アサシンとアーチャーの力を使うエミヤ (影後)
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プリズマイリヤ
衛宮志戸


俺は何故ここにいるのか判らない。

衛宮士郎となり、聖杯戦争を生き抜き、地獄を見てきた。

義父のような存在にはならず、最終的に言峰のように教会の代行者となった。

カレンに言われ地獄を見て、遠坂に追われ地獄を見て、桜に追われ地獄を見て………

独身を貫いて……いや、カレンと結ばれ言峰を名乗った俺は相当狂っていたのかもしれない。

原作を知っている筈なのに俺は言峰綺礼の言葉が激しく耳に残った。

というより、カレンと結ばれたのも彼奴のせいだった気がする。俺を永遠の忠犬にするとかそんな理由で。

もし、この世界にカレン・オルテンシアがいるなら頼む。俺(志戸)じゃなくてこの世界の衛宮士郎をお前の犬にしろ。

俺は、衛宮士郎だが衛宮士郎(主人公)じゃない。言峰綺礼の言葉を理解でき、感性が壊れているとすら感じてしまう。

 

「それでも……俺は…………」

 

英霊なんかにはならない、あの馬鹿野郎みたいにはならない。

俺はカレンを見送り、息を引き取った。

はずだったのだが。

 

「……なぁ、俺達は双子なんだよな」

 

「今更か、士郎。俺とお前は双子だぞ、どうした?頭でも打ったのか?」

 

「なっ…そんな言葉しか言えないのかよ!志戸!」

 

俺はいや、衛宮士郎ではなく今衛宮志戸として生きている。家族にはかつて守れなかったイリヤ、それが普通に生きて生活している。

 

「じゃあな、俺はサボる」

 

「なっ!そんなの一成が」

 

「……生憎、俺は成績優秀なんでな」

 

俺はもう衛宮士郎じゃない、同じ顔でももう違う。元々、俺は衛宮士郎じゃないんだ。

 

「……投影開始」

 

親父が持つ武家屋敷に入り浸る俺。

ここは俺がずっと一人で生活してきた証だ。

ここにいれば、藤ねえ、セイバー、桜、遠坂達との記憶が蘇る。

ライダーを倒した時、セイバーと別れたあの日の事、アーチャーに殺されかけた事。

イリヤのバーサーカーに殺されかけた事。

ランサーに貫かれたこと。

………ろくな事覚えてない。

 

「あっ……」

 

それはボロボロの少女だった、摩耗した記憶の中にある衛宮士郎の可能性の一つに存在する妹。

 

「…お帰り」

 

「………おにい……ちゃん」

 

ボロボロの服を着て、俺に抱きついてくる少女。

それと同時に、俺の頭に並行世界の記憶が生まれる。俺の役割は……美遊の兄なのだろう。

士郎はイリヤの兄。俺は、この孤独な少女の兄。

 

「……ごめんな、お前の……お前の本当の兄じゃなくて………家族なのに……」

 

「え………」

 

「ごめん……ごめん……美遊、俺は……俺は……お前の………」

 

それは……懺悔だったと思う。俺は……美遊と一緒に泣いてしまった。止まらなかった、止まれなかった。

 

「お兄ちゃんは……お兄ちゃんじゃないんだ」

 

「美遊……そうだ。俺は……衛宮志戸。この世界に衛宮士郎は居る。俺は……士郎の兄か弟か」

 

「それでも、お兄ちゃんはお兄ちゃんだよ。私の……私の大切な」

 

「この世界なら……俺は……お前の願いを叶えられるかな、美遊」

 

「え?」

 

「海だ」

 

俺は武家屋敷に布団を敷いた。誰かが来るわけじゃない、でも妹を床には寝させられない。

 

「美遊が布団を使えよ、っとそうだ。先にお風呂だよな。あと」

 

「そんなに焦って……大丈夫?お兄ちゃん」

 

記憶で、最後に見たのは涙だったか。

せめて、今の笑顔を守りたいと思った。

 

「料理まで手伝わなくて良いんだぞ?俺が全部」

 

「駄目!お兄ちゃんの妹だもん、手伝わないなんておかしいよ」

 

片付けが終わり、美遊がお風呂に入っている。

俺は土蔵に入って布団を探していた。

ここは、第四次で親父とお袋が拠点にした場所だ。アインツベルンの城は入れないし、予備の布団ぐらいならと思ったが有るのは魔法陣だけだった。

 

「………コレは」

 

それは本来存在しない力だった。並行世界の衛宮切嗣の成れの果て。抑止の代行者アサシンエミヤのクラスカード。そして、2枚目のアーチャーのクラスカード。

 

「……守れって事か美遊を」

 

命に変えても?馬鹿だ、そんなに考えより自分の命も守って守る。それが出来ないなら二流以下だ。

 

「キャァァァァ」

 

浴場から悲鳴が聞こえてくる。

 

「投影開始」

 

干将莫耶を投影し、美遊の為に動いた。

 

「舐めるな!」

 

入った瞬間、桶が飛んできたがそれを真っ二つに斬ると……見てはいけない。

妹の裸体がそこにはあった。

 

「変態!」

 

「待て!まってくれ!美遊」

 

俺が驚いた瞬間、美遊の姿が変わった。

いや…変わってしまった。見覚えのある魔術礼装、性格が終わり黒歴史を量産したあの悪魔。

 

「何故……カレイドステッキが」

 

「あの……助けてもらえませんか」

 

俺はカレイドステッキを叩き折ろうとしたが美遊が待ったをかけた。

 

「お兄ちゃん、待って」

 

「ありがとうございます」

 

おかしい、というよりこんな感じだったか?

あの黒歴史製造機が

 

「私、サファイアと申します。貴男の仰る通りカレイドステッキです」

 

「あのキシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグの魔術礼装が何故一人でに居る。遠坂凛は」

 

「あの、何故そこまで詳しいのか存じませんが、私の主はルヴィ」

 

「まさか…ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトか?」

 

「お兄ちゃん、遠坂凛とかルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトとか誰?」

 

美遊から絶対零度の視線が向けられてくる。

仕方ない、後で説明しよう。

 

「待てよ、そうかルヴィアと凛は犬猿の仲だよな。まさか…カレイドステッキ使って魔術の撃ち合いでもしたのか?!」

 

「本当に見ていたように言いますね、はい。そのとおりです。私達の目的はこの冬木市に現れたクラスカードの回収。それを私怨で喧嘩に使われては……」

 

「主を見限り、新たな主をか。それで、何故美遊何だ」

 

理由は判る、大体この予想であっているはずだ。

 

「魔力量です」

 

「やはりか、しかしクラスカードか」

 

美遊は話を聞いている、そして覚悟が目に灯る。

 

「サファイア、アナタと契約すれば私は戦える?」

 

「はい、しかし」

 

「お兄ちゃん、私は…私は……護られるだけは嫌。お願い、お兄ちゃん。もう……」

 

俺は何も言えなかった。

 

「どうすれば良いの?」

 

「血を1滴私にいただければ」

 

「…これでいい?」

 

薄っすらと中指から血が出る。

俺は…………すまない衛宮士郎。お前の願いを俺は……踏み躙った。

 

「これで…契約は完了です」

 

「……お兄ちゃん」

 

「待て……冗談だろ」

 

俺は美遊の姿より学校の方に感じる魔力に恐怖した。存在しないはずだった。

出てきてはいけない、こんなモノだったのだろう。原作もとうに覚えていないが、俺が衛宮士郎として戦った英霊は憶えている。

 

「お兄ちゃん……どうして」

 

「美遊、必ず帰るからここで待っててくれ」

 

「投影開始(トレース・オン)」 

 

黒化英霊となっても変わらないスピード、死の感覚。忘れられない、忘れちゃいけない。

俺を、初めて殺した英雄。

 

「…クー・フーリン」

 

俺が真名を言った事に気付いたのかランサーはヤリを構えて俺を狙って来た。

 

「………仕方ない。クラスカード、アサシン。夢幻召喚(インストール)」

 

「お兄ちゃん?」

 

「悪いな、ランサー。どうやら、俺は正義の味方よりも暗殺者が向いてるみたいだ」

 

赤い外套そして、アーマーを装着し、腰にはトンプソンコンテンダーとキャリコ、サバイバルナイフが装備される。

 

「妹の前だ、格好つけさせてくれ」

『時のある間に薔薇を摘め(クロノス・ローズ)』

 

俺の時間が加速する、現実ではどう見えるのだろう。恐らくはランサーが無惨に斬り捨てられる映像が流れているのだろうか。

 

「終わりだ」

 

最後にコンテンダーに装填された起源弾をランサーに撃った。

ランサーの心臓が破裂し、静かに霧散していく。

 

「美遊様、あのお兄様はいったい」

 

「衛宮士郎、私のお兄ちゃんで、私のヒーロー」

 

 

 

 



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出会い

ランサーが消える瞬間、当たりが変わった。

 

「ちっ……やってくれたな坊主」

 

「……ランサー」

 

「てめぇ、俺が本気を出してたら負けてたぞ。いくら強くてもな、良いな?お前は結局はアーチャーの野郎と同じだ、それを忘れんなよ」

 

「本質はどれもこれもか……ランサー。アンタの力、借りる」

 

「その槍使って負けたら承知しねぇからな」

 

気付くと俺はランサーのクラスカードを所持していた。今のは記憶なのだろうか、それとも全く別の何かなのだろうか。

 

「お兄ちゃん、怪我はない?!」

 

「美遊、大丈夫。俺はな………隠れてるんだろ。既にサファイアから話は聞いてる、ランサーのクラスカードは渡す」

 

「……貴男、何者ですの」

 

それは俺が俺(衛宮士郎)だった頃に付き合いのあったルヴィアだった。でも、今の彼女が俺に向けるのは警戒だ。

 

「…衛宮志戸、魔術使いだ」

 

「……それで、カレイドステッキは」

 

「ルヴィア様、私の主は美遊様です。凛様と喧嘩ばかり続ける貴女様にはもうついていけません」

 

カレイドステッキに見限られたルヴィアは苦々しい顔をする。

 

「あの!私を貴女と契約させてください!!」

 

「美遊?」

 

「……今のカレイドステッキの契約者、確かに遠坂凛も私と同じはず。………ふふっいいですわよ!その代わり、シド!貴男の事も」

 

「ルヴィア、魔術師が自分の魔術を話すか?

悪いが、俺は話せない」

 

「…仕方ありませんわ。しかし……ふふっ美遊はまだ判りませんがシドの実力は私達よりも遥かに上!見ていなさい遠坂凛、必ずや私が、私達が全てのクラスカードを」

 

俺と美遊はそんなルヴィアを冷めた目で見ていた。俺達は契約する相手を間違えたと理解した。

 

夜、美遊も疲れたのか寝てしまう。

それでも、俺はあの時の爺さんのように縁側に座りなら星を眺めていた。

 

「夢幻召喚(インストール)」

 

持っているアーチャーのカードを肉体に呼ぶ。

だが、いや俺だからこそだろうか。正義の味方にはならないと、切嗣の理想も継がないと、それでもカレン・オルテンシアと過ごしながらも、戦い続けたせいだろう。

 

「…まさか……私がお前に使われるとはな」

 

「アーチャー、いや、オルタの方が良いか?」

 

「確かにな、貴様は正義の味方にはけしてならん。かと言って、俺のように全てを忘れる運命もない。貴様は…言うなれば第4の可能性だ」

 

「月の裏側に渡す事もない、全く別の衛宮士郎か。だからか……俺の固有結界がこんななのは

 

 

『I am the bone of my sword

(体は剣でできている)

Steel is my body,and fire is my blood.

(血潮は鉄で心は硝子)

Standing on many corpses

(いくつもの屍の上に立ち)

Imprisoned for eternity

(悠久に囚われる)

Still I seek meanin in my life

(それでも我は生涯に意味を求める)

That’s my why this body

(だからこそ、この体は)

”Infinited sword works”

(無限の剣でできていた)』

 

数多の骸の上に剣が刺さった世界。

月光が照らし、俺が殺した化物や魔術師の死体が無惨に放逐されたような世界。

 

「貴様は、何処の俺よりも酷いようだな」

 

「……それでも、力は貸してもらうぞ。アーチャー」

 

「判っているさ、クライアントの意向には従う」

 

オルタの意識が消えた。

だが、確信する、彼奴はもう彼女の記憶もないのだろう。

俺は、彼女の、笑顔も、剣も、全てを憶えている。

月光に照らされて、この世界では一本の剣だけが血に汚れず、美しく輝きを放っていた。

 

「■■■■君に会えたなら」

 

俺は固有結界を解き、静かに眠りについた。

 

「お兄ちゃん……」

 

「美遊?」

 

 

まだ春先、少し肌寒い。だが、それよりも俺の腕に抱きついて眠る美遊に驚きが隠せない。

毛布がかけてあるのは、美遊がしてくれたのだろう。ガッチリと腕を掴まれ、俺が起きるには美遊を起こすしかない。

 

「美遊、美遊?」

 

「あっ……お兄ちゃん」

 

「おはよう、サファイア。いるんだろ」

 

「はい、志戸様。エーデルフェルト嬢に連絡してくれ。今夜18時、----にて夕食をと」

 

「わかりました」

 

「?」

 

「美遊も行くぞ」

 

「え、でも」

 

「安心しろ、服も買おうな」

 

俺は自分の貯金で買ったバイクを出す。

 

「え?学校は」

 

「美遊、この世界には2つの人間がいる。勉強の必要のない人間。そして、妹の方が自分の幸せよりも大切な人間だ」

 

「理由になってないよ!」

 

「兎に角、サイドカーに乗れ!サファイアもだぞ、美結に渡した鞄にでも入っておいてくれ。美遊はその鞄を離すなよ」

 

「了解しました」

 

「お兄ちゃん?」

 

「風になれるぞ」

 

「む?こらぁ!しどー!!!学校来なさい!!!」

 

「貴様!衛宮!!!どういうつもりだァァァァ!!!」

 

「藤ねぇ、一成、悪いな!今日、俺はサボらせて貰う。じゃあな!!!」

 

「衛宮ぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「シドーーーー!!!!」

 

お目付役的な二人から逃げ俺はデパートに来た。

勿論、ブティックにだ。

 

「俺のスーツとこの子に似合うドレスを頼む」

 

俺はさり気なくブラックカードを店員に見せる。

 

「しっ…失礼します!此方でお待ち下さい!!!」

 

すぐに奥へと通される、これも自分で稼いだからだ。

 

「お兄ちゃん、どうして」

 

「そうか、美遊は知らないか。サファイア、教会の雇われ代行者は知っているか」

 

「はい、黒鍵を使い数多の……まさか」

 

「それが俺だ、勿論雇われだから使い捨てだ。その代わり、報酬は多い」

 

カレンと言峰がいる世界だ、以外と簡単に話が通った。無論、親父達に話が行かないようにはしてある。別人の戸籍で、別人の名前でだ。

 

「こちらです」

 

「美遊、行くと良い」

 

「うっ…うん」

 

「さて、俺の服も見せてもらおう」

 

「はっ…はい」

素晴らしい出来栄えだった、美遊は笑顔で頬を赤らめている。

 

「お兄ちゃん」

 

「あぁ、綺麗だぞ」

 

俺は自身のタキシードと純白のドレス。

もし、美遊の花嫁衣装を…………

お前もだろう衛宮士郎、美遊のドレス姿を見たかったはずだ。必ず俺がバージンロードを歩く美遊の姿を見せてやるからな。

 

「あの、値段は」

 

「一括だ」

 

「はい!」

 

美遊と俺は私服に着替え、今度は普通に服のコーナーに向かう。ここで下着や私服類を買い揃えないと行けない。

 

「お兄ちゃん、恥ずかしい」

 

「本当はもっと買わないとだけど今は良いか。しかし、どうしよう。布団は早くても明日だからな……」

 

「なら……」

 

「どうした?」

 

「………なんでもない」

 

静かに美遊の頭を撫でて家に戻る。

と言っても衛宮家じゃない、武家屋敷だ。

ここは俺が親父から制式に借りている。

まだ学生という事で値段は月3万、光熱費及び水道代ガスは自腹。学生が終わったら、制式に買うかとも思う。

 

「時間か、美遊」

 

「うぅ……」

 

「そうだよな、手伝うさ」

 

美遊にドレスを着せてやる。流石に一人では難しいからだ。

 

「ありがとう」

 

「お綺麗ですよ、美遊様!」

 

「サファイアもありがとう!」

 

「さて、タクシーを呼ぼう」

 

俺と美遊はタクシーにのり指定した場所に向かった。

 

「良い場所ですわね」

 

「冬木の街が一望でき、最高の料理もある」

 

「えぇ、同意しますわ」

 

「………美味しい」

 

ウェイターがノンアルコールワインを空け、俺とルヴィアのグラスに注ぐ。

美遊にはオレンジジュースだ。

 

「…乾杯」

 

「えぇ」

 

共に一口だけのみ、話を始める。

 

「貴男を調べましたわ、衛宮志戸。だからこそお聞きします、何者ですの?幼い頃に魔術師殺し衛宮切嗣に引き取られる。でも、そこからは一切魔術師として生活していた様子はない」

 

「そうだね、俺は名前も戸籍すら変えて活動していた。そうだな、通り名だけなら聞いた事があるはずだ。キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグの教え子ならね」

 

「お見通しという訳ですか、ならば聞かせてください。その通り名を」

 

「雇われ代行者」

 

「……良いんですの?」

 

「君達が魔術協会だからか?生憎、雇われだ。危険な任務を高報酬で受けるだけのフリーランス。まぁ、魔術協会からの依頼を受けた事はないけどな」

 

「…わかりました、改めてMr.ご協力お願いしますわ」

 

「えぇ、Mrs.あと一つ、実はこの子の戸籍がかなり面倒でな。俺の妹なんだが……Mrs.そちらでどうにかならないか?」

 

「お兄ちゃん?」

 

美遊が悲しそうな目を向けてくるが、現在美遊に戸籍がないことはまずい。

 

「わかりましたわ、エーデルフェルトの名にかけて必ず。そしてMr.と……美遊さんでしたわね」

 

「はい」

 

「今夜0時にあの学校に向かってもらいますわ。最初の仕事です」

 

「なら、せめて夕食は楽しもうか」

 

「えぇ…ふふっ……しかし……雇われ代行者……遠坂凛。くくっ……今に見ていなさいですわ」

 

「…ルヴィア様」ハァ

 

サファイアが柄を曲げて溜息を付いている。

……改めて、俺達は契約者を間違えたのかもしれない。

 

「お兄ちゃん」  

 

「大丈夫、大丈夫だ。お前は強いし、第一俺がついてる」

 

そう、並行世界の衛宮士郎(俺)、美遊は俺(志戸)が必ず守るから。

 

 



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第二戦から

真夜中、0時を過ぎようとする時間。

俺、美遊、ルヴィアは学校に居た。

 

「それが貴男の礼装ですのね」

 

「ノーコメントさ、さて……美遊行こうか」

 

「うん、サファイアお願い」

 

「はい、美遊様」

 

サファイアの魔力で俺達を鏡の中へと向かわせる。ランサーの時はあっちで限界していたが、本来ならこんな世界なのだろう。

 

「……ライダーか」

 

間桐桜のサーヴァントにして俺達が最初に仕留めたサーヴァント。思えば、あの時からだ。

俺は聖杯戦争を止めると言いながら、親友を殺した。慎二から桜を救った?

全然だ、間桐臓硯すら起源弾を使い仕留め、桜すら殺しかけた。

 

「……だが、過去の話だ」

 

今の世界で桜がどうとか関係ない。

 

「美遊、ランサーを使え。ゲイ・ボルグなら霊器を一撃で砕ける」

 

「クラスカード『ランサー』

限定展開(インクルード)

『刺し穿つ死棘の槍』ゲイ・ボルグ」

 

美遊の一撃でライダーの霊器が消える。

そして、俺は再びあの世界に呼び出された。

 

「お久しぶりです」

 

「…ライダーか、」

 

「えぇ…桜はあのあと」

 

「生きてる、子供もいる」

 

「そうですか、しかし……この世界は私の知る世界ではない。シロウ、せめて桜を」

 

「……努力する、桜は俺(衛宮志戸)じゃなくて衛宮士郎に惚れてるんだからな」

 

空間から戻る、そしてルヴィアに蹴りを入れようとする遠坂の足を受け止めた。

 

「…」

 

「ちょっと、アンタ邪魔しないでよね!」

 

「この世界から出るのが先決だ、たわけ!サファイア」

 

「はい!」

 

サファイアが俺達を鏡の世界から外に出す。

 

「ふふっ…遠坂凛、哀れなり!行きますわよ!美遊!Mr.!!この勝負、

貴方様と美遊さえいれば勝ちですわ!」

 

「何なのよ……あの男」

 

(……あの声)

 

この中でイリヤだけがアサシンの正体に近付いていた。

 

「Mr.そして美遊!戸籍はなんとかなりましたわ!」

 

「へぇ、教えてくれよ」

 

「名前は美遊・エーデルフェルトですわ」

 

「……わかりましたわ」

 

流石に衛宮を名乗らせる訳には行かないからな。

美遊には悪いと思っているが、仕方がない。

 

「家はどうするんだ?」

 

「お兄ちゃんと居たいです」

 

「構いませんわ、でも稀には来て頂きます」

 

「わかりました」

______________

 

 

「翌日、俺は悪友である間桐慎二とどうやってお目付役である柳洞一成から逃げるかを計画していたのだ」

 

「それを目の前で言うかバカタレ」

 

「なんだよ、俺は学校に迷惑かけてないぞ!祝日はボランティアのゴミ掃除、頼まれれば士郎と一緒に備品の修理、成績優秀、女子生徒からの人気も高く俺の親友間桐慎二とゲームしたり」

 

「まてよ!そこまで志戸と親しくなった覚えはないぞ!」

 

「なんだ?残念だ友よ、憐れにもワカメとして〘わくわくざぶーん〙の流れるプールに沈みたいらしい」

 

「怖いわ!てか何だよ、ワカメって!」

 

「ふむ、昆布の方が良いか?」

 

「おい、衛宮!お前の兄貴どうにかしてくれよ!!」

 

「「え?どうしんたんだよ慎二」」

 

「あぁぁぁぁあ!!!!」

 

「「え?いたずらやめろよ志戸!!」」

 

「くそ……志戸め、衛宮を知り尽くしているから同じにされたら判らん」

 

「俺が士郎だ!一成昨日の」

 

「俺だ!一成、昨日」

 

「何故二人共書類の件を知っている!どっちが志戸だ!!!!」

 

俺は士郎の真似をする。いや

真似なんか必要ない。俺と、士郎は同一だ。

だから、こういう時何をいうかすら予想できる。

 

「あららっと……何だ二人の判別ができないのか?なら、簡単だ!出てこい、間桐!」

 

「あのぉ……美綴先輩?」

 

「なに、部活に来ないバカをさっさと連れて行くためだ。あと、一成、部費よこせ」

 

「今言うか!」

 

桜は不味い、色々と不味い。

 

「はい、左側が先輩です。志戸先輩ですね」 

 

「おっと……速すぎないか?バレるのが」

 

「なっ!」

 

「っと、それではだ。美綴、お前は間桐を呼ばなくても気付けたんじゃないか?」

 

「まぁな、じゃあな志戸」

 

「あぁ」

 

誰かと話すこともなく出ていくはずだった。

 

「あれ?遠坂さん?」

 

「あっ…衛宮くん」

 

俺は今極限まで魔力を抑えている。それはこの世界の俺(衛宮士郎)と同じレベルまでだ。

 

「どうしたんだ?誰かを待ってるとか……もしかしてルヴィアゼリ」

 

「絶対違うから」

 

「ところで……イリヤさんは元気?」

 

「当たり前だろ」

 

俺はここで遠坂の顔が変わったのを見た。

 

「ねぇ、衛宮くん。なんで…〘私がイリヤさんを知ってる〙て思ったの?」

 

初等部には遠坂は向かっていない。それどころか、俺も士郎もイリヤの事を教えていない。

兄弟と考えつくか、答えはNoだ。イリヤはアインツベルンを名乗っている。

兄妹とは瞬時に理解はできないだろう。

 

「………答えなさい、衛宮士郎いえ衛宮志戸。貴方は」

 

「固有時間制御・三重加速」

 

アサシンのカードによって生身でも使えるようになっている爺さんの固有時間制御。だが、やはりクラスカードを使用した時と違い代償が大きい。

だが、それでも100m走るのはなんとかなった。

元々の身体能力は異常である俺は100を10秒台で走れる。それを三重加速でやれば3秒で視界から消えられる。

 

「くそ……二度と使わない」

 

一瞬だけの筈なのに身体は悲鳴を上げ、内出血を起こしている。

 

「投影開始……全て遠き理想郷」

 

アヴァロンを投影し身体に触れさせる、これだけで俺の身体の再生は早まる。

 

「くっ……流石にきついな」

 

美遊は今日はルヴィアの家に泊まるはずだ。

なら、寝ていても問題はなさそうだ。

 

「お兄ちゃん!」

 

「……美遊、どうして」

 

雑木林の中で隠れるようにアヴァロンを使っていた俺に美遊は声をかけてきた。

 

「その身体」

 

「……遠坂二バレかけてな。それよりも、美遊学校で友達は」

 

「ルヴィアさんの家に……サファイア」

 

「この傷、いったいどんな魔術を使えば………ますます謎が深まりますね。志戸さんは」

 

「聞かない、それが契約だろ?サファイア」

 

「わかりました、美遊様行きましょう」

 

俺と美遊はルヴィアの家に向かって居たはずなのだが……

 

「お兄ちゃん?」

 

「不味いな、俺はこれから先にいけない」

 

俺は近くに気配をけして隠れる。案の定、美遊とイリヤとセラがばったりと出くわした。

 

何か喋っているようだが、美遊とイリヤの関係は悪い。いや、仲良くなるのは良いがルヴィア陣営だし、遠坂から逃げたから余計に面倒臭くなる。

俺はイリヤとセラが消えたのを確認しルヴィアの家に入った。

 

「お兄ちゃん、大丈夫だった?」

 

「ごめんな、ちょっと治療しないとやばいんだ」

 

「貴方がMr.ですか」

 

「ええ、Mrs.の契約者にして美遊の本当の兄です。この度は妹の事、ありがとうございます」

 

「いえ…しかし貴方もですかな?」

 

「そういう貴方も、私と同じ様に匂いますね。人殺しの匂いが」

 

俺とルヴィアの執事さんは睨み合ってしまった。

 

「オーギュスト、Mr.と争うのはよしなさい」

 

「美遊、Mr.こちらですわ」

 

ルヴィアと俺は互いにMr.、Mrs.と呼んでいる。

これなら最悪、俺を名前も知らない存在であると切り捨てられる。そして、美遊をルヴィアの力で守ってもらえる。

 

「さて、今日の目的はキャスターのクラスカードですわ。場所は橋のふもとの公園、美遊は此方で送りますが、Mr.はどうしますの?」

 

「悪いな、遠坂凛から逃げるのに代償のでかいのを使ってしまった。一度家に戻り時間には合流する。変わらず0時だろ?」

 

「はい、ではそれで」

 

「お兄ちゃん?」

 

「美遊、お前は俺の妹だ。強くあれ。心が折れない限り、必ず俺がお前を助けるからな」

 

「美しい兄妹愛ですね、ルヴィア様」

 

「えぇ、私とあの子のように」

 

俺は静かにルヴィアの家を後にした。

 

「あっ、志戸!今日は武家屋敷じゃないのか」

 

「これから帰る」

 

「一緒に住むのは」

 

「悪いな、俺は……今のうちから自立して生活するんだ。あの家を親父から買って、あそこで暮らすためにな」

 

「昔から武家屋敷が好きだよな、まぁいいさ。偶にはイリヤに顔見せろよ!」

 

士郎はそう言って家に戻っていく。

アレは魔術を知らず、災害にすら合わなかった俺。

だからこそ羨ましい、何故俺はあの絶望を。

切嗣との別れを、イリヤの死の瞬間を、セイバーとの別れを覚えているのか。

忘れられたら、どれほど良かったものか。

 

「……殺意じゃないな、なぁ…俺(衛宮士郎)。お前はいったい何になるんだ?」

 

俺の言葉は虚空に消えた。

 

 

 

 

 



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第三戦予想外の使者

「夢幻召喚(インストール)アーチャー」

 

まるで神父のような黒いハーフジャケットの様な物で何故か裸体になっている。隠されているのは乳と脇のみだ。

 

「二度とお前は使わねぇ」

 

だが、使ってしまった物は仕方がない。

俺はルヴィアとの合流地点に向かった。

案の定

 

「キャァァァァ!!!」

 

「……お兄ちゃん、近づかないで」

 

「……なんでさ」

 

「志戸様、そのファッションは些かルヴィア様と美遊様に刺激が強すぎるかと」

 

「泣きたいのは俺もだよ」

 

取り敢えず投影したマグダラの聖骸布をマント替わりに使う。なんで黒くなった俺(アーチャー)は露出狂みたいにはなったんだあのバカは。

 

「……時間だ、」

 

「速攻ですわ、開始と同時に距離を詰め、一瞬で仕留めなさい」

 

「はい」

 

「あと、可能ならドサクサに紛れて遠坂凛も葬って」

 

「なら、それは俺がやるか?」

 

冷たく言放つ、流石に二人も俺の顔を見てきた。

 

「あの…志戸様?」

 

「サファイア、驚くな。ただの冗談だ、俺が狩るのは化物と下衆のみだ」

 

干将莫耶を投影して装備する。銃剣となっているが、まぁ使えるだろう。

 

「ジャンプ……か」

 

俺達3人は鏡面世界に侵入した。

イリヤと遠坂の姿も確認できる。

 

「キャスター……ルヴィア」

 

「どうしました?Mr.」

 

「負けたな」

 

「障壁展開!」

 

ルヴィアと美遊は魔術障壁で守っているようだが、時間も無いだろう。

 

「熾天覆う七つの円環」

 

熾天覆う七つの円環を展開しながら射撃を行うが、やはりというべきか、当たり前だと言うべきか、キャスターに弾かれる。

 

「全く…度し難い」

 

「最大出力、砲射(シュート)!!」

 

美遊の放ったビームがキャスターに向けて飛んでいく、イリヤとルビーも褒めているようだ。

どうせ、無駄に終わるが。

 

「さて、Mrs.、美遊、遠坂凛、イリヤスフィール・フォン・アインツベルン。撤退をオススメする。コレは負け戦だ」

 

「何故ですのMr.!あれなら……」

 

「……っ!」

 

「なっ、弾いた?!」

 

「あれは…魔力指向制御平面?!まさか…これ程の規模で」

 

キャスターの竜巻に囚われる、だが俺には無意味だ。

 

「さっさと逃げろ、ボロ雑巾の様になる前にな」

 

「アンタは!」

 

「サファイアちゃん!」

 

「ルビー姉様!」

 

俺は意図的に転移陣から離れる。

 

「え!そんな…待って!」

 

美遊達が消えたのをの確認し、静かにキャスターを見る。

キャスター、彼女達との出会いも俺が衛宮士郎であった頃からの違いだろう。

葛木先生とメディアさん、出会って間もない頃はただお似合いの夫婦としか感じなかった。

俺が料理を教えたりした。

裏で何をしていようが変わらずの態度で付き合ってくれた二人が俺は好きだった。

姉と兄ではなく、まるで父親と母親に叱られている様な気分にすらなれた。

死んだ爺さんのかわり、その思いが強かったが……

 

「キャスター、俺はアンタに感謝してるさ。アンタと葛木先生が居なくちゃ俺は助からなかった。セイバーもだ、アンタと葛木先生を祝福したかった。アンタと…葛木先生は俺の……第二の両親だよ」

 

「………」

 

黒化英霊のはず、言葉も届かないと理解していたのだが、キャスターは魔術の発動をやめた。

何故か、理解できないが、俺はまるで追い出されるかのように鏡面世界の外に出た。

 

「……破戒すべき全ての符、何故俺に渡したんだ。キャスター」

 

出る瞬間、何かが懐にあった。

投影したものではなく、本物の破戒すべき全ての符。

 

「アンタは…俺が楽にしてやる」

 

 

 

「さて、ボロボロの諸君等は下がるべきではないのかね?私としてはクライアントを守るだけで精一杯なのだが」

 

「あの……貴方は?」

 

「イリヤスフィール・フォン・アインツベルン、先ずは自分から名乗るものだよ」

 

「え?でも……」

 

「イリヤ…そいつは衛宮志戸、なんでここに居るのかしらね?ねぇ……」

 

「ほぉ……知らん名だ。俺はアーチャー、ただのサーヴァントだ」

 

「凛さん、あり得ないよ。だって、あの堅物で女っ気がなくて、セラとリズにすらアッチだと思われてて、何時もパパに目を向けてて」

 

おかしいな、心はとっくに捨てたのに……凄い痛いよ。なんでだろう

 

「イリヤさん、イリヤさん、あれ」

 

「お兄ちゃん、大丈夫?」

 

「あぁ、俺の妹は美遊。お前だもんな」

 

「うん」

 

「な……そういえばエーデルフェルトって」

 

「ってことはまさか…」

 

「なにを考えているか知らんが、遠坂凛か………冬木のセカンドオーナーだがここで葬るのも手か?」

 

俺の言葉に遠坂の態度が変わる、俺に遠坂や皆を殺せるはずがない。なのに、彼女達に俺は衛宮士郎に見えないんだろう、もう俺は俺(衛宮士郎)じゃないんだ。

 

「ふっ…冗談だ、どうやら遠坂のセカンドオーナーは自分の立場からこのような言葉を向けられることもないほど蝶よ花よと育てられたらしい。ふふっ…いやはや実に」

 

「くっ…アンタは」

 

「しかし…キャスターが飛べるのは意外だった。いや、神代の魔術師なら飛ぶことは容易いか」

 

「そうか、飛んじゃえば良かったんだ」

 

その一言で振り返るとイリヤが飛んでいた。

あれ、飛行魔術的なのってかなり高度じゃなかったか?前に時計塔でそんなことを

 

「魔法少女って、飛ぶものでしょ?」

 

イリヤの思い込みで飛べるのなら苦労はしない。

 

「くっ!負けてられませんわよ美遊!今すぐ貴女も飛んでみせなさい!!」

 

ルヴィアが言うが当の美遊は

 

「人は飛べません」

 

それに怒ったルヴィアは俺と美遊の首根っこを引きずりながら消える。おかしい、俺は鍛えているからかなり重い。軽く80はあるのにどうして……

 

 

翌日、俺と美遊は空の上にいた。これも美遊を飛ばすためだ。

 

「……志戸様、本当にやるのですか」

 

「Mr.貴方の妹に対する信頼は素直に感激しますが………」

 

「Mrs.、サファイア、大丈夫だ。紐無しバンジーだと思えばいい」

 

「死にますから!」

 

美遊が叫ぶが俺は静かに頭を撫でる。そして、俺の所持するクラスカードを美遊にルヴィアにバレない様に手渡す。

 

「待って…本当に待って」

 

「美遊、これで俺を守る物はない。Mrs.先に逝くぞ」 

 

「お兄ちゃん!!!」

 

ヘリコプターからダイブする。ここで美遊が飛べなければ俺は死ぬ。

固有時間制御で伸ばしても地面につくまで大体10秒台。

 

「駄目……嫌だ、お兄ちゃん」

 

「美遊様!志戸様を殺す気ですか!速く飛ばないと!!!」

 

「お兄ちゃん!!!!」

 

着々と地面が近づいている、今見えたヘリコプターから飛び出す美遊が。

 

「…もう、遅いな」

 

こうして死ぬのか、馬鹿みたいだな

 

「お兄ちゃん!!!」

 

泣くなよ、おかしいな。俺じゃない俺(衛宮士郎)の妹の筈なのに……まるで天使に見えてしまう。

 

「飛べたじゃないか」

 

「あっ……」

 

だが、その時間が一瞬で終わった。

恐らくは火事場の馬鹿力のようなものなんだろう。

 

「あれ、志戸お兄ちゃん」

 

「コレは……禁断の恋ですよ!イリヤさん!魔法少女とそれに救われた一般人!あの娘は誰か?と空想したら偶然学校でばったりと」

 

(美遊、すまない。俺は寝る。イリヤに気付かれる訳には行かないんでな)

 

「えっ…どういう」

 

俺は固有時間制御で自身の肉体活動をむりやり加速させ、疲労困憊の状態にする。

 

「あの…美遊さん?」

 

「この人、気絶してた。貴女の家族?」

 

精一杯、美遊はそう言ってごまかす。

家族、最愛の人。一緒に暮らして、自分を守ってくれる人。

それをあたかも、他人かのように扱うのは心が痛かった。

案の定、俺は衛宮家に連れて行かれた。

その頃には疲労も回復しており、すぐに起きる。

 

「志戸お兄ちゃん」

 

「イリヤか」

 

頭を軽く撫でてやる、イリヤに愛情を与えられるのは俺じゃない。俺にとってイリヤは姉なのだ、俺の知らない切嗣を知っていて、俺が守れなかった存在。

 

「志戸、武家屋敷ではなく此方で」

 

「セラさん、俺に居場所はないよ」

 

「志戸!」

 

美遊とイリヤは魔法少女のアニメを見ている。

さり気なく、家を出るとリズが懐かしい服装で武器を構えていた。

 

「志戸、お仕置き」

 

「どうしたんですか、リズさん。そんな玩具を」

 

いや、確信しているんだろう。だから、俺にレアメタル製のハルバートを振り下ろしてきた。

明確な殺意、だからこそ俺は動いてしまった。

 

「固有時間制御二重加速」

 

「それ、旦那様の魔術。何処で習った」

 

「……」

 

「志戸の秘密主義、治す」

 

「ならリズには見せるよ。初めてだ、人を飲み込むのは。

『I am the bone of my sword

 

(体は剣でできている)

 

Steel is my body,and fire is my blood.

 

(血潮は鉄で心は硝子)

 

Standing on many corpses

 

(いくつもの屍の上に立ち)

 

Imprisoned for eternity

 

(悠久に囚われる)

 

Still I seek meanin in my life

 

(それでも我は生涯に意味を求める)

 

That’s my why this body

 

(だからこそ、この体は)

 

”Infinited sword works”

 

(無限の剣でできていた)』」

 

「……固有結界」

 

「わかるだろ、リズ。俺の邪魔はしないでくれ」

 

リズを気絶させ、衛宮家に戻る。

『顔のない王』を投影し、姿をくらましながら進む。廊下に座らせるようにして、俺はまた消える。そして、戻るは武家屋敷だ。

 

「来たわね、まさか…ここまでアナタが優秀だとは思わなかったわよ」

 

「どうやら、とことん俺の邪魔をしたいようだな。遠坂は」

 

顔のない王を剥がした瞬間、ガンドが飛んできた。懐かしい、聖杯戦争のときのような苦しみが俺を駆け巡っている。

 

「冬木のセカンドオーナーとして、聞かせてもらうわよ。衛宮志戸、貴方の秘密を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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衛宮士郎

「…意外だな、いや君を知っている身からするとその行動力は変わらずと言うべきか」

 

俺は遠坂にカフェオレを出し、自身もコーヒーを飲んでいる。

 

「貴方の口ぶりだと、まるで私を知っているように言うのね」

 

遠坂は昔から抜けているよりも鋭い所が目立つ。

普段は呪われたうっかりなのにな。

 

「……第2魔法、遠坂凛。君なら理解できるかな」

 

俺の出した一言で遠坂が青ざめた。コレはルヴィアにも話していない事だ。

遠坂には此方を話し、ルヴィアにはあちらを話す。

 

「まさか………貴女は衛宮くんなの?」

 

恐る恐る聞いてくる遠坂、そうか……君だけは俺を衛宮士郎と。

 

「……もう違うさ、この世界の俺(衛宮士郎)は魔術も知らない。聞かせてくれよ、遠坂。お前は……俺をどうしたい?」

 

遠坂は何も答えない、当たり前だ。

言えないのだから、遠坂は魔術師にしては優しすぎる。ルヴィアもだが………

 

「聞かせて、貴方の世界では」

 

「遠坂、聖杯戦争って知ってるか?」

 

「えぇ…7人の魔術師と7騎のサーヴァントによって行われる……まさか」

 

遠坂の言葉に俺はうなずきを返す。

 

「俺はかつて、冬木で行われた第五次聖杯でセイバーのマスターとして聖杯戦争に参加し、勝利した」

 

「……私を殺すの」

 

「なんでそうなる」

 

「だって…」

 

「言うが、遠坂と俺は味方どうしだぞ。

(俺とアーチャーは敵同士だけど)」

 

「そう、私は生き残れたのね」

 

「まぁ、並行世界の話だ。気にする必要も無い、無意味な事だ。気にするな」

 

静かにそう呟くと、遠坂から叩かれる。

 

「ねぇ、衛宮くんならどうして……そんな風になっちゃったのよ!一体…何が」

 

そうか……遠坂はこの世界の俺(衛宮士郎)に惚れたのか。なら、この世界の俺(衛宮士郎)が衛宮士郎にならないようにするだけだ。

 

「簡単だ、俺は……悪の敵になった。誰かを裁く私刑を行いながら、教会の代行者として人の成れの果てや、外道、魔術師を殺してきた。そしたら…わからなくなったんだ。ある時、俺は子供を殺した。自分の息子と娘、その子達と変わらない歳の子を」

 

「……それは」

 

「吸血鬼と化していた、殺しが救いになるはずだ。殺さなければ誰かが何時か死ぬはずだ」

 

俺は拳を握りしめる。

 

「でも……未だに夢を見る。俺の事を最後に……お父さんと呼んだあの子供を。幻覚だと言えた、なのに……俺は抱きしめた。塵になるまでその子を抱き締めてしまった。今でも覚えてる、塵になっていく瞬間を。消えた瞬間を、熱を失ったあの時を………」

 

あの時、俺は自分の子供を殺したように錯覚した。たから、殺し続けた。忘れるために、思い出さない為に……俺は正義の味方(衛宮士郎)じゃなかった。

 

「これが……俺の全てだ」

 

話し終わる頃には俺は汗を滝のように流していた。こっちに来てまで代行者を続けるのも、全てがそうだ。死んでも、彼女の鞘になれずこんな世界に来た。俺は……何なんだ。

 

「ねぇ…衛宮くん」

 

「なんだ遠さがぁ?!」

 

遠坂に左頬を思いっきり殴られた。

 

「ウジウジしてんじゃないわよ!衛宮くん!よく聞きなさい!そっちの世界の私は止めなかったの?!桜や、イリヤ、そういえば慎二も居たでしょうが!」

 

「なんでイリヤまで……慎二とイリヤは聖杯戦争で死んだ!特に…慎二は俺がこの手で殺した!親友も殺して……桜と遠坂は俺を止めようとしてくれたが………俺は聞く耳なんて持ってなかった」

 

「馬鹿ね、筋金入りよ。兎に角!そっちの私に変わって言うわ、衛宮くん!」

 

こっちの遠坂と同じ気迫、どこに行っても赤い悪魔は健ざ

 

「休みなさい!」

 

「は?」

 

「わくわくざぶーんでも、何処でも良いから行きなさいよ。思い詰めすぎなのよ、その点、こっちの衛宮くんは良いわよ。色々とあるけど、元気だもの。良いわね、もっとゆとりを持って楽しく生きなさいよ!誰かに背負った物を手伝って貰うとか!」

 

「フッ………フハハハ…フハハハフハハハハ」

 

「何よ急に笑いだして」

 

「いや、遠坂は何処の世界も変わらないと思ってさ。そうだな、俺は俺、衛宮士郎だがこの世界じゃ衛宮志戸、それで良い、悪いな遠坂」

 

もういい、笑ったら何か吹っ切れた。

 

「そうだ、俺はルヴィア陣営だからな。キャスターのクラスカードは渡さないからな?」

 

「良い顔になった瞬間それ?良いわよ、宣戦布告受けてやろうじゃない!」

 

遠坂は帰った、俺も静かにアサシンと、アーチャーのクラスカードを見る。

 

「力借りるぞ、爺さん、俺」

 

一瞬、クラスカード達が輝いたように見えた。

 

 

 

―――――――

夜、今だけは……このときだけは美遊にも、イリヤにも、誰にも邪魔はさせない。

 

「二重夢幻召喚」

 

アサシンとアーチャーをその身に宿す。

肉体が張り裂けそうな程苦しい、だが…片方は親父、片方は俺の成れの果て。

 

「力を……かせ!!!!」

 

黒い外套にプレートアーマー。

キャリコだけでなくガンブレードとなった干将莫耶を腰に装備し戦える。

 

「……キャスター」

 

そして、サバイバルナイフのかわりに破戒すべき全ての符を鞘に収めた。

 

「今いく……義理母さん」

 

俺が出現したポイントに寸分違わず、爆撃が飛んでくる。回避しながら昔のように俺の身体に全て遠き理想郷を投影する。

 

「固有時間制御三重加速!」

 

地面を駆け抜ける俺、降り注ぐ爆撃。俺は走りながらキャリコをキャスターに向けて撃つ。

魔術障壁を展開され防がれ、キャスター自身もそれに並列して俺に魔術を放つ。

この空間で止まってはいけない、止まれば死。

走り続け、進み続け、キャスターの心臓に〘破戒すべき全ての符〙を突き立てるために。

 

「まさか下からもか!」

 

上だけでなく下からも狙われる。

だが、それならより加速するだけだ。

 

「固有時間制御……四重加速」

 

英霊となった身体が軋む。

中身が張り裂けそうになりながら、俺は走る。

だが…殺したくない、キャスターにも消えてほしくない。

 

(坊や)

 

「宝具二重解放!I am the bone of my sword. So as I pray,時ある間に薔薇を摘め」

 

キャスターを破戒すべき全ての符で斬り刻む。

俺以外の全ての時間が止まったと錯覚した世界の中で涙を流した。

 

「……ありがとう」

 

起源弾ではなく、俺(エミヤ・オルタ)の魔弾を装填したコンテンダーの引き金を引いた。

 

―――――

「まったく!この前よりはマシな顔になったわね、坊や」

 

目の前で、かつて恩師と共に生活していた時と変わらない笑顏を向けてくれる女性。

母親を知らない俺に、母親として愛情を向けてくれた女性。

 

「ごめんなさい……守れなくて………」

 

「良いのよ、あの腐れ神父と英雄王に私が勝てるはずがないもの」

 

「それでも、あの時俺とセイバーが間に合っていれば」

 

「たら…とか、れば…っていうのは変わらないわよ。それに……私に沢山の料理を教えてくれたじゃない。ねぇ…坊や、あの人は……宗一郎様は」

 

「キャスターと……一緒に眠ってる」

 

「最後まで……最後までキャスターを思って」

 

「………そう、それ(破戒すべき全ての符)は持っていなさい。良いわね?」

 

「あぁ、必ず」

 

「………坊や、貴方も宗一郎様と同じ誠実で、純粋よ。セイバーは貴方の前に必ず現れるわ」

 

「伝えるよ、最後まで」

 

「じゃあね、私の坊や」

 

最後、キャスターは俺を抱き締めて消えていった。

 

「ありがとう、義理母さん」

 

 



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彼女

「終わったよ………」

 

キャスターのクラスカードを見ながら静かに言う。勿論出てきた先で眉間にシワを寄せている遠坂凛がいた。

 

「ふむ、遠坂凛。どうやら遅かったようだな。キャスターのクラスカードは私の契約者に渡させてもらおう。しかし、そこでプルプルとまるで子鹿のように震えている姿。実に愉快だな」

 

「黙れこの腐れ神父2号!」

 

遠坂凛のパンチを回避したらルヴィアの方に飛んでいった。

 

「やりましたわね、遠坂凛!!」

 

「今アンタはお呼びじゃないのよ!ルヴィア!!」

 

殴り合いを始める二人に笑いながら静かに美遊とサファイアの方に行く。

 

「えっと…お兄様、お一人でキャスターを?」

 

「そうだ、サファイア。人外を狩るのは私の仕事だ」

 

「格好いい!ねぇ、この人美遊さんのお兄さん?」

 

「ふむ、確かに兄ではある。君はイリヤスフィール・フォン・アインツベルンだな。妹をよろしく頼む」

 

だが、お前も妹である事には変わらない。

そして、何故目覚めない。

イリヤ、君はそこで寝ているだけなのか。

何故、いや……確かイリヤじゃなかったな。

 

「もう覚えていないか」

 

摩耗した記憶、自分が衛宮士郎だがそれ以前は既にゴミとかしている。思い出さなくて良い記憶、所詮忘れた過去だ。

 

「しかし………よくやる」

 

喧嘩を続けている少女を見ると笑えてしまう。

雑談を交え、笑っていると不意に風が吹いた。

不穏な風だ。いや、俺はソレを知っている。

 

「熾天覆う七つの円環」

 

美遊とイリヤを守るように展開する、ルヴィアと遠坂は生憎だが間に合わない。というより、守れない。

 

「まさか……君なのか、セイバー」

 

ルヴィアと遠坂を風が襲った。中に吹き飛び、墜ちてゆく二人を救った俺は姿の見えない英霊に声をかけた。

 

「……」

 

黒く染まった外装と剣。だが、ソレを俺が見間違えるはずがない。

 

「………美遊、イリヤ、二人を頼む」

 

「そんな、英霊と連戦だなんて」

 

「舐めるなよ小童よ。俺は貴様らよりも数段地獄を見てきているのだ」

 

時間がない、幸い遠坂とルヴィアは気絶している。

 

「ストライクエアか!」

 

干将莫耶で圧縮された空気を斬り裂き、突貫する。しかし、その先にはセイバーが約束された勝利の剣を構えて立っていた。

 

「顔を……顔を見せてくれ……セイバー」

 

「……」

 

無慈悲に振るわれる約束された勝利の剣を弾きセイバーの仮面を奪うために疾走する。

 

「なんでだ、セイバーなんだろ!セイバー!!!」

 

干将莫耶が砕かれれば投影し直し何度も弾く。

俺の原点は君だ、だからこそ俺は頑張れたのに。

 

「セイバー!」

 

約束された勝利の剣が振るわれる、ビームとなり俺達を飲み込まんと。

 

「熾天覆う七つの円環!!!」

 

光が迫った、8枚の花弁を持つ花がその枚数の盾を展開した。しかし、1枚1枚、砕けていく。

 

(やめてくれ)

 

3枚目、4枚目

 

(君を傷つけるなんて俺には)

 

5枚目、6枚目

 

(そうか…君はきっと俺を殺すために)

 

7枚目

 

(愛している、セイバー。俺の…愛しい女性)

 

8枚目も砕かれんとするとき、死を覚悟している俺に言葉がかかった。

 

「シロウ!」

 

 

「『I am the bone of my sword

 

 

 

(体は剣でできている)

 

 

 

Steel is my body,and fire is my blood.

 

 

 

(血潮は鉄で心は硝子)

 

 

 

Standing on many corpses

 

 

 

(いくつもの屍の上に立ち)

 

 

 

Imprisoned for eternity

 

 

 

(悠久に囚われる)

 

 

 

Still I seek meanin in my life

 

 

 

(それでも我は生涯に意味を求める)

 

 

 

That’s my why this body

 

 

 

(だからこそ、この体は)

 

 

 

”Infinited sword works”

 

 

 

(無限の剣でできていた)』」

 

確かに聞こえた彼女の声が。

数多の屍の中、血潮一つ付かずただ美しいままのあの時から変わらない聖剣。

 

「えっ?!ちょっとなにこれぇぇ!!!」

 

「……兄さん」

 

「サファイアちゃん、これって」

 

「ルビー姉様、もし話せば私達の命がありません」

 

「ですよねぇ〜〜」

 

「借りるよ、セイバー」

 

台座から引き抜き、まるで俺を待っていたかのようにセイバーは俺に剣を振るってきた。

 

「くっ!ならば…コレは俺が失い臨んだ夢の剣

『唯一つ忘れられない絆の剣(エクスカリバー・ブライダル)』

 

「!」

 

俺が宝具を展開したと同時にセイバーも約束された勝利の剣をふるった。2つのビームがぶつかり俺の心象世界に光が走る。

 

数多の死体が消え去り、月光だけの心象世界に数多の星が輝く。

 

「約束された勝利の剣!!!

(エクス、カリバー!!!)」

 

聞こえた、君がそこに居ると。

わかった、キャスターが、いや義理母さんがなぜ、破戒すべき全ての符を渡したのか。

 

「穿け…破戒すべき全ての符!!!」

 

俺の矢は必ず当たる、どんなにミスをしても狙った位置へと。

 

「……セイバー、□□□□□」

 

光に呑まれるすぐに消えさるかと思ったが、思いの外この身体の対魔力が高かったのか、それとも、別の要因か俺は生き残っている。

 

「あぁ……何故、お前はそこまで馬鹿なのだ」

 

「……俺が、君を傷付けるはずがないだろ?」

 

黒い鎧だが、確かに見えている。

俺には、彼女の瞳が。

 

「待っていた、待っていたのだぞ。お前を……私は」

 

「……ごめん」

 

「お前は……私の鞘なのだ!私の……私だけの物なのだ!」

 

意識が朦朧としてくる。

目の前で泣いている彼女を抱き寄せ、言えなかったあの言葉を伝えたい……

 

「待て……行くな……行かないで……行かないでください………シロウ」

 

泣いているが、血が流れすぎているもう。

俺にはどうしょうもない。

 

「行くな……逝くな!!シロウ!!!!」

 

 

――――

 

「よく知る天井だな」

 

「起きたのか、シロウ」

 

「セイバーに、美遊まで……」

 

起き上がろうとして気付いた俺の身体に傷のない事に。

 

「私の鞘だ、返されたがまた貸し出しても構わん。お前は私の鞘なのだからな、シロウ」

 

「むっ……あの、セイバーさん。先程から私の鞘と衛宮士郎いえ、衛宮志戸は私の兄です」

 

その言葉にセイバーもむっとした顔で言い返した。

 

「ならば…契を交わすこともできんだろう。それに……シロウの投影した武器を忘れたか。

エクスカリバー・ブライダル。届いたぞ、貴様の気持が」

 

「は?」

 

美遊から不穏なオーラがする、セイバーにはそのとおりだからなんとも言えない。

 

「あの、いい加減に話してください!私はもう、パンクしそうです!」

 

そう話すサファイア、俺は包み隠さず話した。

 

「つまり、お兄様も美遊様と同じく……いえ、また別の並行世界から。そして、そのセイバー様は並行世界で行われた聖杯戦争でお兄様のサーヴァントであり、恋人以上の存在だと」

 

「そうだ、シロウは私の鞘なのだから」

 

「でも、お兄ちゃんはお兄ちゃんです」

 

「……すまない、一旦家を出る」

 

「待てシロウ、何処に行く気だ」

 

「……殺し合いだよ」

 

顔のない王を投影する。パスは繋がっているが、セイバーは俺の居場所はわらがないはずだ。

しかし…懐かしいな。

彼女とこうして繋がっているのは。

俺は自分の死装束を投影する。

言峰と同じデザインの神父服、だが俺のは純白だ。

 

「来たか、衛宮志戸。その服装という事は……理解しているのだな?」

 

「カレンもか……埋葬機関も動いているのか」

 

「いいえ…ただ哀れな信徒を捕縛するだけ」

 

「それは困るな、まだやることがある」

 

「ふふっ…衛宮志戸。やはりお前は私の同類だ、貴様は所詮壊れた人形」

 

「言峰、僕の息子をそちらに誘うのはやめてもらえるか」

 

「衛宮切嗣……くくっ……クハハハフハハハ!まさか…、こうして貴様と相まみえるとは、しかし……まさか味方とはな」

 

「あぁ、僕もなんの冗談だと思うよ」

 

銃口を向ける親父と、ニタニタと嗤う言峰。

そして、何を考えているか理解できないカレン。

 

「固有時間制御二重加速」

 

親父のトンプソンコンテンダーに銃口を向けるが、背中から黒鍵が飛んできたが。

ソレを弾けば、今度はカレンの聖骸布だ。

 

「舐めるな」

 

黒鍵を投影し、聖骸布を切り裂く。

だが、今度は親父がコンテンダーの引き金を引く。

 

「っ!」

 

身を翻し、弾を避ける。コレは起源弾だ、当たれば俺は終わる。

 

「教会を破壊するつもりか!」

 

「何、僕には関係のないことさ」

 

「……この腐れ神父が治しますので」

 

「……私としては、君が何もしなければ良いのだがな」

 

「馬鹿を言う」

 

加速した体で外に出る、ここで気絶させるか殺すかしかない。

 

「どけ」

 

言峰の拳をいなし、受け流す。俺の八極拳の師であるこの男、一撃でも受ければ骨が逝く。

 

「逝きなさい」

 

「聖骸布が!」

 

だからこそ、囮として役に立ったのだろうか。

俺の左腕に聖骸布が絡みつく。解こうにも解けない。

 

「カレン!」

 

前は嫌味な女だった、でも結局はカレンを見送って消えた。だが、それがどうした。前ということに変わりはない。今の俺は俺だ、だから俺は撃てるはずだ。そのはずだった。

 

「何故撃てない」

 

カレンの顔に引き金が引けなかった。

殺したいほど憎んてもいなければ苦しませたい相手でもない。

むしろ、憎しみなら言峰綺礼に向ける物の方が多い。

 

「やはり貴方は私を撃てない。良い相棒でしたよ」

 

「舐めるな」

 

「porca miseria」

 

カレンの前に黒鍵を投げる。彼女自身が回避し、体勢を崩して倒れ、マグダラの聖骸布の効果は止まる。

 

「……休んでろ、俺を捕まえたいならせめて身体を労れ」

 

「言われる筋合いはないわ」

 

カレンからマグダラの聖骸布を取り上げ、そこら変に捨てる。簡単な治療は自分で行うだろう、今はあの二人だ。

 

「神父として、どんな者にも手を伸ばすお前は実に素晴らしい信徒だ」 

 

「急にどうした」

 

「いや、あの根本の性格が歪んでいるシスターにあのように声をかけるとは。無慈悲な代行者ではないと言うことか」

 

「言峰、あまり僕の息子に話しかけるな」

 

「私にこのような協力を申し込んだ男の言葉とは思えないな。衛宮切嗣」

 

周りにも誰かがいる。

 

「彼の事は此方でも把握したいのだが」

 

「巫山戯ているな、ウェイバー・ベルベット。いや、ロード・エルメロイ二世か」

 

「……衛宮志戸。君に封印指定候補者として名が上がり始めている。どうか、一度我々と話して欲しい」

 

「わかった」

 

「貴様等、シロウに何をしている!」

 

「な…セイバーだと?!」

 

「お兄ちゃん!」

 

「カレイドステッキ?」

 

「二人共、場を掻き乱してくれてありがとう。これで俺は封印指定まっしぐらだ」

 

俺は覚悟を決めて干将莫耶を投影したのだが……

 

「あら、セイバーじゃない!久しぶりねぇ………元気してた?」

 

「アッ…アイリスフィール?待て、今そのような」

 

「仕方ない、言峰、教会を借りるぞ」

 

「構わないがね、封印指定はどうするのだね?」

 

「魔術師なら殺せば良い、それに……人形氏ともパイプはある」

 

「衛宮志戸、お前は私の胃を殺したいのか?おい!」

 

「ウェイバー・ベルベット、俺に関わった時点で運がなかったな」

 

言峰教会にさで全員が座るのを確認した後、俺は話し始めた。

 

「先ず…挨拶をしよう。俺は衛宮志戸」

 

「違うでしょう」

 

「…衛宮志戸、もといシロウ・コトミネ神父だ」

 

カレンがニタニタと笑うのが腹立たしい。

 

「先ずはじめに、俺は第二魔法によりこの世界に来た存在だ」

 

「第二魔法、並行世界への移動か」

 

「流石、ロード・エルメロイ二世だな。ここからは俺の来歴を話そう。俺の過去だ」

 



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自分

「第二魔法、まさか……」

 

「さぁね、話す必要はないさ。大まかな事は話したろ、並行世界の住人が何故か並行世界の自分自身と暮らす。それがどれ程苦痛だったか」

 

「それで、士郎いや志戸と呼ぶよ」

 

「構わないさ親父」

 

「なぜ、言峰に接触を?」

 

「……同じだからだ。俺は前から魔術師殺しの異名を受け継いで時計塔やアトラス院、それに雇われ代行者として幾つも命を刈り取った。それに、金を稼ぐには実力を示せば良かった」

 

「だからといって……シロウ、お前は彼のようになるつもりだったのか!」

 

「セイバー、俺はアーチャーにはならないさ」

 

「すまない、そのアーチャーとは?英霊の事では」

 

「簡単だ、衛宮切嗣の正義の味方という理想を抱いてアラヤと契約した哀れな男の成れの果て。抑止力として永遠に囚われた無様な存在、衛宮士郎の成れの果ての一つさ」

 

「……志戸、士郎の成れの果ての一つとは?」

 

「殺生院キアラって知ってるか?」

 

「えぇ、教会もマーク…そういうことか」

 

「流石だな、言峰神父。カレンも笑うな。兎に角だ、殺生院キアラは中々に面倒な女でだ、抑止となるはずの衛宮士郎を堕落させ墜ちた衛宮士郎の成れの果て。また、別の世界だと月にあるムーンセルと契約した衛宮士郎の成れの果て、そして……俺のように外道と人外を狩り続ける死装束の神父。まだあるかもな。まぁ、これが衛宮士郎の成れの果ての話だ」

 

親父は顔を下に向けていた、何も話さない。

 

「まってくれ、なら私が呼び出したサーヴァントを知っているのか!」

 

「えぇ、ウェイバー・ベルベット。覚えているぞ、征服王の事もな。嫌な記憶だ、まぁ、貴様の顔面に約束された勝利の剣を振るったのは良い思い出だ」

 

「巫山戯るな!」

 

兎に角、並行世界の事は話し終えた。

 

「では士郎じゃなくて志戸だ。志戸、そこの美遊という子は」

 

「並行世界の衛宮士郎の妹だ。どうやら遠坂凛の宝石剣の影響で転移したらしい。そこでまぁ、ある種の根源?に繋がってる俺に彼女の記憶が入ってきた」

 

「並行世界の同一人物の記憶か、確実に封印指定だな」

 

「時計塔と全面戦争か?良いぜ、知り合いのアトラス院の奴等も巻き込んでやる」

 

「止めろ、冗談ではない」

 

「あら、忠犬。その場合私はどうなるのかしら?ねぇ」

 

「…カレン、止めろ」

 

話が終わった。兎に角だ、話はこれ以上広げる気はないらしい。教会は優秀な代行者を失う事を恐れ、時計塔はセイバーというサーヴァントと代行者との敵対を恐れ、親父達は何も言わない。

 

「そういえば…ねぇ!志戸、貴方って前の世界で死んだって言ったけど…子供はいるのよね?」

 

「……アイリ、ここで聞くのかい?」

 

あからさまに魔力を感じる、背中にひしひしと冷たい魔力を。

 

「……いない」

 

「嘘だな、私の直感がそう言っている。シロウ、誰の子だ。サクラか、リンか、それとも別のか」

 

「待ってくれ、セイバー。その士郎って」

 

「そうだな、少なくとも私とリンとはしたな。サクラとも行っていてもおかしくない」

 

「……お兄ちゃん?」

 

「美遊様、落ち着いて下さい!美遊様!」

 

美遊がハイライトが消えた目で転身し、俺にステッキを向けている。

セイバーも約束された勝利の剣を俺の肩に………

 

「………あら、何時も私に熱い視線を向けたというのに、忠犬は……」

 

「何でこっちのお前が……あ」

 

「聞かせろシロウ早く!」

 

「リンと一人、サクラと一人、カレンと二人子供を作りました。ついでに前の名前はシロウ・衛宮・オルテンシアでした」

 

「忠犬、」

 

「シロウ」

 

「お兄ちゃん」

 

「ふふっ、切嗣、私の子供は人気ねぇ」

 

「あはは……僕は君だけで良いさ」

 

「フッ、まさかお前がこのように笑うとはなぁ」

 

「だまりなさい外道神父」

 

俺さ、真面目な話してたんだぜ。

なんで、ここまで痛めつけられなきゃ行けないんだよ。

 

「なんでさ」

 

翌日は学校に行かなかった。

セイバーと美遊の機嫌を治すのにかなり時間を食った。腹立つのはセイバーの味覚が残念になった事だ。

 

「むっ…シロウ、私はハンバーガーを所望したぞ!」

 

「セイバー、ハンバーガーも良いけどな。こうして皆で同じ食卓で食べるのが良いんじゃないか、昔みたいに」

 

「まぁ…嫌いではない」

 

「セイバーさん、お兄ちゃんは渡しません」

 

「ふっ…小童よ、シロウは我が鞘だ。諦めろ」

 

《ガルルルル》

 

「美遊様、女の子がしちゃいけないです。その顔」

 

サファイア、我が家の常識枠

美遊、妹ブラコン

セイバー、エンゲル係数消費量増加枠

俺、殺戮者

 

やばいな、まぁ、嫌いじゃないが。

 

「行ってきます!」

 

「おう、イリヤによろしくな!」

 

そんな話を朝した。今は……

 

「シロウ、運転を」

 

「駄目、せめて服を買ってからな」

 

なんて話をしたんだが、何故かセイバーは黒い服を好む。逆に俺は白い服を好むけど、基本的に白いスーツだし、何か白黒で……駄目だ。

 

「そう言えばだ、シロウ。アレの意味だ」

 

「何だ、セイバー」

 

「言わせる気か、『唯一つ忘れられない絆の剣(エクスカリバー・ブライダル)』の事だ」

 

「あっ……」

 

「ブライダルだなんて……私は」

 

「嫌……違わないけど、その俺も」

 

「ん!」

 

「セイバー?!」

 

「今はこれだけだ!行くぞ!他にも買いたい物があるのだからな!」

 

頬に伝わった暖かな感触、ソレを体感だと何十分を感じていたと思う。

 

「行くぞ、シロウ!」

 

「待てよ、セイバー!それに、俺は志戸だよ!」

 

 

――同じ時間別の場所で

 

「えっと……美遊さん?」

 

「何、イリヤ」

 

持っていた鉛筆が急に砕け、教室に大きな音が響いた。

 

「えっと…………うん、誰も何も見ていない!いいわね!諸君!」

 

「はい!タイガー!」

 

「タイガー言うな!」

 

 

――――

 

「シロウ、どうだ!コレは!!」

 

「………」

 

それは漆黒のドレスだった、セイバーのイメージは青だった。でも、今の彼女は何者にも染まらない。漆黒の黒。

 

「……似合ってる、俺も……君になら染められて良い」

 

「そっ…そうか、まぁ……シロウがそう言うならな。しかし……私もシロウは赤が似合うと思ったが、白か、良いな」

 

「純白のスーツさ、なぁ……セイバー」

 

「どうした、シロウ」

 

「ゴメンな、すぐに迎えに行けなくて」

 

「……良い。それに、感じていた。シロウ、何度も私の墓所に足を運んで居たのだろう?」

 

「…そうだな」

 

「それに、今の私は生きている。魔力でもなく、生きているんだ。シロウ」

 

「令呪もない、でも確かに君を俺は感じている」

 

「私は剣で」「俺は鞘だ」

 

「だが、言うぞ。小童には渡さない、あのシスターにもだ」

 

「………」

 

「別に妾を持つなとは言わないが、正妻は私だ。そこは譲らんさ」

 

「………セイバー、何か食べよう」

 

「あぁ、シロウ」

 

セイバーが飲食店に消える、俺もソレを追いかけようとした瞬間

 

「貴様はやはり死なねばならないさ、衛宮士郎」

 

虚空から響く声に何もできなかった。

 

「シロウ?どうした……シロウ!」

 

寒い…遠く……何も………

 

 

 

――――

 

「シロウ!逝くな!!何故だ!何故アヴァロンが!破戒すべき全ての符だと?いや……違う、コレは」

 

私の目の前でシロウは倒れた。純白の衣装は赤く染まり、背からは破戒すべき全ての符が生えていた。私は知っている、これが贋作だと。

 

「アーチャー……貴様は何処まで」

 

シロウの成れの果て等という存在は関係ない。

私の鞘を、私のシロウを傷つけたのだ。

アーチャー、

 

「必ず殺してやる」

 

私はシロウをバイクに乗せると記憶にある学園に向かった。覚えている、あの女、遠坂凛が居るはずだ。

 

「失礼するぞ」

 

「なっ!何だ君は」

 

「遠坂凛、来てもらうぞ」

 

「ちょ!待ちなさいよ!」

 

騒ぐ遠坂凛を引っ張り、バイクに近づかせる。

 

「なによこれ、なんで…志戸君が」

 

「何をだと?アーチャーは貴様のサーヴァントだろうが!」

 

「待て……セイバー」

 

「シロウ!喋るな、すぐに」

 

「遠坂……聞いてくれ、アーチャーの…クラスカードはどうなった」

 

「それならイリヤが」

 

「……俺はアーチャーに襲われた。もしかしたら、セイバーと同じくクラスカードを媒体に再び召喚されたのかもしれない。気を付けろ、彼奴は……衛宮士郎の成れの…果て…だ」

 

「シロウ!遠坂凛、貴様の家と我が家!何方が魔術結界として優秀だ!」

 

「それは……志戸君の家よ、」

 

「ならば…最初から向かえばよかったのか、すまないシロウ。アーチャーは私が必ず殺す、だから安心して待つといい」

 

「………」

 

シロウは既に喋らない。

破戒すべき全ての符のせいでアヴァロンによる回復が阻害されている。

どうすれば良い、どうすれば。

 

「……君は僕を頼りはしないのかい?セイバー」

 

「……キリツグ!どけ!私はシロウを」

 

「手当ぐらいなら可能だ、サーヴァントとの戦いは苦しいが、忘れていないかい?アインツベルンだよ。我が家は」

 

 

―――

 

「冬木にあるアインツベルンの古城、まさか再び使うことになるとは」

 

「キリツグ、シロウを利用するのなら貴様を斬る」

 

「安心してくれ、セイバー。自分の子を裏切る事はしないさ」

 

どの口がとセイバーはその言葉を飲み込んだ。

少なくともイリヤスフィールとシロウに対してキリツグは純粋だった。と記憶しているからだ、イリヤスフィールに関してはすれ違いがあったが、

シロウが何かしたのは覚えている。

 

「ここだ」

 

「コレは何だ?いや…コレは」

 

「……そうだ、あの武家屋敷よりもこの城のほうが霊脈の収束地として優秀だ。ここに志戸を寝かせよう」

 

それは自分の記憶にすらない泉、魔力が満ちかつてのブリテンの泉のような気配すらある。

 

「ここは……」

 

「言ったろ、霊脈の収束地だ。ここなら志戸も助かる、かもしれない」

 

キリツグはそう言いながらシロウを泉に沈めた。

本来溺れ死ぬはずだが、何故かシロウは生きている。それどころかシロウを中心に波紋が広がっている。

 

「志戸は無事さ、ここは元々日本の禊に使われていた場所だ。神様はもういないけど、神聖さは変わってないはずだ」

 

「そうか、ならば…この泉の神よ。どうか、我が鞘を頼みます」

 

私は約束された勝利の剣を泉に刺し、祈った。

 

「行くのかい?」

 

「アーチャーを殺す、でないとシロウは狙われ続けるだろう。今のシロウを殺そうとしているのはあくまでもアーチャーの意志だ。ならば…アーチャーを殺せば終わる」

 

「…良いだろう、ただセイバー。負けるなよ」

 

「誰に物を言う、私はアルトリア・ペンドラゴン。騎士王と呼ばれた女だ」

 

私は約束された勝利の剣を腰に携え、アーチャーを仕留めに向かった。

 



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衛宮士郎

彼はまるであの時のように柳洞寺で待っていた。

並行世界の自分を撃ち抜き、そして並行世界で再び聖杯戦争をやり直そうとしている。

彼自身、それが無意味だと理解している。

だが、自分が知りながら自分の知らない衛宮士郎。

まったく別の未来に行き着いた衛宮士郎に興味すらあった。

だが、蓋を開けてみればありえない存在と成り果てていた。

かつて、何処かの衛宮士郎が自分の座にアクセスしてきたが、あの衛宮士郎は違う。

関わりのある英霊の座にアクセスしている。

それどころか彼等と言葉すら交わしている。

だが、それだけなら得意性で済ませることが出来たかもしれない。

 

「なぜ、並行世界の記憶すら読み取れる」

 

それは根源である。

アカシックレコードから受け取るのなら、今の衛宮士郎はどの衛宮士郎よりも強力であり凶悪だ。

 

「……まさか…あれで生きているだと」

 

「あぁ、アーチャー。シロウは生きている」

 

アーチャーは思案に深けっていた為か、それとも元マスターのうっかりが移ってしまったか。

 

「投影開始」

 

「貴様を殺す」

 

「墜ちた騎士王か、そのまま沈め記憶の中に」

 

干将莫耶と約束された勝利の剣がぶつかる。

セイバーの中にはアーチャーを殺すというドス黒い感情が渦巻いている。

 

(これが彼女だというのか……コレは………)

 

「跪け、アーチャー」

 

「ぬっ!」

 

干将莫耶が同時に砕かれる。

アーチャーは即座に干将莫耶を投影し直すと、セイバーに向けて投げた。

 

「知っている」

 

壊れた幻想、いくらセイバーでも壊れた幻想から逃れるのは困難だ。

しかし、最初から警戒していれば別である。

 

「やれやれ、このまま倒れていれば衛宮士郎の死を見ずに済んだものを」

 

「黙れ、私はシロウを守る。シロウは約束した、共にアヴァロンへ向かうと。共に進むと……ソレを今度こそ」

 

「ふっ……」

 

鼻で嘲笑ったアーチャー、そして冷酷な目をセイバーに向けた。

 

「その幻想を抱いて消えろ」

 

「何が!」

 

偽・螺旋剣。

それは通常よりも小さく投影されていた物であった。腸を抉られ、その場に蹲るセイバーをアーチャーはただ見下したのだ。

 

「全て遠き理想郷も無く、その傷。私が手を出すまでもないが……宝具は邪魔だな」

 

「ぐっ…ぐぁぁぁぁ」

 

セイバーの両腕を折り、アーチャーは静かに柳洞寺の入り口を見た。

 

「貴様……アーチャー!!!」

 

「殺さないのは慈悲だ」

 

アーチャーは高台に登ると赤原猟犬を投影し、魔力を溜める。

衛宮士郎を確認するため、一撃で仕留める為に。

 

「セイバー、ごめん……ゴメンな、俺が必ず殺すから」

 

「なんだとだが!」

 

赤原猟犬が志戸を狙う。だが、

 

「……無意味だ、アーチャー

『I am the bone of my sword

 

(体は剣でできている)

 

Steel is my body,and fire is my blood.

 

(血潮は鉄で心は硝子)

 

Standing on many corpses

 

(いくつもの屍の上に立ち)

 

Imprisoned for eternity

 

(悠久に囚われる)

 

Still I seek meanin in my life

 

(それでも我は生涯に意味を求める)

 

That’s my why this body

 

(だからこそ、この体は)

 

”Infinited sword works”

 

(無限の剣でできていた)』」

 

アーチャーとセイバーの飲み込む固有結界、ソレを見たアーチャーは怯えすら忘れていた。

放った赤原猟犬はそこら辺の死体に突き刺さり、何度目の前の存在を射抜こうとも矢は当たらない。

 

「ここは俺の心象世界、だが今は違う。ここの死体全てが……衛宮士郎なのだから」

 

「なっ!」

 

「シロウ!それは!」

 

「お前に殺された俺、セイバーに裏切られて死んだ俺、イリヤ達に殺された俺、ここに居る屍は今だけはすべて衛宮士郎だ」

 

「止めろ」

 

「そして…お前と俺が合わさった事で……見ろ。あれがお前の最後だ」

 

それは自分でない自分、そう言いたかった。

だが、アーチャーはできなかった。

 

「まさか……遠坂」

 

「何よ、こんな牢獄に囚われて……こんな事のためにアンタは」

 

「言わないでくれ」

 

「なんで……なんで…私を頼らなかったのよ」

 

「違う……遠坂俺は」

 

「なんで……」

 

「面会終了だ」

 

「まて!遠坂!遠坂!凛!!!」

 

アーチャーの風景が変わった。

それは絞首台 

 

「…遠坂」

 

誰も見ていない、薄暗い部屋。

執行官の生暖かい手の感触だけが首から伝わる。

 

(俺は…満足だ)

 

違う

 

こんなの望んでいない

 

「なら、何故こうなった」

「遠坂は泣いていた、桜もだ」

 

「アーチャーいや、衛宮士郎。死ぬのはお前自身だ」

 

「貴様!」

 

アーチャーの目の前で執行官の顔が衛宮士郎となる。それと同時にアーチャーは首を絞められ、最後まで苦しみながら

 

「はぁ……はぁ……コレは」

 

「セイバー、大丈夫か」

 

「えぇ、シロウ」

 

アーチャーの前では全て遠き理想郷でセイバーを治療する衛宮士郎の姿がある。

 

「今のは……今のは何だ!」

 

「判らないか、なら教えてやる。お前の記憶だ、摩耗したと言いながら、失ったと言いながら、お前が最後まで刻み続けた涙だ」

 

「私は……」 

 

「お前も所詮俺だ、お前の記憶も俺にはある。アカシックレコードさ、俺は俺だから、接続し、そして…今がある」

 

「…衛宮士郎」

 

「だからな、衛宮士郎。原点に帰ろう、貴様は正義の味方。俺は悪の敵、来いよ。人形」

 

「ふっ…良いだろう。行くぞ、衛宮士郎。最も夢に遠き男」

 

「「I am the bone of my sword.

――― 体は剣で出来ている」」

「永久に遥か黄金の剣

エクスカリバー・イーマージュ!!!!」

「唯一つ忘れられない絆の剣

エクスカリバー・ブライダル!!!!」

 

 

2つの贋作がぶつかり合い、光が冬木を包んだ。

それは贋作でありながら、贋作でない光の剣。

 

「……貴様、セイバーの剣にブライダルとはな」

 

「そういうお前は何だ?イーマージュ?想像?」

 

消えかかるアーチャーと軽口を言い合う。

 

「最後にだ」「なんだ」

 

「…俺はお前が嫌いだ、お前は正義の味方だからな。俺とは相容れない」

 

「ふっ……私はお前が気に入ったぞ。所々言峰のような雰囲気さえ無ければな」

 

「黙れ、さっさと消えろ。座に帰れ」

 

アーチャーが消え去るとクラスカードが落ちてくる。憎たらしい存在のクラスカード、ソレを懐にしまう。

 

「シロウ、大丈夫なのか」

 

「セイバー、大丈夫だ。アカシックレコードを見たがここで死ぬ未来は無い。ここで死ぬなら、それはある種の……いや、どうでもいい事だな」

 

この力も美遊から与えられたのか、それとも俺が……いや、俺は衛宮士郎だ。

それ以前など、有りはしない。

俺は、俺なんだ。

 

 

 



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衛宮の姉妹

アーチャーの現界事件は終わった。

遠坂とルヴィアは何か話したいようだったが、結局何も言わないでくれている。

 

「志戸!お前……今日はサボらず来たのだな」

 

「……柳洞か、サボってるわけじゃない。最低数しか来る気がないだけだ。それにだ、何か言いたいなら全教科満点取ってみせろ。俺は興味ないがな」 

 

「…スポーツ万能、成績最優秀、だが性格が全てを打ち消している。のにもだ、今日は珍しく機嫌が良いな」

 

「何……いい日になると思ってな」

 

それは偶然だった。

 

「衛宮志戸、居るか」

 

「葛木先生、どうしました」

 

昼を食べようとしていると葛木先生からお声掛けが来る。並行世界であるここでも葛木先生は変わらず恩師だ。

 

「あぁ、藤村先生から家庭科の臨時メンバーとしてお前が選ばれた。一応聞くが、勉学は問題ないか」

 

「一応、ハーバードかMITなら余裕で受かれる頭はありますし、高校レベルなら3年前に全て終了済みです」

 

「わかっている、なら良い」

 

という会話があったのは50分前だ。

 

「シロウ、ご飯だ」

 

「……だっってぇ…どうせならセイバーちゃんも一緒に食べようかなっ?て思ったりしちゃったわけだぜ!」

 

「……まじか………食材、たりないよなぁ……」

 

(セイバー、一食だ。おかわりも無いからな)

 

(シロウ!それは私になんと!)

 

子犬みたいに泣きそうなセイバーがいる。

やめてくれよ、何時も食べてるだろ?

今朝もたらふく食べたのに…………

 

(帰ったら同じの作るから……な?頼む、セイバー)

 

(判った……我慢しよう)

 

セイバーは食べ物の事になると人が変わるというか……まったく。

 

「初めましての子は初めましてだな、衛宮志戸だ。イリヤと美遊の兄的存在だ。此方はセイバー、まぁ…俺の味見役だ」

 

「はいはーい!それは…私もいいんでしょ!」

 

生徒の前だぞ、いい加減にしろ。藤村!!

 

「藤村先生、生徒の前です。はい」

 

「………君達、藤村先生を監視しててくれ。既に飢えた虎なんだ」

 

「「「はい!」」」

 

と言っても俺がやることは藤ねぇとセイバーの分を作るだけ。

今回作るのはローストビーフ。

正直お高めのお肉なんだが…藤ねぇが食べたいらしくて自腹叩いたらしい。

 

「美遊は…少しソースの味が濃い目だな」

 

「判りますか」

 

「肉に合わせるとしてもそうだな………いや俺は好みの味だ」

 

「……ありがとうございます」

 

ソースを軽く舐め、頭を出してきた美遊を撫でる。美遊は素直じゃない仔猫か?

 

「美遊さん、凄く赤くなってる!」

 

「うわぁ……可愛い」

 

「えっ…!いや……あの!!」

 

「じゃあな」

 

続いてだ、イリヤの方に行くのだが………

 

「……イリヤ、俺は行ったぞ。直ぐに呼べとな。コレは何だ?」

 

「……ローストビーフです」

 

肉は真っ黒に焦げ、ソースはただ不味い。

塩味か甘味かとも思ったが、舐めて感じたのは刺激だ。何を入れればこうなるのか。

 

「君達もだ、そうだな………丁度よい。俺は衛宮士郎(正義の味方)じゃないからはっきり言ってやる。食材への冒涜だ、できるできると高を括った結果がこれだ。しかし………アレンジ精神は褒めてやる。型に囚われない料理という物もある種必要だからな。レシピに沿ってばかり……それでは己の料理とは言えん。ふむ、肉はまだ食べれるな、ソースを……ふむ、何とかマシになった」

 

「嘘……美味しい」

 

「衛宮さん格好良い!」

 

「なんで…」

 

「イリヤ、セラに学べ。少なくともマシにはなるだろう」

 

――――――

授業が終わって下校時間になったときだ。

私はもう一人のお兄ちゃんの以外な一面を見た。

私、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンにはお兄ちゃんが二人いる。

衛宮士郎と衛宮志戸。

衛宮士郎はお兄ちゃん、衛宮志戸は志戸お兄ちゃんと私は区別している。

堅物で女っ気がなくて、何時も私を悪く言う。

正直、志戸お兄ちゃんは皮肉屋だと思ってたのに……まぁ、撫でてくれたりセラに内緒で色々買ってくれるけど……

 

「へぇ……セイバーさんが………フフフ」

 

面白いネタを見た、これをセラとリズお姉ちゃんに見せれば……

 

「お兄ちゃん……なんで………なんで………」

 

「おや、イリヤさん、コレはバレたらまずいのでは」

 

「イリヤさん、見たら不味いのでは?流石に志戸さんを巡る三角関係に突っ込むきは」

 

「あら、元気でいるのね。忠犬、それに………あらあら、青い騎士王が真っ黒に」

 

「前々から思ってたが……カレンってもしかして」

 

「あら、イタリアで私に忠犬があんな言葉を話したなんて……覚えていないわよ?」

 

「待て!ここで話すな!」

 

「お兄ちゃん?」

 

「シロウ!それはどういう事だ」

 

「待てセイバー…って美遊まで?!」

 

「うはぁ!!四角関係!中々無いですよ!しかも士郎さんと違って朴念仁ではない!いやぁ……凄いですね志戸さん!歳上!同い年!年下!選り取り見取りの」

 

「ルビー、黙って!」

 

不味い、美遊さんが一瞬こっちを見た。

かなり不味い、バレてるかもしれない。

 

「……カレン、俺に何だ?あるんだろ、仕事か?」

 

「シロウ、仕事とは」「お兄ちゃん?」

 

「えぇ…まぁ……警告よ。貴方の妹、他の家族は知ってるのかしら」

 

「カレン、美遊の」

 

「違う、カレンが言いたいのはアレの事だな」

 

「シロウ…アレとは?」

 

「えぇ…だからその子と盗み聞きしている駄猫はさっさと帰りなさい」

 

「美遊、すまない。ルヴィアと合流してほしい、この件は聞かれたら不味いんだ」

 

「判った、サファイアわかってる?」

 

「大丈夫ですよ、では行きましょう。美遊様」

 

美遊さんは私の方に真っ直ぐ歩いてきた。

 

「イリヤ、行くよ。ルビー、サファイアも」

 

「え〜気になりま」

 

その時だ、ルビーを挟むように何かが飛んできた。それは…歴史の授業でみた雁股矢だ。

 

「…喋るな、カレイドステッキ。ここで運命を終わらせるか、それとも……どうするか、選べ」

 

「生きたい!」

 

「疾くと、失せろ」

 

それは…アーチャーと名乗ったあの人と同じ目だ。やっぱり、志戸お兄ちゃんはルヴィアさんの協力者なんだ。

なら、秘密を探るのも………

 

「ルビー!!!取れない!!!」

 

「イリヤさん!折れる!ルビーちゃん折れちゃうから!!!」

 

気づいたら美遊とサファイアだけが残ってた。

志戸お兄ちゃん達を見失った……無念。

 

あれ?美遊って、志戸お兄ちゃんの……え?

 

 

――――

「それで、カレン。話はいったい?」

 

「わかるかしら、あの子。そろそろ溢れるわよ」

 

「シロウ、どういう事だ」

 

「……なんでカレンがソレを知っているのか、実に気になるが……良いだろう。セイバー、イリヤをどう思う」

 

「何を…並行世界だからか随分と」

 

「そうだな………セイバー、イリヤが幼い頃に出会ってるんだよな。前にもそれで色々とあったし」

 

「あぁ、だがこちらのイリヤは私を見ても」

 

「……まぁな、イリヤが生まれたのは聖杯戦争の大体8ヶ月前だ。別にそこは並行世界の位差だと思えば良い。だが……聖杯としての力は持っていた」

 

「……まさか、いや……それでは」

 

「そうだ、イリヤは聖杯だ。魔術回路も変わらずある。だが、使い方は愚か知識もない。セラもリズも、衛宮家の全員が魔術を隠していたのさ。俺がバレるまでな」

 

「シロウがバレるとは………いったい誰に」

 

「リズだった、そこから親父と母さんに伝わったんだろう」

 

「シロウ、それは」

 

「どうでもいい、今はイリヤだ。何故、教会のお前が知っている。カレン」

 

「フフッ……忠犬、それは言えないわ。もう一度、私の忠犬になるなら」

 

「…シスター、それ以上私のシロウに近付くな」

 

面倒な事になり始めた、イリヤの事もだが……誰か、助けてくれ。

というより、カレン、お前は本当に何なんだ?

 

 



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最強のサーヴァント

イリヤが暴走した、俺が管理していたあの野郎のカードを使用し、アサシン。

ハサンを殲滅したらしい。

だが、そもそもだ。アーチャーのカードは俺が持ってた筈なのに何故という理由がある。

 

「……つまりか、偶然俺の家に上がった時〘偶然〙現界したはずのアーチャーのクラスカードをイリヤが〘偶然〙確保し戦闘をしていたと?」

 

「はい…私としましてもイリヤさんが何時手にしたか判らないんですので……あの…どうか……命だけは」

 

「…その意味のない性格を破壊し、ただの礼装にすれば」

 

「サファイアちゃん!!!助けてぇ!!!!」

 

「衛宮君!落ち着いて!!ルヴィア!手伝いさないよ!!」

 

「いえ、元はと言えば遠坂凛。貴女がカレイドステッキを件の少女に渡したのが原因ですわ!無様にやられなさい!」

 

「この!こんな時まで……」

 

「いやぁ……しかし、以外でしたね。イリヤ様には興味無いのかと」

 

「………」

 

ルビーにそう言われ、黒鍵を下ろす。

今更ながらイリヤを衛宮士郎に任せていた俺の責任でもある。

嫌…それ以上に俺とセイバーがその時ついていれば問題はなかったのだ。

件の日、俺は何故か体調不良を起こしていた。

理由は判らない、呪いか…それ以外か。

セイバーに看護して貰っていたが、その日だけは動くこともままならなかった。

そうだ、セイバーをイリヤと美遊につけておけば良かったのだと起こってからわかる。

これも所詮私刑、八つ当たりだ。

 

「……クラスカードは後何枚だって…聞くまでもないか」

 

「……良いの?妹でしょ」

 

「どうせ血の繋がりはない、だか……遠坂、ルビー、イリヤを頼むぞ。Mrs.作戦会議だ、美遊、行くぞ。Mrs.はお手を拝借」

 

「よろしくお願いしますわ、Mr.そして美遊、ここからは貴女一人になります。屋敷に戻りますわよ」

 

俺達はエーデルフェルト邸に戻る。イリヤとはすれ違うことはなかったが、問題ないだろう。

 

「シロウ、話はすんだのか」

 

「セイバー、勿論だ」

 

霊体化していたのか、セイバーがエーデルフェルト邸につくなり現れた。

 

「残る英霊は一人、バーサーカーか」

 

「はい、Mr.の言う通りです」

 

今まで現れたのは第5次のサーヴァント。

つまり、残るサーヴァントは奴だけだ。

イリヤのサーヴァントにして、ギリシャの大英雄。殺すなら、俺とセイバーがいればいい。

彼奴に美遊は勝てない、足りないんだ圧倒的に。

キャスターの破戒すべき全ての符でも、ヘラクレスの宝具12の試練は破れない。俺とセイバーならできるが……毎回固くなるからな。

結局、俺が削り切るしかない。

 

「美遊、少し喉が乾いてさ。紅茶を貰えないか?特別に美味しい奴をさ」

 

「え…うん!」

 

美遊の笑顔が眩しい、だからこそ離れてもらう。

 

「ルヴィア、次の戦闘俺を………」

 

 

 

翌日、美遊の空気が変わっていた。イリヤスフィールと何かあったんだろう。

容易に想像できる。

 

「さぁ、覚悟はいいわね。ラストバトル始めるわよ」

 

「…ステッキに見放された戦力外が何を言うか」

 

「セイバー!何よ!私だって好きでなったわけじゃないわよ!てか、アレはもう二度と」

 

「遠坂、集中しろ。美遊、サファイア。飛ばせ」

 

「はい、志戸様」

 

「うん、」

 

今俺は負担を度外視して、黒い俺と親父のカードを夢幻召喚している。

二度と黒い俺だけを使うものか!

あれじゃあただの変態だ!

 

「やっぱりか………バーサーカーだな」

 

「待ちなさいよ、何この壁!」

 

「お兄ちゃん!待って……止めて」

 

「出しませんわ、美遊、遠坂凛。コレはMr.との契約ですので」

 

俺はルヴィアに頼んだ魔術障壁の展開を。

その為に、とある物を投影し手渡した。

 

「それはかのジャンヌ・ダルクが使ったと言われる旗だ。悪いな、セイバー、ルヴィア」

 

「……シロウなりのけじめなのだろう、生きて帰れ、我が鞘」

 

「……美遊を本当に私の妹にすることはなさらないように。Mr.」

 

美遊の泣きそうな顔が見える。この顔も見たことがある。でも、奴は…バーサーカーだけは駄目なんだ。アレは………

 

「大丈夫だ、美遊」

 

「待って…………駄目…………」

 

「行くぞヘラクレス!命の貯蔵は満足か?」

 

「■■■■■■■」

 

ヘラクレスのナインライブズが振るわれるが、俺はソレを干将莫耶で受け止める。

黒化しているがやはりだ、このバーサーカーはあのバーサーカーと謙遜がない!

 

「イリヤを失って……喚くなよ!」

 

干将莫耶が破壊される、直ぐ様俺はゲイ・ボルグを投影する。

 

「まだだ……今、刺し穿つ死棘の槍!」

 

俺の投影したゲイ・ボルグがバーサーカーに刺さる。しかし、命を削るまでには行かなかった。

それどころか、俺の肉体がバーサーカーに掴まれ床に打ち付けられる。

 

「ごぶっ……」

 

「■■■ッ■■■!!!!」

 

ナインライブズが俺に何度も振り下ろされる、熾天覆う七つの円環を投影しているが壊されるのは時間の問題だ。

 

「ちっ…アイツ(アーチャー)はヘラクレスの命を6削ったとかぜってぇ嘘だろ!固有時間制御5倍速」

 

英霊化していることもあり、5倍にも耐えられる。

張り裂けそうだが、今はなんとかなる。

 

「殴り続ける!!!」

 

胸に刺さったままの刺し穿つ死棘の槍にむけ何度も何度も何度もパンチを与える。届かないなら届けるまでだ、貫けないなら貫くまでだ。

 

「オォォォォォォォ!!!!!」

 

「■■ッ■■■■■■ッッ!!!!!」

 

やっとの思いで魂を1削った、反動は全て遠き理想郷でなんとかしているが、眼の前では元気に

 

「……まじかよ、治ったばっかで怒り心ドッ?!」

 

屋上から壁を抜け5階ほど突き抜けた。

バーサーカーに投げられたか、それともか。

 

「あぁっ……クソ………」

 

以外にボロボロだと思ったが、血を吐いただけで済んでいる。

 

「投影開始、『無毀なる湖光』」

「なぁ、バーサーカー。俺って本来さ、剣術苦手なんだぜ!」

 

「■■■ッ!!!!!」

 

アロンダイトとナインライブズが何度も何度も打ち合う。投影してランクは下がったがそれでもアーチャーのやつよりも投影能力は高い。

てか、俺が黒い俺を使うのはアーチャーよりも来い戦闘経験にある。投影なら俺が彼奴等よりも精度は上だ。あと、彼奴だけだ。

固有結界を起源弾の代わりにするなんてやつ。

 

「ったく、甘いよな。」

 

バーサーカーの目の前で固有時間制御を発動しようと

 

「お兄ちゃん!」

 

「なっ!ルヴィア!何をして……はぁ?〘我が神はここにありて〙が折れてる?!何やった」

 

「知らないわよ!私が触ったら急に壊れたのよ!!!」

 

「遠坂家が壊すのは家電だけじゃないのかよ!」

 

美遊の急な参戦に驚きが隠せ無い、それにセイバーは

 

「約束された勝利の剣!!!」

 

「……何だよ、お前等は」

 

「死にそうだったのでな、鞘が無ければな剣は剥き身だ。死なせるものか」

 

「お兄ちゃんハ私が守る……だから……」

 

「すみませんわ、Mr.しかし、コレは私の任務でもあります。旗が折れた以上、構いませんわね?」

 

「衛宮君、背負いすぎって言わなかったかしら」

 

「ふっ…そうだったか、いや……だな。美遊、セイバー、遠坂、ルヴィア」

 

「美遊、これを使え」

 

「セイバーさん?」

 

「私のクラスカードらしい、ふむ……何だシロウ」

 

セイバーの髪がブロンドからシルバーに。

でも違う。シルバーだがうっすらとだが金色に。

そして、青かった装束は漆黒に染まり……

 

「セイバー……綺麗だ」

 

「……ここで話すことか、馬鹿者」

 

「……サファイア、殺ろう」

 

「美遊様?!」

 

「行くぞ」

 

俺は勝利すべき黄金の剣を投影した。まだ、固有結界は見せられない。

 

「勝利すべき黄金の剣!」

 

あぁ、問題ない。

勝てる、それならば

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どれ程良かっただろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 



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イリヤの帰還

「ごぶっ……」

 

「Arrrrrrrrr!!!!」

 

「なっ!ランスロット!!!」

 

俺の肉体を何かが貫いていた。

あり得なかった、その存在が。

居るはずのないサーヴァントなのだから。

 

「Arrrrthurrrrrrr……!!」

 

背中からアロンダイトが抜かれ、俺は吹き飛ばされる。身体の再生が始まるが動けない。

 

「くっ……ランスロット…貴様ぁぁぁあ!!!」

 

セイバーはランスロットと打ち合いを始めた。

狂っていても彼はランスロットだ、その技量は円卓最強と言われたほどだ。

 

「お兄ちゃん!」

 

「美遊、くそ!熾天覆う七つの円環」

 

肉体の再生の方に魔力が行っているのか力が出ない。熾天覆う七つの円環も2枚の花弁があるだけだ。

 

「■■■■■■!!!」

 

もう…やるしかない。出ないと、危なすぎる。

みんなが、みんなの命が危ない。

何故、何故現れた。俺のせいか、俺というこの世界の異物を殺すために、あのランスロットは召喚されたというのか。

 

「Aaaaaaaaa!!」

 

「くっ…ランスロット、だが……貴様に負ける訳にはいかんのだ!ストライク…エア!」

 

セイバーのストライクエアは迫るランスロットに当たった。当たったはずだった。

 

「Arrrthurrrrrr!!」

 

だが……アロンダイトを抜いたランスロットには大したダメージになっていない。

 

「ぐっ……」

 

「ルヴィア!やるわよ!Anfang――!!」

 

「えぇ、遠坂凛!!Zeichen――!!」

 

それは二人の合体魔術

 

「轟風弾八連」「爆炎弾八連」

 

「「炎色の荒嵐」」

 

それは二人の現在の最大火力、だが…それは本来無意味に等しい物。

 

「ナイスだ……

I am the bone of my sword.

ハルペー」

 

不死殺しの鎌、俺はソレをバーサーカーに向かって投げた。回転し、まるでブーメランのように飛翔しながらハルペーはバーサーカーの首を取ったのだ。

 

「……美遊、遠坂、ルヴィア、俺とセイバーを置いて逃げろ」

 

「そんな、衛宮君貴男は」

 

「Mr.それは」

 

「俺が彼奴の魂をできるだけ削る!再戦しろ、コレは……」

 

「駄目!お兄ちゃんは死ぬ、私は絶対に」

 

「……クソ!」

 

俺は3人を押し退けバーサーカーと対峙する。回復も間に合わない……それよりも、俺の左手…何処行った?

駄目だ、左手がいや左腕がない。

 

「美遊……様」

 

意識を失っていたのか、左腕から流れ出る血で水溜りができている。幸い、全て遠き理想郷が何とかしてくれたようだ。左腕があれば後でくっつけよう。

 

「美遊……ここには良い人しかいないだろ?口は悪いけど、遠坂も、ルヴィアも良い人だ」

 

「待って…待って!!!」

 

「こんなとき、こう言うらしい。

………死ぬには良い日だ!」

 

俺は絶世の名剣を投影しバーサーカーの右腕を斬り落とした。サファイアを美遊へと蹴り飛ばしバーサーカーに迫る。

 

「シューーート!!!!」

 

「ぐはっ……」

 

上からレーザーが飛んできた。そして俺はあろうことがランスロットの方に飛ばされる。

 

「シロウ、その腕は……」

 

「まぁ、なんとかなるさ。ボロボロだけど、ってセイバーもか」

 

「……シロウ、行けるな」

 

「勿論だ」

 

俺は絶世の名剣をランスロットに投げる。

勿論、掴むよな。

 

「壊れた幻想」

 

「シロウ、えげつないな」

 

壊れた幻想を受けたランスロットの右腕が消えた。あとは殺すだけだ。

 

「セイバー、令呪を持ってめいずる。宝具を開放せよ」

 

「形だけか?」

 

「懐かしいだろ?」

 

「ふっ……良いだろう約束された勝利の剣!!」

 

蹲るランスロットに向けて約束された勝利の剣が放たれた。黒い閃光が全てを飲み込み、残るのは灰だけだ。

 

「……しかし、左腕の変わりを探さんとな」

 

「冗談にしては笑えんな、シロウ」

 

「そうかい」

 

―――

「イ……イリヤ………どうしてここに」

 

居ないはずのイリヤが私の前に現れた。何かとても良くない事が起こった気がするけど、今は気にしちゃ駄目だ。

 

「……ルビー、今志戸お兄ちゃん居なかった?」

 

「……あ~あ、イリヤさん前科付きますね、コレは」

 

「どうしよう!!!って!美遊大丈夫?!!って違う!こんなことを言いたいんじゃない!

わたし―馬鹿だった。何の覚悟もないまま、ただ言われるがままに戦って、美夢、志戸お兄ちゃんだけじゃない。凛さんとルヴィアさんにも迷惑をかけた」

 

イリヤは泣きそうだけど、話を続けている。

何故か、バーサーカーもイリヤを見るなり攻撃をやめた。

 

「戦ってて、何処か他人事だった。こんなの現実じゃないって。ウソなんだって……」

「でも……、そんなウソみたいな力が自分にもあって、あんな事になって…全部が怖くなって……」

「でも…それでも、友達を見捨てられない。私、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンが前に進むのに、友達を見捨てるなんて出来ないから!」  

 

「□□□□□□□ッ!!!!」

 

バーサーカーが咆哮を上げた、でも…心なしか今までと違う気がする。

 

「美遊、終わらせよう。二人で」

(そして、前に進むために)

 

ルビーとサファイアが共鳴していた。そして、セイバーのクラスカードが並列限定展開される。

 

―――――

私は見た、この世界のお嬢様を。

いくら世界が違おうと私は消して見間違えない。

何故かあの小僧も居るようだ、なら今の私は必要ないだろう。

私が傷付けていたあの少女を助ける為、現れたのお嬢様。

ならば、私がすることは決まっている。

お嬢様の階段になることだ、ここのお嬢様はまだ幼い、だが掛け替えのない物を今掴もうとしておられる。

 

「□□□□!!!!!」

 

お嬢様、私は貴方のサーヴァントで良かった。

私は貴女に倒されて満足です。

お嬢様を守れず、お嬢様の期待に答えることも出来なかった私をお許しください。

 

「そんなことないわよ」

 

(お嬢様)

 

「ねぇ、バーサーカー!遊びましょ、一緒に」

 

(……お嬢様)

 

「この世界の私は幼いのね、シロウ」

 

「……何故俺まで呼んだ。姉さん」

 

「むっ…やっちゃえ、バーサー」

 

「待て!左腕無いしバーサーカーにボロボロに負けたばっかだ!やめてください!」

 

「はぁ……待ったくー。バーサーカー、バーサーカーは私のサーヴァントよ!だから……一緒に居てくれるわよね」

 

(お嬢様)

 

私は歓喜の涙を流す、お嬢様はお嬢様であられた。

 

「バーサーカー、シロウ、一緒に見ましょ。まるで、万華鏡みたいね」

 

「……kaleidoscope、なら俺の仕事は」

 

「護りなさい、私にはバーサーカーが居るもの」

 

(お嬢様、お供します)

 

小僧は私とお嬢様を見ることなく、背中を向けた。お嬢様は微笑んでいた、だがわかる。

小僧も、お嬢様も、悲しんでいると。

 

「バーサーカー、行きましょう」

 

光に飲まれた私は、お嬢様を肩に載せて光を進んだ。

 

「来たか!ヘラクレス!!!」

 

とりあえずお嬢様と離れ離れにされたのに腹がたった私はイアソンの顔を殴った。

手伝いはしてやろう、だがまだ殴らせろ。

 




ここのヘラクレスはこのあとオケアノスに行きました。
イリヤやシトナイ化している予定です。


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プリズマイリヤ2wei!
2wei!スタートする


クラスカード集めが終わり、志戸とルヴィアの契約も終わった。
遠坂凛には衛宮志戸から大量の現金が渡され、ホクホク顔で時計塔に帰るはずだった。
のだが、結局爺の言葉により愉冬木から空港に向かうヘリが墜落。
変わらず二人は冬木市で生活する事になった。
そして…衛宮士郎改め衛宮志戸は自身を別側面、アルターエゴと受け入れ、前前世の趣味であった歌というか、完璧に趣味に生きていた。


「涙が溢れるのは 君が傍で微笑むから」

 

「抱きしめたくなるのは 君が傍にいるから」

 

クラスカード集めが終わった俺は、まぁ…何と言うか遠坂にも言われたし色々と楽しんで生きようと思う。セイバーいやアルトリアも養うし、雇われ代行者も続けるけど……こう、前前世の趣味に飛び付くのも良いかもと思ったんだ。

 

「何故に生まれて来たかなんて」

 

…これが地味に成功した、地味にじゃない成功だ。プロデューサーはいないけど、少なくとも学園にファンはできたと思う。

とりあえず、士郎を巻き込んで衛宮二人で歌ってる。偶に慎二も巻き込む。一成も巻き込む、歌が下手とか関係ない。心から歌える為に色々巻き込んだ。

 

「お兄ちゃん!!志戸お兄ちゃん!!」

 

「お兄ちゃん!!!お兄さん!!」

 

可愛い妹達も応援してくれている。

俺は士郎とアイコンタクトする。もうすぐ終幕だ。

 

「同じ時代に

今、出会えた仲間たちよ」

 

「「我等思う故に、我等あり」」

 

「新しい歴史に

漕ぎ出せ仲間たちよ」

 

「「我等思う故に、我等あり」」

 

「人生は誰も皆一度きりさ」

 

「「思いのままに」」

 

拍手喝采、今日は小さなリサイタル。

始まりは一成に音楽室借りたのが始まりで彼処から体育館に変わるのは速かったな。

何故か動画に挙げられて学園のPRに使われたのは笑った。勿論、俺と士郎は顔を隠してる。

まぁ、今日は音楽室で歌ってるだけだけど。

 

「……ふぅ、志戸。いい歌だな」

 

「あぁ…まぁな」

 

この世界じゃ、作詞作曲俺となるが申し訳ないな。本当にさ。

 

「そう言えば、志戸変わったよな。前は取っ付きにくい性格してたのにさ」

 

「はっちゃけたかな?人生楽しんだ者勝ちだ。士郎、お前は」

 

「これから一成の手伝いがあるんだよ。イリヤ達を頼むよ」

 

「…ブラウニーか」

 

士郎との関係も少なからずマシになったと思う。

せめて、このブラウニーの性格を治したいがそう上手く行かないんだな、これが。

 

「じゃあな、イリヤ」

 

「志戸お兄ちゃんは入らないの?」

 

「いや何……ちょっと、セラとリズと話すのが怖くてな。美遊、行くぞ。セイバーいや、アルトリアが腹を空かせてる。最速のメールが来た」

 

「あはは……アルトリアさん」

 

俺と美遊はすぐに家に帰った。

 

「シロウ!帰ったか!!」

 

「あぁ、ただいま。アルトリア」

 

「買い物はしてあるぞ、今日は趣味の日だったのだろう。私も聴きたいが……まぁいい。パスタを頼む!」

 

「わかった、美遊はアルトリアと……いや宿題が先だな」

 

「はい、お兄ちゃん」

 

「アルトリア、手伝ってくれないか?」

 

「良いぞ、シロウ」

 

夕飯は簡単に作り終わった。

アルトリアが積極的に手伝ってくれるからだ。

 

「しどーーー!ご飯頂戴!!!」

 

「来たな藤ねぇ!!こんなことも有ろうかと余分に作ってあるぞ!」

 

「流石志戸だぜ!切嗣さんにお世話頼まれたけど一人前なのは流石だぜ!!」

 

桜達は居ないがここは変わらない、俺の心のオアシスだ。

 

「そうだ藤村先生、次の授業の」

 

「美遊ちゃん!?予習なんてしなくていいわよ!今は志戸の作った料理を沢山食べるのが先よ!!」

 

ナポリタンとかぼちゃポタージュスープ、そしてシーザーサラダ。

落ち着いた料理を美味しく食べてくれる彼女達の笑顔は料理人として嬉しい物だ。

 

「そうだ、志戸は夏休み予定あるの?」

 

「あぁ、そうだな……美遊を海に連れていきたい。勿論、アルトリアもだけど……藤ねぇも来るか?俺以外にもあれ…監督役が欲しくてさ、何時も見れる訳じゃないし」

 

「良いじゃない!付いてくてか連れてけ!」

 

変わらない、ただ美遊が泣きそうだった。

泣かないでほしい、泣き顔は見たくないんだ。

 

「しっかし、美遊ちゃんが志戸の妹だなんて」

 

「義理だけどな」

 

「えぇ、この歳で婚約者と義理の妹を持つとは」

 

「ゲホッゲホッ」

 

待て、今アルトリアはなんて…、

 

「そうよねぇ……でも不純異性交遊は許さないわよ!」

 

「……その時は落とします」

 

待て、美遊の目からハイライトが消えたぞ。

アルトリア、なんてことを言ってくれたんだ。

てか、婚約者って何だよ!

そんな話聞いたことないぞ。

 

(……設定だそうです、いえ…キスしてますし恋人に違いはないのでは)

 

(サファイア、俺を殺したいのか!)

 

翌日、というか昨日の事は話したくない。

兎に角だ、俺は普通に生活していたんだが美遊とイリヤが誘拐された。仕方なしに何時もの死装束に着替、イリヤの魔力を追う。

 

「遠坂にルヴィアか………面倒な事をしてくれる」

 

地脈を治しに来たか?だが…ここでそんな

 

「ぶっ…!」

 

二人が

 

「「底無し沼だーーー!!!!」」

 

なんて叫んでる、やめろ……俺を笑い死にさせるな。

面白い物を見れた後、巫山戯てるのか地礼針を指した。ここって大空洞だよな、かつてアレがあった。そんな所に………

案の定逆流した、だがイリヤがアーチャーのクラスカードを使って守ったようだ。

 

「………どうしたらこうなる」

 

イリヤスフィール・フォン・アインツベルンが分身していた。

 

「……また学校は休みか。これは……退学だな」

 

俺は発煙筒を投げ込み、イリヤを回収した。

 

「……アルトリア、」

 

「シロウ、ソレは……」

 

「……イリヤスフィールだ」

 

「……どういう意味だ」

 

「……聖杯戦争かな、アルトリア。悪いな、裁定者になってくれ。家は閉める、当分はイリヤの家に。金はこのアタッシュケースに入ってる」

 

「待てシロウ、話は!」

 

俺は『顔のない王』を2つ投影し、冬木の街に隠れた。

 

「…起きないのか」

 

「わかるの」

 

「少なくとも、お前が衛宮切嗣に見つかれば殺される。奴は、家族を天秤にかける」

 

奴は魔術の世界で産まれたイリヤスフィールよりも、自分の娘イリヤを取るだろう。

俺の親父だ、それぐらい理解できる。

 

「……お兄ちゃんは」

 

「……憎いか?俺が」

 

「…………いいえ、守ってくれたから」

 

イリヤスフィールは俺の義手を静かに撫でた。

人口筋肉と俺の腕から移植した魔術回路を繋げた完全なる義手。とある人形師に作って貰った貴重品だ。

 

「……イリヤは憎いか」

 

「………殺したい、私から私を奪ったから」

 

「なら、先に魔力だな」

 

俺はイリヤスフィールの肩に触れ、自身の魔力を渡した。左腕の一件から俺の魔力は無尽蔵になった。どうやら死に近付ける程、俺は根源との接続が深くなるようで今は魔力だけなら根源から供給出来る。

 

「……ありがとう、お兄ちゃん」

 

「……イリヤスフィール、コレは聖杯戦争だ。俺がお前を守るか、それとも別の解決が出来るのな。別の解決が出来るなら俺はソレを信じるが……お前が死ぬなら俺は世界だろうが敵にしてやる」

 

「……それはイリヤの事も」

 

「さぁな、どうせ衛宮切嗣が守るさ。だが、美遊、セイバー、カレ……何でここで彼奴の名前が出てくる?!」

 

「お兄ちゃんも大変ね」

 

 

翌日、俺は泣きたくなった。

 

「うんうん…お揃いだよ!お兄ちゃん!!」

 

「何故、俺が彼奴と同じ服装にならねば………」

 

イリヤスフィールのせいで俺の服装がアーチャーと同じになっていた。背丈も足に投影したブーツで地味に近い。

 

「うんうん!白より赤だよ!」

 

「後、お兄ちゃんの事はアーチャーって呼ぶから。宜しくね、アーチャー!」

 

「…ふっ……良いだろう。私のマスターとして、頑張れイリヤスフィール」

 

「……うん、お兄ちゃん!」

 

その目は確かに彼女だった、俺の姉。

救えなかった、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンと。

 

「でも……ごめんなさい」

 

〘助けてくれてありがとう、でも私一人でやります〙

 

「あの…バカが!」

 

俺はどうやら眠らされたようだ、やらかしてくれたな。まったく……

 

「マスター…負けた挙げ句裸にされるとは……見苦しいぞ」

 

「なっ!貴方は」

 

「サーヴァントアーチャー、安心しろ。私が貴様等と争う事はない」

 

「ほぉ……サーヴァントが来たとは………しかもアーチャーか」

 

不味い……そうだったな、居てもおかしくないよな。

 

「反転したセイバーか…どうした。衛宮士郎が居ないようだが」

 

「貴様に聞けば良いだけだ!」

 

「投影開始!マスター!やることはやれ!此方はセイバーを抑える!」

 

「うん!お願い、アーチャー!!」

 

干将莫耶とセイバーの約束された勝利の剣がぶつかる。不味いのは剣撃を響かせているから段々と人が来てもおかしくない。

 

「っていうか!その顔で、裸で街に出るなァァァ!!!」

 

「なっ!マスター!!!!」

 

俺は今セイバーよりも、イリヤスフィールのほうが心配だ。流石に裸は不味い。

 

「逃がすものか、アーチャー!」

 

「ええぃ……壊れた幻想、投影開始『顔のない王』」

 

 

壊れた幻想の爆発で視界は遮られたその隙に『顔のない王』で撤退する。

 

「お兄ちゃん」

 

「目立な、はあ……アーチャーじゃなくて衛宮士郎いや、衛宮志戸として聞くぞ。迷ってるな、自分はイリヤスフィールだと理解しつつも、完璧に殺す意思はまだ固まっていない。そうだろ、教えてやる。お前のクラスカードの元になったクソ野郎は少なくとも2km先から狙撃できる」

 

「…やっぱり、お兄ちゃんはそうなのね。家の中で誰よりも英霊に詳しいし、誰よりも取捨選択ができてる。なら、なんで私に」

 

「……周りがイリヤにつくなら、イリヤスフィールに一人ぐらい居ても良いだろ。お前がゆっくり休んで泣ける相手がな」

 

イリヤスフィールを膝に載せ、頭を撫でてやる。

セーフハウスだが、必要最低限の物しかない。

食事も缶詰だ。

 

「……悪いな、美遊が家にいる都合上、武家屋敷は使えない。一つ心当たりがあるが、個人的に行きたくない」

 

「お兄ちゃん、お兄ちゃんは聖杯戦争をしたことあるの?」

 

「……だな、お前ならか。第2魔法並行世界の運営。俺は並行世界の衛宮士郎さ、アルトリアいやセイバーのマスターだった。詳しいことは省くが、イリヤスフィールがどんな存在かも理解してる。第3魔法、俺は今更完成させたくない。本当ならお前を今すぐ俺の伝手で生きるための肉体を与えられる女の所に連れていきたい」

 

「……嬉しいけど、駄目。私はイリヤを殺すわ。だから、アーチャー。私を護りなさい」

 

「わかった、マスター」

 

俺はもう何も言うまい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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イリヤスフィール命名

「……巫山戯ているのか」

 

「助けてアーチャーさん?!」

 

「……いや、私のマスターが君の敵なのにどうして助ける理由がある。しょうがない、麻婆食べるか?」

 

「この状況で何考えてるの馬鹿!」

 

俺はイリヤに泰山で売っていた麻婆を食べさせようとしている。

勿論、甘口だ。でないと死ぬから。

カレンと言峰なら……いや、食べるシーンなんて見たくない。

 

「……ふむ、あからさまな罠なのだが…どうする。マスター」

 

「うん、取り敢えず殺しましょう!アーチャー!!」

 

「……すまない、私は選択を間違えた」

 

「えぇ…お前の事だ、イリヤスフィールを心配にソチラにつくことは理解できた。それ以上に、私の鞘が入っていることを忘れたか。シロウ」

 

「…アルトリア」 

 

「コスプレか、忌々しいアーチャー等……前回は許したが今回は許さん」

 

「ちっ…投影開始」

 

俺は赤い外套を脱ぎ捨て、白い死装束を纏う。

 

「…行くぞセイバー!魔力の貯蔵は十分か!」

 

「こい、シロウ!」

 

射殺す百頭を投影し、セイバーの約束された勝利の剣と打ち合う。あたりが衝撃波で倒れるが、今はセイバーを抑えることが重要だ。

 

「イリヤスフィール!選べ、イリヤを殺すか、どうするか、俺はセイバーを抑える!他は所詮雑兵だ!お前ならできる!」

 

「シロウ!イリヤを殺すつもりか!」

 

「なら、イリヤスフィールはどうなる!切嗣はあの娘を殺すぞ!」

 

約束された勝利の剣を防ぎながらセイバーを説得するために何度も話しかけた。

 

「お前なら判るだろう!衛宮切嗣は正義の味方だ!何処まで行ってもソレが変わることはない!君が一番…よく知っているだろう!!」

 

「だが…この世界のキリツグはシロウ、お前の事も愛している!ならば」

 

「……はぁ!!!!」

 

「くっ…強い…何故ここまでの力が……シロウ!」

 

「根源接続者なら、出来るんだよ。セイバー!!」

 

「くっ…シロウ!!いい加減にしろ!何を急いでいる!!」

 

「姉さんだ!守れなかった!それが…今眼の前にいた!!なら、今度こそ守りたい…そう思っても良いだろう!!」

 

「シロウ!!!死んだんだ!イリヤスフィールはギルガメッシュに殺された!!お前が…お前が最後を看取ったのだろうに!」

 

セイバーの剣撃が鋭く、素早くなっていく。

 

「お前は…ただあの黒いイリヤにイリヤスフィールを重ねているだけだ!それに…守れなかったのは私も同じだ!」

 

「!」

 

「約束された勝利の剣!!!」

 

「熾天覆う七つの円環!!」

 

セイバーの約束された勝利の剣を受けた俺は、満身創痍だ。あの日、セイバーと出会った時と同じように。

 

「…シロウ、もういい。………今は休め」

 

「……セイ……バー」

 

――――

「さて…尋問しましょうか、と言いたい所だけど黒いイリヤの前に尋問しなきゃいけない相手が居るのよね」

 

「……何も話さんさ。その子の正体もな」

 

「衛宮君、あなたに拒否権はないわよ。自分の妹を殺そうとする存在に協力するなんて」

 

「どうかしてるか?なら、ヒントをやるさ。イリヤスフィールは嘘をついていない」

 

「どういう意味よ」

 

「そういう意味だ」

 

「Mr.それでは理解できません、何か」

 

「…お兄ちゃん、教えて。この子は誰」

 

俺はイリヤスフィールとアイコンタクトを取る。

 

「……イリヤスフィールだ」

 

「だからそれは私」

 

「イリヤ、わかった。お兄ちゃんの言葉の意味が」

 

「え?美遊どういうこと?」

 

「お兄ちゃん、美遊にヒントあげすぎよ」

 

確かに、そうだと思うがまだ無理なはずだ。

 

「……ごめんなさい、まだ話せない。ごめんなさい、イリヤ」

 

美遊は完全に気がついている、いや…まだ完全ではないか。

 

「……フィール」

 

「お兄ちゃん?」

 

「フィール?なにそれ」

 

「俺はもう話さん。それ以上は雇われ代行者と殺し合うつもりで来いよ」

 

俺が本気で殺気を放つと遠坂もルヴィアも何も言わなくなる。だが、遠坂はニヤついてイリヤに注射を……

 

「な!遠坂、なんて物を」

 

「流石の衛宮君も理解してるのね。コレは一方的な痛覚共有」

 

「しかも…主の死すら伝えるものだ。お前、それがどんな相手に……くそ、今はそうだったな」

 

目の前で行われた悲劇に俺は何も言えない。  

 

「えぇ、これで安全よ。アナタがイリヤを殺せばアナタも死ぬ。でも、イリヤがアナタを殺してもイリヤは死なない」

 

「…クソッ……」

 

「お兄ちゃん…本物なの」

 

「本物だ、俺も昔使ってたからな。殺す魔術師を使い捨てにするときにだ。くそ……厄介すぎるぞ」

 

「…流石代行者、えげつないわね」

 

「目の前で家族にやられる方が胸糞悪いけどな」

 

まぁ、イリヤとイリヤスフィールの殺し合いは起こらないだろう。

 

「それに……黒いイリヤに効果的なのは人質よね」

 

「……は?」

 

「……ってことで当分の間衛宮君はルヴィアの使用人となります」

 

「……何故ですか、Mr.の姿が似合いすぎて」

 

「魔術師の暗殺も行った、一通りのマナーもマスターしている。安心しろ、外で俺がいや…私が衛宮だとバレることはない」

 

「……お兄ちゃん!!!!」

 

「美遊、同僚か。イリヤスフィール、好きにしろ、私は当分使用人の身だ。だが……問題あるまい」

 

そうだ、ルヴィアの使用人を務めるのも二度目。

今更なことなのだから。

イリヤスフィールが士郎に迫ったそうだ。

そしてイリヤが……フフ…これが愉悦?

いや、駄目だ。あの親子に毒されたらまずい。

――――――

 

「志戸お兄ちゃん!どういうこと!あの黒いのが」

 

「やはり出たか…安心しろ。私はイリヤスフィールの部屋に近づく事はできない。もし近づけば……私の右腕は爆発四散し金輪際義手生活だ。まったく、この前は左腕で今度は右腕が危機に瀕するか……笑えん」

 

俺の顔を見たんだろう、二人は何も言わなくなる。

 

「でも…今日、学校にクロが現れたんです。イリヤの従兄弟を名乗って来週転校してくるとまで」

 

「あっ…あと私の友達に片っ端からチューを」

 

「はぁ…やれやれ、地下は完璧でしたわ。それこそ、Mr.が助け出さない限り。しかし、Mr.はずっとオーギュストの下で動いて居ました。地下に行く時間はありませんことよ」

 

そしてなんやかんやあってイリヤスフィール改めてクロエが俺の妹となり、学校に入学することになった。身分証?ルヴィア、俺、オーギュストさんが偽造した。

美遊の時と同じだ。

だが……ここで不味いことが起こる。

俺の家系図だ。

 

父衛宮切嗣 

母アイリスフィール・フォン・アインツベルン

弟衛宮士郎

妹イリヤスフィール・フォン・アインツベルン

妹クロエ・フォン・アインツベルン

妹美遊・エーデルフェルト

 

クロエと美遊を妹とした事で親父からつながる所でおかしなこととなる。

まぁ、何かあれば俺が手を出すだけだ。

―――

「はい、エーデルフェルト邸に何か御用で」

 

「え?志戸?」

 

「………志戸?誰でしょうか、私の名はアーチャー。このエーデルフェルト邸にて使用人見習いを務めさせて頂いています」

 

士郎は俺の存在に驚いているが納得したようだ。

だが、やはりセラとリズか。

 

「それで…風呂を借りに来たと」

 

「うん、お風呂壊れた」

 

「……城を使えば良いだろうって…そうか、手入れしてないのか」

 

「……やはり志戸、貴方は魔術を」

 

「少なくとも小学生の頃からだ。むしろ、気付かなかったのか?夏休み教会で過ごしていた時点で怪しまれていたと感じたが」

 

「……礼拝の知識や聖書に詳しくなっていたので純粋に」

 

「夏休みでイギリスに行く時点気付け、元アインツベルンだろうに」

 

「シド、やっぱり詳しい」

 

「…親父からその内聞かされるさ。母さんも知ってるから、まぁ……兎に角だ。俺は魔術師じゃなくて雇われ代行者。でなきゃリズのハルバートを防げないだろ」

 

「………固有結界持ってるのに」

 

「やめろ、声で出すな。封印指定されたら時計塔滅ぼすぞ」

 

「別にいい。それよりも……戻る気は?」

 

「今更か…俺が居なくとも士郎が居るだろうに。まったく」

 

俺はそれだで会話を切る。それ以上話すことがない、話す理由もないからだ。

いい加減、姿を消すべきかもしれない。

アルトリアと旅に出るもの良いかもしれない。

美遊は……どうするか。

 

「………一人、全裸か。風邪を引くぞクロエ」

 

「……ねぇ、お兄ちゃん。元の世界って…何?

元の生活って」

 

「……イリヤに言われたか。いくぞ、クロエ」

 

「お兄ちゃん……は?」

 

「今更右腕も惜しくない、ほら手を取れよ」

 

投影した干将莫耶で自分の右腕を斬り落とす。

勿論、スーツやシャツは畳んであるし血も魔術で止めてある。

 

「……なんでそこまで」

 

「妹がだからな、お前は」

 

投影で義手を作る。蒼崎の所に行かなければ行かなくなったが、仕方ない。

 

「……今日はキャンプだな」

 

「ここって」

 

「良いだろ?海も見えるし、街の光もない。

テント張るぞ、手伝ってくれ」

 

「うん」

 

虫除けスプレーを散布して、ランタンを焚く。

他にも虫除けライトもきちんとつける。

 

「ねぇ、お兄ちゃんは……」

 

「クロエ、今は考えるな。星を見てみろ、無限に広がる星空ってのをさ」

 

「…綺麗」

 

「どうだ、イリヤから見るんじゃない。自分の目で見て、感じるのは。ほら、ココア出来たぞ」

 

「ありがとう……お兄ちゃん」

 

「あぁ…良かったよ」

 

俺はテントで静かに眠るクロエを撫でる。

 

「……アイリスフィール・フォン・アインツベルン。お前はクロエをどうする、もし受け入れないなら、俺が守る」

 

その日夢を見た、俺の…悪の敵としての始まりを。

 

「僕は、正義の味方になりたかったんだ」

 

「なれるよ!父さんなら!諦めないでよ!僕も…そうだな………父さんが正義の味方だから悪の敵!格好いいでしょ!」

 

「あぁ、そうだね。士郎……昔、僕が話したことを覚えてるかい」

 

「魔法使いって話?」

 

「あぁ、士郎。僕は君を魔法使いにする、そして……士郎に頼みたいんだ。士郎、君の姉を助けてあげてくれ、間に合わない…僕の代わりに」

 

太陽が登っている、クロエはまだ寝息を立てていた。

 

「…守ってやる、3人とも……俺の妹だから」

 

家族も守る、愛する人も守る。

その為なら、この身体は惜しくない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




あれ?
おかしいな、何か書いててオリぬシロウが正義の味方とは違うベクトルで壊れ始めたぞ。
いや、前々から壊れては居たけど……両腕義手だし……Oh


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家族とは

「……こうして、海を眺めて思うんだ。異物が入り込んだ世界で、俺は一体何をしてるんだってな」

 

「……私を呼んだのはクロエだと思ってた」

 

「……クロエなら寝ているさ、今回は俺が眠らせた」

 

膝の上で寝ているクロエを美遊に見せる。

 

「座るといい、座椅子だけど…立って話すより良いだろ?」

 

美遊は警戒せず座る。

 

「…美遊、例えば家族でも警戒は怠るなよ」

 

「お兄ちゃんが私達を裏切る事はないから」

 

美遊はその目を俺に向けてくる。撫でたいが、今動いたらクロエが起きてしまう。

 

「昔…冬木市にて7人のサーヴァントと7人の魔術師による聖杯戦争が行われた。それは聖杯という願望器を出現させる為の儀式でもあった。だが…それは熾烈を極めた。結末は民間人すら巻き込む大災害へと発展した。それは…一人の魔術師がある願いの為に犠牲を行ったから生まれた」

 

「その…魔術師って」

 

「魔術師殺し衛宮切嗣。美遊、クロエいやイリヤが一体何なのか理解できているな」

 

「……私と同じ聖杯」

 

「そうだ、正確には小聖杯だが……詳しく話すのは後の機会だ。小聖杯を偶然化させるにはサーヴァントを倒し、大聖杯に焚べなければいけない」

 

「大聖杯?」

 

「ソレも後で教える。兎に角だ、小聖杯を具現化させるにあたり、一つ犠牲を強いる事になる。当時の聖杯、アイリスフィール・フォン・アインツベルンは結果死んだ」

 

「なんで」

 

「簡単だ、人間じゃないからだよ。人間と同じように食べ、排泄し、子をなす。だが、本当の正体は小聖杯の外装。小聖杯を具現するにあたり、段々と外装は剥がれていく」

 

「まって……なら、イリヤも」

 

「そうだ、イリヤは衛宮切嗣と小聖杯の外装との間に生まれた小聖杯の外装。だが……この世界では衛宮切嗣とアイリスフィール・フォン・アインツベルンがその機能を封じ込めたようだ」

 

「……なら、何故クロエが」

 

「……コレは予想だがカレイドステッキのせいだ。サファイア、聞かせろ。転身だったか?その時、魔術回路はどうなる?例えばだ、使い続けて命の危機に瀕して、封印が解ける。という事もあり得るんじゃ無いか?」

 

「……恐らくはありえます。イリヤ様はアサシンに襲撃を受けた際にそれが発現し」

 

「……この前一件でより活性化した。教えてやる、彼処は大聖杯と呼ばれる物があった。ヨリにもよってそこを選んだせいだ。地脈の力と聖杯の外装としてのイリヤが共鳴した。だから……クロエが出たと予想する」

 

「まって……クロエはアーチャーのクラスカードが」

 

「そう、完全な肉体じゃないのさ。キスしたらしいが……それは魔力供給の一環だ。キスなのはクロエの小悪魔な性格からだろうな。面白いさ、士郎には積極的なのに俺に対しては…美遊お前と同じように接してくる。キスも強請らず、ただ俺に優しさを求めている。……なぁ、美遊」

 

「お兄ちゃん……」

 

「………志戸様、地雷を踏み抜きましたね」

 

「………なんでさ」

 

俺は転身した美遊の魔力砲を食らった。

 

「えっ!ちょっと!何これ!」

 

「……お兄ちゃん、許さない。クロエにばっかり………」

 

「待て!美遊!」

 

「ちょっと!美遊何してるの!」

 

「どいて……お兄ちゃんを一回躾ける」

 

「俺は犬じゃない!」

 

「シロウ……探したぞ、ふふ……まさか………私から逃げられるとでも?」

 

「アルトリアさん?!」

 

「美遊、協力しろ。シロウを捕まえるぞ」

 

「うん、アルトリアさん!」

 

「待て待て待て!俺は今回悪いことは」

 

「右腕、切り落したな」

 

「……」

 

「「私達が…どれだけ心配したと思っている!」」

 

「「約束された勝利の剣!!」」

 

「待てよ二人と」

 

もう…許してよ。

俺はクロエ、美遊、アルトリアに膝枕している。

こうしないと許されないからだ。

 

「むっ…流石だなシロウ。よく鍛えられている」

 

「うん…でも、良い感じ」

 

「わかる…お兄ちゃん、気持ちいいよ」

 

痛い、激しく痛い。お前たちが休む下で俺の足は剣山のような小石で固められた草の上だ。

 

「ねぇ…クロエはどうしてイリヤを殺そうと」

 

「……」

 

「クロエ、嫌なら俺が言うか?」

 

「……話すわよ。イリヤが私達を否定したから。イリヤは元の生活、魔術を知らない生活に戻りたいって言ったの。それは美遊やお兄ちゃんとの関係もない。あれだけ助けられて…あれだけ友達だと思ってた美遊も否定されて」

 

「……クロエ、それは違うぞ。イリヤは」

 

「違わないわよ、セイバー。イリヤは逃げたいの!この世界から、自分が普通でいられた日常に!

それで消えた存在の事なんて」

 

クロエが飛び出し、干将莫耶を投影している。

 

「………クロエ、お前が私に勝てると思っているのか」

 

「勝つ、セイバーにも、美遊にも…そしてイリヤを殺して偽りの日常も終わらせる」

 

セイバーが黒い鎧と約束された勝利の剣を出した。完全に戦うつもりだ。

 

「クロエ、貴方もイリヤ。なら、私の友達、友達が間違えたなら……私が止める」

 

「美遊まで」

 

「……今回、俺はアーチャーのサーヴァントなんでね。最後までクロエのサーヴァントだ」

 

「お兄ちゃん……いえ…行くよ、アーチャー」

 

「あぁ…だが、少々違うな。アーチャー、アサシン、夢幻召喚。クロエ、これがクラスカードの本当の使い方だ」

 

黒と赤の兵士となり共に戦闘開始のアイズを鳴らした。

 

「セイバー!夢幻召喚!!」「征くぞ!美遊!!」

 

「「投影開始」」

 

セイバーと美遊が迫る、俺はセイバーに対し干将莫耶を投げる。

 

「殺すつもりはない…だが気絶はしてもらう!壊れた幻想!!」

 

「その程度!」

 

「くっ…対魔力か」

 

干将莫耶を再び投影するが素の筋力が違いすぎる。今の俺はどう頑張ってもB程度だろう、セイバーは素でBだが…どう考えてもAはあるぞ。

 

「くっ…ならば!」

 

「その程度!!」

 

「未来でも見えているのか!!」

 

ブーメランのようにした干将莫耶が見ていないのに弾かれる。何の冗談だ、コレは!

 

「ちっ……ならば」

 

銃剣の干将莫耶を投影し、射撃戦に移行する。

 

「お兄ちゃん!ちょっとお願い!!」

 

「くっ!美遊までもが!!」

 

「お兄ちゃんはイリヤがどうなっても」

 

「俺が消えたらクロエは一人だ!美遊、お前ならそれが理解できるはずだ!」

 

「だが、それでも止める!セイバーさん!」

 

「良くやった!

『卑王鉄槌』、旭光は反転する。光を呑め・・・!約束された勝利の剣!!」

 

「舐めるな…投影の精度なら俺は彼奴よりも上だ!熾天覆う七つの円環!!」

 

「美遊!お前もだ!!」

 

「はい!約束された勝利の剣!!」

 

熾天覆う七つの円環の割られる速度が上がる。

なら、もっと投影するだけだ。

 

「…何だと」

 

「不味いです!セイバー様!確実にやばい所から」

 

「見える、俺の可能性、アカシックレコード疑似接続完了」

 

「くっ…魔力が」

 

「クロエ!時間は稼いだぞ!!」

 

「……投影開始、偽・偽・螺旋剣」

 

「なっ……」

 

俺の胴体を刃が貫いている、そうか……クロエ。

 

「…ごめんなさい……ごめんなさい………ごめんなさい」

 

「それが……選択か?」

 

「………なら、俺はおう…えん…す…る」

 

「お兄……ちゃん」

 

―――――

 

「……シロウ何をしている!鞘があるだろう、その程度なら」

 

「セイバー、無理よ。心臓を貫いたんだもの。今回はどう足掻いても……ね」

 

私はお兄ちゃんを殺した、もう…戻れない。

でも、セイバーはもう…良い。

セイバーを無力化するならお兄ちゃんを無力化すればいい。

まさか………成功するとは思わなかったけど。

 

「くっ!」

 

「許さない……なんで……なんでお兄ちゃんを殺した!!お兄ちゃんは最後まで貴女の…クロエの味方だったのに!」

 

「何?形だけ、どうせお兄ちゃんも私を」

 

心にもない、たった数日だけどお兄ちゃんは心から心配してくれたし、愛してくれた。

だから、私は決めた。死ぬって。

 

「きなよ…美遊、貴女もお兄ちゃんの所に送ってあげる!!」

 

美遊なら私を殺せる、美遊も線引が出来ているから。私とイリヤは別物、お兄ちゃんは私も救ってくれるだろう。でも、それに甘えたら私は……駄目になる。私はイリヤスフィール、小聖杯の外装。

 

「投影開始!!」

 

「真名解放!」

 

「止めて!」

 

私と美遊の前に私〔イリヤ〕が現れた。

だから憎い、なんで来た。

このまま行けば私は死ねたのに。

 

「二人共止めて!戦わないで!」

 

「イリヤ!止めないで…クロエはお兄ちゃんを殺した!ここで…トドメを刺す!」

 

「勝手すぎわよ、今更来たところでもう貴女にできる事なんてアリはしないの!

それに……『元の生活に戻りたい』のでしょう?良かったじゃない、ここで私を殺して、お兄ちゃんも死んだ。ほら、後は美遊も、ルヴィアも、凛も捨て去れば元の生活よ!」

「目を閉じて、耳を塞いで塞ぎ込んで、自室に閉じ籠もってなさいよ!それが…貴女の望みでしょ!」

 

「私はお兄ちゃんの敵を討つ!イリヤ!邪魔は」

 

「嘘つきだよ」

 

「……だって、クロエは私、そんなのもうわかってる!なら、出来ないもん。私は、お兄ちゃんを殺せない。クロエもそうでしょ!志戸お兄ちゃんに大切にされてて、殺せるはずがない!それに……なんでそんなに悲しそうなの」

 

「!」

 

「ねぇ…もう、止めよう。一緒に暮らそうよ。私は、もう決めた。迷わないって、逃げないってだから」

 

「……なんで、なんで、今なのよ。もう…遅いのよ。お兄ちゃんも刺しちゃった……もう、止められない。止まっちゃいけないの!」

 

私は全ての魔力を使って二人を

 

「……勝手に殺すなよ」

 

「お兄ちゃん!」

 

「……そんな……生きて」

 

「言ったでしょ、私はお兄ちゃん達を殺せない。

志戸お兄ちゃんは口が悪いけど、何時も見ていていくれた。迷子になったらすぐに見つけ出してくれた。お兄ちゃんは何時も優しい、そんな……そんな……大切な人達を私が殺せるはずがないもの」

 

「あぁ、俺は生きていぐぶ」

 

「「お兄ちゃん!!」」「志戸お兄ちゃん!?」

「シロウ!!!!」

 

―――

「ごめんなさい、まさか………ピンポイントで当たるとは思わなくて」

 

「いや…母さん……クソ痛い」

 

「セイバーもごめんなさい。家族の事に巻き込んで」

 

「いや…アイリスフィール。私もシロウとは家族だ。問題ない」

 

「あらあら……」

 

俺は今、武家屋敷の地藏に担ぎ込まれた。

 

「流石ね忠犬、全治5ヶ月の怪我が私の手当で全治1ヶ月に縮み、身体のソレでもうすぐ完治よ。久しぶりに良い怪我人が見れたわ」

 

「……なぁ、カレン。お前、記憶あるだろ」

 

「さぁ」

 

「もう、カレンちゃんも志戸が好きならキスぐらいしちゃいさないよ!」

 

「…フフ」

 

「……なんでさ」

 

結論から言えば全部母さんが終わらせたらしい。

クロエは衛宮家で生活することになった。

セラとリズはなんとなく察しているのだろう。

イリヤについては全て話したようだ。

 

「それでね、シドにごめんなさいを言いたい娘がいるの」

 

「クロエ、入るんだ」

 

生気が無いように見える、いや泣いているんだろう。俺は身体を起こしクロエの頭を撫でる。

 

「寝てねきゃ」

 

「………生きていてくれて、ありがとう」

 

それは俺が親父にかけられた言葉。

でも、ここで言うべきだと思ったんだ。

 

「さぁ、夕食を作ろ」

 

起き上がろうとするが身体が動かなかった。

 

「血が足りないんだ、シロウ。無理するな。美遊が作ってくれている」

 

「……お兄ちゃん、ごめんなさい、ごめんなさい」

 

「……笑うんだ、俺は家族が笑顔でいて欲しいから」

 

無理矢理俺も笑顔を作る、クロエもそれに応じて笑ってくれた。

 

「あら、私の前では疲れ切った顔、私の身体を求めてきたのに」

 

「カレンさぁ、覚えてるよな!てかそれ、何時のだ!使徒にけしかけたときか!アトラス院を爆破しろのときか!」

 

「……どうだったかしら」

 

「駄目だ……勝てねぇ」

 

「……お兄ちゃん?」「シロウ、何故私には」

 

「……あらあら、志戸。火遊びは駄目よ」

 

死んどけば良かったよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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家庭内ランキング

「……巫山戯ているのか」

 

俺が大聖杯の探索をしていると電話がかかってきた。訳の判らない内容だが、衛宮家に来てほしいというのだ。

此方は暇じゃないと何度も言ったが相手は士郎だ。これが魔術を知っていればよかったのだが、何分民間人すぎる。

 

「くそ…」

 

俺は大聖杯を解体という話に不信感を得た。

あの男がそれを許すはずがない。

奴は召喚されていたはずだ、それを何もしないで消えるというのはあり得ない。

今俺は『唯一つ忘れられない絆の剣』よりも強力かつ、あの存在を殺すための宝具何度も投影しようとしていた。

その為にも大聖杯の残滓が必要だったのだが、

 

「仕方ない、かりだぞ」

 

衛宮家にアルトリアを連れて行く。

勿論バイクだ、運転はアルトリア。

 

「なっ、シド!アルトリアさんまで」

 

「これから出掛けるんでな、それで?話って何だ」

 

「あっ!お兄ちゃん!」

 

「クロエか、良い子にしてるな」

 

「…あっ、アルトリア」

 

「……えぇ、クロエ」

 

俺とアルトリアは前の事なんて水に流した。

もういいから、俺と二人でクロエの頭を撫でる。

 

「やっぱり、お兄ちゃんとアルトリアはお似合いだよ。誰よりも」

 

「ありがとう、クロエ」「…当たり前だ」

 

イリヤ、士郎、セラ、リズ、母さんまで見たことのないような顔を俺に向けている。

 

「何だ、間抜け顔を晒して。士郎、その顔を退けろ。打つぞ」

 

「怖いぞ、てか…志戸もそんな優しい顔をするんだなって」

 

「……そうか」

 

俺とアルトリアはソファに座る。その間にクロエがちょこんと座る。

 

(クロ……志戸お兄ちゃんの前だと猫被ってる)

 

俺もアルトリアもそんなクロエに甘くしてしまう。美遊は中々そういうことはしない。

甘えて来るのも俺一人に対してだ。

だからか、クロエが妹ではなく娘のように感じられてしまうんだ。

 

「…モードレッドよりも良い子だ」

 

「……(モードレッドは泣いていい)」

 

まぁ、セイバーからしたら裏切り者だし………はぁ。

 

「ソレで、話を聞聞かせてもらおうか」

 

「うん!志戸お兄ちゃん!!」

 

「イリヤ待って」

 

クロエに対してニタニタと笑うイリヤ。クロエはただイリヤを睨むだけだ。

 

「……クロエ」

 

「はい!」

 

「それは、自己満足なのかな。それとも、お前なりの信頼の証かな」

 

――――

私の前でお兄ちゃんがしゃがんでいる。

シロウお兄ちゃんと違って、真に私を理解してくれているお兄ちゃん。私とお兄ちゃんは兄妹、大切な人。でも、イリヤを誂いたかった。

それに…お兄ちゃんに会いたかった。

だから、シロウお兄ちゃんに近づいたし、イリヤに悪戯もする。

でも……

 

「……残念だ、クロエ」

 

失望された?幻滅された?嫌だ……お兄ちゃんに捨てられたくない。

 

「お兄ちゃん……違う、違うのだから……」

 

「……クロエ、これからはしないな」

 

「……うん………ごめんなさい」

 

「……実際どうだ、こっちは。嫌なら、俺とセイバーと住むか?」

 

「……いい、ママも、イリヤも、シロウお兄ちゃん、セラさんとリズさんも居るから。だから……だから……私は寂しくないよ」

 

「そうか…でも、士郎には謝れ。人として、ソレは必要だぞ」

 

お兄ちゃんの言葉は棘がある。

優しくて、鋭くて、だから良い。

お兄ちゃんが真の優しさを向ける相手は家族だけだから。

 

 

――――

 

「それで……上下関係か」

 

 

①アイリ

―神の壁―

②キリツグ

―親の壁―

③イリヤ

―お嬢様の壁に―

④セラ・リズ・シド

―メイドの壁・兄の壁―

⑤シロウ

 

 

「妥当だな」

 

「は?」

 

「アインツベルン家当主に婿入りしたんだよ、親父はな。だから必然的に立場は低くなる。そして、実子であるイリヤがその立場になるのは確実だ」

 

「あら、一番反発しそうなシドから良いお返事が」

 

「だが……何故俺も入る?俺は」

 

「だって……シドも私の子供だから。貴方が私達をどの様に思っているか、自分自身をどう思って居るかは知っているわ。でも……貴方は私の子供の衛宮志戸なの」

 

年甲斐もなく抱き着かれ、頭を撫でられる。

俺が今まで心の底から母と呼んだのはキャスターだけだった。

 

「……止めてくれ、母さん。俺は子供じゃない」

 

「……えぇ、そうね」

 

「?待てよなら、何で俺は」

 

「シロウだから」

 

「何でさ!」

 

リズに反論する士郎、俺はそれをどんな目で見れば良いのか判らない。

正直、この家族とももうすぐ別れることになる。

卒業さえすれば、俺はセイバーと旅に出るつもりだ。……カレンに捕まってたまるか。

兎に角、付いてくるなら美遊とクロエを連れて行くのもいいかもしれない。

世界を巡って、あの二人に知らない世界を見せてやるのも。

 

「なら、クロは勿論ここよね!」

 

―兄の壁その2―

クロ

 

 

それにクロエが反発した。

小猫どうしの喧嘩に発展し、二人を俺は捕まえた。

 

「二人共、喧嘩は止めろ」

 

「でも、お兄ちゃん!」

 

「クロはそうやって志戸お兄ちゃんに」

 

「アルトリア、ゴメンな予定変更だ。泰山に行こう」

 

その時、イリヤとクロエの顔が死んだ。

 

「言峰から泰山のクーポンを貰っていたのを思い出した。イリヤ、クロエ、外食と行こうか」

 

二人揃って首を横に振る姿は笑いを誘う。

カレンのせいで食べれる様になってしまった麻婆。

 

「シロウ……アレを食べるのか」

 

「勿論、アレだ」

 

思い出すのは吐き気を催す程の熱を放射する赤い何か。

 

「喧嘩、するなら泰山だぞ?」

 

「「私達、仲良しだよ!お兄ちゃん!!」」

 

泰山、不味くはないんだ。

………死ぬほど辛いだけなんだ。

 

――――

 

「……学校行くのやめるか?この際、いっそ」

 

俺は憂鬱だった、今更やり直す学問。

どうせ満点が続き、実につまらない。

馬鹿騒ぎは楽しいがそれだけだ、他は……まぁな。

 

「……金は自分で払ってるし、このまま消えても……はぁ」

 

「………会いたくねぇ」

 

それは来るに当たり、下駄箱に入っていた一枚の紙切れ。

 

 

忠犬

放課後、保健室に来なさい

 

 

何を言われるかわかったものじゃない。

たが、アイツには確かめなければいけない。

俺と同じなのか、それとも別か。

それだけでも………

 

「来たぞ、カレン」

 

「……そう、来たのね。忠犬」

 

「………」

 

カレンは普段とは違い白衣を着ている。

いや、見慣れているとは言えないが保険教諭の為、何度か顔は合わせている。

だが、シスターのイメージの為か似合わない。

 

「忠犬、警告よ。近いうちにバゼット・フラガ・マクレミッツが来る。理由は」

 

「……どうでもいい。俺の家族を壊すなら殺すだけだ」

 

「シロウ、やめなさい。貴方が死ぬわよ」

 

普段とは違い、慈愛に満ちた声だ。

それこそ、前に聞いていた声でもある。

 

「……覚えているのか」

 

「……えぇ、トオサカとマトウの顔は今でも忘れられないわ」

 

その言葉とはカレンの結婚報告の時の事だろう。

二人から逃げ回り、教会に行き着いた俺を拾ったカレンは俺を落とした。

あの時はボロボロで藁にも縋りたい思いだった。

妖美なる悪魔に追われ、堕落しかけ、時計塔の屑どもは命を狙ってくる。

そんな時にであったカレンが天使に見えた。

まぁ……人生の墓場に向かったが。

 

「別にあの二人に子供がいるのは良いわ、でも……忠犬、貴方を独占し……フフ」

 

けして邪な考えではない、いやある意味邪である。カレンは俺の追いかける二人を嘲笑うのが面白かったのだろう。

俺が二人と何度か会っていても何も言わなかった。その代わり、二人に攻撃することが増したが。

 

「……それで……俺にはアルトリアが居る。お前に靡く事はないぞ」

 

「……えぇ、でも元妻としての警告」

 

「聞き入れるかは俺次第か」

 

俺は何も言わず保健室から出る。

 

「生き居れば治しては上げるわよ?貴方は上客だから」

 

「……死なない」

 

「……そう」

 

カレンは何も言わなかった。保健室から出ようした俺をマグダラの聖骸布が包む。

 

「………なっ」

 

「おまじないよ……らしくないわね」

 

抱き締められ、そんな言葉を言われる。

その後、カレンは何も喋らなかった。

 

 

 

 

 



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封印指定執行者対雇われ代行者

イリヤだけでない、衛宮家の日常はクロエという新たな家族共に始まった。
楽しい日常、それがこの2ヶ月続いた。
だが、その中に衛宮志戸はいなかった。
アルトリアすら所在がしれない。
最後に会話したのカレンすら志戸の所在地は分からなかった。だが、とある執行者の到来と共に雇われ代行者は帰還する。


「……志戸お兄ちゃん何処いったんだろうね」

 

衛宮志戸が消息を経って2ヶ月。

家には置き手紙として

 

〘多分生きてるはずの神秘にあってくる。

最悪死ぬけどアルトリアは後追いするなよ。

美遊はアルトリアの食事を。口座の方に1000万入れたから無駄遣いするなよ。

あと、食事バランスを考えろよ。

アルトリアはジャンクフードはかり食べるなよ。

クロエが来たらプリンレシピ通りのプリンを食べさせてやってくれあと………〙

 

と約30枚に及ぶ要望とその他諸々か記載された書き置きがあり、セラとリズはこれほど思うなら消えなければ良いのにと考えていた。

クロエは色々と書かれていたことでイリヤに弄られ、美遊とアルトリアは少なくない傷を負った。

そして現在、衛宮志戸はと言うと

 

「ちぃ…投影開始!!」

 

「まだまだだな」

 

「くそ……アンタと殺し合いをしたい訳じゃないんだがな!!」

 

「なに…お前を見ているとセタンタを思い出す!!」

 

俺はバゼット・フラガ・マクレミッツの到来に備えアイルランドに飛んだ。

 

「なに…私に弟子入りしようと言うのだ。しかも、一ヶ月でクー・フーリンと生身でやり会えるほどにしてくれとは」

 

「だから殺し合いか……確かにな」

 

俺は戦い続けた、鈍った感を取り戻し、鋭い1本の剣になるために。

 

――――

 

 

「ルーン魔術は何とかか……」

 

「帰るのか」

 

「……力は得た。殺してもらうのはクー・フーリンに頼みな」

 

俺は成長した。たった一ヶ月で身長は190cmとなり、体重は110kgに増えていた。

無駄な脂肪は完全に消え、髪は赤から白髪に変わった。コレは前と変わらず投影魔術の使い過ぎだろうか。それともストレスか。

肉体はよりマッシブになり、自分自身が驚いている。

 

「戻るか」

 

俺は祖国、日本の冬木に戻った。取り敢えず、挨拶をすべきだと思い衛宮家に向かった。美遊が何時も居るわけではない。恐らくセイバーの世話をしてくれたはずだ。

 

「はい、当家に何…用で……しょうか」

 

特におかしな服装はしていない。

白色の神父服を着ているだけだ。

 

「………聖堂教会が何用で」

 

「セラ、何を勘違いしている?俺は志戸だ」

 

「………は?」

 

俺の前でセラがフリーズした。

 

「アルトリアの世話を焼いてくれたと思ったが違ったのか、まぁ良い。クロエとイリヤは居るか」

 

「いやいやいや……志戸!この2ヶ月で何が!!!」

 

「セラ…うるさ………誰?」

 

「そんなに変わったか確かに身長は20cm伸び、体重も60kgほど増えたが」

 

「志戸!貴方のそれは別人です!!」

 

「……セラ、リズ何が……は?」

 

「士郎か、確かにチビだな。……フッ」

 

何故か笑いたくなった。

 

「お前志戸かよ!何があった!!!」

 

「なに…鍛え直した、この2ヶ月俺は地獄を見て更に進化した!どうだ、この背筋、胸筋、肉体美!」

 

「いや、すげぇけど………なんでさ!!!」

 

「お兄ちゃん………うるさい……誰?」

 

「イリヤは寝坊助……誰?」

 

イリヤとクロエに誰かと聞かれた。

クロエには解ってもらえると思ったが……

 

「衛宮切嗣の弟だ。甥と姪に会いに来た」

 

「その俺も信じそうになる嘘止めろ志戸!」

 

「うそ!志戸お兄ちゃんなの?!」

 

「お兄ちゃん……イメチェン?」

 

「いや……アイルランドの光の御子の師に会った。鍛えてくれたよ、ルーン魔術も学んできたさ」

 

士郎はキョトンとしていたがクロエとセラは目を丸くしている。

 

「じゃあな、アルトリアに帰還したと伝えなくては」

 

ここに居ないなら家だと目星をつけ、急いで帰る。

 

「アルトリア!帰ったよ!!」

 

アルトリアの気配がない、それよりもドス黒い何かが……

 

「……まじかぁ」

 

俺の部屋から不穏な気配がある、それこそ怨念が集まったような物を。

 

「……アルトリア?」

 

戸を開けて入ると案の定、アルトリアがエクスカリバーする体勢でいた。

 

「ごめんって」

 

「何処に行っていた」

 

「ケルトの影の国」

 

「何のために」

 

「鍛え直すため」

 

「私じゃ駄目なのか!シロウ!!」

 

セイバーは俺の胴に抱きつき、上目遣いで見てくる。

 

「駄目じゃないけど、ケルトの影の国は世界で唯一神話の神秘が残る地だ。鍛え直すには十分すぎる場所で、」

 

「なら、何故私を置いていった」

 

「いや……アルトリアはパスポート無いし」

 

「作れば良かったろう!」

 

「それはそうだけど」

 

アルトリアは拗ねていた、俺に置いていかれたのがよほどショックだったのだと思う。コレは当分は拗ねたままだな。

 

「ごめん」

 

「謝るぐらいなら私を置いていくな」

 

 

翌日、家から呼び出しを受けた俺は衛宮家にアルトリアと共に赴いた。濃密な魔力だ。あの女が近くにいるのか?

 

「何用で?」

 

「うん、あの」

 

「お兄ちゃん、お小遣い下さい!」

 

「クロエ?!」

 

アルトリアは呆れているが俺はすぐに答えを出す。

 

「何億欲しい」

 

「待って!?」

 

「イリヤさん?!お兄様ってブルジョアジーですか?!」

 

「ごめんなさい、イリヤ。私も流石に予想外」

 

「20億ドルまでならなんとかなる、それ以上は」

 

「なんとかしないで!てか、ドル?!」

 

「ん?知らなかったか、俺は月500万程家に渡している。母さんと親父には秘密だがセラに無理やりな。この頃通帳を新しく作ったせいで隠し場所がどうとか言ってたが」

 

「何でそんなにあるの?!」

 

「株と代行者業、傭兵業、この3点だ。これだけあれば簡単に稼げるぞ」

 

「あ……思い出しましたね。イリヤ様。お兄様は教会の雇われ代行者として人外や外道魔術師を尽く殺してきた一流の殺し屋です。報酬も一流ながら仕事も一流 」

 

「志戸お兄ちゃん、怖い」

 

「そう?お兄ちゃんは私達に優しいじゃない」

 

「お前はシロウの身体すら貫いたものな」

 

「セイバーさん、それは言わないで………」

 

クロエの顔がすぐに暗くなる。

まだ引きずっているのか。

 

「兎に角、お小遣いだな。まともな話ならお前達、今度武家屋敷に来い。通帳もだぞ、300万やろう」

 

「お兄様、それ子供が持つべき金額じゃないてすよ」

 

「安心しろ、何故か株で失敗したことが無くてな。この頃スイスや世界各地に口座を開いた所だ」

 

「……うそ」

 

「………取り敢えず今5万ある。お前達、分けて使え」

 

「え?志戸お兄ちゃん」

 

いい加減にすべきか、流石に美遊の恩人を見捨てるわけにはいかない。

 

「セイバー……イリヤとクロエを捕まえろ」

 

 

「なっ!」「お兄ちゃん?!」

 

家から出て、エーデルフェルト邸に入る。

案の定、壁は崩れルヴィアもボロボロだった。

 

「おやおやコレは、ダメットさんじゃあないか?どうした、封印指定されたお馬鹿さんがこんな所に」

 

「…その喋り方、立ち振る舞い……コトミネですか!」

 

「………妹の仕事場を、そして恩人に手を出した。命の覚悟はできているんだろう?雑魚」

 

「……えぇ、此方の台詞ですよ。コトミネ!!」

 

バゼットの拳と俺の拳がぶつかる。

奴が剛の拳だとすれば、俺は柔の拳。

受け流し、胴体に蹴りを入れる。

 

「ちっ…受け身を取られたか」

 

「流石の代行者ですね、私の一撃をいなしてみるとは」

 

「……力はお前」

 

「技は貴方」

 

「「速さは……同じ!!」」

 

俺は奴の宝具を展開させる前に殺さないと行けない。出なけりゃ、決定打を放つ必要がある。

 

「流石ですね、シロウくん」

 

「ちっ……ダメットさんじゃない……バゼットさん……相変わらずの腕力だよ!!」

 

俺は黒鍵を投影し、装備する。投擲し、その瞬間同時に迫る。

 

「無駄!」

 

バゼットは己の拳で黒鍵を破壊しようとする。だが…

 

「壊れた幻想!!」

 

そう、黒鍵はいわばDランク宝具レベルの魔力塊だ。流石のバゼットもダメージを受けたのか蹌踉めいている。

 

「はぁ!」

 

「舐めるな!」

 

心臓に80km/hを越える高速の拳が入る。

 

「ゴブッ……やってくれる」

 

口から大量の血を吐くが、バゼットも目の前で大量の血を履いていた。

 

「ゲボッ……手数はそちらが上か」

 

「しかし……今更聞くぞ。何故破壊した」

 

「クラスカードの回収の為」

 

「………そうか、まぁ。殺すことに変わりないが」

 

「騎英の手綱❨ベルレフォーン❩!!!」

 

ソレは恐れていた事だった。俺とバゼットが共に一息付いた瞬間を狙ったソレに、バゼットは笑っていた。

 

「ヨセエェェミユゥゥゥゥゥ!!!」

 

斬り抉る戦神の剣(フラガラック)が飛んでいく。今ここでぶつかれば美遊は倒れるだろう。

 

「……熾天覆う七つの円環!!!」

 

熾天覆う七つの円環の展開すら無かった事にされ、俺の身体に迫る剣。

 

「……くそっ……が……」

 

腹部を貫通したフラガラックは美遊に届く事はない、だが、俺がもう戦えない。

 

「……戦友の好です。殺しはしません」

 

バゼットの言葉に怒りを覚える、憎しみも、全てを超越させる。

 

「お兄ちゃん!!」「美遊!!」

 

イリヤとクロエが来た。俺は宝具を再び投影する。

 

「無駄です、それ以上は死ぬ気ですか!」

 

「………」

 

干将莫耶を投影する。

 

「イリヤ……クロエ、セイバーをどうしたか不明だが……美遊を連れて行け。良いな」

 

「待って、お兄ちゃんは」 

 

「俺は……ここでこいつを道連れだ」

 

それは俺の切り札。俺が必ず勝てるフィールド。

 

「『I am the bone of my sword

 

(体は剣でできている)

 

Steel is my body,and fire is my blood.

 

(血潮は鉄で心は硝子)

 

Standing on many corpses 

 

(いくつもの屍の上に立ち)

 

Imprisoned for eternity

 

(悠久に囚われる)

 

Still I seek meanin in my life

 

(それでも我は生涯に意味を求める)

 

That’s my why this body

 

(だからこそ、この体は)

 

”Infinited sword works”

 

(無限の剣でできていた)』!!!」

 

 

「……固有………結界」

 

「さぁ……バゼット・フラガ・マクレミッツ。お前も、ここにある骸の一つのなる時間だ」

 

俺は嗤う、戸惑い俺に拳を構えるバゼットを見ながら。

 

「さぁ………狩りの始まりだ」

 

俺の声は自分でもわかるほど冷たく、そして愉快だった。

 

 

 



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固有結界【無限の剣製】Infinited sword works

それは本来の衛宮士郎の持つ固有結界ではない。

同じ、無限の剣製の名を持つが、本来のソレよりも禍々しく、そして、無慈悲な物だった。

 

「はぁ!」

 

「どうした、バゼット」「まだ、骸はあるぞ」

 

根源と繋がった俺にとって、この固有結界はまさに扉をだ。今、俺は根源という蛇口から魔力という水を最大で出している状況だ。

 

「どうした、まだまだ行けるぞ」

 

「……くっ…」

 

この中で、俺の傷は意味をなさない。

この世界で、この俺は無数にある骸の一つ。

 

「どうした、バゼット」

 

「……何故、何故ここまで!普通の人間なら恐怖する!それなのに、何故だ!心臓も、頭も、それこそ恐ろしい殺し方を与えている!なのに……何故一切恐怖がない!」

 

「………わからないのか?」

 

バゼットはわかっていないようだった。

恐怖なんて、感情なんてあるはずない。

 

「バゼット、お前は、何を攻撃しているんだ?」

 

「何を……か…………」

 

バゼットの前にあるのは同僚の死体である。

打撲痕により頭が陥没し、無惨に殺された。

 

「……くっ、幻術など、私には」

 

「………馬鹿だなぁ、なら……面白い予行をしてやるさ」

 

あたりの風景が変わる。

 

「今からアンタを殺すわけだが」

 

「――え?」

 

それはバゼット・フラガ・マクレミッツの記憶であり、記憶でない。目の前にいたシロウは消え、

知らないはずの男が立っている。

朱き魔槍を持った青い槍兵、バゼット・フラガ・マクレミッツは知らない。知らないはずだった。

 

だが、言葉を紡いてしまう。

 

「――待って、―――待って下さい。私は――私は貴方と戦う理由が――

貴方だって…私と戦う理由は!」

 

それは本来の自分ならありえない程、弱々しい声だった。涙が出そうになる、胸が締め付けられる。苦しさが止まらない。知らない…いや、知っている。

 

彼の……名は

 

「クー……フーリン」

 

「あるだろ、アンタは聖杯戦争に勝つためにここに来た。サーヴァントを全て倒すまで戦いは終わらない。アンタは今、俺と殺し合う為にここに居る」

 

違う、貴男は……貴男はクー・フーリン貴男は…私の。そう、言葉を紡ぎたかった。だが、記憶に急に靄がかかるように、紡ぐはずの言葉が消えていく。

 

「――ちが―――わた…私は貴男とは戦わない」

 

弱々しい言葉が口から出てくる。

始めに構えた拳が震えていく。

 

「そうだ、貴男とは戦わない。貴男とは戦わない、貴男とは戦わない……!」

 

「だって、だって――貴男は私のこと――知って…る……?」

 

バゼットは少しずつ近づいていく、槍兵に手を取ってもらうため、もう一度呼んでもらう為。

 

「知らねぇよ、アンタみたいな負け犬に覚えはない」

 

それは拒絶だった、バゼットの心は既に壊れようとしている。

 

「違う!知らない!こんなの……私は!」

 

「だめだろ……バゼット、まだ見ていなくちゃ」

 

「シロウ!止めろ!!もう……止めろ!!!」

 

バゼットの拳が虚空をきる。見たくない、止めて欲しい、嫌だ。普段なら絶対に感じない感情が溢れ、反らしたい視線が引き込まれる。

 

「―――――では、貴男は私の敵か」

 

「そうだ、この“四枝の浅瀬”、ルーン使いなら意味が分かろうよ」

 

そう、バゼットは知っている。理解している。

 

「……その陣を布いた戦士に敗北は許されず。

その陣を見た戦士に退却は許されない。

―――我等赤枝の騎士に伝わる一騎打ちの大禁戎だ」

 

バゼットに逃げるという考えはない。

バゼットには奥の手がある。

 

「その心臓」

 

「後より出でて先に断つもの(アンサラー)」

 

「貰い受ける!ゲイ…ボルク!」 

「斬り抉る戦神の剣」

 

バゼットは斬り抉る戦神の剣を展開した。

時間を操るその魔剣、どんな相手も先に死んでしまえば意味がない。バゼットは勝利を確信していた。

 

「――――え」

 

肉をさき、心臓を破裂させた何かを見る。

 

「ぁ―――――この、槍」

 

戦神の剣が時間を操るのなら、クー・フーリンの魔槍は因果逆転の魔槍。

ゲイボルクは真名を開放した瞬間、心臓に命中しているという結果を持つのだ。

 

「コレは……返すぜ」

 

それは鉱石の耳飾りだった。知っている、自分が持っている。否、自分が渡した物だから。

槍が抜かれ、倒れた身体で消えていく槍兵を見続ける。

 

「待って……待って……私も………持っている……の……待って………ラン……サー」

 

それは誰の記憶か、ただバゼットが苦しみが増す。嘔吐が止まらない、自分の記憶であるのに自分の記憶でない。

 

「終わりだ、バゼット」

 

「違う……貴方は違う!」

 

呪いの朱槍を持った神官がいる。

違うと、理解している。彼ではないと、だが…

バゼットの拳が震え続ける。

顔も、背丈も、違う筈なのに、纏う気配が同一だった。

 

「その心臓……貰い受ける」

「後より出でて先に断つもの(アンサラー)

 

「刺し穿つ死棘の槍(ゲイ…ボルク)!!!」

「斬り抉る戦神の剣(フラガラック)!!!!!」

 

それは二人の運命を終わらせたのだ。

 

固有結界が消えていく、フラガラックが刺さった男が子供に抱きつかれる。

何か話しているようだ。でも……

 

「……」

 

身体から呪いの朱槍が引き抜かれる。

 

「………」

 

「……」

 

目の前の存在にバゼットは涙を流す、

 

「まっ……て」

 

「………」

 

 

この日、バゼット・フラガ・マクレミッツの時は止まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

訳ではない

 

「……何故、私を」

 

「………アンタが死んだら、話し合いができないだろうが」

 

フラガラックによって胸に巨大な傷跡ができた男が呪いの朱槍を持ちながら話しかけてくる。

 

「俺の勝ちだ、バゼット。アンタは敗者だ。話だけでも、聞いてもらうぜ?」

 

男は朱槍をバゼットに向けて言い放った。

 

 

 

 

 

―――――

一方でバゼットに勝利した俺は美遊、クロエ、イリヤに抱きつかれていた。

因みにここでバゼットを生かしたトリックを

話そう。

まず、俺は投影したゲイボルクを一度破壊したのだ。刃がかけるだけで投影した品は消える。

ソレを利用し柄を壊し即座に投影し直した。

それで、真名開放はリセットされると共にフラガラックを回避した。フラガラックが効果を得るのは最初に投影したゲイボルクであり、二回目に投影したゲイボルクはその範疇ではない。

 

受けた代償は大き過ぎるがまぁ、問題はない。

 

「お兄ちゃん……死んじゃうと」

 

「あぁ、美遊多分あと20分もしたら出血多量で死ぬ」

 

「お兄ちゃん!全然大丈夫じゃない!!!」

 

「クロエか、正直目眩もし始めてる。イリヤがいたな、俺は最後にバゼットに話しかけるからその後多分死ぬ、死なせたくないならセイバー連れてこい」

 

そして、バゼットに話しかけ俺はゲイボルクを抱えたまま意識を失った。

目覚めた時、俺は冬木の言峰教会の中でアルトリアとカレンに治療を受けていた。

 

「忠犬、今回は一段と酷い。やりがいがある仕事だったわ」

 

「悪いな、一流の治療師がいるなら多少の無理が効くからな」

 

「シロウのソレは多少どころじゃない、良いな。それは蛮勇だ」

 

「蛮勇でも、勝てるなら勝つさ。それに……今回はバゼットを生かす必要があった。まぁ……結局行き着く先は同じだろうけどな」

 

「はぁ…忠犬、笑い事ではないわ」

 

そう、笑い事ではない。心臓の付近を狙われ過ぎたのだ。この身体はもうすぐ死ぬ。

 

「カレン…アルトリア、手伝って欲しい」

 

「……良いわ」

 

「………何をする気だ」

 

「『I am the bone of my sword

 

(体は剣でできている)

 

Steel is my body,and fire is my blood.

 

(血潮は鉄で心は硝子)

 

Standing on many corpses 

 

(いくつもの屍の上に立ち)

 

Imprisoned for eternity

 

(悠久に囚われる)

 

Still I seek meanin in my life

 

(それでも我は生涯に意味を求める)

 

That’s my why this body

 

(だからこそ、この体は)

 

”Infinited sword works”

 

(無限の剣でできていた)』」

 

固有結界を発動させ、根源と繋がる。

 

「偽・聖杯(フェイク・フィール)」

 

「聖杯を……何をする気だ!シロウ!!」

 

「この身体はアヴァロンと高い親和性を持っている。だが…アヴァロンでも今の身体は治せない。なら、聖杯を使う。贋作でも聖杯は聖杯だ。

願望器であるコレは願いを叶える事はできる筈がない。でも、宝具である全て遠き理想郷なら、この贋作聖杯で強化できる……筈だ」

 

「…何を馬鹿な!」

 

「それに……コレは根源の魔力で物質化させた物だ。これがあれば俺は何時でも完璧な状態で根源から魔力供給ができる」

 

「良いでしょう、忠犬。渡しなさい」

 

「カレン!貴女は」

 

「なら、見殺しにするか?」

 

「……く」

 

カレンが麻酔を打ち、俺の心臓が開かれる。

痛みはないが、意識がある。

 

「…………」

 

その日、俺は贋作聖杯の外装となった。

 




………あれ?シロウ、何でこうなった?あら?

まじで、これシロウだけ救いない。
四股の打ちたしか、3つが義手、義足で、身体中に傷が合って、影の国で投影使い過ぎて白髪になり、フラガラックで2度貫かれて、贋作聖杯埋め込んで……

作者はシロウが傷付く事で愉悦を得ているのか?
この私が………



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海と新たなカードと

夏休みが始まる、それはかつての約束を果たすための休日と最後の戦いの始まりだった。
衛宮志戸はセイバーと共に新たな力を得るために動く。


夏休みが始まった。

それは子供に取って素晴らしい時間の始まりだ。

美遊との約束もある俺はまず、皆で海に行くことになった。そう、皆でだ。

 

「何故、親父達まで居るのかねぇ………魔術師殺しはおやすみかい?」

 

「なんだい、志戸。殺気立って」

 

「……シド、子供が見ているぞ」

 

飄々とする衛宮切嗣とその隣で腕を組んでいる母さん。

 

「そうだぞ、志戸!2ヶ月どっか行って帰ってきたら別人レベル!私も驚くぞこらぁ!」

 

「藤ねぇは静かにしてくれよ!」

 

そう、皆だ。

 

「シド、新鮮」「リズ、おやめなさい」

 

「志戸の奴、反抗期か?」

 

「衛宮、よせ。志戸が激しい剣幕で此方を見ている」

 

もうやだよ、金だけ出してバックレたかったか。

取り敢えず、海につくまでにイリヤ、クロエ、美遊の同級生が車に轢かれる事件が起きた。

ついうっかり、指を鳴らしてしまったが運転手は土下座して謝ってきた。

 

「………失せろ、ゴミが」

 

「ヒィ………」

 

何故か有り金全部置いていった為、轢かれた子供に渡しておいた。

 

「……イリヤのお兄ちゃん、怖いね」

 

「うん、優しいんだよ。優しいんだよ、本当なら」

 

そこからは泳いだりした。と言っても、遊ぶのは子供組で基本的に俺達は何もしない。

 

「……志戸、その髪は」

 

「親父か、投影魔術の使い過ぎさ。流石に影の国で生き残るのに無理したからな」

 

「セイバーから聞いていたが……よく死なずに」

 

「……このまま時間があればゲイボルク貰えたかもな。でも、スカサハ仕込のルーン魔術ならできるぜ?」

 

俺はそばに座る親父に笑う、考えたら俺はこっちに来てからマトモに親父と話たことはなかったな。

 

「志戸、君は」 

 

「……親父が言った言葉だ。生きていてくれてありがとう」

 

あの災害を引き起こした、親父だからこそ出た言葉だ。

 

「……イリヤの為にボロボロの身体で何度も、何度も、アインツベルンに向かって、その度に寿命を擦り減らして………俺はアンタを救えなかった。正義の味方にはならない、でも悪の敵になっちまった。結局、呪いを受け継いじまった」

 

「………士郎、悩んで良いんだ。僕は………君の世界の僕はアイリも犠牲にして、結局、できなかった。士郎、君に受け継がせてしまった」

 

親父の言葉で涙が出てきてしまう、聞きたくない。

 

「……固有結界の話を聞いた。アレは」

 

「そうさ……俺が殺し続けた奴等の死体だ!根源と繋がってから色々と変わったがな……本来は俺が俺が自分の罪を忘れない為だった。でも……もう駄目だ、殺すことに慣れちまった。俺は」

 

「………そうか、でも、イリヤ、クロエ、それに皆を士郎、君は殺せるかい」 

 

 

家族を、大切なものを、俺は……

 

「もう、タイガ!シロウも何か言ってよ!!」

 

「イリヤちゃん!だからこっちに……士郎!」

 

「士郎、お腹が空きました」

 

「衛宮くん、ちょっと」

 

「先輩、お話が……」

 

「忠犬、来なさい」

 

思い出す懐かしい記憶、

 

「……殺せる………訳ない」

 

そうだ、殺せない。家族だ……家族なのに

 

「なら、壊れてないさ。士郎、昔の僕は妻も、娘も、全てを犠牲にするつもりだったんだ。君の方が、よっぽど人間さ」

 

それ以上、言葉が出なかった。

何も話せなかった。

 

「行こうか、志戸。もうすぐ昼食だ」

 

いつの間にか志戸に戻っていた。

 

「あぁ……親父」

 

距離は……俺の中で少しずつ、近づいてる。

そう、思いたい。そして、海の家についたのだが

 

「誕生日会?そうか……イリヤ、クロエ、美遊は今日が誕生日だったか」

 

「うん、お兄ちゃん」「……うん」

 

俺の方に来た二人の頭を撫でる、そうか……美遊は今まで。そして、クロエはイリヤの中から。

 

「……ごめんな、気付けなくて」

 

「いや…お兄ちゃん?!」

 

「………美遊も、本当ならもっと速く………」

 

「……ううん、良いの」

 

俺達の関係を知らないメンバーが俺に声をかけてくる。だが…言えない。親父たちはクロエの事は理解しているが、美遊の事は無理だろう。

 

「……誕生日会ならプレゼントを持ってきていない俺は馬鹿だな」

 

「衛宮、志戸に伝えなかったのか?」

 

「いや、セラ達が伝えるかと」

 

「……士郎、志戸は家に一切居ないのですから伝えるのはほぼ不可能です」

 

「……確かに」

 

「3人には必ず埋め合わせをする、必ずだ」

 

「志戸お兄ちゃん、怖いよ?」 

 

「お兄ちゃん、うん!」

 

「………」

 

美遊は微笑むだけだ、そうか……美遊は知っていたんだな。俺が死にかけた事も。あれからほぼ毎日がアルトリアとカレンによる観察の日々だったと。

 

「………」

 

何故か美遊の視線が冷たくなっていく。

 

「グハッ!」

 

俺は飛んできた何かにぶつかって吹き飛ばされた。待てよ……金周りは良いよな?

黄金律多分ある……

もしかして、俺はランサーの同類(幸運E)か?

 

「……志戸?!!!!」

 

俺を吹き飛ばした何かが飛んできた方向に向かった。そこには

 

「……何をしている、Mrs.……遠坂凛、それに」

 

「アイスキャンディーは……む?」

 

―――――

 

私、イリヤスフィールの前で新たな戦いが始まろうとしている。

 

「バゼット……時計塔に戻ったのではなかったか?」

 

「……コトミネ…二人も、奇遇ですね。この様な場所で」

 

「…バゼット!」

 

「というか、その格好なんですのシェロ!あmと……Mr.のその身体は」

 

うん、忘れてたけど志戸お兄ちゃんの胴体には大きな傷跡があるし、背中も切り傷だらけだし、……なんで……あの水着なの?

あからさまに色んな人に警戒されてるよ?!

 

「……」

 

志戸お兄ちゃんの気配が変わった。

まさか………ここで戦う

嫌なんというか、凛さんと、ルヴィアさんのせいで変な方向に行ってる。あと、シェロってお兄ちゃんのことなの?

 

「金ドリルとツインテール!!!」

 

ナナキが何か言い出した、お姉さんの恋路の邪魔したとか

 

「……」

 

一成さんやお兄ちゃんも二人を叱ってるし、ただ志戸お兄ちゃんが何か言おうとしてるし。

 

「……そうか。ナナミの妹か、なら後で伝えろ。ラブレターを間違えるな、俺は弓道部じゃない」

 

「………あの、それはお姉ちゃんに伝えろと?」

 

「俺が正面切って言ってもいいが……彼奴、泣くぞ」

 

そこから変にヒートアップしていった。

志戸お兄ちゃんは何も話さないし、私は巻き込まれるし………

 

 

そこからの記憶か何もない。

 

志戸お兄ちゃんが激しい剣幕をしていたのは判る。あと、ルビーが3日ほど壊れた。

 

 

 

 

――――

 

巫山戯た海の日から数日、再建したエーデルフェルト邸に俺とアルトリアは居た。

 

「………あの、Mr.これは?」

 

「何だ、再建祝の宝石だ。足りないか?」

 

「いえ……高純度ですし、媒体にも使える素晴らしい品ですが」

 

「………安心しろ、元では化け物と外道魔術師と要人暗殺だ」

 

「衛宮君、それ汚いお金って言ってるわよね?」

 

「違う、ロンダリングはしてあるぞ」

 

「何も言いませんわ」

 

何故か俺が宝石の山を渡した瞬間場が凍った。

やはり、別の品が良かったか。

簡単なケーキ等で終わらせれば……こんな反応はされずに済んだのか?

兎に角、メイド服を来た遠坂の主導で話が進む。

 

「バゼットが同行するのか………殺すか?」

 

「シロウ、落ち着け。3人だけでなくルヴィアと凛まで怯えている」

 

「……兎に角よ、8枚目のカード」

 

「……まて?8枚目だと?」

 

そう、俺はここで8枚目のカードの事を始めて知った。

 

「えぇ……それが」

 

「なら、8枚既にあるだろ」

 

そう、俺の彼奴と親父のカードを別にしても8枚目は既にあるのだ。

(作者すら此時まで忘れていた)

 

「へ?」

 

「バーサーカーのクラスカードなんだが」

 

「あぁ、シロウと共に倒したランスロット卿のカードだな。たしか」

 

「……待ってください、Mr.何時の話ですの?」

 

「バーサーカー戦だな、ランスロットが乱入してきてそのまま倒した。……ふむ、どうやら今回の事とは関係ないな。俺が保管しておこう」

 

「待ちなさい!流石にそれは譲れないわよ!」

 

「……いや、お前達すら知らなかったなら、別にいいだろ。新しいのが8枚目だ、コレは俺が持ってるやつだ。気にするな」

 

「……遠坂凛、それは既にMr.の所持品です。やめましょう」

 

「ちょっとルヴィア」

 

「……雇われ代行者であるMr.に私達は勝てませんわ。それに、今は次のカード。幸い、Mr.は悪用することはありえませんし」

 

「感謝するMrs.貴女からの依頼ならそうだな3回まで相場1割で受けよう」

 

「ありがとうございます、心強いですわ」

 

「あと、士郎と2人切りでのデートも」

 

「感謝しますわ!!!」

 

「なっ!私には」

 

「……フッ」

 

「貴方は………」

 

遠坂の悔しがる顔が笑えてしまう、駄目だ。

激しく愉悦を感じてしまう。

 

「……衛宮くん、貴方は綺礼みたいよ」

 

「……フフッ…言峰とは泰山をよく行く友人だ。どうだろう、遠坂凛。ぜひとも夕食を」

 

周りが引いてる、わかるぞ。

最初はそうだった、でもなれると以外に美味いんだ。あの、麻婆。

 

「絶対に嫌よ」

 

会議は終る、俺はアルトリアと共に武家屋敷に戻った。

 

「……まずだアルトリア、これから行うのは割と確率だと思う。何かあれば約束された勝利の剣でぶちのめして」

 

「わかった」

 

「クラスカード……三重夢幻召喚」

 

クラスカードアーチャー

衛宮士郎の成れの果て

クラスカードアサシン

衛宮切嗣の可能性

クラスカードバーサーカー

堕ちた円卓の騎士

 

なんとも酷い面子だが、俺は使う。

見た目が変わる、プレートアーマーが鎧に変わり、赤いストールを巻きながら黒の腰マント。

右腰に無毀なる湖光(アロンダイト)。

左腰にキャリコ。

そして、裏腰に破戒すべき全ての符が鞘に収められている。

 

「……シロウ、大丈夫か?」

 

「魔力の消費が激しいが……根源と繋がった今の俺ならなんとかなる。固有結界を使えばより多く供給される。問題はない」

 

「……シロウ、何を焦っている」

 

焦っている、この俺が?ありえ

 

「奴だからか」

 

「ッ?!」

 

「8枚目、ソレを私達の第5次に当てはめれば自ずと答えは出る。シロウ、お前は一人で終わらせる気だな。だから、ランスロットを」

 

「セイバー!奴なら奴なら殺される!あの子達が!俺しか……」

 

「シロウ!」

 

アルトリアに顔を掴まれた。目をそらすこともできず、アルトリアの金色の瞳を覗く。

 

「俺しかじゃない……私も居る、だから背負い込むな。あの時は私が居なかった。だから、イリヤは殺されていた。私が付いた時、シロウはイリヤを抱いて泣いていた!それが、それがどれだけ私自身辛かったか!」

 

「……」

 

「私を見ろ!シロウ!お前は一人じゃない、私が居る!だから……だから行くな!お前が死んだら……私はどうなる」

 

アルトリアの泣き顔で俺は何も言えなかった。

強い女性だと思っていたのに、いざアルトリアの泣き顔を見たら………

 

「……ごめん」

 

俺はアルトリアと抱き合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第9の英霊

志戸は力を手にし、アルトリアとの絆を深めた。
しかし……それは終わりへの序曲に過ぎない。
悪の敵の最後は近い。


時計の秒針が刻一刻と12時を刻もうとしている。

俺とアルトリアは完全武装の状態で仲間達の前に現れた。

 

「……アルトリア、いやセイバー。唇を」

 

「わかった」

 

俺は仲間達がいるというのに口吻を交わす。

 

「なっ……衛宮君なにを!」

 

「令呪が戻った、完璧だ」

 

「あぁ…シロウ。最後の聖杯戦争だ」

 

それの意味を知るものは少ない、だが遠坂凛、イリヤ、クロエ、美遊の四人が反応した。

 

「バゼット…来たか」

 

「……流石ですねコトミネ。完全な状態とは」

 

「フラガラックは十分か、今回のアーチャーは……只者じゃないぞ」

 

「えぇ、わかっています」

(何故、アーチャーと?)

 

時間となり、鏡面世界へと俺達は飛び込んだ。

 

「セイバー!令呪をもって命ずる!!宝具を開放せよ!」

 

「あぁ、マスター!二人で行くぞ!!」

 

「『約束された勝利の剣

(エクスカリバー……モルガーーン)』!」

「『唯一つ忘れられない絆の剣(エクスカリバー・ブライダル)』」

 

2つのエクスカリバーによる斬撃が世界を破壊する。

 

「何をしている!彼奴はこの程度で倒せん!さっさと続けろ!」

 

続くように遠坂とルヴィアによる協力魔術が放たれた。

 

『打ち砕く雷神の指』トールハンマー

 

北欧の雷神トールの持つ神器の名を冠した魔術は俺とアルトリアのエクスカリバーに続くように放たれた。

 

「マスター!共にやるぞ!!」

 

「えぇ!アーチャー!!!」

 

「「投影開始」」

 

「偽・約束された勝利の剣」

「偽・螺旋剣」

 

赤黒い弓兵と幼き弓兵の二人による矢が同時に放たれた。

しかし、それは見慣れない盾により阻まれる。

 

「くっ…腐っても奴か!遠坂、ルヴィア、3人を頼むぞ!セイバー!バゼット!突貫するぞ」

 

「言われなくとも!」

 

「先陣は切らせてもらう!」

 

だが、それは罠だった。

 

「衛宮くん!罠よ!!」

 

知っている、俺とセイバーは。だから回避できた。だが、隣でバゼットが串刺しとなっている。

ルーン魔術で強化していたらしい礼装もあれではゴミ同然だ。

 

「…まさか蘇生のルーンとは」

 

放たれた宝具を干将莫耶で弾き、撃ち落としながらバゼットの行動を称賛する。

 

「何を……くそシロウ、任せるぞ」

 

「任せろ、アルトリア」

 

「熾天覆う七つの円環」

 

それは更に進化した盾である。花弁は9枚に増え、既に元の性能を超えている。

 

「くっ!今なら!」

 

「馬鹿…死ぬ気か?」

 

「くっ……シロウ、宝具を使うぞ」

 

「まじか……辛くなるか?」

 

「『卑王鉄槌』、旭光は反転する。光を呑め・・・!

約束された勝利の剣(エクスカリバー……モルガーーンッ)!!!」

 

上空に放たれた約束された勝利の剣で宝具の大群を打消す。だが、バゼットの頭に1本の短剣が迫る。干将莫耶ですぐさま撃ち落とそうとしたが、その前にクロエに撃ち落とされた。

 

「まったく、世話が焼けるわ」

 

「バゼットさん!お願いします!!」

 

バゼットの速度が上がる、心臓を抉るつもりなのだろう。

奴を殺すには……それでは不十分だ。

 

「不様だな、」

 

「コトミネ!何故知っていた!!あれが……あれがアーチャーだと!!!」

 

「フン……バゼット。貴様如きに話す理由などあるわけ無いだろう。しかし……自分自身も奴に染まったか?お前が苦しむ姿が実に……ククッ」

 

敵対者の苦しむ姿に愉悦を感じている。

駄目だな、感性が死んできてる。

 

「……セイバー、予定変更だ。此奴を起こす」

 

「シロウ、何を」

 

「………使ってやるぞ、貴様をな」

 

鏡面世界にヒビが入る。

それは俺の力じゃない、奴が出ようとしている。

 

「…乖離剣エアか。おい、Mrs.と遠坂、逃げろ。死にたくなければな」

 

エアが振るわれると鏡面世界が砕かれる。

 

「ヴィマーナで行ったか、セイバー出るぞ」

 

「わかった、次は本気で殺す」

 

俺とセイバー、その他が外に出ればヴィマーナに乗り消えるアイツが見える。カードを外し、普段の神父服になる。

 

「無様に負けたわね、忠犬」

 

「何を……これからだ、奴は外に出た。なら、聖杯戦争の再開というわけだ。カレン、頼むぞ」

 

「待ちなさい、カレン・オルテンシアを知っている?シロウ・コトミネ、貴方は」

 

「バゼット……バゼット・フラガ・マクレミッツ。残念だよ、見せたのに。何故思い出せない、クー・フーリンが泣くぞ」

 

「黙れ……彼は………違う……違う、何……この……記憶」

 

やはり、バゼットは完全に記憶と別れたわけじゃない。刻まれたか。

 

「彼女はカレン・オルテンシア。俺のパートナーの一人だ、表向きは初等部の保険教諭をしている」

 

「忠犬の医療担当のカレン・オルテンシアよ。

……さて、忠犬。今回、死ぬつもり?」

 

「ふざけるなよ、アイツが相手で死ぬだと?舐めるな!どんな手を使っても生き残り、彼奴の亡骸を…………」

 

「シロウ、落ち着け」

 

「待って……志戸お兄ちゃんはカードが何なのか、聖杯戦争が何なのか知っているの?」

 

「当たり前だ、それに……クロエ、お前今気付いたな?」

 

そう、話していてクロエの視線が俺と交わった。

その時、驚愕した顔をしていた。

 

「混ざり合って……分からなかった。でも……ありえない!なんで……なんで……聖杯があるの!ママは」

 

「簡単だ、バゼットと戦った俺は死ぬ寸前だった。どうあがいても、な。だが………俺には無尽蔵の魔力がある。クロエ、アーチャーの奴のクラスカードがあるお前なら理解できるな?」

 

「嘘……作り出したの?聖杯を?!」

 

「正解だ、今俺は聖杯の外殻。無論、贋作だがな、しかし……贋作聖杯がある限り、俺は根源との繋がりがより強固となり、更に代償がない。さて………話は終わりだ。ここからは………な?」

 

「カレン、頼むぞ?」

 

「それは聞けないわね、あくまでも中立だもの」

 

「残念だ、さて、正直に話そう。足手まといはいらない。君達は邪魔だ」

 

「何を……」

 

「…フラガラックでも倒せんよ。俺は……俺の天敵は衛宮士郎だけだ」

 

俺はセイバーに視線を送る。約束された勝利の剣が俺とカレン、その他を示す。

 

「さて、監視者としては困るのだけれど」

 

「修繕費は持つ、セイバー、カレン。英雄王を殺しに行くぞ」

 

「えぇ、わかっているわ。忠犬」

 

「カレン、守ってはやれんぞ」

 

「セイバー、貴方が守る必要はないわ、忠犬がいるもの」

 

「…了解だ」

 

 

 

―――――

 

「くそ……まさか、裏切者だなんて」

 

「違う!お兄ちゃんは……お兄ちゃんは私達を裏切ったりしない!」

 

「美遊!でも、志戸お兄ちゃんは私達を」

 

「イリヤ、この場に居ない3人は誰も私達を殺そうとはしていないわよ。裏切者というのは早慶よ、遠坂さん」

 

「む……クロエ、ならなんで……」

 

「簡単ですわ、あの方は代行者。人ならざる者を殺すのが仕事」

 

「……コトミネは任務に実力不足が現れれば無力化し、自分一人で任務遂行をすると聞いた事がありますが……あの男、私もだと?」

 

皆がそれぞれに思いをいう、勿論私もだ。

志戸お兄ちゃんはなんのためにしていたのか……

 

「しかし、わかったというよりもコトミネの言葉とアレで理解できました」

 

バゼットさんが決まり顔で話し始めた。

 

「恐らく、あの3人は最初から知っていた。」

 

「そう、それがここで行われた聖杯戦争。7騎のサーヴァントと7人の魔術師による殺し合い」

 

そう話し始めたのは美遊だった。

 

「なんで………知ってるのよ」

 

「クロエがテントで寝てた日、お兄ちゃんに教えてもらった」

 

「なんで話さなかったのですか!」

 

「聞かれませんでしたから」

 

美遊はそう言うと私とクロエの手を取った。

 

「ルヴィアさんと凛さんも。大丈夫です、お兄ちゃんが、2人とバゼットさんを裏切っても、私達3人を裏切る事は絶対にないので」

 

「……何故でしょう、美遊の言葉が理解できますわ」

 

「考えたら美遊の為にルヴィアに協力して、イリヤと美遊を守りたくてバーサーカーに一人で突貫、片腕斬り落とされて、クロエの為に片腕切り落として、3人の為にバゼットと殺し合って、腹を貫かれて……」

 

「お兄ちゃん、考えたらよく生きてたわね」

 

「うん、志戸お兄ちゃん、もしかしたらアレかも。ターミネーター」

 

「……イリヤ、クロエ、お兄ちゃんは機械じゃないよ」

 

「ターミネーター、確かに、任務の為なら……」

 

「取り敢えず、皆いきましょう!志戸お兄ちゃんの場所は、ルビー!」

 

「はい、お任せを!」

 

いくら足手まといでも構わない、志戸お兄ちゃんも、お兄ちゃんだから。

私も、美遊も、クロエも、皆傷付いて欲しいなんて思ってないから。

 

 



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英雄王〘ギルガメッシュ〙対偽物〘フェイカー〙

衛宮士郎はカレン・オルテンシアとアルトリア・ペンドラゴンを連れ、冬木の大聖杯に向かった。
かつての地、しかしそこではあの男が蘇らんとしていた。


「ククッ……クハハハハハハハ」

 

「なんで……どうして」

 

「我!復活!!」

 

「少しは黙っててくれないかなぁ?!」

 

俺が大聖杯につくと全裸の女性と少年が言い争いをしている。

 

「ほぉ……偽物〘フェイカー〙ではないか」

 

「………おかしい、お前はそんな笑う奴だったか、てか……性転換したか?」

 

「フッ…我の身体に男も女もないわ!この姿すら何物よりも素晴らしき財なのだからな!

しかし……良いぞ…良いぞ、偽物よ!貴様、言峰のように愉悦を知ったか!良いぞ、贋作者のアーチャーとは違い貴様はやはり我が財に相応しい」

 

「……」

 

「お久しぶりね、偽物さん。すみません、大人の僕が」

 

何故かテンションMAXな英雄王と大人の僕という言い方からして子供の英雄王。

この二人を見ているとあのシャドウサーヴァントだった英雄王に向けた殺意が湧かない。

それどころか、近所の笑える馬鹿とそのお目付け役という感じすらある。

 

「……あらあら、英雄王が面白いこと」

 

「……何故貴様がいる」

 

「……フフフ」

 

「嫌な予感が」

 

カレンは嘲笑うとマグダラの聖骸布を二人に巻きつける。女の英雄王には効かないはずだが、何故か解けていない。

カレン、何をしたんだ。

 

「……何処から出した」

 

出したものを見て怯える英雄王達。

ソレは何よりも赤く、そして数多の人間の意識を奪う麻婆。

泰山の激辛麻婆だ。

 

「やめろ!もう、唇が腫れるのも!お腹がゆるくなるのもの嫌だ!ムグ」

 

「待ってください!僕は関係なマグ」

 

「……憐れな」

 

そう呟くのはアルトリアだ。

見るからに悶絶している二人の英雄王、しかし身動きは取れない。

 

「フフフ………」

 

「よせ……ソレはあの狗めに」

 

『んだとてめえ!!』

 

何故か何処からともなくランサーの声が聞こえた気がする。アルトリアはキョトンとした顔をしている。

 

「俺の……俺の、決意って何だったんだ?」

 

死ぬ気で復讐しようとしたら、相手がこんな感じになってて、拍子抜けと言うか、毒気が抜けてしまった。

 

「しかし、偽物よ。面白い身体になっているではな」

 

「まだあります」

 

「むがががぁぁ………」

 

言葉にならない悲鳴をあげる英雄王に愉悦を感じない。

 

「……カレン?」

 

「貴方の分もありますから」

 

「シロウ、私もだ」

 

英雄王達の前で泰山のあの赤黒い麻婆を食べてやると二人は血の気が引いた顔をしている。

 

「……偽物よ、何が……何があったのだ」

 

「なれた」

 

「モキュモキュ」

 

信じられない物を見たという二人が可哀想になり、市販ながら自販機で炭酸を買ってあげた。

 

「感謝するぞ、偽物よ」

 

「大人の僕がすみません」

 

残った麻婆を食べるが二人は顔を青くしている。

理解できなくもないが、食べれてしまうし、以外に言峰も外的要因で嫌いになれない男だし、義父には違いないし。

 

「………それで、偽物よ。面白いことになっているな」

 

「あぁ、模造聖杯を心臓にな。こっちに来てからアカシックレコードに接続できるようになってな、俺の可能性だけなら観測できるんだ」

 

「ほぉ…自分に対しての千里眼とは」

 

「アンタには負ける、だから……俺の知らな俺の記憶すら有る」

 

ギルガメッシュは炭酸を飲みながら話を聞く。

 

「ふむ……己だけの千里眼か、ならば何故常に使わんのだ」

 

「未来を知っても、面白くないだろ。たとえソレが決められた道筋でも、俺は無知で進む。ソレが、俺だ」

 

だからこそ変わらない。

俺の抱いた痛み、苦しみ、憎しみ、だからもう一度再燃させる。

憎悪の炎がこの身を焦がす。

 

「……ほぉ、偽物よ。我とやり合うつもりか」

 

「贋作者では無いか……つくづく忌々しいよ。

英雄王、さぁ………御遊びは終わりだ」

 

王の財宝が展開される、子供の英雄王の方は傍観者に徹するようだ。

 

「行くぞ、英雄王。武器の貯蔵は十分か?」

 

投影魔術を使い、銃剣としたアロンダイトを英雄王に向ける。

奴はニヤリと笑うと財宝を放ってきた。

飛ばされた財宝を足場にしながら空を飛ぶ英雄王に迫る。

 

「やはり貴様は良い……その眼差し、その姿。

現代の英雄に相応しい」

 

「俺が英雄だと?巫山戯るな!俺は……俺はそんな安っぽい存在になる気はない!」

 

現代にとって英雄の意味は違う。

初戦、何かのプロパガンダだ。俺は、絶対にならない。

 

「ほぉ……、面白いぞ、偽物!!

《王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)》」

 

「投影開始」

 

放たれた宝具と同じものを投影しぶつける。

魔力に限界はない、英雄王の宝具が尽きるまで俺は戦える。

 

「第2宝具解放!

〘縛鎖全断・過重湖光

(アロンダイト・オーバーロード)〙」

 

地面から全力で飛び上がり、英雄王の肉体を裂かんと俺は迫った。

 

「熾天覆う七つの円環」

 

「やはり!守られるか……この」

 

自分の技量は常に搦手とともにある。

二手三手、先を行くことだ。だが、今はそれができない。

 

「くそ………」

 

「偽物よ、そろそろ良いか?」

 

「剣山だと?!」

 

全方位から放たれる宝具を干将莫耶で弾いていくが、肉体は限界だ。

 

『宝具二重解放!I am the bone of my sword. So as I pray,時ある間に薔薇を摘め』

 

加速し、動けない英雄王を斬りつける。

破戒すべき全ての符、無毀なる湖光、干将莫耶、

と何度も武器を変えながら、身体が限界を迎えるギリギリまで斬りつける。

 

「終わりだ」

 

固有結界弾を装填したコンテンダーの引金を引く。

 

「良い……良いぞ、数多の英霊を其身に宿し、死力を尽くし戦う。貴様こそ、真に現代の英雄よ」

 

英雄王は霊核を破壊したにも関わらず、生きている。流石に予想外だ、心臓を破壊したにも関わらず生きているだと?

こんなの、どうやって殺せば良い。

 

「認めてやろう、我の負けよ。今はな」

 

体内から固有結界を暴走させ、刺さった剣山を打ち消す。

 

「シロウ、無理をするな」

 

「アルトリア、だい…じょうぶだ」

 

全て遠き理想郷による回復が始まる。

更に根源からの魔力を流し込み、増幅させる。

 

「ほぉ、根源へと至ったか?」

 

「……根源と繋がったんだ。至った訳じゃない」

 

俺、アルトリア、英雄王が話していると残りを連れたカレンが来た。

 

「……あらあら、益々人間ではない何かに」

 

「人間だよ、でなければ、狩りはしないさ」

 

「……お兄ちゃん?」

 

「おめでとう!エミヤ・シロウ!!」

 

小さな英雄王が俺を称える。

そして……繋がる言葉にバゼット、イリヤ、クロエ、ルヴィアがなんのことだと考えている。

知っている遠坂と美遊は……

 

「流石だよ、聖杯戦争の勝者にして、セイバーのサーヴァント。アーサー王のマスター!認めるよ!僕も!!」

 

「……黙れ、なんのようだ。ギルガメッシュ」

 

「ふっ……我の名を言うか、良いだろう。負を認めたのだ、許すぞ」

 

「……話したいのは平行世界の英雄と、平行世界のお姫様とですよ。ねぇ、衛宮士郎、美遊ちゃん?」

 

美遊はセイバーのクラスカードを夢幻召喚し、英雄王に斬りかかる。

 

「よせ、俺も万全でない。この状況で勝てると思うな」

 

美遊の剣を干将莫耶で受けとめる、英雄王が何をするか判らない以上、止める他ない。

 

「ねぇ……お兄ちゃん、平行世界って」

 

クロエが声をかけてくる、その目はまるで捨てられる子犬のようだった。

 

「わからぬか、雑種よ。貴様の境遇、この男が泣かぬはずがない。何よりも、平行世界の貴様である聖杯の外装を殺したのは我だ。貴様は所詮、この男」

 

「……兄だからだ。家族だからだ、家族だから、守ると誓った。英雄王、もう一度だ、貴様をここで殺してやる」

 

俺の中で憎悪が蘇る、駄目だ。

殺してやりたい、コイツを……喰らってやりたい。

 

「シロウ!!」

 

「……俺は」

 

「ククッ……そうか……貴様、貴様は何と…貴様も聖杯であったか。贋作ではなく、貴様もこの冬木の聖杯であるか」

 

「なんだ、何を……何を知っている!ギルガメッシュ!!」

 

「知らぬが仏よ、セイバーよ。我はこの男に興味が湧いたぞ。死なせるでないぞ、此奴が死ねば、この世に〘獣〙が産まれ堕ちるぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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プリズマイリヤ3rei!!
運命/Fate


不穏な言葉を残す英雄王、だが……それだけで終わらない。
衛宮士郎達の前にさらなる敵が姿を見せる。
命をかけて全てを守るか、はたまた《厄災》となり滅ぼすか、運命は再び始まった。


「……英雄王、俺とアルトリアは」

 

「はっきり言おう、お前の事はわからん。我の千里眼を持ってしてもな、だが朧気ながら見えるぞ。貴様が獣となり、戦う姿がな」

 

獣とはBEASTの事だろう、人類悪。

衛宮士郎という存在は最後、望まれて殺された。

もし、それが憎しみなら?

俺は殉教者になどなりたくはない、だから前回も戦い続けた。全てと

 

「……英雄王、アルトリアとカレンがそうさせんさ。俺は、もう自分の意志では死ねないかもな」

 

軽口を叩こうとするが子供の方が喋り始める。

 

「女の僕、それに……偽物さん。そろそろ逃げませんか?僕としては受肉できたし、こんな面倒な場所からは消えたいんですけど」

 

そう話す子供の英雄王の上で空間が割れる。

魔法陣が形成され、何かが現れた。

 

「……エアを……エアを……我の許可無しに………雑種がぁぁぁぁぁ」

 

英雄王が叫ぶ、当たり前だろう。

自身の宝具を、自分の許可無く使われるのだ。

こいつがキレないわけがない。

 

「アルトリア、美遊…3秒後、宝具解放」

 

「うん」「わかった」

 

3秒後に女達が現れる。

 

「『卑王鉄槌』、旭光は反転する。光を呑め・・・!約束された勝利の剣!!!」

 

「約束された勝利の剣!!」

 

「…コレは俺が失い臨んだ夢の剣

『唯一つ忘れられない絆の剣』

 

2本の約束された勝利の剣とつ一忘れられない絆の剣が侵入者を消し去らんと迫った。

 

「熾天覆う七つの円環」

 

盾である、俺の使う贋作ではなく本物の熾天覆う七つの円環。これを出せるのは今だと、英雄王しか居ない。

 

「貴様……我の力を無許可に使うだけでなく、我が蔵を漁るか!雑種」

 

「はぁ?マジモンの英霊が3匹、それに………衛宮士郎」

 

「生憎、俺は貴様らの知る衛宮士郎じゃあない。だが………お前達の敵なのは確かだ。

投影開始『空を臨んだ勇気の翼(イカロス・パラスキニア)』」

 

背に機械のような白翼が形成され、肉体が空を飛ぶ。

 

「歯向かうか、衛宮士郎」

 

「どうだかな……妹の為だ。殺させてもらう」

 

慣れた手付きでMP5を投影する。

やはり銃器は消費がでかいが、そこまでの問題じゃあ無い。

 

「うるせぇ蝿が!」

 

「今は天使だ」

 

バーサーカーのクラスカードを夢幻召喚したような少女の腕を斬り落とし、英雄王モドキに向かう。

 

「神の鎖」

 

「無駄だよ!縛鎖全断・過重湖光

(アロンダイト・オーバーロード)!!!」

 

「天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)」

 

「世界が……崩壊する」

 

誰かが呟く、巫山戯るなよ。

親父とやっと仲直りできて、母さんや、セラとリズとも話さなくちゃならないんだよ。

 

「アカシックレコード接続開始。

■■■■■■■■■」

 

俺は何をしたのか判らなかった。確実なのは……

俺がやらかしたという事だけだ。

 

「……はぁ、どでかいクレーター。また、世界超えちまった」

 

周りには誰もおらず、雪がふる世界。

服装は変わらず白い神父服。

クレーターの中には魔術工房。

 

「………偵察か」

 

そう思っていたら不意に爆発が巻き起こる。

出てきたのは、怒り心頭の英雄王二人とイリヤ、そして…ブルマの少女だ。

 

「投影開始『空を臨んだ勇気の翼(イカロス・パラスキニア)」

 

「あはは……君、見てたね?」

 

「くっ…シロウ、貴様もう少し速く来る気はなかったのか」

 

「目覚めたのはついさっきだ、しかし……英雄王いえ、ギルガメッシュ様。イリヤを守護していただき、感謝を」

 

「……ほぉ、貴様からそう言われるのは嫌いではないな。セイバーよりも、我にこそ相応しいのではないか?」

 

何かをくらわんとしたイリヤ達の前で大翼を広げる、煙が上がるが空を臨んだ勇気の翼には傷ひとつない。おかしい、投影の精度が狂っている。

 

「てめぇは……てめぇは………」

 

「腕が生えたのか?まるで蜥蜴だな、それとも……ホムンクルスか?」

 

「…衛宮士郎!」

 

「名前も知らない女に、呼び捨てされるのは嫌いだな。イリヤ、美遊は居るんだな」

 

「居る!確かに見た!」

 

「………撤退だ」

 

「え…」

 

「英雄王は傷付き、その少女も怪しい。俺一人でもやり会えるが……厳しいと言わざる得ない。エインワーズだったな。俺の名前はシロウ・エミヤ・オルテンシア。聖堂教会の雇われ代行者として……お前達を狩る。そして、妹を取り戻す」

 

「今は……敵わなくても……届かなくても……

いつか必ず助け出す!ミユはアナタ達の道具じゃない!!」

 

「ほざけぇぇぇ」

 

「……時のある間に薔薇を摘め

(クロノス・ローズ)」

 

止まった世界の中で俺は俺達は脱出した。

その後、此方を観察していたクロエとバゼットと合流を果たす。

 

「……よかった……クロ」

 

イリヤがクロとバゼットと出会えた安心感で気絶してしまった。

 

「ゲホッゴホッ」 

 

寒さのせいか咳き込んでしまった。

手で何とか抑える。

 

「…」

 

「お兄ちゃん?」

 

「今行く、寒さで風邪でも引いたかな?」

 

 

 

_____

 

 

「……」

 

イリヤを寝かせたと同時にお兄ちゃんも別の教室で死んだように眠ってしまった。

当たり前だ、お兄ちゃんは私よりも投影の精度が高くて、何時も戦ってる。

 

「……今だけ、ごめんなさい」

 

私はお兄ちゃんにキスしたことはない。

お兄ちゃんの前では、お淑やかでいたい。

そう、感じてるから。

でも、私自身の魔力がそろそろ危ない。

 

「…ごめんなさい」

 

お兄ちゃんとキスをして繋がる。

 

「……嘘」

 

あり得ない程濃密な魔力、模造聖杯を埋め込んだレベルじゃない。でも…それ以上に私はお兄ちゃんに恐怖する。

 

「なんで……嫌……」

 

私はその場から逃げてしまった。

誰にも言えない、こんなの、辛すぎる。

 

 

 

 

――――――

私は起きたイリヤ、ギルガメッシュくん、ギルガメッシュさん、バゼットさんと一緒に授業をしている。

バゼットさんとギルガメッシュさんが机に座っているのは正直、何かのプレイみたいだった。

勿論言えない。

 

「さしあたってわかってる敵の戦力は2人」

 

「アンジェリカ、我と小僧のカードを使う不届き者だな」

 

「小僧って……僕としてはなんで……TSしたままなんですかね?!」

 

「何を言うか、いつか何処かの世界線に女帝ギルガメッシュが存在しない訳が無かろう。我は女帝ギルガメッシュ・リリィ。言うなれば姫ギルガメッシュなのだ」

 

「……巫山戯るなよ!なら

まだ大人の僕が来る方がよかった!!!」

 

「こら、ギルガメッシュくん喧嘩しない!」

 

「やはり小童はのぉ?」

 

「殴るぞ」

 

こっち来てから完璧に邪険になったよ。この2人、ギルガメッシュさんは子供のギルガメッシュくんをおちょくって……

 

「まぁ、一時的な協力?利害が一致してるし」

 

「我はシロウが気に入ったぞ、我が財にしても良い」

 

「……だめです」

 

ギルガメッシュさんは面倒な事になりそうだけど協力してくれるなら良い。

 

「それで…クロ、ベアトリスのカードは?」

 

「それは予想が付くわ」

 

私が言うよりも先にルビーが話す。

 

「雷神トールですね」

 

「透?」

 

「トール!ミョルニル=トール!知らないの!」

 

「北欧神話最強の神です、しかし」

 

「神なら僕達、それに……」

 

「あの程度の雑種なら、シロウなら殺せるだろ、というよりも、黒きセイバーは何処だ。アレならシロウの危機に意気揚々と飛び込むと思ったが」

 

「セイバーさんは判らない、あとお兄ちゃんとは合わせない、誰も、面会禁止だから」

 

「…その為ですか?シロウ君の寝ている部屋に結界を張ったのは」

 

「……ねぇ、クロ。志戸お兄ちゃんに何が」

 

私の予想ならセイバーさんは■■■■■。

いや、受肉してそうだったし、多分、大丈夫。

凛さん、ルヴィアさんと多分一緒に居るはず。

 

「つまり、対抗策は」

 

「なんで……」

 

その時、結界が破れた。入ってじゃない、内側から破かれた。

 

「イリヤスフィール、元気なようだな。ギルガメッシュ達も……バゼット・フラガ・マクレミッツ。さっさと手を引くべきだったな」

 

「シロウくん貴方は」

 

「馴れ馴れしく呼ぶな、俺は聖堂教会所属の代行者だ」

 

「……そうでしたね、コトミネ。それで」

 

「雷神様は俺が殺す、英雄王モドキはお前達で相手をしてくれ。簡単だろ?ギルガメッシュが二人いるんだからな」

 

お兄ちゃんはそういうと出ていこうとする。

 

「待って!」

 

私はお兄ちゃんを追った。すぐに分かる、何か張られた。

 

「クロエ、どうした?」

 

「なんで……なんで……動けて」

 

「クロエ、妹の為なら……死物狂いで何とかするさ。だからな、誰にも……言わないでくれ」

 

この時、抱き締めてくれたお兄ちゃんは……

 

 




はい、3eri!!

来ました、もうすぐこの物語も終わります。
無論、Grand Order編に突入しますけど、多分シロウが関わる特異点の数って少ないと思いますね。


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衛宮士郎の燈火は段々と燃えていく。
それは近いうちに業火となり、新たな焔となるだろう。だが、ソレを支える木々は既に無い。


「……ゲホッゲホッゲホ」

 

ビチャリと当たり一面に赤黒い液体が広がる。

月明かりに照らされたそれが何なのか、自分自身が良く理解できている。

 

「お兄ちゃん?」

 

「イリヤか、志戸お兄ちゃんとは呼ばないんだな」

 

「……」

 

俺はキャンプ用品を投影し、手頃な家から盗んだココアを作る。

 

「星、いっぱいだね」

 

「街明かりが少ないからですね」

 

ルビーの言葉に頷く、それだけじゃない。

 

「冷たいっていうのもあるかもな、大気中の水蒸気がなくなって星がより綺麗に見えるんだ」

 

だが、イリヤはそんな話をしたいのではないだろう。

 

「もう…帰れないのかな」

「並行世界とか、正直SFすぎる話なんだけど」

「こうして、真っ暗な街を見ていると……」

「もう、私達の知ってる街は無いんだなって…」

「家も、家族も、友達も……」

「皆……いなくなっちゃって………」

「…もう、会えないのかな」

 

俺はイリヤの頭を撫でる。

衛宮士郎の様にイリヤに優しく接した記憶はない。俺が、割り切れなかったから。

 

「……ゴホッゲホッゴホッゲホ」

 

「お兄ちゃん!!!」

 

激しい苦しさにその場に倒れ込む。

吐血し、イリヤの服にもべっとりと自分の血がついてしまう。

何時から居たのか、クロエが出てきた。

 

「……やっぱり、お兄ちゃんはもう…」

 

「クロ?!兎に角早く皆を」

 

「呼ぶな……俺は……俺はまだ戦える」

 

「……止めて、もう…良いよ」

 

クロエは恐らく知っているのだろう、俺の身体のことを。

 

「もう……休んで……私が、私がお兄ちゃんの代わりに頑張るから。だから……もう……良いよ」

 

「クロ、どういう……」

 

「イリヤ!わからないの!お兄ちゃんは、お兄ちゃんはもう…居ないの!お兄ちゃんは」

 

「居るよ!ここに……今も話して」

 

「死んでるの!既に!死んでる筈なの!!!」

 

俺はクロエを優しく起こし、イリヤの隣に立たせる。

 

「生きてるさ、全て遠き理想郷の力で。死ぬ寸前だがな」

 

「………そんな」

 

「なら、もう休んでも」

 

「大丈夫だ、俺はまだ戦える。お前たちも、皆も、家に帰れる。俺が戦えばな。大丈夫だ、必ず帰す。美遊も」

 

「でも……お兄ちゃんが」

 

「クロエ、俺は所詮並行世界の衛宮士郎だ。あの世界には、あの世界の衛宮士郎がいる。衛宮士郎は二人もいらんだろ?」

 

俺は笑顔でそう伝え、校内に戻る。

 

「…コトミネ」

 

「バゼット、俺が死ぬまでの時間は分からない。宝具でも、俺の身体は治せない。だから…言わせてもらうぞ。妹達を頼む」

 

「駄目です、自分の力で護りなさい」

 

翌日、俺は灯油ストーブを修理していた。

 

「終わりだ、付けてみろ」

 

「凄い!手入れもされてなかったのに」

 

「前の世界だと、今の衛宮士郎の様に修理したりしていた。形も、構造も同じだ。間違えることはない」

 

「いやはや…バラされてからもう、自分を偽る気は無いですね、偽物さん」

 

「限られた時間なら、有意義使うさ。英雄王」

 

「シロウよ!朝食を作れ!あの腐れ麻婆拉麺は食べたくない!」

 

「食材がない、諦めろ」

 

英雄姫(並行世界の英雄王らしいから)から駄駄を捏ねられるが、食材がない。

 

「そう言えば、お兄ちゃんはお風呂作れる?」

 

「……できるかと言われたら無理だな。俺ができるのは宝具の投影と簡単な物の投影だ」

 

「それ、ベッドとキャンプ用品と日用品作り出した人が言う言葉なの?」

 

そっぽを向くと英雄王と目があった。

 

「なら出しましょうか?お風呂。屋上で良いですよね?」

 

英雄王が温泉を出した、そんな宝具があるのかと思ったが俺も投影できそうだ。

 

「……まじかぁ」

 

「いやはや……温泉、気持ちいいですね、偽物さん」

 

「あぁ…傷だらけの身体が」

 

「ほぉ、その肉体、その―――流石だな!シロウ!」

 

「何入ってきてんだ馬鹿姫!女湯は隣だぁ!」

 

「良いではないか!我が肉体美にてお前を虜に…美人局という奴だ」

 

何してんだよと殴りたくなったが、眼の前にクロエが飛んできた。

 

「貴女はこっちだ!」

 

「よせ小童!貴様らの肉体ではシロウを囲い込む事など不可の」

 

「もいでやろうかしら」

 

「…女の僕がごめんなさい」

 

「……英雄王、お前も苦労してるよな」

 

「そう思うなら、財になってあげて下さい。もう、僕はつかれた」

 

「ノーコメント」

 

俺達は一時の休息を受け入れた。

そう、一時の休息だった。

再生の為に俺は眠った、眠っていたのだが、

何かが俺の心に響いた。

 

 

―――――

勝てない、地力が違いすぎる。

田中さんが何かして私達は解放されたけど、動けない。

イリヤを助けたいのに動けない、嫌だ……家族を失いたくない。

 

「お前……俺の妹達に何してる」

 

来てほしく無かった、希望だけどその希望は既に風前の灯火なのだから。

 

「くくっ……ハハッ……フハハハハッ」

「衛宮士郎……面白い、此方の衛宮士郎よりも強く!そして、真に英雄となる男!!!」

 

「ダリウスだったか?小悪党に多そうな名前だ、笑えるな」

 

「貴様、エインワーズ家の当主であるこの……」

「は?」

 

「コトミネ…それは」

 

その時、ダリウスの両手が消えた。

バゼットさんも見えなかったと思う、驚愕していた。私と同じ干将莫耶を投影して、血をはらっている。

 

「……先ずは両手だ。次は……両足か」

 

酷く冷たい目だけど、暖かさを感じた。

私達に向けられる暖かさを、

 

「何故だァァァァァ何故貴様の力は!!!!ありえん、こんなの私の舞台には」

 

「まって…パパを殺さないで!」

 

お兄ちゃんは少女事殺すきだったと思う。

でも、私達が向けた視線で気が変わったのだろうか。

 

「消えな……ガキに免じて助けてやるよ。まぁ……次は殺すがな」

「グッバイ……ダリウス」

 

____

 

偽・螺旋剣を投影し、2人のエインワーズを神の鎖で繋ぐは英雄王にキレられるかもしれんが、今だけだ。

 

「まって…その子は」

 

「死ぬか生きるか…運次第だな」

 

二人はそのまま何処かに飛んでいく。

まぁ、目的地はエインワーズの工房だが。

 

「壊れた幻想」

 

肉片となるなら問題ない、しかし……奴の宝具は何なんだ。

 

「コトミネ、助かりました」

 

「バゼット、じゃあ後任せるわ」

 

俺はまるで肉体が張り裂けたかのように血を噴き出して死にかけた。

バゼットが治療のルーンをかけてくれた事で、何とか一命をとりとめた。

 

「……シロウよ、我の蔵にはアンブロシアに近しいものがある。取り敢えず食せ」

 

失敗した林檎の様な果実を食べる。

アンブロシアではない為に不死にはなれないが、

肉体の回復には役に立つ。

 

「……凄いな、英雄王の蔵の果実を食べたというのに俺の身体はボロボロのままだ。このまま行ってもあと、どれだけ持つかな」

 

この言葉を受けて、イリヤとクロエは顔が歪んだ。だが、仕方のない事だ。

 

「……」

 

「ねぇ、お兄ちゃんは」

 

「死は誰にも訪れる、人間は生まれる場所や時間、人種は選べない。始まりは選べない、だが……終わりは選べる。俺は……俺は俺らしく、自分の意志で終わりに向かう。イリヤ、クロエ、それがお前達にとってどう思うかは関係ない。

俺は、俺らしく死んでやる。悪の敵、家族の敵を滅ぼす存在、ここならエインワーズを殺す存在。俺は衛宮士郎だからな」

 

場がより一層重くなった所で俺は英雄王二人に問う。ダリウスの使った宝具についてだ。

 

「……わからない」

 

「私もだ、心当たりがない。我等が知らないとはそういう事だ」

 

「……面倒な事になった」

 

「コトミネ、どういう」

 

「…英雄王には

『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』という宝具がある。それは全ての英霊達の宝具の原典となる物を所持している事だ。まぁ、神造兵器は流石にないだろうが」

 

「誰が神の僕の物など」

 

「兎に角だ、その英雄王が知らないと言うことはまったくオリジナルの宝具という事だ。性能も不明、能力は氷が?いや、もっとあるかもしれん。聞かせろ、エヌマ・エリシュは撃てるのか」

 

「…世界を滅ぼす気か」

 

「……つまりだ、今現在戦力として使えるのは英霊二人、死にかけ一人、封印指定執行者一人、少女二人、ここに喧嘩っぱやい時計塔の二人と俺の最愛の人を追加したい」

 

「……お兄ちゃん、惚気けないで」

 

「アルトリアに寿命の話をしなくちゃいけない。しかも1ヶ月と自分で言ったがそれ以下の可能性の方がでかいんだ。会いたくなっても良いだろうに」

 

完璧に打たれるのは確定している。だが、それでも、逢いたいんだ。

 

「……兎に角、明日だ。良いな、明日から行動開始だ。戦力を整え次第、美遊を奪還し、エインワーズを一人残らず殺した後に、帰還する。無論、そこに俺が居ない場合の為の切札は後で英雄王に渡しておく」

 

「面倒な事を」

 

「全員、今は安め。俺は言峰綺礼の拉麺屋から出前を頼んでくる。…所で、麻婆は何個欲しい」

 

俺は自分が食べたいからから聞いたが全員からドン引きされた。

わかる、確かに最初は死ぬ程だった。

だが、何時しか旨く感じる。

 

「行ってくる」

 

俺は金貨を投影した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




衛宮士郎(オリぬ士郎)
クラス アルター・エゴ (□□□)

混沌・善

好物、泰山の麻婆。
嫌いな人 英雄王
苦手な人 英雄王
好きな人 セイバー
嫌いな事 子供を殺すこと

ステータス
筋力B 耐久EX 俊敏B 魔力ー 幸運E 宝具EX
この場合のーはEXを通り越し、あり得ないの意

対魔力A(EX)

単独行動A(単独顕現EX)

根源接続A

クラスカード使用
クラスカードを使用し、自身のクラスを追加する。

宝具選択
自分のコマンドカードが宝具攻撃となる。
ゲームだと1キャラでエクストラまで含めた宝具連発するクソキャラになる。

QUICK2 Buster2 Arts1






 


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囚われし姫

時間がない、それは彼が一番知っている。
理解している、だが終わらない、終われない。
「エインワーズを滅ぼす」
衛宮士郎はその在り方を既に変えている。


「……俺まで攫って何になる?」

 

「どんな魔術も効かず、与えた傷は瞬時に回復する。……人間ですか」

 

「少なくとも人間さ、貴様等を一人残らず殺す事は確定しているがな」

 

それは衛宮士郎が本来なら絶対に向けない顔。

子供を殺すことは嫌いな衛宮士郎が絶対にしない顔。残虐かつ、血に酔っているような誰もが怯え、恐怖する顔だった。

 

「並行世界の衛宮士郎、貴方は」

 

「俺と敵対した時点で殺す、舐めるなよ?小娘、お前は所詮借り物の力で粋がっているにすぎない。お前は……抗えない力に襲われたとき、どうなるのかな?怯えるか、立ち向かうか、赦しを請うか……フフッ……ハハッフハハハ」

 

「何故笑う」

 

「時間切れだ……バカな女だな」

 

俺の周りから闇が広がる。

それはとある存在の宝具、けして許されるはずのない宝具、だが、衛宮士郎というある種同じ存在だからあの男と同じ事ができる。

そして、奇しくも俺は奴と同じ壊れた神官だ。

 

「苦痛、苦悩、死を喰う蛇よ。生きる糧、焚べる薪に集い給え――悪神は此処に在りて。『零れ氾く暗黒心臓(ザジガーニエ・アンリマユ)』」

 

アンリマユ〘この世すべての悪〙すら衛宮士郎の身体を媒体に最弱のサーヴァントとして顕現した。俺と同質、俺という存在は奴と似通っているのだから、力の一部も扱える。

 

「コレは……!!!」

 

「じゃあな、人形」

 

呑まれそうになる女を嘲笑い、静かに歩く。

 

「……まだ………その時ではない」

「投影開始『空を臨んだ勇気の翼(イカロス・パラスキニア)」

 

堕落した天使の様に空へと飛び上がる。

 

「さぁ……祝福だ、受け取れ

投影開始『偽・不毀の極槍

(ドゥリンダナⅡ)』!!

追加だ、『偽・破戒すべき全ての符』!!」

 

魔力を最も少なくし、撃ち込む一撃。

大した被害も出せないが、挑発には向いているのだ。魔術式も、全てが破壊される。

 

「壊れた幻想」

 

ニタリと笑いながら、俺はその場で顔のない王を投影し姿を隠した。

 

――――

 

それは騎士王であった。しかし、その騎士王はけして一人ではなかった。

 

「アレが……シロウだと言うのか!」

 

「そうだ……お前の衛宮士郎ではないがな」

 

黒き騎士王は嫌悪感を隠すこと無く、隣に立つ青き騎士王へと答えを返した。

 

「行くぞ、シロウが侵入したなら戦場となる」

 

「………黒い私よ、何故そんな冷たい目を」

 

「冷たい目だと?」

 

セイバーオルタはセイバーに言われた台詞に怒りを感じる。

 

「貴様はシロウが優しいと言ったこの目を貶すのか?どうやら、先に殺す相手が決まったようだ。家に帰れず、私の約束された勝利の剣の錆となるが良」

 

「待ってくれ…私が悪かった」

 

「ふん……貴様が帰る為にはシロウに、ひいては私に強力しなければならないのだ。さっさと行くぞ」

 

「あぁ……」

 

セイバーの態度に不満を感じながら、セイバーオルタはエインワーズの屋敷を狙う。

 

「「約束された勝利の剣!!!」」

 

二本の約束された勝利の剣がエインワーズの魔術障壁を破壊し、屋敷を砕く。その先には激しい戦闘をする衛宮士郎とアンジェリカ、ベアトリス、そして怯えているエリカ、気絶しているイリヤの姿があった。

 

「くくっ……小娘、生きてたのか………殺しがいがあるな!」

 

「ひっ……来ないで………いや」

 

「私達の邪魔をするか、衛宮士郎」

 

「悪は俺が決める、俺にとっての悪はエインワーズだ。つまりだ……お前達は全員……鏖殺という答えに繋がるな」

 

「ふざけんな!」

 

「ほぉ……雷神トールの割に弱いよなぁ?所詮、雑魚は雑魚だ。さて……逃さねぇ。知ってるかい、ケルトには……相手を殺すか、殺されるまで、出られないし、邪魔できない呪いがあることを」

 

「逃げろ、ベアトリス!!」

 

だが、アンジェリカの声が届くよりも先にそれは行われた。冷酷に、そして恐ろしく冷たい。

ベアトリスは理解している、勝てないと、殺されると。

 

「四枝の浅瀬(アトゴウラ)」

 

陣が造られると、誰も手出しができなくなる。

不敗と不退の盟約、クー・フーリンが知られているが、ケルトの戦士はソレを行える。

そして、この男も、スカサハからの支持をうけソレを知っているのだ。

 

「来るな………出してく……」

 

「逃げるなよ、俺の妹に手を出そうとしたんだぞ。それに……お前はもう、死んでるんだ」

 

「は?」

 

「刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)だよ。もう、刺さってるんだぜ?」

 

「あっ………」

 

「お前は所詮、弱い存在に対してしか行動ができない雑魚だ。お前達は、俺の逆鱗に触れた。正義の味方とか言う幻想を信じ、馬鹿ばかり行った」

 

「ジュリ……ァ」

 

そして少女達の見ている前で、士郎はより猟奇的な行動に移る。ゲイ・ボルクの穂先に刺さった心臓をもぎ取り、まるで果実の様に口にする。

幸いなのはイリヤが気絶していた事だろう。

サーヴァントである二人の騎士王は知っている。

それが何か、それがどういう事かを。

 

「壊れた幻想」

 

ベアトリスの遺体は頭を遺し、粉々に吹き飛ぶ。

 

「ふむ……ハハッ………そうか……だから腕を落としても復活したわけか」

 

「貴様、ベアトリスを」

 

「巫山戯るなよ、人間でもない、心臓を喰ったが……お前もか?魔力の塊だ。昔喰らった吸血鬼の物よりもな。しかし……魂の固定化か。憎たらしいぜ、アインツベルンか?お前達は……殺してやる」

 

「巫山戯るな!世界の救済が我らの目的だ、ソレを」

 

「巫山戯ているのはお前達だ、世界の救済?

馬鹿らしい、俺はお前達が俺の妹を誘拐、監禁したから殺しに来たんだ」

 

「その程度で、我々の邪魔を」

 

「シロウ!」「シロウ!!」

 

「何で二人になってる、いるのは知ってが……俺の魂食いまで見られるとは」

 

「……シロウ、本当なのですか!彼らの目的が世界の救済」

 

「違う、こいつ等の目的は新世界の創造。そして、人類の進化。新世界でも生きられる存在へのな」

 

シロウはソレを嘲笑いながら見ている。

 

「何がおかしい!」

 

「だってなぁ……新世界に適応するってことは今の肉体を捨てるという事だ。俺なら判る、アカシックレコードに接続し、世界を観測できる俺ならな」

 

「巫山戯るな、根源に到達したというのか!」

 

「お前の言う新世界には未来がない。全ての生命は死に絶え、それに適応した人類。そして、美遊には一人の少女として生きて欲しいという願いが既に届いているんだよ。聖杯となるには既に壊れてるんだ。俺達は知ってるぞ、壊れた聖杯が出した悲劇をな」

 

「あぁ、世界のマナを使うと言っていたな。その先にあるのは全ての命の…終わりだ」

 

 

 

―――――

 

アルトリアは乗ってくれた。セイバーの方はキョトンとしている。純粋すぎる、このセイバーの相手なら衛宮士郎だな。

 

「さて、世界の救済なんて幻想はいらない。俺としては美遊、家族、バゼット、ついでにこの世界の俺も連れていきたいんだがな」

 

「……貴様は」

 

アンジェリカの憎む顔に愉悦を覚えてしまう。

仲間を無慈悲に殺され、俺を憎んでいるのか?

実に人間臭い、そして……馬鹿らしい。

 

「エリカ!!」

 

「…え」

 

「…………」

 

投影するのはハルバート。アルトリアはセイバーを止めてくれている。

 

(俺なら、殺せる)

 

ハルバートを振り押し、あと一歩といった瞬間。

 

「やめて!」

 

「お兄ちゃん、」

 

「イリヤにクロエか」

 

ちょうど良かった、今なら美遊も取り戻せる。

 

「アルトリア、セイバー、イリヤ、クロエ、美遊と恐らくは囚われているだろう衛宮士郎を救え。俺はここに来る面倒くさい奴と、そこのアンジェリカ等を……戦う(鏖殺する)」

 

彼女達が消えるまでアンジェリカを痛め付け、苦しむ様を見続ける。

 

「……やってくれたな、衛宮士郎」

 

「よぉ、馬鹿らしい幻想を抱いた憐れな少年。ダリウスなんて殻は破って出てこいよ。なぁジュリアン君?」

 

「憎たらしい存在だ、我が屋敷を破壊した挙げ句、聖杯にいらぬ知恵を!衛宮士郎!!!」

 

「ありゃ?死んだ仲間の事は言わないんだな。まぁ、今は頭だけだしな」

 

そう言って俺は見せつけるように頭部を踏み砕いた。アンジェリカは無表情ながら反応しているが、ジュリアンにそんな物は無い。

 

「お前という存在が!邪魔なんだ!!!」

 

「お前の結末は地獄行きだ、感謝しろ。神父様が直々に送ってやるよ」

 

 

 




……完璧に正義の味方じゃない。
今、外伝的な感じでFGO編書いてます。

そっちのシロウはここよりはマシかと


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人類悪にして救世主、顕現

ソレは本来の人類悪ではない。
イレギュラーが起こり、抑止すら作動せず、
たった一人の心によって、世界を滅ぼさんとする人類悪にして救世主、最後の審判を下すこともなく、ただ一つの願いのために。


「ちぃ!」

 

「これ程までに」

 

ジュリウスによって作られた存在であるエリカはその身を捧げた。

そして、衛宮士郎を殺すための力をその身から出現させる。

 

「泥か?いや……それ以下か」

 

俺は現れたシャドーサーヴァント達に約束された勝利の剣を振るう。

切り裂き、いとも容易く殺して行ける。

 

「まだだ!俺の結末は…俺の神話は」

 

俺の心が高揚している、殺して良い存在たち。

これを這いつくばらせ、絶望させ、その眼の前で世界を滅ぼすその姿。

ソレを幻姿する。

悪魔の羽根と天使の翼が生え、既に身体は人間とは言えない何かとなっていた。

 

楽しい、壊すのが。

苦しい、壊すのが。

殺したい、守りたい、

 

相反する感情が渦巻いて、そして怒りとなって、

ジュリアン共に向かっていく。

 

「王の財宝」

 

シャドーサーヴァントと共に数多の宝具が降り注ぐ。

 

「熾天覆う七つの円環」

 

左手から巨大な花が開く、おかしい。

何も感じない、苦しさも、辛さも、今まで感じていた気怠さも。

まるで、命が蘇っているかのように。

 

「何故………貴様にそんな力は」

 

「投影開始」

 

撃鉄が上がる、今自分自身が一発の弾丸とかしている様にも感じてしまう。

 

「さぁ、デッド・オア・アライブ

『I am the bone of my sword

(体は剣でできている)

Steel is my body,and fire is my blood.

(血潮は鉄で心は硝子)

Standing on many corpses 

(いくつもの屍の上に立ち)

Imprisoned for eternity

(悠久に囚われる)

Still I seek meanin in my life

(それでも我は生涯に意味を求める)

That’s my why this body

(だからこそ、この体は)

”Infinited sword works”

(無限の剣でできていた)』!!!」

 

「……固有………結界だが……これは」

 

また固有結界が進化している。

死体と剣山だったあの世界に花が舞、屍達はきえ、刃達がまるで墓標の様に立っている。

 

「あり得ない……何故、お前はアレだけ狂っていて、世界はこんなにも」

 

「優しい、と感じるのか?」

 

瞬間、楽園のような世界が燃えた。

ジュリウスとアンジェリカが燃えていく、地獄の業火に焼かれていく。

かと思えば、吹雪の中に晒される。

 

「お前は………何なんだ」

 

「憐れなものだな、ジュリアン。自身の事も理解できず、正義の味方を履き替え、哀れにも!俺という、絶対に勝てない存在にここで殺される運命なのだから」

 

「なっ!なめるなァァァ宝具開放!エヌマ・エ」

 

「残念だが、俺の世界で宝具は使わせんよ」

 

天地乖離す開闢の星がまるで星屑の様に消えていく。まるで世界から消されたように、始めから存在すらしていない様に。

 

「俺の世界では、俺の許可なく、俺が創り出した武器を扱うこと、俺が創り出した武器以外を使う事はできない。ここは、俺という存在が、最強である為のフィールド。ここに飲まれた時点で、お前達に未来はない」

 

「巫山戯んな!お前は、お前はこの世界が」

 

「どうなっても構わない、俺が守るのは家族だ。死にゆく世界なんてどうでもいい」

 

俺が最後の一撃を与える為、剣を振るう。

だが……それは自分自身が見たことがない程に黒く、禍々しく、神聖さを感じるものだった。

 

「審判の時だ」

 

それはキリストを串いた6本の槍の内の一つ。

教会の深部に保管されていた本物に99.9%近付けた聖槍。

 

「運命の槍《スピアオブディスティニー》」

 

全ての邪悪を払い、聖なる力を与える、聖人の血を吸い、聖槍という存在に昇華された槍。

誰も、受け止められるはずがない。

英霊として、正真正銘の英雄王か、あの男なら、止められただろうが、この者達には不可能だ。

 

「さぁ………理想に溺れて眠れ」

 

 

 

 

 

____

 

 

「クソッ、雑魚共が!イリヤスフィール、美遊は見つけたのか!」

 

「わかってるけど、」

 

「約束された勝利の剣!」

 

「大丈夫です、イリヤスフィール。私達が援護しますから」

 

「つくづく吐気がする、私はこんなだったのか」

 

私の前で何時もの黒いアルトリアさんと、青いアルトリアさんがエクスカリバーと言って黒化英霊を倒してる。

 

「えと、訳がわかりませんわ!何でこんな事に!」

 

「少しはだまりなさいよ!」

 

ルヴィアさんと凛さんも叫んでるし、ギルとギルさんはどっか行ったし、もう……どうすれば

 

「イリヤ!」

 

「美遊!良かったぁぁぁぁ!!!!」

 

「えっちょっと……イリヤ」

 

「抱きついてるんじゃない!わかってるの!今まで外でお兄ちゃんが戦ってる!お兄ちゃんは死ぬ寸前なの!さっさと助けて戻らないと本気で死ぬのよ!」

 

「え?」

 

「……シロウが死ぬとは」

 

そうだ、アルトリアさんはまだ知らないんだ。

でも、今話している時間はないし、

 

「あっと、やぁ……お前達は………美遊?」

 

「うそ……お兄……ちゃん」

 

そこにはギルさんに肩を貸されてボロボロになっているお兄ちゃんがいた。

でも、お兄ちゃんは外で戦ってて、

 

「………もう、考えるのは後!早く出るの!お兄ちゃんを殺したいならそうしなさいよ、私が、斬り刻んで持って行って上げるから」

 

クロが叫んで私達は外にでた、でも風景はあのクレーターと違って、楽園の様になっていて、

お兄ちゃんがジュリアンとあの女の人を殺そうとしていた。

 

「……ねぇ、クロ。お兄ちゃんに翼が生えてるし、何か角生えてない?」

 

「………獣とは違うな、まったく別の何かか。セイバーよ、お前は止めることはできなかったな」

 

「黙れ、英雄王」

 

黒いアルトリアさんが飛び出していった。

 

「……シロウ、撤収だ。この者達は捨て置け」

 

何か神々しい槍を放とうとしていたお兄ちゃんをアルトリアさんが止める。

 

「何を言う、ゴミは殺すだけだろ」

 

でも、お兄ちゃんは止まらなかった。ジュリアンに向けて槍を投げる。

 

「ジュリアン!!!」

 

そう、叫んであの人、アンジェリカさんが倒れた。腹部から血を流して、今にも死にそうで

 

「駄目ですよ、先輩」

 

でも、続かなかった。

あり得なかった、お兄ちゃんの胴から剣が生えた。

 

「先輩、どうして、私から逃げたんですか?」

 

「先輩、私はずって待っていました」

 

「先輩、私、ずっと、好きだったのに」

 

「先輩、殺して下さい」

 

二人、クラスカードを使って現れた女性。

一人はアサシンのクラスカードだと思うけど、もう一人が判らない。

 

「……何故、お前が」

 

「フフッフハハフハハフハハハハハ!!!傑作だな!お前も殺せたい相手がいたか!最高だ!最高だ衛宮士郎!!!」

 

「くっ!貴様、よくもシロウを」

 

「待て……アルトリア、駄目だ、駄目なんだ」

 

お兄ちゃんは何かを喋ってる。

でも、伝わらない。

  

「桜、済まない、俺は少なくとも、お前を殺せない。だから……眠れ」

 

風景が変わる、墓地のような、怖くて、でも、何処か安らぎを感じられる場所に。

 

「遠坂!やれ!!!!」

 

「え?私なの?!」

 

「まったく、感づいてたの!」

 

辺りに見覚えない宝具が散りばめられて、そして

 

「アーチャー!お願い!!」

 

「不本意だが、マスターの命だ!投影開始!」

 

お兄ちゃんを串いていた剣をアーチャーと呼ばれた人がお兄ちゃんを蹴り飛ばしで!無理矢理抜かせて!そのまま抱きかかえてる。

 

「セイバーも行くわよ!」

 

「ちぃ……エインワーズだったか………次は、この騎士王の怒りをうけよ」

 

「もう、何なのよ!」

 

凛さん達も驚いたけど、ギルとギルさん、アルトリアさんが

 

「行きますよ」

 

的なことを言って先導してくれた。

兎に角、私達は勝ったんだ。

 

 

 

 

 

______

 

「……つくづく嫌な顔を見る、遠坂。聖杯戦争は終わってるじゃないのか?」

 

「私としては子供から逃げて私と桜を置いていった貴方を信用できるかと言われたらできないのだけれど」

 

「シロウは私のだ、リン。貴様には渡さんぞ」

 

「……忠犬、何故この駄目イド女が二人に?」

 

俺、衛宮士郎は平行世界まで来て家族会議に繰り出されている。

 

「えと、だな。俺が平行世界の衛宮士郎と言う話はしたか?」

 

「なっ!そうなんですのMr.?!」

 

「えぇ、でも何で私がいるのよ、しかも」

 

「なに?若い頃ってこんなにもキャンキャン言ってた訳?」

 

「ふむ、マスター。今と変わらないと」

 

アーチャーの奴が無駄口を叩いて遠坂に、ガンドを打ち込まれてる。

 

「地獄に落ちろ、マスター」

 

「兎に角だ!平行世界で何だが、俺はシロウ・コトミネ・オルテンシアかシロウ・エミヤ・オルテンシアと名乗り、子供が6人いる」

 

「えぇ、認知も!定期的に会いにも、来るわね!そこの腐れシスターに奪われたけど」

 

「フフッ」

 

カレンがにこやかに笑ってるが、止めろ。

 

「てか、アンタも何でイリヤが居るのよ!前回でギルガメッシュに」

 

「止めろ、さっさとここに来た理由を」

 

「……は?聖杯解体するために聖杯戦争起こして!アンタが裁定者として派遣されて、言峰みたいに気づいたらセイバーのマスターなってたクセに!」

 

「待て、俺は知らんぞ!俺は遠坂、お前から解体するから手伝えと言われたがその時は始祖と戦闘中でしかも、ボロ負けして大怪我を負った時期だ!カレンが行ったはずだぞ」

 

「えぇ、忠犬の変わりに私が…………」

 

「つまり?限りなく近い所にある平行世界の衛宮士郎ってこと?」

 

「そうだ、しかも俺とカレンは転生して更に平行世界に生まれた。俺は衛宮士戸で、偽名のシロウ・コトミネ使って教会で雇われ代行者してて、今はカレンとアルトリアと板挟みで生活してる」

 

「……あら、朴念仁の振りは止めたのね」

 

「朴念仁のフリして内縁の妻が2人だぞ。二度とするか」

 

「でも、聞かせてよ。貴方の世界の衛宮士郎は」

 

「少なくとも、ここにいる遠坂凛とルヴィア、間桐桜、あとイリヤは落としてるし、リズとセラも」

 

「最悪ね」

 

アーチャーが傷を受けてるけど、俺は笑ってやる。そして、後ろを向けば

 

「お兄ちゃん、最低」

 

「シロウ、見損なったぞ」

 

「……平行世界のシロウとはいえ」

 

なんでさ

 

なんやかんやあってわ俺達は学校からこの世界の衛宮士郎の武家屋敷に来た。

 

「まず、俺達もうすぐ死ぬ衛宮士郎の世界だ」 

 

「お兄ちゃん、そんなの止めて」

 

クロエに泣き顔で止められるが、あの時の昂揚感が抜けたせいか正直歩くのもやっとだ。

 

「……冗談抜きだ、俺は今戦えば戦うほど身体が死んでいく。戦えば強いが、マジで寿命の前借りみたいなもんでな、死んだらアルトリアとアヴァロンを探す旅に出る予定だ」

 

「そう、まぁ私は逃がしませんが」

 

「カレン、貴様は付いてきそうだな」

 

「兎に角、俺の世界をAとし、そこのボロボロの衛宮士郎いるこの世界をBとし、遠坂達の世界をCとして、分けた」

 

 

Aメンバー

衛宮士郎 アルトリア・ペンドラゴン

カレン・オルテンシア 

クロエ・フォン・アインツベルン

イリヤスフィール・フォン・アインツベルン

遠坂凛 ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト

バゼット・フラガ・マクレミッツ

ギルガメッシュ

 

Bメンバー

衛宮士郎 美遊 ギルガメッシュ 言峰綺礼

山田

 

Cメンバー

遠坂凛 サーヴァントの塵芥なゴミクソ野郎

間桐桜 セイバー 多分いるその世界の衛宮士郎

 

「貴様は私に対して」

 

「丁度いい、この世界の俺。紹介してやるよ、正義の味方を願ったあげく、小を切り捨てるという狂った衛宮切嗣の考えに理解を示し、抑止力と契約して抑止の守護者に落ちた俺達の成れの果ての一つだ」

 

「は?」

 

「つくづく貴様は、そう言うお前こそ正義の味方ではなく悪の敵として世界中の悪を私刑で裁き、カレン・オルテンシアに救われるまで地獄にいた。代行者として人ならざる存在や外道魔術師を何人殺した?証拠も残さず、家族ごと、そして…最終的には人類悪でありながらまったく別の何かへと、貴様根源と接続までして」

 

「あん?アルトリアと歩むためだった、根源に繋がったのは何故かは知らんし、知るつもりもない。あと、こんな風になったのは想定外だ」

 

そう言って俺は天使と悪魔の様な姿を見せる。

 

「待ってくれ、二人共平行世界の」

 

「そうだな、お前だよ。衛宮士郎、しかもだ。俺は根源、アカシックレコードに常時接続状態でな、お前の記憶も流れてきた。まったく、こっちに俺が居なかったら美遊は独りぼっちだった。判ってるのか?」

 

「それは、そうだけど」

 

「お前も逃げるべきだった。それこそ、美遊と一緒に」

 

美遊の兄だからこそ判る言葉を紡ぐ俺と衛宮士郎。

 

「それで、私としてはCのメンバーが気になるんだけど」

 

「なに?多分いる衛宮士郎って、後何で桜さんが」

 

「まず!セイバーが現界してるからだな、パスが無ければサーヴァントは終だ。でも、未だに受肉もせずに現界している事。エインワーズに居なかったという事はその世界の俺は多分、独自に動いてるな。それこそ、セイバーに魔力だけを供給して。次に、何故間桐桜なのか。アサシンのクラスカードを使っていたのが桜だからだ。それに、もう一つのカードは何故かダブってるランスロットだな。アサシンは多分呪腕のハサンだろう」

 

 

「どうして」

 

「桜が先輩と呼ぶのは俺、衛宮士郎だけだ。ほかは遠坂先輩やら名字をつける」

 

「へぇ、そこは、気付いてたんだ」

 

「伊達に朴念仁のフリなどしていない。俺は聖杯戦争に勝つ為の準備をしてたんだからな」

 

「の割に、キャスターと葛城先生をもう一人の両親的に、言峰を師匠としてたり、」

 

「止めろ、兎に角だ。まぁ、おかしくはないだろ。何処かの世界線で呪腕のハサンはあの、間桐源蔵のサーヴァントだし、ランスロットは間桐雁夜のサーヴァントだ。間桐という関係なら桜と繋がりは有る」

 

俺はアカシックレコードをを頼りに情報を得る。

 

「それで、山田ってだれ?」

 

そうイリヤから聞かれた、いや山田のはずだぞ。

 

「私は田中です!」

 

「すまん」

 

急いで書き直す、しかしだ。何故武家屋敷にホワイトボードが

 

「ついでにいえば、Aでの最高戦力は英雄姫ギルガメッシュ又は、コトミネです。彼はどうやら影の国にまで赴き、かのクー・フーリンが行った修行を二ヶ月で終わらせてきた男です。ルーン魔術においては、この中でNo.1で」

 

「貴様、そんな事まで」

 

「マジで私の所の衛宮士郎とは違うわね」

 

「ゲイ・ボルクは貰えなかったが、生身でも強いぞ?」

 

言峰綺礼仕込の八極拳と、スカサハ仕込の体術と槍術とルーン魔術、さらにアルトリア仕込の剣術もある。

 

「なぁ、俺もアンタみたいに強く」

 

「なりたいか?なら、どうだ?お前の傷も直してやるぞ、アカシックレコードの魔力を自由に引き出せるからな、亜種聖杯なら簡単に作れる」

 

「聖杯を?」

 

「といってもあくまでも魔力リソースだぞ?お前のボロボロの身体なら治せるかもな」

 

そう言って模造聖杯を衛宮士郎に渡してやる。

死ぬべきじゃない、コイツは俺よりも人間らしいんだから。

 

「…願えば、俺は治るのか?」

 

「治るし、お前の魔術も教えてやる。俺と、そのカードの英霊と同じ様に戦わせてやる。カードなしでな」

 

衛宮士郎は決意したように聖杯を使った、そして白だった髪やボロボロだった身体が治っていく。

 

「流石だね、偽物」

 

「真の聖杯は要らないさ、俺はこの世界から連れ出したいんだからな」

 

「まったく、別世界はどうでもいいか」

 

傷が治った衛宮士郎に抱きつく美遊。

ソレを見たら、何処か嬉しくて、切ない気持になっていく。

 

「…」

 

その時だ、俺の視界が揺らいだ。

 

「お兄ちゃん!」「シロウ!」

 

クロエとアルトリアが支えてくれる。

 

「ゴホッゴホッゴホッ」

 

口から溢れようとする大量の血をおさえ、ボロボロの神父服で拭う。

 

「大丈夫なのか」

 

「きにするな、美遊の、俺達の妹の為だ。それに、俺には恋人も、家族もいる。こんなので死んでられないんだが………」

 

「なぁ、風呂入って寝てくれ。もぅ、立ってるのも辛いんだろ?」

 

衛宮士郎(自分自身)に見透かされたようで、何だか変な気分だ。

 

「そうだな、」

 

「私が入れよう、行くぞ。シロウ」

 

「ならば私も」

 

「黙れ、貴様は貴様のシロウの心配をしろ!」

 

「私が手伝うわ、私の忠犬だもの」

 

「シロウは私のだ」

 

アルトリアはカレンを認めている気がする。

何故か、二人で俺を風呂に連れて行こうとするからだ。

 

「お兄ちゃん、帰れるよね」

 

「大丈夫だ、クロエ。また、キャンプしような」

 

アルトリアとカレンは俺を支えてくれている間、何も言わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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衛宮士郎の始まりPart1

翌日、俺達3人はとある相談会というか、どういう存在なのかを全員に伝えるために集まっていた。

 

「……くそったれ、じゃんけんで負けたから俺からだ。そうだな、これは俺達の聖杯戦争。それこそ、クラスカード、なんかじゃない。真に、英霊、サーヴァントと7人のマスターによる殺し合いの話だ」

 

 

それは衛宮士郎の始まりの物語。

 

1994年、冬木市を災害が襲った。

しかし、それは災害などではない、一人の魔術使いの、願いの先にあったものだった。

 

「熱い………ここは」

 

燃え盛る街並み、煤け、誰も居なくなった瓦礫の上をただ只管少年は歩いていた。

助けて欲しい、死にたくない、誰か、誰か。

願い、求め、歩き続けると一人の男が少年を抱きしめた。

 

「生きていてくれてありがとう」

 

それが少年の、――士郎が終わった瞬間だった。

士郎は気付くと病院の上で寝ていた、点滴を打たれ、ボロボロだった身体は動かせない。

 

「……君は、このまま施設に入るのと、見ず知らずのおじさんに引き取られ付のなら、何方が良い?」

 

おじさんいや、衛宮切嗣はそういった。

その日から、――士郎は衛宮士郎となった。

衛宮士郎は良く教会に祈りに行った。

神が何かしてくれたのかと、願いが通ったのだと。

 

「ふむ……熱心な信徒かと思ったが、どうやら違うようだな」

 

「言峰神父のご友人の……おはようございます」

 

「フッ…童子にしては良くできている、貴様名を」

 

「衛宮士郎です」

 

それがある種の腐れ縁の始まりであった。

ライダージャケットを着た金髪の男性は、士郎から見ても整い、そこら辺のモデルが霞んで見える程の男性だったのだから。

 

「……励めよ、偽物(フェイカー)。そしてだ、神等に祈るのは止めよ」

 

それが、フェイカーと呼ばれた由縁。

人類最古の英雄王に名付けられた肩書だ。

 

「……言峰神父」

 

「今日も来ていたか、衛宮士郎」

 

「えぇ、しかし神に祈るのは止めにします。何故か、金髪の男性と話してそんな気がしたので」

 

「では、何に祈るのかね?」

 

「何でしょう、息とし生きる者達とはどうでしょう」

 

士郎は子供とは思えないほど、感性が変わっていた。美しいものも、醜い物も、悪しき物も、全てが等しく映るのだ。

ソレを相談できたのが、言峰綺礼という神父だけだった。

それからだ、衛宮士郎は言峰綺礼に何故か気に入られた。

八極拳という戦い方を習い、人ならざる存在と戦う事を教わった。

だが、それは日常の外での事だ。

日常では士郎は義父である衛宮切嗣の世話を続けていた。時折訪れる藤村大河にも手伝って貰っていたが、それでも一番献身的に世話をしていた。

長期の旅行に赴いては衰弱していく、そんな衛宮切嗣を士郎は見ていて苦しかった。

 

「士郎、僕が魔法使いだって事は話たかい?」

 

「義理父さん、そんなのは止めろ。冗談は」

 

「冗談じゃない、士郎。僕は、君に魔術を教えたい……僕のスペアになってほしかったんだ」

 

衛宮士郎は知った、衛宮切嗣が自分を拾ったのは助けた為と、もう一つ。自分のスペアとするためだと。

 

「士郎、君には姉がいる。その子はきっと僕を、そして、君を憎むだろう。でも、見捨てないで欲しい、士郎」

 

「判ったよ、姉さんに会う。そして、助けるよ」

 

それが衛宮士郎の最初の誓いだった。

そして、次に来るのが衛宮士郎が悪の敵を願った誓い。衛宮切嗣から魔術を教わり、鍛え上げられ、衛宮士郎は衛宮切嗣すら越える存在となった。

 

「僕は正義の味方になりたかったんだ」

 

衛宮切嗣の最後の言葉に士郎はつなげる。

 

「なら、俺がソレを支えるよ。俺は、正義の味方にはなれないけど、きっと悪の敵にはなれる。誰かを踏み躙る悪を、倒す、そんな奴になら」

 

「あぁ、その時は二人で頑張ろう」

 

そして、1999年1月15日の話だ。

衛宮切嗣は眠るように息を引き取った。

しかし、衛宮士郎は泣けなかった。

家族のはずだった、悲しくもある。

だが、何処か理解していた。

覚悟していた、衛宮切嗣の死に泣くことはなかった。

 

「泣かないのかね、衛宮士郎」

 

「言峰神父、悲しいとは何でしょう。何処か、感情が苦しくはあります。しかし、涙は流れない。これは駄目なのでしょうか」

 

衛宮士郎は八極拳の師である言峰綺礼にその事を相談する。誰か、それこそ家族が死んで悲しいという感情が理解できない。

人はいずれ死ぬ、遅かれ早かれだ。

 

「ふむ……面白い、衛宮士郎。私の仕事を手伝い給え」

 

衛宮切嗣が死ねば、言峰綺礼が師となり衛宮士郎を鍛えた。人ならざる物を狩り、魔術を教わった。

 

「待ちなさいよ!言峰と最初から知り合いだった訳!」

 

「……遠坂、別に」

 

「巫山戯んじゃないわよ!言峰の奴も」

 

「…続けるぞ」

 

衛宮士郎は恐怖のコントロールも可能となった。

親密な存在である間桐桜、姉代わりの藤村大河の前ではまったくの別人を演じられた。

研ぎ澄まされたナイフではなく、一人の存在。

衛宮士郎でいられたのだ。

そこから数年し、衛宮士郎の前にはもう一人の師となる人物である葛木宗一郎が現れた。

 

「……衛宮、何故求める?」

 

「救わなきゃいけない人がいるんです、先生。

殺してでも、血を流してでも、救わなきゃいけない人が」

 

そして、数ヶ月いや1年程、衛宮士郎が葛木宗一郎に師事を受けていると葛木宗一郎はボロボロの女性を拾ってきた。

当時の衛宮士郎はその正体を知っていた。

キャスター、聖杯戦争の為に呼び出された過去の英霊だと。

だが、衛宮士郎は参加すると思っていなかった。

 

「あら、坊や宗一郎様は」

 

「先生はまだだよ、キャスターさん。ほら一成に何か言われる前に作っちゃおう」

 

キャスターのサーヴァントは貴賓に満ちていた。

だが、宗一郎を愛しているのは本当だった。

衛宮士郎は柳洞寺に通いながら、キャスターに料理を教え宗一郎から教えを受け、自身の養父の墓を整える。

この頃には衛宮士郎にとってキャスターのサーヴァントは母の愛を知らない故に、母親の様になっていた。

 

「……坊や、魔術師なのね」

 

「……うん、親父からも受け継いだ。投影開始」

 

キャスターという存在を知っているから、信頼し、信用しているから、死んで欲しくないから、衛宮士郎は自分の秘密を見せた。

 

「投影魔術、しかも………これは」

 

キャスターに見せた物は簡単なフォーク。

しかし、本来なら消滅するはずの投影魔術は残り続け、存在している。

 

「壊れたりすれば消えるんだ、ほら」

 

フォークの先端を壊し、消滅させる。

キャスターはそれに驚愕し、問うた。

 

「坊や、貴方は」

 

「……助けたい人がいるんだ、俺の親父は、その人を助けられなかった。だから、スペアとして俺を助けたんだ。それが、それが存在意義だから」

 

衛宮士郎はそこで壊れた。

誰でも良かったのだと、家族とはスペアではない、血の繋がり有る者達だけなのだと。

 

「…うそ、パパは」

 

「……そうだろうね、イリヤ、お前の衛宮切嗣は優しいんだよ。俺も優しくされたから判る、俺の所の親父は俺の事はきっとスペア程度だったがね」

 

だが……それでも衛宮士郎は衛宮切嗣を尊敬していた。家族として、父親てして。

学校では各部のサポーターとして活動し、学生間の仲も良い。

衛宮士郎は典型以上の優等生だった。

 

「よぉ、衛宮」

 

「慎二か、何だ?次のテストで賭けでもするか?そうだな、負けたら新都で焼き肉奢りなんて」

 

「はっ?やってやるよ、今度も僕が勝つけどな」

 

「ざけんな、1点差なくせに」

 

「お前が英語でしくってくれて助かったよ」

 

「……許せねぇ」

 

衛宮士郎にとって間桐慎二はライバルであった。

自分と同じ様に優等生を演じていながら、何処か抜けている存在。そして、守りたい日常である間桐桜の兄。

柳洞一成は親友であり、大きな存在であるのだ。

 

「しっかし、慎二。もし、俺が魔法使いだって言ったら信じるか?」

 

「は?」

 

その時の慎二の顔には衛宮士郎の知らない程の闇があった。

 

「ほら」

 

そう言いながら衛宮士郎はまるで手品のようにナイフを懐から出し、自分の口に入れていく。

周りにいた生徒達も驚きの声を上げる。

 

「あむあむ……たらーん」

 

「は?」

 

「ネタバラシ、慎二食べてみろ」

 

衛宮士郎はもう一本のナイフを出し、慎二の口に入れる。はたから見れば猟奇的な映像だが、それは直ぐ様収まる。

 

「甘?!」

 

「デザインチョコだ、クソ甘いし不味い。なぁ、慎二。お前最高だよ!一緒にマジシャンやらないか!売れるぞ、俺達さ!」

 

「巫山戯るな!尖ってたぞ!てか、何処から出した!」

 

衛宮士郎は笑いながら許してくれと謝る。

間桐慎二はそういう存在だった。

だがその日常も破壊された。

1月31日の事だった。

何時ものように暗い夜道を武家屋敷へと帰る途中、異国の少女に声をかけられた。

衛宮士郎はその存在を知っている。

 

「…早く呼ばないと死んじゃうよ、お兄ちゃん」

 

「……イリヤスフィール姉さん」

 

「へぇ………わかってるんだ。でも、私は貴方とキリツグを許さない」

 

それが俺とイリヤスフィール姉さんとの初の

 

「待って!お兄ちゃんよりも私が…歳うえ?!」

 

「見た目は変わらんがな、イリヤスフィール姉さんはホムンクルスだ。勿論、お前もだイリヤ。今は違うぞ?どうやったか知らんが、お前は人間だ」

 

「へ?」

 

「イリヤスフィール姉さんは当時18だったしな、それよりも続けるぞ」

 

2月2日の事、衛宮士郎は親友の一成の手伝いをしていた。

 

「くわぁぁぁ」

 

「おい衛宮、人前で欠伸はするものでない」

 

「一成、そうは言っても仕事が多すぎだぞ。まったく、このブラウニーと言えども大変だ」

 

「ブラウニーよりも、貴様はルシファーだ!」

 

「堕天使かよ」

 

これは当時の衛宮士郎の異名である最初、何故か穂群原学園のブラウニーと呼ばれていたのだが、人をおちょくり、笑い、愉悦を感じていると、『穂群原学園の堕天使』と何故か呼ばれるようになった。当時としてはブラウニーの方が好きであったが。

 

「兎に角だ、貴様は速く帰れ。残りは俺がやっておくよ」

 

「悪いな、お先に失礼」

 

衛宮士郎は静かに立ち去る。

そして見てしまった、当時赤い悪魔と呼ばれ

 

「危な?!ガンド飛ばすな遠坂!」

 

「「アンタが変な事言うからでしょうが!!」」

 

「赤い悪魔が!」

 

兎に角、赤い悪魔と呼ばれていた遠坂凛とそのサーヴァントである色黒見せ筋赤

 

「偽・螺旋剣」

 

「熾天覆う七つの円環。お前等は静かに話を聞けないのか!」

 

「黙れ、貴様こそきちんと話せんのか!」

 

遠坂凛とそのサーヴァントてあるアーチャーが、ランサーと学校の校庭で戦っていた。

魔術の秘匿も考えず、学校にその時間なら人が居ないと、甘い想定をした結果である。

もっと別の場所でやりようがあった筈だが。

 

「は?」(遠坂凛A)

 

アーチャーとランサーの戦闘は熾烈を極めていた。アーチャーくせに干将莫耶を投影し、ランサーのゲイ・ボルクの高速で打ち合いを行っていた。あれは見ていて思った、何処がアーチャーだとな。恐ろしいのはランサーだ、アレだけトリッキーに戦うアーチャーにハンデを負いながら戦闘していたのだから。

俺は、面倒事に巻き込まれたく無いためさっさと逃げる事に

 

「ふざけてるわよね?あの時の事忘れてないわよ」

 

ココは私、遠坂凛(A)が話すわよ。

衛宮君はアーチャーとランサーの戦いを見て、偵察に徹していたの。

私のアーチャーとランサーの戦い方、ソレを調べるためにね。でも、アーチャーがそれに気づいた。

 

「何者だ!」

 

あの時の事は覚えてるわよ、急に大きな、それこそ人が隠れれる程の盾を持った生徒がアーチャーと、ランサーを吹き飛ばしたんだから。

 

「ちっ……」

 

その後、まるで煙のように消えたわ。

 

「あの野郎!巫山戯やがって!!弓兵!てめぇは後だ!」

 

「まて!ランサー!!!」

 

あの時のランサーはキレてたわね。

恐ろしい事に衛宮君はその後、顔のない王という宝具を使って逃げていたらしいの。

 

「……ここからは俺だぞ」

 

衛宮士郎は命からがら武家屋敷へと戻ったのだが、どうやらランサーに追跡されていたようでバレてしまった。

 

「てめぇ、何もんだ。魔術師じゃねぇな」

 

「ほお、流石だな。赤枝の騎士、相手にとって不足なし」

 

衛宮士郎はラウンドシールドを投影した。

そして、ランサーと一騎打ちに入ったのだ。

 

「あるのは知っている、固有時間制御2倍加速」

 

それは、衛宮切嗣から受け継いだ魔術。

衛宮士郎は盾を使い、ランサーを吹き飛ばす。

 

「つええ……こんな戦いだ!俺が待ってたのは!」

 

「当たり前だ、しかし…この盾使い勝手が良いな」

 

「はぁぁ!」

 

衛宮士郎に迫るゲイ・ボルク、真名は開放していないが、ランサーのそのスピードは実に恐ろしい。しかし、固有時間制御で加速している衛宮士郎はなんとか対応できたのだ。

 

「お前、名は」

 

「スカサハ」

 

「ざけんな」

 

「衛宮士郎だよ、赤枝の騎士」

 

「ちっ…有名すぎんのも問題だな。お前とはもっと楽しみたいが……悪いな

刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)」

 

「真名開放、

偽・理想の城

フェイク・キャメロット」

 

かの城が映りだし、消えた存在が蘇る。

盾は消えていく、しかし段々とけずられていき、ついに衛宮士郎は土蔵へ吹き飛ばされる。

ラウンドシールドを杖代わりにして立ち上がる。その時だ、地面が光続け、俺はその日に運命とであった。

 

「問おう、貴方が私のマスターか」

 

「あぁ、俺が……君のマスターだ」

 

「マスターだったのかよ、サーヴァントまで呼び出しやがって」

 

「マスター、その盾!いえ!怪我は」

 

「ランサー、赤枝の騎士クー・フーリンのゲイ・ボルクだ。この盾が無ければ即死だった。いやはや、流石因果逆転のやり、避けることは叶わず、刺されなければ意味をなさないとはな」

 

「……貴方がその盾を持っている、気になりますが、良いでしょう」

 

「えっと、クラスは?」

 

「セイバーです」

 

「なら、セイバー。ランサーの撃退が優先だ、倒す必要はない。行くぞ、」

 

「はい、マスター!」

 

衛宮士郎は鎧を投影した、かつて見た西洋鎧。

ソレを、生きるために。

 

「はぁ!」

 

「クソ、見えねぇ剣ってのは卑怯だろうが!」

 

「どうした、赤枝の騎士!」

 

衛宮士郎の盾とセイバーの不可視の剣。

たった今、出会ったとは思えない程に整った連撃、それにクー・フーリンは嫌気が差していた。

 

「てめぇ、本当はそのセイバーの従者とか言わねぇよな!不老不死とは!」

 

「ざけんな、不老不死なんているかよ!苦しさなら、お前が一番知ってんじゃねぇの?!アンタの師匠からさ!!」

 

「ちぃ、嫌な所をを!」

 

「セイバー!」「マスター!」

 

「ちぃ!クソが!」

 

ランサーは衛宮士郎を蹴り飛ばすと、闇夜に紛れる。

 

「マスター?!待て!ランサー!!」

 

「セイバー、もう良い……」

 

受け身に成功していたが、鎧は砕け、霧散していく。残っているのは盾だけだ。

 

「ふぅ……」

 

ボロボロとなった武家屋敷を魔術で修復する。

苦手ながらの作業で時間を食い、更に自身の手当が遅れてしまう。屋敷の中に入り、自身に簡単な手当を行う。セイバーに手伝って貰いながら、歩き、座布団に座る。

 

「……さて、セイバー。話そうか」

 

「マスターは魔術師なのか」

 

「ん…いや、魔術使いかな?俺の名は衛宮士郎」

 

「衛宮?すまない、衛宮切嗣という名に」

 

「……そうか、真名は判った。すまない、アーサー王。義父が貴方に、死んでしまった彼に変わり、俺が謝罪を」

 

衛宮士郎はセイバーに深く、頭を下げた。

 

「いえ、過ぎたことです。それで、マスターの願いは」

 

「……願いはない。強いて言うなら、イリヤスフィール姉さんを救うことかな。衛宮切嗣が出来なかったことだから」

 

「マスター?」

 

「俺は、親父のスペアだから。親父が助けられなかったイリヤスフィール姉さんを救う必要があるんだ」

 

当時の私(アルトリア)はその瞳を見て私と同じなのではと思ってしまいました。

 

正直、見ている私が苦しかったぞ

(アルトリア・オルタ)

 

「……セイバー、君の願いは?」

 

「選定のやり直しを、祖国を救うために」

 

「……やり直し、なら勝たないと。君のために、願いがない俺よりも、君には相応しいよ」

 

「否定、しないのですか?」

 

「だって、俺も変えたい過去はあるよ。でも、セイバーの願いの方が重要だもの。俺さ、親父に拾われるまでの記憶がない、その記憶を取り戻したいし、やり直したい。そうすれば今みたいな俺にならずに済むかもしれない」

 

「今みたいなとは?」

 

「泣けないんだ、悲しくないんだ。親父が死んだときも、痛いときも、悲しいって感情がない、苦しいって感情がない、あるのは怒と喜びだけ、歪な存在、それが俺、まるで人形だろ?笑顔を作りながら、中では何も感じてはいないんだ」

 

セイバーは絶句していた。

理解できない存在を見ているようで、それともまったく別の何かか。まるで、作られた様な存在、そう、

 

「…モードレッド?」

 

「違うよ、俺は衛宮士郎」

 

「すまない、マスター」

 

「堅苦しいからさ、シロウで良いよ」

 

「えぇ、シロウ」

 

本当に私は何故モードレッドと言ってしまったんだ。似ても似つかないぞ、シロウとアレは

(オルタ)

 

えぇ、色々とありますがシロウは私とカレン、キャスターには常に純粋でした。

モードレッドよりも、とても良い人です

(アルトリア)

 

………俺達の陣営は敢えて、教会には行かずにいる方針をとった。

しかし、迫るマスターの存在に立ち向う事を強いられる。

 

「呼んだのね、お兄ちゃん。しかも………裏切り者のセイバーだなんて」

 

「なっ!イリヤスフィール、しかし」

 

「年上からお兄ちゃんとはな、……まったく、イリヤスフィール姉さん。止めてくれ、切嗣の為に」

 

「切嗣はお母様を見殺しにし、私達アインツベルンを裏切った!そして貴方の様なぽっと出を拾って家族ごっこ、巫山戯ないで!!やっちゃえ!バーサーカーー!」

 

「なっ、本物のイリヤスフィールなのですか」

 

「セイバー、不味い!偽・理想の城!!」

 

セイバーの前に立ち、バーサーカーの攻撃を真名を開放した盾で防ぐ。

 

「シロウ!」

 

「戦え!戦え!今を生き残る為に!

お前は、騎士だろう!セイバー!!!」

 

「五月蝿いわよ!バーサーカー、叩き潰して!」

 

「ぐぁぁぁぁ」

 

「ぐっぁぁぁぁぁぁぁ」

 

バーサーカーの石斧が俺の身体を空中に打ち上げる。アチコチから血が溢れ、体制を立て直そうとすれば、バーサーカーが眼の前に。

 

「シロウ!」

 

「舐めるな!!!!」

 

振るわれた石斧を避け、バーサーカーの腕を蹴り飛ばす、その反動を使い自身の身をバーサーカーより先に地面につける。

 

「セイバー!」

 

「えぇ!」

 

セイバーがバーサーカーと打ち合いを始めるが、腕力から言えばバーサーカーに部がありすぎる。

 

「投影開始『無毀なる湖光(アロンダイト)』」

 

自身の能力が何れ程かは判らない、しかし衛宮士郎はその身を使う。

 

「うっ!オォォォォォ!!!!!」

 

「嘘!バーサーカー!!!」

 

バーサーカーを俺は空に打ち上げる。

 

「アロンダイトまで!シロウ、貴方は」

 

「俺の魔力!持ってけ!!!!セイバァァァー!!!!!」

 

「『約束された勝利の剣(エクス……カリバー)』ァァァッ!!」

 

閃光が夜空に登っていく、その光に心を奪われる。

 

「バーサーカー!!!」

 

「……イリヤスフィール」

 

「……待てセイバー…殺さない、守るって、約束したんだ。姉さんを……必ず……」

 

血だらけの身体で俺は姉さんに近づく。

 

「何で!キリツグは貴方を拾って家族ごっこを」

 

「イリヤスフィール、それは違う。シロウは……キリツグのスペアだそうです」

 

「え?」

 

「兎に角だ、今は寝かせるべきです。私も、シロウの願いである貴方を傷つける気はありません」

 

「………バーサーカー、彼を、弟をお願い」

 

「ぐるらぁぁぁ」

 

「なっ、生きて?!」

 

「……私のバーサーカーは最強だから」

 

翌日、衛宮士郎の前には月のように輝く髪、そして、蒼き騎士鎧を来た男装の美少女が。

 

「シロウ、恥ずかしいです」

 

「漆黒の鎧は嫌いか?おい、嫌いなのか」

 

「愛している、アルトリア。君の全てを、それこそこの身を君に捧げても構わない程に」

 

「貴様は私の鞘なのだ、当たり前を言うな」

 

「……凛、私が言うのも何ですが私とシロウよりも、あの私とシロウは重くありませんか?」

 

「……両重いね」

 

「美遊様?」

 

「少し、不満なだけ」

 

話を戻そう。その少女とかのバーサーカーを従え、自身が義父に救うと違った姉が、自身の姉代わりの藤村大河と親友の妹である間桐桜の二人と言い争っていたのだ。

 

「先輩に何をしたんですか!」

 

「違う、シロウに私は何もしていない!」

 

「士郎と話を」

 

「俺は無事だよ、藤ねえ、桜」

 

頭から左眼にかけて赤くなった包帯を巻き、杖を使って歩いている姿に二人は絶句した。

 

「セイバーさんと……紹介するよ。戸籍上なら、俺の妹のイリヤスフィール・フォン・アインツベルン嬢だ」

 

「士郎、それって」

 

「……藤ねえには辛い話かもな。親父、切嗣には昔愛を誓いあった人がいたんだ。でも、イリヤスフィールの家はドイツの名家、親父は稼いでると言っても日本人。婚約は許されなかった。でも、秘密裏にあっては逢瀬を重ね、想い人はイリヤスフィールを身籠ってしまった。藤ねえも覚えてるだろ、親父が外国に行ってたのは」

 

「うん、切嗣さん毎回ドイツに行ってて、変なお土産ばっかり」

 

その言葉に驚いたのはイリヤスフィールだった。

何度もドイツ語で【違う、嘘よ】と呟いている。

 

「……うん、わかった。けど、士郎のその怪我は」

 

「そうですよ!先輩のお父様の話は悲恋過ぎます、でもその怪我とその人達は」

 

「昨日のよる、バイクに乗った変な男に轢かれたんだ。全身青タイツの変態だよ。棒状の何かを振り回してた。二人が手当してくれたのか?」

 

「はい、それは勿論」

 

「キリツグの話聞かないと行けないし」

 

「なら、入院しないと」

 

「駄目よ!私は時間がないの!入院なんかしてキリツグの話を」

 

「そんな、先輩の身体は」

 

「桜、これは俺の親父からの頼みでもあるんだよ。遺言の一つかな、イリヤと話して欲しい、俺は義務がある。責務がある、衛宮切嗣に拾われた時から、俺は……衛宮士郎になったんだから」

 

「判りました、でも毎朝見に来るのは」

 

「そうよ!それぐらい…てかご飯も」

 

「私のメイドにやらせるわよ!そうね、朝は許すから早く出てって、」

 

衛宮士郎は松葉杖やらを付け、痛々しい風貌をしながら二人を見送る。

 

「親父の罪は俺の罪だ、それにどうやらあの子は親父と何度もあっていた。死んでいることすらまだ、知らないんだ」

 

「…でも、士郎」

 

「そうです、先輩は」

 

「……俺はさ、大丈夫だから。藤ねえも、桜も、ありがとう」

 

二人を見送り、俺は武家屋敷に戻る。

 

「……シロウ、それは」

 

イリヤスフィールとセイバーの前で汚い包帯を捨てていく、中からは無傷の身体が現れる。

 

「セイバー、俺はまずイリヤスフィール姉さんに渡さなくちゃいけない物がある」

 

それは衛宮切嗣が託した者、衛宮士郎の知らない存在達が笑顔で笑いあい、写っているロケットだ。

 

「……お母様、キリツグ」

 

「……俺の物じゃない、切嗣に愛されてるのは貴女だけだよ。イリヤスフィール姉さん」

 

「シロウ、ですが」

 

「…セイバー、同盟を組みたい相手がいる。イリヤスフィール姉さんも、話して欲しい。あの人なら、もしかしたら姉さんを救えるかもしれない」

 

「待って、なら一回帰らないと、シロウと……セイバーも来て」

 

イリヤスフィールは衛宮士郎とセイバーを見た。

何処か迷っていたが、ルビーの目は慈愛に満ちている。

 

「行こうか」

 

タクシーを呼び出し、イリヤスフィールの居城。

冬木市のアインツベルンの古城へと向かった。

セイバーは懐かしむように、装飾を見ている。

 

「……私はアイリスフィールと共に居ました。

イリヤスフィール、あの」

 

「お願い、お願い……セイバー、話さないで」

 

悲しむような、苦しむ様な、そんな声で告げる。

セイバーはソレを聞けば何も言えなくなってしまった。

衛宮士郎はどうやら足が治って居ないというか激しく折れていたようで松葉杖は変わらない。

 

「セラ、リズ、ただいま」

 

「……イリヤ、おかえり」

 

「リーズリット。おかえりなさいませ、お嬢様。そして、」

 

「衛宮切嗣の代理、衛宮士郎。そして」

 

「サーヴァントセイバーです」

 

「お嬢様の招待ですので、しかし何かすれば」

 

「お願い……セラ、今だけは止めて………」

 

イリヤスフィール姉さんは泣いていた。

俺はその涙を拭う資格はない、所詮、衛宮切嗣のスペアなのだから。

 

「……それで、シロウ貴方は」 

 

「衛宮切嗣の目的はイリヤスフィール姉さんの救出、俺はその為にこの力を教えられた。宝具を投影できるという、まさに封印指定されてもおかしくないこの力は、イリヤスフィール姉さんを救うためだけに鍛えられてきた。その為に、衛宮切嗣から魔術回路も受継いだ」

 

「……教えて、シロウ。キリツグは」

 

「俺を何とも思ってないだろう、ただ自身が壊した街で偶然拾った子供だ。どうせ、その程度だ」

 

「違う、キリツグは優しくて、でも…ズルくて」

 

「それはイリヤスフィール姉さんに対してだけだよ。俺は、姉さんと違うけど同じだよ。ホムンクルスだ。人間から生まれ、あの日、全てをリセットされ、家族の記憶も何もない。そして、衛宮切嗣という存在にイリヤスフィール姉さんを助ける為だけに作られた」

 

「違う!キリツグはそんな事は」

 

「……切嗣をそう思ってくれているなら、切嗣はきっと浮かばれる。……姉さん、会ってほしい人がいる。お願いだ、俺と来てほしい」

 

「どういう」

 

「同盟、そして……姉さんを人にするために」

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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衛宮士郎の始まりPart2

俺は姉さん達の了承を取り付けた。

自分の力さえあれば、該当する人物の願いは叶えられるからだ。

 

「ほぉ、サーヴァントを連れてなお……」

 

「アサシンですか、シロウ」

 

「セイバー、止めてくれ。昼に来た意味が無い」

 

「ねぇ、シロウ。本当に私を……」

 

「可能性がある、あの人なら」

 

当時の俺は藁にも縋る思いだった。

だからこそ、母親と思える女性に話をつけに来たのだ。

 

「来たのね、坊や」

 

「うん、キャスターさん」

 

当時のキャスターはコルキスの王女メディア。

ギリシア神話の魔術師だ、詳しく知っているはずなんだ、魂のことなら。

 

「わかっているのかしら、いくら坊やでも」

 

「俺は……キャスターと葛木先生をもう一人の母親、父親だと思ってる。だからこそ、死んでほしくないし、殺したくない。だから……」

 

「坊や、何を」

 

俺は自分の持てる知識をすべて使った。

 

「投影開始」

 

自分の血を媒体にし、魔力を捻り出す。

手にするのは、黄金の果実。その模倣品。

女神ヘラの果樹園「ヘスペリデスの園」に生えている、かの果実の模造品。

 

「坊や!」

 

魔力だけでない、命すら持っていかれる。

だが……俺の生命など惜しくない。

俺が俺になった時点で、既に

 

「……それは」

 

「待って、お兄ちゃん……それって」

 

「ヘラクレスの試練、その11番目。黄金の果実。俺がやれれば姉さんにも、でも悪い。これは、キャスターさんへのだ。それに……俺よりも、キャスターさんの方が詳しい」

 

「そうね、模造品だけど私が限界し続ける力はあるわ。良いでしょう、坊や。何故来たのかしら」

 

俺は目的をすべて話した、この人に獺は付きたくないから。

 

「……できなくはないわ、でも、」

 

「……材料がない」

 

「えぇ、アスクレピオスが居れば宝具で」

 

「……待てよ、母さん。母さんの魂食いって吸血か?」

 

「……シロウ?」

 

「坊や、なんと?」

 

「……失言だった、忘れてく」

 

「へぇ………シロウはキャスターみたいなお母様が……へぇ………」

 

「ー!!!!!!!」

 

何故か言葉が話せないヘラクレスすら笑っている気がする。なんだ、この嫌な雰囲気は。

 

「魂食いはしてるわよ、ガス漏れ?アレがそうね」

 

「なら、吸血鬼は違うか。取り敢えずだ、アインツベルンはバーサーカーのヘラクレス、衛宮はセイバーのアーサー王、キャスター陣営はアサシンを召喚し、ランサー陣営はクーフーリン、遠坂はアーチャー、間桐は不明だな」

 

「真名も言うものでないぞ、シロウ」

 

「だがな、セイバー。姉さんにはバレているし、バーサーカーは姉さんが、キャスターの真名も正直わかった気がする」

 

「え?シロウ、キャスターの真名わかったの?」

 

「あぁ、ヘラクレスとアスクレピオスそれをまるで旧知の仲の様に話す存在は少ない。女性ともなればな」

 

「なら、何故真名を」

 

「俺は、キャスターに信じて欲しいからだ。キャスターも俺の灰色の世界に色をくれた一人なんだ。セイバー、無論君もだ。何もない俺に意味を……」

 

俺は理解したくなかった、自分には何もない事を。でも、藤ねぇ、桜、慎二、そして、キャスターが意味をくれた。

衛宮切嗣の願い、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンの救出さえ終われば、俺に意味はない。

 

「坊や、本気なの?」

 

「キャスター、スペアとして育てられている俺に、何の意味がある。俺は、この聖杯戦争の最中に死ぬことになる。姉さんなら、セイバーの願いを叶えられ、なおかつヘラクレスを裏切りもしないだろう」

 

イリヤ姉さんは俺に驚きの表情を向ける。

 

「わかるの?バーサーカーの言葉が……」

 

「姉さん、言葉じゃない。バーサーカーの目的は姉さんを守り抜くことだ。バーサーカーはその為なら、命すら惜しくない。その筈だ」

 

「バーサーカー?」

 

「ぐぉぉぉぉ」 

 

頷くように首を動かし、そして吼える。

 

「バーサーカーの願いはイリヤスフィールの生存。しかし、私のマスターはシロウだ!それに……私はまだあの盾の」

 

「坊や、それに……聖杯戦争は英霊を聖杯に焚べないと」

 

「必要ないんだ」

 

俺の一言はイリヤ姉さんすら知らなかったようだ。それに……セイバーすら。

 

「なぜです、シロウ」

 

「衛宮切嗣から聞いた、冬木の災害とは彼がセイバーに聖杯に対して宝具を使わせたことで、聖杯の泥が溢れた為に起こった事だと。そして、俺は調べた。今までの聖杯戦争で、勝者は居ない。

あの中身は知らないが、泥というのはおそらくは溜まりすぎた魔力の事だろう」

 

「つまり、これ以上だと溢れ出る?」

 

「そうだ、最悪の場合は冬木の壊滅。どうなるかはわからない、ここら辺で勝者を作らないと、後々面倒だ」

 

「しかし!私はシロウ!貴方と共に勝ち上がると」

 

「……王ならば、目的を見誤ってはいけない。

王ならば、その力、そして、仲間を信じなければいけない。セイバー、俺を信じてくれ。必ず、必ず君を聖杯に導こう。例え、死んでも」

 

悪の敵になる、その目的は衛宮切嗣の死と共になくなった。失われた。

意味のない、空の夢となった。

だからこそ、俺はセイバーを導く存在となりたい。

 

「今夜、今夜よ。バーサーカーのマスター。貴女を人間にして上げる。この、コルキスの王女がね」

 

「…ありがとう、ねぇ、シロウ。さっきのまた出せる?バーサーカーの為に」

 

「ぐろぉ?」

 

姉さんはバーサーカーを家族だと、ならば願いに答えなければいけない。だが、まだ無理だ。

 

「せめて、あと2日。まだ、まだ万全じゃない。だから……それまで待ってて欲しい」

 

「うん、ありがとう。シロウ」

 

そして、俺達が向かうのは墓地。

寺の裏手に存在する衛宮家の墓。

 

「キリツグ………嘘つき」

 

姉さんは泣いている、俺はそれを慰めるすべはなく、ただ見守るだけだ。

 

「……ねぇ、シロウ。シロウに家族は」

 

「存在しない、記憶に無い両親など、存在しないと同義だ。俺は、衛宮切嗣のスペアなのだから」

 

「……そう、もう良いわ」

 

寺を出れば姉さんと別れる事になる。

無意味な事だが、それでも………

 

「ねぇ、シロウ。シロウも私と過ごそう、セイバーの願いを叶えればシロウは」

 

「……何故?」

 

「私はアインツベルンの当主になる、決めたわ。私はドイツの、御爺様を滅ぼす。だから……その時は手伝って。そして……一緒に暮らすの」

 

「あぁ、そうだな。イリヤ姉さん」

 

俺が振り向けばセイバーと姉さんは立ち止まっていた。

 

「……キリツグ」

 

「俺は……衛宮士郎だよ」

 

思えば、あの時はセイバーから見ても似てたのかもしれないな。

 

「……それで、なんでこっちに二人が居るんだよ」

 

「衛宮の名前はそれ程我がアインツベルンにとって重いのです。リーズリット」

 

「セラ、気にし過ぎ」

 

「……どうやって入ったかは聞かない。ここで生活するなら、好きなようにしてくれ。ただし、藤村大河は巻き込むな」

 

「良いでしょう、貴方の交友関係は既に調べています。何故、そこで彼女の名前が出ないのかも」

 

「……知りすぎれば死ぬのはお前だぞ」

 

切嗣の形見のトンプソンコンテンダーをセラに向ける。そして、ホルスターにしまうと同時に握手を行う。

 

「よろしく頼む」

 

「えぇ、エミヤシロウ」

 

そして夜、俺達はキャスターのいる柳洞寺に向かう途中、出会いたくない一派と出会う事になった。

 

「ここで出会うとはなぁ……坊主」

 

「舐めるなよ、俺をな」

 

「マスター、応戦するぞ」

 

俺の前に現れたのは英霊クー・フーリン。

同じように、鎧と盾を構える。

 

「姉さん、先に行け。俺とセイバーが戦う」

 

「でも」

 

「……バーサーカー、姉さんを守るならお前の元仲間のところへ」

 

「ぐらぁ」

 

バーサーカーは頷き、姉さんを抱えて飛び上がる。

 

「何故待っていた、ランサー」

 

「セイバー、俺もな……戦う意志のないガキを殺すつもりはねぇ。それにな、俺はそこの小僧に興味があんだよ」

 

「……マスターは守る」

 

「守られる必要はない、俺も戦えるのでな」

 

「行くぜ、セイバーとそのマスター!」

 

「はぁ!」

 

円卓の盾でランサーの槍を防ぎ、その隙をついてセイバーが剣戟を入れる。

この時、ランサーには真名はバレて居なかったからな、優位に立ち回れた。

 

「はい!あの、真名って」

 

「イリヤ、真名とはつまり、その英霊の名前だな。セイバーならアルトリア・ペンドラゴン。そこの見せ筋色黒クソ野郎は不本意ながらエミヤシロウという名前がある」

 

「ふん」

 

「ジークフリートやアキレウスならクロエ。お前は何処を狙う?」

 

「ジークフリートなら背中、アキレウスならアキレス腱っそういう事ね。弱点が」

 

「そうだ、真名は弱点を示す物でもある。因みにそこのエミヤシロウの弱点は遠坂凛、間桐桜、藤村大河、その他大勢だ。いやはや、エミヤシロウ。私よりも毒牙にかけた女性の数は多いと見える」

 

「ぐっ……貴様は!さっさと話を戻せ!」

 

 

……セイバーと俺対ランサーという図式ができていた所に邪魔をするように矢が飛んできたのだ。

現れたのは遠坂陣営、つまりアーチャーだ。

 

「ランサーに、セイバーとそのマスターまで?!」

 

「マスター、気を付けろ!コイツラは糸筋縄ではいかない」

 

「ちっ!アーチャー!一時休戦だ、お前はセイバーを狙いな!俺はセイバーのマスターをだ!

刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルグ)」

 

「舐めるな!顕現せよ、

『偽・いまは遙か理想の城

(フェイク・キャメロット)』!」

 

俺が真名を解放した盾、そして背後には巨大は白亜の城が出現する。

 

「これは……マスター!!」

 

「セイバー!!行けるか!!!!!」

 

俺の気持ちが、言葉が伝わってくれたのだと感じた。

彼女を、俺自身を守るために存在した城。

 

「束ねるは星の息吹、輝ける命の奔流。受けるが良い!

─約束された勝利の剣!!!!

(エクスカリバァァァァ!!!!)」

 

セイバーの宝具はアーチャー、そして、ランサーを飲み込んだ。しかし、殺し切る事はできなかったのだ。

 

「セイバー、今のうちだ」

 

「えぇ、シロウ」 

 

俺はセイバーに抱えられながら柳洞寺に向かった。そこでは既にバーサーカー、イリヤスフィール姉さん、キャスター、アサシンが待機していたんだ。

 

「酷くやられたのぉ、セイバーのマスターよ」

 

「あぁ、流石は赤枝の騎士だ。だが、お前も相当だろ、アサシン」

 

「ふむ、その目、死にたい男の目ではないな」

 

何処か此方を見透かすような若いアサシンになんとも言えない感情を抱きながら、キャスターとセイバーに手当をされる。

 

「英霊とやり合うだなんて……坊やは自分の身は大事になさい」

 

「…そうです、シロウ。それに!あの城の事も私はまだ聞いてませんよ!」

 

「シロウ、お説教だよ」

 

「まったく、怒る女は怖いとはいやはや」

 

霊体化して消えたアサシンを恨みつつ、反省を述べた。

 

「ごめんなさい。……あと、セイバー。君の、質問の答えだけれど、俺は宝具の投影もできるんだ。あれは」

 

「ギャラハッド卿の」

 

「使い勝手が良かったんだ、鎧はイメージだぞ?」

 

「だが……私は嬉しい、かつての仲間達と居るようで」

 

「…お似合いね、二人共」

 

「……!」

 

この時、キャスターに言われた一言に赤面するセイバーの写真を何故収めなかったのか。

かつての俺に対して怒りが隠せないさ。

 

「シロウ、あのそういうのは」

 

「……止めてくれ、シロウ」

 

二人のセイバーがたじろぎ、俺の心は壊れそうになるほどの……

 

「お・兄・ちゃん」

 

「ク……クロエ」

 

「話しなさい、速く」

 

「……忠犬、ん」

 

「?!」

 

「貴方は私のものです」

 

「こいつは」

 

「何故かしら、ここで殺したほうが後々」

 

「やめろ、お前たちの世界の事を俺に巻き込むな。アルトリアも、カレンも後で話すぞ。色々とな」

 

取り敢えず!俺達はそこから距離を縮めていった。

 

「良い夜ね、衛宮くん」

 

「………遠坂」

 

なのに、怒り心頭の遠坂と出会ったんだ。



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衛宮士郎の始まりpart3

当時の俺は騙すつもりでいた。

鎧は全身鎧、顔は見られていないはずだった。

 

(セイバー、まだ霊体化しておいてくれ)

 

(しかし、シロウ)

 

(アーチャーが何処から狙っているか判らない。君には警戒を)

 

(わかりました)

 

「こんな夜更けに何してるんだよ」

 

「えぇ、それはコチラの台詞よ。セイバーのマスター」

 

「マスター、何を言ってるんだ?俺は葛木先生の奥さんに料理を教えに来てるだけだぞ」

 

俺はそう言うといつものようにヘラヘラとしながら隣を歩く。  

武器もない、敵対心もない。

当時の俺は、遠坂凛を知っていた。

セカンドオーナーという自分と確実に敵対する立場。

 

「ごふっ」

 

だが、俺を背中から一差しするサーヴァントが居た。アーチャーだ。

 

「アーチャー!アンタは」

 

「マスター!気を抜き過ぎだ!コイツは」

 

アーチャーの叫び声と同時に俺はアーチャーの左肩を起源弾で撃ち抜いた。だ

 

「やれやれ………セイバー、計画変更だ。ここでアーチャーには脱落してもらおう、敵対者には死だ」

 

トンプソンコンテンダーから放たれた起源弾でアーチャーは英霊でありながら魔術回路に傷を負った。それなのに無理矢理干将莫耶を投影して、此方を狙うように立ち上がる。

 

「なんで………なんで……いきてるのよ!」

 

「蘇生のルーンだ、生憎……魔術師の殺しには慣れている。偽装の仕方も完璧さ、俺は魔術師殺しなんだからな」

 

「シロウ、私の後ろに」

 

「なら、遠坂を俺は狙おうか」

 

 

俺の言葉を聞いた瞬間、遠坂の顔が青くなった。

 

「アーチャー!止めて!ここで争うのは不味いわ!」

 

「しかしマスター!!」

 

「お願い!」

 

アーチャーが干将莫耶を消しながら、だが、俺の射線上から遠坂を守るように立ちはだかる。

 

「セイバー、何時でも抜けるように。……さて、セカンドオーナー、何故やめた?」

 

「…魔術師殺し、違うわね。雇われ代行者、貴方の話は聞いてるわよ。魔術師殺しの息子」

 

「知らなかったのか、親父の……衛宮切嗣の事を」

 

「同姓同名の他人だと思ってからね、さて……衛宮くん。是非ともお話がしたいのだけれど。冬木のセカンドオーナーとして」

 

その言葉には頷くしかなかった、セカンドオーナーから対談を申し込まれたなら、受けなければ後々面倒臭い。

特に、時計塔という場所には面倒なクズが大量にいる。

何度……鏖殺してやろうかと思ったことか。

 

「まって……そんな事考えてたの!?」

 

「執行者や屑どもが封印指定してきてな、返り討ち、血族一つ鏖殺した。人質もな、簡単だったぞ?付け上がりには良い薬だ」

 

「貴様は無垢な人も」

 

「?何言ってる、魔術師な時点で大抵はクズだ。ロード・エルメロイ二世の所はまともだがゼルリッチの爺とかは本気のゴミだぞ。何度か生命狙ってやったが飄々としてやがる」

 

「何してんのよ!」

 

「いや……お兄様は魔法使いも敵に回して」

 

「………他の世界のことと言えど、変わりませんね。貴男に再起不能にされた代行者が何人居たか」

 

「うそ……アンタ、そっちの世界でも」

 

「だって……邪魔だしな、」

 

無駄話は終わりだ、俺は衛宮家に遠坂を連れて行った。

 

「さて、衛宮君」

 

「すまない、遠坂嬢。簡単な饗しぐらいはしよう」

 

そう言い、俺は遠坂を上がらせ饗しの支度をする。遠坂家がこの冬木での名家だと知っていることもあり、高級茶葉と和菓子を出す準備をする。

 

「……シロウ」

 

「セイバー、君の分もある」

 

「ありがとうございます!いえ!そうではなく」

 

「………忘れていた、まぁ……死んだらその時だろ」

 

「リン!」

 

イリヤ姉さんとバーサーカーのコンビが遠坂を襲おうとしたが、赤い弓兵に防がれる。

 

「ナッ!バーサーカー?!衛宮くん、貴男!!」

 

「…生きてたか」

 

「シロウ、何これ」

 

「姉さんか、冬木のセカンドオーナーだ。殺すのは不味いぞ」

 

「へぇ……貴女が。私はイリヤスフィール・フォン・アインツベルン、そこの衛宮士郎の姉よ」

 

「姉?どう見ても妹か」

 

「話している場合か!」

 

「バーサーカー、もう良いわよ。どうせ後で殺せるもの、そのアーチャーは」

 

バーサーカーは石斧をしまい、イリヤ姉さんを肩に乗せた。

 

「良かった、茶菓子が無事でな」

 

半壊した武家屋敷に投影魔術を応用した修復魔術を行い、即座に直す。

 

「魔術師殺しと対談したいらしい、セラさん、リズさんも、あまり出てこないでほしいね」

 

「……私達はお嬢様の護衛ですので」

 

「ん、イリヤは守る」

 

取り敢えず、夕餉の準備と晩餐の準備を行った。

 

「……美味しい」

 

「凄いわシロウ!リズよりも」

 

「くっ…」

 

「モキュモキュ」

 

「……美味」

 

「なっ」

 

「ねぇ、衛宮君は」

 

「魔術師を殺すなら毒殺が楽でね、特に美味なる食事は最後の晩餐に相応しいと思わないか?」

 

俺がそう話した瞬間、遠坂が吹く。

 

「おや、レディにしては酷い物だな。これが遠坂の御令嬢か」

 

「アンタが毒とか」

 

「……私はこう言ったぞ?毒殺にはとな、これは私のもてなしだ。第一、人の食事にケチを付けるのか?」

 

「リン、少なくともこの男はもてなしの流儀は保っている。今は君が不敬に当たるぞ」 

 

「……くっこの」

 

この時、何処か無様な姿に愉悦を感じていた。

 

「ふむ、まぁまぁの出来か。セイバー、美味しいかい?」

 

「えぇ、シロウ!貴男が私の下に居れば」

 

「……それは良いかもしれないな」

 

「駄目よ!シロウは私が貰うんだから!」

 

「むっ!イリヤスフィール」

 

「そうだな、イリヤスフィール姉さん」

 

適当に返事をしながら遠坂の方を向く。

 

「さて、見ての通り俺はアインツベルン陣営だ。さて、そこでだ。何の御用かな、遠坂凛嬢」

 

「……今冬木で魂食いが行われているの。その犯人を」

 

「……間桐だ」

 

「何が」

 

「おそらく、マスターの名前は間桐桜。いや、あの家なら慎二か?」

 

「何を……」

 

「遠坂よりも今回に備えていたのは衛宮だ。敵の情報は先につかんでおくべきことだ」

 

「シロウ!私にも」

 

「エミヤ・シロウ、お嬢様に話さないとは」

 

「俺個人で決着をつけるつもりでした。ガス爆発の件はこちらの同盟者だ。敵対するつもりなら殺すぞ」

 

当時、色々とやることが多かった俺は常に脅すが先に出ていた。

 

「くっ……そんなの」

 

「できないなら終わりだ、今日は遅い、休んでいけ。セラさん、頼みます」

 

「……良いでしょう」

 

「ちょっと!待ちなさ」

 

「こっち」

 

セラとリズに連れて行かれる遠坂、そして衛宮邸に侵入しないアーチャー。

 

「セイバー」

 

「えぇ、マスター」

 

完全武装し、盾を構えながら外に出る。

 

「やれやれ、客人の饗し方も知らないと」

 

「客人か、生憎だな。我が家には敵対者は血祭りに上げろという教訓がある。さて、アーチャー」

 

「…我がマスターを傷付けたこと、許さん」

 

「俺も腹を貫かれた借りを返さないとな……さて、遠坂は終わりだ」

 

「ちぃ!」

 

アーチャーが干将莫耶でセイバーの約束された勝利の剣を受け止めるが、俺が盾で吹き飛ばす。

 

「貴様は」

 

「おっと、経験はあるみたいだが……」

 

干将莫耶を正面からバカ正直に振ろうとしていた。俺は英霊にも味覚がある事、痛みを感じることを知っている。

 

「トラップはな」

 

「ぐ!」

 

赤い粉末、いわゆる唐辛子だがコイツは実に便利だ。調味料と言っておけば問題はないにも関わらず、相手を尋問するのに使える。

 

「きっ…貴様」

 

「目は一定時間見えないよな?さて、死んでもらおう。赤い弓兵」

 

「シロウ、駄目!」

 

脇腹から何かが俺を吹き飛ばす。

グシャリという音と、足が変な方向に曲がっている事以外俺は変わらない。

 

「イリヤスフィール!シロウ、無事か!!」

 

「まさか……遠坂がイリヤスフィール姉さんを抱き込むとは………」

 

再生を加速させ、自分の肉体を回復していく。

 

「イリヤスフィール!貴女は!」

 

「セイバー、大丈夫。イリヤスフィール姉さん、酷いじゃないか。死ぬところだったぞ」

 

「大丈夫よ、バーサーカーは手加減できるもの」

 

「ぐるるぅぁ!」

 

足と体が再生したのを確認し、立ち上がる。

 

「シロウ、アーチャーを倒すのは駄目よ。アインツベルンと遠坂は同盟を結んだのだから」

 

「その期間は?」

 

「…吸血鬼討伐までよ」

 

「命拾いしたな、赤い弓兵。吸血鬼を倒せば敵同士だ。次は……確実に仕留める」

 

盾を背負い、傷ついた赤い弓兵を見る。

 

「衛宮くん、やってくれたわね」

 

「君の目的は同盟ではなく協力だったな。ならばこちらで吸血鬼を仕留めれば協力となる。無論、それまでに君がアーチャーを失おうと俺には関係ないことである。だが、まさか……イリヤスフィール姉さんを抱き込むとはな」

 

「…仕方ないじゃない、リンったらおかしいの。バーサーカーに勝てるはず無いのに私に啖呵きって!私のバーサーカーは最強なのにね」

 

「……そうだな、悔しいがセイバーも勝てない。この聖杯戦争でバーサーカーに勝てる英霊を呼び出すのは困難だろう」

 

「シロウ、そういうのは悔しいのですが」

 

「セイバー、悲しいがバーサーカーには勝てんさ。俺たちでもね。それに、バーサーカーは現界し続けるさ。イリヤスフィール姉さんの最強の護衛として。俺も……教えを請うべきかな?」

 

「なら!先に私にです!盾ばかりでなく剣も」

 

「アーチャー、私達って」

 

「蚊帳の外か……」

 

俺はアーチャー気付かれないようにアーチャーを睨んだ。アーチャー本人以外には気付かれない。

この時、奴も睨み返してきた。

 

「さて、正直マナバレしていると思う。だが」

 

「アーサー王、一体どんな触媒……いえ…その円卓が触媒かしら」

 

「…話す必要はない、そしてだ。遠坂、お前のサーヴァントはなんだ。俺は聖杯戦争に備えてきた、歴史も学び、英霊への知識で言えばお前やイリヤスフィール姉さんよりも高いと自負している。だが……お前だ、お前の真名が想像できん。何者だ、その顔……肌は黒いが日本人だな?」

 

「なっ!アーチャーは記憶喪失で」

 

「………笑わせる、まったく……笑わせる。まぁ良い、間桐を仕留めればこの同盟は終わりだ。その時は……アーチャー、貴様を殺す。この身体が叫んでいる、貴様が俺の敵だと。覚悟しろよ……Faker(贋作者)」

 

この時、セイバーもイリヤスフィール姉さんも、俺から距離をとっていた。

理解できない憤怒、それを目の前の存在から感じたからだ。

 

「…死ぬのは貴様だ」

 

「………」

 

夜は、こうして開ける。

 

 

 

 

 



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衛宮士郎の始まりpart4

傷を負った衛宮士郎だったが、持ち前の再生能力により戦いを続けようとする。
しかし、ばーさーに吹き飛ばされ、姉であるイリヤから衝撃の一言が飛び出した。




「……シロウ、なんであんな事したの」

 

「アーチャー陣営は邪魔だ、アサシンの居場所はわかったがアーチャーは不明だった。それに間桐なら俺とイリヤスフィール姉さんだけで倒せる」

 

俺はイリヤスフィール姉さんから視線をのがし、淡々と真実を述べる。

 

「でも、同盟を」

 

「それに、宣戦布告をしたのはアーチャー。セイバー陣営である俺は死にかけていたんだぞ」

 

バーサーカーに紐で縛られ、石斧を背中に突きつけられた状態では流石に正直に話すしかない。

それに、我が姉は実に容赦がないのだ。

 

「私の目を見て話しなさい」

 

「何処か似てる雰囲気の存在と、学校でクー・フーリンと馬鹿した女にムカついた。姉さんの隣に居るし、アーチャーは外にいた。殺すチャンスだったからやった、後悔はない」

 

「シロウ、貴方は」

 

俺は悪びれるつもりもなく、言い切った。

 

「俺の目的はイリヤスフィール姉さんの生存だ。そして、セイバーの願いを叶えること。さっさと大聖杯の魔力を使って願いを叶えれば問題ない」

 

「なっ…なんですって!聖杯戦争は」

 

「知らないのも無理はない、遠坂時臣は敗北者だ。自身で御せるとし、人類最後の王を呼び出した間抜け、そうだろう?」

 

「アンタは!」

 

俺は遠坂凛に打たれた、その瞳には激しく怒りが滲んでいる。

 

「……馬鹿なんだよ、俺は……聖杯戦争に備えてきた。父親に、衛宮切嗣に全てを話された。判るか、あの泥の中で本来の俺は死んだ。残ったのは怒りと憎しみ、憎悪、悲しみ、万物を全て平等にしか見れない存在。真っ平らの世界で、変化がおきた。俺は託された。衛宮切嗣からイリヤスフィール姉さんを。そして、始めて見たんだ、光を。俺を息子の様に思い愛してくれている女性、そして……気高き女騎士を」

 

「なら…桜や……藤村先生は」

 

「……彼女達もそうだな、俺の守るべき日常だ。俺、衛宮士郎が雇われ代行者や魔術師殺しではなく、穂群原学園のルシファーで居られるファクターだ」

 

「……わかりました。シロウ、貴方に」

 

与えられた一言が俺の運命を決めたんだと思う。

殺ししかしていなかった俺の始めての勲章なのだから。

 

「貴方に、円卓の騎士としての役目を与えます。我が騎士として、共に戦いなさい」

 

「………陛下の身心のままに」

 

「なっ!そんなのおかしいじゃない!なんで…なんで…サーヴァントが」

 

「リン、シロウの存在は歪だ。だが、判る。シロウには導くものが必要なのだ。私に…私にそんな価値はないかもしれない、だがシロウに呼ばれた。求められたのなら、騎士王としてそのすべてを使おう」

 

俺は導きを求めていたんだ、イリヤスフィール姉さんを救ったあとの事。

全てだ、殺し合いも、聖杯戦争に備えるのも、全てイリヤスフィール姉さんの為だった。救ったあとの事など考えていなかったんだ。

 

「シロウ、ライダーのマスターは知っているか」

 

「…………話せません」

 

「つまり、知っていると?」

 

「ちょっとシロウ!お姉ちゃんの私にも話せないの?!」

 

「イリヤスフィール姉さん、話してもいいが遠坂凛が何もしないことが条件だぞ」

 

「ちょっと、それどういう意味よ」

 

俺はこの時に全てを話した。

 

「陛下、イリヤスフィール姉さん、俺がこの聖杯戦争の為に備えてきた事は知ってるな?」

 

「えぇ、シロウ。貴方は何度もそう話していた」

 

「全ての聖杯戦争の状況を調べ、今回の聖杯戦争が異常であることも理解している。本来なら後50年は後だったのだから」

 

そう、聖杯戦争は60年おきに起こるのだ。それが、たかが10年でおきた。

 

「ライダーのマスターは……間桐だ」

 

「なっ!」

 

「マキリ・ゾォルケン……アインツベルンにはそちらの方が良いか」

 

「……シロウ、続けて」  

 

「俺が桜が間桐だと知って付き合っているのには理由がある、偽りの日常を俺に与えてくれる存在の一人だから、そして…だ。マキリ・ゾォルケンによって作られた偽りの聖杯だから。もし、危うくなれば聖杯戦争が消える、代行者なんでね、マキリ・ゾォルケンごと、間桐桜を殺そうとも考えていた」

 

その瞬間、平手打ちが迫った。だが、俺は逆に遠坂の手を強く握り締め、苦しませる。

 

「衛宮君…貴方は」

 

「馬鹿だなぁ、捨てた妹の事を…桜が間桐でどんな生活をしているかも知らないくせに」

 

「!」

 

「……知ってるか?桜はな、幼少期から虫に陵辱され、辱められ、心すら壊れている。救ってやりたいが、力が無かった」

 

「アンタは……なんで…なんで…そこまで」

 

「情報収集は大切だ、敵を仕留めるにもな。だから教えてやる、サーヴァントは知らんがマスターは間桐桜、だが慎二も怪しい」  

 

「何を…彼奴に魔術回路は」

 

「…イリヤスフィール姉さん、この馬鹿。やはり脱落させよう、仲間にしていても、使い道はない」

 

「シロウ、駄目よ。いくら滑稽でもね」 

 

「シロウ、どういう事です?」

 

「陛下、サーヴァントの方々はご存知でないと思います。聖杯をアインツベルンが、冬木の管理を遠坂が、令呪を作ったのはマキリなのです。つまり、抜け穴もある。令呪を作った本人がいるんだから、死なずに、何百年も生きながらえている。マキリ・ゾォルケンが」

 

俺は遠坂に落胆した、うっかりではなく落胆だ。

もう少しマシだと思っていたんだが………

 

「…どうするつもりだ」

 

「マキリ・ゾォルケンの弱点も調べた、桜の助け方も頭の中で計画ができている。後は戦力なんだ」

 

「待ちなさいよ、慎二は」

 

「生憎だが、慎二には死んでもらう。親友だが、やり過ぎた」

 

「何を」

 

「俺は救いを知らない、殺すことでしか救えない兎に角だ。サーヴァントの敗退は精々一で終わらせたい、まぁ、ランサーでだ」

 

「…シロウ、」

 

「キャスターも味方である。守る、救うは全てに与えるものではない。限りある一部の存在に与えるものだ。慎二はその一部から外れた。それだけだ」

 

正義の味方は既に死んだ、残ったのは殺戮マシーン。

 

「さて……聖杯戦争も長引かせるつもりはない、俺はこの件を素早く終わらせたい。そして、アーチャーと殺し合う」

 

「シロウ、まだ言うの?」

 

「仕方ないだろう、残った敵対サーヴァントはアーチャーだけだ」

 

その時だった、俺は頬を打たれた。

 

「ねぇ、シロウ。私、言ったわよね。家族として、弟として貴方をアインツベルンに連れて行くって。ふざけないで!まだ、まだキリツグのスペアだと思ってるの!いい加減にして!私を救ったのは…お母様やキリツグじゃない!シロウ!貴方なの!貴方は私の弟!弟なら姉であるこの、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンに従いなさい!」

 

「……」

 

このとき、俺は何故か鎧を投影しイリヤスフィール姉さんの前に跪いていた。

 

「やめて!私が欲しいのは忠誠じゃない!騎士じゃない!家族なの!お願い………やめて…………」

 

「…イリヤスフィール、シロウは恐怖や悲しいといった感情がわからないそうです。シロウは私のマスターですが、イリヤスフィール。決めました、私はシロウを生かす。そして、イリヤスフィール、貴女も生きるべきだ。貴方達二人は、この世界で幸せになる権利がある」

 

「■■■■■…」

 

バーサーカーもそうだと言うように頷いている、それをアーチャーは辛そうに見ていた。

 

「……今、できたな。俺は……人間らしく……笑いたい……泣きたい…人間になりたい」

 

この願いが俺の『原典』だ。この日に人形である衛宮士郎から人として生きる事を願った衛宮士郎という個人になった。

それが叶うかどうかは判らないが、当時の俺はただ真っ直ぐにそれを聖杯に願おうとしていたんだ。



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FGO
Grand Order 特異点Fから


これは本編とは密接に関わりのある何時かの話です。
しかし、この作品の衛宮士郎が辿り着く成れの果ての話でもあります。


 

「サーヴァント、アルターエゴ。真名は衛宮士郎、何でも屋だ。良かったな少年、俺に会えて」

 

「衛宮士郎?!アイドルの!!!!」

 

「ココの俺は何をしているんだ」

 

黒髪の少年に何処かで見た〘赤い悪魔〙の面影を感じつつ、ボロボロとなった冬木の街を眺める。

どうやら媒体で召喚された訳じゃなく、冬木という場所に縁があるから呼ばれたみたいだ。

□□□を召喚するなんて、運がないな。

 

「……さて、パーティを始めるか」

 

「あの……貴方はあの……本当に衛宮士郎さんなんですか」

 

「さぁな、さて………サーヴァントは誰かと思ったが………クラスが変わったか、ライダー」

 

「誰です、私を知っている様子」

 

「真名は女神メデューサ。石化の魔眼、そして…ペガサス。良く知ってる、生前仲良くしたからな」

 

「誰です………私は…私はあなたの様な英雄は」

 

「眠れ……」

 

壊れかけの彼女を眠らせる為に、俺は自身に宝具を投影していく。

〘不死殺しの鎌・ハルペー〙

〘空を駆ける羽のサンダル(タラリア〙

〘鏡像結界の袋(キビシス)〙

〘青銅鏡の盾〙

 

「まさか……ペルセウス!」

 

「眠れ、メデューサ!

真名解放〘偽・不死殺しの鎌〙」

 

「アテナの……あの……物達の配下等に!!!

〘騎英の手綱(ベルレフォーン)!!!〙」

 

ライダーと宝具の撃ち合いだが、彼女が勝てる道理はない。

 

〘時ある間に薔薇を摘め(クロノス・ローズ)〙

 

止まった時間の中で俺はハルペーでライダーを斬り続けた。ペガサスすら殺し、無慈悲に、そして、敬愛を込めて。

 

「あっ……貴方は…………」

 

「…………桜の子にはお前の話をした。お前が生きていれば………桜を頼めた」

 

「いえ……桜は………幸せだった……そう、思い」

 

投影した宝具達を破壊し、誰かのマスターである少年の下に戻る。

 

「すまない……歌っても?」

 

「えっ……はい」

 

「涙が溢れるのは 君が傍で微笑むから」

「抱きしめたくなるのは 君が傍にいるから」

「何故に生まれて来たかなんて」

「考えてもわからないんだ」

「だから生きる」

「魂燃やし生き抜いて 見つけだすいつか」

「同じ時代に 今、出会えた仲間たちよ」

「「我等思う故に、我等あり」」

「新しい歴史に 漕ぎ出せ仲間たちよ」

「「我等思う故に、我等あり」」

「人生は誰も皆一度きりさ」

「「思いのままに」」

 

何故かマスターの少年も返してくれていた。

ノリが良いのは嫌いじゃない、中々面白い子みたいだ。

 

「あの、後でサイン頼んでも」

 

「生き抜いてからな、君は他に仲間はいないのか」 

 

「すみません、でも、もう一人居るはずなんです!」

 

「まぁ……今は隠れてろ。熾天覆う七つの円環」

 

「やはり、投影の精度では敵わんか」

 

「忌々しいな、俺の前に現れてそんなに殺したいか?俺としてはさっさとアルトリアとの旅に戻りたいんだが」

 

「……貴様は………どの俺よりも自由だな」

 

「悪の敵も、正義の味方もやめたからな。今の俺はアイドルで主婦で旅人で………」

 

「やめろ、お前の話を聞いていると自分が惨めに感じる」

 

ジリジリと距離を測る俺と奴。白に対して奴の赤。実に腹立たしい、俺は俺だが何度も殺しに来た彼奴を好きになるつもりはない。

 

「偽・約束された勝利の剣!!!」

 

「なっ!」

 

「俺はもう…何でも投影できるんだよ。逃げるぞ、少年!」

 

顔のない王と空を臨んだ勇気の翼を投影する。

俺を追うつもりはないのか、それとも泳がせているのか…嫌な奴には変わりないか。

 

「マスター!」

 

ある程度飛んでいるとマスターと少年を呼ぶ少女にであった。盾を持っているし、何か感じる。

 

「マスター、少年。君にはサーヴァントが居たのか?」

 

「えっ…いや、マシュ!この人は違うんだ!」

 

少年が何とか説明をしてくれたからか、少女は頭を下げてきた。

 

「ありがとうございます、私はマシュ・キリエライト。シールダーのデミ・サーヴァントです」

 

「俺はアルターエゴ、衛宮士郎だ」

 

『衛宮士郎だって?!教会の代行者が何でここに』

 

「誰だ、今の俺はサーヴァントだ。逸れだがな」

 

「そんな、生きている人間が英霊になるだなんて」

 

「おっと………それよりもさっさと女を救うぞ。ったく、お前等は何なんだ。雑魚しか居ない」

 

取り敢えず、魔力を頼りに一人の女を救う。

 

「なっ…教会の代行」

 

「うぜぇ……黙れ」

 

俺がキャリコを構えれば女は黙る。

今の俺は機嫌が悪い、嫌な奴も見つけるし、知り合いを殺すハメになるし、

 

「アサシンもか」

 

「へ?」

 

「盾の嬢ちゃん、本当に出来損ないだな」

 

「何故……ハサンさんよ。山の翁が泣いてるぞ」

 

「……初…………代………さ」

 

これで殺したサーヴァントは2騎。ランサーとアサシン、残るはクソ野郎アーチャーに、セイバー、ライダー、キャスター、バーサーカー。

 

「貴方は何者なの、サーヴァントのようでサーヴァントでないし」

 

「俺はサーヴァントなんだがな、まぁ……俺自身何でこっちに召喚されたか知らん。少なくとも、〘まだ〙死んでないからな」

 

俺は嗤いながら銃剣の干将莫耶を構える。

 

『皆!気をつけてくれサーヴァントが』

 

「大丈夫だ、この男は奴等とは違う」

 

「……てめぇ、服装も変えやがったのか!アーチャー!!」

 

「黙れ!俺を……俺をアーチャーと同じだと思うのか!あのクソ野郎と!」

 

「てめぇ……坊主か!」

 

「こい…家に行くぞ」

 

俺はクー・フーリン達を連れて適当な民家に入った。

 

「……んで?お前、何で彼奴みたいになってんだ」

 

「お前が何処まで知ってるか知らんが、俺の名前は衛宮士郎だけじゃない。

シロウ・コトミネ・オルテンシア

又は

シロウ・エミヤ・ペンドラゴン

だ」

 

「お前、セイバーとあの腐れシスターに捕まったのか」

 

「言うな、あの二人からは逃げれなかった。というより、セイバーとは相思相愛だったからな」

 

どうやら色々と覚えているようで話が弾む。

少年少女達には適当な料理を振る舞い、キャスターと会話をする。

 

「さぁて、邪魔者はいないな」

 

「あぁ……聞かせろ」「聞かせな」

 

「お前は誰だ」「てめぇ……何になった」

 

キャスターが杖を、俺は干将莫耶を構える。

 

「てめぇ……人ならざる者に墜ちやがったか!俺の槍託されといて……お前は!!」

 

「……貴様こそ誰だ、記憶も、奴と、クー・フーリンと同じだな。だが……彼奴はどんなクラスになってもゲイ・ボルクだけは失わない!」

 

「やるか」「決まっている」

 

「投影開始…偽・朱の魔槍」

 

「アーチャーと同じかとも思ったが……その振る舞い、スカサハか」

 

「血の滲むような2ヶ月だった、ゲイ・ボルクは受け取らなかったが……舐めるなよ。この俺を」

 

「舐めてねぇよ!」

 

俺の槍とキャスターの杖がぶつかり、激しい衝撃波が起こる。これで起きてしまうだろうが、今はキャスターの正体の方が先月だ。

 

「少なくとも、俺はランサーが好きだった。戦って彼奴ほど楽しい奴は居なかった!」

 

「ちっ!俺と同じだろうが!!」

 

「スカサハのルーンとは違うようだぞ!

キャスター!!」

 

キャスターの魔術によるものか、二匹の狼が俺を狙ってくる。

 

「くそ…喰らえ。アンサズ!」

 

「ちぃ…スカサハ仕込は伊達じゃねぇか!」

 

「気配が……くそ」

 

ルーンによるものだろう、気配が消えた。

 

「我が魔術は炎の檻、茨の如き緑の巨人。因果応報、人事の厄を清める社───

倒壊するはウィッカー・マン! オラ、善悪問わず土に還りな───!

 

とっておきをくれてやる

焼き尽くせ木々の巨人。

『灼き尽くす炎の檻(ウィッカーマン)』!」

 

「熱い……」

 

灼熱がこの身を焦がす、だがこの身体にソレが効くことはない。

 

死ぬ、違う、救う、違う、愛する、違う、

守る、違う、衛る、違う、護る、答えは……

 

「てめぇ…………その姿は」

 

「知り合いにも、見せたくなかった。その顔だから、少なくとも、俺の恩人のサーヴァントでもあるからな」

 

「………堕ちやがったか!獣に!!!」

 

左側に堕天使の如き翼が4枚生える、しかし対になるはずの右側には何もない。

人間ではない、サーヴァントでも無い。

 

「そうだ、キャスター。俺は、完全に墜ちては居ない。まだ、生きている俺が、完全に落ちた時。俺も、完全なビーストに覚醒する」

 

「……何がお前を追い詰めた」

 

「妹ができた、新たな世界で。だが、俺の身体はボロボロだった。俺は戦えない、子供達を戦わせたくなかった。護りたかった」

 

「付け込まれたか……」

 

「キャスター、お前は確かにクー・フーリンだよ。俺の知ってるクー・フーリンであり、俺の知らない誰かだ」

 

俺は干将莫耶を下げ、キャスターの出方をまつ。

 

「何の真似だ」

 

「俺はまだ獣じゃない、ソレにな。俺はまだ死んでない、死にかけの俺だが、俺が生きている限り俺も獣には落ちない」

 

「……良いぜ、どうせ今だけの関係だ」

 

「ちょっと、何してるの!」

 

「嬢ちゃんか、何、こいつの実力をな」

 

「クー・フーリンとやり合いたくなった。だが……そうだな、やはりゲイ・ボルクを持ったランサーのお前か、数多の宝具を使いこなすライダーのお前と戦ってみたいものだ」

 

俺は嗤っていたと思う、キャスターが嫌な顔を見るように俺を眺める。

 

「さて、キャスター。君は藤丸と仮契約したのだったな」

 

「なんだその胡散クセェ話し方はよ!」

 

「何、感謝の気持だ。受け取れ」

 

「おいてメェ、それ何処から出した!」

 

「……あの………それは」

 

「坊主!ソレを食うな死ぬぞ!」

 

それはキャスターは知っている。

真っ赤なマグマのような赤い麻婆。

吐き気すら覚えるような、気持ち悪さの塊。

 

「さぁ、食べろ。キャスター」

 

「よせよ……お前はそんなやつじゃねえだろ!」

 

「さぁな……カレンに食わされまくったからか、美味いと感じる様になってしまった。さぁ、キャスター、共に美味を知ろう」

 

「ざけんじゃねぇ!」

 

愉悦を感じているのは、どうやら俺が言峰と同じ様になり始めているからなのかな。

 

「……つくづく醜い顔だなアーチャー」

 

「ふむ、そう煽るな。私は貴様のあり方を嫌っては居ないぞ」

 

「お前が俺を褒めるだと?吐き気がする」

 

「おい、アーチャー。てめぇの相手は俺がする」

 

「そうだな、キャスターの相手をしてもらおう。俺は………」

 

「はっきりと言ってやる、彼女は俺ではなく貴様をご所望だ。理由は理解しているな?」

 

「はぁ…………」

 

頭を抱える、つまりだ。こいつも奴等も俺の記憶がある、クラスカードとして現れた記憶がある。

そして、

 

「少なくとも、私を一番で殺しに来たのだ。理由は察しろ」

 

アーチャーは笑っている、完全に理解しているんだろう。

 

「つまりか、お前は何かに侵食されたから現界し続けていると?」

 

「そうだな、セイバーに聞くと良い」

 

「……キャスター、肉片残らず殺せ」

 

俺はゲイ・ボルクを投影し、キャスターに投げる。

 

「お前………どんだけ彼奴嫌いなんだよ」

 

キャスターに呆れられるが、どうでもいい。

 

「藤丸、マシュ、オルガマリー、さっさとついてこい」

 

3人を引き連れて向かうは大聖杯。

 

「来たか、シロウ」

 

「………なぁ、アルトリア。聞かせてくれ、俺は獣に落ちたのか?」

 

「安心しろ、私もそこの記憶はない。それに、私は現在進行系であの街でお前を見ていた筈だ。青い私とな」

 

「止めろよ、頭が痛いぞ」

 

「あの、お二人は」

 

「「恋人だ」」

 

間髪入れずに同時に返す二人に呆れ果てるカルデアのメンバー。マシュだけは何処か頬を赤らめている。

 

「さて……まず、悲しいがアルトリアを退去させ、聖杯の確保。その後、この空間に隠れてる気持ちの悪い悪魔を霊核ごと払わなければならないんだが」

 

「なんだ、知っていたのか」

 

「根源から与えられた情報だ、アルトリア。」

 

「待ちなさい!貴方は現代の人間の筈!何をどうすれば」

 

「ちっ……」

 

「まぁ、五月蝿い蝿はどうでもいい。しかし…その盾、面白い物を持っている」

 

「……そういう事か」

 

「シロウ、そのサーヴァントの真名は言うな」

 

「わかった、予想もついた。だから言うぞ、お前に勝てないんだ。このまま俺がとやり合うか?」

 

「駄目だ、私が許せん。その盾を持っているなら私の宝具位防いでみせろ」

 

「あー……そういう」

 

「そんな、戦う必要なんて!」

 

「シールダー、アルトリアがあぁいうなら俺は自分の身は守るが他は知らんぞ。お前達が死んでも困ることはないしな。それに、お前がやらなきゃお前の先輩と所長とやらはここで死ぬ。お前がやるんだ、お前がな」

 

「…………」

 

「士郎さん、マシュは俺たちが行くまでたった一人で俺を探してくれていたんだ!寂しいとか、怖いとか、マシュが感じるなら俺はマシュの隣に立つ」

 

「先輩」

 

「OK、所長ちゃんは?」

 

「私も、私の部下を信じるわ」

 

後ろに立つじゃない、隣に立つ二人。

 

「OK!アルトリア、いやセイバー!令呪をもって命ずる!宝具約束された勝利の剣を使用せよ!」

 

「わかった、マスター!!」

 

「なっ!何でサーヴァントが令呪を持ってるのよ!!!」

 

「俺がアルトリアのマスター兼恋人兼旦那兼鞘だからだ!他に理由はない!」

 

「んな馬鹿な!!」

 

「先輩いえ、マスター!!!何故かアーサー王と士郎さんの周りだけピンク色に見えます!」

 

「兎に角行くぞ!約束された勝利の剣!!!」

 

「「マシュ!!!」」

 

「守ってみせます!!!!」

 

シールダーは二人を守ってみせた、アルトリアもソレを見届け、約束された勝利の剣を腰に戻す。

 

「よし、という訳で合格だ。おめでとう、宝具使えたな」

 

「えっ……あっ、はい」

 

「所長ちゃん、君には禁断の果実を与えよう。今すぐ食べると良い」

 

「禁断の果実って……何でそんな物を!!!」

 

「知り合いからもらった」

 

思い出すのは何故か女とかしていた英雄王。

否、英雄姫。しかも何故か俺にアプローチを仕掛けてくる。俺の物語が続いている都合上、まじでどうなるんだ。アカシックレコード、頼むからデータの更新はまだするなよ。

 

「んで、出てきなよ。俺が呼ばれるって事は人間じゃない、それこそ人外何だろ?」

 

「貴様……教会の代行者か。まぁ良い、このレフ・ライノール・フラロウスが」

 

「あっ、フラロウス何だ」

 

「………馬鹿だな、あの男」

 

「あぁ………レフ、レフなの」

 

「フラロウスよ、父と子と精霊の御名において命じる。悪魔よ地獄へかえれ」

 

「何故!…貴様、エクソシストか!!!!」

 

「悪魔フラロウスよ!父と子と精霊の御名において命ずる。悪魔よ地獄へとかえれ」

 

「よせ……止めろ………やめろぉぉぉぉぉ」

 

最後に聖水で清めた弾丸もくれてやった。

 

「え……レフは」

 

「あれ、悪魔だ。良かったな、所長ちゃんは悪魔に魅入られていたんだよ。あと少しで魂を持っていかれる所だったぞ」

 

「え…あ、ありがとうございます」

 

「何だよ、もう終わりか?」

 

「キャスター!!アーチャーの四股は切り落としたか?生皮は剥いだか?内臓を抉り出して、野犬に食わせたか?」

 

「お前、俺よりアイツの事嫌いすぎだろ!」

 

「まぁ、俺とアルトリアはこれから退去からさ。良かったね、キャスター。勝者だ」

 

「は?」

 

「シロウ、座に戻るぞ。お前の場所も用意しているからな。今度こそ、旅支度だ」

 

「あぁ、そうだ。禁断の果実は必ず食べろよ、じゃあな」

 

俺とアルトリアは互いの心臓を約束された勝利の剣で〘貫き愛〙をし、共に座に向かった。

 

「………釈然としねぇ」

 

「えと………ありがとう、キャスター」

 

「まぁ、何かあれば呼べや」

 

 

 

俺とアルトリアは座についたのだが、座というより心象空間にいる。

 

「シロウ、お前の旅路を見せてくれ。あの日から、私が居なかった日々を」

 

「……あぁ、何から話そうか」

 

長い間、アルトリアと二人きりで話し合った。

俺の苦しみ、どういう風に息子達が生まれたのか。何故、オルテンシアを名乗っているのか。

事細かく、話すことになった。

 

「喚ばれているな、シロウは」

 

「俺もか……まったく、行こうか」

 

座から離れ、出口へと向かう。

 

 

「何処だ……ここ」

 

俺は今、何処かの都市で迷っていた。

 

 

 




衛宮士郎の出現場所は大抵アルトリア関連です!
それが誰かは関係しますし、むしろ、それ以外とも関わるかと言われたらイエスとなります。
しかし、とあるアルトリアが斬りつけますし、とある女神様がブチギレますし、とある魔法少女は呆れ果て、妹二人から剣を向けられ、女神と融合した姉からは笑われ、その従者から殴られる。
そんなオリぬ士郎となります。


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サーヴァントマテリアル

衛宮志戸

クラス:アルターエゴ(ビースト・セイヴァー)

真名:衛宮士郎

性別:男性 出典:Fate/stay night 地域:日本

属性:混沌・善

 

ステータス

筋力B 耐久EX 俊敏B 魔力ー 幸運E 

宝具EX

この場合のーはEXを通り越し、あり得ないの意

 

対魔力A(EX)

 

単独行動A(単独顕現EX)

 

スキル

根源接続A

 

 

スキル1 クラスカード使用

NPを獲得量UP及び、クラスカードを使用により自身のクラスを追加する。また、宝具を選択可能となる。

 

スキル2 模造聖杯の外装

自身を含めた味方全員にNP自動回復および、ダメージカット、防御力UPが付与される。

 

 

スキル3 終わりなき星

衛宮士郎二関係するサーヴァントの攻撃力を3段階上げる。

 

好物、泰山の麻婆

嫌いな人 英雄王

苦手な人 英雄王

好きな人 セイバー

嫌いな事 子供を殺すこと

 

宝具選択

自分のコマンドカードが宝具攻撃となる。

ゲームだと1キャラでエクストラまで含めた宝具連発するクソキャラになる。

 

宝具1

 

無限の剣製”Infinited sword works”

『唯一つ忘れられない絆の剣

(エクスカリバー・ブライダル)』

 Bustr

【敵全体に超強力な〔竜種属性〕特効攻撃

<オーバーチャージで特攻威力アップ>】

 

対軍宝具

衛宮士郎の有する中で最も残虐で美しい、固有結界。月明かりの世界の中で、衛宮士郎が最後の剣を振るう演出。

 

宝具2

時のある間に薔薇を摘め

+

破戒すべき全ての符

+

無毀なる湖光

 

「てんこ盛りだ!喰らいやがれ!」

 

敵単体に超強力な防御力無視攻撃&敵単体のチャージを減らす&敵単体のクリティカル発生率をダウン(3ターン)<オーバーチャージで効果アップ>

+

強化状態解除+自身のNP増加(オーバーチャージで増加)】

+

【自身のArtsカード性能をアップ(1ターン)+敵単体に超強力な攻撃+敵単体に被ダメージが増える状態を付与(5ターン)〈オーバーチャージで効果アップ〉】

 

Arts

 

対人宝具

衛宮士郎が手にした《アサシン》《バーサーカー》《アーチャー》を無限召喚し、メディア本人から譲り受けた破戒すべき全ての符で止まった時間の中で斬りつけ、コンテンダーで自身の固有結界を内包した弾丸を撃ち出す。

その後、駄目押しの如く無毀なる湖光で斬りつける。

 

宝具3

創世の灯火(ビッグ・バン)

敵全体に超強力な〘対人理属性〙特効攻撃

〈オーバーチャージで効果UP〉

 

自身の真の姿を表し、人理に属した全てのものへ特効を与える攻撃を行う。

Quick

 

 

 

 

 

QUICK2 Buster1 Arts2

 

召喚時のセリフ

「サーヴァント・アルターエゴ。衛宮いやシロウ・A・オルテンシアだ。神父をしている。

喜べマスター、お前の願いを叶える為、手をかそう」

 

強化時のセリフ

「フフッ…俺を強化するとは………どうなっても、知らんぞ?」

 

霊基再臨1

「ふむ…シロウ・A・ペンドラゴン。まさか、再臨するたびに名が変わるのか?流石にいや………まぁ何とか」

 

霊基再臨2

「言峰士郎……何故こうなる?いや、嫌いではないが………う~む」

 

霊基再臨3

「衛宮志戸。これも私の名前だ、妹も……いや、この話はあとでしょうか。しかし、恐ろしいな。霊基再臨するたびに俺の過去がバラされていくとは………いや、嫌いではないさ。自分の罪を理解するのはな。ん?この黒翼か?まぁ…堕天使だからかな」

 

霊基再臨4

「衛宮士郎……そして、ついに見せてしまったか、クラスビースト、そして、セイヴァーのダブルクラス。マスター、戦友には見せたくはなかった。俺は、人理を否定し、人類種の天敵として存在する者さ。そうでありながら、人を守護する。まったく、苦しいな。だが、これで真の宝具が使える、マスター。利用しろ、お前にはそれしかない」

 

画像

角が生え、黒翼と白翼を持った堕天使が涙を流す画像。

 

 

霊衣アイドル開放

「確かにアイドルをしているがね……何故だろう、一部の女性サーヴァントから執拗に狙われている気がする」

 

霊衣水着開放

「傷だらけ天使……酷いものを見せたな、悪いな。マスター」

 

 

通常時

バトル開始「死にに来たか」

 

バトル開始2「無駄死にだな、哀れな」

 

バトル開始3「お遊びの時間は終わりだ」

 

スキル1

「クラスカード無限召喚!アーチャー!」

無限の剣製

 

「クラスカード無限召喚!アサシン!」

時ある間に薔薇を摘め

 

「クラスカード無限召喚!バーサーカー!」

無毀なる湖光

 

「クラスカード三重無限召喚!」

 

 

どれかを選択

 

カード1選択

「へぇ」

 

カード2選択

「…攻め時か」

 

カード3選択

「いいだろう」

 

宝具カード1

「俺だけの固有結界だ、見せてやる」

 

宝具カード2

「親父、義理母さん、ランスロットさん、英雄の力お借りします!」

 

宝具カード3

「おいおいおい、俺はどうなっても……知らんぞ?」

 

アタック1 「ふっ!」

 

アタック2 「はぁっ!」

 

アタック3 「せい!」

 

アタック4 「そこかっ!」

 

アタック5 「失せろっ!」 

 

アタック6 「干将・莫邪!」

 

EXアタック1 「もらったぞ!」

 

EXアタック2 「そこまでだっ!」

 

宝具1セリフ1

「見せてやるよ、俺とアルトリアの絆を

I am the bone of my sword

…コレは俺が失い臨んだ夢の剣

 

『唯一つ忘れられない絆の剣(エクスカリバー・ブライダル)』」

 

宝具1セリフ2

「まじかよ、俺とアルトリアの記録がみたい?話してやるよ……え?もう……すっ飛ばして

”Infinited sword works”んで

『唯一つ忘れられない絆の剣(エクスカリバー・ブライダル)』」

 

宝具2セリフ1

「使う、皆の力を。英雄の力をお借りします!

喰らえ……これがラストだ!」

 

宝具2セリフ2

「詰め込み過ぎか?いや……敵を倒すにはこれぐらいは必要だ!やってやるぜ!」

 

宝具3セリフ1

「能力全解放、根源接続500%。

宇宙の始まりへと世界を戻そう、それが俺に与えられた力

『創世の灯火(ビッグ・バン)』」

 

宝具3セリフ2

「始まりは、星星の爆発からだった。

今、誰かが滅ぼすというのなら俺が今、滅ぼし無に返す。終わりだ」

 

『創世の灯火(ビッグ・バン)』

 

ダメージ1

「やってくれる……!」

 

ダメージ2

「ぐっ!」

 

戦闘不能1

「深手を負ったか」

 

戦闘不能2

「これは……敗北だ……な」

 

勝利1

「決意も覚悟も足りなかったな」

 

勝利2

「もう少し手こずると思ったのだが……」

 

 

霊衣『アイドルエミヤ』

 

バトル開始1 

「こらこら、ファンサービスは当たり前だぞ?」

 

バトル開始2

「見ての通り、仕事中なんだ。軽く流すよ」

 

バトル開始3

「正面から?ふんっ、人がいいんだな。なら、アイドルらしく答えてやろう」

 

スキル1

「とはいえ、遊びじゃないんでね」

 

スキル2

「鋭くいこうか」

 

スキル3

「ファンサービスは大切だからね」

 

カード選択1

「あるある」

 

カード選択2

「チャンスだろ?」

 

カード選択3

「了解した」

 

宝具カード1

「いいとも、任せておきたまえ、マスター!最高のエンターテインメントだ!」

 

宝具カード2

「本当に?仕方ないなあ、全く」

 

宝具カード3

「アイドルにやらせるな!」

 

アタック1「ふっ!」

 

アタック2「はぁ!」

 

アタック3「せい!」

 

アタック4「とあ!」

 

アタック5「フィィィッシュ!」

 

アタック6「戦うアイドルだ!」

 

EXアタック1

「狙い通り…だよ」

 

EXアタック2

「フルセット、もらったあ!」

 

ダメージ1

「ファンサービス、間に合わない」

 

ダメージ2

「おっと」

 

戦闘不能1

「ファンが多すぎる……面目ない、マスター」

 

戦闘不能2

「まずいな、楽屋に逃げるぞ!済まないな、マスター」

 

勝利1

「あっさり終わったな。たまには大物を狙いたいものだ」

 

勝利2

「そう大したロスにはならなかったな。予定に変更はなしだ、マスター」

 

マイルームでのセリフ

会話1

「そろそろ出陣だ。準備は出来ているか?」

 

会話2

「契約だからな。どんな命令であれ、とりあえず話は聞くさ。俺は雇われ代行者だからな」

 

会話3

「サーヴァントと言えど、好き嫌いは有る。信頼に足る采配を願いたいものだな。間抜けな指揮官に使われるんじゃ、兵士は戦えん」

 

会話4

「サーヴァントのクラスに相性があるように、英霊そのものにも相性がある。俺の場合は赤いアーチャーと赤いアサシンだな、特筆すべきはコイツラだ。もし、居るなら……俺は仲間通しでコロシアイだぞ?」

 

会話5

「まじかよ……。以前から災難体質だと思っていたが、まさか、女神に取り憑かれるとは……よほど波長が合っていたんだな……素直じゃない系女性の原典、というやつか?まぁ、金がないのは変わり無しか」

(イシュタル or イシュタル(水着) 所持)

 

会話6

「見ていて苦しいな……違うはずがない、まったく。俺は……もう…………ごめん、藤ねぇ」

(ジャガーマン 所持)

 

会話7

「あ~やだやだ、中身は別のはずなのにどうしてまったく。まぁ、話てて楽しいし、今度刀でも打ってもらうか。幾らでしてくれるかな?」

(千子村正所持)

 

会話8

「アルトリア・ペンドラゴンが沢山……なっ、セイバー。いや……俺の愛するセイバーは黒き騎士王だ。……何か多くね?」

(アルトリア・ペンドラゴン所持)

 

会話9

「……マスター、お前は気を付けろよ。女難ってのはいつ来るか判んねぇからな」

(アルトリア・ペンドラゴンオルタ

 美遊・エーデルフェルト

 クロエ・フォン・アインツベルン

 アルトリア・ペンドラゴンランサーオルタ

 アルトリア・ペンドラゴンメイドオルタ

 カレン・オルテンシア所持)

 

会話10

「妹達には、俺の暗いところは見せたくなかったな」

(イリヤスフィール、クロエ、美遊 所持)

 

会話11

「義理父、はぁ……」

(言峰綺礼 所持)

 

会話12

「義理母さん、せめて……ここでは平和に暮らしてくれ。俺が言えた義理じゃないけど、ありがとう」

(メディア メディア・リリィ所持)

 

好きなこと

「休日にやる事?作詞作曲、ライブもたまに、後は……武器を弄くってるな。そして、デートか」

 

嫌いなこと

「嫌いな物か?赤いアーチャーと赤いアサシン」

 

聖杯について

「模造聖杯ならいくらでも作ってやれるぞ?何?自分で手にしてこそ価値がある?良いこと言うな、ほら、やるよ。選別だ」

(初回のみ聖杯獲得)

 

「願いならあるさ、でも……それは自分で叶えてこそなんだろ?」

 

 

霊衣について

「マネージャーと連絡がつかん!マスター、済まないがマネージャーの変わりでいてくれ、何?仕事?んなのは私が居れば十分だ!行くぞマスター!アイドルを見せてやるよ!」

 

絆Lv.1

「……」

 

絆Lv.2

「はぁ」

 

絆Lv.3

「どうした」

 

絆Lv.4

「大丈夫か?」

 

絆Lv.5

「……絆を繋ぐと、別れる時苦しいんだ。悪いな、湿っぽい話をして」

 

イベント開催中

「ん……何か起きたようだ。ハロウィ……何処に逃げた?」

 

誕生日

「誕生日おめでとう、マスター。今日一日、無様なところは見せられないな」

 

 



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カルデアに召喚されて

「先輩!新しいサーヴァントの方が!!!」

 

「マスター、まさか……」

 

「誰でも良いので来てください!」

 

「マスター、女難は諦めろ」

 

俺は藤丸立香、人類最後のマスターやってます。

色々大変な事がおこりすぎて、このカルデアで頑張っているんですけど………

女難が酷くて...今回はエミヤとマシュと一緒にまともな男性サーヴァントに来てほしくて召喚してます。

 

「安珍様!」

 

「マスター君!」

 

「マスター!!」

 

「我が夫」

 

色んな...主に女性サーヴァントと関係というか、知らない内に色々あるせいで色んな意味で死にそうです。

 

「……はぁ、まともなサーヴァント来ないかな」

 

「あれ、マスターさんだ!」

 

「イリヤちゃん……それに、クロエちゃんに美遊ちゃんも」

 

「召喚サークルが光ってて、まだ来ないの?」

 

「うん、なんか凄い遅くて……」

 

「…………赤い、弓兵だと?」

 

「マスター伏せろ!」

 

はぁ、色んな意味で死にそうです。

生前の禍根とか普通にあるの忘れてた。

そうだよね、常識人のエミヤでも……生前色々とありそうだし。

 

「……アーチャー、今度こそ……今度こそお前の四股を剥ぎ、蛆虫の餌にしてくれる」

 

「くっ!!ヨリにもよって貴様か!」

 

「……お兄ちゃん!!!!」

 

「クロエ!」

 

そしたらクロエちゃんが叫んであの人に抱きついた。

でもそれを受け止めて、片手で何か剣を振るっていた。

そしたら、エミヤの干将莫耶が凄い速度で弾かれて、エミヤが壁に縫い付けられてる。

 

「……ごぶ」

 

「死にはしない…手当はしてやらんがな。しかし、クロエに美遊か。どうした?お前が愛してやまない衛宮士郎では無いんだが?」

 

「お兄ちゃん……お兄ちゃん………」

 

「クロエ、どいて」

 

「シドお兄ちゃん」

 

「イリヤか、ふむ……クロエ、美遊、あそこの害虫を殺すから退けて」

 

召喚したサーヴァントから明確な敵意は始めてだ。殺される。

 

「……良く見たらお前、冬木で見たマスターか。つまり……カルデアか、そうか」

 

「え?」

 

なんか急に武器をしまった。

 

「もしかして、アイドルの」

 

衛宮士郎さんですか?って声をかけようとしたら、静謐ちゃんがナイフを構えて立っていた。

 

「お前がマスターを」

 

「ほぉ、この俺に向かってくるか?実力の違いも判らず、哀れにも俺に向かってくるのか」

 

「近づかなくちゃ、貴方を殺せない」

 

何処かのラスボスみたいな口調で衛宮さんに、俺を守る為に来たであろう、静謐ちゃんが段々と近寄っていく。

 

「妄想毒身」

 

「静謐の……首を出せ」

 

「なっ」

 

衛宮さんだったのが急に山の翁になって

 

「信託は下った。」

「聞くが良い。晩鐘(ばんしょう)は汝の名を指し示した。告死(こくし)の羽――首を断つか、『死告天使(アズライール)』……!!」」

 

「オーダーチェンジ!」

 

「あん、マスター何が」

 

ごめん、ランサー!でも、仕方がないんだ。

俺の前でランサーの首が飛んだと思ったら血を流す事なく、消えていく。

 

「山の翁!止めてくれ!」

 

「馬鹿だな、俺は山の翁では無い」

 

「貴様……益々実力が上がっているか!」

 

「ランスロット卿のクラスカードは実に使い勝手が良い。姿を変えられるのはな」

 

とにかく、ランサーが一度死んだことでカルデアが警戒態勢になった。

警報が鳴り響いて………

 

「マスターさん!私!黒い、黒いアルトリアさん達を呼んでくる!だから、マスターさん、クロと美遊も、どうにか頑張って!」

 

「逃げた!」「イリヤ!!」

 

黒いアルトリアさんに何があるのかわからないけど、兎に角イリヤちゃんに任せるしかない。

 

「エミヤ、今応急手当使うから」

 

「すまないマスター、だが……援軍が来たようだぞ」

 

「懐かしい気配を感じてきてみれば……最後の弟子が居るとはな」

 

アーチャーが視線を向けた方向にはスカサハ師匠がいた。え?最後の弟子って……まじ?

 

「仕方ないか……投影開始」

 

ゲイ・ボルグが衛宮さんの腕に握られてる。

そして、地面に紋様が浮かんだ。

 

「アトゴウラか……行くぞ」

 

「……この頃、命のやり取りが好きなんじゃないかと思い始めててな、丁度いい死んでくれ」

 

「マスター、すぐに避難しろ」

 

「え?なんでなのさ、師匠なら」

 

「スカサハは……負ける」

 

「ありえません!スカサハさんはカルデアの最高戦力の一角で」

 

「貴様は獣に堕ちたのか」

 

ゲイ・ボルグ同士の打ち合いが段々と変化していく、スカサハ師匠が、少しずつ 少しずつだけど、押されている。それどころか、苦しそうな表情になっていく。

 

「……対人理、人理に組み込まれし者達は俺には勝てんか」

 

「それって、どういう」

 

口に出た言葉を紡ごうとするけれど、死が近づいている事が理解できなかった。

マシュが守ってくれなければ……そう思わせる殺気だ。

攻撃は俺に向いてないけど、今までの経験が死を連想させる。

 

「冗談抜きで不味い!」

 

「マスターさん!連れてきたよ!!!」

 

「師匠!皆が来たよ!!……師匠!?」

 

「敗北か……久しき……感じ」

 

「惨たらしく死ぬではなく、槍を持ったまま死んだか………師よ、見届けたぞ」

 

スカサハ師匠が死んだ、でもすぐに復活はしてくる。

流石の皆もスカサハ師匠が死んだとなったら目が変わる。

 

「さぁ、美遊、クロエ、邪魔をするなよ。そこの赤い弓兵を」

 

「「「何をしているのだ、シロウ」」」

 

「あ、」

 

「酷いなぁ……私達じゃ止まらないのに」

 

「「「もう一度いう、何をしているのだ。シロウ」」」

 

「……違う、違う筈だ、いや……だが君は」

 

「こい、シロウ。我が鞘」

 

「巫山戯るな、シロウは私のものだ」

 

「私だ」

 

「お兄ちゃんは私のお兄ちゃんなんですけど」

 

「違う、私のお兄ちゃん」

 

何処か見覚えのある修羅場が眼の前にある。

違うのは血濡れの衛宮さんが何処か絶望仕切った目をしていることと

 

「あら、シロウじゃない。神父してるって本当だったのね」

 

「むむ?何故か見たことがあるような……無いような……う~ん」

 

「……」

 

「イリヤ、お兄ちゃんの心壊れる」

 

「だって近くに居たんだもん、シトナイさんと、ジャガーマンさん」

 

「アルトリア、イリヤスフィール姉さん、藤ねえ、イリヤ、美遊、クロエ」

 

「シロウ、何してるのよ」

 

そこで自分が血塗れだって気付いたんだと思う。

 

「違う、違う……死んでいる。姉さんも……藤ねえはここに居るはずがない……ありえないだろ!それに……それに……アルトリア達もだ、何故!何故記憶を」

 

「なんかわからん!でも言わなきゃいけない気がする!!コラ、シロウ!セイバーさんやイリヤちゃんに迷惑かけて!何考えてるの!」

 

ジャガーマンさんの言葉で衛宮さんが手に持っていたゲイ・ボルグが床に落ちて霧散していく。

今にも死にそうな顔で、ボロボロと涙を流している。

 

「シロウ、直せ。お前が壊したんだ」

 

アルトリアセイバーオルタの言葉で機械が動き出すみたいに、衛宮さんが動き出した。 

 

「済まなかったな人類最後のマスター、つい堪忍袋の緒が切れた。許してくれ、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も殺しに来たクソ野郎を見てしまったら怒りが治まらなかったんだ」

 

衛宮さんは一瞬で召喚ルームを修復して、俺に手を伸ばしてきた。

 

「聞こう、君が俺のマスターか?」

 

爽やかな笑顔が血に濡れて、何処か狂気を孕んでいるように見えてしまう。

 

「うん、俺がマスター、藤丸立香です」

 

「契約成立だ、だが気をつけて欲しい。俺に令呪は効かないぞ?」

 

「わかりました」

 

「マスター!!!!」

 

そうだよね、終わらないよね。カルデアが警戒態勢になったし、師匠とランサーも倒れたし……

 

「それで、君はアルターエゴのサーヴァント。衛宮士郎であると?」

 

「あぁ、教会の雇われ代行者。アイドルの衛宮士郎、顔は色々あります。レオナルド・ダ・ヴィンチ、以後よろしく」

 

「……まぁ、自己紹介ぐらいはしてもらうよ」

 

そんなこんなで食堂だ。

 

「ふむ……シロウ・A・コトミネ・オルテンシアだ。この様に神父をしている、尊敬している聖人、聖女の方々にお会いできて光栄だ」

 

「……坊主、俺の事殺しやがったな」

 

「ランサー……そうか、食べるかね?」

 

「てめぇのその感じアイツを思い出すぜ」

 

「ふむ……だが、何時でも戦おう。私は負けないのでね」

 

「良いぜ、師匠の弟子らしいからな、本気で行くぜ?」

 

クー・フーリン達の目が怖い、次は

 

「貴方はマスター様の敵ですか?」

 

「敵対者なら沢山いるのではないかね?少なくとも、始めから仲間などという存在の方が少ないと感じる」

 

「嘘ではありませんね、しかし……私は信じられません」

 

「信じてもらおうとは思っていないのでね、鐘の中で死ぬのは避けたい、特に蛇に焼き殺されるなんてナンセンスだ」

 

「⁉」

 

清姫の顔の警戒心が強まる。それもそうだ。誰も真名を言ってないのに真名を当てている。それに所々に視線を向けてる所もだ。

 

「アンタ、歪んでる」

 

「存在自体が歪んでいるような聖女に言われる筋合いはないな。それに、神父だが生憎私も無神論者だ。とある方に神に祈るのは止めろと言われてね。まったく、懐かしいことだ」

 

ジャンヌオルタのことも...正直、道満と違う警戒心が湧いてくる。...ゴージャスが来る気配を感じる。

 

「ほぉ、偽物(フェイカー)か」

 

「お久し振りです、私が感謝し、憎悪する御方」

 

「くくっ…良いぞ。貴様は変わらず道を見つけているようだな」

 

「人形を卒業しました、何故か女体化した貴方様に襲われようともしましたが」

 

「……やめよ、我としても奴は置いてきたのだ」

 

何故か英雄王が遠い目をする。

それどころか何処か疲れたような。

 

「懐かしいですね、偽物さん」

 

「ギル君も懐かしゅう、所で何故お二人はつかれた顔を」

 

「ほぉ、我を封印したかと思えば我の財が居るでは」

 

「マジで何なのさ!これが僕の未来だと?!色ボケにも程がある!!」

 

「知るか小童!我としても何故こうなったのか予想ができん!」

 

「女帝、お前何処にでもいるな!」

 

「ふっ、シロウよ。貴様もセイバーと共に我が財と」

 

「「「渡さない」」」

 

アルトリア達と美遊、クロエが防いでる、衛宮さんはため息をついているし……

 

「まず言おう、衛宮士郎とかそんな名前...少なからず生前関わりがあるサーヴァントが多数いるように感じるが……まぁ、興味はない。信用しろとも、信頼しろとも言わん、俺は力を貸すだけだ。平行世界の事などどうでもいい、召喚された理由は何かに引っ張られたからだ。じゃあな」

 

「…待ちなさい、シロウ」

 

「「待て、シロウ」」

 

「んぐっ……」

 

あからさまに顔色が変わってアルトリア達から詰め寄られてる。

 

「大変だなぁ」

 

《士郎》

 

「……聞かせてください、貴方はシロウなのですか」

 

「はぁ…青い騎士王、君の思うエミヤシロウに近いのは赤い弓兵だ。俺じゃない」

 

「「「シロウ」」」

 

「アルトリア、やめてくれ」

 

疲れている、そう感じるのだが変わらない笑顔が嬉しくそして……

 

「…私は」

 

「セイバーさん、俺は貴女を知らない。俺が知るのはアルトリアだけだ」

 

だからこそ、拒絶する。

彼女は俺の知るアルトリアじゃない、俺の知るアルトリアは黒くなり、ジャンクフードと俺の手料理を嬉しそうに食べてくれる。

彼女達だ。

 

「……仕方ない、料理でも作ろうか」

 

「ジャンクか?」

 

「アルトリアは俺の手料理は嫌いか?」

 

「…好きだ」

 

「あの!私も」

 

「セイバーも食べるだろ?」

 

昔の、俺が衛宮士郎という人間を演じていた時の顔を向ける。

セイバーは俺に右手を伸ばし、左手でそれを引っ込める。

 

「……ローストビーフサンド、野菜ジュース、しかし、食堂にこんなにサーヴァントが残ってるとは思わなかった」

 

「坊主の飯だろ?美味えんだよな!」

 

「何、貴様が何れ程腕を上げたかな」

 

「あら、坊やじゃない。来てたのね」

 

「士郎!ご飯食べさせて!」

 

「……お兄ちゃん!」

 

「シドお兄ちゃん、私も手伝う?」

 

「良いさ、この程度なら簡単だ。舐めるなよ、晩餐会を開いて全員毒殺した事すらある」

 

「ゲブっ!坊主!」

 

「クー・フーリン、毒なんて入れてない。犬もな」

 

知り合いのサーヴァント達も続々と出てくる。

 

「あら、衛宮くんじゃ...違うわ。誰?」

 

「……遠坂じゃないな、神か」

 

遠坂だけじゃない、パールヴァティー、BBやら俺の知りたくないサーヴァントが多数いる。

 

「うそ…これだけの人数を一人でさばいてる」

 

「おかわりだ」

 

「アルトリア、少し早いな。予想外だ」

 

「何を入れたのだ、私が腹半分まで溜まっているぞ」

 

「昔、英雄姫から貰った調味料だ。減らないし、魔力も十分にあってな。それを使えばこの様に魔力を食事で補給するサーヴァントなら満腹感を得られる」

 

「そうか、だが私はまだだ」

 

「できた、みんなの分もだ」

 

机に戻り、アルトリア達が食事を始めている。

 

「「モキュ……モキュ……」」

 

可愛いな

 

「お兄ちゃん、手伝うわ」

 

「お兄ちゃん、私も手伝える」

 

「クロエ、美遊、なら皿洗いをしてしまおう」

 

「私も手伝うよ」

 

「貴女は…ブーディカだったか」

 

「えぇ、君もそうとう」

 

「アルターエゴよりも正直、アベンジャーの方が相応しい気がするね。何分、自分は別側面でもない、衛宮士郎に違いないのだら」

 

「君は、何がそんなに」

 

「……全てかな、俺を作り出した存在も、俺を殺そうとしてきた未来の俺も、俺を召喚したマスターも……所詮、敵でしかない。協力関係だけど、俺の大切なものを奪うすべてが敵なんだ。俺からの何かを奪うなら…俺は……そうだね。すべての敵になろうか?」

 

俺が放った言葉で食堂の音がなくなる。

 

「お母さんを殺すの?」

 

「へぇ……君は生まれなかった魂の集合体か……殺さないさ。敵対しなければね」

 

小さな少女の頭を優しく撫でる。

 

「泣いてるの?」

 

「……嫌だね、思い出すのはさ。君、名前は」

 

「ジャック」

 

「そうか、ジャック。これをあげるよ、友人がいるなら友人達と食べるといい」

 

元はアルトリアの食後のデザートにしておこうと思ったクッキーを渡し、離れていく姿に何処か苦しさを覚える。

 

「……子供は良い、善悪なんて関係ない。子供特有の純粋さがあるから。まぁ、だからこそ面倒だけど」

 

「ねぇ、君は………子供を殺したことがあるのかい」

 

「………!!!」

 

サーヴァントならできるはずだ。

俺は…誰とも話すべきではない。

駄目だ、思い出したくない。

霊体化させ、この場から消える。

誰にも見られたくない、嫌だ…………

 

英霊になっても変わらない、あの時手を掛けた子供の吐き気。

敵対者でもない、被害者だった。

エインワーズのゴミとは違う、被害者の子供。

それを殺した記憶が、思い出したくない記憶が、フラッシュ・バックされる

 

「くそ……」

 

「………ほぉ、君は?」

 

「サーヴァントアルターエゴ。コトミネ神父だ」

 

「いやはや、懐かしい顔を見たな」

 

「……言峰」

 

「衛宮士郎、君も私と同じ壊れた男だ」

 

「お前と違うのは、人の喜びも理解できること。同じことは人の不幸に愉悦を感じること。そして、人を殺すことに躊躇いがないのは衛宮切嗣譲りさ」

 

「やはり、お前は私と同じだな」

 

「……俺は、いや、同じだな。食べるか?」

 

「……頂こう」

 

泰山の麻婆を言峰に渡し、自分の分を食す。

考えたらこの男の義子だが、何かした覚えはない。

むしろ、ギルガメッシュと共に壊れていた頃の俺を何かと導いてくれていたとも感じる。

不思議なものである。

 

「衛宮士郎、君の願いは叶ったかな?」

 

「…さぁな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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