デュエル・マスターズACE (リュウ・セイ)
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ACE1:新たなる伝説、始まる。

新作です。
すごく久しぶりの投稿なので、暖かい目で観てください。
それでは、どうぞ。


 

 

 

 ある日の朝。

 校門前に一人の男子高校生が立っていた。

 

「…………」

 

 校門前に立つと、男子高校生は校門前にある看板、「ACE学園」を見る。

 

「ここが『ACE学園』……」

 

 まるで、確信したかのように呟き、男子高校生はゆっくりと、門の中に入る。

 

「ここから新しく始まるんだ……僕の学園生活が……」

 

 入り際に、男子高校生はそう小さく呟いた。

 

 

 

 一方、ACE学園の中では大変なことが起きていた。

 

「オラァッ!《オニカマス》でダイレクトアタックっ!」

「う、うわぁぁぁぁぁっ!」

 

 不良っぽい男子高校生、『早峰(はやみね)(そう)』は眼鏡を掛けた男子高校生、『眼鏡(めがね)(かける)』とデュエマをしていた。

 結果は想の《異端流しオニカマス》で、ダイレクトアタックを決めた、想である。

 

「はっ!弱え、弱すぎる!そんな実力で、大会に出ようなんだ、10年早えぜ、一年!」

「っ……!」

 

 そう言って、想は翔を見下し、その光景を見かけた生徒たちは唖然とする。

 

「アイツ、またやってるよ……」

「あの一年生、可哀想……」

「仕方がないよ、大会に出ようと息巻いて、たまたま想に聞かれたんだ……運が悪い……」

 

 そうコソコソと、生徒たちの一部は小さく呟いた。

 そもそも、二人がデュエマをする理由だが、先程の生徒達が言ったように、翔が大会に出ようと、息巻いた矢先に、たまたま通りかかった想に聞かれて、俺がお前の実力を試してやる、と、強引にデュエマを始めたのだ。

 

「アンタ、また弱い者いじめをしているの!」

「ッ……!」

 

 しかし、一人の金髪の女子高生、『斎条(さいじょう)咲恋(されん)』が駆けつけ、翔の側に立ち、想にそう言った。

 それを見た想はバツが悪そうに、咲恋を睨んだ。

 

「何だ?生徒会長か?オメエ、数ヶ月前に、オレがボコしたの、もう忘れたのか?あぁん?」

「っ……!」

 

 想は咲恋の顔に近づき、嫌味たらしく、そう言い、咲恋は歯を食い縛った。

 実際の話、咲恋は数ヶ月前に、想に負けている。

 しかし、そんなことは関係なく、咲恋は生徒会長の使命として、想に講義する。

 

「……忘れてないわ。けど、だからこそ、私は生徒会長として、アンタを止めるっ!これ以上、アンタの好きにはさせないっ!」

「はっ!良いぜ!もっと暴れたかったし、何より、そこにいる一年に、現実ってやつを教えてやるぜ!」

「だ、ダメですよ、生徒会長!」

 

 今から始まる戦いに、翔は震えながらも、咲恋に声をかける。

 

「大丈夫よ、一年生……これでも私、アイツに負けてから、それなりに鍛えてきたから……」

「いや、良いんです、生徒会長……俺が調子に乗っていただけなんで、だから……」

「…………」

 

 翔の必至な説得に咲恋は黙り込む。

 しかし、一年である翔に間を刺されたのか、想はイライラしながら、咲恋に声をかける。

 

「おいおい、やるなら、さっさと、おっ始めようぜ、生徒会長様よぉ!」

「っ!良いわよ、相手になって────」

 

 

 

「────そのデュエマ、少し待って貰えるかな?」

 

 

 

「「「!?」」」

 

 突然、人混みの中から一人の少年の声が響き、翔、咲恋、想、3人を始め、全校生徒がその声に視線を向ける。

 

 見た目はどこにでもいる、ごくごく普通の男子高校生であり、ACE学園の制服を着ている辺り、この学園の生徒であることは間違いない。

 少し特徴があるとすれば、後ろの髪がやや長いこと、それぐらいだ。

 

(誰?あの子?この学園の生徒みたいだけど、あんな子、見たことない……)

 

 しかし、生徒会長である咲恋は知らない。生徒会の仕事で、ある程度、この学園の生徒を把握しているが、咲恋にとっては全く見られない生徒だ。

 そんなことを考えてる中、気がつけば、男子生徒は咲恋達の下まで歩いていた。

 

「……あなた、名前は?」

「……はぁ、久しぶりに会って、それはないよ、咲恋ちゃん」

「っ!?アンタ、もしかして、(しょう)!?」

 

 突然現れた男子生徒に咲恋が名前を聞くと、男子生徒はため息まじりに、彼女にそう言った。

 その声を聞いて、咲恋はこの男子生徒が誰なのか、思い出し、大きな声で、その名を口にした。

 それを聞いて、男子生徒、もとい、勝は満遍の笑みを浮かべる。

 

「正解。卒業以来だね、咲恋ちゃん」

「え?なんで?どう言うこと?私、聞いてない!」

「その反応から察するに、秋乃(あきの)さんから何も聞いてないみたいだね。全く、あの人は……」

「っ!?テメェ、秋乃の知り合いか!?」

 

 秋乃、と言う名前を聞いて、先程まで黙っていた想が驚き、それを聞いた周りの生徒達が騒めき始めた。

 

「秋乃って、あの『(ほむら)秋乃』か?」

「焔財閥の一人娘にして、この学園の理議長を勤めてる?あの秋乃?」

「それ以外に誰がいるんだよ?」

「だとしたら、意外だな……」

「だな、あんなヤツが秋乃の知り合いなんて……羨ましいぜ!」

 

(やっぱり、秋乃さん、この学園の有名人なんだ……最後の方、不純な声が聞こえたけど、聞かなかったことにしよう……)

 

 生徒達が騒めき出してる中、勝は脳裏に、焔秋乃が有名人であることを実感し、そのまま、咲恋に声をかける。

 

「それで咲恋ちゃん、さっきの話だけど……」

「はぁ、わかってるわよ。どうせ、止めても無駄なんだし……アンタに譲るわ」

「ありがとう、咲恋ちゃん」

「その代わり、絶対に勝ちなさいよ!」

「ああ、任せて!」

 

 そう軽く会話をし、勝は咲恋に代わって、想と向き合う。

 

「あの、大丈夫なんですか?あの人に任せて?」

「ん?あぁ、大丈夫よ。アイツがやる以上、負けることは、まずないわ。それより君はアイツのデュエマを見た方が良いわ」

「え?それはどう言う意味ですか?」

「アイツのデュエマは……普通じゃない。普通じゃないけど、多分、この学園に良い刺激を与えるわ……」

「…………」

 

 突然、現れた勝に想を倒せるのか、不安を感じた翔は咲恋に問い掛けるも、何故か、咲恋は自信満々に勝が負けることはないと言い切り、それよりも、勝のデュエマを見た方が良いと、オススメするかのように言う。

 また、彼のデュエマは普通じゃないと、翔にそう告げる。

 その言葉の意味がわからない。わからないが、翔は一先ず、勝と想の二人のデュエマを見届けることに決めた。

 

 

 

「普通じゃない……か……」

「あ?何か言ったか?」

「いえ、何も……それで先行は……」

「テメエからだ。先輩だからな、後輩に優しくするのは当たり前だろ?」

 

 お互いにデッキをシャッフルし、シールドと手札を5枚ずつ準備した後、想から勝に先行を渡された。

 

「まぁ……勝つのはオレだがな!」

「……」

 

 一言。さっさ一つの一言で、突然の圧に、勝は黙り込む。

 それと同時に、周囲にいる生徒達も黙り込み、緊張の嵐が切って下された。

 

「それじゃ……いくぜ!」

「「デュエマ・スタートッ!」」

 

「マナをチャージ。ターンエンドです」

「あ?《ボルシャック・NEX》?しかも、ご丁寧に、ツインパクトの方をマナに置くのか?」

「…………」

 

 マナに置かれたカードに想は悪態をつく。

 勝がマナに置いたのはツインパクトカードの《ボルシャック・NEX/スーパー・スパーク》だ。

 ツインパクトカードはクリーチャーと呪文が一つのカードタイプだ。

 その中でも、勝が置いたカードはメインデッキの鍵となる、《ボルシャック・NEX》であり、その下の呪文面、《スーパー・スパーク》は守りに特化したカードだ。

 つまり、想が言いたいのは、勝のデッキが《ボルシャック・NEX》を軸にしたデッキであり、その防御札であるカードをマナに置いた。

 デュエマは同じカードを4枚まで入れられる。つまり、その内の一枚を、勝はマナに置いたのだ。

 

「……まぁ、良い、勝つのはオレだ。ドロー、《クロック》をマナに置いて、その1マナで、城カード、《海底鬼面城》を要塞化!」

「《鬼面城》……殿堂カードを初手に引くとは、流石ですね、先輩……」

 

 想がシールドの上に置いたカードに、勝は身構える。

 無理もない。デッキに1枚しか入れられない殿堂カードであり、置かれたシールドから離れない城カード、《海底鬼面城》を、想は1ターン目にシールドに置いたのだ。

 そして、その効果は想のターンのはじめに、勝と想はお互いに山札から1枚ドローでき、特定の種族が想の場に入れば、想はさらに、追加で1枚ドローできるのだ。

 つまり、次のターンから、想の手札が2枚以上、増えるのだ。

 

「はっ!言っているのも、今のうちだ!オレはこれでターンエンドだ!」

「僕のターン、ドロー。マナをチャージして、2マナで、《アニー・ルピア》を召喚!ターンエンド!」

 

 想が手札に増えるに対して、勝はドラゴンをサポートする種族、ファイアー・バードの《アニー・ルピア》を場に出す。

 

「オレのターン。まず、ターンのはじめに《鬼面城》の効果で1枚ドロー。テメエはどうする?」

「当然、引きます……」

 

 想のターンに渡ると同時に、想の《海底鬼面城》の効果で、想と勝、両者、1枚ずつ、カードを引き、想はそのまま通常のドローを行い、無言でマナにカードを置く。

 

「2マナで、《伝説演者 カメヲロォル》を召喚!コイツも《鬼面城》と同じ効果で、オレたちの手札を増やす!つまり、オレは次のターン、手札が3枚増える!ターンエンド!」

「ま、不味い!このままじゃ、あの人も俺と同じパターンで負けてしまう!」

 

《カメヲロォル》を見た瞬間、翔は勝が自分と同じパターンで負けることに危機感を覚える。

 

「それがどうかしましたか?」

「何?」

 

 しかし、勝は動揺する様子がない。

 それどころか、ほんの少し、笑っていた。

 

「デュエマの基本は5枚のシールドをすべてブレイクし、相手にダイレクトアタックを決めて、勝利すること。ただ手札を増やすだけじゃ、勝てないよ……」

「……何が言いたい?」

 

 勝の言葉の意味に想は問いかける。

 問いかけられた勝は笑ったまま、当たり前のことを言う。

 

「これぐらい、ピンチでもなんでもない!僕のターン、ドロー!」

 

 勢いよく、カードを引き、引いたカードを一瞬見て、手札に加える。そのまま別のカードをマナに置き、3枚のマナをタップする。

 

「これが僕のACE(切り札)、《ボルシャック・フォース・ドラゴン》を召喚ッ!」

 

 

 




次回、決着です。

感想など、お待ちしています。


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ACE2:覇道を示すは、勝利の龍装者。

2話目です。
勢いが落ちないうちに投稿です。
それではどうぞ。


 

 

 

「タマシード・クリーチャー!?しかも、3マナ、パワー9000のW(ダブル)・ブレイカーだとぉッ……!」

 

 勝が出したタマシード・クリーチャー、《ボルシャック・フォース・ドラゴン》に想は驚く。

 それと同時に、周囲の生徒達も騒めき始めた。

 

「マジかよ、あいつ!」

「まだ先行3ターン目なのに、もう切り札を出してきた!?」

「スゲェな、アイツ!」

「この勝負、わからなくなってきたな!」

「ああ!ついに、想も見納めだな!」

「ガンバレー!転校生!」

「想をぶっ飛ばせー!」

 

 騒めく生徒達。しかし、中には勝を応援する者もいた。

 それは想に負けた翔も同じ気持ちだった。

 

「これはもう、あの人の勝ちですね!ですよね?生徒会長?」

「……」

 

 ただ一人、咲恋だけは違った。

 その表情はとても険しかった。

 理由はただ一つ。勝が召喚した《ボルシャック・フォース・ドラゴン》を出すタイミングだった。

 

(まだ出すのは速いわよ……しかも、パーツが一枚足りてないし、どうするつもりなの?)

 

 そう咲恋が思う中、それを知らない勝は《ボルシャック・フォース・ドラゴン》の効果を発動する。

 

「《ボルシャック・フォース・ドラゴン》の効果!このタマシードが出た時、パワー4000以下のクリーチャーを1体、破壊できる!《カメヲロォル》を破壊!」

「クソ、《カメヲロォル》が!」

「さらに!《アニー・ルピア》で、《鬼面城》が要塞化されてるシールドを攻撃!」

「ッ、トリガーはない……!」

 

 勝の怒涛の攻撃に、想はなすすべもなく、受ける。

 挙句、先程、《アニー・ルピア》でブレイクされたシールドはS(シールド)・トリガーの《終末の時計(ラグナロク) ザ・クロック》だった。にも関わらず、想は《カメヲロォル》と《鬼面城》の両方を失った反動で、まともな判断ができなかった。

 

「これで、ターンエンドっ!」

「調子に乗ってんじゃねぇッ!」

「っ!?」

 

 突然、叫び出す想。その叫び声に流石の勝も驚き、身構える。

 

「勝つのはオレだ!そして、負けるのは……お前だ、転校生!オレのターン、ドロー!マナチャージ!」

「っ、火文明のカード!?まさか!?」

「その、まさかだ!」

 

 想のマナゾーンに新たに置かれた火文明のカードに驚き、次に想が何をするのか、勝は察した。

 それを見た想は叫び、一枚のカードを宣言する。

 

「まずは、B(バッド)A(アクション)D(ダイナマイト)S(スペル)2を発動ッ!この呪文のコストを2少なくするかわりに、手札を1枚捨てる!3マナで呪文、《“必駆(ビッグ)蛮触礼亞(バンフレア)》ッ!」

「っ、その呪文は!?」

 

 想が見せた呪文に勝は驚く。

 無理もない。《“必駆” 蛮触礼亞》は手札のビートジョッキーを1体、ただで出せる呪文なのだ。代わりに、ターンの終わりに破壊されるが、ビートジョッキーの殆どがスピードアタッカーを持っており、出したターンにすぐに攻撃できるのだ。

 つまり、想は今からスピードアタッカーを持ったビートジョッキーを出し、このターンで一気に、勝を追い詰めるのだ。

 

「出番だ、《“麗片禅(レペゼン)戦車(せんしゃ) バッドラマー》ッ!《“必駆” 蛮触礼亞》の効果で、オレの《バッドラマー》と、テメエの《アニー・ルピア》を強制バトル!破壊だ!」

「《アニー・ルピア》が……!」

 

 無惨に破壊される《アニー・ルピア》。

 対して、想は手を緩めず、《バッドラマー》の効果を発動する。

 

「さらに、バトルに勝利した《バッドラマー》の効果を発動!コイツがバトルに勝った時、カードを1枚引き、B(バッド)A(アクション)D(ダイナマイト)を持つ、ビートジョッキーを1体、手札から場に出せる!ただし、ターンの終わりに、そいつは破壊される!だが、そんなことは関係ねぇ!」

「っ、まさか!?」

 

 勝は想が《バッドラマー》から出そうとしているビートジョッキーが何なのか、予想した。

 そして、その予想は、見事に的中した。

 

「覇道を示せ、勝利の龍装者!《勝利龍装(しょうりりゅうそう) クラッシュ“覇道(ヘッド)”》ッ!」

 

「あ、アレは……!」

「!?ちょっと、どうしたの、君?」

 

 想が場に出した《クラッシュ“覇道”》に、翔は震えた声を出し、突然、地面に膝をつき、それを見た咲恋は翔に声を掛ける。

 

「まずい……このままじゃ、あの人は俺と同じ目に遭います。こうなったら、もう、誰も、早峰先輩を止めることはできません……」

「……そんなことはないわ」

「え?」

「アイツは絶対に勝つ。何故なら、ボルシャックを使ったアイツが負けたところを、私は一度も見てない……だから……」

 

(だから、私はアンタを最後まで信じているわよ、勝……)

 

 戦意を失ったかのような目になる翔に対して、咲恋は最後まで勝が勝つことを信じ、真っ直ぐ、勝と想の二人のデュエマを見届ける。

 

「コイツで、テメエは地獄行きだぁ!スピードアタッカーの《クラッシュ“覇道”》でW・ブレイクッ!」

「……トリガーはない」

「続いて、スピードアタッカーの《バッドラマー》で攻撃!この時、自分のクリーチャーの2回目の攻撃時に、手札の《龍装者 バルチュリス》を見せて、効果を発動!」

「ッ……!」

 

 突然、想は《バッドラマー》の攻撃時に、手札にある《バルチュリス》を見せる。

 その効果は2回目のクリーチャーのアタック後、自身を場に出せる。しかも、《バルチュリス》はスピードアタッカーを持っている。

 つまり、《バッドラマー》のアタックの後、想はスピードアタッカーの《バルチュリス》で、勝のシールドを0枚にするのだ。

 

「トリガーは……ないです」

「《バッドラマー》のアタック後、《バルチュリス》を場に出す!これで、テメエのシールドをゼロにしてやるぜ!」

「……」

 

 勝利を確信した想は、勢いのまま、勝の最後のシールドをブレイクしようと、《バルチュリス》に手を置く。しかし、そこで想は手を止めて、黙り込んでいる勝を見る。

 

(戦意喪失か?いや、それにしては静かすぎるな……待てよ。まさか、コイツ……!?)

 

 慌てる様子もない。絶望する様子もなければ、その素振りもない。見えるのは、この場を静かに、冷静に、眺めている。

 

(さっきの攻撃で、必要なパーツは揃った。後は……この状況をひっくり返すカードを引ければ、まだ勝機はある……!)

 

 否、眺めているのではない。分析しているのだ。

 この状況を逆転できる術を、ひたすらに考えているのだ。

 

「オイ、先に言っておくぞ、転校生。タップされた《クラッシュ“覇道”》が破壊された時、俺は追加ターンを得る。つまり、どうあがいても、テメエに勝ち目はねぇ、諦めろ!」

 

 それに気づいた想はイライラを感じずにはいられず、勝にそう強く言い放す。

 

「……だとしても、諦める理由にはなりませんよ」

「何?」

「デュエマはその時、その瞬間、その一瞬で、あらやる状況をひっくり返します。どんなに絶望的な盤面であろうと、諦めなければ、必ず、道は開けます……ループデッキ以外は、ですがね……」

 

 当たり前だ。そんな当たり前のことを、勝は平然と言ってのける。

 

「……諦めなければ……道は……開ける……」

 

 いつも間にか、そう静かに、翔は言い、それを聞いた咲恋は呆れ半分に溜め息を漏らした。

 

「はぁ、アイツはいつもそう。ああいう恥ずかしいことをサラッと言ってしまうんだから……」

「……でも、なんとなく、わかる気がします。生徒会長が言った言葉の意味も」

「え……?」

 

 いつも間にか、立ち上がった翔に咲恋は驚き、どういうことか、問いかけようとする前に、想の大きな叫び声で、遮られた。

 

「だったら、この状況をひっくり返してみろよ!《バルチュリス》で、最後のシールドをブレイクッ!」

「シールド・トリガー、発動っ!」

「ハッ!今更、《スーパー・スパーク》が出たところで、何の意味もねぇ!さっさと、諦め────」

「反撃だ、《ボルシャック・テイル・ドラゴン》っ!《バルチュリス》と強制バトルっ!」

「ハァッ!?」

 

 突如、勝のシールドから現れたクリーチャー、《ボルシャック・テイル・ドラゴン》に面喰らい、想は驚く。

 

「なんでそんなものが入っていやがる!?普通は入らないだろ!?」

「僕、普通じゃないんで、こういうの、入れる人なので、諦めてください、先輩」

「答えになってない!」

 

 正に、その通りである。

 

「クソ、ターンエンド!ターンの終わりに《バッドラマー》と《クラッシュ“覇道”》を破壊!タップ状態で破壊された《クラッシュ“覇道”》の効果で、俺は追加ターンを得る!」

 

 そう言って、カードを引き、マナを増やして、2枚のマナをタップした。

 

「《熱湯グレンニャー》を召喚!効果で一枚ドロー!残りの2マナで《異端流しオニカマス》を召喚!ターンエンド!まだだ!次のターンが来れば、オレの勝ちは確定する!」

「……先輩、それ、負けフラグです。そして、それを今から回収します。ドロー。マナをチャージせず、3マナで《単騎連射(ショートショット) マグナム》を召喚します」

「ッ!?《単騎マグナム》だとぉッ!?」

 

 勝が出したクリーチャー、《単騎連射 マグナム》に想は絶叫した。

 何故なら、《単騎マグナム》は想が出した《鬼面城》と同じ、デッキに1枚しか入れられない、殿堂カードだからだ。

 その効果は勝のターン中、想のクリーチャーが場に出るかわりに、破壊されるのだ。この《単騎マグナム》の恐ろしいところは、場に出たクリーチャーの効果が発動されないのだ。

 つまり、勝のターン中、想はシールド・トリガーを持ったクリーチャーを場に出しても、《単騎マグナム》で破壊され、《クロック》のような、場に出た時に発動する効果が発動されないのだ。

 

「さらに、自分の場にドラゴンがいるので、G(グラビティ)・0で、《レクタ・アイニー》を召喚!これで僕の場に、火のクリーチャーか、火のタマシードが合計4枚以上なので、《ボルシャック・フォース・ドラゴン》はクリーチャーになる!《ボルシャック・フォース・ドラゴン》で攻撃!攻撃時に、自分の他のクリーチャーに『スピードアタッカー』と『パワーアタッカー+6000』と『パワード・ブレイカー』を与える!」

「な、なんだとぉッ!?」

 

 これにより、先程出した《単騎マグナム》と《レクタ・アイニー》の2体は攻撃に参加できる。

 因みに、パワード・ブレイカーを得たクリーチャーはパワーが6000毎に、ブレイク数を一つ追加する。そして、パワーアタッカーは攻撃時に強制的に発動する能力。つまり、勝のクリーチャーは今、殆どがW・ブレイカー以上を持っているのだ。

 

「《ボルシャック・フォース・ドラゴン》で、W・ブレイクっ!」

「クソッ!《単騎マグナム》がいなければ、《クロック》が出せたのに……!」

 

 ブレイクされたシールドの中に3枚目の《クロック》があったが、《単騎マグナム》の存在により、悪態をつけるしかない、想。

 

「さらに、《単騎マグナム》で、W・ブレイクッ!」

「ッ、シールド・トリガー!呪文、《スパイラル・ゲート》!効果で、《レクタ・アイニー》をバウンスだ!」

 

 最後の最後で、トリガーで返す、想。しかし、勝の場にはまだ、攻撃可能な《ボルシャック・テイル・ドラゴン》がいる。

 

「これで、最後です!《ボルシャック・テイル・ドラゴン》でダイレクトアタックっ!」

 

 勝者、勝。見事、翔の仇を討ち、想に勝ったのだ。

 

 

 




次回は後日談。その後は未定です。


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ACE3:勝利の後は色々と大変です。

今回は短いので、気楽に読んでください。


 

 

 

「クソッ……!このオレが負けるとはッ……!」

 

「なんとか、勝てた……!」

 

 激しいデュエマの中、見事、想に勝利した勝。

 しかし、その反動で、両者、息が絶え絶えである。

 

「勝!」

「先輩!」

「っ……!」

 

 勝のもとに駆けつける咲恋と翔。

 二人は想に一度負けているため、勝が想に勝ったことに、とても嬉しそうである。

 

「やるじゃん、勝!」

「すごいです、先輩!まさか、早峰先輩に勝つなんて……!」

「たまたま運が良かっただけだよ」

 

 喜ぶ二人。その表情に、勝も不意に微笑んでしまった。

 

「オイ、転校生……」

「!?」

 

 三人で喜びに浸っている中、ふっと、想は勝に声をかけながら、勝に歩み寄っていた。

 

「なんですか?先輩?」

「……名前をまだ、聞いてなかったな」

「え?」

 

 意外な発言に、勝は驚き、それに釣られて咲恋と翔も、驚く。

 

「良いから、さっさと名前を教えやがれ!」

「ちょっとー、なんで喧嘩腰なんですか!?」

 

 今度は怒鳴り出す想。それに困惑し、勝は慌てて、想に名前を教える。

 

「……えっと、火野(ひの)勝です」

「……そうか。火野か。オレは早峰想。次はオレが勝つ!それだけは忘れるんじゃねぇぞ!」

 

 そう言って、想はフラフラな体を引きずって、その場を去った。

 

「また、デュエマがしたいな、早峰先輩と……」

「何言ってるのよ。この学園にいる限り、いつでもデュエマができるでしょ?」

「俺はもう関わりたくないですね……」

「まぁ、あの先輩が卒業するまでの話だけど……」

 

 そう言って、咲恋は勝に励ましの言葉をかける。

 

「それよりも、勝。ここからが大変かもよ?」

「え?それはどういう────」

 

「おーい、転校生!」

 

 先程、勝と想のデュエマを見ていた生徒達が一斉に勝の元に駆け出し、気づけば、皆、デッキを手に持っていた。

 

「今度は俺とデュエマやろうぜ!」

「いや、先にデュエマするのはおれだッ!」

「それよりも、君と秋乃さんの関係を知りたいな!」

「ちょっとー、男子ぃー!遠慮ってものはないわけー?まぁ、それはそれとして、次は私とデュエマしましょ!」

「わ、私も!」

「僕も!

 

 そう、沢山の生徒が勝に詰め寄り、それを見た勝は先程、咲恋が言った言葉の意味を理解し、静かに咲恋の方に視線を向ける。

 

「私、助けるつもりはないからね」

「ですよねー。まぁ、仕方がない。ここは……戦略的、撤退だっ!逃げろー!」

 

 そう言って、勝は全速力で校内を走り出した。

 

「あ、逃げた!」

「待てー、転校生!」

「是非、秋乃との関係を!」

「それはもういいわ!」

 

 生徒達もまた、想に勝った勝にデュエマをするため、全速力で勝に追いかけるのだった。

 

「全く、これからが忙しくなるわね……」

「あの、助けなくて、大丈夫なんですか?」

「大丈夫よ。アイツ、見た目に反して、結構、体力はあるし、足もそこそこ早いんだから、心配しなくても大丈夫わよ」

 

 そう言って、咲恋は生徒会室に戻る為、この場を後にした。

 

 因みに、余談だが、授業が始まるチャイムが鳴るまで、生徒達と勝の鬼ごっこは続き、勝を追いかけた生徒達は教師達に説教されたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 場所は変わり、理事長室。

 想に勝った勝を追いかける生徒達を陰ながら、微笑む二人の女子生徒がいた。

 一人はこの学園の理事長にして、焔財閥の一人娘、『焔秋乃』。

 もう一人は彼女のメイドであり、この学園の生徒である、『暁月(あかつき)エリカ』。

 

「どうやら、こちらが動くまでもありませんみたいね。これで、想も少しは大人しくなるでしょう……」

「どうでしょうか?あの手の(はい)は懲りずに、またやりますよ。大人しいうちに、退去した方がよろしいかと?」

「そう心配することはありませんよ、エリカ」

「しかし、お嬢様!」

「しかしもありませんわ!これは理事長として、決定事項ですわ!」

「っ、わかりました。お嬢様様がそう判断されるなら、私からは何も言いません……」

 

 珍しく、声を荒げるエリカに秋乃はつい怒鳴ってしまい、渋々な表情でエリカは返事を返す。

 それを見た秋乃はため息を漏らし、椅子に座った。

 

「……まぁ、念のため、予防線を貼りましょう。ちょうど、手の空いている人材が一人いますし、彼女に監視の命を与えましょう」

「あのお花畑の子をですか?確かに、彼女も、この学園に通っていますが、学年が二つも下ですよ?彼女に務まりますか?」

「務まるための対価はいくらでもあります。それを考えるのも、財閥の娘としての見せ所ですのよ?」

「成る程。それでしたら、私からも二言はありません。そうなると、次なる問題は……」

「……これですわね」

 

 そう言って、机の上に置かれている『経費削減の為、ACE・デュエマ部を廃部にする』と、書かれた一枚の紙を眺めながら、秋乃は理事長として、次なる問題の解決策を考えるのであった。

 

 

 




プロローグ的なお話はこれにて、終了。
次回からは部活動です。部活動と言っても、入部前に、問題解決が先ですが…。


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ACE4:果たし状と廃部の危機。

今回も短めです。


 

 

 

「?果たし状?」

 

 火野勝がACE学園に転校し、早峰想とのデュエマに勝利してから1週間が経過したある日の朝。勝の下駄箱の中に、『果たし状』と書かれた紙が置かれていた。

 

「……こう言うのって、現実(リアル)であるんだ。まぁ、内容は(おおむ)ね、察しはするけど」

 

 そう言って、勝は『果たし状』と書かれた紙を広げた。紙の幅はそこまで広くはなかったので、周りの生徒達の邪魔にはならず、内容を確認できた。

 果たし状の内容は『今日の放課後、デュエマしましょう!屋上で待っています!』、と、書かれていた。

 内容を確認した勝は「やっぱり」、と、小さく呟き、紙を(たた)んで、制服のズボンのポケットの中に入れて教室に向かった。

 

 

 

 

 

「何でうちの部が廃部になるのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっー!」

 

 場所は変わり、理事長室。

 そこでは、生徒会長である斎条咲恋が朝から怒涛の叫び声を上げていた。

 

「しかも、理由が経費削減のためって、ふざけるんじゃないわよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっー!」

 

 本日二度目の叫び声を上げる咲恋。そして今は、この学園の理事長である、焔秋乃に抗議しているのだ。

 

「仕方がありませんわ。お父様が決めたことですので……」

「こればかりは、諦めるのが妥当かと思いますよ、咲恋様」

 

 秋乃と秋乃のメイドであり、この学園の生徒の一人、暁月エリカの二人は感情任せに抗議する咲恋を(なだ)める。

 しかし、それが返って、咲恋の怒りをヒートアップさせる。

 

「納得できるわけないでしょう!どうするのよ、これぇっ!」

「お、落ち着いてください、咲恋様!」

「落ち着いていられないわよっ!」

 

 悲痛な叫びを上げる咲恋。

 流石に叫びすぎて、三度目は控えめだが、それでも、自分の部が廃部になる、という悲しい想いは変わらない。

 咲恋が落ち着くまで、数分かかったが、ようやく落ち着いたところ、秋乃は問題解決の糸口を彼女に提示する。

 

「お父様の話によりますと、ゴールデンウィークの前に部員を5人集めれば、廃部を取り消すと言っていますの……」

「5人集めろって、もう1週間しかないじゃない!?しかも、今年の新入生の殆どは部活動を決めてるし、空いてる人材、結構限られてくるわよ!?」

「それに関しては問題ありませんわ。エリカ」

「はい、お嬢様」

 

 パンパン、と、両手を軽く叩くエリカ。すると、理事長室の入り口が開き、咲恋は振り向いた。

 そこには口をガムテープで貼られ、体を縄に縛られた、三年の問題児、早峰想と想を無理矢理連れてきた、体格が小柄で、青紫髪のツインテールの女子生徒の姿があった。

 

「……秋乃さん、これは?」

「今日から『ACE・デュエマ部』に入部する、三年の早峰想さんです。想さん、咲恋さんと仲良くしてくださいね」

「うぅーん、うぅー!(誰が入部すると言ったー!)」

 

 秋乃の言葉に想は訴えるも、秋乃は聞く耳を持たず、満面(まんめん)の笑顔で、咲恋に向ける。

 

「これからどうなるの、うちの部活……」

「なるようになるしかないですね……」

「ですね!」

 

 秋乃の笑顔に絶望した咲恋は心底落ち込み、そんな咲恋に、エリカは投げやりに言い放し、ツインテールの女子生徒は元気な返事を返した。

 

 

 

 

 

「というわけで、勝、『ACE・デュエマ部』に入ってほしいの!お願いっ!」

「お断りします」

「何でぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」

 

 時間は経過し、昼休みに入ってすぐ、咲恋は勝に『ACE・デュエマ部』に誘うも、即答で断れた。

 まさか、断れるとは思わず、咲恋は再び、叫び声を上げた。

 因みに、勝と咲恋とエリカは二年生であり、同じクラスである。

 

「どうしてなの!?理由を教えて、勝!」

「……理由か」

 

 咲恋の問いに、勝は廊下側の席で読書をしているエリカに視線を向ける。

 勝の視線を感じたエリカは深い溜め息を吐き、本を閉じて、椅子から立ち上がり、二人のもとに歩み寄った。

 

「どうかしましたか、火野?」

「いや、アレを言うべきかどうか、悩んでいるんだけど……」

「アレ、ですか……」

「アレ?」

 

 二人が言う、アレとは何か、咲恋が疑問に思う中、先にエリカが口を開いた。

 

「正直に申しますと、無理に言う必要はありません。ですが、それを理由に断る理由はないと思います。まぁ、私個人の考えですが……」

「……わかった。相談に乗ってくれて、ありがとう、暁月さん」

「いえ、これぐらいは相談に乗ったには入りません。では……」

 

 そう言って、エリカは自分の席に戻り、読書を再開した。

 それを見た勝は咲恋に向き直り、ある提案をする。

 

「咲恋ちゃん、明日、僕とデュエマをしよう。咲恋ちゃんが勝ったら、僕は『ACE・デュエマ部』に入る。僕が勝ったら、咲恋ちゃんは諦める。それで良いかな?」

「?別に良いけど、今はダメなの?」

「ダメです」

 

 そう強く拒否し、咲恋は渋々な表情で勝に時間と場所を知らせる。

 

「……わかったわ。明日の放課後、学園の体育館でデュエマをしましょう」

 

 そう言うと、勝は頷き、それを見た咲恋は勝から離れ、教室を出て、その場を後にした。

 

 

 

 

 

 それから時間が経過し、放課後。

 勝は『果たし状』に指定された場所、ACE学園の屋上の扉の前に来ていた。

 

「ふぅー、はー……ヨシっ!」

 

 深呼吸をし、気合を入れて、扉のハンドルを軽く捻り、扉を勢いよく開けた。

 

「頼もう!」

「!?」

 

 扉を開けると同時に、大声を出す勝。

 屋上で待っていたのは、オレンジ色の髪に、花型のアクセサリーを着けた、一人の女子生徒『明星(あけぼし)ひより』がいた。

 

「急に大声を出すから、ビックリしました……」

「そりゃあ、悪かったね。なんて、こんなものが置かれていたから、気合を入れなちゃって思って、つい、大声を出しちゃった」

 

 そう言いながら、勝は『果たし状』をひよりに見てる。

 それを見たひよりは一瞬、眉を(ひそ)める。

 

「なるほど。そう言うことですか……私の挑戦、受けて貰いますか?火野先輩」

「どうして僕の名前を?」

「あのデュエマを見れば、誰だって、知っていますよ」

「あのデュエマ……1週間前の早峰先輩とのデュエマか?」

「はい」

 

 勝の問いに、ひよりは、はっきりと、返事を返した。

 それを聞いて、勝は「なるほど」と、小さく呟いた後、前に出る。

 

「改めて、僕の名前は火野勝。1週間前に転校した、二年生だ」

「一年の明星ひよりです!火野先輩、私はアナタのカッコいいデュエマに惚れました!アナタが早峰先輩とデュエマをした、あのカッコいいデュエマを……今度は私に見せてくださいッ!」

「カッコいいかはわからないけど、君の想いに答えられるよう、努力するよ。それから……僕のことは勝で良いよ、明星さん」

「っ、わかりました!それなら、私もひよりで構いません!さん付けもいりません、勝先輩!」

「オッケー、それなら始めようか、ひよりちゃん!」

 

 お互いにデッキを取り出し、そのデッキに、想いを乗せた後、二人は魔法の言葉を叫ぶ。

 

「「デュエマ・スタートっ!!」」

 

 今、少年と少女の激しく、アツかりし、デュエマが始まろうとしている。

 

 

 




対戦パートは次回に続きます。


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ACE5:カッコいいのその先へ。

今回の話は対戦パート、オンリーです。
後、お互いのデッキの都合上、話が少し長めです。ご了承を。


 

 

 

「私のターン!マナをチャージして、3マナで呪文、《龍の呼び声》!効果で、山札の上から1枚をマナに置いて、それがドラゴンなら……もう1枚、マナを増やす!ターンエンド!」

「僕のターン!マナチャージして、3マナで《ボルシャック・栄光・ルピア》を召喚!こっちも、マナを増やして……ドラゴンだから、もう1枚増やす!ターンエンド!」

 

 先行はひよりから始まり、2ターン目まではお互いに何もできず、マナチャージのみだったが、3ターン目で、ようやく動き始めた。

 ひよりのデッキは火と自然と光の三色デッキ。所謂(いわゆる)、リース・カラーだ。《龍の呼び声》が入っている辺り、ドラゴンを主軸としたドラゴンデッキのようだ。

 対して勝のデッキは、前回、想とデュエマをした火文明単色デッキから、打って変わって、火と自然の二色デッキに変更されている。また、ひよりとはデッキ構成は異なるが、こちらは名前に《ボルシャック》を主軸としたドラゴンデッキだ。

 

(お互いに、2ターン目に《メンデル》を引けず、3ターン目でようやく。マナを伸ばしたけど、ここから、どう動くかが重要だなぁ……)

 

「私のターン!マナをチャージして、5マナをタップ!自分の場にクリーチャーがいなければ、このクリーチャーのコストを3軽減する!」

「自力でコスト軽減?まさか!?」

 

 勝が驚いている中、ひよりは気にせず、手札から1枚のカードを取り出す。

 

天真爛漫(てんしんらんまん)(いかづち)よ、龍となって、姿を現せ!《雷龍(らいりゅう) ヴァリヴァリウス》を召喚ッ!」

「ッ、やっぱり、《ヴァリヴァリウス》か!」

「はい!この子は私が初めてデュエマをした時、最初に手にしたカードです!故に、このデッキはこの子を活かす為のデッキです!」

 

(なるほど、それでリースか。それなら、色々と納得ができるな……)

 

 ひよりが出した切り札に勝は驚きつつ、彼女がリース・カラーで組んだことに納得する。

 

「《ヴァリヴァリウス》はスピードアタッカーです!出したターンに攻撃できます!《ヴァリヴァリウス》で攻撃する時、マジボンバー7を発動ッ!デッキの上を見て、そのカードか、手札から、コスト7以下のクリーチャーを場に出します!今回は手札から《トップ・オブ・ロマネスク》を出します!」

「ブロッカーか、厄介だな……」

「それだけではありません!《トップ・オブ・ロマネスク》は出た時に、山札の上から2枚をタップして、マナを増やします!」

 

 攻撃をしつつ、守りを固める。そして、次のターンに繋げるため、マナを伸ばす。まさに、火と自然と光の特徴を活かしたデッキだ。

 何より、ひよりのデッキビルディングとデッキの熟練度はかなりのものだと、勝はそう確信した。

 

「そして、これがメインの攻撃!《ヴァリヴァリウス》で、W・ブレイクっ!」

「トリガーは……ない」

「《ヴァリヴァリウス》の攻撃の終わりに、自身の効果で、山札の上から1枚を、シールドに追加します!」

「そんな効果があったな。自力でコスト軽減ができて、マジボンバー7ばかり、気を取られていたけど……」

 

 事実、《ヴァリヴァリウス》の強みはそれである。おまけに、スピードアタッカーも付いているので、案外、忘れやすい。

 

「私はこれで、ターンエンド!さぁ、勝先輩!ここから逆転して、私にカッコいいところを見せてくださいっ!」

「無茶なことを言ってくれるな、全く……けど、男としては、その想いには(こた)えないといけないな!僕のターン!」

 

 勢いよくカードを引く。そのカードを見た時、勝はある一つの可能性を思いつく。

 

「……これなら、いけるはずだ!まずはマナチャージ!4マナをタップして、《ボルシャック・西南(きりの)・ドラゴン》を召喚!《西南・ドラゴン》の効果で、自分のドラゴンの召喚コストを2軽減!」

 

 残った2枚のマナをタップし、勝は一枚のカードに手にかける。

 

「……大地の龍神よ、ボルシャックの名を持って、今ここに現れよッ!《ボルシャック・バラフィオル》を召喚ッ!」

 

 少し貯めてから、勝は召喚口上を言い、《ボルシャック》の名を持つ、2体目のタマシード・クリーチャー、《ボルシャック・バラフィオル》を召喚した。

 それを見たひよりは無邪気な子供のような目で、目を光らせていた。

 

「はぁぁ、勝先輩の召喚口上、カッコいいです!感動です!感激です!ありがとうございますっ!」

「大袈裟だなぁ、全く……」

 

 などと言いつつ、内心、喜ぶ勝。正直なところ、かなり恥じらいを感じていたが、想やひよりとデュエマをしている中、自分も言いたくなったのは秘密だ。

 

「さて、感動するのはこれぐらいにして、デュエマを続けるよ」

「は、はい!」

「《栄光・ルピア》でシールドを攻撃!この時、《ボルシャック・バラフィオル》の効果を発動!自分の《ボルシャック》が攻撃する時、デッキの上を見て、それがコスト6以下の、火のタマシードか、火のクリーチャーなら、バトルゾーンに出せる!」

 

 捲られたのは《ボルシャック・フォース・ドラゴン》、コストは3である。

 

「ヒット!《ボルシャック・フォース・ドラゴン》を場に出し、その効果で、《トップ・オブ・ロマネスク》を破壊!」

「っ、ブロッカーが……!」

 

 ひよりのシールドを確実に減らすため、勝はブロッカー能力を持つ、《トップ・オブ・ロマネスク》を破壊する。

 そして、勝の場には今、火のクリーチャーが4体いる。タマシード状態の《ボルシャック・バラフィオル》と、山札から出た《ボルシャック・フォース・ドラゴン》はクリーチャーになる。

 

「そして、これがメインの攻撃!《栄光・ルピア》で、シールドをブレイク!」

「っ、トリガーはありません!」

 

 トリガーがないことを確認した勝はクリーチャー状態になった、《ボルシャック・バラフィオル》に手を置く。

 

「《ボルシャック・バラフィオル》はスピードアタッカーを持っている!よって、攻撃続行!《ボルシャック・バラフィオル》で攻撃する時、山札の上を見て……コスト6の《ボルシャック・ドラゴン》を場に出す!W・ブレイクッ!」

「っ、トリガーはありません!」

 

 トリガーがないことを確認した勝は一度、深呼吸をする。想との対戦の際、息を切らしかけたので、その反省も()ねて、気持ちを落ち着かせるのだ。

 

「これで僕はターンエンド」

「私のターン!8マナで、2体目の《ヴァリヴァリウス》を召喚!」

 

 今度はコスト軽減なしで、2体目の《ヴァリヴァリウス》を召喚するひより。

 そこでひよりは一度、自分の手札と場を見渡す。

 互いに、シールドは3枚。勝の場にはタップ状態の《ボルシャック・バラフィオル》と《栄光・ルピア》の2体。アンタップ状態の《フォース・ドラゴン》と《ボルシャック・ドラゴン》と《西南・ドラゴン》の3体。合計で5体のクリーチャーが並んでいる。

 対して、こちらは2体の《ヴァリヴァリウス》のみ。

 攻撃しながら、守りを固めることは可能だが、いかんせん、《ボルシャック》が攻撃する度に、コスト6以下の火のクリーチャーを並べる《ボルシャック・バラフィオル》が厄介だ。

 

(先に《バラフィオル》を退かしたいけど、《西南・ドラゴン》のセイバー能力で防がれる可能性がある。今の手札じゃ、2体を同時に退かすことはできない……)

 

 そこまで思考を働いた後、ひよりは自分の山札に視点を向ける。

 

(可能性があるとすれば、この山札にスピードアタッカーか、勝先輩のクリーチャーを退かす手段があるかどうか、だけど……)

 

 ひよりは自身が組んだデッキの内容を思い出し、今見えているカードと見えていないカードの中から、逆転できるカードを考える。

 数秒、考えた後に、ひよりは《ヴァリヴァリウス》に手を置く。

 

「決めた!ここはクリーチャーを退かさず、シールドを1枚でも多く削る!《ヴァリヴァリウス》で攻撃!攻撃する時、マジボンバー7を発動っ!」

 

 その想いは決意の一歩、勝利の一歩であった。確実な勝利を掴む為、勝のシールドを減らすことに、ひよりは賭けたのだ。

 そして、《ヴァリヴァリウス》のマジボンバーで見たカードに、ひよりは無邪気な子供みたいに、にっこりと、小さく笑った。

 

「勇気を出せば、想いは伝わる!そして、その想いは、私に力を貸してくれる!アンタップ状態の《ヴァリヴァリウス》の上に、スター進化!《ボルシャック・モモキングNEX》っ!」

 

 それはキングマスターカードの1枚、《モモキング》のカードであり、その《モモキング》がレクターズの力に目覚めて、初めて、英雄の力を継承した《ボルシャック・NEX》の鎧を纏った姿、《ボルシャック・モモキングNEX》であった。

 

「《モモキング》!?しかも、《ボルシャック・モモキングNEX》だって!?」

 

 これには流石の勝も驚かずにはいられない。なんせ、自分以外にも、ボルシャックを使うものがいるのだから。

 

「《モモキングNEX》の効果を発動!場に出た時、山札の上を見て、それが火のクリーチャーか、レクスターズなら、場に出せる!」

 

 捲られたのは3枚目の《ヴァリヴァリウス》。火と光の多色クリーチャーなので、《モモキングNEX》の効果で場に出せる。

 

「ちょっ!?流石にそれはキツいって!」

 

 それを見た勝は叫ぶ。流石にこれはやりすぎである。

 

「関係ありません!攻撃中の《ヴァリヴァリウス》で、W・ブレイクっ!」

「ッ、シールド・トリガー!呪文、《スーパー・スパーク》!ひよりちゃんのクリーチャーをすべて、タップ!」

 

 このタイミングで、勝は光のシールド・トリガー呪文、《スーパー・スパーク》を引き当て、ひよりの攻撃をなんとか防ぐ。

 

「そんな!?このタイミングで、トリガーを引くなんて……悪運が強いですね、勝先輩……」

「それでも、キツいものは変わらないよ!」

「そうですか。攻撃の後に《ヴァリヴァリウス》の効果で、シールドを増やして、ターンエンドです」

 

 軽く会話をしながらも、ひよりは一通りの処理を終えて、勝にターンを渡した。

 

「僕のターン……こっちも割り切って、攻めるしかない!自分のマナゾーンにカードが6枚以上あるから、このクリーチャーのコストを3に変更!さらに《西南・ドラゴン》のコスト軽減で、1マナをタップ!」

「たったの1マナぁ!?一体何が出るというんですか!?」

 

 勝の言葉にひよりは驚くも、勝は気にせず、手札から1枚のカードを手にとる。

 

「一撃、一瞬で蹴り上げろ!《ボルシャック・ヴァルケリー》を召喚ッ!」

 

 それは異質なボルシャック。今までのボルシャックは拳で戦うイメージだが、このボルシャックは脚で蹴る。それが、この《ボルシャック・ヴァルケリー》だ。

 

「《ボルシャック・ヴァルケリー》はスピードアタッカーで、パワード・ブレイカー!さらに、シビルカウント3を持っている!」

「っ、確か、そのカードのシビルカウントは……」

 

 シビルカウント。それは自分の場にいるクリーチャーか、タマシードの数が、シビルカウントを持つカードと同じ文明で、シビルカウントで指定された数と同じ以上なら効果を発動する能力。

 そして、《ボルシャック・ヴァルケリー》のシビルカウントは3。つまり、《ボルシャック・ヴァルケリー》と同じ、火のクリーチャーか、火のタマシードが合計3枚以上あれば、《ボルシャック・ヴァルケリー》のシビルカウントは発動できる。

 その効果は攻撃時に勝の手札をすべて捨て、3枚引き、捨てたカード1枚につき、パワーが+4000される。

 

 今、勝の手札は4枚。《ボルシャック・ヴァルケリー》のパワーは8000。つまり、ひよりのシールドをすべてブレイクできるのだ。

 

「《ボルシャック・ヴァルケリー》で攻撃!攻撃時に、シビルカウント3を発動ッ!手札をすべて捨てて、3枚ドロー!こうして、捨てたカード1枚につき、《ボルシャック・ヴァルケリー》のパワーを+4000!さらに、《ボルシャック・バラフィオル》の効果で、山札の上を見て、コスト4の《西南・ドラゴン》を場に出す!

「2体目の《西南・ドラゴン》!?」

 

 ドラゴンを破壊から守る、セイバー持ちの《西南・ドラゴン》が2体に増え、ひよりは驚く。

 これではトリガーが出ても、セイバー持ちの《西南・ドラゴン》で、防がれるからだ。

 

「《ボルシャック・ヴァルケリー》で、シールドをすべて、ブレイクッ!」

「っ、トリガーは……ありません!」

 

 4枚あったシールドはすべて、《ボルシャック・ヴァルケリー》によって、ブレイクされ、トリガーが一枚もないことに、悔しがるひより。

 しかし、それとは別に、ひよりはどこか、清々しい気持ちだった。

 

「最後はコイツで決める!《ボルシャック・ドラゴン》でダイレクトアタックッ!」

 

 

 




デュエルシーンをもう少し、スムーズに進めたいなぁ、と、内心、少し思います。


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ACE6:新しい関係と苦い過去。

1日に3話投稿、ヤバいね。
そんな中、ボルシャック・アークゼオスが高くて、驚いています。


 

 

 

「……やっぱり、勝先輩はカッコいいです」

「……そんなことはないよ」

「え?」

 

 デュエルを終えて、ひよりは真っ先に、褒めるも、勝はそれを否定した。

 その顔はどこか痛まれない表情で、哀しい目をしていた。

 

「僕は、そんな良い人じゃないよ。ただ、全力で、デュエマをしているだけだよ……」

「先輩……」

 

 勝の言葉にひよりは心底、ガッカリしただろう。失望させてしまっただろう。そう思う勝だが、ひよりはどこか怒っている様子だった。

 

「勝先輩、そんなに悲観的にならなくて良いと思います。先輩は私にとって、カッコいい人です!だから……だから、そんなことを言わないでください……」

「ひよりちゃん……」

 

 怒ったかと思ったら、今度は涙を流して、悲しむひより。

 

(あぁ、そうか。彼女は昔の僕と同じなのか……)

 

 それを見た勝はどこか、懐かしさを感じ、ひよりは昔の自分に似ていることに気づき、近づいて、彼女の頭を静かに撫でる。

 

「ちょっ、何をして……!?」

「ゴメン。僕、こういうことしか思いつかなくて……許してほしいわけではないけど……ダメかな?」

 

 突然、頭を撫でられて、驚き、顔を赤くするひより。それに対して、勝は許しを()うかのように頭を撫でながら言う。

 

「ず、ずるいです!先輩はずるい人です!」

 

 頭を撫でる勝の手を払いながら、ひよりは涙ながらも、叫ぶ。

 数秒、沈黙が続くが、先に破ったのはひよりだった。

 

「……許してあげます」

「良いの?」

「ただし、私を弟子にしてくれれば、です!」

「で、弟子ぃ!?」

 

 突然の提案に勝は驚き、困惑する。

 それを見たひよりは提案した理由を説明する。

 

「はい!元々私、弟子入りするために、勝先輩にデュエマを挑みました!」

「僕、それ知らないんだけど……」

「言っていないので、知らなくて当然です!」

「……わかった。降参だよ、ひよりちゃん」

「やったぁー!」

 

 それを聞いて、勝は諦めたかのような顔で、両手をあげて、降参の合図をすると、ひよりは満面の笑みで喜んだ。

 

「(これは一本、取られたな)ただし、学園にいる間は普通に先輩と後輩の関係で頼むよ」

「まっかせてくださいッ!私、こう見えて、口は固い方なので!」

「そう言う人は、大体、口は軽い!」

 

 突っ込みを入れつつも、勝はひよりを弟子として、迎えるのだった。それと同時に、また変な噂が立つな、と、勝は内心思い、近いうちに、咲恋と秋乃には話そうと思った。

 

 

 

 

 

「ただいまー」

「お帰りなさいませ、勝様」

「ただいま、マリちゃん」

 

 ひよりと別れた後、勝は真っ直ぐ、家に帰り、玄関を開けると、メイド服を着た、青紫髪のツインテールに、カチューシャを着けた小柄な少女、『月野(つきの)マリ』が迎え入れていた。

 月野家は代々、火野家に仕えていて、マリは勝の使いであり、住み込みで、勝の身の回りの世話をしている。

 元々は一人暮らしをするつもりだった勝だが、勝の父親が反対し、マリの母親の提案で、マリを使いとして、一緒に住むことになったのだ。

 

「今日はお帰りが遅かったみたいですが、何かあったのですか?」

「いつものデュエマだよ。全く、人気者は辛いなぁ……」

「そういう顔には見えませんが、何かありましたか?」

「何にもないよ。本当に、ただデュエマをしていただけだよ」

「そう、ですか。それなら宜しいんですが、あまり長いようでしたら、秋乃様に一度、ご相談されます?」

「いや、それには及ばないよ。寧ろ、今、楽しいぐらいだよ」

 

 嘘である。本当はひよりとデュエマをした後、昔の自分を思い出していたのだ。昔と言っても、そこまで長くはなく、中学二年生頃の話である。

 

 中学時代の勝には好きな女性がいた。中二の夏前に、思い切って告白をし、その女性から了承を得た後、すぐに彼氏彼女の関係になった。

 しかし、その関係は長くは続かず、中学三年の秋に彼女から別れてほしいと言われた。当時、勝はとても頭が悪く、地頭の良かった彼女は偏差値の高い高校に進学できたので、それが理由で別れてほしいと言われたのだ。

 幸い、第三志望の高校には進学できたものの、人とのコミュニケーションがあまり得意じゃない勝は、クラスに馴染めず、すぐに不登校になった。

 そんな(おり)に、たまたま出掛ける用事があった勝は、不良に絡まれていた秋乃を見かけ、彼女を助けたのだ。

 これが焔秋乃との最初の出会い。それから彼女と関係を(きず)き、協力して、元カノが進学した学校と同じぐらいの偏差値であった、ACE学園に転校できたのだ。

 当然、地頭の悪い勝にとっては過酷()つ、地獄だった。ただ一点、自分を振った元カノに見返したくて、勝は必死に勉強した。

 

(ほんと、秋乃さんには感謝してもしきれないなぁ)

 

 などと、そう思う勝だが、未だに彼女に感謝の言葉を伝えられていない。

 

「そう言えば、明日、咲恋先輩と『ACE・デュエマ部』の入部をかけて、デュエマをするんですよね?」

「え?ああ、そうだけど……」

 

 突然、マリはそんなことを言い出した。

 何故、彼女が知っているのか、少し考え、勝はある可能性に賭け、マリに問いかける。

 

「また秋乃さんから聞き出したの?」

「聞き出したなんて、人聞きが悪いですね、勝様。エリカ先輩から聞きました。『ACE・デュエマ部』の入部をかけて、咲恋先輩とデュエマをすると……」

「結局、聞き出してることには変わりないじゃないか!」

 

 そう突っ込みを入れつつ、勝は明日に備えて、新しいデッキを組むのであった。

 

 

 




次回は入部を賭けて、咲恋と勝がデュエマをします。


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ACE7:部の存続をかけた戦い。

少し展開が早いかも?
まぁ、気にしても仕方がないか。


 

 

 

「逃げずに、よく来たね、勝!」

「逃げるわけないだろ?と言うか、逃げたら、困るのは咲恋ちゃんだろ?」

「……それもそうね」

 

 ここはACE学園の体育館の中。そこで、勝と咲恋は相対(あいたい)していた。

 前日、咲恋から『ACE・デュエマ部』に入部してほしいと頼まれ、勝は一度断るも、エリカと相談した後、デュエマで咲恋が勝ったら、入部する、と、勝は自分から言い出したのだ。

 

 そして今、部活存続のため、今か今かと、デュエマが始まろうとしている。

 

「……それじゃあ、始めましょう」

「うん……」

 

「「デュエマ・スタートッ!」」

 

 

 

「私のターン!マナをチャージして、《赤い稲妻(サバイバル・スター) テスタ・ロッサ》を召喚!ターンエンド!」

「げっ、《テスタ・ロッサ》!?」

 

 先行、咲恋の2ターン目。

 咲恋は火の踏み倒しメタクリーチャー、《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》を召喚した。それを見た勝は早速、げんなりしていた。

 勝のデッキは前回同様に、《ボルシャック・バラフィオル》で展開する火と自然のドラゴンデッキ。

 それに対して、咲恋のデッキは、マナゾーンを見る限り、火と水と光の三色デッキ。通称、ラッカ・カラーで、《テスタ・ロッサ》を始めとした、相手の動きを制限するクリーチャーを軸にしたメタビートデッキだった。

 つまり、勝にとっては咲恋のデッキはとても相性が悪いのだ。

 

「マジかぁ……とりあえず、ドロー。マナチャージして、呪文、《メンデルス・ゾーン》!山札の上から2枚を見て、その中にあるドラゴンをすべて、タップしてマナに置く!2枚とも、ドラゴンだから、2ブースト!」

「嫌そうな顔をしつつ、しっかりと、《メンデル》を引いて、2ブーストを決めてくるわね」

「それでも、嫌なものは嫌だよ!ターンエンド!」

 

 実際、《テスタ・ロッサ》が出たことで、勝の手札にある《ボルシャック・バラフィオル》は腐ってしまった。

 

「私のターン。マナチャージして、3マナで呪文、《T()T(トリプル)T(スリー)》!3つの効果から1つ選んで、効果を発動!今は手札を増やしたいから、3枚ドローを選ぶわ!ターンエンド!」

「僕のターン。そっちが3枚ドローなら、こっちは3枚ドローの1ブーストだ!呪文、《決闘者(デュエリスト)・チャージャー》!デッキの上から3枚を表向きにして、その中にある《ボルシャック》を手札に加える!」

 

 捲られたのは《ボルシャック・栄光・ルピア》、《ボルシャック・フォース・ドラゴン》、《ボルシャック・西南・ドラゴン》、すべて、《ボルシャック》である。

 

「ヨシッ!3ヒット!唱えた《決闘者・チャージャー》はマナに置いて、残った3マナで、《ボルシャック・フォース・ドラゴン》を召喚!《テスタ・ロッサ》を破壊!」

「流石に処理が早いわね……ってか、今気づいたけど、そのデッキ、《ボルシャック》多くない?」

「そういうふうに、デッキを組んだからね!ターンエンド!」

 

 

 

「流石です、勝先輩!早速、踏み倒しメタの《テスタ・ロッサ》を破壊しましたっ!」

「当たり前です。《ボルシャック》を使ったあの人がこの程度で、止まる訳ありません」

「ハッ!そうでなくちゃ、面白くねぇ!じゃなきゃ、オレが負けた意味がねぇ!」

 

 咲恋と勝のデュエマが白熱する中、二人の対戦を観にきた、ひより、マリ、想の3人はそれぞれ感想を言う。

 

「あの、ここに俺が居て、大丈夫でしょうか?」

「何も問題ありません。貴方も、『ACE・デュエマ部』の部員の一人です。寧ろ、来なければ、損です。まぁ、私はどちらでも良かったのですが、秋乃様がどうしても、と、言うので、観に来ましたけど……」

「とかなんとか、本当はエリカも勝様が心配で来たのでしょう?」

「っ、そんなことはありません!私は……そう、咲恋様が勝たなければ、『ACE・デュエマ部』がなくなるので、それが心配で観に来ているのです。ただ、それだけです!」

 

 観戦していたのはひより達だけでなく、翔、エリカ、秋乃も二人のデュエマを(のぞ)いていた。

 いつも間にか、翔は『ACE・デュエマ部』に入部しているが、そこは気にしないでおこう。

 

「にしても、あの二人、デュエマしながら、普通に会話してるな。さては、仲良いのか?」

「咲恋様と勝様は同じ中学に通っていたんです。多分、その時の付き合いで、仲が良いんだと思います……」

 

 不意に、想がそう疑問を述べ、マリがその疑問に答えた。

 それを聞いた想は不思議にマリが何故、そんなことを知っているのか、疑問に思い、問いかけた。

 

「テメェ、一年の癖に、なんでそんなことを知ってるんだ?」

「同じ中学の後輩なので、知ってて、当然です」

 

 雑に返答するマリ。それを見て、想は一瞬、イラつきを感じるが、秋乃とエリカがいるため、イライラを抑えた。

 

「あの、このデュエマ、どちらが勝つのでしょうか?」

「当然、勝先輩に決まってます!」

「どうでしょうね」

「ええ、咲恋様も、想に負けて以来、腕を磨いています。なので、場合によっては……」

 

(ハッ、馬鹿言ってんじゃねぇよ。オレに勝てねぇような女が、アイツに勝てるわけねぇだろ……!)

 

 

 

 白熱したデュエルの中、咲恋の4ターン目が始まる。

 互いに動きは順調。先に動いたものが勝利の(いただき)を手にすることができる。

 

「ここが正念場ね、私のターン!マナチャージして、4マナで、《エヴォ・ルピア》を召喚!出た時の効果で、カードを1枚引いて、《エヴォ・ルピア》から進化できるコスト5以下のクリーチャーを場に出せる!」

「ッ、来るか、あのデッキの切り札が……!」

 

 今から来る切り札に、勝は身を構える。

 

(きら)めく(かがや)きは悪を裁くッ!《エヴォ・ルピア》をスター進化!正義を貫けッ!《「正義星帝(スティルジャスティス・ティルジエンド)」〈鬼羅(きら).Star〉》ッ!」

 

 それは《正義星帝》がレクスターズの力に目覚め、鬼羅丸の力を借りた姿、《「正義星帝」〈鬼羅.Star〉》だった。

 

 

 




こちらの都合で続きます。
一応、次で決着します。


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ACE8:煌めく輝き。

 

 

 

 高々と召喚向上を咲恋は叫び、彼女が出した切り札は《「正義星帝(スティルジャスティス・ティルジエンド)」〈鬼羅(きら).Star〉》だった。

 

「《〈鬼羅.Star〉》の効果を発動!このクリーチャーが出た時、または攻撃する時、カードを1枚引いて、手札からコスト4以下のクリーチャーを場に出せる!もう一度、《エヴォ・ルピア》を出して、その効果で、《〈鬼羅.Star〉》にスター進化!」

「に、2体目!?」

「新たに出た《〈鬼羅.Star〉》の効果で、3枚目の《エヴォ・ルピア》を出すわ!」

「ッ、まさか、3枚目の《〈鬼羅.Star〉》が……!?

「そのまさかよ!《エヴォ・ルピア》を《〈鬼羅.Star〉》にスター進化!」

「ぎゃぁぁぁぁぁッ!」

 

 まさかまさかの《鬼羅.Star》が3体。その光景に、勝は絶望のあまり叫び声を上げた。

 しかも、咲恋はまだ3体目の《鬼羅.Star》の効果を使っていない。

 

「3体目の《鬼羅.Star》の効果で、《エヴォ・ルピア》を出して、今度は《キャンベロ〈レッゾ.Star〉》にスター進化!」

「《〈レッゾ.Star〉》!?確か、そいつの効果は……」

「《〈レッゾ.Star〉》が場に出た時、勝、アンタはクリーチャー1体しか、場に出せない!」

 

 完全に《ボルシャック・バラフィオル》が腐り、仮にこのターン、耐え切っても、次のターン、勝はクリーチャーを1体しか出せない。

 

「いくわよ、勝!《〈鬼羅.Star〉》で攻撃!攻撃する時、カードを引いて、手札から《奇天烈 シャッフ》を場に出すわ!」

「今度は《シャッフ》か……!」

「《シャッフ》の効果!数字を一つ選んで、相手は次のターン、その選んだ数字と同じ呪文を唱えられず、同じコストのクリーチャーは攻撃もブロックもできない!当然、選ぶ数字は5よ!」

 

 次から次へと、咲恋のクリーチャーが並び、それと同時に、勝の動きを止めてくる。

 おまけに、《シャッフ》の効果で、勝の守りの(かなめ)である、《スーパー・スパーク》が唱えれなくなっている。

 

「そして、これがメインの攻撃!《〈鬼羅.Star〉》でW・ブレイクッ!」

「ッ、《スーパー・スパーク》が使えれば……!」

 

 ブレイクされたシールドの中に《スーパー・スパーク》があったが、《シャッフ》の効果で、唱えられなくなっている。

 折角、このターン、耐えれられるカードを引けたのに、使えないことに歯を噛み締める勝。その表情はどこか、悔しさの塊だった。

 

「まだまだいくわよッ!もう1体の《〈鬼羅.Star〉》で攻撃!攻撃する時に、今度は《ブランド-MAX(マックス)》を場に出すわ!」

 

(まずい、このままじゃ……!)

 

 負ける。そう確信した勝は残り3枚のシールドの中に逆転できるカードが出ることを祈るのだった。

 

 

 

「勝先輩が押されてる!?」

「マジか……あの生徒会長、あんなに強くなっていたのか……」

「だから言ったでしょう、彼女もまた、強くなっていると」

 

 まさかの展開にひよりと想は驚き、エリカはまるで自分が鍛えたかのような、自慢げに言う。

 

「けど、最後に勝つのは……」

「勝様ですね」

「……」

 

 しかし、それでも尚、勝が勝つことを信じるマリと秋乃の二人の気持ちは変わらず、翔は静かに、勝と咲恋の二人のデュエマを眺めながら、脳裏にこう思った。

 

(いつか俺も、あんな風にデュエマができるのかな?)

 

 

 

「……トリガーよ、きてくれッ!」

「《〈鬼羅.Star〉》で、W・ブレイクッ!」

 

 ブレイクされる2枚のシールド。勝は恐る恐る、2枚のシールドを捲り、中見を覗く。

 

「ッ、きた!シールド・トリガー、《ボルシャック・テイル・ドラゴン》を2体、召喚ッ!」

「《テイル・ドラゴン》!?それも2体!?」

「1体は《ブランド-MAX》と、もう1体は《〈レッゾ.Star〉》とバトル!この時、シビルカウント3で、《テイル・ドラゴン》のパワーを+2000される!」

 

 シールドから現れた2体の《テイル・ドラゴン》。幸い、《ボルシャック・フォース・ドラゴン》が場にいたお陰で、シビルカウントが達成し、その能力で、《テイル・ドラゴン》のパワーは7000に上がった。

 1体は場に残るが、もう1体は《〈レッゾ.Star〉》と相打ちになり、破壊される。

 

「ッ、やるわね!けど、《ブランド-MAX》が選ばれた時、勝、アンタのシールドを1枚、墓地に置いてもらうわ!」

「最後のシールドが……!」

 

 しかし、咲恋のクリーチャーも、ただでは破壊されず、《ブランド-MAX》の能力によって、勝の最後のシールドを墓地に置いた。

 因みに、《〈レッゾ.Star〉》は場を離れた時、進化元のクリーチャーをアンタップする能力があるが、まだ攻撃していなかったので、この能力は不発となった。

 

「これで終わりよッ!《〈鬼羅.Star〉》で攻撃する時に、もう一度、《ブランド-MAX》を場に出すわ!《〈鬼羅.Star〉》で、ダイレクトアタックッ!」

 

 

 

「オイ、マジか……!?」

「勝様が負ける!?」

「勝先輩っ!」

 

 勝のシールドは0。この攻撃が通れば、勝の敗北は確定する。誰もが、そう思った。

 

「いいえ、まだですわ……」

 

 しかし、たった一人、秋乃だけは違った。

 

 その証拠に、勝の瞳はまだ、燃え尽きていなかった。

 

 

 

「革命0トリガー!《ボルシャック・ドギラゴン》ッ!」

 

 

 




すみません、もう少し続きます。
次で決着をつけます。


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ACE9:決着、轟炎の竜皇。

決着です。
そして、ボルシャックのアイツが出ます。


 

 

 

「《ボルシャック・ドギラゴン》!?まだ、そんなカードがあったの!?」

 

 革命0トリガー。

 それは自分のシールドが0枚の時、相手がダイレクトアタックする時に手札から、ただで使えるカード。

 そして、この《ボルシャック・ドギラゴン》は革命0トリガーを持った、進化クリーチャーだ。

 自分のデッキの一番上を捲り、それが進化ではない、火のクリーチャーなら、そのクリーチャーを進化元に場に出せる。

 この時、進化元のクリーチャーが出た時の効果は発動できる。

 

「捲られたのは……《ボルシャック・NEX》ッ!革命0トリガー、成功!《NEX》の効果で、山札から《ルピア》と名のつくカードを場に出せる!《凰翔竜機(おうしょうりゅうき)ワルキューレ・ルピア》を場に出すよッ!《ワルキューレ・ルピア》の効果で僕のドラゴンはすべてブロッカーを得る!そして、《〈鬼羅.Star〉》の攻撃を、今出した《ボルシャック・ドギラゴン》でブロックッ!」

「そんな、この攻撃も止められるの!?」

 

 革命0トリガーで、手札から《ボルシャック・ドギラゴン》を使い、山札の上から《ボルシャック・NEX》を捲り、その《ボルシャック・NEX》の効果で、山札から《ワルキューレ・ルピア》を呼び出し、その《ワルキューレ・ルピア》の効果で、《ボルシャック・ドギラゴン》をブロッカーにして、咲恋の《〈鬼羅.Star〉》の攻撃を防いだ。

 これにより、咲恋はもう攻撃できない。

 と言っても、咲恋の手札に2枚目の《シャッフ》があれば、話は別だが。

 

(どうする?デッキに入ってる《シャッフ》は2枚。1枚は場に出したし、もう1枚はマナだし、《ブランド-MAX》も2枚使ったし、3枚目は……引けるかわからないし……)

 

 この通り、咲恋のデッキには《シャッフ》は2枚しか入っておらず、《ブランド-MAX》も3枚のうち、2枚使っている。

 

「……ここは、追撃せず、ターンエンド!ターン終了時、《〈鬼羅.Star〉》の効果で、コスト4以下のクリーチャーをすべて、アンタップ!」

 

 これにより、《〈鬼羅.Star〉》以外は殴り返されず、《〈鬼羅.Star〉》の効果で、コスト4以下のクリーチャーはブロッカーを得ているので、ブロッカー全破壊がでない限り、咲恋のターンは必ず、返ってくる。そう思った咲恋は勝にターンを渡す。

 

 

 

「マジか!?あの攻撃を耐えたのか!?」

「流石です、勝先輩!」

「これはもう、勝様の勝ちですね!」

「す、すごい……!こんなデュエマ、見たことない!」

 

 咲恋の攻撃をすべて防ぎ、その圧倒的な運命力を見せつけた勝に、観戦していた想達は驚きと感動に満ち溢れていた。

 

「流石ですね、勝様。でも……」

「えぇ、不味いかもしれませんね」

「ハッ、何言ってやがる!ここから逆転するのが、アイツだろ!」

「いいえ、逆転は不可能です。どうあがいても……」

「え?それはどういう意味ですか?」

「その意味は……このデュエマを最後まで観れば、わかります」

 

 何かを(さっ)したのか、秋乃は皆に、二人のデュエマを最後まで観るように言った。

 

 

 

「僕のターン。さて、どうしたものか……」

 

 引いたカードを見て、勝は考える。

 前のターン、咲恋は《キャンベロ〈レッゾ.Star〉》を場に出している。その《〈レッゾ.Star〉》の効果によって、勝はクリーチャー1体しか場に出せない。故に《ボルシャック・バラフィオル》を使って、クリーチャーを展開できない。

 

(ここから逆転できるカードはアレしかない。《NEX》の効果で山札にあるのはわかっているけど……)

 

 先程引いたカードは、そのカードではない。だが、まだ打つ手はある。可能性がある限り、0ではない。どこかの主人公(ヒーロー)が言っていたが、誰だか忘れてしまった。

 そんなことを考えながらも、勝はその可能性に賭けた。

 

「……《ボルシャック・バラフィオル》をマナに、3マナで呪文、《ヒートブレス・チャージャー》!デッキの上を見て、それがアーマードを持つカードなら、手札に加える!」

「ッ、そのカードは……!?」

 

 捲られたのは、ボルシャックのO(オーバー)R(レア)、《轟炎(ごうえん)竜皇(りゅうおう) ボルシャック・カイザー》だった。

 そのカードが入っていたことに、咲恋は驚き、勝は《ボルシャック・カイザー》を手札に加えて、唱えた《ヒートブレス・チャージャー》をマナに置いた。

 これにより、勝が使用できるマナは5枚。その5枚を迷いなく、タップする。

 

「爆炎を纏うは、竜の帝王ッ!《轟炎の竜皇 ボルシャック・カイザー》を召喚ッ!」

 

 魂を熱く、熱く、熱く、《ボルシャック・カイザー》に想いを乗せて、勝は激しく召喚口上を言う。

 その《ボルシャック・カイザー》が出た途端、勝の場にいる5体のクリーチャーが赤く光った。

 

「シビルカウント3!《ボルシャック・カイザー》はスピードアタッカーとバトル中のパワーを+50000される!《ボルシャック・カイザー》で、《〈鬼羅.Star〉》に攻撃!」

「シールドじゃなくて、《〈鬼羅.Star〉》に攻撃!?何を考えているか知らないけど、その攻撃は通すわ!」

 

 それを聞いた時、勝はニヤリと、不適な笑みを浮かべた。

 

「この時、《ボルシャック・カイザー》のシビルカウント5を発動ッ!ボルシャックランサー!《ボルシャック・カイザー》をアンタップ!」

「ッ、まさか、無限攻撃!?」

「あぁ、その通りだよ、咲恋ちゃん!」

 

 これが《ボルシャック・カイザー》の最大の効果であり、勝のクリーチャーが光った理由である。これにより、咲恋の《〈鬼羅.Star〉》と、進化元の《エヴォ・ルピア》を破壊できる。

 仮に《〈鬼羅.Star〉》の効果で、ブロッカーを得たクリーチャーで守っても、《ボルシャック・カイザー》の無限攻撃によって、また狙われる。

 無駄にアタッカーを減らすより、咲恋は大人しく、《〈鬼羅.Star〉》と、進化元の《エヴォ・ルピア》を破壊するのだった。

 

「《〈鬼羅.Star〉》はすべて破壊した!次は、シールドを攻撃!シビルカウント5で、アンタップ!」

 

 今度はシールドを狙い、咲恋のシールドを次々とブレイクする。

 1枚、また1枚、気がつけば、咲恋のシールドが残り1枚になり、その1枚もブレイクされた。

 

「これでトドメだよ、咲恋ちゃん!」

「……いいえ、まだよッ!シールド・トリガー、《終末の時計(ラグナロク) ザ・クロック》ッ!勝、アンタのターンを強制終了よッ!」

「ッ!?ここで《クロック》か……」

 

 最後の最後で、トリガーの《クロック》を引かれ、無限攻撃を持った《ボルシャック・カイザー》の攻撃が通らなかったことに、勝は悔しがるも、すぐに諦めがついたかのように、小さく、そう言った。

 対して、《クロック》のお陰で、難を逃れた咲恋は深いため息を吐き、《クロック》の効果で、強制的にターンが回り、カードを引く。

 

「呪文、《イデア・パラドックス》!相手のコスト4以上のカードを手札に戻す!《ワルキューレ・ルピア》を手札に戻すわ!」

「ッ、最後の(とりで)が……!?」

 

 ブロッカー付与の《ワルキューレ・ルピア》が勝の手札に戻される。これで、勝を守るものがなくなった。

 2枚目の《ボルシャック・ドギラゴン》、あるいは《革命の鉄拳(てっけん)》があるかもしれないが、それはもう割り切りだ、と、咲恋はそう自分に言い聞かせ、《革命の鉄拳》だけでもケアしようと、《シャッフ》に手を置く。

 

「《シャッフ》でダイレクトアタック!選ぶ数字は3よッ!」

「……残念だけど、《ボルドギ》も《鉄拳》も、手札にないよ」

 

 そう言うと、勝は《シャッフ》のダイレクトアタックを受けた。

 

 勝者、咲恋。

 見事、勝を『ACE・デュエマ部』に入部させたのだ。

 

 

 




初のボルシャック・カイザーが負けに繋がりましたが、まぁ、仕方がない。


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ACE10:チーム結成、その名は……。

『ACE・デュエマ部』って言いにくいですよね。
なので、名前を変更します。


 

 

 

「負けちゃったか……まぁ、こればかりは仕方がないか」

「その割には全然悔しそうに見えないんだけど……」

 

 部の存続を賭けたデュエマは咲恋が勝利し、敗北した勝は第一にそう言った。

 あまり悔しそうに見えない勝の表情に、咲恋は不思議に疑問に思った。

 

「そうでもないよ。これでも結構、悔しいって、思ってるよ」

「……そう?それなら、喜んで良いのかな?」

「あまり喜ばれると、少し(へこ)むよ」

「アンタでも、冗談言うんだ?」

「む、本気だよ」

 

 勝が意外な発言に、咲恋は冗談まじりに言うと、勝は少し怒った表情で、そう言い返した。

 

「フフ、悪かったわよ。それで、約束、覚えてる?」

「勿論、『ACE・デュエマ部』に入るよ。ついでに、最後の1人を紹介しようか?」

「本当に?」

「わざわざ嘘は言わないよ」

「……そう、期待してる」

 

 そう言うと、二人のデュエマを観戦していた秋乃達が近づいてきた。

 

「二人とも、すごいデュエマでした!」

「まさか、勝先輩が負けるなんて……」

「しかも、最後が《クロック》とか、ダッセェ負け方だな……って、痛えぇ!」

 

 勝が咲恋に負けたことに、笑顔で言う想に、マリは想の足に容赦なく、蹴りを入れた。

 

「痛えよ!何しやがる!チビ女!」

「誰がチビですか!大体、勝様は全力を出して負けたんですよ!そこに少しは評価を(あたい)しなさい!ですよね?勝様?」

「いや、そうでもないよ。悔しいけど、早峰先輩の言う通りだよ……」

「え……?」

 

 意外な発言にマリは驚き、それを聞いた想はつまらなそうな表情をしていた。

 

「何だ、理由、わかってるのかよ。ツマラねぇな」

「問題児の先輩は黙っててもらいますか?」

「へいへーい」

「それで勝様、さっきの話ですが……」

「あぁ、実は……」

「《クロック》が一枚も見えてなかったから、もしかしたら、シールドに埋まっているかもしれない、そう言うことでしょう?」

「……」

 

 勝が言い出す前に、秋乃が割って入って、そう説明し、言い出そうとした勝は図星だったのか、黙り込んだ。

 

「もしくは、貴方の防御札が《ボルシャック・ドギラゴン》しかなくて、咲恋様の攻撃を防ぐ手段があまりなかった。違いますか?」

「……どっちも正解だよ」

 

 観念したのか、エリカの仮説に、勝は否定もせず、返答した。

 

「全く、いざ言われるとキツいものだよ……」

「それじゃあ、アンタ、自分が負けるの、最初からわかってたの!?」

 

 意外な真実に、咲恋は驚く。

 

「いいや、最初の《〈鬼羅.Star〉》が攻撃する時まではわからなかったよ。ただ、その時のW・ブレイクで、《スーパー・スパーク》と《ボルシャック・ドギラゴン》が埋まってたんだ。その時だよ、負けが見えていたのは……」

「なっ……!?」

 

 そうはっきり言う勝に、咲恋はまた驚き、それと同時に、自分は彼に実力で勝った訳ではないと、気づく。

 

「まぁ、流石に《テイル・ドラゴン》が2枚あったのは予想外だけどね」

「何よ!嫌味なの、それ!」

「ちょっ、なんで急に怒るのさ!?」

「そりゃあ、怒りますわよ」

「えぇ、全く……」

 

 突然怒り出す咲恋に、勝はどうにかして宥められないか、考え、ふっと、ひよりが目に入った。

 

「あ、そうだ!ひよりちゃん、一緒に部活入らない?後1人、部員が足りなくて困ってるんだー」

「え?私は全然構いませんが、あの、生徒会長は大丈夫なんですか?」

 

 突然、話を振られたひよりは咲恋に問いかける。

 

「なんか良いように流されてるけど……えぇ、問題ないわ。事実、後1人足りないし、寧ろ、歓迎するわ」

 

 その言葉に、ひよりは満面の笑顔で、子供みたいに、はしゃぎ始めた。

 

「本当ですか?やったー!これで毎日、勝先輩とデュエマができるー!」

「たまには、私の相手もしてよね?」

「オレのことも忘れるな!」

「貴方はまず、その口を治すのが先でしょ!」

「だから蹴るんじゃねぇよ!チビ女!」

 

 と、こんな感じで、ついに『ACE・デュエマ部』に部員が5人揃った。

 

「そう言えば、チーム名はどうします?」

「チーム名?」

「はい、ずっと、『ACE・デュエマ部』って呼ぶの、なんだか違和感があるなぁ、と」

「そうね、確かに言われてみれば……」

 

 ふっと、翔がそんな提案をし、それを聞いた咲恋は今まで考えてなかったのか、秋乃に視点を向ける。

 

「秋乃さん、何か、提案はある?」

「……実は、皆さんに、ピッタリの名前があります」

「それ、本当?秋乃さん?」

「どんな名前なんですか?」

 

 どうやら事前に考えていたのか、秋乃はそう言い、それを聞いた勝はどんな名前か、期待し、ひよりも無邪気な子供みたいな瞳で目を光らせていた。

 

「チーム名は『ACE(エース) STRIKER(ストライカー)』。意味はサッカー用語で、ゴールを決める人。その中でも(すぐ)れた選手を意味しますわ。わたくし達、ACE学園にはピッタリの名前だと思います。どうでしようか?」

「『ACE STRIKER』……うん、良いと思う」

「何だか、とってもカッコいい名前です!」

「オレは安直だと思うがな」

 

 などと言いつつ、意外と気に入っているのか、頬が緩んでいる想であった。

 

「ん?わたくし達って……」

 

 ふっと、秋乃が言った言葉に違和感を感じ、勝は秋乃に視線を向けると、秋乃は少し微笑んでいた。

 

「あら、わたくし達もチーム、『ACE STRIKER』の仲間ですよ、勝様」

「マジ?」

「マジです」

「マジなのです!」

 

 なんと、ここに来て、秋乃、エリカ、マリの3人も、チーム、『ACE STRIKER』に加わるのだった。

 

「……まぁ、いいか!」

 

 咲恋とのデュエマは意外な結果に終わったが、これからの毎日が楽しみな勝である。

 

 

 




はい、というわけで、部員が無事、5人(以上)揃いました。
予定より、1話分長くなりましたが、まぁ、許容範囲です。
次回からはGWでの休日を少し書こうかと……。
後、ほぼ毎日投稿をしているので、少しの間、休憩をとろうと思います。
その間、感想などありましたら、言ってください。


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ACE11:デュエマをするのに大事なもの。

今回の話は少し現実的なお話をします。
高校生なら、というか、学生なら皆、通った道だと思います。
まぁ、大人になっても何度か通るんですけどね(汗)
という訳で、ACE11、どうぞ。


 

 

 

 チーム、『ACE(エース) STRIKER(ストライカー)』が結成してから1週間。

 ゴールデンウィークに入った勝達は各自、休日を過ごしていた。

 

 そんな中、ひよりの誘いで、勝はマリを連れて、3人でカードショップに来ていた。

 

「《ボルシャック・アークゼオス》、1枚900円。《クック・(スクランブル)・ブルッチ》、1枚400円……」

「《インフェル星樹(スタージュ)》、1枚500円。銀トレ、1枚650円……」

 

「「高いッ……!!」」

 

 ショップに来て早々、ショーケースにあるカードが高いことに、げんなりする勝とひより。

 高校生にとって、1枚500円以上のカードを買うには中々勇気がいる。ましてや、複数枚、4枚揃えて買うのも一苦労である。

 マリと共同生活している勝は金銭面の管理をマリに任せているため、私生活込みで、手持ち金が限られている。

 対して、ひよりは家があまり裕福ではないため、1枚500円の《インフェル星樹》に手をこまねいている。

 

「すみませーん、特価の《最終(さいしゅう)モルト》を4枚、お願いしまーす!」

 

 一方のマリは特価品コーナーにある、1枚200の《最終(ファイナル)龍覇(りゅうは) グレンモルト》を4枚、買っていた。

 

 ──数分後。

 

「それで、お目当てのカードが高くて、買う気になれず、ここでフリーをしてると?」

 

 結局、勝とひよりはお目当てのカードを買わず、フリースペースでデュエマをして、時間を潰していた。

 それを見て、レジから帰ってきたマリは呆れて物も言えない、と言わんばかりに、2人にそう言った。

 

「だってよぉ、《(スクランブル)・ブルッチ》が1枚400円だぞ!《アークゼオス》はまだしも、レアの《轟・ブルッチ》が400円って……高すぎるよッ!」

「私も、《星樹(スタージュ)》がまだ、あんなに高いなんて、思いませんでしたッ!」

「はぁ……」

 

 深いため息を吐くマリ。2人の言うことはごもっともだが、高校生なら高校生らしい、買い方がある。

 例えば、期間を空けて、カードが安くなるの待つか、先程のマリのように、特価品コーナーで買えば、幾つか出費がマシになる。

 

 しかし、今回の2人の場合、話は別である。

 

 勝は『双龍戦記(そうりゅうせんき)』で出た新ギミック、メクレイドを軸にしたボルシャックデッキを組むため、先程、ショーケースにある《ボルシャック・アークゼオス》と《クック・轟・ブルッチ》を買おうと思ったのだ。

 因みに、《ボルシャック・カイザー》の進化系である、《覇炎竜(はえんりゅう) ボルシャック・ライダー》は4枚セット、500円で売っていたらしく、そちらは安く買えたので心配はない。

 尚、スタートデッキのボルシャックは、ひよりとはじめてデュエマした日の前の日に買ったらしい。

 

 ひよりは《ヴァリヴァリウス》がお気に入りで、《ヴァリヴァリウス》を軸にした白赤緑(リース)軸のドラゴンデッキを使っていたが、1週間前の勝と咲恋のデュエマを見て、「自分もあんなデュエマがしたい!」と言い出して、どう言う訳だが、白赤緑軸のモルネクを組もうと言い出し、手持ちに1枚もない、《インフェル星樹》を4枚買おうと思ったのだ。

 肝心のモルネクは去年、発売された『龍覇爆炎(りゅうはばくえん)』を親にねだって、買っているので、そちらは問題ないらしいが。

 

「はぁ、全く……」

 

 2人揃って、子供だ、と。マリは心底、そう思った。

 そもそも、勝はひよりの師匠で、ひよりは勝の弟子なら、もう少し遠慮というものを知ってほしい、と、マリは口には出さないが、そう思った。

 

「──テメエら、何やってる?」

「え?」

 

 ふっと、聞きられた声が響き、3人はそちらに視点を向けると、そこにはACE学園の3年生にして問題児、そして、今は勝達と同じチームメイトの早峰想がいた。

 

「珍しいですね、貴方がここにいるなんて……」

「オイ、休日に先輩と会って、第一に言う言葉がそれかよ、あぁ?」

 

 あからさまに嫌そうに言うマリの言葉に、(かん)に障ったのか、想は早速、喧嘩腰になり、マリに突っかかって、そう言った。

 

「知りませんよ。こっちは今、大事な話をしているんです。邪魔しないでください」

「ハッ、そうかよ!こっちは折角、美味しい話があるってのによ!」

「美味しい話?何ですか?それ?」

 

 食いついたマリに想は今までやられた分を仕返しに、意地悪しようと考え、マリに振り返り、不敵な笑みで、こう言った。

 

「オイオイ、大事な話があるんだろう?だったら、オレはここでオサラバだ、じゃーな」

 

 そう言って、想は子供じみたことを言い、勝達に背中を向けて、この場を去ろうとする。

 

(勝った!あぁ、この感じ、この高揚感、過去一番に最高だ……!)

 

 マリにやり返せたことに、満足し、高揚感に浸る想。

 それを察したのか、マリは深い深呼吸をする。

 

 ──そして、駆け出し、ジャンプし、両足を前に出しながら、想の背中にドロップキックを仕掛ける。

 

「ソリャアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァッ!」

「どわぁっ!?」

 

 マリは叫びながら、想の背中に見事、ドロップキックをぶちかました。

 そのまま想の体は地面に倒れ、横になり、想の背中をマリは自身の足を強く乗せた。

 

「テ、テメェ……よくも、やったなぁ……」

 

 ガクっと、まるでアニメやドラマに出てきそうな音が鳴り、想はそのまま気絶した。

 その光景に、店内にいる人達は皆、唖然とした。

 なんて、マリの身体はかなり小柄で、その体格に反した運動神経を持ち合わせていたからだ。

 それはひよりも例外ではない。

 

「あの、師匠。マリちゃんって、もしかして……」

「うん、そう言うこと。後、ひよりちゃん、それ以上は言わないであげて。二次災害が起こるから……」

「……はい」

 

 あまりの出来事に、その場にいる全員が想の安否を心配した。

 

 




今回から、少し早いめのゴールデンウィークのお話です。

想が言う美味しい話とはいったい?

まぁ、大体ロクでもない話ですがね(本当に?)

感想など、ありましたら、気軽に言ってください。


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ACE12:勝、激怒する。

主人公、怒ります。
少しだけ、ですが……。


 

 

 

「大丈夫ですか?早峰先輩?」

「そう心配するならよぉ、あのオンナをどうにかならねぇのか?」

「貴方が悪いんです!貴方が私に挑発するのが悪いんです!」

「まぁまぁ、マリちゃん、その辺にしてあげてー」

 

 フンッ、と、かなり不機嫌なマリ。

 対して、マリにドロップキックを喰らった想はかなり背中を痛がり、勝に自身の背中をさすってもらっていた。

 因みに、マリにドロップキックを喰らった想が目が覚めたのは、1時間後である。

 

 ふっと、彼が去り際に言っていたことを、勝は思い出し、想に問いかけた。

 

「そう言えば、早峰先輩。先程言っていた美味しい話って、何ですか?」

「あ?あぁ、それか……」

「どうせ、ロクでもない話でしょ」

「何でテメェは一々、オレに突っかかってくるんだよ?ケンカ売ってんのか?だとしたら、こっちはいつでも買ってやるぞ?あぁ?」

「もう、2人とも、仲良くしてください!」

「「コイツ(この人)と仲良くできるか(できません)っ!!」」

 

 そう、息を合わせて叫ぶ2人。

 あまりの息のあった叫び声に、ひよりは「ヒィっ!?ごめんなさい!」と、謝ってしまう始末。

 

 ──ブチッ。

 

 そんな、小さな音が鳴った。

 それが聞こえたマリは「あ……」っと、恐る恐る、音が鳴った方に振り向く。

 

「どうした?」

 

 それを見た想はマリに問いかける。問いかけられたマリは震えながらも、ゆっくり指を上げて、勝の方にさす。

 

 ──否、勝をさしている。

 

 何も知らない想はそのまま勝の方に体を向けると、そこには──

 

「──2人とも、少しお話ししようか?」

 

 ──静かに激情している勝の姿だった。

 この後、2人は勝に30分ほど、説教されるのは言うまでもない。

 

 

 

「──それで美味しい話って何なんですか?」

「あぁ、実はここから少し離れた場所にカードショップがあってよ、そこのデュエマの大会……非公認の大会だが、そこに優勝すれば、その店に売ってるカードを半額にしてくれるんだと。特価品も含めてな……」

「そんな店があるんですか!?」

 

 説教を終えて、ようやく本題に入り、想が言っていた美味しい話を聞いて、ひよりは驚いていた。

 勝も顔には出さないが、内心、驚いていた。

 因みに、マリは勝に説教されて、精神的ショックを受け、机の下で、体育座りになり、何か呪文のようなものをブツブツと唱えていたが、勝達はあえて気にしないようにしていた。

 

「……そのカードショップの名前、わかりますか?」

「あー、確か名前は『ブラックキャット』?だったかな?」

「そこは曖昧なんですね」

 

 いつの間にか、いつもの調子に戻っていたマリ。

 そんなマリにひよりは「お帰り〜、マリちゃん」と、活気のある言葉をかけ、マリは「ただいまー、ひよりちゃん」と、返事を返す。

 

「それで、勝様、どういたしますか?」

「当然、行くに決まってるよ」

「新しいボルシャックを組みたいですものね!」

 

 マリの問いかけに、さも当たり前のように、勝は返事をする。

 それを聞いたひよりは高らかにそう言った。

 

「それもあるけど、どちらかというと、名前が気になるかな?」

「?名前、ですか?」

「オイ、まさかテメェまで、オレを疑うのか?」

「別に疑ってませんよ。ただ……中学の時にいたチームの名前が入ってるから、少し気になっただけです……」

「勝様……」

 

 勝はカードショップの名前を聞くと、どこか上の空を眺め、それを見たマリは勝を心配した。

 

「それでしたら、今からこのメンバーで行きましょう!」

「今から!?」

 

 それを見たひよりは3人に提案すると、想が真っ先に驚いていた。

 

「ひよりちゃん、今からはやめといたほうが良いですよ……」

「?何でですか?」

「ひよりちゃん、時計を見て……」

「?時計、ですか?」

 

 勝が言うと、ひよりはお店にある時計を見た。

 見ると、もう夕方の4時半である。

 

「あ……」

「もうすぐ門限の時間だからね」

「うちの学校、校則が厳しいから、今日はもう解散にしましょう、ひよりちゃん」

「はい、そうですね。断念ですが……」

「んじゃ、明日の昼の1時に、その店の前に集合だな」

「何で貴方が締めてるんですか?」

「うっせぇー」

 

 想が最後に返事をすると、勝達は皆、店に出て、解散し、それぞれの家に帰っていった。

 

 

 

 

 

「──もしもし。お久しぶりです、勝です。そちらは……元気ですね。実は少しお願いがあって、連絡しました。ブラックキャットというお店を調べてほしいんです。カードショップなんですが……はい、僕も明日、友達と一緒に行くので、暇があれば、調べようと思います。はい、ありがとうございます」

 

 ピッ、と、電話を切ると、勝は椅子に背をもたれ、机の上に並べてるデュエマのカードを眺める。

 

「明日のデッキを組んでいるんですか?」

「マリちゃん……ありがとう」

 

 浮かない顔をしている勝を気にしてか、マリは勝に水が入ったコップを渡し、勝はそれを半分ぐらい飲んで、空いてるスペースに、机の上に置いた。

 

「それもあるけど、どっちかって言うと、明日行くお店の名前が気になってね。それについて、中学の時の知り合いに頼んでいたんだ……」

「そうですか……あの、勝様」

「ん?」

「あまり夜更かしはしないでくださいね。体に障りますよ」

「人をお年寄りみたいに言ってくれるね。まぁ、その気遣いはありがたいけどね」

 

 そう言って、勝はデュエマのカードを片付け、残った水を飲み干し、コップをマリに渡して、自身ののベッドに入り、横になった。

 

「おやすみ、マリちゃん」

「おやすみなさい、勝様」

 

 

 




何やら、不吉な予感……。


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ACE13:ブラックキャット

投稿から、1週間が経過したことに昨日の夜気づいて、びっくりしてます。


 

 

 

「ここがブラックキャット……」

「名前の通り、看板は黒と黒猫が貼ってありますね……」

「でも、中はかなり明るいみたいですよ!」

 

 ほら、と、ひよりがお店の中を指さす。

 確かに、お店の外装は黒を意匠とし、右端に黒猫の形があり、中は電気が明るく、夜になっても、中が見えるのではないか、と、疑うぐらいに、店内は明るかった。

 

「……」

 

 だけど、勝は何故か、黒猫の看板に目が入っていた。

 まるで懐かしむかのように、勝の瞳は曇っていた。

 

「?勝先輩?どうかしましたか?」

「……え?」

「え、じゃなくて、黒猫の看板を見て、どうかしたんですか?」

 

 不意にひよりは気になり、勝は「あ、ああ、黒猫ね」と、(うつむ)きながら、返事をし、少し間を置いて、口を開いた。

 

「……前の学校を少し思い出していたんだ?」

「確か前は『山猫(やまねこ)学園』でしたね。それがどうかしたんですか?」

「仲の良かった友達が少し気になってね……」

「黒猫の友達がいたんですか?」

「アハハ、うん。いたよ。猫耳が着いた黒いフードの子が……」

 

 冗談まじりに言ったつもりが、意外な返答に、ひよりは少し驚いてしまった。

 

「……元気にしてるかな」

「転校、したんですか?」

「ううん、逆だよ。僕が居なくなって、いじめられていないかなって……」

 

 それを聞いて、ひよりは地雷を踏んでしまったことに気づき、急いで、勝に謝ろうと声をかけようとした、その時だ。

 

「──オーイ!テメエら、いつまでそこにいるつもりだー!」

 

 ブラックキャットの玄関前で、想の大きな声が響いた。

 なんと間が悪い、とはこのこと。

 

「行こうか、2人とも」

「はい、勝様」

 

 想と合流するため、勝が前に出ると、マリは勝の後をついていった。

 

「……」

 

 完全に謝るタイミングを逃したひよりは少ししてから、2人の後を追った。

 

 

 

「遅えぞ、テメエら!いつまで待たせる気──ゴフッ!」

 

 合流して早々に、想はマリに腹パンされ、お腹を抑える。

 

「オイ、チビ女、会って早々に腹パンとは良い度胸だな……」

「早峰先輩、カッコつけて言いたいなら、まずはその腹の痛みを治してからにしてくれませんか?」

「そう思うなら、お前、コイツの主人だろ!なんとかしろ!」

 

 腹の痛みを抑えながら、想は勝に抗議する。

 

「──アンタ達、なんでここにいるの?」

 

 突然、聞きなれた声が響き、勝達は声の方に振り向くと、そこには咲恋と翔の2人が居た。

 

「生徒会長!?それにメガネ君!?」

「2人とも、どうしてここに?」

「それはこっちの台詞よ……」

 

 突然の来訪者に、ひよりは驚き、勝は2人がここに来た理由を問いかけるも、逆に咲恋は勝達に問いかけた。

 

「早峰先輩がここの大会に優勝すれば、このお店のカードを半額にしてくれると聞いて来たんです。そしたら……」

「私たちが来た、と……」

「俺達も、昨日、このお店の大会に出ようって、話をしてたんです。まさか、火野先輩達が居るなんて、驚きました」

「驚いたのはこっちです!」

「うん。なんと言うか、かなり珍しい組み合わせだね」

 

 勝が言うと、いつも間にか、元気になっていた想が翔に近づき、翔の首を腕で巻いてきた。

 

「なんだぁ、眼鏡?いつも間に、生徒会長を堕としたんだよぉ?ええ?」

「お、堕としたなんて、俺はただ、生徒会の仕事で疲れてる生徒会長に気分転換に誘っただけです!特別深い意味は……」

「そう遠慮するなよ。オレにはわかる。男なら、誰しも惚れた女に手を出したくなるきも──イッテェェッ!」

 

 突然、マリに背中を蹴られる想。

 突然蹴られた想はまたか、と、思い、マリに視線を向けると、マリはとても不快な目で、想を見下していた。

 

「先輩、セクハラ発言、やめてもらえませんか?」

「そー言うテメエは、パワハラをヤメロォッー!」

 

 叫ぶ想に対してマリはプイッと、首を振る。即ち、否定、拒否である。

 

「なにこれ?」

「気にしないで、2人とも、昨日からずっと、この調子なんだ……」

 

 その光景に咲恋は疑問に感じ、勝は渇いた声で、咲恋の疑問に答えた。

 

 

 

 ──プップー。

 

 

 

『?』

 

 突然、車のクラクションが鳴り響き、勝達はそちらに視線を向けると、そこには、赤い高級車が止まっていた。

 その高級車の後部座席が開き、そこから、肩まで長い赤い髪に、足元まで長い赤いロングスカートを着た女性──ACE学園の理事長にして、焔財閥の1人娘、焔秋乃が現れ、その後ろにはメイド姿の暁月エリカが現れた。

 

『……』

 

 まさかの来訪者に、勝達はその場で固まってしまった。

 

「あら?皆様、こちらで何をしてますの?」

 

 突然、現れた秋乃はブラックキャットの前にいる勝達に問いかけた。

 

「……秋乃さんこそ、どうしてここに?」

「わたくしはこのお店の視察と、このお店で行う非公認大会の司会をしに来ましたの」

『え?』

 

 秋乃の問いに勝が問い返しすと、秋乃はさも当たり前のことを言ってのける。

 それを聞いた勝達は全員、驚いてしまった。

 

「このお店、秋乃さんが経営してるお店なの!?」

「正確には、わたくしのお父様が経営してるお店ですのよ、ですのよ!」

 

 二度言う秋乃。彼女が二度言うことは、事実だろうと、この場にいる全員がそう思った。

 

「だとしたら、何でブラックキャット?財閥的に、レッドキャットか、ファイアーキャットじゃないの?」

 

 焔財閥は赤、または、炎のイメージが強く、『ブラックキャット』は日本語に変換しても、『黒猫』になるので、焔財閥のイメージにあわない。そう思って、勝は秋乃に問いかける。

 

現実(リアル)に赤い猫や、炎の猫が居ますの?」

「……居ないね」

「そういうことです。現実にいる猫は黒、茶色、白など、多種多様に色々います。その中でも、黒猫は人々の中で、イメージとして残りやすいので、あえて、ブラックキャット、という名前にしてます」

「なるほど……」

 

 秋乃の説明に勝は納得する。

 確かに、イメージとして残すなら、わかりやすい名前の方が覚えやすい。流石、焔財閥、といったところか、と、勝は口には出さないが、内心、感心するのだった。

 

「さて、説明はこれぐらいにして、わたくし達は先に中に入りますわよ、エリカ」

「はい、お嬢様」

 

 エリカが返事を返すと、秋乃とエリカはブラックキャットの中に入った。

 

「……大変だね、秋乃さん」

「アンタも似たようなもんでしょ?」

「僕の家系はあそこまで大変じゃないよ。それよりも……」

「ええ、わかってるわよ。皆、私達も中に入るわよ」

 

 咲恋の合図で、勝達はブラックキャットの中に入っていた。

 

(結局、謝る暇がありませんでした……)

 

 入る途中、ひよりは未だに、勝に謝罪できなかったことに悔やんでいた。

 

 

 




デュエマシーンはもう少し待ってね。


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ACE14:猫による再会。そして、哀しい出来事。

猫づくしです。


 

 

 

 お店の中はわりと普通だった。

 特別、猫の衣装や猫のカチューシャなどを着けている店員がいるわけでもなく、皆、営業用の私服にエプロンを着けていた。

 強いて言えば、客人と来ている学生が多いことか。

 

「……なんと言いますか、普通ですね」

「てっきり、店員が猫の衣装を着てるとばかり、想像してたけど、拍子抜けね」

「ですね!」

「テメエら、それ、どう言う意味だ?」

「変態の先輩が好む店だから、そういうものかと……」

「ヨーシ、テメエら、表出ろ。いや、ここはデッキを構えろ。オレの新しいデッキでボコボコにしてやるぞ?」

「はいはい。そう慌てなくても、大会が始まれば、皆、デッキを構えるから、デッキをしまってください、早峰先輩。咲恋ちゃん達も、早峰先輩を煽らないの。仮に事実だとしても、そういう失礼なことは言わないの」

「テメエが一番、失礼なこと言ってんだよッ!火野!」

 

「火野?火野って、もしかして……」

 

 想が大きな声で、勝の苗字を呼ぶと、突然、黒髪の長い女性の店員が勝達に近づいてきた。

 

「ねぇ、君」

「あ?なんだよ?」

「さっき、火野って言ってたけど……それって、彼のこと」

「あ?ああ、そうだけど……」

 

 想がそう返事を返すと、女性は勝に近いた。

 

「……やっぱり、アンタ、勝ね」

「え?」

 

 今度は名前を呼ばれて、勝は驚き、それ見て、女性は猫耳のカチューシャを取り出し、頭に着けた。

 

「!?君は、もしかして、キャルちゃん……?」

 

 それを見て、勝は彼女の名を上げた。

 彼女の名は『キャル』。本名は『猫崎(ねこざき)瑠璃(るり)』。

 勝が以前通っていた山猫学園のクラスメイトである。

 

「久しぶりね、勝!」

「久しぶりだね、キャルちゃん。少し見ない間に、雰囲気が変わったね」

「まーね。こっちも色々あったし、アンタも色々あったみたいだし、お互い、少し変わったわね。そこにいるのは……部活仲間?」

「うん。そうだよ……」

 

 勝の返事を聞いて、キャルは咲恋達の前に出た。

 

「自己紹介が遅れたわね。私は猫崎瑠璃。よろしく」

「私は斎条咲恋。生徒会長で、このメンバーの部長を務めてるよ。よろしく」

「私は明星ひよりです!勝先輩の弟子です!」

「月野マリです。勝様の身の回りのお世話をしてます」

「……早峰想。三年生だ」

「め、眼鏡翔、です!い、一年です!よろしくお願いします!」

「もう、アンタ、固いわよ。男の子なら、もう少ししっかりしなさい。ね?」

「は、はい!善処します!」

「うん。良い返事ね……」

 

 一通りの自己紹介を終えると、ひよりはキャルに質問する。

 

「あの、さっき、キャルって呼ばれてましたけど、あれ、どういう意味ですか?」

「?あぁ、アレね。私のプレイヤーネームよ。プレイヤーネーム」

「プレイヤーネーム……猫崎さんは何かゲームをやってるの?」

「キャルで良いわよ。後、さん付けもなしよ。多分、同い年なんだし、部長なら、堂々としてなさい」

「え、ええ、そうね……」

 

 コミュニケーション能力が高いのか、キャルの対応に、咲恋は後ずさる。

 

「えーと、何かゲームをやってるか、だったわね。見て分からない?この店で働いているってことは、そういうことよ……」

「え?えーと……」

「……テメエも決闘者(デュエリスト)か?」

「ピンポーン。アタリね。特にこれといったものはないけど、ご褒美に飴ちゃんをあげるわ」

「お、おう、ありがと……」

 

 想が答えると、キャルは服のポケットから飴を取り出し、想に渡す。

 渡された想はそう小さく、返事を返した。

 それを見て、勝は少し驚き、キャルに声をかける。

 

「……キャルちゃん、本当に変わったね。随分と明るくなったし、何か良いことでもあった?」

「……さぁね。強いて言えば、アンタが居なくなって、1人になって、どうしたものか、と、考えた時に……とりあえず、明るく、元気に、そして、心を強くして、私をいじめてた奴らを仕返してやったわ!そうしたら、もう心がスッキリしたの?あの時は嬉しかったわー」

「!?キャルちゃん、それって、もしかして……」

 

 嫌な予感がした。勝はそう思ったが、キャルはすぐにそれを否定した。

 

「安心して。特別、手を出してないわ。ただ、今までやられたことをやり返しただけよ。そーしたら、先生に『お前のようなヤツは我が校には必要ない!この学園から去れー!』って、言われたわ。それを聞いて、私は言われた通り、学園から出ていってやったわ!いやー、あの時の先生の姿、アンタに見せたかったわー」

「え……?」

 

 活気に溢れて、喋るキャルに、勝は呆気に取られて、驚いてしまった。

 

「ちょっと待って。それって……」

 

 

 

「──ええ、そうよ。私、退学させられたの」

 

 

 




もう1話書いたら、それからデュエルシーンを描きます。なので、もう少しお待ちを。


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ACE15:ひより、モヤモヤ。明けの星をその手に。

ひよりちゃんがメインの話。
後、今回は長めです。


 

 

 

 店長に呼ばれて、キャルが離れた数分後、残された勝達は空いたデュエルスペースに座っていた。

 

「……」

 

 キャル本人から知らされた出来事に、勝は顔を伏せていた。

 

「まさか、退学になっていたなんてね……」

「……そうだね。少しビックリだね」

「先輩……」

 

 明らかに元気がない勝に、皆、心から心配していた。

 

「ま、仕方がねーじゃねぇの。本人もアレでスッキリしてるみたいだし、寧ろ喜ぶべきだろ?」

 

 想があまりにもデリカシーの欠片のない発言に、想以外の全員が驚き、鋭い目で想に視線を向ける。

 

「ちょっと、先輩、いくらデリカシーがないからって、流石にそれはないと思います!」

「オイオイ、事実だろ?それに、テメエが転校した後なら、それこそ、仕方がねーだろ?それともナニか?転校したからって、助けてやれることがあったのか?」

「……ッ!?」

 

 そこまで言われて、勝はようやく、彼が何を言いたいのか、理解し、少し目を瞑って、口を開いた。

 

「……確かに、早峰先輩の言う通りだ」

「勝!?アンタ……それ、本気で言ってるの?」

 

 勝の意外な発言に、咲恋は驚き、勝に問いかけるも、勝は頷き、それを見て、咲恋はため息を吐いた。

 

「……ハァー、わかったわ。アンタがそれで良いなら、もう何も言わないわよ」

「私も勝様が良いなら、構いません。ひよりちゃんもそれで良いよね?」

「わ、私は……」

 

 マリの問いかけに、ひよりは口ごもり、翔に目を向け、問いかける。

 

「メガネ君はどう思う?」

「俺は……早峰先輩の言っていることが正しい、と、思います……」

「オー、わかってるじゃねぇか!眼鏡!」

「……」

 

 全員、薄情者だ、と、ひよりは口には出さないが、そう思った。

 それと同時に、体の内側から、怒りが湧いた。

 

「……アアアァァッー!」

 

 突然、ひよりは叫び声をあげ、椅子から立ち上がった。

 

「早峰先輩の薄情者!メガネ君の人でなし!会長のあんぽんたん!マリちゃんのオタンコナス!勝先輩のドラゴンバカー!略して、ドラバカー!」

 

 最後に「うわーん!」と、泣きながら、店から出ていた。

 突然の出来事に、勝達は暫く固まってしまった。

 

「な、なんだ?急に……」

「ひよりちゃん……」

「……追いかけなちゃ!」

 

 突然、店から出ていってしまったひよりに、勝は心配になり、立ち上がるも、想はそれを停止する。

 

「ほっとけ。それよりも、こっちは大会に参加しねぇと、いけねーだろ?」

「っ、だけど、それでも追いかけなちゃ!謝らなちゃ!」

「だったら、テメエ1人で行け!オレはガキのおもりはゴメンだッ!」

 

「──何の騒ぎですの?」

 

 突然、騒ぎ始めた勝達の声が聞こえたのか、秋乃とエリカの2人が勝達の前に現れ、騒ぎ始めた理由を問いかける。

 

「秋乃さん……実はひよりちゃんが店に出ちゃったの」

「ひよりちゃんが?」

「そう言えば、泣きながら、店に出て行くの見かけましたね」

「……状況はわかりませんが、勝様、ここはわたくしに任せてもらえませんか?」

「秋乃さん。でも……」

「でも、も、ありません。皆様は今日の大会を楽しみで、ここに来ているのでしょう?だったら、大会に受付をし、準備を整えないといけませんわ」

「けど……」

「勝、ここは秋乃さん達に任せましょう。私達は私達のすべきことをしましょう」

「……わかった。秋乃さん、エリカさん、ひよりちゃんをお願いします」

 

 苦渋の決断をした勝は秋乃とエリカにひよりを任せ、勝達は大会にむけて、準備を始める。

 

 

 

 ブラックキャットから少し離れた公園のベンチで、ひよりはそこで座っていた。

 

「私、何やってるんだろう。それに……今日は失敗ばかりだ……」

 

 と、ひよりはそう小さく呟く。

 思い返せば、今日の自分は地雷ばかり踏んでいる。

 今日の大会を楽しみに、皆、新しいデッキを組んで、大会に備えていたのに。勝の前の学校のクラスメイトの事情を知って、その人物に会って、学園から追放されて……。

 

「もう、頭がぐちゃぐちゃだ……」

 

「──こんなところで、何をしてますの?」

 

「!?ほ、焔先輩!?それに暁月先輩!?どうしてここに?」

 

 突然の来訪者、秋乃とエリカが現れたことに驚き、ひよりは2人が何故ここに来たのか、問いかける。

 

「皆、貴方を心配してますよ」

「……」

「貴方の帰りを待っていますよ……」

「……合わせる顔がありません。私、先輩達に酷いこと、言ってしまったし……きっと皆、怒っています……」

「そんなことはありませんわ」

「え?」

 

 ひよりの言葉に秋乃はハッキリと否定した。

 

「皆、心配してますし、わたくし達も心配でここに来てます。それに勝様……勝も、貴方を心から心配して、真っ先に立ち上がって、謝ろうとしていましたよ」

「謝る?先輩が、私を……?」

 

 ひよりの問いかけに、秋乃は無言で頷いた。

 

「そんな、先輩が謝る必要ないのに……寧ろ、私が謝らなちゃいけないのに……なんで……」

「それだけ、貴方のことを、心から許している証拠です。わたくしの時はかなり時間がかかりましたもの……」

「そうだったんですか?」

 

 意外な真実に、ひよりは驚く。

 あまり2人がいるところを見かけないが、勝の様子から、すぐに打ち解けたのとばかり、思っていた。

 

「ええ、あの時の勝はとても酷かった。けど、あの時……過去があるから、今の勝がいるわけです」

「過去があるから、今の先輩がいる……」

 

 それを聞いて、ひよりはこれまでのこと、勝と一緒にいた時を思い出した。

 はじめて学園に来た時、想とのデュエマに勝利し、全校生徒にデュエマを挑まれて、注目を浴び、自分もその1人で、彼とデュエマをし、彼のカッコよさに惹かれた。

 咲恋とのデュエマはとても手に汗握る試合で、自分もあんなカッコいいデュエマがしたいと思った。

 出会ってまだ1ヶ月。ほんの僅かな時間しか経っていないが、ひよりにとって、(先輩)はかけがえのない人になっていた。

 そして、勝もまた、ひより()がかけがえのない人物になっているのだと、そう思った。

 そこまで考えた後に、ひよりは勢いよく、立ち上がった。

 

「焔先輩、私、戻ります。皆の……勝先輩のところに……」

「ええ、そうしなさいッ!明星ひより!貴方の明けの星を、その手で掴みなさいッ!」

「はい!」

 

 そう返事を返すと、ひよりは勝達のもと──ブラックキャットに戻っていった。

 

 

 

「ひよりちゃん、戻ってこないね」

「……うん、そうだね」

 

 もうすぐ大会が始まる中、ひよりが未だに、ブラックキャットに戻っていないことに心配する勝と咲恋。

 想は「待っても無駄だ」と突っぱねることばかりで、そんな想にマリは怒りを露わにして、抗議している。

 

「……」

 

 対して、翔はひよりを心配する勝と咲恋の背中を見て、2人にかける言葉が見つからず、2人の背中を眺めていた。

 

「──もうすぐ大会が始まりまーす!大会に参加される人は集まってくださーい!」

 

「……勝、いくわよ」

「うん」

 

 キャルの掛け声が店内に響き、勝達はキャルの近くに集まった。

 

 幸い、ひよりの分は勝が『ヒヨリ』と書いておいたが、本人が来なければ、不参加になる。

 

「今日の大会参加者は16名です。今から呼ばれる人は返事を返さなければ、不参加になりまーす!それではまず、1番、サーガさん!」

「はーい」

 

 と、順番にキャルは大会参加者の名前を呼んでいく。

 勝達は11番から名前を書いているので、その番号が来たら、返事を返さなければならない。

 

 延々と淡々と。次々に参加者の名前を言う。

 

 そして、遂に、勝達の番号が来た。

 

「11番、カツさん!」

「はい!」

 

 カツ=勝。

 

「12番、コイさん!」

「はい!」

 

 コイ=咲恋。

 

「13番、ソニックさん!」

「オウよ」

 

 ソニック=想。

 

「14番、メイドガールさん!」

「はーい」

 

 メイドガール=マリ

 

「15番、ガチャダマンさん!」

「は、はい!」

 

 ガチャダマン=翔。

 

 

 

「16番、ヒヨリさん!」

 

 

 

 沈黙。その番号が呼ばれた時、沈黙が走った。

 

「16番、ヒヨリさーん!いませんかー!」

 

 再度、ヒヨリの名前を呼ぶキャル。

 一向に返事がないので、キャルは勝に声をかける。

 

「勝、ひよりちゃんは?」

「すみません、まだ来てません」

「……そう。それなら仕方がないけど、ヒヨリ選手は不さ──」

 

 

 

「──お待たせしましたッ!」

 

 

 

 突如、店内の入り口から声が響いた。

 大会参加者、店員の皆はそちらに視点を向けると、ゼェー、ハー、ゼェー、ハー、と息を切らしたひよりが立っていた。

 

「ひよりちゃん!?大丈夫?」

「だ、大丈夫……です……み、水を、お願いします……」

 

 息を切らしたひよりを咲恋が背中をさすり、誰か水を持ってきてもらうと、声をかけた、その時。

 

「はい、ひよりちゃん……」

「……ッ!?勝、先輩……」

 

 水を差し出す勝。それを見て、ひよりは水をとって、勢いよく飲む。

 

「プー、ハー!生き返ります!」

「ひよりちゃん、今日の試合、楽しもうか!」

「──ッ、はいっ!」

 

 ひよりの元気な返事が店内に響き、32名の参加者が全員揃った。

 

 

 




最後、無理矢理締めましたが、予定通り、次回からデュエルシーンを書いていきます。
さーて、大会優勝者は誰の手になるかなー(笑)


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ACE16:デュエマの非公認大会、始まります。

ACE10か11の段階で、数話書くつもりが、気がついたら、長く書いてしまった、GW篇……(汗)
おまけに、今回の話、1話でまとめると長くなるから、分割するはめになった……。
まぁ、仕方がない。
という訳で、ACE16、どうぞ。


 

 

 

 ひよりがブラックキャットに帰ってきて、ついに非公認大会が始まろうとしていた。

 

「これより、デュエマの非公認大会を始めます!参加者の皆様は自分の番号がある席に座ってください!」

 

 キャルのアナウンスで、勝達は各自、自分の番号の前に座った。

 

「「あ……」」

 

 座席に座ると、勝と翔は口を揃える。

 

「まさか、初戦で身内戦か。ついてないなぁ……」

「俺も、そう思います……」

 

 そう2人は話すも、対戦の準備を始める。

 

「……皆さん、準備ができましたね?先行後攻を決めるジャンケンをしてください」

 

 参加者の皆がシールドと手札を並べ終えた後、キャルは参加者の皆にそう言った。

 

「それじゃあ、ジャンケン……」

 

「「ポン!」」

 

 勝はグーで、翔はチョキ。よって、先行は勝からである。

 

「皆さん、ジャンケンを終えましたね?それでは、デュエマの非公認大会、第一試合を始めます!」

 

『デュエマ・スタートッ!!』

 

 

 

「──呪文、《レッツ・ゴイチゴ》!効果でマナを1枚増やします!ターンエンド!」

「僕のターン!ドロー!こっちは《栄光・ルピア》を召喚ッ!効果でマナを増やして……ドラゴンだから、もう1マナ増やす!ターンエンド!」

 

 勝のデッキは引き続き、赤緑ボルシャックを使用。

 対して、翔のデッキはわからないが、マナゾーンを見る限り、多色カードが多く、自然単色のツインパクトカードが採用された、独自に組まれた5色デッキだと、勝は思った。

 

「やっぱり強いですね、そのカード……」

「あぁ。ただ、今回は《メンデル》を引けてないから、割とキツいけどな……」

「そうですね。ドローして、マナを増やして、3マナで呪文、《お清めシャップ》!マナを増やして……あ」

 

 軽い雑談をしながら、デュエマをする勝と翔。

 そんな中、翔が唱えた《お清めシャップ》の効果で、山札の上から置かれたカード──《ガチャンコ ガチロボ》に、翔は目を点にした。

 

「《ガチロボ》がマナに……」

「ってことは、7軸ガチロボか……」

 

 7軸ガチロボ。

 コスト7のクリーチャーを軸に、《ガチロボ》の効果で、山札から同じコスト7のクリーチャーを3体踏み倒し、それらで戦うデッキだ。

 つまり、《ガチロボ》以外はコスト7で統一されており、ツインパクトカードの性質を活かして組まれたのが、7軸ガチロボである。

 

 それが見えた翔は悲しみの声をあげ、勝は翔のデッキが7軸ガチロボだと理解した。

 

 デュエマのルールには、同じカードを4枚まで採用できる。つまり、デッキに4枚採用されているであろう《ガチロボ》が一枚見えたのだ。

 

「……《お清めシャップ》のもう一つの効果で、俺の墓地の《イチゴッチ・タンク》を山札に戻します。……これで、ターンエンドです」

 

 翔は《ガチロボ》が一枚見えたことに、悲しみながらも、デュエマを続ける。

 

(正直、辛いなぁ……)

 

「……まぁ、そういうこともあるさ」

「え?」

「いや、何でも……」

 

 翔の気持ちを読み取ったのか、勝は少し同情し、そう呟いた。

 突然、心を読まれたことに、翔は驚くも、勝はそれを否定した。

 

「……早く決めないといけないな。ドロー、お?良い引きだ」

 

 そう言って、勝は手札を1枚マナに置いて、6枚ある内の5枚のマナをタップする。

 

「──久しぶりにいこうか!《王来(オーライ)英雄(ヒーロー) モモキングRX(レックス)》を召喚ッ!」

「──ッ!?も、モモキング!?」

 

 意外なカードに驚く翔。

 今まで、ボルシャックしか使ってなかった勝が、モモキングを使ってくることに、翔は予想してなかった。

 

「別に驚くことはないさ。寧ろ、今まで使わなかったのが異常だったんだよ……」

「それでも、このタイミングで《RX》って……最悪だ」

 

 絶望を見るかのように、翔はそう呟く。

 対して、勝は今まで使わなかったことが異常だと、そう言ってのける。全くもって、その通りである。

 

一先(ひとま)ず、《モモRX》の効果を使うよ。手札を1枚捨てて、2枚引くよ──来たか」

 

(あ、嫌な予感……)

 

 突然、勝が不適な笑みを漏らし、翔は嫌な予感を感じた。

 

「《モモRX》をスター進化!《ボルシャック・モモキングNEX(ネックス)》ッ!」

「来ないでほしかったです……」

「まぁ、そう言うな。《モモNEX》の効果を使うよ。山札の上を捲って……あ」

 

 ──捲られたのは《ボルシャック・バラフィオル》。

 ボルシャックを呼ぶ、2体の連鎖ボルシャックが揃ってしまった。

 

「……投了したいです」

「しても良いよ?」

「しません。まだ《ガチロボ》が出てないので……」

 

 若干、涙目になりながも、翔は投了せずに、デュエマを続ける。

 

「わかった。なら、速攻で決める。《モモNEX》で攻撃!攻撃する時に、《モモNEX》と《ボルシャック・バラフィオル》の効果をそれぞれ発動。まずは……《ボルシャック・バラフィオル》から使うよ!」

 

 そう言って、山札を捲ると、コスト7の《ボルシャック・ドギラゴン》だった。《ボルシャック・バラフィオル》で出せるのは、コスト6以下の火のクリーチャーだ。コスト7以上の《ボルシャック・ドギラゴン》は墓地に置かれる。

 

「《ボルシャック・バラフィオル》の効果は失敗、か……」

「断念でしたね、火……カツ先輩。先に《モモNEX》から解決しておくべきでしたね」

 

「──いや。寧ろ、良かったよ。先に、《ボルシャック・バラフィオル》から解決して……」

 

「……え?」

 

 意外な言葉に、翔は呆気にとられ、驚いてしまった。

 そんな翔の驚きに応えるかのように、勝は《モモキングNEX》の効果を解決する。

 

「次に《モモNEX》の効果!山札の上を捲って……《ボルシャック・ヒート・ドラゴン》を場に出す!そして、《モモNEX》で、シールドをT(トリプル)・ブレイクッ!」

「っ、そうか!《モモNEX》はパワード・ブレイカーで、攻撃中に、墓地にある火のカード1枚につき、パワーが2000上がる!先輩の墓地は確か──」

 

 勝の墓地には、《モモキングRX》の効果で捨てた《ボルシャック・栄光・ルピア》と、《ボルシャック・バラフィオル》の効果で山札から墓地に置かれた《ボルシャック・ドギラゴン》の2枚。

 つまり、勝はこれを見越して、先に、《ボルシャック・バラフィオル》の効果を解決し、《モモキングNEX》のパワーをあげて、T・ブレイカーに繋げたのだ。

 

「そういうこと。さらに、こっちにはさっき、クリーチャー化して、スピードアタッカーを持ってる、《ボルシャック・バラフィオル》と《ボルシャック・ヒート・ドラゴン》がいる。どっちも、W・ブレイカーで、《栄光・ルピア》もいる。この攻撃、耐えられるかな?」

「ッ、耐えてみてます!」

 

 そう言って、ブレイクされるシールドの3枚を覗く翔。

 

「ッ、きた!シールド・トリガー!呪文、《アイド・ワイズ・シャッター》!効果で、《ボルシャック・バラフィオル》と《ボルシャック・ヒート・ドラゴン》をタップ!次の先輩のターンに、その2体はアンタップしない!」

「っ、やるね……。だけど、攻撃の手を止めないよ。《栄光・ルピア》で攻撃する時、《ボルシャック・バラフィオル》の効果で……《ボルシャック・フォース・ドラゴン》を場に出すよ!シールドをブレイクッ!」

「ッ、トリガーはありません……」

「それなら、ターンエンドだ」

 

 

 



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ACE17:捲りVSガチャ、第一試合の結果は……。

 

 

 

「俺のターン……」

 

 なんとか、勝の攻撃を耐え切った翔。

 無事に翔のターンが渡り、翔はカードを引き、マナを1枚置いた。

 

「今度はこっちの番!さぁ、ガチャの時間だ!6マナで、《ガチャンコ ガチロボ》を召喚ッ!《ガチロボ》の効果で、山札の上から3枚を表向きにして、そへがすべて同じコストのクリーチャーなら、場に出せる!」

 

 勢いよく、6枚のマナをタップし、《ガチロボ》を召喚する翔。

 それと同時に、翔は《ガチロボ》の効果を使い、山札の上から3枚を見る。

 

「──当然、すべて、コスト7です」

 

 そう言って、翔は真ん中の眼鏡を指で当てて、《ガチロボ》で見た3枚のカードを、バトルゾーンに置いた。

 

 現れたのは《覚醒(かくせい)連結(れんけつ) XX(ダブルクロス)DD(ディーディー)Z(ゼータ)》、《秘革(ひかく)求答士(きゅうどうし) クエスチョン》、《R(ロイヤル)S(ストレート)F(フラッシュ)K(カイザー)》の3体だ。

 

「《クエスチョン》!?なんでそんなものが7軸ガチロボに……!?」

「枠が余ったのと、他に良いカードがなかったので、代用で入れてます」

「……なるほど。いや、どちらにしても、このタイミングで、《クエスチョン》はキツい」

 

 7軸ガチロボに《クエスチョン》が入ってることに、勝は驚き、翔が理由を説明すると、勝は理解しつつも、この盤面の《クエスチョン》は辛いのである。

 

「《クエスチョン》の効果!《ボルシャック・フォース・ドラゴン》を選びます!さぁ、先輩!クリーチャーを全て手札に戻す(全バウンス)か、《ボルシャック・フォース・ドラゴン》を破壊するか、選んでくださいっ!」

 

 これが《クエスチョン》の効果。相手に二択を選ばせ、自分の盤面を有利に持っていくのだ。

 

「……ここは、破壊を選ぶ」

 

 苦渋の切断をした勝は《ボルシャック・フォース・ドラゴン》を破壊した。

 

「そうですか……。次に《XXDDZ》が出た時、EX(エクスト)ライフ能力で、シールドを1枚追加します」

 

 次に翔は《XXDDZ》の持つ、EX(エクスト)ライフ能力を解決し、シールドを1枚、追加した。

 EXライフはディスペクターだけが持つ効果で、EXライフを持つディスペクターが場を離れる時、そのシールドを墓地に置けば、一度だけ、場に残ることができる。

 

「さらに、《XXDDZ》の効果で、俺のクリーチャーはすべて、スピードアタッカーを得ます!《XXDDZ》で攻撃!攻撃する時に、《XXDDZ》の『EX(エクスト)ライフ』シールドを墓地に置くことで、先輩のターンのはじめまで、先輩は呪文を唱えられない!W・ブレイクっ!」

 

 ブレイクされる2枚のシールド。そのうちの1枚を、勝は翔に見せる。

 

「……シールド・トリガー!《ボルシャック・テイル・ドラゴン》っ!シビルカウント3で、パワーを上げて、《ガチロボ》とバトル!破壊だ!」

「っ、だけど、《XXDDZ》の効果で、《ガチロボ》はスレイヤーを得ているので、先輩の《テイル・ドラゴン》も破壊です!」

 

 なんとか、次の《ガチロボ》の攻撃から展開を防ぐことに成功する勝。だが、未だに、危機的状況は変わらない。

 

(なんとか、《ガチロボ》は除去できたけど、問題はここからだ……)

 

 勝は《R・S・F・K》に目をやる。

 この《R・S・F・K》には攻撃時にガチンコ・ジャッジを持っている。

 

 ガチンコ・ジャッジは互いの山札の上を見て、そのコストを比べ、ガチンコ・ジャッジをしたプレイヤーのコストが相手以上なら、そのカードが持つ効果を発動できる。

 

 そして、肝心の《R・S・F・K》の効果は自分がガチンコ・ジャッジを中止するか、負けるまで、ガチンコ・ジャッジができ、ガチンコ・ジャッジに勝った分、相手のシールドをブレイクできる。

 

 勝のシールドの残りは3枚。

 そして、翔のデッキの最大コストは7。対して、勝のデッキは《ボルシャック・バラフィオル》が入っている関係上、基本コストは6である。

 一応、コスト7である《ボルシャック・ドギラゴン》は入っているが、肝心の《ボルシャック・ドギラゴン》は今回、デッキに2枚しか採用していない。

 1枚は《ボルシャック・バラフィオル》の効果で墓地に置かれているので、必然的に、ガチンコ・ジャッジをされたら、勝の負けは確定している。

 

 また、《R・S・F・K》のガチンコ・ジャッジの発動は攻撃時であるため、1回目のガチンコ・ジャッジに勝つか、シールド・トリガーが出なければ、勝はそのままダイレクトアタックを受けてしまう。

 

(正直言って、ガチンコ・ジャッジの負けはほぼ確定してる。けど、ほんの僅かな希望に……僕は賭ける!)

 

 腹を括って、勝は覚悟を決めた。

 

「次はコイツです!《R・S・F・K》で攻撃!攻撃する時に、ガチンコ・ジャッジです!」

 

「「ガチンコ・ジャッジっ!」」

 

 勝、コスト7、《ボルシャック・ドギラゴン》。

 

 翔、コスト6、《ガチャンコ ガチロボ》。

 

 よって、ガチンコ・ジャッジに勝利したのは勝である。

 

「そ、そんな!?ガチンコ・ジャッジに負けるなんて……!?」

「僕もまさか、勝てるとは思わなかったよ……」

 

 思わぬ結果に翔と勝の2人は、揃って驚く。

 

「と、とりあえず、《R・S・F・K》で、シールドをブレイクです!」

「……トリガーはないよ」

「《クエスチョン》で、W・ブレイクです!」

「……これも、ないよ」

「……ターンエンドです」

 

 渋々、ターンを終える翔。どうやら、《R・S・F・K》のガチンコ・ジャッジが勝てなかったことが相当(こた)えているみたいだ。

 

「僕のターン。ドロー……。さて、決めるか」

 

 勝はマナチャージせず、5枚のマナをタップする。

 

「《轟炎の竜皇 ボルシャック・カイザー》を召喚っ!シビルカウント3で、スピードアタッカーを得る!《ボルシャック・カイザー》で攻撃!攻撃時に、《ボルシャック・バラフィオル》の効果で、《ボルシャック・ドラゴン》を場に出す!さらに、シビルカウント5で、《ボルシャック・カイザー》をアンタップ!そして、最後のシールドをブレイクっ!」

「っ、トリガーは……ありません!」

 

 最後のシールドにトリガーがなかったことを確認した勝は再び、《ボルシャック・カイザー》に手を置く。

 

「──《ボルシャック・カイザー》でダイレクトアタックっ!」

 

 

 




困った時のボルシャック・テイル・ドラゴン、便利すぎる(苦笑)

という訳で、勝君、第二試合に通過です。


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ACE18:第二試合に通過するのは。

通過メンバー、紹介回です。
軽く読んでもらえると、助かります。


 

 

 

「ふぅー、なんとか勝てた。ギリギリだったけど……」

「まさか、ガチンコ・ジャッジに負けるなんて……勝っていれば、俺にも勝機があったのに……」

「デュエマは時の運だよ。それがわかっただけでも良い経験だよ」

「はい……」

 

 そう言って、勝と翔は先に集まっている咲恋とマリと想の3人と合流する。

 

「お2人とも、お疲れ様です」

「あ、ありがとうございます……」

「そっちもお疲れ様、マリちゃん……」

 

 2人を出迎えてくれるマリに翔はややぎこちなく、返事を返す。

 勝はマリに返事を返しつつも、暗い表情をしている咲恋に目をやり、マリに問いかける。

 

「……ねぇ、マリちゃん。咲恋ちゃん、どうしたの?」

「実は……」

「なんで、サガループがここにいるのよ。普通に考えて、非公認なんだから、ここはカジュアルなデッキを使うでしょ。どう考えても……頭、おかしいんじゃない?ループデッキ使いたいなら、1人回しか、CSで使いなさいよ。本当に本当に、信じられない。やっぱり、デュエマはくso──」

「咲恋ちゃん、ストップ!」

「──ハッ……!」

 

 あまりにも見てられなかったので、これ以上言う咲恋に、勝は待ったをかけると、咲恋は我に返って、勝の方に視線を向ける。

 

「……あら、勝、何かしら?いや、それよりも、アンタは勝ったの?」

「勝ったよ、眼鏡君に……」

「そう……」

 

(やったわ!一回戦負けが私1人じゃないわ!これで待ってる間、八つ当た……じゃなくて、フリーして、時間を潰せるわ!)

 

 咲恋の問いかけに、勝はそう答えると、咲恋は脳裏に、そう思い、密かに喜ぶのだった。

 それを見て、勝は想とマリに勝ったのか、気になり、2人に問いかける。

 

「……因みに、早峰先輩は?」

「当然、勝ったに決まってるだろ?わかりきったことを一々聞くんじゃねぇよ……」

「はいはい。マリちゃんは?」

「なんとかデッキが回ったので、勝つことができました!」

「そうか。それなら良かった。後は……」

「ひよりちゃんだけね」

 

「──ただいま戻りましたぁッー!」

 

 噂をすれば、ひよりは元気な声で、勝達のもとに戻っていた。

 その表情はとても嬉しそうな顔をしていた。

 勝ったのか、と、勝はそう思い、少し笑みを溢し、ひよりに声をかける。

 

「勝ったんだね、ひよりちゃん」

「っ!?なんでわかるんですか!?勝先輩!?」

「そりゃあ、あんだけ元気な声を出せば、誰だってわかるわよ」

「むぅ……せっかく勝ったのに、皆さんに驚かせようと思ったのに……」

 

 いつも間にか、勝ったことが知られたひよりは驚き、咲恋はひよりの疑問にそう答える。

 それを聞いて、ひよりは少し頬を膨らませて、そう言った。

 

「ごめんごめん。けど、すごいじゃないか!この調子なら、優勝できるんじゃない?」

「本当ですか!?」

「んなわけねぇだろ!オレ様に当たったら、テメエは即落ちだぁ!」

「そ、そうでした……けど、早峰先輩や勝先輩が相手でも、私、負けませんよっ!」

「私のこと、忘れてない?」

「勿論、マリちゃんが相手でも、負けません!」

 

 元気に話すひよりに、勝は笑顔を浮かべる。

 

(良かった。いつもの元気なひよりちゃんだ……)

 

 大会が始まるまで、ひよりはお店から離れていたが、秋乃の説得で、戻ってきて、大会に出てから、いつも通りに戻っていたひよりを見て、勝は安堵する。

 

「今から第二試合を始めまーす!参加者の人は座席についてくださーい!」

 

 そう思った矢先、キャルの大きな声が響いた。

 

「呼ばれましたね」

「……じゃ、いくか」

「ですね!」

「……それじゃあ、咲恋ちゃん、眼鏡君、少し待っててね」

「こっちは気にしなくて良いから、アンタは次の試合に集中しなさい」

「……うん」

 

 そう返事を返し、勝達は第二試合に備えた。

 

 

 




次は第二試合です。


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ACE19:“罰怒”&轟轟轟

昨日、ACE15の内容を少し変えました。
どこを変えたかと言うと、参加人数を32人から16人に減らしました。
理由としては、今の投稿スペースだと、30近く書く恐れがあるので、これ以上、自分が書きたいものが書けないのは嫌なので、内容を少し変えました。
それ以外は変わらないので、気軽に読んでください。
今後、こういうことがあるかもしれませんが、何卒、この作品をよろしくお願いします。
前書きが長くなりましたが、ACE19、どうぞ。


 

 

 

「次はテメエが相手か……」

「……よろしくお願いします」

 

 目が合うなり、話をかけるなり、想とマリの2人は嫌悪感を隠しながら、準備を始める。

 

「私は超次元を使います……」

「見せてもらえるか?」

「……どうぞ」

 

 マリ:超次元ゾーン

時空(じくう)喧嘩屋(けんかや)キル》

《時空の英雄(えいゆう)アンタッチャブル》

《時空の戦猫(せんびょう)ヤヌスグレンオー》

勝利(しょうり)のプリンプリン》

《勝利のリュウセイ・カイザー》

《勝利のガイアール・カイザー》

将龍剣(しょうりゅうけん) ガイアール》

銀河大剣(ぎんがたいけん) ガイハート》

 

十中八九(じっちゅうはっく)、モルトビートか、Λ(ラムダ)ビートだな……《ヤヌス》入ってるのが少し気になるが、まぁ、わりと普通の超次元だな……ただ……)

 

「テメエ、いつの時代のデッキを使ってるんだ?頭、オカシイのか?」

「頭が沸いてる不良の先輩には言われたくないですね……」

「……」

 

(ヨーシ、速攻でボコろう。ついでに、わからせてやるかッ!)

 

 試合が始まる前から、ピリピリとした2人の空気に、近くにいる参加者や司会をやってるキャルはやや冷や汗と震えを感じるも、キャルはすぐ、気を取り直して、試合開始の合図をする。

 

「そ、それでは、参加者の皆様、準備ができましたね?これより第二試合を始めます……!」

 

『デュエマ・スタートッ!』

 

 こうして、波乱の予感しかしない、デュエマの非公認大会、第二試合が始まるのであった。

 

 

 

「私のターン。マナチャージして、2マナで呪文、《未来設計図(みらいせっけいず)》を唱えます。呪文の効果で、山札の上から6枚見て、その中からクリーチャーを1枚手札に加えます。私は《コスモ・セブ Λ(ラムダ)》を手札に加えます。残りのカードは好きな順序で山札の一番下に置きます。ターンエンドです……」

「オレのターン!《カンゴク入道(にゅうどう)》を召喚ッ!《ブレイズ・クロー》で、シールドをブレイクッ!」

「……トリガーはありません」

「そうかよ。なら、ターン終了時に、《カンゴク入道》の効果で、シールドを1枚、手札に加える!これで、ターンエンドだ!」

「鬱陶しいですね、そのトカゲ……」

「ハッ!そう思うなら、退かしてみな!」

 

 先行はマリから始まり、マリは切り札である《超電磁(ちょうでんじ) コスモ・セブΛ》を手札に加え、準備に取り掛かるも、想はその隙に、マリのシールドを《凶戦士(きょうせんし)ブレイズ・クロー》でブレイクし、《カンゴク入道》でシールドを減らすかわりに、手札を増やす。

 どちらも動きは順調に見えるが、マリがやや不利のようだ。

 

(正直、《ブレイズ・クロー》よりも、《カンゴク入道》が邪魔ですね……それなら!)

 

 そこまで考えた後、マリは3枚のマナをタップする。

 

「3マナで、《Dis(ディス)ノメノン》を召喚!」

「ゲッ、そいつ、入ってんのかよ……!」

 

 嫌そうな顔をする想に、マリは今出した《Disノメノン》に手を置く。

 

「《Disノメノン》はマッハファイターを持っています。アンタップ状態の《カンゴク入道》に攻撃します。破壊です」

「そっちか……まぁ、良いけど、《ブレイズ・クロー》を放置して良いのか?」

「鬱陶しいですが、こっちの手札を増やせるので、放置します。後、いざとなったら、《Disノメノン》の(まと)になります……」

「ほんと、食えねえ女だなぁ……テメエといい、生徒会長といい、焔といい、何でウチの学校の女は皆、こうなんだ?」

「知りませんよ。バトルに勝った《Disノメノン》の効果で、山札の上を見て、手札に加えるか、マナに置くことができます……今回はマナに置きます。ターンエンドです」

 

 試合中にも関わらず、2人は互いに毒舌(どくぜつ)を吐きながら、デュエマを続ける。

 

「あの2人、いくら非公認だからって、緊張感なさすぎでしょ……後、毒舌を吐きすぎだし……」

「ま、まぁ、それだけ、2人の仲は良いって事ですよ、生徒会長……」

「ふぅ〜ん」

 

 そんな2人を他所(よそ)に、咲恋と翔はそんな会話をしていた。

 

(本当に仲が良いなら良いけど。あの2人の場合、互いに毛嫌いしてるし、どちらかというと、仲が悪いし……でも、なんというか……なーんか、それとは別に、違和感を感じるんだけど、なんだろう……?)

 

 ふっと、咲恋はそんなことを思い、疑問を感じながらも、2人の試合を見守るのだった。

 

「オレのターンッ!《カンゴク入道》は破壊されたが、《ブレイズ・クロー》が残ってるから、ナンの問題もねぇ!マナチャージ!2マナで、《斬斬人形(ギルギルにんぎょう)コダマンマ GS(じーえす)》を召喚ッ!効果で、シールドを1枚手札に加える!この時、S(ストライク)・バックを発動ッ!」

「S・バック……!?」

 

 まさかの効果に、マリは珍しく驚いてしまった。

 

「手札に加えた火のカードを墓地に置くことで、《デュアルショック・ドラゴン》をノーコスト召喚だッ!コイツが出た時、オレのシールドを1枚、墓地へ!さらに!オレはこのターン、火のクリーチャーを2体召喚したから、マスターB(バッド)A(アクション)D(ダイナマイト)、発動ッ!」

「っ、来ますか……!」

 

 マリが身構える中、想は手札2枚のうち、1枚のカードを手にする。

 

「──喧嘩上等(けんかじょうとう)ッ!コイツですべて、ブッ飛ばす!きやがれ、《“罰怒(バッド)”ブランド》を召喚だァッ!」

「っ……!」

 

 召喚口上を勢いよく叫び、机を叩きつけ、想は《“罰怒”ブランド》を召喚した。

 本来、7マナ必要な《“罰怒”ブランド》だが、ビートジョッキー特有のB・A・D能力の上位互換、マスターB・A・D能力で、1マナで召喚したのだ。

 

(手札が残り1枚……まさか、あれがあるんじゃ……)

 

 しかし、マリは想が出した《“罰怒”ブランド》よりも、残り1枚の手札を見る。

 

「そのうわべっつらの表情、歪ませてやるよッ!」

 

 想は最後の1枚をマリに勢いよく見て、召喚口上を叫ぶ。

 

(ごう)、轟、轟、と、(うな)れ!叫べ!エンジンを鳴らせ!マスターG(ゴゴゴ)G(ガンガン)G(ギャラクシー)、発動ッ!《轟轟轟(ゴゴゴ)ブランド》を召喚ッ!」

 

 

 



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ACE20:妖精の力と熱血星龍

妖精の力、その力とは一体?


 

 

 

 手札が《轟轟轟ブランド》だけの時、マスターG・G・Gの効果で、マナを払わずに召喚できる殿堂カード。それが《轟轟轟ブランド》だ。

 

「やっぱり、来ましたか……(正直、来てほしくなかったですが……)」

 

 マリにとっては、あまり来てほしくなかったカードである。

 

「《轟轟轟ブランド》が出た時、オレのマナゾーンに火のカードが1枚以上あるなら、山札からカードを1枚ドローできる!」

 

 そう言って、想はカードを1枚引く。

 さらに、想のクリーチャーはすべて、《“罰怒”ブランド》の効果で、スピードアタッカーを得ているのだ。

 

「くらいやがれッ!オレの攻撃を!まずは《“罰怒”ブランド》で攻撃!W・ブレイクだッ!」

「……トリガーはありません」

「そうか!なら、《轟轟轟ブランド》も攻撃だッ!W・ブレイクッ!」

「断念ですが、それ以上は通しません。シールド・トリガー、《クロック》です。召喚して、貴方のターンの残りを飛ばします」

「……クソ、仕留め損ねたか!」

 

 なんとか、トリガーの《クロック》を引いて、難を逃れるマリ。

 ただし、マリの表情はとても険しかった。

 

(なんとか耐えましたけど、このターンで仕留める方法がないですわね……一先ず、ドローしてから考えますか……)

 

 そう脳裏に思ったマリはカードを引くと、「あ……」と、小さく呟いた。

 

「ア?どうした?」

 

 それを見た想は問いかけるも、マリは返答せず、引いたカードと手札を見て、考えると、ニヤリと、不適な笑みを溢した。

 

「先輩、このデュエマ、私の勝ちです」

「ア?何を言って……」

 

 想が言い切るより前に、マリはマナチャージせず、1枚のマナをタップした。

 

「呪文、《フェアリー・ギフト》。次に召喚するクリーチャーのコストを3軽減します」

「……は?」

 

 マリが唱えた自然単色の呪文のカード、《フェアリー・ギフト》に想は間の抜けた声を漏らした。

 何故なら、そのカードは想が出した《轟轟轟ブランド》と同じ殿堂カードだからだ。

 

「い、いや、たった6マナのクリーチャーで、この状況をひっくり返すカードなんて、あるわけ──あ」

 

 そこまで言いかけた時、想はマリの超次元ゾーンを見て、思い出す。この状況をひっくり返すカードの存在を。

 

「出番です。私の切り札にして、私のヒーロー、《龍覇(りゅうは) グレンモルト》を召喚します」

 

 D(ドラゴン)S(サーガ)の主人公、グレンモルトがドラグナーの力を手にした姿、《龍覇 グレンモルト》である。

 

「マジかよ……!」

「《グレンモルト》が場に出た時の効果で、超次元ゾーンからコスト4以下の火のドラグハート・ウェポンを1枚、場に出して、《グレンモルト》に装備します!」

 

 そう言って、マリは超次元ゾーンにある、《銀河大剣 ガイハート》に手を置いた。

 

「私は《銀河大剣 ガイハート》を装備します!《ガイハート》を装備したクリーチャーはスピードアタッカーを得ます!《グレンモルト》で攻撃!シールドをブレイクです!」

「ッ、トリガーはねぇ!

「それなら、《クロック》で攻撃!攻撃する時に、手札の《バルチュリス》を見せます!」

「ッ、そいつは……!?」

 

 それは想が勝と初めてデュエマした時に使ったカード、《龍装者 バルチュリス》だった。

 想は知っている。このタイミングで、そのカードの強力さを。そして、今度は自分に牙を向けられる恐怖を。

 

「クソ、このデッキにトリガーなんて、そんなに入ってねぇんだよッ!」

 

 そう悪態をつけながらも、僅かにトリガーがあることを期待しながら、ブレイクされたシールドの中を確認するも、トリガーはなかった。

 

「トリガーはありませんね?それなら、《バルチュリス》を場に出し、《ガイハート》の龍解条件を解決します……」

 

 そう言って、マリは再び、《銀河大剣 ガイハート》に手を置く。

 自分のクリーチャーが2回攻撃した後、《銀河大剣 ガイハート》は、真の姿を表す。

 

「……あの人や彼女達、そして、貴方よりも、私は熱くありませんが、私にも、情熱の心があります──」

 

 咄嗟にマリは勝や秋乃、咲恋達、そして、目の前で一番嫌いな想の顔を思い浮かばせた。

 

「──これが私の龍解にして、私の心の情熱の化身、《熱血星龍(ねっけつせいりゅう) ガイギンガ》です!」

 

 それは今のマリを映し出したかのようなカード、《熱血星龍 ガイギンガ》の姿がマリの横に薄らと、浮かび出した。

 

「な、何だァッ!?」

 

 突然、マリの横に薄ら、浮かび出した《ガイギンガ》に、想は驚くも、マリは気にせず、デュエマを続けた。

 

「《バルチュリス》で、最後のシールドをブレイク!」

「ッ、トリガーは……ねぇか……」

 

 あったとしても、今のマリの場には攻撃可能なクリーチャーが《Disノメノン》と、先程、龍解した《ガイギンガ》の2体がいるので、火単色デッキで、2体を止める術は限られている。

 

「これでトドメです。《熱血星龍 ガイギンガ》で、ダイレクトアタックっ!」

「グッ、ハァ……!?」

 

 映し出した《ガイギンガ》は想の顔を思いっきり殴った。

 

 勝者、マリ。これにて、マリは準決勝に通過したのだ。

 

 

 




正解は殿堂カードの《フェアリー・ギフト》です!


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ACE21:準決勝に駒を進めたのは。

 

 

 

「《ボルシャック・カイザー》で、ダイレクトアタックっ!」

 

「《ヴァリヴァリウス》で、ダイレクトアタックです!」

 

 想とマリのデュエマが終わった少しした後。勝とひよりのダイレクトアタックの宣言が響き、見事、2人は準決勝に駒を進めた。

 

「ふぅー、なんとか勝てた……」

「ぎ、ギリギリでしたが、これで次は──準決勝です!」

 

 そう2人は会話しながら、先に席を取って、休憩をしている咲恋達のもとに向かった。

 

「お疲れ様です、勝様」

「ひよりちゃんもお疲れー」

「そっちもお疲れ様、マリちゃん。そっちはどうだった?」

「勝ちました。そこにいる、不良の先輩に……」

「「……え?」」

 

 突然、想に指を指しながら、マリから告げられた真実に、勝とひよりの2人は揃って、驚きの声を上げた。

 

「……え?待って、そんな、まさか……早峰先輩が負けた……?何かの冗談だよね、咲恋ちゃん……?」

 

 あまりの信じられない出来事に、勝は咲恋に問いかけた。

 問いかけられた咲恋はふふっと、少し笑って、こう言った。

 

「いやー。まさか、2年の勝に負けて、今度は1年のマリちゃんに負けるとは、コイツもついに、年貢の納め時かと思ったよ……!」

 

 そう言って、咲恋は再度笑う。今度は高笑いである。

 

「……え〜と、早峰先輩、ドンマイです!」

「同情するな!同情するなら、オレに変われ、ヒヨコ!」

「だ、誰がヒヨコですか!?私はひよりです!間違えないでくださいっ!」

 

(これは……)

 

 重症だ、と、勝は脳裏に、そう思った。

 正直な話、想の実力なら、決勝戦まで余裕で通過すると思っていた。

 一度しか戦ってない勝から見ても、想の実力は本物だ。

 そんな彼が負けるとは、正直なところ、信じられない話である。

 ただ、勝はマリと一緒に暮らしているため、ある程度、彼女のデュエマの腕も知っている。

 総合的に、2人の実力を考えると……。

 

「……有り得なくはない、か」

「テメエ!何を根拠に言ってやがる!内容次第ではデュエマでボコすぞ?あぁ?」

「そこは表に出ろ、ではなく、デュエマなんですね……」

 

 想の発言に、翔はそう分析する。

 

「はいはーい、そこの3人!もうすぐ、準決勝だから、座席につきなさーい!じゃないと、棄権扱いにするわよー!」

「は!?ヤバい!?ひよりちゃん、マリちゃん、いくよ!」

「「はい(です)!」」

 

 仲裁に入ったキャルの言葉に、勝、ひより、マリの3人は急いで、座席に着くのであった。

 

 

 

「んで、準決勝の相手がひよりちゃんか……」

「先輩!あの時のひよりと同じだと思わないでくださいね!」

 

 そう元気よく言うひよりに、勝は少し微笑んだ。

 

「……そうか。それなら、少し期待しているよ、ひよりちゃん」

「っ!?」

 

 直後、勝の雰囲気があの時──はじめてひより(自分)とデュエマ時と比にならないオーラを増していた。

 

「……先輩、もしかして、あの時、手加減してました?」

「いいや、全力だよ。あの時も、今も、僕は常に全力でやっているよ。強いて言えば、あの時よりも、僕は強くなっているんだろうな……」

「先輩……?」

 

 勝の瞳はどこか、上の空で、哀しみの目だった。

 ひよりはそんな勝を心配するも、今の自分達は大会に参加しているプレイヤーだ。

 ──つまり。

 

「先輩。今は私を見てください。成長した私の姿を……見てください、先輩っ!」

「っ、そうだね……今は君とのデュエマを楽しもうじゃないか!」

 

 そう気合を入れると、勝はひよりと相対する。

 

「私は《禁断〜封印されしX〜》と超次元ゾーンを使います!」

 

 ひより:超次元ゾーン

《将龍剣 ガイアール》

《銀河大剣 ガイハート》

覇闘将龍剣(はどうしょうりゅうけん) ガイオウバーン》

闘将銀河城(とうしょうぎんがじょう) ハートバーン》

無敵王剣(むてきおうけん) ギガハート》

爆銀王剣(ばくぎんおうけん) バトガイ刃斗(ハート)

無敵剣(むてきけん) プロト・ギガハート》

(はじ)まりの龍装具(りゅうそうぐ) ビギニング・スタート》

 

「モルネク、か……」

 

(しかも、《禁断》入り……《星樹(スタージュ)》がないから、封印を剥がしながら、雑な2マナブーストはないとはいえ、《ボルドギ》を警戒しないにこしたことはないな……)

 

 勝はひよりの《禁断》とひよりのデッキに入っているであろう、《ボルシャック・ドギラゴン》に警戒しながら、攻撃に応じなければならない、と、そう脳裏に考える。

 

「皆さん、準備はできましたね?それでは、これより準決勝を始めます!」

 

『デュエマ・スタートッ!』

 

 

 

 




次回、勝対ひより、二度目の対決!勝つのはどっちだ!?

感想など、お待ちしています!


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ACE22:再戦、似たもの同士。

 

 

 

 ついに始まった勝とひよりの準決勝。

 この試合に勝った者が決勝に駒を進めれるのだ。

 

「──呪文、《メンデルス・ゾーン》!2枚とも、ドラゴンだから、2ブーストだ!」

「こっちも、《メンデルス・ゾーン》です!2枚とも、ドラゴンなので、2ブーストです!」

 

 互いに、ドラゴンデッキの十八番、《メンデルス・ゾーン》を唱え、マナを一気に増やす。

 そして、先行、勝の3ターン目。勝はこのターンで、一気に攻めようとしていた。

 

「僕のターン!《モモキングRX》を召喚!効果で、手札を1枚捨てて、2枚ドロー!その後、《モモキングRX》を《モモキングNEX》にスター進化だっ!」

「っ、《モモキングNEX》、ですか……!」

 

 勝の場に現れた《ボルシャック・モモキングNEX》に、ひよりは眉をひそめた。

 以前、勝とはじめてデュエマをした時、ひよりが使っていたが、今回はボルシャック使いである、勝が使っているので、何ら不思議ではないが、やはり、相手に使われると、ほんの僅か、不愉快を感じざるを得ないひよりだった。

 

「あの時は、君が使っていたが、今回は僕が使わせてもらうよ……《モモキングNEX》の効果で、山札の上を見て、それが火のクリーチャーか、レクスターズなら、場に出せる!」

 

 そう呑気に思い出話に浸りながらも、勝は《ボルシャック・モモキングNEX》の効果を使い、山札を捲る。

 捲られたのは《ボルシャック・ヒート・ドラゴン》。火のクリーチャーなので、バトルゾーンに出せる。

 そして、《ボルシャック・ヒート・ドラゴン》はスピードアタッカーとW・ブレイカーを持っている。

 さらに、先程、《王来英雄 モモキングRX》で墓地に置いた《ボルシャック・バラフィオル》と《メンデルス・ゾーン》の2枚で、《ボルシャック・モモキングNEX》は攻撃中、パワー1300のT・ブレイカーだ。

 つまり、勝はこのターン、ひよりのシールドをすべてブレイクできるのだ。

 

「ここは……《ボルシャック・ヒート・ドラゴン》で、攻撃!W・ブレイクっ!」

「……っ!?」

 

(《モモキングNEX》から攻撃、ではなく、《ヒート・ドラゴン》から攻撃……!?)

 

 何故?と、そこまで考えた後、ひよりはあることに気づいた。

 勝は恐らく、ひよりのデッキに入っているであろう、《熱血龍(ねっけつりゅう) バトクロス・バトル》、または《熱血龍 バトクロス・ハンマー》に警戒して、先に《ボルシャック・ヒート・ドラゴン》から攻撃したのだ。

 どちらも場に出た時に、相手のクリーチャーとバトルする効果があり、パワー6000の《ボルシャック・ヒート・ドラゴン》よりパワーが上なので、先に《ボルシャック・ヒート・ドラゴン》から攻撃したのだ。

 

(流石ですね、先輩!けど、残念ながら、私のデッキ、どっちも入っていないんですけど……)

 

 勝のプレイングに感心しながらも、ひよりは自分のデッキに入っていないカードを警戒されて、少し複雑な気持ちに駆られた。

 そんな気持ちに駆られながらも、ひよりはブレイクされたシールドの中を確認し、その中には、 トリガーがあった。

 

「っ、トリガーは……ありません!」

 

 だが、ひよりは、そのトリガー、《炎龍覇(えんりゅうは) グレンアイラ》を使わなかった。

 理由はひよりの手札にある、《超戦龍覇(ちょうせんりゅうは) モルトNEXT(ネクスト)》にある。

 これが、今回のひよりの切り札である。

 そして、《超戦龍覇 モルトNEXT》のコストは7。現在、ひよりのマナは4枚。マナチャージしても、5マナで、7マナ必要な《超戦龍覇 モルトNEXT》を出すことはできない。

 だが、《炎龍覇 グレンアイラ》の下面の呪文側、《「助けて!モルト!!」》は、ドラグナーを持つクリーチャーをただで出せる。

 つまり、7マナ必要な《超戦龍覇 モルトNEXT》を2ターン早く、場に出せるのだ。

 つまり、ひよりは次のターンに繋げるため、あえて、トリガーである、《炎龍覇 グレンアイラ》を使わず、手札に温存したのだ。

 

(問題は、次の《モモキングNEX》の攻撃で、捲られた火のクリーチャーがスピードアタッカーを持っていたら、私は確実に……負ける!)

 

 多少の運が絡むとはいえ、ひよりは次の《ボルシャック・モモキングNEX》の攻撃で、出てくる火のクリーチャーがスピードアタッカーを持っていないことを祈るのだった。

 

「次、いくよ!《モモキングNEX》で、攻撃!効果で山札を捲って……火のクリーチャー、《ボルシャック・フォース・ドラゴン》を場に出すよ!効果は不発だけど、関係ない!《モモキングNEX》で、シールドをT・ブレイクっ!」

「っ、トリガーはありません!」

「僕はこれで、ターンエンドだ!」

「ふぅー……」

 

 なんとか、このターンを耐えることができた、と、ひよりはそう安心するも、依然として、危機的状況には変わりない。

 

(スピードアタッカーが出なかっただけ、まだマシだけど、除去しにくい、《フォース・ドラゴン》が出たのは、正直……しんどい!)

 

 けれど、諦める理由にはならなかった。否、ひよりは諦めるわけにはいかなかった。

 思えば、ここに来て、彼女は失敗続きだった。その失敗を払拭するため、彼女は諦めるわけにはいかなかった。

 恐れず、前に進め、と、ひよりは自身に言い聞かせる。

 何事も挑戦あるのみ。何故なら、自分は──否、人は生まれ持って、挑戦者だからだ。

 故に、彼女はまだ、恐れるわけにも、諦めるわけにもいかなかった。

 

「私の……ターンっ!」

「……っ!?」

 

(今の感じ、まさか……!?)

 

 ひよりがカードを引くと、勝は何かを感じた。

 

「ひよりちゃん、君は……」

 

「──先輩!」

 

「っ!?」

 

 勝が何かを言い切るよりも前に、ひよりは口を開き、手札を1枚、マナに置いた。

 

「……見ていてください、先輩!これが私の全力です!」

 

 勢いよく、5枚のマナを倒し、ひよりは1枚のカードに想いを乗せた。

 

「呪文、《「助けて!モルト!!」》!効果で、手札からドラグナーを1体、場に出せます!」

 

 突如、彼女が手にした、もう1枚のカードが赤く光った。

 

(ひよりちゃん、君は、やっぱり……)

 

「人は常に挑戦者!それはつまり、挑戦者(チャレンジャー)!ならば、その挑戦を、頂点に変えるまでです!駆け巡れ、《超戦龍覇 モルトNEXT》!」

 

 それは何事にも恐れず、仲間と共に前に進み、成長した火のドラグナー、《グレンモルト》が進化した姿、《超戦龍覇 モルトNEXT》だった。

 

 

 



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ACE23:ひより、覚醒。

覚醒とは?
それは皆が夢みる、アレです。
それでは、ACE23、どうぞ。


 

 

 

「火のコマンドが出たので、《禁断》の封印を一つ、墓地に置きます!そして、《モルトNEXT》のマナ武装5、発動っ!超次元ゾーンから、ドラグハート・ウェポン、《爆銀王剣(ばくぎんおうけん) バトガイ刃斗(ハート)》を場に出して、《モルトNEXT》に装備します!」

 

 ひよりの超次元ゾーンから《爆銀王剣 バトガイ刃斗》が浮き上がり、そのまま《モルトNEXT》に装備された。

 

「《バトガイ刃斗》を装備したクリーチャーはスピードアタッカーを得ます!《モルトNEXT》で攻撃っ!この時、《バトガイ刃斗》の効果、発動します!山札の上を見て、それが進化ではないドラゴンなら、場に出せますっ!」

 

 ひよりの山札から捲られたのは、ひよりのお気に入りのカード、《雷龍 ヴァリヴァリウス》だった。

 

「──自分のターン中に自分のドラゴンが出たのが、最初でなければ、《バトガイ刃斗》を龍解できます!」

 

 ひよりは《爆銀王剣 バトガイ刃斗》を手に置いた。

 

「爆熱、銀河、王剣、《爆熱王(ばくねつおう)DX(デラックス) バトガイ銀河(ぎんが)》に、龍っ、解っ、ですっ!」

 

 そう高らかに、ひよりは《爆銀王剣 バトガイ刃斗》を《爆熱王DX バトガイ銀河》に裏返した。

 

「そして、《モルトNEXT》で、《モモキングNEX》に攻撃です!」

「っ、パワーは同じ……相打ちか……!けど、進化元の《モモキングRX》は場に残る!」

「それも破壊します!《ヴァリヴァリウス》で、《モモキングRX》に攻撃!攻撃時に、マジボンバー7、発動ですっ!山札を見て……ビンゴです!もう一度、《モルトNEXT》を場に出しますっ!」

「またぁっ!?」

 

 また《超戦龍覇 モルトNEXT》が出たことに、勝は驚き、げんなりする。

 それと同時に、火のコマンドが出たことで、ひよりは《禁断》の封印を1枚、墓地に置いた。

 

(しかも、このタイミングの《モルトNEXT》って、相当、やばい……!)

 

「《モルトNEXT》のマナ武装5で、超次元ゾーンから、今度はドラグハート・フォートレス、《闘将銀河城(とうしょうぎんがじょう) ハートバーン》を場に出します!

「あ……」

 

 終わった、と、勝は口には出さず、脳裏で、そう思った。

 

「そして、《ヴァリヴァリウス》で、《モモキングRX》とバトル、破壊です!」

 

 パワー11000の《雷龍 ヴァリヴァリウス》に、パワー6000の《王来英雄 モモキングRX》では、パワーで負け、あっさり破壊される。

 

「まだです!《ハートバーン》で、スピードアタッカーを得た、《モルトNEXT》で、《ボルシャック・ヒート・ドラゴン》を攻撃です!」

 

 今度は《ボルシャック・ヒート・ドラゴン》が破壊され、勝の場には、タマシード状態の《ボルシャック・フォース・ドラゴン》だけになった。

 

「──そして、攻撃の後、《モルトNEXT》の(ドラゴン)マナ武装5、発動ですっ!」

「……っ!」

 

 突如、ひよりのマナゾーンからドラゴンのお叫びが鳴った。

 

(ひよりちゃん、君はやっぱり、クリーチャーの声が聞こえているのか……?)

 

 ひよりのマナゾーンから、龍の咆哮を聞いて、勝は脳裏にそう思った。

 

「攻撃の後、《モルトNEXT》をアンタップっ!そして、ドラゴンがアンタップしたので、《ハートバーン》の龍解条件、達っ、成っ、ですっ!」

 

 そう叫ぶと、ひよりは《闘将銀河城 ハートバーン》を裏返した。

 

「──これが私の頂点に達した、覇道の龍っ!《超戦覇龍(ちょうせんはりゅう) ガイNEXT(ネクスト)》、龍っ、解っ、ですっ!」

「……っ!?」

 

 龍解した直後、ひよりの後ろから薄らと、《超戦覇龍 ガイNEXT》が浮かび上がり、お叫びをあげた。

 

「な、何っ!?」

「今の、ドラゴンの叫び声が、聞こえた、気がする……」

「は?何言ってんだよ?そんなこと、あるわけないだろ?」

「だ、だよなぁ……」

「いや、でも、それなら、今のは……?」

 

 突然の叫び声に、店内にいる誰かが驚き、客人の人達が動揺を隠せなかった。

 

 しかし、そんな中、勝はひよりと向き合い、デュエマに集中していた。

 

(今ので、確信した。ひよりちゃんは、真の決闘者(デュエリスト)だ……!)

 

 それは、漫画やアニメにしか存在しない空想の存在、空想の称号、それが真の決闘者(デュエリスト)だ。

 ひよりはその真の決闘者(デュエリスト)だと、勝はそう確信したのだ。

 

「先輩!行きます!《バトガイ銀河》で攻撃!攻撃する時、カードを引いて、手札から進化ではないドラゴンを1体、場に出します!出すのは、これです!《永遠(とわ)のリュウセイ・カイザー》を場に出します!火のコマンドが出たので、《禁断》の封印を一つ、外します!」

「っ、今度は《永遠リュウ》か!?」

 

 現れた《永遠のリュウセイ・カイザー》に、勝は悪態を吐きつつ、冷静に、この状況を打開する手を考える。

 

(今の僕の手札には、《ボルドギ》はない……だったら……!)

 

 突如、勝の瞳の色が青から赤く、紅色の炎に変わった。

 

「……このシールドにすべてをかける!来い、ひよりちゃん!」

「っ、いきます!先輩!」

 

 

 

「──っ!?」

「お嬢様?」

「……なんでもありませんわ」

 

(何も起こらなければ良いですが……)

 

 勝とひよりの対戦に、秋乃は密かに、胸騒ぎを感じた。

 

 

 



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ACE24:決着、そして……。

決着です。


 

 

 

「……このシールドにすべてをかける!来い、ひよりちゃん!」

「っ、いきます!先輩!《バトガイ銀河》で、T・ブレイクですっ!」

 

 5枚のシールドにすべてをかけた勝はひよりの最初の攻撃、《爆熱王DX バトガイ銀河》に備える。

 

「シールドチェック!トリガーは……」

 

 ブレイクされた3枚のシールドを勢いよく掴み、中を確認する勝。

 1枚でも良い。この状況を打開するトリガーが1枚でもあれば、と、勝はそう脳裏に願うも、トリガーはなかった。

 

「どうやら、トリガーはなかったみたいですね、先輩」

「っ!?」

 

 顔に出ていたのか、ひよりは勝の顔の表情を読み取り、そう思った。

 

「次、いきます!《永遠のリュウセイ・カイザー》で、W・ブレイク!」

「頼む、きてくれ……!」

 

 逆転を狙うことを強く祈り、勝は残り2枚のシールドを確認した。

 その中には、革命0トリガーを持った《ボルシャック・ドギラゴン》と、シールド・トリガーを持ったカードだった。

 

「きたっ!シールド・トリガー!呪文、《スーパー・スパーク》っ!効果で、ひよりちゃんのクリーチャーをすべて、タップっ!」

「っ、そんな……!」

 

 また止められた、と、ひよりはそう思った。

 あの時と同じ。勝と初めてデュエマをした時と、同じ状況だった。

 

「……ターンエンドです」

 

 渋々、ひよりは勝にターンを渡した。

 それと同時に、ひよりの後ろに浮かび上がっていた《超戦覇龍 ガイNEXT》がゆっくり消えていった。

 それを見た勝は瞳の色を、赤い紅色の炎から青に戻した。

 

「僕のターン、ドロー……」

 

 静かにカードを引き、勝はマナチャージせず、マナゾーンのカードを5枚タップした。

 

「もう一度、《モモキングRX》を召喚!効果で、手札を1枚捨てて、《ボルシャック・ドギラゴン》に進化!場に出た《ボルシャック・ドギラゴン》の効果で、《永遠のリュウセイ・カイザー》とバトル!破壊だ!」

「……っ!」

 

 ひよりの《永遠のリュウセイ・カイザー》の効果で、タップ状態で出た《ボルシャック・ドギラゴン》がバトルに勝った直後、《ボルシャック・ドギラゴン》がアンタップした。

 これは進化元の《王来英雄 モモキングRX》のシンカパワーの効果で、このクリーチャーの上に進化したクリーチャーがバトルに勝った時、アンタップする、という効果だ。

 よって、勝の《ボルシャック・ドギラゴン》がアンタップし、ひよりにダイレクトアタックができるのだ。

 

「……いくよ、ひよりちゃん」

「……はい」

 

「《ボルシャック・ドギラゴン》で、ダイレクトアタックっ!」

「……革命0トリガーはありません。私の負けです」

 

 勝者、勝。これにて、決勝戦に駒を進めたのは勝である。

 

 

 

「どうやら、私の心配は杞憂でしたね」

 

 そう言うと、秋乃はブラックキャットから出ようと足を動かす。

 それを見たエリカは最後まで見届けないのか、疑問に抱き、秋乃に問いかける。

 

「?最後まで、見届けないのですか?お嬢様?」

「ここまで来れば、勝つのは勝様に決まってますわ。結果がわかった試合を最後まで見る必要性がありますの?」

「ですが、デュエマは時の運。最後まで、誰が勝つのか、わからないものだと、私は思います」

「……」

 

 確かに。エリカの言葉には一理ある。そう思った秋乃は決勝戦まで、見届けようと思い、足を止めた。

 

 ──その時だ。

 

「キャアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァッー!」

 

「「!?」」

 

 突然、マリの叫び声が店内に響き、2人はマリのもとに駆け寄った。

 

 

 




次で決勝戦です。
長かった…実に長かった…。
ようやく、この作品の物語が次に進められます。

感想などありましたら、言ってください。
大変、励みになります。


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ACE25:敗北するマリ。

 

 

 

 時は遡ること、数分前。

 準決勝は勝とひよりの2人だけではなく、隣で対戦しているマリと対戦相手の女性も決勝に進むため、デュエマをしていた。

 そして、バトルゾーンの状況はマリが有利に立っていた。

 

「龍解!《熱血星龍 ガイギンガ》!《ガイギンガ》で、シールドをW・ブレイク!」

 

 マリは《熱血星龍 ガイギンガ》の龍解に成功し、女性の残りのシールドを2枚、ブレイクした。

 マリにはまだ攻撃可能な《Disノメノン》がいる。

 ここでトリガーが出なければ、マリは決勝戦に駒を進められる。

 

「──シールド・トリガー!呪文、《ドラゴンズ・サイン》!」

「……ッ!」

 

 しかし、その想いは虚しく、1枚のトリガー呪文、《ドラゴンズ・サイン》で、阻まれた。

 まさかのカードに、マリは驚き、女性は気にせず、《ドラゴンズ・サイン》の効果を発動する。

 

「《ドラゴンズ・サイン》の効果で、手札から光のコスト7以下の進化ではないドラゴンを1体、場に出せる!手札から《ザーディクリカ》を場に出すわ!《ザーディクリカ》のEX(エクト)ライフ!山札からシールドを1枚、追加するわ。さらに、《ドラゴンズ・サイン》で出たクリーチャーはブロッカーを得る!」

「ッ、そんな!?このタイミングで《ザーディクリカ》……!?」

 

 女性が手札から場に出した《龍風混成(りゅうふうこんせい) ザーディクリカ》に、マリは驚く。

 何故なら、《ザーディクリカ》は、場に出た時、手札か、墓地から、コスト7以下の呪文をただで唱えられるのだ。

 

「《ザーディクリカ》の効果で、わたしは手札から呪文、《英知と追撃の宝剣(エターナル・ソード)》を唱えるわ!」

「《英知と追撃の宝剣(エターナル・ソード)》っ!?」

 

 それはかつて、強力すぎるあまり、殿堂入りされた水と闇の多色呪文、《英知と追撃の宝剣(エターナル・ソード)》だった。数ヶ月前に、殿堂解除され、4枚使えるようになった、そのカードの能力は二つ。

 一つは、相手のクリーチャーを2体選び、相手はその2体のどちらかを手札に戻(バウンス)し、どちらかを破壊するか、だ。

 もう一つは、相手のマナゾーンのカードを2枚選び、相手はその2枚のどちらかを手札に戻(バウンス)し、どちらかを墓地に置くか、だ。

 

「あなたの場の《Disノメノン》と《龍覇 グレンモルト》の2体を選ぶわ!さぁ、どちらを破壊し、どちらを手札に戻すの?」

「ッ、《ノメノン》を手札に戻し、《グレンモルト》を破壊します……」

「次はマナゾーンだけど……そうね、水が少なそうだし、《コスモ・セブΛ》と《クロック》の2枚を選ぶわ」

「……《クロック》を墓地へ、《Λ》を手札に戻します。ターンエンドです」

「わたしのターン……」

 

 攻撃を止められたマリは渋々、ターンエンドを宣言し、相手にターンを渡す。

 ターンを渡された女性はカードを引き、7枚のマナをタップした。

 

「《覚醒連結 XXDDZ》を召喚っ!EXライフ!シールドを追加して、スピードアタッカーを得た《XXDDZ》で攻撃!攻撃する時に、手札の《(とき)法皇(ほうおう) ミラダンテ(トゥエルブ)》の革命チェンジを発動するわ!」

「……ッ!」

 

 女性の手札から見せられた《時の法皇 ミラダンテⅫ》に、マリは驚き、絶望した。

 

「まずは《XXDDZ》のアタックトリガーで、《XXDDZ》自身のEXライフシールドを墓地に置いて、あなたの呪文を封じるわ!その後に、《時の法皇 ミラダンテⅫ》に革命チェンジっ!」

 

 場と手札の《XXDDZ》と《ミラダンテⅫ》を入れ替え、《ミラダンテⅫ》をタップ状態で、場に出した。

 それと同時に、女性の後ろから、薄らと、黒い《ミラダンテⅫ》が姿を現した。

 

「っ、そんな、貴方は、一体……!?」

 

 それを見たマリは驚き、問いかけるも、女性は返答せず、《ミラダンテⅫ》の必殺技を発動した。

 

「《時の法皇 ミラダンテⅫ》のファイナル革命、発動っ!相手はコスト7以下のクリーチャーを召喚できない!」

 

 これにより、マリの最強のシールド・トリガー・クリーチャー、《クロック》が止められた。また、《XXDDZ》の効果で、呪文も止められたため、マリは自分の身を守る術を完全に封じられたのだ。

 

「さらに、手札から光のコスト5以下の呪文を唱えられるけど、今回はないわ。よって、カードを1枚ドロー……T・ブレイクっ!」

 

 守る術を完全に失ったマリに、《ミラダンテⅫ》が襲いかかった。

 

「ッ、トリガーは……あった!けど……」

 

 ブレイクされたシールドの中に《クロック》があったが、《ミラダンテⅫ》の効果により、コスト3の《クロック》は場に出せない。

 

「……これで、終わり!《ザーディクリカ》でダイレクトアタックっ!」

 

 直後、《ザーディクリカ》の幻影がマリに襲った。

 

(すみません、勝様。どうやら、私は……)

 

 隣でデュエマをしている勝に、マリは謝罪しながらも、幻影の《ザーディクリカ》の攻撃を喰らった。

 

「キャアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァッー!」

 

 幻影の《ザーディクリカ》の攻撃に、マリは叫び声をあげ、その場に倒れた。

 

 

 



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ACE26:恐れていた出来事。

 

 

 

「キャアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァッー!」

 

 何事かと思った。

 突然、隣で、準決勝をしていたマリの叫び声が響いた。

 振り向くと、マリは椅子から倒れていた。

 不自然な倒れ方だったけど、僕は急いで、マリに近寄った。

 

「マリちゃん!?どうしたの!?マリちゃん!?」

「何事ですの!?」

 

 後から秋乃さんとエリカさん、咲恋ちゃん達がマリに近寄った。

 

「火野様、退いてください。私が見ます」

「わかった……」

 

 そう言って、エリカがマリに近寄り、マリの手を持って、手首に指を当てた。

 

「……脈拍は正常。ですが、呼吸が荒いですね。急いで、救急車を呼んだ方がよろしいですね」

「それなら、私が呼ぶわ」

「お願いします、咲恋様」

「……」

 

 マリは無事なのだろうか?

 そう不安が過ぎる中、早峰先輩が僕に近寄った。

 

「オイ、火野」

「早峰先輩……」

「……大丈夫か?」

「……え?」

 

 突然、早峰先輩が僕の顔を見て、そう問いかけた。

 何で?って思った時、早峰先輩が口を開いた。

 

「あー、クソ。調子狂うなァ、全く……テメエがそんな顔して、どうすんだよ?」

「……早峰先輩?」

「オレは……月野がキライだ。けど、アイツの拳やら、蹴りやら、結構悪い気がしなかった。いや、違うな。なんて言うかよ、テメエがそんな顔だと、月野が……その、可哀想だろ?」

「早峰先輩……」

 

 多分、早峰先輩は僕のこと、強いては、マリちゃんのことを気遣っているんだろう。

 早峰先輩なりの気遣いで。

 だとしたら、僕が言うことはただ一つ。

 

「……ありがとうございます、早峰先輩」

「べ、別に、お礼を言われる筋合いはない!ただ、オレはテメエやマリに負けて、悔しかったんだよ!だから……だからよ、そんな顔をするな。このオレが唯一認めた、ライバルよ……」

「……っ、はい!」

 

 そう返事を返した途端、マリと向かい合って、対戦していた女性が僕達に近寄った。

 

「──ねぇ、その子、大丈夫?」

 

 女性は不安そうな口調で、僕達に問いかけた。

 ほんの少し白々しかったけど、僕はその問いに答えた。

 

「……わかりません。ただ、専門家に見れば、具合がわかるかもしれません」

「そう……それなら良かったわ」

「何……?」

「私、一応、手加減したんだけど、その子が大袈裟に倒れるから、ビックリしちゃった……」

「……ッ、テメエ、それ、本気で言ってるのか!」

 

 流石に我慢の限界なのか、早峰先輩が大きな声をあげた。

 それを見た女性はニヤリと、不適な笑みをした。

 

「あら〜、君、彼女に負けた負け犬くんじゃない?」

「誰が負け犬だ!誰が!」

「そう一々叫ばなくても、聞こえているわよ。マ・ケ・イ・ヌ・くん♡」

「オイ、テメエ、喧嘩売ってるんなら、買うぜ?」

「喧嘩を売る?それは私の台詞よ──」

「あ?それはどういう──」

 

 突如、彼女は僕と早峰先輩の間に入って、早峰先輩の体がいつの間にか、倒れていた

 

「──ッ、が、ハ……!?」

「な、何が起こって……!?」

「──私に喧嘩を売るなんて、君、良い度胸ね?」

 

 倒れている早峰先輩の背を彼女は自身の足で踏み、力を入れて、早峰先輩の背中をグルグルと、捻って回した。

 

「グ……ゥ……ァ……アァ……!?」

「早峰先輩!」

「今度は君が相手よ、カツくん。いえ、勝くん……」

「……!?」

 

 どうして、僕の名前を?そう思った時、彼女の目が青く、水色の瞳になっていた。

 

「──ッ!?君は、まさか……」

「──勝様!」

「ッ!?」

 

 僕が彼女の名を言い出そうとした矢先、秋乃さんから声をかけられた。

 

「ちっ、邪魔が入ったわね……また後でね、カツさん」

「……」

 

 そう言って、女性は早峰先輩の背中から離れ、どこかに去っていた。

 

「いてて、ったく、酷い目にあったな……」

「……」

 

 ようやく自由になった早峰先輩はそう言い、僕は秋乃さんに振り向いた。

 

「秋乃さん、どうしたの?」

「もうすぐ、決勝戦です。準備をしてください」

「え?でも、マリちゃんは……?」

「彼女は今、職員の休憩室で休ませてもらってます。救急車が来るまで時間がかかるので、彼女はそこで休ませていただいてます」

「そう……なんだ……」

 

 エリカの説明に僕は納得した。

 すると、僕の顔を見て、秋乃さんは不安そうな顔で、僕に声をかけた。

 

「……さっきの女性についてですか?」

「……うん」

「気持ちはわかりますが、今は切り替えてください。月野さんのことを想うなら……」

「オレからも頼む……」

 

 珍しく、早峰先輩から、そんな言葉を聞いた。

 

「早峰先輩……」

「オレのこの痛みと、月野の怪我、まとめて、借りを返してこいッ!」

 

 そう言って、早峰先輩は右手を拳にして、僕に向けた。

 それを見た僕は左手を拳にして、早峰先輩の拳に当てた。

 

「……わかりました。先輩の分も、マリちゃんの分、そして……僕の、このモヤモヤ、全部まとめて、彼女に返してきます!」

「ああ、頼むぜ、ライバル……」

 

 そうして、僕は決勝戦に向けて、先に座っている彼女に向かい合った。

 

 

 

 一部始終を見ていたキャルは秋乃とエリカに近づき、2人に問いかける。

 

「ねぇ?本当に始めるの?」

「始めるしかありません。何故なら、デュエマで起きた問題は、デュエマで解決するしかありませんもの」

「……そう、わかったわ。んじゃ、気合を入れて……」

 

 一度、深呼吸をし、キャルは大きな声をあげた。

 

「さぁ、泣いても笑っても、これが、最後のデュエマ!11番、カツ選手対、2番、イズミ選手!このデュエマに勝利したモノが、このお店の商品を半額で購入できるわよ!さぁ、2人とも、準備は良い?」

「はい!」

「いつでも……」

 

「それじゃ、デュエマー!」

 

「「スタートッ!!」」

 

 

 




本名ではありませんが、今回、勝が対戦する女性の名前はイズミです。
先に言っておきますが、イズミは今後、重要なキャラなので、ここからこの作品は大きく動きます。乞うご期待。


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ACE27:絶望を叩き込む、青い、水色の瞳。

決勝戦、前半です。
後編は近日中に、投稿します。
それではACE27、どうぞ。


 

 

 

 ついに始まった、勝対イズミの決勝戦。

 勝はマリと想を傷つけたイズミを許せず、怒りの炎を燃やしていた。

 対して、イズミはこの試合に勝って、ブラックキャットで売っているシングルカードの商品を半額で買えるのを楽しみに、デュエマをしていた。

 

「……」

「何?随分と怖い顔してるけど?そんな顔してたら、デュエマ、楽しくないよ」

「……僕は今、怒っている」

「はい?何で?」

「決まってるだろ。君がやったことは許されない行為だからだ!」

『……!?』

 

 珍しく、勝は感情的に、怒りに任せて、怒鳴り声をあげた。

 今までは何事も冷静に、落ち着いていて、あまり感情的になることはなかった。

 たまにデュエマで見てる、最後まで諦めない表情をするが、それとは別に、感情的になるような、そんな素振りは全くなかった。

 

 珍しく、怒りに任せる勝に、咲恋達は驚きを隠せないでいた。

 

(勝、アンタ、そんな状態で、本当にデュエマができるの?)

 

(先輩、そんな感情的になったら、プレミしますよ!?)

 

 そんな中、咲恋とひよりはそんな勝を心配し、脳裏にそう思った。

 

「……あっそ。別に良いよ。私もきみに許されたいとか、思ってないし」

 

 そう言って、イズミはカードを引き、マナを置いて、3枚のマナをタップした。

 

「《天災(ディザスター) デドダム》を召喚!《デドダム》の効果。このクリーチャーが出た時、自分の山札から3枚見て、1枚を手札、1枚をマナ、そして、最後の1枚を墓地へ置くわ。ターンエンド」

「……」

 

 淡々と、プレイするイズミ。そんなイズミに、勝は彼女が《デドダム》で墓地に置いたカード、《ザーディクリカ》を眼にする。

 

(5cザーディ、か……守りが固いから、あまりこっちと相性は良くないけど、ここは盤面を並べて、クリーチャー除去に専念しよう……幸い、こっちは《メンデル》が成功してるし、ここは……!)

 

 そう意気込み、勝はカードを引いた。

 

「僕のターン。マナチャージ、4マナで、《ボルシャック・西南(キリノ)・ドラゴン》を召喚!さらに、《西南・ドラゴン》の効果で、1マナで、《ボルシャック・フォース・ドラゴン》を召喚!《フォース・ドラゴン》の効果で、パワー4000以下の《デドダム》を破壊!」

「やるね……って、言いたいけど、その判断、本当に正しいと思ってるの?」

「……何が言いたいの?」

「はぁー……」

 

 呆れた、と、口には出さないが、そう言わんばかりに、イズミはそう思った。

 

「きみは……いいえ、あなたは何も変わってないね。あの時も、今も、何も変わってない……」

「っ!?君はやっぱり……」

「言わせないよ。そして、これ以上、あなたには自由にさせない……」

 

 そう冷たく言うイズミは、カードを引き、マナを1枚置いた。

 これで、イズミのマナは5マナ。《ドラゴンズ・サイン》を唱えるなら、このタイミングだが、彼女は前のターン、《デドダム》で、《ザーディクリカ》を墓地に置いた。

 つまり、彼女は今、《ドラゴンズ・サイン》が手札にない。手札にないものを手札に抱え込むのは、想が使った赤単ブランドなら、カウンターで抱え込むが、勝のデッキは赤緑ボルシャック。

 動きはビマナよりだが、ひよりが使ったモルネクみたいに、突然のビートダウンを仕掛けてくるミッドレンジよりのデッキだ。

 つまり、ここはゆっくり準備をしてから仕掛けてくる筈だ、勝はそう思った。

 

「悪いけど、あなたが考えるほど、わたし、そんなに甘くないよ」

「……!?」

 

 しかし、イズミは勝の考えを察したのか、否定するかのように、そう冷たく言い、5枚のマナをタップした。

 

「呪文、《ドラゴンズ・サイン》。手札から《XXDDZ》を場に出すわ」

「なっ!?」

 

 ここでまさかの《XXDDZ》を出してくるイズミに勝は驚いてしまった。

 

(《ドラサイ》があったんだったら、何で、《ザーディクリカ》を手札に加えなかったんだ!?)

 

 本来なら、そうするが、イズミの考えは違った。

 その理由は、次の攻撃で、わかるのだった。

 

「まずは《XXDDZ》のEXライフで、シールドを追加。そして、そのまま、《XXDDZ》で攻撃!攻撃する時に、手札の《未来(みらい)法皇(ほうおう) ミラダンテSF(スーパーフューチャー)》の革命チェンジを宣言!」

「なっ!?」

 

 またしても、勝は驚く。今度は《ミラダンテSF》に。

 

「最初に《XXDDZ》のアタックトリガーを解決。自身の『EXライフ』シールドを墓地に置いて、次のわたしのターンまで、あなたは呪文を唱えられない。そして、その後に《ミラダンテSF》に革命チェンジっ!」

 

 イズミはそう叫び、場の《XXDDZ》と、手札の《ミラダンテSF》を入れ替えた。

 それと同時に、イズミの瞳が青く、水色に変わり、彼女の後ろから、《ミラダンテSF》の影が薄らと、現れた。

 

「──未来をこの手に、そして、あなたには……絶望の闇を叩き込む!《ミラダンテSF》のファイナル革命、発動っ!山札からカードを1枚引いて、手札から、光か水のコスト6以下の呪文をただで唱えられる!呪文、《灰燼と天門の儀式(ヘブニアッシュ・サイン)》!」

「なっ!?このタイミングで、《灰燼と天門の儀式(ヘブニアッシュ・サイン)》!?」

 

 手札から唱えられた呪文に、勝はまた驚いてしまった。

 

「呪文の効果で、墓地から《龍風混成 ザーディクリカ》を復活させるわ!EXライフ!からの、呪文の効果で《ザーディクリカ》と《西南・ドラゴン》をバトル!破壊!」

「ッ……!」

 

 ドラゴンのコスト軽減とセイバー持ちの《西南・ドラゴン》が破壊されたことに、勝は歯を噛み締める。

 

「さらに《ザーディクリカ》の効果で、墓地から《ドラゴンズ・サイン》!からのからの、手札から《XXDDZ》を場に出すわ!」

 

 今度は《ザーディクリカ》、《XXDDZ》と、次々と、イズミの後ろからクリーチャーの影が現れた。

 

「……!?」

「さぁ、あなたは私の攻撃、耐えられるのかしら?」

 

 3体のドラゴンに、勝は瞳の色を赤く、紅色の炎に変えた。

 

「……僕は……諦めない!何がなんでも、絶対に、諦めないッ!」

 

 

 



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ACE28:諦めない瞳、赤い、紅色の炎。

中編です。
この話を明日辺りに終わらせてます。
それではACE28、どうぞ。


 

 

 

「諦めない?それなら、教えてあげる!現実っていう、絶望を!」

「……っ!?」

 

 勝の言葉に癇に障ったのか、イズミはそう叫び、3体のドラゴンがお叫びを上げた。

 流石の勝も、それには驚き、恐れず、デュエマに集中した。

 

「《XXDDZ》のEXライフ!シールドを追加して、《ミラダンテSF》の攻撃を続行!シールドをT・ブレイクっ!」

「ッ、シールド・トリガー、《ボルシャック・テイル・ドラゴン》!」

 

 トリガーを引く勝だが、シビルカウントが達成していないため、《テイル・ドラゴン》で、《ザーディクリカ》を除去できない。

 最も、《ザーディクリカ》にはEXライフ・シールドがあるため、バトルができたとしても、場に残る。さらに、《XXDDZ》の効果で、スレイヤーが付与されているため、逆に勝の《テイル・ドラゴン》が破壊される。

 

(最初から、こっちはバトルする気は全然ない!大事なのは、次のターンに繋げるため、クリーチャーを1体でも多く、場に残すことだッ……!)

 

「……何を考えているか、知らないけど、無駄な抵抗よ!《ザーディクリカ》で、W・ブレイクっ!」

「ッ、トリガーは……!?」

 

 ブレイクされたシールドの中に《スーパー・スパーク》があったが、《XXDDZ》の効果で、勝は呪文を唱えられないでいる。

 

「……ない」

「そう?それなら、これで終わり……!《XXDDZ》で、ダイレクトアタックっ!」

 

「勝!?」

「「先輩!!」」

 

 幻影の《XXDDZ》が勝を襲い、それを見た咲恋、ひより、翔は心配し、声を上げる。

 

 ──しかし。

 

「──まだだッ!革命0トリガー、《ボルシャック・ドギラゴン》ッ!!」

「……!?」

 

 勝はまだ諦めていなかった。それどころか、まだ逆転できると、信じていた。

 

「あのヤロウ、やっぱり、持ってたか……!」

「ですが、《ボルシャック・ドギラゴン》1枚では、この攻撃は止められない……」

「ええ。EXライフがある限り、《XXDDZ》を除去することはできない……」

「そんな!?それじゃ、このまま《ボルシャック・ドギラゴン》を使っても、先輩は負けちゃうんですか!?」

「いいえ。可能性は一つ、あります」

「え?」

「咲恋さんとデュエマした時に使ったカードなら、この状況をひっくり返せる筈です!」

 

 そう。勝にはまだ《ボルシャック・NEX》から《ワルキューレ・ルピア》を出して、《ワルキューレ・ルピア》の能力で、勝のドラゴンはブロッカーとなり、イズミの《XXDDZ》の攻撃を止めることができる。

 

(一番きて欲しいのは《ボルシャック・NEX》だけど、それだけじゃダメだ!この状況を確実にひっくり返すには……アレしかない!だから……)

 

 勝はデッキの上に指を置き、強く願った。

 

(だから……きてくれ!僕に力を貸してくれ……!)

 

 そう強く願い、勝は山札の上を捲った。

 

「っ、そのカードは……!?」

 

 捲られたカードに、イズミは驚く。

 何故なら、そのカードは、《ボルシャック・サイバーエクス》だったからだ。

 

「ッ、きた……!革命0トリガー、成功ッ!《ボルシャック・サイバーエクス》を《ボルシャック・ドギラゴン》に進化ッ!」

 

 突如、勝の後ろから、《ボルシャック・ドギラゴン》の影が現れ、イズミの《XXDDZ》の攻撃を止めた。

 その後、《ボルシャック・ドギラゴン》は拳を、《XXDDZ》は剣を出し、直後、粒子となって、2体のドラゴンは消えた。

 

「な、何が起こったの……!?」

「わ、わかりません……ただ、《ボルシャック・ドギラゴン》が先輩を守った気がします……」

「きっと、そうです!流石、勝先輩です!あの状況で、ダイレクトアタックを防ぐなんて、すごいです!」

 

 いまいち、状況が飲み込めない、咲恋と翔だが、ひよりの言葉で、なんとか危機的状況を脱したと、理解し、安心する。

 

「……気に入らないわね。その目……」

「別に気に入られたいわけじゃないよ。ただ、僕は必死なだけさ……」

「そう。なら一つ、教えてあげる。わたしはあなたの、そういうところが、昔から嫌いだったのよっ!」

『!?』

 

 珍しく、声を荒げたイズミの言葉に、咲恋達は驚く。

 

「ど、どういうことでしょうか?焔先輩……」

「……」

「まさか、あの子……」

 

 咲恋は急ぎ、スマホを取り出し、中学時代の写真を引っ張り出した。

 その中には、咲恋と一緒に、イズミに似た女子中学生の写真が写っていた。

 

「やっぱり……」

「あの、生徒会長、やっぱりって……?」

「あのイズミって子、中学の時の同級生で、生徒会を一緒にやっていた『赤羽(あかばね) 結衣(ゆい)』よ……」

「そして、勝様の元カノです……」

 

 突然、咲恋達の後ろから、マリの声が響き、振り向くと、そこにはフラフラのマリの姿があった。

 

「ちょっ、アナタ、無理しちゃだめよ!?」

「すみません、斎条様……ですが、この試合、最後まで見届けさせてください……」

 

 そう、マリは強く願い、咲恋は深い溜め息を吐いた。

 

「はぁー……全く、わかったわよ。肩貸して。支えてあげるから、一緒に勝の試合を観ましょう。その代わり、救急車が来たら、病院に行くこと、わかった?」

「はい。ありがとうございます……」

 

 マリが返事を返すと、咲恋はマリの肩を支え、勝とイズミのデュエマを最後まで見届けるのだった。

 

「……僕のターン」

 

 なんとか、ターンが周ってきた勝だが、正直なところ、劣勢なのは変わらない。

 

(なんとか、危機は脱した。問題なのは、ここからだ……)

 

 今の勝の手札には《モモキングRX》があるが、進化先である、《ボルシャック・モモキングNEX》がないのだ。

 故に、《モモキングRX》のドロー効果で、《モモキングNEX》を引かなくれば、勝は間違いなく、今度こそ、負ける。

 

(悠長に考えてる暇はない!ここは……動く!そして、勝利を掴み取る!)

 

 そう決心した勝は5枚のマナをタップした。

 

「コイツにすべてを賭ける!《王来英雄(オーライヒーロー) モモキングRX(レックス)》を召喚ッ!」

「っ、ここで、モモキング!?」

 

 今度はイズミが驚き、勝の後ろに《モモキングRX》の影が現れるも、勝は気にせず、《モモキングRX》の効果を解決する。

 

「手札を1枚捨てて、カードを2枚ドロー!」

 

 信じている、と、勝は自身のデッキとモモキングにそう想い、山札からカードを2枚引いた。

 

 1枚は《ボルシャック・栄光・ルピア》。

 

 ──違う!

 

 恐る恐る、もう1枚を覗く。

 

「──ッ!」

 

 ──そのカードは、《ボルシャック・モモキングNEX》だった。

 

「きたッ!その後、《モモキングRX》から進化できる、コスト7以下の進化クリーチャーを場に出せる!《モモキングRX》の上に、スター進化ッ!《ボルシャック・モモキングNEX》ッ!」

 

 

 



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ACE29:優勝するのはどっち?

どっちだろう?


 

 

 

 それは、この大会で勝を支えたカード、《ボルシャック・モモキングNEX》の姿が、ブラックキャットの中に、影ではなく、実体として、現れた。

 それと同時に、イズミのクリーチャー、《ザーディクリカ》と《ミラダンテSF》の2体も、実体化した。

 

「へぇー、引き当てたんだ。《モモキングNEX》を……」

「ああ。コイツはこの大会で、世話になったカードだ。だから、この試合も、コイツで……勝つ!」

「ふん、やってみなさい!あなたの実力がどれだけ上げたか、わたしが試させてあげる!」

「いくよ、イズミ……いや、結衣ちゃん!」

 

 勝の決意に、《モモキングNEX》はお叫びを上げた。

 

「《モモキングNEX》の効果で、山札を捲って、火のクリーチャーか、レクスターズなら、場に出る!来い、《ボルシャック・バラフィオル》ッ!」

 

 新たなドラゴン、《ボルシャック・バラフィオル》が現れ、実体化し、火のクリーチャーが4体以上なったことで、《ボルシャック・フォース・ドラゴン》も実体化した。

 

「うそ……!?」

「本当に、クリーチャーが実体化してる……!?」

「マジでか……」

「勝先輩、カッコいいです!」

 

 突然、目の前で、クリーチャーが実体化していることに、咲恋、翔、想は驚き、動揺を隠せず、ひよりは勝と結衣がクリーチャーを実体化していることに感動していた。

 

「まずは、《モモキングNEX》で、《ザーディクリカ》に攻撃!《ボルシャック・バラフィオル》の効果と合わせて、山札の上を2枚捲る!」

 

 捲られたのは《ボルシャック・ヒート・ドラゴン》と《ボルシャック・フォース・ドラゴン》だった。

 2枚とも、火のクリーチャーで、ボルシャックの名を持つドラゴンだ。

 

「2体のドラゴンを場に出して、《ザーディクリカ》とバトル!破壊だ!」

「《ザーディクリカ》のEXライフ・シールドを墓地に置いて、《ザーディクリカ》は場に残る!」

「まだだ!バトルに勝った《モモキングNEX》をアンタップ!もう一度、《モモキングNEX》で、《ザーディクリカ》に攻撃!もう一度、《ボルシャック・バラフィオル》の効果と一緒に、山札の上を2枚捲る!」

 

 今度は《ボルシャック・西南(キリノ)・ドラゴン》と──

 

「──来たか!《轟炎(ごうえん)竜皇(りゅうおう) ボルシャック・カイザー》を場に出す!そして、《ザーディクリカ》とバトル!今度こそ、破壊だ!」

「っ!?」

 

 破壊された《ザーディクリカ》は墓地に置かれ、結衣の場には、《ミラダンテSF》の1体のみ。

 

「そいつも、破壊する!《モモキングNEX》で、《ミラダンテSF》に攻撃!《ボルシャック・バラフィオル》の効果と合わせて、山札の上を2枚捲る!」

 

 3度も、2体のボルシャックの効果により、《ボルシャック・栄光・ルピア》と《ボルシャック・フォース・ドラゴン》の2体が場に出る。

 

「バトル!破壊!アンタップ!そして、《モモキングNEX》でシールドを攻撃!《ボルシャック・バラフィオル》の効果と合わせて、山札の上を2枚捲るッ!」

 

 4度、山札の上を捲り、現れたのは《ボルシャック・バラフィオル》と《ボルシャック・ドラゴン》の2体だった。

 

「に、2体目の《ボルシャック・バラフィオル》!?」

「これで勝先輩は、またボルシャックを2体出せます!」

「……いいえ、ダメですわ」

「ええ、これは不味いですね、お嬢様……」

「「え?」」

 

 勝がまたドラゴンを2体並べられることに、ひよりと翔は嬉しさを感じる中、秋乃は先程の勝のプレイングにミスを感じ、エリカも何かの危険を察したのか、秋乃の言葉に賛同した。

 2人の反応に、ひよりと翔はてんでわからず、想は小さく、こう呟いた。

 

「……バカやろうが。焦って攻撃して、山札を削ってるんじゃねぇよ」

「「!?」」

 

 その言葉に、勝の山札を確認した。

 なんと、10枚近くまで、山札のカードが減っていた。

 これ以上、《ボルシャック・バラフィオル》の効果を使えば、勝の山札は消える。つまり、山札切れ(ライブラリアウト)だ。

 オマケに、《ボルシャック・バラフィオル》の効果は強制である。

 どうあがいても、山札切れは避けられず、後数回で攻撃して決めなければ、勝の負けは確定する。

 

「そ、そんな……!?」

「感情的に任せた、アイツの負けだ。それに……あの女、笑ってやがる」

 

 想の言う通り、結衣の顔は笑っていた。微笑んでいた。

 

 ──そして。

 

「……本当に、あなたは何も変わってないわね。あの時と、何も変わらず、ただ真っ直ぐに突き進む、その姿は……だから──絶望の闇に堕としてあげる!」

「──ッ!?」

 

 不気味な笑みを浮かべた。それは悪魔のような笑顔だった。

 それには流石に、勝は恐怖を覚え、寒気を感じた。

 

「も、《モモキングNEX》で、Q(クワトロ)・ブレイクッ!」

 

 結衣のシールドを一気に4枚ブレイクした。

 

「シールド・トリガー!」

「……ッ!?」

 

 直後、結衣のシールドからシールド・トリガーが現れ、勝のクリーチャーは謎の光の鎖で縛られ、身動きができず、結衣の場には、《ザーディクリカ》が蘇っていた。

 

「な、んで……!?」

 

 訳がわからない。いや、わからないわけではないが、何故、それがあったのか、わからなかった。

 

「《ザーディクリカ》の効果!呪文、《ロスト・Re():ソウル》!」

「ッ!」

 

 刹那。勝の手札がすべて、墓地に置かれた。

 クリーチャーは攻撃できず、シールドは0、手札も0。故に、勝はこのターン、何もできない。

 

「……ターンエンド」

 

 悔しい。悔しい気持ちがいっぱいで、勝はターンエンドを宣言し、結衣にターンを渡した。

 

「わたしのターン。《ザーディクリカ》で……ダイレクトアタック!」

 

 結衣の《ザーディクリカ》の攻撃に、勝はその場に倒れた。

 

 これにて、デュエマ非公認大会、優勝者はイズミこと、赤羽結衣の優勝で幕を閉じた。

 

 

 




はい。これにて、デュエマ非公認大会、終了です。
優勝者はイズミこと、結衣ちゃんです。
主人公、また大事な場面で負けちゃいましたね……(誰のせいだ)
次回は後日談を1、2話書いて、次の章に進めたいと思います。
また、リアル事情により、投稿スピードが減速します。
なるべく、週一のスペースで投稿しますが、不定期になる恐れがあるので、何卒、ご理解の程よろしくお願いします。

誤字脱字、感想など、ありましたら、いつでも言ってください。


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ACE30:中学時代の苦い記憶。

何とか、もう1話投稿できて、良かったです。
今回は勝君と結衣ちゃんの中学時代のお話です。
そんなに長くないので、かるーく、読んでもらえると、有難いです。
それではACE30、どうぞ。


 

 

 

 ──中学時代。

 僕が『JOE学園』に通っていた記憶で、3年生に上がる前の月の話だ。

 当時、仲の良かった先輩が空港で旅立つ日に誓った記憶。

 先輩は当時、中学生でありながら、デュエマの腕がすごく強くて、その実力はプロデュエリストに負け無しの実力で、海外のスポンサーからスカウトされるぐらいの実力の持ち主だった。

 そして、この日。■■先輩は自分の実力が世界に通用するのか、試すために、旅に出る。

 

「勝。後のことはお前に任せた!結衣とデュエマ部を頼んだぜ!」

「はい!任せてください!■■先輩!僕、■■先輩の分まで、頑張ります!」

「おお!向こうで、お前の活躍、期待しているぜ!」

「はい!」

 

 当時の僕は何の責任もとれず、ただ無邪気に、■■先輩との約束を交わした。

 

 ──だけど、物事は順境に進むことはなかった。

 

 僕らが3年生に上がると、僕達が卒業した後、来年でデュエマ部がなくなることを知らされた。

 そんなのは嫌だ。僕は必死になって、廃部から免れないか、考えて、足掻いた。

 

 そんなある日。僕は当時、付き合っていた女性、赤羽結衣ちゃんとの約束を忘れていた。

 気づいたのは、友人からの連絡からであり、夕方になって、僕は約束の場に向かった。

 

「──嘘つき!」

「!?」

 

 約束の場に着くと、僕は結衣ちゃんに頬を叩かれた。

 何故?と、問いかけるより前に、結衣ちゃんが先に口を開いた。

 

「勝くんの嘘つき!あたしのこと、守ってくれるって、約束したじゃない!なんでよ!?」

「違うんだ!結衣ちゃん!僕はただ、先輩との約束を守ろうと……」

「あたしより、お兄ちゃんとの約束が大事なの!?」

「違う、そうじゃない!僕は……」

「もういい!あたしたち、別れましょう。それじゃ、さようなら……」

「待ってよ、結衣ちゃん!待って!結衣ちゃん!待ってぇぇぇぇぇッー!」

 

 今思えば、アレは僕が悪かったんだ。

 僕が結衣ちゃんとの約束を忘れて、デュエマ部を守るために、必死になって、挙句、結衣ちゃんを守ることができなかった。

 僕の不甲斐なさが招いた結果だ。

 

 ──そう思った直後。

 

 成長した結衣ちゃんとザーディクリカの姿が僕の前に現れた。

 

「結衣、ちゃん……?」

「……ザーディクリカで、ダイレクトアタックっ!」

「え?う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?」

 

 突然、ザーディクリカの攻撃に、僕はその場から吹っ飛び、地面に落下した。

 

 

 

「うわっ!?」

 

 ドタンッ、と、勝はベッドから落下し、目か覚めた。

 

「いてて……ここは……?」

 

 目が覚めた勝は周囲を見渡した。

 見るからに、病院の中にいるみたいだが、何故、自分がここにいるのか、わからなかった。

 

 最後に覚えているのはブラックキャットの非公認大会の決勝戦で、結衣とデュエマをして負けたことだ。

 

 そう思った矢先、扉が開き、メイド姿のマリが現れた。

 

「勝様!?目が覚めたんですね!」

 

 目が覚めた勝を見て、マリは慌てて、勝に近づき、体を起こして、ベッドの上に座らせた。

 座った後、勝はマリが何故、元気なのか気になり、彼女に問いかけた。

 

「ありがとう、マリちゃん。マリちゃんは、その……大丈夫なの?」

「はい。勝様が目覚める2日前に目が覚めたので、見ての通り、元気です!」

「2日前って……え?マリちゃん、僕、どれぐらい寝てたの?」

「え、えっと、確か、明日から学校が始まるから……丸1週間、ですかね?」

「!?」

 

 マリから告げられた言葉に、勝は信じられなかった。

 つまり、勝はゴールデンウィークの間、ずっと、病院のベッドの上で寝ていたのだ。

 

「……マリちゃん」

「?何でしょう?勝様」

「少し、1人にしてくれる。後、部活の皆に目が覚めたって、連絡してくれる」

「……わかりました、と、言いたいところですが」

「……?」

 

「せんぱーい!お見舞いに来ました!

 

 突然、扉が勢いよく開かれ、聞きられた少女の声、ひよりの元気な声が響いた。

 

「こーら、ひよりちゃん。病院の中で叫ばないの──って、勝!?」

 

 続いて、咲恋が入り、叫び声を上げたひよりに注意するも、目が覚めた勝を見て、咲恋は勝に掛け出した。

 

「アンタ、もう動いて良いの?いや、それよりも、痛い所とかない?ねぇ?」

「ちょ、ちょっと落ち着いて、咲恋ちゃん!」

「落ち着いていられないわよッ!アンタが……アンタがあんな目にあって……私……」

 

 今度は顔を勝の胸に覆って、下に向く咲恋。

 

 ──そして。

 

「う、う、うわあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

「「「!?」」」

 

 号泣した。

 突然、咲恋は号泣し、それを見た勝達は驚き、その場に固まった。

 

 暫く、咲恋が泣き止むまで、咲恋は勝から離れず、咲恋が落ち着いた後、ひよりは咲恋を連れて、その場を後にした。

 因みに、勝は病院の先生から異常なしと知らされ、翌日の朝、退院した。

 

 




という訳で、中学時代、兼、後日談はこれにて、終了。
次回からは物語が動きますが、さて、どうなることやら……。
前話でも言いましたが、投稿速度が減速し、週一のペースで投稿する予定です。
多少の前後がありますが、これからも、この作品をよろしくお願いします。


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ACE31:それぞれの心の傷跡

お久しぶりです。
予定通り、今日から週一投稿に切り替えさせていただきます。よろしくお願いします。
それではACE31、どうぞ。


 

 

 

 ブラックキャットの大会を終えて、1週間と数日が経過した。

 病院から退院した勝は、いつも通りに日常を過ごしていた。

 

 ──ただ一つ、ACE学園の生徒相手に勝はデュエマで負けていたことを除いて。

 

「《サンブレード・NEX》で、ダイレクトアタック!」

「ッ、えっと、革命0トリガーは……ないね」

「やったー!また火野に勝ったー!」

「オイオイ、火野?最近どうした?ずっと、負けっぱなしだぞ?」

「アハハ、ほんと、どうしてだろう?デッキの調子が悪いのかな?それとも、運が悪いのかな……」

「なんだよそれ?」

 

 勝が冗談まじりに言うと、男子生徒の1人がそう呟き、勝は男子生徒達と一緒に笑った。

 いや、無理に笑っていた。

 恐らく、ブラックキャットの非公認大会で、結衣に負けたのが、相当、精神的に応えたのだろう。

 クラスメイトや他クラスの生徒相手には気づかれていないが、チームメイトである咲恋達は勝の異変に気づいていた。

 

 

 

 場所は変わり、生徒会室。

 

「火野先輩、大丈夫でしょうか?」

「完全に無理してるわね、アレは……」

 

 窓ガラス越しで、勝の様子を見ていた翔は心配し、咲恋は勝が完全に無理していることを悟った。

 と言っても、それは咲恋も同じである。

 

「そういう会長も、仕事の手、止まってますよ。それに、明星さんから聞きました。病院の中、火野先輩に抱きついて泣いたらしいじゃないですか」

「な、泣いてないわよ!断じて、私は泣いてないわよ!」

 

(何勝手に言いふらしてるのよ、ひよりちゃん!)

 

 などと、この場にいないひよりに、咲恋は脳裏でそう突っ込みつつ、ふっと、ブラックキャットで勝と結衣のデュエマを思い出した。

 クリーチャーの実体化。アレはどういう原理で、どういった理屈で、実体化しているのか、正直なところ、かなり気になる。

 そして、実体化したクリーチャーを使って、平然とデュエマをする2人の姿。あのデュエマはまるで、真のデュエルみたいだった。

 ただ、自分が知っている真のデュエルは命懸けの戦いだ。だけど、真のデュエルに負けたマリと勝の傷は軽傷だった。

 訂正。軽傷ではあるが、2人とも、5日以上、意識を失っていたため、軽々しく、そう思ってはいけない。

 

 ──アレは真のデュエルではない?

 

 ──それなら、何故、2人はクリーチャーを実体化できる?

 

 ──そして、結衣は何故、あんなに変わったのだろうか?

 

「……」

「会長?」

 

 謎が謎を呼ぶ中、咲恋はほんの僅か、これからが心配になり、不安を感じるのだった。

 

 

 

 また場所は変わり、屋上。

 早峰想はそこで、大の字になって、横になって、苛々していた。

 彼を苛かけているのは勝を負かした結衣である。

 彼女の実力は本物だ。ただそれとは別に、彼女はまだ奥の手を隠している。根拠はないが、想はそう感じた。

 それと同時に、何故2人はクリーチャーを実体化ができるのか、疑問を抱いていた。

 

「……ったく、イライラするぜ」

 

 バタンッ、と、屋上の扉が開き、そこには制服を着たマリの姿があった。

 

「あ?なんだ、月野か……」

「ッ、なんだとは何ですか?それと、気安く、苗字で呼ばないでください、先輩」

「わかった、ロリo──」

「えい!」

「──ガハッ!」

 

 想が言い切るより前に、マリは想の腹を殴った。

 

「……殴りますよ?」

「もう殴ってるよ……」

 

 そう言って、想はお腹を抑えながら立ち上がった。それと同時に、あることを思い出した。

 

(そういえば、コイツもガイギンガを実体化させてたな……)

 

 想と対戦した時、マリは想にダイレクトアタックをする際、ガイギンガを実体化させていた。

 ただ一つ、2人と違うのは、マリのガイギンガ(クリーチャー)は影のような実体化だった。

 何が違うのか、ふっと気になり、デュエマをすれば、また実体化するのか、自分も、彼らのように、クリーチャーを実体化できるのか、色々な想いが入り混じり、想はデッキを取り出した。

 

「……なぁ、月野」

「……だから、気安く、苗字を──」

「オレとデュエマしねぇか?今から?」

「──!?」

 

 意外な提案にマリは驚き、少し間を置いてから「……いいですよ」と、返事を返した。

 意外な返答に、提案した想は驚き、眉を顰めた。

 

「随分と素直だな、オマエ……」

「貴方のためではありません。私のためです。それに……」

「火野のためか?」

「……はぁ、最悪です」

 

 図星だったのか、マリは不快感を感じ、デッキを取り出した。

 

「良いですよ、先輩。相手になってあげます!」

「んじゃ、いくぜ……」

 

「「デュエマ・スタートッ!!」」

 

 

 

 ──またまた場所は変わり、ACE学園校門前。

 

「勝せんぱーい!」

「……?」

 

 学園の門から出る直前、ひよりの大きな声が響き、呼び止められた勝は足を止めた。

 

「ひよりちゃん、どうしたの?」

「勝先輩と一緒に帰りたくて、声をかけました!」

「そ、そうなんだ。それなら、事前に連絡してくれれば良いのに……」

「勝先輩の後ろ姿を見て、思いついたので、連絡する暇がありませんでした!」

「それなら、仕方がないね。んじゃ、一緒に帰ろうか?」

「はい!」

 

 ひよりの元気な返事を聞いて、勝はひよりと一緒に門を潜ると、見覚えのある赤い高級車が2人の前に止まった。

 止まった直後、ドアの窓ガラスが下に下がり、秋乃が顔を出し、2人に声をかけた。

 

「お二人とも、今からお帰りですの?」

「そういう秋乃さんも、今から帰り?」

「ええ……良かったら、家まで送りましょうか?」

「……え!?良いんですか!?」

「構いませんよ。勝様はどうします?」

「僕は……遠慮しておくよ」

「あら?人の好意を無下にするのですか?」

「そーですよー!こういうのは得したもん勝ちです!」

「その言葉は少し違う気がするけど……」

「火野様。ここは秋乃様の気遣いに感謝して、車に乗ることをオススメします」

 

 と、秋乃の後ろで座ってるエリカが顔を出して、勝に提案する。

 

「暁月先輩も言ってますし、送ってもらいましょう!ね?先輩!」

「……はぁー、わかったよ」

 

 深い溜め息を吐いた後、観念した勝はひよりと一緒に赤い高級車に乗った。

 

 

 



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ACE32:恋はときどき、ドキドキする。

今回は初めての恋愛話、もとい、恋バナです。
主に、勝と秋乃の二人。お互いがどこまで想っているのかを中心に書きました。
それではACE32、どうぞ。


 

 

 

「そう言えば、勝先輩って、この学園に来る前、焔先輩とはもう会っていたんですよね?」

「?そうだけど?それがどうかしたの?」

 

 車に乗った直後、ふっと、ひよりが勝にそんなことを質問した。

 勝がひよりの質問にそう返すと、突然、勝の顔に近づいた。

 

「ズバリ、2人は付き合っているんですか?いや、そもそも2人はどこで出会ったんですか?初恋は?告白はどちらが先なんですか?」

「ちょっ、ひよりちゃん、落ち着いて!後、顔が近いから一旦離れて!」

 

 突然、恋バナに発展し、興奮しだしたひよりに勝は必死に宥め、顔から離れるよう、頼み込む。

 

「……」

「はぁー、全く何をやっているんですか?それから明星さん。何故、今になって、そんなことを聞くのですか?」

 

 そんな二人の会話を聞いて、秋乃は頬を赤くし、小さくうずくまり、その光景を助手席から見ていたエリカは溜め息を吐きながら、ひよりに質問する。

 

「だって、気になるじゃないですか!女性としては!何より、勝先輩は焔先輩のすすめで転入してきたんですよ!」

「それは……そうだけど……」

 

(……言って良いのだろうか?)

 

 ひよりの圧に、勝は口ごもり、秋乃に視線を向ける。

 

「……わたくしが不良に絡まれた所を、勝様に助けていただいたんです」

 

 突然、秋乃は小さく、口を開き、そう言って、言葉を続ける。

 

「わたくしは……それが初恋でした。けど、勝様はその時、前の彼女さんに失恋して、心を閉ざしていて、わたくしのこと、女性として意識してくれなかったのですの。ですが、少しずつ、関係を築く内に、わたくしのこと、女性として意識してくれて……アタックして、惚れさせましたの……」

「……っ!?」

 

 照れ臭そうに、秋乃は顔を赤くなりながら、そう言うと、勝に視線を向ける。

 視線が合った勝は直後、顔を赤くし、秋乃から目を逸らした。

 

「あー、これはかなり、ご関係がよろしいようで……」

「わかったなら、さっさと降りなさい。着きましたよ、明星さん」

 

 いつも間にか、ひよりの自宅に着き、エリカが言うと、「はーい」と、ひよりはあっさり車から出た。

 車から出たひよりは車の中にいる秋乃達に振り向く。

 

「送っていただき、ありがとうございます!先輩方、また明日お会いしましょう!」

「え、ええ。また明日、学校で会いましょう、ひよりちゃん」

「……また明日、ひよりちゃん」

「はい!」

 

 ひよりの元気な返事を聞いた後、秋乃は運転手に「出発してくださいませ」と言うと、運転手は「はい」と返事を返し、車を発進させた。

 

「……大丈夫ですかね、勝先輩」

 

 赤い高級車の後ろ姿を見て、ひよりは1人、勝を心配し、小さく、そう呟いた。

 

 

 

 次に赤い高級車が止まったのは勝の家の前、ではなく、令和では見られない、江戸時代にあるような、とても古風なお屋敷──エリカが住む暁月家の道場の入り口前である。

 

「着きましたよ、勝様」

「着いたって、ここって……暁月さんの家だよね?」

「ええ。私の家ですが、何か?」

「……」

 

 嫌な予感がする。

 勝は自身の身の危険性を感じ、急いで、この場から離れようと足を動かすが、それよりも早く、エリカが勝の服の首部分を強く掴んだ。

 

「逃しませんよ、火野様……いえ、勝様」

「……お手柔らかにお願いします」

 

 エリカから殺気のようなオーラを感じた勝はあっさり逃走を諦め、秋乃と一緒に3人で道場の中に入った。

 

 ガラガラと、玄関が開く音が鳴り、エリカは扉を開ける。

 扉を開けると、1人の老人、エリカの祖父、『暁月 キリオ』が前に立っていた。

 

「……ただいま戻りました。キリオお祖父様」

「うむ。よく帰った、エリカ。そちらは……秋乃様と火野君か……」

「はい。お邪魔します、エリカのお祖父様」

「お邪魔します……」

「……ふむ。奥の部屋が空いてるから、好きに使うといい」

「はい、ありがとうございます、お祖父様」

「気にするな。娘の使いのお嬢様と、そのお婿が来たのだ。3人で少しお話をする時間が必要だろう?それに……」

 

 ふっと、キリオは勝に視線を向けた。

 向けられた勝は脳裏になんだろう、と疑問を抱く。

 

「あの、なんでしょうか?」

「いや、何でもない。いや、あるな」

「どっちなんですか?」

「ハハ、年をとると、どうにも物忘れが激しくてなぁ……部屋にオヤツを置いてあるから、好きに食べなさい」

「ありがとうございます、エリカのお祖父様」

 

 秋乃が返事を返すと、キリオは自分の部屋に帰っていった。

 それを見た勝達は奥の部屋に入り、大きな四角形型の机の上に、のり煎餅(せんべい)が入った皿が置かれていた。

 

「オヤツって、のり煎餅ですか……まぁ、良いですけど……」

「お茶は……ないみたいですね、エリカ」

「ええ、わかっています。少々お待ちください」

 

 そう言って、エリカはどこかに行ってしまい、二人きりになった勝と秋乃は向かい合って、机の前に正座して座る。

 

「……」

「……」

 

 沈黙する二人。

 そんな中、勝はひよりが言った言葉を思い出し、ほんの少し、頬を赤くする。

 

(マズいな……ひよりちゃんが変なことを聞いてきたから、変に意識してしまうな……折角、意識しないようにしてきたのに……!まぁ、考えても仕方がない。のり煎餅でも食べて、気持ちを落ち着かせよう……)

 

 そう思い、勝はのり煎餅に手を伸ばし、同じタイミングで、秋乃ものり煎餅を取ろうと手を伸ばし、二人が取ろうとしたのり煎餅の上に二人の手が触れた。

 

「「ッ!?」」

 

 瞬間、二人はすぐさま、のり煎餅から手を離し、離した手を胸に置いた。

 

「「……」」

 

(ヤバいヤバい!変な意識をするな!変な意識をするな!平常心平常心!)

 

 気持ちを落ち着かせるどころが、寧ろ、気持ちが昂ってしまい、自分の体温がさらに上がっていることを感じ、勝は秋乃から視線を離す。

 

(マズいですわ!マズいですわ!勝様の手に……いえ、指に触れてしまいましたわ!まだ手を繋いでないのに!どうしましょうどうしましょう!?)

 

 一方の秋乃は動揺し、勝の指に触れたことに混乱していた。

 

(これはもう、いっていいのだろうか?いや、良くないだろ!普通に考えて、馬鹿か!?そもそも、いっていいって何がだ!?)

(エリカには悪いですが、このまま勝様と良い関係を築きあげるために、更に一歩、踏み出すべきですわ!ハ!?わたくしは今、なんて破廉恥なことを考えていたんですの!?バカですの!?)

 

「お二人とも、紅茶を持ってきました」

「「えっ?」」

 

 互いが互いに、不純な思考を持つ中、左手に紅茶の入ったティーポットと右手に二つのコップを持ってきたエリカが二人の間に入ってきた。

 

「それで、お二人とも、何をやっているんですか?」

「「いいえ(いえ)、何もないです」」

 

 何やら、エリカから負のオーラのようなものが纏っており、二人は辿々しく、揃って、そう言った。

 それを聞いて、エリカは少し間を置いて、「そうですか」と、言って、ティーポットと二つのコップを机の上に置き、一つのコップに、紅茶を注いだ。

 

「……お嬢様、紅茶をどうぞ」

「あ、ありがとうございますわ、エリカ……」

 

 秋乃に紅茶の入ったコップを渡し、もう一つのコップに紅茶を注ごうと、手を動かすが、突然、手を止めた。

 

「……」

「エリカ?」

「暁月さん?」

「……火野様」

「は、はい!」

「貴方には、紅茶を飲む前に、やることがあります」

「やること?」

 

 突然、エリカはそんなことを言い出し、勝は彼女に問いかけると、ティーポットを置いて、デュエマのデッキを取り出した。

 

「火野様。貴方はここ最近、学園で負けていることが多いですね。確か、赤羽結衣(元カノ)に負けて以来、でしたね?」

「……何が言いたいの?」

「決まっています!」

 

 そう強く言うと、エリカは勝に指を指した。

 

「貴方の根性を叩き直してあげます!一度の敗北で、心が折れるようでは、秋乃様の側に居させるわけにはいきません!ましてや、この私に負けるようでは、赤羽結衣(元カノ)には勝てません!」

「ちょっと、エリカ!?何を言って──」

「良いよ。そのデュエマ、受けるよ」

「勝様!?」

 

 まさかの返事に秋乃は驚き、エリカは小さく微笑んだ。

 

「それでこそ、火野様、です。ですが、先程も言いましたが、この私に負けるようでは、赤羽結衣(元カノ)には勝てません!」

「言われるまでもないよ。それから、元カノって言うの、やめてくれない?微妙に腹が立つ」

「……わかりました。貴方が勝ったら、考えてあげましょう。良いですよね?秋乃様?」

「もう勝手にやってください……」

「それじゃあ、いくよ!」

 

「「デュエマ・スタートッ!!」」

 

 こうして、勝とエリカの二人によるデュエマが始まった。

 

 

 




次回、勝対エリカ。
勝利の女神はどちらに微笑むのか?
そして、エリカが使うデッキは一体何なのか?
次回にお楽しみにください。


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ACE33:深淵に眠る闇の戦士。

遂に、あの種族が参戦します。


 

 

 

「私のターン。マナチャージ。2マナで、《ブルーム=プルーフ》を召喚します。効果で山札の上から1枚、墓地に置きます。ターンエンド」

「僕のターン。マナチャージして、2マナで、《賢樹(けんじゅ) エルフィ-1(ワン)》を召喚。ターンエンド」

 

 突然、始まった勝とエリカのデュエマ。

 エリカのデッキは昨今(さっこん)の主人公が扱う闇文明、アビスロイヤルを中心にしたデッキ。

 対して、勝はいつものボルシャックデッキ、ではなく、クリーチャー同士を無理矢理合成したディスペクターと、それに従う、心が欠けたディスタスを中心にした火と水と自然の三色デッキ。

 

「珍しいですね、貴方がボルシャック以外のデッキを使うなんて……」

「……眼鏡君にも言ったけど、僕だって、ボルシャック以外のデッキやカードを使うよ」

「……そうですか」

 

 あからさまに、つまらそうに返事を返すエリカに勝は少しむっと、頬を膨らませた。

 

「大体さ、なんで急にデュエマしようと思ったの?理由は……さっき説明してたね……」

「……ええ」

 

 対戦前に「貴方の根性を叩き直す」、「私に勝てなければ、結衣には勝てない」などと、エリカは勝に、そう強く言っていた。

 確かに、結衣に負けて以来、勝は学園内にいる生徒相手に負け続けていた。

 いつもの勝なら、油断なく、負けることはそうそうないが、結衣に負けて以来、生徒相手に負けることが増えていた。

 

「まさか、本当に、僕の根性を叩き直す気じゃないよね?」

「……さぁ、どうでしょう?」

 

 しらを切るかのように、意地悪深く、エリカはそう言い、カードを引く。

 

「マナチャージ……ここはやはり、これですね」

 

 そう言って、エリカは3枚の闇のカードをタップし、それと同時に、エリカの手札から1枚、紫色のオーラが纏っていた。

 

「深淵に眠るは闇の邪龍(じゃりゅう)、《邪龍 ジャブラッド》を召喚っ!」

 

 現れたのはアビスロイヤル屈指(くっし)の最強のクリーチャーの一体、《邪龍 ジャブラット》がタマシード状態で顕現(けんげん)した。

 

「《ジャブラッド》の登場時効果で、山札の上から2枚を墓地へ!さらに、《ブルーム=プルーフ》で攻撃!この時、《ジャブラッド》の効果で、さらに2枚を墓地へ!」

 

 これにより、エリカの墓地の枚数は5枚。しかも、2枚目の《ジャブラッド》とアビスロイヤルの切り札が置かれた。

 

「《ブルーム=プルーフ》で、シールドをブレイクっ!」

「……トリガーはないよ」

「私はこれでターンエンドです」

「僕のターン……」

 

 カードを引き、勝はエリカの墓地を確認した。

 

(次のターン、手札にアレがあれば、アビスロイヤルの切り札が墓地から復活する。それなら……!)

 

 手札から一枚のカードをマナに置き、3枚のマナをタップした。

 

「呪文、《お清めシャラップ》!山札から1枚、マナに置いて、暁月さんの墓地のカードをすべて、山札に戻して、シャッフル!」

「っ、そんな!?」

 

 エリカの墓地にある2枚目の《ジャブラッド》と切り札は墓地から消え、山札に返った。

 オマケに、今さっき、《お清めシャラップ》で置かれたカードが自然単色のカードだったため、勝は迷わず、そのカードをタップした。

 

「《エルフィ-1》の効果で、ディスタスのコストを1軽減!2体目の《エルフィ-1》を召喚!ターンエンド!」

 

 これで、勝は次のターン、ディスタスのコストを2軽減できる。

 しかし、手札を一気に2枚使ったため、勝の手札は今3枚。多くもなく、少なくもないが、次のターンに出せるディスタスが1枚しかなく、残りの2枚は呪文カードとディスタスではない《クロック》だった。

 

(正直、手札はかなり心許(こころもと)ないけど、これで次のターン、暁月さんは大きなアクションができない筈だ……)

 

「……これで私の動きを止めた。そう思っているなら、大きな間違いですよ、火野様」

「……ッ、それはどういう意味だ?」

 

 勝が脳裏で安心する中、突然、エリカは口を開き、小さく、そう言い、勝は彼女に問いかけた。

 

「……私のターン」

 

 問いかけられたエリカは返事を返さず、カードを引き、手札から1枚、マナに置いた。

 

 そして、エリカの右の目の瞳が紫色に変わった。

 

「それは……こういうことです……」

 

 4枚のマナをタップし、エリカは一枚のカードに手を(かざ)す。

 

「現れなさい。深淵の闇を()べる帝王、《アビスベル=ジャシン帝》を召喚っ!」

 

 瞬間、部屋一面が闇に包まれ、その闇は3人を呑み込み、見知らぬ場所に移動していた。

 そこはまるで、人々がイメージする地獄のような場所だった。

 しかし、そこには相応しくない生物──クリーチャーが実体化していた。

 そして、この異様な空間に平然としていられる3人もまた、異常だった。

 

「……まさか、またここに来られるなんて思わなかったな。それに──君が《ジャシン帝》を持っていたのは驚いたよ、エリカ」

「……なんのことでしょうか?」

「惚けるのか?まぁ、良い。それならこっちも、全力でいかせてもらうよ……!」

 

 あからさまに、しらを切るかのように言うエリカの言葉に、勝は瞳の色を、赤い、紅色の炎に変えた。

 瞬間、勝とエリカの周りに、炎が現れ、まるで、結界のように2人を囲んだ。

 

「瞳の色を変えたところで、私に勝てると思わないことだっ!」

「思ってないよ!けど、本気を出さないわけにはいかないよッ!」

 

(勝様。負けないでください。これはあなた様がさらに強くなるための試練ですわ。それに……ここで(つまず)くようでは、この先、結衣(彼女)に勝てることはできませんわ……)

 

 激しいデュエマが始まる中、秋乃は勝が勝つことを信じつつも、先のこと、そして、赤羽結衣に勝てないと、脳裏に悟るのだった。

 




まさかの主人公、ボルシャック以外のデッキを使用。
まぁ、元々予定していたので、ようやくって感じです。


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ACE34:禁断竜王。

 

 

 

 突然、地獄のような世界に引き摺り込まれながらも、勝とエリカのデュエマは激しさを増していた。

 

「それでは、《ブルーム=プルーフ》で攻撃!《ジャブラッド》の効果で、山札の上から2枚を墓地へ!シールドをブレイクっ!」

「ッ、シールド・トリガー!《猛菌(もうきん) キューティ-2(ツー)》を召喚!意味ないけど、一応、《アビスベル=ジャシン帝》を選んで、次の僕のターンのはじめまで、攻撃とブロックはできない!」

「……ターンエンド」

 

 実体化したクリーチャー同士のデュエマ。まるで真のデュエルに見えるが、勝とエリカが対戦している場所から離れた場所(ところ)で、クリーチャー達はそこで戦っていた。

 エリカは切り札の《ジャシン帝》と《ジャブラッド》を揃え、勝のターン中、踏み倒しを許さない《ブルーム=プルーフ》の3体を並べていた。

 対して勝は3ターン目に《お清めシャラップ》で、一度、エリカの墓地をリセットし、ディスタスのコストを1軽減する《エルフィ-1》を2体と、先程、シールド・トリガーで出た《キューティ-2》の3体を並べていた。

 ここまでは両者、互角に見えるが、切り札を2体並べたエリカの方がやや優勢のようだ。

 

(……どうしますか?勝様?)

 

「僕のターン……マナチャージして、2体の《エルフィ-1》のコスト軽減で、2マナで、《妖精(ようせい) アジサイ-2》を召喚。効果で、山札の上から2枚見て……ッ!?」

 

 突如、《アジサイ-2》の効果で、山札の上から2枚を見た勝は言葉を詰まらせた。

 一枚は《電磁(でんじ) アクアン-2》。もう一枚は──今回、勝がこの三色デッキで組んだ切り札、《禁断竜王(きんだんりゅうおう) Vol(ボル)-Val(バル)-8(エイト)》だった。

 

「勝様?」

「?どうかしましたか?火野様?」

「……いや、何でもないよ。《アクアン-2》をマナに置いて、もう一枚を手札に加える」

 

 手札に《Vol-Val-8》を加えた後、勝は《Vol-Val-8》のカードを見る。

 

(昔の僕なら、君を使うことができなかった。けど、今の僕は強くなった……はず。けど、どんなに強くなっても、結衣ちゃんには勝てなかった。だから、これはその一歩。僕がさらに強くなるために《Vol-Val-8》、力を貸してくれるか?)

 

 そう脳裏で、《Vol-Val-8》に問いかけると、《Vol-Val-8》のカードが光った。

 それと同時に、カードから声が聞こえ、勝の耳に響いた。

 

『──汝ノ望ミ、シカト聞イタ。故ニ、我ハ、汝ヲ、主ト認メル。サァ、主ヨ。我ト、我ラ、ディスタスヲ使エ!』

「ッ、わかった。そして、ありがとう……」

 

 勝が返事を返すと、《Vol-Val-8》の光が収まった。

 それと同時に、何かが吹っ切れたかのように、勝は大きな声を上げる。

 

「その身を捧げよ、ササゲール、発動ッ!」

「「っ!?」」

 

 突如、勝の場にいる《エルフィ-1》2体、《キューティ-2》、《アジサイ-2》の計4体のディスタスが墓地に置かれた。

 その光景にエリカと秋乃の2人は驚き、それと同時に、実体化している4体のディスタスが、その場に爆発し、魂のような霊体が4つ、勝の手札に集まり、吸収された。

 そして、残った3枚のマナをタップし、一枚のカード、《Vol-Val-8》に手を置き、引き抜く。

 

「今こそ、封印されし、禁断の竜王を解放する時!3マナで、《禁断竜王 Vol-Val-8》を召喚ッ!」

 

 突如、次元の裂け目が開き、そこから《Vol-Val-8》が現れた。それと同時に、《Vol-Val-8》の体から魂のような霊体が現れ、勝のシールドの前に出現し、勝の山札から1枚、シールドに加わった。

 

『全テヲ、破壊、スル……!我ハ、主、ショウニ使エル、禁断、竜王、ナリ……!』

「しゃ、喋った!?」

「馬鹿な!?こんなことがあり得るのか!?」

 

 現れた《Vol-Val-8》が喋れることに、2人は驚く。

 本来、クリーチャーは意志を持たず、特別な繋がりがなければ、会話することもままならない。

 逆に言うと、勝と《Vol-Val-8》──否、禁断竜王はそれだけ、強い繋がりで結ばれている。

 

『ウル、サイ!オマエ、タチ、目障リ!一瞬、デ、破壊、スル……!』

 

 女性のような機械的な声で、禁断竜王はエリカと秋乃の2人にそう言って、圧をかける。

 

「《Vol-Val-8》はスピードアタッカーとジャストダイバーを持ってる!よって、そのまま攻撃!する時に、《Vol-Val-8》の攻撃時とアタック・チャンス呪文、《禁断竜秘伝エターナル・プレミアムズ》の2つを発動ッ!」

『ウ、オオオオオオオオオオォォォォォォォォォォッ!』

 

 突如、禁断竜王はお叫びを上げながら、巨大な剣で、《ブルーム=プルーフ》を切り裂いた。

 そのまま《ブルーム=プルーフ》は爆破し、エリカの場にあった《ブルーム=プルーフ》が墓地に置かれた。

 

「っ、《ブルーム=プルーフ》が!?」

「《Vol-Val-8》の効果!山札の上から、カードを5枚見て、その中からカードを2枚まで選んで、手札に加え、残りを山札の一番下に置き、その後、お互いのパワー6000以下のクリーチャーを全て破壊する!」

「なるほど。それでこちらの《ブルーム=プルーフ》が破壊されたのですか……」

 

 これでエリカの場には《ジャシン帝》とタマシード状態の《ジャブラッド》のみ。

 また、《ブルーム=プルーフ》が居なくなったことで、勝がアタック・チャンスで唱えた《エターナル・プレミアムズ》の効果を最大限に発揮できる。

 その効果は。

 

「次に《エターナル・プレミアムズ》の効果!プレイヤーを一人選び、そのプレイヤーのマナからコスト5以下のクリーチャーを場に出す!その後、山札の上から1枚、タップして、マナに置く!今回は僕のマナゾーンから《カダブランプー》を場に出して、山札の上から1枚、タップしてマナに置くよ!」

「な!?このタイミングで、《カダブランプー》ですか!?」

 

 今度はランプの魔人の如く、《カダブランプー》が場に出る。

 すると、タップ状態の《Vol-Val-8》がアンタップ状態になった。

 これが《カダブランプー》の効果。場に出た時、自分の他のクリーチャーをアンタップし、そのクリーチャーのパワーを+2000するのだ。

 以外なカードに、エリカは驚くも、勝が唱えた《エターナル・プレミアムズ》には、まだ効果が2つ残っている。

 

「さらに、《エターナル・プレミアムズ》の効果で、《Vol-Val-8》と《ジャシン帝》をバトル!」

「手札に捨てるカードも、《ジャブラッド》の効果で、防ぐこともできませんね。大人しく、破壊されます」

『オラァ!ジャシンガナンボノモンジャァ!』

「「「えっ?」」」

 

 さっきまでの機械的な言葉遣いとは違い、ヤンキー女子みたいな言葉遣いに変わり、その突然の変貌に、3人は驚く。

 そんな3人を他所に、禁断竜王はまた巨大な剣で、《ジャシン帝》を切り裂いた。

 

「「「……」」」

『サァ、主ヨ、最後ノ力ヲ使ウノデス!》

 

 あまりにも異様な光景に唖然とする3人。

 対して、禁断竜王は今度は元気な声で、勝に《エターナル・プレミアムズ》の最後の力を発揮するよう、指示した。

 それを聞いて、勝ははっとなり、《エターナル・プレミアムズ》の最後の効果を提示する。

 

「最後に《エターナル・プレミアムズ》の効果で、このターン、僕のクリーチャーはブロックされない!そして、《Vol-Val-8》で、T・ブレイクッ!」

『オラァァァァァァァァァァァッ!』

「っ、シールド・トリガー!《悪灯(あくとう) トーチ=トートロット》を召喚!その効果で、相手のパワーの一番小さいクリーチャーを破壊!《カダブランプー》を破壊です!」

 

 勝の指示に、禁断竜王はエリカのシールドを3枚ブレイクした。

 しかし、ブレイクされたシールドの中に《トーチ=トートロット》が現れ、両手から火の玉を出し、勝の《カダブランプー》に向けて放し、破壊した。

 

「なんの!《Vol-Val-8》で、もう一度、攻撃!攻撃時に山札の上から5枚見て、2枚を手札に加えて……全体破壊は任意(にんい)だから、今回は使わない。W・ブレイク!」

「……トリガーはありません」

「オケ。僕はこれでターンエンド。この時、《Vol-Val-8》の効果、発動!僕のターン中に、クリーチャーが4体以上破壊されていれば、追加(エクストラ)ターンを得る!」

 

 これが勝が扱う、《禁断竜王 Vol-Val-8》の恐るべき能力。

 

「僕のターン……マナチャージせず、4マナで《シャッフ》を召喚。効果で、7を宣言。これで《トーチ=トートロット》はブロックできない。この意味、わかるよね?」

「……ええ、完敗です」

 

 最後の詰めと言わんばかりに、勝は《シャッフ》を召喚し、《トーチ=トートロット》のブロッカー能力を封じた。

 

「──《Vol-Val-8》でダイレクトアタックッ!」

『我ト、主ノ、勝利ダ!』

 

 

 




勝君、今度はしっかり勝ちましたね(笑)
対戦後のお話は次回、描きます。


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ACE35:報酬と新たな目標と新たな決意。

 

 

 

 エリカにデュエマに勝利した後、勝達は元の場所に戻っていた。

 

「……暁月さん、怪我はない?」

「これぐらい、何ともありません……」

 

 以前、マリは結衣とのデュエマでクリーチャーによる攻撃を受け、怪我をした。

 幸い、勝は慣れているのか、ある程度、禁断竜王の力を使いこなしているため、エリカに怪我をさせないように、手加減をしたが、一応、怪我はないか、エリカに確認をとるも、この通り、エリカは無事である。

 

「……そう?それなら本題に入るけど、何で君がジャシン帝を持っているの?」

「これは貴方が知るジャシン帝ではありません」

「え?」

 

 勝の質問に、あっさり否定して答えるエリカに勝は驚き、再度、問いかけるよりも前に、エリカは《アビスベル=ジャシン帝》のカードと《邪龍 ジャブラッド》のカードの2枚を勝に見せる。

 

「瞳を使えば、このカードから発せられるオーラを感じられるはずです。貴方なら、それができますよね?それで確認してください」

「……わかった」

 

 いまいち、納得できていないが、勝は渋々、瞳を赤い、紅色の炎に変え、2枚のカードから発せられるオーラを探った。

 

「え?嘘……?ない?なんで?」

 

 だが、どういうわけか、2枚のカードからオーラのようなものが感じられなかった。

 

「やっぱり、貴方でも感じられなかったみたいですね……」

「どういうこと?」

「私にもわかりませんが、このカード達はデュエル中にしか、力を発動せず、それ以外はただのカードにすぎないんです」

「なるほど。それなら、僕の瞳の力でも感じられないわけだ……」

「あの、それって、大丈夫なんですか?」

 

 突然、勝とエリカの会話を近くで聞いていた秋乃は口を開き、二人に問いかけた。

 

「今のところは大丈夫だよ。ただ、もしものことがあったら大変だから、一度、特務課(とくむか)の人たちにお願いした方が良いんじゃないかな?」

「それなら、最初に手にした時に、一度お願いしましたが、『それは君に相応しいカードかもしれない。時が来るまで、君が持っておくと良い』と、言われました」

「相変わらず、いい加減な人だな、あの人は……」

 

 勝達が言う特務課とは『デュエマ災害特別対策部隊』、通称『特務課』。

 彼らはデュエマに関する犯罪を防ぐために活動している部隊であり、中には、実体化するクリーチャーを止める者もいる。

 また、彼らは特殊な力があり、その力は勝と結衣と同じ、瞳の色が変化する者が大半である。

 そして、その瞳の力にはクリーチャーを使役したり、カードの力を魔法のように扱って、クリーチャーと戦うことができる。

 と言っても、最近はクリーチャーが出ることは全くないので、主に犯罪者をあぶり出したり、同じ力を持つ者を探すために使われている。

 

「そうなると、当分の間、君が持っておくのが得策か……」

「良いのですか?」

「良くはないよ。ただ、あの人が暁月さんに預けたなら、僕からは何も言うことはないよ」

「……そうですか。それなら、代わりの物を貴方に渡しましょう」

 

 そう言って、エリカは一人、部屋を出て、少ししてから、小さい封筒を持って、部屋に入ってきた。

 

「こちらをどうぞ。火野様」

「……開けて良い?」

「構いませんわ。きっと、勝様なら、喜びますわ」

「?」

 

 秋乃は小さい微笑み、それを見た勝は疑問を抱きながらも、封筒の中を開けた。

 その中にはデュエマのカードが数枚入っていた。

 

 しかも、そのカードの中には──

 

「──《ボルシャック・アークゼオス》!?しかも、4枚!?」

「ブラックキャットで、欲しがっていたので、わたくしの方で買い取っておきましたわ」

 

 あっさり、そう言うが、今、《ボルシャック・アークゼオス》の値段は1枚1000円を越える。

 しかし、この少女、焔秋乃は焔財閥の一人娘である。

 つまり、彼女なら、《ボルシャック・アークゼオス》を4枚買うことなど、動作(どうさ)もない。

 

「マジか……いや、秋乃さんなら、有り得るな……」

「それはどういう意味ですの?勝様?」

「いえ、ナンデモナイデス」

 

『ナーンデ、カタゴトナンデスカ?』

 

「「「え?」」」

 

 突然、勝のデッキから聞き慣れた機械的な女性の声が響き、勝はまさかと思い、デッキから1枚のカード、《禁断竜王 Vol-Val-8》を取り出した。

 しかも、その《Vol-Val-8》のカードはなんと、人型の女性の姿になっていた。

 

「「「なんで!?」」」

 

 突然、女性の姿になったカードに3人は揃って驚く。

 

「いや、待て待て!?どういう経緯で、そうなった!?Vol-Val-8よ、説明してくれるか!?」

『ム、ソノ、言イ方ハ、良クナイ、デス。ワタシハ、禁断竜王、デス。ボル-バル-エイトハ、合体、前ノ、名前ガ、無理矢理、合ワセタ、名前、デス。正式名ハ、禁断竜王、デス』

「めんどくさ!けど、そういうことなら、仕方がない。改めて、禁断竜王、どういう経緯で、そうなったか、説明してくれるか?」

『了解。解析、開始……解析、完了』

「仕事が速いですわね……」

「ええ。ですが、こういう時の解析の速さは大抵、ロクな結果ではない──」

 

『──先程ノデュエマデ、主ノ不思議ナ力ガ、上昇シ、マタ、ソチラノ女性ノ、ジャシン帝ノ、マナガ、増幅シタコトデ、対抗策、モトイ、打開策トシテ、ワタシガ顕現シマシタ』

 

「「「……え?」」」

 

 まさかまさかの禁断竜王からとんでもない真実を3人は告げられる。

 

「ちょっと待ってぇー!?それってつまり、復活するってことか!?ジャシン帝が!?」

『イエ、違イマス』

「?何がどう違うのですの?」

『皆サンハ、タンポポガ、ドウヤッテ、繁殖、シテイルカ、ゴ存知、デスカ?』

「「「?」」」

 

 急に花のたんぽぽの繁殖方法を問いかける禁断竜王の言葉に、3人は頭を傾げる。

 

「……確か、白い綿毛(わたげ)が咲いたら、その綿毛が散って、風に乗って飛散(ひさん)する……だって?」

『ソノ通リ。ツマリ、理屈ハ、ソレト、オナジ、デス』

「?」

 

 またしても、勝は頭を傾げる。

 たんぽぽの繁殖方法はわかっているが、それとジャシン帝の復活と何が関係あるのだろうか、と、勝は脳裏に疑問を抱く。

 

「……もしかして、このジャシン帝は本体ではなく、コピー、あるいは、模造品ですの?」

『イエス。モット、イウト、ソレハ、本体ニ、違イ、モノ。故ニ、ワタシ、ガ、顕現シタ、理由、デス。タダシ、今ハ、マダ、眠ッテ、イル……タメ……問、題、ハ……a……マ……ン……』

「禁断竜王!?」

 

 突然、壊れた機械のように、禁断竜王の言葉が停止した。

 それと同時に、勝のスマホが鳴り響き、勝は急いで、スマホを取り出すと、非通知のメールがきていた。

 恐る恐る、中を開けると、件名に『禁断竜王』と、書かれていた。

 

『スミマセン。マナガ、不足、シタタメ、一時的ニ、睡眠モード、モトイ、充電、サセテ、モライマス』

 

「……どうやら、マナが枯渇して、寝ているみたいだ」

「そうですか。それなら、良かったです」

「うん。代わりに、問題事が山ほど出たけど……」

 

 赤羽結衣との再戦。

 新しいボルシャックの構築。

 そして、ジャシン帝、復活のために、力をつけないといけないこと。

 

 一つずつ、順番に、解決しなければならない。脳裏でそう思う中、秋乃が勝に声をかけた。

 

「もう一つ、やるべきことがありますわよ」

「……デュエマ甲子園。わかってる。そのために、僕はACE学園に来たのだから……出るからには全力で勝ちにいくよ!」

「貴方だけのデュエマ甲子園ではありません」

「わたくしやエリカ、咲恋さん達も参加するのです。常々、忘れないでくださいまし」

 

 秋乃は笑顔で、そう強く言い、その言葉に勝は満遍の笑顔を見せる。

 

「わかってるよ!チーム全員参加と、チームの誰かが優勝すること!そして……その中で、否、デュエマ甲子園で、一番強いことを、僕が証明するよッ!」

 

 新たな目標と、新たな決意に、勝はそう強く、二人に宣言した。

 

 

 




やっと、デュエマ甲子園の話が書けます。
と言っても、後数話ほど……予定では5話ほど、遠回りします。

感想などありましたら、言ってください。励みになります。


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ACE36:赤羽結衣が通う学園。

今回は結衣ちゃんが通う学園のお話です。


 

 

 

 ここは赤羽結衣が通う学園、『天災(ディダスター)学園』。

 ここにいる生徒は皆、男女問わず、不良であり、また、デュエマの実力がかなり高いが、ごく稀に、天才、もとい、天災級の実力者がいる。

 そして、赤羽結衣は今、三年の男子生徒とデュエマをしていた。

 その男子生徒は今年のデュエマ甲子園の優勝候補筆頭であり、その実力はかなりの腕前である。

 

「──《XXDDZ》で、ダイレクトアタック!」

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 しかし、結衣にとっては、その実力は関係なかった。

 彼女はお得意の5色コントロールで、男子生徒の手札を破壊し、《英知と追撃の宝剣(エターナル・ソード)》で、バトルゾーンとマナゾーンを削り、決めつけには、《XXDDZ》と《ミラダンテⅫ》のロックで、一気に攻め、勝利した。

 

「……ふぅー」

 

 敗北した男子生徒はその場に倒れ、それを見た結衣は肩の力が抜けたのか、溜め息を吐いた。

 流石の彼女でも、優勝候補筆頭の相手には、骨が折れたのだろう。

 

「いやー、流石は結衣。優勝候補筆頭の相手に、圧倒するとか、やるじゃん」

「……」

 

 両手をパチパチと、叩きながら、金髪ツインテールの女子生徒、『花宮(はなみや)黒江(くろえ)』はそう言い、彼女の言葉に、結衣は無表情に、黒江に近づいた。

 

「はい、勝利の一服の飴ちゃん」

「ありがとう……」

 

 お礼を言って、黒江から渡された飴を貰い、迷うことなく、結衣は口に入れる。

 

「んで、ぶっちゃっけると、どうだったの?」

「練習相手としては悪くはないね。けど、私の実力向上には、少し物足りないかな」

「へー、言うじゃん。本音は?」

「……危なかったけど、実力とプレイングはわかったから、次は瞬殺ね」

「おー、言い切ったよ、この子。こわ」

「……」

 

 黒江がそう言うと、結衣はバツが悪そうに、黒江を睨む。

 

「何?うち、睨まれることした?」

「……別に」

 

「オイ!今度はオレ達と勝負だ!赤羽結衣!」

 

 そう言って、僅か10人ほどの生徒が寄ってきて、結衣と黒江を中心に囲んだ。

 

「ん?何だ?アンタ、この間、結衣にボコられた三年じゃん。ウケる。性懲りも無く、結衣に挑むとか、頭悪いん?しかも、女の子一人相手に、数で迫るとか、外道かよ」

「うるせぇ!こっちはもう後に引けねぇところまできてるんだ!さっさと、デッキを構えろ!それから、オレは『阿保宮(あほみや)トオル』だ!いい加減、名前を覚えやがれ!」

「はいはい。んで、結衣、どうする?」

「……当然、相手になるよ」

「決まりね!んじゃ、早速──」

「ちょい待ち」

 

 女子生徒と結衣がデッキを取り出そうとすると、黒江が待ったをかける。

 

「結衣、アンタ、さっき、優勝候補筆頭を相手に疲れてるやろ?ここは、ウチが軽ーく、ブッ飛ばすから、アンタは休んどき。な?わかったな?」

「……」

 

(本当は自分がやりたいだけでしょ?)

 

 脳裏にそう思う結衣だが、あえて口には出さず、黒江に「わかった。お願いするわ、黒江」と言って、結衣は取り出しかけたデッキを腰に収めた。

 

「うし。そういうわけで、アンタらの相手はウチがすることになった」

「何勝手に決めてやがる!」

「そうよ!私たちを舐めてるなら、容赦しないわよ!」

 

 女子生徒がそう言うと、彼女は迷うことなく、黒江に挑んだ。

 

「──その(おご)り、後悔するじゃねぇぞ?」

 

 ──30分後。

 先程、結衣と黒江を囲んだ10人の生徒がその場に倒れた。

 何故なら、花宮黒江ことが、今年の天災級の実力であるからだ。

 そして、その、黒江の実力を買って、結衣は彼女と共に、デュエマ甲子園に向けて、実力()を上げていた。

 

「ウケる。何か策でもあるのかと思ったら、大したことないじゃん」

 

 意地の悪い笑みで、黒江はそう言うと、先程、結衣に突っかかってきたトオルが横になりながらも、口を開く。

 

「ふ、ふざけんじゃねぇ……そこの女に負けるならまだしも、無銘のヤツに負けるなんて……ありえねえ……」

「……」

 

 トオルがそう言うと、結衣は倒れているトオルに近づき、右足を彼の背中に強く、踏んだ。

 

「ガハ……!」

「……実力は常に積み重ね。つまり、努力の結晶であり、黒江の実力は努力によって得たもの……本物よ!それを認めない者に、強くなる価値はないわ!」

 

 そう強く言うと、トオルの体を回して、腹を思いっきり、数回蹴った。

 

 気を失ったところを見て、結衣は黒江に近づく。

 

「……ごめんなさい。私、冷静さを失ってたわ」

「気にすることはないよ、結衣。とりま、どうする?後一人、戦力が欲しいところだけど……」

「それなら一人、心当たりがあるわ。少し時間がかかるけど、任せてくれる?」

「りょーかい。んじゃ、ウチはその間に、やることやっていきますか……」

「?やること?」

 

「なーに、ほんの少し、ご挨拶と──宣戦布告をしに行くだけだよ」

 

 

 




はたして、黒江が行く所は一体?


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ACE37:部室に来訪する天災(ディザスター)

 

 

 

 ──ピンポーン!

 

「ん?」

 

 突然、玄関のチャイムが鳴った。

 

(こんな夜遅くに誰だろう?お父さんとお母さんは仕事だし……ネットで何か頼んだのかな?)

 

 そんな軽い気持ちで、私、明星ひよりは玄関に向かい、扉を開けた。

 

「え?」

 

 開けると、そこには警察の人が立っていた。

 しかも、相手は女性で、髪の毛がかなり長くて、見た目が20代ぐらいの美人さんだ。

 私はその容姿に目を奪われ、一瞬、我を忘れていた。

 

「……失礼。私はこういうものだ」

 

 そう言って、警察の人、『颯井(さつい)剣子(けんこ)』さんは私に名刺を渡した。

 

「?デュエマ犯罪特別対策部隊?えっと、確か、デュエマで罪を犯した人を捕まえる警察の人……ですよね?」

「ああ、そうだ。そして、私はその司令官だ。我々のことを知っていて、大変嬉しく思う」

「えっと、ありがとうございます?それで、その司令官さんが私に何のよう……まさか!?」

 

(まさか私、知らないうちに犯罪に手を染めていた!?それとも、知らず知らずのうちに、犯罪者に協力してたとか!?もし、そうだとしたら、私の人生……終わりじゃん!)

 

 そう脳裏で思う中、次に剣子さんから発せられる言葉に、私は面食らった。

 

「何、君が思うものじゃない。ただ、ほんの少し、目を見せてもらえればいいだけの話だ」

「あ……」

 

 終わった。

 

 

 

 ──翌日の放課後。

 

 現在、ACE学園のこの時間帯は運動部、文化部問わず、全部活動が活発に活動している時間帯だ。

 そして、それは『ACE・デュエマ部』こと、チーム『ACE STRIKER』も例外ではない。

 

「《コスモ・セブΛ》で、ダイレクトアタック!」

「クソ!また負けた!もう一度だ、月野!」

「何度やっても、結果は同じですよ?」

「ナンだとぉ!?」

 

「初動も大事だけど、やっぱり、強力な7コスト帯を多く積みたいわね」

「やっぱり、そうなりますか。そうなると、《ホーリーエンド》が4枚、必要になりますね」

「だね……」

 

「……」

 

 マリと想はデュエマをし続け、咲恋は翔に7軸ガチロボについて相談をしている中、ひよりは一人、ぼーっと、4人を見ていた。

 

「ん?どうしたの、ひよりちゃん?」

「ふぇ!?な、何でもないですよ!ただ、皆さんを見ていただけですよ!」

 

 何でもない、と言うが、何でもなくない。口ではそう言うが、顔はそうではない。

 

「ひよりちゃん、何か悩み事があったら言ってね。相談に乗るよ」

「ほ、本当に何でもないですよ。ただ……」

 

 咲恋はひよりに何か悩みがあるのだと、そう思い、ひよりにそう言うが、ひよりは慌てて、そう否定する。

 

(まさか、私にクリーチャーを使役する力がある、なんて言っても、誰も信じてくれないだろうなぁ……)

 

 昨晩、剣子がひよりの家に訪れ、強引にひよりの目を確認したところ、どうやら、ひよりにはクリーチャーを使役する力があることが判明した。

 ただ、剣子曰く、「まだ()が生えたばかりだから、本格的に使役するには資格や覚悟、クリーチャーとの契約などが必要だが、今の君には気にしなくて良い」とのこと。

 否、気にはする。もし、それが本当なら、アニメや漫画みたいに、ヤバい人達に襲われたり、拉致されたり、記憶を書き換えられたりしたら、たまったもんじゃない。

 

「そう言えば……勝先輩、まだ部室に来ませんね。何かあったのでしょうか?」

「ああ、勝ね……実は──」

 

「──邪魔するよ」

 

 ガタンッ!と、勢いよく部室の扉が開き、金髪ツインテール、花宮黒江が突然、入ってきた。

 突然の来客に、咲恋達は黒江に視線を向け、想は真っ先に、黒江に近づき、問いかける。

 

「何だぁ?テメエは?」

「ウチ?ウチは……天災(ディダスター)学園、二年生の花宮黒江。よろ。何、ほんの少し、挨拶に来ただけよ」

「……挨拶?」

「うん。そう、挨拶。主に結衣の同中(おなちゅう)の、勝ってヤツに……」

『!?』

 

 そう、あっさり言い切る黒江の言葉に咲恋達は驚く。

 

「結衣って、もしかして、結衣は貴方と同じ、天災(ディダスター)学園に通っているの!?」

「ん?そうだけど、それがどうかしたの?」

「……」

 

(成る程ね。結衣の性格が変わったのは天災(ディダスター)学園に通っていたからなのね。元々、あそこは不良の溜まり場だし、結衣の性格が変わったのも頷けるわ)

 

 中学時代、咲恋は生徒会の仕事で、結衣の様子を見てきた。

 品行方正(ひんこうほうせい)で、礼儀正しく、誰よりも優しかった結衣があんな風に変わるとは思わなかった。

 

「とりま、勝ってヤツ、誰?ウチ、ソイツに用があるんだけど……」

「……勝なら今日は来ないわよ」

「は?なんで?」

 

 咲恋の言葉に、頭にきたのか、黒江は不機嫌になり、また、圧をかけるかのように、咲恋に問いかける。

 

「アイツは今、風邪を引いた秋乃さんのところに向かってるわ!だから、今日は来ないわよ!」

「ふーん……んじゃ、ソイツの住所、教えて」

「!?教えるわけないでしょ!」

「だと思った……面倒だけど、これで決めよっか……」

 

 一歩も引かない咲恋の様子を見て、黒江はめんどくさそうに、デッキを取り出した。

 

「ウチが勝ったら、秋乃とかいうヤツの住所、教えてもらう。良いよね?」

「……ええ、望むところよ!」

「ワリいが、その喧嘩、オレ達も混ぜてもらうぜ」

「?早峰?それに、マリちゃん?」

「さっきから聞いてると、妙に腹が立つな、テメエ?ほんの少し、わからせてやるか?」

「先輩と同じ意見なのは癪ですが、私も貴女を勝様の所に行かせるわけにはいきません」

「お、俺も会長と同じ気持ちです!」

「私もです!」

「皆……」

 

 最初は咲恋一人で戦うはずだったが、いつも間にか、想とマリ、翔、ひよりが協力し、チーム一丸(いちがん)となって、黒江と対峙する話になっていた。

 それを見た黒江は深い溜め息を吐いた。

 

「……はぁー、めんどくさ。良いよ、順番に相手してあげる」

「その言葉、後悔するんじゃねぇぞ!」

「うっさいし。さっさと、始めるよ」

 

「「デュエマ・スタートッ!!」」

 

 

 




黒江さん、場を乱しすぎでは?(苦笑)


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ACE38:財閥の屋敷に来訪する天災(ディザスター)

終わらない、黒江乱舞。


 

 

 

「アンタで最後な、ダイレクトアタック」

「っ、そ、んな……」

 

 ガクッと、マリは黒江に敗北し、その場に倒れた。

 見ると、咲恋達4人目も、その場に倒れていた。

 どうやら、黒江は咲恋達5人を相手に、勝利したのだ。

 

「はい、終わりでーす。約束通り、住所、教えて」

「だ、れが、貴女なんかに、教える、もんですか……」

「ま、そう言うと思った。だから……勝手に探すわ」

 

 黒江はマリの体を回し、腰辺りやズボンのポケットに、手を突っ込む。

 

「ッ!?貴女!?何を!?──イヤん!」

「おー、良い声出すじゃん。ま、今回は、そういうの、どうでもいいんだけど……お、ビンゴ」

 

 そう言うと、マリのズボンのポケットからスマホを取り出し、画面を開いて、マリの親指に、スマホのホームボタンを当てる。

 すると、画面が開き、それを見た黒江はニヤリと、笑みを浮かべた。

 

「協力、ありがと。おやすみ」

「ッ……!?」

 

 黒江は容赦なく、マリの腹を殴り、殴られたマリは気を失った。

 

「さーて、秋乃とか言うヤツの住所は……え?」

 

 電話のアイコンを開き、『焔秋乃』の番号と住所を見て、黒江は目を丸くした。

 

(マジ?秋乃って、焔財閥の一人娘の秋乃なの?勝って、ヤツ、一体何者?)

 

 秋乃の存在に、黒江は頭を悩ませ、混乱し、抱え込むも、すぐさま、自分のやるべきことを思い出し、それらを一旦、頭の片隅(かたすみ)に置いた。

 

「まぁ、何でも良いや。とりま、この住所を、ウチのスマホにメモして……よし」

 

 スマホに住所をメモした後、黒江は「行くか!」と、息巻いて、秋乃の住む、焔財閥の家に向かった。

 

 

 

 一方、その頃、結衣はブラックキャットに来ていた。

 理由はそこで働いている、猫崎瑠璃こと、キャルに会いに来たからだ。

 

「アナタが猫崎瑠璃さん?」

「?そうだけど?アンタは確か、この間、非公認大会で優勝したイズミさん?だって?」

「はい、その節は大変すみませんでした」

「別に謝ることはないわよ。それで?わざわざ、私に声をかけたのは何か理由があるんでしょ?」

「はい、お察しのとおりです。なので、単刀直入に言います──」

 

「──猫崎瑠璃さん、貴女を天災(ディダスター)学園にスカウトしにしました」

 

 

 

 何も知らない勝は風邪を引いた秋乃の看病と、秋乃が財閥の仕事をいくつか受けていたことを知り、秋乃の代理、というのは厳しいので、エリカの仕事を手伝っている。

 

「すみません。わざわざ、こちらの仕事を手伝ってもらって……」

「別に構わないよ。それに困った時はお互いさまだよ?」

「ありがとうございます。それでしたら、こちらの書類に目を通して、ハンコをお願いします」

「うわー、一気に遠慮ないね……」

 

 こんな感じで、冗談を言い合えるぐらいに、二人の関係は良好である。

 良好であるが、ただ一人、焔秋乃は扉の向こうで、二人の関係に嫉妬の眼差しを向けていた。

 

「……なんか、秋乃さんから、凄い嫉妬の視線を感じる」

「そう思うなら、お嬢様のフォローに入ってください」

「はい、そうします……」

 

 そう言って、勝は秋乃の部屋に向かい、それを見送ったエリカは種類を一つにまとめて、机の真ん中に置いた

 

「……ここは関係者以外、立ち入り禁止です」

「いやー、そちらさんのセキュリティがガバガバだから、すんなり入れたわ」

 

 屋敷のどこから入ったのか、突然、黒江は悪びれもなく、そう言って、現れた。

 

「大方、マリのスマホを勝手に使って、こちらに侵入したところですか」

「良い推理だけど、探偵としてはまだまだ、かな?ま、ウチにはどうでもいいけど……」

 

 そう言って、黒江はデッキを取り出した。

 それを見たエリカは無言で、デッキを取り出した。

 

「……一応、問いましょう。貴女の目的は?」

「火野勝を完膚なきまでに叩きのめす!それがウチの目的……最初はただの挨拶のつもりだったけど……」

「そうですか。ですが、如何(いか)なる理由であろうとも、この屋敷に入った者は生かしておけません!」

「そうかよ。ま、御託(ごたく)はいいよ。さっさと、用事を済ませて、ウチは家に帰る。それだけだよ」

 

「──だったら、僕が直々に相手してあげるよ」

 

「「!?」」

 

 突如、秋乃の部屋に向かったはずの勝が戻っており、エリカの前に立った。

 

「……フ、ウケる。アンタ、面白いな。のこのこ、ウチの前に現れるとか、バカじゃないの?」

「バカはどっちだ?凄く痛い不良のギャルのお姉さん?略して、S・I・F・G、なんてね……」

「あん?今何つった?」

 

 勝が発した言葉に、黒江は今までにないぐらい、不機嫌になり、怒りながらも、勝に問いかけた。

 

「聞こえなかったの?凄く、痛い、不良の、ギャル!略して、S・I・F・G!わかった?」

「ムッカァー!アンタ、女相手になんて暴言吐くの!そりゃあ、見るからに不良で痛いヤツだけど、ウチはギャルじゃなくて、凄くカッコいい不良なの!わかった?」

「わからないよ。と言うか、わかりたくない。部活の仲間を痛ぶった相手の感性なんて、尚更ね……」

「……」

 

 それを聞いて、黒江は一瞬、黙り込むも、すぐさま、口を開いた。

 

「なーんだ、そこまで話が回ってるんだ。だったら、こんな回りくどいことしなくていいな……」

 

 そう言うと、黒江の瞳が黒い、緑色に変化した。

 それと同時に、黒江の後ろに、巨人のような影が現れた。

 

「……なるほど。君も真の決闘者(デュエリスト)か……それなら!」

 

 それを見た勝は瞳の色を赤く、紅の炎に変化し、ボルシャック・フォース・ドラゴンの影を実体化させた。

 

「へー、結衣から聞いてたけど、アンタも真の決闘者(デュエリスト)なんだ……ま、どうでもいいよ。何故なら──」

 

「──ウチのジャイアントがアンタのドラゴンを捻り潰すッ!」

「いくよッ!」

 

「「デュエマ・スタートッ!!」」

 

 

 




はたして、勝は黒江に勝てるのか!?
次回、ご期待!


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ACE39:天災(ディザスター)の正体!?吠えろ、英雄達!!

今回の話はとても長いので、時間がある時に読むことをオススメします。
という訳で、ACE39、どうぞ。


 

 

 

「ウチのターン。まずは2マナ、双極(ツインパクト)呪文、《記録的剛球(ロングラン・ヒット)》。効果で、山札の上から1枚、マナに。ターンエンド」

「僕のターン!こっちも、ツインパクトだ!呪文、《決闘者(デュエリスト)・チャージャー》!効果で、山札の上から3枚見て、《ボルシャック・フォース・ドラゴン》と《ボルシャック・バラフィオル》を手札に!《ザークピッチ》は山札の下に置いて、《決闘者・チャージャー》をマナゾーンに!ターンエンド!」

「序盤から飛ばすね。ま、良いけど。ウチのターン。マナチャージして、《雲の超人(クラウド・ジャイアント)》を召喚。効果で、山札の上から3枚見て、3枚とも、ジャイアントだから、すべてタップしてマナに。ターンエンド」

 

 互いに、動きは順調に進んでいるが、黒江のマナは今、7マナ。

 対して、勝のマナは4マナ。マナチャージしても5マナしか使えないため、強力なドラゴンを出すにはまだ時間がかかる。

 そう、いつもなら、だ。

 

「僕のターン!マナチャージ!4マナをタップ……《クック・(スクランブル)・ブルッチ》を召喚!」

「ッ、ソイツは確か……!?」

「流石に知ってるか。だけど、僕にとっては今回が初陣(初めて)だ!そして、コイツも、だ……!」

「ッ!?」

 

 突如、勝の後ろにボルシャック・カイザーとボルシャック・フォース・ドラゴン、2体のドラゴンが実体化し、ボルシャック・フォース・ドラゴンは前脚を浮かせて、細い腕に変化し、背中に着いていた2本の砲撃が小さなガトリングと、その上に長い(ブレード)に変化し、腰辺りに移動し、砲撃が着いていた背中から翼が生えた。

 その姿はまるで、恐竜の姿に近い姿だった。

 この瞬間、ボルシャック・フォース・ドラゴンは今、新たな姿、新たな名前()、新たなボルシャック、《強襲竜(きょうしゅうりゅう) ボルシャック・レイダー》に生まれ変わった。

 

「僕のすべきこと、為すべきことを果たす為なら、覇道の道も惜しまない!《轟・ブルッチ》の効果で、次に使うアーマードのコストを6軽減!1マナで、《覇炎竜(はえんりゅう) ボルシャック・ライダー》を召喚ッ!」

 

 勝の召喚向上に合わせて、生まれ変わったボルシャック・レイダーの背中に、ボルシャック・カイザーは乗った。

 これが、勝の新たな切り札にして、新たなボルシャック、《覇炎竜 ボルシャック・ライダー》だ。

 

「マジか。4ターン目で、切り札とか、ヤバイな……」

「それだけじゃないよ!《ボルシャック・ライダー》はスピードアタッカー!出たターンに攻撃できる!《ボルシャック・ライダー》でシールドを攻撃!この時、アーマード・メクレイド5を2回発動ッ!」

 

 その瞬間、勝の山札の上から3枚が浮き、その内の一枚、《ボルシャック・フォース・ドラゴン》を選択し、それを場に出し、残り2枚は山札の下に置き、新たなに3枚が浮き上がり、その中から一枚、《ボルシャック・アークゼオス》を選択し、それを場に出し、残り2枚を山札の下に置いた。

 これが《ボルシャック・ライダー》の能力。各ブレイクの前に、アーマード・メクレイド5を発動できるのだ。

 そして、《ボルシャック・ライダー》はW・ブレイカーを持っているため、必然的に、アーマード・メクレイド5が2回使えるのだ。

 そして、今回、『双竜戦記』から追加された新能力、メクレイド。

 自身の山札の上から3枚を見て、指定された種族とコスト以下のカードをただで使えるのだ。

 

「場に出た《ボルシャック・アークゼオス》のアーマード・メクレイド5、発動ッ!山札から3枚見て……《ボルシャック・(ストライク)・ルピア》を召喚ッ!そして、《ボルシャック・フォース・ドラゴン》の効果で、《雲の超人》を破壊ッ!そして、《ボルシャック・ライダー》で、W・ブレイクッ!」

「ッ、テメエ!調子に乗ってんじゃねぇ!」

 

 刹那。ボルシャック・ライダーがブレイクしたシールドの中に、シールド・トリガーがあり、黒江はそれを発動した。

 それはまるで、黒江の叫びに応えるかのように、顕現した。

 

「──双極(ツインパクト)!呪文、《輝跡の大地(アース・ウインド・アンド・パット)》っ!呪文の効果で、マナゾーンからコスト8以下のジャイアントを一体、場に出す!出すのはコイツだ!」

 

 突如、その巨人は顕現した。否、巨人と言うのは生やさしい存在である。それは巨人であり、竜の姿をしたジャイアント・ドラゴン。

 

「すべてを踏み潰せ!そして、反撃を許すな!これがウチの切り札、《首領竜(キャプテン) ゴルファンタジスタ》だッ!」

 

 花宮黒江の切り札、《首領竜 ゴルファンタジスタ》が実体化し、姿を現した。

 

「呪文の効果で、《ゴルファンタジスタ》と《ボルシャック・ライダー》をバトル!」

「《ボルシャック・ライダー》の効果で、セイバー能力を得た《ボルシャック・爆・ルピア》を破壊して、《ボルシャック・ライダー》を守る!」

 

 実体化したゴルファンタジスタはボルシャック・ライダーに拳をぶつけるが、突然、幻影として現れたボルシャック・爆・ルピアが盾になり、「ピィ!」と叫び声を上げながら殴られ、爆破し、破壊された。

 しかし、破壊されたボルシャック・爆・ルピアの炎は消えず、勝の山札に近づき、吸収され、赤く光った。

 

「破壊された《ボルシャック・爆・ルピア》の効果!アーマード・メクレイド8を発動ッ!」

 

 すると、勝の周りに紫色の炎が現れ、それが徐々に、(まこと)(ほのお)に変わり、そこから巨大な龍が現れた。

 

「闇の龍神よ、炎を纏え!そして、仲間を守れ!出番だ、《ボルシャック・モルナルク》ッ!」

 

 闇のファイブ・オリジン・ドラゴン、《黒龍神モルナルク》がボルシャックの名を持った姿、《ボルシャック・モルナルク》が姿を現し、ボルシャック・ライダーの横に並び立つ。

 

「《ボルシャック・モルナルク》の効果!墓地にある《ボルシャック・爆・ルピア》を手札に戻す!」

「それがどうした?こっちは《ゴルファンタジスタ》の効果を、すでに発動してる。次のウチのターンのはじめまで、コイツよりパワーが小さいクリーチャーはウチを攻撃できない!」

「……ッ!?」

 

 それはつまり、《ゴルファンタジスタ》が出た今、このターン、勝のクリーチャーはもう攻撃できない。

 

(否、待てよ?マナから《ゴルファンタジスタ》が出たってことは、彼女が次に使えるマナは7マナ?それでいて、さっき攻撃したことで、手札は今、4枚。ドローで5枚、マナチャージして、4枚だから……)

 

 冷静に黒江の場とマナ、手札を分析する勝。

 そして、黒江が使ってるデッキは自然単色のジャイアントデッキ。

 勝が知ってるジャイアントデッキと『双竜戦記』で追加されたジャイアントを思い出し、そこから考えられるカードを見出す。

 

(……もしも、アレが彼女のデッキに入っているなら、僕は次のターン、確実に負ける。けど、《ゴルファンタジスタ》の効果で、僕はこのターン、攻撃できない)

 

 これは賭けだ、と、勝はそう結論づける。

 どの道、《ゴルファンタジスタ》の効果で、勝はこのターン、攻撃できない。

 自身が最も危険なカードが入っていないことを祈り、勝は黒江にターンを渡すしか、他にない。

 

「……ターンエンド」

「やっと、ウチのターンか。考えるのが長かったな?考える時は考えますって、一言言った方が良いよ?」

「……そうだね。次からは気をつけるよ」

「うん、よろしい。ま、いくら考えたところで、結果は変わらないんだけどね」

「どういう意味ですか?」

「どういう意味も何も、アンタはこのターンで、ウチに負ける」

「ッ、まさか……!?」

 

 勝がそう口にした次の瞬間、黒江の場に、《環嵐(かんらん)!ホールインワン・ヘラクレス》、《とこしえの超人(プライマル・ジャイアント)》、《キャディ・ビートル》の3体が一瞬で場に出た。それらはすべて、種族にジャイアントを持つクリーチャーだ。

 そして、黒江の場は今、4体のジャイアントが揃ってしまった。

 つまり、ここで最上級にして、勝にとっては最悪のジャイアントが場に出るのだ。

 

「自分の場にジャイアントが4体以上いれば、コイツはG・ゼロで場に出せる!」

 

 それは忍者(シノビ)のジャイアント。背景ストーリーで、《剛撃戦攻(ごうげきせんこう)ドルゲーザ》がシノビの力を得て、世界崩壊を防いだ姿──

 

「光の中に闇あり。そして、闇が光に反転し、表舞台に顔を出す、《キャディ・ビートル》を進化!《終の怒流牙(ラスト・ニンジャ) ドルゲユキムラ》を召喚!」

 

 ──《終の怒流牙 ドルゲユキムラ》。

 これこそが、勝が一番、恐れていた進化ジャイアント・クリーチャーだ。

 そして、そのドルゲユキムラは実体化し、黒江のゴルファンタジスタの横に並び立った。

 

「《ユキムラ》の効果。マナから《ハヤブサマル》を手札に戻す」

 

 このターンに決められなかった時の保険と言わんばかり、ニンジャ・ストライクを持つ光の殿堂カード、《光牙忍(こうがにん)ハヤブサマル》を手札に戻し、勝に見せつける。

 対して、勝は恐れいていた出来事、即攻撃に参加できる《ドルゲユキムラ》が出たことと、ワールド・ブレイカーを持った《ゴルファンタジスタ》、メクレイドや《ボルシャック・ドギラゴン》の革命0トリガーを封じる《とこしえの超人》が揃ったことに、絶望していた。

 

(また……僕は負けるのか?)

 

 この時、結衣に敗北した光景が脳裏に過った(フラッシュバックした)

 あの時と状況が少し違う、部分的に、近いものを感じた。少なくとも、勝はそう感じた。

 

『──諦めるのか、人間?』

 

「え?」

 

 突如、どこからか、声が響いた。

 聞きなれない声の筈が、ずっと、近くに感じる。

 

『我を汝に託した美し少女の想いを無下にするのか?』

 

『あの時の屈辱を晴らしたいんだろ?』

 

『だったら、こんな所で、諦めるんじゃねぇ!』

 

「……!」

 

 ボルシャック・フォース・ドラゴンの声が聞こえた途端、勝は実体化しているボルシャック・モルナルクと、バトルゾーンのボルシャック・アークゼオス、そして、手札のボルシャック・バラフィオルの声に気づいた。

 

(そうだ、僕は一人で戦っているんじゃない!仲間と一緒に、ここまで強くなれたんだ!それに何より……)

 

 勝は実体化しているボルシャック・ライダー、否、ボルシャック・レイダーに進化したボルシャック・フォース・ドラゴンに振り向く。

 

「……忘れていたよ。僕はずっと、君と一緒に戦っていたのに、何でだろうね?けど、気づかせてくれて、ありがとう、ボルシャック・フォース・ドラゴン……否、ボルシャック・レイダー……」

 

 勝がお礼を言うと、ボルシャック・レイダーはそっぽを向いた。

 

「もう、大丈夫だよ、皆……僕はもう、最後まで諦めない!絶望なんて、しないよ!」

 

 そう強く、決意すると、勝は黒江に向かい直った。

 

「ブツブツブツブツと、独り言を言っているようだけど、サレンダーするなら、今のうちだけど?」

「サレンダーはしないよ。ここで逃げたら、また、前に進めなくなる。そんな気がする……」

「あっそ。んじゃ、遠慮なく、《ゴルファンタジスタ》で、ワールド・ブレイク!」

 

 黒江の指示に、ゴルファンタジスタは勢いよく駆け出し、巨大な二つの手で5枚のシールドを挟み、粉砕した。

 これにより、勝のシールドはすべてブレイクされた。

 

「シールド・トリガー!《ザーク・(カノン)・ピッチ》を召喚!効果で、《とこしえの超人》を破壊!」

「ウケる。さっさのトリガーがそれだけとか、悪足掻きもならないじゃん」

「確かに。これじゃあ、君の《ドルゲユキムラ》は止められない」

「だったら、何の意味があるの?」

「意味ならあるよ。それに……君は一つ、大きなミスを犯した」

 

 指を指しながら、勝はそう強く、宣言した。

 

「は?ミス?ウチが?何それ?意味わからんし。わかるように説明してくれる?」

「良いよ。わかるように説明してあげる。まず、各ターンに一度、ファイアー・バードが出たことで、《ボルシャック・アークゼオス》の効果が発動。《ドルゲユキムラ》と強制バトル!」

 

 ボルシャック・アークゼオスの影が一瞬現れ、そのままドルゲユキムラに突撃した。

 しかし、ドルゲユキムラのパワーは17000。

 対して、ボルシャック・アークゼオスのパワーは5000。

 場にいるファイアー・バードは《轟・ブルッチ》と《砲・ピッチ》、そして、何故か、アーマード・ファイアー・バードが付いている《ボルシャック・モルナルク》の3体がいるため、パワーが+9000されるが、それでも、パワーは14000。

 ギリギリパワーが足りず、ボルシャック・アークゼオスが破壊される。

 

「は?何やってるの?自分のクリーチャーを破壊するとか、バカじゃん。ウケる」

「笑っていられるのも、今のうちだよ。各ターンに一度、アーマード・ドラゴンが破壊される時、《ボルシャック・モルナルク》の第二の効果が発動!」

 

 しかし、ボルシャック・モルナルクの体が燃え上がり、そこから一体のファイアー・バードが現れた。

 

「破壊されるかわりに、ファイアー・バードを一体、場に出せる!出すのは当然、《ワルキューレ・ルピア》だ!」

「……!?」

 

 それは勝がボルシャックデッキで採用しているファイアーバードであり、アーマード・ドラゴンである、火と光の多色クリーチャー、《凰翔竜機ワルキューレ・ルピア》だ。

 

「な、何でこのタイミングで、《ワルキューレ》が出てくるんだ!?ってか、アンタそれ、赤単だろ?何で赤白で多色の《ワルキューレ》が入ってるんだよ!?」

「《ボルシャック・アークゼオス》や《ボルシャック・バラフィオル》……後、今回、たまたまだったけど、《ボルシャック・モルナルク》から出て、革命チェンジで《ザークピッチ》を使い回せるから採用してるだけだよ!」

「それだけの理由で採用してるのか!?クソ、ターンエンド!」

 

 激しく突っ込みを入れつつ、黒江は悔しながら、ターンを終えた。

 

「僕のターン!《ボルシャック・爆・ルピア》を召喚!《ボルシャック・アークゼオス》の効果で、《ドルゲユキムラ》とバトル!今度はこっちの《ボルシャック・アークゼオス》が勝つから、《ドルゲユキムラ》を破壊だ!」

「クソ、ウチの切り札が……!」

 

 再び、ボルシャック・アークゼオスの幻影が現れ、ドルゲユキムラに突撃し、今度はドルゲユキムラを、ボルシャック・アークゼオスの細い爪で切り裂き、破壊した。

 そのまま、ボルシャック・アークゼオスの幻影は消えた。

 

「そして、《ボルシャック・モルナルク》で、シールドを攻撃!」

「そうはさせるかよ!ニンジャ・ストライクで、《ハヤブサマル》を出して、自身をブロッカーにして、ブロック!」

「まだだよ!《ボルシャック・アークゼオス》で攻撃!《ボルシャック・アークゼオス》はパワード・ブレイカー!よって、君のシールドをすべてブレイクだ!」

「……ッ!」

 

 炎が黒江のシールドに襲い掛かり、焼かれて溶けていき、3枚あるシールドがすべて、ブレイクされた。

 

「トリガーは……ないか」

 

 その中にシールド・トリガーはなかったことに、黒江は目を伏せる。

 

(あーあ、負けちゃったか……ま、でも、やるべきことは果たせたし、いっか……)

 

「ねぇ、君の名前、教えてくれる?」

「……は?」

 

 敗北が見える中、突然、勝はそんなことを聞いてきた。

 

「まだ僕、聞いてなかったからさ……」

「……はぁー」

 

 照れ臭そうに名前を聞いてくる勝の仕草に、黒江は深い溜め息を吐いた。

 

「花宮黒江……それがウチの名前……」

「!そうか……それじゃ、花宮さん……また、デュエマしようね」

「!?」

 

 それは告白に近い言葉だった。少なくとも、黒江から見て、そう勘違いしても、おかしくない。

 

「──《ボルシャック・フォース・ドラゴン》で、ダイレクトアタックッ!」

 

 

 




文字数が普段より多くなってしまったが、後悔はない。
というか、今後、こういう形で描かないと、話数が増える一方……(汗)
後日談は近いうちに投稿します。


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ACE40:新しい交友関係(トモダチ)と新たなチームの結成。

後日談です。


 

 

 

「いやー、負けた負けた。完膚なきまでに敗北したって感じだわ」

「……」

 

 ハッハッハー、と、高笑いながら、黒江はそう言った。

 それを見た勝はさっきまでの態度と違うことに、困惑していた。

 

「……えっと、それで花宮さんの目的って何?」

「黒江で良いよ!何、ほんの少し挨拶と謝罪をしに来たんだよ……」

 

 そう言って、黒江は勝に近づき、自身の腕を勝の肩と首に巻くように置いた。

 

「ちょっ、黒江さん、近い!後、顔が胸に当たりそうなんですが!?」

「わざと当ててんだよ!そう照れることはないし、減るものじゃないだろ?」

「あるよ!色々と!」

 

 急に距離を縮めてくる黒江の態度に、勝は悪戦苦闘し、どうにかして、離れないか、考えていた。

 

「──何をやっているんですか?お二人とも?」

「「!?」」

 

 その時、二人の後ろから、殺気に近い気配を感じ、二人は恐る恐る振り返ると、そこには竹刀(しない)を持ったエリカの姿があった。

 

「秋乃お嬢様がいるのに、浮気とは良い度胸ですね、火野様?」

「違う!そうじゃない!黒江さんが急に詰めてきて──」

「言い訳は無用!この竹刀で、貴方達の頭を叩きます!」

「まさかのウチも巻き添え!?」

「当たり前です!」

 

 それを聞いて、勝と黒江はエリカから離れ、逃げた。

 それを見たエリカは二人を追いかけ、10分もしないうちに、二人を捕まえ、星座して、30分ほど、説教をした。

 

「それで、貴女の目的は何ですか?」

 

 説教を終えた後、エリカは再度、黒江に目的を問いかけた。

 

「だから、ウチは挨拶と謝罪をしに来たって言ってるだろ?まぁ、挨拶は完全に、ウチの個人的な用件で、謝罪は……この間の結衣の件な……」

「!?」

 

 結衣の名前を聞いた途端、勝は驚き、表情を歪めた。

 

「……店の名前は聞いてないけど、この間、結衣が非公認大会で、そっちに迷惑をかけたみたいだからさ。代理でウチが謝りに来たわけ」

「その割にはかなり暴れたみたいですね」

「それについては、素直に教えてくれなかった、そっちが悪い……」

「……」

「?どうした?勝?」

「ッ!?黒江さん!?」

 

 結衣の名前を聞いてから、勝は固まってしまっており、それを見た黒江は勝の顔に近づき、問いかけた。

 突然、顔を近づかれた勝は驚いてしまった。

 

(何、顔を赤くしているんですが!それにそんなに顔を近づけるとは、後でもう一度、お説教ですね!)

 

 それを見たエリカは不快に感じ、脳裏で、そう思った。

 

「さっきからぼーっとして、どしたん?」

「……別にどうもしません。ただ、黒江さん。貴女の用件は済みましたよね?」

「ん?ああ、そうだな……」

「それなら速やかに帰るよう、お願いします」

「は?」

 

 突然、帰れと申し出る勝の言葉に、黒江は驚き、それを見たエリカは意外な発言をする勝に驚き、一瞬、固まってしまったが、すぐに彼の精神状態を察し、立ち上がった。

 

「そうですね。貴女の用件が済みましたし、こちらからも、速やかにお引き取り願います」

「アンタも何を言って……ッ!?」

 

 言い返そうとした途端、先程よりも、エリカから強い殺気──右目が紫色に変化したことに気づき、黒江は黙り込んだ。

 

「……なるほどな。それなら勝、最後に一つ、聞いておきたいことがある?」

「大事なこと?」

「ああ、アンタにとっても、ウチにとっても、大事なことだ」

「……わかった」

 

 一瞬、間を置きながら、勝は黒江に返答した。

 

「──アンタはまだ、結衣のことが好きか?」

「……」

 

 その質問に勝は黙り込み、目を瞑り、考え始めた。

 

(僕がまだ結衣ちゃんのことが好きか、か……正直なところ、わからない。ただ……)

 

 ふっと、ブラックキャットで出会った結衣の様子を思い出し、そこで一つ、気になったことがあり、目を開けて、黒江に問いかける。

 

「正直に言うと、わからない。結衣が何を考えて、どういう理由で、あんなことをしたのか、わからない。けど……」

「けど、何だ?」

「……言いたい事があるなら、正直に話してほしい。それが今、僕が一番気になることで、黒江さんの質問に答えられる精一杯の解答です」

「……火野様」

「……そうかよ」

 

 勝の想いを聞いて、黒江は満足した笑みで立ち上がった。

 

「良い返事を聞けたわ。これでウチは帰る。あまり帰りが遅いと、結衣に怒られるしな」

「待って!」

 

 そう言って、黒江はその場から立ち去ろうと、足を運ぶが勝が待ったをかける。

 

「連絡先、交換しない?」

「お断りだ」

「何で!?」

 

 勝の問いかけに即答で返した黒江の言葉に、勝は驚く。

 

「何でって、当たり前だ。フツー、初対面のヤツに連絡先を聞くとか、頭沸いてんのか?」

「そっちだって、勝手にこっちの住所、特定したよね?」

「──ッ!?テメエ、ひ弱な見た目に反して、頭が相当切れるみたいだな?」

「頭が良くなきゃ、デュエマで勝てる試合も、勝てないよ」

「……ま、それもそうか。アンタの頭の良さに、ウチは負けたのかな」

 

 そう言って、観念したのか、黒江はスマホを取り出し、それを見た勝はスマホを取り出した。

 

「言っとくけど、結衣に関しての連絡は禁止だからね?」

「わかってるよ。あくまで、トモダチとして、連絡するよ」

「……」

 

(ほんと、頭の切れがよろしいこと……)

 

 そう脳裏で思いながらも、黒江は勝と連絡先を交換した。

 

「んじゃ、ウチはこれで失礼するよ」

「うん、またデュエマしようね」

「……ん」

 

 小さい声で返事を返した後、今度こそ、黒江はこの場から立ち去った。

 

「そう言えば、暁月さん、さっき、右目、紫色になっていたよね?」

「申し訳ありません。緊急事態でしたので……」

「いや、別に良いんだけど、あまり使わないようにね」

「はい……」

 

 

 

 ──場所は変わり、天災(ディザスター)学園の体育館の中。

 

 焔財閥の屋敷から出た後、黒江は結衣に用事を済ませたことを報告しに、学園に帰っていた。

 

「ただいまー、結衣ー」

「お帰り、黒江。用事は片付いた?」

「ああ、無事にな」

 

 そう返事を返すと、見慣れない少女──キャルを見かけ、結衣が言っていた心当たりの人物か、結衣に問いかける。

 

「その子が例の子?」

「うん、そうよ!今日から私達と一緒のチームになる、キャル!」

「……よろしく」

「なんかよそよそしいな……」

「仕方ないでしょ。慣れないんだから……」

 

 どこか、よそよそしさを感じた黒江は思ったことを口に出してしまい、それを聞いたキャルは長い黒髪を右手の人差し指で、くるくる回しながら、そう言った。

 どこか機嫌が悪い様子だが、黒江は気にせず、結衣に話しかける。

 

「ま、いっか。とりま、これでデュエマ甲子園に参加できるな。後は……チーム名か。どうする?」

「それなら、もう決めてあるわ!」

 

 そう高らかに言う結衣の言葉にキャルは深い溜め息を吐いた。

 

「チーム名は、『Bloody(ブラディー) Shadow(シャドー)』よ!」

「!?」

 

 その名前を聞いて、黒江は驚き、名前の意味を口に出す。

 

「血塗れの影って、物騒だな」

「私も最初聞いた時は血の気が引いたわ。それに……背筋が震えたわ」

 

 そう言って、実際に背中を震えさせ、キャルはチーム名に嫌悪感を感じていた。

 

「なんで?良い名前じゃない?」

「……ま、良いんじゃない。チームのリーダーは結衣なわけだし。知らないけど」

「私も別に悪いとは思わないわ。それに……」

 

 突如、キャルの左目が紫色に変化した。

 

「今の私たちにピッタリだし……」

 

 そう言うと、結衣と黒江も、それぞれ、水色と緑色の瞳に変化した。

 

「ま、それもそうか……」

「フフ、二人が気に入ってくれて、私、嬉しいわ」

 

 満面の笑顔で結衣が言うと、二人も静かに笑みを溢した。

 

「あー、今からが楽しみだなぁ。デュエマ甲子園……それに──

 

 

 

 ──待っててお兄ちゃん。結衣ももうすぐ、そっちに行くから」

 

 そう言って、体育館ステージに置かれていた結衣と、結衣の兄らしき少年の写真が映っていた。

 

 

 

 ──その日の夜、焔財閥の屋敷で寝ていたエリカはベッドから起き上がった。

 

「……ッ!?」

 

 突然、右目に痛みを感じたエリカは、右手で目を当てた。

 その時、嫌悪感を感じる、生暖かい液体のような感触に気づき、恐る恐る、手から離した。

 その手から真っ赤な紅色の液体、血が手に付いていた。

 

「これは、一体……?」

 

 不思議に思ったが、隣の部屋で寝ている秋乃に不安させない一心で、急ぎ、洗面所に向かった

 

 しかし、この時、エリカのデッキケースから《アビスベル=ジャシン帝》のカードが光っていたことを、エリカは気づくべきだった。

 後にこれが大変な事態になる前兆だと。

 

 

 




急に、ホラーになりましたね(苦笑)
まぁ、次回から予定通り、デュエマ甲子園を描きます。
ただ、大会正式をどうするかは次の話を考えながら描きます。
非公認大会の二の舞にはなりたくないので……。


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ACE41:ストレスが溜まったら、激辛ラーメンを食べに行こう!

おふざけ回です。よって、デュエマはしません!
嘘です。いや、デュエマをしないのは本当ですが、今回は学生あるあるのお話です。


 

 

 

『──ついに、今年もやって参りました!デュエル・マスターズ、略して、デュエマ!デュエマで最強を決める大会、デュエマ甲子園が今年の夏、開催されるよ!わからない人のために、デュエマ甲子園の概要を簡単に説明するよ!数年前まで、誰でも大会に参加できた、デュエマ甲子園。しかし、ルールの複雑化に伴い、現在は高校生だけの大会になりました。そして、今年のデュエマ甲子園は3人1組のチーム戦!また、レギュレーションは殿堂カードの規制があることを除いて、アドバンスでも、オリジナルでも、何でもアリ!そして本選に上がれるのは優勝チーム、上位16名まで!今までのデュエマ甲子園は、個人戦がメインだったけど、今年はチーム戦!仲間の絆が試される大会だから、仲の良い友達と一緒に参加してね!あ、因みに、デュエマ甲子園に参加する際は学校の先生に、ちゃんと、許可をとること!良い?わかったなら、皆、急いでお店にGO!だよ?以上、リポーターの颯井(さつい)銃子(じゅうこ)でした!』

 

 

 

「──という訳で、早速、今度の予選大会に向けて、メンバーを3人に絞り込むわよ!」

「……息巻いているところ、悪いんだけど、今、僕と咲恋ちゃんと翔の3人しかいないよ」

「何でよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!?」

 

 秋乃の風邪が治ったので、勝は数日ぶりに部室に来ると、部室の中には咲恋と翔の二人しか居らず、来て早々に、咲恋からデュエマ甲子園の説明を受け、勢いで、メンバーを絞り込もうとした所、勝が現状の状況を説明し、的確に突っ込みを入れると、咲恋の口から叫び声が上がった。

 

(久しぶりに見たなぁ、この光景……確か、入部してほしいって、誘われた時以来だって?)

 

 懐かしむかのように、脳裏でそう思う勝だが、咲恋は両手で、机をバンバンと、2回叩いた。

 

「何でうちの部員はこうも自由なわけ!?何?私に対しての嫌がらせ?それとも、リーダーとして、力不足だから?ねぇ、二人とも、教えて!」

「「……」」

 

(可愛い……)

 

(会長が壊れた!?)

 

 完全に涙目になっている咲恋を見て、勝は可愛い犬、または猫のように思い、翔は情緒不安定な咲恋を見て、完全に壊れたことに驚き、動揺を隠せなかった。

 

(この感じだと、酒飲んだら、悪酔いするか、速攻で酔い潰れるかの二択だな。だったら……!)

 

「咲恋ちゃん、一先ず、落ち着こ。ね?」

「これが落ち着いていられるわけないでしょ!こうなったら、私にも考えがあるわよ!」

「考え?」

「ええ!それは……勝!アンタ、私にラーメン奢りなさい!」

「「……え?」」

 

 咲恋から意外な発言に、勝と翔は揃って、驚いてしまった。

 

 

 

「いやー、人のお金で食べるラーメンは美味しいわね!」

「まさか、手持ち金がなくなるまで、ラーメンをおかわりするなんて……」

「しかも、頼んだのが、激辛ラーメン。それも5杯って……うっ、思い出したら気分が……」

「眼鏡君、大丈夫!?」

 

 宣言通り、咲恋は勝にラーメンを奢らせ、手持ち金がなくなるまで、その店の激辛ラーメンを頼んだ。それも5杯。

 どうやら、生徒会の仕事や部活動でのこと、そして、この間の黒江の襲撃に、相当ストレスを溜めていたみたいだ。

 

「あ、会長。それに、勝先輩に!眼鏡君!」

「3人とも、ここにいらしてたんですね?」

 

 すると、道端で偶然、ひよりとマリ、そして、想の3人と遭遇した勝達。

 何故か、想の首部分をマリに掴まれて引きずられているが、3人はいつもの光景と思い、特別、気にしなかった。

 

「気にしろ!」

「うるさいですよ、早峰先輩!」

「理不尽だろ!?クソが!」

「二人とも、仲がいいね」

「「どこがだ(どこがです)!」」

「……フッ、息、ピッタリじゃん」

「「……」」

 

 息の合った二人を見て、勝は鼻で笑い、そう突っ込むと、マリと想は勝を目で強く睨んだ。

 

(オー、怖い怖い)

 

「それでひよりちゃん。補習の方はどうだったの?」

「何とか今日中に終わりましたけど、たくさん、課題を出されました……」

 

 実は黒江が部室に襲撃した翌週、ACE学園では中間テストがあった。

 そして、ひよりはその中間テストで赤点を二つ取ってしまい、補習を受けていた。

 科目は数Ⅰと英語。どちらも、ひよりの苦手科目で、ひよりは今日、その二つの科目の補習を受けていたのだ。

 

「大変ね。まぁ、課題は時間がある時に片付ければ良いわよ!」

「会長、その発言は人をダメにします。特にひよりちゃんは、一年の中で、頭がそんなに良くない方です」

 

 いつも間にか、元気になった翔がそう言い、それを聞いたひよりが「なんだとー!」と、言って、翔に突っかかろうとしたが、咲恋がそれを停止させた。

 

「その発言だと、眼鏡君は一つも赤点を取らなかったみたいね」

「当然です。高校生で赤点を取るなんて、論外です」

 

(本当は、国語と古典がギリギリ赤点になりかけたけど……)

 

 脳裏でそう思い、翔は眼鏡の真ん中の線を指に当て、ふっと、勝が中間テストで何点取ったのか、気になり、問いかける。

 

「そう言えば、火野先輩はこの間の中間テスト、どうでした?」

「……」

 

 問いかけられた勝はその場に固まった。

 それを見た想はニヤリと、不適な笑みを溢した。

 

「何だぁ?テメエも赤点取ったのか?情けねぇなぁ、先輩として示しがつかないぞ?」

「そういう早峰先輩は、古典と歴史、後、数Ⅲと数B、赤点でしたよね?」

「な!?テメエ、何でそれを!?」

「秋乃さんから聞きました」

「あのオンナァァァァァッー!」

「だから、うるさいですよ!早峰先輩!」

「グホォッ!?」

 

 脇腹を強くショップし、想を気絶させるマリ。

 それを見た一同は気に留めず、翔は勝に詰め寄った。

 

「それで、中間テストの結果、どうだったんですか?」

「え、えーと……」

 

 翔から目を逸らし、勝は咲恋に助けを求める。

 

「そう言えば私、アンタの中間テストの結果、聞いてないわね。ひよりちゃんはどう思う?」

「当然!知りたいです!」

 

(咲恋ちゃんの裏切りものぉー!)

 

 どうやら、勝の周りには味方は居らず、代わりに、期待の眼差しが2人と好奇心が1人、計3人が居り、助け船のマリは想を担いでいて、話にならない。

 

「……わかった。正直に言うよ」

 

 ついに観念したのか、勝は中間テストの結果を3人に教える。

 

「まず、数学以外の科目がすべて80点。次に数Aが90点。そして、数IIが……100点」

「「「え?」」」

 

 なんと、勝は学園内で、数Ⅱと数Aの順位が1位(トップ)で、他の科目は上位10人のうちの1人に入っていた。因みに、クラスメイトである咲恋は英語が1位で100点だったが、数Ⅱと数Aで1位を取った勝にライバル視を持ち、それ以来、数Ⅱと数Aで張り合うようになったのはまた別のお話。

 

 

 



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ACE42:紫色の目を持つ者の呪い。

注意。今回の話は残酷な描写が含まれているため、読む際は気をつけてください。


 

 

 

 ──その日、暁月エリカは体調を崩していた。

 

 1週間程前に、主人である秋乃の風邪がうつったのか?

 と、思っていたが、実際はそうではない。

 その証拠に、エリカの右目が紫色に変化しておる、そこから大量の血が出血していた。

 本人曰く、朝起きたら、右目が紫色に変化しており、身体を起こしたら、血が出、横になった途端、さらに大量の血が流れ出たのだ。

 財閥の財力で、凄腕の医師に調べた所、「原因不明でわからない。ただこのまま血が出れば、出血死する恐れがある」とのこと。

 幸い、今日は休日で、学園が休みで良かったが、このまま放置すれば、エリカはいずれ、出血死で死ぬ。

 

「エリカ……」

「……お嬢、様……そんな、顔を……しないで、ください……ぐっ、ああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

「エリカ!」

 

 秋乃を安心させるため、エリカはそう言うが、すぐさま、右目の痛みに苦しみ、両手で右目を抑える。

 それを見た秋乃はどうしようもなく、ただエリカが無事てあることを祈るしかできなかった。

 

「秋乃さん!」

「!?」

 

 そんな折に、勝とマリ、そして、エリカの叔父のキリオが秋乃に駆けつけた。

 

「勝様!?それにマリちゃんとエリカのお爺さん!?皆さん、どうして……」

「君のお父さんから、連絡が来たんだ」

「僕とマリちゃんにも、連絡が来てね。そしたら、暁月さんのお爺さんと向こうで会って……今に至るわけ」

「お父様が連絡を?」

「うん。よっぽど、秋乃さんのことを心配してたよ」

 

 勝がそう言うと、秋乃は勝に抱きついた。

 突然、抱きつかれた勝は秋乃の体重に押されて、そのまま倒れた。

 

「イ、テテ、急にどうしたの?秋乃さ──」

「勝様!エリカを助けて!このままじゃ、エリカが……エリカの命が危ない!」

「──ッ!?」

 

 その言葉に、勝は強い重みを感じ、勝に抱きついたまま、秋乃は激しく泣き始めた。

 

 

 

 ──数分後。

 

 秋乃は泣き止み、落ち着いた後に、事態を聞くと、どうやら右目に原因があることを、秋乃から知らされた。

 それを聞いた勝はあることに気づき、急ぎ、秋乃に問いかける。

 

「秋乃さん、暁月さん……エリカのデッキって、まだ屋敷にある?」

「え?ええ、ありますけど、それがどうかしたのですの?」

「部屋を教えてくれる?確かめたいことがあるんだ」

「何を言っているんだ、君は!今はカードよりも、エリカの命が大事だろ!秋乃さん、君もそう思うだろ?」

 

 突然、エリカの部屋を聞き出すなり、カードを確認するなり、めちゃくちゃなことを言い出す勝の言葉に、エリカの叔父として、キリオは勝に怒鳴り、秋乃に問いかけた。

 

「……いえ、今は勝様の言葉に信じますわ」

「──は?」

 

 しかし、秋乃の返答は勝の言葉を信じる方に賭けた。

 

「私も賛成。というか、それしかないんでしょ?」

「うん。マリちゃんは叔父さんと一緒に居て。何かあったら、守ってあげて」

「任せてください!」

 

 胸に手を当てながら、マリは自信をもって言った。

 それを聞いた勝は秋乃と一緒に、エリカの部屋に向かった。

 

 

 

「──な、何だこれ!?」

「勝様、ベッドの上に一つ目のタコがいます!」

「ッ、アイツは……!?」

 

 エリカの部屋に入ると、エリカの部屋はとてもカオスになっていた。

 まず、部屋全体に紫、青、緑の三色が塗られており、ベッドの上には一つ目のタコの姿をした怪物がいた。

 

「《スパトー:ド:スパトゥー》!?ってことはアビスロイヤル、いや、ジャシン帝が復活し始めているのか!?」

『──ソノヨウデスネ』

 

 突然、勝のデッキから《Vol-Val-8》のカードが勝手に出てきて、そのまま女性の姿、禁断竜王として実体化した。

 ただ、以前と異なるのが、両手両腕が機械的なロボットになっており、右手には剣、左手には盾が握られていた。

 

「禁断竜王!?実体化できたのか!?」

「ええ。少しの間ですが……」

「カタゴトじゃ、なくなってる!?」

「いや、それより、その腕どうした!?まるでロボットみたいだぞ!?」

「元が禁断機関からきているので、その影響でしょう」

「即答か!?まぁ、この際だからなんでもいいけど……」

 

 いきなり禁断竜王が実体化したことに驚くも、勝と秋乃はスパトー:ド:スパトゥーに目を向ける。

 

「とりあえず、アイツをなんとかできる?」

「任せてください。あんな奴、昼飯……いえ、夕食前です!」

「そこは朝飯前って、言い直そうよ!」

「キ、シャアアアアアッー!」

「お二人とも、来ますわ!」

「ッ、しまっ──」

「そうはさせません!」

 

 秋乃の言葉に、勝は避けるのに一歩遅れ、スパトー:ド:スパトゥーはそのまま勝に襲い掛かるも、咄嗟に禁断竜王が盾で防ぎ、すぐさま、剣で薙ぎ払うも、スパトー:ド:スパトゥーは素早く(かわ)し、元の場所に戻った。

 

「ごめん!禁断竜王!」

「構いません。主を守るのが、我の使命、です」

 

 禁断竜王の言葉に、勝は心の底から頼もしいと想い、小さく、笑みを溢した。

 

「それよりも、勝様、アレをどうやって倒すのですの?」

「物理的に倒せれば、一番、楽だけど、それをすると、この部屋が血塗れになるな……」

「!?」

 

 それはつまり、スパトー:ド:スパトゥーの命を奪うという意味だ。

 

「そ、そんなこと、ダメに決まってますわ!」

「僕もそれは嫌だよ。けど……」

「主よ。我と主の目を使えば、無力化できます」

「ッ、それって、つまり……」

「考える時間はありません。事は急を(よう)します」

「……わかった。僕も覚悟を決めるよ!」

「あの、それはどういう……」

「秋乃さん、今から僕達がやること、信じてくれる?うまくいけば、エリカを助けられるかもしれない!」

「!?」

 

 何が何だかわからない。が、どうやら、スパトー:ド:スパトゥーの命を奪わず、エリカの命を助けられるみたいなので、一先ず、二人を信じることにした。

 

「わかりましたわ!お二人を信じます!」

「ありがとう、秋乃さん。いくよ、禁断竜王!」

「はい!」

 

 そう言うと、禁断竜王はカードに戻り、勝の手に収まり、勝は禁断竜王のカードをスパトー:ド:スパトゥーに掲げた。

 

「キィ、シャアアアアアァァァァァッー!」

 

 それを見たスパトー:ド:スパトゥーは飛び跳ね、勝に襲い掛かるも、勝は咄嗟に、目を赤い、紅色の炎に変化させ、叫んだ。

 

「デュエル・ゾーンッ、強制展開ッ!」

 

 

 




Twitterでも言いましたが、タグに残酷な描写を追加しましたので、今後、こういう描写が増えるかもしれないので、斜めご了承ください。


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ACE43:もうひとりの、紫色の目を持つ者の呪い。

 

 

 

 ──数時間前。

 

 エリカの右目が紫色に変化した同じ頃、デュエマ甲子園に向けて特訓しようと、結衣と黒江よりも先に天災(ディザスター)学園の体育館に来ていたキャルは(もが)き苦しんでいた。

 

「ぐぅ……あ、ァァァァァッー!」

 

 ジタバタと暴れるキャル。

 見ると、彼女の左目が紫色に変化していた。

 しかし、エリカと違うのは、キャルの左目から血が出血していなかった。

 

「オイ、どうした!?」

 

 後から来た黒江と結衣の二人は、苦しんでいるキャルの元に駆けつけ、暴れる彼女を抑えるため、左目に置いている両手を掴み、離した。

 離すと、そこで二人はキャルの左目が紫色に変化していることに気づく。

 

「っ、これは……!?」

「オイ結衣、これ、どうなってるんだ?」

「……」

 

(まさか、ジャシン帝の復活がこんなに早いなんて……)

 

 結衣は事の発端がジャシン帝、復活と気づき、脳裏でそう思った。

 

「……ん……る」

「……え?」

 

 突然、キャルは何かを呟き、黒江はキャルがまた同じことを言うかもしれないと思い、耳を()ました。

 

「呼ん……でる……」

「呼んでる?誰が?」

「わか、らない……けど、私を、呼んでる声が聞こえる……うっ!?」

「キャル?うわっ!?」

 

 突然、キャルは立ち上がり、黒江は驚きのあまり、滑って、腰を抜かした。

 

「オイ、キャル!急に立ち上がるなよ!」

「……」

「キャル?」

 

 急に立ち上がったキャルに注意する黒江だが、キャルは無言のまま、顔を黒江に振り向いた。

 それを見た結衣は何か、殺意のような、禍々(まがまが)しいオーラがキャルの体から(あふ)れているのに気づき、キャルから離れるよう、黒江に叫んだ。

 

「離れて、黒江!」

「え?」

「邪魔だ」

「うわっ!?」

 

 しかし、結衣が叫ぶよりも早く、キャルは黒江の体を横に投げ飛ばした。

 投げ飛ばされた黒江は、咄嗟の機転で受け身をとって、体勢を立て直した。

 

「オイ、キャル!いきなり何するんだ?」

「……五月蝿い」

「んだと!?」

 

 突然、人を投げ飛ばしたキャルに問いかけるも、キャルの返答は黒江を怒らせるのに、十分(じゅうぶん)な一言だった。

 しかし、キャルの様子がさっきまでと違うことに結衣は気づいていた。

 

「キャル、貴女、もしかして……」

「うっ!?」

 

 またキャルは苦しみだし、今度は胸を掴んで苦しみを抑えるも、痛みが治まる訳もなく、今度はキャルの後ろから犬のような、狼のような顔が三つ繋がっており、それはギリシャ神話に出てくる怪物、ケルベロスのような姿をした影が顕現した。

 

『ウゥ、ワオオオオオォォォォォン!』

「く、耳が……!?」

「鼓膜が、破れる……!」

 

 その怪物は吠え、その叫び声は二人の耳に激しい痛みが走り、両手で耳を塞いだ。

 その間に、キャルは怪物の背中に乗り、キャルを乗せたまま怪物は飛び、勢いをつけて体育館の天井に体当たりした。

 

「な!?」

「っ!?

 

 その光景に二人は驚き、キャルを乗せた怪物はどこかに言ってしまった。

 

 

 

 数分後。耳の痛みが(おさ)まった二人はこれからどうするか、話し合っていた。

 

「どうするよ、結衣……」

「……追いかけるよ」

「追いかけるって、どうやって?あっちは空を飛べるし、対してこっちは自転車や車は使えないし、歩いて追いかけるにしても、普通に考えて無理があるだろ?」

「……何のために、その目があると思っているの?」

「え?」

 

 そう言うと、結衣は自身の目を指に当て、そのまま青い、水色の瞳に変化した。

 

「私達の目には同じ力を持つ人を探す力があるのよ」

「それってつまり……」

「これでキャルを追いかける。ただ、向こうは空を飛べるし、完全に追いつくには少し難しいかもね……」

「……ウチ、バイクの免許あるよ。原付だけど」

「そうなの?それなら黒江は先に行って。私も後から追いつくから」

「一緒に乗らないのか?」

「法律的にアウトよ。それに、何より、私達の身の安全を考えた方が良いわ」

「え?」

 

 結衣の口から発しられた言葉に、黒江は驚いてしまった。

 意外すぎる。いつもの彼女なら、他人に対して、然程(さほど)気にしないはずの彼女が珍しく、キャルのことを気にしていた。

 流石の彼女でも、仲間に対しては気にかけるのだろう、と、黒江は内心、そう思った。

 

「何よ?」

「いや、意外だな、って、思ってよ……」

「は?殴られたいの?」

「怖いこと言うなよ。とりま、ウチはバイクで先に行くけど、本当に良いんだな?」

「ええ、構わないわ」

「……わかった」

 

 そう言って、黒江は体育館を後にして、先にキャルを追いかけた。

 

 黒江が居なくなった後、一人になった結衣はスマホを取り出し、ある人物に連絡を取り合うため、電話をかける。

 

「もしもし。ええ、私よ。予定よりも早く、ジャシン帝が復活するみたい。今すぐ、私も現場に向かうわ」

 

 そう言って、結衣は電話を切り、デュエマのカードを一枚、取り出した。

 

「……久しぶりにいくよ、オーパーツ」

 

 そう言うと、結衣の目が青い、水色の瞳に変化し、左目の内側だけ、『氷』、という文字が浮かび上がった。

 更に、それと同時に彼女の足元に、水色の魔法陣のようなものが現れた。

 

「……転移。場所はもう一つの紫色の目を持つ者……その近くに転移」

 

 そう言うと、結衣は姿を消した。水色の魔法陣もいつも間にか、消えており、体育館の中は完全に無人となった。

 

 

 



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ACE44:深淵のタコを切り倒せ!

勝対スパトー:ド:スパトゥーの対戦です。


 

 

 

「デュエル・ゾーンッ、強制展開ッ!」

「!?」

 

 突如、勝とスパトー:ド:スパトゥーの間に謎の光が現れ、彼らを巻き込み、別の空間に転移された。

 

 ──ここはデュエマによって勝敗が決まる決闘場、『デュエル・ゾーン』。

 ここでの戦いは命はとらず、代わりに、激しい痛みを与えるようになっている。

 また、現実とは違い、クリーチャーが完全に実体化するのだ。

 

「どうやら、うまくいったみたいだね」

『エエ、ソノヨウデスネ。デスガ……』

「わかってる。こうなる事は最初から覚悟していたよ」

 

 そう言って、勝は以前、エリカとの対戦で使っていた《Vol-Val-8》を軸にした青赤緑(シータ)ディスペクターを構え、スパトー:ド:スパトゥーに向き合う。

 

「キ、キ、イィ、アアアー!」

「……何言ってるか、わからないけど、悔しがっているのはわかる」

『デスネ……』

 

 禁断竜王がそう言うと、スパトー:ド:スパトゥーの前に薄いデュエマの台が現れた。

 

「……ここから出たいなら、僕をデュエマで倒すんだね!」

「キィィッー!」

 

 歯を噛み締めながら、スパトー:ド:スパトゥーは手札から1枚、マナに置いた。

 どうやら、デュエマの知識があるみたいで、対戦はできるみたいだ。

 

「僕のターン、マナチャージして、ターンエンド」

 

 それを見た勝はいつも通りにプレイするも、会話が成立しない相手に、不思議と不安を感じた。

 

「キ、キ、《ド:ノラテップ》!」

 

 プテラに似た怪物、《ド:ノラテップ》が、スパトー:ド:スパトゥーの前に現れた。

 

「普通に名前は言えるんだ……」

『器用デ、草、デスネ』

 

 と言っても、アビスのコスト軽減を持つ《ド:ノラテップ》が出たことに、勝は内心、頭を抱えた。

 

「僕のターン。マナチャージして……そっちがコスト軽減なら、こっちもコスト軽減だ!《エルフィ-1》を召喚ッ!」

 

 張り合うかのように、勝もディスタスのコストを下げる、《賢樹 エルフィ-1》を場に出す。

 

「キキ、《ボーンおどり》……キ、キィ、《ベル=ゲルエール》……!」

「一気に墓地を肥やしてきたな……」

『主。気ヲ、ツケテ!切リ、札、来ル!次ノ、ターン!』

 

 主人を心配してか、不安な声で、禁断竜王はそう言い、それを聞いた勝はスパトー:ド:スパトゥーの墓地を確認した。

 

(《ジャシン帝》や《ジャブラッド》はないけど、ヤバイのがそこそこ落ちたな。しかも、プレイに無駄がない!)

 

 先程、《ボーンおどり・チャージャー》で、墓地とマナを増やし、《ド:ノラテップ》のコスト軽減で、《ベル=ゲルエール》を1マナで召喚し、墓地をさらに増やした。

 どうやら頭はそれなりに良いみたいで、油断は禁物だ、と、脳裏でそう思い、勝はカードを引く。

 

「《シャラップ》は今回、抜けてる(・・・・)から、かわりに、これを使うよ!呪文、《闘争と成長の決断(パーフェクト・バトルグロース)》!この呪文は本来、5マナ必要だけど、自分の場に、パワー6000以上のクリーチャーがいれば、コストを2軽減して、3マナで唱えられる!」

「キィィ!?」

 

 勝の場には、パワー13000の《エルフィ-1》がいる。よって、《闘争と成長の決断》の条件は満たされ、3マナで唱えられるのだ。

 

「そして、この呪文は3つの効果の中から2回選んで唱えられるけど……今回はマナ加速を2回使う!ターンエンド!」

 

 本来であれば、コスト軽減を持つ《ド:ノラテップ》を退かしたい所だが、墓地を見る限り、自分の動きを優先した方が良いと思い、勝はマナ加速を選んだ。

 

 勝がターンエンドを宣言すると、スパトー:ド:スパトゥーは墓地から1枚のカードを取り出した。

 

「キィィ、キキ、アビス、ラッシュ!キィィッ!《スパトー:ド:スパトゥー》!」

 

 言いづらそうに、スパトー:ド:スパトゥーはアビスラッシュで自身を場に出し、そのままタップした。

 

「キィィィー!」

「うわっ!?」

『主!?』

 

 叫び声を上げながら、スパトー:ド:スパトゥーは自身の触手を一つ、勝に向けて伸ばした。

 しかし、それは勝に当たることはなく、薄い二つの壁が防ぎ、かわりに、その壁が砕かれ、その欠片の一部が勝の体に傷をつけた。

 

「イテテ、大丈夫だよ。禁断竜王」

『シッカリ、シテ、下サイ!死ナナクテモ、死ヨリ痛イ、痛ミ、ヲ、感ジマス!下手ヲ、スルト、大怪我、シマス!』

「そうだったね。完全に失念してたよ……」

 

 気を引き締めて、勝はブレイクされた2枚のシールドの中を確認した。

 

「……トリガーはない」

「キィ、《ベル=ゲルエール》!」

 

 トリガーがないことを知らせると、今度はベル=ゲルエールが襲い掛かるも、またしても、薄い壁が阻み、ベル=ゲルエールは迷わず、それを砕いた。

 

「キィ!?」

「ッ、これは……まさか!?」

 

 しかし、その壁から雷のマークが出現し、勝はブレイクされたシールドの中を確認すると、それはシールド・トリガーを持ったカードだった。

 

「これ以上は攻撃させない!シールド・トリガー!《ミランダ-2(ツー)》を召喚!効果で、《ド:ノラテップ》をマナゾーンに!」

「キィィ!?」

 

 現れたのは《エルフィ-1》と同じ自然のディスタス、《無頼(ぶらい) ミランダ-2》が現れ、アンタップ状態のド:ノラテップを掴み、スパトー:ド:スパトゥーに向けて、投げ飛ばした。

 そのままスパトー:ド:スパトゥーにぶつかる、かと思ったが、その前に、ド:ノラテップが粒子となって消え、いつも間にか、カードの《ド:ノラテップ》はマナゾーンに置かれていた。

 

「……なんか、色々とシュールだな」

『言ッテル、場合、デスカ!』

「ごめん!けど、なんか面白くて、つい口が滑った!」

「キィィィィィッー!」

 

 言い合ってる中、突然、スパトー:ド:スパトゥーは叫び声を上げ、アビスラッシュで出した自分自信を山札の下に置いた。

 その後、スパトー:ド:スパトゥーの山札は紫色に光り、スパトー:ド:スパトゥーはこう宣言した。

 

「ア……アビ、ス……メク、レイド、8……発、動……!」

「!?」

 

 すると、山札の上から3枚がスパトー:ド:スパトゥーの前に浮かび上がり、その内の1枚を場に出した。

 

「ラ、《ラゼル=ズバイラル》、召ッ、喚ッ!」

 

 それは螺旋階段を依代にしたアビスロイヤル、《深淵(しんえん)螺穿(らせん) ラゼル=ズバイラル》だった。

 

「このタイミングで、《ラゼル=ズバイラル》!?いや、それよりも、あのタコ、普通に召喚って言ったな!?」

『ドウヤラ、我々カラ、言語ヲ、理解、シタ、ヨウ、デス!』

 

 勝の疑問に素早く答える禁断竜王。その説明に、納得する勝だが、この場面で現れた《ラゼル=ズバイラル》に頭を抱える。

 

「《ラゼル=ズバイラル》、ノ、効果、発、動ッ!手札、カ、マナ、ドチラカ、選ベ!」

「な!?」

 

 すると、勝の手札とマナが紫色に光った。これが《ラゼル=ズバイラル》の能力。4つの中から2つ、相手に提示し、その内の一つを相手に選ばせ、絶望に叩き込む、恐ろしい能力だ。

 そして、今、《ラゼル=ズバイラル》の効果で、スパトー:ド:スパトゥーが提示したのは、相手の手札をすべて捨てるか、相手のターンのはじめに、相手は自身のマナゾーンのカードを3枚までしかアンタップできないかの二択だ。

 どちらを選んでも、どちらか片方が奪われるため、勝は次の自分のターンに反撃できる可能性を考えた。

 

(今の手札だと、選ぶとしたら、マナ……問題は次のドローと山札次第、か……どの道、手札を捨てるのは論外だ!それなら……!)

 

「僕は……マナを選ぶ!マナを3枚までしかアンタップしないを選ぶ!」

「キィ、キキ、キィー!ソノ、選択、後悔、スル、ナヨ……!」

 

 目が一つしかない、スパトー:ド:スパトゥーは薄ら笑みを溢し、勝をからかうかのように、そう叫んだ。

 

『……主』

「大丈夫だよ、禁断竜王……」

 

 心配する相棒に勝は自信を持って、カードを引いた。

 そして、引いたのだ。この絶望的な状況をひっくり返す、逆転のカードを。

 

「ねぇ、タコさん」

「キィ?ナンダァ?」

 

 もう殆ど、会話ができるスパトー:ド:スパトゥーの反応を見て、勝は安心し、笑った。

 

 そして──

 

「──反撃、させてもらうよ」

 

「!?」

 

 ──笑顔で、そう宣言した。

 

 それを見たスパトー:ド:スパトゥーは驚き、同時に初めて、恐怖を覚えた。

 

「まずはマナチャージ。そして、ササゲール、発動ッ!」

 

 実体化しているエルフィ-1とミランダ-2は爆発し、二つの魂が勝の手札に集まり、吸収し、1枚のカードを取り出した。

 

「大地に眠る者よ、科学の力で叩き起こせ!4マナで、《竜界電融(りゅうかいでんゆう) N(エヌ)EXT(エクストリーム)》を召喚ッ!」

 

 ブゥーン、という、エンジン音。地面をえぐるタイヤの音が鳴り響き、勝の頭上を飛び越えて、姿を現した。

 デッキに1枚しか入れられない殿堂カード、《ボルバルザーク・エクス》と、《ボルバルザーク・エクス》と相性の良い《サイバー・N・ワールド》が合体したディスペクター、《竜界電融N・EXT》が姿を現した。

 

「《N・EXT》の効果!マナゾーンにあるディスタスとディスペクターをすべて、アンタップ!」

「ナ、ナニィ!?」

 

 偶然にも、勝のマナゾーンはすべて、ディスタスとディスペクターのため、6枚のマナをすべて、アンタップした。

 

「これでこっちのマナが回復した!1マナで呪文、《フェアリー・ギフト》!次に召喚するクリーチャーのコストを3軽減!5マナで、《勝災電融王(しょうさいでんゆうおう) ギュカウツ・マグル》を召喚ッ!」

 

 今度は電融の王、《勝災電融王 ギュカウツ・マグル》が駆けつけ、勝の前に現れた。

 

「《ギュカウツ・マグル》の効果!山札の上から4枚見て、その中から、コストの合計が9以下になるように、多色クリーチャーを場に出せる!」

 

 すると、勝の山札の上から4枚のカードが浮かび上がり、その中には《Vol-Val-8》のカードがあり、勝は迷わず、《Vol-Val-8》のカードを掴んだ。

 

「待たせたね、《禁断竜王 Vol-Val-8》!」

 

 そう言って、勢いよく、《Vol-Val-8》を場に出した。

 そして、Vol-Val-8として、禁断竜王は実体化した。

 

「やっと、大暴れの時が、キマシタッ!」

 

 そう禁断竜王は叫び、ギュカウツ・マグルとN・EXTの間に入った。

 今ここに、最強の電融のディスペクターが3体、並び立った。

 

「ア、アリエナイッ!?1ターンで大型クリーチャーを3体!?こっちは《ラゼル=ズバイラル》で、マナを封じたのに……!」

「ゴチャゴチャ、五月蝿い!さっさと、我に切られて、シネ!」

「ヒィィン!?」

 

 禁断竜王の圧に、スパトー:ド:スパトゥーは怯え、涙を流した。

 

「……可愛いけど、涙を流してもダメだからね!《N・EXT》で、攻撃!攻撃する時に、そっちの墓地と手札を山札に戻す(リセット)!その後、新たなに5枚のカードを引かせる!」

「己!アビィの墓地が!」

 

(あ、一人称、アビィなんだ……)

 

 まぁ、どうでもいいけど、と、そう脳裏で片付け、勝は攻撃の手を(ゆる)めなかった。

 

「《N・EXT》で、W・ブレイクッ!」

「シ、シールド・トリガー!ト、《トーチ=トートロット》を、召喚!シ、シビルカウント、3で、オマエのクリーチャー、2体、破壊ッ!」

「EXライフで、《N・EXT》と禁断竜王は場に残る!」

 

 トーチ=トートロットの炎で、2体のクリーチャーが燃え尽きて、破壊されるも、事前に、勝のシールドに追加された2枚のシールドを墓地に置き、破壊を防ぐ。

 

「己ぇ!」

「……禁断竜王で攻撃!する時に、山札の上から5枚を見て、2枚を手札に加える!その後、互いにパワー6000以下のクリーチャーを、全て破壊!」

「シネシネシネェ!我の力の(かて)となって、皆、シネェ!」

 

 突然、バイオレンス状態になり、禁断竜王は巨大な剣で、勝のN・EXTとスパトー:ド:スパトゥーのトーチ=トートロットとベル=ゲルエールを切り裂き、破壊した。

 その勢いで、スパトー:ド:スパトゥーにも切り裂こうと、剣を振り下ろすと、薄い、三つの巨大な壁が阻み、スパトー:ド:スパトゥーの真横に逸れた。

 

「ム、座標がずれた。けど、次は外さない……」

「キィ、キキ!オマエ、達に、次は、ない!アビィのターンで、オマエ達は、負け、る……!」

「ン?何を寝ぼけたことを言っているのですか?」

「キ?」

 

 首を傾げるスパトー:ド:スパトゥー。それを見た勝は(あわ)れみの目で、スパトー:ド:スパトゥーを見つめ、宣言した。

 

「このターン、クリーチャーが4体以上、破壊されたので、僕は追加ターンを得る」

「……エ?」

 

 訳がわからない。理解ができない。スパトー:ド:スパトゥーの思考はそれしか浮かばなかった。

 

「……僕のターン。《禁断竜王 Vol-Val-8》で、ダイレクトアタック!」

「これが本当の、エターナルプレミアムズ!」

「キィィィィィー!?」

 

 禁断竜王の斬撃に、スパトー:ド:スパトゥーは断末魔の叫びをあげ、真っ二つに切られ、爆発した。

 爆発の中から、スパトー:ド:スパトゥーのカードが現れ、勝の手元に落下した。

 

 

 



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ACE45:危険な場所で、二人は再び邂逅する。

 

 

 

 デュエル・ゾーンで、なんとかスパトー:ド:スパトゥーを倒した勝は秋乃の元に戻っていた。

 

「お待たせ、秋乃さん……」

「勝様?あの、先程のタコの怪物は?」

「デュエマに勝って、カードになったよ」

 

 そう言って、カードになったスパトー:ド:スパトゥーを秋乃に見せた。

 それを見て、秋乃は安堵(あんど)した。

 

「安心しているところ、悪いんだけど。秋乃さん、エリカのデッキを探そう」

「……わかりましたわ。と、言いたいのですが、実は勝様がいないうちに、エリカのデッキを取り出しておきましたわ」

「そうなんだ。ありがとう、秋乃さん」

 

 そうお礼を言うと、秋乃は照れ臭そうにしながらも、エリカのデッキを取り出し、勝に見せた。

 

「デッキの中を少し確認するね」

「……はい」

 

 エリカのデッキを勝に渡し、中を覗くと、デッキの数枚が足りないことに勝は気づいた。

 また、《ジャシン帝》と《ジャブラッド》のカードが1枚もなかった。

 

「……これはまずいかもしれない」

「と、言いますと?」

「……あまり言いたくないけど、良いかな?」

「構いませんわ。覚悟は……できていますわ!」

 

 覚悟を決めた秋乃の瞳を見て、勝は現状の危険性と、今後の可能性を説明した。

 

「まず一つ、エリカのデッキの枚数が少ないこと。二つ、《ジャシン帝》と《ジャブラッド》のカードがないこと。三つ、これらから察するに、さっきのスパトー:ド:スパトゥーみたいに実体化しているクリーチャーが多いこと。四つ……これが一番重要で、最も危険性の高いことなんだけど……良いかな?」

「先程も言いましたが、覚悟はできていますわ。どんとこい、ですわ!」

「……わかった。四つ、カードの減りとエリカの出血から察するに、実体化しているクリーチャー達は、エリカの生命力を吸っているんだ」

「エリカの、生命力?一体何故?」

「クリーチャーの実体化に必要なのは、マナとなる養分が必要なんだけど、こっちの世界には、その養分が存在しない。かわりに、僕達、人間のもつ生命力は、それなりにマナがあるんだ。個人差はあるけど」

「っ、それってつまり……!?」

 

 そう、実体化に必要なマナがなければ、クリーチャーは実体化できず、そのマナのかわりに、エリカの生命力を使って、実体化しようとしたところ、実体化するクリーチャーの数が多く、先にエリカの生命力が持たず、目から大量の出血が出たのは、それが原因だろう、と、勝はそう推測する。

 

(おまけに、“目に力を持つ人間”は狙われやすいんだけど……そこは黙っておこう……)

 

「そんな……そんなことのために、エリカがあんな目にあうなんて、許せませんわ!」

「……」

 

 珍しく、怒りに任せた秋乃の表情を見て、勝は静かに、彼女の肩に手を置いた。

 

「大丈夫。僕が必ず、エリカを助けるよ。だから、安心して、秋乃さん……」

「……勝様」

 

「──悪いけど、貴方達にはそこで引っ込んでてもらうわ」

 

「「!?」」

 

 突如、女性の声が響き、それと同時に扉が閉まり、その扉が氷に包まれ、固まってしまった。

 

「な、なんですの!?」

「この氷は、まさか……!?」

 

 動揺する二人。急いで氷を溶かそうと、手に炎を出そうとする勝だが、いつも間にか、両手、両足が氷に包まれており、手元にあったはずのエリカのデッキも無くなっていた。

 

「っ!?手が凍ってる!?それに、エリカのデッキがない!?」

「デッキは私が預かったわ。それに、さっきも言ったけど、貴方達にはそこで大人しくしてもらうわ」

「その声は、結衣ちゃん!?どうしてこんなことをするんだ?」

 

 突然、扉の向こうから聞き慣れた女性の声、赤羽結衣の声が響き、突然、結衣が来たことに、勝は驚きつつ、彼女に問いかけた。

 

「……私の目的はジャシン帝の復活。それを邪魔する者は誰であろうと容赦はしない!勝、例え、貴方でもね」

「……!?」

 

 結衣の目的に、勝は驚き、黙り込む。

 どうやら、相当、ショックのようだ。無理もない。かつての想い人が、そんな目的を持っていたとは考えられず、精神が(こた)えないはずがない。

 

「わかったなら、ジャシン帝が復活するまで、そこで大人しくしてなさい」

「待ちなさい!エリカは?エリカはどうなるのですか!?答えなさい!」

「エリカ?ああ、ベッドで横になって、目から血が出てるあの子ね。悪いけど、彼女はジャシン帝復活のために、その糧になるの。断念だけど、諦めなさい」

「「!?」」

 

 人の心がないのか、それとも、人としての思考が欠落しているのか、結衣は冷たく、そう告げ、足を動かした。

 やがて、結衣の足音が聞こえなくなり、部屋に飛び込められた勝と秋乃は絶望のあまり、その場で固まってしまった。

 

「……るな」

「?勝様?」

「ふざけるな!」

「!?」

 

 そう強く叫ぶと、勝の右側の瞳に『火』、左側の瞳に『炎』、二つの文字が浮かび上がり、それと同時に、凍っているはずの手足が徐々に溶かされ、ある程度、動けるようになった足を、前に出し、炎を纏った右手で、氷で包まれた扉を勢いよく、ぶん殴り、扉を壊して、道を開けた。

 

「……」

 

 その光景に、秋乃は驚き、言葉を失った。

 

「いくよ、秋乃さん!エリカさんを助けに!」

「っ、はい!」

 

 勝の掛け声で、秋乃は我に返り、二人はエリカの元に向かった。

 

 

 

「全く、手間をかけさせるわね……」

 

 気絶しているマリとキリオを見て、結衣は吐き捨てるかのように、そう言った。

 エリカの部屋に勝と秋乃を閉じ込めた後、結衣はエリカのもとに向かうため、移動していた。

 その途中、実体化したアビスロイヤルの《テブル=ザザーム》と、ノワールアビスの《ノラディ:ド:スルーザ》に襲われていた二人を助け、助けた後、二人を気絶させていた。

 

(これ以上、怖い想いをさせないためとはいえ、少しやりすぎたかな?)

 

 脳裏でそう思った、その直後、スマホの着信音が鳴った。

 スマホを取り出し、画面を開くと、黒江からだ。

 どうやら、彼女も着いたのだろう、と、軽い気持ちで、電話に出た。

 

「もしもし、黒──」

『大変だ!結衣!キャルのやつ、焔財閥の屋敷の中に入っていた!』

「!?」

 

 着くのが早すぎる。真っ先にそう思った結衣は、急ぎ、黒江の電話を切り、デッキを取り出した。

 

 ──その時だ。

 

「ワオォォォォォォォォォォン!」

 

 犬、否、狼の叫び声が結衣の頭上に響き、天井が崩れ、崩壊した。

 そこから、ケルベロスの影、否、影から完全に実体化した《深淵(しんえん)三咆哮(さんほうこう) バウワウジャ》の背中に乗ったキャルが現れた。

 

「キャル……」

「……邪魔しないで、結衣」

 

 一瞬、結衣を見つめたキャルは、一言、そう言った。

 

「邪魔はしないわ。けど……」

「けど、何?」

「……貴方を邪魔する者が来るみたいだから、私がそいつらを阻止するわ」

「……いいの?」

「良いよ。貴方には早く強くなってほしいし、何より、“アレ”は貴方の手にあった方が、こっちにも都合の良いの」

「……わかった」

 

 いまいち納得できないが、一旦、結衣の言葉を呑み込んだキャルはバウワウジャに乗ったまま、エリカの元に向かった。

 

「……さてと、私も準備しないと」

 

 そう言って、結衣はスマホを取り出し、メールで、黒江に『私が来るまで、その場で待機』という一文を打ち、送信した。

 送信後、こちらに向かう足音が二つ、響いた。

 一つは勝の足音。もう一つはわからないが、恐らく、この屋敷の関係者だろうと、結衣はそう思い、スマホをズボンのポケットに入れ、デッキを前に掲げた。

 

「──ターゲット、ロックオンッ!」

 

 結衣はそう宣言し、結衣のデッキから水色の細長い線が伸び、誰かを()らえた。

 恐らく、勝だろう、と、そう思い、結衣は宣言した。

 

「デュエル・ゾーン、強制展開!」

 

 

 




次回、勝対結衣、二度目の対戦。
はたして、勝は結衣に勝ち、ジャシン帝の復活を止めて、エリカを救えるのか?


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ACE46:すれ違う、二人の想い。切り裂け、爆炎の竜!

 

 

 

「ッ、秋乃さん、危ない!」

「え?きゃ!?」

 

 突然、水色の細い線が勝と秋乃に襲い掛かり、勝は咄嗟に秋乃を突き離した。

 突き離された秋乃は驚き、勝から離れるも、水色の細い線は勝を捕らえ、勝の体はそこで停止した。

 

「禁断竜王!秋乃さんを頼む!」

『了解、デス!』

 

 そう返事を返すと、勝のデッキから禁断竜王は人型に実体化し、秋乃の側についた。

 

「秋乃さん!先に行って!君が、エリカを──」

「勝様!」

 

 言い切るよりも早く、勝の体は粒子となって、姿を消した。

 突然、勝が消えたことに、秋乃は呆然と立ち尽くしてしまった。

 

「焔秋乃!気持ちはわかりますが、主なら大丈夫です!今は、アナタの友人を助けに行きましょう!」

「っ、わかりました。必ず、エリカを助けますわ!禁断竜王、わたくしについてきてください!」

 

 そう言って、秋乃は禁断竜王と一緒に、エリカの元に向かった。

 

 

 

 突然、デュエル・ゾーンに引き込まれた勝は結衣と相対していた。

 

「呪文、《「暴竜爵様(ぼうりゅうしゃくさま)のお出でましだッチ!」》!山札の上から4枚見て、《ボルシャック・ヒート・ドラゴン》を手札に加える!その後、好きな順序で、山札の上か下に置ける!2枚は上、1枚は下に置いて、ターンエンド!」

「私のターン。私は《天災 デドダム》を召喚するわ。山札の上から3枚見て、1枚をマナ、1枚を手札、残り1枚を墓地に置いて、ターンエンド」

「僕のターン!こっちは《ヒートブレス・チャージャー》を唱えるよ!山札の上を見て、《ザークピッチ》を手札に加える!ターンエンド!」

 

 互いに手札とマナを増やし、切り札を出す準備を進めていく。

 どちらも動きは順調に見えるが、3ターン目にクリーチャーを出せなかった勝がやや不利に見える。

 以前、勝はブラックキャットの非公認大会で、結衣に負けている。

 あの時とは違うデッキを使っているが、禁断竜王がいない今、勝は《ボルシャック・ライダー》を切り札にした赤単アーマードで、結衣と対決することになった。

 正直なところ、まだ発展途上中のデッキを使うのは危険だが、手持ちのデッキが青赤緑(シータ)ディスペクターと、これしかないため、仕方なく使っている。

 対して、結衣のデッキはいつもの5色コントロールではなく、水、闇、自然の3色に絞った、青黒緑(アナカラー)を使っている。

 

(まだデッキの全貌はわからないけど、カラーリング的に相性は最悪だ!)

 

 先程の《デドダム》のようにアナカラーは手札、墓地、マナ、三つのゾーンに(さわ)れて、クリーチャー除去も三通りあり、闇の手札破壊(ハンデス)があるため、相手への妨害がそこそこあり、デッキの回転を円滑に進めるカードで固められているため、相手よりも優位にアドバンテージを稼げれるのだ。

 代わりに、火文明のような高パワー、高火力のあるクリーチャーやスピードアタッカーを持ったクリーチャーが存在しないため、決め手には欠ける。

 しかし、それはもう過去の話。以前、咲恋とデュエマをした際、咲恋が使っていた《ブランド-MAX》はS(スター)-MAX(マックス)進化を持っている。

 S-MAX進化は進化元を必要としない、進化クリーチャーだ。

 そして、このS-MAX進化を持つ進化クリーチャーは各文明に1種類以上、配られている。

 つまり、アナカラーの唯一の弱点が克服されているため、勝はアナカラーの戦略とS-MAX進化を持った進化クリーチャーを警戒しながら、戦略を組み立てなければならない。

 

(一先ず、ハンデス対策として、《ザークピッチ》は手札に加えたけど、相手は結衣ちゃんだ!油断したら、一瞬で負ける!)

 

「私のターン……ねぇ、勝くん」

「?何、結衣ちゃん?」

「あなたは何故、ジャシン帝の復活を止めるの?」

「……そんなの決まってるよ。ジャシン帝が復活したら、世界が終わる。それは瞳の力を持つ、僕達が止めなければならないことだ!君ならわかるだろ?」

「わからないわ」

「え?」

「あなたが……あなたたちがこの世界を守る意味が、私にはわからない!こんなクソみたいな世界を守って、何の意味があるの!」

「!?」

 

 ほんの僅か、彼女の本音が見えた気がした。

 それ故に、勝は拳を強く握り締め、自分に腹が立った。

 何も知らず、自分の理想論を、彼女に押し付けたこと。彼女がこんなにも苦しんでいるのに、自分は何も知らなかったこと。

 勝は自分自信に腹が立った。

 

 しかし、それとこれとは話は別だ。そう自分に言い聞かせ、勝は結衣を強く見つめる。

 

「……それでも、守らなければいけない!使命を、果たさなければいけない!」

「そんなの、やりたいやつが勝手にやってよ!あなたがやる必要ないでしょ!」

「他人に押し付けてはいけないんだ!僕達は“選ばれた”!選ばれた以上、使命を放置してはいけないんだ!」

「わたしは“選ばれたくなかった”!あなたも“選ばれてほしくなかった”!だから──

 

 

 

 ──わたしが止める!あなたに嫌われても、わたしはあなたを止める!あなたの使命をへし折るっ!」

 

 そうして、5枚のマナをタップした彼女は手札から1枚のカードを掲げ、叫んだ。

 

「闇を纏え!水の龍素記号(りゅうそきごう)っ!《龍素記号wD(ダブリューディー )サイクルペディア》を召喚っ!」

「ッ、そいつは……!?」

 

 それは《ザーディクリカ》の片側、《龍素記号Sr(エスアール) スペルサイクリカ》が闇の種族、ダークロードの力を纏ったクリスタル・コマンド・ドラゴン、《龍素記号wD サイクルペディア》だった。

 コスト5、パワー5000、ジャストダイバーとブロッカーを持ち、本家と同じく、墓地から呪文を唱えられるが、範囲がコスト4以下と(せば)まった。

 かわりに、手札から唱えた呪文をもう一度唱えるようになった。

 そして、結衣の墓地には、前のターン、《デドダム》で墓地に置いたカードがある。

 

「《サイクルぺディア》の効果で、墓地から呪文、《勝熱と弾丸と自由の決断(パーフェクト・ジョーカーズ)》!呪文の効果で、《サイクルぺディア》と《デドダム》はこのターン、プレイヤーに攻撃できる!」

「ッ!?」

 

 勝は驚いてしまった。

 今の結衣には決して似合わないカードだと、勝はそう思い、驚いてしまった。

 何故なら、《勝熱と弾丸と自由の決断(パーフェクト・ジョーカーズ)》は弾丸という二文字と、勝熱を情熱に置き換えれば、情熱と自由の象徴である。

 故に、今の結衣は利己的(りこてき)な思考で、情に流されることはまず無い。

 しかし、かつて、結衣の想い人であった勝は違った。

 

「……唯ちゃん、そこまでして、君はジャシン帝の復活を成し遂げたいの?」

「当たり前よ!これがわたしの、自由の決断!こんなクソみたいな世界をぶっ壊す、わたしの覚悟よっ!」

 

 それは悲痛な叫び、(かな)しい決断だった。

 僅かに、胸の痛みを感じた。スパトー:ド:スパトゥーと戦った時に負った傷とは別に、心から感じた痛みだった。

 

(──ああ、そうか。結衣ちゃん、君は今、昔の僕と同じ気持ちなのか)

 

「《サイクルぺディア》で攻撃!する時に、革命チェンジっ!」

 

 結衣の指示に、駆け出したサイクルぺディアはカードに戻り、手札から新たなカードを、結衣は投げた。

 

「すべてを()てつけ!そして、目の前にいる大っ嫌いな彼を(こお)りつくせ!《完璧問題(ラストクエスチョン) オーパーツ》っ!」

 

 それはテック団の最終兵器にして、結衣の真の切り札、《完璧問題 オーパーツ》だった。

 ただし、アニメで見たオーパーツと違い、オーパーツの右手に英知と追撃の宝剣(エターナル・ソード)が握られていた。

 それと同時に、結衣の水色の瞳の左側が『氷』の文字が浮かび上がり、周囲に冷気が蔓延(まんえん)した。

 

「寒ッ!寒いけど、気合で我慢だッ!」

「《オーパーツ》の効果!わたしは山札の上からカードを2枚引いて、あなたは手札からカードを2枚選んで、山札の下に置いて!」

 

 寒さを感じながらも、勝は手札からカードを2枚、山札の下に置いた。

 元々、火や炎を扱う勝にとって、寒さに耐性があるが、結衣の放つ冷気は普通に感じてしまうのだ。

 

「W・ブレイクっ!」

 

 振り下ろされる長剣(ちょうけん)。しかし、薄い、巨大な壁が二つ現れ、勝を守り、勝はシールドの中を覗いた。

 

「ッ、トリガーは……ない」

 

 シールド・トリガーがないことを知らせると、結衣は迷わず、《デドダム》に手を置く。

 

「《デドダム》で攻撃!する時に、侵略、発動っ!」

「侵略!?まさか……!?」

 

 デドダムの足元から突然、不気味な手が現れ、デドダムを地面の中に引き()り込んだ。

 

「……デンジャラス、ゾンビ!《デドダム》を《S(エス)(きゅう)不死(ゾンビ) デッドゾーン》に侵略進化!」

 

 地面の底から現れたのは侵略者の上位種にして、不死(ゾンビ)の力を持ったS級侵略者、《S級不死 デッドゾーン》だった。

 

「T・ブレイクっ!」

「ッ、が……!」

 

 現れたデッドゾーンは右腕のタイヤで、叩くも、またしても、三つの壁が現れ、攻撃を防ぎ、砕かれた。

 しかし、デッドゾーンが砕いた壁の一部が勝に当たり、デュエマの台から突き離した。

 

「……イテテ、完全に、油断したな」

「!?勝、あなた、頭から血が……!?」

「?」

 

 言われて、手に頭を当てると、滑りとした生暖かさを感じた。

 血だ。先程の壁の一部が頭に傷をつけたみたいだ。

 それを見て、勝は服の袖で手を拭き、頭から出た血を、腕で払い、シールドの中を確認した。

 

「……トリガーはない」

「っ、ターンエンドよ!」

「僕のターン……っ!?」

 

 カードを引いた瞬間、勝はふらついた。

 どうやら、頭から出た血が身体(しんたい)に悪影響を与えているのだろう、と、そう思った勝は手札を見る。

 

(大丈夫。手札に必要なパーツは揃ってる!後はメクレイドで見たカード次第だ……!)

 

「……ねぇ、そろそろ諦めない?こんなことしても、辛いだけだよ?」

「確かに辛いし、痛いし、逃げたいよ。けど……目の前で、助けを求めている人を放ってはおけない」

「他人でしょ!そんなことして、何の意味があるの!」

「他人じゃないッ!」

「!?」

 

 珍しく、勝は怒鳴り声を上げた。

 どうやら、他人という言葉に頭に来たのだろう。

 もう、我慢ができない。感情を抑えられない。そう思考が()ぎり、勝は心の内を叫んだ。

 

「彼女は……秋乃さんは他人じゃない!僕が辛い時、秋乃さんは支えてくれた!秋乃さんのお陰で、僕はまた、前を向いていられる!進んでいける!だから今度は、僕が秋乃さんを支える!」

「っ、勝……あなた、そこまでして……」

「守りたいさ!守りたいから、ジャシン帝の復活を止めて、エリカを助ける!結衣ちゃん……いや、結衣!君が秋乃さんを傷つけるなら、僕が許さないッ!絶対に許さないッ!」

 

 心の内を叫んだ勝は4枚のマナをタップし、1枚のカードを手に掲げた。

 

「《クック・轟・ブルッチ》を召喚!次に使うアーマードのコストを6軽減!」

 

 クック・轟・ブルッチの鳴き声に共鳴するかのように、勝の手札から1枚のカードが燃え上がり、勝はすかさず、そのカードを引き抜いた。

 

「炎を纏えしは、覇道の竜!そして……僕の道を指し示せ!1マナで、《覇炎竜 ボルシャック・ライダー》を召喚ッ!」

 

 勝の目の前に、炎の嵐が現れ、そこからボルシャック・ライダーが姿を現した。

 それと同時に、勝の右目が『火』、左目が『炎』の文字が浮かび上がり、デュエル・ゾーンの空間が炎に(おお)われた。

 

「ボルシャック・ライダー?それがあなたの新しい切り札なの?」

「ああ!そうさ!そして、コイツで君を倒して、ジャシン帝の復活を止める!《ボルシャック・ライダー》でシールドを攻撃!各ブレイクの前に、アーマード・メクレイド5を2回発動ッ!」

 

 新たに炎の嵐が二つ現れ、そこから、ボルシャック・アークゼオスが2体現れた。

 

「《ボルシャック・アークゼオス》のアーマード・メクレイド5を発動ッ!それが2回だ!」

 

 2体のボルシャック・アークゼオスの手から小さな炎が現れ、そこから、ボルシャック・爆・ルピアが2体現れた。

 

「ファイアー・バードが出たから、2体の《ボルシャック・アークゼオス》の効果で、《デッドゾーン》と《オーパーツ》とバトルッ!」

 

 パワーが14000まで上がった、2体のボルシャック・アークゼオスはそれぞれ、デッドゾーンとオーパーツとバトルし、破壊した。

 

「そして、《ボルシャック・ライダー》で、シールドをW・ブレイクッ!」

 

 結衣の前に、巨大な薄い壁が二つ現れ、ボルシャック・ライダーは気にせず、二つの長剣で、その壁を切り裂いた。

 しかし、切り裂かれた壁の中から雷のマークが一つ、現れ、結衣は咄嗟に、シールドの中を確認し、宣言した。

 

「シールド・トリガー!呪文、《九番目の旧王(ザインティ・ザイン)》!相手のクリーチャー、すべてのパワーを−3000!」

 

 不気味な悪魔の手が無数に現れ、勝のクリーチャーを苦しめた。

 パワーが3000しかない、クック・轟・ブルッチと2体のボルシャック・爆・ルピアはパワーが0になり、破壊された。

 しかし、ボルシャック・爆・ルピアの炎の魂は消えず、勝の山札に吸収された。

 

「破壊された《ボルシャック・爆・ルピア》のアーマード・メクレイド8を発動ッ!1回目……《ボルシャック・NEX》!2回目は……コイツだ!」

「っ、そのカードは!?」

 

 見せつけられたカードに結衣は驚く。

 何故なら、そのカードは、かつて、勝が切り札として使っていたカードだったからだ。

 

「鎧を纏いしは、爆炎の竜!切り裂け、《爆竜(ばくりゅう)デュアルベルフォース》ッ!」

 

 炎の大剣を二つ持ち、侍のような鎧を纏った、フレイム・コマンドとサムライの種族を二つ持ったアーマード・ドラゴン、《爆竜デュアルベルフォース》が炎の嵐の中から現れ、ボルシャック・ライダーの隣に並んだ。

 

「《デュアルベルフォース》!?なんでそんな古いカードが、そのデッキに入ってるの!?」

「カードのイラストがカッコいいからだよッ!それ以外に理由なんてないよッ!」

「意味わかんないっ!」

 

 純粋な男としての感性を結衣に伝えるも、男心(おとこごころ)がわからない結衣にとって、勝の感性が理解できなかった。

 

「《ボルシャック・NEX》の効果で、山札から《アニー・ルピア》を場に出す!《アニー・ルピア》のシビルカウント3で、《アニー・ルピア》以外のクリーチャーはすべて、スピードアタッカーになる!そして、自分の場に《NEX》か、《XX》があれば、《デュアルベルフォース》はT・ブレイカーを得る!」

 

 共鳴するかのように、ボルシャック・NEXとデュアルベルフォースは咆哮し、炎の大剣が細長い剣へと変わった。

 

「《デュアルベルフォース》で、T・ブレイクッ!」

 

 二つの細長い剣が、結衣のシールドを切り裂いた。

 

「っ、トリガーは……」

 

 ──なかった。

 

 脳裏でそう思った結衣は、視線を下に落とした。

 それを見た勝は《ボルシャック・アークゼオス》に手を置いた。

 

「──《ボルシャック・アークゼオス》で、ダイレクトアタックッ!」

 

 

 



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ACE47:今、一つになる。開眼される紫の瞳。

 

 

 

「……ここね」

 

 バウワウジャの背中に乗って、キャルはエリカが眠っている部屋の扉の前に立ち止まり、バウワウジャの背中から降りた。

 

「……開けるわよ」

「ウゥ──ゥ──ン──ッ!」

「何よ、急に怖い顔をして……私なら大丈夫よ、安心して。それにいざって時に、アンタが守ってくれるんでしょ?その時は頼りにしてるわ」

「ウ──ゥ──ン。ク──ゥ──ン。……」

 

 キャルが扉を開けようとすると、バウワウジャは皺を寄せて、機嫌を悪くし、それを見たキャルはバウワウジャに説得し、安心させようと顎と頭の上を撫でて、落ち着かせた。

 

「それじゃ、今度こそ、開けるわよ」

「……バウッ!」

 

 ガチャッ、と、ハンドルを軽く回し、扉を開けた。

 

「ッ!?」

 

 扉を開けると、エリカが寝ているベッドが血の色で染まっていた。

 どうやら、バウワウジャが機嫌を悪くしていたのは血の臭いが原因のようだ。

 そう思った矢先、キャルの左目が痛みを感じた。

 さっきまでの強い痛みはなく、どちらかと言うと、共鳴しているかのように痛みを感じ、キャルは迷わず、ベッドに向かい、中を覗いた。

 

「ッ!?」

 

 キャルは言葉を詰まらせた。

 驚きのあまり、言葉を詰まらせてしまったのだ。

 見ると、エリカの右目が血の色で紅く染まっており、右目だけでなく、左目、鼻、口から血が出欠していた。

 その光景に、キャルは一歩下がり、吐き気を感じ、近くにあったゴミ箱に手を出し、口から異物を吐いた。

 

「はぁ……ぁ……何なのよ、全く……ッ!?」

 

 ある程度、異物を吐いた後、また左目から痛みを感じた。

 それは、まるで、何かに訴えるのかような痛みで、その内容は、ベッドに寝ているエリカの目を奪え、と言わんばかりに、具体的な内容で訴えてきた。

 

「わかっ、てる……わよ……」

 

 痛みに耐えながらも、キャルは自身に訴えてくる何かに返事を返し、ベッドで横になっているエリカの体の上に乗った。

 

(……ほんと、こうしてみると、グロテスクね)

 

 脳裏でそう思いながらも、顔が血塗れのエリカの右目を無理矢理開かせた。

 すると、エリカの右目の紫色の瞳とキャルの左目の紫色の瞳が光り、共鳴した。

 

「く……!?」

「っ……!?」

 

 共鳴と同時に、二人はまた痛みを感じた。

 

「「う……うぅ、うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」

 

 そして、二人は苦しみ、大きな叫び声を上げた。

 

 

 

「はぁ……はぁ……な、何だったの……今の……」

 

 やがて、苦しみから解放されたキャルは真っ先に悪態をつき、息を切らした呼吸を整え、エリカを覗いた。

 

「……」

 

 死んでいるのか、と、脳裏に若干(じゃっかん)の不安を感じ、手に鼻を当てると、息があった。

 どうやら死んでおらず、それを知ったキャルは安堵した。

 そう思った時、右目に違和感を覚え、近くにあった手鏡を取り、自分の顔を覗いた。

 

「っ!?」

 

 すると、キャルの右目が紫色に変わっていた。

 

「……そうか。私、成し遂げたのね」

 

「──エリカぁぁぁぁぁっ!」

 

 突然、扉の向こうからエリカの名を呼ぶ叫び声が響き、勢いよく、扉が開かれ、二人の来訪者──秋乃と禁断竜王が現れた。

 

「っ、貴女、この部屋で一体何をしていたの?」

「……別に。ただちょっと、そこで寝ている子に用があっただけよ。もう用は済んだけど……」

 

 現れた秋乃は真っ先に、キャルに問いかけると、キャルは吐き捨てるかのように、そう言った。

 それを聞いて、秋乃は怒りを露わにした。

 

「……許しません!貴女は絶対に、わたくしが許しません!」

「……許せないなら、どうするの?人を傷つけたこともないお姫様が、どうやって、私を許しを()うって言うの?」

「止めます!貴女をこれ以上、好き勝手させないために、貴女の身を拘束して止めます!」

「は、やれるものなら、やってみなさいっ!バウワウジャ!」

「バウ!」

「させません!」

 

 近くで待機していたバウワウジャが秋乃に襲い掛かるも、禁断竜王がそれを阻止する。

 

「主の想い人を傷つける者は、この禁断竜王が爪一つ、触れさせません!」

「あっそ。その間に、私は逃げさせてもらうわよ!」

「逃しませんわ!」

 

 そう言って、秋乃は駆け出すも、キャルはジャンプして躱した。

 

「悪いけど、アンタじゃ、私を(とら)えられないわ。さっさと、諦めなさい」

「だとしても、諦めるわけにはいきませんわ!」

「強情なヤツ……いいわ。それなら……」

 

 突然、キャルはデュエマのデッキを取り出し、それと同時に、バウワウジャはカードの姿に戻り、キャルのデッキの中に入っていった。

 

「何のつもりですの?」

「私とデュエマをしましょう?」

「え?」

 

 意外な提案に秋乃は驚く。

 そんな秋乃を放置して、キャルはデュエマをする理由を提示した。

 

「貴女が勝ったら、私は大人しく捕まってあげる。けど、私が勝ったら、大人しく、その道を通してもらうわ」

「……わかりました」

「危険です、焔秋乃!」

 

 秋乃はあっさりキャルの提案を受けるも、禁断竜王はそれを阻止する。

 

「危険なのは重々承知していますわ!それに……わたくしが負けると本気で思っているの?」

「実力の話ではありません!今の彼女は、ジャシン帝にもっとも近い力を持っています!故に、安易にデュエマを受けてはなりません!」

「だとしても、ですわ!」

「!?」

 

 秋乃の叫びに、禁断竜王は後ずさる。

 

「だとしても……わたくしはこのデュエマを受けないわけにはいきませんわ!」

「……」

 

 必死な想いで叫ぶ秋乃に、禁断竜王は黙り込み、少し間を置いてから、溜め息を吐いた。

 

「……わかりました。けど、危険と感じましたら、強制的にデュエマを中断させていただきます」

「ありがとうございます、禁断竜王」

 

 禁断竜王から了承を受けた秋乃はキャルに向き直った。

 

「……話、終わった?」

「ええ、終わりました。それから、逃げずに待っていただき、ありがとうございます」

「……全く、口の減らない女ね」

「そうですわね」

 

 そう返事を返すと、秋乃はデッキを取り出した。

 

「それじゃ、いくわよ!」

「ええ、いつでも……!」

 

「「──デュエマ・スタートッ!!」

 

 

 



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ACE48:キャルvs秋乃!

秋乃とキャルの初デュエマ、初対決。
どちらも、初めての対戦で、不安がありましたが、良い感じに仕上がりましたので、じっくり読んでいただけると、嬉しいです。
前書きはこれぐらいにして、ACE48、どうぞ。


 

 

 

「「デュエマ・スタートッ!!」」

 

「転移!場所は人気(ひとけ)がない場所!」

 

 二人がデュエマ開始の宣言をした後、禁断竜王はそう言って、エリカを除いた三人を屋敷の天井に転移させた。

 

「っ、ここは……わたくしの家の屋敷の天井?」

「はい。勝手で申し訳ありませんが、安全性を考慮して、天井に転移させました」

「なるほど。ありがとうございます、禁断竜王」

「いえいえ、お気になさらず」

 

 お礼を言った後、秋乃は再び、キャルに視線を向ける。

 

「……全く、余計なことを。まぁ、その分、気を遣わずに済むってものか」

 

 そう毒舌を吐きながらも、キャルはすぐに臨戦態勢に入った。

 

「私のターン!まずは手始めに、《ド:ノラテップ》を召喚するわ!ターンエンド!」

 

 先行、キャルの2ターン目。

 キャルのデッキはエリカと同じ黒単アビスロイヤルだが、ノワールアビスを数枚採用していた。

 対して、秋乃のデッキは──

 

「わたくしのターン!わたくしはタマシード、《NEXの手甲(しゅこう)》を場に出しますわ!」

「《NEXの手甲》!?」

 

 ──赤白(あかしろ)タマシード。または、赤白ライオネル。

 しかも、《NEXの手甲》入り。それは、キャルのアビスロイヤルにとっては天敵のカードだ。

 

「《NEXの手甲》の効果!各ターン、はじめて自分のタマシードが出た時、コスト2以下のクリーチャー1体か、タマシードを1枚、破壊しますわ!《ド:ノラテップ》を破壊しますわ!」

「鬱陶しいわね、そのカード……!」

 

 これが《NEXの手甲》の能力。

 正確な効果は、各ターン、はじめて自分のタマシードが出た時、3つの効果から1つ選ぶ、だ。

 その内の1つ、コスト2以下のクリーチャー1体か、タマシードを1つ、破壊する、を、秋乃は選び、キャルの《ド:ノラテップ》を破壊した。

 

「わたくしはこれで、ターンエンド、ですわ!」

「……私のターン」

 

 引いたカードを見て、キャルは考える。

 キャルのデッキはコスト2以下のアビス・クリーチャーが多く採用されているため、秋乃の《NEXの手甲》はガン刺さりなのだ。

 故に、キャルは下手に、コスト2以下のアビス・クリーチャーを場に出せないのだ。

 最も、コスト2以下のアビス・クリーチャーが手札にあればの話だが。

 

「……マナチャージ。3マナで《レター=ジェンゲガー》を召喚。ターン終了時に、山札の上から1枚を墓地に置いて、それがアビスならカードを1枚引くわ」

 

 山札の上から墓地に置かれたのは、《深淵の三咆哮 バウワウジャ》だった。

 

「アビスロイヤルの《バウワウジャ》だったから、私はカードを引いて、ターンエンドよ」

「わたくしのターン……」

 

 カードを引いた秋乃は手札から1枚、マナに置いて、思考を巡らせた。

 

(《ルピア炎鬼(えんき)(ふう)》を場に出したいですが、次のターン、手札から出して、強い進化クリーチャーがあまりいませんわ。それでしたら……!)

 

「タマシード、《カーネンの心絵(メモリー)》を場に出しますわ!効果で、山札の上から3枚見て、その中の進化クリーチャーとタマシードを手札に加えますわ!」

 

 意を決して、秋乃は《カーネンの心絵》を場に出し、山札を捲る。

 捲られたのは《スロットンの心絵》、《センメツ邪鬼(じゃき)<ソルフェニ.(オーガ)>》、《NEXの手甲》の3枚。

 

「《スロットンの心絵》と《センメツ邪鬼<ソルフェニ.鬼>》の2枚を手札に加えますわ!残りの《NEXの手甲》は山札の1番下に置きますわ!次に、はじめて、タマシードが出たから、場の《NEXの手甲》の効果で、手札の《ルピア炎鬼の封》を捨てて、1枚ドロー!これで、ターンエンドですわ!」

 

 次のターン以降に必要なカードを手札に加えつつ、《NEXの手甲》の第二の効果で、さらに山札を掘って、手札を整える。

 

「私のターン!いくわよ、《アビスベル=ジャシン帝》を召喚ッ!《レター=ジェンゲガー》の効果で、墓地と手札を増やして、ターンエンドよ!」

 

 対してキャルはアビスロイヤルの切り札、《アビスベル=ジャシン帝》を場に出し、《レター=ジェンゲガー》で、墓地と手札を増やしていく。

 

 両者、動きは順調。

 しかし、4ターン目にもなれば、秋乃のデッキは動き出す。

 

「わたくしのターン!ドロー!マナチャージ!《カーネンの心絵》を、《センメツ邪鬼<ソルフェニ.鬼>にスター進化!タマシードから進化した時、コストが一番小さい、相手のクリーチャーとタマシードをすべて、破壊しますわ!」

 

 今、キャルの場はコスト3の《レター=ジェンゲガー》と、コスト4の《アビスベル=ジャシン帝》の2体。

 その中で、コストが一番小さいのは、コスト3の《レター=ジェンゲガー》、1体のみ。

 よって、《レター=ジェンゲガー》は破壊され、墓地に置かれ、キャルのバトルゾーンは《アビスベル=ジャシン帝》だけになった。

 

「《<ソルフェニ.鬼>》で攻撃!コスト4以上の、火のレクターズが攻撃する時、手札の《キャンベロ<レッゾ.Star>》の侵略を宣言!先に、《<ソルフェニ.鬼>》のアタック・トリガーを解決しますわ!手札を1枚捨てて、2枚ドロー!その後、《<レッゾ.Star>》の侵略を解決!《<ソルフェニ.鬼>》を、《<レッゾ.Star>》に侵略・スター進化!《<レッゾ.Star>》の効果!次の相手のターン、相手はクリーチャー1体しか場に出せませんわ!」

「……処理が長い!」

 

 思わず、キャルは突っ込んでしまった。

 まさか、1回の攻撃で、ここまで長いとは、流石のキャルでも、考えてもみなかった。

 

「ッ!?ごめんなさい!けど、これで処理は終わりですわ!」

 

 意外にも、キャルから突っ込まれたことに、秋乃は驚き、これ以上の処理はないと告げる。

 

「それで、この攻撃はどうします?」

「……ブロックはしないわ」

「それでしたら、真ん中の左右を1枚ずつ、ブレイクしますわ!」

「面倒なところを選ぶわね……」

 

 悪態を吐きながらも、キャルは指定された2枚のシールドを取り出し、トリガーがないか、中を確認した。

 

「……トリガーはないわ。けど、かわりにこれを使うわ!S(ストライク)・バック!呪文、《秩序(ちつじょ)意志(いし)》で、アンタの《<レッゾ.S tar>》を封印するわ!」

「ッ!?そんな、《<レッゾ.Star>》が……!?」

 

 まさかの闇のS・パック呪文、《秩序の意志》によって、秋乃の《<レッゾ.S tar>》は封印された。

 

「……ターンエンドですわ」

「私のターン……マナチャージせず、《深淵(しんえん)壊炉(かいろ) マーダン=ロウ》を召喚するわ。出た時に、アンタの手札を見て、クリーチャーを1体、墓地に置くわ」

「ッ、わたくしの手札はこれです……」

 

 キャルは《マーダン=ロウ》の効果で、秋乃の手札をすべて見る。

 秋乃の手札の中は、《アルカディアス・モモキング》、《正義星帝<ライオネル.S tar>》、《スロットンの心絵》が2枚、計4枚のカードがあり、キャルは《<ライオネル.S tar>》を指差した。

 

「そのカードを墓地に置いてもらうわ」

「ッ、わかりましたわ……」

 

 渋々、秋乃は切り札である、《<ライオネル.S tar>》を墓地に置いた。

 

「……私はこれでターンエンドよ」

「わたくしのターン……」

 

 切り札を墓地に置かれた秋乃は戦意を失いかけていた。

 

(切り札を墓地に置かれた今、わたくしに勝ち目はありません。けど……!)

 

 ふっと、秋乃はエリカのことを思い出した。

 この屋敷で、エリカと一緒に育ち、暮らしたこと。

 平日、エリカと一瞬に車で、学園に行ったこと。

 放課後、エリカと一緒に部活の仲間とのデュエマ。

 そして、暇がある時に、自分からデュエマを誘う時、エリカは笑顔で、相手をしてくれた。

 美味しい紅茶を注いでくれた。

 そんなエリカの笑顔を奪った彼女が許せなかった。

 

 そう思った時、秋乃は失いかけた戦意を取り戻し、キャルに向き直った。

 

「わたくしは、絶対に負けられません!エリカのためにも、このデュエマ、負けていられませんわ!」

 

 そう決意した後、秋乃は《スロットンの心絵》に手を出す。

 

「タマシード、《スロットンの心絵》を場に出しますわ!《スロットンの心絵》の効果で、このカードを、《アルカディアス・モモキング》にスター進化させますわ!」

 

 光文明、最強の種族、エンジェル・コマンドにして、《聖霊王アルカディアス》の鎧を纏ったモモキング、《アルカディアス・モモキング》がバトルゾーンに現れ、秋乃の瞳が黄色い、星型のマークに変わり、秋乃の後ろに、アルカディアス・モモキングが実体化した。

 

「これは……!?焔秋乃、貴女も、主と同じ、瞳の力を……!?」

「へぇ、アンタも、そうなんだ……それなら!」

 

 キャルも両面を紫色に変化させた。すると、キャルの後ろから、ジャシン帝が実体化した。

 

「《アルカディアス・モモキング》が出たことで、《<レッゾ.S tar>》の封印を剥がしますわ!さらに、《NEXの手甲》の効果で、手札を1枚捨てて、1枚ドローしますわ!」

 

 手札入れ替えをした後、秋乃は《アルカディアス・モモキング》に手を置く。

 

「《アルカディアス・モモキング》で、シールドを攻撃!」

「させないわよ!《ジャシン帝》でブロック!この時、手札を2枚捨てて、《ジャシン帝》は場に残る!」

 

 アルカディアス・モモキングが切り掛かろうとすると、ジャシン帝が体を張って、それを阻止し、アルカディアス・モモキングの剣に斬られ、爆発した。

 しかし、爆発の中からジャシン帝は無傷で、その場に立ち、キャルの元に戻った。

 

「……ターンエンドですわ」

「私のターン。悪いけど、このターンで決めるわ!アビスラッシュ、発動ッ!」

 

 すると、キャルの墓地から《レター=ジェンゲガー》、《フォーク=フォック》、《ジャブラッド》、そして、《バウワウジャ》の4体のアビスが場に現れ、キャルの後ろに、ジャブラッドとバウワウジャが実体化した。

 

「さぁ、絶望しなさいッ!そして、闇に飲まれなさいっ!」

 

 すると、ジャシン帝の剣が秋乃の横に飛び、秋乃の右側のシールドが2枚吹き飛び、ゆっくり、秋乃の元に落下し、秋乃はシールドの中を覗いた。

 

「ッ、トリガーはありません……」

「そう?それなら、今度はこれ!」

 

 今度はジャブラッドの咆哮で、秋乃の左側のシールドが2枚吹き飛び、先程と同じように落下し、シールドの中を覗くと、トリガーがなかった。

 

「最後は、《フォーク=フォック》で、シールドをブレイクっ!」

 

 最後のシールドがブレイクされ、秋乃は恐る恐る、シールドの中を確認した。

 

「ッ、そんな!?シールド・トリガーが1枚もないなんて!?」

 

「──これで、終わりよッ!《バウワウジャ》で、ダイレクトアタックッ!」

 

 

 




ヒロイン、秋乃の初デュエマがまさかの敗北。
はたして、次回、どうなる?


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ACE49:傷つけられる想い人。激情する勝!

 

 

 

 ──時は数十分前に遡る。

 

「なんとか……勝った……」

 

 デュエル・ゾーンで結衣に勝利し、先に脱出した勝だか、体はもうボロボロで、疲れは限界に達していた。

 正直、この後の戦いが保つとは考えられない。

 それでも、自分の使命を放置するわけにはいかない。

 そう決意し、勝は足を動かした。

 

「──待ってよ、勝君」

「!?」

 

 久しぶりに聞いた呼び方に、勝は驚き、足を止めて、振り返ると、突然、デッキが飛んできて、勝は咄嗟に、それを掴んだ。

 飛んできた方に視線を向けると、仁王立ちの結衣がそこに立っていた。

 

「……何のつもり、結衣ちゃん?」

「別に。大した理由はないわ。ただ手ぶらでいくのはどうかと思っただけよ。それに……」

「それに、何?こっちは急いでいるんだ。言いたいことがあるなら、さっさと言ってくれる?」

「ム、そんなことを言われると、言いたくなくなる……」

「それだったら、僕は先に行く」

 

 そう言って、結衣を無視して、勝は先に進もうと、足を動かした。

 

「何よ!人の気持ちを知らないで!」

「……」

 

 大きな怒鳴り声を上げる結衣だが、勝は気にせず、ゆっくり、足を前へと進めた。

 

 やがて、勝の姿は見えず、その場には結衣一人しか居なかった。

 

「本当に、勝手な人……そんなんだから、いざって時に、痛い目に遭うんだよ……」

 

 

 

「扉が開いてる?」

 

 エリカが眠っている部屋の扉の前に着くと、その扉が開いていることに気づき、勝は痛めている体を無理矢理力を入れ、早足で、部屋の中に入った。

 

「っ!?」

 

 見ると、エリカのベッドが血の色で塗られており、部屋の中が悪臭で充満していた。

 急いで、エリカのベッドに近づき、エリカの様子を伺うと、エリカの両目、鼻、口から血が出ていていた。

 

「エリカ!?まさか……!?」

 

 死んでいるのか、と、脳裏でそう思い、エリカの鼻に手を当てた。

 

「!?息がある!?」

 

(まだ息はある!救急車を呼べば、助かる!)

 

 そう思った勝はスマホを取り出そうとすると、その腕を掴む手──エリカの手が掴まれた。

 

「勝……様……」

「ッ、エリカ!大丈夫!今、救急車を呼ぶから、少し待ってて!」

 

 そう勝が叫ぶと、エリカは(かわ)いた喉から言葉を発し、小さい声で、勝に告げた。

 

「お嬢……様を……助けて……ください……」

「──え?」

 

 一瞬、その言葉の意味に、勝は理解するのに遅れた。

 

 

 

 ──それからというもの、勝は急ぎ、屋上に向かった。

 

 体は痛いが、そんなものは構っていられない。

 あの後、エリカから可能な限り、秋乃の居場所を聞き出し、エリカを別の部屋に移した後、何故か気絶していたマリとキリオをエリカと同じ部屋に移し、救急車を呼んで、今、階段をもうダッシュして屋上に向かって、走っていた。

 

 ──あれから、どれくらいの時間が経ったのだろうか?

 

 もしもの時のためとはいえ、エリカ達を安全な場所に避難させた時間が大きい。

 禁断竜王がいるとはいえ、それでも、安心はできない。

 時間的ロスが激しい。脳裏で、そう不安を感じる中、勝はボロボロな体を無理矢理動かし、前へ進んだ。

 

(頼む!僕が来るまで、無事でいてくれ!)

 

 そう思った矢先、開けかけの扉が見え、勝はその扉に突進し、屋上に着いた。

 

「な……!?」

 

 屋上に着くと、勝は目を疑った。

 何故なら、キャルの後ろにジャシン帝とジャブラッド、そして、バウワウジャが実体化しており、キャルの両目は紫色に変化し、秋乃とデュエマをしていた。

 

「──これで終わりよッ!《バウワウジャ》で、ダイレクトアタックッ!」

「ワオォォォォォォォォォォンッ!」

「ッ、キャアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァッー!」

 

 バウワウジャの咆哮に、秋乃は叫び声を上げながら、吹き飛び、扉の横の壁に激突した。

 激突した壁に凹みができ、また数秒もしないうちに、秋乃の体は前かがみに倒れた。

 

「ッ、秋乃さん!」

 

 だが、その前に勝が秋乃の体を支え、ゆっくり体を下ろし、壁を背もたれにし、ゆっくり座らせた。

 

「……勝、様……?」

「大丈夫?秋乃さん?」

「……」

 

 勝の問いかけに、秋乃は無言で頷き、それを見た勝は安堵した。

 

「秋乃さん。どうして、こんな無茶な真似をしたの?」

「……ごめんなさい、勝様。わたくし……どうしても、許せなかったの……エリカが、傷つけられたことが……だから……」

「……もう良いよ、秋乃さん。後は僕に任せて……」

「……はい」

 

 そう返事を返した後、秋乃は意識を手放し、気を失った。

 秋乃の小さな声を聞いて、勝は立ち上がり、いつも間にか、秋乃と行動を共にしていた禁断竜王が近づいており、彼女に「秋乃さんをお願い」、と、一言言って、キャルに向かい、目を鋭くし、彼女を睨んだ。

 その時、勝の瞳は赤い、紅色の炎に変わり、右目に『火』、左目に『炎』の文字を浮かび上がらせた。

 

「……何よ、そんなに怖い顔をして」

「……僕は君を許さない。秋乃さんを傷つけた、君を……絶対に、許さないッ!」

 

 そう言って、勝はデッキを取り出し、掲げ、叫んだ。

 

「デュエル・ゾーンッ!強制展開ッ!」

 

 

 

「なんで君達はこうも、僕の大事な人を傷つけるんだッ!」

「そう思うんなら、首輪でもつけておきなさいよッ!」

「ッ、ふざけるなぁッ!」

 

 感情に任せた勝はそう叫び、クック・轟・ブルッチのコスト軽減で、ボルシャック・ライダーを1マナで召喚し、キャルのシールドを攻撃しなから、アーマード・メクレイド5で、ボルシャック・アークゼオスを2体、場に出した。

 そこからさらに、ボルシャック・フォース・ドラゴンとボルシャック・バラフィオルが現れ、キャルのシールドを2枚、ブレイクした。

 

「シールド・トリガー!《邪侵入(ジャスト・イン・ユー)》と《悪灯(あくとう) トーチ=トートロット》!」

 

 しかし、シールドの中にシールド・トリガーが2枚あった。

 また、キャルの場にはタマシード状態の《ジャブラッド》と《バウワウジャ》がいるため、本来、シールド・トリガーを持たない、《邪侵入》のシビルカウント2が達成され、シールド・トリガーとして、宣言された。

 

「《邪侵入》の効果で、山札から4枚を墓地に置いて、墓地から、《アビスベル=ジャシン帝》を復活させる!そして、《トーチ=トートロット》のシビルカウント3で、アンタはパワーが一番小さいクリーチャーと一番高いクリーチャーを選んで、破壊しなさい!」

「ッ、《轟・ブルッチ》と《ボルシャック・フォース・ドラゴン》を破壊する!」

 

 アビスロイヤルの切り札、《ジャシン帝》が墓地から復活し、ドラゴンをスピードアタッカーにする《轟・ブルッチ》と《ボルシャック・フォース・ドラゴン》が破壊され、勝は焦り出す。

 挙げ句、ブロッカーが2体いる。

 これ以上、攻撃しても意味がない。いつもの勝なら、そう考えるが、今の勝は感情に任せているため、そこまで頭が回らない。

 

「《ボルシャック・バラフィオル》で、攻撃!ボルシャックの攻撃時に、山札の上を巡って、《ボルシャック・ヒート・ドラゴン》を場に出す!」

「その攻撃は通すわ!けど、ただではすまさない!S・パックで、《秩序(ちつじょ)意志(いし)》を唱えるわ!アンタの《ボルシャック・バラフィオル》を封印!」

 

 突然、神の神託がおり、ボルシャック・バラフィオルの頭上に雷が落下し、そのまま、ボルシャック・バラフィオルは石化した。

 

「《ボルシャック・ヒート・ドラゴン》で、シールドを攻撃!」

「《ジャシン帝》でブロック!」

 

 ボルシャック・ヒート・ドラゴンが突撃すると、ジャシン帝がそれを阻止し、手元にある杖のような、槍のような武器で、ボルシャック・ヒート・ドラゴンを切り裂き、破壊した。

 

「クソ!ターンエンド!」

 

 悪態をつきながら、勝はターンエンドを宣言し、キャルは無言でカードを引いた。

 

「……アビスラッシュ!墓地からアビス・クリーチャーを、大量に復活させて、シールドをブレイクアンドブレイクッ!」

 

 刹那。キャルの場に、大量のアビス・クリーチャーが現れ、勝のシールドを一気にブレイクした。

 

「ッ、そんな!?トリガーが、1枚もない……!?」

 

(負けられない!こんなところで、僕は負けられないのに……!)

 

「──《バウワウジャ》で、ダイレクトアタックッ!」

 

 

 




またしても、大事な場面で負けてしまう主人公、勝君。
一体誰が、キャルを止めるんだ?


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ACE50:ジャシン帝、復活。

お待たせしました。


 

 

 

「──が、はッ……!?」

「!?主!?」

 

 ボロボロの状態で、勝はデュエル・ゾーンから現れ、その場で倒れた。

 それを見た禁断竜王は主である勝の安否を確認するため、駆けつける。

 

「全く、大したことないわ。それに、目を使うまでもなかったわ……」

 

 後から現れたキャルはそう毒舌(どくぜつ)()き、現れたキャルに禁断竜王は勝の前に立ち、彼女を警戒した。

 

「……」

「何よ、そんなに睨んで?」

「これ以上、主達を傷つけるなら、我が許さない……!」

「またなの?ほんと、めんどくさいわね、アンタ達……」

 

 そう悪態を()きながらも、キャルはあることを思い出した。

 

「ああ、そうだ。それ、私がもらうね……」

「!?」

 

 そう言って、キャルは両目を紫色に変化させ、それを見た禁断竜王は剣を構えるも、すぐさま、自身の後ろから異様な気配を感じ、振り向いた。

 見ると、勝の上にエリカのデッキの残骸が浮いており、それはキャルの元に飛び、キャルは片手で掴み、自身の手元に収めた。

 

「さて、次は……」

 

 キャルの足元に突如、紫色の魔法陣が現れた。

 

「今こそ、常闇(とこやみ)に寝る邪神を蘇らせる時!触媒(しょくばい)は手元にあるカード達……そして、バウワウジャ以外の、実体化しているアビス達……!」

 

 キャルの叫び声に、エリカのデッキが浮き上がり、屋敷に潜んでいるアビスロイヤル、ノワールアビスの魂がデッキに吸収され、そのデッキが紫色のオーラを纏った。

 

「召喚ッ!アビスベル=ジャシン帝ッ!」

 

 刹那。デッキは光り輝き、その光の中から、アビスベル=ジャシン帝が実体化し、キャルの前に現れた。

 

「……貴様が余の眠りを覚ましたのか?」

「ええ、そうよ。そして、私は、アンタの主よ」

「……何?貴様のような弱き者が、余の主だと?フフ、笑わせるな!」

「……この瞳を見ても、同じことが言えるのかしら?」

 

 嘲笑うジャシン帝に、キャルは紫色の目を見てる。

 

「……紫色の瞳。なるほど。余の主と言うだけのものがあるか。だが、それがどうした?いくら、紫色の瞳があるとは言え、貴様が弱き者なのは変わりようがない」

「……確かに。私は弱き者かもしれない……けど、この瞳の使い手に選ばれたのは()で、アンタを蘇らせたのも()。それは事実よ」

「だから、なんだ?それだけで、余が貴様に従うとでも、本気で思っているのか?」

「ええ、本気で思っているわ」

 

 ジャシン帝の問いに、キャルはあっさり答える。

 それを聞いたジャシン帝は高らかに笑った。

 

「フフ、アッーハハハハハッ!面白い!実に面白いぞ!そこまでの愚か者は生まれて初めてみたぞ!良かろう!貴様が如何(いか)に、愚かで、弱き者か、この目で確かめてやろう!」

 

 そう言って、ジャシン帝はカードになり、キャルの手に収まった。

 

(……上等よ!絶対、認めさせてやる!私の実力を!)

 

 そう脳裏で、キャルは決意し、バウワウジャの背中に乗って、どこかに行ってしまった。

 

 

 

 ──それからというもの、勝達は病院に運ばれた。

 ただ、マリとキリオは軽傷で済み、すぐに退院した。

 対して、大怪我をした勝と秋乃は1週間、入院することになり、出血の多いエリカは意識を失い、昏睡状態に(おちい)るも、3日後に意識を取り戻し、数日、リハビリも兼ねて、病院に入院することになった。

 

 ──そして、病院に入院して、5日目。

 突然、なんの前触れもなく、特務課の颯井剣子が勝の元に訪れてきた。

 

「久しぶりだな、火野……」

「……剣子さん?どうして、ここに?」

 

 突然、訪れた剣子に勝は問いかける。

 

「君の家に向かったら、お世話係の子に、君が病院に入院していると聞いて、ここに訪れてきた」

「……なるほど。それでしたら、ちょうど良かったです。色々と、聞きたいことがありましたので、行く手間が省けました」

「結衣のことか?それとも、ジャシン帝のことか?」

 

 勝が気になっているであろう事柄に、剣子は幾つか言い、勝に問いかける。

 

「両方です。特に、結衣ちゃんがなんで、ジャシン帝を復活させようとしたのか、そこが一番、気になります」

「なるほど……まず、結論から言えば我々にもわからない。わからないが、彼女に、『ジャシン帝の復活の阻止』を命じたのは私だ」

「……そうですか」

 

 それを聞いて、勝は顔を伏せながらも、小さくそう言った。

 それを見た剣子は不思議に思い、勝に問いかける。

 

「?何だ?怒らないのか?」

「怒りませんよ。それに……結衣ちゃんがああなったのは、半分、僕のせいなんで……」

「……そうか。ああ、そうだ。ブラックキャットの件をまだ言っていなかった」

「ああ。そう言えば、お願いしてましたね……」

 

 ブラックキャットに行く前日、勝は夜遅くに、剣子に電話をかけ、ブラックキャットについて調べてほしいと、特務課である剣子に依頼していた。

 だが、勝はそのことをすっかり忘れており、剣子は今更ながら、その結果を報告する。

 

「結論から言えば、白だ。何も問題もない、少し変わったカードショップだったよ」

「そうですか。ありがとうございます」

「……ふむ」

 

 また剣子は不思議そうな目で、勝を見る。

 それを見た勝は剣子に問いかける。

 

「あの、どうかしましたか?」

「いや、意外と冷静だな。もう少し、動揺したり、感情的になったりすると思っていたが、どうやら、私の思い過ごしみたいだな……」

「……」

 

 思いがけない出来事に、勝は耐性がなく、大抵、動揺したり、感情的になって、暴れたり、挙げ句の果てには、泣き始めるが、今の勝は不思議と冷静でいることに、剣子はほんの少し驚いていた。

 

「……もう高校生です。いつまでも、子供のままではいられませんよ」

「それもそうだな。さて、概ねの話は済んだし、私はこれで失礼するよ」

 

 そう言って、剣子は病室から出ようとするが、扉を開ける直前、彼女は勝にこう言った。

 

「……あまり、自分を責めるなよ」

 

 そう言って、剣子は扉を開けて、病室を出た。

 

 一人になった勝はカーテンが開いてる窓ガラスの向こう側の空を眺めた。

 

(……自分を責めるな、か。正直に言うと、それは無理な話だよ。僕は守れなかった。秋乃さんと暁月さんを……そして、ジャシン帝の復活を止められなかった。自分を責めないわけにはいかない!)

 

 勝は自分の無力さに腹が立ち、拳を強く握るも、去り際に言った剣子の言葉を思い出す。

 

(だけど……そうだね。あまり、自分を責めちゃいけないよね。けど、この胸の痛みは消えない!)

 

 握った拳を胸に当て、勝は(いきどお)りを感じた。

 その想いは重く、強く、勝の心を(むしば)む。

 だが、同時に、自身の無力さを知る。

 

「──随分と情けねぇツラだな、親友」

 

 突然、勝のことを“親友”と呼ぶ少年の声が響き、勝はその声の方に振り向いた。

 

「!?拓真(たくま)!?」

 

 振り向くと、ツンツン頭の少年が立っており、その少年を見て、勝は驚いた。

 何故なら、彼は勝の親友、『神原(かんばら) 拓真』だからだ。

 

 

 




Twitterでも呟きましたが、今月から土日に投稿します。
話を途切れないため、1日に2話、2日で4話の投稿を目指して頑張りますが、慣れるまでは土日のどちらかに1話だけ投稿させていただきます。


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ACE51:勝の親友、神原拓真、現る。

 

 

 

 突然、病室に訪れた勝の親友、神原拓真に、勝は驚いていた。

 

「拓真、どうしてここに?」

「オレも剣子さんと同じだよ。それと、オレだけじゃないぜ」

「?」

 

 拓真の言葉に、勝は疑問を抱くも、すぐに、その疑問は解決された。

 拓真の後に、右目に包帯を巻かれ、車椅子に乗ったエリカと、そのエリカを押す秋乃と、勝の見舞いに来たマリの3人が現れた。

 

「マリちゃん、秋乃さん、暁月さん、3人とも、どうして……?」

「どうしてもなにも、みんな、お前が心配で、見舞いに来たんだよ」

「……そうなの?」

「はい。わたくし達、そのつもりで来たのですが……」

「何やら、浮かない顔ですね、勝様……」

「!?そ、そんなことないよ!元気!元気!超元気だよ!」

 

 マリの指摘に、勝は慌てて、そう言うが、全く元気ではないと、4人はすぐに気づいた。

 

「……何か悩みがあるなら、親友として、聞いてやるぜ!」

「本当に、何もないよ……」

「何かあるだろ?話せよ、親友?」

「だから、何もないって……」

「はぁー、めんどくせぇなぁ……」

 

 痺れを切らして、拓真は深い溜め息を吐きながら、そう言い、勝の胸ぐらを掴み、顔を近づかさせる。

 

「何か困ってるんだろ!そんなに(つれ)え顔をするぐらいなら、吐き出してまえ!他のヤツに言えないなら、オレには話せ!吐き出せ!そして、楽になれ!一人で、全部抱え込むんじゃねぇ!わかったか?親友!」

「……拓真」

 

 それを聞いて、勝は涙を流し、泣き始め、泣きながら、数日前に起こったことをすべて話した。

 

「ジャシン帝の復活を阻止できず、そこの3人を守れず、結衣の気持ちも気づけなかった自分に腹が立って、嫌気がさした、か……」

「……うん」

「勝様……」

「「……」」

 

 事情を聞いて、拓真は簡単にまとめて、言葉にし、それを聞いた秋乃達は深刻な顔をした。

 

「はぁー、お前なぁ、ほんと、昔から変わらねえな……」

「?」

「そういう、何でも一人で解決しようとするところ、出会った頃から変わらねえし、ほんと、バカだなぁ……」

「……頭が悪い拓真には言われたくないよ」

「んだと?お前にだけは言われたくねえよ、このデュエマバカが……」

 

 売り言葉に買い言葉、とは、(まさ)に、こう言うことだ。

 親友故に、こう言う会話ができるのだろうと、秋乃達はそう思った。

 

「……オレはもう引退した身……デュエマから降りた身だけどよ。お前の悩みぐらい、相談に乗るし、愚痴を聞くぐらいはできる。だからよ、一人で抱え込もうとするな」

「拓真……ありがとう……」

「礼なら、良いってことよ。寧ろ、もっと頼ってくれていいぜ」

「ありがとう、拓真。けど、これは……」

「僕一人の問題だ、なんて、言わないよな?」

「……」

 

 図星なのか、勝は黙り込む。それを見た拓真はまた深い溜め息を吐き、勝にこう言った。

 

「勝、さっきも言ったが、お前はもう一人じゃない。お前には頼もしい仲間がいる。頼れる仲間がいる。だからよ、そいつらに頼れ。オレだけじゃなくて、他のヤツらに。お前らも、そう思うだろ?」

「勿論、ですわ……」

「はい、私も同じ気持ちです……」

「……」

 

 突然、拓真に話を振られた秋乃とマリはそう答え、エリカは無言で頷いた。

 

「みんな……ありがとう……」

 

 それを聞いた勝は3人にお礼を言い、また、涙を流した。

 

「全く、涙(もろ)いのも、相変わらずだな……」

「うっ、さい……」

 

 その返事を聞いて、拓真は病室を出ようと、足を運び、扉の前に止まり、勝に向いた。

 

「……勝、まだ踏ん切りができないなら、一度、“あそこ”に向かうと良い。あそこなら、多分、お前の悩みを解決してくれる」

「……わかった。考えておくよ」

「ああ、そうしろ。後、それから、次にジャシン帝……結衣と戦うことになるとしたら、デュエマ甲子園かもしれない。ついでに、そこで、鍛えてもらえ。仲間と一緒にな……」

 

 そう言って、拓真は勝の返事を聞かず、病院を出た。

 

 

 

「──あの、待ってください!」

「?」

 

 勝の病室を出た後、拓真は少女の声に止められ、振り向くと、そこにはマリの姿があった。

 

「ん?どうした?」

「あの……ありがとうございます。勝様を励ましていただいて……」

「ああ、そのことか。別に大したことはしていない。親友として、当たり前のことをしただけだ……」

「それも、そうですが……」

「?」

 

 何やら、歯切れが悪いマリの様子に、拓真は疑問を抱いたが、すぐに、彼女は口を開いた。

 

「あの時……勝様が浮かない顔をした時、吐き出せるように、言ってくれたこと、私はとても感謝してます。私なら、あそこまで踏み込めませんでした……」

「……あんなの誰だって、できるよ」

「え?そうなのですか?」

 

 あっさり言い切ってしまう拓真の言葉に、マリは意外な返答に驚く。

 

「大事なのは、相手の悩みや気持ちを聞き出す、コミュニケーション能力と、それを受け入れる度量と、相手を傷ついてでも、自分が嫌われても良いという度胸の3つ……いや、それらを踏まえての覚悟を含めると4つか。君はコミュニケーション能力はあるが、それを受け入れる度量と度胸と覚悟がなかっただけだよ……」

「……」

 

 それを聞いて、マリは黙り込む。同時に、拓真がどれだけ、心が広く、勝のすべてを受け入れる覚悟があることを知った。

 

「……ま、そう気に()むな。オレも最初からできたわけじゃねえし、こういうのは時間と経験がモノを言うものだ」

「……ありがとうございます。貴重なご意見、心より感謝します」

 

 そう言って、頭を下げて、お礼を言い、マリは勝の病室に戻った。

 

(……律儀な子だったな。それにしても、結衣のヤツ、ジャシン帝を復活させて、何を考えてるんだ?)

 

 マリが過ぎ去った後は拓真はそう脳裏で疑問し、思考を巡らせ、考え込み、あることを思いついた。

 

(……オレもデュエマ甲子園に参加するか。勝が心配なのもあるが、何より、結衣が何を考えているのか、知りたいしな)

 

 そう思った後、拓真は急ぎ、デュエマ甲子園に向けて、準備に取り掛かった。

 

 

 



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ACE52:すべてを吐き出して、少年は前を向く。

 

 

 

 それから2日が経過し、勝と秋乃は無事に退院した。

 エリカはまだリハビリがあるため、まだ病院に入院しているが、身体の回復は順調のようだ。

 

 ──その翌日の放課後。

 

 勝は部室で、部活仲間の咲恋達に、秋乃の屋敷で起こったことを説明した。

 

「テメエら、とんでもねえことに巻き込まれてるな!」

「それでよく生きてたわね!」

「お、驚きです!驚きすぎて、一周回って、羨ましいです!」

「明星さん、事は大事ですよ」

 

 想と咲恋は驚き、ひよりは勝がクリーチャーとデュエマしたことに羨ましいと感じ、翔はそんなひよりを注意した。

 皆の意外な反応を見て、勝は少し驚いていた。

 

「あの……みんなは怖くないんですか?」

「あ?怖い?何がだ?」

 

 勝の問いかけに、想は何が怖いのかわからず、逆に問いかけた。

 

「いや……クリーチャーの実体化や僕がクリーチャーと戦えること……結衣ちゃんがジャシン帝を復活させたこと……皆は怖くないんですか?」

「……それだけ?」

「え?」

 

 それだけなの、と、再度、咲恋は勝に問いかけ、勝は咲恋の意図(いと)が読めず、わからなかった。

 それを見た咲恋は深い溜め息を吐いた後、勝にこう言った。

 

「本当は自分が拒絶されるのが、怖かったんじゃないの?」

「!?」

 

 その言葉に、勝は驚き、顔を伏せた。

 どうやら、咲恋の予想が当たり、図星を突かれた勝は顔を伏せ、黙り込むも、すぐに顔を上げて、口を開いた。

 

「……そう、だね。正直に言うと、怖かったんだ。みんなが知ったら、僕から離れていく気がしたんだ。だから、黙っておこうと思ったんだ。けど……」

「そうもいけなくなった、あるいは、自分一人じゃ抱えきれなくなって、誰かに頼ろうと思った……大方、そんなところかしら?」

「……うん。もっと言うと、親友に説得されて、その圧に負けたんだよね」

 

 入院中に親友の拓真が訪れ、彼の説得により、勝の心はぴっちり折れ、その重圧に耐えきれず、勝は退院した翌日に、咲恋達に話そうと、密かに決めていた。

 

「……そう。正直に言うと、もっと早くに言ってほしかったわ」

「全くだ。こんなツラになるまで、一人で抱えてんじゃねえぞ?」

「珍しく、早峰先輩がまともなことを言ってる!?」

「しばくぞ、明星?」

「しばいたら、私が殴ります」

「酷くねえか?」

 

 いつも間にか、いつもの雰囲気で包まれた部活仲間の光景に、勝は涙が出た。

 

「火野先輩……?」

「……ごめん。なんか、嬉しすぎて、涙が出て……!」

「もう男なら、泣くんじゃないわよ!」

「全くだ!」

 

 そう言って、勝を励ます咲恋と想。後から翔とひよりも勝を励まし、その光景に秋乃は嬉しい反面、どこか(さび)しさを感じた。

 それを見たマリは秋乃に声をかけた。

 

「……」

「秋乃様、どうかしましたか?」

「……いえ。わたくしの考えは間違えではなかった。間違えではないのに、何故でしょう?この……ぽっかりと空いた気持ちのような……疎外感を感じるような感覚は……」

「……秋乃様?」

 

 突然、秋乃は謎の寂しさに悩まされ、その寂しさがなんなのか、部活の活動が終わるまで考えたが、結局、それが何なのか、わからなかった。

 

 

 

 ──さらに翌日の放課後。

 

「合宿?」

「うん。デュエマ甲子園に向けて、合宿しようと思うんだけど、どうかな?」

 

 もうすぐ5月が終わり、6月に入る中、勝は咲恋と一緒に先に部室に来て、真っ先に、合宿をしないか、提案した。

 

「そんなに長い期間はかけられないけど、2日か、3日ぐらい、どこかに泊まって、合宿しない?」

「……良い考えね、って言いたいけど、うちの経費じゃ、宿泊先や宿泊費はあまりないし、第一に、学園側が許可するとは思えないわ」

 

 運動部と違い、勝達の部活は文化部のため、活動に必要な経費がそんなに多くなく、また、秋乃が理事長と言っても、文化部に、そこまで肩入れできないため、咲恋は真っ先に、勝の提案を否定した。

 

「それなら安心して。期末考査が終わった後、ちょうど3連休になるから、その日にしようと考えてるよ」

「なるほどね。けど、宿泊先はどうするの?当てがあるの?」

「うん、あるよ」

「即答ね……」

 

 余程(よほど)、合宿がしたいのか、勝の気持ちに、咲恋は観念し、深い溜め息を吐いた。

 

「……わかったわ。そこまで言うなら、合宿をしましょう。ただし、宿泊費はアンタの自腹よ!それが合宿をする条件。わかった?」

「うん!わかった!それじゃ、早速、みんなに連絡しないとだね!」

 

 こうして、期末考査を終えた後、勝達、チーム、『ACE STRIKER』は3日間の合宿が決まったのだ。

 

 

 



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ACE53:本当の気持ち、少女は真の友になる。

今回から天災組の話を描いていきます。


 

 

 

 ──一方、その頃、天災(ディザスター)学園では、デュエマ甲子園に向けて、特訓をしていた。

 

 ジャシン帝の復活後、キャルはアビスデッキの練度を上げるため、結衣と黒江を相手に、日々、デュエマに(はげ)んでいた。

 

 しかし、緑単ジャイアントしか所持していない黒江には、そこそこ勝てているが、5色コントロールやアナカラーなど、多種多様のデッキを扱う結衣にはあまり勝てていなかった。

 

「コイツで、トドメッ!《XXDDZ》で、ダイレクトアタックッ!」

「ッ、また負けた!」

 

 そして、何度目かわからないが、キャルは結衣に敗北した。

 

『やはり貴様は弱き者だな。我らが居て負けるとは、恥を知れ!』

「うっさいわねえ!カードの姿で、説教されても、ただの嫌味にしか聞こえないわよッ!」

 

 カードの姿で、ジャシン帝は悪態を吐き、キャルは怒りながらも、そう言った。

 

「大体、アンタ、場に出てもロクな仕事しないでしょ?」

『それは、貴様が墓地を貯めずに我を出すからだろ!ロクに下準備もしないで、我を出せば良いわけではないのだ!』

「何よ!ペラペラジャシンのクセに!」

『ペラペラ……だと!?貴様、我が気にしていることを口にしたな!』

「事実でしょうが!」

『何だとー!』

 

 突然、口喧嘩を始めるキャルとジャシン帝。

 その光景に黒江は「あーあ、また始まったよ」と、吐き捨てるかのように、そう言った。

 どうやら、キャルが負け続けたり、プレイをミスすると、二人(?)はいつも口喧嘩をしているようだ。

 

「これは長く続くみたいだな、どうする?結衣?」

「……どうもしない。喧嘩するなら、私はもう帰る」

「止めなくて良いのか?」

「どうもしないって、さっきも言ったでしょ?だから、帰る」

 

 そう言って、結衣は体育館を出た。

 

「……勝手な奴だな、全く」

 

 それを見た黒江はそう毒舌を吐き、喧嘩している二人を放棄して、結衣の後を追った。

 

 

 

 いつも間にか、結衣は商店街に来ており、当てもなく、ぶらぶらと歩いていた。

 

(……何やってるんだろう、私)

 

 ふっと、結衣は足を止めて、脳裏でそう思った。

 

(本当はこんなこと、したくないのに……意地を張って、勝と敵対して……ほんと、何やってるんだろうな)

 

 顔を上げて、脳裏にそう思い、結衣は空を眺めた。

 青い空に、白い雲が飛び、眩しい陽射しが目に入り、右手で、目を隠した。

 

(私の本当の気持ち、それは……)

 

「──ゆーいー!」

 

「!?」

 

 突然、結衣の名を呼ぶ、聞き慣れた少女の声が響き、結衣はその声の方に振り向いた。振り向くと、そこには結衣の後を追いかけて、早足で走っていた黒江の姿があった。

 

「ハー、ハー……やっと追いついた……」

「黒江!?どうして?」

 

 切らした息を、黒江は整え、結衣は何故、黒江が来たのか、問いかける。

 

「どうしてって、結衣が心配だからだよ」

「……私は別に心配されるような子じゃないよ」

「だとしても、ウチは友達として、結衣が心配なんだよ。わかるか?」

「……」

 

 友達。その言葉を聞いて、結衣は顔を伏せた。

 それと同時に結衣は脳裏にこう思った。

 

(黒江は私のこと、友達っていうけど、私はあなたのこと、友達なんて、一度も思ってない。寧ろ、私の目的のために、黒江を利用しているだけ……それだけなのに……)

 

 ふっと、結衣は胸を痛んだ。その痛みは身体的に、ではなく、精神的な痛みだった。

 結衣は自身の胸を掴み、叫んだ。

 

「……私はあなたのこと、これぽっちも、友達なんて思っていない!」

「!?結衣……?」

「私はただ……利用していただけよ。あなたの友達を想う気持ち、あなたの持つ瞳の力、あなたの……デュエマの腕を……私はただ、自分の目的のために、利用している最低の女よ……!」

「……」

 

 ああ、ついに言ってしまった。

 そう脳裏で思いつつも、結衣は後悔なんて感じなかった。いや、感じないはずだった。その瞳に涙が出るまでは。

 それを見た黒江は結衣を抱きしめた。

 

「っ、黒江……?」

「……いいよ」

「え?」

「ウチはそれでもいいよ。アンタがウチを利用したいなら、利用すれば良いし、ウチの瞳やデュエマの腕を買ってるなら、ウチはそれに応えたい。けど、よ。これだけは言わせてもらうよ……」

 

 そう言って、黒江を息を吸って、思いっきり、叫んだ。

 

「ウチはアンタの友達だ!そして、アンタも心の中で、ウチのことを友達と認めてる!だから……だからよ……自分の気持ちにウソをつくんじゃねぇよ……」

「……う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 その言葉に結衣は号泣した。

 周りの目を気にせず、ただひたすらに、号泣し、泣いた。

 

 

 

 ──数分後。

 

 泣き止んだ結衣を連れて、二人は近くのベンチに座り、結衣は黒江の肩に(もた)れていた。

 

「ねぇ、黒江」

「ん?何?結衣」

「……私、あなたと、本当の意味で、友達になりたい」

「……何言ってんだよ。ウチら、もう友達だろ?」

「!?」

 

 その言葉に、結衣は驚くも、すぐに満面の笑みで、黒江にこう言った。

 

「うん、そうだね……」

 

 

 




今回は結衣の本当の気持ちを描きました。
また、前書きにも言いましたが、今回から天災組の話を描いていきます。


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ACE54:無限の闇使い、黒崎レオン。

 

 

 

 ──翌日の放課後。

 

 今日もデュエマ甲子園に向けて、特訓する結衣達。

 しかし、キャルのアビスデッキの進捗(しんちょく)が良くなく、あまりにも上達しないキャルの腕に、結衣と黒江は頭を悩ませていた。

 

「だーかーら!アンタ、出てすぐ落ちるのやめなさいよ!」

『貴様こと、墓地が溜まっていない時に、我を出すな!』

 

 挙げ句の果てには、口喧嘩を始める二人。

 もう見慣れた光景に、結衣と黒江は揃って、深い溜め息を吐いた。

 

『第一、貴様、瞳の力に頼りすぎだ!そんなのでよく、紫色の瞳に選ばれたものだなぁ!』

「っ、何よ!私が居なかったら、アンタ、蘇れなかったくせに!」

『何だと!?』

「何よ、このペラペラジャシン!」

『貴様、また我が気にしていることをー!』

「本当のことでしょうが!」

 

「──良い加減にしなさいっ!」

 

 ついに我慢の限界を迎えた結衣は大きな声で叫び、キャルの頭を拳骨し、ジャシン帝のカードを瞳の力で凍らせた。

 

「い、痛い……頭が割れるぐらいに、痛い……!」

『さ、寒い……!なんざ、この寒さは?こ、凍え死ぬ!ジャシンの我が、凍え死んでしまう、だと……!?』

「……流石にこれはやりすぎだと思うぞ、結衣?」

「何言ってるの?これぐらい、まだ優しい方よ」

「優しい方なんだ……」

「……本気を出したら、凍るよ」

「こわ……」

 

 結衣の発言に、黒江は肝が冷えたが、そんな黒江を見て、結衣はまた深い溜め息を吐いた。

 

「……こうなったら、専門家に頼るしかないわね」

「専門家……?」

「少しクセはあるけど、私の中で、一番、闇文明を扱うのが、上手い人よ……」

 

 

 

 ──場所は変わり、商店街の中央付近。

 

「ここよ……」

「ここよ、って、喫茶店じゃねぇか!」

 

 結衣の発案で、闇文明を扱うのが、一番上手い人に会う為、結衣達は学園を出て、商店街の中央にある『喫茶・クロ咲店』という、喫茶店に来ていた。

 

『……感じるぞ。強い闇の力を持った者が、この中にいる』

「ほんとかな……」

「ただ結衣が紅茶を飲みたいだけじゃねぇか?」

「…………入るわよ」

「おい、今の間は何だ?」

 

 黒江のツッコミを無視して、結衣は喫茶店の扉を開けた。

 

 

 

 ──カランカラン。

 

 

 

 と言う古風な音が鳴り、結衣達が店内に入ると、一人の女性が出迎えてくれた。

 

「いらっしゃいませー!3名様でご来店ですか?」

「すみません。オーナーの黒さ……レオンさんはいますか?」

「おや?オーナーのお知り合いさんですか?少々お待ちを……」

 

 そう言って、女性は店の奥に行ってしまった。

 待ってる間、黒江とキャルは周囲を見渡した。

 店の中はどこか古く、懐かしく、それでいて、アニメや漫画に出てくる喫茶店であった。

 しかし、結衣達以外の客はおらず、店員も先程の女性しか居なかったため、あまり人気ではないことが伺える。

 

 そんなことを思っていると、先程の女性と一人の青年が現れた。

 その青年を見た時、黒江は違和感に気づいた。

 

(アレ?勝?いや、アイツはウチらと同じ高校生だし……親戚か、兄弟か……?)

 

 その青年はどことなく、勝に似ているが、よく見ると、髪の色が少し茶色に染めているため、勝の親戚か、兄弟かと、黒江はそう思った。

 

「オーナー、こちらの方達ですが……」

「……なるほど、理解した。彼女達はわたしが相手をしよう。君は仕事に戻って構わない」

 

 青年がそう言うと、女性はレジの方に戻っていた。

 それを見た後、青年は結衣達の方に、視線を向ける。

 視線を向けられた途端、結衣以外の面々が面食らった。

 

(なんと、禍々(まがまが)しい闇のオーラだ!?だが、コヤツだな。先程の闇の力は……!)

 

(なんか、すげえ、オーラ?……殺気?みたいなのを感じるな……)

 

(何なのよ、コイツ!?私より、闇の力を持ってるじゃない!?)

 

 2人と1体のクリーチャは脳裏で、そう思い、青年は口を開いた。

 

「まず、場所を変えよう。ここじゃ、他の客に迷惑だ」

「……そのわりには、私達以外、客がいないじゃない」

「うちは夜が本番なんだ。昼間はあまり人が来ない。これが普通だ」

「ふーん……まぁ、どうでもいいけど……」

 

 などと、青年から感じる殺気のようなオーラを前に、動じず、軽口を叩ける結衣の姿に、黒江とキャルは驚いていた。

 

「……ついてこい」

 

 何かを察したのか、青年は後ろを振り向き、奥の方に進み、結衣達も後を追いかけるように、お店の奥の方に、入っていた。

 

 

 

 奥に入ると、そこにはデュエマの台が一つ、置かれていた。

 

「うちは喫茶店以外にも、デュエマも少し経営している。故に、暇な時や遊びたいヤツはここを自由に使っている」

「なるほど……」

 

 青年が説明すると、黒江はそう返事を返した。

 

「……さてと、誰から相手になる?」

「「!?」」

 

 そう言うと、先程までとは比べ物にならない殺気が青年から放された。

 その殺気に、黒江とキャルは膝をついた。

 

(マジか……さっきまでのとは、比べ物にならねえ、オーラを放しやがった!?)

 

(ウソでしょ!?この人、どんだけ闇が深いのよ!?けど、私にだって、引き下がれない理由があるのよっ!)

 

 そう思ったキャルはすぐに立ち上がり、叫んだ。

 

「上等よ!やってやろうじゃない!」

「ほう?威勢がいいな?良かろう。貴様から、調教してやろう!この俺、無限の闇使いと言われた、黒崎(くろさき)レオンが直々に相手してやる!」

「やれるものなら、やってみなさいよっ!」

「ゆくぞ!」

 

「「──デュエマ・スタートッ!」」

 

 

 



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ACE55:幻夢(まぼろし)の帝王にして、無限の闇龍。

 

 

 

 ──キャル対レオンのデュエマ。

 

 キャルは黒単アビスロイヤルを使用し、2ターン目に、《ベル=ゲルエール》を召喚し、3ターン目に、《ボーンおどり・チャージャー》を唱え、墓地とマナを伸ばしていた。

 対して、レオンは水と闇の2色デッキ、青黒(あおくろ)カラーで、2ターン目に、《戯具(ギーグ) ドゥゲンダ》、3ターンに、《フェイト・カーペンター》をそれぞれ召喚し、手札と墓地を入れ替えていた。

 

 そして、キャルの4ターン目が始まるところだ。

 

「私のターン!マナチャージして、3マナで呪文、《邪侵入(ジャスト・イン・ユー)》!山札の上から4枚を墓地に置いて、墓地からコスト4以下のアビス・クリーチャー、《アビスベル=ジャシン帝》を場に出すわ!」

 

 アビスロイヤルの切り札、《ジャシン帝》を場に出すことに成功したキャルはさらに、追い討ちをかける。

 

「アビスラッシュ!墓地から《ジャブラッド》を2体、召喚!効果で、山札の上から2枚を墓地へ!これを2回行うわ!」

 

 もう一体のアビスロイヤルの切り札、《ジャブラッド》を2体出し、さらに墓地を4枚増やす。

 

(このターンは決めきれない。けど、相手のシールドを少しでも減らして、こっちの墓地を増やす!)

 

 そう脳裏で思い、キャルは《ベル=ゲルエール》に手を置く。

 

「《ベル=ゲルエール》で、シールドを攻撃!」

 

 攻撃しながら、2体の《ジャブラッド》の効果で、キャルはさらに墓地を4枚増やす。

 

「……トリガーはない」

「それなら、《ジャブラッド》で、シールドを攻撃!W・ブレイク!」

 

 畳み掛け、さらに墓地を増やし、キャルの攻撃に、レオンは無言で、シールドの中を見る。

 

「……来たか。シールド・トリガー、呪文、《サイバー・チューン》。効果で、3枚引き、2枚捨てる。この時、《斬隠蒼頭龍(きりがくれそうとうりゅう)バイケン》を捨てた時、コイツは場に出る。そして、クリーチャー1体をバウンスする。もう一体の《ジャブラッド》を手札に戻してもらう」

「《ジャブラッド》の効果!自分のアビス・クリーチャーが場を離れる時、墓地のカードを4枚選んで、シャッフルし、山札の下に置いて、場に残す!」

 

 キャルの墓地からカードが4枚、勝手に浮き上がり、シャッフルされ、山札の下に置かれた。

 

「……ターン終了時、アビスラッシュで出た《ジャブラッド》1体は山札の下に置いて、もう一体は自身の効果で、場に残すわ。ターンエンド」

 

 タップ状態の《ジャブラッド》は下に置かれ、もう一体は自身の効果で、場に残し、タマシード状態にして、キャルはターンを終えた。

 

「俺のターン。悪いが、先程の攻撃で、こちらの準備は整った」

 

 そう言って、レオンはマナを1枚チャージし、1枚の闇のカードをタップした。

 

「──墓地進化、《死神術士(しにがみじゅつし)デスマーチ》を召喚」

 

 墓地から闇のカードが重ねられ、レオンの場に《デスマーチ》が場に出た。

 パワーはさっさの1000。ブロッカーを持ち、このクリーチャーとバトルしている相手のクリーチャーのパワーを−4000する能力を持つ。

 

 しかし、今回はそれらは関係ない。大事なのは、《デスマーチ》の“進化元で重ねられたカード”である。

 

「そして、3マナで、呪文──《龍脈術(りゅうみゃくじゅつ) 落城(らくじょう)(けい)》を唱える。場のコスト6以下のカードを手札に戻す。俺が戻すのは、《デスマーチ》だ」

 

 その言葉に、外野で見ていた黒江は疑問を抱いた。

 

「え?折角出した進化クリーチャーを手札に戻すのか?」

「違うわ。《落城の計》で戻すのは“場のコスト6以下のカード”よ」

「え?あ……」

 

 結衣の言葉に、黒江はレオンの意図に気づき、キャルも、レオンが何をしようとしているのか、すぐに理解した。

 

「──無限の闇に眠れ、退化!《∞龍(むげんりゅう) ゲンムエンペラー》!」

 

 刹那。キャルの場のクリーチャーと手札、墓地のカードからテキストが消えた。

 

『な、なんだ!?力が抜けていく感覚は……!?』

 

 バトルゾーンにいるジャシン帝がそう呟くと、レオンの場にいる《ゲンムエンペラー》の瞳が光った。

 

「《ゲンムエンペラー》が場にいる限り、互いに、コスト5以下のクリーチャーと呪文の効果を無視する。貴様お得意のアビスラッシュは封じたぞ?どうする?」

「決まってるわよ!最後まで戦うわよ!」

 

 そうキャルが叫ぶと、レオンは不適な笑みを浮かべた。

 

「そうか!ならば、(あらが)ってみてよ!《バイケン》で、《ベル=ゲルエール》を攻撃!破壊だ!」

「ッ!?けど、まだ私には《ジャシン帝》がいる!私のターン!」

 

 キャルは勢いよく、カードを引き、2枚のカードを場に出した。

 

「《ド:ノラテップ》と《ジャブラッド》を召喚!そして、《ジャブラッド》で、シールドを攻撃!」

「愚か者め!《ゲンムエンペラー》で、ブロック!返り討ちだ!」

「ッ!けど、《ジャシン帝》で、《バイケン》を攻撃!」

「それで、どうする?」

「っ、ターンエンド……」

 

 歯を食いしばり、キャルは胸に悔しさを感じ、ターンエンドを宣言した。

 

「俺のターン……《ゲンムエンペラー》で攻撃!(インフィニティ)ブレイカァァッー!」

「ッ!?」

 

 レオンの《ゲンムエンペラー》の攻撃により、キャルのシールドはすべて、ブレイクされた。

 その中にはシールド・トリガーの《ハンマ=ダンマ》と《邪侵入》の2枚があった。

 

(《ゲンムエンペラー》の効果で、2枚とも、トリガーを封じられてる!)

 

 だが、《ゲンムエンペラー》の効果で、シールドから加わった2枚のシールド・トリガーは封じられている。

 

「──これで、トドメだ!《ドゥゲンダ》で、ダイレクトアタックッ!」

 

 

 

 デュエマの結果はレオンが勝利し、敗北したキャルは、その場で膝をつき、顔を下に向いていた。

 

「私が……負けた……」

「キャル……」

 

 結衣が声を掛けようとするも、黒江が止め、首を横に振り、レオンに睨む。

 

「……次はウチが相手になる」

「ほう?先程まで、怯えていた貴様が俺に勝てるのか?」

「やってみないと、わからないですよ?」

 

(正直、勝てるかは微妙だけど、ウチのデッキなら、まだ勝機があるはずだ……!)

 

 脳裏で、そう自分に言い聞かせ、黒江はデッキを取り出す。

 

「いいだろう。だが、流石に実力差があるからな。代理人に頼むとするか……」

「?代理人……?」

 

 すると、扉が開き、一人の少女が入ってきた。

 

「──お義兄(にい)ちゃん、ここに居た」

「丁度良いタイミングに来たな。リオン」

「?」

 

 突然、入ってきた少女、リオンは疑問を抱く。

 

「え?まさか……!?」

「そのまさかだ──

 

 

 

 ──お前の相手は我が義妹(いもうと)、黒崎リオンだ!」

 

 

 



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ACE56:レオンの義妹(いもうと)、黒崎リオン、現る。

今回は短めです。


 

 

 

「何で、ワタシがデュエマをしないといけないわけ!?」

 

 レオンの義妹、黒崎リオンは義兄であるレオンに、激しく訴えていた。

 

「そう言うではない。息抜きがてら、デュエマをするのも悪くないだろ」

「ワタシはもう引退した身よ!今のデュエマなんて、わかるわけないでしょうが!」

 

 激しく反発する義妹、リオン。

 これが俗に言う反抗期か、と、義兄のレオンはそう脳裏で思い、何とかして、彼女にデュエマをしてやれないか、説得する。

 実際のところ、リオンは2年前にデュエマを引退している為、今のデュエマのカードプールについてこれていない。

 ましては、リオンは今年、中学3年生であり、受験まっしぐらである。

 デュエマなど、している暇はないのだ。

 

「……なぁ、ウチら、何のために、ここに来たって?」

「そこのシスコン拗らせたお兄さんに、闇の使い方を教わりにした」

「あの人、シスコンなんだ……」

「因みに、義妹のリオンはブラコンを拗らせてるわ」

 

 キラッと、可愛い顔でウインクし、結衣は二人について、軽く説明した。

 その説明を聞いて、黒江は「えー……」と言って、口を開けて、あんぐりしていた。

 一方のキャルはまだ顔を下に向いていた。

 

「仕方がない。これだけは使いたくなかったが……」

「ッ!?お義兄ちゃん、それは……!?」

 

 突然、レオンは一枚の紙を取り出した。

 それは『私の将来の夢』と、書かれた作文だった。しかも、義妹のリオンの作文である。

 それを掴んで、レオンは息を大きく吸い、吐き出す。

 

「黒崎リオン!私の将来の夢は──」

「やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!」

 

 バチン、と、ものすごい音が鳴り響き、リオンはレオンの顔を思いっきりビンタした。

 余程、その作文の内容を言われたくないらしく、リオンの顔は真っ赤になっていた。

 

「ハァ、ハァ……わかった!わかったわよ!やれば良いんでしょ!デュエマを!」

「うむ、よろしい。後、リオン。義兄にビンタをするのはどうかと思うぞ?」

「誰のせいよ!それで、デッキは?ワタシ、もう持ってないんだけど……」

「少し待っていろ……」

 

 そう言って、リオンに叩かれた頬を抑えながら、レオンは立ち上がり、一度、部屋を出て、デッキを取りに行った。

 

 ──数分後、デッキを取りに行ったレオンは部屋に戻り、リオンにデッキを渡す。

 

「これを使え、我が義妹よ。そして、コイツらに闇の素晴らしさを見せつけるのだ!」

「はいはい。その厨二病、良い加減やめてよね」

 

 などと言いつつ、リオンはレオンから渡されたデッキの中見を見る。

 サラサラと、手馴れたカードの見方。一通り、見終わると、リオンはデッキをシャッフルした。

 

「……それで、ワタシの相手は誰?」

「ウチや」

 

 そう黒江が返事を返すと、リオンはシャッフルを止め、デュエマの台の前に立った。

 それを見た黒江も、デュエマの台の前に立ち、デッキを置いた。

 

「それじゃあ……サクッと、終わらせるよ」

「ッ!?」

 

 瞬間、リオンから、もの凄いオーラを感じた黒江は、ほんの少し、手が震えた。

 

(ウチがビビってる!?まさか、相手は引退した身!ウチが負けるわけあらへん……!)

 

 そう自分に言い聞かせ、黒江は臨戦態勢をとる。

 

「それじゃ、いくよ──」

 

「「──デュエマ・スタートッ!!」」

 

 

 



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ACE57:黄泉(よみ)より不思議な大樹(たいじゅ)の王。

今回の対戦、めちゃくちゃ長いです。


 

 

 

 ──黒江対リオン。

 

 黒江は《ドルゲユキムラ》が入った緑単ジャイアントを使用。

 3ターン目に、黒江は《雲の超人(クラウド・ジャイアント)》を場に出すことに成功し、マナを一気に7マナまで伸ばしていた。

 対して、リオンのデッキは闇と自然の2色デッキ、黒緑(くろみどり)である。

 2ターン目に《ダーク・ライフ》、3ターン目に《ライマー・ドルイド》を召喚し、墓地とマナを順調に進めていた。

 

 ──そして、黒江の4ターン目。

 

「ウチのターン!双極(ツインパクト)!呪文、《巨打設計図(ジャイアント・インパクト)》!山札の上から3枚を表向きにして、その中にあるジャイアントとスノー・フェアリーをすべて手札に加える!」

 

 捲られたのは《とこしえの超人(プライマル・ジャイアント)》、《チアスカーレット アカネ》、《環嵐(かんらん)!ホールインワン・ヘラクレス》の3枚。

 すべて、ジャイアントであり、《巨打設計図》の効果により、黒江の手札は一気に3枚増えた。

 

「更にウチは《ホールインワン・ヘラクレス》を召喚!効果で……妹さんの墓地をすべてシャッフルして、山札の下に置いてもらう!」

「ッ、最悪!後、その呼び方、やめてください!お義兄(にい)ちゃんの妹ってだけで、スゴく不快です!」

「ええ……」

「リオンよ、義妹(いもうと)とはいえ、義兄(あに)に対して酷くないか?」

「お義兄ちゃんは黙ってて!」

「……じゃあ、なんて呼べば良いの?」

「……普通に名前で呼んでください」

 

 そっぽを向きながら、リオンはそう答えると、黒江は心底、めんどくさいと感じ、深い溜め息を吐いた。

 

「はいはい、わかったよ。リオンちゃん」

「ッ!?ありがとう、ございます……」

 

 リオンがそう返事を返すと、黒江はデュエマに集中し、1マナをタップした。

 

「んじゃ、1マナで、《とこしえの超人(プライマル・ジャイアント)》をついでに召喚して、ターンエンド」

「……ワタシのターン!マナチャージして、3マナで、呪文、《終焉の開闢(ビギニング・オブ・ジ・エンド)》!山札の上から3枚、墓地に置いて、クリーチャーを1体、手札に加える!《龍装鬼(りゅうそうき) オブザ08(ゼロハチ)(ごう)》を手札に加える!」

 

 そう言って、リオンはまた《終焉の開闢》を唱え、先程、使った《終焉の開闢》のクリーチャー面、《オブザ08号》を手札に加える。

 これで、リオンの墓地は6枚まで回復し、墓地と手札に《オブザ08号》が1枚ずつあるため、次のターンも、また同じ動きができる。

 また、2回目の《終焉の開闢》で、切り札を墓地に落とすことに成功した。

 

「ワタシはこれでターンエンドです!」

「ウチのターン!悪いけど、このターンで決めさせてもらうよ!」

 

 そう言って、黒江は2体の《アシスター・サイネリア》を召喚し、《サイネリア》のコスト軽減で、《チアスカーレット アカネ》を3マナで召喚した。

 これで、黒江の場にいるジャイアントは4体以上揃った。

 

「ウチの場に、ジャイアントが4体以上いるので、《ドルゲユキムラ》のG・ゼロ、発動!《アシスター・サイネリア》に進化!マナから《ハヤブサマル》を手札に回収して、手札のコイツをマナに置く!」

「ッ、そのカードは……!?」

「ほう、面白いカードをマナに置いたな……」

 

 黒江が置いたカード──《十番龍(じゅうばんりゅう) オービーメイカー Par(パー)100(ハンドレッド)》に、リオンは驚き、レオンは面白そうに感心していた。

 

「《ホールインワン・ヘラクレス》の効果で、ウチはマナからクリーチャーを1体、場に出せる!そして、コイツはウチの自然のクリーチャーか、自然のタマシードを場に出した数分、コストを3軽減できる!」

 

 先程の《オービーメイカー》を見せながら、黒江はそう説明した。

 黒江はこのターン、《ドルゲユキムラ》のG・ゼロを含めて、自然のクリーチャーを4体場に出している。

 つまり、このターン、黒江の《オービーメイカー》は1マナで召喚できるのだ。

 

「十番目の大地の龍よ、今こそ動き出せ!《十番龍 オービーメイカー Par100》を1マナで紹介!」

 

 黒江の《オービーメイカー》が場に出た瞬間、黒江の場のクリーチャー全てが緑色に光った。

 

「《オービーメイカー》のシビルカウント5!相手のターン中、相手は『場に出た時』の効果などで発動(トリガー)するクリーチャーとタマシードの効果を発動できない!これで、このターン、ウチは決められなくても、リオンのクリーチャーの効果は止めた!」

「ッ、そんな……!?」

 

 その効果にリオンは驚く。

 仮にこのターン、耐え切っても、リオンは次の自分のターン、場に出たクリーチャーの効果が使えない。

 攻撃の体勢を作りつつ、決められなかった時の為の保険で、相手の反撃を完璧に封じる。これが黒江の必勝法である。

 

「さっきも言ったけど、このターンで決めさせてもらう!《ホールインワン・ヘラクレス》と《ドルゲユキムラ》で、シールドをブレイクッ!」

 

 攻撃しながら、《ホールインワン・ヘラクレス》の効果でマナを増やし、リオンのシールドを攻撃した。

 5枚あった、リオンのシールドがすべてブレイクされ、《雲の超人》のダイレクトアタックが決まれば、リオンは負ける。

 

 ──しかし、シールドの中からトリガーが2枚出た。

 

「シールド・トリガー!《閃光(せんこう)守護者(しゅごしゃ)ホーリー》を2体召喚っ!効果で、花宮さんのクリーチャーをすべてタップです!」

「な、光文明のカード!?」

 

 光のシールド・トリガー・クリーチャー、《閃光の守護者ホーリー》によって、黒江のクリーチャーはすべてタップされた。

 まさか、光文明の《ホーリー》が入っていたなんて、と、脳裏で黒江はそう思い、面食らった。

 

「クソ!ターンエンドだ!」

 

 相手のターン中にしか、クリーチャーやタマシードを止められない《オービーメイカー》の弱点を突かれ、黒江は悪態を吐きながら、ターンエンドを宣言した。

 

「──相手のターンの終わりに、手札の《流星(りゅうせい)のガイアッシュ・カイザー》の効果を発動!花宮さんがマナゾーンのカードをタップせず、《ドルゲユキムラ》を場に出したので、このクリーチャーをノーコストで召喚します!」

「な!?」

 

 だが、リオンは黒江がG・ゼロで場に出した《ドルゲユキムラ》の効果を利用し、手札にある《流星のガイアッシュ・カイザー》を場に出した。

 

「《ガイアッシュ・カイザー》が出た時、山札の上からカードを2枚引きます」

 

 またしても、黒江のターン中なので、《オービーメイカー》の効果は貫通され、《ガイアッシュ・カイザー》の効果により、リオンの手札が増えた。

 

「……ワタシのターン。マナチャージ。3マナで呪文、《終焉の開闢》!山札の上から3枚を墓地に置いて、墓地から《オブザ08号》を手札に加える!この時、墓地に置かれた2体の《爆撃男(ばくげきおとこ)》の効果で、花宮さんの《とこしえ》のパワーを−4000!破壊!」

「な!?」

 

 どこからでも墓地に置かれた時、《爆撃男》は『相手のクリーチャー1体のパワーを−2000する』効果があり、それが墓地に2枚置かれたため、《爆撃男》の効果が2回発動し、パワーが4000もある《とこしえの超人》のパワーを0にし、破壊した。

 

(これでリオンの墓地にいる“アレ”が場に出せるな……)

 

 兄、レオンが脳裏にそう思う中、リオンは“アレ”の持つ効果を宣言する。

 

「そして──“フシギバース”、発動!」

「フシギバース!?」

「フシギバース?なんだ、その能力は?」

 

 リオンがまさか、フシギバースを使うことは結衣は驚くも、黒江はそれが何なのかわからず、リオンに問いかけた。

 

「フシギバース能力は、場のクリーチャーを1体、マナに置いて、墓地にあるフシギバースを持ったクリーチャーを場に出せる能力。この時、指定されたフシギバースのコスト分をマナに置いたクリーチャーのコスト分減らせる」

「スゲェ、インチキ効果だな……」

 

 フシギバースの説明を聞いて、黒江はそう言い、リオンは《ホーリー》をタップしてマナに置き、2枚のマナをタップした。

 

「不思議な世界、黄泉(よみ)の世界より深く眠る大樹(たいじゅ)の龍王よ、今こそ蘇れ!《大樹王(だいじゅおう) ギガンディダノス》を召喚ッ!」

「ッ!?」

 

 刹那。リオンが《ギガンディダノス》を場に出した瞬間、黒江に重圧が襲った。

 

(……何だ!?体がすごく、重い!?いや、それよりも──)

 

「《ギガンディダノス》のフシギバースは14。コスト9の《ホーリー》をマナに置いたら、マナコストは5マナ必要だけど、《ガイアッシュ・カイザー》の効果で、コスト10以上のクリーチャーの召喚コストを4下げられる。つまり、《ギガンディダノス》は2マナで召喚できる!」

「ッ!?」

 

 黒江が《ギガンディダノス》のテキストを確認したことに気づいていたのか、リオンは《ガイアッシュ・カイザー》の効果を使って、《ギガンディダノス》を2マナで召喚したことを説明し、それを聞いて黒江は驚く。

 

「《ギガンディダノス》は出た時に、相手の手札をすべてマナに置くけど、花宮さんの《オービーメイカー》の効果で、《ギガンディダノス》の出た時効果は使えない……けど!だからって、何もできないわけじゃないんだよね!もう一度、フシギバース、発動!現れなさい!2体目の《ギガンディダノス》!」

「な!?」

 

 リオンの言葉に黒江は驚く。

 そして、リオンはもう1体の《ホーリー》をマナに置き、2体目の《ギガンディダノス》を場に出した。

 それを見た黒江は絶望し、自身の身体に、さらに重圧が重くのしかかったことを感じた。

 

(まただ!しかも、さっきより、重い……!?)

 

 1体目の《ギガンディダノス》が出た時と同様に、2体目が出た瞬間、黒江の身体はさらに重くなり、その重圧に耐えきれず、膝をついてしまった。

 

「……どうやら、体は限界のようだな」

「っ、どういう意味だ?」

 

 その様子を見て、レオンは小さく、そう言い、それを聞いた黒江は疑問を感じ、レオンに問いかける。

 

「その《ギガンディダノス》はただのカードではない。対戦相手を重圧で押し潰す力がある。故に、まともにデュエマができない状態にするのだ」

「ハッ、なんや、それ……!」

 

 重圧の原因を知り、黒江は無理矢理、体を起こし、立ち上がった。

 それを見て、レオンは驚く。

 

「ほぉ?《ギガンディダノス》が2体いる状態で、立ち上がるとは、中々やるな……」

「黒江……」

 

 重圧による圧力で、立っているのがやっとの黒江の姿に、結衣は心配する。

 

「悪いけど、最後まで付き合ってもらうよ……リオンちゃん」

「……わかりました。ワタシはこれでターンエンドです。ですが、《ギガンディダノス》が場にいる限り、《ギガンディダノス》よりパワーの小さいクリーチャーはワタシに攻撃できません!」

「……マジかよ」

 

 そう言って、黒江はカードを引くも、打開策を引けず、そのままリオンにターンを渡した。

 

「ワタシのターン……《ギガンディダノス》で、ワールド・ブレイクッ!」

 

 そして、リオンは容赦なく、《ギガンディダノス》で黒江のシールドをすべてブレイクした。

 ブレイクされたシールドの中を確認するも、シールド・トリガーが1枚もなかった。

 

「……トリガーはない」

 

「そうですか。それでは、2体目の《ギガンディダノス》で、ダイレクトアタックッ!」

 

 

 



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ACE58:対戦を終えて。そして、意外な人物との再会。

 

 

 

「──話にならんな」

 

 黒江とリオンの対戦を終えると、レオンは真っ先にそう言い出した。

 それを聞いて、結衣は面食らい、顔を下に向いたキャルはさらに落ち込み、黒江はそれを聞いて、ブチギレた。

 

「んだと?ウチらが実力不足なのは仕方がないけど、もう少し言い方ってものがあるだろ?」

「そんなものは知らん!第一に、お前達、その程度の実力でよくデュエマ甲子園に参加しようと思ったな?」

 

 睨み合う二人。

 しかし、レオンはすぐさま、黒江から視線を外し、結衣に視線を向けた。

 

「特に赤羽結衣。貴様、目が曇ったか?」

「え?」

「聞こえなかったのか?貴様の目は曇ったのか?貴様には人を見る目がないのか?そう聞いているのだ!答えろ!」

「……」

 

 レオンの叫びに、結衣は黙り込む。

 その様子を見て、リオンはこう思った。

 

「……結衣先輩。ショウ兄となんかあった?」

「ッ!?」

「「え?」」

 

 その言葉に結衣は動揺した。それと同時に黒江とキャルは揃って、驚きの声を上げた。

 どうやら、図星のようだ、レオンはそう思った。

 そして、黒江とキャルはこのレオンとリオンが勝の兄と妹と知り、苗字が違うことに、疑問を抱いた。

 

「やはりか……」

「お義兄ちゃんも気づいてたんだ」

「制服を見ればわかる。何より、アイツは今、ACE学園に通っている。対してこの女は問題のある天災(ディザスター)学園に通っている。お前ら、2年前に何があった?」

「……」

 

 その問いかけに、結衣は答えず、無言で入り口の前まで移動し、足を止めた。

 

「……悪いけど、私からは何も言わないわ」

 

 そう言って、結衣は部屋を出た。それを見た黒江は慌てて、自分と結衣の鞄を持って、「結衣、ちょっと待てよ!」と言って、結衣の後を追いかけた。

 それを見たレオンは頭を掻いた。

 

「……全く、答えてくれないから君に聞いたんだがな」

「まぁ、今のはタイミングが悪いよ。お義兄ちゃん……」

「わかってる。だが、兄ってのは、いくつになっても、弟や義妹(いもうと)が心配なんだよ……」

「そんなんだから、彼女ができないんだよ」

「……お前もいい加減、ブラコンを卒業しろ」

「……あのさ」

 

 まだこの部屋に残っていたキャルは二人の話の間に入って、声をかけた。

 

「……アンタ、勝の兄なの?」

「?あぁ、そうだが……」

 

 それを聞いて、キャルはあることを問いかける。

 

 それは──

 

「──2年前の結衣と勝の関係、教えてくれる?」

 

 ──中学時代の勝と結衣の関係であった。

 

 

 

「はぁ、全く、いきなり二人の関係を知りたいとか、頭がおかしいだろ、あのJK……」

「その割には、ちゃっかり教えてあげてるよね?お義兄ちゃん」

 

 その日の夜。お店の中で、レオンはもうお店には居ない、キャルについて愚痴を漏らしていた。しかも、営業中にも関わらず。

 因みに、リオンはレオンの手伝いでお店に残っている。

 

「仕方がないだろ?まさかあのJKが勝が前通っていた山猫学園の生徒だったからな?オマケに、勝が気にかけていたし……教えない訳にもいかないだろ?」

「はいはい。ブラコン乙ー」

 

 そう言って、リオンはレオンから離れ、客席の上にある皿やコップを取りに行った。

 

 ──カランカラン。

 

 と、音が鳴り、扉が開き、一人の客が入ってきた。

 その客に「いらっしゃいませー」と、言った後、レオンはその場に固まった。

 それを見たリオンは「どうしたの?」と、問いかけると、レオンは入ってきた客に指を指した。

 それを見て、リオンはその客に振り向いた。

 

「ッ!?貴方は……!?」

 

 その客を見て、リオンは驚きの声を上げた。

 その客はどこか少年のような顔立ちを残しつつ、大人のようで、青年のような体格だった。

 しかも、イケメン。服装は洋服だが、顔の頬にアメリカのマークの着いたシールが貼られており、髪は金髪に染まっていた。

 その姿に、レオンとリオンは見覚えがあった。

 

 何故なら、その人物は──

 

「久しぶりだな、レオン。リオンちゃんも、少し見ないうちに色々と成長したな」

光太(こうた)!?お前が何故、ここに!?」

 

 ──赤羽結衣の兄、『赤羽光太』だったからだ。

 

 

 

 その頃、赤羽結衣は自室で、デッキを調整していた。

 と言っても、彼女は普段、5色コントロールしか使っておらず、調整と言うより、カードを並べていただけだった。

 オマケに、結衣自身はスマホの画面に目を向けている始末。

 完全に、カードを散らかしたまま、スマホに集中している状態だった。

 

「……ん?」

 

 ふっと、結衣は公式サイトから新弾のカードの情報が流れているのに気づき、それに目を向けた。

 すると、結衣はその新弾のカードに目を疑った。

 

「え?これ、《アクア・ハルカス》?しかも、2マナ?多色の《グレンニャー》が単色になってる?こっちは《エナジー・ライト》に墓地リセがついてる?ナニコレ?」

 

 と、一部のカードを見て、結衣は頭を抱えた。

 それと同時に、新弾のカードが出るのが楽しみになっていた。

 

「……あ、そうだ」

 

 そこまで考えた後、結衣は机の上のデッキを片付け、引き出しを開けて、黒い紙箱、ストレージボックスを取り出した。

 

「確か、この中にあのカードが……あ、あった!」

 

 そう言って、結衣は《Drache(ドラッヘ) der'Zen(ダーゼン)》を4枚取り出し、机の上に置いた。

 その後、結衣は種族にマジックをもったカードを取り出していった。

 その中には昔、結衣のお気に入りのカードの1枚、《プラチナ・ワルスラS(エス)》もあった。

 

「《シャッフ》や《アダムスキー》はわかってたけど、《ワルスラ》がマジック・コマンドを持ってたの意外だったなー。あ、昔、《アダムスキー》や《ガチダイオー》、《ギャブル》の侵略元に使ってたわ」

 

 ハハハ、と、一人小さく笑い、結衣は種族にマジックを持ったカードを並べて、考えた。

 

(まぁ、こんなのを使うより、普通に5cザーディクリカやループデッキを使った方が良いんだけど……)

 

 ふっと、結衣は勝との2度目の対戦を思い出した。

 そして、その後にレオンとキャル、リオンと黒江、今日の対戦を思い出し、レオンの言葉を思い出した。

 

「私の目が曇ってる?人を見る目がない?馬鹿にしないでよ!私の目は曇ってもなければ、人を見る目はあるわよ!」

 

 そう声を出した後、結衣は《Drache der'Zen》を1枚、手に取った。

 

「──ッ!?」

 

 その時、結衣の目が青く、水色の瞳に変化し、左目に『氷』の文字を浮かばせ、《Drache der'Zen》が共鳴するかのように光り輝き、結衣の右目に“何か”が浮かび上がった。

 

『──汝は魔法を信じるか?』

 

 結衣の脳裏に、その言葉が響き、結衣は迷わず、「信じる」と、返事を返した。

 すると、右目の“何か"が杖のようなマークに変化し、《Drache der'Zen》の輝きが収まった。

 それを見て、結衣は再度、マジックを持ったカード達を覗いた。

 

「……そっか、そういうことね。うん、わかったよ。君達を使ってあげる」

 

 そう言って、結衣は《Drache der'Zen》を軸にした新しいデッキを組み始めた。

 

 

 



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ACE59:闇を越えろ!暴走龍&超神星!

 

 

 

 ──あれから2週間が経過した。

 結衣達は喫茶・クロ咲店で、レオンとリオンを相手にデュエマ甲子園に向けて、特訓していた。

 その特訓は地獄のようなものだった。

 退化ギミックを使って、3ターン目に《ゲンムエンペラー》を出されるわ、盾殴ったら、《ホーリー》と《ガイアッシュ・カイザー》をセットで出され、返しのターンには、《ギガンディダノス》が出るわ、もう地獄絵図に等しかった。

 そして、今日も特訓の日に結衣達は来るが、生憎、今日は新弾発売日。

 流石に、特訓よりも新弾を買いに行くだろうと、レオンはたかを括っていた。

 

 ──しかし、三人は今日も、喫茶・クロ咲店に来ていた。しかも、お店の前に。

 

「……二人とも、今日は何が何でも勝つわよ!」

「わかってるよ、結衣」

「やられっぱなしの私達じゃない所、見せてあげるわ!」

 

 そう気合を入れて、三人は店の中に入った。

 店に入ると、レオンは意外そうな顔をして驚いていた。

 

「……まさか、今日も来るとはな。しかも、こんな朝早くに」

「時間が押してるのは百も承知よ。けど、新弾を買う前に、貴方達に勝ってから、新弾を買いたいの」

「なるほどな。リオンよ、対戦の準備に入るぞ」

「はいはい。面倒だけど、サクッと終わらせるよ!」

 

 そう言って、リオンは学校の鞄を置いて、奥の部屋に入った。

 それを見たレオンは思い出したかのように、結衣にこう言った。

 

「そう言えば、貴様に客が来ているぞ」

「客?私に?」

「ああ。しかも、特訓の相手をしてくれると申し出ている。どうする?」

「……わかった。話し相手のついでに、新しいデッキの練習台になってもらうわ」

 

 少し考えた後、結衣はそれを承諾し、それを聞いてレオンは「そうか、それなら良かった」と言って、先に、奥の部屋に入ろうと足を運んだが、出入り口の前に足を停止した。

 

「……ああ、そうだ。今回は特別仕様で、一人ずつ入ってこい。30秒ぐらい待ってから部屋に入れよ」

 

 それだけ言って、レオンは奥の部屋に入った。それを聞いて、結衣達は一人ずつ、順番に奥の部屋に入った。

 

 

 

「まさか、最後の最後まで、貴様が相手か……」

「……」

 

 奥の部屋に入ると、キャルの前にレオンが立ち塞がるかのように仁王立ちしていた。

 

「……さて、何から話すか」

「前振りはいらないわ。私はもう迷わない。結衣のためにも、(アイツ)のためにも、私は……アンタに勝つ!」

 

 その言葉に、レオンはニヤリと、薄ら笑みを浮かべ、叫んだ。

 

「良かろう!ならば、貴様の強き覚悟、この俺に見せてみよッ!」

「行くわよ!」

 

「「デュエマ・スタートッ!!」」

 

 

 

 ──先行、キャルの3ターン目。

 

「呪文、《邪侵入(ジャスト・イン・ユー)》!山札の上から4枚を墓地に置くわ!その後、《バウワウジャ》を復活させて、さらに4枚を墓地に置くわ!ターンエンド!」

 

 キャルは2ターン目に出した《ベル=ゲルエール》に続いて、《邪侵入》と《バウワウジャ》で、一気に墓地を肥やしていた。

 

 対してレオンは前と同じように、《ゲンムエンペラー》を軸にした退化デッキだが、今回は自然を加えたアナカラーで、2ターン目に《地龍神(ちりゅうしん)魔陣(まじん)》を唱え、マナを1枚増やした。

 

 そして、レオンの3ターン目が今、始まるところだ。

 

「俺のターン。マナチャージして、《デドダム》を召喚。マナと墓地と手札を増やし、余ったマナで、《エマージェンシー・タイフーン》を唱える。山札からカードを2枚引いて、手札を1枚、墓地に置く。墓地に置くのは──当然、《ゲンムエンペラー》だ」

「ッ!?」

 

 突然、墓地に置かれた《ゲンムエンペラー》に、キャルは驚き、手が一瞬、震えた。

 

「そう怯えるな。まだデュエマは始まったばかりだ。俺はこれでターンエンドだ」

「……私のターン。マナチャージして、《フォーク=フォック》を召喚。山札の上から3枚を墓地に置いて、アビスを持つ《ジャシン帝》を手札に加えるわ。ターンエンド」

「先程から墓地を増やしているな、貴様。何を狙っているかは知らんが、ここで封じさせてもらうぞ!」

 

(来る……!)

 

 身構えるキャル。対してレオンは勢いよく、カードを引き、マナをチャージして、闇のカードを1枚、タップした。

 

「墓地進化!《デスマーチ》を召喚!そして呪文、《落城の計》!《デスマーチ》を剥がし、我が切り札(ACE)、《ゲンムエンペラー》を場に出す!これで貴様は終わりだ!ターンエンド!」

 

 レオンの《ゲンムエンペラー》が現れたことにより、キャルはコスト5以下のクリーチャーと呪文が使えなくなった。

 

 初めてレオンと戦った時と同じ状況である。

 

(あの時と同じ状況だけど、大丈夫!結衣のアドバイスで、墓地にクリーチャーを10枚貯めた!)

 

 しかし、キャルには秘策があった。《ゲンムエンペラー》がいる状況で、足掻ける秘策が──

 

 

 

 ──時は1週間前に遡る。

 

『まず、《ゲンムエンペラー》が出た段階で、アビスデッキは軒並み機能不全になるから、アビスラッシュで速攻したいけど……』

『わかってる。けど、私は《ゲンムエンペラー》がいる状態で勝ちたい!じゃないと、あの男の闇の切り札()を越えないと、私は先へ進めない気がする!』

『……わかった。それならこれとこれ、後、これを試しに入れてみて。アビスじゃないけど、少なくとも、《ゲンムエンペラー》がいる状態で足掻けるから、入れるに越したことはないと思う』

『!?結衣!ありがとう!』

 

 

 

「──私のターン!」

 

 勢いよくカードを引き、キャルは火文明のカードをマナに置いた。

 それを見たレオンは驚く。

 

「火文明のカード?まさか!?」

「そのまさかよ!」

 

 マナに置いた火文明のカードを含めた2枚のカードをタップした。

 

「あの時のリベンジ、果たせてもらうわよ!墓地にあるクリーチャーの数だけ、このクリーチャーのコストを下げられる!10コスト軽減!《暴走龍(ライオット) 5000GT(ジーティー)》を2マナで召喚!」

 

 現れたのは無法の暴走龍、《暴走龍 5000GT》。火文明のアウトレイジであり、キャルの秘策の一つだ。

 

「《5000GT》が場に出た時、パワー5000以下のクリーチャーをすべて破壊!」

 

 キャルの《ベル=ゲルエール》と《フォーク=フォック》、レオンの《デドダム》が《5000GT》の効果により破壊され、墓地に置かれた。

 

「さらに墓地のクリーチャー11枚を進化元にして、11コスト軽減!超無限墓地進化!《超神星(ちょうしんせい)DOOM(ドゥーム)・ドラゲリオン》を1マナで召喚!」

 

 今度は闇のフェニックスにして、デーモン・コマンドとドラゴン・ゾンビの3つを持つ闇の進化クリーチャー、《超神星DOOM・ドラゲリオン》が現れた。

 

「残ったマナで、《ジャブラッド》を召喚!そして、《DOOM・ドラゲリオン》で攻撃する時、メテオバーン、発動ッ!」

 

 進化クリーチャーの《DOOM・ドラゲリオン》の下のカードを1枚選び、墓地に置いた。

 そして、キャルは《DOOM・ドラゲリオン》の真の能力、メテオバーン能力を発動させる。

 

「アンタの《ゲンムエンペラー》のパワーを−9000!その後、墓地から《ラゼル=ズバイラル》を復活させる!」

「《ラゼル=ズバイラル》!?このタイミングでか!?」

 

 ここにして、アビスロイヤルの《ラゼル=ズバイラル》を場に出すキャル。

 そして、レオンは気づく。

 ここまで、キャルが出してきたクリーチャーはすべて《ゲンムエンペラー》の効果の範囲外であること。

 

(まさか、ここまで《ゲンムエンペラー》の弱点をついてくるとはな……)

 

「《ラゼル=ズバイラル》の効果!シールドを2枚ブレイクされるか、手札をすべて捨てるか、選びなさい!」

「《バイケン》はないが、シールドを減らすわけにはいかん!手札をすべて捨てる!」

 

 手札をすべて捨てることを選んだレオンはキャルの《DOOM・ドラゲリオン》の攻撃に備える。

 

「《DOOM・ドラゲリオン》で攻撃!T・ブレイク!」

「っ!?」

 

 ブレイクされる3枚のシールド。その中にはG(ガード)・ストライクの《地龍神の魔陣》とシールド・トリガーの《エマージェンシー・タイフーン》があった。

 しかし、《ゲンムエンペラー》の効果はレオンにも及ぶため、それらの効果は打ち消しされている。

 

「《5000GT》で、W・ブレイク!」

「っ、トリガーは……ないか」

 

 残り2枚のシールドの中にも、G・ストライクがあったが、《ゲンムエンペラー》の効果により、レオンは何もできない。

 

「──これで終わり!《バウワウジャ》で、ダイレクトアタック!」

 

 

 



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ACE60:(パワー)を越えろ!天災(ディザスター)の戦慄!

 

 

 

 同じ頃、黒江はリオンと相対していた。

 

 お互いに、お得意のマナ加速でマナを伸ばしつつ、黒江は手札を、リオンは墓地を増やしていた。

 

 ──そして、先に仕掛けたのはリオンだった。

 

「フシギバース!《オブザ08号》をマナに置いて、《ギガンディダノス》を墓地から召喚っ!場に出た時の効果で、黒江さんの手札をすべてマナに置いてもらいます!」

「ッ、クソ!折角貯めた手札が……!」

 

 リオンの《ギガンディダノス》の効果により、黒江は大量の手札をマナに置かれた。

 幸い、タマシード状態の《ホールインワン・ヘラクレス》がいるため、マナにいるクリーチャーを場に出せる。

 しかし、いかに《ホールインワン・ヘラクレス》で、クリーチャーをマナに出せるといっても、パワー50000もある《ギガンディダノス》を越えるクリーチャーなど、早々にいない。

 

(まぁ、いつものウチなら早々に諦めてたけど、今回ばかりは諦めるわけにはいかないんでね!)

 

 

 

 ──1週間前の夜。

 

『正直に言うと、どんなにパワーが高いジャイアントでも、《ギガンディダノス》のパワーの前では歯が立たない。だから、パワー以外の方法で、対処するしかない』

『《ナチュラル・トラップ》じゃ、焼石に水だろ?《罠の超人(トラップ・ジャイアント)》でも同じだし、どうすれば……』

『そこでよ。パワーで勝てない相手には頭を使うのよ。わかりやすく言うと、魔法ね』

『?いや、そうだけど、それじゃあ何も解決しないんじゃ……あ』

『どうやら、気づいたみたいね。まぁ、そう言うことだから、後は黒江次第よ』

『……はぁー。ウチ、アレ、あんま好きじゃないんだよな』

『そこは頑張って』

『へいへーい』

 

 

 

「──ウチのターン!ドロー!」

 

 勢いよくカードを引く黒江だが、手札1枚で、この状況を逆転できるわけでもなく、引いたカードをマナに置いた。

 

「《ホールインワン・ヘラクレス》の効果で、マナからクリーチャーを1体、場に出せる!」

 

 しかし、黒江はターンを終えず、《ホールインワン・ヘラクレス》の効果で、マナからクリーチャーを場に出す。

 

「何を出しても、《ギガンディダノス》の前じゃ、すべてが無意味だよ!」

「確かに、普通にクリーチャーを召喚してもダメだ。だから……」

 

 静かに告げる黒江の言葉に、リオンは今までにない、重圧(プレッシャー)を感じた。

 

(何?この感覚?)

 

 訳の分からないプレッシャーを感じながら、リオンは身構える。

 

「──さぁ、すべてを無に帰ろうぜ、《「修羅(しゅら)」の(いただき) VAN(ヴァン)・ベートーベン》を召喚!」

 

 それは無に帰す者。文明を持たない第6の文明、ゼロ文明のキング・コマンド・ドラゴン、《「修羅」の頂 VAN・ベートーベン》だった。

 

(《VAN・ベートーベン》!?ジャイアントデッキになんであのカードが入ってるの!?)

 

 まさかの《VAN・ベートーベン》にリオンは面食らい、動揺を隠せず、驚いてしまった。

 

「召喚によって、場に出た《VAN・ベートーベン》の効果を発動!相手のクリーチャーをすべて、手札に戻す!」

「っ、しまった!《ギガンディダノス》が……!」

 

 12マナも必要な《ギガンディダノス》を再召喚するには時間がかかる。オマケに、ドラゴンとコマンドを封じる《VAN・ベートーベン》がいるため、その難易度は格段に上がる。

 

「ウチはこれで、ターンエンド」

「っ、ワタシのターン!」

 

 勢いよくカードを引くも、手札が高コストのクリーチャー且つ、《VAN・ベートーベン》がいるせいで、迂闊(ドラゴン)にドラゴンを場に出せない。

 

「……ターンエンド」

「ウチのターン……さぁて、反撃させてもらうぜ!」

 

 そう言って、黒江は5枚のマナをタップした。

 

「《轟廻(ごうかい)!グランドスラム・スコーピオン》を召喚!マナゾーンのカードを4枚アンタップ!さらに4マナで、《ホールインワン・ヘラクレス》をマナから場に出して、3体目の《ホールインワン・ヘラクレス》を場に出す!そして──」

 

 3体目の《ホールインワン・ヘラクレス》の効果で、黒江はマナから切り札を場に出す。

 

「──G・ゼロ!2体目の《ホールインワン・ヘラクレス》を《ドルゲユキムラ》に進化!場に出た時に、マナからもう一枚、《ドルゲユキムラ》を手札に加えて、3体目の《ホールインワン・ヘラクレス》の上に進化!」

 

 これで、黒江の攻撃可能なクリーチャーは4体。しかも、いずれも、T・ブレイカーを持っている。

 

(ああ、これは終わった……)

 

 その盤面に、リオンは自分が負けることを悟った。

 元々、守りがあまり堅くないデッキなため、数による物量と質量には滅法(めっぽう)弱い。

 

「《ドルゲユキムラ》2体で、シールドをすべてブレイク!」

「トリガーは……まぁ、ないよね……」

 

 トリガーがないことを確認した黒江は《VAN・ベートーベン》に手を置く。

 

「──《「修羅」の頂 VAN・ベートーベン》で、ダイレクトアタック!」

 

 

 

 キャルと黒江が対戦を終えてる中、最後に残った結衣は今、苦戦していた。

 

 なぜなら──

 

「さぁ、結衣、この状況をどうやって巻き返すんだ?」

「……」

 

 ──相手は結衣の兄、赤羽光太だからだ。

 

 

 



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ACE61:光を越えろ!奏でる魔法vs真実の光!

 

 

 

 ──遡ること、数分前。

 

 最後に部屋に入った結衣はレオンから「お前の客が来ている」と言われて、それが誰なのか、わからなかった。

 

 しかし、その部屋で待っていたのは結衣の兄、光太だった。

 

「お兄ちゃん!?何で日本(ここ)にいるの!?」

 

 突如、アメリカから日本に帰ってきた兄、光太を見て、結衣は動揺のあまり、驚きの声を上げた。

 

「何でって、オマエや勝が心配で、日本に帰ってきたんだ。そしたら、レオンに結衣の相手をいきなり頼まれてよ……」

 

 結衣の問い掛けに光太はそう答え、それを聞いた結衣は普段通りの冷静さを取り戻し、ゆっくりと、静かに口を開いた。

 

「……兄さんには関係ないよ」

「……そうか」

 

(レオンの言う通りに、勝の話を出すと、不機嫌になるな。何でだ?)

 

 久しぶりに会うなり、辛辣な表情を浮かべる結衣の姿を見て、光太はレオンと事前に話していたことを思い出し、彼の予想が当たったことに、心底ガッカリし、深い溜め息を吐いた。

 

「……結衣。オレはオマエのアニキだ。そして、勝はオレの後輩だ。二人が仲良くしてくれないと、アニキとしては心配なんだよ、オレは」

「それは兄さんの考えでしょ?私と勝は、もうその段階を越えたの。今更、兄っぽいことされても迷惑よ!」

 

 荒げる声を上げる結衣のごもっともな意見に、光太はほんの少し凹むも、すぐに気持ちを切り替え、デッキを取り出した。

 

「わかった。それなら、コイツで決着をつけようか……」

「望むところよ!」

 

 その言葉を合図に、二人は揃って、叫び声を上げた。

 

「「デュエマ・スタート!」」

 

 

 

 ──そんなわけで現在に至る。

 

 そして、光太の5ターン目。

 

 光太は《スターゲイズ・ゲート》で、《闘門(とうもん)精霊(せいれい)ウェルキウス》を場に出し、その《ウェルキウス》の効果で、光太のお気に入りの(マイフェイバリット)カード、《封印(ふういん)精霊龍(せいれいりゅう) ヴァルハラ・パラディン》を場に出した。

 場に出た《ヴァルハラ・パラディン》の効果でシールドを1枚増やし、結衣の《アシスター・Mogi(モギ)林檎(リンゴ)》をタップさせて、ターンを終えた。

 幸い、結衣の場には《コーボー・マジカルショッカー》がいるため、まだ巻き返せる。

 

「……私のターン」

 

 渋々と言った感じに結衣はカードを引き、少し考えた後に、手札を1枚、マナに置き、4枚のマナを倒した。

 

「呪文、《水筒(すいとう)(じゅつ)》!呪文の効果で、GR(ガチャレンジ)召喚を2回行う!」

「GR召喚!?そういえば、GRゾーンにカードが置かれていたな……」

 

 その言葉に光太は驚くも、結衣の墓地の横に置かれている12枚の白いカードの束、“(ちょう)GR(ガチャレンジ)”が置かれていることに気づく。

 

 ──超GRとは、裏向きが白く、山札とは別に、12枚のカードが必要とする束であり、同じカードは2枚までで、それらはすべて、GR(ガチャレンジ)クリーチャーという特殊なクリーチャー・タイプで構成されている。

 そして、そのGRクリーチャーを場に出すには、先程の結衣が使用した《水筒の術》のように、『GR召喚』と書かれたカードを使い、超GRの一番上からGRクリーチャーを召喚するのだ。

 この時、超GRのカードはゲーム開始時に、山札と一緒に準備し、山札と一緒にシャッフルするのだ。

 またに、ガチャのようなチャレンジ。ランダム性が非常に高く、何が出るかはわからないのだ。

 

「超GRで捲られたのは……《パス・オクタン》とC.A.P. (キャプテン)アアルカイト》!この2体を召喚して、《コーボー・マジカルショッカー》の効果を起動!各ターン、はじめて自分が呪文を唱えた時、手札を1枚捨てて、マジック・メクレイド5を発動!」

 

 今度は山札の上から3枚を見る。

 その中には、このデッキの切り札、《Drache(ドラッヘ) der'Zen(ダーゼン)》があった。

 

「魔法を極めるは音楽の水龍(すいりゅう)!さぁ、(かな)でましょう!《Drache der'Zen》!」

 

 ──これが結衣の新たな切り札(ACE)、《Drache der'Zen》。

 

 そして、結衣の右目がどこか魔法使いのような杖が浮かび上がった。

 

「ッ!?」

 

 それを見た光太は静かに驚き、脳裏にこう思った。

 

(まさか、結衣が魔法使いに目覚めるとはな……まぁ、元々、水やら氷やら扱ってたし、今更驚くことでもないか……)

 

 (なか)ば呆れ気味に、光太はそう思い、デュエマに集中した。

 

「《Drache der'Zen》が場に出た時、山札からカードを3枚引いて、2枚を墓地に置くわ!私はこれで、ターンエンド!」

 

 たった1ターンで、クリーチャーを3体増やした結衣は攻撃せず、ターンを終えた。

 オマケに、タマシード・クリーチャーの条件である同じ文明の水のクリーチャーか、水のタマシードを4枚以上、揃えたことで、《Drache der'Zen》はクリーチャーと化した。

 

「やるな、結衣!こっちもウカウカしていられなくなってきたぜ!」

「余裕でいられるのも今のうちよ、兄さん」

「ハハ、全くだ……オレのターン!」

 

 勢いよくカードを引き、その引いたカードを見て、光太はニヤリ、と、不敵な笑みを浮かべた。

 

「悪いな、結衣。こっちも全力でいかせてもらうぜ!」

 

 そう言って、手札を1枚、マナに置き、6枚のマナをすべてタップした。

 

「──開け、天国の門!呪文、《ヘブンズ・ゲート》!手札から進化ではない、光のブロッカーを2体、場に出すぜ!」

 

 刹那。光太の瞳が黄色に変化し、右目に『天』、左目に『光』の二文字が浮かび出した。

 

 それを見た結衣は咄嗟に、両目を水色に変化し、左目に『氷』の文字を浮かばせた。

 

 そして、結衣の後ろに《Drache der'Zen》が実体化した。

 後に続くかのように、光太の後ろにも、《ヴァルハラ・パラディン》が実体化し、その後ろには先程、光太が唱えた《ヘブンズ・ゲート》の門が現れた。

 

「出番だせ、オマエら!《歴戦(れきせん)の精霊龍 カイザルバーラ》と《電磁魔天(でんじまてん)イエス・ザナドゥ》を場に出す!」

 

 現れたの《ヴァルハラ・パラディン》と同じ、種族にエンジェル・コマンド・ドラゴンを持つ《歴戦の精霊龍 カイザルバーラ》と、天使と悪魔、そして、科学の力を持つ《電磁魔天イエス・ザナドゥ》の2体だった。

 そのうち、《イエス・ザナドゥ》だけが実体化し、《ヴァルハラ・パラディン》の横に並び立つ。

 

「《イエス・ザナドゥ》が出た時、墓地からシールド・トリガー付き呪文をただで唱えられる!こうして唱えた呪文は墓地ではなく、表向きでシールドゾーンに置かれる!」

 

 そう言って、光太は自身の墓地から呪文カードを1枚、手にする。

 

「オレが唱えるのはコイツだ!呪文、《サイバー・ブレイン》!山札からカードを3枚ドロー!その後、《イエス・ザナドゥ》の効果で、表向きでシールドゾーンに置く!」

「ッ、《ヘブンズ・ゲート》じゃなくて、《サイバー・ブレイン》!?まさか……!?」

 

 本来なら、《ヘブンズ・ゲート》を唱え、ブロッカーを並べて、結衣の攻撃を備えるが、あえて、そうせず、手札を増やしたと言うことは、光太はこのターンで決めると言う合図だ。

 

「続いて、《カイザルバーラ》の効果で、カードを引いて、コスト7以下の光のクリーチャーを場に出す!オレが場に出すのは──コイツだ!」

 

 光太の叫びに答えるかのように、『真』という文字が浮かび上がり、そこからクリーチャーが現れた。

 

「──真実をこの手に!《(しん)龍覇(りゅうは) ヘブンズロージア》ッ!!」

 

 

 




次回に続きます。


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ACE62:光を刈り取れ、宇宙による魔法。

 

 

 

「《ヘブンズロージア》!?このタイミングで……!?」

 

 実体化したクリーチャーを見て、結衣は驚く。

 それはかつて、クリーチャー世界(ワールド)を救った英雄、グレンモルトの友にして、宿敵(ライバル)、《真・龍覇 ヘブンズロージア》だった。

 

「《ヘブンズロージア》が出た時、超次元ゾーンから、コスト5以下の光のドラグハートを場に出せる!出すのは当然、コイツだ!」

 

 そう言って、光太は超次元ゾーンから横向きのカード──ドラグハート・フォートレスを手にし、バトルゾーンに置いた。

 

「ドラグハート・フォートレス!《天獄(てんごく)の正義 ヘブンズ・ヘブン》を場に出すぜ!」

 

 それは光のドラグハート・フォートレス、《天獄の正義 ヘブンズ・ヘブン》だった。

 

「さらに、オレの場にエンジェル・コマンドが5体以上いるので、G・ゼロ、発動ッ!光を(しめ)せ、聖霊(せいれい)(おう)!《カイザルバーラ》を《聖霊王(せいれいおう)アルファリオン》に進化ッ!」

 

 それは《聖霊王アルカディアス》が新たな力を手にした姿、《聖霊王アルファリオン》だった。

 そして、ヴァルハラ・パラディンとイエス・ザナドゥの間に、アルファリオンが実体化した。

 今、光太の場には5体のエンジェル・コマンド(とエンジェル・コマンド・ドラゴン)と1枚のドラグハート・フォートレスがあり、そのうち、4体のクリーチャーと1つのドラグハート・フォートレスが実体化している状況である。

 また、今、光太が攻撃できるクリーチャーは進化クリーチャーで、T・ブレイカーを持つ《アルファリオン》と、W・ブレイカーを持つ《ウェルキウス》と《ヴァルハラ・パラディン》の3体。

 つまり、結衣はシールド・トリガーを引かなければ負ける。

 おまけに、《アルファリオン》がいる限り、結衣は呪文が使えず、仮にこのターンを凌いだとしても、《アルファリオン》の効果で結衣のクリーチャーは召喚するのに、コストが5多くなっている。

 

「いくぜ、結衣!《アルファリオン》で、T・ブレイクッ!」

「ッ、トリガーは……ないわ!」

 

 アルファリオンの斬撃に結衣は一瞬、怯むも、すぐに持ち直し、シールドの中を確認し、トリガーがないことを光太に知らせる。

 

「そうか?それなら、《ヴァルハラ・パラディン》で、W・ブレイクッ!」

 

 今度はヴァルハラ・パラディンの槍が結衣の残り2枚のシールドを突き刺し、砕いた。

 シールド・トリガーがなければ、《ウェルキウス》のダイレクトアタックで光太の勝利になる。

 

 ──しかし、そうはならなかった。何故なら、ブレイクされたシールドの中に、シールド・トリガーがあったからだ。

 

「シールド・トリガー、発動ッ!《マジック・A(アコギ)・セミプーロ》を召喚ッ!」

「ッ、ブロッカーか!」

 

(しかも、《セミプーロ》か。厄介なヤツが出たな……!)

 

 破壊された時、《セミプーロ》は相手のクリーチャーを1体、手札に戻せる。

 

 ここで下手に《ウェルキウス》で攻撃すれば、《アルファリオン》が手札に戻り、次の結衣のターン、結衣は呪文が使え、《コーボー・マジカルショッカー》のマジック・メクレイド5が発動する。

 また、《Drache der'Zen》の攻撃時に、墓地から再び、《水筒の術》で、GR召喚を行い、水のGRクリーチャーが4体以上になると、《アアルカイト》はW・ブレイカーになる。

 

 逆に攻撃しなければ、結衣は先に《セミプーロ》で、光太の《アルファリオン》か、《ヴァルハラ・パラディン》に攻撃し、自爆させて、《アルファリオン》を手札に戻すことができる。

 

 そこまで考えた後、光太は自身の手札を見る。破壊以外で、《セミプーロ》を退かすか、あるいは攻撃事態を封じるか、を。光太は必死に考えた。

 

(攻撃事態を封じる……?)

 

 脳裏を必死に働かせる中、光太はあることに気づき、再び考えた。

 

 ──そして、ある結論に至った。

 

(あるじゃねえか!攻撃を封じる手が……!)

 

 脳裏でそう(ひらめ)いた後に、光太は《ヘブンズ・ヘブン》の効果を宣言する。

 

「──ターン終了時、《ヘブンズ・ヘブン》の効果で、手札から光のブロッカーを1体、場に出せる!オレは2体目の《イエス・ザナドゥ》を場に出し、墓地から《ヘブンズ・ゲート》を唱える!《星門(せいもん)精霊(せいれい)アケルナル》を2体、場に出すぜ!そして、《イエス・ザナドゥ》で唱えた《ヘブンズ・ゲート》をシールドゾーンに置く!」

 

 何をするかと思えば、ブロッカーが3体に増え、シールドが8枚に増えただけだった。

 そう思った時、結衣は、はっとなって気づく。光太のお気に入り(マイフェイバリット)にして、切り札(ACE)、《ヴァルハラ・パラディン》の効果に。

 

「──この時、《ヴァルハラ・パラディン》の効果を発動ッ!自分のシールドゾーンにカードが置かれた時、相手のクリーチャーを1体選んで“フリーズ”させる!《セミプーロ》をフリーズだッ!」

「ッ、そんな……!?」

 

 ──フリーズとは、タップされたクリーチャーは次のターン、アンタップできない、という効果の略称である。

 

 これにより、結衣の《セミプーロ》は、次のターン、アンタップできなくなった。

 

 これでは、光太の《アルファリオン》を退かすことができず、呪文も唱えられず、クリーチャーもコストが5、重いままである。

 

 完全に解答札を潰された、と、そう思った。

 

 

 

 ──相手が光太の妹、赤羽結衣でなければ、の話だが。

 

「──まさか、ここまで上手くいくなんて、思わなかったわ」

「ッ!?」

 

 その言葉に、光太は寒気を感じた。

 そして、光太は知る。彼女が、否、結衣が今から何をするのか、を。

 

 そんな光太を他所に、結衣は気にせず、カードを引き、4枚のマナをタップさせた。

 

「タマシード!《コーライルの海幻(ビジョン)》!《アルファリオン》を山札の一番下に!」

「タマシード!?」

 

 まさかの水のタマシード、《コーライルの海幻》が使われたことに、光太は驚き、面食らった。

 今までの結衣なら考えられないことである。

 今までの結衣は呪文カードで、厄介なクリーチャーをどうにかしてきたが、《アルファリオン》の存在により、呪文を封じた今、どうにもできない筈が、タマシードの存在によって、それができてしまった。

 

 実体が保てなくなったアルファリオンは粒子となって消え、呆気なく、本体であるカードは山札の下に置かれた。

 

「これで呪文が使える!《Drache der'Zen》で攻撃──する時に、《Drache der'Zen》の攻撃時(アタックトリガー)とS級侵略[宇宙(スペース)]を発動ッ!」

「ッ、S級侵略!?しかも、[宇宙]ってことは……!?」

 

 その言葉に光太は絶望する。

 そして、結衣は《Drache der'Zen》で墓地に置いた“自然の呪文のカード”を手にし、宣言する。

 

「呪文、《ビックリ・イリュージョン》!種族はマジック・コマンド・ドラゴン!これで私のクリーチャーはすべて、“水のコマンド”を得た!」

「ッ、しまった……!」

 

 結衣のクリーチャーがすべて、マジック・コマンド・ドラゴンであり、水のコマンドを得たことで、結衣は手札から宇宙の侵略者を《Drache der'Zen》に重ねた。

 

「あらゆる法則をぶち破り、宇宙の力で、相手のすべてを刈り取れ!《Drache der'Zen》を、《S級(エスきゅう)宇宙(スペース) アダムスキー》に侵略進化ッ!」

 

 刹那。結衣の《Drache der'Zen》は《S級宇宙 アダムスキー》に進化し、光太のシールドではなく、山札を4枚、墓地に置いた。

 

「《アダムスキー》はシールドを攻撃するかわりに、相手の山札を攻撃できる!その攻撃枚数はブレイク枚数につき、2枚!」

 

 おまけに、《アダムスキー》はブロッカーにブロックされず、W・ブレイカーを持っているため、確実に光太の山札を4枚、墓地に置けるのだ。

 また、《ビックリ・イリュージョン》の効果で、水のコマンドを得た結衣のクリーチャーは《Drache der'Zen》を除いて、4体いる。

 

 このデュエル中、光太は《エナジー・Re():ライト》と《サイバー・ブレイン》の2回と《ウェルキウス》と《カイザルバーラ》、そして、《ヴァルハラ・パラディン》の効果で、山札が11枚、減られており、デュエル開始の手札5枚とシールド5枚、そして、ターンのはじめのドローの5枚、合計26枚の山札が減られている。

 また、《コーライルの海幻》で、《アルファリオン》と《カイザルバーラ》の2枚が山札に戻り、その後、1枚ドローし、1回目の《アダムスキー》で、4枚減っている。

 よって、光太の残り山札は11枚である。

 

 後、3回。《アダムスキー》の攻撃で、光太の山札は1枚残り、結衣がターンエンドを宣言した後、その1枚を引いて、光太は敗北するのだ。

 

「……結衣。オマエ、いつから、そんなデュエマをするようになったんだ?」

「私がどんなデュエマをしようと私の勝手だよ、兄さん」

 

 そう言って、結衣はマジック・コマンド・ドラゴンを得た水のクリーチャー達で攻撃し、《アダムスキー》に侵略させて、光太の山札を1枚に残し、《イエス・ザナドゥ》で追加した、表向きの《サイバー・ブレイン》をブレイクした。

 

「──ターンエンド。さぁ、兄さん、最後の1枚を引いて……」

「……オレのターン。最後の1枚を引いて、山札が0枚になったから、オレの負けだ」

 

 ──光太の山札切れ(ライブラリアウト)により、結衣は光太に勝利した。

 

 

 




初、《Drache der'Zen》の活躍が《アダムスキー》による侵略元になってしまった……。

おまけに、この作品、初のライブラリアウト……けど、後悔はしていない。


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ACE63:対戦を終えて、兄は妹を信じ、少女は一歩、前に歩き出す。

後日談です。


 

 

 

 それぞれの部屋で対戦を終えた結衣達は一度、部屋から出て、レオン以外のメンバーは適当に椅子に座っていた。

 

「どうやら俺達全員、負けたみたいだな……」

「お義兄ちゃん、そこは結衣先輩達が勝ったことを褒めるべきでは?」

「……それもそうか」

 

 リオンの指摘に、レオンは渋々、自分達に勝利した結衣達を褒めようと声をかけようとするも、先に結衣が口を開いた。

 

「悪いけど、お世辞はいらないわ」

「嫌々で褒められても、嬉しくないっす」

『勝ったのは我らだ。故に、敗者は黙って我らに従え』

「アンタは今回、何もしてないでしょうが!」

「……泣いて良いか?リオン?」

「えっと……ドンマイ」

「ピエン……」

 

 完全に涙目になってしまったレオンを見て、妹のリオンは彼を誠心誠意、全力で宥める。

 

「……なぁ、結衣」

「?何?お兄ちゃん?」

 

 そんな中、先程まで黙っていた光太が突然、口を開き、結衣に声をかける。

 

「……オマエと勝に何があったんだ?」

「……兄さんには関係ない話よ」

「……そうか」

 

 それを聞いて、光太は一度、目を瞑り、少し考えた。

 

(これ以上の自問自答は無意味か……だとしたら、兄貴として、オレができることは……二人を信じるしかないな……)

 

 脳裏でそう結論づけた光太は目を開き、腰から白い小さな箱を取り出し、結衣に見てる。

 

「?兄さん?それは?」

「見上げ物……と、オレに勝った報酬、かな?」

「何で疑問形?まぁ、貰える物は貰っとくけど……」

 

 そう言って、結衣は光太から白い小さな箱を受け取り、中身を見て良いか、光太に問いかける。

 

「……中身を見ても良い?」

「いいぜ」

 

 光太から了承を得た結衣は小さな箱の中身を開けようと、開け口を探し、端っこに開け口があることに気づき、そこから開け、中身を取り出す。

 

「──え?」

 

 取り出した中身を見て、結衣は驚く。

 

 ──それはデュエマのカードだった。

 

 

 

「アレを渡して大丈夫なのか?」

「?何が?」

 

 結衣達が店を出たレオンは結衣に渡したカードについて、光太に問いかけた。

 問いかけられた光太は(とぼ)けるかのように言い、それを見て、レオンは深い溜め息を吐いた。

 因みに、この場にいないリオンは今、学校に行っている。

 本来は休日で学校は休みだが、高校受験に向けているリオンにとってはそんなものは関係ないのだ。

 

「何が?じゃない。あのカードは貴様にとっては天敵(てんてき)だろ?」

「だからだよ。結衣があのカードを使うかどうか、見極めるのに最適だろ?」

「それで自分を首を絞めても俺は知らないぞ」

「何だよ?久しぶりに会って、機嫌悪りぃじゃねぇかよ?」

「当たり前だ!連絡もしないで、いきなり帰ってくるのだ!少しはこっちの身を考えろ!このデュエマバカが!」

「シスコンのオマエにだけは言われたくねぇよ!」

「誰がシスコンだ!俺はただ、義妹(リオン)が心配なだけだ!」

「それをシスコンって言うんだよッ!」

 

 ギャー、ギャーと、言い争っている二人の声が外まで響き、リオンが帰ってくるまで、二人はまだ言い争い、リオンが帰ってきた後、説教されたのは言うまでもない。

 

 

 

 ──その日の夜。

 

 赤羽結衣は自室で、光太から貰ったカードを見て、新しいデッキを組んでいた。

 勿論、新弾で強化されたマジックと、彼女が気に入っている5色コントロールと一緒にデッキを改造し、製作していた。

 

「……全く、兄さんは本当にデュエマバカね」

 

 などと、彼女は小さく、そう言って、手を止めずに動かす。

 

 ──その時、結衣はふっと、思った。

 

 光太が何故、自身にカードを渡したのか、疑問を抱き、兄から渡されたカードをもう一度見る。

 

 ──そのカードの名は《音卿(おんきょう)精霊龍(せいれいりゅう) ラフルル・ラブ》。

 コスト7。光と水の多色カードで、ツインパクトカードである。

 種族はエンジェル・コマンド・ドラゴンとドレミ団と革命軍の3つを持つ。

 効果は3つ。

 一つ目は光、または水のドラゴンに革命チェンジできる。

 二つ目はW・ブレイカーを持っている。

 そして、三つ目は、次の相手のターンの終わりまで、相手の呪文を唱えられなくする能力を持っている。

 下の呪文面は《「未来(みらい)から来くる、だからミラクル」》。

 コストは6で、効果はカードを3枚引き、手札からコスト5以下の呪文をただで唱えられる。

 

 どちらの面も強力且つ、結衣が使っているマジックデッキや5色コントロールと相性が良い。

 そして、結衣の兄、光太の扱うヘブンズ・ゲートデッキ。通称、天門デッキにも相性が良いのだ。

 故に、彼が何故、妹である自分に渡し、彼自身のアイデンティティの首を絞める真似をするのか、結衣にはわからなかった。

 

「……まぁ、なんでもいいわ。高くて手が出せなかったし、1枚買うか、少し悩んでたところだから、ちょうどいいわ」

 

 そう言って、結衣は再び、新しいデッキの製作の手を進めるのだった。

 

 

 




次回から勝くん達の話に戻ります。


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ACE64:少年の悪夢と、ちょっとした事故。

お久しぶりです。
色々と悩みましたが、合宿に入る前の伏線回です。
後、投稿が遅れてすみません!
それではACE64、どうぞ!


 

 

 

 ──とある白い世界。

 

 そこに一人の少年が立っていた。

 

「……」

 

 少年は周囲を見渡した。

 誰もいない。いるのは少年、ただ一人のみ。

 

(……ここは……もしかして、夢?)

 

 そう思った少年はここが夢だと気づく。

 

(……一先ず、前に進んでみるか)

 

 再び周囲を見渡した後、少年は一歩ずつ、前へゆっくりと歩み始める。

 

 少し歩いた後に、少年の前に薄らと影が現れ、そこから人の形となり、やがて、少年へと姿を変えた。

 

「……!?」

 

 突然現れたもう一人の自分に驚き、少年は「君は一体、何者なんだ?」と、問い掛ける。

 

「……君はどうして強くなりたいんだ?」

「……?」

 

 しかし、もう一人の自分は少年に答えず、逆に少年に問いかけた。

 

「どうしてって、守りたい人が居るからだよッ!」

 

 そう強く、少年は答えた。

 

「──あの女、■■のためか?」

 

「!?」

 

 後ろから、またもう一人の自分が現れ、その自分に少年は驚きつつ、「そうだよ!」と、答える。

 

「──違うね。君は勝ちたいんだ」

 

「──■■■■、■■■■、■■■■。この三人に、君は勝ちたいんだ」

 

「──と言っても、■■は勝ってる。■■には……勝ってるけど、その前に負けてるから、引き分け(イーブン)だね」

 

「──対して、■■……■■■には負けちゃってるし、■■さんは傷ついちゃうし、■■さんの紫色の右目も奪われちゃうし、最悪だね」

 

 また一人、一人と、自分が現れ、そこからさらに、自分が増えていった。

 気がつけば、少年の周りには、自分自身が囲んでいた。

 

「……ッ、やめてくれッ!」

 

 そう強く叫び、少年は自身を取り囲む自分達を手で振り払った。

 すると、少年に似た彼らは消えた。だが、すぐさま、新たな自分が少年の前に現れた。

 

「……最低だよね?」

 

「ッ、違う!■■ちゃんは何か考えがあって、行動してる!■■だって、■■ちゃんのために行動してる!■■■だって、きっと、紫の目の力で振り回されて、暴走して、■■■■■■に操られて……」

 

「──だとしても、彼らがやっていることは最低なことだ。最低な行いだ。そうは思わないか?」

 

「違うッ!」

 

「違うと何故言い切れる!」

 

「ッ!?」

 

 その言葉に、少年は口を詰まらせる。

 

「何故違うと言い切れる?何故彼らを庇う?君の大事な人……■■さんを傷つけた彼らを庇う必要があるんだ?何故だ?答えろ、■■■ッ!」

 

「──ッ!?」

 

 言葉が出なかった。

 否定する言葉も、そうする理由も、何も、言葉が出なかった。

 

「……結局、君はそういう人間なんだよ、■■■」

 

 そう言うと、少年に似た彼は幼い頃の少年へと姿を変えた。

 

「君は優しい。けど、本当はただ認めてほしかった。構ってほしかった。優しくて、可哀想な自分を助けてくれる手がほしかった。だけど、彼女は……■■■■は君を助けなかった。寧ろ、君を傷つけるばかりだ。こんなにも傷ついているのに。こんなにも、助けを求めているのに。それなのに、■■■■は……■■ちゃんは僕を傷つけてるだけだッ!それがわからない僕じゃないだろ!」

 

「違うッ!違う違う違う違う違う違う……絶対に、違うッ!」

 

「絶対なんて、言葉を使うな!」

 

「ッ!?」

 

 気がつけば、幼い自分は少年の前に近づいていた。

 突然、近づいてきた自分に、少年は驚き、腰をおろし、足が地面についた。

 

「いいか?よく聞け?この世に絶対はない!この世にあるのは結果だ!結論だ!仮定なんて、意味をなさないッ!」

 

 最後に「そうだろ?」と、問いかけられた時、少年は「うん」と頷きかけるも、すぐに口を塞いだ。

 

「……違う」

 

「違わないさ。いい加減、目を覚ませ、僕……」

 

 そう言われた時、少年は「違う!」と、強く否定し、叫び、目の前にいる自分を突き放し、立ち上がった。

 

「……君は……僕じゃないッ!君は昔の“弱い僕”だッ!」

 

 そう言うと、彼はニヤリと、薄ら笑みを浮かべた。

 

「違わないさ。だって、君は──“弱い僕”のままだよ?今も昔も……ね?」

 

 ──ブツッ!

 

 突然の音と彼の言葉を合図に、彼らの世界はそこで閉ざされた。

 

 

 

 

 

「──ッ!?」

 

 少年──火野勝は勢いよく目を覚ました。

 

「……とても、いやな夢、だったな」

 

 そう小さく呟くと、背中から大量の汗が出ていることに気づき、勝は時計の針を観る。

 時刻は今、午前6時55分。ちょうど7時になる前である。

 

(……先に、シャワーでも浴びよ)

 

 そう思った勝はベッドから離れ、着替えを持って、風呂場に向かう。

 いくらマリと共同生活しているとはいえ、流石に風呂と食事と学校に行く準備は自分でしないといけない。

 これは当たり前である。だが、一番最初に生活する際、マリが「勝様の世話は私に任せてください!」などと、言い出すので、お互いに話し合った結果、洗濯物以外は交代で家事をすることにした。

 その結果、勝は人並みに一人で家事ができるようになり、最近は自分からやるようにしている。

 

(ただ最近、夏が近くなってるからか、部屋が熱いんだよね……クーラーはあるけど、電気代かかるし……かと言って、夏の間、扇風機で過ごすのは無理があるな……マリちゃんともう一度話し合うか……)

 

 脳裏でそう思う中、勝は風呂場の扉を開ける。

 

「え……?」

 

 扉を開けた途端。同居人、月野マリがそこにいた。しかも、服を脱いで、下着が出た状態で、だ。

 幸い、下着でマリの大事な部分は隠れているが、それでも、ほぼ裸なのは変わらない。

 

「……」

「……勝様、何か言うことは?」

「……ごめんなさい」

「フンッ!」

 

 勝の謝罪の(つか)の間、マリは回し蹴りで、勝の顔を勢いよく蹴った。

 

 ──バタンッ!と、そんなアニメみたいな音が鳴り響き、勝はそのまま仰向けの状態で廊下に倒れた。

 

「り、理不尽だ……」

 

 そう言って、勝は倒れたまま気絶した。

 

 その日、勝は学園に遅刻したのは言うまでもなく、何故か、顔に少し大きめの絆創膏(ばんそうこう)が貼られていたが、勝はその理由を答えなかった。

 

 

 




最後のオチ、どうにかならなかったのか?
ならなかったのです。
だって、この作品、最近、シリアス要素が多すぎるので、そろそろお約束要素やギャグ要素を取り入れて、どうにかして、安定化?じゃないけど、安心感が欲しいところです。
こんな感じですが、今後とも、この作品をよろしくお願いします。


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ACE65:合宿といえば、山と道場だよね?

 

 

 

 ──数日後。

 

 デュエマの新弾、『忍邪乱武(りんじゃらんぶ)』が発売され、期末テストも無事に終わり、誰一人赤点を取らなかった勝達。

 そして、待ちに待った合宿の日。その日、勝達は合宿のため、ある場所に来ていた。

 

 そこは勝達が通うACE学園から少し離れた場所にあり、その場所は山であり、その山の中央に道場があるのだ。

 

 その道場の名前は──『ACE武神(ぶじん)道場』である。

 そこはACE学園の運動部、空手部と剣道部が理由している道場であり、勝達はそこで2泊3日の合宿することになっているのだ。

 

「よくまぁ、こんな山ん中にある道場で、合宿の利用許可がおりたな……」

「秋乃さんのお陰ですよ。この山、焔財閥が買い取った山で、そこに道場を立てたのが、財閥の偉い人だよ」

「ケッ!結局は権力と金の力かよ……!」

「そんなことを言っていると、後でバチが当たりますよ、早峰先輩」

「うるせぇ!あの財閥の女に媚び売ったヤツが口を開くなッ!」

 

 道場の前に着くなり、合宿の利用許可がおりた理由を説明するなり、突然、悪態をつける想を宥める勝だが、彼の機嫌は治ることはなく、寧ろ、悪化する一方だった。

 ふっと、勝の後ろからついていた咲恋が口を開いた。

 

「その本人が来ていないのはどうかと思うけど……」

「仕方がないよ。財閥の仕事が被ったんだから……」

「そりゃあ、わかってるわよ。ただ……」

「会長は連帯責任を気にする感じですか?」

「そう言うんじゃなくて、財閥の娘である秋乃さんが居ないと、道場の人に説明できないでしょ?」

「その心配なら大丈夫だよ。僕とマリちゃんが面識あるから、道場の人も知っている筈だよ。多分だけど……」

「不安しかないわ」

 

 最後に咲恋がそう小さく言うと、勝は「何が?」と問いかけるも、咲恋はすぐさま「何でもないわ」と、返事を返した。

 

「……」

「マリちゃん、大丈夫?」

「え?ええ、大丈夫よ、ひよりちゃん!」

 

 ふっと、今日一日、ずっと黙っているマリの様子を見て、心配したひよりはマリに声をかけるも、当の本人は慌てて、大丈夫だと、そう言い切った。

 その様子を見た勝はマリに声をかける。

 

「大丈夫?マリちゃん?先に休憩する?」

「い、いえ!私なら大丈夫です!さぁ、さっさと中に入りましょう!」

 

 そう言って、マリは勝から逃げるかのように、先に道場の中へと入っていった。

 

「……マリちゃん、大丈夫でしょうか?」

「本人が大丈夫なら、大丈夫じゃねぇのか?知らねーけど」

「……」

 

 その様子をひよりはまた心配するも、想はどうでもいいのか、冷たくそう言い、勝はマリの様子を見て、静かに彼女の背中を目で追った。

 それを見た咲恋は勝に声をかける。

 

マリちゃん(あの子)と何かあったの?」

「……うん。少し前に……ね」

「そう。それなら早めに謝りなさいよ。あまり長く引きずると、収拾(しゅうしゅう)がつかなくなるわよ」

「……わかってるよ」

 

 勝がそう返事を返すと、咲恋は深い溜め息を吐いた。

 それを見た勝は「何?」と、咲恋に問いかける。

 

「ううん、何も。ただ少し面倒だな、って思っただけよ」

「何?不満なの?」

「不満……じゃないけど、なんか、言い切れない、というより、言葉が出てこないのよね?」

「それって、不満があるからじゃないの?何かしらの」

「だとしたら、その原因はアンタ達かもね?」

「……」

 

 その言葉を聞いて、勝はほんの少し、咲恋を睨んだ。

 

「ちょっと、睨まないでくれる?」

「別に、睨んでないよ」

「睨んでたわよ?まぁ、その様子から見て、色々と察しはついてるけど……」

「あっそ……」

 

 そっぽを向いて、勝はそう言う。

 それを見た咲恋は慌てて、「悪かったわよ」と、謝った。

 

「一先ず、マリちゃん(あの子)のことは私が見とくから、アンタは自分のことに集中しなさい」

「……ありがとう、咲恋ちゃん」

「お礼を言われほどじゃないわ」

 

 そう言って、咲恋は道場の中に入り、その後に、翔、想、ひよりの順に、三人は道場の中へと入った。

 

「──き──は──なん、で──んだ?」

 

「……?」

 

 最後の一人になった勝は、道場の中に入ろうとするも、突然、後ろから声が響き、勝はすぐさま振り返った。

 

「?誰もいない?」

 

 けれど、そこには誰も居なかった。

 

「気のせい……かな?」

 

 そう思った勝は少ししてから道場の中へと入った。

 

 

 

 ──しかし、勝はこの時、気づくべきだった。

 

「……」

 

 自分達を影から覗いている存在に──勝はこの時、気づくべきだった。

 

 

 

 ──一方、その頃。焔財閥の仕事で遅れることになった秋乃とエリカの二人は今、とある商店街に来ていた。

 というより、本当はこの日のために、財閥の仕事は休みを取っている。

 にも関わらず、二人は何故、勝達と一緒に合宿に行かず、こんな所で、油を売っているのか、というと──

 

「お嬢様、そろそろ我々も行かなくてはなりませんよ?」

「わかっているわ、エリカ。けど……」

 

 ──気まずかったからだ。

 

 あの日。エリカがキャルに紫の目を奪われて以来、秋乃は勝と顔を合わせづらくなっているのだ。

 一応、その件に関しては「秋乃さんが気にすることじゃないよ。力不足だった僕に責任があるよ」と、勝から言われており、秋乃はなるべく気にしないようにしていた。

 だが、やはり、というか、あの時、自分が負けていなければ、()が傷つくことはなかった。

 エリカだって、自分で守れた筈だ。助けられた筈だ。

 そう言った、後ろ向きなことばかり考えていた。

 

「……わたくしは焔財閥の人間として失格ですわ」

「お嬢様……」

 

 その言葉に、エリカは励ます言葉を考えるも、すぐには浮かばず、咄嗟に、エリカは秋乃を抱きついた。

 

「……?エリカ?」

「……申し訳ありません、お嬢様。私が不甲斐ないばかりに……」

「エリカ……」

 

 その言葉に、秋乃は泣きそうになった。

 しかし、財閥の人間たる者、涙は流してはいけない。

 流して良いのは、大切な人がいなくなった時、親族がいなくなった時、そう決められている。

 故に、秋乃は涙を流すのを、堪えた。

 

 けれど、それの代わりになる感情、想いが浮かばなかった。

 あるのは虚しさと哀しみのみ。そして、後悔。

 そう思った時、また涙を流しそうになった。

 

 

 

 ──その時だ。

 

「──お前達、何をしている?」

 

 二人に声をかける勝に似た青年──黒崎レオンが二人の前に現れた。

 

 

 



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ACE66:深淵の少女は騎士であり、武士(サムライ)である。

こちらではお久しぶりです。
リアルが忙しく、暫く、こちらでの投稿を休みにし、また、小説の描き方を忘れないために、うっかり二作目を描いてしまいました。
少しずつですが、こちらでの投稿を回復したいと思います。
それではACE66、どうぞ。


 

 

 

「もう一度問うぞ。お前達、ここで何をしている?」

「「……」」

 

 突如として現れた勝に似た青年、黒崎レオンの問いかけに、秋乃とエリカの二人は黙り込む。

 

「聞こえなかったか?ここで何をしている?」

「ッ!」

 

 二人の耳に届かなかったのか、レオンは再度、二人に問いかけるも、エリカが秋乃の前に立った。

 

「……そういう貴方こそ、何者ですか?」

「質問を質問で返すな。まぁ、何者かと問われれば、答えても構わないが……まずはこちらの問いに答えてもらおうか?」

 

 溜め息混じりにレオンは問いかけるも、それを聞いたエリカは首を横に振った。

 

「悪いですが、私達がどこに居ようと、何をしようと、私達の勝手です。ましてや、見知らぬ人に答える義理はありません」

「答える気はない、か……まぁ、その返答はごもっともだがな……」

 

 などと言いつつ、二人を見逃すわけがなく、レオンは目で二人を見、警戒する。

 それを踏まえてか、エリカも秋乃の前に立ちつつ、次に動くレオンの行動に警戒する。

 

 睨み合う二人。それが数秒経過した後、レオンは深い溜め息を吐いた。

 

「睨み合っても(らち)が明かない!これで白黒はっきりするか?」

 

 そう言って、レオンは1枚のデュエマのカードを取り出し、二人に提案する。

 それを見た秋乃は驚き、「デュエマの……カード……?」と、小さく呟いた。

 対してエリカは驚きと同時に、心底、呆れていた。

 

「……貴方、ふざけているんですか?」

「大真面目だ!それでどうする?乗るか(やるか)乗らないのか(やらないのか)?どっちだ?」

「……やりましょう。相手は私がします」

 

 レオンの問いかけに、エリカは即答で答えた。

 

「エリカ!?貴女、何を言ってるの!?」

 

 それを聞いた秋乃は驚き、慌てて、エリカを停止させるように心頼む。

 

「大丈夫です、お嬢様。瞳の力がなくとも、デュエマはできます!なのでお嬢様、私を信じてください!今度こそ、お嬢様を守る(つるぎ)になります!」

「エリカ……わかったわ。貴方を信じます!」

「話は決まったな?」

 

 いつも間にか、デュエマ台がレオンの前に現れており、それを見たエリカはデュエマ台の前に立ち、デッキを取り出した。

 それを見たレオンは自身もデッキを取り出し、互いにデッキを交換し、シャッフルとカットをした後、デッキを持ち主に返し、対戦の準備を進める。

 準備を終えた後、レオンはエリカに声をかける。

 

「……それじゃ、いくぞ」

「ええ。いつでも……」

 

「「デュエマ・スタート!」」

 

 ──こうして世にも奇妙な対戦(デュエマ)が始まった。

 

 

 

「俺は呪文、《ダーク・ライフ》を唱える。山札の上から2枚見て、1枚をマナ、1枚を墓地に置く。唱えた《ダーク・ライフ》は墓地へ……ターンエンド」

「私のターン……あまり使いたくありませんが、致し方がありません。呪文、《ヒートブレス・チャージャー》を唱えます!山札の上を見て……アーマードを持つ《クック・(スクランブル)・ブルッチ》を手札に加えます!」

「《ブルッチ》?なるほど。最近流行りの赤単アーマードか……」

 

 互いに序盤はマナ加速、手札補充といったデッキを回すための下準備。

 しかし、後攻であるレオンにとってはやや動きが遅い。

 対して、先攻であるエリカは先程使ったカードに、やや毛嫌いしているのか、渋った表情で唱えたが、それでも動きは順調のようだ。

 

(速度で間に合うかどうかは不安だが、こちらはやれることをやるしかない)

 

「俺のターン。マナチャージして、《ライマー・ドルイド》を召喚する」

「?《ライマー・ドルイド》?ああ、不死樹(ふしぎ)王国ですか。なるほど。それならこちらの方が速く動けますね」

「……《ライマー・ドルイド》の出た時の効果で、山札の上から4枚見て、1枚をマナに置き、残り3枚を墓地へ。その後、自身の効果で、《ライマー・ドルイド》は墓地に置かれる。ターンエンド」

「……」

 

 淡々とターンエンドを宣言するレオンを見て、秋乃は先程、レオンが墓地に置いたカードに不安を感じていた。

 

(エリカの方が優勢なのに、何故でしょうか?この感覚は……?)

 

 不安。恐怖。そう言った、負の感情に近いものが秋乃の胸に刺さる。

 

 それを知らないエリカは勢いよく、カードを引き、ターンを進める。

 

「私のターン!このターンで決めます!」

 

 そう言って、手札から1枚、マナに置き、4枚のマナをタップした。

 

「まずは《クック・轟・ブルッチ》を召喚します!《ブルッチ》の効果で、次に使うアーマードのコストを6軽減!」

「来るか!はたして、《ボルシャック・ライダー》か、《ボルシャック・アークゼオス》か……まぁ、どちらにしても、こちらにとってはタダではすまないな……!」

「……彼ならどちらかを使いますが、断念ながら、私はそのどちらでもありません」

「何……?」

 

 意外な発言にレオンは驚く。

 そしてエリカは残り1枚のマナをタップし、デュエマ台に勢いよく、1枚のカードを叩きつけた。

 

「これが私の本来の切り札!《ボルバルザーク・紫電(しでん)・ドラゴンP'S(プレイス)》!」

 

 

 



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ACE67:武士(サムライ)の覚悟!レオン、絶対絶命!?

 

 

 

「《紫電・ドラゴン》!?しかも、プレイス版だと……!?」

 

 エリカが場に出した切り札、《ボルバルザーク・紫電・ドラゴンP'S(プレイス)》にレオンは驚く。

 

 また、レオンが言った『プレイス版』とは、スマートフォンゲームで遊べる『デュエル・マスターズプレイス』の略称の一つで、誰でも気軽にデュエマができるゲームアプリである。

 そして、オリジナルのカードをいくつか調整し、効果を強く、強化したものもある。

 エリカが出した《ボルバルザーク・紫電・ドラゴンP'S(プレイス)》もその1枚であり、オリジナルの《ボルバルザーク・紫電・ドラゴン》とは別で、且つ、『デュエル・マスターズプレイス』から逆輸入したカードは皆、名前に『P'S(プレイス)』をつけられるのだ。

 

 そして、エリカが出した《ボルバルザーク・紫電・ドラゴンP'S》は本家と同じ、W・ブレイカーと“侍流ジェネレート”を併せ持ち、各ターン、はじめてタップした時、アンタップする能力を持つ。つまり、2回攻撃ができ、このアンタップする能力を使う際、自身を含むサムライが5枚以上あれば、自身以外のクリーチャーもアンタップするのだ。

 

 よく見ると、エリカのマナゾーンにサムライを持つ火のカードと水のカードが数枚ある。つまり、エリカのデッキは火と水のサムライデッキであり、切り札である《ボルバルザーク・紫電・ドラゴンP'S》を速く出すために組まれており、《クック・轟・ブルッチ》を採用した構築なのだ。

 

「《紫電・ドラゴンP'S》が場に出た時に、侍流ジェネレート!《竜装 シデン・レジェンド》をノーコストで場に出します!」

「!?《シデン・レジェンド》!?また懐かしいカードを……!」

「これが私の本来の力です!《シデン・レジェンド》の効果で、《紫電・ドラゴンP'S》にノーコストでクロスッ!」

 

 “侍流ジェネレート”とは、一部のサムライが持つ効果であり、“クロスギア”をただで出す能力なのだ。

 次に“クロスギア”とは、クリーチャーを強化する装備カードである。一見すると、ドラグハート・ウェポンに近いが、あちらと違い、クロスギアはメインデッキに入り、デッキの枠を()ってしまう。

 そのため、やや玄人(くろうと)向け、または、ファンデッキよりで使われていたが、今では、サイキック・クロスギアという、超次元ゾーンに採用するタイプも増えたため、構築難易度は格段に下がった。

 そのクロスギアを出すことをジェネレートと呼び、クリーチャーに装備することをクロスと呼ぶ。

 クリーチャーにクロスする際は、そのクロスギアのコスト分、払わなければならない。

 

 しかし、エリカが出した《竜装 シデン・レジェンド》は火文明の3マナのクロスギア。本来なら3マナ払わなければ、クリーチャーにクロスできないが、この《シデン・レジェンド》は《ボルバルザーク・紫電・ドラゴン》専用のクロスギアで、その名称を持つクリーチャーなら、ただでクロスできるのだ。

 つまり、《ボルバルザーク・紫電・ドラゴンP'S》も、その名称とサポートが受けられるため、《シデン・レジェンド》の効果で、ただでクロスできるのだ。

 

 そして、気になる《シデン・レジェンド》の効果はクロスしたクリーチャーの攻撃時に、相手のシールドを1枚ブレイクでき、クロスしたクリーチャーのパワーを+3000を与えるのだ。

 

「《クック・轟・ブルッチ》の効果でスピードアタッカーを得た《紫電・ドラゴンP'S》でシールドを攻撃!この時、《シデン・レジェンド》の効果で、先にシールドを1枚ブレイク!」

「トリガーは……ないか」

「では、メインの攻撃──W・ブレイクッ!」

「っ!」

 

 一気にシールドを3枚ブレイクされるレオン。だが、その中にはトリガーが1枚もなかった。

 

(まぁ、無理もないか。元々、トリガーは少ないし、仕方がないか……それにこのターンはシールドがなくなるだけで、ダイレクトアタックまではいかない……)

 

 半ば諦め気味に、レオンは自身のデッキにトリガーがあまり多くないことを悟るも、このターンで自分が負けることはないと確信する。

 

 だが、エリカの考えは違った。

 エリカは言った。このターンで決める、と。

 それは強い意志と決意で固められていた。

 そして、このターンで決めるパーツは手札に揃っている。

 

 

 

 ──つまり、エリカはこのターンで決めるのだ。

 

 

 

 レオンにターンを返す気など、一切ないのだ。

 

「《紫電・ドラゴンP'S》で攻撃!する時に、《ワルキューレ・ルピア》の革命チェンジを宣言!」

「何!?」

 

 これがエリカの必勝法。

 勝が愛用する《ワルキューレ・ルピア》を使って、ファイアー・バードである《クック・轟・ブルッチ》をスピードアタッカー化にすることで、このターンで、ダイレクトアタックまでいける。

 つまり、トリガーがなければ、レオンはこのターンで負けるのだ。

 

 それを見たレオンは驚く。そして、思考を(めぐ)らせる。

 

(この状況、返せるのか?)

 

 

 




今回は地の文、もとい、クロスギアやデュエプレの解説が長くなりましたが、次回で、エリカとレオンの対決は終わります。


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ACE68:デュエマは時の運、故に残酷な時がある。

 

 

 

(この状況、返せるのか?)

 

 絶対絶命のピンチの中、レオンはこの状況を打破できないか、思考を(めぐ)らせていた。

 

「っ!?」

 

 その時、レオンの思考にある人物が浮かび上がった。

 それを見たレオンは「フッ……」と、静かに笑みを溢した。

 

(そうだったな。お前なら……最後まで諦めないよな!だったら、俺も“兄”として、諦める訳にはいかないな!)

 

「「ッ!?」」

 

(あの瞳……彼と同じ、何事にも諦めない瞳をしている!?)

 

(この感じ……勝様と同じ!?)

 

((まさか、この状況を返すと言うの(です)か!?))

 

 突然、レオンの雰囲気が変わったことにエリカは驚き、秋乃はレオンの雰囲気が勝に近いと感じ、二人は揃って、レオンがまだ諦めていないことに気づき、そして、この絶望的な状況を返すと、ほんの僅か、否、二人は確信した。

 

「どうした?まだ貴様のターンだぞ?」

 

「ッ、まずは《シデン・レジェンド》の効果でシールドをブレイクっ!」

 

「シールド・トリガー!呪文、《偉大(いだい)なる(めぐ)み》!その効果で、墓地からクリーチャーを3体、俺のマナゾーンに変換する!」

 

「「なっ!?」」

 

 その行動に一切の曇りがなく、レオンはシールドの中にあるカードを確認せず、シールド・トリガーを迷うことなく、宣言した。

 

 その行動に二人は驚く。

 普通はシールドの中を確認してから、シールド・トリガーを宣言するが、レオンはその予備動作を一切せず、堂々と迷うことなく、シールド・トリガーを宣言した。

 

「で、ですが、それがどうしたと言うのですか!次に《ワルキューレ・ルピア》の革命チェンジを解決!《紫電・ドラゴンP'S(プレイス)》を手札に戻し、《ワルキューレ・ルピア》で、最後のシールドをブレイクッ!」

 

「……甘いな」

 

「なっ!?」

 

 またしても、シールド・トリガーが発動された。

 それは相手のクリーチャーを1体破壊する闇の呪文カード、《スーパー・デーモン・ハンド》が発動され、その凶々(まがまが)しい悪魔の手が《ワルキューレ・ルピア》を掴み、握り潰し、破壊した。

 おまけに、破壊した《ワルキューレ・ルピア》のコスト分、レオンの墓地が5枚増えた。

 これにより、エリカの《クック・轟・ブルッチ》は攻撃できず、レオンにダイレクトアタックを決められないため、エリカはターンエンドを宣言するしかない。

 

「……ターンエンド」

 

「俺のターン……中々、楽しかったぞ?貴様とのデュエマ。実に久しぶりにひりつくような感覚だった。これは──そのお礼だ」

 

「ッ!?」

 

 刹那。次の瞬間。レオンが繰り出すカードと切り札により、エリカの場とマナゾーンが吹き飛び、手札とシールドも破壊された。

 

「そんな!?こんな一瞬で!?“さっさの2ターンで返される”なんて……!?」

 

「これが現実だ、受け入れよ。そして、これで最後だ」

 

 そう言って、レオンは自身の切り札に手を置く。

 

「──ダイレクトアタック」

 

 静かに、ダイレクトアタックを宣言し、切り札を横に倒した。

 

 

 

 デュエマに敗北したエリカはその場で膝をついていた。

 

「そんな……私には負けられない理由があるのに……こんなところで負けるわけにはいかないのに……」

「デュエマは時の運だ。故に、残酷な時がある。肝に銘じておけ……」

「エリカ!」

 

 秋乃がエリカに駆け寄ると、レオンは暫く黙り込んだ。

 

「っ、お嬢様、申し訳ありません……」

「そんなことはいいですわ!それよりもエリカ!あなた、大丈夫ですの!?」

「……すみません。(まこと)に言い(にく)いのですが、大丈夫ではありません」

「……そう。それなら、次はわたくしが相手になりますわ!」

「ッ!?お嬢様!?」

 

 突然、デッキを取り出し、対戦を申し込む秋乃の行動にエリカは驚き、止めようとするも、その前にレオンが口を開いた。

 

「いや、その必要はない」

「……え?」

「先ほどのデュエマでわかったことがある。お前達は俺が“探しているヤツ”ではない。故に対戦する必要はない」

「そ、そうなのですか……?」

「対戦する必要はないが、警告する」

「警告?」

「あまり商店街をウロウロするな。痛い目に遭いたくなければな……」

 

 それだけ言うと、レオンは二人の前から去り、その場を後にした。

 

「……彼は何だったんでしょうか?」

「わかりません。ただ……彼は強い。そして……“似ている”」

「その様子だと、エリカも感じたのね」

「はい……嫌というほどに……」

 

 先程のデュエマでわかったこと。

 文明やプレイスタイルは違えど、レオンの姿はどこか、勝に似ていると、二人は感じた。

 

 

 

 そして──

 

「……エリカ、行きますわよ」

「?お嬢様、どちらに?」

「決まっています。勝様達がいるところにです」

「!?わかりました。至急、車の手配をします」

 

 ──二人は勝達がいるACE武神道場に向かった。

 

 

 



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ACE69:再会。合宿で、かつての先輩と人気アイドルに出会う。

 

 

 

「──俺がこのACE武神道場の管理人!(けん)師範代(しはんだい)の『武神(ぶじん)英司(えいじ)』師範代だッ!そして、今日から2泊3日の合宿の間、君達の保護者になるッ!よろしくッ!!」

 

「うるさ!?声、もう少し抑えられないのか!?」

 

「すまないな!大きい声を出すのは生まれつきなんだッ!慣れてくれ!!」

 

「慣れるか!」

 

 道場に入って暫くした後、勝達はこの道場の管理人兼、師範代の英司に挨拶しにきたが、会って早々に、彼の大きな声に、早峰想は耳を抑えていた。

 想ほどではないが、流石に翔や咲恋も、英司の大きな声に耳を抑えた。

 

「あ、明星ひよりです!1年です!よろしくお願いします!」

「良い返事だッ!これなら、どんな相手にも屈しず真正面から立ち向かえるなッ!1年だから、尚、これからが期待できるなッ!!」

「……ッ!?ありがとうございます……!」

 

 しかし、たった一人、ひよりは英司の大きい声に屈しず、真正面から返事を返した。

 その光景に勝とマリは静かに驚いていた。

 

「マジか……ものの数分で対応してやがる……!?」

「ひ、ひよりちゃん、無理してない?」

「だ、大丈夫です。最初は驚きましたが、すぐに慣れました……」

「嘘だろ!?あのバカデカい声に慣れれるのか……!?」

 

 一方で、想は英司の大きな声、もとい、彼の勢いとテンションに対応できていることに驚き、咲恋はひよりが無理してないか、心配するも、ひよりは平気な顔で、大丈夫と答えた。

 

 彼の大きい声は勝やマリ、秋乃やエリカ、そして、空手部や剣道部に所属している生徒でも頭を悩ませて、対応と慣れるのに時間がかかるのに、ひよりはあっさり順応(じゅんのう)した。

 

 それを見た勝はこの合宿で真っ先に成長の成果がでるのは、ひよりだと(さと)り、成長した彼女の実力が楽しみだ、と、脳裏でそう思った。

 

「さて、本題に入るが……俺はカードゲームに関しては全くもって疎いッ!!」

 

「自信を持って言うことではないだろ……」

 

 棘のある想の言葉に、英司は顔を近づけて、「そこでだッ!!」と、大きなを出した。

 間近で大きな声を聞かされた想は「チケぇよ!顔が!」と、彼の精一杯の大きな声で言い返した。極め付けには、「離れろ、鬱陶しい!!」と付け足し、それを聞いた英司は想から離れ、彼が考えた計画を提示する。

 

「そこで俺はカードゲームの専門家を雇った!しかも、凄腕だッ!優秀な人材だッ!そして何より、この合宿で君達を強くしてくれる!!絶対に、だッ!!」

 

『──ッ!!』

 

 その言葉に勝達の体に電撃が流れた。

 もうすぐ始まるデュエマ甲子園に向けて、優勝を目指す勝達にとっては有難い話だ。

 故に皆、それぞれが燃えていた。主に闘志が。

 

「という訳で、諸君ら、入ってくれ!!」

 

 英司の合図に、二人の男女が入ってきた。

 

「……え?」

 

 その二人を見て、勝は驚く。

 

 何故なら──

 

「初めまして。合宿の間、君達を鍛えることになった『速水(はやみ)裕也(ゆうや)』だ。よろしく頼む」

 

「初めましてー!みんなのアイドル!ノゾミんこと、『星野(ほしの)(のぞみ)』でーす!アーイマイサーセン!なんちゃって!アハ!」

 

 ──その人物達は勝が中学時代にお世話になった先輩、速水裕也と今一番の人気のアイドル、ノゾミんこと、星野望だからだ。

 

 

 




話のネタが溜まりに溜まってたんで、今日の所はこの辺で失礼します。
次の投稿は明日か、来週かわからないですが、なるべく早く投稿するよう、頑張ります。

追記。
2023年8月20日に、星野マイの名前を星野望に変更しました。
元々、望として、名前を出す予定でしたが、キャラの名前を思い出せず、急遽、星野マイとして、仮の名前を出しました。
ご迷惑をおかけしますが、今後とも、この作品をよろしくお願いします。


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ACE70:かつての先輩と再会し、少年は何を求めるのか。

 

 

 

 ──数時間後。

 

「ハァ……ハァ……だぁぁ!クソッ!何でこんなクソ熱い日に走らなきゃならないんだッ!」

 

「無駄口叩く暇あったら、さっさと走れー!」

 

「うるせえ!そう思うなら、テメエから先に走りやがれ!」

 

「……お先に失礼します。早峰先輩」

 

「な!?火野、テメエ!先輩であるオレより前に走るんじゃねえ!」

 

「も……もう……限界……です……」

 

 バタン、と、眼鏡君は倒れた。

 それを見た速水先輩はすぐに眼鏡君を抱えて、道場の中に入っていった。

 

 そんな中、僕と早峰先輩はまだ走っている。

 理由は速水先輩から、道場の周りを20周走ってこいと言われた。

 普通の人なら10周ぐらいで、根を上げるけど、僕は普段、体力不足にならないように、それなりに走っていたから、そこまでキツくないけど、普段走っていない早峰先輩と眼鏡君の二人はかなり参ってるみたいだ。

 けど、それでも早峰先輩はまだ頑張って走っている。まだ11周しか走ってないけど。

 眼鏡君は……まぁ、元々、体を動かすのが苦手だから、今ぐらいがちょうどいいだろう。

 

 対して僕は、と言うと。

 

(そろそろキツくなってきたな……まぁ、後5周だし、もう少し頑張るか……)

 

 そう思って、少し気合を入れて、僕は頑張って走り、先に速水先輩の課題をクリアした。

 

「ハァ……ハァ……やっと、15周目……後5周……!」

 

 あ、早峰先輩、やっと15周に入ったんだ。

 

 そう思っていると、道場から速水先輩が出てきた。

 

「?勝、もう走り切ったのか?」

「はい。結構キツいですね……」

「その割には余裕があるな?」

「ただの痩せ我慢ですよ」

「そうか……なんか聞きたいことあるか?」

「……誰の()(がね)ですか?」

 

 僕はずっと気になっていたことを速水先輩に問いかけた。

 理由は……色々あるけど、速水先輩は本来、“あの人”と一緒に海外でデュエマを広めたり、“とあるバイクレーサー”のメカニックを受け持っている。

 そんな人が何故、日本にいるのか、疑問に思わないわけがない。

 誰かの頼みで、日本に来ているしか、そう思えない。

 

「オイオイ、久しぶりに会って、それはないぜ?まぁ、そう思うのも無理はないけどよー」

「……」

 

 やや呆れ気味に、話をはぐらかす速水先輩の態度に僕はほんの少しイラッと感じた。

 気づけば、僕は速水先輩に睨んでいた。

 

「そう睨むなよ?折角、“可愛い顔”が台無しだぞ?」

「……燃やされたいんですか?」

「オー、怖い怖い。そういえば、お前、“可愛い”って言われるの嫌だったな?」

「わかってるなら、こっちの質問に答えてくれます?」

「わーたよ。ったく、短気(たんき)なのは相変わらずだな……」

 

 そう言って、速水先輩は指を指した。

 指した場所は、このACE市で一番高い山、ACE山だ。

 

「あそこに、お前の求める答えがある。そこに行けば、ある程度のことはわかる」

「……なんか、またはぐらかされた気がするけど、わかりました」

 

 そう言って、僕はACE山に向かおうとしたけど、速水先輩が「待った」と、僕の足を止めた。

 

「こんな熱い中、山道を歩くんだ。水分補給はしっかりとっておけ」

 

 そう言って、速水先輩は僕にスポーツドリンクを渡してきた。

 僕は無愛想に「ありがとうございます」と、お礼を言って、スポーツドリンクを片手に持って、今度こそ、ACE山に向かった。

 

 

 



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ACE71:スーパー・スター・アイドル!星野望の実力は如何(いか)に!?

 

 

 

 ──一方、その頃。望を含む女性陣メンバーは、というと……。

 

 

 

P'S(プレイス)覚醒(サイキック)リンク!《激竜王(げきりゅうおう)ガイアール・オウドラゴンP'S(プレイス)》っ!」

 

 望を相手に、マリ、咲恋、ひよりは彼女とデュエマをしていた。

 しかも、ただのデュエマではない。望は3つのデッキを使い、3人同時にデュエマをしていた。

 

 

 

 そして、マリとの対戦で、望は切り札であるサイキック・スーパー・クリーチャー、《激竜王ガイアール・オウドラゴンP'S》の覚醒(サイキック)リンクに成功した。

 

「《ガイアール・オウドラゴンP'S》でシールドを攻撃!攻撃時に《ガイアール・オウドラゴンP'S》よりパワーの小さいクリーチャーを全て破壊!」

 

「っ!?そんな!?私のクリーチャーが……!?」

 

「そのまま、ワールド・ブレイクっ!」

 

 一瞬で、マリのクリーチャーを全滅し、マリの5枚あるシールドを全てブレイクした。

 

「シールド・トリガーは……嘘!?1枚もないの!?」

 

「それじゃあ、《ボルバルザーク・エクス》で、ダイレクトアタックっ!」

 

 5枚あるシールドの中に、シールド・トリガーがないことにマリは驚き、望はそのまま《ボルバルザーク・エクス》で、ダイレクトアタックを宣言し、そのまま勝利の決めた。

 

「相変わらず、パワーが段違いね……」

「でも、今だと、パワーが5万越えのクリーチャーが増えましたし、そこまでパワーが高くないような……」

「それでも、あのパワー2万5千は高いわよ。オマケに、攻撃時にパワー2万5千より低いクリーチャーを全部破壊って、頭悪いんじゃない?」

 

 望の切り札を前に咲恋は呆れ気味に言い、ひよりは《ガイアール・オウドラゴンP'S》よりパワーの高いクリーチャーが沢山いると言った。

 それでも咲恋は、あくまでも《ガイアール・オウドラゴンP'S》の能力(スペック)に頭が悪いと言った。

 

呑気(のんき)に話している所悪いけど、今度はアナタの番よ?斎条咲恋さん?」

 

「!?」

 

 ニヤリと笑う望の姿に、咲恋は身構える。

 バトルゾーンとシールドの数では咲恋が有利。

 だが、望から感じるオーラに、咲恋は後ずさる。普段はアイドル活動で、歌とダンスで、ファンを笑顔にさせる彼女だが、ここデュエマにおいては同年代である咲恋や勝よりも実力は上であり、望はこのターンで決めようとしていた。

 

 

 

 ──そして、望は動く。手札から1枚のカードを引き抜き、11枚あるマナを全てタップした。

 

「勝利は必然?いいえ、勝利は掴むものよ!《「必勝(ひっしょう)」の(いただき) カイザー「刃鬼(ばき)」》を召喚っ!さぁ、楽しい楽しい“ガチンコ・ジャッジ”の時間だよっ!」

 

「全然楽しくないわよ!後、こっちのデッキ、最大コストが5だから、勝てる訳ないでしょ!」

 

「そんなことを言われても知りませんよー、だ」

 

「ムキィィ!」

 

「ちょっと会長!?叫び声がお猿さんみたいになってますよ!?」

 

 “ガチンコ・ジャッジ”とは、互いに山札の一番上を捲り、コストを比べ、ガチンコ・ジャッジを宣言した側が相手のコストと同じか、それ以上なら、勝利し、その後の能力が使える。

 望が使う《カイザー「刃鬼」》のガチンコ・ジャッジは勝利した数だけ、ハンターを1体、マナ、手札、墓地から無条件(ただ)で出せる。強力な能力だ。

 ただし、その強力な能力故に、召喚して場に出さないといけないのと、相手のシールドの数を参照して、《カイザー「刃鬼」》のガチンコ・ジャッジを行う。

 故に、《カイザー「刃鬼」》の能力を最大限に活かすには、相手のシールドをブレイクせず、相手の攻撃を耐えなければならない。

 

 しかし、望はそれを成し遂げた。

 咲恋の攻撃を耐え、《カイザー「刃鬼」》の召喚に必要な11枚のマナコストを貯め、見事、《カイザー「刃鬼」》の召喚に成功したのだ。

 

「それじゃあ、斎条さんのシールドは5枚だから、5回ガチンコ・ジャッジっ!」

 

「だ・か・ら!勝てる訳ないでしょ!」

 

 5回ガチンコ・ジャッジを行った結果、5回全て、望が勝利し、望は《ボルバルザーク・エクス》、《永遠(とわ)のリュウセイ・カイザー》、《閃光(せんこう)のメテオライト・リュウセイ》、《不敗(ふはい)のダイハード・リュウセイ》を2体、合計コスト、39コスト分のハンターを踏み倒した。

 

(大丈夫!こっちは《ボン・キゴマイム》がいるから、このターンは攻撃されない!仮に、《鬼丸「(ヘッド)」》が出ても追加ターンは得られない!)

 

 しかし、咲恋はこうなることを先を読み、《ボン・キゴマイム》を出していた。

 その能力は『相手のクリーチャーが出た時、このターン、そのクリーチャーは攻撃できない』という能力。

 つまり、折角、《カイザー「刃鬼」》で踏み倒した望の大型ハンターは攻撃できないのだ。

 

 どうあがいても、私の勝ちだ、と、咲恋は脳裏で勝利を確信した。

 

「ふふっ……」

 

「な、何よ……?」

 

 ふっと、望は不敵に笑った。

 それを見た咲恋は疑問を抱き、彼女に問いかける。

 

 そして、望は答える。咲恋の考えが(あさ)はかだと。

 

「《ボルバルザーク・エクス》の効果で、私のマナを全てアンタップっ!そして──7マナをタップ!呪文、《無双と竜機の伝説(エターナル・ボルバルエッジ)》っ!」

 

「っ!?その呪文は……!?」

 

 望が唱えた《無双と竜機の伝説》に、咲恋は驚く。

 何故なら、望が唱えた《無双と竜機の伝説》には恐ろしい能力があるからだ。

 

「まずは、呪文の効果で、パワー6000のクリーチャーを全て破壊っ!」

 

 現在、パワー6000のクリーチャーは望の《ボルバルザーク・エクス》のみ。よって、望の《ボルバルザーク・エクス》だけが破壊される。

 一見、自分のクリーチャーを破壊することに意味がないようにみえるが、問題はこの後の効果だ。

 

「この呪文を唱えた後、私は追加ターンを得る!つまり、アナタの《ボン・キゴマイム》の効果を貫通して、私の可愛いリュウセイちゃん達で攻撃して、私の勝ちィィー!」

 

「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっー!」

 

 断末魔のような叫び声を上げる咲恋。

 追加ターンを得た望は《メテオライト・リュウセイ》でタップしたクリーチャーに《リュウセイ・カイザー》と一緒に攻撃し、《ダイハード・リュウセイ》の効果で、咲恋のシールドを墓地に置いた。

 それが2体いるため、1回の攻撃で、咲恋のシールドを2枚墓地に置ける。故に、2回の攻撃で、4枚のシールドを墓地に置いた。

 

 

 

 ──そして、最後の1枚を墓地に置こうとしていた。

 

「《カイザー「刃鬼」》でシールドを攻撃する時、《ダイハード・リュウセイ》の効果で最後の1枚のシールドを墓地へ!」

 

「く、《クロック》がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっー!」

 

「だんねーん!《カイザー「刃鬼」》で、ダイレクトアタックっ!」

 

 

 



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ACE72:挑戦者(チャレンジャー)、ひよりの覚悟!

 

 

 

 望の《ダイハード・リュウセイ》の効果で、シールドの中にあった《クロック》は無惨にも墓地に置かれ、悲しい現実を叩きつけられた咲恋は泣き叫ぶしかなかった。

 

 その光景を()の当たりにしたひよりは、アイドルである望の実力に驚いていた。

 

「つ、強いです……!」

 

「驚いているところ、悪いけど、今度はアナタの番よ?明星ひよりちゃん?」

 

「っ!?」

 

 今度はひよりとの対決。

 マリと咲恋の二人を相手にしたにもかかわらず、星野望は疲れを見せない。

 パフォーマンスを高く求められるアイドル活動の賜物(たまもの)か、中々疲れを見せない望。

 その姿に、ひよりは圧倒され、チーム内で実力の高い2人が敗れた今、ひよりは彼女()を倒せるのか、と、自身に問いかけた。

 

(いいえ!私だって、デュエマ部の……チーム、『ACE(エース) STRIKER(ストライカー)』の一員です!だから……!)

 

「だから、こんなところで諦めるわけにはいきません!《超戦龍覇 モルトNEXT》を召喚っ!マナ武装5で、超次元ゾーンから《爆銀王剣 バトガイ刃斗》を装備!さらに、《禁断》の封印を1枚、墓地に置きます!」

 

 諦めない一心で、ひよりはカードを操る。

 それを見た望はふっと思った。

 

(この子、将来、有望な決闘者(デュエリスト)になりそうね!ひとつひとつのプレイに無駄がないし、今後に期待ね!)

 

 それは1人の決闘者としての視線、考えであり、望はこの合宿で一番伸びしろがあると感じた。

 

「けど……断念だけど、今は負けてあげない!」

 

「っ!?」

 

 その言葉にひよりはまた圧倒される。

 けれど、引き下がる訳にはいかない。ここまでやった以上、最後までやり切るのみ、と。

 

「《バトガイ刃斗》を装備した《モルトNEXT》はスピードアタッカーを得ます!よって……《モルトNEXT》で攻撃!攻撃する時に、《バトガイ刃斗》の効果で山札の上を見て……2体目の《モルトNEXT》を場に出します!マナ武装5で、今度は《闘将銀河城 ハートバーン》を場に出します!次に《禁断》の封印を墓地に置きます!」

 

 次に!と、言ったところで、ひよりは口籠った。

 理由は《バトガイ刃斗》を《バトガイ銀河》に龍解させるかどうか。

 龍解すれば、さらにドラゴンを呼ぶことができ、ひよりのマナゾーンにドラゴンが5枚以上あるので、《モルトNEXT》の(ドラゴン)マナ武装5で、今、攻撃中の《モルトNEXT》をアンタップさせ、ついでに《ハートバーン》を《ガイNEXT》に龍解できる。

 その《ガイNEXT》の能力で、ひよりのクリーチャーは全てスピードアタッカーを得るため、《バトガイ銀河》で新たに呼び出したドラゴンもすぐに攻撃に加わる。

 

 

 

 ──しかし、ひよりは躊躇(ためら)ってしまった。

 ()しくも、この状況、この状態が全て、以前、ブラックキャットの非公認大会で、勝とデュエマした時と全く同じなのだ。

 

 故にひよりは思う。あの時と同じように、シールド・トリガーで逆転されるではないか、と。

 

(……あの時は無我夢中でプレイしていましたが、今は違います!先輩達とたくさんデュエマをして、私自身、自分の実力が上がっていることを感じています!だから!)

 

「だから……ここは引き下がらず、前に出ます!自分のターン中に、2体目の《モルトNEXT》が出たことで、《バトガイ刃斗》を《バトガイ銀河》に龍解しますっ!」

 

「っ、このタイミングで《バトガイ銀河》……!?」

 

 前に出ることを決意したひよりは《バトガイ刃斗》を《バトガイ銀河》に龍解させる。

 その行動に望は驚く。何故なら、《モルトNEXT》の龍マナ武装5で、アタックの後に《モルトNEXT》をアンタップさせ、3体目のドラゴンを出した後に《バトガイ銀河》に龍解させた方が、盤面で詰めた方が良い。

 シールド・トリガーで除去される、または止められるリスクはあるが、それでも、そうした方が良いと、望は感じた。

 だが、同時に。ひよりがそうしないということは、シールド・トリガーを警戒し、それをケアしつつ、最初から場に出すドラゴンを2体までにして、その2体と《ハートバーン》の裏側、《ガイNEXT》と《モルトNEXT》の2体で詰めていった方が確実に勝利に繋がる。

 

 そう思った望は、自身のシールドにシールド・トリガーがあることを祈りつつ、次に《バトガイ銀河》の攻撃で、ひよりが呼び出すドラゴンに警戒するのだった。

 

「トリガーは……ないわ!」

 

「ヨシっ!アタックの終わりに、《モルトNEXT》の龍マナ武装5で、自身をアンタップ!自分のドラゴンがアンタップしたことで、《ハートバーン》を《ガイNEXT》に龍解ですっ!」

 

 これで、ひよりのクリーチャーは4体起き上がり、まだ龍マナ武装を使っていない《モルトNEXT》が1体と、《バトガイ銀河》で新たに呼び出すドラゴンのことを考えると、事実上、6回の攻撃が可能。

 

 対して、望のシールドは残り3枚。はっきり言って、この盤面で返せる札など、ないに等しい。

 

 

 

 ──だが、望はまだ諦めていなかった。

 

 それどころか、彼女の瞳から闘志が燃えていた。

 まるで、最後まで諦めず、ほんの僅かの可能性に信じて戦う、勝のような姿をしていた。

 

 その光景に、ひよりは一瞬、戸惑うも、すぐに気持ちを切り替え、《バトガイ銀河》に手を置く。

 

「《バトガイ銀河》でシールドを攻撃!攻撃時に、山札からカードを引いて、手札からドラゴンを1体、場に出します!私が場に出すのは《雷龍 ヴァリヴァリウス》です!」

 

(うわっ、何気に面倒なのが出てきた……まぁ、それでも……!)

 

「それでも、ただでは負けてあげないよ!シールド・トリガー!《スローリー・チェーン》と《テック(だん)波壊(はかい)Go(ゴー)》!」

 

「っ!?」

 

 まさかのシールド・トリガーが2枚あったことに、ひよりは驚く。

 そして、望は先程見せた2枚のシールド・トリガーの順番を一瞬考え、すぐに発動させる。

 

「まずは《波壊Go!》から解決するね!選択効果で、今回はコスト5以下のカードをすべて手札に戻すよ!その後に、《スローリー・チェーン》の効果で、ひよりちゃんのクリーチャーはもう私を攻撃できないよ!」

 

「っ、そんな……!ターンエンド、です……」

 

 後一歩及ばず、ひよりはターンエンドを宣言する。

 おまけに封印解放された《伝説(でんせつ)の禁断 ドキンダムX(エックス)》が棒立ち状態である。

 このカードは敗北能力を持ち、一度場を離れると、ひよりは即座に負けるのだ。

 まぁ、パワーは99999もあり、コスト4以下の呪文で選ばれないので、先程の《波壊Go!》のような高コストの呪文が多く入っていなければ、倒せないので、そう簡単に場を離れることはない。

 

 

 

 ──しかし、相手が望でなければ、話は別である。

 

「私のターン!さっきの攻撃で必要なパーツは揃ったわ!まずは呪文、《超次元シャイニー・ホール》で、《ドキンダムX》をタップ!」

 

「っ!?」

 

 早速、《ドキンダムX》の弱点を突いてくる望。

 その無駄のないプレイングにひよりは驚く。

 そして、望は超次元ゾーンから1枚のカードを取り出した。

 

「次に!超次元ゾーンから《勝利のプリンプリン》を場に出すわ!《プリンプリン》の効果で、《バトガイ銀河》を選んで、次の私のターンのはじめまで、ひよりちゃんの《バトガイ銀河》は攻撃とブロックができないわ!」

 

 さらに!と、望は残り6枚のマナをすべてタップさせた。

 

「宇宙より帰ってきた私の切り札!今こそ、共に戦いましょう!《リュウセイ・ジ・アース》を召喚っ!」

 

 ダンッ!と、音を鳴らし、デュエマ台を勢いよく叩き、望は切り札である《リュウセイ・ジ・アース》を場に出す。

 

「《ジ・アース》の効果で、山札の上を見て、そのカードを手札に加えるか、マナに置けるわ!今回は手札に加えるわ!そして──」

 

 望はさらに手札から1枚のカードに手を出す。

 マナはすべて使い切った。にも関わらず、望はさらにカードを使うのだ。

 

 ──そして、彼女が引き抜くカードが、否、そのカードこそ、望の真の切り札である。

 

「さぁ、最終決着(フィナーレ)よ!自分の場に《プリンプリン》と《リュウセイ》がいると、このカードはG(グラビティ)・ゼロで召喚できるわ!」

 

「っ、その効果で呼び出すカードって、まさか……!?」

 

 そこまで言われて、ひよりは1枚のカードを思い出す。

 

 そして、答え合わせをするかのように、望はそのカードを《リュウセイ・ジ・アース》の上に重ねた。

 

「これが私の真の切り札(ACE)!《リュウセイ・ジ・アース》を、《決着のリュウセイ・ジ・エンド》に進化!」

 

 サイキック・クリーチャーではないドラゴンに進化し、上記の通り、特殊なG・ゼロを持った進化クリーチャーで、リュウセイの名を持ったドラゴン、《決着のリュウセイ・ジ・エンド》がバトルゾーンに現れた。

 

「《リュウセイ・ジ・エンド》で、《ドキンダムX》に攻撃!この時、《リュウセイ・ジ・エンド》の効果を発動っ!このクリーチャーが相手クリーチャーとバトルする時、バトルするかわりに、そのクリーチャーを手札に戻して、《リュウセイ・ジ・エンド》をアンタップするわ!」

 

 この効果により、ひよりの《ドキンダムX》は手札に戻され、ひよりは敗北する。

 仮に、この攻撃をブロッカーで防げても、先程の効果で《リュウセイ・ジ・エンド》は場を離れない限り、何度でも《ドキンダムX》を攻撃できる。

 

 

 

 ──よって、ひよりはこの攻撃を防げず、《ドキンダムX》の効果で敗北するのだ。

 

「……《ドキンダムX》の効果で、私はゲームに敗北します」

 

 ひよりはなす術がなく、《ドキンダムX》の効果で敗北し、望は見事、彼女達を相手に3人抜きしたのだ。

 

 

 




リュウセイシリーズって、ボルシャックと同じぐらい、どれもこれもカッコいいですよね?


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ACE73:邂逅。最速の決闘者(デュエリスト)と、もう一人の火野勝。

 

 

 

「……ん?ここは?」

 

 いつも間にか、木の下に寝ていた火野勝()。何で?

 確か僕、山道を登っていたはずなんだけど……?

 

 そう思った僕は直前に起きた記憶が蘇った。

 

 ああ、そうだ。森林の中に何かがいると思って、興味本位で近づいたら、後ろから誰かに突き落とされたんだ……。

 

「……」

 

 何で僕、突き落とされたんだろう?

 

「誰かに恨まれるようなことをしたのだろうか?などと、思っている主だが、安心してください。私の見立てでは、主はそのような人間ではないことは、この禁断竜王が証明済みです!」

「……何で実体化してるの、禁断竜王?」

 

 突然、僕の心を読み取って、人間体で実体化した禁断竜王が目の前でサムズアップして喋り出した。

 

 あの、勝手に人の心読まないでくれる?

 

「すみません、主。どういう訳か、この森の中にいる間、主の心が読めるみたいです」

「え?」

 

 何それ?限定的なエスパー能力?

 どこぞのロボットアニメや超能力を持った主人公じゃないんだよ?

 

「それを言うなら主、○○○○では?」

「待って!それを言ったら、色々と不味いから、それ以上は言わないで!禁断竜王!」

「は、はい!申し訳ありません、主……」

 

 あ、危なかったぁ……。

 何故かはわからないけど、それを言ったら、色々と不味い気がする。何かはわからないけど、そんな気がする!

 

「ひ、一先ず、上に登ろうか、禁断竜王」

「はい。わかりました、主……ただ、ちょっと……」

「?」

 

 どうしたんだろう?と思った僕はすぐに、その原因がわかった。

 上を見上げると、かなり高い崖が視界に入った。

 それを見た僕は口を開けて、驚いてしまった。

 

 これを登るのか?

 

「……主、言わなくてもわかります。流石にこれは私でも無理です」

「だから、人の心を読まないでよ!」

 

 どーすんだよこれ!禁断竜王がクリーチャー化しても登れないんじゃ、どうしようもならないよッ!

 

「だー!考えろ考えろー!何か良い案はないのかー?」

 

 

 

「──ギャーギャーうるさいぞ。火野勝」

「「!?」」

 

 突然、後ろから声が響き、僕と禁断竜王は後ろを振り向いた。

 

 そこには一台の赤バイクと赤いライン状が入った黒いジャージを羽織った青年のような人が一人いた。

 それを見た僕は驚いてしまった。

 

「あ、アナタは──(まこと)さん!?」

 

 その人の名は暗闇(くらやみ)真。

 かつて、世界を滅ぼそうとした最恐にて最悪、そして、最速の決闘者(デュエリスト)だ。

 

 何故、彼が此処にいるのか?

 そう思った僕は真さんに声をかけた。

 

「……どうして、真さんが此処に?」

「……概ね、お前と同じだ。火野勝」

「僕と同じ?真さんも、誰かに突き落とされたんですか?」

「……」

 

 無言で、真さんは頷いた。

 それを見た僕はもう一つ、真さんに質問した。

 

「もう一つ。真さん、誰かに恨まれるような人っていますか?」

「いるわけねぇだろ?バカバカしい。ただ単に、その辺にいる人間を突き落としたかっただけか、そいつにとって、都合が悪いから俺達を突き落としたか……その二択だろ?」

「……どっちにしたって、最悪な理由ですね」

「全くだ……」

 

 

 

「──そんなことはないよ?安心して、お兄ちゃん達……」

 

 

 

「「「ッ!?」」」

 

 突然、少年の声が響き、僕と真さん、そして、禁断竜王はその声に振り向いた。

 

 コソコソ、と、少しずつ、こっちに近づく足音が聴こえた。

 

 影の中から光を浴び、少しずつ、素顔を見え、それを見た僕達は……いや、僕は驚いてしまった。

 

「……ぼ、僕!?」

 

 ──何故なら、その影から現れたのは、顔が少し幼い、もう一人の火野勝()がいたからだ。

 

 

 




お久しぶりです。
長くは語りませんが、少しずつ、こちらの投稿を復帰して、頑張りますので、これからもよろしくお願いします。


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ACE74:自分との対決。

 

 

 

「僕がもう一人……?」

 

 理由がわからない。訳がわからない。口に出しても余計にわからず、理解できない。

 ただただ、脳裏に浮かぶのは「わからない」の一点張り。

 強いてわかっていることは──彼は僕であって“僕じゃない”。

 目の前にいる僕は顔が幼く、背がほんの少し、ほんの少しだけ縮んでいた。何故だかわからないけど。

 

「……お前は火野勝なのか?」

「……」

 

 不意に、真さんが目の前にいる幼い火野勝(もう一人の僕)に問いかけた。

 すると、幼い僕はふっと、ニヤリと奇妙な笑みを浮かべた。

 

「そうさ、ボクは君さ。もしも、という可能性の君であり、君はその可能性に行かなかったボクさ」

「え?」

 

 ──どういう意味だ?

 

 そう脳裏に浮かんだけど、すぐにその答えがわかった。

 

「……アナタ、“別世界の火野勝()”ですね?」

「ピンポーン。大正解!さっすが、電融の王サマ。あ、今は禁断竜王だって?ま、どっちでもいいか!」

 

 

 別世界の僕?それってつまり、平行世界から来た僕ってこと?

 それにしても、さっきからノリが軽い気がするんだけど、気のせい?

 

 

「それよりさ、僕。ボクとデュエマしない?君が勝ったら、ここから出してあげるよ!」

「え?デュエマ?別に良いけど……」

「……待て火野勝」

「……真さん?」

 

 突然、ボクは僕にデュエマを申し込み、僕はそれを了承するけど、真さんが僕の肩を掴んで、その申し出を止めた。

 

「何があるかわからない。ここは俺に任せてもらえないか?」

「……ありがとうございます、真さん。けど、ここは僕に任せてください」

 

 僕のことを心配して真さんは先にカレとデュエマを申し込む提案をするけど、僕はそれを感謝しつつ、拒否した。

 

「なんとなく、これは自分で解決しなきゃいけない気がするんです。理由はわからないですが、そんな気がするんです……」

「憶測で物事を決めるな。だが、お前の意見は尊重する。故に俺が言えることは一つ……必ず勝て」

「ッ、はい!」

 

 そう言って、僕はデッキを取り出し、いつも間にか、もう一人のボクに振り返り、前に出た。

 

「作戦会議は終わったー?」

「うん。終わったよ……キミを倒して、僕達は外に出る!!」

 

 そう宣言すると、僕とカレの前に木製のデュエマ台が現れた。

 

「随分と気合か入ってるけど、最初から飛ばさないことをオススメするよ、僕」

「……肝に銘じておくよ、ボク」

「それじゃあ、始めようか?」

「ああ……」

 

「「デュエマ・スタートッ!!」」

 

 

 

 

 

「《アシスター・コッピ》を召喚!」

「……相変わらず、ボルシャックを使うね」

 

 ──こうして始まった僕とショウのデュエマ。

 

 先行は僕からで、2ターン目にアーマードのコストを1軽減してくれる《アシスター・コッピ》を無事に召喚できた。

 いつもはあまり引けないけど、今回は初手からあって良かった。

 

 対してショウは僕のマナゾーンを見て、呆れていた。

 

「ボクのターン……君に見せてあげるよ?アーマードの“もう一つの可能性”を……」

「……え?」

 

 突然、カレはそんなことを言い出し、2枚のマナをタップした。

 

「……ジェネレート!《竜装(りゅうそう) ゴウソク・タキオンアーマー》!」

「!?」

 

 カレが場に出したのは──コスト2の火文明のクロスギア、《竜装 ゴウソク・タキオンアーマー》。

 それを見た時、僕は驚いた。何故なら、見たことないクロスギア(カード)だからだ。

 

「クロスギア!?それに見たことないカードだ!?」

「驚くのはまだ早いよ?このクロスギアが場にいる限り、ボクのクロスギアを出す時、またはクロスする時、そのクロスギアのコストを1軽減できる。さらに、ボクのサムライ・クリーチャーのコストを1軽減できる」

「な!?」

 

 何それ!?効果盛りすぎでしょ!?

 頭おかしいんじゃない!?

 

「ボクはこれでターンエンド。さぁ、君のアーマードを……いや、ボルシャックを見せてくれよ?」

 

 僕が脳裏で突っ込む中、カレは僕に挑発した。

 

「……わかった。見せてあげるよ!僕のボルシャックを!僕のターン!」

 

 本当はあの《タキオンアーマー》を退かしたいけど、断念ながら《ザーク・(カノン)・ピッチ》が引けてない。

 

 だから、ここは──自分の動きを通す!

 

「《アシスター・コッピ》の効果で、各ターンに1度、アーマードを使うコストを1軽減!3マナで、《ボルシャック・バラフィオル》を召喚ッ!ターンエンド!」

 

 自分のボルシャックが攻撃する度に、仲間を増やす《ボルシャック・バラフィオル》を召喚した僕は次のターンに備え、ターンを終えた。

 

 手札にはスピードアタッカーを持ったボルシャックが2枚ある。そのうち1枚はコスト4の《ボルシャック・コーヤ・ドラゴン》がある。

 次のターン、《アシスター・コッピ》が仮に破壊されても、このカードを使えば、《ボルシャック・バラフィオル》の効果が使える。

 

 つまり、次のターンが来れば、僕の勝利が確定する!

 

「──何を勝ち誇っているか知らないけど、君に次のターンは来ないよ」

「え?」

 

 何を言ってもいるんだ?

 

 そう思った瞬間、目の前にいるボクは3枚のマナをタップした。

 

「勝利という名の勝利(ビクトリー)を掴め!これがボクの切り札(ACE)だッ!《ボルメテウス・武者(むしゃ)・ドラゴン「武偉(ブイ)」》を召喚ッ!」

 

 

 



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ACE75:勝の本音。

 

 

 

「勝利という名の勝利(ビクトリー)を掴め!これがボクの切り札(ACE)だッ!《ボルメテウス・武者(むしゃ)・ドラゴン「武偉(ブイ)」》を召喚ッ!」

「む、武者・ドラゴン!?」

 

 ボルシャックと対をなすボルメテウスの名を持ったドラゴン。

 その中でも特別、異質なドラゴンがおり、それが《ボルメテウス・武者・ドラゴン》である。

 しかし、今、目の前にいる《ボルメテウス・武者・ドラゴン》は勝が知っている《ボルメテウス・武者・ドラゴン》の姿ではなかった。

 

 別世界の勝が力を求め、その際に新たな姿として生まれたのが《ボルメテウス・武者・ドラゴン「武偉」》である。

 

 つまり、これは《ボルメテウス・武者・ドラゴン》の未来の姿である。

 

「《「武偉」》が出た時の効果で、自分のシールドをブレイクできる!そうしたら、相手のパワー6000以下のクリーチャーを1体破壊できる!君の《アシスター・コッピ》を破壊!」

「っ、《アシスター・コッピ》が……!?」

「まだだよ?《「武偉」》のもう一つの効果を発動!侍流ジェネレート!《竜牙 リュウジン・ドスファング》を場に出すよ!」

「っ!?そんな……!?」

 

 あの《武者・ドラゴン》、侍流ジェネレートを持っているの!?

 

 もう一人の勝が出した《ボルメテウス・武者・ドラゴン「武偉」》の効果に、侍流ジェネレートを持っていることに勝は驚く。

 

「驚くのはまだ早いよ?《ドスファング》が出た時、またはこのカードにクロスしているクリーチャーが攻撃する時、サムライ・メクレイド5を発動でき!」

「な、メクレイドも!?」

 

 自分が使っている戦略が目の前にいるもう1人の自分が持っていることに勝は驚く。

 

「山札から出てくるのは……お?良い引き。出すのはコレ!《聖獣ピュアイカズキ》だよ!」

「!?」

 

 ぴゅ、《ピュアイカズキ》!?よりによって、そのカードなの!?

 

 ショウが出した《ピュアイカズキ》に、勝は絶望する。

 理由はあの《ピュアイカズキ》には、出た時に、山札の上から5枚見て、その中にクロスギアかあれば、1枚選び、ノーコストで場に出せるのだ。

 もしも、ここで2枚目の《ドスファング》が出されたら……考えただけで、恐怖しかない。

 

「さぁ、《ピュアイカズキ》の効果で山札の上を捲るよー!」

 

 頼む!2枚目の《ドスファング》よ、来ないでくれ!

 

 そう脳裏で祈るのも、その祈りはあっさり裏切られた。

 

「お?今日はついてるね。という訳で、2枚目の《ドスファング》を場に出すよ!」

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッー!」

「ハハハ!楽しくなってきた!」

「こっちは全然楽しくないよ!?」

 

 僕がそう突っ込むと、先程、笑って楽しんでいたもう1人のボクは顔を歪ませて、僕を睨んだ。

 

「何を言ってるの?デュエマは楽しむものでしょ?」

「え?」

 

 真剣な表情で、カレはそう言い、僕はその場で固まった。

 何故なら、その言葉には圧のようなものが込められていた。

 

「好きなことは楽しんでやるものでしょ?それなのに、君は何だ?さっきから全然、楽しくなさそうじゃない?何で?」

「な、何でって……」

 

 それは恐らく、大事な人を守れなかったことへの罪悪感と、大事な場面で負けたことへの敗北感。

 

 ──所謂、挫折だ。

 

「……僕は負けたくないんだ!大事な人が傷つくのが嫌なんだ!だから……だから、僕は……!」

「楽しむことを捨てたの?」

「!?ああ、そうだ!僕はいつか大人になる!大人になったら、好きなことができなくなる!楽しむ暇もなくなる!だったら、こんなの最初から……ないほうが良い!それが最善なんだ!」

「主……」

「……」

 

 それは勝の本音だ。今まで溜まりに溜まった感情が爆発し、目の前にいる自分に吐き出していた。

 それを見守り、心配する禁断竜王と、何かを察したのか、真は静かに拳を強く握った。

 

「そんなの……つまらないよ。生きていて、楽しいの?」

「楽しくない!だけど、生きるためには、守るためには、何かを切り捨てなければならないんだッ!」

「……それが、君の本音なの?」

「ああ、そうだ!これが僕の本音だ!キミにはわからないだろうね?僕の苦しみが……!」

 

 気がつけば、僕は泣きながら叫んでいた。

 何故、涙が出ているのか、わからない。わからないけど、このデュエマだけは譲れない。負けたくない。

 

 

「──ああ、わからないよ」

「え?」

 

 

 不意に、カレは切り捨てるかのように、そう言った。

 

「わからない……だって?」

「……うん。正確には、わかりたくない、かな?だけど、これだけは言える。今の君は間違ってる」

「!?」

 

 その時、僕の中で何かが崩れた。

 

「2枚目の《ドスファング》のサムライ・メクレイド5を発動!来い!《爆炎ホワイトグレンオー》!」

 

 あれは確か、サムライ・クリーチャーにすべてスピードアタッカーを与えるクリーチャー、だったか?

 

「……自分のサムライ・クリーチャーなら、《ドスファング》はただでクロスできる。《ホワイトグレンオー》に《ドスファング》2枚をダブルクロス!そのまま《ホワイトグレンオー》で攻撃!この時、《ドスファング》2枚のサムライ・メクレイド5をそれぞれ発動!」

 

 刹那。2枚目の《ホワイトグレンオー》が現れた。

 その後に、もう一体のサムライ・クリーチャーが現れた。

 

 それは──

 

 

 

「──二天一流、お借りします!《ヴァルキリアス・武者・ムサシ「弍天」》ッ!」

 

 

 



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ACE76:完全敗北。

 

 

 

「──二天一流、お借りします!《ヴァルキリアス・武者・ムサシ「弍天(にてん)」》ッ!」

 

 

 ──それは《戦極竜ヴァルキリアス・ムサシ》が武者の名称を得た新たな姿、《ヴァルキリアス・武者・ムサシ「弍天」》だ。

 

「《「弍天」》の出た時の効果!自分の火のエレメントの数以下の相手のエレメントを一つ破壊できる!」

 

 今、ショウの場には《タキオンアーマー》と《「武偉」》。そして、多色カードであり、火文明を持つ《「弍天」》、《ドスファング》の2枚。合計5枚の火のエレメントがある。

 

 よって、勝の場にいるコスト4の《ボルシャック・バラフィオル》は破壊されるのだ。

 

「君の場の《ボルシャック・バラフィオル》を破壊!」

「っ、そんな《ボルシャック・バラフィオル》が……!?」

 

 無惨にも破壊された《ボルシャック・バラフィオル》に勝は絶望する。

 無理もない。今の《ボルシャック・バラフィオル》はタマシード状態である。

 タマシード状態である間は、クリーチャー破壊には一切効かない。だが、最近のデュエマはクリーチャー以外のカードを破壊する“カード指定除去”や表向きのカードを破壊する“エレメント破壊”の二つがある。

 故に、タマシード・クリーチャーである《ボルシャック・バラフィオル》や《ボルシャック・フォース・ドラゴン》にとっては天敵である。

 

 

「その後、光のエレメントの数だけドロー!」

 

 

 多色カードである《ドスファング》と《「弍天」》は光文明である。よって、《ピュアイカズキ》を含めると、4枚ドローができる。

 

「そして、これがメインの攻撃!《ホワイトグレンオー》でシールドをブレイクッ!」

「っ、トリガーは……ない」

「それなら《「弍天」》で攻撃!攻撃する時に、《ミラダンテⅫ》に革命チェンジッ!」

「み、《ミラダンテⅫ》!?そんなカードまで入ってるの!?」

 

 ここに来て、まさかの《ミラダンテⅫ》が入っていることに勝は驚く。

 

「《ミラダンテⅫ》のファイナル革命ッ!次の相手のターンの終わりまで、相手はコスト7以下のクリーチャーを召喚できない!さらに、コスト5以下の光の呪文を唱えられる!けど、今回はないから、かわりにカードを1枚ドロー!最後に《「弍天」》の効果で、自分の手札の枚数以下のアーマードか、サムライのカードをただ使える!使うのは《「弍天」》!クリーチャーの場合はノーコストで召喚だよー!」

「っ、そんな!?こんなの……──」

 

 

 ──返せるわけがない。

 

 

 そう思った時、僕はブラックキャットで再会した結衣ちゃんとのデュエマを思い出した。

 

 

 ──ああ、そうか……僕はまた負けるのか……。

 

 

「《ミラダンテⅫ》で、シールドをT・ブレイクッ!」

「……トリガーはないよ」

 

 敗北を確信した僕はブレイクされたシールドを手札に加えた。

 

「もう一度、《「弍天」》で攻撃!攻撃する時に《音卿の精霊龍 ラフルル・ラブ》に革命チェンジ!今度は呪文を止めるよ!」

「……ないよ」

 

 再度、《「弍天」》の攻撃時に、ショウはまた革命チェンジを宣言し、今度は呪文を止める《ラフルル・ラブ》を場に出す。そのまま勝の最後のシールドをブレイクした。

 ブレイクされたシールドの中に、G・ストライクの《クック・轟・ブルッチ》があったが、あまりの物量の多さに、勝は大人しく、そのカードを手札に加えた。

 

 

 

「──コイツでトドメだよッ!《ボルメテウス・武者・ドラゴン「武偉」》でダイレクトアタックッ!」

 

 

 

 

 

 対戦を終えた勝はその場に膝をつき、両手を支えに。地面についた。

 

「また負けた……」

「負けたなら、もう一度、立ち上がれば良い。僕に勝つまで、何度でも何度でも、立ち上がって、足掻いて、そして……」

「そんな簡単なことを言うなよっ!」

 

 突然、勝は叫び声を上げ、それを見た真は勝を強引に立ち上がらせ、そのまま勝の顔を殴った。

 

「主!?」

 

 それを見た禁断竜王は叫び、勝に駆け寄った。

 

「良い加減にしろ!火野勝!俺の知ってるお前はそんなやつではないだろ!」

「真さんに僕の何がわかるって言うんですか!?もう嫌なんだよっ!負けることも!戦うことも!何もかも嫌なんだよっ!」

「!?」

 

 その言葉に、真は驚く。何故なら勝の瞳には光がないからだ。

 恐らく、先程の戦いで、心に深い傷を負ったのだろう。

 同時に戦うことへの拒絶反応を起こしていた。

 

「それでも、誰かがやらなきゃ……誰かがやらなきゃ、ここから抜け出せない。だったら、戦って戦って戦い抜いてやる!」

「火野……お前……」

 

 しかし、当の本人は気づいていない。

 気づかず、ただ使命感のまま抗い、戦おうとしている。

 

 

 ──しかし、もう1人の火野勝は違った。

 

 

「──いや、良いよ。なんか冷めたわ……」

「え?」

 

 突然、そんなことを言い出すショウに、勝は驚き、カレの目を見た。

 

 

 ──その瞳はまるで冷めた目をしていた。自分自身を哀れみ、同情していた。

 

 

 それを無意識に気づいた勝は怒りで声を荒げた。

 

「なん……だよ……何なんだよっ!その目は!?僕を哀れんでいるのか!?同情しているのか!?だとしたら、人を馬鹿にするのも大概にしろ!」

「……君は馬鹿だ」

「……は?」

 

 また意味不明なことをショウは自分自身に言い出した。

 

「馬鹿で愚かで醜い人だ……そんな人にデッキが……カードが答えるわけないだろ?」

「何を言っているんだ……?」

「わからない?わからないなら良いよ。そのかわり、もう二度とボクの前に現れないでくれ……」

 

 そう言って、ショウは3人に背を向け、森の中に入っていた。

 

「おい、待て!」

 

 それを見た真はショウを追いかけようと、足を前に踏み込むと、周囲の景色が変わった。

 

「!?何!?」

「これは一体……?」

 

 突然、周囲の景色が変わったことに真と禁断竜王は驚き、勝は「ふ、ふざけるな……」と言って、その場に倒れた。

 

「主!?」

「おい、火野!返事をしろ!火野ぉぉぉぉぉッ!」

 

 二人の掛け声に勝は反応を返せず、そのまま意識を手放した。

 

 

 



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ACE77:アイドルだから強いわけではない。

ACE73の続きになるけど、時間帯的には同時に起きているので、一応、ACE76からの続きになります。


 

 

 

 一方、その頃。何も知らない咲恋達は……。

 

「すみません、負けちゃいました……」

「そんなに落ち込まないの、ひよりちゃん」

「そうだよ?相手はアイドル。それでいて、デュエマの腕がとーても強い人なのよ。仕方がないよ……」

「そう……ですが……」

 

 望に負けたひよりは激しく落ち込み、それを励ます咲恋とマリ。

 しかし、一向に元気を取り戻さないひより。

 その姿を見て、望はひよりの前に立つ。

 

「……ひよりちゃん、だって?少しお話しても良いかな?」

「?なんでしょうか?」

 

 ひよりが問いかけると、望は「にぃぃー!」と言いながら、両手でひよりの頬を引っ張った。

 

「ふぇふぇんですか!?」

 

 突然、自分の頬を引っ張る望に、ひよりは「何するんですか!?」と、抗議する。

 

「よしよし。少しは元気になったみたいね」

「ふぇ?」

 

 望がそう言うと、ひよりは疑問に思い、ひよりの頬を放し、望は少し間を置いて、口を開いた。

 

「……昔ね、ある人に言われたの。一度失敗したぐらいで凹まない。成功するまで、何度でも挑戦して挑戦して挑戦して、成功した時は思いっきり笑おう!って」

 

 突然、望は語りだし、それを聞いたひよりは失敗した時はどうするのか、疑問に思い、望に問いかけた。

 

「失敗した時は……?」

「……」

 

 ひよりの質問に、望は少し考え、口を開いた。

 

「……失敗した時は思いっきり泣こうって言われたの。沢山泣いて、泣いた後は新しいことに挑戦しようって言われたの……私の場合、そんなことはなかったけど、もし、そうなってたら、多分泣いてた」

「……」

 

 望がひよりに何を伝えたいのか、何となく、咲恋とマリは理解した。

 

 彼女が言いたいのは最後まで諦めず、ほんの小さなチャンスを掴もう、と、ひよりにそう言いたいのだと、二人はそう思った。

 

「……わたし、もう凹みません!例え、何度凹みかけても、諦めず、勝利を掴んでみせます!」

 

 望の想いが伝わったのか、ひよりは元気を取り戻し、それを見た望は満面の笑顔を見せる。

 

「……うん!その意気よ!ひよりちゃん!」

 

 望の励ましで元気を取り戻したひよりを見て、咲恋とマリは静かに微笑んだ。

 

 

 

 ──その時だ。

 

「皆、大変だ!」

「!?どうしたの!?裕也くん!?」

 

 突然、望達の前に裕也が慌てて現れ、彼の慌てぶりに何か異常事態が発生したと思い、望は彼に問いかけた。

 

 

 ──そして、次の瞬間。

 

 裕也の言葉に望を含む、その場にいる女性陣全員が目を開き、驚く。

 

「──火野が何者かに襲われて、怪我をした!」

 

『……え?』

 

 

 



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ACE78:悪夢──それは絶望への始まり。

 

 

 

 

「《ザーディクリカ》でダイレクトアタック!」

 

 ──負けてしまった。

 

 

「《バウワウジャ》で、ダイレクトアタックッ!」

 

 ──また負けてしまった。

 

 

「《ボルメテウス・武者・ドラゴン「武偉」》でダイレクトアタックッ!」

 

 ──またまた負けてしまった。

 

 

 ──何故、僕は肝心な時に負けてしまうのだろうか?

 

 ──何故、僕は冷静な判断(プレイ)ができないだろうか?

 

 ……何故だ?僕は強くなったんじゃないのか?

 

 焔秋乃(彼女)と出会って、僕は変わった、強くなった。

 その筈なのに、何故、僕は大事な場面で負けるんだ?

 

 

 ……わからない。

 

 

 わからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないッ!わからないッ!わからないッ!わからないッ!わからないッ!わからないッ!わからないッ!わからないッ!わからないッ!わからないッ!わからないッ!わからないッ!わからないッ!わからないッ!わからないッ!

 

 

「何で僕は大事な場面で負けてしまうんだッ!」

 

 そう強く叫んだ時。僕の目の前に、幼い僕が現れた。

 

「何故だッ!何故なんだッ!僕は確かに、強くなったッ!強くなった筈なのに、何故、僕は負けるんだッ!」

 

「……それは──

 

 

 

 ──君がデュエマを好きではないからだよ?」

 

 

「ッ!?何を……!?」

 

 何を言っているんだ?

 

 そう言い返す前に、カレは僕の言葉を遮った。

 

「いや、それ以前に。君は本当に、彼らが好きなのかい?」

 

 カレはそう言って、僕を──否、僕の後ろにいる“何か”に指を指した。

 それを見た僕は恐る恐る後ろに振り返った。

 

「──ッ!?」

 

 振り返ると、そこにはボロボロのボルシャック達がいた。

 

 

 ──それだけじゃない。

 

 

 咲恋ちゃん、ひよりちゃん、マリちゃん、眼鏡君、早峰先輩、エリカさん──そして、その中央に倒れている秋乃さんの姿があった。

 

 

「違う!僕はこんなの……望んでない!」

 

「違わないよ……」

 

「ッ……!?」

 

 

 秋乃さんの顔で、“彼女”の声が聞こえた。

 

 

 ──“結衣”だ。

 

 

 そう思った時、目の前の背景が一気に変わり、今度は黒江、結衣、キャルの順に、3人が並んでいた。

 

 

「なんで約束を破ったの?」

 

 

「なんでわたしを見捨てたの?」

 

 

「ウチらは友達じゃないのか?」

 

 

「──ッ、違う!」

 

 

 違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違うちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウ!

 

 

 僕は目の前の光景に全力で否定した。

 そうしなければ、自分じゃいられない。否定しなければ、今までの努力が無駄になる。そう思った。

 

 

 ──しかし、次の瞬間。

 

 

「あ……」

 

 

 僕の前に、またボクが──否、ボクが沢山現れて、僕は口を詰まらせた。

 

 

「デュエマが好きなら、カードやクリーチャー、人を大事にするよね?」

 

「秋乃さんが好きなら、彼女なら、もっと大事にするよね?」

 

「なのに君、全然大事にしてないよね?」

 

「それって、デュエマが好きじゃないってことだよね?」

 

「違う!僕は……」

 

「違わないよ!」

 

「ッ!?」

 

 その言葉を聞いて、僕は後ずさった。

 

 同時に、沢山のボクが一人になり、手を上に上げた。

 

 すると、今度はボルメテウス・武者・ドラゴン「武偉」が実体化し、僕は恐怖のあまり、その場に膝を着き、後ずさった。

 

「い、いやだッ!いやだいやだいやだ、いやだぁぁぁぁぁッ!」

 

「やれッ!ボルメテウス・武者・ドラゴン「武偉」!」

 

「グオオォォォッー!」

 

「う……ぁ……」

 

 刹那。ボルメテウス・武者・ドラゴン「武偉」の炎の息吹が僕に襲いかかった。

 

 それを見て、僕は両手で顔を覆い隠した。

 

 

 



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ACE79:解放──しかし、絶望は終わらない。

 

 

 

「うわあああああぁぁぁぁぁッ!?」

 

「!?勝様!?」

 

 ──次の瞬間、僕は叫び声を上げて、ベッドから起き上がった。

 近くで看病していたマリちゃんが驚き、慌てて、僕に近寄って、僕の背中をさすった。

 

「はぁ……はぁ……マリ、ちゃん……?」

「大丈夫ですか、勝様?」

 

 聞かれて、僕は一度、深呼吸をし、マリちゃんに「大丈夫……」と一言伝えた。

 

「本当に大丈夫ですか?だいぶうなされていたようですが……」

「……」

 

 僕はマリちゃんの質問に答える前に周囲を見渡し、彼女にここがどこなのか、確認するため、問いかけた。

 

「マリちゃん、ここは……?」

「ここは道場の休憩室です。簡易ですが、勝様はここで寝かせてもらっていたんです……」

「そう、なんだ……」

 

 マリちゃんの説明に、僕は納得し、ふっと、たまたま目に入った鏡に視点を向けた。

 

 

 ──すると、夢で見たボクが鏡の中に写った。

 

 

「──君はまだ友達ごっこを続けるの?」

 

「う、うわあああああぁぁぁぁぁッ!?」

 

「!?勝様!?」

 

 

 僕は思わず、叫び声を上げ、マリちゃんがいるにも関わらず、枕を鏡に向けて投げ、そのままベッドから降りて、部屋を出た。

 

 

 

「きゃ!?」

 

 部屋を出て、すぐ、誰かにぶつかった。

 

 相手は──ひよりちゃんだ。

 

「いてて……先輩、急に部屋から出ないでくださいよー」

 

「ご、ごめん、ひより、ちゃ……」

 

 ひよりちゃんに謝ろうとした一瞬。悪夢で見たひよりちゃんの姿が浮かんだ。

 

「う、うわあああああぁぁぁぁぁッ!?」

 

 それを見た僕はまた叫び声を上げて、慌てて、ひよりちゃんから離れた。

 

「先輩!?」

「何事だ!?」

 

 騒動に駆けつけて、真さんが来て、ひよりちゃんに問いかけた。

 

「それが先輩が突然、叫び声を上げて、それで……」

「まったく、面倒な……!」

 

 そう言いながら、真さんは僕の腹を殴り、「うっ……」と、僕は呻き声を上げ、そのまま静かに気を失った。

 

 

 

 ──数時間後。

 

 また目を覚ました僕はさっきと同じ場所で寝ていた。

 僕はベッドから起き上がらず、目だけを動かし、横を見ると、マリちゃんとひよりちゃん、そして、秋乃さんとエリカさんの4人がいた。

 

「……」

「勝様!良かった、目を覚ましましたわ!」

「もー、先輩。急に叫び声を上げるからビックリしました!」

「……ごめん。ひよりちゃん……」

 

 ひよりちゃんに謝罪した直後、扉からノックがかかり、マリちゃんが「どうぞ」と言った後、真さんが入ってきた。

 

「お、目が覚めたな、火野勝……」

「ええ、お陰様で……」

「そうか……それなら早速──今から俺とデュエマをするぞ?」

「……え?」

 

 

 ──何を言っているんだ?

 

 

「ちょっと貴方、いきなり何を!?」

「何って、決まっている。デュエマだ。お前達はデュエマ甲子園に向けて合宿に来ているのだろう?だったら、実戦あるのみだ……」

「だからって、こんないきなり……!」

「いいよ、秋乃さん……」

「!?勝様!?」

 

 声を荒げる秋乃さんの姿を見て、僕はベッドから起き上がり、視点を真さんに向き直った。

 

「……真さん、あなたのデュエマ、受けます」

「そうか。それでこそ、火野勝だ……」

「その代わり、一つ、条件があります」

「?何だ?言ってみろ」

「……」

 

 僕は一度、秋乃さんに視点を向け、すぐさま、真さんに向き直り、静かに口を開いた。

 

 

「──僕が勝ったら、僕は金輪際(こんりんざい)、デュエマをやめます」

 

 

 



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ACE80:宣言──勝、デュエマをやめる。

 

 

 

「──僕が勝ったら、僕は金輪際(こんりんざい)、デュエマをやめます」

「何……!?」

 

 

 突然、勝様はデュエマをやめることを宣言した。

 それを聞いた秋乃(わたくし)達は驚き、わたくしは思わず、「……え?」と、声を漏らしてしまった。

 

「……貴様、本気か?」

「本気です」

「そうか……それなら仕方がない。だったら俺からも条件を出す。俺が勝ったら、俺から出す課題を必ず成功させろ!」

「……わかりました」

 

 勝様が返事を返すと、真様は「先に行って待っている」と言って、その場を後にしました。

 残されたわたくし達は勝様に視点を向けるも、勝様はわたくし達の顔を見ず、静かに立ち上がり、デッキを持って、扉の前まで歩き、その場で止まりました。

 

「……それじゃあ、行ってくるよ」

「ッ!?待ってください!勝様!」

 

 思わず、声を荒げてしまった。

 けど、今はそんなことを気にしていられない。

 

「……本気でやめるつもりですの?」

「……デュエマのこと?」

「ええ……嘘、ですよね?勝様?」

「ううん。嘘じゃないよ。僕は……本気だよ、秋乃さん……」

「──ッ!?」

 

 その言葉に、わたくしの胸は何かに縛られるかのように強く、痛く、感じました。

 同時に、勝様の言葉に寂しさを感じました。何故かはわかりませんが、直感的にそう思いました。

 けど、勝様は冷たく、静かにそう言い切り、そのまま扉を開けて、真様の元に向かいました。

 

 

 ──勝様、何故ですの?

 あんなにデュエマが好きで、誰よりも強くなろうとしていたのに、どうして……?

 

 

「……お嬢様。私達も向かいましょう」

「……」

 

 わたくしの気持ちを察して、エリカがわたくしに声をかけました。

 

「勝様にも何か考えがあって、ああ言っているだけですし、私達も向かって確かめましょう」

「そうですよ!きっと、勢いで言い間違えただけかもしれませんよ!」

「……そうですわね」

 

 マリちゃんとひよりちゃんの励ましで、わたくしは勝様の後を追うことを決意し、咲恋さん達に連絡を入れて、急ぎ、勝様の後を追いかけました。

 

 

 

 

 

 ──場所は変わり、ACE武神(ぶじん)道場の広場。

 そこで火野勝と暗闇真の二人は向かい合っていた。

 

「来たか……それでは早速始めるぞ?」

「……ええ」

 

 真の問いかけに、勝は一言返事を返し、デッキを取り出した。

 それを見た真は自身もデッキを取り出し、構える。

 

「いくぞ──」

 

 

「「──デュエマ、スタートッ!!」」

 

 

 

 

 

「──俺のターン!《カンゴク入道(にゅうどう)》を召喚!ターン終了時に、《カンゴク入道》の効果で俺のシールドを1枚手札に加える!ターンエンド!」

「《カンゴク》……それに《禁断》か……」

 

 おまけに、マナゾーンには《百鬼(ひゃっき)邪王門(じゃおうもん)》が置かれている。

 十中八九、《邪王門》入り赤黒バイクか?

 だとしたら、次のターン辺りに火のコマンドか、追加で《カンゴク入道》辺りを出すかの二択か……。

 

 僕は真さんのバトルゾーンとマナゾーンを見て、真さんが扱うデッキが《邪王門》入り赤黒バイクと予想した。

 今回、僕が使うデッキは以前、《モモキングNEX》と《ボルシャック・バラフィオル》を軸にした赤緑ボルシャック。

 

 久しぶりに使うけど、初手は上々(うえうえ)と言った感じだ。

 ただ、バイクデッキの特性上、赤緑ボルシャックとの相性はあまり良くない……。

 

 ──まぁ、考えても仕方がないか!

 

「できることをやるだけだッ!呪文、《メンデルス・ゾーン》!2枚見て……よしよし、2枚ともドラゴンだから、そのままマナを2枚増やす!ターンエンド!」

「俺のターン!《影速(えいそく) ザ・トリッパー》を召喚!火のコマンドが出たため、《禁断》の封印を1枚墓地に置く……」

「っ、《ブラックゾーン》……!!」

 

 よりによって、《ブラックゾーン》が墓地に置かれた……!!

 

 真さんの《禁断〜封印されしX〜》の封印から墓地に置かれたカードを見て、僕は悪態をついた。

 

 

 ──《禁断の轟速(ごうそく) ブラックゾーン》

 T(トリプル)・ブレイカーとS級侵略[轟速]──自分の手札か墓地、またはバトルゾーンの火または闇のコマンドが攻撃する時、進化できる能力──を持ち、場に出た時に、こっちのパワーが一番小さいクリーチャーに封印する能力を持つ。

 

 

 強力な能力が豊富で、恐らく、今回の真さんの切り札だ。

 何より、さっき出した《ザ・トリッパー》はコマンドを持っている。故に、真さんはこのターンで、僕のシールドを4枚ブレイクできる。

 

「《ザ・トリッパー》で攻撃!侵略はせず、そのままシールドをブレイクだ!」

「……え?」

 

 しかし、真さんの考えは違った。

 真さんは《ザ・トリッパー》を《ブラックゾーン》に侵略させず、《ザ・トリッパー》のまま、僕のシールドをブレイクした。

 

「……トリガーはありません」

「そうか。それなら《カンゴク入道》もシールドをブレイクだ!」

「……これもありません」

「ターン終了時、《カンゴク入道》の効果でシールドを1枚、手札に加える。ターンエンド」

「……僕のターン。マナチャージ……あ」

 

 そうか。そういうことか。

 さっき、《ザ・トリッパー》を《ブラックゾーン》に侵略しなかったのは、《ザ・トリッパー》が持つ能力──相手はカードをマナゾーンに置く時、タップして置く──を活かすためか。

 そうだとしたら、さっき《ブラックゾーン》に侵略しなかったのも納得ができる。

 おまけに、《カンゴク》の鬼タイム──自分と相手のシールドの合計が6以下の時に発動する能力──で、パワーが5000に上がっている。

 

「やりますね、真さん……」

「いつまでも速さに拘る訳にはいかないからな。これぐらいは誰でもできる」

「だとしても、それを瞬時にやれるのは流石ですね……」

 

 正直に言うと、こっちの戦術がかなり崩された。

 

 ──けど、何もできない訳ではない!

 

「久しぶりにいくよ!《ボルシャック・フォース・ドラゴン》!場に出た時に、相手のパワー4000以下のクリーチャーを1体破壊できる!《ザ・トリッパー》を破壊っ!」

「ッ、やるな……!」

「こっちだって、やられっぱなしじゃいられない!ターンエンド!」

「……そうか。だが、その前にやらなければならないことがあるぞ?」

 

 ふっと、真さんは僕から視点を外し、顔を右に向けた。それを見た僕は真さんが向いた方に振り向いた。

 

「……っ」

 

 そこにはデュエマ部の皆がいた。

 

 

 



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ACE81:想い──皆の想い、真の想い。そして──

 

 

 

「勝!アンタ、デュエマをやめるって本気なの!?」

「ざけんじゃねぇぞ!オレはまだテメエに勝ってねえぞ!」

「火野先輩!俺達には貴方が必要です!だから、デュエマをやめないでください!」

 

 僕が真さんとデュエマをしている中、咲恋ちゃん、早峰先輩、眼鏡くんの3人がそれぞれ僕に想いを伝え、説得した

 

 ……悪いけど、それは無理な相談だ。

 

「……真さん、デュエマを続けましょう」

「「「!?」」」

 

 けど、僕は3人の説得を無視し、真さんとのデュエマを続けた。

 それを見た彼女──エリカさんがついにブチギレた。

 

「火野勝!ふざけるのも大概にしなさい!」

「エリカ!?ちょっと落ち着いて!」

「落ち着いてなどいられません!先程から何ですか?突然、デュエマをやめるなど、本気だの言い出して、貴方はそういう人ではないでしょう!下手な嘘を()くぐらいから、もっとマトモな嘘を──」

 

「──うるさいっ!」

 

『!?』

 

 あまりにもエリカさんがやかましいので、僕はついに怒鳴ってしまった。

 

 もう……我慢の限界だ!

 

「さっきからなんだ?人がデュエマをやめるつもりなのに、君たちの勝手な都合で僕に押しつけるな!僕はこの合宿で気付かされたんだ!──自分は……本当はデュエマが嫌いだってことに!」

『!?』

 

 その言葉に皆は驚き、僕ははっとなって、我に返った。

 

 ああ、つい勢いで言ってしまった。けど、こればかりは仕方がない。訂正のしようがない。

 

 暫く沈黙が続いたが、先に僕が口を切り開いた。

 

「……わかっただろ?これが本当の僕だ。だから、僕のことは、もうほっといてくれ……」

「勝様……」

「先輩……」

 

 僕がそう言うと、秋乃さんとひよりちゃんが落ち込んだ。そして、カードになってわからないが、禁断竜王も落ち込んでいる気がした。

 

 

 またしても沈黙。空気が最悪と言った状況だ。

 正直、デュエマなんて、続けられる気がしない。

 

 

 ──しかし、ただ一人、真さんだけが違った。

 

 

「──ほっとけるわけないだろ?この馬鹿者」

 

 突然、真さんは僕に罵倒し、僕は思わず、「……え?」と驚いてしまった。

 

「火野勝。お前は……本当はデュエマが好きだ。誰よりも好きだからこそ、嫌いになる理由がない。あるとすれば、もう一人の(お前)の言葉だ。だが、気にするな……ヤツの言葉を()に受けるな。耳を貸すな……」

「けど、僕は……」

「それだ。その思考こそ、お前の考えを歪ませている原因だ。故に──俺がお前の根性を叩き直してやる!俺のターン!」

 

 勢いよく、カードを引き、真さんは「よし!」と一言言って、手札を1枚、マナに置いた。

 これで真さんのマナは4マナ。ソニック・コマンドの大半が4マナで固められているから、ここいらで動いてくるはず。

 

 

「このカードで、お前の目を覚ましてやる!いくぞ!──《絶速(ぜっそく) ザ・ヒート》を召喚ッ!」

 

 

 それは今まで見てきたソニック・コマンドと違った。

 とても異質で、かなり不気味。けれど、心は燃えていた。

 まさに──灼熱。ヒートの名前に恥じぬクリーチャーだった。

 

 

『オラオラオラァ!魂燃えてるか?真?』

 

「安心しろ。今日の所は最初からヒートアップしている」

 

『そうか?そうだな!そういうことにするぜ!という訳でオマエ達、魂燃えてるかぁ?』

 

『……え?カードの中からクリーチャーが喋った!?』

 

 突然、カードの中から話し声が聞こえることに、僕以外のデュエマ部の皆は驚き、困惑した。

 

 そう言えば、真さんのクリーチャーって、結構話し声が聞こえやすいんだよね……。

 それはそうと。あのザ・ヒート、めっちゃテンション高い気がするんだけど、気のせい?

 

 

「……悪いがヒート。今回は(かつ)を入れたいヤツがいる。力を貸してくれるか?」

 

『お安い御用だぜ、真!テメエからの頼みなら、喜んで受けてやるッ!んで、その相手が目の前にいるヤツか?』

 

「ああ、そうだ」

 

 そう真さんが返事を返すと、ザ・ヒートは僕を見て、観察する。

 

『フムフム、なるほどな。これは相当に、(すみ)やかに!爆速的に!絶速(ぜっそく)的に!喝を入れなければだな!』

 

「いけるか?」

 

『ハッ!誰にものを言っているんだ?そうしなければならない理由があるだろ?だったら任せろ!人生、何事も気合と根性で、大体どうにかなる!』

 

 うわ、すごい脳筋的思考だ。

 いや、それよりも、まず先にやることがある。

 

「そろそろ、デュエマ続けません?」

「おっと、そうだな。ヒート、大人しくしてろよ?」

『あいよ!って、言われても聞かないんだがな!』

 

 ハハハッ!と、カードの中で、ゲラゲラと笑い出すザ・ヒート。

 対して、真さんは気にせず、火のコマンドが出たことで、《禁断》の封印を1枚墓地に置き、そのまま《ザ・ヒート》の効果を解決する。

 

「《ザ・ヒート》が場に出た時、山札の上から3枚を墓地に置く。その後、墓地からクリーチャーを1枚回収する。俺が回収するのは《レッドゾーンF(フォーミュラー)》だ」

「っ……!?」

 

 

 マズイ。確か、あのカード──《レッドゾーンF》──は攻撃した後に、自身だけを墓地に置いて、進化元をアンタップする能力と、攻撃中、こっちのG(ガード)・ストライクが一切使えない効果を(あわ)せ持っている。

 おまけに、真さんの場には《カンゴク》がいるため、このターン、真は合計で、3回の攻撃ができる。

 正直、状況は最悪と言って良いほどに等しい。

 

「耐えきれるのか?この盤面を……?」

「声に出ているぞ?」

「っ……!?」

 

 真さんの指摘で僕は思わず、口を塞いだ。

 

「ミスは誰にでもある。その上で耐えてみせろ。お前なら……お前にしかできないはずだ。この状況を覆せ!」

「……」

 

 そう言われて、僕は自分の胸に手を当てた。

 

 

「──っ!?」

 

 

 ──刹那。周囲が一変した。

 

 

 



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ACE82:希望──勝の想い、太陽が降りる時。

 

 

 

 突然、真っ白な空間に変わり、僕は周囲を見渡した。

 

「誰もいない……?」

 

「──いるよ」

 

「!?」

 

 聞き慣れた声。その声に僕は驚き、真っ直ぐ、前を向いた。

 すると、そこから影が現れた。それが徐々に前に近づき、やがて、人の姿となって、その身を(あらわ)にした。

 

 ──そいつは昼間に見た幼い火野勝(ボク)だった。

 

 カレを見て、僕は身構える。

 

「……」

 

「……何を考えているの?」

 

「……僕は本当にデュエマが嫌いなの?」

 

 僕の問いかけにカレは深い溜め息を吐いた。

 

「これを見ても、まだ同じことが言えるの?」

 

「っ!?」

 

 カレの手によって見てられる景色。

 そこには傷だらけで、ボロボロのボルシャックの姿があり、地面に倒れ込むデュエマ部の皆。

 

 

 ──さらに、彼らの前に立ち上がる結衣、キャル、黒江。そして──()の姿があった。

 

 その後ろには、ジャシン帝、ゴルファンタジスタ、オーパーツ──ボルシャック・フォース・ドラゴンの姿があった。

 

 

「これでも君は、自分はデュエマが嫌いじゃないって、言い切れるのか?」

 

「……本当にそうなのかな?」

 

「何……!?」

 

 僕の言葉にカレは驚き、動揺する。

 

 そして、それに合わせるかのように、僕の目の前で見える景色に、1人の少女が立ち上がった。

 

「!?」

 

 その光景に、妄想(イメージ)の中の僕は驚く。

 

 絶望的な状況にもかかわらず、彼女はたった1人で、静かに立ち上がった。

 

「どんなに絶望的でも、最後まで諦めない。それが“火野勝”という人間だろ?だったら──

 

 

 

 ──最後まで諦めず、自分の好きを貫き通す!それが火野勝()だッ!」

 

 

 その瞬間。光が──太陽が降りてきた。

 

 その太陽に共鳴して、イメージに映るボルシャック・フォース・ドラゴンはボルシャック・レイダーに変化した。

 

 そして、空想、妄想と分かりながらも、僕は彼女──秋乃さんに視点を向けた。

 

「……」

 

 目が合った彼女は無言で頷き、一枚のカードを取り出し、掲げた。

 

 

 ──その瞬間。希望の光が輝いた。

 

 

「ッ、そんな、まさか……!?」

 

 カレが驚く中、秋乃さんが握られたカードと太陽、そして、ボルシャック・レイダーが光り出した。

 

 やがて光が消え、目の前に映る光景が(さま)変わりした。

 

 そこにはもう絶望はなく、希望に溢れた世界に変わっていた。

 

 そして、気づけば、僕の横に秋乃さんがいて、後ろには姿を変えたボルシャック・レイダーの姿があった。

 

「……ありがとう、フォース・ドラゴン、秋乃さん。それから、秋乃さん。さっきは酷いこと言って……ごめん」

 

「……」

 

 僕の謝罪に秋乃さんは無言で微笑み、そのまま粒子となって消えた。

 

 うん。わかっているよ。ちゃんと、向こうで秋乃さんに直接謝るよ。

 

「何故だ!?何故捨てない!?何故認めない!?自分の罪に!?自分の行い!?何故だ!?何故、君達は彼についていくんだ!?」

 

「──そんなもの、決まっている」

 

 突然、ボルシャック・NEXが姿を現し、カレにそう言い切った。

 

「キサマは我々を捨てた。だが、こちらの主人は我々を捨てなかった。ただそれだけの話だ」

 

「それに、そもそも、根本的な考え方が違います。アナタと主では全くと言っていいほどに……」

 

「故に拙者達はショウ殿についていくのでござるッ!」

 

 次々に、ボルシャック・カイザー、禁断竜王、モモキングが姿を現し、僕とカレの在り方の違いを説明した。

 

「ふざけるな!そんなの納得できるか!」

 

「今のキサマにはわからぬだろうな」

 

「ッ、ボルシャック・ドギラゴン……!?」

 

 最後にボルシャック・ドギラゴンが姿を現すと、カレは後ずさった。

 

「お前も、ボクを見下すのか!?弱いボクを見下して、強い僕につくのか!?」

 

「力に強さも、弱さも関係ない!ましてや、そこに上下関係など、もってのほかだ!」

 

「黙れ!真っ先にボクを裏切ったお前に言われたくないッ!」

 

「……」

 

 ──ああ、そうか。

 

 カレも結局は僕と何も変わらないのか……。

 だったら、僕が言えることは一つ。

 

「僕は……デュエマを捨てないよ」

 

「!?何故だ!?辛くないのか?怖くないのか?段々、嫌な想いをしたはずだ!それなのに、何故!?」

 

「好きだからだよ……」

 

「!?」

 

 たったの一言。たったの一言で、カレは驚き、黙り込んだ。

 

「デュエマが好きだから、どんなに辛くても、どんなに怖くても、好きな物を捨てたくないんだ。だから……僕はデュエマを捨てない……!」

 

「ふ、ふざけるなッ!」

 

「グオオォォンッ!」

 

 カレの叫び声に、ボルメテウス・武者・ドラゴン「武偉」が姿を現し、叫び声を上げ、空間に裂け目を開いた。

 

「もう良い!ボクの思い通りにならないなら、ボクの手で、君を絶望の底に叩き落としてやるッ!」

 

 そう言って、カレはボルメテウス・武者・ドラゴン「武偉」の背中に乗って、どこかへ飛び去った。

 

 それを見て、僕は皆に振り返る。

 いつも間にか、沢山のクリーチャーが並び立っていたが、僕は気にせず彼らに語りかける。

 

「……皆、僕に力を貸してくれる?」

 

「「「「「勿論だ(当たり前だ)(心得た)(任せろ)ッ!」」」」」

 

 そう言って、皆、カードに戻り、僕の周囲に集まり、そのまま光り輝いた──

 

 

 



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ACE83:禁断の轟速──炸裂!ブラックゾーンラッシュッ!!

 

 

 

「──ッ!?ここは……?」

 

 

 僕は一体何をしていた?

 

 

 そう思った時、僕は直前の記憶を思い出し、自分はまだ真さんとデュエマをしていることに気づいた。

 

「どうやら、何か掴めたみたいだな……」

「ええ、お陰様で……自分の本当の気持ちに気づきました」

 

 それを聞いた真さんは「そうか……」と、小さく呟き、満面の笑みを浮かべた。

 

「これで遠慮なく、お前を全力で叩きのめすことができる!」

「……っ!?」

 

 その一言で、真さんの目が一瞬で変わった。

 

「いくぞ!《ザ・ヒート》で攻撃!この時、手札にある《覇帝(はて)なき侵略 レッドゾーンF》の侵略を発動ッ!」

 

 本気を出してきた真さんを相手に、僕は僕の今ある全力で、真さんとのデュエマに集中した。

 

「火のコマンドが出たことで、《禁断》の封印を1枚墓地へ!そして、《レッドゾーンF》でW(ダブル)・ブレイクッ!」

 

『オラァッ!W・ブレイカー、一丁お上がり!』

 

 ブレイクされる2枚のシールド。その中にはシールド・トリガーがあり、僕はすかさず、それを使った。

 

「ッ、シールド・トリガー!呪文、《大和(やまと)ザンゲキ(けん)》!自分の場にドラゴンがいるので、パワー12000以下のクリーチャーを1体破壊できる!《カンゴク入道》を破壊!」

 

「ッ、《レッドゾーンF》を破壊にしないのか!?」

 

『オイオイオイ!焦って、プレミかよ!ダッセェな!!」

 

「……」

 

 ザ・ヒートに煽られながらも、僕は手札を見て冷静に思考を(めぐ)らせた。

 

(いや、あの顔。ミスではないな?誘っているのか?だとしたら、どうする?)

 

 一方の真は先程の勝のプレイングに何か裏があると感じ、少し考え込む。

 

(手札には《レッドゾーンZ(ゼット)》がある。故に、このターンで決めることは可能だが、裏目を考える必要があるな。ならば……!)

 

 考えが纏まった真は次の一手(いって)に出る。

 

「《レッドゾーンF》の効果で、自身を墓地に置き、《ザ・ヒート》を叩き起こす!そして、《ザ・ヒート》で攻撃!──この時、侵略、発動ッ!」

 

 手札から1枚、墓地から2枚のカードを使用し、宣言する。

 

「手札から《(あつ)き侵略 レッドゾーンZ》と、墓地から《禁断の轟速 レッドゾーンX(エックス)》と《禁断の轟速 ブラックゾーン》の3枚を《ザ・ヒート》に重ねて侵略進化ッ!」

 

『レッドゾォォンッ!ゼェェトッ!!……からの、レッドゾォォンッ!エェェクスッ!!……そして、ブラックッ、ゾォォォンッ!!!』

 

 一番下から《レッドゾーンZ》、《レッドゾーンX》──そして、一番上に、《ブラックゾーン》に重ねて、《ザ・ヒート》を進化させる真さん。

 同時に、ザ・ヒートは叫び、火のコマンドが3体出たことで、真さんは《禁断》の封印をすべて、墓地に置いた。

 

 

 よって──

 

 

「──禁ッ、断ッ!!……解ッ、放ッ!!《伝説の禁断 ドキンダムX》ッ!!!」

 

 

 ──最強の禁断のレジェンドカード、《ドキンダムX》が解放された。

 

 

 幸い、僕の《ボルシャック・フォース・ドラゴン》はまだタマシード状態のため、《ドキンダムX》の効果で、封印される心配はない。

 

 ただ、一番の問題は、真さんが最初に《ザ・ヒート》に重ねたカード、《レッドゾーンZ》の効果だ。

 

 

『くらいやがれッ!ゼット、ブラック、ゾォォン、ラァァシュッ!!』

 

 

 炸裂するブラックゾーンの拳が僕の最後のシールドを叩き割った。

 しかも、墓地に置かれたのが、《スーパー・スパーク》だった。

 

 

 最悪だ。よりによって、今、一番墓地に置かれたくないカードが墓地に置かれた……。

 

 

「これで終わりだッ!《ブラックゾーン》で、ダイレクトアタックッ!!」

 

『あばよ!ブラック、ゾォォン、パンチッ!!』

 

 

 真さんの《ブラックゾーン》のダイレクトアタックが決まれば、僕は敗北する。

 正直、このまま負けるつもりでいた。

 

 

 ──けど、そうもいかなかった。

 

 

「先輩!負けないでください!!」

「勝様!最後まで諦めないでください!!」

 

 

「──ッ!?」

 

 

 ひよりちゃんと秋乃さんの叫びに僕は驚き、2人に振り向く。

 

 

「例え、デュエマをやめても、このデュエマだけは負けないでくださいっ!!」

「そうですわよ!わたくしの知っている勝様はこんなところで諦めたりしませんわ!!」

 

 

 それは励まし、応援──エールの言葉だった。

 それを聞いた僕は2人を見て、ふっと、小さく笑ってしまった。

 

「良いの?ここで勝ったら、僕、デュエマをやめちゃうよ?」

「そうだぜ!ここは……えっと誰だって?まぁ、良いや!先輩に勝ってもらうのが筋だろ?」

 

 うわ、早峰先輩。さりげなく、真さんの名前忘れてる。

 

「……本当にそう思いますの?皆さん?」

「あ?そう思うも何も、そうだろ?なぁ、斎条?」

「……そうね。私も秋乃さんと同じよ」

「ほらよぉ!って、ええええええええええ!?なんでぇぇ!?」

 

 咲恋ちゃんの意外な発言に、早峰先輩は困惑し、今度は眼鏡くんに同意を求める。

 

「メガネ!お前も、オレと同じ意見だよな!?」

「……すみません。俺も先輩達と同じ気持ちです」

「何でだ!?」

 

 ついに、頼みの綱であった眼鏡くんの返事に、早峰先輩は声を荒げた。

 

「何でって、決まっています!」

「彼とデュエマをした者ならわかるはずです。彼がこんなところで終わるような人間ではありません!」

「だから、わたくし、信じています!このデュエマで勝っても、勝様はデュエマを続けてくれることを……!!」

「秋乃さん……」

 

 秋乃さんのその言葉を聞いた時、僕は少し前のことを思い出す。

 秋乃さんとひよりちゃんに酷いことを言ったことを。

 

 

 後でちゃんと、2人に謝ろう……。

 

 

 そう決心した僕は真さんに視点を向ける。

 

「全く、勝手なことばかり言ってくれるね。けど、良いよ。真さん、このデュエマ、勝たせてもらいます!」

「ハッ!面白い!やれるものならやってみろッ!」

 

 

 ──ええ、やってやりますよ!!

 

 

 脳裏でそう宣言した僕は手札から1枚のカードを抜き取った。

 

 

「──革命0トリガー、発動っ!!《ボルシャック・ドギラゴン》っ!!」

 

 

 



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ACE84:輝く革命──目覚めろ!太陽のボルシャックっ!!

 

 

 

「──革命0トリガーっ!!《ボルシャック・ドギラゴン》っ!!」

 

 

 高らかに宣言した僕は《ボルシャック・ドギラゴン》を見て、山札の上を公開した。

 

 

「来た!《モモキングRX》!そのままバトルゾーンに出して、《ボルシャック・ドギラゴン》に重ねて進化!《RX》の効果で、手札を1枚捨てて、《ボルシャック・モモキングNEX》にスター進化っ!!」

 

 さらに、《モモキングNEX》の効果を解決し、山札の上を捲る。

 捲られたのは《ボルシャック・NEX》。

 それを見た僕は次に《ボルシャック・NEX》の効果を解決した。

 

「《ボルシャック・NEX》の効果で、山札から《ワルキューレ・ルピア》を場に出す!」

 

「!?ドラゴンをブロッカーにするルピアか!?」

 

「それだけじゃありません!僕の場の、火のクリーチャーが4枚以上だから、《ボルシャック・フォース・ドラゴン》はタマシード状態からクリーチャーになる!」

 

 

 これでブロッカーを持つドラゴンは4体。今の場なら、真さんの攻撃を防げるけど、《邪王門》を3枚唱えられたら、僕の負けだ。

 

 

 ──だから、ここからは完全にお祈りタイムだ!

 

 

「《ブラックゾーン》の攻撃を《ボルシャック・フォース・ドラゴン》でブロックっ!」

 

『ッ、真!《邪王門》は!?』

 

「……断念ながら、手元にはない。というか、今回はデッキに3枚しか入れていないからな。おまけに、マナと墓地に1枚ずつ見えている。何が言いたいかわかるか?」

 

『手札にはないんだな!わかった!なら、《ドキンダム》で場を減らせ!』

 

「言われるまでもない。《ドキンダムX》でダイレクトアタックッ!!」

 

「《ボルシャック・NEX》でブロックっ!」

 

「……ターンエンド」

 

 

 なんとか、この危機を脱したけど、まだ油断はできない。

 手札に《邪王門》がないのはわかったけど、敗北を回避する《一王二命三眼槍(バラド・ヴィ・ナ・シューラ)》がある可能性がある。

 

 

「だとしたら……ここが正念場か……」

 

 正直、勝てる見込みは薄い。

 

 

 ──けど、もう、負けるわけにはいかないんだっ!!

 

 

「……僕のターン!ドロォォッー!!」

 

 

 最後の(ラスト)ターンとわかり、僕は気合を入れて、カードを引く。

 

 恐る恐る、引いたカードを覗き、僕は目を見開き、静かに驚いた。

 何故なら、そのカードは見たことがないカードで、デッキに入れた覚えのないカードだからだ。

 

 そして、何より、そのカードはどこか、《ボルシャック・レイダー》の姿に似ていた。

 

 

 ──このカードは一体!?

 

 

 そう思った時、声が響いた。

 

 

『──このデュエマ、勝とうぜッ!!勝ッ!!』

 

「っ、わかった……!!」

 

 

 そう返事を返した僕は迷わず、《ワルキューレ・ルピア》に手を置いた。

 

 

「《ワルキューレ・ルピア》で《ドキンダムX》に攻撃っ!──する時に、革命チェンジっ!!」

 

「何……!?」

 

「このタイミングで革命チェンジ!?」

「一体、なんのカードが出るのでしょうか?」

 

 

 皆が驚いている中、僕はそのカードの名を口にした。

 

 

「──(かがや)け!太陽のボルシャックっ!《輝く革命 ボルシャック・フレア》っ!!」

 

 

 刹那。周囲に熱き突風、もとい、熱風が吹き、そのカードがバトルゾーンに姿を現す。

 

 その姿は《ボルシャック・レイダー》を彷彿(ほうふつ)させる姿で、所々にドリルがあった。

 

 

 ──そして、太陽の力を纏い、革命チェンジの力を得たボルシャック・レイダーの新たな姿、《輝く革命 ボルシャック・フレア》。それがこのカードの名前である。

 

 

「《ボルシャック・フレア》の効果!!自分のクリーチャーがはじめてバトルする時、必ずバトルに勝利するっ!!」

 

「なんだと!?」

 

 

 いくら、パワーが99999ある《ドキンダムX》でも、“必ずバトルに勝利する”効果の前では無意味である。

 一応、《一王二命三眼槍》があれば、敗北を回避できる。

 

 

「……《ドキンダムX》が場を離れたことにより、俺はゲームに敗北する」

 

 

 だが、断念ながら、真の手札には《一王二命三眼槍》はなく、《ドキンダムX》の効果により、真は敗北した。

 

 

 ──よって、勝者は勝。

 

 新たな切り札、《ボルシャック・フレア》を手にし、真とのデュエマに勝利したのだ。

 

 

 



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ACE85:僕はデュエマをやめない。

 

 

 

「勝先輩が勝った……!」

「流石ですわ!勝様!」

「全く、ヒヤヒヤさせるんじゃないわよ……」

 

 

 ()が真さんに勝ったことに、ひよりちゃんと秋乃さんは心の底から喜び、咲恋ちゃんはやや呆れ気味にそう言うが、ほんの少し、顔が(ゆる)んでいた。

 

 

「けど、これでアイツはデュエマをやめるのか……」

「「あ……」」

 

 

 けど、早峰先輩の一言に、喜んでいたひよりちゃんと秋乃さんは一気に落ち込んだ。

 

 

 全く、余計なことを言わないでほしいな……。

 まぁ、最初にやめるって言い出したのは僕だし、仕方がないか……。

 

 

「……火野」

「わかっています。真さん……」

 

 

 真さんに押されて、僕は部活仲間の皆に視点を向ける。

 

 

「……」

 

 

 一度、深呼吸をし、皆に「僕はデュエマをやめないよ」と、伝えた。

 

 

 そしたら……。

 

 

『やったー!』

 

 

 と、何故か、エリカさん以外の女性陣が喜んでいた。

 

 ……何で?

 

 

 

 

 

 ──それから、あっという間に時間が経過した。

 

 皆で晩御飯を食べ、風呂に入り、寝る時間になると、ふっと、僕はデッキを眺め、ベッドから起き上がり、カードを並べた。

 

 普段ならマリちゃんに「部屋が()らかるので、夜にカードを触るの、やめてください!」って、怒られるけど、今は別室だし、たまには良いよね?

 

 なんて、考えているうちに、いつも間にか、カードを並べ終え、僕は自分のデッキを睨んだ。

 

 

「……」

 

 

 ──そして、僕は思った。

 

 今のままじゃ、もう一人のボクには勝てない。

 デッキの相性もあるけど、純粋に、デッキの練度が違いすぎる。

 赤緑ボルシャックなら、まだ勝ち目はある。けど、それを使うのは、何か違う気がする。

 

 

「……《ボルメテウス・武者・ドラゴン「武偉」》、《ヴァルキリアス・武者・ムサシ「弐天」》、《竜牙 リュウジン・ドスファング》……」

 

 

 ふっと、僕はもう一人のボクが使っていたカードを思い出した。

 理由は口に出した方が、頭が回るから。

 

 

 ……というのは建前で、本当は少し嬉しかったりしている。

 ん?なんでかって?実はこう見えて、僕はボルシャック以外に、《ボルメテウス・武者・ドラゴン》や、サムライを持つ種族が好きだったりする。

 

 

 ──だから、かな?

 

 

 今、こうして、(くや)しい気持ちより、嬉しい気持ちがいっぱいなのは?

 

 いや、だからと言って、負けて悔しいのは変わらないけど。

 

 

「かと言って、今から新しいデッキを組むのは少し骨が折れるな……」

 

 

 さて、どうしたものか?

 

 デッキの性質的に、タマシード軸のライオネルや、メタクリを並べて攻めるラッカ鬼羅.Starに似ている。

 似ている?いや、違うな。初動の動きはライオネルで、クリーチャーを並べる鬼羅.Starを合わせた感じかな?

 もっと言えば、相手は最速で、3キルができる赤単我我我にも似ている所がある。

 

 まるで、僕の苦手なデッキを、まとめて相手をしている気分だ……。

 

 

「ん?苦手なデッキ……?」

 

 

 ふっと、そこまで考えた僕はあることに気づいた。

 

 

 あー、そうか。そういうことか……。

 これなら、まだ戦えるな。

 

 問題は……。

 

 

「手持ちのカードに、そういうの、持ってないんだよなー」

 

 

 だからといって、秋乃さんに頼るわけにはいかないし……。

 

 

「あ、そうだ!咲恋ちゃんに連絡してみるか!」

 

 

 そう思った僕は咲恋ちゃんに連絡し、急ぎ、彼女の部屋に向かった。

 

 

 



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ACE86:やっぱり、デュエマは楽しい。

 

 

 

 ──翌日。

 

 

「ふあー、眠い……」

「それはこっちの台詞よ!全く、朝までデッキ作りに付き合わせるんじゃないわよ!」

 

 

 あの後、僕は咲恋ちゃんの部屋で、咲恋ちゃんのカードを何枚か借りて、一緒に徹夜して、デッキを組んでいた。

 その結果。僕と咲恋ちゃんは二人揃って、寝不足で、目の下にクマができていた。

 

 

 まぁ、結果的に良いデッキができたし、ヨシとしますか!

 

 

「何一人だけ満足そうな顔をしてるのよ!腹立つから、私とデュエマしなさい!」

「良いよ!新しいデッキの試運転といこうか!」

 

 

「「デュエマ・スタートッ!!」」

 

 

 

 

 

「──《チャラ・ルピア》を召喚っ!ターンエンド!」

 

「出たわね!インチキクリーチャー!こっちは《赤い稲妻(サバイバル・スター) テスタ・ロッサ》を召喚よ!ターンエンド!」

 

 

 ドラゴンの召喚コストを2軽減する《チャラ・ルピア》に対して、咲恋ちゃんは革命チェンジを封じる《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》 を召喚した。

 

 

 ってか、インチキクリーチャーって、何?

 確かに、コスト2で、ドラゴンの召喚コストを2軽減するのは少し壊れだけど、個人的には、墓地とマナ、手札の3つのゾーンを触れる《デドダム》が一番インチキで、壊れだと思う。

 

 

 そう思いながらも、僕はカードを引き、手札を1枚、マナに置いて、少し考えた後、1枚のカードを切った。

 

 

「呪文、《決闘者(デュエリスト)・チャージャー》!山札の上から3枚見て、その中にある《ボルシャック》と名のつくカードを、すべて手札に加える!《ボルシャック・フォース・ドラゴン》と《ボルシャック・アークゼオス》を手札に加えるよ!」

 

 

 名前に《ボルシャック》を持たない、《閃光(せんこう)の守護者 ホーリー》は山札の一番下に置かれ、唱え終わった《決闘者・チャージャー》を、僕はマナに置いた。

 

 

「そして、《チャラ・ルピア》のコスト軽減で、1マナで、《ボルシャック・フォース・ドラゴン》を召喚!登場時効果で、《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》を破壊!」

 

「相変わらず好きね、そのカード……」

 

 

 増やしたマナを使って、僕は《ボルシャック・フォース・ドラゴン》を場に出し、革命チェンジを阻害(そがい)する《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》を破壊した。

 対して、咲恋ちゃんは僕が出した《ボルシャック・フォース・ドラゴン》を見て、呆れていた。

 

 

 いや、だって、《ボルシャック・フォース・ドラゴン》は秋乃さんから貰った最初のカードだから、そりゃあ、好きだよ?

 最近、出番が少ない気がするけど……今でも、このカードはボルシャックの中で、一番好きだよ。

 

 

「……僕はこれでターンエンド」

 

「私のターン!呪文、《T()T(トリプル)T(スリー)》!山札から3枚引いて、ターンエンド!」

 

「そっちも大概じゃん」

 

「手札増やして、マナ増やして、クリーチャー除去してる方が何言ってるの?」

 

「……それもそうか!」

 

 

 (なか)ば、開き直りながら、僕は山札からカードを引き、手札を1枚、マナに置いた。

 

 

 ──そして、考えた。

 

 

 このターン、何をすべきか、何が最善なのか、を、考えた。

 

 

 ……まぁ、やっぱり、最初はこれだよね?

 

 

「《チャラ・ルピア》のコスト軽減で、《ボルシャック・アークゼオス》を召喚!登場時効果で、アーマード・メクレイド5を発動っ!」

 

 

 山札の上を3枚見る。

 その中には、《ボルシャック・バラフィオル》、《アシスター・コッピ》、《凰翔竜機 バルキリー・ルピア》の3枚があった。

 僕はその中から、《ボルシャック・バラフィオル》を選択した。

 

 

「《ボルシャック・バラフィオル》を召喚!これで火のクリーチャーが4枚以上あるから、《ボルシャック・フォース・ドラゴン》と《ボルシャック・バラフィオル》はタマシード状態からクリーチャーになる!」

 

「ッ、一気に展開してきたわね……」

 

「驚くのはまだ早いよ。残りのマナで、《ミクセル》を召喚!」

 

「!?《ミクセル》!?このタイミングで……!?」

 

 

 僕が出した光のクリーチャー、《奇石(きせき) ミクセル》に、咲恋ちゃんは驚く。

 

 このクリーチャー──《ミクセル》は、相手のマナゾーンにあるカードの枚数より大きいクリーチャーを出した時、そのクリーチャーを山札の一番下に置く効果を持つ。

 故に、咲恋ちゃんの切り札、《〈鬼羅.Star〉》の早出しするのに必要な《エヴォ・ルピア》の効果を、僕は封じたのだ。

 

 

 これで、次のターン、《エヴォ・ルピア》が出ても、《〈鬼羅.Star〉》は場に残せない。

 そして、何より、シールド・トリガーを持つ《スロットンの心絵(メモリー)》から《〈鬼羅.Star〉》によるカウンターも封じた。

 

 これで心置きなく、シールドに攻撃できる……はず。

 

 

「《クロック》だけが不安だけど、これ以上は割り切るしかない!《ボルシャック・フォース・ドラゴン》で攻撃!自分の《ボルシャック》が攻撃する時、《ボルシャック・バラフィオル》の効果で、山札の一番上を見て、コスト6以下の火のクリーチャーか、火のタマシードならバトルゾーンに出せる!」

 

 

 捲られたのは《ホーリー》。コスト6以下でもなく、火のクリーチャーでもない、光のクリーチャーである。

 

 

 ハズレか。まぁ、仕方がない。

 今回は光のカードも入ってるから、《ボルシャック・バラフィオル》でハズレを捲れる確率はかなり高い。

 

 

「《ボルシャック・バラフィオル》の効果は失敗したけど、《ボルシャック・フォース・ドラゴン》の効果で、自分の他のクリーチャーすべてに、『パワーアタッカー+6000』と『スピードアタッカー』と『パワード・ブレイカー』を与える!そして……《ボルシャック・フォース・ドラゴン》で、W・ブレイクっ!」

 

「ッ、トリガーはないわ……!」

 

「次は《ボルシャック・バラフィオル》で攻撃っ!攻撃時に、山札の上を捲って……《単騎連射(ショートショット) マグナム》を場に出すよっ!」

 

「このタイミングで《単騎》!?うそでしょ!?」

 

 

 ──これで《クロック》は封じた!

 

 

「パワーアップした《ボルシャック・バラフィオル》で、シールドをT・ブレイクっ!」

 

「あー、もう!《単騎》がいなければ、《クロック》で耐えれたのにぃー!」

 

「ハハ、間一髪か……《ボルシャック・アークゼオス》で、ダイレクトアタックっ!」

 

 

 

 

 

「やっぱり、デュエマは楽しいね。咲恋ちゃん」

「?何当たり前のことを言っているのよ?」

「……そうだね」

 

 

 咲恋ちゃんとのデュエマを終えた後、僕は改めて、デュエマが楽しいことを実感した。

 

 そう咲恋ちゃんと話していると、突然、扉が開き、真さんが僕達の前に現れた。

 

 

「朝からやかましいと思ったら、お前ら、デュエマをしていたのか?」

「あ、真さん。おはようございます」

「おはようございます」

「ああ、おはよう……体の調子はどうだ?火野?」

「ハハ、寝不足なので、あまり良くないですね」

「徹夜でデッキを組むからよ」

 

 

 そういう咲恋ちゃんも、目の下にクマができてるよ?

 

 ……まぁ、原因を作ったのは僕だけど。それに付き合ってくれる咲恋ちゃんには、本当に感謝してるよ。

 

 

「そうか……それなら2時間ほど、部屋で寝ていろ。起きたら、すぐに食事をとれ……」

「……わかりました」

 

 

 そう言って、僕は自分の部屋に戻って、ベッドの中に入って寝た。

 

 

 

「?あの、出かける用事でもあるんですか?」

 

「あー、ちょっとな。と言うか、昨日、火野がああなった原因を作った張本人に、少し会いに行くからな」

 

 

 



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ACE87:輝く革命──さぁ、リベンジマッチだっ!

 

 

 

 真さんに言われて、2時間の睡眠と食事をとった後、()は徹夜で組んだデッキを持って、外でバイクのメンテナンスをしている真さんと速水先輩の元に向かった。

 

 

「お?来たぜ、真」

「……裕也、こっちは任せた」

「あいよ」

 

 

 そう速水先輩が返事を返すと、真さんはバイクのメンテナンスを止めて、僕に振り向いた。

 

 

「……準備は良いな?」

「……はい。覚悟はできています」

 

 

 そう返事を返すと、真さんは僕に近づき、自分の手を僕の肩に置いた。

 

 

「そう(りき)むな。肩の力を抜け……お前はお前のデュエマをすれば良い」

「……ありがとうございます」

 

 

 そう返事を返すと、真さんは速水先輩の元に戻り、僕はその後をついていった。

 

 

「裕也、バイク(コイツ)の調子はどうだ?」

「問題ない!いつでも走れる!」

「そうか……では行くぞ、火野」

 

 

 そう言われて、僕は一度、深呼吸をし、気合を入れて、真さんに返事を返した。

 

 

「……はい!行きましょう!真さん!」

 

 

 

 ──さぁ、リベンジマッチだ!

 

 

 

 

 

「……来たね」

 

 

 真さんのバイクに乗せてもらい、僕は昨日会ったもう一人のボクがいる場所に行き、無事に辿(たど)り着くと、まるで待っていたかのように、もう一人のボクは僕達を出迎えてくれた。

 

 

 ……と言うか、少し身長伸びてない?

 

 

 出会って早々、僕はもう一人のボクの身長が伸びていることに気づき、今のカレは、僕と同じぐらいの身長に伸びていた。

 

 

「……さっさ、1日でそんなに身長が伸びるの?」

「あー、これね。いつも間にか伸びてた」

 

 

 伸びてたって、そんなファンタジーみたいなことある?

 

 ……まぁ、それはそうと。

 

 

「わざわざ、待っていてくれたの?」

「……フ、バカなこと、言わないでよ──」

 

「──っ!?」

 

 

 会って早々に、カレはボルメテウス・武者・ドラゴン「武偉」を呼び出し、僕達を睨んだ。

 

 

「君達を叩きのめすために、わざと待っていったのさ!」

「……」

 

 

 その(ひとみ)には、その言葉には、強い怒りがこもっていた。

 

 

 

 ──だが、同時に、どこか(かな)しい目をしていた。

 

 

 それを見た時、僕は自分が今、何をするべきか、理解した。

 

 

「……僕は昨日、キミに負けた。完膚(かんぷ)なきまでに叩きのめされた。けど、今は違う!僕はキミを……キミ達を止める!その上で、勝ってみせるっ!」

 

 

 そう決意すると、僕の後ろに、ボルシャック・フレアが姿を現した。

 

 それを見たカレは舌打ちをし、叫び声を上げた。

 

 

「やれるものなら、やってみろ!」

 

「ああ、やってやるさ!」

 

 

 その瞬間。僕達の周りに、炎が浮かび上がり、まるで、僕達を(かこ)むかのように、円状になって、その炎は僕達を囲んだ。

 

 だが、僕とカレは気にせず、後ろにいた真さんは僕から少し離れ、僕とカレは、互いにデッキを取り出した。

 

 

 ──そして、決闘の合図が開かれた。

 

 

「「真のデュエル・スタートッ!!」」

 

 

 



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ACE88:武士の怒り──咆哮!!ボルメテウス・武者・ドラゴン「武偉」ッ!!

 

 

 

「《タキオンアーマー》をジェネレート!ターンエンドだ!」

 

「僕のターン!……こっちは呪文、《超英雄(ちょうえいゆう)タイム》!《タキオンアーマー》を破壊!」

 

「なんだと!?」

 

 

 先行はカレ──もう一人のショウ──からスタートし、カレは2ターン目に、クロスギアのジェネレートとクロス、そして、サムライ・クリーチャーの召喚コストを下げる《竜装(りゅうそう) ゴウソク・タキオン・アーマー》を出してきた。

 

 だが、僕は返しのターンに、相手のコスト3以下のカードを破壊するツインパクト呪文、《超英雄タイム》を唱え、《タキオンアーマー》を破壊した。

 

 それを見たカレは驚き、怒りを(あら)わにした。

 

 

小癪(こしゃく)真似(まね)を!《天装(てんそう) タイショウ・アームズ》をジェネレートッ!」

 

「っ!?」

 

 

 ──また知らないクロスギア!?

 

 

 新たなクロスギア、《天装 タイショウ・アームズ》に驚き、僕は身を構えた。

 

 

「コイツは登場時に、山札の上から3枚見て、その中にあるサムライと名のつくカードを好きな数、手札に加えられる!」

 

「な!?そんなのアリ!?」

 

 

 まさかの手札補充要員。

 しかも、種族にサムライと名のつくカードであれば、クロスギアやツインパクト、タマシードも手札に加えられる。

 

 

 ……なんて便利なカードなんだ。

 

 

「ボクが加えるのは《タキオンアーマー》と《リュウジン・ドスファング》、そして──《ボルメテウス・武者・ドラゴン「武偉」》だッ!」

 

「っ!?」

 

 

 オール3枚ヒット。

 しかも、その中には切り札である《ボルメテウス・武者・ドラゴン「武偉」》と、サムライ・メクレイド5を持つクロスギア、《竜牙(りゅうが) リュウジン・ドスファング》が手札に加わっている。

 

 

「ターンエンド!さぁ、どうする?火野勝!!」

 

「っ……」

 

 

 ──どうする?

 

 

 ──(いな)、考えるまでもない。やるべきことは決まっているっ!!

 

 

「今、できることをやるだけだ!呪文、《決闘者(デュエリスト)・チャージャー》!山札の上から3枚見て……《ボルシャック・フォース・ドラゴン》と《ボルシャック・レイダー》を手札に!《チャラ・ルピア》を山札の一番下に置いて、ターンエンドっ!!」

 

「それだけか?それだけで、ボクを止められると思うな!!」

 

 

 刹那。周囲の炎が燃え上がった。

 

 そして、カレは──否、ショウは1枚のカードを引き抜いた。

 

 

「来いッ!!ボクの……否、オレのACE(切り札)!!《ボルメテウス・武者・ドラゴン「武偉」》ッ!!!」

 

「グルル……グオオォォォン!!!」

 

 

 燃え上がった炎は()ぜ、爆ぜた炎の中から、武士のような鎧を纏った4足歩行の竜──《ボルメテウス・武者・ドラゴン「武偉」》が姿を現した。

 

 しかし、その(ひとみ)(あか)く、ギラついており、まるで、()(おこ)っている、と、言わんばかりの眼をしていた。

 

 そして、姿を現すや否や、突然、ボルメテウス・武者・ドラゴン「武偉」は咆哮した。

 

 

「──っ!?」

 

 

 それを見た僕は前回の対戦を思い出した。

 これがフラッシュバックというのだろう、と、冷静に、そう思った。

 

 大丈夫。こういった経験は慣れっこだ。

 それに、今の僕には──頼もしい仲間が沢山(たくさん)いる。

 

 

「そのすました顔、歪ませてやる!《武者・ドラゴン「武偉」》が出た時、侍流ジェネレート!《リュウジン・ドスファング》をタダで場に出す!!」

 

 

 今度は竜の鎧を纏ったクロスギア──《竜牙 リュウジン・ドスファング》が姿を現した。

 

 

「次に《リュウジン・ドスファング》が出た時、サムライ・メクレイド5を発動ッ!!」

 

 

 山札の上から3枚を見ると、「チッ、連鎖(動き)が止まったか!」と、毒舌を吐き、カレは渋々、1枚のカードを場に出した。

 

 

「……仕方がない。お前にも、活躍の場を作ってやる。サムライ・メクレイドで《マロク》を場に出す!!」

 

「!?」

 

 

 またしても、知らないカード。

 

 見た目は未来的なクリーチャーで、何故か、種族にアーマード・サムライを持ち、スターノイドとマシン・イーターを(あわ)せ持つ光のクリーチャー、《戦術(せんじゅつ)天才(てんさい) マロク》が姿を現した。

 

 

「《リュウジン・ドスファング》はサムライ・クリーチャーにタダでクロスできる!《マロク》にクロスして、ターンエンドッ!!」

 

「……僕のターン」

 

 

 カードを引き、マナを1枚増やして、僕は一度、手札を見て考えた。

 

 

 どうする?ここは《ボルシャック・フォース・ドラゴン》を召喚して、《マロク》を破壊するか?

 

 

 そう思った僕は《ボルシャック・フォース・ドラゴン》に手をつけると、突然、カードの中から、《ボルシャック・フォース・ドラゴン》は首を横に振った。

 

 

 ──ん?違う?

 

 まさか、あの《マロク》に除去耐性があるのか?

 

 

 そう思った僕は《マロク》を見て、もう一度、《ボルシャック・フォース・ドラゴン》に手をつけると、また首を振られた。

 

 

「……そうか。お前がそこまで言うなら、違うんだな。それなら……これだ!《クック・(スクランブル)・ブルッチ》を召喚っ!」

 

 

 僕の前に小さな炎が現れ、そこから《クック・轟・ブルッチ》が姿を現した。

 

 

「《轟・ブルッチ》の効果で、次に使うアーマードのコストを6軽減!──呪文、《レイド・エントリー》っ!!」

 

「ッ、何……!?」

 

 

 前のターン、《決闘者・チャージャー》で手札に加えた《ボルシャック・レイダー》はツインパクトで、その呪文側、《レイド・エントリー》を唱え、もう一人のボクはそれを見て、驚いた。

 

 

「呪文の効果で、《レイド・エントリー》を山札に加えてシャッフル!──その後、アーマード・メクレイド8を発動っ!!」

 

 

 デッキをシャッフルした後、山札の上から3枚のカードが(ちゅう)に浮き、その中から1枚のカードを取り出した。

 

 

 

 ──そして、それを、もう一人のショウ(ボク)に見せた。

 

 

 

(ガラ)の悪さは随一(ずいいち)!だけど、頼れる兄貴(アニキ)分!──召喚、《ボルシャック・ガラワルド》っ!!」

 

 

 



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ACE89:ぶつかり合う二人の少年──柄の悪さと二天一流!!

 

 

 

(ガラ)の悪さは随一(ずいいち)!だけど、頼れる兄貴(アニキ)分!──召喚、《ボルシャック・ガラワルド》っ!!」

 

 

 その姿はまるで、《ボルシャック・NEX(ネックス)》がボロボロになった姿であり、巨大な炎のエネルギーが胴体の中から剥き出しに出て、詰まっていた。

 アビス・レボリューション第2弾、『忍邪乱武(りんじゃらんぶ)』で新たなに追加されたボルシャック──《ボルシャック・ガラワルド》が姿を現した。

 

 

「ッ、何だ?そのボルシャックは……!?」

 

 

 突然、現れたボルシャック・ガラワルドを見て、もう一人のボク──ショウは驚き、動揺した。

 

 それを見た僕は、このカードを知らないのか?と、一瞬、脳裏で疑問に思ったが、すぐさま、その思考を放棄し、デュエマに集中した。

 

 

「《ガラワルド》が出た時、相手のクリーチャーとバトルできる!《ボルメテウス・武者・ドラゴン「武偉」》とバトルだっ!!」

 

「ッ、強制バトル効果だと!?」

 

 

 僕の説明に、カレはまた驚き、動揺した。

 

 だが、僕は気にせず、ガラワルドにカレの切り札、ボルメテウス・武者・ドラゴン「武偉」と戦うように指示を出した。

 

 

「行け、ガラワルドっ!!」

 

「迎え撃て、武者・ドラゴンッ!!」

 

「ギャオオォォン!!」

 

「グオオォォンッ!!」

 

 

 拳と刀。それぞれ得意な武器を構えて戦う2体のドラゴン。

 だが、純粋な(パワー)ではガラワルドが圧倒的に強く、武者・ドラゴンの攻撃をあっさりかわし、ガラワルドは容赦なく、拳を叩き込んだ。

 

 

 

 ──そして、ショウの切り札、ボルメテウス・武者・ドラゴン「武偉」は無惨に散った。

 

 

 

「──ッ、武者・ドラゴン!?」

 

 

 その光景に、ショウは自身の切り札、ボルメテウス・武者・ドラゴン「武偉」が破壊されることに驚いた。

 

 

「バトルに勝利した《ガラワルド》の効果で、僕は山札からカードを1枚ドロー!」

 

 

 そんな中、勝はバトルに勝利した《ガラワルド》の効果を解決し、山札からカードを引いた。

 

 

「まさか、オレの切り札、《ボルメテウス・武者・ドラゴン「武偉」》を倒すとはな……だが、その程度の戦略、計算のうちだッ!!」

 

「これで終わらないよ!《ガラワルド》はスピードアタッカーで、攻撃時に相手のクリーチャーとバトルできる!《ガラワルド》でシールドに攻撃して、《マロク》とバトルっ!!」

 

 

 僕の指示に、ガラワルドはマロクに突撃するも、突然、ショウのシールドが1つ、マロクの前に移動し、ガラワルドの拳を(はば)んだ。

 

 何故?と思ったけど、その理由はカレの口から、すぐに理解した。

 

 

「《マロク》のエスケープを発動ッ!シールドを1枚、手札に加えて、《マロク》を場に残す!」

 

「っ、エスケープを持っていたのか……!!」

 

 

 だから、フォース・ドラゴンは首を振っていたのか!!

 

 

「だけど、バトルには勝利してる!よって、《ガラワルド》の効果で、カードを1枚ドロー!──そして、《ガラワルド》で、W(ダブル)・ブレイクっ!」

 

「くれてやるよ!シールドなんて……!」

 

 

 そう言って、カレは4つある内の2つの(シールド)を前に出し、ガラワルドは気にせず、拳で、その2つを(くだ)いた。

 

 

「──だが、タダではやらん!代償は払ってもらう!──シールド・トリガー!!呪文、《大和(やまと)ザンゲキ(けん)》!!」

 

「っ、《大和ザンゲキ剣》!?」

 

 

 突然、シールドの中からボルシャック・大和(やまと)・ドラゴンの幻影が現れ、ガラワルドに急接近し、右手に持つ刀で、ガラワルドを真っ二つに切り裂いた。

 その後、幻影として現れた大和・ドラゴンは粒子となって消えた。

 

 

「なっ!?ガラワルドが破壊された!?」

 

 

 まさか、パワーが9000もあるガラワルドが破壊されるとは思わなかった。が、すぐに冷静になって、状況を整理した。

 

 

 今の呪文はツインパクトカードになった《ボルシャック・大和・ドラゴン》の呪文面、《大和ザンゲキ剣》だ。

 本来は相手のパワー4000以下のクリーチャーを1体破壊する効果だけど、自分の場にドラゴンがあれば、パワー4000以下のかわり、パワー12000以下まで、相手のクリーチャーを1体破壊できるのだ。

 

 

 そして、カレの場にはドラゴンはいない。

 いるのはドラゴンを持たないクリーチャーの《マロク》と、エンジェル・コマンドとアーマード・サムライを持つクロスギアの《タイショウ・アームズ》と、アーマード・サムライとアーマード・ドラゴンを持つクロスギアの《リュウジン・ドスファング》の3枚のみ。

 

 

 ──ん?“ドラゴンを持つクロスギア”?

 

 

「っ、そうか、《リュウジン・ドスファング》か!」

 

「そうだ。この呪文、《大和ザンゲキ剣》は何も“クリーチャーでなければならない”わけではない。タマシード、あるいはクロスギアなど、場に“ドラゴンを持つカード”がオレの場にあれば、相手のパワー12000以下のクリーチャーを破壊できるのだ」

 

 

 なるほど。それなら、パワー9000の《ガラワルド》を破壊できるのも納得だ。

 

 

 そこまで考えた後、僕は再度、自分の場を見て、これ以上、攻撃できるクリーチャーがいないことを確認し、「僕はこれでターンエンド……」と、言って、カレにターンを渡した。

 

 

「オレのターン。ターンのはじめに、《マロク》の効果を起動。自身がクロスされている時、サムライ・メクレイド5を発動!《タキオン・アーマー》を場に出し、この効果で場に出したのがクロスギアなら、《マロク》にタダでクロスできる!」

 

 

 場にいる《マロク》の効果を解決した後、カレはカードを引き、手札を1枚、マナに置いて、考える仕草をとる。

 

 そして、考えた後。カレは行動に移した。

 

 

「……《タキオン・アーマー》のコスト軽減で、3枚目の《タキオン・アーマー》を1マナで場に出し、その2枚のコスト軽減で、3マナで《ヴァルキリアス・武者・ムサシ「弐天(にてん)」》を召喚ッ!!」

 

「っ……!!」.

 

 

 慣れた手つきで、カレはカードを素早く捌いていった。

 

 

「《ムサシ「弐天」》の効果で、お前の《クック・轟・ブルッチ》を破壊!その後、カードを4枚ドロー!」

 

「っ、《轟・ブルッチ》が……!!」

 

 

 カレの《ムサシ「弐天」》は自分の火のエレメントの数分、相手のエレメントを1つ破壊でき、さらに、自分の光のエレメントの数分、カードを引ける。

 

 よって、その効果で、こちらの《轟・ブルッチ》が破壊され、カレはカードを4枚引いた。

 

 

「……」

 

 

 そして、カレは一度、深呼吸をし、目を鋭くして、僕を睨んだ。

 

 

 

「……さて、前座はここまでだ。ここから先は、貴様を全力で潰させてもらうぞッ!!」

 

 

 



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ACE90:時の(かね)が鳴る時──諦めろ!そして、もう一度、絶望しろ!!

 

 

 

「──《マロク》でシールドを攻撃──する時に、クロスしてる《リュウジン・ドスファング》のサムライ・メクレイド5を発動ッ!!来い、《ホワイトグレンオー》ッ!!」

 

「っ、このタイミングで《ホワイトグレンオー》か……!」

 

 

 自分のサムライ・クリーチャーにスピードアタッカーを(あた)える《爆炎(ばくえん)ホワイトグレンオー》が出たことで、このターンに出た《ムサシ「弐天」》はすぐに攻撃できる。

 

 

 ──だけど、打点は足りない。けど、革命チェンジを持つ《ミラダンテ(トゥエルブ)》か、《ラフルル・ラブ》があれば、話は別だ!

 

 

 

 それなら──

 

 

 

「──ここで、トリガーを引いてやる!来い!シールド・トリガー……!」

 

 

 

 そう強く叫ぶも、現実はそう甘くなかった。

 

 マロクの持つ短剣で、シールドは砕かれ、その破片(はへん)の一つを手にし、それがカードとなって変わり、僕はそれを見るも、そのカードはシールド・トリガーを持たなかった。

 

 

「どうやら、トリガーを引けなかったみたいだな……!」

 

「っ、くそ!なんでこんな時に引けないんだよっ!!」

 

「これが現実だッ!受け入れろ!《ムサシ「弐天」》で、シールドを攻撃──する時に、革命チェンジッ!!」

 

「──ッ!!」

 

 

 畳み掛けるかのように、カレは《ムサシ「弐天」》をタップした。

 

 

 

 ──そして、そのまま手札に戻し、今来てほしくない、最悪のカードがバトルゾーンに現れた。

 

 

「──《(とき)法皇(ほうおう) ミラダンテⅫ》ッ!」

 

 

 刹那。実体化したミラダンテⅫが現れた瞬間、僕の周りに黄色い鎖が現れ、その鎖は僕の体を強く縛った。

 

 

「ぐっ……!!」

 

「《ミラダンテⅫ》の効果!コスト5以下の光の呪文がないため、カードを1枚ドロー。そして、ファイナル革命を発動ッ!お前は次のターンの終わりまで、コスト7以下のクリーチャーを召喚できない!」

 

 

 そう宣言すると、カレは「さらに!!」と、言って、手札から1枚のカードを手にする。

 

 

「《ムサシ「弐天」》の効果で、オレの手札の枚数以下のアーマード、またはサムライを持つカードをタダで使える!!」

 

 

 今、カレの手札は7枚ある。

 

 よって、コスト7以下のアーマード、またはサムライを持つカードをタダで使えるのだ。

 

 

「もう一度来い!《ムサシ「弐天」》ッ!その効果で、山札から……4枚までドローだ!──そして、《ミラダンテⅫ》で、シールドをT(トリプル)・ブレイクッ!!」

 

「──っ!!」

 

 

 砕かれる3つ(3枚)(シールド)

 

 鎖で縛られた僕の体は、砕かれたシールドの破片をもろに受けた。同時に、鎖も切れ、そのまま、僕の体は地面に膝をついた。

 

 そして、「はぁ……はぁ……」と、(あら)い息を吐き、僕はすぐに、立ち直れなかった。

 

 

「……これでわかったでしょ?君じゃ、ボクには勝てない。絶対的な力……圧倒的な力の前には、君は誰にも勝てない。ボクにも、結衣にも……ましてや、ジャシン帝や、憧れの赤羽光太にも、君じゃ、勝て──」

 

 

「──確かに。今のままじゃ、僕は誰にも勝てないね」

 

 

「──ッ、何!?」

 

 

 まだ立てるのか?と。言いたげな顔で、カレは驚いた。

 

 

 ──当たり前だ。

 

 

「まだ何も、終わってない……」

 

 

 ──まだシールドは1枚残ってる。

 

 

「まだ何も、始まってない……」

 

 

 ──3枚の中に、トリガーはなかった。

 

 

 けど──

 

 

「僕はまだ、彼女と……秋乃さんと夏祭りに行ってないんだっ!!」

 

 

 ──だから!

 

 

「だから!こんな所で、諦めるわけにはいかないんだっ……!!」

 

「──ッ!?」

 

 

 ゆっくりと、立ち上がりながら、僕は目の前にいるカレ──ショウに、そう叫んだ。

 

 

「だったら!明日(希望)を信じて死ね!《ムサシ「弐天」》で攻撃!その効果で、《ボルメテウス・武者・ドラゴン「武偉」》を場に出す!!」

 

 

 再び現れる武者・ドラゴン「武偉」。

 

 そして、ムサシ「弐天」の持つ2つの刀が、僕の最後のシールドを砕いた。

 

 

「ッ……!!」

 

 

 砕かれる最後のシールド。

 

 その欠片(かけら)の一部を僕は──掴んだ。

 

 

「いい加減、諦めろ!そして、もう一度、絶望しろ!!」

 

「……」

 

 

 諦めない。どんなに絶望的な状況でも、僕は最後まで、絶対に諦めない!!

 

 

 そう決意した僕は掴んだシールドの欠片が、いつも間にか、カードに変化しており、それを覗いた──

 

 

 



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ACE91:蒼き(つるぎ)を引き抜く時──僕は……最後まで諦めないっ!!

 

 

 

「──勝先輩、大丈夫でしょうか?」

 

 

 ──突然、特訓中に、明星(あけぼし)さんは勝様を心配して、小さく、そう呟きました。

 

 それを聞いてしまったのか、はたまた、聞こえてしまったのか、咲恋(されん)さんは明星さんに近づき、声をかけました。

 

 

「大丈夫よ、ひよりちゃん。アイツが負けるとしたら、相当(そうとう)運が悪い時よ」

「そうですね。彼が負けるとしたら、運が悪い時ですね」

 

 

 咲恋さんに続き、エリカがそう言うと、明星さんは小さく微笑みました。

 

 

「ふふ、そうですね。先輩が負けるとしたら、運が悪い時ですね!」

 

 

 笑顔で明星さんがそう言うと、秋乃(わたくし)も、つい、つられて笑ってしまいました。

 

 

「確かに。勝様が負ける理由(とき)大抵(たいてい)、運が悪い時ですわね……」

 

 

 他に彼が負ける理由があるとすれば──

 

 

 

 ──いえ、これ以上は考えないでおきましょう。

 

 

 彼氏(勝様)の名誉を守るため、何より彼女(わたくし)的に、考えないでおきたい。

 

 これも、一つの仕事。

 彼女としての立場もありますが、何より、焔財閥の娘として、どんなに小さな仕事でも、簡単な仕事でも、無理難題に押し付けられた仕事でも、完璧にこなしてみせましょう。

 

 

 そう決心した後、わたくしは胸に手を当て、強く祈りました。

 

 

「なので、勝様。絶対に勝ってくださいね──」

 

 

 

 

 

「──大丈夫だよ、秋乃さん。どんなに絶望的でも、僕は最後まで、諦めないっ!!」

 

 

 ──シールド・トリガー!!

 

 

「シールド・トリガー!《閃光の守護者 ホーリー》!!その効果で、相手のクリーチャーをすべてタップっ!!」

 

「……ッ!?なんだと!?」

 

 

 シールドから現れた光のクリーチャー、ホーリーによって、カレのクリーチャーはすべてタップされ、それを見たカレは驚き、「ターンエンド……」と、渋々、僕にターンを渡した。

 

 

「僕の……ターンっ!!」

 

 

 勢いよく、カードを引き、僕は3枚のマナをタップさせた。

 

 

「もう一度、頼む!《ボルシャック・ガラワルド》!!」

 

「グオオォォォッー!!」

 

「ッ、またソイツか!いい加減、キツこいぞ!!」

 

 

 炎の中から咆哮するガラワルドの姿にショウは悪態をつく。

 

 

 ──しかし、そんなカレに、僕は声をかけた。

 

 

「キツこい?そんなの当たり前だろ!」

 

「……!?」

 

「約束したんだ……もう二度と誰にも負けない!自分にも、結衣ちゃんにも!……だから、キツこくても、ガラが悪くても、立ち上がって……勝つって決めたんだっ!!」

 

 

『大丈夫だよ、■■ちゃん。ボクが何とかしてみせるから……」

 

 

「──ッ!?ウルサイ!ウルサイウルサイウルサーイ!」

 

 

「《ガラワルド》の効果で、《マロク》とバトルだっ!」

 

「エスケープは使わず、そのまま《マロク》を破壊する!」

 

「バトルに勝利したから、《ガラワルド》の効果で、カードを1枚ドロー!そして、《ガラワルド》で、シールドを攻撃──する時に、《ガラワルド》の効果と手札の《ドギラゴン(バスター)》の革命チェンジを宣言!」

 

「なっ!?《ドギラゴン剣》だと!?」

 

 

 僕が指示するよりも早く、ガラワルドはムサシ「弐天」とバトルし、そのままカードの姿になって、僕の元に戻り、僕は……勢いよく、召喚口上を叫んだ。

 

 

(あお)(よろい)(まと)いし、革命の龍よ!もう一度、僕に力を貸してくれ!過去を切り裂け!《蒼き団長(だんちょう) ドギラゴン剣》っ!!」

 

 

 思いっきり、召喚口上を叫んだ後、僕の前に(あか)(あお)の二つの炎が渦巻きのように現れ、そこから、蒼き鎧を纏った革命の龍──《蒼き団長 ドギラゴン剣》が姿を現した。

 

 

「ドッ!ドギッ!ドギラゴンッ!!──ギャアアアァァァッー!!」

 

 

 自身の名前を言った後、ドギラゴン剣はお叫びを上げた。

 

 

「……そ、そんな……ドギラゴン。お前まで、ボクを裏切るのか……!?」

 

 

 ──裏切る?いいや、それは違う。

 

 

「コイツは君の目を覚ますため……いや、僕を勝利に導くため、此処(ここ)にいるんだっ!」

 

「──ッ、ダマレ!ダマレダマレダマレェェッー!!」

 

「黙らない!!」

 

「ッ……!?」

 

「もう……終わらせよう。こんな悪夢から、目を覚ますんだっ!──《ドギラゴン剣》のファイナル革命を発動っ!手札から《()ぶ革命 ヴァル・ボルシャック》を場に出すっ!!」

 

 

 ボルシャック・ヴァルケリーが革命の力を()た新しい姿、《飛ぶ革命 ヴァル・ボルシャック》。

 コイツの効果はかなり使いにくい。けど、今のこの盤面では、コイツの効果はかなり()く。

 

 

 その効果は──

 

 

「──《ヴァル・ボルシャック》の効果!自身以外のクリーチャーを2体まで選び、タップ、またはアンタップさせる!《ドギラゴン剣》をアンタップだっ!!」

 

「な、なんだと!?

 

 

 これにより、攻撃中の《ドギラゴン剣》はまた攻撃でき、仮に《ハヤブサマル》のようなシノビが出ても、こっちの攻撃可能なクリーチャーは3体いる。

 

 

 つまり──

 

 

「──この勝負は僕の勝ちだっ!!」

 

「ッ、そうはさせるか!ニンジャ・ストライクで、《ハヤブサマル》を場に出して、自身をブロッカーにして、《ドギラゴン剣》の攻撃をブロックだッ!」

 

「もう一度、《ドギラゴン剣》で攻撃っ!!」

 

 

 ドギラゴン剣の長い刀が、ショウの残りのシールドをすべてブレイクした(切り裂いた)

 

 

「……ッ!?そんな!?シールド・トリガーが……ガード・ストライクが1枚もないだと!?

 

「《ヴァル・ボルシャック》で攻撃する時、《輝く革命 ボルシャック・フレア》に革命チェンジっ!!」

 

「ッ!?そいつは……!?」

 

 

 夢の世界で、ボルシャック・レイダーが新しい力に覚醒した姿、《輝く革命 ボルシャック・フレア》。

 

 そのボルシャック・フレアの巨大なドリルがカレ──ショウを襲った。

 

 

「これで終わりだっ!《輝く革命 ボルシャック・フレア》で……ダイレクトアタックっ!!」

 

 

(そんな……ボクが、負ける?最強の力を得たボクが負ける……?)

 

 

「ありえない!あってはならないんだ!このボクが負けるワケには──」

 

 

 ──刹那。

 

 カレが言い切るよりも前に、巨大なドリルがカレ──ショウを貫かず、カレの目の前で地面に穴を開け、その衝撃波で、ショウは吹き飛んだ。

 

 

 




ようやく、決着です。
ここまで長った……本当に。

……まぁ、後日談がまだありますが、気長にお待ちください。

それでは次回。また会いましょう。


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ACE92:後日談──それぞれの帰るべき場所。

 

 

 

 ──何故だ?

 

 

 意識を取り戻したショウ(ボク)は真っ先にそう思った。

 

 体はボロボロで、ホコリのような砂が少量ついていて、ボクはゆっくりと、口を開き、目の前にいる人物──火野勝(自分自身)に問いかけた。

 

 

「何故?トドメを刺さない?」

 

「……教えてほしいんだ」

 

「──は?」

 

「……キミが歩んだ道……キミの世界で、僕はどんな道を歩んだのか、教えてほしいんだ」

 

「……」

 

 

 そう言って、頭を下げる()

 それを見て、ボクは反吐(へど)が出るほど、不快(ふかい)さを感じた。

 

 

「……くだらない。そんなことを聞いて、何になる?“この世界”では全く関係ないだろ?」

 

「……それでも、聞かないわけにはいかないんだっ!」

 

「ッ……」

 

 

 その言葉に、ボクは眼を見開いた。

 

 そいつの体はボロボロで、服はシールドの破片によって切られ、それでも──()は真っ直ぐな(ひとみ)で、ボクを見ていた。

 

 それを見て、さっきまでの不快さはどこかにいった。

 

 

 ──ああ、そうか。

 

 

 ──ボクは彼を絶望させるために来たんじゃないんだ……。

 

 

 ──僕はその()を見るために、ここに来たのか……。

 

 

 ──どんなに絶望的な状況でも……最後まで希望を信じて、諦めない気持ちで戦う……その姿勢(しせい)を見たかったんだ……。

 

 

 そう思った時、ボクの体が段々と薄くなっていることに気づいた。

 

 それを見て、何かを察したのか、彼の隣にいた青年──暗闇(くらやみ)(まこと)が口を開いた。

 

 

「どうやら、時間みたいだな……」

 

「っ、そんな……!まだ僕、キミに聞きたいこと、見せてない景色がいっぱいあるんだ!だから、まだ──」

 

「──勘違いすんな。別にこれで終わるわけじゃない。ただ……帰るだけだ」

 

「帰る……?」

 

 

 それを聞いて、彼は一瞬、驚くも、すぐに満面の笑顔を見せる。

 

 

「……そうか、帰るのか。“キミがいるべき世界”に……」

 

「……気持ち(ワリ)いな、その笑顔()。けど……最後に、その笑顔が見れて、安心した……」

 

 

 そう言って、ボクの意識はだんだんと、朦朧(もうろう)とし、やがて、跡形(あとかた)もなく、消えた。

 

 

「──バイバイ、別の世界のボク……」

 

 

 

 

 

 ──数時間後。

 

 もう一人のショウ(ボク)に勝利した()は合宿場に戻ると、皆、僕の姿を見て、心配してくれた。

 

 

「先輩!?大丈夫ですか、その怪我!」

「すぐに救急車を呼びましょうか?」

「大丈夫だよ、ひよりちゃん、マリちゃん」

「でもアンタ、すごい怪我してるじゃない?一度、病院に行ったら?」

「会長達の言う通りです!一度、病院に行って、検査を受けてください!」

「だから大丈夫だよ!っていうか、僕は病院が嫌いなんだ!あの注射器とか、特に!」

 

『そういう問題じゃない(です)!!」

 

 

 珍しく、息があった。いや、呑気なことを言っている場合じゃない。

 

 

「だから言っただろう?一度、部屋に戻って、着替えてからにしろって……」

「そう思うなら、助けてくださいよ!!」

「自業自得だ。自分でなんとかしろ」

「そんなー!?」

 

『勝(先輩)(様)!!』

 

「っ、ああもう!こうなったら、デュエマで勝負だっ!」

 

『望むところ(よ)(です)!!』

 

 

「全く、騒がしいですね」

「あら?わたくしは楽しいですよ、この状況」

「……そうですか」

 

 

 その様子を少し離れたところで、エリカは呆れ、秋乃はこの状況を心から楽しんでおり、それを見たエリカは溜め息まじりにそう言った。

 

 

「──秋乃様!エリカ様!そこで見てないで、二人も勝様を止めるため、手伝ってください!」

 

「あらあら、呼ばれたみたいね……」

「仕方がありませんか……」

 

 

 マリの掛け声に二人は勝達のもとに向かい──そして、デッキを取り出した。

 

 

「それじゃあ……皆、いくよ──」

 

 

『──デュエマ・スタートッ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フンフンフーン♪ンーンーンー♪ンンン〜♪」

 

 

 ある家で、一人の女性は鼻歌をしながら、今日の晩御飯を作っていた。

 

 しかし、その女性は車椅子に乗っていた。

 

 幸い、この家は彼女が不自由なく、暮らせるように作られているため、彼女は不満もなく、幸せに暮らせていた。

 

 

 ──ガタガタッ!

 

 

「……ん?」

 

 

 突然、玄関の方で(あわ)ただしい音がし、女性は料理を作る手を止め、両手で力いっぱい、車椅子のタイヤを回し、玄関まで向かった。

 

 

「──ッ!?」

 

 

 玄関まで向かうと、そこには一人の青年がいた。

 

 その青年を見て、女性は驚いた。

 

 何故なら、その青年は、黒いズボンに黒いコート、そして、コートの中に、首まで長い(あか)い服を着ており、それらの服がボロボロで、(すな)まみれになっていたからだ。

 

 

「「……」」

 

 

 二人は暫く黙り込み、静かに見つめていた。

 

 

 そして──先に、青年が口を開いた。

 

 

「──ただいま、ユイちゃん。そして、ごめんね。約束、守れなくて……!」

 

 

 そこまで言うと、青年──否、ショウは彼女──ユイに抱きつき、激しく、涙を流した。

 

 突然、抱きつかれ、涙を流したショウに、ユイは一瞬、驚くも、すぐに状況を理解し、優しく抱きしめ、右手を彼の頭に、ゆっくりと、撫でた。

 

 

「……なんで謝るの?ちゃんと、約束を守ってくれたじゃない?」

 

「……へ?」

 

 

 そこまで言うと、ユイはショウの体を放し、彼の顔と、自身の顔を合わせた。

 

 

「怪我は……まあまあしてるけど、ちゃんと、ワタシのところに帰ってきてくれた。それだけで、ワタシはまだ希望を信じて、前を向いて、明日を迎えれるよ。だから……おかえり。帰ってきてくれて、ありがとう。ショウ」

 

「う……ゔ……ゔぁわあああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッー!!」

 

 

 それを聞いて、ショウはまた激しく、泣いた。

 

 

 ──そして、彼はこの時、(ちか)った。

 

 

 ──もう二度と絶望をしないと。

 

 

 ──希望を信じて、諦めず、前を向くと。

 

 

 ──彼は、そう、誓ったのだ。

 

 

 




なんとか今日中に投稿できた……。
これにて、合宿編は終了です。
次回から夏休みスペシャル……の予定だけど、ちょっとわからないです。すいません。
かなり期間が空いているので、少し考える時間をください。

後、感想などありましたら、ドシドシ、ズバズバと言ってください。大変励みになります。(後、ほんの少し、モチベが上がります)

長くなりましたが、これにて、合宿編は終了です。
次回の話をお楽しみください。ではでは〜。


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ACE93:夏祭り──それは楽しい思い出の1ページ。

 

 

 

 ──あれから数日が経過した。

 

 合宿を終えて、すぐに夏休みに入り、デュエマ部の皆はそれぞれ夏休みを過ごしていた。

 

 

 

 ──そんなある日。

 

 明星ひよりから、デュエマ部の皆に夏祭りに行かないか、と、お誘いの連絡が来た。

 

 

『皆さん!祭りに行きませんか?』

『いいね。行こう!』

『右に同じく』

『異議なし!』

『お、俺も会長に賛成です!』

『わたくしも賛成ですわ!』

『私もお嬢様と賛成です』

『……』

『悪いが、オレはパス』

『ダメです。早峰先輩も来てください。というか、来なければ、私が連れていきます。よろしいですか?』

『えー……』

『わかった。家に訪問されたくないから行くわ』

『決まりですね!あ、皆さん、デッキも忘れずに持ってきてください!』

『?何かあるの?』

『小規模ですが、デュエマの大会があるので、持ってきてください!』

『……わかった。レギュレーションとルール、後、個人戦か、団体戦か、教えてほしい』

『えーと……』

『レギュレーションはオリジナルで、個人戦です。トーナメントではなく、連勝チャレンジです。優勝商品は双龍戦記と忍邪乱武、後、最新弾のビクトリーベストがそれぞれ6パックずつ貰えます!』

『結構、豪華な優勝商品だ……(困惑)』

『その分、連勝チャレンジはキツそうね……どれくらいやるか、わからないけど……』

『なんと!7連勝です!しかも、デッキの入れ替えアリです!継続して、同じデッキを使っても問題ありません!』

『なるほど。それは面白そうだ!』

『……帰り道、荷物が重くなるから、私は遠慮しておくわ』

『自分も会長と同じく……』

『わたくしとエリカもやめておきますわ』

『マリちゃんも遠慮しておくって』

『早峰先輩は?』

『……テメエが出るなら、オレも参加する』

『決まりですね!』

『それじゃあ、時間は……大会のこともありますし、夕方の5時にお祭の入り口の前で、集合で!』

『わかったー』

『了解です』

『りょ』

『わかりましたー』

『わかりましたわ』

『了解です』

『……り』

 

 

 

 部活の皆と夏祭りに行くことが決まったひより(わたし)は、いつも間にか、鼻歌を歌っており、再度、スマホで皆とのやりとりを覗いた。

 

 

「フンフーン♪思った通り、勝先輩と早峰先輩は参加しますね!ただ……」

 

 

 断念なことに他の先輩達、強いては同い年であるマリちゃんとメガネ君が大会に参加しないことに、少し寂しかった。

 

 

 ──まぁ、でも、マリちゃんは仕方がないかな?

 

 

 自己紹介の時に、イベントごとや大勢で活動するのは苦手だ、と、本人は言っていたから仕方がない。

 

 

 ──けど。

 

 

「マリちゃんにも、参加してほしかったなぁ……」

 

 

 そうぼやきつつ、私は大会……じゃなかった夏祭りに向けて、新しいデッキを制作するのであった。

 

 

 

 

 

 ──夏祭り当日。

 

 

 予定時間よりも早く着いてしまった()とマリちゃんは、お祭りの入り口前で、皆が来るのを待っていた。

 

 

「……早く来すぎしたかな?」

「いえ、そんなことはありません。皆さんが遅いだけです。というか、提案したひよりちゃんがいないのはどうかと思うんですが……」

「まぁまぁ、それ以上は言わないであげてよ。そのひよりちゃんから、もう少しで着くって連絡が来たんだし、許してあげてよ?」

「……仕方がありません。勝様に(めん)じて許してあげます。それにしても……」

「「アツい……」」

 

 

 そう、何より暑いのだ。

 早く来すぎたのか、夏だからなのか、はたまた、お祭りで人が集まって、体温が上がっているのか、兎に角、暑いのだ。

 

 

 というか、夕方であるにも、かかわらず、暑いのは何故だ?

 

 これも地球温暖化による影響なのか?

 

 

 幸い、こうなることを予想して、水を1本ずつ持ってきて良かった。

 

 けど、それでも暑いことには変わりない。

 

 

「すみませーん!着替えに時間かかって、遅れましたー!」

 

 

 と、思っていたら、ようやく、一人の少女──明星ひよりちゃんがこちらに来た。

 

 

 流石に待たせすぎだ、と、一言、文句を言ってやろうと思った僕だが、ひよりちゃんの姿を見て、一瞬で、言葉を失った。

 

 

「ハァ……ハァ……すみません。着替えに時間がかかったのと、思ってたより人が多くて、あまり前に進めなかったです……」

「……」

「?先輩?」

「!?い、いや、なんでもない!なんでもないけど、その……」

 

 

 一瞬、目を逸らすも、すぐに、彼女の姿を見る。

 

 

浴衣(ゆかた)を着てきたんだ……」

「はい!折角なので、着てみました!どうですか?可愛いですか?」

「……っ」

 

 

 ACE学園に転校してから、何故か、一緒にいる時間が多い、明星ひより。

 その理由は、無邪気な性格と明るい笑顔。そして、彼女の持つコミュ力の高さだ。

 

 そんな中、何度か、プライベートで彼女の私服姿を見てきた僕だが、今までのひよりちゃんは子供みたいな服装が多かった。

 けど、今のひよりちゃんは、どこか、ほんの少しだけ、大人っぽい感じがした。

 

 

 ──恐らく、彼女が着ている浴衣のせいだ。

 

 

 縞模様(しまもよう)の明るいオレンジ。だけど、濃いオレンジと薄いオレンジが絶妙な色バランスで、明るい性格の彼女をさらに象徴(しょうちょう)するかのように、その明るさが増し、さらに、彼女のコミュ力の高さが相まって、僕の脳に刺激をあたえた。

 

 

 ……これはアリだな。

 

 

「勝様。ひよりちゃんの浴衣姿を見て、如何(いかが)わしいことを考えましたね?」

「え……?」

「!?考えてない!考えてないから!」

「……まぁ、先輩も男の子ですし、仕方がないですね」

「違うから!(だん)じて違うから!」

『主も、オサカン、ですね……』

 

 

 ──禁断竜王まで!?

 

 

 違う!僕は断じて、違う!

 

 

 僕は……僕は……!

 

 

「僕は健全な男の子だあああああぁぁぁぁぁッ!」

 

 

 そう強く叫ぶ勝だが、それは虚しくも……否、現実は非情にも、不健全な男の証となるのだった。

 

 

 

 

 

「全く、人様の迷惑を考えなさいよね……」

「……ごめんなさい」

 

 

 数分後。無事に皆と合流した後、さっきの騒動を見ていた咲恋ちゃんに、僕はお説教を喰らっていた。何故に?

 

 

「まぁまぁ、月野さんも悪気がなかったわけですし、それぐらいで良いじゃないですか、咲恋さん」

「その月野がどこにも居ねえが……」

「後で彼女にもお説教をしましょう」

「え、こわ……」

 

(それはそうと、アイツ、どこに行ったんだ?)

 

 

 急に態度を変える秋乃さんの姿に、早峰先輩は少し引いていた。が、すぐに周囲を見渡した。

 その奇妙な態度に眼鏡君は気になり、早峰先輩に問いかけた。

 

 

「早峰先輩、どうかしたんですか?」

「いや、月野と暁月の二人が見当たらないんだが……」

「……早峰先輩は女心が分からないんですね」

「……は?何っつった?喧嘩売ってんのか?その眼鏡、わってやろうか?」

「聞こえなかったんですか?早峰先輩は女心が分からない人ですね」

「よーし、その喧嘩買った。表に出ろ、メガネ。お前のそのダサい眼鏡、わってやるよ……!」

「ふ、二人とも!こんな時にケンカはダメですよ……!」

 

「「明星(さん)は黙ってろ(黙っててください)!!」」

 

「っ、は、はい……!」

 

 

 仲裁(ちゅうさい)に入ろうとするひよりちゃんだが、早峰先輩と眼鏡君の二人の叫び声に後ずさった。

 

 

 ……これは流石に不味いな。

 

 

 僕達以外にも、この夏祭り(イベント)を楽しみに来ている人がたくさんいる。

 この二人が喧嘩を始める分はまだ良いけど、他の人に被害が出たら、折角の夏祭りが台無しだ。

 

 最悪、二次災害が起きても、おかしくない。

 

 いや、下手をすると……僕達の夏休みが終わる。

 

 

「それだけは避けたいな……」

「?勝様……?」

 

 

 小さく呟いた後、僕は前に出る。途中、秋乃さんに声をかけられた気がするけど、僕は気にせず、二人の喧嘩を止めに入った。

 

 

「二人とも、喧嘩はそれぐらいに──」

 

「──そんなに喧嘩したい(やる気がある)なら、デュエマで白黒つけたらどうですか?」

 

 

 僕が二人の喧嘩を止めに入ろうとする直前。いつも間にか、帰ってきたマリちゃんが二人にそう提案した。

 

 

 ──しかも、浴衣姿で、だ。

 

 

「マリちゃん!?浴衣に着替えに行ってたの!?」

「勝様、すみません。エリカさんと一緒に急遽、浴衣に着替えに行ってました。それで二人とも、どうします?」

 

 

 そう言って、マリちゃんは二人に提案した。

 

 

「……オレは構わねえが、メガネ、テメエはどうする?」

「……提案に乗りたいのは山々ですが、生憎(あいにく)、俺はデッキを持ってきていません」

「それでしたら、私のデッキを貸しましょう。ちょうど、貴方が使っている7軸ガチロボを組んできているので、どうでしょう?」

「……それだったら、乗ります。良いですよね?早峰先輩?」

「ハッ、好きにしろ!」

 

 

 早峰先輩から承諾を得た後、眼鏡君はマリちゃんからデッキを借りて、近くにある休憩所で、二人は移動し、「「デュエマ・スタートッ!!」」と、言って、対戦を始めた。

 

 

「さて、私達は会場に行きますか……」

「え?二人を待たないの?」

「待っていたら、大会に参加できないですよ、勝様」

「あ……」

 

 

 それもそうか。と、納得しかけたが、流石に二人を放棄するのは可哀想と思い、待ってあげようと声をかけるが、その前に、咲恋ちゃんが口を開いた。

 

 

「それなら私が二人を見ているから、アンタ達は先に行きなさい」

「咲恋ちゃん……良いの?」

「良いわよ。こういうのは生徒会長の務めよ」

 

 

 今、生徒会長は関係ないと思うよ、と、思ったけど、あえてそこは黙っておこう。

 

 

 そう思っていると、今度は暁月さんが口を開いた。

 

 

「……アナタ一人では不安なので、私も一緒に残りましょう」

「……良いの?秋乃さん?」

「構いませんわ。寧ろ、皆さんが一緒じゃないと、わたくしも楽しめませんわ」

「……ありがとう、秋乃さん、エリカ。という訳で、勝達は先に行って行って」

「……わかったよ。三人とも、行こうか」

「……はい、勝様」

「咲恋先輩!後で合流しましょうねー!」

「わかってるわよー!」

 

 

 そうして、僕達は一度、別行動を取り、僕と秋乃さんとマリちゃんとひよりちゃんの四人は先に祭りの中に入っていった。

 

 

 



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ACE94:夏祭り──そして、彼らはまた出会う。

 

 

 

「マリちゃん、デッキを持ってきてたの……?」

「え?ええ、そうですね。一応というか、なんというか……」

 

 

 ひよりちゃんの問いかけに、マリちゃんは歯切れが悪く、そう言った。

 

 

「それにしても……」

「人が多いですわね……」

「だね……」

 

 

 祭りの中に入ると、僕達は真っ先にそう思った。

 

 周囲は活気(かっき)に満ちており、たくさんの屋台とゲームがあり、その中で楽しむ人々がいた。

 

 

「予想はしてたけど、ここまで人が多いのは予想外だ……」

「無理もありません。祭りのイベントの一つとはいえ、今日はデュエマの大会がありますし、それを目当てで来ている人も多いと思います」

「なるほど。道理(どうり)で、大きいリュックを背負った人をたまに見かけるわけですわ……」

 

 

 いくらデッキの入れ替えがアリだと言って、大きいリュックを背負って、祭りの中をウロウロされるのは周りの人に迷惑だ。

 

 

 ……まぁ、僕らもあまり、人のことは言えないけど。

 

 

「なんか……迷子になりそうです」

「そういう時は誰かと手を繋いで、動いた方が良いよ」

「と、言いつつ、サラッとわたくしの手を掴むのはどうかと思いますよ?勝様?」

「……嫌だった?」

「……いえ、嫌ではありません」

「「……」」

 

 

 自分達は何を見てられているのだろうか?と、ひよりとマリは口には出さないが、内心、そう思った。

 

 

「おーい!勝!」

 

「……?」

 

 

 突然、誰かに名前で呼ばれた。とても聞き慣れた声だ。

 僕は声の方に振り返えると、そこにはツンツン頭の少年──親友の拓真が居た。