新スーパーグレイトウォーズ (一芽)
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プロローグ ぶつかり合う絶望

いろいろ振り返り、一から読み直して様々な修正を加えました。
前作の方のノリが好きだった方は申し訳ございません。
今後ともよろしくお願いします。
プロローグは前とほとんど変わりませんが、どうぞ。


宇宙戦歴■■年■月■日

 

 

俺は今、とある国の戦場にいる。本当なら俺の親友が奴らを一掃して終わるはずだった。

 

日本帝国の戦術機『激震』を操縦する俺『白銀武』の目の前には地獄が広がっていた。

 

「くそっ、どうしてこうなったんだ!あいつに何があったんだ!」

 

 

 

 

 

 

俺達の地球は火星・月から襲来した化け物『BETA』によって滅茶苦茶にされた。

そんなBETAから人類が生き延びるために発動した『オルタネィティブ計画』は、最終段階である『オルタネィティブ5』が発動してて数億人の中から選抜された十数万人の人々がバーナード星系へと旅立ち地上に残された人類の『バビロン作戦』も最終段階に突入し、大量のG弾を用いて大多数のBETAを殲滅した。

そして地球に残る人類は、生き残ったBETAとの戦いを繰り広げていた。俺達には強い味方がいた、光子力エネルギーで動く黒鉄の城『マジンガーZ』だ。

マジンガーZの操縦者の『兜甲児』は俺の親友でとても頼りがいのある男で、恋人の『弓さやか』と共に戦場を駆け抜け、生き残ることを諦めかけた俺達に希望を与えてくれた。

 

 

 

 

…………………だが、俺達の希望には、全てを絶望へと叩き落とす恐るべき力が眠っていたんだ。

 

 

「どこだ、どこだ!!俺の敵はどこだああああああああ!!!」

 

俺の目の前には悪魔のような姿に変わり果てたマジンガーZと、マジンガーZに眠っていた破壊の力『マジンパワー』に飲み込まれて暴走する甲児の姿があった。

 

「目を覚ませ甲児!お前はそんな力で暴走する人間じゃないだろ!」

 

俺は必死に甲児に呼びかけた。

 

「ぐっ、ぐがあぁぁ!」

 

マジンパワーによって暴走する甲児には、俺の声は聞こえなかった。

 

「武さん無事ですか!」

 

そこに、光子の翼を生やしたアンドロイド『ミネルバX』が武の激震の前に現れた。

 

「おいミネルバ!どうしてあいつはマジンパワーを発動させたんだ!?」

 

唯一マジンパワーについて知っていたミネルバに、俺は落ち着きをなくした状態で、ミネルバに甲児の身に起こっていることについて聞いた。

 

「甲児さんは、目の前で弓さやかを殺されて、マジンパワーが暴走してしまい、マジンガーZに取り込まれているんです」

 

甲児の恋人の弓さやかはBETAの偵察をしていた。

だが、BETAの群れと遭遇してしまったのだ。

俺達はすぐに助けに行ったが、そこにあったのは無惨に破壊されたさやかのアフロダイAの姿だった。

生体反応も無く、我を忘れた甲児はBETAに突撃し、BETAを全滅させた。

だが…そこにいたのはマジンパワーを発動させ、全てを破壊しようとする悪魔と化したマジンガーとそれに飲み込まれる甲児の姿だった。

 

「じゃあ突撃したときにはもう……でもそんなことがあるのか!」

 

俺はその事をどこかで認められず、ミネルバに聞く。

 

「はい、今までの世界でも、甲児さんがマジンパワーの暴走に巻き込まれる事は何度もありました」

 

ミネルバは、過去に何度も世界をやり直している、そんな彼女だからマジンガーや甲児について詳しく、俺と甲児にマジンパワーについて教えてくれたんだ。

 

「彼はもう元の兜甲児には戻れないでしょう、それにマジンパワーによって、彼等まで目覚めてしまった」

 

ミネルバは何とも言えない表情だ…。

 

「くそっ、奴らか…」

 

マジンパワーは地球そのものに影響を与えた。

そして奴等が目覚めた…。

 

「ゴアアアアアアアアアア!!」

 

大地を揺るがすほどの雄叫びを上げながら、破壊の限りを尽くす怪獣の王『ゴジラ』そして…………。

 

『……………………』

 

不完全な状態で目覚め、ただ暴走している巨大ロボット『ゲッタードラゴン』。

奴等は元々、長い眠りについていたのだが、マジンパワーの影響によって目覚めてしまい、ゴジラの場合は全てを破壊の対象とて、ゲッタードラゴンの場合は不完全な状態だったらしく、バランスの悪いボディで動き回り、ドラゴンから放たれる異常なまでのゲッター線によって、たくさんの人々がゲッターに飲み込まれていった。

 

「なんだてめえら、俺に殺されてえのか!?」

 

甲児がゴジラ達に向かい叫ぶ…。

 

「ゴルアアアアアアア!!」

 

ゴジラも咆哮を上げ、マジンガーを睨む。

ゲッタードラゴンも吠えはしないが、マジンガーを睨むようであった…。

 

…………そして遂に、出会ってはいけない三つの存在が戦いを始めた。

 

「どうすればいいんだミネルバ!このままじゃ地球そのものが崩壊するぞ!」

 

「………………………武さん、もう諦めましょう」

 

俺の機体の下にいるミネルバはそう告げた。俺はその意味が分かっていた。

だから危険を承知で激震を降りて、ミネルバに詰め寄った。

 

「ふざけんなよ!何でここまで来て諦めなきゃいけないんだ!」

 

俺も分かっていた。もう諦めるしかないって。でも、もし俺達がここで逃げたら、死んでいった多くの戦友達に会わせる顔がないんだ!

 

「すいません武さん、あなたの気持ちは分かります。……………………でも、ここで死んだらあなたはどうするんですか!?あなたは元の世界に帰りたくないんですか!?」

 

「……………」

 

俺はミネルバの発言に対して、何も言い返せなかった。だって彼女の言っていることは正しいからだ。俺はこの世界の人間じゃない、他の世界の人間だ、そこには俺の大切な人達がいる、俺はその世界に帰るために、ここまでがんばってきたんだ。

 

「グルオオオオオ!」

 

ゴジラの口から放たれた放射熱線が、俺の激震へと放たれる。

 

「しまった!?」

 

間一髪ミネルバが俺を持ち上げて、フォトンスクランダーで上空へと上がることで、なんとかゴジラの放射熱線を避けれたが、俺の乗っていた激震は跡形もなく消滅していた。

 

「くそっ!ゴジラの奴め…!」

 

俺は無力な自分が情けなかった。

 

「武さん!とてつもないエネルギー量を持つ巨大生物がこちらに向かっています!」

 

「なにっ!?今度は何だよ!?」

 

俺の予想では、そいつは巨大怪獣だとすぐに予想が付いた。

そして、その巨大生物らしき物体が上空から姿を現した。そう奴は…………。

 

「グルアアアアアアアア!!」

 

地球の守護神と呼ばれる伝説の怪獣『ガメラ』だ、地球に仇なす者としてマジンガー達と戦いに来たのだろう。

 

「てめえも俺に殺されたようだな!ならば死ね!光子力ビィィィィィィィィム!!」

 

マジンガーの両眼から光子力ビームが放たれる。

 

「グルアッ!」

 

ガメラもプラズマ火球と呼ばれる技で応戦する。

 

「俺を見下すんじゃねえ!この怪獣野郎がああああぁぁ!!」

 

マジンガーの背中のスクランダーが巨大なZの形をした翼へと変貌し、上空へと上がりガメラを睨みつける。

 

「これがマジンパワー『変態』か!?……やめてくれ甲児!お前は正義の味方なんだろ!悪魔になんかなっちゃ駄目だ!」

 

俺は甲児にこれ以上過ちを犯してほしくなかった…。

 

「消えろおおおぉ!!」

 

「ガアアアアアアア!!」

 

マジンガーZの大回転するロケットパンチととガメラのバニシング・フィストがぶつかり合う。

その衝撃で空は割れ大地が裂けた。

 

「うわああぁぁ!!」

 

吹き飛ばされる俺をミネルバがなんとか支える。

 

「武さん!彼らがガメラに意識を向けている間に私達は逃げましょう!」

 

逃げるだって!?

 

「逃げるって言ってるけど、そもそもどこに逃げるんだよ!」

 

するとミネルバは、目に涙を浮かべながら言った。

 

「さようなら武さん、今度こそ世界を守ってください」

 

ミネルバの目には涙が浮かんでいた。

今度こそ…?…

 

「えっ?ミネルバ、それはどういう……」

 

「ルストハリケーン」

 

ミネルバのルストハリケーンが俺へと吐かれた。

 

「ミネルバなにを!?」

 

ミネルバの口から放たれたルストハリケーンが、俺を包む。

 

 

……あれ…………俺の……意識が………す…か………こう…………………。

 

 

 

 

 

「ごめんなさい武さん、私にはこうするしかなかった。」

 

私のルストハリケーンによって光子へと変換された武さんの姿はもうなかった。

 

「ガアアアアアアアアア!!」

 

ガメラが唸る。

 

「ゴアアアアアアアアア!!」

 

ゴジラが吼える。

 

「…………………」

 

ゲッタードラゴンが構える。

 

「てめえらまとめてぶっ殺してやるよ!!」

 

そして、マジンガーがそれら3つの存在に向かい、甲児さんが叫ぶ。

 

私の目の前で4つの力がぶつかり合う。

大地を削り、山を砕き、ただ戦いあう。

 

「……………………■■さん」

 

私は、武さんの愛した■■さんの名前を呟く。

私は知っていた、彼女のお腹には武さんとの子どもが宿っていたことを。

でも彼女は、武さんには言わないでほしいと言った。

自分の子どもに会えない苦しみをあわせたくなかったからだ。

 

「■■さん、どうかご無事でいてください、次の世界でまた会いましょう」

 

私は■■さんの無事を祈りながら、世界の終わりを目に焼き付ける。

 

「今度こそは絶対に世界を救いましょう」

 

4つの力がぶつかり合う中で、私はこの世界から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

……………この時、ミネルバは知らなかった。次の世界で起きる、今まで以上の壮絶な戦いの始まることを…。



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第1話 青年と銃使いと鎧の女戦士

第1話
一部修正しています


宇宙戦歴43年4月12日 日本 山口県

 

日本の山口県にあるとある町、かつては多くの人々が住んでいたこの町は、昔の面影はなく、破壊の爪痕しか残されていない。

そんな町の中を歩く一人の男がいた。

 

 

「……ったく、食料を探しに来たら、人っ子一人いやしねえじゃねえか」

 

この男の風貌は変わっている。ボロボロのカウボーイ・ハットを頭にかぶり、全身を覆い隠すほどの茶色のコートを身に纏い、腰のホルダー拳銃が納められていた。

いったいこの男はいったい何者なのか?

 

 

 

 

 

 

場所は変わって………。

 

砂浜を歩く一人の青年がいた。

青年は黒いジャケットを身に纏い、青いジーンズを履いていて、背中に大きなリュックサックを背負っている。額には赤い布が巻かれており、歩くたびに肩まで伸びた緑がかった黒髪が尾の様に揺れている。

 

「ここはいったいどこなんだ?」

 

青年は自分のいる場所が分からず、気が付いたらこの砂浜に倒れていた。

 

「しょうがない、人を探すか」

 

青年は二十分程砂浜を歩くと川を見つけ、上流へと向かい、そこで水を確保した。

 

それから一時間程歩くと、滅茶苦茶に破壊された町を見つけた。青年は町の中に入り、進んでいく。

 

「いったい、何があったんだ?……………ん?」

 

ふと青年は、道の真ん中に変な格好をした男が倒れているのに気が付いた。

 

「おーい!大丈夫ですか!」

 

青年は、慌てて男に駆け寄る。

 

「変な格好だけど、死んでるのかな?」

 

男は茶色のカウボーイ・ハットとコートを身につけていていた。

 

「おい坊主…勝手に殺すな」

 

「うわっ!」

 

男が急に目を開けて、青年は驚いた。そりゃあそうだ、死んでる様に見える、変な男が急に目を覚ましたんだから。

 

「驚くことはねえだろ、それより坊主、水を持ってないか?」

 

青年はこの男が倒れていた原因は、単なる水不足だとすぐに気が付き、先ほど、川で確保した水の入った、2リットルのペッドボトルを男に渡す。

 

「おっ、すまねえな」

 

男はすごい勢いで水を飲み干した。

 

「相当喉が渇いていたんですね」

 

「いやあ、一日近く飲んだり、食ったりしてないからな」

 

青年は冷や汗をかいた。

 

「はあ…、そうですか、そういえばここは

どこだか分かりますか?」

 

男は不思議そうな顔をする。青年は何か変なことを言ったのだろうかと思った。

 

「おいおい、ここは日本の山口県だろ、日本人なのにそんなことが分からないのか?」

 

「えっ?」

 

一瞬、青年の思考が停止した。なぜなら、青年の知っている日本の山口県には、こんなゴーストタウンはないのだから。その様子を見ていた男は、青年が困惑している原因に気が付いた。

 

「はあ~、そうかお前、別世界の日本から来たんだな」

 

「!?」

 

青年は、男が言うことが理解できなかった。

 

「まあ最近多くてな、突然、空や海に穴が開いたと思ったら、そこから見たこともない人型兵器や化け物が現れたって話がさ」

 

「じゃあ僕はそこから、来たのですか!?」

 

男の言葉に青年はつい大きな声を出す。

 

「本人に分からないことが俺に分かるわけねえだろ」

 

男は呆れ顔で答える。

 

「………すいません」

 

青年も頭を下げて詫びる。

 

「とりあえず名前を教えてくれよ、俺の名は『グラド』、ただの旅人さ」

 

男、グラドは青年に軽い自己紹介をした。

 

「僕の名前は…………………………」

 

青年は、暗い顔で自分の名前を言おうとしない。

 

「どうしたんだ坊主?自分の名前が分からないのか?」

 

すると、青年はグラドの目を見て言った。

 

「………僕、名前が無いんです」

 

「ハッ!?名前が無い!?」

 

青年の発言にグラドは驚愕した。

それもそうだ、名前の無い人間など聞いたこと無いからだ。

 

「それに待てよ…お前今までどうやって生きてきたんだ…?」

 

誰だって疑問に思うことを聞いた。

すると、青年は暗い顔つきになるも口を開いた。

 

「僕は小さいときから、育ててくれた父さんからずっと「お前」とか「坊主」とかしか呼ばれてないし、父さんが死んだ後も名前を考えることすら無くて……」

 

「……………なんかすまねえな、そんな事聞いて」

 

父親を亡くしてから、ずっと独りだったという青年の話を聞いたグラドは、その話をさせたことに対して謝った。

 

「いいえ、そんな話を聞いてくれただけで嬉しいですよ。それにしても名前が無いって結構大変ですよね」

 

青年は、今まで気にならなかった自分の名前に関して、急に気になりだした。

 

「まあ、そんな困った顔すんなよ、俺がなんとかするからさ、とりあえず、生きた人間を探しに行こうぜ」

 

「そうですね…よろしくお願いします」

 

そして、共に行動する事になった2人は、横浜へ向かうため、旧米国軍基地を目指した。

 

旧米国軍基地のある岩国市は、徒歩で二時間ぐらいで着くため、その道中は、グラドがこの世界について知っていることを、青年に教えた。

 

 

 

この世界は、過去に多くの戦いがあった。五十年近く前、日本に『ゴジラ』、米国に『キングコング』が出現し、人類は多大な被害を被った。特にゴジラは、一度倒された後も、他の個体が出現し、『モスラ』や『ラドン』などの新たなる怪獣が出現し、人類の損失は多かった。

そんな中、突如として現れた『恐竜帝国』・『百鬼帝国』との戦争に突入した。

人々は対抗策と、空の危険性を考えた上で『戦術機』を開発した。

しかし、戦術機の性能では到底かなわなかったが、恐竜帝国・百鬼帝国は、早乙女博士が生み出した『ゲッターロボ』によって倒された。

そんなゲッターロボの勇姿と圧倒的な力を見た世界中の軍は、ゲッターロボを量産しようとしたが、早乙女研究所で起きた事故で、早乙女研究所にいた人間が突如として消えた。

この時、唯一残っていたのは、ゲッターロボのパイロットである『流竜馬』と『神隼人』の二人だけで、パイロットの一人である流竜馬のその後どうなったかは不明だが、もう一人のパイロット神隼人は、ゲッターロボの動力源であるゲッター線に関する資料を封印し、ゲッター線を使用しない新たなロボットの開発を始めたらしい。

その後、宇宙から現れた謎の敵『ガイゾック』が現れ、新たなスーパーロボット『ザンボット3』との戦いに突入する。

だが、多くの人々は、ザンボット3を持っている神ファミリーがガイゾックを地球へ呼び寄せたのではないかと非難した。

そんな中ザンボット3とガイゾックの最後の戦いが始まった。

ザンボット3のパイロット達の活躍もあり、ガイゾックは宇宙空間にて倒されたがその後の神ファミリーの消息は不明である…。

怪獣達も姿を消し、平和となったと思われた地球だったが、宇宙から最悪の敵が現れた。

その敵には様々な姿や種類があり、それらを総称して『BETA』と呼んだ。

BETAは最初月に出現し、そして地球へと降下、圧倒的な数で地球中を蹂躙していった。

異形の地球上の生命とは全く違う外見を持つタイプと宇宙空間で主に活動し、地上へと降り立つと地中へと潜み、変化して樹へとなる虫のようなタイプがいた。

そんな中、弱った世界を完全に支配しようと世界に宣戦布告をした2人の科学者がいた。

『Dr.ヘル』と『プロフェッサー・ランドウ』である。

彼らの率いる『機械獣』・『金属獣(メタルビースト)』軍団などの出現で、さらに戦いが激化してしまい、地球の総人口は八億六千万人にまで減少した。

だが、人類もやられてばかりではなかった。

天才科学者兜十蔵が生み出した、スーパーロボット『マジンガーZ』を中心としたスーパーロボット軍団が生まれた。

機械獣・金属獣軍団以外にも、長き静寂を破り活動を始めた巨大怪獣とBETAが脅威として存在していた。

巨大怪獣は、BETAの『光線級』が集中攻撃しても、あまりダメージを負う事は少なく、人類でまともな相手ができるのは、マジンガーZを始めとした一部のスーパーロボット達、そして米国の生み出した兵器『G弾』ぐらいである。

人類はそれらの脅威に追いつめられてる以上、さらなる超兵器の開発は急ぐばかりであった。

 

 

 

「本当に僕の知っている世界とは違いますね……」

 

グラドからこの世界について説明を受けた青年は、そう呟いた。

 

「そのようだな、そういえば、怪獣の話をしたとき、知っている様だったが、お前の世界でも怪獣が暴れたりしたのか?」

 

グラドは青年に質問した。

 

「はい、ただ僕のいた世界には、この世界の半分にも満たないぐらいしか怪獣はいませんよ」

 

青年は何とも言えない表情で言う。

 

「へえ、そうかい」

 

グラドと青年は、それから一時間ほど歩き、目的地の米国軍基地へと到着した。

 

「………それにしても、酷い有様でしたね」

 

青年が酷い有り様言っているのは、途中に通った岩国市の変わり果てた姿のことだ。

 

「日本はまだいいさ、BETAに一度蹂躙されたが、その半分近くが、後に怪獣共にやられて西日本を取り戻せたんだからよ」

 

グラドは歩きながら、また青年に説明を始める。

 

三年前までこの日本には、BETAの前線基地である『ハイヴ』が二つ存在したが、その内の一つである『横浜ハイヴ』アメリカの新兵器G弾により消滅し、その後、西日本に氷の中から蘇った怪獣王ゴジラが出現し、BETAがゴジラに集中している間に戦術機の部隊とスーパーロボットの部隊、そしてそれらの部隊を指揮する轟天号を西日本に送り込み、守護者の怪獣『モスラ』・『キングシーサー』の助けもあり、西日本のBETAの七割を殲滅し、ユーラシア大陸へと追いやった。

だが、BETAを殺し尽くしても暴れ続けるゴジラを倒すために戦ったスーパーロボット軍団の多くを犠牲にしながら、なんとか轟天号の誘導で南極へと誘導し、再びゴジラを氷の中へと封印することにに成功した。

西日本を取り戻しても、BETAに破壊し尽くされた西日本に帰ってくる者はいなかった。

たとえ帰りたくても、またBETAが上陸する可能性が高く、政府は西日本へ行くことすらも禁止にした……。

 

「それにしても、この基地はよく無事でしたね」

 

青年の言うとおり、米国軍基地はほとんどBETAに破壊されていなかった。単に海側にあったからという理由かもしれないが。

 

「でもこの基地に何をしに来たんですか?」

 

青年はグラドに問う。

 

「いやあ、俺の機体をこの基地に隠していてよ、それを取りにな」

 

「あれグラドさん?あなたは戦術機でも持っているんですか?」

 

青年はグラドはてっきりホルダーの拳銃だけが武器と思っていた。

 

「まさかこの拳銃だけで生き残っていたかと思ってたのか?」

 

グラドが呆れ顔で聞く。

 

「…ハァ…確かにこんな俺がロボットに乗るのは変かもしれないが、BETAなんて万単位で攻めてくるのが普通なんだぜ、自分専用のロボットぐらい持っていないと生きていけねえよ」

 

「…は、はあ」

 

それから二人は基地の中に入っていく。二人は格納庫の前まで来た。

 

「この中にグラドさんの機体が………」

 

青年は格納庫を見て、グラドの機体がどんなのだろうかと考えていた。

 

「ちょっと待ってろよ、半月ぐらい動かしてないから、メンテナンスしてくるからよ。」

 

「そうですか、じゃあ僕は海でも見て来ます」

 

青年は、グラドに自分のリュックサックを預ける。

 

「基地の中からは出るなよ、もしもの時は、お前に渡した通信機を使え」

 

「分かりました」

 

グラドは、格納庫の中に入っていき、青年は基地の滑走路まで行き、そこから海を眺めた。

 

「そういえば僕、この世界に来たとき、砂浜で倒れていたんだよな、その時は海なんか見る余裕は無かったけど、こうして見ると、僕の世界の海と変わっていることはないんだよな」

 

それから数分くらい経過し、充分海を眺めた青年は格納庫の所まで戻ろうとした時だった。

 

『ギィアアアアアアアアアアアアアア!!』

 

「!?」

 

突如、青年の耳に何かの声が聞こえた。

 

「今のはいったい!……………………!あれは!」

 

青年は海の方を見ると、小さな人影らしきもののが、4匹の鳥のような巨大生物に追われていて、こちらに向かっているのだ。

 

「あれは『ラドン』!?いや違う、別の怪獣だ!」

 

青年はとっさに通信機で、グラドに連絡を取る。

 

「グラドさん!怪獣がこの基地へ向かってきます!メンテナンスは終わりましたか!」

 

青年は焦った声でグラドに状況を説明した。

 

『なんだと!怪獣がこの基地へ!?おい小僧!早くこっちへ戻ってこい!」

 

「ですが、怪獣に追われていてる人がいるんです!」

 

青年は落ち着きを保てなかった。

 

『駄目だ!早くしないとお前が死ぬぞ!』

 

グラドを何とかして通信を止めようとした。

しかし……!

 

「…で、ですが…、うわああああ!」

 

『おい!どうした!すす…!………』

 

二人の通信は途切れてしまった。

 

 

 

 

青年は、怪獣の翼が引き起こした突風で吹っ飛ばされ、近くのコンテナに叩きつけられた。

 

「くそ、周りを見てなかったからか、そういえば通信機は!?」

 

青年は通信機を見る。

しかし、通信機は壊れていた。青年は体を起こす。

 

(そういえばグラドさん、さっき、僕のことを小僧と呼ばなくて、なんか言ってたな、すすまで覚えているけど、通信機が壊れたから最後まで聞こえなかったな、…………ってそんなことを気にしている隙はない!怪獣は、追われていた人はどうなったんだ!)

 

青年は滑走路を見る、そこにいたのは………。

 

「ギャアアアアアアアア!」

 

先ほどの怪獣達だ。1匹の怪獣が吠えると、他の3匹も吠える。怪獣は鳥の様にも見えるが、羽毛などはなく、翼は蝙蝠の方が近いかもしれない。平らな頭で平らな突起物が2つ後ろを向いていて、眼は赤一色だ。

 

「う、うう……」

 

声に反応した青年はすぐ近くに人影を見つけた。

だが、それは人型なのだが変わった姿をしていた。

全身が鎧のようなものを纏っていて、ボディの一部が桃色なのとその体格からして女性だと思われるが、あんな怪獣達から逃げてきたにしては、背中にはブースターが装備しているわけでもないのだ。パワードスーツのようにも見えるが、明らかに地球上の技術ではないと青年は直感的に気づいた。

 

「大丈夫ですか?」

 

青年は怪獣に気づかれないように、そっと謎の女性に近寄り、声をかけた。

 

「…あ……貴方は?」

 

女性は青年を見た。

 

「僕はただの旅人です、早くこの場から逃げましょう。僕と緒に来た人が近くの格納庫にいますから」

 

青年はそう言って、彼女の手を掴み、この場から離れようとしたときだった。

 

「ギャッ!ギャアアアアアアア!」

 

怪獣の中の1匹に見つかってしまった。

 

「まずい!早く逃げよう!」

 

青年は女性の手を取る。

 

「私を置いて逃げてください!私は化け物みたいな人間でそうすぐには死にませんが、貴方は普通の人間ですよ!すぐに死んでしまいますよ!」

 

「嫌です、目の前で死にそうな人を助けられない方が死ぬより辛いですから」

 

女性は、自分のせいでこの青年を危険な目に遭わせたのに、この青年は、そんな自分を助けようとするのに涙がこぼれそうになった。

 

「ちょっと離れててください」

 

「まさか、この体で戦うつもりですか!?」

 

青年はボロボロになりながらも戦おうとする女性の姿に驚いていた。

 

「大丈夫です、私は『テッカマン』、テッカマンレイピアです……そう簡単には倒されませんよ」

 

女性はどこからか出したか分からない剣を構えて、怪獣達へと突っ込んでいった。

 

「レイピアさん!」

 

「いっけええ!」

 

テッカマンレイピアは、自分の武器である剣テックソードで空から急降下し、怪獣の右翼を切り裂く。

 

「ギャルアアアアアアアアア!?」

 

右翼を切り裂かれた怪獣が悲鳴を上げる。

 

「よし!この勢いでいけば…。」

 

レイピアは怪獣へと追撃を加えようとした。

 

「ギャワアアアア!」

 

「きゃああああああ!?」

 

しかし、テッカマンレイピアは後ろから怪獣に翼で地面に叩き落とされた。

 

「ギャアアアア!」

 

怪獣の口がレイピアに迫る。

 

「レイピアさん危ない!」

 

怪獣がレイピアを食らおうとしたその時だった!

 

『これでも食らいな蝙蝠野郎!』

 

グラドの声が聞こえ、グラドのいた格納庫の方から黄色い光の砲撃が放たれて、レイピアを食らおうとした怪獣を消滅させたのだ。

 

「今の声はグラドさん!」

 

青年は声を上げる。

すると、壊れて画面が真っ黒だった通信機の画面が明るくなり、グラドの通信が入った。

 

『おい進(すすむ)!大丈夫か!今の攻撃で死んでないよな!?』

 

「大丈夫ですよグラドさん!というか進って誰ですか!?」

 

青年は聞き覚えのない名前で呼ばれて反応に困った。

 

『俺が考えたお前の名前だよ、道切進(みちきり すすむ)、名前がないと不便だろ?』

 

そう伝えるグラドの声は、どこか父親のように優しかった。

 

「………ありがとうグラドさん、会ったばかりで見ず知らずの僕に名前をくれて」

 

青年…『道切進』はグラドに礼を言う。

 

『なあにいいってことよ。そんなことより、お前が助けようとした奴を連れて早くその場から離れろ!その怪獣『ギャオス』はしつこく狙ってくるぞ!』

 

「分かりました!」

 

進はグラドの忠告を聞き、倒れていたレイピアを背中に乗せてその場から離れようとする。

 

「ギィアア!」

 

「危ない!」

 

ギャオスは、進達に攻撃を仕掛けようとした。

それを察知した進は近くの格納庫の陰にレイピアを下ろすも、進はギャオスの超音波メスを真っ正面から食らってしまう。

 

「うおおおおおお!」

 

だが!彼はその攻撃を両手で受け止めたのだ!

 

「まさか、あの攻撃を受けめた!?」

 

レイピアは自分でも耐えきれなかった超音波メスに生身で耐えた進を見て、驚愕する。

 

「貴方はいったい……?」

 

そう言ったレイピアに対し、超音波メスを耐えきった進は少し笑みを浮かべて言う。

 

「僕も化け物ですよ、あなたとは違いますがね、まあそれ以前に僕は本当は人間じゃない」

 

進の顔は優しかったが、それとは別の恐ろしい何かを放っていた。

 

「…えっ?」

 

レイピアは一瞬、進の言ったことが理解できなかった。

 

「僕は人間が生み出した破壊の使者、怪獣王の息子」

 

進がそう言うと、彼の身体は蒼い光に包まれる。

 

「「「ギィア!?」」」

 

ギャオスはその光を見て怯えていた。

そして光は50mぐらいの大きさになり、光は消える。

 

だが、そこに進の姿はなかった。そのかわりに全身が黒い巨大な生物がそこにいた。

 

「あ、ああ…」

 

レイピアはその姿に見覚えがあった。

自分が知る破壊の王と呼ばれた怪獣とそっくりなのだ。

 

そう、その名は……………。

 

 

 

 

 

 

「……ゴジラ」

 

「グルオオオオオオオオオオオオ!!」

 

怪獣王『ゴジラ』の咆哮が米国軍基地に響き渡った。



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第2話 黒き力と白き因果

米軍基地に響き渡る咆哮は、大地を震わせ、海を揺らした。

 

「ゴジラだと?………しかも、俺の知っている個体とは違う?」

 

自分の機体のコックピットの中にいるグラドは、メインカメラに映るゴジラを見てあることに気づく。

過去に写真でゴジラを見たことがあるグラドだが、今自分の目に映るゴジラは戦場で見た個体よりも少し緑がかっていて容姿の違いも多い。

彼の見たゴジラは初代の個体などとは姿形が似てるというより、全体的に身軽な体つきであった。

どちらかと言えばあのゴジラは、前述の初代ゴジラに似ていて、彼の知っているゴジラよりも、腕や足が太く、力強さが伝わってくる。

そしてグラドは、先ほどの通信で聞こえた進の言葉を思い出す。

 

「まさか、あれは進なのか?」

 

そんな確証はなかった。

だがグラドは、もしかしたら、あのゴジラは進ではないのかと考えている。

しかしそれならば、進と会ったときに気づく筈だろうとも思う。

 

「……くそっ、考えたって何も分からねぇ、ちょうどこいつの調整が終わったことだし」

 

そう言ってグラドは自分の愛機を動かし、格納庫から出る。

 

(この目で確かめてやる、あのゴジラの正体を)

 

 

 

 

 

 

「………………」

 

身長50m近くある巨体は、黙ったままギャオスを睨みつける。

 

「「「ギャ…ギャルア……」」」

 

ギャオス達は、自分達を睨みつけるゴジラに恐怖を感じているようにレイピアに見えた。

 

(この感じは何?あのゴジラから感じられる……これは怒り?)

 

レイピアはゴジラの気持ちが感じれた気がした。

 

「ギャワアアアア!」

 

我を忘れた1匹のギャオスがゴジラに向けて超音波メスを放つ。

……だが。

 

「……………」

 

超音波メスはゴジラの体に当たると、拡散して消えた。

 

(嘘!?なんて防御力なの!?)

 

レイピアはゴジラの頑丈さに驚愕した。

 

「ギュエエエエエ!!」

 

ギャオスはやけになり、ゴジラに体当たりを試みる。

 

(………ガシッ)

 

だが、ギャオスの頭がゴジラの左手に掴まれる。ゴジラの二分の一ほどの大きさしかないないギャオスは、悶え苦しむ。

 

「…ガッ!」

 

ゴジラの左手が蒼く輝くと、ギャオスの頭、そして体は膨張し、最後には爆散した。

 

(!あの怪獣がいとも簡単に倒されるなんて!)

 

レイピアはもはや口から言葉が出ないほど驚いていた。

 

「ギィ!ギャワアア!」

 

目の前で、同族が一撃で殺されて、逃げるように1匹ギャオスは空へと羽ばたく。

 

「ギギィ!ギャオワアアアア!」

 

翼が切り裂かれたギャオスも、なんとか空へと逃げれた。

……………………しかし、怪獣王から逃げれるはずはなかった。

 

「グルアアアアアア!!」

 

ゴジラの口から、青白い放射熱線が翼を切り裂かれてうまく飛べないギャオスへと放たれる。

 

「ギャ、ギャオワアアア!!」

 

ギャオスは断末魔と共に、放射熱線によって爆散する。

 

「ギッ、ギィ!」

 

唯一生き残ったギャオスは、ゴジラから逃れるために最大速度で逃げようとした。

 

「ギャワアアア!?」

 

突如、黄色い光の一撃が、ギャオスへと当たり、ギャオスは跡形もなく消滅した。

 

「あの攻撃はさっきの…」

 

レイピアは攻撃が放たれた方を見るとそこには、巨大な銃を持つ30mぐらいの大きさの人型ロボットがいた。

そのロボットは、全身が赤茶色でマント纏っていて、ボディには傷が多く、明らかに他の機体のパーツを使っている箇所が多かった。その頭部には二つの角があるが、一本は折れていた。左腕は普通の腕だが、右腕には巨大な銃が握られており、その銃を持つ為なのか、右腕にはバランサーがあり、左腕よりも大きく、並みの戦術機なら殴られただけでひとたまりもないだろう。

 

『おい嬢ちゃん、無事か?』

 

ロボットに乗るグラドは、ロボットのスコープに映るレイピアにスピーカーで無事を確認した。

 

「はい、大丈夫です…ですが………」

 

レイピアは、ロボットをじっと観るゴジラの方を見た。

 

『おい、俺の言葉が分かるかどうか知らないが一応言っておく…………………お前は進なのか?』

 

グラドはゴジラに向かって、自分の声を飛ばした。

 

「………………グルルゥ…」

 

ゴジラは一度、グラドの機体とレイピアを見る。

 

「ガアァッ!」

 

ゴジラは空に吠え、レイピア達のいる地面を大きく揺らす

 

『チィ…!』

 

グラドはとっさに大銃をゴジラに向ける。

ゴジラが進でも、ちょっとした甘さで面倒な事になるかもしれないからだ。

 

「ガアァァァァァ」

 

グラドが大銃を向けると、ゴジラは右手で首を押さえて力が抜けるように鳴く。

すると、ゴジラの体は蒼い光に包まれる。

 

「これは……さっきと同じ光?」

 

レイピアは不思議そうに見る。

青い光は、人間サイズまで小さくなると光は消え、そこには先ほどと同じ姿の進が立っていた。

 

『………進』

 

「………」

 

二人は、目の前の人物が進だと分かっていたが近寄ることはしなかった。だが、先ほどのゴジラが進の姿になったと考えると進は人間の姿をした怪獣と考えられたのだ。

 

「…すいません、僕が化け物だと思われてもかまいません、ですが、一度話を聞いてもらえないでしょうか」

 

進は難しい表情でグラド達へと言った。

 

『……………………』

 

グラドは答えない

 

(やっぱり駄目かな、あんなの見たら誰だって……)

 

進も内心不安だった

 

『よし、解った』

 

「「えっ?」」

 

進とレイピアは簡単にグラドが答えたのでびっくりする。

グラドは機体の胸部にあるコックピットのハッチを開き、外に出てきて進の前に立つ。

 

「じゃあ聞かせてくれよ、お前が誰なのかを」

 

「いいんですか…?僕が化け物かもしれないのに?…先ほどの姿を見たでしょう…」

 

進は真剣な顔でグラドを見る。

 

「ああ~面倒くせえな、たとえ化け物でも、お前はそこにいる女の子を守ったろ、それだけでお前は優しい化け物って奴さ?」

 

それでもなお、グラドは笑顔であった。

 

「………」

 

進は何も言わないが、この人なら安心して話せると思った。

 

「それで嬢ちゃん、身体の方は大丈夫なのかい?」

 

グラドは、自分に続いて進の元へと歩いてきたレイピアに身体の状態を確かめる。

 

「まあ、ひとまずは大丈夫です」

 

「それならいいけどよ、その鎧は脱がないのかい?」

 

グラドは安心した様子だった。

 

「…………」

 

レイピアは急に黙った。

 

「ん?どうしたんだ?」

 

するとレイピアは恥ずかしそうに言う。

 

「私、人の姿に戻ると…裸なんです…」

 

「「へっ?」」

 

2人は間の抜けた声を上げた。

 

「私これでも女の子なんですよ、いくら何でも男の人の前で脱ぐなんて…」

 

「お、おぉ、すまねえな、そういえば基地ん中に女物の服があったと思うからちょっと取ってきてやるよ」

 

グラドは冷や汗かきながら着替えを取りに行った。

 

十分後、グラドが基地に保管してあった緑の軍服を持ってきて、レイピアは変身を解き、その服に着替えた。

 

「お待たせしました」

 

「おう、終わったか………?」

 

グラドは、レイピアの姿を見て正直驚いていた。なぜなら、あの鎧の下はある程度鍛えた軍人でも入ってると思っていたが、実際は年も若い少女だったからだ。

 

「そういえば名前を聞いていなかったな、俺達に教えてくれないか?」

 

レイピアは名前を言ってなかったのを思い出した。

 

「あっ、そうでしたね、すいません、私の名前はミユキで名字の方は事情があって言えませんが、年齢は16で日本人です」

 

「16だと!?」

 

グラドはさらに驚いた。16の少女があんな鎧を纏って怪獣と戦っていたことが普通では考えられないからだ。

 

「そんな事より進さんの事について早く教えてもらいましょう」

 

レイピアは話題を変えようとした。

 

「お、おぉ、そうだな進、話してくれよ」

 

グラドも慌てながら話を変える。

 

「では、始めに言っておきます、僕はあなた方が思っているとおり別世界の怪獣ゴジラです」

 

「いきなり言ったか…」

 

進がいきなり、自分の正体を明かしたのに驚いていた。

 

「正確には、ゴジラが人間の細胞を体内で培養して生み出した肉体に意識を移した存在ですがね、この世界に来たときはどういうわけかこの肉体の状態でいました」

 

進は2人に言う。

 

「え…?進さんは別世界から来たんですか…?」

 

ミユキはグラドに遅れリアクションをとった。

 

「すいませんね、言い忘れていました、まあ、あなた方の様な優しい方々なら僕がゴジラだということを話しても大丈夫でしょう、じゃあまずは、ゴジラについて説明しますね、この世界のゴジラはどうか知りませんが、僕達の世界では、ゴジラザウルスという恐竜の生き残りが人間の生み出した核の力によって変貌した姿です」

 

「皮肉な話だ、自分達が生み出した力が怪獣を生むなんてな」

 

グラドは進の話をちゃんと受け止める。

 

「……………」

 

「ん?どうしたんだミユキちゃん?」

 

暗い顔になったミユキを見たグラドは、彼女に声をかける。

 

「あっ、何でもありませんよ、それよりも進さん、続きをお願いします」

 

進は続きを話し始める。

 

「分かりました、では次は僕について説明しましょう。まず、僕は元々、アドノア島という島にあった卵から誕生したただのゴジラザウルスでしたが、僕は生まれた頃は人間の手で育てられました。ですが、その中にも優しい方々はいましたが、僕はゴジラを誘き出すための餌として利用されました」

 

「よくそんな目に遭って俺達を信用できたな」

 

グラドはそういう人間の行動が嫌いであった。

 

「大丈夫です、僕は人類と敵対するのが目的ではありませんから、それに、その事があったから僕は父さんと出逢えたんですから」

 

「お前の親父がゴジラのことだったのか……」

 

ある意味、大きな事である。

 

「まあ、そうですね、あの世界では僕と父さんしか同種族はいませんでしたから、他にも、父さんに力を託して死んでいったラドン兄さんがいますね、あの方のおかげで父さんと僕は出逢えたんで」

 

そして、進は語った。

彼と彼の育ての親であるゴジラとのバース島での暮らしを、彼はとても成長の速度が早く、一年ぐらいで父の三分の一近くまで成長した。

彼は、その頃に宇宙から飛来した最凶最悪の怪獣『スペースゴジラ』を仲間だと思ったが、スペースゴジラによって結晶体に封じ込められた。

しかし、ゴジラがスペースゴジラを倒したことにより彼は解放された。

彼はまた父との暮らしが戻ったことに喜んだ。

…………しかし、悲劇は起きた。

彼らが住むバース島が消滅し、その時に起きたウランの核分裂で彼は不完全なゴジラ『ゴジラジュニア』となり、ゴジラは、最悪なことに体内の温度が上昇し、メルトダウンが迫っていた。

ゴジラジュニアは、父が見つからず、帰巣本能でアドノア島へと帰ろうとしていたが、彼を慕っていた超能力者の女性ともう一人の超能力者のテレパシーによって、東京へ向かい、そして破壊の限りを尽くす怪獣『デストロイア』と戦った。

デストロイアをなんとか倒したゴジラジュニアは、東京へ向かっていたゴジラと再開するも、ゴジラの目の前でゴジラジュニアは上空から地面に叩きつけられる。

ゴジラは、この時に自分の生命力をゴジラジュニアに与えるも、意識は戻らず、目の前で唯一の仲間であり息子であるゴジラジュニアを奪ったデストロイアに容赦なく攻撃した。

だが、戦いの中でゴジラの体の限界が迫り、デストロイアは最終的に日本軍の兵器と日本のスーパーロボットによって倒された。ゴジラはメルトダウンを止めようと冷凍兵器で何とか抑えようとした。

そして、長年、最強と呼ばれた怪獣王ゴジラはその生涯に幕を閉じた。メルトダウンは抑えられたが、東京中に散布された高濃度の放射能で、東京は死の都と化すと思われた。

だが、奇跡は起きた。

 

「父さんが与えてくれた生命力でなんとか生きていた僕は、東京中の放射能を全て体内に吸収して完全なゴジラになりまし。そして、僕は姿をくらまし、僕と同じ様に行く当てもない怪獣を仲間にして世界中を見て回り、地球へ襲来した宇宙人が残した怪獣を人間へと変える装置で、この姿になれるようになったんです」

 

「最後の当たりは、もうめちゃくちゃだな」

 

グラドはあえて突っ込まなかった。

 

「まあ、運が良かっただけですよ、ただ僕がこの世界にいることを仲間に何とかして伝えないといけません、彼らは、仲間のためなら無茶する馬鹿ばかりですから」

 

進は笑顔で言った。

 

「お前の話を聞いてたら、怪獣もいい連中ばかりだな」

 

グラドは興味深そうに言った。

 

「別にそうでもないですよ、僕達みたいな人間との共存を望む怪獣なんて下手したら同種族からも命を狙われかねないですから」

 

進は難しそうに言う。

 

「でも、あなたみたいな怪獣がたくさんいれば、この世界の人類もここまで衰退しなかったかもしれないのに」

 

ミユキは真っ直ぐに意見を言った。

 

「それは分かりませんよ、人間も悪魔になれるんですから」

 

「……」

 

ミユキは黙り込んだ。

 

「すいませんミユキさん、ただ僕はそうなるように努力はします、仲間や世界のために」

 

「そういえば、さっきも言っていたが、お前の仲間はどんな奴らなんだ」

 

グラドは進の仲間が気になっていた。

 

「一言で言うなら、怪獣なんですが、僕のように人間の肉体を使い分けてる者達です」

 

「ほう」

 

グラドは興味深そうに反応する。

 

「ちなみに、ゴジラの体は実態を隠しているだけですので、ゴジラに戻る際はその体を出現させて一つに融合しますのを覚えておいてください」

 

二人には見えないが、どうやらゴジラとしての体と進の体が融合してゴジラになるようだ

 

「そうか、とりあえずばこれからどうするか決めようぜ、まあ、進は分かっているが、ミユキちゃんはあまり人には話せないことが多そうだから、ひとまずミユキちゃんは、俺の知り合いの所へ連れて行こう」

 

グラドはミユキの安全を確保しなければと考えていた。

 

「その人は信頼できるんですか?」

 

ミユキは正直心配だった。自分の正体がばれるといろいろ危険だからだ。

 

「大丈夫だって、良い奴だから」

 

そう言ってグラドは、自分の機体のコックピットに乗る。

 

「そういえば、さっきから気になっていましたが、そのロボットは何なんですか?」

 

進はグラドの機体が気になっていた。

 

「ああ、こいつのことか、こいつはな『ブラストホーク』って名前で、スーパーロボットの技術を取り入れた機体で射撃や砲撃とかが主な戦い方だ」

 

そう言ってグラドは、西洋の兜にゴーグルを被せたようなブラストホークの顔を進達の方へと向かせる。

 

「まあ、触ってもいいが、勝手に壊すなよ、パーツを揃えんのだるいんだから」

 

グラドはそう2人に忠告して、コックピットの中にある通信機で連絡を取る。

 

「電波悪いな……おっ、繋がった、おいモトコ!俺だよグラド!ちょっとお願いがあってさ」

 

 

 

グラドは通信で会話すること十五分が経過した。

 

「おいミユキちゃん!俺の知り合いの香月モトコって医者がよ、ひとまず面倒観てくれるってよ!」

 

「本当に大丈夫なんでしょうか?」

 

ミユキは不安そうな目だった。

 

「大丈夫大丈夫、あいつの妹は危険だけど、モトコなら信頼できるって!」

 

グラドは自慢げに言う。

 

「それならいいんですけど、進さんはどうするんですか?」

 

確かに進のこれからも決めなくてはならない。

 

「確かに、僕が別世界から来たって信じてくれる人がいるんですか?」

 

「それだけど、進は今言ったモトコの妹の所へと連れて行く」 

 

グラドは爆弾発言をした。

 

「ちょっと待ってください!今さっき、その妹さんは危険だって言ってたじゃないですか!」

 

進は慌てふためく。

そりゃあそうだ。

危険な人間の所なんて知っていて行けるわけがない。

 

「大丈夫だろお前なら、怪獣だし」

 

「そういう問題じゃありません!」

 

グラドの発言に進は突っ込みを入れた。

 

なんだかんだいって、3人のこれからは決まろうとしていた。

 

 

 

場所は変わって、とある島。

 

「ここはどこだああああぁぁ!!」

 

青年、白銀武は叫んでいた。何処かもわからない離島にたった1人で半日もいるせいで、彼は叫ぶことしかできなかった。

 

「まったく、なんでこんな島にいるんだよ!」

 

武は本来違う平行世界の人間だ。

だがある日、BETAによって滅茶苦茶にされた違う並行世界の地球で目覚めた。

いろんなことがあり、仲間と共に頑張っていたが、オルタネイティヴ5の発動で人類の一部は他星系へと移住することになったが、大多数の人類が地上へと残されて戦っていたが、G弾の影響で地球の環境は変わり果ててしまった。

そんな地球で戦っていた彼は先ほど、自分の部屋で目覚めたが、外に出てみると、かつて人が住んでいただろう島の小さな村にいたのだ。

家は奇跡的に綺麗な状態で残っていたが、中はゴミ屋敷そのものになっていたため外に出たが、今度は船が無く、島中を見て回ったが、船などどこにも無かった。

そんなこんなで彼は、陸一つ見えない海の方を眺めていた。

 

それから一時間ほど経ち、彼は浜辺に行くと小さな船が見えた。

 

「やった!これで助かる!」

 

だが、船が在るところへ行くが、周辺には人影は無く、武は、砂浜にあった足跡を追って走った。

 

「あっ!」

 

武は遂に人間を見つけた。白いシャツを着ただらしなさそうな男が港の近くに立っていたのだ。

 

「おーい!あの船は貴方の物ですか!」

 

武は男に近づき話しかける。

だが、男は返事しない。

 

「?どうしたんですか?」

 

「……キッ……キキッ」

 

男の様子が明らかにおかしい。

 

「えっ?」

 

突如、目の前の男が緑色の虫のような怪物に姿を変えた。

 

「うわぁ!」

 

武は反射的に怪物と距離を取る。だが、怪物は武に狙いを定めてゆっくりと近づいてくる。

 

「何なんだよお前は、うおおおぉ!」

 

武は、近くにあった鉄パイプを掴み、怪物の体へと振り下ろす。

 

「ギィ?」

 

「なっ!?」

 

鉄パイプは折れ曲がり、怪物も大した反応をとらなかった。武はそれに驚愕する、なぜなら、彼の体は常人以上に鍛え上げられていて、普通の人間なら一発殴るだけで気絶させるぐらいつよくなった筈だからだ。

 

「くそ!どうすれば…」

 

「ギシャアア!」

 

怪物が武に迫る。

 

「うわあああ!」

 

その時だった!

 

「ハアァ!」

 

何者かが武と怪物の間に割って入ってきて、怪物にパンチを決めた。

 

「!?」

 

武は何がなんだか分からなかった。

 

「おい…大丈夫か?」

 

「は、はい」

 

武は、自分を助けた者を見た。

それは蜂を模したような黄色いパワードスーツを全身に纏った男だった。

 

「貴方はいったい?」

 

武は男に問う。

 

「俺の名はザビー…『仮面ライダーザビー』…時間が無いから話ならあいつを倒してからにしろ…」

 

そう言ってザビーは、怪物の方を見る。

 

「ギュワアアア!」

 

怪物は虫のように脱皮し、蜘蛛のような怪物へと姿を変えた。

 

「チッ…脱皮しやがったか、まあこっちは最初からライダーフォームだからワーム一体ぐらい問題ないがな」

 

「ギシャア!」

 

蜘蛛の怪物『アラクネアワーム』は突如として姿が見えなくなる。

 

「なら此方も、クロックアップ…!」

 

《Clock Up》

 

その瞬間、武の目の前からザビーの姿も消える。いや、正確にはザビーとワームの動きが速すぎて武には見えないだけなのだ。

 

《Clock Over》

 

そして、武の目の前にはいつの間にか、ザビーの猛攻でダメージを負ったアラクネアワームと余裕のザビーが立っていた。

 

「これでとどめだ、ライダースティング…!」

 

《Rider Sting》

 

「ハアッ!」

 

「ギュシャアアアア!!」

 

ザビーの必殺技『ライダースティング』を食らったアラクネアワームは爆散する。

 

「(す、凄い!)」

 

武はザビーの強さに興奮していた。

 

「…ふぅ」

 

ザビーは変身を解くと、二十歳ぐらいの男が出てきた。

 

「俺の名は『影山瞬』、対ワーム撃滅組織『ZECT』のチーム『シャドウ』の副隊長で、階級は中尉だ」

 

(ZECTなんて組織は聞いたこと無いぞ、この世界はいったい?)

 

武は聞き覚えのない組織の名前に困惑する。

 

「その反応を見る限りでは、お前が白銀武だな?」

 

「どうして俺の名を!」

 

武は影山が自分の名を知ってることに驚く。

 

「お前のことを知っている女からこの島で白銀武の反応があったと報告があって、俺が派遣された…わざわざ兄貴から、ザビーゼクターを借りてきてよかった…まさか、ワームに襲われているとはな」

 

影山は疲れ顔で答える。

 

「そのザビーゼクターとワームっていったい?」

 

武は聞き覚えのないことをできるだけ知りたかった。

 

「そんな事は、横浜基地に着いてからにしろ…あの魔女は五月蝿いんだ」

 

「横浜基地!?」

 

武は聞き覚えのある横浜基地に反応した。

 

「うるさい…早く行くぞ!」

 

そして武は、浜辺にあった影山の船へ乗り日本帝国の横浜基地へと行くことになった。

 

 

 

 

そして場所は変わる。

 

横浜基地の中にある『香月夕呼』の研究室、そこには香月夕呼と日本のスーパーロボット『ゲッターロボ號』の開発者の1人でもある神隼人がいた。

 

「先ほどの話は本当か?」

 

隼人は夕呼の方を見る。

 

「はい、別世界から来た人の姿を持つ怪獣王の息子と因果に導かれた男がこの基地へと来ます」

 

夕呼の言葉は到底信じれないもののはずだが、隼人は過去の経験上そういうの信じることにしている。

 

「こっちは、アラスカにゲッターチームを送ってから、毎日、新兵器の開発で忙しかったからな、彼らの存在が我々にとってプラスになるのか?」

 

隼人が指導した新ゲッターチームはとある事情でアラスカにいる。

 

「それは分かりませんが、前者は、こちらの戦力になれば我々人類にとってはとても役に立ちましょう」

 

そういう夕呼に対して、隼人は難しい顔をした。

 

「ゴジラは、ゲッター線で死ぬどころか活性化する奴だからあまり刺激を与えるなよ」

 

ゴジラにゲッター線はプラスでしかない。

過去に実証済みだ。

 

「分かっています神大佐、話は変わりますけどDr.ヘルの方は最近行動を動きませんね」

 

強大な力を持つDr.ヘル、そんなDr.ヘルは、なぜか近頃目立って動いていなかった。

 

「Dr.ヘルは物量よりも機械獣と金属獣、一体一体の性能が計り知れないから危険だ…」

 

単体の機械獣、または金属獣を倒すのには、数で攻めても意味をなさない事がある。

それは2人の悩みの種の一つであった。

 

「まったくです、BETAやラダムの対策で戦力が減る一方で、貴重なスーパーロボットが減るとまずいですからね、それで例の男もこの基地へと召集します」

 

隼人はその男のことをよく知っていた。

 

「彼をか?大丈夫なのか?」

 

彼は心身ともに強い。

だからこそ心配なところがあった。

 

「大丈夫に決まってますよ、あの大戦を生き抜いた英雄なのですから『兜甲児』は」

 

マジンガーZのパイロット兜甲児、日本でその名を知らぬ者はいないと言えるほどの英雄だ。

 

「まったく、俺達は何処へ行こうとしているのだろうな…」

 

隼人は疲れた顔をした。

 

「そうですね、少なからず、明るい未来でも目指しますか?」

 

夕呼は怪しい笑みを見せた。

 

「お前が言うと変な感じだな」

 

隼人は軽く冷や汗をかく。

 

「ふふっ、貴方だって昔はそんな性格じゃなかったじゃないですか」

 

夕呼が小馬鹿にするように微笑む。

 

「うるさい、昔の話はするなと言っただろ」

 

隼人はあまり過去の話をしたがらない男だ。

それがどんな話でも。

 

「はいはい、まあ、これからはさらに忙しくなりますから、今ぐらいは楽にしたいですよ」

 

「まったくだ」

 

2人は研究室を後にした。

 

 

 

「……」

 

 

2人が出て行くのを、多くのことが謎に包まれた少女『社霞』が見ていた。

 

 

 

この横浜基地で、怪獣王の息子と因果に導かれし青年が出逢う日も近い…………。



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第3話 ナデシコに集いし者達

道切進が本来いた世界、この世界で今、新たな物語が

まろうとしていた。

 

「…平和だなぁ」

 

少年『尾形悠真』の口から気の抜けた声が漏れる。

自分で作った朝食を食べ終えた悠真は、改めて今の平和を実感する、つい半年近く前まで国内でたくさんの戦いがあった国とは思えなかった。

ここ最近は連合軍とネオジオンの戦いのニュースはあまり聞かない。

だが、彼の平和な時間は、そう長くは続かなかった。

 

「起きたか悠真!飯食ったか!?食ったんなら今日も早く行こうぜ!」

 

突然家の扉を開き、騒がしい男が入ってきた。

 

「朝からうるさいですよ、ジロウ兄さん」

 

悠真は眠たそうな声で男に言った。

 

「だから二郎じゃないって言ってるだろ!俺の真の名はダイゴウジ・ガイだろ!」

 

その男、『ダイゴウジ・ガイ』、本名『山田二郎』であり、悠真は本名の二郎で呼んでいるのだが、本人はそれを好ましく思っていない、というより、自分の本名が平凡というのにコンプレックスを抱いているのだ。

 

「しかし、なんでこんな朝から行くんですか?」

 

悠真は面倒くさそうに聞く。

 

「そりゃあ俺達のゲキ・ガンガーを観に行くに決まってるだろ!」

 

「ゲキ・ガンガーではないですよ、あれは…」

 

ガイの言うゲキ・ガンガーとは、昔放送されていたロボットアニメである。

そして、ガイは悠真と自分だけが知るとあるものをゲキ・ガンガーと呼んでいる。

 

「じゃあ外で待ってるから飯食ったら俺にいってくれよな」

 

ガイはそう言うと扉の外に出て行った。

 

「…ハァ…」

 

悠真の口からため息が漏れた。

 

その後朝食を終えた悠真とガイ2人は、悠真の家の裏山にある洞窟へと行く。

 

悠真には血の繋がりがある家族はいない。

正確には父親らしき人物がいたのだが、その人物は、隠居の身であった『尾形秀夫』に赤ん坊の悠真を託して行方がわからなくなった。

そんな秀夫に育てられた秀夫は、悠真を優しく、時には厳しく育て、本当の祖父と孫のような絆で結ばれる関係になった。

そんな秀夫なのだが、長期間家を出ることになり、秀夫の遠い親戚であったガイが悠真の面倒を観ることになった。

ガイは悠真にとっては兄のような存在なのだが、どうにも頼り無いところがある。

秀夫もその面で心配してる様子でもあった

 

「にしてもよ、さすがにこれ以上俺達のゲキ・ガンガーをこんな所に放置しててまずくないのか?」

 

洞窟の奥へと進みながら、ガイが悠真へと言う。

悠真はゲキ・ガンガーではないと言っても無駄と思い突っ込まなかった。

 

「大丈夫だよ、それにあれは僕以外には使いこなせない」

 

そして二人は、その辺の少し大きな学校の体育館の二倍以上はあるんじゃないだろうかと思われる広い空間に出た。

 

「いつ見ても凄い迫力だよな、こいつは!」

 

ガイが子どものような喜び顔を見せて見つめているのは、その空間の真ん中に立つ、巨大な鋼の巨人であった。

 

「まったく兄さんは…それにしても、この機体を作ったこいつの生みの親の顔が見てみたいよ、文句の一つは言いたいし…」

 

悠真は巨人、いやロボットを見ため息を漏らす。

全高が20m以上あるこのロボットは、日本の甲冑を模したようなボディである。

全体的なカラーは青紫、ラインや鋭利な部分、そしてこの機体の存在感を示す頭部の三日月型の角は金色である。

両腰にある鞘には一本ずつ刀が納められていて、背部には機関砲らしき武装が二つ備えられている。

 

「そもそもこいつ、どうして僕の所に来たんだろ?」

 

悠真とこの機体が出逢ったのは1ヶ月前のことで、季節はずれの大雨で、裏山にある老夫婦のお墓が無事か確認しに行った際にに裏山の一部が崩れているのを発見、崩れた場所に開いた穴の中に入りこのロボットを見つけたのだ。

しかも、このロボットを悠真は簡単に操縦した。

元々、ロボットのパイロット専門学校にを通っていただからできたのだと思われたが、このロボットは他の人間が操縦使用とすると機能を停止してしまう。

既にガイや学校の知り合いに乗ってもらい試している。

 

「いい加減にこいつをどうするか考えないと」

 

悠真は毎日このロボットの整備をしていて、ガイはその手伝いというなの特訓の指導をしている。

 

「せっかく出逢えたロボットなんだがな…でもどうするんだ?連合軍にでも渡すのか…?もったいねえな…」

 

ガイはスーパーロボットや特別感のあるロボット好きのためこの機体をどうするか考えるときは少しテンションが下がる。

 

「さすがに軍には…このロボットが戦場で人を殺めるのは嫌だな」

 

この機体の性能の高さを知ってる悠真は、この機体が戦場に出るの恐れていた。

 

「まあ、なんだかんだ言ってお前はこいつのこと気に入ってるからな」

 

「別にそんなんじゃ…」

 

ガイは少し外れた事を言う。

 

その後、2人は機体の整備などをした。

ガイはこの機体でゲキ・ガンガーの技を再現するか考えていてばかりだったが…。

 

二人は一度家へと戻ってきた。

 

「ん?」

 

悠真は、家の扉の横にあるポストの中に入った封筒を見つけ、取り出した。

 

 

「とりあえず開けてみろよ」

 

「分かったよ」

 

ガイが急かし、悠真が封筒を開くと中には一枚の紙が入っていた。

その手紙には、きれいな日本語で長ったらしく文章が書いていた。悠真は凄い速さで手紙の内容を読んでいく

 

「………………………はぁ!?」

 

短時間で手紙を一通り読んだ悠真は、手紙の最後の文を読んで驚きの声を上げる。

「どうした悠真!?」

 

悠真は声を震わせながら応えた。

 

「このロボット……ことが………バレた…」

 

ガイは驚きの表情を見せた。

 

「おいおい!どういうことだよ!?」

 

ガイはなんとか落ち着こうとするも声は大きいままである。

唯一冷静さを取り戻した悠真は手紙の内容をガイに教える。

 

 

 

「つまり、三日前にこのロボットを起動させたときに、偶然ネルガル重工のレーダーに反応してばれたわけか」

 

ちなみにその時に機体を動かしたのはガイだから、ガイが悪いとは悠真は言わなかった。

言っても聞かないと思うからだ。

 

「うん、今になって思うと最初にこいつを起動させた僕にも責任はあるんだけどね」

 

悠真は何とも言えない顔をする。

 

「そんな気にするなよ、それでこいつは何に使うのか書いてるのか?」

 

ガイが悠真に疑問に思うことを聞く。

 

「それなんだけど、どうやら、ネルガルの新造戦艦ナデシコのクルーとして参加しないかと書いてあるんだ」

 

「ナデシコだと!?俺を平和を守る戦いへと誘われて乗ることになっていた!?」

 

実はガイは今度、ナデシコのクルーの一人として参加する予定なのだ。

 

「そうだよ。それにどうやら、この機体は一度パイロットとして登録された人間にしか操縦できないらしいんだ、今からパイロットの変更もできないらしいし、だから、僕がこのロボットのパイロットとしてナデシコの戦力になってくれないかという事らしいんだ」

 

ナデシコという単語にガイが反応した。

 

「でもさ、お前はどうするんだ?話を聞く限りじゃ強制させられてるわけじゃねえんだろ、お前と一緒に戦えるのは嬉しいがよ、もしもって時に爺さんを悲しませたくはねえからな」

 

悠真といつか共にロボットに乗って世界を守るために戦いたいと思っていたガイだが、ガイは一応元軍人で実績がある。

それに対して悠真はまだ16の少年だ、ロボットを操縦する技能があるからといって、本当の戦場を知らないパイロットとしてはまだ未熟だ。

それに悠真は尾形秀夫の大事な家族だ、危険な戦地へは送れない。

そのため、ガイは悠真がナデシコのはクルーになるのは反対だった。

2人の言葉を聴き、悠真はもう一度手紙を読み返し、告げた。

 

「よし決めた、この話に乗ろう」

 

悠真はあっさりと言う。

 

「おいおい!大丈夫なのか!?」

 

普段はただの熱血バカであるガイも、さすがにすぐに認められない。

 

「兄さんの気持ちは分かる、僕の未熟さも…だけど僕はね、こいつが他の人間が動かすのが嫌なんだ、ワガママだと知っていても、ここでこの話を受けなかったら一生後悔すると思う」

 

悠真は一息入れてまた喋る。

 

「それに、ロボットで人を守るのならロボットの戦う戦場は知るべきなんだ、甘えた考えだと言われてもいい、それでも行ってみたい」

 

悠真の将来の夢は、自分が作った機体で世界を守るという子供らしい夢だ。

だからこそ、彼はこの千載一遇のチャンスを逃したくないのだ。

 

しつこく聞いてきたためにしょうがなく一緒に来た。…そもそも、2人は今のところ行く当てもないから、断る理由もなかった。

 

「(これ以上言っても駄目だな…)その言葉、言ったからには全力でやれよ!」

 

ガイは笑顔で言うが、その目は真剣であった。

 

「当たり前じゃないか」

 

悠真はガイと同じ真剣な目つきをした笑顔で答えた。

 

 

 

 

そして、9日後…

 

 

 

 

悠真は、長崎県の佐世保にあるネルガル重工のドックの前ににいた。

 

「着いた…それにしても持って来すぎたかな…」

 

悠真は今の自分の状態を観て言う。

悠真は、両手にキャリーバッグを持ち、背中にはパンパンに膨らんだでっかいリュックサックを背負っている。

肩には鞄を掛けていた。

 

「機動戦艦なんて滅多に観れないからという理由でカメラとかプリンターまで持ってきてしまった…それにしても迎えの人遅いな」

 

悠真はかれこれ30分ほどこの場にいるが、いくら待っても出迎えの人間が来ない。

昨晩の電話では、出迎えの人間が待っていると説明があったためこの場で待っているが、いつまで経っても迎えの人間は現れない。

 

「…何時になったら来るんだ…あ、あの人かな」

 

悠真の前に1人の男が現れた。

 

「お待たせしました、尾形悠真様とお連れのお二方様ですね、案内人のプロスペクターというものです」

 

プロスペクターと名乗る男は悠真に挨拶をし、悠真も挨拶を返した。

 

「ど、どうもよろしくお願いします、それにしても遅かったですね」

 

悠真は遅かった理由を知りたかった。

 

「まあ、私もネルガルの人間として忙しい身ですが待たせたのは申し訳ございません。話は変わりますが、あなた様の元にあったあの機体ですが、ナデシコに移しておりますのでご安心を」

 

あの機体はどうやら、ネルガルの自己負担で洞窟から出され、ナデシコに移送されたらしい。

 

「ところであのロボットは何なんです?」

 

悠真はあの機体についてプロスペクターに聞いてみた。

 

「それはナデシコの中で話しましょう、それと今回はあなた方以外にも、竹尾ゼネラルカンパニーのトライダーG7とそのパイロット兼社長でおらっしゃる竹尾ワッ太様、他にもGUTSとGフォースから隊員の方など様々な方面の方が参加されておりますので」

 

トライダーG7という単語に悠真はギョッと目を開いて反応した。

 

「トライダーG7!?あのトライダーG7がナデシコに!?………あ、すいません騒ぎすぎました…」

 

つい興奮した悠真は落ち着きを取り戻し、プロスペクターに頭を下げ謝罪する。

 

「いえいえ、あなた方以外のクルーの皆さんも個性豊かな方々ばかりですから、別に大丈夫ですよ」

 

プロスペクターの個性豊かな方々ばかりというのに若干不安を覚えた悠真であった。

 

そして悠真はドックへと入り、悠真は興奮を隠せなく写真を撮ろうとしたが、ネルガルの人間に止められた。

そして、ナデシコに入った悠真は、そ用意されていた個室へと行き、荷物を出したりしていた。

 

「ハァ…写真ぐらい撮りたかったけど、駄目か…」

 

とりあえず悠真は荷物を全て出し、ナデシコの中を見て回ることにした。

 

(そういえば火星奪還作戦の為の戦艦なんだよねこれ、スーパーロボットを乗せるために、本来の1.7倍大きくなったらしいし、まあしょうがないかな…ん?)

 

悠真は、格納庫にて見覚えのある男を見つけた。

 

「こりゃあすげえぜ!トライダーG7!!あのスーパーロボットに拝めるなんて…くぅぅ!最高だぜ!!」

 

ナデシコの中にある格納庫へと来た悠真は、格納庫の中でやたらはしゃいでいるガイが目に入った。

 

「なんだ、兄さんか…」

 

「お、悠真じゃねえか!やっと着いたか!あ、お前の機体『倭猛零式』も格納庫に既にあるぜ」

 

ベラベラ喋るガイの倭猛零式という単語に悠真は頭を傾げて、すぐにあの三日月兜のあの機体だと分かった。

 

「(倭猛零式って名前なのかあのロボット…)…それにしても兄さんはどんな機体に乗るんですか?」

 

どうせエステバリスなのは知っているのだが、悠真は念のために聞いてみた。

 

「そりゃあ俺特注のスペシャルなゲキ・ガンーー」

 

「だからゲキ・ガンガーじゃねえと言ってるだろ!」

 

ガイがゲキ・ガンガーと言おうとした時、1人の男が大声で怒鳴ってきた。

その男が二人の元へと近寄ってきた。

 

「ったく何回言わせれば分かるんだ…あれはエステバリス、決してゲキ・ガンガーなどではないからな」

 

男は呆れ顔でガイを見た。

 

「へいへい」

 

ガイは面倒くさそうに返事をする。

 

「まあそんな事はいい、それよりもお前さんがあの倭猛のパイロットか?まだ16の子供と聞いていたが本当だったのか」

 

男は悠真を観た。

 

「はい、それで失礼しますが、貴方はメカニックの方でしょうか?よろしければ名前を聞かせてくれませんか?」

 

悠真は男がメカニックだとすぐ気が付き名前を聞いた。

 

「俺の名は瓜畑セイヤ(ウリバタケ・セイヤ)、ナデシコのメカニックだよろしく頼むよ。それとさっきこの馬鹿が言ったのははゲキガンガーじゃねえからな、エステバリスだからな」

 

男、ウリバタケ・セイヤは、呆れた顔でガイを見て言った。

 

「別にいいじゃねえか博士」

 

ガイは笑いながら言う。

 

「だから、いつも博士じゃないって言っただろ!」

 

2人の子供のような言い争いを観て、悠真の顔に自然と笑みが浮かぶ。

最初は堅苦しい人ばかりいると思ったが楽しくやっていけそうだと、悠真は思った。

 

するとそこに、1人の男がやってきた。

 

「まったく広いな…ん?」

 

男は悠真達と目が合った。

 

「こんにちは、失礼ですがあなたは?」

 

悠真が男に話しかけた。

男は、一瞬反応に困った顔をしていたがすぐに口を開いた。

 

「ああ…俺はアキト、天河アキトだよろしく頼む……それにしても凄いなこの戦艦、スーパーロボットまで積んでいるのか」

 

男、『天河アキト(テンカワ・アキト)』は、ガイの言ったスーパーロボットの単語に反応を示す。   

 

「お前スーパーロボットに興味あるのか?なら後で伝説のアニメ『ゲキ・ガンガー3』を一緒に観ようぜ!」

 

アキトは一瞬驚いたが、すぐに口を開いた。

 

「ゲキガンガーか……懐かしいな……って!そんな話してる場合じゃなかった!ユリカを探さないと!」

 

アキトはそう言って、どこかへ行ってしまった。

その後、エステバリスの凄さを雄真に見せようとしたガイは、エステバリスでゲキガンガーの技を再現しようとして転倒し負傷した。

少しの間エステバリスに乗れないが大丈夫らしいく、心配した悠真だが、ガイの怪我をしても元気な様子を見てひとまずブリッジへと行った。

ブリッジには艦長以外のクルーが集まっていた。

ブリッジへと来た悠真に、悠真と同い年ぐらいの少年が声をかけてきた。

 

「よう!初めましてだな、俺の名は竹尾ワッ太、竹尾ゼネラルカンパニーの若社長でありトライダーのパイロットさ。お前は倭のパイロットである尾形悠真か?」

 

悠真は、いきなりトライダーG7のパイロットである竹尾ワッ太に話しかけられて、ガチガチに固まっていた。

 

「は、はい!ど、どうもよろしくお願いします!」

 

悠真は震え声でワッ太に言う。

ワッ太は苦笑いをする。

 

「そんなに固まるなって、俺が活躍したのは小学六年の時だぜ、四年経った今じゃ仕事が少なくてよ、会社のためにも今回の計画に参加したのさ」   

 

ワッ太の話を聞く中で、悠真はなんとか落ち着きを取り戻した。

 

「そうなんですか、苦労なされてるんですね…」

 

ワッ太は会社の事は社員に任せ、い人で参加している。

そして、悠真はブリッジにいる人間のほとんどに挨拶を済ませたころにブリッジに一人の女性が入ってきた。

 

「みなさ~ん!私がナデシコ艦長ミスマル・ユリカでーす!ブイ!」

 

 

「「「………………」」」

 

ナデシコ艦長の名乗った女性『御統ユリカ(ミスマル・ユリカ)』は、元気よく挨拶をしたが、この場にいた者達は無言で反応に困っていた。

すると、彼女の後を追って1人の男が入ってきた。

彼は、女性と何か話をして一同の方を向いて言った。

 

「失礼しました、彼女は正真正銘ナデシコの艦長で、そして僕が副長のアオイ・ジュンです、皆さんよろしくお願いします」

 

一同は、真面目そうな『葵ジュン(アオイ・ジュン)』が言うのなら大丈夫だろうと心の中で納得した。

 

「では、これからナデシコについて説明をーーーー」

 

その時、艦内に警報が鳴り響いた。

 

「「「!?」」」

 

ブリッジにいた者達は急な警報に驚く。

 

「木星トカゲ起動兵器が出現、施設上空にて連合軍と交戦中です」

 

ナデシコのオペレーターである少女『星野ルリ(ホシノ・ルリ)』が状況を説明する。

 

「なんだって!」

 

悠真は突如として現れた木星トカゲに驚く。

 

 

 

場所は変わって、佐世保ドックへと急行する1つの赤い戦闘機があった。

その名は『ガッツウイングレッド』怪獣との戦闘用に改造されたライドメカ『ガッツウイング』の最新鋭機である。

そして、そのパイロットであり、GUTS新隊員の『セキシマ・ホムラ』は、木星トカゲが佐世保ドック上空へと出現したことを知らされ現場へと急行していた。

 

「チッ、木星トカゲの連中とは…面倒な奴らだ!」

 

ホムラは、GUTS代表としてスキャパレリプロジェクトに参加しろと隊長の『イルマ・メグミ』に命令された。彼女曰く、優れた戦闘技術を持つホムラが適任だったらしい。 

隊長は今回の任務のために、最新鋭のガッツウィングをホムラに与えてくれた。彼も、今回の任務には反対ではなかったが、まさか、いきなり木星トカゲと戦う羽目になるとは思わなかったのだ。

そして、施設上空へとたどり着いた彼を迎えたのは、木星トカゲの小型無人兵器、通称『バッタ』である。

 

「一匹残らず破壊する!」

 

ホムラはガッツウイングは、ニードルガンやミサイルで次々とバッタを破壊していく。このガッツウイングは、対ディストーションフィールドの装備が施されているのでフィールドの無いバッタなどは敵ではない。

その時だった。

 

「ぶっ飛べえっ!」

 

「!?」

 

突如、地上からエステバリスのワイヤードフィストが飛んできてバッタを破壊、さらにそのままホムラのガッツウィングに拳が衝突した。

機体は大きく揺れ、ホムラはエステバリスのパイロットと通信を繋げる。

 

「おい貴様!気をつけろ!」

 

こんな状態で友軍機らしき機体の攻撃が当たったのだ。

ホムラは、そんな者に腹を立てていた。

 

「え!?今の当たった!?すいません!」

 

ワイヤードフィストを飛ばしたエステバリスに乗っていたアキトはホムラに謝る。

ホムラは、明らかに軍人に見えないアキトを観て言った。

 

「貴様民間人だろ!なぜ民間人がエステバリスに乗ってる!」

 

モニターに映ったアキトの顔を見たホムラは、アキトが民間人だと気が付いた。

 

「そ、それは…」

 

アキトは民間人だとバレて言葉に詰まってた。

 

「まあ今は仕方ない!話は後だ、一気に叩くぞ!」

 

ホムラは、味方は戦力では1人でも欲しいので今はアキトについて深くは考えなかった。

 

「はい!」

 

そして2人はバッタへと攻撃する。

そんな中ホムラは、エステバリス以外のロボットに気が付いた。

 

「いけ!トライダールアー!」

 

トライダーG7である。

ホムラはトライダーG7のパイロットであるワッ太へと通信を繋げる。

 

「俺はGUTSのセキシマ・ホムラ、貴様等の味方だ」

 

ホムラは、先ほどのアキトの件のことからあらかじめ自分は味方だと言っとくことにした。

アキトのように素人ではないのは知っているのだが念のためである。

 

「こっちはトライダーG7の竹尾ワッ太だ!助太刀感謝するぜ!」

 

ワッ太は清々しいほどの笑顔で応える。

 

「では、奴らをとっとと倒すか」

 

「「おう!」」

 

ガッツウィング・エステバリス・トライダーG7の活躍でほとんどのバッタは倒された。

アキトは、なんだかんだでエステバリスを動かせていた。

だが、メンテナンス中だったコンバトラーのエネルギーはほとんど無く、最新のガッツウィングやエステバリスも次々と増える敵に対して徐々に不利になる。

 

「チッ…ミサイルも残ってねえしブレイクガンもエネルギーがほとんど残ってない、さあてどうしたものか…」

 

その時だった。

海の中から巨大な陰が現れた。

 

「あれはナデシコ!」

 

アキトはナデシコの名を叫ぶ。

そう、現れたのは戦艦ナデシコだ。

そしてナデシコが、なぜ、このタイミングで現れたのかというと………。

 

「アキト!皆さん!お待たせ!」

 

その場で戦っていた全員の回線にユリカの声が響きわたる。

 

「お待たせってこのタイミングで…」

 

アキトは呆れ顔で言う中、ユリカはそんなのを気にも留めずに…

 

「そうなの!あなたのために急いできたの!」

 

「「…………」」

 

あなた…アキトのために来たと言う。

これがその理由である。

戦場にいて血が上ってたホムラも黙るほどだった。

そして、海に集まっていたバッタ達はナデシコへと向かおうとする。

 

「馬鹿な連中だ、ナデシコに突っ込むとは」

 

ホムラは、何とも言えない顔でバッタ達を観る。

 

「敵残存兵器、有効射程距離内に入りました」

 

ルリはバッタ達が攻撃の射程距離内に入ったことを伝える。

 

「どかーんと一発いきましょう!グラビティブラスト発射!」

 

ユリカの言葉を合図とし、ナデシコの主力武装である重力波の主砲『グラビティブラスト』が放たれる。

そして、あれほどたくさんいたバッタ達は、グラビティブラストに飲まれ1匹残らず消え去った。

 

「あれがナデシコの力…」

 

ナデシコの中にいた悠真は、ナデシコの実力に冷や汗をかいていた。

 

その後、彼等はナデシコに乗艦した。

彼等はナデシコの乗艦するクルー達に最低限の自己紹介を済ませた。

ちなみにエステバリスに乗っていたアキトは、偶然エステバリスに乗ることになったらしく、戦いはやはり素人らしい。

そして、アキトはナデシコの艦長ミスマル・ユリカとは幼なじみらしく、ナデシコに戻った直後は、彼との再会を喜ぶユリカの言葉が回線に響き渡り、その場いいた全員が呆れていた。

 

「まあ、そのうち慣れるって!」

 

ワッ太はホムラの肩に手を置いて言う。

 

「そうだな…」

 

ホムラはなんとも言えぬ顔だが返答した。

 

その後、ナデシコ宇宙空間に出て、手の空いたクルー達は、夕食を取りながら他のクルー達と交流を深めていた。

そんな中、ホムラは誰かと通信機で連絡を取っていた。

 

「そうか、もう少しで合流できるのか。分かったがとりあえずとっとと来いよ」

 

堅苦しい顔ばかりするホムラが、少し表情が崩れて、笑顔を見せながら電話をしていた。

 

「すいません、どなたかと合流するのですか?」

 

悠真がホムラに聞く。

 

「ああ、Gフォースの連中だな、今連絡取ってたのはガルーダⅢのパイロットの青木一馬だ」

 

「青木一馬…?」

 

青木一馬という聞き慣れぬ名を聞いた悠真は、反応に困っていた。

 

「まあ、メチャクチャな奴だが信頼は置ける馬鹿さ」

 

「「(馬鹿とか言ってるけど…)」」

 

最後の馬鹿発言は、青木一馬を知らない悠真達からしても余計だなと思えたが、言うほどでもなかった。

 

 

 

 

「ヘックシ!誰か噂してるな…」

 

ガルーダⅢの操縦室にて、パイロットである『青木一馬』はくしゃみをした。

すると、ガルーダⅢの周辺を飛ぶ三体のエステバリスから通信が送られ、モニターにエステバリスのパイロット達の顔が映る。

 

「おいおい、しっかりしてくれよカズさん」

 

赤いエステバリスのパイロットである『昴リョーコ(スバル・リョーコ)』が呆れた顔で青木の様子を観る。

 

「大丈夫だってリョーコちゃん、それよりも早く行かねえと勝手にナデシコ火星へ向かったりするかもな」

 

「「「………」」」

 

この状況でよくもまあこんな笑えない冗談を言えるものだとエステバリスのパイロット達であるスバル・リョーコ・『天野ヒカル(アマノ・ヒカル)』・『真木イズミ(マキ・イズミ)』の三人はは思っていた。

 

「あ…すまないな、不謹慎なこと言って…とりあえず行くぞ!」

 

「(なんだかんだで話を逸らした…)」

 

リョーコが呆れる。

 

「ふぅ…」

 

ヒカルは一度精神を落ち着かせる。

 

「笑えない…実力不足」

 

イズミは先ほどの冗談をまだ根に持っていた。

 

なんだかんだで、4機はナデシコの方を目指すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「青木の奴、馬鹿やってなきゃいいが」

 

ホムラは自室で報告用の書類などを纏めていた。

 

「………何か嫌な予感がする」

 

ホムラは書類を纏めていた手を止め、目を細めて精神を研ぎ澄ませる。

すると、ホムラの脳内にいろんな声や音などのノイズが聞こえてきた…そして。

 

『ジャワアアアアアアア!』

 

「!?」

 

明らかに人間でも通常の動物でもないものの鳴き声が頭に響き渡った。

 

それと同時に艦内に警報が鳴り響く。

 

(やっぱりか!)

 

ホムラは大急ぎでブリッジへと向かう。

 

「おい!何があったんだ!」

 

ブリッジにはユリカやパイロット達など多くの者が集まっていた。

そして、ホムラが着いたことを確認すると、プロスペクターが口を開いた。

 

「ふむ…どうやら怪獣が出現したようです、しかも世界中に」

 

「「世界中!?」」

 

プロスペクターの発言に、悠真とアキトが大声を出して驚く。

 

 

「それでどういうことなんだ、怪獣が世界中に現れたって…?場所なんかもハッキリしてんのか…?」

 

地球に残った社員や家族がいることが心配なワッ太は、なんとか落ち着きを保ちながら言う。

 

 

「はい、先ほど地上と通信が入り、モンゴル、イースター島、そしてアメリカ・アフリカ・ヨーロッパ、そして日本に立て続けに怪獣が、それ以外の国々にも謎のアンノウンが出現したらしく、世界中の軍がそれらの対応に追われているそうです」

 

プロスペクターから聞かされた地球の現状に、一同の中に重い空気が流れる。

 

「だから今回のプロジェクトに反対だった軍がナデシコを追ってこなかったのか…」

 

このプロジェクトに反対する軍の人間は多かった。

そのため、今回のナデシコの行動に軍が動かなかったのはおかしかったのだ。

 

「そんなことより地上に戻らないと!地上の人達が危ない!」

 

アキトが叫ぶ。

アキトは火星のコロニーに住んでいたが、木星トカゲの攻撃で地球へと飛ばされた。

そしてその地球が火星のような危険な状態にあるのを見過ごせなかったのだ。

だが、そんな彼をホムラが止めた。

 

「駄目だ、俺達は火星に向かわねばならない」

 

そう言うホムラにアキトが掴みかかる

 

「あんたは地上の人達が心配じゃないのかよ!」

 

そんなアキトに対してホムラは、彼を強く睨みつける。

 

「いい加減にしろこの素人が……地上の人間には助けてくれる軍がいる………だがな、火星にいる人間にはその軍がいない…貴様が一番分かってるのではないのか…!?」

 

「それは…!」

 

アキトはホムラの言葉に落ち着きを取り戻す。

アキトは、火星に残された人達を絶対に助けたいのだ。

 

 

「だから俺達は火星へ行かなければならない、地上に戻りたい奴は勝手に戻れ!俺は1人になっても火星へ行く……」

 

すると、ワッ太がホムラの型に手を置く。

 

「落ち着きなって、あんたが焦っても何も始まらないだろ」  

 

ワッ太は落ち着いた笑みを浮かべて言う。

 

「…そうだな、気を使わせてすまなかったな…艦長もすまなかった、馬鹿みたいに叫び散らして」

 

ホムラも落ち着きを取り戻し、艦長であるユリカ、他のクルー達に頭を下げる。

 

「いえいえ!私達も気を引き締めて火星へ向かいましょう!」

 

ユリカはガッチガチに固まりながら言っていた。

ホムラは、もう一度アキトの方を観る。

 

「俺も怒鳴ってすまなかったな…だが安心しろ、地上にはスーパーX3や世界中のスーパーロボットがいる、そう簡単には人類は負けない、俺達が戻らなくても大丈夫だ」

 

ホムラがアキトの肩に手を置く。

 

「いや、こちらこそすいまーー」

 

アキトはホムラに謝ろうとした時、再び警報が鳴った。

 

「「「!?」」」」

 

その場にいた者達は急な警報に驚きを隠せずにいた。

 

「今度は一体何なんだ!?」

 

悠真が叫ぶ。

 

「前方にディメンションホールが出現、ホール内から多数のアンノウンが出てきます」

 

ルリが冷静さを保ちつつ、何が起きたのか説明をした。

ディメンションホールとは、ほとんどの事が謎に包まれた次元断層である。

地上、空中、宇宙空間関係なく出現し、何も出てこなければ時間がある程度経って消滅して何の問題も無くて良いのだが、近年そこから未知のアンノウンが出現する事が増えた。

そのためディメンションホールの生体反応を探知する装置などが作られたのだ。

ナデシコにもちゃんと付いている。

 

「こんな時にアンノウンとは…仕方がない、竹尾!出撃だ!」

 

ホムラの声と共にワッ太とガイが反応する。

 

「へっ、どんな奴らが来ても俺達の相手じゃないぜ!」

 

ホムラはワッ太と共に格納庫へと向かう。

 

「艦長いいのですか?あの2人をを行かせちゃって」

 

悠真は2人が出撃することについてユリカに聞く。

するとユリカは、笑顔で答える。

 

「大丈夫です彼らなら!もし何かあってもナデシコで援護しちゃいます!」

 

ユリカの発言に周りの固かった空気は崩れて、多くの者の反応は呆れる反応ばかりだった。

 

「まったく、しっかりしてよね館長」

 

ナデシコの操舵士である遥ミナト(ハルカ・ミナト)がユリカを観て言う。

しかし、ユリカの耳には入っていなかった。

 

「…俺もいくよ、不安なところもあるけどあの人の言葉を聞いたら頑張れる気がしたんだ、俺でもできることをやりたい」

 

アキトも出撃する覚悟を決める。

 

「頑張ってアキト!あなたは私の王子様なんだから!」

 

ユリカの発言に、アキトの真面目な表情は崩れた。

 

「な、何言ってんだこの馬鹿!俺はいくぞ!」

 

そしてアキトは格納庫へと向かった。

 

「俺もいくぜ!スーパーロボットと共に戦える機会なんて滅多にないからな!」

 

ガイは負傷した腕を回しながらアキトの後を追った。

 

「兄さん…まあ、止めても無駄か」

 

悠真は呆れ顔だが、どこか笑みを浮かべてガイの後ろ姿を見送った。

そんな悠真に、プロスペクターが話しかけてきた。

 

「そういえば悠真さん、あなた様の機体『倭猛零式』ですが、戦闘に出られるようにメンテナンスが完了しましたがどうなされますか?」

 

倭猛が動かせると聞いた悠真は、目を見開いてプロスペクターを観る。

 

「あの機体で戦えるんですか!」

 

プロスペクターよくわからない笑みを浮かべて説明を始める。

 

「一応は戦えますね。ただ、装備が専用の太刀二本と背部にある二門の光粒子機関砲ぐらいしか使えないのが痛手かと、元々他の装備は火星に着くまでには完成させる予定でしたので」

 

悠真はニヤっと笑みを浮かべた。

 

「それだけで充分です!僕も出ます!こんな僕でも皆さんの役に立てるように頑張ってみせます!」

 

悠真はそう言ってブリッジを出て格納庫へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、宇宙空間のトライダーG7など四つの機体はホールから出てきたアンノウンとホムラ達との戦闘の真っ最中であった。

アンノウンは小型の虫のような生命体で一匹一匹であるが小さいが数がとても多く、ガッツウィング・トライダー・2機のエステバリスは苦戦していた。

どの機体もメンテナンスが完全ではなく、ガッツウィングとトライダーは先ほどの戦闘でミサイルなどを多く消費し補給もほとんどされていないのだ。

 

「ゲキガンパァンチ!」

 

ガイの青いエステバリスの拳が、アンノウン達を次々としとめていく。

しかし、アンノウンの数が多すぎてきりがなかった。

 

「くぅ!ウジャウジャ出てきやがって!数が多いんなら合体してでかくでもなりやがれ!」

 

ガイは願望を含みながらもアンノウン達に向かって叫んだ。

 

「よし!こうなったらトライダー・バード・アタックを使う!皆は奴らを俺が指定する位置へと誘導してくれ!」

 

「解ったぜ!みんないくぞ!」

 

ワッ太の言葉を聞き、燃えに燃えまくってるガイが、アキトとホムラを先導した。

 

「まったく元気だけが売りだな…だが、成功させてみせるぞ!」

 

ホムラのガッツウイングがアンノウン達を誘導させるために飛ぶ。

 

「俺もやってやる!」

 

アキトもエステバリスを飛ばす。

三人の機体は無数のアンノウンの周りを飛ぶことでアンノウン達を挑発し、そのままのワッ太の指定した場所まで誘導した。

 

「皆!その位置からそいつ等を離れさせないでくれよ!」

 

ワッ太の言葉を聞いた3人は、アンノウン達を取り囲んで攻撃を加えながら中央へと追い詰めていく。

 

「「ギギィ!」」

 

アンノウンの群れは一点に集中していく。

 

「よし今だ!トライダー!バード!アタァァック!」

 

トライダーが光の鳥となり、アンノウン達へと突っ込む。

 

『ギギャアアア!?』

 

アンノウンの群れは叫びともにトライダーのバード・アタックで倒された。

 

「ギギィ!」

 

しかし、生き残ったアンノウンは攻撃後で隙のできたトライダーへと特攻してくる。

 

「しまった!」

 

アンノウンに気がついたワッ太は、トライダーに避けさせようとするも、避けれそうになかった…。

 

「ギギィ!」

 

アンノウンがトライダーの眼前に迫る!

その時!

 

「いっけえええ!」

 

「ギギャア!?」

 

アンノウンはトライダーの目の前で、突如現れた機体かによって切り刻まれた。

 

「あの機体は…倭じゃねえか!?…まさか…!」

 

ガイは、現れた機体…倭猛零式の姿を観て言った。

そして、ガイのエステバリスや他の機体に倭からの通信が飛ばされた。

 

「大丈夫ですか皆さん!」

 

それは倭猛を操縦する悠真であった。

倭の両手に握られた太刀がアンノウンを切り刻んだのだ。

 

「悠真…大丈夫だ、出てきたんなら覚悟は決めてるのだろ?」

 

ガイは真剣な目で悠真に聞いた。

 

「ああ!まあ、ガイ兄さんみたいに戦うーー」

 

「貴様ら!まだ来るぞ!」

 

「ーー!?」

 

悠真の言葉は、ホムラの発言でかき消された。

ホムラはガッツウイングのレーダーで地球の方から来る何かを感じ、皆に注意をしたのだ。

 

「来るって何が来るんだ!?」

 

アキトがホムラに聞いたときに、ナデシコのルリから通信が入った。

 

『皆さん、地上から3匹のGモンスターが宇宙へ向かったと報告が入りました、気をつけてください』

 

「「!?」」

 

その場にいたホムラ以外の者達に衝撃が走る。

『Gモンスター』とは、四年前に東京でゴジラがメルトダウンを起こしたときに放射能と共にゴジラの体から放出されたことにより、世界中へと散らばったG細胞を取り込み怪獣へと変貌した生物達のことを指す。

最初に確認された個体はイグアナが変貌した怪獣でアメリカで暴れまわり、最終的にはミサイルで倒された。

だが、この怪獣より凶暴な怪獣は世界中で出現し、スーパーロボットなどによって倒された。

今回世界中に出現した怪獣達もGモンスターだと思われる。

このGモンスターは生命力が高く、数が多い場合はかなりキツいものがあり、苦戦を強いられることが多い。

宇宙空間にいるナデシコの戦力でGモンスターを三匹も相手するのは危険なのだ…。

 

「来た…」

 

アキトがそう言って観た方角からは、宇宙空間へと出た3匹のGモンスターが出現した。

3匹のGモンスターはナデシコやロボット達を睨みつけた。

 

真ん中のGモンスターは鮫と恐竜を合わせたようなGモンスターで両手のヒレと巨大な背びれを揺らしている。

そして、その個体の両側にいる2匹の個体は、両方海蛇型で違いは片方が尾の先が鎌のようにっているのともう一方は尾の先が棘の付いた鉄球のようになっている。

 

「ジジャァァ…」

 

鮫型が巨大な口を開き小さく鳴く。

 

「ギキィ…」

 

2匹の海蛇型は怪しく身体をうねらせる。

 

「どうする…今の状態じゃあいつらの相手をするのはキツいぞ…くそ…!補給がちゃんとできてないときに来るなんて!」

 

ワッ太は悔しそうに言う。

 

「ひとまず作戦をーー」

 

「うわあああああ!!」

 

「ーーおい尾形ぁ!勝手に突っ込むな!」

 

ホムラが作戦を決めようとした時、倭は太刀を構えてGモンスター達へと突っ込んでいった。

 

そして、それを見たホムラはガッツウィングで悠真を追う。

 

「くそ!何やってんだよお前!うわあぁ!」

 

悠真はただただ叫ぶ。

どうやら倭は悠真の意志で動いてる訳じゃなさそうだ。

しかし、暴走してるようにも見えない。

 

「ジジャワアァァ!」

 

力強く叫ぶ鮫型は、口から青い光の球を吐き出し倭めがけて撃ってきた。

 

「うわあああぁぁぁぁぁぁ!!」

 

悠真はただ叫ぶしかなかった

 

「悠真あぁ!」

 

ガイはエスエバリスで倭に接近しながら彼の名を叫ぶしかできなかった。

 

(こうなったら!)

 

ホムラは心の中である決意をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(あれ……僕死んじゃったのかな?…………それにしては意識が………え!?)

 

倭のコックピットの中で目を覚ました悠真は目を疑った。

なぜなら、悠真の目の前に観たこともない何かがいたからだ。

 

 

 

 

「あ…れは巨人?」

 

アキトの言うとおりそれは巨人であった…。

 

「嘘だろ…」

 

ワッ太は目の前に巨人が出現したことに目を疑った。

 

「す、すげぇ…」

 

倭の目の前に立つ橙色と銀色の巨人は静かに攻撃の構えをとる。

 

「ズィアッ!」

 

炎の巨人『ウルトラマンイグニス』がここに降臨した。



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第4話 巨人の戦いとメチャクチャAI

「ズィアッ!」

 

銀色と橙色の巨人ウルトラマンイグニスは、3匹のGモンスターに対して攻撃の構えをとる。

 

「ギキィィイイイイ!!」

 

1匹の海蛇型はイグニスへと突撃しそのまま絡みついた。

 

「あっ!巨人が!」

 

アキトは叫ぶ。

 

「ギキキッ!」

 

そして、もう一匹の海蛇型もイグニスに絡みついて締め付ける。

 

「どうするんだ!あの巨人やられるぞ!援護しなくてーー」

 

「いいや!あれを見な!」

 

焦りながら喋るアキトをガイの言葉が遮る。

 

「「キギィアアア!!?」」

 

巨人に絡みついていた海蛇型Gモンスター二匹が突然体に火が点き燃えだしたのだ。

 

「ズォオオオアア……!」

 

体内の温度を急上昇させて体外へと解放し、そのエネルギーで体にまとわりつく物体を燃やすイグニスの能力『ヒートボディ』だ。

 

「「ギシャァアアア………!」」

 

2匹の蛇型は燃え尽き、蚊取り線香の燃え尽きた灰のようになって散った…。

 

「す…凄い…!一気に2匹も倒すなんて…」

 

アキトは巨大な存在同士の戦いに驚きの声を上げる。

 

「ジャワァアア!」

 

2匹が倒されたのを観た鮫型はイグニスに向かって体当たりを仕掛ける。

 

「ズォアッ!」

 

しかし、鮫型の体当たりはイグニスの左手で受け止められた。

 

「「「「!!?」」」」

 

一同はイグニスの実力に言葉が出なかった。

 

「ジャワァッ!」

 

鮫型は巨大な口でイグニスの右手に食らいつき鋸のように鋭利な歯で右手を食いちぎろうとした。

 

「……ズィァアア!」

 

「ジャウィッ!!?」

 

イグニスが力強い声を上げると鮫型の体が赤く輝く。

鮫型は突如イグニスの右手から口を離した。

 

「悠真、何があったんだ?あとホムラさんは?」

 

ワッ太はイグニスから少し距離を取り、一息ついていた悠真と通信を取る。

 

「…どうやら、内側から溶かされかけたそうですね、あとホムラさんなんですが、少し離れたところにガッツウイングの反応がありますので大丈夫でしょう…」

 

「そうかホムラさんは大丈夫そうだな……って内側から…!?」

 

悠真の発言にワッ太は驚く。

 

「あのGMの歯を観てください、明らかに先ほどと形状が違いますから…」

 

悠真がそう言うと、ワッ太達は機体のカメラに鮫型の歯をズームして映す。

 

「………なっ!?」

 

アキトは驚きの声を上げた。

なぜなら、イグニスを食いちぎろうとした歯が蝋燭のように溶けていたのだ。

 

「ジャジィィイ!」

 

鮫型は苦しみの声を上げる。

触れた物を体内の超高熱を放出して溶かすイグニスの能力『ヒートソニック』である。

 

「ズォオオアッ!」

 

イグニスの右手から放たれた炎が蛇のような形状をとり鮫型を拘束する。

 

「ジィジャア!?」

 

鮫型は混乱しながらも、炎から抜け出そうとする。

 

「ズォォォオオオオオ……」

 

炎の巨人は両手を┫に構えて両手にエネルギーを集中させる。

 

『皆さん、巨人から発せられるエネルギーが急上昇してきます、その場から退避してください』

 

ルリがワッ太達に通信で警告する。

 

「尾形!早くその巨人から離れるんだ!」 

 

ワッ太は通信を通して悠真に叫ぶ。

だが、悠真に聞こえてはいたが、悠真自身は放心状態で反応が鈍り、身動きがとれなかった。

 

(安心しろ、その場にいれば吹き飛ばされはしない)

 

その時、炎の巨人イグニスの声が悠真の頭の中に伝わる。

 

(!!?今、巨人の声が頭の中に!?)

 

悠真はメインカメラに映るイグニスを観た。

イグニスは、両手にエネルギーを集中させていた。

 

「ズォオオアアアア、ズィア!」

 

イグニスの必殺光線『バニシウムシュート』が鮫型めがけて放たれる。

 

「ジジャァァアアアアアア!?」

 

鮫型はバニシウムシュートの直撃を受けて爆散する。

 

「……………」

 

イグニスは鮫型の最後を見て、ただ宇宙空間に立っていた。

 

「あの化け者共を一人で倒したのか……ん?」

 

ワッ太は何かに気づく。

 

「……あ、ああ」

 

悠真に倭の目の前に立つイグニスの姿を見て言葉を失う。

 

「……」

 

イグニスは黙って倭の姿を確認する。

その時だった!

 

「危ないぞ悠真!再生したGMがー」 

 

「ズィオアッ!?」

 

突如として、ツギハギのようでもはや何型なのか分からないGMがイグニスを突き飛ばす。

 

「な!?」

 

悠真は驚く。

 

「鮫のやつの破片の細胞がアンノウン達の残骸を取り込んだんだ!悠真も離れろ!」

 

ワッ太は悠真に向かって叫ぶ。

悠真は今の状態で再生型(再生したGM)の近くにいるのは危険と判断し距離を取った。

 

「ズォォォアッ!」

 

イグニスは地球の重力に飲まれる前になんとか体勢を立て直した。

 

「……」

 

すると、イグニスの胸のランプのようなものが赤く点滅し始めた。

 

「…点滅している…?」

 

悠真はイグニスの胸の点滅が何を現すか分からなかった。

 

『皆さん、巨人の体内から確認されるエネルギーの量が急速に減少し始めてます』

 

「「なんだって…!?」」

 

悠真とワッ太は、ルリの発言に驚く。

先ほどまでエネルギー消費など気にしないように戦っていた巨人が急にエネルギー減少の速度が速くなったのだから。

 

「ズォオオ!」

 

「ギッシャアアア!」

 

再生型の攻撃に対して、なんとか耐えるイグニスであったが、徐々に押されていた。

 

「このままじゃマズいぞ…どうするか…」

 

ワッ太はどう行動するか悩む。

その時、ワッ太達にとある回線から通信が入る。

 

「こちらガルーダⅢ!どうやら大変なことになってるな、このガルーダで援護するぜ!」

 

ガルーダⅢのパイロットの青木一馬は、ガルーダⅢからの援護攻撃をワッ太達に言った。

 

「あんたがホムラさんの言っていた青木さんか…」

 

「そうだ」

 

ワッ太の言葉に、青木は反応する。

 

「よし…それなら、トライダーとガルーダの攻撃であのGMにダメージを与える、トドメはトライダーで刺す…それでどうかな…?」

 

ワッ太の言葉を聞いた青木は、十秒ほど考えて口を開く。

 

「OK、巨人様に俺達人間の頑張りを見せてやろうぜ!」

 

青木は元気よく言う

 

「よし!じゃあいくぞ!」

 

トライダーとガルーダⅢは再生型に突っ込む。

 

「「いっけぇ!」」

 

トライダーのトライダービームキャノン、ガルーダⅢのダブルメーサーキャノンが、再生型へと放たれる。

 

「ギィ!?ギシィィイ!」

 

再生型は二機による同時攻撃をモロに喰らい、苦しみの叫びを上げる。

 

「……」

 

イグニスは、悔しそうな感じなかまらも、一度再生型と距離を取った。

 

「よし、トライダージャベリン!りゃあっ!」

 

トライダーの持つ槍『トライダージャベリン』が、再生型の体を何度も突き刺す。

 

「キッシイイイ!?」

 

「トドメだ!」

 

悲鳴を上げる再生型に、トドメのキックを決めた。

 

「ギシィアア!?」

 

再生型は体内の温度が急上昇し、どろどろに溶けた。

 

「やったぜ…ん…?」

 

ワッ太はイグニスの方を見る。

イグニスの体は赤く輝いていた。

 

「…どうしたんだ?」

 

「さぁ…ただ、エネルギー切れですかね?」

 

ワッ太の一言に悠真が応える。

 

「ズォォアァ…」

 

イグニスは赤い光を放ち、自分の体をその光で包みこむ。

 

「おい、今度は一体なんだよ!?」

 

アキトはそう言いながら、反射的に武器を構えたが、イグニスの放った光は自然と消えた。

 

そして、そこにイグニスの姿は無かった。

 

「………!…あの巨人何処に行ったんだ…!?」

 

ガイはイグニスが消えたことに驚く。

 

「ルリちゃん巨人は!?」

 

ワッ太は、冷静さを保ちながらルリに聞く。

 

『巨人の反応は消失しました、近辺にも確認できません』

 

「なんだって!?一体何処に…!?」

 

ルリが巨人の反応消失について言うと、悠真は落ち着きを無くしながら喋り、その悠真を一人の男の怒声が落ち着かせた。

 

「落ち着け尾形!今は無事に帰艦することを考えろ!」

 

ガッツウイングを飛ばして倭達の近くまで来たホムラだ。

 

「ホムラさん大丈夫で?」

 

ワッ太声をかける。

 

「なんとかな、それにしても青木が駆けつけたくれたおかげで俺達はなんとかGMを退けれた…青木、そして竹尾、感謝する」

 

ホムラは感謝の念を込めて二人に礼を言った。

 

「俺はやれることをやったまでさ」

 

ワッ太は自信ありげに言う

 

「そうだな、それに助け合いに理由はいらないだろ?それよりも、ガッツウイングの方はどうなんだ?見たところスピードや動きが不安定なようだが」

 

青木はガルーダのパイロットをやってたためか、宇宙空間でも飛んでる戦闘機の動きの違和感に気づけるのだ。

 

「機体の損傷などは観ただけではわからないが、機器の一部がかなり壊れているため動かさない方がいいだろう…尾形にはすまないが、倭猛に一時的なドッキングをしてから尾形と共にナデシコへと帰艦する、青木達は先に戻っていてくれ」

 

「了解、みんな戻るぞ」

 

青木がホムラに返答する。

そして、青木達はホムラの言うとおり先にナデシコへと戻っていった。

そしてホムラは彼らの機体がナデシコへと帰艦するのを確認して通信回線を切る。

 

「……さあ、今のうちに説明してもらおうか、この機体がGMに突っ込んでいったわけを」

 

倭猛にガッツウイングをドッキングさせたホムラが通信で悠真に言う

 

「そ、それはなんと説明していいやら……」

 

悠真は説明に困った様子だったその時だった。

 

『それは俺が説明してやるよ!』

 

 

「「!?」」

 

倭の機内に第三者の声が響きわたった。

 

 

 

 

数分後、ガッツウイングとドッキングした倭猛もに無事にナデシコへと帰艦した。

ナデシコには、既に着艦していたエステバリス隊の3人もいた。

 

そして、それぞれの機体から降りてきた二人は、何かに対して不満げな表情でその場にいたプロスペクターに詰め寄った。

 

「おいプロスペクターさん、なんなんだあの機体は、あんなのが搭載されてるなんて聞いてないぞ!」

 

ホムラは眉間にしわを寄せながら言う。

 

「おやそういえば説明をしてませんでしたね」

 

対するプロスペクターは、うっかりとした表情で応えた。

 

「おや?じゃないですよ!こっちは危うく死にそうになったのに!」

 

悠真は興奮気味にプロスペクターに言う。

 

「おいおい、どうしちまったんだお前ら?」

 

ガイが割って入り、悠真達に聞く。

 

「今この機体に何か搭載されている言ったよね、もしかしてさっき映像で観た倭の動きと関連があるの?…あ、私はアマノ・ヒカルだよ、紹介遅れちゃったけどよろしく頼むね」

 

ヒカルは遅くなりながらも2人に名乗った。

 

「こちらこそよろしく頼みます……で、まったくあいつのせいで機体が自由に動かせなかったんですが、説明していただけませんか?」

 

悠真はなんとか落ち着きを取り戻し、プロスペクターに聞く。

 

「あいつ?お前の機体は一人乗りの筈だろ、何を言って…」

 

「そこからは私から説明いたしましょう」

 

アキトが喋ってるのをプロスペクターが遮った。

 

「やっと言う気になったか」

 

ホムラは呆れ顔で言う。

 

「まさか、あのような事になるとは思いませんでしたからね」

 

プロスペクターはそう言うと、一息をついて再び口を開く。

 

「ではまず、倭猛零式について話す前に『超鋼装機計画』について話しましょう」

 

「「「「超鋼装機計画?」」」」

 

その場にいた者達は、超鋼装機計画という聞いたことのない単語に反応が困った。

 

「はい、超鋼装機計画とは、未知の異星人が来襲しても対抗でき、戦争などの様々な戦場での戦いに特化した機体を生み出す計画です。こちらの倭猛を合わせて5体の機体が存在してたのですが……」

 

プロスペクターは難しい顔をする。

 

「してた?まさか倭以外の機体はもう存在しないのか?」

 

ウリバタケが不思議そうに聞く。

 

「いえいえ、そんな事はありません。ただ、倭以外の機体はパイロットの方々と共に行方不明でありまして…」

 

プロスペクターは冷や汗を垂らしながら答えた。

 

「行方不明…!?…どういうことですか!?」

 

悠真は不安げに聞く。

 

「私もあまり詳しくは知らされてないのですが、超鋼装機のパイロット達の部隊のうち隊長一名と隊員二名が任務中に突如の失踪、それを追って残された隊員二名も彼らの行方を追ったのですが、彼らも消失したのですよ。そして尾形さんより前の倭猛のパイロットの方も不完全な倭を残して別の機体で彼らを追って、彼までもが行方知れずになりました。そして、倭猛も彼らを追って単独で彼らを捜索しに……」

 

そこでワッ太がプロスペクターの話の一部に、おかしな箇所を見つけた。

 

「ちょっとまってくれよ、単独って、そん時にこいつに乗ってたパイロットはどうなったんだ…?悠真が見つけたときも誰もいなかったってさっき聴いたぞ」

 

プロスペクターの話からすると、倭猛はパイロット無しで行動したことになるのだ。

 

「…いやワッ太さん、そもそもこいつには人が乗ってなかったんだ、こいつ自体が単独で行動してたんだ」

 

「「「「…?」」」」

 

この場にいるほとんどのクルー達は悠真の言っていることを理解していなかったが、ホムラとウリバタケ、そしてプロスペクターは気づいているようだった。

すると、ホムラが倭猛の方を観る。

 

「ったく、いい加減に貴様から喋ったらどうだヤマト!」

 

「「「「ヤマト!?」」」」

 

ホムラが大声で呼んだ名前に、ナデシコクルーは困惑していた。

なぜなら『ヤマト』という人間はクルーの中にはいないし、誰も聞いたことのない名前だからだ。

 

「おい!ヤマトって誰だよ!このロボットに誰か乗ってるのか!?」

 

そんなアキトの問に対して、ホムラは気難しそうに答える。

 

「あぁ…なんと言えばいいんだろうな…乗ってるというより積んで…」

 

その時、倭猛のスピーカーが起動し、ノイズに混じりながらも声らしきものが聞こえてきた。

 

『……あああああ!もう長ったらしいな!解ったよ話しゃあいいんだろ!』

 

「「「「!!!?」」」」

 

ナデシコクルーの面々は、突如として倭のスピーカーから聞こえてくる声に大きく驚いた。

 

「うるさいぞ、ポンコツAI!静かに喋れないのか!」

 

『誰がポンコツだ!俺が助けてやらなけりゃ宇宙空間に残されてたくせに!』

 

「「「「…………………」」」」

 

…凄くシュールな光景であった。

ナデシコクルー達にとっては、スピーカーから聞こえる声と、その声に対して怒鳴るホムラはとても不思議な光景であり、なんとも言えないものであった。

 

ふと、ワッ太はホムラの発言の中からあることに気が付いた。

 

「あんた今、AIって言わなかったか?じゃあさ、今喋ってるのって……」

 

「そうだ、倭に積んである自称『超高性能AIヤマト』だ、凄く五月蝿くて耳に触る」

 

ホムラは倭猛の方を指差しながら、ワッ太にヤマトについて教えた。

 

『自称じゃないって言っただろ!……ま、まあそんなことよりも……そうさ!この俺こそがヤマトの機能を支えるハイパーアルティメットAIヤマト様だ!どうだ驚いたか!」

 

「「「「………………………………………」」」」

 

全員無反応だった。

いつも騒がしいガイですらだ…。

そしてクルー達は納得した。

確かにこんな馬鹿AIならGモンスターに突っ込んでもおかしくないからだ。

 

「こいつはパイロットのサポートと機体の制御などの様々な役割があるんだが、肝心の中身がこれだから、消息不明の仲間を自分だけで探しに出たら、エネルギー切れで洞窟に身を隠すことになり、パイロットから操縦権を奪い、明らかに勝ち目のない敵に突っ込んだりする馬鹿だからな、まったく情けないな」

 

ホムラはAIヤマトの暴走っぷりをクルー達に軽く説明する。

 

『………すいませんでした』

 

自分の暴走っぷりについて聞いたヤマトは、倭猛を動かしてその鋼の巨大で土下座した。

 

「「(何だこの光景は…)」」

 

一部の者は、さらにシュールな光景を見せられて、反応に困る。

 

「…と、とりあえずこの話はこれで終わりだ。それよりも、とっとと火星へと向かわないとまたGモンスターみたいな連中に襲われるぞ」

 

そう言ってホムラが格納庫を後にしようとしたときだった。

 

「ちょっと待ってください、倭の事もだけど、それよりもあの赤い巨人については何も話さないのですか?」

 

悠真のその言葉で、一同は先ほどの巨人について思い出す。

 

「そうですね、倭についてはある程度の事は解りましたが、あの巨人については味方なのかも解りませんでしたからね。もしかしたらまた我々と遭遇かもしれませんし、巨人について話をした方が良いかもしれませんね」

 

プロスペクターも巨人について話をしようと思っているらしい。

 

「あの巨人なら大丈夫だ、俺達に危害を及ぼすことは無いだろう」

 

ホムラは面倒くさそうながら、さらっと答えた。

 

「は…!?何言ってんだよあんた!?そんな簡単に解るわけねえだろ、真面目に考えろよ!」

 

アキトはホムラに対して怒っていた。

先ほどまで真面目に話していたのに、急に面倒くさそうに答えるという態度の変わりようからだろう。

 

「じゃあ聞くが、貴様はあの巨人がどう見えた?俺達を殺そうとする悪魔にでも見えたのか?」

 

ホムラは、アキトの目を見て言う。

 

「!……悪魔なわけないだろ!だってあの巨人は尾形を助けてくれたろ…」

 

アキトの目は真剣そのものであった。

 

「ならそれでいい、巨人が尾形を助けたことには変わりないしな。…俺は巨人を信じるさ、ここにいる者達が信じなくてもそれは個人の自由だ」

 

「「………………」」

 

そう言ってホムラは格納庫から出ていった。

一同はホムラに対して、何も言えなかった。

 

 

 

 

その後、ナデシコの艦長ユリカは地上にいる父『御統 コウイチロウ(ミスマル・コウイチロウ)』司令と連絡を取るも、コウイチロウは世界中に出現したGモンスターを討伐の指揮を執るため自ら前線に出ているらしい。

 

 

ナデシコは月近くの軌道に留まっていた。

 

「それでは皆さん!30分後にナデシコは火星へと向かいますので、それまでに少しでも皆さんで交友を深めてください!」

 

「(どうせ、いつでもクルーと交友深めるだろこの艦は…)」

 

ワッ太は、どことなく抜けた感じのあるユリカの発言に苦笑いをする。

 

「…それにしても、カオスな面子…」

 

エステバリス隊のマキ・イズミは、クルー達を観て言う。

 

「アハハハ…」

 

悠真はワッ太のように苦笑いをするしかなかった。

 

 

 

その頃、ホムラは自分の部屋で、思い悩んでいた。

 

「……ふぅ…(火星と地球、どちらにも奴らの手がかりがある…火星に行くことになって一番苛ついてるのは俺なのかもな…火星の手がかりをいち早く目にしたくて…テンカワのことは言えんな…)」

ホムラは、グラスに入ったワインを口にする。

 

ホムラは、右手に銀色のペンダントを持ち、ペンダントの中を開いた。

 

「…父さん…母さん……フレイア…俺は馬鹿だよな、すぐに感情的になって怒鳴ったりして…大人になりきれない子どもだな俺は…」

 

ペンダントの中から、ライターのように炎が出現し、そこにはホムラの亡き家族である両親と妹のフレイアが映し出されていた。

 

「…だけど…今度こそ多くの命を守るから…!…二人の仇を取って、フレイアを取り戻してやるからな……!」

 

ホムラの瞳は深紅に輝いていた。

 

「……………」

 

そんなホムラの言葉を聞いていた男がいた。

偶然、ホムラの部屋の前に来ていたアキトであった。

ホムラの言葉を聞き、彼が亡き家族のために戦っていることにホムラの覚悟の大きさを感じ、ホムラに苛ついてた自分が許せなかった。

アキトも火星で両親を亡くしている。

だから、大切な家族を失う気持ちは解るのだ。

 

「(そうだ、俺達は行かなければならない火星へ!そのためにも!俺は、自分ができることをやるんだ!)」

 

そして30分後

ナデシコはやっと火星へ向けて発進した。

 

 

 

 

それから、二日が過ぎた。

 

 

 

悠真の駆る倭猛は、荒れ果てた大地に立っていた。

目の前の蜥蜴型GMの群れに対して、倭猛の肩部にある二門の光粒子機関砲の照準を向けていた。

 

「ヤマト機関砲を使う!目の前の敵に向かって撃つぞ!」

 

悠真は、倭猛の操縦レバーを強く握る。

 

『おらぁ!任せろ!全部もってけぇえええええ!!』

 

二つの機関砲から、ありったけの光弾がGMへと放たれる。

 

「ギシャァアアアアア!?」

 

大量の光弾を喰らったGMは爆散する。

 

『よっしゃあ!俺に任せれーーー「馬鹿野郎!なにやってんだ!」ーーへっ?』

 

ヤマトがビシッと決めようとするのを、悠真の怒鳴り声が遮った。

 

「敵はまだいるんだぞ!それなのに貴重な弾をこんなに消費する奴があるか!」

 

今の攻撃で、倭が機体内で生成できる光弾の残数はほとんど無くなっていた。

 

『ゲッ!?どうすりゃあいいんだよ!』

 

ヤマトは高性能なのかも疑わしくなるほど慌てる。

 

「お前のせいだろ!…っと言っても無駄か…まったく!」

 

悠真は残るGM達の動きを観察する。

 

『こうなったらやけだ!あんな連中俺だけでぶっ倒してやるぜ!』

 

だが、悠真の観察を妨害するように、ヤマトは強引に悠真から操縦権を奪い、倭猛の両手に刀を持たせて敵に特攻する。

 

「おい!ヤマト!やめろ!ってうわぁぁああああああ!!?」

 

『ストップ!ここまでだ!』

 

悠真の叫び声が消えると共に、ホムラの声がコックピットを模したシュミレーターに響き渡る。

トレーニングルームにいるホムラの声が聞こえたとともに目の前の敵が突如消え、悠真の乗るシュミレーターの画面は真っ暗になる。

 

「はあ……疲れた」

 

悠真はタオルで汗を拭きながら、シュミレーターから出てきた。

 

「だてにパイロット目指してないな貴様は。戦闘中の判断力はとても良い」

 

ホムラはそう言いながら、悠真にスポーツドリンクを渡す。

 

「「問題は……」」

 

2人は呆れ顔をする。

 

『おいホムラ!何で止めたんだよ!もう少しで倒せたのによ!』

 

トレーニングルームの巨大スピーカーからヤマトは怒鳴り散らかす。

 

「黙れ、貴様はあの時の特攻からなにも学んでないらしいなを貴様一機が自爆するならいいかもしれんが、尾形が乗っていることを忘れるなよ。そのままで戦場に出たら敵のいい的だ、試しに俺のガッツウイングと戦ってみるか?貴様一機倒すぐらい、一分もいらんだろう」

 

ホムラは容赦なくヤマトへと言った。

 

『なんだと~!俺があんたに負けるわけないだろ!』

 

スピーカーから聞こえるヤマトの騒ぎ声は、とてもうるさかった。

2人はため息を漏らした。

 

「あーあ、またかよ、いつも五月蠅いな」

 

トレーニングルームにエステバリス隊の3人が入ってくる。

隊長のリョーコはヤマトの様子を見て呆れる。

 

「よく来たなお前ら、シュミレーターならちょうど空いたぞ。尾形がこの馬鹿AIのせいでひどい戦いをするから俺が止めたんだ」

 

ヤマトはさらにギャアギャア騒いでいるが、五人はそれを無視する。

 

「パイロットの方は安心なんだがな、倭は、それと比べてAIの方は…」

 

リョーコは情けないものを見る目で、ヤマトの声が聞こえる巨大スピーカーを見る。

 

「うんうん、悠真君は頑張ってるよ本当に、それはいいけどヤマト君は」

 

ヒカルはぎこちない笑顔で巨大スピーカーの方を見る。

 

「パイロットをサポートするはずのAIが、足を引っ張ってる……笑えない」

 

イズミは冷たい目でヤマトを見る。

 

『ちくしょお!どいつもこいつも俺のことを馬鹿にしやがって!』

 

「「「だって、本当の事だから」」」

 

5人はキッパリと言う。

 

『うわぁああああああ!!』

 

ヤマトは、泣きながら(?)スピーカーの電源を切り、倭の中へと戻っていった。

 

「実際の話、ケーブルさえ繋がっていれば、様々な機器へと移動できたりする時点で、普通ではあり得ない性能なのに、そのAI(ヤマト)がもう少し頭を使ってくれたら…」

 

機能だけは優秀なヤマトについて悠真は愚痴る。

 

「お前の機体って、パイロットとAIのシンクロ率で引き出せる能力が変わるんだったっけ?じゃあ、下手したら今のまま戦場に出ても…」

 

リョーコが引きつった顔をしながら悠真に聞く。

 

「初心者のパイロットが操縦する旧式の機体にすら勝てないかもしれんな。だが、シンクロ率さえ高ければ、コンバトラーなどに続く性能を発揮できるらしいから、俺達は、尾形とヤマトが火星に行くまでの間に、一人前になれるように指導するしかない」

 

ホムラの言うとおりで倭猛は、パイロットとAIのシンクロ率で発揮できる性能の高さが極端に変わり、低ければ旧式の機体以下、高ければスーパーロボット並みととても極端な差が出るのだ。

 

「頑張ってるなホムラの兄貴は」

 

リョーコは彼のパイロットとしての技量に憧れていて、敬意を表して兄貴と呼んでる。

ホムラ本人はあまり嬉しくないようだ。

 

「そういえば、さっきウリピーが倭の武装があらかた完成したって言ってよ」

 

ヒカルが思い出した事を悠真に伝える。

 

「やっと、できたんですか!さすがに機関砲と太刀だけじゃこれからの戦いで生き残れませんからね、安心しましたよ」

 

悠真は嬉しさのあまり、ついガッツポーズをした。

 

「これで、残された問題はヤマトだけだな、それにしても、火星は今頃どうなっているんだか……」

 

ホムラは難しい顔をしながら言う。

火星の情報はほとんど入ってこないために、万が一のためにもこれだけの戦力がナデシコに集められたのは、この場の人間も知っていることだ。

だが、それでも安心できないのは確かである。

 

「火星に着いても問題ないように、今日は俺がお前らの練習相手になってやろう、手加減無しでいくつもりだから、全力でこい!」

 

ホムラは気合いの入った声で4人に言った。

 

「よっしゃあ!今日こそ兄貴に一泡ふかしてやるぜ!」

 

 

 

その後、4人はシュミレーターで一対一でホムラに挑むも、ホムラの駆るガッツウィングと良い勝負をするも、誰一人もホムラから勝利を奪えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

様々な人間を乗せたナデシコは、火星へと向かう。

だが、彼らはこの先起きる予期せぬ出来事について知る由もなかった…



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第5話 火星到着

遅くなってしまいすいません。
原作の描写などが飛ばし飛ばしだと感じましたら申しわけございませんが、それでも読んでくださりありがとうございます


ー惑星コルヴァスー

 

 

 

「おいホルス、こんな所でなにやってるんだ?」

 

「やあラビス、君こそどうしたんだい、こんな所で?」

 

惑星コルヴァスに住む二人の青年『クトゥーガ・ラビス』と『ナイアラット・ホルス』は、とある丘で偶然出会った。

 

「俺か?俺は父さんに頼まれて、星をこいつに写して来いって言われてな」

 

ラビスは、首から下げた焼写機(カメラと似たようなもので、写したものを焼写機内部で、特別な性質を持つ炎で写した光景を紙に焼き付ける物)をホルスに見せつける。

 

「本当に君のお父さんは星好きだね」

 

ラビスは微笑を浮かべて言う。

 

「一日中植物の観察とかばっかりやってるお前には言われたかねえよ」

 

ラビスは呆れ顔でホルスを見た。

 

「ハハハッ、確かにそうかもしれないね」

 

ホルスは明るく笑う。

ホルスは、コルヴァスや周りの星々の自然を専門として研究している自然学者のガーアスの一人息子で、ガーアス以上の才能があると言われ、父からも周りの人々からも未来を期待されている。

 

「そういえばお前はあの約束を覚えてるか?」

 

ラビスはホルスにとある約束について聞く

 

「うん、もちろん覚えてるよ。いつか僕と君、君の妹のフレイアと3人で一緒に太陽系へと行くことだろう?」

 

ホルスは優しい笑みを浮かべて答える。

 

 

「ちゃんと覚えてくれたんだな…」

 

「だって僕と君の仲じゃないか、忘れるはずないよ」

 

ホルスの笑顔につられてラビスの顔も自然と笑みがこぼれる。

 

 

 

 

 

 

 

「………!!………夢か……」

 

夢から覚めたラビス…地球名セキシマ・ホムラは大量の汗をかいていた。

 

「……ったく、よりによってなんであんな夢を…!」

 

ベッドから起き上がったホムラの目は、赤く炎のように燃えていた…。

 

 

 

 

ーナデシコ内食堂ー

 

「ホムラさんどうしたんだろう…なんかやつれた顔してるけど」

 

悠真は朝食を取りながら、朝からやつれ顔のホムラを見て心配していた。

 

「彼女に振られたとか…?」

 

「ないない」

 

ヒカルの発言に対して青木が呆れ顔で否定する。

 

「なんか変なピアスも付けてるよな」

 

ワッ太は、昨日までホムラの右耳に付いてなかった赤い宝石の付いたピアスを指摘する。

 

「本当に何があったんやら」

 

ワッ太はモヤモヤした気持ちで言う。

すると、食堂で働かせてもらっているアキトが、食事中の悠真達の前に現れた。

 

「あの人だって頑張ってる、だからあんまり詮索しない方が良いんじゃないか?」

 

アキトは爽やかな顔で言った。

 

「どうしたお前…?こないだあんなにホムラの事でガチギレしたのに…何かあったか?」

 

青木が不思議そうにアキトに聞く。

 

「いや、何でもないけど」

 

アキトの方も不思議そうに答える。

 

「まさかホムラさんの事が好きとか…」

 

ヒカルの発言に、男性陣は寒気を感じてアキトから距離を置く。

 

「アキト…そうなんだな…まあ、あんまり詮索しねえよ」

 

ワッ太の言葉に男性陣はさらにアキトと距離を置く。

 

「ちげぇよ!!」

 

アキトの怒鳴り声が食堂に響き渡った。

 

 

 

 

 

ーシュミレーター ステージ荒野ー

 

「ヤマト!裂光(レッコウ)を使うぞ!」

 

「チィ!わかぁってる!」

 

ヤマトは倭猛に装備された光粒子弾丸発射式拳銃『裂光』に光粒子を送り、それを倭猛を操作する悠真が右手を掴み、目の前にある的へと構える。

 

「…!」

 

悠真は狙いを定め、倭猛は的を次々と落としていく。

しかし、最後の一つには光粒子が足りなくて落としそこねた。

 

「何やってるんだヤマト!出力不足だぞ!」

 

悠真はヤマトに怒鳴る。

 

「あぁん!?前は使い過ぎ、今度は出力不足かよ!やってられっか!」

 

「僕も君のようなAIなんて御免だね!」

 

ヤマトと悠真は口喧嘩をする。

しかし、それもすぐに止まる。

 

「いい加減にしろお前等!こちとらゲキガンガーの訓練してんのによ!」 

 

ゲキガンガー大好きガイが二人(正確には一人と一機)に怒鳴ったのに周りの者は驚愕していた。

普段からうるさいガイはこんなのは耳に入らないと思ったからだ。

 

「あと、ゲキガンガーじゃなくてエステバリスだからな!」

 

ウリバタケがガイに言ったが、ガイは既にシュミレーターの中に意識を集中させて周りの声が耳に入ってなかった。

 

「「……」」

 

悠真とヤマトは黙っていた。

 

「……(あいつ等)」

 

ガイはシュミレーターを止めて悠真達の様子を一度見た後、再びシュミレーターを起動した。

 

 

 

 

 

ー廊下ー

 

「おい悠真、そこまで落ち込むなよ」

 

ワッ太が悠真の肩の上に手を置く。

 

「ワッ太さん」

 

「だから、そのワッ太さんってのやめてくれないかな~調子狂うぜ」

 

ワッ太は照れくさそうに頭をかく。

実はワッ太は、さん付けで呼ばれるのに慣れていなかった。

 

「それにしても悠真、お前はヤマトをどう思ってるのか?うっとおしい邪魔者か?」

 

ワッ太はこの際だから、悠真のヤマト対する思いをしろうと思っていた。

 

「…確かにあいつの事で迷惑したりしますが、邪魔者なんて思ってないですし…むしろ、あいつ自身の事がわかりたい」

 

悠真はもじもじしながら言った。

 

「そうか……にしても、やっぱりあいつは実戦じゃないとわからんタイプだろうな…ああいう奴は戦場の厳しさを知らんと駄目だって中学の先生が言ってたな」

 

「そうなんですか…(中学の先生は何を教えてたんだ…)」

 

ワッ太の先生に対して悠真は触れなかったが、自分の中のモヤモヤはある程度取り除かれた。

 

「とりあえず頑張ってみます!」

 

「おう!頑張れよ~!」

 

悠真は笑顔をワッ太へと向けて格納庫へと向かい、ワッ太も笑顔で返した。

 

「俺も頑張るかな!」

 

ワッ太はシュミレーターのあるトレーニングルームへと向かった。

 

 

ー休憩室ー

 

「おお、どいつもこいつも張り切ってるな~。素質がある奴もたくさんいるから頼もしいな」

 

休憩室にて休んでいる青木は、同じく休憩室にいるホムラと雑談をしており、休憩室のカメラに映る悠真ワッ太の様子を観た青木は、二人や他のクルーに対しての期待感を込めた語りをしていた。

 

「あいつ等にはいろいろ言ってしまったが、なんだかんだで期待している。気を抜いてると俺達も追い抜かれるかもな恐竜坊や」

 

ホムラは嫌みな笑顔を青木に見せながら言った。

 

「その名で呼ぶなって…まあ、お前もあいつ等を期待してて良かったな、それに簡単に追い抜かれないように頑張るさ」

 

青木はそう言うと、休憩室を出て行った。

 

「俺もトレーニングの続きといこうか」

 

ホムラも休憩室を後にした。

 

 

 

 

ー倭猛コックピット内ー

 

そして、ホムラ達に期待されてる者の一人である悠真は、倭猛のコックピットの中にいた。

 

『…で、話は何だよ…?』

 

コックピット内のスピーカーから、気の抜けたようなヤマトの声が聞こえた。

 

「まず、怒鳴ったりことなんかを謝りたいなと思って…」

 

「どうした急に…?」

 

ヤマトは、今まで自分に対して強気であった悠真が自分に対して謝ることを聞いて、予想はしてなかったためか反応に困っていた。

 

「お前の事をなんでもかんでも怒っていたけど、言い過ぎなこともあったし謝らないと思ってね、こんな僕に付き合ってくれてるだけでも感謝するべきなのに」

 

悠真はヤマトの声が聞こえるスピーカーに向かって頭を下げる。

 

「お、おう…俺もなんかすまないな…とりあえずは頭を上げろよ(やっべぇ…感謝とかメチャクチャ恥ずかしい…)」

 

そう言うとヤマトは黙り込む

 

「………」

 

「………」

 

コックピットは静寂に包まれる

 

「…とりあえずお互いに協力し合って頑張ろうヤマト…」

 

「そ、そうだな」

 

悠真とヤマトのギクシャクした関係は、グダグダながら終わったのだった。

 

ー格納庫ー

 

「…いやあ!よかったよかった!」

 

格納庫にあるカメラから倭猛のコックピット内の様子を見ていたガイはグダグダなど気にせず、悠真達の関係がうまくいきそうなのに笑いながら喜んでいた。

 

 

 

 

「…まるで状況が読めないな…」

 

ウリバタケはガイとコックピット内の様子を交互に観、この一言しか口から出なかった。

 

 

 

 

 

その後、悠真とヤマトの仲は、その後は少しギクシャクしながらも良くなっていった。

シュミレーターでも、2人(ヤマトは人として数えられている)の戦術の相性なども高まり、他の面々とのコンビネーションなどもできるようになった。

 

 

 

そして、火星へと向かうナデシコも到着まで目と鼻の先になっていた。

 

 

 

 

 

ー火星 とある洞窟内部ー

 

「…ナデシコ…トライダー……そして、炎の巨人……奴等が火星へと来るのか……面倒くさい事になりそうだ…」

 

洞窟内の岩の上に座る1人の男がいた。

口元をマフラーで隠す男は、ブツブツとナデシコなどの事を面倒くさげに呟いていた。

すると、白服を身にまとった生真面目ながら熱い心を持ってそうな男がマフラーの男に近づいてきた

 

「…我々も出るべきか?さすがに君1人では…」

 

「いや、俺1人で十分だ…君達がここで奴等に姿を見せでもしたら、それこそ面倒なことになる…」

 

マフラーの男は白服の男の申し入れを断る。

 

「そうか、無理はするなよ」

 

白服の男の言葉に、マフラーの男は無表情な顔で口を開く。

 

「…俺は負けない…君達の心配など必要ない」

 

マフラーの男はそう言うと、洞窟から出て行った。

 

 

 

 

 

ーナデシコ内部食堂ー

 

「もう少しで着くんだな…火星へ」

 

食堂に集まっていた面々に対し、真剣な目つきのアキトの言葉が放たれる。

 

「そうだな、もう少しで到着だぜアキトの兄ちゃん」

 

ワッ太がそうアキトに言うと口におむすびを放り込む

 

「火星へ行くなら落花生を食べ……何でもない」

 

マキは途中まで言おうとしたことを後悔したのか途中で言うのをやめた。

 

「イズミちゃん…アハハ…」

 

ヒカルは苦笑いをしている。

他の面々も同じように苦笑いしている。

 

「まあ、着いたら着いたで自由な時間なんて無いかもしれないからな、今のうちにリラックスしといた方が良いかもな、そうだろホムラ?」

 

「あ、ああ」

 

気楽な感じの青木の言葉に、戸惑いながらも言葉を返した。

 

「まあ、とりあえずはもう2時間で火星へと着くからな、青木の言うように貴様等も体を休めるなら今のうちだ。ゆっくり休めよ」

 

ホムラはそう告げると、食堂を出てトレーニングルームへと行ってしまった。

 

「あいつが一番休むべきだろぉ」

 

ガイは食堂の出口の方を観て、ヒカル以上の苦笑いで言った。

 

「とりあえず、今のうちに食えるだけ食っとこうぜ!アキトの兄ちゃん頼むぜ!」

 

ワッ太はアキトに向かって元気良く告げた

 

「ああ!任せな!(俺はどうせ運ぶだけなんだろうけど)」

 

その後、ワッ太は食い過ぎて腹をこわしたというトラブルがあったが、平和な一時は過ぎていった。

 

 

そして、2時間が過ぎた…。

 

ー火星軌道ー

何事もなくナデシコは火星軌道へと着き、ナデシコは火星へと降下し始めていた。

 

「ナデシコ、火星の大気圏内に突入しました。皆さん、出撃を」

 

ナデシコが火星の大気圏内まで降下した事を、ルリはクルーの面々に伝える。

 

「ふぅ…何事も無さそうだな…ふぁ~」

 

ガルーダⅢのコックピット内にいる青木は、ナデシコが火星大気圏へと突入したことの安心感であくびが出てしまった。

 

「おい青木!気を抜くな!」

 

ホムラは青木に渇を飛ばす。

 

「へいへい」

 

「まったく…」

 

青木の気の抜けた返事に、ホムラは呆れ顔だ。

 

「それにしても、ナデシコ護衛でスタンバイしてるけど、出撃の放送無いですね…」

 

『だな…』

 

倭猛のコックピット内にいる悠真とヤマトは、ナデシコ護衛の出撃の放送がくるのを青木達と共に待っていたのだが、放送がこなかった。

 

「せっかく準備してんだから、出撃あるなら早くしてほしいぜ」

 

ガイは不満げに言う。

 

『…あ?…気のせいか』

 

「どうしたんだヤマト?」

 

ふと声を出したヤマトを心配し、悠真は声をかけた。

 

『いや、なんか反応あった気がしたが気のせいだった』

 

「…なんだ」

 

悠真は呆れ顔だ。

 

『(いや、今の反応は確かだ…ただ、少し離れていてハッキリと反応しない…だけどこりゃあ戦艦クラス…しかも、データで見覚えあるやつじゃ…)』

 

時間が空いたらヤマトは、データの中を探索することにした。

 

結局ナデシコは無事降下し、倭猛などの機体の出撃はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー火星 居住区廃墟ー

 

「付いてきたはいいんだがアキト、大丈夫なのか?」

 

「ああ…ありがとうございます青木さん」

 

青木の心配する声にアキトは顔を暗くしながらも応える。

 

 

 

青木は、アキトとメグミと共に廃墟となった火星の居住区にいた。

 

「まあ、お二方はこの辺にいてくれ。俺は周囲をいろいろ見て回る」

 

青木はそう言うと、2人に背を向けて2人がいる場所から離れていった。

 

「青木さん…」

 

メグミは静かに青木の背中を見届けた。

 

「…メグミちゃん、少し昔話をしようか…」

 

「…昔話…?」

 

アキトの真剣な声質に、一瞬メグミは戸惑う。

 

「…俺、そしてユリカの昔話かな」

 

アキトは落ち着きながらも、なお真剣にメグミに言う

 

「…アキトさん…わかりました、聞かせてください」

 

メグミもアキトの話を聞くことにした。

廃墟となった居住区には、静かなアキトの声すらよく聞こえた…。

 

 

 

 

 

ーナデシコ ブリッジー

 

「静かになったね…」

 

ユリカは周りのクルーの数を確認しながら言う。

 

「青木さん達3名は居住区廃墟に、セキシマさんと尾形さんの2名は火星の状態を確認しに偵察に行ってます」

 

ルリはユリカに対して丁寧に説明した。

 

「アキト~…」

 

ユリカは膨れっ面でアキトの名を口にする。

 

「大丈夫か艦長…」

 

「さあな…」

 

ワッ太とリョーコは呆れ顔でユリカを見た。

 

 

 

 

 

ー火星 上空ー

 

悠真の倭猛、ホムラのガッツウイングL(レッド)は、火星の上空を飛んでいた。

 

「どうだ尾形、空を飛ぶ感想は」

 

尾形は通信で悠真に言葉を伝える。

 

「最初は怖かったですが、今は空を飛ぶ事が楽しく感じますよ」

 

悠真の嬉しさを込めた返答をした。

 

「楽しいか、面白い奴だな貴様は」

 

ホムラは微笑を浮かべながら言う。

 

 

 

今の倭猛零式は多環境対応型の飛行ユニットを背部とドッキングしており、そのおかげで地球と重量が違う火星の空すらも自由に飛べるのだ。

 

 

 

『お二人さん、楽しい会話のところすまねえが近くにエネルギーを発生する建築物が確認できるんだが』

 

「何だと…?」

 

ヤマトから伝えられた建築物の存在を聞いたホムラの口から、尖ったような声が出る。

 

「ホムラさん、どうしますか?」

 

悠真はホムラに聞く。

 

「観に行こう…すまないが、俺に付いてきてくれないか」

 

「わかりました(すまないがって随分弱気な感じだな…)」

 

悠真はホムラからどことなく弱気な感じがしたが、どちらかといえば何かを急いでるようにも見えた。

 

『じゃあ降りようぜ』

 

ヤマトがそう言うと、倭猛はゆっくりと降下し始める。

ガッツウイングLも続いて降下した。

 

 

 

 

 

「これは…遺跡…?」  

 

悠真は目の前にある建築物を遺跡と言った。

確かに星は違えど、どことなく地球の遺跡と似た小さな遺跡であった。

 

『この中から変なエネルギーを感じるぜ、行くかおめえ等?』

 

悠真の持つ小型端末から発声するヤマトは、2人に遺跡に入るかどうか聞いてみる。

 

「俺は行こうと思う、この遺跡のエネルギーが俺達に害あるものかもしれないから調査はした方が良いだろう」

 

「じゃあ僕も付いていきます、もしかしたら火星の人達が遺跡の中にも避難してるかもしれないし」

 

目的などは違えど、2人は遺跡の中に入る気のようだ。

 

『じゃあ俺はここで待ってるぜ、ナデシコの方にも連絡入れとっからせいぜい頑張れよ』

 

ヤマトは怠げながらも、2人を遺跡の外で待つことにした。

 

「任せたよヤマト、では行きましょうホムラさん」

 

「ああ」

 

2人は必要になりそうな物を持ちながら遺跡の中に入っていった。

 

 

 

 

ー謎の遺跡ー

 

 

 

 

「…なんか静かですし、大したものも見あたりませんね…人もいそうにありませんし」

 

薄暗い遺跡をライトで照らしながら歩く2人であったが、悠真の言うとおり、静かで大したものが無い。

ずっと一本道であった。

 

「…尾形、どうやらその大したものとご対面できるかもな」

 

「はい?……あ、ここは!」

 

悠真は周りを見渡して気づく。

そう、2人はいつの間にか円形の広い空間にいたのだ。

その空間の天井を観た2人は、次に空間の真ん中にある墓標のような石碑が目に入った。

 

「これはいったい………ッ!」

 

ホムラは、石碑に描かれた絵を見て息を呑んだ。

 

「巨人…?…しかも5人も…?」

 

悠真の言葉とおり、石碑には5人の巨人が描かれていた。

 

勇敢そうで天を見上げる巨人

力強そうで拳を握りしめる巨人

燃えさかる炎を纏う巨人

風を纏い剣を持つ巨人

黒き闇に包まれた巨人

 

どの巨人も、似通ったものはあまり感じられなかった。

 

「「…炎の巨人…」」

 

2人は炎を纏う巨人を観る。

その姿は、悠真を助けたあの巨人にとても似ていたからだ。

 

「……」

 

ホムラは炎を纏う巨人の絵に触れる。

 

「ホムラさん!絵から光が!」

 

炎を纏う巨人の絵が赤い光を放った。

そして炎は、ホムラの右耳のピアスに吸い込まれるこのように消えた。

 

「…………あれ…?」

 

反射的に目をつぶっていた悠真は、光が消えてたことに驚いた。

 

 

「さっきのはたんなる発光だな、遺跡を作った奴等が面白半分で付けたものだろう…」

 

「は、はぁ」

 

悠真はホムラの言葉がよくわからなかった。

 

「とりあえず、他に何も無いようだしここを出……誰だ!」

 

突如ホムラは、拳銃を構えて近くの柱の方へと向ける。

よく観ると、顔以外を茶色い布で隠した男がいた。

 

「…ッ!」

 

男は素早く遺跡の出口へと向かった。

 

「追うぞ尾形!」

 

「はい!」

 

2人は男の後を追う。

そして、男が出口から出るのが見え、2人はさらに走る速度を上げて出口から出た。

 

 

 

「…どこに行った…」

 

ホムラはそう言いながら周りを観る。

しかし、男の姿は影も形も無かった。

 

「…仕方ありません…あの男の事を他の方々に伝えてから、アキトさん達と合流しましょう」

 

悠真はそう言い、倭猛に搭乗した。

 

「そうだな、あの男が青木達の所へ向かったとも考えれるしな…とりあえずは一秒でも早く青木達の所へと行こう」

 

「はい!」

 

そして2人は、再び機体に搭乗してアキト達のいる居住区廃墟を目指して機体を飛ばした。

 

 

 

『…ん?』

 

「どうしたんだいヤマト?」

 

ヤマトがいきなり声を出したので、悠真はどうしたのかと聞いた。

 

『いや、なんかセンサーに反応あったかと思ったんだがな、やっぱり無かっただけの話だな』

 

ヤマトは気の抜けた感じで言う。

 

「しっかりしてくれよ…降下の時も同じ感じだったし…何かあった際には君が頼りなんだから」

 

悠真は冷や汗をかいて言う。

 

『わかったわかった、とりあえずは何か反応があったらすぐに伝えるからよ!』

 

ヤマトは自信ありげに言った。

 

「「まったく…」」

 

悠真とホムラは、ため息を漏らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「隊長…奴等はどうやら居住区の廃墟へと向かってるそうです」

 

「ふむ、わざわざ我々が戦いやすい所へと向かうとはな…よし、全機は居住区廃墟へと向かう!」

 

「「「了解!」」」

 

「偉大なるネオジオンのために…!」

 

ネオジオンのMS部隊は、倭猛などとは別ルートで居住区廃墟へと行くために動き出した…。

 

 

 

 

ー火星 居住区廃墟ー

 

 

「……アキトさん、いろいろ話させてしまってすいません…」

 

アキトから、アキトのいろんな過去を聞いたメグミは、どこか申し訳ない気分となってアキトに謝る。

 

 

「謝らないでよメグミちゃん、むしろ君が最後まで聞いてくれた事に感謝したいくらいだよ」

 

アキトは微笑みながらメグミに言う。

 

「いえいえこちらこそ……アキトさん…アキトさんの事がーー」

 

『アキト~!何やってるの!』

 

メグミが喋ってるのを、突如通信機から聞こえたユリカの声が遮った。

 

「………」

 

メグミはなんとも言えない顔になっていた。

 

「…で、いったい何の用だ?」

 

『私達もナデシコと一緒にそっちに向かってるの、ホムラさん達もそっちに行くって』

 

ユリカはわかりやすく2人に説明した。

 

「…じゃあ待ってるから、着たら連絡をくれ」

 

『わかったよアキト!任せて!』

 

アキトの言葉を聞いたユリカは、やたらと大きい声で返事をして、通信を切った 。

 

「本当に大丈夫なのか…」

 

ユリカの気楽な声に対してアキトは呆れ顔だ。

 

「…ま、まあ、誰か来るのを待ちましょうよアキトさん」

 

「メグミちゃんも落ち着きなよ」

 

アキトはメグミに向かって苦笑いで言う。

 

「あら、お盛んなことね」

 

「「!?」」

 

アキトとメグミは、突如聞こえた第三者の女性の声に驚き、後ろを見た。

そこには1人の金髪の女性が立っていた。

 

「はじめまして、私の名前はイネス・フレサンジュ、そこの男性にあなた達について聞いたわ」

 

『イネス・フレサンジュ』と名乗る女性は、すぐ近くにいる青木の方を見る。

 

「青木さん、この人とはどこで……ッ!他にも人はいませんでしたか!」

 

アキトは突然青木に詰め寄って、イネス以外の火星の人間について興奮しながら聞く。

 

「落ち着きなってアキト、他にも火星の人間はちゃんといたからさ、安心しなって」

 

青木は、生き残っている火星の人々がいるということをアキトに伝えることで、アキトを落ち着かせた。

 

「良かった…本当に…それで、その人達はどこに?」

 

「私が案内するわ、その代わり変に興奮しないように」

 

火星の人々がどこにいるのかと青木に聞くアキトを見て、イネスはアキトを火星の人々のいる場所へと案内することにした。

 

「ありがとうございます!…そうだ、メグミちゃんも来てくれるかな…?」

 

アキトはメグミにも一緒に付いてきてほしくなり、メグミに聞いてみた。

 

「はい!もちろん付いていきます!」

 

メグミは付いていく気満々のようだ。

 

「俺は他の奴が来るかもしれないから、俺はここに残ってるからな、なんかあったら連絡する」

 

青木はそう言うと、ガルーダⅢの方へと戻っていった。

 

「じゃあ行きましょう」

 

イネスは火星の人々が隠れている地下へと歩いていき、アキトとメグミはその後に付いていった。

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…本当に何があるかわからないな火星は……疲れる…とりあえず、あの2人があの人達を説得できればそれでいいんだがなぁ…ん?」

 

ガルーダⅢの中で独り言を言っていた青木は、ナデシコの通信回線に繋げようとしたら、知らない通信回線と繋がってしまった。

 

「…?…おい、誰だ?……」

 

青木は、相手が誰かも知らないのに普通に会話を試みた。

 

「……なになに…?……ほう……………………………ハァ!?……ビクトリーファイブ!?」

 

青木の口から、ビクトリーファイブという単語が飛び出す。

それは、かつて宇宙に旅立ったロボット等と、そのロボットに乗っていた英雄達の事であった…。

 

 

「………まあわかった…ここで合流ということか……とりあえず、俺達の艦に連絡を入れさせてもらうから、後は俺達の艦、ナデシコにいろいろ聞いてくれ…」

 

青木はそこで通信を切る。

 

「……まったくよ、俺達のヒーローが火星に来たなんて誰が予測できたんだよ…」

 

青木は、ついさっきまでビクトリーファイブ、昔に本で観たことあるビクトリーファイブと通信してたのに驚きながらも、冷静さを保とうとしていた。

 

「…とりあえず、混沌としだしたな」

 

青木は、紙飛行機を作りながら呟いていた。

 

 

 

 

 

物語は、また加速するのであった…。



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世界観・参戦作品など(随時追加予定)

簡単な世界観の説明や、現段階での参戦作品をまとめました。
是非ともどうぞ。
設定などは、ある程度進みましたら更新します。


スーパーグレイトウォーズ、略称SGWは、二部構成です。

オリキャラやオリジナル機体などが複数登場します。

ひとまずは一部の参戦作品や設定を書きます

2つの世界の地球は、悠真達のいる地球をG(グランド)アース、進が現在いる地球をW(ウォー)アースと呼称します

Gアース 

簡単な歴史説明

かつて、ゴジラの出現で自分達の技術の低さを目の当たりにした人類は、さらなる技術の発展を目指した

しかし、技術の発展とともに、人類は強大な力を手にするようにもなり、自分達の主権などを争い幾度も戦争が起きた。

そんな中、妖魔帝国が出現し、ムー帝国とライディーンは戦いを繰り広げてなんとか妖魔帝国を倒した。

だが、妖魔帝国が倒れた後も、キャンベル星人、ボアザン星人、バーム星人などの地球外からの敵との戦いで、戦争は急ながらも終結する。

地球外からの異星人達と戦い、ビクトリーファイブと呼称されるようになったコンバトラーV、ボルテスⅤ、ダイモスとパイロット達などの面々は、巨大な戦艦マグネバードに乗って異星人達との和平のために宇宙へと旅立っていった。

その頃、火星での開拓は大きく進んでいた。

そして、日本に新たなるゴジラが出現し、世界中は今度は怪獣などの強大な生物に対抗するためのロボットの開発などを進めていった。

ロボットの開発がちゃんとできてない中、コロニーのジオン公国が地球連合政府に対して完全な独立宣言をし、戦争状態となる。

当初は地球連合軍が押されていたが、ガンダムなどの地球連合軍のMS開発などが進んだことにより、ジオン公国に勝利することとなった。

その後、未来人のメカキングギドラより得られた技術でロボット工学はさらに進んだが、グリプス戦役や第一次ネオジオン抗争が勃発した。

そして、日本でもついにゴジラがメルトダウンで死ぬという事が起き、世界中に衝撃のニュースとして伝えられた。

そして、現代では火星に出現した木星トカゲや、ネオジオン、謎の敵ゾンダー、そしてゴジラの持つG細胞で怪獣化したGモンスターなどが驚異となっている。

 

Wアース

簡単な歴史説明

五十年近く前に、日本に『ゴジラ』、米国に『キングコング』が出現し、人類は多大な被害を被った。

特にゴジラは一度倒された後も、他の個体が出現し、『モスラ』や『ラドン』などの新たなる怪獣が出現し、人類の損失は多かった。

そんな中、突如として現れた『恐竜帝国』・『百鬼帝国』との戦争に突入した。

人々は対抗策と、空の危険性を考えた上で『戦術機』を開発した。

しかし、戦術機の性能では到底かなわなかったが、恐竜帝国・百鬼帝国は、早乙女博士が生み出した『ゲッターロボ』によって倒された。

そんなゲッターロボの勇姿と圧倒的な力を見た世界中の軍は、ゲッターロボを量産しようとしたが、早乙女研究所で起きた事故で、早乙女研究所にいた人間が突如として消えた。

この時、唯一残っていたのは、ゲッターロボのパイロットである『流竜馬』と『神隼人』の二人だけで、パイロットの一人である流竜馬のその後どうなったかは不明だが、もう一人のパイロット神隼人は、ゲッターロボの動力源であるゲッター線に関する資料を封印し、ゲッター線を使用しない新たなロボットの開発を始めたらしい。

その後、宇宙から現れた謎の敵『ガイゾック』が現れ、新たなスーパーロボット『ザンボット3』との戦いに突入する。

だが、多くの人々は、ザンボット3を持っている神ファミリーがガイゾックを地球へ呼び寄せたのではないかと非難した。

そんな中ザンボット3とガイゾックの最後の戦いが始まった。

ザンボット3のパイロット達の活躍もあり、ガイゾックは宇宙空間にて倒されたが、その後の神ファミリーの消息は不明である。

怪獣達も姿を消し、平和となったと思われた地球だったが、宇宙から最悪の敵が現れた。

その敵には様々な姿や種類があり、それらを総称して『BETA』と呼んだ。

BETAは最初月に出現し、そして地球へと降下、圧倒的な数で地球中を蹂躙していった。

異形の地球上の生命とは全く違う外見を持つタイプと宇宙空間で主に活動し、地上へと降り立つと地中へと潜み、変化して樹へとなる虫のようなタイプがいた。

そんな中、弱った世界を完全に支配しようと世界に宣戦布告をした2人の科学者がいた。

『Dr.ヘル』と『プロフェッサー・ランドウ』である。

彼らの率いる『機械獣』・『金属獣(メタルビースト)』軍団などの出現で、さらに戦いが激化してしまい、地球の総人口は八億六千万人にまで減少した。

だが、人類もやられてばかりではなかった。

天才科学者兜十蔵が生み出した、スーパーロボット『マジンガーZ』を中心としたスーパーロボット軍団が生まれた。

機械獣・金属獣軍団以外にも、長き静寂を破り活動を始めた巨大怪獣とBETAが脅威として存在していた。

巨大怪獣は、BETAの『光線級』が集中攻撃しても、あまりダメージを負う事は少なく、人類でまともな相手ができるのは、マジンガーZを始めとした一部のスーパーロボット達、そして米国の生み出した兵器『G弾』ぐらいである。

 

参戦作品

元々いた世界で分けます

Gアースのある世界

ゴジラ(VS基準でVSデストロイア後)、ウルトラマティガ、宇宙世紀ガンダム(ストーリーは逆襲のギガンティスを扱う)、機動戦艦ナデシコ、勇者王ガオガイガー、無敵ロボトライダーG7、ゴッドバード(漫画)、DETONATORオーガン、その他ティガ以外のウルトラ怪獣登場予定

Wアースのある世界

ゴジラ(ミレニアム基準で、ミレニアムから東京SOSまでのゴジラは初代たは別の個体で、1匹出します)、ラドン、平成ガメラ(3後で、平成ガメラの個体は基本的にほとんど出ない予定)、ガメラ小さき勇者たち、仮面ライダー555パラダイス・ロスト、仮面ライダーカブトGOD SPEED LOVE、キカイダー(石ノ森漫画版)、仮面ライダーBLACK(特撮版と漫画版を合わせた感じになります)、ULTRAMAN(劇場版)、マブラヴオルタネイティブ、トータル・イクリプス、真マジンガーZERO、ゲッターロボ號(漫画版)、無敵超人ザンボット3(冒険王版寄り)、宇宙の騎士テッカマンブレード



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