、なんてこともなさそうかなー。」

 

まあ、一番近くて目立つから来ただけだし、ここに出口があるなんて都合の良いことは思ってなかったけどね。って言うか真理ちゃん何食わぬ顔で噴水に入ってない!?

 

「ふう、足びしょびしょだね。」

「何で入ったの…。」

「だってそうしなきゃ細かく調べられないじゃないか。」

「それはそうだけど…。」

「とりあえずズボンと靴を着替えてきてください。そのままじゃ風邪を引きます。」

「そうだね。医者の不養生というわけにも行かないしね。」

 

いつの間にかそれぞれの個室には同じセットアップの服が用意されていて、すぐに着替えられるようになっていた。

 

「やあやあお待たせ。」

「おかえり。あっちのみんなは順調そうだった?」

「うーん、普通。と言うより奇異の目で見られちゃって中々話しかけられなかったよ。」

「そりゃそうでしょう。別の場所を探索しに行ったはずの人が足をびしょびしょにして自分たちのところに来たら。」

 

的確なツッコミだ。

 

「それじゃ次のところに行こうか。」

「ああ、そうしよう。」

 

ずっと噴水周りで駄弁っていても他の人たちに怒られてしまうので次は宿泊棟とは噴水を挟んで反対側にある建物に向かうことにした。それなりに歩いて行くと鉄筋コンクリート製の大きな建物が建っていた。

 

「これ、何ですかね?」

 

入り口を見てみると本来この建物が何であったのかを示すプレートだったとおぼしき金属製の板が大分くすんでしまってここが一体何の施設なのか分からなくなってしまっていた。

 

「うーん、なんだろうなぁ。」

「おい、これを見てみろ。」

 

遠巻きに建物を見て回るボク達に対して1人扉まで近寄っていた靏蒔さんが扉を指さす。その言葉に導かれるようにボク達も扉に近づく。すると扉のガラスの部分に何か張り紙がされていた。そしてその張り紙には工事現場で被るようなヘルメットを被ったモノトラがこちらに向かって頭を下げているイラストも描いてあった。その内容を見てみると、

 

 

『施設老朽化のため整備中につき立入禁止ご迷惑をおかけします。』

 

 

とまるで本当にホテルのスタッフが貼った張り紙のような内容になっていた。

 

「結局これは何の施設なんだろうね?」

 

その疑問は残ったままだ。

 

「うーん、でもこういう高級ホテルでホテルそのものの外にある施設だとすると、プールとかジムとかそういうスポーツ系の施設じゃないかな?」

「おお、なるほど。さすがは超高校級の探偵。」

「そんなたいしたことじゃないって。それに今のはあくまで状況からの推察であって本当に正しいとは限らないんだし。」

「ま、もしかしたら何かの条件で開放されるのかも知れないし、その時に答え合わせをしようじゃないか。」

「そんなプレッシャーかけないでよ。」

 

さて、あとボク達が見に行かなきゃならないところと言えば、やっぱりあの巨大な鳥かごの一番端、ここの敷地の限界部分だろうか。

 

「じゃあ後は一番端っこまで見に行こうよ。」

「まあ、門などがある可能性が高いとすればそこですよね。」

「うへー、結構広いよー?」

「でも見ないことには何も分からない。行こう。」

 

そう言うと靏蒔さんはずんずん突き進んでいく。

 

「ものっすごいパワフルさ。」

「言ってても仕方ないでしょう。早く行かないと置いて行かれますよ。」

「そうだね。」

 

そんな話をしている間にも靏蒔さんはどんどん先に行ってしまうので、彼女を見失う前に追いつこうと急いで歩いて行った。

…が、結果敷地の端にたどり着いて見つけたものはとんでもない真実だった。

 

「なんだ、この巨大な壁は…。」

「外に出るどころか見ることすらできないじゃないか…。」

 

どこかに抜け穴の1つもないかと敷地をぐるっと調べながら回ってみたが、それも徒労に終わった。

 

「どうしよう、これ…。」

「せめて外でも見られないものか…。」

 

と言いながら立ち尽くしていると、

 

「それなら2人で協力して外を見れないか試してみようじゃないか!」

 

と唐突に真理ちゃんがそんな提案をしてきた。

 

「…どういうこと?」

「ほら、片方が自分の肩にもう片方をを乗せてできるだけ高さを稼げばこの高い壁から外を覗けるんじゃないか、と思ってね。」

「誰がやるんです…?」

「それはー、男の子、頑張ってくれたまえ。」

「ボクら!!?」

 

そんな無茶な、と言ったところで真理ちゃんが無茶ブリを言い出すのも、言い出したら聞かないのも昔からのものだ。抵抗したところでどうせ何かしらの理由を付けてさせられるに決まってるんだからむしろ素直に従っておいた方が良いだろう。

 

「…しかたない。泊クン、支えてもらえる?」

「え、やるんですか!?」

「真理ちゃんは言っても聞かないからね。素直に従っておいた方が身のためさ。」

「まったく…。これ、貸しですからね?」

「うん、ちゃんと返すよ。」

 

そう言うと泊クンは仕方ないとしゃがみ込んでくれた。その肩に上手く足を乗っけてゆっくりと立ち上がってもらう。そうして泊クンが立ち上がりきったところでボクの目の前に見えていたのは、灰色の壁だった。

 

「どう、です、か…?何か、見えます、か…?」

「ごめん!壁しか見えない!」

 

しかもこれの何がタチが悪いって後50cmもあればこの壁の一番上に届きそう、言い換えると外が見えそうなところである。とりあえず一度ゆっくりと下に下ろしてもらう。

 

「後50cmくらいではあるんだけど、壁しか見えなかったよ…。」

「ということは、外の情報をどうにかして得る手段はない、と。」

「うーん、そういうことになっちゃうかなぁ…。」

「…はあ。仕方ないですね。」

 

泊クンは疲れた、とばかりにため息を漏す。

 

「じゃ、とりあえず食堂に行こうか。」

 

真理ちゃんが悪びれもせず提案する。

 

「泊クン、行こっか。食堂なら椅子も水分も好きなだけあるからさ。」

「…はあ、はあ。ほんっと、簡単に言ってくれますね…。でも椅子と水分に関しては賛成ですし、もう少しだけ頑張らせてもらいますよ…。」

 

泊クンは呆れつつも前を行くボク達に付いてきてくれた。彼、とんでもなく面倒見もいい人なのではないだろうか。

食堂に戻ってくると既に他の班は探索を終えて集合していたところだった。時間もちょうどよかったので、ボク達はお昼ご飯を食べながらそれぞれの探索結果についての報告会を行うことにした。

 

「それじゃ、順番通り1班から報告させてもらうでござるよ。」

「あれ、班長からじゃないの?」

「いやー、アタシはこういうの苦手だから小十郎に頼んだんだ。」

「あ、そういうこと。」

「それじゃあ報告を始めてもいいでござるか?」

「ああ、頼んだ。」

「某達はホテル入り口から見て左側、東棟とロビーを探索したでござる。」

「ほうほう。」

「まず東棟には2つの宴会場、コンビニ、土産物屋とそのバックヤード、そして大浴場があったでござる。」

「大浴場!温泉!?」

「と言っても大浴場はまだ整備中のようで、もう少し時間がかかる、とのことでござる。でも大分広いようでかなり期待できるでござるよー。」

「ロビーは?」

「ロビーはフロントがあったくらいでござるな。フロントは後ろに扉があるんでござるが、どうやらカギがかかっているようでどう頑張っても開かなかったでござる。」

「それは気になりますね…。」

「で、出口とおぼしきものは見つからなかったでござる。申し訳ござらん。」

「ま、建物内部はねー。」

「かたじけない。後は階段があったがシャッターが閉まっててまだ上がれなかったでござる。第1班の報告はこんなところでござる。」

「うっし、じゃあ2班はオレだ!2班は1班とは反対側、西棟と食堂を探索したぜ!ま、食堂は今朝も飯食ってるし、大した発見はなかったぜ。で、西棟には宴会場が2つ、食堂に直接繋がるキッチン、備品と食料品の倉庫、リネン室、あとやっぱ閉まってる階段ってとこだな。東棟と違うところと言えば、こっちもまだ動かねえみてえだがエレベーターが設置されてたぜ。」

「つまり東棟とは大差なかった、ということか?」

「いや、あともう1つ、気になるところがあったな。廊下の突き当たりにもう1本通路があってな、その奥に真っ赤な扉があってな。調べて見たんだがカギが閉まってて中に入れなかった。」

「それもちょっと気になるっすね。」

「2班はこんなもんだ!」

 

ホテルの中だけでも気になるものがかなりあったな…。

 

「じゃあ今度はボク達だね。ボク達はホテルの外を調べてきたよ。」

「一番期待大っすね!」

「うーん、単刀直入に言うと外に出口らしきものは見つからなかったんだ。」

「そうかー。」

「ただ敷地全体を大きく回ってきたよ。その結果このホテルの知識はあの鳥かごだけじゃなくてとても高い壁に囲まれてて外の状況を確認するのも難しい、って感じだった。」

「他にはぁ?」

「後は1カ所気になる建物があったよ。」

「気になる建物?」

「鉄筋コンクリートでできた建物みたいなんだけどね、建物の名前を書いたプレートがくすんじゃってて何の建物か分からなかったんだ。だけどさっき話に出た大浴場と同じで、整備中らしいから後々開放される可能性もあるかも。」

「そっちも楽しみに、ってことだね。」

「じゃあ最後、4班頼むぜ!」

「それなら俺から話そう。俺達は職員宿泊棟を調べた。途中妙なアクシデントはあったがとりあえず問題なく探索は進んだ。」

「妙なアクシデント?」

「足だけずぶ濡れにしたそこの医者が来た。」

「…どゆこと?」

「アハハ、噴水をよく調べるために噴水に入っちゃってね。」

「いやいや、そこまでする…?」

 

真理ちゃんはここでもみんなにドン引きされていた。まあ仕方ないよね。目の前で実際に事情を分かってみてたボク達ですらドン引きしたんだから。

 

「でだが、部屋に関してはベッド、着替え、シャワー、洗面台、電気機器など一通り生活に困らないようになっている。」

「…昨日は気付かなかったがかなり便利だ。」

「後は全員共同で使えるランドリーがあった。ここを使えば部屋にある着替えも洗濯することができるだろう。」

「わたくしたちにここでずっと生活させる気満々ですわね…。」

「でも生活に支障がでなそうなのはありがたいでござるな。」

「じゃ、今回の報告はこんなとこだな!」

「あ、香奈から提案があるんだけどいいー?」

「ん?どうした?」

「一応今日それぞれの場所をみんなで探索したけどさー、もしかしたら見落としがあるかもー、って思ったからー、明日またシャッフルして探索してみないー?」

「あ、いいね!違う視点から見たら新しいものが見つかるかもしんないし!」

「えー、俺ちんめんどくさーい。」

「貴様は黙っていろ。」

「俺ちんにだって発言権はあってしかるべきだと思うけど?」

「しょうもないことしか言わないだろう。」

「いやー?俺ちんだってたまには良いこと言うぜー?」

 

また靏蒔さんとクレイグクンが始まったよ…。ホントにこの2人相性が悪いな。

 

「そこまででござる。」

 

するといつの間にか2人に近づいていた伊達クンが竹光をクレイグクンに、鞘を靏蒔さんに向けて制止していた。

 

「少し手荒で失礼。2人ともいい加減にするでござる。クレイグ殿、こういうマジメな場でいちいち人の癇に障ることを言って話の流れを止めるのはやめろ。靏蒔殿もクレイグ殿の戯言にいちいち付き合っていたら話が進まぬ。皆のためを想うならやめるでござる。」

 

おお…。何かかっこいい…。

 

「へいへーい。これからは自重するよ。」

「すまない。熱くなった。」

 

そして2人とも伊達クンの言葉に従う姿勢は見せてくれた。クレイグクンに関してはどこまで本気か怪しいけれど。

 

「うし、じゃあ今日のところはこの辺で解散すっか!」

 

みんなが一度静かになったところで雷文クンが場を仕切って解散を宣言する。

 

「次は夕飯の時間な!」

「夕飯の時間って竜の字、時間決めねえでどうやって集まんでい?」

「あ、それもそうだ。じゃ7時で。」

「あいよ!みんなも分かったな?」

「おうよぉ。」

 

まさか大地クンが江戸言葉につられるとは…。

そしてこの後は約束通り夕食の時間に集まって食事を摂った以外には自由に時間を過ごして一日が終わった。そしてそのまま夜時間になった。

 

 

キーン,コーン… カーン,コーン…

 

 

「午後10時になりました。一部施設はロックされますので該当施設にいる生徒は速やかに退出してください。それでは良い夢を。お休みなさい。」

 

普段の様子とは全く違う放送に得も言われぬ気持ち悪さを感じながらボクは明日に備えて眠りにつくのだった。

 

 

 

 

【モノトラ劇場】

 

「よお、久しぶりだな!またオマエラの顔を見られて嬉しいぜ!」

 

 

「って何だか浮かねえ顔してんな?」

 

 

「ま、オマエラのことだ。これから何が起こることになるのかよーく分かってるだろうがな。」

 

 

「ここで1つ豆知識だぜ!」

 

 

「今回の舞台であるホテル、その語源はhospes。」

 

 

「ラテン語で旅人とか客って意味らしいぜ?」

 

 

「この言葉からホスピタリティって言葉なんかも生まれたみてえだぜ?」

 

 

「ま、こんな知識どこで使うのか分かんねーけどな。」

 

                    ・

                    ・

                    ・

 

【生存者】

超高校級の探偵          深見優(フカミユウ)

超高校級のレーサー        速瀬マハ(ハヤセマハ)

超高校級のバスケットボール選手  雷文竜(ライモンリュウ)

超高校級の外交官         金谷秀征(カナヤシュウセイ)

超高校級のバドミントン選手    羽月翔子(ハツキショウコ)

超高校級の医者          津田真理奈(ツダマリナ)

超高校級の歴史学者        伊達小十郎(ダテコジュウロウ)

超高校級の大工          鷹岡筋次(タカオカキンジ)

超高校級の数学者         言村香奈(コトムラカナ)

超高校級の作曲家         美作奏(ミマサカカナデ)

超高校級の???         鏑木麗(カブラギレイ)

超高校級の銀行員         泊尚輝(トマリナオキ)

超高校級のハッカー        クレイグ・ホワイトバーチ

超高校級の弓道家         靏蒔由衣(ツルマキユイ)

超高校級の地主          大地真英(ダイチマサヒデ)

超高校級のバイオリニスト     木田結弦(キダユヅル)

 

残り16人




はい、という訳で第1章スタートです!本編が始まっていくわけですが、皆さんの中で誰が生き残りそうとかの予想はあるんでしょうか?今後の展開にも注目していただけると幸いです!

それでは前作と同様、ここからは設定裏話キャラクター編をやっていこうと思います!今回は主人公である深見優くんの話をしていきましょう!
深見くんは実は最初は希望ヶ峰学園への入学を辞退しようと考えていました。それは単純に自分には釣り合わない、と考えていたからです。しかし、担当者との話の中で真理ちゃんこと津田さんが入学するかも、という話を聞いて急転直下入学を決めた、という背景があります。
続いて名前に関してなのですが、下の名前は本人の優しい雰囲気に合わせてそのまま優です。そして苗字に関しては、探偵っぽい苗字と考えたときに、「探」という字と同じ旁を持っている「深」という字を使いたいな、と思ったことと「深く見る」というのが探偵らしいな、と思ったので「深見」となりました。その名の通り、今後しっかり探偵として活躍していくこととなるのでどうぞお楽しみに!
ということで今回はここまでです!また次回!


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CHAPTER1 (非)日常編2

キーン,コーン… カーン、コーン…

 

「おはようございます。今日も一日元気に頑張りましょう。」

 

朝…、か。そう言えば今日は調べる場所をシャッフルするんだったよな…。だとしたら早く食堂に行かないと。

急いで身支度を調えて食堂に行くとまだ雷文クン、クレイグクン、鏑木クン、伊達クン、靏蒔さん、木田さんが既に来ていた。

 

「お、深見ちんも来たし、後半分くらい?」

「あ、おはようクレイグクン。」

「なんだい、そんな不思議そうな顔して?」

「あ、いや、目の隈とかスゴいからこんなきちんと起きてくるってイメージがなくて。」

「おいおい、人は見た目で判断しちゃいけねえんだぜぇ?俺ちんはちゃんとハッキングに集中できるようにちゃーんと睡眠時間は取ってるのよ。」

「なるほど…。」

「だから昨日もちゃんと3時には寝たぜ?」

「それちゃんと寝たって言うの…?」

 

やっぱりクレイグクンの言うことは本気なんだかからかってるんだかよく分からないや。でも昨日の伊達クンの言葉通り、クレイグクンと靏蒔さんがことあるごとにぶつかるって事はなくなっているみたいだ。そこだけは安心した。そうこうしているうちに他のメンバーも続々と集まってきて、昨日同様豪華な朝食をみんなで囲んだ。食事が終わると昨日のくじを羽月さんが持ち出してきた。

 

「あれ、グループもシャッフルするの?」

「その方が親交も深まるかなって。」

「確かにそれはそうかもしれねえなぁ。」

「じゃあこうするのはどうでござる?その班の番号と探索場所の組み合わせは変えずにくじを引き、人と場所が被っていたら交換して調整するんでござる。そうすれば違う目で探すのも、親交を深めるのもどっちも達成できるでござるよ。」

「お、ナイスアイディア!」

 

伊達クンの名案を受けてボク達はその通りにくじを引き、被りを調整した結果、今日の探索場所は次の通りになった。

 

 

1班:鷹岡、鏑木、クレイグ、深見

2班:羽月、泊、木田、速瀬

3班:伊達、言村、靏蒔、金谷

4班:津田、美作、大地、雷文

 

 

「うへー、色気ねー。」

「別にそう言う目的じゃないんだし、今日一日なんだからいいじゃない。」

「それに男同士ってのも気楽でいいモンだろ?」

「……まあな。」

 

男だらけの何ともむさ苦しい第1班の探索はここから始まった。

 

 

まず最初に向かうことにしたのはコンビニだ。と言っても最初に集合する前に一度行っているから大まかな構造とかは分かっているんだけど。

 

「うーん、特に何の変哲もないコンビニだよね。」

「ま、ありゃあ便利だっつうだけだな。」

「お、パンツも売ってるぜー。これでおねしょしても大丈夫だぜ、鏑木ちん。」

「…。」

「いてっ!あっ!鏑木ちん!暴力反対っ!!あっ!!やめてっ!!いやあぁぁぁぁ!!!」

 

軽口を叩いたクレイグクンを鏑木クンが無言でしばき回している。まあこれはクレイグクンの自業自得だししかたないけどあまりやり過ぎて学級裁判が始まっても困るのである程度クレイグクンが反省したところでボクと鷹岡クンがストップをかけた。

で、マジメな話に戻るわけだけど。

 

「まあパンツ云々はさておき、とりあえずボク達がこれから生活するにあたって緊急性の高いものに関してはここで調達できそうだね。」

「ホテル内の売店みたいな感じで扉も付いていねえし、どの時間帯でもこれるっつうのもいいもんだ。」

 

きっとこのホテルのどこかには救護室とかもあるんだろうとは思うけど、とりあえず軽いケガ程度ならここで対応できるのはありがたい。コンビニの品揃えの良さに感激したところでボク達は別のところに向かうことにした。

次に向かった先は近いところで土産物屋に向かった。土産物屋はまさにホテルの土産物屋、という感じで、そこにはお菓子からキーホルダー、今は置かれていないが普段はTシャツなんかも置かれているようだ。

 

「深見ちん深見ちん、見てみてー。刀ー。」

 

はしゃぎながらクレイグクンが持ち出してきたのは什器にかかっていた刀の形のキーホルダー。確かに行楽地のお土産屋さんの定番であるとは言える。

 

「そんなの持ち出してこなくて良いって!」

「えー。かっこいいのに。あ、それともこっちのご当地オーピーちゃんのほうがよかった?」

 

もう片方の手の中のキーホルダーを見るとそっちはご当地の格好をした某食品メーカーのキャラクターがモノトラの扮装をしたフィギュアがついていた。

 

「いらないって…。っていうか何それ…。」

「わっかんなーい。ま、モノトラが勝手に作ったんでしょ。」

「権利関係とかかなり危なそうだけどね…。」

 

とそんな会話をしている内に鏑木クンが無言で奥の部屋に入ろうとしていた。

 

「あ、ごめん!」

「…構わない。」

「ここは…。」

「…恐らく、この土産物屋のバックヤード。」

「ってことはここにもっといろいろなものが置かれてるってワケだよね。」

「…まあ、そうなる。」

 

中に1歩入るとそこは段ボールの壁、といった感じだった。

 

「うーん、かなりの在庫を抱えてるみたいだね。」

 

しかも長いこと整理もされていないようで、段ボールの中には床に放り出された状態になっているものもあった。

 

「まったく、適当な人がいるもんだなぁ。」

「…これは…、Tシャツか…。」

 

鏑木クンが箱の外側に貼ってあるシールを覗き込みながら呟く。

 

「あれ?でもさっきお店にはTシャツなかったよね?」

「…長いこと品出しもされていないようだな。」

「ここまで来ると適当っていうより長い間誰も手入れしていないって言う感じがするね。」

「…だとしたらこのホテルは一体何だ…?」

 

この後バックヤード全体をくまなく探索してみたけれど特に大きな発見はなく、むしろここが長らく放置されていたのではないかという考えとその場合のこのホテルに関する謎が更に深まっただけだった。

そして最後に向かったのは2つの宴会場。そのうち片方はボクが最初に目覚めた時にいた部屋だ。

 

「ここはー、なんつうか、何の変哲もねえな。」

「ま、ただの宴会場だろうしねぇ。ひゃっほーい!!!」

 

クレイグクンが猛ダッシュで畳にスライディングしている。

 

「もう、やめなよ。」

「いーじゃん、いーじゃん!別に俺ちん達の他に誰かいるわけじゃないんだからさ?」

「それはそうだけど…。」

「ま、クレの字の行動はともかく、宴会でどんちゃんする場所なワケである意味問題はねえんじゃねえか?」

「…大ありだと思う。」

 

2つの宴会場は廊下を挟んで離れており、特に他に気になるものもなかったのでとりあえずここを離れた。

最後に一応大浴場には行ってみたけど、昨日の速瀬さん達の報告と相も変わらず、今日も整備中のままだったのですぐに戻ることにした。

 

「さて、後行くところと言えば、ロビーくらいかな?」

「…そうだな。」

 

ロビーではフロントのカウンターくらいしか調べるところはないけれど。

 

「フロントのカウンターには特に面白そうなモンはねえなぁ。」

「…昨日伊達の言っていたとおり、後ろに扉はあるが開けることはできなさそうだ。」

「じゃ、調べるのはこんなもんだな!!」

 

これでボク達の担当範囲は全て調べ終わったのでとりあえず食堂に戻ることにした。

食堂で待っている内にみんなも戻ってきたので、昨日と同様、昼食がてら今日の探索結果の報告会をした。…んだけど、結局のところ特に何か新しく見つかることはなかった。念のため、明日までは班をシャッフルして別の場所を調べることに決まった。

 

 

 

さて、午後は特にやることもないしヒマだなぁ。ずっと宿泊棟の部屋に篭もっているのも不健康だし、ちょっと色んなところを歩いてみるか。

 

「おや、深見サンじゃないっすか。何やってるんすか?」

 

噴水庭園を歩いているとちょうどそこに美作さんもやってきたところだった。

 

「いや、ちょっとヒマでさ。何かで時間を潰そうと思って。」

「あ、それなら自分にちょっと付き合ってくださいよ。」

「え、ああ、いいよ。」

 

美作さんに引きずられるまま、食堂に連れて行かれ、紅茶を飲みながら2人で談笑して時間を過ごした。

そう言えば美作さんとこうやって腰を落ち着けて話すのって意外と始めてかも知れない。

 

「ところでさ、美作さんにちょっと聞いてみたいことがあったんだけどいい?」

「いいっすよ!」

「美作さんって何で作曲家になろうと思ったの?今時中々ここまでマルチな作曲家って珍しいでしょ?」

「うーん、なんで、かぁ…。色々細かく言おうとすればあるっすけど、結局のところはモーツァルトになりたかったから、っすかね?」

「モーツァルト?」

「あ、今バカだと思ったっすね?」

「いや、そんなことはないって。ただどういうことだろうとは思ったけど…。」

「音楽って色んなものに欠かせないんすよ。自分でも意識していないうちに色んなところで音楽を聴いてるんす。例えば、映画とかゲームとかそういうフィクションの世界はもちろんですけど、バラエティ番組とか果てはニュース番組とかでも番組を通して音楽がないってのはあり得ないじゃないっすか。」

「それはそうだと思うけど…。」

「それでも今は漫画とかは音楽がなくても楽しめるっすけど、モーツァルトの時代は今よりも生活と音楽って密接だったと思うんす。そしてモーツァルトはその必要な音楽の全てを作り続けた人だと自分は勝手に思ってるんすよね。で、そんな人の事を知ったときに『自分もこんな風になりたい!』ってそう思うようになったんす。それが自分の原点っすね。」

「なるほど…。」

「でもやっぱり続けてくモチベーションってのは色々やっている内にいっぱい見つけながらここまで来てるっすけどね。」

「そうなの?」

「そりゃあ自分だって人間っすから、キツいときだってあるっすよ。そーんな雷文サンみたいな音楽バカじゃないっす。」

 

それはそれで雷文クンに失礼な気はするけど…。

 

「自分が"超高校級"って呼ばれてるのは手前味噌っすけど作る曲が素晴らしくて高校生とは思えない、ってところっすけど、その曲ができるまでにはそれなりに"産みの苦しみ"ってのはあるんす。で、中々アイディアとかイメージが降りてこなくて心が折れそうになるときもあるっすけど、そういうときにふと自分の曲を聴いて笑顔になってくれたお客さんとか、演奏家の皆サンとかの顔を思い出すともうちょっとだけ頑張ってみよっかなー、って気持ちになるんす。そうやってここまでやってきたんすよ。」

「そうなんだ…。」

 

彼女はもちろんだけど、音大で専門的に学んだわけではないし、これまでも誰か師匠についてやってきたわけではない。完全な独学だ。、さっき美作さんは自分の超高校級と呼ばれる理由をああ言ったけど、絶対そのセンスの面も彼女が超高校級たる所以であるとは思う。でもだからと言って彼女が苦しんでいないかというとそういう訳ではないのだ。

 

「でもやっぱりキミはすごい人だよ。きっとボクはどれだけ強い思いで始めてもどこかできっと心が折れてしまう。そうならずにここまで来たのはやっぱり尊敬できるよ。」

「なんかそんなに褒められると照れるっすね…。」

 

ボクは率直な想いを伝えただけなんだけど美作さんは照れくさいのかはにかんだように笑う。その笑顔にちょっとだけドキッとしてしまったのはボクだけの秘密だ。

 

「じゃあまた今度っす!」

「うん、またね。」

 

軽く挨拶を交わすとボク達は別々の方向に向かって歩き始めた。

食堂を出てコンビニの方に向かうと、宴会場の中に誰かがいるのが見えた。中を覗き込んでみるとそこで靏蒔さんが正座して目を閉じて座っていた。

 

「…何してるの?」

 

さすがに気になって声をかけてみると、靏蒔さんはゆっくりと目を開けた。その美しく澄んだ瞳がボクのことを射貫いている。

 

「…精神統一だ。」

「精神統一?」

「ああ。私は本番でも平常心でいられるように普段の生活の中でも時間を見つけて精神統一をするように心がけている。こうなってしまっては中々矢を射る機会もないだろうが、むしろこのような特殊な状況だからこそ平常心は崩すまいと思ってな。深見もやってみるか?」

「じゃあ、ボクもやってみようかな。」

 

靏蒔さんの隣でボクも正座して一緒に精神統一して時間を過ごした。いつもよりも落ち着いた気分になれた気がする。

精神統一は終わったけど、もう少し靏蒔さんと一緒に過ごしてみようかな。

 

「そうだ、靏蒔さんともゆっくり話してみたかったんだ。」

「それなら好都合だ。私も中々探偵というものに出会う機会はなくてな。」

「じゃあまずボクから話聞いてもいい?」

「ああ、構わない。」

「それなら遠慮なく。靏蒔さんってどういう経緯で弓道を始めるようになったの?」

「私が弓道を始めた理由か。それならば簡単だ。お祖母様の影響だ。」

「靏蒔さんのおばあちゃん?」

「ああ。私のお祖母様は弓道の師範をやっていてな、それはもう、素晴らしい腕前の持ち主だったんだ。」

「へえー。」

「確かお祖母様もかなり昔に"超高校級の弓道家"として希望ヶ峰学園を卒業した、と言っていたな。」

 

それはかなりの腕前のハズだ。

 

「ほんとにすごい腕前だったんだね。」

「ああ。本当に素晴らしかった。私など足元にも及ばなかった。」

「そんなにかぁ。」

「そのお祖母様が私にも弓道をしろ、と私が幼いときに言い出したのがきっかけだったんだ。」

「自分から始めたんじゃないんだ。」

「弓道なんてその当時お祖母様がやっていたこと、くらいの認識でしかなかったな。むしろ始めてから数年間は弓道を嫌いだったまであるな。」

「そうなの!?」

「お祖母様はかなり厳格な人だったからな。弓道を始めたての私にも容赦なかった。お祖母様は厳しいし、手は痛いし、冬なんかだと寒いしで弓道なんか何が楽しいんだ、とも思ったときもあった。」

「よく今まで続けたね。」

「それはだんだんやっている内さ。結局どれだけ辛いと思ったところでお祖母様からは逃げられないからな。どうにかして楽しみを見出せないものかと思いながら稽古をしたものだ。そうしている内に矢が綺麗な軌道で的に向かっていく様子が面白いと思うようになってな。その当時は、いや、今もかも知れないが、お祖母様には遠く届かないものの、その美しい矢の軌道をもっと自分で生み出したいと日に日に強く思うようになっていったよ。」

「それが今芸術的とまで言われる靏蒔さんの射の原点なんだね。」

「ああ。まあ、今思えば超高校級の感覚でやっている稽古だ。普通にやったら辛くないわけがない、とは思うがな。」

 

それに付いていって見せた靏蒔さんはやっぱり超高校級なんだなぁって思うけどね。

 

「もしここを無事に出ることができたら深見にも弓道を教えてやろう。かなり肉体的にも精神的にも強くなるぞ。」

 

できたらそのおばあちゃんのメニューではやらないでもらえると助かるなぁ…。

 

「それでは今度は深見の話を聞かせてもらおう。」

「うん。それじゃあね…。」

 

お互いの原点の話をしている内に時間は過ぎていき、気付いたら夕食の時間になっていた。そして夕食後は特にやりたいこともなかったのでそのまま就寝することにした。この時のボクは、みんなそれなりに穏やかに楽しく過ごしているし、コロシアイなんか起こるわけがないと思い込んでいた。でもこの生活の本番が始まるのはこれからだったんだ。それをボク達は明日から嫌というほど思い知ることになる。

 

 

 

 

【モノトラ劇場】

 

「全ての物事において始まりは重要なものなんだぜ。」

 

 

「しっかり、最初の段階でそれをやりたい理由をはっきりさせておかねーと、」

 

 

「大概途中で方向性が曖昧になって失敗するという結末を迎えることになっちまうんだぜ。」

 

 

「そこでオレはこのコロシアイ職業体験を成功に導くためにきちんと最初のコロシアイを起こさせなければならないと思うんだぜ。」

 

 

「だからオレは奴らに、」

 

 

「大きな大きなプレゼントをすることに決めたんだぜ。」

 

 

「楽しみに首を長ーくしてして待っていると良いんだぜ…。」

 

                   ・

                   ・

                   ・

 

【生存者】

超高校級の探偵          深見優(フカミユウ)

超高校級のレーサー        速瀬マハ(ハヤセマハ)

超高校級のバスケットボール選手  雷文竜(ライモンリュウ)

超高校級の外交官         金谷秀征(カナヤシュウセイ)

超高校級のバドミントン選手    羽月翔子(ハツキショウコ)

超高校級の医者          津田真理奈(ツダマリナ)

超高校級の歴史学者        伊達小十郎(ダテコジュウロウ)

超高校級の大工          鷹岡筋次(タカオカキンジ)

超高校級の数学者         言村香奈(コトムラカナ)

超高校級の作曲家         美作奏(ミマサカカナデ)

超高校級の???         鏑木麗(カブラギレイ)

超高校級の銀行員         泊尚輝(トマリナオキ)

超高校級のハッカー        クレイグ・ホワイトバーチ

超高校級の弓道家         靏蒔由衣(ツルマキユイ)

超高校級の地主          大地真英(ダイチマサヒデ)

超高校級のバイオリニスト     木田結弦(キダユヅル)

 

残り16人




さてさて、モノトラはどうやら何かを企んでいるようですが、一体何をするつもりなんでしょうか…?と言っても原作二次創作関係なくダンガンロンパが好きな皆様は何となく想像はついてるんじゃないかと思いますが…。その真相はまた次回!

それでは今回の設定裏話、今回は速瀬マハさん編です!
速瀬さんは歴代最年少のレーサーであると同時に歴代最年少賞金女王でもあります。彼女は子どもの頃親に連れられて見たレースに心奪われたことによってレーサーになることを決めました。そして彼女のレース前後の熱い雄叫びとその様子からは想像も付かないような冷静かつ的確なレースぶりが人気を博しています。
そして彼女の名前に関してなのですが、まずは「速」という字を使いたいなという考えから近い音の苗字である「早瀬」の「早」の字を置き換えました。下の名前は分かりやすく「マッハ」からです。レーシングカーでマッハで駆け抜けていく彼女の姿を現した名前にできたかな、と思っています。
と今回はここまでです!次回は少し物語が動きますのでお楽しみに!!


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CHAPTER1 (非)日常編3

キーン、コーン… カーン、コーン…

 

「おはようございます。7時です。今日も1日元気に頑張りましょう。」

 

さてと、今日もみんなで探索する予定になっているし、遅れないうちに早く行こう。昨日と同様急いで身支度を調えて食堂に行くと昨日と同じメンバーが既に揃っていた。

 

「お、はよっす!」

「あ、雷文クンおはよう!」

「どうやらこのメンツが朝に強いメンツみてえだな。」

「うん、そうみたいだね。」

「クレイグが早いのは意外だけどな。」

「おいおい、そりゃねぇぜ。」

 

いや、正直意外だよ。昨日の発言だって冗談半分に聞いてたし。

そんな事を話している内にいつの間にかみんなが揃っていた。みんなで食事を終えてそれぞれが好みのホットドリンクを飲んでいるところに奴は現れた。

 

「おーっす、元気そうだな!」

「何しに来た。」

「帰れ。」

「キミはお呼びじゃないかな。」

「わお、シンラツ。全く、オレはオマエラに大事なプレゼントを持ってきてやったってのによー。」

「大事なプレゼント?」

「ああ。そうだぜ。」

「ならそれだけ置いてさっさと帰れ。」

「言い振りが追い剥ぎみてーなんだぜ…。つっても分かりやすい物品じゃねーぜ?オマエラに持ってきたのは"動機"だぜ。」

「…動機?」

「ああ。オマエラもうこの生活に入ってもう4日目だろ?なのに一向に誰も殺そうとしねーじゃねーか。」

「あったりめえでい!!」

「でもそれじゃーつまんねー。で、何が足んねーのか考えた結果、オマエラにはお互いを殺す動機がねーと思ったわけだ。だからそこでオマエラが思わずお互いを殺したくなるような、そんな情報を持ってきてやったんだぜ。」

「んな情報いるかよ!」

「ほんとかー?ホントに聞かなくて良いのかー?もしかしたらオマエラにとって大事な人の情報かも知れねーんだぜ?」

「…何だと?」

「アタシらの身内に手ぇ出したってのか?」

「そこは聞いてみねーと分かんねーんだぜ。」

「だったらさっさと教えてよ!」

「ぐぷぷ…。やーだね、教えてやんねー。」

「は?」

「何をふざけているでござるか?」

「いや、何もふざけちゃいねーんだぜ。だってこの情報を教えねーってのが今回の"動機"なんだからな。もしオマエラがこの中の誰かを殺し、そして学級裁判で見事他の全員を騙しきって生き残ったその時にはソイツにはおもしれー情報を教えてやるんだぜ。あ、少しだけヒントはやるぜ。その情報ってのは、"オマエラから失われたもの"に関する情報だぜ。ってなワケで楽しいコロシアイライフを送ってくれ!じゃあな!!」

「あっ!おい!!」

 

言いたいことだけ言ってモノトラは姿を消してしまった。

 

「…失われたものってなんだよ…。」

「考えるだけ無駄ですわ。既に"失われた"のだとしたら今のわたくし達にはどうすることもできないわけですし。そんなことのためにコロシアイなんて、今あるものを失わせようとするなんて馬鹿馬鹿しいですわ。」

「…え、ええ。そうですね。」

「確かに自分たちから失われたものが何か、ってのは気になるでござるが、そんなことのために誰かを殺すと思われているなんて某達も見くびられたものでござる!」

「コロシアイなんてぜってぇに起こさせねえからな…!」

 

モノトラの用意した"動機"に少し不安は覚えたけどみんなコロシアイなんて起こさせないというスタンスは最初の日から変わっていないみたいだ。その事実に安心しつつボク達は今日の探索のメンバーを決めることにした。そして今回決まったメンバーはこんな感じだ。

 

 

1班:言村、靏蒔、雷文、津田

2班:美作、木田、深見、伊達

3班;鏑木、大地、金谷、羽月

4班:泊、クレイグ、早瀬、鷹岡

 

 

「あ、深見サン、今日はおんなじ班っすね!よろしくっす!」

「うん、よろしく!」

 

今日は昨日調べたのとは反対側のホテルの西棟を重点的に調べることになった。一通り食堂を調べた後、まず最初に向かったのは今出てきた食堂の隣にある厨房だ。ここでどうやって料理が準備されているのかは分からないけど、一見すると設備が普通よりも整っている感じがするだけで何の変哲もないホテルの厨房という感じがした。

 

「うーん、やっぱここにはなんもないっすよねぇ。」

「せいぜい3カ所に入り口が付いているってだけだね。」

「今はいってきた入り口と、食堂に繋がる扉、あとはあっちの倉庫に繋がる扉の3つでござるな。」

「包丁とかの設備も普通ですわね。強いて言うならシュラスコの串が目立つように置いてあるくらいですわ。」

「あとは今日も飲んでたホットドリンクが収納されているくらいだね。」

「じゃあ次行くっすよー。」

 

美作さんに導かれるように次に開いたのは倉庫の扉。ここにはコンビニとは違い、ここで調理するための食材やその他生活必需品、緊急用の衣服や靴、防犯グッズなんかも置いてある。

 

「かなり色々置いてあるでござるな。」

「うーん、でも医療品はなさそうだね。」

「でもコンビニとかには色々おいてあったっすし、とりあえず大丈夫じゃないっすか?」

「でもさすがに大怪我とか病気はどうにもならないからなぁ。」

 

それは昨日コンビニを調べていたときにもちょっと思っていたことではあるんだけど。

 

「ま、そんときはそんときで!」

「楽観的すぎますわね…。」

 

でもないものを嘆いてもどうしようもない。今後何らかの条件で解放されるであろうエリアに救護室があることを祈ろう。

倉庫を出たボク達は目の前の宴会場に入ることにした。と言っても昨日調べた2つの宴会場と大差ない。

 

「うっひゃー広いっすねー!」

「ここの障子を開ければ2つの宴会場が1つになるわけでござるな。これは大宴会ができそうでござる!」

「それはちょっと楽しみですわね。」

 

ほんとにやるつもりなの!?でも確かにそれはちょっと楽しそうかも…。

 

「ま、宴会のスケジューリングは後でやるとして、まだもうちょっと調べるところもあるわけっすし、次行きましょー!」

 

こうして次に向かったのはリネン室。ここにはシーツや枕、布団の予備が大量に置かれている。

 

「かなりの量でござるな。」

「でもさすがにここに出口があるようには思えませんわね。」

「そうっすね…。でもこれだけあれば多少おねしょしても大丈夫っすね!」

「…するの?」

「深見サンが。」

「しないよ!!」

 

何を言い出すのさ急に!!?

 

「あ、でもこれだけあるならいーこと思いついちゃったっす!」

「いいこと?」

「なんでござるか?」

「そ・れ・は!お昼ご飯のときのお楽しみっす!皆サンきっと賛成するっすよー?」

「…突拍子もないこと言い出しそうですわね。」

「…同感かも。」

 

そして最後に行ったのは最初のときの報告にもあった赤い扉。豪華なホテルの雰囲気には合っているような気もするけど、扉の周辺にもここが何のための部屋かは書いておらず、詳細は謎のままだ。

 

「うーん、やっぱりカギがかかってるでござるなぁ。」

「ってことは、他の施設と同じ、開放されるのを待つしかない、って感じだね。」

「じゃあ今回の探索はこんなところっすかね。」

「そろそろお昼の時間になりますし、一度食堂に戻りましょう。」

「うん、そうしよっか。」

 

こうしてボク達はホテル西棟の調べられる全ての部屋を調べ終わると、昼食と報告のために食堂に戻っていった。みんなが集まってからこれまでと同様、お昼を食べながら報告会をしたんだけど、結局のところ今日もどこの班からも出口に関する有力な情報が出てくることはなかった。

少し空気は重くなったけれど、見つからなかったものは仕方がない、これからも粘り強く探索を続けて何かあったら報告しようということで話が収まった。みんなが一通り食事を終えたところで美作さんが『皆サンに提案があるんすけどいいっすか?』と立ち上がった。もしかしたらさっき探索中に言っていたいいことっていうのを言うつもりなんだろうと思った。

 

「皆サンご存じの通り、ここの西棟にはリネン室があるっすよね?」

「おう、そうだな。」

「で、近くに1部屋に繋げられる宴会場があるじゃないっすか?」

「うん、あるよねー。」

「で、そこで思いついたんすけど、宴会場を使って"枕投げ"しないっすか?」

「枕投げぇ!!?」

「みんなで身体使って親睦を深めたらコロシアイが更に遠のくかな、って思うんすけど、どうっすかね?」

 

やっぱり突拍子もないことを言い出した…。けれど、美作さんの言うことにも一理ある。みんなで楽しく過ごして絆を深めればモノトラの言うようになってしまう可能性はかなり引き下げられる。今回の"枕投げ"はの第1歩にすることができるかも知れない。そしてそう思ったのはボクだけじゃなかったみたいだ。

 

「探索の時に言っていた良いこと、ってのはそういうことでござったか!某、賛成でござるよ!」

「うん!うちも良いと思う!」

「負けねえぜい!!」

 

みんなが賛成の声を上げ始めたので、美作さんもだんだんノッてきて、夕食後に西棟の宴会場で枕投げ大会をすることになった。そして、夕食前にボクと速瀬さん、雷文クンが準備の手伝いをすることになった。

 

 

 

さて、準備をするまでにもう少し時間がありそうかな。だったら少しの間自由に過ごさせてもらうことにしよう。そう思って宿泊棟の外を歩いていると、

 

「ふーかーみーt…あいだだだだだだだだ!!!やめてやめて腕折れるっ!!!!」

 

おっと、反射で腕を固めてしまった。

 

「うひー。深見ちんひでーぜー。」

「ごめんって。」

「にしてもすげえ反応じゃん。」

「気を張ってるときにはね。」

「そいつはどういうことだい?」

「ボク、探偵でしょ?するとさ、危険なとこにも行くことがそこそこあるからさ。護身術を身につけて不意打ちにも対応できるようにしてるんだ。」

「でも最初のとき不意打ち食らってたじゃん。」

「さすがに自己紹介の場で不意打ちを食らうとは思ってなかったからね。」

「あ、そゆこと。じゃ、今は気ぃ張ってんだ。」

「不意打ちを食らったからね。それに、一応モノトラの動機とかも出ちゃってるし。」

「あれ?深見ちんみんなのことを信用してない感じ?」

「うーん、そういう訳ではないんだけどね。職業病みたいなものだよ。何があってもいいように、対応できるように、ってね。」

「へー、深見ちん探偵っぽいじゃん。それなら俺ちんの事も守ってくれるとうれしいなーなんて。」

「そこまで強いわけじゃないよ。あくまで護身術程度。例えば超高校級の格闘家、みたいな人に襲われたらひとたまりもないし、正面からのケンカに強いわけじゃない。」

「あ、なーんだ。それじゃあダメじゃん、春」

「そこまでだよ。そこからは個人名だから。」

「お、よく知ってんねぇ。」

 

護身術の話をした後はなんだかんだでクレイグクンと内容もない話をしてずっと時間を過ごした。そのうちに準備の手伝いをする時間になった。

 

「お、皆サン集まったっすね!じゃあ準備しましょう!」

 

と言っても枕を運ぶだけだと思うけど…。

 

「今日の枕投げ、ちょっといつもと違う感じで行こうと思ってるんすよ。」

「いつもと違う感じ?」

「なんて言えばいいんすかね?サバゲー、みたいな?」

「サバゲー?」

「ほら、雪合戦の本格的バージョンみたいのあるじゃないっすか!」

「ああ、雪で壁作ったりするやつな?」

「それっす!そんな感じにしたいんすよ!」

「何で壁作んだ?」

「そりゃあもちろん、布団とか毛布っすよ。雪合戦と違うのは作戦に応じて壁の位置を移動させやすいとこっすかね。前に固めるのか、バラバラにするのか、もっと違う形にするのか、それぞれのチームの特徴が出るっすよ!」

「なんかすっげえ面白そうだな!」

「じゃあかなり用意しないとね!」

 

美作さんの提案は思ったよりも面白そうで、それならばと大量に布団と枕を運び込んだ。

 

 

 

夕食を食べ終わって少し落ち着いた後、みんなはそれぞれに西棟の宴会場に集合した。そして鷹岡クンが部屋の間の襖を外して壊さないところに置いてくれた。部屋の準備が大まかに完了したところで美作さんがみんなの前に出てくる。

 

「じゃあ皆サン、このくじを引いてください!チーム分けするっすよ!」

 

するとみんなが美作さんのもとに集まってくじを引いていく。そしてできあがったチームがこれだ。

 

チームA

深見

金谷

羽月

鷹岡

美作

鏑木

靏蒔

大地

 

チームB

速瀬

雷文

津田

伊達

言村

クレイグ     

木田

 

「あ、深見サン、おんなじチームっすね!」

「…むう。」

「負けないでござるよ!」

「やるからには全力、だねぇ。」

 

みんなのやる気は十分だ。もちろんボクだって負ける気はない。

 

「じゃ、ルール説明するっすよ!」

 

とチーム分けに続いて美作さんが説明を始める。

 

 

1.枕が当たった人はアウト、そのゲームから脱落とする。

 

2.どちらかのチームの全てのメンバーがアウトになるか制限時間が来たら試合終了。残り人数の多いチームが勝利。

 

3.各陣地に置いてある布団を使って壁を作ることができる。壁の位置、数、高さは各チームの裁量に任せられる。

 

4.部屋の真ん中を境界とし、そのラインを超えてはならない。ラインを超えた人はアウトとする。

 

5.アウトとなった人は部屋から退出し、部屋の外から応援する。

 

6.全5ゲーム行い、勝ち数の多いチームが最終的な勝者となる。

 

 

「こんな感じっすね!何か質問とかあるっすか?」

「…いや、ない。」

「シンプルかつ分かりやすくていいじゃないか。」

「燃えてきたー!」

 

こうしてボク達の大枕投げ大会はスタートした。

 

「っしゃあ行くぜ!!」

「うわっ!!」

「ぐあっ!!」

「やったっす!!」

「マズいっ!!雷文クンの高弾道投下だ!!」

「なんだと!!?」

「マジィな、靏蒔ちん弓がなくても狙いが正確すぎるぜ…!」

「鏑木もコントロールいいぞ!!?」

「あっ!伊達君竹光ではたき落とせるのずるいっ!!」

「それならオイラに任せろい!!」

「何っ!!?受け止めきれなっ…!!ぐあああ!!!!」

「伊達ぇぇぇぇ!!?」

 

とこんな感じで戦いはかなり白熱した。当のボクはと言うと全部のゲームで中盤くらいで脱落してしまった。けれどちょいちょい枕を当てることはできていた。そして最終結果はと言うと、

 

「3対2でチームAの勝ちっす!!」

「だああっ!負けたあああ!!」

「鷹岡殿がチート過ぎるでござるよ!」

「まさか壁ごと吹き飛ばされるとは夢にも思いませんでした…。」

「いや、アレには自分もドン引きっす…。」

「でも雷文君の高弾道投下もかなりやばかったね。」

「完全に意識の外から飛んできてたもんね。」

「球状のものじゃなくても正確にシュートできるたあな。」

 

ゲーム終了後片付けをしながらみんなで感想会を行う。色々思ってもみなかったことが発生してかなり面白い結果になったように思う。そしてそれだけ白熱した分、みんなの距離もかなり近づいて仲良くなれたように思う。片付けを終えたボク達はまたこんなイベントをやりたいね、なんて話をしながらそれぞれの部屋に戻っていった。ボクもまた枕投げ大会をやりたいなと思いながら眠りに落ちていった。

 

 

 

 

 

まさかその翌日にあんなことが起こるなんて知りもしないで…。

 

 

 

 

 

【モノトラ劇場】

 

「枕投げってのはいいよな!」

 

 

「みんなで対立してるようでみんなの絆がどんどん深まっていく感じがするんだぜ。」

 

 

「だからみんな修学旅行とかでやろうとするんだろうな。」

 

 

「だけど気を付けなきゃなんねーぜ?」

 

 

「枕投げをしてて流血騒ぎだの」

 

 

「意識不明になった奴がいるだの、」

 

 

「意外と枕って奴は危険だったりするからな。」

 

 

「全く、日常のどこに危険が潜んでいたもんかわかんねーんだぜ。」

 

                   ・

                   ・

                   ・

 

【生存者】

超高校級の探偵          深見優(フカミユウ)

超高校級のレーサー        速瀬マハ(ハヤセマハ)

超高校級のバスケットボール選手  雷文竜(ライモンリュウ)

超高校級の外交官         金谷秀征(カナヤシュウセイ)

超高校級のバドミントン選手    羽月翔子(ハツキショウコ)

超高校級の医者          津田真理奈(ツダマリナ)

超高校級の歴史学者        伊達小十郎(ダテコジュウロウ)

超高校級の大工          鷹岡筋次(タカオカキンジ)

超高校級の数学者         言村香奈(コトムラカナ)

超高校級の作曲家         美作奏(ミマサカカナデ)

超高校級の???         鏑木麗(カブラギレイ)

超高校級の銀行員         泊尚輝(トマリナオキ)

超高校級のハッカー        クレイグ・ホワイトバーチ

超高校級の弓道家         靏蒔由衣(ツルマキユイ)

超高校級の地主          大地真英(ダイチマサヒデ)

超高校級のバイオリニスト     木田結弦(キダユヅル)

 

残り16人




今回はここまでです!さあ、深見くんの言う「あんなこと」とは一体何なのでしょうか…?かなり不穏な気がしますが全員無事だといいですね…!その真相は次回を乞うご期待!ということでお願いします!

それでは今回の設定裏話は雷文竜君の話をしていこうと思います。
雷文君はイメージとしてはV3の百田君みたいな、みんなを勢いで引っ張っていく兄貴分、という感じのキャラです。ですが、そんな熱い性格とは裏腹にバスケットボールにおけるポジションはSG(シューティングガード)、スラムダンクの三井や黒子のバスケの緑間に代表されるポジションです。それにはどうやら彼の過去に関係があるようですがそれはいつか本編で。
名前はバスケ選手ということで身長が高い→tall→Thor(音が一緒)で雷、というイメージから「雷」という字を苗字に入れました。下の名前の「竜」に関しては雷雲を呼ぶ存在、ということでやはり雷から連想してつけた名前です。
それでは今回はここまで!また次回お会いしましょう!!


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CHAPTER1 (非)日常編4

キーン,コーン… カーン、コーン…

 

「おはようございます。7時です。今日も1日元気に頑張りましょう。」

 

いたた…。昨日は思いっきり枕投げしたせいで少し腕が筋肉痛だ…。だけどあれだけしっかり運動した後の睡眠の質はかなりよかったようで、とてもスッキリ目が覚めた。その気分が良い状態のままボクは食堂に向かっていった。

ホテルに入るとまずすぐにその異様さに気付いた。ロビーに人だかりができている。

 

「あれ、雷文クン、どうしたの?」

「いや、これ見てみろよ。」

 

雷文クンは首を押さえながら指で指し示す。その方向に目を遣るとロビーのカーペットの上に血が垂れていた。

 

「これは…!?」

「…わからない。」

 

鏑木クンが首を横に振る。他に集まっている3人もよく分からない、という感じだった。そうしている内に他のみんなも集まってくる。みんなもボク達の異様な様子に気付いたらしく、中には床の血痕を見て口を押さえている人もいる。すると最後にクレイグクンと言村さん、そして真理ちゃんが最後にやってきた。

 

「あれ、どうしたのー?」

「Gでも見つけた?」

「Gだったらよかったんだけど…。」

 

一連の流れを説明する。話を聞いた真理ちゃんがボク達にこう提案してきた。

 

「ま、とりあえずここでじっとしていても仕方ない。一度食堂で朝食を摂りながら考えようじゃないか。」

 

真理ちゃんの提案に乗ってボク達は食堂に入る。するとまたそこで違和感を覚えた。

 

「あれ、いつもだったらもう朝ご飯置いてあったよね?」

 

羽月さんの一言がその違和感の正体を言い当てた。

 

「あ、ほんとだ。」

「えー、俺ちんお腹空いちゃったよー。」

 

みんなが文句を言いながら普段自分が座っている椅子に座る。そしてその瞬間、3つ目にして最大の違和感がボク達を襲う。椅子が1つ空いている。

 

「おい、今いねえの誰だ?」

 

速瀬さんが疑問を口にする。ボク達は周囲を見回す。すぐに誰がいないのかは分かった。

 

「…泊クンだ!」

「まさかとは思うけど…。」

 

みんなで再び食堂を出る。ロビーに垂れた血痕はよく見るとまっすぐキッチンの方と土産物屋とかコンビニとかの方へ伸びている。その場で2手に別れて泊クンを探す。そしてボクはキッチンの前に立つ。入り口から見ただけでその異常な状況は分かる。

 

「血塗れではござらぬか…!」

 

そう、キッチンの床は全体的に血に濡れているようだった。

足が重い。…ボクは今何を考えている…?ありえない…。昨日、あんなにみんなで楽しく過ごしたじゃないか…!なのにそんなことっ…!!!

覚悟を決め、一息吐くとボクは意を決してキッチンに踏み込んだ。

 

 

ありえない。ありえないはずなんだ。

 

 

 

こんな、コロシアイなんか…。起こる…、ハズ…。

 

 

 

 

「いやあああぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「うぷっ…!!すまぬ…!ちょっと外にっ…!!」

 

 

 

 

 

でもそんな自分に言い聞かせるような言葉に意味などなかった。

 

 

 

 

 

 

"超高校級の銀行員"泊尚輝の死体はボク達のそんな願いをあざ笑うかのようにそこに横たわっていた。

 

 

 

 

 

 

CHAPTER1 小さな夜の絶望  非日常編

 

 

 

泊…クン…?なん…で…?頭が回らない。どうして…?

ぐるぐると混乱する頭に整理を付けようと必死になっていると、それは突然に鳴った。

 

 

 

ピンポンパンポーン…!

 

「死体が発見されました。一定の捜査時間の後、学級裁判を行います。」

 

 

 

圧倒的に悪趣味な放送。そして,泊クンの死を告げる放送。だけどその放送のおかげでボクは冷静になれた。フッと一息吐くと、

 

「雷文クン、別れた方のみんなを呼んできてもらえる?」

「お、おう…!」

「みんなは一度現場から出て。これから捜査はしなきゃならないんだけど、それより前に現場に入って荒らしてしまうとマズい。」

「ああ…。」

 

一度みんなを現場から出した状態で待っていると、反対側の方に探しに行ったみんなもキッチンの前に集まってくる。

 

「…どういう、ことですの?」

「…始まってしまったんだよ、"コロシアイ"が…!」

「…中で死んでいたのか?」

「うん。少なくともあのアナウンスが流れたって事は死亡確認が取れているんだと思う。」

 

遅れてきたみんなに状況を説明していると、奴は現れた。

 

「お、遂に始まったみてーだなぁ。やーっとか。みんな飽きちまうんじゃねーかと心配だったんだぜ。」

「みんな?」

「おっと。それは後のお楽しみってことで。」

「何をしに来た?」

「なーに、別にオマエラの邪魔をしにきたわけじゃねー。今回は医者もいるとはいえ、監察医じゃねーだろうからな。オレが先に検死しといてやったぜ。ザ・モノトラファイル!!」

 

そう言うとモノトラはどこからかタブレット端末を取り出してボク達1人1人に配っていく。

 

「これを活用しながら犯人捜ししろってことねぇ?」

 

タブレットの中身を見ながらクレイグクンがそう零す。

 

「犯人捜しって…!」

「そうだろ?俺ちん達にゃモノトラが用意した物とはいえ動機があった。でもモノトラにはない。モノトラが泊ちんを殺しても俺達がコロシアイを始めるとは限らねえんだからな。むしろ俺ちん達を上手くそそのかしてコロシアイを始めさせた、って考える方が自然だろ?」

「貴様、こんなときまで…!!」

「靏蒔さん、待って。クレイグクンの言うことにも一理あるよ。」

「深見、お前まで私たちの中に犯人がいると言うのか!!?」

「そういう訳じゃないよ。それはこれから捜査してみないと分からない話だし。だけど、お互いに疑い合って、その上で得た信頼なら今よりももっと強固な物になるはずだよ。」

「深見…。」

「ボクは小説家じゃないから陳腐な言い回しになっちゃうけど、これは疑うためじゃなくて信じるためにやるんだ。疑うのはその手段だよ。」

 

ま、昔やったゲームの受け売りだけどね。

 

「…うん、すまない。私も冷静ではなかったようだ。」

「じゃあ捜査をはじめよっか。」

「優クン、それならボクが検死をしよう。モノトラファイルだけじゃいかんせん情報が足りない。モノトラの言ったとおり、ボクは監察医ではないけれど、死体もそれ相応に見てきてる。慣れているはずさ。」

「うん、じゃあ任せるよ。」

「後は…。現場の監視も必要じゃねえの?犯人が何か隠したりするかも知れねえし。」

「それならオイラが受け持つぜ!!」

「それなら安心だな!」

「あ、香奈も見張りして良い?」

「言村サンがっすか?」

「昨日の枕投げで足くじいちゃってあんまり歩けないんだよねー。」

「じゃあ任せても良いかな?」

「合点承知の助!」

 

今日日聞かないな…。

 

「じゃ、こんな形で捜査開始だ!」

 

 

 

-捜査開始-

 

それじゃあまず、一応さっき配られたファイルを確認しておこうか。

 

 

モノトラファイル1

被害者は"超高校級の銀行員"泊尚輝。死亡推定時刻は午前2時頃。死因は鋭利なもので刺されたことによる喉の傷。死体が発見されたのはキッチンの倉庫扉前である。他には目立った外傷はない。

 

 

確かに情報はそこそこ載っているけどこれだけじゃ情報は足りないかも知れない。だけど推理の参考にはなりそうかも。

 

 

コトダマゲット!

【モノトラファイル1)

被害者は"超高校級の銀行員"泊尚輝。死亡推定時刻は午前2時頃。死因は鋭利なもので刺されたことによる喉の傷。死体が発見されたのはキッチンの倉庫扉前。

他には目立った外傷はない。

 

 

よし、じゃあ事件の概要も分かったところで捜査を開始しよう。

 

「あ、深見サン、一緒に捜査しましょ!」

「うん、いいよ!」

「よーし、じゃあレッツラゴっつつ…。」

「どうしたの?どこか痛いの?」

「うーん、昨日の枕投げで腰を捻っちゃったみたいでして、朝起きたらずっと痛いんすよ…。」

「じゃあ、ゆっくり急いで捜査していこうか。」

 

すると死体の方から真理ちゃんが声をかけてきた。

 

「あれ、どうしたの?」

「いやぁ、ちょっとこれだけ預かってほしくてね。」

「これは?」

「うーん、キーホルダー、かな?喉に刺さってたんだけど、さすがに検死の邪魔だからね。」

「うん、分かった。」

「それ、どこかで見たことあるっすね…。」

「ボクもだよ…。どこだったかな?」

「ん?それ土産物屋にあったやつじゃねえの?」

 

すると横からクレイグクンが声をかけてきた。そういえば…。

 

『深見ちん深見ちん、見てみてー。刀ー。』

 

2回目の探索の時、クレイグクンは土産物屋で同じような刀の形をしたキーホルダーを見つけてはしゃいでいた。確かにこれは似たようなものかもしれない。でもなんでこんなものが死体の喉に刺さっていたんだ…?

 

 

コトダマゲット!

【刀のキーホルダー)

泊の死体の喉に刺さっていた。恐らく土産物屋に売られていたものだと思われる。

 

 

「それじゃ本格的に捜査を開始しよっか。」

「はいっす!」

 

まずは…。…ん?

 

「ごめん、真理ちゃん、横通るよ。」

「ああ。」

 

ふと目に付いたのはコンロの横に置いてあるティーカップだ。そこにはティーバッグが引っかけられたまま放置されていた。

 

「おや、誰っすかね?こんなとこに出しっぱなしにしておいたのは?」

「うーん、でもただの出しっぱなしとも違う気がするよ?」

「そうっすか?」

「だってほら。コンロにはヤカンに水が入れられたまま放置されてるでしょ?」

「あ、ほんとっすね。じゃあ誰かが紅茶を飲もうとしたのに結局飲まずに紅茶を入れる準備だけしたまま置いていったってことっすか?」

「うん、そういうことになるね。」

「うーん、ほんとにどういうことなんすかね?」

 

 

コトダマゲット!

【淹れかけの紅茶)

ティーカップとティーバッグが出しっぱなしのままになっている。

横のコンロには水の入ったヤカンも放置されていた。

 

 

「…にしても、これキッツいっすねぇ。」

「血の臭いもスゴいしね。もしかして気分悪くなっちゃった?」

「いや、そんなことはないんすけど、泊サン、どれだけこの中で逃げ回ったんだろう、と思ったら居たたまれなくて。」

「確かにね…。」

「全く、こんなことをした犯人が許せないっすよ。」

「…うん、そうだね。」

 

 

コトダマゲット!

【血痕)

キッチンが全体的に血で汚れていた。誰のものであるかは不明。

 

 

床の血痕もそうだけど、今回の事件の悲惨さを示すのはそれだけじゃない。

 

「それに、周りもひどいね。」

 

そう言ってボクは周囲を見回す。キッチンには様々な設備が用意されていて、大概の料理はできるようになっているんだけど、その設備の多くには数々の何かで切りつけられたような傷が付いていた。

 

「これ、昨日調べたときにはなかった傷っすよね?」

「うん。だから、昨日の夜、泊クンが死ぬまでの間に付けられたものだと思う。きっと、相当揉み合ったんだろうね。」

「うわぁ、そんなニュースでよく聞くワードを自分で体験したくなかったっすよ…。」

「…ボクはまあ慣れてるけど、他のみんなはきっとそうだろうね…。」

 

 

コトダマゲット!

【傷だらけのキッチン)

キッチンの至る所に何かで切りつけられたような傷が付いている。泊は昨夜ここで相当犯人と揉み合ったものと思われる。

 

 

キッチンが傷だらけになっているのも気になるが、その他にも気になる部分、というか違和感を感じた部分があった。

 

「うーん、この違和感はなんだ…?」

「争った形跡ってやつのせいじゃないっすか?」

「どういうこと?」

「いや、傷だらけなのもそうなんすけど、他にも散らばったりしてるじゃないっすか。」

「あー。」

 

美作さんの言葉を元にキッチンを見回ると、その正体に気付いたかも知れない。

 

「これは…。」

 

キッチンのテーブルの上に鉄の串が何本も置いてあった。

 

「あれ?」

 

その串を見ていると羽月さんが首を傾げている。

 

「どうしたの?」

「え?ああ、深見君。いや何日か前にここを探索したときにはこの串こんなに乱雑だったかなって思って。ちゃんと立てて整理されてたと思うんだよね。」

 

そう言えば昨日ボク達が探索したときもこんなに乱雑には置かれていなかったような気がする。

 

「うーん、でもシュラスコの串だし、仕方ないのかなぁ?」

「シュラスコ?」

「南米の方の料理だよ。さすがにうちも作ったことはないけど肉の塊を串に刺して焼いて、食べるときにはそれをナイフで削いで食べるんだよ。」

 

どうやら羽月さんは料理にも詳しいらしい。

 

「で、串なんて立てといたって不安定でしょ?」

「うん、そうだね。」

「だからさ、昨日の事件が起きてる間にぶつかって倒れちゃったのかな、って。」

「確かに…。その可能性は考えられるかもね…。」

 

 

コトダマゲット!

【シュラスコの串)

キッチンに乱雑に置かれていた。羽月曰く、数日前にキッチンに探索に来たときにはきちんと整理して立てられていたと思われる。

 

 

「すまない、少し良いか?」

「どうしたの?」

 

シュラスコの串に意識を取られていると、いつの間にか近くに来ていた靏蒔さんが声をかけてくる。

 

「どうしたの?」

「これを見てほしい。」

 

そう言うと靏蒔さんは食堂に繋がる扉の前を指さす。そちらを見てみると何かキラキラと光っている。何かと思って近づいてみると、扉の前に何か金属の破片のようなものが落ちていた。

 

「これ、なんだと思う?」

「うーん、なんだろう?さすがに捜査を進めてみないと分からないかな。」

「そうか、すまない。」

「いや、ありがとう。むしろ重要な情報かも知れない。」

「それならいいんだが…。」

 

他に金属片の周りに何かないかと見回してみると、近くの食堂に繋がる扉にはボクの腰より少し低い位置に深い傷が付いていた。

 

「…これ、もしかしてこの金属片に関係してるのかな?」

「扉にぶつかった結果金属製の何かが壊れた、ってとこっすかね?」

 

扉も金属製だし、金属の何かが壊れるのはあり得るんだけど、どういう傷なんだろうか…?

 

 

コトダマゲット!

【ドアの傷)

食堂に向かう金属製のドアに深い傷がついていた。また、ドアの付近には金属の破片が落ちており、金属製の何かがここで破壊されたものと思われる。

 

 

ふう、一通りキッチンの中は調べ終わったかな。そろそろ真理ちゃんに検死の結果を聞ける頃かも知れないな。

 

「真理ちゃん。」

「お、ちょうどいいね。つい今検死が終わったところだよ。さて、何が聞きたい?」

「いや、全部話してよ…。」

「じゃ、分かったことの中で大きなものを2つ。1つ目は死因について。」

「死因ってモノトラファイルに書いてあったよね?」

「うん。念のためね。で、端的に言うと、モノトラファイルに書いてあったとおりの死因だったよ。喉に付いた傷が原因で泊クンは死んだ、という訳だね。で、それだけじゃ検死の意味が薄いからね。調べたことで分かった情報をもう1つ。泊クンは即死だったよ。」

「即死?これだけキッチンが血塗れなのに?」

「うん。これもモノトラファイルの通り、喉の傷以外には外傷はないし、泊クンは犯人の手によって一撃で殺されてしまった、という状況じゃないかな。」

 

だとしたらこの血塗れのキッチンはどういうことなんだろう…?

 

 

コトダマゲット!

【津田の検死)

モノトラファイルに書かれているとおりの死因である。モノトラファイルに書かれていない情報としては、泊は即死である。

 

 

「で、もう1つの分かった事って?」

「ああ、それはね、喉に付いている傷の形だよ。」

「傷の形?」

「ああ。まず簡単に言うと泊クンは喉を2回刺されてる。」

「2回?」

「ああ。2つの形の傷が重なり合った形になっているからね。そのうちの1つは細長い形だしさっき優クンに渡した刀のキーホルダーじゃないかな。」

「もう1つは?」

「うーん、正直分からないな。ただ形状は分かるよ。直径5ミリ程度の細長い凶器じゃないかな。もしかしたらアイスピックとかかもしれないね。ここはホテルのキッチンだ、ジュースなんかを提供するときに使ってもおかしくないだろう?」

 

直径5ミリ、細長く鋭利なもの…。どこかで見たような気もするけど…。でもそれよりなんで犯人は2回、しかも別のものを使って刺したんだろう…?

 

 

コトダマゲット!

【死体の傷の形)

津田によると喉の傷は2つの傷が重なり合っているとのこと。その2つの傷は片方は細長いもので発見時に喉に刺さっていたキーホルダーによるものと思われる。もう1つの傷は直径5ミリ程度の細長い凶器を使われたと考えられる。

 

 

「真理ちゃんありがとう。」

「いいよいいよ。」

「じゃあもうちょっと死体を調べるね。」

「任せたよ!」

 

さてと、死体で気になるところと言えば…

 

「あれ?この右手に握ってるのって?」

「包丁、っすかね?」

「だよね…。」

「でも刃先が折れちゃってるっすよ?」

「なんでだろ…。」

 

しかもどうして被害者の泊クンが握ってるんだろう?

 

 

コトダマゲット!

【折れた包丁)

泊の手に握られていた包丁。

刃先の部分が折れてしまっている。

 

 

「…ちょっと失礼。」

 

ボクは少し気になって泊クンの手から包丁を取る。

 

「…やっぱ探偵って死体に触るの抵抗ないんすか…?」

「うーん、ないわけじゃないけど触れないと事件が解決しないからね。」

「…そういうもんすか。」

「そういうもんだよ。」

 

さてと、気になるところと言えば。

ボクは包丁を近いところに付いているキッチンの傷に当ててみる。

 

「…やっぱり。」

「何がっすか?」

「傷が一致するんだよ。包丁の刃の部分と。」

「ってことはキッチンの傷は包丁で付けられたものってことっすね?」

「うん。もう1つ推理するなら、この包丁もこうやっていろんなところを切りつけている内に折れちゃったんだろうね。」

「はえー、そういうことっすか。」

 

 

コトダマアップデート!

【傷だらけのキッチン)

キッチンの至る所に何かで切りつけられたような傷が付いている。泊は昨夜ここで相当犯人と揉み合ったものと思われる。

また、この傷は包丁によって付けられたものであると考えられ、泊の手に握られた包丁はその切りつける過程の中で折れてしまったものであると考えられる。

 

 

あともう1つ、死体に関して気になることがあった。

 

「この裾、どうして血がついているんだろう?」

「あ、ほんとっすね。さっき津田サンも喉の致命傷以外に傷はなかったって言ってたっすもんね。」

「だとすると…。凶器を拭いた、とかかな?」

「でも血って中々落ちなくないっすか?」

「だからこれだけしっかり擦った痕になってるんじゃないかな。一見血がついていないようにさえ見えればボク達は警察じゃないし、ルミノール反応までは調べられないからね。」

「だとすると凶器を探すのも一苦労、っすね…。」

 

 

コトダマゲット!

【スーツの裾)

泊のスーツの裾に血液が付着していた。恐らく凶器についた血を拭き取るのに使われた物と思われる。

 

 

キッチンの中も死体もとりあえず調べ終わった。そろそろ他の場所も調べに行こう。

 

                   ・

                   ・

                   ・

 

【生存者】

超高校級の探偵          深見優(フカミユウ)

超高校級のレーサー        速瀬マハ(ハヤセマハ)

超高校級のバスケットボール選手  雷文竜(ライモンリュウ)

超高校級の外交官         金谷秀征(カナヤシュウセイ)

超高校級のバドミントン選手    羽月翔子(ハツキショウコ)

超高校級の医者          津田真理奈(ツダマリナ)

超高校級の歴史学者        伊達小十郎(ダテコジュウロウ)

超高校級の大工          鷹岡筋次(タカオカキンジ)

超高校級の数学者         言村香奈(コトムラカナ)

超高校級の作曲家         美作奏(ミマサカカナデ)

超高校級の???         鏑木麗(カブラギレイ)

超高校級のハッカー        クレイグ・ホワイトバーチ

超高校級の弓道家         靏蒔由衣(ツルマキユイ)

超高校級の地主          大地真英(ダイチマサヒデ)

超高校級のバイオリニスト     木田結弦(キダユヅル)

 

残り15人




という訳で、最初の事件が遂に起こってしまいました…。最初の被害者は皆さんの予想通りでしたでしょうか?キッチンの捜査だけで色々謎がありましたが、一体誰がこの事件を起こしてしまったのでしょうか…?


さて、それでは今回の設定裏話は金谷秀征くんに関してです。
金谷くんのバックボーンに関してはこれまでに物語の中で説明された通りですが、そもそもどうして彼の両親は彼を仕事の場に連れて行っていたのでしょうか?というのが今回の裏話です。金谷くんは両親に憧れ、外交官を目指していました。また、家族も両親以外いなかったため、彼の事を心配した両親が特例で金谷くんを連れて行かせてもらっていたようです。ただ、それが裏目に出てテロリストに捕らえられてしまうみたいですが…。
名前のに関しては、まず苗字はホテルの名前からです。と言ってもただのホテルではなく、海外の著名人が多く訪れていたホテルの名前からです。続いて、名前に関しては外交官ということで「秀でた」者が海外へ「征く」というところからこういう名前になっています。
ということで今回はここまでです!また次回お会いしましょう!


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CHAPTER1 非日常編-捜査-

さて、そろそろ他の場所の捜査にも行ってみようか。そう思ってキッチンを出ようとすると美作さんに呼び止められた。

 

「あ、深見サン、ちょっといいっすか?」

「どうしたの?」

「あ、いやちょっと聞きたいことがあって。」

「聞きたいこと?」

「はいっす。深見サンってホットドリンクは何派っすか?」

「急に何さ?」

「気になったんすよ。」

「何でかは分かんないけど…。ボクは大概紅茶かな。」

「わかったっす!あ!ちょっと他にも調べたいことがあるんでここでお別れでもいいっすか?」

「あ、そう?良いけど…。」

 

急にどうしたんだろう…。

 

「それじゃあボクが代わりに助手役を務めてやろうじゃないか。」

「あ、真理ちゃん。いいの?」

「ボクは捜査のプロではないからね。方向性が分からなくて困っていたところなのさ。むしろ色々教えてもらえるかい?」

「うん、いいよ。」

 

という訳で美作さんの代わりに真理ちゃんを迎えてキッチンの外の捜査に向かうことになった。キッチンを出てまず目に付くのはやはり血痕だ。キッチンの中もかなり血塗れな状態だったけど、その血痕はどうやら外、土産物屋の方にまで続いているようだ。

 

「…ん?」

「どうしたんだい?」

「ちょっとこれ見てみてよ。」

「血の痕、かい?」

「もちろんそれもそうなんだけど、よく見てみてよ。」

「?」

「足跡になってる部分があるでしょ?」

「あ、ほんとだ。」

「多分キッチンで血を踏んだか何かしたんだろうね。」

「じゃあこれも犯人の痕跡ってことか。」

「そういうこと。」

 

ただ、気になる部分がないわけじゃない。こんなに足跡が残るほど血が足に付いていたというのになんで土産物屋の近くにもキッチンの方に戻っていく足跡が残っていないんだろう…?

 

 

コトダマゲット!

【血の足跡)

キッチンから土産物屋の方向にむかっている。逆にキッチンの方に戻っていく足跡は残っていない。

 

 

土産物屋に入っていくと、そこでも何人かが捜査していた。

 

「おう、深見!もう現場は良いのか?」

「一通り調べ終わったからね。」

「じゃあちっと確認してえんだけどいいか?」

「うん。」

「いや、そんなたいしたことじゃねえんだけどさ、あそこにかかってるキーホルダーってよ、泊の喉に刺さってた奴とおんなじ奴だよな?」

 

雷文クンの指さす方向を見ると、そこには何日か前の探索でも見た刀の形をしたキーホルダーが何種類かかけられていた。

 

「うん、そうだと思うよ。」

「だよな!ありがとう!!…でもよ、なんでわざわざ犯人はここまで来たんだ?こんなに血が垂れてるっつうことは犯人はかなり血塗れだったって事だろ?なのになんで余計にヒントを残しかねねえことしたんだろな?」

「うーん、そこは学級裁判で推理してみないと分からないかも…。」

「やっぱそうかぁ。わりいな!」

「気にしないで!」

 

ただそれとは別に気になったことがある。それはさっきからずっと雷文クンが首を押さえていることだ。そう言えば、朝に最初に会った時も首を押さえていたような気がする。

 

「ねえ、雷文クン。」

「どうした?」

「朝からずっと首を押さえてるけどどうしたの?」

「ん?ああ、これか。なんつうこたぁねえんだけどよ、寝違えちまって。やっぱ普段の枕じゃねえとダメなんかなぁ。」

「そういうことね。」

 

それなら事件には関係なさそうかな。それならあとはバックヤードを調べてみようかな。

 

「…深見に津田か。どうした?」

 

そこでは先に鏑木クンが捜査を進めていた。

 

「一通りキッチンの捜査が終わったからね。他の場所も調べてみようと思って。」

「…そうか。それなら確認したいことがあるんだが。」

「いいけどどうしたの?」

「…ああ、助かる。私はあまり記憶力がよくない。記憶違いだったら申し訳ないんだが、この段ボールは先日の探索では開けられていなかったよな?」

 

鏑木クンの言葉を受けてバックヤードの段ボールを見てみる。恐らく彼が言っているのは壁になっている方の箱ではなく、床に1つだけ放り出されていた箱の事だろう。どちらにしても段ボール箱は開けられていなかったはずだ。

 

「開いてなかったはずだよ。」

「…そうだよな。ありがとう。」

 

確かにそれは気になる。ボクらの探索の後に気になった誰かが開けた可能性はゼロではないけれど。でもよく見てみると中身を誰かが持ち出したような形跡もあるし、事件に関連している可能性は高い。

 

 

コトダマゲット!

【開けられた段ボール)

バックヤードの床に置かれているTシャツの入った段ボール。数日前には閉まっていたが開けられており、中身を誰かが持ち出したような形跡もある。

 

 

それにこの段ボール箱が事件に関係していると推測できる要素はこれだけじゃない。それはこの段ボールの周辺にできている血溜まりだ。つまり事件後に犯人がこの段ボールの近くに来たということだ。でも、泊クン、こんな血溜まりができるほど血が出てたかな…?

 

 

コトダマゲット!

【血溜まり)

バックヤードの段ボールの足元にできている。血液の主が泊であるかどうかは不明。

 

 

「優クン、どうやらこの段ボールのところまで血痕は続いているみたいだね?」

「うん、そうだね。足跡の方もここまで来ているね。」

 

けれどやっぱりここからも戻っていく足跡がない。ここで足の裏の血液を拭き取った…?でもなんでキッチンで拭いてから来なかったんだ?それこそタオルでも何でも置いてあっただろうに…。

 

 

コトダマアップデート!

【血痕)

キッチンが全体的に血で汚れていた。誰のものであるかは不明。

血痕は廊下を出て土産物屋のバックヤードまで続いており、床の段ボール付近の血溜まりで終わっている。

 

 

「あ、深見君、これ預けてもいいー?」

 

段ボールを調べ終わった後、その場を立ち上がると大地君が声をかけてきた。

 

「どうしたの?」

「あのねぇ、深見君が調べてた段ボールの近くにこの袋が落ちてたんだぁ。」

「そうなの?」

「もしかしたら事件に関係あるかもって思ってぇ。」

「うん、ありがとう。」

 

うーん、何が入ってた袋なんだろう?断言はできないけど、もしかしてアレかな…?

 

 

コトダマゲット!

【ビニール袋)

バックヤードの段ボールの近くに落ちていた。何が入っていたものかは不明。

 

 

さて、バックヤードで調べられそうなところはこんなところかな。

そう思って真理ちゃんと一緒に土産物屋を離れる。すると少し歩いたところで真理ちゃんに呼び止められた。

 

「どうしたの?」

「いや、少し気になることがあってね。ちょっと聞いてもらえるかい?」

「うん、いいけど。」

「今土産物屋で雷文クンが首を寝違えたって言ってただろう?」

「うん、そうだったね。」

「実は今日他にも朝の段階で何人かケガ人が出ているんだ。」

「あ、もしかして言村さん?昨日の枕投げで足を挫いちゃった、って言ってたよね?」

「ああ、香奈さんもそうなんだが、一緒にクレイグクンも来ただろう?」

「あ、そう言えば今日は珍しく遅くホテルに入ってきたね。」

「彼もね、腰を痛めたから治療してほしい、とボクに頼んできたんだ。パソコンを弄るために長いこと座っていたら痛めたらしい。ま、香奈さんとクレイグクンの診察をしていたから少し遅れたんだけどね。まあ、昨日みんなで運動したし、仕方はないと思うんだが、他にもケガしている人がいたら教えてほしい。」

「それなら美作さんも昨日の枕投げで腰を痛めた、って言ってたよ。」

「ホントかい?」

「わざわざこんなことで嘘は吐かないよ。」

「それもそうだね。」

「まあ、今そんなことをしている余裕はないし、裁判が終わったら診てあげてよ。あ、ボクも腕が筋肉痛ぎみだから湿布か何かもらえると嬉しいな。」

「ま、そうだね。2人とも診察してあげるよ。」

「ありがとう。」

 

 

コトダマゲット!

【ケガ人)

ここ一晩で何人かのケガ人が出ている。

深見は腕が筋肉痛になっている。雷文は首を寝違えた。言村と美作はそれぞれ足首と腰を昨日の枕投げ大会の中で痛めてしまった。クレイグはパソコンを座って弄っている内に腰を痛めてしまったようだ。また、言村とクレイグは今朝津田による診察を受けている。

 

 

一度現場のキッチンに戻ろうと思って廊下を歩いていると、入れ替わりにキッチンから出てきた靏蒔さんに遭遇した。

 

「ああ、お前達か。土産物屋に何かあったか?」

「うん、そこそこ事件に関係しそうなものを見つけたよ。」

「そうか。」

「靏蒔さん、ボク達よりも長くキッチンを捜査してたけど、何か新しいものは見つかった?」

「いや、2人がいたときから新しく見つかったものはなかった。申し訳ない。その代わりと言ってはなんだが、昨日のことで思い出したことがある。」

「思い出したこと?」

「昨日ちょうど深見達が枕投げ大会の準備をしていた頃だ。少し喉が渇いてな。食堂に行ったんだが、その時に泊が何やら独り言を言っているのが聞こえたんだ。と言っても全てを聞いていたわけではないんだが…。」

「それでも構わないよ。何を聞いたの?」

「えっとだな、そのまま言っていたことを話すぞ。『一番貸しているのは雷文さんですね。でも彼は少し難しいか…。だとすると次に貸しているのは…、深見さん、彼ですね。』と言っていた。」

「貸している?」

 

でも確かに彼はお金だけでなく行動に関しても貸し借りを重視していたきらいがある。

 

「深見に関しては恐らく探索初日の事を言っているのだろう。壁から外を見ることができるか確かめるために肩にお前を乗せていただろう?その時のことを"貸し"と言っているのかと思ってな。雷文に関しては分からん。ただ、昨日の段階では何か頼み事をしようと考えているのかと思っていたんだ。ただ頭を使う作業だったからこう言っては失礼だが雷文に頼むのを諦めた、と勝手に解釈していたんだ。だが、今こうなってしまうともしかしたらあの独り言も事件に関係しているのかも知れない、と思ったんだ。だから一応言っておく。」

「うん、ありがとう。頭に留めておくよ。」

「訳に立ったのならよかった。」

 

確かに、その独り言を言っていた翌日に泊クンは何者かに殺されている。事件との関連を疑った方が良いだろう。

 

 

コトダマゲット!

【靏蒔の証言)

昨日泊が独り言を言いながら歩いていた。

内容は『一番貸しているのは雷文さんですね。でも彼は少し難しいか…。だとすると次に貸しているのは…、深見さん、彼ですね。』

 

 

「…そうなるとあそこも行っておいた方がいいのかな…?」

「どうしたんだい?」

「急遽予定変更、もう1カ所行っておこうと思って。」

「どこへ?」

「宿泊棟の泊クンの部屋さ。」

「どうして?」

「さっきの靏蒔さんの言っていた泊クンの独り言だよ。もしかしたら彼の独り言に関して何か関連するものが見つかるかも知れないでしょ?」

「念のため、ってやつかい?」

「まあそんなとこ。情報が多いに越したことはないからね。」

 

宿泊棟の泊クンの部屋の前。ドアノブを引っ張ると、カギがかかっていた。参ったな…。

 

「どうしようかな…。」

「それなら任せてくれたまえ。」

 

どうやって部屋に入ったものか考えていると、真理ちゃんがそんなことを言い出す。それと同時に手をパンパンとならす。

 

「おう、どうした?」

「わっ!」

 

すると唐突にモノトラがボク達の目の前に現れた。

 

「ちょっと頼みたいことがあってね。泊クンの部屋のカギを開けてくれないか?念のため捜査をしておきたいんだ。」

「そういうことならいいんだぜ!開けごま油!!」

 

なにその呪文…。

そう思っているとガチャッと扉が開いた。なんでそれで開くのさ…。

 

「ありがとー。」

「お安いご用なんだぜ。」

 

そしてなんで真理ちゃんはモノトラを使いこなしているんだ…。

まあ、そんなところは気にしても仕方ないし、泊クンの部屋を捜査しよう。彼の部屋には彼の手帳が机の上に置かれていた。

 

「…ごめんね、ちょっと見させてもらうよ。」

 

机に向かって手を合わせた後、彼の手帳をパラパラとめくっていく。そこに書かれていたのは基本的に自分が担当している融資先に関する情報とそこでいつ何を話したかなど彼の銀行員としての仕事に関する事だった。恐らくここに書かれていたメモの内容を元に様々な銀行としての対応を提案していたのだろう。だが、現状何かが書かれている中で最後のページ、そこに書かれていた内容に目が留まった。

 

「あれ、これは…。」

 

そこに書かれていたのは『貸している人リスト』として誰にいつ何をしてあげたのか、ということが事細かに書かれている。その中にはボクの名前があるのだけど、そこには探索初日にボクを肩に乗せたことが書かれていた。また、真理ちゃんの欄には探索中に彼女の無茶な提案を受けたことが書かれていた。そして雷文クンはことあるごとに大した用事ではないのだが彼に頼み事をしていたようだ。まあ、確かに頼めば後々返さなきゃならない、というのは抜きにしてとりあえず確実に完了してくれる泊クンには頼みやすいのはちょっと分かってしまうけどそれにしてもこの数日で頼みすぎではないだろうか。

 

「まったく、雷文クンは泊クンのことをなんだと思っていたんだろうね?」

 

真理ちゃんも横でそのリストを見ながら苦笑している。ちなみにこの手帳の中に書かれている名前はボク、速瀬さん、雷文クン、真理ちゃん、クレイグクン、言村さんの6人だ。そしてもう1つ、このリストに関して気になることがあった。

 

「なんでボクの名前に丸印がついているんだ…?」

「それこそ由衣さんの言ってた独り言の内容通りじゃないか?」

「うん、それはそうなんだけどね。」

 

だとしたら泊クンはボクに何を頼むつもりだったんだろうか…?

 

 

コトダマゲット!

【貸している人リスト)

部屋に残されていた泊の手帳の中にこの生活の中で誰に何をしてあげたのかについて事細かに記されている。リストに名前があったのは深見、速瀬、雷文、津田、クレイグ、言村の6人。

また、深見の名前のところには丸印が付けてある。

 

 

やっぱりこの部屋には泊クンの独り言に関連している可能性があるものが残されていたか…。

さて、今度こそ予定通りもう一度キッチンに戻ろう。

キッチンに戻るとそこでは美作さんがニコニコしながら待ち受けていた。

 

「あ、深見サン、津田サン、戻ってきたっすね!」

「何を調べてたの?」

「そこは最後の1人に質問を終えてからっす!津田サン、好きなホットドリンクは何っすか?」

「急になんだい?まあ答えて何か損があるわけでもないだろうから答えるけど、紅茶さ。結構凝ってるんだぜ?」

「分かったっす!じゃ、これで全部調べ終わったし、報告するっす!」

「…もしかしてみんなにホットドリンクの好みを聞いて回ってたの?」

「なんで分かったんすか!?」

「いや、今の真理ちゃんへの質問で分かるって…。で、一応聞いておくけど、なんで?」

「ほら、キッチンにティーカップが放置されたじゃないっすか。もしかしたらあれも事件に関係してるのかな、と思って念のためっす!」

「じゃあ一応聞いてもいい?」

「合点っす!じゃあまずはちょうど目の前に2人いる紅茶派からっすね。深見サン、津田サン、自分、あと大地サンが紅茶派でした!で、次にコーヒー派の人なんすけど、雷文サン、金谷サン、鏑木サン、クレイグサンがそうでした。あと一応なんすけど、食後の感じからして泊サンもコーヒー派っすね。で、次は甘ーいココアっす。速瀬サン、羽月サン、言村サン、木田サンの4人がココアっすね。そして最後に和風な緑茶っす。緑茶派は残りの伊達サン、鷹岡サン、靏蒔サンの3人っすね。」

「うん、ありがとう。」

 

とりあえず聞いてはみたけど、やっぱ事件に繋がる感じはあまりしないなぁ…。けど一応頭の片隅には残しておこう。

 

 

コトダマゲット!

【ホットドリンクの派閥)

それぞれの好みがある。

深見、津田、美作、大地が紅茶派。

雷文、金谷、鏑木、クレイグがコーヒー派。

速瀬、羽月、言村、木田がココア派。

伊達、鷹岡、靏蒔が緑茶派。

死んだ泊は食後の様子からコーヒー派であると思われる。

 

 

うーん、ちょっと情報を整理したいなぁ…。

 

「ふーかーみーt…うおああああ!!!」

 

ドッターン!!!という音が自分の近くから聞こえてくる。後ろからの気配を感じてつい投げてしまった。誰かと思って見てみるとやっぱりクレイグクンだった。

 

「いっつつ…。ひでえぜ深見ちん…。俺ちんケガ人だぜ?急に投げなくてもいいじゃんか…。」

「ごめんね。」

「心がこもってねえ!!?」

「何の音ですの?」

 

ボクがクレイグクンを投げた音を聞きつけて木田さんが出てきた。

 

「あ、ビックリさせてごめん。ボクがクレイグクンを投げちゃったんだ。」

「どういうことですの!!?」

「えっとね、探偵の性かな。気を張っているときにボクに、特に後ろから何かしようとする気配を感じると咄嗟に関節技をかけちゃったり投げちゃったりするんだ。どうにも昨日の動機発表から気が抜けなくてさ。」

「ま、それは仕方ないですわね。むしろそんな状況で不意打ちをしかけるクレイグさんが悪いですわ。」

「木田ちんも冷てえ!!!」

「確かに、優クン昨日からずっと気を張ってるね。枕投げ大会の時でさえ。身体を壊さないよう気をつけてくれよ?」

「うん、気を付けるよ。」

 

 

コトダマゲット!

【深見の護身術)

気を張っているときに深見に何かしようとすると咄嗟に反撃してしまう。

また、津田の目線で見ても昨日の動機発表からずっと深見は気を張っている。

 

 

さて、他には…

 

 

キーン、コーン… カーン、コーン…

 

「さて、そろそろ良い頃合いじゃねーか?ってなワケで学級裁判の幕開けだぜ!!西棟奥の赤い扉の前に集合してくれ!!!」

 

 

…時間切れ、か。もう少し調べておきたかったような気もするけど、そんなことを言っていても仕方ない。腹をくくってボクは他のみんなと一緒に赤い扉の前に集合した。

以前調べたときにはカギがかかっていたその扉はいつの間にか開放されていて、自由に入れるようになっていた。中に入ったは良いものの、みんなの不安の色は隠しきれていない。

 

「くそっ…。誰がこんなことしやがった…!」

「もしこの後の裁判で泊君を殺した犯人を見つけられなかったらうちらみんな…?」

 

そう、もしここで正しい犯人を見つけることができなかったらボク達は、死ぬ。その事実はボク達の心に重くのしかかる。でも、それを理由に逃げるわけにはいかない。だって、もっと泊クンは無念だったハズなんだから。

 

「…大丈夫、絶対犯人は見つけるよ。見つけてみせる。」

「随分な自信じゃねえの?」

「探偵、だからね。ボクが必ず真実を見つけてみせるよ。」

 

拳に強く力を込める。

 

「張り切りすぎっす。もっと肩の力抜いて。」

「…美作さん。」

「そんなんじゃ見つかる真実も見つからないっすよ!だーいじょうぶっす!なんとかなるっすから!」

 

美作さんは明るくボクの肩を叩いてくれた。

 

「…うん、ありがとう。」

 

1つ深呼吸をしてボクは前を向く。必ずボクはこの事件の真実を見つけてみせる。そして、生き延びてみせる。そのためにも、冷静に。

しっかり前を見据えて目の前のエレベーターに乗り込む。ボク達みんなの命を掴むために。

 

                    ・

                    ・

                    ・

 

 

【生存者】

超高校級の探偵          深見優(フカミユウ)

超高校級のレーサー        速瀬マハ(ハヤセマハ)

超高校級のバスケットボール選手  雷文竜(ライモンリュウ)

超高校級の外交官         金谷秀征(カナヤシュウセイ)

超高校級のバドミントン選手    羽月翔子(ハツキショウコ)

超高校級の医者          津田真理奈(ツダマリナ)

超高校級の歴史学者        伊達小十郎(ダテコジュウロウ)

超高校級の大工          鷹岡筋次(タカオカキンジ)

超高校級の数学者         言村香奈(コトムラカナ)

超高校級の作曲家         美作奏(ミマサカカナデ)

超高校級の???         鏑木麗(カブラギレイ)

超高校級のハッカー        クレイグ・ホワイトバーチ

超高校級の弓道家         靏蒔由衣(ツルマキユイ)

超高校級の地主          大地真英(ダイチマサヒデ)

超高校級のバイオリニスト     木田結弦(キダユヅル)

 

残り15人




次回、第1章学級裁判スタートです!誰が泊君を殺した犯人は誰なんでしょうか…?この事件の真実は一体どこに…?次回をお楽しみに!!

それでは設定裏話です!今回は羽月翔子さんのお話です!
羽月さんはかなりのサラブレッドです。お父さんは陸上の十種競技の選手、お母さんは四大大会で好成績を残したテニスプレーヤーです。そんな両親の娘である羽月さんは高い身体能力を持って生まれ、彼女が選んだバドミントンでもかなりの成績を残すことに繋がっていきます。
羽月さんの名前に関してですが、苗字はバドミントンということで、「羽」という字を使いたいな、ということからスタートしています。更に、前作にもそう言うキャラがいたのですが、「羽」という字を持ち、かつちょっとおしゃれに感じていたプロ野球選手の苗字から「羽月」という苗字にしました。そして名前はバドミントンの空を翔るように跳ぶイメージから「翔子」という名前にした、という感じです。
それではまた次回お会いしましょう!!


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CHAPTER1 学級裁判 前半

エレベーターは下降する。地中へ向かって深く、深く。ボクは捜査の中で得た情報を整理しながら同時に泊クンの事を思い出していた。泊クンはかなり慎重派の人だった。それと同時にかなり面倒見のいい人だった。貸し借りには厳しい人だったけど、それでも優しい人だった。信じたくはないけど、この中に彼を殺した犯人が混じっている。その事実に心は痛むけれどそれでもボクは前に進む。必ずこの事件の真実をボクは見つけてみせる…!

唐突にエレベーターが止まる。そして開いた扉から外に出るとそこには円形に並べられた16の証言台があった。

 

「これは?」

「おう、オマエラよく来たな!ここは学級裁判を行うための裁判場!ここではオマエラ全員が被告であり、オマエラ全員が検事であり、オマエラ全員が裁判官だ!」

「もう1つ、あれは?」

 

そう言って指さした先には泊クンの遺影に血の色をしたペンキでバツ印が描かれていた。

 

「泊の奴だけ仲間はずれにするのはかわいそうだろ?だからアイツの魂も一緒だって意味でここに用意させてもらったぜ!」

「悪趣味な奴め…。」

「さて、こんなとこで話しててもしかたねーだろ?早く自分の席に着いてくれ!」

「席に着けと言われても…。」

 

文句を言いつつボク達はそれぞれ適当に場所を決めて証言台の前に立つ。

 

「それじゃあ最初の学級裁判スタートだぜ!!」

 

 

 

コトダマ一覧

【モノトラファイル1)

被害者は"超高校級の銀行員"泊尚輝。死亡推定時刻は午前2時頃。死因は鋭利なもので刺されたことによる喉の傷。死体が発見されたのはキッチンの倉庫扉前。

他には目立った外傷はない。

 

【刀のキーホルダー)

泊の死体の喉に刺さっていた。恐らく土産物屋に売られていたものだと思われる。

 

【淹れかけの紅茶)

ティーカップとティーバッグが出しっぱなしのままになっている。

横のコンロには水の入ったヤカンも放置されていた。

 

【シュラスコの串)

キッチンに乱雑に置かれていた。羽月曰く、数日前にキッチンに探索に来たときにはきちんと整理して立てられていたと思われる。

 

【ドアの傷)

食堂に向かう金属製のドアに深い傷がついていた。また、ドアの付近には金属の破片が落ちており、金属製の何かがここで破壊されたものと思われる。

 

【津田の検死)

モノトラファイルに書かれているとおりの死因である。モノトラファイルに書かれていない情報としては、泊は即死である。

 

【死体の傷の形)

津田によると喉の傷は2つの傷が重なり合っているとのこと。その2つの傷は片方は細長いもので発見時に喉に刺さっていたキーホルダーによるものと思われる。もう1つの傷は直径5ミリ程度の細長い凶器を使われたと考えられる。

 

【折れた包丁)

泊の手に握られていた包丁。

刃先の部分が折れてしまっている。

 

【傷だらけのキッチン)

キッチンの至る所に何かで切りつけられたような傷が付いている。泊は昨夜ここで相当犯人と揉み合ったものと思われる。

また、この傷は包丁によって付けられたものであると考えられ、泊の手に握られた包丁はその切りつける過程の中で折れてしまったものであると考えられる。

 

【スーツの裾)

泊のスーツの裾に血液が付着していた。恐らく凶器についた血を拭き取るのに使われた物と思われる。

 

【血の足跡)

キッチンから土産物屋の方向にむかっている。逆にキッチンの方に戻っていく足跡は残っていない。

 

【開けられた段ボール)

バックヤードの床に置かれているTシャツの入った段ボール。数日前には閉まっていたが開けられており、中身を誰かが持ち出したような形跡もある。

 

【血溜まり)

バックヤードの段ボールの足元にできている。血液の主が泊であるかどうかは不明。

 

【血痕)

キッチンが全体的に血で汚れていた。誰のものであるかは不明。

血痕は廊下を出て土産物屋のバックヤードまで続いており、床の段ボール付近の血溜まりで終わっている。

 

【ビニール袋)

バックヤードの段ボールの近くに落ちていた。何が入っていたものかは不明。

 

【ケガ人)

ここ一晩で何人かのケガ人が出ている。

深見は腕が筋肉痛になっている。雷文は首を寝違えた。言村と美作はそれぞれ足首と腰を昨日の枕投げ大会の中で痛めてしまった。クレイグはパソコンを座って弄っている内に腰を痛めてしまったようだ。また、言村とクレイグは今朝津田による診察を受けている。

 

【靏蒔の証言)

昨日泊が独り言を言いながら歩いていた。

内容は『一番貸しているのは雷文さんですね。でも彼は少し難しいか…。だとすると次に貸しているのは…、深見さん、彼ですね。』

 

【貸している人リスト)

部屋に残されていた泊の手帳の中にこの生活の中で誰に何をしてあげたのかについて事細かに記されている。リストに名前があったのは深見、速瀬、雷文、津田、クレイグ、言村の6人。

また、深見の名前のところには丸印が付けてある。

 

【ホットドリンクの派閥)

それぞれの好みがある。

深見、津田、美作、大地が紅茶派。

雷文、金谷、鏑木、クレイグがコーヒー派。

速瀬、羽月、言村、木田がココア派。

伊達、鷹岡、靏蒔が緑茶派。

死んだ泊は食後の様子からコーヒー派であると思われる。

 

【深見の護身術)

気を張っているときに深見に何かしようとすると咄嗟に反撃してしまう。

また、津田の目線で見ても昨日の動機発表からずっと深見は気を張っている。

 

 

 

【学級裁判開廷】

 

「それじゃあまず最初にこの学級裁判のルールを説明させてもらうんだぜ!この学級裁判では誰が殺人を犯したのか、その犯人であるクロを議論によって見つけ出してもらうんだぜ!議論の結果クロだと思った人物に最後には投票してもらう。そしてその結果一番得票数が多かった人物をこの裁判におけるクロとし、それが正しい犯人だった場合はそのクロのみがおしおき、もしそれが間違っていた場合、真のクロ以外の全員がおしおきとなるぜ。」

「で、そのおしおきってのが、処刑、だったな。」

 

ついに学級裁判が始まる…。ボクはふうっと一度大きく息を吐く。

 

「じゃあ最初に事件の概要をまとめて行くっすよ!」

「死んだのは知っての通り、泊尚輝だ。」

「発見場所はキッチンだったよね?」

「ああ。オレと深見とあと3人で見つけた。」

「わたくし達をあと3人でまとめないでくださる…?」

「死亡推定時刻は午前2時ごろでござったな。」

「死因はモノトラファイルの通り、喉を刺されたことだったよ。」

「それなら一番分かりやすそうな凶器からいこうぜ!!」

 

 

 

議論開始

 

カナヤ「今回の事件の凶器、か…」

 

 

ハツキ「それなら決まってるよ!」

 

 

ハツキ「【キーホルダー】を使って刺したんだよ!」

 

 

ハヤセ「そんなもんちゃんと刺さんのか?」

 

 

ハツキ「犯人はキーホルダーを使って、」

 

 

ハツキ「泊君を殺しちゃったんだよ!」

 

 

確かに目に見えて刺さっていたのはキーホルダーだったけど…。

 

【死体の傷の形)→【キーホルダー】

 

「それは違うよ!」

 

 

 

「いや、それは違うんじゃないかな。」

「なんでよ!」

「簡単な話だよ。死体には実は2つ傷があったんだ。」

「2つ?」

「真理ちゃん、説明してもらえる?」

「ああ、任された。ボクが検死をしたところね、彼の喉の傷は2つの傷が重なった形をしていた。1つは今翔子さんが言っていたキーホルダーが刺さったときの細長い傷。そしてもう1つは直径5ミリ程度の円形の傷だ。」

「それが…?」

「よし、じゃあここで簡単なクイズだ、さっきも言ったとおり、死体にはキーホルダーによるものと思われる細長い傷とそれとは異なる直径5ミリ程度の円形の傷の2つがあった。そしてキーホルダーは死体に刺さったままだった。さあ、どっちの傷が先についたものでしょうか?はい、優クン!!」

「ボク!!?」

 

死体には形の異なる2つの傷。そしてその原因のうちの片方は死体に刺さったままだった。それなら先についた傷は…、

 

 

 

選択肢セレクト

 

1.細長い傷

 

2.円形の傷

 

→2.

 

「これだ!」

 

 

 

「円形の傷、だよね?」

「その通り。先に付いた傷は円形の傷の方なのさ。」

「でも、1回キーホルダーで刺してからまたその何か別の丸いもので刺したのかも…。」

「その可能性も低いかな。人間は機械じゃないからね。同じところを刺したと思っても正確に同じところを刺すというのは難しい。どう頑張っても多少のズレが生まれるのさ。今翔子さんが言った状況の場合、死体には一見見えにくくても3回刺した後が残るのさ。」

「そう、なんだ…。ごめん…。」

「気にすることはないよ。」

「それなら結局凶器はなんだったんでい?」

「うーん、恐らくだけど犯人は同じくキッチンにあったものを使ったんじゃないかな?」

「キッチンにあったもの?」

「うん。」

 

実際、このホテルのキッチンには直径5ミリ程度、断面が円形となるもう1つの傷の原因の条件に当てはまるものがあったはずだ。

 

 

 

証拠提出

【シュラスコの串)

 

「これで証明するね!」

 

 

 

「例えばシュラスコの串、とかね。」

「シュラスコって…何でござるか?」

「ブラジルの肉料理だよ。串に刺して焼くの。」

「なるほどでござる。」

「そうそう、でその串ならばちょうど直径5ミリ程度の円形の傷に当てはまるんじゃないかな。」

「シュラスコの串で刺して殺人なんてどこかで聞いたことあるな!!」

「うるせえ!!」

「でもさー、なんで犯人はわざわざもう一回キーホルダーを刺したのー?」

「現状考えられるものとしては凶器を誤認させるため、じゃないかな。そう思える証拠もあるし。」

 

犯人の目的が凶器の偽装であったと思われる証拠と言えば…

 

 

 

証拠提出

【スーツの裾)

 

「これで証明するね!」

 

 

 

「泊クンのスーツの裾が血で汚れていたんだ。多分ここで串を拭いたんだと思うよ。まあ、その時に戻そうとして本来の状態とは違って乱雑な状態になっちゃったみたいだけどね。」

「全く、プロの医者がいるっていうのにナメられたものだよ。その程度傷の形で分かるってのに。」

「まあまあ、犯人もそこまで頭が回らなかったんだって。」

「深夜とはいえ一度現場を出て土産物屋まで行くリスクも頭になかったみたいっすからね。」

「でももう少し事件の情報を整理したいところだ。」

「それではもう少しその話をしていこうか。」

 

 

 

議論開始

 

ライモン「事件の状況か…」

 

 

ダイチ「現場が【キッチン】だってのはいいとしてぇ」

 

 

ダイチ「他になにかあったかなぁ?」

 

 

ツルマキ「やはり現場の血じゃないか?」

 

 

タカオカ「とんでもねえ状態だったな…」

 

 

ハヤセ「犯人に襲われた尚輝は」

 

 

ハヤセ「【傷を負って逃げ回った】けど」

 

 

ハヤセ「結局殺されちまったんだよな…」

 

 

あれ、泊クンってそんな余裕あったんだっけ…?

 

【津田の検死)→【傷を負って逃げ回った】

 

「それは違うよ!」

 

 

 

「いや、泊クンに逃げ回る余裕はなかったはずだよ。」

「でもあの血は泊のだろ?」

「ボクも最初はそう思ってたんだけど、真理ちゃんの検死を聞いて違うんじゃないかって思ってる。」

「また津田か!?」

「大忙しだね。」

 

真理ちゃんの検死からはキッチンの血が泊クンのものではないと推測される要素があった。それは…

 

 

 

選択肢セレクト

 

1.泊は即死

 

2.死亡推定時刻

 

3.死体発見現場

 

→1.

 

「これだ!」

 

 

 

「そもそもの話なんだけどね、泊クンは即死なんだ。」

「即死ぃ!!?」

「ちなみにね、死んだ人間からはどれだけ心臓や太い動脈を刺したところでそこまで大量に血が出ることはないよ。」

「じゃああんなに部屋中血塗れになるのは…。」

「ありえないってことになるんだ。それと同時にもう1つ分かることがある。」

「分かること?」

 

そう、現場の状況と死体の状態から分かることは…

 

 

 

選択肢セレクト

 

1.泊はただの被害者

 

2.泊はただの被害者じゃない

 

3.泊の事件にはモノトラが関わっている

 

→2.

 

「これだ!」

 

 

 

「泊クンはただの被害者ではないってことだよ。被害者のものではない血液で汚れたキッチンはそこに今回の犯人以外の、あえて言うのであれば泊クンの思惑も関わっているって事を示しているんだ。」

 

 

「ここだけは急ごうかなぁ。」

 

 

「大地クン?」

「現場の血が泊君のものじゃない可能性が高いことは分かったよぉ。でもそれが泊君がただの被害者じゃないってことの根拠にはならないんじゃないかなぁ。」

 

こういう反論が来ることもあるよね…。でも泊クンが今回の事件に被害者としてだけではなく関わっている可能性は高いんだ。

 

 

 

反論ショーダウン

 

「津田さんの検死の通りだとすればぁ」

 

 

「キッチン全体の血液が」

 

 

「泊クンのものじゃないって事はわかるよぉ?」

 

 

「でもさぁ、」

 

 

「それが泊クンがただの被害者じゃないってことには」

 

 

「ならないと思うんだぁ」

 

 

-発展-

 

「もちろん、それだけじゃ証明はできない」

 

「けれど、他の証拠と組み合わせれば」

 

「キッチンの血が泊クンのものではないってことが証明されるんだ!」

 

 

「他の証拠ってなにぃ?」

 

 

「キッチンには何か証拠でもあったのぉ?」

 

 

「【何か見た人もいない】しさぁ、」

 

 

「やっぱり、」

 

 

「キッチンの血は泊クンのものだったんだよぉ」

 

 

いや、確かあの人が関係しそうなことを言っていたはずだ。

 

【靏蒔の証言)→【何か見た人もいない】

 

「その言葉、斬らせてもらうよ!」

 

 

 

「それならば関係しそうな証言をしている人がいるんだ。」

「それって誰ぇ?」

「靏蒔さんだよ。」

「そうなのぉ?」

「私か?」

「うん。靏蒔さん、捜査中に思い出したことがあるってボクに教えてくれたよね?」

「ああ、アレのことか。」

「アレって何だ!?」

「説明してもらえる?」

「ああ。昨日のことだ。ちょうどみんながそれぞれに自由時間を過ごしているとき、私は泊が独り言を言いながら歩いているのを見かけたんだ。」

 

『一番貸しているのは雷文さんですね。でも彼は少し難しいか…。だとすると次に貸しているのは…、深見さん、彼ですね。』

 

「こんなことを言いながら歩いていたんだ。その時は誰かに頼み事をしようとしていたんだと思っていたんだ。もしかしたらそれが頭脳労働なのかも、ともな。」

「オレにゃ頭脳労働はできねえってか!!?」

「それはその通りじゃん。ぷぷっ。」

「なんだとクレイグこの野郎!!!」

「まあまあ。」

「ただ正直これが今回の事件に関係しているという確証はない。実際のところどうなんだ?」

「関係しているよ。恐らくね。」

「とは言ってもどのように関係するんですの…?」

 

 

 

議論開始

 

キダ「今の靏蒔さんの証言が事件にどう関係するんですの?」

 

 

ダテ「確か深見殿は、」

 

 

ダテ「泊殿は【ただの被害者じゃない】って言ってたでござるな?」

 

 

カブラギ「…ならば泊は他に何であったというんだ?」

 

 

コトムラ「被害者じゃないならー、」

 

 

コトムラ「『加害者』とかー?」

 

 

ライモン「アイツは殺されてんだぞ?」

 

 

クレイグ「じゃあ、犯人にとって」

 

 

クレイグ「見られたくないモンを『見ちまった』」

 

 

クレイグ「とかどうよ?」

 

 

アレを踏まえるとあの人の証言がしっくりくるはずだ。

 

【折れた包丁)→『加害者』

 

「それに賛成だよ!」

 

 

 

「多分、泊クンは加害者になろうとしていたんだ。」

「えっ!!?」

「泊クンの死体の状況をよく思い出してほしいんだけど、ほら、泊クンって手に包丁を握ったまま死んでたでしょ?」

「…ああ、そうだったな。…刃は折れていたが。」

「あれ?でも確か今回の凶器って…。」

「そう、キッチンに置かれていたシュラスコの串だ。それに、死体の傷の状態を考えても包丁だけは凶器になり得ない。だとしたらその包丁は誰が使ったんだろうね?」

「そんなの、泊しか…。」

「…そういうことか。」

「泊クンは誰かを殺そうとした結果失敗し、返り討ちに遭って死んでしまったってわけさ。」

「じゃあその殺そうとした人が犯人、ってこと?」

「そこは分からないけど恐らく。でももしかしたらその人さえ分かれば状況は動くと思うよ。」

 

それなら泊クンが殺そうとした人って誰なんだろう…?

 

 

 

議論開始

 

ミマサカ「それならとりあえず、」

 

 

ミマサカ「泊サンが殺そうとした人を【探せばいい】ってことっすね!」

 

 

ハヤセ「つったってどうやって探すんだ?」

 

 

ダイチ「現場を見てたなら」

 

 

ダイチ「【議論は簡単】なワケだしねぇ」

 

 

ツルマキ「何か【書き残しているわけでもなし】、」

 

 

ツルマキ「難しいんじゃないか?」

 

 

カナヤ「キッチンに何か」

 

 

カナヤ「【特定に繋がるものがあった】可能性はないのか?」

 

 

ミマサカ「うーん、見てないっすね…」

 

 

ダテ「やっぱり難しいのではござらぬか…?」

 

 

確か泊クンの部屋に残されていたものがあったはず…!

 

【貸している人リスト)→【書き残しているわけでもなし】

 

「それは違うよ!」

 

 

 

「実は泊クンはヒントを書き残していたんだ。」

「そうなのか!?」

「うん。実はね、靏蒔さんの証言を聞いて念のため泊クンの部屋を調べに行ったんだ。そしたら彼の部屋の手帳にはこんなものが残されていたんだ。」

 

そう言ってボクは写真に収めた泊クンの手帳の内容をみんなに見せる。

 

「これは?」

「泊クンが何か、恐らく行動を貸していた人のリストだよ。」

「行動を貸す?」

「泊クンはよく誰かに何かをしてあげるとき、『貸しですからね』って言っていたんだ。」

「そう言えばそんなこと言ってた気がすんな。」

「このリストはその言葉を言った人のリストだよ。」

「貸し、って言い方をするって事はつまりどこかで返してもらうつもりだった、ってこと?」

「そういうことになるね。」

「もしかして靏蒔の証言って…。」

「多分、このリストに則って殺人の計画を立てていたときの独り言なんだと思う。」

「…ん?」

 

リストに関する説明と推理をみんなに話していると、金谷クンが何か気付いたことがある様子だった。

 

「どうしたの?」

「このリスト、お前の名前に大きく丸がついているぞ、深見。」

「えっ!!?どういうことでござるか!!?」

「つまりこれは泊が標的にしようとしていたのが深見、お前だったんじゃないのか?」

 

確かに、靏蒔さんの聞いた泊クンの独り言の中にもボクの名前が挙がっている。そしてその言葉を靏蒔さんの解釈通りではなく、泊クンが殺しの計画を立てていたという前提で解釈すると、『一番貸しのある雷文クンを直接殺すのは身体能力的に難しいから次点で貸しているボクをターゲットにしよう』と取ることができる。

 

「ということは、泊君を返り討ちにしたのは、深見君だった、ということですの…?」

 

問題はその解釈を元に考えるとボクが犯人だと考えられる、ということだ。もちろん、ボクが殺していないということはボクが一番分かっている。どうにかこの状況を打破しないと…!

 

 

 

【裁判中断】

 

「解釈ってのはおもしれーよな!」

 

 

「同じ判断材料を以てしても」

 

 

「どの角度から見るかによって大きく考えの結果が変わっちまう。」

 

 

「まあ、だからこそ人によって」

 

 

「様々な考え方が出てくるんだけどな。」

 

 

「それらの考えが間違ってるとは言わねーが、」

 

 

「それらの全部が真実だとは限らねー。」

 

 

「むしろ、間違ってねえからこそ厄介なのかもしれねーな…。」

 

                    ・

                    ・

                    ・

 

【生存者】

超高校級の探偵          深見優(フカミユウ)

超高校級のレーサー        速瀬マハ(ハヤセマハ)

超高校級のバスケットボール選手  雷文竜(ライモンリュウ)

超高校級の外交官         金谷秀征(カナヤシュウセイ)

超高校級のバドミントン選手    羽月翔子(ハツキショウコ)

超高校級の医者          津田真理奈(ツダマリナ)

超高校級の歴史学者        伊達小十郎(ダテコジュウロウ)

超高校級の大工          鷹岡筋次(タカオカキンジ)

超高校級の数学者         言村香奈(コトムラカナ)

超高校級の作曲家         美作奏(ミマサカカナデ)

超高校級の???         鏑木麗(カブラギレイ)

超高校級のハッカー        クレイグ・ホワイトバーチ

超高校級の弓道家         靏蒔由衣(ツルマキユイ)

超高校級の地主          大地真英(ダイチマサヒデ)

超高校級のバイオリニスト     木田結弦(キダユヅル)

 

残り15人




今回はここまで!前作の時にノンストップ議論のところで誰が喋ってるのか分かりにくくなってるかも、と思ったので、今回は苗字だけ片仮名で入れてみましたが、どうでしたでしょうか?本編に関してですが、深見君大ピンチな感じです…!深見君はどうやってこの局面を乗り切っていくのでしょうか?そして、今回の犯人は一体誰なのでしょうか…?

それでは今回の撮影裏話です!今回は津田真理奈さんです!
津田さんはこれまでの描写通り、幼い頃に海外へ渡り、若くして医者となり多くの命を救ってきた天才医師です。制度上身分は研修医のままのようですが…。深見君は作中で彼女が希望ヶ峰学園への入学を決めたきっかけだと言っていましたが、実は津田さんの方も超高校級の探偵がスカウトされたと知ってそれまで日本の普通の高校に通うつもりで射たのを希望ヶ峰学園への進学を決めました。どうやら医者になろうと思った理由も深見君にあるようですが、その辺りの話は本編でできたら良いなと思います。
名前に関しては、才女というイメージから津田梅子の「津田」、医師としての観点から真理を掴む、という意味で「真理奈」という名前になりました。という感じです。

次回は今回の事件の真相が分かっていきますので、どうぞお楽しみに!!


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CHAPTER1 学級裁判 後半

【裁判再開】

 

ボクに対してみんなの目線が注がれる。確かに、これまで挙がってきた証拠を鑑みると、泊クンは殺人を計画しており、それを実行したが返り討ちに遭って殺されてしまい、その泊クンが殺そうとした相手は泊クンの独り言にも挙がっていて、泊クンの手帳のリストにわざわざ丸印をつけてまで名前が残されていたボクだと思われるので犯人はボクだと考えるのは筋が通っている。だけどもちろんボクは犯人じゃない。でも感情論で反論したところでみんなが納得することはない。であれば、ボクもきちんと証拠を提示して…

 

「何を言っているんだい、金谷クン。優クンが殺人犯だって?冗談言うのも大概にしてくれたまえよ。」

「真理ちゃん?」

「そちらこそ冗談を言うのはやめろ。この結論に至るまでの推理を導いたのは他ならぬ深見本人だろう。」

「そうは言ってもそれは状況証拠っすからねえ。確実に犯人が深見サンだとは言えないはずっすよ?」

「でも明らかに泊君は深見君を狙ってたし…。」

「一番怪しいのは深見ちんだよなぁ?」

「某は深見殿が人殺しをするような人には思えないでござるよ。」

「普段がどうかは知りませんが、こんな特殊な状況では何とも判断がつきませんわ。」

「それなら疑うのも違えだろ?」

「でもー、犯人だって言われて一番しっくりくるのは深見君だよー?」

「まだ証拠が全て出揃ったわけじゃないだろう。」

「…深見が泊に借りがあったのも事実。」

「でもそりゃアタシも一緒だからなー。」

「でも他に犯人らしい人もいないよぉ?」

「優の字!潔く名乗り出たらどうなんでい!!」

「やってもないのに名乗り出ようもないよ。大丈夫、ボクが犯人じゃないって証明してみせるよ。」

 

でもみんなの意見が真っ二つになっちゃってる…。こんな状況でどうやって解決していけば良いんだ…!

 

「お?真っ二つ?真っ二つって言ったか?」

「いや、思っただけだけど。」

「心の中では言ったんだな?それならコイツの出番だぜ!!裁判場変形!!さあ、オマエラの意見を存分にぶつけ合い、相手の意見をたたきのめせ!!!」

 

その宣言と共にモノトラは目の前の装置に巨大なカギを差し込む。そしてモノトラがカギを捻るとボク達が立っている証言台が浮き上がってゆく。その動きに困惑する者、怯える者、とりあえず落ちないようにしがみつく者様々だった。そして、移動が終わるとちょうどついさっき対立した意見を持つみんなが向かい合うような形に並べ変わっていた。

 

 

 

議論スクラム

 

 

〈深見優は泊尚輝を殺した犯人か?〉

 

犯人だ    犯人じゃない

金谷     深見

羽月     速瀬

鷹岡     雷文

言村     津田

鏑木     伊達

クレイグ   美作

大地     靏蒔

木田

 

 

カナヤ「【証拠】を元にここに繋がる推理をしたのは深見本人だろう。」

「美作さん!」

ミマサカ「あくまで状況【証拠】に過ぎないっす!」

 

 

ハツキ「でも、泊君の【ターゲット】は深見君だったんでしょ?」

「雷文クン!」

ライモン「泊の【ターゲット】だからって犯人だとは限らねえぞ!!」

 

 

キダ「靏蒔さんの【目撃証言】もありますのよ?」

「靏蒔さん!」

ツルマキ「あくまで泊が独り言を言っていた事への【目撃証言】であって犯行の証拠ではない!」

 

 

クレイグ「泊ちんの【リスト】にも名前があったんだぜ?」

「速瀬さん!」

ハヤセ「【リスト】に名前があるのはアタシも一緒だ!」

 

 

カブラギ「…だが他に【犯人候補】もいないだろう。」

「伊達クン!」

ダテ「そもそも他の人が【犯人候補】から外れたわけではないでござるよ。」

 

 

ダイチ「それでも【殺されかけた】っていうのは明らかな動機だよねぇ。」

「真理ちゃん!」

ツダ「そもそも優クンが昨晩【殺されかけた】と決まったわけではないだろう?」

 

 

タカオカ「潔く【白状】したらどうなんでい!!」

「ボクが!」

フカミ「やってないものを【白状】なんてできないよ!!」

 

 

 

CROUCH BIND

 

SET!

 

 

「これがボク達の答えだ!!」

 

 

 

「確かにボクが怪しいのは事実だけど、確実にボクが犯人だと決まったわけじゃない。もう少し議論を続けさせてもらってもいいかな?」

「…構わんが。業腹だがな。」

「うーん、っつうかよーく考えたらあのキッチンの血って泊ちんのものじゃなかったら犯人のって考えるのが普通だよな?」

「確かに…。」

「つうことはだ。犯人は泊ちんからの一撃をどこかしらに食らったってことだよな?」

「そういうことでござるな。」

「だとしたら深見ちんが犯人ってのはありえねえ気がしてきたんだけど。」

「どういうことだ?」

「そりゃあ深見ちんのアレよ。」

 

クレイグクンの言いたいアレってもしかして…、

 

 

 

証拠提出

【深見の護身術)

 

「これで証明するね!」

 

 

 

「アレってもしかしてボクの護身術のこと?」

「それよそれ。」

「護身術ってどういうことー?」

「えっとね、ボクは探偵でしょ?だから危ない目に遭うこともあるし、最低限自分の身を守れるよう護身術を身につけてるんだ。」

「とは言っても不意打ちとかでは厳しいと思いますわ。」

「いんや、そんなことはないってのは俺ちんが証明するぜ。なんたって昨日と今日、2回ふざけて不意打ちしたら2回ともひでえ目に遭ったからな。」

「なんでそんなことをしているんだ…。」

「スキンシップのつもりだったんだよぉ。で、深見ちんは動機の事もあって昨日から気を張ってるって言ってた。そんで気を張ってるときはどんな攻撃も返せるって話だ。」

「さすがに超高校級の格闘家とかだと無理だけどね…。」

「でも泊ちんはそんな強いわけねえだろ?そんだけ強えんなら最初っから雷文ちんを狙うわけで、それが無理だから深見ちんをターゲットにしようとしていたわけで。」

「つまり、泊が包丁を持って襲いかかったところで深見が出血を伴うようなケガを負うわけがない、と?」

「そゆこと。俺ちん達の他のメンバーならともかく深見ちんはそれこそ包丁を持った犯罪者なんて相手し慣れてるわけで、いきなりの包丁にビビって動けなくなる、なんてのも考えにくいだろ?」

「それはそうかも…。」

「…少なくともキッチンが血塗れになるようなケガを負うとは考えにくいな。」

「ってことは犯人の議論も振り出し、ってことですの?」

「その可能性が高いんじゃねえの?ま、ゼロじゃあねえけど。」

「ボクは少なくとも別の犯人がいるって考えた方がいいと思うけど、みんなはどうだい?」

「うーん、そう聞いちまうとそんな気がしてくんな…。優の字、わりい…。」

「いいよ。元々ここはそういう場だし。」

 

そう返すボクにクレイグクンはバチンと目配せをしてくる。もしかしてボクが犯人だっていう可能性は低いと思っていながらさっきはボクを疑う側についたのか…?

 

「…全く、行動が読めないんだから。」

 

でもクレイグクンがさっき言った通り、キッチンの血が犯人の血だと仮定するとかなり犯人の動きが絞れてくるような気がする…。ならばその前提の元で犯人の行動を推理していくのが吉かも知れない。どうやら美作さんも同じ考えに至ったらしく、次の議論の口火を切った。

 

 

 

議論開始

 

ミマサカ「じゃあさっきクレイグサンの言った通り、」

 

 

ミマサカ「キッチンの血が犯人のものだとすると、」

 

 

ミマサカ「犯人はキッチンでどんな行動を取ったんすかね?」

 

 

ダイチ「とりあえず、【泊君に襲われた】のは確定だよねぇ?」

 

 

ハツキ「そのせいで傷を負っちゃったんだもんね…」

 

 

カブラギ「…あの状態を見るに」

 

 

カブラギ「犯人はキッチン内を【逃げ回った】はずだ」

 

 

ハヤセ「その後は…」

 

 

ハヤセ「尚輝から【包丁を奪って】」

 

 

ハヤセ「代わりにシュレック?の串で」

 

 

ハヤセ「アイツを【刺し殺した】んだよな!」

 

 

あれ、確か泊クンが攻撃を続けられなかったのはそのせいだっけ…?

 

【折れた包丁)→【包丁を奪って】

 

「それは違うよ!」

 

 

 

「えっと、まず、シュレックじゃなくてシュラスコ、ね?シュレックは緑の怪物だよ…。」

「それだそれ!」

「その包丁って確か泊がただの被害者じゃない、って話の根拠の1つだったよな?」

「うん、その通りだよ。泊クンは犯人を包丁で攻撃していたはずだ。だけど、その包丁を奪われたんじゃなくて折ってしまったことで攻撃を続行できなくなってしまったんだ。」

「なぜそんなことに?」

「犯人のことを攻撃しながら追いかけたからじゃないかな?」

 

恐らく泊クンが犯人を追いかけていたという証拠もある。

 

 

 

証拠提出

【傷だらけのキッチン)

 

「これで証明するね!」

 

 

 

「キッチンが傷だらけだったでしょ?泊クンは包丁を振り回している内にキッチンのそこら中に傷を付けてしまったんだと思うよ。」

「で、その最中に包丁を折っちまった、と。」

「うん。」

「どこで折ったんだろー?」

「その場所も推測できるよ。」

 

泊クンが包丁を折ってしまったと思われる場所。それを示す証拠は…

 

 

 

証拠提出

【ドアの傷)

 

「これで証明するね!」

 

 

 

「食堂に向かうドアだよ。」

「あー確かあそこにひときわ深い傷があったっすね!」

「そう。そこで包丁を折ってしまったんだ。」

「その傷が前々からあったものだって可能性はないでござるか?」

「恐らく今回の事件の過程で付いたものだと思うよ。」

 

それはドアの近くに落ちていたものが証明してくれる。

 

 

 

閃きアナグラム

 

Q.キッチンのドアの傷が昨夜の事件で付いたことを証明するものは?

 

〔き〕〔ん〕〔ぞ〕〔く〕〔へ〕〔ん〕

 

→金属片

 

「これだ!!」

 

 

 

「だってこの傷の付いたドアの足元に金属片が落ちていたからね。」

「金属片でござるか?」

「うん。さすがに普段のキッチンでドアの足元に金属片が落ちてることはないでしょ?」

「それはそうでござるな…。」

「そしてその金属片の正体はここまでの推理も鑑みると包丁だって考えられる。つまり、泊クンは犯人を攻撃する内にこのドアに包丁をぶつけてしまい折ってしまったんじゃないかってことも推測できるんだよ。」

「なるほど…。納得したでござる!」

「つまり、状況を整理すると、泊サンは包丁で今回の事件の犯人を襲い、最初に深い傷を負わせることに成功した。けれどそれだけじゃ犯人は死なず、逃げる犯人を包丁を振り回しながら追いかける内に食堂側のドアに包丁をぶつけてしまい折ってしまった。その隙を突いて犯人はシュラスコの串を使って泊サンを殺した。ってことでいいっすか?」

「そういうことになるかな。」

「でもそれじゃなんで犯人が土産物屋までわざわざキーホルダーを取りに行ったのか判然としないね。深い傷も負っているというのに。」

「そこは犯人の推測できる行動と本来その中で残った痕跡から推理していくしかないね。」

 

 

 

議論開始

 

ツダ「犯人は泊クンを殺した後、」

 

 

ツダ「キーホルダーを取りに【土産物屋】へ行ったハズだよね?」

 

 

カブラギ「…その後【キッチンへと戻ってきている】ハズだ」

 

 

ハツキ「でも犯人は大怪我してるはずで、」

 

 

ハツキ「何でわざわざ遠い土産物屋まで行ったのか、」

 

 

ハツキ「【理由が分からない】んだよね?」

 

 

タカオカ「どうにか推測できねえのかい?」

 

 

カナヤ「できるなら最初からやっているだろう」

 

 

カナヤ「犯人の【痕跡もなし】に」

 

 

カナヤ「推測なんぞできるわけもない」

 

 

キダ「それでもどうにかするしかありませんわよ!」

 

 

そう言えばキーホルダーを取りに行っただけならあの証拠に説明が付かないな…。

 

【血の足跡)→【痕跡もなし】

 

「それは違うよ!」

 

 

 

「犯人の行動の足跡は残っているよ。文字通り、犯人の血でできた足跡としてね。」

「足跡ごときで何が分かる?」

「説明が付かないんだよ。」

「説明?」

「もし犯人がキーホルダーを取りに行くためだけに土産物屋に行ったなら足跡の状態に説明が付かないんだ。」

「置いてかねえでくれよ。その足跡ってのはどういう状態だったんでい?」

 

確かにまずはその説明からだね。現場に残されていた足跡の状態は…

 

 

 

選択肢セレクト

 

1.歩幅が広い

 

2.全部つま先立ち

 

3.帰りの分がない

 

→3.

 

「これだ!」

 

 

 

「その足跡っていうのはね、帰りの分がなかったんだ。」

「…そういうことか。」

「なんで鏑木サン一人で勝手に納得してるんすか!?」

「…キーホルダーはカモフラージュ、ということだろう?」

「うん。その通り。犯人はキーホルダーを持ち出して目立つように現場に残すことで土産物屋に行った真の目的を隠したんだ。」

「なぜそんなことが足跡から分かる?」

「…犯人はかなり出血していたはずだ。そしてそれほどのケガならすぐに血が止まることはないし傷が塞がることもない。それならばただキーホルダーを取りに行っただけならキッチンへ戻る方向の足跡がないのはあり得ないだろう。」

「そういうことか…!」

「他のみんなにも分かりやすく説明すると、犯人はすぐに血が止まらないような大怪我だった。ならばキッチンへ戻る方向の足跡が残らないというのは本来あり得ないハズなんだ。犯人はその足跡を消すような何らかの目的で土産物屋に行き、その目的を隠すためにキーホルダーを持ち出したんだよ。」

「つまり犯人には土産物屋に行った真の目的があったってことか!!」

「それじゃー、次はその真の目的だねー。」

 

 

 

議論開始

 

コトムラ「犯人が土産物屋に行った真の目的って何だろうねー?」

 

 

ハヤセ「『食いもん』じゃねえか?」

 

 

ハヤセ「うまいもん食えば傷も治るだろ?」

 

 

キダ「そんなすぐには治らないと思いますわ…」

 

 

ツルマキ「『傷口を押さえる布』とかはどうだろう?」

 

 

ツルマキ「応急処置には不可欠だろう」

 

 

ライモン「いや、『レジ袋』だ!!」

 

 

ライモン「傷から出た血をそこにため込んだんだ!!」

 

 

ダイチ「そんなに上手くいくかなぁ…?」

 

 

何日か前の探索と変わったポイントがあったような…

 

【開けられた段ボール)→『傷口を押さえる布』

 

「それに賛成だよ!」

 

 

 

「多分、靏蒔さんの言うとおり、犯人は傷口を押さえるための布を探しに行ったんだよ。」

「やはりか。」

「実はね、何日か前の探索の時とは変わっていたところがバックヤードにあったんだ。」

「変わっていたところ?」

「段ボール箱が開けられていたんだよ。」

「それがどう事件に関係するの?」

「関係してるのはその中身なんだ。」

 

その段ボールの中身は…

 

 

 

選択肢セレクト

 

1.Tシャツ

 

2.スノードーム

 

3.お菓子

 

→1.

 

「これだ!」

 

 

 

「Tシャツが入っていたんだよ。」

「Tシャツ…。厚手の布でござるな。」

「それに、犯人がその箱の周りに長く留まっていたって証拠もあるんだ。」

 

犯人が段ボール箱の周りに長く留まっていた証拠は…

 

 

 

証拠提出

【血溜まり)

 

「これで証明するね!」

 

 

 

「箱の周りに血溜まりができていたんだ。」

「補足をしておくと、キッチンから続いていた血の足跡と血痕はこの血溜まりに続いていたからこの血溜まりは十中八九犯人の血液によってできたものだと考えられるね。」

「犯人はTシャツを取り出すために箱の周りに留まっていたからこそこんな痕跡が…」

 

 

「その推理はクラッシュだ!!」

 

 

「ちっと確認してきてえんだけどさ、」

「どうしたの?」

「ホントに犯人はTシャツを使ったのか?だって土産物屋にはもっと使いやすい手ぬぐいとか置いてあっただろ?なんでわざわざTシャツを使う必要があるんだよ?」

「それならそこの疑問はきっちり解消していこうか。」

 

 

 

反論ショーダウン

 

「土産物屋には」

 

 

「手ぬぐいとかもっと使いやすいモンも」

 

 

「置いてあっただろ?」

 

 

「なんで犯人はわざわざ」

 

 

「バックヤードまで行って」

 

 

「Tシャツを取りに行ったんだ?」

 

 

-発展-

 

「そこは多分それだけ出血量が多かったからじゃないかな?」

 

「手ぬぐいを使うだけじゃ」

 

「血が流れ出すのを止めきれなかったんだよ。」

 

 

「そうは言ってもさ」

 

 

「犯人がTシャツを使ったって」

 

 

「確証もないだろ?」

 

 

「血溜まりだって」

 

 

「箱に寄っかかっただけかもしんねえし…」

 

 

「犯人が箱からTシャツを取り出したっつう」

 

 

「【痕跡もない】ワケだしよ?」

 

 

もしかしたら箱の近くに落ちていたアレって…!

 

【ビニール袋)→【痕跡もない】

 

「その言葉、斬らせてもらうよ!」

 

 

「それならば段ボール箱の近くに落ちていたこのビニール袋がそのTシャツを取り出したっていう証拠になるよ。」

「ただのゴミじゃねえのか?」

「最初はボクもそう思っていたんだけどね。でもそれは違かったんだ。」

「その袋の中には何が入ってたんすか?」

 

この袋の中に入っていたもの、それは…!

 

 

 

選択肢セレクト

 

1.キーホルダー

 

2.Tシャツ

 

3.モノトラ

 

→2.

 

「これだ!」

 

 

 

「そのまんま、Tシャツだよ。アパレルショップなんかに届く服は基本的に袋に入った状態でお店に届くからね。それにハンガーに掛けておかないのであれば袋に入ったまま陳列することも少なくない。だからこのお土産のTシャツもビニール袋に入っていたと考えられるんだ。」

「…箱の近くに落ちていたのであればそう考えるのが妥当か。」

「さすれば、犯人は傷口をTシャツで押さえていた、というのも間違いなさそうでござるな。」

「あれ、ってことはさ、ここまでの情報を総合すると犯人はひどいケガをしてるってことだよね?それなら男女それぞれで服を脱いで確認すれば犯人がすぐ分かるんじゃないの!?」

「それは名案だ。ならば男子は一度裁判上を出てもらって…」

「そうは問屋が卸さねーんだぜ!!」

「何だよ、邪魔すんなよ!」

「そんなの学級裁判の趣旨に反するじゃねーかよ!そんなんで犯人が分かっても誰も面白がってくんねーんだよ!」

「そんなのどうだって良いじゃん!!」

「よくねーの!!視聴率に…っとこれ以上はマジいな。とりあえず、誰がその傷を負った犯人なのかっつーのは議論と推理で導き出してくれ!」

「ちぇーっ、良い案だと思ったんだけどなぁ。」

「それならそれで仕方ないだろ。犯人が誰なのか推理するしかあるまい。」

 

犯人はかなりの出血を伴うケガをしている。その犯人は一体誰なのか…。まずはその候補者を絞っていかないと…!

 

 

 

議論開始

 

ハツキ「犯人はひどいケガをしてるんだよね」

 

 

キダ「だとしたらわたくし達の中にも」

 

 

キダ「【ケガ人がいる】ハズですわね」

 

 

ツルマキ「そうは言っても誰がそのケガ人なんだ?」

 

 

カナヤ「【見た目で分からない】から議論しているんだろう」

 

 

タカオカ「オイラはケガなんかしてねえぞ?」

 

 

ハヤセ「アタシもだ!!」

 

 

ツダ「言うだけなら誰にだってできるよ」

 

 

カブラギ「…そうは言っても【情報がない】」

 

 

カブラギ「…誰がケガ人かなんて本当に分かるのか?」

 

 

ダイチ「僕も分からない気がしてきたよぉ…」

 

 

そう言えば捜査中に気になることがあるって言ってた人がいたような…

 

【ケガ人)→【情報がない】

 

「それは違うよ!」

 

 

 

「そう言えば真理ちゃん、捜査中に気になることがあるって言ってなかった?」

「気になること…。気になること…。もしかしてアレのことかい?」

「それで合ってるんじゃないかな。」

「実は昨晩の間にかなりケガ人がボク達の中に出ているようなんだ。」

「ケガ人?」

「そうさ。実際ボクも今朝2人を診察したんだ。」

「真理ちゃんが治療した2人の他にも何人かケガした人がいるんだ。」

「そのケガをした人っていうのは誰でござるか?」

「まずボクが腕の軽い筋肉痛、雷文クンが首を寝違え、言村さんと美作さんが昨日の枕投げ大会でそれぞれ足首と腰をケガ、そしてクレイグクンがパソコンを長時間弄っている間の腰痛かな。」

「つまり、この中に犯人がいるってぇワケだな?」

「だけどー、深見君は可能性が低い、って話にさっきなったよねー?」

「そういやそうだな。」

「ってことは4人、か。」

 

…いや、それは違う。ここまで絞られてくるともう誰が犯人かというのはほぼ分かっている。ボクが犯人の可能性があると睨んでいるのは2人だ。

 

「まず真理ちゃんに一応確認しておきたいんだけど、診察ってどの程度のものをしたの?」

「まあ、朝食まで時間もないから服の上からの触診程度さ。本人達には朝食後に治療してあげると言ってあったからね。」

「そっか、ありがとう。」

 

だとすると犯人が誰かはまだ確定できない、か。じゃあまず2人を削るところから始めよう。

 

「実はね、その4人の中から2人は候補から外すことができるんだ。」

「そうなんですの?」

 

まず、ケガをしている箇所が外に出ていて明らかに犯人ではない人物がいる。それは…

 

 

 

選択肢セレクト

 

1.雷文

 

2.言村

 

3.美作

 

4.クレイグ

 

→1.

 

「これだ!」

 

 

 

「まず雷文クンは犯人候補から外せるんだ。」

「自分で言うのもなんだが何でだ?」

「ケガをしている場所が表に出ている上に首だからそもそも包丁なんて当たったら致命傷だからね。」

「そもそも泊殿は雷文殿を避けて深見殿を狙うつもりだったわけでござるし、犯人とは考えにくいでござるな。」

「そしてもう1人。」

 

その人のケガの箇所はあそこまで出血するとは考えにくい上に、普通に考えたら包丁では狙わない場所だ。

 

 

 

選択肢セレクト

 

1.クレイグ

 

2.美作

 

3.言村

 

→3.

 

「これだ!」

 

 

 

「犯人候補から外せるもう1人は言村さんだよ。」

「香奈ー?」

「そう。言村さんのケガをしている場所は足首。」

「包丁ではちょっと狙いにくいよねぇ。」

「その通りだよ。だから言村さんは犯人じゃないと考えられる。」

「つうことは、残る犯人候補はミマの字とクレの字ってなワケかい。」

「なるほど、だからボクの診察について聞いたわけだね。もしきちんと治療までしていたらどちらが犯人かすぐ分かったハズだからね。でもボクは服の上からの触診しかしていない。残念だよ。」

 

……!そうか…。そういうことだったのか…。あそこに残されたアレは…。そう言えばあの情報も総合すると…。

 

「あれ、深見サン、どうしたんすか?ブツブツ言い出して?」

 

…だとすると犯人は…。

 

「…2択じゃない…。もう犯人は分かった…。」

「え、マジか!!?」

「それって誰でござるか!!?」

 

そう、この事件の犯人は…!!

 

 

 

 

 

指名しろ

【ミマサカカナデ】

 

「キミしかいない!」

 

 

 

 

 

「…え?自分っすか?ちょっとやだなー。深見サン冗談キツいっすよ!」

「いや、現場に残されていたあの証拠、そして美作さん自身が調べてくれたものがキミを犯人だって教えてくれたんだ!!」

 

 

 

議論開始

 

ミマサカ「ちょっとやだなー」

 

 

ミマサカ「自分が犯人なワケないじゃないっすかー」

 

 

ライモン「そうだぜ?」

 

 

ライモン「【クレイグの可能性】だって残ってるんじゃねえのか?」

 

 

ミマサカ「そ・れ・に!」

 

 

ミマサカ「見つけた証拠は【使い切っちゃった】っすよ?」

 

 

ミマサカ「他になんにも残されてないっすよ!」

 

 

ダテ「うーん、本当に美作殿が犯人なんでござるか…?」

 

 

コトムラ「香奈もそうは思えないよー」

 

 

キッチンに残されたアレをボク達はまだ議論に挙げていない…!

 

【淹れかけの紅茶)→【使い切っちゃった】

 

「それは違うよ!」

 

 

 

「まだこの証拠を使ってないハズだよ。」

「これは確かキッチンに残されていたもの、だったよな?」

「うん。こんな風に紅茶を淹れようとしたまま放置するって言うのは考えにくいでしょ?何かアクシデントがあって紅茶を飲めるような状況になくなってしまったと考えるのは自然なはずだよ。」

「確かにそれはそうだと思うっすけど、それがなんで自分が犯人だってことに繋がるんすか…?」

「それはこの証拠と照らし合わせれば分かるんだ。」

 

紅茶が美作さんを犯人だと裏付ける証拠となる根拠は…

 

 

 

証拠提出

【ホットドリンクの派閥)

 

「これで証明するね!」

 

 

 

「美作さんが調べてくれたこれだよ。」

「コイツはなんだ?」

「みんながどんなホットドリンクを好むのか、という事を調べた結果だよ。みんな捜査中に美作さんに聞かれなかった?」

「そう言えば聞かれたような気がしますわね。」

「うちもー。」

「某もでござる。」

「そしてもちろん、この中には美作さんの名前もある。じゃあ美作さんは何が好きなんだろうね?」

 

美作さんが好きなホットドリンク、それは…。

 

 

 

選択肢セレクト

 

1.紅茶

 

2.コーヒー

 

3.ココア

 

4.緑茶

 

→1.

 

「これだ!」

 

 

 

「美作さんは紅茶派なんだ。」

「クレイグって可能性はないのか?」

「クレイグクンはコーヒー派だよ。深夜ではあるけど、わざわざいきなりルーティーンを変える必要もないし、この紅茶を準備していたのは十中八九美作さんだ。」

「…まいったっすねー…。確かに自分は紅茶好きっすけど、そのせいで犯人扱いされるんじゃたまったもんじゃないっすよ…。それだけで犯人にされるくらいなら、皆サンを守るためにも、精一杯反論させてもらうっすよ!!!」

 

 

 

パニックトークアクション

 

「冗談キツいっすよ!」

 

 

「自分は犯人じゃないっす!」

 

 

「それだけで犯人扱いっすか!?」

 

 

「それは間違いっす!!」

 

 

「紅茶は好きっすけど…」

 

 

「たまったもんじゃないっすよ…」

 

 

「証拠不十分っす!!」

 

 

「皆サンのためにも!!!」

 

 

『クレイグサンにだって犯人の可能性が残されているハズっすよ!!!』

 

《ドア》《の》《傷の》《位置》

 

「これで終わりだよ!!」

 

 

 

「…どういう、意味っすか?」

「議論の中でも話題に上がったキッチンのドアの傷。なんで付いたのかって話を覚えてる?」

「…包丁で攻撃したときに犯人に避けられてぶつかった、その時に包丁は折れてしまった、って話でしたよね?」

「そう。そしてその傷の位置はボクの腰よりも少し低い位置にあった。」

「それが…?」

「クレイグクンの身長は187cm、ボクよりも17cmも大きい。それに従ってボクよりも腰の位置が高いんだ。じゃあここで質問、泊クンは何で包丁が折れる程の力で攻撃したんだと思う?」

「トドメを刺すためじゃないのぉ?」

「その通り。でも泊クンは最初は犯人を一撃で殺そうとしたはずだ。だとしたら狙う場所は?」

「オレだったら咄嗟に同じとこを狙うと思うぜ。」

「2人のケガしている場所は?」

「腰、でしょう?」

「扉の傷はクレイグクンより腰の位置が低いボクの腰よりも低い場所にあったんだけど、だとすると?」

「…クレイグを殺すために刺す位置としては不適格。」

「だよね。だとしたら犯人の可能性が高いのは?」

「奏だけ、ってことかよ…。」

「…そういうこと。」

 

苦い顔をするみんなから視線を美作さんに移す。当の美作さんは反論を諦めたのか、目を閉じて天を仰いでいた。

 

「じゃあ、最後にこの事件の全てをまとめるから、それに納得したら罪を認めてくれる?」

 

                   ・

                   ・

                   ・

 

【生存者】

超高校級の探偵          深見優(フカミユウ)

超高校級のレーサー        速瀬マハ(ハヤセマハ)

超高校級のバスケットボール選手  雷文竜(ライモンリュウ)

超高校級の外交官         金谷秀征(カナヤシュウセイ)

超高校級のバドミントン選手    羽月翔子(ハツキショウコ)

超高校級の医者          津田真理奈(ツダマリナ)

超高校級の歴史学者        伊達小十郎(ダテコジュウロウ)

超高校級の大工          鷹岡筋次(タカオカキンジ)

超高校級の数学者         言村香奈(コトムラカナ)

超高校級の作曲家         美作奏(ミマサカカナデ)

超高校級の???         鏑木麗(カブラギレイ)

超高校級のハッカー        クレイグ・ホワイトバーチ

超高校級の弓道家         靏蒔由衣(ツルマキユイ)

超高校級の地主          大地真英(ダイチマサヒデ)

超高校級のバイオリニスト     木田結弦(キダユヅル)

 

残り15人




という訳で、犯人が発覚致しました!!皆さんの予想は当たっていたでしょうか?次回はおしおき編となって行くわけですが、死を目の前にして何を語るのでしょうか…?それは次回をお楽しみに!!

それでは今回の設定裏話です!今回は伊達小十郎君編です!!
伊達君は某コンビのツッコミ担当よろしく、仙台藩初代藩主の血を引いています。それ故にその人物に興味を抱くことになり、歴史学の道へと突き進んで行くことになります。ちなみに腰に差している竹光は幼い頃に時代劇にハマってからずっと持ち歩いている相棒のようなもので、本人曰く、死ぬまで持っているだろう、とのことです。
名前の由来に関してですが、苗字はもう設定の通り、そのまま現代まで苗字を引き継いできています。名前は伊達政宗の右腕、片倉景綱の通称から「小十郎」です。見た目や話し方とは裏腹に結構常識人な彼ですが、一体どんな活躍を見せてくれるのでしょうか?
今回はここまでです!それではまた次回お会いしましょう!!


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CHAPTER1 学級裁判 閉廷

ここまでの推理の流れをまとめて、こんな学級裁判なんてボクがここで終わらせる!!

 

 

 

クライマックス再現

 

ACT1

「今回の事件のきっかけは昨日の朝のこと。モノトラがボク達に対してコロシアイの動機を与えたことだった。」

 

「どういう理由でかは今となっては分からないけど、泊クンは動機となった情報を手に入れるために殺人計画を立てることになったんだ。」

 

 

ACT2

「そこで泊クンは殺人のターゲットを絞ることになった。」

 

「泊クンは手帳に自分が貸しを作っている人物をリストアップしているみたいだったから、その中から選ぶことになった。」

 

「その結果としてボクをターゲットにすることにしたみたいだけどね。」

 

 

ACT3

「泊クンは殺人計画を実行するために昨夜みんなが寝静まった後に凶器となる包丁を調達しにキッチンに侵入した。」

 

「そこで包丁を持っていたときに泊クンにとって想定外の出来事が起こってしまった。ある人物が紅茶を飲むためにキッチンにやってきてしまったんだ。」

 

「そして泊クンはその人物と鉢合わせてしまう結果になったんだ。」

 

「その人物こそが今回の事件のクロとなってしまったんだ。」

 

 

ACT4

「多分キッチンにやってきた段階では今回のクロは泊クンが殺人計画を立てているなんて思ってもいなかったはずだよ。」

 

「だからこそクロは紅茶を淹れる準備を進めていたわけだからね。」

 

「だけど泊クンはそうは思わなかった。クロに殺人を企んでいるところをバレたと思った泊クンは急遽その場で殺人計画のターゲットをクロに変更したんだ。」

 

「そして実際に泊クンは後ろからクロを襲撃し、腰に傷を負わせることに成功した。」

 

「だけどその傷は致命傷には至らず、クロはキッチンを逃げ回り、泊クンは包丁を振り回してそれを追いかけるという構図が生まれてしまったんだ。」

 

「その中で泊クンは食堂へ繋がるドアに追い込んだクロにトドメを刺そうと思い切り攻撃した。結果としてその攻撃は外れ、包丁はドアにぶつかって折れてしまったんだ。まあ、その時に付いた傷が犯人を証明する要素にはなったんだけどね。」

 

「そして包丁が折れたタイミングでクロは逃げ出せばよかったんだろうけど、そこまで頭の回らなかったクロはキッチンの中にあったシュラスコの串を掴み、思わず泊クンの喉を突いて殺害してしまったんだ。」

 

 

ACT5

「咄嗟の犯行であった分、クロはそのまま自分の部屋に逃げ帰ろうとしたけど、その時に自分の血で足跡が残っていることに気がついた。」

 

「そうでなくてもただでさえ出血が多かったからクロはその止血に使えそうな布を探すことにしたんだ。」

 

「そこでクロが思いついたのは土産物屋のバックヤードに置いてあったTシャツの入った段ボールだった。」

 

「だからクロはどうにかその段ボールを開けて取り出したTシャツを傷口の付近に縛りつけて止血をしたんだ。」

 

 

ACT6

「現場を離れて少し冷静になったクロは学級裁判のことを思い出したのか、現場をそのままにしてしまったことに気付いた。更に、今自分がいる土産物屋にクロたる自分が来た目的に気付かれればクロの正体に気付かれるとも踏んだ。」

 

「そこでクロは今自分がいる土産物屋と現場となったキッチン、両方の偽装工作ができる案を思いついたんだ。」

 

「計画に従ってクロは土産物屋の刀の形のキーホルダーを持ってキッチンに戻ったんだ。」

 

「そしてクロは泊クンの喉にシュラスコの串を刺し直し、本当の凶器であるシュラスコの串についた血液を泊クンのスーツの裾で拭き取った上で元の場所に戻したんだ。」

 

 

「そして、現場やその他の場所に残った証拠を踏まえると、泊クンの攻撃を受けつつも返り討ちにし、自分の犯行だけでなく止血の証拠まで偽装しようとしたクロは美作奏さん、キミしかいないんだ!!!」

 

 

 

「…これが今回の事件の全てだよ。」

「……。」

「…。」

 

沈黙が流れる。でもそれは当然のことかもしれない。こうして犯人が分かるまで、ボク達みんなの心のどこかにこの仲間の中には人殺しをするような人物はいないっていう気持ちがあったはずだ。でもこうして証拠が揃ってしまうとその希望も打ち砕かれたも同然だ。そして当の美作さんも黙りこんだまま一言も発さない。

 

「…どうなんでござるか、美作殿。ここまでの深見殿の推理、合っているんでござるか?美作殿が、泊殿を殺したクロなんでござるか…?」

 

伊達クンが辛さをにじませた顔で美作さんに問う。美作さんが観念したように言葉を発しようと息を吸ったその瞬間、奴が割り込んできた。

 

「まー、犯人が分かったのは良いけどよー、この状態じゃまだ学級裁判は終わってねーんだぜ?」

「何だよ!邪魔すんなよ!!」

「だってよー、オマエラまだ投票してねーだろ?犯人確定みてーな雰囲気だけどよー、ちゃんと投票してその結果が出てからやっと裁判終了だぜ?最初にも言っただろ?」

 

そう言えば投票をするような事を言っていた気がする…。それならば仕方ない。話を聞くのは投票が終わってからでもできる。焦るべきじゃない。

 

「じゃあ、まず投票しちゃおうか。」

 

すると証言台に死んだ泊クンを含めた16人全員に対応したボタンが出てきた。ボク達はそれぞれが犯人の名前に対応したボタンを押した。

 

 

 

投票結果→ミマサカカナデ

 

 

 

【学級裁判閉廷】

 

「さあ、投票したぞ。」

「発表してよ!!」

「まあまあそう焦んなって!それじゃあ発表するぜ!!今回の投票結果は!!なんと!!まさかの!!大正かーい!!!!」

 

分かっていたことだった。彼女が犯人だってことは。でもどこかそれでもまだ彼女を信じたいと思っている自分が心のどこかにいた。でもそれももうできない。モノトラの非情な宣告は彼女が紛れもない泊クン殺しの犯人であることを証明していた。

 

「…やっぱり、美作さんが犯人だったんだね…。」

「…いやっすねぇ。深見サンがその真実を明らかにしてみせたんじゃないっすか。忘れちゃったんすか?」

「…そんなわけはないけど…。」

「それならばモノトラの言うとおり、皆サンは大正解、泊サンを殺したのは自分っす。」

「それはやっぱり、泊クンに殺されかけたから?」

「その通りの部分とその通りじゃない部分があるっすね。」

「…どういう、意味でござるか?」

「まず、殺人をした直接の理由はこれまでの推理の通り、自分がたまたま深夜に紅茶を飲むためにキッチンに入ったらそこで泊サンに出くわし、そこで殺されかけたからっす。」

「それじゃあ、その通りじゃない部分って何…?」

「自分がわざわざ偽装工作をしたり理由っす。」

「…ケガの応急手当の痕跡をごまかすためではなかったのか?」

「それもそうなんすけど、最悪、そんなごまかしをしなくてもどうにかなった可能性はあったんすよ。」

「どういうことぉ?」

「結局出血量がひどくて朝まで保たないと思ったんで、モノトラに治療をしてもらったんすよ。」

「つまり、美作さんの部屋に戻る方向への血痕さえ残っていなければ、あんな面倒な細工は必要なかったかも知れない、ってこと?」

「…そういうことっす。」

「じゃあなんでそんなことしたのさ!?」

「…急に怖くなっちゃったんすよ。もしかしたらこのまま現場の状況を放置して部屋に戻ってしまったら自分が何か痕跡を残してしまってバレてしまうかも知れない、って。そしたら自分は死ぬことになるって。」

「人の命を奪っておいて自分は死にたくないと思ったワケか。自分勝手だな。」

「何とでも言ってください。そもそも泊サンを殺したのだってこのままじゃ逃げ切れずに殺される、死にたくない、って思ったからっすから。泊サンを殺す前も、殺す後も、死にたくないって気持ちは変わってないっす。」

「もしその結果キミ以外のボク達全員が死ぬことになったとしても?」

「その時の自分はそう思っていたっす。」

「その時は、ってどういうことだよ?」

「捜査をしている内にどんどん冷静になって、だんだん自分がしでかしたことの大きさに気付いたっす。そして本当に自分が、自分だけが生き残って良いのか、そう思うようになっていったっす。」

「…だからホットドリンクの派閥を調べたりしてくれたってこと?自分の好みまで正直に書いて。」

「その通りっす。何かヒントになればと思って。実際に事件が起きる直前に自分の好みのものを飲もうとしていた自分にしか重要だと思えないことでしたから。」

「なんでそこまでしたんでい?もしかしたらそれがなかった優の字ですら犯人が誰か繋がらなかったかもしれねえんだぜ?そしたらお前さんだけでも生き延びられたかも知れねえ。」

「それはー、うーん、あはは。過ぎらなかったと言ったら嘘になるっす。ここで、この裁判だけどうにかやり過ごすことができれば自分は生き延びられるってそう思ったっす。でも、そうやって生き延びたところで自分は自分を嫌いになる。自分を嫌いなまま生きるなんてそんなの生きてるって言わないじゃないっすか。死にたくないからって理由で人を殺して偽装工作までした自分が言っても説得力ないかもしれないっすけど、そんな生き方をするくらいならみんなを助けて死んだ方がマシっす。昨日は咄嗟にそうしちゃったっすけど、自分はそうありたい。」

 

真剣な目で彼女はボク達に訴えかけてくる。確かにその言葉は彼女の行動と矛盾しているかもしれない。けれどそう語る彼女の瞳には嘘はない。これまで多くの噓吐きを見てきた探偵であるボクであるからこそ、それだけは断言できる。

 

「さてと。」

 

一通り自分の気持ちを話し終えてスッキリしたのか、美作さんは何かスイッチを切り替えるように一言漏す。

 

「みんなを守りたいって言ったっすけど、今の状態じゃそれは厳密には達成されたとは言い切れないっすね。」

「どういう意味…?」

「そりゃあ、1つしかないじゃないっすか。自分は今回の事件の正しいクロで、それを皆サンは言い当てた。それならば正しいクロである自分が向かう先は…」

「…おしおき、か。」

 

美作さんの言葉を先回りして鏑木クンが呟く。

 

「もう、最後まで言わせてください!最期の言葉になるんすから!!でもまあ、こんな締まらない最期も自分らしくてちょっといいかもしれないっすね。じゃ、モノトラサン、始めちゃってください!」

「お?いいのか?」

「美作さん!!!」

「自分は人を殺したんす。その報いくらいきちんと受けさせてください、それがせめてのわがままっす。」

「それじゃあ!!超高校級の作曲家、美作奏のために!!スペシャルなおしおきを!!!用意したぜ!!!!」

「あと最期に1つだけ。こんな人殺しの言葉なんて、って思うかも知れないっすけどついでだと思って聞いてってください。自分はこんなことになっちゃったっすけど、皆サンならきっと、これ以上悲劇を起こさないことができると思うっす。だから、こんなコロシアイで死ぬのなんて、自分で最後にしてください。お願いします。」

 

美作さんはそう言い終えるとボク達に向けて深々と頭を下げた。

 

「そんじゃ始めるぜ!!!おしおきターーイム!!!!」

 

モノトラは床からせり上がってきた赤いボタンをその手に持ったガベルで思い切り押した。すると唐突にそれは始まった。

 

 

 

ミマサカさんがクロにきまりました。

おしおきをかいしします。

 

 

 

頭を下げる美作さん。その上から突然、鋼鉄の鎖が伸びてきて、その先に付いた首輪が美作さんの首を捕らえた。

 

首輪がしっかりと美作さんの細い首を押さえ込むと、そのままもう一度鎖は上へと戻っていき、美作さんの身体もそれに引っ張られるように上へと登っていく。

 

どうにか連れ戻そうとみんなが腕を伸ばしたけれど、その甲斐空しく、みんなの手は空を掴むこととなった。

 

すぐに見えなくなった美作さんの身体がどうなったのか、それを見せるために大きなモニターがボク達の前に登場した。

 

そこにいたのはタキシードを着て様々な楽器を持った大量のモノトラ達と鎖に繋がれたまま譜面台の前に立たされた美作さんの後ろ姿だった。

 

 

超高校級の作曲家・美作奏のおしおき

《アイネ・クライネ・フェアツヴァイフルングムジーク》

 

 

元々首には先ほどから鎖が繋がれているが、更に2本鎖が伸びてきて美作さんの両方の手首を捉える。そして鎖に繋がれた彼女の右手にはいつの間にか指揮棒が握られている。

 

一度画面が上にずれていく。するとその鎖の先にはそれぞれ美作さんの手を繋ぐ鎖を握ったモノトラがいた。

 

モノトラが片方の鎖を上げると美作さんの右手がつられて上がる。するとチューニングしていたモノトラのオーケストラが静かになる。

 

息を整えたモノトラは鎖を振り始める。それと同時に演奏が始まる。演目は「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」。ドイツ語で「小さな夜の音楽」。

 

いきなり有名なフレーズから始まり、いきなり最高潮を迎える。だんだん曲名にふさわしく静かなフレーズが流れる。

 

そして再びあのフレーズへ。ゆっくりしていたところに油断していたのか、モノトラは焦って鎖を引く。すると美作さんの肘からバキッと嫌な音がした。

 

肘から飛び出す骨。吹き出す鮮血。ここからは美作さんの顔は見えないが、きっとその顔は苦悶に歪んでいることだろう。

 

どんどん盛り上がっていく曲。混乱している様子のモノトラ。するともう片方の腕も骨が折れ、皮膚から鮮血と共に骨が突き出す。

 

リズムが乱れ、曲も本来のものとはかけ離れたものになっていく。

 

それでもお構いなしにモノトラは演奏を続けていく。鎖も変わらず振られ、どんどん美作さんの身体は痛めつけられていく。

 

肩が外れる。皮膚が裂ける。飛び出した骨が別の場所に刺さり、さらに噴き出す血。

 

そして曲はクライマックス。どんどん盛り上がっていき、そして最期にはボロボロになって本当に人かどうかも分からない美作さんが両手を上げ、最高潮のまま演奏は終了した。

 

幕は下りる。静寂に包まれたステージ。何も見えなくなったその幕の後ろでゴトンと何かが倒れる音がした。

 

幕の下からは鮮血が流れ出し、彼女の命は既に尽きてしまっていることをありありと画面の外に伝えていた。

 

 

 

「エクストリィィーーーーム!!!!!」

「うわああぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

満足げに叫ぶモノトラと悲鳴を上げるみんな。反応は正反対だった。

 

「ちょ、もう限界…。」

 

中にはその凄惨さに吐き気を催す者までいた。

 

「なんでこんなことになっちゃうの…?」

「もううち帰りたいよぉ…。」

 

他にも青ざめた顔で目の前の現実を受け入れられずにいる者もいた。

 

「…モノトラ。」

「お?なんだ?」

「なんでボク達にこんなことをさせる。こんなことをさせても無意味なはずだ。」

「そんなことはないぜ?意味ならある。オマエラをこうやって“絶望”させられるって意味がな。」

「“絶望”…?」

 

“絶望”。その言葉に聞き覚えのないものはボク達の中にはいないだろう。数年前に起こった「人類史上最大最悪の絶望的事件」、そしてその首謀者であった江ノ島盾子率いる「超高校級の絶望」。いわば、この数年間の世界中の人たちの身に起こった悲劇を象徴するワードこそが“絶望”だ。

 

「“超高校級の絶望”は数年前に滅んだはずだ。お前達は何者なんだ!?」

「なあに、“絶望”は滅んじゃいない。いや、どこからでも何度でも舞い戻って見せる、それだけだ。」

 

つまり、このコロシアイは数年前、希望ヶ峰学園で起こったコロシアイ学園生活と同じ、“超高校級の絶望”が仕組んだものっていうことか…?

 

「まあ、その辺は今するんじゃつまんねー。どうせだったらもっと盛り上がるタイミングでしねーとな。そんじゃ、オレは先に戻らせてもらうぜ!!」

「あっ、おい!!」

 

ただただ気になる情報の断片だけを残してモノトラはボク達の前から姿を消した。残されたボク達の間にはただただ重苦しい空気だけが残されていた。

 

「…絶望なら、充分しちゃってるよ…。」

 

羽月さんがポロッと零す。そしてそれは心のどこかでみんなが思っていた事だろう。だから誰もそれに反論することができないでいる。

 

「…でも前は向かなきゃいけないよ。」

 

そう、ここで立ち止まってもいられない。

 

「美作さん、最期に言ってたでしょ?ボク達だったら二度とコロシアイを起こさせないことだってできるって。」

「そんなこと言ったって…。」

「それに、モノトラが、このコロシアイを仕組んだ奴が“超高校級の絶望”だったとしても先輩達みたいにボク達だってきっと奴らを倒すことだってできるはずだよ。」

「…そう、でござるな。某達だって入学してすぐと言っても希望ヶ峰学園の一員、希望の象徴でござる。こんなところで凹んでいられないでござる!」

 

伊達クンのこのさっぱりとした性格にはどれだけこれからも救われていくことなんだろう。彼のさっぱりと割り切ったその言葉に他の落ち込んでいたみんなも顔を上げていく。

 

「確かに、落ち込んだまま進まないなんてボク達らしくなかったね。さて、死んでしまった者は仕方ない。凹んでいたところで2人が帰ってくるわけでもない。そんなことをしているくらいなら2人の死を無駄にしないためにもしっかり休んで、しっかり出口を探して、ここにいるみんなでこんな場所を出て行かなきゃね。」

「さすが医者、ドライですわね。」

「いやー、まだ引きずっちゃいるけどね。でも救えなかった者を背負ったままじゃいつかその重さに潰される。それじゃあ意味がない。死んだ人の事を、なんで死んだのかを忘れちゃいけない。けど死なせてしまったことは他でもない、彼ら自身の問題であるべきだ。自分が殺したんでもない限り自分が背負う必要はないのさ。だから2人の死に凹むのはここまでさ。」

「…。」

 

そんな真理ちゃんの医者らしいさっぱりとした死生観に帰ってくる言葉はなかったけれどみんなどこか吹っ切れた顔をしていた。

そうだ。ずっとここで凹んでいても仕方がない。もしそのマイナスな気持ちが次のコロシアイにでも繋がろうものならそれこそ死んだ2人に申し訳が立たない。

ボク達は二度とコロシアイを起こさないという決意を新たにこの地下の裁判場を後にした。

 

 

 

 

深夜、職員宿泊棟。ふと急に目が覚めた。あんなことがあった後だ。中々寝付けない。

 

「ちょっと外に出てみるか…。」

 

自分の部屋を出るとそこにはただただ静寂が流れていた。寝られているかどうかは別として他のみんなは深夜なのもあって部屋にいるようだ。ふと思いつきでとある部屋のドアに手をかける。

 

「…開かない、か。」

 

ボクが開けようとしたのは美作さんの部屋。もう亡くなっているとは言え女の子の部屋に入ろうとするというのはどうかとも思ったんだけど、もう二度と話せなくなってしまった彼女が何を思って生きていたのか、その足跡を少しでも辿れれば、と思ったんだけど、そううまくは行かないらしい。

その後泊クンの部屋も入ろうとしてみたけどこちらも入ることはできなかった。捜査の時しか入っていないから落ち着いて泊クンという人物について知りたかったんだけどな。どうやらモノトラは亡くなった人たちに関してボク達に情報を与えるつもりはないみたいだ。

一通り落ち着くと急に眠気が襲ってきたので部屋に戻ることにした。こんなところで寝落ちしておしおきなんてシャレにならない。布団に入るとそのままゆっくりと意識は暗闇に落ちていった。

 

 

 

 

CHAPTER1 小さな夜の絶望  END

 

 

TO BE CONTINUED…

 

                   ・

                   ・

                   ・

 

【生存者】

超高校級の探偵          深見優(フカミユウ)

超高校級のレーサー        速瀬マハ(ハヤセマハ)

超高校級のバスケットボール選手  雷文竜(ライモンリュウ)

超高校級の外交官         金谷秀征(カナヤシュウセイ)

超高校級のバドミントン選手    羽月翔子(ハツキショウコ)

超高校級の医者          津田真理奈(ツダマリナ)

超高校級の歴史学者        伊達小十郎(ダテコジュウロウ)

超高校級の大工          鷹岡筋次(タカオカキンジ)

超高校級の数学者         言村香奈(コトムラカナ)

超高校級の???         鏑木麗(カブラギレイ)

超高校級のハッカー        クレイグ・ホワイトバーチ

超高校級の弓道家         靏蒔由衣(ツルマキユイ)

超高校級の地主          大地真英(ダイチマサヒデ)

超高校級のバイオリニスト     木田結弦(キダユヅル)

 

残り14人




という訳でこれにて第1章終結です!!ちょっと時間がかかっちゃって申し訳ないです…。次回からは第2章が始まっていくので、物語がどう動いていくのか楽しみにしていただければ幸いです!!

それでは今回の設定裏話、鷹岡君編です!!
鷹岡君の大工としての特徴はその大きな身体からは想像も付かないような繊細な技術とそれをどんな場所でも十全に発揮できる身体能力です。そしてもう1つ、デザイン能力にも長けており、ただ家を建てるだけでなく、色んな施設の建設に携わっています。ちなみに、大地君が所有する施設の中にも鷹岡君が建設に関わっている建物が多くあります。どこかではそんな彼の力を見せる話も書けたらいいなとは思ってます。
名前に関しては、まず高いところで仕事をするイメージと力強いイメージから「鷹」と筋骨隆々なところから「筋」という字を盛り込みました。
それではまた次回お会いしましょう!!


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CHAPTER2 我がクララに愛を込めて
CHAPTER2 (非)日常編1


ホテルの敷地のどこか。大きなモニターを前に何者かが座ってほくそ笑んでいる。

 

「…さてさて、最初の学級裁判はこんなところか…。ま、中々盛り上がったんじゃねーの?奴らはどうやら色々ゴチャゴチャ考えているみてーだが、無駄無駄。1階学級裁判が起こっちまえばここからはもうドミノ倒しにコロシアイは起こっていくんだ。それは太古の昔から決まってるこの世の理だ。さーてと、次は誰が誰をどんなふうに殺すのかね…?ぐぷぷ。ぐぷぷぷぷぷぷ…!」

 

 

 

 

 

CHAPTER2  我がクララに愛を込めて  (非)日常編

 

 

 

 

 

キーン、コーン… カーン、コーン…

 

「おはようございます。7時です。今日も一日元気に頑張りましょう。」

 

朝のチャイムで目が覚める。昨日の出来事は言い表しようもなく不快、その一言に尽きた。できることならもう一度布団に潜り込んで現実逃避してしまいたいところだけどそんなことをしたら昨日の今日でみんなに心配をかけてしまう。そういう訳にもいかないのでどうにか頭を起こして食堂に向かった。食堂に入るとこれまでと同様、と言うには1人足りないけど、雷文クン、伊達クン、鏑木クン、靏蒔さん、木田さんの5人が集まっていた。

 

「おーっす。」

「あれ、クレイグクンは?」

「あー、昨日の今日で疲れたからもう少しだけ寝てくと言っていたでござる。」

「全く、だらしのない奴だ。」

「まあまあ、そんなこと言ってはかわいそうですわ。クレイグさんもああ見えて昨日のことがショックだったんですのよ、きっと。」

「まあ、それはそうだろうが…。」

「…そろそろみんな集まってくる。…食事の準備を。」

「ああ、そうだな!!」

 

鏑木クンの指摘を受けてみんなで準備をする。まあ、準備と言っても食事そのものは今日も準備されているし、やることなんて飲み物とグラスを出すくらいなんだけど。そうこうしているうちにみんなが集まってきて朝食会が始まった。と言ってもやっぱり雰囲気は暗い。どうしてもこの円形のテーブルでその存在を激しく主張している2つの空席がボク達の心に影を落としている。特に美作さんはこの数日間ボク達にとってムードメーカーだったから特にその寂寥感を感じざるを得ない。

一通り食事を終えて何となく談笑しているとそこに奴は割り込んできた。

 

「おうおう、オマエラ昨日あんだけ息巻いてた割にゃ随分暗いじゃねーか。」

「何をしにきた?」

「私たちは貴様に用はない。」

「オマエラになくたってオレにゃああるの!そうでもなきゃ誰がわざわざオマエラの前に出てくるかってんだ。ただでさえ昨日の裁判で疲れてるってのによー。」

「ならば早く用件だけ話して帰ってほしいですわ。」

「へいへい。そんじゃオマエラに朗報だ。新しいエリアが開放されたぜ。」

「新しいエリア?」

「このホテルの2階と外でメンテナンス中だったあと1つの建物、そして大浴場、それが開放されたんだぜ。まーそれをどう扱おうがオマエラの勝手だが、一応知らせといてやるぜ。じゃあな!!」

 

それだけ言うとモノトラはさっさと帰って行った。

新しいエリア…。もしかしたらそこにはボク達がここを脱出するための手掛かりがあるかもしれない…!

どうやら他のみんなもその考えに行き着いたようで、みんなさっきまでと打って変わって少し明るい表情をしている。そしてすぐに探索へ向けた作戦会議になった。

 

 

 

「さて、前は何個かに班分けして調べたけど、今回は前ほど探索範囲も広くないし、各自きちんと情報も欲しいだろうからみんなそれぞれの探索にしようと思うんだがどうだ?」

「いいんじゃねーのー?その方が俺ちんもサボれるしー。」

「またクレイグ殿はそんなことを…。靏蒔殿がものすごい形相で睨んでるでござるよ。」

「おー、こわこわ。」

「でもうちちょっと不安だな…。だって昨日あんなことがあったばかりでしょ?一人で行動するのはちょっと怖いかも…。」

「うーん、それもそうかもぉ。」

「まあそこは誰かと組む、とかも個人の自由で良いんじゃないかな?探索してる分には誰とも顔を合わせないってのも考えにくいし、何かあったらすぐ対応できるよ。まあ、何もないのが一番だけど…。」

「よーし、じゃあ探索に出発だ!!」

 

 

 

みんな各々探索に向かっていく。すると本当にこれまで閉まっていたシャッターが開いていた。

 

「あ、こっちのエレベーターも使えるみてえだぜ!!」

「2階くらいならいいけどもっと高い階になるとありがたいねー。」

「わざわざ動かないエレベーターに近寄らなかったから知らなかったがこんなところにトイレもあったんだな。」

「知らなかったの!?と言ってもふつーのトイレだったけどね。さすがに男子の方は分かんないけど…。」

「ま、女子の方がそうなら同じだろう。今は2階の探索の方が先だ。」

「それもそっか。」

 

 

 

2階に入るとまず目に付いたのはずらーっと並んだ客室。これまでは1階の売店とか食堂のスペースにしかいなかったからこの光景を見てやっとボク達はホテルの中に囚われているのだということを自覚した。

廊下を進んでいくと、個室が並んでいる中に1つだけ重厚な木の扉があった。そしてその扉の上には金属製のプレートに“LIBRARY”と書いてあった。

 

「ここは…図書室?」

「どうやらそうみたいでござるな。」

 

中に入って調べて見ると、一ホテルの中に設置された図書室であるとは思えないほどのラインナップだった。中には小説だけでなく、新書や図鑑、学習漫画なんかも置いてあった。

 

「これはすごいね。」

「壮観でござるな。」

 

共に調べに入ってきたボクと伊達クンはこの光景に目を白黒させていた。

 

「あ、こんなとこに某の著書があったでござる。」

「著書!!?」

 

でも確かに彼は歴史学者だ。本の執筆依頼が来たとしても何らおかしくはない。そう考えてみるととんでもない人と一緒にいるんだなぁ。

とそんな感じに図書館の蔵書を調べていると奥の扉からクレイグクンが出てきた。

 

「お、深見ちんに伊達ちんじゃん。どったの?」

「いや、ここの蔵書を調べてただけだけど…。」

「あー、そゆことね。でもここの蔵書はすっごいよねえ。でも、奥の書庫も中々面白いものが置いてあったから調べて見るといいよ。」

「そうなの?」

「さっすがにこんなとこには出しちゃおけないモンがゴロゴロさ。と言っても深見ちんなら生で見たことがあるものかもしれねえけど。」

 

その一言でクレイグクンが見たものが何であるか何となく想像が付いてしまった。だけど調べないわけにも行かないし、むしろなんでそんなものが置いてあるのかは気になるからちょっと入ってみるか。

書庫の中に入ると埃っぽい部屋の中で大量のファイルが本棚の中に並べられていた。ファイルの内の何冊かは埃を被っていなかったが、恐らくこれをクレイグクンは見たのだろう。中身を見てみると、案の定、それは本来なら警察に保管されているべきな様々な殺人事件のデータが載っているファイルだった。中にはボクが解決に関わった事件もあった。

 

「そういやこんな事件もあったっけ…。」

 

そんな本来感傷と尾は真逆のファイルを本棚に戻して他のファイルを手に取ると、そこには希望ヶ峰学園の校章が書かれていた。そして表紙には『希望ヶ峰学園再建計画』と書かれていた。

 

「…何だろう、このファイル?」

 

気になったので中身を調べて見ると、そこには衝撃の内容が書かれていた。

そこに書かれていたのは過去に希望ヶ峰学園で行われたコロシアイ学園生活について。そしてその後どのようにして未来機関が超高校級の絶望を倒して希望ヶ峰学園を復興させたのか。その一連の流れについて書かれていた。計画と書いてある以上これ自体は希望ヶ峰学園が開かれた今年以前のものだろうとは思うけれど、実際、ボク達が知っているとおりの復興の流れが書かれていた。

1枚1枚ページをめくっていく。そこには凄惨な写真と共に当時の記録が詳細に残されていた。

 

「…これが、前回のコロシアイ…。」

 

そこに残されていた記録はこれまで数多くの殺人事件を見てきたボクからしても目を逸らしたくなるようなそんな凄惨な記録だった。高校生がこんなことを強制されていたなんて…。そしてボク達も今同じ状況下に置かれているなんて…。

そして更には復興の過程。ただそこには気になるワードが書かれていた。それは“超中学級の絶望”。どうやら超高校級の絶望は中学生を拉致し、自らの後継として育てていたようで、そのほとんどは未来機関によって捕らえられ更生されたようだが、数名は取り逃してしまっているようで野放しになってしまったらしい。

 

「後継、か…。ということはもしかしてこのコロシアイをボク達にさせているのはその“超中学級の絶望”の生き残りなのかも知れない…。」

 

一通りファイルに目を通した後、ボクは図書室を後にした。

 

 

 

そのまま廊下を歩いて行くと開けた空間に出た。ちょうど1階のロビーと食堂に当たる場所にホールと何かしらの大きな部屋があるみたいだ。その大きな部屋に入ろうとしていると反対側の廊下から声をかけられた。

 

「あ!!おーい、優!!ちょっとこっち来てくれよ!!!」

 

どうやら速瀬さんが何かを見つけたらしく、ボクは一旦そちらの方に向かうことにした。

 

「どうしたの?」

「これ見てくれよ!!」

 

速瀬さんが指さしたのは先ほどの図書室と同様、客室の中にある大きな部屋だった。そこにはカラオケルームと書いてあるようだった。。

 

「カラオケ?」

「ああ!!面白そうだろ?入ってみねえか?」

「今は探索中だよ?」

「カラオケルームの探索だって!!」

「絶対歌うつもりでしょ…。」

 

そんな速瀬さんに呆れつつ中に入ると、中では既にもう歌っている人がいた。

 

「~~♪あ、深見くん、マハちゃん、どうしたのー?」

「どうしたのはこっちのセリフだよ。何やってるのさ…。」

「?歌ってるのー。」

「それは分かるって。なんで今それを…?」

「あはー、なんか吸い寄せられちゃってー。」

「やっぱそうだよな!!」

 

2人揃うと何か頭痛くなってきた…。ボクはそこの設備が受付カウンターとマイク、デンモク、モニター、グラス、ドリンクバーと基本的なカラオケのものと同じであることを確認すると足早にその場を去ることにした。

 

 

 

カラオケルームを出てもう一度あの大きな部屋に向かおうとしたその時、目の前に先ほどは気付かなかった部屋があることに気付いた。

 

「これは…、救護室?」

 

中に入ってみるとそこは薬臭い部屋であり、病院のようなベッドもあったので、そこである程度の病気やケガへの対応ができることが分かった

どんなものが置いてあるのか調べようとしているとそこにもう1人入ってきた。

 

「あら、深見さんじゃありませんの。」

「木田さん?」

「深見さんもここが気になりまして?」

「うん、そんなところ。」

「それじゃあ一緒に探索しましょう。」

 

木田さんに導かれるようにボクはこの救護室の探索を開始した。

救護室には多少のケガや病気には難なく対応可能なくらいの薬と道具が置いてあった。

 

「かなり色々揃ってるね。」

「もしかしてここからは思う存分コロシアイをしろって意味かしら?」

「何か嫌だな…。」

「冗談ですわ。」

「シャレにならないって…。」

 

木田さんってこんな冗談も言うんだ…。とりあえず多少の病気やケガなら大丈夫だと分かったところで一度この部屋を離れた。

 

 

 

さて、落ち着いたところで中央のホールから繋がる大きな部屋に入ってみよう。

重厚な扉をゆっくり押し開けるとそこには大きなスクリーンがあった。どうやらこの部屋は映画館になっているようだ。既にこの部屋の中には羽月さん、靏蒔さん、大地クンの3人がいた。

 

「あ、もう3人もいたんだ。」

「深見か。ああ、私もここに来て2人と合流してな。」

 

靏蒔さんがスクリーンの方で2人で話しながら探索を進める羽月さんと大地クンに目を遣りながら話す。

 

「靏蒔さんはここで何を?」

「あ、いや、ここで私も探索を進めてはいるんだが何だかあの2人の間に割って入りにくくてな。1人だ。」

 

確かに出会って数日のハズなのに何だか2人の間には交ざりにくいオーラが出ている。

 

「じゃあ2人で探索する?」

「頼んでもいいか?」

「じゃあここまででどこまで探索が進んだか教えてもらってもいい?」

「そうだな。私が探索したのは現状この部屋だ。この部屋には見ても分かるとおり、大きなスクリーンがある。座席数もそれなりにあるみたいだ。天井もそれなりに高くて、一番高い床からでも梁まで5メートルほどある。」

「なるほど…。」

「後はまだ探索していないところとしてあそこの映写室があるからそこを探索したい。」

「わかった。」

 

映画館の奥の階段から上ってゆき、映写室に入る。どうやらカギは掛っていなかったようで自由に入ることが出来た。

映写室に入ってまず目を引いたのは大きな映写機。ちょうど真ん中の席の真上に当たるようで、ここから映像をスクリーンに映し出すことが出来る。

映写室の後ろにはフィルムの入った棚が置かれていた。そこには様々なサイズの、言い換えると様々な長さの映画が置かれていた。その人の好みによって色んな映画が見られるみたいだ。

 

「今時珍しいね、フィルムの映画館なんて。」

「そうなのか?今でもフィルムで流しているものとばかり思っていたが。」

「今は技術が進歩しているからね。大概の映画館はデータで送って流してるはずだよ。」

「初めて知った…。」

 

そんな豆知識の話をしながら部屋の探索をしていると奥の壁に何やら大仰なレバーの付いたスイッチを見つけた。

 

「これはなんだ?」

「ちょっと待って、横に説明書きがある。読んでみるね。映画館のドアは映写中に外からも中からも出入りできないよう自動的にロックがかかるようになっています。こちらのレバーはそのオートロック機能のオンオフを司るものになっています。ですが、体調不良等の緊急事態の際以外はできる限り触らないようお願い致します。だって。」

「ということはあまりこのスイッチには触らない方が良いな。」

「埃も被ってるし、そうだね。わざわざ弄る必要もないし放っておいて良いと思うよ。」

「ああ、分かった。念のためみんなに周知しよう。」

「お願いするね。特にクレイグクンには念入りに。」

「もちろんだ。」

 

そこには悪ガキの好きなようにはさせまいと目を光らせる生徒指導の先生みたいなおっかない顔つきをした靏蒔さんがいた。正直震え上がった。

 

 

 

2階をとりあえず調べ終わったところで一度下に降りてきた。そう言えばモノトラは東棟の大浴場も開放された、みたいなことを言ってたな。なら調べてみようかな。

向かって右側、男子浴場の青いのれんをくぐって大浴場に入ると既に金谷クンが探索というか入浴していた。

 

「…何してるの?」

「見て分かるだろ。風呂に入ってる。」

 

それは見れば分かるけど。

 

「いや、何で入ってるの…?」

「泉質調査だ。」

「いや、書いてあるじゃん…。」

「情報だけはな。だが入ってどうかは実際に入ってみないと分からないし、自分に合う泉質かどうかはここでの生活の質に直結する大きな問題だ。」

「そうなんだ…。」

「なんだ、深見は風呂に興味がないのか?」

「人並みだよ…。泉質まではこだわらないって…。」

「鈍感な奴はうらやましいな。」

 

大概の人がそうじゃないかと思うんだけどなぁ…。

まあ、金谷クンが湯船を探索してくれているということでボクは他の部分の探索をしてみたけれど、結局のところ風呂桶とかシャワーとかいわゆる温泉とかホテルの大浴場にある設備と大差なかった。だけど露天風呂はちょっと気になるので後で入ろうかと思う。

 

「じゃあ他のところに行ってみるね。」

「ああ。」

 

金谷クンはこちらに顔を向けることなくヒラヒラと手を振ってボクを送り出した。

のれんから出ると大浴場入り口のところで真理ちゃんと出会った。真理ちゃんは腰に手を当てて牛乳をイッキ飲みしていた。

 

「…何してるの?」

 

本日2度目のツッコミ。

 

「牛乳を飲んでるのさ。」

 

それも見れば分かる。

 

「いや、なんで牛乳を飲んでるのさ。」

「何を言ってるのさ。風呂上がりと言えば牛乳だろう?」

「…もしかして真理ちゃんもお風呂に入ってた?」

「当たり前じゃないか。お風呂の質は生活の質に直結するんだよ?って“も”?」

「金谷クンも男子風呂に入ってたんだよ…。しかも今の真理ちゃんとおんなじこと言ってた。」

「それはそれは。金谷クンとは話が合いそうじゃないか。」

「ちゃんと探索しようよ…。」

「一応探索はしてたぜ?ただ普通の温泉の設備と一緒だったから特筆する部分がなかったってだけで。」

「それじゃ男子の方と大差ないね。」

「これからどうするんだい?」

「後1カ所残ってるからそっちに行ってみるよ。」

「そうかい、頑張ってくれたまえよ。」

「なんで上から目線なのさ…?」

 

 

 

 

図らずも女子のお風呂の設備の情報も得たところで最後に外の建物を見に行ってみよう。

最初の探索の時にメンテナンス中になっていて入れなくなっていた建物。あの日はプールとかジムとかではないかと推理していたけれどさてさて答え合わせはどうだろうか。

畢竟、ボクの推理は半分正解で半分間違いだった。なぜならその建物はプールとジムが一体化した施設だったからだ。

 

「思いの外豪華って感じだなぁ。」

 

そんなことを独りごちて中に入ると中の気温は外より2,3度高い感じがした。

その原因は様々なトレーニング機器をガッチャガッチャと動かしている2人の大男だった。

 

「…なんで筋トレしてるの?」

「おう、優の字か!!ここじゃあ中々オイラの腕を披露する機会もねえんでな、鈍っちまわねえよう鍛えてんだ!!」

「雷文クンも?」

「おうよ!!色んな機器が置いてあって中々いい感じなんだ!!」

 

そんな雷文クンの言葉を聞いてボクも周囲を見渡してみる。すると確かに上半身も下半身も色んな部位を鍛えられるようになっていた。更にかけられる負荷も様々になっていてバーベルの重りやダンベルも幅広い重さが準備されていた。

 

「確かにこれはスゴいね…。」

「お、深見も気に入ったか?ならオレらと一緒にトレーニングしようぜ!!」

「今は良いかな…。」

「そうか…。気が向いたらいつでも言ってくれよ!!」

「う、うん…。」

 

多分気が向くことは永遠にないんじゃないかな…。

部屋の端には扉が2つあり、そこが更衣室になっていた。だけどその入り口にはカードリーダーが設置されており、カギがかかってる状態だった。

 

「これってもしかしてしおりをかざすの?」

「ああ、そうみたいだぜ!男子更衣室は男子の、女子更衣室は女子の電子しおりでしか開かねえみてえだ。」

「ふーん。でもこれ例えばボクが真理ちゃんにしおりを貸したら真理ちゃんも男子更衣室に入れるってことになっちゃわない?」

「あ、確かにそうだな。そこら辺どうなってんだ?」

 

考え得る可能性の話をしていると唐突にモノトラが割り込んできた。

 

「いやー、盲点だったんだぜ!!確かに誰かに借りたら異性の更衣室も入れちまうな…。そいつはあんまよくねーんだぜ。」

「だよね?」

「ならここは新しい校則を追加するんだぜ!!」

 

モノトラがそう言うとボクの電子しおりからピピッと音が鳴った。校則の欄にnewの文字が出ていたので開いてみると既に新しい校則が追加されていた。

 

 

11.生徒間の電子しおりの貸し出しを禁じる。

 

 

これでとりあえずの問題は解決した、と言って良いのかな…?

多少気になるところはあったけどまだこの更衣室の奥にあるプールを調べられていないのでそちらの探索を先にすることにした。

反対側のプールの扉を開けるとそこでは鏑木クンが探索をしていた。

 

「…深見か。」

「探索の調子はどう?」

「…それなりだ。」

「そっか。」

 

そこからは無言でお互い探索を進める。しかし、ビート板とか水中に潜って探すアレとか謎の大きな時計とかプールによく置いてあるようなものが置いてあるだけだった。

 

「でもなんだかホテルのプールって言うよりは学校のプールみたいだね。」

「…確かにな。」

「戻る?」

「…そうだな。」

 

…気まずい。2人だと会話が続かない…。

とりあえず今回開放されたエリアの探索はこんなところだろうか。ボクはとりあえず探索を終わりにして食堂に向かった。そして昼食を食べながらお互いが発見したものを報告し合った。その後はそれぞれ自由に過ごしてそのまま1日が終わった。

色々な場所を歩いた後だからか、夜時間になる前には早々にボクは睡魔に捕まり、意識を手放すことになった。

 

 

 

【モノトラ劇場】

 

「クマノミってのはおもしれえ生き物だってのは有名だよな!」

 

 

「家族で暮らしているクマノミはもし母親が死んだ場合父親がメストなり、」

 

 

「一番大きい子どもがオスとなるんだぜ。」

 

 

「これを専門的には雌雄同体って言うんだ。」

 

 

「これはふとした思いつきなんだけどよ、」

 

 

「今時色んな嗜好があるからな。」

 

 

「ここ十数年くらいのところだとある意味人間も精神的には雌雄同体だと言えるかも知れねーな。」

 

 

「ってなワケで次回からはあたしもメスになってお送りしようかしらん?」

 

                    ・

                    ・ 

                    ・

 

【生存者】

超高校級の探偵          深見優(フカミユウ)

超高校級のレーサー        速瀬マハ(ハヤセマハ)

超高校級のバスケットボール選手  雷文竜(ライモンリュウ)

超高校級の外交官         金谷秀征(カナヤシュウセイ)

超高校級のバドミントン選手    羽月翔子(ハツキショウコ)

超高校級の医者          津田真理奈(ツダマリナ)

超高校級の歴史学者        伊達小十郎(ダテコジュウロウ)

超高校級の大工          鷹岡筋次(タカオカキンジ)

超高校級の数学者         言村香奈(コトムラカナ)

超高校級の???         鏑木麗(カブラギレイ)

超高校級のハッカー        クレイグ・ホワイトバーチ

超高校級の弓道家         靏蒔由衣(ツルマキユイ)

超高校級の地主          大地真英(ダイチマサヒデ)

超高校級のバイオリニスト     木田結弦(キダユヅル)

 

残り14人




お久しぶりです!第1章の終結からかなり時間が経ってしまい申し訳ありません!やっと第2章が開幕です!!今回は様々な新しいエリアが開放されていく、というお約束通りの回となりましたが、さてさてここからどんな事件が起こってしまうのでしょうか…?どうぞお楽しみに!!

それでは今回の設定裏話、今回は言村さんです!
言村さんは幼い頃から数字に関するあれこれが得意であり、中学生になる頃には天才数学者と呼ばれるようになっていました。そのため本人を知らない人にはお堅いイメージを持たれているようなのですが、実際のところはむしろのんびりしていて少し抜けている、という感じの女の子です。
名前の由来なのですが、下の名前に関しては何となくかわいらしい女の子のイメージでつけた名前です。そして苗字は何となく数学とは真逆の文系っぽい字を使ってやろうと思い立って「言」という字を使いました。

という訳で今回はここまでです!!ここから少しの間はみんなでわちゃわちゃしてますのでご安心ください笑。それではまた次回!!


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CHAPTER2 (非)日常編2

キーン,コーン… カーン、コーン…

 

「おはようございます。7時です。今日も1日元気に頑張りましょう。」

 

昨日しっかり動き回って疲れてから眠ったからだろうか、今日はいつもよりもスッキリと目が覚めた気がする。その分上機嫌で食堂に入ると食堂の中に銀色の大きな何かがいくつか置いてあった。

 

「何これ…?」

「カート、か…?」

 

よく見てみるとよく大きなレストランなんかで配膳に使われたりするような大きなカートが何台か食堂に置いてあった。そのうちみんなが集合してきてこの状況にみんなで首を傾げた。

 

「こんなのあったか?」

「うーん、なかったと思うでござる。」

「そりゃあ今日用意したからな!!」

「どわあっ!!」

 

不意打ちで現れたモノトラに驚いてしまった。

 

「で、今日用意したってどういうこと?」

「ほら、こういうのってルームサービスを運ぶときに使うだろ?」

「それはそうですけどそれが何ですの?」

「おいおい、オマエラみんなこれが何なのか忘れちまったのか?」

「コロシアイ、でござろう?」

「正式名称だ。」

「えーっと確か…、コロシアイ職業体験、だったよね?」

「その通りだぜ!オマエラにはあくまで職業体験のテイでここに集まってもらってるんだぜ。なのにオマエラ何も職業体験らしいことしてねーじゃねーか。」

「だって誰も他にお客さんいないんだからしょうがないじゃーん。」

「ま、そりゃそうなんだがな。でもコイツはオマエラにとっても使えない代物じゃねーはずだぜ?」

「何でさ?」

「2階に色んな施設ができただろ?特に映画館なんかジュースとポップコーンは欠かせねーじゃねーか。」

「それはそうだねぇ。」

「だけどよー、わざわざ1階のキッチンから自分で運んでくるのは大変だろ?だからそういうときにこのカートに乗っけて運んでくれば自分の手で運ぶよりも楽に安全に運べるってスンポーよ。」

「あー、なるほど。」

「納得したか?」

「まあそれなりにはな。」

「じゃ、映画館に運ぶもルームサービスするも勝手だが、コイツをどんどん有効活用してくれ!!」

 

そこまで言うとモノトラはボク達の前から姿を消した。

 

「…つまりモノトラは某達に便利に生活してもらうためにこのカートを用意した、ってことで間違いないでござるか?」

「いんやぁそいつはわかんねえだろ。モノトラのことだ。このカートも上手くコロシアイに活用する奴が出てくることを期待して準備したんじゃねえのー?」

「おい、貴様また…!」

「いや、それは否定できないだろう。これまで俺達にコロシアイをさせようとしてきていたモノトラがただ俺達に快適に暮らさせようと考えているとは考えにくい。むしろクレイグのいっている可能性の方が高い。このカートが動機やら凶器って事はないだろうが警戒しておいて損はない。」

「金谷…。」

「うん、ボクも警戒しておいて良いと思う。」

「深見まで…。」

「でも警戒しすぎてお互いが疑心暗鬼になるのもよくないし、実際あれだけ大きいものは下手に扱うと危ないから気を付けようね、って程度で留めておくのが良いんじゃないかな?」

「まあ、そうだな。」

「うし、じゃあ話もまとまったところで飯だな!!オレ腹減っちまったよ!!」

「そうだね。」

 

とりあえず注意だけはしておくということで結論が出たところでみんなで朝食を食べて解散することになった。

 

 

 

朝食を食べ終わって部屋に戻る途中、電子しおりからピロンと通知音が鳴った。また新しい校則でも追加されたのかと思って見てみると新しく電子メダルという欄ができており、100枚ほど入れられていた。そこにはモノトラからのメッセージも添えられていた。

 

『一昨日の裁判をクリアした報酬だぜ。ホントは裁判が終わった直後に渡すつもりだったんだが渡し忘れちまってな。このメダルはコンビニに設置されているガチャから景品を取る時に使えるから存分に活用してくれ。』

 

ガチャ?それで何かを手に入れたとして、その何かは本当に役に立つものなのか?とはいえ気になるのは気になるのでコンビニに向かうことにした。コンビニに入ると既に同じことを思っていたようで雷文クンと伊達クンがガチャを回していた。

 

「何かいいものでも手に入った?」

「おう、深見か!いんや、変なモンばっかだ。小難しい本なんてオレの(しょう)に合わねえ。」

「こっちも同じでござる。窓もない、外に出ても空しか見えない、こんなホテルで双眼鏡なんてどう使えと言うのか、という話でござる。」

「あはは…。やっぱりそんなところだったか…。」

「どうせだったら深見殿も回してみるでござるよ。それで変なものを手に入れて、3人で笑い飛ばしておしまいでござる。」

 

ボクも変なものを手に入れる前提なんだ…。でもまあ確かに役に立つものが手に入るとは思えないけれど…。こうしてガチャガチャマシーンの正面に設置されたタッチパネルにしおりをかざし、ピロンと音が鳴ったところでマシーンのレバーを2度3度と回した。するとコロンと一つのカプセルが転がり出てきた。

 

「何でござるか?何でござるか?」

 

伊達くんは揶揄う気満々でワクワクした顔をしている。こういう時に限ってネタにもならないようなつまらないものが出てくるんだよね…。

大した期待もしないままカプセルを開けると中から電車の模型が出てきた。

 

「何これ…。」

 

そして一緒に入っていた説明書きには“男のロマンエクスプレス”と書いてあった。

 

「また扱いづれえもんが出てきたなぁ。」

「いじりにくいでござる。」

「2人が回させたんだよね!!?」

 

うーん、この模型は自分の部屋にでも飾っておけば良いのかなぁ…?そう思いながら廊下に出るとちょうど女子が何人か通り過ぎるところだった。その女子勢はみんなタオルを持っていた。

 

「あれ、どうしたの?」

「あ、深見くんだー。えっとねー、香奈達はねー、お風呂に入るのー。」

「真理奈があんまりにも勧めてくるもんだからどんなもんかと思ってな!」

「温泉なんて久しぶりですし、ちょっと楽しみですわ。」

「そうなんだ。じゃあ楽しんできてね。」

「うん!」

 

そう言ってすれ違う。3人がのれんをくぐっていった後、ボクの手の中ではさっきの電車の模型が手に入れたときよりも存在感を放っていた。まるでボク達3人に“ロマンを追い求めろ”と迫るかのように。

 

「な、なあ、2人とも。アイツら大浴場に行ったよな?」

「う、うん。」

「大浴場といえば露天風呂があったはずだ。そんでその仕切りは細い竹でできていた。」

「そうでござったな。」

「ってことはよ、よーく探せば1カ所くらい隙間ができてんじゃねえか?」

「「!!」」

 

その一言にボクと伊達クンもはっと息を飲む。

 

「…つまり、“そういうこと”でござるな?」

「…ああ、“そういうこと”だ。」

「…見つかったらタダじゃ済まないよ?」

「そんなリスクだけでおめえら夢の景色(ロマン)を諦められんのか?」

 

夢の景色(ロマン)、だって…?そんなの…、そんなの…!

 

「諦められるわけないでござる!!!」

 

ボクの気持ちを伝えようとした瞬間、隣で同じ気持ちであった伊達クンが想いを叫んだ。

 

「ああ、そうだよな…!ならオレ達、こんなとこで立ち止まってる場合じゃねえよな!!?」

「うん!うん!!!」

「早く行かねば3人が出てきてしまうでござる…!」

 

そうだ、こんなところで時間を無駄にするわけにはいかない!ボク達は勇んでその足をボク達の桃源郷(アガルタ)へと進めた。

 

 

 

ボク達は急いで服を脱ぎ、露天風呂へと飛び出す。そしてくまなく細い竹で出来た仕切りを調べて見ると、そこにはこっそりと覗くことの出来そうな隙間が何カ所か見つかった。

 

「ここから覗き込んだら…。」

「ああ、楽園が見える…!」

「早く、早く見るでござる…!」

 

コソコソと話ながらゆっくりとそれぞれに割り当てられた隙間を覗いていくと、そこにはボク達が想像したとおりの素晴らしい光景が広がっていた。そして聞こえてくる天女達の笑う声。

 

「うおっ!結弦でっけぇな!!」

「でっけぇとかはしたないこと言わないでくださる?それに貴女だって充分大きいですわよ?」

「ほんとだよー。香奈自分のを特段ちっちゃいって思ったことないけどー、2人を見てたら自身なくなっちゃったー。」

「落ち込むことはありませんわよ?」

「むー。えいっ!」

「ひゃあっ!何しますの!!?」

「持ってる人に持たざる者の気持ちなんて分からないんだもん!悔しいから揉んでやるー!」

「やっ!ちょっ!ひゃあん!やめてくださいまし!」

「おお…。ふかふかだー。」

「クッションみたいな扱いはやめてっ!というか速瀬さん助けてくださる!!?」

「ほえー。こりゃすげえなぁ。」

「っていつの間にか揉んでるっ!!?もうっ!!2人ともそこまでーーーー!!!!」

 

なんだこの天国は…?目が幸福だよ…。まさに眼福だよ…。

 

「たわわでござる…!」

「アホなオレだがこの光景の感想なら本の1冊や2冊書けちまいそうだ…!」

 

チラッと横を見遣ると2人がそれぞれの感性の中で感想を口走っていった。すごく、すごく分かるよ…!!

 

「…。なーんか視線を感じんな。」

 

そう仕切りの先の速瀬さんが呟いた。

 

「!マズいっ!!」

 

これ以上は危険だと脳みそが信号をガンガンに送ってくる。さすがに速瀬さんにバレたらタダでは済まなさそうなのでボク達は急いで撤退することにした。

その後廊下で。

 

「…オレ達なんであんなに熱を上げてたんだ…?」

「分からないでござる…。」

「バレたら命なんてないのにね…。」

「…とりあえず戻るか…。」

「そうだね…。」

「ここにいたら多分速瀬殿の野生のカンでバレて一巻の終わりでござる…。」

 

ボク達は女性陣が出てくる前に急いで寄宿舎に戻り、身の安全を確保することにした。

 

 

 

その後みんなで集まって昼食を食べることにはなったけれど3人への罪悪感でボク達は3人に対して目を合わせることが出来なかった。

とりあえずボク達の行いがバレなかったところで自由な時間が出来た。たまには誰かとお話でもしてみようか…?そう思って周りを見回してみると寄宿舎のロビーで立っている鏑木クンと目が合った。だけど彼はすぐに目を逸らすとそそくさとその場を去ろうとしたのでボクはその後を追いかけることにした。

 

「鏑木クン!!」

「…。」

 

彼は無言のままどんどん突き進んでしまう。

 

「鏑木クンってば!!」

 

もう1回呼び止めると彼はやっと足を止めてこちらを振り向いてくれた。

 

「…何だ?」

「いや、ヒマならちょっとお話でもどうかと思って…。」

「…確かにやることはないが…。…だが私と話してもつまらないと思うぞ?」

「それは話してみないと分からないよ。」

「…まあ、深見がそれで良いというのであれば。」

 

そう言いながら鏑木クンはボクと他愛ない会話をしてくれた。確かに話し方は淡泊かも知れないけどけっして会話がつまらない、なんてことはなかった。

 

「そう言えばなんだけどさ、鏑木クンって何の超高校級の才能を持ってるの?」

「…なぜだ?」

「いやぁ、そう言えば聞いたことなかったなぁ、って思ってさ?」

「…そうか。それならば申し訳ないが答えることはできない。」

「それはどうしても?」

「…そうだな、どうしてもだ。と言ってもそれだけでは納得できないだろう。単純な話なんだ。私には今才能の記憶がない。」

「記憶が?」

「…ああ。どうやら黒幕が我々の事を連れてくるときに私の才能の記憶を奪ったようだ。だから思い出せないんだ。私の生い立ちを考えてもそんな黒幕の脅威になるような才能であったとは思えないんだがな。」

「その生い立ちって聞いても?」

「…ああ。私から言い出したんだ、話すよ。…私は元々孤児院で育った。親の顔は知らない。孤児院の先生曰く、ある夜外で赤ん坊の泣き声が聞こえたものだから見に行ってみると籠に入れられて玄関のそばに私が置かれていたようだ。置かれていた、と言えばまだ聞こえは良いが、要は捨て子だったんだ。」

「そう、なんだ…。」

「…そう恐縮することじゃない。私も気にしていない話だ。物心が付いたときには既に孤児院の中だったからな、むしろ、私にとっては孤児院に幅広い年代の子どもがいるって状態の方が当たり前で自分の境遇自体を珍しいとは思ってもコンプレックスには思っていないんだ。」

「じゃあ、名前も?」

「…ああ。その孤児院が鏑木孤児院、と言ってな。それ自体は院長の苗字なんだが、家族の苗字が違うのは変だ、と言うことで何か特別な希望がない限りはみんなこの苗字を名乗ることになっていた。そこに加えて私は生まれてすぐに預けられているからな。名前も孤児院でもらった。」

「血は繋がってなくても大切な家族なんだね。」

「…。…まあ、な。」

 

…?今少し間があったような…。

 

「…という訳で私の生い立ちは何か特別な一族の出でもなければ何かの学問の英才教育を受けてきたわけではない。私が何かの才能を持っていたとしてもこのコロシアイの黒幕の邪魔になるとは到底思えないからなぜ私の記憶を変に奪ったのか、そしてその奪われた私の才能は何なのか、私自身も知りたいと思っているところなんだ。だから私の才能は答えられない。」

「そっか。色々教えてくれてありがとう。」

「…構わない。」

「じゃあまたね!」

「…あ…!」

「?どうしたの?」

「…いや、何でもない。大した話じゃない。」

「ホントに?」

「…ホントだ。それにこれからも大した問題にはならないと思う。」

「なら良いんだけど…?」

「…また夕食で。」

「うん、またね!」

 

そう挨拶を交わしてボクは鏑木クンと別れた。それにしても鏑木クンがあんな生い立ちを抱えていたなんてなぁ。でも今が幸せならそれでいいのかな。あ、でも最後に何を言おうとしたんだろう…?そこの答えが出ることはないままボクは次の場所に向かっていった。

 

 

 

キッチン付近を歩いているとちょうどカートをゴロゴロと転がして羽月さんがどこかに向かうところだった。

 

「あれ、どうしたの?」

「あ、深見君!実は映画鑑賞でもしよっかなぁ、なんて思って!昨日の探索の時にうちの好きなアニメ映画のシリーズがあってさ。」

「そうなんだ。モノトラのことだから悪趣味な自主制作映画とかしか置いてないと思ったよ。じゃあそのカートは?」

「あ、これ?これポップコーンとドリンク!映画鑑賞には必要不可欠でしょ?」

 

羽月さんは超高校級のバドミントン選手だし、映画とかよりも身体を動かす方が好きなのかななんて勝手に思ってたな…。

 

「あ、深見君もよかったら見に行く?」

「急に行っても大丈夫?」

「大丈夫大丈夫!ってかむしろ布教させてよ!」

「それなら遠慮なく!」

 

ボクもドリンクを準備して一緒に映画館に向かった。ただ映画を見るだけでなく大ファンの羽月さんの解説付きでより深く映画を見ることが出来た気がする。

 

「付き合ってもらっちゃってごめんね!」

「いやいや、解説含めてすごく面白かったよ。」

「それならいいんだけど…。」

 

そう言えば羽月さんに聞いてみたかったことがあったんだった。

 

「そう言えばさ、何かの番組でお父さんとお母さんはバドミントンをやってなかったって聞いたんだけどさ、何で羽月さんはバドミントンをやることになったの?」

「あーそう言えばそういう話はテレビとかでもしたことなかったかも。なんてことはない簡単な話なんだけどね。」

「そんなあるあるな感じなの?」

「あるあるもあるあるだよー。だって幼なじみのお姉ちゃんに憧れて始めたんだもん。」

「確かにそれはあるあるかも…。」

「うちの親がトップアスリートなのは知ってるよね?」

「うん。この前スポーツニュースでもやってたからね。素晴らしいサラブレッドだ、って言われてた。」

「ちょっとそこまで言われちゃうと恥ずかしいな…。でね、うちが子どもの頃って2人ともまだギリ現役選手だったんだ。で、引退後もよく色んな場所に解説とか中継とかに行ってたの。だから家に2人ともいないって事が結構あって。でそんなときによく面倒を見てくれてたのが近所に住んでたお姉さんだったんだ。でね、もちろんお姉さんの方が先に中学校に上がって部活を始めるってなったときにそのお姉さんがバドミントンを選んだんだ。休みの日なんかに大会があったりすると応援に行ったりもしたんだよ。でその応援してるときに毎日のように会ってるお姉さんだけどかっこいいなぁって思ってうちも始めたの。」

「追いかけて同じ競技を始めるくらい大好きな人なんだね。」

「うん、大好き!」

 

屈託なく笑う彼女の笑顔に少しだけドキッとしてしまう。

 

「じゃあうちちょっと用事あるからまた後でね!」

「うん、じゃあね!」

 

羽月さんは手を振って去って行く。彼女は恩人であるそのお姉さんにきっともう一度会いたいと思っているはずだ。そして何より前の動機のこともあってその人のことをかなり心配しているに違いない。でも彼女はそんな不安をおくびにも出さない。だからこそみんなでここを脱出しなければならない。そんな決意を固めてボクはその場を後にした。

 

 

 

キーン、コーン… カーン、コーン…

 

「午後10時になりました。これより夜時間となります。ホテル本館内の該当施設はロックされますのでご注意ください。それではよい夢を。お休みなさい。」

 

 

【モノトラ劇場】

 

「続編っていうのは不思議な響きだよな。」

 

 

「ワクワクもするし不安にもなる。」

 

 

「いざ形となったときに満足できれば喜ばれるし、不満なものになれば辺り一面火の海だ。」

 

 

「きっと制作陣もドッキドッキな事だろうと思うぜ。」

 

 

「オレはそういうのに詳しいんだ。」

 

 

「コイツも続編ってのに当たるわけだが、見てる奴らは満足してくれてんのかねぇ。」

 

 

「ま、その辺りは奴らの反応がいつか証明してくれるだろ。」

 

 

「反応が楽しみで仕方ねーぜ…。」

 

                    ・

                    ・

                    ・

 

【生存者】

超高校級の探偵          深見優(フカミユウ)

超高校級のレーサー        速瀬マハ(ハヤセマハ)

超高校級のバスケットボール選手  雷文竜(ライモンリュウ)

超高校級の外交官         金谷秀征(カナヤシュウセイ)

超高校級のバドミントン選手    羽月翔子(ハツキショウコ)

超高校級の医者          津田真理奈(ツダマリナ)

超高校級の歴史学者        伊達小十郎(ダテコジュウロウ)

超高校級の大工          鷹岡筋次(タカオカキンジ)

超高校級の数学者         言村香奈(コトムラカナ)

超高校級の???         鏑木麗(カブラギレイ)

超高校級のハッカー        クレイグ・ホワイトバーチ

超高校級の弓道家         靏蒔由衣(ツルマキユイ)

超高校級の地主          大地真英(ダイチマサヒデ)

超高校級のバイオリニスト     木田結弦(キダユヅル)

 

残り14人




はい、お久しぶりです!ちょっと現実世界が忙しすぎて更新がかなり遅くなってしまいました…。まだ落ち着いていないので次回もちょっと遅くなってしまうかもです…。どうか気長に待ってもらえると嬉しいです!


それでは設定裏話です!今回は美作さん編です!
美作さんはこれまでにも何度か言及されてきたとおり、作曲家として様々なジャンルの音楽に関わってきています。その幅はクラシックのような曲からアイドルの楽曲、そしてゲーム、アニメ映画と行ったサブカルチャーのBGMまでかなりの広さを誇っています。色んなアーティストにも楽曲提供しており、その過程で木田さんとも出会っています。このように彼女自身のコミュ力もあって音楽関係者だけでなくかなりの人脈を持っていたようです。
名前はかなり分かりやすいものになっているかなと思います。「美しい曲を作り奏でる」作曲家だからこの名前になっています。
それでは今回はここまでです!また次回お会いしましょう!!


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CHAPTER2 (非)日常編3

キーン、コーン… カーン、コーン…

 

「おはようございます。今日も一日元気に頑張りましょう。」

 

朝、か…。もうあの事件から3日が経ってしまったんだな…。3日と言えば前回モノトラが動機と言ってボク達を引っかき回したのも調査を始めて3日目のタイミングだったな…。もしかしたらモノトラは今日何かしらの動きを見せてくるかもしれない。警戒をしておいて損はないだろう。

そんなことを考えながら食堂に入ると何かいつもと違う雰囲気があった。そしてその原因はすぐ分かった。それはテーブルの上に置かれていたタブレット端末だ。それはご丁寧に人数分が綺麗に並べられており、その異様な光景に先に食堂に来ていた何人かがそれを手に取ることに尻込みしているようだった。

 

「…これ何…?」

「よく分からんでござる。」

 

でもその詳細は分からなくてもその正体が何であるかは以前の経験から推測することが出来た。

 

「これってもしかして“動機”…?」

「動機ってまさか…!」

「うん、そのまさかだと思う。」

 

そう、コロシアイの動機。やっぱり今日辺りに何か動いてくるんじゃないかとは警戒してたけど案の定、モノトラはボク達にコロシアイをさせるつもりのようだ。

 

「中身は何なんだ…?」

「ま、タブレット端末って事は動画か写真か、ってとこじゃねえの?」

「拙者達に視覚的に外に出たいと思わせるようなものって事でござるな。」

「ま、そうゆうことっしょ。」

 

そんな感じで目の前のタブレットに関して話し合っているとみんなが集まってきてまた一通り騒ぎになった。とりあえず現状何か不都合が発生しているわけではないのでこのタブレットの扱いに関しては朝食を食べてから話すことにした。

そして朝食後。

 

「さて、喫緊の問題はこのタブレットなワケだけど。」

 

真理ちゃんが話を切り出す。

 

「多分これは動機だと思う。」

「動機って、コロシアイの…?」

「うん。今日は新しいエリアが開放されて3日目。そして前回の動機が発表されたのもボク達がこのホテルを探索し始めて3日目。そろそろモノトラが動いてもおかしくない頃合いだと思うんだ。」

「確かにモノトラが僕達の生活水準を上げるためだけにこのタブレットをよこしたとも思えないしねぇ。」

「でもタブレットっつうことはさ、アタシ達がわざわざ開いて見なけりゃ済むっつうことだよな?」

「まあそうだとは思うけど、」

 

そう上手くいくかな、とそう言いかけたとき奴が割って入ってきた。

 

「そうは問屋が卸さねーんだぜ!!」

「うわっ!!」

「で、その問屋が卸さないってのはどういう意味だ?」

「そのままの意味だぜ。ソイツはオマエラの推理通り、今回の動機だ。見てもらわねーと困る。できることならここで見てほしいが、こんなとこで見たんじゃお互いに情報共有されて動機になりゃしねー。だから今日の午前中までにそのタブレットの中身を見ろ。正午になったときに見ていない奴はおしおきだ。」

「なるほどぉ?そりゃだいぶ悪趣味だ。」

「何と言われようが関係ねーんだぜ。オマエラがコロシアイさえしてくれればオレに取っちゃ何でも構わねーんだからな。ほんじゃ!」

 

取り残されたボク達はタブレットを見て立ち尽くしていた。

 

「で、どうするんですの?」

 

木田さんが口を開いた。

 

「ここでぼーっと正午まで過ごすわけにも行かないでしょう?」

「でもコロシアイに繋がるかもって分かってるものを見るのもなー…。」

「しかし見なかったら見なかったで死ぬことになる。」

 

どうしたものか…。

 

「部屋で見るってのはどうだ?」

「竜の字、そいつぁどういうことでえ?」

「どっちにしろ見ねえことにはこっちが死ぬんだ。でも知られちゃマズい情報かも知れねえ。だとしたら部屋で見てその後はとりあえず自分が一番信頼できる奴にだけ情報共有しときゃあ良いんじゃねえか?」

「それに、知っておけばとりあえず対策にはなるでござるよ。何を動機にしようとしているのかが分かっていれば警戒することは出来るでござる。」

「うーん…、確かにそうかも…。」

 

そこまで話が進んだところで鏑木クンがテーブルのタブレットにスッと手を伸ばす。裏面を見て自分の名前が書いてあることを確認すると、

 

「…ならば部屋で見てくる。私が既に見ていることが分かっていればみんなも尻込みせずに見られるだろう?」

 

彼はあまり他人に興味がないように見えて意外と周りの人のことをよく考えてくれているようだ。確かにタブレットの中身を見ること自体が裏切り行為に当たるかもという不安を抱えているくらいなら誰かが最初に口火を切ってくれていた方がみんな遠慮なく動機の確認が出来る。

 

「だったらアタシもそうさせてもらうぜ!」

 

続くように速瀬さんがタブレットを持ち出したところでみんなもそれぞれ自分の名前の書かれたタブレットを持って自室に戻っていった。

 

 

 

そしてボクの部屋。タブレットの電源を入れると1つだけアプリが入っていた。それは動画再生アプリだった。そしてそのアプリを開くとそこに入っていたのもまた1本だけの動画だった。

 

「これが、今回の動機…。」

 

ゴクリと唾を飲む。でもこのまま躊躇っていても仕方がない。えいやっと気合いを入れて再生ボタンを押した。

 

 

 

『深見優クンの動機ビデオ』

 

そのテロップの後誰かのビデオレターが始まった。そこに映っていたのはボクもよく知っている人たち。

 

『あー、えっとー、深見君。って何だかこんな改まって話すのも恥ずかしいな…。』

 

『警部!しっかりしてくださいよー!』

 

それはボクが色んな事件に関わる中で出会ってきた刑事さん達。普段は気さくで優しくて、それでいてひとたび事件となればかっこいい。そんなボクにとって憧れの人たちだ。

 

『んんっ!ごほんっ!じゃあ気を取り直して。深見優君、希望ヶ峰学園入学おめでとう。いつも助けてもらっているボク達としても実の子どもや弟が入学したようなそんな喜ばしい気持ちだよ。』

 

刑事さんたち、ボクのことをそう思ってくれていたんだ…。

 

『希望ヶ峰学園には自分の才能に合わせた成果報告をするシステムがあると聞いているからきっとまた色々会うことがあると思うけど、その時はよろしく頼むよ。』

 

『警部、それ事件が起きてるって事であんまり喜ばしいことじゃないんじゃ…?』

 

『あ、確かに。まあ、事件関係なくたまには遊びに来てくれよ。お菓子とかお茶とか用意して待ってるからさ。』

 

『いっつも落ち着いて話せないから今度深見君の恋バナなんかも聞かせてねー!』

 

楽しく、明るくボクの新たな門出を祝ってくれる刑事さん達。彼らもまさかボクが今こんなことに巻き込まれているなんて思いもしないだろう。でもこの人達にもう一度会うためにも必ずここを生きて脱出しなければならないと思った。だけどこの程度の映像ならボクが殺しを決意するほどの動機にはならないと思ったその瞬間、動画が暗転した。そして次の瞬間、衝撃の映像に切り替わった。

 

『これまで色々な場面で仲良くしてきた刑事さん達。深見クンにとって彼らはいつの間にか大切な人たちになっていました。』

 

そんなモノトラのナレーションと共に流れてきたのはモノトラを模したマスクを被った暴徒とその凶行に対応すべく向かってゆく刑事さん達。最初のうちは警察の方が人数も多く、すぐに鎮圧されるものだろうと思って映像を見ていた。しかし暴徒達の抵抗は激しく、1人、また1人と警察官が倒れていく。そして遂にはボクの知っている刑事さん達にまでその魔の手が伸びた。その瞬間また画面が暗転し、モノトラのナレーションが入る。

 

『世の中で暴れる暴徒達。それを止めるために深見クンと中のよかった刑事達も動きました。しかし、予想外の抵抗に窮地に追い込まれてしまう。一体彼らはどうなってしまったのでしょうか?』

 

最後に映ったテロップと同じ文言のナレーションがボクの心臓を一気に締め上げた。

 

『正解は“卒業”の後で!!』

 

 

 

「…どうなってるの…?」

 

絞り出した一言。それに続いてボクの感情があふれ出す。

 

「どうなったんだよ!!?刑事さん達は!!みんなは!!!無事なのかよ!!!?」

 

くそっ!刑事さん達はどうなったんだ…!!あの動画の続きは!!

いても立ってもいられなくなって部屋を飛び出す。するとそこにみんなが揃っていて、みんなやっぱりあの動画を見て部屋を飛び出してきたようだった。

 

「…やあ、優クン。ヒドイ顔じゃないか。」

 

そう軽口を叩く真理ちゃんの顔も真っ青だ。病院の同僚か家族か、きっとボクが見たようなのと同じような映像を見せられたのだろう。他のみんなの顔も一様に蒼白だった。

沈黙が流れる。誰も言葉を発する気力もないという感じだった。そんな中で1人だけボク達に提案をした人物がいた。

 

「ねぇ、みんなに1つ提案があるんだけどいいかなぁ?」

 

それは大地クンだった。大地クンもまた顔面蒼白ではあったもののそんな中でもボク達に提案をしたいという様子だった。

 

「提案ってのはなんでい?」

「今日これからみんなで映画を見ないぃ?」

「映画?」

「確かにタブレットの映像はショッキングだったけどさぁ、結局それが本当だとは限らないでしょぉ?だからむしろもっと面白い映像を見て上書きしちゃおうよぉ。」

 

確かに彼の言うことは尤もかも知れない。今はディープフェイクなんていう精巧な偽物の動画を作る技術もあるくらいだ。今ここにいるボク達にその真偽を確かめる手段はない。だったらそんな動画のことなんて忘れてしまうのが一番だ。

暗いところで一緒に過ごすというところに不安を感じない人がいなかったわけではないが、それよりもあんな映像のことを忘れてしまいたいという思いが勝ったのか、結局みんなで映画を見ることになった。

 

 

 

軽くお昼を食べて2時頃に映画館に向かうと既に大地クンや雷文クンを始めとする何人かが既に準備をしてくれていた。

 

「で今日は何を見る予定なの?」

「うーん、どうせなら2本くらい見ようかなって思ってるんだよねぇ。でハートフルなのとアクションものと毛色が違うのを見て楽しんでもらおうかなぁって思ってるよぉ。」

 

そんなことを言いながら大地クンは大きなフィルムを運んでいた。すると今度は入り口の扉が開いて2台のカートが入ってきた。ゴロゴロと音を立てて羽月さんと靏蒔さんがカートを運んでいく。

 

「わっ!すごいね。」

「ドリンクにポップコーン!色んな味があるから好きなのを持っていってね!」

「うん、ありがとう。靏蒔さんも!」

「いや、私はただ運ぶのを手伝っただけだ。礼を言われる程のことでもない。」

「それを言ったらうちだって大地君に頼まれたのを作っただけだもん。」

「それならどっちにもありがとうでござる。」

「そ、そうか。」

 

あれ?靏蒔さん、伊達クンにお礼言われてちょっと照れてる…?

そんなことを言っている内にみんなが映画館に集まってきて揃って着席していた。各々好きなドリンクとポップコーンを持って映画が始まるのを今か今かと心待ちにしている。そしてみんなが落ち着いたところで大地クンが映写室へと入っていった。

すると数分の内にシアター内は暗転し、代わりにスクリーンが明るく浮かび上がった。そして大地クンが席に戻ってきた直後映画が始まった。

1本目はアクション映画。国家の諜報機関に所属する敏腕スパイが様々な障壁に行く手を遮られながらもその優れた身体能力と知能を駆使して切り抜けてゆく。

 

「だーっ!!そこはもっとこう!!こうハンドルを切れば速く曲がれんのに!!」

「イッテェ!!バカヤロ速瀬!!上映中に動くんじゃねえ!!」

「うるさいぞ。静かにしろ。」

 

主人公に感情移入して動いてしまう人。その煽りを喰らってしまう人。そしてそのどちらもに迷惑そうにする人。そんな感じで各々の楽しみ方をしている。するとその瞬間、画面の中で爆発が起こる。

 

「っ!!」

 

隣で観ていた真理ちゃんが肩をビクッと震わせる。その様子を見てボクもふふっと笑ってしまう。

 

「…なんだい?」

「いや、ビックリしたんだなーって思って。」

「なんだよぅ。バカにしてんのかよぅ。」

「そんなんじゃないって。ただ変わんないなーって。急に大きな音がするのが苦手なの。」

「人間数年じゃそう変わらないよ。」

「そっか。」

 

真理ちゃんは口を尖らせながらこちらに向けていた目をスクリーンに戻した。

そうこうしているうちに敏腕スパイが傷だらけになりながらも全ての事件を解決して帰ってきた。こうして物語はエンディングを迎えた。

すると一度シアター内が明るくなる。

 

「じゃあちょっと休憩にしよっかぁ。僕は次のフィルムをセットしてくるねぇ。」

 

そう言って大地クンは席を立った。

 

「じゃあうちは飲み物のおかわり持ってくるけどほしい人いる?」

「あ!じゃあオレコーラ!!」

「アタシも!」

「ウーロン茶をもらうでござる!」

「じゃあボクはアイスティーで。」

 

各々ほしい飲み物を注文していく。

 

「それなら私も手伝おう。1人では大変だろう。」

「あ、由衣ちゃんありがと!」

 

そしてカートを転がしながら2人はキッチンへと向かっていった。少しの間待っているとドリンクが届いた。

 

「あ、飲み物持ってきてくれたんだねぇ。ありがとぉ。」

「大地君はいつも通りアイスティーでいい?」

「うん、大丈夫だよぉ。」

 

そう言って大地クンは羽月さんからドリンクを受け取った。

 

「あれ、いつも飲み物を持ってきてもらってるの?」

「うん。よくここに映画を観てるからねぇ。ここの一番後ろの真ん中の席で観るのが好きなんだぁ。それでね、羽月さんもよく来てるしぃ。ついでだから良いよって持ってきてくれるんだぁ。」

「そういうことなんだ。」

 

そんな話をしていると再び大地クンは映写室へと向かっていき、数秒するとシアターが暗転した。

続いて始まったのは恋愛ものの映画。主人公の女の子は目立たない、とは名ばかりのとても美人な女の子。ひょんな事から学校イチののイケメンとそのライバルのイケメンに迫られることになる。まあよくある恋愛映画だ。だけどそれはそれで女子達の好みには合うみたいで、

 

「きゃーっ!うちもあんなことされてみたいなぁ…。」

「かっ顔近すぎないかっ…!?キッキキキキキスしそうだぞ…!!?」

 

なんて話をしながら観ている。いや、靏蒔さんは観ていると言うのだろうか?両手で顔を隠してしまっている。でも指の隙間から見えてそうだな、うん。やっぱ観てはいるみたいだ。

 

「ほうほう、こんなのもあるのか…。」

 

そしてそれは真理ちゃんも例外ではないようで、何かブツブツと呟きながら映画を観ている。

 

「…どうしたの?」

「っ!!なんだい急に。」

「いや、何か言ってたから何か気になるところでもあったのかなーって思って。」

「なんでもないっ!別に大したことじゃないさ。」

「そう?」

 

まあ、これ以上聞いたところで答えてくれそうにないしこれ以上詮索するのはやめておこう。なんならこれ以上聞いたらボクが痛い目を見てしまいそうだ。

そうこうしているうちに物語は進み、ヒロインは相手のイケメンに告白し、彼がそれを受け入れた。色々な傷害を乗り越えた末の結末だった。そんな物語にシアターの数カ所からすすり泣く声が聞こえてくる。恐らく感動して泣いているのだろう。そして2人の幸せの予感を匂わせるそんなラストシーンを迎えて映画は終わり、シアターが明るくなった。

 

「ううっ…。よ、よがっだねぇ…。」

 

羽月さんがボロボロに泣いている。

 

「ああっ。ほんどうによがっだ…!!」

 

雷文クンもっ…!?

他にも同じように泣いている人たちが何人かいた。と言ってもこのままこの場を去るわけには行かないので泣いている人たちの代わりにボクを始めとする泣いていない人たちでッ片付けをした。

そして気付いたときには夕食の時間になっており、みんなはどうやらあの動機ビデオのことは忘れてしまっているみたいだった。ボクはフィルムの片付けを終えて映写室から出てきた大地クンに声をかけた。

 

「あ、大地クン。」

「あれ、深見君まだ戻ってなかったのぉ?」

「うん、念のためね。」

「そっかぁ。もしかして僕に用事でもあったぁ?」

「そういう訳じゃないんだけど…。でもありがとね。」

「んんー?」

「大地クンがこの提案をしてくれたおかげでみんなあの動機ビデオのことは忘れてるみたいだ。大地クンのおかげでコロシアイを回避できるかも知れない。」

「そっかぁ。役に立てたならよかったよぉ。僕もコロシアイは望まないしねぇ。」

「このままみんな無事でいられるといいね。」

「…うん、そうだねぇ。」

「そろそろ夕ご飯の時間になっちゃうし、食堂に行こっか。」

「そうしよっかぁ。」

 

こうしてボク達は食堂へと向かい、みんなで今日の映画の感想を言い合いながら食事をした。それぞれ色んな感想があってスゴく面白かった。そしてその後すぐ部屋に戻ったら急激に眠気が襲ってきてボクは夜時間のアナウンスがなる前に眠りに落ちていった。

 

 

 

 

このままみんなが無事にこのホテルを脱出できるという“希望”を抱きながら…。

 

 

 

 

【モノトラ劇場】

 

「映画ってのは何がおもしれーのかよく分かんねーんだよな。」

 

 

「あれはフィクションだろ?」

 

 

「っつーことはよ、要は嘘ってことだ。」

 

 

「嘘なんて吐かれてもだーれも得しねーだろ?」

 

 

「なのになんで人間っつー生き物は」

 

 

「わざわざ金を払ってまで嘘を吐かれに行くのかね?」

 

 

「ただでさえこの世の中は嘘だらけだっつーのに」

 

 

「自分の趣味くらいは本物の中で生きていてーよな。」

 

                    ・

                    ・

                    ・

 

【生存者】

超高校級の探偵          深見優(フカミユウ)

超高校級のレーサー        速瀬マハ(ハヤセマハ)

超高校級のバスケットボール選手  雷文竜(ライモンリュウ)

超高校級の外交官         金谷秀征(カナヤシュウセイ)

超高校級のバドミントン選手    羽月翔子(ハツキショウコ)

超高校級の医者          津田真理奈(ツダマリナ)

超高校級の歴史学者        伊達小十郎(ダテコジュウロウ)

超高校級の大工          鷹岡筋次(タカオカキンジ)

超高校級の数学者         言村香奈(コトムラカナ)

超高校級の???         鏑木麗(カブラギレイ)

超高校級のハッカー        クレイグ・ホワイトバーチ

超高校級の弓道家         靏蒔由衣(ツルマキユイ)

超高校級の地主          大地真英(ダイチマサヒデ)

超高校級のバイオリニスト     木田結弦(キダユヅル)

 

残り14人




今回で2章の動機発表も終わりました!あの映像がみんなの心にどんな影響を及ぼしてしまうのでしょうか…。そしてどんな事件に繋がってしまうのでしょうか…。ああ、恐ろしや恐ろしや…。
さて、話は変わりまして祝!超探偵事件簿RAINCODE発売!!!21年に発表があってから1年半、首を長ーくして待っておりました。自分の色んなことのモチベにもなっておりました。それ故に発売日には日をまたいだ瞬間から初めてそのままSwitchの充電が切れるまでやっておりました。そんなもんだから2日ちょっとで終わりました笑。でもやっぱりスタイル変わってないなと思い、すっごく楽しませていただきました。つきましてはまた新しく僕達を“絶望”させてくれると嬉しいなぁなんてまた思ってしまった次第でございます。


長々と話し込んだところで今回の設定裏話です!今回は鏑木クン編です!
鏑木クンはこれまでの描写からも分かるとおり、自分の才能の記憶を失っております。一体なぜ黒幕は才能の記憶を奪ったのでしょうか…?そして一体どんな才能なのでしょうか…?でもどうやら鏑木クンの反応を見る限りその才能はその幼少期を過ごした孤児院にも何か関係があるようです。その詳細は鏑木クンが才能に関する記憶を思い出すのを待つことに致しましょう。
名前に関してなのですが、鏑木という苗字に関してはまさにその謎多き才能に関連付けていますので、その説明はもう少し後に出来たらなと思います。そして名前の麗は鏑木クンのクールで無愛想ながらも綺麗な顔立ちをしているイメージから付けました。
まだまだ謎の多い鏑木クンに関しても色々注目して見てもらえればなと思います。

という訳で今回はここまで!また次回お会いしましょう!


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CHAPTER2 (非)日常編4

キーン、コーン… カーン、コーン…

 

「おはようございます。7時です。今日も1日元気に頑張りましょう。」

 

もう朝、か…。前の事件は動機発表の翌日のこのタイミングで起こったんだよな…。昨日みんなで映画を観てあんな動画のことを忘れた雰囲気があるとは言えやっぱり不安だ…。

でもそんなこと言ってたって仕方ない!みんなの絆はきっと昨日深まっているはずだ。

そう気合いを入れ直して食堂に向かった。

 

「おーっす深見!」

 

雷文クンが明るく挨拶をしてくる。やっぱり大丈夫そうだ。

そうこうしているうちにみんなが集まってきた。念のため人数を数えてみるときちんと14人全員が揃っていた。そう簡単にコロシアイなんて起こるものではないんだ。そう少し安心できたところで朝食をみんなと一緒に食べた。

食事を食べ終わってみんなで片付けをしていると、言村さんが真理ちゃんに何やら話しかけていたが、さすがに女の子同士の会話に割って入るわけにもいかないので何か相談事でもあるのだろうというところでボクはその場から離れた。もしお医者さんに相談が必要なデリケートな話だったりしたら本当に悪いしね。

 

「…ヒマか?」

 

そんなこんなでキッチンの近くでボーッとしていると鏑木クンに声をかけられた。

 

「どうしたの?」

「…少し頼み事がある。」

「それって?」

「…護身術を教えてほしい。」

「ボクの?」

「…ああ。前回の捜査中にクレイグに技をかけているのを見て素晴らしい技術だと思った。ずっと教わりたいと思っていたんだが中々声をかけられていなくてな」

「いいけどどこでやるの?」

「…トレーニングルームでいいかと思っているんだがどうだろうか。」

 

うーん、少し狭いような気もするけど護身術なんて大概使う場所も狭いからいいか。鏑木クンも自分の身を守りたいんだろうし。

 

「うん、いいよ。やろっか。」

 

そんな話をしてトレーニングルームに入ると既に雷文クンと鷹岡クンが筋トレしていた。

 

「おう、優の字、麗の字、珍しいじゃねえか。筋トレか?」

「実はちょっと違うんだ。」

「…深見に護身術を教わろうと思っている。」

「それってアレか?クレイグにかけてたって奴。」

「みんなそのイメージなんだ…。でもそれだよ。」

「面白そうじゃねえか。どうせならオイラ達にも教えてくれよ。」

「お、いいなそれ!」

「鏑木クンが良いのであれば…。」

「…構わない。むしろ色んな人間と実践した方が習得も早いだろう?」

「うん、それも一理あるね。」

 

こうしてボク達はお昼の時間になるまで護身術の訓練を4人で行った。

そして昼食後。

 

「…深見、午後も少し練習に付き合ってもらって良いだろうか。忘れない内にもっと身体に動きを染みつけさせたい。」

「うん、分かった。雷文クン達はどうする?」

「うっし、なら付き合うぜ!」

「オイラもでい!」

 

午前中は比較的基本的なことをやったので、午後は少しずつ実戦に近い技や動きのトレーニングをした。やっぱり3人ともボクよりも運動神経がいいのでスポンジのように技術を吸収していった。そうこうしているうちに時計を見たら2時を過ぎていた。

 

「じゃあ今日のところはここまでにしよっか!もしもっとやりたいってなったら明日以降も教えるからさ。」

「…ああ、ありがとう。」

「ま、ムリしてケガしたらそれこそ護身術を使えるようになった意味がねえからな!」

「よし、じゃあオイラはもっと鍛えて技の重さが上がるようにしておくぜ!」

「乗った!!」

「…私はもう少し動きの確認をしてから部屋に戻る。」

「うん、じゃあボクは先に戻るね。」

 

こうしてボクは3人に別れを告げて部屋に戻った。

 

 

 

部屋で汗を軽く拭いて着替えたところで喉が渇いてきた。まあそれも当たり前か。なんだかんだで4時間以上護身術の訓練をしていたんだから。

そういうことでボクはキッチンに飲み物を取りに行った。

職員宿泊棟を1歩出たその瞬間、

 

「ふっかみちあああああああああ!!!!!」

 

クレイグクンがボクに何かしようとしてきたので咄嗟に腕を取って放り投げた。

 

「いつつ…。深見ちん前より技のキレ上がってない?」

「あー、さっきまで訓練してたからかな?身体が動くのかも。」

「かー、熱心だねぇ。俺ちんそんな頑張れねえわ。んじゃまた後でー。」

 

褒められてるのかよく分からない言葉を言いながらクレイグクンは部屋へと戻っていった。その直後、

 

「クレイグさんも懲りませんのね。」

 

今度は木田さんが話しかけてきた。

 

「木田さん。まあすぐ対処できるから問題ないんだけどね。」

「やりすぎませんようにね。わたくし嫌ですわ、学級裁判で貴方を敵に回すの。」

「あはは、気を付けるよ。」

 

悪い冗談だ…。でも気を付けよう。

すぐに木田さんと別れてキッチンに入ると中では速瀬さんと金谷クンが何か話していた。

 

「2人ともどうしたの?」

「ただの世間話だ。お前こそどうした。」

「いやあちょっと喉が渇いて。」

「どうせなら倉庫からお菓子も持ってこい。ちょっとしたお茶会だ。」

 

あ、持ってくるのは完全にボクの仕事なのね。まあいいけど。

倉庫に入ってお菓子の棚に向かっていたその時、

 

「うわあ!」

 

何かの箱に足を引っかけて転んでしまった。

 

「いったた…。誰だろうこんなところに箱を出しっぱなしにしたの…。」

 

そう思いながら箱の方を振り返ると中には大量の掃除用具なんかを引っかけておくようなフックが入っていた。誰かが部屋の整理をするのに持ち出したんだろうか。

 

「そいつぁただのフックじゃねーぜ!」

「うわっ!何さ?」

「そいつはモノフック!見た目は普通のフックだが、圧倒的な強度を誇り、1トンだろうと支えちまう。ワイヤーさえ保てばな。」

「なんでそんなものがここにあるのさ?」

「フックなんてどこでも使うだろ?強いに超したことはねーじゃねーか。」

「それもそっか。」

 

っと、そろそろお菓子を持って行かないと2人に文句を言われそうだ。

ボクは倉庫の中から色々お菓子を見繕って2人のいる厨房に戻った。

 

 

 

「そういや優、今日ずっといなかったよな?何してたんだ?いつもなら適当にホテルん中プラプラしてんだろ?」

「ああ、それなら今日は鏑木クンに頼まれて護身術を教えてたんだ。」

「なんだそれ、カッケー!!お前そんなの使えんのかよ!!」

「覚えていないのか。前に学級裁判で話題になっただろう。」

「そうだっけ?」

「うん、話に上がったかな。でね、最初は鏑木クンにだけ教える予定だったんだけど、気付いたら雷文クンと鷹岡クンにも教える感じになっちゃって。」

「なんだよー。そんな面白そうなことアタシも誘ってくれよー!!」

「多分明日もやると思うけど速瀬さんも来る?」

「おう!行く行く!!秀征も来るだろ?」

「俺は行かん。」

「ははーん、自身がねえんだな?恥ずかしい姿晒すと思って逃げてんだろ?」

「…む。いいだろう、やってやるよ。おい、深見。俺も明日は参加する。」

「あはは、ケガはしないようにね。」

 

そんなこんなでキッチンで話している内に羽月さんがカートを押してやってきた。

 

「あれ、こんなとこで何してんの?」

「お茶会?」

「え、何それ!うらやましい!!うちも混ぜて!!」

「うん、いいよ。」

 

羽月さんも交えたお茶会は途中トイレでの抜けとかはあったけれど思いの外盛り上がって、気付いたら時間は4時になろうとしていた。

 

「あー楽しかった!ありがとね!」

「もう行っちまうのか?」

「ちょっと頼まれごとをしてて。」

 

そう言って羽月さんは立ち上がった。

 

「翔子は別にアタシらの召使いじゃねえんだ。自分でやらせりゃいいじゃねえか。」

「うちがやったげるって言ったんだからいいの!じゃあ行ってくるねー!」

 

そうして速瀬さんの心配をよそに明るく羽月さんはキッチンを出て行った。

 

「なら俺達もこのあたりでお開きにしておくか。」

「うん、そうだね。」

 

羽月さんを仲間はずれみたいにしてしまうのも申し訳ないのでボク達も片付けをして部屋に戻ろうとした。その瞬間。

 

 

 

 

「イヤアアアアアァァァァァァァァァァ!!!!!!!!」

 

 

 

 

耳を劈く絶叫。それはホテル中に響いていた。

 

「今のは…!?」

「翔子の声じゃなかったか!!?」

「聞こえた方向は多分2階…?」

 

ボク達は片付けを放り出して急いで2階へと向かう。エレベーターを待つのも惜しい。階段を使って上っていき、廊下を駆け抜ける。すると映画館の入り口から少し入ったところで羽月さんが口を押さえたまま座り込んでいる。

 

「羽月さん、大丈夫!!?」

 

その問いかけに彼女はふるふると首を横に振りながら指をゆっくりとどこかへと向ける。その指先に誘導されて目線を向けた瞬間。

 

 

 

ピンポンパンポーン…

 

「死体が発見されました。一定の捜査時間の後学級裁判を行います。」

 

 

 

非情な宣告。そしてそのアナウンスが示すものが何かはすぐに分かった。

 

 

 

 

“超高校級の地主”大地真英は頭を砕かれその人生の物語に幕を閉じていた。

 

 

 

 

 

CHAPTER2 我がクララに愛を込めて  非日常編

 

 

 

 

 

「何だよこれっ…!」

「…また、起こったというのか…!“コロシアイ”が…!」

 

ボク達がまだ目の前で起こっている現実を受け止めきれずにいる内にどんどんみんなが映画館へと集まってきて各々、事態に対する反応を見せていた。

 

「くそっ!またこんなことが起こってしまったのか…。」

「大地殿…。」

「……。」

 

そしてみんなが立ち尽くしていると、

 

「よおオマエラ!またコロシアイが起こったみてーだな!!ってなワケでオマエラにコイツを持ってきてやったぜ!!」

 

モノトラが場の空気を読まない底抜けに明るい声で現れた。そして消沈するボク達1人1人に“モノトラファイル”を手渡していなくなった。そして手に残されたタブレット端末の重みがボク達に大地クンが死んでしまったこと、そしてコロシアイが再び起こってしまったことを強く実感させた。

 

「…でもやらないわけには行かないよな。」

 

だってここで何もしなければボク達はみんな死んでしまうのだから。

この手で必ず真実を暴いてみせる…!

 

 

 

-捜査開始-

 

まずはモノトラファイルかな。

 

 

モノトラファイル2

被害者は“超高校級の地主”大地真英。死亡推定時刻は14時40分頃と見られ、死体発見現場は映画館。死因は鈍器のようなもので頭部を殴られた事による頭蓋骨陥没骨折で、即死。被害者に抵抗した痕跡はなく、不意打ちだったものと思われる。

 

 

大地クンは不意打ちで頭を殴られた事による即死、か。苦しまなかったと思われることだけは唯一の救いかも知れない。それに死亡推定時刻も分かってるからこの時間のみんなのアリバイも調べて見る必要があるな。

 

「深見、おめえ、捜査すんのか?」

「うん。みんなの命が懸ってるからね。」

「そうか。うし、オレは頭がよくねえかんな、鷹岡と一緒に現場の見張りをしとくぜ。」

「うん、お願い。」

「それならボクは前と同じく検死に入るよ。」

「分かった。」

 

これで現場の見遣り役と検死役も決まったことだし、本格的に捜査を始めようか。

 

 

 

コトダマゲット!

【モノトラファイル2)

被害者は“超高校級の地主”大地真英。

死亡推定時刻は14時40分頃。

死体発見現場は映画館。

死因は鈍器のようなもので頭部を殴られた事による頭蓋骨陥没骨折で即死。

被害者に抵抗した痕跡はなく不意打ちだったのではないかと考えられる。

 

 

 

まずは…、第一発見者に話を聞いてみようか。青い顔をしているところを申し訳ないけどボクは羽月さんに話を聞きにいった。

 

「羽月さん、大丈夫?」

「うん、何とか…。ところで深見君どうしたの?」

「こんなことがあってすぐで悪いんだけど、発見時の状況を聞きたくて。」

「わかった。話すよ。えっとね、深見君達とお茶会した後にさ、うちワゴンを持って出てったでしょ?それって大地君に頼まれて映画館で食べたものの片付けをしようとしてたんだ。」

「なんでそもそも羽月さんがそれを言い出すことになったの?」

「それは単純でね、昨日みんなで映画見たときと同じでポップコーンとドリンクを持ってきてほしいって頼まれたからだったら片付けもしようかー、って訊いたんだ。」

「ちなみにそれって何時くらい?」

「えっと、2時にはなってなかったと思う。そこから映画を2時間観るから4時くらいに取りに来て、って頼まれて取りに来たらこんなことに…。」

「そっか、そういうことだったんだね。ちなみに14時40分、モノトラファイルによると大地クンの死亡推定時刻なんだけど、このときって羽月さんは何してたの?」

「えっとその頃はー、そうだ!真理奈ちゃんの部屋にいたよ!真理奈ちゃんと香奈ちゃんと3人で10分ちょっとおしゃべりしてて大体その頃が2時40分くらいだったと思う。」

「うん、分かった。ありがとう。」

 

 

 

コトダマゲット!

【羽月の証言)

14時頃に大地にポップコーンとドリンクを届けた。

その2時間後に頼まれた通りに食べたもののゴミを回収しに来たら大地の死体を発見した。

 

 

 

よし、じゃあ次は…。

 

「深見、少し良いか。」

「ん?どうしたの、靏蒔さん?」

「いや、少し気になることがあってな。」

「気になること?」

「先日ここを調べたときに上映中はドアのロックは閉まって出入りできなくなる、という話だっただろう?だが大地の様子を見る限り彼は映画を観ている途中に殺されたようだ。だとしたら犯人はどこに行ったんだ?」

「そういえば…。ちょっと待ってて!ごめん羽月さん!」

「どうしたのー!!」

「もう一個聞きたいことが出来た!」

「そっち行くね!」

 

……

 

「で、聞きたい事って?」

「ここの映画館って上映中はカギがかかって出入りできなくなるんだけど、羽月さんが発見した前後に映画館の中でも外でも怪しい人って見た?」

「うーん、見てない…。なんで?」

「えっとね、映画館の構造上犯人は大地クンを殺した後この映画館は出られないハズなんだ。だから本来大地クンが映画を見終わるタイミング、つまりロックが解除された直後に映画館に来た羽月さんなら誰か見てないかと思ったんだけど…。」

「そっかぁ。でもやっぱ見てないなぁ。」

「そっか、ありがとう。」

「つまり死体発見時には犯人は現場周辺にはいなかった、と?」

「そういうことになるね。」

「つまり事件発生時現場は密室だった、というワケか。」

「穴はまだあるかもしれないけどね。」

 

 

 

コトダマゲット!

【ドアのロック)

映画の上映中はドアにロックがかかり、外からも中からも出入りできなくなる。

 

 

 

「あ、そうだ。靏蒔さんは事件発生時どこにいたの?」

「それなら大浴場にいた。」

「1人で?」

「1人と言えば1人だが、1人じゃないと言えば1人じゃない。」

「哲学?」

「女子風呂には私しかいなかった、というだけだ。」

「男子の方には誰かいたってこと?」

「ああ、伊達がな。」

「誰がいたかまで分かってるの?」

「会話したからな。石鹸を借りた。」

「ボディーソープなかったっけ?」

「あの手のはあまり合わなくてな。固形石鹸の方が私は良いんだが、不覚にも忘れてしまったんだ。そしたらたまたま隣に同じく固形派の伊達が来たんで借りたんだ。伊達にも聞いてくれ。確認が取れるはずだ。」

「うん、そうしてみるよ。ありがとう。」

 

まあこんな嘘を吐く方が自分に不利になるし、恐らく正しいんだと思う。念のため確認はするけど。

えーっと、真理ちゃんはまだ検死してるみたいだから、別のところを調べてみよう。そう言えばドアのロックの制御スイッチが映写室にあったはずだ。そっちを一度調べて見ようか。

 

 

 

映写室の電気を点けて周りを見回してみると、映写機は映画が終わったときのままになっているみたいだ。

映写機の目の前にはスクリーンに映像を映すための小窓があり、そこからは大地クンの死体がよく見える。

 

「ってことはこの映写機は大地クンの死体の真後ろにあったってことか…。」

 

しかもこの小窓は劇場内の床から見てもそこまで高い位置にはない。ということは不用意に目の前に何かが通ればスクリーンに影が映ってしまうかも知れないな。

 

 

 

コトダマゲット!

【映写機)

今回使っていたものは大地の席のちょうど真後ろにあった。

高さはそこまで高い位置にはなく、目の前に何かが通ったらスクリーンに影が映ってしまうと思われる。

 

 

 

次に視線を移すとその先にあったのはフィルム。映写機にセットされたままになっている。

 

「このままっていうのもアレだし、外して棚に戻しておくか。」

 

ガチャっという音と共にフィルムを外した。けれどその瞬間違和感に気付いた。

 

「あれ、これ小さくない…?」

 

ボクの中での映画のフィルムのイメージと言えばもっと大きかったような気がする。このフィルムはせいぜいが20cm強ってところだ。

 

「それは単純に記録時間が短いからだろう。」

「金谷クン。記録時間が短いってどういうこと?」

「別に2時間と尺が決まっているわけじゃないんだ。時間が短い映画だってあるだろう。」

「それはそうだろうけどフィルムを見ただけで分かるの?」

「まあな。そのサイズならせいぜい40分といったところだろう。単純な知識の問題だ。」

「そうなんだ…。」

 

あれ?でも羽月さんは大地クンに2時間後に来てほしいって頼まれてたんだよな…?なんでこっちの映写機には40分映画のフィルムがセットされてるんだろう…?

 

 

 

コトダマゲット!

【フィルムのサイズ)

映写機にセットされていたフィルムの収録時間は約40分ほどのものだった。

 

 

 

この時間の矛盾は裁判で考えていくとして、とりあえずこのフィルムを棚に…。

ってあれ?この棚フィルムをしまう隙間がないぞ?だって1本この場にあるんだからそんなワケないのにな…。

一度手に持ったフィルムを安全なところに置いて棚を調べて見る。

 

「…これはフィルムじゃないな。」

 

すると棚の中のフィルムに混ざってフィルムじゃない円盤状の何かが紛れ込んでいた。それを引っ張り出してみるとそれは血痕の付いた直径20cm、重さ5kgほどのバーベルの重りだった。

 

「これ…!」

「凶器か…。」

 

しかも血液が結構固まってしまっている。そこそこの長い時間放置されていたんだろう。

 

「犯人はこれで被害者を殴打、形が近いことを利用してフィルムの棚に隠した、といったところか。」

「多分ね。でもそれだけじゃなさそうだよ。」

「どういうことだ?」

「これよく見てみて。血痕のところ。何本か筋が入ってるでしょ?」

「そうだな。」

「つまりこの重りに血が付着したときにはこの重りには何かが縛りつけてあったって事だよ。」

「…!なるほどな。」

「ね、まだ色々謎が残ってそうでしょ?」

「少なくとも判断を付けるのは早そうだ。」

 

恐らく凶器と思われるこの重り、そしてその重りに付着した血液の妙な点。色々考えるべき事はありそうだ。

 

 

 

コトダマゲット!

【バーベルの重り)

フィルムをしまう棚に入っていた。大きさは直径20cm、重さは5kgほど。

血液が付着しており、これが凶器であると考えられる。

 

【重りの血痕)

被害者のものと思われる血痕。よく見てみるよ何本か筋のように途切れており、血液の付着時になにか紐のようなものが縛りつけてあったと思われる。

 

 

 

思いがけない発見があったな。でも本来の目的は部屋の奥で存在感を放っているスイッチだ。レバー状になっていて映画館の入り口のドアのオートロックシステムのオンオフを司る。もしこれに動かされた形跡があるのであれば犯人は上映中であっても映画館の出入りが可能であった、ということだ。ということで調べて見たが最初に見たときと同様ほこりを被っていて全く動かした形跡はない。

 

「何を見ている?」

「映画館のドアが上映中にロックされる機能のスイッチだよ。これに動かされた形跡があれば犯人は上映中でも映画館をできたって考えられるんだけど…。」

「その考えは外れた、と。」

「そういうこと。つまりこの映画館は」

「“密室”だったという訳だな。」

「ドア自体を調べられてないから確定ではないけどそういうこと。第一発見者の羽月さんも誰も見ていないらしいしね。」

「俺達もそんなに時間は空けていない。その証言は信じてもいいだろう。」

 

でもこれでかなり厄介になったぞ…。

 

 

 

コトダマアップデート!

【ドアのロック)

映画の上映中はドアにロックがかかり、外からも中からも出入りできなくなる。

映写室にオンオフのスイッチがあるがほこりを被っていて誰も触れた形跡はない。

 

 

 

よし、映写室はこんなところかな。

映写室を出ると真理ちゃんから呼びかけられた。

 

「やあやあ優クン、検死が終わったよ。」

「あ、ほんと?」

「検死の結果を伝えるからこっちに来てくれ。そしたらあとは周囲を自由に調べてもらって構わないさ。」

「うん、よろしく。」

 

さてさて、どんな検死結果が出たのやら。少し緊張しつつもボクはゆっくりとその足を真理ちゃんの方へと向けた。

 

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【生存者】

超高校級の探偵          深見優(フカミユウ)

超高校級のレーサー        速瀬マハ(ハヤセマハ)

超高校級のバスケットボール選手  雷文竜(ライモンリュウ)

超高校級の外交官         金谷秀征(カナヤシュウセイ)

超高校級のバドミントン選手    羽月翔子(ハツキショウコ)

超高校級の医者          津田真理奈(ツダマリナ)

超高校級の歴史学者        伊達小十郎(ダテコジュウロウ)

超高校級の大工          鷹岡筋次(タカオカキンジ)

超高校級の数学者         言村香奈(コトムラカナ)

超高校級の???         鏑木麗(カブラギレイ)

超高校級のハッカー        クレイグ・ホワイトバーチ

超高校級の弓道家         靏蒔由衣(ツルマキユイ)

超高校級のバイオリニスト     木田結弦(キダユヅル)

 

残り13人




はい、という訳でついに事件が発生してしまいました…。皆さんの予想としてはどうでしたでしょうか?死んだメンバー誰なのか、当たったでしょうか?
次回も捜査編が続いていくわけですが、一体誰が大地クンを殺したのでしょうか…。


それでは今回の設定裏話です!今回はクレイグ君のお話です!
クレイグ君はこれまでにも話があったとおり、あんな性格ですが様々なサイバーな事件を解決し、警察内では深見君と同じくらいその名が知られています。なぜあんな性格になってしまったかというと、彼自身は幼い頃からパソコンを弄るのが大好きでした。ですが、その趣味が災いし、周囲からは根暗な機械オタクとしていじめに遭ってしまい、不登校になってしまいます。その後色々な手段を用いていじめっ子達は破滅に追い込むのですが、人間不信は直らずあんな感じで周囲の人をどこか見下し、小馬鹿にするような態度を取ってしまっている、という訳です。
名前に関しては、一応ホワイトハッカーにあたる、ということで「ホワイト」と付く苗字を付けようということで「白樺」の英語訳とたまたまキャラ設定を考えていたときに耳に入ってきた外国の方の名前からクレイグ、となりました。
いつか彼のひねくれた性格が同じ超高校級の仲間達とのふれあいの中で少しでも直ると願って今回は終わりたいと思います!


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CHAPTER2 非日常編ー捜査ー

真理ちゃんの検死が終わったみたいだし話を聞いてみよう。

 

「真理ちゃん、何か分かった?」

「よーし、話してやろう。まず大地クンの死因だが、まあモノトラファイル通り頭部の陥没骨折で間違いないみたいだ。」

「ふむふむ、あとは?」

「ちょっと気になるところがあったね。」

「それは?」

「大地クンの頭の傷の位置と形さ。まず大地クンの傷は頭頂部にあった。ボクも医者だからね。撲殺された死体も何度か見たことあるけど大概その場合頭部の傷は後頭部にあった。そりゃ後ろから忍び寄るからそうだよね。そういう意味では一般的な傾向から外れていると言えるね。傷の形は横に長い長方形だ。それを見る限りハンマーやバールと言った一般的な凶器を使ったものだとは考えにくいね。」

 

だとしたらやっぱり凶器は…

 

 

 

コトダマゲット!

【大地の傷)

傷は頭頂部に横に長い長方形の傷が付いていた。

津田曰く、一般的な鈍器による撲殺と比較すると傷の形状や位置が不自然である。

 

 

 

あ、そうだ。真理ちゃんには聞いておかないといけないことがあったんだ。

 

「ねえ、真理ちゃん。今日羽月さんが真理ちゃんの部屋に行ったって言ってたんだけど何か話を聞いたりしてる?」

「ああ、その話か。ちょうどその時間にね、香奈さんがボクに相談があると言うんで部屋に招き入れたんだ。どうせならお茶でも飲みながら話をしようと思って翔子さんには紅茶と香奈さんの好きなココアとお菓子を届けてもらったよ。まあ、結局話し始める前に15分くらい世間話をしてしまったけどね。」

「それって何時くらい?」

「確か2時半くらいじゃなかったかな?雑談が終わったら彼女はキッチンに戻ると言っていたね。」

 

そこから15分話し込んでいた、ということは少なくとも羽月さんが真理ちゃんの部屋を出たのが2時45分ごろ。その頃までは確実に3人は一緒にいたわけだな。その後はボク達と一緒にいたのはボク達が一番よく知ってる話だし。

 

 

 

コトダマゲット!

【津田の証言)

2時半頃言村と話すにあたって羽月に紅茶、コーヒー、お菓子を届けてもらった。

15分ほど雑談をした後羽月はキッチンへと戻っていった。

 

 

 

真理ちゃんの話が本当だとすると3人は犯行時刻の頃は雑談の最中だったということになる。2人の証言がある程度一致しているし疑う余地はないとは思うけど念のため言村さんにも後で話を聞いておくとしよう。

真理ちゃんの検死が終わったって事は死体の周りを調べられるって事だ。ここは念入りに調べておこう。

 

「あれ、この床随分傷ついているな。」

 

気になったのは大地クンの座る席の真後ろの床。床にはカーペットがあるため目立ってはいないが近くで見ると深くヘコんでいる。

 

「背もたれもか…。」

 

視線を上へと移すと、大地クンが座っているイスの背もたれの上部もヘコんでいた。

 

「なんでこんなところが…?」

 

殴った時に勢い余ったのだろうか?でもそれじゃあ床の傷の説明が付かない。少なくとも重いものがぶつかったんだろうとは思うけどここは学級裁判の中で推理していくしかないか…。

 

 

 

コトダマゲット!

【イスのへこみ)

大地が座っていたイスの背もたれにへこみが出来ていた。

重いものがぶつかったと考えられる。

また、そのすぐ下の床にも傷が付いていた。

 

 

 

さて、他には…。

大地クンの死体の方に目を遣るとその近くにはポップコーンとドリンクが置かれていた。恐らく羽月さんが持ってきたものだろう。

ただそこには少し違和感があった。

 

「…そうか!手を付けた痕跡がないのか…!」

 

映写室の状況やこれまでの大地クンの行動を考えれば彼がここに映画を見に来たのは明白だ。そう考えればポップコーンやドリンクも映画のお伴として用意したはずだ。ならば全く手を付けないっていうのは考えにくいよなぁ。なんでこんな丸っきり中身が残ってるんだろう…?

 

 

 

コトダマゲット!

【ポップコーンとドリンク)

羽月が大地に頼まれて持ってきたもの。しかし手を付けた痕跡がない。

 

 

 

そろそろ他のところも捜査してみるか…。

そう思ったその時鷹岡クンが巨大な脚立を抱えて映画館に入ってきた。

 

「どうしたの?」

「いや、ちっと気になったことがあったんで調べて見ようと思ってな。」

「気になったこと?」

「なんでい、優の字は気付かなかったのか。じゃあちっと待っててくれ。」

 

そう言うと鷹岡クンは慣れた足取りで脚立を登っていく。そして大地クンの死体のちょうど真上の梁を目視で確認するとうんうんと頷きながら降りてきた。

 

「まあ見てもらった方が早え。ちっとあの脚立に登ってみな。」

 

鷹岡クンに促されるまま脚立に登る。って言うかこんな5メートル近い脚立どこにあったんだ…。

 

「落ちねえように気ぃつけながらちょうど真の字が死んでる辺りを見てみろ!!」

 

鷹岡クンの言うとおりに梁を見てみるとちょうどそこに細い傷が残っていた。鷹岡クンが気になっていたのはこれのことか。

一度脚立を降りてから鷹岡クンに話を聞く。

 

「よくあの傷を見つけたね?」

「おう!大工だからな!あのくれえの傷を見つけるのなんざ朝飯前よ!!」

「なんであんなところに目を付けたの?」

「あー、普通に作ったらあんなとこに傷なんて出来ねえだろ?何の傷かは分かんねえけどよ。」

「多分アレは糸とか細い紐で擦った痕だと思うよ。」

「事件と関係しそうか?」

「うーん、分からないけど明らかにおかしいし覚えて置いて損はないかも。」

 

 

 

コトダマゲット!

【天井の梁)

床から約5メートルほどの高さにある。

大地の死体の真上の部分に糸や細い紐で擦ったような痕がある。

 

 

 

後鷹岡クンにはこれを聞いておかなくちゃ。

 

「鷹岡クン。」

「おう、なんでい?」

「護身術の練習の後事件の起きたときってどこにいた?」

「アリバイって奴だな!事件が起きたときっつうと2時40分くれえだよな?だとすると…、まだジムにいたぜ。」

「ずっといたの!?」

「おうともよ。竜の字と麗の字もいたぜ。」

「そっか、ありがとう。」

 

3人いたとなるとまあ、この3人のアリバイは間違いないだろう。念のためどちらかに会った時には確認しておくとしよう。

一通りこんなところかな。そろそろ映画館の外も調べて見ようか。

 

「…!こんなところにつまみなんか付いてたんだ。」

 

映画館を出ようとドアを少し開けたときボクはその手すりの近くにあったつまみに気がついた。これは言うまでもなくカギのつまみだろう。そうなると犯人はもしかしたら出入りできたかも…。

 

「ああ、ムリでござるよ!」

「伊達クン、どういうこと?」

「昨日の鑑賞会の時途中でトイレに行こうとしたでござるがカチンコチンで動かなかったでござる。おかげで漏す寸前だったでござるよ。」

「そっか…。」

 

漏してたら大惨事だったな…。

 

「じゃあ調べてもあまり手掛かりはないかなぁ。」

 

そんな話をしながら何となくつまみを捻ってみる。今はドアが少し開いているからカギは掛っていないけど、本来ならドアを開けさせないようにするための四角の金具が飛び出してきた。するとその縁の一部には少し傷が付いていた。

 

「あれ、これなんだろう。」

 

一度ドアを閉めてもう一度カギをかけてみる。するとちょうどドアの隙間から金具の傷が見えた。

 

「ドアの隙間にピッタリ合う位置に傷か…。何か引っかけていたのかな…?」

「外に行かないでござるか?」

「ん。ああ、ちょっと気になることがあったんだ。」

「ドアにでござるか?」

「うん。ドアのデッドボルトに不自然な傷があってね。」

「でっ…何と?」

「デッドボルト。ほら、カギを閉めたときに出てくる四角い金具があるでしょ?アレのこと。」

「あれそんな名前だったでござるか。1つ利口になったでござる。で、そのデッドボルトがどうしたでござる?」

「さっきも言った通り不自然な傷があったんだ。まあ、正体が分からないから裁判の中で説明するよ。」

「分かったでござる。」

 

 

コトダマアップデート!

【ドアのロック)

映画の上映中はドアにロックがかかり、外からも中からも出入りできなくなる。

映写室にオンオフのスイッチがあるがほこりを被っていて誰も触れた形跡はない。

ドアの内側には手動で動かせるカギのつまみも付いているが、伊達によると上映中は動かせないとのこと。

 

コトダマゲット!

【デッドボルト)

縁に何かを引っかけたような傷が残っていた。

 

 

 

そして伊達クンにも聞いておくことがもう1つ。

 

「伊達クン、さっき靏蒔さんから事件発生時にちょうど2人で大浴場にいたって聞いたんだけどほんと?」

「言い方に語弊があるでござるっ!!?でもまあ間違いないでござるよ。某、靏蒔殿に石鹸を貸したでござるから。きちんと帰ってもきたでござるよ。」

「うん、ありがとう。」

 

2人の証言が一致した。しかも石鹸を通して2人ともちゃんと大浴場にいたことも分かった。つまりこの2人はシロだろう。

こんどこそ外を調べよう。まずはやっぱり映写室で見つけたアレが本来あったであろうあそこだ。

 

 

 

ジムに行くと既に雷文クンと鏑木クンが捜査をしていた。

 

「おう、どうした?」

「実は映画館で見つかったものが恐らく本来ここにあったものだろうと思ってね。」

「…凶器か?」

「多分ね。」

「凶器と言えばオレも気になったことがあったんだ。」

「それって?」

「ここに置いてあったバーベルの重りが足んねえんだ。アレなんかメチャクチャ重いしもしかしたらと思って来てみたんだ。どこ行っちまったんだろうなぁ?昨日来たときには確かにあったハズなんだがよ?」

「…何か心当たりはあるか?」

「多分雷文クンのカンは大当たりだよ。映写室に血の付いたバーベルの重りが隠されてたから。」

「やっぱりか。」

「…つまり犯人は雷文が昨日最後にここに来た後重りを取りに来て犯行に用いた、ということか。」

 

 

 

コトダマゲット!

【雷文の証言)

5キロの重りが1枚なくなっていた。

昨晩の時点では確実に存在していた。

 

 

 

「でもそれも妙な話だよな。だって人を殴るだけだったらダンベルとかだってあんだろ?なんでわざわざあんな使いにくいの使ったんだろうな?」

「正直まだ分かってないかな。昨日は何時までいたの?」

「昨日は映画も観て疲れてたからそんな遅くまではいなかったぞ?せいぜい8時だ。」

「じゃあ持ち出す時間の余裕はありそうかな。あ、そうだ。時間と言えば2人とも事件が起こった時間にはここにいたんだよね?」

「おう!3人で筋トレしてたぜ!」

「…間違いない。」

「了解!」

 

ならば鷹岡クンも含めた3人は関係なさそうかな。

次は…。色々現場の謎にヒントをくれるかもしれないし倉庫に行ってみようか。

 

 

 

倉庫に入ると足に何かが当たった。それは先ほどお茶会をする前にボクが足を引っかけて転んだ箱だった。お菓子を取りに行く前に一応入り口を塞がないようにおいておいたのだ。

 

「そういえばこの箱に入ってたのって…。」

 

そう呟きながら箱の中身に手を伸ばす。箱の中身はフックだ。そしてこのフックに関してモノトラはこんなことを言っていた。

 

 

『そいつはモノフック!見た目は普通のフックだが、圧倒的な強度を誇り、1トンだろうと支えちまう。ワイヤーさえ保てばな。』

 

 

見た目からはそうは見えないが、このフックはかなりの耐荷重を誇るらしい。つまり多少の重たいものを引っかけておいたところでこのフックは余裕で耐えられるだろうということだ。普段なら単純に便利な道具だろうけどこの状況下においてはなにか厄介な事態を引き起こすかもしれない。

 

 

 

コトダマゲット!

【モノフック)

モノトラ特製のフックで、1本当たりの耐荷重は1トンを越える。

 

 

 

箱を再び押し込むとそのタイミングで言村さんが倉庫にやってきた。

 

「あれ、深見くんこんなところでどうしたのー?」

「ああ、ちょっとヒントがないかなと思って。ここなら色んなものがあるからさ。今回映画館にあるものだけが使われたわけじゃ無さそうだしさ。」

「そっかー。」

「言村さんは?」

「人影が見えたからー。」

「あ、そういうこと。」

 

そう言えば言村さんには聞いておかなければならないことがあったはずだ。

 

「言村さん、今日真理ちゃんと一緒にいたんだって?」

「うんー。ちょっと相談事があってねー。」

「相談事?それって今聞いても大丈夫なこと?」

「大丈夫だよー。むしろ事件に関係してるかも知れないしー。」

 

この事件に関係…!?

 

「それってどういうこと?」

「えっとねー、昨日夜時間にはなってなかったから9時くらいだったかなー。ホテルの中をお散歩してたんだけどー、そしたら映画館で変な音が聞こえたんだよねー。」

「変な音?」

「まずパンって乾いた音がしてー、その後にドカッみたいな音がしたんだよねー。」

 

擬音じゃ分からないって…。でも聞いた音から想像すると…。

 

「乾いた音の後に重いものが落ちる音がしたんだね?」

「そうー。マットか何かに落ちた音だと思うー。」

「そっか。他に何か気になったことはある?」

「えっとねー、大地クンが話してる声が聞こえたー。」

「大地クンが…?」

「多分誰かと話してたんだと思うけどー、相手は分からなかったー。」

「それは妙だね…。」

 

大地クンがその死んだ場所で死ぬ前日に不審な音が立っている現場にいた。しかも他の誰かと。そんなの事件に関係がない訳がない。

 

「それでこれが真理ちゃんとどう関係が…?」

「中を見てみようかなって思ったんだけどー、カギがかかってて開かなくてー。怖かったからこのことを相談してみよーって思ったんだー。」

「なるほどそういうことだったんだね。で、事件が発生したころもずっと真理ちゃんの部屋にいた、と。」

「そうだよー。まあ大地クンが死んじゃった頃は翔子ちゃんも一緒に雑談してたけどねー。」

 

ここは真理ちゃんの証言通り、か。よしここはこんなところか。

 

 

 

コトダマゲット!

【言村の証言)

昨晩映画館の付近で奇妙な音を聞いた。

音の内容は乾いたパンという音と重いものがマットの上に落ちるような音。

同時に誰かと話しているとおぼしき大地の声も聞こえたが、映画館にはカギがかかっており入れず、怖くなって帰ってきてしまった。

今日津田に相談しようと思ったこともこの件に関してであった。

 

 

 

でも死んだ大地クン本人がこの事件の前段階にどう関係しているんだろう…。

この疑問に対するヒントを得るためボクは大地クンの部屋に向かうことにした。今回も前回の事件と同様、モノトラが簡単に開けてくれた。

中に入るとそこには大きな本棚が置かれていた。しかしその中身は全部床にぶちまけられていた。

 

「何だこれ…!」

 

一番手前に落ちていたファイルを開くとそこには大地クンが所有する施設に関する情報が事細かに記載されていた。これはいわば大地クンの才能による成果がまとめられたファイルだ。そんな大事なものがなぜこんな風になってしまっているのだろう?

 

「もしかして…、“動機、かな…?」

 

あの穏やかな大地クンがこんなことをするなんてその原因として思い当たるのはあの動機ビデオしかあり得ない。

部屋は足の踏み場もない状態だったけれどできるかぎりファイルを踏まないように入っていき、大地クンのタブレット端末を探した。

それはファイルの山の中に埋もれて落ちていた。状況を見る限り投げつけたか何かしたのだろう。床には傷が付いている。しかし憎たらしいことにタブレット端末には憎たらしいことに傷1つ付いていない。

 

「…ごめんね、見せてもらうね。」

 

本体横のスイッチを押すと“ToraPad”という文字が出た後ボクのものと同じように動画再生アプリのアイコンが出てきた。そしてそのアプリの中に入っていた動画を再生する。

 

 

 

『大地真英クンの動機ビデオ』

 

映像が始まってまず映し出されたのは各地の様々な施設で楽しむ人々の姿とその笑顔だった。

 

『超高校級の地主である大地真英クン。その彼が多く所有しているのはテーマパークや映画館といった数多くのアミューズメント施設です。』

 

そしてモノトラの声でのナレーションが始まる。

 

『きょうは、ぱぱとままときゅあぷりのえいがをみにきました!』

 

『実は今日彼女の誕生日なのでここでデートをしようと思って。ここだけの話なんですけどちょっとしたサプライズも用意してるんです。』

 

『僕は運動が好きなのでやっぱ近くにこういう施設があると楽しいですね。ありがたいです。』

 

続いて映ったのは何人かのインタビュー。みな大地クンが所有している施設で楽しく遊んでいる事が分かる。

 

『大地クンが所有している施設は多くの人たちの楽しみを作り出し、みんなを笑顔にしていました。ですが。』

 

ボクの動機ビデオの時と同じように画面が暗転する。そして再び画面が付いたとき、そこには先ほどまでの幸せな風景とはほど遠い、見るも無惨な姿となった各地の施設が映し出された。

 

『そんな夢のような時間は終わりを迎えたのです。』

 

そして周りには多くの人々が倒れている。周囲からは煙が上がっており、何か人為的なものによってこの事態が引き起こされたのではないかと強く感じられる。

そして倒れている人たちの中には先ほどのインタビューに答えていた人たちも混ざっていた。

 

『大地クンが積み上げてきたものは文字通り、一瞬にして崩れ去ってしまったのです。』

 

ボクが見ているだけでも胸が締め付けられる思いだ。当事者である大地クンは一体どんな思いでこの映像を見たのだろうか。

 

『ではなぜ、大地クンの所有するアミューズメント施設はこんな惨いことになってしまったのでしょうか?一体誰がこんな心ないことをしたというのでしょうか?』

 

そして最後にはあのテロップが表示される。

 

『正解は“卒業”の後で!』

 

 

 

「これが、大地クンの…。」

 

正直まだ受け入れ切れていない。こんなのもうテロ行為じゃないか…!だけど現実問題としてボクの動機ビデオの刑事さん達も暴徒と戦っていたようだった。もしかして外の世界は今こんなことになってしまっているっていうのか…?

 

「…っ!ありえない!」

 

思わず口を突いて言葉が出る。

そうだ。ありえないはずだ。こんなビデオ、モノトラが捏造して作ったものに決まっているんだから…!

だけどこのビデオの存在自体はかなり有用だ。みんながそれぞれにビデオを見たのだから、大地クン自身もこのビデオを見ているはずだ。そう考えるとこのビデオ自体が今回の事件における何かに関連していてもおかしくはない。記憶に留めておいても損はないはずだ。

 

 

 

コトダマゲット!

【トラパッド)

大地の部屋に置かれていたもので、今回の動機となっている。

中身は大地の動機ビデオであり、内容は大地がこれまで積み上げてきたものが全て崩れ去ったという旨のものだった。

 

 

 

よし、この部屋はこんなところで良いかな。

 

 

キーン,コーン… カーン、コーン…

 

「さてさて、そろそろ学級裁判を始めてーんでオマエラは西棟奥の赤い扉の前に集合してくれ!」

 

 

そろそろかなとは思ってはいたけどもう少し捜査をしておきたかったな…。

よし、じゃあ最後にみんなに聞いたアリバイだけはまとめておこうか。

 

 

まずはボク。ボクは事件発生当時速瀬さんと金谷クンと3人でお茶会をしていた。途中から羽月さんも加わったけどそれはあくまで事件発生後の話。

その羽月さん自身はその直前まで真理ちゃんの部屋にいた。真理ちゃんに頼まれて言村さんと2人分のお菓子と飲み物を持っていったらしい。2人の話によると羽月さん自身も40分を過ぎるまで真理ちゃんの部屋にいた。

雷文クンは鷹岡クンや鏑木クンと一緒にジムにいたことが分かってる。3人ともそれぞれの姿をずっと確認していたらしいからそこは疑う余地はない。

伊達クンと靏蒔さんはちょうど同じ時間帯に大浴場にいた事がお互いの証言から分かっている。言葉だけだと録音の可能性もあったけれど、石鹸の貸し借りもしていたのであればどちらもその場にいたのだろう。

アリバイの確認が取れなかったのはクレイグクンと木田さんの2人。だけどボクは部屋を出てキッチンに向かうまでの道すがらに2人と会っている。2人に会ったのは2時を過ぎてから。つまりこの時間帯は映画館のドアがロックされているハズだから2人とも死亡推定時刻に映画館には入れない。

よし、これがみんなのアリバイの状況、かな。

 

 

 

コトダマゲット!

【事件発生当時のアリバイ)

深見、速瀬、金谷はキッチンで鉢合わせ、そのままお茶会をしていた。

羽月は津田と言村にお菓子と飲み物を運んでおり、事件発生当時は3人で話していた。

雷文、鷹岡、鏑木はジムにいた。

伊達と靏蒔はそれぞれ大浴場におり、会話及び石鹸の貸し借りをしている。

クレイグと木田はアリバイの確認が取れていないが、2人とも映画館のロックがかかっている時間帯に深見と会っている。

 

 

 

扉の中に入ると既に他のみんなは集合していた。

 

「これで全員だな。」

「くそっ!また1人減っちまったっ…!」

「悔しがっていても仕方がありませんわ。今はこの学級裁判を乗り越えることを考えませんと。」

「そうだけどよ…。」

 

みんなにとって想定外の2度目の殺人。みんなも動揺しているのが手に取るように分かる。でもだからこそ探偵であるボクがうろたえるわけには行かない。

あんな動機ビデオで傷ついた上に更に殺されてしまった大地クンのためにもボクは必ずこの事件の真相を暴いてみせる…!!

 

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【生存者】

超高校級の探偵          深見優(フカミユウ)

超高校級のレーサー        速瀬マハ(ハヤセマハ)

超高校級のバスケットボール選手  雷文竜(ライモンリュウ)

超高校級の外交官         金谷秀征(カナヤシュウセイ)

超高校級のバドミントン選手    羽月翔子(ハツキショウコ)

超高校級の医者          津田真理奈(ツダマリナ)

超高校級の歴史学者        伊達小十郎(ダテコジュウロウ)

超高校級の大工          鷹岡筋次(タカオカキンジ)

超高校級の数学者         言村香奈(コトムラカナ)

超高校級の???         鏑木麗(カブラギレイ)

超高校級のハッカー        クレイグ・ホワイトバーチ

超高校級の弓道家         靏蒔由衣(ツルマキユイ)

超高校級のバイオリニスト     木田結弦(キダユヅル)

 

残り13人




お久しぶりです!今回でやっと事件の証拠が出そろいました!ですので、誰が犯人か推理してみてください!こちらも着実に書きためていきたいと思っております!

それでは今回の設定裏話です!今回は実は前回抜けておりました、泊くんです!
泊くんはこれまでの話でも書かれてきたとおり、メガバンクと呼ばれる大きな銀行の頭取の息子であり、将来的には彼自身も頭取となることが既定路線とされていました。そんな彼の特徴として面倒見の良さというものが挙げられますが、それにはとある出来事がきっかけとなっています。彼は銀行員としての仕事をし始めてすぐのころとある中小工場に融資打ち切りの話をしに行きます。その工場長は何か大きな抵抗した訳ではなく、むしろすんなりとその打ち切りを受け入れていました。そのため彼も何も気にすることなく帰りました。しかし後日彼のもとに衝撃の情報が入ります。それはその工場長が自殺したという報せでした。周りの人からは後味はよくないがどうしても起こることだ、とフォローを受けました。しかし彼はそれではいけないと思うようになりました。そのため彼は綿密なアフターケアもするようになり、その評判が更なる銀行の業績アップの一因となっていきます。
彼の名前はかなり分かりやすいです。某倍返し系のドラマに出てくる銀行員2人の名前を文字を変えて組み合わせた形となっています。なのでドラマを見ていた方からすると単純かと思われたと思います笑。

今回はここまでです!次回からの学級裁判ではどんな波乱が巻き起こるのか、お楽しみに!!


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CHAPTER2 学級裁判 前半

地の底まで沈みきったエレベーターがガクンと止まる。そしてその扉が開かれる。ゆっくりと出て行くみんなをよそにボクは前回の学級裁判の最後を思い出していた。

 

『自分はこんなことになっちゃったっすけど、皆サンならきっと、これ以上悲劇を起こさないことができると思うっす。だから、こんなコロシアイで死ぬのなんて、自分で最後にしてください。お願いします。』

 

美作さんと約束したのに…。もう二度と学級裁判を起こさせないって…。なのにボク達はまたこんな場所に来ている。

大地クンはとても優しい人だった。自分だってあのビデオを見て動揺していたはずなのにボク達をもう一度団結させようと映画鑑賞会を提案してくれた。よりにもよってそんな彼を殺した人がボク達の中にいる。その事実が悔しい。そして美作さんとの約束を守れなかったことが何よりも不甲斐ない。

 

「おーい深見!早く来いって!」

「ごめん。今行くよ。」

 

でもだからと言ってこんなところで足を止めるわけには行かない。

この悔しさは学級裁判で晴らす。真実を明らかにすることで…!

 

 

 

コトダマ一覧

【モノトラファイル2)

被害者は“超高校級の地主”大地真英。

死亡推定時刻は14時40分頃。

死体発見現場は映画館。

死因は鈍器のようなもので頭部を殴られた事による頭蓋骨陥没骨折で即死。

被害者に抵抗した痕跡はなく不意打ちだったのではないかと考えられる。

 

【羽月の証言)

14時頃に大地にポップコーンとドリンクを届けた。

その2時間後に頼まれた通りに食べたもののゴミを回収しに来たら大地の死体を発見した。

 

【映写機)

今回使っていたものは大地の席のちょうど真後ろにあった。

高さはそこまで高い位置にはなく、目の前に何かが通ったらスクリーンに影が映ってしまうと思われる。

 

【フィルムのサイズ)

映写機にセットされていたフィルムの収録時間は約40分ほどのものだった。

 

【バーベルの重り)

フィルムをしまう棚に入っていた。大きさは直径20cm、重さは5kgほど。

血液が付着しており、これが凶器であると考えられる。

 

【重りの血痕)

被害者のものと思われる血痕。よく見てみるよ何本か筋のように途切れており、血液の付着時になにか紐のようなものが縛りつけてあったと思われる。

 

【大地の傷)

傷は頭頂部に横に長い長方形の傷が付いていた。

津田曰く、一般的な鈍器による撲殺と比較すると傷の形状や位置が不自然である。

 

【津田の証言)

2時半頃言村と話すにあたって羽月に紅茶、コーヒー、お菓子を届けてもらった。

15分ほど雑談をした後羽月はキッチンへと戻っていった。

 

【イスのへこみ)

大地が座っていたイスの背もたれにへこみが出来ていた。

重いものがぶつかったと考えられる。

また、そのすぐ下の床にも傷が付いていた。

 

【ポップコーンとドリンク)

羽月が大地に頼まれて持ってきたもの。しかし手を付けた痕跡がない。

 

【天井の梁)

床から約5メートルほどの高さにある。

大地の死体の真上の部分に糸や細い紐で擦ったような痕がある。

 

【ドアのロック)

映画の上映中はドアにロックがかかり、外からも中からも出入りできなくなる。

映写室にオンオフのスイッチがあるがほこりを被っていて誰も触れた形跡はない。

ドアの内側には手動で動かせるカギのつまみも付いているが、伊達によると上映中は動かせないとのこと。

 

【デッドボルト)

縁に何かを引っかけたような傷が残っていた。

 

【雷文の証言)

5キロの重りが1枚なくなっていた。

昨晩の時点では確実に存在していた。

 

【モノフック)

モノトラ特製のフックで、1本当たりの耐荷重は1トンを越える。

 

【言村の証言)

昨晩映画館の付近で奇妙な音を聞いた。

音の内容は乾いたパンという音と重いものがマットの上に落ちるような音。

同時に誰かと話しているとおぼしき大地の声も聞こえたが、映画館にはカギがかかっており入れず、怖くなって帰ってきてしまった。

今日津田に相談しようと思ったこともこの件に関してであった。

 

【トラパッド)

大地の部屋に置かれていたもので、今回の動機となっている。

中身は大地の動機ビデオであり、内容は大地がこれまで積み上げてきたものが全て崩れ去ったという旨のものだった。

 

【事件発生当時のアリバイ)

深見、速瀬、金谷はキッチンで鉢合わせ、そのままお茶会をしていた。

羽月は津田と言村にお菓子と飲み物を運んでおり、事件発生当時は3人で話していた。

雷文、鷹岡、鏑木はジムにいた。

伊達と靏蒔はそれぞれ大浴場におり、会話及び石鹸の貸し借りをしている。

クレイグと木田はアリバイの確認が取れていないが、2人とも映画館のロックがかかっている時間帯に深見と会っている。

 

 

 

【学級裁判開廷】

 

「同じような説明をすることにゃなるがまあ一応聞いてくれ。オマエラには今回大地真英を殺した犯人を当ててもらう。クロの指名は投票によって行う。その結果オマエラが正しいクロを指名できたらクロにはキツいおしおきを受けてもらうぜ。逆に間違ったクロを指名してしまった場合、クロは卒業、その他の奴らにおしおきを受けてもらう。ま、てなワケで議論を始めてくれ。」

 

前回と同じようにモノトラが裁判の大まかな流れを説明する。不本意ながら既に1回やったことだ。自分のやることは分かっている。

 

「まずは事件発覚までの流れを整理するぞ。昼食を取り終わって俺達はそれぞれに自分の時間を過ごしていたな。事件が発覚したのは午後4時頃だ。第一発見者は誰だ?」

「うちだよ…。大地君が映画を見終わったタイミングで鑑賞中に飲み食いしたゴミを片付けに映画館に行ったらそこで…。」

「アタシらは翔子の悲鳴を聞いて映画館に駆けつけたんだよな。」

「ボク達が駆けつけたことで3人以上の発見って条件を満たして死体発見アナウンスが鳴ったんだ。」

「よし、ならばその前提情報を元に議論を開始するぞ。」

 

 

 

議論開始

 

カナヤ「そう言えば羽月はなぜ分かった?」

 

 

ハツキ「なぜって言うのは何を?」

 

 

カナヤ「大地が死んでいるということについてだ」

 

 

カナヤ「映画館は上映が終わっているとはいえ」

 

 

カナヤ「【暗かった】だろう?」

 

 

ハツキ「大地君の座ってた席が一番後ろだったから…」

 

 

ハツキ「入ったときの廊下の明かりで」

 

 

ハツキ「明らかに頭が【血塗れだった】のが見えて…」

 

 

ダテ「確か大地殿の死因は頭部の陥没骨折だったでござるな」

 

 

ツルマキ「つまり大地は【ハンマー】か何かで」

 

 

ツルマキ「撲殺されたということか…」

 

 

あれ、本当にそうだったかな…?

 

【大地の傷)→【ハンマー】

 

「それは違うよ!」

 

 

 

「靏蒔さん、それは違うんだ。」

「だが撲殺に使うような凶器なんて後はバールくらいしかないだろう?」

「多分バールでもないかな。」

「そうなのか…。だがそもそもなぜそんなことが分かるんだ?」

「それは真理ちゃんに聞いてみよっか。」

「希望ヶ峰学園が誇る検死担当であるボクの出番かな?」

「そんな担当学校にはいらないよ!?」

「小ボケはそんなところにして、説明してもらえる?」

「ま、そうだね。手っ取り早い話、大地クンの頭に残された傷がハンマーやバールでつけたものとは違うのさ。さて、ここで問題だ。その傷の形はどんなものだったかな?」

 

確か傷の形は…

 

 

 

選択肢セレクト

 

1.三角形

 

2.長方形

 

3.円形

 

→2.

 

「これだ!」

 

 

 

「確か長方形、だったよね?」

「その通りだ。しかも後頭部から見て横長のね。ハンマーやバールじゃこうはならないだろう?」

「確かにそうだな…。」

「でもさぁ、だとしたら実際の凶器は何なんだい?」

 

それなら確かあそこで見つかったはず…!

 

 

 

証拠提出

【バーベルの重り)

 

「これで証明するね!」

 

 

 

「バーベルの重りだよ。これを使って犯人は大地クンを殺したんだ。」

「そんなのどこから見つけだしてきたんだ?」

「映写室さ。」

「映写室ぅ!?」

「映写室にあったフィルムを保管する棚の中に置いてあったんだ。しかもこの重りには血が着いているし、今回の凶器はこれで間違いないと思うよ。」

「ってことはー、犯人はわざわざバーベルの重りを使って被害者を撲殺してー、その後その凶器を映写室に隠したって事だねー。」

「ならば犯行時刻と死亡推定時刻は一致するでござるな。」

「ということは次は死亡推定時刻当時にアリバイがない人を探せば良いんだね!」

 

 

 

議論開始

 

コトムラ「死亡推定時刻にアリバイかー」

 

 

ツルマキ「モノトラファイルによると」

 

 

ツルマキ「大地の死亡推定時刻は【14時40分頃】だったな」

 

 

ライモン「その頃ならオレは【ジムにいた】ぞ!」

 

 

クレイグ「俺ちんは【自分の部屋にいた】ぜ!」

 

 

ツダ「それなら【ボクも同じ】さ」

 

 

カナヤ「待て待て」

 

 

カナヤ「1人1人話を聞いている余裕はないぞ」

 

 

キダ「ですがこのままではアリバイは分かりませんわ」

 

 

キダ「誰もアリバイについては【まとめていない】でしょう?」

 

 

こんなこともあろうかと準備はしてあるさ。

 

【事件発生当時のアリバイ)→【まとめていない】

 

「それは違うよ!」

 

 

 

「木田さん、安心して!捜査時間内にできる限りみんなに話を聞いてアリバイについてはまとめてあるから。」

「そうなんですの?さすが探偵、抜け目ないですわね。」

 

それ、褒められてるのかな…。

 

「で、アリバイはどうなんだ!?」

「一応みんなにも確認してもらいたいんだけど、ほとんどの人にアリバイがあったよ。」

「ほとんど?つまりアリバイがなかった人物がいる、と?」

「まあ、一応、ね。」

「なんでい、歯切れが悪いじゃねえか。普通に教えてくれよ。」

「まずはそうだね。この中でアリバイのない人物は2人。それは、」

 

 

 

選択肢セレクト

 

1.津田と羽月

 

2.金谷と速瀬

 

3.クレイグと木田

 

4.雷文と鷹岡

 

→3.

 

「これだ!」

 

 

 

「クレイグクンと木田さんだよ。」

「…!そういう、ことですの?」

 

木田さんは気付いてくれたみたいだ。

 

「なんでい、簡単な話じゃねえか。つまり、14時40分頃にアリバイがなかったのがクレの字とユヅの字ならこの2人のどっちかが犯人って事じゃねえか。」

「それがそうも簡単にはいかなそうなんだ。」

「どういうことでござるか?」

「ボクはね、2時を過ぎてから事件発生までの間に2人と会っているんだ。」

「そういうことか。」

「おい!結弦も秀征も自分だけ分かったような感じ出すなよ!アタシらにも分かるように説明してくれ!!」

「簡単に言うとね、2人はどちらも映画館の中には入れなかったんだよ。その時間は映画館にロックがかかっていたはずだからね。」

 

 

 

「ソイツは建て直しでい!」

 

 

 

「鷹岡クン!?」

「優の字が言いてえことは分かるが、やっぱ納得いかねえ!トコトンまで付き合ってもらうぜ!」

 

 

 

反論ショーダウン

 

「要は優の字は」

 

 

「2人に外で会った時間にゃ」

 

 

「映画館にはロックがかかってて入れなかった」

 

 

「だから2人は犯人じゃねえ」

 

 

「そう言いてえんだろ?」

 

 

「だがそいつぁそうは行かねえぜ!!」

 

 

-発展-

 

「ちょっと待ってよ!」

 

「あの時間に2人が外にいたってことは」

 

「2人に犯行が不可能だったことを完全に証明しているんだ!」

 

 

「なんでそう言い切れるんでい!?」

 

 

「別にあの時間に外にいても犯行が可能な方法はあるぜ!」

 

 

「映写室のレバーだ!」

 

 

「アイツで【自動ロックを切っておけば】」

 

 

「本来ロックがかかっていたはずの時間に」

 

 

「外にいることができるぜ!!」

 

 

確かに方法としては存在してるけど、その選択肢は取られなかったんだ…!

 

【ドアのロック)→【自動ロックを切っておけば】

 

「その言葉、斬らせてもらうよ!」

 

 

 

「いや、それはあり得ないんだよ。」

「そいつはどういうこった?」

「とっても簡単な話なんだ。だってあのレバーは、

 

そう、あのレバーは…

 

 

 

選択肢セレクト

 

1.埃が積もっていた

 

2.壊れていた

 

3.実はドアのロックのものじゃなかった

 

→1.

 

「これだ!」

 

 

 

「埃が積もっていたんだからね。」

「それがなんでい?」

「誰も触っていないんだよ。」

「そういうことか!!」

「誰も触っていない、ということはイコール誰もレバーを動かしていない、ということだ。ならば映画館のドアがロックされている時間帯に外にいたことが確認されているクレイグクンと結弦さんにも犯行は不可能だった、ということになるね。」

「なるほど…。合点でい!優の字、悪かったな!!」

「だがそうだとすると1つ問題が発生するな。」

「問題?何だそりゃ?」

「簡単じゃねえの。誰も犯人候補がいなくなるんだろ?」

「うん、クレイグクンの言うとおりだよ。たった2人、大地クンの死亡推定時刻当時のアリバイが確認されていなかったクレイグクンと木田さんに犯行が不可能だったと証明されたって事は逆にこの場にいるボク達全員に犯行が不可能だって事になるよね。」

「…つまりここまでの推理が間違っていたということか?」

「うーん、そういうわけでもないと思う。だって実際に2人以外はきちんとアリバイの確認が取れているし、アリバイがない2人だってずっとここまで話し合ってきたとおり、犯行が不可能だって分かっているんだから。」

「…ならばこの状況はどういうわけだ?大地は確実に殺されたにも関わらず我々の中には誰も犯人となり得る人物がいない。矛盾してはいないか?」

 

学級裁判が行われている以上この超高校級のメンバー達の中に犯人はいる。でも状況を見る限りボク達の中に誰も犯人は存在しえない。これは矛盾しているように見える。

 

「いや、そうとも限らないかもしれないよ?」

「…津田?」

「ほら、よおく考えてごらんよ。ボク達の中に犯行当時のアリバイがなくて、そして犯行も可能だった人物が1人だけいるじゃないか。」

 

うん、真理ちゃんは気付いているらしい。後1つ、現状残されている可能性に。

 

「うん、そうだね。たった1人、大地クンを殺すことが出来た人物がいるはずだよ。」

「それは誰だ!?」

 

そのたった1人、ボク達の中で大地クンを殺すことが出来た人物は…!

 

 

 

指名しろ!

【ダイチマサヒデ】

 

「キミしかいない!」

 

 

 

「冗談、ではないよな?」

「もちろん、本気さ。」

「説明を伺ってもよろしいですか?」

「うん。現状ボク達のほとんどに大地クンが死んだ14時40分時点でのアリバイが存在している。数少ないアリバイのない2人に関しても犯行に当たって映画館に侵入できないことが分かっている。つまり今この裁判場にいる13人全員に犯行が不可能だったって事になる。」

「それはその通りですわね。」

「ここまでボク達の中で犯行当時に映画館内にいることが出来なかった人について議論してきたワケだけど、ここでちょっと考え方を逆転させてみよっか。」

「逆転って事はー、大地君が殺されたときに犯行現場にいた人ってことー?」

「うん、その通りだね。」

「まあもちろん殺された大地は現場にいたよな?」

「後は大地君を殺した犯人もいたはずだよね?」

「でも今生きている人たちの中に現場にいることが出来た人はいなかったでござるな。」

「となると大地以外に映画館にいることが出来た人物はいなかったわけだ。」

「…一見矛盾しているように見えるがもし被害者と犯人が同一人物だったとすればこの矛盾も解消されるというわけだな。」

「説明するまでもなく全部出てきちゃったね。まあ総合すると大地クンが映画館で自殺したんだとすればこの中に犯人はいなくても大地クンの殺人事件は成立すると思うんだ。」

「だけどよー、なんで大地ちんは自殺したんだ?理由が分かんねえぞ?」

「どうやらその理由を紐解く必要がありそうだな。」

 

 

 

議論開始

 

クレイグ「結局大地ちんはなんで自殺したんだ?」

 

 

ツルマキ「まあこんな生活だ」

 

 

ツルマキ「『精神的な限界』が来てもおかしくあるまい」

 

 

ハヤセ「逆に精神的にキツくなった誰かからの」

 

 

ハヤセ「『嫌がらせ』なんてのもあるかもな」

 

 

カナヤ「あの『動機ビデオ』が」

 

 

カナヤ「殺人ではなく自殺の動機になったかもしれんぞ」

 

 

キダ「わたくしたちに何か」

 

 

キダ「『伝えたいことがあった』のかも知れませんわ」

 

 

ダテ「うぅむ…」

 

 

ダテ「考えれば考えるほど色んな理由が出てくるでござるなぁ…」

 

 

確かに色んな理由が考えられるけれど、大地クンの部屋にあったアレのことを考えると…

 

【トラパッド)→『動機ビデオ』

 

「それに賛成だよ!」

 

 

「多分、原因は動機ビデオだったんじゃないかな?」

「根拠は?」

「ビデオの内容だよ。ボクが口で説明するよりも見てもらった方が早いかな。モノトラ、みんなに見せてもらうことは出来る?データはそっちで持ってるんでしょ?」

「おう!もちろんだぜ!」

 

そう言ってモノトラが何かのスイッチを押すと天井から大きなモニターが降りてきた。

続いてモノトラが再生ボタンを押すと先ほどボクが大地クンの個室でトラパッドを通して見た映像が流れた。その映像を見たみんなはそれぞれの反応を見せていた。だけど最終的なみんなの結論は同じ物だった。それは、

 

「こんなの自殺したってしょうがねえじゃねえか…!」

 

最初に口を開いた雷文クンの言葉が全てを語っていた。

 

「っつうことはやっぱ真英は自殺したって事でいいのか…?」

 

そしてその結論に至ったことでみんなの心がこの事件の結末を大地クンの自殺ということで結論づける方向に傾いていっているのが手に取るように分かった。だけどそれじゃいけない。絶対に。みんなが自殺と結論づけたい気持ちはよく分かる。ボクだってそうだ。みんなのことを疑わないで済むのであればそれが一番良い。だけどそれは逃げだ。疑うことをしたくないから、疑うことで自分が傷つきたくないから選んだ楽な結末だ。得てして逃げで選んだ選択肢はその人に良い結末をもたらすことはない。ならばボクが今するべき事は1つ。もしこの事件の真実が本当に大地クンの自殺であったとしても疑いたくないから選んだ結末ではなく、議論を尽くした末の結末にすること。そのためならばボクは自分に疑いの目が向いたとしても構わない。皆が前に進むための真実を手に入れるためなんだから。

 

 

 

【裁判中断】

 

「逃げるが勝ちなんて言葉があるがありゃ嘘だな。」

 

 

「逃げた奴の手に勝利が収まる事なんて絶対にありえねーんだぜ。」

 

 

「じゃあなんでそんな言葉があんのかって?そりゃ簡単だぜ。」

 

 

「負け犬共が自分の選択は間違っていなかったって正当化するための浅い悪知恵から生まれているんだぜ。」

 

 

「戦略的撤退から勝利に繋げることは可能だが、敗走から価値に繋がることは絶対にねー。」

 

 

「さあてオマエラは自分の人生どう生きる?」

 

 

「逃げながら自分を正当化するだけのつまらねー人生か、時には後ろに下がったように見えながらも確実に着実に目的地に近づき続ける修羅の道か、2つに1つだぜ?」

 

                   ・

                   ・

                   ・

 

【生存者】

超高校級の探偵          深見優(フカミユウ)

超高校級のレーサー        速瀬マハ(ハヤセマハ)

超高校級のバスケットボール選手  雷文竜(ライモンリュウ)

超高校級の外交官         金谷秀征(カナヤシュウセイ)

超高校級のバドミントン選手    羽月翔子(ハツキショウコ)

超高校級の医者          津田真理奈(ツダマリナ)

超高校級の歴史学者        伊達小十郎(ダテコジュウロウ)

超高校級の大工          鷹岡筋次(タカオカキンジ)

超高校級の数学者         言村香奈(コトムラカナ)

超高校級の???         鏑木麗(カブラギレイ)

超高校級のハッカー        クレイグ・ホワイトバーチ

超高校級の弓道家         靏蒔由衣(ツルマキユイ)

超高校級のバイオリニスト     木田結弦(キダユヅル)

 

残り13人




久しぶりの投稿ですが、遂に第2章学級裁判が始まりました!さてさて、裁判は思わぬ方向に向かっている感じがしますが、この事件の真相やいかに!?


さてさて、今回の設定裏話は靏蒔さんのお話をしていきましょう。
彼女は一度自己紹介の段階で言われているとおり、人生の中で矢を外したことは一度しかありません。これは彼女の才能を示すものであったと同時に、彼女にとって大切な存在に関わる出来事でもあります。それは彼女の師でもある祖母に関する事です。中学生最後の全国大会、彼女は準決勝の直前、とある急報を受けます。それは祖母が倒れて病院に緊急搬送された、というものでした。彼女は動揺をしつつも試合への出場を続行しました。しかし、準決勝の第一射の時に心の動揺を抑えきれず、大きく外してしまうこととなるのです。ところがその一射のおかげで彼女の中で何か吹っ切れたようで、そこからは完璧な射を続け、そのまま勝利、その勢いのまま優勝を果たすこととなったのです。
彼女の名前に関しては「弦」と「結」という2つの字が中心となっています。と言ってもそれをそのまま使うのも味気なかったので、それぞれ音が同じで違う字を使い靏蒔由衣という名前になりました。


次回は学級裁判後編、真実へ向けて驀進していきますので、乞うご期待です!!


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CHAPTER2 学級裁判 後半

【裁判再開】

 

「結局大地君は自殺だったって事でいいんだよね…?」

 

羽月さんが話を切り出す。

 

「…良いと思うでござるよ。」

「動機だってあるし、ここにいる誰にも犯行は不可能なんだし、お互いを疑い合う理由はねえよな…。」

「私ももうお互いを疑い合うというのは疲れた…。」

 

マズい…。みんなの心が完全に大地クンの自殺として結論づける方向に傾きかけている…!こんな状況でボク1人が言い出したところで状況は変わるのか…?

 

「…待て。それはまだ早計だ。」

「鏑木…?」

「もし大地が自殺だったとしたらまだ分かっていない証拠がいくつか残っている。その謎を解明しない限り真の解決は望めない。」

「金谷殿…。」

「わたくしもこのままではまだしっくりきませんわ。しっくりこないということは納得感がないということ。そんな状態で結論づけるのは危険ですわ。」

「結弦ちゃんまで…!」

「それにー、他にもまだ悩んでる人もいるっぽいしねー。でしょー?深見くん。」

 

言村さんが急に話を振ってくる。

 

「う、うん。ボクも鏑木クン達の言うとおりだと思ってる。現状も推理だと大地クンの自殺だとしか考えられないけど、でもそれじゃまだ全ての謎が解けたわけじゃない気がする。」

「気がするって要は深見ちんのカンってことかい?」

「そりゃいくら何でもムリがあるぜ?」

「普通の人のカンならそうだろうけど今回はなんて言ったって超高校級の探偵のカンだからね。無碍に切り捨てることも出来ないと思うけど?」

「だがここまでの推理を導き出したのは他の誰でもねえ、優の字じゃねえか。」

「…現状ではその可能性が高いだけだ。まだ議論の余地はある。」

 

幸いまだ自殺と結論づけることに疑問を持っている人は何人かいる。だけどそのせいでむしろボク達の意見が真っ二つに割れてしまっている…。一体どうしたら…!

 

 

「お、真っ二つって言ったか!?」

 

いや、思っただけだけど。って前もこんなことなかった?

 

「ならばコイツの出番だぜ!!変形裁判場起動!!!」

 

モノトラが勝手にボクの考えを読み取って裁判場を変形させる。するとまた前回の裁判の時と同様、意見が対立している人たちが対面する形になった。

 

 

 

議論スクラム

 

 

〈今回の事件は大地による自殺か?〉

 

自殺だ!     自殺じゃない!

速瀬       深見

雷文       金谷

羽月       津田

伊達       言村

鷹岡       鏑木

クレイグ     木田

靏蒔

 

 

ハツキ「映画館の中には【大地君】しかいなかったんでしょ?」

「木田さん!」

キダ「死亡推定時刻には【大地君】しかいませんでしたわね。」

 

 

ライモン「それなら犯行は【不可能】じゃねえか!」

「金谷クン!」

カナヤ「直接の犯行はな。トリックを使えば【不可能】じゃないかもしれない。」

 

 

クレイグ「つったって映画館には誰も入れなかったんだ。【自殺】しかねえだろ?」

「真理ちゃん!」

ツダ「【自殺】なら撲殺よりももっと良い方法があるんじゃないかな?」

 

 

ダテ「しかし自殺に繋がる【動機ビデオ】があったのも事実でござるよ。」

「ボクが!」

フカミ「本来はコロシアイを起こすための【動機ビデオ】だよ!」

 

 

ツルマキ「だが犯人は死体発見時まで【映画館】に出入りできなかったはずだ」

「鏑木クン!」

カブラギ「…【映画館】は本当に死体発見時まで出入り不可能だったのか?」

 

 

タカオカ「【ロック】がかかってたって話じゃねえのか?」

「言村さん!」

コトムラ「【ロック】の話は大地くんが殺された時点での話でしょー?」

 

 

ハヤセ「じゃあ犯人はどんな【トリック】で真英を殺したっつうんだよ?」

「ボクが!」

フカミ「【トリック】はこれから議論していこうよ!」

 

 

 

CROUCH BIND

 

SET!

 

 

「これがボク達の答えだ!!」

 

 

 

「大地クンにはまだ何かしらのトリックを用いて遠隔で殺害された可能性があるんだ。だからこそまだいくつかの詳細が分かっていない証拠が残されているんだよ。ボク達はその謎を解明してからじゃないと結論づけるわけにはいかないと思うんだ。」

「…優がそう言うならしゃあねえけどよ…。」

「そう言われると可能性を無碍にできない気もするでござるな。」

「でもどうしてそう思ったの?」

「一番は真理ちゃんの検死だよ。」

「津田の?」

「うん。大地クンの傷の位置、どこにあったか覚えてる?」

「えっとー、確かー…。」

 

そう、大地クンの傷の位置は…、

 

 

 

選択肢セレクト

 

1.頭の前部

 

2.頭頂部

 

3.後頭部

 

→2.

 

「これだ!」

 

 

 

「大地クンの頭の傷は頭頂部にあったんだ。そこにもう1つ、大地クンの傷の形は覚えてる?」

「確か後頭部から見て横長の長方形、という話だったな。」

「この2つの情報を総合すると自殺をするにしても、普通に撲殺したにしても違和感のある状況になるんだ。」

「…違和感?」

「凶器の持ち方、そして致命傷となる一撃の加え方だよ。傷の形を見る限り、犯人はバーベルの重りを真横に持っていたはずだ。そしてそれを頭頂部に落とすとすると?」

「自殺なら真上に腕を伸ばして振り下ろすなり落とすなりするだろうね。どちらにせよかなりの勇気とパワーが必要だよ。」

「他殺だとすると腕が大地さんの頭の真上に覆い被さる形になりますわね。不意打ちでしょうに気付かれるリスクがありますわ。」

「こんな感じでこの傷の位置と形で致命傷を与えようとするとどうあっても違和感のある状況になるんだ。」

「…つまりこの矛盾を解決するために存在しているのが何らかのトリック、という訳か。」

「そういうこと。」

「じゃあそのトリックに関係しそうなものを挙げてけば良いんだな!」

 

 

 

議論開始

 

ダテ「トリックに関係しそうなものでござるか…」

 

 

ツルマキ「【死体の傷の形】を付けるためのトリックか」

 

 

ツルマキ「ならば『凶器』に細工してあったのではないか?」

 

 

ライモン「『現場』に何か残されちゃいねえのか?」

 

 

ライモン「トリックを使ったなら」

 

 

ライモン「痕跡くらい残ってるんじゃねえか?」

 

 

キダ「『死体』の可能性もありそうですわ」

 

 

キダ「頭部の傷以外にも」

 

 

キダ「どこかに痕があるかもしれませんし」

 

 

そう言えばなんであんなところにあんな痕跡があったんだろう…?

 

【天井の梁)→『現場』

 

「それに賛成だよ!」

 

 

 

「雷文クン、それだよ!」

「現場に何か残ってたのか?」

「うん、鷹岡クンが気付いてくれた痕跡がね。」

「オイラかい?」

「そうだよ。ほら、言ってたでしょ?天井の梁に糸とか細い紐で擦ったような痕が残ってたって。」

「ああ、そういやそうだったな!」

「それが何なのだ?」

「つまり、映画館の梁には何か細い紐状のものが通してあって、しかもそれがある程度の圧力をかけながら梁の上を動いた、ってことが分かるんだよ。」

「ある程度の圧力をかけながら紐を動かすとしたら方法は限られる。力いっぱい引っ張るか、後は重さをかけるなどして物理法則を利用するか。」

「普段映画館を使うだけならそんな紐なんて圧力をかけながら梁を通す必要はねえんじゃねえか?」

「…ということはその痕は何か事件に関係する、ということだな。」

「じゃあその天井の梁に通っていた紐には何がくっついていたんだろうね?」

「うーん、常識的に考えたら凶器の重りじゃないー?」

「そう、その通りさ。」

「やったー!」

「なんでそんなことが分かるの?」

「それは重りを見れば一目瞭然さ。」

 

だってあの重りには…、

 

 

 

閃きアナグラム

 

Q.天井を通した紐にバーベルの重りが繋がっていたという証拠は?

 

〔と〕〔ぎ〕〔れ〕〔た〕〔け〕〔っ〕〔こ〕〔ん〕

 

→途切れた血痕

 

「これだ!」

 

 

 

「だって重りに付いた血痕が途切れているからね。重り単体で殴ったらそんなことにはならないでしょ?恐らく梁に通してあった紐がそこそこしっかり重りに結びつけられていたんだよ。結んだ紐の下に血痕が入り込めないくらいにね。」

「でもなんでそんな風になってんだ?」

「簡単さ。時間差で大地クンを殺すためだよ。」

「それは本当でござるか?」

「それは天井の梁の位置を見てもよく分かるんだ。」

 

だってその痕の残っていた梁の位置は…

 

 

 

選択肢セレクト

 

1.映画館の入り口付近

 

2.スクリーンの目の前

 

3.映写室の真横

 

4.大地の真上

 

→4.

 

「これだ!」

 

 

 

「だって今話題に上がっていた梁は大地クンの真上にあったものだからね。」

「マジかよ…。じゃあ何か?今回のクロは大地ちんを殺すために…。」

「うん、梁と細長い紐を使って時間差で重りを大地クンの頭に()()()()んだ。それにほら、床と大地クンが座っていたイスにも傷が付いていたでしょ?アレは落ちてきた重りがぶつかった痕だと思うんだ。」

「そしてその重りが落ちるまでの時間に自分のアリバイを作り上げた、という訳だね。」

「でもよ、そんな正確に落ちる時間なんて分かんのか?」

「じゃあ今度は正確に時間を計った方法を議論していこっか。」

 

 

 

議論開始

 

ハヤセ「どうやって重りが落ちる時間を計ったんだ?」

 

 

キダ「どこかに【結びつけておいて】」

 

 

キダ「解けるまでの時間を計った、とか…?」

 

 

タカオカ「紐に【切れ目をいれた】ってのはどうでい?」

 

 

タカオカ「大雑把だが時間は分かりそうだぜ」

 

 

ツダ「うーん、どれも正確性に欠けるね…」

 

 

カナヤ「ちょっとした不確定要素で」

 

 

カナヤ「計画が崩れかねんな」

 

 

ツルマキ「だがしかしその場合どうするんだ?」

 

 

クレイグ「映画館の中には」

 

 

クレイグ「【正確な時間に動作するものなんてねえ】しなぁ…」

 

 

ハツキ「じゃあいっそのこと【運任せ】とか?」

 

 

カブラギ「…それではアリバイの確保がほぼ出来ないと思うが…」

 

 

そうか、アレを使えばある程度時間の計算が可能なんだ!

 

【ドアのロック)→【正確な時間に動作するものなんてねえ】

 

「それは違うよ!」

 

 

 

「クレイグクン、1つだけあるんだよ。映画館の中に正確に動くものが。」

「そいつは何だい?」

「ドアのロックだよ。アレは映画の開始と共に自動でロックされて、映画の終了と同時に自動で解除される。さっきも一度議論したとおり、その機能の制御レバーは誰も触れていないから事件発生当時も作動していたはずだよ。」

「あー、確かにそうだな。でもよぉ、ソイツをどう使えば正確な時間にアリバイを作れるんだい?」

「それはね、ドアのとある場所を使えばいいんだよ。」

「とある場所?」

「そしてそれは実際に事件に使用された可能性が高いんだ。」

 

そのドアの場所ってのは…

 

 

 

証拠提出

【デッドボルト)

 

「これで証明するね!」

 

 

 

「ドアのデッドボルトさ。」

「でっどぼると?」

「ドアのカギを閉めると四角の金具がでてくんだろ?アイツの事よ。」

「あー、遊んだことあるよー。」

「で、その金具がどうしたんですの?」

「そこに紐を繋げておくことで映画が終わってロックが解除された瞬間に支えを無くした紐が落ちていく、って寸法さ。」

「…だがいくら映画館の扉に隙間があるとは言え、閉まっている扉のわずかな隙間で紐を結ぶ、というのはムリがないか?」

「大丈夫、そこを補完する道具が倉庫にあったんだ。」

 

 

 

証拠提出

【モノフック)

 

「これで証明するね!」

 

 

 

「これ、倉庫に大量に置いてあったフックなんだけど、モノトラの特製でかなりの重さに耐えられるらしいんだ。このフックに紐を結びつけて、扉のロックがかかった瞬間にデッドボルトに引っかけるんだ。むしろデッドボルトには縁のところに何か金属を引っかけたような痕が残っていたからこのフックを使ったって考える方が自然なんだ。」

「…確かに、フックの方がロックが解除された後も確実に紐が外れて重りが落ちていくな。」

「こういう風にして犯人は時間差で大地クンを撲殺するトリックを…、」

 

 

「その推理、落ちるぜ。」

 

 

「いーや、ちっと待ってくれや。もしその推理の通りだとするとこれまでの話と違えところがあるぜ。」

「じゃあその矛盾を解消していかないとね。」

 

 

 

反論ショーダウン

 

「確かに深見の言うとおり、」

 

 

「そのトリックを使えば映画館にいなくても」

 

 

「犯人は大地を撲殺できたかもしれねえ」

 

 

「けどよ…、」

 

 

「その推理には致命的な欠陥があるぜ!!」

 

 

-発展-

 

「その欠陥って何?」

 

「実際にそれを示す証拠が残っている以上、」

 

「このトリックしか考えられないハズだよ!」

 

 

「まあ聞いてくれ」

 

 

「確か裁判が始まるときに羽月が」

 

 

「大地が映画を見終わるタイミングで映画館に行ったら」

 

 

「死体を見つけた、って言ってたよな?」

 

 

「ならば大地が見てた映画は【16時に終わる】もののハズだ!」

 

 

「14時40分に大地が死んでるハズはねえ!!」

 

 

なるほど、雷文クンの反論は筋が通っている。けれど、実際の状況と比較するとその矛盾は解消されるんだ!

 

【フィルムのサイズ)→【16時に終わる】

 

「その言葉、斬らせてもらうよ!」

 

 

 

「雷文クン、実はね、大地クンが見ていた映画は16時より遙か前に終わっていた可能性があるんだ。」

「そりゃどういうことだ?」

「まず前提としてね、大地クンは14時に映画を見始めている。そしてその映画が見終わる16時に来てもらうよう羽月さんにお願いしているんだ。つまり羽月さんと大地クンが想定していた映画の長さは2時間映画、一般的に劇場で流される映画くらいの長さだ。だけど実際に映写機に残されてたフィルムのサイズは大きく異なる。」

 

そのフィルムの長さは…

 

 

 

選択肢セレクト

 

1.20分

 

2.30分

 

3.40分

 

→3.

 

「これだ!」

 

 

 

「実際のフィルムは40分程度しか収録できないサイズのものだったんだ。」

「何だと!?」

「もう一度思い出してね。大地クンが映画を見始めた時間は14時。そしてそこから40分の映画が見終わるとその時刻は?」

「14時40分…。」

「ピッタリ大地が殺された時間じゃないか!」

「何で羽月さんの証言と食い違っているのかは分からない。けれど実際に大地クンが映画を見終わる時間と大地クンの死亡推定時刻は一致している。ならばこの推理は間違っているとは言えないでしょ?」

「むぐぐ…。納得したぜ…。」

「ですがそれも妙な話ですわね。」

「何でー?」

「大地さんは映画のフィルムがすり替えられていたことに気付かなかった、ということでしょう?誰かが入ってきてそんな作業をしていたら気付きそうなものじゃありません?」

 

それは確かにそうだ。ここまでの流れで大地クンが他殺であるのは明白だ。だからこそ木田さんの言っていることには一理ある。じゃあなんで大地クンはそんな犯人の行動に気付かなかったんだろう…?

 

 

 

議論開始

 

キダ「大地さんはなぜフィルムのすり替えに気付かなかったんでしょうか?」

 

 

ダテ「大地殿が気付けないほど」

 

 

ダテ「【手際がよかった】んでござろうか…?」

 

 

カナヤ「だが俺達は映写機の扱いに関しては素人だ」

 

 

カナヤ「それは考えにくい」

 

 

コトムラ「そもそも【すり替えてない】とかはー?」

 

 

コトムラ「120分1本でも40分3本でも」

 

 

コトムラ「映画を観る時間は2時間だしー。」

 

 

クレイグ「実は【大地ちんがすり替えてた】りして…」

 

 

ツルマキ「だが大地は自殺ではないのだろう?」

 

 

ツルマキ「そんなことを【する意味がない】」

 

 

カブラギ「…ならば【すり替えられる人物はいない】」

 

 

カブラギ「ということになるが…?」

 

 

もしかしてボク達はあの可能性が完全に頭から抜けていたのか…?

 

【言村の証言)→【する意味がない】

 

「それは違うよ!」

 

 

 

「待って!1つだけ可能性があるかも。大地クンがフィルムをすり替えていたかも知れない可能性、少なくとも大地クンがフィルムのすり替えを知っていた可能性と言い換えても良いけど。」

「どういうことだ?」

 

大地クンが他殺でありながらそのトリックの一端を理解していた可能性、それは…!

 

 

 

閃きアナグラム

 

Q.なぜ大地はフィルムのすり替えを知っていたのか?

 

〔き〕〔ょ〕〔う〕〔は〕〔ん〕

 

→共犯

 

「これだ!」

 

 

 

「大地クンがこの事件の共犯だった場合だよ。」

「共犯、だと…?しかも自分を殺す事件のか…!?」

「いや、むしろ今回のクロの方が共犯だったのかも知れない。少なくとも大地クンが今回の事件に関わっていた可能性を提示できる人がいるからね。」

「それは…?」

「言村さんだよ。彼女は映画館の近くで昨晩妙な音と会話を聞いているんだ。」

「それってどんなの!?」

「えっとね、乾いた音の後にマットみたいなところに重いものが落ちた音だったよー。」

「会話の方は何だ?」

「えっとねー、相手は分からなかったんだけどー、大地クン、誰かとお話ししていたみたいー。」

「そうは上手くはいかねえか…。」

「大地クンが話していた相手は分からないけど、音の原因なら推測はできるよ。前者の音が何の音かは見当も付かないけれど、後者の重いものがマットに落ちる音は多分バーベルの重りがイスに落ちた音だ。」

「何でそんな音が昨夜聞こえるんだ?」

「簡単だよ。今日、この事件のトリックが上手くいくかを実験していたんだ。大地クンの話し声も実験の結果を受けてのものだったんじゃないかな。」

「待つでござる!深見殿のその推理ではまるで今回の事件が大地殿主導で行われた、というように聞こえるでござるよ!?」

「うん、その通りだからね。だからこそさっきも言ったでしょ?“むしろクロの方が共犯者だったんじゃないか”って。」

「つまりこの計画は大地によって立てられ、そしてクロとなった共犯者の手によって実行された、ということか?」

「そう。つまりこの事件は大地クンによる何者かを共犯者として巻き込んだ壮大な大地クンの殺人計画だったんだよ!」

「いやいや、突飛すぎやしねえかい?証拠だってねえだろう?」

「実は大地クンが犯行を知っていた可能性を示すものは他にもあるんだ。」

 

 

 

証拠提出

【ポップコーンとドリンク)

 

「これで証明するね!」

 

 

 

「こいつが何だってんでい?」

「これは現場に残されていたものだよ。そして大地クンが羽月さんに頼んで持ってきて貰ったものだ。にもかかわらずこれらには一切手を付けた痕跡がなかった。多少こぼれてはいたけど恐らく大地クンの死亡時の衝撃で落ちたものだと思う。」

「よく考えてみろ。もし大地が犯行を知らずにただ映画を観るだけのつもりで映画館にいたのだとしたらせっかく用意してもらったフードやドリンクに手を付けないなんてことあり得るか?」

「アタシにはもったいなくてできねえな。」

「大地クンには犯行の詳細が分かっていた。だからこそ死に逝く自分がその直前に何かを摂取するということをしなかったんじゃないかな。」

「でもならなんで食わねえものを頼んだんだ?」

「うーん、死ぬつもりであることを隠すため、そしてもう1つ、羽月さんに嘘の映画が終わる時間を伝えることで実際の映画終了時間から16時までの約1時間20分、人が映画館に入ってきにくい状況を作るため、じゃないかな。それだけの時間があれば偽装工作も充分可能だしね。まあ必要な偽装工作が出来るかはその共犯者次第だっただろうけど。」

「大地がその計画を実行した理由はやっぱり…。」

「うん、きっとあの“動機ビデオ”だと思うよ。ボク達の最初の大地クンの自殺だ、という推理はあながち間違いではなかったんだよ。あのビデオを見て絶望した大地クンは誰かを共犯者としつつ自分を殺害する計画を立案・実行したんだ。」

「またなんでそんなしちめんどくせえことを?自殺するだけならどこかで首括っちまえばそれまでじゃねえか。」

「うーん、例えば自分が死ぬまでの一連の過程をその共犯者に準備させることに意味があった、とか?」

「確かに同じ自分の考えで死ぬにしても自殺と自殺幇助では大きく異なりますわ。だって誰が実行したのかが変わりますから。」

「っつうことは、大地ちんはその共犯者をクロにしたかった、ってワケだ。悪いやつだねぇ。」

「目的は恐らくその人物を殺すことじゃなく生かすことだったとは思うけどね。明らかに状況は大地クンの意志によって作られたもの、だけどどこまで共犯者が関わっているかは分からない、というのが大地クンの狙いだったんだよ。そう言う状況に陥ればボク達には2つの大きな選択肢を押し付けることが出来るからね。」

「…今回のクロが大地か共犯者か…。」

「でも大地クンは大きな見落としを1つしていた。」

「見落とし?」

「大地クンはボク達にさっき鏑木クンが言ってくれた2つの選択肢を押し付けたとして結局どっちを選ばせたかったんだと思う?」

「共犯者をクロにして、その人を生かそうとしていたワケだから大地クンを選んでほしかったんじゃ?」

「そう、その通り。まあ共犯者がいたということがそのことの何よりの証拠になるんだけどね。」

「何でー?」

「自分に置き換えて考えてみて。自分含めて全員を学級裁判で殺す計画を立てたので手伝ってください、って言われたら手伝う?」

「ぜってえ手伝わねえな。」

「でしょ?つまり大地クンは共犯者に対して例えば『君をクロにして外に逃がす計画を立てたから自分を殺してくれ』とか大地クンを殺してクロになってもらう取引を持ちかけた、としか考えられない。」

「そうなるな。」

「まあ色々と御託は述べてきたけど、結局のところ大地クンはこの現在に至る状況そのものが大地クンがクロになるっていう選択肢を削ってしまうものになることを見落としていた。もっと言うと今回のクロは大地クンの計画に乗って大地クンを殺した共犯者だ。」

「さすれば我々の中のその“共犯者”をあぶり出せばよい、と。」

「そういうことさ。」

「つったってどうやってあぶり出すのさ?」

「そうだね、じゃあまずは事件に使われたものから考えていこうか。今回の事件に使われた道具の中で誰でも使えたものは何?」

「えーっと、フックと重り、かな?どっちもみんなの共有スペースにあったよね?」

「そうだね。じゃあ逆に調達が難しいものは?」

「細い紐でありながら少なくとも40分間はバーベルの重りに耐えうるもの、でござるな。」

「じゃあそれを持っている人は誰かな?」

「私の弓の弦はそれに当てはまるかも知れないな。」

「バドミントンのガットもかなり強いんじゃねえか?」

「素材にもよるだろうがバイオリンの弦も相当なもののハズだ。」

「…当てはまるのはこんなところか。ならばこの3人の中に犯人がいるということになる。」

 

そう、細くて強い紐を持っているのはこの3人。この段階に来てまだ候補者が多いようにも感じられる。けれどもう1つ、この犯行を行うにあたって不可欠なものを加えると犯人はたった1人に絞られる。

 

「…いや、犯人は1人だよ。今回の計画を成功させるために必要なものが揃っているのは1人しかいないんだ。」

「マジか…!」

「それは誰でござるか…!?」

 

必要なものの説明は後回し、まずはその犯人に犯行は暴かれたという事実を叩き付ける!!!

 

 

 

 

 

指名しろ!

【ハツキショウコ】

 

「キミしかいない!」

 

 

 

 

 

「…え?うち…?」

「うん、そうだよ。キミが犯人だ。」

「待ってよ!うちはやってない!!なんでそんなこと言うの!?」

「ボクはさっき犯行に使われたものの中で重要な2つを抜かしてみんなに伝えたんだ。1つは紐をくぐらせた後に一度下まで下ろすのに使う持ち手、そしてもう1つは紐を床から5メートルの高さにある梁に通すだけの身体能力だよ。そして靏蒔さんは持ち手を、木田さんは身体能力を持ち得ないんだ。」

「何でよ…?由衣ちゃんだったら矢だって使えるかも知れないでしょ!?」

「…すまないがそれはムリだ。あの梁と天井の距離ではかなりの難易度だ。練習を積めば通せるだろうが、先に深見が言っていた実験の段階で色んなところに矢が刺さった痕跡を残してしまう。」

「じゃあ結弦ちゃんは!?鷹岡君が使ってた脚立を使えばそんな身体能力なんてカバーできるじゃん!」

「さすがに目立つだろう。鷹岡ならまだしも木田がその体格であの大きな脚立を運んでいたらな。どこかで目撃証言が出るリスクが高い。計画の目的を考えると大地が取るとは思えない選択だ。」

「でも…、でも…!うちにだってムリだもん!!!」

 

美作さんのときと同じだ。もしかしたら羽月さんは更に動揺しているかも知れない。ならば彼女の反論をいなし切って彼女自身に罪を認めてもらう!!

 

 

 

パニックトークアクション

 

「うちじゃないもん!!」

 

 

「なんでそんなこと言うの!?」

 

 

「他の2人だってできたかもじゃん!」

 

 

「殺してない!」

 

 

「うちには出来ないんだもん!!」

 

 

「なんでうちが!?」

 

 

「絶対絶対絶対に違う!!」

 

 

「うちにだって殺せない!!」

 

 

「深見君のバカあぁぁぁ!!」

 

 

『逆にどうやってうちが梁に紐を通したって言うのさ!?』

 

《天》《井》《打》《ち》

 

「これで終わりだよ!」

 

 

 

「…!!!」

「キミはガットをシャトルに結びつけ、バドミントンの基本練習の1つである天井打ちの要領で強く打ち上げ、梁に紐を通したんだ。靏蒔さんの矢と違ってシャトルは何かをひどく傷つけるリスクは少ないから多少失敗してもやり直しが利いただろうしね。」

「う、うう…。うわあああぁぁぁぁぁぁぁん!!!」

「は、羽月…?」

 

羽月さんは抵抗空しくその反論を打ち破られたことで泣き出してしまった。ムリもないのかもしれない。それでもボクは前に進まなければならない。そのためにもこの事件の全てをまとめてこの学級裁判を終わらせる!!

 

                    ・

                    ・

                    ・

 

【生存者】

超高校級の探偵          深見優(フカミユウ)

超高校級のレーサー        速瀬マハ(ハヤセマハ)

超高校級のバスケットボール選手  雷文竜(ライモンリュウ)

超高校級の外交官         金谷秀征(カナヤシュウセイ)

超高校級のバドミントン選手    羽月翔子(ハツキショウコ)

超高校級の医者          津田真理奈(ツダマリナ)

超高校級の歴史学者        伊達小十郎(ダテコジュウロウ)

超高校級の大工          鷹岡筋次(タカオカキンジ)

超高校級の数学者         言村香奈(コトムラカナ)

超高校級の???         鏑木麗(カブラギレイ)

超高校級のハッカー        クレイグ・ホワイトバーチ

超高校級の弓道家         靏蒔由衣(ツルマキユイ)

超高校級のバイオリニスト     木田結弦(キダユヅル)

 

残り13人




一気に第2章学級裁判後編まで駆け抜けましたが、いかがでしたでしょうか?皆さんの犯人予想は当たっていたでしょうか?コメントなんかで教えてくれると嬉しいです!次回はおしおきとなっていくのでどんなおしおきが待っているのかワクワクドキドキということで…。

それでは今回の設定裏話!今回はこの事件の主役である大地クンについてお話ししていきましょう!
超高校級の地主である彼ですが、同時に大地コンツェルンの御曹司でもあるのはこれまでにも描かれてきたとおりですが、実は彼の一族はそれぞれ得意分野が異なります。例えば彼の父親ならコンサルティング、兄弟なら食品や出版などどこかに特化しています。そして大地クンの場合は不動産、それ故に多くの土地を所有し、彼の才能へと繋がっていきます。一族の一点特化の豊かな才能によって彼の実家の財閥は保たれているわけですね!
名前に関しては大地主であることから付けられています。名前に関しては正直ふと口に出したときの語感で決めました笑。色々な事が起こった彼ですが、普段の彼が一体どんな生き様であったのか、見てみたかったです…。

それでは今回はここまで!また次回お会いしましょう!! 


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CHAPTER2 学級裁判 閉廷

この事件の全てをまとめてこんな悲しい学級裁判なんて終わらせる!

 

 

 

クライマックス再現

 

ACT1

「今回の事件の発端は昨日の朝のこと、タブレット端末を通してコロシアイの動機となるビデオが配られたことだった。」

 

「モノトラの想定としては動画を見て外に出たいと考えさせてコロシアイに繋げることだったんだけど、大地クンの場合はそのビデオに絶望して自殺することを決めてしまった。」

 

「ただここで自殺をするに当たって大地クンが選んだ手段が問題だった。」

 

「大地クンは普通に自殺するのではなく、誰かに自分を殺させることを目論んだ。そしてその大地クンを殺害する人物として選ばれたのが今回のクロだったんだ。」

 

 

ACT2

「ある程度の計画を立てた後、その成功率を上げるために大地クンとクロは昨日の夜、映画館で犯行手順が上手くいくかどうかの実験を行っていた。」

 

「その中の音の一部と大地クンの話し声は言村さんに聞かれていたんだけどね。」

 

 

ACT3

「実際に今日行われた犯行の手順は次の通りだ。」

 

「まずクロはポップコーンとドリンクを持って映画館で大地クンと合流した。もしかしたらその時にキッチンのワゴンなんかを使ってバーベルの重りを持ち込んだのかも知れないね。」

 

「こうして持ち込んだバーベルの重りにクロはガットを結びつけた。更に反対側の端にはシャトルを結びつけてトリックの準備の第一段階は完成さ。」

 

「こうしてガットの結びつけられたシャトルを天井打ちの要領で打ち上げて梁の上を通し、更に梁を跨いで落ちてきたシャトルを引っ張り下ろしていつでも重りが持ち上げられるような状態を作ったんだ。」

 

「下ろしてきたシャトルからガットを外し、今度は倉庫に置いてあったフックにガットを縛りつけた。」

 

「この状態でクロはフックを映画館の外まで引っ張って重りを持ち上げたんだ。そしてそこから大地クンが扉を閉めて映画をスタートさせて扉をロックしたんだ。」

 

「そしてこの状態のドアの隙間から少しだけ覗いているデッドボルトにフックを引っかけることで映画館の中では重りがぶら下がった状態を維持することになったんだ。」

 

 

ACT4

「ここまでの準備を終えた上で大地クンはその重りがぶら下がっている真下の席に座った。」

 

「そしてその場で映画を鑑賞した。映画が終了すると同時にドアのロックが開き、デッドボルトからフックが外れたことで重りは大地クンの頭頂部めがけて落ちてきた。それがクリーンヒットしたことによって大地クンは死亡することとなったんだ。」

 

 

ACT5

「一方クロの方は重りが落ちるまでの一定の時間差を利用してちょうどその時間に真理ちゃんと言村さんと一緒にいるようにした。」

 

「こうすることによって大地クンの死亡推定時刻当時には誰かと一緒にいたという偽のアリバイを立証したんだ。」

 

 

ACT6

「その後クロは時間を見計らってもう一度映画館へと向かった。現場の証拠隠滅のためだね。」

 

「大方を隠し終わった後は、先に大地クンに伝えられていた映画の終了時刻に合わせて第一発見者を装ってみんなを呼ぶことになったんだ。」

 

 

「そして、ここまでの一連のトリック、それが実行可能な道具と能力、その両方を持ち合わせていたのは、羽月翔子さん、キミしかいないんだ!!!」

 

 

 

「うっ…!ううっ…。」

 

未だに羽月さんは泣きじゃくるだけで何かを話してくれる様子はない。ならばまずは先に。

 

「モノトラ、まずは投票を。」

「冷静だな。話は聞きたくねーのか?」

「どうせ先に投票させるでしょ?それに今のままじゃ話すこともままならなそうだしね。まずは投票をして犯人を確定させる。」

「そうか。よし、それならオマエラ!それぞれがクロだと思う人物に投票してくれ!!」

 

ボクは再び見ることとなったそのボタンに手をかける。そしてゆっくりとこれまでの推理で犯人と導き出した人にその票を入れた。

 

 

 

投票結果→ハツキショウコ

 

 

 

【学級裁判閉廷】

 

「投票完了、でござるな…。」

「結果はどうなんだ?もったいぶらずに早く言え。」

「そう焦んなよ。ちゃあんと発表してやるからよ。それじゃあ発表するぜ!今回の学級裁判は!なんと?意外や意外!!?大!正かーい!!!そう、超高校級の地主・大地真英の自殺に付き合って、そしてクロとなったのは!!羽月翔子だったんだぜーー!!!」

「……。」

「くそっ!!」

 

みんなは各々の悔しさの表現をしている。そんな中でボクは先ほどまで子どものように泣きじゃくっていた彼女に目を向ける。すると彼女はいつの間にか泣き止んでいたがその代わりに俯いたままボク達の方に目を向けることはしなかった。

 

「…羽月さん、どうして大地クンの計画に乗ったの?」

「え…?」

 

ボクの言葉に少しだけ顔が上がる。

 

「確かにキミもあの動機ビデオは見てたはずだけど、どうしてわざわざこんなクロとして死ぬようなリスクを取ったの?」

 

これまでの彼女は一般的な女子高生そのもののスタンスであり、コロシアイに関連する物事に関してはむしろ臆病なくらいだったようにも思う。そんな彼女がどうしてこんな凶行に及んだのか。ボク達には聞く権利があると思った。

 

「それはね、あの日、動機ビデオが配られた日にね、大地君に殺してほしいって頼まれたんだ…。」

 

そう言えば大地クンはあの日の映画鑑賞会のポップコーンやドリンクの準備も羽月さんに頼んでいたはずだ。もしかしたらその時かも知れない。

 

「でもこれまでのキミだったらそんなリスクの高い頼み事は引き受けなかったと思うんだけど。」

「大地クンね、あのとき殺してほしいって事の他にもう1つうちに伝えてきたことがあるの。」

「それは?」

「“好き”だって。」

「何ぃ!!?」

 

なんとも驚きの告白だ。

 

「だから最初は止めたんだよ?だったら一緒にいようよって。でも大地クンの動機ビデオを見せられて、ぼくにはもう生きる理由も意味もないって言われちゃって…。そして、『だからこそ最期に自分の命は好きな人を生かすために使いたい』って…。」

「重ぉ…。むしろそんなん迷惑極まりねえっしょ…。」

「…否定出来んな。」

「みんなが言うことも分かるよ?でも大地君はそのときにはもう覚悟を決めてて、だったら最期のお願いくらい聞いてあげたいって、そう思っちゃったんだ…。」

「だから大地クンを殺したってワケかい。」

 

でもその優しさは否定できない。彼女が死に逝こうとする人の最後の願いだけでも聞き入れてあげたいとそう思ってしまった、その心根の優しさをボクは理解できてしまう。でもだからこそ。

 

「それでも殺人は殺人だよ。現実世界では自殺幇助くらいになるかも知れないけれど、それでも1人の人の命を奪ってしまったというその事実は変わらないんだ。」

「うん、そう、だよね…。分かってる。大地君の願いを聞き入れるって決めた時点でもううちはこうなることも覚悟の内だったから。だって大地君がうちのために命を捨てるって覚悟を決めているのにうちが同じ覚悟を決めないなんてそういう訳にはいかないでしょ?」

 

彼女はそこまでの覚悟を持って…。

 

「本当にそうかぁ?」

 

羽月さんの思いを吐露した言葉にモノトラが茶々を入れてくる。

 

「邪魔すんじゃねえやい!!」

「いや、そんなつもりはねーんだぜ?ただ本当に羽月は大地のためにこの事件の計画に乗ったのかってことにゃ甚だ疑問だったんでな。」

「それはどういう意味だ?」

「そりゃもちろんこれのことだろ?」

 

そういうとモノトラはリモコンを操作して先ほどのスクリーンを下ろしてきた。

そしてそのままとある映像を再生し始めた。

 

「…っ!!」

 

その様子を見た羽月さんは顔をサァッと青くする。

 

 

 

『羽月翔子サンの動機ビデオ』

 

一度暗転した画面が再び点灯するとどこかの一室のソファで大学生くらいの女の人が少し緊張した面持ちで座っていた。

 

『アスリート夫婦の間に生まれた羽月翔子サン、その幼少期は両親が忙しいことも多く、一人で過ごすことが多くありました。』

 

『そんな彼女の面倒をよく見てくれていたのがお隣のおうちに住んでいたお姉さんでした。』

 

『彼女はまるで実の妹のように羽月サンとの時間を過ごしてくれました。』

 

そんな説明が入ると映像の中の女性が話し始める。

 

『えっと翔子ちゃん、お久しぶりです!あはは、改めて何か話してって言われると緊張しちゃうね。』

 

そう言って画面の中の女性ははにかみながら話し始めた。

 

『あんなにちっちゃかった翔子ちゃんももう高校生かぁ。ビックリしちゃうなぁ。でもいつも活躍はテレビを通して見てました!かっこいいなぁってずっと思ってたよ!』

 

でもやっぱりこの人の羽月さんに対する愛情はかなり深いものがあると感じさせられた。以前羽月さんが言っていたとおり、姉代わりの人だったのだろう。

 

『希望ヶ峰学園に行ったって事はきっと翔子ちゃんはこれまで以上にスゴい選手になっていくんだと思います!ずっと応援してるからね!』

 

そう彼女が言い終えた直後、ザザッという音と共に画面が暗転した。そしてそこに映ったのは切り裂かれたソファ。それだけでなくそこには血痕とおぼしきものが付着している。

 

『そんな彼女も今年で大学2年生、学校にも慣れて、多くの友人に恵まれて楽しい学生生活を送るはずでしたが、それはもう叶いません。』

 

まるで希望と絶望を一度にない交ぜにしてぶつけられた感覚。

 

『それは一体なぜなのか?一体彼女の身に何が起こったのか?』

 

そして最後にはお決まりのあのフレーズが表示される。

 

『正解は“卒業”の後で!!』

 

 

 

モニターが再び黒くなり、映像が終わるとみんなは絶句という表情で真っ暗な画面を睨み付けている。その一方で自分の動機ビデオをみんなに発表されてしまった羽月さんは真っ青な顔をして震えている。

 

「ま、そこの女の動機はこんな感じになっていたわけだが、本当の動機は大地のためなんかじゃなくてこのビデオに出てきた女のためじゃねーのか?」

「っ…!」

「大地の好意につけ込んで、そのビデオの中の女を助けに行こうとしたんじゃねーのか?」

 

モノトラが追い打ちをかけていく。羽月さんは今にも倒れそうな様子だ。

 

「おいテメエ!!そこまでにしとけよ!!」

 

見かねた雷文クンがモノトラを怒鳴りつける。だけどモノトラは止まる様子を見せない。

 

「なぁに言ってんだ?オマエラもコイツの身勝手で死にかけてんだろーが。むしろオマエラも一緒に罵声を浴びせてやればいいじゃねーか!」

「ぐっ…!」

 

雷文クンが痛いところを突かれたとばかりに言葉を詰まらせる。

 

「それとこれとは別でござる。理由はどうあれ、某達も一歩間違っていたらこうなっていた。それが分かっているのに罵声を浴びせることなんてできんよ。」

「それに羽月は私達にとって大事な仲間であることに変わりはない。暴言はそこまでにしてもらおうか。」

「そ、そうだよー!翔子ちゃんは香奈達にとって…」

 

 

「もうやめて!!!」

 

 

雷文クンが言葉を詰まらせたのに代わって伊達クン、靏蒔さん、言村さんが声を上げると、それを遮るような叫び声が聞こえた。その声のした方を見ると、肩で息をしながら羽月さんがこちらを見ていた。

 

「もう…、やめて…!」

「羽月殿、何故止める!!」

「もう、うちなんかのために争わないで…!うちは、うちにはもう、みんなにそんなに思ってもらえるほど価値なんてないのに…!!うちは大事な仲間の一人を殺した人殺しなのに!!!」

 

腹の底から、いや、心の底から絞り出すような叫びにボク達は言葉を失った。

 

「…じゃあなんでだよ…!じゃあ、なんで真英を殺した!!?」

「そんなのモノトラが言ったとおりだよ!!お姉ちゃんが大変な事になったかも知れない!!それでいても立ってもいられなかったから!!死にたがってる人ならうちの罪悪感が少しでも軽くなるって思ったから!!!」

 

速瀬さんの問いかけに今までにないくらいはっきりと答えが返ってくる。“罪悪感”。きっと彼女の中でずっとあのビデオを見たときから「ここを出なきゃ」という想いがあったはずだ。でもそれはできなかった。自分が誰かを殺すという罪悪感に耐えられそうになかったから。でもその状況は変わってしまった。羽月さんの心情を知ってか知らずか、大地クンは彼女に自分を殺す計画を持ちかけた。その出来事こそが彼女の心を抑え続けていた“罪悪感”というブレーキを緩めさせてしまったんだ。

 

「庇われたいとは思わないけれど、責められる道理もないよ。だって、さっき伊達君が言ったとおり、同じような動機ビデオを見せられて、一歩間違ったらみんながうちの立場だったかも知れないんだから。」

 

ギリギリと音がしそうな程に強く拳を握りしめて羽月さんは最後にそう絞り出した。

ボク達はみんな無言だった。分かっているからだ。今回の大地クンの計画のようなきっかけさえあればクロになっていたのは自分だった、と。今回の羽月さんは被害者自身がそのきっかけを持ってやってきてしまった。いわば大地クンはネギを背負ったカモだった。そのたった1つの出来事が羽月さんに殺人を決意させてしまった。

 

「…だから、うちを許さないでね。」

「!」

 

他のみんなには聞こえていないみたいだけどボクには聞こえてしまった。たった一言、誰にも聞かせないつもりで羽月さんが零した一言。ああ、まさかキミは…。

 

「じゃあ、モノトラ、お願い。」

「なーんかつまんねーなー。どうせだったらさっきまでのテンションで最後まで泣き喚いてくれればよかったのによー。」

「全部バレてそれでもわめく程、うちは往生際悪くないよ。これでもう終わり。」

「ま、それならそれでいいぜ。じゃあ行くとするか。」

「あ、待っ…!」

「それじゃ!!超高校級のバドミントン選手、羽月翔子のために!!!スペシャルなおしおきを!!!用意したぜ!!!!」

 

聞こえてしまった彼女の言葉。それに反応して手を伸ばしてしまう。けれどその手は空しく空を掴み、モノトラがボタンを押すと同時に出てきた鎖に繋がれて羽月さんは連れて行かれてしまった。

 

 

 

ハツキさんがクロにきまりました。

おしおきをかいしします。

 

 

 

鎖に繋がれて羽月さんが連れて行かれた先はバドミントンのコート。

 

そのコートの中では4体の巨大なモノトラがダブルスの試合を行っている。

 

するとその中の1体が足を滑らせて転び、試合続行が不可能になるかも知れない状況に陥った。

 

ペアのモノトラは近くに連れてこられた羽月さんに強制的にラケットを握らせてコートの中に立たせる。

 

 

超高校級のバドミントン選手・羽月翔子のおしおき

《ボディをねらえ!》

 

 

新たなゲームの最初のサーブは羽月さん。彼女がこれまでにも何度もやってきたとおり、サーブを打つ。

 

それに対して相手方のモノトラが強い球を返してくる。

 

その返球に対しても羽月さんはこれまでの通りきちんと返した

 

ハズだった。

 

強い返球を受けた彼女の肘はこれまで見たことのない方向に曲がり、彼女の顔が苦悶に歪む。

 

球自体はきちんと返せており、もう一度とばかりにモノトラは更に強い球を打つ。

 

動かない肘をムリに動かし、彼女は返球を試みる。

 

ムリに強い球を受けた彼女の身体は肘のみならずダメージを受けていく。

 

かばいながら球を受ける分、他の場所に負担がかかり、そしてその箇所が壊れていく。

 

そうするうちにいつの間にか羽月さんは息も絶え絶えに鳴りながらコートに立っていた。

 

最後にどうにか返した球は緩く高く上がった。もうどこの骨が折れていないのかも分からない。

 

それでもどうにか次の球を返そうとする羽月さんに向かってモノトラはスマッシュを打つ。

 

その球はこれまでの中でも最も強い勢いで羽月さんに向かっていく。

 

シャトルを受けようと羽月さんはラケットを胸の前に持っていく。

 

刹那。

 

ガットを突き破り、羽月さんの胸も突き破り、鮮血に染まりながらシャトルはコートへ落ちた。

 

羽月さんはその胸の孔と同じくらい虚ろな目をして床に斃れ臥した。

 

 

 

「エクストリーーーーーム!!!いやあ、思いの外根性あったが、オレの手にかかればこんなもんよ!!!」

「…っ!!」

 

また失ってしまった。死なせてしまった。仲間を、ボク達の手で。鮮血の中で斃れる羽月さんの姿を見てボクは拳を握りしめることしか出来ない。ボクにはまた救うことが出来なかった。

 

「優クン…。キミが…」

「何ヘコんでんだよ深見ちん。俺ちん達が気にすることじゃねえだろ?だって理由はどうあれ羽月ちんは俺ちん達を騙して殺そうとしたんだぜ?当然の報いさ。」

「クレイグ、貴様っ!」

「大地ちんだってそうだぜ?みんな忘れてっかも知んねえけど、そもそもこの計画は大地ちんが立てたものだ。羽月ちんは乗っただけ。俺ちん達を殺そうとした2人をボロクソ言って何がわりいってんだい?俺ちん達にはそれくらい愚痴る権利はあると思うぜ?」

「…。」

 

一度クレイグクンに食ってかかろうとした靏蒔さんが苦虫を噛み潰したような顔で黙りこむ。ボク達は確かに2人の計画で死にかけた。でもだからってそれが死んだ2人を貶していい理由にはならない。

 

「それは…、違うよ。2人は悪くない。」

 

だって…。

 

「だって…、黒幕がこんなコロシアイなんてさせなければ、あんな動機ビデオなんて用意さえしなければ、2人だってこんなことしなかったんだ…!ボク達の敵は2人じゃない。このコロシアイを仕組んだ黒幕だよ。」

「優クン…。」

 

そう言い切るとクレイグクンはフッと笑う。

 

「なあんだ。大事なこと分かってんじゃねえの。そーそー、俺ちん達にとっての敵はそこのモノトラちんの裏にいる黒幕さ。それの確認さえ出来りゃいい。」

「クレイグくん、ほんとにそう思ってたー?」

「もっちろんさあ。本心よ、本心。」

「疑わしいがな。」

「言村ちんも靏蒔ちんもひでえなぁ。ま、日頃の行いか。」

「…分かってるなら直したらどうだ?」

「人間ここまで育っちゃそうは変わらんのさ。」

 

今ボク達は2人もの仲間を失った。そしてそれによって心に大きな傷を再び負った。だけど、ボク達は良くか悪くか、強くなっている。こうして、すぐに冗談を言い合えるくらいには。

今回起こった事件も、その結末も悲しいものだ、だけど、みんながこうして笑っている光景はボク達に二度とコロシアイを起こさせないと予感も決意もさせるのに充分なものだった。

 

 

 

CHAPTER2 我がクララに愛を込めて  END

 

TO BE CONTINUED…

 

                    ・

                    ・

                    ・

 

【生存者】

超高校級の探偵          深見優(フカミユウ)

超高校級のレーサー        速瀬マハ(ハヤセマハ)

超高校級のバスケットボール選手  雷文竜(ライモンリュウ)

超高校級の外交官         金谷秀征(カナヤシュウセイ)

超高校級の医者          津田真理奈(ツダマリナ)

超高校級の歴史学者        伊達小十郎(ダテコジュウロウ)

超高校級の大工          鷹岡筋次(タカオカキンジ)

超高校級の数学者         言村香奈(コトムラカナ)

超高校級の???         鏑木麗(カブラギレイ)

超高校級のハッカー        クレイグ・ホワイトバーチ

超高校級の弓道家         靏蒔由衣(ツルマキユイ)

超高校級のバイオリニスト     木田結弦(キダユヅル)

 

残り12人




さてさて、時間がかかってしまいましたが、2章はここまでです!!
2度の裁判を経て確実に成長もしている深見クン達は今後どのような物語を紡いで行くのでしょうか…?


それでは設定裏話、今回でキャラクター編はラスト、木田結弦さんのお話です。
木田さんは超高校級のバイオリニストとして希望ヶ峰学園にスカウトされていますが、実は彼女の両親も学年は異なりますが超高校級の才能を持った音楽家でした。その2人の期待に添う結果は見せてきた彼女ですが、一時期、これからも期待に応えられるのか、その不安が転じての反抗期が高じて家出をしてしまった時期もあるようです。
名前に関してはバイオリンの大雑把な材質である木、そしてバイオリンに張ってある弦を用いた名前になっています。


次回からはここのコーナーでは前作の時と動揺、各章における設定裏話や超高校級の○○をやっていこうかな、と思いますので、乞うご期待です!それではまた次回!!


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CHAPTER3 心と口と行いと才能で
CHAPTER3 (非)日常編1


ここはホテル内の一室。モニター以外の明かりのない部屋でモノトラが誰かと話している。

 

「いやー、順調順調!もう2回もコロシアイが起きてるぜ。これならオマエの出番もないかもな。」

「……。」

「ま、そう焦んなって。その分他に必要な動きが出たら頼めるってモンよ。」

「…?」

「必要な動きが何かって?まあそりゃそんときになってみなけりゃわからねーがよ。でもまあ例えば邪魔者の排除とか?何人かいるだろ?厄介そうなの。」

「………。」

「ま、また指示を出すんで、そんときにゃよろしく頼むぜ。」

 

会話の内容は分からない。だけど分かることはただ1つ。

この学園には黒幕の内通者がいる。

だけど深見達はそれをまだ知らない。知ることになるのはいつになることやら…。

 

 

 

CHAPTER3 心と口と行いと才能で (非)日常編

 

 

 

キーン、コーン… カーン、コーン…

 

「おはようございます。7時になりました今日も1日元気で頑張りましょう。」

 

朝、か…。昨日は裁判後の謎のハイテンションで乗り切れてしまったけどやっぱり時間が経つと気分が悪い。昨日の裁判の結末も、大地クンと羽月さんの死に様も。だけどボク達はその敵をモノトラの裏にいる黒幕だと狙いを定めた。ならば足を止めているわけには行かないだろう。

食堂に行くとそこにいたのは雷文クン、伊達クン、靏蒔さん、木田さん、そしていつもはもうちょっと寝ている言村さんだ。逆にいつもは意外と早く起きてくるクレイグクンは今日はまだ来ていない。

 

「はよーっす。」

「うん、おはよう。みんなは寝れた?」

「疲れてたって意味ではグッスリだったでござるが…。」

「寝覚めは悪かったな。」

「まああんなことがあった後ですし。ところで言村さんは今日は早いですわね?」

「うーん、なんとなく早く目が覚めたから、みたいなー?」

「ま、そんな日もあっていいだろ!」

 

そうこうしているうちにみんなが集まってきた。やはりみんな寝れてはいるみたいだけどあまり体調は良くなさそうだ。

 

「やっぱダメだね、あんなことがあった次の日は。」

「貴様は関係なく寝坊だろう。」 

「そうとも言うね。ま、遅刻はしてないから許してよ。」

 

クレイグクンもまだ少し眠そうだ。

みんなの朝食がひと段落したところで真理ちゃんが話を切り出す。

 

「さて、これで我々は不本意ながらも2度目の学級裁判を乗り越えたことになる。すると、だ。前回同様、新たなエリアが広がると考えていいだろう。」

 

そう言えばそんなこともあったな。

 

「まあとは言え、外には他に何か施設があるという雰囲気はなかったから、おそらくこのホテルの3階が解放されるものと思われる。」

「つまり、オイラ達は今日はその新しいエリアっつうのを探索するって訳だな!」

「そういうことさ。」

「ならば前のときと同じで人によって自由に探索、って形でいいか?」

「うん、そうだね。じゃあ片付けが終わったらみんなで探索に行こうか。」

 

 

 

2階の階段まで上がっていくと、真理ちゃんの予想通り昨日まではシャッターで鎖されていた3階へと繋がる階段が通れるようになっていた。そしてそれぞれが自由に調査をスタートしていった。

ボクは西棟の方から調査をスタートした。

 

 

 

まず目に入ったのは客室に混じって設置されていた資料室。ここでは一体何が見られるんだろう?

中に入ってみるとまず目に入ったのはズラッと並べられたディスプレイ。どうやらここは言い換えるとパソコンルームに当たるらしい。

中に入るとクレイグクンと言村さんが調査を進めていた。

 

「何か見つかった?」

「あー、深見くんだー。」

「いんや、なんにも見つかってねえぜ。ただ分かったことはある。」

「一瞬で矛盾していかないでよ…。」

「嘘は吐いちゃいねえぜ?実際今すぐに使えるものは何もなかった。」

「じゃあ後から使えそうなものがあったってこと?」

「まあそう焦るなよ。説明するからさ。まず、このパソコンは本来インターネットに繋がっていたと考えられる。だけどこの環境下だ。さすがに今は使えねえ。そして後1つ、これくらいなら俺ちんがハッキングできそうだ。」

「ハッキング?」

「ああ。俺ちんが作ったソフトを入れたり何か別のデバイスから情報を入れたりってな。さすがに電子しおりとかトラパッドじゃ出来なかったことがここじゃ出来る。」

「つまり何かハッキングして入れる予定があるってこと?」

「お、鋭いねえ。まさにその通りさ。ま、ここに来たときからずっと考えて準備はしてたんだがやっとそれが実現できそうなのさ。ま、行動に移す時にゃ深見ちんにも見せてやるよ。」

「うん、ありがとう。」

 

結局クレイグクンが何を企んでいるのかはよく分からなかったけど今のところボク達に何か害を加えるつもりではなさそうなのでスルーすることにした。

 

 

 

ホールの奥に何か大きいスペースがあるのは気になるけどまずは東棟の探索をしてみよう。

東棟でまず目に入ったのは他の部屋とは異なる黒い重そうな扉だった。ここには何があるんだろう…?

その答えは中に入るとすぐに分かった。奥には大きなステージ、手前にはバーカウンターとおぼしきものが設置されていた。ここはいわゆるライブハウスというものではないだろうか。ステージには煌々と証明が焚かれ、その主役を今か今かと待っている。

そこでは速瀬さん、雷文クン、木田さんの3人が調査をしていた、というかじゃれ合っていた。

 

「いいじゃねえかよー!聴かせてくれよー!!」

「嫌ですわ!わたくしのバイオリンはこういうところで弾くためのものではありません!!」

「アタシも聴きたいぜー!!」

「…何やってんの?」

「あ、水島さん、いいところに!助けてくださる!!?」

「いや、助けてって言われても…。何があったの?」

「木田の奴が演奏してくんねえんだよ!!せっかくあんな良いステージがあんだぜ?聴きてえじゃんよ!!」

「アタシの方からもこうやって頭下げてんだぜー?」

「それが頭を下げてる側の態度ですの!!?」

 

あー、つまり2人が木田さんにステージでバイオリンを演奏してくれってせがんでいるのか。木田さんも大変だなぁ…。

 

「でも木田さんもたまには思い切り弾きたいんじゃない?」

「それはそうですがここではちょっと…。」

「まあ、木田さんはずっと大きなホールとかで演奏してきたもんね。こういうところは苦手か。」

「あ、いやそうではなく、こういうところにはこういうところに合う音楽があると思いますの。ですけどわたくしあまりそのジャズとかロックに類する曲は弾いてきたことがなかったのでさすがに付け焼き刃の演奏はお見せできませんわ。」

「いいって!付け焼き刃でも充分上手えだろ?」

「貴方方ではなく、わたくしが嫌なのです!せめて2日、練習時間をくださいまし。幸いここには楽譜がありますし、練習すればできますわ。」

 

それはそれでスゴいけど…。て言うか木田さんの付け焼き刃の基準ってどこからなんだろう…?

 

「あ、でも楽譜なんてどこにあるの?」

「あそこの倉庫の中に置かれていましたわ。乱雑で作曲家に対するリスペクトが足りませんけど。」

 

倉庫、か…。一応見ておこうかな…。

木田さんの言い分に納得したようで、2人は「2日後、約束だからな!」と言いながら引き下がった。

 

「全く、エネルギッシュすぎますわ…。」

「まあだからこそ超高校級のアスリートなんじゃない?」

「まあそうとも言えますが。深見さんはこれからどうされますの?」

「さっき木田さんが言ってた倉庫も調べて見るよ。」

「そうですか。それならばわたくしはお先に。」

「うん。」

 

木田さんがライブハウスを離れた後、ボクは倉庫の中を調べて見た。確かに棚の中に楽譜が乱雑に積み重ねられていた。そしてその他にもボクは見覚えがないけどどこかのバンドとおぼしき人たちが写ったポスターが何種類か積まれていた。

その他にも予備の楽器やその手入れ道具、ステージの照明を手入れするときに使ったりするのだろうか、脚立も数脚置かれていた。

 

「この前鷹岡クンが使ってた奴はさすがに大きすぎて扱いきれないけどこれくらいだったらボクでも扱えそうだ。」

 

思い出していたのは昨日の事件の捜査の時に鷹岡クンが映画館に持ちこんだ巨大な脚立。さすがにアレは持ち運ぶのに重すぎるけどここにあるのは一般的なサイズで男子なら誰でも問題なく扱えるだろう。女子でも真理ちゃんみたいに身体が小さい人じゃなければ扱える。

何か高いところに登る必要のあることが起こったらこっちに取りに来ることにしよう。

ライブハウスで調べられそうなのはこんなところかな。じゃあ次のところに行こう。

 

 

 

この3階にはどうやらあともう一つ東棟の方にスペースがあるようだ。

扉をゆっくり開けると、そこからはなんとも表現しがたい匂いが漂っていた。しいて表現するのであれば夜の繁華街ですれ違う匂いだ。まあ、もっと端的に言うなら化粧品臭い。

 

「深見か。どうした?」

「いや、探索中だけど…。」

「それもそうか。」

 

そこには3脚のイスと大きな鏡台、そしてその前に所狭しと並べられた大小、そしてカラーも様々なビンやプラ容器。ボクにはあまり縁はないけれどここはいわゆる“メイクサロン”と呼ばれる施設だろう。

 

「まあ、来てみたは良いがここが一体何の部屋なのかさっぱり見当も付かない。化粧室というには派手すぎる気がするが…。」

 

あー、確かに靏蒔さんもこういう場所にはわざわざ来なさそうなイメージがある。むしろ捜査とかで来たことがある分ボクの方が来ている回数が多いかも知れない。

 

「ここはメイクサロンだよ。」

「メイクサロン?」

「うーん、なんて言えば良いのかなぁ。プロにメイクをしてもらうんだよ。」

「つまり化粧版の美容室ということか?」

「まあ美容室をヘアサロンなんて言ったりもするしそんなところかな。」

「ならばこのような雰囲気も納得だ。」

 

そんな話をしているとカーテンの掛った奥の部屋から伊達クンが出てきた。

 

「おお、深見殿もこちらに来られたのか。某、中々このようなところは疎い故、新鮮でござる。」

「確かに、伊達クンがメイクサロンにいるのは想像付かないかも。」

「そうでござろう?某と靏蒔殿でこのめいくさろんなる施設に縁のない者トップ2でござるな!はっはっは!!」

 

伊達クン、女の子にそれを言うのはかなりデリカシーがないと思うんだけど。

恐る恐る靏蒔さんの方を振り返ると、靏蒔さんは顔を真っ赤にしてプルプル震えながら俯いていた。あー、マズいかも、これ。

 

「ま、まあそうだな。わ、私も化粧などとは関わりもなかったからな。」

 

大分強がってるなぁ。これがクレイグクンだったら激怒と共に矢の雨が降っていたことだろう。

 

「ま、問題ないでござろう?」

 

いや、大問題だから。

 

「化粧品がこれまで全くいらぬほど靏蒔殿が美人だったというだけの話でござるからな。」

「っ!!」

 

あ、もっと真っ赤になった。伊達クンって天然タラシなのかも。

真っ赤になった靏蒔さんを見て伊達クンは「どうしたでござるか!?すごい熱でござる!!早く救護室に!!」とか言ってお姫様抱っこをしてたけどむしろそれじゃ熱は上がる一方だと思うなぁ。そんな2人を見送ってからボクは探索を始めることにした。

まずはこの店舗スペース。さっきも少し見たけど、ここには鏡台とその上に並べられた化粧品の入れ物がまず目立つ。多分これを使ってお客さんの顔にメイクを施すのだろう。と言ってもそれぞれの鏡台で乗ってる化粧品の種類が違うからもしかしたら誰かにメイクした後そのままになってるのかも知れない。

 

「あ、そういえば伊達クンさっき奥から出てきたよな…。」

 

そう思い視線を奥に移すと先ほど伊達クンが出てきたカーテンがあった。

そこをくぐってみるとどうやらそこはこのメイクサロンのバックヤードに当たる場所のようだ。お客さんに販売したり、この場のメイクで使ったりすると思われる化粧品が所狭しと並べられている。口紅やファンデーション、コンシーラーなどボクには縁遠そうなものがいっぱいだ。

 

「でもまあ、ここにあるものが凶器になることはそうそうないか。むしろ女子の生活の質が上がって喜ばれるような場所かも。」

 

そんな独り言を漏しながらボクはメイクサロンを後にした。

 

 

 

最後に残しておいた場所はホールの奥の大きな空間。こちらも扉は付いておらず、出入りは自由になっている。中からは何やらガチャガチャと電子的な音楽が響き渡っていてちょっとうるさい。

見回してみると様々な色にピカピカと光る大きな機械がいくつも設置されていて、ここがいわゆるゲームセンターであることは一目で分かった。

 

「いや、旅館にあるのは見たことあるけどホテルにってのは珍しい気がする…。」

 

そんなことを思いながら探索を開始する。

まず目に入るのはズラッと並んだクレーンゲーム。どうやらこれを使って売店にあったガチャガチャマシーンと同じ景品が獲得できるらしい。つまりこの電子しおりに入っている電子メダルを使えば自由に遊べるということだ。そんな筐体を見ながら歩いていると既に筐体の前で唸っている人がいた。

 

「…真理ちゃん、何してるの?」

「何ってクレーンゲームに決まってるじゃないか!あそこのぬいぐるみが中々取れなくてね…。」

「子どものころからぬいぐるみ好きなのは変わらないね。」

「まあね。」

「でもほどほどにして探索してね。どうせここにはボク達以外には誰もいないんだし、いつでも取りに来られるよ。」

「ま、それはそうなんだけどね。」

 

真理ちゃんに別れを告げて少しうろついてみると、データカードダスとかメダルゲームとか色々なゲームが置いてあった。メダルゲームの機械の前では今度は鷹岡クンが唸っていた。

 

「鷹岡クンは何をしてるの?」

「むぐぐ、なっかなか当たんなくてな…。」

 

確かに様子を見ていると全然結果が出そうな気配はない。その理由は恐らく1つ。全部高いポイントの奴を狙っているからだ。特にこういうメダルゲームは運の要素が強い。あまり高いポイントばかり狙うとどうしてもすぐメダルが枯渇する。

 

「ちょっとずつ低いところから狙えば…?」

「それじゃあつまんねえじゃねえか!」

「あ、そう…。」

 

鷹岡クンは将来ギャンブルには手を出さない方が良さそうだな。絶対底なし沼に沈むことになりそうだ。

奥の一角には一見駅やスーパーの駐車場でも見かけるアレみたいな見た目をしたブースがいくつも並んでいた。ボクはあまり関わりを持たずに生きてきたけどこれはプリクラという奴だろう。その目の前では鏑木クンが首を捻っていた。

 

「鏑木クンどうしたの?」

「…いや、ちょっと分からなくてな。」

「何が?」

「…なぜこんなところで証明写真機が並んでいるのか、分からないんだ。」

「ああ、これはプリクラだよ。」

「…なんだそれは…?」

「いや、写真を撮るのは変わらないんだけど、友達同士とかカップルとかで撮るんだ。」

「…それなら別にケータイでもよくないか…?」

「今時はね。でも昔は写真に落書きとかは出来なかったからね。ここで思い出の写真を撮ったんだよ。出てくる写真もシールになっててそれこそケータイとかに貼ってたみたいだよ。特に女の子はよく撮ってたみたい。」

「…なるほど。ありがとう。勉強になった。……それにしても女の子…。…女の子、か…。」

 

鏑木クンが何かブツブツ言いながらどこかに行ってしまったのでボクも他のところに向かった。

他にもガンゲームとかレースゲームとか色々なゲームが設置されているけど全てを回って足を止めていたら時間が足りないので最後に人影が見えた場所に近づくことにした。そこでは金谷クンが調査をしていた。ここはダンスゲームのコーナーだった。

 

「何してるの?」

「見て分かるだろう、調査だ。」

「いや、それは分かるけど。」

「何、ここはこのゲームセンターにおいても一番奥にあたる。何か起こってもおかしくないと考えただけだ。」

「何かってもしかして…?」

「もしかしなくとも殺人だ。ここは一目に付きにくい。ここからは入口が見えにくいし、他の筐体も周りにあるから比較的一目に付きにくい。それはつまり事件の発生を発見するのが遅れやすくなるということであり、逆にここにいたら誰かが悪意を持って近づいてきても目の前に来るまで気づけないということだ。このエリアの利用に関してはかなり注意した方がいいだろう。」

「なるほど、そうだね。それにここはこの奥のエリアに限らずとも全体的に雑多で中で何か起きていても気づきにくいよね。どうにか対策を講じられればいいんだけど…。」

 

そう話し合っていたボク達の間にいつの間にかゲームセンターにやってきていた彼が割り込んできた。

 

「そーゆーことなら任せといてよ。」

「クレイグクン?どういうこと?」

「ま、結局のところこのエリアじゃあ見通しが悪くって何か悪さできちまうっつうのが問題なわけだろ?だったらそうならないようにしてあげればいい。」

「何か案でもあるのか?」

「俺ちんを誰だと思ってるのさ?」

「アホ。」

「ちゃらんぽらん?」

「ひでえなぁ…。俺ちんは超高校級のハッカーだぜ?機械にゃ誰よりも詳しい。ってなワケでコイツを使うんだ。」

 

そう言ってクレイグクンはポケットからビデオカメラを出した。

 

「深見ちんにゃ考えてることがあるとだけ言っておいたが、コイツと資料室のパソコンを使って擬似的な防犯カメラを作るのさ。確かに色んな商業施設みたいに何個も繋ぐのはムリだがゲームセンターの入口に繋ぐ位は出来る。そしてそれをみんなに周知しておけば誰もゲームセンターで悪さはしねえだろって寸法さ。」

「確かに出入りしたことが分かってしまう以上犯行はできんな。だがなぜそれに資料室が関係するんだ?」

「カメラだけだと壊されたら終わっちまうだろ?だからホテルの備品であるパソコンにデータを飛ばして保存するのさ。俺ちんのパソコンじゃねえのは映像の信用性を担保するためだな。もしそれだけじゃ心配ならハッキング防止のプログラムだって仕込んじゃうぜ?」

「なるほどな。」

「それって他の場所にも設置できるの?」

「残念ながら複数はムリだ。俺ちんが探した限りビデオカメラはコイツ一台。だから一番有効そうな場所にだけ設置する。」

「なるほど、分かったよ。」

「多分明日にゃ設置できるはずだ。そんときにゃまた声かけるよ。」

「うん、よろしく。」

 

そんな感じで防犯対策の段取りを組んだところでボク達は別れた。

その後はみんなでそれぞれの調査結果の報告をしたけれど出口に繋がるような情報は出てこなかった。

報告会の後は部屋に戻って自分の時間を過ごした。

 

 

 

キーン、コーン… カーン、コーン…

 

「午後10時になりました。これより夜時間となります。ホテル本館内の該当施設はロックされますのでご注意ください。それではよい夢を。お休みなさい。」

 

 

 

【モノトラ劇場】

 

「防犯カメラってのは本当に防犯になってるのか疑問に思うときがあるよな。」

 

 

「確かに店に行ったときにものを盗らねー理由の1つにカメラは挙がってくるかも知れねーがよ、」

 

 

「そもそもそれで理性が働く奴は盗みなんかしねーんじゃねーかとも思うんだよな。」

 

 

「それにほら、刑事ドラマなんかでもよ、防犯カメラが出てくる時って捜査するときだろ?」

 

 

「すでに犯罪起こっちまってんじゃねーか、犯罪防げてねーじゃねーか、とも思うワケよ。」

 

 

「だったらよ、」

 

 

「いっそのこと“傍観カメラ”にでも名前変えた方が役割には合ってんじゃねーか?」

 

                    ・

                    ・

                    ・

 

【生存者】

超高校級の探偵          深見優(フカミユウ)

超高校級のレーサー        速瀬マハ(ハヤセマハ)

超高校級のバスケットボール選手  雷文竜(ライモンリュウ)

超高校級の外交官         金谷秀征(カナヤシュウセイ)

超高校級の医者          津田真理奈(ツダマリナ)

超高校級の歴史学者        伊達小十郎(ダテコジュウロウ)

超高校級の大工          鷹岡筋次(タカオカキンジ)

超高校級の数学者         言村香奈(コトムラカナ)

超高校級の???         鏑木麗(カブラギレイ)

超高校級のハッカー        クレイグ・ホワイトバーチ

超高校級の弓道家         靏蒔由衣(ツルマキユイ)

超高校級のバイオリニスト     木田結弦(キダユヅル)

 

残り12人




というわけでお久しぶりです!いやー、忙しくて更新に間が空いてしまいました…。
今回からは第3章に突入と言うことで、新たなエリアも広がり、どんな出来事が起こっていくのか楽しみなような、怖いような…。
次回以降も是非お楽しみに!!

さて、設定裏話は前回までで全キャラの話が終わったので、今回からは各章のタイトルやおしおきなどの裏話をしていこうかなと思います!
今回は第1章のタイトル名についてです!
第1章のタイトルは「小さな夜の絶望」です。
これは前作の1章と同じく“絶望”というダンガンロンパを象徴するワードを入れたいな、と言うのがありました。また、みんなで枕投げをして遊んだ後の静かな夜に殺人事件が密やかに進行していた、という空しさを表現したいと思い、このワードの組み合わせになっています。
また、ワードチョイスの元ネタもあります。それはヴォルフガング・A・モーツァルト作曲のセレナード、「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」の日本語訳、「小さな夜の曲」です。これは先ほどもお話しした事件の様子と共に、犯人が作曲家の美作さんであったことを暗示するタイトルになっています。
小さな夜に巻き起こった大きな絶望を乗り越えて深見くん達は前に進んでいきます。その旅の道筋を皆さんに見届けていただけたらと思います。

という訳で今回はここまでです!次回をお楽しみに!!


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CHAPTER3 (非)日常編2

キーン、コーン… カーン、コーン…

 

「おはようございます。7時になりました。今日も1日元気にがんばりましょう。」

 

だんだんこの自室で寝起きすることに慣れてきてしまっている事実に恐怖を覚えている今日この頃だけど、現実逃避しているわけにも行かない。ベッドから身体をゆっくり起こして服装と神を整えるとボクは部屋を出た。

ホテルに入って食堂に入ろうというその瞬間、後ろから声をかけられた。そちらを振り向くとその声の主はクレイグクンだった。

 

「よっ、深見ちん!」

「どうしたの?」

「いやぁ完成したぜ!」

「完成?」

「おいおい忘れちまったのか?もちろんアレだよ!防犯カメラ!」

「え、もう!?」

「部品もハンダも自前のものが部屋に揃ってるし一晩あればちょちょいのちょいよ。ま、詳しい話は朝飯を食った後にでも。ま、こんなとこで立ち話もアレだしな!」

「そうだね。」

 

そしてその通り、朝食をみんなが一通り食べ終わったタイミングでクレイグクンが話を切り出した。

 

「深見ちんと金谷ちんには昨日のうちに少し話してあるんだがよ、ゲームセンターにコイツを取り付けようと思う。」

「それは何だ?」

「防犯カメラだよ、靏蒔ちん。ゲームセンターに取り付けるのさ。」

「なぜゲームセンターだけなのだ?」

「そいつは単純、倉庫にビデオカメラが1つしかなかったからさ。ビデオカメラを改造して俺ちんのパソコンからハッキングをかけて映像をリアルタイムで資料室のパソコンにデータで送る。ゲームセンターはこれまでのエリア含めて一番雑多だからね、一番殺人に向いてる。ここを抑えるだけでも防犯効果があるだろ?」

「なるほど、理解した。」

「…だがそれを我々に伝えてよかったのか?…美作や羽月のようにもし殺人を企む者がいたら真っ先にカメラを壊すかも知れないぞ?」

「そのためのリアル配信でしょー。データさえきちんと送られていればカメラ本体に何か起こっても大丈夫、って寸法よ。」

「それだけではないな。もしキミが殺人をしたとしたら?さっきキミはキミのパソコンからハッキングをかけてカメラから資料室のパソコンにデータを送れるようにしたと言っていたね?ならばキミのパソコンからデータを操作するのも簡単じゃないのかい?」

「その心配も尤もだ。だから俺ちんはきちんとハッキング対策をしてある。データに悪さをする奴がいたら逆ハッキングを仕掛けてハッキングをかけた端末をダメにしちまう。さすがに俺ちんのパソコンでやってみせるのは困っちまうけど資料室のパソコンの内の一台で試してみせることはできるぜ?」

「そういうことであれば。」

「つってもまだ稼働できてるわけじゃない。プログラムができたってだけでね。実際に動くかどうかはこれからカメラを取り付けないと分からない。そこでこれから何人かに手伝ってほしいんだけど構わないかい?」

「うん、いいけど。」

「じゃあボクも付き合おうか。」

「アタシも!なんか面白そうだしな!」

「深見ちん、津田ちん、速瀬ちんありがと。あと1人くらい来てくれると助かる。できたら男手がいいな。」

「それなら某も手伝おう。」

「お、伊達ちんサンキュー!じゃあこの5人で設置してくるぜー。」

「…頼んだ。」

 

こうしてボク達はゲームセンターに防犯カメラを設置することになった。

 

 

 

朝食の片付けが終わった後すぐ、ボク達は早速防犯カメラの設置に乗り出した。

カメラはボクが預かり、コードとか必要な道具をみんなで手分けしてゲームセンターの入口に運び込んだ。

 

「さて、まずはカメラ本体を設置するぜ。」

「どこを見えるようにすんだ?」

「まあ入口全体だな。入口に死角がない画角にしたい。」

「それなら全部じゃなくて良いんじゃない?こうやって廊下が映るようにゲームセンターの中からカメラを設置すれば…、ほら、誰か通れば映るでしょ?」

「おお、ほんとでござるな!」

 

ライブハウスから持ち出した2つの脚立を並べてその上でボクと伊達クンで角度を確認する。交代してみんなで画角を確認すると全員の納得を得ることが出来た。

 

「それじゃあここに延長コードを延ばしてっと…。」

「じゃあこっちはこっちで固定するでござるよ。」

「うし、これでカメラの方の設置は完了だな!」

 

その後伊達クンが電源スイッチを入れてまずはカメラ本体の設置が問題なく終わった。

 

「さて本番はここからだ。夜時間の間は資料室にゃ入れねえからな。理論上はこれで使えるはずだが如何せん実際に繋いでみなきゃ分からん。」

「じゃあ早速つなぎに行こっか。」

 

次は資料室のパソコンにデータを送るプログラムを準備する。

資料室に入ると一番手近なパソコンを起動させ、クレイグクンはそこに自分のノートパソコンを繋いだ。そして10分ほど作業するとボク達の方を向き直った。

 

「これでとりあえずはできあがってるはずだ。」

「じゃあ見てみようぜ!」

「そう慌てんなって。行くぜ?スイッチオン!」

 

そう言ってクレイグクンが資料室のパソコンを操作するとその画面いっぱいに先ほど電源を入れて放置してきたカメラからの映像が映し出された。

 

「これは成功、ということでいいのかな?」

「ま、とりあえずはな。でも100パーじゃない。」

「どういうことでござるか?」

「ここの倉庫に置かれていたビデオカメラもこっちのパソコンも少し型式が古いんだ。そこに無理矢理通信装置を取り付けて映像データを送れるようにしたんだが、そのせいで少し不具合が起こってる。」

「不具合って何だ?」

「1時間当たり5分、映像が撮れない時間が生まれてる。この5分間は映像がカメラにもパソコンにも記録できねえ。だからもしこの5分間に何かあったらお手上げって話さ。」

「なぜそんな話を?ボク達が悪用するかも知れないよ?」

「コイツは俺ちんなりの誠意さ。防犯カメラがその役割を果たさない時間があるなんて大事なことを俺ちんしか知らないってのはアンフェアだ。だけど全員に教えて悪用されたらカメラの意味がない。だから手伝ってくれたみんなにだけ特別に知っておいてもらうってなワケさ。」

「具体的にはどの辺りの時間だい?それが分かっているだけでも警戒が出来る。」

「そうだな。具体的にはさっきカメラとパソコンを繋いだのが9時半ちょうどだったから大体毎時25分から30分くらいの時間帯だと思ってよ。」

「つまりその時間を跨いでゲームセンターにいた場合は警戒が必要だってワケだね。」

「そういうこと。ま、他のみんなはこのことを知らないからわざわざゲーセンで悪さはしねえだろうし、杞憂だとは思うけどね。」

「だけど知っておいてよかった。ありがとう。」

「いんやそれほどでもー?」

 

こうしてクレイグクン発案の防犯カメラは無事セットされ、1つコロシアイを防ぐ方策が確立された。

 

「あ、そうだ。」

「どうしたの?」

「これでゲーセンの安全もある程度確保されたことだし、ここでみんなで遊ばね?」

「ゲームするってこと?」

「ああ。ゲーム大会さ。ちょうどここにはスコアが出るゲームとか賞品で比べやすいゲームとか色々あるからね。それで勝負しようって話さ。」

「確かに面白そうだな!」

「某これまでげえむなるものをやってこなかった故自信はないがワクワクするでござるな!」

「じゃあその話はお昼の時にでもみんなに伝えておこうか。」

 

こうしてクレイグクンの発案でゲーム大会を開催することになり、この場にいなかったみんなも乗り気になってくれた。

クレイグクンを中心に午後は何人かで明日のゲーム大会に向けた準備をしてくれることになった。ボクはそのメンバーから外れたので、自由に過ごすことになった。

 

 

 

あまり行儀の良いことじゃないけど図書室で本を借りて部屋で紅茶でも飲みながら読書をしようと本を持ったままキッチンに入るとそこでは言村さんがお菓子を物色していた。

 

「あれー、深見くんだー。」

「や、言村さん。おやつタイム?」

「うん、そうだよー!深見くんも一緒に食べるー?」

「じゃあご一緒させてもらおうかな。」

 

その場で温かい飲み物を飲みながら言村さんと他愛もない会話をした。不思議な性格をしている彼女のペースを掴むのに少し苦労はしたけど…。

 

「そう言えば言村さんは“超高校級の数学者”って話だけど、何がきっかけで数学をやろうと?」

「んー?んー。ごめん、覚えてないやー。」

「覚えてないの!?」

「うん、気付いたら計算してたからー。」

「そんなに小さな頃から?」

「うん!香奈のおうちはねー、パパがいなくてママが先生やってたんだよねー。だから香奈はいつもおうちで一人だったんだー。」

「そうなんだ…。」

「でもおうちで一人でいてもつまんないでしょー?だからママがおうちに置いてた教科書を読んでたのー。」

「お母さん、数学の先生だったんだ。」

「そう!」

「でもよく分かったね。数学ってことはお母さん少なくとも中学以上の先生でしょ?難しかったんじゃない?」

「うーん、そうでもないよー?本に書いてあるのを組み合わせればいいんだからー。」

 

それが一番難しいんだけど…。

 

「おうちでずーっとそればっかりやってたらお母さんビックリしちゃってねー。いーっぱい難しい本買ってきてくれたんだー。それをずーっと解いてる内にいつの間にか有名になってたんだー。」

「すごいね…。」

「だからー、なんで数学を始めたのかは分かってるけどー、いつそれを始めたのかは覚えてないんだー。だから香奈にとって数字はちっちゃい頃からのお友達なんだー。」

「すごいね…。でも寂しくなかったの?」

「うーん、寂しかったんじゃない?」

「なんで疑問形なの?」

「覚えてないから?だけどー、数学に没頭して当時の気持ちを覚えてないってことは当時の香奈は寂しかったんじゃないかなーって。でも結局覚えてないからただの想像ー。」

「そっか。」

「でも今は気にしてないよー?だってあの頃があったから今の香奈があるんだし。お母さんだって1人で頑張って香奈を育ててくれたんだから感謝してる。」

「じゃあ絶対ここを出ないとね!」

「うん!」

 

不思議な雰囲気を漂わせていた彼女の心の根っこの一端を知ることが出来たところでボクは言村さんと別れ、別の場所に向かうことにした。

 

 

 

もう少し時間がありそうだ。もう少しホテルの中を散策してみよう。

ゲームセンターに向かってみるとそこにはレースゲームで遊ぶ速瀬さんの姿があった。

 

「お、優じゃねえか!アタシにちっと付き合えよ!」

 

ボクは速瀬さんに誘われて一緒にレースゲームをすることになった。実際の車ではないにも関わらず速瀬さんのドライビングテクニックはとてつもなく、圧倒的な差を付けられて負けることになった。

 

「そう言えば速瀬さんは何で運転免許を取れてるの?まだ高校生でしょ?」

「そりゃアレだよ。レーシングカーの運転のライセンスと車の免許は丸っきり別物だからだよ。」

「そうなの!?」

「ああ!だからアタシぐらいの年のレーサーは多くないがいるっちゃいるぜ?」

「そうなんだ…。」

 

初めて知った…。

 

「アタシも1日でも早くレーサーになりたくて調べまくったからな。その辺の知識は優にも負けねえ。」

「どうしてそんなに熱量を持ってたの?」

「アタシの親父がな、レーサーだったんだ。腕の良いレーサーでよ、日本一だったと思うぜ。」

「じゃあお父さんに憧れてレーサーになったんだ。」

「うーん、それはちっと違うな。親父を越えるためだ。」

「越えるため?」

「親父は高校生の内にレーサーになって高校卒業後に一気に名を馳せた。だったらアタシはもっと早くライセンスを取って、もっと早く名を馳せる。そうすりゃアタシは親父以上のレーサーで、日本一のレーサーだ。それにアタシにはそれが出来る自信があった。」

「それで実際に最年少のレーサーで勝利数も圧倒的なんだもんね。本当にスゴいなぁ…。」

「いや、優も充分すげえぞ?っつうか今の状況ならむしろ優がいなきゃアタシらはみんあ早々に全滅してた。どんな才能もテキザイテキショ?って奴だ。」

「こんな適所ほしくなかったけどね…。」

「ハハハ、違いない。」

 

カラカラと笑った後速瀬さんはふと真面目な顔になる。

 

「アタシの才能はここじゃあんまし役に立たねえ。でもだからこそアタシはここを出なきゃ行けねえ。諦めらんねえ夢もあるしな。」

「夢?」

「ま、その辺はまた機会があったら話すよ。でもずっとここから出なきゃって気持ちは買わんねえんだ。」

「それって…。」

「あ、勘違いすんなよ?こんなところで野垂れ死ぬのはごめんだけど誰かを殺すのはもっとごめんだ。絶対に出口を見つけるなり黒幕をぶっ飛ばすなりして真っ当にここから出て行く。そんでぜってえに夢を叶える。」

「うん、そうだね。頑張ろう。」

「何言ってんだ。この目標は正直アタシだけじゃ力不足だ。特に頭の力の方がな。そいつを補うには優、お前の力が必要だ。手伝ってくれるか?」

「うん、もちろん。ボクだって外に出て大切な人たちが無事か確認しなきゃ。」

「ああ、そうだな!じゃあよろしくな!」

 

そう言って速瀬さんは右手をスッと出してくる。ボクもそれに応じるように右手を出し、ぐっと握り合う。普段の動きの激しいレースの中でハンドルを話さないように握力の鍛えられた彼女との握手はちょっと痛かったけれどだからこそその右手から彼女の強い思いが伝わってくるようだった。

 

 

 

速瀬さんと別れて部屋を出るとそこでは少し不機嫌そうな顔をしながら真理ちゃんが立っていた。

 

「あれ、どうしたの?」

「いや、随分仲よさそうだなと思ってね。」

「速瀬さんと?いやちょっと雑談してただけだけど。」

「そう言ってキミは一昨日も事件が発覚する直前まで彼女といたらしいじゃないか。」

「金谷クンも一緒にいたけどね?」

「やっぱアレかい!?優クンもおっきい方が良いってのかい!?」

「えっ?えっ!?どういうこと!?」

「分からないならいいっ!」

 

そうまくし立てると真理ちゃんはボクの元を去って行った。

 

「え、ええ…。」

 

結局真理ちゃんが何を考えているのかよく分からないまま真理ちゃんと別れることになってしまった。ちなみにこれは夕食後に雷文クンから聞いた話なのだが、真理ちゃんはどうやら筋トレを始めようとしているみたいで2人に相談してきたらしい。真理ちゃんは真理ちゃんだと思うけどなぁ。真理ちゃんの上腕二頭筋や大腿四頭筋がどれくらい大きかろうとボクにとって大きな問題じゃないしむしろ筋トレをし続けると身長は伸びにくくなるなんて聞いたこともあるけれどまあそこはボクよりも雷文クンや鷹岡クン、そして医者である真理ちゃん本人の方が詳しいだろうからボクが口出しするのはやめておこう。

 

 

 

そうこうしているうちに夜時間を迎え、ボクはゆっくりと睡眠に向かって行くのだった。

 

 

 

キーン、コーン… カーン、コーン…

 

「午後10時になりました。これより夜時間となります。ホテル本館内の該当施設はロックされますのでご注意ください。それではよい夢を。お休みなさい。」

 

 

 

【モノトラ劇場】

 

「人が死んで悲しいのは肉があるうちだ。」

 

 

「焼いちまって骨になっちまえばもう諦めが付く。」

 

 

「そりゃそうだよなぁ。」

 

 

「肉が付いてりゃ起き上がってきても驚きはしてもやな気分にはならねえ。」

 

 

「生きてたときのまんまならな。」

 

 

「でも骨が集まって起き上がってきたら」

 

 

「怖いぜえ…?」

                    

                    ・

                    ・

                    ・

 

【生存者】

超高校級の探偵          深見優(フカミユウ)

超高校級のレーサー        速瀬マハ(ハヤセマハ)

超高校級のバスケットボール選手  雷文竜(ライモンリュウ)

超高校級の外交官         金谷秀征(カナヤシュウセイ)

超高校級の医者          津田真理奈(ツダマリナ)

超高校級の歴史学者        伊達小十郎(ダテコジュウロウ)

超高校級の大工          鷹岡筋次(タカオカキンジ)

超高校級の数学者         言村香奈(コトムラカナ)

超高校級の???         鏑木麗(カブラギレイ)

超高校級のハッカー        クレイグ・ホワイトバーチ

超高校級の弓道家         靏蒔由衣(ツルマキユイ)

超高校級のバイオリニスト     木田結弦(キダユヅル)

 

残り12人




どうもお久しぶりです!色々11月中を忙しく過ごしている内に1ッか月以上投稿が空いてしまいました…。まだもう少しだけ日常パートが続きますのでのんびり気長に待っていただければと思います。

続きまして今回の設定裏話!今回は第1章のおしおきの話をしていこうかなと思います。
第1章のおしおきのタイトルは「アイネ・クライネ・フェアツヴァイフルングムジーク」です。これは超高校級の作曲家、美作奏さんのおしおきだったわけですが、こちらのモデルも章タイトルと同じく、モーツァルト作曲、「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」です。元の曲が直訳すると「小さな夜の曲」になっているのに対してこちらのおしおきは直訳すると「小さな絶望の曲」となっています。おしおきの内容はモーツァルトの時代は戯曲などの指揮を作曲者本人が行っていたことから指揮者として立ち、その指揮台でムリに身体を動かされて壊されるというイメージになっています。奏でられた音楽の中で望まぬ形で身体を破壊されて死んでゆく、そこで聞こえてくる音楽はまさに彼女にとって「絶望の曲」だったのではないでしょうか?

というわけで今回はここまで!また次回お会いしましょう!!


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CHAPTER3 (非)日常編3

キーン、コーン… カーン、コーン…

 

「おはようございます。7時です。今日も1日元気に頑張りましょう。」

 

今日もまた朝が来た。着替えていると先日みんなに動機として配られていたトラパッドがチカチカと光っていた。

 

「何だろ…?」

 

気になって近づいてみると前回の殺人の動機となったビデオが保存されている動画再生アプリから何かの通知が来ていた。通知を開いてみると、

 

 

『新しい動画が更新されました。各自時間のあるときに確認されますようお願い申し上げます。』

 

 

これってもしかして動機…?新しい動機が配られたって言うのか…?でも放置しておくことは出来ないよな…。動画を再生してみると非常に聞き覚えのあるジャズ風のトランペットを基調としたBGMと共に動画が再生された。

 

 

 

『深見優クンの紹介ビデオ』

 

紹介ビデオ…?動機ビデオじゃなくて…?

そう思いながら視聴を続けると前回の動機ビデオと同様、モノトラのナレーションが入った。

 

『少年の名前は深見優。一見普通の男子高校生に見えるけれど、その正体は何と、名探偵なのである。』

 

『“超高校級の探偵”として希望ヶ峰学園への入学の決まった彼は数々の難事件をこれまでに解決してきている。』

 

そんなナレーションと共に映し出されるのは数多の難事件とそれをボクが解決した事を奉じる新聞、そしてその中のボクの写った写真。

 

『いやあ本当に彼には助けられてますよ。』

 

『いっつも私達の気づけなかったところに目を付けて事件を解決してくれますもんね!』

 

『彼と関わりの深い刑事の人たちも今や彼に絶大なる信頼を寄せています。』

 

刑事さん達…。先日の動機ビデオではただならぬ事態に巻き込まれていた様子であった彼らが元気な様子でビデオの中で話している。恐らくこのインタビューはあの事件の前に撮られたものであろうと推測できるがそれでもやはり元気な姿を見られるとどこかホッとする気持ちがある。

 

『さて、そんな彼ですが、今はホテルシンフォニーに囚われ、そこでの“コロシアイ”を強要されています。』

 

誰がどの口で言っているんだ…!

 

『コロシアイ職業体験はなんと言っても殺人がバレないことが肝要。だからこそクロが生きるために全力を注いだ謎を解決する必要があります。』

 

『そんな生活は彼の才能を活かすにはうってつけだと言えるでしょう。』

 

『深見クンのそんな探偵としての才能はどれほど発揮されるのでしょうか?そしてその結末やいかに!!?』

 

そんな動画を見ている人を煽るようなナレーションが流れた後画面が暗転し、テロップが浮かび上がってくる。

 

『“超高校級の探偵”深見優、“参戦”!!』

 

 

 

まるでボクが格闘ゲームに登場することになったかのようなナレーションとテロップと共に動画は終わった。一体何だったんだ…?でも確か以前のコロシアイは世界中に電波ジャックで生配信されていたと聞いた。もしかしたらこの動画もコロシアイの始まる前に流されていたりでもしたのだろうか…?ボク1人に見せるにはこの動画は手がこみすぎている。このコロシアイも世界中に配信されていると考えた方が良いのかもしれない。

でも一人でこうやって考え込んでいても事態は解決しない。早く食堂に行ってみんなと合流しよう。

 

 

 

多少いつもより遅くなったとは言えど寝坊をしたわけでもない。だから食堂に入った時にいたのはいつものメンバーに加えてクレイグクンくらいだった。

 

「深見ちんおはよー。」

「今日は早い日?」

「ああ。今日のゲーム大会が楽しみでな。こんなのも作ってきたぜ?」

 

そう言ってクレイグクンが取り出したのは得点表と実施競技リスト。

 

「こいつを元にみんなでやるのさ。各ゲームの順位を元に点数を付けてその点数の合計で最終順位が決まる。分かりやすいだろ?」

「うん、そうだね…。」

 

クレイグクンは屈託なく笑う。本当に今日のゲーム大会を楽しみにしているみたいだ。もしかしたらあのビデオを見ていないのかも知れない。いや、見ていたとしても動機ではないと思っているのかも知れない。あくまであのビデオの名前は“紹介ビデオ”なのだから。

そうこうしているうちにみんなが集合してきてわいわいと朝食を食べ始める。みんなの様子を見る限りみんな何かを気にしている様子はない。みんなやっぱりあのビデオを見ていないか、アレを動機だと思っていないかの2択なのだろう。だとしたらボクのこの不安な気持ちは杞憂かも知れない。むしろみんなにボクの考えを伝えることでみんなを不安にさせてしまいそれがコロシアイに繋がるかも知れない。だったら余計なことは口にしないようにしよう。

 

 

 

朝食が終わった後はみんな自由に過ごし始めた。クレイグクンを中心に何人かは午後のゲーム大会に向けた準備を始めた。ボクは身体が空いているので少し自由な時間を過ごさせてもらうとしよう。

 

 

 

ジムの方を覗いてみるとそこでは雷文クンが筋トレをしていた。

 

「お、深見じゃん!久しぶりに護身術教えてくれよ!」

 

数日ぶりに雷文クンに護身術を教えて時間を過ごした。

 

「毎日筋トレ続けられるのすごいね。」

「ああ!やっとかねえと身体が鈍っちまうからな!外出た時に困っちまう。」

「困るって言うのはやっぱり?」

「ああ、バスケだ。思いっきり出来なくなっちまうだろ?」

「ほんとにバスケが好きなんだね。」

「まあな。自他共に認めるバスケバカだ!」

 

自分で言っちゃうんだ…。

 

「ま、始めたきっかけは成り行きだけどな。」

「そうなの?てっきりアメリカのプロリーグを観て憧れたとかなのかと。」

「最近は観るけどな。元々は兄ちゃんがやってたんだ。兄ちゃんは身体もでけえし足も速えし頭も良い。すげえんだ。そんな兄ちゃんがオレを誘ってバスケを始めたんだ。身長なんかオレよりでけえ。」

 

それホントに人間…?

 

「ま、脚力全般は軽い分オレのがあったけどな。だから、動けるオレがパワーフォワード、強え兄ちゃんがセンターとかシューティングガードとかだったんだ。」

 

あれ?でも…。

 

「雷文クンってシューティングガードじゃなかったっけ?」

「今はな。色々あってシューティングガードに落ち着いた。」

「お兄さん、バスケやめちゃったの?」

「まあ、そんなとこだ。でもいつか戻ってくると思ってる。そんときまではオレが兄ちゃんの代わりだ。いつ戻ってきても大丈夫なように兄ちゃんの場所はオレが守る。」

「でも雷文クンまで鍛え上げちゃったらチームの中でシューティングガードはむしろ兄勇んじゃなくて雷文クンじゃない…?」

 

至極単純な疑問をぶつけてみると雷文クンは雷に打たれたような顔をして大口を開け、冷や汗を垂れ流していた。

 

「確かに…!でもま、そんときゃそんときだ。オレが今でもパワーフォワードも行けるって見せつけてみんなにオレがパワーフォワード、兄ちゃんがシューティングガードの元の形を認めてもらうだけよ。兄ちゃんにだってそんくらいヨユーだ。」

 

話を聞く限りあり得ない話でもなさそうなのが恐ろしい兄弟だ…。

その後も雷文クンのお兄さん自慢を聞き続けて時間を過ごした。

 

 

 

もう少しだけ時間がありそうかな。

図書室に向かってみると中では伊達クンが読書をしてる最中だった。ボクが近づくと伊達クンはこちらが全く声をかけていないのに

 

「おお、深見殿か。一緒に読書でもどうでござるか?」

 

と言ってからニッと振り返って笑った。後ろに目でも付いているのだろうか?

でもそのお誘いには乗ることにしてボクも本棚から探偵小説を取り出して読むことにした。

少し時間が経ったところでふと気になって読書を止めた。その疑問を解消するために伊達クンに質問を投げかけてみる。

 

「伊達クンって具体的に何の研究をしてるの?」

 

その質問を聞いた彼はほんっとうに嫌そうな顔をした。

 

「あ、何か気に障ること聞いちゃった?」

「いや、とんでもなく難しい質問が飛んできたな、と。」

「え、そうだったの!?」

「いや、語るだけなら簡単でござる。でも研究者ではない人にどうかいつまんで話すかっていうのは研究者の永遠の課題でござる。どうも某に限らず研究者には自分の好きなことを語りすぎるきらいがあるでな。」

「そうだったんだ。ごめん…。」

「それに某の研究てぇまは実家に関連することでござるしな。」

「実家?」

「そう。まあ苗字の通り、某は仙台藩主伊達家の末裔、まあ伊達政宗の子孫でござる。」

「あーなるほど。」

「その中でも伊達家中第一の家臣とも言える片倉小十郎に関連する研究をしていたでござるよ。」

「へえ…。しかも新説を唱えて学界の注目の的なんだもんね。スゴいなぁ…。」

「まあちぃとを使ったようなもんでござるけどな。」

「チート?何で?」

「先ほども言った通り、我が家は伊達家の末裔。政宗に関連する文献で未だ表に出ていなかったものがたまたま家に残されていたのを某が発見しただけのこと。文献さえあれば某が言い出した説も他のお偉い先生方なら導き出したものでござろう。」

 

そう自虐的に言う割にはその顔に悲壮感はない。

 

「でも某が見つけ出したことに意味があるんでござろうな。伊達の血を引く某が明らかにせねばならない何かがまだこの世には隠されておるのでござろう。もしそんな使命があるのだとすれば某は足を止めている場合ではござらん。まだ歴史の大河の中に沈んだまま見つかっていないその真実を見つけ出す日まで某は歩み続けよう。」

 

その瞳には強い決意の炎が宿っていた。

超高校級の歴史学者の根本にあるものを知ったところでボクは伊達クンと別れた。

 

 

 

気付いた頃にはお昼の時間になっており、みんなで昼食を食べたあと少し時間が経ってから全員がゲームセンターに集合した。

 

「よおし、全員集まったな。それじゃあ第1回希望ヶ峰学園ゲーム大会を始めるぜ!!」

 

クレイグクンのかけ声を皮切りにみんなが歓声を上げる。大会が始まるとゲームの経験の深い浅いにかかわらず、みんな楽しんでゲームをしている様子だった。

 

「ここでこうハンドルを切るっ!!」

「なにぃ!?」

「さすが超高校級のレーサー…。ゲームであっても戦闘を譲らねえってか…!」

「ああああやべえやべえ、右右右っ!!来てる来てるっ!!」

「…落ち着け、雷文。」

「逆に何で鏑木はそんな落ち着いてられるんだっ!!?」

「わきゃあっ!」

「言村さん!?」

「大丈夫かい?」

「いったたぁ…。多分大丈夫だと思うー。」

「そう言えば前の枕投げ大会の時も足捻挫してたよね?」

「あはは、そうなんだよねー。どうにも香奈、運動神経悪くってー。」

「これからはもっと運動をするといいよ。適度な運動は健康にも良いし、脳みそにも良い影響を与えるからね。」

「そうしよっかなぁ。」

「まさに今君がやっていたダンスゲームなんてちょうどいいかもね。」

「意識してみるー。」

「………。」

「金谷さん無言ですわね…。」

「おい、あまり五月蠅くするな。気が散る。」

「たかがクレーンゲームだろ?」

「だが勝負は勝負だ。負ける気はさらさらあっ。」

「落としたでござるな。」

「貴様らが五月蠅くするからだっ!!」

「そうムキになんねぇ!悪かったって!!」

「ふっ、ゲームには自信があったようだがこういう身体を使うゲームに関してはそこまででもないようだな。」

「全部普通のゲームじゃ俺ちんが有利すぎるっしょ?でもちったあ手加減してくれたって良いんだぜ?」

「愚問だ。私の辞書に手抜きという文字はない。」

「でーすよねー。とうっ!ああっ!すり抜けてった!!」

 

それぞれが思い思いの順番で決められた数のゲームを回っていく。ゲームをする中でこの短い期間では中々会話したり関わったりする機会を持てなかった人同士での交流が促進されていく感じがする。みんなでわいわいする内にみんなの絆が深まっていく。

みんなで大騒ぎをしている内に一通り全員が全てのゲームをプレイし終わり、得点計算が行われていく。

 

「さてさて、順位を発表していこうかね。せっかくだし11位から行こうか。1位と最下位は最後で!」

 

クレイグクンがブービーから順番に順位を発表していく。その名前の呼ばれる順番で悲喜こもごもという感じであったがそれでもみんなは楽しそうだ。

 

「それではー、第1位の発表でーす!栄えある第1位はー…!ダラララララララララダン!鏑木ちんでーす!」

「…私か…?」

「いやーやっぱり総合力の高さが光ったよねぇ。頭も切れる身体能力も高いし。そして何よりあまり慣れてない感じなのに何でも出来るっつう適応力の高さよね。これらの能力の合わさった結果優勝は鏑木ちんになったわけでーす!」

 

そうクレイグクンが高らかに宣言すると全員からわーっと歓声が上がり拍手が巻き起こる。普段から基本的にポーカーフェイスな鏑木クンだけど今回ばかりはみんなに褒めそやされて照れくさそうな雰囲気が出ている。

 

「あれ、鏑木照れてる?」

「…いや、そんなことは…。」

「なんか珍しいモン見たな…。」

 

そんな鏑木クンをみんなでからかっている。

 

「対して、最下位はー、言村ちん!」

「あーやっぱりかー。」

「頭脳系のゲームは強かったんだけどねー。やっぱり俺ちんよりヒドイ運動神経が仇になっちゃったかなー。」

「その通りー。もうちょっと運動しようと反省したところだよー。」

「まーそんときゃ俺ちんにも付き合わせてよ。俺ちんも自分の運動神経のなさにほとほと呆れてるところさ。」

「その時には私も監視させてもらうがな。」

「何でさー。」

「貴様が不埒なことをしないか監視するためだ。」

「またまたーそんなこと言ってホントはや、ごめんなさい。」

 

そうクレイグクンは軽口を言いかけて靏蒔さんの人にらみに竦んだ様子を見せる。

そんな2人を見てみんなでまた大笑いする。

そんな光景にボクはあのトラパッドに送信された動画に関する心配はやっぱり杞憂だったと安心する。あの動画はただただモノトラがボク達に嫌がらせをするために送りつけてきたものだったのだろう。現に奴はボク達にあの動画を見るように嗾けては来ていない。それはそれで次に何を仕掛けてくるのかという部分は不安だけど対策の取りようもないものを心配していても仕方がない。

 

「最後にみんなでプリクラ撮ろうぜ!」

 

遠くからクレイグクンが声をかけてくる。12人なら広い筐体ならどうにか入りきるだろうか?

 

「せめえって。」

「でも仲間はずれは出せねえだろ?」

「それはそうだが…。」

「ほらほら、文句を言わず中に寄るでござるよ!こんなでこぼこ感も某達らしいでござる。」

「ちょっ!伊達っ!あまり身体を押し付けるなっ!」

「おお、靏蒔殿相済まぬ。そう長い時間のことではござらぬ故、赦されよ。」

 

そんなこんなでわいわいしながらみんなで1つのブースにぎゅうぎゅう詰めになって写真を撮る。取り出し口から出てきた写真はどうにもこうにもな感じで、いかにもボク達らしい絆の感じられる写真になっていた。そんな写真を見ていると今こんな状況に置かれているのが嘘なのではないかと思えてくるほどだった。

写真は16枚。一人一人に1枚ずつ渡った上で余りはすでに死んでしまった仲間達の部屋のドアに貼ることで彼らも仲間であることで全員で再認識した。

 

 

 

半日ゲームをして過ごしたこともあって気持ちの充足感とは裏腹に身体はもうヘトヘトになっていた。だから夕食を食べた後はすぐに部屋に戻り、ベッドに倒れ込んだ。するとすぐにボクの意識はモノトラのアナウンスを聞くまでもなく深い眠りの底へと落ちていった。

 

 

 

【モノトラ劇場】

 

「はいチーズ!」

 

 

「え、何をしたかって?何、難しいことじゃない。オマエラの魂をいただいただけさ。」

 

 

「コイツを使えば人の魂を抜き取ることが出来るって偉いお侍が言ってたらしいからな。」

 

 

「え?ソイツは迷信だって?」

 

 

「そりゃそうだな。だけど信じるってのは恐ろしいもんだぜ。」

 

 

「人間それが正しいと信じ込めば」

 

 

「どんな残酷なことだって出来ちまうんだからな…。」

 

                   ・

                   ・

                   ・

 

【生存者】

超高校級の探偵          深見優(フカミユウ)

超高校級のレーサー        速瀬マハ(ハヤセマハ)

超高校級のバスケットボール選手  雷文竜(ライモンリュウ)

超高校級の外交官         金谷秀征(カナヤシュウセイ)

超高校級の医者          津田真理奈(ツダマリナ)

超高校級の歴史学者        伊達小十郎(ダテコジュウロウ)

超高校級の大工          鷹岡筋次(タカオカキンジ)

超高校級の数学者         言村香奈(コトムラカナ)

超高校級の???         鏑木麗(カブラギレイ)

超高校級のハッカー        クレイグ・ホワイトバーチ

超高校級の弓道家         靏蒔由衣(ツルマキユイ)

超高校級のバイオリニスト     木田結弦(キダユヅル)

 

残り12人




さてさて、今回モノトラはずーっと静かですが、それが何だか不穏な感じがしますね…。一体何を企んでいるというのでしょうか…?今後の展開を楽しみにしていただければ幸いです。

それでは今回の設定裏話!今回は第2章タイトルの解説をしていこうかなと思います。
第2章のタイトルは「我がクララに愛を込めて」です。このタイトルに何か言葉としての元ネタはありませんが、タイトルのモチーフにしたものというか人物がいます。それはドイツの作曲家、ロベルト・シューマンとその妻クララ・シューマンです。2人は仲の良い夫婦として有名ですが、2人が結婚に至る過程には様々な障害がありました。その2人の、特にロベルトの一途な様子を1人の女性のために命をなげうった大地君になぞらえ、その殺人計画をクララに捧げたロベルトの音楽に置き換えたようなタイトルになっています。
次回はまた物語が動いていきますので、一体何が起こるのか乞うご期待です!ということでまた次回お会いしましょう!


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CHAPTER3 (非)日常編4

キーン、コーン… カーン、コーン…

 

「おはようございます。7時です。今日も1日元気に頑張りましょう。」

 

 

 

気付いたら朝になっていた。昨日の心地良い疲労感はすでになく、新たな1日の始まりに気分が重くなっていた。ゆっくり身体を起こして身なりを整え、食堂へと向かう。

 

「おお深見殿、おはようでござる。」

「うん、おはよう。」

 

いつも通りの早起きメンバーで揃って朝食の準備を進める。あれ、何か物足りない感じがするような…?

 

「おはよー。」

 

するとクレイグクンがゆらっと食堂に入ってくる。今日もどうやら早起きの日だったらしい。クレイグクンはボク達をぐるっと見回すとふと思いついた疑問を口にする。

 

「あれ、靏蒔ちんは?寝坊なんて珍しくね?」

「そういやそうだな。」

 

だから物足りない感じがしたのか。いつもだったら早々に食堂に来ている彼女がいないから。でも確かにあのしっかり者の彼女が寝坊なんて珍しい。

 

「もしかしたら体調でも崩されているのかも知れませんわ。わたくし寄宿舎に様子を見てきますわ。」

「頼むでござる。」

 

木田さんが靏蒔さんの様子を見に寄宿舎に向かう。彼女が戻ってくるまでの間に真理ちゃんや速瀬さん、金谷クンといったメンバーも集まってくる。

 

「どうした?」

「いや、いつもだったら早起きな靏蒔さんが今日は来ていないんだ。」

「それ故今は木田殿が寄宿舎の部屋に様子を見に行っているでござるよ。」

「ああ、なるほど。だから彼女は戻っていったのか。っつつ。」

 

真理ちゃんは納得といった感じでぽんと手を叩くとすぐに痛そうにした。その手を見てみると包帯が巻かれていた。

 

「あれ、どうしたの、その手?」

「ああ、優クンが心配するほどのことじゃないよ。ただの腱鞘炎みたいなものさ。」

 

もしかして昨日のゲーム大会で熱中しすぎたんだろうか?

ほぼ全員が揃ったところで木田さんが戻ってきた。その顔を見る限り芳しい結果は得られなかったのだろう。

 

「どうだった?」

「もぬけの殻でしたわ。」

「はっ?」

「もぬけの殻でしたわ。」

「2回言わんでも分かる!どういうことでい!?」

「まずチャイムを鳴らしお声がけしました。それで反応がなかったため今度は少し荒っぽくドアを叩きました。それでも反応がございませんでしたのでドアノブを捻ってみたところカギが開いていましたわ。」

 

カギが開いてた?それって…!

 

「仕方がありませんので中を覗いてみましたが中には誰もおらず。嫌な予感がしてそうだんしようと戻ってきた次第です。」

「カギが開いていた、か。それはちょっと不穏だね。それってつまり捜査できるようになっている、ということだろう?」

「まさか靏蒔殿が…?」

「その可能性は高いと言える。」

「…靏蒔だけではないな。言村はどこだ?」

「…!」

 

鏑木クンの言葉に促されて周囲を見回すと確かに言村さんがいない。靏蒔さんのことだけで頭がいっぱいになっていた。これは本格的に嫌な予感がする。

 

「とりあえず探すしかあるまい。無事ならそれでよし、そうでないなら覚悟を決める必要がある。」

 

金谷クンの言葉に促されてボク達は各々2人の捜索に乗り出す。

 

「深見殿、一緒に行っても?」

「うん、いいよ。」

「一体2人はどこに…?」

「言村さんは普通に部屋にいる可能性もまだあるけれど靏蒔さんはどうかな…。」

 

彼女はそんなに色んな場所を動き回るタイプの人ではない。行く場所は限られているだろう。

 

「廊下に出て行ったみんなの様子を見る限りみんな1階から探しているみたいだからボク達は上から虱潰しに行こう。順番に行けば見つかるはずだよ。」

「相分かった。」

 

ボクと伊達クンは階段を駆け上がり、東棟から捜索を開始する。

 

「メイクサロンから行こう。」

「靏蒔殿がこんなところに来るとは思えんが…。」

「言ったでしょ、虱潰しだって。手掛かりがない以上1つ1つ選択肢を潰してくしかないよ。」

「…そうでござるな。」

 

それに少なくとどちらかの件に関してはここは当たりだ。入口からでも何かが散らばっているのが見える。

 

「覚悟はいい?」

「うむ。」

 

確認を取ってメイクサロンの中に踏み込む。するとそこには…

 

 

 

 

 

 

苦しそうに口と目を大きく開いたまま息絶えた靏蒔由衣の遺体が横たわっていた。

 

 

 

 

 

「靏蒔殿っ!!」

 

伊達クンが駆け寄って彼女の肩を揺さぶろうとする。

 

「ダメだッ!!」

「!!」

「死体に触っちゃダメだ。現場を保存しなきゃいけない。伊達クン、みんなを呼んできて…!」

「承知した。皆を呼んでくるで…」

 

ボクの声に冷静さを取り戻し、皆を呼ぼうと伊達クンが走り出したその瞬間。

 

 

 

ピンポンパンポーン…

 

「死体が発見されました。一定の捜査時間の後学級裁判を行います。」

 

 

 

「なっ…!」

「ここにいるのはボク達2人だけ。さっきのレストランにクロでないにもかかわらずず死体の存在を黙っていた人がいない限り靏蒔さんの死体に関してはアナウンスは流れない。ということはつまり…。」

「言村殿もっ…!一体どこに…!」

「予定変更だ。ボクも一緒に行く。」

「承知!」

 

2人でメイクサロンを駆け出すとそこで焦った様子でこっちに向かってくる雷文クンと出くわした。

 

「雷文クンっ!」

「2人も3階にいたのか!ちょうど良い。ゲーセンに向かってくれ。そこに言村がいる。鏑木と鷹岡もそこで待ってるはずだ。」

「うん。じゃあ逆に雷文クンは一度メイクサロンに寄ってもらえる?」

「どういうことだ。」

「靏蒔殿がいるでござる。」

「…っ!わかった。」

 

言葉を交わしてボク達はゲームセンターへと向かう。その途上、

 

 

 

ピンポンパンポーン…

 

「死体が発見されました。一定の捜査時間の後学級裁判を行います。」

 

 

 

どうやら雷文クンが3人目の発見者になってくれたらしい。そこでほっと一息、という間もなくボク達はゲームセンターにたどり着く。

 

「鷹岡クン!鏑木クン!」

「優の字か!!あそこだ。」

 

鷹岡クンは恨めしそうに苦々しい顔をしてプリクラの筐体を指さす。それは昨日ゲーム大会の後みんなでプリを取った思い出の場所。まさかその場所に…。

ゆっくりとカーテンに手をかけ、そっとめくっていく。分かっていたことだ。でもやっぱり悔しい思いは拭えない。

 

 

 

 

 

その中に眠っていた言村香奈の抜け殻を目にしてしまえば…。

 

 

 

 

 

CHAPTER3 心と口と行いと才能で 非日常編

 

 

 

 

 

「言村殿…。」

「まさかこんなことになっちまうとはな…。」

 

伊達クンと鷹岡クンが唇を噛む。そんな2人の様子を横目に見ながら鏑木クンがこちらに向き直る。

 

「…ところで先ほどの2回目のアナウンスはどういうことだ。何か深見は知っているか?」

「うん。ボクと伊達クンも先に3階まで挙がってきたんだけど、メイクサロンで靏蒔さんが死んでたんだ。3人目は廊下ですれ違った雷文クンだと思う。情報も伝えたし。」

「…そうか…。」

 

鏑木クンも苦々しい顔をする。

そうこうしているうちに他のみんなもゲームセンターに集まってくる。2人も死んだというその事実に動揺する者、怒る者、冷静な者、反応は様々だ。そんな中でも覚悟を決めて捜査に向かおうとしていたその時、奴は現れた。

 

「おお、遂に起こったな。殺人がよ。ってなワケでコイツを持ってきたぜ!」

 

そう言ってモノトラはボク達1人1人にモノトラファイルを配って歩く。

 

「何だか拍子抜けという様子だな。」

 

モノトラの様子を眺めて金谷クンがそう告げる。

 

「まあな。もう少し時間がかかるかと思っていたんだが、まあコロシアイが起こればなんでも良い。こっちにゃ好都合だ。」

「どういう意味だ。」

「何でも良いっつったろ?これ以上は何も言う気はねえ。」

「ちっ。」

 

金谷クンはイライラした様子でひったくるようにモノトラファイルを受け取る。

モノトラの発言の意味には心当たりがある。静かにしていたように見えるが奴は何かボク達に仕掛けていたと言うことだろう。そしてそれはモノトラの、黒幕の想定としてはもう少し時間をかけて効果が上がるものだった。でもそんな黒幕の想定を上回るスピードでこの殺人が起こった。ならばそのモノトラの動きというのは恐らくあのトラパッドに送られてきたビデオだ。一見そうは見えなかったけれどアレはコロシアイの動機になり得るものだったということだろう。でもそれについて何も語る気がないのであれば追及しても仕方ない。今するべきことはこの事件の証拠を集めて学級裁判を生き残ることだ。

ボクは気を引き締め直してモノトラファイルに目を向けた。

 

 

 

-捜査開始-

 

 

 

まずはモノトラファイルの確認だ。

 

 

モノトラファイル3。

1人目の被害者は“超高校級の数学者”言村香奈。死亡推定時刻は午前1時半頃。死因は首を絞められたことによる窒息死。死体が発見されたのはゲームセンターのプリクラの中。

2人目の被害者は“超高校級の弓道家”靏蒔由衣。死亡推定時刻は午前7時頃。死因は首を絞められたことによる窒息死。死体が発見されたのはメイクサロン。

 

 

どちらも死因は首を絞められたことによる窒息死か…。真理ちゃんの検死を聞いてみないことにはまだ何とも分からないけれど同一犯による可能性が高いのかな…?

 

 

 

コトダマゲット!

【モノトラファイル3)

1人目の被害者は“超高校級の数学者”言村香奈。死亡推定時刻は午前1時半頃で死因は首を絞められたことによる窒息死。死体発見現場はゲームセンターのプリクラの中。

2人目の被害者は“超高校級の弓道家”靏蒔由衣。死亡推定時刻は午前7時頃で死因は首を絞められたことによる窒息死。死体発見現場はメイクサロン。

 

 

 

「それじゃあこれまで通り津田殿、遺体の検分を頼むでござる。」

 

そう伊達クンが切り出すと真理ちゃんは苦々しい顔をしてこちらを見る。

 

「その件なんだけど、ボク今ちょっと手をケガしてしまってね。正直上手く検死が出来るかと言われると…。」

「そりゃまじいな…。死体の情報が分からねえんじゃこっちもどうしようもねえぞ。」

 

ボク達が頭を抱えていると、スッと手が挙がった。

 

「…ならば私がやろう。これまではプロがいるのに出しゃばるまでもないと思っていたが多少の知識はある。」

「任せてもいいかい?」

「…ああ。」

「すまないね。」

「じゃあ真理ちゃんはボクと一緒に捜査する?」

「そうさせてもらおうかな。」

 

よし、じゃあまずは1つ目の現場のこのゲームセンターだ。最初はこのプリクラ。この筐体はちょうど入口から一番奥のダンスゲームにまっすぐ向かう途中にある。なんで言村さんはこの中で死んでいたのか。

 

「モノトラファイルを見る限りでは香奈さんの死亡推定時刻は午前1時半、つまり深夜だ。なぜ彼女はこんなところにいたんだろうね?しかもプリクラの機械の中だ。」

「あんな深夜に誰か一緒に撮る相手がいたとは考えにくいよね…。」

 

その謎も含めて考えていく必要があるな…。

 

 

 

コトダマゲット!

【プリクラ)

この中で言村の死体が発見された。

入口からゲームセンターの最奥のダンスゲームにまっすぐ向かう途上にある。

 

 

 

そしてもう1つ気になるのはこの血痕。床にかなり垂れている。先ほど死体を発見した際、プリクラの写真機の周囲にも垂れていた。でも言村さんの死因は首を絞められたことによる窒息死。写真機の周囲だけなら被害者の血痕である可能性も考えられるけれど残念ながらプリクラの外にも垂れている以上その可能性は低い。逆に犯人のものである可能性もあるだろう。

 

「少々失礼。」

「…どうした?」

「被害者に出血は見られるかな?」

「…今のところはないな。被害者の身体に目立った外傷はない。」

「そうかい。優クン、とのことだよ。」

「ありがとう。」

 

じゃあやっぱりこの血痕は犯人のもので間違いない。つまり犯人はどこかに外傷を負っている。…いや、まさか、な。

 

 

 

コトダマゲット!

【床の血痕)

プリクラの写真機の周辺と筐体の外の床に血液が垂れていた。

犯人のものではないかと思われる。

 

 

 

「…簡単にはこんなところだろう。」

「もう良いのかい?」

「…私は医者じゃない。専門知識はないからな。私自身の経験や観察からしか情報は得られない。」

「まあそれは仕方ないね。所見はどうだい?」

「…そうだな。気になったことは2つあるが、1つは靏蒔の死体も調べてからにしたい。」

「ふむふむ。ではもう1つは?」

「…もう1つは言村の手だ。言村の右手の爪に血液の付着した皮膚片が詰まっていた。だがやはりさっきも言った通り言村の遺体には目立った外傷は見られない。」

「なるほど。」

「…もしかしたら周囲の血痕とも関わるかも知れない。」

「うん、そうだね。ありがとう。」

「…では靏蒔の死体も見てくる。鷹岡、いいか?」

「おう、じゃあオイラは見張りしてくるぜ。」

「うん、お願い!」

 

鏑木クンの検死は端的で分かりやすい。だからこそ情報が整理しやすい。そしてその新たな情報を元にしても恐らく犯人はケガをしている。……。

 

 

 

コトダマゲット!

【言村の爪)

言村の右手の爪に血液の付着した皮膚片が詰まっていた。

言村の遺体には目立った外傷は見られない。

 

 

 

検死が終わったならばボクの方でも死体を調べて見よう。

 

「あれ?」

 

ボクが死体を調べているのを横から除いていた真理ちゃんがふと声を上げる。

 

「どうしたの?」

「いや、いつも彼女が胸ポケットに入れていたハンカチがなくなっていると思ってね。」

「ハンカチ?」

「ああ。生前彼女が話していたんだ。希望ヶ峰学園への進学祝いにお母さんから買ってもらった大切なものだったそうだ。縁には英語で彼女の名前が入っているらしい。」

「それは肌身離さず持っていたの?」

「ああ。何を忘れても決してそのハンカチだけは忘れていないそうだ。」

 

ということはそのハンカチを昨日の深夜に限って持っていなかったとは考えにくい。ならば犯人が持ち去ったとみて間違いない。

 

 

 

コトダマゲット!

【言村のハンカチ)

生前の言村が母親からプレゼントされ、大切にしていたハンカチ。

肌身離さず持っていたものが行方不明になっている。

津田によると縁には彼女の名前が英語で刺繍されているらしい。

 

 

 

死体に関して他に気になるところは無さそうだ。

ふと振り返ると柱に昨日のゲーム大会の結果が張り出されていた。そこには昨日の総合成績と各ゲームの結果が記されている。

 

「おや、貼りっぱなしだったみてえだな。」

「クレイグクン?」

「あー、昨日の結果。剥がし忘れてたみたいだ。にしても昨日あんだけ楽しく遊んだってのにこんなことになっちまうなんてな。」

「うん、ホントにね。」

「言村ちん、かなり昨日の結果を気にしてたみたいだな。自分の運動神経が悪いって。」

「そうなの?」

「ああ。昨日の結果は俺ちんの他に言村ちんと鏑木ちんてまとめててさ。最終結果を集計しているときにそんなことを言ってた。あ、順位は俺ちんがまとめたから2人ともみんなと同じタイミングで知ったんだぜ?」

「いや、そこの情報はいいって…。でもそっか。言村さん、昨日の結果気にしてたんだ。」

「そう言えばもうちょっと運動するとも言っていたね。」

「あー嫌だ嫌だ。人間思い出話に浸るようになったら終わりだぜ。捜査しようぜ。」

「うん、そうだね。」

 

 

 

コトダマゲット!

【ゲーム大会の順位表)

昨日のゲーム大会の順位表。総合成績と各ゲームの結果が張り出されている。

集計はクレイグの他に言村と鏑木が担当していた。その際言村は自身の運動神経のなさを嘆く発言をしていたようだ。

 

 

 

あ、クレイグクンと言えば。

 

「クレイグクン、ちょっといい?」

「ん、どした?」

「この現場、ゲームセンターでしょ?ってことはアレが役に立つんじゃないかと思って。」

「あ、それってあの防犯カメラのことかい?まーそうだね。じゃあ資料室でデータを見てみようか。」

「ボクも同行しよう。」

 

 

 

「よし、じゃあ再生するよん。」

「うん、お願い。」

 

3人で資料室のパソコンの小さな画面を頭を突き合わせて覗き込む。

 

「少し早送りして、言村ちんが死んだのは1時半だから大体その10分前から元のスピードに戻すね。」

 

3人で見落としがないようにじっくりと画面を見つめる。しかし画面に映っているのは代わり映えのしない廊下の映像だけだった。ちょうどクレイグクンが再生速度を元に戻したタイミングで言村さんは映ったけどそれ以外に何か特別なものは映らなかった。すると一瞬プツッと映像が飛んでまた再生される。そこからどれだけ映像を流し続けても何かが映ることはなかった。それを見たクレイグクンはあー、とため息を吐く。

 

「だーめだね。こりゃ映ってないわ。」

「やっぱりかぁ。」

「映ってたのはゲーセンに入ってく言村ちんだけだね。」

「でも全く収穫がなかったわけじゃないよ。これだけ何も映らないってことは逆に犯人が絞られたってことだ。」

「本当かい?」

「うん。じゃあそのためにカメラの設置の流れからまとめていこうか。まずはカメラのスペックから。」

「カメラのスペックっつっても大したことはねえぞ?俺ちんが倉庫に1個だけあった防犯カメラを改造して作っただけだしな。こうやって資料室のパソコンから映像を見られるようにしてはあるが。」

「じゃあその改造をしたが故に起こった弊害は?」

「無理矢理データを送れるようにした分、データを処理するために1時間に5分映像が撮れてないインターバルの時間ができちまったな。具体的には毎時25分から30分だ。」

「じゃあそのカメラのインターバルについて知ってるのは?」

「えーっとまずカメラを作った俺ちんだろ?あとはカメラの設置を手伝ってくれた深見ちんと速瀬ちん、津田ちん、そして伊達ちんの計5人だ。」

「ね?」

「いや、ねと言われても。」

「映像に映っていたのは被害者の言村さんだけ。犯人の姿は映っていない。行きの時間だけならともかく戻ってくる時間もだ。どちらか片方だけなら偶然ということもありえるけど両方ってなってくると話は変わってくる。犯人はこのカメラのインターバルについて知っていたとしか思えない。」

「なーるほどねー。じゃあこのインターバルの情報は結構大事なわけだ。」

「そういうこと。」

「そんじゃ用事も済んだところで俺ちんは他の捜査をしてくるよ。」

「うん。」

 

ボクは先にこのカメラに関する情報を整理してから捜査に戻ろうかな。

 

 

 

コトダマゲット!

【防犯カメラの映像)

1時20分頃にゲームセンターへと入っていく言村の姿が映っていた。

その前後の映像を見ても言村以外にゲームセンターに出入りした人物は映っていなかった。

 

【防犯カメラ)

クレイグが倉庫にあったビデオカメラを改造して作った。

ゲームセンターの入口に設置してある。

映像は資料室のパソコンから見ることが出来る。

 

【インターバル)

無理矢理映像データを資料室のパソコンに送るように改造した結果1時間に5分ほどデータの処理のためにカメラが映像を録画できない時間が出来てしまった。

インターバルに当たるのは毎時25分から30分頃。

このことを知っているのはカメラを改造したクレイグとカメラの設置に立ち合った深見、速瀬、津田、伊達の計5名。

 

 

 

よし、防犯カメラに関する証拠はこんなところかな。

 

「じゃあ次だね。」

「よしきた!」

 

真理ちゃんと一緒に資料室を出るとそのすぐのところで鏑木クンが立っていた。

 

「わっ!鏑木クン!?」

「…!…驚かせて済まない。靏蒔の検死が終わった。メイクサロンの捜査をしてもらって構わない。」

「あ、それを伝えに来てくれたの?ありがとう。」

 

それならば、とボクと真理ちゃんは第2の殺人現場となったメイクサロンへと向かうことにしたのだった。

 

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                    ・

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【生存者】

超高校級の探偵          深見優(フカミユウ)

超高校級のレーサー        速瀬マハ(ハヤセマハ)

超高校級のバスケットボール選手  雷文竜(ライモンリュウ)

超高校級の外交官         金谷秀征(カナヤシュウセイ)

超高校級の医者          津田真理奈(ツダマリナ)

超高校級の歴史学者        伊達小十郎(ダテコジュウロウ)

超高校級の大工          鷹岡筋次(タカオカキンジ)

超高校級の???         鏑木麗(カブラギレイ)

超高校級のハッカー        クレイグ・ホワイトバーチ

超高校級のバイオリニスト     木田結弦(キダユヅル)

 

残り10人

 




さてさて遂に事件が起こってしまいました…。本家よろしく今回も第3章は2人も…。まだまだ捜査は前編ですが、一体誰がこの殺人を起こしたのでしょうか…?


それでは今回の設定裏話。今回は第2章のサブキャラ解説です。
今回紹介していくのは羽月さんの“お姉さん”です。具体的に名前を決めているワケではありませんが、第2章の事件の発生に一役買ってしまった重要人物です。彼女が羽月さんにとってどんな立ち位置の人物かは本編でいやというほど語ったので、今回は逆の立場、彼女にとって羽月さんはどんな存在だったのか、というお話をしていきましょう。お姉さんにとって羽月さんは正直もう遠いところにいる人物となってしまっています。友人と話すときには羽月翔子の幼い頃を知っている、ということも話しますが、それはすでに妹のような女の子の話ではなく、有名人に関わる話となっています。なので実はあの動機ビデオのオファーが来たときも正直喜びより困惑の方が勝っているのですが、それはもう羽月さんは知り得ない話です。もちろん、彼女は羽月さんのことが嫌いなわけではありません。むしろ大好きで再会したら喜んでくれたことでしょう。でも長年会わずに片方がすごい世界に行ってしまったことによってどこかよそよそしさも生まれてしまった、というそんな幼なじみの微妙な距離感、というのが“お姉さん”にとっての羽月さんなのです。


次回は捜査編の後半パートです。証拠が出そろったら是非是非犯人の予想をしてみてください!


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CHAPTER3 非日常編-捜査-

鏑木クンの検死が終わったというのでボクと真理ちゃんは靏蒔さんの方の殺人現場であるメイクサロンへと足を踏み入れた。

 

「じゃあまずは検死結果から聞いていこうか。」

「…分かった。ではまず言村の時に言いかけたことだが、やはりこの殺人は同一犯によるものかもしれない。」

「根拠は?」

「…靏蒔の首に手の痕が付いていた。そしてこれは言村の首にも付いていた。恐らく犯人は2人とも素手で絞め殺したのだろう。」

「たまたま別の人がやったのかもしれないよ?」

「…2つの手の痕はほぼ同じ大きさだった。もちろんこの痕だけで犯人を誰か1人に絞りきるのは難しいだろうが、少なくとも別の人間とは考えにくいと私は考えている。」

「なるほど…。」

 

ならば2つの事件の犯人は同一犯である可能性も念頭に入れておこう。

 

 

 

コトダマゲット!

【手の痕)

靏蒔の喉に付いていた痕。手で首を絞めたものと思われる。

言村の首にも似たような痕跡が残っており、2つの痕の大きさはほぼ同じであった。

 

 

 

「他に何か気になるところはあった?」

「…そうだな。言村と異なり死体に外傷があった。」

「外傷?詳しく話を聞こうか。」

「…靏蒔の両腕にアザが見られた。腫れも見られる。骨折している可能性も否めない。位置は両腕とも手首から20cmほどの位置だっただろうか。」

「なるほどね。それならボクも念のため見ておくだけはしておこう。」

 

でもなぜ言村さんのときには外傷が見られなかったにもかかわらず靏蒔桟に関しては腕にアザが見られたんだろう。どうして犯人はわざわざそんな外傷を負わせた…?

 

 

 

コトダマゲット!

【両腕のアザ)

靏蒔の両腕にアザが見られた。骨折している可能性もある。

位置は両腕とも同じ位置に見られ、手首から約20cmほど離れた位置にアザがあった。

 

 

 

「…検死で気になったのはこんなところだ。」

「なるほど、分かった。ありがとう。」

 

一通り死体に関する情報を手に入れたところで今度はボク自身の目で死体を調べて見よう。まずはさっき鏑木クンが言っていたことを真理ちゃんにも確認してもらおう。

 

「靏蒔さん、失礼するね。」

 

靏蒔さんの道着の袖をめくって真理ちゃんに見せる。

 

「真理ちゃん、どう?」

「うん、確かに骨折しているかもしれないね。ここにはレントゲンの設備もないから正確には調べられないけどね。ただ両腕の同じところにアザっていうのは少し不可解な気もするね。」

「多分何者かの意思が絡んだ骨折なんだと思うよ。」

「だとしたら納得だね。」

 

靏蒔さんの腕に関して確認が取れたところでもう少し死体について調べてみよう。

…あれ、死体の首元…?うす橙色の何かが付着している。

 

「どうしたんだい?」

「ほら、死体の首のここ、よく見てみてよ。」

「え、ふーむ。おや、確かに何か付着しているね。」

 

真理ちゃんが右手ですっと首元に触れる。

 

「ふむ、これは粉末状の化粧品だね。なぜここにだけ付着しているのかは不明だけどね。そして、」

 

そう言って真理ちゃんは立ち上がり鏡台と床を指さす。

 

「恐らくこの鏡台と床に散らばった化粧品の粉と同質のものじゃないかな。」

「でも確か靏蒔さんって…。」

「化粧はしない、と言っていたね。まあそれであの肌の透明感とふっくら唇というのは恐れ入るけれどね。」

 

やっぱりそうだよな…。最初にここを調査したときも彼女はメイクサロンのことを縁がないと考えていたはずだ。実際メイクサロンのことを知らなかったし化粧に関わりがなかったとも言っていた。だとしたらなんで靏蒔さんの首元に化粧品が付着しているんだろう?

 

 

 

コトダマゲット!

【首の汚れ)

靏蒔の死体の首にうす橙色の粉末が付着していた。

化粧品ではないかと考えられ、似たような粉末がメイクサロンの鏡台と床に散らばっている。

 

 

 

だとするとそもそもこの粉末の正体は何なのか。それを探る必要があるかもしれない。

真理ちゃんの言うとおり鏡台と床に散らばっている化粧品の粉とこの靏蒔さんの首に付いている粉末は同じものだろう。ということはこの粉はここで何らかの要因によって散らばったということだ。ならばこの粉末が元々入っていた容器がどこかに落ちているかも知れない。

死体に一度手を合わせるとボクは立ち上がり床に何か落ちていない調べて見ることにした。するとそれはすぐに見つかった。床の隅の方に丸いプラスチック製のケースが落ちていた。

 

「なるほど、これが由衣さんの首に付着していた粉末の正体か。これは…、ファンデーションだね。」

「なるほど。」

「念のためバックヤードを見ておくかい?」

「うん、そうしようかな。」

 

カーテンをくぐるとそこには鷹岡クンがいた。

 

「あれ、鷹岡クン?」

「おう、優の字に真理の字!ここに何か用事かい?」

「うん、ちょっと捜査にね。鷹岡クンこそ何してるの?」

「いや、あの床に散らばってた粉が何か調べようと思ってな。ここでこぼれてたってことは十中八九化粧品だろ?」

「まあそうだね。」

「でもさすがに粉だけじゃ見つからなくてよ。」

 

え、粉だけを手掛かりに探そうとしてたの…?

 

「さすがにそれは無茶じゃないかい?」

 

真理ちゃんも同じことを思っていたらしい。

 

「そうなんだよなー。でも他に手掛かりもねえししゃあねえだろ?」

「床にこんなものは落ちてたけどね。」

「こいつは?」

「あの粉が元々入ってたケース。ファンデーションみたいだよ?種類と銘柄が分かれば探すのも一気に楽になるでしょ?」

「おお、そうだな!」

 

実際、ファンデーションの棚から同じケースを探すとすぐに見つかった。

 

「おや?」

「真理ちゃん、どうしたの?」

「以前ここに来たときにはこの箱は未開封だったんだ。だから箱の横に書いている個数そのままが入っていたはずだ。」

「開いてねえんならそうだろうな。」

「でも今箱を覗いてみたら2つなくなっていた。1つは手元にあるこれだとしてもう1つはどこに行ったんだろうね?」

 

行方不明になったファンデーション、か…。事件に関係するのかな…?

 

 

 

コトダマゲット!

【ファンデーション)

メイクサロンのバックヤードに置かれていた。

箱から2つなくなっている。

同じケースが1つメイクサロンの床に落ちていた。

 

 

 

「ファンデーションに関しては後でもう少し調べてみるよ。」

「おう、頼んだぜ!」

「ちなみに鷹岡クンは何か気付いたことってある?」

「気付いたことか…。」

「なんでも、些細な変化で良いんだけど。」

「些細な変化、ねえ…。あ、そうだ。最近変なことがあったんだ。」

「変なこと?」

「昨日なんだけどよ、ゲーム大会が始まるまでの間は筋トレでもするかと思ってよ、ジムに行ったんだ。そしたらよ、ダンベルがいくつか無くなってたんだよ。」

「え?」

「っ!!」

「そんな重てえ奴じゃなかったとは言え前回の事件のこともあったからよ、警戒してんだ。」

「うーんでも今回の事件はどっちも扼殺だからダンベルは関係ないんじゃないかな…?」

「そうかぁ?」

 

十中八九誰かが部屋でトレーニングしようと持っていったんだろうけどわざわざ鷹岡クンが話題に出してるくらいだし、一応念頭に入れておいてもいいのかな?

 

 

 

コトダマゲット!

【鷹岡の証言)

昨日ジムに行った際にダンベルがいくつか無くなっていた。

 

 

 

よし後もう少しだけメイクサロンを調べてみるか。

先ほどのファンデーションがこぼれていた鏡台の横を見てみるとそこにはゴミ箱があった。その中を覗いてみると血塗れの布が入っていた。

 

「うわっ、何だこれ!」

「どうしたんだい?」

「血塗れの布が入っていたんだ。」

「何だって…?ん?どこかで見覚えがあるような…?」

「ホントに?」

「うーん、ちょっと思い出せないけどね。もし思い出せたら伝えるよ。」

「分かった。」

 

一応もう少し観察してみようか。

サイズは大体ハンカチくらい、というかハンカチかな、この布は。血痕が付いているということはこれで応急的に止血をしていた可能性があるな。となってくると…。

次に布そのものを見てみる。すると縁に何か文字が書いてある。

 

「a…n…a…。ブランド名かな?」

 

刺繍されているみたいだ。少なくとも血痕が見られる以上事件に関係しているのは明白だ。記憶しておこう。

 

 

 

コトダマゲット!

【血塗れの布)

メイクサロンのゴミ箱から発見された。大きさから見てハンカチではないかと思われる。

縁には「ana」と刺繍が入っている。

 

 

 

…よし、メイクサロンの捜査はこんなところかな。後はどこを捜査しておこうかな…?

一度ゲームセンターに戻ってみるか。

ゲームセンターに戻るとそこでは雷文クンが難しい顔をして唸っていた。

 

「どうしたの?」

「おう、深見か。いやちょっと昨日のことを思い出しててな。」

「昨日のこと?」

「ああ。昨日の夜に変なことがあってよ。」

「聞かせてもらえる?」

「おう。まず昨日の夜、うーん、大体3時にはならないくらいの時間だな。夜中に喉が渇いて目が覚めちまったんだ。だからよキッチンに飲み物を取りに行こうと思って部屋を出たんだ。」

「うんうん、それでそれで?」

「そしたらよ、寄宿舎のどこからかは分かんねえけどよ、焼き肉の匂いがしたんだ。」

「焼き肉?」

「ああ。肉好きの俺が言うんだ、間違いねえ。アレは焼き肉の匂いだった。でもよ、あんな時間に誰が焼き肉なんか食うんだと思ってよ。」

「確かに…。夜食にしてももうちょっと軽いものを食べるよね。」

「結局アレは何だったんだと思ってよ。」

 

3時、か。時間としてはすでに言村さんの殺人が起こった後だな。そして靏蒔さんはまだ生きている時間帯。普通に考えたら2つの犯行時刻の谷間の時間だし事件には関係ないんだろうけど…。でもよりによって昨晩というのが気になる。頭の片隅に留めておこう。

 

 

 

コトダマゲット!

【雷文の証言)

昨晩、深夜の3時にならないくらいの時間に喉が渇いて目が覚めたためキッチンに飲み物を取りに行こうと寄宿舎の部屋を出た。その際寄宿舎のどこかの部屋から焼き肉の匂いがしてきた。

 

 

 

雷文クンの証言について考え込んでいると木田さんに唐突に声をかけられた。

 

「わ、ごめん、何か用だった?」

「ええ。靏蒔さんが亡くなっていたのはメイクサロンでしたわよね?」

「うん、そうだね。」

「だとすると少しわたくしに心当たりがありますの。よかったら捜査のお手伝いをお願いできます?」

「うん、いいよ。真理ちゃんも来る?」

「じゃあそうさせてもらおうかな。」

「で、どこを捜査するの?」

「靏蒔さんの部屋ですわ。」

 

靏蒔さんの部屋に事件に関係する手掛かりが…?

 

 

 

靏蒔さんの部屋はすでに朝木田さんが来たときのままカギが開け放たれ、誰でも自由に出入りできる状態になっていた。そのため問題なく部屋に入ることが出来た。                    

 

「木田さんの言う心当たりって何?」

「なぜ殺害現場に木田さんが足を運んだのか、という話ですわ。」

 

確かに。先ほど死体を調べたときにこれまで化粧をしてこなかったという靏蒔さんの首元に粉末状の化粧品が付着していた。そのことも違和感がある話ではあるが、それよりも何よりもそんな靏蒔さんがなぜあそこにいたのかということも疑問だ。木田さんはその答えに心当たりがあるらしい。

 

「わたくしの思う心当たりはこのポーチですわ。」

 

そう言って木田さんは靏蒔さんの机の上に置いてあったポーチを手に取る。

チャックを開けて中身を取り出すと様々な化粧品が出てきた。

 

「化粧ポーチ、か。」

「でも靏蒔さん、これまで化粧とは縁が無かったって言ってたけど化粧品は持ってたんだ…。」

「ふふ、優クン違うよ。これはあのメイクサロンに置いてあった化粧品だ。そこそこ高級なものだよ。ポーチも含めてね。」

「えっ、そうなの?」

「ほら、よく見てみたまえよ。下地にファンデーション、アイブロウにアイシャドウ、マスカラ、チーク、そして口紅。みんなあそこに置いてあっただろう?」

 

確かに言われてみると鏡台の上に置いてあったものもちらほら見られる。

 

「おや、でもフェイスパウダーが足りていないね。」

「フェイスパウダー?ファンデーションと何か違うの?」

「全く違うよ。ファンデーションはシミとか色んなものを隠して肌を綺麗に見せるためのものだ。対してフェイスパウダーは皮脂とかで化粧が崩れないように使うんだよ。」

「へえ…。」

「あのねえ、確かに優クン自身が化粧する機会はそうそうないだろうさ。でも多少の化粧品への理解はないと女性にモテないよ?」

「う…。気を付けるよ…。」

 

真理ちゃんの講義と説教を同時に受けるハメになってしまった…。でもなんで木田さんはこのポーチが部屋にあると知っていたんだろう…?

 

「木田さんはなんで靏蒔さんの部屋にポーチがあるって知ってたの?」

「だって靏蒔さんに頼まれたんですもの。」

「何を?」

「化粧を教えてほしいって。」

「化粧を?」

「うふふ、あのしっかり者の靏蒔さんにもかわいらしい部分がありますのね。ある人にメイクサロンと縁遠いって言われたことを気にしていたらしいですわ。」

 

それって伊達クンじゃ…。でもそれを言ったらきっと伊達クンは女性陣一堂から正座でお説教を喰らってしまうだろうから黙っていよう。

 

「ですからわたくしの道具を使って一通り手順を教えて差し上げましたわ。その後手順と必要な道具も一通りメモにしてお渡ししました。」

「なるほど…。」

 

だとしたらそのメモはどこにあるんだろう…?でも化粧の練習をするんだとしたら…。

女性の部屋でそこに入るのはデリカシーに欠けるかとも思ったけれど捜査のためだ。仕方ない。靏蒔さんの部屋の洗面所に入った。すると案の定、木田さんが書いたと思われるメモが鏡に貼られていた。確かにそこには化粧の手順とそれに必要な道具が書かれていた。

 

「うん、確かに洗面所にメモが貼ってあったよ。」

「よかったですわ。」

 

靏蒔さんは化粧の練習をするためにメイクサロンに置いてあった化粧品を使おうとしていた。だとするとこれまで化粧に関わってこなかった靏蒔さんがメイクサロンで殺されていたのにも繋がりが生まれてくる。この部屋での発見はキチンと覚えておこう。

 

 

 

コトダマゲット!

【化粧品)

津田によるとメイクサロンに置かれているそこそこ高級なもの。

ポーチにまとめて入れて置かれていた。内容は下地、ファンデーション、アイブロウ、アイシャドウ、マスカラ、チーク。

また津田によるとフェイスパウダーが足りていないらしい。

 

【木田の証言)

靏蒔に頼まれて化粧を教えた。

その際化粧の手順と必要な道具をメモにまとめて靏蒔に渡した。そのメモは洗面所の鏡に貼られていた。

 

 

 

「他に調べておきたいことはある?」

「いえ、もう特にありませんわ。わたくしの目的はすでに果たしました。」

「じゃあそろそろ出ようか。あまり長居するのも申し訳ないし。」

「ああ、そうだね。」

「あ、木田さん先に戻ってて。」

「分かりましたわ。」

 

木田さんを先にみんなの元に戻してボクは真理ちゃんの方に向き直る。これだけは学級裁判が始まる前にきちんと聞いておかなければならない。

 

「真理ちゃん。」

「なんだい?」

「その左手のケガ、どうしたの?」

「おいおい、ボケるにはまだ早いぜ?今朝も言ったじゃないか。腱鞘炎みたいなものだって。」

「真理ちゃん、ボクは仮にも超高校級の探偵だよ。嘘を吐く人は嫌と言うほど見ているんだ。これ以上言わなくても真理ちゃんはボクの言っていること、分かるでしょ?」

「はあ、参ったね。でも本当に大したことじゃないんだ。事件にも全く関係ないしね。」

「……そっか。」

「不服かい?」

「いや、大丈夫。ここから先は今やることじゃないしね。」

「そうかい。じゃあボクも先に戻っているよ。」

「分かった。」

 

そう言うと真理ちゃんはそそくさとボクの元から離れていった。

その背中を見送りながらボクは思考を回す。

真理ちゃんのあのケガ、昨日は無かった。つまり昨日の夜以降に負ったケガだということだ。じゃあなんで?ボクにも説明できない理由があるのか…?それはもしかしたら…?

いや、ここから先は真理ちゃんにも言った通りここでやるべきことじゃない。あくまで彼女のケガについて覚えておくに留めておこう。

 

 

 

コトダマゲット!

【津田のケガ)

今朝から津田は左手に包帯を巻いている。

理由を聞いても答えてくれない。

 

 

 

キーン、コーン… カーン、コーン…

 

「捜査はここまで、タイムアップだ。オマエラは1階西棟奥の赤い扉の前まで集合してくれ。」

 

ここまで、か。たった1人、ゆっくりと赤い扉へと歩を進める。まだ謎は残っているが後はあっちで組み立てていくしかないだろう。

 

 

 

赤い扉の中に入ると何人かはすでに集まっていた。その中には真理ちゃんもいた。そちらに視線を送るとふいっと目を逸らされた。一体彼女が何を考えているのか、今はよく分からなくなってしまった。

集まったみんなの顔に視線をずらすとそこには色んな顔があった。3度目の学級裁判に不安の色を浮かべる者、凄惨な事件に憤りを覚える者、あまり深く考えていない者。様々だ。

ボクはと言うと頭はかなり冷えている。死んだ2人に思い入れがないからではない。逆だ。大切な仲間を2人殺されたというその事実に怒りがこみ上げてくる。そしてその怒りが一周回ってボクの頭を冷静にさせているのだ。どんな理由があろうとこの凶行を受け入れるわけにはいかない。必ずボクはクロを見つけ出し、その行いの責任を取らせる。もしその真実が普段のボクにとってどれほど受け入れがたい真実だったとしても。

 

                    ・

                    ・

                    ・

 

【生存者】

超高校級の探偵          深見優(フカミユウ)

超高校級のレーサー        速瀬マハ(ハヤセマハ)

超高校級のバスケットボール選手  雷文竜(ライモンリュウ)

超高校級の外交官         金谷秀征(カナヤシュウセイ)

超高校級の医者          津田真理奈(ツダマリナ)

超高校級の歴史学者        伊達小十郎(ダテコジュウロウ)

超高校級の大工          鷹岡筋次(タカオカキンジ)

超高校級の???         鏑木麗(カブラギレイ)

超高校級のハッカー        クレイグ・ホワイトバーチ

超高校級のバイオリニスト     木田結弦(キダユヅル)

 

残り10人




という訳で一気に捜査編まで駆け抜けていきましたが、一体この事件の犯人は誰なんでしょうか…?証拠も出そろったところで皆さんも推理してみてください!

それでは今回の設定裏話。今回は第2章おしおき編です。
第2章のおしおきは「ボディをねらえ!」です。タイトルは古いアニメではありますがテニスを題材にした「エースをねらえ!」です。競技の性質は大きく違いますが、分類すると同じネットスポーツというところでおしおきの内容と照らし合わせた結果このタイトルになりました。そして“ボディ”というワードを選んだところにはバドミントンの基本の狙い目の1つというところで、超高校級のバドミントン選手としてそこも狙ってくるのが分かっていても返しきることが出来ない屈辱、というおしおきの要素をそこに込めていきました。

次回からは学級裁判開幕です。真実が明らかになるまで是非ともお付き合いください!


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CHAPTER3 学級裁判 前半

エレベーターを降りるとみんなは無言でそれぞれの席に着く。

ボクもゆっくりと深呼吸をしみんなをぐるっと見回す。その表情には不安と覚悟が宿っている。

言村さんはどこか不思議な雰囲気のある人だった。たまに会話が噛み合っているのかどうか不安になるときもあった。だけど優しい人だった。靏蒔さんはしっかり者だった。それ故にクレイグクンなんかとはぶつかることもあったけどみんなのことを大切に思ってくれている人だった。

そんな2人が殺された。この中の誰かの手によって。ボクはその犯人を赦すことは出来ない。必ずこの手で見つけ出してみせる。

3度目の学級裁判の幕が今切って落とされる。

 

 

 

コトダマ一覧

【モノトラファイル3)

1人目の被害者は“超高校級の数学者”言村香奈。死亡推定時刻は午前1時半頃で死因は首を絞められたことによる窒息死。死体発見現場はゲームセンターのプリクラの中。

2人目の被害者は“超高校級の弓道家”靏蒔由衣。死亡推定時刻は午前7時頃で死因は首を絞められたことによる窒息死。死体発見現場はメイクサロン。

 

【プリクラ)

この中で言村の死体が発見された。

入口からゲームセンターの最奥のダンスゲームにまっすぐ向かう途上にある。

 

【床の血痕)

プリクラの写真機の周辺と筐体の外の床に血液が垂れていた。

犯人のものではないかと思われる。

 

【言村の爪)

言村の右手の爪に血液の付着した皮膚片が詰まっていた。

言村の遺体には目立った外傷は見られない。

 

【言村のハンカチ)

生前の言村が母親からプレゼントされ、大切にしていたハンカチ。

肌身離さず持っていたものが行方不明になっている。

津田によると縁には彼女の名前が英語で刺繍されているらしい。

 

【ゲーム大会の順位表)

昨日のゲーム大会の順位表。総合成績と各ゲームの結果が張り出されている。

集計はクレイグの他に言村と鏑木が担当していた。その際言村は自身の運動神経のなさを嘆く発言をしていたようだ。

 

【防犯カメラの映像)

1時20分頃にゲームセンターへと入っていく言村の姿が映っていた。

その前後の映像を見ても言村以外にゲームセンターに出入りした人物は映っていなかった。

 

【防犯カメラ)

クレイグが倉庫にあったビデオカメラを改造して作った。

ゲームセンターの入口に設置してある。

映像は資料室のパソコンから見ることが出来る。

 

【インターバル)

無理矢理映像データを資料室のパソコンに送るように改造した結果1時間に5分ほどデータの処理のためにカメラが映像を録画できない時間が出来てしまった。

インターバルに当たるのは毎時25分から30分頃。

このことを知っているのはカメラを改造したクレイグとカメラの設置に立ち合った深見、速瀬、津田、伊達の計5名。

 

【手の痕)

靏蒔の喉に付いていた痕。手で首を絞めたものと思われる。

言村の首にも似たような痕跡が残っており、2つの痕の大きさはほぼ同じであった。

 

【両腕のアザ)

靏蒔の両腕にアザが見られた。骨折している可能性もある。

位置は両腕とも同じ位置に見られ、手首から約20cmほど離れた位置にアザがあった。

 

【首の汚れ)

靏蒔の死体の首にうす橙色の粉末が付着していた。

化粧品ではないかと考えられ、似たような粉末がメイクサロンの鏡台と床に散らばっている。

 

【ファンデーション)

メイクサロンのバックヤードに置かれていた。

箱から2つなくなっている。

同じケースが1つメイクサロンの床に落ちていた。

 

【鷹岡の証言)

昨日ジムに行った際にダンベルがいくつか無くなっていた。

 

【血塗れの布)

メイクサロンのゴミ箱から発見された。大きさから見てハンカチではないかと思われる。

縁には「ana」と刺繍が入っている。

 

【雷文の証言)

昨晩、深夜の3時にならないくらいの時間に喉が渇いて目が覚めたためキッチンに飲み物を取りに行こうと寄宿舎の部屋を出た。その際寄宿舎のどこかの部屋から焼き肉の匂いがしてきた。

 

【化粧品)

津田によるとメイクサロンに置かれているそこそこ高級なもの。

ポーチにまとめて入れて置かれていた。内容は下地、ファンデーション、アイブロウ、アイシャドウ、マスカラ、チーク。

また津田によるとフェイスパウダーが足りていないらしい。

 

【木田の証言)

靏蒔に頼まれて化粧を教えた。

その際化粧の手順と必要な道具をメモにまとめて靏蒔に渡した。そのメモは洗面所の鏡に貼られていた。

 

【津田のケガ)

今朝から津田は左手に包帯を巻いている。

理由を聞いても答えてくれない。

 

 

 

【学級裁判開廷】

 

「3度目になるが一応説明をしておくぜ。オマエラには今回の殺人事件のクロが誰かを議論してもらう。そして誰か1名をクロとして指名してもらう。正しいクロを指名した場合クロのみがおしおきだ。逆に誤ったクロを指名した場合、クロ以外の全員がおしおき、本物のクロは晴れて自由の身だ。」

「ちょっと待って、裁判の前に1つ確認しておきたいことがあるんだけどいいかな?」

「ほう、津田、その確認しておきたいこととは何だ?」

「今君は学級裁判で“今回の殺人事件のクロが誰かを議論してもらう”って濁した言い方をしたね?でも今回は一応被害者が2名いるわけだ。となるとクロも最大2人いることになるわけだ。その場合ボク達はどちらを殺したクロを指名すれば良いのかな?2人ともかい?」

「そこに気付くとは中々やるな。その賢さに免じて教えてやろう。今回は先に発見された方の被害者を殺したクロを指名してくれ。」

「先に発見されたというのは?」

「先に死体発見アナウンスが流れた方だ。」

「なるほど、了解した。」

「前提条件も揃ったところで議論を始めてくれ。」

 

先に死体が発見された方、か。モノトラの言う基準に合わせるならばつまり言村さんを殺した犯人を見つけろ、ということだな。

 

 

 

議論開始

 

ライモン「先に死体が発見されたのってどっちだ?」

 

 

ダテ「確かちょうど某と深見殿が」

 

 

ダテ「靏蒔殿を発見したときに【最初のアナウンス】があったでござる」

 

 

ツダ「確かその時は2人しかいなかったという話だったね」

 

 

カブラギ「…つまり先に発見されたのは」

 

 

カブラギ「【言村】ということだな」

 

 

キダ「ならばまずは言村さんの死因からですわね」

 

 

タカオカ「モノトラファイルによると香奈の字は窒息死だから…」

 

 

タカオカ「香奈の字は【紐で絞められて】殺されちまったってワケか」

 

 

確か彼女の首にはあの痕跡が残っていたはず…!

 

【手の痕)→【紐で絞められて】

 

「それは違うよ!」

 

 

 

「鷹岡クン、それは違うんだ。」

「違うってなあどういうこったい?」

「言村さんの首には手の痕が残っていたんだ。だから彼女の死因は恐らく、」

 

 

 

選択肢セレクト

 

1.ロープによる絞殺

 

2.毒による呼吸困難

 

3.手を使った扼殺

 

→3.

 

「これだ!」

 

 

 

「彼女の死因は恐らく“扼殺”だ。」

「薬ってことか?」

「そうじゃないよ。字が違うんだ。分かりやすく言うと手で首を絞めて殺したんだ。」

「ホントかよ…。」

「…言村の首には手の形にアザがあった。手で絞められたと考えて良いだろう。」

 

とりあえず彼女の死因はこんなところか。

 

「あ、質問質問!香奈の奴は何であんなとこで殺されてたんだ?」

「なんで、って言うと?」

「モノトラファイルを見ると香奈の死亡推定時刻はよるの1時半頃って書いてあんだろ?だとしたらなんであんな時間にゲームセンターになんかいたんだ?」

「ああ、そういうことか。じゃあ次はそれについて議論していこうか。」

 

 

 

議論開始

 

ハヤセ「なんで香奈はあんな時間にゲームセンターにいたんだ?」

 

 

カナヤ「日中のゲーム大会で」

 

 

カナヤ「『忘れ物』でもしたんじゃないか?」

 

 

ダテ「確かに彼女は抜けてそうではござるが…」

 

 

カブラギ「…わざわざあの時間に行く理由はないな」

 

 

クレイグ「ゲームの『特訓』、とかだったりして」

 

 

タカオカ「確かにスポーツ系はひどかったな」

 

 

ツダ「必ずしもゲームが目的とは限らないんじゃないかい?」

 

 

ツダ「例えば誰かと『待ち合わせ』していた」

 

 

ツダ「とかね」

 

 

もしかしたらあのときのことが関係しているのかも…?

 

【ゲーム大会の順位表)→『特訓』

 

「それに賛成だよ!」

 

 

 

「クレイグクン、それだよ。」

「あ、やっぱり?」

「彼女は鷹岡クンも言ったとおり運動系のゲームがトコトン苦手だった。だからその特訓のためにゲームセンターに来たんじゃないかな。実際、そういうことを言っていたらしいし。ね、クレイグクン。」

「そうなのよ。昨日のゲーム大会、途中まで得点の集計を俺ちんの他に鏑木ちんと言村ちんが手伝ってくれてたんだけどさ、その時言村ちんがもう少し運動しよう、ってなことを言ってたんだ。」

「…そう言えばそんなことを言っていたな。」

「言村さんの発言も踏まえると彼女の目的は…」

 

 

「調律が必要ですわね。」

 

 

「何か引っかかることがあった?」

「ええ。ですから一曲お付き合い願えますか?」

「うん、もちろん。」

 

 

 

反論ショーダウン

 

「貴方方は先ほど」

 

 

「言村さんはゲームの特訓のために」

 

 

「ゲームセンターにいたとおっしゃいましたが、」

 

 

「それこそ深夜でなくてもよろしいのでは?」

 

 

「日中の方が身体も元気で」

 

 

「練習になると思いますのに」

 

 

-発展-

 

「でも実際あそこにいたんだ」

 

「他に彼女があそこにいた要因がない以上」

 

「そう考えるしかないじゃないか!」

 

 

「しかし他のジャンルならともかく」

 

 

「運動系のゲームなら」

 

 

「余計に1人でいた理由が分かりません」

 

 

「ゲーム自体が競ったり対戦したり、」

 

 

「【相手が必要なものばかり】です」

 

 

「やはり彼女の目的は【ゲームの特訓ではなく】」

 

 

「他の理由であそこにいたのではありませんか?」

 

 

いや、彼女の目的はゲームの特訓だったはずだ。それはあの証拠が証明してくれる!

 

【プリクラ)→【ゲームの特訓ではなく】

 

「その言葉、斬らせてもらうよ!」

 

 

 

「いや、やっぱり言村さんの目的はゲームの特訓をすることだったはずだよ。それは彼女が発見された場所が示しているんだ。」

「彼女が発見された場所、というと…。」

「プリクラ、だったな。」

「そう、彼女はプリクラの筐体の中で発見されたんだ。」

「いや、でもよプリクラん中じゃ運動できなくねえか?」

「大切なのは彼女がプリクラの中で発見されたことそのものじゃないんだ。その発見された場所がゲームセンターの中においてどの位置にあったか、ってことなんだ。」

「プリクラがどこにあったか?」

「うん。プリクラのある場所は入口からまっすぐ進んでとあるゲームに向かう途上にあるんだ。」

「とあるゲーム?」

「うん。」

 

 

 

閃きアナグラム

 

Q.入口からプリクラを通り過ぎてまっすぐ向かった先にあるゲームとは?

 

〔だ〕〔ん〕〔す〕〔げ〕〔ー〕〔む〕

 

→ダンスゲーム

 

「これだ!」

 

 

 

「ダンスゲームだよ。入口からまっすぐ進んでプリクラを通り過ぎたその一番奥。そこにはダンスゲームがあるんだ。」

「ダンスゲーム…。確かにそれなら1人でも運動できますわね…。」

「つまり香奈さんはダンスゲームで運動するためにわざわざ夜中にあそこにいたわけだ。」

「深夜にわざわざ行ったのは誰かの目に付くのが恥ずかしいから、とかそんなところだったんじゃないかな。タダでさえ昨日運動が極端に苦手なことをボク達みんなに見られたばかりだったしね。」

「犯人は言村があそこに来る可能性を読んでゲームセンターで待ち伏せをしていた、という訳か。」

「そういうことになるね。」

「あれ、ちょっと待てよ?そもそも現場はゲームセンターだったんだよな?つうことはよ、犯人なんてすぐに分かんじゃねえか!」

「おい、竜の字、そいつはホントか!?」

「ほら、アレだよ。オレ達にはアレがあるじゃねえか!」

 

もしかして雷文クンが言っているのって…

 

 

 

証拠提出

【防犯カメラ)

 

「これで証明するね!」

 

 

 

「雷文クン、それって“防犯カメラ”のことだよね?」

「おうそれだ!」

「そんなのついてたのか!?」

「…速瀬、お前は設置に立ち合ってたはずだが…?」

「あれ、そうだっけ?」

「……もういい…。」

「とにかくよ、あの映像を見りゃ犯人が分かるはずだっ!!」

 

 

 

議論開始

 

ライモン「ゲームセンターの入口には」

 

 

ライモン「防犯カメラが【設置されてた】」

 

 

ライモン「あの映像を見りゃ」

 

 

ライモン「【犯人がわかる】じゃねえか!!」

 

 

クレイグ「そりゃ妙案だ」

 

 

カブラギ「…確かにカメラの映像なら」

 

 

カブラギ「クレイグの仕込んだソフトで」

 

 

カブラギ「【細工も不可能】だ」

 

 

ハヤセ「けってーてきなしょーこってやつだな!」

 

 

確かあの映像に映っていたのは…。

 

【防犯カメラの映像)→【犯人が分かる】

 

「それは違うよ!」

 

 

 

「それがそうもいかないんだ。」

「何でだよ!!」

「ボクもそう思って捜査時間中に資料室のパソコンから防犯カメラの映像を調べて見たんだ。だけどそこに映ってたのはたった1人だけだった。」

「じゃあソイツが!!」

「…たった1人…?」

「なるほど、そういうことですの…。」

「おい、どういうこってえ!?」

「落ち着いて、今説明するから。その映像に映っていた1人ってのはね、」

 

 

 

選択肢セレクト

 

1.言村

 

2.靏蒔

 

3.津田

 

4.鏑木

 

→1.

 

「これだ!」

 

 

 

「言村さんだったんだ。」

「なっ!」

「よく考えてみれば当たり前の話だ。被害者はゲームセンターに自らの足で向かった。つまり映像に奴の姿が映っているのは当然だ。」

「でもそいつは変だぜ!!?なんで言村はゲームセンターで死んでたのに殺した犯人が映ってねえんだよ!!?」

 

 

 

議論開始

 

ライモン「言村はゲームセンターで死んでたんだ!」

 

 

ライモン「じゃあ何で映像に」

 

 

ライモン「【犯人が映ってねえ】んだよ!!?」

 

 

ツダ「カメラの『画角に穴があった』のかな?」

 

 

クレイグ「いんや、きちんと誰かが通ったら」

 

 

クレイグ「全員映っていたハズだ」

 

 

ハヤセ「分かったぞ!」

 

 

ハヤセ「犯人は実は超高校級の『透明人間』だったんだ!!」

 

 

カナヤ「何を言っているんだ…?」

 

 

ダテ「何か映らない『裏技』があった」

 

 

ダテ「と考えた方がまだ筋が通るでござるな…」

 

 

アレを活用すればカメラに映らないことは可能なはずだ。

 

【インターバル)→『裏技』

 

「それに賛成だよ!」

 

 

 

「伊達クン、それだ。犯人はカメラに映らない裏技を使ったんだ。」

「そんなものがあるのか?」

「うん、防犯上の観点から一部の人しか知らなかったんだけどね。」

「その裏技って何だ?」

「あのカメラにはインターバルがあるんだ。」

「インターバル?」

「詳しくはカメラを作ったクレイグクンに説明してもらおうか。」

「おっけー。まずそもそもだ。あのカメラは防犯カメラじゃない。倉庫にあったビデオカメラを俺ちんが改造して作ったんだ。じゃあ俺ちんはどんな改造をしたでしょうか、深見ちん!」

「ボクっ!?」

 

えっと確かクレイグクンが行った改造は…。

 

 

 

選択肢セレクト

 

1.画角を広げた

 

2.パソコンに映像を送れるようにした

 

3.データ容量を広げた

 

→2.

 

「これだ!」

 

 

 

「たしか、資料室のパソコンに映像を送れるようにしたんだったよね?」

「その通り!でもさ、そもそもあのビデオカメラはデータを別の端末に移す前提で作られてなかったんだ。そんなカメラを無理矢理改造したからちっと不具合が生じちまった。」

「…不具合、とは…?」

「それが深見ちんの言うインターバルさ。1時間に5分、データをパソコンに送る処理のために撮影機能をストップしちまう。」

「つまりその5分間だけは映像がない、という訳ですね。」

「そういうこと。毎時25分から30分あたりがちょうどそこにあたる。」

「それを知っていたのは誰だ?」

「まずはカメラを作った張本人である俺ちん。あとはカメラの設置に付き合ってくれた深見ちん、速瀬ちん、津田ちん、伊達ちんの4人には俺ちんなりの誠意として教えてあるぜ。まあ、速瀬ちんは忘れちまってそうだけど。」

「あはは、わりい。」

「…つまり最大5人がこの事件の犯人になり得る、という訳だな。」

「ですがここから絞るのは大変ですわよ。犯行時刻は深夜1時半、誰もアリバイなんてありませんわ。」

「それはそうでござるな…。」

 

 

 

議論開始

 

キダ「犯行時刻は1時半…」

 

 

キダ「犯人ではない人も【眠っていますわ】」

 

 

ダテ「つまり誰も【無罪を証明できぬ】…」

 

 

クレイグ「カメラの映像にも」

 

 

クレイグ「【これ以上の手掛かりはねえ】しなぁ」

 

 

ライモン「つっても後何があるよ?」

 

 

ライモン「現場とかか?」

 

 

タカオカ「だがあそこにゃもう【何も残ってねえぞ】?」

 

 

カブラギ「…現場百遍、」

 

 

カブラギ「捜査の基本ではあるがな…」

 

 

あそこを見てみればまだ何か残されているかも…!

 

【床の血痕)→【何も残ってねえぞ】

 

「それは違うよ!」

 

 

 

「まだ現場には検討していない痕跡があったはずだよ。」

「そりゃ何でい?」

「床の血痕だよ。プリクラの写真機の周辺と筐体の周りの床には血痕が残されていた。これが事件の真相に近づくためのヒントになっているハズだよ。」

「しかし普通に考えたらそれは殺された言村殿のものではござらんか?」

「いやそれはないんだ。だって言村さんは…」

 

 

 

選択肢セレクト

 

1.外傷がなかった

 

2.血液が青い

 

3.サイボーグ

 

→1.

 

「これだ!」

 

 

 

「外傷がなかったんだ。彼女の死体には傷がなかった。つまり床にこぼれていた血痕が言村さんのものだとは考えられないんだ。」

「…それは検死を行った私も証言しよう。」

「じゃあ一体誰があんなところで出血したんだ?」

「“犯人”じゃないかな。」

「犯人ん!!?」

「うん、そうとしか考えられない証拠も残されているよ。」

 

言村さんではなく犯人が出血したと考えられる証拠、それは…!

 

 

 

証拠提出

【言村の爪)

 

「これで証明するね!」

 

 

 

「言村さんの爪を見てほしいんだ。」

「言村の爪?」

「彼女の右手の爪には血液の付着した皮膚片が詰まっていたんだ。」

「えっとお、つまり?」

「彼女は何者かの肉体を強く引っ掻いたってこと。」

「なるほど!」

「そして彼女の死体に傷がない以上言村さんに引っ掻かれたのは今生きている中の誰か、もっと言うと犯人である可能性が高い。言村さんを殺そうとして抵抗を受けた犯人は彼女に引っ掻かれ、出血してしまったんだ。」

「…そういうことか…。」

「じゃあ犯人はケガしてるってことか!」

「うん、そしてそれは手の可能性が高い。犯人は被害者の首を手で絞めている。そしてその手をはずそうとして引っ掻いたと考えられるからだ。」

「ならば手をケガしている者を探せ、という訳だな。」

 

 

 

議論開始

 

ハヤセ「犯人は【ケガしてる】ってことか!」

 

 

カナヤ「しかも手である可能性が高い」

 

 

クレイグ「だけどそんな奴いたかぁ?」

 

 

クレイグ「【ケガ人なんて思いつかねえ】ぜ?」

 

 

ダテ「それに加えて」

 

 

ダテ「防犯カメラの【インターバルを知っている者】」

 

 

ダテ「という条件もあるでござるよ」

 

 

カブラギ「…そう考えると」

 

 

カブラギ「かなり条件が狭いな…」

 

 

ライモン「だあーっ!!」

 

 

ライモン「そんな条件に当てはまる奴なんて」

 

 

ライモン「【ホントにいる】のかよーー!!?」

 

 

たった一人、その条件に当てはまる人物がいたはずだ。

 

【津田のケガ)→【ケガ人なんて思いつかねえ】

 

「………。」

 

 

 

「…クレイグクン、たった1人だけこの狭い条件に当てはまる人物がいるよ。」

「おいおい、マジかよ…!」

 

その人物は…。

 

 

 

 

 

指名しろ!

【ツダマリナ】

 

「キミしかいない!」

 

 

 

 

 

「真理ちゃん、キミだよ。」

「…っ!」

「真理ちゃん、キミは左手に包帯を巻いているね?そのケガを腱鞘炎のようなものだってごまかしたけれど、本当は違うんじゃない?」

「……。」

「おい、真理奈!何とか言えって!疑われてんだぞ!!」

「このケガは……。」

「おいおい、ホントにこりゃ当たりか?」

「そんなワケっ…!!」

「然れど今上がった条件に当てはまるのも事実…。」

「本当に、津田さんが犯人だということですの…?」

 

口々に困惑の声が上がる。当たり前だ。ボクだってまだ信じられない。彼女が犯人だなんて。これまでの学級裁判において大切な検死役を務めてくれた彼女がボク達を裏切ろうとしていたなんて。

そしてその中心にいる真理ちゃんは一言も言葉を発さない。

困惑の渦がこの裁判場をぐるぐるぐるぐるとかき混ぜるように渦巻いていた。

 

 

 

【裁判中断】

 

「くんくん、くんくん。」

 

 

「え、一体何してるかって?」

 

 

「嗅ぎ取ってるのさ、絶望の匂いを。」

 

 

「え、どんな匂いかって?」

 

 

「ぐぷぷ…。」

 

 

「血と脂汗と悔し涙の匂い」

 

 

「だったりしてな…。」

 

                    ・

                    ・

                    ・

 

【生存者】

超高校級の探偵          深見優(フカミユウ)

超高校級のレーサー        速瀬マハ(ハヤセマハ)

超高校級のバスケットボール選手  雷文竜(ライモンリュウ)

超高校級の外交官         金谷秀征(カナヤシュウセイ)

超高校級の医者          津田真理奈(ツダマリナ)

超高校級の歴史学者        伊達小十郎(ダテコジュウロウ)

超高校級の大工          鷹岡筋次(タカオカキンジ)

超高校級の???         鏑木麗(カブラギレイ)

超高校級のハッカー        クレイグ・ホワイトバーチ

超高校級のバイオリニスト     木田結弦(キダユヅル)

 

残り10人




まずはここまでで前半終了!学級裁判も混沌を極めております。深見君達はこんな状況からどう真実を見つけ出すのか…?乞うご期待です!


それでは今回の設定裏話です!今回は前作同様、「超高校級の○○」をやっていこうかなと思います!本人達のコメント付きです!そして今回のテーマは「超高校級の好物」と参りましょう。

深見優→紅茶
「捜査資料を見ながら飲むこともあるかなぁ。」

速瀬マハ→ファストフード全般
「速いはウマいだ!」

雷文竜→ラーメン
「バスケの後のラーメン、これが最高なんだ!」

金谷秀征→サラダ
「あまり脂っこいものは好かん。」

羽月翔子→お姉ちゃんのクッキー
「良く作って食べさせてくれたんだー。」

津田真理奈→あっさりしたもの
「さすがに患者さんの前で濃いものを食べる気にはならなくてね。」

伊達小十郎→ずんだ餅
「地元の銘菓でござるしな。」

鷹岡筋次→肉
「やっぱ肉食わねえとエネルギーが足りねえよ!」

言村香奈→ケーキ
「糖分摂って頭を回すのだー。」

美作奏→ピリッと辛いもの
「あの刺激がたまらないっすよ!」

鏑木麗→サンドイッチ
「…手軽なもののほうが好みだ。」

泊直哉→味噌汁
「日本人ですしね。」

クレイグ・ホワイトバーチ→カロリー○イト
「簡単な栄養補給代表っしょ!」

靏蒔由衣→焼き魚
「一番食べていてホッとするな。」

大地真英→ポップコーン
「映画でも遊園地でもどこででも食べてる内にね。」

木田結弦→ブドウジュース
「よく海外でも食事会に呼ばれるのですが、その時によく飲みますわ。」


とみなさんの好物はこんな感じな模様です!意外なものとかもあったでしょうか?
さてさて、次回は学級裁判後編、真実へ向けて駆け抜けていきましょう!それではまた次回!


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CHAPTER3 学級裁判 後半

【裁判再開】

 

ここまでの犯人の条件は2つ。1つはクレイグクンが設置した防犯カメラに全く姿が映っていないことから防犯カメラの映像が撮れていないインターバルの時間があることを知っていること。もう1つは言村さんの右手の爪に血痕の付いた皮膚片が詰まっていながら言村さん本人には一切傷が付いていないことから身体のどこか、可能性が一番高い場所としては手に傷を負っていること。

現状この2つの条件に当てはまるのは信じがたいことだけど真理ちゃんたった一人だ。しかも彼女は手のケガについて一切の説明を拒んでいる。

 

「申し開きはあるか?もしその手のケガに何らかの殺人とは関係のない事情があるんだとすれば今ここで説明してくれ。俺達も今ここで選択を間違うわけにはいかない。」

「……。」

「だんまりかよ…。」

「色々と事情があってね。今ここでは説明するのは難しいんだ。だがこれだけは言わせてもらう。私は断じて香奈さんを殺してなんかいない。」

「おいおい、そりゃねーぜ。説明もなしに信じろってのがムリな話だ。」

「ちょっと待ってよ!まだあくまで真理ちゃんが条件に当てはまるってだけで犯人だってワケじゃ…!」

「じゃあ深見は手にケガしてんのかよ!?」

「う、それは…。」

「…だが今決めつけるには早計なのも事実だ。」

 

どうしよう、またみんなの意見が対立してしまってる…!どうすれば…!!

 

「お、どうやら意見が対立してるみてーだな!ならば変形裁判場の出番だ!!」

 

そう言うとモノトラは大きなカギを取り出し、目の前の鍵穴に差し込む。そしてそれを捻るとこれまでと同様、ボク達の立つ証言台が動き、向かい合わせの構図になった。

 

 

 

議論スクラム

 

 

〈言村香奈を殺害したのは津田真理奈か?〉

 

津田だ!     津田じゃない!

雷文       深見

伊達       速瀬

鷹岡       金谷

クレイグ     津田

木田       鏑木

 

 

ダテ「津田殿は【インターバル】のことを知っていたでござる!」

「ボクが!」

フカミ「【インターバル】のことは他にも知っていた人がいたよ!」

 

 

クレイグ「でも津田ちんは【手】をケガしてるぜ?」

「金谷クン!」

カナヤ「あくまで【手】をケガしている可能性が高い、というだけだ。」

 

 

ライモン「だったら何で【ケガの理由】を話さねえんだ!」

「速瀬さん!」

ハヤセ「【ケガの理由】は今は話すのが難しいって言ってただろ!?」

 

 

キダ「でしたら【扼殺】の時以外になぜケガをしましたの?」

「真理ちゃん!」

ツダ「別に【扼殺】の時以外でもケガはするさ。」

 

 

タカオカ「引っ掻かれた以外に【出血】する理由がねえ!」

「金谷クン!」

カナヤ「別に包帯を巻いているからと言って【出血】しているとは限らないだろう。」

 

 

クレイグ「正確な情報が出るのは困るから【検死】しなかったんじゃねえの?」

「鏑木クン!」

カブラギ「…ならばむしろ私に【検死】させるメリットがない。」

 

 

 

CROUTCH BIND

 

SET!

 

 

 

「これがボク達の答えだ!」

 

 

 

「あくまでボクが指摘したのは真理ちゃんがこれまでに挙げてきた犯人の条件に当てはまる、ということだよ。確かに怪しいけれどまだ真理ちゃんが犯行を行ったという確たる証拠は挙がっていないよ!」

「それならばわたくし達はきちんと議論しなければなりませんわ。なぜ津田さんは今左手にケガをしているのか。」

 

 

 

議論開始

 

キダ「もし津田さんが犯人でないとしたら」

 

 

キダ「どうして彼女はこの【一晩の間に】ケガをしているんですの?」

 

 

ダテ「しかも【出血性のケガ】でござるからなぁ…」

 

 

ハヤセ「わかったぞ!」

 

 

ハヤセ「夜食を作ろうとして」

 

 

ハヤセ「『包丁』でケガしたんだ!」

 

 

ライモン「たまたま『スッ転んだ』んじゃねえか?」

 

 

カブラギ「…ならば他の箇所もケガをするだろう」

 

 

カナヤ「そもそも俺達は津田の」

 

 

カナヤ「患部を見た訳ではない」

 

 

カナヤ「『出血性のケガではない』という」

 

 

カナヤ「可能性もありえるな」

 

 

もしかしてあそこで起こっていたことって真理ちゃんのケガに関係しているのか…?

 

【鷹岡の証言)→『出血性のケガではない』

 

「それに賛成だよ!」

 

 

 

「金谷クン、その可能性がありそうだ。」

「やはりか。」

「そもそも津田のケガは血が出てねえってことか…?」

「うん。鷹岡クン、捜査中に言っていたこと、ここでもう1回教えてくれる?」

「オイラなんか言ったか?」

「ほら、あのジムでの話。」

「ああ、アレのことか!いいぜ。」

「ジムで何かあったのか?」

「おう!昨日のゲーム大会の始まる前、集合時刻になるまでオイラはトレーニングしようと思ってジムに行ったんだ。そしたらよ、そんなに重てえ奴じゃあなかったんだがダンベルがいくつか無くなってたんだ。」

「然れど今回の事件の手口は“扼殺”、ダンベルは関係ござらんのではないか?」

「じゃあもしそのダンベルを持っていったのが真理ちゃんだったとしたら?」

「…何だと?」

「もし真理ちゃんが昨日何らかの目的でダンベルを持っていった。そしてその結果手をケガしたとしたら?事件には関係なくても昨夜の内に手をケガしていたことに説明が付くでしょ?」

「では何のために津田は部屋にダンベルを持っていったのだ?」

「それならそんな難しいことじゃないんじゃないかな。」

 

真理ちゃんが部屋にダンベルを持っていった理由、考えられるのはアレかな。

 

 

 

選択肢セレクト

 

1.殺人の凶器

 

2.トレーニング

 

3.文鎮

 

→2.

 

「これだ!」

 

 

 

「真理ちゃんはトレーニングを部屋でするためにダンベルを持っていった、そうじゃないかい?」

「なんでわざわざ…。別にオイラ達と一緒にやったっていいじゃねえか。」

「それは鷹岡クン達がいることが都合悪かった、とかじゃないかな。女の子には色々複雑な事情があるときもあるしね。」

「おう、真理の字!どうなんでえ!?」

「その通りさ。事情があって部屋で1人でトレーニングをしたかった。だからジムからダンベルを部屋に持ち込んだのさ。でもさすがにボクはトレーニングに関しては素人、とまでは言わなくても医療方面と比べると強くない。だから自分自身のキャパを超えたトレーニングをしてしまった。その結果手首を痛めてしまった、という訳さ。」

 

そう言いながら真理ちゃんは包帯を外し左手を見せる。するとそこには軽く腫れた彼女の左手首があった。

 

「なーるほどねぇ。じゃあなんで最初っから言わなかったんだい?」

「最初は優クンに名指しされた時点で包帯を外すつもりだったんだ。だけどモノトラが脅すもんだからね。」

「脅す?」

「ああ、裁判前にね。手のケガについて真実が出てくる前にボクから明かすな、と。」

「おい、どういうつもりだ。隠蔽を強要したのか!」

「おいおい、そんなんじゃねえぜ。エンターテイメント性を担保するために真実を明かすタイミングを調整しただけだ。」

「同じだろう!!」

「でも真実は分かった。問題ねーだろう?」

「クソヤローが…!」

 

モノトラの奴、真理ちゃんにそんなことをっ…!でも…。

 

「今は気持ちを抑えよう。今ボク達がやるべきことは言村さんを殺した犯人をつきとめることだよ。」

「うん、そうだね。」

「2人がそう言うんじゃ…。」

 

よし、話を議論に引き戻せたところで次の議題を考えなくちゃ…。

 

「でもそもそも津田の他にゃケガをしてる奴はいねえよな?」

「…だがだとするとあの皮膚片は一体誰のものなんだ…?」

「確か言村の死体には傷はなかったんだよな…。」

 

あの皮膚片が被害者のものか、犯人のものか…。

 

 

 

選択肢セレクト

 

1.被害者

 

2.犯人

 

→2.

 

「これだ!」

 

 

 

「やっぱり…、犯人の皮膚片なんじゃないかな?」

「でも他の誰もケガしてねえぞ?」

「ならばそこにトリックがあるんだよ。犯人による何らかの偽装が介入しているから本来の状況と矛盾が生じてるんだよ。」

「ならば俺達が見た現場の状況を1つ1つ整理していく必要があるな。」

 

 

 

議論開始

 

カナヤ「俺達が見た現場の状況を1つ1つ挙げていくぞ。」

 

 

ダテ「言村殿は【ぷりくら】の中で殺されていたでござるな」

 

 

タカオカ「筐体の周りには【血痕が付いていた】な」

 

 

ライモン「ああ、血塗れだった」

 

 

カナヤ「死体はどうだった?」

 

 

カブラギ「…【手で首を絞めた】痕があったな」

 

 

ツダ「後は…」

 

 

ツダ「手に血液の付いた皮膚片が」

 

 

ツダ「【詰まっていた】んだったね」

 

 

カブラギ「…現場からは」

 

 

カブラギ「【何も持ち出されていない】はずだ」

 

 

確か被害者の持ち物の中に…!

 

【言村のハンカチ)→【何も持ち出されていない】

 

「それは違うよ!」

 

 

「待って、1つだけ持ち出されていたものがあったんだ。」

「…何?」

「言村さんのハンカチだ。」

「…ハンカチ?」

「ああ、そう言えば。彼女が常に肌身離さず持ち歩いていたハンカチが事件後は行方不明になっていたね。」

「そいつぁ犯人が持ち出したってことかい?」

「その可能性が高いよ。」

「何のために…?」

「傷口を押さえるためじゃないかな。これまでの議論の通り犯人は言村さんの抵抗によって出血するレベルのケガを負った。咄嗟に犯人は傷口を押さえて血痕をあれ以上残さないために目に付いた言村さんのハンカチを使ったんじゃないかな。」

「じゃあ犯人が持って行っちまってそのまま、ってワケか…。」

「いや、そうとも限らないよ。だってハンカチそのものはもう見つかってるんだから。」

「ほんとでござるか!?」

「うん。」

「一体どこに!?」

 

言村さんのハンカチのたどり着いた先、それを示す証拠は…!

 

 

 

証拠提出

【血塗れの布)

 

「これで証明するね!」

 

 

 

「これさ。」

「この血塗れの布がそうだって言うのかい?」

「うん。だってこの布には言村さんのハンカチと同じ特徴があるからね。」

「香奈のハンカチと同じ特徴?」

「その特徴って言うのはね、」

 

 

 

閃きアナグラム

 

Q.血塗れの布と言村のハンカチに共通する特徴とは?

 

〔ふ〕〔ち〕〔の〕〔し〕〔し〕〔ゅ〕〔う〕

 

→縁の刺繍

 

「これだ!」

 

 

 

「この布の縁にはね、刺繍がしてあるんだよ。」

「それがどう関係するでござるか?」

「言村さんのハンカチにも縁に刺繍がしてあるんだよ。彼女の名前が英語でね。」

「でも刺繍があるだけじゃ繋がりがあるとは限らないんじゃねえか?」

「この血塗れの布の刺繍はね、“ana”って書いてあるんだ。そして彼女の名前を英語で表記すると?」

「“Kana”だな。」

「恐らく血痕によって見えなくなっている部分の刺繍は大文字の“K”なんじゃないかな。するとどうかな?この血塗れの布には…」

「…言村の名前が刺繍されている。つまり深見が見つけたこの布きれは言村のハンカチだった、という訳か。」

「で、それはどこにあったんだ?本来はそういう議題だろう。」

「うん、そうだね。このハンカチがあったのはね、」

 

 

 

選択肢セレクト

 

1.言村の個室

 

2.プリクラの中

 

3.ジム

 

4.メイクサロン

 

→4.

 

「これだ!」

 

 

 

「メイクサロンのゴミ箱の中に入っていたんだ。」

「なにぃ!?」

「メイクサロン…、ですか…!?」

 

そうだ。みんな忘れかけていたかも知れないけれどこの事件の被害者は“2人”。言村さんと、“靏蒔さん”。そして靏蒔さんの死体が発見されたのは“メイクサロン”だった。確かにボク達が探さなければならないのは言村さんを殺した犯人だけど、その犯人は靏蒔さんが殺された現場にも現れているのだ。

 

「そう。ここに来て2つの事件は繋がりを見せたんだ。この言村さんのハンカチがメイクサロンで発見されたことと靏蒔さんがメイクサロンで死体となって発見されたこと。この2つの出来事は無関係じゃない。」

「つまりわたくし達はここから靏蒔さん殺害事件の謎まで解かなければなりませんの…?」

「でも由衣さんの事件の真相が分かればよりクロの正体にも近づけるはずだよ。」

「…そうだな。そもそも2人の事件は恐らく同一犯によるものだ。」

「ほんとでござるか!?にわかに信じがたいが…。」

「ならまずはそこから明らかにしていこうか。」

 

 

 

議論開始

 

ダテ「本当に2人を殺したのは」

 

 

ダテ「【同一犯】なのでござるか?」

 

 

カナヤ「鏑木がそう断ずるからにはその【根拠がある】はずだ」

 

 

ハヤセ「その根拠ってなんだ!?」

 

 

ライモン「『死因』が一緒とかか?」

 

 

クレイグ「そりゃモノトラファイルにもそう書いてあるからな」

 

 

クレイグ「それだけじゃねえんじゃねえの?」

 

 

ダテ「だとすると死因のみに留まらず…」

 

 

ダテ「『手口』も同じ可能性があるでござるな」

 

 

キダ「靏蒔さんも」

 

 

キダ「犯人に『ケガを負わせていた』かもしれませんわ」

 

 

言村さんの事件と靏蒔さんの事件、この2つに共通する特徴と言えばアレがあったはずだ…!

 

【手の痕)→『手口』

 

「それに賛成だよ!」

 

 

 

「2人の事件に共通する要素、それは手口だよ。確かにそれが結果的に死因にも繋がっては行くけどね。」

「犯人はどんな手口を使ったでござるか!?」

「2つの事件に共通するのは殺害方法だよ。2人はどちらも手で首を絞められて殺された“扼殺”だった。それを示すように2人の死体にはどちらにも首に手の痕が残ってるんだ。」

「でもなんでわざわざ同じ手口を…?」

「そこはまだこれからだよ。先に考えていく必要があるのはなぜ犯人と靏蒔さん、そのそれぞれがメイクサロンに行くことになったのか、だよ。それを明らかにすればなぜ犯人が同じ手口で2人を殺害したのかも自ずと明らかになってくるはずだよ。」

 

 

 

議論開始

 

クレイグ「じゃあ先に犯人から考えていこうぜ」

 

 

カナヤ「なぜ犯人がメイクサロンに訪れたのか…」

 

 

ハヤセ「さっきの【ハンカチを捨てに行った】んじゃねえか?」

 

 

ハヤセ「実際に捨てられてたわけだしよ」

 

 

キダ「それならば自分の部屋で捨てれば済みますわ」

 

 

ライモン「だが他にメイクサロンに用事なんてねえだろ?」

 

 

ライモン「悠長に【化粧品を取りに来たわけじゃねえ】だろうし…」

 

 

タカオカ「【由衣の字】に用事があったんじゃねえか?」

 

 

タカオカ「きっと話がこじれて」

 

 

タカオカ「殺しちまったんだ!」

 

 

犯人がメイクサロンに来た目的、それはメイクサロンにしかないものにあるはずだ!

 

【ファンデーション)→【化粧品を取りに来たわけじゃねえ】

 

「それは違うよ!」

 

 

 

「いや、きっと犯人は化粧品に用があったんだ。」

「何ぃ!?でもなんでそんな悠長なことを?」

「むしろ犯人にそんな余裕はなかったんじゃないかな。だからこそ犯人は化粧品に頼ったんだ。」

「…ファンデーションか。」

「そう、犯人はファンデーションを使うためにメイクサロンに行ったんだよ。」

「待ってくれ!事件と化粧品の関係性が見えてこねえ!もっとちゃんと説明してくれ!」

 

少し話を急ぎ過ぎちゃったかな。ならばまずはこの裁判中に起こったことから今の議論に繋げていこうかな。

 

「うん、分かった。じゃあ少し前のことを思い出して。少し前の段階で疑われてたのは誰だったっけ?」

「真理の字だったじゃねえか。」

「それは何で?」

「手のケガの理由を説明してくれなかったからでござるな。」

「じゃあなんでそもそもケガしていることが分かったんだっけ?」

「…深見が言及したからだろう。」

「あ、言い方が悪かったね。ボクはどこに注目したから真理ちゃんを追及したんだと思う?」

「包帯だろう。これ見よがしに付けていたじゃないか。」

「そう。真理ちゃんは手に包帯をしていたけれどその理由を説明できなかった。だから疑われていたんだ。これって犯人にも当てはまらないかな?」

「なるほど…。もし今のように津田さんの疑いが晴れたとき、同様に手をケガした犯人が包帯を巻いていたら次に疑いが向くのは犯人になってしまう、というワケですわね。犯人が津田さんのケガについて知らなかったのならなおさらですわ。」

「そういうこと。つまり犯人がメイクサロンにファンデーションを使いに行った理由、それはね…」

 

 

 

選択肢セレクト

 

1.傷を治すため

 

2.傷を消毒するため

 

3.傷を隠すため

 

→3.

 

「これだ!」

 

 

 

「手に負った傷を隠すためだったんだよ。」

「隠す?」

「ファンデーションは本来肌のシミとかを隠して綺麗に見せる効果がある化粧品だ。咄嗟に傷口を隠すアイデアとしては悪くないね。」

「じゃあ犯人の思惑が分かったところで次は靏蒔ちんがメイクサロンに行った理由だね。」

 

 

 

議論開始

 

ライモン「靏蒔がメイクサロンに行った理由か…」

 

 

ダテ「そも靏蒔殿は」

 

 

ダテ「【化粧をしない】でござるからなぁ」

 

 

カナヤ「だとすれば」

 

 

カナヤ「【化粧関連の用はない】ということになるな」

 

 

ハヤセ「【散歩】してたんじゃねえか?」

 

 

ハヤセ「ずっと動かねえと」

 

 

ハヤセ「身体も鈍るしな!」

 

 

クレイグ「誰かに【頼まれごとをしてた】のかもな」

 

 

クレイグ「なんやかんやで靏蒔ちん優しかったし」

 

 

ツダ「わざわざ朝っぱらに行く必要は」

 

 

ツダ「ない気もするけどねえ…」

 

 

あの部屋に残されていたものを考えると彼女の目的は…!

 

【化粧品)→【化粧関連の用はない】

 

「それは違うよ!」

 

 

 

「一概に化粧に関連して用がなかった、とは言い切れないんじゃないかな。」

「それはクレイグの言った頼み事って話か?」

「そうじゃなくてね、実は靏蒔さんの部屋からこんなものが見つかっているんだ。」

「これはポーチ、か。」

「どこかで見覚えがあるでござるな。」

「メイクサロンに置いてあった化粧品を入れるためのポーチだよ。中には化粧品も入ってる。」

「つまり靏蒔は化粧に挑戦するつもりがあった。それ故にメイクサロンに行った、とそういう訳だな。」

「うん。」

 

 

 

「切り捨て御免!」

 

 

 

「少々待たれよ。」

「どうしたの?」

「今深見殿は矛盾したことを申された!もう少し深掘らせていただこう!」

 

 

 

反論ショーダウン

 

「今深見殿は」

 

 

「靏蒔殿の部屋に」

 

 

「化粧品のポーチが置かれていたと」

 

 

「申されたな?」

 

 

「中には化粧品が入っていたとも」

 

 

「しかしそれでは」

 

 

「矛盾しているでござる!」

 

 

-発展-

 

「一体どこが矛盾しているのさ!」

 

「靏蒔さんが化粧に挑戦しようとしていることも」

 

「何もおかしくないはずだよ!」

 

 

「ならばどうそのポーチの中身を」

 

 

「集めたでござるか?」

 

 

「化粧の素人の靏蒔殿には」

 

 

「手順も必要な道具も」

 

 

「【知る機会はござらん】!」

 

 

「そこのところをどうお思いか!?」

 

 

靏蒔さんが化粧に関する情報を知る機会はきちんとこのホテルの中にもあったんだ!

 

【木田の証言)→【知る機会はござらん】

 

「その言葉、斬らせてもらうよ!」

 

 

 

「確かに本やネットでは知ることはできないかもね。でも知っている人に聞けば充分知識を得ることはできると思うよ?」

「何と…!」

「実際、靏蒔さんに化粧について教えたと証言している人がいるしね。」

「その御仁とは…?」

 

靏蒔さんに化粧について教えた人、それは…!

 

 

 

指名しろ!

【キダユヅル】

 

「キミしかいない!」

 

 

 

「木田さんだよ。」

「ええ、彼女に教えましたわ。手順と道具をお教えして、メモにまとめてお渡ししました。」

「実際彼女の部屋の洗面所にはそのメモが貼られていたよ。」

「なるほど…。ん?しかし木田殿に教わったということはその時点で部屋に化粧品があった、ということでは?ならば靏蒔殿がメイクサロンに行く理由はござらんと思うが…。」

「教えたときはわたくしの道具をお貸ししましたわ。その後の練習はメイクサロンで道具を調える、というお話にはなっていましたが。」

「そういうことでござったか。」

「ちなみに木田さんに聞いておきたいんだけど、靏蒔さんがメイクサロンに道具を取りに行くときは木田さんも同行したの?」

「いえ。同行事態は提案致しましたが断られてしまったもので…。」

「つまり靏蒔さんは1人で道具を取りに行ったってことだね。」

「ええ、恐らくは。」

「だとしたら納得だ。」

「何がですか?」

「靏蒔さんが1人で今日の朝メイクサロンに向かった理由が分かったんだ。」

「…本当か?」

「うん。まずはそれを示す証拠品を見せるね。」

 

 

 

証拠提出

【化粧品)

 

「これで証明するね!」

 

 

 

「この化粧品のポーチを見てほしいんだ。」

「これはさっきのポーチか。」

「それが何だってんだ?」

「さっきこのポーチの中には化粧品が入っている、という話をしたよね。具体的に言うと入っていたのは次の7つ。下地、ファンデーション、アイブロウ、アイシャドウ、マスカラ、チーク、口紅だよ。」

「確かに化粧品が入っているようだな。だがこれがどうした?」

「木田さん、この中に必須の道具の内の1つが足りていないんじゃないかと思うんだけど、どうかな?」

 

そう問うと木田さんは指折り数えてその後ああ、という顔をする。

 

「細かく言うといくつかありますがわたくしが靏蒔さんにここまでは必ず、とお伝えしたものの中だとフェイスパウダーが足りていませんわ。」

「なるほど、そういう訳か。」

「どういうわけでい?」

 

靏蒔さんの化粧ポーチの中には足りていない道具があった。そして靏蒔さんはメイクサロンで死亡していた。この2つの情報を繋ぐ彼女がメイクサロンに行った、いや、行かなければならなかった“理由”。それは…

 

 

 

選択肢セレクト

 

1.フェイスパウダーを取りに行った

 

2.言村のハンカチを取りに行った

 

3.ファンデーションを取りに行った

 

→1.

 

「これだ!」

 

 

 

「靏蒔さんはフェイスパウダーを取りにメイクサロンに行ったんだ。」

「っつうことは要は忘れ物を取りに行ったってことかい。またなんでわざわざ朝っぱらに。」

「靏蒔さんはあまり化粧の練習をしていることを人に言いたがりませんでしたわ。ですから人がほとんど来ないであろう朝の時間にメイクサロンに行ったのではないでしょうか。」

「で、結局何で犯人は香奈と由衣を殺すのに同じ方法を用いたんだ?最初はそういう話だったろ?」

「そこに至るにはもう1つ段階を踏む必要があるね。」

「もう1つの段階ぃ?」

「うん。それは“なぜ靏蒔さんは殺されたのか”について考えることだ。それを考えるためにもさっきの話を整理しよっか。」

「さっきの話、というとなぜ犯人と靏蒔殿がメイクサロンに行ったのか、ということでござるか。」

「そう。じゃあまずは犯人から。犯人は何でメイクサロンに行ったんだっけ?」

「おいおい、バカにすんじゃねえやい。手のケガを隠す化粧品を使うため、だったじゃねえか。」

「そのとおり。次に靏蒔さん。なんで彼女はメイクサロンに行ったんだっけ?」

「ポーチに入れ忘れた化粧品を人知れず取りに行くため、だったよね。」

「そうだね。じゃあこれが最後の質問。メイクサロンにこの2人が居合わせたのは偶然かな?それとも誰かの思惑があったのかな?」

「えーっとそうなると…。」

 

犯人と靏蒔さんが同じ時にメイクサロンに居合わせた。その状況になったのは…

 

 

 

選択肢セレクト

 

1.偶然

 

2.必然

 

→1.

 

「これだ!」

 

 

 

「偶然、だったんだよ。」

「なっ…!」

「犯人が犯行の際に手に傷を負ったのは偶々。そして靏蒔さんが朝にメイクサロンに行ったのも誰かに唆されてもことではない。だとすると2人が今日の朝メイクサロンに居合わせたのは全くの偶然だったというしかない。つまり靏蒔さんの方に犯人に殺される謂われはなかった、ということになる。そして、犯人も本来メイクサロンに来る予定はなかったということは…」

「犯人の側にも本来なら靏蒔を殺す理由はねえってワケか。」

「そういうこと。」

 

ということは最初の疑問にも自ずと答えが出てくる。

 

「じゃあ最初に立ち戻ろうか。犯人と靏蒔さん、2人がメイクサロンに向かった理由が分かった。そして2人がメイクサロンで出会ったことが偶然であったことも分かった。それならばなんで犯人はわざわざ同じ手口で靏蒔さんも殺したのかな?」

「偶然だったっつうことは最初は犯人も靏蒔を殺す気はなかったってことだよな?」

「なれば同じ手口であったことも“偶然”。咄嗟の犯行だった、ということでござるか…。」

「まあ、そういうことになるね。」

「じゃあ犯人も由衣のことは何も考えずに殺しちまったってことか…。クソッ…!」

 

恐らく靏蒔さんの殺人に関しては犯人も咄嗟に行ったことだろう。だけど誰かが来ることを全く想定していなかったかと言われるとそれはどうだったんだろう…?

 

 

 

議論開始

 

ハヤセ「まさか犯人が【考え無しに】」

 

 

ハヤセ「由衣を殺しちまってたなんてな…」

 

 

ダテ「腹立たしい限りでござる…」

 

 

カブラギ「……」

 

 

カナヤ「何だ?」

 

 

カナヤ「何か思うところがある顔だな」

 

 

カブラギ「…いや、」

 

 

カブラギ「メイクサロンに人が来る可能性を」

 

 

カブラギ「犯人は【多少は想定していた】気がしてな」

 

 

ライモン「なーに言ってんだ!」

 

 

ライモン「2人の死体は【全く同じ状況】だったんだ」

 

 

ライモン「人が来るなんて思ってたわけねえだろ!?」

 

 

そうか、ボクはあそこに引っかかってたんだ…!

 

【両腕のアザ)→【全く同じ状況】

 

「それは違うよ!」

 

 

 

「犯人は多分誰か来ても良いように警戒はしていたはずだよ。その証拠が靏蒔さんの死体に残ってる。」

「…アザ…!」

「おい鏑木!アザってどういうことだ!」

「…靏蒔の死体には両腕にアザがあった。事件以前には無かったものだ。」

「補足をすると両腕とも同じ位置にあったよ。しかも由衣さんは骨折している可能性もあるね。」

「それだけ両腕の同じ位置に強い圧をかけられた状態で靏蒔さんは首を絞められたってことだよ。」

「なんで犯人はそんなことしたんでい?」

「それは昨日起きたことを考えれば簡単なハズだよ。昨日犯人は犯行を行ったときどんな目に遭った?」

「そいつぁさっきからずっと言ってるし香奈の字に手を引っ掻かれたんだろ?」

「じゃあもし翌日同じく手で首を絞めることになったらどこを警戒するかな?」

「対象の手か。殺す対象の手を封じて前日の夜と同じ轍を踏まないようにしたわけだな。」

「その通り。」

「然れど犯人はどのように手を封じたんでござるか?」

 

犯人がどうやって靏蒔さんの両手を封じたのか。その方法は体勢を想像すれば簡単だ。

 

 

 

選択肢セレクト

 

1.縛り上げた

 

2.気絶させた

 

3.膝で押さえつけた

 

→3.

 

「これだ!」

 

 

 

「首を絞めたときの体勢を想像すれば簡単だよ。咄嗟に首を絞める以上何かもので抑えることは難しい。だけど両手はもちろん首を絞めるために塞がってしまう。だから犯人は膝で両腕を押さえつけてから首を絞めたんだ。」

「…人一人の体重がかかれば確かに腕の骨が折れてもおかしくはないな。」

「犯人はもしメイクサロンで傷を隠している最中に人が来てしまったらこの方法でもう1人殺すことまでは想定していたと思うよ。時間も考えれば低い可能性だったけど実際にそうなってしまっているしね。」

「メチャクチャ狡猾な犯人じゃねえか!」

 

だけどもう既に犯人は絞られている。言村さんと靏蒔さん、2人を殺害した犯人が同一人物だということになった時点で。だけど扼殺そのものは珍しい手口じゃない。だからそのことを肉付けしていくために靏蒔さんの殺害の背景を探っていく必要があった。そちらも2人の別々の確固たる目的が不幸な偶然として重なった結果という形で成立した。

こうなれば後はあのときの出来事、そしてあの時の発言が犯人を絞る要素として大きな意味を持つ。

まずはあの人にその事実を叩き付ける…!

 

「そうだね。犯人はかなり狡猾だ。だけど靏蒔さんの事件がきちんと言村さんを殺した犯人と同一人物によるものと証明された今、既に犯人は丸裸も同然だよ。」

「マジかよ!深見ちん、そいつは誰なんだい!!?」

 

一度みんなに視線を向けた後ボクはゆっくりとその人に視線と人差し指を向ける。

 

「今回の連続殺人事件、その犯人は…!」

 

 

 

指名しろ!

【クレイグ・ホワイトバーチ】

 

「キミしかいない!」

 

 

 

「俺ちん…?」

「クレイグ殿が…?」

 

まだみんなは飲み込み切れていないという状況だ。その中でたった一人、鏑木クンだけは違った。

 

「…深見、そう言うからには何か根拠があるんだろう?」

「うん、もちろん。」

「…ならば私の方から質問させてもらう。…これまでの裁判の中で容疑者となったのは5人だ。」

「確か防犯カメラのインターバルについて知っていたクレイグ、深見、速瀬、津田、伊達の5人だったな。」

「…その中で明確に犯人であることが否定されたのは津田たった1人だ。ならば深見、お前含め3人が犯人ではない根拠は何だ?」

 

その質問は妥当なものだ。ならば1つ1つ解決していこう。

 

「じゃあまずはボクと伊達クン。ボク達は同じ要因で犯人ではないと言えるんだ。」

 

ボク達2人が犯人ではないことを証明するもの、それは…!

 

 

 

選択肢セレクト

 

1.言村の死体発見アナウンス

 

2.靏蒔の死体発見アナウンス

 

3.朝のモノトラアナウンス

 

→2.

 

「これだ!」

 

 

 

「…靏蒔の死体発見アナウンス?」

「そう。死体発見アナウンスの条件は3人が死体を発見すること。」

「…モノトラ、その3人に犯人は含まれるのか?」

「これまでも受けてきた質問だがよ、そもそも死体発見アナウンスは推理の材料じゃねーぜ?ま、だがいいか。どうせ答えるまで引き下がらねーだろうしな。今回の場合は含まねー。」

「うん、ならば確実だ。今回、靏蒔さんの死体発見アナウンスに関わる3人はボク、伊達クン、そして雷文クン。」

「…それは確実なのか?」

「朝の時点では誰も死体を発見していなかった。そして2人を探すことになったときに雷文クン達と別の方向から真っ先に3階に向かったのがボクと伊達クンだった。つまり僕たち2人より先に靏蒔さんの死体を発見していた人がいた可能性は低いんだ。」

 

説明をしながら周囲を見渡す。誰もボクと伊達クンより先に死体を発見したと言い出す人はいない。つまりこの仮説は正しかったということだ。

 

「…深見と伊達については分かった。ならば速瀬はどうだ?」

「こちらは速瀬さんの発言が証拠になり得る。防犯カメラの話題が出たとき、速瀬さんはその存在を忘れていたかのような発言をしていた。言い換えるとインターバルのことも忘れていた可能性が高いんだ。」

「…嘘を吐いていた可能性は?」

「理由がないんだ。彼女がインターバルについて知らされていたハズであることは事実。それを証明する人もいる。そんな中で防犯カメラの存在を忘れていた、という嘘を吐くことのメリットはない。だからこそ速瀬さんの発言はホントである可能性が高いんだよ。」

「…状況証拠ではあるが、確かに速瀬である可能性も低そうだ。だそうだが、クレイグ。」

 

ボクが一番にクレイグクンを疑う理由について整理ができたところで鏑木クンはクレイグクンに話を振る。

 

「……だそうだが…?」

 

クレイグクンの声は震えている。

 

「死体発見アナウンスはともかく、速瀬ちんのは無罪の証明になってねえだろうがよ!!!」

「!!!」

「甘い甘い甘い甘い!甘えんだよ深見ちん!!!そんな理由で俺ちんが納得すると思ったら大間違いだ!!!俺ちんが犯人じゃねえって証明してやるから見てやがれ!!!!」

 

 

 

議論開始

 

クレイグ「俺ちんは犯人じゃねえ!!」

 

 

クレイグ「速瀬ちんが犯人である可能性は」

 

 

クレイグ「まだ残ってるぜ!!」

 

 

キダ「確かに速瀬さんの方は」

 

 

キダ「【根拠に乏しい】ですが…」

 

 

クレイグ「扼殺なんて【誰でもできる】!」

 

 

クレイグ「インターバルも【どっちも知ってる】!!」

 

 

クレイグ「【止血はどうしたんだよ】!!?」

 

 

クレイグ「靏蒔ちん殺害時の【アリバイもねえ】!!!」

 

 

クレイグ「こんな状況で」

 

 

クレイグ「どっちが犯人かなんて【分かるわけねえ】!!!」

 

 

カブラギ「…さあ、どう打ち破る?」

 

 

あの証言、もしあれに関わるものだとすれば犯人はクレイグクンしかありえない!!

 

【雷文の証言)→【止血はどうしたんだよ】

 

「その言葉撃ち抜くよ!」

 

 

 

「止血の方法、それを示すのはある人の証言だ。」

「何だと?」

「雷文クン、昨日の夜のこと、ここでもう一度証言してもらえる?」

「お、おう?昨日の夜中、3時にはなんねえくらいなんだけどよ、喉渇いてキッチン行こうと部屋を出たらよ、寄宿舎のどっかからか焼き肉をしてる匂いがしてきたんだ。誰か夜食でも食ってんのかと思ったんだがさっすがに夜中に焼き肉は重えだろ?結局何だか分かんねえなって思ってたら今日のこの騒ぎってワケだ。」

「うん、ありがとう。この証言が犯人の止血の方法に繋がるんだ。」

「は?んなワケねえだろ!誰かの夜食までこじつけて俺ちんを犯人にしてえのかよ!!!」

 

こうなったらもう理屈で何を言っても認めないだろう。だったら完璧な答えで完膚なきまでに叩きのめす!!!

 

 

 

パニックトークアクション

 

「ありえねえ!!」

 

 

「意味分かんねえ!!」

 

 

「他にも容疑者はいんだろうがよ!!」

 

 

「甘え甘え甘え甘え!!!」

 

 

「夜食がなんだってんだ!!?」

 

 

「こじつけだ!!」

 

 

「速瀬ちんはどうなんだよ!!」

 

 

「嘘吐いてるだけかもしれねえじゃんか!!」

 

 

「止血の方法を説明してみろよ!!」

 

 

『焼き肉の匂いがどう止血に繋がるか説明してみろよ!!』

 

《はん》《だ》《ご》《て》

 

「これで終わりだよ!」

 

 

 

「っ!!」

「クレイグクン、防犯カメラの改造に関してはんだごてを使えば簡単だってそう言ってたよね?」

「…ああ、言ったね。」

「はんだごては高温を発する電子工作の道具だ。金属を溶かせるくらいにね。その高熱を使えば傷口を焼いて止血するくらい簡単なんじゃない?」

「だから焼き肉の匂い、か。」

「人とは言え肉を焼いているんだ。焼き肉の匂いがしてもおかしくないね。」

「これでどうかな。ここまでの全ての状況がクレイグクン、キミがこの事件の犯人だと示していると思うけど。」

「……そこまで、分かっちまうのかい。こりゃあ俺ちんの負けだ。」

 

最後の砦を崩されたクレイグクンはそう呟いて俯いた。

 

「最後に、この事件の全てをまとめて終わらせるね。」

 

                    ・

                    ・

                    ・

 

【生存者】

超高校級の探偵          深見優(フカミユウ)

超高校級のレーサー        速瀬マハ(ハヤセマハ)

超高校級のバスケットボール選手  雷文竜(ライモンリュウ)

超高校級の外交官         金谷秀征(カナヤシュウセイ)

超高校級の医者          津田真理奈(ツダマリナ)

超高校級の歴史学者        伊達小十郎(ダテコジュウロウ)

超高校級の大工          鷹岡筋次(タカオカキンジ)

超高校級の???         鏑木麗(カブラギレイ)

超高校級のハッカー        クレイグ・ホワイトバーチ

超高校級のバイオリニスト     木田結弦(キダユヅル)

 

残り10人




えー、自分でもビックリするくらい長くなりました。前半の7割増しくらいの文量になっております。
次回はなぜ彼がこんな事件を起こしたのか、その真相が明らかになっていきますのでお楽しみに!

今回は想定外の文量にHPが切れてしまいましたので、設定裏話はお休み、ということでお願いします…。ということでまた次回お会いしましょう!


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CHAPTER3 学級裁判 閉廷

ここまでの議論で全て明らかになった。後はこの一連の事実をまとめてこの悲惨な事件に幕を引く!!

 

 

 

クライマックス再現

 

ACT1

 

「この事件のきっかけは昨日のゲーム大会。運動系のゲームでヒドイ成績を出してしまった言村さんはその改善をすることを誓ったんだ。」

 

「そして言村さんはそれに向けてダンスゲームを使った秘密の特訓をするために深夜にゲームセンターに向かったんだ。」

 

「でもそんな言村さんを狙っている人物がいた。それがこの事件のクロだったんだ。」

 

「クロは言村さんがゲームセンターへ向かうことを知って、待ち伏せをするか跡をつけるかしてゲームセンターへと入った。」

 

「その際クロは自分がゲームセンターへと向かったことを隠すために防犯カメラで映像が撮影されていないインターバルの時間を利用したんだ。」

 

 

ACT2

 

「首尾よくゲームセンターに侵入したクロはそのまま犯行を実行に移した。」

 

「素手で言村さんの首を絞めたんだ。」

 

「だけどその時クロにとってもイレギュラーな事態が発生した。」

 

「言村さんの抵抗を受けたんだ。それによって手を引っ掻かれ、出血を伴うケガを負うことになってしまった。その痕跡は犯行現場となったと思われるプリクラの周辺に残っていたよね。」

 

「とりあえず傷口を押さえるためにクロは言村さんのハンカチを奪った。そして侵入したときと同じく防犯カメラのインターバルを利用してゲームセンターを脱出したんだ。」

 

 

ACT3

 

「でもそこでクロは気付いた。思ったより自分の出血量が多いってことにね。」

 

「でも真理ちゃんには頼れない。ケガの経緯を説明しなければならなくなるからね。だからクロは自分の持ちうる道具の中でこの問題を解決することにしたんだ。」

 

「そこでクロが使ったのははんだごて。高熱を発する機械を用いて傷口を焼いて無理矢理出血を止めたんだ。」

 

「この時の匂いが雷文クンが深夜に嗅いだ焼き肉の匂いの正体だよ。」

 

 

ACT4

 

「だけどそれだけじゃ足りなかった。傷口が露わになったままだったからだ。」

 

「普通のケガなら包帯でも巻いておけばすむんだろうけど今回はそうも行かなかった。学級裁判の中でクロのケガの話になることは時間の問題だったからね。実際、手に巻いていた包帯のせいで真理ちゃんも疑われているし。」

 

「そこでクロが思いついたのはファンデーションを使って傷口を隠すことだった。」

 

「だからクロは翌朝、人が少ない時間にメイクサロンに行ってファンデーションを使うことにしたんだ。」

 

「だけど再びイレギュラーが起きた。」

 

「人が来る可能性は低いだろうと思っていた時間に秘密裏に化粧の練習をしようとしていた靏蒔さんが不足したものを取りに来てしまったんだ。」

 

「そしてそこでクロと靏蒔さんは鉢合わせることになってしまったんだ。」

 

 

ACT5

 

「このままでは自分の犯行が明らかになってしまうと恐れたクロは口封じのために靏蒔さんを殺すことにしたんだ。」

 

「メイクサロンにちょうど人が来てしまう万が一の可能性を想定していたクロは前日のような抵抗を受けることを防ぐ方策を採った。」

 

「それは膝で靏蒔さんの腕を押さえつけて首を絞めることだったんだ。」

 

「そのせいで靏蒔さんは抵抗もできず、更には腕を骨折した状態で殺されてしまうことになったんだ。」

 

 

ACT6

 

「その後クロは早起きした日のふりをしてボク達と食堂で合流したんだ。」

 

「そして何も知らないふりをしてボク達と一緒に朝の食堂にやってこなかった2人を捜索していたんだ。」

 

 

「一つ一つの行動はできる人が多いものだったかも知れない。だけど、その全ての条件を満たし、今回の事件を成立させることができたのはクレイグ・ホワイトバーチ!キミしかいないんだ!!!」

 

 

 

「マジ…かよ…!」

「おい、クレの字!!なんとか言ったらどうなんでい!!」

「……。」

 

クレイグクンは未だ沈黙を貫いている。

 

「まずは投票だけ済ませてしまおうか。どうせ話はそこからだろう?」

「…そうだな。」

 

それに呼応するように証言台にボタンが表示される。早く彼の話を聞くためにもさっきまでの議論の結果を踏まえたその名前に該当するボタンを手早く押した。投票はこれまでよりも早々に終わり、すぐに投票結果が表示された。

 

 

 

投票結果→クレイグ・ホワイトバーチ

 

 

 

【学級裁判閉廷】

 

「ぐぷぷ…。大!正!かーい!!!なんとなんと、3度目の学級裁判も正しい答えを言い当てたんだぜ!!そう、真夜中のゲームセンターで言村香奈を殺し、それを隠すために靏蒔由衣も殺した犯人は、超高校級のハッカー、クレイグ・ホワイトバーチなんだぜ!!!」

「……。」

 

喧しいモノトラの宣言とは対極にみんなは黙りこんでしまった。みんな心のどこかにはボク達の中に仲間を2人も殺すような人間がいるなんて信じられていなかったところがあったのだろう。

 

「お?何も聞かなくて良いのか?だったら早々におしおきに…、」

「待って。それはダメだ。ボク達はクレイグクンに聞かなきゃならない。なんでこんなことをしたのか。」

 

でもだからといってそのまま彼が死に逝くことを受け入れるわけにはいかない。これからも生きていくボク達の納得のためにもこの事件のきっかけを聞かなければならない。

 

「…確かにその通りでござる。今回はモノトラから何か動機を配られたわけでもござらん。つまりこの凶行はクレイグ殿自身の意思から来た殺人ということ。理由を聞かねば納得なぞできん。」

「およ?動機は配ったハズだぜ?」

「戯れ言を抜かすな。某はそれらしきものを一切見ておらんぞ。」

 

モノトラと伊達クンのやり取りを見てボクは1つ心当たりを思い出す。それは昨日の朝、ボクの部屋で見たあの動画。まるでテレビ番組でボク達の活躍を紹介するために流されるようなビデオだ。

 

「モノトラ、もしかしてそれってあの昨日の朝に来ていた動画のこと?」

 

とは言えボクの仮定が正しいかどうかといわれると自信が無いからその仮定をそのままモノトラにぶつけてみる。

 

「おお、さすが探偵。気付いてたか。」

「どういうことだよ!?」

「トラパッドにオレが新しい動画を送っておいたんだぜ。」

「つまりそれが新しい動機、ってことか。」

「なんで優はそれを知ってんだよ!!」

「一言で言うと見たから、かな。」

「なぜ言ってくれなかったんだい?」

「理由は大きく分けて2つだよ。1つはビデオの内容が確実に動機だと断ずるには根拠が足りなかったこと。もう1つはだからこそボクの悲観的な推理でみんなを混乱させるわけにはいかなかったこと。」

「だが動機は動機だったんだろ?」

「いや、動画のタイトル自体は“紹介ビデオ”だった。」

「紹介ビデオ?」

「誰かに向けてボク達1人1人を紹介するために用意されたビデオって感じだった。だから動機と言うには根拠が弱かったんだ。だから確信を得るまでは余計な言及は避けてたんだけど、今回はそれが悪手だったかも。申し訳ない。」

「深見殿の我々を気遣う気持ちも分かるでござるよ。理由があるなら皆も責めぬ。ただ1つ疑問があるでござる。モノトラよ、お主、なぜビデオのことを皆に伝えなかった?」

 

確かにそれは気になるところだ。同じビデオによる動機であっても前回の時は時間制限まで設けてボク達にビデオを見させようとした。でも今回はその働きかけどころか動機の存在すら周知していない。そこにどんな思惑があったのか。

 

「そいつはオレのマンネリ防止のための新たな取り組みって奴だぜ。毎回毎回オレの方から動機を見ろってのはつまらねーだろ?だからどんな動機なのか、そして誰が動機を持っているのか、全く誰にも分からねー状態でやってみようと思ったわけだ。さすがに誰も見なかったら教えたけどな。」

「そんな面白半分でやったでござるか?」

 

穏やかな伊達クンの話す声はワントーン低い。それほどまでに怒っているということなのだろう。だがそんな伊達クンの様子もモノトラは意に介さない。むしろ自分のやったことは正当だと主張するかのようにイスにふんぞり返って座っている。

 

「で、いいのか?オレが飽きたらもうおしおきだぜ?オレが何でビデオの存在を教えなかったかなんてどうでもいいだろ?」

「その通りだ。随分良心的だな。」

「その方がおもしれーからな。」

「ふん。結局悪趣味な奴だ。」

 

でもモノトラの言うとおりだ。ボク達はこの犯行の理由をきちんとクレイグクンの口から聞かなければならない。

 

「クレイグクン、キミが見たのはクレイグクンのこれまでの活躍をまとめたビデオだったんじゃないかと思うんだけど、それがどうして今回の2人も殺した犯行に繋がったのか、ボクには理解できない。」

「……。」

「だからこそ君の口からきちんと説明を聞きたい。」

「………。」

「おい、この期に及んでだんまりってのはねえんじゃねえか?」

「……。はっ。」

 

これまで沈黙を貫いていたクレイグクンの口から久々に発された音はボク達を鼻で笑う空気の漏れる音だった。

 

「理解できねえのはこっちの方だぜ。なんでテメーらはそうやって平気な顔でいられんだよ?」

「…どういう意味だ?」

「そのまんまの意味だ。テメーらはここを出てえとは思わねえのかい、って話だ。外に色んなものを残してきてんだろ?」

 

その言葉にみんなが何を思い浮かべているかは分からない。でもボクが思い浮かべたのは前回の動機となったビデオで尋常じゃない出来事に巻き込まれていたと思われる刑事さん達の姿。

 

「それは動機ビデオにも利用された人たちってことかい?」

「まあそれもあるが、他にも色んなものを残してきてんじゃねえのか?例えばやりてえこととか、栄光とか。」

 

ボクは自分のやってきたことを自分の栄光だとは思っていない。むしろ何かが起こってからしか力を発揮できないことに苛立ちさえ覚えることがあった。でもそんな人ばかりじゃないだろう。真理ちゃんなんかは多くの患者さんから感謝されていただろうし、速瀬さんや雷文クンには多くのファンや成績がその活躍に伴っていたはずだ。それを捨てることに躊躇がないかと言われれば嘘になるのかも知れない。

 

「オレはよ、バスケができりゃ何でも良いんだ。デケー大会のが確かに上手え奴らとやれて楽しいけどよ、それは1つの楽しみ方だ。好きなバスケができりゃオレはどこにいようと関係ねえよ。」

「ボクはそもそも休職中だしね。それに医者として大事なのは命を救うことであって目立つことじゃないさ。」

「だそうだが?」

 

どうやらそんな考えはボクの杞憂だったらしい。彼らにとって外で何を為したか、為せるかは大きな問題じゃない。自分らしくあることが一番重要なのだ。

 

「やっぱ理解できねえわ。テメーら狂ってるぜ!」

「どの口が!!」

「俺ちん達は希望ヶ峰学園の生徒だぞ!!世界の希望になる存在なんだ!!そんな俺ちん達がこんなとこで朽ちて果てるなんてあってはならねえ話じゃねえかよ!!!」

「…それがお前の本心か。」

「ああ。俺ちんは最初の殺人が起こったときからずっとテメーらが鼻持ちならなかった。なんでこんなとこで、誰が次に誰に殺されるかも分かんねーのに仲良しごっこできんだって。むしろ殺した美作ちんや羽月ちんの気持ちのが理解できた。」

「ならなぜわざわざ防犯カメラを作ったりゲーム大会を企画したりしましたの?」

「んなん簡単だろが。俺ちんが死なねえためだよ。俺ちんはぜってえに死ぬワケにゃいかねえ。殺されねえために俺ちんの身に危険が及ぶ要素はできる限り排除したし、肚ん中で何思ってようと表向きはそれなりに仲良くしようと努めたさ。それも全部全部全部全部全部全部全部っ!!!生きて!!こんなとこさっさと出てくためだ!!!」

 

もう全て諦めてやけになったのか、クレイグクンはこれまでずっと心の中でジュクジュクと渦巻いていたヘドロのような感情を全てぶつけてくる。そしてその奥底にあったのは自分は世界の希望の象徴だという中途半端に肥大化したプライド、そして、いつ自分が誰に殺されるか分からないというこれまでの態度からは想像も付かなかったような恐怖心。

 

「フーッ!フーッ!」

 

一度に全てを吐き出したからか、クレイグクンは肩で息をしていた。

人を食ったようなその態度の裏に隠していた彼の心の弱い部分。そのうちのどちらかだけでもボク達が気付いてあげられていたらこんなことにはならなかったのかも知れないと思うと裁判前の怒りの感情はだんだんの内に後悔の感情に変わっていく。

 

「貴様が俺達のことが気に食わなかったことはよく分かった。だがなぜ今だ。そんなに外に出たかったのなら前回の動機の時に早々に誰かを殺していれば良かったじゃないか。」

「おい秀の字!!」

「……。」

「その沈黙が答えか。」

「…どういう、意味だよ…?」

「貴様はただの臆病者だ。殺すことも殺されることもどちらも嫌だ嫌だのわがままで押し通そうとした。1回ビデオを見たくらいじゃおしおきの恐怖が拭えなかったんだろう?人を殺すという行為への嫌悪感が拭えなかったんだろう?今回のビデオでここに留まり続けて誰かに殺されるかも知れない恐怖との戦いに終わりが見えないことに怖くなったんだろう?俺はこのコロシアイを肯定するつもりは毛頭無いが、少なくとも羽月は貴様のように流されて殺したわけではなかった。自らその道を選んだ。美作は学級裁判で疑われた深見のことを庇い、自らの行為に対する責任を取った。どちらも覚悟があった。貴様とは違う。何が希望だ。そんな御託を並べる前にそのつまらん虚栄心の仮面を捨てたらどうだ?」

 

金谷クンの言葉に乗っているのは心の底からの軽蔑。そしてその言葉を受けたクレイグクンはふるふると震えている。そして。

 

「…クソが。」

「何だ。良く聞こえないな。」

「…クソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!俺は間違ってねえ間違ってねえ間違ってねえ!!あああああああああ!!!!!」

 

一言で表すならばキャパオーバー。金谷クンの言葉が数刺しした彼の心は完全に破れ、支離滅裂なことを叫ぶしかできない、壊れたAIとなっていた。

 

「だそうだ。下らん。恐怖心ばかり膨れ上がって、それをつまらん虚栄心で塗り固め、そのくせ頭が回るから小賢しい罪を犯す。そんなくだらない人殺しがそこのバカだ。」

「…それは違うよ。」

「何?」

「確かに彼が恐怖心を虚栄心で塗り固めた人だったのは事実だと思う。だけど、そんな彼の心の風船にガスを送り続けて、そして最後に針を刺したのは、紛れもないモノトラ、そしてその後ろにいる黒幕だよ。」

「そんなことは分かっている。だがそんな黒幕の掌で踊り続けたのを俺は下らんと言ったんだ。」

 

金谷クンは再び氷のような視線を未だ叫び続けるクレイグクンに突き刺す。

 

「モノトラ。アレが五月蠅くて敵わん。さっさと終わらせてくれ。俺は部屋に戻って寝たい。」

「おう秀の字、いくら何でも言い過ぎじゃねえのかい?」

「じゃあ何か?怖かったな、かわいそうだったなとアレの頭でも撫でてやれば満足か?アレはその身勝手さ故に2人殺したただの人殺しだぞ?」

「っ!」

 

どれだけクレイグクンが言葉を尽くそうときっとボク達には彼の気持ちの1パーセントも理解できないのだろう。あそこまで大きく膨れ上がった恐怖心とそれを完全に外から固めていた虚栄心は。だからこそ、金谷クンの突き放す言い方にもなんて反応して良いのか分からないんだ。

そんな心がゴチャゴチャしているボク達を更に混乱させるように悪意は投げ込まれる。

 

「で、もう良いのか?おしおきをはじめちまうぜ?」

「…。」

「……。」

「沈黙は肯定と取るぜ?ってなワケで超高校級のハッカー・クレイグ・ホワイトバーチのために!!スペシャルなおしおきを用意したぜ!!!」

「ああああああああああああ!!!!!」

 

叫び続けるクレイグクンと沈黙を貫くボク達。そんな正反対の様相を呈した裁判場を尻目にモノトラはおしおきの起動スイッチを押した。

 

 

 

クレイグクンがクロにきまりました

おしおきをかいしします。

 

 

 

暗闇の部屋。冷たいコンクリートに押し固められたその匣の真ん中にポッと明かりが灯る。

 

無機質なその青い明かりはゆっくりとその正面に座る人物の顔を映し出す。

 

その正体はクレイグ・ホワイトバーチ。今まさに断罪されんとする咎人。

 

 

超高校級のハッカー・クレイグ・ホワイトバーチのおしおき

《名前のない英雄》

 

 

画面に映し出されるのはどこかの会社のセキュリティ。疑惑の真相を突き止めるために深く深く潜ってゆく。

 

キーボードを叩く手は止まることはなく、目にも留まらぬ速さで記号を打ち込んでゆく。

 

瞬間、鮮血のように真っ赤な画面。

 

WARNING。そこから先は何が起こるか分からない。そんな警告。だけどそんな障害に彼の手は止まるどころかむしろ加速してゆく。

 

破る。くぐる。潜る。乗り越える。

 

多くの障害を乗り越えた先、そこにあったのは1つの宝箱。

 

それを開くため彼は高らかに音を響かせてエンターキーを強く叩く。

 

ゆっくりと開く宝箱。その中にあったのはモノトラ印の爆弾。それが画面の中で爆ぜる。

 

ダミーだったかと戻ろうとしたその瞬間、部屋が宝箱のように開く。差し込む閃光に目を細めているとそこに何かが降ってくる。

 

自らの横に落ちてきたそれをみると、それは先ほど画面の中で爆ぜたものと同じデザインの塊。

 

マズいと思ったのももう遅い。

 

強い光と共に炎の花畑が広がる。

 

花が全て散り、煙が晴れてゆくとそこに斃れていたのは黒焦げになった人型の何か。

 

既にその顔は焼き尽くされ、元が誰だったのかなんて他の人が見ても分からなくなってしまった。

 

彼のことを多くの人はとある呼び名で読んだ。それは常に画面の中で戦い、表に顔を出すことが無く、その正体を誰も知ることがなかったことからつけられたあだ名。

 

でも顔が焼き尽くされ、真に彼が何者か分からなくなった今、その彼の姿はまさに・・・。

 

 

 

「いーやっほおおぉう!!エクストリーーーーーム!!!!おしおきは爆発だぜーーーー!!!」

「・・・・・・・・・。」

 

言葉が出ない。彼の行いは決して赦されることではない。だからこそボク達はみんなでその罪を明らかにし、糾弾した。けれどこんな、こんな死に方をするべきだなんて誰も思ってなんかいない。

 

「クソっ・・・。」

 

そう零すのがやっとだった。

 

「ふうっ。爽快なおしおきも終わったとこだしオマエラもさっさと戻って休めよ。体調不良で死なれたって何も面白くねーからな。」

 

メインイベントは終わったとばかりにボク達に興味を無くしてさっさとモノトラは去って行く。まるでこのコロシアイが日常の一部であるかのように。

クレイグクンがずっとずっと心の中に爆弾のように抱えていた恐怖心。それは多かれ少なかれ今の僕たち全員が抱えているもの。

取り残されたボク達の間に流れていたのは不安だった。いつそれが誰の中で爆発するのか、それは誰にも分からないことだったから。

誰も足を動かせないでいるとすっと金谷クンがエレベーターの方に歩き出した。

 

「早く戻るぞ。こんなところにいたって気が滅入るだけだ。俺はさっさと帰って寝る。」

 

振り向かずに放ったその言葉はボク達に対して“生き抜いてみせる”と静かに、強く宣言したように聞こえた。

 

「ええ、そうですわね。」

「腹も減ったしな!」

「それはいつもじゃねえのか?」

「うるせー!」

 

不安は消えない。それは仕方が無い。でもきっとみんなで力を合わせて頑張れば今度こそみんなでここを出られるんじゃないか、そう思える。ボクはみんなの後に続いてエレベーターに乗り込んだ。

 

 

 

エレベーターが到着するとみんなはそれぞれ自分の部屋に戻っていった。ボクもそうしようかと一歩足を前に出すと、

 

「深見殿、少々よろしいか?」

 

伊達クンに呼び止められた。

 

「どうしたの?」

「しばしお付き合い願いたい。」

「うん、いいけど。」

「ここで話すのもなんだ。移動するでござるよ。」

 

伊達クンに付き従ってたどり着いたのはメイクサロン。今朝はここでボク達2人が靏蒔さんの死体を最初に発見した。

 

「某は1つ後悔していることがあるでござるよ。」

 

ぽつりぽつりと伊達クンは話し始めた。

 

「こんなコロシアイに巻き込まれておきながら、某は心のどこかで自分とその大事な人だけは殺したり殺されたりなんてことに巻き込まれることはないと思い込んでいたでござる。」

 

大事な人、か。ここでそう言うってことはそれって・・・。

 

「それって・・・、靏蒔さんのこと?」

「さすがでござるな。深見殿には分かってしまうでござるか。そうでござる。先ほどは大切な人、などとごまかした言い方をしたが、端的に申せば某は靏蒔殿のことが好きだったでござるよ。」

 

そうなんじゃないかと思っていた。だって彼女と話しているときの伊達クンはいつもより楽しそうだったから。

 

「始めは美しい人だ、とそれだけだったでござる。でも、一緒に過ごす内に気付いたら、とそんなところでござる。」

「そっか。」

「某は臆病者でござる。靏蒔殿は、靏蒔殿だけは死なぬとそう思い込んで自分の気持ちを伝えるのを先延ばしにし続けた。月並みな理由でござるが、某のこの気持ちを伝えて今までのように接することができなくなるのが怖かった。」

 

今は全て片付けられて綺麗になった、でも今朝は確実にそこに彼女がいた場所を見つめ伊達クンは零す。心なしか声が震えている。

 

「然れど、こんなことになってしまうならば伝えておけばよかった・・・。」

 

そう呟いた瞬間、彼の双眸から涙が溢れ出す。

 

「好きだったっ・・・!好きだったでござるよ・・・!今頃申してももはや遅いやも知れぬが、某は靏蒔殿のことが好きでござった・・・!!うああっ・・・!ああああっ・・・!!」

 

崩れ落ちて今やもう届かない愛の言葉を涙と共に溢れさせる。その伊達クンの背中をボクは眺めていることしかできなかった。

数分後。

 

「すまぬな、付き合わせてしまった。」

「いいんだ。でもなんでボク?」

「なんとなく、でござるよ。もしかしたら心のどこかで共に死体を発見した深見殿にならこの気持ちを吐き出せるとそう思ったのやもしれぬな。」

「そっか。」

「でもやっと気持ちの整理がついたでござる。某はまだ死ねぬ。必ずや生き延びて、どこよりも高い場所からもう一度この気持ちを、今度は靏蒔殿に聞こえるように高らかに叫ぶでござる。その時までは死ねぬ。だからそのためにも深見殿には共に戦ってほしいでござるよ。」

「うん、もちろん。」

 

ボクも決意を新たにする。ボクは必ず生きてここを出る。そしてその時には・・・。

 

 

 

CHAPTER3 心と口と行いと才能で  END

TO BE CONTINUED・・・

 

                    ・

                    ・

                    ・

 

【生存者】

超高校級の探偵          深見優(フカミユウ)

超高校級のレーサー        速瀬マハ(ハヤセマハ)

超高校級のバスケットボール選手  雷文竜(ライモンリュウ)

超高校級の外交官         金谷秀征(カナヤシュウセイ)

超高校級の医者          津田真理奈(ツダマリナ)

超高校級の歴史学者        伊達小十郎(ダテコジュウロウ)

超高校級の大工          鷹岡筋次(タカオカキンジ)

超高校級の???         鏑木麗(カブラギレイ)

超高校級のバイオリニスト     木田結弦(キダユヅル)

 

残り9人




ということで無事第3章が完結致しました。いかがでしたでしょうか?人の複雑な感情の絡み合いが起こした悲劇でしたが、一体どうすればよかったんでしょうね・・・。
次回からは第4章が始まっていきます。ここからは後半戦です。深見くんたちの戦いを見届けていただければ幸いです。ということでまた次回!


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CHAPTER4 別れの曲と言う勿れ
CHAPTER4 (非)日常編1


深夜。昨日の学級裁判で皆の心はすり減り、皆が寝静まった頃。

 

「で、何の用だ?」

 

モノトラを呼び出す影。

相手はすらっと伸びた長身。これまで誰にもその心の裡を掴ませてこなかった人物。その手には2度の事件のきっかけとなったタブレット端末が握られている。

 

「・・・これはどういうことだ?」

 

鏑木麗はその中の映像を見せながらモノトラを問い詰める。

 

「どういうことも何もねーぜ。オマエの紹介ビデオだ。まあ、結果3度目の学級裁判の引き金になったみてーだがな。」

「・・・そういうことじゃない。私が聞きたいのはこのビデオの中身についてだ。本当に私の才能は・・・。」

「おう、その通りだ。人数も減ってきたんでな。教えちまってもいいかと思ってよ。どうせヒントを与えねーためにオマエの相棒は置いてねーだろ?」

「・・・そのようだが。」

「さて、それを知ってどうする?誰かを殺すか?昨日死んだクレイグの野郎じゃねーが、オマエを必要としている奴は大勢いるぜ?」

「・・・くだらない。私は誰を殺すつもりもない。本領が発揮できないならできないなりに私は私のできることをするだけだ。貴様を、その裏にいる黒幕を倒すためにな。」

「ぐぷぷ・・・。やれるもんならやってみやがれ。」

「・・・言われずとも。」

 

真っ暗な静寂の中に足音が溶けてゆく。このやり取りを知るものは誰もいない。

 

 

 

CHAPTER4 別れの曲と言う勿れ (非)日常編

 

 

 

キーン、コーン・・・ カーン、コーン・・・

 

「おはようございます。7時です。今日も1日元気で頑張りましょう。」

 

ぼんやりとした頭を無理矢理再起動させて身体を起こす。しんどい。一晩経って仲間が3人も死んだという事実がボクの心に重くのしかかってくる。でもこうして塞ぎ込んでいるわけにも行かない。レストランへ向かおう。

 

「おお、深見殿おはようでござる。」

「おはよう。」

 

レストランに入ると伊達クンが声をかけてくれた。昨日は少し心配だったけど、どうやらそれも杞憂に終わりそうだ。

レストランを見回してみるとそこにいたのは雷文クン、伊達クン、鏑木クン、木田さんの4人。一昨日までだったら毎日欠かさずこの時間には来ていた靏蒔さんの姿はそこにはない。その事実に彼女はもう死んでしまったのだと再び強く実感させられる。

でも暗くなっていても死んだ人は帰ってこない。だからもっと明るく行こうか。

そうこうしているうちに他のみんなも集まってきた。

 

「さて、不本意ながら3度目の学級裁判が終わったわけだけれど。」

 

食事が終わったタイミングで真理ちゃんがみんなに声をかける。

 

「つまりそれがどういうことか、みんなはお分かりかな?」

 

これまでの学級裁判が終わった翌日、そこで起こったことといえば・・・。

 

「新しいエリアの開放ってこと?」

「その通りだよ、優クン。」

「もう調査しなくてよくねえか?」

「何でさ?」

「いつも新しいエリアで殺人が起こるじゃねえか。縁起悪いぜ。」

「そうも行くまい。これまでにそういう傾向があるならばそれこそ新たなエリアについて知っておかなければ命取りだ。」

「・・・コロシアイがまだ起こると?」

「起こらないと?これまでどれだけ対策を打っても3度も殺人は起きた。ならばここからはいかに自分の身を守りつつ殺人が起こる前に黒幕の正体に迫るかということにシフトするべきだ。そもそも永遠にここに留まるわけにもいかないわけだからな。」

「それは一理あるね。ボク達はここをいつかは脱出しなければならない。そのためには黒幕を倒さなければならない。そしてそれにはこれ以上の戦力の減少は避けたいところだ。ならばみんなが自分の身を守る方法を考えるべきだね。危機管理さ。」

「みんなが警戒を高めていれば黒幕も手を出しにくくなるしね。」

「むう…。津田と深見がそう言うんなら従うぜ。」

 

とそんなこんなでみんなで4階の探索を行うことになった。

 

 

 

ボクは前回と同様、西棟の方から探索を開始した。

4階に上がってまず目に入ったのは博物館と書かれたスペース。こんなホテルのいちスペースに博物館とは・・・。

中に入ると伊達クンと鷹岡クンがいた。

 

「ほー、これは国宝の名刀ではござらんか・・・。なんでこんな代物がこんな場所に・・・。」

 

伊達クンはガラスケースの中にこれでもかと並べ立てられた日本刀に夢中になっている。

でも一番目立つのはこの博物館の中央に置かれた大きな水晶玉・・・、のレプリカだ。どうやらガラス製らしい。サイズ感としてはバスケットボールくらいだろうか。

 

「こりゃまた見事だな。」

 

隣で鷹岡クンもこのガラス玉に魅入っている。

 

「ケースの説明書きによると中世ヨーロッパの魔法使いが未来予知を行うために使ったもので、その予知の精度は約30パーセント、らしいよ。」

「3割か・・・。そう聞いちまうとそんな大したモンじゃねえ気がしてくるな・・・。」

「そんなことはねーんだぜ!」

 

水晶玉について話しているとそこに不快な声が割り込んできた。

 

「何だよ。」

「未来予知の的中率30パーはすげーんだぜ。決まった範囲に飛んでくるボールを棒で打つだけでも4割は打てねーんだからな。」

「その比較は正しいのか・・・?」

「とにかく、この水晶玉はすげーったらすげーんだ!!無くなったら困るから本物はあってもバックヤードにしまい込んで代わりにレプリカを置いてるんだぜ!!」

 

そう言うとモノトラはひょこっといなくなった。

 

「だってさ。」

「未来予知だの何だのオカルト話にはてんでオイラは疎いからなぁ。ま、すげえならすげえってことにしとくか。」

「うん、そうだね。」

 

他の展示品も念のため確認してまわると古文書とか古い日用品とか一般的な博物館の展示品といった感じで何か特別に気になるものが置かれている雰囲気はなかった。

奥には博物館のバックヤードに繋がるとおぼしきドアがあったがカギがかかっていて開けることはできなかった。

 

「うひょー!!」

 

よだれを垂らさんばかりに刀を眺めている伊達クンをよそにボクは博物館を後にした。

ってか「うひょー」って伊達クン、もう自分のキャラ付けを忘れてしまってるんじゃないかと思った。

 

 

 

一度中央の大きな部屋はスルーして、次に向かったのは東棟の奥の方にあるカフェ。レトロな雰囲気の扉を押し開けると香ばしいコーヒーの香りが鼻腔をくすぐった。

中では金谷クンがコーヒーを飲んでいた。

 

「なんでコーヒーを飲んでるの・・・?」

「毒物が含まれていないかの確認だ。」

「だとしたらその方法は明らかに悪手だと思う。」

「まあな。」

 

悪びれもしないや。

 

「というのは冗談として、東棟とホール奥の部屋の探索は終わったんでな。ひと休憩というわけだ。」

「なるほどね。」

「ここの探索をするなら俺の事は気にせず勝手にやってくれ。」

「じゃあそうさせてもらうよ。」

 

お言葉に甘えてカウンターの中へ入っていく。そこに並んでいたのは何の変哲も無い、と言うには余りにも豪華すぎるコーヒー豆や茶葉のラインナップ。確かにキッチンにもコーヒーや茶葉も置いてはあったけれどそれはインスタントコーヒーやティーバッグであり、本当の魅力を引き出したものとは言えないだろう。

 

「うわ、こんな高級品まで・・・。」

「壮観だろう?」

「うん。少なくとも夜時間になる前だったらちょっと遠いのを度外視してもここに紅茶を飲みに来るのはアリだよ。」

「深見がそこまで言うとはな。」

 

他にも調べて見るとコーヒーや紅茶に会うお菓子やその材料とレシピがしまわれている棚や冷蔵庫にその場で一番おいしい形で味わうための道具が勢揃いしていた。

これは紅茶好きの端くれとしては見逃せない。

 

「で、紅茶を眺めているだけで良いのか?」

 

おっと、つい見入ってしまった。ここの紅茶を置いて離れるのは後ろ髪を引かれる気分だけど今は探索中。ここの紅茶は後でゆっくり飲みに来るとしよう。

 

 

 

次に向かったのは廊下の反対側。そこには「くらやみハウス」と書かれている。これはお化け屋敷的なものだろうか?

扉を開けて中に入ってみるとそこに広がっていたのはただひたすら深い暗闇。

 

「これどういうこと・・・?」

 

とりあえず一歩足を進めると3歩もしたところでゴツンと壁にぶつかってしまった。

 

「いたた・・・。」

 

ここからどう向かうんだろう・・・。

次の行き先を探して壁をトントンと叩いていくと左に向かって通路が延びていそうなことが分かった。そこからはあらかじめ壁にぶつからないよう壁をさっきと同じように叩きながら進んでいく。

 

「ひゃうっ!」

 

すると柔らかい感触と共にそんなか細い悲鳴が聞こえてきた。

 

「な、なんですの!?」

「えっ、木田さん?」

「その声は深見さん?もしかしてわたくしの・・・、その・・・、む、胸を今触ったのは深見さんですの!?」

「む、胸ぇ!?ご、ごめん!そんなつもりはっ・・・!!」

「ここで立ち止まっていたわたくしも悪いですからそんな強く責めるつもりはございませんけど、これからは気をつけてくださいね?」

「う、うん。」

 

でもこんな真っ暗闇の中でどう気を付けろって言うんだ・・・。

 

「でもなんでこんなところで立ち止まってたの?」

「わたくし、真っ暗なところがどうにも苦手で・・・。調査のためと意を決して入ったは良いものの・・・。」

 

足が止まってしまった、という訳か。

 

「じゃあ一緒に行く?」

「いいんですの?」

「うん。ずっとここを出られないんじゃ困るでしょ?」

「え、ええ。じゃあ失礼して・・・。」

 

すると腕にギュッと何かが絡みつく感触があった。

 

「離れたままじゃ歩けそうにありませんの。はしたないとは思うのですが、赦してくださいね?」

「構わないけど・・・。」

 

そこからは何となくくねくね曲がった道とかそこそこ急な登りと下りのスロープとかでこぼこ道とか色々あった気がしたけど腕の柔らかい感触で全て吹っ飛んだ。こうして出口にたどり着いてドアを開けるとそこで待ち受けていたのは。

 

「おやおや優クン、随分楽しそうじゃあないか?」

 

非常に不機嫌そうな、というか明らかにかなり不機嫌な真理ちゃんだった。

 

「中で動けなくなっていた私を深見さんが優しくエスコートしてくださったんですのよ。」

「へえー、そんな優しいところもあるんだねぇ?」

「真理ちゃん、怒ってるよね・・・?」

「別に怒っちゃいないさ。ただそういうのが好みなんだな、と思っただけさ。」

「どういうこと!?」

「探偵なんだろ?自分で推理してみれば良いじゃないか?」

 

そう言って真理ちゃんは去って行ってしまった。これは大分怒ってるなぁ・・・。

 

「あら、津田さんには申し訳ないことしてしまいましたわね。」

 

何であっけらかんとしてるの・・・。原因は木田さんなんだけど・・・?

とりあえず一通りくらやみハウスに関しては調べ終わったし、残ったホールの奥のスペースを調べることにしよう。

 

 

 

ホールに到着し、奥に進んでいくと、そこには「ギャラリー」と書いてあった。

それは博物館とほぼ一緒なのではないだろうか・・・?

中に入ってみると美しい芸術品がズラッと並んでいた。

 

「お、優じゃんか。」

 

中に入ってすぐに出会ったのは速瀬さんだった。彼女がこういう美術品に興味があるイメージはなかったのでここの調査をしているのは意外だ。

 

「良いとこに来たな!頼みたいことがあんだ!」

「頼みたいこと?」

「いやあ、調査だからと思ってここに来たのは良いんだがよ、アタシよく考えたらこういうのにゃあ疎くてなんも分からねえんだわ。だから調査を手伝ってくれ。」

 

・・・だよね。一瞬でも速瀬さんもこういうのに興味があると思ったボクがバカだった。

色々な美術品の作者や制作背景について速瀬さんに色々説明しながら調査を進めたけれど速瀬さんがどこまで理解しているのかについては疑問の余地が残るところだ。

 

「あんがとなー!」

 

一通りの説明が終わったところで速瀬さんは満足したようにギャラリーを去って行った。

さて、ずっと速瀬さんに話していたせいで調査が思ったより進んでないぞ。

という訳でもう一度調査を開始した。

壁にはそれこそルーヴルとかオルセーとかの世界的に権威の有る美術館に所蔵されていてもおかしくないような名画が並んでいた。ダ・ヴィンチやゴッホ、ダリやシャガールと言った様々な時代、様々な地域の巨匠達の絵画だ。これは一見の価値があると言えるだろう。

真ん中のスペースには本物レプリカを問わず数々の美しい世界各地の工芸品や大理石の彫刻が並んでいる。真っ白のその姿には人体の美しさがありありと表現されていて今にも動き出しそうだ。その隣には上半身裸で彫刻と同じポーズを取っている雷文クン。・・・雷文クン!?

 

「・・・っ!おうっ!深見どうしたんだ?」

「どうしたんだはこっちのセリフだよっ!?何してるの!?」

「ポージングだ。」

「なんでっ!?」

「いやー、彫刻の見事な筋肉を見てたら負けてらんねえなって思ってよ?」

「だからって脱がなくても・・・。」

「やっぱ生で見なきゃ比べられねーじゃん?」

 

そもそも彫刻と比較するというのが意味が分からないって・・・。

 

「でもオレじゃちっと力不足だなぁ。」

「そうなの?」

 

筋トレ素人のボクじゃよく分かんないや。どっちもすごい筋肉だと思うけど・・・。

 

「おう。デカさはそこまで負けちゃいねえんだがどうにも質がな。オレの方が柔らかい。」

 

そりゃ石と肉を比べたらね・・・。

 

「だから今度は鷹岡を連れてくることにするぜ。」

「鷹岡クンを?」

「おうよ!アイツなら勝てそうな気がするぜ。」

 

いやぁ、さすがの鷹岡クンでもムリなんじゃないかと思うけど・・・。まあ本人が満足するまでやらせておこうか。

 

「じゃあ行ってくるぜ!」

「うん、行ってらっしゃい。」

 

そういうと駆け足で雷文クンは出ていった。

その後の結果は火を見るより明らかで、2人は更に肉体を鍛え上げることを誓い合っていた。

一通り調べ終わったかな。後は・・・、奥の扉か。博物館にも同じような扉があったし多分あそこもこのギャラリーのバックヤードのようなものだろう。一応扉の上には「美術倉庫」と書かれている。博物館と異なるのは恐らく部屋の形から見てあのバックヤードは客室スペースを占有して設置されているということくらいだろう。ただもう1つ、こちらの方は博物館と違ってカギは掛っておらず、自由に出入りすることができた。中では鏑木クンが黙々と調査を進めていた。

 

「・・・深見か。私に用か?」

「いや、ボクもここの調査をしようと思って。」

「・・・そうか。だが大したものは無さそうだ。」

「そうなの?」

「・・・ああ。ここに置かれているのはあのギャラリーに出し切れなかったと思われる美術品だ。」

 

その鏑木クンの言葉につられて周りを見てみると確かにドラマや映画なんかで見たことがあるような薄い木箱がズラッと並んでいる。他の異なる形をした木箱には工芸品や彫刻が入っているのだろう。

 

「・・・私はこういう美術品の扱いには明るくない。傷つけるわけにもいかないので調査も簡単なものしかできていないがな。」

「それは仕方ないんじゃない?実際、ここにあるのは鏑木クンの言ったとおりのものばかりだろうし。」

 

ここに重要な何かが眠っているとは考えにくい。黒幕の視点に立ってみても何か重要なものを置くならここにカギをかけないなんてことはあり得ない。リスクが大きすぎる。裏をかいて、という可能性もなきにしもあらずではあるけれどだとしたらせめて博物館の方もここと同じように開放してボク達に選択肢を押し付ける方がまだリスクヘッジができる。

 

「・・・何かあったか?厳しい顔をしているぞ。」

「あ、いや、考え事をしてたんだ。」

 

考え込んでしまった。これはボクの悪い癖だ。ここから先のことはもうちょっと自分の中で整理することにしよう。そして必要に応じてみんなに相談しよう。

 

「じゃあそろそろ戻ろっか。ちょうど良い時間でしょ。」

「・・・ああ、そうだな。」

 

ボクと鏑木クンは美術倉庫を後にしてレストランへと向かった。

 

 

 

昼食を摂りながらこれまでと同じように報告会を行った。ここまできたら何か出口の手掛かりがあるとは思っていない。だけど黒幕に繋がる手掛かりとおぼしきものも見つかったという訳ではなかった、というのは少ししんどい気分になった。だけどそんな気分を癒やすような施設が並んでいたのはボク達にとって僥倖とも言えるかも知れない。

その後は一度解散し、各々が自由に時間を過ごしている内に夜時間を迎えた。

 

 

キーン、コーン・・・、カーン、コーン・・・

 

「10時になりました。これより夜時間となります。ホテル本館内の当該施設はロックされますのでご注意ください。それではよい夢を。おやすみなさい。」

 

 

 

【モノトラ劇場】

 

「コーヒーってのは学生のお伴だよな。」

 

 

「レポートをやりながら、ゲームをやりながら飲んで深夜に寝落ちしないようにするわけだ。」

 

 

「だけどそんなコーヒーには他の効果もあるんだぜ。」

 

 

「滋養強壮、まあ言い換えればアレが元気になるわけだ。まあそう言う意味でも学生の夜のお伴と言えるわけだ。」

 

 

「だが1つだけ気を付けろよ?」

 

 

「コーヒーってのは飲み過ぎると口臭の原因になっちまうからな。」

 

 

「まあ要はニンニクと一緒だな。摂取しすぎで口が臭くなってモテなくなっちまたら元の木阿弥って奴だからな。」

 

                    ・  

                    ・

                    ・

 

【生存者】

超高校級の探偵          深見優(フカミユウ)

超高校級のレーサー        速瀬マハ(ハヤセマハ)

超高校級のバスケットボール選手  雷文竜(ライモンリュウ)

超高校級の外交官         金谷秀征(カナヤシュウセイ)

超高校級の医者          津田真理奈(ツダマリナ)

超高校級の歴史学者        伊達小十郎(ダテコジュウロウ)

超高校級の大工          鷹岡筋次(タカオカキンジ)

超高校級の???         鏑木麗(カブラギレイ)

超高校級のバイオリニスト     木田結弦(キダユヅル)

 

残り9人




第4章開幕!ということで皆様2024年、どうお過ごしでしょうか?私はこの小説意外にも大真面目に書かなければならないものがあって年始から大忙しな次第でございます。
ここで1つ告知をば。実は前話の投稿段階では既に始まっていたのですが、このたびpixivでも連載を行うことに致しました。今は前作を順に投稿しているところでございます。前作の投稿が終わり次第、こちらも順に投稿し、追いつき次第、同時投稿に切り替えていこうと思います。よろしければそちらも覗いてみてください!

さて、設定裏話、今回は第3章のタイトルについてお話ししていこうと思います。
3章のタイトルは「心と口と行いと才能で」です。この元ネタはバッハが作曲したとされる教会カンタータの「心と口と行いと生活で」です。この曲は要は自らの心と言葉と行いと生活でイエス・キリストへの信仰を証明しなさいという教えを表した曲です。つまりこの4つの要素がキリストへの信仰という1つのものへと集約されています。対するこのタイトルはこの4つの要素が人を殺す方向と人を助ける方向でバラバラに向かっている3章クロのちぐはぐさを表現したタイトルになっています。もし彼の4要素がが人を助ける方向に向かっていたならあんな悲劇は起こらなかったのでしょうか・・・。

という訳で今回はここまで!もしかしたら少し空いてしまうかも知れませんが、また次回お会いしましょう!


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CHAPTER4 (非)日常編2

キーン,コーン・・・ カーン、コーン・・・

 

「おはようございます。7時です。今日も1日元気に頑張りましょう。」

 

朝か・・・。昨日は調査の疲れもあってよく眠れたなぁ。

スッキリ目覚めたところでレストランに向かうことにしよう。

 

 

 

「おう、おめえらにちと話があるんだがいいか?」

 

朝食を食べている途中にそんなことを言いながら鷹岡クンが立ち上がる。

 

「・・・話とは何だ?」

「おめえらに協力して欲しいことがあるんでい。」

「内容によるな。」

「4階によ、くらやみハウスってあっただろ?あそこがあのまんまだと危険な気がするんでい。真っ暗だから何でもできちまうだろ?そこでオイラは考えた。改造しちまえばいいんじゃねえか、ってな。」

「改造?」

「おうよ。まあ正確にゃ改装だな。」

「で、何をするつもりでござるか?」

「オイラはあの部屋をただの真っ暗な部屋じゃなく、お化け屋敷にしようかと思ってる。」

「なーんか面白そうじゃん!」

「ただそれにゃ人手が足りねえ。アイデアもオイラ1人じゃ大したもんは出ねえ。そこで、だ。おめえらの中で何人か、手伝っちゃくれねえか?」

「面白そうでござるな!乗ったでござるよ。」

「じゃあオレも手伝うぜ!」

「・・・なら私も手伝おう。アイデアには自信は無いが色々なものの設営なら力になれるだろう。」

「おお、竜の字、伊達の字、麗の字!助かるぜ!じゃあ早速朝飯の片付けが終わったらはじめるぜ!」

「おうっ!」

 

とまあそんな感じで勢いのままくらやみハウスの改造計画がスタートした。けれどボク自身としては一抹の不安が拭いきれなかった。だって、前回の殺人は今回と同じように防犯カメラの設置を提案したクレイグクンの手によって、そのカメラの特性を利用して行われたのだから。

 

 

 

「おい、深見。少し良いか。」

 

朝食を食べ終わり、鷹岡クン達が早速くらやみハウスの改装に向かっていった後、一度部屋に戻ろうかと思ったところで金谷クンに呼び止められた。

 

「ここで話すのもなんだ。カフェに行くぞ。」

 

こうしてボクは金谷クンと一緒に4階へと向かっていった。

 

「さて、どう思う?」

「それは何について?」

「ついさっきの話だ。鷹岡の改装のな。」

「正直今の段階では何とも。ただ物事は動くとは思う。良くか悪くか、その方向性は分からないけれど。」

 

ボク達の会話に合わせてテーブルの上のドリンクの湯気が揺れる。

 

「深見もそう思うか。ただ俺は悪い方向に物事が動く気がしてならない。」

「やっぱり金谷クンもそう思う?」

「何だ、深見もか。」

「前回の事件もクレイグクン発案で設置されたカメラが使われていたからね。鷹岡クンがどうこうとは思わないけれど、もしモノトラが動いてきたときにあのお化け屋敷を悪用する人がいないとは限らない。」

「そうだな。加えて、鷹岡はくらやみのままでは危険だと言っていたが、正直お化け屋敷では五十歩百歩だろう。驚かす都合上仕掛けが見えるような明るさはあるだろうが薄暗いことには変わりは無い。」

 

金谷クンの頭にも前回の事件のことが過ぎっていたらしい。

 

「そこで深見、お前に相談がある。」

「相談?」

「俺と協働でいい。このカフェにいるようにしてくれないか?」

「それはここで鷹岡クン達の動向を探るってこと?」

「ああ。恐らくモノトラが仕掛けてくるのはこの2,3日のことだろう。その中でお化け屋敷の構造を熟知するのは残りの連中には難しい。となればもしお化け屋敷で犯行ができるのは鷹岡に協力者の雷文、伊達、鏑木の3人を加えた計4人だ。それにもしお化け屋敷以外の場所で事件が起きたとしてもあの3人の居場所が分かっていれば犯人は残りの3人の中の誰か、いや正確には死んだ1人を除いた2人の中の誰かの可能性が高い、ということになる。ここまで絞れていれば犯行のハードルが上がる。」

 

レトロな壁に設置された窓の外を眺めながら金谷クンは自分の考えを話す。既に警戒を開始しているみたいだ。そのマネをするようにボクも窓に目を向ける。

 

「わかった。協力するよ。」

「助かる。」

 

その後昼食の時間になるまで紅茶を飲みながら金谷クンと一緒に警戒を続けた。度々伊達クン達が色々なものを抱えて往復しているのは見えたけれど何か怪しい様子は特には見られなかった。

金谷クンとはこれまで余り一緒に過ごしたことはなかったけど、意外と気まずい感じにならなかったのは新たな発見だろう。

 

 

 

午後は少し廊下に出て不自然にならない程度にくらやみハウスの改装の様子を探ることにした。するとちょうどそこに鷹岡クンがやってきた。

 

「おお、優の字じゃねえか。どうしたい?」

「ああ、ちょっとどんな感じか気になっちゃって。」

「そういうことか。つってもまだ大雑把にコンセプトが決まって動き出しただけだからなあ。まだおもしれえモンは見せられねえな」

「そっか。」

 

その動き出した、っていうのが伊達クン達が色々なものを抱えて運んでいたのにあたるわけだ。

 

「今は何してるの?」

「ちっと休憩だ。さすがにぶっ通しは疲れちまうからな。こういうとこの管理も棟梁の仕事よ。」

 

そう言えば鷹岡クンは若くして大工の棟梁を務める天才だったな。こういうところも彼が天才たる所以だろう。

 

「じゃあ少しおしゃべりしない?鷹岡クンのこともっと知りたいな。」

「お?そうか?じゃあそうするか!」

「じゃあ質問。鷹岡クンはどうして大工になろうと思ったの?」

 

これはボクがいつもその人に最初に聞くこと。その人の大事にしているものの由来を知ること。それによってボクはその人の人柄の大枠を知る。

 

「うーん、そいつぁちっと難しい質問だなぁ。」

「悪いこと聞いちゃったかな?」

「あー、そういう訳じゃねえんだ。オイラは物心ついた時にゃもうトンカチを握ってた。幼稚園に上がる頃にゃノコギリ挽きができたし、小学校に上がる頃にゃ少々のモンは全部自分で作れるくらいだった。だからそもそもの話なんだが、オイラにゃ大工以外のものになるっつう考え自体なかったんだ。」

 

安全管理としてはどうなんだとも思うけど、彼の凄さはこれだけでとても伝わってくる。

 

「じゃあ、なんでそんなに自由にものづくりできる環境にあったの?」

「ああ、そいつなら簡単だ。オイラの親父が大工でよ。親父のお古の道具が家中そこらに転がってたんでい。だからおもちゃがわりにして遊んでたんだ。」

「お母さんもよく止めなかったね…。」

「お袋も大工だったからな。」

「お母さんも!!?」

「おうよ。お袋も腕のいい大工だ。」

 

あれ、でも確か鷹岡クンって彼自身が大工の棟梁じゃなかったっけ…?

 

「鷹岡クンは2人とは一緒に大工をしてたわけじゃないんだね?」

「ん?ああ、そうだな。勘当されてるからな。」

「勘当!?家を追い出されたってこと!?」

「おう。オイラが中坊の時によ、中学出たら大工になるって言ったら猛烈に反対されてよ、大喧嘩した。」

 

意外だ。鷹岡クンは普段から大らかで誰かとケンカをするなんてイメージがなかった。

 

「意外って顔だな。」

「よく分かったね。」

「それくらいオイラにも分からぁ。だがよ、オイラに付いてくるって言ってくれた奴らと一緒に働いてる内に親父とお袋の気持ちもだんだん分かるようになってきてよ。2人はただオイラのことが心配だっただけなんだよなぁって最近じゃ思ってる。」

「仲直りはしないの?」

「どうだかなぁ。オイラもお袋も親父も3人揃って頑固者だからよ、会ったらまた喧嘩しちまうかもなぁ。」

 

そんなことを言う鷹岡クンの顔にはどこか寂しさが顔を覗かせていた。それに彼はこのままじゃダメだとそう思っているはずだ。だから彼は今ここにいる。

 

「でもしたいんでしょ?仲直り。」

「はは、まあな。喧嘩した時よ、お袋にせめて高校は出ろって言われたんだ。腕は疑っちゃいねえがケガはするかもしれねえ。そんでもし大工として働けねえってなったら今日日中卒じゃ働き口がねえってよ。棟梁っつっても1人の人間だ。風邪だって引くし、ケガもする。運良くここまではそんなことなく来たけどよ、下のモンの中にゃそういうのがきっかけでやめてった奴もいた。そいつらを見ててさ。2人の言うことは正しかったって思うようになったのは。だから高校に入って勉強しながら大工を続けてる。」

 

希望ヶ峰学園の入学条件は2つ。1つは何らかの分野で超一流と言えるような成果を持っている事。そしてもう1つは“現役”高校生であること。そう、もし彼が中学を卒業してそのまま働いていただけなら希望ヶ峰学園のスカウトを受けることはなかったはずだ。だからこそ彼は以前の自分の意思を曲げて高校に入っていると推理した。そしてそこまでするからにはきっとご両親と仲直りしたいんじゃないかとも思った。

 

「オイラはいつかちゃんとここを出るぜ。」

 

決意の篭もったまなざしで意思の篭もった言葉が放たれる。

 

「オイラはここを出てきちんと親父達に謝る。それで赦してもらえるたぁ思わねえがけじめはつけなきゃならねえからな。」

 

遠くを見ながらニカッと笑うその横顔には彼の強い決意が表れていた。

 

 

 

カフェに戻ってくるとそこではちょうど金谷クンがコーヒーを飲むために豆を挽いているところだった。

 

「何か新しい情報はあったか?」

「ううん、特には。今のところお化け屋敷組には大きな問題は無さそうだよ。」

「ならいい。」

 

金谷クンがコーヒーを淹れている横でボクは気になっていた茶葉を取り出し、紅茶を淹れて金谷クンと一緒にカフェから監視を行うことにした。

2人でずっと無言でいるのも気まずいのでこれまで中々聞く機会のなかったことを金谷クンに聞いてみることにした。

 

「金谷クンって外交官、なんだよね?」

「正確には違うがな。」

「え、でもみんな“超高校級の外交官”って呼ぶでしょ?」

「それはあくまで超高校級としての肩書きに過ぎない。本来外交官というのは数々の試験を突破した先にある立場でそこにたどり着くのはほんの一握りの人間だけだ。」

「でもよくニュースに名前が出てくるじゃない。」

「それは先方のご指名だからだ。なまじネゴシエーターとしての信頼を得てしまったが故のな。俺からしたらめんどくさいと言ったらない。」

 

金谷クンは不機嫌そうに鼻を鳴らす。

そう言えば確か金谷クンが外交官としての才能を最初に発揮することになったのはご両親と一緒に海外でテロ組織に捕まってしまったときのことだと聞いたことがある。外交官の才能を見出されたことは金谷クンに取っては不本意なことだったのかもしれない。

 

「少し踏み入ったことを聞いてもいい?」

「何だ?」

「もしかして金谷クンはあまり“超高校級の外交官”って呼ばれるのは好きじゃない?」

「・・・好きか否かで言えば答えは否だな。知っての通りきっかけもきっかけだったからな。」

 

やっぱりそうか・・・。

 

「まあ理由はそれだけじゃない。俺が外交官としての才能を見出されたあの事件、それが理由でな、多くの武力行使が行われた事件の現場に行くことも多かった。その中で命を危ぶまれるような思いもしたことがある。正直、都合の良い駒として使われているんじゃないかと思ったことも一度や二度じゃない。」

 

そう過去のことを語る金谷クンの顔にはその当時の苦しさがこちらからでも感じ取れるくらい深い皺が刻まれいていた。

 

「俺はこんな才能なんて無ければよかったと何度も思った。こんな才能さえ無ければこんな危険な思いをすることはないのに、とな。だけど悪いことばかりでもない。」

「そうなの?」

 

ここまでの話を聞く限りそんな良いことなんてあるように思えないんだけど・・・。

 

「そもそもの話だ。最初のあの事件もこの才能が無ければ今生きていられなかったかも知れない。それに国のお偉いさんが食べるような飯はかなり美味い。しかもそれも国の奢りだ。俺の懐は痛くない。」

 

フッとこちらにどや顔を向けてくる。でも確かにニュースで流れるような料理は食べてみたいけど手は出ないと思ったことが何度もある。

 

「そんなこともあって俺はこの才能を疎ましいと思ったことはあっても今は俺の軸となるものの1つだと思っている。将来的には本当に外交官になっても良いとも思ってる。まあ国が逃がしてはくれんだろうがな。だがもしここをお互い生きて出られたときにはその店を紹介してやらんでもない。一見お断りの店もあるからな。俺の紹介が必要なこともあるだろう。」

「あはは、その時はお願いするよ。」

 

ボクにそんな高級店に行けるような収入というか甲斐性というかがあれば、だけど。

そうこうしているうちにみんなで夕食を食べる時間が近づき、ボク達はまた一度カフェを離れて下に降りることにした。

 

 

 

夕食が終わった後、4人はまたお化け屋敷の改造に戻っていった。4人にバレないようにもう一度ボクと金谷クンはカフェに向かった。だけど結局今日のところは何か起こるということはなく夜時間を迎えそうになったのでその場を後にすることにした。

その後ボク達は夜時間でも出入りが自由なゲームセンターに入り今日の情報をまとめることにした。

 

「今日のところはどう思う?」

「ボクは特に何か気になったことはないけど・・・。」

「深見もそう思うか。」

 

やっぱり金谷クンもそう思うのか。

 

「ただもし何か起こりうるとすれば今日運んでいた資材で何かを企んでいた場合かな。」

 

強いて言うのであれば、だけど。

 

「ボク達には現状中で何が作られているのかを知る手段はないからね。」

「だがそんな物騒なものを作っていれば他の3人に気取られるだろう。特に恐らく自分も作業を行いながらでも全体の進捗を把握できる鷹岡にはな。」

「もし鷹岡クンが何かを考えていたとしても何か関係ない物を作っていれば何かの弾みでバレてしまう可能性は高いよね。」

「だとすると実際にお化け屋敷の内装として使うものを凶器としても使えるようにしておく、とかか・・・?」

「確かにそれなら不自然な動きをすることなく殺人の準備をできそうかも・・・。」

「まあ少なくとも今日の時点でそんなものが作られているとは考えにくいが・・・。」

「確かに動機はまだ発表されていないからね。だけど油断は禁物だと思う。ここまで3つの事件が起こってみんなの心は疲弊しているしね。動機に関係なく殺人の準備が進んでいてもおかしくない段階までは来ていると思う。」

「確かにな・・・。だとすると現状のくらやみハウスの中を確認できればいいんだがな・・・。」

「だけどそれは難しいと思う。日中は鷹岡クンたちの中の誰かしらはいるだろうし、あそこはドアが付いているから夜時間は恐らくカギがかかってしまう。」

「調査すること自体が難しい、という訳か・・・。」

「うん。」

「ならばどうする?」

「と言っても何か特別対策を取れるわけではないからね。」

「どちらか手伝いに入るか?そうすれば自ずと内部事情を見られると思うが。」

「どうだろう。鷹岡クンに断られたら厳しくなるし、面白いものを見せたいって言う鷹岡クンの考えを聞く限りこれ以上中身を知っている人を増やしたがらないんじゃないかな。」

「ならばできる限り外から情報を探る手段を模索した方がいいか・・・。」

「ただ問題はずっとボク達がカフェに居座ってるとそろそろ怪しまれそうってことなんだよね・・・。」

「今日は2人揃って1日中カフェにいたからな。その危険性はあるな。だが人数を増やしても怪しまれるぞ?」

「そこは交代で2人いるようにすればいいんじゃないかな。決まったメンバーがずっといるっていう状況じゃなくなるだけで大きいよ。」

「留まっている顔ぶれを変えるというワケか。」

「そういうこと。」

「ならば明日の・・・」

 

 

 

キーン、コーン・・・ カーン、コーン・・・

 

「10時になりました。これより夜時間となります。ホテル本館内の当該施設はロックされますのでご注意ください。それではよい夢を。おやすみなさい。」

 

 

 

「・・・夜時間になってしまったな。」

「続きは明日にしよっか。どちらにしてもみんな部屋に戻ってるだろうし。」

「ああ、そうだな。」

 

ボク達は一度部屋に戻り、明日以降の監視体制は明日になってから考え直すことにした。

 

 

 

本当はこんなところで先延ばしせずにもっときちんと話し合っておくべきだったんだけど、ボクにも金谷クンにもどこか油断があったのかもしれない。なんだかんだそんなすぐには殺人は起こらないだろうっていう、露店のクレープの質の悪いクリームぐらい甘い油断が。

 

 

 

【モノトラ劇場】

 

「友達を表現する言葉って色々あるよな。」

 

 

「親友とか兄弟とか相棒とか色々な。」

 

 

「だけど結局のところそれは表向きの、表面上の言葉でしかねーんだぜ。」

 

 

「どれだけ言葉を重ねたってすれ違うときはすれ違うし、一言二言しか話していなくたって伝わるモンは伝わる。」

 

 

「どれだけ仲良くたって殺すときは殺すし、どれだけ恨んでいようと殺さねーときは殺さねーんだぜ。」

 

 

「ま、要するに。」

 

 

「妙な我慢なんかせず自分の心に従って生きろって話だな。」

 

                    ・

                    ・

                    ・

 

【生存者】

超高校級の探偵          深見優(フカミユウ)

超高校級のレーサー        速瀬マハ(ハヤセマハ)

超高校級のバスケットボール選手  雷文竜(ライモンリュウ)

超高校級の外交官         金谷秀征(カナヤシュウセイ)

超高校級の医者          津田真理奈(ツダマリナ)

超高校級の歴史学者        伊達小十郎(ダテコジュウロウ)

超高校級の大工          鷹岡筋次(タカオカキンジ)

超高校級の???         鏑木麗(カブラギレイ)

超高校級のバイオリニスト     木田結弦(キダユヅル)

 

残り9人




お久しぶりです!リアルで大真面目に書かなきゃならないものがあり、そちらを優先している内に間が空いてしまいました・・・。ここからはそれなりのペースでこちらの投稿ができると思いますので、楽しみに待っていただければ幸いです!

それでは今回の設定裏話!今回の設定裏話は第3章のおしおきの由来についてです。
第3章のおしおきのタイトルは「名前のない英雄」です。タイトルの由来はEGOISTさんの楽曲、「名前のない怪物」です。色々なサイバー犯罪に対応するホワイトハッカーはその姿が表に出ることはそうそうありません。ニュースでサイバーな問題が解決したとしてもそれが誰の手によって行われたものなのか知っている人はそう多くはないでしょう。そんな状況を表したタイトルになっています。
おしおきの内容は非常にシンプルで、どれだけサイバー犯罪に対応できる優秀なハッカーであっても直接的に武力で働きかけられたら何もできなくないというクレイグくんの存在意義を完全否定するようなものです。そしてその結果誰の死体なのか分からなくなり、タイトルかかった状況になる、というわけです。

コロシアイも後半戦に突入しました。ここからどんなことが起こっていくのか、どうかお楽しみに!それではまた次回お会いしましょう!!


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