虹のプリズムと夜明けの光 (BURNING)
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空からの来訪者

初めましての人は初めまして。既に他の作品を読まれた方はこんにちは。BURNINGです。他の方のひろプリの小説を読んでいたら書きたくなったので投稿します。それではどうぞ!


明るい日差しが注ぐ部屋。そこで寝ている一人の少年。彼の名は虹ヶ丘あさひ。小豆色の髪の毛をセンターパートにしており、目は緑色で中性的な顔つきをしている。

 

「すぅ……すぅ……」

 

「あさひ!もう朝だよ。起きてってば!」

 

そうやって声をかけてきたのはあさひの双子の姉である虹ヶ丘ましろ。その容姿はピンクがかった薄い小豆色のロングヘアーに髪の一部を結い上げ後頭部辺りでシニヨンに。更に白いリボンを結んでいて目の色は双子らしくあさひと同じで緑だ。

 

「姉さん、春休みなんだからまだ寝させて……」

 

「もう!あさひは朝起きるのが遅すぎるの!朝ご飯の時間だってば」

 

ましろがあさひを揺さぶるとあさひは無理矢理起こされて欠伸をしてからゆっくりと布団から出てくる。

 

「やっと起きた。何でいつもこんなに遅いかな」

 

「姉さんが早すぎるだけだよ」

 

「だとしてもあさひももう少し起きるのを早くしないと。学校が始まったら起きれなくなるよ」

 

「大丈夫だってその時は寝坊したって言えば良いだけだから……」

 

「それって遅刻している事前提じゃん!」

 

しっかり者のましろとは真逆であさひは時間にルーズなのかのんびりとしている。しかし、彼の中で決めている事があり、それは姉の事を傷つける奴は絶対に許さないという事だ。

 

「おはよう。ましろさん、あさひさん」

 

「「おはよう、おばあちゃん」」

 

それから二人は部屋を出ると一階に降りた。そこにいたのは二人の祖母であるヨヨ。温厚な性格で優しく、双子の孫の面倒をよく見ていた。ちなみに、二人の父母は海外に赴任しているのでこの場にはいない。

 

それから三人で朝食を摂ってから二人はヨヨからおつかいを頼まれ、二人は買い物のために街へと出ていく。

 

「そういえば姉さんは好きな人とかいるの?」

 

「好きな人?いないよ。だってまだそんな相手なんて見つからないし。そういうあさひはどうなの?」

 

「俺?うーん、昔はいたよ」

 

「えぇ!?だ、誰?私の知らない所で好きな人なんていたの?」

 

ましろはいきなり降って湧いたあさひの恋愛事情に驚くと心配する。あさひが姉を守りたいと思う一方、ましろもましろで弟であるあさひの事を大切に思っておりそんなあさひが誰かに恋してるなんて話になればすぐに食いつくのだ。

 

「ま、もう叶わない恋だけどね……。その人は遠くに行っちゃったし」

 

「そっか……まるであげはちゃんみたいだね」

 

あげはとは、二人の幼馴染で二人とは年が離れているものの、元々近所同士だったために仲良くしていたのだ。しかし、数年前にあげはは引っ越してしまい、もう彼女とは数年間会っておらず、時々電話や手紙によるやり取りをするぐらいだ。

 

「あげはお姉さん……今頃何してるのかな」

 

「確か保育の勉強をするために専門学校に通うって話だったけど……」

 

二人で話しているうちに街にまで到着し、ヨヨから頼まれた買い物を一つずつ済ませていく。

 

「ローズオイルにシナモンスティック……あと干したカエルだけど……」

 

「前の二つはともかく、干したカエルってどこに売ってるんだろ?」

 

「……さぁ?」

 

二人はヨヨからのオーダーの意図がわからずに困ったが、一旦それは置いておいて買い物を続ける事にした。するとどこからともなく手帳が落ちてきた。

 

「「え?」」

 

二人は何で空からこんな物が落ちてくるのかわからずに疑問符を浮かべる。いや、上から物が落ちてくる分なら近くに建物があるので窓からうっかり落としたのかもしれない。しかし、その手帳に書いてある字が見たことのない文字で書かれていたからだ。

 

「何これ……何で読むんだろ……」

 

「その前に何でこんな物が空から……え?」

 

あさひが空を見上げると目を点にする。それから震えながらましろの肩を叩くとましろもその方向を見て驚きの声を上げた。

 

「うわぁああああああああ!!」

 

何と上空から人が降ってきているのだ。その子は声の高さからして女の子なのだが何かを抱えながら落下しており、このままでは地面に激突コース待った無しだ。

 

「そこ、どいてください!」

 

「「えぇえええええ!?」」

 

二人はあまりの唐突な事に驚いて叫びながらその場に立ち尽くしてしまい、躱す反応が一歩遅れてしまう。その瞬間、あさひが咄嗟に姉を守るためにましろを後ろに突き飛ばすとそのまま自分が下敷きになるために構えを取る。

 

「あさひ!!」

 

その瞬間、あさひが目を閉じて衝撃に備えているとその痛みはいつまでも来なかった。彼が目を開けるとそこには落下してきた少女が紫のオーラを纏ってゆっくりと降りてきた。

 

「せ、セーフ……」

 

少女がそう言いながらゆっくり降りてきた赤ちゃんを抱える。すると二人はその光景に唖然とし、一歩遅れて少女も相手を驚かせてしまったと急いであさひの方に詰め寄った。

 

「ハッ!?ご、ごめんなさい!びっくりしましたよね?実は私も相当びっくりしていて……」

 

そこから少女は次々と言葉を発するマシンガントークを始める。その言葉の情報量にあさひの頭はショートしていきましろがそんなあさひを助けようと割って入ろうとした。しかし、少女のトークが早すぎて割って入ることもできず彼女は最終手段を用いる事にした。

 

「タ————イム!」

 

ましろが手と先程拾った手帳でTの字を作って強制的に話を止めさせると三人揃って顔を見合わせてから現実逃避を始める。

 

「「「これ、夢だ」」」

 

「夢でしたか……」

 

「うんうん、夢、夢」

 

「だって夢じゃなかったら空から人なんて落ちてこないしね」

 

三人は夢だと思い込む事で無理矢理納得して話を進める。そうでもしないとこの超常現象に頭が壊れそうだからだ。

 

「初めまして、夢の中の人。私、ソラ・ハレワタールです」

 

「私はましろ。虹ヶ丘ましろだよ。こっちが私の双子の弟」

 

「虹ヶ丘あさひです。よろしくね」

 

「よろしくお願いします」

 

三人がそれぞれの自己紹介を終えてからソラと名乗った女の子が辺りを見渡しながら興味津々の様子だった。

 

「……それにしても、鉄の箱が走っているなんて夢の世界はすごいですね…この夢の街、名前はなんていうんですか?」

 

「ソラシド市だよ!」

 

「ソラシド市……良い街です」

 

それからふとソラがましろの手元を見ると手帳に気がついた。それからソラは声を上げる。

 

「あっ、その手帳……」

 

「もしかしてこれって……」

 

「はい、私のです!拾ってくれてありがとうございます!」

 

それからましろがソラに手帳を返すとあさひが素朴な疑問を抱く。手帳に書かれているわからない字についてだ。

 

「ソラ……で良いかな。その手帳には何て書いてあるの?」

 

「えっとですね。この文字はスカイランドの言葉で私の……」

 

そこまで言いかけた瞬間、突如として三人の近くに何かが落ちてくると周囲に煙が立ち上る。

 

「……何あれ」

 

「夢の中、本当に何でもありだよ!」

 

ましろがツッコミをする中、あさひは胸騒ぎが止まらなかった。何か嫌な予感がしてならなかったのだ。煙が晴れて出てきたのは紫色をしたブタのような肥満体をして出っ歯にでべそ、青色のモヒカンの髪型が特徴のブタ人間のような人物だ。

 

「ソラ!許さないのねん!お前をボコボコにして、それからプリンセスを頂くのねん!」

 

「……プリンセス?」

 

あさひが聴き慣れない単語に思わず聞き返しつつソラを見やるとソラが抱えている赤ちゃんがブタ人間に対して怯えているのが見えた。

 

「こんな小さな赤ちゃんを怯えさせて……許せない」

 

あさひは拳を握りしめると怒りを露わにする。そして、ソラは赤ちゃんをあやすようにして声をかけた。

 

「怖くないですよ。私が守ります」

 

「守れるかな……カモン!アンダーグエナジー!」

 

ブタ人間が手を地面に置くとそこからドッと闇のエネルギーが飛び出してそれが近くにあったショベルカーに吸い込まれていくとショベルカーが姿を変化。怪物へと早変わりする。

 

「ランボーグ!」

 

それを見たあさひは脳内が混乱する。当然だ、いきなりこんな怪物召喚なんてされれば驚くのも無理は無い。

 

「エネルギーが入った途端ショベルカーが怪物に!?」

 

あさひが周りを見渡すと他の人々が騒いでいるが避難しようとは思ってないのかザワザワと騒ぐのみである。その後、ランボーグと叫んだ怪物が腕と腕をぶつけ合わせるとそれによって衝撃波が駆け抜けた。それによりようやく危険を察知した周囲の人々は逃げ出していく。

 

「普通に痛いよ!これ、夢じゃ無いの?」

 

ほっぺたを抓っているましろの前にあさひが立つと彼女に逃げるように促す。

 

「俺が足止めするから姉さんは逃げて」

 

「そんな、あさひを一人で行かせるわけには……」

 

「……二人共、この子をお願いします」

 

するとソラは手に抱いていた赤ちゃんをましろに預けると一人怪物へと向かって行こうとする。

 

「ソラちゃんだっけ?一緒に逃げ……」

 

「行ったらダメだ!」

 

二人がそれぞれソラの手を掴むとその両手は震えていた。それを見て二人はソラも怖いのだと察知する。

 

「すぅ……はぁ……相手がどんなに強くても、最後まで正しいことをやり抜く…それが、ヒーロー!」

 

ソラは深呼吸してから言葉を呟き、二人の手を振り解くとそのまま怪物へと向かっていってしまう。

 

「待ってソラちゃん!」

 

「私が時間を稼ぎます!だから逃げてください」

 

「でも……」

 

「姉さん、行くよ!」

 

姉と比べて比較的に体力と力を持ってるあさひが赤ちゃんを抱えるともう片方の手でましろの手を掴みそのまま怪物とは別の方向に走り出す。

 

「ソラちゃん……」

 

「振り返っちゃダメ。あの子の頑張りを無駄にしたらいけない!」

 

「あさひはこのままで良いの?」

 

「良いわけ……無いよ。でも、俺達ではアイツに勝てない。だから俺達にできる事をやらないとダメなんだ」

 

二人は走りながら問答をし、そのまま道の角を曲がって逃走する。しかし、その次の瞬間にはいきなり目の前に先程の怪物とブタ人間が降り立った。

 

「もう来たのか……って事はあの子は……くっ」

 

あさひはここに怪物が来た時点であの子は既にやられたということを察し、悔しそうにする。

 

「無駄な抵抗はやめるのねん。さっさとプリンセスを渡せ」

 

「嫌だ」

 

あさひはそう言い放ち、ましろも首を横に振る。それを見たブタ人間は呆れたようにしていた。

 

「姉さん、今度は俺が姉さんを守るよ。だから逃げて……」

 

そう言ってあさひはましろに赤ちゃんを預けて構えを取る。それを見たましろはダメだとばかりにあさひを見た。

 

「いつまでも姉さんに守られてばかりの自分じゃダメなんだ。だから今度は俺が姉さんを守る!」

 

「脇役が何カッコつけてるのねん!大人しくさっさと」

 

「やめなさい!あなた達の相手は……私……くっ!?」

 

そこに先程やられたからかボロボロになったソラが二人へと追いついてきて何とか怪物を止めようとするが体はもう限界になっておりその場に膝をついてしまう。

 

するとソラが倒れた拍子にブタ人間の元に彼女の手帳が飛んでいってしまう。

 

「何だ?……私のヒーロー手帳?」

 

ブタ人間は手帳をめくりながらその中身に目を通しつつ読み始める。

 

「『空の上を怖がっていたらヒーローは務まらない』『ヒーローは泣いている子供を絶対見捨てない』ブフッ!『絶対、ヒーローになるぞ』……ヒーロー!ギャハハハ!」

 

ブタ人間は笑いながら手帳のページを次々と破っていき、罵っていく。

 

「弱いヤツは!ガタガタ震えて!メソメソ泣いてれば良いのねん!」

 

「酷いよ!もうやめて……」

 

ましろの叫びも虚しくページは全て破り捨てられてしまい、勝ち誇ったようにブタ人間はソラを見下す。

 

「テメェ……」

 

そう言ったブタ人間を見たあさひの目がいきなり緑から黒く染まると人間離れした速度で近づき、そのままブタ人間を蹴り飛ばす。

 

「な!?」

 

「アレって……あさひダメ!」

 

ましろは何かを知っているのかあさひを静止するが、あさひの怒りは収まらない。

 

「お前は他人の大切な物を、彼女の心の支えを踏み躙った!俺はそんな奴を許さない……それに、姉さんをあんな危険な目に遭わせた。姉さんは俺の大事な存在だ。覚悟は……できてるんだろうな!」

 

「ら、ランボーグ!この脇役を潰せ!」

 

そう言ってランボーグがあさひに攻撃を仕掛けるとあさひはまた人間離れした速度で距離を取る。

 

「あさひ止めて!そんな姿私は望んで無い!」

 

その言葉が届いたのかあさひの目がスッと元に戻ると意識を取り戻す。それからあさひはいきなり力が抜けた影響でその場にへたり込んでしまう。

 

「あ、あれ?急に力が……」

 

「ブッ!パワーアップもそれで終わりなのねん?なら、さっさと終わりにしろランボーグ!」

 

ブタ人間の指示でランボーグが赤ちゃんを攫おうとましろとあさひに迫る中、赤ちゃんが泣きそうになる。

 

「大丈夫……パパとママの所に……お家に帰ろう」

 

そう言ったのはあさひが頑張っている間に立ち上がったソラだ。ソラは赤ちゃんを安心させるように微笑むとフラフラの体を動かしてランボーグと二人の間に立つ。

 

「相手がどんなに強くても……正しいことを最後までやり抜く……それが、ヒーロー」

 

するとソラの胸の辺りに青い光が出てきてそれがペンの形に変化。ソラがそれを掴むとエルから眩いエネルギーが生み出された。

 

「ぷりきゅあああ!!」

 

するとそれがソラに飛んでいき、ソラが飛んでいった物を掴むとそれがアクセサリーのような丸い形に変化してスカイブルーに色づく。

 

「ヒーローの出番です!」

 

ソラがそう言うと眩い光がソラを包み込みペンがマイクのような形に変化する。

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!」

 

ソラがアクセサリーのような物……スカイトーンをスカイミラージュにセットするとマイクの部分が携帯扇風機のように回転。

 

「ひろがるチェンジ!スカイ!」

 

ソラの言葉と共にマイク部分にSKYと表示され、ソラは謎の空間に移動してそこにあるステージに降り立つ。それから髪がスカイブルーのツインテールに先の方がピンクに変化。更にブーツを装着する。

 

「煌めきホップ!」

 

煌めきホップでは頭に髪飾りと耳にアクセサリーが付与される。

 

「爽やかステップ!」

 

爽やかステップでは体に青と白を基調としたドレスが装着されて足に白のハイソックスが履かれる。

 

「晴々ジャンプ!」

 

晴々ジャンプでは手にオープンフィンガーグローブが付けられて最後に左肩に青いヒーローのようなマントが生やされる。

 

「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」

 

ソラは決め台詞と共に変身を完了し、その姿を露わにする。そしてそれはまるで戦場に降り立った一人のヒーローそのものだった。

 

「私……どうしちゃったんですか!?」

 

「凄い……」

 

「あ、アイツをやっつけろ!ランボーグ!!」

 

ましろとあさひが驚く中、ブタ人間はすぐに怪物に指示を出すとランボーグはキュアスカイへと襲いかかる。するとキュアスカイはジャンプで躱すが、そのあまりのジャンプ力に驚くばかりだった。

 

「うぇええっ!?」

 

「嘘っ!」

 

「何あの超人的な力……アレが、変身した時の素の力って事?」

 

それからスカイは建物の上に着地するとランボーグもそれを追っていく。その十数秒後、ランボーグはスカイに吹き飛ばされたのか建物から真っ逆さまに落ちてきた。

 

「あの怪物を一瞬で……」

 

それからスカイが建物の壁を走りながら降りてきたかと思うとそのまま浄化技を発動。雲のエフェクトを吹き飛ばしてから流星の如き速度でランボーグへと突撃し、青いエネルギーと共に繰り出す必殺パンチ……。

 

「ヒーローガール!スカイパンチ!」

 

「スミキッタァ〜」

 

するとランボーグは浄化されて元のショベルカーに戻り、その後スカイがブタ人間を見やるとブタ人間は恐れ慄いたような声を上げる。

 

「ひっ!カバトントン!」

 

それから黒い煙となって逃げ出し、その場は収められた。それからスカイは変身解除し、ソラの姿に戻るとソラは二人の元に行く。

 

「怪我はありませんか?」

 

「あなたこそ……」

 

「そうだよ、さっきまであんなに傷だらけだったのに……」

 

「私は大丈夫です!」

 

その言葉に二人は安心したが、それでも浮かんでくる疑問は止まることを知らない。

 

「ねぇ、ソラちゃん……あなたは本当にヒーローなの?」

 

「そうそう、怪物をあんなにアッサリ倒して。むしろヒーロー以外に言葉が見つからないよ」

 

「うーん……私にもわかりません」

 

それを聞いて二人は苦笑いした。これが三人の運命を変える出逢いになる事を……この時の三人はまだ知らない。




また次回もお楽しみに。


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お家への招待

キュアスカイがランボーグを倒し、ブタ人間を撤退させる事には成功した。しかし、その影響で周囲の注目を浴びたからか周りに人が集まってきていた。

 

「皆さーん!もう安全です!安心して良いですよ!」

 

そうやって集まってきた人々に声をかけるソラ。それを見たましろとあさひは大慌てでソラを止めようとする。

 

「ちょっ、そんな事言っても安心できないって!」

 

そうやっているうちにパトカーのサイレンが聞こえてきて、警察のやっかいになるのは嫌だとばかりに二人は顔を見合わせて頷くとお互いの意思を理解。それから二人でソラを捕まえるとそのまま方向転換した。

 

「「お、お騒がせしました!」」

 

そうやってそそくさと逃げ出す二人。ソラは頭に疑問符を浮かべたままだが、そのまま一緒に連れられていく。

 

「姉さん、どうしようこれから」

 

「ひとまずここから離れるのが先だよ」

 

「もしかして私、何か不味いことでもしました?」

 

そうやって問答しながら三人はましろとあさひが住む家にまでやってきた。

 

「はぁ……はぁ……」

 

「ふぁあ!ましろさんにあさひさんは、もしかしてこの世界のプリンセスにプリンス……ましろ姫にあさひ王子ですか!?」

 

ソラは二人の家の大きさに思わずそんな事を言うが、二人はそんな事ないとばかりに“違うよ”と返す。するとましろは疲れからか息を切らしており、それを見たあさひは姉の身を案じる。

 

「姉さん、大丈夫?ただでさえ姉さんはあまり運動得意じゃ無いのに……」

 

「大丈夫。でも、おばあちゃんにはどう説明しよう……」

 

二人はそれで頭を悩ませる。普通に説明した所でどうにもならないのは目に見えているのだ。

 

「ましろさん、あさひさん。お帰りなさい」

 

二人が悩んでいると二人の祖母、ヨヨが出てきてソラを含めた三人を迎える。

 

「ねぇ、おばあちゃん。絶対に信じてもらえないと思うけど聞いて!この子達が空の上からぴゅ〜って!モンスターがバーンって!それから、それから……キラキラってなってフワーッて……」

 

「姉さん、それじゃあ絶対に伝わらないって。慌てるのはわかるけど、もう少しわかりやすく……」

 

「大変だったわね」

 

「「え?」」

 

「お上がりなさい」

 

二人はヨヨの理解力の高さに驚くばかりだ。普通の相手にましろのような説明の仕方をしてもわかるはずがない。実際、あさひだって何も事情を知らなければ意味不明だっただろう。

 

「自分で言うのもなんだけど、今の説明でOKっておかしくない?」

 

「そうだよおばあちゃん。何で今ので良いの?」

 

「ふふっ」

 

二人が更に困惑するのにも関わらず、ヨヨは余裕の表情のままだった。それから三人は中に入ると早速ソラの口から事情説明が入った。

 

どうやら、ソラは元々スカイランドと呼ばれる別の世界にいたらしく。今彼女が抱えている赤ちゃんはブタ人間の手によって攫われてしまったらしい。それを助けるためにソラはブタ人間を追いかけて彼が開いた謎の空間に飛び込み赤ちゃんを救い出したまでは良かったのだが、そこから出た時にはソラシド市の上空にいてあさひ達との出会いに繋がったわけだ。

 

「スカイランド……こことは別の世界があるなんて…まだ信じられないよ」

 

「俺も。正直別の世界から来たって言われてもいまいちピンと来ないし……」

 

「私だって別の世界にいるなんて信じられません……それに自分がキュアスカイに変身したことも」

 

「そのペンって何なんだろう。プリキュアって何だろう?」

 

「疑問は尽きる事は無い……か」

 

三人はそれぞれに抱え込んだ疑問で頭の中がいっぱいになっている中、ヨヨは冷静にその様子を見ていた。

 

「ねぇ、おばあちゃん。お部屋の百科事典にプリキュアのこと載ってたりしないかな?お願い、調べてあげて……」

 

ましろがそう言うとソラはそんな事よりも大事なことがあるとばかりに口を開いた。

 

「私のことよりも、この子をお家に帰してあげる方法を探すのが先です!……約束したんです。この子をパパとママの所に帰してあげるって!」

 

「ソラ……自分の事よりも他人のこと優先って、やっぱり優しいんだな。君は」

 

あさひがソラの心意気に感心しているとそれからソラは立ち上がって大きな声で叫ぶ。

 

「ヒーローは泣いてる子供を絶対に見捨てません!」

 

するとあまりの大きな声に赤ちゃんはスヤスヤと寝ていたのを起こされて泣き出してしまう。

 

「えるぅ〜!」

 

「むしろ泣かせちゃった……」

 

「ごめんね、よしよーし」

 

「ほら、ベロベロ……バァ!」

 

「姉さん、変顔できたんだ……」

 

「今そんな事言ってる場合じゃ無いでしょ!あさひも手伝って」

 

ソラとましろが赤ちゃんをあやそうとするがなかなか泣き止んでくれない。その状況であさひは何かを思いつくとそれを口にする。

 

「あ、もしかしてお腹が空いたとか?さっきまで寝てたし」

 

「それだ!」

 

それからましろはミルクを買いに行こうとするが、市販の物で大丈夫なのかがわからずにパニックになってしまう。そんなましろをあさひが落ち着かせようとした時、今まで黙っていたヨヨが話す。

 

「粉ミルクとマグならキッチンにあるわよ」

 

「「「え?」」」

 

それから三人でミルクを準備すると赤ちゃんに飲ませて何とか事なきを得る。その際、ソラが赤ちゃんに手際よくミルクを飲ませてからゲップをさせていた。

 

「ソラ、赤ちゃんをあやすの上手いな。もしかして赤ちゃんをあやすのは既に経験済みだったりする?」

 

「はい!家に年の離れた弟がいますので、このくらい慣れた物です」

 

「なるほど……それにしても粉ミルクとマグなんてよく家にあったよな……」

 

「オムツもあるわよ」

 

「準備良すぎない!?」

 

ヨヨが先の先まで読んだ準備をしているのを見て三人は驚く。それからヨヨは一人語り始めた。

 

「出会いに偶然はない……人と人が巡り会うこと。それはいつだって必然、運命……物語の始まり」

 

それを聞いたソラとましろは首を傾げる。いきなり難しい事を言われたので無理は無い。そんな中、あさひはその言葉の意味を理解しようと考えていた。それを見たましろは一人ツッコむ。

 

「あさひ、今はまだ無理に考えなくても良いんだよ?」

 

「え!?」

 

「あなたの世界に戻る方法が見つかるまで二階の空いている部屋を好きにお使いなさい」

 

それからヨヨは奥の部屋に入っていってしまう。三人はそれから顔を一度見合わせつつ上に行くことになった。三人はソラのための部屋を決めてから寝てしまった赤ちゃんを横にして三人で少し話すことにした。

 

「そういえば、気になっていたんですけど……」

 

「何?」

 

「あさひ……君が先程人間離れした速度で動いて怪物相手に立ち回っていたじゃないですか。あの変化、ましろさんは知っていたんですよね?」

 

「え、あ、うん」

 

「できればああなってしまった理由が知りたくて……」

 

それを聞いてあさひの目が何かに怯えたような目に変わる。それをソラに知られたくない。知られてしまったらソラに忌み嫌われてしまうと思い怯えているのだ。

 

「あさひ……」

 

「嫌だ……知られたくない……」

 

それを聞いたましろはあさひの意思を汲んでソラにはまだ話さない事に決めた。

 

「ごめんね、ソラちゃん。あの記憶はあさひにとって思い出したくない嫌な記憶なの……それに、そのせいでソラちゃんに嫌われたくないって考えてるから今は話せないよ」

 

ソラはあさひの嫌がりようにこの言葉が嘘ではないとちゃんと理解し、納得すると頷いた。

 

「こちらこそごめんなさい。無神経な事を聞いてしまって……」

 

「良いよ。あさひだってソラちゃんに嫌な気持ちを抱いているわけじゃないから」

 

するとソラはいきなりましろの前に跪くとそれから時代劇とかでお約束の言葉を話し始めた。

 

「このソラ・ハレワタール、このご恩は一生忘れません。これからはあなた達二人の騎士となって誠心誠意……」

 

「待って待って。ソラちゃん、私騎士とか要らないよ」

 

「俺も……それに、俺達はそういう関係じゃなくてさもっと別の関係性が似合うと思うよ」

 

「じゃ、じゃあどうすれば……」

 

困惑するソラの前に二人は双子らしくよく似た笑顔で手を差し伸べる。

 

「「お友達からお願いします」」

 

「は、はい!」

 

それを聞いたソラは満面の笑みを浮かべるとその手を取って立ち上がる。彼女はとても嬉しそうでそれを見た二人も受け入れてもらえて嬉しそうな顔つきになった。

 

それからソラは疲れからかすぐに寝てしまい、二人はそんなソラにそっと毛布をかけてあげると自分の部屋に戻っていく。

 

翌日の朝。あさひはいつも通り、ましろに無理矢理起こされると下に降りていった。それから少し後にソラも降りてくるとヨヨも含めた四人で朝食を食べる。

 

「うんま〜!何ですか?この魚!くさみがなくて歯ごたえプリプリ……甘みが口の中にブワーっと広がって、まるで目の前に大海原が広がるようです!」

 

ソラは鮭の塩焼きを食べながらまるでグルメリポーターのように食レポをしているのを見て二人はツッコむ。

 

「というか、スカイランドにも海があるんだな……」

 

あさひはスカイランドという場所がどんな所か知らないが、ある程度はこちらの世界とも似通った場所なのだろうと予想する。

 

「これは何でしょう?」

 

そう言ってソラが掴んだのは梅干しである。それを見たあさひは慌てて止めようとするが……。

 

「ちょっ、それをそのまま食べたら……」

 

「うっ!?」

 

流石に梅干しをそのまま食べてしまったからか、ソラはその酸っぱさに悶えることになりそれを見た二人は苦笑いする事になる。

 

「梅干しをそのまま食べちゃったか」

 

「まだ早かった気がするけど、仕方ないよね」

 

今のソラは見慣れない世界での文化に触れて好奇心が爆発している状態なのだ。こうなるのも無理は無いだろう。それから三人はヨヨから頼まれた買い物ついでにソラの服を買いに行く事になった。因みに、今ソラが着ているのはましろのジャージである。

 

「昨日襲ってきたアイツの名前って、ザブトンだっけ?カツドンだっけ?」

 

「大体そんな名前だったと思います!」

 

「いやいや、そうじゃ無いよ。テンドンだよ」

 

「「それは無い(です)!」」

 

「えぇ!?」

 

三人は今現在赤ちゃんをヨヨに預けてショッピングモールに向かっている。赤ちゃんの名前だが、三人共知らないので仮の名前としてエルとソラが名付けた。

 

「まだこの辺にいるのかな?アイツとバッタリ出くわしたらどうしよう……」

 

「私が追い払います!」

 

「万が一姉さんを狙ってきたら俺が足止めするから」

 

「あさひ、気持ちは嬉しいけどそれはちょっと嫌かな……」

 

「え?」

 

「私のためにあさひが傷つくのはあんまり見たくない。だからソラちゃんに任せよう」

 

「でも……」

 

「大丈夫です。どんな相手だろうと私がやっつけますから!」

 

「………」

 

あさひはそれを聞いて胸の中にモヤモヤとした気持ちが湧いてきた。彼としては自分の力で守りたい。昔からずっと助けられてきた姉を助けたいという思いでいっぱいなのだ。

 

するといきなり近くからスマホの着信音が鳴るとソラは何事かと思い構えを取る。

 

「ソラ?今のは、ただの電話の着信音だよ?そんな身構えなくても大丈夫だから」

 

「すみません、取り乱しました……。ヒーローはどこであっても冷静沈着でなくてはなりません!この世界の機械に驚くのはこれで最後です!」

 

ふんすと鼻息が聞こえるほどにソラは張り切っていたが、あさひは不安そうな顔つきでそれを見ている。

 

「……先が思いやられる」

 

ボソッとあさひは二人に聞こえないようにそう呟き、二人と共にショッピングモールへの歩みを進めていくのであった。




また次回もお楽しみに。


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ソラの憧れ

あさひ、ましろ、ソラの三人がショッピングモールに到着すると早速ソラが驚きの声を上げていた。

 

「た、建物の中に市場が……」

 

続けて二人がエスカレーターに乗って上の階に行くとソラは初めて見るエスカレーターを警戒する。

 

「階段が勝手に動いて……」

 

「おーい」

 

「………」

 

ソラが恐々とエスカレーターに乗って上の階へと移動し、あさひ達に追いつく。それからましろが案内用のロボットに声をかけると勿論ソラはそんな物知らないのでましろとロボットの間に割って入る。

 

『いらっしゃいませ』

 

「洋服屋はどっちだったっけ?」

 

「ましろさん!何だか怪しいです!離れてください!」

 

「えーっと……どっちかと言うと私達の方が怪しいかな……」

 

「え?」

 

「………はぁ」

 

あさひは先程の宣言はどうしたとばかりに溜息を吐き、ましろは苦笑いする。それから案内用のロボットから洋服屋の場所を聞き、そこでソラやましろは中に入り、あさひはソラの服選びはましろに任せて一人近くのベンチに座っていた。

 

「ソラ、確かに初めて見るものばかりで驚くのはわかるけど……全然有言実行できてないなぁ……」

 

あさひは二人が服選びを楽しむ中、一人で思考を巡らせていた。

 

「昨日の怪物に勝つにはどうしたら良いんだろ……。プリキュアになる?いや、アレはソラにヒーローとしての覚悟があってエルちゃんの力が共鳴した?からできたもの。俺にそんな事なんてできるのかな」

 

「……無理に決まってるだろ。お前程度にはよ」

 

するといきなり自分の胸の中から声が聞こえてきた。それにあさひはびっくりすると立ち上がって辺りを見渡すが、誰か外の人間が話しかけたような感じでは無い。

 

「一体誰が……」

 

「ふん。お前、自分の声にも気が付かないとかアホにも程があるだろ」

 

「……誰?」

 

あさひは周りに怪しまれないように小声でそっと胸の内に問いかける。それに答えるかのように心の声は返事を返した。

 

「俺か。……俺はお前の心に巣食う者。偶に意識を交代してやってるだろ?」

 

「は?何の事だよ」

 

「自覚なしか。まぁ良い。いずれ俺の正体がわかる日が来る」

 

それからあさひの胸の中の何かからの声は聞こえなくなり、あさひは困惑を隠せなかった。それから何度か呼びかけたが全く反応しなくなり、あさひは頭を悩ませる事になる。

 

「何だったんだよ……今の。幻聴?それとも本当に……」

 

あさひが頭を抱えているとそこに買い物が終わって着替えたソラと自身の姉であるましろが戻ってきて呼びかける。

 

「あさひ!あさひってば!」

 

「え!?」

 

どうやらあさひはボーッとしていたせいか姉からの呼びかけを無視してしまっていたらしい。

 

「ごめん姉さん……」

 

「もう、ソラちゃんの服選び終わったから他の買い物を済ませて外に行くよ」

 

それから三人はヨヨから頼まれた買い物も済ませつつショッピングモールから外に出てベンチに座って話すことになった。

 

「ねぇ、聞いても良い?ソラちゃんはどうしてそんなにしてまでヒーローになろうと思ったの?」

 

「それ、俺も気になってた。まぁ、無理に話さなくても良いけど」

 

「……本物のヒーローを見てしまったからでしょうか」

 

それからソラは青い空を見上げつつ二人に自分の過去について話し始めた。

 

「小さい頃に行ってはいけない森に迷い込んでしまったことがあって、あの日私は本物の私のヒーローに出会ったんです。あの人みたいになりたい。そのために毎日トレーニングして、ヒーロー手帳をつけて」

 

「ヒーロー手帳……」

 

「それって、まさか」

 

二人はその手帳は昨日のブタ人間の手によって破かれてしまったことを思い出すとあの手帳はそれだけ大事な物であったと理解すると共に暗い顔になる。ソラも仕方ないよとばかりに残念そうな顔になったがその中に後悔の気持ちはない。

 

「た、助けてくれ!」

 

すると近くから助けを求める声がして三人がその方を向くとそこには手に大量のハンバーガーを手にした昨日のブタ人間がハンバーガーを頬張る所だった。

 

「いっただきまーす!うめぇ!パワーが漲ってくるのねん!これだけ食べれば……うん?お、お前ら!」

 

ブタ人間は三人に気がついたようで道路を挟んだ向かい側から三人を睨みつけてくる。

 

「ざ、ザブトン!」

 

「違うって!テンドンだよ!」

 

「ザブトンやテンドンじゃないのねん!カ・バ・ト・ン!なのねん!」

 

「あれ?違った……」

 

ましろが怯え、あさひが違ったことに衝撃を受けているとソラが二人の前に出て二人を守るように手を広げる。

 

「性懲りも無くまた悪い事を!許しませんよ!カツドン!」

 

「カバトンだって言ってんだろ!わざとか!ええぃ、あのガキンチョはどこだ!」

 

カバトンは名前を何度も間違えられたことに対して腹を立てつつもエルがいない事に対して声を上げる。

 

「なっ!?まだエルちゃんの事を狙ってるのかよ!」

 

それに対してあさひが道路の反対側から叫びつつ反応し、睨み合う。

 

「へっ、まぁ良い。昨日のお礼をするのが先だ!ボッコボコにした後にネチネチと聞き出してやるのねん!カモン!アンダーグエナジー!」

 

それからカバトンは昨日のように真っ黒なエネルギーを地面から召喚し、近くにあった自販機に取り込ませるとその姿をランボーグへと変えさせる。

 

「ランボーグ!」

 

「にゃはははは!」

 

ランボーグはペットボトル型のミサイルを放つとあさひは自分で躱し、ましろはソラに押されるようにして何とか回避する。すると更にランボーグはペットボトル型のミサイルを放ち続けて逃げるソラとましろを狙い続ける。

 

「許せない……姉さんを、ソラさんを傷つけるな!」

 

するとあさひの目が再び黒く染まりかける。それを見たましろはすぐに声を上げてやめるように言う。

 

「ダメ、あさひ!そんな姿にならないで!」

 

「でも……姉さんが」

 

「私のことは大丈夫だから……」

 

ましろに止められてあさひの目が黒くなるのは中断されて元に戻る。それを見たカバトンは笑いながら二人を見下した。

 

「弱えぇ脇役がでしゃばるんじゃねーよ。二人揃って雑魚のくせに」

 

「今なんて言った?」

 

そう言うとあさひは近くに落ちていた鉄パイプを拾うとカバトンに向けて投げつける。

 

「おわっ!?」

 

流石に不意打ちで攻撃されたせいかカバトンもびっくりしてそれを躱すので精一杯となった。

 

「俺を馬鹿にするのは良い。……だが、俺の姉さんを馬鹿にするのは許さない!」

 

あさひはましろを馬鹿にされたせいか頭に血が上って周りが見えなくなってしまう。今回は目が黒化しなかったものの、それでも彼の怒りは最高潮にまでなっていた。そこにランボーグが割って入ると生身のあさひ相手に攻撃を繰り出す。その瞬間、あさひは目を黒く変える事なく人間離れした速度で移動し、更に拳を叩きつける。その一撃でランボーグは一瞬怯まされた。

 

「……未熟です。あさひ君はましろさんを傷つけられたのが原因ですが、相手とすぐに戦うって気持ちになったのに……。私はこうして躊躇してる」

 

「ソラちゃん……」

 

ましろは今、ソラの手を掴んでいるためその震えが自分にも伝わってきていた。それは、ソラが戦うことに対して怖がっている証拠でもある。

 

「憧れのあの人の背中は遥かに遠い。それでも、今は……ヒーローの出番です!」

 

それからソラは腰に付けていたペンを手に取るとそれを使い変身する。

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!スカイ!」

 

ソラの姿は再びキュアスカイとなり、変身を完了すると決め台詞を言い放つ。

 

「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」

 

「出たなプリキュア!ランボーグ、あんな脇役は無視だ!あのプリキュアを倒せ!」

 

カバトンの指示と共にランボーグはあさひを無視するとペットボトル型のミサイルを飛ばしてスカイと近くにいるましろを狙う。すぐにスカイはましろを抱き抱えてから建物の上に跳び上がり、ミサイルを回避する。

 

「ソラちゃん……気をつけて!」

 

「はい!」

 

それからランボーグはペットボトル型のミサイルを飛ばしてスカイを攻撃するが、いとも簡単に接近されるとそのまま連続パンチを貰う。そして、あさひは超人的な跳躍力でましろの元に向かうといきなり力が抜けたように脱力してその場にへたり込む。

 

「あさひ!大丈夫?怪我はしてない?」

 

「姉さん……俺は平気だよ。大丈夫。それよりも、やっぱりスカイに任せるしかランボーグには対抗できないのかな……」

 

あさひはそう言いながら落ち込んだ顔つきになる。ましろはそんなあさひを気遣いつつスカイの戦いを見ることになった。

 

「間合いを取れ!ランボーグ!」

 

ランボーグはスカイにパンチを繰り出すが、それは簡単に躱されてスカイに距離を取られるとそのまま反撃のキックが命中し、ランボーグは後ろに吹き飛ばされる。

 

「何してるのねん!」

 

「ランボーグ!」

 

ランボーグは吹き飛ばされた事でスカイと距離を自動的に取れたからか、ペットボトル型のミサイルを飛ばして攻撃してくる。

 

「効きません!やあっ!」

 

スカイはそのミサイルを簡単に全て弾き飛ばすとその軌道がカバトンの方へと逸れてカバトンはその影響で自分に飛んできたミサイルを躱すので手一杯となる。

 

「ランボーグ!と、とっておきだ!」

 

カバトンの指示と共にランボーグは巨大なペットボトル型のミサイルを生成し、飛ばしてくる。

 

「ランボーグ!」

 

「ソラ(ちゃん)!」

 

「くっ!!」

 

「う、受け止めただと!?」

 

スカイは自分に飛んできたミサイルを両手で受け止めるとそのままミサイルの勢いを利用して回転を始める。

 

「大・回・転!プリキュア返し!」

 

そのままミサイルをランボーグに投げ返し、ランボーグはその火力をモロに喰らって地面に叩きつけられた。それからスカイは体勢を崩したランボーグへと浄化技を放つ。

 

「ヒーローガール!スカイパンチ!はあっ!」

 

「スミキッタァ〜」

 

その一撃はランボーグに命中するとランボーグを浄化させていき、元の自販機へと戻したのだ。それからスカイはカバトンを見下ろして一歩前に出るとカバトンはランボーグがやられたために撤退した。

 

「ひっ、カバトントン!」

 

スカイは変身を解き、ソラの姿に戻るとペンを見つめる。それを見たましろとあさひは同時に手を出した。

 

「わかってます。二人共、騒ぎになる前に」

 

二人はソラの手を掴むとそのままソラを引っ張っていき、『Pretty Holic』と看板に書いてある店に入ると二人はある物を探した。

 

「「よかったぁ……まだ売り切れて無かった……って、え?」」

 

二人が同時に手を伸ばしたのは一冊の可愛らしい手帳で、二人はそこで顔を見合わせる。どうやら考えていた事は一緒なのだとそれぞれ察するとそれを二人でソラに見せる。

 

「これ、どうかな?」

 

「どうって……」

 

「さっきソラが言ってたヒーロー手帳の代わり」

 

「そうそう。これをヒーロー手帳の代わりにするの。私、発売前から情報をチェックしてお小遣い貯めてたんだ」

 

「本当は俺も姉さんにプレゼントするつもりで貯めていたんだけど、今これが必要なのはソラだと思うから。俺と姉さん、二人で半分ずつ料金は払うから」

 

二人の気持ちはソラに手帳をプレゼントしたいという気持ちで一致しており、そしてそれは双子だからこそ相手を気遣う優しさもそっくりなのである。

 

「ダメですよ、そんな……もらえません」

 

「「お願い、プレゼントさせて……」」

 

「どうして……私のためにそこまで?」

 

ソラは疑問に思う。二人揃ってそこまでしてくれるのか。そしてその気持ちは今回もしっかりと一致していた。

 

「「本物のヒーローを見ちゃったから……かな」」

 

それを聞いたソラは嬉しそうにその手帳を受け取ると満面の笑顔を浮かべる。

 

「……優しいな。だが、その優しさが命取りにならないと良いが……」

 

そんな様子を見ていたあさひの中に潜む声がそう呟くが、ソラの笑顔を見る事でいっぱいのあさひの耳には届かない。




また次回もお楽しみに。


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エルのホームシック

ソラに手帳をプレゼントしてから数日が経ったある日、ましろとあさひは二人の両親とビデオ通話していた。

 

「ましろちゃんにあさひ君!早くこっちの仕事を終わらせて会いたいよ。ホワホワのまっしろな綿雲、ま・し・ろ・ちゃん!それに、夜の闇を照らす明るい太陽、あ・さ・ひ・君!」

 

「や、やめてよパパってば。そういうの。もう子供じゃないんだから」

 

「父さん、そういうのが割と恥ずかしい年頃なんだ。……頼むから人前とかでそれやらないでよ?恥ずかしさで倒れる自信あるから」

 

二人は父親からの愛情表現を恥ずかしいと返す。中学生にもなればこのような言葉を恥ずかしくないと思う方が不自然かもしれない。

 

「えぇ!?そう?」

 

「「そうそう」」

 

「元気にしてる?ましろ、あさひ。寂しくない?」

 

落ち込む二人の父親の隣にいて二人を気遣うのは二人の母親だ。海外にいる二人の両親だが偶にはこうしてビデオ通話によって話をしている。

 

「大丈夫だよ。おばあちゃんもいるし」

 

「それに、今度新しい友達もできたしね」

 

「そう。今度帰ったら紹介してね」

 

「また連絡するから」

 

「うん。二人共、お仕事頑張ってね」

 

「「じゃあね」」

 

そう言って二人との通話は切れてタブレットの画面が暗くなる。するとエルの泣く声が聞こえてきた。

 

「ソラちゃん」

 

「ここで泣き始めちゃったか。ま、通話中に泣かなかっただけまだ良いけど……」

 

二人がソラの元に寄るとソラは近くに置いてあったマグを手に取りそれをエルへと差し出す。

 

「ミルクですか?どうぞ」

 

するとエルはそれじゃないと言わんばかりに首を振る。

 

「なら、おしめですか?」

 

「えるぅ!」

 

それも違うとまた首を振ってから不安そうに辺りを見渡す。まるで誰かを探しているかのように。

 

「あ、もしかして……」

 

「パパとママに会いたいのか」

 

ましろとあさひの考えは当たっており、エルは二人の質問に首を縦に振る。

 

「そうなんですか。……とは言ってもスカイランドに戻る方法はわからないままですし」

 

「うーん、せめてパパとママの顔を見せてあげられればなぁ……」

 

「でも、そんな都合の良い物なんてここには……」

 

あさひが頭を悩ませていると扉が開く音がしてヨヨが歩いてきた。しかも良い知らせを持って。

 

「できるわよ」

 

「へぇ、そんな便利な物が……ってできるの!?」

 

「これを使えばスカイランドと通信することができるわ」

 

そう言ってヨヨが見せたのは一枚の鏡だった。どうやらそれを使えばスカイランドとの通信も可能となるらしい。

 

「この鏡はミラーパッド。これを使えば好きな場所を映すことができる。スカイランドにいるこの子の両親ともお話できるわ」

 

そう言って実際にヨヨがミラーパッドを使って街中を次々と映していく。

 

「へぇー、この世界にはそんな便利な物があるんですね」

 

「「いやいや、そんなの無いよ(から)!」」

 

「おばあちゃん何者なの?」

 

「というか、スカイランドの事を聞いても特に驚いてなかったし、絶対何か隠してるでしょ!」

 

ましろとあさひの問いかけに対してヨヨは平然とある秘密を口にする。

 

「実はねぇ……私はスカイランド人なの」

 

「そっかぁ……おばあちゃん、スカイランド人なんだねぇ……」

 

「姉さん、脳のキャパオーバーしてる……俺も信じられないが」

 

ましろはいきなり飛び出した祖母からの衝撃的なカミングアウトに脳が許容できる容量を超えてしまい頭から湯気が出てしまっている。

 

「スカイランド人!?本当に!?」

 

「ヨヨさんもスカイランド人だったんですか!?」

 

ヨヨが言うにはヨヨ自身、スカイランドで博学者だったらしいのだが五十年前にあさひ達の世界を調べにソラシド市へとやってきたのだ。

 

「ヨヨさん、もしかして……私とエルちゃんがスカイランドに戻る方法も知ってたりするんですか?」

 

「ええ、勿論知っているわ。ちょっと時間がかかるけど、私に任せて欲しいわ」

 

それを聞いたソラは嬉しそうにするとヨヨへとお礼を言う。そして、今やるべき事であるスカイランドとの通信をするための方法を聞いた。

 

「通信をスカイランドにまで届けるにはこのスカイジュエルが鍵になるわ」

 

そう言ってヨヨはスカイランド語の本を取り出すとそのあるページを開けた。そこには空色の鉱石が描かれており、これがスカイジュエルだということが一目見てわかった。

 

「「スカイジュエル?」」

 

「スカイランドにある様々なエネルギーになる鉱物です」

 

「こっちの世界の石炭とかみたいなものか」

 

「こんなの、見た事ないし簡単には見つからないだろうね」

 

ましろとあさひは一瞬エルの方を向いてから二人で顔を見合わせて頷くと立ち上がった。またしても二人の意思が一致した証拠である。

 

「私、スカイジュエルを見つけてエルちゃんをパパとママに合わせてあげたい!」

 

「ああ、突然異世界に放り出されて両親と離れ離れになって泣いている子を見捨てるなんてできないな」

 

「ましろさん、あさひ君、私も同じ気持ちです!」

 

それに合わせてソラも立つとやる気満々の状態であった。三人共泣いているエルを助けたい気持ちでいっぱいなのだ。

 

「どこへなりとも行きます!」

 

「おばあちゃん、スカイジュエルはどこに行けばあるの?」

 

それを聞いたヨヨはニコリと笑うとましろの質問に対する答えを返した。

 

「うちの裏山にあると思うわ」

 

「「えぇ!?」」

 

それを聞いたソラとましろはずっこけてあさひは苦笑いする。まさかこんなに近くにあるとは思わないからだ。

 

「あー、そういうパターンね」

 

「意外と近場でしたね」

 

「宝石のありかはあなたのミラージュペンが示してくれるはず」

 

それから三人はエルと共に出かけるための準備を進めていき、出発する直前にヨヨからエル用の抱っこ紐を渡された。

 

「ありがとうございます。ヨヨさん」

 

「色々と役に立つと思うわ」

 

「……色々と?」

 

あさひの質問にヨヨは答える事はなく、すぐに三人は出発して裏山へと向かう事になる。ちなみに、荷物はあさひが持ち、エルはソラが抱っこして移動する。三人は移動中に色々と会話をしながら歩みを進めていく。

 

「本当にびっくりだよ。まさかおばあちゃんがスカイランド人だなんて」

 

「という事はましろさんもあさひ君もちょっとだけスカイランド人って事になりますね」

 

「確かにそうなるな」

 

「ふふっ、やっぱり」

 

「え?」

 

ソラはニッコリと笑うとエルと二人を順に見ながら返事を返していく。

 

「ヨヨさんが言うように私達が出会ったのは運命なのかもしれませんね!」

 

「そうだよね!」

 

「え、えるぅー!」

 

するとエルがまた泣き始めてしまう。このままでは先に進めないのでましろは近くにあった綿毛を取ってくるとエルへと見せた。

 

「フワフワの綿毛だよ」

 

「える!」

 

それだけでは気に入らないのかエルはプイッとそっぽを向いてしまう。ましろは“じゃあこれならどう?”とばかりにその綿毛に息を吹きかけると綿が飛んでいき、それを見たエルは嬉しそうにその綿に手を伸ばした。

 

「える!える、えるぅ〜!」

 

「ましろさん上手ですね!」

 

「何が?」

 

「エルちゃんのあやし方です。赤ちゃんにとって大事なのは今何を感じているのかをわかってあげる事です。こうして、エルちゃんの好きそうな物がわかったのもきっとましろさんの優しさなんでしょうね」

 

「そ、そうかな」

 

ましろはソラに褒められて照れくさそうに顔を赤くする。それを見たあさひは一人考えていた。

 

「(昔からそうだ。姉さんはいつも他人に優しくする。俺も姉さんの優しさに何度救われた事か。だから、姉さんのこの優しさは俺が守らないと。姉さんの温かさを守ることが俺にできる精一杯だから)」

 

あさひがそう思っているとソラは近くにあったいかにも毒キノコのような鮮やかな色をしたキノコの前にしゃがんでいる。

 

「これは……」

 

「「待って!!それ、毒キノコ!!」」

 

姉弟は揃ってソラを止めるとホッと息を吐いてソラがキノコに触れなかった事に安堵する。

 

「山には危険な植物もあるからよくわからない物は無闇に触っちゃダメだよ」

 

「はい……危ない所でした」

 

「後で家にある図鑑を貸してあげる」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

すると再びエルが泣き出してしまう。今度は先程ミルクを飲まなかった影響でお腹が空いてしまったと三人は察し、一旦休憩を取る事にした。まずはソラがエルにミルクを飲ませてからましろは三人で食べる用のパンを出した。

 

「はい、二人にはパンがあるよ」

 

「ありがとうございます!」

 

ソラは早速パンを手に取ると一口食べる。するとソラは美味しかったのか笑顔になった。あさひもそれに続くようにパンを手に取って食べる。

 

「とっても美味しいです!」

 

「やっぱり姉さんの焼いたパンは美味しいよ」

 

「良かった。実は上手く焼けたか心配だったんだ」

 

「え!?これ、ましろさんが焼いたんですか?」

 

「そうだよ」

 

「パンが焼けるなんてましろさんは凄いです!」

 

ソラは感激したようにましろを褒めちぎり、ましろはそれに嬉しそうにする。

 

「あれ?もしかしてこのパン……雲の形ですか?」

 

ソラはパンを手にし、空に浮かぶ雲の隣に並べるようにして見比べる。どうやら、ましろはソラのいるスカイランドをイメージしてパンを焼いたようだ。

 

「名付けて雲パン」

 

「雲パン!エルちゃん、雲パンですよ〜フワフワ〜!」

 

ソラとましろはエルへとそれを見せて元気づけようとする。エルはそれを見て嬉しいのかその顔が笑顔へと変わり、二人は安心した表情になる。

 

「……やっぱり、姉さんには人を喜ばせる才能がある。それに比べて、俺は他人を傷つける事しかできない……こんな自分に価値があるなんて到底思えない」

 

「あさひ君、何か言いました?」

 

ソラはあさひがボソッと小さく言った言葉が気になってあさひへと質問する。それをあさひは何でもないと誤魔化した。しかし、ましろには悲しそうな顔になる所をバッチリ見られたようで。

 

「あさひ、もしかしてまだあの時の事気にしてるの?」

 

「……そんなのじゃないよ」

 

「じゃあ、じゃあ何でそんなに辛そうな顔をしてるの?」

 

「……」

 

あさひは見られたくない顔を見られたからか、プイッとそっぽを向く。ソラはそれを見てきっと前に聞いたまだ話せないあさひの秘密と関係してるんだろうと思い、その場では聞かない事にした。それから三人は荷物を片付けてスカイジュエル探しを再開する事になる。




また次回もお楽しみに。


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ワクワク!スカイジュエル探し

休憩を終えた三人が出てきたのは森の中を流れる小川で反対側には竹藪が鬱蒼としている。今度はエルのお世話をましろと交代して荷物は引き続きあさひが背負っていた。

 

「おばあちゃんが言っていたのはこの川だけど……」

 

「本当にあるんでしょうか?」

 

「手当たり次第で探すしか……って、ん?」

 

三人で話していると突如としてソラの腰に付けていたペンが光を放ち始め、スカイジュエルの存在が近くにある事を示している。

 

「ペンが光りました!」

 

「って事は……」

 

「近くにスカイジュエルがある!」

 

「さぁ、宝探しの時間です!」

 

ソラがペンを翳しつつ三人でキョロキョロと辺りを捜索する。するとソラが何かを見つけたようで二人もその後を追う。

 

「こ、これって……」

 

「うーん、どう見ても人工だなぁ」

 

三人が見つけたのは絶妙かバランスで積み上げられた石のオブジェのような物だ。こんな物が自然でできるわけがないので、大方誰かが積み上げて作ったのだろう。

 

「凄い!誰が何のために……」

 

「確かに凄いけど……」

 

するとエルがいきなりくしゃみをしてしまい、その影響で先程まで奇跡的に積まれていた石がガラガラと崩れてしまう。

 

「……崩れたな」

 

「「う、うん」」

 

「くしゃみ一つで壊れるなら多分強い風がちょっと吹けばすぐ崩れて危なかっただろうし、二人に怪我が無くて良かったよ」

 

それから三人は気を取り直して歩いていくと目の前に巨大な大岩が地面にめり込むように置かれており、中に何かがあるかもしれなかった。

 

「まさか、この中に?」

 

ましろがそう言うとあさひがスッとソラへと背負っていたリュックを手渡した。

 

「あさひ?」

 

「一番壊せる可能性がある俺がやってみる」

 

「「え?」」

 

二人はあさひの言葉に唖然となるとましろは弟の身を案じて止めさせようとする。

 

「待って、これであさひが怪我をしたら……」

 

「その時はその時考えよう」

 

「……もしかして、昔アニメでやってたアレをするの!?」

 

ましろがあさひに聞くと彼は頷き、それから半身の構えを取る。その後、左足を大きく振り上げて右足と左足が一直線になるほどにすると振り上げた左足を地面に踏み込み、そのまま後ろに下げていた右腕を思い切り突き出す。

 

「パッと開かずに、ぎゅっと握って……ダン!ギューン!ドカーン!……太陽の……鉄拳!!」

 

太陽の鉄拳

 

するとあさひの右腕に赤い灼熱のエネルギーが纏われていきそれは拳の形へ。そしてそれが岩へと繰り出される。その拳は岩に命中すると岩を砕く

 

 

 

 

 

事は叶わず、逆に灼熱の拳が消えてしまい、あさひの拳がガンとぶつかってその直後にあさひの悲鳴が響く事になった。

 

「痛ってぇえええ!!」

 

「「………」」

 

「だから言ったのに!」

 

これにはソラもエルも思わず呆然となってしまう。奇跡的に鉄拳越しに当たった影響かダメージは少なかったが、ましろからもう二度とやるなと注意されて怒られてしまう。

 

「もう!一応そのアニメを見た後にちょっと練習してるのは見てて、実際できそうにはなってたけど結局未完成のままだったじゃん!」

 

「面目ない……」

 

あさひは痛みを堪えつつ反省の色を示す。それを見たソラは無言で預かっていたリュックをあさひに返して岩の前に立つ。

 

「今度は私が!」

 

ソラは構えを取るとそこから長い溜め動作の後に岩を思い切り殴る。するとその一撃によって岩は真っ二つに粉砕されると中からアンモナイトの化石が出てきた。

 

「押忍!」

 

「凄い、あさひとは大違いだよ」

 

「ぐっ!?言わないで姉さん……結構心に来るから……」

 

「でも、化石はお宝だけど特にペンに変化は無いしやっぱり関係無かったね」

 

それから三人はまたスカイジュエル探しを再開し、川の流れに沿って歩いていく。すると突然ペンが光り、何かに反応していた。

 

「凄い光!」

 

「あれって、もしかして……」

 

三人が辺りを見渡すと川の浅瀬から眩い光が出ており、三人がその場所に行くと川に手を突っ込み光を放つ何かを手に取る。それはヨヨの待っていた図鑑に乗っているスカイジュエルで間違いなかった。

 

「ありました!」

 

「これでスカイランドと通信ができる!」

 

「やったぁ!やりました!」

 

そう言ってはしゃぐソラ。それを見たあさひは苦笑いしつつそれを見ていた。

 

「ソラ、嬉しいのはわかるけどそんなにはしゃいだら……」

 

その時、ソラが地面に着地した衝撃で近くにあった石を重ねたオブジェが崩れる音がする。しかも、その時にオブジェの制作者もそこにいたらしく怒ったような声を上げた。

 

「あぁー!おい!ビックリして崩れちゃったじゃないか!」

 

三人がその声の主を見るとよく見覚えのあるブタ人間……いや、カバトンその人だ。

 

「どうしてくれるのねん!」

 

「あなたは!」

 

「お前は!」

 

「カバピョン!」

 

「違う違うカバトーンだって」

 

「そっちの脇役は惜しいが違う!カ・バ・ト・ン!なのねん!良い加減覚えろっつーの!」

 

会うたびに名前を間違えられるカバトンはオブジェを崩された事もあって怒っていたが、ましろがエルを抱えている事もあってニヤリと笑う。

 

「探し物が向こうからやってくるなんて……ラッキー」

 

「エルちゃんを狙う気持ちは変わらない……か」

 

「おら、その赤ん坊をこっちへよこしな」

 

カバトンはましろを脅すようにしてエルを寄越すように要求するが、勿論ましろが良いと言うわけがない。

 

「絶対に嫌!」

 

「へっ、なら仕方ないのねん。カモン!アンダークエナジー!」

 

カバトンがいつものようにランボーグを呼び出すと今回は竹のランボーグだ。それを見たソラはあさひとましろの前に立つと二人を庇う。

 

「二人は隠れていてください!」

 

「うん」

 

「無理はするなよ、ソラ」

 

「わかってます!」

 

「ヒーローの出番です!」

 

二人はエルを連れて近くにあった岩へと隠れる。それからソラはミラージュペンを使って変身を始めた。

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!スカイ!」

 

ソラは光に包まれると同時にその姿をキュアスカイへと変えるとそのまま決め台詞を口にする。

 

「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」

 

「ランボーグ!やってしまえ!」

 

カバトンがランボーグに指示を出すとランボーグはスカイへと飛びかかり、スカイはそれを躱す。するとランボーグは両手にあるタケノコのような物を地面に突き刺すといきなり地面から先端が尖った竹が大量に生えてきた。

 

「えるぅ……」

 

「大丈夫。きっとキュアスカイが守ってくれるよ」

 

心配そうにするエルにましろは彼女を安心させるようにその頭を撫でてあげる。その一方で、あさひは悔しそうに唇を噛んでいた。

 

「敵が来たって言うのに、俺は何でこんなに無力なんだ……今すぐにでもスカイを助けに行きたいのに……」

 

「力が欲しいか?」

 

その時、いきなりあさひの胸から声が聞こえてきた。そしてそれは前に聞こえた声と同じである。

 

「また……」

 

「力が欲しいなら今のお前じゃあ無理だ。俺と代われ」

 

「でも……」

 

あさひがその声を聞いて困っている中スカイとランボーグの戦いは続き、スカイは生えてくる竹を躱しつつ近くの岩の上に立つ。すると竹はその岩をも簡単に破壊し、砕いてしまう。

 

「凄いパワー!!」

 

しかしスカイは岩が砕かれる前には跳び上がっており、そのままランボーグへとキックを繰り出す。ランボーグはそれに対抗するために両手を地面から抜いてパンチで迎え撃つ。だが、スカイはそれさえも計算済みでその拳を回避して着地するとガラ空きの腹に拳をぶち込む。

 

「上手い!」

 

「むきーっ!何やってるのねん!」

 

カバトンに怒られてランボーグは立つと今度はタケノコ型のミサイルを飛ばしてくる。

 

「こんなのには当たりません!」

 

スカイはそれを軽い身のこなしで躱し続け、接近する。その時、ランボーグが発射したミサイルの中の一発がましろとあさひ、エルが隠れている岩へと飛んでいった。

 

「不味い!ましろさん!」

 

スカイは急いでそのカバーに向かうが、そこにランボーグが攻撃を仕掛けてきて向かうことができない。そして、そのミサイルが三人に直撃するその時……。

 

「ッ!こうなったら一か八かだ!」

 

「ダメ!」

 

「少しでも軌道を逸らされば姉さんとエルちゃんに直撃はしない。だから!」

 

そう言うとあさひは先程ましろに止めるように言われた太陽の鉄拳の体勢に入る。当然ましろはそれを止めるように叫ぶが、あさひは言うことを聞かない。

 

「太陽の……鉄拳!」

 

あさひは先程同様に右手に赤い灼熱のエネルギーを纏いながら拳を繰り出す。しかし、今度は先程とは違って溜めが短い分エネルギーの離散も早かった。押し負ける……あさひがそう思って目を瞑ると声が聞こえてくる。

 

「……仕方ない。貸し一つだ」

 

あさひの中の声がそう言うとあさひの目が黒く染まり、体から禍々しいオーラが出ると拳が黒く変わり、巨大化。そのままミサイルを弾き返すとランボーグに命中してランボーグを吹き飛ばした。

 

「今のは……一体?」

 

「とにかくチャンスです!」

 

ましろと元に戻ったあさひが驚く中、ランボーグにできた隙をスカイは見逃さない。一気に浄化技で決めにかかる。

 

「ヒーローガール!スカイパンチ!」

 

「スミキッタァ〜」

 

その一発がランボーグに直撃するとランボーグは浄化されてカバトンはいきなり起きた出来事に怒り心頭となる。

 

「またしてもやられたのねん!こうなったら……」

 

するとカバトンはどこからともなく先程三人が見かけた毒キノコを手にしており、それを食べた。

 

「あ、それ食べたら……」

 

「うまうま。これで、パワー全開なのねん!」

 

カバトンは栄養補給をしてパワーを回復させると二度目のランボーグを召喚しようとする。

 

「カモン!アンダーク……」

 

その時、カバトンのお腹が鳴ると腹を痛めた。どうやら先程の毒キノコの影響で体調を崩したらしい。

 

「もう。無闇に山にある物を取ったり食べたりしたらダメなんですよ。めっ!」

 

「覚えてろ……カバトントン!」

 

流石に腹痛を起こしてはランボーグを呼ぶことすらできないので撤退を選び、それと同時にソラも変身解除。二人と合流する。

 

「ソラちゃん、ありがとう」

 

「俺からもありがとう」

 

「いえ、ましろさんとあさひ君がエルちゃんを守ってくれたから私も安心して戦えたんです。それに……あさひ君のあの力が無ければ、きっとましろさんもエルちゃんも守れなかったと思います」

 

それを聞いたあさひは心の中でモヤモヤとした気持ちになった。何故ならあの力は自分のものじゃない。自分の中に潜む何かの力なのだ。

 

「そんな、あれは……俺の力じゃないのに……」

 

「何か言った?」

 

「いや、何でもないよ」

 

それからあさひ達は裏山を出るとヨヨの元に戻り、スカイランドとの通信を繋がることに成功させる。その通信自体はあまり長くは保たなかったものの、エルを両親と会わせることができた。それにより、エルのホームシックは一応解決する事になる。

 

そして、エルという呼び名についてだが、それ自体は合っていた。ただ、その正体はスカイランドのお姫様であり通信の相手がスカイランドの国王と王妃だった事からそれはわかった。そしてヨヨはスカイランドではハイパースゴスギレジェンドの名誉博学者と呼ばれていてあさひはその事で驚きを隠せなかったが、何とか飲み込んで受け止める。

 

通信の後ソラとましろは外で二人話していたが、あさひはそれには加わらなかった。一人部屋に籠ると胸に手を当てて必死に声を聞こうとして、全く反応が無いのに頭を悩ませる。

 

「……どうして……何で俺から聞いた時は応えてくれないんだよ。お前は誰だ?お前は何なんだ?お前の真の目的は何だ?……まさか、お前はあの時に生まれた存在なのか?」

 

あさひは幾つも問いをぶつけるが、声は全く応えてくれない。そんなあさひは少しずつ混乱し、心がどんどん沈んでいく感覚に飲まれていった。

 

「応えてくれよ……俺はお前の事を知りたくて……」

 

その声に応える者は誰一人いない。あさひはこの時からましろやソラにも相談できない悩みをただ一人で抱えることになってしまったのだ。果たして、彼の悩みが解決する日が来るのか。それを知る者は誰一人いない。




また次回もお楽しみに。


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幼馴染との再会

エルのホームシックを解決してから数日。あさひ、ソラ、ましろの三人は早朝にランニングをしていた。あさひは運動自体、そこそこできるので何とかソラの速度に追いつくことができている。ただ、ましろは運動はあまり得意では無いのでソラとあさひがゴールに付いてから暫く後に到着したが。

 

「ソラちゃ〜ん!」

 

「姉さん、無理しないで良いって言ったのに」

 

「この前の事がどうしても頭から抜けられなくて、ランニングして体を鍛えたら少しはソラちゃんの役に立てるかなって」

 

この前の事とは竹のランボーグからの流れ弾が飛んできた際に自分が何もできなかったことについてである。

 

「でも、千里の道も一歩からだからね」

 

「それってどういう事ですか?」

 

「毎日コツコツやらないとダメって事だな。ま、姉さんがソラみたいになろうと思ったらかなり時間がかかると思うけどね」

 

「それでも私は強くなりたい……あさひの事も守れるようになりたい」

 

ましろとしてもあさひに守られるのは胸が苦しいのだ。姉として弟を守りたい気持ちが強くなっている証拠だろう。するとソラがペンで手帳に平仮名だが、メモをしている所を見て二人は驚く。

 

「えぇ!?いつの間に覚えたの?」

 

「一日五文字ずつ。毎日コツコツです」

 

「それにしても凄い記憶力に対応力……」

 

「私も毎朝ランニングを続けたらソラちゃんやあさひみたいに強くなれるかな」

 

それを聞いてソラは首を横に振る。それを見てましろは半分落胆したように“だよね”と言った。しかし、ソラの本音はそこには無い。

 

「いえ、ましろさんは今のましろさんのままでも良いんです」

 

それを聞いたましろは首を傾げる。自分にそんな良い所なんてあったのかなと考えているようだ。そして、あさひも顔を曇らせていた。

 

「……あれは、俺の強さなんかじゃない。俺は、二人が思ってるほど強くなんか……」

 

「あさひ?どうしたの?」

 

「な、何でもないよ」

 

あさひはその場を何とか誤魔化すとその直後にソラのお腹が鳴り、ましろはソラに手を引かれながらあさひはソラの速度に追いつけるように先程以上の速度で家まで蜻蛉返りする事になる。それからヨヨも含めて朝食を摂り終えると突然インターホンが鳴り響く。

 

「こんな朝早くから誰だろう?」

 

「迷惑な人だったら俺が……」

 

「ストップあさひ。そんな物騒な事考えないで」

 

「私が出ます!」

 

それからソラが玄関の扉を開けるとそこには栗毛のロングヘアーをした女性が立っていた。いきなりソラに抱きつくとソラに話しかけるが相手が自分の思っていた人とは違ったのか、女性は困惑した顔になる。

 

「誰?」

 

「こっちの台詞です!」

 

それから騒ぎを聞きつけたましろとあさひが出てくるとその人物を知っているかのように驚いた顔になっていた。

 

「あげはちゃん!?」

 

「あげは(ねえ)なんで!?どうしてここに……」

 

「ましろん!あさひ!久しぶり!」

 

するとあさひの顔があげはに見惚れたように若干赤く染まる。そして、あげははそんなあさひを見てニッコリと笑う。

 

「あさひ、久しぶりに私の顔を見て嬉しい?」

 

「う、嬉しいも何も、びっくりしてつい……」

 

あさひは照れくさそうに顔を少し背ける。そんな二人が仲良くしている所を見てソラは疑問を抱く。

 

「えっと、どちら様ですか……?」

 

ソラの問いにあげははタブレットをどこからともなく取り出すと紙芝居風に説明を始める。

 

その内容は昔、あげははソラシド市に住んでいて当時近所同士だったましろやあさひと仲良くしていた。しかしあげはの母親の仕事の都合でソラシド市からあげはは引っ越す事になり、あげはは泣きながら家を出ていってしまう。その先の部分は長々と話したら日が暮れるとましろに止められて話はそこで終わった。

 

「あの時はあげはちゃんだけじゃなくてあさひも大泣きしたからね……」

 

「あはは……多分それ、あの約束が原因だと思うけど……」

 

「ち、小さい頃のただの約束だよ……それに今はもう……」

 

あさひの目が落ち込んだような物に変わり、一旦話題を変えることにしてあげはは自己紹介をする。

 

「私、聖あげは!18歳!血液型はB。誕生石はペリドット!ラッキーカラーはベイビーピンク!最近のブームはイングリッシュティー・ラテ・ウィズ・ホワイトチョコレート・アド・エクストラホイップ!はい、そっちのターン!」

 

あげはに言われてソラもエルを抱えたまま自己紹介を開始した。

 

「初めまして。この家でお世話になっている、ソラって言います」

 

「この街の子?」

 

「いえ、エルちゃんと一緒に別の世界から来ました」

 

「……別の世界?」

 

そこまで言ったところでましろが慌てて両手でTの字を作って止めに入る。そして、あさひに至っては完全に呆れてしまっていた。

 

「タ——イム!」

 

「やると思ったけど、早速やっちゃったか」

 

それからましろは指でバツマークを作ると口に当てて喋っちゃダメだとソラを戒める。

 

「そ、そうでした!大騒ぎになるからスカイランドから来たって事や、エルちゃんがプリンセスだって事は話さないようにするってましろさんやあさひ君と決めたのに……」

 

「プリンセス?」

 

「える!」

 

あげはがまた初耳の単語を聞き返すとましろは再び言っちゃダメだという事を今度は叫びながら伝える。そして、あさひに至ってはもうどうしようもないとばかりにため息を吐いた。

 

「あげはさん!今耳にした事は綺麗さっぱり忘れてください!」

 

「隠し事〜?」

 

あげはが口を尖らせて露骨に嫌な顔をするが、あさひとましろは申し訳無さそうに謝る。

 

「ごめんね、あげは姉。友達の秘密は言えないんだ……」

 

「その時が来たらちゃんと話すから……」

 

「OK。じゃあその時を楽しみにしているね」

 

それからあさひ、ソラ、ましろの三人はあげはの用事である保育の専門学校の近くに来ていた。あげはは遠い街からここ、ソラシド市の保育の専門学校に通うべくこの学校の校長先生と対談しているのだ。ソラとましろ、あさひは一旦あげはの用事が終わるまで学校の敷地内にあるベンチでエルと共にゆっくりしている。

 

「ここはどこなんですか?」

 

「ここはね、保育士さんの学校だよ」

 

「保育士?」

 

「小さい子供のお世話をする先生の事だな。あげは姉、昔から保育士さんになりたいって言ってたから」

 

「なりたい物のために頑張るって偉いよね」

 

三人は楽しげに会話を進めているとふとましろがエルへと質問をした。

 

「ねぇ、エルちゃんは将来何になりたいの?」

 

「えるぅ……」

 

「姉さん、流石にまだエルちゃんには早いよ」

 

「それもそうだね……」

 

それからソラがましろとあさひに全く同じ質問をする事にした。ソラも二人の将来なりたい物が気になるようで、二人は考え込み始めると暫くして答えを出す。

 

「「……特に無い!!」」

 

どうやらましろもあさひも将来の夢に関してはまだ決まっておらず、頭を悩ませている所だった。

 

「(そ、そういえばクラスの人達が言ってたよな?“あさひに夢は無いのか?”って……よくよく考えてみれば俺って特に誰かと比べて抜けている取り柄とか無いし。このままだとズルズル行くかも……って、ん?)」

 

あさひがふと前を見ると近くにモヒカン頭をした紫の小さなブタがこの前山で見た毒キノコを餌として仕掛けられている昭和に出てくるのような古典的な罠へと向かう様子が見られていた。

 

「(……は?何あれ、子豚……にしてはあのモヒカン頭は何だ?そして何だあの昭和の罠は。しかもあの毒キノコ、この前裏山で見たやつだし……)」

 

すると子豚はキノコをクンクンと嗅いでから一瞬こちらの方を向く。この行動であさひは確信した。この光景は明らかな罠であると。

 

「姉さん……あれ」

 

「うん。無視した方が……」

 

「ブタさんが危ない!」

 

「「いや、罠だよな(ね)?」」

 

ソラは良い意味でも悪い意味でも純粋なため、そう叫ぶと一瞬にしてブタを助け出してしまう。

 

「危ない所でした。ブタさん。あれは罠ですよ。近寄ってはいけません」

 

「……カバトントン」

 

その瞬間、子豚の額にある丸い何かが光ると共に周囲に煙幕が張られて元に戻ったカバトンが姿を現した。

 

「ゴホッ、ゴホッ……あなたは……」

 

「グフフ……まさか、このカバトン様がブタに化けていたとは……あっ、お釈迦様でも気づくめぇ!」

 

「な、なんてずる賢い!」

 

「コントかな?」

 

「えるえる」

 

「はぁ……またこのパターンかよ。ただ、何であんな見え見えな作戦をしていたのやら……」

 

カバトンはニヤニヤしているとソラもあさひと同じ事を思ったのか、カバトンへと先程の行動の真意を聞く。

 

「何のためにこんな事を……」

 

「まだ気づかないのねん?」

 

カバトンが右手を翳すとその手にはソラの腰に付けられていたはずのミラージュペンが盗られており、それを見てようやくソラは自分のペンが盗まれた事を理解した。

 

「ッ、返してください!」

 

ソラが慌てて取り戻そうと走るがカバトンは後ろに跳んで躱し、すぐにアンダークエナジーを呼び出す。

 

「カモン!アンダーグエナジー!」

 

今回は先程あった毒キノコにエネルギーが吸い込まれてキノコ型のランボーグが召喚された。

 

「ランボーグ!」

 

「ギャハハ!プリキュアになれないお前なんか怖くないのねん!今度こそプリンセス・エルを頂くぜ!」

 

カバトンは既に勝ちを確信したのかように笑うとランボーグに三人を襲わせる。

 

「くっ……キュアスカイじゃないとランボーグを倒せない……どうすれば……ッ!」

 

あさひがふとましろとエルの方を見ると二人を捕まえようと触手が伸びており、あさひは急いで動くがもう間に合わない……そう思った時、ソラがすぐに対応して触手を蹴り飛ばした。しかし、それだけでは触手が止まる事はなくその触手はソラの足に巻きつこうとしたその瞬間。

 

「ソラ!」

 

ようやく追いついたあさひがソラを突き飛ばすと代わりに触手で絡め取られて捕まってしまう。

 

「あさひ!」

 

「んぁ?なんか脇役の方が捕まったけど……まぁ良い。どちらにしてもプリキュア無しではランボーグには勝てないのねん」

 

「あさひ……どうして、何でこんな事に……」

 

ましろがあさひを心配する中、学校からあげはが出てくるとましろとソラに一旦避難するように呼びかける。それからソラもましろもどうしようもできない自分に悔しさを抱きながらあげはと共に学校の中へと避難した。

 

「あげは姉、ありがとう……あとは俺がコイツを……」

 

あさひは身体中に力を入れて巻き付いた触手を振り解こうとするが、触手は思ったよりもキツく縛られており全く動けない。

 

「く……」

 

「無駄なのねん。お前程度の力ではどうにもならないのねん。それじゃあ……」

 

カバトンがランボーグに指示を出すとランボーグから少し小さめなランボーグが出てきてソラ、ましろ、あげはを追いかけていく。

 

その頃ソラ、ましろ、あげはの三人は学校の上の階へと逃げつつどうするべきか考えていた。

 

「あさひ……あさひ……大丈夫かな……」

 

「ましろさん……」

 

双子の弟を心配するましろを横にソラは罪悪感でいっぱいだった。自分があんな罠に引っ掛からなければ、ペンを奪われなければ。こんな事態に陥る事は無かったはずだと。自分を強く責めていた。

 

「ソラちゃんは悪くないよ」

 

そう言ったのはましろである。ましろの声を震えており、あさひが捕まった不安で今にも押し潰されそうな気持ちを抑えての言葉だとわかった。

 

「でも……」

 

そうこうしているうちに三人は屋上に到着し、屋上の扉が開かないようにドアノブにロープをくくりつけて近くの突起に結んで固定した。

 

「……大丈夫。あさひなら……あさひなら無事だから」

 

不安そうにするソラとましろにあげはが励ますように声をかける。だが、二人はあげはの顔を見て、あげは自身も不安そうな様子を拭えてない事を感じ取れた。あげはにとってもあさひは大切な幼馴染なのだ。だからこそ自分を奮い立たせる目的でもこの言葉を言ったのだろう。

 

三人が不安でいっぱいになる中、ランボーグに捕まって下にいるあさひはその心に声が響いてきていた。

 

「……力、貸してやろうか?」

 

その言葉にあさひは悩むとそれから暫くしてある決意を固めたのであった。




また次回もお楽しみに。


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ましろの強さとあさひの弱さ

ランボーグに囚われたあさひは自分の心に聞こえてくる声に対してある決意を固めるとその声に答えを返した。

 

「要らない……この場面は俺一人で切り抜ける」

 

「はぁ?何言ってるんだよ。お前には一生かかっても無理だと言ってるだろーが」

 

「黙れ!お前なんかに頼ってばかりで本当の強さなんて手に入るか!」

 

あさひが心の中にいる自分の助けなんて要らないと切って捨てる。あさひも自分の力じゃない力で助かっても自分のためにならないと考えていた。

 

「あー、マイクテス、マイクテス……無駄な抵抗をやめるのねん!今すぐプリンセスを連れて出てこい!」

 

カバトンは手にしたスピーカーを使い屋上に逃げたましろ達に降伏勧告を呼びかける。

 

「ほら、脇役。お前も何か言ってやれよ。“俺達の負けだ。カバトンさんにごめんなさいをしよう”とな」

 

「ソラ、姉さん、あげは姉!出てきたらダメだ!」

 

「お口チャック!」

 

するといきなりあさひの口にガムテープのような物が貼り付けられて口を塞がれてしまう。

 

「ッ……」

 

「あさひ!」

 

「ダメよ、ましろん。落ち着いて!」

 

「今行っても私達じゃ……」

 

「だって、あさひが、あさひが……私の大切な弟が……」

 

飛び出そうとするましろをソラとあげはの二人が何とか押さえ込む。ましろは心の中で悔しがっていた。自分に戦う力さえあれば今すぐにでも助けに行くのに……と。

 

「出てこないのねん……なら!」

 

カバトンが指を鳴らすとランボーグから更に触手が生えてきてあさひに拷問を開始した。最初だからか頬を引っ張られてから離される程度の攻撃で済んだが、これから時間が経てば経つほどそれが強くなるのは目に見えている。

 

「テメェ、いつまでもったいぶるつもりだ。さっさと俺と代われ」

 

「言っただろ。お前の力なんて借りない!」

 

あさひは無理矢理触手を解こうとして必死に暴れるが、全く効果は無い。それどころか、ランボーグに察知されて先程よりも強い力で締められて身体中に痛みを感じて動きが止まってしまう。

 

「あぐっ……」

 

「だから言ってるだろ?俺じゃないとこの場は切り抜けられない」

 

「嫌だ。俺の力で……どうにかするんだ!」

 

「はぁ……無理矢理代わる事もできなくはないが、もう好きにしろ。どうなっても知らないがな」

 

そう言ってあさひの胸の内に聞こえていた声は消えてしまい、あさひは自分一人でどうにかするしか無くなってしまった。

 

「うぁあああ!!」

 

あさひはまた脱出を試みて体に力を入れるが逆に先程よりも更に強く絞められてしまう。

 

「やかましいのねん。ランボーグ!」

 

「ランボーグ!」

 

「がっ……」

 

そう言うとランボーグはあさひの体を地面へと叩きつけた。その攻撃であさひはダメージを負ってしまい、気を失う事になる。それを屋上から見ていた三人は息を呑む。ましろは震えながらもそれでも前に踏み出そうとしている。

 

「……どこかに落ちてる金属バットを拾って戦えばワンチャン……いや無理。ああ、何か良い手は無いの?あさひがあんなに苦しんでるのに……」

 

「今の私にできるのは……」

 

ソラとあげはが何か良い手段が無いか考える中、ましろは静かにただ一言呟いた。

 

「行かなきゃ。……あさひを助けなきゃ……」

 

「そんなのわかってる……私だってあさひがあんな目に遭っているのは見過ごせないし、できるなら飛び出したい。でも、私達に何ができるの?ただの人間で、あの怪物に勝てるって言うの?」

 

「私が、悪いんです……私のせいで……私がもっとちゃんとしていたら」

 

あげはもソラもどうする事もできない自分に嫌気がさしており、頭を悩ませていた。

 

「それでも……それでも行かなくちゃだよ!」

 

するとましろの胸から白とピンクの光が出てきてソラの時と同様にそれはペンへと変化。そしてその光は下にいたカバトン達にもバッチリ見えていた。

 

カバトンはランボーグの上に乗るとランボーグはそのまま上へと伸びていき、屋上まで見えるようになる。

 

「ゲッ!?ど、どうしてあんな脇役が……」

 

カバトンがいきなり出てきたましろのミラージュペンに驚く中、それを見ていたましろやあげはも驚き、エルは不思議そうな目でそれを見ていた。

 

「何これ……」

 

「これ、私の?私が……プリキュアに!?」

 

ましろが恐る恐る手を伸ばすとカバトンは慌ててそれを声で止めようとする。カバトンとしてはこのままプリキュアになられれば警戒するべき敵がまた一人増えてしまうからだ。

 

「止めろ!脇役なんかがプリキュアになれるもんか!お前に何の力がある?自分だってわかってるんだろ!ほら!」

 

その言葉にましろは思わず手を止めてしまう。自分がプリキュアになったとしても何の取り柄も無い自分が誰かの役に立てるのか。あさひを救う事ができるのか。その思いで躊躇してしまう。しかも、それと同時に小型のランボーグが屋上の扉の前にまで来てしまい、ドアをガチャガチャと開けようとする。

 

「は、早くプリキュアにならないと……でも……私なんかじゃ」

 

「ましろん、それを手に取ったらどうなるのか?プリキュアって言うのが何なのか。私にはわからない……でも、そんなのどうだって良い!……そこ、うるさい!!」

 

躊躇うましろの横からあげはが声をかける。あげははガチャガチャとドアを開けようとするランボーグを一喝して黙らせると彼女がし始めたのは自分が引っ越しの影響でましろやあさひと離れ離れになるとなった時の話だ。

 

その時、あげはは家出して近くにある川の堤防で泣いている時の事。ましろはあげはと同じように別れが辛くて泣いているあさひを連れてあげはを連れ戻しに来た。ましろ自身も寂しい気持ちがあるにも関わらず、必死に泣くのを我慢してあげはの前で笑顔を作ってあげはを励ますその姿にあげはは救われたのだ。

 

「あの日、ましろんに教わったんだ。優しいって事は強いって事だって……私なんか?そんな事言うな!そんな事誰にも言わせるな!ましろんには優しさって言う誰にも負けない力があるんだ!」

 

あげはの言葉に話を聞いていたソラも頷き、ましろの背中を後押しする。

 

「あげはさんの言う通りましろさんは強いんです。だから、自信を持ってください!」

 

その時、小型のランボーグが屋上のドアの上にある天井を突き破って姿を現した。しかし、ましろの心にもう迷いなんてものは無い。あるのはプリキュアになる決意とあさひを助けたいという想いだけだ。それと同時にエルの体に光が灯り、ソラの時と同様の力が飛び出す。

 

「ぷりきゅあああ!!」

 

その光をましろは掴むとスカイトーンとなりピンクに色がつく。更にそのタイミングでランボーグが出てきて三人の前に立ちはだかった。

 

「ヒーローの出番だよ!」

 

ましろは台詞を言うとソラの時と同じくペンがマイク型に変換。スカイトーンを装填し、掛け声を言い放つ。

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!プリズム!」

するとマイクにPRISMの文字が出てましろはステージの上に降り立つと同時に髪がピンクの長髪に変化して足にピンクのフリルが付いたシューズを履く。

 

「煌めきホップ!」

 

煌めきホップでは頭に白の髪飾りと耳にイアリングが付与される。

 

「爽やかステップ!」

 

爽やかステップでは体に白を基調として水色らピンク等様々な色のドレスが着せられる。更にスカート部分には様々な星の煌めきが彩られたインナースカートもあった。

 

「晴々ジャンプ!」

 

晴々ジャンプでは両手に白のロンググローブが装着されてから腰から2枚のハートマークが入った布が出てくる。

 

こうして変身を完了したましろはキュアスカイの時と同様に決め台詞を口にした。

 

「ふわりひろがる優しい光!キュアプリズム!」

 

そこに現れたのはお姫様のような可愛い重視の服を着ながらも戦場に新たに誕生したヒーロー、キュアプリズム。そしてその光で目を覚ましたあさひは姉の変わりように驚いていた。

 

「(もしかして……姉さん?)」

 

「かっこよ!」

 

「えるぅ〜!」

 

「ましろさんが、プリキュアに!」

 

「ボッコボッコにしろ!ランボーグ!!」

 

カバトンの指示と共にランボーグはプリズムへと攻撃を開始する。プリズムはそれを躱すが、いきなりパワーアップしたがためにまだそのパワーに慣れておらず、跳びすぎてしまう。

 

「パワー強すぎだぁ!」

 

「ランボーグ今だ!プリンセスを捕まえろ!」

 

カバトンからの支持を受けて小型ランボーグはあげはを襲おうとする。それを見てソラはあげはの前に立ち、あげはも逃げる準備をする。しかし、ランボーグの攻撃をプリズムが許す訳がなかった。

 

「させないよ!」

 

プリズムは跳んでいった先にあった建物の壁を足場にするとそのまま跳び、その勢いを利用してランボーグを蹴り飛ばして近くにいたカバトンを巻き込ませるとカバトンが奪っていたソラのミラージュペンが空中を舞う。

 

「ソラちゃん!」

 

「はい!」

 

それからソラは走り込むと手すりを足場にして跳び上がり、空中に飛ぶミラージュペンを掴んだ。

 

「ヒーローの出番です!」

 

すかさずソラもプリキュアへと変身のためのシークエンスを開始。ペンをマイクに変化させてスカイトーンを使う。

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!スカイ!」

 

ソラがその姿をキュアスカイへと変身すると決め台詞を言って変身完了する。

 

「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」

 

それからキュアスカイはあさひを捕まえているランボーグへと接近するとその体を殴る。するとあさひを捕まえている触手の拘束が緩み、あさひの体はするりと抜け落ちる。しかし、あさひは度重なる締め付けと触手による攻撃で受け身を取ることもできない。このままでは地面に叩きつけられてしまう。その瞬間、屋上から飛び降りたプリズムがあさひを抱き止めると口に付いていたガムテープのような物を剥がして優しく笑う。

 

「大丈夫?あさひ」

 

「姉……さん。ごめんなさい、俺なんかのために……」

 

「謝らないで……。今はカバトン達が許せないから!」

 

プリズムは地面に着地してあさひを下ろすと先程吹き飛ばされた小型ランボーグが同じくランボーグと向かい合うスカイの後ろに降り立つ。

 

「ランボーグ!やっちまえ!」

 

「キュアスカイの邪魔は……させないよ!」

 

プリズムは両手に白いエネルギー弾を作り出すとそれをランボーグへとぶつける。それから接近して両手で小型ランボーグを吹き飛ばした。

 

「これなら……私も戦える!」

 

プリズムは自分の力を感じて両手を握りしめると、吹き飛ばされたランボーグへと走って行った。そして、スカイはもう一体の大型ランボーグへと走っていくと浄化技を繰り出す。

 

「ヒーローガール!スカイパンチ!」

 

「スミキッタァ〜」

 

流星の如きスカイのパンチはランボーグに炸裂してランボーグを浄化する。そして、プリズムも残った小型ランボーグに向けて浄化技を使用。倒しにかかった。

 

その技はプリズム両手の間にエネルギーの弾丸を生成。両手を上に掲げてその気弾を巨大化させると両手を胸の前に突き出して気弾を放つ遠距離攻撃技……。

 

「ヒーローガール!プリズムショット!」

 

「スミキッタァ〜」

 

「つ、強ぇえ……」

 

これによりランボーグは二体とも浄化される事になりカバトンは頭を抱えると黒い煙となって撤退する。それから二人は変身を解くとましろの方は力が抜けたのかその場に崩れ落ちる。

 

「ましろさん!」

 

「大丈夫。緊張が解けてふにゃってなっちゃっただけで……」

 

「ごめんなさい。私が未熟なせいで……私なんかのせいで……あさひ君にもあんなに迷惑をかけて」

 

そこにソラが駆け寄るとましろに謝罪の言葉を口にした。ソラは自分のせいでこのような事態に陥ってしまったと責任を感じているのだ。

 

「ソラ、俺なら大丈夫……むしろ、俺の方こそごめんなさい。俺が捕まったせいで皆には沢山心配をかけて、俺の事なんて放っておけば良かったのに」

 

そこまで言ったところであさひはましろに頭を撫でられた。それからソラとあさひの耳元でましろは小さく囁く。

 

「ダメだよ……自分なんかなんて言っちゃダメ。ソラちゃんは私の大事な友達。あさひは私の世界でたった一人の弟。私が助けたいって思うのは当然のことだから」

 

その言葉に二人は笑顔になる。それからあげはも降りてきて三人と合流し、無事を喜びあった。

 

「三人共無事で良かった……」

 

「あげはちゃんもエルちゃんを守ってくれてありがとうだよ」

 

「ところで、さっきの出来事。こればかりは綺麗さっぱり忘れるのは無理そうなんだけど……」

 

「「あ、あはは……」」

 

「こればかりは仕方ないよな……」

 

「それとさ、あさひ」

 

「何?あげは姉……」

 

その瞬間、あさひはあげはに抱きつかれると優しく抱擁される。あさひはいきなりの出来事に驚くとあげはの顔は安堵の表情でいっぱいになっていた。

 

「良かった……」

 

「あげは姉」

 

「ごめん、もう少しこのままでいさせて」

 

それからあげははあさひを暫く抱きしめるとその温もりを感じ続けた。そして、あさひは心の中に幸せの感情が溢れ出てきて暫く彼もあげはの温もりを噛み締める。

 

「ふん……結局解決したのはあの二人か……やはり俺が主導権を握る上で一番邪魔な存在だ。ここはあの戦法であの二人を誑かすのが得策か……」

 

この時はこの場の全員が気づかなかった。あさひの中にとめどなく溢れ出ていく真っ黒なドス黒い感情が少しずつ、しかし確実に増幅されていく事を。




また次回もお楽しみに。


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あさひの悪夢と強化ランボーグ

今回は残酷な描写が入ります。その事を前提で読んでください。それではどうぞ!


ましろがキュアプリズムに覚醒してから数日の時が経った。あれからカバトンが襲ってくるという事態は無くなった。しかしソラは寝るたびに怖い夢にうなされるようになり、あさひもあさひで悪夢をみるようになった。

 

暗い夜道、あさひ、キュアスカイ、キュアプリズムの三人がランボーグから逃げている。そんな中キュアスカイがランボーグに立ち向かう。

 

「ましろさんとあさひ君は逃げてください!」

 

「でも……私は……」

 

「逃げるよ姉さん。まだ俺達を狙ってる敵はいるんだ!」

 

スカイを見捨てたく無いプリズムはスカイを助けようとするが、あさひは姉に傷ついてもらいたくないという気持ちでいっぱいとなり、プリズムの手を握って無理矢理連れていく。すると一人の真っ黒な体をした人のような物が追いかけてきた。

 

「あさひ、逃げて!」

 

「無茶だよ姉さん!姉さんも一緒に……」

 

すると自分から何かのドス黒い感覚が体中を駆け巡り、意識がいきなりその感覚に乗っ取られてしまうとプリズムの腹を真っ黒なエネルギーの拳で殴ってしまう。

 

「え……」

 

「あ……さ……ひ?」

 

あさひは自分の意思とは全く関係なく姉を攻撃した事に困惑するとプリズムは腹を攻撃された影響か、はたまた不意打ちされたせいか唾を嘔吐するとそのまま倒れ込み変身が解けてしまう。

 

「ゴホッ、ゴホッ……」

 

ましろが腹の痛みに耐えつつむせる中、追いついてきた真っ黒な人間に頭を掴まれて無理矢理立たされる。するとドス黒い感覚に乗っ取られたあさひがましろの喉元を掴み、そのまま呼吸困難な状態にしてしまう。

 

「やめろ!やめてくれ!姉さんを……姉さんを離せ!」

 

あさひは自分の体の主導権を取り返そうともがくが、心の中で真っ黒な闇の鎖に囚われてしまうと身動きが不可能になった。

 

「逃げろ……逃げてくれ姉さん!!」

 

「か……はっ……」

 

それから自分の姿をした何かは更にましろの首根っこを掴んだまま持ち上げるとましろは苦しそうに足をバタバタさせる。しかし、その動きも徐々に弱くなっていき、とうとうガクリと意識を手放してしまう。

 

「あ……あぁ……姉さん、姉さん!」

 

自分の姿をした何かはようやくましろの首から手を離すとそのまま落下してくるのに合わせて胸の辺りを思い切り蹴り飛ばし、微かに残っていた息の根を止めてしまった。

 

「……嘘だろ?姉さん……何で、何で……」

 

あさひが絶望感でいっぱいになる中、いきなりスカイが吹き飛ばされてくると傷だらけで変身解除し、死んでしまったましろとそれを見下ろすあさひを見ると怒りを露わにする。

 

「どうして……どうしてましろさんを!あさひ君、あなたは何をしたかわかってるんですか!!」

 

「違う、俺じゃない……俺じゃないんだ……」

 

あさひは張り裂けそうなぐらいに声を上げるが全くその声は聞こえないのかソラは再び変身しようとする。

 

その瞬間、スカイミラージュを手にした右手とソラの首根っこが掴まれてソラはその痛みと苦しさでスカイミラージュを手放す。

 

「あ……ぁあ……」

 

あとはましろの時と同じだった。ソラもましろと同様に殺されてしまいそれの後にようやくあさひへと主導権が返されるがもう全てが手遅れだ。

 

「何で……何で……やっぱり、俺の手は人を傷つける事しかできないんだ……だから、俺は……俺は……うあぁあああ!!」

 

あさひが叫びと共にガバリと起きるとそこはいつもの自分の部屋の中だった。どうやら今までの惨劇は夢だったようなのだが、ランボーグの登場に自分自身を覆うドス黒い感覚。この夢にあった内容は全て心当たりがあるので妙に現実味がある内容だ。

 

「まただ……またこの夢。姉さんがプリズムに変身してからずっとこればかりだ。ソラも姉さんもきっと俺の事を信じてるから仮にこの夢の通りになったら俺の殺意に気づかない可能性が高い……どうすれば。どうすれば……」

 

あさひは悩んだ末にある決意を固めてすぐに準備を始めた。それから一度次の日の朝を待ってそれを実行する。翌日の朝、ヨヨの元にソラとましろが集まりプリキュアの伝説について話がされた。

 

「プリキュアとは何なのか?古い本を調べてわかったの。今はスカイランドの人々からも忘れさられている古い伝説なのだけれどね」

 

曰く、プリキュアとは昔々、ある嵐の夜に闇の世界に住まう魔物達がスカイランドへと攻め込んできてスカイランド側にとって絶望的な戦いが始まった。空は暗い雲に覆われてスカイランドは危機的な状況に陥ってしまう。

 

そんな中でスカイランドの姫が祈りを捧げると勇敢な戦士が降臨した。その戦士の名がプリキュア。プリキュアはその力であっという間に闇の魔物を倒してスカイランドに平和を取り戻す事になる。

 

それを聞いてましろは体を震わせるとエルを安心させるように話す。

 

「伝説の戦士……プリキュア!エルちゃん、もう安心だよ。伝説のヒーローが味方だよ」

 

「えるぅ〜!」

 

ましろは興奮のあまりエルを抱きながら回転し、喜びを爆発させる。そして、やる気に満ち満ちた顔になっていた。

 

「そっかぁ!エルちゃんの不思議な力はスカイランドのプリンセスパワーだったんだね!私さ、今から猛烈にトレーニングしたい気持ちだよ!ソラちゃん、今から一緒にランニングしよう!」

 

ソラはましろからの質問に答える事は無かった。まるで別の事を考えているかのように。

 

「ソラちゃん?」

 

「そんな事より、この世界とスカイランドを繋ぐトンネルはいつ開いてもらえるんですか?」

 

「え?」

 

「もう少し時間を頂戴。簡単な作業では無いの。百種類以上の素材を繊細な手順で組み合わせてそれから……」

 

ヨヨの言葉にソラは待つ必要があるという事実に耐えきれずに思わず叫んでしまう。

 

「カバトンは簡単にトンネルを開いたじゃありませんか!」

 

ソラが叫んだ所で自分がヨヨに失礼な事を言ってしまった事を自覚。すぐに謝罪するとその場から離れてしまう。

 

「ソラちゃん……」

 

「そういえば、あさひさんはどこに行ったのかしら?」

 

「え?あさひ?そういえばさっきからずっと見かけないけど……」

 

ましろはようやくここで違和感に気がつく。朝食の時は一緒にいたのだが、食べ終わって部屋に戻ると言ったきり家のどこにも見当たらないのだ。

 

「おばあちゃん、ミラーパッドで探せる?」

 

「ええ……」

 

ヨヨがミラーパッドを起動するとあさひの姿は家ではなく街にいた。しかも片手に大きめなスーツケースを持って。

 

「え……あさひ、何で?もしかして……家出?」

 

それからましろは大慌てであさひに電話をするが、着信拒否されているのか反応すら無く、急いでソラを呼ぶとエルを抱っこして街に行ってあさひを連れ戻そうとする。

 

その頃、あさひは一人街中を歩いていた。理由は、もし夢の出来事が本当になったら大切な二人を殺してしまうかもしれない。そう考えて怖くなり、家出を決意したのだ。

 

「おばあちゃん、姉さん。今まで迷惑かけてごめんなさい……今の俺はそこに居てはいけないから……」

 

あさひは半分死んだような顔つきで方々を彷徨う。行くアテなんてどこにも無い。引き取ってもらう先も無い。可能性があるとすれば海外にいる両親の元だ。だから空港に行って飛行機に乗り、海外に行くつもりなのだ。ここまで行きさえすればましろ達を傷つける可能性はほぼ無くなる。

 

「ん……あれは?カバトン?」

 

あさひが歩いているとおでん屋の屋台でやけ食いしているカバトンが目に映った。その顔はいつに無く必死であり、彼も彼で苦労しているのだと肌で感じた。

 

「ま、アイツに関わると碌なことがない。無視してさっさと……」

 

すると胸の鼓動がドクンと高鳴る。その瞬間あさひはその場に立ち尽くすと意識を失い、バタンとその場に倒れた。

 

「あれ……俺は何でこんな所に……」

 

次に目が覚めるとそこは真っ暗な空間だった。そしてその空間には見覚えがある。夢の中でましろとソラが殺された場所だ。

 

「……交代の時だ。弱い俺」

 

「お前……何で」

 

そこに居たのは今まで心の中に潜んでいたもう一人の自分だった。しかし、今回はどこか様子がおかしい。まるで本気で主導権を乗っ取りに来たような顔をしている。

 

「お前の天下は終わり。今この時から俺がお前の代わりになる」

 

「冗談はよしてくれよ。俺は代わるつもりはない」

 

「ふん。お前程度でどうにかなるとでも?それこそ冗談はよしてくれ」

 

すると闇のあさひはニヤリと笑うとあさひに詰め寄っていく。それからあさひの顔を覗き込むとその姿をあさひと全く同じように変化させた。

 

「これで満足だろ?ほら、代われ」

 

「嫌だと言ってるだろ」

 

「頑固だなぁ。まぁ、お前がどれだけ抵抗しようが関係無い。俺の力は既にお前の力を遥かに凌ぐ。試してみるか?」

 

そう言うと闇のあさひは超スピードで接近してあさひの腹を思い切り殴る。するとあさひはその衝撃で吹き飛ばされてしまい、壁に叩きつけられた。

 

「がっ!?」

 

「ほらな。お前じゃあもう俺には勝てないんだよ」

 

「何だと!?」

 

「はぁ、俺は生まれてから随分と我慢してきたからな」

 

そう言うと闇のあさひは指を鳴らし、あさひの体を闇のエネルギーで包み込むと球体のバリアの中に閉じ込めた。

 

「な、何するんだよ!」

 

「じゃあな。お前はもう用済みだ。せいぜい自分の無力さに打ちひしがれろ」

 

そうやって闇のあさひはあさひの入った球体を蹴り飛ばすと意識の深淵へと強制的に沈ませる。

 

「そんな……俺は、俺は……」

 

「仕方ないから俺の名前ぐらいは最後に教えてやる。俺の名はお前の中に生まれたもう一人の意識……カゲロウだ」

 

その言葉を最後にあさひの心はカゲロウと呼んだもう一人の自分の意識と入れ替わるように深き漆黒の闇の中に放り込まれて眠りにつく事になった。

 

一方、そんなあさひの事情などつゆ知らず。彼を探すソラとましろの二人は方々を探したが見つからず、二人は休憩する事にした。その際、ソラはましろに悩みを打ち明ける。

 

「そっか、そんな夢を……」

 

実はソラもここ最近悪夢にうなされており、ソラの方はましろとあさひがランボーグに追い詰められて傷ついてしまうというものだった。そのため、ソラはましろにもう変身しないように言う。

 

「私が未熟なのが原因なんです。だから、私がもっと強く、強くなれば良いんです」

 

「ソラちゃん……」

 

二人で話しているとどこからとも無く音が聞こえてきて、二人がその方向を見ると巨大な電車型のランボーグがガリガリに痩せたカバトンを乗せて空に浮かんでいた。

 

「……エルちゃんをお願いします。ヒーローの出番です!」

 

それからソラはましろの静止も聞く事なくキュアスカイへと変身するためにスカイミラージュを構える。

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!スカイ!」

 

ソラの姿がキュアスカイへと変化するといつもの如く決め台詞を口にした。

 

「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」

 

スカイはましろを置いていくと一人でランボーグに突撃。建物の屋上 と移動してランボーグと対峙する。

 

「へっ、一人か」

 

「一人ぼっちを恐れない!それがヒーロー!」

 

「何がヒーローだ。お前なんかより俺の方が……強ぇえんだ!」

 

「ランボーグ!」

 

カバトンの叫びに応えるようにランボーグは両腕をぶつけるとそのまま突撃する。そしてスカイも一気に倒すために浄化技を使用した。

 

「ヒーローガール!スカイパンチ!」

 

それと同時にランボーグも拳を突き出してキュアスカイと激突する。二つの拳はぶつかり合い、暫く拮抗するが威力の差でスカイが押し切られると吹き飛ばされてしまう。

 

それを見たましろはスカイを助けるために変身しようとするが、エルを抱えたままではまともに戦えない。

 

「こんな時にあさひがいれば……どうしよう」

 

そう思った時、抱っこ紐がいきなり小さな小舟のような形となりエルを乗せて浮き始めた。

 

「これって……」

 

その時、ましろは以前ヨヨから聞いた言葉を思い出すとヨヨの準備の良さに感謝する。

 

「これなら、変身できる!」

 

ましろがペンを取り出すとそれを使ってすぐに変身するための行動を開始。

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!プリズム!」

 

ましろはその姿をキュアプリズムへと変化させるとそのまま降り立って決め台詞を言う。

 

「ふわりひろがる優しい光!キュアプリズム!」

 

それからプリズムはエルと共にピンチに陥ってしまったスカイの元へと急いで走っていくのであった。




モチベーションが上がるので感想を書いていただけると嬉しいです。また次回もお楽しみに。


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二人の絆と消えた朝日

ましろがプリズムに変身するとスカイが落下した建物の上へと移動する。そこではスカイが傷だらけで倒れており、痛みに悶えていた。

 

「スカイ!」

 

スカイが自分を心配して来た二人を見ると驚きのあまり目を見開く。変身するなと言ったばかりのプリズムが来てしまった事とエルが抱っこ紐に乗って飛んでいるからだ。

 

「え……エルちゃんが飛んでる!?」

 

「立てる?」

 

「私は大丈夫です」

 

スカイはプリズムの手助けなんて要らないとばかりにそっぽを向くとプリズムの顔が曇る。

 

「出たな二匹目……そして、三匹目。あの脇役はいないが……まぁ良い。プリンセスは貰った!」

 

カバトンはランボーグを操るとエルを捕まえるために飛びかかる。それを見たプリズムは一瞬の刹那、エルを抱えてスカイを突き飛ばしつつ自分も避けて何とか難を逃れる。そして、ランボーグが入ってこれない路地に逃げる事で一旦カバトンの視界から外れた。

 

「お客様のお呼び出しを致します。プリキュア様〜!」

 

カバトンが騒ぐ中、スカイ、プリズム、エルは路地で一息つきつつ話す事にする。

 

「危なかった。今は言い争っている暇じゃないよ。一緒に戦おう?」

 

「できません」

 

プリズムの提案にスカイは否定する。何故それほどまでにスカイは一緒に戦うのを拒むのか。その理由はすぐに明かされた。

 

「でも……」

 

「友達だから。ましろさんとあさひ君は私の初めての友達だから!」

 

スカイことソラは小さい頃にソラのヒーローに助けられてからずっとヒーローとしてのトレーニングを始めた。青春の全てをヒーローになるためのトレーニングに費やしてきたために普通の女の子がやっているはずの友達作りも無く、一人ぼっちで過ごしてきたのだ。そんな彼女だが、ましろやあさひと出会って彼女にとって初めて友達が出来た。

 

「我が儘です。わかってます!でも怖いんです。ましろさんも……あさひ君だって傷つくのは嫌なんです!」

 

「スカイ……」

 

「それで良いのかよ」

 

そう言って路地から出てきたのはずっと姿を消していたはずのあさひだった。

 

「あさひ!どこ行ってたの?心配したんだから」

 

プリズムがそういう中、あさひは怒ったようにスカイの胸ぐらを掴んだ。

 

「傷つくのが怖い?そんなの甘えでしか無いだろ。姉さんだってスカイの事が心配で来ているんだよ。そもそも、覚悟を決めて戦士になったのは姉さん自身。それを止める権利はスカイに無い」

 

「ッ……」

 

普段の彼からは感じられないような怒気にスカイはたじろぐ。それを見たプリズムはあさひを嗜めた。

 

「あさひ、そこまでしなくても良いよ……」

 

「でも……」

 

あさひがプリズムの方を向くとプリズムは首を横に振る。それを見たあさひはスカイを掴んだ手を離した。

 

「あぁもう!姉さん、俺は言いたい事言ったからな」

 

そう言うといきなり上から音が聞こえた。四人が上を向くとそこにはカバトンの乗ったランボーグが覗き込んでいたのだ。

 

「み〜つけた!」

 

「ランボーグ!」

 

それから四人は追いかけてくるランボーグから逃げるために急いでその場から走り始める。ランボーグは建物を破壊しながら追いかけてきてあさひは無言である決意を固めるとエルを抱っこ紐ごと抱えた。

 

「ちょっとあさひ!」

 

「カバトン!お前の狙いはエルちゃんだろ?だったら二人じゃなくてこっちを狙え!」

 

そう言ってあさひは二人と別れるように別の方向へ逃げる。それを見た二人は止めようとするが、あさひの目は真剣そのものだった。

 

「あさひダメ!」

 

「そう思うならさっさと二人で話をつけて!二人が喧嘩したままならずっと一人で逃げ続けるから」

 

「でも……」

 

「そんな勝手、私は……」

 

スカイがランボーグの元に行こうとするとプリズムがスカイの手を掴んで静止する。

 

「ましろさん!?何で……」

 

「スカイ、どうしてもダメなの?」

 

「……私はあなた達に傷ついて欲しくなくて……」

 

「その気持ちは私も一緒だよ!!」

 

「え……」

 

スカイが驚く中、プリズムの目は悲しそうになっていた。そしてその顔つきは前にあさひがした顔と瓜二つ。この辺りは双子だからだろう。

 

「あさひは、私の弟は……いつもあんなに必死で物事に取り組んでる。今だってそう。私達が仲直りするための時間を稼ぐためにエルちゃんを抱えて自分を囮にしてる」

 

「だったら早く助けに……」

 

「あさひは。あさひなりに私達のことを心配してくれてる。そんなあさひが傷つくのは私だって認めたく無い。この前、私が攻撃を受けそうになった時にあさひは身を挺して助けてくれた。でもその時怖かった。あさひが私のせいで傷ついて欲しく無いって。スカイに対してもそう。スカイ一人に戦わせるのは……友達が傷つくかもしれないというの、本当は辛かったんだよ?」

 

プリズムの言葉を聞いてスカイは落ち込んだような顔つきに変わる。そして、自分が相手を想うように相手もまた自分を想ってくれていたという事実を受け止めた。

 

「私はあなたの友達。あなたが心配なんだよ?助けたいよ。気持ちは同じ。これって、一緒に戦う理由にはならないかな?」

 

そう言ってプリズムはスカイへと手を差し伸べる。そしてスカイはその手を取るとプリズムと共に並んだ。

 

「わかりました……一緒にやりましょう。プリズム」

 

「ふふっ……やっとその名前で呼んでくれた」

 

プリズムはスカイに向かって微笑んでいるとその瞬間、あさひがランボーグによって吹き飛ばされて二人の近くにある壁に叩きつけられてしまうとあさひはかなりのダメージを受けた様子で痛そうにしていた。

 

「あさひ!」

 

「大丈夫……エルちゃんは無事」

 

「え、えるぅ……」

 

「心配しないで。俺は大丈夫だから……それよりも、ちゃんと仲直りはしたみたいだな」

 

「はい。心配をかけてごめんなさい!」

 

スカイが謝るとあさひは姉のようにニコリと笑ってサムズアップする。そして、それを見届けてから二人はランボーグと向かい合った。

 

「 ぷりきゅあー!」

 

するとエルからまた光が溢れ出てそれが二人の元に行くと新たなスカイトーンとして手に握られた。

 

「それは、二人の絆の形……二人だけの新しい力か」

 

「やろう、スカイ!」

 

「はい!プリズム!」

 

それから二人はスカイミラージュに新たなスカイトーンを装填。すると扇風機部分が回転。

 

「スカイブルー!」

 

「プリズムホワイト!」

 

プリズムがスカイミラージュを右手から左手へと持ち替えつつ二人で手を繋ぎ合わせる。それから二人はスカイミラージュを掲げるとスカイブルーとピンクのエネルギーがスカイミラージュに入る。それからエネルギーが放出されると上空にディスク型の物が出現してそこから虹色の光がランボーグへと降り注ぐ。

 

「か、カバトントン!」

 

カバトンはランボーグが捕まったことで中にいる自分にも被害が及ぶと考えて即撤退。しかし、もう捕まってるランボーグは逃げる事ができない。

 

「「プリキュア!アップ・ドラフト・シャイニング!」」

 

その瞬間、ランボーグがディスクの中に吸い込まれるとそこから大量の気流が吹き出してその勢いで押し出されるように二人が前に出る。

 

「スミキッタァ〜」

 

それによってランボーグは浄化されると元の電車へと戻り、その場は解決される事になった。それを見届けた三人は顔を見合わせて勝利を喜び合う。それからスカイとプリズムは変身解除し、あさひの顔を見る。

 

「あさひ。帰ろう」

 

「………」

 

「あさひ?」

 

無言になったあさひにましろは違和感を覚える。あさひはそんなましろをいきなり突き飛ばした。

 

「え!?」

 

「あさひ君!?一体何を……」

 

その瞬間、あさひはエルを捕まえて闇のエネルギーボールに閉じ込めてしまう。

 

「え、える!?」

 

「そんな、あさひ!何してるの!!」

 

「まさか、あさひ君じゃ……ない?」

 

ソラの言葉を聞くとあさひは噴き出してそのまま高らかに笑い始める。

 

「ぷっ……くく……あはははは!!」

 

「あさひ……」

 

「姉さん、その呼び方はやめてくれない?俺はあさひであってあさひじゃねーんだよ」

 

いきなり豹変したあさひの態度に二人は困惑し、ボールに閉じ込められたエルは今にも泣き出しそうな顔になっている。

 

「俺の名はカゲロウ。あさひの中に巣食っていたもう一人の虹ヶ丘あさひだ」

 

「エルちゃんを返してください!」

 

「返す?何言ってるんだよ。今までずっと一緒にいたんだ。それが俺に代わった途端掌返しとはヒーローの名もたかが知れてるな」

 

ソラを馬鹿にしたように見下すカゲロウはニヤニヤと笑いながら二人を見つめる。

 

「あさひを……私の弟をどこにやったの!!」

 

いつもは温厚なましろがいつになく怒ったような声色でカゲロウを問い詰める。当然だ、何しろ自分の弟の命に関わるかもしれないから。

 

「あさひかぁ……アイツなら俺の意識の奥深くに眠ってるよ。ま、もう二度と目は覚まさないがな」

 

「だったらあなたを浄化して助け出す!」

 

ましろはミラージュペンを構えるとその瞬間、カゲロウは手にエネルギーの刃を出現させてエルの前に持ってくる。

 

「おっと、ここで変身したらコイツの命は無いぜ?」

 

「……ッ」

 

それを見てましろは大人しくペンを下ろすと悔しそうに唇を歪ませる。ソラも手に握り拳を作って強く握りしめていた。

 

「卑怯です……どうしてこんな事を……」

 

「卑怯?悪党に卑怯も何もねーだろ。さてと、このまま逃げても良いんだがそれだとお前らが納得しないだろ?……決闘だ。今から三時間後、場所はお前らの家の近くにある裏山。勝負内容はお前らのうちどちらか片方が俺との一騎打ちをする。詳細はまたその時教えてやる。もしお前らが勝てば俺は引っ込むしこの赤ん坊……エルも返してやる」

 

それからカゲロウは闇のオーラと共にエルを連れ去ってしまい、その場には戦いの後の静寂が残るのみだ。

 

その直後、ソラが自分の拳を地面に叩きつけて悔しそうにしていた。ヒーローになりたいのに泣きそうな子供一人救えなかったのである。

 

「あさひ……何で……私は、何を間違えたの?」

 

そんな中、弟の突然の豹変にまだ事実を受け止め切る事ができないましろは頭を抑えて絶望していた。

 

失意の二人は心に深い傷を負い、話し合うために一旦家に戻るがその足取りは重い。何しろ、ソラにとっては友達が、ましろにとっては弟の離反だ。動揺するなという方が無理だろう。

 

そして、その場から撤退したカゲロウはと言うと、手にランボーグを召喚するために必要となるアンダークエナジーを高めていた。実は先程、ランボーグの戦闘をした際にランボーグからアンダークエナジーを少しだけ吸収し、それを自らの力で育てたのだ。

 

「ふふっ。これなら俺もランボーグを出せる。そうだなぁ……二人の内一人にはランボーグの相手でもしてもらおうかな」

 

それからふとエルの方を向くと今度はエルへの手を翳した。するとエルから無理矢理何かの光を受け取り、そしてそれはスカイトーンのような形を形成。それを見たカゲロウはニヤリと笑う。果たして、彼の目的とは何なのか。それが明かされる時は近い。




評価や感想を書いていただけるとモチベーションが上がります。また次回も楽しみにしてください。


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あさひの過去と心の闇

カゲロウがエルを連れ去ってから一時間。ソラとましろは家に帰ると重苦しい雰囲気を出していた。理由はあさひがカゲロウに乗っ取られてしまうのみならず、エルを連れ去られてしまったからだ。

 

「あさひ……私の大切な弟なのに、何であんな闇の面を私達に一言も相談しなかったのかな」

 

「大切に思ってるからこそ、相談できなかったんじゃないですか?私もあさひ君の立場ならきっと……」

 

二人が話す会話もどこかぎこちなくなってしまう。あさひの豹変にまだ心の整理が付かない。動揺した今の心境で戦っても勝ち目は薄いだろう。

 

「ましろさん、カゲロウとの勝負は私がやります。ましろさんに弟と戦わせるわけにはいきません」

 

ソラはましろを気遣ってカゲロウとの決闘は自分がやると名乗り出る。優しいましろでは弟に手を上げるのは難しいと考えてのソラなりの配慮だった。

 

「嫌だ……弟は、私が取り戻したい。あさひは、私の大切な弟を奪ったアイツは……絶対に許したくない。私の力で、私のあさひを……救いたい」

 

ましろの目は本気であり、ソラはそんなましろを見ると安心してましろの手を取る。

 

「大丈夫です……ましろさんなら、きっとあさひ君を救えます」

 

「うん。あさひは私の手で救うよ」

 

それから二人は一度ヨヨの元に向かうとあさひの事について事細かく話す事にした。ヨヨにも孫が大変な事になっているという事実をちゃんと伝えるべきだと思ったからである。

 

「……知ってるわよ」

 

「「え!?」」

 

「あさひさんが悩んでいた事も、家出した理由も」

 

ヨヨは全てお見通しだった。流石はあさひの祖母と言うべきなのか、あさひが抱え込んでいた問題を全て知っていた。その上で家出を止めなかったのだ。

 

「どうして……知っていたのならなんで家出を止めなかったの?」

 

「あの子はあの子なりに、あなた達二人を心配していたのよ」

 

ヨヨの言葉に二人は顔を見合わせる。それからヨヨの口からあさひが悩んでいた理由について話される事になった。

 

「そんな……何でそんな悩みを私達に一言も相談しなかったの……」

 

「あさひ君も私と同じで、嫌な夢を見ていたんですね……」

 

「それにしてもおばあちゃん、何であさひの悩みを知ってたの?」

 

「あさひさんから聞いたからよ」

 

二人はそれを聞いて目を見開く。実は、この前日にあさひがヨヨと会った際にヨヨに全て見透かされていたためにあさひはヨヨにだけ相談する事にしたのだ。

 

それから二人はヨヨと別れると部屋に戻る。それからソラはある事を聞く事にした。

 

「……ましろさん。あさひ君の過去を……教えてもらえませんか?」

 

「え……」

 

「わかってます。本人に許可を取らずに聞くことが無神経な事だって……でも、それを知ればあさひ君を救う鍵がどこかで見つかるかもしれません」

 

それを聞いてましろは悩む。確かにあさひの過去を遡れば何か解決策が見つかるかもしれない。しかし、ここで話してしまうという事はあさひの気持ちに反する事になってしまう。

 

「……わかったよ。あさひ、ごめんね……」

 

ましろは悩んだ末に話す事にした。それからましろはあさひの過去について話し始める。

 

〜回想 数年前〜

 

あげはが引っ越しをしてから暫く時が経った。あさひはあげはの居なくなった寂しさを何とか克服したものの、それでもどうしても割り切る事ができずにいつも暗い顔になっている。

 

「あさひ、もうあげはちゃんは居ないんだよ。良い加減切り替えて……」

 

「わかってる……わかってるよ姉さん……それでも俺は……あげは姉の温もりが恋しくて……」

 

「私だってそうだけど……あさひはちょっと異常だよ?」

 

「………」

 

あさひはそれ程までにあげはに固執しており、簡単に忘れる事ができなくなっていたのだ。それから二人は気分転換をするために散歩に出かける事にした。あさひは気乗りしなかったのだが、それでもましろに無理矢理連れて行かれて二人で歩く事にした。

 

「あさひ、あさひがあげはちゃんと一緒に居たいって気持ちはわかるよ。でも、いつまでも引きずっていたらあげはちゃんだって……」

 

「そんなのわかってる!でも、でも俺は……あげは姉は俺といつまでも一緒だって約束してくれたのに……なのに……」

 

あさひはそう言って泣き始めてしまう。ましろはそんなあさひを優しく撫でて慰めようとする。

 

「あさひ……私の温かさじゃ足りない?あげはちゃんじゃないとダメ?」

 

「……」

 

あさひは小さく頷く。あさひにとってそれほどあげはは特別な存在となっていたのだ。あさひの心の弱さの土台はこの時既にでき始めていたのかもしれない。

 

「どうしよう……あげはちゃんを感じられるもの……」

 

ましろは歩きながら必死にあさひがあげはを感じられる何かが無いか考える。あさひはその間も心細さで泣き続けており、幼いましろにはどうするのが正解なのかがわからずに戸惑ってしまう。すると突然ましろは前を見ていなかったがために前から来る人に気が付かずぶつかってしまう。

 

「きゃっ!」

 

「おい、コラガキ!どこ見てるんだよ」

 

「ひっ!?ご、ごめんなさい……」

 

運悪くその相手は五人ぐらいの不良でましろとあさひを取り囲むように陣取られてしまうとましろはあさひを守るために震えながらもあさひの前に立って両手を広げる。

 

「へっ、俺達に勝手にぶつかったんだ……お前ら、やれ!」

 

そう言うと二人は子供だったからか簡単に捕まってしまい、手足を縛られて口にガムテープを張られてそのまま拉致されてしまう。

 

二人は必死に逃げようと抵抗もした。だが、小学生が不良に勝てるわけがない。そのまま車に押し込められると人気の無い建物の中に連れ去られてしまった。

 

「う……く……」

 

二人が目を覚ますとそこは不良の溜まり場のような場所で十人ほどの不良がたむろしていた。そのため、二人は目覚めた途端恐怖に震える。

 

「……こんなガキ連れてきてどうするんだよアニキ」

 

「簡単さ、コイツらの親から身代金をたっぷり貰うんだよ」

 

二人はその会話を聞いて息を呑む。まさか自分達のせいでこのような事態に陥るとは思ってもみなかったからである。

 

「取り敢えず、こっちの女の服を剥がしてこの状況の必死さをコイツらの親に教えてやろうぜ」

 

「ひっ!?」

 

それを聞いたましろは恐怖に震え上がる。知らない人達に、いきなり服を剥がされてしまえばどうなるか。考えただけでも嫌だった。

 

「だがその前に、このガキ共からコイツらの親の電話番号を聞かないとなぁ……」

 

そう言って不良達はあさひを見やる。女であるましろの方が心の弱いと考えてあさひを痛めつけてましろに吐かせる事にしたのだ。それからあさひは不良達の手で殴られ、蹴られ、身体中に傷をつけられる事になった。

 

「がほっ……ごほっ……」

 

「あさひ……あさひ!!」

 

「姉さん……言わないで……俺はどうなっても良いから姉さんは……」

 

「そんな、嫌だ!あさひ!」

 

ましろはボロボロにされていくあさひを見て思わず言ってしまいそうになる。そしてそれは不良達の思う壺だ。

 

「がふっ……げほっ、げほっ……」

 

あさひは度重なる不良からの攻撃で意識が朦朧として気を失いそうになると、いきなり不良達から水をかけられた。まるで気絶するなど許さないとばかりに……。

 

「僕ちゃんよ、さっさとこの女に番号吐くように言えよ!」

 

「嫌だ……姉さんが嫌がってるだろ……」

 

「生意気な!」

 

それからあさひは顔を踏みつけられて頭の骨が軋み始める。そしてその激痛は当時小学生のあさひには耐え難い苦痛だった。

 

「やめて!言う、言いますからもうあさひを傷つけないで……」

 

ましろはとうとうあさひの静止も叶わず言う事になってしまい、不良達は二人の両親へと電話をし、脅すと金と共に指定した時間に来るように言い放つ。

 

「さて、仕上げは……」

 

すると不良の一人がましろの服を破こうとカッターを取り出す。そしてそれを見たましろは恐怖のあまり暴れ、叫ぶ。

 

「や、やめて!嫌だ!私、なんで?こんなの……」

 

その叫び声が電話に入ったのか二人の両親から心配の声が聞こえてくると不良はその電話を切った。そして、本格的にましろの服を剥がそうとしたその瞬間、突如としてあさひからドス黒いオーラが出てくると共にあさひの顔は怒りに染まって目が黒く変化している。

 

「姉さんに……俺の姉さんに……触るな!!」

 

その声と共にあさひは両手両足の拘束をとんでもない力で破壊すると人間離れした速度と力で次々と不良を薙ぎ倒していく。そしてましろはその様子を見ないように目を瞑る。次に目を開けた時にはあさひが自分の拘束を解いて立っており、自分を犯そうとした不良達はボロボロになって地に倒れ伏していた。

 

「姉さん、大丈夫?」

 

あさひの目はいつもの緑の目に戻っており、ましろは大丈夫だと返す。それからあさひは疲れからか気を失うと同時にその建物に警察が入ってきて二人は無事に保護される事になる。

 

〜現在〜

 

「それから私はカウンセリングを受けて何とか立ち直る事はできたけど……」

 

「けど?」

 

ソラが聞き返すとましろは暗い顔のままあさひのトラウマについて話す事にした。

 

「あさひは闇の自分がやったとは言っても他人を傷つけてしまって、それが原因で自分の手は人を傷つける事しかできないんだって認識を持っちゃったの。それがずっとトラウマになって、いつか自分のせいで大切な物を全部壊すんだって考えに至って……今でも脳裏にあの光景がフラッシュバックするようになって……」

 

それを聞いたソラは両手を強く握りしめながらポロポロと涙を流していた。それと同時に自分はとんでも無いことを聞いてしまったのだと自覚する。

 

「ごめんなさい……ましろさんにとっても辛い出来事なのに……私はなんて無神経な事を……」

 

「私はもう平気だよ……でも、あさひがこれを話したくなかったのは多分自分の弱さと他人から忌み嫌われる力を使った事をソラちゃんに知られたくなかったからだと思う」

 

「それでも、それでも私はとんでもない事を聞いてしまいました……」

 

ソラが思い詰めているとましろがそっとソラに手を重ねる。そして、気にする必要は無いと首を振った。

 

「でも……」

 

「あさひは、その日からより一層私を守りたいって気持ちが強くなったの。もう二度と私に同じ目に遭って欲しく無いから。……だからある意味私のせいなんだ。あさひの心に深い闇を芽生えさせてしまったのは」

 

「いえ!ましろさんは何も悪くありません!だから、自分を責めないでください」

 

二人はそれから一度落ち着いてからふと時計を見た。もうすぐカゲロウとの約束の時間である。そして、それを確認して二人は日の暮れた裏山へと歩いていく。あさひをカゲロウから救い出すために……。そして、カゲロウもカゲロウでそんな二人を待ち構える。自分のもう一つの人格に絶望を教えるために。

 

そうして、約束の時間ぴったりにソラとましろはカゲロウと向き合うのであった。




また次回もお楽しみに。


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VSカゲロウ 絶望戦線

カゲロウとの約束の時間。ソラとましろの二人は夜の森を中を歩き、カゲロウと相対した。カゲロウの手には闇のボールに閉じ込められたエルが今にも泣きそうな顔で二人を見ており、そのボールの中に入ったエルをカゲロウは何とソラ達へと投げた。

 

「「え!?」」

 

まさか自らエルを返すなんてあり得ないと二人は考えたからである。そもそもこの状況下でエルを返すという自分の優位を手放す行為をしたという事はそれなりの自信がカゲロウにある。そう考えて二人は更に警戒した。

 

「何のつもりですか?エルちゃんを返して……」

 

「返す行為は不服だったのか?それとも俺の真意が知りたいと?なら教えてあげるよ。簡単な話、もうエルは不要だからだ。元々お前らをここに連れてきてくれさえすればエルの使用目的は無くなる。ただそれだけさ」

 

それを聞いて二人はカゲロウに舐められていると考えた。だが、舐められているのなら好都合。このまま手を抜いてくるのなら速攻で勝負を仕掛けるだけだ。

 

「戦う前に聞いておきます。あなたは何の目的であさひ君と入れ替わったんですか?」

 

ソラは真剣そうな表情でカゲロウへと問い詰める。カゲロウはそれを聞いて少し考えると答えを返した。

 

「目的……か。俺が自由になりたいから入れ替わった。ただそれだけさ」

 

「それだけ……それだけの理由であさひは……私の弟は……」

 

ましろはカゲロウの言葉に憤る。ソラはそんなましろを宥めて落ち着かせた。平静さを失っての勝負はあまりにも危険だからである。

 

「さて、どっちが俺の相手になってくれるんだ?ソラか?それとも……」

 

「私が相手よ」

 

そう言ってましろが前に出る。そしてそれを見たカゲロウは笑った。まるで予想通りと言わんばかりに。

 

「やっぱりな。姉さんが相手してくれると思ったよ。姉さんは優しい、弟想いの良い人だ。だからこそそう来ると予想も立てやすい。それじゃあ、ソラにはコイツと遊んでもらおうか。カモン!アンダーグエナジー!」

 

カゲロウはニヤリと笑うと手に溜めていたアンダークエナジーを放出。そしてそれは近くの岩に吸い込まれると巨大な岩のランボーグが出現する。

 

「ランボーグ!」

 

「嘘!?ランボーグまで……」

 

「言っておくがコイツに俺達の決闘を邪魔させるつもりは無い。ソラが戦いの間退屈しないように出してやっただけだ」

 

それを聞いてソラはランボーグと向き合うとましろの方を向く。それから二人はコクリと頷き、ペンを取り出す。

 

「「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!」」

 

「スカイ!」

 

「プリズム!」

 

それから二人は同時に変身するとそれぞれキュアスカイとキュアプリズムへと変化する。

 

「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」

 

「ふわりひろがる優しい光!キュアプリズム!」

 

二人は名乗りを終えると共に足を揃えて青空の空間に踏み出してジャンプした。

 

「「レディ……ゴー!ひろがるスカイ!プリキュア!」」

 

それから二人が青空の空間に着地して決めポーズと共に変身を完了し、輝きが辺りを照らすと変身を完了した。

 

「へぇ。中々良い名乗りするねぇ。けど、それができるのはこれが最初で最後だ」

 

そう言うとカゲロウは胸から闇のオーラと共に何かを取り出すとそれは黒色のペンの形となる。

 

「え!?」

 

「あれって……」

 

それからカゲロウがペンを持つ手とは逆の手にスカイトーンのような禍々しいオーラを放つ何かを手にしてそれを構える。

 

「悪いけど、変身できるのはそっちだけじゃねーんだな。これが」

 

それからカゲロウはいきなり闇に包まれると黒い光と共に謎の空間へと移動する。

 

「ダークミラージュ!トーンコネクト!」

 

カゲロウがペンから黒いマイクの形をしたダークミラージュにスカイトーン……では無く、ダークトーンを装填し、それによって扇風機部分が回転した。

 

「ひろがるチェンジ!トワイライト!」

 

すると扇風機部分にTWILIGHTと文字が表示される。するとカゲロウは闇夜の空を模した空間に出てきたステージの上に降り立つ。そして髪は小豆色から黒く染まると共に銀の靴が装着される。

 

「暗転ホップ!」

 

暗転ホップではカゲロウの髪に蝙蝠を模した小さな髪飾りが付き耳にはターコイズのピアスがつく。そして目の色が緑からターコイズへと変化。

 

「絶望ステップ!」

 

絶望ステップでは体にスーツのような服や足にはズボンが装着され、その色は黒いが差し色にターコイズや紫のラインが走っている。これらから明るい色で纏められているプリキュア達とは異なり、明らかに闇を模した物になっていると一目瞭然であった。

 

「宵闇ジャンプ!」

 

宵闇ジャンプでは両手に黒のグローブが装着されて更に背中から黒い翼が生えてからそれがマントへと変化し、それが腰の辺りまで垂れ下がる。

 

そうして変身を完了するとカゲロウはプリキュア達がやっているように決め台詞を言い放つ。

 

「宵にひろがる絶望の闇!キュアトワイライト!」

 

カゲロウことキュアトワイライトが降り立つとスカイの方には目もくれず、プリズムだけを見据える。トワイライトは知っているのだ。ヒーロー精神に溢れるスカイは絶対に自分の方に関与してくる事は無いと。例え、プリズムがどれだけ痛めつけられようともだ。

 

「ルールは単純だ。フィールドはこの裏山全て。どちらかが変身解除するまで戦い続ける。そして、念のために言っておくがこの戦いにスカイは絶対に関与してはならない。もし関与した場合は俺の中に眠る虹ヶ丘あさひを即座に消滅させる」

 

「ッ……」

 

それを聞いてスカイはたじろぐ。トワイライトにとってあさひの方の人格などいつでも好きに消せると言うのだ。

 

「大丈夫。私が勝てば良い話だから!」

 

「プリズム……」

 

「ふふっ、優しい姉さんに弟を傷つける覚悟はあるのかな?」

 

この期に及んでトワイライトはプリズムの心を揺さぶる。少しでも気持ちを乱せばそこを突く気満々な様子だ。

 

「じゃあ始めようか。ランボーグ、スカイを程々に相手してやれ。何なら倒しても構わない」

 

トワイライトの指示と共にランボーグがスカイへと襲いかかる。それを見たスカイはランボーグとの交戦を開始。そして、トワイライトはプリズムを見据えた。

 

「最低最悪の姉弟喧嘩の始まりだ。合図は俺が出す」

 

そう言ってトワイライトは片手を天に掲げるとプリズムも構える。それからトワイライトが闇の弾丸を天へと放ち、それが弾けた瞬間にプリズムへと走り始めた。

 

「やあっ!」

 

同時にプリズムも前に出てトワイライトとの戦闘を始め、まずは様子見とばかりに拳と拳を交える。それから二人の拳や蹴りがぶつかり合い、その威力で周囲に衝撃波が発生した。

 

「くっ……やっぱり強い!」

 

「姉さんもな。ま、まだまだ序の口さ。このぐらい付いてきてもらわないと困る」

 

プリズムは一旦トワイライトから離れると両手に光の気弾を生成して連続で射出する。それをトワイライトは闇のエネルギーバリアで防ぐとそのエネルギーを短剣の形に変化させて短剣による二刀流の型でプリズムへと接近しつつ刃を振るう。

 

「うおらっ!」

 

トワイライトは短剣を振ってプリズムがそれを躱した直後にガラ空きの足を蹴り、怯ませた所に足を短剣で斬りつけた。

 

「あぐっ!?」

 

プリズムはその痛みで後ろに跳んで着地すると、その瞬間斬られた足に激痛が走る。

 

「うっ!?」

 

「プリズム!」

 

スカイが足を痛めたプリズムに余所見をした瞬間、ランボーグに吹き飛ばされてしまう。

 

「このランボーグ、カバトンが呼んだランボーグよりも何枚も上手です……。だったら!一気に決めます!」

 

それからスカイはランボーグを倒すためにランボーグからのパンチをジャンプで躱しつつ上を取り、浄化技を発動。

 

「ヒーローガール!スカイパンチ!」

 

それからランボーグの顔面にスカイパンチが決まるとランボーグに浄化のエネルギーが流し込まれる。

 

「ランボーグ!」

 

しかし、ランボーグはその浄化のエネルギーを簡単に打ち破るとスカイの手を掴んで地面に叩きつけてしまう。

 

「うわぁあああ!」

 

「スカイ……」

 

「そんな余裕はあるのか?」

 

それからトワイライトは容赦なく短剣を振るってくる。プリズムは何とかそれを躱すが、足の痛みのせいで既に満足に戦えなくなっていた。

 

「近づけさせたらダメ……だったら!」

 

プリズムが両手を翳し、周りに大量の気弾を生成。それをトワイライトへと続けて放ち続ける。何が何でもトワイライトに接近させないつもりだ。

 

「へぇ、少しはマシな手を使ってきたな。けど、俺の技がそれだけだと思うなよ?」

 

トワイライトが手を翳すと短剣が一度消滅し、周囲に短剣の形をしたエネルギー弾が大量生成。それがプリズムに向けて射出される。その一撃一撃はプリズムからの気弾の威力を圧倒的に上回っており、プリズムの気弾は全て打ち消されるとそれどころかプリズムへと短剣を模したエネルギー弾が雨のように降り注ぐ。

 

「うあぁあああああ!!」

 

プリズムはその雨に滅多撃ちにされるとその場に倒れ込んでしまう。その体は傷だらけで、何とか立とうとしてはいるが足の痛みに加えて身体中を駆け巡る先程のダメージがそれを許してくれない。

 

「あ……く……」

 

「姉さん、流石に脆すぎでしょ。ほら、立てないのなら立たせてやるから」

 

そう言ってトワイライトはプリズムの髪飾りを掴むと無理矢理引っ張り上げてプリズムを立たせる。

 

「ほらよ!」

 

トワイライトはプリズムの腹を容赦なく殴り、プリズムはそれで唾を嘔吐。それから腹を苦しそうに抑える。

 

「あさひ……目を覚まして……私の大切な……」

 

「ふん。この期に及んで情かよ。あさひはもう俺の心の底の底。二度と出てこれないし、目を覚ましても声は聞こえない。さっさと諦めな」

 

それからプリズムはトワイライトに反撃の拳を放つがそれは簡単に受け止められて逆に腹へと何度も膝蹴りが叩き込まれる。

 

「がっ!?ぐふっ……」

 

その痛みは中学生が味わって良いような痛みでは無く、もうこれは拷問そのものの痛みだ。勿論プリズムことましろがそんなもの味わったことも無い。いつプリズムが気を失ってもおかしく無いぐらいだ。

 

「あ……さ……ひ……」

 

「うるさいなぁ。だから、あさひはもう出てこないんだって。取り戻したかったら俺を倒してみろよ。まぁ、もう今のお前にそれだけの力なんて残ってないだろうがよ」

 

「……まだ……よ。何があっても……諦めない」

 

プリズムはまだまだ戦意は喪失してない様子でトワイライトを睨む。しかし、睨んだ程度では戦況は覆られない。

 

「はぁ、しょうがないなぁ」

 

トワイライトはプリズムを投げると両手に短剣を持ち、相手を潰すための技……プリキュアで言う浄化技に当たる技を使用する。

 

「お前らのネーミングセンスに合わせてやるよ」

 

トワイライトが両手の短剣を逆手持ちして闇のエネルギーを込めると刃の部分が長く伸びる。それから回転しつつ漆黒のエネルギーと共に繰り出すその一撃……。

 

「ひろがる!トワイライト・ジ・エンド!」

 

その攻撃がプリズムに突き刺さった瞬間、プリズムは声にもならない悲鳴と共に体が千切れるような痛みを感じてから近くの岩に叩きつけられる。そのままプリズムはぐったりとして動かなくなってしまった。変身解除はしていないので勝負は続行だが、これではいつやられてもおかしくない。

 

「プリズム……そんな……」

 

スカイはそんなプリズムを見て顔を青ざめさせる。そしてその動揺の隙を突かれてランボーグに顔を掴まれるとそのまま地面へと組み伏せられてそのまま至近距離からエネルギー砲をまともに喰らうとスカイも倒れたまま動かなくなってしまった。

 

トワイライトと彼が生み出したランボーグの力は強大であり、二人はあっという間に追い詰められてしまう事になる。




評価や感想を入れていただけるとモチベーションが上がります。また次回もお楽しみに。


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夜明けを告げる眩き朝日

闇のプリキュア、キュアトワイライト及び、彼の生み出したランボーグの前にスカイとプリズムはあっという間に追い詰められると地に伏してしまう。

 

「あーあ、お前ら弱すぎ。まさかここまで早く倒れるとはな」

 

トワイライトは二人を見下すようにして上から見下ろす。このままでは二人共負けるのは時間の問題だ。

 

「ま、勝負のルールは姉さんの変身解除。さっさとそれを達成して絶望を味わわせてやるか」

 

そう言ってトワイライトはプリズムの元に歩いていくと微かに体を動かそうとしてもがくプリズムを見据える。

 

「最後に良い事を教えてやる。どうしていきなり俺とあさひが入れ替わったかだ」

 

「う……うぅ……」

 

辛うじて目を薄らと開けたプリズムだったが体を動かすだけの余力など残っておらず、ただ黙ってトワイライトの話を聞く。

 

「俺が覚醒したのはお前らの知っての通り俺と姉さんが攫われた時だ。まぁ、その時は俺の力は誕生したてでまだまだ弱かったし人格と言える程では無かった」

 

それからカゲロウは自分の力が増幅された理由を少しずつ話し始める。彼は不良相手に一暴れした後、力を使いすぎた影響で一旦引っ込む事となり、そこから数年間の間、力を蓄える事に専念した。そして、ある事件がきっかけでカゲロウの意識はより強く覚醒した。その事件と言うのが……。

 

「まさか、私がキュアスカイへと覚醒した事ですか?」

 

「正解。まぁ厳密に言えば、お前がスカイに覚醒する直前にあったカバトンへの怒りや憎しみと言った負の感情が昂った時だ」

 

カゲロウはそれ以降、あさひに手を貸すと言いつつも実際は弱い自分への怒り、ソラやましろが力を手にした事への嫉妬、カバトンへの憎しみと言ったあさひ自身が生み出した負の感情を吸い続けて力を高く、強く変えていったのだ。

 

「お前らの存在が、あさひの中に眠っていた俺を強くした。感謝するぜ、そして極め付けはあさひの心が不安定になった事だ。悪夢を見るようになって衰弱しきったあさひの精神を乗っ取るのは意外と簡単だった」

 

カゲロウがあさひに言っていた無理矢理代わる事も可能と言う言葉。実は本当だったのだが、それでは交代にエネルギーを消費してしまい戦いに使う力や活動時間に支障をきたしてしまう。だからこそあさひの精神が悪夢によって弱くなる瞬間を狙い、少ないエネルギーロスであさひの主導権を奪い取ったのだ。

 

「ありがとよ、お前らと弱いあさひのおかげで俺の力はここまで強大になった。……そうだなぁ。もらうだけもらっておいて感謝の一つもしないのは礼に反する。一瞬だけ外の様子を見せてやるよ。あさひ」

 

そう言うとトワイライトは心の中に閉じ込めたあさひの目の前にモニターのような物を出すとそこにトワイライトが見ている視界を共有させた。

 

「姉……さん……ソラ……」

 

「あさひ……お願い、目を覚まして……」

 

その時いきなりトワイライトの足を何かが掴むとそれは純白のグローブをしており、ボロボロになりながらもあさひの心配をする彼の姉のプリズムだ。

 

「無駄だって言ってるだろ!」

 

そう言ってトワイライトはプリズムの手を振り解くとそのまま足でプリズムの背中を踏みつける。

 

「あがっ……はぁ……はぁ……はぁ……」

 

プリズムは息切れを起こし、もう立つだけの体力さえも残っていなかった。それなのにも関わらず未だにあさひを心配し、気にかけている。

 

「カゲロウ……さっきの話だけど一つだけ間違えてるよ」

 

息も絶え絶えになりながもプリズムは顔を上げて優しい笑顔を作る。そして、トワイライトへと言い放った。

 

「あさひは……弱くなんかない」

 

「そうです……他人のためなら自己犠牲も厭わない……そんな不屈の心が、あさひ君にはあります!」

 

スカイは持ち前の体力と精神力で立ち上がるとランボーグとの戦闘を再開。それを見たトワイライトは舌打ちする。するとそこに何かが走ってくる音がした。そこにやってきたのはあさひが大切にする幼馴染の聖あげはだ。実は、ヨヨからの連絡を受けてこの決戦の地に一人でやってきていた。

 

「あさひ!あなたは私達よりもずっと強いわ!それに……男ならそんな奴に負けるな!!」

 

あげははトワイライトに狙われると言うリスクを犯しながらもあさひを救うために必死に叫ぶ。するといきなりトワイライトの頭に衝撃が走ると共にトワイライトは頭を抑える。

 

「あがっ!?な、何だ……この痛み……まさか……これは!」

 

「出すな……俺の大事な友達に……幼馴染に……姉さんに……手を出すんじゃねぇ!!」

 

そう、トワイライトの心の中に閉じ込められていた虹ヶ丘あさひが目を覚ましたのだ。そして、自分を包み込む闇の球体状のエネルギーバリアを何度も何度も殴り続け、少しずつヒビを入れていく。

 

「馬鹿な……お前の力なんてたかが知れてるはず……俺の今の力なら完封できるはずなのに!」

 

トワイライトは叫びながら必死にあさひが出てくるのを抑え込もうとする。しかし、もうあさひの猛攻撃は止まらない。

 

「俺を待ってる人がいる……助けたい人がいる。俺の大事な人がいる!だからお前に……これ以上好き勝手させない!」

 

「この土壇場で……お前の意思も成長したというのか?このままでは俺の目的が果たせない!!」

 

「プリズム!」

 

「うん!はぁああああ!!」

 

プリズムは疲れ切った体を、痛みに軋む体を必死に起こすと何とかギリギリ立ち上がる。それから両手を真上に掲げるとエネルギーを集約し始めた。

 

「このっ……俺がそんな技を使わせるとでも……がああっ……」

 

トワイライトは一つ計算を間違えた。あさひの心は沈んでから何もしなかった訳じゃない。沈んでからもその心は折れていなかったのだ。姉が、ソラが、あげはが、絶対に助けに来てくれると信じていた。そして、トワイライトが油断する瞬間を狙ってあさひの持てる全力を持ってして自分を閉じ込める壁を壊しに行ったのだ。

 

それにより、あさひを覆う壁は粉々に砕け散り、暗い漆黒の世界に一筋の光が差した。その光は眩く、闇を照らす光だ。

 

「姉さん!今だ!カゲロウを……倒して!!」

 

あさひは張り裂ける程の声で叫ぶとその言葉は姉のプリズムに届く。それと同時にプリズムはいつもの倍はあるであろう光のエネルギー弾を生成完了した。

 

「これが私の全部よ!ヒーローガール!プリズムショット!」

 

プリズムから放たれた光弾はトワイライトを包み込むとその体を急速に浄化していく。そしてそれはカゲロウの力がどんどん失われる事に繋がった。

 

「馬鹿な……この俺が目的を果たせないなんて……だが、これで終わると思うなよ?俺はまだあさひの体で生き続ける。いつか必ず、コイツを超えて……うぁああああああ!!」

 

プリズムショットの光がトワイライトを変身解除に追い込むとそのままカゲロウの意思はあさひの意思と入れ替わるように消失。その場には倒れ込んだあさひが残るのみだった。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……あ……う……」

 

それと同時に力を使い尽くしたプリズムも変身解除してましろの姿で倒れ込む。それを受け止めたのは他でもない復活したあさひだった。

 

「ありがとう……姉さん。姉さんならきっと、助けてくれるって信じてた」

 

「あさひ……」

 

それからあげはがあさひの無事を喜んで駆け寄ろうとするとズシンという音と共にその足を止める。そう、まだこの場にはランボーグが残っているのだ。

 

「ヤバイ……このままじゃ……」

 

「ましろさんはもう限界ですし、これじゃあプリキュア・アップ・ドラフト・シャイニングが使えません……スカイパンチは効きませんし……」

 

スカイが悩んでいるとランボーグに吹き飛ばされてしまい、変身解除してしまう。ソラもソラで電車ランボーグとの戦闘の疲労が濃く残っており、限界は近かったのだ。

 

「どうしよう。これじゃあ、ランボーグを止められない」

 

するとあさひは立ち上がり、ランボーグと二人の前に立ちはだかる。

 

「あさひ……無茶だよ!」

 

「だとしても、俺のために二人はここまで必死に戦ってくれたんだ。俺だって……俺だって二人を守るために戦いたいんだ!」

 

あさひがそう叫ぶとエルの体から光が溢れ始めると共にエネルギーの光が放出された。

 

「ぷりきゅあああ!!」

 

するとそれはカゲロウが使っていたダークトーンに命中するとそれが赤く燃えるように変化し、太陽のような赤いスカイトーンに変わる。それからペンも黒い闇が剥がれ落ちるように二人が使うようなミラージュペンになった。

 

「ヒーローの出番だ!」

 

その瞬間、ミラージュペンがスカイミラージュに変化し、スカイトーンを装填する。

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!サンライズ!」

 

するとマイク部分の扇風機が回転し、そこにSUNRISEという文字が浮かび上がる。それからあさひがステージに降り立つと髪が小豆色から炎のようなエフェクトと共に灼熱の赤に変化し、赤と白のブーツが付与された。

 

「煌めきホップ!」

 

煌めきホップではあさひの髪に太陽の形を模した小さな髪飾りが付与され、耳に赤いピアスが付けられる。そして、目の色が緑から赤へと変わった。

 

「爽やかステップ!」

 

爽やかステップではあさひの体に赤を基調として白やオレンジのラインが入ったスーツと足に黄色を基調として赤とオレンジが差し色であるズボンが装着される。

 

「晴々ジャンプ!」

 

晴々ジャンプでは両手に白のグローブが装着されつつ背中から白の翼のエフェクトが出てから白いマントが腰辺りまで垂れ下がる。

 

あさひは変身を完了するとスカイ達のように決め台詞で変身を締めくくった。

 

「夜明けにひろがる眩い朝日!キュアサンライズ!」

 

ここに新たなる戦士が爆誕したのであった。その名もキュアサンライズ。あさひが戦う覚悟を決め、カゲロウを乗り越えた事により生まれたプリキュアである。

 

「あさひ君も……プリキュアに!!」

 

するとそれと同時に夜が明けると共に眩い朝日が顔を出して周囲を照らす。その朝日をバックにキュアサンライズは飛び出すとランボーグの攻撃を受け止めつつ上に投げ飛ばす。

 

「ランボーグ!?」

 

更にサンライズは空に跳ぶと空中でランボーグを滅多撃ちにした上に地面へと踵落としで叩きつける。

 

「強い……」

 

「もしかして……」

 

「あげはちゃん?」

 

あげはの頭にはある仮説が上がり、それを二人へと伝える事にした。

 

「カゲロウとあさひは表裏一体。カゲロウが強くあればあるほど、あさひが変身するサンライズの力も飛躍的に増幅するって事かな」

 

勿論これは仮説なので確証は無い。だが、もしそうだとすれば今のあさひは頼れるなんてレベルじゃない。カゲロウがあれだけ強かった分あさひも強いという事なので、もうプリキュアにとって即戦力になり得る。

 

「俺の罪は俺が償う!覚悟しろ!」

 

するとあさひは両手を胸の前で合わせてから何かの棒を持つように手を移動させるとそこに灼熱の長剣が現れた。それと同時に朝日のエフェクトが地平線の奥から顔を出すとその長剣に炎が灯る。それから剣を掲げて振り下ろすサンライズの浄化技……。

 

「ひろがる!サンライズカリバー!」

 

浄化のエネルギーを纏わせた炎の斬撃の本流はランボーグを斬るとそのエネルギーがランボーグを包み込み、浄化していく。

 

「スミキッタァ〜」

 

こうして、ようやくランボーグは倒される事になりこの場は収められることになる。サンライズは変身解除するとそこにあげはに支えられてソラとましろがやってきた。

 

「あさひ、やったね」

 

「ごめんなさい!」

 

あさひは真っ先に三人へと頭を下げた。当然だ。自分の不始末が原因でここまでの事件にしてしまったのだ。あさひはかなり責任を感じてしまい三人に顔向けすらできなくなっていた。

 

「俺が弱かったから……ちゃんとしてなかったから……その結果がカゲロウの誕生に意識を乗っ取られて……姉さんを傷つけて、ソラを傷つけて、あげは姉を心配させて……俺はもう皆の友達や家族としてなんか……」

 

その瞬間、三人は顔をいつまでも上げないあさひの顔を上げさせると抱きついた。その温もりは温かく、あさひの目からはいつの間にか涙が溢れ出ていた。

 

「大丈夫……もう大丈夫だからね」

 

「あさひ君は悪くなんかありません」

 

「こうして無事に帰ってきてくれて、私達は幸せだよ」

 

それを聞いてあさひは安心するように目を閉じて三人からの気持ちを受け止める。そんな中、あさひの心臓がドクドクと高鳴っていた。これは勿論カゲロウによるものでは無い。あさひがこの感情の正体に気がつくのはもう少し先の話である。




評価や感想を入れていただけるとモチベーションが上がります。また次回もお楽しみに。


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謎の像と目覚めた悪魔

最近のプリキュアに春映画がやらなくなってしまったので少し寂しいと思っている作者です。なのでこの小説ではひろプリの春映画枠のオリジナルストーリーを入れる事にしました。時系列はサンライズ覚醒後からアニメ六話の間の話です。それではどうぞ!


あさひがキュアサンライズに目覚めてから数日。もうすぐあさひ達は春休みも終わると言った所だった。

 

「あさひ!起きてよ!」

 

「姉さん……だからもう少し寝かせて……」

 

「何言ってるの。学校はもうすぐ始まるんだよ?学校が始まったらもう私も起こしに来る余裕も無いんだからね」

 

あさひはいつものようにましろに起こされて起きるとソラやヨヨ達に挨拶して朝食を摂る。それから片付けをして……そんな日常を過ごしていた。あさひは以前にも増して手伝いやらを以前にも増して一生懸命するようになっている。理由は自分の中に潜んだ闇の意思であるカゲロウの一件が尾を引いていた。

 

「あさひ、無理に頑張らなくて良いんだよ?」

 

「姉さん、気遣いは嬉しいけど、今は頑張らないといけないんだ」

 

あれから三人は戦いのダメージが原因で家に戻ると緊張の糸が切れて朝にも関わらず寝てしまった。それからあげははあさひがカゲロウと入れ替わった際にその場に置き去りになってから奇跡的に交番に届けられていたあさひの荷物が入ったスーツケースを回収。そして、あさひは目覚めてから一言の相談もなく家出してしまった事についてましろに叱られた。

 

だが最後にはましろはあさひを笑って許し、足に付けられた傷もプリキュアから変身解除した際に治っていたので特に支障をきたすことも無い。

 

「そういえばあさひ、宿題はちゃんとやってるの?」

 

それを聞いたあさひの手が一瞬止まる。それから少しずつ冷や汗を流し始めてゆっくりとその場から逃げようとした。

 

「その反応はやって無いね」

 

「お、終わってないだけで多少はやってるし……」

 

「そう言ってこの前の冬休みの宿題、間に合わなかったでしょ?さっさと部屋に戻ってやってきて」

 

「うぅ……」

 

あさひは渋々宿題を片付けに部屋へと戻っていく。あさひの成績は別に特筆するほど良くもなければ悪いというわけでも無い。ただ、長期連休の際の宿題はどうしても後回しにしてしまう悪い癖があるのだ。なので、休み明けが間近になるとこうやってましろに促されて泣く泣くやる事になる。そこに入れ替わるようにソラがやってきた。

 

「ましろさん」

 

「何?」

 

「あさひ君が宿題を終わったら三人で一緒に出かけませんか?」

 

「良いよ。あー、でもあさひの宿題はそれなりに量が残ってると思うから時間は少しかかるけど大丈夫?」

 

「はい!」

 

それからソラとましろはあさひの宿題を終わらせるのを待つ。あさひは数時間かけて何とか残っていた宿題をあらかた片付けると昼食を摂ってからエルを連れて四人で街へと出かけた。

 

「ソラちゃん、どこに行きたいとかある?」

 

「それなら、この前皆さんと出かけたショッピングモールで色々と見てまわりたいです!」

 

「良いね!」

 

ソラの意見にあさひも賛同し、ショッピングモールに行って買い物では無いが、内部を見て回ることに決める。それから四人はショッピングモールでの出来事を楽しんでから外に出てきた。

 

「楽しかったです!」

 

「ソラちゃんが喜んでくれて何よりだよ」

 

「そうだな。次はどうする?夕方までにまだまだ時間はあるよ」

 

「それじゃあですね……」

 

ソラが二件目を考えて話そうとするといきなり目の前に空から何かが降ってきた。突然の出来事に三人共驚くと後ろへと飛び退く。

 

「「「うわぁあ!」」」

 

その煙が晴れていくとそこに落ちていたのはいかにも封印のお札が貼られた何かの像だった。

 

「な、何?」

 

「うん?これって……」

 

三人がその像を覗き込むと突然像から何かの声が聞こえてきた。その声はまるで助けを求めてるかのようで細々と苦痛に悶えているような声だった。

 

「何ですか?この像は」

 

「「知らないよ!!」」

 

ソラが二人にこの像について知ってるかどうか聞くがそんな事二人が知るはずもない。それからソラがお札を剥がそうとして手を伸ばすとその手をあさひが掴んだ。

 

「ストップだよソラ」

 

「あさひ君?」

 

「これ、絶対何かを封印するためのお札だよね?それを剥がしたらどうなるかわからないよ?」

 

「そうだよソラちゃん。今回は踏みとどまろう。ね?」

 

二人に止められてソラはその像を仕方なく元あった場所に戻そうと考えたが、空からいきなり落ちてきたので元々どこにあったかもわからない。

 

「とはいえどうしましょう」

 

「だよね……しかも気味悪い声も聞こえるし……」

 

ただその辺に捨てただけでは他の人に拾われてお札を剥がされるかもしれない。そのため一度家に戻ってヨヨに相談する事にした。折角の四人揃ってのお出かけだが、この像を持ったまま行くのは無理と考えて泣く泣く中止にする事になる。

 

それから四人は帰ろうとすると今度は近くから助けを求める声が聞こえてきた。

 

「今の声!」

 

「行ってみましょう!」

 

三人がその場所へと急ぐとそこにはケーキ屋から出てきたカバトンが手にケーキを大量に抱えており、ケーキ屋の店員が困り果てた様子になっている。

 

「……なんか見覚えのある光景だな」

 

「また性懲りも無く悪い事を……」

 

「ひとまず止めないと!」

 

「あ!お前ら!」

 

どうやら向こうも自分達に気付いたようで例の如くカバトンは自分達へと敵意の目を向けてくる。それからカバトンはあさひが持っている像に気がつくとそれについて言及した。

 

「そこの脇役、何だその手に持った変な像は!」

 

「あ、これ?なんかいきなり空から……ってお前には関係ないだろ」

 

「今サラッと正直に言いかけたよね?」

 

「この際何でも良いのねん!今日こそプリンセスをいただくぜ!カモン!アンダーグエナジー!」

 

カバトンがいつものようにランボーグを呼び出すと今回は近くにあった電柱にアンダークエナジーが吸収されてランボーグとなった。

 

「ランボーグ!」

 

ランボーグが出るとましろが抱えていたエルが抱っこ紐を変化させて空に浮く。これにより、三人共が戦えるようになった。

 

「ましろさん、あさひ君、行きましょう!」

 

「うん(ああ)!」

 

三人はそれぞれペンを出すとそれがスカイミラージュに変化。

 

「「「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!」」」

 

「スカイ!」

 

「プリズム!」

 

「サンライズ!」

 

三人はそれぞれプリキュアへと変身するとそれぞれが決め台詞を言い放つ。

 

「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」

 

「ふわりひろがる優しい光!キュアプリズム!」

 

「夜明けにひろがる眩い朝日!キュアサンライズ!」

 

「「「レディ……ゴー!ひろがるスカイ!プリキュア!」」」

 

三人は変身を完了するとカバトンとランボーグの前に降り立つ。そして、そんな三人を見てカバトンは驚いた。

 

「いつの間にかあの脇役もプリキュアになったのねん!?」

 

「あー、そういえばカバトンとこの姿で会うのは初めてだったな。俺の名前はキュアサンライズ。以後お見知り置きを」

 

「むかーっ!こうなったら、ランボーグ!アイツら三人纏めて倒すのねん!」

 

カバトンからの指示でランボーグが三人へと襲いかかってくる。勿論三人はそれを軽々と躱し、ランボーグからの追撃をもいなす。

 

「あれ?何だかランボーグの攻撃がゆっくりに感じます……」

 

「もしかして、カゲロウとの戦闘のおかげで私達の体も鍛えられたのかな?」

 

カゲロウの呼んだランボーグはカバトンが呼ぶランボーグよりも強く、それによって鍛えられたスカイ。更にカゲロウ本人と戦ったプリズム。そしてカゲロウが強くなったおかげで相乗的に強い状態になっているサンライズ。今の三人の力ならカバトンのランボーグを以前より簡単に相手できるようになったのだ。

 

「アイツら、いつの間にか強くなってるのねん!ランボーグ、アレを出すんだ!」

 

「「「アレ?」」」

 

三人が疑問に思うとランボーグは手から電線のような物を伸ばすと三人を捕まえようとする。勿論それに捕まれば電気が流されると考えた三人はそれをすぐに躱す。

 

「これでも喰らっとけ!」

 

サンライズが手に炎を生成するとそれを電線へとぶつける。するとそのまま炎は電線へと燃え移り、電線を焼きながらランボーグの体を炎で包む。

 

「ランボーグ!?」

 

「サンライズ……炎も使えるんだ」

 

「とは言っても制御とか結構難しいんだけどね」

 

これでもサンライズは炎の威力を加減しているようであり、フルパワーで使えばもっと火力が出るようだ。しかし、こんな街中でそれをすれば二次被害が起きるためにある程度手加減しなくてはならない。

 

「ランボーグ!何やってるのねん!」

 

カバトンが慌てていると三人は同時に攻撃をぶつけてランボーグを吹き飛ばし、とうとう追い詰める。

 

「このまま一気に……」

 

するといきなりランボーグから電線が不意打ちで伸びてくるとサンライズの体を捕まえた。

 

「「サンライズ!!」」

 

「ぐうっ……」

 

更にサンライズの体に電気が流れてダメージを負う。スカイとプリズムはサンライズを助けるためにランボーグへと飛び掛かるが、電線によって弾かれてしまった。加えて、ランボーグはサンライズを地面に叩きつけるとその拍子に先程持っていた像がカバトンの方に飛んでいってしまう。

 

「しまった!はあっ!」

 

サンライズはすぐに取り返すために体を炎で包むと電線を焼き切り、そのまま両手に剣を召喚する。更にその剣の柄を連結。そのまま剣を回転させながら走っていくと剣は赤い炎を纏う。

 

「喰らえ!風輪火斬!」

 

風輪火斬

 

サンライズから繰り出された斬撃によってランボーグは切り刻まれ、かなりのダメージを与える。

 

「スカイ、プリズム、今だ!」

 

「「うん!」」

 

それからスカイとプリズムは二人による合体技を発動。スカイトーンをスカイミラージュに装填する。

 

「スカイブルー!」

 

「プリズムホワイト!」

 

「「プリキュア!アップ・ドラフト・シャイニング!」」

 

二人の技によってランボーグは浄化されると勝利を収める。それを見たカバトンは当然憤った。

 

「むきーっ!また負けたのねん!だったら……」

 

カバトンは近くに落ちていた像を手に取ると貼られていたお札を無造作に剥がしてしまう。

 

「「「あ!」」」

 

三人は慌てるがもう時既に遅い。すると突然お札からポンという音と共に煙が発生する。

 

「え!?」

 

「な、何?」

 

その煙が晴れると中から出てきたのは黄色い髪をしつつ巫女服を着た可愛らしい女の子で歳はあさひ達と同じくらいの見た目だつた。

 

「ここは……」

 

「中から……女の子が出てきて……え?」

 

「夢じゃないよね!?これ、現実だよね?」

 

サンライズとプリズムはいきなり出てきた女の子に困惑し、スカイも絶句している。そんな中、女の子は我に返ったかのように慌て始めた。

 

「へ!?な、何、この世界……あれは何?あれは?あれは?というより、ここどこ!?」

 

あまりの慌てように三人は既視感を感じてしまう。それからも女の子の焦りは止まらないようで周りをキョロキョロするとカバトンが手にした像が映った。

 

「あ……あぁ……それは、それは……」

 

カバトンの手にした像を見ると女の子の目は絶望したようなものに変わっていく。すると像から禍々しいオーラが漏れ始め、しまいにはそれが悪魔のような形へと変化していった。

 

「な、何なのねん!」

 

「像から……なんか出てきちゃった」

 

「って、そんな事言ってる場合じゃないよ!」

 

「ええ、これはかなり危険そうです!」

 

プリキュア三人が警戒心を露わにする中、悪魔はニヤリと笑うとプリキュア三人を見据える。それから突然口からエネルギー波を発射するのであった。




評価や感想を入れていただけるとモチベーションが上がります。また次回もお楽しみに。


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英雄となった少女

カバトンが封印のお札を剥がして現れたのは見るからに邪悪な悪魔であり、お札は少女の姿となって具現化した。そして、悪魔は無造作にプリキュアの方を向くとエネルギー波を発射する。

 

「ッ!」

 

それにいち早く反応したサンライズはプリズムとスカイを突き飛ばして自分はそれに巻き込まれてしまう。

 

「サンライズ!!」

 

「そんな……」

 

何とかサンライズは今の攻撃を耐え切ったものの、受けたダメージは大きく体に傷を多く付けていた。

 

「大丈夫……何とか耐えれた」

 

「サンライズ……」

 

プリズムは心配そうにサンライズを見るが、目の前に敵がいる以上あまりそちらに気を向ける事ができない。

 

「プリズム!前!」

 

そんな間に悪魔からの拳がプリズムへと叩きつけられる。プリズムは何とかそれを受け止めようとするが、人型である悪魔の速度は速くプリズムはそれを腹に受けてしまう。

 

「がっ……」

 

「だったら!」

 

スカイが攻撃の直後の隙を付いて悪魔へと蹴りを繰り出すが、それも簡単に受け止められるとそのまま振り回されて地面に叩きつけられる。

 

「あぐっ!」

 

「コイツ、カゲロウよりも強いんじゃ……」

 

「な、なんだかわからないけど今のうちに逃げるのねん。カバトントン!」

 

プリキュア三人が悪魔と戦っている間にカバトンは逃げるように撤退。巻き込まれては敵わないからだ。

 

「スカイ、サンライズ、使って!」

 

それからプリズムら周囲に気弾を放つと二人はそれを足場代わりにして悪魔を撹乱。二方向から同時に攻撃を仕掛ける。だが、悪魔はそんな物通用しないとばかりに片手でそれぞれの攻撃を受け止めてしまう。

 

「そんな……」

 

「くっ……」

 

「ぬん!」

 

そのまま二人は空中でぶつけられるとそのままもつれて落下する。更にその隙を突いてエネルギー砲を発射。それを見たサンライズはスカイを庇うように前に出るとエネルギー砲をまともに受けてしまい、身体中傷だらけになると変身解除してしまう。

 

「あさひ!!嘘だよね?」

 

「私のせいで……」

 

二人は倒れたあさひを心配する中、悪魔の体はいきなり巨大化。そのまま二人は悪魔の手に捕まると握り締められてしまう。

 

「「あぁあああああああ!!」」

 

二人はあまりの痛みに悲鳴を上げるがそんな程度で悪魔が攻撃を止めるはずがない。それどころか更に締め付けを強くする始末である。

 

「このままじゃ……」

 

「負けちゃう……」

 

あさひは何とか無事で立ち上がるが体へのダメージは深く、立つのもやっとな状態だった。

 

「二人を……助けないと」

 

あさひは無理しながらサンライズに変身するためにまたペンを構える。しかし、体の痛みでその場に膝をついてしまい項垂れてしまう。

 

「今の俺には……何も救えないのか?……二人があんなに苦しそうにしてるのに」

 

あさひは悔しそうにする中、二人は絞められ続ける。すると突如として衝撃波が悪魔へと飛んでいくと悪魔が吹き飛ばされてスカイとプリズムが手放された。

 

「な、何?」

 

三人がその方向を向くと先程出てきた巫女服の少女が手を翳しており、それから少女は悪魔の前に立つ。更に少女は胸から何かの波動を放つと悪魔の体は縮小していき、それが少女の胸の前で小さな球体となると少女が何かの呪文を唱えて閉じ込める。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

少女は悪魔を封じ込めるとそのまま疲れからか倒れてしまった。しかし、これにより一旦この場は収められる事になる。スカイとプリズムは変身を解き、あさひも二人と合流して少女の元に歩み寄った。

 

「この子は一体何者なの?」

 

「お札になっていたと思えば今度はあの化け物を封じ込めてたし……」

 

「って、そんな事言ってる場合じゃ無い!急いでこの子連れて離れるよ!」

 

それから三人は騒ぎになってしまう前に離脱するべくあさひが少女を背負って家にまでの帰路につく。

 

「この子、お札になってたんだよね。って事は長い間さっきの悪魔を封印していたのかな?」

 

「えぇ、しかもこちらの世界について何も知らない様子でしたし……」

 

「ともかく、この子が目覚めてから話を聞くしか無いだろ」

 

三人は家に戻るとヨヨはそれを見てすぐに受け入れる。毎度の事ながらヨヨの理解力には目を見張るものがあるのだ。それから少女が目覚めると少女はまた場所が変わっている事に混乱するが何とか三人で落ち着かせる事ができた。

 

「すみません、何から何まで……」

 

「いえ、私達の方こそ助けてくれてありがとうございます」

 

「あのままだと私達もやられていたから」

 

それから三人は少女に色々と聞く事にしたのだが、まずその前にお互いの自己紹介をする事に決める。

 

「私、ソラ・ハレワタールです」

 

「虹ヶ丘ましろだよ。こっちが私の双子の弟の……」

 

「虹ヶ丘あさひです。改めて先程はありがとうございました」

 

三人が自己紹介を終えると次はそちらの番だよとばかりに少女の方を見る。それから少女は深呼吸をしてから言葉を口にした。

 

「は、初めまして。私は天気の巫女、ヒメ・アメミヤです。ヒメと気軽に呼んでください」

 

「ヒメ……その名前は……」

 

そこにヨヨがやって来ると驚きの顔つきになっていた。ヨヨはその名前に聞き覚えがあるようで、それを見た三人は顔を見合わせる。

 

「知ってるの?」

 

「知ってるも何も、ヒメ・アメミヤという名前はスカイランドの博学者の中で知らない人はいない程の有名人よ」

 

「えぇ!?」

 

「ソラちゃん知ってた?」

 

ましろがソラに聞くが、ソラは知らないとばかりに首を横にブンブンと振る。

 

「この方はスカイランドに古くから伝わる伝説の英雄よ」

 

「「え、英雄!?」」

 

「何だか話が壮大になってきたなぁ……」

 

ソラとましろが声を大にして驚く中、あさひは遠い目でその状況を見ていた。それからヨヨは以前本で調べた伝説について話し始めた。

 

それはスカイランドが誕生して間も無い頃。まだまだスカイランドは発展途上で人々はそんなスカイランドを発展させるために精を出していた。彼女ことヒメはスカイランドの王の一族だったが、女の子だったのと優秀な兄が三人もいたのが原因で王位継承権は無くただの少女として一生を過ごすと彼女自身も考えているぐらいに平凡な人生を送っている。

 

そんなある日、闇の国の悪魔……ベリアルがスカイランドを我が物とするために悪魔軍団と共にスカイランドへと侵攻を開始。スカイランドの住人は悪魔達と戦った。しかし、当然ながら悪魔を相手に人間は次々とやられてしまう。ヒメはこの状況を打開するために毎日空に向かって祈りを捧げると突然空が暗くなり悪魔達へと捌きの雷が落ちるようになる。それが影響して悪魔達は分が悪いと判断し、撤退していった。

 

「凄い……祈りを捧げて悪魔達を撃退するなんて……」

 

「あれ?でもこの話だけだとヒメちゃんがお札になっていた理由がつかなくない?」

 

ましろの質問にヒメは顔を暗くする。どうやらあまり触れられたく無い話なのだろう。

 

「どちらにしてもスカイランドの英雄……か」

 

三人が感心する中、ヒメは嫌な事を思い出したのかボソッと小さく呟く。

 

「そんなに良い物じゃないよ。英雄なんて肩書き」

 

「「「え?」」」

 

三人が声を合わせる中、ヨヨはそれに納得したかのように頷く。まだこの話には続きがあるようだ。

 

悪魔達を撃退してからというものの、ヒメはスカイランドを救った英雄と呼ばれるようになり、ヒメを国の主人にするべきという話が持ち上がった。勿論ヒメは最初この話を断る気持ちでいたのだ。だが国民の期待を裏切るわけにはいかないと最終的にこの話を受けた。しかしそれは同時に三人の兄の嫉妬の目を一手に担う事になる。それから数ヶ月後、今度は前回以上に力を増したベリアルの軍が攻め込んできた。そんな悪魔軍を相手にヒメは祈りを捧げると今度はヒメの体に力が溢れ出てきて彼女はその力を持ってして悪魔軍を制圧する。

 

そして遂にベリアルとヒメは直接対決する事になった。

 

「……古文書に書いてあったのはここまでよ」

 

「「「え?」」」

 

三人はまさかの古文書の情報の中途半端さに驚く。どうやら、古文書のページがそこから先は消えており、何が起きたのかもわからない状態になっているようなのだ。

 

「……ここから先の話は私がします」

 

ヒメはヨヨの話の続きを始めた。ベリアルとヒメの二人による対決は当初、ヒメが優勢だったのだがベリアルは時間が経つほどにパワーを上げてきてヒメを圧倒するようになるとヒメはベリアルを相手に大敗北を喫する。

 

「ボロボロになって帰った私に待っていたのは罵詈雑言の嵐でした」

 

それを聞いて三人は目を見開く。英雄と呼ばれた少女はただの一回の負けが原因で国民から責め立てられたのだ。

 

「……私はそれから傷を治療する事なくまたベリアルに一人で挑みました。勿論結果は惨敗。アイツは、強すぎたんです……。私の力でももう太刀打ちできないぐらいに成長していて……」

 

それからヒメは国内で迫害に遭うようになり、毎日のように屋敷に石が投げられて責め続けられた。それからヒメはある決意を固めてまたベリアルへと挑みに行く。

 

「三度目の対決。もう私の力なんてベリアルにとっては取るに足らない存在だと考えて油断し、隙を作りました」

 

ヒメは身体中の傷を引き摺ってボロボロになりながらも持てる力の全てを使い尽くして油断していたベリアルを封印。それから二度と出てこられないように自らをお札に変える事でベリアルの暴走を封じ込めたのだ。

 

「……それから国民は掌を返したようにベリアルから二度もスカイランドを救った英雄としてまた讃えられるようになりました。でも私は……それからずっとベリアルが出てこないように像に封印されていたベリアルの力を死に物狂いで抑え続けました。しかも不幸な事にお札になった時に私の精神まで消しきれなかったのかずっと外の様子は私の耳に筒抜けでした」

 

つまり、ヒメは永遠の時を生きながらベリアルを抑え続けた上にずっと一人で孤独に耐えていたのだ。

 

「私は……普通の女の子として一生を全うしたかった。こんな苦しい思いをし続けるぐらいなら私なんてあの時ベリアルに殺されるべきだったの……」

 

ヒメの目から徐々に涙が溢れ出て来ると辛い気持ちを、今までずっとベリアルとの戦いに力を使ってきてその気持ちを誰にも理解してもらえずに耐え続けた苦労を吐露していく。

 

「私の命にもう価値なんてない。かつての英雄なんて肩書き、私なんかには重すぎたの。だからもう英雄なんて言わないで……私は英雄になるつもりでベリアルと戦ったわけじゃない。当時のスカイランドの人々の中でまともにベリアルと戦えたのが私だけだったから戦ったの」

 

「ヒメちゃん……」

 

「私、もうこの家を出て行きます」

 

 

そう言ってヒメは外へと出て行こうとするとソラが立ち塞がった。そして、ソラはダメだとばかりに首を振る。

 

「……ベリアルは完全封印されたわけじゃない。さっき封じ込められたのはベリアルが出たばかりで力がまだ蓄えられてないから。次に出てきたらもう私じゃ抑え込めないよ?」

 

「だったら、私達がなんとかします」

 

「無理よ。あなた達三人がかりでも出たばかりのベリアル相手に苦戦してたのに……」

 

ヒメは止めるソラを振り切って一人で行こうとするがそれをあさひとましろが両手を後ろから掴んだ。

 

「それでも何とかする……約束する!」

 

「だからヒメはここにいて良いんだよ」

 

「どうして?私達は会ったばかりの赤の他人。何で私なんかを気遣うの!」

 

ヒメの言葉に三人は息を合わせて全く同じ言葉を口にする。そしてそれはヒメの心を突き動かした。

 

「「「友達だから」」」

 

「え……」

 

「どんな過去を抱えていたとしても、ヒメさんは一人の人間です。だから私達が友達としてあなたを守ります」

 

「私達の力を信じて欲しい。私達は英雄なんかじゃないけど、誰かにとってのヒーローを目指してるから」

 

 

「俺達はそれぞれに弱さを持ってる。それでも三人でカバーしあってきたから俺達はここにいるんだ。だから、差し伸べられた手を取るのをを……躊躇わないで」

 

その言葉にヒメはポロポロと涙を流し始めるとその場に崩れ落ちて泣き始めた。ヒメはずっと心細かったのだ。英雄として讃えられていても彼女に味方と呼べる人間は一人たりともいなかったのだから。一人で孤独に戦う戦士……そんな彼女は生まれて初めて友達と呼べる存在に出会えたのだ。

 

それから四人はその日を終えていく。だが、ヒメが封じ込めたベリアルの力は少しずつ確実に増しているのだった。




また次回もお楽しみに。


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楽しい思い出作り

ヒメと出会った翌日、あさひ、ソラ、ましろ、エル、ヒメの五人は街中に出てきていた。その理由はヒメに楽しい思い出を作ってもらうためである。

 

「私なんかのために……どうして?」

 

「ん?そんなの決まってるでしょ。ヒメは普通の人生が欲しかったって言ってたんだ。今までずっと辛いことを一人で抱えてたし、そろそろ幸せになる権利も持ってると思うからね」

 

前日の夜に三人で話し合った結果、ヒメを幸せにする方法として自分達との楽しい一時を過ごすことが彼女にとっての幸せだと判断。一緒に出かける事にした。

 

「……すみません。気を使わせてしまって……」

 

「大丈夫ですよ。今日はヒメさんと沢山の楽しい思い出を作ることが目的ですから!」

 

それから五人は街中に出るとショッピングモール内に入り、まずはヒメに似合う服を探す事にした。今はましろの服を借りている状態である。

 

「え!?な、何ですかここ!建物の中に市場が……」

 

「あー、なんかその反応見覚えあるなぁ……」

 

「私も似たような反応していましたものね」

 

ヒメは昔のスカイランドでは王族だったために国民の生活にはあまり馴染みがなく、欲すれば全て手に入るような状況だったがために普通の生活についての知識があまり無かった。

 

「私、えと……どうしたら……」

 

「取り敢えず、これだと思った服を選んでみて。それに合わせた服を探すから」

 

「う、うん」

 

それからヒメのファッションショーが始まった。お姫様のようなドレスコーデやワンピース、カジュアル系にボーイッシュ等次から次へとヒメは服を着せられて三人で何が似合うのかを見定める。

 

「え、えと……どうですか?」

 

「う、うーん」

 

「これ……どの服も似合いすぎて逆にどうすれば良いんだろ」

 

まさか着ていった服がどれもこれも似合いすぎるとは思っていなかった。流石にお嬢様と言うべきか、どの服でも華麗に着こなす上に元々の容姿が良すぎてどの服を着ても様になっているのだ。

 

「とにかく、ヒメちゃんはどれが良いの?」

 

「う、う、えと……」

 

「ヒメ……あんまり無理してこの中から決めなくても良いんだよ?自分が気に入った服を着れば良いんだから」

 

ヒメは着た服のあまりの多さにどうすれば良いのかわからずに悩んでしまっていた。更に友達と服を選ぶなんて初めてのことで緊張してしまい、なかなかこれといった物を見つけられずにいたのだ。

 

「じゃ、じゃあ……これはどうかな?」

 

ヒメが手に取ったのは自分のイメージカラーと言うべき黄色を基調として所々に白のアクセントが入った服を手にするとそれに決めた。

 

「似合ってます!ヒメさん!」

 

「そうかな……でも、私にそんなセンスなんて無いよ」

 

「大丈夫。最初は皆手探りで自分に合う服を探す物だから」

 

「それに、ヒメは普通の女の子みたいにしたかったんだろ?だったらそれで良いんだよ」

 

それを聞いて嬉しくなったのかヒメは笑顔になると幸せそうにする。それを見た三人は心の中でガッツポーズをした。三人がヒメに求めていたのはその笑顔だったからである。

 

「次はどうする?」

 

「えっと……あそことか……」

 

そう言ってヒメが指差したのはゲームセンターだった。それを見たソラも初めて見るゲームセンターに目を輝かせる。

 

「私も行きたいです!」

 

「じゃあそこにしよう!」

 

それからエルを含めた五人はその方向へと向かい、ゲームセンターへと入る。まず最初にやるのはクレーンゲームでヒメは可愛い鳥のぬいぐるみを見つけるとそれを欲しそうにジッと見つめる。

 

「これが欲しいの?」

 

「え!?あ、う、うん……でも変だよね。私の好きな物なんて……」

 

「全然変じゃ無いよ!むしろ、ぬいぐるみが好きな人は結構いるから!」

 

「まずは私がやります!」

 

早速ソラが前に出るとやろうとするが、勿論初めてなので使い方も知らないわけで……。

 

「えっと、どうすれば良いんですか?」

 

「あはは……だよね……」

 

「私がお手本を見せるから、ソラちゃんはそれからね」

 

そう言ってましろはお金を入れるとレバーを操作してぬいぐるみを取ろうとする。しかし、クレーンは一瞬ぬいぐるみを掴みこそしたものの滑ってしまい失敗に終わった。

 

「失敗かぁ……」

 

「次こそは私です!」

 

それから今度はソラが挑戦すると慣れない手つきでレバーを操作し、ぬいぐるみを取ろうとするがぬいぐるみをクレーンで僅かに動かしたのみで終わってしまう。

 

「失敗です……なかなか難しいですね」

 

「いや、十分だよ」

 

「え?」

 

最後にあさひが挑戦する。あさひはクレーンを操作して何と一発でぬいぐるみを掴み、それから取り出し口にまで持っていくとそれを入れて獲得に成功する。

 

「よっしゃ!」

 

「「えぇ!?」」

 

「あさひ、こういうのは結構得意なんだよね……」

 

ましろが解説をする中、あさひは静かに首を振ってからある事を口にした。

 

「でもさ、俺が一発で取れたのは姉さんとソラが少しずつぬいぐるみを動かしてくれたおかげなんだ。最初のあの位置だと掴むのがかなり難しい角度だったから。姉さんが位置を少し動かして、ソラが微妙に角度を変えてくれたから俺が取れたんだよ。これは三人のチームプレイの結果だよ!」

 

それから三人でハイタッチをしてからヒメにぬいぐるみを渡す。ヒメはそれを受け取るとぬいぐるみを抱きしめて嬉しそうに笑う。

 

「でも良かったんですか?私のために、お金だって……」

 

「大丈夫。今日はヒメちゃんに幸せになってもらうために出かけてるんだから」

 

三人はそれからもゲームセンターで多くのゲームをして遊び、ヒメはその中で幸せという感情を沢山味わった。その後、三人はフードコートでご飯を食べつつ話す事になる。

 

「……こんなに楽しい思い出、私……生まれて初めてです」

 

「そっか、ヒメはずっと我慢してきたもんね」

 

「はい。永遠の時の中、私は戦いという事しかやってこなかったので……」

 

ヒメは下を向くとまた暗い顔になる。するとそれはダメとばかりにましろとソラがヒメの顔を上げさせた。

 

「な、何を……」

 

「そんな考え、今日は捨ててください」

 

「でも……」

 

「誰だって最初は初心者だから。それに、ヒメちゃんが幸せな顔になったら私達も嬉しい気持ちになる。逆に悲しい顔なんて見たら私達も悲しくなっちゃうよ」

 

ヒメはそれでも三人に気を使わせていると考えてどうしても笑顔になる事ができなかった。ヒメも優しい性格だからこそ、他人に気を使わせている今の状況を良いとは思えなかったのだ。

 

「……ヒメ、もしかして俺達が気を使ってると思って遠慮してたりするの?」

 

「はい……」

 

ヒメは小さく頷く。このままではヒメも幸せという感情を満足に感じられないかもしれない。そこで、あさひはある事を思いついた。

 

「だったらさ、次はここに行こう」

 

そう言ってあさひが連れて行ったのは映画館だった。それからあさひはヒメの好みを聞く事なく映画のチケットを買う。

 

「え、ちょっとあさひ!」

 

「大丈夫。これなら全員観れると思う」

 

それからあさひはヒメの手を引くと一緒に映画を観ることにした。その作品はヒーロー物でとあるヒーローが悪の組織に攫われたヒロインと世界を救う物語だ。ヒーローは何度やられても立ち上がり、最後には悪を倒して世界の平和を取り戻す事ができた。

 

「面白かったです!」

 

「でもどうして?ヒメちゃんがトラウマを抱えて苦手そうなヒーロー物を……」

 

「いや、そうでも無いよ」

 

するとヒメはポロポロと涙を浮かべて泣いており、物語に感動した様子だったのだ。

 

「私も、あんなヒーローになれたら良いのに……強く、優しいヒーローに」

 

あさひはヒメの頭にポンと手を置くと優しく撫でた。それにヒメは驚きつつ癒されたような感じになる。

 

「……大丈夫。ヒメは十分強いし、誰かのために動いたスカイランドのヒーローさ。だからもっとそれを誇りに思っても良いんだよ」

 

「「あさひ(君)がヒメちゃん(さん)を口説いてる!?」」

 

「える!」

 

あさひの狙いはここにあった。敢えて気を使わない映画を見せてその内容に感動させてから彼女に対して優しく接する事でヒメの気持ちを上手くコントロールしたのだ。

 

「……弟にこんな才能があったなんて信じられない」

 

「でも、これならヒメさんも幸せになってくれているので良いですよ」

 

それから四人はヒメに楽しい時間を過ごしてもらうために奮闘し、一通り楽しんでもらった所で帰り道につくことにした。

 

「皆さん……今日はありがとうございました。私、こんなに幸せな気分になるのは初めてで……私にもこんなに幸せなる権利があるなんて思いもしなくて」

 

「これからもっと幸せになれるから」

 

「うん、今までずっと辛い思いをしてきたんだから」

 

「その分は幸せになっても文句は言われないよ」

 

「皆さん……」

 

ヒメはそんな三人に感謝でいっぱいになっているとその時、胸がドクンと高鳴ると共に突如として体から闇のオーラを発し始めてしまう。

 

「ううっ……」

 

するとヒメはその場に膝をつき、そのオーラを必死で抑え込もうとする。

 

「な、何!?」

 

「もしかして、ベリアルか!」

 

「皆さん……逃げてください!ベリアルが……ベリアルが出てしまいます!」

 

三人はそれを聞くと顔を青くする。こんな街中でベリアルが出てきてしまえば被害が大きくなってしまう。ヒメは持てる力の全てを持ってして抑えようとするが、もうそれも保たなかった。その瞬間、ヒメが封じ込めていた丸いバリアが弾けてベリアルが顕現。そのまま外に出てくると叫び声を上げた。

 

「うぉおおおおお!!」

 

「しまった……私のせいで……」

 

「ヒメちゃんは悪くない!」

 

「ひとまずヒメちゃんはエルちゃんを連れて隠れていて!」

 

三人はエルをヒメに預けてからペンを取り出すとベリアルに立ち向かうために構える。

 

「「「ヒーローの出番です(だよ)(だ)!」」」

 

それから三人はペンをスカイミラージュへと変化させてプリキュアへと変身する。

 

「「「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!」」」

 

「スカイ!」

 

「プリズム!」

 

「サンライズ!」

 

「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」

 

「ふわりひろがる優しい光!キュアプリズム!」

 

「夜明けにひろがる眩い朝日!キュアサンライズ!」

 

「「「レディ……ゴー!ひろがるスカイ!プリキュア!」」」

 

三人は同時変身を完了すると再誕したベリアルに向かって突撃する。するとベリアルは闇のオーラを発するとともに自身は巨大化し、眷属である小型の悪魔を召喚していった。こうして、再臨したベリアルとプリキュアによる戦いが再び幕を開ける。その時、ヒメの心の中に何かのエネルギーが宿った事をその場の全員が気づくことはなかった。




また次回もお楽しみに。


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絶望の戦い 一筋の希望

プリキュアに変身した三人はベリアルへと突撃するとベリアルは眷属である悪魔を召喚し、プリキュアへと向かわせる。

 

「行くよ、二人共!」

 

「「うん!」」

 

「まずはこれでも喰らえ!炎牙無限衝!」

 

炎牙無限衝

 

サンライズが手に炎の長剣を召喚すると刀身に炎を纏わせて連続で斬撃波を放つ。それにより、小型の悪魔の数を一気に減らした。

 

「遠距離攻撃なら私だって!」

 

プリズムが両手を構えると周囲に光のエネルギー弾が出現。それからエネルギー弾を連続射出し、悪魔に命中させていく。プリズムの攻撃では僅かな火力不足なのか一発で倒すことはできない。しかし、足を止めさせられればその間にスカイとサンライズが倒してくれると信じてプリズムはひたすら撃ち続ける。

 

「ヒーローガール!スカイパンチ!はあっ!」

 

キュアスカイは流星の如き速さで次々と小型の悪魔を薙ぎ払っていき、蹴散らしていく。スカイパンチを一体への攻撃にわざわざ使っていてはキリがないので今回は複数の相手にもダメージを与えられるような特殊版だ。

 

「ひろがる!サンライズカリバー!」

 

サンライズが炎のエネルギー波を放出し、その奔流が次々と悪魔を呑み込み、浄化させていく。あっという間にベリアルの眷属を消滅させるとベリアル本体へと三人は攻撃を仕掛け始めた。

 

「だあっ!」

 

まずはサンライズとスカイが突撃し、ベリアルの腹へとパンチを叩き込むとそこから拳のラッシュをぶつける。しかし、ベリアルはそれを意にも返さないようですぐに二人を弾き飛ばしてしまう。

 

「プリズム!」

 

「うん!ヒーローガール!プリズムショット!」

 

そこにプリズムからのエネルギー弾が発射されてベリアルの顔面を狙う。ベリアルもそれを口からのエネルギー砲で迎え撃ち、二つの攻撃は空中でぶつかり合う。

 

「くうぅ……」

 

「無駄だ……雑魚共!」

 

ベリアルはそう言うと一瞬にしてプリズムショットを粉砕してプリズムをエネルギー砲の餌食にする。

 

「うぁあああああああ!!」

 

「姉さん!よくも!!」

 

「サンライズ、落ち着いてください!」

 

サンライズは手に炎の長剣を手にしてベリアルへと攻撃を仕掛ける。ベリアルはこれを拳で受け止めた。しかし、サンライズはそれも予定通りとばかりに剣で腕を逸らさせるとそれから腕の上を走りながら接近。両手に炎の剣を出現させてそれを連結させると炎を纏わせる。

 

「風輪火斬!」

 

風輪火斬

 

ベリアルの顔面に炎を纏わせた斬撃をぶつけるとベリアルも流石にダメージが入ったのか後ろへと下がる。そこにスカイが再び浄化技を発動した。

 

「ヒーローガール!スカイパンチ!」

 

スカイが突撃してベリアルの顔に浄化のエネルギーを込めたパンチを叩き込む。ベリアルはその勢いに若干押されるが、それだけで倒し切るのは流石に無理なのかベリアルはそれを腕で払いのけるとそのままスカイが吹っ飛んだ先にエネルギー砲を放ってスカイは背中からダメージを負うとそのまま叩きつけられてしまう。

 

「がふっ!」

 

「スカイまで……なら、俺が!」

 

サンライズは跳びあがるとそのまま長剣を構えて振り下ろす。ベリアルは当然エネルギー砲で迎撃するが、サンライズの狙いはそこでは無い。するとサンライズは空中て加速姿勢に入り、エネルギー砲が到達する直前に回避しつつ着地。そこから一気に決めにかかる。

 

「今なら使える!太陽の鉄拳!」

 

サンライズはあさひの時では失敗していた太陽の鉄拳を発動させると巨大な拳がベリアルを空中へと吹き飛ばし、身動きを封じ込めた。そこにサンライズからの追撃が解き放たれる。

 

「ひろがる!サンライズカリバー!」

 

サンライズから放たれた炎のエネルギー波の奔流がベリアルを呑み込むとそのまま押し出し続ける。

 

「はぁああああああああ!!」

 

「小賢しい……失せろ!」

 

なんとベリアルは攻撃を耐え切ってしまうとカウンターとしてエネルギー砲を放ち、サンライズを狙い撃ちしてしまう。

 

「ぐあああああああ!!」

 

そのままサンライズは地に伏すとそのまま傷だらけとなってしまう。

 

「ゲホッ……ゲホッ……はぁ……はぁ……昨日とはまるで次元が……」

 

プリキュア達にとってベリアルの圧倒的な成長スピードは誤算だった。このままでは昨日と同じ……いや、それ以上の敗北になるかもしれない。

 

「う……く……」

 

「か……あ……」

 

二人もたった一撃で疲労困憊であり、サンライズは自分がやるしか無いと立ち上がるが揺らいでしまう。

 

「このままじゃ、勝てない……唯一希望があるとすれば……」

 

一瞬サンライズはチラッと倒れているスカイとプリズムを見る。二人もダメージは大きいようで立つまでに時間がかかりそうだった。

 

「二人の合体技しか無い……アレに賭けるためにも、俺が何としてでも時間を稼がないと!」

 

サンライズは手に長剣を構えるとそれから地面に着地したベリアルへと走っていく。当然ベリアルはサンライズを集中的に狙うと一人ずつ潰そうとしてくる。

 

「やあっ!」

 

サンライズは炎のエネルギー弾を生成するとそれをベリアルへと射出。ベリアルはエネルギーバリアでそれを防ぎ、巨大な腕を伸ばしてくる。

 

「喰らうか!」

 

サンライズはそれに捕まれば絶対に逃げられないと考えてすぐに回避し、今度は近くの建物に飛び移った。

 

「少しでも時間を稼ぐ!二人が立ってさえくれれば、絶対に助けに来てくれる!」

 

サンライズは二人を信じてベリアルからの攻撃を凌ぎ続ける。そして、それを見た二人も何とか立ち上がると二人はサンライズの様子を見て彼のやりたい事を理解した。

 

「スカイ、サンライズが引き付けている今のうちに……」

 

「やりましょう。あの技しか恐らくアイツには通用しません!」

 

それから二人は合体技を使うためにスカイトーンを装填。それからエネルギーを高めていく。

 

「スカイブルー!」

 

「プリズムホワイト!」

 

それを見たサンライズはベリアルを相手に突進するとベリアルはエネルギー砲を発射する。その中にサンライズは炎を纏ったまま突入していき、そのままベリアルの前に出てきた。

 

「馬鹿な!?」

 

「うらぁああ!!」

 

サンライズはベリアルへと長剣を突き出すと長剣をベリアルの体へと深々と刺しこむ。それから持てる全エネルギーでベリアルの体を炎に包み込んだ。その状態で繰り出すプリキュア・アップ・ドラフト・シャイニングの強化技……。

 

「「「プリキュア!アップ・ドラフト・バーニング!」」」

 

三人による擬似的にアップ・ドラフト・シャイニングを強化した浄化技。これでベリアルを浄化できないのであればもう打つ手は無い。そのままベリアルは空中に存在する円盤へとゆっくりと吸い込まれ始める。

 

「「「はぁああああああ!!」」」

 

三人は気力を振り絞り、ベリアルの体を完全に消滅させようと力を込める。しかし、ベリアルもただではやられまいと抵抗し、三人はそのあまりの強大なエネルギーを前に押し込まれ始めてしまう。

 

「「「ぐぅうううう……」」」

 

「人間の分際で……この私を簡単に押し込めると思うな!」

 

そう言うとベリアルはいきなり闇のオーラを高めると眷属を召喚し、眷属に上空にある円盤を攻撃させる。その影響か、円盤にヒビが入りスカイとプリズムは手を握る力を強くして何とか持ち堪えようとした。サンライズはその間に眷属を全て倒すために跳びあがる。

 

「ひろがる!サンライズカリ……ぐあっ!?」

 

その瞬間、そうはさせまいとベリアルがエネルギー砲を放ってサンライズをスカイとプリズムの立っている場所の近くに叩きつけさせてしまう。

 

「「サンライズ!うあっ!?」」

 

更に円盤のヒビは深く入っていき、どんどん二人にかかる負荷も大きくなっていく。

 

「あと少しなのに……」

 

「このままじゃ、持ち堪えられない」

 

円盤にベリアルが吸い込まれるまであと数センチ。だが、ベリアルは悪魔に指示を出すと悪魔達は同時に円盤を攻撃。加えてベリアルも中から今までとは比べ物にならないほどの衝撃波を放出して自身を包む炎を消し飛ばすと円盤を内側から攻撃。流石の必殺技でも内と外からの同時攻撃には耐えられずに粉々に粉砕されてしまった。

 

「そんな……」

 

「私達の合体技でもダメなの?」

 

「く……この化け物め……」

 

三人の目に絶望が浮かぶ中、ベリアルは眷属の悪魔を吸収し始めると空を闇のエネルギーで包み込んでいき、曇らせていく。そして、目障りなプリキュア三人を吹き飛ばすために先程以上のエネルギー砲を放出した。

 

三人はそのエネルギー砲に飲み込まれてしまうとそのまま意識を手放して三人共攻撃の衝撃によって発生したクレーターにめり込むように倒れて、変身も解けてしまう。

 

「ソラ!ましろ!あさひ!」

 

そこにヒメが走ってくると傷だらけとなり気を失って倒れた三人をゆするが三人からの返事は無い。

 

「ふん。お前、よく見たら私に刃向かった愚かなスカイランド人か」

 

「く……」

 

ヒメは立ち向かおうとするが、エルを抱えた今の状態ではどうしようもできない。もう戦う事ができる戦士は誰一人いないのだ。

 

「お前達はよく戦った。敵だが褒めてやる。だが、もうお前らに打つ手など何も無い。諦めて滅びを受け入れろ」

 

「私は……私は……何のために生まれてきたの?」

 

ヒメはその場に崩れ落ちると涙を浮かべた。平凡な人生を送りたかったのに英雄としての力に目覚めてしまいそれも叶わず、かと言って自分を犠牲にする以外に世界を救う事はできず。今度は自分の人生を失い、時を経てやっとできた友達も目の前で倒れていく。

 

「……もう今のベリアルを封印する方法は無いけど……こうなったら、私も命尽きるまで……」

 

ヒメが覚悟を定める中、突如として声が聞こえてきた。その声の主は倒れているあさひからである。

 

「やめとけよ。そうやって自分の自由を諦めるのは」

 

そう言って倒れていたはずのあさひが立ち上がるとその雰囲気がどこか変わっていた。

 

「まったく、どいつもこいつも自分を犠牲にさえすれば世界を救えると思いやがって……ホント、ムカつく奴らだ。だが、今回ばかりは世界を滅ぼさせる訳にはいかない。損な役回りだが手伝ってやるよ……あさひ」

 

その姿はあさひであってあさひでは無い。虹ヶ丘あさひの中に住まうもう一人の主人格。カゲロウだった。

 

「力はやられて時間が経ってないからまだ不完全。だが、ここは一肌脱いでやるよ」

 

そう言ってカゲロウはあさひの使っていたスカイミラージュとスカイトーンを漆黒の闇に染める。

 

「ダークミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!トワイライト!」

 

カゲロウはその姿をキュアトワイライトへと変化させると変身を完了して降り立つ。

 

「空にひろがる黄昏の闇!キュアトワイライト!」

 

トワイライトはベリアルを見つめるとベリアルはどこか同族のような気配を感じたが、それは自分の仲間では無いとすぐに判断して襲いかかってくる。

 

「お前ら、さっさと目を覚ませよ?俺とて長くは保たないからな!」

 

そう言ってトワイライトは一人でベリアルへと立ち向かっていく。それを見たヒメは胸が締め付けられる思いになる。それは何もできない自分の無力さを呪うものだ。

 

「え、える?」

 

しかしその時、エルは確かに感じた。ヒメの胸の中の光が更に強く輝きを放ち始めていることに。




また次回もお楽しみに。


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闇を照らす奇跡の力

トワイライトに変身したカゲロウがベリアルへと挑む中、倒れていたソラとましろにヒメが必死に声をかけていた。

 

「ソラ、ましろ!目を覚まして!」

 

そこに一台のハマーが到着すると中からあげはが出てきてぐったりとしている二人を気遣う。

 

「ソラちゃん!ましろん!大丈夫!?しっかりして!」

 

「あなたは……」

 

「私は聖あげは。二人の幼馴染と友達。あなたはヨヨさんから聞いたけど、ヒメちゃんで良いんだよね?」

 

「え、ええ……」

 

「ひとまずエルちゃんは私が預かるわ」

 

そう言ってあげははヒメからエルを預かるとヒメは戦いに行こうとするが、あげははそれを見逃す事なく手を掴んだ。

 

「ダメ。今の力を失ったあなたじゃ……」

 

「でも、友達がこんなに傷ついているのに、戦っているのに見捨てられない!」

 

「……え?」

 

あげはがふとベリアルの方を向くとそこにはあさひを奪った自分にとって憎むべき相手であるカゲロウが変身したキュアトワイライトが映った。

 

「カゲロウ!?なんでアイツが前に出てるの?……アイツがあさひの分まで戦ってる?」

 

それからヒメは息を吸うとそれから祈りを捧げた。するとソラとましろに光が降り注ぎ、二人の意識を取り戻させる。

 

「私……なんで?」

 

「ヒメちゃん……まさかあなたが……」

 

「二人共、大丈夫?」

 

そこにあげはが声をかけると二人は立とうとするが、体に激痛が走るとそのまま悶えてしまう。

 

「無理したらダメ!」

 

「ごめんなさい……今の私じゃ、意識を取り戻させるだけで精一杯。体の傷までは癒せないの」

 

ヒメが申し訳なさそうにする中、二人は大丈夫だとヒメに伝える。そして、四人はトワイライトの戦いを見守るのであった。

 

「貴様、人間では無いな?」

 

「へっ、お生憎様で俺は人間の力を超えてるんだよ!」

 

トワイライトは持ち前のスピードでベリアルの攻撃をことごとく回避し、時間を稼いでいく。

 

「だが、少し不味いな。俺の技では相手を浄化できない。まぁ仮にできたとしても今のアイツには通用しないだろーがな」

 

トワイライトの弱点、それは自身が負の感情から生まれた存在のために闇の敵を浄化する事ができない点である。だからどんなに頑張っても彼ではどうする事もできないのだ。今の彼に出来るのはソラ、ましろ、あさひが回復するまでの時間稼ぎ程度なのである。

 

「少しはやるようだな。だが、俺の力は今この瞬間にも増大していく。お前如きの力などでは勝てない程にな」

 

トワイライトの力は確かに強い。だが、彼の力はあくまでサンライズと同程度。つまり、サンライズに勝てない相手はトワイライトにも勝てないのだ。それでもトワイライトは諦めるつもりはない。あさひの心を乗っ取るため、あさひと入れ代わって自由を手にするためにこの最強の悪魔を相手にする。

 

「お前、何故俺を攻撃しない?……ふん。どうせお前では俺を浄化できないんだろう?」

 

「チッ、気づかれたか!だったら!」

 

トワイライトの弱点をベリアルに見抜かれてしまうと彼は先程までの逃げの手から一転し、攻撃を仕掛ける。トワイライトでは浄化できずともダメージは入れられるので少しずつ相手の力を削ぐ作戦に切り替えたのだ。

 

「慌てて攻撃に移った……図星か。ならばお前など取るに足らない。眷属共でも相手してろ」

 

そう言うとベリアルは眷属の悪魔を召喚してトワイライトを攻撃させる。浄化ができなければこの悪魔達も倒す事ができない。仮に倒せてもエネルギーが残るのでベリアルの力で復活されてしまう。

 

「くっ、このままだと不味いな。ベリアルがアイツらを攻撃してしまう」

 

「……カゲロウ」

 

「あさひか……お前、まだやれるんだろーな?」

 

「当たり前だ……だが今はその力は無い。だから……」

 

そう言うとあさひが力を込めた。するとカゲロウに何かの光が灯る。それと同時にカゲロウの持つ短剣に黒の光が付与された。

 

「まさか、お前……」

 

「今の俺にできるのはこのくらいだ。カゲロウ……頼む」

 

あさひがカゲロウにそう言うとあさひの声が聞こえなくなり、この場をカゲロウに任せる事にしたという事がわかる。

 

「へっ、粋なことしてくれるな。これは俺も後に退けないだろーがよ!」

 

それからトワイライトは悪魔達に向かっていくと次々と切り裂いていき、浄化を成功させる。

 

「ひろがる!トワイライト・ジ・エンド!」

 

トワイライトが浄化技を発動するとベリアルが呼び出した悪魔をあっという間に殲滅し、そのままベリアルへと浄化の光が灯った刃で斬りつけた。

 

「貴様、いつの間にそんな力を……」

 

「へっ、今の俺ならお前を浄化する事も可能なんだよ!」

 

「ふん。そんなちっぽけな光でどうにかなると思うな!」

 

それからトワイライトとベリアルの二人はまた激突を続ける。そんな様子を地上の面々は不安そうに見ていた。

 

「カゲロウ……何で私達を助けてるんだろ」

 

「多分、カゲロウも世界が消えるのは嫌だからじゃない?ほら、私達と利害は一致してるから手を貸してくれてるとか」

 

「何にしてもましろさん、もう一回変身です……ッ!?」

 

「うん、私達も戦わなきゃ……あぐっ……」

 

「二人共まだ出ちゃダメ!」

 

二人はまた変身しようとするが、まだダメージが抜けきらない体で無理に戦えば今度はタダでは済まないかもしれない。そう思ったあげはが二人を止める。

 

「……どうしたら……私は皆さんの力になれる?私の力で何ができる?どうすれば良いかわからない……」

 

ヒメは悩み続ける。かつての英雄はもうその力の殆どをベリアルの封印に使ったためにもう戦う力など残っていない。だがこのままでは友達を見殺しにする事になってしまう。ヒメが葛藤する間にもトワイライトが吹き飛ばされてきて五人の近くに叩きつけられてしまう。

 

「ぐ……う……流石にもう限界か……悪い、あさひ……後は任せた」

 

そう言うとトワイライトは変身解除してカゲロウとあさひが入れ替わり、あさひは何とか目を覚ます程度にまでは回復したがまだ万全とは言い難い。このままではベリアルにやられてしまう。

 

「く……姉さん、ソラ……戦おう」

 

「でもあさひ!このまま戦ったら最悪の場合……」

 

「死に至る……でしょ?……そんなのどうでも良い。勿論死ぬのは勘弁だけど……俺達はここで逃げるなんて事はできない!」

 

「そうです。私達はヒーロー。正しい事を最後までやり抜いて見せます!」

 

「私達の力はちっぽけだけど、力を合わせれば……何とかなる!」

 

三人は再びミラージュペンを取り出す。それからあさひのペンは闇が剥がれるようにいつものピンク色となり、スカイトーンも赤く染まる。

 

「……あげはさん、作戦は何かありますか?」

 

「……こうなった以上、作戦は無いわ。でも約束して。絶対に……生きて戻ってくる事!」

 

あげはに今できるのは三人の無事を祈って待つ事。それだけしか無い。それでもあげはは精一杯、自分のできる事をやるつもりだ。それを見たヒメは何かに気がついた。

 

「そうか……私、力が無いからって……最初から諦めてたんだ。馬鹿ね……私も最初は力なんて無かった。でも諦めずに祈りを捧げたから……私は誰かのヒーローになれたんだ」

 

するとヒメの胸からミラージュペンが出現。しかし、スカイトーンは無いので変身する事ができない。

 

「……大丈夫……神様……私に力を授けていただけませんか?友達を助けたいんです!」

 

それからヒメが祈りを捧げると天から光が差してスカイトーンが舞い降りた。それをヒメが手に取るとそれは黄色く変化する。

 

「……私は、英雄じゃない。でも、ヒーローになりたい!」

 

するとペンがスカイミラージュへと変化すると共に変身のための言葉を叫ぶ。

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!ウェザー!」

 

そう言うとスカイミラージュの回転部分にWHETHERと表示される。するとヒメは三人が変身するようなステージでは無く、雲の上を模した空間に移動する。それと同時にヒメの髪がハーフアップで纏まるとともに髪の色が更に明るい黄色に変化する。それと同時に黄色と白の靴が装着された。

 

「煌めきホップ!」

 

煌めきホップでは頭に雷のエフェクトと共に髪飾りが装着されて雪のエフェクト共に耳にイヤリングが付与されていく。

 

「爽やかステップ!」

 

爽やかステップでは雲のエフェクトと共に体に黄色と白を基調としたドレスのような服が着せられていき、足には雨のエフェクト共に水色のハイソックスが履かれる。

 

「晴々ジャンプ!」

 

晴々ジャンプでは太陽のエフェクト共に両手に白に黄色のラインが入ったグローブが付けられる。最後に風のエフェクトと共に天女がするような羽衣が背中に装着されて変身を完了する。

 

「空にひろがる数多の天気!キュアウェザー!」

 

ヒメが変身したのは天気を司るプリキュア、キュアウェザー。ここに新たなるプリキュアが誕生したのであった。

 

「キュアウェザー……」

 

「カッコいい!」

 

「やったね、ヒメ」

 

「えるぅ!」

 

その場の皆がウェザーを祝福する中、ベリアルは何が起きたのかまだ飲み込めずに混乱していた。

 

「馬鹿な……新たな戦士だと!?」

 

「昔の私と同じだと……思わないで!」

 

ウェザーは雲のエフェクトを召喚するとそれに飛び乗って空へと舞い上がる。それから天に祈りを捧げると空が青く晴れ渡った。

 

「そうか!ウェザーだから天気を自在に操れるんだ!」

 

「それだけじゃ無い……皆さんに……奇跡の力を!」

 

ウェザーが更に祈ると天から三つの光が降り注ぎ、ソラ、ましろ、あさひの三人にそれが当たると体の傷を癒していきながらスカイトーンに新たな光を灯した。

 

「え!?何これ……」

 

「もしかしてこれも……キュアウェザーの力なの?」

 

「これなら……戦える!」

 

それから三人は顔を見合わせて頷くとスカイミラージュを構えると共に光輝くスカイトーンを装填する。

 

「「「スカイミラージュ!スーパーコネクト!」」」

 

スーパースカイトーンを装填するとそこにSUPERの文字が出てくる。

 

「「「ひろがるチェンジ!」」」

 

「スーパースカイ!」

 

「スーパープリズム!」

 

「スーパーサンライズ!」

 

三人はいつもの変身のようにホップ、ステップ、ジャンプと段階は踏みつつも、いつもよりも数倍のエネルギーを誇る力を纏い、その姿を戦場に舞い降りた天使のような翼を生やし、ドレスやスーツが光輝く色に、所々には黄金の力が纏われていく。それから変身を完了し、降り立った。

 

「無限にひろがる青い空!スーパーキュアスカイ!」

 

「ふわりひろがる優しい光!スーパーキュアプリズム!」

 

「夜明けにひろがる眩い朝日!スーパーキュアサンライズ!」

 

「「「レディ……ゴー!ひろがるスカイプリキュア!スーパーモード!」」」

 

その姿が露わになるとあげはは目を輝かせており、エルも喜んだ様子だ。

 

「凄い凄い!皆カッコよくなってる!」

 

「えるぅ〜!」

 

「「「ウェザー!」」」

 

三人は新たに生えた翼で空にいるウェザーの元に並び立つとウェザーへと礼を言う。

 

「ありがとう、ウェザーのおかげで……」

 

「いえ、私がこうして変身できたのも……皆さんのおかげです。だから、ここから先の話はベリアルを倒してからにしましょう!」

 

「そうですね!」

 

「ああ、ここからは俺達のハイライトだ!」

 

「馬鹿な、こんな奇跡……許してなるものか!!」

 

怒り狂うベリアルだが、そんな彼に負けるつもりなんてない。四人の戦士はベリアルへと立ち向かっていくのであった。




また次回もお楽しみに。


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絆の力と別れの時

スーパーモードに変身したスカイ、プリズム、サンライズの三人にキュアウェザーとなったヒメ。四人は力を究極にまで高めたベリアルと交戦する。

 

「だあっ!」

 

まず先陣を切ったのはスカイだ。そのスピードは普段の何倍も早く、あっという間にベリアルの目の前にまで到達すると拳を叩きつける。

 

「ぐっ!?」

 

その一撃はベリアルを押し込むと後ろへと下がらせる。それを受けてまともにやり合うのは危険と判断し、すぐさま眷属で時間を稼ぎに来た。

 

「ここで部下を出した……」

 

「多分、ベリアルの力が高まるまでの時間稼ぎだ」

 

「それなら素早く倒すだけ!」

 

プリズムは気弾を生成してそれを連続射出する。その威力は今までの比では無く、あっという間に眷属の数を減らした。

 

「はあっ!」

 

更にサンライズが炎を纏って突撃すると眷属達に次々と激突して焼き尽くす。ウェザーも天に祈りを捧げて竜巻を発生させると眷属を吹き飛ばしていった。

 

加えて、ウェザーは片手を前に出して浄化のエネルギーを高めるとそこに雷のエネルギーが装填される。そこから発射される浄化技。

 

「ヒーローガール!ウェザーボール!」

 

この技は毎回ランダムでボールに装填される天気が変わり、攻撃のパターンも変化する。今回は雷のために電撃を纏ったエネルギーボールとなったのだ。

 

「サンライズ、ここは私とウェザーに任せてスカイの元に!」

 

「わかった。プリズム、ウェザー。頼んだよ!」

 

ここで人数を割き過ぎるとベリアルに有効打を与えられない可能性があるので一度サンライズは先へと進む。その頃スカイはベリアルと殴り合っている最中だった。

 

「だあああっ!」

 

スカイは次々繰り出されるベリアルの拳とまともに拳をぶつけ合いながら何度も周囲に衝撃波を発生させつつ互角に戦っている。

 

「馬鹿な、この俺の力と互角だと?」

 

「凄い、さっきまでよりも比べものにならない程の力が湧いてきます!」

 

「うおらっ!」

 

そこに長剣を構えたサンライズが斬撃を放ちベリアルの体を斬り裂いて炎で包み込む。

 

「ぐあああ!!」

 

更にサンライズとスカイが同時にパンチを繰り出してベリアルを吹き飛ばすとベリアルの力は徐々に弱まっていく。

 

「何故だ!?何故コイツらにこれ程までの力がある!!」

 

「さぁな。俺達だってよくわからない。奇跡の力と言えばそこまでだとは思う。でもな、お前と俺達では決定的に違う点がある」

 

「何!?」

 

「私達は……多くの人に支えられて今を生きてます。今だって、ヒメさんがいたから強くなれた。その前もカゲロウが助けてくれたから私達が立ち上がる気力を取り戻せたんです!」

 

そこに眷属の悪魔を殲滅したプリズムとウェザーも合流する。

 

「あなたには仲間がいるけど、あくまでそれはあなたの僕であって友達のような固い絆で結ばれている訳じゃない!」

 

「私達は英雄になんかなれない。でも、誰かのヒーローになるために今を必死に生きている!」

 

「「「「だからあなたには絶対に負けない!」」」」

 

それから四人は同時に浄化技を繰り出すために構えを取る。それに合わせてベリアルもエネルギー砲のチャージを始めた。

 

「ヒーローガール!スカイパンチ!」

 

「ヒーローガール!プリズムショット!」

 

「ひろがる!サンライズカリバー!」

 

「ヒーローガール!ウェザーボール!」

 

スカイが技の特性上前に出るとそれに重なるようにプリズム、サンライズ、ウェザーの攻撃が入り、スカイパンチの出力が大幅に向上する。それに対抗するようにベリアルの攻撃がスカイパンチとぶつかる。

 

「「「「はぁああああああああああああ!!」」」」

 

四人の攻撃はベリアルのエネルギー砲を打ち破るとベリアルへと命中し、浄化のエネルギーを流し込む。だが、それで終わってくれないのがこの悪魔の強さだ。このタイミングでベリアルのパワーアップの時間となってしまいベリアルは更に巨大化。スカイパンチを弾いてしまう。

 

「ぐっ!!」

 

「スカイ!大丈夫?」

 

「ええ……でも、これでは……」

 

「愚かな人間共が……この俺に……平伏せ!!」

 

ベリアルは先程の数倍はあるであろうエネルギー砲をチャージし始める。これをまともに喰らえば幾ら今の強化された四人でも押し負けてしまうだろう。

 

「………俺達三人の合体技だ」

 

「でも、あれは即興の技だし……今度も成功するとは……」

 

「だとしてもやるしかありません。今のベリアルを倒すには……」

 

「……私が時間を稼ぎます。だから、お願いします。世界を救ってください」

 

「「「うん!」」」

 

ウェザーが前に出ると祈りを捧げてベリアルの周囲に吹雪を発生させる。これにより、一時的にベリアルの視界を奪うとそこから続け様に落雷が降り注ぎ、ベリアルに直接的なダメージを与えて行動を少しでも遅らせた。

 

「ぷりきゅあぁああ!!」

 

その時、エルから光が放出されるとサンライズの分のスカイトーンが発射されてサンライズはそれを掴む。それと同時に二人のスカイトーンも変化して三人の技に変化した。

 

「スカイブルー!」

 

「プリズムホワイト!」

 

「サンライズレッド!」

 

それからスカイとプリズムが手を繋ぎ、サンライズが後ろから両手でスカイミラージュを持つとエネルギーをチャージする。それから浄化のエネルギーが放出されて手を繋いだスカイとプリズムを包み込む。

 

「晴れ渡る空!」

 

「溢れる光!」

 

「闇を掻き消す絆の力!」

 

スカイ、プリズム、サンライズの順番で言葉を叫ぶとスカイは右足をプリズムは左足を強く踏み出し、それからサンライズがフルパワーの炎を発動し、放出されたエネルギーをバーストさせる。

 

「「「プリキュア!クリアスカイ・サンシャイン!」」」

 

それからスカイとプリズムが真上に掲げたスカイミラージュを前へと突き出して太陽のマークを出現させるとそれにサンライズがバーストさせたエネルギーを全て吸収。その後、威力が数倍に増大したエネルギー砲としてベリアルへと噴射した。

 

「こ、小癪な……!?」

 

先程までウェザーによって足止めされていたベリアルがそれを振り払うと既に目の前にまでエネルギーが迫っており、自らのエネルギー砲を発射する前にその技を受けてしまう。そしてその攻撃によって先程までのどの攻撃よりも強い浄化の光が自らを包み込み、その体を一瞬にして消失させていく。

 

「ば、馬鹿な……この俺が、この俺が二度も敗れるだと!?うぁああああああああ!!」

 

それからベリアルの体は太陽のエフェクトに包み込まれるとそれがどんどん小さくなっていき、最後には太陽のエネルギーが凝縮されてから消え、余ったエネルギーが衝撃波として駆け抜けていく。

 

「スミキッタァ〜」

 

これにより、ベリアルは完全浄化されてその姿を無くし、それから四人は顔を見合わせて勝利を喜び合った。

 

「凄いじゃん皆!」

 

それから四人は地上へと降り立つと変身を解除した。その時、三人のスカイトーンは元に戻り、更にサンライズが持っていた合体技用のスカイトーンも光の粒子となって消滅。どうやら今回限りの特別仕様だったようでもうあの技を放つ事はできないようだ。

 

そして、変身を解いたウェザーことヒメに異変が起きていた。

 

「あれ?ヒメちゃん、何だか体が透けてきてない?」

 

「……ごめんなさい。私、皆さんに黙っていた事があって……」

 

ヒメの顔つきは悲しそうな顔になっており、その姿はどんどん薄くなり始めている。

 

「私の命はお札としてベリアルと戦っていた時に少しずつ削られていたんです。今まで長い間ずっと戦っている間に本来の私の寿命は尽きてしまって……だから、お札から元に戻ってから一日分しか私は人間として活動できなかったんです。もう、タイムリミットが来てしまったみたいで……」

 

ヒメの目には涙が浮かんでおり、ポロポロと泣き始めていた。やっと手に入れた普通の女の子としての生活。やっと手に入れた友達。やっと手に入れた普通の幸せ。それらは本来、彼女が人間として手に入れるべき当たり前の物。彼女はお札となってしまった事でそれらを全て諦めてしまっていた。でも、あさひ達と出会った事で最後の最後で手にする事ができたのだ。

 

「そんな……ヒメさん……ヒメさんの幸せはまだまだこれからも」

 

ソラがそう言った所でヒメは涙を流しながら首を横に振った。もう彼女には時間が無い。

 

「ソラさん、あなたの明るさのおかげで私も明るい気持ちになる事ができた。ましろさん、あなたの優しさのおかげで私の心はポカポカと温かくなれた。あさひさん、あなたの諦めない心のおかげで私は最後までベリアルに立ち向かう事ができた。……あげはさん、あなたとは本当に短い間でしたけどエルさんを預かっていただきありがとうございました。おかげで私はプリキュアとしてベリアルと戦う事ができました」

 

ヒメはその場の全員に感謝の気持ちを述べると足から少しずつ光の粒子となって消え始める。

 

「私は……ヒーローになれたかな?」

 

「なれてるよ……当たり前だろ?」

 

「ずっと忘れないからね……ヒメちゃん」

 

「ヒメさんは消えてしまっても、あなたの意思は私達の心の中で生き続けます!」

 

ソラとましろは涙を流し、あさひは男だからか泣くのを必死に堪えていた。三人としてもヒメはたった一日しか一緒にいなかったが、大切な友達だ。そんな彼女が消えそうになるのを見ていたら悲しい気持ちでいっぱいになるのも当然である。

 

「最後に……こんな私と友達になってくれてありがとう……皆は私の分まで幸せになって……」

 

そう言ってヒメは完全にその姿を消滅させるとその場にヒメが使っていたスカイトーンが落下し、彼女のいた証として残った。

 

「「「うぁああああああ!!」」」

 

三人はそれから悲しさのあまり大泣きし、その様子をあげはは涙を堪えながら見ていた。エルはあげはが必死に抱きしめて三人が泣く姿を見せないようにした。エルがつられて泣き出さないように……。

 

決戦の翌日。ソラの手帳にはヒメの絵が描かれており、その隣にはヒメの使っていたスカイトーンが置かれていた。

 

「あさひ!もう明日には学校が始まっちゃうから早起きしなさい!」

 

「えぇー、姉さんもう少し寝かせて……」

 

「私が起こします!」

 

「ソラ!?それはやめ……ぎゃあああああ!!」

 

三人はヒメが残してくれた彼女の存在した(スカイトーン)をそれぞれの胸にしまいこみ、今日も普通の生活を送り続ける。彼女が求めた幸せを噛み締めるために……。




今回で春映画枠の話が終わり、次回からは本編の話に戻ります。また次回もお楽しみに。


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学校再開と欠けた気持ち

ベリアルとの戦いを終えた二日後、とうとうあさひ達の春休みも終わり、学校の日がやってきた。そんな中、あさひは……

 

「あさひ!もう良い加減起きなさいって!学校に遅刻するわよ!」

 

「……姉さん、何言ってるの?今日も春休……ハッ!?」

 

まだ春休みだと思い込んでいつも通り寝坊し、遅刻しかけていた。勿論ましろは準備を終えて制服姿である。

 

「はぁ……結局あさひってば春休みはもう終わったのに結局早起きしないし……」

 

ましろが呆れる中そこにソラが入ってくるとましろの制服姿を見た。

 

「おはようございます!」

 

「おはようソラちゃん」

 

「あれ?ましろさん、どうしたんですか?その格好」

 

勿論こちらの世界で学校に行くための制服をソラは初めて見るので驚いている状態だ。

 

「えへっ、これは学校の制服だよ」

 

「とっても素敵です!あれ?でもあさひ君もそうなんじゃ……」

 

「あさひならいつも通り寝坊して今大慌てで準備中」

 

「あはは……」

 

ましろの説明にソラは苦笑いを浮かべるのみだった。あさひの時間に対するルーズさには困ったものである。それが原因で今遅刻しかけているわけだが。

 

「そういえば、ソラちゃんは学校って知ってる?」

 

「はい!勿論です!スカイランドにも学校はありましたから。私も通ってましたよ」

 

「そっか。じゃあそこら辺はこちらの世界と同じだね」

 

二人で話しながら玄関に向かうとそのタイミングでようやくあさひが追いついてきて何とか出発時刻には間に合わせた。ただし、朝食のパンは咥えながらだが。

 

「あさひ、次からは気をつけてよ。私だって準備があるんだから」

 

「面目ない……」

 

ましろに言われてシュンとしながらあさひは玄関で靴を履く。そして、ソラも一緒に外に行くようで二人に着いてきた。

 

それからソラは学校まで着いてきてしまい、それを校門に立っていた先生に咎められてしまう。

 

「あなた、ここは部外者立ち入り禁止ですよ」

 

「えぇ!?スカイランドでの学校は誰でも自由に出入りが……」

 

「ストップだソラ!取り敢えずスカイランドの事は言っちゃダメ!」

 

あさひがソラの口を塞ぎ、ましろと二人で笑って誤魔化す。それからソラには一度家に帰ってもらう事になり、それからましろとあさひは二人で学校に入った。

 

「まさかソラがあんな事をするとは……」

 

「仕方ないけど、ちょっとびっくりしちゃったね……」

 

二人で話しながら教室に入っていくと春休みの間は合わなかったクラスメイト達が話をしている。そんな中、ましろ達の元に近づく三人がいた。

 

「おはようましろんに虹ヶ丘君」

 

「久しぶりだね」

 

「やっほー」

 

「おはよう、仲田さん、吉井さん、軽井沢君」

 

話しかけてきた三人のうち、ボブカットにした女子が仲田つむぎ。茶髪にポニーテールにした女子が吉井るい。眼鏡をかけた男子が軽井沢あさひだ。軽井沢については下の名前があさひと被るので基本的に皆苗字で呼んでいる。

 

「あ……う……」

 

そんな中、あさひは話しかけてきたクラスメイト達に返事をしようとしたが心の中で過去のトラウマがフラッシュバックしてしまい仲良くなって自分の過去を知られたら忌み嫌われると考えて言葉に詰まってしまう。

 

「ほら、あさひ。皆が話しかけてるでしょ」

 

「う……えと……ッ!!」

 

あさひは話したいという気持ちよりも怖い気持ちが勝ってしまい三人を掻き分けて自分の席に行ってしまう。

 

「あ、ちょっと!」

 

「……春休みが過ぎてもダメかぁ……」

 

「ごめんね。あさひはちょっと昔怖い目に遭ったせいで色々と大変なの」

 

「知ってるよ。怖い男の人達に拉致されたんでしょ?」

 

実はこの三人、ましろからあらかたの事情は聞いておりあさひが何故拒絶反応をしてしまうのかも知っていた。

 

「気にする事無いのになぁ……」

 

「なかなか割り切れないものじゃない?過去のトラウマってさ」

 

「うん……ソラちゃんと話す時はあんなに嬉しそうなのに何で皆とは話せないのかな……」

 

三人はそれを聞いてソラという初めての単語に疑問を浮かべる。そしてそれをましろも察したのか不味いと考えてすぐに何でもないと訂正した。

 

「何でだよ……何で皆を疑う……。あんなに良い人達なのに……」

 

あさひもあさひであんな事をしてしまったのを後悔していた。折角皆が仲良くしようとしているのに自分はどうしても壁を作ってしまうこの現状がどうにも歯痒く、自分を痛烈に責めていた。

 

「……それはお前が過去を乗り越えてないからだ」

 

「カゲロウ……」

 

するとカゲロウが声をかけてきた。あさひはカゲロウとのやり取りを聴かれないように更に声量を落として話をする。

 

「ホント、お前は不器用だな。自分の悩みを話せば少しはスッキリするだろ」

 

「それで拒絶されたらどうする?こんな奴とはもう一緒にいないなんて言われたら……俺は、俺は……」

 

「はぁ……臆病にも程があるだろ。お前は……」

 

「臆病で何が悪い……お前なんかが目覚めたから……俺は欲しくもない他人から忌み嫌われる力を手にしたんだ」

 

あさひの言葉にカゲロウは内心ほくそ笑む。カゲロウの成長条件は負の感情。このままではカゲロウの思う壺だ。そこにましろが声をかけてくる。

 

「あさひ、大丈夫?」

 

「……姉さん」

 

「チッ……」

 

カゲロウは邪魔をされて明らかに苛立つと心の底に引っ込んだ。ベリアルとの戦いの爪痕は彼にもあり、またエネルギーを溜め直す必要があるので今無理に出るわけにはいかないのだ。

 

「またカゲロウなの?」

 

「……うん。アイツがまだ生きているのは姉さんも知ってるでしょ?だから皆に関わらないように言って。また皆を傷つけるから」

 

「それは無理だよ。あさひだってそんなの望んでなんかないでしょ」

 

ましろには何もかもお見通しのようであさひは言葉に詰まってしまう。それから大きく溜息を吐くとその日の学校を過ごす事になった。

 

その頃、家に残ったソラは家の手伝いを進めていた。掃除や勉強エルのお世話、トレーニングをしているとあっという間に時間は過ぎて……

 

 

何もやる事が無くなってしまった。そのため、ヨヨの元に行くとヨヨが今進めているスカイランドへのトンネルを開く作業を手伝う事にした。

 

「結構力が要りますね……これ」

 

「えるぅ〜」

 

「トンネルの完成までには沢山の手順がいるからとっても助かるわ」

 

ヨヨから感謝の言葉を述べられるとソラは以前、焦りのあまりヨヨに失礼な事を言ってしまった事に対しての謝罪をする。

 

「ヨヨさん、この間はごめんなさい。私、自分の事ばかり……」

 

「良いのよ。それよりもこっちの世界には慣れた?」

 

「はい!けど、私。お世話になりっぱなしで皆さんにも迷惑をかけてばかりです」

 

それから二人で話しているとソラはましろやあさひの事が気になって仕方なくなってしまう。それをヨヨに見透かされたのかある事を聞かれた。

 

「もしかしてましろさんやあさひさんと一緒に学校に行きたかったりするかしら?」

 

「い、いえ……私はこの家でやらなければならない事がありますし……」

 

ソラの声はどこか寂しそうな物に変わっておりヨヨはそれを感じ取ってソラにおつかいを頼んだ。

 

「それでは行ってきます!」

 

ソラが出ていくとヨヨは携帯を出してある場所に電話する事にした。その頃、学校ではあさひは昼休みに入ると一人教室を出て誰もいない場所に向かって歩く。

 

「……ここなら誰も来ないかな」

 

そう言って一人で弁当を広げて食べ始める。所謂ボッチ飯だ。でもこれは小学校を卒業して給食が無い中学に進学してからずっとそうしている。今更何も変わらない……はずだった。それなのに心が寂しさを感じているのかいつもよりご飯の味を感じられないのだ。

 

「何で……こんなに物足りないんだろ……」

 

あさひは心に大穴が空いたような感覚で食事を摂り続ける。彼の顔は暗く、身も心も冷え冷えとした感覚のみが駆け抜けていく。

 

「ご馳走様でした」

 

あさひは小声で食べ終わりの挨拶をしてからその場で弁当を片付けると一人で空を見上げた。

 

「ソラ、今頃一人で何してるんだろ?」

 

青い空にそう呟くが返事は返ってこない。そして、あさひはソラとは別の人物の顔も思い浮かべた。

 

「あげは姉……綺麗になってたな。……あげは姉、昔から可愛かったけど、大人になってそれに磨きがかかって……」

 

「よう、やっぱりお前はあげはに執心だな」

 

そこにカゲロウがあさひの気持ちを邪魔するように割って入る。勿論あさひは不機嫌になる訳で。

 

「何だよカゲロウ。邪魔しに来たなら帰ってくれ」

 

「まぁそう言うなって。お前、本当に良いのか?友達を作りたいんだろ」

 

カゲロウはあさひの心などお見通しとばかりにそうやって言う。カゲロウはあさひの半身だ。あさひの思考を読むなど容易いという事である。

 

「……俺に友達なんて要らない。友達なんて作ったらきっと歪な俺の心を見透かされてこんな俺なんて要らないと捨てられる」

 

「ふん。負の感情ばかり高めてるとまた俺に乗っ取られるぞ?良いのか?」

 

あさひはカゲロウにそう言われてまた機嫌を悪くするとカゲロウに戻るように言って席を立ち教室に戻っていく。その目には涙が浮かんでおり、本当は友達が欲しいと切に願っているようだった。

 

同時刻、街に出ていったソラは『Pretty Holic』の前で一人の女性と出会っていた。

 

「ソラちゃん!」

 

ソラはいきなり後ろから抱きつかれると驚いて振り向く。そこにいたのは学校が終わって帰る途中のあげはであった。

 

「どうかしたの?なんか浮かない顔をしてたよ?」

 

あげははソラに質問した後にソラがなかなか答えを返せずにいたのを見てソラにある事を提案する事に決める。

 

「オッケー。取り敢えず、気分アゲてこ!」

 

それから二人が向かったのは『Pretty Holic』の2階にある喫茶店だ。そこでソラはあげはが頼んだパフェを食べ切るとあげはは再び質問する。

 

「どう?元気出た?」

 

「はい……あ、でも……」

 

「それはまだ悩みが解決してないって顔だね」

 

それからあげははソラに一人でいる理由を聞き、ソラから事情を聞くとましろとあさひがいなくて寂しいと結論づけた。

 

「わかるよ。その気持ち。ましろんの優しさはお日様のようにポカポカでさ、あさひもそんなましろんの双子の弟だから優しさが倍になるって言うか……」

 

「そういえば、あげはさんにとってのあさひ君って一体どういう関係なんですか?」

 

今度はソラがあげはにあさひについて聞いてみるとあげはは懐かしそうな顔つきに変わり、天井をボーッと見上げる。

 

「あさひはね、私と初めて会った時……実は凄い恥ずかしがってた。多分歳上の女の子と話すのは初めてだったんだと思う。それから何度か会う内に少しずつ慣れていってくれて私の事を初めて“あげは姉”って呼んでくれた時はとても嬉しかったかな。……多分私はあの時のあさひの事を友達として好きになっていたんだと思う」

 

「そうなんですか……」

 

「でも……この前久しぶりに会ったあさひは少し変わってた。私の事をあげは姉って呼んでくれて親しい間柄って事は変わらないと思う。……でも、どこか私に遠慮しているのか余所余所しくなって……私に隠し事をするようになったのかな?」

 

それを聞いてソラはその隠し事の正体はあさひの弱さについてだという事を容易に察しがついた。あさひは親しくしたいと思った相手にほど己の闇や弱さを見せたがらない。そういう人間なのだと何となく感じるようになっていたのだ。

 

「……いつかさ、あさひには弱さの全てをさらけ出してほしい。あさひの全部を知りたい。……なーんて。これじゃあ私、あさひの事が好きみたいだね。……それじゃあ、ソラちゃん。私の話も終わったしもう少し付き合ってもらうよ」

 

「……え?」

 

それからあげははソラを連れて『Pretty Holic』の一階へと降りていくのであった。




評価や感想をいただけるとモチベーションが上がります。また次回もお楽しみに。


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伝える気持ち、隠したい気持ち

あげはに連れられて『Pretty Holic』の一階にあるメイクのお試しコーナーへと移動したソラ。それからソラはあげはがチョイスしたメイクを使ってソラを可愛く仕上げていく。

 

「あげはさん、私……メイクは……」

 

「……大丈夫。メイクはね、ただ美しくなるだけじゃなくてさ、ちょっとの勇気が足りない時に力を貸してくれるんだ」

 

するとソラはあげはの言葉に乗せられて気持ちが上がっていく気がしていた。

 

「キラキラってアガるよね!それにさ……さっき言ってた事。ましろんやあさひに伝えたいって気持ちになったでしょ」

 

「はい!今なら何だってできそうな気がします!」

 

それからソラは店の外に出ようとした所で一度止まって振り向くとあげはの方を向いた。

 

「あげはさん。ありがとうございました!……では!」

 

それからソラはあげはにお礼を言ってから走り出し、それをあげはは見送るとあさひの事を思い浮かべた。

 

「あさひ……私もあさひに伝えたい事がある。でもそれは今じゃない。あさひが自分の事をさらけ出せる覚悟が決まったら私もちゃんとそれに向き合うよ……なんてね」

 

その頃、学校ではましろとあさひがその日の授業を終えて帰路についていた。ちなみにあさひはその日、何度か他のクラスメイトに話しかけられこそしたものの、どうしても上手く話す事ができずに壁を作ってしまい上手く返事ができず。関係は変わらないままだった。

 

「あさひ、もっと皆を信じて……」

 

「できる事なら信じたいよ。でもさ、拒絶が怖い……嫌われたくない。だったら最初から目立たない方が、友達になんかならない方がいい」

 

それを聞いてましろは溜息を吐く。どうしたら弟は他の人と仲良くするのか。悩みの種は尽きない。

 

二人が校門を出るとその時、ソラが走ってきて二人の元に到着した。

 

「ましろさん!あさひ君!」

 

「ソラ……」

 

「ソラちゃん!どうしたの?こんな所で」

 

「あの、二人にどうしても伝えたい事があるんです!」

 

「だーっ!ストップ!ストップ!」

 

それからソラが何かを言おうとするとその瞬間、いきなり道路警備員のような服装をした何かが割って入ってくる。その正体はカバトンであり、彼は自分が無視された事に腹が立っているのか苛立っている様子だった。

 

「あなたは!」

 

「また現れましたね!カバトン!」

 

「はぁ……何でこうも面倒な時に来るかな?出直してきてくんない?」

 

それからカバトンは何やらランボーグを召喚する際に必要となるカロリー値が高い程強いランボーグが出せるみたいな説明を始めると三人はそんなのどうでも良いとばかりに切って捨てる。

 

「今良い所だから邪魔しないで!」

 

「あなたの出番なんて必要ありません!」

 

「あの、尺が勿体無いから自主的に退場してもらえない?」

 

「むかーっ!よくもこの俺をコケにしたな!カモン!アンダーグエナジー!」

 

カバトンは流石に酷い扱いを受けて怒ってしまったのかいつも通りにランボーグを呼び出す。今回は先程まで自分が被っていたヘルメットのランボーグを召喚。三人はそれを見てペンを構えた。

 

「「「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!」」」

 

「スカイ!」

 

「プリズム!」

 

「サンライズ!」

 

三人はその姿をプリキュアへと変えていくと変身後に行う名乗りを始めた。

 

「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」

 

「ふわりひろがる優しい光!キュアプリズム!」

 

「夜明けにひろがる眩い朝日!キュアサンライズ!」

 

「「「レディ……ゴー!ひろがるスカイ!プリキュア!」」」

 

三人が名乗り終えるとランボーグ早速回転しながら突進してくる。三人は躱しつつ距離を取る。

 

「これでも喰らえ!太陽の鉄拳!」

 

太陽の鉄拳

 

サンライズから繰り出された巨大な炎の拳はランボーグのヘルメット部分にぶつかるが、ヘルメット部分は固いのか全くダメージにならなかった。

 

「固っ!」

 

「だったら!」

 

プリズムが気弾を発射してランボーグの注意を引く間にスカイが接近しつつアッパーでヘルメットの無い部分を打ち上げる。

 

「スカイ、プリズム、こんな奴さっさと倒してさっきの続きだ」

 

「「ええ(うん)!」」

 

するとランボーグは着地と同時に煙を噴射すると周囲に煙幕を張る。その煙は黒く、三人は視界を奪わせてむせてしまう。

 

「ゲホッ、ゲホッ……このっ!」

 

「俺、ツェエエエイ!」

 

カバトンが竹馬に乗って煙幕の範囲から逃れつつ勝ち誇ったかのように叫んでいるとサンライズはそんなの効くかとばかりに体を発光させる。

 

「スカイ、プリズム、目を瞑って!サンライズフラッシュ!」

 

するとそのあまりの眩さにランボーグとカバトンは逆に視界を奪われる事になり、目を抑える。そして、その瞬間こそが二人が狙っていた時だった。

 

「今です!」

 

「やあっ!」

 

スカイとプリズムが接近してランボーグを上に蹴り上げるとサンライズ両手を合わせて思い切り叩き落とす。

 

「これで決める!」

 

それからサンライズは手に炎の長剣を生成し、浄化のための技を解き放つ。

 

「ひろがる!サンライズカリバー!」

 

炎の斬撃の奔流がランボーグを包み込むとそのままランボーグを浄化し、撃退する。

 

「スミキッタァ〜」

 

「また負けたのねん!カバトントン!」

 

カバトンはランボーグがやられたために撤退し、それから三人は変身解除して帰り道についた。

 

三人で歩く中、その場に気まずい雰囲気が流れていく。それをどうにかしようと三人は声を出す。

 

「「「あ、あの……」」」

 

すると声が重なり、それからソラはましろやあさひに譲るが、二人も遠慮してソラから言うように促す。

 

「じゃあ……えっと」

 

ソラは少し悩んでからあげはに言われた事を思い出すと共に一歩踏み出して勇気を振り絞る。

 

「ましろさん、あさひ君。……私は、もっと二人と一緒にいたいです!」

 

それを聞くと二人も気持ちは一緒だったのか、ソラの意思を肯定する。三人共が相手がいないというだけで時間が過ぎるのがゆっくりになってしまう程にそれぞれお互いの事が大事に思えてきたのだ。そして、三人が家に帰ると驚きの事実が待っていた。

 

「えぇ!?ソラを学校に通わせる!?」

 

「それ本当?おばあちゃん!」

 

「ええ。転校の手続きはもう済んでいるわ。後は必要な物を揃えるだけよ」

 

どうやらヨヨが機転を効かせてソラを学校に転入させる事ができたようで、三人はその事を喜び合う事になった。

 

その日の夜、あさひはある人物に電話をかける事にした。その人物というのは……

 

「もしもし、あげは姉?」

 

『あさひ!珍しいね、こんな急に電話してくるなんてさ』

 

「……あげは姉、友達を作るにはどうしたら良いのかな……」

 

あさひがあげはに相談したい事。それは友達の作り方だった。あさひはカゲロウが生まれるキッカケを作ったあの日からずっと友達を作るという行為を固く我慢してきた。一度その楽しさを知ってしまえばもう歯止めが効かなくなると考えて。そして、あさひはソラと友達になった事で知ってしまった。もうあさひの心のセーブは仕事をしてくれないのだ。

 

『友達かぁ……もしかして、あさひは今までずっと友達を作らなかったの?』

 

「……作れなかった。もしこんな弱くて醜い俺を見せたら、俺のダメな部分を見せたら切り捨てられると思って……怖くて……」

 

『あさひ、君はいつからそんなに臆病になったのかな?』

 

「……あげは姉には教えたくない。教えたらきっとあげは姉は幻滅するから」

 

それを聞いてあげははガッカリしたような声色に変わる。あげはとしてはむしろ理由を聞きたくてたまらなかったからだ。自分がいなくなってからあさひはこんなにも変わってしまったのだから。

 

『あさひ。無理に教えてとは言わないよ。でもね……友達が作りたいのならまずは怖がらずに一歩踏み出さないと何も始まらないよ』

 

「………そんなのわかってる。でも俺の事を深く知られて……それで嫌がられたら……」

 

『そっか。昔から変わらないね。そういう怖がりな所は」

 

「そう簡単には変わらないよ。俺の……弱い部分は」

 

それからあさひはあげはとの電話を切ってからあさひは溜息を吐く。すると今度はカゲロウが話しかけてきた。

 

「お前、そんなにクラスメイトに話しかけづらいのなら俺が代わってやろうか?」

 

「……余計な事をするなカゲロウ。お前は皆に一番見せたくない俺の闇の部分だ」

 

あさひはカゲロウをとことん隠そうとするつもりだ。もしカゲロウの事がバレて変に目立てば注目を浴びてしまう。そうなればクラスメイトは自分の闇に気がついて今よりももっと疎遠になるかもしれない。

 

「ははっ、別に良いんじゃねーの?あげはも言ってただろ。まずは一歩踏み出すのが大事だと」

 

「踏み出した先が崖だったらどうする?真っ逆さまに落ちるだけだ」

 

「そんな事を恐れてたらお前が望む友達なんて存在は一生経っても手に入らないぞ」

 

あさひはカゲロウの言葉を重く受け止めていたが、なかなか上手く割り切る事ができずにいた。すると部屋の扉がノックされてましろが入ってくる。

 

「姉さん……」

 

ましろが入ってきた事でカゲロウは大人しく身を潜める。基本的にカゲロウが話しかけてくるのはあさひが一人でいる時ばかりだ。

 

「……あさひ。あさひは友達が欲しくないの?」

 

「またその話?要らないって言ったでしょ。俺は……」

 

「嘘。あさひが嘘つく時は必ず私の目を見ずに話すの。自覚ある?」

 

それを聞いてあさひは今日何度目かわからないほどの溜息を吐いてから正直に話す事にした。

 

「そうだよ。俺だって学校の友達の一人や二人は欲しい。でも怖いんだ。もし歩み寄って拒絶されたら……大切な物を壊してしまう俺の手でちゃんと相手の手を掴めるのか……」

 

「それは、あさひ次第だと思うよ。前にヒメちゃんにあなた自身が言ってたよね?差し出された手を掴むのを恐れないでって。あさひ……あなたもだよ」

 

そう言ってましろは夜遅いので自分の部屋へと戻っていく。あさひは無言でその様子を見守ると翌日の準備をして眠りにつく。果たして、こんなあさひに友ができるのか。その話はまた別の機会に……。




また次回もお楽しみに。


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ソラの転校と桜の木

ソラの転入初日。早速あさひ、ましろ、ソラの三人はお揃いの制服を着て学校の準備を進めていた。……いつものようにあさひはましろやソラに起こされるまで寝坊しかけていたが。エルも少しずつ成長しているようで、はいはいによる移動速度が速くなっていた。そんなエルは三人が学校に行くのを寂しそうに見つめる。

 

「エルちゃん。私と遊びましょうね。楽しいお話は沢山知っているから」

 

そう言ってヨヨがエルのお世話を引き受ける中、ソラは申し訳なさそうに見ていた。

 

「すみません、何から何まで……お世話になってしまって。もし、学校で上手くやれなかったら……」

 

「ふふっ。大丈夫、案ずるよりも産むが易し。まずは踏み出さないとね……あさひさんも」

 

「え……」

 

どうやら、ヨヨには何も言わずともあさひの悩みを見通しているようだ。

 

「私もフォローするから、ソラちゃんは安心して学校を楽しめば良いよ!」

 

「………」

 

「あさひ?どうしたの?」

 

「な、何でもない。ちょっと考え事を……」

 

あさひはヨヨに悩みを見通された事に動揺して上手く取り繕う事ができずにいた。

 

「あさひ、無理に抱え込まずに相談して」

 

「大丈夫……大丈夫だから」

 

それから三人は時間が迫っている事もあって出発する事になり家を出ると学校までの道のりを歩き始める。それから学校に着いて朝のホームルームの時間になり早速ソラは転校の挨拶をする事になった。

 

「ハレワタールさんは海外からの転校生だ。外国の生活が長いから不慣れなこともあると思うが、そこはみんなでサポートしてほしい」

 

「ソ、ソラ・ハレワタールです!ましろさんとあさひ君のお家でお世話になってます!よ、よろしくお願いします!」

 

自己紹介を終えるとソラは自分の席に移動する事になる。ちなみに席はましろの隣だ。

 

「こんな大勢の前での挨拶は初めてで、緊張しました。変な事は言ってませんでしたか?」

 

「うん。きっと皆ともすぐに友達になれるよ」

 

「友達……」

 

すると早速近くの席に座っている仲田や吉井が声をかけ始めるとソラはそちらの方を向く。

 

「ましろんや虹ヶ丘君と同じ家で暮らしてるんだ。良いなぁ、楽しそう」

 

「はい!凄く楽しいです」

 

「なんて国から来たの?」

 

「はい!スカイランドです!」

 

それを聞いてあさひは吹き出した。まさかこうも簡単にスカイランドについて自分から言うとは思わなかったからである。

 

「虹ヶ丘君、どうしたの?」

 

「え!?あ、え、えっとソラ。故郷の名前はそれじゃ無いでしょ!」

 

あさひはすかさずソラのフォローに入るとソラも間違えてスカイランドについて話してしまったと思い至った。

 

「本当はスカンディナビア半島?そんな所だったっけ?」

 

「は、はい!そこです!!」

 

あさひは何とか知ってる風を装い、上手い事躱す。……しかし、今度は逆にあさひが目立つ事になってしまい、あさひは物知りだと周囲から認知されてしまった。

 

「……はぁ。何でこんな……」

 

それから何とかホームルームの時間をやり過ごす事には成功したものの……ヒヤヒヤする事の連発で一瞬たりとも気を抜けなかった。そして、休み時間の時にあさひは一人でボーッとしているとそこにましろとソラが来る。

 

「先程はありがとうございました」

 

「あさひごめん。私もフォローが……」

 

「良いよ。俺だっておばあちゃんからちゃんと設定聞いておかなかったらフォローできなかったし」

 

「そういえばあさひ君は誰かと一緒にはいないんですか?」

 

「……俺にそんな物必要ない」

 

「……え?」

 

言葉とは打って変わって悲しそうな顔をするあさひにソラは何かを言おうとするが、ましろはそれを止めて首を横に振る。

 

「でも……」

 

「俺には友達を作る権利なんてない」

 

そう言ってあさひは友達を作ることなんて初めから諦めたかのように絶望したような顔になっていた。

 

「あさひ君……」

 

「ソラ、何でも正直に話すのは良いけどあんまりそれでスカイランドの事とかをうっかり言うのはダメだからな?」

 

「は、はい……気をつけます。私、できるだけ目立たないようにするので!」

 

「目立たない?……ソラ、多分それだと……」

 

そう言いかけた時、授業のチャイムが鳴ったために三人共席へと戻ると授業を受けた。その時、ソラは極力目立たないように前にましろから教わっていてわかっていたことでも手を上げずにやり過ごす。それを見たあさひは心にモヤモヤとした気持ちを浮かべていた。

 

それから授業は進み、この日はスポーツテストがあった。ソラは自信ありげな様子だったが、目立たぬように真ん中ぐらいの成績を狙うつもりだ。

 

「さてと、俺も目立たないようにしないとな」

 

そうして始まった50メートル走。あさひは普段、手を抜いているわけでは無いのだが特別他の男子と比べて速い訳ではない。強いていうならクラスの男子の中で上から5、6番目ぐらい……所謂ちょっと速い程度なのである。だが今回は違った。

 

「はぁ……あさひ。そんな手を抜くぐらいなら。代われ」

 

そう言ってあさひはいきなりカゲロウに主導権を奪われるとカゲロウは普段よりもかなり速度を制限しつつ、尚且つクラス内の男子の中で一番の成績を出せるような速度で走り、見事にクラス一位を取ってしまった。

 

「凄い!虹ヶ丘君ってあんなに速く走れたんだ!」

 

「カッコいい!」

 

「良いぞー!」

 

クラス内から黄色い声が上がる中、あさひは青ざめた様子でカゲロウに詰め寄る。

 

「ちょっとカゲロウ!何してくれてるんだよ!」

 

「はぁ?何ってお前がノロノロゆっくり走りやがるから本気出しただけなんだが?」

 

「嘘つけ!お前にとってあんなのは力の半分も出してないだろ!」

 

カゲロウはあさひが詰め寄ってものらりくらりと躱し続け、あさひは手で頭を抑える。そこからは散々だった。

 

あさひが少しでも手を抜けばカゲロウが常識の範疇に収まる程度に力を加減しつつクラス一位を取れるレベルの力を発揮してくるのだ。

 

「ダメだこれ、終わった……」

 

あさひのメンタルはボロボロであり、もはやカゲロウが前に出るのは当たり前と考えて諦めていた。しかも、クラス一位を取るたびにクラスメイトから歓声が上がり、褒められるのだ。あさひとしては友達を作らないように自主的に関わりたくないと考えているので困った物である。

 

「去年はこんな事無かったのに……カゲロウが目覚めたから……」

 

正直あさひにとってカゲロウの目覚めは迷惑以外のなにものでもない。勝手に乗っ取られてソラとましろを襲う、偶に冷やかされるなどこれまでも割と面倒ごとを引き起こしてきたのだが、今回は更にクラスメイトの注目を浴びるような事までされたのだ。

 

その頃、ソラについても溜息を吐く事態に陥っていた。何しろ、彼女は手加減するつもりだったのに色んな要因が重なって学年の新記録を次々に打ち立ててしまったのだ。

 

「ま、まぁ二人とも。落ち込まなくても良いと思うよ」

 

「……姉さん、カゲロウのせいでこっちは割と大変だったんだけど?」

 

ましろが宥める中、ソラもあさひも落ち込んでしまう。二人共望まない記録を残してしまったのだから。

 

「凄い事だと思うよ。私はあんまり運動できないから……」

 

「そう言ってくれるのはましろさんだけです。きっと他の皆さんは私の事を変だと思ってます……これで別の世界から来た事までバレれば……もう皆さんとは友達には……」

 

「はぁ……そんな所だろうと思った。ソラ、多分それはソラの思い違い。実際は……」

 

あさひがそう言うとそこにクラスメイトの仲田、吉井、軽井沢の三人がやってくるとソラの事を褒め始めた。

 

「ソラちゃん!凄いよ。さっきの宙返り!」

 

「今度さ、俺達に宙返りを教えてくれよ!」

 

「あんたはグイグイ行き過ぎ。ソラちゃんだって困るでしょ」

 

それを聞いてソラは嬉しそうに笑顔になる。それとは対照的にあさひは顔を曇らせていった。

 

「あ、そうだ。虹ヶ丘君も今度どうやったらそんなに速く走れるようになるのか教えてよ」

 

「そ、それは……」

 

あさひは返答に困ってしまう。何故ならあの時に走ったのはカゲロウ。自分ではあの速度を出すのは難しいと考えているのだ。しかも下手に友達になるとまた傷つけてしまうと思い躊躇してしまう。

 

「……無理しなくて良いよ」

 

「え?」

 

「虹ヶ丘君はあんまり人と話すのは得意じゃないでしょ?だから少しずつで良いからね」

 

そうやって気遣われた言葉をあさひは聞き、心がポカポカするように温かくなっていった。それから三人は昼ご飯のために教室に戻っていく。あさひもいつもの定位置で食べるために行こうとするが、その手をましろに掴まれた。

 

「あさひ、ソラちゃん。ちょっと来てくれる?」

 

それから三人が移動したのは校舎の屋上だ。ここはましろのお気に入りの場所らしい。それからましろが指差すとそこには花を満開に咲かせた桜の木があった。

 

「ほら、あれを見て。綺麗でしょ?」

 

「なんて言う木ですか?」

 

「桜って言うんだ。この学園ができた時からずっとあそこにあるんだって」

 

それからましろは二人にもっと自分を出すべきだと伝える。それを聞いてあさひはまた暗い顔になった。

 

「もしそれで……皆から変な人だって思われたら、俺がいつか他の人達を傷つけたら……」

 

「大丈夫。あさひは知ってると思うけど、私も最初は凄い緊張して周りとは上手く話せなかったの。でもね、この桜の木を見たら肩の力が抜けて上手く話せるようになったんだ。だからね、二人共一歩踏み出してみればきっと皆と仲良くできる。そういう人達がここには沢山いるから」

 

そうやってましろは二人を励ますとソラは笑顔になってやる気十分の気持ちに変化。それでもあさひの方はなかなか踏み出せずにいた。

 

「俺なんかを良いって言ってくれる人なんているのかな?ずっと皆に冷たく接してきたのに、“今更何言ってるの”って言われたら……」

 

「お前、自分を過小評価し過ぎ」

 

そこにカゲロウが心から声をかけてくる。あさひはいきなりのカゲロウの乱入に驚いた。

 

「お前は俺だ。……そんな奴がダメな人間なわけじゃねーだろ。むしろ、俺はお前の闇で悪い部分だとしたら今のお前には良い部分しか無いんだかよ、もっと自信を持て。前に前進しろ。あげはにもそう言われただろうが」

 

「カゲロウ……」

 

あさひはそれを聞いてようやく前を向くための気持ちが整ったのか戸惑いながらも前向きになっていた。

 

「こんな俺でも……友達になってくれる人はいるのかな?」

 

「いると思います。だって私はあさひ君の友達ですし!」

 

「あさひ、やっと歩み寄る準備ができたみたいね」

 

それから三人は教室へと向かう。その中でソラはある事を考えていた。それは自分に関係する事が殆どだが、今からあさひを違和感なく他のクラスメイトと接する事ができるようにするためのある作戦だ。そしてそれはすぐに実行される事になる。




評価が欲しい……(切実)。正直、読者の方がどのくらい面白いと思っているかがわからないので誰か評価を入れていただけると参考になると思います。また次回もお楽しみに。


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歩み寄る勇気と新たな力

昼休み、ソラは黒板の前に立つと教壇に手をついてクラスの全員に聞こえるように声を上げた。

 

「皆さん!お食事中にすみません!転校の挨拶をもう一度やらせてください!」

 

ソラはそう言ってまずは自分の名前を黒板に書き始める。ハレワタールのルの字が逆になっていたが、それは触れないでおこう。

 

「ソラ・ハレワタールです!ましろさんやあさひ君の家でお世話になってます!」

 

「さっきと同じじゃん」

 

そう言った軽井沢に仲田と吉井が口に指を当てて静かにするように促す。

 

「私は早く皆さんと馴染みたくて、それで目立たないようにした方が皆さんと仲良くなれるかななんて考えていました。でも、それではダメだと気づいたんです」

 

それからソラは黒板の端にいるましろやあさひの方を向くと二人はコクリと頷く。

 

「やっぱりちゃんと私の事を知ってもらいたい……わかってもらいたいんです!私はヒーローを目指しています!」

 

それを聞いて皆は驚く。ヒーローを目指すなんて人は初めて聞いたからだ。それでも、誰一人としてその事を嘲笑う人はいなかった。

 

「だから私は体を鍛えていて、運動には自信があります!私はここに来たばかりで慣れないことも多いです。それでも、ましろさんやあさひ君と友達になって新しい事を沢山知って。この学校に通うのも凄く楽しみで……」

 

ソラはこの世界に来てからましろやあさひと過ごした楽しい日々を思い出しながら自分の本当の気持ちをクラスメイトに伝えていく。

 

「もし、よろしければ皆さんと友達になりたいです!よろしくお願いします!」

 

そう言ってソラは頭を下げる。すると仲田が最初に拍手を始め、それを皮切りにクラスメイト達は次々に拍手していく。

 

「話してくれてありがとう!」

 

「遠い国からようこそ!ヒーローガール!」

 

「その呼び方良い!」

 

それからソラはクラスメイト達から大歓迎されると嬉しさか顔を赤くしつつ喜びが込み上げていく。それからソラはその空気が変わらない内にあさひの元に行くとその手を掴んだ。

 

「え!?ソラ、何を……」

 

ソラはあさひを黒板の中央に連れてくるとあさひの背中を押した。そうしてこう叫ぶ。

 

「すみません、皆さん。そのままこっちを見ていてください!次はあさひ君が言いたい事があるそうです!」

 

それを聞いてクラスメイト達はザワザワと声を上げる。今までずっとクラス内で空気のように過ごしてきたあさひが何かを言いたいとなればそれを聞き逃すようなクラスメイトはいない。

 

「ちょっとソラ……俺は……」

 

「ほら、あさひ。あさひだって……友達が欲しいんでしょ?だったらさ……勇気を出さなきゃ」

 

ましろにもそうやって促されてあさひは緊張しながらクラスメイトと向き合う。それから言葉を口にしようとするが、なかなか言葉になってくれない。

 

「あ……う……」

 

クラスメイト達の視線はあさひへと集中する。そして、無言の時間があまり長引けば不審に思われてしまうだろう。それでもあさひは気持ちを上手く言葉にする事ができない。そして、それが原因で頭に最悪の光景がフラッシュバックする。

 

(回想)

 

「何?言いたい事があるって嘘じゃん」

 

「はぁ、待って損した」

 

「あんたなんかと誰が友達になるの?」

 

「今までずっと冷たかったくせに」

 

次々と悪口を言い、蔑んだ目をしてくるクラスメイト。いつもは温かい言葉をかけてくれるはずの面々がそれを止めて棘のある言葉であさひの心を抉ってくる。最悪の光景……いや、もっと最悪なのは何かを言った所で反応の一つも無く全て無視される事だ。

 

(現在)

 

あさひはどんどん気持ちが乱れ始め、呼吸も荒くなる。このままでは不味い。そう思った所で肩にポンと手が置かれた。あさひが振り向くとそこにはましろが手を置いていたのだ。

 

「大丈夫……大丈夫だから」

 

姉に言われてあさひは深呼吸してから冷静になり、ようやくクラスメイトへと言葉を紡いだ。

 

「に、虹ヶ丘あさひです。俺もソラと同じで皆に話したい事があるんだ」

 

あさひは話しかける怖さも残っていたが、それでも口にしたからには伝えないわけにはいかないと勇気を振り絞って言葉にする。

 

「俺はずっと怖がっていた。俺は昔、人を傷つけた事があって……それで、俺なんかと友達になったら……またいつかその人を傷つけるんじゃないのかって怖くて怖くてたまらなかった。それでも俺は今、この瞬間に皆と友達になりたい」

 

最初は恐々としていたあさひだった。しかし話している間に少しずつ打ち解け始めていき、とうとう普通に話せるようになったのだ。

 

「ソラとは違って俺の長所なんて無いかもしれない。それと、今までずっと冷たい態度ばかりでごめんなさい……。今更許してもらえるなんて思わない。……それでも、それでもこんな俺を許してくれるなんて思う人がいるなら……ぜひ友達になってください!」

 

あさひが最後まで話を言い切るとそれを受けてクラスメイト達は顔を見合わせてからまた先程のように拍手を始めた。

 

「やっと……そうやって本音で話してくれたね」

 

「ずっとこの日を待ってたよ」

 

「……え?」

 

「虹ヶ丘君は気づいてなかったけど……皆は虹ヶ丘君と友達になりたかったんだよ」

 

それからあさひもソラと同様に温かく受け入れられる事になり、あさひは胸の大穴が塞がっていくような感覚を感じながら嬉しさのあまりに頷く。

 

「ありがとう……皆。これからよろしくお願いします!」

 

あさひが頭を下げると皆は更にあさひを改めて迎え入れるかのように拍手を強くした。そんな中、いきなり一人の男子生徒が入ってくると慌てた様子で何かを伝えにくる。

 

「み、皆!大変だ!」

 

その内容は……転校生と思わしきモヒカン頭の不良が購買のパンの買い占めや学食のカレーを一人で平らげたと言った所であった。それを聞いたあさひ、ソラ、ましろはその正体に心当たりがあるようですぐにその不良生徒?の元に行く。

 

三人がそこに行くと学生服を着た不良……いや、カバトンがメロンパンを頬張っている所だった。

 

「美味いのねん!目を閉じれば北の大地でたわわに実ったメロン達が舞い踊るようなのねん!」

 

「そのパンは形はメロンっぽいけどメロンは入ってないよ!」

 

ましろがカバトンの勘違いに対してツッコむとカバトンは振り向いて三人と向き合う。

 

「お前ら!」

 

「やっぱお前かよカバトン」

 

「どうしてここに?」

 

ソラの質問に、カバトンは答えを返す。その中身を要約すると日向ぼっこをしていたカバトンにどこからともなく飛んできたボールが当たり、その痛みに導かれてこの学校までやってきたとの事だ。

 

「うん、そのボールは絶対ソラが投げたアレだよな……」

 

「何だと!?ソラ、お前が投げたのねん!!」

 

「あさひ!余計な事言わないの!」

 

カバトンはソラに対して敵対心を燃やすが、こればかりは仕方ない事ではある。

 

「ぐぬぬ……だったらお前らに復讐するのねん!カモン!アンダーグエナジー!」

 

するとカバトンはアンダーグエナジーを召喚してランボーグを呼び出す。今回はよりにもよってましろが勇気を貰った桜の木だ。

 

「やるしか無い……か」

 

それから三人はそれぞれスカイミラージュとスカイトーンを取り出す。

 

「「「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!」」」

 

「スカイ!」

 

「プリズム!」

 

「サンライズ!」

 

それから三人はそれぞれプリキュアへと変身すると名乗りを始めていく。

 

「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」

 

「ふわりひろがる優しい光!キュアプリズム!」

 

「夜明けにひろがる眩い朝日!キュアサンライズ!」

 

「「「レディ……ゴー!ひろがるスカイ!プリキュア!」」」

 

三人が変身完了すると早速カバトンがランボーグへと攻撃指示を出す。ランボーグは木の枝を模した両腕を合わせて桜の花びらを舞い散らせながらエネルギー波を発射する。三人は飛び上がるとそれを回避。それからプリズムが気弾を発射してランボーグを怯ませる。

 

「やあっ!」

 

「だあっ!」

 

そこにスカイとサンライズからのダブルキックが決まり、ランボーグは後ろに吹き飛ばされる。

 

「ランボーグ!もっと猛烈に舞い散らせるのねん!」

 

するとランボーグは両腕に電撃を纏わせた状態でエネルギーを放出し、三人はそれを喰らって吹き飛ばされてしまうとスカイは校舎の壁に、プリズムは渡り廊下の柱に、サンライズは地面に叩きつけられる。

 

「弱ぇえええ!俺、強ぇえええ!今日こそ覚悟しろ」

 

「……お前、今何つった?」

 

すると地面に叩きつけられたはずのサンライズが怒りの気持ちを高めながら立ち上がる。

 

「俺は、プリズムに……スカイに、あげは姉に皆と向き合う勇気を貰った。誰かと友達になるのがこんなにも温かい事なんだって教わった。そのキッカケをくれたのはプリズムが見せてくれたこの桜の木だ。それを誰かを傷つける道具に変えたお前を俺は絶対に許さない!覚悟するのは……お前だ!」

 

サンライズの言葉にカバトンも憤ったようでサンライズに集中攻撃するようにランボーグへと指示を出す。

 

「ランボーグ!」

 

ランボーグがまた桜吹雪のような攻撃を仕掛けるとサンライズはそれに巻き込まれて爆発と共に周囲に煙幕が発生した。

 

「「サンライズ!」」

 

それを見たスカイとプリズムはサンライズを心配する……しかし、煙が晴れるとサンライズを守るように何かの光がそれを防いでいた。そしてその光が具現化するとサンライズの手に新たなスカイトーンが収まる。

 

「これは……」

 

「エルちゃんがいないのに、スカイトーンを生成した?」

 

「どうして……」

 

サンライズはこれを使うべきだと本能が理解し、それをすぐに使用する。

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!スタイルチェンジ!グリフォン!」

 

サンライズがスカイトーンを装填してそう叫ぶとサンライズの姿に変化が始まる。するとどこからともなくグリフォンが飛んでくるとそれがスーツ姿の上からアーマーのような物に変化して装着されていく。それは鎧というよりは体にフィットするようなパワードスーツであり、更に身体中の筋肉が増加していく。そうして最後にサンライズの頭の髪飾りがグリフォンの頭を模した物に変化してキュアサンライズ・グリフォンスタイルに変化したのだった。

 

「な、何なのねん!アイツ、いきなり姿が変わっただと!?」

 

「凄い……何ですかあれは!?」

 

「力が漲る……もう誰にも止められない!」

 

「ランボーグ!やってしまうのねん!」

 

ランボーグはサンライズを押し潰そうと両腕をサンライズへと振り下ろす。しかし、サンライズはそれを両腕で受け止めると軽々と持ち上げてランボーグを振り回し、地面へと一度叩きつけてから投げ飛ばす。

 

「うおらっ!」

 

「凄いパワーです!」

 

「もしかしてこれがそのスタイルの真価なの!?」

 

それからサンライズは手を翳すといつもの長剣では無く、自らの身長と同じくらいはあるであろう大剣を呼び出してそれを振り回す。サンライズは大剣をランボーグへと叩きつけてから跳び上がる。しかし、その高さはいつもよりは低く、あまり機動戦は向いてないように見えた。

 

「スカイ!」

 

スカイが走ってくるとサンライズがバレーボールのトスをするように腕を組み、スカイがそれを踏み台として乗る。それから正面へとサンライズは思い切り打ち出す。そのタイミングでスカイは浄化技を発動。

 

「ヒーローガール!スカイパンチ!」

 

「ランボーグ、近づけさせるな!」

 

ランボーグはそれを抑え込むために花びらを飛ばしてくるがスカイの加速力がそれを上回り、スカイパンチがランボーグに命中。ランボーグは体勢を崩した。

 

「サンライズ、決めてください!」

 

「ああ」

 

サンライズは再度大剣を呼び出すとそれを思い切り地面に突き刺して地面に自らのエネルギーを注入。すると地面から次々と火柱が上がっていき、その火柱がランボーグの周囲を取り囲む。

 

「ラ、ランボーグ!?」

 

すると徐々に火柱の包囲は狭まっていき、繰り出されるグリフォンスタイルの浄化技。

 

「ひろがる!サンライズボルケーノ!」

 

最後にランボーグの足元から特大のエネルギーが噴き上がり、ランボーグの体を浄化していく。

 

「スミキッタァ〜」

 

「カ、カバトントン!」

 

ランボーグが浄化された事でカバトンは撤退。その日はそれから何事もなく一日が終わって夕方、あさひ達は桜の木の前で話していた。

 

「転校初日!色々ありすぎてあっという間に終わってしまいました!」

 

「まぁ、終わりよければ全て良しだよ!」

 

「あはは……確かにそうだな」

 

すると三人へとクラスメイトの仲田、吉井、軽井沢の三人が声をかけてくる。

 

「あ、いたいた!ヒーローガール!」

 

「ソラちゃん、ましろん、虹ヶ丘君!一緒に帰ろう!」

 

それからあさひは新しくできた友達の元に行くと六人で学校から家への帰路につく事になった。




また次回もお楽しみに。


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新たな出会い 少年になれる鳥

ソラが学校に通うようになってから暫くの時が経った。エルもはいはいから少しずつ色んな事ができるようになり、それに伴って危険も増えた。だが、それはあさひ、ソラ、ましろの三人でカバーし合いながらなるべくエルを自由にさせている。

 

そんなある日、エルはソラの部屋でソラのベッドの上にある玩具を取るために掴まり立ちをしようとする。

 

「えるぅ〜」

 

それから立つ所までは良かったのだが、まだ上手くバランスが取れないので後ろへと倒れかけてしまう。その瞬間、何かの手がエルを支えた。そこにいたのは一人の少年だったのだ。

 

「大丈夫?」

 

エルはそれを見て不思議そうな顔になる。その顔は初めて見たからだ。その少し後にソラがマグを片手に部屋に入ってくるとそこには玩具を片手に嬉しそうにするエルといつの間にか開け放たれた窓だった。

 

「あれ?」

 

ソラが不審に思うと窓の外に顔を出して辺りを見渡す。するとそこにいたのは一羽のオレンジの小さな鳥だった。

 

「……鳥さん、誰か見かけませんでしたか?」

 

勿論鳥が返事する筈もなく……その場はソラの勘違いとして終わる事になる。

 

その日の夕方、あさひ達が夕食を食べている際にソラは先程の事について話す事にした。

 

「へぇ……少し目を離した間にエルちゃんが絶対に取れない位置にあった場所にあった玩具を手にしていた上に閉めていた窓が開いていたと」

 

「ええ、しかも人の気配もしたんです」

 

それを聞いてましろもあさひも不思議そうな顔つきになる。そもそもソラの部屋の位置は二階だ。しかも人がいたという事が正しければ犯人は昼間に堂々と侵入してきた事になる。

 

「気のせいじゃ無い?それよりも鳥に話しかけちゃうソラちゃん……可愛い!」

 

「スカイランドでは言葉を話す鳥もいるのでつい……」

 

どうやらスカイランドには荷物を運ぶ手伝いをする鳥、モデルをしてる鳥、王様の城で働く鳥、背中に乗せて飛んでくれる鳥……多種多様な鳥がいるのだ。

 

「そうやって聞くとソラは割とファンタジーな世界からの来訪者に見えてくるな」

 

「こんなに美味しいものがチーンとしただけで食べられるなんて、そっちの方がよっぽどファンタジーです!……う〜ん!カライライス、最高!」

 

「カレーライスだよ」

 

「え?辛いからカレーって言うんじゃ無いんですか?」

 

「それが違うらしいんだよな」

 

それから三人は雑談をしながら食事を楽しみ、その日の夜となる。あさひは自分の部屋で宿題やらやる事を終えてからカゲロウと話をしていた。

 

「そいつは妙だな」

 

「ああ、ソラの言ってる事が合ってるとしたら一体誰が侵ってきたんだろ?」

 

あさひとしてはどうも先程のソラの話が頭の中で引っかかるのか疑問を浮かべていた。

 

「ふん。あながちそれは間違ってないかもな」

 

「……え?」

 

「時々だがあさひ、姉さん、おばあちゃん、ソラ以外に人間の気配がする。しかもそれはソラが来る前からもちょくちょくあった」

 

「お前まさか、人の気配を察知できるのか?」

 

「何となくだ。確信は無い」

 

二人で話を進めているとドシンという大きな音が聞こえてきたためあさひが慌てて窓を開けて外を見ると同時にましろも開いて外を見た。そこにはソラが部屋から飛び降りたのか外の地面にいる様子でその下には小さな鳥を捕まえているような状態だ。

 

「怪しい人を捕まえました!日中に忍び込んだのもこの男の子です!」

 

「男の子……?」

 

「ソラ……それ、鳥だぞ?」

 

二人がそう言っているとそこにヨヨもやってきてソラへと話しかけてきた。

 

「その子を離してあげて。私の知り合いなの」

 

「知り合い……これはどうにも訳ありみたいだな」

 

それから鳥はソラに離してもらうと自力で立ち上がり、突如として言葉を話し始めたのだ。

 

「ボクはツバサ」

 

「鳥が……喋った!」

 

「言葉を話して人間に変われる鳥さん……まさかあなたは、スカイランドのプニバード族!!」

 

それを聞いて自らの事をツバサと呼んだ鳥は小さく頷く。それからあさひ、ソラ、ましろ、ヨヨ、ツバサの五人とソラがエルを抱っこして家の居間で話を聞く事になる。

 

どうやらツバサは一年程前にスカイランドからこちらの世界へと落ちてきたらしく、そこでヨヨに保護されたようだ。スカイランドとソラシド市の間には大きな嵐によって空間に穴が一瞬だけ開くらしく、その穴が空いた瞬間にスカイランドから何かしらの原因で落ちた物がソラシド市に流れ着くらしい。

 

「それからずっとここでヨヨさんのお世話になっています」

 

「一年前って、私とあさひがこっちに引っ越してきた頃だよね?それからずっとただの鳥のフリをしていたって事?どうして……?」

 

「なかなか長い事隠していたものだな。話そうとは思わなかったのか?」

 

「……話しても信じてもらえないと思って……」

 

ツバサは申し訳なさそうにそう呟く。しかし、ソラはその矛盾を見逃さなかった。

 

「タ——イム!」

 

ソラがいきなり叫ぶとツバサはびっくりして鳥の姿から人の姿へと変わってしまう。

 

「変わった!?」

 

「びっくりするとつい……」

 

「ファンタジーだなぁ……」

 

「話を逸らさないでください!私とエルちゃんがこっちに来た後ならいつだってスカイランドの事について話せたはずです!なのに黙っていた!どうしてですか!」

 

ソラはジタバタしながらツバサへと文句を言い続ける。流石にこれについては弁明が必要そうだが、ソラがあまりにも怖い顔つきになっているせいでツバサは余計に言い出しづらそうにしている。

 

「怖い顔になっちゃってるよ、ソラちゃん」

 

「ワン!」

 

まるで犬のように吠えるソラを一度置いておき、あさひはツバサには何か考えや事情があるのではと思い至る。

 

「まぁ、ソラ。ここは一度ツバサを信じてあげないかな?」

 

「ですが……」

 

「人には話せる事と話せない事がある。それは俺の過去についても同じ事が言えるから……」

 

「………」

 

ソラはまだ納得のいかない様子で、それからツバサへと大声で問い詰める。しかしそのせいでエルを泣かせる事になってしまい、結局エルが泣き止むまでに苦労する事となり、話はあやふやのままに終わってしまった。

 

それから翌日、ましろが朝起きるとあさひはまだ起きておらず。いつも通り寝坊だと思って起こしに行くとそこには頭を抑えながら悶えるあさひがいた。

 

「ゔぁああああああ!!」

 

「ちょっとあさひ!?何やってるの!!」

 

ましろがあさひを心配するとあさひは苦しそうにする理由を説明し出した。

 

「なんか起きたら急に頭が痛くなって……カゲロウ……お前の仕業か!?」

 

「さぁ?何の事やら……」

 

「お前ぇえ!!」

 

どうやらあさひの頭痛はカゲロウが原因であり、いつもは大人しいあさひがここまで痛がるという事はそのダメージは本物だとましろは察する。

 

「取り敢えず、今日学校には行かないようにした方が良いと思う。カゲロウの事まで皆には知られたく無いでしょ?ちゃんと事情は説明するから今日はゆっくり休んでね」

 

「う、うん……そうす……痛だだだだぁああ!!」

 

ましろは仕方なくあさひを置いて準備を始めると下に降りていく。それを見届けるとあさひは頭を抑えるのを止めた。

 

「……これで良いんだよな」

 

「ああ。何の不自然も無くましろへの言い訳ができる方法だ」

 

「ったく、お前な。幾ら頭痛のフリをするためとはいえ何で実際に頭を痛くさせるかな」

 

どうやら先程の行動はましろを騙すための演技であり、今日学校を休むための口実作りだ。何故こんな事をあさひはしたのか。それは、夜の一件でソラはかなり思い詰めた様子だったのであさひは心配になったのだ。

 

「ソラ……あの後ずっと寝ずにエルの事を見守っていた。自分の未熟さを責めてるんだろうけど……」

 

それからあさひはましろを上手く騙して学校を休み、ソラの様子を見に行く。するとソラは体操座りをしたまま眠ってしまっていた。

 

「やっぱり疲れは誰にでもある。流石のソラでも寝ずにずっと見守るのは……ん?」

 

するとエルがあさひを見るやあさひの方にはいはいしてやってくるとあさひの股の下を通り抜けて廊下へと出て行った。

 

「え?」

 

その直後ソラが目を覚ますとエルがいない事に気がつく。そして扉を見るとあさひが立っていたのであさひへとソラは問い詰めた。

 

「あさひ君!エルちゃんを見ませんでしたか?いきなりいなくなって……」

 

「大丈夫。廊下へと出ただけだから。それと、一人で無理するなよ。ソラ」

 

「ですが……私は」

 

「俺だって昨日の件は反省すべきだと思ってる。でもさ、あの子……ツバサだっけ?あの子もエルの事が心配みたいなんだよ。ほら」

 

それからあさひがソラに促すとソラが廊下に出た。するとそこには人間の姿をしたツバサがエルの方をソワソワとした様子で見守っているのが見える。

 

「え……えるぅ……」

 

どうやらエルは壁を使っての掴まり立ちをしようと頑張っており、それを見てあさひ、ソラ、ツバサはエルを見守る事になった。それからエルは何度か転びそうになったが最後には壁から手を離して立つ事に成功する。

 

「えるぅ!」

 

それからエルは三人の方を見ながら喜びの顔を見せる。そんなエルを見て三人も思わず笑みを浮かべた。次の瞬間、エルが転びそうになるとソラとツバサがスライディングをしながら手を伸ばし、倒れたエルを支える。

 

「頑張ったね……諦めなかったね……偉いね!」

 

ソラは嬉し泣きをしながら頑張ったエルを抱いて褒める。そんなソラを見てツバサは目を見開いた。そこにヨヨがやってくる。そして、ツバサはある決意を固めて二人へと話しかけた。

 

「……ソラさん。あさひ君。一緒に来てもらえますか?」

 

それからツバサはヨヨを含めた三人を連れてある部屋へと歩いていく。その先はいつも鍵がかかっていたために入る事ができなかった部屋だ。

 

「ここって、俺や姉さんも入った事の無い部屋……まさか、俺と姉さんが入れなかったのは、ツバサに貸してたから……」

 

それからツバサが鍵を開けるとそこにあったのは多くの本が置かれた部屋であり、天井には飛行機の模型などがあっていかにも研究室と呼べるような内装をしていたのだ。

 

それからあさひとソラはこの部屋についてやツバサの秘密についてを知る事になる。




また次回もお楽しみに。


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飛べない鳥 飛びたいという想い

ツバサに案内されてやってきた研究室のような部屋であさひやソラはツバサから話を聞く事になった。

 

「ここで何を調べてるんだ?」

 

あさひからの問いにツバサは一冊の本を棚から取るとあさひやソラへと見せた。

 

「……航空力学です!」

 

「ソラさんは飛行機を知っているかしら?」

 

「えぇ、テレビで見た事ぐらいは……」

 

「その飛行機を飛ばすための学問。それが航空力学よ」

 

ヨヨからの説明にソラは頷く。風の向きやその強さ。翼の角度。全てが噛み合う事でようやく空を飛ぶ事ができるのだ。

 

「……こちらの世界の人が空を飛ぶために長い時間をかけて編み出した学問をボクは一年かけて勉強しました。スカイランドに帰らなかったのはそのためです」

 

ソラはあまりに難しい内容に困惑した様子で、あさひはそれを聞きながらある疑問が浮かんだ。

 

「ツバサって一応鳥なんだろ?何で空を飛ぶための学問をやってるんだ?もしかして……」

 

あさひが何かを察したのかそれを言おうとするが、それを言いかけた所で止めた。これを今話せばツバサの秘密の深淵を勝手に覗くと感じたからである。

 

「あさひ君、何かわかったんですか?」

 

「いや、それを話すかどうかを決めるのは……ツバサだ」

 

そう言ってあさひはツバサの方を見る。それからツバサは意を決して二人へと向き合った。

 

「約束してください。本当の事を言っても笑わないって……」

 

それからツバサは窓際に行くと外を見ながら自分の願いを呟く。

 

「空を……飛びたいんです」

 

ツバサはそれから自身の過去について話す事にした。ある時に王の都で展覧会があったために遊覧鳥に乗りながら移動している時の事だ。ツバサの父は絵描きである。そんな時に前から来た気流に遊覧鳥が揺れてしまいツバサは落下を始めてしまう。

 

「ソラさんは知っているでしょう?ボク達プニバード族は世にも珍しい空を飛べない鳥だという事を……」

 

「やっぱりそうか……」

 

あさひは自分の仮説が正しかった事を確認する事ができ、それからツバサの話の続きを聞く事にした。

 

プニバード族は大昔に人間に変身する力を得る代わりに飛ぶ力を失ってしまっている。そのためにツバサは空を落下していき、一応小さな翼をパタパタとは動かしたが飛ぶ事はできない。そんな時、ツバサの父親が危険を顧みずにツバサを助けるべく飛び出すとツバサをキャッチして空を飛んだのだ。

 

「あの日……飛ぶと言う夢がボクの中に開きました。でも……」

 

同じプニバードの里の者達はツバサの夢を嘲笑った。父親に聞いてもただ必死に飛んだだけとしか言われず。それからツバサは飛ぶ練習をしていたが何度やってもダメで……嵐の晩に発生する強い風を使えば飛べると考えたが、見事に失敗してソラシド市に落ちてきたのだ。

 

「……でも無駄じゃなかった。落っこちたおかげでボクはこの世界で空を飛ぶ学問に出会えた。それを学んで、風の流れを正しく読めば……ボクも空を飛べるかも……」

 

そこまで言いかけた所でツバサがソラの方を向くとソラは感極まり、目をキラキラさせてツバサの夢を褒めた。

 

「か〜っこいい!一度やると心に決めた事は最後まで諦めない!それがヒーロー!」

 

「飛べない鳥だからって飛ぶのを諦めずに何度でも挑戦するその心意気。凄いな」

 

あさひもあさひでツバサの夢を笑う事なく、逆に凄いと感服する。それを見てツバサは驚いた様子だった。

 

「笑わないの?」

 

「笑いません!」

 

「むしろ、誰が笑うんだよ。こんな良い話」

 

「私はヒーローになりたい!ツバサ君は空を飛びたい!道は違うけど、私達は同じじゃないですか!……誤解しちゃってすみませんでした!」

 

ソラは昨日の自らの失態についてツバサに謝ると同時にツバサへと手を差し出す。

 

「……お友達になってくれませんか?」

 

差し出した手をツバサは掴み、嬉しそうに笑う。それからツバサはあさひの方を向いた。

 

「あさひ君。ボクは君とも友達になりたいです。……君が過去に辛いトラウマを抱えてる事はヨヨさんから聞きました。それでもボクは……」

 

そこまで言った所であさひは首を横に振り、“それ以上は良いよ”という事を暗に知らせる。

 

「俺も過去を乗り越えるために頑張ってる。それにさ、俺もツバサと友達になりたいんだ」

 

それを聞いてツバサは安心したような顔つきになるとあさひもツバサと手を握り、握手した。

 

「これからよろしく。ツバサ」

 

「こちらこそ……あさひ君」

 

その日の夕方、ましろが心配そうな面持ちで急いで学校から戻ってくるとまずは頭を痛めたあさひの方に駆け寄る。

 

「あさひ!大丈夫!?もう頭は痛く無い?」

 

「あ……えっと……」

 

あさひはましろに嘘をついていたのでそれに対する上手い躱し方を考えているとソラがキョトンとした顔で爆弾を投下した。

 

「何を言ってるんですか?あさひ君は今日も元気でしたよ?」

 

「……え?」

 

「ば、馬鹿!ソラ……そんな事言ったら嘘がバレ……はっ!」

 

あさひは思わずソラにツッコんでしまうと後ろから怒気が発せられ始める。あさひは不味いと考えて逃げようとするが、もう時既に遅い。

 

「あーさーひー!あなたまさか……私を騙したね!!」

 

ましろの声は普段の大人しい声から一転。誰が見ても明らかにキレている様子に変わっていた。

 

「姉さん落ち着いて!取り敢えずこれには色々と訳があって……」

 

「私やクラスの皆からの心配も知らないで!あさひに何かあったのかと皆心配してたんだから!」

 

「ちゃんと謝るから!」

 

それからあさひはましろに説教される羽目に遭い、心の中ではカゲロウがそんなあさひを笑う事態になる。勿論カゲロウも共犯なので同じ罪なのだが、こういう時に限って出てこなかったのでカゲロウは何も言われなかった。

 

それから赤ちゃん用のケーキをエルに食べさせる事になり、ケーキをこぼしそうになった所をツバサがフォローする。

 

「ツバサ君はエルちゃんを助けるナイトですね」

 

「ナイトは大袈裟だよ」

 

二人はそう言って笑い合う。ましろは二人が何故仲良くなったのかを知らないためにキョトンとしていた。そこにあさひが今日の出来事をましろに話してましろはそれに納得する形となる。

 

するとその時、外から大きな音が聞こえてきて家の中にいる五人とエルが外に出ていく。そこに見えたのは街を襲うUFO型のランボーグだった。

 

「あんなのが空を飛ぶなんて……デタラメだ!航空力学的にあり得ません!」

 

「今はそんな事を言ってる場合かな?」

 

「取り敢えず……止めるしか無さそうだな」

 

「ツバサ君、エルちゃんをお願いします」

 

「危ないからここにいてね」

 

「はい。気をつけて」

 

あさひ、ソラ、ましろの三人はツバサにエルを預けてペンを構える。それから変身のための行動を開始。

 

「「「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!」」」

 

「スカイ!」

 

「プリズム!」

 

「サンライズ!」

 

それから三人は同時に光に包まれるとその姿をプリキュアへと変えていく。そうして変身を完了すると名乗りをしていく。

 

「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」

 

「ふわりひろがる優しい光!キュアプリズム!」

 

「夜明けにひろがる眩い朝日!キュアサンライズ!」

 

「「「レディ……ゴー!ひろがるスカイ!プリキュア!」」」

 

こうして三人は名乗り終えるとすぐに街の方に向かって飛び出していく。それを見送ってヨヨとツバサがエルを連れて中に避難しようとするとエルが抱っこ紐を操ってそれに乗るとそのまま三人の後を追いかけてしまう。

 

「いけない!」

 

するとヨヨの元に一本の電話がかかってきた。それはあげはからであり、あげはは今現在、街にいるのかランボーグを目視できる場所にいたのだ。

 

『ヨヨさん、こっちでランボーグが暴れてる!』

 

「街にいるのね」

 

それからヨヨがエルの事について説明するとあげはは驚きの声を上げるが、それと同時にランボーグからの攻撃が近くに命中してその土煙を被ってしまう。

 

『私に任せてください』

 

それからヨヨはあげはに電話越しで指示を出す。その間にツバサはと言うと何かの覚悟を決める。

 

「風を読むんだ……」

 

それからツバサは鳥の姿に変身すると走っていき、プリキュア達と同様に飛び出す。それから翼をパタパタと動かして空を飛ぶ……

 

 

 

 

 

 

事は叶わずにそのまま落下してしまう。

 

「痛たた……やっぱりダメなのかな?プニバード族のボクが空を飛ぶなんて……」

 

それからツバサは街に行くためにボールのように変化するとコロコロと転がりながら坂道を下っていく。

 

 

その頃、街ではスカイ、プリズム、サンライズの三人が遥か上空にいるランボーグへと攻撃を仕掛けるために建物の壁を走っていった。勿論ランボーグからの攻撃を躱しながらである。それから三人は屋上に到着するとサンライズが太陽の鉄拳を構えを取った。

 

「スカイ、プリズム……タイミングを合わせて乗るんだ!」

 

サンライズの言葉に二人は頷くと小さくジャンプしてサンライズの真上に被さるように二人は飛ぶ。

 

「太陽の鉄拳!」

 

太陽の鉄拳

 

サンライズの手に巨大な拳ができたその瞬間、二人はその上に乗るとサンライズは思い切り拳を突き出して二人を巨大な拳ごと真上に打ち出す。

 

「「ジャンプ!」」

 

「そんな程度で届くものか!」

 

カバトンがランボーグの中から煽る中、スカイとプリズムは太陽の鉄拳が消える直前に跳び上がる。そのまま空中で体勢を変えてプリズムが下に、スカイが上になるとプリズムがスカイをドロップキックで上に飛ばしてスカイがランボーグへとグングン近づく。

 

「はぁあああ!」

 

スカイがとうとうランボーグへと到達してパンチを繰り出すが、それは空を切った。カバトンがランボーグを操作して更に遠くへと移動させたからだ。

 

「ズルくない!?それ!」

 

「あー、これはかなり厄介だな」

 

それからスカイは空中に留まろうと抵抗するが、それも虚しく落下していき、プリズムのアシストもあって何とか三人は同じ建物に揃う。しかしその瞬間、遥か上空のランボーグは何かのエネルギーをチャージしているようで紫色に光っていた。

 

「ねぇ……何かヤバそうじゃない?」

 

「ええ……ヤバヤバです!」

 

「取り敢えず、逃げるぞ!」

 

三人は危険を察知して咄嗟に逃げの一手を取る。その時、ランボーグからエネルギー砲が飛んできて三人を的確に狙い撃ち……

 

「チッ!二人共!」

 

その瞬間にサンライズは二人を突き飛ばすと一人だけそのエネルギー砲に飲み込まれて地面へと吹き飛ばされる。そして助けられた二人もその衝撃で建物の屋上に叩きつけられて気を失うのであった。




また次回もお楽しみに。


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空まで届け!三人のジャンプ

ランボーグの攻撃により発生した衝撃波が原因で吹き飛ばされたスカイとプリズム。二人は屋上で目を覚ますとそこには二人を心配するあげはがいた。

 

「あげは……ちゃん?」

 

「良かったぁ……」

 

それから二人はボーッとした意識の中、サンライズがいない事に気がつく。

 

「サンライズは?私の弟はどこに……」

 

プリズムがサンライズの心配をする中、あげはは申し訳なさそうにサンライズについて語る。

 

「サンライズは……さっき二人を庇った時に深傷を負っちゃって……それで今地上で休んでる。でも、多分あの子の事だから……」

 

するとサンライズが屋上にまで跳んでくると傷だらけの体を引き摺りながら三人元に歩いてきた。

 

「二人共……平気?怪我は無い?」

 

「サンライズ……ごめんなさい。私達のせいで……」

 

「大丈夫。このくらいは何とも……うっ!?」

 

サンライズは体への痛みでふらつき、あげはに支えられながら立つのでやっとだった。

 

「無理したらダメ、サンライズは休んでて」

 

「休んでなんかいられるかよ……俺はまだやれる」

 

サンライズは歯を食いしばりながら痛みを我慢し続け、二人の元に寄ろうとすると体に更に激しい痛みが走ってその場に崩れ落ちてしまう。

 

「サンライズ……」

 

「もう、無理したらダメだって!」

 

あげははサンライズに絶対安静を指示すると二人を連れてランボーグが見える位置に移動する。

 

「そういえばあげはさんはどうして?」

 

「……あなた達を追ってエルちゃんが飛び出しちゃって。それを追いかけてきてみたら三人共倒れていて、それにあれ!」

 

あげはが指を指すとそこにはランボーグへと吸い込まれるツバサとエルが見える。

 

「エルちゃん!」

 

「ツバサ君まで……どうして」

 

「質問は無し。二人を助けないと!」

 

それからスカイとプリズム、あげはの三人はあげはの作戦を実行するためにランボーグが見える位置にまで移動する。そこに安静にするように言われたサンライズも来た。

 

「サンライズ、来ちゃダメだって……」

 

「そんな事言ってられない!怪我なら我慢してみせる。二人の足は引っ張らない。だから俺にも手伝わせて欲しい。二人だけじゃ超えられない壁も俺達三人ならきっと超える事ができる!だから……」

 

サンライズの必死の言葉にあげはは考え込む。あげはとしては傷ついたサンライズをこれ以上無理させたくない。この作戦は元々スカイとプリズムが無理しなければできない作戦な上にそこに傷だらけのサンライズにまで無理を強いたく無いのだ。

 

「私からも……お願いします。サンライズを作戦の中に入れてあげてください」

 

「私も、サンライズを信じたい!」

 

スカイとプリズムに促されてあげははやむ得ないと言った顔つきで了承するとサンライズの役割を伝えた。そしてそれは先程よりもサンライズへの負担がかなり大きくなる役割だ。それをサンライズは嫌な顔一つせずに受け入れる。

 

「サンライズ、行けますか?」

 

「私達は皆サンライズを信じてる。だからお願い」

 

「勿論だ。やってやるよ!」

 

それから三人は頷くと共に今度は三人同時にジャンプする。それからサンライズは空中で以前の戦いで手にした新たな力を発揮する。

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!スタイルチェンジ!グリフォン!」

 

それからサンライズは力方面を強化した形態、グリフォンスタイルになるとスカイとプリズムの下に回り込むそれからサンライズは腕に炎のエネルギーを高めつつ両腕でパンチを繰り出す。

 

「これでどうだ!」

 

グリフォンスタイルとなりサンライズの力が増しているのを利用してサンライズは二人同時に、尚且つ先程よりも若干遠くまで二人を飛ばす。それからサンライズは屋上に受け身も取らずに叩きつけられた。

 

そして、残った二人はサンライズがダメージを更に負う様に苦しい表情を見せるがそれでも二人はサンライズの頑張りを無駄にしないために次の段階に進む。

 

「スカイ、行くよ!」

 

それからプリズムは先程同様にスカイの足場となってスカイを飛ばしてから両手で巨大な気弾を生成する。

 

「撃って!」

 

そこにあげはからの指示が入り、プリズムが気弾を撃ち出すとその反動でプリズムは更に落下速度が早まる。

 

「姉さんは……俺が守る!」

 

サンライズは痛みに軋む体を動かしてプリズムが落ちてくる際に下敷きとなり、プリズムへのダメージを少しでも軽減させる。

 

「サンライズ!?」

 

「二人の頑張り……無駄にはしません!」

 

最後にスカイがプリズムの気弾に乗りつつ気弾が残っている内に上へと移動し、最後のジャンプをする。しかし、それはランボーグまで到達せずにスカイも落下を始めてしまう。そして、落下するスカイもサンライズが受け止めつつまた下敷きとなってスカイへのダメージを軽減した。

 

「ッ……」

 

それを見たあげはは苦しそうな顔をするサンライズを気遣ってこの作戦を中止にする事を三人に告げる。

 

「ごめん……正直、私の作戦に無理があった。もっと別の……それに、サンライズへの負担があまりにも大きすぎる……だから」

 

「俺はまだやれる!二人よりも頑丈な俺にしかできない仕事だ……それにさ、女の子が叩きつけられるのを黙ってなんて見てられない。俺が下敷きになれば二人の負担も軽減するし、その分高く跳べる」

 

サンライズは身体中に激痛が走り、グリフォンスタイルが解ける中、それでもやると言っているのだ。スカイやプリズムがそんなサンライズに対して反対の意見を言うはずがない。

 

「サンライズがこんなに頑張ってるのに……」

 

「私達が諦めるわけにはいかないよ!」

 

それから三人は何度も何度も挑戦を続けていく。しかし、その度に失敗しては叩きつけられるのを繰り返し、サンライズの体は限界がどんどん近くなっていく。何しろ、サンライズはスカイとプリズムが落下ダメージをなるべく負わないように自ら下敷き代わりとなって二人の衝撃を受け止めているのだ。元々のダメージだけでなくそのダメージも加われば彼の体はすぐにボロボロになってしまう。

 

「サンライズ、もう無理したらダメ!二人に傷ついてほしく無い気持ちはわかるけど、サンライズもこれ以上やったら……」

 

「わかってる!!でもさ……自分の限界なんて幾らでも超えていきたい。俺の限界を他の人から決めつけられたくない。例え、あげは姉が相手でも」

 

サンライズはスカイとプリズムにやろうと促す。そしてそれを聞いた二人もやる気に溢れていたが内心はサンライズに負担をかけてばかりだと心苦しかった。

 

「サンライズ、次からはサンライズが上に行ってください」

 

「え!?」

 

そう言ったのはスカイだった。ここに来て跳ぶ順番を変えると言うのだ。サンライズが文句を言おうとするとスカイは手に握り拳を作って苦しそうな表情でサンライズを見つめていた。

 

「サンライズは無理のしすぎです!いつだってそう。思えばサンライズは大切な人を守るためなら自己犠牲を厭わない。それがサンライズの良い所で悪い所です」

 

「……スカイ」

 

「どうにかして私が二人を上に飛ばします。だからサンライズが一番上に回ってください」

 

スカイからの提案をサンライズは断ろうとしたその時、サンライズはハッとした。スカイやプリズム、あげはの顔つきが皆自分を心配し、気遣っている物だと気がついたからである。

 

「……俺は何をしていたんだ?自分の我儘のせいで皆をここまで心配させて……俺がしたいのは本当にこんな事?皆を心配させる事なのか?」

 

サンライズはそれを聞いて悩み、プリズムの方を向くと彼女もスカイの提案に賛成の顔つきをしていた。それだけサンライズは三人を心配させていたのだということを感じ取る。

 

「……わかった。二人共、信じて良いんだよね?」

 

「「勿論(です)!」」

 

サンライズは二人を信じるとあげはに順番の入れ替えによる作戦の練り直しを頼む。

 

「お願いあげは姉、俺はあそこまで行かないとダメなんだ。だから……」

 

「……なら、この手段で行こう」

 

それから三人はあげはからの提案を受けるとまた三人同時にジャンプする。すると今回はプリズムが一番下となりまずスカイを先行してキックで撃ち出す。その直後にプリズムは自らの浄化技を発動。

 

「ヒーローガール!プリズムショット!」

 

プリズムは巨大な気弾を発射する事でサンライズを一気に前へと押し出す。それから先に最高点に達したスカイが落下を始めてそれを後から加速したサンライズが追い抜く。

 

「今だ!スカイ!」

 

「ヒーローガール!スカイパンチ!」

 

そこに技の特性上、強制的に前に出る事ができるスカイパンチで先行するサンライズに追いつくとサンライズはスカイパンチで伸ばせるだけ飛距離を伸ばし、スカイの拳を踏み台にして更にジャンプする。

 

それからスカイとプリズムは屋上に落下し、それぞれ落下ダメージを負った。だが今までサンライズが守った分、二人はまだまだ健在だ。

 

「「サンライズ!」」

 

それからサンライズはランボーグへと肉薄していく……だが、あと一歩届かない。サンライズカリバーを使えば打点は足りるが、それでは躱された時に次の手を打てなくなる。

 

「俺は……二人の頑張りに答えるんだ。ツバサとエルを……助けてみせる!」

 

その瞬間、サンライズの体からまたエルがいないにも関わらず、スカイトーンが出現。そしてそれはサンライズの手に収まった。

 

「あの光は!?」

 

「もしかして、また!」

 

「今はこの力に……賭けるしかない!」

 

それからサンライズはスカイトーンをスカイミラージュに装填すると再びスタイルチェンジを発動する。

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!スタイルチェンジ!ドラゴン!」

 

するとどこからともなくドラゴンが飛んでくるとその姿がアーマーへと変化してサンライズへと装着されていく。それはグリフォンスタイルとは違ってパワードスーツでは無く、最低限の装甲しか無い軽めなスーツであり、両手には何かのエネルギー発生装置を搭載したアーマーが合体する。最後にサンライズの髪飾りが龍を模した物に変化し、キュアサンライズ・ドラゴンスタイルへと変身完了した。

 

「何あれ?」

 

「サンライズがまた進化した……」

 

「行くぞ!」

 

それからサンライズが手に力を込めると両手に赤いエネルギーが高められる。そこから四角く、足が置けるようなサイズの板が出現。それをサンライズは踏むといきなり上へと跳ねて飛距離が伸びた。

 

「まさかこれ……ジャンプ台の役割を果たしてくれるのか!?」

 

それからサンライズは両手にエネルギーを込めると四角い板が次々と召喚されていき、それを踏むたびに前へ前へと跳躍していく。そうして、とうとうランボーグの元に到達し、両手に召喚した双剣をランボーグへと突き刺すのであった。




また次回もお楽しみに。


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空に羽ばたく勇気の翼

サンライズがランボーグへと攻撃を命中させる少し前の事。ランボーグの内部へと取り込まれたツバサとエルはカバトンの前に突き出されていた。

 

ツバサは街にまで到達した後にカバトンに自分を狙うように言うがツバサではどうしようもできないのでただ逃げ惑うしかできない。そこにエルが抱っこ紐で助けようとするものの、重量オーバーで速度が出ずに捕まってしまう。そうして今のこの状況に至るのだ。

 

「(何をやってるんだ……ボクは。エルちゃんを助けに来たのに逆に足を引っ張ってるじゃないか)」

 

ツバサが落ち込む中、カバトンはバナナを食べながら二人と対峙する。

 

「お前、スカイランドのプニバード族だろ?」

 

「それが何だ?」

 

「聞いたことあるぞ。確か、空を飛べないダサダサな鳥」

 

カバトンが罵る中、ツバサはカバトンの前に出るとエルを守るように手を広げる。

 

「エルちゃんは渡さない。どうしてもと言うならこのボクを倒してからに……」

 

そう言った直後にツバサはカバトンに瞬殺されて目を回し、エルを攫われてしまう。

 

「お前さ、何でそんなに頑張っちゃってるの?アレかぁ。プリンセスを守れば王様からご褒美を貰えるかも……」

 

「そんなんじゃ無い。……こんな小さな子が知らない世界に放り出されて。助けたいと思うのは当たり前じゃ無いか!」

 

「わからん」

 

ツバサは立ち上がりながらカバトンへと必死に立ち向かおうとする。しかし、カバトンはそんな物どうでも良いとばかりにツバサへとバナナを投げてからエルを抱えて扉の向こうに去っていく。

 

「エルちゃん!」

 

「お前……なんか嫌い」

 

それからツバサはカバトンによって空中に放り出されてしまう。それからツバサは何とかエルの乗っていた抱っこ紐に乗ることで何とか地上への激突は免れたものの、自分ではどうしようもできないと考えていた。

 

「ボクじゃダメだ……あとはスカイとプリズム、サンライズに……」

 

ツバサはそう言うが、それでも脳裏に泣き叫ぶエルの姿を思い浮かべるともう一度ランボーグの中に潜入する。その時、カバトンは何やらトンネルを開くとそこで何かへとエルを連れて行った際に貰える報酬について交渉している様子だった。それからツバサは人間の姿となるとシャボン玉のような物に閉じ込められたエルを取り返そうと近づく。

 

「えるぅ!」

 

「シッ……」

 

ツバサはエルに静かにするように口に指を当てるとエルもそれを理解して指を口に当てる。

 

それからツバサはエルの捕まっているシャボン玉に触るとシャボン玉は壊れてエルを助け出した……が、それと同時にカバトンに見つかってしまう。

 

「赤ちゃん泥棒!」

 

「お前には言われたく無い!」

 

カバトンが追いかける中、ツバサはエルを抱っこして逃げ出す。その最中にカバトンは見事なブーメラン発言をかましてツバサにツッコまれる。それからカバトンは自分で捨てたバナナの皮に足を滑らせるとコケてしまい、ツバサはその間に自分が入ってきた窓から出るとエルを抱っこ紐に乗せて逃げるように言う。

 

「さぁエルちゃん。行って」

 

「えるぅ!?」

 

「一人で行くんだ」

 

ツバサはエルを一人で逃しつつ自分はその場に残ると言う。当然エルはそれを容認するはずが無い。エルは嫌だとばかりに首を振る。

 

「いたぁ!」

 

それからカバトンは小さな窓を無理矢理抜けると二人を捕まえるために出てくる。それからツバサはエルの抱っこ紐に捕まるとエルは抱っこ紐を動かす……が。やはり重量オーバーで動きが遅くなってしまう。

 

「やっぱりスピードが出ない!!」

 

「逃がすものか!」

 

カバトンはランボーグを操作すると逃げるエルを追いかけていく。勿論ランボーグの方が速いのでこのままでは捕まってしまう。その時、ツバサは覚悟を決めてエルへとそっと自らの意思を伝えた。

 

「エルちゃん……逃げて」

 

そう言ってツバサは抱っこ紐から手を離し、そのまま地面へと落ちていく。

 

「結局……飛べなかったな」

 

ツバサは目を閉じて浮かんだ走馬灯は自らの夢を嘲笑う里の者達だった。それからツバサは落ちていくと、その時いきなり落下が止まる。

 

「えるぅうう!!」

 

エルがツバサを見捨てられないとばかりに力を発揮して落下を阻止していたのだ。しかしこれではカバトンに追いつかれてしまう。

 

「エルちゃん!ボクの事は良いから!」

 

「えるぅ!」

 

「掃除機光線発射!」

 

するとエルの真上に回ったランボーグから対象を吸い込む光線が発射された。

 

「える!?えるぅ!!」

 

「エルちゃん!」

 

「バァカ!そんな脇役放っておいてさっさと一人で逃げとけば良かったのに……」

 

カバトンはそう言ってエルを嘲笑い、自らの勝ちを確信する。しかし、吸い込まれていく刹那に浮かべたエルの涙を見たツバサがこの事態を黙っているわけがなかった。

 

「やめろ……エルちゃんを……笑うなぁああああ!!」

 

ツバサが叫んだその時、ツバサの胸からオレンジの光が溢れ出る。そしてそれは今まで何度も出てきたプリキュアに覚醒するための光だ。

 

「嘘だろ?あんな脇役が?プリキュアになるって言うのか?」

 

「もし、ボクに最期が訪れたとしたら……その時に思い出すのはボクを笑った人達の顔じゃ無い。プリンセス、ボクを守ろうとしてくれたあなたの顔です!」

 

そして、光はミラージュペンへと変化し、ツバサはそれを掴んで更なる決意を表明する。

 

「でもそれは今じゃ無い。だってこれからは、ボクがあなたを守るんだから!」

 

「させねぇ!」

 

その瞬間、エルを吸い込んでしまえばプリキュアにはならないと考えたカバトンが光線の出力を強化する。

 

「えるぅ!?」

 

「プリンセス!」

 

だが、その時。ドラゴンスタイルへと進化を果たしたサンライズの突撃がランボーグを貫く。

 

「喰らえ!」

 

サンライズの攻撃はランボーグに突き刺さり、その攻撃が影響してランボーグ内部に存在する計器が爆発して機能不全へと陥っていく。

 

「「届いた!」」

 

「よっし!」

 

これにより、掃除機光線が止まってエルが解放される。そしてその瞬間、エルは自らの力を発動させてツバサへとスカイトーンを射出した。

 

「ぷりきゅあああ!!」

 

そしてそれはツバサの手に握られるとオレンジのスカイトーンに変化。ツバサはそれとペンを使って変身する。

 

「プリンセス・エル!あなたのナイトが参ります!」

 

それからペンはスカイミラージュへと変化。スカイトーンを装填して掛け声を言い放つ。

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!ウィング!」

 

するとマイクにWINGの文字が出現し、ツバサがステージへと降り立つ。その瞬間、髪の毛が明るいオレンジに染まり、更に頭の上で丸まっていた鶏冠がアホ毛となる。そして鳥の尾を模したように細長いアンダーポニーテールへと変化。続けてオレンジのブーツを履く。

 

「煌めきホップ!」

 

煌めきホップでは小さな黒のハット型の髪飾りが装着されて耳にピアスのような物が装着される。

 

「爽やかステップ!」

 

爽やかステップでは体に紳士服を模した服が装着され、足にはショートパンツに腰からローブを下げる形となる。右足には赤いリボンタイが巻かれていた。

 

「晴々ジャンプ!」

 

晴々ジャンプでは両手にグローブが付けられて、そのまま空を自在に飛び回り、変身を完了する。その姿は男の子らしい姿で纏まっていた。

 

「天高くひろがる勇気!キュアウィング!」

 

ツバサが名乗りを終えると、ツバサ……いや。キュアウィングはエルの力無しでも空に停滞していたのだ。

 

「キュア……ウィング!」

 

「ここに来て新たなプリキュアの誕生……だな!」

 

ウィングはそれから空へと舞い上がると自由自在に空を飛んでいく。そうしてエルを抱えるとランボーグから遠ざかった。

 

「空を飛ぶプリキュア……ツバサ君、頑張ったね!」

 

その様子を地上から見ていたスカイは目に涙を浮かべて感動した様子だ。その時、ランボーグに剣を突き刺していたサンライズは剣が消えて落下を開始する。

 

「はっ!サンライズ!掴まってください!」

 

「大丈夫!俺にはこれがあるから!」

 

そう言うとサンライズは空中にまた幾つものジャンプ台を召喚してそれを足場代わりにしつつスカイ、プリズム、あげはのいる屋上へと降りて行った。そこにウィングとエルも合流する。

 

「ウィング!サンライズ!エルちゃん!」

 

「やるじゃん!少年!」

 

あげはに声をかけられてようやくウィングは自分が空を飛べたという実感が湧き、そして自分の父の言葉を思い出す。

 

ツバサの父は“何故飛べたのか”と聞いても“ただ必死に飛んだとしか言えない”としか言わなかった。そしてツバサもその意味をようやく理解することになる。

 

「認めねぇ!空が飛べたからって何なんだ!強ぇええのはこの俺なんだ!」

 

そう言ってカバトンは先程三人を吹き飛ばしたランボーグからの強烈な光線を発射させるための溜め時間に入る。

 

「またアレが来るよ!」

 

「もう、撃たせません!だって今はキュアウィングがいるんですから!」

 

「俺も手伝うよ。ウィング一人には背負わせない……俺達はチームだからさ」

 

「える!」

 

皆からの声援を受けてウィングは笑顔になると頷き、エルへと声をかける。

 

「はい、行ってきます!プリンセス!」

 

そう言ってウィングは空へと飛び上がり、それに続くようにサンライズは空中にジャンプ台の道を作るとそれを次々踏みながら空へと舞い上がる。

 

「来るならこいやぁ!」

 

「一度やると心に決めた事は絶対に諦めない!それがヒーロー!そうボクは決めた!プリンセスを守るのは……キュアウィングだ!」

 

それからウィングはどんどん加速。それから夕日のエフェクトをバックにエネルギーを纏っていくと羽を舞い散らせながらランボーグへと突進するウィングの浄化技……

 

「ひろがる!ウィングアタック!」

 

そしてそれはランボーグを貫き、翼のエフェクトと共にランボーグは落下を開始する。

 

「何で負けるのねん!カバトントン!」

 

カバトンは故障したモニターや計器を前に悔しそうにしながらその場から撤退。そして、残されたランボーグを倒すのはサンライズの役目である。

 

「サンライズ!後は任せた!」

 

「任された!」

 

サンライズはジャンプ台を使って加速していき、ランボーグの上を取ると炎を纏いながら両手に剣を召喚してそれを前に投げつけると剣は合体し、形を変えて龍のエフェクトへと変化する。それから龍は咆哮を上げてランボーグの真上から撃破するために繰り出すドラゴンスタイルの浄化技。

 

「ひろがる!サンライズドロップ!」

 

「スミキッタァ〜」

 

サンライズが真上から龍のエフェクトと共にドロップキックを命中させるとそのまま地上にまでランボーグを押し込み、地上に激突する際にエネルギーが流し込まれて浄化。撃退に成功する。

 

それからサンライズとウィングが屋上にいる面々の元に戻るとスカイ達が駆け寄った。

 

「ウィング、サンライズ!やりましたね!」

 

「「はい!」」

 

それからその場の面々は勝利を喜び合う。その直後、サンライズは変身解除してその場に座り込むと寝てしまう。

 

「ちょっとあさひ!?」

 

「あれだけ無理してたんです……きっと疲れたんでしょう」

 

「もう、しょうがないなぁ……」

 

そう言ってあげはがエルを変身解除したツバサに任せてあさひを背負うと一緒に帰路につく。あさひの顔は幸せそうであり、それはこの一件をちゃんと終わらせられた事に対する安心感だと皆は理解した。こうして、この日もプリキュア達の勝利で幕を閉じるのである。




また次回もお楽しみに。


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ツバサの歓迎パーティをやろう!

ツバサがキュアウィングとなって数日後の夜。ましろの部屋での事だ。ましろが父と母に手紙を書いていたのだが、そこにあさひが入ってくる。

 

「姉さん、入るよ」

 

「あさひ……」

 

ましろはちょうど手紙を書き終えたようであさひの方を向く。それからあさひは話し始めた。

 

「姉さん……何か悩んでる?」

 

「え?」

 

あさひの質問にましろは驚く。何故ならちょうど今、ましろは悩んでいた所でそれを見透かされたからだ。

 

「なんで……」

 

「姉さんが俺の事をわかるように俺も姉さんの事は大体わかる。何年一緒にいると思ってるの」

 

「……ねぇ、あさひ。将来の夢やなりたい目標ってあさひにはある?」

 

ましろの質問にあさひは黙り込んでしまう。あさひ自身もそのことについて悩んでいるからだ。あさひもましろ同様に将来の夢や目標が特に無く、その事について言われたことがある。

 

「……俺も特に無い」

 

それからあさひは申し訳なさそうに小さく呟いた。それを聞いてましろは“そっか”と返す。

 

「姉さん……夢や目標が無い俺が言うのも違和感が出るかもしれないけどさ。……無理に今すぐ夢を求めなくても良いんじゃないかな」

 

「……え?」

 

あさひの言葉にましろは驚くとあさひは言葉を続けていく。まるでましろの不安を取り除くように。

 

「姉さんはちょっと焦りすぎだと思う。ソラもツバサも夢や目標を持ってるけど、それは二人が絶対に叶えたい目標として立っているから二人共あんなに真剣になれてるんだ。そしてそれは今すぐ見つけなければ絶対にダメって話じゃない。だから……」

 

そこまで言った所であさひは言葉に詰まってしまう。あさひもあさひで実の所は焦っているのだ。自分にもちゃんとした目標がいると。それなのにそれさえ決められないダメな自分にモヤモヤしていたのだ。それを察したのかましろはあさひを優しく撫でる。

 

「ふふっ……ありがと、あさひ。私を元気付けてくれようとしてたんでしょ?」

 

「ちょっ、ちょっと姉さん!俺はもう子供じゃ……」

 

「そうだよね……無理に今決めなくても良い。私達の夢はゆっくり探そっか」

 

それからその日の夜はそれぞれ寝ることにして翌日に移る。その日の朝、あさひ達はツバサの歓迎パーティをしようという話になった。

 

「歓迎パーティですか?」

 

「そう!新しくプリキュアになったツバサ君とこれから一緒に頑張っていこうというパーティをしたいと思って」

 

「姉さん、テンション高いのは良いけどさ……ツバサ、そこの鳥小屋にいるよ?」

 

あさひがそう言うと鳥小屋にいたツバサがポンッと音を立てて人間の姿へと変身する。

 

「歓迎パーティ?ボクのですか!!」

 

「うわあっ!ツバサ君、そこにいたんだ……まだちょっと慣れないな」

 

「えっと、そんなに気を遣ってもらわなくても……」

 

「大丈夫です!私はやりたいです、ツバサ君の歓迎パーティ!」

 

「える!」

 

ソラもエルもやる気満々みたいであさひもそれに頷き、その場の全員がやる事に賛成する事になる。

 

「ツバサ君、ダメかな?」

 

「いえ……ダメってわけでは……嬉しいです」

 

「では、開催決定ですね!」

 

それから早速歓迎パーティの準備に取り掛かる事に決まった。それにツバサも参加すると言い、三人はそれを受け入れて四人で準備する事になる。早速準備に取り掛かり、飾り付けについて話し合ってから今度は料理についての相談に変わった。

 

「ツバサ君、何か食べたい物ってある?」

 

「やっぱりパーティと言えばヤーキターイですね」

 

「そっかぁ、ヤーキターイ……え?」

 

「姉さん……思考停止しちゃったな。ソラ、ヤーキターイが何か知ってるか?」

 

思考停止したましろに変わってあさひがソラにヤーキターイについてを聞く事にする。そして、ヤーキターイとはプニバード族が食べるお祝い料理だそうだ。

 

「外はフワフワ、中はしっとり甘くて凄く美味しいんですよ。最後に食べたのはここに来る少し前だったんだよなぁ」

 

どうやらツバサが最後にヤーキターイを食べたのはツバサが描いた絵がコンクールに入賞した際にお祝いとした食べた時でツバサの父と母と共に食べたヤーキターイは絶品だったそうだ。

 

「そういえば、ツバサ君はもうずっとこっちの世界にいたんですよね」

 

「あ、ホームシックとかじゃないですよ?両親とはヨヨさんのミラーパッドで連絡も取れてますし」

 

「作ってみようよ!ヤーキターイ」

 

ましろの提案にツバサは疑問を浮かべる。ツバサ本人も作り方がわからない。味だって再現できるかもわからないのだ。

 

「それは……」

 

「諦めずにチャレンジです!」

 

「だな。むしろそうする以外に手は無いでしょ。まずはおばあちゃんに聞いてみるのが一番だと思う」

 

あさひの意見に全員が賛成し、ヨヨの元に行くとヤーキターイについてはミラーパッドでわかるらしく、しかも作り方もわかるそうだ。

 

「ミラーパッドが優秀すぎる……」

 

「こんなにあっさりわかるなんて……」

 

それからヨヨが完成状態の絵を見せるとあさひとましろが驚きの声を上げる。

 

「「えぇ!?」」

 

「そう!これがヤーキターイです!」

 

「へぇ、魚の形をしてるんですね!」

 

「まぁ、スカイランドでもプニバード族に伝わる特別な料理ですから!」

 

ツバサが自信満々に説明しているとあさひとましろはその料理を見た事あるので拍子抜けしてしまっていた。

 

「うーん、これって私達の世界の……たい焼きだね」

 

「「えぇ!?」」

 

「というか、よくよく名前を見たらヤーキターイってたい焼きの文字を入れ替えただけだしなぁ……」

 

それからヨヨの説明が入る。ヤーキターイの生地にはプニ麦粉が、中身はプニの実が使われているらしく、たい焼きとは味が少し変わってしまうそうだ。

 

「じゃあ……こっちの材料でたい焼きを作るからツバサ君、食べてみて!」

 

「はい!」

 

それからましろとあさひが中心となってたい焼きを作る事になり、暫くしてたい焼きが完成するとそれをツバサの前に出した。

 

「これがたい焼きだよ!」

 

「見た目はヤーキターイと全く同じですね!」

 

「後は味ですね」

 

「ツバサ君、食べてみて」

 

それからツバサがたい焼きを食べようとするとソラとましろがジッとツバサを見つめる。その影響か、ツバサは食べづらそうにしていた。

 

「ソラ、姉さん。気になるのはわかるけど見つめられると余計に食べづらくなるでしょ」

 

「はっ……」

 

「ごめんね、ツバサ君」

 

「いえ……それでは」

 

それからツバサはたい焼きを一口食べてみる。それを見てすぐに二人はツバサに味について確認した。

 

「どうかな?」

 

「どうですか?」

 

「……美味しいです!」

 

「という事は……」

 

「ヤーキターイと同じ味かな?」

 

そこまで聞いた所でツバサは言葉を詰まらせる。やはりというか、案の定というか、全く同じ味にまではならないようだ。

 

「でも、美味しいですし十分ですよ」

 

「ううん。ここからがスタートだよ」

 

「そうだな。ツバサがヤーキターイとたい焼きの味の違う部分を教えてくれればヤーキターイが作れるはずだ」

 

「なるほど!」

 

ツバサが言うには生地の味は殆ど同じなのだが、中身のあんの味が違うのでそれを変えて作るという結論に至った。そこからは楽しい料理の時間が始まった。四人であんを変えたたい焼きを次々と作っていく。ある時は小麦粉を被って粉まみれになって笑い合い、ある時は上手く焼けるように祈りながら待ったりして試行錯誤を繰り返す。

 

こうして、出来上がった幾つものたい焼きをツバサに試食してもらう。それからツバサは全て試食してみるものの、どれもヤーキターイとは違う味になっていた。

 

「そっか……」

 

「一筋縄ではいかないよな……」

 

「でも、どれも美味しかったですよ」

 

それを聞いて皆で笑い合う。そして、ましろはまだまだやる気な様子であった。

 

「じゃあ……まだまだチャレンジ!」

 

「材料を買い足してどんどん作っていこうか」

 

それから四人は街に出かけると買い出しを行い、ヤーキターイのあんの候補となるものを探して買う事になる。その帰り道、堤防の上を四人で歩いていた時の事だ。

 

「蜂蜜とカスタード、オレンジに果物!後は……」

 

「シャケです!思いつく物は全部買いましょう!」

 

「……魚ってあんにできたっけ?まぁ、やれるだけの事はやるけどさ」

 

ソラの言葉にましろは苦笑いし、あさひはツッコミを決める。昼も過ぎて遠くの空に夕焼けの色が見え始めたためにもう時間もあまり無い。

 

「もう時間も無いし、それで上手く作れれば良いけど」

 

「大丈夫。きっと何とかなるさ」

 

「そうだね!」

 

「ありがとうございます。ましろさん、あさひ君。ボクのために……ソラさんとこんなに頑張ってくれて」

 

「お礼なんて良いよ。私はツバサ君にヤーキターイを食べて、喜んでもらいたいだけで」

 

「俺も折角のツバサの歓迎パーティだし、ツバサに喜んで貰えればそれで十分。それにさ、姉さんの手伝いをするのは昔からの癖みたいな物だし」

 

二人がそう言うとツバサに続く形でソラもましろへと話しかける。

 

「思い出します。私もここに来たての頃、ましろさんにスカイランドをイメージした雲パンを作ってもらいました。それが、凄く嬉しくて……ましろさんの料理は食べた人を笑顔にする不思議な力があるんですよ!」

 

「はい!」

 

「思えば姉さんの料理はいつも絶品だし、それは姉さんの想いの込もった料理だから余計に美味しく感じるのかもな」

 

三人の言葉にましろは照れ臭くなったのか少し顔を赤くしつつそんな事は無いと返す。

 

「……私が初めて料理をしたのはね、お仕事で疲れているパパとママにおにぎりを作ってあげようとしてね……」

 

「そうだったな。俺も姉さんも上手く作れなくてその時は泣いちゃってさ、そこに二人が気づいて一緒に作ってくれた」

 

「あの時食べたおにぎりはとっても美味しくて、皆笑顔で、ずっと忘れられない味……」

 

その味はあさひやましろにとって、ツバサのヤーキターイと同じように言えるような味だったと二人は話す。それにツバサは何かに気がついたように足を止めた。

 

「わかりました!ボクはヤーキターイを食べたかったんじゃ無くて……本当は……」

 

ツバサが三人へと何かを言おうとしたその時、突如としてスピーカー越しに聴き覚えのある声が聞こえてくる。

 

「かばや〜きいも〜おいも〜おいもだよ〜!」

 

四人がその方向を向くとそこには焼き芋屋に変装したカバトンがメガホンを片手に焼き芋を勧めていたのだった。




また次回もお楽しみに。


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ツバサが本当に欲しかった物

ツバサが大事な事を言おうとしたその瞬間、焼き芋の屋台に扮したカバトンがメガホンで大きな音を立てて邪魔をしてきた。

 

「ほらほら!甘くてホッカホカ!美味しいのねん!」

 

そう言うカバトンを四人はスルーして話を先に進めようとする。

 

「アレは無視して良いな」

 

「ツバサ君、教えて」

 

「本当に食べたかった物は?」

 

「それは……」

 

そこまで言った所でカバトンも無視された事に憤ったのかまた邪魔するように声を張り上げる。

 

「ちょいちょいちょーい!聞いてんのか!美味しい焼き芋なのねん!」

 

「今大事な所なので後にしてください!」

 

「カバトンなんて気にしないで話を続けて」

 

「えっと……」

 

更に無視されたからかカバトンは更に声を張り上げて四人の良い時間を邪魔してきた。

 

「美味しい焼き芋なのねん!」

 

「ごめん!ちょっと静かにしてて!」

 

そこまで言われて流石のカバトンもイライラが最高点に達すると変装を脱いで怒りを露わにする。

 

「石焼き芋屋に化けてお前らを油断させる作戦だったが……カモン!アンダーグエナジー!」

 

「ランボーグ!」

 

カバトンは最後の手段としてランボーグを呼び出すと今回は焼き芋を模したランボーグが出てきた。

 

「「「邪魔すんなよ(しないで)(ください)!」」」

 

あさひ、ソラ、ましろの三人は同時にカバトンへの文句を言うとましろの呼びかけと共にミラージュペンを取り出す。

 

「皆、行くよ!」

 

「「「「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!」」」」

 

「スカイ!」

 

「プリズム!」

 

「ウィング!」

 

「サンライズ!」

 

今回は初めての四人での同時変身を行い、それぞれプリキュアへと変身を完了するとそれぞれ名乗りをしていく。

 

「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」

 

「ふわりひろがる優しい光!キュアプリズム!」

 

「天高くひろがる勇気!キュアウィング!」

 

「夜明けにひろがる眩い朝日!キュアサンライズ!」

 

「「「「レディ……ゴー!ひろがるスカイ!プリキュア!」」」」

 

四人は変身を完了するとランボーグへと向き合う。そして、カバトンはいつも通りにランボーグへと攻撃指示を出した。

 

「出たなプリキュア!熱々の焼き芋弾で四人纏めて芋っちまえ!」

 

するとランボーグは左手の砲台から次々と焼き芋型のエネルギー弾を連射。四人はそれをジャンプで躱すとまずはウィングをターゲットにする。ウィングは空中を自由自在に飛び回りながら回避し続けていく。

 

「たあっ!」

 

そこにスカイが後ろから攻撃を加え、更にサンライズからの火炎弾が命中する。

 

「数の上ではこっちが有利なんだよ!」

 

それからサンライズがランボーグからのヘイトを買い、その隙にスカイとウィングが両サイドから挟み撃ちにする。

 

「はあっ!」

 

追撃としてプリズムが気弾を連続射出。ランボーグもそれに対抗するように焼き芋弾を連射。二つの攻撃は中央でぶつかり合う。

 

「ほらほら負けるな!芋っちまえ!」

 

ランボーグはそれに応えるようにプリズムの気弾を押し始める。プリズムはその出力に押されていく。

 

「くうぅ……」

 

「どうだ強ぇええだろ!もっと撃って撃って撃ちまくれなのねん!」

 

「させるか!」

 

そこにフリーになったウィングが空から奇襲をかけてランボーグの攻撃を中断させるとそのままウィングは太陽の光を背にしてランボーグとカバトンはその光をモロに見てしまい、視界を奪われる。

 

「はあっ!」

 

「今だ!」

 

ランボーグが怯んだ隙をウィングとサンライズは見逃さない。すかさず接近して踵落としと剣による斬撃がランボーグを襲い、ダメージを与えた。

 

「たあっ!」

 

そこに地上にいるスカイからの追撃が決まり、ランボーグは押されていく。

 

「スカイ!ウィング!サンライズ!凄いよ!」

 

四人がカバトンとランボーグを囲むように陣取るとカバトンは流石に不味いと判断したのか焼き芋を両手に持つとそれを食べる。

 

「何で芋を……あっ!」

 

サンライズはカバトンが何をするのかを瞬時に理解。すぐに後ろへと跳んだ。

 

「喰らえ!」

 

カバトンは特大のオナラを周囲に向かって放出。そしてそれは咄嗟に後ろへと避けたサンライズを除く三人がまともに喰らう事になり、その臭いの凄まじさに鼻を抑える。

 

「くさ〜!」

 

「うぅ……」

 

「臭いよぉ……」

 

「今だ!ランボーグ!」

 

「させねーよ!」

 

そこに間一髪でカバトンのオナラを回避したサンライズがランボーグを後ろから殴り飛ばす。

 

「なっ!?何で喰らってないのねん!ぐぬぬ、やはりお前は厄介な奴だ……だったら、さっき食った焼き芋のカロリーをくれてやる!カモン!アンダーグエナジー!」

 

「はぁ!?」

 

すると全く同じ焼き芋のランボーグがもう一体召喚されるとランボーグは二体分に増加。まさかの事態にサンライズも驚くばかりだ。それから今召喚されたランボーグはサンライズを狙い攻撃を仕掛けていく。

 

「チッ!」

 

サンライズは手に長剣を出すとランボーグとの一対一を強いられる。その隙にもう一体がプリズムへと焼き芋弾を発射。プリズムはそれを気弾で防ぐがそれによって発生した煙幕がプリズムの視界を奪う。

 

「ランボーグ!」

 

煙が収まった時にはランボーグがプリズムの目の前に立っており、プリズムはランボーグからの攻撃をまともに受けてしまう。

 

「「「プリズム!」」」

 

「オラオラどうした?プリキュアさんよ!まずは一匹撃破!」

 

「……してないよ!」

 

煙が晴れるとそこには堤防の土手に叩きつけられながらも、しっかり防御していたプリズムが体に傷を負いながら立っていた。

 

「私は……まだ、戦えるよ!」

 

「姉さんをよくも……」

 

サンライズは怒りの感情を高めると新しく召喚されたランボーグを蹴り飛ばしてプリズムの元に駆け寄る。そして、スカイやウィングも合流した。

 

「皆、ここからだよ!力を合わせればきっと勝てる!」

 

プリズムの激励に三人は頷く。するとカバトンはそんなプリズムを嘲笑うと馬鹿にし始めた。

 

「ケッ、空も飛べない!身軽でもない!ついでに炎も使えない!そんな弱ぇえ雑魚が何を言ってやがる!」

 

カバトンにそう言われてプリズムが落ち込んだように俯く。それを聞いてサンライズは更に怒りを高めていた。

 

「姉さんを……馬鹿にしたのは……不味かったな!」

 

そう言うとサンライズはランボーグ相手に接近して一瞬にしてランボーグを吹き飛ばすともう一体も剣を投げつけてそれを命中させると炎で相手を包み込む。

 

「ラ、ランボーグ!?」

 

「姉さんは、プリズムは弱くなんかない!」

 

その間にもう一体が立て直し、スカイとウィングへと焼き芋弾を放っていく。

 

「そうだ!お前は何もわかってない!プリズムには、誰にも負けない優しさがあるんだ!」

 

「その通りです!プリズムは、その優しさでいつも私を照らしてくれます!それがどんなに心強い事か!」

 

そしてスカイとウィングもランボーグを相手に接近しつつランボーグからの焼き芋弾を粉砕していく。

 

「ボクのためにヤーキターイを作ろうとしてくれた!おかげでボクは大切な事に気がつく事ができた!」

 

「プリズムは、姉さんは周りの皆を照らしてくれる輝きを……」

 

「「「持っているんだ!」」」

 

三人は同時にランボーグへと攻撃を繰り出してダメージを与え、二体纏めて吹き飛ばした。

 

「スカイ、ウィング、サンライズ!」

 

「黙れ黙れ!何を訳のわからない事を言ってやがる!強ぇえって事はこう言う事なのねん!」

 

すると二体のランボーグはそれぞれ腕から先程とは比べ物にならない程の巨大な焼き芋弾を発射してくる。

 

「どうだ?スーパーダブル巨大焼き芋ミサイルだ!」

 

スカイとウィングが構える中、サンライズとプリズムが二人同時に浄化技を繰り出す。

 

「ヒーローガール!プリズムショット!」

 

「ひろがる!サンライズカリバー!」

 

「私の大切な友達に……手出しはさせないよ!」

 

「姉さんを馬鹿にした事、後悔するんだ!」

 

二人の攻撃は焼き芋弾を粉砕するとランボーグのバランスを崩させる。そしてその時こそがサンライズの狙い通りの瞬間だった。

 

「ウィング!」

 

サンライズの声にウィングは反応すると空へと飛び上がり一気に加速。浄化技を発動する。

 

「ひろがる!ウィングアタック!」

 

その一撃は二体のランボーグの内、一体に命中するとランボーグの体を貫通し、浄化のエネルギーで包み込む。

 

「スミキッタァ〜」

 

「な!?ラ、ランボーグ!サンライズを……」

 

「遅い!炎牙無限衝!」

 

サンライズが連続で炎の斬撃を放つとランボーグは切り刻まれてダメージを負い、怯んでしまう。そしてその隙を作るのがサンライズの思惑だ。

 

「スカイ、プリズム!」

 

スカイとプリズムはスカイトーンを出すと二人による合体技を発動。スカイミラージュに装填する。

 

「スカイブルー!」

 

「プリズムホワイト!」

 

「「プリキュア!アップ・ドラフト・シャイニング!」」

 

「スミキッタァ〜」

 

二人による合体技はランボーグを浄化すると撃退に成功。これによりカバトンは二体のランボーグをどちらも失う事になった。

 

「カバトントン!」

 

カバトンは焼き芋の屋台と共に撤退。それから夕陽が傾く中、四人は堤防の上に座って話をする事になる。

 

「気づいたんです。本当は、ただヤーキターイを食べたかったんじゃなくて父さんや母さんと一緒に食べた楽しい時間を過ごしたかったんです」

 

それを聞いてあさひもましろもハッとする。それは先程二人が話した内容に直結するからだ。

 

「……その事に気づけたのはましろさんやあさひ君のおかげです。だって今日、あさひ君、ましろさん、ソラさんとヤーキターイを作ろうとして、それが凄く楽しくて。出来上がった物を食べてみたら、あの時と同じくらいの美味しかったから」

 

ツバサにとって大事だったのはスカイランドのヤーキターイを再現する事ではなく、友達と過ごしたこの楽しい時間そのものだったのだ。

 

「味は違っても今日皆で作った料理は、ボクらのヤーキターイです!」

 

それから四人は帰ってから歓迎パーティを開き、それをめいいっぱい楽しむ事になる。

 

「(パパ、ママ、今日は私の中の輝きを信じられるような日になったよ)」

 

その日の夜、ましろは父や母への手紙を再び書き、自分の中に芽生えた新たな思いをつらつらと書いたのだった。




また次回もお楽しみに。


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すれ違う想い

今回はアニメ11話の前のオリジナル回です。それではどうぞ!


ツバサの歓迎パーティを終えてから時間が経った。その間カバトンによる襲撃も無く、平穏な日々を過ごしていたのだがあさひは悩んでいる様子だった。

 

「はぁ……どうしよう。ここ最近、あげは姉とまともに会話できてない」

 

あさひが最後に一対一であげはと会話をしたのは前に電話をした時だ。しかもその時は自分が悩んでいたのであまり雑談ができずにいた。あさひとしては二人きりでゆっくりと話がしたいのだ。

 

「ひとまず電話でこっちに来れるか聞いてみようかな?」

 

それからあさひは思い立ったが吉日とばかりにあげはへと電話をかける。数コール後に電話の相手、あげはは出てくれた。

 

『もしもし、あさひ?』

 

「あ、あげは姉……えっと、その……」

 

『何?何か悩み事でもあるの?』

 

「そうじゃなくて……今日って時間空いてる?」

 

『……もしかして私と会いたい感じ?』

 

あげはに自分の感情を見透かされてあさひはビックリしたが、それでもやりたい事が当たっていたので肯定の意思を示す。

 

「そうだよ。俺はあげは姉と会いたい」

 

『オッケー。それじゃあ場所はどうする?』

 

「場所は……」

 

それから二人はソラシド市にある喫茶店で会う事となった。先にあさひが到着して待っているとあさひは後ろからいきなり声をかけられる。

 

「わっ!」

 

「うわぁっ!」

 

あさひはあげはからいきなり声をかけられた影響か、驚いてしまう。

 

「あ、あげは姉……びっくりしたじゃん」

 

「ごめんごめん。でもやっぱりあさひはそういう所が可愛いよ」

 

「可愛いって……それはあげは姉の方だよ……」

 

「え……」

 

あさひからの思わぬカウンターにあげはは一瞬驚くが、すぐに平静を装って喫茶店の中に入る事になる。

 

「それで、今日は何の話をしたいの?」

 

「……正直まだ何も決まってない。あげは姉とお話しはしたいと思ったけど具体的な内容はまだ……」

 

「そっか。じゃあ私から聞くね。……あさひには夢や目標とかある?」

 

最初にあげはから飛び出した質問、それはましろと同じであさひが見つけたいと思っている将来についてだ。

 

「……無い。俺には特に目立った長所も、誰かに比べて秀でてる所が無い。だから何になるのが正解なのかがわからなくて……ソラはヒーロー、ツバサは空を飛ぶ。二人にはちゃんと目標がある」

 

「ふうーん。でも私はあさひは凄い頑張り屋さんだと思うよ」

 

「でも、それはあくまで頑張っているだけで……」

 

あさひにとって何事にも一生懸命になる姿勢は自分にとって当たり前だと思ってる。当たり前だからこそ長所に思えないのだ。

 

「姉さんは俺なんかより周りに優しさを与えて心を温めてくれる。姉さんにできるなら双子の俺にもできると思った。けど、無理なんだ。俺には姉さん程に相手を温かく包み込む力なんて無い。俺に目立った長所はどこにも無い。だから、俺なんて……」

 

その瞬間、あげはの指がいきなりあさひの口に当てられると言葉を遮られた。あげはのいきなりの行動にあさひは驚いて戸惑うばかりだ。

 

「その“なんて”って付けるの禁止。あさひにはあさひなりの良い所がある。他人と比べて劣等感を感じるのは自由だけど、それじゃあ前は向けないよ」

 

あげははあさひを励ますようにそう伝える。それから小声で呟いた。

 

「ほんと、昔私が好きになった男なんだからもっとちゃんとしてくれないと……」

 

「あげは姉?」

 

「何でも無いよ。ほら、何か頼まない?お金は出すから」

 

「そんなの、あげは姉に悪いよ」

 

あさひは最初、遠慮していたがあげはに諭されて渋々頷いて頼む事にした。

 

「そういえばさ、あげは姉は沢山こっちに来てるけど最近大丈夫?保育士さんの学校の宿題とか溜まってないの?」

 

「大丈夫。私は超優秀だしさ……」

 

あさひがそれを聞いた途端疑問が浮かんだ。長い間会ってなかったとはいえ、あげはの性格は幼少期に一緒にいた事でよくわかっている。

 

「……あげは姉。嘘は吐かなくていいよ」

 

「え!?」

 

「はぁ……やっぱり図星か。……ごめん。大変な時に呼び出すような事しちゃって……」

 

あさひはあげはの内情を知って自分のせいでこうなってしまった事に対する謝罪をした。

 

「本当に謝らなくて良いよ!私がちゃんとしてないのが原因だし……」

 

それから二人はまま談笑を続けながら話は進み、あさひにあげはからある質問が飛ぶ事になる。

 

「そういえばさ、あさひには好きな人とかいるの?」

 

「……え?」

 

あまりの不意打ちな質問にあさひはポカンとして、その直後顔を真っ赤に染める。

 

「い、いないよ……そんな人」

 

「ふうーん?じゃあ何でそんなに顔を真っ赤にしてるのかな〜?」

 

あげははあさひを揶揄うようにそう言い、あさひはプクッと頬を膨らませる。しかし、あさひとしてはいきなりあげはからそんな事を言われればビックリして恥ずかしがるのも当然だ。

 

「あげは姉、ちょっとズルいよ」

 

「えぇー?でもさ、あさひに好きな人がいるなんてねぇ……どんな人かな?」

 

あげははここぞとばかりにグイグイと迫ってくる。あさひは顔から湯気が出てきて恥ずかしがり、なかなか答えを返せなかった。

 

「好きな人というより……俺の好みの人と言うか……」

 

「好みの人?それってどういう人かな」

 

「……優しくて、可愛くて、俺の事をちゃんと見てくれて……明るくて……」

 

「ソラちゃんみたいな人?」

 

「うーん、似てるけど違うかな……確かにソラは今言った事に当てはまるけど、ソラは俺の大事な友達。恋愛感情は無いよ」

 

それを聞いてあげはは考える。誰があさひの好みの人なのか。それから暫く考えてあげははある結論に至った。

 

「それってさ、私が知らない人?」

 

あげはの知らない人であればあげはに答えを出す事は不可能だ。知らない相手まで思い浮かべる事はできないからである。

 

「………知ってる人だよ」

 

あさひはその質問に対して素直に答えた。嘘を吐いた所で即バレてしまうと考えたからだ。

 

「……えぇ、それじゃあ誰だろ?ましろん……は双子の姉だし絶対違うでしょ?うーん」

 

あげはが考え込む中、あさひは頭の中で冷や汗をかいていた。……実は答えはあげは自身なのだ。あさひの好きな人……。それが目の前にいて誰かと考え込んでいる。このままではいつバレてもおかしく無いと考えたあさひは話題を変える事にした。

 

「あげは姉こそ好きな人はいないの?」

 

「私?……いるよ」

 

「え……」

 

あさひはそれを聞いた瞬間思考が凍りつくような感覚に襲われてしまった。あげはに好きな人がいる……あさひはそれを聞いてその人とは自分の知らない、自分よりももっと性格の良い誰かが好きなのだとあさひは解釈。そうして胸が突然ズキンズキンと痛み始めた。

 

「あさひ?どうしたの?……顔色が悪くなって……」

 

「……ッ!」

 

あさひはそのままあげはを放って喫茶店から飛び出すとそのまま走って行ってしまった。あげははそれを見てキョトンとした顔つきに変わるが、あさひに嫌な言葉をかけてしまったのかなと思い至ってスマホであさひへとメッセージを送る。

 

「……やっちゃったなぁ」

 

あげはが普段の彼女の様子から一転して落ち込む中、あさひもあさひで公園のベンチに座って頭を抑えていた。

 

「何でだよ……何で……何で……あげは姉に好きな人?何の冗談だよ……」

 

あさひの胸の痛みは更に激しくなる。好きだと思っていた人が他の誰かに恋していたら心苦しくなるのは当然だ。しかもそのせいであげはを置いてきてしまった。あげはに嫌な思いをさせたとあさひは考えて更に落ち込んでしまう。するとスマホの通知が鳴ってメールを開くとそこにはあげはから“あさひ、さっきはごめん。何か嫌な事を言っちゃって”と短いがあげはが自分に責任を感じているような言葉が綴られていた。

 

「あげは姉……」

 

それからあさひはメッセージを返そうと文字を打ち込んだ所で手が止まってしまう。

 

「俺は……あげは姉になんて顔をして謝れば良い?俺は、あげは姉の気持ちを踏み躙ったんだ。今更……許してくれるのかな?」

 

それからあさひは怖くなってメッセージがなかなか送れずにいた。その時、目の前に人影が現れるとあさひはそれに気がついて前を見ると……そこには先程置いてきてしまったあげはがいた。

 

「あげは……姉」

 

「やっぱりメッセージだけじゃダメだと思ってさ、さっきはごめん。私、あさひが嫌がるような何かを言っちゃったんだよね?」

 

「違う……あげは姉は悪く無い。俺が勝手に思い込みをしただけで……」

 

そこまで言った所であげはがあさひを抱きしめると背中を優しくさする。

 

「あげは姉!?」

 

「そっか……良かった。ごめんね、あんな辛い思いさせちゃって……」

 

それからあげははあさひから離れるとあさひはあげはへと頭を下げて謝罪の言葉を口にする。

 

「俺こそごめんなさい。勝手に思い込んで、そのせいであげは姉に心配をかけてしまって……」

 

それから二人は顔を見合わせると吹き出して笑い合った。それからあさひは気持ちを切り替えるとあげはの恋を応援する事にし、自分の気持ちは胸にしまい込んだ。

 

「あげは姉の恋、俺はちゃんと応援するからね」

 

「……え?」

 

あげははあさひの言葉にキョトンとする。それからあさひはそんなあげはに違和感を覚えるとそれについて聞く事にした。

 

「え?何か俺、変な事言ったかな?」

 

「ううん。大丈夫、何でも無いよ」

 

あげははそう言ったものの、内心では頭を抱えてしまう。彼女の今の心情はこうだ。

 

「(えぇ!?あさひ、何か勘違いしてない!?私が本当に好きな人は……昔からずっとあさひただ一人なのに……)」

 

あげははこの時、あさひが好きな人は自分では無い誰かと勘違いをしてしまう。このせいであさひもあげはもお互いの事が好きな両想い状態なのに相手に積極的なアピールができなくなってしまったのだ。

 

「そうだ、あげは姉……これをあげるよ」

 

そう言ってあさひが手渡したのはあさひの家の鍵のスペアだった。あげははそれを見て驚く。

 

「これ、良いの?」

 

「……だってあげは姉、ここ最近沢山こっちに来てるしさ。……スペアがあった方が良いかな……なんて。皆には後で言っておくから」

 

「……ふふっ。ありがとう、あさひ」

 

それからあさひはあげはの運転する車に送られて家に戻っていく。それからあげはにお礼を言ってからあげはが帰っていくのを見送るのであった。

 

まさか、この時は先程渡したスペアキーがすぐに使われてあげはにその事で感謝される事になるとは知らずに……。




また次回もお楽しみに。


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らそ山での山登り

あさひとあげはが会ってそれぞれの気持ちがすれ違ってしまった翌日の早朝。ツバサが鳥の姿で目から覚めて眠たそうに目を擦ると目の前にある人物が現れた。

 

「可愛い〜!!」

 

「え!?うわっ!」

 

「モチモチできゃわわ〜!」

 

その人物はいきなりツバサを抱き上げるとほっぺにスリスリし始める。ツバサはあまりに急にそれをやられたのでビックリして人間の姿へと変わってしまう。

 

「わぉ!今のどうやったの?」

 

いきなり家に入ってきてツバサにほっぺスリスリをしたその人物というのが……

 

「あなたは……あげはさん!?」

 

「お邪魔してまーす!私、聖あげは!初めまして、ちゃんと話すのは初めてだね」

 

朝早くにこの家にやってきた聖あげはだ。ツバサは何故あげはが家にいるのかサッパリで混乱した様子になっていた。

 

「ど、どうしてあなたがこの家に!?」

 

「あれ?あさひから聞いてないの?……実はつい昨日合鍵を貰ってね。まさかこんなに早く感謝する事になるとは思わなかったけど」

 

「そういえばそんな事を言っていたような……って!何で急に来るんですか!」

 

「えぇーっ、良いじゃん!君の活躍はましろんやあさひから聞いてるし。ねぇ、鳥でも朝弱かったりするの?ねぇ、もう一度鳥になるのをやって見せて!」

 

あげははツバサへとグイグイと迫っていく。そのせいでツバサはなかなか言葉を返せずにいた。

 

「よろしく少年!」

 

「……少年……ってボクの事ですか!?」

 

ツバサの問いにあげはは笑って頷く。そこにあさひ、ソラ、ましろの三人が降りてきた。ツバサとあげはが近くにいる様子を見てあさひは心がモヤっとする感情に駆られる。

 

「(あげは姉……ツバサと距離が近い……何で?羨ましい……)」

 

「あげはちゃん、いきなりどうしたの?」

 

「今日は皆でお出かけ!山行こう山!イェーイ!」

 

「山!?」

 

それからとんとん拍子に話は纏まり……早速皆であげはの運転するハマーに乗り込み、山への道を進む事になった。

 

「あげは姉、俺は別に良かったのに……」

 

「ダメダメ。折角なんだから全員で行かないと……でもごめんね、少年。鳥の姿じゃないと全員乗り切れなくて……」

 

あさひ達の人数だと一台の車に乗るには定員オーバー。なので仕方なくツバサは鳥の姿であさひの膝の上にちょこんと座っている。

 

「別に……これが本来のボクの姿ですから」

 

ツバサは少し膨れた顔をして不機嫌そうにしている。だが、人数が人数なので仕方ないのだ。

 

「やっぱ可愛いなぁ〜」

 

「むぅー!」

 

「(やっぱりあげは姉、ツバサに対しての距離感が近すぎだよ……もしかしてあげは姉の好きな人って……いやいや、あり得ないあり得ない……だって相手はプニバード族……鳥だよ?無い無い無い)」

 

あさひは現実逃避するように嫌な考えをブンブンと頭を振って振り切る。それに気になったのかましろがあさひへと問いかける。

 

「あさひ、どうかしたの?無理してない?」

 

「大丈夫だよ、姉さん。無理なんてしてないから」

 

あさひはそう言って誤魔化すが、心の中は穏やかではいられない。何しろ、好きな人が別の男と距離を近く接すれば嫉妬するのも無理は無いのだ。

 

「な、なんだがボクに凄い視線を向けられている気が……」

 

そしてその感情を肌で感じ取ったのか、ツバサは危機感を抱く事になる。それから車は法定速度を守りつつビュンビュンと景色を飛ばしながら進んでいく。

 

あげはは車を運転しつつ歌まで歌い出す始末だ。あさひはあげはの歌に聞き惚れている状態で、ソラは興奮した様子で外の景色を見ている。

 

「一体なんて速さですか!?木や建物がビュンビュンです!」

 

「ソラ、スカイランドでの移動手段って基本的に鳥なのか?」

 

「そうですね。スカイランドでは空でも地上でも鳥さんに運んでもらう事が多いですね!」

 

「鳥さんも良いけど、私のピヨちゃんもビュンビュンできゃわわ〜でしょ!」

 

「あげは姉、車に名前を付けてるんだ……」

 

あげはの言葉にあさひは色々と発言があげはらしいと納得する。そしてツバサは何だか嫌そうな様子で言葉を発する。

 

「何でボク達、山に向かってるんですか?」

 

「えー?偶には皆で遠出したく無い?あと、君の事を知りたいしね!少年!」

 

「その少年って言うのを止めてもらえませんか?」

 

二人のやり取りを聞きながらあさひは絶賛嫉妬中だった。先程からあげはの興味はツバサにしか無いとばかりの発言である。あさひが嫉妬してしまうのも仕方ない。

 

「あげは姉、何でさっきからツバサにばかり……」

 

「良いじゃん。少年とはあまり話した事ないし、この際交友を深めるのもアリだからさ」

 

あげはがそう言うとあさひは頬を膨らませて明らかにツバサへの嫉妬の感情を昂らせる。ツバサはこれ以上は不味いと考えてあげはの発言に対して文句を言うのを止めた。

 

それから暫く車で移動すると“らそ山”と呼ばれる山に到着。そこではイメージキャラクターのソラ五郎の看板が建っていた。

 

「ソラ五郎の出す謎を解きながら山登りに挑戦しよう……か」

 

「謎を解きながら山登りですか、面白そうですね!」

 

どうやら全ての謎をクリアすると非売品のグッズをプレゼントしてもらえるらしい。

 

「何か少年に似ているね」

 

「似てませんよ!フン!」

 

あげはの言葉にツバサはふてくされてしまい、それとは対象的にエルはテンションが上がってしょうがないのだ。

 

「それじゃあ、皆でエルちゃんのために謎解きしちゃいますか!」

 

「「「「おー!」」」」

 

それからコースは二つある事が地図からわかり、片方は歩きやすいゆったりとしたコース。もう一つは登り甲斐のありそうな急なコースだった。ソラは明らかに急なコースを選ぼうとしている。

 

「……ソラちゃん、エルちゃんのお世話は私に任せて行きたい方に行きなよ」

 

「本当ですか!?ありがとうございます!」

 

それからエルはあげはがお世話する事になり、ソラはウキウキとした顔でエルへと行ってきますを言う。

 

「ではエルちゃん!行ってきますね!」

 

「えるぅ!」

 

それからソラはましろの手を掴むとそのまま彼女を引っ張って歩き始める。

 

「ましろさん!一緒に行きましょう!」

 

「えぇ!?私もそっちなの!?」

 

「………」

 

あさひはその様子をポカンとした様子で見ているとそうこうしている間にソラとましろは行ってしまい、その場にはあさひ、ツバサ、あげはの三人が残る事になった。

 

「それじゃあ、少年とあさひは私とだね!」

 

「え!?」

 

「まぁそうなるよな……」

 

それからあさひ、ツバサ、あげはの三人でゆったりとしたコースを歩き始める。勿論荷物は男であるあさひとツバサがそれぞれ背負っていた。

 

「えるぅ〜!」

 

「ご機嫌だね、エルちゃん。あさひ、少年。荷物重くない?」

 

「大丈夫です。ボクはプリンセス・エルのナイト!このくらいの荷物、何ともありません」

 

そう言ってツバサは変に意地を張ると一人で歩いていく。その後をあさひがあげはと並ぶように歩いた。

 

「ツバサ、子供だと侮られたくないからああやって言ってるだけだから」

 

「わかってるよ。あさひも無理したらダメだからね」

 

「うん」

 

それから三人は先へと進んでいくとソラ五郎の謎解きが見つかった。そこには“あたたたすたれたちたたったくたなのだ!”とあって妙に“た”が多い文だと三人とも感じる。

 

「この問題、答えは……」

 

「シッ」

 

「あげは姉?」

 

「ちょっとだけ少年に考えてもらおう」

 

あさひが答えを言おうとするとあげはに止められてツバサに答えてもらおうと言われる。あさひはそれに了承してわからないフリを始めた。するとエルがいきなり泣き出し始める。

 

「おむつかな?えっと……」

 

それからあげはがキョロキョロと探すと近くに休憩所と思わしき小屋があってそこにあげはが走って行く。

 

「休憩所発見!じゃあ行ってくるね!少年、あさひ、謎解きは任せるよ」

 

「わかった」

 

それから暫くツバサが考え込んでいる間にあさひはのんびりとして、ツバサが答えに気がつくまで待つ。

 

「ああっ!わかりました!あさひさん。ボク、答えが分かりましたよ」

 

「本当!?それじゃああげは姉の所に行こうか」

 

それから二人でエルのおむつを替え終わったあげはの元に到着すると三人で答え合わせをする。

 

「「「答えはアスレチックだね(でしょ)(です)」」」

 

「………え?二人共わかってたんですか?」

 

「私はついさっき思いついたんだけど、あさひは最初からわかってたみたいだよ」

 

「えぇ!?あさひさん、何で言ってくれないんですか」

 

ツバサに文句を言われたあさひは謝りつつ事情を話そうとするが、あげはの手前、彼女を巻き込むわけには行かないので少し事実を変えて答えた。

 

「ツバサやあげは姉もちゃんと謎解きができるように黙ってただけだよ」

 

「もう!」

 

ツバサはあさひからの返事を聞いて拗ねてしまう。それを見た二人はそんなツバサにニコリと笑った。

 

「ツバサ、俺はツバサがちゃんと答えがわかるって信じてたよ」

 

「でも、これじゃあボクが答えのわかってはしゃぐ子供みたいじゃないですか!」

 

そんなこんなでアスレチックコーナーに辿り着くとツバサとあさひの二人コンビでアスレチックへと挑戦した。

 

「ほっ!よっと!」

 

「あさひさん、ちょっと早いですって!」

 

「あんまり遅いと置いてっちゃうからね!」

 

「そんなぁ!」

 

そんなこんなで二人でアスレチックを終えるとツバサは疲れ切った様子であさひは楽しんだ顔つきで道に合流。その先には二人の荷物とエルを抱いたあげはが待っていた。

 

「お疲れ様!」

 

「あー、楽しかった」

 

「あ、あ、アスレチック……関係ないじゃないですか!」

 

実はこのアスレチックを迂回するコースが最初からあり、アスレチックには挑戦する必要すら無かったのだ。それから三人は更に先へと進む。

 

「さぁ、次行こう次!」

 

「むう……」

 

あげはとエルが上機嫌になる中、ツバサはあげはに振り回され続けた影響か、あげはに不満を抱いている様子だった。

 

「お、次の問題発見!」

 

次にあげはが見つけたのは周囲に広がる花畑の中に存在するであろう“隠れている綺麗な物は?”という質問だ。

 

「あげは姉、これってもしかして……」

 

「……もしかしてあさひも同じ事考えてた?」

 

あさひとあげはの二人は全く同じ事を考えていたのか顔を見合わせる。それに対してツバサは疑問が浮かぶ様子であった。

 

「あれに乗ろうか!」

 

そう言ってあげはが指さしたのはロープウェイ乗り場だ。しかし、そちらはコースから外れてしまう道になる。ツバサがそれを見逃すはずがない。

 

「え!?そっちはコースから外れてしまいますよ!謎解きは?」

 

「良いから良いから!少年、早く早く!」

 

そう言って急かすあげは。あさひもあげはの方へとついていく中、ツバサはとうとう我慢の限界となって怒ってしまう。

 

「もう良いです!ボクはこっちを探します!」

 

そう言ってツバサは本筋のルートへと歩いて行ってしまう。それを見たあさひはツバサに事情を説明しようとするが、あげはにそれを止められた。

 

「あげは姉、何で……」

 

「大丈夫。きっと少年は気づいてくれるよ。だから、行こう」

 

「……あげは姉」

 

こうして、あさひとあげはの二人はエルを連れてロープウェイの乗り場へと移動し、乗り込む。そんな中、あさひは不安を隠せなかった。あげはとは違ってツバサを信じられていない証拠である。それから二人の乗り込んだロープウェイは上へと登り始めるのであった。




この度、振り子メンタルさんの小説、『ヒーローガールとヒーロー気質の転生者』とのコラボ回を描く事が決まりました!コラボ回の内容についてはまだ煮詰まっていませんが、少しでも良い回にできるように頑張りますのでよろしくお願いします。

振り子メンタルさんの作品のURLを貼っておきますのでよろしければ読んでみてください。

https://syosetu.org/novel/308725/

また次回もお楽しみに。


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信じる気持ちと二人の力

ロープウェイに乗ったあさひとあげは。二人は外の景色を楽しみながらロープウェイに揺られていく。

 

「……あげは姉、何でツバサの事を」

 

「大丈夫。少年なら……ツバサ君ならきっとわかってくれるよ」

 

「………」

 

「あさひ、そんなに私が少年の事を考えると気持ちが落ち着かなくなる?」

 

「え……」

 

あげはにはあさひの気持ちなど何でもお見通しなのかあっさりとあさひの中のモヤモヤを見抜かれてしまう。

 

「だってあげは姉、ツバサに凄いグイグイ行くし……それにもっと俺に構ってほしいというか……って、これじゃあ駄々をこねる子供だね」

 

そうやっていったあさひの顔が赤くなる。自分で言っていて恥ずかしい事を言ったという証拠だ。

 

「……ようやく弱い所を見せてくれた」

 

「え?」

 

「……私はね、あさひの事を全部知りたいんだ。私がいない間にあさひに何があったのか。あさひは何で変わってしまったのか。ちゃんと知っておきたい」

 

あさひはそれを聞いて不安そうな顔つきに変わる。あげはにだけは弱い所を、自分の欠点を見せたくない。あの忌々しい記憶を知られたくないと考えていた。あげはに嫌われれば、もう二度と立ち直れないと考えていたからである。

 

「私に嫌われるのは怖い?」

 

「ッ!!」

 

やはりあげはにはあさひも隠し事ができない。全て見抜かれてしまっている。

 

「怖いよ……俺の秘密なんて話したら……絶対にあげは姉は俺の事を嫌う。あげは姉にだけは嫌われたくない。あげは姉に嫌われたら俺は……」

 

そこまで言った所であげはの目が悲しそうな物に変わる。あげはにとってはあさひの今の発言がかなりのショックだったようであげはは小さく言葉を発した。

 

「……あさひにとって私への信用ってその程度だったんだ……」

 

「え?」

 

あげはの言葉にあさひは思わず思考が停止してしまう。あげはがこう言うのも当然だ。信用しているのであればちゃんと真実を言う事ぐらいはできたはずである。言う前から嫌われると決めつけているのはあげはにとってかなりのショックな話になるのだ。

 

「ち、違う……俺は、あげは姉に」

 

「良いよ。今は無理に言わなくて。でも……いつかきっと言ってほしい。私が信用できると思ったらで良い。……私はいつでもあさひの事を信じてるから」

 

そうこうしているとロープウェイは頂上まで着いてしまい、それから二人は降りるとあげはがいきなり移動を始めた。

 

「あげは姉!?」

 

「……少年も来てくれたみたいだよ」

 

「!!」

 

あげはの視線の先には荷物を背負いながらも歩いているツバサの姿がおり、あげははツバサへと手を差し伸べた。

 

「頑張れ!少年!」

 

「えるぅ!」

 

ツバサがあげはの手を掴み、頂上に辿り着く。それから頂上から下を見下ろすとそこには多くの花が虹を描いている様子であった。

 

「虹……あれって、謎解きの答え?」

 

「上から見ないとわからないようになっててね。本当に綺麗……」

 

「ロープウェイを使ったのは、エルを抱えた状態で上まで歩くのは厳しかったからだよ。あと単純に時間がかかるって言うのもある」

 

それからあげはは綺麗な花畑を見ながらそれに見惚れていた。そして、あさひとツバサもあげはにならってそれを見る。するとツバサの頭にとある疑問が思い浮かんだ。それは……

 

「どうしてわかったんですか?……ボクが山頂を目指してくるって……」

 

「ロープウェイから走ってるのが見えてたからね」

 

「走るの早いんだね」

 

「えぇ!?わかってたのなら先に言ってくださいよ!」

 

「いやいや、ロープウェイから言うのは無理だから」

 

それから三人で上からの景色をもっと眺めようとすると後ろから何かの気配がした。そしてその気配はあげはとエルを腕で捕まえると持ち上げてしまう。

 

「「な!?」」

 

「ランボーグ!」

 

そこにいたのはロープウェイを模したランボーグであり、それをけしかけたのは一人しかいない。

 

「カバトン……」

 

「プリンセスを捕まえたのねん!あとついでに脇役も……ま、こっちは要らないけどな」

 

それを聞いてあげははムッとした顔になる。それから周囲にいた他の人々達が逃げたのを見て二人は頷き、ペンを構える。

 

「行くよツバサ」

 

「はい!」

 

「「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!」」

 

「ウィング!」

 

「サンライズ!」

 

二人はそれからプリキュアへと変身すると二人で名乗りをしていく。

 

「天高くひろがる勇気!キュアウィング!」

 

「夜明けにひろがる眩い朝日!キュアサンライズ!」

 

「「レディ……ゴー!ひろがるスカイ!プリキュア!」」

 

二人は早速ランボーグへと攻撃しようと飛び出す。しかし、ランボーグはあげはとエルを前に突き出してきて二人は攻撃を躊躇ってしまう。

 

「くっ……」

 

「だったら!」

 

サンライズはウィングの攻めている反対側に回り込んで両サイドから挟み撃ちにする。しかし、それもランボーグには通じないのか、ランボーグに後ろに跳ばれて躱されてしまう。

 

「オラオラどうした?プリキュアさんよ、脇役とプリンセスがダメージを負うのが怖くて攻撃できないのねん?」

 

「卑怯な!」

 

「テメェ、よくもあげは姉とエルちゃんを盾に!」

 

サンライズが怒り立つ中、ランボーグはそんなのお構いなしとばかりに攻撃を繰り出してくる。

 

「良し、このまま戻ってくるのねん!ランボーグ!」

 

カバトンがそう言うとランボーグは片手をロープウェイのロープに掴まってそのまま傾斜に沿って滑りながら降り始める。ウィングはすぐにそれを追い、サンライズもスタイルチェンジで姿を変化させた。

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!スタイルチェンジ!ドラゴン!」

 

サンライズはドラゴンスタイルに変身してジャンプ台を使いながら空中を跳び、追いかけていく。

 

「離してよ!このっ!……って、今離されても困るんだけどね……」

 

あげはとエルはランボーグに捕まっているものの、今手を離されれば地面へと真っ逆さまに落ちてしまう。そして、そうなれば二人共無事では済まない。するとあげはは何かを思いつく。それからランボーグへと話しかけた。

 

「ねぇ、君。私とジャンケンしよ!ジャンケン!」

 

「ラン!?」

 

「ちなみに私は……グーを出すよ!」

 

あげはの突然の宣告にサンライズは呆気に取られるが、あげはの目を見るとそれが本気なのだとわかった。そして瞬時にあげはの意図を見抜く。

 

「ララ……」

 

「え!?」

 

「宣言しちゃうとは……もしかしてちょっとおバカさんなのねん!ランボーグ、パーを出すのねん!」

 

カバトンがランボーグへと指示を出すとサンライズとあげはは心の中で狙い通りと考える。そして、サンライズは空中をジャンプして進みながらウィングの隣へと移動した。

 

「ウィング、二人がジャンケンをしたらすぐにランボーグの手の下に移動して」

 

「え!?どうして……」

 

「良いから。……あげは姉を……信じて」

 

サンライズの言葉にウィングは頷くとその時あげはが一瞬こちらを見てからすぐに向き直る。

 

「それじゃあ行くよ。ジャン……ケン!グー!」

 

それからあげはと片手がロープを掴むので塞がっているランボーグによるジャンケンが行われるとあげはは宣言通りグーを出し、ランボーグはパーを出す。そしてそれはランボーグがあげはを捕まえていた手をパーにした事であげはとエルを解放する事を意味した。

 

「あ!?」

 

「引っかかってくれて……ありがとよ!」

 

カバトンがあげはの意図に気がつくも、時既に遅し。あげはは真っ逆さまに落下を始める。するとその直後にあげははウィングによって受け止められ、ランボーグの顔面にはサンライズからのキックが叩き込まれた。

 

「ありがとう!ツバサ君!」

 

「幾ら何でも無茶しすぎですよ!サンライズが気づいていなかったら……はっ……もしかして……」

 

「ふふっ。サンライズとウィングなら気づいてくれる、私を助けてくれるって信じてたよ」

 

「とにかく、安全な所に隠れていてください!」

 

顔面を蹴られたランボーグはロープウェイのロープ部分に乗ってサンライズとの戦闘を開始。それと同時にウィングはあげはとエルを頂上に連れていくとサンライズの元に戻ってきた。

 

「お待たせしました!サンライズ」

 

「ここからは一緒にやるよ!」

 

「はい!」

 

それからサンライズとウィングはランボーグとの戦闘を続けていく。サンライズは両手に双剣を構えてランボーグからの攻撃を受け流して隙を作り、そこに空中を自在に飛べるウィングからの攻撃を決めた。

 

「ウィング、これを加速機の代わりに!」

 

サンライズが両手を翳すとウィングが突撃姿勢になったその瞬間を狙って足元に赤く四角いジャンプ台を生成。それを踏ませるとウィングは一気に加速してランボーグを吹き飛ばす。

 

「サンライズ!びっくりしたじゃないですか!」

 

「ごめん、でもウィングならきっと上手く対応してくれるって思ったからさ」

 

「むかーっ!ランボーグ、さっさとその二人を倒すのねん!でないと……」

 

その直後にいきなりランボーグの背中に衝撃が走るとそこに山の麓からロープをの上を走りながら登ってきたキュアスカイとキュアプリズムが到着した。

 

「ごめん!遅くなって!」

 

「大丈夫ですか?」

 

「大丈夫。むしろありがとう、二人ならきっと気づいて来てくれるって信じてたよ」

 

「……信じる気持ち……はっ!サンライズ!」

 

「何?」

 

「ボク達二人にしかできない相手を想う絆の形……ボクの事を信じてくれますか?」

 

「勿論!」

 

それからスカイとプリズムは跳び上がるとそのままランボーグを二人で蹴り飛ばし地面にまで叩きつけさせる。

 

「二人共!」

 

「今だよ!」

 

その瞬間、サンライズの胸に光が宿ると二つのスカイトーンが出現。そしてその中の一つがウィングの元に飛ぶとウィングはそれを掴む。

 

「やっぱり出てくれた。サンライズ、二人で決めましょう!」

 

「ああ!」

 

それと同時にサンライズは最後に一回高く飛び上がってから二人でスカイトーンをスカイミラージュに装填する。

 

「「スカイミラージュ!」」

 

「天に羽ばたく誇り高き翼!」

 

「熱き力よ、翼に宿りて闇を焼き尽くす希望となれ!」

 

サンライズが体に炎を纏い、ウィングへとドロップキックを繰り出すとウィングはそれを踏み台にして両足をサンライズのドロップキックに合体させる。

 

「「プリキュア!フレイムバードストライク!」」

 

その瞬間、サンライズの炎がウィングへと乗り移るとそれが巨大な炎の鳥を形成。それからサンライズが発射台のようにドロップキックを放つとその威力でウィングは一気に加速。そのままランボーグを貫いてその体を焼き尽くし、ランボーグを浄化させる。

 

「スミキッタァ〜」

 

「ったく、何でこんなに強ぇええんだ!カバトントン!」

 

ランボーグがやられたのでカバトンは撤退。そして、それから四人はそのまま山頂へと向かうと二人の無事を確認する。

 

「あげは姉、大丈夫?怪我は無い?」

 

「大袈裟だなぁ。大丈夫だよ」

 

「える!」

 

「あさひと少年が助けてくれたからね」

 

四人は頂上から地上にある花畑を見るのを満喫し、それからあげはの車に乗っての帰り道についた。

 

後ろの席でソラとましろ、エルが寝てる中、あさひは普通に起きており、ツバサはウトウトしながらも寝そうになっている。

 

「疲れた?」

 

「いえ……」

 

「今日は助けてくれてありがとう……ちゃんとカッコ良かったよ」

 

あげはがそう言った頃にはツバサはとうとう寝てしまい、あさひとあげはのみが起きている状態だった。

 

「……あげは姉。過去の事……話してもいい?」

 

あさひはあげはへとその質問を投げかけるとあげはは嬉しそうに頷き、肯定する。

 

「良いよ」

 

それからあさひがあげはへと過去の出来事について話す。それからあさひは恐る恐るあげはへと質問を出した。

 

「……これで全部だよ。あげは姉、こんな俺のことでもちゃんと見てくれる?見捨てずに……幼馴染としていてくれる?」

 

「当たり前でしょ。むしろ、あさひが何でそうなったのか。点と点が繋がったよ。話してくれてありがと」

 

「うん……」

 

それからあさひも疲れで寝てしまい、あげはは赤信号の間にそんなあさひを見て微笑んだ。

 

「私が好きになった人だもの……切り捨てたりなんてしないよ」

 

その日の夜、カバトンはと言うと……一人とある建物の屋上で簀巻きの状態で凍えていた。

 

「ああ、心が寒いのねん!今日もプリキュアに負けた……何でこんなに負け続けるのねん!」

 

するとその瞬間、カバトンの周囲が黒い空間に包まれると声が聞こえて来た。

 

『カバトン。最早貴様に猶予は無いぞ』

 

「ははぁっ、それはもうよーくわかっております」

 

『役立たずに価値は無い!』

 

カバトンは知っていた。その言葉を言われるという意味を。その直後に空が暗くなり、雷がカバトンの近くに堕ちた。

 

「ひぃいっ!こ、今度こそプリキュアを倒してプリンセス・エルを手に入れて見せます!」

 

カバトンは土下座の体勢で両手を合わせて平伏した様子だ。こうして、プリキュア達の知らない場所でカバトンが遂に後が無い状況にまで追い込まれたのだった。




また次回もお楽しみに。


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カバトンの覚悟とあさひの修行

らそ山へのお出かけからまた暫く時間が経ち、今現在あさひ、ソラ、ましろ、ツバサの四人はヨヨに頼まれておつかいに出かけている。

 

「おばあちゃんのおつかいが終わったら『プリホリ』のカフェでお茶して行こうか」

 

「はい!あそこのスウィーツは絶品ですから!」

 

「良いんじゃない?寄ろっか」

 

そうしているといきなり四人の前に今までよりも更に怒った様子のカバトンが姿を現した。

 

「イラつくぜ!イラついてしょうがねぇのねん!こっちはいよいよやばいことになってるってのによ!」

 

「やばい……どう言う事ですか?」

 

「そっちの事情は知らないけどさ、そんな理由で暴れるのはやめてもらえないかな?」

 

あさひがカバトンに対して文句を言うとカバトンは焦ったような様子である事を宣告する。

 

「うるせぇ!そもそも全部ソラ、お前のせいなのねん!あの時お前さえ邪魔しなけりゃ!ソラ、お前は俺の疫病神だ!俺と一対一で勝負するのねん!」

 

「うーわ、完全な逆恨みかよ……」

 

あさひが呆れる中、ましろとツバサは受ける必要は無いとソラへと言う。それに対してカバトンは宣言をした。

 

「もしソラ、お前が勝てばプリンセス・エルには二度と手を出さないのねん!」

 

「「「え!?」」」

 

「……その言葉に嘘はありませんね?」

 

「ああ」

 

ソラからの問いにカバトンは肯定の意思を示し、それが嘘では無いと宣言する。

 

「……言質は取ったからな?後で言い逃れはできないぞ?」

 

「問題無いのねん。こっちはとっておきの奥の手があるからな。勝負は3日後!首を洗って待ってろねん!これは最終決戦だ!」

 

それからカバトンはいなくなり、四人は一度家にまで帰る事になった。

 

「ソラちゃん……本当に大丈夫なの?」

 

「はい、これも私が決めた事です。それに、エルちゃんをスカイランドに送り届けとしてもカバトンが狙う限りは安心できません」

 

ソラはやる気十分だったが、ツバサはまだ不安そうな表情になっている。

 

「でも、あんな奴の言葉を信じて良いのでしょうか?」

 

「……正直、約束を守るとは考えにくい……だが、それでもこちらは受けると言った以上、約束を守らないといけない……それにさ」

 

あさひが言いかけた言葉の続きをソラが話す。

 

「カバトンの目はいつになく真剣でした」

 

「だとすれば、奥の手というのもきっとハッタリでは無く本当です」

 

「どんな手かはわかりません……それでも勝つのが」

 

「ヒーロー……なんだよね?」

 

ましろがソラへと言うとソラは目を見開く。それからましろは言葉の続きを口にした。

 

「こうなったらソラちゃんを応援しようよ!それに、決闘まであと3日あるし私に良い考えがあるんだ!」

 

それからましろが電話をするとその相手は出て、それから了承を得ると暫くして家にまでやって来た。

 

「特訓!特訓!楽しい特訓!」

 

今現在、ソラ、ましろ、ツバサ、エルはあげはの運転の元、車に揺られている。何故このような事になったかと言うと、ましろがあげはに電話をして特訓先までの運転役を頼んだからである。

 

「あげはちゃん、保育士さんの学校のレポートとかも大変なのにごめんね……」

 

「大丈夫!こう見えて私は超優秀だし、ソラちゃんの大勝負のためだもの!」

 

「あげはさん、ありがとございます!」

 

「少年ともまた話がしたかったしね。……ごめんね、またその姿になってもらって」

 

あげはの車に全員が乗るとやはり定員オーバー。という訳で今回もツバサには鳥の姿で居てもらっている。ただし、あさひがいないからかトランクに積まれた荷物の上にいる形だが……。

 

「……むすーっ」

 

「それでさ、どういう特訓をするの?やっぱり滝に打たれたり、山の主と戦ったり……あ!もしかして山の頂上で必殺技の修行をする感じ?」

 

あげはは少年漫画のような思考で次々と候補を上げていく。それを見たツバサは呆れ気味にツッコミを入れた。

 

「いやいや、漫画の読み過ぎですよ?そんな訳……」

 

「そう!正にそういう特訓なの!」

 

「え!?」

 

だが今回はいつもはツッコミ役のましろまであげはの案に便乗。そのせいでツバサはまたもや振り回される事になる。

 

「はい!それです!」

 

「よっしゃ!取り敢えず、良い滝あるよ!行ってみよう!あ、そういえば何であさひは付いてこなかったの?」

 

「それが……どうしても残ってやりたい事があると言って聞かなくて……」

 

そう、この場にあさひがいない理由。それはあさひ自身がやるべき事を考えていたからだ。その頃、あさひの家の近くにある裏山では、あさひが一人その中に入っていた。

 

「カバトン……アイツの目は本気だった。ただ、気になるのが敵が今までカバトンしか出てきていない事。アイツに仲間がいてもおかしくない。もしカバトンに仲間がいてそいつがカバトンよりも強かったら不味いからな」

 

それからあさひは適当に広い場所を見つけるとそこである行動を起こした。

 

「……カゲロウ。出てこれるんだろ?出てきてくれ」

 

そう言うといきなりあさひの体からカゲロウが分離。あさひと全く同じ姿をして立つ事になる。

 

「おいおい、いきなり呼び出して何の用だ?」

 

「やっぱりな。お前、俺から分離できたはずなのに何で今まで分離しなかった?」

 

「ふん。俺だって分離できるならしたかった。だがな……」

 

カゲロウがそこまで言いかけた所で止めた。あさひはそれに違和感を覚えるが、聞いた所で素直に答えてくれそうに無かったので聞かずに自分の用件を言う事にする。

 

「カゲロウ……俺を強くしてくれ」

 

「……はぁ?」

 

まさかの頼みにカゲロウは唖然とする。普通に考えて自身の影であるカゲロウに頼むような事ではないからだ。

 

「おいおい、お前本気で言ってるのか?」

 

「じゃないなら姉さんやあげは姉と一緒に行ってる」

 

あさひの目は本気の目であり、カゲロウもそれを理解したのだがそれでもまだカゲロウはやる気にならない。

 

「お前な、誰がお前なんかを強くする義理があるんだよ。そもそも、お前が弱い方が俺としては交代しやすいんだよ」

 

「……そうでも無いだろ」

 

あさひはカゲロウの言葉に対して反論する。カゲロウはそれを聞いて続きを言うように促した。

 

「前にあげは姉が言ってた。俺とお前は表裏一体。カゲロウが強くなれば俺の力も比例して強くなる……だとすれば、俺が強くなればお前の力も比例して強くなるんじゃないのか?……そのためにお前は俺に力を貸してくれたんだろ?」

 

「は?何の事だよ」

 

カゲロウはこの期に及んでとぼけるとあさひの苛立ちを誘う。負の感情でも自分を強くできるためにあさひに負の感情を芽生えさせようとしているのだ。

 

「……はぁ。もうちょっと上手い誤魔化し方をしてくれ。エルがいないのにスカイトーンを俺が出していた時があっただろ。アレは俺自身の力じゃない。どう考えても人外の何かの力だ。そして俺にはお前と言う人外の存在がいる。ここから導かれる答えはただ一つ。俺の発現した力はお前から発せられているものなんだと」

 

カゲロウはそれを聞いて若干不機嫌な様子に変わる。どうやら図星のようでカゲロウが力を貸していた事を暗に示していた。

 

「……俺としてもお前に力を貸すのは不本意なんだよ。確かにお前のスタイルチェンジの力やツバサってガキとの絆の力は俺が元になってはいる……が、俺一人じゃあアレを出すことはできない。お前の気持ちの力と俺の力が一つになってようやく生成可能になるんだよ」

 

カゲロウは種明かしをした後に更に不満そうに溜息を吐いてから話の続きを話す。

 

「それに、確かにお前の力に比例して俺の力も増大した。何ならアイツらと敵対したあの時よりも俺の力は増している。だが、それとこれとは話が別だ。俺により確実なメリットが無い。俺が教えた所でお前が強くなるとは限らないからな。それで手伝えなんて傲慢が過ぎるぞ」

 

「……わかった。なら………これも条件として入れる。だから頼む!手伝ってくれ」

 

あさひがカゲロウに頭を下げてお願いする。それを見たカゲロウはあさひの顎を手でグイッと上げると顔を近づけて返事を返した。

 

「仕方ない……それで手を打ってやる」

 

それからあさひとカゲロウによるマンツーマンの修行が始まった。まずは山の中で基礎的な体力作り。3日という僅かな時間で成長するのは厳しいが、カゲロウはそのキッカケを与えるためにどうするのが効率的なのか奔走した。

 

「はぁ……はぁ……」

 

山の中を走りながらあさひは息を切らせていた。だが、カゲロウは知っている。あさひの体がプリキュアになる前に比べて比べ物にならない程、鍛えられているという事を。

 

「……お前、少し前と比べて比較的に強くなったな」

 

「はぁ?何の事だよ」

 

「………自覚なしか」

 

カゲロウはこのあさひの急成長についてある仮説を立てていた。プリキュアとして戦う度にあさひの体は確かに鍛えられている。だがそれなら他の三人も同様の事が言えるはず。だがあさひはそれが他の三人と比べてそれが顕著なのだ。カゲロウはこの現象を自分がいるのが原因だと仮定した。

 

「多分、お前と俺の二人分の人格と体がお前の中に宿っているのが影響して単純に二人分鍛えられて人の倍ぐらいは早く成長しているのだと思う。ま、これについてはあくまで仮説だ。本当の所は知らん」

 

あさひの中に眠る才能……それは人よりも成長速度が速いという事だ。そしてそれは彼の伸び代がまだまだ限界知れずという事でもある。

 

それから、あさひはカゲロウから課されたメニューをこなし続け、着実に成長するための土台を作っていく。

 

「良し、最後は俺との一対一だ。プリキュアになるのは禁止。お互い相手を倒すつもりで戦うぞ」

 

「わかった!」

 

二人はボロボロになりながらも、組み手を続けていき3日の内の1日を終えていく。

 

「今日はここまでだな」

 

「ああ。それじゃあ……」

 

「仕方ない。戻ってやるよ」

 

そう言ってカゲロウはあさひの体の中へと戻っていく。それから山を降りてあさひは家へと帰宅した。そんなあさひを家で出迎えたヨヨは傷だらけのあさひを見て心配するが、あさひは大丈夫とばかりに最低限の傷のケアだけして翌日も特訓を続ける。

 

「これで終わりだな」

 

「カゲロウ……ありがとうな」

 

「ふん。礼は良い。あの約束、覚えてるな?」

 

「ああ、今度姉さんに頼むよ」

 

「それなら良い」

 

こうしてあっという間に三日間は過ぎていき、カゲロウとの修行を終えたあさひは一回りも二回りも強くなって戻っていく。いよいよ決戦の日となるのであった。




また次回もお楽しみに。


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カバトンとの決闘!

決戦の日、特訓をしてきたソラ達が家に帰ると家に残って一人修行していたあさひが身体中傷だらけの状態でいるのを見てあさひの事を心配した。

 

「あさひ!?どうして……」

 

「まさか、カバトンが約束を破って……」

 

「姉さん、ツバサ、落ち着いてくれ……これは俺が自分で特訓してたんだよ」

 

「「……え?」」

 

それからあさひはカゲロウとの特訓についてソラやあげは、エルを含めた面々に話をする。

 

「カゲロウと特訓だなんて……よくカゲロウが許可したよね」

 

「……その事なんだけど、姉さん。実はカゲロウとある約束をして……」

 

それを聞いたその場の全員が嫌な予感を頭に浮かべた。あさひが変な約束を取り付けたと感じたからである。

 

「その約束と言うのは?」

 

「1日だけカゲロウが好きに行動して良い日を作る事だけど……」

 

「「「はぁ?」」」

 

この条件に三人共驚きを隠せない。カゲロウならもっと厳しい条件を提示してくると思っていたのだが、それとは全く違う条件に逆に驚いてしまったのだ。むしろ、この程度の条件のせいでカゲロウに騙されているんじゃないかと言い出す始末である。

 

「ま、まぁカゲロウもそれで良いって言ったんだからその辺にしてあげてくれ……」

 

それから時間に遅れては不味いのでカバトンの待つ河川敷へと向かう。実際に戦うソラが前に出て、あさひ、ましろ、ツバサ、あげは、エルは近くにあった草むらに隠れて様子を見ることになった。

 

「……来たか、なのねん。ビビって逃げ出したかと思ったのねん」

 

「約束は守ります。カバトンこそ、約束は覚えていますよね?」

 

「ああ。もし負けたらプリンセスには手を出さないのねん」

 

それからカバトンは手に黒いエナジー……アンダーグエナジーを高めてそれを具現化する。

 

「これが俺の奥の手だ!この三日間で最大限にまで高めたアンダーグエナジーを……俺自身に注入する!」

 

その様子を見ていたあさひはカバトンの奥の手が仲間を呼び出すことでは無かったことにひとまず安心する。

 

「カモン!MAXアンダーグエナジー!」

 

それからカバトンはアンダーグエナジーを自身に注入する事で巨大化。ランボーグのように強化される。

 

「ふはははははは!強ぇええ!……漲るぜ、これが俺の最強の奥の手だ!」

 

「やはり、奥の手と言うだけあってやばそうだな」

 

あさひ達が不安になる中、ソラは構えるとプリキュアに変身するためにペンを構える。

 

「……行きます!スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!スカイ!」

 

それからソラはキュアスカイへと変身すると一人、決め台詞を言い放つ。

 

「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」

 

スカイが変身完了すると早速戦いの火蓋は切って落とされる。まず先に仕掛けたのはカバトンだ。次々と拳をぶつけてこようとしてくる。それに対してスカイは見事な動きで躱していく。

 

「凄い……攻撃を全部躱して……」

 

「特訓の成果出てるよ!」

 

「クソッ!当たりさえすればお前なんか……」

 

カバトンがムキになって攻撃をした瞬間、スカイはそれに合わせて踏み込みつつカウンターをかます。

 

「なっ!?」

 

スカイからのカウンターを見事に喰らったカバトンはその場に膝をついて攻撃を喰らった腹を抑える。

 

「くっ、パワーはこっちが勝ってるのねん!お前になんか負けるわけが……」

 

カバトンはそれから両手でスカイを挟み潰そうと両側からスカイへとスカイを叩こうとしてきた。

 

「くっ!?」

 

スカイはそれを何とか潰されないように防ぐが、身動きが取れなくなってしまう。

 

「スカイ!!」

 

「捕まえたのねん!このまま潰してやるのねん!」

 

カバトンは挟み込む圧力をどんどん強くする。このままではスカイが潰されてしまう。スカイも苦しいのか、少しずつ腕が押し込まれていく。

 

「頑張れ!スカイ!」

 

その時、声を上げたのはあさひだ。それに続くように他の面々も声を上げてスカイを応援する。それを見たカバトンはエルが近くに来たことに対してほくそ笑む。

 

「やっぱり近くに来ていたのねん……あん?」

 

その時、スカイが応援を受けたからか、体勢を再び持ち直すとそのままカバトンの両腕を押し返してしまう。

 

「そんな馬鹿な……パワーじゃ俺が圧倒的に上なのねん!こんな事、絶対あり得ないのねん!」

 

「皆の応援が……私に力をくれます!」

 

「お、応援だぁ?そんな物、強さには関係ねぇ!」

 

カバトンはそう言って体のエネルギーを高めると拳を繰り出してくる。それに合わせてスカイもパンチを繰り出すとそれを弾き飛ばした。

 

「はぁああっ!」

 

スカイはカバトンに隙を作るとそのまま浄化技を発動。一気に倒しにかかる。

 

「ヒーローガール!スカイパンチ!」

 

スカイから繰り出されたパンチがカバトンに命中するとカバトンは吹き飛ばされて仰向けに倒れる。これによりスカイの勝利が決まり、カバトンの敗北がスカイから宣言された。

 

「や、やりました!」

 

「か、勝ったんだよね?」

 

「凄いじゃん!スカイ!」

 

「えるぅ〜!」

 

ましろ達四人が喜ぶ中、あさひはまだ気を抜いていなかった。最悪の事態に備えていたからである。それはカバトンが約束を守らずに不意打ちをしてくる事。それをされても防げるように構えていた。

 

「俺が……負けた?」

 

「勝負は付きました……約束通りもう二度とエルちゃんには……」

 

「そんな約束、忘れたのねん!」

 

カバトンはそう言って立ち上がると手を伸ばして黒いエネルギーの手を出すとそれをエルへと射出する。それがエルを奪い取ろうと伸びていく中、その直線上にあさひが立ちはだかった。

 

「あさひ!」

 

「お前ならそう来ると……思っていた!」

 

その瞬間、あさひはペンを取り出して攻撃が自分へと届く前に瞬時に変身をする。

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!サンライズ!」

 

あさひの姿は一瞬にしてサンライズへと変わると手にした剣でカバトンから伸ばされたエネルギーを一瞬にして切り刻む。

 

「夜明けにひろがる眩い朝日……キュアサンライズ!」

 

それからサンライズは名乗るとそれと同時にエネルギーはバラバラになって消えていく。

 

「サンライズ!」

 

「二人共、今のうちに変身を!」

 

サンライズの機転で変身する時間を稼いだましろとツバサの二人もミラージュペンを取り出して変身をする。

 

「「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!」」

 

「プリズム!」

 

「ウィング!」

 

「ふわりひろがる優しい光!キュアプリズム!」

 

「天高くひろがる勇気!キュアウィング!」

 

二人は変身を完了するとすかさずウィングがあげはとエルを抱いて空へと飛び上がり、そのタイミングでサンライズが前へと飛び出す。

 

「はあっ!」

 

カバトンは出てきたサンライズに対抗しようとするが、サンライズの速度は三日前よりも数秒分速くなっておりカゲロウとの特訓の成果が出ていた。これにより、カバトンは一瞬にして吹き飛ばされるとまた体勢を崩す事になる。

 

「スカイ、プリズム!」

 

サンライズからの声に二人は反応してすぐに合体技を発動。それからすぐに技を放つ。

 

「スカイブルー!」

 

「プリズムホワイト!」

 

「「プリキュア!アップ・ドラフト・シャイニング!」」

 

「スミキッタのね〜ん」

 

これによりカバトンの中に入っていたアンダーグエナジーが浄化され、カバトンは元のサイズに戻るとそのまま落下してきた。

 

「カバトン、あなたの負けです」

 

「い、嫌だ!負けるなんて絶対嫌なのねん!」

 

その直後、周囲の空に黒い雷雲が広がると共にカバトンは体の震えを更に強くする。

 

「アンダーグ帝国では弱い奴に価値は無いのねん!だから俺は必死に強ぇええ奴になろうと……」

 

「アンダーグ……」

 

「帝国?」

 

スカイとプリズムが疑問を浮かべる中、サンライズはカゲロウと二人で立てた自身の仮説が正しい事を証明すると共に、相手の強大さを思い知った。

 

「やはり、敵はカバトン一人じゃ無かったか」

 

「おいおい、なかなか壮大な話になってないか?」

 

するとカバトンの体にエネルギーが纏われるとそのまま空中へと連れ去られる。恐らく、カバトンはもうアンダーグ帝国には不要だと判断されたのだろう。

 

「ひっ、俺はまだ役に立ちます!どうか!どうか!お許しを!」

 

カバトンは必死に抵抗するが、もうそんな物意味が無いとばかりに周囲の雷がどんどん強くなる。そして、何発かはスカイ達の近くへと落下してきていた。

 

「ま、まさか!?」

 

「チッ、カバトンを用済みと切るつもりだな!」

 

その直後、スカイはいきなりカバトンに向かって飛び出した。それを見たサンライズはスカイに向かって手を翳すとスカイを炎のバリアで包み込んだ。

 

「カバトン!今助けます!」

 

「俺はお前の敵なのねん!な、何故!?」

 

「わかりません!でも、こうする事が正しいと思ったからです!」

 

その直後にスカイの接近を許すまいと雷がスカイへと落ちるが、それはサンライズが展開した炎のバリアによって全て防がれる。そして、カバトンの真上に生成された巨大な雷が落下する瞬間、サンライズはその雷を少しでも抑えるために技を発動した。

 

「ひろがる!サンライズカリバー!」

 

サンライズからの炎の斬撃が落下する雷と衝突し、拮抗している間にスカイがカバトンを突き飛ばすとその直後に雷がサンライズの技を無理矢理押し退けて落下する。しかし、もうそこにはスカイもカバトンもいないために直撃は免れた。

 

「(俺の負けだ……お前は強ぇえ……俺なんかよりもずっとな……あばよ)」

 

それからカバトンは川に落下して姿を消し、空は再び黒い雲が無くなって晴れ渡った。こうしてカバトンとの戦いは終わり、一度全員で家に戻る事になる。

 

「……カバトンの言っていたアンダーグ帝国って一体……」

 

「おばあちゃんも知らない国みたい」

 

「カバトンに聞くのが一番ですがもう二度と会わないでしょうね」

 

「だろうな……でもさ」

 

あさひが言いかけた台詞をましろは理解すると続きの言葉を口にする。

 

「ソラちゃん、ツバサ君、あさひ。まだ色々と心配だけど、こんな時こそ元気を出していかないと!」

 

「ですね、気持ちをチェンジです!」

 

「……どんな相手が来てもエルちゃんを守り抜くだけです」

 

「取り敢えず……カゲロウ。約束はどうする?いつ交代したいとか候補はあるか?」

 

あさひがカゲロウとした約束を守るために胸の内に宿るカゲロウへと話しかけた。

 

「……ふん。まだ決まってねーよ。……まぁ、近いうちに俺から代わってやるから安心しろ」

 

アンダーグ帝国と呼ばれる敵。そしてまだ見ぬカバトン以外の刺客。あさひ達四人は新たな決意を胸にまた新たなる一歩を踏み出す事になるのであった。




また次回もお楽しみに。


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カゲロウの一日

今回はオリジナル回となっています。それではどうぞ!


カバトンとの決着が付いた数日後の朝。この日は土日で朝早く起きる必要は無い。普段のあさひなら絶対にそう言って寝坊する……のが普通だ。しかし、今回は違った。

 

「ふぁああ……」

 

「あさひー!また寝坊を……え?」

 

ましろがあさひの部屋に入るとそこには既に起きているあさひがおり、普段の彼なら絶対にあり得ない光景だった。

 

「……おはよう、姉さん」

 

「……あなた、本当にあさひ?」

 

ましろはあさひの言葉に違和感を覚えるとその正体を見抜いた。それは……

 

「カゲロウなの?」

 

「へぇ……よくわかるなぁ。流石はお姉様」

 

どうやら今日はカゲロウが前に出ているようで、ましろはこれは前にあさひが言っていたカゲロウとあさひが一日だけ入れ替わる日だと思い至る。

 

「……あさひは?」

 

「そんなに怖い目になるなよ。ちゃんと俺の中にいるぜ?」

 

ましろからの目線にカゲロウは呑気に答える。やはり以前対立したからか、カゲロウが出てくるのはあまり好感触では無いのだ。

 

「おはようございます!あさひ君!」

 

そこにソラがやってくるとカゲロウに挨拶するが、ましろはすぐに訂正する。

 

「ソラちゃん、今日はカゲロウが出てくる日らしくて……」

 

「そう……だったんですか」

 

何だかソラもカゲロウが相手だと余所余所しくなってしまう。カゲロウはそれ程までに他の面々からよく思われてないのだ。

 

「はぁ……本当に仕方ない奴等だなぁ。取り敢えず、飯食わせろ」

 

それから三人は下へと降りると朝食を摂る事になり、今日はましろの作った料理を食べた。

 

「美味いな、やっぱり姉さんの料理は最高だ」

 

「………」

 

「あれ?どうしたんですか?ましろさん」

 

ツバサはましろの様子がおかしい事に気がつくと聞くが、すぐにカゲロウと交代したせいだと聞いてそれはそうなるだろうと頷く。

 

それから食事を摂り終わると片付けをして各自自由時間となる。早速カゲロウはエルの元に行くとエルをあやそうとするが……。

 

「える!」

 

「おいおい、あさひじゃないからって好き嫌いは良くねーぞ?」

 

どうやらエルはカゲロウには懐いてないらしく、カゲロウはそっぽを向かれて困った様子に変わる。

 

「おいソラ。何でこのガキは俺を嫌うんだ?」

 

「日頃の行いです!」

 

以前にエルはカゲロウの手によって連れ去られて無理矢理力を使わされたのもあってやはり彼女も良い気持ちでは無いらしい。

 

「やれやれだな」

 

仕方ないとばかりに諦めると宿題をやる事にした。学校で一応あさひが授業を受けてる際にカゲロウもそれを聴いていたので何となくだが宿題を実行するのは可能だ。

 

「ったく、何でこんなに面倒な事を……」

 

「これを俺はいつもやってるんだけど?」

 

「あさひか……」

 

「少しは俺の苦労がわかったか?」

 

「知るか。お前らの苦労なんぞわかってたまるかっての」

 

今回はあさひが胸の内からカゲロウへと話しかける。カゲロウは宿題をパパッと終わらせるとそれから暇な時間に入った。それから何をするべきかと考えているとそこにましろが入ってくる。

 

「カゲロウ……」

 

「へぇ、お姉様が初めて名前を呼んでくれたな」

 

「そのお姉様って言うのはやめてほしいかな」

 

それから二人で話をする事にした。主にましろからの質問が殆どだったが。

 

「カゲロウは、この前自由が欲しいって言ってたよね?……どうしてなの?そのためだけにあさひを体の中に閉じ込めないといけない程?」

 

「………そうだな。そうしないと俺はアイツからの完全な独立はできない。……俺はずっと生まれてからあさひの中で生きてきた。その間、何度も外の世界を知りたいと思ってはいた……が、力の無い俺にはそれはできなかった」

 

カゲロウはあさひが幼少の時に生まれて以降、力を貯めるためだけに長い時間をかけて成長してきた。だが、その時間はカゲロウにとって外へと出たいという欲求をどんどん募らせるのみに終わっている。だからこそ虹ヶ丘あさひの一つの人格として覚醒した時にカゲロウはその欲求を爆発させて何度も代わろうとした。

 

「でもあさひは頑なに代わろうとしなかった……だから強硬手段に出たんだね」

 

「まぁ、それもお前らによって失敗に終わったけどな」

 

「それはカゲロウのやり方が……でも、カゲロウにはそれ以外に伝える手段が無かったんだよね……」

 

「ま、そういう事だ」

 

ましろはカゲロウと話せば話す程にカゲロウも自分の弟の一部なのだと考えるようになっていた。そして、あさひとカゲロウ。二人を両方とも救う事はできないのか。ましろは頭を悩ませる事になる。

 

「……そんなに悩まなくても良い。……まぁ、俺が前に出たいという気持ちは今もあるがそれでもどうしようもないものはどうしようもないからな」

 

それからカゲロウは部屋から出ると一人ツバサの元に向かった。それからツバサを見つけると鳥状態の彼を掴んだ。

 

「へ!?あさひ……じゃなくてカゲロウさん!?」

 

「呼び捨てにしろ。何となくその呼び方は面白く無い」

 

「ええ!?」

 

「……早速で悪いが、ちょっと面を貸せ」

 

それからカゲロウによってツバサは引き摺られていくと二人で裏山に移動する。そして、ポイとツバサは投げられると地面に激突すると同時に人の姿へと変わった。

 

「痛たた……って、何するんですか!」

 

「……お前を鍛えてやる。プリキュアに変身しろ」

 

「どうして?ボク、何かしましたか?」

 

「……はぁ。良いか、今の現状で一番戦力にならないのはお前だ。ツバサ」

 

カゲロウは一切包み隠すことなくツバサへと侮辱の言葉を言い放つ。そして、それから急に人が変わったかのようにツバサへと詰め寄ると蹴り飛ばそうと足を上げる。

 

「ッ!」

 

ツバサはそれを躱すものの、カゲロウの目は本気でありツバサに変身しろと目を底光りさせていた。

 

「仕方ないですね……」

 

ツバサはペンを出すとプリキュアへと変身するためにスカイトーンを装填する。

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!ウィング!天高くひろがる勇気!キュアウィング!」

 

それからツバサはキュアウィングへと変身し、カゲロウを睨む。いきなり攻撃を仕掛けてきた事に納得がいかない様子だ。

 

「それで良い。行くぞ。ダークミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!トワイライト!宵にひろがる絶望の闇!キュアトワイライト!」

 

すかさずカゲロウも変身するとウィングへと襲いかかる。空中を自在に飛び回るウィングに対してカゲロウは森の木々を足場にしつつ縦横無尽に跳び回った。

 

その機動力はウィングとほぼ変わらないぐらいであり、なかなか侮れない。

 

「ボクの速度に追いつくなんて……」

 

「ふん。悪いが今のお前など俺の敵じゃない」

 

トワイライトはウィングを挑発してペースを乱そうとしてくる。ウィングがムキになるのを狙っているのだ。

 

「はあっ!」

 

それからウィングは自慢のスピードでトワイライトの周りを飛び回ると死角から攻撃を仕掛けていく。

 

「無駄だ」

 

その瞬間、トワイライトの体に球体状のバリアが張られるとそのままウィングはそのバリアに阻まれてしまう。

 

「そんな……」

 

「たあっ!」

 

それからウィングへと回し蹴りが叩き込まれてウィングはガードこそ間に合ったがそれでもあまりの威力に近くの木へと叩きつけられた。

 

「強い…」

 

「やはりな、お前にとっての利点は空を飛べる事とその素早い動きだ。だがそれだけに頼るようではプリンセスのナイトになど絶対になれない」

 

「ッ……」

 

「プリンセスのナイトになりたいのならもっと強く、誇り高くあれ。誰にも負けないという意地を見せてみろ!」

 

トワイライトは更にウィングを挑発。それからウィングはトワイライトへと何度も攻撃を仕掛けるがことごとく防がれ、逆に攻撃をもらう始末だ。数分後にはウィングは傷だらけで地面に無惨にも叩きつけられてしまう。

 

「ふん。空を飛べるっつてもこの程度か……」

 

「あなたは、何の目的でボクを攻撃するんですか……」

 

「言っただろ。お前を鍛えてるんだよ。……あさひのおばあちゃんから聞いた。もうすぐスカイランドのトンネルが開くと。もしそうなったら俺と俺の姉さんとは離れ離れになる。……そんな時に弱いままでアンダーグ帝国の更なる刺客に勝てると思うなよ!」

 

それを聞いてウィングは息を飲む。カバトンがいなくなったとはいえアンダーグ帝国は更なる刺客をエルへと差し向けるだろう。そしてスカイランドでの戦いに変わればプリズムとサンライズはいちいちトンネルを潜らないとスカイランドに行けない。そしてその間はスカイとウィングの二人だけでランボーグを止めなければならないのだ。

 

「そしてナイトというのはエルを守るための守りの最終ライン……そこがアッサリ抜かれるようじゃ話にならないんだよ!」

 

トワイライトは倒れたウィングの頭を掴むとウィングへと何度もパンチを浴びせる。ボロボロのウィングにそれを躱す事ができるはずもなくただひたすらに殴られるのみだ。

 

「ゴホッ……ゴホッ……」

 

「……そんな弱い奴が……ナイトになるだと?笑わせるなよ!」

 

「弱い?……ボクが……そうあってたまるか!」

 

ウィングはトワイライトへと反撃のキックをゼロ距離で放つ。トワイライトはそれをガードし、そのままパンチを顔面に叩きつける。

 

「はあっ!」

 

しかし、ウィングはそれを受けながらもトワイライトへとパンチで返し、トワイライトの体勢を崩させる。

 

「ひろがる!ウィングアタック!」

 

それからウィングの浄化技でトワイライトへと突撃。その攻撃がトワイライトに命中すると爆発と共に周囲に衝撃波が駆け巡った。

 

「……ッ!」

 

「やればできるじゃねーか……が、まだ詰めが甘い」

 

ウィングアタックを何とトワイライトは片手で受け止めるとそのエネルギーを自身に張ったバリアで浄化のエネルギーを受け切る。

 

「ひろがる!トワイライト・ジ・エンド!」

 

次の瞬間、ゼロ距離からのトワイライトの技を受けてウィングは変身解除。そのまま地面に倒れ込む。

 

「ううっ……」

 

そのままツバサが痛みに悶える中、トワイライトは変身を解いて見下ろした。

 

「まだまだだな。ま、一矢報いただけでもマシか。今日はここまでだ、帰るぞ」

 

カゲロウが踵を返す中、ツバサはカゲロウに対して言葉を投げかけた。

 

「カゲロウ!……またボクを鍛えてください!ボクは、強く、強くなりたいんです!」

 

それを聞いてカゲロウはニヤリと笑うと振り向く事なく答えを返していく。

 

「当たり前だろ……スカイランドに帰るまでの僅かな間だが、お前のその弱い体を叩き直してやる」

 

それからカゲロウ達は家に戻るとまたましろの作った手料理を美味しく食べて寝る前にまで時間は進んだ。

 

「……どうだった?一日自由にしてみてさ」

 

「ふん。悪く無い……むしろお前が良いならずっとこうしたいぐらいだ」

 

「それは無理……でも、偶にだったら代わっても良いよ」

 

「どういう風の吹き回しだ?前まで嫌がってただろ」

 

「……あんな事を聞いたら、今まで通りじゃいられないよ」

 

「そうかよ」

 

そう言ってカゲロウは眠りに付き、それと同時に主人格をあさひへと返して心の奥底に帰っていく。こうして、カゲロウの1日は終わりを告げるのであった。




また次回もお楽しみに。


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ファーストシューズと開いたトンネル

カゲロウとあさひの入れ替わりから数日後、今現在あさひ、ソラ、ましろ、ツバサの四人はエルを連れて赤ちゃん用の靴のコーナーにやってきた。

 

「わぁ〜」

 

「ちっちゃくて可愛いね。えっと、エルちゃんに似合うのは……」

 

ましろがそう言っているとソラが近くにあった靴を手に取ってエルへと見せる。

 

「これとかどうですか?とっても頑丈そうですし、防御力が高そうです!」

 

「える!」

 

ソラの見せた靴はどうやらエルの気に召さないようで、プイッとそっぽを向かれてしまった。

 

「防御力の件は取り敢えず置いておこうか。えっと……これはどう?」

 

次にましろが靴底の部分が光っている靴を見せるがエルはまた嫌だとばかりに首を横に振る。

 

「これはどうですか?」

 

それからソラとましろが次々と靴を見せていくがどれも嫌なのかエルの気に召さない。

 

「……なかなか手厳しいなぁ……」

 

あさひがそう言う中、ソラとましろは冷や汗を流す。エルが気に入る靴でないと納得しなさそうだ。

 

「もう、好き嫌いはダメですよ!」

 

ソラが注意する一方で、ツバサはやれやれとばかりに前に出ていく。

 

「ふぅ、プリンセスは悪くありません。足りていないんです。お二人のセンスが」

 

「「えぇ!?」」

 

「エルちゃんはスカイランド王家のプリンセス、キラキラ輝く一番星、国民のアイドル!そんじょそこらのデザインで満足する訳が無いです」

 

「……自身満々だな」

 

ツバサはそれから靴は自分が選ぶとばかりに探していくとキラキラと輝く豪華そうな靴を見つけて手に取る。

 

「さぁ、お受け取りください。プリンセス、あなたのナイトが選んだとびきりの……」

 

「える!」

 

ツバサが言い切る前にエルは嫌だと言うようにプイとしてしまい、それに同情するようにソラとましろがツバサの両肩にそれぞれ手を置く。

 

「……これは酷い」

 

「あさひは何が良いと思う?」

 

「そうですよ。さっきから一人だけ選ばないのはズルです」

 

「何で!?というか巻き込むな!」

 

それからあさひが探す番となり店の中の靴を探すがどうもピンと来るような靴が無い。あさひはそれに焦り始めてしまう。

 

「あさひ、いつまでかかるの?」

 

「そうですよ!日が暮れてしまいます!」

 

「待って!本当にエルに似合うような靴が無いんだって!」

 

「ほう、良いセンスしてるじゃねーか。お前からは言い出し辛いだろ。代われ」

 

「えっ!?ちょっ、待っ………」

 

その瞬間、あさひはカゲロウに入れ替わるとカゲロウが三人の方へと歩み寄った。

 

「ふん、お前ら。ちゃんとエルの事わかってあげてるのか?多分この靴屋にはエルが気にいる靴は無いぞ」

 

「カゲロウ……」

 

「何でわかるんですか!」

 

いきなりの宣告に三人とも困惑するばかりだ。無理も無い。まだ見せてすら無いのにどれもハズレだと言っているようなものだからである。

 

「エル、お前はどうなんだ?パッと見てこの中に欲しいと思った靴はあったか?」

 

カゲロウの問いにエルは首を横に振って答える。そしてそれはここには自分のお気に入りの靴は無いという事を暗に示す事になる。

 

「嘘……でしょ?」

 

「カゲロウの方がエルちゃんの事をちゃんとわかってるなんて……」

 

「ショックです」

 

「ふん。あさひ、もう良い。戻れ」

 

そう言ってカゲロウは引っ込むとあさひに戻ってきた。あさひはカゲロウにまた振り回された事に溜息を吐くとどうするべきかと悩んだ。

 

「取り敢えず、別の靴屋を探す?」

 

「そうですね、ここには無いとわかった以上、時間を無理に使う必要はありません。エルちゃんのお気に入りが見つかるまでこの街の靴屋さん全部を、いいえ……この世界の靴屋さんを全部周りましょう」

 

「……話が壮大になってきたね。終わる頃にはエルちゃんが大人になっちゃうよ?」

 

するとエルが何かを見つけて指を指す。その先にあったのはとある年配の女性が買おうとした靴である。

 

「える!えるぅ〜!」

 

どうやらエルが欲しいのはあの靴であり、それ以外は嫌がっていたのにあの靴だけは絶対に欲しいと言わんばかりだ。

 

「あの靴は人の物です」

 

「別の物にしよ。ね?」

 

「……あまり駄々をこねないで下さい」

 

「……三人とも、あの人が来ちゃってるよ?」

 

「「「え?」」」

 

三人が目を上げるとそこには先程の靴を買おうとしていた女性が立っていた。

 

「どえらい可愛い赤ちゃんやな。これ、気に入ったんか?」

 

「える!えるぅ……」

 

「すみません……」

 

「これ、あげるわ」

 

「「えぇ!?」」

 

いきなりの女性からの宣言に姉弟揃って驚きの声を上げる。そして、それと同時に貰ってしまって良いのかという気持ちにさえなった。

 

「でも……」

 

「遠慮せんでもええよ。まだお会計する前やしな」

 

それから女性から靴を譲ってもらうが、あさひはまだ渋い顔をしたままだった。対象的にソラは喜んだような顔をしているものの、あさひはすかさず問いかける。

 

「本当に良いんですか?この靴……元々は誰かに渡すための靴だったんじゃ……」

 

「そうですよ!その子がガッカリしてしまうんじゃ……」

 

ましろもあさひに続くようにそう口にする。そんな中、女性はどこか落ち込んだ様子で後ろを向くと後悔は無いと言わんばかりにある言葉を口にする。

 

「……これで良かったんや」

 

それから女性が靴屋を出ていき、ソラがその後を追うものの女性は既にどこかへと行ってしまった後だった。

 

それから四人は家に帰るとソラは絵を描いてから先程の出来事を後悔していた。

 

「断るべきでした……きっと、何か事情があったんです。なのに私……未熟」

 

「今度どこかで会えたらまたお礼を言おう」

 

「いいえ、今すぐあの人を探しに行ってこの靴を返しましょう!」

 

「えぇ!?じゃあ、プリンセスは?こんなにこの靴を気に入っているのに……」

 

ソラの発言にツバサはあまり好感触では無い様子だった。そして、あさひの中にいるカゲロウもそれに合わせて言葉を発する。

 

「……あさひ、どうやらソラの言った事を実行できるほど、ソラとツバサには時間が残されてないみたいだ」

 

「カゲロウ?それってどういう……」

 

その直後ヨヨの部屋の方から何かの波動が伝わってきた。四人がヨヨの部屋へと移動するとそこにはミラーパッドから青いトンネルのような物が生成されていたのだ。

 

「……トンネルの入り口」

 

「遂に完成したのか」

 

「じゃあこれ、スカイランドに繋がってるの?」

 

「……ええ、約束通りに完成させたわよ」

 

とうとうスカイランドに繋がるトンネルが完成し、ソラ、ツバサ、エルはスカイランドへと戻れるようになったのだ。しかし、それは喜ばしい事であると同時に別れへのカウントダウンが始まった事でもある。エルをスカイランドへと返せばソラがここにいる理由は無くなってしまうし、ツバサだってずっとここにいるわけにはいかないのだ。

 

「……お別れの時が来てしまったのか」

 

あさひがボソッと呟いたその言葉を他の三人もしっかりと受け止める。そして、ヨヨはスカイランドの王様や王妃様と話をしてトンネルの調整が翌日の夕方に終わる事を報告。それからヨヨは静かに話し始めた。

 

「皆、聞いてちょうだい。アンダーグ帝国はこれからもきっとエルちゃんを狙ってくる。戦いの場所はこのソラシド市からスカイランドへと移る……でも、ましろさんとあさひさんはスカイランドでは暮らせない。学校もあるし、勉強もしないといけない……それに」

 

「ランボーグがエルちゃんを襲ってきたら私もあさひもトンネルを使ってすぐにスカイランドに助けに行くよ」

 

「でも、恐らく一緒に過せる時間は今日が最後……」

 

「その通りよ。寂しいけどね。……あげはさんにも声をかけて今日はご馳走にしましょう」

 

その言葉を聞いて四人とも寂しそうな表情へと変わる。その日の夜、連絡を受けたあげはと共に夕食を食べる事になった。

 

「そっか、帰っちゃうのか」

 

「エルちゃんをお家に返してあげる。そのために頑張ってきたんですから。……ましろん、あさひ、明日どうするの?」

 

あげはに声をかけられた二人だが寂しさに気を取られてボーッとしてしまっていたせいであげはに不審に思われてしまう。

 

「ましろん、あさひ?」

 

「え!?あ、明日?一緒にエルちゃんを送り届けて観光してから帰ってくるよ」

 

「丁度学校お休みだから」

 

それからあっという間に時間が過ぎて寝る時間になった。ソラとましろは同じベッドに一緒に入り、あさひとあげははそれぞれバラバラの布団に入って寝ていた。そんな中あげはがまるで怪獣のようないびきを立てながら寝ていて、あさひはしっかり寝ていたがソラとましろはなかなか眠れずにいる。

 

「グガー……グガー……」

 

「怪獣みたいですね……」

 

「あげはちゃん、学校忙しいし毎日車で通うの大変だし……最後に顔を出してくれただけありがとだよ」

 

「最後……」

 

二人はなかなか寝付けずに話していると最後という単語が出て更に寂しさを募らせていく。その様子を薄らと目を開けてみていたあげはは更に大きないびきでわざと二人が眠れないようにして二人だけの時間を過ごさせようとする。

 

「これじゃあ眠れないよ」

 

「ちょっと、外の空気を吸いに行きませんか?」

 

それから二人が外に出ていくのを見計らってあげは、そして寝ていたはずのあさひが目を開けて起き上がる。

 

「あさひ?起きてたんだ」

 

「あげは姉こそ、二人の時間を過ごさせるためにわざとうるさくしてたでしょ」

 

「……あさひは行かなくて良いの?きっとソラちゃんと過ごせる最後の時間だよ?」

 

あげはにそう言われてあさひは一瞬行こうとしてその足を止めた。あさひは振り返ってあげはの方を見ると笑ってこう答える。

 

「いや、俺は遠慮しておくよ。女子二人だけの時間なんてそうそう無かったからさ……それに……」

 

あげはは見た。あさひの頬に涙が伝うのを……。あさひは二人の前では決して泣かないように我慢していたのだ。あさひだってソラと過ごした楽しい時間が終わってしまうのは嫌なのだ。

 

「今俺が行ったら……せっかく二人が泣かないでいるのに台無しになっちゃうでしょ……」

 

あさひはそれから泣きながら外にいる二人を見つめ、あげははそんなあさひを励ますように背中を優しくさすりつつ外にいる二人を見つめた。

 

「そうだね……二人共泣いたって良いのに、良い子達すぎるよ」

 

それから最後の夜は過ぎていく。ひとしきり泣いたあさひは寂しさを紛らわせるためにあげはに抱かれながら寝る事になり、ソラとましろは別の部屋で改めて寝る事にしたのだった。




また次回もお楽しみに。


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大切な贈り物と旅立ちの時

次の日の朝一番。あさひ、ソラ、ましろの三人は街中に昨日買ったエルの靴を持ってやってきていた。理由はスカイランドに行く夕方までの間に靴を女性へと返すためである。そして、家ではツバサがエルに靴が無い事を悟らせないようにしつつ時間を稼いでいた。

 

「えるぅ……」

 

「今日はお家で遊びませんか?天気予報で言ってましたよ。今日は雨が降るかもって……絵本!絵本を読みましょう!それともお人形遊びが……」

 

「える!える!え・る・る!」

 

それでもエルの事を騙すのは難しいのかやはり聞かれてしまう。それをツバサは何とか誤魔化しつつ時間を稼ぐのだった。

 

「ズルいですよ……ソラさん、ましろさん、あさひ君。ボクに損な役回りを押し付けて……」

 

その頃三人は何軒かの靴屋に寄って情報を集めつつ昨日の女性を探していく。だが、数多くの人の中から特定の人を探す作業は簡単では無い。最後に寄ったソラシドモールの靴屋がもう唯一の希望だ。

 

「ここがダメだともう……」

 

「別の靴を買いに来るかもって、それくらいしか手掛かりが無いですものね」

 

「……あさひ、当たりだ。そっち見てみろ」

 

いきなりあさひの中のカゲロウがそう言った瞬間、聞き覚えのある声が聞こえてきて三人が振り向く。そこには昨日の女性が誰かと電話する様子であった。

 

「二人共!いたよ!」

 

「「あ!」」

 

「……カゲロウ、頼みがある……」

 

「へいへい。仕方ないから引き受けてやるよ」

 

それから三人は電話が終わった時を見計らって女性に声をかけると喫茶店でゆっくりと話をする事になる。

 

「……そら、ご苦労さんやったなぁ。でもお金を払ったのはそっちやし、それにあの赤ちゃんはこの靴をえらい気に入っていたやないか。そっちこそ大丈夫なんか?」

 

「大丈夫……では無いです。正直な所」

 

「でも、“これで良かった”と聞いて何だか気になって……」

 

「ちゃんと理由だけでも聞かないと……」

 

「心の声が漏れてまったか。おばちゃん、恥ずかしいわぁ」

 

それから三人は女性からあの靴を買おうとしていた理由を聞く事になる。元々この靴はつい最近歩けるようになった女性の孫に買おうとしていたのだが、孫とその両親……女性の子供とその妻は仕事の都合で海外へと行ってしまう事になったのだ。そのためにこの靴を最後に手渡そうと空港まで持って行こうとしたのだが……。

 

「でもこんなの渡したらおばちゃんは絶対に泣いてまう。そしたらおばちゃんの息子も皆、しんどい気持ちになるやろ?そんなの誰も得せぇへん。別れを涙で汚さない方が、ニコニコ笑って明るくお別れした方がええ……」

 

女性がそこまで言った所で三人は同時にテーブルに手をつくと同じ気持ちを言葉にする。

 

「「「そんなのダメです(だよ)!」」」

 

「きゅ、急にどないしたん?」

 

驚く女性を他所に三人は話を聞いて思った事をそのまま女性へとぶつけていく。

 

「本当の気持ちを言わないとダメです!」

 

「嫌だって寂しいって、ずっと一緒に過ごしたいって!」

 

「泣いたって、駄々をこねたって良い」

 

「そうしたら……」

 

「きっと、その後は本当に笑ってお別れできる筈です」

 

「だから今からでも行きましょう!」

 

三人が次々と言葉を紡ぎ説得しようとする中、女性はまだ諦めた顔を崩さない。

 

「かもしれんな……でももう遅いんや、じきにテークオフや。だからその靴はお嬢さん達の赤ちゃんにあげて欲しい」

 

女性はそう言って代金を払って喫茶店から出て行ってしまう。しかし、それで諦める三人では無い。何としてでも女性とプレゼントの靴を送り届ける。そう考えてももぞら空港から飛行機がテークオフするまでの時間を調べた。

 

「多分今の俺達の速度だと間に合わない」

 

「でも、プリキュアになれば……」

 

「絶対に間に合わせるよ!」

 

それから三人は建物の屋上に登り、誰もいない事を確認してペンを取り出す。

 

「「「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!」」」

 

「スカイ!」

 

「プリズム!」

 

「サンライズ!」

 

三人はそれぞれプリキュアへと変身すると名乗りをしていく。

 

「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」

 

「ふわりひろがる優しい光!キュアプリズム!」

 

「夜明けにひろがる眩い朝日!キュアサンライズ!」

 

「「「レディ……ゴー!ひろがるスカイ!プリキュア!」」」

 

三人は変身を完了するとすぐに女性を見つけてそこに降り立つ。勿論女性は空からいきなり人が降ってくれば驚くわけで……。

 

「だ、誰!?」

 

「通りすがりのヒーローガールです!」

 

「一応俺は男だけとな?」

 

「そんな事は良いの!さ、行きましょう!」

 

「ど、どこへ?」

 

「「「空港に!」」」

 

「もしかしてあなた達は……」

 

それから女性は三人の意見に頷くとまずはスカイが女性を背負い、サンライズはドラゴンスタイルへとチェンジする。

 

「飛びますよ……しっかり捕まっててくださいね!」

 

「言われんでもそうするわぁ〜!」

 

それからサンライズが両手に力を込めると地面にジャンプ台を三つ生成。それからそれをスカイ、プリズム、サンライズがそれを踏んで跳び上がる。

 

その威力は普段よりもかなり抑えてある。理由は変に出力を上げると女性の体がその圧力に耐えきれないからだ。

 

「もう一回行くぞ!」

 

サンライズは再度ジャンプ台を召喚。女性としてはもうやりたくない気持ちだったが、間に合わせるにはもうこうするしか無いのだ。

 

「と、跳んでるぅうう!!」

 

「ラスト一回!行くよ!」

 

サンライズは出力を再度調整して着地点が安全な場所になるようにしつつジャンプ台をまた生成。最後の一回を跳んだ。女性はプリキュアの超人的な能力で跳ばされた影響で何度も絶叫しながら移動し、何とか三人の力でテークオフまでに空港へと到着に成功。それから三人は誰もいない所で変身解除し、女性と共に女性の息子達の元に走る。

 

それからキョロキョロと息子とその家族を探すとロビーのベンチに座っていた。女性は一度行こうとしてから躊躇い、止めようとする。しかし、ソラは首を横に振ってそれはダメだということを示す。

 

「行ってください……」

 

それから女性は勇気を出して搭乗口に向かおうとする息子へと声をかけた。

 

「亮太」

 

それから女性はファーストシューズを持って息子の前に笑顔で歩いていく。

 

「どうしたん?さっき電話で急用が入ったって……」

 

「ばぁば!あぁ〜!」

 

「これ、プレゼント……ファーストシューズ……」

 

そして、ファーストシューズを渡した女性の目にはみるみるうちに涙で溢れていった。それを彼女の息子が寄り添って励ます。それを見た三人はこの世界で出会ってから起きた色んな出来事を思い出していく。

 

そうしているうちに三人共頬に涙が伝っていきいつの間にか泣いているのだと自覚。それからいつの間にか三人は手を繋いでおり、この一瞬にも思えるような、永遠にも思えるような時間を過ごした。

 

「(ああ……やっぱり、別れって寂しいな……ソラも姉さんも泣いている……男の俺がしっかりしないと……)」

 

しかし、あさひも溢れ出てくる涙は止まる事なく続き……もうこの気持ちに歯止めなんて効かないのだ。それから三人は女性と別れて帰路に着く。すると目の前からカゲロウが現れた。

 

「カゲロウ……どうしてここに?」

 

「俺が予め分離しておいたんだ」

 

あさひは泣いたせいで若干充血した目を二人に見せながらカゲロウを分離させた理由を説明する。

 

「やれやれ、あさひ。お前、俺への扱いが雑になってきてないか?こんな事までさせてくれてよ」

 

そう言ってカゲロウが出したのは女性が送ったファーストシューズと全く同じ靴だった。

 

「どうしてこれを……」

 

「あさひの奴があの女を見つけた直後のタイミングで俺を分離。それから靴を探すように指令を出してたんだよ。……ま、これでも探すのは一苦労だったけどな」

 

「ありがとうございます、カゲロウ」

 

「ひとまず……信じて良いんだよね?」

 

「ふん。勝手にしろ。後で俺が裏切ってお前らが文句を言っても受け付けないからな?」

 

それからカゲロウがあさひの中に戻ると三人はその靴を手に家に戻る。その靴を履いてエルは上機嫌になり、気に入った様子だ。

 

ツバサとあげはは靴が見つかったことに疑問を抱き、あさひ達に聞くとカゲロウが見つけてくれたと聞いて驚いていた。

 

「カゲロウ、良い所あるじゃん」

 

「でもカゲロウ曰く、こんな事はもう二度としないって……」

 

「あはは……」

 

「える?」

 

「な、なんでもないよ〜」

 

エルは五人がボソボソと話しているのに一瞬疑問に思ったがましろからの何でもない発言に一応納得してくれた。そして、ミラーパッドの調整も完了し、いよいよスカイランドへの出発の時が来る。

 

「ヨヨさん、本当にお世話になりました」

 

「ありがとうございました」

 

「ボタンはあなたが押せば良いわ」

 

それからソラがミラーパッドのボタンを押すとトンネルが開き、あさひ、ソラ、ましろ、ツバサ、エルがトンネルの前に集合する。

 

「ましろん、あさひ、お土産よろしく!」

 

「はーい」

 

「あげは姉も元気でね」

 

「もう、すぐに帰ってくるのにそれはおかしくない?」

 

「あはは……」

 

「気をつけていってらっしゃい」

 

「「「「はい!」」」」

 

こうして、あさひ達四人はスカイランドへの道を進んでいく。あさひとましろにとっては初めてのスカイランド。どのような場所なのか、どんな出会いがあるのか。それらを思い浮かべながらトンネルの中へと入っていくのであった。

 

 

 

 

(番外編)

 

スカイランドの扉が開いた日の夜、あさひが泣き終わってからあげはは一人あさひを抱きしめている。

 

「あさひ……今日はもう一緒に寝る?」

 

「うん……」

 

二人で布団の中に入るとあさひはまるで子供のようにあげはへと抱きつくとそのまま手放さなかった。

 

「ふぇっ!?あ、あさひ……きゅ、急にどうしたの!?」

 

「だって、あげは姉は一緒に寝るって言ったから……この方があげは姉の温もりを感じられると思って……」

 

「(そりゃあ、一緒に寝ようと言ったのは私だけど……や、やっぱり恥ずかしい……)」

 

今のあさひは羞恥心よりも寂しさを埋めようとする気持ちの方が強く、中学生が親しい大人に抱きつくと言う恥ずかしい事態を認知していない。そのため、普段よりもグイグイと距離を詰めていくのだ。

 

「あげは姉……大好き……。あげは姉は小さい頃に俺の隣にいてくれるって約束してくれた……だから俺もあげは姉の隣にいる」

 

「あさひ……(待って待って!あさひの理性のブレーキが壊れてない!?このままだと勢いで行っちゃうんじゃ……)」

 

「すぅ……すぅ……」

 

その直後、あさひから寝息が小さく聞こえてくると彼が寝てしまった事を示していた。それにあげははホッと安心する。

 

「おやすみ……あさひ。……私も大好きだよ」

 

そう言ってあげははあさひの額に小さくキスするとそのまま寝てしまう。その翌日にあさひが遅れてやってきた羞恥心によって悶える事になるのだが、それは完全な余談である。




また次回もお楽しみに。


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スカイランドの青の護衛隊

スカイランドへのトンネルを進むあさひ達一行。四人が進むトンネルにももうすぐ終わりが訪れるという頃。

 

「もうすぐ出口ですね」

 

「なかなか不思議な旅だったなぁ」

 

「いやいや、これからスカイランドに着くんだからね?あさひ」

 

「ひとまず、着いてから色々と……って、え!?」

 

四人がトンネルを抜けたその場所には丁度スカイランドの王様が立っており、四人はいきなり王様を下敷きにして着地する事になってしまう。

 

「ご、ごめんなさい!」

 

「えるぅ〜!」

 

あさひが急いで退いて謝るとそれと同時に他の三人も謝る。そして、エルは不思議な力で空中に浮くと王妃の元へと飛んでいった。

 

「お帰りなさい。プリンセス・エル」

 

「えるぅ」

 

どうやら母親の元に戻れてエルも嬉しそうだ。それから四人は改まって現状について話す事になる。

 

「えるぅ〜!」

 

「歩いた!プリンセスが歩いたぞ!」

 

「ええ……」

 

「そなた達、よくぞプリンセスを取り戻してくれた。深い愛情をもってして我が娘の世話をしてくれた事。心から礼を言う。そなた達が守ってくれたのはあの子の身の安全だけでは無い。……笑顔だ」

 

「ソラ、ましろ、ツバサ、あさひ。あなた達はスカイランドのヒーローです」

 

「ヒーローだなんてそんな……」

 

「俺達は当たり前の事をしただけで……」

 

ましろとあさひが謙遜する中、二人の方を向くとそこにはソラもツバサと目をキラキラさせた様子でそれを見ていた。

 

「「スカイランドの……ヒーロー」」

 

それを見て残る二人は苦笑いをする始末である。それからソラは首を振って王様へと話を切り出す。

 

「王様、エルちゃんを攫った者の事でお話が……」

 

「まぁ待て」

 

「プリンセスが帰ってくるのを待っていたのは私達だけではないのです」

 

それから王様と王妃様は国民へとエルが戻ってきたという事を言い、それを受けたスカイランドの国民達は喜びを露わにしていた。四人も皆の笑顔を見てようやく幸せが戻ったのだと安心する。国民への話が終わってから別の部屋で話をする事になった。

 

「アンダーグ帝国は何故プリンセスを狙う……」

 

「あなた」

 

「あぁ……いや、すまなかった。この件は全て私が預かる。そなた達は安心して家に帰るが良い。親元でゆっくりと体を休め……」

 

「プリキュアの力!お貸しします!」

 

「私も!」

 

「ボクも!」

 

「俺もです」

 

四人がそれぞれ力を貸すという事を表明してから王妃に危険だと言われる。それでもソラはこう言い放った。

 

「相手がどんなに強くても、正しい事を最後までやり抜く!それがヒーローです!」

 

「……ヒーローか」

 

その直後、知らない誰かの声が聞こえて四人が振り向くとそこには薄紫色の髪をハーフアップにした女性で青い衣装にマントを付けたいかにも騎士らしき女性がそこには立っていたのだ。

 

その女性が歩いてくるのを見て四人は道の脇に整列。そして、女性は王様と王妃様の前にひざまづく。

 

「プリンセス、よくぞご無事で」

 

「おお、戻ってくれたか」

 

「都を留守にしていた間とはいえ、プリンセスをお守りできず……」

 

「いいえ、辺境の地の大火災であなたが指揮を……」

 

女性と王様達が話している間、あさひとましろは誰かわからずにポカンとしている。そんな時にソラとツバサは興奮した様子でそれを見ていた。

 

「誰?」

 

「シャララ隊長ですよ!スカイランドを守るヒーローチーム、青の護衛隊。シャララ隊長はそのリーダー。世界で一番強い戦士ですよ!」

 

それを聞いてあさひは息を呑む。剣はプリキュアになった際に自分も使うのだが、世界一の剣士という事は自分よりもきっと凄い使い手なのだろうと感じていたのだ。

 

その直後、ソラはひざまづくシャララ隊長の背中に抱きついていた。そしてシャララ隊長もソラの事に気づいている様子で……。

 

「大きくなったな。ソラ」

 

「はい!」

 

「あれからもう十年になるのか」

 

「はい!」

 

「「(そっか、あの人がソラ(ちゃん)の憧れの……ヒーロー!)」」

 

ましろとあさひは前にソラから聞いていた話を思い出してこの人がそうなのだと納得する。それから日を跨いで翌日、ましろとツバサの二人はスカイランドの飲食店で食事をしていた。

 

「ふふっ……ふふっ……」

 

「ご飯が冷めちゃうよ?」

 

「ご飯どころじゃないですよ!王様が認めてくださったんですから!これからもプリンセスの側に居てもいい。ナイトとしてって!」

 

「子守役としてって言ってなかった?」

 

ましろの的確なツッコミにツバサは慌てて手を振る。そして、ツバサはある事を疑問に思ったのかましろへと質問を投げた。

 

「ところで、本当に要らなかったんですか?」

 

「何が?」

 

「ご褒美ですよ」

 

王様からは四人に褒美として好きな物を出してくれるという話が上がっていた。しかし、ましろに関しては特に何も要らないと言って断ったのだ。

 

「どうして何も要らないって言ったんですか?」

 

「エルちゃんが無事にお家に帰れただけでも十分だからね……あ、でもおばあちゃんにスカイジュエルを頼まれていたからそれを貰っておけば良かったかも」

 

「まるでボク達が図々しいみたいじゃないですか」

 

そう言っているといきなりツバサの頭に手を置かれた。ツバサがびっくりして振り返るとそこに居たのは……

 

「うわっ!?び、びっくりしたじゃないですか!カゲロウ!」

 

「よう」

 

「どうしてここに?」

 

「ふん。あさひの野郎が俺がここにいる間は好きに行動しても良いとか言ったからな。好きにやらせてもらっている」

 

「あはは……それよりもさ、ソラちゃんは上手くやれてるかな?」

 

「ソラは大丈夫だろ。強いし、アイツの実力なら上手くやっていける。むしろ心配なのは……」

 

「あさひ君の方ですよね……」

 

三人は今この場にいない二人の事について考えていた。その頃、スカイランドの王城ではシャララ隊長に連れられてソラとあさひの二人が青の護衛隊のいる部屋へと歩いている。

 

「あさひ君、どうしてここに?」

 

「……どうしても鍛えて欲しかったんだ。俺はまだ戦士として未熟。だからこそこのチャンスを活かして強くならないといけない。そのためなら、何だってする……(あげは姉を俺一人でも守れるぐらいに……)」

 

それから扉が開けられると副隊長と思われる巨漢の男が一声かけて隊員達が敬礼する。

 

「見習いの隊員を紹介する」

 

シャララ隊長がそう言うとソラが前に出て自己紹介を始めた。

 

「ソラ・ハレワタールです!シャララ隊長に憧れてヒーローを目指しています!王様にお願いして皆さんの仲間にしてもらえる事にしました!未熟者ですが一生懸命頑張ります!よろしくお願いします!」

 

そう言ってソラが頭を下げると同時に一人の隊員から声が上がる。その声の主は赤い髪にツリ目が特徴的な女性だ。

 

「まだ子供じゃないですか……」

 

「え?」

 

「控えろベリィベリー」

 

「別の世界に行ってプリンセスを救って来たとか。護衛隊に入りたくて嘘をついているのかも」

 

「私は嘘なんか……」

 

「弱い奴を仲間に入れるなんて反対です。邪魔ですから!」

 

「だったら私の力をテストしてください!」

 

「……面白い」

 

「二人共よさんか」

 

ベリィベリーと呼ばれた女性はソラに対して明らかに敵意を剥き出しにしており、一触即発の空気を醸し出していた。そして、ベリィベリー以外にももう一人声を上げた人物がいる。

 

「あの……そっちの男の子は見習いではないんですよね?でしたら何故ここに?」

 

それはベリィベリーと同い年ぐらいの男であり、黒い髪を怒髪にして逆立てつつ体に筋肉隆々としたいかにも強そうな男が声を上げていた。

 

「あぁ、この子は自身を鍛えるためにこの隊を見学に来た者だ」

 

「鍛えるため……」

 

それ聞いた男は苛立ったように拳を握りしめる。そして、そんな中でもあさひは自己紹介をした。

 

「別の世界からこのスカイランドに来ました。虹ヶ丘あさひです。青の護衛隊の皆様のお力はスカイランドの中でも一番と聞きました。俺は少しでも強くなりたいと思っているので皆さんの強さの理由を知りたいと思い見学させていただきます。よろしくお願いします」

 

「調子に乗るな」

 

「ッ……」

 

「おい、お前もかドリアーン」

 

「何が強さを知りたいだ、そんな事のためにお前はここに来たのか。だとしたらハッキリ言って邪魔だ。今すぐに元の世界に帰れ」

 

「邪魔……確かに俺は邪魔かもしれません。でも、自分の強さを追い求める事の何が……」

 

「それが一番邪魔だと言ってるんだ!ここにいる奴等は私欲のための強さを求めているんじゃない!このスカイランドの平和を守るためにいるんだ。……貴様、よくよく見たら邪悪な力の波動が少し残ってるな?お前がプリンセスを攫った奴の仲間じゃないのか?」

 

あさひはその男の迫力にたじろぎそうになるが、それでも負けるわけにはいかないと張り合おうとした所でシャララ隊長に止められた。

 

「そこまでにしろ。ドリアーン、ベリィベリーもだ。そんなに二人が入るのが気に入らないのならベリィベリーはソラと、ドリアーンはあさひと一対一の勝負をしてもらう。……ソラ、あさひ。願いを叶えたければ戦いの中であの二人を納得させろ」

 

それからソラ、あさひ及び青の護衛隊の面々は決闘場に向かうとまずはソラとベリィベリーの二人が向き合う。

 

「さぁ、始めようか」

 

ベリィベリーがそう言うと手のグローブに電撃が走った。そしてそれが彼女の武器だということが容易に察しがつく。

 

「……好きな物を使っても良い」

 

ベリィベリーがそう言う中、ソラは武器には全く目もくれずに構えを取る。

 

「……舐めるな。後悔する事になるぞ」

 

それからシャララ隊長から始めという合図があって二人の決闘が始められた。それからベリィベリーは手のグローブに纏わせた電撃を手刀のようにしたり、電撃のボールを作り出して放ったりしながらソラへと攻撃を仕掛けていく。

 

「はあっ!」

 

それに対してソラは攻撃を喰らわないように躱しつつこちらも格闘戦で応戦。ベリィベリーからのエネルギーボールを回避しつつキックを叩き込んだ。しかしそれはベリィベリーにガードされてしまう。

 

二人の実力は互角であり、一進一退の攻防が続く中にましろ、ツバサ、カゲロウの三人が大量の差し入れと共にやってきた。

 

「えぇ!?何がどうなってるの?」

 

「お前ら、どこから入った!?」

 

いきなり入ってきた三人を見て副隊長のアリリが驚きの声を上げる。そして、ドリアーンはカゲロウの姿を見た途端更に警戒心を強くした。

 

「む?……この男から感じられる邪気……まさか、こいつがあのあさひとか言う奴の邪気の正体か……」

 

その頃、ソラはベリィベリーからの回し蹴りをまともに喰らって後ろに吹き飛ばされてしまう。

 

「くっ……」

 

「ソラちゃん!」

 

「ッ!」

 

「余所見をするな!」

 

更にましろから声をかけられた事でソラはその方向に気を取られてしまい、その瞬間に隙を突かれて電撃ボールを喰らってしまう。

 

「うわっ!?」

 

「ああっ!」

 

電撃で体が痺れたソラにベリィベリーは容赦なく走り込んでいく。

 

「青の護衛隊は最強のチームだ!弱い奴に……居場所は無い!」

 

ベリィベリーからのトドメの一撃が放たれる瞬間、ソラは痺れを振り切って攻撃を回避し、ベリィベリーの背後に回るとそのまま拳をベリィベリーの顔の前で寸止めする。

 

「……勝負あり。ソラの勝ちだ」

 

それからその場に崩れ落ちたベリィベリーへとソラは言葉を言い放つ。

 

「……弱いとか、強いとか、大事なのは正しい事をしたいという気持ち……そうですよね?あなたは間違っています!」

 

ソラの言葉にベリィベリーは涙を流しながら拳を握りしめてその場を立ち去っていく。

 

「全くお前って奴は……のわっ!」

 

アリリ副隊長がそう言った直後、彼を突き飛ばすようにましろとツバサが駆け寄っていきソラの無事を問う。ソラはそれに対して笑顔で返した。

 

「……第二戦だ。小僧、来い」

 

「「え?」」

 

そう言ってドリアーンが前に出るとそれと同時にあさひも出ていった。そこに瞬時に状況を理解したカゲロウがあさひの中に入ろうとする。

 

「いや、良い。カゲロウ、今回は俺の力だけで戦わせてくれ」

 

「……お前、俺無しだとまず間違いなく負けるぞ?アイツはそれほどまでに強い」

 

「……俺は俺自身の力で戦う。戦わないといけない!」

 

あさひはカゲロウの参加を拒否し、カゲロウは仕方なく観戦の方に移った。そして、ましろとツバサはそんなあさひを見て焦り始める。

 

「俺はベリィベリーと違って甘くは無いぞ?」

 

「……わかってる」

 

そう言って二人は向かい合い、戦闘のための構えを取るのであった。




今回登場した男、ドリアーンはこの小説のオリキャラとなります。また次回もお楽しみに。


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あさひの覚悟!守りたいという想い

スカイランドに来たあさひ達。あさひとソラの二人は青の護衛隊のメンバーのベリィベリーとドリアーンから敵意の目を向けられてしまう。そんな二人は決闘場でそれぞれ一対一の勝負を行う事になった。一戦目のソラはベリィベリー相手に勝利を収め、次はあさひの番である。

 

「……俺が使うのはこの大斧だ。お前も好きに武器を使えば良い。勿論、さっきの小娘みたいに使わないのもありだ」

 

そう言ってドリアーンは手に青いエネルギーで生成した大斧を手にすると構える。

 

「………」

 

あさひは武器を一瞬見やるとすぐにその中から剣を選んで構えた。やはりプリキュアで剣を扱っているだけあって剣を使った方が良いと感じたのだ。

 

「それがお前の武器か……」

 

「行きます」

 

それから開始の合図と共にあさひは走っていく。それに対してドリアーンは不動の構えだ。

 

「はあっ!」

 

あさひが剣で突きを放った瞬間、ドリアーンからの大斧が振り抜かれてあさひはいきなり吹き飛ばされてしまう。

 

「がっ!?」

 

「あさひ!」

 

ましろが心配する中、あさひが立ち上がる。その時、ドリアーンは既にあさひの前にまで迫っていた。

 

「くっ!?」

 

またドリアーンからの一撃があさひへと放たれてあさひは剣でそれをガードするものの、その圧倒的なパワー差を前にまた吹き飛ばされて今度は壁に叩きつけられてしまう。

 

「ごふっ……」

 

「……その程度か。お前の強さはそんなものか!」

 

それからあさひは再びドリアーンに向かうと剣と斧での打ち合いにな?が、元々のパワーは圧倒的に向こうが上。そのためあさひはあえなくそのパワー差にねじ伏せられると地面へと激突する。

 

「はぁ……はぁ……(つ、強い……パワー勝負なんてしたら歯が立たない)」

 

あさひは既に息切れを起こしており、それだけドリアーンの力が半端では無い証拠だった。

 

「これはまだ小手調べだぞ?」

 

それからドリアーンからの斧による振り下ろしがあさひを襲う。あさひはそれを咄嗟に横に跳んで回避するが、靴の先端が斧に掠ってその勢いでまた吹き飛ばされてしまう。

 

「う……く……」

 

「ふん、お前は弱すぎる。相手にすらならん。怪我したくなければ降参しろ」

 

「(……カゲロウと特訓したのにまるで相手にすらならないなんて……いくらカゲロウが抜けてパワーダウンしてるとは言ってもここまで差が開くとは……)」

 

あさひが思考する間にもドリアーンからの猛攻撃は続く。あさひは何度も吹き飛ばされ、叩きつけられながらも痛みを堪えながら戦い続ける。そんな粘り強いあさひにドリアーンは問いかけた。

 

「……何故そこまでして強さを求める?」

 

「はぁ、はぁ……いきなり何ですか?」

 

「答えろ。お前が強さを求める理由が知りたい。それに、何故あんな邪悪な存在を胸の内に抱えようとする?」

 

「……邪悪?……確かにカゲロウは俺の悪い部分そのものだ。邪悪と思われても仕方ない。……でもな……カゲロウの事情も知らないあんたが……カゲロウを邪悪と決めつけるな!」

 

そう言った瞬間、あさひから凄まじい気迫が溢れ出ていき、ドリアーンを見据える。

 

「ふん。それでは答えにならない。お前の強さを求める理由、それを教えろ」

 

「……あんたはさっき、俺の強さを私欲だと吐き捨てた。……この青の護衛隊に入る人々は私的な強さを求めてるんじゃ無いと!……俺にだっているんだ。守りたい大切な人が、守りたい人の明るい笑顔が!俺はそれを守るために戦う……戦い抜いてみせる!だから俺は強さが欲しい……強さが無ければ……何も守れないから!」

 

あさひはそう叫ぶとドリアーンへと向かっていく。それからドリアーンが大斧を振り下ろすと鍔迫り合いとなり、あさひに勝ち目は無いかに思えた。しかし、その瞬間あさひはドリアーンのパワーに拮抗すると押されずに踏ん張っているのだ。

 

「……お前、少しはやるようになったじゃねーか」

 

「はぁあああ!」

 

するとあさひの熱が剣に伝わり、灼熱の炎を宿す。

 

「何!?」

 

それからドリアーンの大斧を押し除けてドリアーンへとタックルを仕掛け、ドリアーンを押し込んでから剣を左手に持ち、右手を引いて足を振り上げる。

 

「太陽の……鉄拳!」

 

太陽の鉄拳

 

あさひが叫びながら拳を突き出すと前は生身で絶対に扱えなかった太陽の鉄拳が発動。そのままドリアーンの体に命中するとドリアーンを大きく後退させる。

 

「まさか、こんな技まで使えるのか?」

 

「あぁあああああああ!!」

 

そして、あさひが走っていき、バランスを崩したドリアーンが体勢を立て直す直前。喉元に剣を突きつける事に成功。そしてそれは勝負が付いたことを意味していた。

 

「勝負あり。あさひの勝ちだ」

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

その瞬間、あさひは剣を引っ込めるとそのまま膝から崩れ落ちて気を失ってしまう。

 

次に目を覚ました時には城の病室のベッドの上だった。あさひの体には傷が大量についており、それはドリアーンの攻撃を凌ぎ続けた故の物だとすぐに結論づける。それからあさひは起き上がろうとするものの、体への痛みですぐに悶えてしまう。

 

「あうっ!?」

 

「動いちゃダメ!」

 

そこにいたのは心配そうに見つめるましろやツバサに先程戦ったドリアーン、そしてカゲロウが立っていた。

 

「姉さん……俺……」

 

「はぁ、お前な。体に無理ばかりかけやがって。思えば俺との特訓の時もそうだったな。幾ら傷ついても構わず続行して、休む事なく自分の限界に挑み続けた……だがな。そのやり方だとお前はいつか死ぬぞ」

 

カゲロウからの忠告にあさひは“善処する”と答え、カゲロウと代わるようにドリアーンがあさひの視界の中に映った。

 

「あの時は済まなかった。お前は確かに私欲で動くような男では無かった。……お前が倒れたあの時、ソラもそこにいる二人もお前の事を心配していた。お前が守りたいのは、ああいう奴等の笑顔なんだろう?」

 

「……はい」

 

「……まだお前の戦い方には直すべき所がある。その傷が治ったら俺達でお前の事を鍛え直す。だから今はゆっくり休め」

 

ドリアーンはそう言って一人で自らの持ち場へと去っていく。残ったましろとツバサの二人は付ききりであさひを看病し、治療しようとしたがあさひはそれだと観光ができないと考えて自分の事を放っておいて良いから行くように伝えた。

 

「でも……」

 

「……嫌な予感がするんだ。俺の中に残ってるカゲロウの一部がそう言ってる。だから……」

 

そう言われて二人は去っていき、あさひはカゲロウに何かを差し出すと二人と一緒に行くように言う。

 

「……仕方ないな。あさひ、それが終わったら俺がお前の中に入って治療してやる。だから絶対にそこから動くなよ」

 

カゲロウも部屋から出ていき、あさひは一人溜息を吐いて小声で呟いた。

 

「……俺は、どうしてこんなに弱いんだ……」

 

そう言って悔しそうにするあさひ。その頃、街では異変が起きていた。ソラ、ましろ、ツバサの三人が悲鳴が聞こえた方に行くとそこにはグローブが元になったであろうランボーグと近くに倒れるベリィベリー、そしてランボーグの上に乗った男がいる。その男は緑色の長髪と道化師のようなメイクが施された顔で耳は尖っており、前髪には2本の触覚のような物が付いていた。

 

「ベリィベリーさん!」

 

「気を失っているだけだよ。弱い者には手を出さない。そう決めているんだ。だってほら、僕って優しいからわかるんだよね。弱い者の悲しみ、怒り、なんかそう言うのが」

 

「あなた、誰?」

 

「バッタモンダー……」

 

「アンダーグ帝国の」

 

「新しい……敵?」

 

「正解」

 

バッタモンダーが指を鳴らすとランボーグは攻撃を仕掛けてくる。それに対して三人はそれを躱しつつペンを構えた。

 

「「「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!」」」

 

「スカイ!」

 

「プリズム!」

 

「ウィング!」

 

それから三人で同時に変身するといつものように名乗りを行なっていく。

 

「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」

 

「ふわりひろがる優しい光!キュアプリズム!」

 

「天高くひろがる勇気!キュアウィング!」

 

「「「レディ……ゴー!ひろがるスカイ!プリキュア!」」」

 

それから三人は降り立つとランボーグとバッタモンダーを見据える。

 

「ここはプリンセスの都だ!これ以上の好き勝手は許さないぞ!」

 

「言ったよなぁ。弱い者には手を出さないって……まぁランボーグはそうじゃ無いけどさ」

 

「ランボーグ!」

 

そう言うとランボーグが右腕の拳を突き出してくる。三人はそれに合わせて跳び上がる。するとランボーグは右腕に電撃を纏わせて突き出してきた。

 

「スカイ!」

 

「はあっ!」

 

スカイはその攻撃を蹴り返して防ぐとそのまま着地。それから構える。次は自分の番とばかりに今度はウィングがランボーグの周りを飛び回って撹乱。それからランボーグはそれに対してウィングの動きを見極めると的確にウィングを吹っ飛ばす。

 

「うわっ!?」

 

「ウィング!たあっ!」

 

今度はプリズムがエネルギー弾を連射してランボーグにダメージを与えていく。その間に青の護衛隊が民間人の避難を手助けしていた。

 

「だあっ!」

 

プリズムの弾幕に支援される形でスカイがランボーグへとキックを放つ。しかし、ランボーグは電撃を纏わせた拳でスカイを吹き飛ばして近くの家の壁に叩きつけさせた。

 

そのタイミングでベリィベリーが目覚めて右手を見るとグローブが無いことに気がつく。そして、それがランボーグとして悪用されていると察して叫ぶ。

 

「やめろ!」

 

「ランボーグ!」

 

しかし、ランボーグはそれで止まるどころか今度はベリィベリーをターゲットにしてしまう。そしてプリズムとウィングがカバーに入ろうとするが間に合わない。ランボーグの拳がベリィベリーに叩きつけられる……その時だった。

 

「ふぅ……悲しいね。弱いって」

 

するとその時、いきなりランボーグが吹き飛ばされると叩きつけられる。ベリィベリーを庇った人物……それは……。

 

「はぁ、結局あさひの奴が言った通りか。……ソラ。俺が時間を稼いでやる。だからこの女にお前の気持ちをぶつけてやれ」

 

そう言ってカゲロウはあさひから受け取ったミラージュペンを手にするとそれが闇に染まっていく。

 

「ダークミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!トワイライト!」

 

そして、カゲロウの姿がプリキュアに変化。変身を完了して一人で名乗りを行う。

 

「空にひろがる黄昏の闇!キュアトワイライト!」

 

カゲロウが変身したトワイライトがランボーグに向かっていく中、スカイはベリィベリーの元に向かう。するとバッタモンダーがベリィベリーを見下すように言葉を発した。

 

「やれやれ、そんな弱い奴を庇って何に……」

 

「ベリィベリーさんは……弱くなんか無い!」

 

それからスカイはベリィベリーへと謝罪の言葉を口にする。

 

「ごめんなさい……」

 

「あなたは……ソラ!?」

 

「一人で頑張っていた事、苦しんでいた事、私……何も知らないのに間違っていますなんて……」

 

「ふん、やっと謝罪が終わったようだな」

 

それを見計らってトワイライトはランボーグの腕を掴むとそのまま振り回して叩きつける。

 

「スカイ、プリズム、決めろ!」

 

トワイライトの言葉と共に二人はスカイミラージュとスカイトーンを取り出す。

 

「スカイブルー!」

 

「プリズムホワイト!」

 

「「プリキュア!アップ・ドラフト・シャイニング!」」

 

「スミキッタァ〜」

 

ランボーグに浄化技が決まると浄化されてランボーグは撃退。それを見たバッタモンダーは……いきなりキレ始めた。

 

「ふざけんなよぉ!……ふっ、おめでとう。お互いに良い戦いだったよね。また会おう……バッタモンモン」

 

バッタモンダーが指を鳴らすとカバトンと同様に撤退。それからベリィベリーは他の青の護衛隊の面々に保護される事になる。そんな中、ベリィベリーはソラの元に来るとソラへと頭を下げた。

 

「ありがとう……ソラ、ごめんね……」

 

それからソラはベリィベリーへとグローブを返し、仲直りする事になる。そしてカゲロウはと言うと病室で伏せっているあさひの元に辿り着く。

 

「カゲロウ……ありがとう」

 

「……馬鹿野郎。闇の俺にそんな言葉なんてかけるんじゃねぇ……目的のためにお前らを利用している俺にはな

 

カゲロウが最後に言った言葉はあさひには聞こえておらず、カゲロウはあさひへとペンとスカイトーンを返すとそのままあさひの体に入っていき、彼の治療を開始するのであった。




また次回もお楽しみに。


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あさひとドリアーン 二人の友情

あさひがスカイランドてドリアーンと対決した翌日、カゲロウの力もあってかあさひの体についた傷は大方回復し切ることができた。

 

「なんつー回復速度だよ。まさか、あの邪悪な奴が入っただけで……」

 

「カゲロウです。その邪悪な奴って呼び方はやめてください」

 

「すまん……」

 

今現在、あさひと青の護衛隊の戦士、ドリアーンは食堂で一緒に食事をしていた。

 

「……それにしてもドリアーンさん、あなたはいつからそんな力強い体になったんですか?そんな一朝一夕ではできないですよね?」

 

「ふん、これは俺がこの護衛隊に入る少し前からだな。……元々田舎の悪ガキだった俺は村の奴らを困らせるような人間だった」

 

あさひはドリアーンが話し始めた青の護衛隊への入隊までの記憶を真剣に聞く。

 

悪ガキだったドリアーンはある日、村の近くにあった山からの土砂災害で被害を受けた。ドリアーンは親からの言いつけで仕方なく復興作業を手伝っていたのだが、復興の応援のために駆けつけた青の護衛隊からの支援の手早さに感銘を受ける事になる。

 

「……あの日から俺は変わった。自分の村を救い、人々の笑顔を取り戻した青の護衛隊に入るためにひたすらトレーニングを続けたさ」

 

「……まるでソラみたいですね」

 

「あの女か……ふん、入隊のためにあれだけ努力していたベリィベリーでも勝てなかったんだ。俺が勝てるかは怪しいぞ」

 

「……やっぱり、今の俺は生身だとソラの足元にも及ばないんだな……」

 

あさひはそれを聞いてやはり今の自分の力ではまだまだ大切な人を守れないと実感。悔しそうにする。

 

「あさひ……だったか?お前も大したものだよ。何しろお前は戦士となる前までは何もしてなかったんだろ?それなのに短期間でよくそこまで強くなれたものだ」

 

「それは、俺の力じゃなくて……」

 

ドリアーンはそんなあさひを見て溜息を吐くと席から立ち上がり、あさひの手を引く。

 

「え!?」

 

「ちょっと付き合え」

 

それからあさひはドリアーンに連れられて護衛隊の訓練室に入った。勿論やる事は一つ。

 

「カゲロウ、お前は分離しろ。できるんだろ?二人になる事が」

 

「へいへい……」

 

そう言うとあさひからカゲロウが分離。カゲロウは一人その様子を見守る事になる。

 

「これって一体……」

 

「昨日言っただろ?お前の戦い方には改善の余地があると。俺が少しレクチャーしてやる」

 

それからあさひはドリアーンの手によって鍛えられる事になる。彼がまず口にしたのは意外な言葉だった。

 

「取り敢えず……この特訓をしている間のルールとして、オーバーワークは絶対にしない事。無理に体を動かせばそれだけ壊れやすくなる。だから昨日の試合みたいにお前が無理をするのは絶対禁止だ」

 

「………」

 

「カゲロウ、お前はこいつと一心同体なんだろ?こいつが無理してると思ったらすぐに止めさせろ」

 

「ああ」

 

ドリアーンが教えるのはカウンター攻撃についてだ。思えば昨日の試合も初手はドリアーンがカウンターによって有利な状況へと変えていた。

 

「相手の攻撃に合わせて自身の攻撃を繰り出す。少しでもタイミングがズレれば攻撃をまともに喰らうリスクもある。だが決まれば相手を崩すキッカケにもなる」

 

そこまで聞いた事であさひは疑問に思った。何故そこまでしてカウンターを押してくるのかだ。

 

「……お前の耐久力と根性は確かに目を見張るものがある。だが、相手の攻撃を喰らいすぎだ。味方を庇ってのダメージなら仕方ない所はあるが相手からの攻撃に合わせて反撃ができないようではお前の体を壊す事になる」

 

あさひはそれに心当たりがあった。カゲロウと特訓した時もこのドリアーンと戦闘した時も、そして思えばベリアルと戦った時もそうだ。相手からの攻撃を受け過ぎて傷つく事が多いと。

 

「………」

 

「まずは手本を見せてやる。その後にやってみろ」

 

そこからドリアーンからのカウンターの指導が始まった。あさひは何度も何度も挑戦して失敗を続け、それでも諦めずに成功させようとする。それから時間が経ち一時間後。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……どうして、どうしてできないんだ」

 

あさひは完全に行き詰まってしまっていた。何度やってもカウンターするどころか防御するので手一杯。相手に合わせられないのだ。

 

「……今日はここまでだ」

 

「ッ!?まだ俺は……」

 

「やめとけ。それ以上は本当に体を壊すぞ」

 

あさひがふと自分の体を見ると殆ど完治していたはずの体がまた傷だらけになっていた。そして、それを自覚したと同時にその場に膝をつく。

 

「あうっ……」

 

「はぁ、お前は少し無理のしすぎだ。今日はもう休め」

 

「……はい」

 

あさひはそれから王様から与えられた部屋に戻ると同時にドリアーンも仕事へと戻っていく。

 

「クソッ、何でだよ……何でこんなに俺は弱いんだ……」

 

あさひはベッドの上に寝転ぶと拳を叩きつけた。それと同時にカゲロウが体へと入るとあさひの体の治療を開始する。

 

「……それは自分自身が自分の事を強いと考えてないからだ」

 

「……は?」

 

あさひが訳の分からないと言わんばかりの返事をするとカゲロウが補足を開始する。

 

「お前は自分の事を未熟だとか弱いだとか考えてばかりだ。だから体もそれに合わせて萎縮してしまっている。思い出してみろ。お前が自分の限界を超える時を。そんな時に自分が弱いだとかネガティブな思考をしているか?」

 

「そりゃあそんな事を考えてたら気持ちで負けてるわけだし……あ」

 

「今のお前はその気持ちで負けてる状態なんだよ。強くなりたいのならまずは自分は強いのだと考えろ。気持ちで負けているようだといつまでも弱いままだぞ」

 

あさひはカゲロウからのアドバイスに小さく頷くとそのまま眠りについた。それから数時間後に目が覚めると体の傷がある程度は回復している。カゲロウの力による回復の速度は日に日に速くなっておりそれはカゲロウの力の増大を意味していた。

 

「……ドリアーンさんの所に行かないと、また特訓を……」

 

「おい、今日はもう終わりだと言われたばかりだろうが。それに俺の回復だって無償じゃない。俺自身の力を減らしてやってるんだ。一日に二度も三度もできるようなものじゃねーんだよ」

 

カゲロウに言われたあさひはまた溜息を吐いて大人しくしようとした。すると突如として街の方で何かの大きな音が聞こえていた。

 

「え!?まさか、またランボーグが……」

 

それからあさひは体がまだ回復しきって無いにも関わらず、部屋を出ると街へと走っていった。

 

 

その頃、街では球体のランボーグが登場しており、バッタモンダーが近くで逃げ惑う人々を見下している。

 

「ふふっ、逃げたければ逃してあげる。僕は優しいからね」

 

そこに街の巡回をしていたドリアーンがランボーグの前に立ちはだかる。

 

「また出たな。この俺が相手してやる」

 

「おや?プリキュアじゃない……まぁ良い。やれ、ランボーグ」

 

「ランボーグ!」

 

ランボーグから繰り出された攻撃はドリアーンへと迫るが、ドリアーンはその攻撃を手にした大斧で受け止める。するとその衝撃で地面にクレーターができるが、ドリアーンは他のメンバーよりも強靭な体の持ち主なために全く意に返さない。

 

「この程度か!」

 

何とそのままドリアーンは攻撃を押し返すとそのままランボーグは数歩下がる。流石に人間相手では無いからか、ドリアーンのパワーを持ってしても吹き飛ばすまでには至らない。

 

「ふん、タフな野郎だ」

 

「君も少しはやるみたいだね。でも!」

 

バッタモンダーが指を鳴らすと目からビームを発射し、近くの建物の屋根を破壊。するとそこから瓦礫が落ちていく。その先には逃げ遅れた子供が泣きながら座り込んでいた。

 

「不味い!」

 

咄嗟にドリアーンは子供の近くに移動すると落下してくる瓦礫を受け止める。体を鍛えているおかげでドリアーンはその瓦礫の重量に持ち堪えているが、あまり長くは保たない。

 

「ぐ……貴様等、卑怯だぞ!」

 

「ふふっ、弱いって本当に罪だよね。ランボーグ、その男にトドメを」

 

ランボーグは瓦礫を受け止めているせいで身動きが取れないドリアーンに攻撃をしようとするが、その瞬間にランボーグは何かの攻撃を喰らって吹っ飛ばされる。

 

「ランボーグ!?」

 

その直後、ドリアーンが受け止めた瓦礫が炎の斬撃で跡形もなく粉砕される。そうして降り立ったのはキュアサンライズに変身したあさひだった。

 

「夜明けにひろがる眩い朝日!キュアサンライズ!」

 

「五人目のプリキュア」

 

バッタモンダーはまだ余裕そうな顔を崩さない。そして、サンライズはドリアーンの隣に並ぶと剣を構えた。

 

「その構え……あさひか」

 

「はい。近くを通ったらランボーグがいたので助けに来ました」

 

「ふん、嘘はよく無いな。まぁ、助けてくれたのは礼を言おう」

 

「二人でやりますよ」

 

「……傷は良いのか?」

 

ドリアーンはサンライズことあさひが元々負っていた傷を心配し、気にかける。だがサンライズは笑って答えを返した。

 

「このくらい、平気ですよ」

 

「そうか……足は引っ張るなよ」

 

それからドリアーンとサンライズによる共同戦線が張られてランボーグと激突する。サンライズの炎の剣とドリアーンの青い大斧がランボーグへと次々と命中し、ランボーグは追い詰められていく。

 

「ランボーグ!」

 

ランボーグはまずサンライズを先に倒すために拳を繰り出してくる。その瞬間、サンライズはランボーグの動きをしっかりと見た。

 

「……ここだ!」

 

サンライズは先程まではできなかったはずのカウンター攻撃を見事に成功させ、ランボーグの腕を斬り裂く。

 

「こいつ……戦いの中で成長を……」

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!スタイルチェンジ!グリフォン!」

 

サンライズはドリアーンのスタイルに合わせるためにグリフォンスタイルへとチェンジ。パワー型の戦いにシフトする。

 

「姿まで変えられるのか……あさひ、俺が相手を崩す。その隙を見逃すなよ」

 

「はい!」

 

ドリアーンは前に出るとランボーグからののしかかり攻撃を大斧で真上へと弾き飛ばす。そのあまりのパワーにバッタモンダーは驚くばかりだ。

 

「何!?」

 

「あさひ!」

 

「ひろがる!サンライズボルケーノ!」

 

サンライズから繰り出された一撃がランボーグを包み込むとそのまま浄化していき、撃破する。

 

「スミキッタァ〜」

 

それを見たバッタモンダーは前の時と同様にいきなりキレ散らかす。

 

「ふざけんなぁああ!弱いくせにこの僕に楯突いて!!」

 

しかし、バッタモンダーは自身が取り乱した事に気がつくとすぐに気を取り直して元の口調に戻る。

 

「……僕とした事が取り乱してしまった……。キュアサンライズ、覚えておくよ。バッタモンモン!」

 

バッタモンダーはそのまま撤退し、サンライズは変身を解くとドリアーンの元に駆け寄る。

 

「ドリアーンさん、先程は隙を作っていただきありがとうございました」

 

「……ふん、礼を言うのはこっちの方だ。お前が来なければ俺は負けていたかもしれん。……あさひ」

 

「何ですか?」

 

「俺と友になってくれないか?」

 

ドリアーンから口に出されたのは友達になりたいという言葉であった。それを聞いたあさひは嬉しそうに笑顔になると当然のように言葉を返す。

 

「こちらこそよろしくお願いします。ドリアーンさん!」

 

それから二人は固く握手をして改めて友達という関係になった。そして、そこに他の青の護衛隊の他の面々も到着してドリアーンは戦いの後の事後処理に追われる事になる。




また次回もお楽しみに。


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スカイランドの危機と失われた者

あさひ達がスカイランドに来て数日、その間十体以上のランボーグが出現していた。しかし、シャララ隊長率いる青の護衛隊とキュアスカイことソラの活躍によってランボーグは次々と倒されていく。

 

「これで十五体目……バッタモンダーとアンダーグ帝国もそろそろ懲りた頃であろう。これからも力を合わせてスカイランドの国民達を守り抜いて欲しい」

 

国王から直々に青の護衛隊達は激励され、ソラは誇らしい気持ちになっていた。ちなみにあさひもあさひで何体かの撃破には貢献しており青の護衛隊で無いにも関わらず、その高い実力を評価されていた。ただ、本人としてはまだ自分の実力に納得がいかない様子だが。

 

そんなあさひが自分の部屋にいると部屋の扉がノックされてましろが入ってきた。

 

「あさひ、入るよ」

 

「うん」

 

「……あさひ、そろそろ私達の世界に……ソラシド市に帰ろっか」

 

「……そっか、もうか」

 

あさひはどこか寂しそうな顔をしながら窓の外を見つめる。それを見たましろはあさひの隣に並ぶと手を握った。

 

「……!」

 

「あさひ、寂しいのはわかるよ。でも……私達には私達のいるべき世界がある。ソラちゃん達にもいるべき場所がある。私達のいるべき場所はここじゃない……だから」

 

「わかってるよ……」

 

あさひの目には涙が伝っており、ソラ達と完全に離れ離れになるのを心の中で拒んでる気持ちがあった。

 

「……ドリアーンさんに挨拶してくる。あの人には短い間だけどお世話になったから」

 

そう言ってあさひは涙を拭って部屋を出ると一人ドリアーンの元に行く。それをましろが見届けてから自分もやるべき事をするために移動を開始した。

 

あさひが青の護衛隊の宿舎がある場所に行くとドリアーンは仕事の最中で書類の整理をしていた。

 

「あさひか……用件は察しがつく。もう帰るのだろう?」

 

「……どうして?」

 

「その顔を見ればわかる。泣いたような跡が残っているからな」

 

「……短い間でしたがお世話になりました。また定期的にこちらに伺いますのでその時はまた指導をよろしくお願いします」

 

そう言ってあさひは頭を下げる。それを見てドリアーンはあさひの頭をぐしゃぐしゃと撫でた。

 

「俺の方こそお前には色々と助けてもらった。礼を言うのは俺達も同じだ。……元気でいろよ」

 

そう言ってドリアーンはまた自分の仕事へと戻っていく。あさひはドリアーンの仕事の邪魔をしないように静かに部屋を出るとましろの元にまた歩いて行った。

 

その頃、エルの部屋ではツバサがツバサの父であるカケルと母であるプワと再会し、そこにましろが乱入。ツバサは両親にましろと結婚したと勘違いされて色々と言われた後にましろはツバサ、エルに別れの言葉を告げる事になる。

 

「ソラシド市に帰る?」

 

「うん。あさひにも話はしてあるよ。……明日おばあちゃんにトンネルを開いてと連絡するつもり。学校に行かないとだし、それに私達がいなくても大丈夫ってわかったから」

 

この世界にはソラ、ツバサ、そして青の護衛隊の面々とエルを守るための戦力には事欠かない。だからましろは安心して任せられると判断したのだ。

 

「……住む所が変わるだけだよ。トンネルを通ればすぐに会える。何も変わらないし、無くならない。だって私達は友達だから」

 

その話を聞くツバサもエルも寂しそうな表情を浮かべていた。そこにドリアーンへの挨拶を終えたあさひも到着し、話に参加する事になる。

 

「……俺も寂しいけどさ、これは割り切らないといけない事。だからさ……」

 

「エルちゃん、元気でね。お腹出して寝たらダメだよ。ちゃんと歯磨きは仕上げまでやってもらうんだよ」

 

「あんまりツバサに嫌々言っちゃダメだよ」

 

それから一瞬あさひがカゲロウとチェンジするとツバサへと話しかけた。

 

「ツバサ、エルのナイトになるつもりならこれからも鍛錬を怠るなよ?前にも言ったがお前はエルを守る最後の砦。抜かれた瞬間にエルが危険な目に遭う事を肝に命じておけ」

 

それからカゲロウはあさひに戻り、ましろと共に最後の言葉を紡いだ。

 

「「……俺(私)達の事を忘れないでね」」

 

「えるぅ……」

 

「……よし、ソラさんがパトロールから帰ってきたら皆で思いっきりご馳走を食べましょう!」

 

「うん!良いね!」

 

ましろがそう言った直後、空に何かの音がすると三人が窓の外を見る。するとそこには街中から次々と立ち昇るアンダーグエナジーが見え、それが遥か上空で超巨大な球体のランボーグが形成。そしてそれがスカイランドの都の真上で少しずつ大きくなっていく。

 

「ランボーグ!?どうして……」

 

「そうか!ランボーグを浄化できるのはプリキュアの力だけ。シャララ隊長達の力でもランボーグは倒せる。でも、浄化まではできてなかったんだ」

 

「じゃあ、浄化できていたのはソラさんとあさひ君が倒していた数体だけって事になる……」

 

それから三人は王様の元に向かうとその時、ツバサは一人ましろとあさひがわからないように別れて走っていった。そして、一人ペンを取り出すと変身する。

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!ウィング!」

 

それからジャンプしながらプリキュアに変身。空へと舞い上がりランボーグの様子を偵察する。

 

「(どんどん大きくなってる……まさか)」

 

「ランボーグ?」

 

その時運悪くウィングが偵察している所をランボーグに見られてしまい、ランボーグから触手が伸ばされる。そして、ウィングはその触手をまともに喰らってしまうと吹き飛ばされてそのままダメージで変身解除。地面へと真っ逆さまに落ちていく。

 

「あ……う……」

 

その瞬間、落下するツバサを抱き止めたのはドラゴンスタイルに変身したサンライズだった。

 

「サンライズ……」

 

「ツバサが一人で出ていくのはカゲロウが見ていた。心配だったから後をつけてみたけどやっぱりこうなったか……」

 

サンライズはこのまま戦っても勝てないと判断して一時撤退し、一度ましろ達と合流するためにツバサに肩を貸しながら歩く。

 

それから王様達のいる部屋に到着するとそこには王様と王妃様、シャララ隊長とソラ、そしてましろが顔を揃えていた。

 

「ツバサ君!」

 

「お役に立てず……申し訳ありません」

 

ちなみにあのランボーグは存在そのものが爆弾であり放っておけば一時間後に爆発してしまう。そしてそうなればスカイランドはアンダーグの闇に包まれる事になる。回避するにはプリンセスを差し出すかプリキュアの力で浄化するしか無い。勿論プリンセスを差し出す選択肢は最初からあり得ないのでプリキュアが出る事になる。

 

「ソラ、プリキュアの力であの爆弾を浄化できないか?キュアスカイとキュアプリズム。二人が手を繋いで発動できる技。確か名は……」

 

「アップ・ドラフト・シャイニング」

 

「ツバサがこんなだから俺とツバサの技であるフレイムバードストライクは使えない……ソラ、姉さん。任せても良い?」

 

「……うん」

 

それからソラとましろは外に出るとペンとスカイトーンを取り出して構える。

 

「「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!」」

 

「スカイ!」

 

「プリズム!」

 

「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」

 

「ふわりひろがる優しい光!キュアプリズム!」

 

二人は変身完了するとすぐに浄化技を発動させるために別のスカイトーンを構えてそれを使用する。

 

「スカイブルー!」

 

「プリズムホワイト!」

 

二人が手を繋ぎ、スカイミラージュを掲げるとランボーグの上空に円盤が出現。そこから降り注ぐ光がランボーグを少しずつ円盤の中へと引き込んでいく。

 

そんな中、あさひは嫌な予感がしていた。今のランボーグは普通のランボーグの力が約十体分纏められている。そのパワーは計り知れない。普通のランボーグなら抵抗すらできずに吸い込まれていたのに今回はその動きもゆっくりだ。下手をすれば破られるかもしれない。そう思ったあさひは一人部屋を出て行った。

 

「あさひ君!」

 

ツバサが後ろからそう呼びかけるが気にする事なく走っていく。そしてそれはカゲロウも同じ事を考えていた。

 

「おいおい、あさひ。お前にはどうすることもできないだろ」

 

「いや、一つだけ手がある。前にベリアル相手に使った即興の三人技……」

 

「アップ・ドラフト・バーニングか」

 

しかし、あの技を発動するにはあさひことサンライズがランボーグの懐に入らないといけない。それにあの時は偶々成功したが、今度も成功できるとは限らないのだ。

 

「リスクは大きいぞ?それでもやるのか?」

 

「ああ、やる!やってみせる!」

 

それからあさひは城の外に出るとペンを取り出して変身をする。

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!サンライズ!」

 

それからすぐにサンライズはスタイルチェンジしてドラゴンスタイルに変化。そのままジャンプ台を生成して空へと跳び上がる。そして、ふと上空の円盤を見るとランボーグから大量の触手が伸びて今にも円盤が破壊されそうになっていた。

 

「不味い!急がないと……」

 

そしてその頃、スカイとプリズムも円盤にダメージが入っている影響でベリアルとの戦闘の時と同様に二人共苦しそうに膝を付いている。

 

「もう……限界!」

 

「でも、諦めない!」

 

「「ゔゔうううう……」」

 

二人は苦しみながらもギリギリで持ち堪え続ける。そして、そのタイミングでサンライズもランボーグの近くに到達。しかし、ランボーグはまだ余力があるようでサンライズへと触手を伸ばしてきた。

 

「チッ、こうなったら真上から一気に接近する!ひろがる!サンライズ……」

 

その瞬間、サンライズはランボーグから伸ばされた触手が真横から迫っている事に気が付かずに捕まってしまう。

 

「うぐっ!?あがああああ!!」

 

それを見たスカイとプリズムもサンライズの心配をするが、今は技を維持するので精一杯。助けに行くことすらできない。

 

誰もが諦めかけたその時、地上から飛び立つ大鳥が見えた。そこに乗っていたのは他でも無いシャララ隊長である。

 

「相手がどんなに強くても……正しい事を最後までやり抜く。それがヒーロー!」

 

「……負けて……たまるかぁあ!スタイルチェンジ……グリフォン!」

 

そのタイミングでサンライズもグリフォンスタイルにチェンジ。そのパワーで触手を粉砕するとすかさずドラゴンスタイルに戻り、空中を飛び回る。

 

「シャララ隊長!二人で行きましょう!」

 

「……勿論だ!」

 

それからサンライズとシャララ隊長はスカイとプリズムの援護をするために迫り来るランボーグの触手を炎の双剣と青い電撃の剣で切り裂きつつ技の妨害をする触手を切り刻む。そして、二人へと先程までのどの触手よりも大きな触手が伸ばされる。

 

「ひろがる!サンライズドロップ!」

 

「ちゃああああ!!」

 

サンライズはドラゴンを模したドロップキックで触手を破壊するとランボーグへと取り付く。そしてシャララ隊長も触手を剣で切り捨てるがそれと同時に体もボロボロになり剣も折れてしまった。

 

そこにランボーグからアンダーグエナジーが発射される。そして、シャララ隊長はもうそれを躱す余力も無い……シャララ隊長がそのエナジーに飲み込まれる刹那……。

 

「ソラ、ヒーローの……出番だ」

 

そして、その言葉を最後にシャララ隊長は闇に飲み込まれてしまう。

 

「貴様……貴様ぁあああああ!!」

 

サンライズは通常のスタイルに戻ると手にした炎の剣をランボーグへと深々と突き刺し、その体を炎で包み込む。そしてその炎は円盤にも伝わり、怒りの炎となって燃え上がった。

 

「スカイ、プリズム、行くぞ!!」

 

「「ゔぁああああああ!!」」

 

それと同時に二人も立ち上がり、三人で決めるべく技の名を叫んだ。

 

「「「プリキュア!アップ・ドラフト・バーニング!」」」

 

それからサンライズがランボーグから離れた直後にランボーグは円盤に吸い込まれて中から出てきた炎の気流と共に浄化される。

 

「スミキッタァ〜」

 

それからサンライズは力を使い尽くした影響か、気を失ってそのまま都の近くの森の中に落ちていく。

 

 

 

 

 

あさひが目を覚ますとそこは城のベッドの上だった。あの後バッタモンダーが城に乱入。スカイとプリズムは倒れ込み、ツバサは傷だらけのために戦えずに窮地に陥る。その結果、王様と王妃様は呪いをかけられて眠ったまま目を覚まさなくなった。何とかその場は目を覚ましたスカイが鬼神の形相でバッタモンダーを退ける事に成功。

 

しかし、戦いの爪痕は大きすぎた。

 

「シャララ隊長が……行方不明に?」

 

「ああ」

 

あさひはドリアーンからそれを聞いた途端、自分のせいだと己を強く責めた。あの場面、自分が捕まりさえしなければ……もっと素早くランボーグに取り付いていればシャララ隊長が出る事もなくランボーグを倒せていたはずだったのだ。

 

「ソラに……なんて言って謝れば……」

 

「……お前は悪く無い……むしろ、よくやった」

 

ドリアーンからそう言われたもののそれでも頬を伝う涙は止まる事なく溢れ続けていく。

 

それから何とか落ち着いたあさひがソラ達の元に行くとソラシド市に帰るという結論に至った。

 

「王様と王妃様を治す方法をヨヨさんに調べてもらうんです」

 

この意見はソラから提案された事にあさひは驚いた。そして、ソラがちゃんと前を向いているのだと知り、自分も同じように前を向くべきなのだと感じ取る。

 

ソラが言うにはエルも連れて行ったほうが良いとの事だ。プリキュアがバラバラになるのも、エルをスカイランドに残すのもバッタモンダーの存在を考えると得策では無い。ならば寧ろ全員で戻った方が良いというのがソラの考えである。

 

そしてソラが見せたのはハート型のスカイジェルのペンダントであった。

 

「これは?」

 

「絶対にまた会える。そういう魔法がかかったペンダントです!」

 

それからあさひ、ソラ、ましろ、ツバサ、エルは荷物を持ってソラシド市へと繋がるトンネルを前に立つ。

 

「負けるな……ソラ」

 

「気張れよ、あさひ」

 

ベリィベリーとドリアーンはそれぞれの友にエールを送り、四人はエルと共にソラシド市への一歩を踏み出すのであった。




また次回もお楽しみに。


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エル太郎と一緒に鬼退治!

スカイランドからソラシド市へと帰還したあさひ達一行。虹ヶ丘家に戻ったあさひ達はヨヨに事情を説明。そして、あさひからの連絡を受けて飛んできたあげはにもスカイランドでの出来事を話す。

 

「そっか、色々と大変だったんだね。ていうか、そのバッタモンダー?って奴。めちゃくちゃ腹立つんだけど」

 

話を聞いたあげはが怒りを静かに燃やす中、あさひ、ソラ、ましろ、ツバサの四人は全員元気がなさそうにしている。そして、そこにヨヨが紅茶を出した。

 

「ねぇ、おばあちゃん。どうしてアンダーグ帝国はスカイランドを襲うの?街を傷つけて、人々を傷つけて……酷いよ」

 

そう言うましろにヨヨはミラーパッドを操作してある画像を映し出すとそれを見せた。

 

「そうね、あれから色々と調べてみたけどスカイランドとアンダーグ帝国はいわば光と影。正反対の二つの国は大昔に戦って以来、交わる事なく過ごしてきた」

 

どうやらスカイランドとアンダーグ帝国は昔、戦いを起こした事があるらしい。しかし、それ以降は一切関わることの無かった二つの国。アンダーグ帝国は何故エルを狙うのか。ヨヨが調べてもその答えは出てこなかったそうだ。

 

「……ちょっと外に出てくる」

 

そう言ってあさひが外に行こうとする。それをましろが前に立って止めた。

 

「どいて、姉さん」

 

「……どこに行くつもりなの?」

 

「裏山でまたカゲロウを相手に修行する」

 

あさひはまた無理をしてでも強くなるつもりだ。あさひもあさひで相当責任を感じているのだ。自分達がここに戻ってきたのは自分のせいだと。自分が強くないから、自分がモタモタしていたからあのような事になったのだと自覚していたからである。

 

「はぁ、あさひ。お前、そんなに無理して強くなってどうする?他の奴等を心配させるだけだろ」

 

カゲロウに戒められてあさひは踏み止まるとまた席に座る。そして、ヨヨは話の続きを始めた。

 

「話にはまだ先があるわ。……王様と王妃様の呪いを解く方法よ」

 

ヨヨが言うにはランボーグを浄化した際に出るキラキラエナジーをミラーパッドに貯めていけばそれで呪いを解くための薬が作る事ができるらしい。

 

「良かったですね!プリンセス!」

 

「パパとママを目覚めさせる事ができるかもしれないって!」

 

治療法が見つかって喜ぶソラ、ましろ、ツバサの三人とは対象的にエルは寂しさのあまり泣き始めてしまう。

 

「よぉしよぉし」

 

そこにあげはが入ってエルを抱き上げると優しくあやす。そしてソラ達は立ち上がると気持ちを切り替えた。

 

「今は俯いている場合じゃありません!まずはエルちゃんの笑顔を取り戻しましょう!」

 

「……だったらさ。良い方法があるよ」

 

「あさひも同じ事考えてた?それじゃあ早速やろう!」

 

それからあげはは持ってきたリュックから何冊もの本を取り出した。そこにあったのは子供が好きそうな絵本達である。

 

「あ、絵本ならボクもスカイランドから沢山持ってきましたよ?」

 

「いや、ただ読むよりももっと効果的な方法がある。それが……」

 

「人形劇!ちょうど学校の演習でやっててさ。これ、授業で作っちゃった」

 

そう言ってあげはが出したのはあげはによく似た人形である。そしてそれを見た途端あさひは心が癒されるような感覚になった。

 

「あげは姉、それって……」

 

「可愛い!何だかあげはちゃんみたい!」

 

「ふっふーん、さしずめあげは姫って所かな」

 

「あげは……姫」

 

あさひはあげはがお姫様のようなドレスを着る姿を想像するとそして、あげはと仲良く話す自分を想像して顔を少し赤らめる。それをソラやましろにバッチリ見られたわけで。

 

「あさひ君、どうしました?」

 

「あさひ?何を想像してるの?」

 

「へ!?な、何でもない!」

 

すぐにあさひは首を振ってその意識を吹き飛ばした。流石にこの空気の中でそんな事は考えられないからである。

 

「エルちゃんはどの本が好きなのかな〜」

 

「……これとかどうですか?」

 

そう言ってソラが見せたのは桃太郎である。そしてエルもそれに興味を持ったので桃太郎をする事に決まった。そして、あさひ達は早速準備に取り掛かる。

 

「あ、そういえば桃太郎のお供って犬、猿、雉でしょ?桃太郎役はもう決まってるし、他のお供達についても三人がいる。じゃあ俺は何をすれば良いんだ?」

 

あさひは疑問に思う。確かにこのままではあさひだけ一人やる事がなく、役無しとなってしまうのだ。そこであげははそれを回避するためにある提案をあさひへとする。

 

「それじゃあさ、あさひは……」

 

そう言ってあげはがあさひへと耳打ちするとあさひはびっくりして顔を真っ赤に変えた。

 

「へ!?ちょっ、ちょっと!それは幾ら何でも恥ずかしいと言うか、なかなか思い切った事と言うか……」

 

「へぇ〜、あさひ。もしかして嬉しいの?」

 

「うぇっ!?」

 

完全にあさひはあげはのペースで踊らされてしまっている。それからあさひは劇を完成させるためと無理矢理納得し、何とかそれをやる事にした。その瞬間、あさひの中からカゲロウも出てくる。

 

「おいおい、楽しそうな事やってるなぁ。俺も混ぜろよ」

 

「カゲロウ、お前は……」

 

「良いだろお前にはあの役があるんだから」

 

「うぐっ!?」

 

あさひはカゲロウに論破されてしまいこれ以上何も言えなくなってしまう。そして、全員で協力し合って完成させた。ちなみに劇の舞台の前にちょこんと座るのは観劇者であるエルだ。

 

「さぁ、人形劇の始まり始まり!」

 

「える?」

 

「むかーし、昔、ある所に小さな雲がフワフワと降りてきました」

 

舞台の裏側ではソラとましろが疑問に思う。普通桃太郎と言えば桃が思い浮かぶからだ。

 

「桃じゃないんですか?」

 

「だよね……」

 

「アレンジしちゃった!」

 

あげはがそう言い、物語の続きを話していく。すると雲が割れて出てきたのは桃太郎とエルを混ぜたような人形。その名も……

 

「中から元気なエル太郎が出てきました」

 

「「「エル太郎?」」」

 

「あげは姉のアレンジ力が爆発しちゃってるよ……」

 

あさひは半ば諦めたように小声で呟く。しかし、エルには好評のようで嬉しそうにしていた。

 

「そして、そんな赤ちゃんのエル太郎を拾ったのはこの国の王子様のあさひ王子でした」

 

そして、あさひを模しつつ王子様の格好をした人形が顔を出すとここでようやくあさひの出番となる。

 

「エル太郎、ミルクを飲んで大きくなってくれよ」

 

「エル太郎はあさひ王子が作ってくれたミルクを飲んでグングン成長していきました」

 

あげはは自らの考えたアレンジに従って話を進めていくが、三人はアレンジしすぎて最早別の話になっていないかと考える始末である。

 

「しかしある日、あさひ王子の婚約者であるあげは姫が鬼に連れ去られてしまいました」

 

「「あげは姫?」」

 

「というか、さっきあさひが顔を真っ赤にしてたのってこれが原因?」

 

「あ〜れ〜!助けて!あさひ王子!エル太郎!」

 

そして、話は更に進んでいく。あさひ王子は自らの育てたエル太郎を大将にし、自らはそのお供として鬼ヶ島へと行く事になる。

 

「そこは自分が大将にならないんだ……」

 

「じゃないと桃太郎として成り立たないしな……」

 

「いやいや、もう既に色々と崩壊してますから」

 

それからあさひ王子は祖母であるヨヨに作ってもらった雲パンを大量に入れたバスケットをエル太郎に預ける。

 

「エル太郎、私の祖母が作った雲パンでございます。どうかお供を集めるのに役立ててください」

 

それから犬のソラ、猿のましろ、雉のツバサが加わり、エル太郎一行は鬼ヶ島へと進んでいく。

 

「「「「え〜る太郎さんエル太郎さん!箱に入った雲パンを一つ私にくださいな〜!」」」」

 

四人は歌う中、あげはのナレーションによって場面は変わり、鬼ヶ島に向かって船を漕ぐ所になる。

 

「あれが……鬼ヶ島!」

 

「何だか嫌な感じがします」

 

「まるでアンダーグ帝国だな」

 

それから四人はスカイランドでの出来事を思い出しながら気分を暗くしてしまう。そして四人の不安が伝染してしまったのかエルは泣き出す事になってしまった。

 

それを見た四人とあげはエルを安心させるために駆け寄る。

 

「大丈夫、大丈夫だから……。不安な気持ちって自然と伝染しちゃうから」

 

それを聞いて四人は更に落ち込んでしまう。しかし、あげはがエル太郎の人形を見せる事でエルを安心させてどうにか落ち着かせる。それから人形劇が再開され、エル太郎一行は鬼ヶ島へと到着した。するとそこに現れたのは巨大な鬼の軍団とその奥に座っている人間サイズだが溢れ出る強大なオーラを漂わせた鬼の大将、カゲロウが座っていた。

 

「何の用だ?」

 

「お、大きすぎるウキ!」

 

「しかも奥に座ってる奴はボク達と変わらないサイズなのに果てしない程の強さがビリビリ伝わってくるケン!」

 

「だが負けてられない。あの大将は俺とエル太郎でやる!」

 

「える!」

 

「私達三人で他の鬼達を引きつけましょう!」

 

「ふん。中々強そうな奴等だな。おい、お前ら。やっちまえ!」

 

それからエル太郎一行と鬼達の戦いが始まる……その時だった。ソラが鬼達へと攻撃をかけた瞬間、鬼の絵が描かれた旗がソラへと倒れてきてしまい、更にそれがあさひにも被って二人はそのまま劇の舞台の幕を倒してしまう。

 

「な、何で俺まで……」

 

「何やってるんだよあさひ……」

 

「み、未熟……」

 

それからその場の全員で舞台を直そうとしたその時だった。エルが立ち上がると歩きながらまだ慣れない言葉遣いだが全員の名前を呼び始めた。

 

「ショラー、ましゅろ、チュバサ、あげは、あしゃひ、かげろ!」

 

それを聞いた全員はエルに元気づけられる形となり、皆の顔が笑顔に変わる。

 

「結局、エルちゃんに励まされちゃってるし……」

 

「でもさ、エルが笑顔になると俺達も笑顔になる。不安が伝染するように笑顔も人に伝染していく。エルが笑顔になったから、俺達も元気づけられたんだ」

 

こうして人形劇を通してエルを含めた全員の元気が戻る。それと同時にスカイランドの方から通信が届き、スカイランドにいる青の護衛隊のメンバーからの激励が告げられた。

 

「王様と王妃様の事はヨヨ殿から聞いた。スカイランドは大丈夫だ。皆、希望を胸に頑張っている!」

 

「そっちもプリンセスを頼んだよ」

 

「お前らの存在が俺達にとっての希望なんだ。だから、絶対に諦めるな!」

 

アリリ副隊長、ベリィベリー、ドリアーンが次々に話しかけていく。そして、あさひはカゲロウを戻すと何かに気がついて外を見た。するとそこには大量の鳥達が窓を叩いている。

 

「これって……」

 

「あ、ボクの鳥友達ですね!」

 

そこにツバサが出向き、鳥の姿で話を聞く。すると衝撃的な内容が伝達される事になる。なんとバッタモンダーがソラシド市の方にやってきたと言うのだ。それを聞いた全員は急いで目撃情報を元に向かう事になるのだった。




また次回もお楽しみに。


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決意を胸に新たな一歩!

あさひ達がツバサの鳥友達からの目撃情報を元にバッタモンダーの元に行くために走る。そして彼がいる公園に到着するとどうやら彼は待ちくたびれた様子で鬼の的当てゲームこと鬼泣かせの上に立っていた。

 

「ああ、ようやく来たね。良い加減待ちくたびれたよ」

 

「バッタモンダー!」

 

あさひ、ソラ、ましろ、ツバサの四人がバッタモンダーと相対する中、あげはとエルは近くの草むらに隠れて様子を伺っている状態だ。

 

「アイツが……バッタモンダーなの?ていうか、エルちゃん。やっぱお家に戻ろうよ」

 

あげはの提案にエルは嫌だとばかりに首を振る。それを見て皆と一緒に居たいというエルの気持ちを察した。

 

「プリンセスを狙って来たんですね?」

 

「いいや!僕の目的は……君達だ。プリキュア!」

 

どうやら巨大ランボーグを出した際にプリキュアによって苦渋を舐めさせられたのが原因なのか今回はプリキュアを倒すためにやって来たようだ。

 

「何度だって返り討ちにしてやるよ」

 

「威勢は良いね。それじゃあ、カモン!アンダーグエナジー!」

 

バッタモンダーがいつものように手を地面に当ててアンダーグエナジーを召喚するとそれが近くにあった鬼泣かせに吸い込まれていき、鬼のランボーグへと変化した。

 

「ランボーグ!」

 

ランボーグが手にした金棒を地面に叩きつけると近くにいた人々は逃げ惑う。そして、四人はペンを手にするとそれを使用する。

 

「「「「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!」」」」

 

「スカイ!」

 

「プリズム!」

 

「ウィング!」

 

「サンライズ!」

 

四人が変身を完了すると最早お決まりとなっている名乗りを始めていった。

 

「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」

 

「ふわりひろがる優しい光!キュアプリズム!」

 

「天高くひろがる勇気!キュアウィング!」

 

「夜明けにひろがる眩い朝日!キュアサンライズ!」

 

「「「「レディ……ゴー!ひろがるスカイ!プリキュア!」」」」

 

四人がランボーグと相対するとランボーグは早速青いエネルギー弾を発射。先制攻撃を仕掛けてくる。

 

「オラよ!」

 

そう言ってサンライズは前に出るとそのエネルギー弾を蹴り返す。ランボーグはそれを顔面に喰らって怯むとその間にスカイがキックを繰り出す。

 

「はあっ!」

 

しかしこれはランボーグが金棒で受け止めるとスカイを球に見立てて金棒をバットのように振るい、スカイを吹き飛ばす。

 

「危ない!」

 

そこにウィングがフォローに入りスカイを受け止める。その瞬間の無防備な二人をカバーするようにサンライズがランボーグ相手に剣を使っての攻撃を仕掛ける。

 

「だあっ!」

 

「ランボーグ!」

 

サンライズとランボーグは剣と金棒をぶつけ合わせる。しかし、パワーではランボーグが上なのか、サンライズは押し切られて後ろに下がる。

 

「くっ、やっぱり一筋縄ではいかないな」

 

「三人共、私が援護するから一斉攻撃だよ!」

 

そう言ってプリズムが気弾を生成。そしてプリズムの指示に頷いた三人は前に出ていく。

 

「たあっ!」

 

プリズムが三人の動きを援護するように気弾を三発放つ。しかしランボーグはこれをまた金棒で跳ね返し、スカイとウィングは動きを乱されてしまう。それに対してサンライズは敢えて気弾を躱さずに真正面から迎え撃つ。

 

「喰らえ!太陽の鉄拳!」

 

サンライズが気弾にぶつけるように炎を纏ったエネルギーの鉄拳を繰り出すとそれが気弾に炎の力を付与させてランボーグへと命中させる。

 

「ランボーグ!」

 

「弱いくせに……生意気なんだよ!」

 

バッタモンダーが苛立ちを露わにする中、ランボーグは体勢を立て直してエネルギー弾を連射してくる。三人は防御の姿勢を取る中、サンライズはまたその中へと突っ込んでいく。

 

「サンライズ!?無理しないで!」

 

「いや、こうするんだよ!秘打千本ノック!」

 

サンライズは炎の剣をバットのような形に変えてそのままエネルギー弾を自ら回転しながら次々に跳ね返していく。

 

「凄い……」

 

「ラン!?」

 

まさかこの数のエネルギー弾を全部跳ね返されるとは思っていなかったのかランボーグはそれを躱すので手一杯となる。

 

「ざっけんなよ!ランボーグ、あの生意気な小僧からやれ!」

 

ランボーグはサンライズへとターゲットを変えるとサンライズへと金棒を構える。サンライズはそれに即応できるようにして他の三人もサンライズのフォローに入ろうとした瞬間。

 

「……なんてね」

 

バッタモンダーの声が冷静なものに変わった瞬間、サンライズはバッタモンダーが何をしてくるか理解。すぐにこちらへと向かってくる三人を纏めて突き飛ばした。

 

その瞬間、ランボーグが三人に向けてエネルギー弾を連射。サンライズはそれを背中に喰らって大ダメージを負ってしまう。

 

「う……ぐぅ……」

 

「サンライズ!」

 

プリズムが弟を心配して駆け寄るとその時にランボーグは真上にエネルギー弾を連射。それが雨のように三人へと降り注ぎ、周りの遊具も纏めて吹き飛ばす。

 

「「「うわぁあああああ!!」」」

 

三人共まともに今の攻撃を受けて地面へと倒れ伏す。四人とも立とうとするがダメージのせいでなかなか上手く動けない。

 

「皆!」

 

そこに四人を心配してあげはがエルと共に駆け寄ってくる。それをバッタモンダーは嘲笑うように見下した、

 

「ああ、メチャクチャだ。これじゃあまるでスカイランドのようじゃないか。王と王妃が倒れ、護衛隊の隊長も消えてしまった。弱いってなんて可哀想なんだ」

 

そんな中、一番ダメージを受けて苦しいであろうサンライズが真っ先に立ち上がる。

 

「違うな……スカイランドは、弱くなんかない!」

 

「そうです!皆、希望を胸に前に向かって進もうとしている。それは私達も同じ!」

 

そこにスカイ、プリズム、ウィングも立ち上がり、しっかりと相手を見据える。

 

「前に向かって進んでいくだけです!」

 

そんな様子を見たあげはは安心そうにし、それと同時にエルが四人の名前を叫ぶ。

 

「皆……」

 

「すかい!ぷりずむ!うぃんぐぅ!さんらいず!」

 

「どうしてそんな事が言えるのかな?現に状況は絶望的だよ?」

 

「ランボーグ!」

 

ランボーグが四人を倒すために金棒を振り上げるとそこにサンライズが立って金棒を受け止める。

 

「「サンライズ!!」」

 

「……絶望的?上等だ。エルが、スカイランドの皆が、落ち込んでいた俺達に元気を分けてくれた。俺達は確かに弱いかもしれない。それでも、そんな俺達を励まして元気をくれる優しい人々がいるから……俺達は強くなっていけるんだ!」

 

サンライズがそう叫ぶとまた前のようにサンライズから光が溢れ出てスカイトーンが生成。そしてそれがサンライズの手に収まる。

 

「三つ目のスカイトーン!?」

 

「まさか、まだサンライズの姿が増えるんですか?」

 

スカイ達が驚く中、サンライズは早速そのスカイトーンをスカイミラージュへと装填し、発動する。

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!スタイルチェンジ!ペガサス!」

 

サンライズがそう叫ぶと天からペガサスが舞い降りてそれがアーマーへと変化。サンライズへと装着されていく。今回はグリフォンスタイルよりは軽量化されているが、装甲が殆どないドラゴンスタイルよりは装甲が存在するいわば軽いプロテクターのような物を装備したスタイル……ペガサススタイルが誕生したのである。

 

「これが、サンライズの三つ目のスタイル……」

 

「くっ。だが、強さの前には無意味だ!」

 

バッタモンダーの指示の元ランボーグがサンライズへと向かってくる。

 

「覚悟しろ……ランボーグ!」

 

サンライズが手にレイピアを召喚すると連続で突きを放つ。しかし、リーチは全く届かないためにバッタモンダーはそれを見下す。

 

「ぷっ、何をするかと思えばその程度で……」

 

その瞬間、サンライズが突きを繰り出した場所に炎の気弾が生成される。それと同時に気弾がランボーグへと飛んでいく。

 

「ランボーグ、跳ね返せ!」

 

バッタモンダーは冷静に気弾をランボーグに跳ね返させようとする。しかし今回はサンライズの方が一枚上手だ。

 

「これで……どうだ!」

 

サンライズが左手を振ると気弾はいきなり止まり、気弾がサンライズの手の動きに合わせて移動するとランボーグの周囲から一斉に攻撃する。そしてランボーグはそれをまともに受けて下がった。

 

「たあっ!」

 

更にサンライズが接近するとレイピアの見事な剣捌きでランボーグのバランスを崩させ、ランボーグへと追撃を仕掛ける,。

 

「スカイ、プリズム、ウィング!」

 

まずはランボーグがサンライズに夢中になっている瞬間にプリズムから気弾が生成され、飛ばされる。

 

「無駄だよ。ランボーグ、それも跳ね返してしまえ!」

 

「ラン……」

 

「煌めけ!」

 

その瞬間、プリズムの気弾が発光してランボーグの視界を奪う。更にウィングが金棒を踵落としで弾き飛ばし、相手の武器を奪った。

 

「僕達にだって……できる事がある!」

 

「例え僅かな光でも!」

 

「希望の光は心と拳を無敵にしてくれるんです!」

 

スカイとプリズムが武器を失ったランボーグへと連続で攻撃を仕掛けていき、ランボーグを怯ませる。そしてその瞬間こそサンライズが決めるべき時だ。

 

「「「サンライズ!」」」

 

サンライズが両手を翼が羽ばたくように動かすと周囲に5本のレイピアが出現。そしてその剣先がランボーグへと向くと次々と剣先からエネルギー波が発射される。

 

5本のエネルギー波はランボーグの目を撹乱するように複雑に動きながら一つへと集まって空へと向かい、強大なエネルギーの雨としてランボーグに降り注ぐ浄化の一撃……

 

「ひろがる!サンライズレイン!」

 

ランボーグは真上から光のエネルギーの雨を喰らって浄化されると撃破される事になる。

 

「スミキッタァ〜」

 

そしてその際に出てくるキラキラエナジーをスカイは見逃さずにミラーパッドを構えるとそこにキラキラエナジーが吸い込まれて画像のハートマークが少しだけピンク色に染まり、エネルギーがチャージされた事がわかった。

 

「ミラーパッド!オッケー!」

 

そしてランボーグがやられた事でバッタモンダーはいつも通りにキレ散らかす。

 

「あり得ぇねぇええ!こんな弱い奴らに負けるなんて!絶対俺の前にひざまづかせてやるからなぁああ!」

 

そのあまりの豹変ぶりにその場の全員がポカンとする始末である。その直後、バッタモンダーは気を取り直してまた優しい言葉遣いに戻る。

 

「僕とした事が、君達の奮闘ぶり……とても素晴らしかった。また来るよ、バッタモンモン!」

 

そう言ってバッタモンダーは撤退。それから夕陽が降り注ぐ中、五人とエルは帰り道を歩く事になる。

 

「ありがとうエルちゃん」

 

「私達はエルちゃんに元気をもらってばかりです!」

 

ソラがそう言うとエルは歩きたそうにし、あげはに降ろされると先程皆で歌っていたエル太郎の歌を口ずさみ始めた。

 

「お、エル太郎さんだ」

 

「「「「「え〜る太郎さんエル太郎さん!箱に入った雲パンを一つ私にくださいな〜!」」」」」

 

五人はエルに続くように歌いながら歩く。するとソラのお腹が鳴り、恥ずかしそうに顔を赤くする。

 

「今日の夕ご飯はどうしますか?」

 

「ハンバーグとかコロッケは?」

 

「雲パンも是非!」

 

「……何でも良いから美味い物食わせろ」

 

最後にカゲロウがそう言い、皆は笑い合うと家への帰り道を進んでいく。そして、五人はそれぞれの胸に新たな決意を抱き、前を向いて進んでいくのであった。




また次回もお楽しみに。


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あさひとあげはのお悩み相談

エル太郎の劇をやった翌日、学校であさひは一人悩んでいた。その様子を見られたのか軽井沢が声をかけてくる。

 

「虹ヶ丘!どうしたんだ?何か悩んだような顔をしてさ!」

 

「……軽井沢。何でも無い」

 

「えぇ!?そうは見えないけどな」

 

軽井沢が興味津々な様子であさひの事を見ていると軽井沢と仲のいい吉井や仲田が止めに入る。

 

「こら、虹ヶ丘君が困ってるでしょ。無理に行かないの」

 

「ごめんね、無理に話さなくても良いから」

 

あさひは二人にそう言われた所で心の中でモヤモヤとした感情が出てきた。それから三人が自分から離れようとしたその時。

 

「あの!」

 

「「「え?」」」

 

「え!?あ!」

 

自分でも何故声をかけたのか分からない。それでも本能が話すべきだと感じ取ったのか、それともただの気まぐれか気が付けば声を上げていた。

 

「どうしたの?」

 

「もしかしてさっきの悩みを話す気になったとか」

 

あさひはこれを話して良いのか少し考えたのちに話した方がスッキリすると考えて話す事に決めた。

 

「実は……」

 

「「「実は?」」」

 

「俺、好きな人がいるんだ………」

 

あさひが少し恥ずかしそうに三人へと話すと三人は一呼吸おいてから驚きの声を上げる。

 

「「「えぇー!?」」」

 

「虹ヶ丘君に好きな人!?」

 

「少し前まで誰とも関わってこなかった虹ヶ丘君に!?」

 

「それはちょっと失礼でしょ」

 

三人がそれぞれの反応を示す中、あさひはここまで言ってしまった以上はもう言うしか無いと考えて開き直り話す事に決めた。

 

「誰!?誰の事が好きなの?」

 

「クラスメイトの誰か?」

 

「ううん……」

 

あさひは首を横に振る。あさひが好きなのはあげはただ一人。他の人への恋愛感情など無いのである。

 

「じゃあ、学年の……」

 

「違うよ。……小さい頃によく遊んでいた幼馴染がいて、その人と最近再会したらその人に一目惚れしたというか……元々好きだったのがもっと好きになったと言えば良いのかな……」

 

「そっか、虹ヶ丘君に好きな人ができたんだね……」

 

「……でも……」

 

「「「でも?」」」

 

「その人には俺とは別の好きな人がいるらしくて……」

 

それを聞いて三人は渋い顔になる。好きな人に恋人がいるのであれば話は別だ。相手から恋愛対象を攫う事になってしまう。それか絶対に叶わない恋になるのだ。

 

「それでさ、その好きな人はもう付き合ってるの?」

 

「ううん。多分まだだと思う。言い回しからしてまだ好きな人がいるだけで付き合っては無い感じだった」

 

「それじゃあさ、その人よりも好きになって貰えば良いじゃん!」

 

「無理だよ……俺みたいな取り柄のないダメな人間が好きになってなんかもらえないよ……」

 

あさひがそう言ったところで三人は顔を見合わせた後にあさひのその言葉を否定した。

 

「それは違うと思うよ」

 

「虹ヶ丘君って凄い努力家だし負けずにアピールし続けたら好きになってもらえると思う」

 

「そうだよ!それに虹ヶ丘君はましろん似で優しいしさ」

 

三人は悩むあさひに少しでも元気になってもらうために励ます。そんな三人からの言葉にあさひは少し気持ちが楽になったのか、三人へと微笑む。

 

「そっか……ありがとう、皆。俺の事を元気づけようとしたんだよね?……もう少し頑張ってみる」

 

「「「どういたしまして!」」」

 

あさひがお礼を言う中、その様子を見ていたましろは色々と納得のいく気持ちになっていた。

 

「(あさひに好きな人……かぁ。でも今の言い回しだとあさひの好きな人って多分あげはちゃんだよね……前々からあげはちゃんに強い執着があると思ったけど、そっか……そういう事だったんだね)」

 

それと同時にましろは先程のあさひのフレーズに疑問を抱く。あげはには既に好きな人がいると言う言葉。以前会った時には彼女はそんなそぶりを全く見せなかった。ましろもましろであげはの事はある程度は理解しているつもりである。

 

「(でも、今は保育士さんの学校の宿題とかであげはちゃんは忙しかったはずなのに恋人なんて作る時間はあるのかなぁ……)」

 

以前、あげはが自分達を特訓のために連れて行った際、ツバサに“学校の宿題が忙しくて余裕がないのでは”と指摘されて彼女は冷や汗をかいていたほどだった。そんな彼女がいきなり恋人を作れるとは到底思えない。そう思ったましろはある決意を固めた。

 

「ましろさん、どうしたんですか?そんなに考え込んで」

 

「え!?そ、ソラちゃん!?な、何でもないよ……」

 

ましろも悩んでいる所を見られたのかソラに指摘されて何とかましろは取り繕う。それからその日の夜、ましろは一人自分の部屋の中でスマホを操作してあげはへと電話をかけた。

 

『やっほー、ましろん。どうしたの、急にさ』

 

「あげはちゃん。ちょっと気になる事ができちゃって……」

 

『なになに?』

 

「……あげはちゃんって好きな人がいるの?」

 

それを聞いた瞬間、あげはは驚いたようにいきなり声を上げた。まさかましろにまで伝わってるとは思わなかったからである。

 

『えぇ!?ま、ましろん!?それ誰から聞いたの!?』

 

「……あさひが昼休みに友達と話している所を聞いちゃって……」

 

『そっかぁ……ましろんにもバレちゃったかぁ……』

 

「それで、誰が好きなの?あ、無理に言わなくても良いからね」

 

ましろがそう言って一応あげはの方に逃げ道を確保してあげる。今ここで無理に聞かない辺り、彼女の優しさが出ていた。

 

『……うーん……でも、ましろんには知っていてもらった方が良いかな……』

 

あげはは暫く悩むような声を上げてから結局ましろに言うことに決めた。

 

「やっぱり言う。……あさひには内緒にしておいてね」

 

それを聞いてましろはすぐに頷く。あさひにこれが知られればかなりのショックだと思ったからだ。しかし、ましろのその考えはすぐに裏切られる事になる。

 

『実は、……私、あさひの事が好きで……』

 

それを聞いた瞬間、ましろの頭が一瞬にしてフリーズ。顔面が凍りついた。

 

「……え?」

 

『ましろん?どうしたの?私、何か変な事言っちゃったかな?』

 

「ううん、ちょっとびっくりしちゃっただけだよ。でもそっかぁ、あげはちゃんがあさひの事を……それっていつぐらいから?」

 

『元々小さい頃に友達として好きだったんだけど、最近のあさひって凄い頑張るでしょ?その何事にもひたむきな姿勢に惹かれたと言えば良いのかな。あとましろんと同じで優しい所も』

 

ましろの問いにあげははすぐに答えを返す。ましろはそれに納得した様子だったがそれと同時に複雑な気持ちになっていく。

 

「うーん、あげはちゃんからはアピールしないの?あさひの事だからあげはちゃんからアピールしたらすぐに受けてくれると思うけど」

 

『……多分無理。あさひにも好きな人がいるみたいで、それは私じゃ無い……』

 

ましろはあげはの言葉に心の中で頭を抱える。これはお互いに勘違いしてそれが拗れてしまっていると。何しろお互いが怖がらずにアピールすればすぐにくっつけるのに勘違いが邪魔をしてそれができていない。

 

「……あげはちゃん、私から言えるのはもっと自信を持って欲しいって事かな。そのあさひの好きな人が誰かまではわからないけど、多分あげはちゃんが本気を出したらきっと上手くいくよ」

 

『そうかな……私、寂しがりやだしあさひの事を束縛してしまうかもしれないよ?』

 

「……大丈夫。あさひならそういう所も含めて好きになってくれるから」

 

それからあげはとの電話を終えたましろは息を吐く。一応まだあさひの好きな人を断定しているわけでは無いのでまだグレーだがこれであげはが一歩踏み出せばあさひも受けてくれる。ましろはそう考えていた。そこに部屋の扉がコンコンとノックされる。

 

「姉さん、入るよ」

 

すると扉が開けられてあさひが入ってくる。ましろはあさひが入ってくるタイミングがもう少し早ければ会話を聞かれたかもしれないと考えてヒヤリとしたがどうやら聞かれては無かったようだ。

 

「姉さん……姉さんに相談があるんだ」

 

「相談?」

 

ましろはその時嫌な予感を感じた。そしてその予感はすぐに的中する事になる。

 

「……あげは姉に好きになってもらう方法って何か無いかな……」

 

「………」

 

「姉さん?」

 

ましろはあさひからの相談内容にまた心の中で頭を抱える。ましろは今まで恋などした事がない。しかもお互いが両想いで相手の出方を怖がってる状態なのだ。ましろに的確なアドバイスができるわけもない。

 

「う、うーん。あげはちゃんに好きになってもらう方法かぁ……」

 

「姉さん……何か知ってるの?あげは姉が誰が好きだとかもう俺には勝ち目が無いとか……?」

 

「(あさひー!あげはちゃんの気持ちに気づいてあげて!!そうなったら二人共幸せになれるんだよ!!)」

 

ましろの頭は既にパンク寸前である。それを見たあさひは一人悲しそうな顔つきに変わった。

 

「…….あげは姉は綺麗だし可愛いし、優しくて誰とでも分け隔てなく接する。相手は高嶺の花。それでも俺はあげは姉の事が好き。だから姉さん、どうやったらあげは姉に好きになってもらえるかのアドバイスが欲しい」

 

ましろはあさひの真剣さに驚くがそれと同時にある事を思いつく。これは、二人を近づけさせるチャンスなのだとましろは捉えたのだ。

 

「私は……いつも通りのあさひで接すれば良いと思うよ。変に取り繕うよりは今のあさひのままで、何も変えない今のままの方が……」

 

「それじゃダメなんだよ……」

 

「え?」

 

あさひが最初ボソッと言ったがそれからすぐに大声になってましろへと言い放つ。

 

「それじゃあ俺はあげは姉が好きって言う人に押し負ける!強くならなきゃ、あげは姉が安心して体を預けられるぐらいには強くならないと……強くならないと俺は見向きもしてもらえないんだ!」

 

あさひの顔は必死そのものであげはへの想いは本物なのだとましろは感じ取る。

 

「……それなら、尚更あげはちゃんには無理に背伸びしないそのままの自分で行ったほうが良いと思うよ。あげはちゃんなら今のままのあさひでも多分受け止めてくれる。だからさ、無理しないで」

 

「………」

 

ましろとしてもあさひに無理をしてほしく無いのだ。変に無理な背伸びをしてもあげはは気を使うばかり。それならそのままで行った方が良いとましろなりのアドバイスである。

 

「……俺は、俺はあげは姉の事を守らないと……男の俺がしっかりしないと……」

 

「あさひ……」

 

あさひはかなり思い詰めた顔でありましろはそんなあさひを不安そうに見つめた。まだあさひは無理しそうで怖い気持ちでいっぱいだ。それでも今のあさひの気持ちは止められない。ましろはそう感じ取るのだった。




また次回もお楽しみに。


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蝶の羽ばたき、朝日に照らされ

今現在、あさひはあげはと二人きりでショッピングモールに出かけている。そして二人は……とてつもなく気まずい雰囲気になっていた。

 

「……あげは姉……」

 

「え?あ、あさひ……何だった?」

 

「えっと……その……な、何でもない!」

 

二人共話しかけようとしては相手の顔を見ると緊張し、なかなか上手く話を進められていないのだ。何故このような事になったのか。時はこの日の前日まで遡る。

 

あさひが決意を固めたその週の金曜日。あさひはどうにかしてあげはとの二人きりの時間が作りたかった。恋敵に勝つためには少しでもあげはとの時間を長く取るべきだと考えているからである。

 

「あげは姉、明日時間取れる?二人きりになりたくて……」

 

あさひはあげはへと電話し、二人でお出かけをする約束を取り付けようとした。そしてその返答は……

 

『良いよ!私もあさひと出かけたかった気分だしね』

 

あげはとの約束を作る事に成功したあさひ。そして翌日、あげはに迎えに来てもらって二人でショッピングモールに行くことになる。

 

「それで、今日はどうしたの?何か相談したいことでもあった?」

 

「ううん……そうじゃなくて、俺はあげは姉と出かけたくて」

 

「そっか。それじゃあ私も遠慮なく行けるね。それじゃあ……」

 

まず二人で服屋に移動するとあげはが自分が着るようの服を選び始めた。そしてあげはがこれだと思った服を何着か手にしてあさひの元にやってくる。

 

「あさひ、どれが似合うかな?」

 

「一度試着してみて、その中で似合う物を言うから」

 

それからあげはによるファッションショーが始まる。あげはが元々ギャルみたいな性格のために清楚系な服も何点か選んだのにはあさひも驚いたが、それでもあげはに似合う服を全力で考える。

 

「……俺としてはこれが良いかな」

 

そう言ってあさひが選んだのは肩が露出しているものの、あまり派手すぎない大人っぽいギャルの服であった。

 

「へぇ〜、あさひはこういうのが好きなんだ」

 

そう言ってあげははグイグイと距離を詰めてくる。それを見たあさひは顔を赤くしつつある考えが脳裏に浮かぶ。

 

「(あれ?あげは姉って好きな人がいるんだよね?どうしてここまで俺にグイグイ来るの?この接し方……好きな人にアピールするのとあんまり変わらないんじゃ……)」

 

変わらないも何も、あげははあさひの事が好きなのだ。だからこの距離感で接してくるのは何も間違っていない。そしてあげはもあさひがあまりに顔を赤くするものだから彼女としても違和感が出てきていた。

 

「(あさひ?あさひって好きな人がいるんだよね……それなのにこんなに顔を真っ赤にして……どうしてだろ?それって好き人を相手にした時にする反応じゃ……)」

 

二人はお互いの態度に気が気でならなくなり、相手との話も少しずつ少なくなっていく。それから二人は物を購入して店を出るがその時にはもう既に気まずい雰囲気が流れるようになっていた。そして冒頭の場面に戻る。

 

「……ねぇ、あさひ」

 

「ご、ごめんあげは姉……ちょっとトイレ行ってくる」

 

「わかった……」

 

あさひは思わずトイレに逃げると洗面台で顔を洗って落ち着きを取り戻そうとした。

 

「何やってるんだよ……もっと上手く接しないといけないのに……このままじゃあげは姉に不審に思われるだけだ」

 

「……苦戦してるな、あさひ」

 

「カゲロウ」

 

カゲロウはあさひの対応が完全に手詰まりになっているのを見て親切心を働かせて手伝おうと出てきたのだ。だが……

 

「……お前の助けなんて要らない。俺一人であげは姉の心を射止める」

 

「大きく出たなぁ。ま、それが良いんだろうな」

 

カゲロウにしては珍しく手をすぐに退いた。あまり無理に言ってもあさひは聞かないと考えたからである。

 

「なぁ、カゲロウ。あげは姉には本当に俺以外で好きな人がいるのかな……」

 

あさひは不安そうにカゲロウに聞く。カゲロウは少し考えた後に返事を返した。

 

「……それを俺に聞くか。……お前以外に誰があげはと似合うって言うんだよ」

 

「え?」

 

「……そのくらいの気持ちで隣に居ればいいんだよ。あげはが誰が好きだろうと関係無い。お前はお前らしくそっと隣にいてやれば良い。それと、男なら逃げるな。俺が言えるのはそれだけだ」

 

カゲロウからの言葉が終わると同時にあげはから心配のLINEが入る。あさひはカゲロウにお礼を小さく言ってから急いであげはの元に戻った。

 

「ごめんあげは姉、心配かけて……」

 

「大丈夫!それじゃあさ、あそこに行こうよ!」

 

それからあさひが連れて行かれたのはゲームセンターにあるプリクラと呼ばれる場所に移動。

 

「ここって……」

 

「あさひ、私はあさひと一緒に写真を撮りたいな」

 

「でも、恥ずかしい……」

 

「大丈夫。私はさ、あさひと一緒に過ごしている今を大切にしたい。だから何かしらの形で残しておきたいんだ。……ダメかな?」

 

あげはからこう言われてあさひは先程カゲロウに言われた事を思い出した。“逃げるな。”それは臆病なあさひにとって勇気がいる行動。それでもあさひは好きな人のためにその人の願いを叶える。そう思って頷く。

 

「わかった。あげは姉、一緒に撮ろう」

 

それから二人は写真を撮るとあげはが加工してあげは好みの写真へと変えた。そして、二人分プリントしてあさひへと手渡す。

 

「はい、これあさひの分」

 

「え……」

 

「折角撮ったんだからあさひも持たないと。ね?」

 

あさひはあげはから写真を受け取るとそれを鞄のポケットに大事にしまい、それから二人でゲームセンター内で楽しい時間を過ごす。それからゲームセンターを出た二人は話しながらショッピングモール内を歩いていく。

 

「あのさ、さっき言えなかったんだけどあさひは……私の事をどう思ってるの?」

 

あげはがそう口にした言葉はあげはとしても勇気がいる発言だったのかとてもぎこちない口調だ。それでもあげはが勇気を出して言った言葉をあさひが受けないわけがない。

 

「……あげは姉は昔からずっと優しくて、可愛くて……あと俺の事をちゃんと見てくれていて……前向きで俺の事を引っ張ってくれた。だからお別れをした時はとても寂しかったし辛かった。それでもまたこうして会えて凄く嬉しいよ」

 

「そっか。……ちゃんと見てくれているのはあさひも同じだよ。覚えてる?昔私が同学年の友達と喧嘩して泣いた時に励ましてくれて……あの時はあさひが助けてくれたから私はちゃんと仲直りする事ができたんだ」

 

それを聞いてあさひは嬉しい気持ちになると同時に胸の辺りがポカポカと温かくなる。そしてあさひは改めて自覚する事になる。やはり自分はあげはの事が好きだと。あげはに好きな人が別でいようとそんなの関係ない。そう感じてあさひは勇気を振り絞る。

 

「あの!……あのね、あげは姉……」

 

「え?」

 

あげはは目を見開く。あさひの顔は何かの覚悟を決めたような顔だった。そして、あさひが口を開こうとした瞬間……。

 

「おや?そこにいるのは……プリキュア!」

 

二人がびっくりしてその方向を向くとそこにはバッタモンダーが立っており、二人はすぐに身構える。

 

「バッタモンダー……」

 

「今あさひが何か言おうとしていた所なのに邪魔しないでよ!」

 

あげははあさひの覚悟を邪魔された事に対して怒りを露わにする。そんなの知るかと言わんばかりにバッタモンダーは溜息を吐くとあげはの前に瞬間移動し、あげはの頬をビンタして吹き飛ばす。

 

「あぐっ!?」

 

「あげは姉!」

 

「カモン!アンダーグエナジー!」

 

バッタモンダーの言葉と共にアンダーグエナジーが出てくるとそれが近くにあった本屋の本棚の中に吸い込まれていき、ランボーグへと変化する。

 

「ランボーグ!」

 

「くっ、ここでランボーグ……ソラも姉さんもツバサもいない……でも、負けるわけにはいかない!」

 

近くの人々がランボーグの登場に逃げ惑う中、あさひはペンを取り出すとプリキュアに変身するために構える。

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!サンライズ!」

 

あさひの姿が一瞬にしてプリキュアへと変化するとすぐさま名乗りをしつつ突撃する。

 

「夜明けにひろがる眩い朝日!……キュアサンライズ!」

 

サンライズからの拳がランボーグに命中するとランボーグは吹き飛ばされて近くの壁に叩きつけられた。

 

「ランボーグ、相手は一人だ。ねじ伏せろ」

 

ランボーグは本棚から本を空中に出すとページが勝手に捲られていき、そこからビームが次々と発射される。

 

「本からの多角的な攻撃……それにこの狭いショッピングモールの道じゃ上手く躱せない……ぐはっ!」

 

サンライズは狭いショッピングモール内での戦いのせいでいつものように上手く戦えずにいた。

 

「ああ、弱いって本当にダメだよねぇ……僕が憐れんであげるよ。まぁ、ランボーグはお構いなしなんだけどね?」

 

その時、ランボーグからの攻撃の流れ弾が近くにいたあげはに飛んでいく。

 

「やばい!スタイルチェンジ!ドラゴン!」

 

サンライズがドラゴンスタイルに変化するとジャンプ台で加速し、最短距離を跳んであげはを押し倒しつつ攻撃を躱す。しかしその衝撃であげはが持っていた先程のプリクラの写真が落ちた。

 

「何だこれ?」

 

そう言ってバッタモンダーがその写真を拾うと不思議そうに見つめる。

 

「返して!それは……」

 

あげはが叫ぶがバッタモンダーはその様子を見てニヤリと笑う。そしてそれを無造作に破り捨ててしまった。

 

「弱い者は大切な物を守ろうとして無惨にそれを折られて絶望する。なんて罪深い世界だ!」

 

バッタモンダーが笑う中、サンライズは俯くと目元が髪の影で黒くなる。その次の瞬間、サンライズが手を翳すとバッタモンダーへと炎の弾が飛ばされた。

 

「ヒッ!?」

 

バッタモンダーがその躊躇ない行動に怯える中、サンライズの目は怒りで滾っている。

 

「貴様は……やってはいけない事をした。あげは姉の大切な物を……俺の大切な物を踏み躙った。……覚悟はできてるよな?スタイルチェンジ……ペガサス!」

 

サンライズの姿がペガサススタイルに変化した瞬間、あげはを守るように彼女を自分の後ろに隠れさせると周囲に何十発もの炎の弾丸を生成。更に自らはレイピアを構える。

 

「はあっ!」

 

サンライズが手を振るとバッタモンダーとランボーグに向かって炎の弾丸が飛んでいく。しかし、それらは躱されて空を切った。このままでは建物に命中して被害が広がる。そう思われた。

 

「馬鹿だねぇ、激情に任せて単調な攻撃をするとは」

 

「は?どこが?」

 

そう言った瞬間、弾丸の軌道が変化。そのまま予め設定されたようなあり得ない動き方で他の障害物に命中しないように迂回しつつ弾丸がランボーグに向かっていき、全弾命中する。

 

「このスタイルの真価は狭い所でも攻撃の軌道を自在に操り確実に相手へとダメージを与える事。攻撃の精密度や技術力ならどのスタイルよりも上だ!」

 

それからサンライズはランボーグに接近するとランボーグの守りが薄い部分を的確に見抜き、次々と周囲にある本を炎弾で破壊しつつ正確無比な突きでダメージを与えていく。

 

「馬鹿な……こんな奴にこの俺が……」

 

「……お前の敗因は……絶対に犯してはならない領域に踏み込んでメチャクチャに踏み躙った事だ!ひろがる!サンライズレイン!」

 

それからサンライズから放たれた浄化の一撃がランボーグに降り注ぎ、ランボーグを浄化。それからミラーパッドを使ってキラキラエナジーを少しでも吸収させる。

 

「ミラーパッド、オッケー!」

 

「ちくしょおお!またこんな奴に邪魔されるとは……覚えていやがれ!バッタモンモン!」

 

今回はバッタモンダーも性格を取り繕う余裕も無かったのか撤退する事を優先し、逃げていく。そして変身を解いたあさひはあげはへと自分が持っていたプリクラの写真を差し出した。

 

「あげは姉、俺の分をあげる。あげは姉は俺との大切な思い出が欲しかったんでしょ?だから……」

 

「いいよ。……あさひのその気持ちだけで十分」

 

あげははそれでもまだ悲しそうな目をしていた。あさひはそれを見て先程言いかけた言葉を再度口にする。

 

「あのね、あげは姉……さっきの話なんだけどさ」

 

「何?」

 

あさひは一度深呼吸してから息を吐き、勇気を振り絞るとあげはへとある言葉を口にした。

 

「あげは姉、俺はあげは姉の事が異性として好きです」

 

「……え?」

 

「だからこの前あげは姉が好きな人がいるって聞いて凄く落ち込んで……俺なんかじゃあげは姉の恋人になれないと思った。でも、それを相談したら皆から励まされて……それで気づいたんだ。やっぱり俺はあげは姉の事を諦めたくないって。だから勇気を出す事にしたんだ。……断られる事なんてわかってる。でも、どうせダメならちゃんとぶつかってからフラれた方がスッキリすると思って……」

 

「……そう、だったんだね……」

 

その瞬間、あさひはあげはに抱きつかれると共に驚く。その瞬間、あさひはあげはの目に流れる涙を感じ取った。

 

「あげは……姉」

 

「とても……嬉しい。私もあさひの事がずっと異性として好きだったから……」

 

その言葉を聞いてあさひは目を見開く。まさかオッケーをもらうとは思わなかったからだ。

 

「なんで……なんで俺を選んだの?俺なんかは……」

 

「言ったでしょ?なんかって言うのは禁止だって……それに、あげは姉っていうのももうダメだよ。だって……私達はもう恋人同士、対等な関係だから、これからは呼び捨てにして」

 

あさひはそれを受けてあげはの事を優しく抱き返す。そして次の瞬間には唇同士が優しく触れ合い、キスをするのであった。

 

「あげは、これからよろしくね」

 

「勿論だよあさひ。これからは私色にどんどん染めちゃうから、覚悟していてね」

 

それから二人は優しく手を繋ぎ、二人だけの時間をめいいっぱい楽しんでから家への帰路へとつく。そしてそんな二人の顔は幸せでいっぱいになるのだった。



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体育祭に向けてのリレー特訓

あげはと恋人になったあさひ。その報告はあさひが家に帰ってからソラやましろ達の前でしっかりとした。勿論皆はあさひとあげはが結ばれた事を祝福し、あさひは幸せな気分になる。それから数日後、学校では体育祭の練習をする事に決まってクラスではその話題が上がっていた。

 

「さて、今日から体育祭の練習が始まるわけだが……まずは選抜リレーのクラス代表を決めたいと思う」

 

担任の教師がそう言うと軽井沢がソラの方を一瞬向いて手を振る。

 

「(あ、やっぱりソラは選ばれるよな)」

 

あさひは勿論傍観を決め込んでいた。自分の足の速さでは選抜リレーの代表に選ばれるなんてことは無いと考えているからだ。

 

「はーい!ソラ・ハレワタールさんが良いと思います!」

 

軽井沢がそう言ってソラを推薦するとトントンと話は進み他のクラスメイトも賛成した様子でソラもこの話を引き受けた。

 

「あ、ところでリレーって何ですか?」

 

「やっぱり知らないか……」

 

ソラの質問に他のクラスメイトがポカンとする中、ましろがリレーの説明をする。そんな中、あさひは嫌な予感を感じていた。前にスカイランドのヤーキターイがこちらの世界のたい焼きに似ているという話があったのだが、それを鑑みるにリレーにもスカイランドでは何かしらの似ている競技があると予想。そしてそれを言い出すとなると……

 

「ああ!ラルーのことですね!スカイラ……」

 

「なるほど!スカンディナビアではそういう競技があるんだな!」

 

あさひがソラの言葉に無理矢理被せてスカイランドの事を言わないようにさせた。そしてソラも後から気がついたのかあさひの方を向いてごめんとばかりに両手を合わせる。

 

「虹ヶ丘君ってそんな事も知ってるんだ……物知りだね!」

 

「あはは……」

 

あさひは何とか乗り切れて心の中でホッとする。そしてソラは次の瞬間ましろにとっての爆弾発言を口にする事になった。

 

「村の祭りでは必ずラルーの選手に選ばれていました!……あ、でも一つだけお願いしたいのが……私にバトンを渡すリレー選手を……ましろさんにして欲しいんです!」

 

「……え?」

 

「は?」

 

「えぇえええええ!!」

 

ソラの発言にましろとあさひはキョトンとした直後、ましろは思い切り叫んでしまう。いきなりこんな事になれば驚くのも当然だろう。

 

「(姉さんご愁傷様だなぁ……)」

 

勿論ましろはもっと速い人の方が良いと言ったのだが、ソラはリレーにおいて重要なのはバトンパスだと言う。確かにバトンパスでバトンを落としたり落とすのを恐れて遅く走るのは命取りだ。ソラの意見は何も間違っていない。そしてその話を聞いたクラスメイト達は揃ってましろがやる事に賛成の意見を示す。

 

「え、えっと……」

 

ましろは冷や汗をかき、不安そうにする。しかし、ソラの目とクラスメイト達からの期待に応えるため受ける事にした。それから女子の他のメンバーも決まっていき、次は男子の番だ。

 

「それじゃあ、次は男子のリレー選手を決めるぞ」

 

担任の言葉にまたリレーの男子のメンバーがトントンと決まっていき最後の一人となる。

 

「アンカーはどうする?」

 

「でもなぁ、あと残ってる足の速い人って言ったら……」

 

その瞬間、クラス全員の目があさひへと向けられた。傍観を決め込んでいたあさひはビクッと体を震わせる。

 

「……え?」

 

「そういえば虹ヶ丘君ってこの前の体力測定の時に男子の中で一番速かったよね?」

 

「む、む、む、む、無理無理!俺なんかにアンカーなんて大役無理だよ!!」

 

あさひは怖がるように飛び退くと姉以上の冷や汗をかく。それでもクラスメイト達からの期待の目線は変わらない。そして担任の先生からも“やってみないか”と言われてしまう。

 

「……うぅ……や、やってみます!」

 

あさひはクラスメイトからの期待を裏切りたくないという想いが勝ってしまい引き受ける事になった。それからその事をツバサやあげはに説明すると二人も協力してくれるという話になり、ましろとあさひの姉弟によるリレーの特訓が始まる。

 

それからあさひ達一行は自然公園に行き、ソラやツバサの指導の元に特訓が開始された。

 

「それでは!リレー特訓を始めます!」

 

「よろしくお願いします!ソラコーチ!ツバサコーチ!」

 

「俺の練習相手としてカゲロウも呼んだから一緒にやってくれるとさ」

 

「ふん、何で俺がこんな事まで……また今度姉さんの美味い手料理を貰うぞ」

 

どうやらカゲロウはあさひとの交渉で条件付きで手伝ってくれるらしく、今回はましろの手料理で勘弁するとの事だ。

 

「それじゃあ早速私が速く走るコツを伝授しますね!」

 

「え?そんなのあるの?」

 

「それは、前だけを見て走る事です!」

 

「「………それで?」」

 

あさひとカゲロウが同時に聞き返す。しかしソラは言い間違えてないようで同じ事を復唱するだけだ。

 

「それは……」

 

「まぁそうですよね」

 

二人にもそう言われてソラは慌てて手をブンブンとさせながら言い訳をする。

 

「ま、周りを気にせずに前だけを見て走るのって結構大変なんですよ!」

 

「ボクもリレーのコツを調べてきたので実際に走ってみましょう」

 

それから早速四人はツバサの言葉と共に走るための構えを取る。すると早速ツバサからの指示が飛ぶ。

 

「ましろさん!スタートする時は三人みたいに体を前に傾けましょう。そうすれば前に行こうとする力が働いて前に進めますよ!」

 

そんな感じで走り始めるとソラとましろ、あさひとカゲロウのペアでそれぞれ走っていく。ソラとましろの方はソラがましろに合わせているのである程度はゆっくりだが、あさひとカゲロウの方はカゲロウが手を抜かずに本気で走ってるのであさひもそれに着いていくので手一杯だった。

 

「カゲロウ……速くない?」

 

「喋ってる余裕があるなら走れ。じゃないと置いてくぞ」

 

カゲロウの速度は圧倒的でありあさひは少しずつ置いていかれ始める。しかし、あさひは自分の限界を超えるために歯を食いしばって走り続けた。そしてあさひはアンカーなのでカゲロウからのバトンパスの練習もあった。

 

「でもカゲロウ、相手が本人じゃない以上やってもあんまり意味は……」

 

「問題ない。この前のリレー練習の際にお前にバトンパスする相手の動きの傾向は見切った。再現も勿論可能だ」

 

「いつも思うけどお前ハイスペックすぎないか?」

 

思えばカゲロウは勉強面に関して以外のことはあさひの数歩前を行っている状態であり、相手の心を読む洞察力にも長けている。割と完璧人間と言われても遜色無い程だ。

 

「ひとまずは練習だ練習……昔みたくあんな目に遭いたくなかったらな」

 

「………」

 

実はあさひにはある懸念があった。昔リレーで起きてしまったある嫌な思い出。それが起きてしまわないか、不安でいっぱいになっていたのだ。

 

そんな中でも四人のリレー特訓は続く。そして休憩に入るとカゲロウはあさひの中に入り、三人はシートの上に座る。そしてヘトヘトのましろ

とあさひは隣り合わせで寝転がった。

 

「はぁ……」

 

「やっと休憩だ……」

 

「二人共お疲れ様」

 

するとエルが二人の元に歩いてくると頭を小さな手で撫で始める。

 

「ましゅろ、あしゃひ!」

 

「凄いねエルちゃん!沢山歩いたね」

 

「ていうか、エルはあんなに動いてたのに元気だなぁ」

 

「エルちゃんは体を動かすだけでも楽しいんだよね」

 

「あー、わかるわその気持ち。俺にもそんな時があったから」

 

あさひがそう言う中、あげはも同意するように頷いてから昔あったある事を口にする。

 

「うんうん、二人は小さい頃私を鬼ごっこの鬼にさせてずっと走りながらよく遊んでいたしね」

 

「えぇ〜そうだったかな?」

 

「まぁ、この辺は体を動かすのが楽しい小さな子供特有の何かだろうな」

 

「それじゃあ、本番まで特訓を頑張るぞ〜」

 

「「「「「おう!」」」」」

 

それからも毎日のように早朝のランニングやらバトンパスの練習で時間はあっという間に過ぎていき体育祭前日の夜となった。その日、ましろとあさひは海外にいる両親とのビデオ通話を行い体育祭について話す事になる。

 

「それでね、ソラちゃんは物凄く足が速いからだからバトンを渡す最後の瞬間まで全速力で走らなきゃだよ。はぁ、ちゃんと落とさずに渡せるかな?」

 

「大丈夫だよ姉さん。姉さんならやれる。むしろ姉さんよりも俺の方が……」

 

『いつになくやる気だね、ましろちゃん』

 

『あさひもまだあの時の事を引き摺ってるの?』

 

「………当たり前だよ。アレが無ければもっと自信を持てたのに……」

 

『でも、ましろが体育祭を楽しみにしてるのは初めてなんじゃない?』

 

「楽しみなんじゃなくて緊張してるんだけどね」

 

微笑ましい一家揃ってのお話の時間。本来ならば二人の両親も体育祭の応援に来たいのだがそれでも仕事があるので仕方ないのだ。

 

『はぁ、今すぐソラシド市に帰りたい。ましろちゃんとあさひ君が走る姿を見たいよぉ……』

 

『応援してるからね?二人共』

 

それから通話が切れるとあさひは溜息を吐く。ましろはそんなあさひを気遣うように声をかけた。

 

「あさひ、本当に大丈夫?」

 

「……大丈夫かと言われたらそうじゃ無いかも。だってさ、俺があの時走れたのは……」

 

体力測定の際に走ったのはカゲロウ。つまり学年トップの速度を出せたのはカゲロウのおかげである。むしろ自分自身の力で走っていないために自信が持てないのだ。

 

「……心配いらないんじゃ無い?確かにあの時はカゲロウがいないと無理だけど、今はもう違うと思うよ」

 

「……いや、仮に走れたとしても……もし途中で転んだら?もし途中でバトンを落としたら?クラスメイトの期待に応えられなかったら?俺はもう皆に顔向けできないよ」

 

あさひはいつものネガティブ思考に突入してしまい、上手く自信を持てなくなっていた。それを見たましろはあさひをギュッと抱きしめる。

 

「ね、姉さん!?俺はもう子供じゃ……」

 

「さっきあさひが言った言葉、あさひにも必要みたいだね。……大丈夫。あさひならきっとやれる。それに、あげはちゃんに良い所を見せるんでしょ?」

 

ましろに励まされた影響かあさひは小さく頷くと安心したようにましろの温もりを感じる。

 

「やっぱり姉さんは、優しいね」

 

こうしてこの日は終わっていき、とうとう体育祭本番の日。その日の空は晴れ渡っており、絶好の体育祭日和であった。




また次回もお楽しみに。


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姉弟の本気のリレー

遂に始まった体育祭。ヨヨ、あげは、ツバサ、エル達が見守る中、綱引きに玉入れに騎馬戦……次々と競技が進んでいく。そしてとうとう訪れたリレーの時。あさひとましろは緊張した面持ちをしていた。

 

「いよいよだ……」

 

「やるしか無い……カゲロウは自分で分離しちゃったし俺の力でやるしか……」

 

「ふふっ、リラックスですよ」

 

その時、ソラが二人の肩に手を置く。二人は少し驚きつつもソラの方を見やる。

 

「ソラちゃんはどうしてそんなに元気でいられるの?」

 

「……だって、信じてますから。ましろさんならきっと最高のバトンを渡してくれるって。それにあさひ君ならきっと最高の走りをしてくれるって」

 

その時、あさひの脳裏にはある事が浮かんだ。それはあさひがリレーに対するトラウマのような出来事である。

 

「……ソラ、聞いてくれる?実は昔、小学校の頃の運動会での事なんだけど……俺はリレーでアンカーをやる事になった。……他のメンバーが頑張ってくれたおかげで俺はトップでバトンを受け取って走り出す事ができたんだ。だけど俺はゴールまであと少しの所で転んだ。そしてそのまま最下位にまで落ちて……そのせいでチームは負けたんだ」

 

あさひにとって忌々しい記憶、そして問題だったのがその後のチームメイトの発言だ。

 

「俺はクラスメイトの元に戻ると責められた。“何であの場面で転んだのか”、“皆の頑張りを無駄にした”とか言われて……だから怖いんだ。皆の期待に応えられなかったら……またきっと今のクラスメイトと友達でいられなくなる。そう思うとどうしても……」

 

その時あさひがソラの顔を見ると彼女は首を横に振っていた。何故ソラがそうしたのか。あさひにはわからなかった。

 

「そんな事をする皆さんではありませんよ。あさひ君が必死に頑張っている所を見れば、例え失敗してもそれを責めたりなんてしません」

 

ソラがそう言うと選抜リレーの女子は集合するように言われてソラとましろが入場口へと走っていく。その姿を見送ってあさひは一人考えていた。

 

「(……そっか。俺は難しく考えすぎていたのか。……やってやる。結果がどうなったって、自分の持てる全力を尽くすんだ!)」

 

それからあさひ達男子が集合する頃にはましろ達女子のリレーも始まっていた。あさひはアンカーで列の一番後ろ。よってリレーの様子は見えない。それでもやり切る気持ちであさひは覚悟を決めていた。

 

その頃、女子のリレーではましろの番になっており、ましろがバトンを受け取ると走り出した。そしてあげは、ツバサ、エル達が応援する中、ましろは一生懸命走る。

 

だが次の瞬間、ましろはバランスを崩して転んでしまう。それから次々とましろの後ろから他の選手達が抜く中、ましろは最後まで諦めずに立ち上がって走り、ソラへとバトンを繋いだ。

 

そしてソラはあっという間に前にいる他の選手を一瞬にして抜き去り、見事一位でゴールするのだった。ソラがましろの方を向くとましろは落ち込んだように下を向いていた。

 

「ましろさん!勝ちましたよ」

 

「やっぱりソラちゃんは凄いよ!ほんと、目にも止まらぬ速さって言うか……ビューンって……」

 

ましろは何とか言葉を紡いでいたが、それでも心の奥底にあった悔しい気持ちがどんどん込み上げてきてソラを置いて走っていってしまう。そして、あさひは入場の際にその様子を見てしまった。

 

「姉さん……まさか」

 

あさひはそれを見て今すぐにでもましろの事を追いかけたかったが、競技がある手前抜ける事ができない。苦しい思いを胸にしまい込んでリレーに臨む。

 

「早く終わらせて姉さんを励まさないと……」

 

それから男子の選抜リレーも始まった。しかし、こちらは序盤から相手チームにリードを許す展開となってしまいあさひがバトンを受け取る頃には最下位となってしまって更に差もある程度開いている。ここから逆転するにはカゲロウの力がいる……あさひはそう思ったがその考えをすぐに捨てた。

 

「(ダメだ……カゲロウがいたら。カゲロウがいないと。……これらは全部甘えだ。カゲロウを頼ってばかりじゃいられない!だから自分の力で、全力で……走り抜く!)」

 

それからあさひはバトンを受け取ると少し前の自分ならあり得ないような速度で加速していくと他のチームの選手との差を徐々に縮めていき、あと一人……。

 

「(このまま一気に……抜いてやる!)」

 

あさひが距離を詰めていく。だが、あと一歩で相手と横に並ぶその時にはゴールテープが目の前にあり……結局あさひのチームは二位に収まり、あさひはその場でポロポロと悔し涙を流して手に握り拳を作って握りしめていた。

 

「(なんでだよ……ちくしょおおお!!)」

 

あさひは心の中で叫び、悔しさを爆発させていた。そしてそれと同時に疲れがドッときてフラフラと歩きながら退場口へと行き、クラスメイトの前に戻った。

 

「……ごめんなさい。俺、一位になれなくて……皆の期待に応えられなくて……」

 

あさひは泣きながらクラスメイトの前で頭を下げる。それを見たクラスメイト達の反応はあさひの思っていた反応とは違った。

 

「ナイスファイト!」

 

「虹ヶ丘君、お疲れ様!」

 

「最下位から二位だろ?十分十分!」

 

「カッコよかったよ!」

 

そうやってあさひは健闘を讃えられる。そしてそれと同時にソラから励まされて戻ってきたましろがあさひを見るとあさひをギュッと抱きしめた。

 

「ごめんね、あさひ。私が心配をかけさせたんだよね?それに私、あさひのリレーをちゃんと見てあげられなくて……だから、だから私のせいで……」

 

「違う。俺の力が足りなかったから……俺が弱かったから……姉さんこそ、最後まで諦めなかったからソラが一位になってくれたんでしょ?だからもっと誇ってよ……」

 

それから二人は互いの健闘を讃えてその場も温かい空気に変わっていく。その様子を観客席で見ていたあげはは……

 

「……カッコよかったよ……ましろん、あさひ。私の大切な人達は……」

 

そうやってましろやあさひの事を後で労おうと思った直後、突如としてランボーグが出現。今回はライン引きのランボーグだ。

 

「ランボーグ!」

 

ランボーグが登場して生徒達は逃げ回る中、ランボーグは校庭で暴れ回る。それを見た三人はツバサにペンを持ってきてもらい、変身する。

 

「「「「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!」」」」

 

「スカイ!」

 

「プリズム!」

 

「ウィング!」

 

「サンライズ!」

 

「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」

 

「ふわりひろがる優しい光!キュアプリズム!」

 

「天高くひろがる勇気!キュアウィング!」

 

「夜明けにひろがる眩い朝日!キュアサンライズ!」

 

「「「「レディ……ゴー!ひろがるスカイ!プリキュア!」」」」

 

四人が変身を終えると早速ランボーグが物凄いスピードで突進してくる。四人はそれを躱し、ランボーグを攻撃しようとするがスピードが速すぎてなかなか捕まえられない。

 

「コイツ、だったら!スタイルチェンジ!ペガサス!」

 

するとサンライズがペガサススタイルに変身し、追尾性能を持つ射撃を放つ。しかし、射撃の飛ぶスピードよりもランボーグの速度の方が圧倒的に速く、またしても躱されてしまう。

 

「速すぎて……狙いが……」

 

それを見たサンライズはある事を思いついた。そしてそれを成功させるにはプリズムの協力が不可欠である。

 

「プリズム、俺に考えがある」

 

「え?」

 

それからサンライズがプリズムに作戦を話す間、スカイとウィングがランボーグの気を引き、時間を稼いだ。

 

「わかった。やってみるよ!」

 

「はあっ!」

 

それからサンライズは巨大な射撃を真上に放つとそれが空中で弾けてランボーグの周囲に降り注ぐ。ここで肝心なのはランボーグには絶対に当てない事。そしてそれを見たバッタモンダーは馬鹿にした顔をしていた。

 

「おやおや、どこを狙ってるのかな?この前ペガサススタイルの利点は精密射撃と言っていたけどアレはハッタリかな」

 

「……それはどうかな?プリズム!」

 

「ヒーローガール!プリズムショット!」

 

その瞬間、プリズムからの技、プリズムショットが放たれてランボーグに飛んでいく。ランボーグは躱そうとするが、まだサンライズが放った雨のように降り注ぐ射撃が残っている。

 

「しまっ!」

 

「いっけぇ!」

 

バッタモンダーはサンライズの狙いに気がつくがもう遅い。ランボーグはプリズムショットを喰らってダメージを受けてしまう。

 

「ペガサススタイルの精密射撃で逃げ道を塞いでそこに特大の技を当てる!見事な連携です!」

 

ランボーグが目を回す中、そこにウィングが決めるために猛スピードで突撃していく。

 

「ひろがる!ウィングアタック!」

 

しかし、技を出すのが一歩遅く、ランボーグが復活して攻撃を躱してしまう。更に運悪くランボーグが避けたせいでそのままウィングは止まれずに地面に激突。ダメージを負う結果に。

 

「ウィング!……はっ!」

 

ランボーグはスカイに向かって走ると今度はスカイがそれに合わせてパンチを放つが、それに合わせてランボーグは後退。そのままスカイがバランスを崩したところにランボーグからののしかかりを受けてスカイは倒れてしまう。

 

「く……うぅ……」

 

「ザマァないなぁ!これでお前らの技のパートナーは潰した。ランボーグ!やれ!」

 

そう、今の現状で合体技を使えるのはスカイとプリズム、サンライズとウィング。そのサンライズとプリズムのパートナーが倒されてランボーグを浄化するのが困難になってしまったのだ。

 

「それでも、俺達は……負けるわけにはいかない!」

 

それからサンライズはレイピアを召喚すると射撃を撃ちまくる。だが先程とは違って逃げ道を塞いで無い分ランボーグは逃げ続けてしまう。

 

「サンライズ、闇雲に撃っても……」

 

「いや、これで良い!」

 

サンライズはその瞬間、別方向に向かって射撃を放つ。それを何回か繰り返すとランボーグは少しずつエネルギー弾に包囲されて逃げ場を失い、校庭の隅に追い詰められるとまともに射撃を喰らう事になる。

 

「凄い……サンライズがここまで頑張ったんだ。私も負けてられない!」

 

「例えパートナーが潰されても、俺達の連携はそう簡単には破れないぞ!」

 

その瞬間、サンライズの胸から新たなスカイトーンが出現。そしてその片方はプリズムへと飛んでいく。

 

「これって……ウィングの時も出ていた……」

 

「ああ、俺とプリズム。二人の力だ!」

 

それから二人はスカイミラージュを取り出すとそれにスカイトーンを装填。それから技を発動する。

 

「「スカイミラージュ!」」

 

「空より降り注ぐ眩い光!」

 

「熱き力よ、光に宿って闇を打ち払う輝きとなれ!」

 

プリズムが両手を掲げて空へと巨大な光のエネルギー弾を放つとそれがランボーグの真上で止まり、サンライズが続けて炎を纏わせたレイピアを投げるとエネルギー弾に命中。エネルギー弾が炎を纏いながら弾けて光の柱を作り、ランボーグを包み込む。

 

「「プリキュア!シャイニングサンピラー!」」

 

その瞬間、ランボーグは光の柱の中で徐々にアンダーグエナジーを浄化されていく。そして、完全にエネルギーが無くなると元のライン引きに戻っていくのだった。

 

「スミキッタァ〜」

 

「ミラーパッド、オッケー!」

 

これによりミラーパッドにエネルギーがチャージされてまた一歩、薬の作成に近づく事になるのだった。

 

「んだよ!アレは何のための道具なんだよ!はいはい、強い強い良かったねぇ、バッタモンモン!」

 

バッタモンダーは今回もやられた事に腹を立てて取り繕う事なく撤退。こうして、体育祭はその後何事もなく終わり、皆揃って家に帰ってきた。

 

「自分でも意外だなぁ、涙が出るほど悔しいって思ったのは初めてだよ」

 

「……俺は正直一位になれなくて残念で……でも、クラスメイトは温かく迎え入れてくれて……」

 

「でしょう?皆さんはあさひ君を責めたりはしないって」

 

「あ、そうだ。あさひ……」

 

「何?あげは……ッ!?」

 

次の瞬間、あげははあさひの頬にキスするとあさひはびっくりして顔を真っ赤に染める。

 

「あ、あげは!?皆見てるのに……」

 

「お疲れ様、カッコよかったよ。流石は私の彼氏!ナイスファイト!」

 

「あ、ありがとう……」

 

あさひとあげはがイチャイチャする中、ソラはましろへとある質問をする事にした。

 

「それで、ましろさんはどんな自分に出会えましたか?」

 

「えっと、思ってたより負けず嫌いで思ってたより走るのが好きな自分だったね」

 

「ふふっ、ましろさんはエルちゃんと同じ。歩き出した赤ちゃんだね。自分の中に沢山の可能性がある事に気がついてどんどん成長していく。チャレンジして良かったね、ましろさん」

 

「日課のランニング、これからも頑張りましょう!」

 

「うん!」

 

こうして、新たな成長をしたあさひとましろ。二人が全力で挑んだ体育祭の日はゆっくりと終わりを告げるのであった。




今回で17話の内容が終わり、次回は18話の内容に入りますが……アニメの速度に追いついてしまう形になりますので18話が終わり次第、前から告知していた振り子メンタルさんの作品とのコラボ回を描きます。その回の投稿も合わせて楽しみにしてください。


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あげはの保育実習

今回の話は今日のひろプリの放送内容を含むのでネタバレが嫌だという方はアニメを視聴後に読む事をおすすめします。それではどうぞ!


体育祭も終わり、時間も経ったある日の昼頃、河川敷に現れたランボーグを相手にスカイ、プリズム、ウィング、サンライズの四人が対処していた。

 

「ランボーグ!」

 

今回は釣竿を模したランボーグであり、両手には虫取り網も持っている。早速ランボーグが頭に伸びている釣竿を飛ばすと襲いかかってくる。更に両手の虫取り網を伸ばしてはスカイ、プリズム、サンライズを捕まえようとしてきた。

 

「はいはい、そんなのには捕まらないぜ!」

 

しかしバッタモンダーは余裕そうで上から見下ろしている状態だ。

 

「ははは!どうしたプリキュア。避けるのだけは上手いな」

 

三人がランボーグを遠ざけている間にウィングが周りにいた人の避難誘導をしている。また、あげははエルを抱っこして守っていた。

 

その時ランボーグが伸ばした釣竿の先が看板を吹き飛ばし、それが逃げている子供へと飛んでいく。

 

「あ!!」

 

「ヤバイ!」

 

サンライズはすぐに向かおうとするが、距離が距離なので間に合わない。その瞬間、近くにいたウィングが看板と子供の間に割って入ると蹴り飛ばした。

 

「大丈夫?さ、早く逃げて!」

 

ウィングに促されて子供は逃げていき、これによりその場の全員が避難を完了。そしてここからは反撃の時だ。

 

「時間稼ぎは……ここまでだ!」

 

それからランボーグからの攻撃を躱しつつスカイとプリズムでランボーグの頭の棒を蹴り飛ばして体勢を崩させる。そして、そこを決めるのはサンライズとウィングだ。

 

「行くよ、ウィング!」

 

「はい!」

 

「「スカイミラージュ!」」

 

「天に羽ばたく誇り高き翼!」

 

「熱き力よ、翼に宿りて闇を焼き尽くす希望となれ!」

 

「「プリキュア!フレイムバードストライク!」」

 

サンライズとウィングの合体技、フレイムバードストライクがランボーグに命中するとその体を一気に浄化させていく。

 

「スミキッタァ〜」

 

「ミラーパッド、オッケー!」

 

そして最後にはしっかりとキラキラエナジーを回収し、無事に勝利を飾った。その様子を見たバッタモンダーはあんぐりと口を開けて呆然とするのみだ。

 

「やったやった!流石プリキュア!」

 

バッタモンダーとは対象的に喜ぶあげはとエルを見てバッタモンダーは怒りの声を上げる。

 

「おい!そこの外野!」

 

「はぁ?」

 

「言っとくけど僕はまだ全然本気を出してないからね」

 

「……負け惜しみってカッコ悪いよ」

 

バッタモンダーの物言いに平然と返すあげは。それを受けてバッタモンダーの怒りは更に高まっていく。

 

「戦っても無い外野のくせに!お前ら!次は覚悟しとけよ!」

 

「だからカッコ悪いのに……まぁ、私が外野なのは本当なんだけど」

 

バッタモンダーは捨て台詞を吐いて撤退し、そこにプリキュアがやってくる。

 

「そんな事無いよ。あげはは俺達の大切な仲間で……俺の大事な彼女だから」

 

サンライズはそう言うとそれに続いてスカイとプリズムも口を揃える。

 

「そうです!」

 

「あげはちゃんが応援してくれるから」

 

「私達も頑張れます!」

 

「プリンセスも大好きですしね」

 

「だいすき!」

 

ウィングに言われてエルもあげはへと抱きつく。あげははそれに嬉しそうにし、それからプリキュアは変身を解くと帰り道を歩く事になる。

 

「私も頑張らないとね!」

 

「え?それってどう言う事?」

 

「……実は、遂に保育園で実習なんだ!今から楽しみすぎるぅ〜!」

 

あげははそう言って嬉しそうにする。それを見た四人は駆け寄るとあげはへとエールを送った。

 

「本当!?あげはちゃん頑張って!」

 

「アゲアゲで行っちゃうよ!」

 

この数日後、あげはは実習先になった保育園……ソラシド保育園で先生となり実習を行う事になる。

 

「みんなー、新しい先生を紹介するよ!」

 

「初めまして、私は聖あげは。まだ見習い先生だけど最強の保育士を目指してます!よろしくお願いします」

 

あげはが挨拶すると園児達も声を揃えて挨拶し、そこからあげはの実習は始まる事になる。

 

「さいきょうだって!」

 

「かっこいい!」

 

二人の女子園児が話している所を聞いて一人の男子園児が声を上げる。

 

「さいきょうはプリキュアだもん!」

 

「プリキュアの事を知ってるの?」

 

「うん!わるいかいじゅうとたたかってくれる、とってもつよいヒーローだよ」

 

「わたしもしってる!」

 

それから園児達の話題はプリキュアの事で持ちきりになるとその中の一人、たけるという園児はプリキュアに助けられた事を話すとあげはは頭を撫でつつそれを聞いた。

 

「へぇ……ウィング、きっと喜ぶよ」

 

そこまで言ったところで園児は疑問を持つ。そしてあげははそれを見てやらかしたと考えた。

 

「プリキュアとしりあいなの?」

 

「あ……」

 

それからあげはは園児達に問い詰められる事になってしまう。あげはは慌てるが、もう遅い。

 

「あげはせんせいもプリキュアなの?」

 

「だってさいきょうなんでしょ?」

 

「違う違う。私はプリキュアじゃないよ。でも仲間的な感じ?」

 

あげはは園児達に嘘を吐くのはできないので結局仲間だということがバレてしまう。だがこれが逆に良い方に働き、あげはは保育園の園児達から手紙を大量に貰ってあさひ達の住む家にやってきた。

 

「と言う訳で、保育園の皆からお手紙!」

 

あげはが目をキラキラさせて手紙を四人に渡す中、あさひはあげはへと詰め寄った。

 

「あげは?何で俺達の仲間だって知られてるの?」

 

「い、いやぁ……つい口が滑ってしまって……」

 

「正体まではバラしてないよね?」

 

「流石にそこは大丈夫だよ……」

 

「あさひ、そこまで言わなくても大丈夫。元々いつかはバレる話だから」

 

あさひは仕方ないとばかりにそれ以上は詰め寄る事は無く、大人しくする事にした。それから手紙に目を通すとサンライズの事についても書かれており、あさひは心がポカポカした気持ちになった。するとカゲロウが出てくる。

 

「おい、何で俺の分は無いんだよ。一応俺もプリキュアなんだが?」

 

「仕方ないだろ。お前は基本中にいるだけなんだから。偶々トワイライトについては見られてないだけだよ」

 

「ふっふーん。そう思うじゃん。はい、これ」

 

そう言ってあげははカゲロウに一通の手紙を渡すとそこにはキュアトワイライトについて書かれていた。

 

「一人だけしか知ってる子はいなかったけどちゃんと居たよ。トワイライトを見たことのある人」

 

「何!?本当か!」

 

カゲロウはいつものクールな様子はどこへやらと手紙を手に取る。カゲロウことキュアトワイライトはこちらの世界であまり姿を確認されていない。唯一人前で盛大に戦ったのはベリアル襲来時の時ぐらいだ。恐らくはその時に偶々見かけてもらったのだろう。

 

「カゲロウ?顔が緩んでるぞ」

 

「あ?知るかよ」

 

それから二人で話しているとツバサが目をキラキラさせてからすぐに元に戻った。

 

「まぁ、でもボク達は強いですからね。手紙の一つぐらい……」

 

そう言ってツバサが手紙を読むとハートを射抜かれたのかズキューンとなってしまう。

 

「たける君、ウィングの大ファンみたいだよ」

 

「ズキューン!」

 

ツバサは鳥小屋の中に手紙をしまうと手紙の返事をどうするか聞くことになる。

 

「へ、返事はいつまでに書けば?」

 

「え、ありがとう!」

 

そう言ってあげはがツバサを抱きしめようとする中、あさひがガーンとした顔になる。

 

「あげは!頼むから俺の前であんまり他の男子に抱き付かないで……正直羨ましくなっちゃうから……」

 

それを聞いてあげははニコリと笑うと今度はあさひへと突撃し、抱きつく。

 

「やっぱりそういう所も可愛いなぁ〜!」

 

「あげは、嬉しいけどちょっと苦しい……」

 

「ったく、イチャイチャするのもその辺にしとけよ」

 

カゲロウに言われてようやくあさひは解放され、プリキュアの面々は保育園への返事を書く事になる。

 

「あ、そうそう。実習中はこの家に泊まらせて貰うからね。ヨヨさんには許可もらってるし!」

 

「あ、あげはが……」

 

あさひは心を射抜かれてそのまま幸せな表情になる。付き合い始めてまだあまり日が経ってないがそれでも同居できるのはあさひにとってとても嬉しい事だからだ。

 

その日の夜、あさひとあげはが二人で話をする事になった。

 

「あげは、泊まるのは実習の間だけなんだよね?」

 

「まぁ、そうなっちゃうかな」

 

「そっか……でもやっぱり嬉しいよ。あげはとこんな身近で過ごせるなんて」

 

「ふふっ。それは良かった。……あさひ、私ね。ちょっとあさひに嫉妬してるんだ」

 

「あげはが?俺に?」

 

「うん……」

 

あげははあさひを隣に連れて行き窓を開けて夜の空を見上げる。

 

「私はプリキュアになれないから……あさひが羨ましい。プリキュアとして私の事を守ってくれるのは嬉しいけど、でも私はランボーグ相手に歯が立たない。だからあさひが困った時に力になれないから……」

 

「そんな事は無いよ。あげはは直接的に戦えなくてもいつも俺達のサポートをしてくれる。それに俺はあげはにどれだけ勇気を分けてもらったことか。だからむしろ俺が感謝してるくらいだよ」

 

それを聞いてあげはは嬉しい気持ちになり、あさひと手を繋ぐ。それからあさひへと優しくもたれかかった。

 

「あさひ、私……もっと強くなるよ。強くなって大切な人達を守れるぐらいに」

 

「……無理な背伸びはしなくて良いよ。あげはが等身大の俺を好きになってくれたように、俺も等身大の今のあげはが好きだから」

 

それから二人で夜の空を見上げてからその日は眠りにつき、翌日を迎える。あげははまた保育園での実習を行う。この日は園児の遊び相手やオムツ交換、更には園児達へプリキュアからの手紙の返事を渡していった。

 

「ふへぇ……満たされるぅ……」

 

あげはが疲れた体を机に預ける中、ふとあさひの事を想う。

 

「あさひ……あさひもここにいてくれたらもっと良いのになぁ……」

 

するとたけるが他の園児と喧嘩をして泣かせてしまったという話を聞いてあげはは飛んでいく。

 

「ぼくさいきょうになるんだもん!プリキュアみたいにわるいやつをやっつけるんだ」

 

それを聞いたあげははたけるが出した拳を両手で掴むと優しく反論する。

 

「たける君、最強になるために大事なのはさ、先生はやっつける事じゃないと思うんだ」

 

あげはが何とか説得しようとするものの、たけるは言うことを聞かずに走って出ていってしまう。

 

その頃、園の外では近くの草むらからあさひ、ソラ、ましろ、ツバサ、エルが様子を見ていた。理由は返事を書いた保育園で実習中のあげはの事が気になったからである。

 

「これ、不審者には思われないよな?」

 

「た、多分大丈夫……」

 

「ってあれは……」

 

そこにたけるが逃げてきてあげはがそれを追いかける構図ができていた。

 

「あれ、絶対何かあったな」

 

「そうみたいだよね」

 

「でも、私達には介入できませんよ」

 

草むらからボソボソと話しつつ様子を伺う四人。そしてそれを見る影が一人。バッタモンダーだ。

 

「さーて、ショータイムの始まりだ。カモン!アンダーグエナジー!」

 

バッタモンダーがいつものようにアンダーグエナジーを召喚すると今回は象のジョウロが変化したまるで象のようなランボーグだ。

 

「ランボーグ!」

 

ランボーグの出現にあげははたけるを守るべく前に出る。

 

「たける君、先生から離れないでね」

 

するとバッタモンダーがあげはへと叫びつつ話しかけてきた。

 

「おい!そこの外野!よくもこの前は負け惜しみだとか言ってくれたね。観客は多い方が良い。君や子供達の前でプリキュアをボッコボコにして現実を見せてやるよ」

 

ランボーグはそれを受けて力を示すように2本の足をドスンドスンとさせる。

 

「そんなことのために……」

 

「まぁ、外野は黙って見てな」

 

「アイツ!」

 

そう言ってあさひ達四人はペンを構えるとランボーグへと立ち向かうために変身する。

 

「「「「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!」」」」

 

「スカイ!」

 

「プリズム!」

 

「ウィング!」

 

「サンライズ!」

 

「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」

 

「ふわりひろがる優しい光!キュアプリズム!」

 

「天高くひろがる勇気!キュアウィング!」

 

「夜明けにひろがる眩い朝日!キュアサンライズ!」

 

「「「「レディ……ゴー!ひろがるスカイ!プリキュア!」」」」

 

四人はプリキュアに変身するとランボーグと戦うために草むらから飛び出していくのであった。




また次回もお楽しみに。


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天に舞う美しき蝶

あげはの実習先に現れたバッタモンダーとランボーグ。サンライズ達は園の危機を救うために変身して登場した。

 

「出たなプリキュア!」

 

「皆!」

 

「あ、キュアウィング!」

 

「お手紙ありがとう。後は任せてね」

 

それからスカイが避難を呼びかけて中にいる保育士達が園児を避難させていく。そしてあげはもたけるを避難させようとするがたけるは近くで戦いが見たいようで嫌々ながらもあげはの手で避難させられることになる。

 

「おい、観客が居なくなったら意味ないじゃないか。逃すな!」

 

バッタモンダーの指示の元ランボーグが長い鼻から水を噴射して避難する園児達を狙う。

 

「させるか!」

 

サンライズが炎の剣で水を受け止めると水を蒸発させて攻撃を防げたが炎も同時に消えてしまい剣が消えてしまう。

 

「やっぱり水には弱いか……」

 

「なるほど、あの剣は水に弱いのか。一つ弱点がわかった所でやっちまえランボーグ!」

 

ランボーグが動き出そうとするとプリズムが跳び上がり気弾をぶつけた。それからスカイが後ろからランボーグを殴り飛ばし、最後にウィングが真上からドロップキックで地面に叩きつけさせる。

 

「やった!」

 

その直後、あげははキョロキョロと周りを見渡す。自分がいないのでエルの心配をしているのだ。そして、その近くにはたけるがこっそりと戻ってきてしまっていた。

 

そしてランボーグはダメージで目を回しており、あげはがバッタモンダーに質問する。

 

「見せたい現実ってこれ?」

 

「まさか?観客が君だけになったのは残念だけど、今から見せてあげるよ」

 

その瞬間、バッタモンダーが指を鳴らすとランボーグが起き上がる。それを見た四人は構えるがランボーグの鼻の先はプリキュア達では無く、近くの草むらにちょこんといたエルへと向いた。

 

「あ!」

 

「不味い!」

 

「あんまり弱い者虐めは好きじゃないけど、やっちゃえ」

 

それを見たサンライズがすぐに動こうとするがサンライズの背後にバッタモンダーが移動すると手刀を放つ。サンライズはそれに気を取られてランボーグの攻撃を許してしまった。

 

「ランボーグ!」

 

ランボーグから放たれた水がエルを狙い、エルはそれを抱っこ紐を操って避ける。それを見た三人はエルを庇うためにその方向へと動く。

 

「ッ!止まれ!罠だ!」

 

サンライズが何かを察して叫ぶがもう時既に遅い。ランボーグから今度は黒いアンダーグエナジーのビームが放たれてそれからエルを守るためにスカイ、プリズム、ウィングの三人がエルの盾になる。しかし、その直後に三人はアンダーグエナジーに包み込まれると黒いオーラを漂わせる透明なエネルギーフィールドに閉じ込められてしまう。

 

「皆!」

 

「テメェ、そのためにエルを……」

 

バッタモンダーは時間さえ稼げれば十分のために元の場所へと戻り、一人残ったサンライズが構えを取る。

 

「ははは!正義の味方気取りの君達ならそうすると思ったよ。これで籠の中の鳥だ」

 

バッタモンダーが嘲笑う中、スカイ、プリズム、ウィングが何とかして脱出を試みるがエネルギーフィールドはまるで壊れない。

 

「こんなもの!」

 

「プリズムショットが出せないよ……」

 

「内からがダメなら外からだ!ひろがる!サンライズ……」

 

その瞬間、ランボーグが背後から攻撃し、サンライズは吹き飛ばされてしまう。

 

「く……やっぱりコイツを倒さないとダメか……」

 

「ふふふ、残念だったなぁ。そのエネルギーフィールドはアンダーグエナジーを濃縮した球体さ。君達の力は使えない。外からならワンチャンあるが、それをさせる程僕のランボーグは甘くないよ」

 

その瞬間、今度はあげはに向かって先程のエネルギービームを放とうとチャージする。

 

「チッ!」

 

サンライズがあげはの前に回るとそのまま浄化技で対抗しようとする。

 

「ひろがる!サンライズカリバー!」

 

サンライズから放たれた炎の斬撃とランボーグのアンダーグエナジーがぶつかり合い、火花を散らすが少しの拮抗の後にランボーグが更に水の激流を追加。水のせいでサンライズの攻撃は僅かに弱まってしまいそのまま押し切られるとサンライズも球体に閉じ込められてしまう。

 

「クソッ!この野郎!」

 

サンライズが炎の剣を出そうとするがやはり出る事は無い。更に何度か殴ってみるもののそれさえも通用しなかった。

 

「残念でしたぁ!いくらお前でもそれを突破するのは無理なんだよぉ!」

 

「ぐっ……」

 

それからプリキュアの四人は悔しそうにバッタモンダーを見つめるとバッタモンダーはプリキュア達を見下すように笑いながら見下ろす。

 

「それだよそれ!その顔が見たかったんだよプリキュア!」

 

「うーわ、気持ち悪っ……」

 

サンライズがドン引きする中、構わずバッタモンダーは嘲笑い続ける。

 

「どうだ外野。これで僕の強さはわかっただろう?後はプリンセスを手に入れれば完全勝利さ」

 

「そんな事……させるか!」

 

サンライズが体に炎を纏わせようと全身に力を入れるが全く反応する事は無い。

 

「お前はそこで大人しくしてな?まぁ、どうにかできるならやってみれば良いんじゃない?できるものならなぁ!!」

 

バッタモンダーからの煽りは止まる事を知らない。サンライズはそれを聞いて何かを閃くと敢えて挑発に乗ったフリをして怒りの力を高めていく。

 

「ぐ……この、クズ野郎め!」

 

「サンライズ、落ち着いて!」

 

「挑発に乗ってはダメです!」

 

そんな時、近くに来ていたたけるは顔を青ざめさせていた。まさかプリキュアがここまで窮地に陥るとは思わなかったからである。

 

「そんな、最強のプリキュアが負けるなんて……」

 

「ああ、そういえば他にも観客が居てくれて嬉しいよ」

 

「アイツ!」

 

「たける君!」

 

サンライズは助けに動こうとするがまだ無理だとばかりにカゲロウが静止する。

 

「待てあさひ。まだ怒りのパワーが足りない。今のままだと流石に壊せないぞ」

 

「ぐ……」

 

たけるは大慌てで逃げ出そうとするがバッタモンダーが逃すわけがない。

 

「逃すな」

 

ランボーグが水を放出してたけるの進路を阻むとたけるは別方向に逃げようとするが転んでしまう。

 

「たける君!」

 

その瞬間、たけるを守るようにあげはが割って入ると両手をひろげる。

 

「あげは、ダメだ!逃げろ!」

 

サンライズが叫ぶがあげはは聞こうとしない。あげはの目は本気だ。

 

「そうはいかない!これ以上、あんたらの好きにはさせない!」

 

「はぁ?あはは!こりゃ良いや!外野のくせに僕をどうするって?」

 

バッタモンダーが一通り笑った後にランボーグに攻撃の指示を出す。

 

「なら逃げ切ってみな」

 

「ランボーグ!」

 

ランボーグが鼻を振り上げるとあげははたけるを背負ってその攻撃を回避する。

 

「しっかり掴まってて!」

 

「あげは!やめろ!無理しないでくれ!」

 

サンライズはあげはを心配して叫ぶ。それと同時に無力な自分への怒りのエネルギーを少しでも増幅させた。

 

「あと少しだ……あげはがもう少し時間を稼ぐと信じろ」

 

カゲロウの言葉にサンライズはバッタモンダーに見られないように小さく頷く。それを見た三人はサンライズは何かをする気だと気がついた。

 

「はぁああああ!!」

 

あげははランボーグからの攻撃をギリギリで躱しつつランボーグの周りを走り続けていく。

 

「あげはちゃん!」

 

「良いぞ、頑張ってみろよ外野!」

 

だが、あげはにはある狙いがあった。ランボーグの周りをぐるぐると回り続ける事によってランボーグの目を回させるとそのままランボーグは倒れ込んだ。

 

「えぇ……」

 

「良し、あげはの作戦が成功した!」

 

「でも……」

 

ランボーグを一時的に足止めさせる事には成功したがそれでもあげはの体力も尽きてしまいその場に膝を突くとたけるを下ろす。

 

「たける君、大丈夫?」

 

「うん……」

 

「良かった……」

 

あげははかなり疲れた様子で息切れが止まらない。そんな苦しそうなあげはをたけるも心配する。

 

「せんせい……」

 

「私は大丈夫」

 

「凄い……」

 

「へ、へぇ……外野の割にはやるじゃないか」

 

「……その外野って言うのはやめてくれる?プリキュアや保育園の皆は私の大切な人達なの。だから私は外野じゃない!」

 

「くっ、外野じゃなかったら何だと言うんだ?」

 

「保育士!そして最強の保育士も最強のヒーローも目指す所は一緒!……それは大切な人を守る事!」

 

そのタイミングでサンライズに込められた怒りの力がチャージ完了し、カゲロウが叫ぶ。

 

「今だあさひ!交代しろ!」

 

「ああ!」

 

その瞬間、サンライズの変身が解けるとあさひ……いや、カゲロウへと変わる。

 

「ダークミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!トワイライト!」

 

一瞬にしてサンライズからトワイライトにチェンジしたあさひ。そしてここに来て何故トワイライトになったのか。それは……

 

「うぉおおおお!」

 

その瞬間、トワイライトの中へとアンダーグエナジーが強制的に吸い込まれていく。

 

「ば、馬鹿な!?こんな事が……何故?」

 

「俺ならアンダーグエナジーを吸収しても何も問題無いからな。だが、これだけのアンダーグエナジーを吸収すれば膨大なエネルギーに耐えきれずに暴走する危険がある……だがな」

 

「そうか!サンライズはわざと挑発に乗ったフリをして怒りのエネルギーを……カゲロウを少しでも成長させるために負のエネルギーを高めたんだ!」

 

そして一時的にパワーアップした今のカゲロウならこれだけのアンダーグエナジーを吸収しても暴走しないとあさひは信じたのだ。そしてエネルギーフィールドの厚みが薄くなった所でカゲロウは再びあさひと交代する。

 

「ひろがるチェンジ!サンライズ!」

 

そしてサンライズになった瞬間取り込んだエネルギーが暴れ出すがもう遅い。サンライズの中に秘められた莫大な正のエネルギーが負のエネルギーを浄化。自らのエネルギーに転換し、薄くなったエネルギーフィールドをサンライズは炎の剣で粉砕し、脱出に成功する。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……何とか出られた……」

 

「ぐぬぬ……だがそんなズタボロの体でランボーグに勝てるとでも?」

 

「いや、ここから先を戦うのは俺じゃねーよ」

 

「何だと?」

 

そう言ってサンライズはあげはをチラッと見やる。そしてそれを見たあげはは頷いた。

 

「まさかその外野がやるのか?冗談はよせよ。プリキュアですら無いコイツに何ができる?」

 

「……だったら私は!」

 

その瞬間、あげはの胸にピンクの光が宿ると中からミラージュペンが飛び出す。

 

「……馬鹿な……こんなはずは……」

 

「……たける君、これで私は最強になるよ」

 

「ううん、あげはせんせいはもうさいきょうだよ!」

 

「あげは……俺はあげはを信じてる。だから思い切り……戦ってくれ!」

 

サンライズとたけるの言葉にあげはは笑って頷くとエルの方を向いた。

 

「エルちゃん!アゲアゲで行こう!」

 

「あげ!……ぷりきゅあああ!!」

 

エルから放たれた光をあげはが掴むとそれはピンクに色づき、スカイトーンを形成する。

 

「最強の保育士の力!見せてあげる!」

 

そしてあげははミラージュペンをスカイミラージュに変化させて変身を行う。

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!バタフライ!」

 

するとマイクにBUTTERFLYの文字が出てあげはがステージへと降り立つ。その瞬間、頭に蝶のエフェクトが止まると髪の毛が金髪へと変化。続けて両足にピンクのブーツが装着される。

 

「煌めきホップ!」

 

煌めきホップでは蝶が髪に止まるとそのまま髪飾りとなり、耳にピアスが装着される。

 

「爽やかステップ!」

 

爽やかステップでは体にへそだしのセパレートタイプのピンクのドレスが着せられて更に右足には紫のストッキングを履き、更に腰からピンクのフリルが垂れ下がる形となる。

 

「晴々ジャンプ!」

 

晴々ジャンプでは首元から腕、手首にかけて薄いタイツのようなものが装着されるとそれが中指で止められる。更に手首にはシュシュがされ、その後目元にアイシャドウが付与されて変身を完了する。

 

その容姿は可愛らしいギャルのようであげはの大人らしさも相まってプリズムとは別ベクトルの可愛さであった。

 

「アゲてひろがるワンダホー!キュアバタフライ!」

 

あげはことキュアバタフライが変身を完了するとその様子にスカイ達三人は興奮し、サンライズに至っては見惚れてしまっていた。

 

「綺麗……」

 

「あげはせんせいが……プリキュア?キュアバタフライ、がんばれー!」

 

「了解!」

 

「お前も閉じ込めてやる!」

 

「ランボーグ!」

 

ランボーグが先程と同様に相手を閉じ込めるエネルギー波を放つ。だが、バタフライが両手を蝶のように構えると蝶型のエネルギーシールドで攻撃を防御してしまう。

 

「なっ!?」

 

「アゲアゲな私には効かないよ!」

 

「凄い!」

 

「「ワンダホー!」」

 

「待ってて!直ぐにアイツを倒して解放してあげるから!」

 

「「「はい!」」」

 

「調子に乗るな!」

 

それからバッタモンダーの指示と共にランボーグが水による攻撃を仕掛けてくる。しかしバタフライは蝶のような舞で周りの木々や建物の壁を利用しつつ攻撃をヒラリと回避。

 

「お遊戯の時間はおしまい!」

 

バタフライが投げキッスをすると蝶型のエネルギーが飛んでいき、ランボーグに止まった瞬間に爆発。ランボーグはそのまま倒れ込む。

 

「ちょっとこれ、借りまーす!」

 

そう言ってバタフライは工事中に建物の周囲に張られる布を拝借するとそれを抱えた。

 

「な、何をするつもりだ!?」

 

「……そのままゴロンしててね!」

 

バタフライは赤ちゃんのオムツをする要領でランボーグの丸い体に布を巻いていくと動きを完全に封じ込めてしまう。

 

「ら、ランボーグ!」

 

「はいスッキリしたね!」

 

それからバタフライは跳び上がると空中に巨大な蝶を模した大型の盾を出現させるとそのままキックの要領でランボーグへと叩きつけて相手を押し潰す浄化技……

 

「ひろがる!バタフライプレス!」

 

蝶型の巨大な盾に押し潰されたランボーグはそのまま浄化されていき、撃破される。

 

「スミキッタァ〜」

 

また、ランボーグが倒された事でスカイ達も動けるようになってすかさずミラーパッドを構える。

 

「ミラーパッド、オッケー!」

 

ランボーグがやられたのでバッタモンダーはまた負け惜しみの言葉をバタフライへと言い放つ。

 

「い、良い気になるなよ!僕が本気を出せば……」

 

「いつでも相手になるよ。でももし、私の大切な人達に手を出したら私は……許さない!」

 

バタフライの目はいつに無く怒っておりその気迫に押されてバッタモンダーは逃げるように撤退を選択する。

 

「バッタモンモン!」

 

そして、たけるがバタフライへと駆け寄っていく。

 

「やったぁ!キュアバタフライ、カッコいい!」

 

「先生の事は皆に秘密ね」

 

「うん!ぼく、たいせつなひとをまもるさいきょうになるよ!」

 

「うん!」

 

それからスカイ達三人も興奮した様子でバタフライに詰め寄っていく。

 

「バタフライ、これからは!」

 

「一緒に戦えるんですね!」

 

「凄く凄く嬉しいです!」

 

「あげ!」

 

「ありがとう!これからは、保育士とプリキュア!両方頑張っちゃうからよろしくね!」

 

それからサンライズがバタフライの元に行くとバタフライはサンライズへと抱きついた。

 

「サンライズ!……これからはサンライズが私を守るだけじゃ無い。私が手にしたこの力で大切なあなたを守るから……」

 

「……わかった。よろしく、バタフライ」

 

こうして、キュアバタフライの力によって事件は一件落着し、それから保育士の実習も終わりを告げた。そしてあさひ達は後日、家でたけるからの手紙を読んでいる状態である。

 

「たける君、バタフライも大好きになったみたいですね」

 

「大活躍でしたから」

 

「だね……」

 

「ま、俺の大切な彼女だから」

 

「あげはちゃん……また泊まりに来て欲しいな」

 

ましろがそう呟くとあさひも落ち込んだような顔になる。その直後、インターホンが鳴るとソラがそれに対応して出ていく。

 

「お待たせし……」

 

「サプライズ!」

 

そう言ってソラに抱きつくと背中には巨大な大荷物を背負っている状態だった。

 

「あげはちゃん?」

 

「その荷物は……」

 

「もしかして……」

 

「あぁ、これ?引っ越してきちゃった!私もプリキュアになった事だし、一緒にいた方が良いでしょ?」

 

「「「サプラーイズ!」」」

 

「あげ!」

 

「じゃ、じゃあ……これからもずっと一緒に?」

 

「うん!」

 

それを聞いて今回はあさひがあげはに抱きつくとその場に他の人がいるにも関わらず、嬉し泣きをし始める事になった。これにより、虹ヶ丘家にプリキュアが全員集結。また新たなステージへと進む事になるのであった。




今回で18話が終わり、とうとうアニメに追いつく形となりました。そして次回からは告知通り振り子メンタルさんの小説である“ヒーローガールとヒーロー気質の転生者”とのコラボ回となります。それではまた次回もお楽しみに。


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別世界からの訪問者

今回からは振り子メンタルさんの作品である“ヒーローガールとヒーロー気質の転生者”とのコラボストーリーです。時系列はアニメ18話と19話の間です。読む前に注意として、今現在、“ヒーローガールとヒーロー気質の転生者”のストーリーはアニメの16話の途中までしか進んでいません。そのため今回のストーリーを読む前の前提条件として時系列は“ヒーローガールとヒーロー気質の転生者”のストーリーが18話まで進んでいているという事を念頭において読んでください。それではどうぞ!


キュアバタフライ覚醒から数日。五人のプリキュア達は今現在、平和なひと時を過ごしていた。

 

「バッタモンダーの奴、あげはが変身してプリキュアが増えたから怖気付いたのかな」

 

「いえ、油断は禁物です。いつまた仕掛けてくるかもしれません」

 

「でも今は束の間の平和な時間だしゆっくりしない?」

 

以前ツバサの歓迎会をしたので今回もキュアバタフライことあげはの歓迎会をしようという話になっていた。まだ企画段階のために色々と準備がいるが、あげははとても嬉しそうな様子になっている。

 

「それじゃあ足りないものの買い出しに行きましょうか」

 

「そうですね!」

 

それから全員で街への道を車で移動する。勿論エルも乗ると人数オーバーなので前と同じくツバサはプニバードの姿であさひの膝の上にちょこんと座る形だ。

 

「ツバサ、毎回毎回ごめんな」

 

「大丈夫ですよ。……そういえば、カゲロウの調子はどうですか?」

 

「あー。あの時無理にアンダーグエナジーを吸ったせいで今は大人しくしてるよ。まだパワーアップした体に慣れてないらしくて……」

 

実は以前の戦いでカゲロウはアンダーグエナジーを吸収した事で更にパワーアップしたらしく、今はその力に慣れるためにあさひの中で大人しくしているのだ。

 

「そうですか……」

 

ツバサには何かが引っかかている様子だが確証は無いので特にそれ以上は言及する事は無かった。

 

エルを含めた六人がスーパーに到着して買い物をしようと中へ足を運んだその時、突如として空が曇り始めると共に空に異次元の穴が空き始めた。

 

「な、何ですかあれ!」

 

「アンダーグ帝国からまた誰か送られてきた?」

 

「とにかくあそこに行こう。とてつもなく嫌な予感がする」

 

それから六人がその場所の近くに移動するとそこには三人の怪人が降り立っていた。

 

「……ここが人間界か」

 

「我々の世界とは比べ物にならない程軟弱そうな連中がウヨウヨいるな」

 

「ま、油断は禁物だぞ?確かこの世界には伝説の戦士が何人もいるのだとか」

 

一人は体に炎を纏い、筋肉質の体に鎧のようなものを着込んでいるようで見るからに固そうな戦士だ。一人は体が黒い雲のようで電気を漲らせている。ここからあまり防御面は固くなさそうだが、それでも電気を使うのだ。弱いと言う事は無いだろう。最後の一人は全身が凍りついており、頭には髪の毛の代わりなのか氷の棘が逆立っていて見るからに氷属性の使い手と言った所だ。

 

「何なんでしょうか、あの三人は……」

 

「でも、見るからに街を襲いそうな雰囲気です」

 

ソラがそう言った直後、三人はそれぞれ体からオーラを漲らせると熱線、雷撃、冷凍光線をそれぞれ射出。街への攻撃を開始した。勿論これには人々も逃げ惑うばかりである。

 

「皆、誰であろうとこの街を壊す奴を許すわけにはいかない。行くよ!」

 

「「「「うん!」」」」

 

それから五人はペンを構えるとスカイトーンを手にして変身する。

 

「「「「「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!」」」」」

 

「スカイ!」

 

「プリズム!」

 

「ウィング!」

 

「バタフライ!」

 

「サンライズ!」

 

五人はそれぞれ変身し、姿を変えると五人で名乗りをしていく。

 

「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」

 

「ふわりひろがる優しい光!キュアプリズム!」

 

「天高くひろがる勇気!キュアウィング!」

 

「アゲてひろがるワンダホー!キュアバタフライ!」

 

「夜明けにひろがる眩い朝日!キュアサンライズ!」

 

「「「「「レディ……ゴー!ひろがるスカイ!プリキュア!」」」」」

 

五人が変身すると建物へと登っていき、三人の怪人の前に出ていく。すると怪人達は攻撃を一時中断して五人を見据えた。

 

「ほう、お前らがこの世界の伝説の戦士……確か名前は……」

 

「プリキュアだよ。もう忘れたのか」

 

「……私達を知っている?」

 

スカイ達が驚く中、怪人達は当たり前とばかりに五人の前に降り立つとニヤリと笑う。

 

「知ってるも何も、俺はベリアルと同じ世界からやってきたからな」

 

「べ、ベリアルと!?」

 

「ベリアルって何ですか?」

 

ウィング以外の四人がその名前を聞いて警戒する中、ウィングだけはあの場にいなかったので知らなくても無理はない。

 

「要約すると前にこの世界に来て圧倒的な力で暴れ回った恐ろしい悪魔だ」

 

「そ、そんなに危険な奴と同じ世界から……」

 

「おいおい、言っておくがベリアルの奴と俺達は仲間でも何でも無いぜ?ただ同じ世界から来たってだけさ」

 

「まぁ、アイツが生きていた時代は大昔だからな。だが、突如としてベリアルの奴が目覚めた時は驚いたぜ」

 

「だがそのベリアルを倒したって言うのがお前らプリキュアって奴だと噂は聞いている。お前らの実力、試させてもらうぜ」

 

三人の怪人は余裕そうな顔つきで五人を見る中、サンライズ達の顔つきは厳しかった。何しろベリアルを知っている上にベリアルの名前を聞いてもまるで意に返さないのだ。つまり、相手は仮にベリアルを相手にしても勝てると踏んでいるのである。そんな奴等が相手なのだ。

 

「……そういえば名前を言ってなかったな。俺の名はドラウト。日照りを司る灼熱の戦士」

 

「僕の名はストーム。嵐を司る迅雷の戦士」

 

「私の名はブリザード。吹雪を司る凍てつく氷の戦士」

 

敵の名前はドラウト、ストーム、ブリザードの三人。彼らは自らのパワーを解放すると周囲に衝撃波が飛び交っていく。

 

「な、なんてパワーなの!?」

 

「でも、負けるわけにはいきません!」

 

それから三人はそれぞれ攻撃を開始してくる。まずはストームが目にも止まらぬ速さで接近するとウィングを殴り飛ばす。

 

「うわっ!」

 

「ウィング!」

 

それを見たスカイがフォローに動くがそこにドラウトが立ち塞がり、殴ろうとしてくる。

 

「くっ!」

 

それをバタフライが蝶型の障壁で防ぎ、持ち堪える。しかし、その直後にストームが戻ってくるとバタフライを横から蹴り飛ばした。

 

「がふっ!?……速すぎる!」

 

「バタフライ!はあっ!」

 

「私も!」

 

「だあっ!」

 

サンライズとスカイとプリズムが隙だらけのストームへと攻撃を仕掛けようとするが今度はブリザードが出てきて三人の足を凍り付かせる。

 

「くっ!?」

 

「俺にそんなのは……効かないぞ!」

 

その瞬間、サンライズの帯びている熱で氷は溶け、すぐにブリザードへと炎の剣を振りかざす。

 

「おお、怖い怖い。確かに私だと相性が悪そうだな。……でも」

 

その瞬間、ストームが手を翳すと上空から大雨が降り注ぎ、サンライズの手にした炎の剣を弱め、とうとう打ち消してしまう。

 

「ッ……」

 

そして、その直後にウィングが戻ってきてブリザードへとパンチを繰り出す。しかし、ブリザードはそれを簡単に受け止めるとそのまま振り回して叩きつける。

 

「ぐあっ!」

 

そのタイミングでスカイとプリズムが氷を粉砕するが今度はドラウトからの火炎放射をモロに喰らってしまい二人共地面に伏してしまう。

 

「ううっ……」

 

「強い……」

 

この時点で五人は三人との実力差を思い知る事になった。五人という数の上で有利なはずなのに圧倒されているのは自分達なのだ。

 

「何だ……プリキュアは伝説の戦士とか言うはずなのに弱いじゃねーかよ」

 

「いやいや、こいつらが弱いんじゃ無くて俺達が強すぎるんだ」

 

「舐めるなよ……」

 

するとサンライズがまた炎を剣を召喚するとまた走っていく。するとドラウトが炎のエネルギーバリアを張るとその剣撃を簡単に受け止めてしまう。

 

「ッ!?」

 

「その程度か」

 

その瞬間、ブリザードとストームが両側からサンライズの腹を蹴り飛ばすとサンライズは無惨にも吹き飛ばされて屋上に叩きつけられてしまう。

 

「う……くぅ……」

 

そこにサンライズを心配して他の四人が駆けつけると構えるがその時点でもう遅かった。

 

ドラウト、ストーム、ブリザードの三人がそれぞれ炎、雷、氷のエネルギー弾を生成し、それを一つに纏める。

 

「「「喰らえ。トリニティデンジャーボール」」」

 

三人がエネルギー弾を放つとバタフライが咄嗟にバリアを張るがそれは一瞬にして粉砕。そのまま五人はエネルギー弾に飲み込まれると声にもならない悲鳴を上げてその場で倒れ伏した。

 

「あ……うぅ……」

 

五人共受けたダメージは深く、傷だらけで立ち上がるのも困難になっていたのだ。

 

「ふん。やっぱりこの程度か」

 

「まるで興が冷めるな」

 

それを抱っこ紐から見ていたエルは今にも泣きそうな目になっており、サンライズはエルを安心させるために立とうとするが、痛みのせいで上手く動けない。

 

「ぐうう……」

 

「え、えるぅ……」

 

「まだだ……」

 

「まだ負けてなんか……」

 

五人が必死に立とうとする。するとその瞬間、上から雷が五人に落とされるとそのまま五人はクレーターの上で倒れ込みサンライズ以外の四人は変身解除。サンライズは持ち前の気合いと根性でギリギリ耐えていたがもう一押し何かを喰らえば変身は解けてしまう。

 

「サンライズ……無理しないでください……」

 

「ソラ達こそ、無理しないでそこで休んでて……俺一人でどうにか……あぐうっ……」

 

サンライズも既に疲労困憊。もう勝ち目なんて万に一つすら無い。それでも諦めたく無いその一心で立ち上がる。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

「「「トドメだ。失せろ!」」」

 

三人が同時攻撃を放とうとして構える。その瞬間、エルが空に向かって叫んだ。

 

「えるぅー!!」

 

その瞬間、攻撃が放たれた。サンライズは少しでもダメージを抑えるために構えると後ろで倒れている四人に被害が及ばないように前に出ようとする。その直後、突如として一筋の光が落ちてくるとそこに一人の戦士が降臨し、攻撃を打ち消した。

 

その姿は腋が露出してる黒いドレスアーマーのようなものに黒の長手袋、黒のロングブーツを付けて、右肩にはキュアスカイと同じようなヒーローのマントが垂れ下がっている。それは全体的に黒が多い格好で青みがかった長い黒髪にルビーのような赤い瞳をしている女の子だった。

 

「お前は……何なんだ?」

 

「あの子も……プリキュアなの?」

 

「私達以外にもプリキュアっていたんですね……」

 

「でもプリキュアになるにはエルちゃんの力が必要なんだよ?それにあんな子、今まで見た事ない」

 

「……大丈夫ですか?ソラ、ましろさん、ツバサ君、あげはさん」

 

「え?どうして私達の名前を?」

 

「私達、あなたと会ったっけ?」

 

ソラ達の驚きに女の子は少し困惑した表情になるが女の子はひとまずそれは後とばかりに前を向く。

 

「もう一度聞く。お前は何者だ?」

 

「……私の名前はキュアナイト……静寂ひろがる夜のとばり!キュアナイト!」

 

キュアナイトと名乗った戦士は状況を打開するために構えると三人の怪人達へと向かっていくのであった。




評価や感想を入れていただけると今後の参考になります。また次回もお楽しみに。


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キュアナイトと並行世界

キュアナイト……突如として現れた謎の少女は自らをそう名乗った。そして、ドラウト、ストーム、ブリザードの三人へと向かっていく。

 

「はあっ!」

 

そのスピードはサンライズよりも速く、あっという間に三人との距離を詰めるとまずはストームを殴る。

 

「チッ!」

 

ストームはそれを防御するものの、パワーもそれなりにあるため勢いで後ろに下がった。その瞬間、隙だらけのナイトにドラウトとブリザードが拳を突き出す。

 

「……はっ!」

 

それをナイトはわかっていたかのようにすかさず両手をそれぞれ左右に突き出して攻撃を受け止める。そのまま二人が何かをする前にそれぞれ投げ飛ばしつつ手にエネルギーで出来た漆黒の槍を召喚。それを片手にドラウトに向かっていく。

 

「小娘が調子に乗るな!」

 

ドラウトは自慢のパワーでナイトを叩きのめすために拳を突き出してくる。ナイトはそれを後ろへとバックステップをして躱し、そのまま槍を投げつけると槍はドラウトの影に刺さり、動きが縫い付けられる。

 

「なっ!?」

 

「これであなたの動きは封じました」

 

「貴様!」

 

そこにスピード自慢のストームがナイトへと不意打ち気味に背後から蹴りを入れようとする。

 

「そうは行きません!」

 

ナイトはそう言うとスカイミラージュを取り出して変身とは別のスカイトーンを装填。力を発揮する。

 

「プリキュア・ミライレコード!」

 

するとナイトの髪が青みがかった長い黒い髪から更に長くなって、ポニーテールへと変化。続けて黒のドレスアーマーのアーマー部分が解除され、所々に星の装飾が施された漆黒のミリタリーロリィタ風の衣装になっていく。黒のロングブーツは黒のニーハイブーツへと変化していき、黒のマントが装着。最後に瞳がルビーのような赤い瞳から黒曜石のような黒い瞳へとなって変身を完了する。

 

「……何、あれ?」

 

「サンライズのスタイルチェンジみたい」

 

「これはキュアナイトαスタイル……私が未来に得るかもしれない私の中の可能性の一つよ」

 

「だからどうした!」

 

ストームは更に速度を上げてナイトへと接近し、手に纏わせた電撃を繰り出そうとする。その瞬間、ナイトは手にした槍を投げつける。しかし、それはストームに躱されてブリザードの近くに刺さった。

 

「へっ、そんなのには当たらねーよ」

 

「それはどうかしら?」

 

「ハッタリをかますな!」

 

その瞬間、ナイトの姿が一瞬にして消えると先程ブリザードの近くに刺さった槍の所にまで瞬間移動。αスタイルの特徴として、刺さった槍の場所にまで瞬間移動できるという物がある。

 

「なっ!?」

 

「はあっ!」

 

ナイトは続けてシャララ隊長が使っていたような青く光り輝く剣を召喚し、それを振るってブリザードを切り裂いた。

 

「ぐうっ……」

 

それを見たスカイは驚きの声を上げる。青の護衛隊以外の戦士があの剣を使えるとは思っていなかったからだ。

 

「どうしてあの子が青の護衛隊の使う剣を……」

 

「調子に乗るなよ小娘!」

 

ブリザードが怒ってナイトへと両手を合わせた巨大な拳を作り、そのまま振り下ろした。その瞬間ナイトはその場におらず、もうブリザードの背後に回ってそのままナイトは蹴りを叩き込んだ。

 

「このっ!舐めやがって!」

 

その瞬間、またストームがナイトへと突っ込んできた。ナイトはそれを見て冷静に躱すとガラ空きの背中に蹴りを叩き込む。そのタイミングでドラウトが槍の拘束から抜け出すと三人が揃う。

 

「だったらお前にもおみまいしてやる」

 

「「「トリニティデンジャーボール!」」」

 

三人のエネルギーが凝縮されたエネルギー弾がナイトへと向かっていく。それを見たナイトは再びスカイミラージュを取り出すとまたその姿を変えた。

 

「プリキュア・ミライレコード!ミライコネクト!ナイトプリズム!」

 

するとナイトはその姿をまた変化させる。髪がポニーテールなのは変わらないが黒のドレスアーマーは白のドレスアーマーへと変化し、夜を思わせる格好から純白の白に変化。キュアナイト・プリズムスタイルに変身するのだった。

 

「今度は私そっくりの姿に変わった?」

 

キュアナイトは姿を変えるとすかさず両手にエネルギーで出来た二丁拳銃を召喚するとそれを合体させてスナイパーライフルへと変化。そして自分へと向かってくるエネルギー弾をロックオンする。

 

「ヒーローガール!ナイトバースト!」

 

ライフルから放たれたエネルギーがエネルギー弾とぶつかり合い、押し合う。だがやはり三人分のエネルギーが入っている分、相手の方が強い。ナイトの技は徐々に押し込まれ始め、ライフルにも亀裂が入り始めた。

 

「く……」

 

その瞬間、サンライズがナイトの隣に並ぶとボロボロの体を無理に動かして浄化技を使う。

 

「ひろがる!サンライズカリバー!」

 

サンライズから放たれた炎の斬撃波がナイトの技に合わさると威力が大幅に上昇し、二つの攻撃が相殺されて打ち消される結果に終わった。

 

「はぁ……はぁ……あ……うぅ……」

 

サンライズは力を使い果たしたからか変身解除し、あさひの姿で倒れ込む。それをナイトが優しく抱き留めるとその姿を見て驚く。それからましろの顔と交互に見てからすぐに敵へと向き直った。

 

「まさか俺達の攻撃と互角とは……」

 

「だが、これであのくたばりぞこないは倒れた」

 

「もう一発撃ち込めば……」

 

そう思ってエネルギーを抽出しようとすると三人の体からオーラが露散。どうやら三人も戦いでエネルギーを消費しすぎたせいか、パワーが切れてしまっていたのだ。

 

「チッ、この世界の侵略はまた一日の休憩を置いてからか……」

 

「お前ら、命拾いしたな。明日の正午、また来てやる」

 

「その時こそお前らの最期だ」

 

そう言って三人の怪人はまた空間の穴を通って撤退し、その場には一時的な平穏が訪れる事になる。そして、それを見計らってソラ達四人がナイトとあさひと合流し、あげはがあさひに肩を貸して立たせた。

 

「う……くぅ……」

 

それから割とすぐにあさひが目を開けるとナイトはまだ変身解除せずに立っている状態だ。

 

「……何とか相手は退けられたけど、明日また攻めてくると言っていたわ」

 

「そんな事よりもあなたは一体誰なの?」

 

「ボク達の事を知ってるみたいですが、ボク達はあなたと会った事なんて無いです」

 

ましろとツバサが問い詰める中、大人しくしているはずのカゲロウが出現する。その瞬間、ナイトはカゲロウが出てくる前にその気配がわかったのか臨戦態勢を取った。

 

「ほう、俺の気配がわかるのか」

 

「……あなたからは邪悪な気配を感じる。まさか、カバトンやバッタモンダーと同じ……」

 

「違う……カゲロウは俺の一部、俺の分身のようなものだ。邪悪に感じるかもしれないけど、信じてあげてくれ」

 

あさひは傷だらけながらも、何とかナイトを安心させるために言葉を紡ぐ。

 

「あさひ、無理しないで」

 

それを見たナイトは何かを考えるような仕草を取るとそれから考えが纏まったのか口を開く。

 

「……もしかして、並行世界のソラ達なんですか?」

 

「「「「「並行世界?」」」」」

 

五人はナイトからの言葉に疑問を持つ。そんな中、カゲロウが代わりに返答した。

 

「……並行世界が何なのかはよくわからんが、そろそろお前も変身を解いたらどうだ?」

 

「そうです。私達に正体を見せないなんてそれこそ怪しいですよ」

 

「………」

 

ナイトは自分の正体をバラすのを躊躇している様子だった。もし彼女の予想が正しければ彼女の知ってるソラ達と目の前にいるソラ達は別人なのだ。それにあさひやカゲロウもいるのでナイトは考えていたがやがて諦めたように変身を解除する。

 

「「「「「………え?」」」」」

 

「こいつは驚いたな……まさかキュアナイトの正体が、男だったとは」

 

「……俺の名前はソウヤ。多分君達とは別の世界からやってきたプリキュアだよ」

 

その姿は薄紫の髪に優しげな瞳が印象的なあさひ、ソラ、ましろと同い年ぐらいの男の子だった。

 

「別の……世界」

 

「ねぇ、ソウヤ君……だっけ?ひとまずここで話すのも変だから一度家に戻ってゆっくりと話さない?」

 

あげはからの提案にソウヤは頷くと六人は車のある所に移動する……のだが、やはりと言うか案の定というか定員オーバーとなり、全員が座ることができない。そのため、ソウヤは車のトランクに乗って何とかギリギリ入ることができた。

 

「ごめんね、ソウヤ君」

 

「いえ、大丈夫ですよ。前にこの車のトランクには乗ったことがあるので」

 

「トランクに乗ったことがあるって……」

 

ましろがそう言う中、あさひは悔しそうに手に拳を握りしめていた。そして、それから家に到着すると家の中でソウヤから話を聞く事になる。

 

「ソウヤ君は別の世界から来たって言ったけど、その世界には私達はいるの?」

 

「うん、ソラとましろさん、ツバサ君にあげはさんはいたよ。でも……そこにいるましろさんとそっくりな子はいなかったな」

 

「……あさひ。俺は虹ヶ丘あさひだ」

 

「虹ヶ丘……ってえ?まさか……」

 

「そうだよ。あさひは私の双子の弟」

 

「俺の世界のましろさんには弟なんていない……。この世界にくる前に世界ごとで違う点があるって聞いたけど……やっぱり違うんだ」

 

ソウヤが驚く中、あさひ達からの質問は続く。二つの世界の違う点をいくつか挙げていくと……

 

・ソウヤとソラが付き合っている。

・シャララ隊長が行方不明になっていない。

・ドリアーンは存在しない

・シャララ隊長が受けるはずだったアンダーグエナジーをソウヤが受けてしまっている。

 

等である。まだまだ他にも挙げていけばキリが無いのでここまでにしておくが。

 

「……なるほど。でも意外だったな。こっちの世界ではあげはさんがあさひと付き合ってるなんて……」

 

「えへへ。あさひは私の自慢の彼氏だよ」

 

「あげは、頼むから恥ずかしい事を言わないでくれ……」

 

そんな様子をソウヤは微笑ましい顔で見てから真剣な顔つきへと戻る。そして、まだまだ話は続いた。

 

「え!?ソウヤ君はシャララ隊長の弟!?」

 

「だからあの時、青の護衛隊が使う剣を出してたんですね」

 

「姉さんから剣術は習っていたし、使いこなせるまでにはあんまり時間はかからなかったからな」

 

するとあさひはある疑問が脳裏に浮かび、それをソウヤへとぶつける事にした。

 

「そういえば、ソウヤはどうやってこの世界に来たんだ?そもそも普通の方法だと世界を跨いで来るのは無理なはずだからな」

 

それを聞いてソウヤは真剣な顔つきへと変わり、それを見て他の面々も気を引き締めて話を聞く事になる。それからソウヤの口は開き、それからこの世界に来た経緯を話し始めるのだった。




また次回もお楽しみに。


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あさひとソウヤ 覚醒のキッカケ

ソウヤは真剣な表情でこの世界へと来た経緯をあさひ達へと話す事になった。

 

「結論から言うよ。ここに来れた一番の要因はエルの祈りだ」

 

「エルちゃんの……祈り?」

 

「俺は今、こうしてソラ達の前に存在しているけど……今目の前にいる俺は完全な俺じゃないんだ」

 

ソウヤからのカミングアウトに全員が頭に疑問符を浮かべる。いきなりこんな事を言われてもわかりづらいからだ。

 

「完全じゃ無いってどういう事?」

 

「さっき俺はシャララ隊長を……姉さんを庇ってダメージを負ったって話をしたよな?その時に肉体がアンダーグエナジーに蝕まれている状態になってしまって……気を失って目を覚まさない状態なんだ」

 

ソウヤは一度順を追って説明する中で自分が今どのような状況に置かれているかの説明から始める。ソウヤの肉体は今現在、アンダーグエナジーに蝕まれている影響で倒れたまま目を覚まさない。所謂スカイランドの王様や王妃様と同じような状態になっているのだ。

 

「だから今ここにいる俺は精神体のようなもので、生きてはいるけど完全な姿じゃない。そして俺は今、幽霊のような状態でもあるから普通の人達からは見えてないんだ」

 

「え?でもボク達からは普通に見えてますよ」

 

「……もしかして、特定の条件を満たした人じゃないと見えないとか?」

 

「そんな感じだと思う。えっと、プリキュアの伝説では祈りによってプリキュアが降臨していたからそれと同じで祈りがトリガーとなって俺は他人から見えるようになるらしいんだ。多分、エルからの強い祈りがあったからからこそ俺は移動できるようになったんだと思う」

 

ソウヤからの説明にその場の全員が納得する。しかし、その時カゲロウが出てくるとソウヤへと質問をした。

 

「お前の来た経緯はよくわかった……だが、お前にとって俺達の世界のコイツらは赤の他人だろ?何でわざわざこっちに来てまで俺達を助けた?」

 

「……助けを求めている人がいたんだ。それに応えない訳にはいかない。……俺を呼んだ時のエルの悲しそうな声を聞いて見過ごせなかったからだよ」

 

「なるほどな。お前がヒーロー気質を持った人間だと言うことはよくわかった……だがお前、まだ何か隠してるな?」

 

「「「「「え?」」」」」

 

それを聞いた途端全員が驚く。ソウヤは核心を突かれたからか一瞬動揺してしまった。

 

「本当ですか?ソウヤ君」

 

「………」

 

ソウヤはその事を話すかとても悩んでいる様子だ。何しろ、カゲロウの言う通りまだこちらの世界の面々とは会ったばかり。なかなか言い出しづらい事なのだろう。

 

「……無理に言わなくても良いよ」

 

あさひからソウヤを気遣う言葉を話す。ソウヤはそれを聞いて目を見開いた。

 

「ソウヤにとって大切な事なんでしょ?だったら無理に言わなくても良い。俺だってソウヤにはあまり言いたくないことを抱えてるから」

 

あさひは過去のトラウマをあまり人に話そうとしない。そしてそれはソウヤも同じ。人には話せない秘密が彼にもある。だからあさひはソウヤへと無理には話させない事にしたのだ。

 

「そうだね。私もあさひの意見に賛成するよ」

 

それにましろも賛成し、ソウヤは二人はやはり姉弟なんだという事を実感する事になる。

 

「それでさ、話は変わるけど……アイツら、明日にはまた攻めてくるんでしょ?対策を考えないと」

 

あげはからの言葉に全員が現実に引き戻される。ドラウト、ストーム、ブリザード。この三人をどうするかの対策会議をする必要が出てきた。

 

それからあげははどこからともなくホワイトボードを持ってくるとそれぞれ戦ってみて感じた三人の特徴を抜き出していく事にした。

 

ドラウトは見た所パワーが強く、炎を操ってきていた。そして、日照りを司ると言っていた所から熱線で相手の体力を消耗させる戦術も使ってくると思われる。

 

ストームはとにかく速く、相手との距離がある程度空いていてもすぐに接近してくるのだ。そして、嵐を司る者とだけあって雷や大雨を操ってくる。水系統の攻撃に弱いサンライズの炎攻撃とは相性が悪いだろう。

 

ブリザードはまだ特に目立った長所は無いが、相手の足を凍らせる攻撃をしてきた所から、吹雪や氷を操ってくる戦法が得意なのだろう。そして、氷が相手であれば炎属性を使えるサンライズとは相性抜群だ。

 

「……こうして見ると、一人一人の得意な戦術とかが見えてきますね」

 

「ただ、まだアイツらは本気じゃなさそうだったし、奥の手を何か隠しているのかもしれない」

 

そして、三人が揃った状態で放つ三人の合体技。トリニティデンジャーボールはまともに喰らってしまうと一撃で大きなダメージを負うことは免れない。つまり、この三人を下手に組ませてしまうとかなり不利である。

 

「やっぱり初手で相手を分断するのが良いかもしれませんね」

 

「うん、三人で組ませたら私達五人が同時にかかっても苦戦してたし、その方が良いかも」

 

ひとまずプリキュアチームの作戦は相手を分断しての各個撃破と決めた。それで、相手は三人。こちらはソウヤを含めて六人なので二人ずつペアで戦うのが良いと言う結論に至る。

 

「ソラと姉さんは組ませた方が良いんじゃないかな」

 

「どうして?」

 

「合体技が使えるからとか?」

 

「あー」

 

スカイとプリズムの二人でなら合体技を使える。なのでこの二人は組ませるべきとあさひは提案するが、ソウヤの考えは違った。

 

「……多分それはあんまり良くないんじゃないかな?」

 

「どうして?」

 

「相手はこっちの事を知ってる様子だったんだろ?だったら多分合体技への対策もしてくるはず。だから敢えて合体技に頼らない方が良いと思うんだ」

 

ソウヤが言うには相手が自分達を知っているのであれば、自分達の合体技への対策もバッチリしている可能性がある。だからこそ敢えて合体技には頼らない戦法で行くべきだと言った。

 

「そうすると……」

 

ひとまず六人は作戦を考えつつ、三人への対策法を組んで行った。それから日が沈んでいき、夜へと向かっていく。ソウヤも一時的に家に泊まる事になり、部屋の場所を案内する。しかしソウヤは家の構造を知り尽くしているために案内されずとも問題なかった。

 

「ソウヤ……入るよ」

 

そう言ってあさひがソウヤのいる部屋に入っていく。二人は個人的に話をする事にした。

 

「ソウヤは……プリキュアになったキッカケを覚えてる?」

 

「え……」

 

あさひからの質問の意外さにソウヤは驚くが、それなら話しても大丈夫なので話す事にした。

 

「キッカケか……元々俺はヒーローになりたくなかった」

 

「え?」

 

「だってヒーローって損な役回りだろ?失敗したら人々から責められるし、重い宿命だって背負わされる」

 

それを聞いたあさひには心当たりがあった。それは前にベリアルと戦った際に出会ったヒメの事である。彼女も英雄として讃えられていたのにベリアルに負けただけで掌を返されてしまっていた。

 

「……でもさ、気づいたんだ。俺はその考えのせいで自分の中のヒーローに憧れる気持ちに蓋をしていたんだって。だから俺はヒーローになりたい。そう願ったらプリキュアになる事ができたんだ」

 

「そっか……やっぱりソウヤは俺なんかよりもずっと強い。心でも、体の強さでも。……俺がプリキュアになれたキッカケはカゲロウの暴走が始まりだった」

 

あさひはソウヤに自分がプリキュアになれた経緯を話す。あさひはカゲロウの暴走をましろ達に止めてもらい、それから大切な人を守りたいという想いで変身できたのだ。

 

「……なるほど。でもさ、最後には自分の力で覚醒できたんだろ?だったら全然弱くなんか」

 

「でも俺は現に大切な人達が、あの三人に痛めつけられているのに守れなかった。……ソウヤが来てくれなかったら、俺は皆の力になれなくて……」

 

あさひは悔しそうに両手を強く握りしめていた。そんなあさひにソウヤは優しく寄り添う。

 

「大丈夫。あさひは十分強いし、それに……あの時俺がやられそうになった時も助けてくれただろ。あれが無ければ俺も無事でいられなかったかもしれないんだ。だから自分の強さに自信を持たないと」

 

「ソウヤ……明日は絶対に勝とう。俺達で、この世界を救うんだ」

 

「勿論」

 

そう言って二人は握手する。二人の絆が更に深まったその時、ソウヤの胸に何かの明るい光が微かに瞬いた。それに二人は気づく事なくその場は別れ、それぞれ寝ることになる。

 

そして迎えた翌日の正午。再び次元の穴が開き、中から三人が出てくる。その姿は更にパワーアップしたかのようにオーラが激しく立ち昇っていた。

 

「昨日よりも強くなってる……?」

 

「それでも、私達は負けられません!」

 

そう言って立つのは六人の戦士達だ。六人はそれぞれミラージュペンとスカイトーンを構える。

 

「ソウヤ、皆で一緒に行くよ」

 

「ああ!」

 

「「「「「「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!」」」」」」

 

「スカイ!」

 

「プリズム!」

 

「ウィング!」

 

「バタフライ!」

 

「サンライズ!」

 

「ナイト!」

 

その瞬間、ソウヤの持つスカイミラージュにNIGHTの文字が出てくると共にソウヤの体が女の子へと変化。そして髪が青みのかかった長い黒髪になると黒のロングブーツが装着される。

 

「煌めきホップ!」

 

煌めきホップではソウヤの瞳がルビーのような赤い色へと変化していく。

 

「爽やかステップ!」

 

爽やかステップでは黒のドレスアーマーが着せられていき、装飾も付与された。

 

「晴々ジャンプ!」

 

晴々ジャンプでは両手に黒の長手袋を付けると最後に右肩からマントが出現。変身を完了する。そして、それと同時に他の五人も変身し、それぞれ名乗りを始めていく。

 

「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」

 

「ふわりひろがる優しい光!キュアプリズム!」

 

「天高くひろがる勇気!キュアウィング!」

 

「アゲてひろがるワンダホー!キュアバタフライ!」

 

「夜明けにひろがる眩い朝日!キュアサンライズ!」

 

「静寂ひろがる夜のとばり!キュアナイト!」

 

「「「「「「レディ……ゴー!ひろがるスカイ!プリキュア!」」」」」」

 

六人は変身を終えると三人の前へと姿を現す。すると三人も臨戦態勢に入りつつ話しかけた。

 

「今度こそお前らを完全に潰してやる」

 

「そして、この世界は僕達三人の物となるのだ」

 

「逃げ出すのなら今のうちだ」

 

三人が脅しをかける中、プリキュア達も負けずに三人へと言い返す。

 

「誰が逃げるって言うんですか!」

 

「私達は絶対に負けない」

 

「この世界を……」

 

「大切な人達を……」

 

「「守ってみせる!」」

 

そして、スカイとバタフライ、プリズムとウィング、サンライズとナイトでペアを組むとそれぞれの相手を倒すために構える。こうして、世界を賭けた戦いのゴングが鳴り響くのであった。




また次回もお楽しみに。


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絶望に立ち向かう諦めない心

再度襲来したドラウト、ストーム、ブリザードの三人。それに対して六人のプリキュアは予め立てていた作戦通りに動き出す。まず動いたのはストームだ。

 

「おらっ!」

 

その瞬間、バタフライが蝶型の障壁を出してストームからの攻撃を防御する。まるで予想通りとばかりに。

 

「たあっ!」

 

そこにウィングがストームを背中から捕まえるとそのまま空を飛びながら遠くへと引き剥がす。その後を追うようにプリズムも建物の上を走っていった。

 

更に今度はスカイとバタフライが同時に前に出るとブリザードへと肉薄。そのままブリザードを二人同時に蹴り飛ばすとその威力で吹き飛ばし、またもや引き離した。

 

「なるほど、こうやって分断するのがお前らの狙いか」

 

ドラウトの言葉にサンライズとナイトが頷く。そして、二人もドラウトとの交戦を開始。ここに二対一の構図が三つできあがる事になる。

 

「ここまで来れば大丈夫」

 

ストームを連れ去ったウィングは自ら屋上に落下してストームにダメージを与えた。そしてそこにプリズムも追いついて気弾を放つ。

 

「たあっ!」

 

「チッ!」

 

何とかストームはそれを回避すると体からオーラを放出して空に雨雲を出現させると大雨が降り始めた。更に今回は風も強く、嵐のような状態である。

 

「くうう……」

 

「な、なんて圧力なの?」

 

ウィングもプリズムも吹き荒れる天候を前に飛ばされないように必死に堪えるのに精一杯。そして、ストームはその直後に二人へと攻撃を開始する。

 

「ぬん!」

 

その瞬間、二人はストームからの超スピード攻撃に吹き飛ばされると屋上に叩きつけられる。

 

「がふっ……」

 

「やっぱり速い……」

 

二人が顔を歪める中、ストームは手を翳すと空から雷が二人の元に降り注ぎ、動けない二人を襲わせる。

 

「くっ!?」

 

何とかそれは回避したものの、次は高速で接近してきたストームからの攻撃だ。

 

「どうしよう、動きが速すぎて対処できない……」

 

「……何とかボクが距離を詰めてみます」

 

「お願い」

 

そう言ってウィングが空を飛びながらストームと肉弾戦を開始。だがやはりスピードの面ではストームの方が速い。しかもこの嵐の中ではウィングの機動力も半減してしまう。

 

「たあっ!」

 

プリズムも援護射撃で攻撃に参加しているが、向かい風のせいで気弾の速度が弱まってしまうとストームにはあっさりと躱されてしまう。

 

「遅いなぁ」

 

その瞬間、ストームが竜巻を発生させるとウィングを引き摺り込み、そのまま竜巻の中に閉じ込めてしまう。

 

「な!?」

 

「ウィング!」

 

「これで片方は閉じ込めた……まずはそっちの小娘からだ」

 

プリズムは気を引き締めると目の前にいるストームからの攻撃に備える。しかし、そのせいで真上への警戒心が薄れてしまった。その直後、プリズムへと特大の雷が落とされるとプリズムはたった一撃で深い傷を負ってしまいその場に倒れてしまう。

 

「あ……ぐぅう……」

 

プリズムは痺れる体を動かそうとするが、傷の痛みが許してくれない。それどころか、ストームにガラ空きの背中を踏みつけられて更なる激痛が彼女を襲った。

 

「ゔぁああああああ!」

 

「プリズム!このっ!」

 

ウィングは何とか竜巻の中から脱出するとストームへとパンチを繰り出す。その瞬間、ストームの姿が消えたと錯覚する程の速度で動き、ウィングを羽交締めにする。

 

「うっ!?」

 

「甘いな」

 

そのままストームは竜巻を纏い、ウィングを捕まえた状態できりもみ回転。そのまま屋上にウィングを叩きつける。

 

「うわぁああ!」

 

傷だらけになったウィング。ストームはそんなウィングの胸ぐらを掴んで持ち上げると何度も腹を殴る。そして、そんなストームを止めるためにプリズムが倒れたまま足を掴むがすぐに振り解かれて逆に体を踏みつけられてしまう。

 

二人共疲労困憊で更にストームに痛めつけられてかなり消耗していた。

 

「ふん。お前ら如きが僕に勝てるなんて思うなよ?」

 

「……それでも、私達は……負けるわけには……うっ!?」

 

その瞬間、プリズムもストームに胸ぐらを掴まれるとそのまま二人に特大の電撃が流し込まれて拷問が開始される。

 

「「うわぁああああ!!」」

 

二人共かなりのダメージを負うとそのまま投げ捨てられて無惨に叩きつけられる事になる。その頃、ブリザードと戦う二人は……

 

「たあっ!」

 

まずはスカイが前に出てブリザードと純粋な格闘戦に入っていた。しかしブリザードはスカイからの攻撃を見切っており、なかなか攻撃が当たらない。

 

「当たりません……どうして?」

 

「あなたの攻撃は昨日の戦闘で見切った。君ではどう頑張っても当てられない」

 

「くっ……」

 

「だったらこれはどう?」

 

そう言ってバタフライが投げキッスをすると蝶型のエネルギー弾が飛んでいき、ブリザードへと止まろうとする。

 

「無駄だ」

 

そう言うとブリザードの足元から氷が出てきて攻撃を防いでしまう。そして、手に氷で生成した槍を作り出すとそれをバタフライへと投げつける。

 

「そんなに当たらないよ」

 

バタフライはそれを躱すがブリザードの狙いは別にあった。槍が地面に刺さった瞬間、地面が凍りつき、二人は足の踏ん張りが効かなくなってしまう。

 

「ッ!?」

 

「これは、やばいかも!」

 

「かもじゃない。ヤバいんだよ!」

 

ブリザードはスカイとバタフライの動きが鈍った瞬間を狙って地面から次々と氷の棘が出てくると二人の体を棘で拘束。身動きを取れなくしてしまった。

 

「「しまった!」」

 

「はあっ!」

 

そこにブリザードが氷の棘のようなものを空中に召喚。そのままそれを真上に放つと上空から雨のように棘が降り注ぎ、二人はそれをまともに喰らって大ダメージを負ってしまう。

 

「「うあああああああ!!」」

 

煙が晴れると二人がボロボロで倒れており、何とか立とうとするが、追い討ちをかけるようにブリザードが手を空に翳すと空から霰が降り始め、二人にそれが次々と命中。霰によるダメージといきなり寒くなった事による気温差でジワジワと体力を奪っていった。

 

「はぁ……はぁ……」

 

「う……くぅ……」

 

二人共立とうとするが、ダメージがそれを許してくれない。更にまだ凍った地面には変わらないので立とうとしては氷で滑って倒れ込んでいた。

 

「どうにかしないとこのままでは……」

 

スカイとバタフライは何とか立ち上がるが既に体は傷だらけ、もう満身創痍と言っても差し支えないぐらいに疲労しきっていた。

 

「……はあっ!」

 

バタフライが障壁を召喚するとスカイがそれを足場にして盾を蹴り、前に出る。ブリザードはその攻撃に対してカウンターを仕掛け、スカイの攻撃を躱しつつスカイの腹へと的確にパンチを叩き込んだ。

 

「がふっ!?」

 

「そんな……」

 

そのままスカイは倒れ込み、バタフライもブリザードへと向かおうとする。しかし、既にブリザードはバタフライの後ろにおり、バタフライは反応すらできずに攻撃を喰らってしまう。

 

「もうどうにもならないよ。お前ら程度ではな!」

 

するとブリザードが手を翳し、吹雪を発生させると二人の体を凍り付かせていく。

 

「う、動きが……」

 

そのまま二人は氷像になってしまい、身動きすら取れなくなってしまう。

 

最後にドラウトと戦う二人も苦戦を強いられていた。ドラウトは周囲を日照りにして暑さで二人の体力を少しずつ消耗させつつ自慢の耐久力で二人の攻撃を同時に喰らってもピンピンするぐらいであった。

 

「弱いな。その程度てば俺には勝てない」

 

「私の攻撃が効かなくなってる……どうして?」

 

「ふん。言ったはずだ。次こそはお前らの最期だと。昨日の俺達は普段の半分ぐらいしか出してないんだよ」

 

「そんな……」

 

「でも、負けるわけにはいかない!スカイミラージュ!トーンコネクト!スタイルチェンジ!グリフォン!」

 

その瞬間、サンライズはパワータイプのスタイルであるグリフォンスタイルになると大剣を持ってして相手のパワーに対抗する。

 

「だあっ!」

 

サンライズからの大剣がドラウトに命中すると炎を流し込む。しかし、ドラウトはその体に元々炎を蓄えているのでやはり相性が悪くあまりダメージを与えることにならない。

 

「俺の炎はお前のように弱くないんだよ!」

 

ドラウトが体に力を込めるとその体を炎で包み込み、二人へと突進してくる。その突進をサンライズは受け止めるとそのまま踏ん張って押し留めた。

 

「今だナイト!俺が足止めしている間に!」

 

「わかった!」

 

ナイトが手に槍を召喚するとそれをドラウトの影に突き刺し、その動きを縫い付けさせる。

 

「よし、二人で一気に総攻撃を……」

 

するとドラウトが力を込めると槍は抜けてしまい、拘束も終わる事になる。

 

「そんな!?昨日は止める事ができたのに……」

 

「言ったはずだ。昨日は前座なんだよ!

 

その瞬間、ドラウトから周囲に炎が飛び散り、日照りで乾燥している事もあってか、ドラウトの周囲が炎に包まれていく。

 

「炎のせいで、近づけない」

 

「だったら俺が……」

 

炎に耐性のあるサンライズが前に出て攻撃するが、炎の拳をカウンターとして貰ってしまう。

 

「ゔぁああああああ!」

 

「サンライズ!?大丈夫?」

 

ナイトがサンライズを心配する中、ドラウトから射出された炎の火山弾とでも言うべき攻撃が飛んできて二人共それをまともに喰らって倒れてしまう。

 

「う……くぅ……」

 

「ナイト、まだ立てる?」

 

「まだ……大丈夫よ」

 

二人が立つと構えを取る。しかし、その瞬間、二人の横から攻撃が飛んできて二人共大ダメージで傷だらけになってしまう。

 

「何で……」

 

「まさか」

 

二人がそっちを振り向くとそこには分断したはずのストームとブリザードが立っていた。

 

「お前らのお仲間は始末した」

 

「後はお前らだけだ」

 

スカイ、プリズム、ウィング、バタフライはもうボロボロで気を失っているか氷漬けになっており、孤立したサンライズとナイトはもはや絶体絶命だ。

 

「皆……クソッ!」

 

サンライズが悔しさでいっぱいになり、下を向く中でもナイトは立ち上がって前を見ていた。

 

「サンライズ。皆を信じよう」

 

「!!」

 

「状況は良くない。でも皆ならきっと立ち上がってくれる。だから……」

 

「そうだよな……俺達だけ諦めるわけにはいかない!」

 

二人共まだ目は死んでおらず、ダメージを受けながらも立ち上がっていた。

 

「だったらこれで引導を渡してやるよ」

 

そう言って三人は再度エネルギーを高めていき、トリニティデンジャーボールを生成する。

 

「「「終わりだ。失せろ!」」」

 

その瞬間、三人の合体技が飛んでいく。するとサンライズがナイトを庇うように前に出て通常スタイルに戻ると炎の剣でそれを受け止めた。

 

「サンライズ!?」

 

「ぐうう……やっぱり強い……でも……」

 

この行動にドラウト達も驚きを隠せない。ナイトはその姿を見てサンライズがまだ諦めてない事を肌で感じ取る。その瞬間、四つの光が飛んでくると攻撃を弾き飛ばした。

 

「「「なっ!?」」」

 

そこにはボロボロながらも、サンライズと共に並ぶスカイ達四人がいたのだ。

 

「皆!」

 

「お待たせしました」

 

「ごめんサンライズ。一人で任せちゃって……」

 

「今度こそ、ボク達皆で!」

 

「絶対にアイツらを……倒そう!」

 

ナイトはこれを見て自分の世界で眠っている自分を救うために諦めずに希望を持って頑張っているソラ達の事を思い出した。

 

「……そっか。やっぱり、世界が違っても皆は変わらない……。希望を胸に頑張ってる!だから、私は……俺はあさひ達の、サンライズ達の力になりたい!」

 

その瞬間、ナイトの胸からスカイトーンが出現。そしてそれはサンライズがモチーフにしている赤いストーンであり、それと同時にナイトのミライレコードが輝きを放った。

 

「サンライズ、力を借りるよ!」

 

そう言ってナイトはスカイトーンを装填し、ミライレコードを使用する。

 

「プリキュア・ミライレコード!ミライコネクト!ナイトサンライズ!」

 

すると青みのかかった長い黒髪に赤のアクセントが入るとそれがハーフアップで纏められていく。そして、黒のドレスアーマーが炎のエフェクトと共にサンライズのモチーフとなる赤に変化。そして、右肩のマントと左右対称になるように左肩から白のマントが垂れ下がる。こうして、キュアナイト・サンライズスタイルが誕生したのであった。

 

「ナイトが……進化した?」

 

「所々サンライズに似ていますけど、これはサンライズの力をモチーフにしてるんですか?」

 

「そうなるわ。……サンライズ」

 

「?」

 

「……これはサンライズと私の力。二人で一緒に行きましょう」

 

ナイトからの言葉にサンライズは笑みを浮かべて頷く。そうして、六人のプリキュアは改めてドラウト達に立ち向かうのであった。




また次回もお楽しみに。


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反撃開始と再びの絶望

六人のプリキュア達はそれぞれダメージを負いつつもキュアナイトが新たな力、サンライズスタイルの力を手に入れた。そして、再びドラウト達へと挑んでいく。

 

「「はあっ!」」

 

プリズムとウィングがストームへと向かっていく中、ストームは余裕そうな顔を崩さない。

 

「何度来ても同じ事だ!」

 

ストームが天候を嵐にすると二人の動きを封じ込めようとする。しかし、ウィングは嵐の中でも普通に……いや、前よりも速く動いていた。

 

「馬鹿な、何故コイツは速く動けているんだ!?」

 

「風を読むんだ……ここ!」

 

その瞬間。ウィングにとって追い風が、ストームにとって向かい風が吹き始めるとウィングは風に乗っていつも以上の速度で接近。ストームが反応する直前に攻撃が決まった。

 

「チッ、だったらこれはどうにかできるかな?」

 

ストームが手を空へと掲げると空に電撃がチャージされていき、落雷が次々と落ちてくる。ウィングはそれを回避し続け、ストームの注意を引きつけた。

 

「はあっ!」

 

ストームはウィングに気を取られて足を止めてしまった。そしてそれはプリズムにとって良い的である。プリズムから連射された気弾がストームに命中するとストームの視界を奪ってしまう。

 

「たあっ!」

 

そこにウィングがストームの真上から踵落としを叩きつけるとストームは堪らず屋上に落下してダメージを負う。そしてそうなればプリズムが接近するのも容易だ。プリズムが距離を詰めて連続でパンチを繰り出すとストームはそれを何とか防御していたが、元々ストームは防御力が高い訳ではない。相手との並外れたスピードの差によって攻撃を回避していただけなのである。

 

「距離さえ詰められれば、私達でも勝てる!」

 

「調子に……乗るな!」

 

ストームはプリズムへと蹴りをぶつけて後退させるとまた超スピードで動こうとした。しかし、その時にウィングが突撃してくるとストームを背中から拘束。それから先程やられたお返しとばかりにきりもみ回転しながらストームを屋上に叩きつけさせてダメージを入れる。

 

「お、おのれ……こんな奴等に……」

 

そこにプリズムからの追撃の気弾が飛んできてストームはそれを躱す。しかし気弾の中の何発かはストームでは無くストームの周りに配置されていき、逃げ道を少しずつ塞いでいった。

 

「煌めけ!」

 

プリズムが手を翳すと気弾は一斉に発光。ストームはその眩しさに目を眩ませてしまう。そこにウィングからの追撃としてオーバーヘッドキックが決まり、またもやストームはかなりのダメージを受ける。

 

「プリズム!」

 

「ヒーローガール!プリズムショット!」

 

プリズムから射出された巨大な気弾がストームへと命中するとストームは大爆発と共に大きなダメージを負って一気に追い詰められる。

 

その頃、ブリザードと戦う二人の方ではブリザードからの凍結攻撃を警戒しつつ戦っていた。

 

「バタフライ、足元を凍結される前に決めましょう!」

 

「うん!」

 

先程の戦闘で思い知った事。それは先程使ってきた凍結攻撃をされると二人の機動力が削がれて相手の思う壺になってしまう。ブリザードはそれをわかっているので一刻も早く氷を張りたかった。

 

「チッ、コイツら……手数で氷を張らせるのを阻止してるな」

 

二人は敢えて懐に入り、ラッシュを仕掛ける事で相手からの攻撃を抑制しつつ戦っていた。

 

「スカイ!」

 

バタフライからの言葉にスカイが頷くとスカイが跳び上がり、キックを繰り出すのと同時にバタフライが回し蹴りを放ってブリザードを蹴り飛ばす。

 

「この程度で……」

 

ブリザードは蹴られた事で二人との距離が空いた瞬間に氷の槍を投げようと構えた。

 

「させません!」

 

その時、スカイが近くに落ちていた棒を殴り飛ばすと氷の槍を弾きつつ凍結を阻止する。

 

そして、その間にバタフライが近づいて再び密着しつつのラッシュを仕掛ける。

 

「はあっ!」

 

そして、バタフライが拳をブリザードの腹に命中させるとブリザードは更に吹き飛ばされる。

 

「馬鹿な、お前らは既にボロボロ。なのに何故ここまでの力が……」

 

「さぁ?私にもわからないわ」

 

「ですが、これだけは言えます。私達ヒーローは諦めない心の持ち主。そう簡単には折れません!」

 

「ほざけ!」

 

ブリザードが口から氷の棘を発射。それが二人へと向かうが、バタフライが障壁を出してそれを受け止めつつスカイが突撃。そのまま右ストレートをブリザードの顔面に命中させてブリザードをよろめかせる。

 

「ぐはあっ……」

 

「大人しくしてもらうよ!」

 

その瞬間、バタフライが接近してブリザードの四方八方にバリアを張っていくと身動きを封じてしまう。

 

「はい、よく大人しくしてました!」

 

その直後にスカイがスカイランド神拳の構えを取る。この技は貯めの時間が長いために普通の状況では戦闘の際に大きな隙を作る。しかし今はその相手の動きが封じられ、足も止まっているために貯めの時間を十分に確保できた。

 

「小癪な……」

 

ブリザードが障壁を殴るが、バタフライが必死にそれを抑え込み、とうとうチャージの時間を稼ぎきった。

 

「はあっ!」

 

そして、スカイランド神拳が放たれる瞬間に障壁が解除され、ブリザードはスカイからのパンチをまともに喰らう事になる。

 

「ごはあっ!」

 

「これでも被ってみる?」

 

更にバタフライが追い討ちとして怯んだブリザードへと布を被せるとブリザードは視界を奪われて布を外そうとする。

 

「スカイ!今だよ!」

 

「はい!ヒーローガール!スカイパンチ!」

 

すかさずスカイがスカイパンチでブリザードを殴り、後ろへと吹き飛ばすのであった。

 

そして、ドラウトとサンライズ、ナイトの戦闘は体から熱線を放出して二人の体力を奪おうとするドラウトだったが、二人はそれをさせない程の連続攻撃でドラウトを追い詰めていく。

 

「ナイト、その姿が俺の力を持っているのなら多分武器は……」

 

サンライズがそう言うとナイトが手にいつもとは違い、赤いエネルギーの剣が召喚される。

 

「これって……サンライズの」

 

「一緒にやるよ!」

 

そう言ってサンライズも炎の剣を構える。ドラウトが炎弾を放ってくるが、二人はそれを切り裂きつつ接近していくとドラウトの体を斬り裂く。

 

「馬鹿な……俺に炎はあまり効かないはずなのに……」

 

「俺一人の炎だけじゃここまで届かなかった。……ナイトが力を貸してくれたからこそだよ」

 

「サンライズ……」

 

二人分の炎でドラウトの纏う炎の熱を上回り、ドラウトを焼き尽くす。そして、ドラウトは両手に炎のナックルを生成すると二人を相手に接近戦を仕掛けてくる。

 

「くっ……」

 

「サンライズ、私に考えがあるの。信じてくれる?」

 

「勿論だよ!」

 

それからナイトがサンライズに作戦を話すとサンライズは頷き、それに従う。

 

「スタイルチェンジ!ペガサス!」

 

するとサンライズがペガサススタイルに変身すると炎のエネルギー弾を生成してそれを射出。ドラウトを面で制圧するために弾幕を張った。しかし、ドラウトはそれを簡単に耐えてしまう。

 

「無駄だ。そんな炎でこの俺を倒すのは……」

 

その瞬間、ドラウトの両サイドに炎の壁が出てくるとドラウトの逃げ道を塞いだ。実は先程の面攻撃の際にペガサススタイルの特性である弾丸の軌道操作によって着弾地点を操作し、両サイドに炎の壁を作るようにしたのだ。そこにナイトが突撃すると右手で赤い剣、左手で青の護衛隊が使っている青の剣を持ち、ドラウトの体を斬り刻む。

 

「があっ!?」

 

「サンライズ!」

 

サンライズは元の姿に戻るとすかさず炎の剣を抜き、斬撃波を繰り出す。

 

「くっ!?」

 

ドラウトがそれを防御するものの、その攻撃はあくまで囮だ。真打は、サンライズからの浄化技。

 

「ひろがる!サンライズカリバー!」

 

サンライズから繰り出される炎の斬撃の奔流。それがドラウトへと放たれるとドラウトは負けじと炎のエネルギー波で対抗。二つのエネルギーはぶつかり合う。

 

「ぐううう……」

 

「貴様なんぞに負けてたまるか!俺がお前らなんぞに!」

 

ドラウトはサンライズとのエネルギーの押し合いに勝つためにエネルギーを更に高める。しかしその瞬間はドラウトの注意が散漫となり、一番狙いやすくなっていた。

 

「ナイト頼む!」

 

「任せて!」

 

するとナイトが手にした赤い剣に炎を宿すとその力を増幅させていき、それと同時に夜を思わせる黒のオーラを纏った。そこから放たれるキュアナイト・サンライズスタイルが使える新たな浄化技。

 

「ヒーローガール!ナイトエクスプロージョン!」

 

ナイトが剣を前に突き出すと同時に炎の力を宿らせた特大のエネルギー砲が放出。サンライズのエネルギーと合体するとドラウトのエネルギー波を一瞬にして打ち破り、ドラウトを焼き尽くす。

 

「ぐぁああああ!」

 

これにより、三人の怪人達はボロボロの姿で叩きつけられるとかなりのダメージを負う結果となった。そして、プリキュア達は集結し、その様子を見つめている。

 

「やりました!」

 

「何とか勝てたのかな?」

 

「いや、油断は禁物です」

 

「うん、まだアイツらはやられてないみたい……」

 

その直後、三人は立ち上がると突如として笑い始めた。それを見たプリキュア達は嫌な予感を募らせる。

 

「やるなぁ、お前ら」

 

「でも、これで君達は僕達を本気にさせた」

 

「私達の真の姿をお見せしよう」

 

すると三人がそれぞれ赤、黄、青の球体に包まれるとそれが空中へと浮かび上がる。そして、それらが空中で一つに合体するとその姿が露わになっていく。それは人型ではあったものの、体は黒く禍々しいオーラを放っていた。先程まではそれぞれ日照り、嵐、吹雪の力を象徴するような色だったがそれらが全て混ざり合う。

 

「そんな……」

 

「まだ先があったなんて」

 

「ここからは全員で行こう」

 

「ええ、その方が良さそうです」

 

そして、三人が合体した怪人は六人を嘲笑うように見下ろすとその名を名乗った。

 

「我が名はイーヴィル。ドラウト、ストーム、ブリザードが合わさる事で誕生する絶対なる神である」

 

「神……ですって?」

 

「お前のような奴に俺達は負けるわけにはいかない!」

 

その瞬間、イーヴィルは手を翳すと衝撃波を放って六人を一瞬にして吹き飛ばしてしまう。

 

「がっ!?」

 

「なんてパワーなの!?」

 

「さぁ、俺をここまでコケにしたんだ……命を持って償ってもらおうか」

 

それからイーヴィルからの威圧感に六人は気を引き締めるとイーヴィルと戦うために向かっていくのであった。




また次回もお楽しみに。


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折れない心が起こす奇跡

ドラウト、ストーム、ブリザードの三人が合体した究極の姿、イーヴィル。イーヴィルの戦闘力は凄まじく、プリキュア六人がかりでも歯が立たなかった。

 

「ぬん!」

 

「「「「「「うわぁああ!」」」」」」

 

イーヴィルが衝撃波を放つだけで六人はイーヴィルへと立ち向かう事すらできずに無惨にも叩きつけられていく。

 

「あ……ぐぅうう……」

 

六人はここまでの戦いで既にボロボロ。今のイーヴィルの力を真正面から受けられる程力も残っていない。

 

「強すぎます……」

 

「でも、負けるわけにはいかない」

 

「スカイ、プリズム。合体技だ……」

 

「でもそれは……」

 

ソウヤが前に言った通り、二人の合体技は対策されている可能性が高い。何しろ、相手はベリアルとの戦いを知っているのだ。アップ・ドラフト・シャイニングでは倒せないだろう。

 

「……少しでも相手の動きを止めてくれれば、俺達四人で総攻撃をかける。これで止められないなら多分どうしようもない」

 

「……リスクは大きい。それでも今はやるしかない」

 

バタフライの言葉に全員で頷くとスカイとプリズムが前に出ていった。

 

「スカイブルー!」

 

「プリズムホワイト!」

 

「「プリキュア!アップ・ドラフト・シャイニング!」」

 

その瞬間、イーヴィルの上に出現した円盤がイーヴィルを吸い込み始める。当然イーヴィルは抵抗し、その邪悪なエネルギーを暴れさせる。

 

「「うぅっ…」」

 

そのあまりの強大さに円盤への物理的な干渉が無くとも二人は膝をついてしまう。

 

「こんなパワー……抑え込むので精一杯……」

 

「とてもじゃありませんが、持ち堪えられません」

 

そして円盤への吸収もイーヴィルの力によって止まってしまい、少しずつ円盤にヒビが入っていく。

 

「俺達も行くよ!スタイルチェンジ!ドラゴン!」

 

するとサンライズがドラゴンスタイルに変化。それと同時にキュアナイトも普通の状態に戻り、ウィング、バタフライと共に技を発動する。

 

「ひろがる!サンライズドロップ!」

 

「ひろがる!ウィングアタック!」

 

「ひろがる!バタフライプレス!」

 

三人が次々と浄化技を使う中、ナイトは自身の周囲に5本の槍を召喚。それと共にイーヴィルの元へと突撃し、槍がキュアナイトを模した姿に変化するとそのまま連続でイーヴィルを攻撃。それから最後にナイトの本体がキックを叩き込む浄化技……。

 

「ヒーローガール!ナイトミラージュ!」

 

四人の追加攻撃がイーヴィルに炸裂するとイーヴィルの力は一気に弱まり、それに合わせてスカイとプリズムも持ち直す。

 

「「はぁあああああ!!」」

 

あと少しでイーヴィルが円盤の中に吸い込まれる……その瞬間だった。

 

「無駄だ」

 

イーヴィルがそう一言言った直後、凄まじいエネルギーと共に周囲に超高密度の邪悪なエネルギーが駆け抜けていき、その威力で円盤が一瞬にして粉砕。そして、六人はそのあまりのエネルギーに吹き飛ばされてしまうと叩きつけられてしまった。その衝撃で変身用のスカイトーンが粉々に砕け散ると変身解除してしまう。

 

「う……くぅ……」

 

「皆さん、大丈夫ですか?」

 

「何とか……でも、スカイトーンが……」

 

スカイトーンが壊された事で六人はもうプリキュアになる事ができなくなってしまう。しかももっと悪い事にイーヴィルの力は先程までよりも比べ物にならない程のパワーを放出していた。

 

「どうやら、お前らにもう戦う術は無いようだな。……受け入れろ、絶望を」

 

その様子を見ていたエルが泣き出しそうにする中、あさひがフラフラになりながら他の五人を庇うように立って両手をひろげる。

 

「あさひ!?」

 

「皆、俺の事は良いから逃げてくれ」

 

「そんな……そんな事できません」

 

「私達も最後まで戦うよ」

 

「ダメだ。姉さん達は、逃げて。ソウヤ、皆をお願い」

 

「………」

 

あさひがそう言うがソウヤは首を横に振った。そんな事できないと……そんな事許さないと言わんばかりである。

 

「……あさひ、それなら俺達も戦う」

 

「でも、俺は大切な人達に傷ついてなんか欲しくない。だから……」

 

その瞬間、あさにはソウヤにビンタされた。叩かれた頬をあさひは抑えながらソウヤを見るとソウヤの目はまだ諦めてない。

 

「……あさひ、俺はあさひの事も大切に思ってる。だから見捨てられない。それに、ソラ達もそんな事望んでないよ」

 

「そうです……私にとってあさひ君は大切な友達です」

 

「弟を置いてなんて逃げられない。私だってまだ戦うんだ」

 

「ボクはプリンセスのナイト……それと同時に、あさひ君の友達だから!」

 

「彼氏を置いて逃げる彼女なんて、みっともないよ。……それに、あさひを守るって私は決めたから」

 

六人は頷くとまだイーヴィルと戦う気持ちは失われてないようだった。

 

「……何故そこまでして戦おうとする?お前らの希望は全てへし折ったはずなのに……何故だ!」

 

イーヴィルには理解できなかった。何度痛めつけても、何度もボロボロにしても、何度心を折ってもその度に立ち上がってくる。その根性と精神力にイーヴィルはたじろいでいた。

 

「「……例えどんなに強い相手がいたとしても……」」

 

「「正しいと思った事を最後までやり抜く!」」

 

「「それがヒーローだから!」」

 

イーヴィルは目を光らせるとエネルギーをチャージし始める。今度は立ち上がれないように体ごと粉砕するつもりだ。

 

「どちらにしても無駄な足掻きだ。お前らはこの一撃で塵も残さずに消え失せる」

 

そう言ってトドメを刺そうとするイーヴィルをこの場にいる全員が見据えた。諦めない気持ちを胸に抱きながら。

 

「終わりだ。消えろ!」

 

イーヴィルから巨大なエネルギー波が放たれると六人を貫こうとする。その瞬間、あさひとソウヤの胸から光と闇が溢れ出ていくとその攻撃を押し留めた。

 

「これは……」

 

その攻撃を押し留めた正体……それはあさひの中に眠るカゲロウとソウヤの中に存在するプリンセスの力……そしてそれをソウヤに与えた残留思念だった。二つの力はその姿を具現化させると必死にイーヴィルからの攻撃を防ぎ続ける。

 

「カゲロウ!?どうして……」

 

「それに、ソウヤ君から出てきたあの女性って……」

 

『初めまして、この世界のプリキュアの皆様。私は大昔に祈りによってプリキュアを呼び寄せたプリンセスです』

 

「えぇ!?じゃ、じゃああの人がかつてのプリキュアの伝説を作り出した一人なの!?」

 

「話している時間はねーな。取り敢えずエル、もう一度スカイトーンを生み出せるか?」

 

「える!?」

 

『ソウヤ様のスカイトーンは私が再度生成できますが、この世界のプリキュア達のスカイトーンを生み出したのはこの世界のエルちゃんです。なので、私から彼女達のスカイトーンを作り出すのは不可能なんです』

 

残留思念こと昔のプリンセスはそう言ってソウヤの分のスカイトーンを再度生成。ソウヤの元に飛ばす。その直後、エルは体に光を高めていくと五人分のスカイトーンを生成し始める。しかし、五人同時な事もあってかやはり生成までに時間がかかってしまう。

 

「えるぅー!!」

 

「エルちゃん頑張って!」

 

するとイーヴィルはそんな事させるわけ無いとばかりにパワーを更に強めていく。流石に残留思念とカゲロウだけでは抑えきれないのが、少しずつ押され始めており、このままではいずれ破られてしまう。

 

「仕方ない……はあっ!」

 

『私も行きます!』

 

すると二人は突如としてそのエネルギーを増大させていくと攻撃に拮抗していく。

 

「馬鹿な、この威力でも押し切れないだと!?」

 

「カゲロウ、無理するな!」

 

「残留思念もこれ以上力を使ったら……」

 

『大丈夫です。私の力はまだ保ちます……それよりも』

 

するとカゲロウの方の力が少しずつ弱くなっていく。残留思念はプリンセスの力があるためある程度は維持できるが、カゲロウはそんな物無いので力を使えば使うほどにエネルギーを一気に消費してしまう。

 

「カゲロウ、戻れ!もう無理だ」

 

「へっ、散々無理しておいて俺の心配だぁ?笑わせんなよ。はあっ!」

 

その瞬間、カゲロウの姿がキュアトワイライトに変化すると必死でエネルギーを抑え続ける。

 

「どうして?スカイトーンが無いのに……」

 

「この前いただいたアンダーグエナジー。アレをプリキュアに変身する力として転換させてもらった。だが、これも長くは続かない。だからエル、頑張ってそこの五人を変身できるようにしてやれ!」

 

「小賢しい奴等だ!良い加減に諦めろ」

 

「「諦めない!」」

 

あさひとソウヤが同時に叫ぶとそれに合わせて四人も横に並ぶ。

 

「俺達は弱い存在だ」

 

「それでも、力を合わせれば」

 

「いくらでも限界を超えられる!」

 

「大切な人達を守るために」

 

「何度だって立ち上がる!」

 

その時、エルがスカイトーンを生成完了し、五人へとそれぞれスカイトーンを飛ばす。

 

「ぷりきゅああああ!」

 

五人はそれを掴むと同時に残留思念とカゲロウが弾き飛ばされてそれぞれあさひとソウヤの中に戻ってしまう。その直後、六人とエルに攻撃が命中。大爆発が発生した。

 

「ククク……ふははは!!全て無駄な足掻きに終わったなぁ。これでこの世界は俺達の……!?」

 

その瞬間エルを含めた七つの光が溢れ出るとエネルギーの球体のような物に包まれて攻撃を防いでいた。

 

「俺達はヒーローだ。そして、今この時が……ヒーローの出番だ!」

 

「「「「「「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!」」」」」」

 

「スカイ!」

 

「プリズム!」

 

「ウィング!」

 

「バタフライ!」

 

「サンライズ!」

 

「ナイト!」

 

それから六人の姿がプリキュアに変わり、その後、その姿を更に変化させていく。その姿はベリアルと戦った時に変身したスーパーフォームに似ているものの、翼の色がそれぞれの色をモチーフにした物になっており、更にスカイ、プリズム、バタフライ、ナイトの頭にはティアラが、ウィングとサンライズの頭には王冠が被せられており服装も自身のイメージカラーに金と虹の輝きを纏った物になっていた。

 

「ミラクルスカイ!」

 

「ミラクルプリズム!」

 

「ミラクルウィング!」

 

「ミラクルバタフライ!」

 

「ミラクルサンライズ!」

 

「ミラクルナイト!」

 

「「「「「「ひろがるスカイプリキュア!ミラクルモード!」」」」」」

 

こうして、プリキュア達は復活と同時に新たな力を手に入れる事になり、イーヴィルはその現実を受け入れたく無いとばかりに睨んでいた。

 

「この土壇場でデタラメな奇跡を……だが、そんな光俺が打ち消してやる!」

 

そう言ってイーヴィルは闇で生成された人形達を召喚すると六人へとけしかける。それをまず迎え撃つために六人は構えるのであった。




また次回もお楽しみに。


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戦いの果てと別れの時

ミラクルモードとなった六人はイーヴィルが生み出した闇の眷属達との戦闘を開始。ミラクルモードとなったプリキュアにとって眷属達など敵ですら無い。

 

「はぁああ!」

 

スカイが普段とは比べ物にならない速度で走るとすれ違い様に次々と敵を殲滅していく。そこにプリズムが気弾を生成して射出。眷属達はそれを受け止めようとするが、その威力は桁違いに上がっているのでどうする事もできずに倒された。

 

「たあっ!」

 

ウィングも空を飛びながら加速して突進していく。そこにイーヴィルがエネルギー波を放つがバタフライが生成した障壁がそれを防いだ。サンライズとナイトも漆黒の槍と炎の剣を武器に戦う。そうしているうちに眷属達はあっという間に全滅した。

 

「馬鹿な……何故ここまで歯が立たないんだ!」

 

「お前は確かに強い。でも、相手を傷つけることのために力を振るう奴に俺達は負けるわけにはいかないんだ!」

 

「サンライズ、二人の力を合わせましょう」

 

「ああ」

 

そう言うとサンライズとナイトからスカイトーンが出てくるとそれをスカイミラージュに装填。二人の合体技を発動する。

 

「サンライズレッド!」

 

「ナイトブラック!」

 

「「エボリューション!」」

 

すると空が薄明に染まり、太陽が夜になっても沈まない現象……所謂白夜になるとそこで黒と白のエネルギーが生成。それが合体すると赤い炎のオーラに黒と白の電撃が纏った巨大なエネルギーボールとなる。それからサンライズとナイトが手を繋ぎ跳び上がると二人でオーバーヘッドキックを放ち、エネルギーボールを相手へとシュートする。

 

「「プリキュア!ホワイトナイトシュート!」」

 

その攻撃がイーヴィルに命中するとイーヴィルは流石の威力に押し込まれていき、大ダメージを受けると突如として力が抜けたようにその場に膝をついた。

 

「馬鹿な……俺の力が抜けていくだと!?」

 

この技の特性として邪悪な力を抑制。弱体化させる事ができる。これによりイーヴィルの力は落ち込む事になり、本来の実力を発揮できなくなった。

 

「あり得ない……さっきまであんなに弱かった奴等が……ここまで追い迫るとは……認めんぞ!」

 

イーヴィルはそう言って残された僅かな眷属を全て吸収。少しでも自分のエネルギーをリカバリーする事にした。

 

「はあっ!」

 

「やあっ!」

 

そこにスカイとプリズムが呼吸を合わせて両サイドから蹴りをぶつけ、イーヴィルを押し込むと真上からウィングが踵落としをぶつける。

 

「ぐっ!?」

 

「「「バタフライ!」」」

 

「これでもどうぞ!」

 

そこにバタフライが投げキッスを放つとそれが蝶型のエネルギーとなり、飛んでいく。そして、イーヴィルの腹に止まると爆発を起こしてイーヴィルを後ろへと吹き飛ばした。

 

「おのれ……おのれぇえ!」

 

イーヴィルは更に激昂すると三人の時に使っていたトリニティデンジャーボールの強化バージョンを生成。そのまま発射する。

 

「喰らえぇえ!!」

 

するとスカイ、プリズム、ウィング、バタフライの四人がかりでそれを受け止める。そのまま四人は自身の強化されたエネルギーでその技を相殺。イーヴィルは驚きで唖然としてしまう。

 

「馬鹿なぁ!?」

 

そこにナイトとサンライズが接近して二人同時に炎の剣と電撃の剣を振り翳してイーヴィルを斬り裂く。

 

「ぐあっ!?」

 

「まだ倒れませんか……」

 

「しぶとい奴だぜ」

 

するとイーヴィルは今までのどの攻撃よりも強いエネルギーボールを生成。それは先程繰り出した技よりも数段上で圧倒的な出力を誇っていた。その直後、イーヴィルは空に跳びあがる。

 

「何を……」

 

「まさか!」

 

「ああ、このエネルギーボールを……この世界にぶつける!」

 

そう言うとエネルギーボールが巨大化していき、地上に命中すればソラシド市は一撃で焦土と化してしまうだろう。

 

「避けたければ避けてみろ!お前らは助かってもこの世界は粉々だ!」

 

「くっ……」

 

「卑怯です!」

 

「なんとでも言え。お前らさえ潰せばこんな世界、支配するのは容易いんだ!」

 

そう豪語するイーヴィルにサンライズとナイトは反論する。

 

「あなたの目的は叶わせない!」

 

「この世界を守るヒーローの力を……侮るなよ!」

 

その瞬間、再びエルの体に光が宿ると六つの輝きがそれぞれに飛んでいく。そして、その中の二つはスカイとプリズムのスカイトーンを変化させ、残り四つはそれぞれサンライズ、ナイト、ウィング、バタフライの手に収まった。

 

「これは……」

 

「スカイ、プリズム、ベリアルと戦った時のあの技……もう一度行けるよな?」

 

「うん!」

 

「勿論です!」

 

そして、ナイト、ウィング、バタフライの手にしたスカイトーンは三人による別の合体技だった。

 

「ウィング、バタフライ。私達も一緒に!」

 

「はい!」

 

「アゲてくよ!」

 

まずはナイト、ウィング、バタフライがスカイミラージュにスカイトーンを装填。

 

「ナイトブラック!」

 

「ウィングオレンジ!」

 

「バタフライピンク!」

 

すると三人の足元に円盤が生成されると共に空へと上昇。その位置はイーヴィルを超える。それを見たイーヴィルはその技が危険な事を察知してすかさず三人からの攻撃の迎撃に使うことにした。

 

三人はそれぞれ手を繋ぐと円盤から凄まじい程の下降気流が噴き出すと三人でその中へと飛び込む。三人はその凄まじい威力で顔を歪めるが、それでも気持ちでそれを抑え込むとそのままイーヴィルへと突撃していく。

 

「「「プリキュア!ダウンバースト・インパクト!」」」

 

三人の突撃に合わせてイーヴィルはエネルギーボールを放つ。二つの技がぶつかり合い、火花を散らしていく。その押し合いはプリキュアに軍配が上がり、エネルギーボールを真っ二つに破壊するとそのままイーヴィルに下降気流ごと激突してそのまま地面にまで叩きつけさせるとイーヴィルの動きを完全に封じ込めた。

 

「このぉ!」

 

イーヴィルは辛うじてそれを押し退けるとナイト、ウィング、バタフライはかなり疲労した様子だった。どうやらこの技は使用者本人への負担も大きいらしい。だが、三人で作ったこのチャンスを逃すサンライズ達では無い。

 

「スカイブルー!」

 

「プリズムホワイト!」

 

「サンライズレッド!」

 

サンライズ達が使うのはあのベリアルをも浄化した三人による最大最強の浄化技であり、しかも今回は前よりも出力は大幅に向上している。

 

「晴れ渡る空!」

 

「溢れる光!」

 

「闇を掻き消す絆の力!」

 

「「「プリキュア!クリアスカイ・サンシャイン!」」」

 

三人から放たれたエネルギー砲はイーヴィルを包み込むと一瞬にしてその体を浄化、消失させていく。その威力はベリアルを倒した事からも折り紙つきだ。

 

「「「はぁあああああああ!!」」」

 

「この俺が……こんな奴らに負けるとは……あり得ないぃ!」

 

イーヴィルの体は完全に浄化されると余ったエネルギーが周囲へと駆け抜けていき、浄化に成功した事を示していた。

 

「スミキッタァ〜」

 

これにより、イーヴィルは完全に浄化されると同時に空が雲一つ無いぐらいに晴れ渡る。そんな綺麗な青空はまるでプリキュア達の勝利を祝うようであり、六人とエルは勝利を喜び合う。それと同時にミラクルモードも解除され、六人のスカイトーンも消えるか元に戻った。

 

それから全員が変身解除するとそれと同時にソウヤの体が薄らと透け始めた。

 

「ソウヤ君!?どうして……」

 

「ごめん、もうそろそろ時間みたいだ」

 

「……そっか、ソウヤにも戻るべき場所と待ってる友達がいるから……」

 

「またこっちの世界に来てください。私達はずっと待ってます」

 

「……それは厳しいかもしれない」

 

そう言うソウヤの顔は寂しさでいっぱいなのかその頬に涙が伝っていた。

 

「俺がこっちに来れたのはエルの強い祈りと精神体としてのこの体があってこそ。もし俺のいた世界にいるソラ達が俺にかかった呪いを解けば、俺はまた普通の人間として過ごすことになる」

 

そう、今のソウヤがここにいるのは彼自身が精神体でいるから成立している部分が大きい。だからこそ元の肉体に戻ればもう二度と世界の壁は越えられないだろう。

 

「だったらさ……今度は俺達がそっちの世界に行くよ」

 

「……え?」

 

「あさひ、その方法を知ってるの?」

 

「わからない。でも、いつか俺はそっちの世界に行ってそっちの世界の姉さん達と会いたいんだ」

 

できるという根拠は無い。それでもあさひはソウヤの世界に行きたいという気持ちがとても強いのだ。

 

「じゃあ、その時は私達も行くよ。そっちの世界の私も見てみたいしね」

 

あさひの意見にあげはも賛同。そして、他の三人も頷く。ソウヤはそれを見て涙を拭くとそれからあさひへと手を差し伸べた。

 

「ありがとう、あさひ。これなら俺も安心して元の世界に帰れるよ」

 

「俺からも助けてくれてありがとう。今度は俺がそっちの世界を救うから」

 

そして、二人が固く手を繋ぎ握手をするとソウヤの姿は光の粒子となっていく。

 

「ソウヤ!」

 

「……?」

 

「またね!」

 

あさひはソウヤに“またいつか会おう。”そういう意味を込めてこの言葉を言った。そして、ソウヤは嬉しそうに笑うとそのまま完全に姿を消した。

 

「ソウヤ……俺はソウヤと共に守ったこの世界を守り続ける。またいつか、君と会えるその日まで」

 

それからあさひ達は話しながら家への帰路につく。そんな中、ソラが思い出したように手を叩く。

 

「あ、そう言えばあげはさんの歓迎会!?」

 

「色々ドタバタしていてそれどころじゃ無かったしね」

 

「それじゃあ帰ってから早速やりましょう」

 

「ホント!?嬉しい!それじゃあ皆でアゲてこ!」

 

それからあさひ達は家に帰ってあげはの歓迎会を行い、盛り上がった。その日の夜、あさひはスマホに保存したある写真を見つめている。それは前日の夜き一緒に撮ったソウヤとの写真だった。

 

「……また会えるよね、ソウヤ」

 

「ふん、ソウヤのことばかり考えているが忘れるなよ?この世界を守るのはお前らの仕事だ。助っ人に助けられているようだといつまで経っても強くなれないぞ」

 

「わかってる。だからこそ、次会う時はもっと強くなるよ。強くなってソウヤ達の力になるから」

 

こうして、あさひ達の激動の二日間は終わりを告げ、また翌日からはいつも通りの日常が始まる。ソウヤと過ごしたこの時間はあさひ達にとって大切なものとなるだろう。

 

その頃、あさひの中のカゲロウは一人ある事を考えていた。

 

「(……力は十分。あとは上手くやれるかどうかだが……これを決行するためには内通者がいるかもな)」

 

そういうカゲロウの目は本気であり、彼の心の中で温めていたある作戦がいよいよ決行される事になる。




今回でコラボ回は完全に終了となります。改めて今回コラボしていただいた振り子メンタルさんには感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございました。これからもこの物語は続いていくので今後もこの小説をよろしくお願いします。また次回もお楽しみに。


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再びの悪夢と裏切りの影

イーヴィルとの戦闘やソウヤとの別れから数日、あさひはいつものように寝ているとある夢を見ていた。

 

「あげは、今日は一緒にお出かけを……」

 

「……」

 

あげはの目は死んでいるようであさひの事を冷めたような顔つきで見つめていた。

 

「あげは?何で……どうしたの?」

 

「あさひ、私はあなたが嫌い」

 

「……え?」

 

あげははそう言うとあさひそっくりな人の腕に抱きついていた。それを見たあさひは絶望したような顔つきに変わる。

 

「今から私の彼氏は……カゲロウよ」

 

そう言ってカゲロウと共にあさひの前から去っていくあげは。それを見たあさひはその事実を拒絶するように嫌な気持ちでいっぱいになる。

 

「待ってあげは!俺が何か嫌な事をしたのなら謝るし、あげはに我儘なんて言わないから!だから、だから……」

 

「あさひのそう言う所が私は嫌い。さようなら、あなたのような存在価値の無い人間は要らないから」

 

あげはがそう言ってカゲロウと共に消えていく。それを見たあさひは絶望に打ちひしがれると叫び、その声で目を覚ます。

 

「はっ!?」

 

体は汗だくで今まで自分が嫌な夢を見ていたという事を示唆していた。あさひがふと胸に手を当てるとカゲロウを呼び出す。

 

「カゲロウ、俺の見た夢……お前が関係してたりする?」

 

あさひがそう言うがカゲロウからの返答は無い。それにあさひは溜息を吐くと再び寝るがまた先程と同じ夢を見て飛び起きてしまう。

 

「これじゃあ眠れない……どうしたら」

 

あさひが困り果てるがそれでも寝ないわけにはいかない。何とか耐えるしか無いと考えて再び眠りにつくと今度は大丈夫だったのか何も起きなかった。

 

翌日に目を覚まして下に降りると既にあげはが起きていてあさひの元にやってきた。

 

「あさひ、おはよー!今日は……」

 

その瞬間、あさひが顔を青ざめさせるとそのままあげはを避けてしまう。それを見たあげはは不思議そうに見ていた。

 

「あさひ、どうしたんだろ?」

 

そこにソラやましろ達も来る。しかし、あさひはソラ達の横をすり抜けると部屋に入って鍵をかけて籠ってしまう。

 

「嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ……このままじゃ……まず間違いなく嫌われる」

 

あさひは完全に混乱してしまっており、誰から何を言われても立ち直れないだろう。するとカゲロウが出てきてあさひの事を見つめた。

 

「あさひ、お前あげはの事を避けて何を考えて……」

 

「……だろ」

 

「は?」

 

「お前が、お前があんな夢を見せたんだろ!」

 

あさひはカゲロウに八つ当たりするように叫ぶ。カゲロウは何のことかわからないのか首を傾げる。

 

「おいおい、俺は何も……」

 

「嘘つけ!勝手に俺の夢をコントロールして……嫌な夢を見せて……お前なんか、お前なんかいなくなれば……」

 

あさひはカゲロウへと叫び続ける。その直後、カゲロウは一瞬無言になると一度溜息を吐いた。

 

「……わかった。そんなにお前が俺の事を必要としないのなら……もうお前とは絶交だ」

 

そう言ってカゲロウはあさひがかけた鍵を開けるとそのまま部屋を出ていってしまう。

 

その直後、ましろとソラ、ツバサが心配そうな顔つきであさひの元にやってきた。

 

「あさひ、どうしたの?いきなりあんな顔になって……」

 

「カゲロウとも何か話していましたよね?カゲロウ、怒った顔をしてましたよ」

 

「あげはさん、凄い落ち込んで……」

 

「ッ……」

 

あさひはあげはが落ち込んでいる事を聞いて更に暗い顔になる。カゲロウについてもやってしまったとは思ったが、今はあげはの事が先だと考えた。

 

「……俺は……」

 

「もしかして、また嫌な夢?」

 

「そうなんですか?」

 

あさひは理由を見抜かれて目を見開く。そして、反応からそれが当たりだと察した三人はあさひの心配をする。

 

「相談して、どんな夢を見たの?」

 

「もしかして、カゲロウと揉めた理由もそこに?」

 

「二人共、あさひ君が困ってますよ。一度落ち着いて……」

 

その瞬間あさひは三人を押し退けるとそのまま家から出て行ってしまう。

 

「あ!ちょっと!」

 

「待ってください!」

 

そこにあげはが戻ってくるとあさひが出て行ったと知ってまた更に落ち込んだ。

 

「……私、何かあさひに嫌な思いさせるような事をしちゃったのかな……」

 

「あげはちゃん、落ち込んでいる所に申し訳ないけど、カゲロウを見なかった?」

 

「カゲロウ……え?見なかったよ」

 

それを聞いて三人は息を呑む。あげはの言ってる事が正しければカゲロウも家出したという事になる。

 

「嘘、カゲロウもなの!?」

 

ひとまず三人はヨヨの元に向かうとあさひがどこにいるのかをミラーパッドで探してもらうように頼みに行く。

 

それから暫くしてから三人が戻ってくると手分けしてあさひの元に向かうと言った。どうやら、あさひが向かったのは家の近くにある裏山ようだ。詳しい場所はヨヨが逐一電話で教えるとの事なので四人バラバラでその場所の付近を探す事になる。その頃、街中ではバッタモンダーが一人ニヤニヤと笑っていた。

 

「ふふっ、僕の作戦は上手く行ったみたいだね。あの時のアンダーグエナジーを有効利用させてもらったよ」

 

バッタモンダーの手にはアンダーグエナジーで生成された水晶があり、そこにはあさひが映っていた。そして、四人が出て行った後にバッタモンダーがその後を追おうとするがその前に一人の客人が姿を現した。

 

「おや、どうやら僕の予想通り来てくれたみたいだね……えっと名前は」

 

「カゲロウだ。バッタモンダーさんよ、お前に話がある」

 

カゲロウが来て想定通りと考えるバッタモンダー。だが話をする前に何かやる事があるとカゲロウへと言い放った。

 

「良いよ、ただし。君は前に僕を相手に戦った。だから話の前に僕に従うと言う証を見せてもらおうか」

 

「わかった……」

 

そう言うとカゲロウはひざまづいてバッタモンダーへと忠誠を誓う言葉を言い放つ。

 

「これまでの無礼は詫びる。その証として……」

 

カゲロウはどこからともなく黒いエナジーに包んで逃げられないようにしたエルを見せた。

 

「え、えるぅ……」

 

「お前の望みのプリンセス・エルだ」

 

「ほーう。確かにプリンセスは僕が喉から手が出るほど欲しい存在。良いだろう。そのプリンセスと引き換えに僕に逆らった事については帳消しにしてやる」

 

バッタモンダーはカゲロウの事を受け入れると早速カゲロウからの話を聞く事にする。

 

「バッタモンダー様は今までプリキュアに何度も苦渋を舐めさせられました。なのでこの俺がこれからそのプリキュアを半壊させます。あなたはそのプリキュア相手にトドメを刺し、プリンセスを絶対に取り返せないようにした状態で安心してアンダーグ帝国へとプリンセスをお連れすれば宜しいかと」

 

「なるほど、確かに今のままプリンセスを送っても奪い返しに来られれば困る。だったら、その方が良いかもね。それで、どうやってプリキュアを半壊させるつもりなんだい?」

 

バッタモンダーはカゲロウからの言葉を聞くとそれで良いとばかりに上機嫌で許可を出し、カゲロウは出ていった。バッタモンダーの顔はしてやったりとばかりで笑みが止まらない。

 

「これでカゲロウもプリキュアも共倒れしてくれれば好都合。僕の任務も達成できるしプリキュアも倒せるしで一石二鳥だ」

 

その頃、一人山の中に逃げたあさひは川の水でパシャパシャと顔を洗いながら気持ちを落ち着かせていた。

 

「はぁ……はぁ……なんで、なんで、あげはがそんな事をするわけがないって、わかってるはずなのに……俺は大馬鹿だ」

 

それから一人で森の中を彷徨っていると何かの寒気がして辺りを警戒する。するとそこにいたのはあげはだった。

 

「あさひ!もう、心配したんだからね!」

 

「あげは……ッ……」

 

あさひはあげはに拒絶される、そう考えて弱腰になる。しかし、勇気を出さなければならないと考えて踏み出そうとした。その瞬間、あげはがあさひの顔をビンタしてしまう。

 

「……え?」

 

「あさひ、あなたとはもう恋人じゃないわ。あなたみたいな弱虫なんて要らない」

 

「あげは?嘘だよな……そんなわけ無いでしょ……俺は」

 

「気安く触らないでよ!」

 

あさひがあげはに触ろうとするとその手を叩いて弾く。それを受けてあさひは完全に顔面が震え、痙攣のようなものを起こし始める。

 

「嫌だ、あげは、嘘だよね、何かの冗談だよね?」

 

「冗談でこんな事は言わないよ。私はあなたが嫌いなの。あとその呼び捨て、気持ち悪い。何?私の事が好きだからって勝手に彼氏面しないで」

 

あさひはその瞬間、その場に項垂れると目の前が真っ暗になる感覚に染まる。するとあげはの姿が一瞬にして変わり、カゲロウになる。項垂れて絶望したあさひはそれに気づくことすらできない。その直後、カゲロウはあさひの中に入り込むと主導権を乗っ取ってペンとスカイトーンを取り上げる。そして、絶望しきったあさひの意志を前のように心の奥底に沈めるとそのまま行動を開始した。

 

そして、ソラ、ましろ、ツバサ、あげはの四人はあさひの事を必死に探していた。

 

「あさひ!居たら返事をして!」

 

「私は怒ってなんかいないよ!だから怖がらないで!」

 

「あさひ君!」

 

「どこですか!」

 

するとあさひの姿をしたカゲロウがどこからともなくゆっくり歩いてくると四人の前に姿を現した。

 

「あさひ!良かった、無事で……」

 

その直後、あさひは黒い衝撃波を放つとあげは以外の三人を吹き飛ばす。

 

「うわっ!?」

 

「あ……さ……ひ?」

 

「いや、違います!この力……カゲロウです!」

 

ソラが叫ぶとカゲロウはニヤニヤと笑い、正解だとばかりに指を鳴らす。

 

「よくわかったなぁ。……そんなにまた俺と向き合いたったか?」

 

「くっ……まさか、また弱ったあさひを閉じ込めて……」

 

「正解。いやぁ、ここまで上手くいくとは思ってなかったよ」

 

「なっ!?もしかして、今までずっと味方のフリをしてきたんですか!?」

 

ツバサの言葉にカゲロウは高笑いを上げる。そしてそれはツバサの仮説が正しい事を示唆していた。

 

「そうだよ。まさかお前らがこの俺を信じるとはな、どれだけお人好しなんだよ。お前らが馬鹿だったおかげであさひを乗っ取れた。礼を言わせてもらう」

 

「あさひを……返して!私の大切な彼氏を……」

 

「あ?だったら俺の彼女になるか?気の強い女は嫌いじゃ無い」

 

「ふざけた事を言わないで!誰があんたの彼女になんか…」

 

「はぁ、なら仕方ないな。お前らを纏めて始末させてもらう」

 

カゲロウはそう言うとあさひから奪い取ったミラージュペンとスカイトーンを黒く染めると変身する。

 

「ダークミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!トワイライト!」

 

その瞬間、カゲロウの姿がトワイライトに変わってそのまま名乗りを行う。

 

「宵にひろがる絶望の闇!キュアトワイライト!」

 

それを見た四人は頷くとペンとスカイトーンを構えると四人も対抗して変身する。

 

「「「「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!」」」」

 

「スカイ!」

 

「プリズム!」

 

「ウィング!」

 

「バタフライ!」

 

「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」

 

「ふわりひろがる優しい光!キュアプリズム!」

 

「天高くひろがる勇気!キュアウィング!」

 

「アゲてひろがるワンダホー!キュアバタフライ!」

 

「「「「レディ……ゴー!ひろがるスカイ!プリキュア!」」」」

 

四人がプリキュアとなるとその瞬間、轟音と共に四人の背後からチェーンソーを模したランボーグが出現。四人を見下ろした。

 

「ランボーグ!」

 

「ランボーグ!?って事は……」

 

「おいおい、今来るとは少し早すぎないか?バッタモンダー様」

 

そこにバッタモンダーがランボーグを従えてやってくるとトワイライトへと言い放つ。

 

「別に良いだろう?手助けに来てやったのさ」

 

「ふん、好きにしろ。ただし、キュアバタフライは俺がやる」

 

「良いよ。それが元々の計画だしね」

 

トワイライトはバタフライを指名すると一対一の勝負を仕掛けるのであった。




また次回もお楽しみに。


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カゲロウの逆襲と燃える朝日

あさひを乗っ取り、バッタモンダーと手を組んだカゲロウ。彼はバッタモンダーと示し合わせてプリキュア達を強襲する。そして、カゲロウが変身したトワイライトはキュアバタフライを相手として指名すると一騎打ちを仕掛けに行く。

 

「はあっ!」

 

「うらっ!」

 

トワイライトとバタフライは正面からぶつかり、拳をぶつける。そして、それと同時にランボーグと三人も戦いを始めた。

 

「ランボーグ!」

 

「「「はあっ!」」」

 

三人がランボーグに攻撃を仕掛けようとしたその時、バッタモンダーが三人へと声をかけた。

 

「良いのかなぁ、僕に逆らって。プリンセスがどうなっても知らないよ?」

 

そう言って闇のエネルギーボールに囚われたエルを見せた。その瞬間、三人は思わず攻撃の手を止めてしまう。そのタイミングでランボーグが頭に付いているチェーンソーの刃を回転させて三人を薙ぎ払う。

 

「くっ!?」

 

「エルちゃん!!」

 

「どうして……」

 

「カゲロウの奴がお前達が出かけて隙だらけになったプリンセスを攫ったんだよ」

 

エルは今にも泣き出しそうな顔をしており、三人は悔しそうに顔を歪める。そして、バッタモンダーはそれを見て高笑いするとランボーグに攻撃を指示する。

 

「エルちゃんが捕まってるから下手に攻撃できない……」

 

「このままじゃ……」

 

「どうにかして助けないと……」

 

三人がその方法を考えている間にもランボーグの攻撃は止まらない。チェーンソー部分を振り回して三人を斬りつける。

 

「「「うわぁああ!!」」」

 

「皆!」

 

「余所見を……するな!」

 

バタフライが三人を気に掛けた瞬間、トワイライトがエネルギーの短剣を生成するとバタフライの腕を斬りつける。

 

「あぐっ!?」

 

その斬りつけられた部分に闇のエネルギーが流し込まれるとバタフライの腕が黒くなり始めた。

 

「何、これ!?」

 

「この前吸収したアンダーグエナジーをお前の体に流し込んだ。お前ら人間は巨大なアンダーグエナジーを取り込むと体が蝕まれるらしいからな。あんまり油断しているとスカイランドの王様みたいになるぞ」

 

その証拠にバタフライは斬りつけられた左腕の動きが鈍くなると共に激しい痛みに襲われる。

 

「くうぅっ……」

 

バタフライはその痛みを歯を食いしばって抑え込み、何とかトワイライトに立ち向かう。しかし、片腕がやられた影響で先程よりもダメージを負う頻度が高くなり、少しずつ追い詰められていった。

 

「ほらほらほら!勝ってあさひを取り戻してみろよ!」

 

バタフライはトワイライトからの斬撃をできるだけ躱すが、それでも躱しきれずに少しずつ体に切り傷が増えてアンダーグエナジーに蝕まれていく。

 

「うぐっ……」

 

バタフライはトワイライトを見据えるがその体が一瞬揺らぎ、息切れも起こしている。

 

「こうなったら……ひろがる!バタフライプレス!」

 

バタフライは跳びあがると浄化技を発動し、真上からトワイライトを押し潰そうとする。しかし、トワイライトはこれを片手で受け止めるとそのままアンダーグエナジーを流し込み、蝶型の盾は粉々に砕けると消滅。着地したバタフライの首根っこを掴むとそのまま締め上げた。

 

「あ………かぁ……」

 

その時、カゲロウの中に眠っているあさひが目を覚ますとカゲロウの中から外の状況を見た。そこに映っていたのはトワイライトに首を絞められて苦しそうにもがくバタフライだった。

 

「やめろカゲロウ!あげはに手を出すな!」

 

「……あさひか。ふん、それで俺が止めるとでも?」

 

それからトワイライトが手を離すとバタフライはそのまま地面に落下し、首を絞められた影響でむせる。

 

「ゲホッ、ゴホッ……」

 

「オラよ」

 

その直後、トワイライトがバタフライの背中を何度も踏みつける。

 

「あぐっ、うぐっ……うぅ……」

 

バタフライは苦しそうにする中、あさひはカゲロウに止めるように懇願する。

 

「あげは!あげは!!頼む、これ以上あげはに、俺の彼女に手を出さないでくれ!」

 

「だったら止めてみろよ。もっとも、そこに居るうちはどうにもならないがな」

 

トワイライトはあさひを挑発して更に我を失わせる。そしてそれは負の感情が高まる事でカゲロウは更に強くなっていく。

 

「うぅ……くぅ……」

 

バタフライが必死に立ち上がる中、トワイライトは更にバタフライの体を何度も斬りつけてアンダーグエナジーに蝕ませていく。

 

「あうっ……くぅう……」

 

バタフライは必死に体の中で暴れ回るアンダーグエナジーを浄化しようとするが、それも少しずつ不可能になっていき、バタフライの体は機能不全を起こし始める。

 

「…お願い、あさひを……返して……私の……大切な人を」

 

バタフライがそう言うものの、トワイライトが返すわけがない。そのままバタフライの胸ぐらを掴んで持ち上げると無数の斬撃波でバタフライの体を切り刻む。

 

「ぅああああ!!」

 

バタフライは意識が朦朧としてきており、もう限界ギリギリだった。それを見た三人が助けに行こうとするが、ランボーグに阻まれてしまう。

 

「ランボーグ、プリキュアを根絶やしにしろ!」

 

「ランボーグ!」

 

ランボーグはプリキュアからの反撃が無いことをいい事に三人を徹底的に痛めつけていく。三人はエルを人質に取られているせいでまともな反撃すらできない。

 

そのまま三人共吹き飛ばされると木に叩きつけられて変身が解けてしまう。

 

「あ……ぐうぅ……」

 

「プ、プリンセス……」

 

「卑怯よ……」

 

「なんとでも言え。まぁでも恨むならそっちのカゲロウを信じた自分を恨むんだなぁ!」

 

バッタモンダーが三人を煽りまくる中、ランボーグが三人にトドメを刺そうとする。

 

「くっ!」

 

その瞬間、三人の周囲に何枚もの蝶の盾が現れてそれを防ぐ。バタフライがトワイライトと戦っている自分よりも三人を守った方が良いと判断して防御壁を召喚したのだ。

 

「そっちを気にかける余裕があるとはな!」

 

その直後、トワイライトからのパンチがバタフライの腹に炸裂するとバタフライは唾を嘔吐して変身も解けてしまう。

 

「ゴホッ、ゴホッ……」

 

そして、身体中を侵食してきたアンダーグエナジーがここぞとばかりにプリキュアではなくなったあげはを蝕み、黒いオーラが全身に回っていく。まるで、毒のように……。

 

「カゲロウ……お願い、あさひを……あさひを」

 

あげははアンダーグエナジーに蝕まれる自分の事よりも大切な彼氏を想ってこの言葉をかける。その瞬間、トワイライトの中で状況を見ていたあさひが暴れ始めた。

 

「ゔぁああああああ!!」

 

そして、それは前にトワイライトが味わった頭の痛みに直結。しかし今回はトワイライトも対処法を知っていた。

 

「分離だ!」

 

そう言うとトワイライトからあさひが分離し、あさひが倒れ込む。

 

「はぁ……はぁ……」

 

「あげは……あげは!あげは!しっかりしてくれ!あげは!」

 

あさひはアンダーグエナジーに体を蝕まれたあげはの元に駆け寄るとその体を抱いて揺さぶる。あげはは薄らと目を開けてあさひを見ると安心したように笑顔になった。

 

「良かった……あさひ」

 

「全然良くなんか無い!あげは、急いで治療を受けないと……でもどうすれば……」

 

あさひが慌てる中、あげはは自分の事は良いとばかりに首を横に振る。

 

「……私の事は放って良いから。それよりもあなたにはやる事があるでしょ」

 

「でも!」

 

状況は絶望的。プリキュア達は敗北し、あさひ自身もカゲロウにペンを取られているせいでプリキュアに変身できない。仮にペンを出せてもエルが捕まっているのでスカイトーンも出せず、このままでは確実にやられてしまう。

 

「あさひ……私はあさひの彼女になれて良かった……だから、そんなに悲しまないで」

 

その言葉を言った直後、あげはは一筋の涙を流してから目を閉じるとそのままアンダーグエナジーに侵食されて呪いがかかった状態になってしまう。

 

「あげはぁああ!!」

 

あさひの目は完全に怒りに染まっており、トワイライトとバッタモンダーを睨んでいた。

 

「お前らを……潰す!」

 

「ふん、笑わせるなよ。プリキュアになれないお前が」

 

「ホント、馬鹿だよねぇ。悪夢の事をカゲロウのせいにしてそれが原因で仲間割れするとは」

 

「……どういう意味ですか!」

 

「カゲロウが前に取り込んだアンダーグエナジー。アレを僕が遠隔操作してそっちの奴に悪夢を見させたんだ。それを君はカゲロウのせいにして、その結果がこの始末さ!」

 

あさひはそれを聞くと更に自分への怒りで地面を強く殴った。するとランボーグはソラ、ましろ、ツバサの三人を前と同じようにアンダーグエナジーの檻に閉じ込めてしまう。

 

「皆!やめろ!俺の大切な人を……」

 

「だったらどうする?お前しか救える人はいないぞ?やってみろよ」

 

トワイライトがあさひを挑発する中、あさひはそれを聞いて更に怒りを高めようとする。

 

「あさひ!」

 

そんな中、ましろがあさひの名を叫ぶとあさひは怒りを高めるのを止めた。

 

「あさひ、私も、皆もあさひを信じてる!勿論あげはちゃんもそう!だから、怒りに飲まれたらダメ!」

 

「思い出してください!あさひ君が初めて変身したあの時の気持ちを!」

 

「あさひ君のその力は大切な人を守るための物ですよね!」

 

三人からの声援にあさひはハッとすると怒りに身を任せるのを止めて深呼吸した。

 

「ソラ、姉さん、ツバサ……そして、あげは。ごめんなさい……俺は沢山の事を見失ってた。カゲロウ、お前にもちゃんと謝らないといけない」

 

「……今更許すとでも?」

 

「……勿論、許さないのならそれで良い。でも、だからって俺の大切な人達を巻き込んでの復讐を……俺は許さない!」

 

するとあさひの胸から赤い光と共にミラージュペンが出現。あさひがそれを手に取るとバッタモンダーが驚きの顔になっていた。

 

「馬鹿な、あの力は一人につき一本しか出せないんじゃ……」

 

「そうだよ。でも、今まで俺が使っていたのはカゲロウが発現した物を借りていただけ……今度は正真正銘俺自身のミラージュペンだ!」

 

だが、スカイトーンが無ければ変身はできない。エルが捕まっている以上、スカイトーンを生み出すなど不可能だとバッタモンダーはそう考えていた。

 

「俺の魂の炎、心火はもう止まらない!」

 

その瞬間、あさひは自らの力でスカイトーンを生成。それを手にするとプリキュアに変身する。

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!サンライズ!」

 

あさひの姿がサンライズへと変化するとプリキュアへの変身を完了する。

 

「夜明けにひろがる眩い朝日!キュアサンライズ!」

 

こうして、今までは絶対にあり得なかったサンライズとトワイライトが向かい合う構図が完成した。

 

「ほう、お前もようやく自分の力でプリキュアになったか……面白い。バッタモンダー様、サンライズは俺の手で始末してもよろしいですか?」

 

「ああ、さっさとそいつを潰しやがれ!」

 

もはや取り繕う事すらしないバッタモンダーの指示を受けてトワイライトは手に短剣を召喚する。

 

「カゲロウ……お前は俺の手で倒す……それが俺にできる償いだ!」

 

「来いよ、お前と俺。光と影、どっちが上か決めようか」

 

「心火を燃やして……ぶっ潰す!」

 

サンライズはそう宣言すると手に炎の剣を召喚し、トワイライトとの戦闘を開始するのであった。




また次回もお楽しみに。


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消えゆく影と聖なる光

ソラ、ましろ、ツバサの三人が捕まり、あげはが呪いにかかった状態になって絶体絶命のプリキュア達。そんな中、あさひが自分の力でサンライズに再度覚醒するとカゲロウが変身したトワイライトに向き合う。

 

「行くぞ、カゲロウ!」

 

「来いよ、あさひ!」

 

二人は走っていくと剣と短剣をぶつけ合わせる。それを見たバッタモンダーはニヤニヤしながらそれを見ていた。サンライズとトワイライトの実力はほぼ同じ。こうなれば、バッタモンダーは戦わずして二人の戦力を削げると考えていたのだ。

 

「はあっ!」

 

「うらあっ!」

 

二人の剣はぶつかり合う度に火花を散らす。それからサンライズの攻撃が決まれば今度はトワイライトからの攻撃が決まる。そんな一進一退の攻防が続く。

 

「攻撃を受けて不利になるのはお前の方だ。攻撃は回避するのをお勧めするぜ」

 

「それはどうかな?」

 

トワイライトからの攻撃がサンライズに命中するが、アンダーグエナジーによる蝕み攻撃がサンライズには効いていなかった。

 

「悪いけど、アンダーグエナジーを貰うわけにはいかないからな。キラキラエナジーによるバリアを張らせてもらったぞ」

 

サンライズは先程バタフライがトワイライトからアンダーグエナジーの攻撃を受けたのを見て対策を立てる必要があると思い至り、バリアで対応する事にしたのだ。

 

「ふん、そのくらいで俺をどうにかできるとでも?」

 

二人は少しずつ体に傷が入っていき、ダメージを負っていく。そしてそれはバッタモンダーの狙い通りの展開であった。

 

「ふふっ、やっぱりアイツらは馬鹿だな。僕の掌の上で転がされている事がわかってない」

 

二人は剣を捨てると今度は素手による殴り合いを始めた。それはまるで戦いと言うよりは子供同士の喧嘩であり、どちらかがギブアップするまで続くデスゲームのようだ。

 

「やれやれ!さっさと二人共くたばっちまぇ!」

 

それを見たソラとツバサは二人を止めさせようと叫ぼうとするが、ましろはそんな二人を見て首を横に振る。二人の邪魔をしてはならない。そう考えたのだ。

 

「来いよあさひ!もっともっとやり合おうぜ!」

 

「望む所だ……お前を倒して俺は先に進む!」

 

二人はボロボロになりながらも殴り合いを進めていく。だが、少しずつ互角だった戦況はサンライズが有利になり始めた。

 

「サンライズが押してます!」

 

「頑張れ!!」

 

「はあっ!うおらっ!」

 

すると少しずつトワイライトからの反撃が弱くなり始め、サンライズは違和感を感じ始める。

 

「カゲロウ……まさかお前」

 

「人の心配している場合かよ!もっと来い、あさひ!」

 

そう言ってトワイライトは攻撃を仕掛けてくる。それを見たサンライズはドリアーンに教わったカウンターで逆に反撃。顔面に命中した影響でトワイライトを吹き飛ばされると大きなダメージを受けていた。

 

「カゲロウ、お前……弱くなってるのか?」

 

「……ああそうだよ!誰かさんから優しさを貰ったせいでなぁ!」

 

トワイライトはそう吐き捨てる。トワイライトことカゲロウは最初の方こそ残忍で目的のためなら手段を選ばなかった。だが、日が経つごとにあさひの影響で優しさを教わり、何だかんだでプリキュア達へと力を貸しているうちに心の面で弱くなっていたのだ。

 

「そしてお前は俺から非情さを教わったおかげで強くなった。この俺と互角にやり合えるぐらいにはな!」

 

それから再び二人のプリキュアはまた殴り合いを続ける。もう今はお互い息切れを起こし、相手からの攻撃を防ぐ余力も無く、ただただ殴り合う。

 

「……ほんと、何でお前なんかと一緒に居たんだろうな。一人でいたら、今頃お前を消せたかもしれないのによ……」

 

「それは、お前が皆を大切に想うようになったからだ……仲間意識ができて、この居場所から離れたく無いと考えるようになったからだ!」

 

そうして、サンライズはトワイライトにアッパーを喰らわせるとトワイライトは吹っ飛ばされて叩きつけられる。

 

「まだだぁ……まだまだ俺は負けてなんかいない!……来いよ、あさひ!」

 

トワイライトはまるで痩せ我慢をしているただの人間のようになっていた。そして、トワイライトがパンチを繰り出す瞬間、足がもつれて倒れ込む。サンライズは咄嗟にそれを支えようとした。

 

「要らねえよ!……お前なんかの手助けなんて借りるかよ……それにお前、もっと非情になりやがれ!」

 

それを聞いたサンライズはトワイライトを離すと一度倒れさせてからそのまま無理矢理立たせた。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

「うぁあああああ!」

 

サンライズは覚悟を決めたようにトワイライトへと炎を纏わせた拳を繰り出して叩き込む。

 

「ぐはあっ!」

 

その瞬間、トワイライトは崩れ落ちるともう満身創痍になっていた。

 

「や、やるしか無いなぁ……俺の目的のために!!」

 

トワイライトが立つとまたサンライズに攻撃しようとする。だが、サンライズはそれを跳ね除けるとそのままトワイライトへと左ストレートを繰り出すとトワイライトはそれをモロに喰らってしまう。

 

もうトワイライトに戦うだけの力は残されていなかった。

 

「カゲロウ……俺は」

 

「トドメを……刺せよ……さっさとしやがれ!」

 

トワイライトからの叫びにサンライズは叫んで返すと浄化技を発動する。

 

「うぁあああああ!ひろがる!サンライズカリバー!」

 

サンライズからの炎の斬撃の奔流。それはトワイライトを飲み込むと彼の体を焼き尽くし、変身解除させるととうとう彼を追い詰めた。すると、カゲロウの体から黒い羽が舞い散る中彼の体は少しずつ消滅を始めていた。

 

「カゲロウ!?どうして……」

 

「俺はな……お前の望みを叶えるためにずっと頑張ってきたんだ」

 

「……まさか、俺がプリキュアになれたのも、強くなれたのも……全部……」

 

「そうだ。お前はプリキュアになる前に力を欲した。だからこそ俺はアイツらと敵対してお前がプリキュアになれるようにお膳立てしてやった」

 

「今までずっと、俺はお前に救われてきていたのか……なのに俺はお前の事を要らないだなんて……ごめんよ、カゲロウ」

 

するとカゲロウは地面を這いつくばりながらサンライズの足元に来ると手にエネルギーを召喚した。

 

「……馬鹿野郎、闇の自分にそれを言う必要は無い。むしろ、お前を困らせてきたのは俺の方なんだ」

 

「違う!お前は不必要なんかじゃない……だから頼むカゲロウ、これからも俺の事を……」

 

だが、もう既にカゲロウの容体は手遅れな場面にまで来ていた。体から消えていく黒い羽はとめどなく溢れていき、カゲロウの体は薄れていく。

 

「この力はお前への最後のプレゼントだ……これがあれば、お前はいつだって俺の力を使い、進化を遂げる事ができる」

 

そう言われたサンライズはカゲロウからエネルギーを受け取るとそれは体の中に吸い込まれていく。

 

「何でだよ……俺のために頑張っていたのならもっと早く言えよ………」

 

サンライズの目からは涙が溢れ出てきており、カゲロウが消えるのを拒絶するようだった。

 

「頼むよ、カゲロウ、お前は俺に必要なんだ……だから消えないでくれ!!」

 

サンライズからの懇願にカゲロウは薄ら笑うとそれをするのはもう無理であると首を横に振った。

 

「……カゲロウ、カゲロウ……」

 

「ああ、最後にこれだけは言っておいてやる……あげはは、お前の事を心配していたぞ。……アイツは良い女だ。ちゃんとアイツと仲良くやれよ……もしまた勘違いであの女の事を遠ざけたら許さないからな」

 

それからカゲロウはもう一つ光のエネルギー弾をあげはへと飛ばすと彼女を蝕んでいたアンダーグエナジーが全て消滅。彼女は呪いから救われる事になる。そして、この二つの行為によってカゲロウの中のエネルギーが全て使い尽くされてしまう。

 

「あさひ……あばよ」

 

そう言ってカゲロウは完全に黒い羽になって消滅。辺りには黒い羽が飛び散っていく。

 

「ゔぁああああああ!!」

 

あさひは叫ぶとバッタモンダーはそれを見て舌打ちをした上に吐き捨てた。

 

「チッ、あの役立たずが。結局コイツが残ったままじゃねーかよ」

 

「……今なんて言った?」

 

あさひの声は静かだがドスが効いており、カゲロウの消滅が影響してあさひの目は怒りでいっぱいだった。

 

「……お前が、カゲロウの事を何も知らないお前が、アイツを……馬鹿にするなぁあ!!」

 

その瞬間、サンライズの胸から赤と白のスカイトーンが出現。その瞬間、周りに飛び散っていた黒い羽がスカイトーンに集まっていく。そしてサンライズがそれを手にするとそのままスカイミラージュを構える。

 

「プリキュア!ホーリーコネクト!ひろがるチェンジ!ホーリーサンライズ!」

 

するとスカイミラージュにHOLYの文字が浮かび上がる。それからサンライズの前に真っ白な姿をした鳥が出現。それが翼を広げて覆い被さると周囲に白の羽が飛び散っていく。そしてそれがサンライズの服の上に被さっていくと服が白を基調としつつ所々に赤の差し色やラインが入った物に変化。マントの上に白い翼が畳まれたような装飾が付与され、頭には白い鳥の頭のような飾りも付く。そして、髪の毛が赤から白に染まり、ホーリーキュアサンライズへと変身完了するのであった。

 

「夜明けにひろがる聖なる朝日!ホーリーキュアサンライズ!」

 

こうして、キュアサンライズの新たなるスタイルが誕生。その名もホーリーキュアサンライズ。カゲロウの消滅を乗り越えてあさひがまた新たに手にしたサンライズの強化変身だ。

 

「ば、馬鹿な……こんな事が……あり得ない!」

 

「凄い……」

 

「私と同じ、真っ白な姿……」

 

「まるで闇が消えて光の力だけになったみたいです」

 

するとアンダーグエナジーが消えて目を覚ましたあげはがサンライズを見ると目を見開いた。

 

「あれが、キュアサンライズなの?」

 

「ランボーグ、アイツをやれ!」

 

バッタモンダーが指示するとランボーグはその命令に従って頭の刃の部分を回転させつつそれをエネルギー波として発射する。するとサンライズの背中についている翼の装飾が展開し、巨大な翼となるとそれが前に出てきて攻撃を防御、防いでしまう。

 

「何!?」

 

「はあっ!」

 

それからサンライズが手に白い炎で作った剣を取り出すとそのままランボーグを斬り裂く。その一撃の重さを前にランボーグはなす術なく吹き飛ばされる。

 

「ランボーグ!?」

 

「嘘だろ!?」

 

「バッタモンダー……お前に慈悲は……与えない!」

 

進化したサンライズはバッタモンダーを見据えるとその周囲に白い羽を舞い散らせながら彼を睨みつけるのだった。




また次回もお楽しみに。


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カゲロウの遺したもの

カゲロウが消滅し、あさひことサンライズは更なる進化を遂げた。その名もホーリーキュアサンライズ。その白い輝きはまるで自らの闇を克服したかのようだった。

 

「バッタモンダー……お前に慈悲は……与えない!」

 

「チィッ!だがこっちにプリンセスが人質としている事を忘れたのか?ランボーグ、やれ!」

 

「ランボーグ!」

 

ランボーグがサンライズへと刃の部分を回転させつつ攻撃を仕掛ける。しかしサンライズはこれを喰らう直前、白い羽へと分解。攻撃を回避してしまう。そしてその直後、バッタモンダーの前に移動するとバッタモンダーへと蹴りを叩き込み、その衝撃でエルを手放させた。

 

「がはっ!」

 

「エル、大丈夫?」

 

「えるぅ〜!」

 

サンライズは助け出したエルをあげはに預けるとエルが救出された事でもう手加減する必要は無くなったために本気で戦う事になる。

 

「お前は……俺を怒らせた!」

 

サンライズが手を翳すと周囲に白い炎でできた炎弾が生成。ランボーグへと命中させる。その瞬間、ランボーグに白い炎が燃え盛り、ランボーグは苦しむ事になった。

 

「ランボーグ!?」

 

その直後、サンライズは手にしている白い剣を地面に突き刺すと地面から白い炎が噴き上がる。そして、それはランボーグを包囲すると逃げ道を消失させた。

 

その直後、サンライズがその中にワープすると真上から蹴りを叩き込み、ダメージを与える。

 

「はぁあああああ!」

 

それからサンライズが周囲に白いエネルギーの剣を召喚するとそのまま剣が降り注ぐ。ランボーグはそれに滅多撃ちにされるとそのまま弱り、とうとう追い詰められた様子だった。

 

「お前らはカゲロウを利用して俺の大切な物を踏み躙った!許さない……許すわけにはいかない!」

 

サンライズが何度も剣で斬りつける。まるで怒りのままに戦う戦士のように……。

 

「サンライズ……」

 

「カゲロウがいなくなって悲しい気持ちを怒りに変えて……」

 

「でも、前みたいな激しい怒りとは違って今回は静かな怒りですね」

 

「これで終わりだ!」

 

サンライズがランボーグから離れると白い剣を光輝かせると白の炎を宿し、そのまま炎の斬撃波として相手へと繰り出すサンライズカリバーの強化技……。

 

「ひろがる!ホーリーカリバー!」

 

サンライズから繰り出された炎と光が合わさった必殺の一撃はランボーグへと飛んでいくとその体を両断。そして、浄化していく。

 

「スミキッタァ〜」

 

「ミラーパッド……オッケー」

 

「クッソォ!今度こそは勝ってやるからな!バッタモンモン!」

 

サンライズはキラキラエナジーもちゃんと回収したが、それでもランボーグとバッタモンダーが消えた事で自らの悲しい気持ちの行き場がなくなってしまう。

 

「ゔぁああああああ!!」

 

サンライズが変身を解くとそのまま崩れ落ちて泣き、悔しさのあまり地面を殴る。それを他の面々はいたたまれない顔つきで見ていた。それから五人は家に帰るとあさひは完全に塞ぎ込んでしまい、部屋に籠ると出てこなくなってしまう。

 

そして、他の四人はそんなあさひを気にかけていた。

 

「あさひ、あんなに辛そうにしていたのに……」

 

「私達には何もしてあげられませんでした」

 

「それどころか、足を引っ張ってしまって……」

 

そんな中、あげはは他の三人よりももっと落ち込んでいた。それを見て違和感を感じたましろはあげはへと聞く。

 

「あげはちゃん?どうしたの?」

 

するとあげはの目から涙が溢れており、その場に崩れ落ちると小声であさひへの謝罪の言葉を口にしていた。

 

「あげはさん!?どうしてそんなに謝ってるんですか!?」

 

「あげはちゃん、何か知ってるの?」

 

それから三人にあげはは問い詰められると観念したようにある事を話す事にした。

 

「実はね……」

 

話はあさひが家を出て行ってましろ達がヨヨの元に行った直後にまで遡る。

 

(回想)

 

ましろ達がヨヨの元に行ったその直後、あげはの影からカゲロウが出てきた。

 

「これで良いんだよね?カゲロウ……」

 

「ああ、すまないな」

 

「それで話って?」

 

「………俺は今からバッタモンダーと接触する」

 

「え?」

 

「……多分あさひに悪夢を見せたのはバッタモンダーだ」

 

それを聞いたあげはは怒りで拳を握りしめた。また大切な人に手を出してきたからである。

 

「バッタモンダー……また私の大切な人を……」

 

「落ち着け。俺に考えがある」

 

それからカゲロウがその考えを言うとあげはに猛反対を受けた。

 

「そんな!それじゃあカゲロウは……カゲロウはどうなるの?」

 

「……おそらくは消えてなくなる」

 

カゲロウが話した作戦とは、敢えてバッタモンダーの作戦に乗ったフリをしてエルを連れ去って献上し、彼を油断させる。そして、自身はあげはを追い詰めていく。するとあさひは出ようとして暴れ出すため、そのタイミングで分離して自分を倒させる。こうする事であさひを更なる段階へと成長させるという案だ。

 

「ダメよ!危険すぎるわ。それにもし上手く行っても……あなたは消えてなくなるのよ!?怖く無いの?」

 

「……俺は今までずっとあさひのためを想って行動してきた。あさひが強くなるための事なら何だってする。……例えそれが自分の身を滅ぼす事になろうとな」

 

それがカゲロウなりの覚悟だった。カゲロウはわかっていた。この作戦を実行すればほぼ確実に自分は消えてしまう……と。カゲロウの目をあげはが見るとそれは本気の目であった。

 

「……わかった。でも、一つだけ約束して」

 

「何だ?」

 

「あさひにはカゲロウが必要なの。だから……絶対に消えないって約束して」

 

あげはの言葉にカゲロウは即答して答えを返す事になる。

 

「……善処する」

 

その直後、カゲロウは黒いエネルギーになるとエルの元に向い、それからバッタモンダーを騙しに行った。

 

(現在)

 

「そんな……じゃあ、あげはさんはずっと知ってたんですか?」

 

「カゲロウが消えるって……それに、もしかしてカゲロウがあげはちゃんを指名していたのも……」

 

「うん、私なら上手くやられてくれるって信じてたみたい」

 

あげははそう言ってはいるが、罪悪感でいっぱいになっていた。何しろ自分はカゲロウが消えてしまうことを知っていながらもカゲロウの作戦を後押ししていた事になるからだ。

 

「あさひ君がこの場にいたら……」

 

「多分私の事を嫌いになると思う……だから、私にはもうあさひの隣にいる資格なんてない」

 

あげはがそう悲しそうに話しているとましろは首を横に振った。そしてそれは他の二人も同様である。

 

「……知っていたからこそあげはさんはあさひ君の隣にいてください」

 

「でも……」

 

「今、あさひ君に寄り添えられるのはあげはさんだけなんですよ」

 

「そうだよ。あげはちゃんもあさひの側から離れたら……一体誰が今のあさひの心の傷を癒せるの?」

 

三人はあげはがあさひの隣から離れないように後押しする。事実、今のあさひは信頼できる人を一人失った状態なのだ。そんな時に誰も側にいなければあさひの心はもっと壊れてしまうだろう。

 

「……私はあさひの隣に居てもいいのかな……カゲロウに協力していたのに」

 

三人は不安そうにするあげはを励まし、あさひに寄り添うように促す。それからあげはは頷くとあさひの元に向かうのであった。

 

その少し前、部屋に籠ったあさひは部屋のベッドの上で仰向けになり天井をボーッと見上げていた。

 

「俺は……無力だ。バッタモンダーの作戦にまんまと引っかかって……カゲロウと敵対して……その結果、カゲロウがいなくなって……」

 

あさひは自分を責め続けていた。ふと起き上がって机の上を見るとそこには書き置きが置いてあり、あさひはそれを見る。

 

「これは……」

 

そこにあったのはカゲロウからの最後の言葉だった。

 

“この手紙を見てるって事は俺はもうお前の前から消えているんだろうな。……あさひ、俺がいなくて寂しいか?……もう二度と俺の事を要らないなんて言えないだろ”

 

「……言えるかよ……こんな事にして……無責任すぎるよ」

 

“お前はもう俺がいなくても強くなれる。頼れる仲間がいるからな”

 

「嫌だよ、カゲロウがいないと俺は……」

 

“いつまでも俺が手を貸してると思うなよ?俺は元々生まれるはずのない存在だ。だから俺が居なくなった今、これからはお前自身の手で未来を切り開くんだ。今までありがとよ……あさひ”

 

それを読み終えたあさひの目には大粒の涙が溢れており、カゲロウとの別れを惜しむ。このメッセージはカゲロウに頼るばかりではなく自分の力で未来を作れという彼からの言伝であった。

 

「カゲロウ……俺は、お前とずっと一緒だと思ってた。今回の喧嘩だって仲直りできると思ってたのに……こんな形でお別れだなんて嫌だよ……」

 

あさひは嘆くがそれでカゲロウが戻ってくるわけがない。もうカゲロウという存在はこの世界にはいないのだから……。

 

そこに扉がノックされてあげはが入ってきた。

 

「あげは……今は来ないでって言わなかったっけ?」

 

「……」

 

「今の俺の顔を……あげはに見せたくない……」

 

その瞬間、あげはが後ろからそっとあさひを抱く。あさひはいきなりの行動に驚くがすぐに言葉を返した。

 

「あげは、今は……」

 

「無理しないで欲しい。カゲロウがいなくなって、寂しいのはあさひだけじゃない。私だってそう。だから……」

 

「無理なんてしてない……」

 

あげはから見てあさひの今の様子は無理している以外あり得なかった。何とか平静を装ってあげはと普通に接しようとしているのが見てとれたからだ。

 

「もっと私を、皆を頼ってよ……私達で良いのならあさひの力に……」

 

「放っておいてって言ってるでしょ!……カゲロウは俺のせいで死んだんだ。トドメを刺したのは俺なんだ。だから、だから……」

 

あさひの声は少しずつ嗚咽混じりの物に変わっていき、辛い気持ちを一人で抱え込もうとする。それをあげはは許さない。

 

「私はあさひの彼女……あさひの背負ってる重荷を一緒に背負いたいの……すぐに立ち直らなくても良い。ゆっくりで良い。またあさひが笑顔になるまで私がずっと寄り添うから」

 

それを聞いたあさひは涙を流し続ける。そして、あげははそんなあさひの頭を優しく撫でるとあさひが落ち着くまでずっと側にいるのであった。

 

カゲロウ、それはあさひの中に潜んでいた闇のあさひ。彼の消滅は果たしてあさひにとって良い事なのか悪い事なのか……それはまだ誰にも知り得ない事である。




また次回もお楽しみに


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落ち込むあさひとあげはの頑張り

カゲロウを失った翌日。この日はあげはが張り切って豪華な朝食を作っていた。それを見たソラ達は歓喜の声を上げる。

 

「なんて豪華な朝食なんですか!!」

 

「あげはちゃんが作ったの?」

 

「そうだよ!美味しい物を食べて、朝から気分をアゲてこ!」

 

しかし、制服を着て学校に行く準備万端のソラとましろなのだが、あさひは一緒ではなかった。

 

「あれ?そういえばあさひは?学校なんでしょ?」

 

「それが……どうしても行きたくないって……」

 

「カゲロウがいなくなって落ち込んだままで……」

 

それを聞いたあげはは一人ご飯を幾つかあさひの皿に盛り付けるとそのままあさひの部屋へと歩いていく。

 

「あげはちゃん、あさひの事を心配してるんだよね」

 

「はい……でもあげはさん、凄い気負ってる様子に感じます」

 

あげはも責任を感じているのだ。もしあの時、カゲロウとの約束を破って自分がカゲロウを消滅させない程度に倒していたらこんな事にはならなかったと思っている。だからこそあげははいつものようにテンション高めの状態であさひの部屋へと行ったのだ。彼に元気になってもらうために。

 

「あさひ、入るよ」

 

「……あげは。ごめん、一人にさせて……」

 

あさひはあげはの事でさえも遠ざけるような言葉を言った。それでもあげはは諦めない。

 

「ねぇあさひ。取り敢えずは朝食を食べない?美味しい物を食べたら気分は……」

 

「放っておいてよ!今はアゲてる気分じゃない。……カゲロウは俺のせいで消えたんだ。俺がもっとちゃんとしていたらこんな事には……」

 

あさひの自分への自虐の言葉は後を絶たない。そんなあさひを見たあげはは仕方ないとばかりに朝食をあさひの机に置くと一人悲しそうに部屋を出ていく。そして彼女はある決意を固めた。絶対にあさひの笑顔を取り戻してみせると……そのためならどんな無理もしてみせると。

 

「ごめん待たせたね」

 

「あげはさん、あさひ君は?」

 

「……ごめん、あさひはどうしても来てくれなくて。だから今日は私達だけで食べよっか」

 

それからあさひを除く全員で朝食を摂る。するとあげははツバサの皿にサラダやらを盛ったりして世話を焼き始める。それに対してツバサはビックリした様子で皿を遠ざけた。

 

「じ、自分でできますよ!というよりどうしたんですかあげはさん!」

 

「え?何が?」

 

「何がって……あげはさん、いつもよりボクに世話を焼いてませんか!?」

 

「良いじゃん。私がやりたいと思ったんだしさ」

 

その言葉にツバサは違和感を感じたがそれを言えばこの場の雰囲気を壊すかもしれないと思い踏みとどまる。

 

それから朝食を食べ終わり、ソラとましろは学校に行く時間となった。そんな中でもあさひは出てこない。

 

「ごめんね、あげはちゃん。あさひ、やっぱり今日は行かないって」

 

「あんなに気を病む必要は無いと思いますけど……」

 

「大丈夫。私がしっかり面倒を見ておくから。あ、それとこれ!」

 

そう言ってあげはは手作りの弁当を差し出した。

 

「お弁当まで作ってくれたの!?」

 

「ありがとうございます!」

 

「LOVEをいっぱい込めたから!」

 

それから二人は学校へと出かける事になり、ツバサ、あげは、エルが見送りをした。それからあげはは家の掃除を開始し、ツバサはエルの遊び相手となる。

 

「あげはさんが掃除……って、何してるんですか!?」

 

ツバサが慌ててあげはの元に行くとあげはがツバサの巣箱をデコっており、ツバサが驚いた様子でそれをすぐに元に戻す。しかし、あげはに勧められてクッションはそのままだが。

 

そこに今まで引きこもっていたあさひがようやく出てきた。

 

「あさひ君!大丈……」

 

「ん、おはよツバサ」

 

「……夫じゃない!!」

 

あさひの顔は目にクマができていて、髪の毛はボサボサ、服もいつもの清潔感はどこへやらと完全にだらけた風になっていたのだ。

 

「あさひ君……やっぱりカゲロウの事が……」

 

ツバサがそういう中、あさひは一人洗面台に行くと顔を洗いつつ髪を元に戻し始めた。

 

「あさひ。これからエルちゃんと一緒に……」

 

「俺は部屋に戻る。皆にこんな俺なんて見せられない」

 

完全にあさひの心は壊れてしまっており、まるで周囲を拒絶しているようであった。

 

「ねぇあさひ!……お願い。あさひが落ち込んでいると二人も悲しい気持ちになるから。だから一緒に遊ぶ事だけでもしてあげてほしい」

 

「……わかったよ」

 

あさひは渋々あげはからの要請に応える事になる。エルとプニバードの姿をしたツバサが庭で遊ぶ中、あさひはそれに上の空状態で付き合った。やはりあさひの頭の中からカゲロウが抜けきっていない証拠である。

 

「………あさひ」

 

「何?また何か注文?」

 

「ねぇ、今はカゲロウの事は忘れて……」

 

「忘れられるかよ。俺のせいで消えた命を……忘れたりなんかできるかよ」

 

「……だったらさ、せめて今は二人との遊びを心から楽しんであげてほしい。二人もそれを望んでるよ」

 

「える!」

 

「そうですよ!」

 

あげはの言葉にエルもツバサも同意する事になる。そして、この後二人は泥んこまみれになり、あげはの手で水をかけられて洗われる事になった。

 

「ちょっと!自分のことは自分で……」

 

「はいはいジッとしてね」

 

「あさひ君!?」

 

あさひはあげはの手伝いでツバサへとドライヤーをかける事になり、それによってツバサは体がモフモフな状態に変化した。

 

「もふもふぅ〜!」

 

「この状態で人になったらどうなるの!?」

 

「試しませんよ!」

 

あげはの興奮気味な質問にツバサは応えることは無く、それからソラとましろが学校から帰ってくるまであさひはあげはの手伝いをする。しかし、結局彼に笑顔が戻る事は無かった。

 

その日の夜、あげはがエルをあやして寝かせるといつもよりも早くエルが寝つくことになる。

 

「エルちゃんがこんなに早く寝るなんて」

 

「やっぱりあげはさんは凄いです」

 

それからあげははソラとましろ、二人の爪にネイルを付けることになり器用な手つきで作業を終えていた。

 

「「わぁあ!可愛い!」」

 

「爪が可愛いと気分アガるよね!あ、そうだ。これも!」

 

そう言ってあげははパウダーフレグランスを使い二人に良い香りを付与する。

 

「ありがとうあげはちゃん!」

 

「私、あげはさんと暮らす事でアゲが何なのか理解できた気がします!……可愛い物や楽しい事で自分を元気にする。それがアゲ!」

 

「あはっ、確かに言葉にするとそんな感じかも!少年とあさひも付けてみる?」

 

そう言ってあげはが二人の方を見るとツバサも巣箱で寝てしまっており、あさひはそれを断った。

 

「あちゃー、少年は寝ちゃったかぁ……あさひは……」

 

「要らない……一人にさせてくれ」

 

あさひは未だに元気を出す事なく死んだような目つきでその場におり、あげははもっと頑張る必要があると考える。その日の夜、あさひが下に降りてくるとそこには夜遅くまで電気を付けて作業を進めるあげはの姿があった。

 

「あげは……こんな夜遅くまでどうして……」

 

こっそりあげはの後ろから何をしているのか見るとそれは保育園の実習で使うであろう絵が描かれてあった。

 

「……あさひ、いるんだよね?」

 

その瞬間、あげはが振り向くとあさひは姿を見られてしまう。そしてあさひはビックリしてしまった。

 

「どうして」

 

「わかるよ。だってあさひ。私が無理してたら心配するでしょ?」

 

「それは……そうだけど」

 

「……昨日も言ったけど私はあさひの事が心配だよ。心を閉ざして他人からの救いの手も跳ね除けて……そんなにカゲロウとじゃないとダメなの?」

 

「それは……」

 

「多分今のこの現状、カゲロウは望んでなんかいないと思うよ」

 

「………」

 

あさひはあげはの核心を突く言葉に思わず息を飲んでしまう。まさにその通りだ。カゲロウもあさひがこのように落ち込んだままでは自分が命をかけてあさひを成長させた意味が無いと思ってしまうだろう。

 

「だからこそ嫌なんだ。俺は死にゆくカゲロウをただ黙って見ているだけしかできなかった。俺は救えなかったんだ」

 

「……それは違うよ」

 

あげははあさひの言葉に反論の意を示す。あげははそれからカゲロウから言われた事の経緯を全て話した。これをすれば自分が嫌われるリスクを承知の上で。

 

「そんな、カゲロウは……全部知ってた上であんな事を……」

 

「カゲロウも覚悟を持って行動していたの。だからあさひが気に病む必要は無い。むしろ、笑顔でいてくれた方が彼にとっては幸せなんじゃないかな」

 

「でも、俺は……」

 

あさひの顔は未だに笑顔にはならない。それを見たあげははある提案をする事にした。

 

「それじゃあさ、あさひに頼みたい事があるんだけど……明日付き合ってくれる?」

 

「……良いよ。多分今の調子だと明日も学校に行く気になれないし……」

 

それからあさひは一人部屋に戻る中、まだあげはは一人無理をして作業を進めていた。そのためあさひは一瞬あげはを手伝おうと思ったが、それでも今はそんな気分になれず、部屋に戻っていく。

 

「……ホント、笑わないあさひなんて……らしくないよ」

 

あげはは悲しそうにそう嘆くと欠伸をしながら作業を進めていくのだった。

 

そして翌朝、ツバサが起きるとそこには疲れ切ってその場で寝落ちていたあげはがツバサに起こされて目を覚ます事になる。

 

「良かった……寝てただけですか……って、ん?まさか、ここでずっと!?」

 

「……えへっ」

 

「えへっ……じゃないですよ!もう、あげはさんは頑張りすぎですよ!」

 

「いやぁそんな事……」

 

「あ・り・ま・す・よ・ね!」

 

それからツバサはあげはが頑張っている姿を見ていた事を宣告し、あげはの事を気にかける。

 

「ボク達のために色々と頑張ってくれてるのはわかります。でも、ソラさんやましろさん、それにあさひ君だってあげはさんが疲れるのは望んでません」

 

ツバサからの言葉にあげはは一度溜息を吐いてから頬をかく。

 

「……あげはさん、あさひ君の事を心配してるんですよね。力になりたいと思ってるんですよね。だからと言って無理していい訳じゃないんですよ」

 

「……ごめんね……もっと大人の私がしっかりしないといけないのに……こんなに頼りなくて」

 

「ボクが求めてるのはそういう言葉じゃありません。もっとボク達を頼ってください!」

 

そんなツバサからの物言いにあげはは観念するとツバサを頼る事にした。そして、この日。あさひはまた体調不良を言い訳にして学校を休む事になり、あげは、ツバサ、エルと共にある場所に向かう。……ただし、ヨヨはこれ以上の休みはあさひのためにならないと、今日で最後にする事を条件に許可を出す事になる。

 

あげはには考えがあった。あさひを元気にする方法を……その手伝いにツバサも参加する事になる。エルを含めた四人が到着したのはとある壁画アートの前だった。




また次回もお楽しみに。


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壁画アートと取り戻す笑顔

あさひ達四人が到着した場所は壁画アートがされた壁であった。ここに描かれている絵はどうやら以前あげはが実習に行ったソラシド保育園に通う子供達が描いた物らしい。

 

「俺とツバサに頼みたい事があるって言ってたけど……それって何?」

 

「それはね……」

 

あげはがその事を言おうとするとツバサが壁画アートを見ていく中で一部、何も描かれていない場所があった。

 

「あれ?ここ、何も描かれてませんけど……」

 

「ふふっ、私達が描くんだよ!」

 

「「ええっ!?」」

 

二人はあげはからの言葉に驚くが、手伝うのを了承した以上はやらないといけないと考えて参加する事になる。

 

「保育園の先生がね、実習の記念で描いて欲しいって。でも、引っ越しでバタバタして時間が無くて……」

 

「時間が無いのにボク達の世話をしていたんですか?」

 

「……あげは、俺達のことを気にするよりも自分の事をちゃんとした方が良い気がするけど……」

 

「あはは……」

 

二人からそう言われて苦笑いするあげは。しかし、あさひのテンションが先程と比べてほんの少し上がっている事をあげはは見逃さなかった。それから早速三人で絵を描く作業に取り掛かる。

 

「あさひも少年も上手だね」

 

「……父さんが絵描きなのでこのくらいは」

 

「俺は普通に描いてるだけだけど……」

 

あさひは最初こそ嫌そうな感じだったが、やっているうちに絵を描くのに少しずつ楽しさを覚えるようになってきていた。それこそがあげはの目的でもある。

 

「少年のご両親ってどんな人?」

 

「……いつまでもボクの事を子供扱い……何かと構ってくるから鬱陶しくて」

 

ツバサはそこまで言った所でふと何かを閃いたように一瞬笑う。

 

「あげはさんの世話焼きな所、誰かに似てると思ったらボクの両親に似てるなって」

 

ツバサはそこまで言った所であげはに失礼な事を言ってしまったと思い謝罪するが、あげはは大丈夫と言う。そして、彼女はソラ、ましろ、あさひ、ツバサ、エルは両親の元から離れているために色々と世話を焼きたくなると語った。

 

「……そういえばあげは、昔から俺に世話ばかり焼いてきたよね。姉さんには普通に友達として接していたのに」

 

「ふふっ、そうだったね……でもそれはさ、あさひが私と接するの恥ずかしがってたし……早くあさひと仲良くなりたかったから」

 

あげはの気持ちを聞いてあさひは心がポカポカするような感覚になる。それからあさひはあげはとツバサに胸の内を明かした。

 

「……俺、カゲロウがいなくなって寂しい気持ちがどうしても拭えなくてさ。……失ってようやく気がついた。俺は沢山アイツに救われていたんだって……だからとても怖かった。俺はカゲロウ無しでは成長できないんじゃないのかって」

 

あさひの真剣な眼差しに言葉を聞いて二人も同じように真剣そうな顔つきに変わる。

 

「でも、あげはが頑張っていることや俺を心配してくれる皆を見て思ったんだ。いつまでもこんな気分じゃダメだって……。だからいい加減前を向かないといけないって感じた……二人共、こんな落ち込んだ俺のせいで迷惑をかけてごめん。俺、前を向くよ」

 

それを見た二人は顔を見合わせると笑顔になり、二人でハイタッチする。あんなに心を閉ざしていたあさひがとうとう前を向く気持ちになったのだ。嬉しくないわけがない。

 

「あげは……心配かけさせてごめん……そのせいで無理してたんだよね」

 

あさひは申し訳なさそうにあげはへと謝罪を言うがあげははそんなの気にしてないとばかりにニッコリと笑う。

 

「大丈夫だよ。あのくらい私にとっては……」

 

「凄い無理してましたよね?」

 

そこでツバサからの的確なツッコミが入る。それを聞いてあげははまた“テヘッ”と言って誤魔化した。

 

「もう、あげはさんもあさひ君も一人で全部背負い込み過ぎです!もっとボク達を頼ってください」

 

「うぅ……でも皆に負担をかけたくは……」

 

「心配させてる時点でボク達への負担になってるんです!」

 

ツバサに言われてあさひも反省する。しかし、その顔は先程までの暗い気持ちでは無くなっていた。

 

「と、取り敢えず絵の続きを描かない?ずっと喋っていても進まないし……」

 

「わかりやすく話を逸らさないでください」

 

それからなんだかんだ言いながらも絵を描く作業は続いていく。その頃、バッタモンダーが工事現場の鉄骨の上でイライラを溜めていた。

 

「クッソォ……カゲロウを使った作戦も失敗……というか、まずプリキュアの数が多すぎなんだよ。チェッ!バラバラになっちまぇ!」

 

バッタモンダーはそれを言った所で何かを思いつく。バッタモンダーはプリキュアに勝つ鍵を探し当てた様子だった。

 

「そうだ……バラバラに戦えば良いんだ」

 

そこまで言った所で突然バッタモンダーの近くに一人の影がやってくるとバッタモンダーに話しかける。

 

「……カバトンと言い、バッタモンダーと言い、随分と苦戦しているようね」

 

「……あ?」

 

バッタモンダーが振り向くとその体を震わせた。そこにいたのは一人の女性の影であり、バッタモンダーは体を震えさせながらその女性を見ている状況だ。

 

「……あんまり苦戦しているとあのお方がお怒りになるわよ?」

 

「ふん!今良い作戦を思いついた所なんだよ。手出しは……」

 

「勿論させてもらうわ。あんた達が苦戦しているプリキュアの力を一度見ておきたいしね。それに……キュアサンライズ。私、アイツの事が好きだから」

 

「はぁ!?」

 

バッタモンダーは謎の女性の突然の宣言に驚きを隠せない。女性はニッと笑うとバッタモンダーに作戦の詳細を聞く。

 

「へぇ、着眼点は悪く無いわ。でも一つミスがあるわよ」

 

「何?」

 

「キュアサンライズ……アレは一人でランボーグを圧倒できる力がある……どう攻略するつもりなの?」

 

「それは……」

 

「あなたのランボーグでは多分キュアサンライズ相手にはパワー不足。やっぱり私も出るわ。その代わり、プリンセスを得た際の手柄はあなたに全部付ける。これで文句は無いわよね?」

 

「くっ……約束は守れよ……」

 

「良いわ。指揮はあなたに任せるし私は見てるだけにするからよろしくね」

 

女性はそう言ってバッタモンダーの肩へと手を置くとその妖艶な顔つきでバッタモンダーに期待をしているとばかりにしていた。

 

場面は戻りあさひ達へ。三人が絵を描くのを進めているとエルが手に絵の具を付けてそのままペタペタと壁に手を押し付け始める。

 

「「「あっ!?」」」

 

「プリンセス、ダメですよ!めっ!」

 

ツバサにそう言われてエルは悲しそうな顔に変わるが、あげはの考えは真逆であった。

 

「いや、寧ろ良くない?」

 

それからあげははエルの手型に幾らか描き足して別の物に変えていく。

 

「こうすれば、チューリップ!こっちはツバサ君!どう?」

 

「「おぉ!!」」

 

「よーし、エルちゃん。もっと手をペタペタしよ!」

 

それを聞いてエルは楽しそうに手に絵の具を付けてペタペタし始める。

 

「……あげは、エルの遊びを上手く使って……」

 

「そうだ、ツバサ君もあさひも自由に描いて見てよ」

 

「え?でも良いんですか?」

 

「その方が三人の合作って感じがするし、良いと思うんだ」

 

あげはからの提案にあさひもツバサも頷くとそれぞれが思い思いの絵を描いていく。それから暫くして壁画は完成し、あげはは二人へとお礼を言う事になる。

 

「完成!三人共ありがとう!おかげで最高の壁画ができたよ!」

 

「……でも、良かったんですか?ボクとプリンセス、あさひ君が混ざっちゃって……」

 

「だから良いんじゃん。相乗効果って奴?私一人で描くよりももっと楽しい絵になったよ。それにさ……私の一番の目的も達成できたしね」

 

あげははそう言ってあさひの顔を見る。その顔は先程までの暗い顔では無く、晴れやかになっていた。

 

「あげは、もしかしてこうなる事がわかってたのか?」

 

「……うーん、半分半分かな。正直さ、あさひが笑顔になるかは賭けだった。何しろあそこまで落ち込んでいたし、もしかすると絵に興味すら示さない可能性もあったから」

 

あげははそう言いながら空を見上げる。あげはとしても今回の一件はあさひに笑顔を取り戻させるための作戦で、それをあさひに悟られればこの作戦は破綻する。それでもあさひはあげはの考え通りにツバサやエル、あげはと共同作業をする事で失われていた笑顔が取り戻される事になったのだ。

 

「……ありがとう、あげは。それとごめん……」

 

「謝らないで良いよ……寧ろ、笑顔でいてくれればそれで良い。私が見たいのは笑っているあさひなんだから」

 

それから四人は完成してからの休憩のためにシートの上で話をする事になった。しかし、そのタイミングで思わぬ来訪者が来る事になる。

 

「あぁ、なんて可哀想なんだ。折角一人増えたのに、ここにいるのはたった三人だけなんてね」

 

そこに来たのはバッタモンダーである。彼はいつものように相手を見下した態度を取ってきた。

 

「「バッタモンダー!」」

 

「また碌でもない事を考えていそうだな」

 

「ふふっ、だったら試してみるかい?カモン!アンダーグエナジー!」

 

バッタモンダーがアンダーグエナジーを召喚するとそれが近くのゴミ箱に入り、それがランボーグに変化する。

 

「ランボーグ!」

 

「二人共、行くよ!」

 

「「うん!」」

 

それから三人はペンを取り出して構えると変身する。

 

「「「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!」」」

 

「ウィング!」

 

「バタフライ!」

 

「サンライズ!」

 

「天高くひろがる勇気!キュアウィング!」

 

「アゲてひろがるワンダホー!キュアバタフライ!」

 

「夜明けにひろがる眩い朝日!キュアサンライズ!」

 

「「「レディ……ゴー!ひろがるスカイ!プリキュア!」」」

 

三人が変身完了するとバッタモンダーは余裕そうに三人を見下ろした。

 

「悲しいけれど、戦いとは時に非常。後の二人が来ない内に……決着をつけさせてもらおう」

 

「なーんかカッコ付けてるけどさ、要は五人相手だと勝つ自信が無いって事じゃん」

 

「ですね」

 

「自信がどうとかじゃねーし、こういうのは頭を使った作戦っていうんだよ!」

 

バッタモンダーは反論されて逆ギレし、そこにサンライズが追い討ちをかけるようにある言葉を口にする。

 

「というか良いの?前に何回か俺一人にボコボコにされた事があるのに俺がいる状況で仕掛けちゃってさ。またホーリーサンライズになればすぐ終わるよ?」

 

サンライズのその言葉にバッタモンダーはニヤリと笑うとまるで問題無いとばかりの顔をしていた。

 

「あぁそうそう。君には別の相手がいるから」

 

「……はい?」

 

その瞬間、サンライズへとエネルギー弾が飛んでくるとサンライズはそれを一瞬にして打ち消す。そこにいたのは前にスカイが戦っていた自販機型のランボーグが立っていた。

 

「ランボーグ!」

 

「え?コイツ、どこから湧いたんだ!?」

 

「そっちの奴は任せるよ」

 

バッタモンダーがそう言うと自販機のランボーグはサンライズへと襲いかかってきた。そうして、三対ニの戦いが始まる事になる。




また次回もお楽しみに。


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二人の絆と新たな敵の影

ウィングとバタフライがバッタモンダーが生み出したランボーグを相手にすると早速ランボーグは腕に付いているゴミ箱の口からゴミの形をした弾丸を放ってくる。

 

「ゴミをポイ捨てしたらダメだろ!」

 

ウィングとバタフライは飛んでくる攻撃を弾き飛ばしつつ戦いを進めていく。

 

「ゴミはゴミ箱に……ポイ!」

 

バタフライが弾を蹴り返すとそれはランボーグの体に付いているゴミ箱の口にシュートされる。

 

「んだよ!たった二人に良いようにされてるな!」

 

ランボーグは続けて自販機のランボーグが使っていたペットボトル型のミサイルを飛ばして二人を攻撃する。

 

「やあっ!」

 

すると二人が弾いた攻撃が向きを変えて壁画へと飛んでいく。

 

「える!?」

 

咄嗟にバタフライが蝶型のエネルギーバリアでミサイルが壁画に命中しないように防ぐ。そして、それはサンライズの方でも戦いは起きており、こちらは互角の勝負になっていた。

 

「ランボーグ!」

 

「くっ!?コイツ、バッタモンダーが出したランボーグよりも遥かに強い!」

 

サンライズは剣を使ってランボーグからの物理攻撃を凌ぐ中、ランボーグは以前カバトンが出したランボーグと同じようにペットボトルのミサイルを放ってきた。ただし、こちらの方が数段速度が速いが……。

 

「やばい!」

 

サンライズはそのミサイルが壁画に向かっているのを見て攻撃を炎の剣で両断しつつ、それによって発生させた炎の壁がペットボトルを焼却し、消失させるがサンライズは苦い顔をしていた。

 

「くっ、プラスチックはあんまり焼却したらダメなんだよな……この際は仕方ないだろうけど!」

 

「ランボーグ、やれ!」

 

バッタモンダーからの指示が飛ぶとランボーグは三人を無視して三人の背後にある壁画を狙って大量の弾丸を発射する。

 

「くっ!」

 

それを見たツバサは自ら回転して竜巻を作り、攻撃をある程度弾く。だがそれだけではダメだ。残った攻撃が飛んでいく中、次に防ぎに来たのはサンライズだ。

 

「はあっ!」

 

サンライズが地面に炎の剣を刺すとそのまま炎が地面に燃え広がり、炎の壁を生み出していく。そしてそれが攻撃を焼き尽くして数をまた減らした。しかしそれさえも抜けてくる攻撃もあり、それを防ぐ最後の砦としてバタフライが構えを取る。

 

「させない!」

 

バタフライは蝶型のエネルギーバリアを幾つも出現させて攻撃を凌ぎ切った。そこに二人も駆け寄って壁画を背にしてランボーグと向き合う。

 

「その壁画……よほど大事なものなんだね」

 

バッタモンダーがニヤニヤと笑いながらそう言うと二体のランボーグがまた大量の弾幕を生成して立っていた。その直後、近くの草むらにいた小鳥達が飛び立っていく。向かう先は学校を終えて下校中のソラとましろだ。

 

「「ランボーグ!」」

 

「させるかっての!スタイルチェンジ!ペガサス!ひろがる!サンライズレイン!」

 

サンライズがペガサススタイルになるとエネルギー弾の雨を生成し、飛んできた攻撃を真上から全て撃ち落とす。しかし、自販機ランボーグが作った攻撃に対しては火力不足なのかそれだけでは止まらずに飛んでくる。

 

「はあっ!」

 

そこにバタフライが蝶型のエネルギーバリアをブーメランのように投げて次々両断。残った弾はウィングが防ぎきり、ウィングとサンライズが前に出る。

 

「「だあっ!」」

 

その瞬間、二体のランボーグは攻撃を壁画へと一発放つ。二人はしまったと後ろを振り向くとバタフライが先程投げたバリアを呼び戻してギリギリ防ぐ。しかし、自販機ランボーグの方の火力が高いのかバリアにはヒビが入っていた。

 

「嘘、なんて威力なの!?」

 

「へぇ、やっぱりあの方のランボーグの力はそれだけ凄まじいという事か……」

 

「この間は保育園で、今度は子供達の壁画?アンタみたいな卑怯者、マジで嫌いなんですけど!!」

 

そう言ってバタフライは怒りを露わにする。そしてそれはサンライズも同じだ。

 

「テメェ、そんなに正面から来るのが怖いのかよ!」

 

「悲しいねぇ、僕は僕なりに最善を尽くしているだけなのに。そこまで言うのなら……正々堂々と力比べと行こうじゃないか。二体のランボーグとそのバリア……どっちが強いかね!」

 

バッタモンダーが指を鳴らすと二体のランボーグが背中にジェットパックの代わりとばかりにペットボトルを合体させた。その瞬間サンライズはバタフライの前に立ちはだかる。

 

「結局二体がかりかよ……だったら纏めてこれで潰してやる。バタフライにも、ウィングにも負担はかけさせない!」

 

そう言ってサンライズはホーリーサンライズになるためのスカイトーンを取り出すとそれを使おうとする……しかし、何故かスカイトーンが使用を拒否しているのかスカイミラージュにはめ込まれない。

 

「何で!?この前は変身できたのに……」

 

「「ランボーグ!」」

 

その時、ランボーグ達はサンライズへと突進してくる。それを見てサンライズは仕方ないとばかりに別の方法を使った。

 

「スタイルチェンジ!グリフォン!太陽の鉄拳!」

 

するとサンライズはパワータイプのグリフォンスタイルへと変身し、巨大な拳で攻撃を受け止める。しかし、その圧力は凄まじく、サンライズは少しずつ押されていき、拳にもヒビが入り始めた。

 

「くうぅ……俺は二人に散々迷惑をかけたんだ……だから、二人に重荷を背負わせるわけにはいかない」

 

サンライズは一人で無理すると更に拳のヒビが深くなっていく。その瞬間、サンライズの後ろにウィングとバタフライが立つと両肩に手を置いてサンライズの拳にエネルギーを流し込んだ。

 

「ッ!?どうして……これは俺がどうにか……」

 

「無理しないで!」

 

「サンライズ……もっとボク達を頼ってください!」

 

ウィングとバタフライはサンライズが無理するのを嫌がっていた。そして更にエネルギーを流し込むと拳は更に大きくなり、ランボーグ達を弾き飛ばす。

 

「なっ!?」

 

「サンライズ……バタフライもそうですが、さっき言った言葉を覚えていますか?」

 

サンライズはウィングが言った言葉を、“一人で全部背負い込み過ぎだ”という事を思い出した。

 

「でも、あのくらい俺だけでもできるよ!それに二人に負担をかけさせたくは……」

 

その瞬間、バタフライに頬を叩かれた。バタフライの目には涙が浮かんでおり、サンライズは唖然とする。

 

「サンライズ!私……サンライズのそういう頑固な所が嫌い……私達がどれだけ心配してるかわかってる?私が無理したらサンライズが心配するのと同じ……サンライズが無理したら私達も心配になるの!」

 

バタフライは必死にサンライズを説得しようとする。そしてそれを見たバッタモンダーはチャンスと見てランボーグに再度突撃を命じた。

 

「今だ!」

 

「させない!」

 

それに合わせて今度こそバタフライが何枚もの障壁を作って攻撃を防ぐ。しかしそれも砕かれていき、最後の一枚にもヒビが入ってしまう。

 

「ううっ……アンタ達の好きには……させない」

 

バタフライはあまりの圧力に押されて片膝を付く。

 

「バタフライ、無茶だ……ハッ……」

 

サンライズはそれを言ったところでハッとする。その言葉は先程無理をして自分にかけられた言葉と全く同じだった。

 

「言ったでしょ……サンライズ。あなたが私を心配しているのと同じ……私だってサンライズが心配なんだから!」

 

「めぇっ!めぇっ!うわぁああん!」

 

その瞬間、壁画の所で見ていたエルがバッタモンダーにやめて欲しいとばかりに泣き始める。しかしバッタモンダーはそんなの知るかとばかりに指を鳴らした。すると自販機のランボーグは一旦攻撃の手を止めると横にズレてまた突撃してくる。今のバタフライには正面のランボーグを止めるので手一杯。バリアを出すことはできない。

 

「させない!ひろがる!サンライズボルケーノ!」

 

サンライズが地面に大剣を突き刺すとランボーグの前に炎の柱を出現させて受け止めつつ弾き返した。

 

「馬鹿な!」

 

「ウィング、お願い!」

 

「はい!……やっとボクを頼ってくれましたね!」

 

ウィングは飛び上がるとバリアを殴り、バタフライと共にランボーグを押し飛ばした。

 

「ボク達と一緒に守りましょう!プリンセス!」

 

「泣くのはお終い!ここからはアゲてくよ!」

 

「アゲ!」

 

するとサンライズは二人の連携を見て自分の間違いに気がついた。

 

「そっか……一人で出来ないことも二人でならできる……大事なのは苦しい事を一人で無理してまで抱え込む事じゃない。皆を、仲間を頼る事なんだ!」

 

その瞬間、サンライズの胸とエルの体に光が灯ると同時に新たなスカイトーンが射出される。

 

「ぷりきゅあああ!」

 

それはサンライズの手とウィング、バタフライの手に収まった。ウィングとバタフライのはオレンジとピンクが混ざっており、サンライズの方はまた新たなスタイルチェンジ用の物だった。

 

「はぁ!?そんなの聞いて無いぞ!」

 

「これって……そうか。カゲロウが俺にスカイトーンを出す力をくれたから……やっぱり俺はアイツに助けられっぱなしだな」

 

まずはサンライズがそのスカイトーンを使うとスカイミラージュに装填する。

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!スタイルチェンジ!ヤタガラス!」

 

するとその瞬間漆黒の鳥、八咫烏がどこからともなく飛んでくるとそれが他のスタイルと同様にアーマーへと変化して装着されていく。そしてそれは赤を基調としたいつものアーマーとは違い、今回は夜を思わせる黒や青を基調としたアーマーでサンライズのメインカラーそのものが黒に変わったと思えるほどだった。変わってないのは髪の毛と瞳の色ぐらいであり、背中のマントが消えて代わりに右肩からのマントが出現。キュアサンライズ・ヤタガラススタイルの降臨である。

 

「サンライズ……でもあれ?この格好、どこかで似たような人を見たような……」

 

「キュアトワイライト?いえ、でも彼とは少し違います。もっと、別の……」

 

そう、キュアトワイライトのメインカラーは黒とターコイズ。加えて紫。ただ今回のサンライズは黒がメインであるものの、差し色が青なのだ。

 

「ひとまず、私達もやってみよう!」

 

ひとまずサンライズの新たなスタイルの事は置いておき、それからウィングとバタフライも新たなスカイトーンを使うとそれにより新たな力を稼動する。

 

「「アップ・ドラフト・シャイニング!」」

 

二人が手を繋ぎ、そう叫ぶと空中に絵の具のパレットのような物が出現した。

 

「え?」

 

「何ですか?これ?」

 

「あ、これは絵の具のパレットじゃない?ってことは……お絵描き?」

 

「いや、絶対違うから」

 

サンライズがツッコミを決める中、バッタモンダーは苛立ちを隠せない様子でそれを見ていた。

 

「クソッ、次々と新しい力に目覚めやがって……だがあっちの方は使い方がわかってないみたいだな……良し、ランボーグ!やっちまえ!」

 

バッタモンダーがそう言うとゴミ箱のランボーグが飛んでくる。それをウィングが受け止める。その隙にもう一体の自販機のランボーグがミサイルを飛ばしてきた。

 

「ヤバイ!どうすれば……」

 

するとその瞬間、どこからともなく声が聞こえてきた。そしてその声にサンライズは聞き覚えがあった。

 

“槍を使って!俺がそうしていたように!”

 

サンライズはその声に導かれるままに手に漆黒の炎で生成された槍を手にすると攻撃の直線上に投げた。その瞬間、サンライズは槍が刺さった場所へと瞬間移動。そしてその力の持ち主をサンライズは知っていた。

 

「……もしかして、ソウヤの……キュアナイトの力なのか?」

 

「「それだ(ね)!!」」

 

サンライズの予想通り、ヤタガラススタイルの力はキュアナイトの力を元にしているのだ。そして迫り来る攻撃を青の護衛隊が使っている青い稲妻の剣と黒い漆黒の炎の槍を駆使して全て粉砕する。

 

「ちょっと止まっててもらうよ!」

 

そう言ってサンライズが槍を投げるとそれがランボーグの影に刺さり、動きが封じ込められた。

 

「凄い……って、感心してる場合じゃ無い!」

 

バタフライがウィングとサンライズがランボーグを抑えている間に使い方を知ろうとするがわからない。

 

「ううん……よくわからないけど何とかなる!」

 

バタフライはスカイトーンをパレットにセットすると召喚された筆のようなものを手にする。

 

「二つの色を一つに!レッド!ホワイト!」

 

バタフライがそれぞれ赤と白の部分を筆でタッチし、それを混ぜるようにスカイトーンの周りでクルクルと回す。

 

「はぁああ!」

 

その瞬間、ウィングの力がいきなり強化され、ランボーグが強制的に持ち上げられる。

 

「はぁあ!?」

 

「ちょっ!?どうしたら良いんですか?何なんですかこれ!?」

 

「みっくしゅぱれっと!」

 

「ああ、そういう名前……じゃなくて!」

 

「そっか!ミックスパレットは皆をパワーアップできるんだよ!」

 

バタフライがようやく新たなアイテム、ミックスパレットの能力を理解するとそれにウィングやサンライズが納得する。

 

「ってことはスタイルチェンジしなくても能力の強化だけならそれを使えばできちゃうのか……」

 

サンライズはスタイルチェンジの長所が一つ無くなったような気がしたが、それでも無いのとあるのとでは断然ある方がいいのでそのまま受け入れる事にした。

 

「ええい!」

 

ウィングはパワーアップした力でランボーグを地面に叩きつけるとそのタイミングでスカイとプリズムも到着したが、まだ二人は状況が理解できずに混乱していた。

 

「何が起きてるんです!?」

 

「パワーアップだと!?それならこっちもだ!ランボーグ!」

 

そう言うとゴミ箱のランボーグは背中に付けたペットボトルを更に増やして対抗。更に自販機のランボーグは前にカバトンの出したランボーグがやっていた巨大ペットボトルミサイルを二つ出して攻撃してくる。

 

「させるかよ!」

 

そこにサンライズが止めに入るとサンライズも地味に強化の恩恵を得ていたので片手でそれぞれのミサイルを受け止めるとそのままいつかのキュアスカイがやっていたあの技を再現する。

 

「大・回・転!プリキュア返し!」

 

二つのミサイルは自販機のランボーグに命中するとそのまま吹き飛ばして地面に叩きつけさせる。

 

「はぁああ!」

 

そしてウィングの方もランボーグの強化を物ともせずに返り討ちにし、バタフライに技を使うように言う。

 

「今です!」

 

それからバタフライは赤、黄、青、白の四つの色の力を発動する。

 

「全ての色を一つに!ミックスパレット!レッド!イエロー!ブルー!ホワイト!」

 

バタフライが順番に色をタッチしていくと筆に虹のエネルギーが高まっていった。

 

「混ぜ混ぜカラーチャージ!」

 

それからバタフライが先程と同様にクルクルとスカイトーンの周りを回転させる。

 

すると虹のエネルギーがウィングの真上から降り注ぎ、その姿を炎の鳥……フェニックスを模した物に変化させる。それからバタフライが上に乗り、敵へと突撃。

 

「プリキュア!タイタニックレインボー!」

 

そのままランボーグに激突するかと思いきや、虹の光に包まれて再度その姿を変化させる。その変化先は……まさかのツバサのプニバードとしての姿だった。

 

「アタック!」

 

それから虹のエネルギーを纏った巨大なプニバードの姿をしたツバサがランボーグを真上から押し潰し、浄化する。

 

「スミキッタァ〜」

 

「ミラーパッド!オッケー!」

 

最後にミラーパッドでスカイがキラキラエナジーを回収し、二人の方は決着がついた。そして、サンライズの方も大詰めである。

 

「今度こそ決めるよ!プリキュア!ホーリーコネクト!ひろがるチェンジ!ホーリーサンライズ!」

 

それからサンライズはホーリーサンライズにパワーアップ。それからすかさず浄化技を使用する。

 

「ひろがる!ホーリーカリバー!」

 

サンライズから放たれた光と炎がランボーグを浄化するとその姿を消滅させていく。しかし、ランボーグが倒された時にランボーグが言う“スミキッタァ〜”が聞こえてこなかった。

 

「……え?」

 

その瞬間、ランボーグのいた場所から赤黒いエネルギーが出てくるとそれがどこかへと飛び去っていき、その場は収められる事になる。

 

「キラキラエナジーが……出ない?」

 

その様子に困惑する一同。しかし、バッタモンダーはランボーグが二体ともやられたために悔しさを滲ませていた。

 

「チェッ!デカけりゃ良いってもんじゃねーんだよ。バッタモンモン!」

 

バッタモンダーが撤退すると近くに隠れながらその様子を見ていた謎の女性はニヤリと笑い、この結果は当然とばかりに小声で呟いた。

 

「ふふっ、そう来なくっちゃ面白くないわ。流石私の惚れた男ね……ただ、やっぱりあの女は目障りね……キュアバタフライ……いつか始末して私があの男の側に寄り添うんだから」

 

そう言うと先程飛び去った赤黒いエネルギーがその女性の元に戻ってくるとそのまま吸収されていき、女性は気持ち良さそうに体を震わせるとその場から撤収した。

 

それから変身を解いた五人は集まってソラとましろが三人から事情を聞く事になる。

 

「そんな事があったんですね」

 

「今度からはツバサ君だけじゃなくて私達にも頼ってね。あげはちゃん」

 

「それと、あさひ君も元気が戻って良かったです皆で私達の暮らしをアゲアゲにしていきましょう」

 

「だね!皆でアゲてこ!」

 

「「アゲ!」」

 

「あげ!」

 

「あ、アゲ……」

 

「アゲ!」

 

それから翌日、張り切りすぎた影響か、疲れ切ったあげはが眠たそうに起きてくる。その時、先に起きていたあさひ、ソラ、ましろ、ツバサの四人も協力して皆で朝食の準備をするのであった。




また次回もお楽しみに。


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あさひと謎の女性

とある日の昼下がり、あさひはあげはと共に街中へと出かけていた。理由はあげはが『Pretty Holic』でバイトをするために面接があるからだ。あさひはあげはの面接が終わるまでの間、のんびりと過ごすつもりで店の近くにある喫茶店で一人待っていた。

 

「あげは、ちゃんと受かると良いなぁ。でも、またあげはと過ごす時間が減るから複雑な気分……」

 

あさひが一人考えていると突如としてあさひの隣の席に一人の女性が座った。あさひがチラッとその方を見ると髪の毛は薄紫で降ろしている。瞳は青く、スタイルも良くあげは相手でも引けをとらないであろう美女であさひが自分に目を向けていると気付いたのかその女性は優しく話しかけてきた。

 

「どうかしましたか?」

 

「え!?あ、いや……ごめんなさい。知らない人にジロジロ見られても嫌ですよね……」

 

あさひはそのあまりの美しさに目を奪われてしまっていた。しかし、あげはにこんな所を見られたら彼女がどう思うかわからない。そのため、すぐに会話を終わらせようとする。

 

「ふふっ、大丈夫ですよ。むしろ……あなたになら見られても良いかもって思っちゃった。不思議よね。だって私達は初対面なのに」

 

あさひは不味いと考えていた。少しずつだが確実に彼女のペースに引き摺り込まれ始めていると直感しているのである。

 

「……その顔だとあなたには彼女がいるわね」

 

「え!?」

 

「正解……かぁ。残念だったなぁ。もしかすると私達は良い関係になれると思ってたのに……」

 

まるで初対面の自分に気があるような女性の物言い。あさひは困り果ててしまった。このままでは女性の良いように振り回されてしまう。そこまで思った所で女性はニッコリと笑い、あさひの心を見透かした。

 

「なーんて、大丈夫よ。彼女がいる相手に手は出さないわ。それに君は多分、自分の彼女さんの事を第一に考えている。だから私がアピールしたって断る……でしょ?」

 

あさひはそれを聞いて頷く。すると彼女の瞳の奥に悲しそうな物が見え隠れしており、あさひは心苦しかった。そこに面接帰りのあげはが乱入してくる。

 

「あさひ!お待たせ!」

 

「あげは……」

 

するとあげはの顔が一瞬にして曇りついていた。彼氏が他の女性と……しかも相手は自分とも良い勝負ができるであろう容姿の持ち主の女だったために警戒心を露わにする。

 

「あなた、逆ナンパですか?私、この人の彼女なんですけど」

 

「ふふっ、そうなのね。大丈夫よ。確かに私からこの子に声をかけたけど、他人の彼氏を奪うほど私はタチの悪い性格じゃないわ」

 

「そうですか……あさひ、いつまでもこんな所にいないでもう行くよ」

 

それを聞いてあげはは安心すると一刻も早く彼女から離れるようにあさひに促す。あさひはそれでようやく正気を取り戻すと女性に“ごめんなさい”と謝ってから席を立って店を出ていく。一人取り残された女性はあさひとあげはがいなくなってからニヤリと笑みを浮かべた。

 

「……やっぱりね。確信したわ。あの子達が私のターゲットで間違い無い。キュアサンライズ……いえ、あさひ君だったかしら。私の心を撃ち抜いた張本人……見た感じだとあの子を奪い取ることは可能そうね」

 

女性はまるで自分の勝ちを確信したような顔であり、次の瞬間にはその場から黒い煙と共に消えていた。

 

そして女性から離れたあさひはあげはに詰め寄られている状態になっている。

 

「ねぇ、あさひ。無いと思うけどあの人に心を奪われたりはしてないよね?」

 

「まさか……そんなわけ無いよ」

 

「ふぅん……だったら良いんだけどさ」

 

あげはは不満そうな顔である。あさひが浮気なんてしていたら彼女のあげははあさひを嫌いになってしまうだろう。

 

「ごめんあげは。……あの人、ちょっと怖い」

 

「え?」

 

「実は最初あの人に見惚れてしまって……そこから話しかけられたんだけど、何だかどんどんあの人のペースに巻き込まれていくような感じがしてさ」

 

あげははそれを聞いて危機感を感じていた。あの女性とあさひを二度と会わせてははいけない。そんな気がしてならなかった。

 

「そっか。……多分もう会わないと思うけど……一応もし今度会ったらすぐに理由を付けて離れよっか」

 

「それが良いかも……下手にあの人と話になったら……今度は完全にどうかしちゃいそう」

 

あさひとあげはは女性と会った時の対処法を考えていると再びその人は目の前に現れた。

 

「ッ!?どうして……」

 

その瞬間、あげはの頭が真っ白になると目からハイライトが消えてしまう。

 

「あげは!あなたは一体……」

 

「何のことかしら?私は何もしてないわよ」

 

「嘘だ……そんな……わ……」

 

その時、あさひの目からもハイライトが消えてしまうと女性に手を引かれてしまう。そして、女性が指を鳴らすとあげはのハイライトが戻り、彼女はさっきまで隣にいたあさひが急に消えてしまっていて驚いていた。

 

「あさひ!?何で……しかも私、何を考えて……」

 

あげははハイライトがオフになっている間の記憶を失っており、その間にあさひが連れ去られたこともどうして自分がハイライトを失ったのかもわからなかった。

 

「とにかくさっきの女の人だったら探さないと!」

 

あげはが慌てて探しに行く中、あさひはと言うと女性と共にとあるアパートの一部屋に連れ込まれていた。

 

「もう良いわよ」

 

そう言って女性が指を鳴らすとあさひのハイライトが戻る。その瞬間、あさひは知らない部屋に連れ込まれていた事に驚いていた。

 

「ここは!?何で俺……あなたは!さっきの……」

 

「ごめんなさいね。さっき話をしてたら急にあなたが意識を失う物だから看病させてもらったわよ」

 

そう言う女性に対してあさひは恐怖でいっぱいになった。当然である。意識を失っている間に連れ去られたのであればこれは立派な誘拐だ。警察に電話しようとするとその動きさえも金縛りにあったように止めさせられた。

 

「な、何を……あなたは一体?」

 

「私ね、あなたに一目惚れしてしまったの。でもあなたには彼女がいる。さっきは奪うつもりは無いって言ったけど……私はあなたの事を諦められないの……だからあなたが私の物って証を刻んであげる」

 

あさひは全身に寒気がする感覚を覚えた。その直後、あさひは全身に金縛りを受けてその場から動けなくなってしまう。そして、女性はあさひの目を見るとその瞳がステンドグラスのような物に変わる。そしてあさひの目もそれを受けてステンドグラスのような物に変化。その直後、あさひは意識を失って倒れ込んだ。

 

「……さひ!あさひってば!」

 

その直後、あさひが目を開けるとそこにいたのは心配そうに自分を揺さぶるあげはだった。そしてあさひが体を起こすとそこは公園のベンチであり、先程までいたはずの部屋では無い。しかも、その記憶さえも消されているのか何故あげはと離れ離れになったのかもわからない様子であった。

 

「あ……げ……は姉?」

 

「良かった……心配したんだからね」

 

「あげは姉、どうしたの?」

 

「え……ちょっとあさひ。あげは姉って呼び方……」

 

「え?あ!ごめん。呼び捨てが良かったんだよね……何でだろ。俺、あげはの彼氏なのにこんな呼び方して……」

 

「アイツ、私からあさひを引き剥がして一体あさひに何を吹き込んだの……」

 

あげはが女性を不審に思う中、あさひはその女性から何をされたのかも覚えていない状態にされていた。そのためあさひはただあげはが自分を心配しているだけに見えてならなかった。

 

「あげは、どうしたの?そんなに心配して」

 

「心配になるよ!あの人……私の大切な彼氏に手を出して無いわよね?変な事を吹き込まれてたら……私、きっと……怒りでどうかしちゃいそう」

 

「あげは、落ち着いて……俺のためにそんな顔にならないで。俺の不注意が招いた事なんだ……だからいつものあげはに戻って」

 

あげははそれを聞いてようやく落ち着くが、それでもあさひを唆されたのでは無いのかと彼女を疑う気持ちや胸騒ぎが止まらなかった。

 

「ごめん、私……あさひの事が心配で……本当にどうかしてた」

 

「大丈夫……心配しなくても俺はあげはが好きだし、その気持ちはずっと変わらないから」

 

その瞬間、あげはがあさひをギュッと抱きしめるとその温もりを確かに感じることになる。

 

そして二人が抱き合う様子を女性は薄らと笑みを浮かべつつ遠くから見ていた。

 

「ちょっとやり過ぎたかしらね。でもこれで刻印は完了。あとはランボーグを適度にぶつけるだけね。ただ、今回は見逃してあげるわよ。正直さっきの刻印とかで能力を使い過ぎてエネルギーも枯渇しているしね」

 

そこにバッタモンダーがやってくると女性へと話しかけた。

 

「あなたもわからない人ですねぇ。どうしてそこまでキュアサンライズが気になるんだ?」

 

「……私は愛に飢えている……私は誰かから愛情を注いでもらった事がない。だから本当の愛が欲しい……。そしてキュアサンライズなら私の事を愛してくれる……そう思ったからよ」

 

その時女性が思い出したのは幼い頃に受けた暴力や罵詈雑言。そして、何度も殺されかけた記憶だった。

 

「はぁ……仕方ない。ここは僕がランボーグを……」

 

「必要無いわ。ここにプリンセスはいない。狙うのならプリンセスにしなさい。もっとも、プリンセスを狙った先でアイツらに出会ってボコボコにされない自信があるのならだけど」

 

「ぐ……」

 

バッタモンダーは基本的に相手への嫌がらせを快楽にしている所がある。今の状況で二人に仕掛けても平常心を保っている二人から返り討ちに遭うと考えてバッタモンダーはその場から去る事を選んだ。

 

「それで良いわ。無駄な損害は避けるのが鉄則よ。さて、キュアサンライズ……私の愛しい王子様。あなたからの愛を受けるためにも私も頑張らないとね」

 

それから女性も消えていき、女性が見ていたあさひとあげはは一旦家に帰ることになった。

 

「あさひ、あさひはこれから何があっても私の事を好きでいてくれる?」

 

「……勿論だよ。もしあげはが苦しい目に遭っていたら……俺がこの手で絶対に救い出す」

 

「そっか……ごめんね、疑うような事を言っちゃってさ」

 

「うん。大丈夫……」

 

あさひがこう言う中、彼の目が薄らとステンドグラスのような瞳になっていたのに二人は全く気づくことは無かった。




また次回もお楽しみに。


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カバトンの就活

キュアスカイことソラとの一騎打ちに敗れ、アンダーグ帝国から始末されそうになったカバトン。彼はその時キュアスカイに助けられて粛清を免れた。それからというもの、カバトンは心を入れ替えてソラシド市で再出発……したのだが。

 

「はぁ……また面接に落ちたのねん。これで十社目」

 

見事に就職難な状況に陥っていた。何しろ、履歴書に書ける事がアンダーグ帝国の一員であった事ぐらいなのでまともに受け取ってもらえないのだ。そして仮にそこを突破しても面接で上手く話す事ができずに落ち続けた。

 

「今までずっと悪い事をしてきたからその報いを受けてるような気がするのねん」

 

カバトンはプリンセス・エルを狙い、あの手この手で悪さをしてきている。そのためにその分の報いを受けてるのではと考えるようになっていたのだ。

 

「でも今更アンダーグ帝国に戻ったってまた粛清されるだけ……。それどころか良い笑い者なのねん」

 

カバトンにはもうアンダーグ帝国に戻る道もプリキュアと敵対する道も残されていない。この街で働き、生きていくしか無いのだ。

 

「はぁ……どうするのが正解なのねん。こんな時は……」

 

カバトンはプリンセスを狙っていた時によく通っていたおでん屋の屋台へと足を運んだ。

 

「いらっしゃい」

 

「親父、また相談に乗ってもらうのねん」

 

「その様子だとリストラされてから再度就職するのに苦戦しているようですね」

 

「わかってるのなら話は早い。どうにかできないものか……」

 

「ふむ……確か前に力なら誰にも負けないと言ってませんでしたか?その自慢の力を活かす仕事はどうでしょう」

 

「なるほどなのねん。確かに今まで受けていた会社はデスクワークが多かった。俺様の力を活かす仕事を選ぶという手があったのねん」

 

カバトンはおでん屋の店長からアドバイスを貰い、それから再度就職のための行動を開始する。

 

「ふむふむ、こっちの方が給料は良いが仕事の時間が長いと……」

 

カバトンはどの仕事が自分に合うのかしっかりと考えるようになり、彼なりに知恵を絞って上手く立ち回れるようにしていく。それから彼は第一希望を決めてその会社へと入るために努力を怠らなかった。そして、面接の日はやってくる。

 

「今度こそ就職してやるのねん!昨日はカツ丼とやらをいただいて気合いも入った!今度こそは絶対に入社するのねん!」

 

カバトンは気合い入りまくりな状態で会場まで移動する中、そこに謎の女性とバッタモンダーが現れた。

 

「久しぶりね。カバトン」

 

「ひっ!?あなたは……」

 

「僕もいるよ」

 

「な、何の用なのねん」

 

カバトンは久しぶりのアンダーグ帝国の仲間との再会するが、二人はカバトンに対して蔑みの目を向けてきた。

 

「見損なったわよ。あの時雷に打たれていればお前は楽になれたのに」

 

「挙げ句の果てに敵であるプリキュアに救われて生きながらえているとは」

 

二人はカバトンを馬鹿にするとカバトンは怒りを何とか抑え込み二人を押し退けて歩いて行こうとする。

 

「……もう一度だけチャンスをやる。……と言ったらお前はどうする?」

 

「何だと?」

 

女性はニヤッと笑うとカバトンに問いかける。カバトンはそれを聞いて驚いた顔つきだ。

 

「お前は散々失敗を重ねてあのお方の信用を失った。しかし、私の方から掛け合って最後に泣きの一回をお前に与えても良いと言われたのだ。勿論、今回成功しても約束の報酬は無い。その代わりにアンダーグ帝国に復帰できる上にこんな所で働く必要は無くなるぞ」

 

女性は甘い言葉でカバトンを自分達の方向へと引き入れようとしていく。その言葉にカバトンの心は揺れた。

 

「(ど、どうするのねん……もし成功すればアンダーグ帝国に帰れるのか……?)」

 

少しの間カバトンは考え込んでいたが、バッタモンダーはニヤニヤとカバトンを見下しているような状態だ。

 

「君はもう我々の帝国では落ちこぼれの烙印を押されているし、このまま手ぶらで帰るよりはプリンセスを捕まえた方が良いんじゃないか?」

 

「……嫌なのねん」

 

「「……は?」」

 

何とカバトンは二人からの提案を跳ねつけた。つまり、断ってしまったのだ。

 

「良いのかよ!お前はこの街で生きるしか無いんだぞ!」

 

荒れるバッタモンダーに対して女性の顔は全く変わらない。

 

「本当に良いのか?こんなチャンスは二度と無いわよ」

 

「ああ!俺はアイツらと約束した。もう二度とプリンセスを狙わないと!一度は約束を破ったが……俺はもうお前らの部下でも何でも無い!命令に従う必要は無いのねん!それに……俺はこの街で生きると……そう決めたからな!」

 

カバトンの決意は固く、これ以上は説得できないと考えた女性は溜息を吐くと仕方ないとばかりに指を鳴らした。

 

「……カモン!アンダーグエナジー!」

 

そう言うとアンダーグエナジーが出てきてカバトンの中へと強制的に入っていくとそのまま前にカバトンが変身した巨大な姿に変化。それだけではなく今回は赤黒いスパークが散る強化態へとなってしまった。

 

「な、何をするのねん!」

 

「……あなたは私達の期待を裏切った。情けを踏み躙ったのだ。あのお方はお前のような者は要らないと仰られている。もはやお前に出来るのは暴れる事でプリキュアを呼び寄せ、プリンセスを攫うことぐらいだ」

 

二人は初めからカバトンを利用するつもりだった。カバトンを使い、エル達を誘き寄せて自分達で手柄を横取りするために彼を操る考えだったのだ。

 

「お前が暴れれば、約束を破ったと考えたプリキュアはもう二度とお前に情けはかけない。大人しくプリキュアに倒されるんだな」

 

「い、嫌なのねん!死にたく無いのねん!」

 

カバトンは抵抗しようとするが、女性の持つアンダーグエナジーの力は強力であり、カバトンの抵抗も虚しくあっという間に乗っ取られてしまった。

 

「俺様は……強ぇええんだ!」

 

カバトンは完全に理性を失い、ランボーグのようにただ命令を聞いて暴れ回る怪物と化してしまう。そこに街に買い出しに出てきていたあさひ、ましろ、あげはの三人がエルと共にその様子を見つける。

 

「あれは、カバトン!?」

 

「久しぶりに会ったけど……アイツまた!」

 

「いや……どこか様子がおかしい。なんだか自分の意思とは関係なく暴れてる気が……」

 

するとカバトンは四人を見つけるとエルへと視線を向ける。

 

「プリンセス……今日こそはいただくのねん!」

 

「仕方ない……やるよ!」

 

三人は被害を拡大させるわけにはいかないのでカバトンと戦うことにした。

 

「「「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!」」」

 

「プリズム!」

 

「バタフライ!」

 

「サンライズ!」

 

「ふわりひろがる優しい光!キュアプリズム!」

 

「アゲてひろがるワンダホー!キュアバタフライ!」

 

「夜明けにひろがる眩い朝日!キュアサンライズ!」

 

「「「レディ……ゴー!ひろがるスカイ!プリキュア!」」」

 

「俺は……強ぇええんだ!」

 

カバトンは口にエネルギーを溜めるとそこから光線を発射してくる。三人はそれを躱しつつ接近し、同時にパンチを繰り出した。

 

「「「はあっ!」」」

 

しかしそれはカバトンがジャンプして躱し、三人は空中でぶつかってしまう。

 

「オラッ!」

 

その隙を突かれて三人は同時にカバトンからのパンチを受けて地面に叩きつけられてしまう。

 

「なんて威力なの……」

 

「たった一撃でここまでダメージがくるなんて……」

 

三人共立とうとするがその痛みは深く、何とか堪えるので精一杯だ。

 

「もらったのねん!」

 

続けてカバトンが二発目の攻撃態勢に入るとサンライズは何とか立ち、炎の剣で受け止める。

 

「くぅうう……」

 

「「サンライズ!」」

 

「二人共、今のうちに!」

 

サンライズが時間を稼ぐ間に二人は立つとそのまま二手に分かれてカバトンを囲む。それからプリズムは射撃を放ち、バタフライはミックスパレットを片手に取る。

 

「二つの色を一つに!レッド!ホワイト!元気の力!アゲてこ!」

 

バタフライがサンライズにその力を使うとサンライズに力が漲り、カバトンの攻撃を押し返す。

 

「な、何ぃ!?」

 

「そういえば、キュアバタフライもミックスパレットもカバトンは初見だったよな!」

 

サンライズの言葉にバタフライは頷くとそのままカバトンの死角に移動して盾を召喚した状態で突撃。シールドチャージを敢行した。

 

「のわっ!?」

 

「プリズム!」

 

バタフライとサンライズが隙を作った所でプリズムからの浄化技が放たれる。

 

「ヒーローガール!プリズムショット!」

 

その一撃がカバトンへと命中する……だが、その瞬間、カバトンはプリズムショットのエネルギーを自身のエネルギーで粉砕してしまった。

 

「嘘!?プリズムショットが通用しない……」

 

「前も思ったけど、このアンダーグエナジー……カバトンやバッタモンダーとは別の人が出してる気がする」

 

カバトンやバッタモンダーのランボーグには効いていた個人の浄化技が通用しないとなると、やはり鍵は合体技になる……しかし、スカイとウィングがいないので使える合体技はサンライズとプリズムのシャイニングサンピラーぐらいだ。

 

「どうにかして私が時間を稼ぐから二人で連携技を!」

 

バタフライがそこまで言った所でカバトンの声が聞こえてきた。

 

「……けて……助けてくれぇ……」

 

「これって……」

 

「やっぱりカバトンは自分の意思で暴れてるんじゃない……誰かに操られてるんだ」

 

こうなると三人はカバトンに攻撃するのを躊躇ってしまう。下手にカバトンを傷つけたく無いからだ。だがカバトンはそんなのお構い無しに暴れてくる。

 

「こうなったら……そうだ!スタイルチェンジ!ヤタガラス!」

 

するとサンライズはヤタガラススタイルにチェンジすると手に漆黒の槍を構える。

 

「サンライズ、どうするつもり?」

 

「こうするのさ!」

 

サンライズが槍を投げてカバトンの影に命中させると動きを止めさせる。それからサンライズは跳び上がると背中に黒い翼を生やして三人に分身。そのまま加速しながらヤタガラススタイルの浄化技を発動した。

 

「ひろがる!サンライズシャドー!」

 

その瞬間、カバトンの影に刺さっていた槍がいきなりひろがるとカバトンを包み込むようにエネルギーフィールドとなり、そこにサンライズが突っ込んで連続で蹴りを放つ。

 

三人のサンライズの蹴りが命中した瞬間、そのエネルギーフィールドがアンダーグエナジーを吸収していき、中からほぼ無傷なカバトンが出てくるとサンライズがそれを抱えて飛び出す。

 

「凄い……もしかして今の技……」

 

「そ。アンダーグエナジーに取り込まれた人や生物を助ける事ができる。その代わり、威力は控えめだからまだあのアンダーグエナジーを完全には消せてない」

 

「だけどこれならもう気にする事なく技を使えるよ!」

 

それからサンライズはペガサススタイルに変身し、プリズムと共に合体技を発動する。

 

「「スカイミラージュ!」」

 

「空より降り注ぐ眩い光!」

 

「熱き力よ、光に宿って闇を打ち払う輝きとなれ!」

 

「「プリキュア!シャイニングサンピラー!」」

 

二人の技が残されたアンダーグエナジーを浄化すると中から赤黒いエネルギーが出てきてそれがまたどこかへと飛び去っていく。それから三人はカバトンの方を見ると彼はゆっくりと目を覚ました。

 

「俺は何でここで……」

 

「大丈夫か?カバトン」

 

「お前ら……まさか、助けてくれたのねん?」

 

三人はカバトンの質問に頷く。するとカバトンは嬉しそうになると三人へと頭を下げた。

 

「ありがとうなのねん!何かお礼をしたいねんが……あ!もうこんな時間なのねん!」

 

それからカバトンは大急ぎで面接会場に向かう事になる。それを見届けた三人はカバトンがちゃんと改心している事が知れて安心し、帰ることになる。

 

「あ!そういえばカバトンにアンダーグ帝国について聞けば良かった!」

 

あさひの言葉に二人も同じ事を考えたが、もう遅いので諦めることになったのは余談である。そして……

 

「やったのねん!ようやく俺も働けるのねん!」

 

とうとうカバトンも就職に成功し、この街で新たな一歩を踏み出す事になる。彼がこの先どのような生活を送るのか。それはまだ誰も知らない話である。

 

その頃、謎の女性は先程サンライズ達が浄化したエナジーをまた取り込み、体に貯めていた。

 

「あなたも人の事言えないんじゃ……」

 

「ふふっ、そうね。でも……この負けは私の力になる。キュアサンライズ……あなたを私のものにするためのね」

 

女性はまた笑みを浮かべつつ上機嫌になる。そして、彼女と一緒にいたバッタモンダーはまた次の作戦を考える事になるのだった。




また次回もお楽しみに。


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ましろの挑戦!絵本を描こう!

ある日の朝、珍しく家にはましろとあさひ、エルの三人だけだった。その理由はソラが日課のランニング。ツバサが外で飛行機の観察。あげはが以前面接しに行って入る事が決まった『Pretty Holic』でのバイト。ヨヨは乗馬クラブに行っている。そのために今はこんなにも人数が少ないのだ。

 

「淹れるよ、姉さん」

 

「ありがとう。あさひ」

 

あさひがましろへと紅茶を出す中、ふとましろがあさひへと話しかけた。

 

「そういえば、こんなにも家が静かなのは久しぶりだね」

 

「あー、確かにここ最近は賑やかだったからな。……俺もカゲロウがいなくなってからなんだが物足りない気分だよ」

 

あさひとしてもカゲロウがちょくちょく心の中であさひを揶揄っていたのが恋しく思えるほどに彼がいなくなって寂しさを感じている。

 

「皆張り切ってるし……私達はこれからどうしようか?」

 

「うーん、それなら丁度良い所に小さな依頼人が来たみたいだよ」

 

「え?」

 

あさひの言葉にましろが首を傾げる中、そこにやってきたのは絵本を抱えてこちらへと歩いてくるエルだった。

 

「ましゅろ〜、あしゃひ〜!」

 

「あ、絵本だね。一緒に読もうね。あさひ、手伝ってくれる?」

 

「勿論、俺も手が空いてた所だしな」

 

「えるぅ〜!」

 

エルは二人に読んでもらえる事に嬉しさを感じ、それから三人で絵本を読む事にしたのだが……

 

「……待って、エル。まだ読むの?」

 

「える!」

 

「もう十冊は読んだよ!?」

 

エルはとにかく絵本を読んでもらいたい気分なのか、十冊を超えてもまだまだ元気に絵本を出して催促してくる。

 

「姉さん、こうなったらエルの気が済むまで読む?」

 

「それが良さそうだね……。よーし、こうなったら何冊でも読んじゃうよ!」

 

それからましろとあさひはエルの気が済むまで絵本を読むのに付き合う事になり、ソラやツバサ達が帰ってくる頃には読み終わった絵本の山ができていた。

 

それから四人はあげはの働く『Pretty Holic』に行くことになり、エルも連れていく事になる。

 

「そんなに二人で絵本を読んだんですか?」

 

「……おかげさまで声ガラガラだよ……」

 

「でも、エルちゃんが笑顔になったし良かったんじゃない?」

 

「優しいですね。やっぱりお二人は双子の姉弟です。優しさも瓜二つですし!」

 

それからエルを含めた五人は『Pretty Holic』に到着し、あげはに声をかけることになる。

 

「あげはさん!」

 

「あ、やっほー!皆、来てくれたんだ」

 

「あげはさん、忙しいのにバイトまで……無理してるんじゃないですか?」

 

ツバサの心配に対してあげはは心配いらないとばかりに上機嫌に言葉を返す。

 

「全然!前からここでバイトしたいとずっと思っててさ、もうめっちゃくちゃ楽しくて!」

 

「……面接の日は色々と災難だったけど無事に受かったし、楽しめてるのなら良いバイトに入れたんじゃない?」

 

あさひがそう言う中、ツバサはまだ心配そうな顔つきを崩さなかった。

 

「無理したらダメですからね!」

 

「あはは、心配しすぎ!お母さんじゃないんだから」

 

「それはこっちの台詞です!」

 

「あげは、その格好も似合ってるよ」

 

「ホント!?嬉しい!!」

 

そう言ってあさひへと抱きついてくるあげは。あさひはこれもあげはから自分の事が好きであるというスキンシップの一貫として受け取っている。それでもこんな店の中でやられるのは恥ずかしいのだが……。

 

「あげは……それをするのはせめて家の中だけにしてって言わなかったっけ?」

 

「えぇー、良いじゃん。減るものじゃないんだしさ!」

 

あさひとあげはは恋人となってもう暫く経ち、少しずつ次のステップに進めるようにあさひも努力してきている。あさひとあげは、ツバサがやり取りしている中、ソラとましろはコスメ売り場に置いてある物を見ていた。

 

「あ!これは新作だね!」

 

「綺麗な色ですね!」

 

「うん。夏のキラキラ太陽に負けないぐらいに元気になれそうだよ!」

 

ましろが興奮気味にそう言う中、一人の女性店員が二人の元に歩いてくる。

 

「素敵な表現ですね」

 

「あ!菜摘さん!」

 

「あげはちゃんのお友達?よくうちのお店に来てくれてるよね」

 

あげはが菜摘と呼んだこの黒髪をおろした人物はあげはのバイトでの先輩で、普段は美大に通っている大学生だ。

 

「はい!」

 

「そっちの男の子は前に言っていたあげはさんの彼氏さん?それによく見たらあげはちゃんのお友達とそっくり……もしかして双子だったりするの?」

 

「どちらも正解ですね。俺は姉さんと同じ日に生まれた双子の弟です」

 

「ましろんはここの大ファンで、それで私もよく来るようになった感じです!あさひもましろんの付き添いで来ている事が多いですね」

 

「『Pretty Holic』は私の癒しなんです!」

 

「俺は少しでもこういうものを知る事で今の女性が何を欲しているのかをちゃんと理解したいので来ています」

 

あげはの説明の後にあさひとましろがそう言うと菜摘はニッコリと笑い頷く。

 

「あさひ君……は、あげはちゃんと付き合ってるんだよね?……後であげはちゃんが好きそうな物を一緒に選ばない?」

 

「えぇっ!?でも、本人にバッチリ聞かれてるのに……」

 

あさひは菜摘からの提案に驚くが、彼女の好意を無駄にするわけにはいかないので受けることにした。

 

「あ!そうだ。ましろんさん、ちょっと相談に乗ってもらっても良い?」

 

菜摘はそういうと以前ソラが使った体験コーナーへと全員で移動する。そこには綺麗な海の絵が貼られていた。

 

「ここ、何か物足りない気がして。『Pretty Holic』ファンのましろんさんなら何か良いアイディアがあるかなと思って」

 

「この絵……菜摘さんが?……綺麗。まるで人魚が住んでそう」

 

「人魚……それ良いかも!」

 

菜摘はましろのつぶやきを聞いてそれをすぐに絵へと描き写すと中央に大きく空いていたスペースに人魚が大きく描かれて絵は更に華やかになる。

 

「凄い……短い時間であっという間に描いちゃうなんて……」

 

「これ、凄く良い!新作コスメを買ったら人魚になれそうって感じがする!」

 

「ありがとう。私にもましろんさんみたいな才能(センス)があったら、絵本もスイスイ描けるんだけど」

 

「絵本……ですか?」

 

「あれに挑戦してるの!」

 

菜摘が指を指すとそこにはソラシド市で開催している絵本のコンテストの張り紙がされていたのだ。

 

「絵本コンテスト……」

 

「うん。でも、中々上手く書けなくてね……そうだ、ましろんさんもやってみたら?」

 

「いえいえ、そんな……」

 

ましろは自分には荷が重いと謙遜するが、あさひとあげはは乗り気になっていた。

 

「面白そうじゃん、ましろん」

 

「良いんじゃない?姉さん、前に自分がやりたい事がわからないって言ってたでしょ?こういうのがキッカケになって将来の夢が見えてくる……みたいな事もあると思うよ」

 

「そうかな……」

 

それからバイト中のあげはを除くあさひ、ソラ、ましろ、ツバサ、エルはホームセンターへと足を運び、応募に必要となるスケッチブック等の買い出しに行く事に。

 

「ありましたー!」

 

「こっちも!」

 

「荷物は俺が持つから姉さんは使いたい物を見てきなよ」

 

「でも……本当にやるの?」

 

「……ましろさんが前に作ってくれた雲パン、感動しました。菜摘さんが言うようにましろさんには才能(センス)と言うものがあるんだと思います!」

 

ソラにも励まされてましろは嬉しい気持ちになるとソラは続けてましろへと頭を下げた。

 

「私、ましろさんが描く絵本を見てみたいと思って……私の勝手な願望ですが!」

 

「取り敢えず、挑戦してみようかな!」

 

ましろは皆に推されてとうとうやる気になり、あさひもそんな姉を全力でサポートしようと張り切った。

 

「姉さん、俺に何かできる事があったら教えてくれる?俺、できる限り力になるから!」

 

「うん」

 

するとエルが砂場遊びのための小さなバケツやスコップ等を手にやってきた。

 

「わーい」

 

「それは絵本とは関係無いけどね……欲しいの?」

 

「えるぅ〜!」

 

どうやらエルは砂場遊びがしたいらしく、笑顔を浮かべながら上機嫌な様子だ。するとあさひはましろが買った分とは別でスケッチブックを手に取っていた。

 

「あれ?あさひ君もやるんですか?」

 

「いや、応募するのは姉さんだけだよ。俺はあげはが保育園の実習とかで使う事ができるように別で絵本を描くだけ。ついでに俺も一緒に絵本を描いていれば姉さんが手詰まりになった時にサポートしやすいかなって」

 

あさひの言葉にソラは納得する中、ツバサはそんなあさひをジーッと見ていた。

 

「……そんな事言って、本当はあさひ君も絵本を描くのを楽しみたいだけじゃ……」

 

「ギクッ……」

 

どうやらあさひの反応からツバサの言葉は図星のようであさひとしてもコンテストには応募せずとも絵本を描くのをやってみたいようだ。

 

「あさひ君、ボク達に気は使わなくて良いからやってみてください」

 

「そうですよ。もしかするとあさひ君も応募したくなるかもしれませんし!」

 

「あはは……それは多分無いよ。……俺には姉さんのような人を笑顔にする才能なんて無いしね」

 

それからあさひ達は物を購入してから公園に向かうとましろとあさひは早速絵本を描く作業へと取り掛かる。

 

「ボク達はここで遊んでますので二人は絵本作り頑張ってください!」

 

「「ありがとう!」」

 

それから二人は絵本作りに取り掛かる。あさひは既に描きたい物語が決まっているのか、もう既に手にしていたペンが動き始めていた。

 

「早っ!……うーん、どんなお話が良いんだろ……」

 

それからましろは色々と構図を考え始める。だが、中々上手く構成が決まらないのか、時々一人ツッコミを入れながら考えている状態だった。

 

「……姉さん、大丈夫?」

 

「うん……最初は桃太郎の話が出てきて、それがシンデレラの話とごっちゃになって……」

 

「……姉さんは固く考えすぎ。まず絵本を通して伝えたい事を考えるんだ。そうすれば、そのフィナーレに向かってどうすれば自然に向かえる良いか自然とわかってくるよ」

 

「そ、そんな事言われても……」

 

あさひからのアドバイスにましろは更に頭を混乱させる。しかし、あさひの手は止まる事なくスイスイと描いてくのだった。

 

するとそこにソラがやってくると二人の隣に座った。

 

「……私が先走ってましろさんを困らせてしまったみたいですね」

 

「ううん。褒めてもらえて嬉しかったし……でも、皆みたいにこれをやりたいって気持ちにはなれなくて」

 

そんな中、あさひは夢中で絵本を描いている中、そんなあさひを見てましろは羨ましそうにしていた。

 

「あさひはこんなにも夢中になっているのに……私は……」

 

ましろが溜息を吐いているとソラが落ち込むましろを励まそうとましろに声をかけていく。

 

「あの!ましろさんはましろさんのままで良いと思う気持ちは今も変わりません……だから気にしないでください」

 

「うん……」

 

そうしているとツバサから困ったような声が聞こえてくると集中していたあさひやソラ、ましろの目線がそちらへと向く。そこにはエルの近くにエルと同い年ぐらいの小さな子供がいるのであった。




また次回もお楽しみに。


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エルの我儘とあさひの説得

ツバサが困ったような声を上げ、それを聞いたあさひ、ソラ、ましろがその方向を向くとそこにはエルの近くにエルと同い年ぐらいの男の子が立っており、エルが持っている砂場遊びの道具を貸して欲しそうにしていたのだ。

 

「プリンセス、一つぐらい貸してあげれば良いじゃないですか」

 

「えるぅ……えるぅ!」

 

エルは道具を貸すのを嫌がっており、あからさまに嫌そうな顔つきになっていた。

 

「どうしたの?」

 

「それが、この子も一緒に遊びたいって来たんだけどプリンセスは絶対に貸さないって……」

 

「だめぇ!」

 

「そんな心の狭い事でどうするんですか?仲良くしないとダメですよ!」

 

ソラが叱ってもエルはまだ貸すのが嫌なのか渡すそぶりすら見せない。そこにましろがそっとエルの近くにしゃがむとエルへと話しかける。

 

「ね、エルちゃんの大好きなこのおもちゃで、お友達と一緒に遊べたら……きっともっと楽しいよ」

 

「えるぅ……」

 

ましろの説得にエルは悩んだ様子であったが、最終的な結論が変わる事は無く……。

 

「いやーや!」

 

「エルちゃん……」

 

その様子を見ていたあさひは仕方ないとばかりにエルの前に回り込むとましろと同じようにしゃがんだ。

 

「それじゃあさ、俺が一つお話しを聞かせてあげるよ。えっと、そっちの子の名前は……」

 

「……そうや」

 

その名前にあさひは一瞬驚く。この前別世界から来て絆を深めた友達と同じ名前だったからだ。しかし、同じ名前の人は幾らでもいるのであさひはすぐに気を取り直して続きを話す事にした。

 

「そうや君も一緒に聞きたい?」

 

あさひのその言葉にそうやは頷く。それからあさひは二人へと一つのお話しを語る事になる。

 

「むか〜し昔、雲の上の世界に大きなお城がありました」

 

「え……」

 

「あさひ君……それは……」

 

ソラとツバサがあさひがスカイランドの事を赤の他人の男の子に言おうとしているのではと考えて止めるように言おうとするが、二人の真剣そうな顔つきに中断させたら取り返しがつかなくなると考えてその気持ちを押し留める。

 

「お城には小さな王子様とお姫様、そして沢山の家来の人々が住んでいました。ある日、いつもよりも早起きしたお姫様は王子様が目覚める前に城の中にあるおもちゃを独り占めにしてしまいました。後から起きてきた王子様は何度も“貸して”と言いましたがお姫様は許しませんでした」

 

「えるぅ……」

 

エルはそれを聞いてそのお姫様は酷い人だと考えた。しかし、それと同時に自分が今やっていることはそのお姫様と何も変わらないのではという事にも思い至る。

 

「王子様は泣き出してしまい、家来達は王子様に何とか元気になってもらおうと手を尽くしましたが泣き止む事はありませんでした」

 

「え、えるぅ」

 

あさひの話を聞いているとエルの心が少しずつ揺れ始めているのかジッと砂場遊びの道具を見つめた。あさひはもう一押しと思い、物語の最後の部分を語る。

 

「そんな王子様の様子を見たお姫様は悲しい気持ちでいっぱいになり、王子様に自分のおもちゃを分けてあげました。すると王子様は泣き止むと“一緒に遊ぼう”と言いました。二人はそれから仲良く遊ぶ事に……するとどうでしょう……お姫様はさっきまでよりも遊びの時間が楽しくなったではありませんか」

 

あさひはただエルへと砂場遊びの道具を貸してあげたらと言うのではなく、お話しにする事でエルの心を動かしつつ彼女に一緒に遊ぶことの楽しさを教えて説得しようと試みる。

 

「……えるぅ」

 

「こうして、王子様とお姫様は仲良く一緒に遊びながら楽しい時間を過ごしたのでした。めでたしめでたし」

 

それからエルとそうやはパチパチと手を叩きながら機嫌を良くした。そこであさひはエルへと話しかける。

 

「エル、さっき姉さんが言ってたけど、一人で遊ぶのと皆で遊ぶの。どっちが楽しいと思う?……もしこれでもエルが嫌だと言うのなら俺はこれ以上は言わない。でもさ、貸してあげる事の楽しさを覚えられればエルは姉さんみたいな優しい人になれるよ」

 

 

エルはあさひのお話しと説得を聞いてまた心が揺れていき、それから彼女が取った行動は……

 

「える!」

 

「よく出来たね。偉いよ、エル」

 

エルは砂場遊びの道具を少し不満そうな顔つきだが、そうやに差し出すとそうやは嬉しそうにそれを手にし、それから二人で遊び始める事になる。

 

「ふぅ、なんとかエルが聞き入れてくれて良かった」

 

「あさひ君……凄いです!」

 

「……偶々だよ」

 

そう言ってあさひが先程まで描いていたスケッチブックを見せると先程の話の中にあった雲の上の世界にあるお城が描かれていた。

 

「それって……」

 

「うん、ちょうど描いていたのは今の話を絵本に纏めた物。あげはからは一緒に遊ぶことの大切さを教えられる何かが欲しいって言われたから」

 

「……未熟です。私はエルちゃんを叱るばかりでした。ましろさんもあさひ君もエルちゃんに優しい気持ちを伝えていて……凄いです」

 

「ううん。あさひがいてくれなかったらきっとエルちゃんはわかってくれなかった……。ありがとう、あさひ」

 

「いや、姉さんが先にエルに優しさを伝えてなければ成立しなかった。姉さんがダメなんて事は無いよ」

 

ましろはあさひからこう言われてもまだ心の中のモヤモヤは無くならなかった。それからふと声が聞こえてきて近くにあったベンチの方を向くとそこにはとある親子が絵本を読んでいて、ましろはそこから何かを思いつく。

 

「そうだ!……ごめん!私、先に帰ってるね!」

 

それからましろはその思いつきが消えてしまわないうちに急いで家へと戻っていく。あさひはそんな姉の姿を見送りながら自分もスケッチブックを手に取る。

 

「それじゃあ俺も家に戻るよ。俺も早めに絵本を完成させたいし」

 

その日の夕方。あげはがバイトから家に戻ってくるとましろがずっと絵本を描く事に打ち込んでいたのに驚いていた。

 

「えぇ!?じゃあ、昼間からずっと絵本を描いていたの?」

 

「えぇ」

 

「そっか、そんなに夢中になって……」

 

「……あんなましろさんは初めて見るわ」

 

するとやかんに入っていたお湯が沸き、それを受けてあげはが止めに行くとソラは不安そうな顔をしている。

 

「ましろさん、無理しているんじゃ……」

 

ソラの心が落ち込む中、あげはがソラへと紅茶とお菓子の入ったトレーを出す。

 

「ソラちゃん、ましろんとついでにあさひの様子を見てきたら?」

 

あげはに言われてソラはまずあさひの部屋へと入るとあさひは黙々と絵本の制作を頑張っていた。そんな中、ソラがあさひの隣にお菓子などを置くとあさひは絵を描く手を止めずにソラに話しかける。

 

「……姉さんの事、自分が無理に巻き込んだと思ってたりする?」

 

「え!?」

 

ソラは思いっきり図星を突かれて驚くと共に不安そうに小さく返事を返す。

 

「……はい」

 

「そっか。……でもさ、さっき姉さんが帰る時の顔を見たんだけど……あの顔はやりたいことを見つけたって顔だったよ」

 

「……!!」

 

「だからソラが気に病む必要は無い。むしろ、笑顔で構えていた方が姉さんも気持ち良いと思うんだ」

 

「あさひ君……」

 

その後、ソラはましろの元に行くとましろにも紅茶とお菓子を置きに行く。その時、ましろがソラにこの作業が楽しいと言ったため、ソラは更に笑顔になるのだった。

 

それから日は流れていき、その間ましろは他の面々にも相談や協力してもらいつつ絵本を完成させていく。こうして彼女の描いた絵本は完成。しかし、完成したのは提出期限日の昼過ぎだった。

 

「もうこんな時間!?急がなきゃだよ!」

 

ましろは準備を済ませるとすぐに市役所へと提出するために慌てて街へと移動を開始。そこにあさひ達もついていく。その足取りは慌てているような様子だ。しかし、その様子を上から見下ろす二つの影……バッタモンダーと謎の女性である。

 

「おや?随分と慌てて……何か大事な用事かな?」

 

「……相変わらず趣味が悪いな、バッタモンダー」

 

「ふ、ふん!こういう時こそ仕掛ける時なんだよ。相手の平常心が乱れている時を狙いピンポイントでダメージを与え、プリンセスを掻っ攫う」

 

「……はぁ。ならば私も自分の目的を果たすとしよう……カモン、アンダーグエナジー」

 

女性はバッタモンダーよりも一足先にアンダーグエナジーを召喚するとそれをランボーグを呼び出すが、敢えてそのランボーグを隠して伏兵としての状態にさせた。

 

そんな事を知らないあさひ達は市役所への道を歩いていく。すると横断歩道の信号が赤になり、あさひ達は歩みを止める事になる。

 

「何時なんですか?締め切り」

 

「五時までに市役所に出さないとで……」

 

時刻はまだ三時半過ぎ……このまま行けば無事に間に合わせることが可能だ。だが、現実とはそう上手くいかないもので……あさひ達の前をトラックが通り過ぎると横断歩道の反対側にバッタモンダーが現れた。

 

「「あ!」」

 

「バッタモンダー!」

 

「その封筒、随分と大事な物なんだね?」

 

「アンタには関係無いし!」

 

あげはがバッタモンダーを睨みつける中、あさひも怒りを露わにしている。

 

「あのさ、タイミングを考えてくれないか?今はお前に構ってる余裕は無い」

 

「僕は心配なのさ。何かアクシデントに巻き込まれてその封筒を失ってしまわないかとね」

 

「そのアクシデントを起こすのはお前だろうが!」

 

「ふっ、カモン!アンダーグエナジー!」

 

バッタモンダーはアンダーグエナジーを召喚し、それを近くにあった歩行者用の信号機に取り込ませるとその姿をランボーグへと変えさせる。

 

「ランボーグ!」

 

「もう!こんな時に……ホント嫌な奴!」

 

「行こう!」

 

それから五人は変身するために構えるとスカイミラージュとスカイトーンを使用する。

 

「「「「「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!」」」」」

 

「スカイ!」

 

「プリズム!」

 

「ウィング!」

 

「バタフライ!」

 

「サンライズ!」

 

「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」

 

「ふわりひろがる優しい光!キュアプリズム!」

 

「天高くひろがる勇気!キュアウィング!」

 

「アゲてひろがるワンダホー!キュアバタフライ!」

 

「夜明けにひろがる眩い朝日!キュアサンライズ!」

 

「「「「「レディ……ゴー!ひろがるスカイ!プリキュア !」」」」」

 

五人は変身を完了すると速攻でランボーグを倒すために戦闘を開始するのであった。




評価が欲しい……。今の自分の作品がどのくらい面白いのかを知るためにも是非入れていただきたいです。また次回もお楽しみに。


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ましろが踏み出した新たな一歩

ランボーグは早速五人へと走ってくる。まず先陣を切ったのはサンライズだ。サンライズは手に炎の剣を構えると青信号を光らせたランボーグのパンチを受け止める。

 

「スカイ!」

 

その瞬間、スカイが飛び出してランボーグへとアッパーを喰らわせて上空へと弾き飛ばす。

 

「信号は人を守るための物……乱暴なんて許されません!」

 

そこに空中へと飛んだウィングがランボーグの上に回り込み、両手を組んで振り下ろす所謂ダブルスレッジハンマーを繰り出してランボーグを地面へと叩きつけさせる。

 

「たあっ!」

 

そのままプリズムが地面に叩きつけられてバウンドしたランボーグを蹴り飛ばし、再び地面へとぶつける。

 

「今だ!バタフライ!」

 

「ひろがる!バタフライプレス!」

 

そこにバタフライからの浄化技が発動。ランボーグの真上から蝶型の盾が迫っていく。

 

「ラン!」

 

するとランボーグの体の信号が赤に変化。その瞬間、バタフライの技がランボーグの真上で強制的に停止してしまう。

 

「ちょっ!?何で?体、動かせないんですけど!!」

 

「ボク達もです!」

 

「まさか、時間停止!?」

 

「ランボーグも止まってるし多分そう!」

 

それからランボーグの信号がまた青になり、浄化技を躱されてしまう。ランボーグが再度突撃してくるとバタフライを吹き飛ばした。そこにスカイが技を使用する。

 

「ヒーローガール!スカイパンチ!」

 

しかし今度も命中する直前にランボーグの時間停止によって攻撃は停止させられてしまい、当たらない。

 

「赤信号になると動きが止まる……」

 

「青信号になると動けるけどそのタイミングがわからない……」

 

再度ランボーグが時間停止を解除するとスカイは地面に叩きつけられてしまい、その隙に再びランボーグが時間停止を使おうとする。

 

「させるか!ひろがる!サンライズカリバー!」

 

そこにサンライズがスカイの前に割って入り、近距離からサンライズカリバーでランボーグを浄化しようとする。だがギリギリランボーグの方が速く、ランボーグへと浄化技が命中する前に時間停止をしてしまった。

 

「く!?」

 

「一体どうしたら……」

 

「このままでは絵本の締め切りに間に合いません」

 

「それは良いの!それよりもランボーグを……」

 

プリズムがそこまで言ったところでスカイとサンライズが同時にそれを否定する。

 

「「よくないよ(です)!」」

 

「……プリズム、次に青に変わったら構わず行ってください!」

 

「姉さんはあれだけ努力したんだから姉さんは先に進まないとダメだ!」

 

サンライズの叫びに他の三人も肯定の意を示す。

 

「そうです、あんなに頑張ったんですから!」

 

「でも、こんなにピンチなのに……」

 

「良いから行く!私達はいつもプリズムの優しさに救われているんだから今日ぐらいは思いっきり応援させてよ!」

 

「……皆」

 

四人ともプリズムが誰よりも頑張ってきたからこそちゃんと報われるべきなのだと言う。そしてそれを見たバッタモンダーは憐れむように停止したまま話し始めた。

 

「美しい……なんて尊い友情なんだ。でも、もう悩まなくて大丈夫。不毛な譲り合いを止められる。一気に叩き潰してあげるから。行け、ランボーグ!」

 

ランボーグはその瞬間、時間停止を解除したサンライズからの攻撃を躱す。直後にスカイが飛び出すとそれに合わせてバタフライがミックスパレットを取り出す。

 

「二つの色を一つに!レッド!イエロー!守りの力、アゲてこ!」

 

バタフライがスカイに光を灯させるとランボーグバッタモンダーがランボーグへと指示を出す。

 

「止めろ!」

 

その瞬間、ランボーグが時間停止を発動する……しかし、今回はいつもとは違った。バタフライからの支援を受けたスカイの時間は止まらなかったのだ。そのため、絶好の的になっていたランボーグの赤信号をスカイが砕くとそれによって時間停止が解除。

 

「馬鹿な……」

 

「良し!これで赤信号は使えないぞ!」

 

「プリズム、さぁ早く!」

 

そのタイミングでプリズムはエルから封筒を受け取って走り出そうとしたその瞬間、突如としてプリズムの真横から猛スピードで何かが体当たりするとプリズムは吹き飛ばされて封筒を落としてしまう。

 

「きゃああっ!」

 

「え!?」

 

そこにいたのは車のランボーグであり、体から赤黒いオーラを放っていた。

 

「このタイミングで別個体のランボーグ!?」

 

「う……くぅ……」

 

プリズムが立とうとしたその時、封筒はバッタモンダーによって拾われてしまう。

 

「ふふっ、君達が大事にしていたこの封筒は……貰ったよ」

 

それからバッタモンダーは封筒の口を開けると中身を取り出した。そこにはプリズムが一生懸命描いた絵本があり、バッタモンダーはそれを破り捨てようと手をかける。

 

「やめて……やめてぇええ!!」

 

プリズムが叫ぶ中、バッタモンダーが中身を破ろうとしたその瞬間……。

 

「……せよ……」

 

「あ?」

 

「その絵本、返せよ!」

 

目にも止まらぬ速さで移動したサンライズがバッタモンダーの腹に肘打ちを命中させていたのだ。

 

「がっはぁ!?」

 

サンライズのその目は怒っており、空中に舞い踊る絵本のページ達をプリズムは急いで拾い集める。

 

「ランボーグ!」

 

そこにまた車のランボーグがプリズムを轢くために突進してくる。

 

「スタイルチェンジ……グリフォン!」

 

その瞬間、サンライズがグリフォンスタイルに変わるとその攻撃を受け止める。サンライズは勢いに押されて少し押し込まれるがそれで止まってしまった。

 

「プリズム……早く行って!」

 

プリズムは頷くと今度こそ封筒の中に絵本を戻してエルと共に走っていく。それを見届けたサンライズはランボーグを投げ飛ばそうと前を見た……しかし、サンライズの目に映ったのは衝撃的な映像だった。

 

「ッ!?」

 

「ランボーグ!」

 

その隙を突かれてサンライズは吹き飛ばされると近くの壁に叩きつけられた。

 

「く……うぅ……」

 

「サンライズ!?」

 

「どうして……」

 

三人が駆け寄る中、サンライズは歯軋りすると怒りを露わにした様子だ。

 

「そうや……君」

 

「「「え?」」」

 

何と車の中に以前出会ったそうやと彼の母親が気絶した状態で囚われていたのだ。恐らく車に乗っている状態で車をランボーグにされてしまったからだろう。

 

「アンタ!人質なんて取って恥ずかしく無いの!?」

 

「知らないねぇ。何しろ、僕が出したランボーグじゃないし」

 

四人が車のランボーグに気を取られている間に信号機のランボーグが出てくるとパンチを振り下ろす。四人はそれをまともに喰らって地面へと倒れ込んでしまった。

 

「卑怯です……」

 

「下手に車のランボーグを攻撃したら……二人に被害が」

 

「……どうにかする方法、あるにはあるよ」

 

サンライズの言葉にバタフライはその手が何のことか心当たりがあるので顔を明るくする。

 

「ただ、アイツの動きを止めないと……現状、あっちのランボーグも相手なのにどうすれば……」

 

「……ボクが何とか止めてみせます」

 

「ボク……じゃなくてボク達ね!」

 

「なら私があっちのランボーグを!」

 

スカイ、ウィング、バタフライはサンライズの奇策に賭けるためにそれぞれがやるべき事を理解して名乗り出る。それにサンライズは笑って頷いた。

 

「わかった……じゃあお願い!」

 

「「ランボーグ!」」

 

信号機のランボーグと車のランボーグは四人を前後から挟むように突進してくる。そんな中、信号機のランボーグをスカイが足止めし、車のランボーグはウィングとバタフライが死ぬ気で押し留めようとする。

 

「はあっ!」

 

まずバタフライが五枚の盾を召喚するとそれを重ねてランボーグの突進を受け止めた。

 

「ひろがる!ウィングアタック!」

 

そこにウィングが自らの突進でランボーグの突進をバタフライのバリア越しに押し留めた。ランボーグはアクセルが踏まれているのかどんどん加速し、二人の守りにヒビが入っていく。

 

「「諦めない!」」

 

「スタイルチェンジ!ヤタガラス!」

 

その瞬間、サンライズはヤタガラススタイルにチェンジするとすぐにランボーグから親子を救い出す一手を打つ。

 

「ひろがる!サンライズシャドー!」

 

サンライズが技を使うとランボーグの中に閉じ込められた親子を殆ど衝撃を与えずに救出する。

 

「大丈夫ですか?」

 

サンライズが飛び出すと二人は目を覚まし、サンライズに助けられた事を自覚した。

 

「おにいちゃん……」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「早く安全な所に逃げてください!」

 

「は、はい。そうや!」

 

それから二人はその場から離れると地面に刺さった槍が抜け、ウィングとバタフライの防御も破壊されて吹き飛ばされる。

 

「「うわぁああ!」」

 

「だあっ!」

 

そこにサンライズがドロップキックを打ち込んでランボーグを吹き飛ばすとサンライズは手に青い稲妻の剣を構えてからそのまま周囲に漆黒の槍を五本召喚。そのままランボーグへと突進していく。

 

「こんな卑劣な手を使うお前らに……俺は負けるつもりは無い!」

 

そのままサンライズは黒い炎に包まれながら槍がサンライズの周りを回転。そのまま重なっていき、サンライズは巨大化した漆黒の槍を手にすると跳び上がり、太陽と重なる。すると強制的に日食が発生して辺りが暗くなった。その状態で放たれるヤタガラススタイルのもう一つの浄化技……。

 

「ひろがる!サンライズエクリプス!」

 

そのままランボーグの真上から槍を投げつけるとその槍が車のランボーグを貫き、浄化していく。

 

「スミキッタァ〜」

 

それを見届けたスカイは自販機のランボーグを蹴り飛ばすとウィングとバタフライも持ち直し、二人で浄化技を発動する。

 

「全ての色を一つに!ミックスパレット!レッド!イエロー!ブルー!ホワイト!混ぜ混ぜカラーチャージ!」

 

バタフライが混ぜた虹のエネルギーがウィングに降り注ぎ、彼の体を変化させるとその上にバタフライは飛び乗る。

 

「プリキュア!タイタニックレインボー!アタック!」

 

そのままランボーグは真上から押しつぶされると浄化される。

 

「スミキッタァ〜」

 

「ミラーパッド、オッケー!」

 

こうして無事に二体のランボーグが浄化されるとバッタモンダーはいつものようにキレ散らかした。

 

「何でだよ……何でこんな弱ぇえ奴等に何度も負けるんだぁあ!」

 

「嫌がらせばかりするあなたのような人にはヒーローは決して負けないんです!」

 

「まぁ良い。君達を叩きのめす楽しみは次に取っておこう。バッタモンモン!」

 

バッタモンダーが撤退すると四人は急いで市役所へと走っていく。四人が到着する頃には時計は五時を指しており、丁度市役所からましろとエルが出てくる所であった。

 

「姉さん!」

 

「皆、大丈夫だった?」

 

「勿論だよ。ましろんは?」

 

「ギリギリセーフ!何とか応募できたよ」

 

どうにか時間内に間に合ったようで応募する事ができたましろ。そして時間は経ち、コンテストの日、大賞の所には菜摘の絵が飾られていた。

 

「これって」

 

「菜摘さんの!?」

 

「綺麗……」

 

「ありがとう……」

 

ましろはその声を聞いて振り向くとそこには菜摘が立っており、彼女は既にましろの絵本も読んだようでましろへと話しかけてくる。

 

「ましろんさんの絵本も凄く素敵だった。私もいつか、あんな風に優しい世界が描けると良いな」

 

それからあさひ達はましろの絵本を見に行くとその内容は森でブランコを見つけた女の子が後からやってきた男の子と一緒にブランコに乗り、森の動物達とブランコを漕ぐと遠くに大きな虹が見えて皆が仲良くなるといったものであった。

 

それを読んだエルは嬉しそうに手を叩く。

 

「やっぱり、ましろさんは凄いです」

 

「……コンテストには落選しちゃったけど私、これからももっ描きたい。エルちゃんや誰かの心に届くような絵本を……」

 

こうしてましろの一つの挑戦が終わり、エルの笑顔を見ながら彼女はこれからももっと頑張るという決意を固めることになる。




また次回もお楽しみに。


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あさひの悩みとやりたい事

ましろにコンテストが終わった翌日、あさひは一人悩んでいた。それは自分のやりたい事がまだ見つかってない事である。

 

「皆は目標があって頑張ってるのに……俺は一人取り残されてる。何とかしないと」

 

あさひは焦っていた。このままでは自分にだけ目標が無く、ただ普通に過ごしているだけなのではと。それからあさひはその事を相談するためにましろの元に向かう。

 

「あさひ、どうしたの?」

 

「それが……」

 

あさひが事の次第を話すとましろはあさひにとって何になるのが最適なのかを考えていたがそれをすぐにやめた。

 

「あさひが本当にやりたいと思った事をやれば良いと思うよ」

 

「でも、それが無いから困ってるわけで……」

 

あさひの言葉にましろは首を横に振る。それは無理に今決めなくても良い。これからゆっくりと探せば良いのだと言う。

 

「そんなゆっくりしてたら……きっとすぐに大人になっちゃう。俺みたいな何の取り柄もない人がそんな風に構えてたら……誰からも必要とされなくなって……」

 

あさひは焦りすぎて完全に周りが見えなくなっていた。そんなあさひを危険だと感じたのかましろは宥めようとする。

 

「そんなに重く受け取らなくても大丈夫だって……」

 

「……姉さんに聞いた俺が間違ってた。ソラ達に聞いてくる」

 

「ちょっとあさひ!」

 

それからあさひは部屋を飛び出してしまうと宣言通りソラの元に行く。しかし、ソラや他の人達からの返事も似たようなものだった。

 

「無理に今すぐ決めなくても大丈夫だと思いますよ。あさひ君なりにゆっくり探せば……」

 

「そうですよ。あさひ君は優しいですし、あさひ君の長所を活かして……」

 

「俺にそんな物は無いよ!皆……なんでわかってくれないんだ!」

 

あさひはソラもツバサも役に立たないと考えて一人部屋に籠ってしまう。頼みの綱のあげはも今はバイトでいないのだ。そんなあさひを三人は心配するが、今はどうしようもできないと考えてそっとしておく事にした。

 

「何でだよ……何で誰もわかってくれないんだ……目標も持たない俺に価値なんて無い。輝ける何かが無ければ俺みたいな人は要らないって思われてしまう」

 

あさひは完全に思い詰めてしまう。自分だけが何の目標も無いために他の面々から置いてかれてしまう事を怖がっているのだ。

 

「……ダメだ。あげはに意見を聞かないと。取り敢えず、あげはの所に行こう」

 

あさひは一人出かける支度をすると外へと出ていく。こうして、あげはが働く『Pretty Holic』にまで足を運ぶ。そんな最中、あさひは気になる張り紙を見つけた。

 

「えっと、エキストラ募集……?」

 

対象は中学生以上であさひも出る事ができるみたいだ。そして肝心の題材だが、それは世界を救うヒーローシリーズである。

 

「土日に撮影だから出てみたい……けど、子供だから親の許可がいるんだよな。おばあちゃんが許してくれるかな」

 

あさひはそう不安そうに呟く中、そこに丁度バイトを終えて帰ってきたあげはがやってくる。

 

「あ、あさひ!やっほー」

 

「あげは!」

 

それかれあさひはあげはにエキストラについて相談する事にした。

 

「……応募したいけど俺はまだ中学生だから親の許可がいるんだよね。おばあちゃんが良いって言ってくれるかな?」

 

「良いじゃん!あさひ、夢が無くて困ってたんでしょ?だったらさ、一回やってみなよ」

 

「……え?」

 

思わぬあげはの後押しにあさひは迷う。エキストラをやる程度では夢なんて見つかる可能性は低いと考えていたからだ。

 

「何事も経験だよ。それにさ、あさひがやりたいって思うのなら皆は反対しないと思う」

 

あげははあさひを猛烈に後押しし、やってみるように促す」

 

「……うん。俺はやってみたい」

 

それから二人で家に帰るとヨヨへと相談に行った。ヨヨはすんなりとあさひがエキストラとして出る事を認めると逆にそれを後押しする。

 

「あさひさんがやりたい事なんだから私はそれを応援するわよ」

 

「ありがとう、おばあちゃん!」

 

あさひはヨヨに許可を貰うと先程までの落ち込んでいた気分はどこへやらとばかりにあさひは嬉しそうな表情へと早替わり。それから正式な手続きを経て休みの日にエキストラとして撮影をする事になった。

 

「あさひがエキストラ!?」

 

「エキストラ……って何ですか?」

 

ましろがあげはから話を聞いて驚く中、ソラはエキストラが何のことだかわからないので疑問を浮かべる。

 

「えっとね、ドラマの撮影とか出てくる端役で要するに主役とは別でその他大勢のキャラの事だよ」

 

「へぇ……」

 

あさひ達が現場に着くと準備のための待機時間を経てからあさひ達の演技が始まる。あさひの出番はヒーローがピンチになった時に応援してヒーローを元気付かせる役だ。あさひ自身は特別な台詞があるわけでは無いためにただ応援すれば良いのだが、エキストラもその場の雰囲気を作るために必要なのであさひは本気で望んでいた。

 

「負けるなぁあ!!」

 

エキストラの中の台詞有りの人がそう言うと、あさひ達他の人も声を張り上げて応援する。ここであさひは敢えて目立つ事なく周りと同じぐらいの声量を維持する事に専念した。無理に声を上げて一人だけ目立つわけにはいかないからである。

 

「皆、ありがとう……俺もまだ戦える!……変身!」

 

《ジャスティスアップ!》

 

それから主役の男性が再び変身し、敵を相手に戦っていく。そんなシーンへと繋がっていくのだが、あさひの出番はここまでなので撮影は終わりとなる。しかしあさひはスタッフの元に行くと頼み込んでいた。

 

「あの、この後のアクションシーンを見学しても大丈夫ですか?」

 

あさひは迷惑な事を承知でスタッフへとお願いする。当然スタッフはあんまり良い返事を返してくれない。すると主役の男性がやってきた。

 

「俺からもお願いします。この子に見学の許可を与えてあげてください」

 

「……え?」

 

あさひはまさか主役の人からそう言われるとは思っておらず、困惑する。スタッフは仕方なく上の人に掛け合い、許可を貰ってくるとあさひは一人見学する事になった。

 

「どうして……ですか?」

 

あさひは主役の男性へと質問する。普通ならあさひが残る事によるメリットは彼には無い。なのにオッケーを出したのだ。何かあると思っていたのだが、その予想は裏切られる事になる。

 

「君のその目を見たからさ。……君は冷やかしで残るわけじゃ無いんだろ?これからの将来、有望なやる気のある人を育成しないとだしな」

 

それからあさひがアクションシーンを見学する様子を遠目からだが、他の四人も温かい目で見ていた。

 

「あさひがあんなに真剣に見てるなんて……」

 

「ふふっ、きっとやりたい事を見つけたんじゃないかな」

 

「ですね。でもアクション俳優に興味を持つなんて少し意外です」

 

「……でも、何事にも真剣に取り組むあさひ君ですからきっとやり遂げるまで努力を怠らないと思います」

 

あさひはスーツを着てのアクションシーンを食い入るように見つめていた。

 

「……凄い。俺もあんな風になれたらな……」

 

この時、あさひの中に何かが芽生えた。そしてそれは少しずつ太く、大きくなっていく。

 

「……やってみたい。俺もあんな風に動いてみたいよ」

 

あさひの心の中で華麗に動く自分の姿を思い浮かべると思わず頬が緩む。しかし、それをすぐに捨て去るとそれを達成するためにはどうするべきなのか考えた。それから撮影は終わり、あさひは主役の男性の元に行くとどうしたらあんな動きができるのかと聞く事にした。

 

「それは、毎日のトレーニングを欠かさない事かな。体ができてないとアクションなんて出来ないからね。あと、俳優だから演技も上手くないと。それもトレーニングと、あと才能もいるかな」

 

「才……能」

 

あさひはそれを聞いた瞬間、自信なさそうに俯く。自分に才能なんて無いと考えて萎縮してしまっているのだ。

 

「役をやろうと思ったらまず……大勢が受けるオーディションの中で役を勝ち取れるだけの実力がいるからね。その実力を得るために努力と自分の持つ才能がいるわけ」

 

「俺なんかに才能は……」

 

「そう考えているうちは多分ダメだと思うな」

 

そう言われてあさひは目を見開き、驚く。それから主役の男性は話を続けた。

 

「そうだろ?自分の実力を信じられない人が上手い演技ができると思うか?もっと自信を持ちなよ」

 

それからあさひは話し終わると他の四人の元に行く。それからあさひが聞いた事を全部話し、自分には自信が無いと言う。

 

「やりたいとは思ってるけど、こんな俺なんかが上手くやれるのかが凄い不安で……」

 

「だったら思いっきりぶつかれば良いじゃないですか!」

 

「でも、俺は……」

 

「男ならウダウダ言わないの。あさひ、自信を持ち続けるのは正直難しい事ではあると思う」

 

「それでもまず最初は自信を持って一歩踏み出さない事には何も始まらないと思うな」

 

「そうそう」

 

四人からあさひは励まされるとあさひは心の中で揺れていた。どうしても自分の才能を信じる事ができていない証拠である。

 

「……あさひ、私達のことを信じてる?」

 

あげははいきなりあさひへとあまり関係なさそうな質問をする。あさひはそれを聞いて即答した。

 

「そりゃあ信じてるよ」

 

「じゃあさ、私は自分を信じる事もできると思うな……だってさ、自分自身を信じられなかったら誰が自分の力を信じてくれるの?もっとあさひは自分を信じないと」

 

「自分を信じる……」

 

あさひはあげはからのアドバイスにようやく納得するとそれからあげはや皆にお礼を言おうとする。その時だった。

 

「うわぁああ!」

 

人々の悲鳴が聞こえてくると共にズシンズシンと何か大きな物が動く音がした。その理由は五人には想像が付くわけで……。

 

「またランボーグ!?」

 

「ここ最近頻度が上がってませんか?」

 

「とにかく行きましょう!」

 

それから五人がその方に移動するとそこにカメラを素体としたランボーグが立っており、ランボーグは赤黒いオーラを放っていた。

 

「また強い方のランボーグ……一体誰がコイツを出してるの!?」

 

「今は倒すしかないよ!」

 

それから五人はランボーグを倒すために変身する。

 

「「「「「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!」」」」」

 

「スカイ!」

 

「プリズム!」

 

「ウィング!」

 

「バタフライ!」

 

「サンライズ!」

 

「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」

 

「ふわりひろがる優しい光!キュアプリズム!」

 

「天高くひろがる勇気!キュアウィング!」

 

「アゲてひろがるワンダホー!キュアバタフライ!」

 

「夜明けにひろがる眩い朝日!キュアサンライズ!」

 

「「「「「レディ……ゴー!ひろがるスカイ!プリキュア!」」」」」

 

五人は変身を終えるとこの場を収束させるためにランボーグへと向かっていくのであった。




また次回もお楽しみに。


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夢の始まりとあさひの決意

カメラを模したランボーグは五人が向かってくるといきなりカメラのレンズを向けてきた。

 

「「「「「え!?」」」」」

 

その直後、カシャッと音が鳴り響くと共にいきなりフラッシュが発生。五人の視界を奪ってしまう。

 

「ランボーグ!」

 

そして視界を奪われて怯んだ所にランボーグは容赦なく攻撃を仕掛けてくる。

 

「うわっ!」

 

「きゃっ!」

 

「厄介なランボーグだな……」

 

すると突如としてランボーグが背中を向けると先程撮った写真の中から五人が出てきてその体が闇に染まる。それから五人はそれぞれ襲いかかってきた。

 

「嘘でしょ!?」

 

これではまるで自分の最大の敵は自分と言わんばかりだ。それぞれ五人は自分と全く同じ姿、同じ実力の相手と戦わされている。

 

「アイツ、こんな能力まで持ってるの!?」

 

プリズムは気弾による射撃を放って牽制するが、相手も全く同じ攻撃で防いでくる。

 

「技も全部コピーしてるみたい!」

 

「って事は俺のスタイルチェンジもできるものとして考えた方が良いな」

 

サンライズはスタイルチェンジによって有利を取ろうと考えていたが、技もコピーされているとなるとそれも厳しい。

 

「……そうだ!皆、相手を変えるよ!」

 

バタフライは敢えて自分以外を相手する事で有利を取ろうと考えた。早速バタフライはコピーのバタフライの腹を蹴り飛ばし、近くにいたコピーのスカイを巻き込んで壁に叩きつけさせる。そのタイミングですぐにスカイも動き、コピーのウィングを横から殴って注意を引く。ある程度相手の陣形が崩れた所で全員が相手を交代し、スカイがコピーのウィング、プリズムがコピーのサンライズ、ウィングがコピーのバタフライ、バタフライがコピーのプリズム、サンライズがコピーのスカイを相手にした。

 

「やあっ!」

 

プリズムが気弾でコピーのサンライズを牽制するとサンライズは炎の壁を出現させて防御する。だがコピーのサンライズが炎の壁を消失させた時にはプリズムが目の前に迫っており、肘打ちでコピーのサンライズを吹き飛ばした。

 

「………」

 

コピーのプリズムが無言で気弾を連射する中、バタフライは障壁を何重にも張って対応。とにかく攻撃を寄せ付けなかった。

 

「そんな簡単には通さないよ!」

 

それからバタフライが障壁の向こう側から投げキッスを放ち、コピーのプリズムへと命中させると爆発する。

 

「何でボクがコピーのバタフライなんですか!」

 

コピーのバタフライが障壁でウィングの攻撃を防ごうとするが、ウィングの加速力と飛行能力で障壁を張らせてから反対側に移動しての攻撃が次々決まっていく。

 

「いきます!」

 

スカイは空中を飛び回るコピーのウィングを捕まえるとそのまま振り回し、地面へと叩きつけて動きを鈍らせてから攻撃を連続で決めていく。

 

「はあっ!」

 

コピーのウィングが反撃しようとする中、スカイが上から踵落としを叩きつけて吹き飛ばした。

 

「……」

 

コピーのスカイがサンライズへと攻撃を仕掛けていくものの、サンライズは見事な体捌きでそれをことごとく回避。それから炎でコピーのスカイの周囲を取り囲むとコピーのスカイは唯一空いている上から脱出するが、そこは予想通りとばかりにサンライズが待ち構えていて、上から攻撃を命中させた。

 

五人はそれぞれが有利に戦いを進める中、暫くの間大人しくしていたランボーグがいきなり援護射撃を放ってきた。コピーの五人を助けるためである。これにより、形勢は逆転。オリジナルのサンライズ達は窮地に陥る。

 

「くっ……ランボーグが援護に入ったせいでかなりキツイ……」

 

「でも、私達には対処する方法が無いです!」

 

「せめてあと一人人手がいたら……」

 

カゲロウがまだ残っていればこの状況を打開できたかもしれない。しかし、そんな事を言っても彼が戻ってくるわけでは無い。

 

「……だったら俺が相手する!」

 

そう言って飛び出したのはサンライズ。サンライズはコピーのスカイの相手をしながらランボーグと戦うつもりだ。

 

「無理しないで!」

 

プリズムは不安そうにサンライズへと声をかける。またサンライズが無理をしているのではと考え、いてもたってもいられないのだ。

 

「ランボーグ!」

 

「………」

 

ランボーグとコピーのスカイによる挟み撃ち攻撃が放たれるその瞬間、サンライズはコピーのスカイの腕を受け流しつつその胸ぐらを掴み、ランボーグへと投げ飛ばす。味方を攻撃するわけにはいかないのでランボーグもこれには攻撃の手を止めてしまう。

 

「今だ!スタイルチェンジ!グリフォン!」

 

サンライズはパワーの形態であるグリフォンスタイルに変わると手にした大剣を振り回す。

 

それから反撃してきたコピーのスカイを大剣で吹き飛ばし、ランボーグも大剣を地面に突き立てた事で発生した火柱で怯ませる。

 

ランボーグからの支援が無くなったコピーのプリキュア達はオリジナルのプリキュア達の敵では無かった。

 

「ヒーローガール!スカイパンチ!」

 

「ヒーローガール!プリズムショット!」

 

「ひろがる!ウィングアタック!」

 

「ひろがる!バタフライプレス!」

 

四人がそれぞれ浄化技をぶつけるとコピー達は次々と消滅。そして、残ったコピーのスカイとランボーグを相手にサンライズが戦っている所に四人も加勢する。

 

「お待たせ!」

 

「その感じだと倒せたみたいだな」

 

「ここからは一緒に!」

 

その瞬間、ランボーグは再びカメラのレンズを向けてくる。このままではまたコピーが生成されてしまう。しかし、同じ手は何度も喰らうつもりは無い。

 

「ここ!皆目を閉じて!サンライズフラッシュ!」

 

その瞬間、サンライズが発光するとそれと同時にシャッターが切られる。だが、サンライズが発光した事で今回は上手く写真が撮れずにコピーが出てくる事は無い。

 

「ラン!?」

 

「もう撮らせないぞ!」

 

ランボーグが慌ててもう一回撮ろうとするが、その瞬間にはサンライズから投げられた炎の剣がレンズを貫いて破壊する。

 

「これでもう写真は撮れませんね!」

 

残されたコピーのスカイがウィングとバタフライに攻撃を仕掛けるが、バタフライがバリアで防御した後にウィングが追撃をかけて吹き飛ばす。そして、すかさず浄化技を発動した。

 

「全ての色を一つに!ミックスパレット!レッド!イエロー!ブルー!ホワイト!混ぜ混ぜカラーチャージ!プリキュア!タイタニックレインボー!アタック!」

 

ウィングとバタフライによる合体技がコピーのスカイを浄化するととうとうコピーのプリキュア達が全員倒される事になる。

 

「この姿で終わらせる!プリキュア!ホーリーコネクト!ひろがるチェンジ!ホーリーサンライズ!」

 

サンライズがホーリーサンライズへと強化変身を遂げると背中に生やした白い翼で空を舞う。

 

「喰らえ!」

 

更にサンライズが周囲に白い炎の炎弾を展開し、それをランボーグへとぶつける。

 

「ラン……ボー……」

 

「スカイ、プリズム、二人でランボーグの動きを止めてくれる?」

 

「「ええ!」」

 

「スカイブルー!」

 

「プリズムホワイト!」

 

二人はスカイトーンを使い、手を繋ぐと二人の合体技を発動する。

 

「「プリキュア!アップ・ドラフト・シャイニング!」」

 

ランボーグが上空の円盤に吸い込まれてそのまま浄化のエネルギーをまともに喰らい、かなり弱った様子だった。

 

「まだこれでも倒せないんですか!?」

 

「もしかして、出てくる度に強くなってるの?」

 

「いや、それでも十分だ!ひろがる!ホーリーカリバー!」

 

最後にサンライズからの白い炎の斬撃がランボーグを切り裂くとようやくランボーグはその体を完全に浄化され、いつものように赤黒いエネルギーが飛び去るとその場は決着する。

 

「何とか勝てました……」

 

五人は変身解除するとそれから暫くしてランボーグの登場に逃げ惑っていた人々も戻ってき始め、無事に撮影は再開されることになった。そして、夕方になって撮影が終了してようやく解散する事になる。

 

「あさひ、今日の撮影はどうだった?」

 

「……正直さ、まだ自信が持てないけど……それでも、やりたい事……やっと見つかったよ」

 

それを聞いて四人は笑顔になる。ようやくあさひの悩みが一つ消えて嬉しいのだ。

 

「ねぇ、ソラ、俺もソラのトレーニングに付き合っても良い?俺ももっと体を鍛えないとだし」

 

「勿論です!」

 

「姉さん、演技の本を買っても良いかな。さっきのアドバイスで体を鍛えるだけだとダメだって言われたし、状況に合わせたピッタリの演技ができるようになりたいから」

 

「良いよ。私はいつでもあさひの練習に付き合うからね」

 

「ツバサ、効率の良いトレーニング方法について調べるの、手伝ってくれる?」

 

「はい!ボクにできる事ならなんでもします!」

 

「あげは……」

 

「わかってるよ。私はあさひの夢を応援する。やっと見つけたあさひのやりたい事だもの」

 

あさひが四人にお願いをしていくと皆は快く受け入れていった。そして、あげはに抱っこされていたエルもニッコリ笑う。

 

「える!あしゃひ、あんばえ!」

 

「エルも応援してくれるの?」

 

「えるぅ!」

 

「ありがとう」

 

あさひはようやく見つけた夢、アクション俳優になるために努力をする事に決めた。その道のりは険しく遠いだろう。それでも夢を叶えるためにあさひは努力を怠らないようにしようと決意を固めるのであった。

 

その頃、謎の女性はそんなあさひ達を遠くの物陰から見つめて笑みを浮かべていた。その近くにバッタモンダーもおり、気に入らなさそうな顔をしている。

 

「へっ、また失敗してるじゃないですか。本当にいつになったら動くんです?」

 

「ふふっ、そうね。まだまだ刻印を動かすにはエネルギーが足りないもの。仕方ないわ。でも、刻印さえ動かせられればキュアサンライズはこちらの物になる。あなたの奥の手とやらと合わせればとてつもない効果が期待できるんじゃないかしら」

 

「そんなに悠長にはしてられねーよ」

 

バッタモンダーは焦ってきていた。ここまでやっても未だにプリンセスを手に入れられないのだ。そろそろカバトンのように始末されてしまうのではと怯えているような状況なのである。

 

「そう思うのならもっと頑張りなさい。あのお方の機嫌を損ねないようにね」

 

「ぐ……」

 

女性はまだまだ余裕そうな顔つきをしている。彼女の言う刻印……それがどのような影響をもたらすのか。それが明かされる時はまだまだ先のことである。

 

 

 

 

 

 




評価をしていただけると参考になりますのでどうかよろしくお願いします。また次回もお楽しみに。


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野菜畑とひろがる知識

休日、あさひ達はあげはの運転する車に乗ってある場所へと移動中だった。ちなみに車の中に乗っているのは運転手のあげは、助手席にヨヨとプニバードのツバサ、後部座席にソラ、ましろ、エル……そしてトランクには一本の黒い槍が置いてあった。

 

「晴れてよかったですね」

 

ソラの言葉にエルも嬉しそうに笑う。そんな中、ましろはこの場にいないあさひの事を考えていた。

 

「それにしても、あさひには悪い事しちゃったなぁ」

 

「問題無いと思いますよ。この槍を使えばどうにかできるって言ってましたし」

 

「あはは……ヨヨさんも乗るとこの車定員オーバーしちゃうから……」

 

「でも、前にこの世界に来たソウヤ君がトランクに乗ってた話もしてましたし、どうにかなったんじゃないですか?」

 

「……それはあさひに悪くてさ、だからこの手を使った方が良いかなって」

 

何故このような事になったのかを簡単に説明すると、数日前にツバサが悩んでいるのを見たヨヨが彼の相談に乗った。そこでツバサは他の皆とは違い目指す目標が無くて、将来ボーッとしてしまうのではと危機感を抱いている事をヨヨに話す。そこでヨヨから提案されたのは週末に出かける事だった。

 

「それにしても、野菜の収穫なんて初めてなんですけど」

 

「ボクもです!」

 

「私もよ。ハーブは前から育ててたけど、野菜は今年からなの」

 

「お昼ご飯は採れたて野菜を食べようと思って、ちょっと特別なお弁当だよ」

 

「特別なお弁当!?だったら、沢山体を動かしてお腹を空かせないと!」

 

ソラがそう言い、その場の全員が笑い合う。ただ一人蚊帳の外になってしまったあさひは一人家で時間を潰していた。ただし、キュアサンライズのヤタガラススタイルの状態でだが……。

 

「はぁ……早く皆からの連絡が来ないかな……」

 

それから暫くして、あげはから連絡を貰ったあさひことサンライズは瞬間移動を発動し、槍の刺さった場所にまで移動した。そこは一面の野菜畑であり、サンライズは変身を解いてあさひの姿に戻る。

 

「一人で待たせちゃってごめんね、あさひ」

 

「大丈夫。それにしても……」

 

あさひ達は目の前の光景に目を見開いていた。あさひは聞いてないのでわからないが、ヨヨは野菜を初めて一年目……つまり、まだ初心者の領域である。それにも関わらず、かなりの出来栄えなのだ。

 

「凄い……」

 

「今年から初めてこれって、ヨヨさん凄すぎなんですけど!」

 

「おばあちゃん、一人でこんなに育てていたなんて……」

 

するとエルが指を指すとその先には大きな鷲の模型が存在していた。

 

「あの鳥さんはね、他の鳥さんが野菜を食べてしまわないように見守っているの」

 

「こちらの世界の鳥さんは私達とお話し出来ませんからね……」

 

そう話しているとツバサは模型に何か心当たりがあるのか、模型をジッと見ている。

 

「あの模型……」

 

「ツバサ、あの模型に心当たりがあるの?」

 

「うん……あれは前に空を飛ぶ仕組みを勉強するために作ったんだけど、作りすぎてしまって……その後にヨヨさんが何かに使うらしかったから預けたんだけど……」

 

どうやらヨヨは畑を守るために鳥の模型を借りて使っているようなのだ。

 

「畑に使うって言ってくれたらもっとちゃんと作ったのに……」

 

「十分凄いわよ。おかげで野菜がちゃんと育ってくれたわ」

 

「では、ツバサ君の鳥さんご守ってくれたお野菜を収穫しましょう!」

 

「「「「おう!」」」」

 

それから六人は手分けして野菜の収穫を開始。収穫の最中、ヨヨはソラ達に色々と教えながら作業を進めていった。

 

「トマトはお尻に星のような白い線がある物は甘くて美味しいわ」

 

例えばトマトを採る際にソラへと実際にトマトの裏側を見せながら伝える等、ヨヨはわかりやすいように教えていく。

 

「とうもろこしに生えてる髭は粒の一つ一つから生えてるんだよ。だから髭の数はそのまま粒の数になるんだ」

 

「あさひ、凄いじゃん。何で知ってるの?」

 

「おばあちゃんの受け売り……幾つかは自分で調べた事もあるけど、大体はそんな感じ」

 

あさひはあげはに褒められて照れくさそうにそう返す。ピーマンの方では緑では無く赤く変わっていたピーマンを見つけたソラとツバサが興味深そうに見ていた。

 

「ピーマンが赤くなってます!」

 

「それは熟しているんだよ。トマトが赤くなるみたいに、ピーマンも熟すと赤くなるんだ」

 

「ましろさんもあさひ君と同じで野菜に詳しいですね」

 

「ふふっ、私もあさひと似たような感じだよ。凄いのはおばあちゃんなんだから」

 

それから一通り収穫を終えたあさひ達は畑の近くにある何も無い場所に移動する。

 

「ここはこれから種を蒔く感じですか?」

 

「うん。にんじんを育てるんだよ」

 

ふとツバサが袋の中身を見るとそこには大量の土が存在していた。これはヨヨが作った肥料であり、その中身は食材から出た生ごみを土の中の微生物が分解して栄養たっぷりになっているのだ。

 

「ヨヨさん……凄い。どうしてそんなに物知りなんですか?」

 

「気になる事を調べているとまた新しく気になる事が見つかるの」

 

ヨヨはハーブを例にして話し始める。ハーブを調べるとハーブを使った料理について気になり、レシピを調べると実際に作りたくなる。作ってみるとどうしても生ゴミが発生するのでそれを有効利用する方法を調べると今度は肥料を作る事が可能だということがわかり、肥料があるので野菜を作ろうと思った。そうなると、野菜について調べるようになる。

 

このようにヨヨの知識量は大体が調べたい気持ちの連鎖によるものだ。それを聞いていたあさひは一人納得の顔になっていた。

 

「(おばあちゃんの知識量には毎回凄いと思っていたけど……やっぱりそれを支える何かがあるんだな……これはハイパースゴスギレジェンドになるのも納得だよ)」

 

ヨヨ曰く、知りたいと言う気持ちは繋がり、広がっていく物であると。そう彼女は結論付けている。するとソラのお腹の音が鳴り響いた。

 

「お腹がペコペコです!」

 

「そろそろお昼ご飯にしよう!」

 

それからあさひ達は昼食を摂ることになり、ましろとあさひが作った弁当が広げられる事になる。

 

「「わぁ……」」

 

「凄く美味しそうです!」

 

二人は目をキラキラさせながらその光景を眺める。

 

「生で食べられる野菜は切っておいたから沢山食べて頂戴ね」

 

それからましろはソースの入った容器を三つ取り出すと置いていく。

 

「それとこれはディップソースだよ。お野菜に漬けて食べてみて。カレーマヨ、たらこクリームチーズ、それからハーブヨーグルトだよ」

 

「オシャレで気分アガるね!」

 

そう言ってあげはが興奮気味にミラーパッドで写真を撮っていく。

 

「あ、そういえばこの料理はあさひも作ったから」

 

「ホント!?あさひの手料理をたべれるなんて幸せ!」

 

「姉さん……言わなくても良いのに……恥ずかしい」

 

あげはが嬉しそうにする中、あさひは顔を赤くして小さく背ける。

 

「採れたてのお野菜をデップ……ソースで食べるなんて、確かに特別なお弁当です!」

 

それから皆で食べ始めようとしたその時、ツバサがふと空を見るとそこには大きめな雲があり、それをあさひも目にする。

 

「……ツバサ?」

 

「これから雨が降るかもしれません」

 

「……こんなに晴れてるのに?」

 

ツバサがそう言うとましろ達は疑問に思う。しかしあさひは違った。

 

「ツバサの言う通りかも。多分そろそろ……」

 

その直後少しずつ雨が降り始めてきたのだ。その事実にましろやあげはは驚くと感心する。

 

「あっ、ホントだ!降ってきた!」

 

「あさひも少年も予想が当たったじゃん」

 

「本降りになる前に屋根のある所に行きましょう」

 

それからあさひ達は移動を開始するとそこで食事の再開をする事になった。そこではエルも美味しそうにご飯を食べており、ソラやましろ、あさひはディップソースにピーマンを漬けて食べている。

 

「ピーマンをカレーマヨで食べると止まりません!」

 

「あげはも食べてみてよ」

 

あさひがピーマンを差し出すとあげははそれを見て少し嫌そうな顔を見せる事になった。

 

「え?あはは……」

 

「あげはちゃん、ピーマン苦手?」

 

「そ、そんな訳無いじゃん。私、大人なんですけど」

 

あげははそうやって大見得を切る。それを見たあさひはそれなら大丈夫かなとばかりにピーマンを一つ取るとディップソースに漬けてあげはの口元に出した。

 

「はい、あーん」

 

「うぇえっ!?」

 

あげははあさひからの積極的な行動にびっくりして変な声を上げてしまう。

 

「あげはさん……」

 

「その反応だとピーマンが苦手だって言ってるような物だよ……」

 

「ち、違うし!あさひがいきなりこんな事してきたから驚いているだけ……」

 

そう言ってあげはは恐る恐るあさひの差し出したピーマンを食べると勢いであさひの指先も口の中に入れてしまった。

 

「「「……あ」」」

 

ソラ、ましろ、ツバサが声を上げる中、あさひは気にしないとばかりにあげはを見つめている。

 

「……どう?」

 

「あれ?美味しい。カレーマヨのお陰で食べやすい!」

 

「それはピーマンが嫌いな人の感想だよー」

 

「そ、それとあさひ……ごめんね、指先まで口に入れちゃって……」

 

「大丈夫……ほら、もう一回やっても良い?」

 

あさひはそれからあげはへともう一度ディップソースに漬けたピーマンを差し出す。あげははあさひの為ならともう一度ピーマンを食べた。

 

「……あげはさん、あさひ君の前だとやっぱり大人って所を見せたいんですかね」

 

「ち、違うよ。でも……あさひにやってもらえるのなら、私……」

 

そう言って顔を赤くするあげは。それを見たあさひ以外のプリキュア組の三人はあげはが恋する乙女だという事を再度認識する事になった。

 

「それにしても、この雨はいつまで降るんでしょうか」

 

「すぐに止むと思いますよ」

 

「俺もツバサと同意見。確かさっきの雲は短時間雨を降らせるタイプの雲だったから」

 

「凄いです二人共!」

 

「物知り!」

 

ソラとましろに褒められて二人は照れくさそうにし、理由を言うことにする。

 

「いや、そんな。空を飛ぶためには天気が重要なので、それで勉強してて……」

 

「俺はそんなツバサが勉強している所にたまたまいて教わっただけだよ。だからこの知識も誰かの受け売り」

 

ふとツバサは先程ヨヨから聞いた言葉を思い出す。そしてヨヨを見るとヨヨはニッコリ笑ってツバサへと話しかけた。

 

「空を飛ぶために勉強していた事が、皆を雨から守ってくれたわね」

 

「はい!」

 

「……私ね、何かを学ぶことと畑は似ていると思うの」

 

ヨヨの言葉にツバサは真剣に聞き入る。ヨヨ曰く、“何かを学ぶことは畑と似ている”と。

 

学んだ事は肥料となり、自らの夢の種を育ててくれる。だが、それはいつ芽吹く事になるかわからない。学んだ事は無駄になるかもしれないと不安になる。しかし、それはいつかの未来で、思わぬ形で花開く事に繋がっていくのだ。

 

今回で言えばツバサが空を飛ぶために学んでいた天気の知識が天気を読む力として雨が降るタイミングを予想した事がそれに当たる。

 

そのような感じで喋っているとあさひ達へと声をかける最悪の来訪者がやってきた。

 

「……君達を倒す作戦を考えるためにこんな山奥にまで来たのに……ここで会う事になるなんてね」

 

「「「「バッタモンダー!」」」」

 

「あのさぁ、毎度毎度タイミング悪く来るの止めてくれないかな?そろそろ飽きてきたんだけど」

 

あさひのその物言いの直後、バッタモンダーの後ろから女性が現れる。その人物をあさひとあげははよく知っていた。

 

「あなたは……」

 

「あの時の!」

 

「こうして会うのは久しぶりね。今回はバッタモンダーに頭を下げられたものだからね……私自ら直接相手してあげるわよ」

 

そう言って謎の女性は妖艶な笑みを浮かべながらあさひ達を見据え、あさひ達はそれを見て構える事になる。




また次回もお楽しみに。


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知識の力とサンライズの窮地

バッタモンダーと謎の女性の登場にあさひ達が身構える。早速バッタモンダーがいつものようにランボーグを呼び出した。

 

「カモン!アンダーグエナジー!」

 

すると今回はツバサが作った鳥の模型がモチーフとなり、空を飛ぶランボーグへと変化した。

 

「ランボーグ!」

 

「アイツ、よりにもよって少年の鳥さんを!」

 

「皆、行きましょう!」

 

五人はいつものようにミラージュペンとスカイトーンを取り出してそれを使用し、変身する。

 

「「「「「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!」」」」」

 

「スカイ!」

 

「プリズム!」

 

「ウィング!」

 

「バタフライ!」

 

「サンライズ!」

 

「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」

 

「ふわりひろがる優しい光!キュアプリズム!」

 

「天高くひろがる勇気!キュアウィング!」

 

「アゲてひろがるワンダホー!キュアバタフライ!」

 

「夜明けにひろがる眩い朝日!キュアサンライズ!」

 

「「「「「レディ……ゴー!ひろがるスカイ!プリキュア!」」」」」

 

五人が変身を完了すると謎の女性が笑みを浮かべた。その瞬間、謎の女性は体に赤黒いオーラを纏う。

 

「そういえば私の名前を言ってなかったわね。……私の名前はラブ。愛を欲する者よ」

 

「へ?」

 

「愛を……欲する?」

 

「まさか、そのためにあさひを!?」

 

バタフライが問い詰める中、ラブはニコリと笑うとその瞬間、バタフライの目の前に移動して彼女をビンタして吹き飛ばす。

 

「あぐっ!?」

 

「バタフライ!」

 

「速い……アイツ、ストームの速度の比じゃない。全く見えなかった」

 

「あなた、本当に鬱陶しい女ね。そんな風にグイグイ男に詰め寄って……キュアサンライズは私が好きになった人なの。あなたなんてすぐに別れさせるから」

 

「ッ……」

 

その瞬間、バタフライの心に怒りが込み上げていく。それから立ち上がるとバタフライは強く拳を握りしめた。

 

「許さない……」

 

「バタフライ?」

 

「サンライズは、あさひは私を好きになってくれたのに、それを後から出てきて横取りですって?あなたこそ最低な女よ!大事なのはサンライズの気持ち……。あなたなんかをサンライズが好きになるわけがない!」

 

サンライズは二人の喧嘩をボーッと見ていたが、バタフライの言葉を聞いて我に返り、サンライズはバタフライを庇うようにラブへと立ち向かう。

 

「俺の心をコントロールするつもりなら、そうはいかない!お前を倒して、バタフライを守ってみせる」

 

「ふふっ、ならあなたと一対一よ。私の力を教えてあげる」

 

それからラブはサンライズについてくるように目配せすると一旦その場から離れ、サンライズもその後を追っていく。

 

そして残された四人へとランボーグが羽型のエネルギー弾を放っていく。

 

「ランボーグ!」

 

それはバタフライがバリアで防ぎ、お返しとばかりにプリズムが気弾を放つ。しかしそれは躱されてしまった。

 

「なんて素晴らしい動きです!流石はウィングの作った鳥さんですね!」

 

「いやぁ、えへへ……」

 

「照れてる場合じゃないよ」

 

「「あ」」

 

「私に任せて」

 

そう言うのはバタフライだ。彼女はミックスパレットを取り出すとそれにスカイトーンを装填する。

 

「二つの色を一つに!ホワイト!ブルー!温度の力!サゲてこ!」

 

バタフライがそう言ってランボーグへとその力を照射するとランボーグの体が凍りつき、動きが鈍った。

 

「ミックスパレットにはそんな力もあるんですね」

 

「まだまだあるよ!」

 

「今なら!」

 

ランボーグが落ちてきた所にプリズムが気弾を放つ。それはランボーグに命中し、ランボーグはダメージを負う。

 

「やった!」

 

「畳み掛けます!」

 

更にスカイが跳び上がるとランボーグへとパンチを繰り出す。するとランボーグは何とか翼を広げるとその瞬間、ランボーグの体が再び浮いてスカイの攻撃は空を切る。

 

「動けないはずなのにどうして……」

 

「上昇気流……ランボーグは空に向かって吹いている空気の流れに乗ったんです」

 

「それなら、ウィングも同じことができるんじゃない?」

 

「前にストームとの戦いでもやってたよね!」

 

「はい!」

 

プリズムとバタフライに言われてウィングは空へと飛ぶ。それからランボーグを追いかけていく。ランボーグは追いつかれる前にエネルギー弾を放ち、ウィングはそれを躱す。そのエネルギー弾はバタフライ達の元に行くがバタフライのバリアがそれを防いだ。

 

ウィングが着地すると何かに気がつき、バタフライへと指示を出す。

 

「バタフライ、あの雲に向かってさっきの下げる力を!」

 

「ランボーグじゃなくて雲に?わかった!温度の力!サゲてこ!」

 

バタフライが再び力を使うと雨が凍りついていき、巨大な雹となってランボーグへと降り注ぐ。

 

「氷?」

 

「どういう事ですか?」

 

「元々雲は小さな水や氷の粒が集まってできています。下げる力で雲を冷やして氷の粒を大きくしたんです」

 

ウィングの言葉に他の三人は驚きを隠せなかった。しかも、ウィングはミックスパレットの力を上手く扱ったのでそれについても感心している。

 

「ミックスパレットってそんな事もできるの?」

 

「まだまだ色々できそうですね」

 

「そんな小賢しい作戦なんて力でねじ伏せて……ん?」

 

バッタモンダーが何かに気がつくと苛立っていた顔から澄まし顔となり、四人へと話しかけた。

 

「君達、ランボーグに気を取られて大事な事を見落としてない?」

 

「「「「え?」」」」

 

「キュアサンライズ、ピンチだよ」

 

バッタモンダーからの言葉に四人がそちらを振り向くとそこにはサンライズが棒立ちになって女性へと手を伸ばそうとしていた。

 

「サンライズ!?」

 

「何をしてるんですか?」

 

「今だ!」

 

ランボーグが四人の不意を突いて攻撃をしてくるとバタフライがそれを防ごうとするが、その前にプリズムが立ち、気弾で防御する。

 

「バタフライ、行って!サンライズを助けて!」

 

「でも……」

 

「バタフライの言葉ならきっとサンライズも正気に戻ります!だから……」

 

「ごめん、お願い!」

 

バタフライが戦線離脱するとランボーグは更に攻撃の手を強めていく。それに対してプリズムが必死に攻撃を防ぎつつウィングが空を飛んでランボーグの注意を引き受けた。

 

その少し前、ラブと交戦するサンライズは炎の剣を片手にそれを振るっている。

 

「はあっ!」

 

しかし、ラブは軽快な身のこなしでサンライズからの太刀筋を全て躱してしまう。

 

「当たらない……どうして」

 

「ふふっ、あなたの動きは全部知ってる。何しろ私はあなたを愛してるから。愛してる人の心を理解するのは当たり前でしょ?だから……あなたの事はちゃんと理解しているつもり」

 

「ッ……」

 

サンライズは体に寒気が走る気がした。ラブはまだまだ本気には程遠いだろう。それなのに全く自分の攻撃が通用しない事に動揺を隠せない。

 

「だったら!スタイルチェンジ!ペガサス!」

 

するとサンライズはペガサススタイルにチェンジ。それから自身の周囲に炎弾が生成され、それから炎弾を発射する。

 

「甘いわ」

 

するとラブの手に紫の蛇腹剣が召喚されてあっという間に炎弾を相殺してしまう。

 

「ふふっ、その程度?まぁ、でもあなた以外が私と戦ったらきっと一瞬で終わっちゃうから善戦している方だとは思うけどね?」

 

「くっ……舐めるな!」

 

サンライズがレイピアでラブを攻撃するが、ラブは手にした蛇腹剣を使うことすらなく躱していく。

 

「……私の事をもっと理解しないと攻撃は当てられないわよ」

 

「喋りながら戦えるって、どれだけ余裕なんだよ……」

 

「嬉しいわね。あなたがそうやって必死に私の事を分析して……私の事を理解しようとしてくれるのは……」

 

「馬鹿にするな!」

 

サンライズは完全に冷静さを失っていた。まるで相手にすらならないとばかりにのらりくらりとサンライズを軽くあしらうラブにサンライズは苛立ちを募らせていく。

 

「そうそう。それで良いの。私、あなたをもっと知りたい。あなたの心を射止めてあげる。そうしたらもうあの女の事なんて考えられなくなるから……。試しに一度やってみようかしら。……刻印、起動」

 

ラブがそう言った瞬間、サンライズの目がステンドグラスのようになり、動きが強制的に止まる。

 

「……な!?動け……ない」

 

「ふふっ、流石刻印ね……じゃあまずは、武器を捨てて私の頬を触りなさい」

 

するとサンライズは手にしていたはずのレイピアを勝手に消失させ、右手をラブへと差し出そうとする。

 

「(……体が、勝手に……何で!?)」

 

サンライズは困惑しながらも、刻印には逆らえないのかラブの頬を触ろうと手を伸ばし続ける。そしてとうとうラブを触ってしまった。

 

「そうそう。それで良いのよ……次は私の胸を触りなさい」

 

「(胸!?それは……)」

 

サンライズはそれは不味いと考えた。そんな事をしてしまえば責任を取らないといけなくなる。そしてそれはあげはとの別れを意味していた。

 

「(嫌だ……そんなの嫌だ。こんな、こんな事で……ラブの事を好きになるわけ……あれ?」

 

サンライズがいきなり疑問符を頭の中で浮かべると突如として体の抵抗する力が弱くなった。

 

「俺が好きな人は……誰?」

 

そうやって口に出した瞬間、サンライズは目を見開いた。自然にその言葉が出てしまったという事実に……サンライズは困惑する。

 

「違う!俺が好きなのはあげはただ一人……あんな奴の事なんて……あれ?あげはって誰?……誰かもわからない人を……俺は好きになったのか?」

 

するとそこにバタフライが走ってくるとサンライズへと必死に呼びかける。

 

「ダメ!サンライズ、目を覚まして!」

 

「あなたは……誰?」

 

「ッ……私は聖あげはだよ!サンライズ、思い出して!」

 

バタフライはサンライズが自分を覚えてない事にショックを感じるが、そんな事を一々言ってられないのですぐにサンライズへと駆け寄ろうとする。

 

「邪魔をしないで」

 

そうラブが冷たく言い放つとバタフライの体に蛇腹剣が巻き付いて思い切り締め上げる。

 

「ゔぁあああああ!!」

 

バタフライが悲鳴を上げる中、サンライズはそんなバタフライを見ると大切な人が傷つけられていると目のステンドグラスが消えて我に帰った。

 

「バタフライに、あげはに、何してるんだ!」

 

サンライズがようやく自我を取り戻すとラブの頬を思い切り殴り飛ばす。

 

「ッ!!」

 

ラブは頬に傷を負い、その痛みを感じると笑みを浮かべた。

 

「ふふっ、流石は私の将来の旦那様……このくらいはやってもらわないと。それにまだ刻印も未完成……良いわ。今回はここまでよ。ラブ・コフコフ」

 

そう言ってラブは赤黒いオーラと共に姿を消して撤退。サンライズは刻印によって無理に体を制御された影響か、その場に崩れ落ちた。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

そこにバタフライが駆け寄るとサンライズの安否を問い詰める。

 

「大丈夫?」

 

「うん……ひとまず、スカイ達を」

 

「えぇ!」

その頃、スカイ達三人はランボーグとの交戦を続けていた。だが、タンク役のバタフライがいなくなった影響で三人は防戦一方だ。

 

「お待たせ!」

 

そこにバタフライが割って入るとプリズムが引き受けていた防御を肩代わりする。

 

「ウィング、俺に考えがある!スタイルチェンジ!ドラゴン!」

 

それを聞いたウィングは自分も同じ考えとばかりに二人揃って空に飛ぶと山のある方向に移動し始めた。

 

「させるか!」

 

バッタモンダーの指示でランボーグが攻撃をその方向に向ける。

 

「「かかったな!強い風が山に当たれば強い上昇気流が生まれるんだ!」」

 

二人は上昇気流に乗って空高く舞い上がる。ただし、サンライズはジャンプ台を使いながらなので上空での停滞はできないが。

 

「チッ、だが二人だけなら好都合だ。追え!ランボーグ!」

 

「ランボーグ!」

 

すると二人は雲の上にまで到達し、ウィングはその様子に感動していた。

 

「プリキュアの力だけじゃ……ここには来れなかった!無駄じゃ無かったんだ!」

 

「ウィング、多分ランボーグもこっちに来る!だから!」

 

「わかりました!」

 

そう言うと二人は合体技を発動させて上ってくるランボーグを迎え撃とうとする。

 

「「スカイミラージュ!」」

 

「天に羽ばたく誇り高き翼!」

 

「熱き力よ、翼に宿りて闇を焼き尽くす希望となれ!」

 

二人が合体技の態勢に入った所でサンライズがウィングを打ち出すタイミングを見計らった。

 

「タイミングは俺が取る。信じてくれるよね?」

 

「はい!」

 

その瞬間、ランボーグが雲を突き破って出てくる。その時をサンライズは狙っていた。

 

「今だ!」

 

「「プリキュア!フレイムバードストライク!」」

 

サンライズから打ち出されたウィングがランボーグの腹に激突するとそのままランボーグを地上にまで押し出し、地面に叩きつけさせると浄化していく。

 

「スミキッタァ〜」

 

「ミラーパッド、オッケー!」

 

最後にスカイがキラキラエナジーを回収し、またもやプリキュアの勝利で幕を閉じる事になる。そしてそれと同時に雨も止み、空は晴れ渡った。

 

「チェ、んだよ!調子に乗ってられるのも今のうちだぞ!マジで!……どうやら、アレを使う時が来たようだな。バッタモンモン」

 

そう言ってバッタモンダーは撤退。それからその日の夜、家に帰るとツバサの前に大量の本が置かれた。

 

ツバサがヨヨに頼み、出してもらったのだ。

 

「ツバサさんに頼まれた通りに色んな本を持ってきたわ」

 

「ありがとうございます。……今のボクにはまだ皆さんみたいな夢は無いですけど、まずは色んな事を勉強してみようと思って!」

 

「えぇ、それが良いと思うわ。それからもう一つ、貰って欲しい物があるんだけど」

 

「……え?」

 

それからヨヨが差し出したのはミラーパッドだった。ツバサはそれを見て驚きを隠せない。

 

「本当に良いんですか?」

 

「ええ、このミラーパッドは知りたいという気持ちを繋げて広げるお手伝いをしてくれる。ツバサさんが使う事で皆さんを助ける力にもなると思うわよ」

 

ツバサがふと後ろを向くとあさひ達もツバサが使うべきだと頷いた。

 

「ありがとうございます!」

 

「それじゃあ、晩御飯にしよっか」

 

「今日は夏野菜いっぱいの手作りカレーだよ」

 

「カレー!!」

 

「かれーい!」

 

あげはの提案にましろが乗っかり、ソラは興奮気味に言葉を発する。

 

「お昼にカレーマヨを食べてから口がカレーの口になっていたんです。あ、カレーの事でしたら私も知ってますよ」

 

「なになに?」

 

「カレーは辛いライスでは無いので、甘いカレーも美味しいのです!」

 

ソラの言葉にましろやあさひも頷く。しかし、あさひのその顔は晴れなかった。

 

「あ、私は中辛が好きです!」

 

「甘口と中辛、両方作ってあるよ」

 

「両方食べます!おかわりします!」

 

「あ!ボ、ボクの分も残してくださいね!」

 

そう言って歩いていくソラとツバサ。そんな中、あさひはかなり思い詰めた様子で一人俯いていた。

 

「あさひ、どうしたの?」

 

「え?ううん。何でも無い……何でも無いから……」

 

そう言って誤魔化すあさひ。それにましろはあさひが何かを抱え込んでいると感じるがその場の雰囲気を壊さないために敢えて聞かず、晩御飯にする事になった。




また次回もお楽しみに。


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壊れた仲と覚悟の戦い

ラブと戦った翌日、あさひは起きてあげはと会うと挨拶をしようとするる。その瞬間……。

 

“その女と付き合う資格が今のあなたにあるの?”

 

「ッ!?」

 

あさひがいきなり脳内に響くラブの声に驚いて振り向く。しかし、後ろには誰もいない。そんなあさひを見たあげはは不審に思った。

 

「あさひ……大丈夫?」

 

「え?……あ……うん」

 

あさひの声は完全に元気を無くした人の声だった。あげははそんなあさひを心配して寄り添おうとする。

 

“お前のような浮気男があげはと付き合う事なんてできるの?”

 

「やめろ!!」

 

あさひはまた脳内に響いた声のせいであげはへと傷つく言葉を言ってしまった。

 

「……あ」

 

「ッ……」

 

あげははあさひに拒絶されてショックを受けてしまう。あさひはすぐに弁明しようとするが、また声が聞こえてきた。

 

“ふふっ、その程度で揺らぐ覚悟ならやっぱりあなたはその女と付き合う資格は無い。さっさと別れた方が女にとっても幸せなんじゃない?”

 

するとあさひの頭にいきなり頭痛が走るとあさひはその痛みに頭を抑える。

 

「うぅっ……」

 

「あさひ!?大丈夫……」

 

「放っておいてくれ!」

 

またあさひはあげはを突き放すような言葉を吐いてしまう。そして流石のあげはでも何度も拒絶されてしまった影響か精神をズタズタにされてしまっていた。

 

「あさひ……ごめん、私……ッ!!」

 

あげははあさひから離れるとショックを受けて逃げてしまった。あさひはそんなあげはを見て顔を青ざめさせる。

 

「あ……あぁ……俺はあげはを……傷つけた……」

 

“そうよ。あなたは恋人を傷つけた……もうあの女にも嫌われたでしょう。私の元に来なさい……あなたのそんな人を疑うような所も全部受け入れてあげるから”

 

「黙れ!!お前のせいで……お前が変に語りかけるから!!」

 

“可愛いわ。そういうあなたが私は大好き。私ならあなたを救ってあげられるわ……そうね、今日の午後三時に指定した場所に来なさい。そこであんな女の事なんて綺麗さっぱり忘れさせてあげるから”

 

それを最後に声は聞こえなくなった。あさひはその場に崩れ落ちると頭にかかった痛みも消えて楽になる。しかし、心はもう既にボロボロだったが。

 

そこにましろがやってくると慌てた様子であさひに声をかけた。

 

「あさひ、あげはちゃんに何を言ったの!?あげはちゃん、見るからに元気無いしあさひに何かを言われたのかなって……」

 

「……姉さん。俺はあげはと付き合う資格なんて無いのかな」

 

「え?」.

 

「俺はあげはに酷い事をしてしまった。それだけじゃ無い。昨日ラブと戦った時に洗脳されていたとはいえラブの胸を触ろうとしたんだ」

 

その瞬間、ましろは驚きで声を失う。それと同時にラブへの怒りが込み上げていった。

 

「あさひに……そんな事をさせるなんて、許せない」

 

あの大人しいましろが見るからに怒りを滲ませている。それだけラブのやった事が許せないのだろう。

 

「あさひは、あさひは何も悪くないよ。だってあさひの意思とは関係無くやったんでしょ?それならあさひは……」

 

「……もうあげはとは別れる」

 

「………え!?」

 

「ちょっ、ちょっと待ってください!」

 

更にその言葉を聞きつけたソラもあさひの元に来るとソラは慌てて問い詰める。

 

「それって……」

 

「あげはにこれ以上迷惑はかけられない。俺はあげはから身を退く」

 

「そんな!?あさひは本当にそれで良いの?あさひ、折角あげはちゃんと恋人になったのに……そんな簡単に捨てられる関係なの!?」.

 

「そんなわけ無いだろ……でもこうするしか無いんだ。俺なんかと一緒にいたらあげはは不幸に見舞われる。あげはが苦しむ顔なんてもう見たくない」

 

「ふざけないでください!あさひ君はあげはさんの気持ちをもっと大事にしてください!」

 

あまりにも無責任なあさひの言葉にソラは激怒する。ましろもあさひの言葉には納得がいかない様子だ。

 

「ソラも姉さんも関係無いだろ。これは俺とあげはの問題だ」

 

「関係あるよ!大切な弟と友達の事だもの!」

 

「そうです。私にとっても大事な人達がこんなに苦しい思いをして、ただ黙って見ていられません!」

 

三人が声を張り上げる中、あげはが戻ってきてしまう。するとあげははその状況を何となく理解すると小さく言葉を紡ぐ。

 

「……良いよ」

 

「「「え?」」」

 

「あさひが私と付き合わない方が幸せになれるのなら……私の存在があさひの負担になっているのなら……私は喜んであさひと別れるよ」

 

そんなあげはの目にはポロポロと涙が溢れていく。あげはも苦しく、悲しい想いをしている。それでもあさひの事が好きだから。あさひの事を想っているからこそこの感情をひたすら我慢してあさひのために別れる事を受け入れようとしていた。

 

「あげはちゃん……」

 

「ごめんね、私のような頼りない女が彼女で……あさひもこんな女の事なんてもう嫌いだよね……。それでも最後にこれだけは言わせて……あさひ、私の事を好きだって言ってくれて……ありがとう」

 

そう言い終わるとあげはは嗚咽を漏らしながら、涙で顔を濡らしながらフラフラと自室へと戻っていく。そしてそれは普段の彼女からは考えられないような低いテンションだった。あさひは完全に顔が青ざめており、それからいつの間にかあさひの目からも涙が伝っていた。

 

「ごめんよ……こんな別れ方にしてしまって……俺は、あげはの幸せをずっと祈ってるから……」

 

するとそこに騒ぎを聞きつけたツバサがようやく来るがもう時すでに遅し。あさひとあげははこの日、この時を持って恋人では無くなってしまった。

 

「……どうしてこんな事にしたんですか?あさひ君」

 

それからツバサが事情説明の後にあさひと一対一で話す事にした。そして、ソラとましろが傷心のあげはを励ましに行くことになる。

 

「……俺はあげはと付き合う資格がない。俺と付き合ったままだとあげはは不幸になる。……あげはと別れれば俺のせいで苦しむ顔をもう見なくて済むか……」

 

その瞬間、ツバサも怒ったようにあさひの頬をビンタした。あさひはそれに対して怒ることもなくただ黙ってツバサからの怒りの言葉を聞く。

 

「あさひ君、それでもやって良い事と悪い事がありますよ。あげはさんがどんな想いであさひ君の事を今まで気にかけてきたと思ってるんですか」

 

「ツバサも同じ事を言うよね……でももう手遅れだよ。俺はあげはの心に深い傷を負わせた。二度とあげはと付き合うなんてできない」

 

あさひがそう言ったらまたあさひはツバサにビンタされた。ツバサの目は本気である。

 

「それなら尚更あげはさんに謝れば良いじゃないですか。付き合うのも別れるのも自由ですが、あげはさんとはまだまだこれからもプリキュアとして一緒に戦うんです。こんな関係のままで良いんですか?」

 

「……だったら俺がラブとバッタモンダーを一人で倒せば良いだけだよ。」

 

「勝手すぎます!どうしてそこまでして……」

 

ツバサの言葉にあさひは悔しそうに歯軋りしていた。本当はこんな事にはしたくなかった。あげはとはずっと一緒にいたかった。それでもあげはが傷つき、倒れ、苦しい思いをするぐらいなら一人で罪を全て背負うつもりなのだ。

 

「……ツバサ、あげはによろしくって伝えて」

 

「ッ!?」

 

「これからラブの元に行く。もし俺が戻らなかったら……あげはの心に寄り添ってあげて」

 

あさひの勝手な発言にツバサが反論しようとするとあさひの目を見て驚いた。その目は薄らとステンドグラスのようになっており、まるで誰かからそうなるように仕組まれたものだと勘づく。

 

「あさひ君、その目……」

 

「俺もついさっき気がついた。多分、ラブの奴から何かを仕込まれたんだろう」

 

ツバサはそれを聞いてラブへの怒りが高まっていく。二人の仲を割くためにここまでするのか……と。

 

「ツバサ……話がある」

 

「え?」

 

「……さっきも言ったけど俺はラブと戦う。そこで刺し違えてでもアイツを倒す……ステンドグラスの目の解除方法がわからない以上、ラブを倒すのが多分手っ取り早い」

 

更にあさひはこの事をあげはには絶対言わないようにツバサへと釘を刺した。

 

「そんな!?あさひ君、正気ですか!!」

 

「正気だよ。でもこうするしかないんだ。あげはが幸せになるにはラブを倒すしか無い。アイツが生きてる限りは何度でも襲いに来る。だから俺は行くよ」

 

あさひはツバサの静止を振り切り、一人家を出ていくとラブの声が指定した場所へと歩き始め、到着した。

 

「待ってたわよ。私の愛しい旦那様」

 

「………」

 

「知ってるわ。あの目障りな女と別れたですって?じゃあ私が横から攫っても文句は言わせないわ」

 

「……お前の彼氏になる気は無い」

 

あさひはラブへと鋭い眼差しを向ける。その目には怒りが込もっており、ラブを絶対に許さないという意思があった。

 

「ふふっ、そう。でも無駄よ。刻印による侵食は少しずつ進んでいる。じきにあなたは私の囁きに逆らえなくなるわ」

 

「……お前はそういう女なんだな」

 

「は?」

 

あさひからの言葉にラブが疑問を浮かべる。それからあさひは言葉を続ける。

 

「そうやって人を洗脳しなければ愛を手にできない可哀想な人。自分からぶつかろうとしない……臆病で面倒な女だ」

 

それを聞いたラブは流石にあさひを相手に苛立ちを募らせる。

 

「はぁ?私の何がわかるの?……私は愛を手にするならどんな手段も使う事を厭わない。……私は愛に飢えている……だって誰からも愛されない人生を送ってきたから」

 

「そうか……ならその苦しい人生を俺が終わらせてやる。……もう二度とあげはを苦しませはしない!」

 

「良いわ。じゃあ早速始めましょ?カモン!アンダーグエナジー!」

 

すると赤黒いアンダーグエナジーが出てくるとラブが付けていた宝石に吸い込まれていき、宝石型のランボーグが出現する。

 

「ラブは戦わなくて良いのか?」

 

「今日はここで高みの見物よ。ランボーグ、あさひを殺さない程度に痛ぶりなさい」

 

あさひはそれからミラージュペンとスカイトーンを構え、変身を始めた、

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!サンライズ!」

 

あさひはサンライズに変身すると降り立つ。

 

「夜明けにひろがる眩い朝日!キュアサンライズ!」

 

キュアサンライズは手に炎の剣を構えるとランボーグへと向かっていく。こうして、サンライズの悲壮な戦いが始まるのであった。




感想や評価をしていただけると参考になりますのでどうかよろしくお願いします。また次回もお楽しみに。


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消えた灯火と不死の炎

キュアサンライズに変身したあさひはラブの呼び出した強化ランボーグを相手に戦闘を開始。

 

「ランボーグ!」

 

ランボーグが次々と攻撃を繰り出す中、サンライズはランボーグの周りを走りながら注意を引きつつランボーグの周囲に炎弾を置いていく。

 

「ふーん、周囲から炎での一斉攻撃かぁ……少しはやるみたいだけど……」

「はあっ!」

 

サンライズが止めていた炎弾を攻撃に使うとランボーグに全て命中する……だがその炎弾が突如として方向を変えてサンライズへと襲いかかってきた。

 

「な!?」

 

サンライズはそれをまともに受けてしまい地面に叩きつけられる。

 

「ッ……何で……」

 

ふとサンライズが周りを見ると小さめな宝石が空中に浮かんでいた。サンライズはここから宝石のバリケードで攻撃を反射し、自分へと飛ばしたのだと察する。

 

「遠距離からがダメなら近距離から!」

 

サンライズは炎の剣を手にしてランボーグへと跳びあがると剣を叩きつける。しかし、その瞬間炎の剣が折れてしまった。

 

「……え?」

 

「ランボーグ!」

 

サンライズが驚いている間にランボーグからのカウンターを貰って壁へと叩きつけられる。

 

「ゴホッ、ゲホッ……なんで……」

 

「ふふっ、原因は二つ。一つは私自身のランボーグの固さ。もう一つはあなたの心が乱れてるから……」

 

「スタイルチェンジ!グリフォン!」

 

サンライズは力が強いグリフォンスタイルに変身すると大剣をランボーグにぶつける。しかし大剣の方が折れてしまい、ランボーグからのカウンターをまともに受けてしまう。

 

「うわぁああああああ!!」

 

「……やっぱり心が乱れてるあなたなんて弱すぎるわね」

 

サンライズは精神的にボロボロであり、それがモロに戦闘にまで響いてきていた。

 

「こんなのじゃダメだ……あげはを安心させるには俺一人でアイツを倒さないと……」

 

サンライズはあげはの事を考えるあまり、完全に心が乱れてしまっていた。

 

「だったらソウヤ、君の力を……え?」

 

するとヤタガラススタイルにチェンジするためのスカイトーンが輝きを失ってしまう。それと同時に他のスタイルチェンジ用のストーンも輝きを失い、サンライズは元の姿に戻ってしまう。

 

「そんな……どうして……」

 

「どうやら力にも見放されたようね」

 

「だったらホーリーサンライズで……」

 

しかしホーリーキュアサンライズのスカイトーンも前の時と同じように使えなくなってしまっており、サンライズは打開策が消えて窮地に陥ってしまう。

 

「はあっ!」

 

サンライズは剣ではなく拳でランボーグを何度も殴るが、全くダメージにならない。それどころか逆にランボーグからの攻撃を腹に受けて唾を嘔吐。そのまま頭を掴まれると投げ捨てられる。

 

「がふっ……」

 

サンライズはもう既にフラフラで立ち上がっても揺らいでしまう。サンライズは一か八かと浄化技を使おうとする。

 

「ひろがる!サンライズカリバー!」

 

その瞬間、浄化技のエネルギーが強制的に露散。変身さえも解けてしまう。

 

「……そんな!?どうして……」

 

あさひが慌ててミラージュペンとスカイトーンを見るとミラージュペンさえもあさひを見放したのか消えてしまい、スカイトーンも輝きを失う事になる。

 

「何で……何で、何で……こんな事に……」

 

「あーあ、つまらない。折角ならもう少し頑張ってよ」

 

「お前、何をした!」

 

「私は何もしてないわ。……あなたの方に問題があるんじゃない?」

 

あさひが今までプリキュアになれた理由。それは大切な人を守るために戦う意志を固めたからだ。だが今のあさひは自分のために大切な人を自ら傷つけ、挙げ句の果てには自分の命さえも粗末に捨てようとしている。これによりプリキュアになれた理由と矛盾が生じてしまったのだ。

 

「俺は……俺は……」

 

「はぁ……ランボーグ、さっさとあさひを気絶させて。そうしたら終わりで良いわよ」

 

ラブからの言葉にあさひは絶望してしまう。ここにもあさひが心が折れてしまった事が要因として来ている。あさひは今まで窮地の時も決して諦めずに最後まで立ち向かう覚悟があった。しかし、今のあさひは心も体もズタボロにされ、立ち上がる力も覚悟も失っている。これではプリキュアの力に見放されても文句を言えない。

 

「ランボーグ!」

 

少しずつランボーグが近づいていく中、あさひは絶望顔で俯いていた。そしてとうとうランボーグからの攻撃が繰り出される……その時だった。

 

目の前にいきなり蝶型のバリアが出てくるとランボーグからの攻撃を防いだのだ。

 

「あさひ!大丈夫?」

 

「……バタフライ」

 

そこに来たのは息を切らせながらあさひを助けに来たキュアバタフライ……聖あげはだった。

 

「……間一髪だったね」

 

「バタフライ、どうして……何でここに来たんだよ!俺はバタフライにあんな酷い事を言ったんだ。恋人の関係を一方的に破棄したのは俺なんだ。なのに……なのに……」

 

するとバタフライは優しくあさひを抱きしめた。そして温かくこう話す。

 

「……当たり前でしょ?私はあさひを大切に思ってるんだから」

 

「え……」

 

「恋人だとか、そうで無いとか関係無い。プリキュアになる時に大切な人を守るって決めたから」

 

バタフライはそう言ってあさひへと優しく笑う。それからバタフライはあさひを庇うように前に出ると両手を広げる。

 

「ラブ、私が目障りなのなら私に直接来なさい」

 

「チッ……じゃあ遠慮なく」

 

そう言ってラブが手を翳すとランボーグが一時的に停止する。それを見たバタフライは一瞬動揺し、ラブの動きを見落としてしまう。その直後、ラブから放たれた赤黒い光線がバタフライの腹を貫いた。

 

「……え?」

 

するとバタフライは一瞬動揺したような声を上げるとその直後に激痛が彼女の体を駆け巡ると同時にバタフライは倒れて変身解除。あさひは急いで駆け寄るとあげはは既に意識が朦朧としていた。

 

「あげは!あげは!しっかりしてくれ!あげは!あげはってば!」

 

「あはは……油断しちゃった……」

 

「そんな事どうでも良い!早く治療しないと……」

 

「ごめん、私……もうダメみたい」

 

あげはは諦めたようにそう言う。しかしあさひはあげはを救うのを諦めようとしない。

 

「何か、何か手があるはずだ。あげは、ちょっと待ってろよ。すぐに見つけてやるからな」

 

「あさひ……私ね、あさひと出会えて幸せだったんだよ……あさひと恋人になって……これから結婚もして、子供も作って、幸せになれるって思ってたんだよ」

 

あげはからの言葉にあさひは自分がどれだけ無責任な発言をして、そのせいであげはを傷つけたのだと自覚した。

 

「あげは……ごめんなさい。俺が弱いせいで……俺がもっとしっかりしないといけないのに……」

 

「そっか……じゃあもう同じミスはしないね。私はもうあなたとは会えないけど、きっとあさひには素敵な出会いがあるはずだから……」

 

あげははどんどん衰弱しており、このままでは命尽きるのも時間の問題だろう。あさひの目からはとめどなく涙が溢れていき、何もできない自分に嫌気がさしてきていた。

 

「嫌だ!俺は、俺はあげはとじゃないとダメなんだ。あげは……頼むから死なないでくれ!」

 

あさひの叫びも虚しく、あげはの生態機能は少しずつ停止していく。心臓の音もゆっくりになり、体も冷たくなっていく。

 

「あさひ……今まで一緒にいてくれて……ありがとう。愛してるよ」

 

そう言ってあげはの目は閉じ、心臓の鼓動は聞こえなくなった。あさひはそれを見て自分への怒りで叫び、荒れ狂う。

 

「俺は……俺は……最低な男だ。俺のせいで……あげはが死んで……俺があんな事を言わなければ……」

 

あさひの心はズタボロでもう限界であった。そこにソラ、ましろ、ツバサが遅れて到着するが、目を閉じてあさひの膝で長い眠りについたあげはと大粒の涙を溢したあさひを見て大体の状況は察しがつき三人ともラブへの怒りを滾らせる。

 

「ラブ!あなたを私達は絶対に許しません!」

 

「二人共、行こう!」

 

「「「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!」」」

 

「スカイ!」

 

「プリズム!」

 

「ウィング!」

 

「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」

 

「ふわりひろがる優しい光!キュアプリズム!」

 

「天高くひろがる勇気!キュアウィング!」

 

三人は変身を完了するとランボーグへと向かっていく。そんな中、一人残されたあさひは目を閉じて冷たくなっていくあげはを見つめていた。

 

「……俺は取り返しのつかない事をしてしまった。プリキュアにもなれない。今の俺に生きてる価値なんてあるのかな?」

 

あさひの目は光を失っており、あげはへと小さく問いかける。当然ながら返事は無い。するとふとどこからかあげはの声が聞こえてきた。

 

「あさひ」

 

「あげは!?」

 

すると突然あさひの体は倒れ込むと精神の世界へと移動。そこには死んだはずのあげはがいた。

 

「あげは……どうして?」

 

「私はもう死んじゃったから本当は話せないけど……ある人のおかげで少しの時間だけ話せるようになったの」

 

「あげは……ごめんなさい。俺は……」

 

「もう、そんな暗い顔しないの。……あさひは自分のやった事を後悔してる?」

 

あげはからの問いにあさひは頷く。当然だろう。自分の判断のせいであげはは命を落としたのだから。

 

「結局俺はあげはを傷つけてしまった……そのせいで」

 

するとあげははあさひを抱きしめた。それからあさひと向き合う。

 

「しっかりしなよ!そんな暗いあさひを私は好きになった覚えは無いよ」

 

「でも……」

 

あげははあさひを叱咤激励し、更にある事を告げる。

 

「あさひの強さは……そんな物なの?大切な人を守るって言ったあの時の決意は嘘だったの?」

 

「……違う」

 

「なら、私の事は構わなくて良いから今残ってる大切な人を守ってよ!」

 

あさひはあげはからの言葉に我に帰るとようやくボロボロの心が落ち着きを取り戻す。

 

「……もう私はあさひの側には居てあげられないけどさ、それでも私はあさひと一緒になれて幸せだったんだから。だからさっさと行って皆を助けてきて!」

 

「わかったよ……あげは!」

 

それからあさひは精神世界から消え、あげはは一人残される。そこにあげはをあさひと会わせた張本人が姿を現す。

 

「……ったく、消滅してからも世話を焼かせる相棒だな」

 

「カゲロウこそ、何でここにいるの?あなたはあさひにやられて死後の世界に行ったんじゃ……」

 

「ふん。知るかよそんな事……取り敢えず、あげは。お前はまたすぐに蘇る」

 

「それってどういうこと?」

 

「あさひを信じていればきっとそうなる」

 

そう言ってカゲロウは姿を消した。あげはは訳のわからない顔をしていたが、一先ずはカゲロウの言う通りあさひを信じる事にする。

 

 

現実世界では三人がランボーグにあっという間に追い詰められて変身解除してしまっていた。

 

「うぐっ……」

 

「強すぎるよ……」

 

「やっぱり前よりも更にパワーアップしてます」

 

そこにあさひが三人の前に立ち、両手を広げた。それを見たラブはニヤリと笑う。

 

「プリキュアじゃないあなたが今更何の用?」

 

「……俺は、確かにもうプリキュアじゃない。あげはを失った弱い人間だ。それでも、俺にはまだ大切な人がいる。その人達を守り抜く!それがあげはから託された俺が負った罪への償いだ!」

 

その瞬間、再びあさひの胸からミラージュペンが具現化するとあさひがそれを手にし、スカイトーンも輝きを取り戻す。

 

「……ヒーローの出番だ!」

 

それからあさひはスカイミラージュを使い、プリキュアへと変身する。

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!サンライズ!夜明けにひろがる眩い朝日!キュアサンライズ!」

 

あさひは再度サンライズとして復活すると更に胸から新たなスカイトーンを具現化させる。

 

「何!?」

 

「見せてやる……これが不死の炎の力だ!」

 

それからサンライズは新たなスカイトーンをスカイミラージュに装填し、スタイルチェンジを発動する。

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!スタイルチェンジ!フェニックス!」

 

するとどこからともなくフェニックスが飛来してくるとサンライズへとその姿を重ねる。その瞬間、フェニックスが炎の鎧としてサンライズに装着されていく。今回は今までのサンライズのどのスタイルよりも重量があるであろう騎士のような装甲で右手には赤い剣が、左腕に腕を覆うサイズの大きな盾が装備される。こうして、キュアサンライズ・フェニックススタイルが爆誕するのであった。




また次回もお楽しみに。


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不死鳥の奇跡

復活したキュアサンライズが新たな力、フェニックススタイルに覚醒するとラブはそれを興味深そうに見つめていた。

 

「ふーん、なかなか面白そうな変化ね。ランボーグ、潰しなさい」

 

ラブの命令を受けてランボーグがサンライズへと攻撃を仕掛けてくる。サンライズはそれを左腕に装備した盾で受け止めると完全に防御してしまう。

 

「はあっ!」

 

更にカウンターとして赤い剣でランボーグを切り裂いた。その一撃は今まで全くダメージとして通らなかったランボーグへと通用し、ランボーグの宝石にヒビが入る。

 

「ランボーグ!?」

 

「……宝石の中には固いものが確かにある。けど、弱点が無いわけじゃない。そこを突ければ!」

 

サンライズは走っていくとランボーグの体を何度も斬りつけていく。今度は先程とは違い、剣が折れる事はない。サンライズの意思が強くなった証拠だ。

 

「ランボーグ、あっちの三人に攻撃よ」

 

ラブはサンライズを無視して傷ついたソラ達へと攻撃するように指示。ランボーグは即座に気弾を発射した。三人はダメージからかまともに動く事ができないため、衝撃に備えて目を瞑る。しかし、そのダメージはいつまで経っても来なかった。

 

「見てください!」

 

ツバサに言われて二人が前を向くとそこには赤いエネルギーの盾が何枚も防波堤のように展開されて三人を守っていた。

 

「ッ!」

 

「そう簡単に俺の大切な人を傷つけられると思うなよ!」

 

ふとラブがサンライズを見ると先程まであった左腕の盾が無くなっている事に気がつく。そして、三人の前に出した障壁が消えた途端サンライズに再度盾が装備された。

 

「ランボーグ、三人にもう一回攻撃をしてからサンライズを狙いなさい」

 

ラブはサンライズの盾の弱点を一瞬で看破するとサンライズに盾を使わせてから無防備なサンライズへと攻撃を放たせる。

 

「無駄だ!」

 

サンライズはランボーグからのパンチをスレスレで回避してからカウンターの一撃を叩き込む。

 

「ランボ!?」

 

「うらあっ!」

 

サンライズがランボーグの腹を力任せに蹴り上げるとそのまま上空に炎の剣の形を模したエネルギー弾を生成。それを雨のようにランボーグへと降らせる。これには堪らずランボーグも滅多撃ちにされてから地面へと叩きつけられた。

 

「……これで終わりにする!」

 

それからサンライズは剣を真上に投げるとそれが炎を纏い、不死鳥の姿を模る。それからサンライズもそれに重なるように一体化すると盾を両手で持ち、前へと突き出しつつ不死鳥の姿のまま相手へと突撃していった。それから繰り出されるシールドチャージを模したフェニックススタイルの浄化技。

 

「ひろがる!サンライズアサルト!」

 

サンライズの攻撃がランボーグを貫くとランボーグは浄化され、残された赤黒いエネルギーがラブへと吸収されるのであった。

 

「ふふっ、そう来ないと面白くないわ」

 

「ラブ……次はお前の番だ!」

 

サンライズが剣先をラブへと向けて彼女を睨みつける。しかしラブはまるで相手にすらならないとニコリと笑っていた。

 

「まぁそう焦らないの。……刻印、沈静」

 

そう言うとサンライズの刻印が一時的に沈静化。サンライズの目のステンドグラスが消失した。

 

「ッ、何をした!」

 

「刻印の特性としてね、沈静化している状態だとどうやっても解除できないの。……例え私を倒したとしてもね」

 

「なっ!?」

 

「そして、刻印が残った状態で私を倒せば刻印を制御する者がいなくなる事を意味する。つまり、刻印が好き勝手にあなたの体を蝕むようになるの」

 

ラブはニヤニヤと妖艶な笑みを浮かべながらサンライズを見下す。彼女はサンライズをコントロールできなくなる代わりに絶対に刻印を解除できないようにしてしまったのだ。これはつまり、今彼女を倒しても無駄という事になってしまう。

 

「さぁ、どうするの?私を倒す?それとも私に従う?好きな方を選ばせてあげるわ」

 

そうやってラブはサンライズを挑発。それに対してサンライズの答えは初めから決まっていた。

 

「プリキュア!ホーリーコネクト!ひろがるチェンジ!ホーリーサンライズ!」

 

サンライズはホーリーサンライズに強化変身。それからラブを倒そうと飛びかかる。

 

「ダメです!サンライズ!」

 

「サンライズ、今は我慢して!」

 

「落ち着いてください!」

 

「だめ!さんらいず!!」

 

するとエルを含めたソラ達四人がサンライズを静止、ラブへの攻撃を止めさせる。

 

「く……」

 

「まぁ、今日あなたを物にするつもりだったけど、お楽しみはとっておくわ。それに……刻印が完成すればあなたは成す術がないしね。バイバイ。ラブコフコフ」

 

ラブはさっさと帰ってしまうと四人は亡くなってしまったあげはの元に集まる。

 

「あげはちゃん……」

 

「私達がもっと早くここに着いていれば……こんな事には」

 

「あげはさんの親御さんになんて言って謝れば……」

 

三人が悲しみに暮れる中、サンライズは一人あげはを抱き抱えると再びフェニックススタイルにチェンジし、突如として体に赤いオーラを纏った。

 

「サンライズ、何をするつもりですか?」

 

「……あげは、今助けてあげるからな」

 

サンライズの言葉に三人は疑問を浮かべる。助けるも何もあげははもうこの世の人では無い。そう思った瞬間、サンライズの体に炎が纏われ、その炎があげはに移っていく。

 

「サンライズ!?何してるの!」

 

「炎で包んだらあげはさんの体が……」

 

「これで良いんだ」

 

すると炎があげはの中に取り込まれていき、淡い光となってあげはの体を治療していく。フェニックススタイルの特徴、それは対象一人を治癒する能力。それは対象が亡くなっていたとしても適用される。そして、光が収まるとあげはが薄らと目を開けた。

 

「……あれ?私、確かに死んだはずじゃ……」

 

あげはがキョトンとしたような顔をしていた。そこに涙ぐんだソラ、ましろ、ツバサの三人が飛びつく。

 

「あげはちゃん(さん)!」

 

「うわっ!」

 

三人にいきなり抱きつかれて驚くあげは。いつもあげはの抱きつきを拒否するツバサも今回ばかりは自分から行った。

 

「良かった……」

 

サンライズは変身を解くとそのまま一人帰ろうとする。しかし、あげははそれを許さなかった。

 

「あさひ」

 

「………」

 

「助けてくれてありがとう」

 

あげははあさひへとお礼を言うがあさひはまだ無言のままだ。あさひは今回の事件も引きずっているからである。

 

「俺のせいであげはは一回死んだんだよ……もうあげはと友達どころか顔を合わせることもできない……その資格も無い」

 

その瞬間、あさひは両肩をあげはに掴まれるとクルリと体を前後ろ反転させられてあげはと向き合わされた。

 

「あさひ、よく聞いて。あさひは、何でもかんでも重く受け止めすぎ。あさひの悪い所だよ。私はフラれた事も、一回あさひを庇って死んだ事も気にしてないよ。むしろ、あさひは色々と引きずりすぎ」

 

「でも……これは俺の罪だ。ちゃんと向き合わないと……」

 

「じゃあ私ともちゃんと向き合わないとね」

 

あげははニコリと笑ってあさひの顔を覗き込む。そんなあげはにあさひはドキドキと胸の鼓動が高まっていく。だが、そんな事をしたらいけない、してはならないとあさひは無理矢理我慢しようとする。

 

「……我慢したらダメ」

 

あげはには何もかもお見通しだった。あさひが我慢している事も、本当は別れた事を後悔している事も。

 

「あげは……俺は……」

 

その瞬間、あさひの口にあげはが人差し指をピタッと置いた。それにドキッとして更に心臓が強く高鳴る。

 

「そこから先は私が言うね。……私はあさひの事が好き。それはフラれてからも変わらない。もしあさひが私と別れた事を凄く後悔してるのなら……私ともう一度付き合って欲しい」

 

あげははあさひへと手を差し伸べる。あさひは手を出そうとしてそれを躊躇した。こんな簡単に許される程、自分の罪は軽くないのだと考えているのだ。

 

「あさひの本当の気持ちをちゃんとぶつけて欲しい。もしそれが私とは付き合わないという答えでも私はそれを受け止めるから」

 

「俺は……あげはと付き合いたい……」

 

それは涙ぐんだ声で辛うじて聞き取れるような掠れ声だった。それでもあさひはようやく本当の気持ちをあげはへと吐露したのだ。

 

「許されるなんて思ってない。今更こんな事虫が良すぎると思われても仕方ない。それでも……それでも俺はあげはの事が大好きだから。あげはの側であげはをちゃんと守りたい……今度はあげはを悲しませないように、傷つけないように……俺があげはを守る」

 

「……約束だよ。私とあさひの二人だけのね」

 

それからあさひはあげはに抱きつくと大声で泣き始めた。あげははそれを黙って優しく受け止める。こうして、あげはとあさひは再び恋人として再出発する事になった。これからも二人の前には困難が待ち受けているだろう。それでも、二人は一緒にそれを乗り越えていく。そう誓うのであった。

 

その頃、スカイランドにて、ドリアーンが街中を巡回しているとドリアーンにとって見覚えのある人物が目の前を横切った。

 

「シャララ……隊長!?」

 

ドリアーンは慌てて後を追いかけていくが、シャララ隊長と思わしき人物はドリアーンからの声掛けにまるで返事すらしない。そして、最後には路地を曲がってドリアーンがそこに到達した頃にはその姿を消してしまった後だった。

 

「いない……一体どこへ……とにかく、この事は報告しなければ」

 

ドリアーンが慌ててアリリ副隊長へと報告に行く中、その姿をバッタモンダーとラブが見ている。

 

「ふふっ、僕の作戦通りだね」

 

「バッタモンダー……わかってるだろうな?」

 

「ああ。もうそろそろアイツらの心を折ってやる。僕のとっておきでね」

 

するとラブは手に赤黒いエネルギーを出すとそれをバッタモンダーへと手渡した。

 

「これは?」

 

「お前の作戦に必要なんだろう?使いなさい」

 

「では遠慮なくいただくよ」

 

バッタモンダーが指を鳴らすと彼の後ろには先程ドリアーンの前に出てきたシャララ隊長がおり、その姿が黒い煙となって消えた。

 

「ちなみに約束はわかってるだろうな?」

 

そうやって念を押すラブにバッタモンダーは頷くとニヤリと笑う。

 

「勿論ですよ。この作戦が成功したらキュアサンライズはあなたに献上しますよ」

 

「ふふっ、ようやくあの子が私のものになる」

 

ラブもバッタモンダーを使い目的を果たすつもりだ。果たして、二人の立てた作戦とは何なのか。それがベールを脱ぐ日は近い。




また次回もお楽しみに。


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二つの悪夢とバッタモンダーの逆襲

ある夕焼けの空、あさひ、ましろ、ツバサ、あげはの四人が励ます中、ソラが絶望した顔つきで座り込んでいた。

 

「私……もう戦いたく無い!!」

 

その時、ソラのミラージュペンが黒くなると消失。スカイトーンも輝きを失ってしまう。

 

「くそっ……ちくしょおおおお!!」

 

あさひの叫びが夕焼けにこだました直後、あさひは自分の叫びで布団から飛び起きた。

 

「はっ……はぁ……はぁ……何だよ……これ」

 

あさひが周囲を見渡すと暗く、まだ夜中である事がわかる。だがあさひは汗だくで悪い夢を見た直後だと言う事が容易に察しがついた。

 

「今のは、夢……それにしては現実味がありすぎる。何しろ、その内容は……」

 

あさひは普段なら起きてしまえばすぐに忘れてしまう普通の夢の割にはその内容をしっかりと鮮明に記憶している。すると肌身離さず持っているサンライズのスカイトーンが危険信号を発しているようにチカチカと輝いていた。

 

「お前も嫌な予感がするのか?」

 

そうあさひは話しかけるとスカイトーンがいきなりまた光り始めるとあさひに映像を見せる。そこにあったのは行方不明になっていたシャララ隊長がバッタモンダーの手によってランボーグとなり、それをソラ達が撃破してしまうとシャララ隊長が倒れて亡くなってしまうような内容だった。

 

「……夢の内容とある程度は同じ……でも夢では亡くなる所までは行ってなかったな」

 

すると突然ヤタガラスのスカイトーンが光り始めるとサンライズのスカイトーンと同じように映像を見せ始めた。そこに映っていたのは以前一緒に戦ったソウヤがランボーグの素体となり、ソラが絶望。そしてプリキュア達が全滅してしまう物である。

 

「嘘だろ……ソウヤが、ランボーグになるなんて……。助けに行かないと……でもどうすれば……俺はソウヤみたいに精神体じゃない。世界の壁なんて越えられないのに……」

 

あさひがどうしようもない自分に悔しさを抱いているとヤタガラスのスカイトーンが眩い光を放ち、次の瞬間にはあさひはドサっと布団へと倒れ込んだ。

 

あさひが目を開けると不思議な空間を移動していた。それはまるでワームホールのようにどこかへと繋がる道のようにも見て取れる。

 

「これは……って、さっきまでパジャマだったのにいつもの服装になってる!?それに体が心なしか透けてるように見えるんだけど……」

 

あさひがこの謎現象に驚きを隠せていなかったが、そんなあさひへと声が聞こえてきた。

 

『虹ヶ丘あさひ様ですね』

 

「その声、この前ソウヤから出てきた残留思念さん!?どうして……」

 

『今はソウヤ様からエトという名前を付けられています。なのであさひ様もエトと呼んでください』

 

「えっと……エトさん、これは一体どういう」

 

『時間がありませんので手短に言います。私の世界のソウヤ様を救って欲しいんです』

 

「!!」

 

あさひは先程の夢で事情を何となく理解しており、そして頷くとエトは話を続ける。

 

『今のあなたはスカイトーンの力で一時的に精神体になっていますので世界の壁も越えられると思います。ですのでどうかお願いします。ソウヤ様を……助けてください』

 

エトの目には涙が浮かんでおり、あさひはそれを見てエトの話は本当なのだと言う事を察すると同時に初めから決まっていた答えを口にした。

 

「わかった。ソウヤには俺の世界を救ってもらったし、それに目の前で助けを求めている人がいるのに見過ごすなんてできない。だから行くよ」

 

『ありがとうございます!そろそろ私達の世界に到着します!』

 

「待っててソウヤ……今助けるから!」

 

そしてあさひは世界の壁を越えると同時に飛び込んでいく。そこには自分がよく知る四人のプリキュアとエル、そしてランボーグと化したソウヤが存在していた。

 

「あなたは……誰?」

 

「私そっくりの顔」

 

「もしかして……ソウヤ君が前に言っていた」

 

「別の世界の友達……」

 

「えっと、初めまして……で良いのかな?ソラ、姉さん、ツバサ、あげは」

 

すると訳の分からない様子のバッタモンダーがいきなりのあさひの登場に驚き、動揺を隠せないでいる。

 

「な、何なんだよお前は……」

 

「俺?別世界からの助っ人」

 

「はぁ?」

 

バッタモンダーが驚く中、あさひはスカイミラージュを片手に持ち、プリキュアへと変身した。

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!サンライズ!」

 

その瞬間、あさひはキュアサンライズへと早変わりするとバッタモンダーとソウヤのランボーグへと名乗りをあげる。

 

「夜明けにひろがる眩い朝日!キュアサンライズ!」

 

これはこちらの世界では絶対に語られることの無い、キュアサンライズがかつて自分の世界を共に救った友を助けるために世界の壁を越えて戦いに行く話だ。

 

 

その戦いが終わり、あさひが再び目を覚ますとそこはいつものベッドの上で外を見ると朝になっていた。そしてあさひはそれと同時に自分達にも似たような事件が起きる可能性があるということを自覚する。

 

「ソウヤ達の世界であった事は多分こっちの世界でも何かしらの形である……絶対にソラを絶望させはしない」

 

あさひが決意を固めると、スカイランドからの通信が繋がり、あさひ、ソラ、ましろ、あげは、ヨヨはミラーパッドの前に集結してスカイランドにいるアリリ副隊長からの言葉を聞いていた。

 

「そうですか……王様と王妃様は眠ったまま……」

 

『ああ、お変わりないと言えばその通りだが……民も兵も希望を捨ててはいない。だが、不安は募る一方だ』

 

アリリ副隊長からキラキラポーションの出来具合について聞かれるが、それも未だに完成の目処が立っていない。何しろ、キラキラエナジーも十分に揃わないからだ。

 

するとベリィベリーとドリアーンが同時に通信に割って入ると話し始めた。

 

『ソラ!』

 

『あさひ!』

 

『こら、話し中だぞ!』

 

「ベリィベリーさん!」

 

「ドリアーンさんも」

 

アリリ副隊長は二人を退けるが、二人はそれでも無理矢理話へと参加する。

 

『ソラ、お前達に話しておく事があるんだ!』

 

『だから、それをこれから話そうと……』

 

『シャララ隊長を、行方不明になっていたシャララ隊長を俺は見たんだ!』

 

それを聞いてソラの顔が明るくなる。何しろ、自分にとってとても大切で憧れの存在のシャララ隊長が生きているとなればこれ以上無い喜びだからだ。

 

「本当ですか!?」

 

『ああ、俺だけじゃ無い』

 

『シャララ隊長を見たという知らせが私達の元に沢山届いているんだ』

 

それにソラとましろは嬉しそうにするが、あさひとあげははまだ喜ぶという結論には至ってなかった。

 

「待って。目撃情報だけ?妖怪や幽霊じゃあるまいし……」

 

「あげはの言う通りだよ。それだけで生きてる断定はできないと思う」

 

『そこなんだ。隊長は最後には煙のように消えてしまったと、皆そう言っている』

 

ベリィベリーの言葉にソラの顔は再び曇る。するとましろがソラと代わるように話し始めた。

 

「本当なのか嘘なのかはわからないけど、ここで話していても始まらないと思います。引き続き捜索を続けて、何か情報があったら教えてください。どんな小さな事でも構わないので!お願いします。ベリィベリーさん!」

 

「ドリアーンさんもお願いします。俺の友達に笑顔を取り戻させてください!」

 

ましろとあさひの言葉に二人は“了解”と返すと通信は途切れた。それからあさひはあげはと二人で話をする事になる。ひとまずあさひは夢の出来事を洗いざらいあげはに相談することにした。

 

「そんな事があったんだね……」

 

「うん。そして、俺の予想通りなら多分近いうちにバッタモンダーがソラを絶望させに来るはず」

 

「あさひ……対策は立てられそう?」

 

あげはにそう聞かれるとあさひは難しそうな顔つきになる。何しろ、バッタモンダーの作戦を止めるにはもう手遅れな所があるからだ。どうにかしようと思うともっと時間を遡らなければならない。

 

「一つだけ手はある」

 

「そっか。でもそれ、あさひの事だから多分……」

 

「ああ。かなりリスクを伴う。確実に成功させる自信は無い。それでもやる」

 

「そっか……じゃあ約束して」

 

「え?」

 

「何があっても無事に帰ってきて」

 

あさひはあげはからの言葉に頷くとその作戦を実行に移すために覚悟を固めるのであった。その日の昼、あさひ達は街のスーパーで買い物をし行き、買い物が終わって出てきていた。

 

「餃子!それはこちらの世界が生み出した究極のグルメ!」

 

「味も良いけどさ、皆で大きなお皿を囲んでワイワイ食べるのが最高に楽しいよね!」

 

「幸せひしひしだよね。エルちゃんの好きなチーズ餃子も作っちゃうよ」

 

「ちーず!しゅきしゅき!」

 

ツバサとあさひが荷物を持ち、あげはの車に積み込んでいるとソラが突如として遠くを見つめる。あさひがふとその視線の先を見るとシャララ隊長の背中が見えた。

 

「ッ!!」

 

そしてあさひはその見覚えがある光景に目を見開く。それは夢の中で自分が一度見た光景だからだ。

 

「まさか……やっぱりあの夢は全部……」

 

次の瞬間、ソラはシャララ隊長を追いかけて走り始めてしまう。あさひは荷物を車に置いて急いで追いかけた。ましろ達が止めるのも聞かずに。

 

「この光景、全部夢の中で見た物……あの夢は全部、これから起こりうる未来の可能性!だとしたらソラが最後に到着する場所は!」

 

あさひは周りの建物の配置、そしてその風景からシャララ隊長がどの場所に到着するかの最終予想を立てるとその場所へと向かう。

 

「やっぱりそうだ!」

 

あさひの予想通り、とある工事現場の場所にシャララ隊長とソラがいた。そして次の瞬間、シャララ隊長はいきなり剣を抜いてソラを斬りつけようとする。

 

「やばい!」

 

あさひはそこに飛び込むとソラを突き飛ばして自分も剣を回避した。その時、突如としてシャララ隊長は黒い煙となって消えるとソラは驚くが、あさひはこれも夢で見た通りだったので驚くことも無い。

 

「やっと来たね、キュアスカイ……と、何だよ。君も着いてきたのか」

 

「ああ。お前の秘策を打ち崩しにきた」

 

「面倒だけど仕方ないか」

 

バッタモンダーがダルそうにそう言う中、ソラがバッタモンダーへと叫ぶ。

 

「何のためにこんな事を!私に対する嫌がらせですか!そんなに私が憎いんですか!!」

 

「ああ、憎いね!」

 

そう言うバッタモンダーは怒りに顔を振るわせていた。スカイランドで巨大ランボーグを倒されたバッタモンダーはその隙にエルを攫おうとしたのだが、そこにスカイが鬼の形相で止めたためにバッタモンダーのプライドが傷つけられたのだ。

 

「優しくて強い僕のプライドを傷つけた事……きっちり落とし前つけさせてもらうぞ!」

 

「そうか……ならやってみなよ!」

 

あさひがそう言う中、バッタモンダーが指を鳴らすと地面から人型のランボーグが登場するのであった。




今回、コラボの話で出てきたソウヤの世界にあさひが向かいましたが、その先の内容については振り子メンタルさんのヒーローガールとヒーロー気質の転生者シリーズにて描いていただけるとの事なのでそちらの作品がアニメ22話の内容に突入するのを楽しみにしていただければと思います。また次回もお楽しみに。


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曇る青空とあさひの覚悟

ソラとあさひの前に現れた人型のランボーグは手に青い刀身をした剣を構える。それを見たあさひは顔を曇らせる。これも見たことのある光景だからだ。

 

「ランボーグ!」

 

「やっぱりこうなる運命か……ソラ、行こう」

 

あさひは敢えてソラには夢の事を伏せておく事にした。そうしないとソラの心は間違いなく折れてしまうからである。

 

「ヒーローの出番です!」

 

「「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!」」

 

「スカイ!」

 

「サンライズ!」

 

「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」

 

「夜明けにひろがる眩い朝日!キュアサンライズ!」

 

「「レディ……ゴー!ひろがるスカイ!プリキュア!」」

 

二人は変身を完了するとランボーグへと向かっていく。スカイは徒手空拳で、サンライズは炎の剣を出す。

 

「ランボーグの影にコソコソ隠れて……それであなたのつまらないプライドは満たされるんですか!!」

 

「スカイ、聞いてくれ……」

 

「サンライズ?」

 

「俺が防御を受け持つ、俺がスカイを守る盾になるからスカイには攻めを任せて良い?」

 

「わかりました!」

 

サンライズは敢えてタンク役を買って出た。それは自分の作戦を実行に移すためにはランボーグの動きを見切る必要が出るからである。

 

「ランボーグ!」

 

バッタモンダーが指を鳴らすとランボーグが襲いかかってくる。その剣をサンライズが受け止めるとその威力に押されるが、気合いで持ち堪える。

 

「くっ……この威力、スカイ!直撃だけは絶対にしたらダメだ!」

 

「そうですね……かなりの剣の使い手のようですし……」

 

二人が冷静に戦況を分析する中、ランボーグはお構い無しとばかりに剣を振るってくる。それにサンライズは炎の剣で対応するが、純粋な腕前ではランボーグの方が上のようだ。そのためにサンライズは少しずつ体を斬られて傷ついていく。

 

「あの人が素体なだけあって……強い」

 

サンライズはそう言うとバッタモンダーはニヤリと笑う。そしてスカイはサンライズの言葉に違和感を感じつつもサンライズのカバーをした。

 

「サンライズ!無理しないでください!」

 

スカイはサンライズを気遣ってランボーグが剣を振り下ろす直前に攻撃を命中させ、ラッシュを叩き込んだ。

 

「はぁああああ!!」

 

するとバッタモンダーは指を鳴らすとスカイの顔に小さな黒い煙を発生させてランボーグの援護をする。その瞬間、ランボーグが剣を再度振り下ろすとそれをサンライズが受け止めた。しかし、サンライズはかなり疲労している様子で息切れを起こしている状態だ。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

「サンライズがこんな簡単に息切れ……?確かにあのランボーグは手練れですが、そこまで疲れるほどの相手じゃ……」

 

スカイは少しずつサンライズに疑惑を抱き始める。そんな中、サンライズは心の中で考えを巡らせていた。

 

「(……何でこんなにすぐ疲れるんだ……はっ……もしかして……向こうの世界での疲労が抜けきれてない!?)」

 

あさひことサンライズはソウヤの世界に行く間に慣れない精神体での活動をした事に加えて、向こうでの戦闘の疲れやダメージを今も引きずってしまっていたのだ。そんな中、スカイがランボーグを圧倒すると次々とランボーグにダメージを与えていく。

 

「懐に入ってしまえば……剣より拳の方が速いんです!」

 

スカイがランボーグを吹き飛ばすと遠くから見つめるバッタモンダーを睨みつける。

 

「バッタモンダー!!」

 

「ふふっ、お楽しみはこれからだよ」

 

するとランボーグは立ち上がる。その瞬間、サンライズはランボーグがどうなるのか察して叫ぶ。

 

「やめろバッタモンダー!それ以上やったら……」

 

「へぇ……キュアサンライズ、お前は察しが良いな」

 

「サンライズ、さっきから何を隠して……」

 

スカイがサンライズへと詰め寄ろうとするとランボーグは背中に青いマントを生やした。その瞬間、スカイはランボーグの素体が誰なのかを知ってしまう。

 

「これは、マント?まさか……」

 

「やっと気がついたかぁ、キュアスカイ。キュアサンライズの方はとっくに気づいていたみたいだけど、お前のためにわざと黙っていたようだなぁ!」

 

バッタモンダーは勝ち誇ったような顔つきでスカイを見下ろす。そしてサンライズは悔しそうな顔をしていた。

 

「止められなかった……」

 

「君の大切なシャララ隊長にアンダーグエナジーを注ぎ込んだんだ。君は酷い事をするよね。キュアサンライズはわかってて防御役になったみたいだけど……いや、むしろわかっていたからこそ攻撃できなかったんだろうけどね」

 

バッタモンダー曰く、ランボーグへの攻撃は全てシャララ隊長へのダメージに転換される。つまり、先程までスカイは大切なシャララ隊長へと自ら進んでダメージを与えていた事になるのだ。

 

「ランボーグ……いや、シャララボーグ。行け!」

 

ランボーグ改めシャララボーグは剣を構えると棒立ちのスカイへと振り下ろす。その瞬間、スカイの頭の中にはシャララ隊長との思い出が駆け巡り、何もする事ができなかった。

 

「馬鹿野郎!」

 

その瞬間、サンライズがスカイを押し倒すとランボーグからの剣撃をまともに喰らってしまう。

 

その瞬間、サンライズの意識は一瞬で刈り取られると脳裏にある情景が浮かび上がった。

 

何も事情を知らないプリズム、ウィング、バタフライが到着してランボーグを攻撃。更にアンダーグエナジーを除去すれば良いと考えてアンダーグエナジーを浄化してしまい、その結果シャララ隊長の命の灯火が消えてソラが絶望する様子を……サンライズは見てしまう。

 

「シャララ隊長……どうして……」

 

そして、サンライズに助けられたにも関わらず、スカイは絶望からまだ棒立ちでランボーグからの二撃目を喰らって吹き飛ばされた。

 

二人の体は傷だらけで、サンライズは何とか意識を取り戻すものの、体を動かすので精一杯だ。

 

「く……うぅ……スカイ……大丈夫か?」

 

サンライズが声をかけるものの、スカイは返事もできない。心も体もボロボロにされたと言うのはこの事だろう。

 

「シャララボーグ、まずはキュアスカイからだ」

 

「ラン……」

 

ランボーグがスカイにトドメを刺そうとした瞬間、白い気弾が何発もぶつけられる。ランボーグが後ろを振り向くとそこにはプリズムが到着し、更にウィングとバタフライ、エルもやってきていた。

 

「「「「スカイ、サンライズ!」」」」

 

するとサンライズがフラフラの体で立ち上がると四人へと叫ぶ。

 

「攻撃するな!このランボーグの素体は……シャララ隊長なんだ!」

 

「「「「え!?」」」」

 

「チェッ、何でバラすかな。シャララボーグ!」

 

バッタモンダーがシャララボーグに指示を出すとシャララボーグは倒れているスカイを再度攻撃しようとする。それをウィングが飛び込んで助けた。

 

「サンライズ、今傷を治すから……」

 

バタフライがミックスパレットを手にするとサンライズへと癒しの力を使おうとするがサンライズはそれを拒否する。

 

「いや、俺じゃない!スカイに使ってくれ!」

 

「ッ!?でも……」

 

「良いからスカイに使え!!」

 

サンライズからの必死の言葉にバタフライは回復の対象を変更し、ミックスパレットを使用する。

 

「二つの色を一つに!イエロー!ブルー!癒しの力!アゲてこ!」

 

それから気を失っていたスカイがバタフライの癒しの力によって目を覚ます。

 

「大丈夫ですか!?」

 

「ッ!」

 

スカイはウィングの腕から無理矢理這い出て飛び降りるとプリズムの前に降り立つ。

 

「助けてください、ましろさん……アレは、あのランボーグは……」

 

「スカイ……」

 

スカイの目には涙が溢れており、今にも心が折れてしまいそうであった。それをプリズムは優しく抱き留める。

 

「シャララ隊長を攻撃する訳にはいかない……どうすれば」

 

ウィングが葛藤する中、バタフライは更に深刻そうな顔をしていた。何故ならサンライズから夢については全部聞いているからである。

 

「そうだ!タイタニックレインボーです!ランボーグにかかっているアンダーグエナジーを浄化すれば……」

 

「ダメ!」

 

ウィングの提案にバタフライは拒否の意を示す。そんな事をしてしまえばどうなるか知っているからだ。

 

「どうして……」

 

「チェッ、それもお見通しかよ」

 

バッタモンダーが舌打ちをする中、スカイ、プリズム、ウィング、エルは疑問を抱く。

 

「それってどういう……」

 

「シャララ隊長は……アンダーグエナジーによって生かされているんだ。だからそれを浄化すれば……シャララ隊長にトドメを刺すことになる」

 

サンライズの言葉にバタフライ以外の全員が息を呑む。つまりこのまま技を使えば浄化どころか隊長を倒してしまう事になる。

 

「じゃあどうすれば……」

 

「あははは!どうするどうする……シャララ隊長を倒すか、このままシャララ隊長に倒されるか!好きな方を選べよ!」

 

バッタモンダーの煽りにサンライズは無言で怒りを露わにするとランボーグの前に出た。それを見たスカイは止めるように叫ぶ。

 

「サンライズ止めてください!!」

 

「……スカイ、一つ質問がある」

 

「……え?」

 

「今からシャララ隊長を攻撃する」

 

「それは……」

 

サンライズの言葉にその場の全員が目を見開いた。バッタモンダーはそれを見てニヤニヤと笑う。

 

「……俺はシャララ隊長を助けるのを諦めない。だから俺はスカイ、お前に問う」

 

「え……」

 

「俺はシャララ隊長を絶対に救い出す。この命に誓って約束する」

 

サンライズの言葉にスカイは困惑するばかりだ。どうやって助けるのか、彼女にはわからなかったから。

 

「……もし失敗したら一生俺を責めても良い。何なら俺を殺してくれても良い」

 

サンライズの覚悟はそれ程までの重さであった。サンライズの足は震えており、彼自身、かなり無理を通しているのか息も荒い。

 

「だからスカイ、お前はどうして欲しい?」

 

サンライズの問いにスカイは震えながら答えを返す。そしてそれを今の彼女が言うにはかなりの勇気のある言葉であった。

 

「……けてください。……シャララ隊長を、助けてください」

 

「そうか」

 

サンライズはスカイの言葉を聞くと覚悟を決めた顔つきに変わるとバッタモンダー、及びシャララボーグを睨みつける。

 

「覚悟は決まったようだなぁ。さぁ、倒すのか倒されるのかどっちだ?」

 

「そのどちらでもねーよ……シャララ隊長は俺が救う」

 

サンライズの目は本気であり、それからシャララ隊長の救出作戦が開始されるのであった。




また次回もお楽しみに。


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救い出した命と沈む太陽

サンライズは覚悟を決めた様子でシャララボーグに向き合うとスカイトーンを取り出す。

 

「プリキュア!ホーリーコネクト!ひろがるチェンジ!ホーリーサンライズ!」

 

サンライズはホーリーキュアサンライズへと強化変身。シャララボーグへと白い剣を振るう。

 

「シャララボーグ!」

 

二つの剣がぶつかり合うとその力は拮抗。しかし疲れ無しのシャララボーグに対してサンライズの体は傷だらけで限界が近く、少しずつ押し込まれていく。

 

「バタフライ、サンライズに癒しの力を!」

 

「オッケー!」

 

プリズムがバタフライにそう言うが、その瞬間突如として蛇腹剣が伸びてくるとバタフライを拘束してしまう。

 

「え!?」

 

「ふふっ、そうはさせないわよ」

 

そこにいたのはラブだ。彼女もバッタモンダー同様に目的を果たすためにここにいる。

 

「バタフライを離して!」

 

プリズムが気弾でラブを攻撃する。しかし、ラブは蛇腹剣を操り、バタフライを盾にした。

 

「うわぁああああ!!」

 

「そんな!?」

 

「卑怯です!」

 

「何とでも言いなさい!」

 

それからラブは蛇腹剣に電撃を流すとバタフライはそれによってダメージを負う。すると体が麻痺する感覚にみまわれた。

 

「体が……動かせない……」

 

「生憎だけどあなたをフリーにすると回復されちゃうから先にあなたの動きを止めさせてもらうわ」

 

そう言ってラブは更に電流を流すとバタフライは悲鳴を上げて身体中が痺れ、完全に動けなくなってしまう。

 

「バタフライ!しっかりしてください」

 

ようやく蛇腹剣の拘束が解けて倒れ込むバタフライの元にウィングが駆け寄る中、サンライズもシャララボーグによって押し込まれていた。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

サンライズの息切れもどんどん荒くなっており、本当に体力切れが間近に迫っている様子だ。

 

「あれぇ、シャララ隊長を救うんじゃないのかなぁ?」

 

バッタモンダーがサンライズを煽る中、サンライズは反応する余裕さえも無い状況だった。

 

「だったら!」

 

サンライズは背中に白い翼を生やすと空を飛ぶ。それから白い翼から射出した白い羽型のエネルギー弾をシャララボーグの周囲に撃ち込み、煙幕を張る。

 

「ランボ!?」

 

「はあっ!」

 

シャララボーグが怯んでいる間にシャララボーグへと急接近し、剣を振ろうとする。その瞬間、シャララボーグが剣を突き出してきてサンライズはそれを咄嗟に防御するがそのあまりの威力を前にサンライズは攻撃を受け止めるので手一杯になってしまう。

 

「くっ……」

 

どんどん落ちていくサンライズのパフォーマンス。このままではシャララボーグに押し切られる。

 

「仕方ない……」

 

サンライズは白い羽を舞い散らせながら瞬間移動するとシャララボーグの背後に出てきてすかさずスタイルをチェンジする。

 

「スタイルチェンジ!ヤタガラス!」

 

シャララボーグが振り向く前にサンライズは手にした漆黒の槍をシャララボーグの影に投げると槍が突き刺さり、動きが縫い付けられる。

 

「チッ!!」

 

「やっと動きを止められた……」

 

サンライズはそれと同時にその場に崩れ落ちると肩で息をしており、体力も危険域に突入していた。

 

「まだだ……まだ終われないのに……動いてくれ、俺の体……」

 

サンライズが必死に軋む体を動かして立ち上がるとシャララボーグは何とか拘束を解こうともがいている。やるなら今しかない。

 

「シャララ隊長……今助けます!ひろがる!サンライズシャドー!」

 

サンライズは跳びあがると最もシャララ隊長を救うのに最適な技でシャララ隊長を救いにかかる。

 

「シャララボーグ、アイツを止めろ!」

 

バッタモンダーもその技は不味いとばかりにシャララボーグに指示を出すがシャララボーグは既に影縫いで動けない。

 

「はぁああああ!!」

 

そして、サンライズシャドーが命中すると囚われていたシャララ隊長をノーダメージで救出。それからすかさずシャララ隊長の傷を癒すための手を取る。

 

「スタイルチェンジ……くっ、フェニックス!」

 

サンライズは揺らぎながらもスタイルチェンジを発動し、フェニックススタイルに変化。そのまま治癒能力を使いシャララ隊長の傷口を塞ぎ、失われた血や力を与えた。

 

「シャララ隊長!」

 

着地したサンライズの元にスカイが駆け寄るとシャララ隊長は薄らと目を開ける。

 

「ソラ……心配をかけたな」

 

「隊長……」

 

スカイの目からは大量の涙が溢れていき、シャララ隊長の無事を心の底から安堵している気持ちでいっぱいになっていた。

 

「スカイ、プリズム、今だ!!」

 

サンライズは今にも張り裂けんばかりの声で叫び、スカイとプリズムに浄化技を使うように促す。

 

「スカイブルー!」

 

「プリズムホワイト!」

 

「「プリキュア!アップ・ドラフト・シャイニング!」」

 

「スミキッタァ〜」

 

「ミラーパッド!オッケー!」

 

二人は残されたアンダーグエナジーを浄化するとキラキラエナジーをミラーパッドで回収。シャララボーグも消滅し、これで完全に一件落着……のはずだった。

 

次の瞬間にはすぐ近くでドサッと言う音が鳴り全員がそれを見るとサンライズが汗だくで倒れており、変身も解けてしまう。

 

「あさひ!」

 

それからプリズムが慌てて駆け寄るとあさひは朦朧とする意識の中で自らを気遣う姉を見る。

 

「あさひ!あさひってば!しっかりして!」

 

「あ……うぅ……」

 

「どうしてこんな事に……」

 

「ごめん、フェニックススタイルの治癒能力……使ったら俺自身の体力を持っていかれるんだ」

 

それを聞いて全員が驚く。あのチート能力が何のリスクも無しに使える訳がない。そう思ってはいたが、ここに来てその弱点があさひの体を蝕んだ。

 

するとあさひの視界に皆と過ごした楽しい時間が流れていく。そしてこれが流れるということはあさひの命の炎が消えかけている証拠だった。

 

「走馬灯……見えちゃった……多分これ、もうすぐ死ぬ……」

 

「そんな……無責任な事言わないでよ……生きてよ……あさひ!!」

 

プリズムが必死に呼びかける中、あさひの意識がどんどん薄れゆく。それを見たラブはバッタモンダーに目配せした。

 

「チッ、できればこの手は使いたくなかったが……カモン!アンダーグエナジー!」

 

バッタモンダーが手を翳すと以前ラブから受け取っていた赤黒いアンダーグエナジーをあさひへと射出。あさひの体へと吸い込まれるとあさひは体の中で暴れ回るアンダーグエナジーに悶えた。

 

「ゔぁああああああ!!」

 

「あさひ!?」

 

「あさひ君に何を……」

 

「何をって?さっきのシャララ隊長と同じだよ。アンダーグエナジーでそいつの傷口と失われた体力を復活させる。ただし、そいつはシャララ隊長と同じようにランボーグになるがな」

 

それを聞いたプリキュア達はすぐに止めようとするがラブがその手を止めさせるようにトドメの言葉を言う。

 

「良いの?アンダーグエナジーを消したらその子、間違いなく死ぬわよ」

 

「「「ッ……」」」

 

今のあさひは体力も消え、命の炎も失われそうになっているのだ。それをアンダーグエナジーで延命させているのにアンダーグエナジーを浄化でもしようものなら今度こそあさひは死んでしまう。

 

「っ……くぅ……」

 

そのタイミングで気絶していたバタフライが目を覚ますと立ち上がるが、その光景を見て怒りに顔を歪める。

 

「私の大切な彼氏に……何してるの!」

 

バタフライが怒りのままに攻撃をしようとしたら瞬間、あさひが声を上げた。

 

「止めて……バタフライ」

 

「でも……」

 

「そんなバタフライは……見たくない」

 

あさひはアンダーグエナジーの侵食で朦朧とする意識の中、周囲を安心させるように声を出す。

 

「スカイ、約束は果たしたよ……」

 

「でも、あさひ君が……」

 

「姉さん、もし皆の心が折れそうになったら姉さんが優しくフォローするんだ」

 

「あさひ……」

 

「ウィング、もし俺が敵になったら迷いなく俺を倒してくれ」

 

「そんな、そんな事……」

 

「バタフライ、俺はバタフライの彼氏でいれて幸せだったよ」

 

「そんなの……今言う事じゃないよ……」

 

「シャララ隊長、スカイを、皆をお願いします」

 

「……ああ」

 

「ソウヤ……約束したのに、絶望の未来を変えてみせるって言ったのに……約束を守れなくてごめん」

 

あさひの目からは薄らと涙が出てきており、その意識はとうとうアンダーグエナジーによって侵食され切ると突如としてアンダーグエナジーがあさひの体を覆うように固着。あさひは人間の姿を保ったまま立ち上がった。

 

「ほう?まさかアンダーグエナジーを取り込んでもランボーグ化しないとは。流石は私の未来の彼氏だな」

 

「あさひ……」

 

するとあさひがプリズムの顔を見た途端彼女をビンタして吹き飛ばす。

 

「きゃっ!?」

 

「あさひ君!何をして……」

 

「……」

 

あさひは無言のままスカイミラージュを取り出すとそれがカゲロウが使っていた物のように漆黒に染まった。

 

「ダークミラージュ!イビルコネクト!ひろがるチェンジ!イビルサンライズ!」

 

するとダークミラージュにEVILの文字が浮かび、あさひはホーリーサンライズの姿に一度変化。それからホーリーサンライズの時に生える翼が漆黒に染まり、体の白い部分はことごとく黒く変化。髪の毛も黒くなり、イビルキュアサンライズへと変身するのであった。

 

「そんな……どうして……」

 

「あはははは!!これは良いや。でもここで決着を付けるのも面白くない。イビルサンライズ、一度帰るよ」

 

「……はい」

 

イビルサンライズはバッタモンダーの命令を聞くと漆黒の霧を発生させて撤収。その時にバッタモンダーの声が聞こえてきた。

 

「また遊びに来るよ。君達の心がズタズタに折れるまで何度も、何度もねぇ!!」

 

「ふふっ、あなた達の悲鳴はまた今度聞いてあげるわ」

 

それと同時にラブも撤収。その場にはプリキュア四人とエル、復活したシャララ隊長が残るのみだ。

 

それから日は傾き、変身を解いた全員の間には重苦しい雰囲気が流れていた。

 

「あさひ……どうすれば……」

 

「そうだ!あさひの体に付いたアンダーグエナジーを浄化してすぐにミックスパレットで傷を癒せば……」

 

「それでダメだったらどうするんですか?ラブが現れて妨害されでもしたら……あさひ君は今度こそ死ぬんですよ?」

 

ソラがそう言う中、他の面々も沈黙してしまう。

 

「私のせいです……あさひ君にあんなに気を遣わせたどころか、私の我儘のせいであさひ君はあんな目に……」

 

ソラは自分を痛烈に責めていた。あさひがああなったのは自分が無理をさせたのが悪いのだと思っている。

 

「ソラ、それでもヒーローとしてできるのはどうやったらあさひを救えるのか考える事で……」

 

「綺麗事なんてうんざりです!」

 

ソラは憧れのシャララ隊長にさえも八つ当たりしてしまっていた。それほどまでに彼女の心はもうボロボロになっている。

 

「でも、ヒーローなら諦めずに最後まであさひ君を信じて……」

 

「ヒーローなんて!!もう……沢山です。私は……戦いたくない!」

 

ソラの叫びにミラージュペンは黒く変わると消滅。そしてスカイトーンも輝きを失ってしまう。

 

「ミラージュ……ペンが」

 

それからソラは項垂れてしまう。辺りは少しずつ暗くなっていき、先程までバッタモンダーが立っていた鉄骨があさひの墓のような雰囲気を出すのであった。




また次回もお楽しみに。


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囚われた朝日と砕けた心

今回の話を読む前に注意です。この話は今日のひろプリの内容を含むのでアニメ視聴後に読む事をお勧めします。それではどうぞ!


体力を使い尽くし、死にかけた所にアンダーグエナジーを注がれてイビルキュアサンライズとなったあさひ。彼は一人闇の中で薄らと目を覚ましていた。

 

「ここは……」

 

「よう、虹ヶ丘あさひ」

 

そこに現れたのは自分そっくりな姿をした一人の男だった。あさひはカゲロウを思い出すがすぐにその考えを捨て去る。

 

「カゲロウ……じゃない。お前は……俺の中に入ったアンダーグエナジーが擬人化したもの」

 

「流石はあさひ。よくわかってるじゃねーか。じゃあ俺がここにいる理由もわかるよな?」

 

「……俺の体を完全に乗っ取りに来たんだろ」

 

「正解」

 

アンダーグエナジーはニヤニヤと笑いながらあさひへとゆっくり近づくとその腹を思い切り殴る。

 

「ごふっ……」

 

「と言うわけでもう少し眠ってもらうぞ。そうだなぁ、取り敢えずお前の姉と彼女から殺してやろう」

 

「ッ……」

 

あさひはそれを止めるためにもがこうとするが、体は全く言う事を聞かない。それどころか、一ミリたりとも動かせないのだ。

 

「言っておくが今のお前は体力を全て失っている状態だ。抵抗はできないし、この空間での体力の復活は無い。だから目を覚ましても永遠に動く事はできないわけさ」

 

あさひはそれを聞いて悔しそうに顔を歪める。しかし、そうした所で何もできない事に変わりはないのだ。

 

「じゃあな、安心しろ。お前の体は俺が有効活用してやる。お前の大切な物全部奪って……全て台無しにしてやるからよ」

 

そう言ってあさひの体を蝕むアンダーグエナジーは去っていく。あさひはこの場にはいない仲間達を心配する。

 

「ソラ、姉さん、ツバサ、あげは……ごめん。俺のせいで……」

 

そしてあさひに取り憑いたアンダーグエナジーが外に出るとそこではバッタモンダーとラブが何やら話をしていた。

 

「バッタモンダー……これはどう言う事だ?説明しろ」

 

「知らねぇよ。俺はお前の注文通りキュアサンライズを生きてここまで連れてきたんだろうが」

 

そう言うバッタモンダーの顔はニヤけており、明らかにラブの気持ちを無視したものだということが見てとれた。

 

「アンダーグエナジーで体を乗っ取る所までは良い。何故コイツの意識を奪った。予定が違う。お前、死にたいのか?」

 

「じゃないとまた変に暴れられるだろ?」

 

「ふざけるな!操るなら刻印があればできる。これでは刻印が使えないだろ!」

 

ラブは怒り狂っており、バッタモンダーはまだ余裕そうな顔つきをしている。ラブの予定ではあさひをアンダーグエナジーで意識を残したまま操り、刻印で彼の体を好き放題するつもりだったのだが、意識も全て乗っ取ってしまったがために刻印は起動したくとも起動できなくなってしまったのだ。

 

「チッ……貴様、覚えておけよ」

 

そう言ってラブは去っていく。その様子を見ていたイビルキュアサンライズはバッタモンダーに話しかけた。

 

「宜しかったのですか?」

 

「ああ。いつまでもアイツにデカい顔をされるのは正直ムカついていたんだ。イビルキュアサンライズ。次にプリキュアを襲う時は奴等に絶望を見せてやれ」

 

「承知しました」

 

そう言って頭を下げるイビルキュアサンライズ。そしてそれを使役するバッタモンダーも笑みが止まらなかった。

 

あさひが消えた翌日、ましろは一人学校で授業を受けていた。ソラはその場にはおらず、あさひとソラの事は友達に事情を上手くぼかして説明。皆二人を心配した様子だった。

 

ましろが学校から帰るとベッドで寝ていたシャララ隊長が起きて出迎える。

 

「ましろ……だったな」

 

「シャララ隊長……無理したらダメです!」

 

「平気だ。一日眠って体力は戻った。……あさひのお陰で、私は救われた。だが、私のせいで彼があのような事になってしまい申し訳ない」

 

シャララ隊長はそう言ってましろへと頭を下げる。それにましろは慌てて言葉を紡いだ。

 

「いえ、むしろ私はあさひが誇らしいです。あんな無理してまで人を助けて……あげはちゃんからも聞きました。あの子、前に私達の世界を助けてくれたソウヤ君の事も助けて相当疲れていたのに……ソラちゃんとシャララ隊長のために無理して頑張って……それで」

 

ましろの目にはポロポロと涙が伝っており、何の力にもなれなかった自分を責めていた。それをシャララ隊長は優しく抱き留める。

 

「大丈夫だ。あさひが簡単に乗っ取られるわけがない。今は、ソラの心配をしてあげてほしい」

 

それから二人でソラのいる部屋に向かうとソラの部屋の扉をノックする。

 

「ソラちゃん。チョコチップメロンパンを買ってきたよ」

 

ましろの言葉にいつもならすぐに反応するソラだが、今回は全く返事が無い。

 

「入るぞ、ソラ」

 

シャララ隊長がドアを開けるとそこにソラの姿は無く、彼女の机にミラーパッドとましろから貰ったメモ帳が置いてあるのみだった。

 

「ソラ!?」

 

「大変だよ!」

 

それからましろが慌ててツバサやあげはを呼びに行く。そこにあったのは“私、ヒーローにはなれませんでした。さようなら”という文字が描かれているのみだった。

 

ソラはスカイランドにある実家へと荷物を抱えて戻ってしまったのだ。

 

「ソラ……すまない」

 

シャララ隊長が呟く中、ソラは一人家の前に戻っていた。そして、そこで家族と再会。久しぶりの家族団欒を過ごしていた。机を囲むのはソラに加えてソラの父親、シド、ソラの母親、レミ、そしてソラの弟、レッドの四人だ。

 

ソラから事情を聞いた三人の中でレミがソラの言葉に相槌を打った。

 

「そう、そんな事があったのね」

 

「どうしてお姉ちゃんのペンは壊れちゃったの?」

 

「……ミラージュペンは私の気持ちが形になった物だと思う。だから……」

 

ソラの心が壊れた今、ペンが失われたのも必然という事だろう。

 

「強い敵に立ち向かうという勇気も、ヒーローになる夢も、友達が考えてくれた作戦も信じられなくて……失敗するのが怖くて……ミラージュペンも私のそんな気持ちに共鳴して……私、ヒーローになれなかった」

 

そう言うソラの気持ちは沈み続けていた。それに対してレッドは自分の気持ちをぶつける。

 

「そんな、約束したじゃん。絶対にヒーローになるって!何で簡単に諦めちゃうんだよ!」

 

「私は……弱かった」

 

「え?」

 

「友達は、あさひは私が萎縮する間も覚悟を聞いてきて、ちゃんと自分のやるべき事をやり遂げた。なのに私は……あさひに嫌な事を全部押し付けて……あさひが死にかけた時も何も手を差し伸べられなかった。こんな私がヒーローでいられるわけがない。いて良いわけがない」

 

「そんなの、言い訳じゃ……」

 

「……レッド」

 

レッドの言葉にシドは反対の意を示す。それから静かにレッドを宥める言葉を告げた。

 

「人が本気で決めた事に口を出すのは間違ってる事だ」

 

「ッ……お姉ちゃんの弱虫!!」

 

そう言ってレッドはソラを挑発する。ソラはそれに苦笑いを浮かべるのみだった。

 

同時刻、虹ヶ丘家ではシャララ隊長、ツバサ、あげはの三人がミラーパッドでゲートを開けていた。

 

「……本当に行かないんですね」

 

ツバサは一人座っているましろへと声をかける。しかし、ましろは否定の意を示した。

 

「今はそっとしておこうよ。周りからわーっと言われてもソラちゃんは困るだろうし……」

 

「ボクはそうは思いません。何のための仲間なんです。何のためにプリキュアは一人じゃ無くて五人なんです」

 

「少年、あさひは今……」

 

「そんなのわかってます!ボクだって……あの時あさひ君が一人傷つくのをただ黙って見ていただけ!シャララ隊長を助ける事だってボクが少しでも手伝っていたら……あさひ君は瀕死にならずに済んでいたかもしれないのに」

 

ツバサがそう言う中、あげはも落ち込んでしまう。あげははあさひが何をするのかを知っていた。知った上で彼が死へと疾走するのを止めずにいたのだ。

 

「私だって……ラブに気絶させられていなければ、あさひを救えたかもしれないって思っていたわよ。でも、それは私の弱さから目を逸らす言い訳。だから、私は……ソラちゃんもあさひも信じてる」

 

「……ましろ、私達で一度行ってくる。だから安心して待っていてくれ」

 

「はい……」

 

それから三人はスカイランドにあるソラの家の前へと出ると玄関をノックした。するとレミが顔を出す。

 

「ソラはここにいますか?」

 

「話をしたいんです」

 

二人がそう言うものの、レミは今ソラはここにはいないと首を横に振る。

 

「ソラは、今出掛けていて……」

 

「ここで待たせてもらっても良いですか?」

 

あげはの言葉にレミは首を横に振るとツバサはまだ何かを言おうとしたが、それをシャララ隊長が制する。

 

「……例えヒーローになれなくたってソラはソラ。優しくて真っ直ぐな子。今のあの子には時間が必要なの。だから……今のソラを受け入れてあげて」

 

「ソラに伝えてください。皆、ソラの事が大好きだって……」

 

「必ず伝えるわ。ありがとう」

 

それからあげは達は帰る事になる。その頃、ソラはシドと共に昔ヒーローになる事を願った湖の前で立っていた。二人は昔の事を話していたが突然彼女の前に悲しそうな顔をしたあさひの幻影が現れる。

 

「あさひ君!」

 

ソラはあさひへと手を伸ばす。しかし、それは空を切り、彼は透けてしまった。それを見て悔しそうにするソラ。するとソラの心に声が聞こえてきた。

 

『……ソラ……ソラ!』

 

「ッ!?この声は……」

 

ソラが心に響く声を聞く。その声に彼女は聞き覚えがあった。それは別世界に存在する友達、ソウヤだった。

 

「ソウヤ君……ソウヤ君ですか!?」

 

ソラはキョロキョロと周りを見渡すがそこには誰もいない。幻聴かと諦めかけると再び声が響いてくる。

 

『ソラ、話がある……心に話しかけるように喋ってくれ』

 

『……こんな感じですか?』

 

『それで良いよ。聞こえてる……。ソラ、話があるんだ。聞いてくれ』

 

それからソラはソウヤと話を終えるとシドと共に家へと戻っていくのであった。

 

日は跨ぎ、夜明けの光が顔を見せ始める。その時、バッタモンダーとイビルキュアサンライズはその空を建物の上から見つめていた。

 

「ソラ・ハレワタールは変身できない。このまま彼女を始末するのは簡単だ……だが」

 

「彼女の友達を潰した方が彼女は傷つく……そういう事だろう?」

 

「その通り。よくわかってるじゃないか」

 

バッタモンダーはニヤニヤと笑みを浮かべる中、イビルキュアサンライズは一人思考を巡らせていた。

 

「(ふん。この器の小さい男に従うのも癪だが、下手に仲間割れをするのは良くない。ここは、コイツに従うのが得策だな)」

 

イビルキュアサンライズはあさひから意識を乗っ取った影響か、少しずつ自我を持つようになっていた。そして、引き換えにあさひはどんどん衰弱していく。心の中で彼は仲間を信じていた。

 

「(頼む……皆、俺を倒して……世界を救ってくれ……)」

 

それからバッタモンダーの指示の元、イビルキュアサンライズは街への攻撃を開始。街の人々にとって悪夢の時間の始まりとなるのであった。




お知らせです。この度、水甲さんの作品であるひろがるスカイ!プリキュア 炎と氷の竜とコラボする事になりました!時系列はアニメ23話とアニメ24話の間を予定しています。それも是非楽しみにしてください。

水甲さんの作品のURLです。興味を持った方は読んでみてください。
https://syosetu.org/novel/309715/

また次回もお楽しみに。


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朝日の暴走と蘇る想い

あさひが囚われてから二日の時が経つ。ましろは一人朝のランニングをしていると一人空を見上げてある決意を固めた。それから一人手紙を書くとそれを折り畳む。

 

「皆さん!来てください!」

 

そこに慌てたようなツバサの声が聞こえてきた。それを聞いてましろは振り向くとツバサの元に行く。そこにはあげはとシャララ隊長も揃っていた。

 

「どうしたの!?」

 

「街にイビルキュアサンライズが現れました!」

 

すると轟音と共に街の方から煙が上がり始める。それを見てあげはは怒りに拳を握りしめた。

 

「アイツ、私の彼氏に……何をさせてるの!」

 

「気をつけて」

 

「おばあちゃん、お願いがあるの」

 

そう言ってましろは先程まで書いていた手紙をヨヨに渡す。ましろは真剣な顔つきでヨヨを見つめ、ヨヨはそれを受けて頷く。

 

「わかったわ」

 

「アンダーグエナジーを浄化して……あさひを助け出す!」

 

「やりましょう。ソラさんのためにも!」

 

「私はアンダーグエナジーを浄化できないが、それでもあさひに助けられた命だ。力になろう」

 

「行こう!」

 

それから三人はミラージュペンをスカイミラージュに変化させて変身する。

 

「「「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!」」」

 

「プリズム!」

 

「ウィング!」

 

「バタフライ!」

 

「ふわりひろがる優しい光!キュアプリズム!」

 

「天高くひろがる勇気!キュアウィング!」

 

「アゲてひろがるワンダホー!キュアバタフライ!」

 

それから四人は現場へと急行する。そこではイビルキュアサンライズが闇のエネルギーを模した剣を召喚して街を粉砕していった。

 

「はい強い。そしてコイツを使役する僕も強い!」

 

するとそこにプリキュア三人とシャララ隊長が到着するとバタフライが口火を切る。

 

「この世界のことわざをあんたに一つ教えてあげる。弱い犬ほどよく吠える!」

 

それを聞いたバッタモンダーはふざけたように“ワン”と吠えるとイビルサンライズがプリキュアの前に降り立つ。するとイビルサンライズが手にグリフォン、ドラゴン、ペガサス、フェニックスの四つのスカイトーンを取り出すとそれを体に吸収する。その瞬間、イビルサンライズはまずグリフォンの力を発動させた。

 

「ぬん!」

 

イビルサンライズが地面を殴るとその衝撃波で地面が陥没。四人は足を取られてしまう。

 

「ひろがる!イビルボルケーノ!」

 

イビルサンライズが地面に大剣を突き立てるとそこから闇の火柱が上がり、四人を飲み込んだ。

 

「「「「うわぁああああ!」」」」

 

早速四人は吹き飛ばされると地面に叩きつけられてダメージに悶える。サンライズの力をコピーしているだけあって強さは本物だ。

 

「スタイルチェンジ……」

 

「アレが相手なの?鬼畜すぎるんだけど」

 

「でもやるしかありませんよ」

 

「ああ!」

 

「スタイルチェンジ、ペガサス!」

 

それからイビルサンライズは手にレイピアを構えると周囲に闇の炎の気弾を生成して雨のように攻撃を降らせる。

 

「くっ!」

 

バタフライは咄嗟にバリアを展開するが、その瞬間バリアを迂回するように弾道が変化。また四人はそれをまともに喰らうと傷だらけとなり、倒れ込む。

 

「一つ一つでも厄介なのに……どうすれば……」

 

「……弱い。降参を進める」

 

そう言うイビルサンライズ。それでも四人は諦めるつもりは無かった。

 

「絶対に負けない……あさひを助け出すまでは!」

 

それから四人は絶望的な戦いへと身を投じていく。そして、同時刻。ヨヨがソラの家の前に移動してソラと出会った。

 

「ヨヨさん……」

 

「ショーラ」

 

「私、もうプリキュアじゃありませんけど……何か用ですか?」

 

「渡してほしいと頼まれたの」

 

それを聞いてヨヨは考えるが、まずはましろからの手紙をソラに手渡す。それをソラは手に取った。

 

「ましろさんから?何を……」

 

「私にもわからない」

 

ソラが恐る恐る手紙を開けるとそこにはまずましろがプリキュアになった日のことが書いてあった。

 

あの時、ソラは真っ先にましろがプリキュアになるのを反対した。友達が傷つくのが怖いから。もっと自分が強くなると。

 

そこから書いてあったのは無理にソラにプリキュアにならなくて良いと、戦う必要はないと。家で元気になってほしいと。綴られていた。

 

それを見てソラは目に涙を浮かべる。そしてその後ましろはこう書いた。

 

“ヒーローになれなかったなんて言わないで……。ソラちゃんはとっくの前からヒーローなんだから”。

 

「私は……ヒーローなんかじゃない!ただの弱虫です!戦うのが怖くて逃げた!あさひ君も!仲間も!街の人達を皆見捨てて!そんなヒーローなんている訳ない!」

 

ソラは泣きながら叫ぶ。そして最後にはましろにとってソラはヒーローであると言う事があり、手紙はそこで終わった。

 

「うぁああああ!私は……私は……」

 

ソラはそれを見てから前日ソウヤと心の中で話した事を思い出す。

 

(回想)

 

『ソラ、元気にしてる?皆と楽しくやれてるかな?』

 

『……いいえ、私に元気なんてありません……あさひ君がシャララ隊長の身代わりになってアンダーグエナジーを注がれて……闇に堕ちてしまいました』

 

ソラはあさひに何が起きたのか、洗いざらい全て話し、それを聞いたソウヤは驚く。しかし、すぐに小さく呟いた。

 

『そっか……ごめんなさい』

 

ソラはいきなりソウヤが謝ったことに目を見開く。何故ソウヤが謝るのか、その理由がソラにはわからなかった。

 

『それは……俺のせいなんだ』

 

『え……』

 

ソウヤはそれから自分がランボーグになってしまった事、そこから復活するためにあさひの手を借りた事、そのせいであさひが相当消耗してしまいこのような事態を招いた事を話す。

 

『あさひ君……そんな事は一言も……あっ!』

 

ソラはそこで思い出した。あさひが何もかもをソラに黙ったまま戦っていたのだと。ソラに余計な気持ちを植え付けてしまわないように。

 

『エトに、この前の残留思念に聞いたんだけど、俺を助けるために俺の世界に来た時も事情を全部知ってるみたいだったんだ。多分、そっちの世界でもそうなる事をあさひは全部知ってた上で両方の世界を救おうとしたんだよ』

 

『そんな……あさひ君は……欲張りです』

 

『そうだな。アイツは前に俺がそっちの世界に行った時に自分は俺よりもずっと弱いと話していた。でも、俺に言わせたらあさひは俺の何歩も先を走っていたんだ。俺の世界を救えたのも結局はあさひの力があってこそ。……俺は何の力にもなれなかった』

 

ソウヤは悔しそうにそう呟く。ソウヤもあさひや周りの人達に全てを任せてしまった事が悔しいのだ。できる事ならソウヤもこっちの世界に来て戦いたいだろう。

 

『もうこちらには来れないんですか?』

 

『……それは難しい。俺がランボーグから救われた時に体も一緒に復活したからもう今の俺は精神体じゃないただの人間だ。多分世界の壁も越えられない』

 

『そんな……』

 

『でもさ、ソラは多分立ち上がれるよ』

 

『え……』

 

ソウヤからの根拠のない発言にソラは困惑する。それからソウヤはソラを励ますように言葉を発した。

 

『ソラの一番大切な物は何?……それをちゃんと思い出して。それが思い出す事ができればきっと……また立ち上がれる』

 

『大切な物……』

 

『すぐに思い出せなくても良い。きっと思い出させてくれる何かはきっとソラの周りにあるから』

 

それを聞いてソラはほんのり顔を赤らめるとソウヤへと言葉を返す。

 

『ふふっ……そっちの私がソウヤ君に惚れた理由……何となくわかっちゃった気がします』

 

『え?』

 

『ありがとうございます……私のために』

 

『頑張れよ、ソラ。俺は祈ることしかできないけど、ソラ達ならきっとやり遂げるって信じてるから』

 

『はい』

 

それからソウヤとの話は終わる。すると空にはソウヤが降らせたのであろう流れ星が次々と流れていった。

 

(現在)

 

ソラの心の中にはましろ達との沢山の思い出が流れていき、そしてそれは彼女の中に失われていた光を取り戻した。

 

「……行かなくちゃ……友達が待ってるから!」

 

ソラがそう言うと胸から光が溢れ出ていき、ミラージュペンが復活。ソラがそれを手に取る。それからシド、レミは外に出てくるとレッド共にソラを見送りに来た。

 

「カッコいいぜ、お姉ちゃん」

 

「ソラ、良いのね。……いってらっしゃい。でも躓いたら、またいつでも帰っておいで」

 

「うん」

 

ソラは家族達に見送られる中、ヨヨがソラへと話しかける。

 

「……実は状況はかなり差し迫っている。操られたあさひさんが街で暴れてる」

 

「え!?」

 

「行ってくれる?」

 

「はい!勿論です!……待っててください……あさひ君。今助けに行きます!」

 

ソラが決意を固める中、街では四人はボロボロになりながらも必死でイビルサンライズに対抗していた。

 

「ひろがる!バタフライプレス!」

 

バタフライが真上から一気に迫る中、イビルサンライズはスタイルチェンジし、ペガサススタイルへ。

 

「ひろがる!イビルレイン!」

 

大量の弾幕がバタフライの盾に同時に命中すると盾は一瞬にして砕け散り、バタフライは大ダメージを受けてしまう。

 

「ぁああああ!!」

 

「だったらボクが!ひろがる!ウィングアタック!」

 

「無駄だ。スタイルチェンジ、フェニックス!」

 

その直後、イビルサンライズはフェニックススタイルにチェンジして正面に盾を展開。ウィングはそれに押し戻され、跳ね返されてしまう。

 

「ひろがる!イビルアサルト!」

 

それから漆黒のフェニックスがウィングに体当たりしてウィングを近くの壁に叩きつけさせる。ウィングが崩れ落ちる中、イビルサンライズが剣を振り下ろそうとした。

 

「はあっ!」

 

そこにシャララ隊長が割って入り、剣を受け止める。しかし、プリキュアでは無いシャララ隊長とアンダーグエナジーで強化させれたイビルサンライズではスペックが違いすぎるためにこのままでは押し負けてしまう。

 

「煌めけ!」

 

その時、プリズムが発射した気弾が発光し、イビルサンライズの視界を奪うとそれからシャララ隊長がイビルサンライズを斬りつける。

 

「無駄だ」

 

だが、フェニックススタイルの特性の再生能力が発動。イビルサンライズは仲間を再生させる力が消えてる代わりに自分の再生能力を極限まで高めている。そのためにダメージを与えても即座に回復してしまうのだ。

 

「ヒーローガール!プリズムショット!

 

そこにプリズムからの巨大な気弾が撃ち込まれるとイビルサンライズはそれを片手で受け止めるとそれを真上へと飛ばしてしまう。

 

「弱い。スタイルチェンジ、ドラゴン!ひろがる!イビルドロップ!」

 

プリズムショットを防がれたプリズムは躱す余裕もなくイビルサンライズからの攻撃が迫る。その時だった。

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!スカイ!」

 

その声が聞こえると共にプリズムとイビルサンライズの間に青い光が割って入り、青い流星の如きパンチが繰り出される。

 

「ヒーローガール!スカイパンチ!」

 

その一撃がイビルサンライズとぶつけるとイビルサンライズは吹き飛ばされて後ろへと下がった。

 

「何!?」

 

「ソラ……ちゃん!」

 

「「スカイ!」」

 

「ソラ!」

 

プリズムが涙ぐみ、ウィングとバタフライはヒーローが復活した事による喜びを分かち合う。

 

「今の私にヒーローを名乗る資格があるとは思えません。でも、プリズム、あなたがそう呼んでくれるのなら私は……何度だって立ち上がります!」

 

こうして、キュアスカイが、ソラ・ハレワタールがあさひを救い出すために復活を遂げるのであった。




また次回もお楽しみに。


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輝く朝日と夜空の絆

ソラことキュアスカイが復活し、先程まで手も足も出なかったイビルサンライズに一撃が決まった事にバッタモンダーは驚いていた。

 

「馬鹿な……」

 

「お待たせしました。皆さん!」

 

「もう、遅いよ!」

 

「チッ、よくもこの俺に傷を……うぐっ!?」

 

その瞬間、突如としてイビルサンライズの動きが止まった。理由は簡単だ。イビルサンライズの中で眠っていたあさひが再び目を覚まし、立ち上がったからである。

 

「何だと!?何故だ。お前の体は限界のはずなのに……」

 

「さっきのスカイパンチのおかげで体力が少し戻ったんだよ……だから思いっきり……お前を止めさせてもらう!」

 

あさひが内から暴れる中、イビルサンライズは体の自由が効かなくなっていく。

 

「皆さんは休んでいてください。ここは私が……」

 

スカイが今まで遅くなった分、今度は自分が行こうとしたがそれをプリズムが手を取って止めた。

 

「プリズム……」

 

「私達はまだやれるよ。だから……一緒に行こう!」

 

するとその瞬間、イビルサンライズが苦しみ始めると彼の中に取り込まれていた四つのスカイトーンが飛び出してその姿を具現化。つまり、グリフォン、ドラゴン、ペガサス、フェニックスの四体が登場したのだ。

 

「まさか、力を貸してくれるんですか?」

 

その瞬間、フェニックスが翼をはためかせると光が傷ついた四人に吸い込まれていき、傷を癒していく。続けてグリフォンとドラゴンが咆哮を上げるとイビルサンライズへと突進していく。

 

「チッ、コイツら……俺は主人だぞ!何をしやがる!」

 

しかし、伝説の生き物達はお前など主人では無いとばかりにイビルサンライズを攻撃。するとバッタモンダーがニヤけて言い放つ。

 

「あれぇ、良いのかなぁ。イビルサンライズへの攻撃はそのままキュアサンライズへのダメージになるんだけど……」

 

「構いません!」

 

「何!?」

 

「だって、私達は皆あさひ君を信じてますから!」

 

するとグリフォンはスカイ、ドラゴンはウィング、ペガサスはプリズム、フェニックスはバタフライの体と一体化すると四人は体にエネルギーが満ち満ちるのを感じた。

 

「行きましょう、皆さん!」

 

「「「うん!」」」

 

「「「「ヒーローガール(ひろがる)!アニマルハート!」」」」

 

四人がエネルギーを放射するとグリフォン、ドラゴン、ペガサス、フェニックスのエネルギー波がイビルサンライズへと向かっていく。それに対抗するようにイビルサンライズも技を放った。

 

「チッ、ひろがる!イビルカリバー!」

 

漆黒のエネルギー斬が飛んでいくと四人のエネルギー波とぶつかるが、その均衡は一瞬で崩れ、あっという間にイビルカリバーは粉砕されるとイビルサンライズは撃ち抜かれる。するとその体から分離するようにあさひが気を失った状態で飛び出てきた。

 

「任せろ!」

 

そこにシャララ隊長が飛び込むとあさひを抱えて彼を救出するとその場には行き場を失ったアンダーグエナジーが残る。

 

「癒しの力!アゲてこ!」

 

そしてすかさずバタフライが癒しの力であさひの傷を回復させた。しかしあさひの目は閉じたままで全員がその行方を見守っている。

 

「お願い……目を覚まして……」

 

それを見たバッタモンダーは何かをしようとするがそれをプリズムが怒りの目でそれを制した。

 

「動かないで!一ミリでも動いたら……絶対に許さない」

 

プリズムの言葉にバッタモンダーは恐怖し、動けなくなる。そして、全員があさひの方を向くとあさひはゆっくりとその瞳を開けた。

 

「心配……かけたね。皆」

 

それを見た全員は笑顔になると真っ先にプリズムとバタフライがあさひへと抱きつく。

 

「良かったぁ……」

 

「本当に……良かった……」

 

二人の目には涙が浮かんでおり、あさひが戻ってきた事を彼の温もりから感じ取った。するとバッタモンダーは逃げようとするがそこにラブが現れる。

 

「バッタモンダー。よくもこの私をコケにしたわね?」

 

「ヒッ!?」

 

「そしてこのような事態にしてしまった責任……しっかり取ってもらうわよ。カモン!アンダーグエナジー!」

 

ラブがそう言うと彼女の赤黒いアンダーグエナジーと先程浄化されずに残ったアンダーグエナジーがバッタモンダーに吸い込まれていき、カバトンように巨大化。バッタモンダーもランボーグとなる羽目になった。

 

「うぁああああ!よくもこの俺を……馬鹿にしやがってぇええ!」

 

「それは自業自得でしょ!」

 

バタフライがツッコむ中、あさひはサンライズのスカイトーンを構えてバッタモンダーと向き合う。

 

「ここからは俺も行くよ。俺もコイツは絶対に許せないから!スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!サンライズ!」

 

あさひはキュアサンライズへと変身すると白い光に包まれていく。そしてすぐに強化変身も発動した。

 

「プリキュア!ホーリーコネクト!ひろがるチェンジ!ホーリーサンライズ!」

 

サンライズは一度イビルキュアサンライズに変身してからその黒い翼が白く戻り、その翼に包まれるようにしてホーリーキュアサンライズへと変身する。

 

「夜明けにひろがる聖なる朝日!ホーリーキュアサンライズ!」

 

「サンライズ!」

 

「一緒にやるよ。皆!」

 

それからバッタモンダーが荒れながらも口からエネルギー弾を撃ち、全員を攻撃する。しかし、サンライズが足を地面にトントンとするとそれによって白いエネルギーフィールドが周囲に発生し、攻撃を防いだ。

 

「すごっ!こんな力あったっけ?」

 

「多分、サンライズが新しく手に入れた力だと思います!」

 

「俺の力を皆に!」

 

すると先程と同様に四体の伝説の生物が四人に重なるとウィングはスカイはパワー、プリズムは精密性、ウィングは機動力、バタフライは防御力が強化される。更にシャララ隊長にもその光は注がれるとシャララ隊長はプリキュアでは無いが、プリキュアと同等近くにまでパワーアップを遂げた。

 

「はあっ!」

 

スカイがバッタモンダーを殴るとその威力で後ろに吹き飛び、ウィングは超スピードで背後に回り込むとそのまま真上へと蹴り飛ばす。それからシャララ隊長が跳び上がると上からオーバーヘッドキックで叩き落とし、プリズムが軌道操作で変幻自在となった気弾をぶつけていく。

 

「クソがぁっ!」

 

バッタモンダーが特大のエネルギー砲を放つがそれはバタフライが出した巨大な蝶型の盾によって防がれた。

 

「だあっ!」

 

そして、最後にサンライズが白い炎の剣で思い切りバッタモンダーを斬りつける。

 

「うぁあああ!!な、何故だ。何故こんなにも痛いんだ!」

 

「お前は感じた事無いだろうから教えてやる。ソラは、シャララ隊長は、皆はもっと痛い思いをしてるんだ!お前が今までしてきた嫌がらせによる皆の痛みはそんな物じゃないんだよ!!」

 

「偉そうにしやがってこの僕をここまで馬鹿にしてくれて!!」

 

その瞬間、バッタモンダーが攻撃をしようとするが、今度はサンライズから出てきたヤタガラスのスカイトーンが光と共に一時的に変化。スカイの元に飛んでいく。

 

「これって……」

 

「スカイ、それはスカイが使うんだ。一緒にやるよ!」

 

「はい!」

 

するとスカイトーンから光と共にソウヤの、キュアナイトの幻影が出現すると二人でスカイトーンを使用する。

 

「スカイブルー!」

 

『ナイトブラック!』

 

「『エンゲージ!」』

 

スカイと幻影のナイト。二人がスカイミラージュを重ねるとその姿が変化。スカイの青と白を基調にした衣装にナイトのドレスアーマーと同じような黒の装飾が所々に追加。そして幻影のナイトにも黒のドレスアーマーの上からスカイと同じ青と白の装飾が所々に追加される。こうして、スカイは一時的にキュアナイトとの絆の力であるエンゲージスタイルへと変身した。

 

そして、サンライズ、スカイ、ナイトの三人はそれぞれスカイトーンを装填する。

 

「ホーリーホワイト!」

 

「スカイブルー!」

 

『ナイトブラック!』

 

「「『エボリューション!」」』

 

その瞬間、空が薄明に染まり、白夜になるとそこで黒と白のエネルギーが生成。それが合体すると青い炎のオーラに黒と白の電撃が纏った巨大なエネルギーボールとなる。それからサンライズ、スカイ、ナイトが手を繋ぎ跳び上がって三人でオーバーヘッドキックを放ち、エネルギーボールを相手へとシュートする。

 

「「『プリキュア!ホワイトナイトシュート!!!」」』

 

以前サンライズとナイトだけで使用したその技は威力が何倍にも膨れ上がり、それがバッタモンダーを包むとその体を浄化していく。しかも今回は浄化してもキラキラエナジーが出ないはずの赤黒いアンダーグエナジーが上乗せされているにも関わらず、技の特性で浄化に成功。キラキラエナジーが大量に出てくる。

 

「スミキッタァ〜」

 

「ミラーパッド!」

 

「チッ、ラブコフコフ」

 

後からエルを抱えて出てきたヨヨがエネルギーを回収するとキラキラポーションを作るのに必要となるエネルギーが満タンにまで揃った。そしてラブは舌打ちするとすぐに撤収。残されたバッタモンダーは傷だらけで落ちてきた。

 

「ぐはっ……」

 

それからスカイは元の姿に戻るとバッタモンダーを睨みつけるがクルリと後ろを向く。

 

「と、トドメを刺さないのか?ま、また来るぞ。お前の嫌がる事をしてやる!それでも良いのか!ソラ・ハレワタール!」

 

「構いません。どんな事をされても負けないくらいに私、強くなりますから」

 

「ち、ちくしょおおお!バッタモンモン!」

 

バッタモンダーはこれ以上無い屈辱と共に撤退し、その日は全員で家に戻った。そして、あさひは一人ベッドで安静にするようにと全員から言われて大人しく布団に入っている。そしてあげはが一人あさひの看病で隣に座っていた。

 

「とほほ、結局学校も休むことになったしまだ体力戻らないし……」

 

「仕方ないでしょ。でも……無事に帰ってきてくれて良かった……」

 

そう言うあげはの顔は泣くのを我慢しているのか、目元が充血しておりあさひはそんなあげはにある事を言う。

 

「あげは、無理しなくて良いよ。泣きたかったら……俺の所で沢山泣いて」

 

「うん……そうする」

 

そう言うとあげははあさひに衝撃を与えないようにそっと抱きつくとそのまま声を上げずに泣いた。あさひはそれだけ心配をかけたのだと感じている。そこにソラ達が入ってくる。

 

「あさひ、大丈夫?」

 

「はっ!?」

 

あげはは咄嗟に飛び起きると平静を装うが、ツバサにツッコまれて苦笑いする。そして、ソラから全員に言いたいことがあるとの事で皆でソラを見た。

 

「私、未熟です。でも、未熟なりに前に進みます。そうすればきっと、いつの日か……ましろさん、ツバサ君、あげはさん、あさひ君、そしてエルちゃん!これからもよろしくお願いします」

 

するとましろが前に出てきてソラが置いて行った手帳を差し出す。

 

「ソラちゃん、もう一度この手帳、貰ってくれるかな?」

 

ましろから差し出された手帳をソラは手に取ると喜びを爆発させた。

 

「はい!……絶対ヒーローになるぞ!」

 

その言葉が部屋に響く中、ヨヨとシャララ隊長がやってくるとある事が告げられた。

 

「皆、これを見てくれるかしら?」

 

ヨヨがミラーパッドを見せるとそこにはミラーパッドが輝きを放っており、そしてそこに映ったのは数多の世界だった。

 

「……これって?」

 

「どうやらこのミラーパッドを起点に多くの並行世界に繋がったようなのだ」

 

「それって……」

 

「ああ、エネルギーを大量消費してはしまうが自分達から別の世界に行くことが可能になる」

 

「じゃあ、ソウヤ達の世界にも行けるって事!?」

 

あさひが嬉しそうにする。だが、何故急に繋がったのかと言う疑問も湧いてきた。

 

「恐らくだけどソウヤの世界と何度も繋がる度にこの世界を包む所謂世界の壁が他の世界と繋がるようになったのだと思うわ」

 

ヨヨの言葉に皆は納得するとひとまずは全員が無事に揃った事を喜び合う。そしてソラは新たな決意と共に未来へと歩いていくのであった。




次回からは予め通知しておいた通り、水甲さんの作品とのコラボ回となります。なのでそれも是非楽しみにしてください。それではまた次回もお楽しみに。


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悲しみの竜と新たな出会い

今回から水甲さんのひろがるスカイ!プリキュア 炎と氷の竜とのコラボ回に入ります。ただ、読む前の注意として水甲さんの作品も私と同じアニメ23話まで終了した事を前提として読んでください。それではどうぞ!


ソラ達の活躍であさひが救われたその日の夜。時空に歪みが生じると再びワームホールが開き、そこから一体の竜が現れた。その竜は水色の髪の少年の姿に変わると建物の屋上に降り立つ。

 

「……僕の仲間は……どこ?」

 

少年は悲しそうな声を発すると夜の街を跳んでいく。翌日、学校から帰ってきたあさひはいつものようにご飯の手伝いをしていた。

 

「あさひ、体は大丈夫?どこか後遺症とか残ってない?」

 

「大丈夫だよあげは。心配しすぎ」

 

「……私、シャララ隊長がランボーグになる夢を聞いた時に私にできる事を聞いておけば良かったって後悔してる。これであさひが戻って来れなかったら尚更自分を責めていたと思うんだ。だから……」

 

その瞬間、あさひはあげはの頭を優しく撫でる。それを受けてあげははびっくりして飛び退いた。

 

「うぇっ!?わ、私、大人なんですけど!?子供にそんな事をされるような歳じゃ……」

 

「あげは達がいてくれたから俺は今ここにいる。あげはは大人だからって俺に甘えなさすぎ。偶には甘えてきても良いんだよ」

 

「……もう!だからって頭を撫でるはちょっと恥ずかしいよ……」

 

「えぇー、どこにいてもハグとかしてくるのに?」

 

「それはそれ!これはこれだよ!」

 

そう言いながら二人でイチャイチャする。そんな様子を見たましろは微笑ましい顔になっていた。

 

「二人共、ご飯を作ってるんだからイチャつくのも程々にね」

 

「「はぁーい」」

 

それからあげは、ましろ、あさひはご飯を作るのを続けていく。するとツバサが慌ててやってきた。

 

「皆さん!大変です!ミラーパッドがいきなり反応して……」

 

するとツバサの部屋から突如としてミラーパッドが勝手に飛び出すと四人の元に来る。そして、話を聞いたソラとエルもやってきた。

 

全員でミラーパッドを覗き込むとそこには街中で一体の水色の体色をした竜が暴れているのが見える。それを見た五人は頷くと自分達のやる事を一時中断。それからヨヨに事情を話して家を飛び出した。エルも抱っこ紐に乗って移動する。

 

「「「「「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!」」」」」

 

「スカイ!」

 

「プリズム!」

 

「ウィング!」

 

「バタフライ!」

 

「サンライズ!」

 

「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」

 

「ふわりひろがる優しい光!キュアプリズム!」

 

「天高くひろがる勇気!キュアウィング!」

 

「アゲてひろがるワンダホー!キュアバタフライ!」

 

「夜明けにひろがる眩い朝日!キュアサンライズ!」

 

「「「「「レディ……ゴー!ひろがるスカイ!プリキュア!」」」」」

 

エルを含めた六人は急いで街へと移動し、現場へと到着すると竜は六人の方を向く。

 

「僕の仲間は……友達は……家族はどこ!!」

 

そう言いながら青いブレスを吐く竜。それをバタフライが盾で防ぐが、その威力はとてつもなく、盾にヒビが入ると割れる瞬間にバタフライをウィングが抱き抱えてギリギリ回避する。

 

「わ、ワンダホー……」

 

「プリキュアの技で一気に弱らせましょう!」

 

「待って!さっきからこの子……泣いてるよ」

 

プリズムがそう言う中、竜は涙を流しながら五人へと攻撃を続けてきた。

 

「なんで僕は一人なの?仲間の元に帰してよ!」

 

竜が咆哮を上げるとその衝撃で五人は吹き飛ばされて近くの建物に叩きつけられてしまう。

 

「竜には龍で行くか。スタイルチェンジ!ドラゴ……」

 

そこまで言いかけた所でサンライズの持つドラゴンのスカイトーンが飛び出すとドラゴンの姿を具現化させる。その瞬間、竜はいきなり攻撃を止めた。

 

「!!君も僕の仲間……君はどうしてここにいるの?」

 

すると具現化されたドラゴンは竜の言葉で何やら話し始める。それから竜は大人しくなるとその場に座り込む。

 

「そんな……僕の仲間はここにはいないって……そんなの、そんなの……」

 

その瞬間、竜は光と共に少年の姿に変わると地面に降り立つ。

 

「凄い、あの子を鎮めるなんて……」

 

「俺のスカイトーンにそんな力があったなんて……初めて知った」

 

「だよね……」

 

スカイ達が話していると竜は突如として頭を抑えると何かを思い出しかけていた。

 

「うぁあああああ!!」

 

その目に映った光景は何者かが竜の里を滅ぼし、竜達を次々と殺していく様子である。その瞬間、サンライズ達を見ると再び元の竜の姿に戻り、サンライズ達を攻撃し始めた。

 

「えぇ!?大人しくなったんじゃ無かったの!?」

 

「とにかく倒すしかありませんよ!」

 

「ダメ!そんな事したらあの子は報われないよ!」

 

プリズムやウィング、バタフライが言い合う中、サンライズはどうするべきか迷っていた。倒すことができない訳ではない。このまま戦ってプリキュアの技を使えば倒す事も可能だろう。しかしそれでは悲しみに暮れたあの竜を救うことはできない。

 

「皆、あの子を倒さずに無効化する事はできないかな?」

 

「でも、プリキュアの技なんて使ったらあの子を倒してしまいます!」

 

「どうすれば……」

 

そこに遅れてシャララ隊長が到着する。彼女は竜の襲撃があった際には街にいたのだが、まずは市民の避難誘導が先と考えて出てこなかったのだ。

 

「サンライズ、フェニックスの力であの竜を落ち着かせる事はできないのか?」

 

「それが、フェニックスの力は傷を治すことができてもあの子の戦意を喪失させる事までは……」

 

その瞬間、突如として空が曇るとワームホールが開き、中から紫の髪をした男が現れた。

 

「ここがベリアルやイーヴィルが侵略しようとした世界か」

 

その男はベリアルやイーヴィルを知っている様子でそれはつまり、彼等と同じ世界からやってきた存在である事がわかる。

 

「ここに来てまた新たな敵ですか!?」

 

「うん?あそこにいる六人がプリキュアって奴らか……」

 

どうやら男はシャララ隊長の事をプリキュアと勘違いしているらしく、地上に降りてくると竜はその男を見るや突然ブレスを放った。

 

「……どうやら竜族の生き残りもここに来たようだな」

 

「竜族の……生き残り?」

 

男が手を翳すと竜は一瞬にして吹き飛ばされて近くの壁に叩きつけられるとたった一撃で少年の姿に戻ってしまう。

 

「あ……うぅ……」

 

「嘘、あの竜をたった一撃で……」

 

「こいつ、ヤバいオーラがビンビン出てるんですけど!」

 

「プリキュア達よ、聞け!俺の名はオロチ。竜の頂点を極めし者だ」

 

その名を聞くと少年はボロボロの体を引きずったまま立ち上がり、叫んだ。

 

「何が竜の頂点だ……貴様のせいで、貴様のせいで……うっ!?」

 

少年はそこまで言った所で体へのダメージによりまた倒れてしまう。それを見たサンライズは急いで駆け寄るとすぐに彼を治療する。

 

「スタイルチェンジ、フェニックス!」

 

それからサンライズが手を翳すと治癒の光が竜に注がれ、竜の傷がある程度回復した。

 

「はぁ……はぁ……」

 

「サンライズ!?」

 

「サンライズの体力は十分あるのにどうして……」

 

「恐らく彼が竜だから余計に回復に体力を使うんだろう。サンライズ、ひとまずはコイツを倒す。まだやれるな?」

 

「はい!」

 

シャララ隊長の呼びかけにサンライズは応えると六人でオロチと向き合う。するとオロチは光と共に八人に分裂。数の暴力で六人へと襲いかかってきた。

 

「嘘でしょ!?」

 

「俺が三人分引き受ける!スタイルチェンジ!ペガサス!」

 

サンライズが火炎弾を生成すると三人に命中させ、三人の注意を引く。そして、残りの五人はそれぞれオロチを一人ずつ相手にする事になった。

 

だが、オロチの力は圧倒的だった。サンライズ以外の五人は一対一にも関わらずまるで歯が立たない。サンライズも三人がかりでの攻撃を前にいくら技術力の高いペガサススタイルでも捌くのが間に合わずあっという間に体が傷ついていく。

 

「ペガサスじゃダメか……プリキュア!ホーリーコネクト!ひろがるチェンジ!ホーリーサンライズ!」

 

サンライズは切り札であるホーリーサンライズを使うとようやく三人をまともに相手できるようになる。だがそれでも劣勢は変わらないが。

 

「ヒーローガール!スカイパンチ!」

 

スカイが青い流星のパンチを繰り出すとその瞬間、オロチは目の前に氷の障壁を作り出すとスカイパンチをそれで受け止めてしまい、砕けた氷を攻撃の気弾代わりにしてスカイを滅多打ちにする。

 

「あぁああああ!!」

 

プリズムは距離を取りながら気弾を放つがオロチはグングン距離を詰めてくる。プリズムは何とか距離を保つためにいつもの手を使う。

 

「煌めけ!」

 

プリズムの光がオロチを包むとオロチは一瞬怯む。その隙にプリズムは距離を取るが、その瞬間プリズムの体に電撃が走り、彼女は悲鳴を上げた。

 

「うわぁああああ!!」

 

何とオロチは地面に手を置いただけで電流を一瞬にしてプリズムの元に飛ばしたのだ。

 

「はあっ!」

 

ウィングは空を滑空しつつオロチを翻弄しようとするが、オロチは地面から樹木を生やすとウィングの足を拘束。そのまま地面へと叩きつけてしまう。

 

「うぐっ!?」

 

それからオロチは樹木を操るとウィングの体を鞭打ちの刑にし、ウィングを傷つけていく。

 

「盾の生成が追いつかない!」

 

バタフライはオロチから繰り出される水流波を障壁で受け止めるが、障壁はあっという間に水圧で破壊されていき生成が追いつかず。バタフライは激流に飲み込まれると水の中で身動きが取れなくなりそこからオロチが体を何度も何度も殴っていく。

 

「たあっ!」

 

シャララ隊長はプリキュアでは無いこともあって他の五人以上に苦戦を強いられていた。オロチが闇の気弾を発射する中、シャララ隊長はそれを何とか捌く。しかし、捌いて隙ができた所にオロチは容赦なく攻撃を叩き込んだ。

 

「え、えるぅ……」

 

傷つき、倒れていく六人を見てエルは目に涙を浮かべる。このままでは負けてしまう。それからサンライズ以外の五人は吹き飛ばされると地面に叩きつけられた。そしてサンライズは何とか持ち堪えているものの、やられるのも時間の問題だ。

 

「「「「「「「「終わりだ」」」」」」」」

 

八体のオロチがそう言うと手にそれぞれ炎、水、雷、木、土、氷、風、闇のエネルギー弾を生成する。サンライズは五人の盾となるために構えを取るとそれを防御しようとした。

 

「来いよ……俺が受け止めてやる!」

 

「その覚悟は見事だが……勇気と無謀を履き違えたな。消えろ」

 

誰もが終わりだと思ったその時、突然四つの影が飛んでくるとオロチは攻撃を中断。そこにいたのは赤い髪の少年に青い蜥蜴を乗せた少年、黄色い髪の少女に緑の髪の男。四人はそれぞれオロチに向けて言葉を発する。

 

「その力、俺達と同類か」

 

「でも私達四人なら行けるでしょ」

 

「できれば戦いたくは無いけどね」

 

「そういうわけにはいかないよ。僕達はこの子達を助けに来たんだから」

 

すると四人はそれぞれ炎、氷、土、風の力を身に纏うとそれぞれ鎧のような物を生成し、オロチへと向かっていくのだった。




また次回もお楽しみに。


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並行世界の竜達と分断

圧倒的な力を持つオロチを前に現れた四人の人間。彼らはそれぞれ炎、氷、土、風の力を操っていた。

 

「お前ら、何者なんだ?前にイーヴィル達が行った時の情報にお前らはいなかったが何者なんだ?」

 

「あんたに教えるつもりは無いわ」

 

そう言う黄色い髪の少女に赤い髪の少年が反論する。

 

「名前を名乗るぐらいは別に良いだろ」

 

「えっと、僕の名前は真倉桜空。上に乗っているのは氷竜のグーリ」

 

「……火竜のノアだ」

 

「私は地竜のアス」

 

「俺は風竜のフウ」

 

四人はそれぞれ名乗る。炎を操っているのは火竜のノア、青い蜥蜴を乗せているのは真倉桜空、蜥蜴は氷竜のグーリ、土を操っているのは地竜のアス、風を操っているのは風竜のフウ。四人はそれぞれの属性の力を操る事ができる。ようでそれぞれ炎、氷、土、風の力を持っていた。

 

「四人の……竜」

 

「正確には僕は竜じゃないけどね。僕はグーリの力を宿したただの人間だよ」

 

「ここに来れたのはもしかして、ミラーパッドの導き?」

 

「そんな所だよ」

 

「当然ミラーパッドが光ったと思ったら苦しんでる君達が見えてね」

 

「ちょうど僕達の世界のプリキュア達は不在だったから僕達だけだけど助けに来たって感じ」

 

この四人は自分達の世界のミラーパッドがサンライズ達の世界のミラーパッドと共鳴。サンライズ達の窮地に駆けつける形となったのだ。

 

「ここに来て見たらなかなか面白そうな相手じゃない」

 

「アス、張り切るのは良いがあまりこの街に被害は出すなよ」

 

「大丈夫よ。ある程度は加減するし。それに、こっちの世界のツバサ君を傷つけるのは嫌だからね」

 

「そこはプリズム達もじゃないんだ……」

 

四人が話しているとオロチはそんな四人を睨みつける。あと少しで自分の念願が叶ったのに邪魔をされれば怒るのは当然だ。

 

「貴様等、何が何だかわからないが邪魔をするのなら容赦しないぞ」

 

「俺はあまり争いは好きじゃないけど、戦うしか無さそうだね」

 

「コイツを倒してこの世界を救おう!」

 

それから四人はオロチへと向かおうとする。しかしオロチの数は八体。このまま二対一では不利のため、サンライズ達も傷を振り切って立ち上がるとノア達の隣に並ぶ。

 

「……傷は良いのか?」

 

「どの世界から来たのかはわからないけど皆が頑張ってるのに休んでなんかいられないよ」

 

「わかった」

 

それからサンライズ達は十人でオロチへと向かっていく。その様子を先程の竜の少年が薄らと目を開けて見ていた。

 

「……どうして。僕は君達を攻撃したのに……何でアイツと。そんな事したらまた友達になれるって思っちゃうじゃないか……」

 

少年の呟きは風に消え、オロチと十人は戦いを始める。今度はプリキュア達もノア達の加勢によって互角近くの戦闘を展開した。

 

「行くわよ!」

 

まず先制攻撃とばかりにアスが地面を殴ると大地が抉れて土波が発生。それがオロチの足を止めさせるとそこに桜空とサンライズの同時攻撃が決まる。

 

「桜空君だっけ、俺の名前はキュアサンライズ。本名は虹ヶ丘あさひだよ」

 

「え!?その名前、もしかして……」

 

「うん。キュアプリズム、虹ヶ丘ましろの弟だよ」

 

桜空はそれを聞いて驚く。彼は自分達の世界ではましろの家に居候させてもらっており、しかもただならぬ関係のため余計に驚いていた。

 

「話している場合か。攻撃が来るぞ」

 

ノアにそう言われて二人は攻撃に備える。オロチ達はそれぞれの属性のエネルギー弾を放ち、攻撃を仕掛けてくる。それに対して、バタフライ、アス、サンライズらの防御技持ちの面々が攻撃を防ぐための障壁を展開。攻撃をしっかりと防ぐ。

 

「行くよ!」

 

フウが追い風を発生させるとウィングが風に乗って突撃し、更にそれを支援するようにプリズムが気弾を放つ。

 

「チッ!」

 

オロチは八人と数こそいるが、連携力の面ではプリキュアや竜達に分がある。しかもオロチ側は八人いるものの、性能面では一人一人に殆ど差がないのでそれぞれの苦手な部分をカバーできなかった。逆にプリキュアと竜の連合チームはそれぞれの弱点を上手くカバーしつつ戦えているのでそれだけ有利に立ち回れている。

 

「はっ!」

 

「たあっ!」

 

ノアの火炎を纏わせたパンチとスカイのパンチが打ち出され、更にその直後に追撃のシャララ隊長による斬撃がオロチを追い詰めていく。

 

「このまま行けば勝てるよ!」

 

「ああ、このまま行くことができればな……」

 

「チッ、こうなればアレを使うか」

 

すると突如としてオロチは分身を解くと元の一人に戻った。それを見てアスは挑発。

 

「もう終わり?」

 

「いや、何か来る。奴が纏う気配が変わった」

 

「この俺に奥の手を使わせる事……後悔するなよ」

 

その瞬間、オロチから物凄いエネルギーが放出されるとサンライズが一瞬にしてそれを喰らえば不味いと察知する。そしてそれを感じ取ったのかアスは地竜防膜と呼ばれる防御壁を、他の三人の竜はそれぞれ炎、氷、風で防御壁を展開。それらを覆うようにサンライズがホーリーサンライズの能力として範囲防御の障壁を作り、攻撃を凌ごうとする。

 

するとそのエネルギーは防御壁を全てすり抜けるとサンライズへと命中。その瞬間、サンライズの持つスタイルチェンジのスカイトーンが飛び出してしまう。

 

「あっ!?」

 

するとグリフォン、ドラゴン、ペガサス、フェニックス、ヤタガラスの五匹が具現化。そしてそれらの目が赤く変わるとその姿を変化させ、人の姿となる。

 

「何をした!」

 

「そいつらに洗脳の術をかけたんだよ。そして……」

 

更にオロチが指を鳴らすと五つのワームホールが開く。その瞬間、サンライズ達はその中へと吸い込まれ始めた。

 

「くっ!?」

 

「な、なんて強い吸引力なの!!」

 

そのワームホールの吸引力は圧倒的でプリキュアと竜達は少しずつ吸い込まれ始める。しかし、何故かシャララ隊長だけは吸い込まれる対象では無いのか全く効果が無かった。

 

「何故私だけ……」

 

「シャララ隊長……」

 

シャララ隊長は一人でも多くこの場に残すためにスカイの手を取ろうとするが伸ばした手は空を切り、全員が次々と吸い込まれていく。すると先程まで倒れていたはずの水色の髪の少年が走ってくると吸い込まれるサンライズの手を掴む。

 

「!!危ないよ!俺の事は良いから君は……」

 

「アイツもついてきたか。ならばお前も一緒に吸い込まれるが良い」

 

オロチが目を光らせると吸い込まれる対象の中に少年も追加されたのか少年の体も宙に浮き始める。

 

「ッ!!」

 

そのまま5つのワームホールの中にそれぞれスカイとノア、プリズムと桜空、ウィングとアス、バタフライとフウ、サンライズと少年のペアで吸い込まれると最後に先程擬人化した伝説の生物が自ら入り、穴は閉じてしまう。

 

「皆!!」

 

「えるぅう!!」

 

残されたシャララ隊長とエルが叫ぶ中、オロチは今開いた穴についての説明を始めた。

 

「安心しろ。特殊な空間に閉じ込めただけだ。まぁ、出ようと思ったら今入って行った生物達を倒さなければならないがな」

 

「くっ、だがお前を倒せば同じ事だ!」

 

そう言ってシャララ隊長が走っていくとオロチへと剣を突き出す。しかしオロチはそれを指2本で受け止めると余裕そうな笑みを浮かべる。

 

「………この程度か?」

 

「ッ!!」

 

「はあっ!」

 

オロチがエネルギー波でシャララ隊長を吹き飛ばすとシャララ隊長は叩きつけられて地面を転がり、その近くに落とした剣が突き刺さる。

 

「ぐうぅ……」

 

オロチはゆっくりと歩いていくとシャララ隊長の使う剣を抜き、シャララ隊長へと突きつけた。しかし何を考えたのかオロチはその剣を投げ捨てるとシャララ隊長を見逃す。

 

「トドメは……刺さないのか」

 

「ああ。お前には無惨に散っていくプリキュア達の姿を見てもらおうと思ってな。あと、そこの赤ちゃんも一緒に見れば良い」

 

「えるっ!?」

 

次の瞬間、二人を包み込むようにエネルギーボールが生成されると二人は閉じ込められてしまう。

 

「くっ!?」

 

シャララ隊長は武器を手放したまま捕まってしまったがためにもうどうすることもができなかった。

 

「そこの中で大人しくしてな、安心しろ、俺が街をメチャクチャにするのはここの決着が付くまで待ってやるからよ」

 

シャララ隊長が悔しそうにする中、オロチはのんびりと5つの映像を映し出して様子を観察する事になる。

 

その頃、異空間に閉じ込められたプリキュアと竜達。そんな中、プリキュアは度重なるダメージの影響で変身解除しており、目を覚ますと体に鈍い痛みが走る。

 

「うっ……早く出口を見つけないと……皆さんも捕まっていましたし……」

 

ソラが立つと近くにはノアもおり、ノアはソラを見つめていた。

 

「えっと、あなたはノアさんですよね?」

 

「さんは要らない。ノアと呼ばれる方が慣れているからな」

 

「ノア、ここは一体……」

 

ソラとノアが辺りを見渡すと切り立った岩場が点在する山岳地帯であり、ここが先程とは違う場所だとハッキリとわかった。

 

「皆さんは別の穴に吸い込まれたんですよね?」

 

「多分な。ここにいるのは俺とソラだけみたいだし、他の奴等は別の穴に吸い込まれでもしたんだろう」

 

ソラとノアは別の穴に吸い込まれたであろう仲間達を心配する。しかし、このままではどうしようもならないので出口を探そうとした。すると足音と共に一人の男が現れる。それは先程オロチが擬人化させた伝説の生物……グリフォンだった。

 

「俺の名はグリフ。お前らを潰させてもらう」

 

そう言うグリフは目を光らせると衝撃波を放ち、二人へと攻撃する。

 

「やるしか無いですね」

 

「仕方ない。ソラ、二人で戦うぞ」

 

「勿論です!」

 

それからソラはミラージュペンを取り出すとスカイトーンを装填し、変身した。

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!スカイ!」

 

そして、ソラはスカイブルーの光と共にプリキュアへと変身し、降り立つ。

 

「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」

 

再度変身したスカイと体に炎の鎧を纏わせたノア。二人が構える中、グリフは二人へと空間の仕掛けを説明する。

 

「ここはオロチ様が作られた異空間。出たければ俺の核となるスカイトーンを使うしか無い。だが、この俺に勝てるかな?」

 

「そんなの、勝ってみせるに決まってます!ノア、行きましょう」

 

「ああ」

 

こうして、スカイとノアは異空間から出るために戦いを開始するのであった。




参考になるので評価や感想をいただければと思います。また次回もお楽しみに。


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伝説の生物達との戦い

スカイとノアが戦いを始めた頃、あさひと少年以外の三箇所でも同様に戦いが始まっていた。

 

プリズム、桜空side

 

「はあっ!」

 

プリズムが放った気弾にペガサスのペガは射撃で対抗。プリズムの気弾を全て撃ち落とす。

 

「桜空君!」

 

「だあっ!」

 

プリズムが気を引く間に桜空が両手を氷の武装で強化し、攻撃を仕掛ける。

 

「その程度では当たらないぞ!」

 

その攻撃をペガは受け流し、桜空の顔面にカウンターを決めて吹き飛ばす。

 

「うぐっ!?」

 

「桜空君!」

 

プリズムが駆け寄ると彼の心配をする。それを見た桜空は自分達の世界にいるプリズムことましろを思い浮かべた。

 

「大丈夫。……やっぱり世界が違ってもましろは優しいな」

 

「へ!?」

 

プリズムは桜空からの言葉に驚いて顔を赤くするが、ペガはそんな事を考えさせる余裕も与えないとばかりに二人を追尾する射撃を撃ってくる。

 

「そんな事言われたらびっくりしちゃうよ」

 

「こちらの世界のましろに変な事を吹き込むな。ややこしい事になるぞ」

 

「ごめん。ここからは集中するよ」

 

桜空は手にエネルギーを集約すると氷の礫を生成。それを射出する。それをペガは全弾避けるとすかさず背中に生やした翼から青いエネルギーを纏わせた羽を気弾として連射。二人もそれを回避しつつ戦う。

 

「やあっ!」

 

プリズムが再び気弾での弾幕を張るとペガの周囲を取り囲むように気弾を配置していく。

 

「なるほど、逃げ道を塞ぎに来たか」

 

プリズムの狙いは攻撃を回避してくるペガを囲み、一斉攻撃で仕留めるつもりだ。

 

「桜空君、私がダメージを与えたら一気に詰めて攻撃して」

 

「わかった!」

 

「ふん。その程度か」

 

「「……え?」」

 

プリズムからの一斉攻撃が迫るその瞬間、ペガは周囲に気弾によって生成したエネルギーバリアを張ると攻撃を全て防いでしまう。加えてそのタイミングで近づいた桜空にはカウンターとして残していた置き玉を使い背後から攻撃を撃ち込む。

 

「うぐうっ……」

 

「甘いな」

 

更に動きが鈍った桜空の腹に掌底が撃ち込まれると桜空は堪らずその場に膝をつく。

 

「桜空君!」

 

プリズムが危険に晒されている桜空を気遣って前に出るものの、それさえも予想済みとばかりにペガは先程のお返しとしてプリズムの周囲に気弾を配置。逃げ道を消した上で全方位からの攻撃でプリズムに大ダメージを与えた。

 

「うわぁああああああ!」

 

これによりプリズムも倒れると二人共痛みに悶える事になる。

 

ウィング、アスside

 

ウィングとアスはドラゴンのドラゴと激しく打ち合っていた。地竜のアスの最大の特徴はその攻撃力だ。攻撃力という面で見れば竜の中でも高位とも言える。ただ、彼女自身、ある出来事がきっかけで力を半分渡してしまったために全盛期よりもかなり力は落ち込んでしまっているが。

 

「はあっ!」

 

アスがブレスを吐くと土石流が流れてドラゴを埋める。ドラゴはすぐに脱出するが、そこに合わせてウィングが蹴りをぶつけて吹き飛ばす。

 

「私の攻撃に合わせるなんて世界が違ってもツバサ君はツバサ君ね」

 

アスは顔を赤くしつつツバサへと話しかけているのを見てツバサはある結論に思い至る。

 

「アスさん、もしかしてそっちの世界のボクの事が……」

 

そこまで言ったところでドラゴはサンライズのドラゴンスタイルのように空中にジャンプ台を生成するとそれを使いながら立体機動で二人を倒そうと接近してくる。

 

「近づいてくるならこっちの思う壺よ!」

 

アスが腕に岩を纏わせるとそれでガントレットを生成。そのままドラゴを殴りに行く。しかし、ドラゴは突然腰から尻尾を生やすとそれを突き出したアスの腕に巻きつけてアスを振り回し、叩きつける。

 

「うぐっ!?」

 

「アスさん!」

 

「余所見している場合か?」

 

更にドラゴは炎のブレスでウィングへとダメージを与え、追い詰めた。

 

「くっ……」

 

「お前らなどさっさと片付けてくれる!」

 

「このっ、あんまり舐めてると痛い目を見せてやるわよ!」

 

それから二人はドラゴと再び戦闘を再開する。今度はウィングが前に出て囮となり、ドラゴからの攻撃を引きつけた。これはアスの持つ高火力を確実に相手へとぶつけるための処置である。これで上手く隙ができれば一気に仕掛けるつもりだ。

 

「はぁあああああ!」

 

「ふん、お前らの狙いなどわかっている。ちゃあっ!」

 

するとドラゴが尻尾を生やすと力を高めているアスへとウィングの攻撃を捌きながら伸ばす。

 

「アス!行ったよ!」

 

「ッ!!」

 

アスはその尻尾への対応で出力の上昇を中断せざるを得ず、尻尾を迎え撃つ。

 

「私を片手間で倒せると思わないことね!」

 

アスはドラゴの尻尾を捕まえるとそのまま振り回して地面へと叩きつける。それから二人は同時攻撃で一気にドラゴを仕留めようとした。

 

「ふっ……」

 

ドラゴがニヤリと笑うとその瞬間、ウィングは何か嫌な予感を感じ取る。そして咄嗟にアスを突き飛ばした。

 

「はあっ!」

 

それと同時にドラゴは口から氷のブレスを吐く。ウィングはそれをまともに喰らうと凍りついてしまい、そのままアスへとウィングが投げられる。

 

「ツバサ!よくも……よくもツバサを!」

 

アスは怒りのままに突進するが、ドラゴはそれを躱しつつ尻尾でアスの首を締め上げる。

 

「あうっ……」

 

「焦った結果がこの始末か。つまらん」

 

ウィングは凍らされ、アスは首を締め付けられてしまい絶体絶命の危機に陥るのであった。

 

バタフライ、フウside

 

バタフライとフウの二人はフェニックスのニクスを相手に戦っており、二人による物理攻撃が次々と決まる中、ニクスは全く動じる事なく余裕そうだった。

 

「その程度ですか?」

 

ニクスがニヤリと笑うと傷は一瞬にして修復。ノーダメージとなってしまう。

 

「嘘、ダメージの無効化!?」

 

「不死鳥の力による超再生能力……こちらの高威力の技で倒すしか無さそうですね」

 

二人が話し合う中、ニクスは退屈そうに手から火炎弾を飛ばす。二人は何とかそれを回避しつつ作戦を練る。

 

「あげはさん、あなたの持つ最高威力の技は?」

 

「え!?えっと、使えてもバタフライプレスだけだよ。あとの技は他の皆との合体技だけ」

 

「やはりこちらの世界のキュアバタフライと同じか……」

 

フウはそう言いつつ竜巻で火炎弾を弾き飛ばす。するとニクスは体を炎で包むと不死鳥の姿となり二人へと突撃してくる。

 

「くっ……」

 

「はあっ!」

 

バタフライがその突撃を蝶型のバリアで防ぐものの、その威力を前に押し込まれていく。そこにフウが風によって生成した矢を連続で射出。それがニクスに命中するとニクスは怯み、そのままバタフライが押し返す。

 

「二つの色を一つに!ホワイト!ブルー!温度の力!サゲてこ!」

 

バタフライがニクスにミックスパレットの温度の能力を使用。これによりニクスが纏う炎の力が弱まった。

 

「ッ!!」

 

「今だよ!」

 

「ああ」

 

フウがエネルギーを高めると巨大な風のエネルギー弾を生成。強力な一撃で決めにかかる。フウから放たれたエネルギー弾はニクスの体に命中すると大きなダメージを与える……しかし、倒し切るには至らなかった。

 

「……ふふふ、確かに今のは効いた。だが!」

 

その瞬間、ニクスの体はまた再生してしまう。しかも再生の際に下がった温度も復活し、更に強大になっていたのだ。

 

「く、化け物なの!?」

 

「これは不味いね」

 

「終わりにしてやる」

 

ニクスは炎の翼を広げるとその翼を二人に向かって伸ばす。そしてそこから炎弾が生成されると射出され、その攻撃が命中。二人は声にもならない悲鳴を上げると深い傷を負い、崩れ落ちてしまう。

 

スカイ、ノアside

 

グリフを相手に戦うスカイとノア。二人は猛烈なラッシュでグリフを押していく。

 

「はぁあああ!!」

 

「無駄だ」

 

その瞬間、スカイの拳をグリフが掴むと圧倒的なパワーで振り回し、ノアへとぶつける。

 

「うわぁああああ!」

 

「ふん!」

 

それからグリフが風の刃を飛ばして二人に命中すると二人は傷つきダメージを負った。

 

「ううっ……強い」

 

「萎縮するなよ。気持ちで負けたらダメだ」

 

「はい!」

 

それから二人は再び向かっていく。ノアは手にガントレットを生成するとそれの先端に鋭い爪を生成。まるで竜の腕のような武装をしてグリフへと殴りかかる。

 

「少しギアを上げるか」

 

するとノアの力が上昇。先程まで防がれていた攻撃が少しずつ決まるようになる。ノア達竜は本気を出すと確実に地形を粉砕してしまうために普段は加減しているのだが、今回はその状態では確実に負けると考えて少しギアを上げることにしたのだ。

 

「はあっ!」

 

加えてノアが至近距離から炎のブレスを放つとグリフはその威力に少し下がる。

 

「やるな。だが!」

 

するとグリフは背中に翼を生やし、電撃を蓄えるとそれを二人へと放出。二人は迫り来る電撃の嵐を躱しながら近づこうとした。

 

「……決めます!ヒーローガール!スカイパ……」

 

スカイが突撃しようとしたその瞬間、スカイの体に地面から生えた電気の鞭が絡みつき、彼女を拘束。

 

「うっ!?」

 

「何だと!?」

 

「さっきの電撃は陽動だ。悪いな」

 

先程放たれた電撃が地面に入るとそれが集まっていき、地面からスカイを拘束するための鞭になるための下準備をしていたのだ。そしてそのままスカイの体には電撃が流される。

 

「うわぁああああ!!」

 

「チッ!」

 

ノアがスカイの拘束を解かせるためにグリフへと走っていく。だがそれもグリフの予想通りだ。

 

その時グリフが翼を動かして突風を発生させるとノアの動きを鈍らせる。そしてその隙を突き、グリフはノアへと拳をぶつけてノアを吹き飛ばす。

 

「ノア!……うぁああああ!」

 

その間もスカイは電撃で攻められておりそのあまりの出力を前に体から煙が上がりぐったりとしてしまう。

 

「ソラ……」

 

ノアは立ち上がるものの既にダメージも深かった。更にグリフは追い討ちをかけるように竜巻を発生させるとノアを着実に追い込む。

 

「うぐぅ……」

 

ノアがフラフラになった所にグリフは電撃を射出。ノアにも電撃を流してダメージを追加。一気に追い込んでいく。こうしてノアもスカイも窮地に陥るのであった。

 

あさひ、少年side

 

他の四チームが窮地に陥ったその頃。あさひと水色の髪をし、少年の姿となった竜の二人は目の前に衝撃的な光景を見ていた。

 

「嘘……だろ?何で……」

 

そこにいたのは先程までただ人になっていただけのヤタガラスのスカイトーンが変化した人間が驚くべき進化を遂げていたのだ。

 

「キュア……ナイト」

 

ヤタガラスのスカイトーンが変化した人間が更に変身した姿。それは別世界の友、ソウヤが変身しているプリキュアであるはずのキュアナイトに瓜二つであったのだ。




また次回もお楽しみに。


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竜の過去と握った手

ヤタガラススカイトーンが擬人化した人間が現れる少し前、あさひは気を失っていた所から目を覚ましていた。

 

「う……くぅ……」

 

するとそこはどこかの廃墟なのか建物の中であり、近くにはあさひを看病していたのか水色の髪をした少年が座っている。

 

「君……まさか俺の事を心配して……」

 

「……そんな事ないよ……。僕はただ……」

 

少年はプイとそっぽを向きながら素っ気なく答える。しかしあさひは少年が照れ隠しをしていると感じ、ニコリと笑った。

 

「ありがとう。助けてくれて」

 

「だから僕は君を助けてなんか……」

 

少年がそう言ったところであさひは少年の隣に座る。少年はあさひから顔を背けたままだったが心なしか先程よりもあさひとの心の距離は高くなっていた。

 

「ねぇ、君の過去に何があったのか。教えてくれる?」

 

「それは……」

 

少年は言葉に詰まる。それを言っても大丈夫なのか。あさひから変な目で見られるのでは無いのかと不安になっていた。

 

「大丈夫。俺は君の事を信じたい。でも、どうしても君が教えたくないと言うのなら無理に言わなくても良い」

 

少年はそれを聞いて考え込む。しかし、いつまでも迷ってばかりではいられない。あさひにちゃんと伝える必要があると考えたら竜は答えを返す事にした。

 

「……僕は元々竜と人が手を取り合い、仲良く暮らす世界に住んでいた」

 

少年の住んでいた世界は多くの竜が住んでおり、彼等はそこにいた人間と手を取り合い、仲良く過ごしていたのだ。しかし、ある日突然人間達は竜を恐れるようになった。そして、彼等から少しずつ忌み嫌われるようになり竜達は人間に不信感を抱く。

 

「そんなある時、アイツが……オロチが僕達の前に現れたんだ。オロチは竜達を仕切って人間と戦うように僕達を後押ししたんだ」

 

オロチに扇動された竜達は人間を襲う。しかし、人間達はそれを知っていたかのように迎え撃つと竜達は大損害を出して負けてしまう。そこからは泥沼の戦争の始まりだった。竜も人間も互いを嫌って殺し合い、以前までの仲の良さなどどこへやらとばかりに戦い続ける。

 

「僕は戦いをやめるように言った。でも、竜達はそれを聞いてくれなかった。人間が先に仕掛けたのだと……人間こそ憎むべき敵だと教えられた」

 

それから人間と竜は互いにその数を減らしていった。そして、互いが弱ったその時。彼が暴れる千載一遇のチャンスを作ってしまったのだ。

 

「オロチは、人間と竜が争うように仕向けていた。互いに弱った二つの種族を彼は纏めて根絶やしにしてしまったんだ。僕は辛うじて生き残ったけど、その時にはもう人間も竜も滅んでしまっていたんだ」

 

少年の目には涙が浮かんでおり、オロチに対する憎しみや怒りでいっぱいになっていた。

 

「それから僕はオロチに一人で立ち向かった。けど彼は強すぎた。僕はボロボロに負けると記憶を消されて……それからはひたすらに仲間を探して色んな世界を旅した。そしてここにやってきたんだ」

 

少年が記憶を思い出したのは恐らくかつて自分の仲間が憎んでいた人間がいたのと、仲良くしたいという心の底に秘めていた想いが消されていた記憶の底から甦ったからなのだろう。

 

「あれ?でも最初、俺達を見た途端大暴れしてなかった?」

 

「あの時……僕はオロチに洗脳されていて、多分オロチが予め設定しておいた人間を殺戮するという気持ちが強制的に高められた結果だと思う」

 

その話を聞いてあさひは少年に同情すると共にオロチへの怒りが高まっていった。

 

「そっか、大変な想いをしていたんだね」

 

「うん」

 

「……じゃあさ、俺と友達にならない?」

 

あさひはそう提案すると少年は驚いたように目を見開く。まさかそんな提案をされるなんて思わなかったからだ。

 

「でも、僕はいきなり君達を襲って……」

 

「そんなの関係無いよ。俺は君の友達になりたい。悲しんでいる子をいつまでも一人になんてさせない。だから……」

 

あさひが手を差し出すと少年はその手を取る。そして、二人が手を握り合った瞬間、あさひの心に何かの光が小さく宿った。

 

「そういえば君の名前を聞いてなかったよね」

 

「僕の名前はギラ。あさひ……で良いんだよね?」

 

「そうだよ。よろしく」

 

二人の間に友情が芽生えたその瞬間、一発のエネルギー弾が二人の間を掠めると二人の横で爆発を起こす。

 

「「!!」」

 

二人がその方向を向くとそこには一人の男がいた。そしてその男の顔にあさひは見覚えがある。

 

「コイツ、俺のヤタガラスのスカイトーンが変身した……」

 

「その通り。お前らが仲良くするのは勝手だが手を組まれるのは厄介だ。だからお前らを排除しろとのオロチ様の指示だ」

 

ヤタガラスのスカイトーンも例外なく洗脳されており、それを解くには倒すしか無さそうであった。

 

「その力は俺の大事な友達との絆の力なんだ。俺に返せ!」

 

「ふっ、お前は自分の置かれた立場がわかってないようだな」

 

男がそう言うとどこからともなくスカイミラージュとスカイトーンを取り出す。

 

「嘘……だろ?何で……」

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!ナイト!」

 

その瞬間、ヤタガラスのスカイトーンが変身した人間は男から女へと作り変わり、キュアナイトそっくりな姿へと変身した。

 

「私の名前はキュアナイト。静寂ひろがる夜のとばり!キュアナイト!」

 

あさひはそれを聞いて怒りに震えた。親友そっくりの姿になったどころかプリキュアとしての力さえもコピーし、真似するとは思わなかったからである。

 

「何でお前がその姿になれるんだ……それは俺とソウヤの大切な絆の証なのに……」

 

「だからこそでしょ。元々この力はキュアナイトの力を模倣したもの。だったら私もキュアナイトの力を使えて当然だわ」

 

「ふざけるな!……その力を、誰かを傷つけたり貶めたりするために使おうとするなんて……許せない。許せるはずがない!」

 

あさひの隣に少年が並ぶと二人は戦う気持ちを確認し、頷く。それからあさひはキュアナイトへと言い放った。

 

「ソウヤとの絆の力、返してもらうよ」

 

それからあさひはスカイトーンとミラージュペンを取り出して変身する。

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!サンライズ!」

 

それと同時にギラも体に力を高めるとその体に竜の力を模した鎧を装着。臨戦態勢を整えた。

 

「夜明けにひろがる眩い朝日!キュアサンライズ!」

 

「ふふっ。その程度で私に勝てるとでも?前にキュアナイトが変身したランボーグを相手に苦戦していたのに。そもそも私はあなたが見たキュアナイトそのもの。だから強さも本物よ。あなたに勝ち目なんて無いわ」

 

「だとしても……諦めるつもりは無い!」

 

それからサンライズは手に剣を召喚して走り始める。そして、ギラも両肩からエネルギーで生成した骨の腕が伸び、それが第三、第四の腕として機能する。

 

「はあっ!」

 

それからサンライズがナイトへと斬りかかるとナイトは青い剣を召喚して受け止める。その力は互角で互いに相手の腹を蹴って後ろに下がった。

 

「だあっ!」

 

サンライズは跳びあがると空中に炎の剣を召喚し、射出する。しかしこれはナイトが手にした漆黒の槍で全て弾き飛ばされた。

 

「喰らえ!」

 

そこにギラが伸ばした骨の腕を振り回し、中距離から一方的に攻撃を仕掛ける。

 

「へぇ、やるじゃない。でもその距離は私のテリトリーよ。プリキュア ・ミライレコード!ミライコネクト!プリズム!」

 

その瞬間、ナイトはプリズムスタイルにチェンジ。手にした銃でギラの体を撃ち抜く。

 

「くっ……」

 

リーチの差で有利を取っていたはずのギラは相手からのまさかの攻撃手段にたじろいでしまう。

 

「ソウヤの力をコピーしてるって事はやっぱり姿も変えられるって事か……」

 

サンライズはそれに対抗するためにホーリーサンライズになろうとする。しかし、その瞬間ホーリーサンライズのスカイトーンをナイトが撃ち抜き、吹き飛ばしてしまう。

 

「あ!!」

 

「ホーリーサンライズにはならせないわよ。ヒーローガール!ナイトバースト!」

 

それからナイトがプリズムスタイルの技を使う。そしてそれに合わせてサンライズも浄化技を発動した。

 

「ひろがる!サンライズカリバー!」

 

二つの技が激突し、拮抗するものの威力の面ではナイトに分があり、サンライズは押し切られるとダメージを負ってしまう。

 

「あぐうっ……」

 

「その程度?」

 

そこにギラがエネルギーで生成した腕を更に生やすと合計六本となり、それでナイトの両手足を拘束。残った2本で滅多撃ちにした。

 

「動きさえ封じれば……」

 

「無駄よ」

 

次の瞬間、ナイトは体から衝撃波を放出すると拘束から逃れる。更に手にした槍を二人の影に投げつけた。

 

「そんなのは喰らわない!」

 

ギラはそう言うが、サンライズはこれからナイトが何をするのか予想がつき、構えようとする。

 

「遅いわよ。ミライコネクト!ナイト!」

 

するとナイトはαスタイルにチェンジ。それから先程投げた槍の元に瞬間移動すると無防備な二人の背中を剣で斬りつけた。

 

「うぐあっ!」

 

「がっ!!」

 

二人共ダメージで倒れ、立とうとするがその瞬間には二人の影に槍が刺されて動きを封じられてしまう。

 

「しまった……」

 

「何だこれ!?動けない……」

 

「弱い、弱すぎるわよ。あんた、本当にプリキュア?同じプリキュアとして恥ずかしいわ」

 

ソウヤなら、本家のキュアナイトなら絶対言わないような罵倒の言葉の数々を容赦なく浴びせるヤタガラスのキュアナイト。

 

「ヒーローガール!ナイトミラージュ!」

 

それからナイトの必殺技が二人へと叩き込まれると二人は傷だらけで倒れ伏し、荒い息を吐いていた。

 

「うぐうっ……」

 

「はぁ……はぁ……」

 

何とか立ち上がるものの、二人共満身創痍でふらついている。このままではやられるのも時間の問題だ。

 

「どうにかしないと……俺達はオロチを倒さないといけないのに……」

 

「あら?そんなこと言っても無駄よ。何しろ他の皆もピンチなのに」

 

そう言って他の四箇所の映像を見せるキュアナイト。それを見たサンライズは悔しさに顔を歪めた。

 

「諦めたらダメだよ、サンライズ」

 

「ギラ……」

 

「僕達は僕達にできる事をやろう!そうすればきっと……」

 

ギラはサンライズを励ますとサンライズは頷き、まだやれるとばかりに視線を強めた。

 

「本当に馬鹿な連中ね。大人しく倒れていれば痛い思いをしないで済むのに。まぁ良いわ。終わりにしましょう」

 

ナイトがそう言うとこの場を終わらせようとまた槍を構える。その瞬間、突如としてサンライズの胸からスカイトーンが出現するとサンライズはそれを手に取った。サンライズはそれを見た途端このスカイトーンを使うべきだと本能が察し、すぐにそれを使用する。

 

「プリキュア・ドラゴンコネクト!シェークハンド!」

 

その時、ギラの体が粒子となって消えるとサンライズの服の上から水色の鎧として武装されていく。そして両腰からローブが垂れ下がり、二つの腕がサンライズの胸の前で握手するとそれが装甲として身に纏われる。

 

「キュアサンライズ……プリミティブスタイル!」

 

「何ですって……こんなスタイル……初めて見たわよ!?」

 

ナイトが驚く中、サンライズは構えを取るとナイトを倒すために動き出すのであった。




また次回もお楽しみに。


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反撃の狼煙

キュアサンライズ・プリミティブスタイルに変身したサンライズはギラと一体化。洗脳されたヤタガラスのスカイトーンが変身したキュアナイトと対峙する。

 

「力が漲る……ギラ、フォローは任せても良い?」

 

「うん。一緒にやろう!」

 

それからサンライズが手に剣を生成するとナイトへと走っていく。ナイトはそれに対抗するように青い剣を出して二つの剣がぶつかり合う。

 

「無駄よ。幾ら姿が変わった所で私の優位は変わらない!」

 

「それは……」

 

「どうかな!」

 

するとサンライズの背中から先程ギラが使っていた骨の腕が伸びてくるとナイトへと攻撃を仕掛ける。

 

「ふん。その程度の攻撃で屈するとでも?」

 

「だろうね。でも、この力の本当の能力、見せてあげるよ」

 

サンライズがそう言うと体に水色のオーラを纏わせる。その瞬間、四つの光が空間を突き破るとそれぞれ別の空間で戦っているプリキュアと竜達の元に向かっていく。

 

「何?今のが真の力?笑わせるわね」

 

「これだけじゃねーよ。ギラ!」

 

「うん!」

 

するとその瞬間、サンライズの体に纏われた水色のオーラがその形を変えていく。そして手に斧が生成された。その斧はダイヤのような輝きがあり、加えて所々に竜の意匠が刻まれている。

 

「はあっ!」

 

サンライズは新たに手にした斧に炎を纏わせるとそれを振るいナイトを斬りつけた。

 

「ぐうっ!?」

 

その一撃は今までのどの攻撃よりも重かった。流石のキュアナイトでもこれには苦戦を強いられる。更にギラが操る骨の腕が何度もキュアナイトに叩きつけられてキュアナイトは一瞬にしてダメージを負う。

 

「馬鹿な……こんな事が……」

 

「散々やられた分……お返ししてやるぜ!」

 

サンライズは意気揚々と斧と骨の腕による連続攻撃を仕掛ける。これを前に先程までとは攻守が逆転。ナイトは一気に追い詰められる事になる。

 

「くっ、近接戦は不利。ならばプリズムスタイルで……」

 

ナイトがプリズムスタイルにチェンジしようとした瞬間、その腕をギラは見逃す事なく捕まえた。

 

「フォームチェンジはさせない」

 

「チッ……厄介な真似を……」

 

「おらあっ!」

 

更に斧でナイトを吹き飛ばす。それからサンライズとギラは戦いを続けるのであった。

 

スカイ、ノアside

 

グリフが二人を圧倒し、とうとうトドメを刺そうとしてきたその瞬間。先程サンライズが飛ばした光が次元の壁を越えて到達する。

 

「これは……」

 

「……スカイ、俺の力を使え」

 

「ノアの?」

 

その光に共鳴するようにノアの体にも光が灯る。二つの光が一つに重なると新たなスカイトーンが生成された。

 

「チッ、まさかこの土壇場でデタラメな奇跡を……」

 

「行きます!」

 

それからスカイがスカイトーンをスカイミラージュに装填。ボタンを押す。

 

「プリキュア・ドラゴンコネクト!フレイムドラゴン!」

 

その瞬間、ノアの体から炎の竜が飛び出すとスカイの体の中に入っていく。するとスカイのドレスに赤い装飾が入る。更にドラゴンの意匠が追加、そしてマントが赤く染まりキュアスカイ・フレイムドラゴンスタイルとなった。

 

「この力、もしかして……」

 

するとスカイが力を込めると魔法陣から炎が放出される。ノアはそれを見て頷いた。

 

「俺の力を使ってるみたいだな。ソラ、二人分の炎ならアイツを倒せる」

 

「はい!」

 

スカイとノアは炎を拳に纏わせるとグリフへと突進する。グリフは二人を迎え撃つが二人の力は飛躍的に上昇しており、グリフの本気でも対抗するのは難しかった。

 

ノアが足払いをかけてグリフのバランスを崩した所にスカイが拳を叩き込む。

 

「だあっ!」

 

更にノアがブレスをぶつけるとグリフを炎の渦の中に閉じ込める。グリフはそれを突破しようとするが中々打ち破れない。

 

「ソラ!今だ!」

 

「はぁあああ!」

 

スカイは炎の渦でグリフの動きが止まっている間にスカイランド神拳の貯め時間を稼ぎ切り、重い一撃をグリフへと叩き込む。

 

「何!?がはあっ!」

 

「はっ!」

 

グリフが怯んだ所にノアが炎の拳をぶつけて一気にダメージを与える。すかさずスカイが回し蹴りで追撃。グリフはもうボロボロになっていた。

 

「サンライズの力、返してもらいます!」

 

スカイはいつものスカイパンチの体勢に入ると体から放出された炎が纏われていく。そして繰り出される炎の流星……

 

「プリキュア!フレイムパンチ!」

 

その一撃がグリフを撃ち抜くとグリフの洗脳が浄化されていき、スカイトーンへと姿が戻った。

 

プリズム、桜空side

 

ボロボロで倒れていた二人の元にもスカイトーンが出てきてそれがペガを弾き飛ばすと桜空の中にいるグーリからの光を受け取ってからプリズムの手に収まる。

 

「これって……」

 

「ましろ、その力ならきっとアイツを倒せる!僕を信じてくれ!」

 

「うん!プリキュア・ドラゴンコネクト!アイスドラゴン!」

 

プリズムもそのスカイトーンを使用すると桜空の中にいるグーリから氷竜が飛び出してプリズムの中に吸い込まれた。するとプリズムのドレスに水色の装飾が追加。ドラゴンの意匠も入り、インナースカートにも氷の模様になり氷竜の力が纏われた事がわかる。こうしてキュアプリズム・アイスドラゴンスタイルが登場した。

 

「私……これでパワーアップできたの?」

 

「グーリの力が使えるのなら多分氷を使えると思う。一度やってみて!」

 

「はあっ!」

 

するとプリズムがいつも使う気弾が水色に変わっていた。加えて氷のエフェクトが付与されると先程よりも速度の速く、威力のある弾幕がペガへと飛んでいく。

 

「チッ!」

 

ペガはそれを自らのエネルギー弾で相殺しようと射撃を放つ。しかし今度はペガのエネルギー弾でも相殺できずにプリズムの射撃が打ち勝つとそのままペガへと全弾命中。そこに桜空が追撃をかける。

 

「必殺!氷竜爆撃!」

 

桜空の持つ最大出力の攻撃。それがダメージによって動きが止まったペガに炸裂。その腹を抉るように拳が命中するとペガの体が凍りつき、それが砕かれた。

 

「馬鹿な……この私が……こんな攻撃で……」

 

ペガは怒りに震えると両手にエネルギーを集約。そのままペガの持つ最高火力の一撃が解き放たれる。

 

「アス、力を借りるよ!地竜防膜!」

 

桜空はある出来事がキッカケでアスの力を使えるようになっていたため、彼女の持つ防御技、地竜防膜を発動。ペガからの攻撃を見事に凌いだ。

 

「ましろ!」

 

「うん!」

 

するとプリズムがプリズムショットを使うために両手を掲げると冷気がそこに纏われていき、気弾が凍りつく。そこから放たれる一撃。

 

「プリキュア!アイスショット!」

 

氷の一撃がペガへと飛んでいくとその体を凍り付かせ、その氷が砕けると同時にペガは元のスカイトーンへと戻された。

 

ウィング、アスside

 

こちらでは凍り付いたウィングと首を絞められたアスだったが、光が飛んできてドラゴを弾くとアスの力が合わさり、ウィングの氷を砕いてウィングの手に収まる。

 

「一体何が……」

 

「ツバサ、それを!」

 

「わかりました!」

 

ウィングがすぐにスカイトーンを装填し、その力を発動した。

 

「プリキュア・ドラゴンコネクト!グランドドラゴン!」

 

するとアスから土の竜が飛び出してウィングの中に入ると服に黄色い装飾、ドラゴンの意匠、そしてローブが黄色く変わる。そして足のリボンタイに竜の爪のような意匠が入ってキュアウィング・グランドドラゴンスタイルに変化した。

 

「その姿、私とお揃いね」

 

「うっ……でもこの力ならきっと!」

 

ウィングが空を飛ぶと両腕に力を込める。するとアスのようにドラゴンの腕が岩によって生成。そのままドラゴを連続で切り裂く。

 

「ぐうっ……」

 

「はあっ!」

 

続けてアスが地面に手を置き力を込める。その瞬間地面から岩の棘が生えていき、ドラゴに命中するとドラゴは堪らず後ろに下がり、ブレスを吐く。それと同時にウィングとアスが土のブレスとエネルギー波を放つと二つの力が打ち勝ちドラゴの体を封じ込める。

 

「何!?」

 

「畳み掛けるわ!」

 

更にアスが接近し、蹴りを繰り出すとその威力で一気にダメージを蓄積させた。

 

「このまま決めさせてもらうわよ!」

 

「たあっ!」

 

二人は同時にドラゴへと飛び掛かるとドラゴは尻尾を伸ばして薙ぎ払おうとする。しかし今度はその尻尾をウィングとアスが捕まえると二人で投げ飛ばす。

 

「うぐっ!」

 

「これでどう?」

 

更にアスが近くに落ちていた大岩を投げるとそれがドラゴに激突し、ドラゴはそのダメージで怯む。そして最後の締めはウィングの技、ウィングアタックだ。これも他の二人と同様にパワーアップ。突撃する際に周囲から土のエネルギーが纏われていく。

 

「プリキュア!グランドアタック!」

 

ウィングからの力強い一撃が決まり、ドラゴはスカイトーンへと戻される事になる。

 

バタフライ、フウside

 

ダメージを負って崩れ落ちた二人にニクスが炎弾でトドメを刺そうとしたその時、光が飛んでくるとフウからの光を受け取って竜巻と共にニクスの攻撃を中断させるとバタフライがそれを掴む。

 

「なるほど、この力ならきっと……」

 

「アゲて行くよ!」

 

バタフライはすかさずスカイトーンをスカイミラージュに装填し、その力を使う。

 

「プリキュア・ドラゴンコネクト!ウィンドドラゴン!」

 

その時フウから風竜が出現。それがバタフライの中に入るとバタフライに緑の装飾が追加。ドラゴンの意匠、そしてアイシャドウが緑に変わり、キュアバタフライ・ウィンドドラゴンスタイルに変身した。

 

「ワオ!この力って……」

 

「俺の力だよ。さぁ、一緒に行こう!」

 

「だが、この再生能力を突破できるわけが……」

 

二人が手を翳すと竜巻が発生。その竜巻がニクスを包むとニクスの体に纏われた炎が一気に弱くなる。

 

「何!?」

 

「凄い、二人分の力とは言ってもここまで威力が上がるなんて」

 

「俺も想定外の力だよ!」

 

二人の力はもうすでにニクスの再生力を上回っており、たった一撃でかなりのダメージを与えていた。

 

「だがこの程度、再生すれば何とも……」

 

確かに再生力を上回る火力を出したとは言っても再生力が消えたわけではない。時間が経てば元通りになる。それを二人が許すわけがない。

 

「「はあっ!」」

 

二人は風による高い機動力で一気に接近するとほぼ同じ場所に同時に攻撃を命中させる。

 

「何だと!?」

 

「再生する前に……」

 

「畳み掛ける!」

 

更にフウは風の刃を生成すると次々と放ち、ニクスを切り刻んでいく。ニクスは防御に集中せざるを得ず、守りに入ってしまった。

 

「バタフライ、一気に決めるんだ!」

 

「オッケー!」

 

バタフライは跳びあがると風のエネルギーを身に纏わせていき、巨大な盾を生成。そのまま風の力を上乗せしたバタフライプレスの強化技。

 

「プリキュア!ウィンドプレス!」

 

その攻撃がニクスに命中し、押し潰すとニクスは再生する間もなく完全に撃破されてしまった。

 

サンライズ、ギラside

 

ナイトと一騎討ちを行うサンライズ。サンライズとナイトはそれぞれスカイトーンを取り出すとそれを装填し、互いに姿を変化させる。

 

「プリキュア・ミライレコード!ミライコネクト!ナイトサンライズ!」

 

「プリキュア・ドラゴンコネクト!シェークハンド・ホーリー!」

 

その瞬間、ナイトはサンライズの力であるナイトサンライズへ、サンライズは水色の鎧を纏った状態のままホーリーサンライズへとチェンジ。ホーリーキュアサンライズ・プリミティブスタイルへと変身。サンライズ・プリミティブスタイルの利点として、他のスタイルとの掛け合わせで更に力を引き出す事が可能となるのだ。

 

「その力……俺とソウヤの絆の力を……悪用するな!!」

 

「ほざけ!これは私の力なんだ……私が使って……何が悪い!」

 

二人は叫ぶと激突する。サンライズはギラの力を白い剣に集約するとナイトを斬りつける。ナイトはそのあまりのダメージに堪らず奥の手を使おうとした。

 

「仕方ない……バーストタイ……」

 

その瞬間、ナイトの体に電撃が走るとサンライズスタイルが解除。傷だらけで倒れ込んだ。

 

「何故……どうしてなの!?」

 

「言ったはずだ。これは俺とソウヤの力だ……お前なんかが使いこなせる訳がない!」

 

「サンライズ、決めよう!」

 

「あ……あぁ……うわぁああ!!」

 

サンライズがいつものホーリーカリバーの動きを見せるとナイトは戦意を喪失し、逃げようとする。それを見たサンライズは唇を噛み締めた。

 

「お前……とことんソウヤを汚してくれて……覚悟しろ!プリキュア!ドラゴンホーリーカリバー!」

 

サンライズから放たれた白い炎の竜を模した斬撃がナイトを飲み込むとナイトは叫び声を上げた。

 

「嫌だ!死にたくない!助けて!私達……友達じゃ……」

 

ナイトはまるで本物のキュアナイトのような声と顔つきで助けを求める。しかし、サンライズはクルリと後ろを向いた。

 

「何が友達だ……ソウヤを、キュアナイトを汚したお前に……それを語る資格は無い」

 

ナイトは爆散するとスカイトーンに戻り、闇のエネルギーが露散。サンライズは元に戻ったヤタガラスのスカイトーンを掴む。

 

「ごめんソウヤ。俺のせいで醜いお前の偽物を生み出してしまった……」

 

サンライズのその声にスカイトーンは“気にしてないからそんなに気負わないで”と言わんばかりに小さく輝いた。その瞬間、空間にヒビが入ると閉じ込められた十人は元の世界へと戻る事になる。




また次回もお楽しみに。


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オロチの本気

五つの空間に分断された十人がそれぞれサンライズのスカイトーンが変化した敵を倒すと空間にヒビが入り、元の世界へと戻った。

 

「あの五人を倒したか……それに、プリキュアは新しい力も手にした。……これは厄介だな」

 

そう言うオロチだが、その顔はまだ余裕そうである。するとオロチが指を鳴らすとそこにはエネルギーボールに閉じ込められて気を失ったシャララ隊長と今にも泣き出しそうになっているエルがいた。

 

「シャララ隊長!」

 

「エルちゃんも……どうして」

 

「ふん。お前らが出てくるのが遅いからだぞ?だからこの二人はこんな目に遭ってるんだ」

 

「何だと?」

 

オロチが十人を嘲笑っているとサンライズが怒りを露わにしていた。

 

「だってそうだろう?お前らがもっと早く駆け付けてさえいればこんな事にはなってないんだからなぁ」

 

オロチの言葉の直後、サンライズはオロチの目の前にまで物凄い速度で接近。拳を繰り出す。

 

「遅い」

 

しかしオロチはそれを片手で掴むとカウンターとしてサンライズの腹に一撃を叩き込む。

 

「「ぐあっ!?」」

 

その瞬間、サンライズとギラの合体が強制解除してしまい元のサンライズとして倒れ込んでしまう。

 

「「「「サンライズ!」」」」

 

プリキュア四人が心配して駆け寄るがオロチが手を翳すと闇の衝撃波を放つ。それを四人はサンライズを守るために前に出るがその攻撃をまともに喰らい元の姿に戻って崩れ落ちた。

 

「皆!!どうして……」

 

サンライズがそれを見て顔を青ざめさせる。また自分のせいで四人を傷つけさせてしまったと。心が乱れ始めていた。

 

「俺の……せいで……」

 

「ああそうだ。お前が変に攻撃したからこうなったんだ。加えてお前のスカイトーン……?だったか。アレもお前がもっとちゃんと管理してたら敵にもならずに済んだのに、ホントお前は馬鹿な奴だなぁ」

 

そうやってサンライズを煽りまくるオロチ。それにサンライズは心を砕かれそうになる。その時、サンライズの手を桜空とノアが掴んだ。

 

「大丈夫だ、お前は悪くない」

 

「そうだよ。サンライズはやれる事を一生懸命やってるんだ。自分を責めたらダメ」

 

そこにアスとフウも並ぶ。それからオロチは構えを取ると体にエネルギーを増幅。すると八人へと分身……するかに思えた。

 

「見るが良い。これが俺の真の姿だ!」

 

そう言うとオロチの姿が一気に巨大化。それは八つの頭を持つ伝説の生物、ヤマタノオロチを彷彿とさせており、強大なエネルギーを秘めていた。

 

「そんな……」

 

「あそこまで化けるのかよ」

 

「ふはははは!お前ら程度これでも十分だがここはコイツらも相手してもらおうか」

 

そう言うと八つの頭からエネルギーが出てくるとそれは先程サンライズ達を苦しめた八人のオロチとなり具現化する。

 

「敵の頭数が一気に増えたな」

 

「ノア、桜空、アス、フウ。四人はオロチの本体を相手してくれ。俺達五人で何とかあったの八人のオロチを倒してみせる。だから!」

 

「大丈夫か?さっきそれで……」

 

四人がサンライズ達を気遣うがサンライズ達の目は本気であり、四人の竜の力を持つ者は頷くとやる事を理解した。

 

「皆、行くよ!」

 

それから十人の内、ギラ、ノア、桜空、アス、フウは背中に翼を生やすと空を飛び、巨大なオロチへと戦いを挑む。そしてサンライズ達五人は八人のオロチを倒すために動いていた。

 

「今度は俺が四人受け持つ。だから……」

 

「ダメです!それではタダでさえ三人でも苦戦していたサンライズに負担がかかりすぎます!」

 

「サンライズ、私達を信じてほしい」

 

「スカイとプリズムで三人、ウィングと私で三人、サンライズが二人。これでやってみよう」

 

サンライズはそれを聞いて皆に負担をかけたくないと思ったがそれでもサンライズは皆を信じて頷いた。

 

「たあっ!」

 

まずはプリズムが三体を気弾で挑発し、スカイが前に出て攻撃を仕掛ける。更にバタフライとウィングも二人で三人を上手く受け持ち、互いにフォローしつつ戦闘を開始。サンライズは残された二体を二刀流で相手する。

 

「ウィング、力を与えるわ!二つの色を一つに!レッド!ホワイト!元気の力!アゲてこ!」

 

バタフライが僅かな隙を見つけてミックスパレットでウィングを強化。それによりウィングは二人の攻撃を受け止めつつ投げ飛ばし、三人目に命中させて一気に浄化技を使用する。

 

「ひろがる!ウィングアタック!」

 

「ぬん!」

 

その中の木を操るオロチが地面から生やした樹木で防御しようとするが、ウィングの一撃はそれを貫通。オロチを貫いて一体撃破する。

 

「やった!これで二対ニ!」

 

更にスカイとプリズムの方もプリズムが気弾で二人を相手取っている間にスカイがラッシュを決めてから浄化技を使う。

 

「ヒーローガール!スカイパンチ!」

 

水のオロチが激流でそれを押し留めようとするがそれはあっという間にぶち抜かれて攻撃が命中。二人目が撃破される。

 

「馬鹿な、もう二人目だと!?」

 

「いや、これで三人目だ!スタイルチェンジ!ヤタガラス!」

 

サンライズがヤタガラススタイルにチェンジすると漆黒の槍を氷の個体に投げつけると地面に刺さり、影縫いを発動。動きを止めてしまう。

 

「な!?」

 

「ひろがる!サンライズエクリプス!」

 

そしてその隙にサンライズが足を止めて的が動かなくなった所に槍をぶつけて浄化。三人目を倒す。

 

これで残り五人。全員が一対一になった所でサンライズ達プリキュアの勢いは止まらない。

 

「はあっ!」

 

スカイがプリズムと交戦している中の一人を背負い投げするともう一人に命中させて吹き飛ばし、怯ませた。それから走っていくともう一人を蹴ってからプリズムの気弾連射に繋げ、最後はプリズムからの浄化技。

 

「ヒーローガール!プリズムショット!」

 

プリズムショットが放たれるとオロチも電撃で対抗するがそのまま押し切られて倒される。

 

「次だよ!」

 

それからすぐにスカイとプリズムが手を繋ぐと一気に自分達の分を終わらせにかかった。

 

「スカイブルー!」

 

「プリズムホワイト!」

 

「「プリキュア!アップ・ドラフト・シャイニング!」」

 

上空に発生した円盤が炎のオロチを光の柱で捕まえるとそのまま円盤に吸い込まれて浄化。撃破される。

 

そしてウィングとバタフライの方もパワーアップが続いているウィングが風のオロチを掴まえるとそのまま空高く連れて行き、そのまま落下の勢いを利用してオロチを叩きつけた。

 

「はあっ!」

 

すかさずバタフライが戦っているオロチへとウィングが組み付くとバタフライに風のオロチを倒すように叫んだ。

 

「バタフライ!」

 

「わかった!ひろがる!バタフライプレス!」

 

風のオロチは立ち上がる直前にバタフライの蝶型の盾に押し潰される事になり撃破。そしてウィングの強化時間がここで切れるとウィングはパワー差で投げ返されるがすぐにバタフライがミックスパレットの力を解放。

 

「全ての色を一つに!ミックスパレット!レッド!イエロー!ブルー!ホワイト!混ぜ混ぜカラーチャージ!」

 

バタフライが色を混ぜている間、無防備になる。その隙に攻撃しようとオロチが構えるがそこにスカイとプリズムが加勢に入り、二人がかりで抑え込む。

 

「プリキュア!タイタニックレインボー!アタック!」

 

そのままバタフライが乗ったウィングが巨大なプニバードの姿となり真上から落下。オロチを浄化していく。

 

これで残るはサンライズの戦っている個体だけ。そしてそれも決着がつきそうであった。

 

「スタイルチェンジ!フェニックス!」

 

サンライズがフェニックススタイルに変身すると手の盾でオロチからのエネルギー波を防ぐ。そしてそれからすかさず浄化技を使用。

 

「ひろがる!サンライズアサルト!」

 

不死鳥のエネルギーを纏ったサンライズのシールドチャージがオロチに命中。これによりオロチは一人残らず全て倒されることになり、プリキュア達が勝利を収めた。

 

「やった!」

 

「いや、まだオロチの本体がいる!ノア達を助けよう」

 

その言葉に全員が頷くと四人のプリキュアは先程のスカイトーンを再び使う。

 

「「「「プリキュア・ドラゴンコネクト!」」」」

 

「フレイムドラゴン!」

 

「アイスドラゴン!」

 

「グランドドラゴン!」

 

「ウィンドドラゴン!」

 

それぞれ四人は再びドラゴンと合体してパワーアップ。更にサンライズも自身を強化する。

 

「プリキュア!ホーリーコネクト!ひろがるチェンジ!ホーリーサンライズ!」

 

これによりホーリーサンライズとなったサンライズ。そしてパワーアップした事で全員が翼を生やして空を飛ぶ事ができるようになった。

 

五人がノア達の元に行くとそこには傷つき、倒れているノア達五人がいた。

 

「ギラ!皆!」

 

「大丈夫!?」

 

「しっかりして!」

 

五人がそれぞれパートナーの元に行くと何とか全員が目を覚ますがかなりのダメージなのか立つのもやっとになっている。

 

「アイツ、強すぎる……」

 

「本当に同じ竜なのってぐらいには……」

 

「私の本気が出せればあんな奴には……」

 

「いや、アスの力が全開だったとしても多分アイツの強さの前には勝てない……」

 

五人はそれを見てオロチを見上げると彼は先程よりも更にエネルギーを高めており、このまま行けばそのエネルギーは天井知らずとなってしまう。

 

「なんて凄まじい力なの!?」

 

「どうすれば……」

 

「……全員の攻撃を一斉にぶつけるんだ」

 

「でも、それでダメだったら……」

 

不安になる面々だがそれでもこの場面ではやるしか無い。このままでは確実に負ける。そう本能が感じ取れる程にはオロチの力は圧倒的なのだ。

 

「作戦会議は終わったか?」

 

「皆、俺のスカイトーンを使ってくれ」

 

その瞬間、四人のプリキュア達にグリフォン、ペガサス、ドラゴン、フェニックスがそれぞれ入り、エネルギーがチャージされる。そして四人の竜と桜空も竜の力を解放し、この場における最大戦力を発動した。

 

「行くよ!ひろがる!ホーリーカリバー!」

 

「「「「ヒーローガール(ひろがる)!アニマルハート!」」」」

 

「「「「「はあっ!」」」」」

 

サンライズからのエネルギー斬、プリキュア達による伝説の生物達のエネルギー波、五人の竜による最高出力のブレス。それら全てが合わさり、巨大なエネルギーの波動となってオロチへと向かっていく。オロチはそれに対抗するように八つの頭からエネルギー波を放ち、二つのエネルギーが激突。その力は拮抗し、押し合った。

 

十人はありったけの力を込めて技を使い押し切ろうとする。しかし、オロチはその力の半分程しか見せていないのかまるで余裕そうな顔つきだった。

 

「ふん。この程度か。失せろ、雑魚共!」

 

その瞬間、オロチのエネルギーが押し切り、十人はそのあまりのエネルギー出力を前に飲み込まれてしまう。誰もが諦めかけたその時。一筋の光が輝くのであった。




また次回もお楽しみに。


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決着と別れ

オロチからの特大のエネルギー波を喰らったサンライズ達。全員の渾身の力も打ち破られて全員が気を失い全てが終わってしまったかに見えたその時、一筋の光と共にサンライズの心の中で彼はある力に目覚めていた。

 

「この光は……何?」

 

「あさひ、まだだ!諦めたらそこで終わりだよ!」

 

そこにいたのはギラ、ノア、桜空、アス、フウの五人だ。五人はサンライズを中心にして立っていたのだ。

 

「皆……でも、俺が無謀な作戦を立てたせいで皆にも負担をかけて……もっと他の作戦なら届いたかもしれないのに……」

 

「大丈夫。まだ手はあるよ」

 

するとそこにスカイ、プリズム、ウィング、バタフライも現れるとサンライズを囲むように並ぶ。

 

「今から僕達の残されたエネルギーを全部託す」

 

「え!?そんな事したら皆が……」

 

「大丈夫。私達を信じて!」

 

そう言うバタフライにサンライズはまだ不安を拭えない。もしそれで失敗したら今度こそ終わってしまう。それにそれでオロチに勝てる保証はどこにも無い。

 

「サンライズ。正直な所、今の私達に出来るのはこれが限界なの。だからお願い。私達の分も背負って欲しい。勿論私達に出来ることは全部する!」

 

サンライズは迷っていた。しかしそれでは何も解決しない。そう考えてサンライズは不安を全て振り切る事にした。

 

「……わかった。皆が俺に託してくれるのなら俺はそれに応えるよ」

 

そして九人は体から光を放つとその全てがサンライズの中に取り込まれる。更にプリミティブのスカイトーンが変化して新たな力が宿った。

 

「行こう、皆の力を今一つに!」

 

するとノア、桜空の中のグーリ、アス、フウが竜の姿に変わるとそれがサンライズの周りを飛び回る。

 

「プリキュア・ドラゴンコネクト!シェークハンド!オールドラゴン!」

 

その瞬間、サンライズの周囲を飛び回っていたグーリがまずサンライズに重なり、竜の尾として生成。続けてフウが竜の翼として合体。更にアスが竜の腕としてサンライズへ飛び込む。そしてノアが竜の顔としてサンライズの胸から出現。最後にギラがサンライズの鎧として体と足に水色の装甲を与えた。

 

そしてプリキュア四人の力も入りサンライズの左肩からスカイのマント、腰からプリズムの布、左脚にウィングのリボンタイ、目元にバタフライのアイシャドウが付与される。

 

光が晴れるとそこにいたのはキュアサンライズ・オールドラゴンスタイルとなったサンライズだった。

 

「何だ……その姿は」

 

「この力が……俺達の最後の力だ!」

 

「なるほど、ならばお前を叩き潰して終わりにしてやる!」

 

オロチが容赦無く八つの口からエネルギー波を放ってくる。しかし、突如としてサンライズの目の前に岩によって強度が増した蝶型の盾が生成されると攻撃を防ぐ。

 

「!!」

 

「はあっ!」

 

続けて背中の翼が竜巻を発生させると同時にそれに乗って超スピードで空を飛び蹴りを叩き込む。

 

「馬鹿な!?こんな事が……」

 

「あるんだよ!俺達は一人じゃない!」

 

更に竜の尻尾を振り回すとオロチの顔を一つ吹き飛ばし、更にスカイのような流星のパンチがオロチの腹に突き刺さる。

 

「ごふあっ!」

 

「せーのっ!」

 

サンライズが両手を前に出すとプリズムの使う巨大な気弾が生成。更にノアの炎が上乗せされて放たれた。

 

「ぐあああ!」

 

「ギラ!」

 

するとサンライズの体に水色のエネルギーが纏われると巨大な斧が生成される。サンライズほそれをギラの力で背中から生やした二本の骨の腕で掴むとそのままオロチへと振り下ろす。

 

「のわぁああ!」

 

「終わりだ!」

 

サンライズはオロチを体から生やした何本もの骨の腕で捕まえるとそのまま引き上げていき、宇宙空間にまで到達する。

 

「何!?」

 

「地上で爆破すると被害が半端なさそうだからな。ここで決めさせてもらう!」

 

サンライズの言葉にオロチは目を見開き、抵抗しようとするがその力は突然弱まった。

 

「言ったはずだ。俺は一人じゃない。皆が支えてくれてるんだ!」

 

サンライズはオロチを投げるとそのままオロチの真下に回り込む。そして体から五体の竜と四人のプリキュアの幻影が飛び出すとそれが次々に重なっていく。

 

「プリキュア!オールドラゴン・ストライク!」

 

サンライズはまずアスの爪で切り裂き、フウの翼で吹き飛ばすとグーリの尻尾でオロチを絡めて凍り付かせる。そしてノアの炎で氷ごと焼き尽くし、最後にギラとプリキュア四人の力と重なってキックを放つ。

 

その一撃はオロチを吹き飛ばし、宇宙の彼方へと彼を追いやると何もない場所でオロチは浄化する。

 

「俺がこんな所でやられるとは……ぐああああ!!」

 

そのまま残されたエネルギーは爆発四散するが周りは何も無い空間のために被害は無い。

 

「……ギラ、仲間と友達の仇は取ったよ」

 

それからサンライズは大気圏を戻って行き地球へと帰還。地面に降り立つとサンライズのは変身解除。そしてあさひの体から九つの光が溢れて分離。それぞれの光は形となってソラ達九人が出てくるのであった。

 

「やったんですね、あさひ君」

 

「あさひ、やったな!」

 

あさひと桜空は二人でハイタッチをし、他の面々も勝利を喜び合う。そして、オロチが消滅した事で解放されたシャララ隊長とエルも皆の元にやってくる。

 

「また助けられてしまったな」

 

「シャララ隊長!」

 

「プリンセス!」

 

するとギラは一人その場を去ろうとした。それをあさひは見逃さない。

 

「ギラ、もう……行っちゃうのか?」

 

「うん、ここは僕の世界じゃ無い。それにここにいたら皆の迷惑になるよ」

 

「そっか……」

 

「でもさ、僕は独りぼっちじゃないって事がここに来てわかったんだ。だからもう寂しくないよ」

 

それを聞いたあさひはニッと笑うとギラの元に駆け寄ってギラとの絆の証のスカイトーンを手渡した。

 

「え?これは……君の力じゃ……」

 

「いや、これはギラが持ってて。もしギラが寂しいと思ったその時は……このスカイトーンがきっと俺達の世界への扉になってくれる。だから……また会おうね」

 

「うん!」

 

そしてギラは異空間への扉を開くとそこへと入っていき、別れを告げた。そして、別れを告げる必要がある面々はまだいる。

 

「それじゃあ、僕達も元の世界に帰るね」

 

「えぇ!?まだここにいても良いんですよ」

 

「俺達の世界のソラも俺達がいないと心配する。だからすまないがここでお別れだ」

 

それを聞いたソラ達も寂しそうな顔つきになる。しかし、悲しんでばかりもいられない。そこでソラ達四人はそれぞれ手にしたスカイトーンを竜達へと手渡した。

 

「じゃあこれはノアにあげますね」

 

「私も、これは桜空君が持ってて」

 

「ボクの分もアスさんに預けます」

 

「じゃあ私もフウに渡しておくね」

 

四人はそれを聞いて驚く。四人が手にしたのはドラゴンスタイルに変身するためのスカイトーンだ。何故これを手渡すのかがわからなかったからである。

 

「どうして?これを使えばいつでもグーリ達の力が使えるのに……」

 

「確かにそれがあればグーリさん達の力が使えるかもしれない。でも、私達の世界は本来なら私達自身が守るべきなんだ」

 

「その力に頼ってばかりだともし世界の繋がりが解けてその力が無くなったら守れなくなる……そんな状態だとダメな気がするんです」

 

「それにさ、その力は多分本来ならあなた達の世界の私達が使うべき力だと思うの」

 

「だからそれはアスさん達の世界のボク達に渡してください」

 

それを聞いて竜と桜空は頷く。すると四人は光に包まれ始める。そしてそれと同時にどこからともなくミラーパッドが飛来するとその体が少しずつその中へと吸い込まれ始めた。

 

「ましろ、この世界は君達が守るんだよ」

 

「ソラ、世界は違ったがお前との時間は楽しかった」

 

「ツバサ君……こっちの世界のツバサ君は私が絶対に幸せにするからツバサ君も幸せになってね」

 

「あげは、俺達は俺達の世界をちゃんと守るから、いつでもこっちに来て良いからね」

 

四人はそれぞれ別れの言葉を告げるとミラーパッドの中へと入っていき、元のいた世界へと戻っていくのだった。

 

「行ってしまったな」

 

「ボク達、助けられてばかりですね」

 

「うん、でもいつか私達が他の世界を助けられるように頑張ろう!」

 

するとソラのお腹がグゥーと音を立てた。それを聞いてソラは顔を赤く染める。

 

「そ、そういえば……夕飯の支度の最中でした……」

 

「もうすっかり暗くなったしね」

 

「何だかんだで結構時間も経っちゃったし……」

 

「戻ってご飯にしよっか」

 

それからあさひ達は虹ヶ丘家へと戻っていく。するとあさひは胸の中がドクンと高鳴った。それに違和感を感じてあさひは胸を抑える。

 

「……あれ?」

 

「あさひ、どうしたの?」

 

「今……何だか変な予感がしたような……」

 

「おーい、ましろさん!あさひ君!早くしないと置いて行きますよ!」

 

「「待って!」」

 

二人が去っていく中、遠くの物陰からラブが見守っていた。どうやら彼女もこの事件を目の当たりにしていたらしい。

 

「ふふっ、中々面白い物を見せてもらったわ。やっぱり私の彼氏はいつも奇跡を身に纏うわね。ただ……一つ気になるのが去り際に感じた鼓動……アレは恐らく……ね。具現化すると厄介な事になりそうだわ」

 

するとその近くに一人の影が見え、ラブはノールックのままその影へと話しかける。

 

「あら?誰かと思えばあなた、新任の子?確かにバッタモンダーは役に立たなかったしあのお方ならそろそろ新しい子を寄越すとは思ったけど……」

 

その影は無言のままラブの隣にやってくる。するとラブは目を見開いた。

 

「ごめんなさいね、てっきり新任の子かと思ったけど……まさかあなたがここに出張ってくるなんてね」

 

その影はラブも知っている様子で普段の彼女からは考えられないような緊張感をラブは醸し出していた。

 

「ラブ、お前もお前でかなり時間をかけているようだな」

 

「そうね、私はキュアサンライズを手懐けようと思ってるしこれには割と時間がかかるのよ」

 

「ふん。自分の趣味を進めるのは結構だが目的を履き違えるなよ。我々はあくまでプリンセスを攫うのが狙いだ」

 

「そうね。確かにそれが目的だわ」

 

「ならば良い。それとお前の予想通りそろそろ新任の者をあのお方は寄越すつもりだ。お前もあまり手こずっているとあのお方の怒りを買うと思えよ」

 

そう言って影は消えていく。ラブはそれを見て少し冷や汗をかきつつ去っていくあさひ達を見守るのであった。




今回でコラボ回は終了となります。コラボしていただいた水甲さんには感謝の気持ちでいっぱいです!本当にありがとうございました!また次回も楽しみにしてください。


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スカイランドへの帰還とあさひの力

竜達との時間を過ごしたその週末、とうとうこの時がやってきた。ヨヨがミラーパッドを操作してキラキラポーションが具現化したのだ。

 

「キラキラポーションの完成よ」

 

「「やったぁ!」」

 

「エルちゃん、これで元気なパパとママに会えるよ」

 

「えるぅ〜!」

 

キラキラポーションの完成に喜ぶ一同。そんな中、あさひはただ一人渋い顔をしていた。

 

「あさひ、どうしたの?」

 

「……この前の事件の後からどこか変な感じが抜けなくて……」

 

「あの時言ってた事……まだ嫌な予感がするんだね」

 

あさひは申し訳無さそうに俯く。折角皆が喜んでいる所なのにこんな話をするべきでは無いとまた一人で悩みを抱え込もうとしたその時、あげはがあさひの頬に手を置いた。

 

「ふえっ!?あげは、何を……」

 

「あさひ、また悩みを抱え込もうとしたでしょ。バレバレだからね」

 

「うぅ……でも皆を無理に巻き込む訳には」

 

「今は良いけど、私達もちゃんと頼ってね」

 

「そうする……」

 

ひとまずはキラキラポーションの完成で虹ヶ丘家に住む一同とシャララ隊長はスカイランドへのゲートをミラーパッドで開き、スカイランドへと移動した。

 

「到着です!」

 

一同か出てきたのはスカイランドにある王城の一室で到着した途端アリリ副隊長、ベリィベリー、ドリアーンの三人が駆け寄ってくる。

 

「シャララ隊長!よくぞご無事で」

 

「あぁ、心配をかけたな」

 

「ソラ、よくやったな」

 

「あさひ、お前のおかげでシャララ隊長は救われたと聞いたぞ。感謝する」

 

ベリィベリーとドリアーンはソラとあさひを褒めるがあさひは首を横に振り、ソラは近くにいたましろとツバサの手を掴んで言い放つ。

 

「いいえ、皆の力です!」

 

「俺もソラと同意見だ。それに俺はシャララ隊長を救った後にバッタモンダーに体を利用されたんだ。褒められるような立場に無いよ」

 

それから一同は眠りについている王様と王妃様の部屋に入るとヨヨが手にしたキラキラポーションを使用する。

 

「さぁ、深い闇からお目覚め下さい」

 

ヨヨがキラキラポーションの蓋を外すと中にある成分が空中でハートの形を描くとそれが弾けて光が飛び散っていく。そして、二人はそれを受けると胸にあったモヤモヤが消えて目を覚ました。

 

「これは、どう言う事だ?」

 

「ずっと、何処かを彷徨っていたような」

 

二人が状況を飲み込めずにいるとエルがはいはいでベッドの上を進み、王妃様の元に行く。そして王妃様はエルを抱くと嬉しそうな顔になる。

 

「プリンセス!」

 

「えるぅ!」

 

「あぁ、無事で良かった」

 

「お二人はバッタモンダーの呪いにかかり、深く長い眠りについていました。しかし、もう心配はありません」

 

「……そうだったのか」

 

ヨヨの言葉に王様は納得するとエルが二人へと赤ちゃんの言葉で話しかける。

 

「パパ!ママ!」

 

「お喋りができるなんて……」

 

「もう一度呼んでごらん」

 

「パパ!ママ!」

 

その様子を見ていたあさひ達は温かい気持ちに包まれる事になった。やはり、家族は皆で一緒にいるのが一番だということだ。

 

それからスカイランドは王様と王妃様が長い眠りから目覚めた事、そしてスカイランドのヒーロー、プリキュアの話題で持ちきりとなった。スカイランドの空島の各地にもその話は伝わっていく事になる。

 

その記事をあさひ、ソラ、ましろ、ツバサ、あげはの五人は王城の部屋で読んでいた。

 

「ねぇ、なんて書いてあるの?」

 

「えっとですね……“王様と王妃様の呪いを解き、青の護衛隊のシャララ隊長を救い出したヒーロー……プリキュア”」

 

スカイランド語で書かれているためにそれが読めるツバサから記事の内容を聞いてあげはは感動で目を輝かせる。

 

「やっば!有名人じゃん私達!」

 

「さっき連絡したら父さんも母さんも大騒ぎでしたよ」

 

「ソラちゃんの家族もきっと喜ぶよ」

 

「はい!」

 

「……スカイランドを救ったヒーロー……か」

 

そんな中、あさひの顔は暗かった。自分はヒーローとして讃えられるような事をしたのか?バッタモンダーに乗っ取られて寧ろ皆に迷惑をかけた自分が悔しくてたまらなかった。するとあげはがあさひの頭に手を置く。

 

「あさひ、まさかと思うけど自分はヒーローじゃないなんて思ってたりしないよね?」

 

「うっ……だって俺は最終的に皆に救われた形だし……結局俺がやったのってシャララ隊長を助けてそのまま死にかけただけなんだから……」

 

その瞬間、あさひはあげはに両頬を引っ張られると共に膨れっ面をしたあげはがあさひを見つめていた。

 

「あさひはあさひでやれる事を精一杯頑張ってきたんだからヒーローとして讃えられて当然だよ」

 

「むしろ、あさひが居たからあの場面でシャララ隊長を救う事ができたんだよ。だからもっと誇りを持って良いと思うな」

 

あげはとましろに背中を押されてあさひはようやく自分に自信を持つとその瞬間、あさひの目の前に何かの映像が流れ始めた。

 

「これは……」

 

そこに映っていたのは傷だらけで倒れた少女に闇の魔物が迫る中、背中に白と黒の翼を生やした一人の男が少女を救い出す様である。そして、顔を赤くした少女がお礼を言おうとしたその時には男の姿はいなかった。そこであさひの見た映像は途切れる。

 

「これは……一体……」

 

「あさひ?大丈夫?」

 

ましろが狼狽えるあさひを心配して声をかけるとあさひはようやく正気に戻ったのかブンブンと首を横に振ってその記憶を抹消する。

 

するとそこにアリリ副隊長とベリィベリー、ドリアーンの三人が入ってくる。

 

「いやぁ、スカイランド中大喜びだ」

 

「是非一度プリキュアを見てみたいという声が上がってだな」

 

「いやぁ、照れますねぇ」

 

「そこで、広場でパレードを行う事になった」

 

「それって、凱旋パレード的な?」

 

あげはが興奮気味にそう言うとベリィベリーとドリアーンが頷き、ベリィベリーが口を開く。

 

「青の護衛隊の先導で皆あの子達に乗ってもらうからよろしくね」

 

「あぁ!あの子達ですね!」

 

「あの子達?」

 

すると五人が連れて行かれた先には五匹のダチョウのような鳥が勢揃いしていた。

 

「なるほど、これが俺達の世界の馬のような役割を果たすのか……」

 

「凄い!」

 

「私、乗れるかな?」

 

「大丈夫、スカイランドでは小さい子も乗ってるから」

 

ベリィベリーにそう言われてもましろの不安は拭えない。そんな中、あさひは無造作に鳥に近づいていく。

 

「あさひ?ちょっと!」

 

その直後、あさひは鳥の頭を優しく撫でる。すると鳥は気持ち良いのかあさひにすっかりと懐いた。

 

「凄い……」

 

「あさひ君、初めてこの子達と会うんですよね?」

 

「うん、そのはずだよ」

 

それを聞いて全員が疑問を持つ。何故あさひはこの鳥が一番気持ち良いと感じる場所を撫でたのか。あさひがこの鳥と会うのは初めてなのだ。普通なら触れ合うのに抵抗が出てもおかしくない。にも関わらず、あさひは平然とやってのけたのだから。

 

「乗っても大丈夫?」

 

そうあさひが小さく呟くと鳥は頷いてあさひが乗りやすいようにストンと座る。それからあさひが乗ると鳥は立ち上がりあさひは初心者とは思えない手綱捌きで鳥を歩かせた。

 

「あさひ君凄いです!こんなアッサリと操れるなんて……」

 

「よーし、あげはさんもいっきまーす!」

 

それからあげはも鳥に近づくと鳥はあさひの時と同様に座りやすいように座り込む。

 

「優しいね!ありがとう」

 

あげははニッコリと笑いながら上に乗るといつの間にか鳥に乗ったツバサが近づく。

 

「あげはさん、行きましょう」

 

「オッケー!あさひも行く?」

 

「いや、姉さんが上手く乗れるか心配だからもう少しここにいるよ」

 

それからツバサとあげはは二人で先に鳥を馬のように操って歩かせていく。そしてましろはソラにコツを聞く事にした。

 

「まだパレードまでには時間があります。練習しましょう、ましろさん」

 

あさひは一度鳥から降りてましろに教えるのとついでにソラのレッスンを聞く事にした。

 

「良いですか、コツはヒョイ!すっ、ラッタッタです!」

 

「……わかんないかな」

 

「擬音を並べられても姉さんはわからないよ。ソラ、もう少し詳しくできない?」

 

「一度見せてみます。ヒョイ!すっ、ラッタッタ!」

 

ソラはヒョイで鳥になり、すっ、で鳥の手綱を取り、ラッタッタで手綱を操って鳥を歩かせる。しかもそのままソラは行ってしまう。

 

「………っておい!ソラ、行っちゃってどうするんだよ!」

 

あさひがツッコむ中、ましろの元にベリィベリーが近寄っていく。

 

「ひとまずやってみよう」

 

ましろはベリィベリーに促されて鳥に近寄るがその時の顔が怖くなって鳥を睨みつけているようになってしまい、鳥は怖がってましろが近づいても逃げてしまう。

 

「お願いだよ〜!」

 

「姉さん、緊張しすぎ。そんな怖い顔をしてたら鳥も怖がっちゃうよ」

 

「じゃあどうすれば……」

 

「大丈夫。姉さん、俺に向かって笑顔になってみて」

 

あさひがそう言うとましろはいつも通りの笑顔になる。あさひはそれで良いよとばかりに頷いて次のアドバイスを出す。

 

「じゃあそのままこの鳥の方を向いて」

 

しかしその瞬間、ましろは緊張で笑顔が若干引き攣ってしまう。それを見たあさひは鳥に寄っていくと優しく撫でながら鳥を安心させる。

 

「大丈夫、怖く無いよ。姉さんは優しいから……乗せてみればすぐにわかるよ」

 

あさひの言葉に鳥は安心したのかましろの前で座り込む。最後はましろに自然に乗ってもらうだけだ。

 

「姉さん、自然に近づいて乗ってみて。大丈夫、この子も姉さんと一緒で優しいからすぐに意気投合するよ」

 

「あさひ、鳥さんと意思疎通なんてできるの?」

 

「……わからない。けど、鳥に触ると何故か気持ちが伝わってくるんだ」

 

それからましろが恐る恐るながらも乗ると鳥はましろをビックリさせないようにゆっくりと立つ。そしてましろが手綱を握るとベリィベリーの先導で何とか歩けるようになった。

 

「やったよあさひ!」

 

「良かった。後はベリィベリーさん、お願いしても良いですか?」

 

「任せてくれ」

 

それからあさひは一人自分の鳥に乗ると移動を開始する。そんな中、あさひは先程の映像が気になっていた。するとまたあさひの目の前に映像が広がる。そこには先程男が助けていた少女が必死になって男を探す様子が映っていた。そんな中また少女は魔物と戦う事になるものの、またしても窮地に陥ってしまう。その時、再び男が現れて少女に力を授けた。

 

魔物を撃退してから少女は消えようとする男に勇気を出して気持ちを伝える。しかしそれを男が受ける事はなくそのまま消えてしまう。そして映像はまたそこで途切れる。

 

「何だよ、これ……何でこんないきなり……」

 

「困っているようね、私の未来の旦那様」

 

あさひが頭を抱えていると突如として目の前にラブが姿を現すのであった。




また次回もお楽しみに。


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あさひの真実と思い出す記憶

あさひが先程から目に映る光景に頭を悩ませているとそこにラブが現れた。

 

「ラブ……お前、こんな所にまで現れて……何の用だよ」

 

「まぁそんなに邪険にしなくても良いわ。今回はあなたにとっておきの話をしようと思って来たの」

 

「………はぁ?」

 

あさひが身構える中、ラブはニコリと妖艶な笑みを浮かべるとあさひは更に警戒心を高める。

 

「……気にならない?どうしてそれまで何も接点が無かった私があなたへと恋愛感情を抱いているのか」

 

「……そういえば何でお前が俺に好意を向けているのか気にはなっていた」

 

それを聞くとラブは目を一瞬光らせると再びあさひへと映像を見せた。その光景は先程まで見ていた魔物にやられてボロボロの少女が男の能力で力を授かり、窮地を切り抜けた後彼女が男にフラれて完全に落ち込んでしまうという内容だ。

 

「さっきと同じような内容だけど、それがどうしたんだよ」

 

「ふふっ、まだ気が付かない?」

 

ラブの顔と記憶に刷り込まれている少女の顔をよくよく照らし合わせるとあさひは一つの結論へと至った。

 

「……まさか!?」

 

「そう。私はあなたの記憶の断片に存在している少女が生まれ変わった者よ。そしてあなたこそが少女を救い、彼女が恋焦がれた対象の男……その生まれ変わりだ」

 

「ッ……」

 

するとあさひの胸がドクンドクンと高鳴る。そこに洪水のように流れ込んでくる見知らぬ記憶。その映像の中に映る物全てに先程見た男が映っていた。

 

「何だよこれ……知らないよ!俺はこんな奴知らない!俺が誰かの生まれ変わりだなんて……そんなの嘘だ!」

 

「ふふっ、混乱してるわね。今のあなたを倒すのは容易い。ついでに言えば簡単に洗脳もできるわ。でも、今はまだ勿体無いわ。今日の所は帰るから後はあなたが自分で考えなさい。ラブコフコフ」

 

そう言ってラブは消え去り、あさひはその場に崩れ落ちると頭を押さえていた。急に告げられた真実に戸惑うばかりでまだ彼自身、その事実を受け止めきれていない。

 

「何で……俺だけ?まさか姉さんも誰かの生まれ変わり?いや、そんなはず無い。俺は普通の人だ。誰かの生まれ変わりだなんてそんな事あるはず無い!」

 

あさひの顔は恐怖に染まっており、自分が自分でいられなくなってしまうのではと考えると頭の中がおかしくなりそうだった。すると再び男の映像が脳裏に映り、あさひは恐怖が更に増大する。

 

「嫌だ……俺は俺だ。他人の記憶なんて持ちたくない!そんなの要らない!欲しくも無い!」

 

あさひはパニックに陥るとその場にうずくまる。そしてそれを心配したのか先程まで乗っていた鳥が不安そうに体を擦り寄せた。その瞬間、鳥の気持ちがどっと流れ込んであさひは更に混乱してしまう。

 

「あ……ぁあ……」

 

「……さひ!……あさひってば!」

 

すると誰かが自分を呼ぶ声を発している事に気がつくと目の前に心配そうにあさひを見つめるあげはがいた。

 

「あげは……何で……」

 

「ボクもいますよ」

 

近くにはツバサもおり、ちょうど通りかかった際に混乱してうずくまっているあさひを見つけたのか二人共あさひを心配した様子だった。

 

「大丈夫?顔色悪いよ。どこかで休む?」

 

「……俺、どうしたら良いんだろ」

 

「「え?」」

 

それからあさひはラブから告げられた事実をありのままに二人へと話した。

 

「そんな、あさひが誰かの生まれ変わりだなんて……」

 

「ラブがあさひ君の事を好きになった理由も何となくは納得がいきました。でも、前世からの愛だからと言ってもうあさひ君はあげはさんと恋人なのに未練がましく執着するなんて……最低だと思います」

 

「あさひ、その記憶の中の人物が誰なのか想像つく?」

 

あげはの質問にあさひは首を横に振る。今のあさひでは自分が誰かの生まれ変わりだとわかってもその前世が誰だったかまではわからないようだ。

 

「俺……皆と一緒に居て良いのかな。こんな前世の記憶持ちの人間なんて気持ち悪いだけ……」

 

「やめて」

 

そう言ったのはあげはだ。その目は明らかに怒っており、あさひへと詰め寄る。

 

「私、あさひの全部を好きになるって自分の中で決めてるの。あさひには自分の事を悲観的に捉えてほしくない。……あさひは私の大切な彼氏だから」

 

「……俺、間違ってた。二人共、心配をかけさせてごめん」

 

それからあさひは何とか心の整理を付けると三人で話しながら鳥の上に乗って移動する事にした。

 

「……そういえば、あさひ君はこれまでに幾度となく人間離れした力を見せてきましたが……その理由が前世にあるとしたら……」

 

「案外あっさりと納得できるかもね」

 

「でも、鳥の気持ちがわかるのは何でだろ……。なぁ、俺は前世でどんな人間だったんだろう」

 

あさひがそう言葉にするとあさひの乗っている鳥があさひを気遣うように小さく鳴く。

 

「……心配してくれてるのか?……ありがと」

 

そう言ってあさひは鳥に優しく手を置く。するとあさひの目の前にある光景が広がった。そこには前世の自分が鳥に囲まれており、自分の背中に生えた白と黒の翼をはためかせながら仲良く空島の間を飛んでいる様子だ。

 

「……ここって、昔のスカイランド?」

 

「「え!?」」

 

あさひがボソッと呟いた言葉に二人は驚く。どうやらあさひの前世はスカイランドにいたようなのだ。そして次にあさひの脳裏に映ったのは誰かの前に平伏して従っている映像だった。そこに居たのは黄色い髪をして三人の兄と思われる人物の後ろにちょこんと隠れている少女である。

 

「この娘……前にどこかで……」

 

あさひは何とか記憶を引き出そうとするものの、まるでそれ以上は知ってはいけないと記憶に蓋をされていた。

 

あさひが考え込んでいると突如として精神が抜け出る感覚と共にあさひはドサリと鳥から転げ落ちる。

 

「「あさひ(君)!?」」

 

当然ツバサとあげははあさひを心配し、あさひをゆするがあさひはまるで夢でも見ているように記憶の中に飛ばされていた。

 

「えっと……ここは」

 

あさひが目を覚ますと記憶の世界の中にいた。そこにはあさひの前世の人物がスカイランドの王族に仕えており、一人の少女を教育していた。あさひが前世の自分と少女に手を伸ばすがそれはスッとすり抜けてしまう。やはり今の自分では触る事は叶わないようだ。

 

「この娘、やっぱり前にどこかで」

 

場面が移り、今度は王城が大騒ぎに包まれていた。前世の自分も王様からの命令を受けて慌てて誰かを探している様子だ。

 

「……だんだん思い出してきた。確かこの場面ではスカイランドの王族の一人娘……ヒメ・アメミヤが行方不明になって……え!?」

 

あさひはその名前を自分で口にして驚く。ヒメ・アメミヤ、あさひ自身の記憶が正しく、尚且つ合っているのであればその人物とあさひは会っているからである。

 

「ヒメって、ベリアルの時にこっちの世界にやってきた……って事はやっぱりここは昔のスカイランドなんだ!」

 

すると再び場面が移ると前世の自分は暗い漆黒の森の中を探しており、そこでヒメを見つけるとヒメは傷だらけで魔物達に襲われていた。

 

「危ない!!」

 

ヒメは魔物からの攻撃で倒れてしまい、そこにトドメを刺そうと魔物が飛びかかる。ヒメが痛みに備えて目を瞑ったその直後、前世の自分が割って入るとヒメが受けるはずだった攻撃を自らが盾になってまともに喰らった。

 

そして前世の自分は自らの力をヒメに預けるとそのまま消えてしまう。ヒメはその体に祈りの力を宿す事になった。

 

「……ヒメは最初からあの力を持っていたんじゃ無かったのか……」

 

それからヒメは奇跡の力を祈りによって使えるようになった。それからというもの、あさひの前世の人物は半透明の姿のままスカイランドを彷徨うようになる。それからヒメはベリアルと戦い、窮地に陥るとその時、あさひの前世の人物はヒメの前に姿を現すと最後の力でヒメに力を与えて今度こそ完全に消滅。亡くなってしまった。そしてヒメは持てる力の全てを使いベリアルを封印。ここで映像は終わってしまう。

 

「はっ!!」

 

あさひが目を覚ますとそこにはソラ、ましろ、ツバサ、あげはが心配そうな顔つきであさひを覗き込んでいた。

 

「……皆」

 

「良かった、あさひ!」

 

「もう、心配したんですよ」

 

「ごめん、ちょっと前世の記憶を見ていたんだ」

 

それからその内容を話すと全員が驚く。そして、ヒメとあさひが出会ったのは何かの運命なのだということだと感じた。

 

「そっか、ヒメちゃんのあの力は前世のあさひが与えたんだね」

 

「うん。俺にそんな凄い力があったなんて思わないよ」

 

「でも、やっぱりあさひ君は優しいです!自分を犠牲にして幼いヒメちゃんを守ったんですから!」

 

「……でもさ、肝心な所でノイズが入って思い出せないんだ。映像に出てきたヒメはほんのり顔を赤くしていたというか……」

 

「それってヒメちゃんが前世のあさひに惚れたのかな?」

 

「そうなのかも、でもさ……ヒメも可哀想だよな。気持ちを伝える前にあの子は頑張りすぎてお札になってしまったんだから」

 

あさひはそこまで言ったところで違和感を感じる。その話をつい最近どこかで聞いた事あるような気がしたのだから。しかし、今はそんな事はどうで良いという事で気分転換にスカイランドのボールドーナツであるドールボーナツを食べる事になった。

 

「わぁあ!こっちにもボールドーナツがあるんだね!」

 

「嫌だなぁ、ドールボーナツですよ」

 

「ボーナドール?」

 

ましろは聞き慣れない単語に疑問符を浮かべるとすかさずツバサが訂正する。

 

「ドールボーナツです」

 

「ドーナ……」

 

「……姉さん、色々とごちゃごちゃになってるよ……」

 

そこにあげはが話を区切るために目を回すましろを遮って言葉を発した。

 

「まぁまぁ、とにかく食べてみよう」

 

「いただきます!」

 

それから皆で一口ドールボーナツを食べるとましろ、あさひ、あげはは美味しいという感情を感じつつ、いつもと違う味に違和感を覚えた。

 

「けど、いつも食べてるドーナツとは違うような……」

 

「だね!」

 

「私にはいつものボーナツですが」

 

ソラの言葉にツバサも同意するように頷く。あさひはそれを聞いてから言葉を紡ぐ。

 

「やっぱり違う世界なんだな。俺達三人とソラ達の世界は」

 

「そうだね。見た目は変わらないのに別々の世界の人なんだなって……奇跡みたいだなって思うんだ」

 

「こっちの世界では絵本にしか出てこないようなお城があって、不思議な鳥に乗ったのも不思議なドーナツを食べれたのも」

 

「皆と出会えたのも……」

 

あさひとましろの姉弟は二人揃って同じ考えで同じ想いだった。やはり、あさひが前世持ちでも二人は双子だと言う事に変わりは無い。するとそこに鳥に跨ったアリリ副隊長がやってくる。

 

「おーい!王様と王妃様がお呼びだ」

 

「「「「「え?」」」」」

 

それからその場はお開きとなり、あさひ達は王城へと戻っていくのであった。




今回の内容を受けてタグを多少変更しました。また次回もお楽しみに。


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エルの秘密とあさひの使命

王様や王妃様の呼び出しによって王城へと戻ったあさひ達五人とヨヨ。六人は王様からの話を聞く事になる。

 

「勇敢なるプリキュア達よ。そなた達には何度も救われた。プリンセスの事も、私達の呪いを解いてくれた事も、心から感謝する」

 

「本当にありがとうございました」

 

「ありがとー」

 

王妃様の膝の上にちょこんと抱かれたエルも感謝の気持ちを伝え、六人は微笑ましい顔になった。

 

「そして、もう一つ。大事な願いを聞いてもらえないか?」

 

王様は真剣な気持ちでそう言うと王妃様が続きの言葉を言い放つ。

 

「この子を、プリンセスを再びあなた達の世界に連れ帰って欲しいのです」

 

「「「「「ええっ!?」」」」」

 

プリキュア組の五人は驚きの声を上げる。そしてツバサやあげはが反論した。

 

「どうして、プリンセスをソラシド市に?」

 

「だって、ようやくパパとママに会えたのに……」

 

「我々も可愛いプリンセスと一緒に居たい。だがこの子は運命の子なのだ」

 

王様がそう言うとエルはキョトンとし、ましろが王様の言葉を繰り返して呟く。

 

「運命の……」

 

「あぐっ!」

 

その瞬間、あさひの頭に電流が走るような感覚に見舞われるとある光景が映った。それは、彼の持つ前世の記憶の一旦である。

 

“あなたにはスカイランドの王族の一人娘、ヒメを守っていただきました。あなたのその力をもう一度貸して欲しいんです。あなたへと遠い未来の世界で二つの人格を持つ戦士としての運命を与えます。そこで運命の子……プリンセスを守ると言うのがあなたへの命題。私からのお願いです”

 

「何……今の、二つの人格を持つ戦士……まさか、サンライズと……トワイライト?」

 

あさひが動揺する中、王様達は驚いたような顔つきになっていた。そして、あさひへと頭を下げる。

 

「そなた……だったのか。あの時言っていたプリンセスを守る運命の戦士と言うのは……」

 

「え!?あさひが……運命の戦士?」

 

「うっ!?」

 

更にあさひの脳裏にある言葉が響く。それは凛とした女性の声だ。

 

“あなたには数多の伝説の生物の力を与えます。そして、その力はあなたが窮地になった際に条件を満たす事で解放できるようにしました。……そして、もう一人……あなたの戦士としてのパートナーも送ります。彼女ならあなたを喜んで支えてくれるでしょう”

 

その声が響く中、あさひは困惑した顔つきに変わる。何しろ聞き慣れない単語も出てきたのだから。

 

「……戦士としてのパートナー?」

 

「それって……」

 

皆はそれぞれ顔を見合わせるが訳がわからないような状態だ。あさひの戦士としてのパートナーなどどこにもいないからである。

 

“彼女はあなたが救った一つの命です。彼女はあなたの役に立ちたいと必死に願っています。彼女には空を操る力を与えました。きっとあなたとなら良いパートナーになれるはずです。

 

「……何?空を操る力?」

 

あさひがそう言うが皆そんな力など持っていない。するとあさひの頭の痛みが消えて解放される。

 

「すみません……取り乱しました。続きをお願いします」

 

あさひはフラフラと立つと続きを話すようにお願いし、二人はエルについての話をする。

 

話の内容としては一年前のある日の夕方、空が美しい色に染まった時。とても早い一番星が二人の前に現れると一番星は二人へと運命の子を授けた。

 

滅びの運命にあるスカイランドを救うために……。そして王様と王妃様は仮の親として旅立ちまでの僅かな間、エルを育てる使命が与えられた。二人はそんな一番星が授けた子を嫌な顔一つせずに育てる事になる。

 

「その時に一番星はこう言ったのだ。プリンセスと巡り合う運命の戦士を用意すると。それが恐らく……」

 

「あさひ君……なんですね」

 

「………」

 

「プリンセスに再び運命の光が宿った。それと同時に、虹ヶ丘あさひ。君も前世の記憶を思い出し始めた。これもまた一つの運命だ。そしてこれは無情な旅立ちの知らせが告げられたのだ」

 

王様も王妃様も悲しそうな目をして涙を流していた。そしてそんな二人を見たエルは赤ちゃん言葉ながらも二人を慰める。

 

「エル……」

 

「こんなにも優しい子になっていたのね。……そうね、きっと大丈夫。ここを離れてもあなたには守ってくれる温かな家、家族がいるんだもの」

 

「……家族」

 

王妃様の言葉にましろが自分達がエルと過ごしてきた家族なのだと自覚。そしてあさひは一人前に出た。

 

「俺、運命の戦士だとか前世で何をしていたのか……わからないことだらけでとても不安です。……それでも、エルを守る事が俺の使命だというのなら俺はそれをやり遂げます」

 

「私達も……だよ。あさひ」

 

「……アンダーグ帝国はこれからもスカイランドやそなた達の元に刺客を差し向けるに違いない。危険を背負わせてすまん。どうか、プリンセス・エルを守って欲しい」

 

王様からの言葉に対するあさひ達の答えはもう初めから決まっていた。

 

「これまでに増して、必ずやエルちゃんを守って見せます!」

 

「ボク達もです!」

 

ソラとツバサがそう言い、ましろ、あげはも頷く。それから五人はパレードの時間となり、王城の門の近くに移動する。そこには青の護衛隊の面々が揃っていた。

 

「ソラ、君達の先導を務めるぞ」

 

「ありがとうございます!」

 

「だが、私に続くのはこれが最後だ。君は君のヒーローを目指せ。大切な仲間と共に」

 

「はい!……あ、そうだ」

 

ソラはシャララ隊長に力強く返事をした後、ポケットからソラとシャララ隊長を結びつけたハート型のスカイジュエルのペンダントを渡す。

 

「これが無くてもまた会えますよね」

 

「……あぁ、スカイランドは私が守る。そして、いつでも君達を支えよう」

 

「……はい!」

 

ソラとシャララ隊長。シャララ隊長の背中を追いかけていたソラが彼女自身の道を進むという意味でここでも一つの別れを迎えた。そして、あさひが不安そうな顔つきになっているのをましろとあげはがポンと肩に手を置く。

 

「大丈夫?」

 

「また暗い顔になって、あさひらしくないよ」

 

「姉さん、あげは……。俺、さっきも言ったけど凄い不安。俺なんかにこの力を扱うのもエルの事を守るのもできるのかどうか心配だ」

 

あさひがそう言ったため、ましろとあげははあさひを励まそうとする。しかし、あさひの顔はもう不安を吹き飛ばしたような顔であった。

 

「でもさ、姉さんやあげは、ソラ、ツバサ。そして青の護衛隊の皆さんにおばあちゃん。多くの人に支えられてるってわかったから俺はやるよ。例えどんな運命が待っていたってそれを全て乗り越えて見せる」

 

「じゃあ、私は彼女として」

 

「私は姉として」

 

「ボク達は仲間として」

 

「「「あさひ(君)を支えるよ」」」

 

ましろ、あげは、ツバサの言葉にその場の全員がコクリと頷く。そしてあさひはそれに頼もしさを感じつつ鳥に跨る。

 

それからあさひ達は鳥に乗って街へと移動していった。すると空が暗くなり、全員が見上げるとそこには一つの黒い雲が上空に見える。

 

「嫌だなぁ、いじわる雲か」

 

「何それ?」

 

「晴れている日に一つだけ現れる黒雲の事をスカイランドではいじわる雲って言うんです」

 

その雲はパレードの時間と丸被りで出現。そしてそれはあさひ達の道がこれから茨の道を通るのだと言う事を暗示しているようだった。人々の不安も募っていく。

 

「……私達で何とかできないかな?

 

「スカイランドの晴れた空、エルに見せてあげよう!」

 

そう言うと五人はミラージュペンを取り出すと五人揃って前に突き出す。

 

「行きますよ!」

 

それから五人はプリキュアへと変身するためにスカイトーンとスカイミラージュを使用。

 

「「「「「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!」」」」」

 

「スカイ!」

 

「プリズム!」

 

「ウィング!」

 

「バタフライ!」

 

「サンライズ!」

 

「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」

 

「ふわりひろがる優しい光!キュアプリズム!」

 

「天高くひろがる勇気!キュアウィング!」

 

「アゲてひろがるワンダホー!キュアバタフライ!」

 

「夜明けにひろがる眩い朝日!キュアサンライズ!」

 

「「「「「レディ……ゴー!ひろがるスカイ!プリキュア!」」」」」

 

五人はプリキュアに変身完了すると人々はプリキュアの登場に湧き上がる。それからまずはスカイとプリズムが手を繋ぎ浄化技を発動した。

 

「スカイブルー!」

 

「プリズムホワイト!」

 

「「プリキュア!アップ・ドラフト・シャイニング!」」

 

黒雲が円盤の中に吸い込まれて浄化。すると空が雲一つない快晴に変わった。次はウィングとバタフライの出番だ。

 

「次はボク達に任せてください!」

 

「オッケー!」

 

ウィングが空を飛ぶ中、バタフライがミックスパレットでそれを支援する。

 

「二つの色を一つに!レッド!ブルー!ワンダホーにアゲてこ!」

 

バタフライが光をウィングに纏わせるとウィングが空中を飛び回った。

 

「何が出るかな?……サプライズ!」

 

するとウィングが飛んだ後にエルの顔が飛行機雲のように浮かび上がると周囲に花火が散っていく。

 

「「「「「ワンダホー!」」」」」

 

人々はそれに驚き、嬉しさを爆発させた。最後はサンライズの番である。

 

「プリキュア!ホーリーコネクト!ひろがるチェンジ!ホーリーサンライズ!」

 

サンライズはホーリーキュアサンライズに変身すると翼を広げて空へと飛び上がり、白い炎の剣を振り上げた。

 

「ひろがる!ホーリーカリバー!」

 

サンライズが真上に向かってホーリーカリバーを使うと空で水の粒へと変化。それが一度弱い雨として降り注ぐと空に虹が浮かんだ。

 

人々はそのあまりの美しさに見惚れるほどで五人の門出を祝福しているようだった。それから五人は集まるとプリズムが四人へと話し始める。

 

「同じ空の下。奇跡みたいな出会いでも運命で繋がって、私達は家族みたいに同じ時を過ごしてる。それが今は凄く嬉しい」

 

「今だけじゃありません!これからも、です!」

 

五人は同じ青い空の下、一緒に過ごしている。そんな時間を大切にしたい。プリズムのささやかな願いだ。

 

「カゲロウ、見てるか?俺は上手くやってるよ。ここにお前もいてくれたら良いんだけどな……」

 

『ああ、ちゃんとここにいるぜ』

 

サンライズの言葉にあの世から応えてくれたのか、サンライズにだけカゲロウの声が聞こえてくるとサンライズはニッと笑う。

 

「サンライズ、どうしたの?」

 

「……何でもないよ!」

 

そう言うサンライズの顔は晴れやかであり、この青空のようであった。この時間がずっと続けば良いのに、そう思いながらサンライズは皆と手を繋いだ。




また次回もお楽しみに。


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プリンセスと一緒に動物園へ

スカイランドから帰ってきたあさひ達は虹ヶ丘家で楽しい時間を過ごしていた……のだが、エルのお世話をするあさひとあげはの間には僅かだが気まずい雰囲気が流れていた。

 

「美味しいね、エル」

 

「えるぅ〜!」

 

あさひがエルにご飯を食べさせている中、あげはがあさひへとミルクを手渡そうとするがその差し出す手は少し躊躇している。

 

「あさひ……これ」

 

「ありがとう、あげは」

 

あさひがそれを受け取ろうとして手を伸ばすがその直前で止まった。

 

「あげは、もしかして俺が運命の戦士って聞いて気を遣ってる?」

 

「………うん」

 

あげはとしてはあさひが、自分の彼氏が、一番星からエルを託された存在なのだと知ると余計に意識してしまうのだ。もっとしっかりと接しないといけない……と。

 

「あげは、できれば今まで通りに接して欲しいな。その方が俺としても助かるし」

 

「……そんな訳にはいかない。私、もっとあさひに相応しい人にならないと……今のままじゃ……」

 

その瞬間、あさひはあげはの口に指を置いた。

 

「あげは。俺は今のあげはで良いんだよ。無理して変わろうとしてほしくない」

 

「でも……」

 

あげははあさひとの接し方について相当迷っていた。あげはもあさひの前世を聞いてしまった以上、そのままの関係ではダメだと考えている。

 

「……ならさ、そんな難しい顔をするのはやめてほしい。あげははあげはなりの接し方でいてくれればそれで十分だから」

 

「うん……」

 

あさひはあげはに接し方を変えるにしても変に変わってしまうのでは無く少しずつゆっくり変えてほしいと言い、彼女が無理をしないように気を配った。

 

それからエルがご飯を食べ終わるとあげはがエルを抱っこして二人でソラ、ましろ、ツバサの元に向かうと三人は何とそれぞれのイメージカラーのアメフトの格好をしていた。

 

「……えぇ!?」

 

「何それ、流行ってるの?」

 

「いえ、プリンセスを絶対に守らないとなんて考えていたら……こうなってしまって……」

 

「取り敢えずそれを脱ごうか、逆にこんな格好してたら目立つよ……」

 

あさひが若干呆れる中、ましろがあさひの前に来ると気まずそうにしている。

 

「あのね……あさ……」

 

「姉さんもか……。お願い、頼むから今まで通りに接して……。逆にこれじゃあ俺も気まずいよ」

 

あさひは自分との接し方を変えようとしているましろへとツッコミを入れた。

 

そして、それから六人は車で動物園に行く事になる。その中であさひは全員に話していた。

 

「皆とにかく考えすぎ。あげはも姉さんもソラもツバサもエルや俺に対して変に緊張してほしくない。エルはエルだし俺は俺。何も変わってなんかいないから」

 

「えるぅ!」

 

「そうだよね……」

 

「わかってはいますが、つい……」

 

それからあげはの運転する車はソラシド自然公園に到着。六人は外に出ると入り口を入ってすぐにティラノサウルスを模したマスコットキャラであるソラシノサウルスが出迎えた。

 

「える……こわい……」

 

エルはソラシノサウルスのその大きさと迫力に怖がってしまう。あげははエルを安心させるように声をかける。

 

「大丈夫だよ。エルちゃん、動物さんがいっぱいいて楽しいよ」

 

「どうぶちゅぅ!!」

 

「ボクも図鑑でしか見たことがない動物を見るのが楽しみです!」

 

「私はお弁当が楽しみです!」

 

「いや、動物園でお弁当が楽しみって……」

 

「まぁまぁ、皆テンションがアガってきてるって事で!」

 

それから早速六人は動物達のいる園内へと入っていく。まず最初に出会ったのはカピバラだ。

 

「わぁあ!カピバラですよ」

 

「カピバラさん、水浴びしてるね!」

 

「おふろ、ちゃぷちゃぷ!」

 

「カピバラってのほほんとして可愛いよね!」

 

あげはがそう言う中、突如として一匹のカピバラがエルの元にやってきた。

 

「あれ?なんかこっちきたよ」

 

「える?かぴら、ごはん?」

 

「え?あぁ、私達がご飯をあげられるんだ!それで近づいてきたんだね!」

 

あげはが納得する中、ましろはエルの言葉に違和感を感じると疑問を口にする。

 

「でも、エルちゃん。なんでカピバラさんがお腹空いてるってわかったんだろ」

 

「プリンセス、どうぞ」

 

「ありがと〜。どーぞ」

 

それからエルが餌を与えるとカピバラは嬉しそうに食事をする。そんなカピバラを見てエルも嬉しそうだ。

 

「………」

 

あさひはそんなエルを見て何かを感じるが、今はそんな事は良いかとばかりに何も言わなかった。それからあさひ達は様々な動物のいるエリアに移動する。

 

「「うわぁ〜」」

 

「何ですか、あの動物!何だかビヨ〜ンってしてますよ!」

 

ソラがゾウの姿を見て驚く。スカイランドにはゾウはいないのか珍しそうな様子だ。

 

「凄い、本物のゾウだ!ゾウはあの鼻を手みたいに使うんですよ!」

 

ツバサが解説するとソラの目はキリンへと向くとその姿に驚いていた。

 

「大変です!あのお馬さん、首が伸びちゃっていますよ!」

 

「わぁ〜、キリンだ!高い所にある葉っぱを食べるために進化して、首が長くなったんです」

 

「この世界の動物は摩訶不思議です!あ、あの馬はスカイランドのシマシマシマウマに似てますね!色はちょっと違いますが」

 

「シマシマウマは青と白ですもんね」

 

ソラがシマウマを指差してそう言ってからツバサがシマシマウマについての補足を説明する。

 

「「青と白!?」」

 

ましろとあげはが驚く中、あさひが訳のわからない様子の二人へと解説を行う。

 

「スカイランドは空にあるからな。空と同じ青の方が他の動物から見つかりづらくなるんだよ」

 

「……え?あさひ、シマシマウマなんて見たことあるの?」

 

「いや、見た事無いよ。ただ、前世の記憶がそう告げているだけ」

 

「こうしてみるとやはりあさひ君は前世でスカイランドにいたんですね」

 

「確かこっちの世界の牛やパンダ、犬もこっちの世界とは色違いだしな」

 

「へぇ〜、私とましろんからしたらスカイランドの動物の方が不思議なんですけど!」

 

「見てみたいなぁ〜」

 

あげはとましろが見た事のないスカイランドの動物に想いを馳せているとエルが動物達へと手招きをする。

 

「おいで、おいで〜!」

 

するとそれに応えるようにエルの周りに動物達が集結する事になる。それを見たましろは驚きの声を上げた。

 

「ほ、本当に来ちゃったよ!」

 

「ぞうしゃん、ちりんしゃん、しまましゃん!」

 

「プリンセスに挨拶をしてますよ!?」

 

動物達はエルの言葉がわかるのか、エルに挨拶をするように体を動かす。そんな動物達をエル以外の五人は驚きの目で見ている。

 

「まさか、この世界の動物は赤ちゃんが大好きなのでしょうか?」

 

「その可能性は無いとは言えないけど」

 

「いやいや、そんな訳無いだろ……」

 

ましろの言葉にあさひがツッコむ中、あげはが頭に浮かんだ仮説を説明する。

 

「多分さ、エルちゃんは動物さんと本当にお話しているのかも」

 

「わぁ……それじゃあ、ボクも話してみたい動物がいるんです!」

 

ツバサの言葉に五人も賛成するとその場所に移動する。その先にいたのは……

 

「百獣の王!ライオン……が、寝ちゃってますね」

 

ライオンは夜行性……つまり夜に活動する事が多いので昼間は起きている方が珍しいと言える。そんな内容の事をツバサ達が話しているとライオンは目を覚ました。

 

「あっ、起きた。起きましたよ」

 

ツバサが興奮気味にそう言うが、突然ライオンは咆哮を上げる。それに驚くソラ達。しかしあさひはまるで動じない。

 

「ひぇえ、迫力あるぅ!あさひ、よく大丈夫だよね……」

 

「あのくらいなら大丈夫だよ」

 

「プリンセス、ライオンさんがなんて言ってるかわかりますか?」

 

ツバサがエルにそう聞くとエルはライオンからの言葉を聞いてそれをツバサへと話す。

 

「らいおんしゃん、ぷんぷん!ねんね、しー」

 

どうやらライオンは昼寝の邪魔をされてしまった影響か怒っており、エルにそう言われて四人はライオンへと謝るとライオンは目を閉じて再び眠りにつく。

 

「次は俺の行きたい所でも良い?」

 

あさひの言葉に皆は頷くとあさひ達は鳥のコーナーへと移動する。するとあさひを見た途端、鳥達はあさひの元に寄ろうと近くにやってきた。

 

「え!?」

 

「やっぱりあさひ君は鳥さんと仲良しなんですね!」

 

「………」

 

あさひが手を伸ばすと鳥達は飼育室の中で無ければ今にも飛び出しそうな勢いだ。

 

 

「……やっぱり、俺の事が気になるのか?」

 

鳥達はあさひの言葉に頷くように部屋の壁を嘴でコンコンと叩き、それぞれが翼を広げてあさひの不安に共感するようにしていた。

 

「俺って前世ではどんな事をしてきたんだろ」

 

あさひはそれにまた考え込んだ。

 

「あさひ、もしかしてまた前世の事で考えてるの?」

 

「……ごめん、ちょっと一人にさせて」

 

そう言ってあさひは一人で無理に五人から離れていく。それからあさひは園のベンチで座っていた。

 

「……やっぱり俺には前世の力が引き継がれているらしいな」

 

あさひは一人そう呟く。するとそこにあさひの前世に当たる人物が幻影として出現。すると彼は背中から白と黒の翼を生やしてあさひの元に歩み寄る。

 

「あなたは誰なんですか?俺の前世なのにそこだけわからないんだ。あなたの正体を……教えてください」

 

しかし、幻影からの答えは無く、ただ首を横に振るのみである。それを見たあさひは苛立ちを募らせた。

 

「どうして応えてくれないんですか!俺の気持ちにもなってくださいよ!俺はあなたの記憶を宿してからずっと毎日モヤモヤして……名乗るぐらいは良いじゃないですか!」

 

あさひは幻影に詰め寄ると手を伸ばす。しかし、無情にもそれは空を切ってしまいすり抜けた。

 

「……何で……あなたはどうしてそこまで俺に教えたく無いんだ……」

 

あさひはその瞬間頭が痛むとまた前世の自分の記憶を強制的に見せつけられる。まるでそれさえ見れば満足だろ……と。

 

「今の自分じゃだめなんです!もっと強くなってエルやあげはを一人でも守れるぐらいにならないと……」

 

そう言った所で幻影は消えてしまい、その後には白と黒の羽が舞い散る。そしてあさひの周りからザワザワという音が耳に入り、あさひが我に帰るとあさひの事を変な人だと思った人がいるのか遠くからボソボソと声が聞こえてくる。

 

「ッ!!」

 

あさひは慌てて作り笑いを浮かべると何でも無いとばかりにその場を去っていく。そしてそこにソラ達も合流して全員でこれから昼ごはんを食べると言う話になるのであった。




また次回もお楽しみに。


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吐露した悩みと新たなる敵

昼時となり、あさひ達は広場の芝生の上でシートを敷いてご飯を食べる事になった。

 

「「「「「いただきま〜す!」」」」」

 

「ま〜ちゅ!」

 

「シャケ、ご飯、のり、そして青空!最高に美味しい組み合わせです!」

 

「おににに、おいちぃ!」

 

ソラとエルが美味しくおにぎりを食べる中、ましろが先程の仮説について話をする。

 

「やっぱり、エルちゃんは動物とお話しできるみたいだよ」

 

「これからもっと色んな力を使えるようになるんでしょうか?」

 

「あり得るかも。ただでさえ私達をプリキュアにしたり、不思議な力を持ってるのかも」

 

あげはがそう言うとツバサ達は頭の中でどんな力に目覚めるか思い浮かべていく。

 

「例えば、空を飛べるとか?」

 

「力持ちになったり!」

 

「目からビームが出たり?」

 

「そ、そんなのハイパースゴスギ赤ちゃんだよ!」

 

「……皆、想像力豊かなのは良いけど、ちょっと飛ばしすぎじゃ無い?」

 

ましろが頭を抱える中、あさひは冷静に慌てる姉を宥める。しかし、ましろだけで無くソラやツバサも慌てていた。

 

「やっぱり、今からでも英才教育をするべきなのでしょうか……」

 

「ご飯にももっとこだわるべきかも!お料理の勉強をしないとだよ!」

 

「はっ!まさか、こんなに早くエルちゃんにスカイランド神拳を伝授する時が来るとは……」

 

「それはまだ早すぎるんじゃ……」

 

三人が頭を悩ませる中、あさひとあげははそんな三人を落ち着かせるように口を開く。

 

「三人共、ちょっと考えすぎ」

 

「そうそう。少し落ち着こう」

 

「「「……あ」」」

 

二人に言われてようやく落ち着いた三人だがその瞬間あさひをジーッと見つめる。

 

「……え?」

 

「あさひ君こそさっきはどうして一人になったんですか?」

 

「本当はあさひも凄い悩んでいるんじゃ」

 

「そうですよ」

 

「う……それは……」

 

「図星ね……」

 

全員に自分も凄い悩んでしまっている事を見抜かれてあさひは狼狽えてしまう。

 

「……さっき俺の前世の幻影と会ったんだ。でも、あの人は自分の存在をなかなか教えてくれなくて……それで焦ってるって言えば良いのかな」

 

あさひは観念すると全員に胸の内を吐露した。あさひもあさひで一度は拭ったはずの不安が再燃しているのだ。

 

「あさひ、私達はいつでもあさひの味方だよ。だからそんなに思い詰めなくても大丈夫だから」

 

「姉さん、わかってる……でも、だからこそもっと自分がしっかりしないとって思ってしまって……。エルが運命の子だと、自分が運命の戦士だって知っちゃった以上、今まで通りになんてできない!俺は、大切な人を一人たりとも失いたく無い。だからもっと強くならないと……弱い自分にはもううんざりだから」

 

あさひはようやく胸の中に秘めていた気持ちを全部伝えた。そうしたらあげは、ましろに両脇から抱きしめられた。

 

「へっ!?」

 

「ごめんね、あさひ……。あさひもあさひで凄い悩んでいたのに私達の事を気遣ってくれていたんだよね……」

 

「私、あさひの彼女なのにあさひの事を何もわかってあげていなかった。自分の事で手一杯で……ごめんね」

 

「ね、姉さん!?あげは!?大丈夫だよ。悩んでるとは言ってもそこまで深刻じゃないから」

 

あさひがそう言っても二人は抱きしめる腕を離そうとしない。二人共あさひに重荷を背負わせたく無いのだ。それなのに知らず知らずのうちに彼に重荷を背負わせた自分を責めているのだ。

 

「二人共、一度落ち着いてください」

 

「そうです、あさひ君が困ってますよ」

 

ソラとツバサに言われてようやく二人はあさひを解放。それからあさひは一度深呼吸をすると四人へと頭を下げた。

 

「多分これからも皆に沢山迷惑をかけると思う。運命の戦士として戦うって意味でも一緒に過ごすって意味でも。俺はもっと皆の力になれるようにする。約束する。だから皆も変に俺に配慮なんてしなくても良い。いつも通りに接して欲しい。それが俺の今の願いだから」

 

それを聞いた四人は一度顔を見合わせると吹き出して笑い始める。それを見たあさひは困惑した。

 

「皆?何で笑うの?」

 

「だ、だってもう割と今更だし」

 

「あさひ君は心配しすぎです」

 

「色々悩んでたの、全部吹き飛んじゃった」

 

「言われなくても私達はあさひの望みを叶えるよ。だって、私達は一つのチームなんだから」

 

「えるぅ!」

 

それを聞いてあさひは安心したのか胸を撫で下ろす。それからエルの事について改めて話し合う事にした。しかし、結論は割とすぐに出てくる事になる。

 

エルが運命の子だろうが関係無い。悩みながらも皆でエルを立派に育てていく。その意見で満場一致したのだから。

 

それからあさひ達はふれあいコーナーで動物達と触れ合う事になった。あげはとあさひの二人はエルを見守りつつウサギとの触れ合いをする事になった。

 

「わぁ〜うしゃしゃん、かわい〜ね〜」

 

「優しく撫でてあげてね」

 

「エルの事は俺が見ておくからあげはも触れ合いを楽しみなよ」

 

そう言ってあさひは茶色い毛並みのウサギを抱っこして連れてくる。

 

「でもあさひに悪いよ……」

 

「あげはもこういう可愛い動物好きなんでしょ?だったら無理に我慢したらダメ」

 

そう言ってあさひはあげはにウサギを預けてエルの事を見守る事にした。

 

「もう……私の彼氏はやっぱりズルいよ……」

 

あげははほんのりと顔を赤らめるとあさひに感謝してウサギとの時間を楽しむ事になる。そして、ソラ、ましろ、ツバサの三人はハムスターと触れ合っていた。

 

「あ、温かい……小ちゃい」

 

「ぷいぷい鳴いてるよ〜」

 

三人もハムスターに癒されている中、あさひはドクンと胸が高鳴る音がして振り向く。

 

「あさひ?どうしたの?」

 

「いや、何か嫌な予感がしたような……」

 

すると動物達が怯え始めるとその瞬間、あさひは更に胸の鼓動が高鳴っていく。

 

「ッ!嫌な予感がする……まさか、この感覚……ヤバイ!」

 

そう言ってあさひは一人で触れ合いコーナーを出ると入り口へと走っていく。

 

「ちょっとあさひ!」

 

ましろがあさひを呼び止めようとするが、あさひは聞く事なく走って行ってしまう。そして、ソラとツバサは怯えるハムスターを見て疑問に思っていた。

 

「急にどうしたのでしょうか……」

 

「何かに怯えてるみたいですね」

 

「まさか、あさひが走って行った方向に何かがいるのかも」

 

それから四人も頷くと入り口の方向へと走っていく。その瞬間、轟音と共に何かがぶつかる音が聞こえてきた。

 

「まさか、あさひが一人で勝手に!?」

 

「あの子、無茶して!」

 

「急ごう!」

 

数分前、一人先行して行ったあさひはソラシノサウルスのオブジェの前に佇む豚とミノタウロスを合わせたような外見に武闘家のような衣装を着た武人のような人物と出会っていた。

 

「……ほう。我の威圧に臆せず立つか。もしやそなた、プリキュアであるな?」

 

「だったらどうする?」

 

「プリキュアは全部で五人とラブ様達から聞いておる。しかもプリンセスは連れずに来たと言う事はそなた、仲間に負担をかけないように一人で来たのか」

 

「さぁな。あながち間違っては無いけど、お前がこっちに来た時嫌な予感がしたから俺が相手をしに来た……理由はそれだけさ」

 

「なるほど。ならば変身するが良い。他の四人が来るまでの間、我が相手しよう」

 

そう言って武闘家の怪物は構えを取る。あさひはスカイミラージュを構えるとすかさず変身した。

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!サンライズ!」

 

サンライズは走りながらその姿を変えていき、男へと拳を繰り出す。それを男は片手で受け止めた。

 

「夜明けにひろがる眩い朝日!キュアサンライズ!」

 

「ほう。お主がキュアサンライズ。ならばプリキュア五人の中で最強の力を持つお主の力を試させてもらおう!」

 

その瞬間、怪物はあさひを掴んだ手を思いっきり自分へと引き寄せるとガラ空きの腹に拳を振るう。サンライズはそれを地面を蹴り上げて上に跳ぶことで攻撃をギリギリの所で回避しつつ怪物に掴まれた拳を放させる事に成功。

 

「ッ……今の攻撃……多分当たってたら一発でやられたかも……」

 

「ほう。お主、我の攻撃を見切ったと言うか。ならば打って来い」

 

「なら遠慮なく!ひろがる!サンライズカリバー!」

 

サンライズが炎の剣を振り下ろすとその奔流が怪物へと命中し、轟音を上げる。サンライズは手応えアリと考えると怪物がどうなったか見極めようとした。その瞬間、サンライズは嫌な予感がすると目の中にリングのような物が現れる。怪物が無傷で突進してくるビジョンが見えたその直後、全く同じ行動を怪物がとってきた。

 

「ッ!」

 

サンライズはまるで相手の動きを完璧に予想したかのような動きで斜め後ろに跳ぶと攻撃を回避する。

 

「む?」

 

そこにようやく他の四人とエルも到着。現場を目撃する事になる。ひとまず四人はサンライズがノーダメージだということに胸を撫で下ろす。

 

「サンライズ、急にいなくならないでくださいよ!」

 

「皆!コイツ、かなり強い!多分今までの幹部と同じと考えたらダメだ」

 

「ほう。我の強さを肌で感じ取ったか。そして……そこにいるのはプリンセス・エルとお見受けする。ならば貴様等が残りのプリキュアか」

 

「あなたは何者ですか?」

 

「我が名はミノトン!アンダーグ帝国に仕える者だ」

 

「って事はバッタモンダーはお役御免にされたって事か」

 

「プリンセスを狙う新たな刺客という訳ですね」

 

サンライズとツバサがそう言う中、ましろがミノトンという名前を聞いてある事を思いつく。

 

「ミノトン……って事はカバトンのお兄さんとか?」

 

「あんな下品で下劣な男と一緒にするでない!」

 

ミノトンはカバトンと一括りにされる事が特に嫌なのか怒った様子で答えを返す。

 

「ひゃっ!」

 

「意地汚いわ、おならで戦うわ、武人の風上にもおけんわ!」

 

「カバトンは禁句みたい……」

 

「って事はお前は他の奴等とは違って正々堂々、武人らしく戦うつもりって事で良いのか?」

 

サンライズがミノトンにそう聞くとミノトンは迷う事なく頷き、肯定の意思を示す。

 

「勿論だ。我はあくまで正々堂々戦うと約束しよう。我こそは本当の武人。プリキュアよ、我がランボーグと手合わせ願おう」

 

ミノトンが五人へと指を指すとそこにラブも姿を現すとサンライズを見据えた。

 

「ラブ様、手出しは無用と申したはず」

 

「確かにそうね。でもやっぱりキュアサンライズは私の獲物。あなたの相手はあっちの四人で良いわよね?」

 

「仕方あるまい。ならば!来たれ!アンダーグエナジー!」

 

「それじゃあ私も、カモン!アンダーグエナジー!」

 

するとミノトンとラブが同時にアンダーグエナジーを呼び寄せるとミノトンはソラシノサウルスに、ラブは彼女が予め手に持っていたライオンの模型の中に吸い込まれていく。

 

「「ランボーグ!」」

 

人々が逃げ惑う中、あげははマスコットキャラのソラシノサウルスをランボーグにした事に憤りを覚える。

 

「あぁ〜!ソラシノサウルスになんて事してくれてんの!」

 

「皆が危険です!守らないと!」

 

それから四人もサンライズと共に戦うためにスカイミラージュを取り出すと変身した。

 

「「「「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!」」」」

 

「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」

 

「ふわりひろがる優しい光!キュアプリズム!」

 

「天高くひろがる勇気!キュアウィング!」

 

「アゲてひろがるワンダホー!キュアバタフライ!」

 

四人は変身を完了すると既に変身していたサンライズと合わせていつもの名乗りを行う。

 

「「「「「レディ……ゴー!ひろがるスカイ!プリキュア!」」」」」

 

五人はそれぞれの相手と向き合うとランボーグを倒すために戦闘を開始するのであった。




また次回もお楽しみに。


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ラブの焦りと目覚める力

プリキュアが五人揃った所でまずはスカイがエルへと避難の言葉をかける。

 

「エルちゃん、あなたは安全な所へ!」

 

「える!」

 

エルがその場から離れた所でミノトンとラブがランボーグへと指示を出す。

 

「突撃!」

 

「やりなさい」

 

「「ランボーグ!」」

 

ソラシノサウルスのランボーグはスカイ達四人へ、ライオンのランボーグはサンライズへと向かっていく。

 

「はあっ!」

 

「喰らえ!」

 

それに対してサンライズは炎の剣で、プリズムは気弾を発射して対応する。しかし、プリズムの気弾はランボーグが強靭な顎で噛み付くと一発で粉砕してしまう。

 

「えぇ!?」

 

「ワッハッハ!我はアンダーグ帝国最強の武人!その我が生み出すランボーグはまた、最強なのだ!」

 

そう誇らしげにミノトンは言う。そしてそれを聞いたウィングがミラーパッドで調べるとソラシノサウルスのデータを見つけた。

 

「ソラシノサウルスのモデルはティラノサウルス!ティラノサウルスは顎が物凄く強いんです!」

 

「ランボーグ!」

 

するとランボーグが四人へと突進していく。それに対してバタフライが障壁を連続展開……するのだが、それらは全て噛み砕かれてしまう。

 

「ちょっ!怖すぎるんですけど!」

 

「ひぇえ〜!」

 

「顔がダメなら……体を狙うまでです!」

 

スカイが一直線に進む中、ランボーグが口にエネルギーを高めると火炎放射の体勢に入る。それを見たウィングはすかさずフォローに入った。

 

「危ない!」

 

そこにバタフライから投げキッスが飛び、蝶のエネルギー弾がランボーグに激突して爆発する。

 

「ラン!?」

 

「はあっ!」

 

そこにプリズムが気弾を放つものの、ランボーグは思い切り跳躍して回避。二人を上から押し潰そうとしてくる。二人はそれをすんでの所で躱す。

 

その頃、ラブの出したランボーグと戦うサンライズは少しずつ追い詰められていった。

 

「くっ、やっぱり前に戦った時よりも強くなってる」

 

「ふふっ、それだけじゃないわよ」

 

サンライズから繰り出される攻撃がことごとく躱すか防御されるかでなかなか決まらないのだ。

 

「どうして……はっ!」

 

すると再びサンライズの目にリングが出るとランボーグは炎を纏って突進してくる動きが見えた。そしてそれ通りの動きをランボーグはする。

 

「スタイルチェンジ!フェニックス!」

 

サンライズはフェニックススタイルとなると左腕の盾で攻撃を受け止めた。しかし、その圧力は強く少しずつジリジリと後退させられてしまう。

 

「コイツ、強い……」

 

ラブはそれを見るとパチンと指を鳴らした。するとランボーグはサンライズから離れると口から火炎放射を放つ。サンライズはそれに対応するために再びスタイルチェンジを発揮。

 

「スタイルチェンジ!ペガサス!」

 

サンライズはエネルギー弾を連続射出すると火炎放射にぶつけていき、勢いを完全に殺す事に成功。凌ぎ切った。

 

「ふーん。やっぱり一筋縄ではいかない……わね」

 

ラブがそう言っているとラブの胸がドクンと高鳴る。その瞬間、ラブの視界にノイズがかかりながらも一人の男の顔が映った。その男は白と黒の翼を広げており、魔物に襲われていた少女の身代わりとなり、傷つく様子が映されていた。

 

「チッ、何でこんな時にあの時の映像が……ホント、うざったいわね」

 

ラブは苛立った声を上げるとサンライズへと攻撃を続けるように指示を出す。

 

「ランボーグ!」

 

ランボーグが目を光らせると炎弾を5つ生成。その瞬間、サンライズの目にリングが宿るとその軌道を完全に把握。その直後に炎弾が放たれるが、サンライズは見事に全て躱す。

 

「ッ、まただ……俺、どうしてこんな少し先の未来が見えるんだ……?そういえばこの前バッタモンダーがシャララ隊長をランボーグにするのも予測できていた。……まさか」

 

サンライズがそう言っていると既に目の前にランボーグの爪が迫っており、サンライズは吹き飛ばされてしまう。

 

「うぐっ!!」

 

「あら?余所見なんてしていて良いの?ランボーグ、さっさと潰して……」

 

するとラブがふと近くを見るとエルが白いウサギと共に目立つ場所に出てきており、それを見たラブはランボーグに指示を出そうとする。

 

「ランボーグ、今のうちにプリンセスを……あぐあっ!」

 

“あなたの使命はプリンセスを守る事……そしてあなたが愛した人を、戦いの中で支える事……”

 

「やっぱりうざったい……こんな使命、私にはもう必要ないのに……いちいち出てくるんじゃないわよ!」

 

ラブの異変にサンライズは疑問を覚える。普段の彼女なら自分が隙を見せたらすぐに突いてきたはず。サンライズが考えているとソラシノサウルスのランボーグがエルを襲おうとして走っていくのが見え、それと同時にライオンのランボーグも向かっていく。

 

「ヤバイ!スタイルチェンジ!ドラゴン!」

 

サンライズはすかさず機動力が高いドラゴンスタイルで二体のランボーグの前に出る。しかし、サンライズだけでは片方しか止める事ができない。

 

「くっ!スタイルチェンジ!グリフォン!」

 

すぐにパワー型のスタイルに変身し、ライオンのランボーグを受け止めると完全に抑え込む。だがまだソラシノサウルスのランボーグが残っている。そこにバタフライを先頭に四人がエルとの間に割って入るとバタフライが盾を生成して止めようとした。

 

サンライズの目にリングが宿り、未来を見るとその盾は粉々に砕け散り、四人が吹き飛ばされてしまう未来が見えてしまう。

 

「ダメだ。アレじゃあ防げない!はあっ!」

 

サンライズがランボーグに掌底を打ち込んで一撃で吹き飛ばすとすかさずドラゴンスタイルとなり、バタフライの盾の前に出る。

 

「サンライズ!?」

 

「プリキュア!ホーリーコネクト!ひろがるチェンジ!ホーリーサンライズ!」

 

サンライズはホーリーサンライズにパワーアップすると白い炎の剣を構えて迎え撃とうとした。その瞬間、またリングが出てきて未来を見るとサンライズはランボーグと互角に押し合っている間にライオンのランボーグが横から体当たり、傷だらけで変身解除してしまうとラブに捕まる未来が見える。

 

「ヤバイ……これ、俺……ラブに捕まる……」

 

そう小声で言ったつもりの言葉が先頭のバタフライに聞こえてしまう。それを聞いたバタフライはすぐに盾を解除してサンライズを押し倒そうと駆け出した。

 

「嫌……サンライズ、そんなのダメ!!」

 

「バタフライ!」

 

バタフライの異変に他の三人も止めようとするが、バタフライ含めた四人の位置ではサンライズのカバーをするには間に合わない。

 

「だったら一か八か……ひろがる!ホーリー……」

 

サンライズが賭けとしてホーリーカリバーでのランボーグの浄化を図る。しかしその瞬間、突如としてミノトンがランボーグの前に出るとランボーグを受け止めた。

 

「……え!?」

 

「強者に立ち向かうその心!赤子ながら……あっぱれ!」

 

次の瞬間、ミノトンはランボーグを吹き飛ばしてしまう。まさか自分で出したランボーグを吹っ飛ばしたその行為に全員が疑問を覚えた。

 

「エルちゃんとウサギさんは安全な所へ!」

 

プリズムの言葉にエルはウサギを乗せると抱っこ紐に乗って退避。それからスカイがミノトンに話しかける。

 

「あなた達の目的はエルちゃんのはず!なのに何故ランボーグから守ったんですか!?」

 

「赤子に牙を向けるなど武人のする事ではない!プリンセス・エルは貴様らを倒した後で良い。我はずっと待ち望んでいたのだ。貴様らのような強者と戦うのをな!」

 

ミノトンはそう言ってプリキュアから離れるとランボーグの隣に移動。それを見たラブは苛立ちを露わにしていた。

 

「ミノトンめ……折角のチャンスを……うぅっ!?」

 

ラブは再び苦しそうにすると体から闇のオーラが露散し始めており、薄らと彼女の中に黄色い髪をした少女が見える。

 

「お願い……助けて!私……このままだとまた……」

 

そこまで言った所で闇のオーラがどこからともなく飛んでいくと少女へと無理矢理覆い被さり、再びラブの姿に戻った。

 

「ランボーグ……さっさと私の将来の旦那を生け取りにしろ!」

 

「ランボーグ!」

 

ラブは焦った様子でライオンのランボーグに指示を出すとランボーグはサンライズへと突進していく。

 

「させるか!」

 

サンライズはすれ違い様にランボーグを滅多切りにするとかなりのダメージを与えた。

 

「ランボーグ、行け!」

 

それと同時にミノトンもランボーグに指示を出すとランボーグが突撃しようとするが、その直前にバタフライがランボーグの足元にバリアを展開。足止めした。

 

「あの口のせいで近寄れませんよ!」

 

「口がダメなら……尻尾です!」

 

スカイはランボーグを飛び越えながら、バタフライに目線で合図を送る。するとバタフライはすぐにスカイのやる事を理解した。

 

「オッケー!二つの色を一つに!レッド!ホワイト!元気の力!アゲてこ!」

 

バタフライがスカイに力を上昇させる技を使うとスカイがランボーグの尻尾を掴み、思い切り投げ飛ばす。

 

「アゲてくよ!ウィング!」

 

「はい!」

 

すかさずバタフライがウィングと共にミックスパレットによる合体技を使用。

 

「全ての色を一つに!ミックスパレット!レッド!イエロー!ブルー!ホワイト!混ぜ混ぜカラーチャージ!」

 

バタフライがウィングにエネルギーを送り、ウィングは不死鳥へと変化。

 

「プリキュア!タイタニックレインボー!アタック!」

 

その後、プニバードの姿となったウィングとその上に乗ったバタフライが上からランボーグを押し潰し、浄化する。

 

「スミキッタァ〜」

 

「やったぁ!」

 

「次はサンライズの加勢に……」

 

スカイがそう言ってサンライズの方を向くとサンライズはまるで相手の動きがわかっているかのように攻撃を回避し続け、ランボーグに出来た隙を突いて攻撃を叩き込んでいた。

 

「凄い……さっきから一発もダメージを受けていません」

 

「バタフライ!」

 

「え?うわっ!」

 

サンライズから投げられたのはホーリーサンライズに変身するためのスカイトーンである。

 

「ちょっとそれ、ミックスパレットで使ってみて!」

 

サンライズがそう言うとバタフライが装填する。その瞬間、四つの色が光輝き、順番に押すように誘導していた。

 

「何だかわからないけど……やってみるね!」

 

バタフライはそれからタイタニックレインボーアタックと同じように色を選択していく。

 

「聖なる光に集え!ミックスパレット!レッド!イエロー!ブルー!ホワイト!混ぜ混ぜカラーチャージ!」

 

その瞬間、虹の光がサンライズへと注いでいくとサンライズの背中の白い翼が展開。更に手にした白い炎の剣に虹の輝きが纏われていく。

 

「プリキュア!ホーリーレインボー!」

 

そのままサンライズの姿が幸福を呼び込むとされる白いカラスへと変化。その口に虹の光を纏った剣を咥えてランボーグへと突進する。

 

「アタック!」

 

そのままサンライズはランボーグに激突するとそのまま突き抜け、ランボーグに虹がかかり、浄化された。

 

「スミキッタァ〜」

 

ランボーグは赤黒いエネルギーごと浄化されるとそのエネルギーラブへと吸収される事無く消え去る。

 

「くっ……このままじゃ、刻印が完成しないじゃない……ラブコフコフ」

 

「うむ、流石はプリキュア。それでこそ、我が戦うのに相応しい。ミノトントン!」

 

それからラブもミノトンも撤退。サンライズ達はまたふれあいコーナーにウサギを戻しつつふれあいを再開することになった。

 

「そっか、さっきエルちゃんがウサギさんを守ったのは……ソラちゃんの真似をしていたんだ」

 

「そうみたいです。危ない事を真似して欲しくないのですが……」

 

ソラがそう言う中、近くで女の子が泣く声が聞こえた。皆がその方を向くとそこには小さな女の子が父親に抱きついて泣いており、ウサギを怖がっている様子だ。

 

「ほら、怖くないよ」

 

するとエルがウサギの餌を手に女の子の元に行くと女の子へと餌を手渡した。

 

「ど〜ぞ」

 

女の子が恐る恐るウサギに餌を差し出すとウサギは餌を食べ始め、女の子は笑顔になる。

 

「わぁ!」

 

「なかよち!」

 

エルがそう言うとましろが何かを思い出す。それは、前にましろがエルのためにと書いた絵本だった。そして、それを見た一同はエルの成長に感動するばかりだ。

 

「エルちゃん!」

 

「前はこんな風に譲ったりできなかったのに……」

 

「ましろんのエルちゃんの心に届いたんだよ」

 

「エルちゃん、私達が気づかないうちに色んな事を沢山受け取ってくれていたんですね」

 

ソラ達が笑顔になる中、あさひは一人考えていた。ラブの体から突然現れた黄色い髪の少女……彼女はヒメとそっくりな顔つきをしていた。そしてそこから考えられる可能性はただ一つ。

 

「まさか……あの子、ヒメの……生まれ変わりなのか?」

 

しかし、そう断定するにはある矛盾がある。それは、ヒメが消滅したのはつい数ヶ月前……そこから僅かな時間であそこまで成長する事はできない。あさひはその点について引っかかっているのだ。

 

「あさひ、どうしたの?」

 

「え?あ、ごめん。エル、あんなに優しく育っていたんだな……これも皆の影響を受けたのかな」

 

あさひは難しい事を考えるのは一度後回しにして今はエルの成長を優しく見守ることにするのだった。




また次回もお楽しみに。


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ラブの作戦と囚われた蝶

動物園に行ってから数日。あさひ達は何気ない日常を過ごしていた。そんな時、ラブは一人頭の中に響く声に苦しんでいる。

 

“あなたの使命はプリンセスを守り、愛した人を戦いの中で支える事。その使命を忘れないでください”

 

「あぁもう!うるさいわよ!何?使命って、あんたが勝手に付けたんでしょ。それに私はアンダーグ帝国に仕える者……余計な口出しは……」

 

するとラブの目の前に映像が現れるとそこにはベリアルと戦い、深い傷を負った黄色い髪の少女……ヒメが一人でベリアルへと立ち向かうものが映し出される。

 

「この忌々しい記憶が……私にこんな記憶は要らないのよ!大人しく消えてなさい!」

 

ラブは荒れた様子で記憶を消し去ろうとする。しかし、どうしても忘れられないのか頭を悩ませていた。

 

「ふん、己の記憶一つコントロールできないか……いや、寧ろあの男に近付いたが故に余計に思い出してしまうのか」

 

そこにローブを纏った影が出てくるとラブを見据えて話しかける。ラブはそれに頭を抑えながら対応した。

 

「何よ……あなたに私の何がわかる……」

 

「……これ以上変に記憶を思い出せばお前にかけた洗脳を引き剥がされる危険があるな」

 

「何?その洗脳って……この私が……?」

 

ラブが影の言葉に困惑していると影が手を翳し、ラブの意識を一瞬にして刈り取ると彼女へと黒いエネルギーボールを投入。それから意識を復活させる。

 

「私は……何を?」

 

ラブが起き上がると影が再びラブへと話しかけていく。

 

「少し気を失っていただけだ」

 

「ふーん。そういえば、この前キュアサンライズが赤黒いアンダーグエナジーを浄化する技を身につけたせいで刻印が完成しなくなったのだけどどうするべきかしら?」

 

「……その技はキュアバタフライとの連携技なのだろう?ならば答えは一つだ」

 

「なるほどねぇ、あの二人を引き剥がせば良いのね」

 

それからラブが作戦のために動き始めると影は溜息を吐いてから一人呟く。

 

「だから時間が無いと言っているのだ……ラブの記憶が戻る前にさっさとプリキュアを一人でも減らさなくては」

 

影はその場から去っていく。そして虹ヶ丘家ではあさひとあげはが二人同じ部屋にいた。あさひはこの日の宿題を、あげはは保育士のレポートをそれぞれ行っている。

 

「……あげは、ここわからないんだけど」

 

「えっとね、ここは……」

 

何故二人が同じ部屋で勉強をしているのか。それは、あさひの宿題がなかなか捗らずあげはに聞きながら宿題をする事になったからである。ちなみに、ましろは今買い物に出掛けているために不在だ。

 

「あげは……ごめん。あげはもレポートが忙しいのに」

 

「大丈夫大丈夫。私としても頼ってくれるのはとても嬉しいからさ」

 

二人は勉強しながらイチャイチャしようとする。しかしそこにツバサが入ってきてそれは強制的に中断した。

 

「お二人共?勉強中にイチャイチャしないでくださいね?」

 

「す、少しぐらいは……」

 

「ダメです。そうするぐらいなら別の部屋で勉強してください」

 

ツバサに言われて仕方なく二人は諦める事になり、大人しく勉強に勤しんだ。

 

それから勉強も終わって二人は雑談の時間になった。二人はベッドの上で隣り合って腰掛けると話を始める。

 

「あげは、最近学校はどう?」

 

「大変だけど楽しんでるよ。ただ……」

 

「?」

 

「最近私がフリーだと思ってる男から色々とアプローチされてるんだよね」

 

「あ〜」

 

あげはは割とモテる方である。ギャルのようなサバサバした性格に明るく、誰とでも分け隔てなく接するために男からモテる事が多いのだ。

 

「私、これでもちゃんとあさひっていう彼氏がいるんですけど……」

 

あげはは口を尖らせながら不機嫌そうにあさひへと愚痴を言う。あさひはそれに苦笑いした。

 

「でもさ、その人達もあげはの事が気になるから話しかけるんでしょ?だったら悪い事は無いと思うな」

 

「できる事なら表立って彼氏持ちだって言いたいよ。でも、あさひはまだ中学生でしょ?大人が中学生に恋してるなんてあんまり言えないし、そんな事言ったら色々と大変そうだから」

 

あげはとしても世間体は気にする方なのか、あさひとの恋人関係についてはあんまり言いたがらないようである。

 

「……でもさ、私……あさひと付き合えて幸せだよ。まだあさひは未成年だからできないけど結婚もしたいって思ってる」

 

「あげは、俺はそう言ってもらえて嬉しいけど結婚は飛躍しすぎ……。まだ俺が大人になるまであと五年ぐらいは待たないといけないのに」

 

「私はずっと待ってるよ。あさひがちゃんと一人前の大人になるまで」

 

「そっか。じゃあ、今はこれで我慢してね」

 

そう言ってあさひはあげはの頬を両手で優しく捕まえるとそのまま彼女の口にキスをした。

 

「!!」

 

「びっくりした?……正直俺も結構我慢してるんだからね。俺が大人になったらもっと色んな事をしよ」

 

「うん……」

 

あげはのその顔つきは完全にあさひに心を射抜かれてトロンとした目つきに変わっており、完全に恋する乙女の顔になっている。それからあげははお返しとばかりにあさひの口にキスで返し、あさひも幸せそうな顔に変わった。

 

その日の翌日、あさひ、ソラ、ましろの三人はいつも通り学校に行っており、更にツバサは家でエルのお世話をしている。そして、あげはは保育士の学校に通っており、その帰り道での事。

 

「もうすぐ次の実習かぁ。最近学校がどんどんハードになっていくよ。この後プリホリでバイトだし……」

 

あげははいつものように学校での講義を終えてバイトのための移動をしているとあげはの前にラブが降り立った。

 

「あなたは、ラブ!!」

 

「ふふっ、まさかあなた一人だけなんてね。私の旦那様とは別れたのかしら?」

 

「冗談はよしてよね。私、ちゃんとあさひの彼女やってるから」

 

「そう。それは残念ね……まぁ、その日々も今日で終わりよ」

 

そう言ってラブが指を鳴らすと突如として二人を中心に紫のエネルギードームが展開。二人の周囲がドームに包まれると外との連絡が完全に遮断された。

 

あげはがあさひ達へと連絡するためにスマホを開くが電波が圏外となっており、ありとあらゆる連絡手段が使えなくなってしまう。

 

「くっ……私を閉じ込めて何のつもり?」

 

「あなた達プリキュアは確かに強い。カバトン、バッタモンダーと二人の幹部を退けただけでなくミノトンのランボーグをも打ち倒すほど。でもそれはあなた達が五人で連携してるから。一人ずつ各個撃破すれば良いのよ」

 

「バッタモンダーの時も言ったけど……やっぱりあなた達は五人相手じゃ勝つ自信が無いみたいね」

 

ラブの言葉にあげはは一歩も退こうとしないのか威勢よく対抗する。それからラブはニコリと妖艶な笑みを浮かべると指を鳴らした。

 

「カモン!アンダーグエナジー!」

 

ラブがアンダーグエナジーを呼び出すとその瞬間、赤黒いアンダーグエナジーが集まっていき、一体の人型の兵士を生成した。

 

「くっ……」

 

「さぁ、あなたもプリキュアになりなさい。殺されたくなかったらね」

 

ラブにそう言われるとあげはは仕方ないとばかりにペンを取り出して構える。

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!バタフライ!」

 

あげははその姿をプリキュアへと変えていくと降り立って名乗りをあげた。

 

「アゲてひろがるワンダホー!キュアバタフライ!」

 

あげはがキュアバタフライへと変わるとラブはすかさずランボーグに命令を下す。

 

「やりなさい」

 

「ランボーグ!」

 

ランボーグがバタフライへと走っていくと腕にガントレットを生成。バタフライ相手に拳を繰り出す。

 

「はあっ!」

 

バタフライはすぐに蝶型の障壁で拳を防ぐが、それは一瞬で粉砕されるとバタフライの腹に命中。バタフライはたった一撃で肺の中の空気が全部吐き出されるような感覚に襲われる。

 

「うぐっ!?」

 

「ただのランボーグと思ったら大間違いよ。今回のランボーグはアンダーグエナジーを濃縮した体を持つ。しかも、いつものランボーグとは違って小柄な分アンダーグエナジーの濃度は更に増す」

 

更にランボーグのスピードはかなりのもので一瞬にしてバタフライの後ろに回り込むとそのままバタフライへと回し蹴りを繰り出す、バタフライはそれに何とか反応すると距離を取る。

 

「強い……でも、やるしか無い!」

 

それからバタフライとランボーグによる戦いが始まり、まずはお互いにラッシュを仕掛けると互いの拳が相手の胸にクロスカウンター。ダメージを受ける。

 

「くぅう……はぁ、はぁ……」

 

バタフライはたったこれだけの戦闘でもう息切れを起こしていた。ラブはバタフライを煽るように話しかける。

 

「あら?もう終わりかしら」

 

「誰が?終わりですって?」

 

バタフライは持ち直すとランボーグと再び拳をぶつけ合わせる。二人の力は拮抗しているのか、互いに有効打を与えられていない。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

しかし、体力という概念のあるバタフライに対してランボーグのエネルギーは底無しだ。このままではバタフライはその内疲労で疲れ切った所をやられて負けてしまう。

 

「だったら、一気に決めるわ。ひろがる!バタフライプレス!」

 

バタフライは跳びあがると蝶型の盾でランボーグを押し潰すと浄化に成功。赤黒いアンダーグエナジーはラブに取り込まれてランボーグに勝利する。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

だがバタフライの疲労も激しく、その場に座り込むとかなり疲れた様子だった。

 

「ふふっ、よくできました」

 

ラブは余裕そうな顔つきでバタフライを見下す。バタフライはそんなラブへと強気に言い放った。

 

「アンタ、ランボーグを浄化されたのに余裕そうね」

 

「実際余裕よ?だってあなたはもうヘトヘト。倒すのはわけないわ」

 

実際バタフライは疲労困憊で立つのもやっとなくらいにまで追い込まれていた。

 

「まだまだこのくらい……ううっ」

 

バタフライはフラフラで足元もおぼつかない様子だ。更に目の前が霞んで見えるようになっており、疲労が色濃く現れている。

 

「さぁ、第二ラウンドよ」

 

するとラブの隣に先程と同じランボーグが二体現れて並ぶ。それを見たバタフライは絶望感に包まれた。

 

「そんな……」

 

「言ったはずよ。余裕だってね。あなた、たった一人でよく頑張ったけど……もうお終いね」

 

「そんな事無い!あさひ達が来るまで耐え抜いて……」

 

その瞬間、ランボーグの中の一体がバタフライの後ろに移動すると彼女を羽交締めにして拘束。もう一体がバタフライの腹を思い切り殴った。

 

「ごふっ!?」

 

バタフライは女性が出すような声では無い声で叫び、体中に痛みが走ると何度もランボーグに殴られてボロボロになってしまう。

 

「あ……うぅ……」

 

とうとう体力も尽きてしまい変身解除してしまうとあげはは傷だらけになる。

 

何とか立とうとするものの、もう体は言うことを聞いてくれず、あげはは無理矢理ランボーグに両腕を拘束されてしまうと立たされてラブに顎クイをされた。

 

「良い気味ね。もうあなたはあさひの隣にいる資格はないわね」

 

「なんですって……私は、あさひの彼女で……」

 

「その言葉はもう聞き飽きた。ランボーグ」

 

その瞬間、あげはの首に手刀が打ち付けられるとあげははそのまま気を失ってしまう。そして、ラブ達の手によって連れ去られてしまうのであった。




また次回もお楽しみに。


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操られたあさひ 刻印の支配

あげはが連れ去られたその日の夕方。それを知らないあさひ達は家であげはの心配をしていた。

 

「あげはちゃん遅いね」

 

「何かあったんでしょうか」

 

ましろとソラが話しているとあさひはソワソワしており、落ち着かない様子だった。

 

「ツバサ、ツバサの鳥友達にあげはについて何か知らないか聞いてくれる?」

 

「わかりました……でも、あげはさんの事ですから大丈夫だとは……」

 

「そんな事わかってる!でも……あげはが、こんな時間になってるのに帰ってこないのはきっと、きっと何かの事件に巻き込まれたんだ」

 

あさひは焦ってるのだ。あげはがもし事件に巻き込まれて帰ってこないのだとしたら何もできない自分の無力さに打ちひしがれてしまうだろう。

 

「ひとまず聞いてきますね」

 

ツバサが外に出ていくとあさひはまだソワソワしており、更にそれと同時に胸騒ぎが止まらなかった。

 

「あげは……そんなわけ無いよな……誰かに拉致されたなんて……」

 

すると目の中にリングが出てくると未来を予知する。そこには傷だらけで囚われたあげはがランボーグによって更に痛めつけられる様子が映っていた。

 

「あげは!?」

 

「あさひ、どうしたの?」

 

「……あ……ぁあ……」

 

あさひは動揺しており、あげはの身に何が起きているのかを察して絶句する。

 

「あさひ君、大丈……」

 

「ッ!」

 

あさひは大慌てで家を飛び出すと街へと走っていく。それを見たソラ達はあさひを止めようとするが、あさひの頭には傷ついたあげはの事でいっぱいだ。

 

「あげは!あげは!……なんでこんな事に……まさか、またバッタモンダー?」

 

「あさひ!?」

 

「こんな時間にどこに行くんですか!」

 

あさひが未来予知を頼りに街中を探し回るととある廃工場にたどり着く。そして中に入っていくとそこには廃工場の奥の柱に磔にされたあげはが傷だらけでぐったりとしていた。

 

「あげは!」

 

あさひが急いで駆け寄ろうとするとスッとあさひの前にラブが姿を現す。

 

「待っていたわよ。旦那様」

 

「テメェ!!俺のあげはに何しやがった!!」

 

あさひは怒りで完全に頭に血が上っており、ラブへと拳を繰り出した。しかし、ラブは一瞬にして移動するとそれを躱してしまう。

 

「ッ!!」

 

「そう慌てないの。あなたの大事な彼女、聖あげはは私が預かった。勿論返さないとは言わない」

 

「何?」

 

「あの女を捨てて……私の事を愛するって言えばすぐにでも返してあげる」

 

「ふざけるな!誰がお前を愛するって言うんだ……俺の愛人に手を出しておいてそんな事が通ると思うなよ!」

 

あさひは怒りに震えており、ラブへと掴み掛かる。その直後、ラブはニヤリと笑う。それにあさひが一瞬違和感を覚えた。

 

「(何かがおかしい……さっきは躱したのに……何で今度は大人しくして……)」

 

「刻印、起動」

 

その瞬間、あさひの目がステンドグラスに変化すると体の自由が効かなくなった。

 

「しまった……これは!?」

 

「ふふっ、頭に血が上りすぎね。私の思惑にも気づかないなんて。実はさっき倒されたランボーグで刻印は完成してるの。もうあなたは逆らえないわ」

 

あさひは必死に体を動かそうとするが、全く動くことは無い。ラブはそんなあさひを見て笑みを浮かべる。

 

「ふふっ、ようやく……よくやくあさひが私の物に……」

 

あさひが刻印で動けなくなる中、何とかして動こうと必死に足掻く。しかし、抵抗するうちに少しずつ頭の中の記憶が薄れ始めるのを感じた。

 

「(あげはを助けないといけないのに……このままじゃ……あれ?俺は誰を助けに来たんだ?なんでこんな所でボーッとしてるんだ?)」

 

あさひはあげはの記憶を徐々に忘れていき、体もダランとして無防備な状態へと変わる。そんな時、あげはが薄らと目を覚ます。そしてその光景を見ると声を張り上げた。

 

「あさひ!ラブ、私の彼氏に何をしてるの!!」

 

「何って、刻印による洗脳よ?文句あるかしら」

 

ラブはそう言って指を鳴らすとあげはの左右に先程のランボーグが出てくると磔にされている影響で体を動かせないあげはのガラ空きとなった腹を殴った。

 

「ごふっ!!ゲホッ、ゲホッ……」

 

あげはは痛みで呼吸が難しくなったためにむせる。更に何発も走る鈍い痛み。それに耐えかねてまた気を失いそうになった。その瞬間、頭から水をかけられると強制的に意識を目覚めさせられる。

 

「あ……うぅ……」

 

それはまるで拷問のようだった。そのタイミングで攻撃の手は止んだが下手にまたラブへと話しかければ同じ目に遭うのは火を見るよりも明らかだ。

 

「ふふっ、良いざまね。今までずっとあなたが良い思いをしてきたんだからここからは私と交代よ。今度はあなたが地獄を見なさい。目の前で彼氏が他の女に取られる様をね」

 

「嫌だ……あさひ……私、どうしたら……」

 

あげははどんどん心細くなる感覚に見舞われると今すぐラブを止めたかった。それなのに何もできない自分が悔しくてたまらない。

 

「私……何でこんなに無力なの?いつもいつもあさひがピンチになってるのに何の力にもなれなくて……」

 

あげはが悔しさに打ちひしがれる中、あさひはどんどん頭の中が真っ白になっていく感覚に見舞われていた。

 

「あれ……俺は今、何をしていたんだ?ラブとデート?ラブと一緒に楽しい時間を過ごしてたのか?」

 

そんな中、あさひの視界にあげはが映るとあさひの目からハイライトが消える。

 

「誰?……お前」

 

「……ッ」

 

あげははあさひから言われた言葉にショックを受けると今にも泣き出しそうになる。しかし、そうした所であさひの記憶は戻らない。

 

「あさひ!私よ!聖あげは!あなたの彼女で……」

 

「は?あんたみたいな奴知らない。何?気持ち悪い。勝手に彼女面すんな」

 

あさひから繰り出された言葉はまるであさひとは思えないような冷たい言葉であり、あげははそんな言葉に心に深い傷を負う。

 

「そんな……思い出してよ!あさひ、本当に私を覚えてないの?幼馴染の……」

 

「は?ラブ、何あの女。俺あんな奴知らないんだけど」

 

「ふふっ、そうね……ホント迷惑な女よねぇ」

 

「………」

 

あげはの心はもうボロボロであり、あさひの目のステンドグラスはより一層光り輝くと更にあさひの記憶を侵食していく。

 

「あれ?そういえば俺の家族は誰?俺に友達なんていたっけ?」

 

あさひの問いにあげはが叫ぼうとするがその直前にラブがそれを遮るようにあさひへと抱きついて話しかける。

 

「大丈夫よ……あなたには私がいる。私があなたの心の寂しさを癒してあげるわ」

 

「ラブ……ありがとう」

 

それからラブは抜けた記憶の代わりとなるようにあさひの心を少しずつ物にしていく。このままでは本当に記憶を全て書き換えられてしまう。

 

「嫌……あさひ、お願い目を覚まして!そんな女に心を奪われないで!」

 

「見苦しいわね、ランボーグ」

 

ラブがランボーグに指示を出すとランボーグはあげはの腹を死なない程度に殴る。

 

「がふっ!?ゲホッ、ゲホッ……はあっ……はあっ……」

 

あげはは意識が朦朧とするが、再び水をかけられて強制的に目覚めさせられる。まるで気を失うことなど許されないとばかりに……恋人が横から掻っ攫われる様を見せつけるために……。

 

「あさひ……お願い……目を覚まして……私達を……思い出してよ」

 

あげはの呼びかけも虚しくあさひはあげはなど眼中にも無いとばかりに無視する。それからラブと向き合うとラブはあさひの唇にキスをしようとする。あさひもそれを良しとしているのか全く抵抗する事なくキスの体勢に入った。

 

「やめて!お願い!私が好きになったあさひは……好きな人がいるのに他の女に手を出したりしないよ……帰ってきて!あさひ!」

 

あげはは叫ぶがラブが再び指を鳴らすとランボーグがあげはを痛めつける。そんな様子を見たあさひの心に何かが芽生えた。

 

「(……どうしてあの女は俺をそんなに引き戻そうとするの?邪魔な女なんだけど……何?元カノだからってそんなに……え?元カノ?そもそも俺の彼女は誰?目の前にいるラブ?それとも……さっきから鬱陶しいあの女?)」

 

その直後、あさひは頭を抑えるとラブから数歩下がって距離を取る。それを見たラブは困惑した。

 

「どうしたのあさひ、私よ?あなたの女は私だけ……」

 

「ラブ……本当にお前は俺の彼女なのか……?」

 

「何を当たり前の事を言ってるの?私があなたの彼女」

 

「じゃあ……俺と一緒に撮ったプリクラの写真、ラブはまだ持ってる?」

 

そう言うあさひにラブは困惑する。しかし、ラブはそれに対してすぐに答えを返した。

 

「えぇ、勿論よ。私、ずっと大切にして……」

 

「嘘なんだな」

 

あさひはラブへとそう言い、切って捨てた。それにあげはが朦朧とする意識で答えを話す。

 

「プリクラの写真はバッタモンダーに奪われてその場で破られた。その後あさひが渡そうとしてくれたけど私はそれを断った……。これが今の質問の答えよ」

 

あげはがそう言った瞬間、あさひの頭の中に欠けていたピースが埋まる。そしてあさひは我に帰ると自分の彼女はあげはだと思い出した。

 

「俺の彼女は……あげは……お前ら、あげはに何をしてやがる!」

 

するとあさひの目のステンドグラスが強制的に粉砕。これによって刻印は完全に破壊された。その後背中に白の翼が生えるとそれがあさひを包み込み、一瞬にしてホーリーサンライズに変身。それからサンライズは飛び上がるとあげはの元に移動して近くにいた兵士のランボーグを一瞬にして斬りつけると遠くへと吹き飛ばす。

 

「あげは、今その傷を治してあげるからな。スタイルチェンジ、フェニックス!」

 

サンライズはフェニックススタイルに変わるとあげはへと治癒の光を与え、その傷を癒した。

 

「あさひ……ありがとう」

 

あげはの目は今にも泣き出しそうになっており、それだけ辛い思いを彼女にさせてしまったのだとサンライズは自覚。それからサンライズはラブを睨みつける。

 

「お前、よくも俺のあげはにこんな思いをさせて……許さないぞ!」

 

「く……あと少しで……あぐうっ!?」

 

その瞬間、ラブの目に映ったのはあさひによく似た顔をした男が自分へと手を差し伸べている様子だった。そして、その男から光が自分へと降り注ぐと自分に力が漲るのを感じ取る。

 

そして、男は力を使い尽くしたのか消えると自分は崩れ落ちて悲しみに暮れる。それから迫り来るベリアルを自らの持てる力の全てで封印。その瞬間、自分から何かの魂が分離するのが見えた。

 

「ッ、あの時の記憶……私が世界を守った英雄?そんなわけ無い。私は英雄なんかになりたくなかった」

 

「その言葉……まさか!?」

 

サンライズがそう言った瞬間ラブの隣に影が降り立つとラブに闇のエネルギーを注入する。

 

「お前は!?」

 

「……ラブめ、結局失敗したか。もう良い。お前のような奴の作戦など要らない。後は憎しみのままにあの二人を倒せ」

 

そう言うとラブから赤黒いオーラが出現。二人をギロリと睨みつける。

 

「私はラブ……いいえ……これが私の真の姿!憎しみの愛を持つ者……ヘイトレッドラブよ」

 

ラブは今までの妖艶な姿から一転。憎しみの赤黒いオーラに包まれていた。その標的は言うまでもなくサンライズだ。

 

「よくも……よくも私の愛を踏み躙ったわね!あなたのような私の愛を受け止められないようなクズ男はもう要らないわ。跡形も無く消してやる!」

 

「許せないのはこっちもだ。よくもあげはを……俺の女を悲しませた事……覚悟しろ」

 

「サンライズ、私も行くよ」

 

サンライズの隣にあげはが並ぶと変身しようとする。しかし、その直前にラブが手から衝撃波を放つとまずはあげはを殺そうとした。サンライズは咄嗟にそれを庇うために前に出るとそれをまともに喰らい、一撃で変身解除。

 

「脆い……脆すぎるわ」

 

「く……コイツ、前のラブとはまるで別人だ」

 

「あさひ君!」

 

「あさひ!」

 

「お待たせしました!」

 

そこにようやくソラ、ましろ、ツバサ、エルが到着。五人のプリキュアが集結した。

 

「良いわ。変身しなさい。纏めて相手してあげるわ」

 

「皆!」

 

あさひの掛け声と共に五人はプリキュアに変身すると名乗りを上げる。

 

「「「「「レディ……ゴー!ひろがるスカイ!プリキュア!」」」」」

 

五人はそれから暴走するラブへと向かっていく。果たして、彼女に勝つ事はできるのか。

 

 

 

 

 

???side

 

「お願い……私を……殺して………」




評価とお気に入りが欲しい……(切実)。評価をしていただけると参考になるのでどうかよろしくお願いします。また次回もお楽しみに。


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ラブの暴走 救出作戦開始

ラブが本気の姿に変身。それと同時に五人がプリキュアになると五人は構えを取る。しかし、ラブはサンライズとバタフライを指差した。

 

「私の相手はあなた達二人だけよ。他の三人はコイツらでも相手しておきな」

 

ラブが指を鳴らすと先程サンライズに吹き飛ばされた兵士のランボーグが二体とラブが一体追加して合計三体が出てくる。その三体はスカイ、プリズム、ウィングをターゲットに定めると走っていく。

 

「くっ!?」

 

「スカイ、プリズム、ウィング!そいつら、かなり強いから気をつけて!」

 

「うん!バタフライ達も気をつけて!」

 

それからスカイ、プリズム、ウィングの三人はそれぞれランボーグの相手をしていく。そんな中、サンライズとバタフライはラブと向き合った。

 

「……お前ら二人は私が潰す。……徹底的に」

 

ラブの目は怒りに震えており、二人はそんなラブを相手に身構える。その瞬間、いきなりラブの姿が消えると二人の後ろに移動していた。

 

「「!!」」

 

「遅い」

 

二人はラブから回し蹴りを喰らって吹き飛ばされるとラブは更に手に紫の蛇腹剣を出すとそれを二人へと鞭のように叩きつける。

 

「「がっ!?」」

 

「弱い。あなた達程度で私に勝てると思ってるのかしら?」

 

「だったら……これで!」

 

サンライズはすぐにホーリーサンライズのスカイトーンを取り出すと強化変身する。

 

「プリキュア!ホーリーコネクト!ひろがるチェンジ!ホーリーサンライズ!」

 

サンライズがホーリーサンライズとなると白い炎の剣をラブへとぶつける。だが、ラブはそれを蛇腹剣で絡めとると剣を奪い取る。

 

「ッ!?」

 

「あなたが憎い、殺してやる……ズタズタに引き裂いてやる!」

 

ラブはサンライズへと突進すると体から紫の蛇のような物を召喚してサンライズの両手両足を拘束。それから電流を流した。

 

「うぐぁあああ!!」

 

「サンライズ!」

 

バタフライがすぐにフォローしようとするがラブはバタフライが殴ってくるタイミングで屈んでからアッパーで真上に吹き飛ばす。更に手を翳すとバタフライの首根っこを掴み締め上げた。

 

「あ……かぁ……」

 

バタフライは空中で首を掴まれたせいで足は地面に着かずに踏ん張りが効かない。そのせいで少しずつ意識が飛び始めた。

 

「うぅ……」

 

「バタフライ!このっ……はっ!」

 

サンライズはその瞬間白い羽を舞い散らせながら拘束から逃れるとラブへと踵落としを喰らわせて怯ませる。それによりラブが捕まえていたバタフライも離されてバタフライは地面に落下。それをサンライズがお姫様抱っこで受け止めた。

 

「大丈夫?バタフライ」

 

「えぇ……ありがとう」

 

「チッ、こんな時までイチャイチャするんじゃないわよ!」

 

ラブはキレながら体から蛇のエフェクトが出るとそれがサンライズ達へと噛みつこうと伸びてくる。

 

「はあっ!」

 

それをバタフライが盾を召喚して受け止め、ラブはすぐに攻撃を集中して打ち破る。しかしその場に二人はもうおらず、二人はラブを挟むようにして両側から走ると同時に蹴りを繰り出してラブにガード越しとはいえ攻撃を当てた。

 

「くっ!?」

 

「次はこれ!スタイルチェンジ!ペガサス!」

 

サンライズはペガサススタイルとなるとラブの周囲へと雨のように射撃を降らせて逃げ道を塞ぐ。

 

「どこを狙ってるのかしら?当たらないわよ」

 

「いいや、本命は……」

 

「私よ!ひろがる!バタフライプレス!」

 

バタフライが真上からラブへと攻撃を繰り出し、ラブを浄化のエネルギーで押し潰そうとする。

 

「ふっ、その程度で勝てるとでも?」

 

その瞬間、ラブは蛇腹剣でバタフライの盾を斬りつけて破壊。攻撃を中断させた。

 

「きゃっ!?」

 

バタフライはそれに吹き飛ばされ、それをサンライズが受け止める。二人は再びラブへと向かうと同時に攻撃を繰り出してラブの腹を殴り飛ばす。

 

「がはっ!」

 

「スタイルチェンジ!ヤタガラス!」

 

サンライズは続けてヤタガラススタイルに変わると浄化技をすかさず発動。追撃をかける。

 

「ひろがる!サンライズエクリプス!」

 

サンライズから投げられた槍がラブを貫こうとする中、ラブはそれをまともに受けた。

 

「やったの!?」

 

「いや……多分今のだと倒せてない……アイツの力はこんなものじゃないはずだ」

 

サンライズがそう睨んだ次の瞬間、突如として何かの光が光る。その瞬間、サンライズは急いでバタフライを突き飛ばした。

 

「え!?」

 

バタフライがそう言ったその時サンライズへと光の光線が飛んでいくとサンライズの肩に命中。それと同時にサンライズの体に激痛が走った。

 

「ぐぁあああ!!」

 

「サンライズ!?」

 

「チェッ、当たったのはサンライズの方か。今ので目障りなあの女を始末しようと思ったのに」

 

ラブはまだピンピンしており、今の一撃でもあまりダメージにならなかったのがわかる。

 

「よくもサンライズを!」

 

バタフライが跳びあがるとキックを出すがそれはラブが片手で受け止めるとそのまま振り回して何度も地面に叩きつける。

 

「あがあっ!?」

 

そのまま地面で引きずってからプロレス技で言う逆エビ固めのような体勢でバタフライの片足を思い切り痛めつける。

 

「ゔぁああああ!!」

 

それからラブはバタフライの髪を掴むとそのまま持ち上げてから彼女の顔を地面に押し付けた。

 

「ホント、アンタ達は私を舐めすぎ。どうやったらそんな簡単に倒せると思ったのかしら?」

 

「バタフライを離せ!スタイルチェンジ!ドラゴン!」

 

サンライズはジャンプ台を連続召喚するとラブへと突撃し、両手の双剣で攻撃を仕掛ける。

 

「ふふっ、かかった」

 

サンライズが目を見開くとラブはバタフライを離してからサンライズの真上に移動して上からオーバーヘッドキックを叩き込む。

 

「ぐっ!?」

 

それからすかさず二人が立て直す前に蹴り上げて二人を吹き飛ばした。

 

「「うぐあっ!!」」

 

その時、スカイ達三人はランボーグを何とか追い詰めて倒そうと浄化技を使用しようとする。

 

「ヒーローガール!スカイパンチ!」

 

スカイから繰り出された流星のパンチがランボーグに迫る中、ランボーグは突然姿を消すと攻撃を透かしてしまう。

 

「え!?」

 

「ヒーローガール!プリズム……」

 

プリズムが浄化技を使う寸前、プリズムの相手していたランボーグも消えると二つのランボーグから出てきたアンダーグエナジーがウィングと戦っているランボーグに吸い込まれていくとランボーグは巨大化。ウィングはその大きさに後ろに飛び退いた。

 

「な、何ですかアレ!?」

 

「ランボーグが合体してしまいました」

 

「三人で何とか倒そう!」

 

ここからは強化ランボーグ対スカイ達三人による戦いへと移っていく事になる。場面は戻ってサンライズ達はラブの身体能力の高さを前に一方的に追い詰められていた。

 

「遅い、弱い、脆い!」

 

ラブからの猛攻撃を前に二人は痛めつけられていく。それからラブは体から蛇を召喚すると蛇は二人の腕に噛みついて二人を拘束。ラブは赤黒いエネルギーを二人へと流し込んだ。

 

「「うわぁああああ!!」」

 

二人の体はもうボロボロで変身解除も間近に迫っていた。ここまで追い詰められてしまえばサンライズのフェニックススタイルによる回復もできない。してしまえばサンライズの体力が保たないからだ。

 

「うぐうっ……」

 

「どうしたら……」

 

「あなた達に勝ち目なんてものはもう無いわ。諦めてやられなさい」

 

ラブは勝ち誇ったように二人を見下す。しかし、サンライズはまだ諦めていなかった。

 

「まだだ……まだ勝つ手はある」

 

「サンライズ……」

 

「バタフライ、ラブを一瞬だけ足止めできる?」

 

「え……」

 

「その隙に俺の全パワーを込めた浄化技でラブを覆うアンダーグエナジーを突破して中の子を救出する」

 

「ラブを覆うアンダーグエナジー?」

 

「ああ……前から度々見たんだがラブは多分人間を素体にしたランボーグのような物なんだ」

 

「まさか、この前のシャララ隊長と同じ……」

 

「うん。だからアンダーグエナジーを浄化してすかさずバタフライの癒しの力で復活させる……それで囚われたあの子を救えるはずだ」

 

「オッケー」

 

バタフライはサンライズの作戦に乗ると向き合う。ラブは二人が立てた作戦などつゆ知らずでサンライズへと走っていく。

 

「はあっ!」

 

その瞬間、ラブの前に蝶の盾が五枚出現。ラブはそれを蛇腹剣を振り回して打ち破るがすかさずバタフライはラブを囲むように四枚の盾を召喚。

 

「チッ、こんな小賢しい盾で防げるなんて……」

 

「スタイルチェンジ!ヤタガラス!」

 

サンライズはヤタガラススタイルに再度チェンジすると漆黒の槍を投げつける。それがラブの影に刺さるとラブの動きは停止。動きを封じ込めた。

 

「こんな物で……私の動きが止められるとでも……」

 

そこにバタフライがミックスパレットを使って技を発動。更にラブの動きを止める時間を更に長くする。

 

「二つの色を一つに!ホワイト!ブルー!温度の力!サゲてこ!」

 

バタフライが使った技によってラブの足元が凍結。ラブは蛇腹剣で盾を破壊するが凍らされた影響でまだ動くことができない。

 

「ひろがる!サンライズシャドー!」

 

そして最後の仕上げ、サンライズシャドーによる攻撃でラブの中から囚われてると思われる人を救出する……のだがサンライズが突入した瞬間、サンライズの体が少しずつラブの中に引き込まれてくように入っていく。そしてサンライズは完全にラブに取り込まれて姿を消してしまった。

 

「サンライズ!!」

 

バタフライがラブからの反撃を警戒しつつ駆け寄るがラブは全く動かなくなってしまう。

 

「一体何が……」

 

バタフライがサンライズを気遣う中、地響きと共に三体のランボーグが合体した融合ランボーグが出てくる。そしてそれと戦っていた三人がバタフライの元に集まった。

 

「バタフライ!大丈夫ですか?」

 

「私は大丈夫……でも、サンライズが吸収されて……」

 

「今はそんな事言ってる場合じゃありませんよ!」

 

ランボーグは四人を敵とみなしており襲い掛かろうとする。四人はランボーグをそのままにしておくわけにはいかないので戦うために構えを取るのだった。

 

一方でラブの中に取り込まれたサンライズは自身の周囲に纏わりつくアンダーグエナジーを押し除けながら中に入っていく。

 

「ここは……ラブが纏うアンダーグエナジーの中……ッ!」

 

サンライズが何かを見つけると駆け寄る。そこには前に一度サンライズの前に姿を現したヒメとそっくりな姿をした少女が拘束されて気を失っていた。

 

「ヒメ……じゃない。ヒメはあの時消えたはず……でもこの子、ヒメにそっくりだ。一体……」

 

するとサンライズの目にリングが出るとこの後に訪れる窮地を予知。すぐにヒメに似た少女を引き剥がそうとするがその前にサンライズの周囲に先程ラブが召喚した兵士のランボーグが大量に出現。サンライズを倒そうと睨んだ。

 

「くっ……コイツらを倒さないと追い出されるか……」

 

サンライズはこの状況を打開するべく戦うための体勢に入るのであった。




また次回もお楽しみに。


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囚われの少女を救い出す光

ラブの体内に入り、囚われた少女の前に出てきたサンライズ。サンライズが彼女を救おうとした瞬間、大量の兵士ランボーグが現れてサンライズを取り囲んだ。

 

「……これは、一筋縄ではいかなそうだな」

 

サンライズは通常のスタイルとなって炎の剣を構えるとランボーグは一斉に襲いかかってくる。

 

「サンライズフラッシュ!」

 

するとサンライズから眩い光が放射されて辺り一帯のランボーグの目を眩ませる。すかさず浄化技を発動。

 

「ひろがる!サンライズカリバー!」

 

今回はランボーグが全方位にいるため、周囲を薙ぎ払うようにサンライズカリバーを使用。周囲のランボーグを纏めて浄化した、

 

「やっぱこれで全滅はしないよな……」

 

サンライズが周囲を見渡すとまだまだ敵の数は多く、執拗にサンライズを排除しようとサンライズを狙っていた。

 

「くっ……だったら!スタイルチェンジ!ペガサス!」

 

サンライズは数多い相手に対して攻撃を捌くのが得意なペガサススタイルにチェンジ。そこにランボーグが飛びかかってくるとサンライズはそれをレイピアで受け流し、斬りつけていく。

 

「一体ずつ倒してたんじゃキリがない。だったら!」

 

サンライズは周囲に炎弾を生成。それを射撃で全方位に射出。ランボーグの急所を的確に射抜き、動きを落としてからすかさずトドメを刺していく。

 

「何とかやるしかない……ここまでの数を相手は正直厳しいけど……」

 

サンライズはラブの相手からの連戦で疲れているが、それを気にしてなどいられない。

 

「相手の動きは予知できるんだ……後は体がついて来れるかだ」

 

サンライズの目にリングが宿ると相手の動きを全て把握。相手からの攻撃は全て回避しつつ集中砲火で確実に減らしていく。

 

「ひろがる!サンライズレイン!」

 

サンライズが浄化技を使い、仕上げをする。すると周囲のランボーグに射撃の雨が降り注ぎ、次々と貫くと浄化していく。

 

「はぁ……はぁ……って、まだいるの!?」

 

サンライズが倒す間も湧き続けるランボーグ。すると今度はそのランボーグが集まっていき、巨大なランボーグを生成。サンライズを踏み潰そうと足を振り上げる。

 

「スタイルチェンジ!グリフォン!」

 

サンライズはグリフォンスタイルになると手に大剣を持ち、相手からの攻撃を迎え撃つ。

 

「はあっ!」

 

サンライズが気合いでランボーグを押し退けるとそのまま大剣にエネルギーを集約。すると剣が更に巨大化。それをランボーグへと振り下ろして両断する。

 

「ひろがる!サンライズボルケーノ!」

 

大剣を地面に突き立てたサンライズは地面にエネルギーを流し込み、真っ二つに斬ったランボーグを地面から噴き出した炎で焼き尽くす。

 

今度はランボーグは再び集まるとその姿を変化。三人の合体技でようやく倒せたベリアルの姿を形成する。

 

「がぁあああ!!」

 

「くっ、ここに来てベリアルかよ!スタイルチェンジ!ドラゴン!」

 

サンライズはベリアルのパワーとまともに戦うのは不利と考えてすかさずスタイルチェンジ。ドラゴンスタイルとなるとベリアルからの面攻撃を何とか回避する。それからジャンプ台を駆使した機動力でベリアルの背後に回り込む。それからベリアルへと双剣で少しでもダメージを稼ぐ。

 

「何とか、何とかダメージは入ってる……本家のベリアルとは違って戦いが長引くほどにパワーアップすることは無い……なら!いつかは倒せる!」

 

サンライズはベリアルの死角を縫うようにして真上を取るとそのままドロップキックの体勢に入る。

 

「ひろがる!サンライズドロップ!」

 

サンライズの龍の姿を模したキックがベリアルに決まり、ダメージを与えるが、やはり致命傷にはならない。するとベリアルは囚われている少女を見てターゲットを変更。少女へとエネルギー波を放とうとした。

 

「くっ!?させない!」

 

サンライズはすぐに少女の前へと回り込むとすぐにスタイルを変え、攻撃に備える。

 

「スタイルチェンジ!フェニックス!」

 

サンライズはフェニックススタイルになると左腕の盾を展開して防御を固めた。その瞬間、未来予知が発動するとその防御では防ぎきれずに破壊され、二人纏めて飲み込まれる未来が見えた。

 

「ッ!?これでもダメか……ひろがる!サンライズアサルト!」

 

サンライズはそれを見てすぐに盾を構えて突撃。そのタイミングでエネルギー波が放たれる。

 

「ぐううう……」

 

サンライズはたった一人でベリアルの攻撃を受け止めるが、少しずつフェニックスの姿に亀裂が入っていき、このままでは破られてしまう。するとサンライズの頭の中に声が響いてきた。

 

「どうして……どうして私を助けるの?」

 

聞こえたのはラブ……では無い囚われた少女の声だった。少女はまるで生きること自体を諦めたような声色になっている。

 

「私はあなたを、あなたの彼女を苦しめたのよ……。過去の恋愛を引き摺って……あなたを勝手に憎んだのよ」

 

「……それは君のせいじゃない。確かに君の体は俺達を苦しめる要因を作った。それでも今は君を助けたい。助けるべきだと信じてる」

 

すると少女の声はラブの声へと変わると先程の少女のように謝罪のような言葉を紡いだ。

 

「ごめんなさい……私……あなたに……いえ、あなたの心に宿る前世のあなたに恋をしていた。そして、その恋は叶わなかった。それなのにずっと付き纏うような真似をして……私は最低な女よ。それでも助けるの?」

 

「……ラブ、お前の根は良い奴だって信じたい。多分、ラブはかつて世界を何度も救ったヒーロー、ヒメの生まれ変わり。まぁ、生まれ変わりと言うには色々矛盾してる点があるけどな」

 

サンライズはラブへと話しかけながらベリアルからの攻撃を凌ぎ続ける。しかし、もうサンライズアサルトのエネルギーが限界に近づいており、もうすぐ打ち破られてしまう。

 

「でも、ヒメの魂を受け継いでいるのなら……ラブ、君の心は闇の中に囚われてるだけなのだと思う。だから俺はそれを救う。救って……君の中に眠るヒメと俺の中に眠る魂で直接話す!」

 

サンライズがそう言った瞬間、サンライズの姿がホーリーサンライズに変化。サンライズアサルトの威力が更に強化されてベリアルからの攻撃を相殺する。

 

「あさひさん……いえ、リブデビル様!」

 

「リブデビル……それが俺の前世の名前……それを知ってるって事はヒメ……ヒメなのか?」

 

最後に聞こえてきた声は誰でもないヒメその人の声である。そして、ヒメは幻影としてあさひの隣に来ると顔をほんのり赤くしていた。

 

「はい!ずっとお会いしたかったです……あ、あの……以前は失礼な態度を取ってしまいすみませんでした。私、あの時はあさひさんがリブデビル様だった事に気が付かなくて……」

 

「良いよ。むしろ、そのリブデビル?って名前……何だかむず痒いって言うか……その人の魂が宿ってるからってその名前で呼ばれるのはちょっと……」

 

「じゃあ、あさひさ……」

 

「様付けは良いよ。でも……一人でよく頑張ったな」

 

そう言ってサンライズはヒメの頭を優しく撫でる。それにヒメは幻影ながらもサンライズへと抱きついた。

 

「ずっと一人でベリアルを封印している間もあなたの事を忘れた事はありません……。こうして奇跡のような巡り合わせのお陰で私はまた会う事ができました」

 

二人で話しているとベリアルが咆哮を上げて二人を潰そうと睨みつける。そしてサンライズはヒメにある事を聞いた。

 

「ヒメ、まだキュアウェザーに変身する力……残ってる?多分今の俺だけだとベリアルには及ばない……だから力を貸して欲しいんだ」

 

「変身は可能です……ただ、スカイトーン無しでの変身は私のエネルギーの消費が激しいので……できても五分だけです」

 

「良し、五分あれば十分だ。また二人でやろう!」

 

「はい!」

 

その瞬間、ヒメが実体化。そして体が光り輝くとヒメの姿が変わっていく。

 

「空にひろがる数多の天気!キュアウェザー!」

 

ヒメは一時的にキュアウェザーへと変身。その時、サンライズにも光が灯るとホーリーサンライズの際に出てくる白い翼の片方が黒く染まると声が聞こえてきた。

 

「仕方ないなぁ……少しだけ手を貸してやるよ。相棒」

 

「カゲロウ!?」

 

そしてホーリーサンライズの服装が変化。白がメインだった服が所々黒く変化。そして胸部、足、腕にそれぞれ装甲が上から追加されると赤と白がメインのカラーリングに黒の差し色が入る。そして頭の白い鳥の飾りに黒のラインが入り、髪の毛が白からまた赤に染まった。

 

「これって……」

 

「カゲロウさんの強い想いが引き起こした奇跡です。きっと、私と同じで遠くの世界からカゲロウさんがあさひさんの力になりたい……その想いがあさひさんに伝わったのだと思います」

 

「えっと、取り敢えずこの姿の名前は……良し、エビリティサンライズ!」

 

「おいおい、何でトワイライトの文字が少しも入ってないんだよ」

 

「何となくこっちの方が良いんだよ」

 

サンライズとカゲロウが久しぶりに軽口を言い合いながらベリアルへと向かっていく。その翼はリブデビルと同じ、白と黒の翼だった。

 

「やっぱりお二人揃ってリブデビル様なんですね!」

 

「「その名前はやめてくれ!」」

 

「ふふっ、息もピッタリです!」

 

ベリアルが二人へとエネルギー弾を連射しながら攻撃してくるが、二人は空を舞いながらベリアルを撹乱。

 

「ウェザー、一緒に決めるよ!」

 

「はい!」

 

「ヒーローガール!ウェザーボール!」

 

「ひろがる!エビリティフィナーレ!」

 

ウェザーが放った晴れの力が込められたエネルギーボールをサンライズが翼を広げた状態で繰り出す赤、黒、白のエネルギーが高められた右足によるキックがベリアルへと命中。ベリアルはエネルギーボールに閉じ込められると浄化されていき、消滅した。

 

「スミキッタァ〜」

 

その戦いが終わるとサンライズはホーリーサンライズに戻り、カゲロウの声も聞こえなくなる。

 

「ありがとうウェザー……いや、ヒメ。お陰で助かったよ」

 

「いえ、寧ろこんな所にまで迎えに来ていただいてありがとうございました」

 

ウェザーはちょうど五分経過で変身解除。そのまま体が薄らと透けていく。

 

「私はこれからもあさひさんの近くにいます」

 

「それってどう言う……」

 

「ふふっ、それはあなたが一番よくわかる筈ですよ……あ、そうそう。私の中に秘められた記憶……どうして私があの子の中にいたのか、教えておきますね」

 

そう言ってヒメはサンライズへと手を翳すとその記憶がサンライズの中に宿る。そして、ヒメは完全に姿を消した。

 

「ヒメ……ありがとう。あ、そうだ。こうしていられない。スタイルチェンジ!ヤタガラス!」

 

サンライズが慌てて捉えられた少女を救出する。その瞬間、空間に少しずつヒビが入っていき崩壊していく。どうやら少女を失った事で不安定となった空間が崩れ始めたのだ。

 

「取り敢えず、ここから脱出する!ひろがる!サンライズエクリプス!」

 

サンライズが槍を投げつけて空間に穴を開けると少女を連れてそこを目掛けて飛び込む。そして、外の世界へと出ていくのであった。




また次回もお楽しみに。


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朝日と蝶の絆 目覚めた少女

サンライズがラブの中で戦っている頃、外の世界では巨大ランボーグを相手に四人が戦っていた。

 

「ランボーグ!」

 

「はあっ!」

 

三体の兵士が合体した強化ランボーグに対して四人は周囲を飛び回りながらランボーグの注意を逸らしつつ戦う。三体のランボーグが合わさっているので下手に正面からぶつかるよりもこの方が良いと考えたからだ。

 

「これでどうです!」

 

スカイが一瞬の隙を突いて飛び込むと拳を叩きつける。ランボーグがその方を向いた瞬間気弾を発射してダメージを与えた。ランボーグがプリズムを狙ってパンチを放つ。

 

「させない!」

 

そこにバタフライが盾を生成して攻撃を防ぎ、その隙にウィングが追撃をかける。四人はこれまでの経験を活かしての連携攻撃でランボーグを追い詰めていった。

 

しかし、ランボーグもただやられているつもりは無いのか、今度は体にエネルギーを固着させる事で生成した鎧を着込むと両腕にガントレットのようなものを生成。防御面と攻撃面を強化。

 

「ズルくないそれ!?」

 

「だったら打ち破るまでだ!ひろがる!ウィングアタック!」

 

「ヒーローガール!スカイパンチ!」

 

スカイとウィングが同時に浄化技を使うとランボーグへとパンチと体当たりを決める……のだが、その攻撃は全く通ることは無く凌がれてしまう。

 

「嘘!?浄化技が効かないなんて!?」

 

「だったら、更に強い浄化技をぶつけましよう!」

 

それからスカイとプリズムがスカイトーンを装填してから手を繋ぎ、スカイミラージュを掲げる。

 

「「プリキュア!アップ・ドラフト・シャイニング!」」

 

ランボーグは技の発動と同時に上空の円盤の中に徐々に吸い込まれていく。しかし、突然ガントレットに電撃が走っていくとそれが全方位に放出。その電撃の影響で円盤に亀裂が入っていった。

 

「「うあっ!?」」

 

「ランボーグ!」

 

そしてランボーグが更に力を込めると円盤が粉砕されてしまい、技は強制中断。二人もダメージを負ってしまう。

 

「だったら!ボク達の技で!」

 

「全ての色を一つに!ミックスパレット!レッド!イエロー!ブルー!ホワイト!混ぜ混ぜカラーチャージ!」

 

バタフライがミックスパレットで虹のエネルギーをウィングに送り、ウィングと共に突撃する。

 

「プリキュア!タイタニックレインボー!アタック!」

 

そしてランボーグの真上からプニバードのウィングがバタフライを乗せて落下していく。しかし、ランボーグがそれを思い切り殴ると浄化のエネルギーが掻き消されてしまい、ウィングとバタフライは吹き飛ばされると叩きつけられてしまう。

 

「「あぐうっ!!」」

 

「そんな、タイタニックレインボーもダメだなんて……」

 

「どうしよう……私達の技が全部効かない」

 

四人共傷つき、立ち上がるのもやっとなくらいになってきていた。バタフライは何とか一人でも回復させるためにミックスパレットを出すが、バタフライ自身の消耗も激しく、倒れ込んでしまう。

 

「無理したらダメです!」

 

「ごめん……でも、私が無理しなかったら……誰が代わりに無理をするの?」

 

そう言ったバタフライの言葉に誰も答えを返せなかった。四人共満身創痍でこれ以上は無理しないとならない。

 

「こんな時サンライズなら、きっと……!!」

 

バタフライは歯を食いしばって立ち上がると一人ランボーグに向かっていく。

 

「やめてバタフライ!」

 

プリズムからの叫びもバタフライは無視してランボーグへと飛び掛かる。しかし、ランボーグからの拳はバタフライの体に命中。バタフライは吹き飛ばされて落下していく。残った三人は軋む体を動かしてバタフライの元に駆け寄った。

 

「バタフライ!しっかりしてください!」

 

「う……くぅ……」

 

「サンライズがこんな所を見たら……きっと悲しみますよ」

 

「あはは……でもサンライズなら今の場面で諦めないかなって……」

 

「もう、前にもっとボク達を頼ってくださいって言ったじゃないですか!」

 

四人はお互いを支え合いながら立ち上がるが消耗が激しく、これ以上の戦闘継続は厳しい。

 

「ランボーグ!」

 

ランボーグは四人を纏めて倒すために手を翳すとエネルギー砲をチャージする。このままではやられてしまう。すると四人の前に一本の漆黒の槍が刺さった。

 

「これは……まさか!」

 

その直後、ランボーグからエネルギー砲が放たれる。そのエネルギーが迫る中、四人の前にサンライズが瞬間移動。そしてすかさずスタイルチェンジを発動した。

 

「スタイルチェンジ!フェニックス!」

 

サンライズはフェニックススタイルとなると左腕の盾を展開して攻撃を凌ぐ。これにより、四人は救われる事になった。

 

「皆、今回復するよ」

 

そう言ってサンライズはフェニックススタイルの治癒能力を四人にそれぞれ発動。サンライズの体力を大量に持っていく代わりに四人の傷の大半を癒した。

 

「あ……くぅ……」

 

サンライズは治癒能力の過剰使用でその場に崩れそうになった瞬間、バタフライはすぐにミックスパレットを取り出して癒しの力を使う。

 

「二つの色を一つに!イエロー!ブルー!癒しの力!アゲてこ!」

 

これにより、サンライズの体力も復活。倒れかけていたサンライズも持ち直す。

 

「ふう……何とか間に合った」

 

その瞬間、バタフライがサンライズへの詰め寄るとサンライズに抱きついた。

 

「もう!戻ってきていきなり無理して!四人に治癒能力なんて使ったら死にかけるに決まってるでしょ!私の回復が間に合わなかったらどうするの!」

 

「あはは……ごめん。でも、バタフライならちゃんと間に合わせてくれるって信じてたよ」

 

するとサンライズは走っていくと近くに横になって倒れている黄色い髪の少女を見つめた。

 

「この子……」

 

「ヒメちゃん!?どうして……」

 

「いや、正確にはヒメじゃない。彼女の魂を宿しているだけの赤の他人。そして、ラブの素体になっていた子だ」

 

「「「「えぇ!?」」」」

 

全員が驚きの声を上げる。よくよく辺りを見渡すと停止していたラブの姿が消えており、彼女に纏われていたエネルギーも消失していた。

 

「……この子はある出来事がキッカケでアンダーグ帝国に連れ去られて、その後洗脳されたんだ。帝国の上位の幹部としてね」

 

「サンライズ、どうしてそんな事を知ってるの?」

 

「……この子の魂に宿っていたヒメに会ったんだ。彼女から大方の事情は全て聞いた」

 

サンライズがそう話しているとランボーグが無視するなとばかりに五人を睨みつける。

 

「そういえば、エルは?」

 

「エルちゃんならちゃんと隠れているよ」

 

「出てきたら狙われてしまいますからね」

 

「そっか。なら大丈夫だね……それで、この感じだとあのランボーグはかなりの強さみたいだけど」

 

「うん。アイツ、私達の浄化技が全然効かなくて……」

 

「だったら……もっと強い浄化技をぶつければ良い」

 

「じゃあ、ホーリーサンライズのホーリーカリバーなら……」

 

サンライズはホーリーサンライズになろうとスカイトーンを出すがそれをしまった。

 

「どうしたんですか?」

 

「ホーリーサンライズにならないの?」

 

「……いや、なれないんだ」

 

「「「「え?」」」」

 

サンライズは青ざめたような様子でホーリーサンライズのスカイトーンを見ていた。それはホーリーサンライズのスカイトーンの輝きがチカチカと点滅しており、変身に使う事が厳しいのだという事を示している。

 

「多分さっき、無理にパワーアップしたせいでスカイトーンに極大の負荷がかかってしまったんだと思う。このままだとホーリーサンライズになるのは無理だ」

 

「なら、私かウィングとの技で……」

 

プリズムとウィングが合体技のためにスカイトーンを出そうとした瞬間、ランボーグは目を光らせるとビームを放ってきた。五人はそれを躱すものの、プリズムとウィングが執拗に狙われており、合体技を使うことができない。サンライズは打てる手がどんどん無くなっていく事に焦りを感じる。

 

「このままじゃ……」

 

「サンライズ、焦ったらダメ」

 

「でも、どうやったらアイツを……」

 

「じゃあさ、私達で一緒に浄化技を使おう」

 

「え!?個人個人の技だと倒せないんじゃ」

 

サンライズは不安そうな声を上げるがバタフライの目は本気であった。

 

「私、サンライズが助けに来てくれて嬉しかった。それに、サンライズは洗脳されても私の事をちゃんと思い出してくれた。私を助けてくれた。だから今度は私がサンライズの力になりたい。サンライズを助けたいの!」

 

その瞬間、サンライズの胸からスカイトーンが出るとバタフライの元にも飛んでいく。それは二人による合体技……サンライズとバタフライの絆のスカイトーンだった。

 

「バタフライ……ありがとう。一緒にアゲてこ!」

 

「うん!」

 

「「スカイミラージュ!」」

 

二人はスカイミラージュにスカイトーンを装填すると二人共空へと同時にジャンプする。

 

「天に舞い踊る美しき蝶!」

 

「熱き力よ、蝶に宿って闇をも打ち消す幸運となれ!」

 

するとバタフライが巨大な蝶型の盾をランボーグの真上に生成するとサンライズとバタフライが手を繋ぎ、不死鳥を身に纏う。

 

「「プリキュア!ダブルウィングスタンプ!」」

 

その瞬間、二人が変化した不死鳥が蝶型の盾に重なるとそのまま真上からシールドチャージ。ランボーグを上から押し潰すと身に纏った炎が蝶に移り、蝶が優しくランボーグを包み込む。そして、ランボーグに浄化のエネルギーが刻印され、消滅していく。

 

「スミキッタァ〜」

 

これによりランボーグは浄化され、プリキュア達は勝利する事になり、変身を解除する。

 

「やったぁ!!」

 

「あげはちゃんとあさひの愛の絆って感じの技だね!」

 

「愛の絆って……何だか恥ずかしいな。ねぇ、あげは」

 

「う、うん……」

 

するとあげははあさひの顔を見た瞬間、顔を真っ赤にするとそっぽを向いた。

 

「あげは?」

 

「完全に照れてしまいましたね」

 

「あげはちゃん、あさひの力になれて嬉しそう」

 

あげははあさひの元に少しずつ寄るとあさひの顔の前に自分の顔を持っていく。

 

「どうした……んっ!!」

 

その瞬間、あげはは三人の前にも関わらずあさひへとキスをした。あげはは先程までラブの影響で囚われており、とても不安だったのだ。だからその不安を拭うためにキスをしたのである。

 

「あさひ……改めて、助けてくれてありがとう」

 

「うん、あげはが無事でいてくれて良かった」

 

二人は抱き合ってお互いの無事を喜び合う。そんな二人をソラ、ましろ、ツバサは笑顔で見届けるのであった。すると先程まで眠っていた少女が目を覚ますと起き上がる。

 

「あ、目が覚めましたか?」

 

「大丈……」

 

「ここ、どこ!?え!?あの建物は何!?鉄の箱が道を走って……って、空があんなに遠く……」

 

目覚めた途端にこの慌てよう、ソラ、ましろ、あさひの三人はこの様子に既視感しか無かった。この少女を巡る話はもう少し続く事になる。




また次回もお楽しみに。


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英雄の力を受け継ぎし少女

ラブとして変身していた少女。彼女が目を覚ました途端、大慌てで周りを見渡していた。

 

「はぅうう……ど、どうしてこんな事に……魔法の世界に迷い込んでしまって……」

 

「取り敢えず落ち着こうか」

 

こちらの世界を魔法の世界という辺り、彼女はスカイランド人だという事がわかるだろう。そして、そんな彼女をそのままにしておくわけにはいかないので一度家へと連れ帰る事になった。

 

「こんな豪邸……もしかして、あなた達はこの世界の王族ですか!?」

 

「そんなんじゃないよ」

 

「てか、ソラと似たような事言うなぁ……」

 

「まぁ、でもこれだけ大きな家ならそう思われてもおかしくないよ」

 

そう言い合っている間にヨヨが出てくるとヨヨは事情を何となく察しているようで落ち着いた様子だった。

 

「……大変な思いをしたんでしょう。お上がりなさい」

 

「……え?」

 

ヨヨは少女にそう告げた。少女はそれに目を見開く。それから時間も時間なので夕飯を食べる事になったのだが……。

 

「ふぇええ……な、何ですかこの食べ物……というか、こんなにもらって良いんですか?」

 

そう言う少女に全員が違和感を持つ。食卓に並べられた料理はいつも食べるような普通の量なのだ。それなのに少女はこんなに(・・・・)なんて言葉を使っている。

 

「えっと、これが普通だよ?」

 

「普通!?え?え?……こんな豪華な料理が普通!?魔法の世界だから食べ物も豪華なんですか?」

 

「違う違う。ここは魔法の世界じゃないよ」

 

少女の言葉に不審に思ったあさひはソラやツバサへと問いかける事にした。

 

「ソラ、ツバサ。向こうでは俺達が食べたような料理は豪華な部類に入るのか?」

 

「そんな事無いはずです。現に食堂では皆さんがそれを食べていたじゃないですか」

 

「だよな……。何でこの子こんなにありがたそうに食べてるんだろ」

 

「そういえば、あなたの名前は?」

 

「……アイ。アイ・ウィンドです」

 

「もしかしてラブって名前、素体のこの子の名前を英語に変換しただけ?」

 

「思ったより安直でしたね……」

 

あげはとツバサがそう言う中、ましろがアイへとある事を訪ねる。その質問は、ましろとしてはあまりしたくなかったが、彼女の事を知るための物だった。

 

「えっと、アイちゃん。もしかして家は貧しかったりするの?」

 

その言葉を聞いた瞬間、アイの顔が青ざめると小刻みに体を震わせ始める。そして、後ずさった。

 

「家……ひっ!?わ、わ、わ、私、な、何かお気に召さない事を言いましたか?」

 

「別にそんなに怖がらなくても……」

 

「ご、ごめんなさい!こんな所にいて!すぐに出ていきますから!」

 

そう言ってアイは慌ててご飯を置くと急いで玄関へと向かっていく。本気で彼女は出ていくつもりのようだ。

 

「待って!アイさん!逃げないでください」

 

ソラが追いかけるとアイはソラへと土下座をして頭を床に擦り付けながら謝り始めた。

 

「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!家出がダメなら働きます!何でもしますから言ってください!私、死ぬまで働きますから!どうかぶたないでください」

 

「ぶつ?……まさか」

 

あさひはアイの様子からある結論に思い至る。そしてそれは他の面々も同じであった。

 

「もしかしてアイさん、家で虐待を受けてるの?」

 

「あさひ、ツバサ君、ちょっと待っててね」

 

そう言ってましろとあげはの二人がアイを一度落ち着かせてから部屋に連れて行くと着ている服を脱がせた。するとそこには大量のあざ、擦り傷、酷い所は切り傷さえもある。これはもう確定だ。彼女は、アイは家で親から虐待を受けているのだと結論付ける。

 

「も、もう良いですか?それとも、このまま私を……」

 

「大丈夫だから。落ち着いて」

 

「ひとまず、ゆっくりで良いから話し合おう」

 

二人に言われてアイは落ち着くとまたあさひやツバサ達と合流して話の続きをする事になった。

 

「それにしても酷い親に育てられたんだな……」

 

「私の親は私を道具としてしか見てませんでした。物心ついた頃から親は私に鬱憤を晴らすため八つ当たりするようになり、家事を教えて私ができるようになると全て家の事を私に押し付けて遊び暮らすようになりました」

 

それを聞いて五人はその親に対する怒りが湧き上がってくる。このような酷い親を許せないという気持ちでいっぱいだ。

 

「そんなある日です。私の心にある人の声が聞こえるようになりました」

 

「ある人の声?」

 

「その声はとても優しくて親の手で傷ついた私の話し相手になってくれました」

 

「その声が聞こえたのって大体いつぐらいから?」

 

ましろからの問いにアイは首を傾げて考えると心の中の記憶を思い出して話す。

 

「大体三年前ぐらいですね。その時から度々その声と話すようになりました」

 

「三年前。……それじゃあヒメさん消滅する前になりますね」

 

「えっとそれなんだけど、多分その声の主はヒメだと思う」

 

そう声を上げたのはあさひだ。それにツバサが疑問を持つ。何しろヒメが消えたのは数ヶ月前。それでは魂が彼女に乗り移ったと言うには時期が合わない。

 

「……ヒメ本人から聞いた話だけど、ヒメはベリアルを封印する際に、自らが抱える負の感情を魂ごと切り離したらしいんだ」

 

「「「「え?」」」」

 

四人はどういう事かわけがわからずに疑問符を浮かべる。それにあさひが付け加えるように説明をした。

 

「えっと、つまりベリアルを封印する際にヒメは封印のお札になったでしょ?その時お札になるためには自らの中に負の感情を全て消さないといけなかった。でも、当時のヒメってベリアルに勝てなかった事を理由に国民から罵詈雑言の嵐に晒されてた。その時に溜まっていた負の感情を切り離す必要が出たんだよ」

 

ヒメがお札に変わるためにどうしても邪魔になる負の感情を彼女は魂ごと切り離す事で分離に成功。そして、ヒメはお札となって封印された。

 

「でもそれってヒメが二つに分かれたって事でしょ?簡単に言ったら善の魂のヒメと負の魂のヒメ。残された負の方のヒメはどうなったの?」

 

「負の魂のヒメはそれから自分の体を探してスカイランドを彷徨い続けたんだけど、ヒメの本体はお札の中だから入る事もできなくて、そこでエルを王様達に授けた一番星にヒメの魂は拾われた。そして、その後遥か長い時を経てヒメの魂を宿す器になったのが……」

 

「私……なんですか?」

 

そう細々とアイは言う。それにあさひは頷いた。するとアイは胸に手を当てると心の中に宿ったヒメへと話しかける。

 

「そっか……あなたも大変な思いをしてきたんですね」

 

アイがそう言っているとツバサがまだ解かれてない疑問をあさひへとぶつけた。

 

「ならどうしてアイさんはラブに変わっていたんですか?」

 

「うーん、ここに関しては推測にはなるけど……多分アイの中に秘められたヒメの魂には元々負の感情が宿っていたからそれを何者かが利用して負の感情を増幅。そしてアンダーグエナジーを大量に注ぎ込む事で強制的に洗脳したんだと思う」

 

「ちなみにラブがヒメの記憶をいきなり思い出すようになったのは?」

 

「それはお札になっていたヒメが消滅してヒメの魂がラブの中に取り込まれて完全に一つに戻ったからかな。キュアウェザーの事もちゃんと覚えていたし」

 

「それが一番可能性が高そうだよね」

 

「それにしてもアイちゃんはこれからどうするの?」

 

「……必要とあればこの家で住み込みで働きます。どんな言いつけもこなしますので言ってください。もし要らないと言うのでしたらすぐに出ていきます……。私の価値はその程度の事でしか見出せません。なので……そのどちらかで……」

 

「ダメ」

 

アイがまるで自分を物のように扱って欲しいと決めつける物言いにあさひ達が納得するはずもない。

 

「じゃあどうすれば……私のような奴隷人間の価値なんてその程度しか」

 

「その奴隷人間って言うのをまずはやめて欲しいかな」

 

ましろの言葉にソラやツバサも次々とアイへと反論していく。それは闇の奥底に沈んだ彼女を引き上げるための言葉である。

 

「そうですよ。自分の事を奴隷だって言うのはどうかしてます」

 

「アイさんはアイさんのやりたい事をやって欲しいです」

 

「……私は……私は……」

 

するとアイの目からポロポロと涙が溢れ出てくるとその場に俯く。彼女としても本当は奴隷扱いされるのは嫌だったのだ。

 

「普通の人として誰かと過ごしたい……闇の力に目覚めてから私、一人で闇の中に囚われていたから……。誰かの温もりを知らないの……」

 

アイはその場に膝を付くと頭を床に擦り付けた。またあさひ達へと土下座をする。それを見たましろはアイの両肩にポンと手を置く。するとアイは頭を上げた。

 

「それじゃあ私達と友達になろうよ」

 

「……え?」

 

「それ賛成!」

 

「それが一番良さそうですね」

 

ましろの提案に他の面々も次々と賛成。アイは急に言われた友達という単語にキョトンとする。そんな物今までずっと無かったからだ。

 

「……良いんですか?」

 

「当たり前です。むしろさっきまでの話を聞いていて友達にならないという選択肢はありません!」

 

「アイ、これからは俺達が側にいるから。ここがアイの家だよ」

 

あさひ達からの温かい言葉にアイは更に大粒の涙を浮かべると嬉しさで泣き始める。

 

「ありがとうございます……私、友達として精一杯頑張りますのでどうかよろしくお願いします」

 

「友達として頑張るって……」

 

「アイさんらしい言葉ですね」

 

「……あ、そうだ」

 

あさひは何かを思い出すと部屋へと戻っていくと何かを手にして戻ってくる。それはかつてヒメが使っていたキュアウェザーに変身するためのスカイトーンだ。

 

「これ、アイにあげる」

 

「これ……」

 

「アイはヒメの生まれ変わり。だからヒメが使っていたこれは持ち主にちゃんと返さないと」

 

「でも私自身はただヒメさんの魂を宿しているだけです。本人では……」

 

「大丈夫。これがあればいざと言う時ヒメが力を貸してくれるから」

 

それを聞いてアイは恐る恐るそれを受け取ると心の中にいるヒメが共鳴。スカイトーンの放つ光が更に強くなったように見えた。

 

「それじゃあアイちゃんの部屋の準備をしないとね」

 

「私も手伝います!」

 

「それじゃあ俺とツバサでご飯の片付けはしておくね」

 

「はい!」

 

こうして、あさひ達の家にアイが合流。また虹ヶ丘家は一段と賑やかな場所になるだろう。そんな様子を遠くの森から見つめる影がいた。

 

「ラブの奴は完全に懐柔されたか……仕方ない。今度は俺が影からミノトンを支援してやるか。もし奴も失敗するようなら……俺自ら叩きのめしてやる」

 

そう言って影は姿を消す。まだまだあさひ達には試練が立ちはだかりそうだ。果たしてあさひ達は試練を乗り越えられるのか。それはまだまだ先の話になる。




次回でこの物語も100話目に到達します。なので次回は100話目の記念回です。また次回もお楽しみに。


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皆でゲームをしよう!

アイが虹ヶ丘家に住むようになって数日。あさひは全員の時間が空いている事を確認して皆を集めた。

 

「えっと、あさひ。急にどうしたの?」

 

「ボク達全員で何かをするんですか?」

 

「うん。皆に集まってもらったのは一緒にゲームをしたくてさ」

 

「ゲーム……ですか?」

 

アイの問いにあさひは頷くとミラーパッドを取り出して画面を見せる。そして、画面を操作すると色んなゲームができるようだった。

 

「ミラーパッドを使ったゲームかぁ。面白そうだね!」

 

「それで、私達六人だけでやるの?」

 

「………いや、実は今回あと六人誘おうと思ってる」

 

「六人?え?でも、そんなに誰を誘うの?」

 

あげはの質問にあさひはニッと笑うとミラーパッドを使って通信し、誰かと話をした。そして、話が終わるとあさひは少し待つようにソラ達に言う。それから約十分後、ミラーパッドが光り輝くとゲートが開いた。

 

「さぁ、来てくれたみたいだよ」

 

「一体誰が……」

 

光が収まるとそこにいたのはソラ、ましろ、ツバサ、あげは、ソウヤ、シャララ隊長、そしてエルの七人であった。

 

「「「「えぇええ!!?」」」」

 

当然こちらのソラ達は驚きの顔に変わる。いきなり自分と同じ姿をした人が現れれば驚くのも無理はない。

 

「誘いを受けてくれてありがとう、ソウヤ。それと向こうの世界の皆」

 

「誘ってくれた時はびっくりしたけど、折角の誘いを断るわけにはいかないよ。それに俺もまた会えて嬉しいよ、あさひ」

 

「私達もまさかこちらの世界に来れる日がこんなに早く来るとは思いませんでしたよ」

 

「それに、こっちの世界の私達にも会えたしね」

 

「はい。あさひ君が用意してくれたゲームをやれるのが楽しみです」

 

「ヤバっ、もうテンションがアガってきたんですけど!」

 

「えるぅ!」

 

「それにしても、ここまで人が増えるとこの部屋も狭く感じるな」

 

そう、ただでさえこの部屋に元々七人の人がいたのにそれがソウヤ達の参加で倍に増えたのだ。部屋を狭く感じるのは仕方ないと言えるだろう。

 

「それじゃあ早速皆でゲームをやるんだけど……ひとまずおばあちゃんから教わったこのミラーパッドの力で……」

 

するとあさひの操作でミラーパッドが光り輝き、その場の全員がその中に吸い込まれていく。すると広々とした空間に出てきた。そして、あさひ達の近くにミラーパッドが出現し、それが出入り口としての役割を果たすと考えられる。

 

「えっと、ここは……」

 

「ミラーパッドの中だよ。この前おばあちゃんに聞いて教えてもらったんだ」

 

「ミラーパッドの中ってこんな感じなんですね」

 

「面白そうです!」

 

二つの世界のソラが興味深そうにする中、あさひが自分達の世界の六人とソウヤ達の世界の六人の間に線を引いてチーム分けを示した。

 

「取り敢えず、このままソウヤチームとあさひチーム。それぞれの世界のメンバー六人ずつでチームを組んで対抗戦をするよ。まずはプリキュアの五人は全員が変身して」

 

「あれ?でもそれだとその子と姉さんだけ能力差が出ない?」

 

ソウヤからの鋭い指摘にあさひは問題無いと言わんばかりにミラーパッドを操作する。

 

「シャララ隊長とアイの二人はこのミラーパッドの力でプリキュア並みの身体能力にパワーアップするから身体能力の差は気にしなくて大丈夫だよ」

 

「それなら安心だね」

 

「それとその子の名前はアイさんって言うんだ」

 

「あ、アイ・ウィンドです……よ、よ、よろしくお願いします」

 

アイは緊張した面持ちでソウヤ達に挨拶をする。それを聞いてソウヤの世界のあげはが安心させるように話しかけた。

 

「そんなに怖がらなくても大丈夫だよ。そっちの世界の私達と同じような感覚で接すれば良いから」

 

「は、はい!」

 

アイはそれを聞いて安心したような顔に変わり、それを踏まえてあさひはスカイミラージュを構えると残りの九人も持つ。

 

「じゃあ行くよ!」

 

「「「「「「「「「「スカイミラージュ!トーンコネクト!」」」」」」」」」」

 

その瞬間、その場が光り輝く。そして十人のプリキュアが姿を現した。

 

「「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」」

 

「「ふわりひろがる優しい光!キュアプリズム!」」

 

「「天高くひろがる勇気!キュアウィング!」」

 

「「アゲてひろがるワンダホー!キュアバタフライ!」」

 

「夜明けにひろがる眩い朝日!キュアサンライズ!」

 

「静寂ひろがる夜の帷!キュアナイト!」

 

変身が完了するとサンライズの胸から四つの光が輝き、グリフォンがスカイ、ペガサスがプリズム、ドラゴンがウィング、フェニックスがバタフライの中に入るとその姿を変化させ、サンライズの世界のプリキュアの四人の格好が一部赤く変わる。これは同じ姿の影響で間違えてしまわないようにするためのサンライズからの配慮だ。

 

「今姿が変わった四人のステータスに変化は無いから安心して勝負できるよ」

 

「それで、皆でやるゲームと言うのは?」

 

「それは……旗取りゲームだよ」

 

するとミラーパッドがサンライズの意思に呼応し、ある程度の距離を置いて二つの旗が立ち、更に岩場や森、川や広場などの様々な地形が生成された。

 

ルールはそれぞれのチームごとのチーム対抗戦でお互いが手にしたボールを相手に当てて撃破する。当たった選手はその場で脱落し、観戦席に行く。ただし、ボールが地面にワンバンしたり相手にボールをキャッチされた場合は当たった判定にはならない。

 

また、選手ごとでそれぞれ特殊能力を発揮できる。例えばキュアプリズムなら気弾を生成し、射撃を放つ事が可能。ただ、ボール以外による攻撃でのヒットは脱落にはならない。

 

勝利条件は相手チームの全滅か、相手の旗を取ることだ。ちなみにボールは生き残っている選手であれば無限に生成できるので弾切れになる事は無い。その分ダメージや疲れとかはそのまま反映されるので下手に動き回ると疲れだけが溜まる事になる。

 

「それじゃあ作戦会議の時間を十分とってからゲームスタートだからよろしく」

 

それから両チームが集まって作戦を話し合い、その後布陣に着いた。二人のエルが審判兼応援役となり、ゲームの開始を告げる。

 

「「げーむしゅたーと!」」

 

その声が響き渡るとともにサンライズチームのウィングが特殊能力の空中飛行で空に飛び上がる。そして、スカイとアイがペアを組んでサンライズと共に攻め上がった。守りに付くのはプリズムとバタフライの2人だ。対してナイトチームはナイトが前に出ると残りのメンバーの内、バタフライを守りに残して四人はそれぞれ隠れるように姿を消す。

 

「やっぱりナイトの事だから隠れると思ったよ……さて、どうするか」

 

サンライズが走りながら考え込んでいるとサンライズの目に未來視の力が宿る。すると両脇から相手チームのウィングとスカイが同時にボールを投げてくる様子が映った。

 

「スカイ、アイ、伏せろ!」

 

サンライズがそう言った瞬間、茂みからナイトチームのウィングとスカイが飛び出すと手にしたボールを投げてくる。しかし、サンライズの指示で二人ともその場に倒れるように伏せたため、ボールは空を切った。

 

「「え!?」」

 

沙流石のナイトも動揺が隠せないのか、今の不意打ちで倒せなかった事に驚いている。

 

「隙だらけ!」

 

その瞬間、サンライズは一人上空に跳びあがっており上から防御がガラ空きのナイトチームのウィングとスカイにボールを投げつけた。

 

しかしこれは前に出ていたキュアナイトが槍を2本投げつけてボールを弾き飛ばして対応する。

 

「マジ?今のを防ぐか」

 

そして、サンライズ、スカイ、アイの三人は後ろに下がるとナイト、スカイ、ウィングの三人と三対三で睨み合う。

 

「どっちも三人……なら」

 

サンライズは体の後ろに手を回して上空にいるサンライズチームのウィングに合図を出す。

 

それを見たウィングは六人が固まっている場所を避けて迂回しつつ旗を狙う。

 

「プリキュア!ミライレコード!ミライコネクト!ナイトプリズム!」

 

キュアナイトがナイトプリズムへと姿を変化。サンライズ、スカイはその特性を知っているためにこの後ナイトが何をするのか予想する。そんな中、アイは一人アワアワしながら状況を見ていた。そしてそれを見逃すナイトチームのスカイでは無い。

 

「今です!」

 

するとサンライズの未来視が発動し、この後キュアナイト・プリズムスタイルの狙撃でこちらのプリズムを撃ち抜き、バランスを崩した所を隠れていたシャララ隊長と相手のプリズムが奇襲。それと同時に相手のスカイがアイへとボールを投げるのが見えた。

 

「仕方ない。スタイルチェンジ、フェニックス!」

 

その瞬間、サンライズが左腕の盾を召喚するとナイトが放つ狙撃の直線上に盾を展開。それと同時にアイのカバーに入った。

 

「ッ!!」

 

これによりナイトの狙撃は防がれ、更にスカイからのボールもサンライズがキャッチしてしまう。

 

「今のタイミングで止められるんですか!?」

 

サンライズが攻撃を止め切ったと思った次の瞬間、上空にいたサンライズチームのウィングの所に気弾が飛んでいくとそれが弾けて光り輝く。その影響でウィングの目が眩んでしまった。

 

「もらった!」

 

そのタイミングでシャララ隊長が飛び出すとボールを当てて倒してしまう。これにより、サンライズチームのウィングが脱落。残り六対五だ。

 

「まさか先制されるなんて……」

 

「どんどん行くよ」

 

すると今度は茂みからナイトチームのプリズムが連続で射撃を放ち、アイを集中攻撃。アイはそれをまともに喰らって慌てふためいた。

 

「ふあっ!?痛い、痛いです!」

 

隙だらけのアイへと今度はナイトチームのスカイとウィングが同時にボールを投げる。その瞬間、サンライズが先にボールを投げるとそれはナイトチームのスカイに命中。スカイは脱落となり、それと同時にウィングもアイへとボールを当ててアイが脱落。

 

「スカイ、一度下がるよ」

 

サンライズは残ったスカイに声をかけてその場から退いていく。ナイトもカウンターを警戒したのか下がっていき、再び遠くから膠着状態となった。

 

「どんどん仕掛けるよ。今度は……」

 

サンライズが次の指示を出すと今度はバタフライも含めた全員で攻撃をする事に。スカイが茂みに入る中、サンライズ、プリズム、バタフライの三人で一斉に突撃する。その様子を見たナイトは隠れたスカイを警戒しているのか一度攻撃に人数を割く事なく全員で防御に回った。

 

「それじゃあ、行くよ!」

 

バタフライは障壁をサンライズの前に展開するとそのまま相手の旗へと突撃。最初に投げられたナイトチームのプリズムからの一発を盾で凌ぎつつ、旗へと手を伸ばす。

 

勿論それをさせまいとバタフライが投げキッスを地面にして煙幕を張る。そして跳び上がっていたナイトチームのウィングがサンライズチームのバタフライへとボールを投げつけてバタフライが撃破。そこにサンライズチームのプリズムがウィングへとボールを投げてナイトチームのウィングも撃破。

 

これで残るはサンライズチームがサンライズ、スカイ、プリズム。ナイトチームがナイト、プリズム、バタフライ、シャララ隊長だ。

 

「プリキュア!ホーリーコネクト!ひろがるチェンジ!ホーリーサンライズ!」

 

するとサンライズはナイトチームの誰も見たことの無いスタイル、ホーリーサンライズに変身すると初速を一気に上げて旗へと走る。

 

「させない!」

 

その瞬間、シャララ隊長がサンライズの前に回り込みボールを投げた。だがその瞬間、サンライズの姿は白い羽を舞い散らせながら消える。

 

「ッ!後ろ!」

 

ナイトが第六感でサンライズが一瞬にしてワープした事を察知するとシャララ隊長、バタフライ、プリズムの三人がかりで止めようとする。するとナイトの第六感が警報を告げた。

 

「これは!ッ!ミライレコード!ミライコネクト!ナイト!」

 

すかさずナイトはαスタイルとなるとそのスタイルをαスタイルへと変化。すぐに手にした槍をサンライズチームの旗に向かって投げる。それと同時にサンライズチームのスカイが出てきてシャララ隊長を後ろから撃破。そしてサンライズを支援するためにサンライズを横から狙うナイトチームのプリズムへとサンライズチームのプリズムがボールを投げ、それにナイトチームのバタフライがプリズムへとボールを投げて二人のプリズムが撃破された。

 

残すはサンライズチームはサンライズとスカイ。ナイトチームはナイトとバタフライだ。そしてこのタイミングでナイトが投げた槍が旗の近くに突き刺さり、ナイトはすかさず瞬間移動。これで条件は五分と五分。あとはスピード勝負だ。

 

「ッ!?不味い、このままだと負ける……」

 

サンライズは未来視でナイトが旗を取るスピードの方が速いと察知。しかもここに来てナイトチームのバタフライが障壁を旗の前に展開して足止めを図る。

 

「仕方ない……バーストタイム!」

 

その瞬間、サンライズの体に炎が宿ると体力を大幅消耗する代わりに全ての能力を三倍に高めるサンライズの奥の手中の奥の手、バーストタイムを発動。猛スピードでバタフライの障壁を粉砕しつつ旗に手を伸ばす。そして、サンライズとナイトはほぼ同時に旗を手に取るとそれと同時に二人のエルからの笛が鳴った。

 

「「ひきゅわけ」」

 

どうやら二人のエルが見てもわからなかったほどに二人が旗を取ったタイミングは同時だったので今回は引き分けに終わる事になる。

 

「引き分けかぁ」

 

「あと一歩早かったら勝てたんですけどね」

 

サンライズとナイトが歩いていくと互いに健闘を讃えて握手し、ゲームは終わりを告げた。その後、二回戦、三回戦と行うが結局勝敗はそれぞれ一勝しただけだったのでトータルの戦績は引き分けの形で終わる事になる。

 

そして一同は元の世界に戻るとそれぞれ話し合っていた。

 

「楽しかったですね!ソウヤ」

 

「ああ、でもやっぱり同じ姿だからか見分けるのが難しいな。向こうのソラ」

 

「むぅ……ソウヤが向こうの世界の私と話してます……同じ私でもやっぱりモヤモヤしますね」

 

「あはは……流石にそっちの世界の私は嫉妬なんて……」

 

あさひの世界のましろがそう言ってソウヤの世界のましろを見ると、思いっきり嫉妬しているのか何だか怖い顔になっていた。

 

「ソウヤ君まさか、他の世界のソラちゃんも誘惑してるの?」

 

「えぇ!?」

 

「ボクはそんなに違いは無さそうですね」

 

「はい。あ、でもソウヤ君が女装した時はちょっと困惑しま……」

 

「ちょっと!?それは恥ずかしいからここで言わないで!」

 

「え?ソウヤ君女装した事あるの?もしかしてプロデュースしたのって向こうの私だったりする?」

 

「さっすが私!よくわかってるじゃん」

 

ソウヤが女装した事に対してソウヤの世界のツバサが口を滑らせたために思いっきり二つの世界のあげはが意気投合してしまう。

 

「同じ人同士だから意気投合するのも当然か」

 

「すみません、今回あまりお役に立てなくて……」

 

「そんなに固くならなくても大丈夫。アイは今回のゲーム楽しめた?」

 

「は、はい!」

 

「あ、もうこんな時間だ。そろそろ戻るね、あさひ」

 

「今日は来てくれてありがとう。今度はそっちの世界に行っても良いかな?」

 

そうあさひが聞くとソウヤはニッコリと笑って決めていた答えを返す。

 

「勿論だよ!今度は皆で俺達の世界に遊びに来て欲しいな」

 

「ああ!」

 

「「またね!」」

 

そう言ってあさひとソウヤは握手をしてからソウヤの世界から来た七人は帰って行った。

 

「またいつか……絶対会おうな」

 

あさひはいなくなったソウヤ達へと呟き、またいつもの日常へと戻っていく事になる。




今回でこの小説も100話目を迎えました。まだまだこの小説は続くので今後もよろしくお願いします。また次回もお楽しみに。


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空港での出会い

ある日の昼、太陽の日差しが照る中、ソラはいつものように体を鍛えていた。今回はエルやプニバードの状態のツバサを背中に乗せて腕立て伏せをしている。

 

「1!2!3!4!5!6!7!8!」

 

「ショーラ!がんばえ!」

 

エルが応援する中、ソラは張り切った様子で腕立て伏せを続けていた。

 

「はい!まだまだ行きますよ!」

 

その隣ではあげはがパラソルによって出来た日陰の下、ビーチチェアの上で涼みながら保育士の採用試験についての本を読んでいる。そこに二人のドリンクを持ってきたアイが話しかけた。

 

「えっと、あげはさん、ソラさん、ドリンク持ってきましたよ」

 

「ありがとうアイちゃん。あ、アイちゃんにもう一つ頼み事をしても良い?」

 

「何ですか?」

 

「アイちゃんも少し休もうか」

 

「え?」

 

あげはがそう言ったのはやはりと言うよりアイは放っておくと家でやる事を全て一人でやろうとしてしまうのだ。あげはとしてはそれはありがたいのではあるが、それはアイに無理を強いる事なので彼女にとってもあまり良く無いからである。

 

「アイちゃん、無理はよくないよ。だから一緒に休もう」

 

「……でも」

 

アイはまだ遠慮していた。過程はどうあれ自分はつい先日までラブとして敵対していたのだ。まだどうしても気まずい空気になってしまうのだろう。

 

すると突然二階の窓からましろとあさひの声が聞こえてきた。

 

「「えぇー!?本当!!」」

 

二階ではましろとあさひが両親とタブレットで通話しており、ある事を聞かされていたのだ。

 

『そうなんだよ』

 

『仕事が一山超えてやっと休みが取れたの』

 

『あぁー、早く会いたい。ホワホワのまっしろな綿雲、ま・し・ろ・ちゃん!それに、夜の闇を照らす明るい太陽、あ・さ・ひ・君!』

 

「もぅ、止めてよパパってばもう子供じゃないって言ったでしょ」

 

「父さん、本当に止めてくれ。頼むから」

 

二人が恥ずかしがる中、二人の父親はその言葉をあんまり言ってはいけないと思い出す。

 

『あ、そうだった。ごめんごめん。でも、幾つになっても可愛い娘と息子に変わりは無いんだ』

 

『そうね、早く会いたいわ』

 

それから通話が終わり、二人が一階に降りるとそこにはクラッカーを持ったソラとツバサが二人へとクラッカーを鳴らす。

 

「「おめでとうございます!」」

 

「はぇ!?」

 

「……もしかして、さっきの聞こえてた?」

 

「うん。嬉しそうな声がバッチリ聞こえてたよ」

 

「きこえた!」

 

どうやら窓を開けていたからか外にも声が筒抜けだったらしい。そんな中、事情を知らないアイが小声であげはへと聞く。

 

「お二人はどうして喜んでいるんですか?」

 

「えっと、二人のご両親は遠い所で仕事をしてるんだけど、久しぶりに帰ってくるんだって」

 

「そうなんですね……羨ましいです。私の両親は……」

 

「それ以上は言わなくて良いよ。前にも聞いたし、アイちゃんはあんまりその事は考えたくないでしょ」

 

あげはからの気遣いにアイはコクリと頷く。それと同時並行であさひ達も話をしていた。

 

「ご両親はいつ帰ってくるんですか?」

 

「明後日だよ。ももぞら空港まで迎えに行こうと思って」

 

「「空港!?」」

 

「あ、前に困っているおばあさんをお送りした所ですね」

 

「そうだな」

 

「空港かぁ、いつか行きたいと思っていた。飛行機が飛び立つ様を見られる場所です。それに、確かももぞら空港のレストランスペースにはヤーキターイ……じゃなくてたい焼きのお店もあるとか」

 

「うん、しかも飛行機の形のたい焼きだよ」

 

ツバサが想いを馳せる中、ソラやましろ、あさひ、あげはもそれに賛同。あげはの運転で皆で空港にまで行く事に決まるのであった。

 

しかし、一つ問題が発生した。ただでさえ定員オーバーだったのにアイも加わった事であげはの車に乗り切れなくなってしまうのだ。

 

「こうなったら、俺がトランクに乗るしか……」

 

「えっと……私、実は……」

 

あさひかそう言う中、アイが恐る恐る手を上げて発言する。その内容に一同は驚きを隠せなかった。

 

「えぇ!?アイさん、他の人に憑依できるんですか!?」

 

「は、はい……」

 

「どうしてそんな力を……」

 

「あ、あの……私にもよくわからないんです。突然変異?特異点?なんて言ったら良いんでしょうか。スカイランドで住んでいた頃一度やったら出来てしまって……。それも多分親から嫌われた原因なのかと」

 

するとアイの体が光るとソラの中に入っていく。そして、ソラの髪に黄色い筋が一本入り、憑依した事がわかるようになっていた。

 

「こ、こんな感じです。あ、憑依したからと言って私の意識しか無いわけじゃないです。必要とあればソラさんと交代もできます」

 

「人に憑依できるなんてファンタジーだね……」

 

それから人数問題も解決したために一同は早速ももぞら空港へと車に乗って行くことになる。

 

「「「ふぁああ……ここが空港……」」」

 

ソラ、アイ、ツバサの三人は空港に来たことに興奮を禁じ得ない。それをあさひ、ましろ、あげはが笑って見守る。

 

「「「うん!」」」

 

「くーこー、きた!」

 

するとどこからかスーツを着た一人の男性とその付き添いのように二人の女性が歩いてきた。

 

「あのキリッとした方達は?」

 

「飛行機を操縦するパイロットさんと空の旅をエスコートしてくださるキャビンアテンダントさん達です」

 

「凄く素敵です!」

 

「はい!」

 

ツバサの解説にソラは興奮気味になる中、あげはが時計を見て皆へと話しかける。

 

「ましろんとあさひのパパとママが到着するまでに時間があるし、あちこち回って楽しもうか」

 

「うん!」

 

それから一同はレストランスペースでたい焼きを味わったり、飛行機の模型やお土産売り場で桃と飛行機が合わさったような形をしたクッキーを見たりした。またそのクッキーと同じような形をした空港のマスコットとも触れ合い、グッズも見ることになる。

 

「空港って楽しい所ですね」

 

「くーこ!すき!」

 

「次はどこに行く?」

 

「少年が一番楽しみにしている所かな」

 

「それって……」

 

一同が向かった先は飛行機が飛び立つ所を見ることができる展望デッキだ。そこでは運良く丁度飛行機が飛び立つ所でソラ、ツバサ、アイはその瞬間を興奮しながら見ていた。

 

「ひこーき!とんだ!」

 

「やっぱ、空港と言えば飛行機でしょ!」

 

「はい!ボクはずっと空を飛びたくて航空力学を勉強してきました。なので、夢が叶った今でも飛行機が憧れの存在に変わりはありません!」

 

ツバサのその言葉にあさひ、ましろ、あげはの三人はニッコリと笑う。するとソラとアイが疑問を浮かべていた。

 

「それにしても不思議です」

 

「はい、あんな大きい物が羽ばたく事もせずに飛ぶなんて……」

 

「ましろさん、一体どうなってるんです?」

 

「えっと……それは」

 

「姉さん、やっぱりここは……」

 

あさひからの言葉にましろは閃くとツバサの元に行き手を置く。ここはましろよりもツバサの方が適任と言える場面であるからだ。

 

「ツバサ君、タッチ」

 

「はい!」

 

それからツバサによる説明が始まった。鳥は羽ばたく事で翼に風を受けて飛ぶ。しかし、飛行機は羽ばたく事ができないのでこうはいかない。それをカバーするのがジェットエンジンによる推進力であり、それによって風を翼に受ける事ができる。こうする事で空を飛ぶ事を可能としているのだ。

 

「えぇ!?ジェットニンジン!?」

 

「空飛ぶ野菜かな?」

 

「あとエンジンね」

 

ましろとあさひが苦笑いする中、ツバサは説明を続けて行く。

 

「つまり、鳥も飛行機も翼が受ける力で飛んでいます。それを専門用語で言うと……」

 

「揚力」

 

「そうなんです!よく知ってましたね……ってあれ?」

 

あさひ達が声の方を向くとそこには一人の少女が立っていた。声の主も彼女である。

 

「そんなの簡単すぎよ。風って目に見えないけど……」

 

そう言って少女がシャボン玉を吹くと風に乗って空へと飛んでいく。こうする事で風の流れを見る事が可能だ。

 

「風って飛ぶのに凄く大事なのよね!」

 

少女がそう言うとツバサが少女がかけている飛行機のような形をしたバッグを見つける。

 

「あ、もしかして君も飛行機に興味が?」

 

「あなたも詳しそうね。望遠鏡で一緒に見ましょう」

 

それから二人はすっかり意気投合。仲良くなると備え付けられている望遠鏡で一緒に飛行機を見る事になる。

 

「ツバサ君、楽しそうです」

 

「………」

 

「アイ?」

 

ふとあさひがアイの方向を見るとどこか上の空と言った顔つきになっており、何だかボーッとしているようだった。

 

「え?ふぁい!?ご、ごめんなさい!」

 

「大丈夫だよ。アイ、急にどうしたの?」

 

「こ、これは……その……」

 

アイの目はどこかツバサと一緒にいる少女を羨ましそうに見るような感じに近く、ジッとツバサの事を見つめていた。

 

「アイ、もしかして……」

 

あさひはそんなアイの様子を見てある仮説に至るが、結局その前に他の皆も飛行機を見ることになったためアイに直接聞く事はできずじまいとなる。

 

「えるぅ!みる!」

 

エルはあげはが抱っこしながら見せる事になり、ソラは望遠鏡を逆から見てましろとあさひにツッコまれていた。また、アイは飛行機を見ながらもどこか物足りないと感じており胸に手を置くと胸がキューっと締め付けられるような気持ちをしている。

 

それから一同は近くのベンチで座りつつジュースを飲む事に。そして、少女と話を始めた。

 

「私は天野翔子。翔子には空高く飛ぶ子って意味があるの!素敵でしょ!あなたは?」

 

「ボクは……夕凪。夕凪ツバサです」

 

それを聞いたあさひ、ましろ、ソラはビックリする。ツバサには元々名字が無かったはずなのでどうしてそんな名字になったのかと。

 

「「「夕凪?」」」

 

「名字があった方が何かと便利でしょ?この前、少年と考えたんだ」

 

「そうなんだ」

 

「ツバサ君にピッタリです!」

 

「むぅうう……」

 

それに更に膨れっ面をするアイ。どうやらツバサが羨ましいようなのだ。あさひはアイへと耳打ちする。

 

「じゃあ今度、ツバサを誘って一緒に考える?」

 

それを聞いてアイは顔を赤くするが、すぐにブンブンと首を横に振るとツバサには後から言いたいと言って二人だけで考えたいという意志を示す。

 

「翔子ちゃんって本当に飛行機が好きなんですね」

 

「そうよ。だって私、いつかママみたいなパイロットになるのが夢なの!」

 

「「「「「「えぇ!?」」」」」」

 

「じゃあ、翔子ちゃんのママってパイロットさんなんですか?」

 

「凄いでしょ!」

 

「凄いです!凄すぎます!」

 

「今日はね、ママの操縦する飛行機に初めて乗る日なの!」

 

「それは楽しみですね!」

 

するとあげはとあさひは顔を見合わせる。翔子はまだ子供。であれば普通なら親も一緒にいるはずなのだが……彼女は一人だけ。そこで二人で聞くことにした。

 

「ところで、一人みたいだけど誰か大人の人は?」

 

「お父さんとは一緒じゃないの?」

 

「パパなら、今登場手続きをしていて……近くで待っててと言われて……あ!」

 

どうやら翔子は父親の言いつけを守れずにこの場所にまで来てしまったようなのだ。そして、その事を思い出した翔子はやってしまったと思い至るのであった。




また次回もお楽しみに。


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荒れ狂う空

翔子は彼女の父親に搭乗手続きが済むまで待つように言われていたのだが、その言いつけを守らずに展望デッキに来てしまっていたのだ。

 

「そうだ……私。待ってないといけないのに……」

 

「搭乗手続きって……」

 

「一階だよ」

 

「きっとパパが心配してます!」

 

すると翔子は心細くなって見る見るうちに目に涙が溜まっていく。そのまま泣き出してしまった。

 

「大丈夫、一緒に探してあげるから」

 

そう言ってすかさずフォローに入るあげは。そして、他の面々も頷く。

 

「パパ……見つかる?」

 

「うん。きっと見つかるよ。それにパパも翔子ちゃんを探しているはずだから、そろそろ……」

 

あげはがそう言うと同時に館内のアナウンスが鳴り響くと迷子の呼び出しについての放送が流れ、それは翔子を探しているという内容であった。

 

「ね」

 

「では、私の背中に。もう、ジェットニンジンの速さってパパの所に送り届けます!」

 

そう言ってソラが翔子の前に背中を差し出すとおんぶしようとする。それに翔子はすっかり元気になると体を預けた。

 

「うん!あと、ジェットニンジンじゃなくてジェットエンジン……うわぁああ!」

 

翔子が乗った瞬間ソラは翔子が驚くようなスピードで駆け出して行く。

 

「そういえば、ソラは案内所の場所を知ってるのか?」

 

あさひがそう言った直後、ソラが自分達の元に戻ってきた。その理由は単純。

 

「案内所ってどこですか?」

 

その言葉に全員がズッコケると結局全員で行く事になった。そして、案内所では彼女の父親が待っており無事に再会する事になる。

 

「あぁ、翔子。無事で良かった……」

 

「ごめんなさい、私……パパの近くで待ってないといけなかったのに……」

 

「パパも目を離しちゃってごめんね」

 

その様子を安心したように見つめるあさひ達。すると翔子の父親は立ち上がるとあさひ達へとお礼の言葉を口にした。

 

「皆さん、本当にありがとうございました。妻は……翔子のママは、パイロットの仕事だから飛行機であちこちを飛び回っていて、いつも一緒には居られなくて。寂しい時もあると思うのですが、そんなそぶりを見せずにママの事を応援していて……」

 

翔子の父親の話を聞いているとあさひとましろは自分の両親の事を重ねて考えていて、その話に共感を持つ。

 

「いつか、一緒に空を飛ぶんだって楽しみに」

 

「わかります。楽しみすぎて、飛行機の見える場所まで一人で行っちゃったんだよね」

 

「うん!」

 

「えるぅ〜!」

 

それから翔子の父親が時計を見ると搭乗の時間が迫っており、もう行かないとならない時間になっていた。

 

「あ、そろそろ行かないと」

 

「うん!皆!またねー!」

 

そう言って翔子は彼女の父親に連れられて搭乗口へと歩いて行く。それをあさひ達は手を振りながら見送った。

 

「「「「「「いってらっしゃい!」」」」」」

 

「……やっぱり、飛行機って良いな。乗客を乗せて飛ぶだけじゃ無くて、乗る人の想いも繋げてるんですね」

 

「少年、良い事言うね!」

 

「いっこといった!」

 

「プリンセスまで!」

 

ツバサとあげは、エルがそんな会話をしているとアイは胸がドクドクと高鳴る音が聞こえており、ツバサをほんのり赤い顔をしながら見つめていた。

 

「(……やっぱりツバサ君は優しいし、物知りだし……何より、プリンセスのナイトを目指しているというのがカッコいいし……どうしよ。私、胸のドキドキが止まらない)」

 

「アイ」

 

「ふあっ!!」

 

あさひがアイに話しかけるとアイは変な声を上げてしまう。これにより、あさひはアイに抱いた疑問を確定させた。

 

「アイはさ、もしかしてツバサの事が好きだったりする?」

 

「ふぇ!?あ、うぅ……」

 

アイは顔を真っ赤にすると小さくコクリと頷いた。アイは割と素直なのでこういう所で誤魔化す事はしない。

 

「そっか。じゃあ、俺達がサポートしようか?」

 

「え……でも……私なんかの事を……」

 

アイは自分に自信を持てない様子で俯く。しかし、あさひの目は本気だった。

 

「大丈夫。きっとアイならツバサの心を射止められるから。自信を持って」

 

「でも……」

 

「……じゃあさ、今度姉さんやあげはに勇気を出す良い方法を教えるように頼むから」

 

「……どうして私なんかのためにそこまで……」

 

「そりゃあ友達の恋だからだよ。ちゃんと結ばれて欲しいと思うのは自然じゃない?」

 

「………!」

 

アイはそう言ってもらえて嬉しいのかニコリと笑う。そんな中、また迷子のアナウンスがまた鳴り響いた。

 

『迷子のお呼び出しを致します。プリキュア様〜、プリキュア様〜、ミノトン様がお探しです。屋上、展望デッキまでお越しください』

 

「……はい?」

 

あさひが呆然とする中、ソラ達も警戒心を露わにする。ミノトンと言えば最近現れるようになった新たな幹部だからだ。

 

「ミノトンって、この前現れた……」

 

「嫌な予感しかしないんだけど」

 

「兎に角行こう!」

 

それから全員で屋上にまで移動するとそこには何処ぞの刑事のような格好をしたミノトンが携帯扇風機を片手に涼んでいる様子だった。

 

「「「「「「ミノトン!」」」」」」

 

「私達を呼び出してどうするつもり?」

 

「こうするのだ!来たれ!アンダーグエナジー!」

 

あげはの問いにミノトンは即座に変装の服を脱ぎ捨てるとアンダーグエナジーを召喚。そしてそれは彼の使っていた携帯型扇風機に吸い込まれていくとそれがランボーグへと変身する。

 

「ランボーグ!」

 

「貴様等がここに来た目的は我を恐れて飛行機で高飛びするためだろうがそうはいかん!」

 

ミノトンの言葉にあさひは未來視を発動するとその直後に何が起きるのかを理解。

 

「ヤバイ!これは……」

 

だがわかった所で今のあさひには止められない。次の瞬間、ランボーグが空に向けて扇風機の風を飛ばすと瞬く間に上空に乱気流が荒れ狂う。この悪天候では飛行機が飛べない上にこれから来る飛行機も着陸できない。

 

「やりやがったな!お前!」

 

「わはは!これで我からは逃げられんぞ!」

 

あさひが叫ぶ中、ミノトンは笑いを浮かべる。そしてそれと同時に他の面々も怒りの声を上げた。

 

「何を言ってるんですか」

 

「私達は逃げも隠れもしません!」

 

「思い込みが激しいタイプみたいね!」

 

「翔子ちゃんはママの飛行機に乗るのを楽しみにしてたのに!」

 

「ましろさんやあさひ君だってご両親と会うのを!」

 

すると一人アイが震えながらも一歩前に出るとミノトンへと気持ちをぶつける。

 

「あ、あなた!私達が狙いなら関係無い人まで巻き込まないでよ!わ、私達はいつでも相手になるから!」

 

「……貴様、どこかで……ッ!まさか、ラブ様……いや、もうただの小娘か。プリキュアでも無い貴様に用は無い」

 

「ッ……」

 

「アンダーグエナジーを失った無力な貴様に何ができる」

 

「それは……」

 

アイはミノトンにそう言葉で切って捨てられるとそれに対してツバサが怒りを露わにした。

 

「アイさんは無力なんかじゃない!ボクも、皆もそう信じています」

 

「ツバサさん……」

 

「アイにだってここにいる価値はある。だから、もうアイを弱いだなんて言わせない!」

 

あさひもそれに倣ってミノトンへと叫んだ。それからアイがエルを抱っこするとその場から退避。そして残った五人はミラージュペンを手にした。

 

「皆さん、行きましょう!」

 

「「「「「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!」」」」」

 

「スカイ!」

 

「プリズム!」

 

「ウィング!」

 

「バタフライ!」

 

「サンライズ!」

 

「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」

 

「ふわりひろがる優しい光!キュアプリズム!」

 

「天高くひろがる勇気!キュアウィング!」

 

「アゲてひろがるワンダホー!キュアバタフライ!」

 

「夜明けにひろがる眩い朝日!キュアサンライズ!」

 

「「「「「レディ……ゴー!ひろがるスカイ!プリキュア!」」」」」

 

五人が変身を完了するとエルを抱えたアイは物陰から様子を伺っていた。

 

「皆さん……お願いします」

 

「覚悟は決まったようだな。いざ尋常に勝負!」

 

ミノトンの言葉にまずはランボーグがエネルギーを高めると扇風機の部分から風を噴射する。それを五人は躱す。それから間髪入れずに風のエネルギーの刃を生成してそれを斬撃波としてスカイとサンライズに飛ばしてきた。二人はそれを見切って躱していく。

 

「スカイ!サンライズ!」

 

ウィングが加勢しようとするが、強風のために近寄れない。それどころか、逆に吹き飛ばされてしまう。ウィングは常に空を飛んでいるために乱気流の影響をまともに受けてしまうのだ。

 

「うぃんぐ!」

 

「大丈夫です。でも……上空の風がこんなに強いと、空高く飛ぶ事ができません……」

 

「ウィングは無理して空から攻撃しなくて良い!ここは俺達に任せろ!」

 

サンライズは炎の剣を手にするとランボーグの足を狙って攻撃を命中させる。

 

「ラン!?」

 

ランボーグがバランスを崩した瞬間を狙ってプリズム、バタフライ、スカイによる三連撃も決まり、形勢は一気に有利になった。

 

「ちょっと、私達を忘れてない?」

 

「はあっ!」

 

「これでも喰らっとけ!」

 

そして、サンライズの炎弾、プリズムの気弾、バタフライの蝶型のエネルギー弾が飛んでいき、ランボーグに命中。そしてウィングも低空飛行でパンチを決めつつランボーグの前を飛び回って撹乱した。

 

「ほらほら、ボクもいますよ!低空飛行なら……行ける!」

 

ウィングはランボーグを完全に翻弄し、ランボーグに隙を作る。そこにスカイとサンライズが同時に出て拳を繰り出す。

 

「「隙あり!」」

 

これにより、ランボーグは後ろに下がるとミノトンはまだ平常心を保っていた。

 

「敵ながらあっぱれ。ならば、更なる力で……」

 

そこまで言った途端、突如として悲鳴が聞こえてきた。全員がその方向を向くとそこにはアイが闇のエネルギーに拘束されており、更にエルも前にバッタモンダーのランボーグがやったようなアンダーグエナジーを濃縮した空間に閉じ込められてしまう。

 

「えるぅ!?」

 

「く……うぅ……」

 

「アイ!エル!どうしてこんな……」

 

「ミノトン、何をしている。プリキュアなど無視してプリンセスを狙え。そういう点ではバッタモンダーの方がマシだぞ」

 

するとどこからともなく声が聞こえてくるとミノトンはそれに対して怒ったように声を上げた。

 

「お主のような卑怯なやり方を我は好かん!そもそも我はプリキュアと戦いに来たのだ。プリンセス・エルや非戦闘員の小娘は後回しで良い!」

 

「ふん。それがダメだと言ってるんだけどな。まぁ良い。ひとまずこの娘は俺の物だ。カモン!MAXアンダーグエナジー!」

 

その瞬間、大量のアンダーグエナジーがアイの中に注がれていく。勿論突然大量のアンダーグエナジーを注入されたアイの体は軋み、悲鳴を上げる。その激痛に彼女の意識は朦朧とした。

 

「ああああああああ!!」

 

「アイさん!」

 

ウィングがすぐに駆け寄ろうとするものの、突風に阻まれて上手く近寄れない。

 

「う……くぅ……」

 

アイは体の中で暴れるアンダーグエナジーに対して必死に抵抗。侵食を少しでも遅らせようとする。

 

「嫌だ……またあんな姿になりたく無い!私の友達を傷つけたく無い!」

 

だが抵抗も虚しくアイの心は侵食され続ける。そうして、彼女の心は闇の中に染まっていくのであった。




また次回もお楽しみに。


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天気の戦士の再誕

闇に心が染まったアイ。だが、その瞬間アイの懐に入っていたキュアウェザーのスカイトーンが輝きを放つ。

 

「あの光……まさか!」

 

プリズムがそう言う中、ランボーグはアイへと攻撃を仕掛けようと構える。しかし、それをさせまいとウィング、サンライズ、スカイが三人がかりでそれを押し留めていく。

 

するとその光がアイを包み込むと彼女を覆うアンダーグエナジーの中に飛び込んでいった。その先にいたのは心の中に存在するアイの魂である。

 

『助けに来ましたよ。私の依代となったアイさん』

 

「どう……して。私は弱いんだよ?こんな私を救った所で……結局は皆さんの足手纏いに……」

 

その瞬間、スカイトーンはヒメの姿に変わるとアイの頭を優しく撫でる。

 

『あなたは友達を傷つけたく無いと叫んでいました。私はそんなあなたに力を授けます』

 

「……なんで?なんで、なんで……私なんかを助けたって意味はないって」

 

『そう思うのは自由です。でも、あなたは彼らに必要な存在。……本当は、私が側にいてあげたい。私が皆さんの力になりたい……。でもそれは今の私にはできません』

 

ヒメは残念そうにそう呟く。今のヒメには何の力も無い。敵を倒す力も無ければ、アイ以外の誰かに寄り添う事もできないのだ。

 

「じゃあ私を塗り潰して!私の魂をあなたにあげるから私の代わりになって。そうすれば、こんな弱い私を前に出さなくても済むから。それに、私みたいな奴隷人間なんて誰も欲してなんかいないよ!」

 

そう叫ぶ彼女の魂は嗚咽を漏らし、自分の心の中に溜まった感情を次々と吐露していく。彼女はとにかく自分を卑下し続けると自分なんて要らないと言う。

 

『……あなたは本当にそれで良いんですか?折角好きな人ができて、彼と幸せにならなくても……本当に良いんですか?』

 

「嫌だよ!私だって普通の幸せが欲しい。普通の生活をしたい。普通の友達が欲しい。でも、無理なの……私なんかにそんな大それた願いなんて度が過ぎているの……。私のような奴隷が……そんな願いなんて叶うわけが……」

 

それを聞いたヒメはアイの魂からアイの姿を強制的に具現化させると彼女の胸ぐらを掴んだ。

 

『ふざけないでください……大それた願い?そんなの誰が決めたんですか。私を宿している宿していない以前にあなたも一人の人間です。人が自分の幸せを求めて何が悪いんですか。アイ……お願いだからそうやって自分を卑下するのはやめてください』

 

「ヒメさん……」

 

するとヒメは自らに光を灯すとアイの方へと自らの手を差し出した。

 

『もし、あなたに自分の幸せを願う気持ちがあるのでしたら私の手を取りなさい。もし、無いのでしたらまだ私の力を使うには時期が早い。私はここから消えます』

 

アイはここに来て二択を迫られた。ヒメの手を取るか取らないか。もし取ればきっと力を手に入れられる。だがそれは自分がサンライズ達と共に戦うということになるだろう。アイは悩んだ。今の自分が行っても足手纏いになるだけなのでは無いのか……と。しかし、彼女はある事を思い出した。それは、自分が好きになったウィングことツバサの顔である。

 

「……私は、諦めたくない。私自身の幸せを掴みたい。そのために、皆の力になりたい」

 

そう言ってアイは覚悟を決めるとヒメの手を掴んだ。するとヒメは光と共にアイを包むアンダーグエナジーを全て消失させていく。

 

『アイさん。あなたならきっと私の力を使いこなせます。……私はあなた。あなたは私なのですから』

 

「もし……私が失敗したら……」

 

『その時はアイさんの友達が何とかしてくれます。だから、精一杯やってください』

 

そしてその直後、元の世界ではアイを覆うアンダーグエナジーが強制消失。そして、アイが元の姿で出てくるとその手にはミラージュペンとスカイトーンが握られていた。

 

「馬鹿な……」

 

「アイさん……アイさんならきっと戻ってくると信じてましたよ」

 

「私は、アイ・ウィンド。まだまだ未熟な私だけど、私の願いを諦めない!」

 

それからアイは手にしたミラージュペンをスカイミラージュに変化。そのまま変身をする。

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!ウェザー!」

 

そう言うとスカイミラージュの回転部分にWHETHERと表示される。するとアイはヒメと同じように雲の上を模した空間に移動。それと同時にするとアイの髪が左側にサイドテールで纏まるとともに髪の色が更に明るい黄色に変化する。それと同時に黄色と白の靴が装着された。

 

「煌めきホップ!」

 

煌めきホップでは頭に雷のエフェクトと共に髪飾りが装着されて雪のエフェクト共に耳にイヤリングが付与されていく。

 

「爽やかステップ!」

 

爽やかステップでは雲のエフェクトと共に体に黄色と白を基調としたドレスのような服が着せられていき、足には雨のエフェクト共に水色のハイソックスが履かれる。

 

「晴々ジャンプ!」

 

晴々ジャンプでは太陽のエフェクト共に両手に白に黄色のラインが入ったグローブが付けられる。最後に風のエフェクトと共に天女がするような羽衣が背中に装着されて変身を完了する。

 

「空にひろがる数多の天気!キュアウェザー!」

 

アイが変身したのはヒメが変身していたプリキュア、キュアウェザー。ここにヒメの意思を引き継いだプリキュアが誕生したのであった。

 

「キュアウェザー……」

 

「ヒメちゃんとそっくりな格好だけど」

 

「やっぱりアイはヒメの力を……いや、これはアイが自分で掴んだ力。アイ自身の力だ」

 

「ランボーグ、更なる力を解放しろ」

 

ミノトンがそう指示を出すとランボーグが体に付いているボタンを押して風量を増加。圧倒的な風量をウェザーへとぶつけようとした。

 

「はあっ!」

 

するとウェザーは雲を召喚するとそこに電気が高まっていき、雷が放出。その竜巻を打ち消してしまう。

 

「何!?」

 

それからウェザーは走っていくとランボーグの懐に入り込む。それから両手を突き出して竜巻を発生させると遥か上空へと吹き飛ばした。

 

「ランボーグ!!」

 

「「「「ええ!?」」」」

 

「ヒメが変身したキュアウェザーは空の天気を操って戦っていたけど、アイの変身したキュアウェザーは直接天気の力を行使するんだ……」

 

「ウィング、使ってください!」

 

するとウェザーが空の乱気流に負けない程の上昇気流を発生させるとウィングはそれに乗って空高く飛び上がる。

 

「ランボーグ、近づけさせるな!」

 

ミノトンの指示にランボーグは上空で立て直すと落下しながら風の刃を飛ばしていく。

 

「バタフライ、速さの力だ!」

 

そこに未来予知でサンライズがどうするべきか読み取ると指示を出す。

 

「オッケー!二つの色を一つに!ホワイト!イエロー!速さの力!アゲてこ!」

 

バタフライがウィングにスピードアップのバフをかけるとウィングは猛スピードで上昇。そして、ランボーグの真上に回り込むとそのまま踵落としで地面へと吹き飛ばす。

 

「たあっ!」

 

更にウェザーが手を振り下ろすとランボーグへと特大の雷が落下。これにより、ランボーグの扇風機を回す機械の部分が故障。風を起こせなくなる。

 

「バタフライ、決めるよ!」

 

サンライズはすぐにホーリーサンライズへと変身するとホーリーサンライズのスカイトーンをバタフライへと投げ渡す。

 

「聖なる光に集え!ミックスパレット!レッド!イエロー!ブルー!ホワイト!混ぜ混ぜカラーチャージ!」

 

それと同時にウェザーも浄化技を発動。するとウェザーの周りに晴れ、曇り、雨、雷、風、雪と言った全ての天候の力が集結するとそれが一体化。エネルギーボールへと変換する。

 

「ヒーローガール!ウェザーボール!」

 

アイの使うウェザーボールは一つの天気に縛られることが無く、全ての天候の力を纏めてぶつける事が可能になっているのだ。

 

「プリキュア!ホーリーレインボー!アタック!」

 

そしてサンライズが変身した白カラスとウェザーの発射したエネルギーボールが同時にランボーグに激突するとその体を一気に浄化していく。

 

「スミキッタァ〜」

 

ランボーグの浄化に成功したサンライズ達。それを見た影は消えていき、それと同時にミノトンも撤退。

 

「ここは潔く退くとするが次はこうは行かんぞ!ミノトントン!」

 

これにより六人は変身を解くと天気も元に戻り、翔子の母親が操縦する飛行機は無事に飛び立つ事ができた。

 

「これで、ましろさんやあさひ君のご両親の乗った飛行機も着陸できますね」

 

「いよいよ、感動の再会。緊張してる?二人共」

 

「そ、そんな大袈裟だよ。でも、ちょっとワクワクしてるかな。皆の事を早くパパとママに紹介したいし」

 

「あさひ君はどうですか?」

 

「……そりゃあ嬉しいよ。それでもあげはとの関係をまずはちゃんと報告しないとだから緊張してると言うか、ちゃんと受け入れてもらえるか不安というか」

 

「大丈夫ですよ。きっとあさひさんとあげささんの関係は受け入れてもらえます」

 

そう言ってフォローしたのはアイだった。それを見て他の六人は顔を見合わせる。先程までの彼女なら絶対に言わなさそうな言葉だったからだ。

 

「アイ、もしかしてプリキュアになる時何かあったのか?」

 

「……内緒だよ」

 

アイはそう言ってニッコリと笑い、それからましろとあさひは両親と再会。あさひはあげはとの関係を改めて報告すると二人はあげはに“あさひをよろしくお願いします”と言い、ひとまず親には受け入れてもらえた。

 

それから全員で家に帰ると何やら二人の父親は新しいTシャツとしてましろとあさひの名前及び顔写真の入ったシャツを見せてきた。それを見て二人は恥ずかしさのあまり赤面になると絶対に商品化しないでと釘を刺すことになる。

 

そして、それから僅かな間だが、ましろとあさひは買い物や料理と言った両親との楽しい時間を過ごす。そしてあっという間にその時間は過ぎていき、二人の両親は海外へと旅立った。

 

「行っちゃったね、姉さん」

 

「うん。でも、前に見送った時は寂しかったけど……今は皆がいるから!」

 

「父さん、母さん」

 

「「いってらっしゃい」」

 

こうして、あさひ達は両親を見送った後に空港を後にする。そんな様子をアイを再びラブにしようとした影は見守っていた。

 

「……もうプリキュアになった以上、あの子はラブにはならない……か。だが、彼女がおらずとも俺の使命は変わらない。必ず、プリンセスを奪って見せる」

 

そう言って影も去り、その場には静寂が残る。果たして、この影は何なのか。それが明かされる日も遠くは無い。




また次回もお楽しみに。


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ミラーパッドでレッツトレーニング!

ある日の昼間、虹ヶ丘家ではこの日行われる花火大会までの間、プリキュアである六人がそれぞれ過ごしていた。

 

「もう!楽しみすぎて待ちきれません!花火大会……早く始まらないでしょうか……」

 

ソラがワクワクする中、ましろは机の上にネイル用の道具を並べている。

 

「夕方までのもう少しの辛抱だよ。ソラちゃんも夕方になるまでの間、ネイル入れやってみる?結構楽しいよ!」

 

「いえ……私にはとてもできないので、体でも動かしておきます」

 

「ねぇ、見てみて。どう?この振り付け。保育園の実習でダンスをやろうと思ってさ!」

 

そう言ってあげはが腕を斜め上に突き出すポーズを取っていた。それを見たましろは笑顔で拍手する。

 

「可愛い!子供達もアゲーだよ!」

 

「ましろん、アゲーじゃなくてアゲ!だよ」

 

「アゲ?」

 

「もっとノリノリでアゲ!あさひもここ最近私のアゲをちゃんと理解してくれるようになったし、双子だからましろんもできるよ!」

 

「そ、そうかな……」

 

あげはがノリノリになる中、ツバサが苦笑いをしつつ会話に参加してきた。

 

「どっちだって良いじゃないですか……それよりも、この本によると丸い形の花火って地上から見ても空から見ても同じ丸い形に見えるそうですよ。ボク、知らなくて」

 

「少年ってば、どんどん物知りになっていくね」

 

そう言ってあげはとましろがツバサの方に興味を持つ中、それを遠くからアイは嫉妬の目で見つめている。

 

「むぅ……ツバサ君にどんどん他の女が寄り添って……」

 

「取り敢えず落ち着こうか、アイ」

 

そう言うアイをあさひは宥めるとアイは俯いて自信なさげに呟いた。

 

「私……得意な事とか無くて……皆が羨ましい……」

 

「じゃあさ、まずは興味のある事を沢山調べてみたら?物知りになればきっとツバサと自然にその話題について話せるようになるよ」

 

「そう?私、勉強したらツバサ君と仲良くなれる?」

 

「やってみる価値はあると思うよ」

 

アイはあさひに勧められてそれをやってみる事を考えた。その直後、ソラが窓の外を見るとそこにはエルがミラーパッドを手に持っていじっているのが見える。それを見て慌ててツバサが外に出ていくとアイはツバサを追って行ってしまう。

 

「……あげは」

 

「何?」

 

「ここ最近恋人らしい事できてないからさ、今度時間が空いた時で良いからデート……する?」

 

あさひからの提案にあげはは嬉しそうにあさひをハグするとその返事を返す。

 

「勿論だよ!あさひ、デートしよ」

 

「むぐっ……あげは、苦しい……」

 

あさひはあげはに強くハグされた影響で息がしづらくなってしまう。しかもあげはとあさひの身長関係は丁度あげはがハグするとあさひの顔があげはの胸辺りに来てしまうので余計にあさひは気まずいのである。

 

「あげは、ハグするのは良いけどもう少し俺の顔の位置が上に来るようにしてよ」

 

「えぇー、私はあさひ相手なら気にしてないから幾らでも良いのに……」

 

それから二人が他愛もない話をしながら外に出るとそこではツバサがエルからミラーパッドを取り上げており、そのミラーパッドが光を放っていた。

 

「……これ、この前あさひ君が操作した時と同じような光が出てますけど!?」

 

「ちょっと待て!?この光は……不味い!すぐに離れないと吸い込まれ……」

 

あさひは前にミラーパッドの中でゲームをやるためにヨヨから操作方法を聞いていたのだが、この光によって何が起きているのかを瞬時に理解。近くにいたソラ、ましろ、ツバサ、あげは、アイを避難させようとするがもう遅い。

 

そのまま全員がミラーパッドに吸い込まれてしまうのであった。それから六人は光の道を落ちていくと以前のようにミラーパッド内に広がる空間が見えてくる。だが、以前とは違い落下の力も加わっているのでこのままでは激突は避けられない。

 

「「「「「「ぶつかるー!」」」」」」

 

しかし、地面に雲のようなクッションが出てくると幸いにも激突による怪我は無かった。

 

「てゆうか、楽しいこれ!」

 

それから一同は立ち上がるとミラーパッド内の空間を見渡す。その景色は以前ここでゲームをした時とは少し違う様子だった。

 

「ここってミラーパッドの中ですか?」

 

「前来た時とは雰囲気が違うね」

 

「この景色……多分これ、わくわくレッスンモードだ」

 

「「「「「わくわくレッスンモード?」」」」」

 

あさひが手を頭に置いて溜息を吐いているとそこにピンクの豚を模した妖精が現れる。

 

「ウェルカム!プリキュアの皆さん!トン!」

 

「トン?もしかしてアンダーグ帝国の罠?」

 

ツバサの言葉にあさひ以外の全員が身構えるがあさひはその考えを即否定した。

 

「違う。コイツは多分ここのレッスンの案内役。名前は確か……」

 

「ピンクットンだトン!ぶひっ、ぶひっ!」

 

「やばっ、可愛い!」

 

あげはが妖精の可愛らしさにメロメロになる中、あさひは時間も惜しいのでひとまず話を進める事をする。

 

「それで、俺達が受けるレッスンはどれ?」

 

「え?レッスンなんてやってる時間は私達には無いですよ」

 

「残念だけどこの機能を起動したら何かしらレッスンをクリアしないと出られない仕組みになってるんだ」

 

「そう言う事だトン」

 

「えぇ!?あさひ、これの回避はできないの?」

 

「無理!」

 

あさひが半ば諦めたように無理だと言い放つ。それを受けて一同は仕方ないと言わんばかりにレッスンを受けざるを得なかった。

 

「まぁ、トレーニングをトントン拍子でクリアすれば大して時間もかからないトン!ぶひーっ!」

 

するとピンクットンは鼻息を思いっきり放射するとピンクの煙が辺り一帯に撒かれてその煙が晴れるとそこには幾つもの絵が描かれたカードが出てくる。

 

「へぇー、色んなトレーニングがあるんだ」

 

「体を鍛えるばかりじゃないんですね」

 

「あさひ君、どれがどのレッスンかわかりますか?」

 

「……ごめん、そこまでは知らない」

 

「よくわからないけど、やったら帰れるみたいだし、挑戦してみよっか」

 

「仕方ないですね!」

 

「グッドグッド!それでは好きなカードを選んでトン!」

 

そう言ってピンクットンがカードを取るように促すと六人はそれぞれ自分がやりたいと思ったカードを取っていく。

 

「私、ダンスが良い!」

 

「飛行機の事っぽいし、ボクはこれかな」

 

「このトレーニング、何だか可愛い感じ」

 

「私はやはり、体を鍛えたいです!」

 

「え、えと……私は……これ」

 

「……じゃあ俺はこれかな」

 

それぞれあげははダンス、ツバサは飛行機、ましろはメイク道具、ソラは階段、アイは人と人が向かい合う物、あさひは鏡の絵が描かれたカードを手にした。

 

「オッケートン。カードをこっちへ」

 

そう言われて六人はそれぞれカードをピンクットンに手渡す。それからピンクットンはそのカードを見つめて誰が誰かを確認していた。

 

「えっと、お姉さんがダンスで、オレンジの少年が……んが、んが……」

 

「待て!それだけはやるな!」

 

あさひがそう言った直後、ピンクットンは特大のクシャミをするとカードがバラバラに落下。そして、それぞれの前で扉となって生成される。

 

「………これ、大丈夫か?」

 

あさひは今のピンクットンの行動に嫌な予感を感じていた。何しろ、今のクシャミでカードがバラバラに落下したのである。そして目の前にある扉の色はそれぞれあげはが赤、ソラが白、ましろが青、あさひがピンク、ツバサが黄、アイがオレンジと自分のモチーフカラーとは違う色になっているのだ。

 

「さ、自分の前の扉を開けちゃってトン」

 

「嫌な予感しかしないが、まぁ、開けるか」

 

あさひ達がそれぞれ扉を開けるとそこにはあげはは暗い空間に一枚の鏡がある部屋に、ましろは長い階段が連なる塔の前に、あさひはダンスステージのある部屋に、ソラは明るい光が灯りつつ中央にメイク道具がある机やメイク用の大きな鏡のある部屋に、ツバサは何も無い薄暗い部屋に、アイは大量の本棚の中に本が並ぶ部屋がそれぞれ広がっていた。

 

「「「「「えぇ!?」」」」」

 

「やっぱりやりやがったなお前!」

 

あさひ以外の五人が自分の思っていた部屋とは違う様子に驚く中、あさひは怒りを露わにしている。

 

「あはー、うっかりカードがシャッフルされちゃったんだトン。ま、気にせずトレーニングして欲しいトン」

 

「「「「「「ちょっ!?」」」」」」

 

六人は文句を言おうとしたが、その暇を与えられる事なく扉は閉まってその部屋の中に閉じ込められてしまう。

 

アイside

 

「はうう……何この部屋。見渡す限りの本、本、本。これ、ツバサ君が選んだ場所じゃ……」

 

アイが中央にある巨大な椅子に座ると眩しい光が灯った。そして、蝶ネクタイをしたピンクットンが現れる。

 

「さぁ、始まりました。クイズ、脱出ミラーパッド!十回正解したらクリアっトン」

 

「クイズ……十回も正解しないとダメなの!?」

 

「今日のテーマは飛行機!では早速問題っトン!」

 

それから早速アイはあまり知識の無い飛行機のクイズをやらされる羽目に遭うのだった。

 

あげはside

 

あげはが入ると、僅かに部屋が明るくなるがそれ以外は変わらない。

 

「これ、あさひが選んだレッスンじゃん。この鏡は……」

 

あげはが鏡に触れると突如として鏡に自分の姿が映るとそれが実体化。そして、目の前に姿を現す。

 

「私は聖あげは。アゲ!」

 

「ちょっ、それ私のなんですけど!」

 

「それもそうトン」

 

すると紫色をしたピンクットンが姿を現すとあげはへとここのレッスン内容を示す。

 

「ここは姿も同じ、中身も同じあなた自身との戦いトン。5本勝負で3回自分に勝ったらクリアだトン。それじゃあ早速やっていくトンね!」

 

あげはは言われるままにそれから自分との勝負を始めていくのであった。

 

ソラside

 

ソラが部屋に入るとキラキラした光に当てられてからサングラスをかけたピンクットンに中央へと案内される。

 

「キラキラし過ぎてクラクラします……」

 

「さ、早くメイクして頂戴トン!素敵な自分になれればゴールトン!」

 

「一人でメイク!?無理ですよ!」

 

「つべこべ言ってる暇は無いトン!レッツトライトン!」

 

「……できるでしょうか。私に……」

 

ソラは不安そうになるが、すぐに首を振ってその考えを追い払う。

 

「いえ、こんな弱気ではいけません、例え困難な道でも前向きに挑戦する。それがヒーロー!」

 

「良いわぁ、その意気トン!世界があなたを待ってるトン!」

 

ソラは早速慣れない手つきでメイク道具を開けて鏡を見ながらメイクを始めることになる。

 

ましろside

 

ましろはいつの間にか運動着に着替えて髪をポニーテールに纏めた状態になっており、塔を見上げていた。

 

「ひぇー、あそこまで行かなきゃなの?階段メチャメチャ長すぎだよ!」

 

ましろがその階段のあまりの長さに萎縮しているとそこに髭を生やしたピンクットンが出てくる。

 

「ふぉっふぉっふぉっ。若者よ、長い階段が苦手なら別の行き方もあるトン」

 

「え?本当?」

 

すると塔の中にましろが案内されると塔の上から垂れ下がる一本の綱の前に出てきた。

 

「これなら近道トン」

 

「なるほど、確かにこれならゴールまで一直線……って、無理無理!絶対無理だよ〜!」

 

確かに綱を上に登るだけの力があれば行けるのだろうが、運動が苦手なましろにできるはずも無く……。結局正規ルートを走らざるを得なかった。

 

ツバサside

 

ツバサが何も無い部屋の中央に行くとそこにはツバサよりも年上の一人の女性が立っていた。

 

「はぇ?何ですかここ。というかあなたは?」

 

するとそこに赤く丸い鼻を付けたピンクットンが出てくるとここの概要を説明。

 

「ここは目の前にいる異性と対話して異性から好感度を一定以上得られればクリアトン」

 

「好感度を得るレッスン!?でもこれ、アイさんが……あ、もしかして誰か仲良くなりたい異性に出会ったんですか!?」

 

「まぁ、ひとまずやってみるトン」

 

「ひとまずコミュニケーション能力ならボクもある程度ありますし、これなら……」

 

「あ、ただ一つ注意なのが相手する異性は自分が一番苦手とするタイプだトンから気をつけるトンね」

 

「……え?」

 

その瞬間、女性はツバサへとグイグイと詰め寄っていくと幾つもの質問を連続してぶつけてき始めた。それこそ、僅かに苦手意識を持つあげはのように……。

 

あさひside

 

「アイツ、マジで後で覚えとけよ……」

 

あさひが愚痴を溢しつつステージの上に立つとアフロヘアのピンクットンが出てくる。

 

「オッケー!ミュージックに合わせてダンストン。ノリノリのダンスがゴールトン」

 

「……てか、ダンス苦手なんだよな。あげはから偶にレッスンを受けて一緒にやるけど全然ついていけないし……。でも、やるしか無いか」

 

こうして、あさひもトレーニングを受ける事になり六人全員がそれぞれの目の前に課せられたトレーニングを開始するのであった。




評価欲しい……。参考になるので評価をいただけると嬉しいです。また次回もお楽しみに。


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トレーニングタイム 支え合う仲間

ミラーパッドに吸い込まれたプリキュアチーム。六人はそれぞれに課せられたトレーニングを行っていたのだが……

 

アイside

 

アイは問題が始まってから早速手詰まりになっていた。何しろ、飛行機の知識など彼女には皆無なのだ。あったとしてもツバサの解説を少し齧った程度なのである。それでは十問正解どころか一問すら答えられていなかった。

 

「うぅ……こんなのわかる訳ないよ……そもそも私、この世界での知識はほぼ皆無……飛行機の事なんてとてもじゃないけどわからないよ……」

 

アイは完全に落ち込んでテンションも下がってしまっていた。丁度キリが良いという事で休憩にこそ入れたが、このままではクリアどころか一問当てることさえ難しい。

 

「……ツバサ君なら全問正解できたんだろうけど……」

 

アイがふと周りに置いてある本を見てみるとそこには飛行機についての本があった。

 

「……ツバサ君ならわからない知識は調べているのかな。私、もっとツバサ君と話せるようになりたい……。同じ話題で盛り上がりたいよ」

 

アイはそれから意を決すると本棚から飛行機についての本を抜き出すと片っ端から読みふけり始める。それをピンクットンは咎めなかった。そのため、アイは真剣に本を読み続けた。

 

「……そろそろ良いトン?」

 

「うん……やるよ」

 

それからのアイは快進撃を続けた。アイは本を読み込んで得た飛行機の知識をフル活用してピンクットンから出された問題に正解し続ける。そしてとうとう最後の一問も正解し、十問正解でクリアする事に成功するのだった。

 

ソラside

 

ソラの方ではメイクをし続けていたのだが、まるで上手く行かない。そもそもソラは今まで一人でメイクをした事など殆ど無い。そもそもやり方がわからないためにどれだけやっても成功しないのだ。

 

「幾らやっても素敵な自分になんてなれません。本当にこれをやるべきなのは……ましろさん」

 

そんな時、ソラはましろがかつて話していた事を思い出すとその言葉を脳裏に思い浮かべる。

 

“ソラちゃん、私ね。いつもの自分にメイクを少しプラスするだけで元気が貰える気がするんだ!”

 

その言葉にソラはヒントを貰った。それは下手に沢山やる必要は無い。いつもの自分にメイクを少しプラスするだけで良いのだ。

 

「いつもの自分に……少しプラス!」

 

それからソラは気を取り直すとメイクを再開。そしていつもの自分に少しプラスした素敵なソラになる事ができ、見事にトレーニングをクリアする事ができた。

 

ツバサside

 

ツバサは先程から苦手な女性を相手にし続けた影響か、頭がこんがらがってしまい上手く返事を返せずに困り果ててしまっていた。

 

「こんなの、ボクには無理ですよ……。そういえばあげはさんにも最初はこんなら気持ちを抱いてましたよね……。でも、それはあげはさんがボクに合わせてくれたから仲良くなれただけなのに……」

 

ツバサは一度休憩を貰うとアイが何故このトレーニングを選んだのかを考える。

 

「アイさん、このトレーニングを選んだのは……やっぱり誰かと仲良くなりたいからなんですよね」

 

ツバサはふとそれを考えていると一つの疑問が浮かんできた。

 

「……でも、アイさんが仲良くなりたい異性って……あさひ君とは普通に話しているのに他に彼女と距離が近い相手は……はっ!」

 

ツバサはそこまで言ったところで何かに気がつく。そして自分の胸に手を当てた。

 

「まさか……ボク?」

 

ツバサはアイが自分と仲良くなりたいのだと察する。そしてよくよく考えると度々女子と話すたびに嫉妬の目線が自分に向けられていた事を思い出した。

 

「……そう、だったんですね。アイさん……。だったら……ボクがこの場面でするべきなのは、引っ込み思案のアイさんが話しやすいようにボクがリードしてあげる事。このトレーニングでそれを達成できるようにしないと!」

 

ツバサはそれから苦手意識のあるグイグイ来る女性が相手でも上手く話を合わせ、女性の好感度を高めていく。そして、そのメーターが一定値を超えると女性はある提案をしてきた。

 

「ありがとう。ねぇ、良かったら私と友達にならない?」

 

「はい!」

 

ツバサが提案を肯定するとトレーニングクリアとなり、この部屋を突破するができたのであった。

 

あげはside

 

あげはは鏡から出てきた自分自身との戦いをしていたが、自分自身を乗り越えられずに二敗してしまう。あと一回負けたらトレーニング失敗となる。そうなればどうなってしまうかわからない。

 

「サゲー……」

 

しかもあげはは自分に負けたショックでテンションも落ちてしまい、モチベーションも危うくなっていた。

 

「……私に自分の限界なんて越えられないのかな……」

 

あげはの目には不安が宿っており、このままやっても恐らく勝ち目は無いだろう。

 

「一体どうしたら私の壁を越えられるんだろう。あさひだったらこんな時……」

 

するとあげはの前にあさひの幻影が出てくるとあげはを励ますような言葉を伝えた。

 

「大丈夫!あげはならきっと限界を越えられる!……無理に相手を意識するんじゃなくて、ただひたすらに自分の力を信じて前に進めばきっと昨日までの自分に勝てるよ!」

 

その言葉を聞いてあげはは頬を軽く二回パチパチと叩く。それで気合いを入れ直した。

 

「クヨクヨしてたらダメ!こんな時こそアゲていかないと!」

 

その後始まった三回戦目の料理対決。そこではどちらが心の込もった料理を作れるかの対決だった。

 

「あさひ……私が愛情たっぷりの料理を作るからね!」

 

あげははこの場にはいない大好きな彼氏を想いながら料理を作る。それからピンクットンのジャッジを受けて見事に一勝を挙げた。

 

「やった!あと二戦、連勝してアゲていくよ!」

 

それから自身の得意分野のダンス対決で勝利し、最後の一戦。それは大好きな人が疲れた時に相手への接し方についての対決である。

 

「相手がよりキュンとするような言葉をかけられた方の勝ちトン!」

 

ピンクットンからそう言われると目の前にあさひを模した人間が生成される。まずは鏡のあげはのターンとなり、それが終わるとあげはのターンとなった。

 

あげははあさひに対してどう声をかけるべきか少し悩んだ後にあさひならこう声をかけて欲しいと考えて話しかける。

 

「……あさひ、今日はお疲れ様。あさひが頑張ってくれるから私も頑張れるんだ。今日はご褒美にキスをあげる」

 

そう言ってあげはは実際にあさひへと優しく抱きついてからキスをしてその疲れを労った。

 

するとピンクットンのジャッジが下り、あげはが勝利。これにより、五本勝負はあげはの三勝でトレーニングクリアとなるのであった。

 

あさひside

 

あさひはダンスのトレーニングでリズムに合わせてハートをタッチするのがこのトレーニングの趣旨なのだが……あさひは大苦戦していた。

 

「くっ、まさかこんなにも苦戦するなんて……というかあげはに鍛えられてるのにまだまだ全然動けてない」

 

あさひは一度休憩を挟んでダンスを踊る時のあげはの姿を思い浮かべる。

 

「そういえば、あげはが前に言っていたっけ。俺はだいぶ動きが固いからもっとリラックスしてテンションをアゲて行こうって」

 

あさひはあげはとお付き合いを始めてからあげはの言うアゲを理解しようと沢山勉強した。そして、彼女に見合う男になるための努力も惜しまなかった。ようやく最近あげはのアゲを理解できるようになり、彼女と対等に話せるようになったのだ。

 

「……俺にならきっとできる。リラックス、肩の力を抜く。そして、アゲて行こう!」

 

そこからあさひはどんどんダンスのコツを掴んでいくと流れてくるハートを一つの漏れも無くタッチし、次々と成功させていく。

 

「あげはのアゲを理解できたんだ。ダンスも同じ。ノリノリでテンションをアゲる!」

 

あさひは完全にあげはのそれを再現すると全てのハートをタッチし、パーフェクトでダンスを終えた。

 

「ブラボー!」

 

「はぁ……はぁ……あげは。出来たよ……あげはのダンス」

 

あさひの顔は晴れやかであり、あげはとの絆の力で成功できたのだと感じ取る。

 

ましろside

 

ましろの方は体力の限界に到達してきているのか、ヨロヨロと階段を登っている。しかし、まだまだ先は長い。ましろはその場に座り込んでしまった。

 

「もう、無理だよ。足が……上がらない……」

 

ましろは荒い息を整えながら空を見上げてこの場にいないソラの事を考える。

 

「ソラちゃんなら、こんな時……」

 

ましろはソラなら何と自分に声をかけるのか。それを考えるとソラの幻影が前に現れる。

 

「大丈夫です。ましろさんのペースで一歩一歩進んで行けば良いんです!さぁ、一緒に行きましょう!」

 

ましろはその言葉に立ち上がると髪に付けていたシュシュを外すとゆっくりと足を上げて階段を登り始めた。

 

「もう少し……頑張れそうだよ。ソラちゃん!」

 

それから少しずつ少しずつ、ゆっくりと歩みを進めていく。そして、とうとうゴールの扉が見えてくるとそこには先にトレーニングをクリアした五人が待っていた。

 

「ましろさーん!」

 

「皆!ゴールしたんだ!」

 

「頂上まであと少しです!」

 

「大丈夫!ましろんならここまで来れるよ!」

 

「ファイトです!ましろさん!」

 

「が、頑張ってください!」

 

「姉さん、ラストスパートだよ!」

 

あさひ達五人はましろへと声をかけていく。そして、ましろが何とかゴールの扉に到達すると全員でそれを受け止めて元の広い空間に戻るのであった。

 

「ありがとう、皆!」

 

「頑張りましたね、ましろさん!」

 

「ソラちゃんが私に手を貸してくれた気がして。きっと、今までもそうやって沢山力を貰っていたんだね」

 

「それは私も同じです。今日だってましろさんの言葉に助けられてゴールできましたし」

 

ソラとましろがお互いに感謝の気持ちを言い合う中、ツバサはアイへと話しかける。

 

「アイさん」

 

「ふぁ、ふぁい!」

 

「ボク、アイさんと友達になりたいです。アイさんは引っ込み思案であんまり上手く話せないかもしれませんがそこはボクがしっかりリードします。なので友達から始めませんか?」

 

「良いんですか?私……上手くツバサ君と話せないかもしれないのに」

 

「大丈夫ですよ。それに、ボクがやろうとしていたトレーニングをクリアできたアイさんならきっとボクと話せます」

 

「うん!」

 

アイは嬉しそうに頷き、そしてツバサとアイは握手を交わした。そしてあさひとあげはもお互いの健闘を讃えあう。

 

「あげは、あげはのおかげで俺は苦手なダンスを克服できたんだ。だから、ありがとう」

 

「私もあさひのおかげで自分という壁を越えられた気がする。私こそありがとう」

 

「一緒にいるって凄いね!」

 

「これからも何でも乗り越えられる気がします!」

 

こうして六人で手を合わせていく中、ピンクットンが喜んだ様子で近づいてくる。

 

「六人共、見事ゴールトン!」

 

「これで、お家に帰れるよね?」

 

「勿論トン!」

 

「アレがこのミラーパッドの出口トン!」

 

全員が後ろを振り向くとそこには白く大きな扉があり、それがピンクットンの指差す出口のようだ。

 

「ようやく花火が見られますね!」

 

「ぶひーっ、それにしても皆素晴らしいトン!とんでもなく感動し……ふがっ?」

 

「……え?」

 

突如として喜んでいたピンクットンの鼻が詰まったような声をあげた。そしてあさひ達六人はその瞬間嫌な予感を感じ取る。

 

「待て、お前まさか!」

 

「ふが……は、は……」

 

「耐えろよ、てかここまで来てそれをやるのだけは……」

 

あさひが何とか我慢するように言うがピンクットンは耐え切ることができず、また特大のクシャミをかましてしまう。

 

「ハックション!」

 

すると一枚の緑で顔の描かれた紙が飛んでいく。それを見たピンクットンは慌てたような顔を浮かべた。

 

「大変トン!」

 

「どうしたの?」

 

するとその紙が出口の扉に貼りつく。それを見たツバサはピンクットンに聞いた。

 

「アレって?」

 

「あはー、うっかり最強モンスターのカードを出しちゃったトン」

 

「マジふざけんなお前!!」

 

あさひは度重なるピンクットンの失態に流石に激怒するとそれと同時に五人も抗議する。

 

「「「「「うっかりすぎ!」」」」」

 

そのままカードは効力を発揮。扉が変化すると扉に両手足が生え、さらに目の部分が出てくる。

 

「うわぁ、ごめんトン!これが最後の試練トン、皆で元の姿に戻してゴールしてほしいトン!」

 

「行こう、皆で!」

 

「「「「「はい!」」」」」

 

それから六人はミラージュペンを手にすると最強モンスターに対抗するためにプリキュアへと変身する事になるのであった。




また次回もお楽しみに。


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頑張ったご褒美

六人はミラージュペンを構えるとスカイトーンも取り出して変身する。

 

「「「「「「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!」」」」」」

 

「スカイ!」

 

「プリズム!」

 

「ウィング!」

 

「バタフライ!」

 

「サンライズ!」

 

「ウェザー!」

 

「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」

 

「ふわりひろがる優しい光!キュアプリズム!」

 

「天高くひろがる勇気!キュアウィング!」

 

「アゲてひろがるワンダホー!キュアバタフライ!」

 

「夜明けにひろがる眩い朝日!キュアサンライズ!」

 

「空にひろがる数多の天気!キュアウェザー!」

 

「「「「「「レディ……ゴー!ひろがるスカイ!プリキュア!」」」」」」

 

六人が変身完了すると最強モンスターと向かい合う。

 

「さっさと片付けて花火見よう!」

 

「今の私達なら余裕だよ」

 

「ですね。アゲアゲで行きましょう!」

 

「はい!」

 

すると突如として最強モンスターは何かのオーラに包まれるとその数を五体へと分身。プリキュアと数を合わせた。

 

「嘘!?こんな事もできるの!?」

 

「厄介な真似をしてくれるなぁ」

 

いきなり分身した最強モンスター。すると最強モンスターは手から緑のエネルギー弾を発射してくる。

 

「取り敢えず一体ずつ確実に倒すよ!」

 

「ならまずはボクから!」

 

するとウィングはエネルギー弾の隙間を縫いながらモンスターへと接近。そのまま加速しつつ突撃する。

 

「ひろがる!ウィングアタック!」

 

ウィングの突撃がモンスターの中の一体を貫くとそれに合わせてサンライズが浄化技を繰り出す。

 

「ひろがる!サンライズカリバー!」

 

ウィングの突撃とサンライズからの炎の斬撃が最強モンスターを吹き飛ばすとそこにスカイとプリズムが手を繋ぎ、技を発動。

 

「スカイブルー!」

 

「プリズムホワイト!」

 

「プリキュア!アップ・ドラフト・シャイニング!」

 

二人が召喚した円盤にモンスターの中の一体が吸い込まれると浄化され、そのまま円盤から気流が出ていく。

 

「まずは一体!」

 

そこに五体が同時に攻撃をしようとしてくるが、これはサンライズのスタイルチェンジ。凌ぎにかかる。

 

「スタイルチェンジ!フェニックス!」

 

するとフェニックススタイルとなったサンライズが盾を周囲に召喚して攻撃を防ぐ。それと同時にバタフライが跳び上がって技を発動。

 

「ひろがる!バタフライプレス!」

 

上からの押し潰し攻撃に最強モンスターが叩きつけられると今度はサンライズが技を使う。

 

「ひろがる!サンライズアサルト!」

 

サンライズからのフェニックスの姿を纏った突撃で更にダメージを負う最強モンスター。そして今度はウィングとバタフライの技が決め手となる。

 

「全ての色を一つに!ミックスパレット!レッド!イエロー!ブルー!ホワイト!混ぜ混ぜカラーチャージ!プリキュア!タイタニックレインボー!アタック!」

 

バタフライが虹のエネルギーを纏ったウィングに乗り、ウィングがプニバードの姿で上から最強モンスターを押し潰して浄化。撃破した。

 

それを見た最強モンスターは流石にこれ以上はやらせたく無いのか四体が並んでエネルギー波を放ってくる。

 

「そんなの、当たりません!」

 

「ああ、スタイルチェンジ、ドラゴン!」

 

サンライズはドラゴンスタイルに変わるとすぐさまジャンプ台で跳び上がって技を使った。

 

「ひろがる!サンライズドロップ!」

 

「私も!ヒーローガール!プリズムショット!」

 

サンライズのドロップキックとプリズムの特大の気弾が最強モンスターに命中すると最強モンスターは思い切り怯む。そこを逃すサンライズ達では無い。

 

「ウィング、行くよ」

 

「はい!」

 

「「スカイミラージュ!」」

 

「天に羽ばたく誇り高き翼!」

 

「熱き力よ、翼に宿りて闇を焼き尽くす希望となれ!」

 

「「プリキュア!フレイムバードストライク!」」

 

二人による炎の鳥を模した一撃が最強モンスターを貫くと浄化。これで残り三体。折り返しだ。そしてプリキュア達の勢いは止まらない。

 

「スタイルチェンジ!グリフォン!」

 

サンライズがパワータイプのグリフォンスタイルとなると地面を思い切り殴ってへこませる。それにより足を取られた最強モンスター達にサンライズは技を使う。

 

「ひろがる!サンライズボルケーノ!」

 

最強モンスターの一体は地面から噴き出た炎に焼かれてダメージを負う。そこにスカイがすかさず追撃した。

 

「ヒーローガール!スカイパンチ!」

 

その一撃が相手を貫くと地面を転がさせる。そして、サンライズは更にスタイルチェンジ。プリズムと共に決めにかかった。

 

「スタイルチェンジ!ペガサス!」

 

「「スカイミラージュ!」」

 

「空より降り注ぐ眩い光!」

 

「熱き力よ、光に宿って闇を打ち払う輝きとなれ!」

 

「「プリキュア!シャイニングサンピラー!」」

 

天から注いだ光の柱が最強モンスターを包み込むとその体を浄化。消失させていく。

 

「あと二体!」

 

最強モンスターはエネルギー弾を連射しつつ六人を倒そうとする。しかし、ウェザーがそうはさせないと手を翳す。すると雨を模したエネルギー弾が生成されてそれを相殺。そこにサンライズが割って入る。

 

「ひろがる!サンライズレイン!」

 

サンライズからの容赦の無い攻撃に最強モンスターは大きくのけぞる。そこにすかさずサンライズは追撃をかけた。

 

「スタイルチェンジ!ヤタガラス!ひろがる!サンライズエクリプス!」

 

サンライズから投げられた漆黒の槍が最強モンスターを貫くとその体に穴を開ける。そして最強モンスターが立て直す前にスカイとプリズムが二人揃って放った蹴りで真上に吹き飛ばす。

 

「バタフライ!」

 

「オッケー!」

 

「スタイルチェンジ!フェニックス!」

 

サンライズは再びフェニックススタイルになるとバタフライと共に浄化技を使う。

 

「「スカイミラージュ!」」

 

「天に舞い踊る美しき蝶!」

 

「熱き力よ、蝶に宿って闇をも打ち消す幸運となれ!」

 

「「プリキュア!ダブルウィングスタンプ!」」

 

二人による真上からの押し潰し攻撃。そして刻印が刻まれて最強モンスターは浄化。残すはあと一体だけだ。

 

「最後の一体です。気を抜かずに行きましょう」

 

「「「「「うん!」」」」」

 

「プリキュア!ホーリーコネクト!ひろがるチェンジ!ホーリーサンライズ!」

 

サンライズはホーリーサンライズにパワーアップすると突撃。白い炎の剣で連続で斬り裂いてからすぐにゼロ距離で技を使う。

 

「ひろがる!ホーリーカリバー!」

 

最強モンスターは後ろに下がるとエネルギー弾で対抗しようとする。しかし、それをウェザーが抑えに行く。

 

「ヒーローガール!ウェザーボール!」

 

ウェザーからのエネルギー弾が最強モンスターからの一撃とぶつかると相殺。そして、最後を飾るのはサンライズとバタフライだ。

 

「聖なる光に集え!ミックスパレット!レッド!イエロー!ブルー!ホワイト!混ぜ混ぜカラーチャージ!」

 

するとサンライズの体が白カラスとなり、更に口には虹の剣を咥えていた。

 

「プリキュア!ホーリーレインボー!アタック!」

 

サンライズの突撃が最後の一体を浄化に成功。これにより、扉は元の姿に戻るといきなり開いてその中に六人は吸い込まれ始める。

 

「「「「「「うわぁああ!」」」」」」

 

六人が吸い込まれていく中、七人のピンクットンが笑顔で手を振っていた。

 

「「「「「「「バイバイトーン!またいつでも遊びに来てトーン!」」」」」」」

 

ピンクットンが見送る中、扉は閉じると六人はミラーパッドから飛び出し、元の虹ヶ丘家に戻ってくる。

 

「やったぁ!無事到着」

 

そこにヨヨと申し訳なさそうな顔をしたエルがヨヨの足にしがみついて立っていた。

 

「お帰りなさい。特訓、どうだった?」

 

「すっごく大変だったけど楽しかった!」

 

「それは良かった」

 

「みーんな、ごめんなさい……」

 

エルは自分のせいで大変な目に遭わせてしまったとあさひ達に謝る。それを六人は笑って許した。

 

「エルちゃん」

 

「大丈夫ですよプリンセス」

 

「は、はい。そんなに気にしないでください」

 

「楽しかったから全然オッケー!」

 

「今度はさ」

 

「エルちゃんも一緒に行きましょう」

 

「うん!」

 

六人に許してもらえてエルは笑顔になるとヨヨがエルの前にしゃがんで話しかける。

 

「そろそろ花火大会が始まるわ。エルちゃん、アレを用意しましょう」

 

そう言ってヨヨが出してきたのはエルとヨヨが一緒に作ったフルーツポンチだった。

 

「えぇ!?プリンセスがこれを!!」

 

「ええ、皆のためにって沢山お手伝いしてくれたの」

 

「たのっ!」

 

「美味しいこれ!」

 

「ほっぺが落ちそうです」

 

「これがこの世界のお菓子……美味しいです!」

 

「はい!」

 

「色々あったけど、終わりよければ全てよし……かな」

 

それから空に花火が上がり、六人は虹ヶ丘家からその絶景を眺める。その美しさにあさひ達は見惚れていた。

 

「花火、最高です!」

 

「うん!」

 

「頑張った甲斐があったな」

 

それから六人は花火を楽しむとその日を終えていく。花火はまるで頑張った六人を労うのであった。

 

(番外編)

 

あさひとあげはの未来

 

一人の怪物に立ち向かうあさひ。その体はボロボロで今にも倒れそうだった。

 

「赤石!お前だけは絶対に許さない!」

 

するとあさひは腰に巻いたベルトに白カラスのレリーフが入ったスタンプを取り出すとそれをベルトに押印してから装填する。

 

《ホーリーウィング!》

 

《Confirmed!》

 

すると待機音が鳴り響く中、あさひはベルトについたドライバーのモードをブレードからガンにチェンジするとそれを引き抜く。

 

《Wing to fly!Wing to fly!》

 

それからスタンプの撃鉄を引き、翼を倒すとそれからトリガーを引く。

 

《ウィングアップ!》

 

《ホーリーアップ!Wind!Wing!Winning!ホーリー!ホーリー!ホーリー!ホーリー!ホーリーライブ!》

 

その瞬間、あさひの姿は白カラスをモチーフにした天使のような白と水色をした仮面の戦士、ホーリーライブに変身する。

 

「赤石ぃい!」

 

ホーリーライブが突撃すると攻撃を繰り出そうとする。その瞬間、赤石は超スピードでホーリーライブの反対側に回った。

 

「疾き事風の如く」

 

「くっ!」

 

それからホーリーライブは銃を撃つが赤石は眼力だけで全て弾き飛ばす。

 

「徐なる事林の如く」

 

「このっ!」

 

ホーリーライブが今度は接近して攻撃しようとするが、赤石はそれを簡単に受け止めるとカウンターとして腹に赤黒い炎をぶつけた。

 

「侵掠する事火の如く!」

 

「うわぁああああ!!」

 

ホーリーライブが悶える中、赤石は余裕そうな顔つきをしている。そしてホーリーライブは怒りのままに赤石へとパンチを繰り出す。しかし……

 

「動かざる事山の如し」

 

赤石は攻撃を受けた所を硬質化させて防御してしまった。そして逆に手を痛めたホーリーライブへと赤黒いエネルギー波を放つ。

 

「風林火山!!」

 

赤石からの攻撃を受けるとホーリーライブはボロボロとなり変身解除してしまうとあさひは倒れてしまうのだった。

 

そこで話は終わり、次回予告となる。

 

「もうおわりなの!?」

 

「良い所で終わっちゃったね」

 

この光景をテレビ越しに見ている三人の微笑ましい家族がいた。一人は大人になったあさひ、一人はあさひと結婚したあげは、そして二人の間に生まれた子供、しょうたである。

 

「パパがやられちゃったのに……だいじょうぶかな……」

 

「大丈夫だよ。これから……」

 

「もうあさひ、演じてるからってネタバレは禁止って言ったでしょ」

 

「はぁい」

 

「えぇー!?パパこれからどうなっちゃうの!?」

 

「ごめんね、それはまた次回のお楽しみだよ」

 

「うぅーっ」

 

しょうたが来週の放送を待ちきれないと言った顔でバタバタと両手足を動かす。

 

「あはは……」

 

「ねぇあさひ、次に休みを取れる日とかは決まってる?」

 

「うーん。まだ厳しいかな。今日だって本当に隙間を縫ってのお休みだし」

 

「そっか。本当にあさひは俳優さんになったんだね……」

 

あさひは努力に努力を重ねて夢を叶えた。今は俳優として日朝のテレビ作品の主役である。

 

「パパのえんぎ、かっこいい!ぼく、パパみたいなヒーローになる!」

 

しょうたはそんなあさひの背中を見てヒーローになりたいといつも言っていた。

 

「そっか。じゃあ、お母さんと一緒にどうやったらヒーローになれるか考えてみよっか」

 

「うん!」

 

あさひもあげはも幸せそうに過ごしており、二人は家族として平和な日々を送っている。二人はこの幸せがいつまでも続けば良いと思いながら笑い合うのであった。




番外編は以前後書きで投稿した番外編の改訂版です。また次回も楽しみにしてください。


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あげはの姉妹との邂逅

今回は今日のひろプリの放送内容を含むのでネタバレが嫌だというのでしたら視聴後に読む事をお勧めします。


ある日の昼。あさひ達は街に出てきていた。それはエルの服を買うためである。あげはがエルを抱っこする中、ソラ、ましろ、ツバサ、アイが洋服を選んでいた。

 

「えるぅ〜」

 

「エルちゃん、こんなのどう?」

 

ましろが選んだのはピンクを基調として真ん中に大きなリボンの付いた服である。

 

「うーん、ちょっとちがう」

 

エルはましろの服を却下すると次はツバサが黄色を基調としつつ襟にオレンジのリボンが付いた服を見せた。

 

「いかがです?とてもゴージャスでプリンセスに相応しい服だと思います」

 

「うん……いや!」

 

「こ、これとかどう……?」

 

エルにそっぽを向かれて次はアイが服を持ってくる。アイが見せたのは黄色一色の上半身に下半身にはひまわりの柄がついた服を見せた。

 

「だーめ!」

 

「見てください!」

 

最後にソラが持ってきた服にはデカデカと“ヒーロー見参!”と書いてあり、ソラらしい服の選び方なのだが……。

 

「見てください。これ、最高じゃないですか?」

 

それを見た途端エルは首を横にブンブンと振って恥ずかしさのあまり叫んだ。

 

「ぜったいいや!」

 

「……なんかどんどん反応が悪くなってない?」

 

「あはは……」

 

あさひのツッコミにあげはは苦笑い。それを聞いたアイ以外の三人は膨れっ面であさひへと詰め寄る。

 

「だったらあさひ君も選んでくださいよ」

 

「そうだよ。あさひだけ選ばないのはダメだよ」

 

「文句ばかり言わないで選んでください」

 

あさひ一人に不満が向かってる事にアイはオロオロと慌てると三人を落ち着かせようとした。

 

「み、皆さんそんなに怒らなくても……」

 

「アイちゃんはひとまず落ち着こっか」

 

それからあさひは泣く泣く選ばされる事になり、結局エルの気には召さなかったのかプイッとされてしまう。

 

「理不尽な……」

 

「自業自得」

 

それから一同は外に出ると一度疲れた体をベンチで休ませた。ちなみにもう既に結構な数のお店を回っている。

 

「街中のお店を回ったのに一着もお気に入りの服が見つからないなんて……」

 

「服探しがこれほど厳しく、果てしないものだとは知りませんでした……」

 

「エルちゃん最近お洋服に拘りが出てきたよね」

 

「成長してる証だよ。大丈夫、お店は他にもある。エルちゃんがアゲアゲになるお洋服、一緒に見つけよう!」

 

「みつけるぅ〜!」

 

そう言ってあげはがエルへと話しかける。エルはそれに嬉しそうに笑った。

 

「わ、私……すみません。良い服がどんなものとか全くわからなくて……そのせいで足を引っ張って……」

 

「重く受け止めすぎですよ。アイさん、気楽に探しましょう」

 

アイは自分の知識の無さに無力感を感じる中、ツバサがそれを優しく励ます。そんな中、近くから歓声が上がると全員がその方を向く。

 

「何でしょう?」

 

そこにいたのは沢山の人だかりとカメラマン、そしてその中心に二人の女性がおしゃれをして立っていた。

 

「早乙女姉妹だ!」

 

「知り合いですか?」

 

「いや、知り合いでは無いんだけど、姉さんが今凄く注目してる有名なモデルさん。まさかこんな所でお目にかかれるなんて」

 

あさひがそう言う中、あげはは一人その様子を見つめていた。すると早乙女姉妹が自分達の方に歩いてくるのが見える。

 

「え!?嘘、こっちに来る!!」

 

そして二人はあげはの前で止まると話しかけてきた。

 

「久しぶりだね」

 

「ばったり会えるなんて超嬉しい!」

 

「「あげは!」」

 

「私も会えてアゲアゲだよ!まり姉ちゃん、かぐ姉ちゃん」

 

「姉……ちゃん?って、まさかあげは、この人達って……」

 

あさひが何かに勘づいているとその後ろから一人の髭の男性がやって来てあげはへと抱きつく。

 

「きゃーっ、あげはちゃん!うっそやだーっ、会いたかった〜!もう、離さないんだから!」

 

「ちょっ!?」

 

それを見たあさひは思い切りその間に割って入ると男を睨みつける。

 

「あの、あげはに何か用ですか?もし変な事を考えていたら……」

 

あさひが警戒心を露わにして臨戦態勢を取る中、それをあげはが慌てて止める。

 

「待ってあさひ、悪い人じゃないの!この人は……」

 

あげはがそこまで言ったところで男の人はあさひを見てまた近い距離で話し始める。

 

「はっ!?き、君!!素晴らしい原石きたーっ!」

 

「……はい?」

 

「そのキリッとした顔つきに先程までの大人しさからは考えられないほど伝わってくる人を惹きつける魅力。あなた、モデルやってみない?」

 

「あさひが……勧誘!?」

 

「待ってください。どうしていきなり……というかあなたは……」

 

あさひはあげはに抱きついたり自分を勧誘したりで起伏の激しいこの男性に驚きを隠せない。このままでは話が混乱してしまうと考えたあげはは場所を変えようと提案。

 

それから一同はPretty Holicへと移動。そこで話をする事になった。

 

「早乙女まりあ。雑誌の読者モデル出身で最近ドラマでヒロインを演じて話題沸騰。人気急上昇中。早乙女かぐや。モデル兼ファッションデザイナーでかぐやっていうブランドで海外からも凄く注目されているわ。二人は姉妹で大人気。ファッションとかメイクとか、女の子達がみーんな真似していわばカリスマ的存在なの」

 

二人と共に来た男性からの説明を受けて準備で忙しいあげはを除く五人は話を聞きつつ驚く。

 

「改めて聞くとあげはの姉さん凄すぎ……」

 

「私達とは別次元の存在に見えてしまいます……」

 

「カリスマって何ですか?」

 

「えっと、ヒーローみたいな物だよ」

 

「あぁ!ファッション界のヒーローって所ですね!」

 

「ところで、あなたは?」

 

ツバサが男性へと何者かという事の質問をした。それを聞いた途端あさひは警戒心をまた剥き出しにする。事と次第では許さないつもりだった。

 

「あさひ、怖い顔になってるよ……」

 

「この人、俺の彼女に勝手に抱きついたんだ。理由次第では……」

 

「取り敢えず落ち着いて」

 

「そんなに警戒しなくても大丈夫よ。私は二人のマネージャー、名前は加古。かっこーと呼んでね」

 

「……まぁ、マネージャーで元々知り合いなら……」

 

あさひも何とか自分を納得させると顔を元に戻す。そんな中、早乙女姉妹がましろへのサインを書き終わってその手帳を返した。

 

「はい、どうぞ。これで良い?」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

「こちらこそ、いつもありがとう」

 

「え?」

 

「あげはから時々電話やメールで聞いてるよ。ましろちゃん、ソラちゃん、ツバサ君、アイちゃん、そして……あげはの彼氏のあさひ君」

 

どうやら姉妹はあげはとのやり取りであさひ達の事を知っているようであり、難なく接していた。

 

「妹がいつもお世話になってます」

 

「こ、こちらこそです!」

 

そう言って頭を下げる二人にあさひ達も慌てて頭を下げる。そこに上からあげはが降りて来た。

 

「お待たせ!皆どうぞ!」

 

それから一同は二階に上がるとあげはが席に案内する。そこにはパフェやジュースが置いてあり、そこでそれらをいただきながら話す事に。

 

「美味しい!」

 

「アガる!」

 

「気に入ってもらえて良かった」

 

「あげはちゃんにお姉さんがいるのは知ってたけど、まさか早乙女姉妹だったなんて……」

 

「てか、あげは。これについては俺も初耳なんですけど」

 

「あれ?言ってなかったっけ?」

 

「私が小さい時に両親が離れて暮らす事になってね……お姉ちゃん達はお父さんと暮らす事になったんだ」

 

それを聞いてあさひはキュッと胸が締め付けられる気持ちになる。あげはがそんな辛い過去を持っているとは思っていなかったからだ。それと同時にあさひはそんな過去を持ちながらもこんなに前向きな性格になったあげはの強さを感じた。

 

「ましろんやあさひと出会う前の事だったから」

 

「早乙女って言うのは父の苗字なの」

 

「苗字は違うけど、私達は正真正銘の三姉妹だよ」

 

「そうだったんだ……」

 

「……」

 

暗い顔をするあさひとましろ。それをあげはは慰めるように二人の手を取る。

 

「ましろん、あさひ、顔を上げて。昔の事なんだし、笑顔でアゲてこ!」

 

「「う、うん!」」

 

「そうそう!親は親、私達は私達。やりたい事やってるしね!」

 

「自由に好きな事をやって、楽しかったらオールオッケー!」

 

「「「イェーイ!」」」

 

それから姉妹三人でハイタッチを交わす。これを見てあさひは離れていてもこの三人は姉妹であるという事を再確認した。

 

「三姉妹ってなんか納得です!」

 

「ノリがそっくり!」

 

そんな事を話していると加古があげはとあさひをジッと見ていた。そして二人へと声をかける。

 

「ねぇ、あげはちゃん、あさひ君。モデルやらない?あなた達なら早乙女姉妹みたいにスターになれるわよ」

 

「ごめんなさい。私がなりたいのはモデルじゃなくて最強の保育士なんで」

 

「俺もアクション俳優になると決めているので……ごめんなさい」

 

「かっこーのお願〜い」

 

「幾らお願いされてもごめんなさい」

 

「俺もやりたい事がちゃんとあるので、すみません」

 

あさひもあげはも加古からのスカウトを断ると加古は仕方ないとばかりに諦める事になった。

 

「はっきり、きっぱりと。でもそういう所も二人の魅力だと思うわ」

 

「スカウト……されるなんて凄いです!」

 

「モデル、やってみれば良いのに」

 

「あげはさんならきっと……」

 

「やった事あるよ」

 

ツバサやアイからの言葉にあげははやった事あると返す。実はかつて一度だけ雑誌の表紙に載ったことがあるのだ。

 

「中学生の時にお姉ちゃん達の仕事を見学させてもらってね。その時にかっこーさんに声かけられて、ちょっとだけやってみたんだ。でも、私は最強の保育士になるって決めてるから」

 

「あげはらしい夢だよね〜」

 

「ぽいぽい!」

 

「勿体無い。磨けば光る、宝石の原石なのに……」

 

すると先程まで寝ていたエルが薄らと目を覚ます。それを見たあげはは声をかけた。

 

「える?」

 

「エルちゃん起きた?おはよう」

 

「おはよ!」

 

「はっ……原石はっけーん!全身から滲み出る可愛さ、高貴な顔立ち、あなた、お名前は?」

 

「える!」

 

「エルちゃん!ベリィプリティー!」

 

加古は今度はエルに才能を見出したようで褒めの言葉を言う。それを聞いていたあさひはエルの素性を知ってるために苦笑いした。

 

「(加古さん、見る目ありすぎ。というか、あと一歩でエルがプリンセスだってバレそうなんだけど……)」

 

「あなたならきっとモデル界のプリンセスになりそうだわ!」

 

「エルちゃんは元々プリ……」

 

そこまで言ったところでましろが慌ててソラの口を塞ぐ。危うくエルがプリンセスだと口を滑らせる所だったからだ。

 

「もっとプリンが食べたい?もう食いしん坊なんだから!」

 

「(……ソラ、正直過ぎる……あと姉さん、ありがとう)」

 

「かぐや、どうかしら?」

 

「うん、良い。適任だと思う」

 

「……何が?」

 

「明日、私達のファッションショーがあるんだけど、出演予定だった子が具合が具合が悪くなって来られなくなってね」

 

「実は、初めて子供服をデザインしたんだ。小さな子達も可愛い服を着て、楽しく毎日を過ごして欲しいなと思って!こんな服なんだけど……」

 

そう言ってかぐやが服を見せる。それはピンクや紫を基調とし、リボンの付いたドレスのような服であった。それを見たエルの反応は……

 

「かわいい〜!」

 

どうやらひと目見ただけで気に入ったようで……。エルは両手を突き出して笑顔で声を上げた。

 

「でしょでしょ」

 

「あれほど服に拘っていたプリンセスがひと目で気に入るなんて……」

 

「流石ファッション界のヒーローです!」

 

「イェイ!」

 

「える、これきる!」

 

「これを着て、一緒にファッションショーに出てくれる?」

 

「は〜い!」

 

エルが気に入ったからかトントン拍子に話が進み、エルがファッションショーに出ることが決まった。

 

「え?ちょっと待ってください。ショーってステージに上がるって事ですよね」

 

「エルちゃん、大丈夫ですか?」

 

「こんな急に決めてしまって……」

 

ソラ、ましろ、アイが心配する中、あさひとあげははそんな不安を拭うように声をかける。

 

「心配するのはわかるけど、私はエルちゃんの気持ちを大事にしたいな」

 

「俺もだよ。それに、エルがやる気になってるんだし、やらせてあげよう」

 

「える、でる!」

 

「大丈夫、私がフォローするから!」

 

あげはがそう言ってこの場はお開きになる……と思われた。するとあさひは早乙女姉妹に話しかける。

 

「あの、まだお時間宜しいですか?……お二人と俺の三人だけで話がしたいです」

 

そう言うあさひの顔は真剣であり、二人はそれをニコリと笑って受け入れた。

 

「オッケー」

 

「私達もあなたと話がしたかったの」

 

それから早乙女姉妹とあさひを除く他の面々はエルの服探しと仕事に戻り、この場には三人だけが残る。それからあさひは二人へと話し始めるのであった。




また次回もお楽しみに。


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あさひと早乙女姉妹の対談

あさひとあげはの姉である早乙女姉妹が向き合うとまず口を開いたのはあさひだ。

 

「改めて、妹のあげはさんとお付き合いさせていただいてます、虹ヶ丘あさひです」

 

「そんなに堅苦しくしなくても大丈夫よ」

 

「あげはさんのお姉さんですし、俺にとっては恋人の姉という立ち位置なので……」

 

そう言ってあさひは緊張しているのか肩を強張らせる。それを見た二人はあさひをリラックスさせるためにある言葉を言う。

 

「じゃあさ、私達の事は義姉さんって呼んでほしいな」

 

「そうそう。あげはの将来の旦那様だし、私達家族になるんだから!」

 

「えぇ!?そ、それは確かにそうですけど……まだ義姉さん呼びは早すぎると言いますか……。結婚だっていずれはと考えてますけどまだ俺は中学生ですし」

 

「ふふっ、あさひ君って私達の前だと意外と固い人間なんだね」

 

「え……」

 

「私達からはできればあげはと接する時と同じようにして欲しいな」

 

「……俺にそんな資格あるんでしょうか」

 

そう言ってあさひは暗い顔つきになる。それはいつもあさひが思い詰める時の顔だ。

 

「……あげはの過去の話を聞いて、あげはは俺が思ってたよりもずっと強いんだなって思いました。幼少の頃に姉妹と俺達幼馴染、二回も辛い別れを経験して……それでも今はちゃんと前を向いて明るく笑顔いっぱいで夢に向かって突き進むあげはの背中が俺からはどんどん遠くなる気がして……」

 

あさひはあげはへの憧れの気持ちと同時にどうしても追いつけそうにない彼女の背中を遠くに感じてしまい、自信を持てなくなってしまっていた。

 

「俺は、あげはに助けられてばかりです。悩んでばかりの俺を導いてくれて、助けてくれて……。俺のようなネガティブな人は本来、あげはの隣にはいてはいけない気がするんです」

 

あさひは話せば話すほどにどんどんネガティブな思考に陥っていく。あさひ自身、自分を信じる気持ちがどんどん弱くなっている証拠だ。

 

「俺は、あげはの彼氏になる時に誓いました。あげはを絶対に幸せにするって。それこそ、俺の一生を懸けてでもです。あげはに降りかかる不幸や悲しみ、寂しさと言った負の感情は全部自分一人で引き受けると……心に決めたのに……実際はあげはの身には不幸も悲しみも寂しさも沢山降りかかって……俺は誓ったことを何一つ達成できていないんです」

 

あさひはどんどん胸が苦しくなるとこれ以上こんな言葉は言いたくない。あげはのおかげで出会えたあげはの姉達にもネガティブな印象ばかり植え付けてしまう。そう考えてもネガティブな思考はとめどなく溢れていく。そんな時だ。

 

するとあさひは両手をそれぞれ早乙女姉妹に片手ずつ掴まれていた。

 

「落ち着いて」

 

「そんな事ばかり言ったら気分サガっちゃうよ」

 

「は、はい……すみません」

 

あさひは“やってしまった”と。これではあげはには相応しくないと思われてしまったと考えていた。しかし、早乙女姉妹から出て来た言葉は意外な言葉だ。

 

「私達はあさひ君の事、素敵な彼氏だと思ったわ」

 

「そうだよ」

 

「……どうして、ですか?」

 

「だって、あげはの事を凄く真剣に考えてくれてるし」

 

「そもそも一生かけて幸せにするなんて、それ程までにあげはを幸せにしたいって気持ちが強い彼氏なんてそうそういないよ」

 

早乙女姉妹はあさひが自分で張ってしまった氷を優しく溶かすように温かい言葉をかける。

 

「あさひ君はそれほどまでにあげはの事を愛してくれてるのなら、きっと私達の両親のようにはならないよね」

 

「そうね。……あさひ君は薄々わかってると思うけど、あの子は昔から寂しがりやでさ。多分あさひ君達と別れるってなった時も大泣きしたでしょ?」

 

それを聞いてあさひは頷く。実際、幼少期にあげはが引っ越すという話になった時、彼女はましろに元気を貰うまで寂しさで泣いていた。

 

「……両親が別れてしまってあげはが一人きりになった時、誰に元気をもらっていたと思う?」

 

「それは、俺の姉さんの……ましろに……」

 

「それだけじゃないよ。あげは、あさひ君からも沢山元気を貰えたって電話や手紙で教えてくれたもの。ずっと一緒にいるっていう約束もしたって伝えてくれた時のあげはの声、とても幸せそうだった」

 

早乙女姉妹はあさひがあげはの心の支えになっていたという事を語る。あさひの目からは涙が出始めていた。

 

「……あげはね、あさひ君と付き合うってなった時凄く嬉しそうで……私達も温かい気持ちになれた。それに、今日初めて会って、マネージャーの加古さんからあげはを守っていた君を見た時、こう思ったんだ」

 

「あさひ君なら私達の妹を任せても良いって」

 

「そんな、俺なんて弱いですし……あげはの力になれてるなんてとても……」

 

「もうなれてるよ」

 

「あげは、あさひ君と再会できたあの日から私達宛ての電話やメールにして伝えて来た事、三割ぐらいはあさひ君の事だったから」

 

「それだけあさひ君はあげはの心の支えになってるの。辛い時、悲しい時、寂しい時……生きていればそんな事は幾らでもある。あさひ君はそんな時にあげはの側にそっと寄り添ってほしいな」

 

それを聞いたあさひは心の中がポカポカと温かくなるととても嬉しい気持ちになれた。自分がどれだけあげはの力になれていたのかわからなかった彼にとって早乙女姉妹からの言葉はとても心を温めてくれたのだ。

 

「……まりあ義姉さん、かぐや義姉さん……俺にお二人の義弟が務まるかはわかりませんが、俺はどんな時でもあげはを支えると約束します。必ずあげはを幸せにします」

 

「まだ固いよ」

 

「さっきも言ったけど、私達の義弟になるのにそんな堅苦しいのはいらない。むしろ、笑ってアゲて欲しいわ」

 

「はい!」

 

あさひはまだ作り笑いの延長線上だったが二人を安心させるために笑顔を浮かべた。それから三人は雑談をして親交を深めていると加古が慌てた様子で戻って来て何かを伝える。

 

「えぇっ!?明日来れるはずの男の子が来れなくなった!?」

 

「そんな……それじゃあ私の服を着る子がいなくなっちゃったのね」

 

「どうかしたんですか?」

 

あさひの問いに加古が答えた。どうやら、明日のファッションショーに出るはずの中学生の男の子が大怪我を負ってしまったらしく、とてもじゃないがランウェイを歩けないと言った様子で突然のキャンセルになったのだ。しかも、その子が着る予定だった服はファッションショーの目玉になる予定であったために出さないわけにもいかない。

 

「どうしよう……」

 

「このままじゃ……」

 

慌てて加古が代役をできないか中学生モデルにある程度聞き回ったが、服のサイズの事を考えるとなると着れるモデルの人数は限られる。そして、候補の子達は皆別の仕事で来られないらしい。

 

「……あの!」

 

そんな中、あさひが声を上げた。それを見て三人は自分の方を向く。

 

「その服のサイズを教えてください」

 

「えっと……だけど」

 

「……それなら行けます!俺にやらせてください!」

 

あさひは自分から名乗りを上げた。それは、自分を励ましてくれた早乙女姉妹への恩返しのためかもしれない。はたまた、一度やってみたいという気持ちが芽生えたからかもしれない。いずれにしても、あさひはやると言った。それに二人はニコッと笑う。

 

「じゃあ、お願い……しよっかな」

 

「私達としても将来の義弟と一緒にステージに立てるのは気分アガるし」

 

「あの、もう一つお願いが……俺に、ランウェイでの歩き方を教えてください。……一日でものになるとは思いません。それでも、全体の質を俺のせいで落としたくないんです。だから……」

 

「ふふっ。じゃあ、今日は私達の宿舎で泊まりましょう。そこでみっちり仕込んであげるから」

 

「良いんですか!?ありがとうございます!!」

 

あさひは早乙女姉妹に頭を下げて感謝を示す。それから一度ましろ達に連絡して今日は泊まってくるという事を報告。そこからあさひの猛特訓が始まることになる。

 

それからその日の夜遅くまで歩く練習をして、多少上達はした。しかし、それでも早乙女姉妹と並ぶにはまだ足りない。そう考えたあさひは更に続けようとする。

 

「もう今日はここまでね」

 

「あさひ君、お疲れさ……」

 

「まだです。まだやれます!やらせてください!俺は……」

 

そこまで言った所であさひの足はもうフラフラであり、揺らいでしまう。これ以上は限界であった。

 

「あさひ君、あなたは初心者なのに凄く頑張ってる。それは良い事だけど、無理は禁物よ」

 

「明日のファッションショーで支障を出したらそれでモデルとして失格なんだから。今日はゆっくり休んで明日に備えないと」

 

「……ッ」

 

「あげはが心配するのも何だかわかるな……」

 

「うん。あさひ君は偶に危なっかしいってあげはも言ってたけど、これはかなりのものね」

 

それを聞いたあさひはまた暗くなる。それを見た二人はポンと両肩に手を置いた。

 

「大丈夫。それだけ気持ちがファッションショーに向いてくれてるのなら、明日はリラックスさえできればオッケーよ」

 

「そうそう。もし失敗したら私達でフォローするから。それに、あげはの前で良い所、見せたいんでしょ?」

 

「……!」

 

まりあとかぐやは全てお見通しだった。あさひが何故やらないと決めていたモデルの仕事の代役をやろうと言い出したのか。それは、彼女の前で良い所を見せたいという恋人のいる男性ならば一度は考えた事はあるであろう思考になっていたからだ。

 

「あはは……」

 

「今のあさひ君は十分輝けるだけの才能を持っているわ」

 

「だから自信を持って。このショーも、あげはと付き合う時も」

 

「……はい!」

 

それからあさひは早乙女姉妹からの仕込みを終えて宿舎に入る。流石に二人と同じ部屋で寝るのはあさひもあげはに悪いと考えたのだが、二人に強く勧められて布団は別だが一緒の部屋で寝ることになった。

 

幸いな事に、二人と同じ部屋に入ったという事を関係者以外は誰も知らず。週刊誌などの撮られたら厄介な人達にバッタリ出会わなかったのは幸運と言えるだろう。それから三人が寝静まった夜遅く、布団で寝るあさひを見下ろす黒い影がいた。

 

「すぅ……すぅ……」

 

「やれやれ……いつまでも自信を持てない奴だな。俺が出るのはまだ先だな。あばよ」

 

そう言って黒い影はどこかに消えていく。こうして、日を跨ぎ、ファッションショーの日となるのであった。




また次回もお楽しみに。


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楽しいファッションショー

ファッションショーの当日。その開演前、あさひは緊張した面持ちで待っていた。その服は水色と青を基調としたシャツに灰色のハーフパンツと言った涼しい印象を与えるような服である。

 

「あさひ、大丈夫?」

 

そこに来たのはエルの保護者という名目でステージ裏にやってきたあげは。あげはも事情を知っているのであさひを気遣う。

 

「大丈夫、義姉さん達に仕込んでもらったから。多少は戦力になれると思う……」

 

しかし、あさひの手は震えており、あげははそれを両手で優しく掴んだ。

 

「大丈夫。あさひならきっとできるよ。私はそう信じてる」

 

「あげは……俺はあげはに励まされてばかりだな。もっとしっかりしないといけないのに……」

 

「そんな事は無いよ。あさひは私の心の支えになれてる。今はそれだけで十分だから」

 

それからファッションショーは開演し、早速早乙女姉妹がランウェイを歩く。その姿に観客達は黄色い声援を送った。それを見たあさひはドキドキと高鳴る胸を抑える。

 

「大丈夫……大丈夫……」

 

しかし、あさひの顔つきはみるみるうちに悪くなっていた。本来、このステージを見に来ている人々のお目当ては早乙女姉妹と元々自分が今着ている服を身につけたモデルの人。自分が下手に首を突っ込んで良い問題では無いのではないかとなっていた。

 

そうこうしているうちに次はあさひが出る番になってしまう。しかし、あさひは緊張でガチガチになってしまっており、このままではとてもでは無いが人前に出てモデル役になどならない。

 

「(どうしよう、どうしよう……もし俺のせいで台無しにしたら……エルを緊張させてしまう。義姉さん達にだって顔向けできない。あげはにだって責められるかもしれない……もう出番なのに顔つきが戻らない……このままじゃ)」

 

だが無情にもあさひの出るタイミングになってしまった。そうやってあさひが怖い顔のまま出ようとしたその時、手を後ろから掴まれる。あさひが振り向くとそこにはあげはが首を横に振っていた。

 

「そんな顔はダメだよ。あさひ、もし緊張が収まらなかったら思いっきり私の笑顔を浮かべて。そうしたら自然と笑顔になるから」

 

あげはにそう言われてあさひは一時的に緊張が和らぐと若干まだ緊張して引き攣ってしまった顔だったが、ランウェイを歩き始めると周りの女性達から声が聞こえてくる。

 

「誰あれ……」

 

「カッコいい……」

 

「やばっ、惚れちゃうかも」

 

そんな声が聞こえてくる中、あさひの中には失敗できないという言葉が浮かんでいた。

 

「(失敗したらダメ、二人の面子を汚してはいけない。昨日の努力を無駄にしたら終わり。あげはに相応しくないと思われる。もっと上手く歩かないと……)」

 

あさひの動きはそんな思考のせいで徐々に固くなってしまう。そして、二人の元に着くと方向転換しようとしたその瞬間だった。緊張からか方向転換する際に足を引っ掛けてしまうとそのままバランスを崩してしまう。

 

「「「「あっ!!」」」」

 

その様子を客席から見ていたソラ達四人は目を見開く。あさひもそれと同時に失敗したと考えてすぐに受け身だけでも取ろうと考える。

 

その時、両側から手を掴まれるとあさひは倒れずに踏み止まった。あさひが後ろを振り向くとそこには優しくあさひをフォローした早乙女姉妹が微笑んでいた。そして、二人は小声で囁く。

 

「体ガチガチだよ」

 

「もっとリラックス。教えた通りに」

 

それを聞いたあさひは一度その場で深呼吸。それからあげはから言われたあげはの幸せそうな笑顔を浮かべる。その笑顔に釣られてあさひの顔は笑顔に変わった。

 

その直後、女性達から更に黄色い声が上がる。あさひの顔つきや服にカッコ良さを感じたのか、あさひはその声を聞いてある感情が浮かんだ。

 

「(楽しい……皆が俺に注目してくれる……。これがモデルの仕事なんだ……)」

 

いつの間にかあさひの肩の力は抜けており、練習通りにランウェイを歩くとポーズも決める。すると声援は更に大きくなり、あさひは早乙女姉妹の元に戻っていった。そしてそのタイミングでエルの出番となり、エルが歩いてくる。

 

最初の方は順調だったエルだったが、三人の元に到着すると観衆からの視線に耐えきれずに怖がって目に涙が浮かび始めた。

 

「えるぅ……」

 

「大丈夫だよ。全然怖くないよ」

 

「スマイルスマイル」

 

「エル、平気だからね」

 

早乙女姉妹とあさひは何とかエルを落ち着かせようとするが、それでもエルの緊張はほぐれない。そこにあげはが飛び出してきた。

 

「エルちゃん!」

 

「あさひ、まり姉ちゃん、かぐ姉ちゃん、任せて!」

 

それからあげはがエルの隣にしゃがむとエルを安心させるように空を指差す。

 

「エルちゃん、見て。あの雲、ウサギさんみたいじゃない?」

 

「うしゃしゃん!」

 

「あっちはヒツジさんかな?」

 

「ひつじしゃん!あれ、くましゃん!」

 

「ホントだ。お空の動物園だね!」

 

それを見ていたあさひはやはりあげはは“子供を落ち着かせるのには手慣れてるな”と思い、あげはの背中はやはり遠いという事を認知した。

 

「あげはちゃーん!ショーの途中だよ!」

 

そうましろに言われたあげはは我に帰ると慌てる。しかし、それでもまだ余裕は残っていた。

 

「やっちゃった……こんな時は思いっきり楽しんじゃお!」

 

「とっても可愛い飛び入りゲストね!私達がもっともっと可愛くしちゃお!」

 

それを聞いたあさひの顔つきが赤く染まる。まさか恋人と共にランウェイに出る事になるとは思わなかったからだ。

 

それからあげはは早乙女姉妹によってその場で即興でメイク。更に二人が付けていた衣装を一部借りて可愛く仕上げた。

 

「あげは、かあいい!」

 

「皆で、アゲてこ!」

 

あさひは一瞬にして可愛くなったあげはを見て心を奪われており、呆然とする。それを見たあげははあさひに手を差し出した。

 

「ほら、あさひも行くよ」

 

「うん!」

 

それからファッションショーは更に盛り上がるとあさひとあげはは手を繋いでランウェイを歩く。それを見た観客達からはお似合いだと言う声も上がり、二人は更に笑顔になる。ファッションショーも無事に終了し、五人はステージ裏に戻るとあさひとあげははメイクを落とし、あげはは姉へと謝っていた。

 

「ごめん。突然出ちゃって」

 

「ううん。おかげで助かったよ」

 

「あさひ君もありが……ってあれ?」

 

まりあがお礼を言おうとした時、あさひは既にそこにはおらず、どこかへと行ってしまっていたのだ。

 

「さっきまでここにいたのに……」

 

「ッ!私、探してくる!」

 

そう言ってあげはが出ていくとステージ裏の隅であさひはうずくまって泣いていた。それをあげはが見つけると寄ってくる。

 

「あさひ、どうしたの?」

 

「……あげは。今はそっとしておいて欲しい……」

 

「……もしかして、さっき転びそうになったのを気にしてるの?」

 

あげはからの言葉にあさひは小さく頷く。あさひとしてはまた自分のせいでショーを台無しにしてしまったと思い込んでいた。

 

「思えばいつもそうだ。体育祭のリレーも、今回のショーも。俺がちゃんとしなかったせいで……皆に負担をかけた。自分は結局足手纏いに過ぎないんだなって……ッ!?」

 

あさひは突然足に痛みを感じるとあげはがそれを心配して駆け寄る。

 

「大丈夫!?」

 

あさひが確認のために靴と靴下を脱いで確かめるとそこには足の裏に豆ができており、それが痛みの原因だった。

 

「……あさひ、もしかして……今日のために豆ができるぐらい昨日死ぬ気で練習していたの?」

 

「……ごめん。俺、結局は皆に心配かけさせて……」

 

それを見たあげははあさひを優しく抱きしめる。そして、背中をゆっくりさすった。

 

「あさひ……もう、無理のし過ぎだよ」

 

「俺、失敗したくなくて……義姉さん達やエルの晴れ舞台を壊したくなくて必死に頑張って。でもそのせいで最後にはこんな風に迷惑をかけてしまった。俺は最低な彼氏だよな……こんな彼氏となんて一緒になんか……」

 

「そんな事言わないで。あさひは私の最高の彼氏。他に代わりなんていない。唯一無二の彼氏なんだから……お願い。そんなサガるような言葉ばかりを使わないで」

 

「あげは」

 

あさひは悔しい気持ちでいっぱいだった。自分のせいで二人の顔に泥を塗ったと考えていたのだ。しかし、それは間違っている。観客達はあさひに憧れを抱いていた。あんな彼氏が欲しいという気持ちになって笑顔を生み出したのだ。

 

「本当に、俺はショーを成功させられたのか?」

 

「当たり前だよ!」

 

あげはから励まされてあさひはようやく笑顔を取り戻す。それからあさひが早乙女姉妹の元に戻ると二人はあさひをギュッと抱きしめた。

 

「うえっ!?ね、義姉さん!?」

 

「あさひ君、今日はありがとう!」

 

「ごめんね、私達の存在がプレッシャーになっていたんだよね」

 

「そ、そんな。俺はただできる事をやっただけで……」

 

「それで十分だよ」

 

「あさひ君のおかげでショーも成功できたんだから」

 

あさひは早乙女姉妹に褒められて笑顔を更に爆発させると改めて早乙女姉妹に礼を言おうと思った。しかし、その直後ステージの方から叫び声と共にランボーグの姿が見えたのだ。

 

「あれは!?」

 

「あさひ君は逃げて!」

 

「でも義姉さん達が……」

 

「まだステージに加古さんがいるの。私達も加古さんを助けたら逃げるから」

 

「ッ……」

 

あさひは早乙女姉妹が危険を冒そうとしているのを見ていてもたってもいられなかった。そのため、この場でプリキュアになるためにペンを取ろうとする。

 

「待って」

 

しかし、それはあげはによって止められた。プリキュアの正体が自分達だとこの場で公にする訳にはいかない。あげははその点において冷静であった。

 

「あさひ、一旦逃げるよ」

 

「でも義姉さん達が……」

 

「大丈夫。……ここで変身はできない。変身したらすぐに助けに行こう」

 

あげはにそう言われてはあさひも引き下がるしか無い。あさひ達は急いで誰もいない場所へと走っていくのであった。

 

そしてステージでは加古がランボーグの登場に腰を抜かしており、その場にへたり込んでいた。

 

「かっこーさん!」

 

「大丈夫?」

 

「まりちゃん、かぐちゃん、早く逃げて!私の事は良いから!」

 

「かっこーさんを置いていけるわけ無いでしょ!」

 

するとランボーグからの触手が三人の真横に叩きつけられる。それを見たミノトンは三人へと言い放つ。

 

「早く来いプリキュア、ランボーグが待ちかねているぞ」

 

「ランボーグ!」

 

ランボーグは触手を伸ばすとステージの後ろにある壁の部分へと叩きつける。その様子に三人はすっかり恐怖して動けなくなってしまった。

 

「ランボーグ!」

 

そしてもう待てないとばかりに三人へと触手をランボーグが伸ばして叩きつけようとしたその時。その触手は押さえ込まれるとそこには怒りに燃えたサンライズ(あさひ)バタフライ(あげは)、更に他の四人のプリキュアが触手を受け止めているのであった。




また次回もお楽しみに。


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あさひとあげは 二人の絆

早乙女姉妹が加古の元に到着する直前、あさひとあげはは人目の付かない場所でソラ達四人と合流。ペンを出した。

 

「皆、ヒーローの出番だよ」

 

「「「「「うん!」」」」」

 

「「「「「「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!」」」」」」

 

「スカイ!」

 

「プリズム!」

 

「ウィング!」

 

「バタフライ!」

 

「サンライズ!」

 

「ウェザー!」

 

「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」

 

「ふわりひろがる優しい光!キュアプリズム!」

 

「天高くひろがる勇気!キュアウィング!」

 

「アゲてひろがるワンダホー!キュアバタフライ!」

 

「夜明けにひろがる眩い朝日!キュアサンライズ!」

 

「空にひろがる数多の天気!キュアウェザー!」

 

「「「「「「レディ……ゴー!ひろがるスカイ!プリキュア!」」」」」」

 

六人は変身を完了すると急いで現場に向かう。そこには早乙女姉妹と加古に向かって伸びていくランボーグの触手があった。サンライズ達六人はランボーグと三人の間に割って入ると触手を掴んで三人を守る。

 

「皆、楽しんでアゲアゲだったのに台無しじゃん!」

 

「俺達の大切な人達に何勝手に手を出してくれてるんだ!」

 

サンライズとバタフライは怒りに震えており、それをミノトンは下らないと返す。

 

「楽しい?楽しさなど無用だ!」

 

「ふざけんなよ……」

 

「皆のアゲアゲな気持ちをサゲんな!」

 

「太陽の……鉄拳!」

 

バタフライ達五人のプリキュアがランボーグを投げ飛るのと同時にサンライズは巨大な炎の拳をランボーグへと叩きつけて吹き飛ばす。それはミノトンを巻き込むと周囲に何も無い草原へと移動。プリキュアの六人もそこに到着する。

 

「この程度では鍛え上げられた我を倒す事はできんぞ」

 

「お相手します!」

 

するとランボーグは紫の光線を触手から発射。このランボーグは照明から生成されているために光を操った攻撃ができるのだ。

 

「一か八か……」

 

「スタイルチェンジ!フェニックス!」

 

スカイは早速突撃する中、サンライズがスカイの前を走ると目の前に左腕の盾を翳し、巨大な障壁を生成。光線を弾きながら突撃する。

 

「ラララ!」

 

ランボーグはバラバラにやっては突破できないと考えてエネルギーを一点収束させて倒しにかかった。

 

「スカイ、俺を使え!」

 

「はい!」

 

サンライズが前に飛び込みながら地面に寝転ぶと両足を空へと向ける。それを見たスカイはサンライズがやりたい事を理解。その足に飛び乗った。

 

「せーのっ!」

 

サンライズが足を前に向けつつそのままスカイを蹴り飛ばす。スカイはジャンプ台の要領で前に跳んだ。

 

「バタフライ、守りの力をスカイに!」

 

「オッケー!」

 

「二つの色を一つに!レッド!イエロー!守りの力、アゲてこ!」

 

バタフライのバフ付与でスカイの防御力が向上。スカイがランボーグに突っ込む中、サンライズの盾が粉砕されてサンライズは光線をまともに喰らってダメージを負う。

 

「うぐあっ!」

 

それと同時にスカイからの一撃がランボーグに炸裂してランボーグは後ろへと下がる。

 

「肉を切らせて骨を断ったか……見事な戦術よ」

 

ミノトンはサンライズの取った手を褒めたが、当のサンライズは倒れてしまうとそこにプリズムとウェザーが駆け寄った。

 

「大丈夫ですか?」

 

「サンライズ、しっかりして」

 

「く……うぅ……俺は大丈夫……ッ!?」

 

サンライズは立とうとすると足に激痛が走る。どうやら先程ジャンプ台としてスカイを蹴り出した際に足の裏の豆に負担をかけていたらしく、無理したせいで足を痛めてしまっていた。

 

「サンライズ、まさか足を……」

 

「このくらい平気だ。俺はまだ立てる」

 

そうやって立ち上がるサンライズからは脂汗が出ており、かなり無理しているのがわかった。

 

「そんなに痛めるまで我慢してたの!?」

 

「……俺のせいでショーを台無しにする訳にはいかないだろ……折角義姉さん達のおかげで……皆が笑顔になったって言うのに」

 

サンライズの目は真剣そのものでまだ頑張って戦おうとする。それを見たミノトンはサンライズを褒めた。

 

「怪我をしてでも戦おうとするその闘志、見事だ。ならばランボーグ、こちらも容赦無しだ!」

 

「ランボーグ!」

 

ランボーグが照明の部分にエネルギーを高めると極太の光線で攻撃する。それに対してプリズムとウェザーがサンライズの前に立った。

 

「サンライズは……」

 

「やらせません!」

 

「「ヒーローガール!」」

 

「プリズムショット!」

 

「ウェザーボール!」

 

二人のエネルギー弾がランボーグの光線と激突すると拮抗して押し合う。しかし、ランボーグにはまだ余力があるのか、触手部分からも光線を発射すると二人の技の威力を超えてそのまま三人を飲み込もうと飛んでくる。

 

「ッ!」

 

サンライズは咄嗟にウェザーとプリズムを両脇に突き飛ばすと自分一人だけ光線をまともに喰らって深い傷を負った。

 

「ぐあああああああ!!」

 

「「「サンライズ!」」」

 

そこにウィング、スカイ、バタフライが駆け寄ろうとするとランボーグが触手からの光線で吹き飛ばしてしまう。そして、サンライズを包んでいた光線が過ぎ去るとサンライズはいつものスタイルに戻ってしまい、大怪我をして倒れていた。

 

「……あ……ぐぅう……」

 

更に足首が赤く腫れており、先ほど転びかけた時に足に無理をさせたのが原因なのか、はたまた今二人を突き飛ばした時に足の裏を庇ったのが原因で捻ったのか。何にしてもサンライズが片足を痛めて動けなくなってしまう。

 

「うぅ……」

 

「サンライズ!サンライズ、しっかりして……すぐに治すから」

 

バタフライがミックスパレットで癒そうとするが、そこをランボーグが攻撃して回復をさせてくれない。

 

「ふはは!軟弱者めが。日々の鍛錬を怠り、チャラチャラとした格好で笑っているからだ」

 

「皆で笑う?最高じゃん。いつも笑える訳じゃない。苦しい時、辛い時、泣きたい時もある。でも、そんな時こそ笑顔で。皆を笑顔にするために頑張って、頑張って!笑顔が帰って来たら、最高なんだって教えてくれたんだ!だから私も……そんな風になりたいんだ!」

 

バタフライは力強くそう言う。それに呼応するようにサンライズが痛めた足を引き摺り、我慢しながら立ち上がると叫ぶ。

 

「俺だってそうだ。苦しい事も、辛い事も、ネガティブな気持ちを隠せない時だって沢山ある!そんな時にこんな俺を支えて、笑顔にしてくれる人達がいる!バタフライは、俺の心の支えだ。うぐっ……だから、俺もバタフライのように誰かの支えになれるような強い人になりたい」

 

サンライズは歯を食いしばり、懸命に足を動かして立ち上がる。例え足の感覚が無くなっても良い。この時この瞬間だけでも力になりたいと考えていた。

 

「ふん。ならば我も全力で叩き潰そう」

 

そう言ってミノトンはランボーグに触手攻撃を命じる。それに備えてサンライズとバタフライが構える中、伸びて来た触手をスカイ、プリズム、ウィング、ウェザーが捕まえた。

 

「何!?」

 

「バタフライ、今だよ!」

 

「サンライズの足を……」

 

「回復させてください!」

 

「私達だって、力になります!」

 

それを受けてすかさずバタフライは頷くとミックスパレットを手にするとスカイトーンを装填する。

 

「二つの色を一つに!イエロー!ブルー!癒しの力!アゲてこ!」

 

するとバタフライから放出された癒しの光がサンライズに降り注ぐとサンライズの絆及び、足の怪我が回復。元に戻った。

 

「ッ……痛みが消えた……これなら……」

 

サンライズが前に出ようとするとバタフライが肩に手を置く。

 

「バタフライ?」

 

「……サンライズ、さっき言い忘れたことがあるの。私は、いつもサンライズの力に頼ってる。そのせいで沢山無理をさせてる事、本当にごめん」

 

「そんな、謝らないでよ。バタフライは……」

 

「だからお願い。今度は私も力にならせて欲しい。これについてはサンライズがどれだけ嫌だ、無理をさせたく無いと言っても変わらない私の気持ちだから」

 

「……そっか。じゃあ……俺達で半分ずつ無理をしよう。お互いが足りない手はそれぞれがカバーする。それで良いよね?」

 

「オッケー。私達の力でアゲていこう」

 

するとサンライズからサンライズとバタフライの二人分のスカイトーンが出現。そして、それが二人の手に収まる。

 

「これは……」

 

「サンライズとバタフライ、二人の絆の証ですね!」

 

二人は頷くとスカイトーンを同時に起動。それをスカイミラージュに装填する。

 

「サンライズレッド!」

 

「バタフライピンク!」

 

「「ブレイブアップ!」」

 

するとサンライズとバタフライが光のラインで繋がると共にそれぞれ赤とピンクのオーラを身に纏う。そして、その姿が変化。サンライズは両肩に赤い鳥の翼のような物が展開。そして、両手足に炎のエフェクトと共に燃え盛る金の炎を模した装甲が装着される。

 

対してバタフライは背中にピンクの蝶の翼が、両手足には銀のリングが装着され、更にスカートが伸びてウェディングドレスのようになった。

 

そして、サンライズの頭には王冠の髪飾りが、バタフライの頭にはティアラを模した髪飾りが付与される。

 

「「プリキュア!ダブルドライブスタイル!」」

 

「な、なんだこれは……」

 

「行くよ、バタフライ」

 

「オッケー!」

 

二人は同時に飛び出すとそのスピードは普段の倍はあった。ランボーグはもちろんこれを止めようと触手から光線を放つ。それを見たバタフライが障壁を召喚すると普段の倍の硬度で光線を簡単に防いだ。それから二人で手を繋ぎ、同時にキックを叩き込む」

 

「ランボーグ!?」

 

「ええぃ、ランボーグ、こうなれば一点集中して攻撃だ!」

 

ランボーグは触手のエネルギーも上乗せした極太のエネルギービームを放つ。それをバタフライがまともに喰らうと何もされていないサンライズも顔を歪めた。

 

「え!?サンライズは何もされてないのに……」

 

「恐らく、あの姿になるとダメージも共有なのかもしれません」

 

「ランボーグ、今だ!」

 

「させねーよ!癒しの力!もっとアゲてこ!」

 

するとサンライズから光が飛ぶとバタフライの傷が回復。復活したバタフライは今度はサンライズへとお返しする。

 

「ありがとう!元気の力!もっとアゲてこ!」

 

今度はバタフライから光が飛んでサンライズに入り、サンライズは片手でランボーグを掴むとバタフライへと投げ飛ばす。それから同時に二人は炎の剣を構えた。

 

「「ひろがる!サンライズカリバー!」」

 

二人同時に放たれたサンライズカリバーが両側からランボーグを浄化するとランボーグは撃退される事になる。

 

「スミキッタァ〜」

 

「なかなかやるな。そうでなくては。我も更に鍛錬に励むとしよう。ミノトントン」

 

ミノトンはそれを受けて撤退。それから六人は早乙女姉妹と加古の元に戻り、三人のいない所で変身解除する。それから三人と合流した。

 

「何が起こったのかわからないけど、エルちゃん、あさひ君。おかげでショーがとっても盛り上がったわ。どうもありがとう」

 

「エルちゃんもあさひも素敵だったよ」

 

「ファッションがなんたるかもわからない私ですが、感動しました!」

 

「わ、私もです」

 

「流石です、プリンセス!」

 

「えるすごい!」

 

「ファッションショー、楽しくて凄いアガったよ。やっぱお姉ちゃん達は凄いね」

 

「やはり、俺では二人の足元にも及びませんでした」

 

あさひとあげはがそう言う中、早乙女姉妹はそれに対してあさひとあげはを褒めた。

 

「凄いのは二人だよ」

 

「だよね!」

 

「私達?」

 

「あげはがステージに出たら泣きそうになっていたエルちゃんが笑顔になって、周りにいた子達もノリノリで踊ってた。皆楽しそうにね!」

 

「モデルのあげはも良いけど、やっぱ保育士さんよね!」

 

「なるっきゃ無いよね。最強の保育士に!あと、あさひ君も短期間のトレーニングであそこまで仕上げたもの。それに、あなたには人を惹きつける才能があるわ」

 

「アクション俳優目指して頑張ってね!」

 

二人から褒められたあさひとあげはは嬉しさで笑顔に変わる。そして、二人揃って意気込んだ。

 

「うん、絶対なるし!」

 

「俺も頑張ります」

 

それから早乙女姉妹は手を重ねるとあさひとあげはにも促す。それを受けて二人も手を重ねた。

 

「お互い頑張ろ!」

 

「自分も皆も笑顔にね!」

 

「俺達ならできます!」

 

「全力でアゲてこ!」

 

「「「「イェーイ!」」」」

 

四人はハイタッチをしてそれぞれの健闘を誓い合う。それを終えて別れる時になった際、あさひは早乙女姉妹に耳打ちされた。

 

「あさひ君、さっき助けてくれたのは君達だよね?」

 

「ッ!わかってたんですか?」

 

「うん。私達の事を大切な人って言ってたしね」

 

「あ……」

 

「いざとなったらあげはを守ってあげてね。こればかりは私達にもできないから」

 

それを聞いたあさひはニコリと笑うとそれを快く了承する。

 

「勿論です……でも、あげはと二人で助け合ってですけどね」

 

こうして、あさひ達の貴重な体験は終わり、それぞれの日常に戻るのであった。




また次回もお楽しみに。


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ソウヤとの特訓

ファッションショーの数日後、あさひはあげはに時間がある事を確認してからツバサに頼んでミラーパッドを借りてきた。

 

「あさひ、急に今日時間が空いてるか聞いてきてどうしたの?」

 

「えっと、ちょっとあげはとトレーニングをしようと思ってさ」

 

「それって戦いの?」

 

「うん。この前、ダブルドライブスタイルになれるようになったんだけど、あのスタイルの力って恐らく二人の力を束ねる事で更なる力を使えると思うんだ」

 

「うーん、それって個々の力を上げればそれを束ねる分その力も相対的に強くなるって事?」

 

「俺はそう考えてる」

 

あさひの予想としてはダブルドライブスタイルの利点としてお互いの力をそれぞれが共有するので、個々の力を上げる事で合わせた時の数字も高くなるという事だと睨んでいるのだ。

 

「でも、どうしてミラーパッド?あ、もしかしてまた前みたいに中に入るとか?」

 

「いや、今回は違うよ。ソウヤに特訓相手をお願いしに行くんだ」

 

「ソウヤ君に?」

 

「実はソウヤ、この前俺が向こうの世界に助けに行った時俺の攻撃を全部躱すか捌いていたんだ。しかもランボーグ化して自我を失ってる状態で」

 

「やっば。それ、どうやったら勝てるの?」

 

「俺もよくわからない。でも、自力では多分ソウヤの方が上だから頼みに行くんだ」

 

それから二人はミラーパッドを使い、トンネルを生成するとソウヤの世界へと渡っていく。ちなみに、自分達の世界のソラ達には事情を説明してあるので問題は無い。

 

それからあさひとあげはの二人はソウヤ達の世界に到着した。するとそこにいたのは向こうの世界のヨヨだった。

 

「あら?突然の訪問者ね」

 

「えっとソウヤの世界のおばあちゃん。こんにちは」

 

「……ソウヤさんなら今出かけていてもうすぐ帰ってくると思うから少しゆっくりしてなさい」

 

「やっぱり向こうの世界のヨヨさんも私達の事は全部お見通しなのね……」

 

それから暫くして、ソウヤがソラやましろ達と帰ってくるとあさひとあげはがいる事に驚いた。

 

「あさひ!?急にどうしたんだ?まさか、またそっちの世界で何かあったんじゃ……」

 

「違う違う、今日はソウヤに頼みがあってきたんだ」

 

「頼み?」

 

「俺とあげはを鍛えてほしい」

 

そう言ってあさひとあげははソウヤへと頭を下げた。それを見たソウヤは慌てたような顔で頭を上げるように言う。

 

「そんな、俺が教えなくてもあさひもあげはさんも十分強いよ」

 

「そう言ってくれるのは嬉しいけど……実は」

 

あさひが頬を掻きながら事情を説明する。それを聞いたソウヤは納得した。

 

「なるほどね、つまりあさひとあげはさん。二人の個々の力を上げる事で二人の合わせた数値を向上させたいと」

 

「貴重な休みなのに押しかけてしまってごめん。もし無理ならまた日を改めるから……」

 

「良いよ。今日は時間が空いてるし……ただ、そうだな……。じゃあ、こっちからもお願いしたいんだけど……俺も習得してみたい力があって。それを特訓するのを手伝って欲しいんだ」

 

それを聞いたあさひとあげはは勿論快く承諾するとその話を聞いていたソラが目を輝かせていた。

 

「え?ソウヤの新しい力ですか?それは面白そうです!あの、私も手伝っても良いですか?」

 

「そうだね、人手は多い方が良いからソラも来て欲しいかな」

 

それから四人は虹ヶ丘家の近くにある裏山に移動するとそこで早速特訓をする事になった。

 

「それで、俺達の場合は連携力を鍛えれば良いと思うんだけど、ソウヤが得てみたい力ってどういうの?」

 

「一言で言うのなら幻想を操る力……かな」

 

「抽象的ね……」

 

「幻想……って何ですか?」

 

「簡単に言うと想像する力だな」

 

ソウヤが得たい力がわかった所で早速トレーニングに入る。まずは準備運動及びランニングで体を慣らした。それから特訓を始める。

 

「ひとまず俺とソウヤはプリキュアに変身しようか」

 

「でも生身の力を鍛えた方が良いんじゃないですか?」

 

「取り敢えず、今の俺がソウヤ相手にどれだけやれるかを見てみたいんだ。あげははソラと一緒に特訓して欲しい。プリキュアになるかソラの言う通り生身で鍛えるかは任せるけど」

 

「私は一度生身を鍛えるよ。あさひは普段から鍛えてるけど、私はあんまりそういうことしてないから体を慣らさないといけないし」

 

それから方針が決まった所であさひとソウヤ、ソラとあげはで別れて特訓する事になる。ソラとあげはがある程度離れたことを確認して二人は変身した。

 

「夜明けにひろがる眩い朝日!キュアサンライズ!」

 

「静寂ひろがる夜の帷!キュアナイト!」

 

それからサンライズとナイトが向き合うと戦いを始めようとするが、その寸前にナイトの体からエトが出てきた。

 

「待ってください。ソウヤ様、あさひ様」

 

「エト、どうしたのですか?」

 

「お二人が戦うと周囲への被害が出るかもなので、私の力で一度ラインを引きますね」

 

エトはそう言うと自らを起点にしてエネルギーフィールドを展開するとその内部が変化。再構成された。

 

「これでお二人がどれだけ地形を破壊してもこの空間を解除すれば元に戻ります。後は思う存分戦ってください」

 

「ありがとうエト」

 

「じゃあ始めるよ!」

 

それからサンライズは炎の剣を構え、ナイトも構えを取る。まず動いたのはサンライズだ。サンライズはナイトへと接近すると手にした剣を振るう。勿論ナイトはそれを簡単に回避。後ろに下がった。

 

「そう来ると思ってた!」

 

サンライズはそれを知っていたのかのように炎弾を生成して連続で射出する。それをナイトは横に跳んで回避する。

 

「ッ!?ここ!」

 

ナイトが何かを感じ取って手に青い剣を生成すると防御姿勢を取る。そのタイミングでサンライズが剣を振り下ろしており、剣同士がぶつかった。

 

「まただ……サンライズ、いつの間に私の動きを見切ったんですか?」

 

「……?」

 

「前にゲームをした際にも感じたのですが、私が知らない何かの力に目覚めたんですか?」

 

「あー、そう言えばナイトは知らなかったよね。……実は俺、少し先の未来が見えるようになったんだ」

 

「………え?」

 

サンライズからのカミングアウトにナイトは思わず固まる。当然だろう。何しろ未来視ができるなんて初見の人は絶対にわからないだろうから。

 

「サンライズ……私が言うのもいけないかもしれませんが……チートにも程がありません?」

 

「いや、第六感を常時発動していて攻撃防いでくるナイトが言っても説得力無いからな?ついでに言うと俺の場合未来視ができてもあくまで可能性の高い未来しか出ないから、それ以外の動きをされると予知が外れるの。多分ナイトが防げているのはその確率が低い未来の動きに第六感によって逸らしているからだと思う」

 

サンライズとナイト、チート能力同士の使い手による戦いは暫く続き、長引きそうだったので一度休憩を挟む事になった。

 

「……まさか、一撃も入れられないなんて、ナイト強すぎ……」

 

「私も危うい場面が幾つもありました。サンライズの成長度合いも凄まじいですよ」

 

「でもさ、ナイトと戦って思ったんだけど……ナイトの戦い方って結構勉強になるんだよな。攻撃の躱し方、カウンターに繋げる動き、俺とはまるで年季が違う気がするよ」

 

「あはは、でもサンライズだって十分強いですよ。まだスタイルチェンジしてないのにここまで私とやり合えるんですから」

 

そう、ここまでやり合った時点でまだサンライズは得意のスタイルチェンジをやっていないのだ。それを解禁した後にやり合えばどうなるか。ナイト視点から見ると想像も付かないだろう。

 

「それで、ナイトはその幻想を操る力について何か掴めた?」

 

「……それが、まださっぱりで……」

 

「うーん。でもさ、ナイトのミライコネクト?の力って自分で生み出してるんだよね?」

 

「正確には私の中のプリンセスの力なので私が創造している訳では無いんですよね」

 

「そっかぁ……あ、でもさ。多分幻想の力ってその人の想像する力を高めたらできたりしそうじゃない?」

 

「想像……かぁ、私そういうの苦手なんですよね」

 

「……どうして?」

 

「実は私、絵を描くのが苦手で……」

 

そう、ナイトことソウヤは完璧に見えるのだが、絵を描くのが苦手なのだ。つまり、何も無い所から何かを想像して描く力が他人よりも低いと言える。

 

「なるほど、幻想の力は何も無い所から物を想像する力。つまり、ナイトとは絶望的に相性が悪いと……。って、じゃあ何でその力を使おうと思ったんだ?」

 

「私の戦い方はあくまで正攻法での戦い方にはめっぽう強いんですけど、相手が搦手を使った際に対応力に欠けると言いますか……」

 

「あー、確かにαスタイルは機動力高いし瞬間移動できるけど槍の刺さってる場所にしか行けないからタイミング読まれて狙い撃ちされたら困るもんな。それにプリズムスタイルについても遠距離戦には強いけど相手に人質とか取られたらどうしようも無いし……俺のサンライズスタイルも正面戦闘は得意だけど、体力使うしね、バーストタイムは特に」

 

「その点、サンライズは色んな場面に適応できるので……」

 

キュアナイトのバトルスタイルは確かに強力だ。ある程度の事なら対応可能な対応力、第六感を使えば相手からの生半可の攻撃はほぼ通用しなくなる上にミライコネクトによるバトルスタイルのチェンジも強い。しかし、ナイトのバトルスタイルは基本的に正面戦闘が得意な物ばかりで奇襲や特殊能力を持つ相手への対応は苦手だと分析できる。

 

その証拠に以前ナイトが戦った強敵の中に体の一部以外はダメージが通らず、それ以外を攻撃されても再生してくる敵を相手をした際はパワーによるゴリ押しをするか、その弱点を付く作戦が整うまでは苦戦を強いられている。

 

「……ならさ、ナイト。まずは色々と想像してみようよ。多分、ナイトが幻想の力を操れない原因はナイト自身に想像力が足りないからだから」

 

「わかりました。やってみます!」

 

「じゃあまずはナイトが今使っている槍を発展させるならどんな形にする?」

 

「え……」

 

「自分が使いやすい槍にするも良し、攻撃力の高い物にするも良し」

 

それから数分後、ナイトは自分の理想的な槍を頭の中で浮かべ終わった。

 

「えっと……できました」

 

「じゃあそれを目の前に出してみて」

 

サンライズからの言葉にナイトがその槍を手に出すとそれは刃が十字になった槍だった。しかし、それはあくまで常識の範囲内に収まる物であったためにサンライズはうーんと唸る。

 

「……あ、そうだ。じゃあ、槍じゃ無くて現実に存在しないような武器を考えるとかは?」

 

「それはそれで難しいですよ……」

 

サンライズとナイトは頭を悩ませる。そこにトレーニングを終えたソラとあげはが入ってきた。サンライズは二人に事情を説明すると何か案が無いか尋ねる。

 

「それなら、想像力を高めるために……はいこれ」

 

そう言ってあげはが出したのはスケッチブックだった。それをナイトは手に取ると何となくあげはがやって欲しいことを理解すると渋い顔になる。

 

「これって……」

 

「そう。ナイトが苦手な絵を描く事だよ」

 

「………」

 

「想像力を豊かにするにはまず何も無い所から何かを生み出さないと」

 

「俺も一緒に手伝うからナイト、やってみよう?」

 

「私もやってみます!」

 

「うん、頑張ってみる」

 

それから四人で制限時間を決めて絵を描く事になった。お題は理想とする世界である。それから時間が経過してそれぞれ見せ合う事になった。




また次回もお楽しみに。


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想像する力と復讐者達

それから時間が経過してそれぞれが見せ合う事になった。一応ナイトとサンライズはプリキュアの変身を解いて元の姿で描いている。

 

「じゃあ、私はこれ!」

 

そう言ってあげはが見せたのはまるで夢の国を表すような遊園地を模した世界だった。やはりあげはは保育士を目指しているだけあって絵が上手い。

 

「あげはさん、やっぱり上手い……」

 

「では今度は私が」

 

ソラが次に見せたのはスカイランドに似た世界だが、そこにはヒーローがいて世界が平和になるように見守っている世界だ。ソラはこちらの世界の事を描くのは難しいので敢えてスカイランドに似せた世界を描いた。

 

「ソラちゃんらしい良い世界だね!」

 

「俺も見せるよ」

 

今度はあさひが世界を見せる。そこには地平線の彼方から眩い朝日が覗き、闇が消えて世界に希望の光が灯るような絵であった。

 

「あさひ上手くない!?」

 

「あさひには前に私が頼んで子供達への読み聞かせの絵本を書いてもらった事があるんだ。だから上手いんだと思うよ」

 

「凄いです!」

 

その絵はあげはとほぼ同レベルと言ってもおかしく無い程であさひの絵の上手さを示している。それだけあさひは想像力豊かなのだろう。

 

「じゃあ最後はソウヤだね」

 

しかし、ソウヤは彼にしては珍しく自身無さそうな顔つきになっていた。それをあさひが安心させるように手を置く。

 

「大丈夫。ソウヤが描いた絵だからきっと素敵な絵だよ」

 

それからソウヤがその絵を見せるとそれはまだ途中で、しかもあさひやあげはと比べるとまだまだ発展途上。並みのレベルではあるのだが、他の三人よりは見劣りする物だった。

 

「これは何をテーマにしたんだ?」

 

「ソラシド市とスカイランドを混ぜた世界だよ。俺達がいつまでも仲良く暮らせるように」

 

「やっぱりソウヤの絵は素敵です!」

 

「でもまだ途中だし……それに全然幻想っぽくないし」

 

「ううん、十分十分」

 

「絵を描く上で大事なのは自分の感覚、感性を大事にする事。ソウヤ君が納得のいく物が描ければそれで良いの。それに私達は画家を目指してるわけじゃ無いしね。テンションをアゲて気楽にやれば良いんだから」

 

それを聞いてソウヤは以前、壁画アートを手伝った際に自分の世界のあげはから言われた言葉を思い出す。自分が思うまま、自由にアゲていけば良いと。

 

「やっぱり、世界が違ってもあげはさんはあげはさんなんですね」

 

「うん!」

 

「俺も、自分なりの感覚で、自分の思った事を自由に形にすれば良いんだ」

 

するとソウヤの胸にチカッと何かが輝いたような光が宿った。その光は少しずつ大きくなると四人の前にポンっと出てきてソウヤの手に収まった。

 

「これって……」

 

「ワンダホー!もしかして!」

 

「新しいスカイトーン、ソウヤの気持ちに共鳴したって事?」

 

ソウヤはそれを見て嬉しそうに微笑むと他の三人もそれに釣られて笑顔になる。するとそれを影から見る人物がいた。

 

「……さてと。雑談はこのくらいにして……ねぇ!いつまで俺達の事を見てるの?バッタモンダー!」

 

「「え?」」

 

あさひがそう言うと影からワナワナと震えて出てきたのは怒りに燃えるソウヤの世界のバッタモンダーだ。一応あげはは初対面だが、バッタモンダーにとっては別の世界から来たあげはの見分けなど付かないのでソウヤの世界のあげはだと思い込んでいる。

 

「何故わかった!」

 

「いや、殺気ダダ漏れだし。狙いはソラだろ?まーた懲りずに雪辱を晴らしに来たとか」

 

「うるさい!お前らのせいで俺の面子は丸潰れだ!弱いくせに俺に楯突くどころか俺の全てを滅茶苦茶にしやがって!」

 

「……それはアンタが悪いんじゃん。負け惜しみとか超ダサいんですけど」

 

あげはがそうやって言い返す。するとバッタモンダーはニヤリと笑みを浮かべた。

 

「だが、驚きだったよ。まさかそこにいる奴がキュアナイトの真の正体だったなんてなぁ!よくも女装なんて古典的な仕掛けをしてくれて。すっかり騙されていたよ」

 

「何の事だよ」

 

ソウヤはダメ元で惚ける。あさひとあげはは疑問を持った何故今までソウヤの正体を知らなかったのかと。

 

「惚けても無駄だ。俺は見たぞ。キュアバタフライが生まれる時に出てきた光がお前の胸から放たれるのをな!」

 

「まさかソウヤ、バッタモンダーの前ではずっと女装するか変身後の姿でしかいなかったのか?」

 

「そうなんだよな……でも、もうこの際しょうがないか。多分バッタモンダーの性格から考えてミノトンとは仲悪そうだし」

 

ソウヤは諦めると仕方なく堂々と自分がキュアナイトとして戦う事に決めた。もうこれ以上正体を隠す理由も無いからである。

 

「僕の目の敵二人を纏めて潰すチャンスだ、カモン!MAXアンダーグエナジー!」

 

するとバッタモンダーが今までの恨みを全て込めた最高出力のアンダーグエナジーを呼び出すとそれを四人の近くに置いていたスケッチブックに吸い込ませる。

 

「ランボーグ!」

 

「懲りない奴だな。皆、行こう!」

 

「「「「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!」」」」

 

「バタフライ!」

 

「サンライズ!」

 

「スカイ!」

 

「ナイト!」

 

「アゲてひろがるワンダホー!キュアバタフライ!」

 

「夜明けにひろがる眩い朝日!キュアサンライズ!」

 

「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」

 

「静寂ひろがる夜の帷!キュアナイト!」

 

「「「「レディ……ゴー!ひろがるスカイ!プリキュア!」」」」

 

四人は並び立つとランボーグと向かい合う。バッタモンダーは指を鳴らすと早速ランボーグが葉っぱを飛ばして攻撃してきた。

 

「そんなの効かないよ!」

 

四人はそれぞれ回避するとスカイが前に出ていく。ランボーグはそれを狙って腕を振り下ろすが、攻撃はバタフライが障壁を出して防いだ。

 

「だったらこれでどうだ!」

 

「ランボーグ!」

 

ランボーグが足に付いている根を触手のように伸ばすと四人を捕まえようと向かってくる。それを四人は見切って躱し、距離を詰めていく。

 

 

「だあっ!」

 

「たあっ!」

 

ナイトとスカイが同時に拳を叩き込むとランボーグは吹き飛ばされて近くの崖に叩きつけられる。そこにサンライズが距離を詰めるとゼロ距離から演壇をぶつけるとランボーグは木でできているからかあっという間に炎上した。

 

「ランボーグ!?」

 

「良し!」

 

「ナイト、一気に決めてください!」

 

「わかりました!ヒーローガール!ナイトミラ……」

 

ナイトが浄化技を使用しようとしたその瞬間、ナイトが何かの気配を感じて技をキャンセル。受け身を取った。すると突如としてボロボロのローブに全身を包んだ何者かがキュアナイトを横から殴り飛ばしたのだ。

 

「うぐっ!」

 

「見つけたぞ、プリンセス。今日という今日はお前を殺してやる」

 

「アンノウン……こんな時に……」

 

アンノウンとは遥か昔、スカイランドでキュアナイトの中に存在するプリンセス・エトと戦ったアンダーグ帝国の元トップの存在で、プリンセスを憎んでいる。そのために彼女を宿したソウヤことナイトは彼に度々狙われるようになったのだ。

 

「なんかヤバそうな奴だな……」

 

サンライズはアンノウンを厄介な存在とすぐに認識。先手必勝とばかりにサンライズはアンノウンへと突進した。

 

「サンライズ!アンノウンの体は……」

 

「わかってる、再生するんだろ!」

 

サンライズは未来視でアンノウンを攻撃してもすぐに再生される事を予知。アンノウンに物理的なダメージを与えるのではなく背後を取って拘束した。

 

「プリンセスを宿していないお前に用は無い」

 

「お前には無くても俺にはあるんだよ」

 

サンライズが必死にアンノウンを抑えるが、そのパワーは圧倒的でサンライズは歯を食いしばってアンノウンを止めようとする。

 

「バタフライ、スカイ、二人でランボーグを任せても良いですか?私はサンライズに加勢します」

 

「わかりました!」

 

「こんな奴、私達二人で押さえてみせるよ」

 

それからナイトはアンノウンを抑え込むサンライズの方にやってくる。しかし、アンノウンのパワーに押し切られたサンライズは背負い投げされると叩きつけられ、肺の中の空気が一度に外に出る感覚に見舞われた。

 

「がふっ!?」

 

「サンライズ!」

 

サンライズは一瞬意識が飛びそうになったが根性で踏み止まると追撃を仕掛けようとするアンノウンの真下から転がって退避する。

 

「はぁ……はぁ……強い」

 

「サンライズ、大丈夫ですか?」

 

「うん。まさかアイツ、あそこまでの強さだなんて……ラブだった時のアイを超えてる」

 

「……これは、バーストタイムで一気に……」

 

「待ってください。実は、アイツ相手にバーストタイムは何回か使っていて……それをやってしまうと恐らく対応されてしまいます」

 

「わかった。ならナイト、近接戦用の姿はある?二人の近接連携で相手に回復させる間も与えないぐらいの速度で一気に畳み掛けよう」

 

「わかりました。プリキュア・ミライレコード!」

 

ナイトはサンライズが見た事もないスカイトーンを起動するとそれをスカイミラージュにセット。

 

「ミライコネクト!βナイト!」

 

するとキュアナイトの青みがかった長い黒髪がさらに長く伸び、一つに束ねられてポニーテールへ。黒のドレスアーマーはミニスカートの黒の和装へと変化し、黒のニーハイソックスとハイカットブーツに装いを変えた。最後にキュアナイトの手に刀身が淡く白銀に輝く刀が握られてキュアナイトβベータスタイルへと変身する。

 

「おお、和風の変身……まるでブラックジェネラル……漆黒の将軍だな」

 

「その例え、初めて聞いたんですけど……」

 

「なら俺もギア上げるか。プリキュア!ホーリーコネクト!ひろがるチェンジ!ホーリーサンライズ!」

 

サンライズもホーリーサンライズへと変身すると白い炎の剣を手に持つ。それから二人揃ってアンノウンへと走っていく。アンノウンはそれを見てナイトへと拳を繰り出すが、ナイトの姿が突然薄く溶けて消える。次の瞬間、サンライズとタイミングを合わせたナイトが同時にアンノウンを斬りつけてダメージを与えた。

 

「ぐ!?小癪な真似を……だが、俺の体は無限だ。すぐに回復を……」

 

その直後、サンライズが連続でアンノウンを斬りつけていき、回復される前にダメージを与えていく。しかし、アンノウンはそれでも回復してしまうとサンライズをニヤリと見据えた。

 

「くっ……マジかよ。再生速度を超えるスピードでダメージを与えても次第に回復するのか……」

 

「……やっぱり弱点の胸を狙わないとダメか」

 

「え?それ初耳なんだけど、胸が弱点なの?」

 

「前の時はそうだったけど、でも同じ場所が弱点だとは思えない」

 

「でもやってみないとわからないだろ!」

 

「あっ!」

 

サンライズが前に飛び出すとアンノウンの胸を狙って剣を突き出す。するとアンノウンは笑うと両手を広げる。その瞬間、サンライズの未来視が発動して危険を知らせるがもう遅い。

 

アンノウンはサンライズに刺された部分からドロドロと液体へと変化するとサンライズに纏わりつき、ゼロ距離から大爆発を起こす。

 

「うわぁああああああ!!」

 

その爆発の直後、ナイトの近くにアンノウンは再び出てくると無傷で立っており、サンライズは傷だらけで元の姿に戻って倒れ込んでしまうのだった。




また次回もお楽しみに。


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怒れる太陽 煌めく夜空

アンノウンの自爆によって深い傷を負い、倒れたサンライズ。それを見たバタフライは顔を青ざめさせると助けに行こうとする。

 

「嫌……サンライズ!」

 

「余所見してて良いのかなぁ!」

 

バッタモンダーが指を鳴らすとバタフライを執拗にランボーグに狙わせた。そして、ランボーグからの葉っぱのエネルギー弾がバタフライに命中してしまう。

 

「くっ、あぁっ!」

 

バタフライは吹き飛ばされると近くの木に叩きつけられてぐったりとしてしまい、スカイが駆け寄る。

 

「大丈夫ですか!?バタフライ!」

 

そして、ナイトの方もサンライズを助けようと走ろうとするが、そこに再生したアンノウンが現れてキュアナイトを攻撃。

 

「くっ、さっきのは一体……」

 

「さっきのは私の分身の中の一体。お前らが弱点の胸を攻撃する事を読んで誘い込ませてもらったんだ」

 

「なんて卑劣な……」

 

「何とでも言え。お前には仲間を守れない無力さを味わってもらってからゆっくり殺してやるつもりだったからな」

 

「ッ、そのためにサンライズを先に狙ってたんですか!?」

 

それから二人が激しくぶつかり合う中、傷だらけのサンライズの意識は朦朧として暗い空間を彷徨っていた。

 

「俺は……弱かった……結局はソウヤにもあげはにも迷惑をかけて……ただの足手纏いになって……。思えばいつだってそうだ。自分が無理をする度に迷惑をかけてきた」

 

するとサンライズの前に一つの黒い影が現れるとサンライズを見つめている。それを見たサンライズはその影に語りかけた。

 

「……お前は……」

 

「何やってるんだあさひ。お前の覚悟はそんな物かよ」

 

そこに現れたのはカゲロウである。それを見たあさひは困惑。カゲロウは消えたはずだ。前のように奇跡の力でも起きない限り出てこれないはずだ。ましては自分の意識の中にいるはずがない……と。

 

「何で……お前がここに」

 

「あ?そんなのどうでも良いだろ。それより、お前。あげはとの誓いをもう忘れたとは言わせないぞ?」

 

「……でも、今の俺にはあげはの隣に立つのは力不足で……」

 

そう言った途端カゲロウはあさひの胸ぐらを掴んで睨みつけた。

 

「舐めてんのか。お前、あんなにあげはの隣に立ちたいって必死に頑張ってきた努力を全部無駄にする気か」

 

「そんなつもりは……」

 

「お前はいちいち思い詰めすぎだ。二人の義姉さんにも同じこと言われただろ」

 

「……何でお前がそんな事知ってるんだよ」

 

「それを言う義理はない」

 

するとカゲロウが外の映像を見せるとそこにはアンノウンによって追い詰められたナイトとランボーグに痛めつけられるスカイとバタフライがいる。

 

「……お前はこの光景を見て尚這いつくばってるつもりかよ」

 

「ッ……」

 

あさひはそれは嫌だとばかりに横に首を振る。それを見たカゲロウはあさひを挑発するように言い放った。

 

「だったらやるしか無いよなぁ」

 

「ああ……すまないカゲロウ。また苦労かけさせて……」

 

「ふん、そう思うのならさっさと元の世界に戻りやがれ」

 

カゲロウにそう言われたあさひことサンライズは目を覚ますと痛む身体を動かして立ち上がる。そして、ナイトの元に走り出した。その少し前、ナイトはアンノウンを相手に押され続けている。

 

「前に戦った時よりも数段強い……」

 

「当たり前だ。私はプリンセス、お前を殺すためにここまで強くなったんだからなぁ!」

 

そこに傷だらけのサンライズが到着するとナイトを庇うように前に立つ。

 

「ナイトは……俺の大切な友達はやらせない」

 

「サンライズ、無理しないでください!」

 

「悪いけど、それはできない。何故ならそれが……俺の性分だからよ。プリキュア!ホーリーコネクト!ひろがるチェンジ!ホーリーサンライズ!」

 

サンライズは再びホーリーサンライズへと変身するとアンノウンへと突っ込む。アンノウンは待ってましたとばかりに再び胸の部分をガラ空きにする。

 

「サンライズ!」

 

ナイトが危険を察知してサンライズを止めようとするが、もう間に合わない。しかし、サンライズも同じ手を二度と喰らうような人間では無かった。

 

サンライズは突進してアンノウンに体を拘束される瞬間、白い羽を舞い散らせながら瞬間移動。アンノウンの後ろを取るとアンノウンの頭を貫いた。

 

「ぐああっ!?」

 

アンノウンはそれを喰らって苦しそうな声を上げる。これはつまり、サンライズがアンノウンの弱点を貫いた事を意味していた。

 

「何ぃ……何故私の弱点が……」

 

「俺の勘だよ。さっき攻撃した時、お前は意図的に頭に攻撃を喰らわないようにしていた風に見えたからな。だから敢えて今度は狙わせてもらった。ナイト!決めてくれ!」

 

「はい!」

 

するとナイトは刀を掲げると夜空のエフェクトが現れ、月が輝く。そして月の輝きが刀に宿り、刀身を更に輝かせた。

 

「ヒーローガール!ナイトスラッシュ!」

 

ナイトはそのまま高速でアンノウンに接近し、斬り裂いた。そして、刀を納刀する動作をするとアンノウンが浄化されていく。

 

「おのれぇ!またしても!!」

 

アンノウンは消え去ると復活する事は無かった。しかし、それと同時にサンライズはその場で倒れ込んでしまう。

 

「サンライズ!大丈夫ですか?」

 

「はぁ……はぁ……何とか平気……これで倒し切れたのか?」

 

「いえ……恐らくあれはアンノウンの分身体の中の一つに過ぎません。なので、倒したとはとても……」

 

「そっか……。ナイト、俺はナイトの力になれたかな……」

 

サンライズは疲れ切っているのか息は荒く、なかなか立ち上がれていなかった。

 

「そんな、十分過ぎるぐらいですよ!」

 

「それは……良かった」

 

ナイトはサンライズに肩を貸すと何とか立たせるが、もうサンライズの体は限界が近く、フラフラと歩いている。その頃、バッタモンダーの生み出したランボーグと交戦するスカイ、バタフライもランボーグの強さの前に追い込まれて傷だらけで倒れていた。

 

「う……くぅ……」

 

「なんて強さなの……」

 

「あはははは!お前らのような雑魚が粋がるからこうなるんだよ!!」

 

二人が悔しそうに顔を歪める中、バッタモンダーはまるで二人を馬鹿にするようにして見下し、嘲笑う。そこにサンライズとナイトが来るとサンライズはフラフラの体が戻らないにも関わらず、ナイトの肩を外すように頼んだ。

 

「ナイト……もう大丈夫……」

 

「ですが……」

 

「お願い……やらせて」

 

サンライズの顔を見た途端ナイトは一瞬身震いする。サンライズの顔はそれ程までに完全にキレていたからだ。

 

「俺と俺の友達の彼女達に……何をしてやがるんだ!」

 

サンライズは怒りの形相で突っ込むとランボーグを何の支援も無しにたった一撃で殴り飛ばすと吹っ飛んで叩きつけられる。

 

「ランボ……」

 

「遅い」

 

次の瞬間には起きあがろうとしたランボーグの目の前に剣が突きつけられており、動くなとばかりにサンライズか睨んでいた。

 

「そこから一ミリでも動いてみろ……俺はお前らを許さない」

 

その言葉はコソコソと隠れていたバッタモンダーにも向けられている言葉だ。バッタモンダーはそのあまりの形相に恐怖して腰を抜かす。

 

「ヒッ……」

 

「サンライズ……前にスカイの事おっかないって言ってたのに……今のサンライズの方が余程おっかないですよ」

 

ナイトはサンライズの怒りの形相を見て冷や汗を流す。その間にバタフライとスカイは立ち上がるとナイトと合流する。一方でサンライズはランボーグへとまだ剣を突きつけたままだった。

 

「終わりにしてやる。ひろがる!ホーリー……うっ!?」

 

サンライズが浄化技を使おうとしたその瞬間、身体中の傷口が悲鳴を上げると激痛が走って動きが鈍ってしまう。ランボーグはそれを見逃さない。

 

「ランボーグ!」

 

すかさずサンライズを殴るとサンライズは吹き飛ばされて近くの岩場に叩きつけられてしまう。

 

「ぐふうっ!」

 

サンライズは声にもならない悲鳴を上げると体は更に痛みを訴える。サンライズがそれに悶える中、バッタモンダーは笑い転げていた。

 

「あはははは!何が許さないだ!こけおどししてくれやがって。オラよ!」

 

バッタモンダーが指を鳴らすとランボーグが痛めた体を無理に動かして立とうとするサンライズを殺そうとして動いてくる。

 

「う……くうっ……」

 

サンライズは何とかしようとするものの、体の痛みはとめど無く襲ってきてどうする事もできない。

 

「やばい……死ぬかも……」

 

サンライズは死を覚悟すると少しでもランボーグにダメージを与えるために対抗しようとした。その時、ナイト、バタフライ、スカイがサンライズの前に立つと両手を広げる。

 

「どうして……」

 

「そんなの、友達を助けるのは当たり前です!」

 

「サンライズは私達の大切な友達。手出しはさせません!」

 

「サンライズ、一人で無理ばかりしすぎ。私との約束をもう忘れたの?」

 

サンライズはそう言われてハッとする。サンライズが新たな力に目覚めた時、バタフライと約束した事。それは二人で半分ずつ無理をする事。サンライズ一人に背負わせない事だ。

 

「……ごめん、バタフライ。俺はまた……一人で……」

 

「わかったのならそれでオッケーだよ。すぐにその傷を癒すね」

 

バタフライがそう言うとミックスパレットを取り出す。そして、二つの色を混ぜた。

 

「癒しの力!アゲてこ!」

 

これにより、サンライズの傷が治って復活。サンライズはバタフライの隣に並んだ。

 

「バタフライ、二人でやろう」

 

「ええ!」

 

「サンライズレッド!」

 

「バタフライピンク!」

 

「「ブレイブアップ!」」

 

「「プリキュア!ダブルドライブスタイル!」」

 

二人は切り札であるダブルドライブスタイルとなると構えを取る。それと同時にナイトも新たな力を使う事にした。

 

「幻想の力、私も使わせてもらいます!」

 

ナイトはスカイトーンをスカイミラージュに装填。その瞬間光に包まれた。

 

「プリキュア・ミライレコード!ミライコネクト!γナイト!」

 

するとキュアナイトの青みのかかった長い黒い髪が下ろされてロングヘアーのストレートに。そして服装が黒のドレスアーマーから金と紺色を基調とした肩出しのドレスへと変化。両腕には袖があり、腰からローブが二枚後ろに垂れ下がっており、そこには幻想的な夜空の星々が描かれている。これにより、キュアナイトが未来で得るかもしれない姿の一つ、キュアナイトγスタイルが誕生するのであった。

 

「キュアナイト……γスタイル!!凄いです!」

 

「やったねナイト。幻想の力、手に入ったじゃん」

 

「喜ぶのはランボーグを倒してからにしましょう」

 

「姿が変わったくらいで何だ……ランボーグ、蹴散らせ!」

 

それから三人は新たな力をその身に纏い、ランボーグへと向かっていく事になる。




また次回もお楽しみに。


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決着と特訓の終わり

γスタイルに変身したキュアナイト、そしてダブルドライブスタイルとなったサンライズとバタフライは前に出ると早速ランボーグが両手から葉っぱのエネルギー弾を連射してくる。

 

「させない!」

 

するとサンライズが手を蝶型に合わせるとバタフライが使う盾が召喚されて攻撃を防ぐ。そこにバタフライがランボーグへとキックを決めた。

 

「ランボ!?」

 

「想像力を働かせる……はあっ!」

 

するとナイトの周囲にサーベルが七本召喚されるとそれが自由自在に飛び回って次々ランボーグに突き刺さる。

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!スタイルチェンジ!ペガサス!」

 

サンライズがペガサススタイルにチェンジするとそれにシンクロするようにバタフライの姿もサンライズと同じような装甲が纏われて変化する。

 

「「はあっ!」」

 

二人が同時に手を翳すと炎弾が生成。それらがランボーグを取り囲むように放たれると滅多撃ちにした。

 

「たあっ!」

 

そこにスカイが跳び上がって蹴りを連続でぶつける。ランボーグはそこまでやられた所でキュアナイトへとターゲットを定めると葉っぱのエネルギー弾を飛ばす。

 

「効きません!」

 

ナイトがそう言った瞬間、自身の周りに盾が生成されてそれらが繋がるようにエネルギーバリアが発生して防御。

 

「「せーのっ!」」

 

サンライズとバタフライは呼吸を合わせて同時にランボーグへと拳を叩きつけてその威力でランボーグを吹き飛ばす。

 

「馬鹿な……僕のランボーグを、アンダーグエナジーを最大まで注いだんだぞ!」

 

バッタモンダーが動揺する中、ランボーグが何とか立ちあがろうとするものの、突如としてランボーグの周囲の重力が増加。ランボーグの動きが止めさせられる。

 

「ランボ……」

 

サンライズがそれを見てふとナイトの方を向くとそこにはナイトがただ手を翳すのみでランボーグの動きを抑え込んでいた。

 

「凄い……え?ナイト、もしかして……」

 

「ええ、どうやらこの姿は重力をも自在に操れるみたいなんです」

 

すると今度はサンライズ、バタフライ、スカイの体が浮き始める。これもナイトのγスタイルの力なのだろう。

 

「ワンダホー!私達も空を自在に飛べるんだ!」

 

「だったら、スタイルチェンジ!ドラゴン!」

 

するとサンライズはドラゴンスタイルへチェンジ。それと同時にバタフライもドラゴンスタイルに似た姿に変化する。

 

サンライズはジャンプ台を生成するとそれを使って普段よりも速いスピードで空中を飛び回った。

 

「じゃあ、私も!」

 

バタフライはジャンプ台を生成してそれを踏んだ瞬間、いきなり前に飛び出た。

 

「え!?」

 

「あ、そのジャンプ台の飛距離とかの調整は結構コツがいるんだ……」

 

「それを早く言ってよ〜!」

 

バタフライは何とかナイトから付与された浮遊能力で何とか踏み留まると次の瞬間には立て直したランボーグがバタフライへと腕を振り下ろす。

 

「ヤバっ……」

 

「バタフライ!」

 

その瞬間、バタフライの前にナイトの操る盾が出てくると攻撃を防いだ。

 

「ありがとうナイト!」

 

「クソッ、だったらランボーグ、奥の手だ!」

 

するとランボーグは地面に自らの根を突っ込むと動きを止めた。するとランボーグは突如として更に体を巨大化させていく。

 

「なっ!?大きくなれるのかよ!」

 

「ですが、動かなければ良い的です!ヒーローガール!スカイパンチ!」

 

スカイが流星のような拳を繰り出すとランボーグはそれを何と真正面から受け止めて弾き飛ばしてしまう。

 

「きゃああっ!」

 

スカイは悲鳴をあげると叩きつけられて体に傷を負う。それを見たサンライズは警戒を高めた。

 

「気をつけて!アイツ、機動力を捨てて防御力が上がったみたい!」

 

すると突如としてランボーグの周囲に存在する草木がしおれていくと枯れ始めた。

 

「まさか、周りの植物の栄養を奪って成長してるのか!?」

 

「早く止めないと!」

 

「でも、どうやって……」

 

「……バタフライ、俺に考えがある」

 

サンライズはバタフライの隣に行くと話しかける。それはサンライズにとって一か八かの賭けであった。

 

「二人で同時にバーストタイムを使う。アレを使えば瞬間火力、速度、防御力等が一気に跳ね上がる。その出力でアイツが成長するよりも早くアイツのエネルギー供給源の根を全て機能停止させるんだ」

 

「けど、サンライズ。確かその技って……」

 

「うん、体力をかなり消耗してしまう。だから失敗したら俺達二人は殆ど戦力にならない」

 

「……危険な賭けね」

 

「もしバタフライがこの案に反対するならこの案は却下だ。二人同時じゃないとあの守りは突破できないからな」

 

サンライズがそう言ったとき、バタフライはサンライズの肩に手を置くとサンライズを安心させるように笑って返す。

 

「……じゃあ、やろっか」

 

「良いのか?バタフライ、成功する保証なんて無いんだぞ」

 

「それは必ず失敗するってわけでも無い。分が悪くても私はそれに乗る。だって、私はサンライズの彼女よ。サンライズのやりたい事にはちゃんと付き合うし、もし失敗しても私はサンライズを責める気は無いから」

 

「オッケー、じゃあ……一緒に行こう!」

 

「アゲていくよ!」

 

「「バーストタイム!」」

 

二人はバーストタイムを発動すると体に炎のオーラを纏う。それから二人は走り出すとそのスピードは普段の三倍のスピードで接近するとランボーグの体へと殴り続ける。それから跳び上がると二人でスタイルチェンジを発揮。

 

「「スタイルチェンジ!グリフォン!」」

 

二人はグリフォンスタイルとなると同時に地面へと大剣を突き立ててエネルギーを流し込み浄化技を発動。

 

「「ひろがる!サンライズボルケーノ!」」

 

そのエネルギーは地中に広がるランボーグの太い根を全て焼き尽くして浄化していく。これにより、ランボーグのパワーは極端に低下。エネルギーの供給が断たれた事でサイズも元に戻っていく。

 

「なっ!?そんな馬鹿な……」

 

「これなら、倒せます!」

 

スカイとナイトは突撃すると二人同時に拳をぶつける。ランボーグはその威力を前に吹き飛ばされてしまう。

 

「ランボーグ!?」

 

「くっ、何してるランボーグ!こんな奴らに負けてるんじゃない!」

 

喚き続けるバッタモンダーに対してナイトは拳を握りしめる。そしてバッタモンダーへと言い返した。

 

「こんな奴ら?……私はスカイに、サンライズに助けられました……あなたは私の命の恩人達をこんな奴らと馬鹿にして……許せません!」

 

ナイトはランボーグの周囲の重力を増加させるとナイトは手を翳してサーベルを飛ばしてランボーグの周囲にサーベルを突き刺すと動きを封じてしまう。

 

「はあっ!」

 

更にナイトはランボーグの上から踵落としを決めてランボーグを地に伏せる。それから浄化技を発動すると周囲が美しい星空へと染まり、星々が幻想的な輝きを放つ。その状態でナイトが跳び上がると夜空に煌めく星々から光がナイトへと集約。背中に翼のような物が展開した状態で真上へと光のエネルギー波を放出した。

 

「ヒーローガール!ナイトファンタジー!」

 

光のエネルギー波は上空に放たれると無数とも思える数に分裂しつつランボーグの体へと流星群のように降り注ぐ。それは美しき夜空から流れ星が次々と降っているように美しい眺めでランボーグは光のエネルギーの中に閉じ込められて浄化され始める。

 

「サンライズ、バタフライ!決めてください!」

 

「「任せて!」」

 

すると二人は同時に跳び上がると足元に蝶型の巨大な盾を出現させる。そして二人は同時に技を発動した。

 

「「ひろがる!バタフライプレス!」」

 

二人同時のバタフライプレスによってランボーグは押し潰されるとナイトの光が一気にランボーグへと注ぎ込まれて完全に浄化される事になった。

 

「スミキッタァ〜」

 

それから四人はバッタモンダーを見据えると彼は震え上がり、捨て台詞と共に何処かへと消えた。

 

「ヒッ!!お、覚えていやがれ!バッタモンモン!」

 

それから四人が変身を解くと既にもう夕日が傾いてしまっており、これ以上の特訓はできなさそうだ。

 

「もう夕方かぁ。バッタモンダーの奴、懲りずに来てくれて……お陰でトレーニングがあんまりできなかったよ」

 

あさひが悔しそうにそう言う中でもソウヤは嬉しそうにあさひへと声をかけた。

 

「そんなこと無いよ。あさひ達のお陰で俺は新たな力に目覚める事ができた。凄く感謝してるよ」

 

「ソウヤ君がそう言ってくれるのなら私達も来た意味があったんじゃない?」

 

「元々は俺とあげはのコンビネーションを鍛えるつもりだったんだけどな」

 

「あはは……」

 

あげはが苦笑いする中、ソラはキョトンとした顔つきで二人へと問いかける。

 

「あれ?でもお二人共、ランボーグと戦う時は息ぴったりでしたよ。新しい力を使った時は特に……」

 

「え?」

 

「あさひ、多分あさひ達のコンビネーションはもう既に完成していたんだよ。これまでの戦いの中でさ。だからその力が目覚めたんだと思う」

 

「そっか……何にしても今日はありがとう、ソウヤ」

 

「え……でも俺達は特に何もしてないよ?むしろ、感謝するのは俺達の方」

 

それから四人は虹ヶ丘家に戻ると丁度良くソウヤの世界のあげは、ましろ、ツバサも揃っておりトレーニング後の四人を出迎えた。それからトレーニングについて話す事にしたのだが、あさひの世界のあげはがある事を思い出す。

 

「あ、そうだ。そういえば私、私の世界のソラちゃんから預かってたんだけど、ソウヤ君。はいこれ」

 

そう言ってあげはが渡したのは小包であった。それを見たソウヤは疑問に思う。

 

「何ですか?これ」

 

「ソラちゃんからソウヤ君に会うなら渡して欲しいって」

 

そこにはあさひの世界のソラからの手紙と手作りしたであろうミサンガが入っていた。

 

「これって……」

 

「俺達の世界のソラがソウヤにプレゼントだって。励ましてくれたお礼をまだしてないってソラが。あと……ソウヤの事を……」

 

「ストップあさひ!それはソウヤ君が手紙を読むときに伝える言葉だから」

 

そう言ってあげはがあさひの口を塞ぐ。あげははこれをあさひが言ってはいけないと感じ取ったからだ。それを見たソウヤの世界のソラの目から薄らとハイライトが消える。あさひが何を言おうとしたか何となくソラは察したらしい。

 

「それじゃあソウヤ君、また会おうね!」

 

「ソウヤ、今日はありがとう!今度はトレーニング以外の目的で来たいな!」

 

「俺こそありがとうあさひ!またね!」

 

それからあさひとあげはは自分達の世界へと帰っていく。それからソウヤはあさひの世界のソラからの手紙を開いた。

 

“ソウヤ君、元気にしてますか?あの時のお礼がまだでしたね。私、ソウヤ君のお陰で恐れずに立ち上がる事ができました。感謝してもしきれないです!なので、私からのお守りです。ちゃんと利き腕に付けてくださいね!”

 

そこまで読んだ所でソウヤは疑問に思う。何故利き腕に付けて欲しいとソラが言ったのか。その理由は……

 

“ソウヤ、ずっと言いたかったです。私はソウヤの事が異性として大好きです!ですが、私とソウヤ君は別世界の人。本来ならこのような感情は許されないと思います。ですから、私の分の愛情はソウヤ君が好きになった人に注いでください!またいつか会える日を楽しみにしています。”

 

それを見たソウヤは嬉しそうに笑みを浮かべるとここにはいない別世界のソラの事を想う。

 

「ソラ、ありがとう。また会おうね」

 

そう呟いてからソウヤはあさひの世界のソラの想いも背負って自分の世界のソラを愛すると誓うのであった。

 

尚、あさひの世界のソラがソウヤに告白したと思い込んだソウヤの世界のソラがハイライトオフの目でソウヤへと問い詰めたのだが、逆にソウヤによって不意打ちでキスをされてソラの頬は真っ赤に染まるのだが、これは完全に余談である。




お知らせです。この作品もここまで書いてきましたが、ここ最近アニメに追いついたのが原因でオリジナルストーリーばかりやっていてそろそろネタが尽きそうなのでここで一旦アニメがある程度進むまで休憩を入れようと思います。楽しみにしていただいている読者の皆様には本当に申し訳ないです。ですが、アニメがまた進みましたら再開しますのでどうかその時を楽しみにしてください。それではまた次回でお会いしましょう。


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忘れ去られたぬいぐるみとローブの影

ある日のこと、ソラと共に外に出かけていたあさひは二人揃って大雨に打たれながら走っていた。

 

「うぅ……何でこんな急に大雨が……」

 

「そんなこと言ってる場合じゃ無いですよ!」

 

二人は傘を持っていかなかったために通り雨に見舞われてもどうする事もできなかったのだ。二人が走っているとソラがふとある一軒家を発見する。

 

「……?」

 

「ちょっ、ちょっとソラ?何を……」

 

すると更に雨が強く降り注ぎ、二人は堪らずその家へと走っていった。

 

「すみません!雨宿りさせてください!」

 

「って、そういえばこの家……空き家だった気が……」

 

二人が家の玄関の下で雨宿りしているとあさひがそんな事を呟く。それから二人は話していた。

 

「……急に降ってくるなんて……」

 

「やれやれ、中々大変なものだな……って、ん?」

 

あさひはふと違和感を感じると周りを見渡す。しかし周りには何の変化も無い。それでもあさひは胸にザワザワとした嫌な予感を感じていた。

 

「こっち!」

 

すると突如としてどこからともなく自分達へと声がかかった。それを聞いた二人は顔を見合わせる。

 

「え?今の声ソラ?」

 

「いえいえ、私は何も……確か家の中から聞こえてきたような気がします」

 

しかし、確かに声が聞こえた。そのため、二人は困惑する。するとまた声は聞こえてくる。

 

「こっちだにゃ」

 

その声の聞こえてきた方を見るとソラは玄関の扉を見やる。すると玄関の扉が勝手に開く。あさひは先程自分が呟いた発言を思い出すと体を悪寒が駆け巡った。

 

「……いや、まさか……そんなわけ無いよな?」

 

しかしソラはそんな事情など知らないのでゆっくりとその家の中へと入っていく。

 

「助かります!お邪魔します!」

 

「ま、待てソラ!」

 

あさひの静止を聞かずにソラは玄関の中に入ると辺りを見渡す。するとそこには電気は付いておらず薄暗い廊下や階段が広がっていた。そして、ソラがキョロキョロと辺りを見渡すと近くの窓辺にぬいぐるみが置かれている。

 

「ぬいぐるみ……」

 

「いやいや、あり得ないあり得ない……だってそんな事あるわけが無い」

 

ソラはいきなり挙動不審となったあさひを疑問に思っているとソラは倒れていたぬいぐるみを起こす。

 

「ネコさん!可愛……」

 

その瞬間、雷が鳴り響くとその猫のぬいぐるみは勝手に動いて立ち上がる。

 

「連れてってにゃ!」

 

そう言うぬいぐるみを見てあさひは何が起きているのか訳がわからず思考停止。頭から湯気が出始めた。そして、そのぬいぐるみを直視していたソラは……。

 

「ひぃいいい!うわぁああ!喋ったぁああああ!」

 

そう言って思い切り逃げ出すと思考停止しているあさひを追い抜いてそのまま一目散に走っていく。

 

「え?ちょっ、ソラ!?置いてくなよ!!」

 

その数秒後、我に帰ったあさひがソラを追いかけて走っていく。そして、取り残されたぬいぐるみは悲しそうにペタンと座り込んでいた。

 

それから二人は猛ダッシュで虹ヶ丘家に戻ると玄関の扉を乱雑に開けて入る。

 

「さっきのは何だったんでしょう?」

 

「はぁ……はぁ……ソラ、気持ちはわかるが俺を置いていくな……」

 

「お帰り。ソラちゃんもあさひも雨大丈夫だった?」

 

「姉さん、それは良いんだ。むしろ、それよりももっとヤバい目に遭った……」

 

あさひからの言葉にましろは首を傾げる。そして、ましろは二人にタオルを渡すとふと何かに気がついた。

 

「どうしたの?その子」

 

それを聞いた途端ソラの体が凍りつき、あさひがソラの足元を見ると同時に顔が強張る。それもそのはず、ソラの足元にいたのは……先程喋っていたぬいぐるみそのものであったのだから。

 

「ゔぁあああああ!!にゃにゃにゃにゃ!にゃんでいるんですかぁあ!」

 

「……これは酷い」

 

こうして、何故か置いてあったはずのぬいぐるみがここまで来ている事に驚いたソラであった。それからあさひはましろ達に事情を説明する事になる。

 

「えっと、このぬいぐるみが二人に着いてうちに来たって事で良いのかな?」

 

「そ、そ、そ、そうです!」

 

「ソラ……頼むからそうやって怖がるのはやめてくれ。気持ちはわからなくも無いけど……」

 

「むしろ何であさひ君は平気なんですか!!」

 

そう言うソラの声は震えており、明らかにぬいぐるみの存在を怖がっていた。

 

「まさかぁ、そんな事ある訳無いじゃないですか」

 

「ソラさん、ちょっと怖がりすぎですよ」

 

ツバサとアイはまだ二人の言うことをにわかには信じられていない様子で呑気そうな声を上げている。

 

「でも、確かに声を聞いたんです!“連れてって”と!」

 

「まぁ、これについてはマジだからソラは嘘ついてないよ」

 

「でも、町外れの洋館って確か今空き家だったはずなんだよ?」

 

「それはそうだから困るんだよ」

 

あげはとあさひのやり取りにツバサとアイは凍りつく。こうなってくると二人の話の信憑性が増すからだ。

 

「じゃあ二人が聞いたのは……」

 

「もしかして」

 

「このぬいぐるみ?」

 

そう言っているとエルは楽しそうにソラにとって禁句に等しい言葉を話す。

 

「おばけぇ!」

 

「ひぇええ!」

 

「ソラちゃん、怖いのは苦手なんだね……」

 

「やっぱり物理で殴って倒せるのと倒せないのとでは反応も違うっぽいなぁ……」

 

あさひはおばけの類が苦手なソラに同情する。あさひとしてはお化けを信じているわけでは無いのだがそれでも全く何も思わないかといえばそうでも無いのだ。

 

「あの洋館に返しに行きましょう!」

 

ソラはそう言ってぬいぐるみを返すように提案。するとぬいぐるみは勝手に動き始めるとあげはの手からすり抜けて飛び出す。

 

「「「「えぇ!?」」」」

 

流石にこれにはましろ達もビックリな様子だった。あさひはそんな反応をした四人に納得の顔つきとなる。流石にこうなれば誰でも驚くだろう。

 

そして、当の猫のぬいぐるみは超能力を発揮すると本棚から大量の本を抜き取ると自分を覆うように配置。バリケードを展開して自分を持ち出されないようにした。

 

「にゃーにゃ、にゃーにゃ」

 

そして殻に籠るように閉じこもった猫のぬいぐるみだったがエルが優しく呼びかける。

 

「にゃーにゃ、だいじょーぶだよ」

 

それを見て安心したのか猫のぬいぐるみは再び超能力で本を元に戻すとエルへと抱きつくようにエルの元に行く。

 

「プリンセス……」

 

「エルちゃんに教えてもらっちゃったね。相手が誰だろうと同じように接するって事を」

 

そう言うあげはにソラはハッとすると己の未熟さを痛感する事になる。

 

「未熟でした!その通りです!」

 

「ソラちゃん?」

 

「ヒーローは困っている人には誰にでも手を差し伸べる。なのに、猫さん……あなたの気持ちをわかろうともせず、帰らせようとしました。ごめんなさい。私で良ければ力になります!」

 

「ま、ソラもこう言ってるし大丈夫だろ。……ただ、それでも怖いものは怖いみたいだけど……」

 

あさひがそう言ってソラの方を見るとまだソラは怖がっているのか顔が引き攣ったままになっていた。

 

「ひとまず、綺麗にしてあげよっか!」

 

「じゃ、じゃあ私がやります!」

 

そう言ってアイがぬいぐるみを綺麗にしようとする。しかし、ソラはそれは自分がやるべきだと考えているのかそれに反論した。

 

「い、いえ!それは私がやるべき仕事です」

 

「む、無理しないでください」

 

「大丈夫です!……多分」

 

「……あげは、俺はちょっとやる事があるからちょっと部屋に戻って良いかな?」

 

「え?良いけど……」

 

結局ぬいぐるみを綺麗にするのはソラがやる事になり、アイはそのサポートに回る事に。そして、あさひは一人部屋に入ると突然窓を開けてミラージュペンとスカイトーンを取り出す。

 

「……さっきから視線がキツいな……一応確認しておくか」

 

そう言ってあさひはミラージュペンとスカイトーンを取り出して変身する。

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!サンライズ!夜明けにひろがる眩い朝日!キュアサンライズ!」

 

あさひはキュアサンライズに変身すると窓から外に飛び出す。すると先程からサンライズに向けられていた視線が自分の方向に向くとそのまま追いかけてきた。

 

「……やっぱり来たか。さて、何が出てくるのやら!」

 

サンライズはそのままその視線の送り主を裏山にまで引っ張っていく。今ソラやましろ達と視線の正体を合わせたらいけない。そう考えての応急処置である。

 

それからサンライズが裏山の中でも見晴らしの良い場所に降り立つとそこに姿を現したのは漆黒のローブを纏った影が出てきた。

 

「……お前、何者だ?何で俺のことを見ていた」

 

「……」

 

しかし、ローブを纏った影は何も返事を返すことは無い。それを見て不審に思ったサンライズは一度カマをかける意味でも攻撃をする事にしてみた。

 

「はあっ!」

 

サンライズから繰り出されたパンチはそのローブの男の体をすり抜けるとその瞬間、サンライズの腹に衝撃が走る。

 

「ふぐっ!?」

 

サンライズは自分の腹を見るとそこにはローブの影がカウンターで拳をサンライズに叩きつけていた。

 

そのままサンライズは目眩がすると崩れ落ちそうになるが、敵の前でそんな事をしては隙だらけになるために何とか堪えると回し蹴りを繰り出す。しかし、それさえもローブの影をすり抜け、その直後に首に手刀が命中するとサンライズはたった二発目で変身解除してしまうと気を失ってしまう。

 

それからあさひが目を開けるとそこは自分の部屋のベッドの上であげはが今にも泣き出しそうな目で見つめていた。

 

「あさひ……良かった……良かったぁあ……」

 

「あげは……」

 

「あさひ、急に一人にしてって言って暫くしても部屋から出てこないと思ったら窓が空いていて……皆で森の中を捜索したらあさひが倒れていたし……本当に心配したんだから……」

 

どうやらあさひはあげはに心配をさせてしまったらしい。時刻はすっかり遅くなっており、暗い中の捜索である事もわかるとあさひはあげはへと頭を下げるために起きあがろうとする。

 

「あげは、ありが……うっ!?」

 

あさひは突如として襲ってきた腹へのダメージで悶えた。どうやら先程の一発がかなり深いダメージとして襲っているようなのだ。

 

「くっ……」

 

「無理したらダメ……あさひ、お願いだから無理しないで……」

 

あげはは不安そうにあさひの無理を止める。それを見たあさひはあげはを安心させるためにあげはの頬を優しく撫でた。

 

「大丈夫。いなくなったりなんてしないよ。それに、今は無理すべき時じゃないから」

 

しかし、あさひをあっという間に倒してしまったローブの影が一体何なのか。その正体は謎のまま。更にあさひは感じてしまった……あの影に勝てる方法が見えない事に……。

 

「ひとまず、どうにかする手立てだけでも考えるべきだな」

 

それからあさひはローブの影にどうやったら勝てるのかどうかを思案しつつその日を終えるのであった。




また次回もお楽しみに。


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リブデビルの謎 彼からの試練

あさひがローブの影に倒されてしまって翌日。あさひは一人スカイランドへとやってきていた。その理由は……

 

「……あのローブの影を倒す手立て……見つかると良いけど……」

 

あさひの中に眠る前世の記憶の中に自分の潜在能力をもっと引き出すための手がかりが何か無いかを見つめるためだ。そのため、スカイランドの王様に頼み込んでスカイランドに伝わる古い本をとにかく読み漁っていた。

 

「スカイランド語は前世の記憶のおかげでスイスイ読める……。後は前世の俺の記憶さえ呼び覚ませられれば……」

 

確証は無い。それでもあさひは可能性をできる限り試してみたかったのだ。勿論、病み上がりの状態でスカイランドに行くと言った際は全員に止められた。それでもあさひの決意は変わらず、ソラ達は根負けして送り出す事にしたのだ。

 

ちなみに今、ソラ達はぬいぐるみの持ち主であるだろう空き家に住んでいた人について調べている。あさひはそれに参加できない事に悔しさを覚えていたがそれでもまた次にあのローブの影が出た際に何かしらの対策法が無いと詰むためにこちらに来ている。

 

「クソッ……どの本にもヒメが生きていた頃の記録が無い……」

 

あさひの前世がいた時代と言うとアイの生まれ変わる前、ヒメがスカイランドの王族としていた頃にまで遡る必要があるのだ。そして、ヒメの記録が見つかれば恐らく自らの前世……リブデビルの事についてもわかると考えていた。

 

「くうっ……何でこんなにも資料が無いんだ。まさか、抹消されたりしてないよな……」

 

あさひがどれだけ探してもヒメの頃の記録が無い。このままでは無駄足に終わってしまう。あさひが必死になって本を読み漁る事三時間弱。それでもまだ見つからない。

 

「やっぱり、無いのかな……。いや、こんな弱気でどうする!アイツを倒すにはどうすれば良いか探すんだろ!」

 

あさひが自らを奮い立たせているとその瞬間、突如として本の並ぶ棚の中から一冊の本が光を放った。まるでこれを手にしろと言わんばかりに。

 

「まさか、これなのか?」

 

そう言ってあさひがそれを手にするとその瞬間、あさひは光と共にその本に吸い込まれてしまう。

 

あさひが目を開けるとそこにあったのはとある映像だった。それは、暗く、深い漆黒の世界。光はどこまで行っても届く事は無く、その中で一人の赤ん坊が泣いていた。

 

「これは……」

 

そこに一人の女性が歩いてくるとその赤ん坊を抱き抱える。そして、こう呟いていた。

 

「よーしよし、リブデビル。あなたはこの世界の覇王、ベリアル様の後を継ぐために生まれたのよ」

 

そう言っているのはリブデビルの母親と言うべき存在なのか、母親はリブデビルを可愛がっている。その様子をあさひ達が倒したベリアルが見ていた。

 

「ベリアル様、この子があなたの力を受け継ぐだけの器を持ったあなたのお子、リブデビルですよ」

 

「ふん。我はそのような物に興味はない。この世界を支配し、我が物にする事以外はな……」

 

それから数年の時が流れてリブデビルは大きくなり、青年にまで育った。それまで順調に育ってきていたリブデビルだったのだが、ここである事が発覚する。

 

「お前は我の力を与えるに相応しくない」

 

「そんな……何故ですか!?ベリアル様!」

 

「……お前、その背中の翼は何だ」

 

するとリブデビルの背中に生えた翼の片翼が黒ではなく白に染まっている事がわかった。

 

「!!あれって……」

 

「これは、その……」

 

「お前は国外に永久追放だ。もうこの世界に立ち入る事は相成らん」

 

そう言われてリブデビルはベリアル達の住む世界を追放。その際に国の重要事項を覚えているままだと危険だと判断されて記憶を一部を残して全て消されてしまった。

 

そんな彼が辿り着いたのは光の国、スカイランドだ。記憶を消されて目覚めたスカイランドにてリブデビルは王の一族に仕えることになる。そんなある日の夜の事、リブデビルが空を見上げていると突如として空に一番星が瞬くとリブデビルへと話しかけた。

 

「あなたは……どうしてこの世界に来たのですか?」

 

「俺は……わからないんだ。何故自分がこの世界にいるのか。この世界で俺は何を成すべきなのか……」

 

「では、私がその運命を授けましょう。私の力の一部を引き継ぎなさい」

 

するとリブデビルが一番星から光が注がれるとその体に光が漲っていく。しかし、それと同時に自らの中の奥深くに眠っていた闇の力も目覚めてしまった。その二つの力は溶け合うと合わさり、リブデビルに更なる力を与える。

 

「やはり、あなたは私が見込んだ通りのお人ですね。……あなたの使命はこれから強く育つ一つの命を己の身を懸けて守る事。そして、彼女を立派に育てる事です」

 

それからリブデビルは暫くしてスカイランドの王族、ヒメの教育係に任命された。一番星から数々の力を授かったリブデビルはヒメを正しい方向へと導いていく。

 

それからリブデビルは暫くしてヒメの命を守ってその身を散らし、霊体に変化してしまう。そして、ヒメがベリアルとの戦いの中で傷ついた所に現れて最後の力を授けるとヒメはベリアルを封印する事に成功した。

 

「……これが、リブデビルの一生だったのか……」

 

するとあさひの後ろにリブデビルが姿を現すとあさひへと話しかける。

 

「……未来の俺よ、何故そこまでして力を求める」

 

「大切な人を救うためだ!」

 

あさひの迷いの無い答えにリブデビルは一度溜息を吐く。それからあさひの前に一瞬にして移動した。

 

「君には無理だ。……俺の力の半分しか扱えてない君にはね」

 

「半分……どういう意味だ!」

 

「その言葉通りの意味だ。光だけの力でどうにかなるほどお前が勝とうと思っている敵は弱くない」

 

リブデビルは冷たくそう言い放つ。今の自分ではローブの影には絶対に敵わない。そう断言されてしまっていた。

 

「そんな事ない!」

 

「ならば何故俺の元に来た。力が欲しいのもその者を倒すためだろう」

 

「ッ……」

 

あさひは図星を突かれてしまうと黙り込んでしまう。するとリブデビルは指を鳴らすと目の前に広い空間が広がった。リブデビルはそこに降り立つ。

 

「何のつもりだ」

 

「お前のその甘い心を叩き直してやる。来い」

 

「……やられても文句言うなよ?スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!サンライズ!」

 

あさひはキュアサンライズに変身すると炎の剣を出してリブデビルへと突き出す。しかし、その瞬間にリブデビルはサンライズの真後ろに移動すると回し蹴りをサンライズに叩き込む。

 

「うぐっ!?」

 

サンライズは吹き飛ばされると何とか止まる。しかし、その痛みはかなり大きく一瞬体が揺らいだ。

 

「……その程度か」

 

「くっ、だったら!プリキュア!ホーリーコネクト!ひろがるチェンジ!ホーリーサンライズ!」

 

サンライズはホーリーサンライズに強化変身。それから白い炎の剣を振りかざす。しかし、それをリブデビルは闇の障壁で防ぎ、光の光弾でサンライズを一瞬にして吹き飛ばす。

 

「うわっ!?」

 

そのままサンライズは叩きつけられて地面を転がる。それから何とかサンライズは立ち上がるものの、体中に痛みが走っていた。

 

「はぁ……はぁ……」

 

「ダメだな。この程度でやられるようならお前にあの影を倒すのは不可能だ」

 

「言いたい放題……言ってくれるな。まだ終わってなんかない!」

 

サンライズは背中の翼を広げると空へと飛び上がり、そのまま白い剣の形を模したエネルギー弾を連射する。だが、リブデビルはそれを両手に生成した光と闇の穴を合体させ。大穴を作り出すとその中に全て吸い込む。

 

「なっ!?」

 

「……お返ししよう」

 

その瞬間サンライズへと逆にその剣が跳ね返される。それどころか、白い剣の中の半分が黒く染まっておりサンライズはそれをまともに喰らうとホーリーサンライズが解除されてボロボロの体で地面に激突する。

 

「ううっ……」

 

「勝負あったな。……お前では何も守れないし救えない。少なくとも……お前の大切な人は守れてもせいぜい一人……いや、一人すら守れないな」

 

「馬鹿に……するな!スタイルチェンジ!ドラゴン!」

 

サンライズは立ち上がるとそのままスタイルチェンジを発動。ジャンプ台で加速しつつリブデビルへと短剣を振りかざす。

 

「……遅い」

 

次の瞬間にはサンライズの前にリブデビルはおらず、サンライズはリブデビルが手にした闇の剣で滅多打ちにされてから地面へと強く激突。ドラゴンスタイルが解けて動けなくなってしまう。

 

「あ……がぁ……」

 

サンライズはどうにかして動こうと悶えるがもう体が言う事を聞いてくれない。

 

「お前は強くなる代償として仲間を一人見捨てた。そんな過程で得た力など無力に等しい」

 

「そんな事は……はっ……」

 

サンライズが反論しようとしてハッとする。その存在に心当たりがあったからだ。

 

「カゲ……ロウ」

 

「ああ、お前は唯一強くなれる道を自らの手で放棄した。そんな奴に俺は越えられない」

 

「そんなの……お前の勝手な言葉だ……俺は一人でも強くなる……」

 

サンライズが立ちあがろうと体に力を込めたその時、リブデビルがサンライズの背中を思い切り踏みつける。

 

「ぐふうっ……」

 

サンライズは地面へと押さえつけられるとまた激痛が彼を襲う。サンライズはそのまま変身解除してしまうとあさひがボロボロの姿で倒れ込んでいた。

 

「ううっ……」

 

「ふん。未来予知の力を持つお前でもこの程度か」

 

実はサンライズは未来視の力を描写こそされてはいないが使っていた。しかし、リブデビルの持つ未来視の力はそれを遥かに上回っており、あさひの動きやスピードは全て見切られてしまっているのだ。

 

「……よくその体たらくで大切な人を守るだとか抜かしたな。今のお前には何もできない。わかったら諦めて帰れ」

 

リブデビルは背中を向けて去ろうとしたその時、リブデビルの足をあさひは掴んだ。

 

「……るさい」

 

「ほう?」

 

「うるさい……お前に何がわかる……大切な人を、ヒメを守れたお前に、守るだけの力が無くて、必死に今まで努力してきて……強くなろうともがいてきた俺の……何がわかる。もう俺は、あげはや姉さん達の悲しむ顔なんて見たくないんだ」

 

あさひの言葉にリブデビルは無言のまましゃがむとあさひの頭を掴んで持ち上げる。

 

「だったら俺という壁を越えてみろ」

 

「……やってやるよ。ひろがるチェンジ……」

 

あさひが再びサンライズに変身しようとした瞬間、リブデビルはあさひを掴んで持ち上げると思い切り腹を殴る。

 

「ごふうっ!!」

 

「ほら、どうした?変身してみろよ」

 

しかし、あさひはもう力尽きてしまったのかダランと手が下に落ちると手にしていたスカイミラージュが手からこぼれ落ちた。

 

「終わりか」

 

リブデビルがそう言って攻撃をしようとした瞬間。突如としてあさひの体からあさひとは別の声が聞こえてきた。

 

「おいおい、お前。俺の相棒に何してやがる」

 

その瞬間、あさひから闇のオーラが出るとリブデビルを吹き飛ばす。それと同時にあさひは崩れ落ちると気を失った。

 

「……なるほど。お前も残っていたのか……ならばお前達二人で成し遂げてみせろ。あのローブの影とやらに勝つという事を……」

 

そう言ってリブデビルは消えるとあさひは元の世界に戻ってきてあさひは起き上がる。傷は治っており、あさひの体はピンピンとしていた。

 

「リブデビル……どうして……」

 

あさひがその本を見やるとその本はどこかへと消えており、その場には何も無い。

 

「……やはり、俺一人ではダメなのか……カゲロウ」

 

それからあさひは部屋を片付けてから元の世界へと戻る事になる。リブデビルにさえ敵わなかった自分の弱さを抱えながら。




また次回もお楽しみに。


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洋館での戦い ローブの影との再戦!?

あさひがリブデビルの試練を終えて家に戻るとましろ達があさひへと声をかけた。

 

「おかえり、あさひ」

 

「どう?何か手掛かりはあった?」

 

「……前世の俺と戦った」

 

「まさか、リブデビル様と!?」

 

アイの言葉にあさひは頷くとそれから自信を無くしたような顔つきで呟く。

 

「……手も足もでなかった」

 

「……!!」

 

その言葉に五人は息を呑む。今のあさひは決して弱く無い。むしろ、六人のプリキュアの中では最強と言っても過言では無い。そのあさひが通用しないというのは前のローブの影を相手にした事を聞いた時と同じぐらいの衝撃なのだ。

 

「ひとまず、今日はゆっくり休んで。明日は一緒にぬいぐるみの持ち主を探すのを手伝ってくれる?」

 

「うん。ごめん、今日は身勝手な俺のお願いを聞いてくれて」

 

それからその日の夜、あさひは一人悩んでいた。自分では勝てないと言ったリブデビルの言葉がどうしても頭から離れないのだ。

 

「……俺じゃ勝てない……じゃあどうすれば勝てるんだ……」

 

するとそこに扉が開いてあげはが入ってくる。それを見たあさひはそっぽを向いた。今の自分をあげはに見せたくないと言わんばかりである。

 

「あさひ、大丈夫?……って、大丈夫だったらそっぽは向かないよね……」

 

「ごめんあげは。今は……」

 

「……私の意見を言っても良い?」

 

「?」

 

「無理して一人で勝つ必要は無いと私は思うな」

 

その言葉を聞いてあさひは納得する。しかし、それと同時に自分の弱さを他人にカバーしてもらわないとならない自分が情けなく感じた。

 

「俺は……弱いのかな。強くなるために沢山努力したし、力も得てきたのに……それはアイツにとってはほんの一部に過ぎなかったって事だし……」

 

それからあさひはあげはへと今日起きた事を全て話す。それからあげはは少し考えてからこう返した。

 

「私は今のあさひでも十分だと思う。ただ、今よりもっと強くなりたいのならもう一度手を伸ばせって事なんじゃない?」

 

「手を伸ばす……」

 

「もうここにカゲロウはいない。それでも一人で孤軍奮闘するよりも誰かと力を合わせるべきだとリブデビルって人は伝えたかったんだと思う」

 

そう言われてあさひはようやく吹っ切れたのかあげはと向き合った。

 

「あげは、励ましてくれてありがとう」

 

「ふふっ、どういたしまして」

 

するとあさひはあげはに優しく抱きついた。それに対してあげはも優しく抱き返す。

 

それから翌日、あさひが起きるとソラが慌てた様子で何かを探していた。

 

「……ソラ?」

 

「ネコさんが……いなくなってしまって……」

 

「……!!」

 

ソラが朝起きるとソラと一緒に寝たはずのネコのぬいぐるみが消えてしまっていた。それからあげはやアイ、ツバサ達も探すが見つからず。六人とエルはネコのぬいぐるみを救うために元いた家に向かう事になる。

 

「きっとネコさんはあの洋館にいるはず!」

 

「あの洋館、去年家主が引っ越してからずっと空き家になってるみたいです」

 

「住んでいた人は今どこにいるかわからないけど……」

 

「それでもソラちゃんは救いたいんだよね?」

 

「勿論です!」

 

すると洋館に到着した六人が家に入ろうと玄関へと走っていく。その瞬間、六人の前にミノトンが飛び出してきた。

 

「手合わせ願おうか!」

 

「「「「「「ミノトン!?」」」」」」

 

「私達、ネコさんを探しに来たんです!」

 

「ネコだと?そんな事よりも勝負が大事であろう!来たれ!アンダーグエナジー!」

 

するとミノトンは問答無用でアンダーグエナジーを呼び出すと家をランボーグへと変えてしまう。

 

「ランボーグ!」

 

「皆さん!」

 

それから六人はスカイミラージュを取り出すとプリキュアへと変身する。

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!」

 

「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」

 

「ふわりひろがる優しい光!キュアプリズム!」

 

「天高くひろがる勇気!キュアウィング!」

 

「アゲてひろがるワンダホー!キュアバタフライ!」

 

「夜明けにひろがる眩い光!キュアサンライズ!」

 

「空にひろがる数多の天気!キュアウェザー!」

 

「「「「「「レディ……ゴー!ひろがるスカイ!プリキュア!」」」」」」

 

六人が変身を完了すると早速ランボーグが家の扉を開け放つ。その瞬間六人は強制的に吸い込まれていく。

 

「「「「「「うわぁああ!!」」」」」」

 

六人が中に入ると扉が閉められて閉じ込められてしまう。そして、外にいるミノトンの映像が投影された。

 

「果たして無事に出られるかな?」

 

「ネコさんが巻き込まれてないか心配です!」

 

「この中のどこかにはいるよね?」

 

「ネコさーん!」

 

「ネコの心配をしている場合か!?」

 

するとミノトンの映像が途切れると今度は二体の小型のランボーグが出てきてまた扉が開くと同時にスカイとサンライズのみが吸い込まれていく。

 

「「ええ!?またかよ(ですか)!?」」

 

「「「「スカイ、サンライズ!?」」」」

 

四人が心配する中、四人の前にも巨大なランボーグが出てきて四人との戦闘が開始される。

 

そして、閉じ込められたサンライズの目の前にはローブの影が現れた。

 

「お前!!何でここに……」

 

しかし、ローブの影が答えを返す事は無い。どうやらこれはサンライズを惑わすためのコピーで意思が無いが戦闘能力は高い再現度でコピーされている。

 

「く……。前はやられたが、今度はそうはいかない!スタイルチェンジ!グリフォン!」

 

サンライズはパワー型のグリフォンスタイルに変わると大剣による重い斬撃波を放つ。

 

「………」

 

「ッ!?」

 

サンライズは未来予知を使うと後ろを振り向くがもう既にそこに影は立っており、サンライズは吹き飛ばされてしまった。

 

「あぐっ!?」

 

「………」

 

未来予知を使っても追いつけないスピード。そして、パワータイプであるグリフォンスタイルをも圧倒するパワー。サンライズは困り果ててしまう。

 

「どうする……動き出しを予知してから動いたんじゃ遅い……」

 

実は未来予知には弱点があった。未来予知を発動した際はサンライズの動きが一瞬だけ硬直してしまうのだ。これは未来を見る一瞬の隙だと考えてもらえればわかりやすいだろう。

 

「こんな時に……もう一人いてくれれば……」

 

見える範囲の動きならサンライズは予知無しでもカバーできる自信があった。もしこの場にもう一人いれば背中合わせでサンライズの見えない背後もカバーできるために対応もしやすかっただろう。

 

「………」

 

その瞬間、影はワープしてくるとサンライズへと攻撃を繰り出す。サンライズは未来予知を捨てて相手の出方をギリギリまで肉眼で見てから反応。何とか影の猛攻を凌いでいた。

 

「……くっ、これなら攻撃は防げるけど反撃ができない……」

 

このままではジリ貧かと思われたその時だった。突如としてサンライズから幻影が出てくると消えたはずのカゲロウが霊体のような姿で現れたのだ。

 

「おいおい、お前何やってるんだよ」

 

「カゲロウ……何でここに?」

 

「お前がやられているのをあの世から見ていたがあんまりにも無様だったから見ていられなくてな?」

 

するとローブの影がカゲロウを攻撃するが、カゲロウはそれを簡単に見切ると受け止める。

 

「こんなもんか?」

 

その瞬間、カゲロウはローブの影を殴り飛ばして怯ませる。その隙をサンライズは逃さない。

 

「スタイルチェンジ!ペガサス!」

 

サンライズはペガサススタイルにチェンジすると炎弾を連射。ローブの影はワープで躱すものの、炎弾はローブの影を追尾。ワープ先に移動して命中する。

 

「今だ!ひろがる!サンライズレイン!」

 

サンライズの浄化技が命中するとローブの影は完全に捉えられて動きが鈍る。そのタイミングでカゲロウはサンライズと一つになるとサンライズはホーリーサンライズに変身。

 

「ひろがるチェンジ!ホーリーサンライズ!ひろがる!ホーリーカリバー!」

 

サンライズから放たれた一撃がローブの影を完全に浄化していくと勝利を収める。その時、空間に扉が開いてサンライズはプリズム達のいる空間に戻ってきた。するとそこにはぬいぐるみとスカイも揃っていたのだがその場にいた全員の顔つきは切羽詰まっている。

 

「サンライズ!」

 

「「「「「逃げて!!」」」」」

 

五人とエル、ぬいぐるみの後ろには超巨大なタンスのランボーグがおり、サンライズも慌てて走らされる事になった。

 

「待て待て待てぇ!?何でこうなってるんだよ!」

 

「そんな事言われたってぇ!」

 

「あそこが出口です!」

 

それからサンライズ達は出口に到着するとそこを潜って外に飛び出す事になる。

 

「流石はプリキュア。この程度で屈する事は無いか」

 

「や、やっと出られた……」

 

「外に出ればこっちの……」

 

その瞬間、サンライズはランボーグに突撃するとランボーグを殴って吹き飛ばす。

 

「ランボーグ!?」

 

「何!?まさか、あの大きさのランボーグを吹き飛ばすとは……」

 

「悪いけど、ここ最近やられっぱなしだったから今日の俺はストレスが溜まっててね!ウィング、バタフライ!決めてくれ!」

 

「オッケー!」

 

それからバタフライはミックスパレットを取り出すとすぐにウィングとの合体技を発動する。

 

「全ての色を一つに!ミックスパレット!レッド!イエロー!ブルー!ホワイト!混ぜ混ぜカラーチャージ!」

 

バタフライが虹のエネルギーをウィングに送るとウィングが火の鳥に変化。その上にバタフライが乗る。

 

「プリキュア!タイタニックレインボー!アタック!」

 

それからウィングがプニバードの姿に変化してランボーグを押し潰すと浄化に成功。勝利を収めるのであった。

 

「スミキッタァ〜」

 

「プリキュア。敵ながらあっぱれである。ミノトントン」

 

そして、ミノトンも撤退して六人は帰路に着く。

 

「ネコさん、無事に見つかって良かったです……」

 

「私達、洋館に住んでいた人を突き止めたんだ!」

 

「問題はどうやって場所を突き止めるかだけど……」

 

「大丈夫です!私がきっと見つけます!」

 

するとそのすぐ近くにタクシーが停まったかと思うと中から女の子とその子の母親と思われる人物が降りてくる。二人は先程あさひ達がいた洋館に入ろうとしているのを見てあさひ達は声をかけた。

 

「あの!」

 

「……はい?」

 

親子が振り向くと少女はソラの抱えるぬいぐるみを見て驚きの目を向ける。

 

「……マロン?」

 

「このネコさんの事ですね?」

 

「りほ!マロン、マロンだよ!良かったね?」

 

どうやらこの少女……りほが持ち主らしく、彼女達が引っ越しの際に置いていってしまっていたのがソラの抱えるネコのぬいぐるみ……マロンだった。りほの親も仕事の都合でなかなか取りに戻る事もできなかったらしい。

 

「良いんだよ、りほ。マロン、ちゃんと見つかったよ」

 

それからソラはしゃがむとマロンを動かしてりほを安心させるように声をかける。

 

「……ずっと、待ってたニャー!」

 

それを見てりほは泣きながらソラの持っていたマロンを受け取ると抱きしめた。こうして、ネコのぬいぐるみ……マロンは持ち主の元に帰る事になり、ソラは少し寂しそうな顔になる。

 

「……持ち主、探す必要が無くなっちゃいましたね」

 

「再会できたから全て良し!」

 

「そうですね」

 

「ソラちゃん、ちょっと寂しい?」

 

「……大丈夫です!マロンさん、嬉しそうだったから」

 

するとソラにだけ聞こえるようにマロンは“ありがとにゃ”と言う。それからソラは手を振ってさようならを告げた。

 

こうして、また一日平和な日々が過ぎていく。あさひはこの平和が続けば良いと思いながら笑顔を浮かべるのであった。




また次回もお楽しみに。


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番外編 あさひとソウヤ 大人の物語

今回は本編の時間から離れて未来の話となります。それではどうぞ!


今現在の時系列から十七年の時が過ぎてあさひ達は大人になった。その間に沢山の出来事を経てあさひとあげはは結婚。子供も産まれて今は五歳。あさひ達は幸せの絶頂にいた。

 

あさひは努力に努力を重ねて夢を叶えて今は俳優として日朝のテレビ作品の主役である。

 

「パパのえんぎ、かっこいい!ぼく、パパみたいなヒーローになる!」

 

あさひとあげはの子供であるしょうたはそんなあさひの背中を見てヒーローになりたいといつも言っていた。

 

「そっか。じゃあ、お母さんと一緒にどうやったらヒーローになれるか考えてみよっか」

 

「うん!」

 

二人がそう話しているとあさひのスマホに電話がかかってくる。かけてきた主はましろであった。

 

「もしもし、姉さんどうし……」

 

『ちょっとあさひ!今日は約束の日でしょ!今どこにいるの!!』

 

「約束……ってあ!そうだった!今日はソウヤとソウヤの世界のソラが来てくれるんだった……やっべ……完全に忘れてたぁ!!」

 

今はあさひは今まで慣れ親しんできた虹ヶ丘家から離れてあげはの聖性を名乗っている。あげはは当初、自分が虹ヶ丘性になると言っていたのだがあさひの強い要望にあげはは根負けして聖の苗字を継承したのだ。

 

「あさひってば、どうしてそんなに私の苗字に合わせたかったの?」

 

「……その方があげはの方に少しでも歩み寄れた感じがして良いんだ。それに、あげはがいなくなったら誰が聖の方の家を継ぐんだよ」

 

「もう、そこまでしなくても良いのに……」

 

今はあさひが運転する車に乗ってましろ達の待つ実家の虹ヶ丘家に向かっていた。

 

それからあさひとあげは、そしてしょうたが家に着くと早速ましろが出迎える。

 

「ただいま。姉さん」

 

「もう、あさひってば。どうしてこんな時まで時間にルーズなの」

 

「ごめんごめん。ソウヤ達はまだ来てないよね?」

 

「……残念だけどもういるからね?」

 

「うげっ!?」

 

あさひが慌てて居間に行くとそこには既にこちらにやってきていたソウヤとソウヤの世界のソラの二人が揃っており、その近くにはソラにそっくりな青い髪をサイドテールに纏めた幼い少女がチョコンと座っていた。

 

「ごめんソウヤ!お待たせ……」

 

「こっちこそ、あさひは過密スケジュールなのに無理言ってごめん」

 

「久しぶりだね。ソウヤ君にソウヤ君の世界のソラちゃん」

 

「あさひ君の世界のあげはさんもお元気そうで何よりです!」

 

お互いに挨拶を終えてからあさひがふと少女の方を見ると目を見開く。

 

「この子、ソウナちゃん?大きくなったね!」

 

「あはは、前に来たのはソウナが生まれたばかりの頃だったから……」

 

「しょうた君も成長しましたよね!」

 

そうやってソウヤが近づくとしょうたは一瞬ビクンと体を震わせる。そしてあさひの足にしがみついて隠れてしまった。

 

「あれ……もしかして……」

 

「うん、しょうた……恥ずかしがり屋で……そっちのソラは多分こっちのソラと同じような感覚だと思うんだけど」

 

「ソウヤ君はほぼ初めましてだから……」

 

しょうたが怖がる中、あさひがしょうたの頭を撫でながら大丈夫だと言う事を伝えて挨拶するように促す。

 

「しょうた、初めて会った人には……」

 

「あ、あいさつ……」

 

「頑張って!」

 

あげはにも応援されてしょうたは勇気を振り絞ると細々とソウヤ達へと挨拶をする。

 

「は、はじめまして……ひじりしょうたです……」

 

それを言うともう限界とばかりにしょうたはあさひの元に行ってしまった。その直後、ソウヤがソウナにも挨拶をするように言う。

 

「ソウナ、挨拶してもらったからちゃんと返さないとね」

 

「うん!わたし、ソウナ・ハレワタールです!よろしくおねがいします!」

 

こちらは元気いっぱいに恥ずかしがる事なく挨拶をする。それを見てあさひは感心していた。

 

「やっぱりソウヤの育て方には敵わないよ……。ソウナちゃん、凄い活発な子に育ったね」

 

「それでもまだまだ教えることは沢山あるよ」

 

「ソラちゃん、ソウナちゃんのイヤイヤ期には苦労しなかった?」

 

「あはは、確かにイヤイヤ期もありましたがソウナは賢いからあんまりイヤイヤと言うのはありませんでした」

 

それからあさひ達大人組は近況報告の為に話す事になったのだが、その傍であさひはしょうたにある事を言う。

 

「パパ達はちょっとお話ししてるからしょうたはソウナちゃんと仲良くしておいで」

 

「でも……」

 

「大丈夫。ソウナちゃんは優しいから安心して良いんだよ」

 

「う、うん……」

 

それからあさひ達が話を始めるとしょうたは怖々とした様子でソウナの元に行こうとするが、足がすくんで動かない。それを見たソウナは逆にしょうたの元に近寄っていく。

 

「わたし、ソウナ。はじめまして、しょうたくん」

 

「……うぅ……」

 

しかし、しょうたは緊張してしまうと中々話す事ができなくなってしまう。そんなしょうたを見たソウナは少し考えてから手を差し伸べた。

 

「だいじょうぶ、こわくないよ。……わたし、しょうたくんとおともだちになりたいの!」

 

「でも、ぼく、よわいよ。パパみたいなヒーローをめざしてるのに……」

 

「ヒーロー!!かっこいいよ。わたしもパパやママみたいなヒーローになりたいとおもってるし、わたしたちきっとなかよくなれるよ!」

 

ソウナからの言葉にしょうたは戸惑うが、それでもソウナから差し出されたその手を優しく取るとソウナは笑う。それにつられてしょうたも笑った。

 

「ソウナちゃん、かめんらいだーってしってる?」

 

「かめん……らいだー?」

 

しょうたが遊ぶ為に持ってきていた銃型の変身玩具を出すとそれをソウナへと見せる。

 

「これとこれをつかってあそぶんだ」

 

「かっこいいね!これ、わたしのいえにはないから……」

 

「じゃあいっしょにたくさんあそぼうよ!」

 

「うん!」

 

しょうたはソウナに遊び方を説明するとソウナはキラキラした目でそれを見つめており、その銃を手に取ると二人で仲良く遊び始めた。

 

そんな様子をあさひ達はこっそりと見ており、二人が仲良くしているのを微笑ましい目で見つめている。

 

「ソウナ、あんなに嬉しそうに……」

 

「でも、しょうたがあそこまですぐに友達が出来たことは無いから」

 

「ソウナちゃんには両親から受け継いだ困っている人を放っておけないヒーロー気質があるんだね」

 

「ヒーロー気質だなんてそんな……」

 

ソウヤが否定しようとするが、ソラは満更でも無いようで嬉しそうな顔をした。

 

「そういえば、あさひが主演をやってるドラマを見てみる?」

 

あげはの提案にあさひは恥ずかしそうにする中、ソウヤとソラはとても興味があるようで一緒に観ることになる。そのドラマは学園青春物語でとある落ちこぼれのクラスの担任として赴任した超生物。その超生物は一年後に地球を壊してしまうらしい。なのでその前に殺すべくクラスメイトと共に超生物に挑む物語だ。今はシーズン1が終わってシーズン2も決まっている状態である。

 

「それにしてもあさひは凄いよね。これだけじゃなくて日朝のテレビで主役でしょ?」

 

「本当に過密スケジュールの中でよく今日一日が空いたよね」

 

「そんな。ソウヤだってスカイランドでの仕事を頑張ってるんだからお互い様だよ」

 

それからあさひ達はドラマを観る事になり、それを観るのを楽しんだ。この日だけではやはり全話は見切る事ができないのであげはが予め用意しておいたBlu-rayをソウヤ達に渡すと時間がある時に好きなタイミングで見れるようにした。

 

「そういえばあさひ、カゲロウは元気でいる?」

 

「え?あー……一応いるにはいるけど……」

 

その瞬間、あさひの雰囲気が変わるとソウヤへと言葉を紡ぐ。

 

「よう、ソウヤ。久しぶりだなぁ」

 

「……やっぱり急に変わるとビックリしますね」

 

「あ、かげろうパパ!」

 

しょうたもカゲロウはもう一人の父親のような物なのでとても懐いており、それを見たソウナはある事を言う。

 

「しょうたくん、パパがふたりいるの?」

 

「うん!あさひパパとかげろうパパ。ふたりはおなじかっこうをしてるんだ」

 

その事を聞いたソウナはその事を不気味に思う事も無く、むしろソウヤに聞くことにした。

 

「パパはふたりになったりしないの?」

 

「……え?」

 

いきなりの言葉に流石のソウヤも混乱する。ソラはそんなソウヤを見てソウナへと語りかけた。

 

「パパはふたりにはなれないんですよ。しょうた君のパパが特別なだけだよ」

 

「ふぅーん」

 

するとしょうたはモジモジした様子でソウナを見ていた。そして、ソウナへと質問する事になる。

 

「ソウナちゃん」

 

「なに?」

 

「すきなひとっている?」

 

そのど直球の質問にソウナは迷う事なく答えをしょうたへと返した。

 

「パパ!わたし、しょうらいはパパのおよめさんになるんだ!」

 

それを聞いたしょうたはグサリと心にダメージを負ったのかしょんぼりしてしまう。それを見たあさひは冷や汗をかく。

 

「……マジかよ。しょうたを一目惚れさせたのか?あの子……」

 

「でも、やっぱりまだソウヤの事が大好きみたいですね」

 

「ふふっ。しょうた、早くも青春真っ盛りみたいだね」

 

ちなみにここから更に十年以上先。成長したしょうたがソウナへと本格的にアプローチを始める事になるのだが、この話は全くの余談である。

 

こうして、久しぶりに顔を合わせたあさひとソウヤ。ソウヤが元の世界に戻る直前、あさひはある事を思い出してそれを報告する事にした。

 

「あ、そうだ。ソウヤ。報告が遅れたけど、あげは……二人目を授かりました」

 

「え!?本当に!?」

 

「おめでとうございます!」

 

「ありがとう。二人目はまだどっちかはわからないけどしょうた、お兄ちゃんになるんだよね」

 

「うん!」

 

するとソウナの影響を受けたからかしょうたはソウヤ相手でも普通に接する事ができるようになっていた。ちなみにこの後暫くしてからソウヤ達の方でも二人目を妊娠したという事を報告するのだが、それはまた別の話だ。

 

「それじゃあソウヤ。お互い頑張ろうな」

 

「うん。それぞれの幸せのためにね!」

 

こうして、ソウヤとソラは自分達の世界に戻っていく。あさひ達は家に戻る中、あげはと二人で話す事になる。

 

「ソウヤ君達、元気そうで何よりだったよね」

 

「うん。ソラちゃんも幸せそうで、ソウヤがどれだけ良い旦那さんになっているかがよくわかる」

 

「あさひも立派な良い旦那さんだよ。だから自信を持って」

 

「わかってる。もうネガティブな気持ちにはそうそうならないしね」

 

「やれやれ。その性格を克服できたのは俺のおかげだろ」

 

「そうだったな、カゲロウ」

 

こうして、あさひ達の幸せな日々はこれからも続いていく。この未来が達成できるかどうかがわかるのはまだまだ先の話である。




また次回もお楽しみに。


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海でのビーチパラダイス!

夏休みも終わりに近づいたある日。あさひ達はあげはの運転の元、海にやってきていた。

 

「夏だね〜!」

 

「夏と言えば海!夏休みの締めは海水浴でしょ!」

 

「海……って何ですか?」

 

そう言うのはましろに憑依したアイだ。スカイランドには海も無く、今まで知る余裕も無かったアイには初めての単語なのである。

 

「私が教えますね。海とは少し大きめな湖の事です!」

 

「いや、少しどころじゃ無いと思うけど……まぁ、二人共見たらきっと驚くよ」

 

あさひはそう言う。するとその海は見えてきた。そこに広がっていたのは地の果てまで続いている広大な海であり、それを見たソラとアイは驚きの顔に変わる。

 

「「広ぉおおい!!」」

 

流石にこの大きさは許容していなかったからか、二人は声を揃えて叫ぶ。

 

「この世界の七割は海だって話です。だから、水の上を離着陸できる飛行艇もあって……」

 

「「待ってください……」」

 

ツバサが自慢げに話をしようとした時、ソラとアイは愕然としたような顔つきになっていた。

 

「七割って……この世界の殆どが海って事ですか!?」

 

「ま、まぁそうなるな」

 

「陸地よりも海の方が大きいって……凄すぎです……」

 

「ねぇ、早く泳がない?」

 

それからあさひ達六人は泳ごうと走っていく。そんな中、ただ一人アイは困ったような顔つきで立っていた。そして、それは海の方でも……。海に入ってから暫くしてソラが波打ち際に戻ってきたのだ。

 

「海、無理です……」

 

「まさか……ソラちゃん。泳げないの!?」

 

「皆、ソラにばかり目がいってるけど……アイも泳げないみたい……」

 

「「「えぇえ!?」」」

 

どうやらソラとアイは泳ぐ事ができないようだ。ソラはスカイランドでは湖を泳ぐのでは無く気合と根性で底を歩く形で踏破しており、そのため泳ぎなど知らなかったのだ。アイは家庭環境がまず劣悪だったために泳ぐ機会すら与えてもらえず……。そのために二人共泳ぐ事ができないのだ。

 

「ていうか、歩いてたんだな。湖の底を……」

 

「泳ぐよりも凄い事してる気がするね」

 

あさひ達は一度休む事になり、ソラはましろから受け取ったお茶を飲み干す。

 

「海も行けると思ったのですが……」

 

「歩く気だったんだね。海の底を……」

 

「運動自慢のソラにこんな弱点があったなんて意外だな……」

 

「一刻も早く克服しなくては!地上の殆どが海なのに今まで戦いの場にならなかったのはただラッキーが続いただけです!ヒーローたるもの、泳げなければなりません!」

 

そう言って意気込むソラ。一方のアイの方もソラ程ではなかったが、危機感を持っていた。

 

「わ、私も泳げるようにはなりたいかな……どっちかと言えば泳げる方が戦いの幅が広がりそうだし」

 

という訳で二人は泳ぎの練習をする事になる。まずコーチとして名乗りを挙げたのはツバサだ。

 

「ボクに任せてください」

 

ツバサはプニバードの姿に変わると海の中をスイスイと飛ぶように泳ぐ。そんな姿を見たあさひはある疑問を浮かべた。

 

「……あれ?そう言えばツバサって……鳥だよな?人と体の構造違うのにどうやって教えるんだ?」

 

「……あ」

 

あさひの鋭い言葉にツバサは少しだけ凍りついてから我に帰る。……どうやら考慮していなかったようだ。その後二番手に名乗りを挙げたのはあげはであった。

 

「私に任せて!保育園のプールで、大勢の子供達を見てるんだから!」

 

それからあげはによる指導が始まったのだが……その内容は園児向けの物であるために役に立つ事はなく、約三十分ほど波打ち際を歩く事をやった後に泳ぎに入る前に夏が終わると言うツッコミが入って交代することに。

 

「ここは私の出番かもだよ!」

 

「じゃあ俺もやりますか」

 

それから虹ヶ丘姉弟による泳ぎの指導が始まった。二人は一応水泳はある程度できるために教えるのに適任と言える。

 

「凄いです!ましろさん!」

 

「じょーず!」

 

「まぁね、小学生の時にスイミングスクールに通っていたからね」

 

「姉さんは八級、俺は六級まで行ってたから泳ぎは教えられるよ」

 

「うんうん、凄さが程よいね!」

 

それからソラはましろに、アイはあさひにそれぞれ教わる事になった。

 

「よ、よろしくお願いします!」

 

「そんなにガチガチになったらダメだよ。まずは力を抜いて海に浮く所から」

 

「力を……抜く?」

 

「そ。表現するなら無心で海に身を委ねる感じかな」

 

「無心……無心……」

 

それからアイは思いっきり海に浮こうとするが、すぐに沈んでしまう。それを見たあさひは考え込んだ。

 

「ど、どうしましょう……」

 

「大丈夫。落ち着いて、ゆっくり浮かぶんだよ」

 

あさひの言葉にアイは浮かぼうとする。しかし、またもや海の中に沈んでしまう。

 

「私、やっぱり役立たずなのかな……一体どうすれば……」

 

アイが悩んでいるとあさひはそれを見てある事を考えつく。

 

「そうだ。空を見上げるように力を抜いてみたらどうかな?」

 

「空を……見上げる?」

 

「そう。例えばあの空を遠くに見据えるように、力を抜いて……何も考えずに……」

 

それからアイは顔を海の上に出すように体を預ける。すると上手く浮く事ができた。

 

「やった!」

 

「はえぇ……私、浮いているんですか?」

 

「浮いてる浮いてる!その感覚を大事にね!」

 

「は、はい」

 

それからあさひはアイにバタ足を教えるとアイはあっという間に習得して泳げるようになった。

 

「あ、アイさん……あんなにも早く泳げるようになるなんて……」

 

一方のソラはアイが早く泳げるようになってしまったがために余計に体に力が入ってしまうと浮く事すらできなくなってしまう。

 

「ソラちゃん、焦らずにゆっくりと……」

 

「ですが、アイさんはあんなにも簡単に……」

 

「焦ったらダメだよ」

 

そこにアイを教え終わったあさひがソラの元に来る。一応まだアイは泳げるようになったばかりなのでもう少し面倒を見る必要があるが、あさひは泳げないソラにアドバイスをするためにここに来たのだ。

 

「多分ソラは力の入りすぎ。緊張する必要も焦る必要も無いからゆっくりじっくりと体を預ければ良いからね」

 

「は、はい……」

 

それでもソラはまだかなり思い詰めているのか暗い顔のままだ。それを見たあさひとましろはどうすれば上手く泳げるようになるか考え込む。するとそこにツバサがやってきた。

 

「折角海に来たんですから焦らずに楽しみましょうよ!」

 

そう言って浜辺の方を見るとあげはとエルがカニを見つけており、あげはがエルにカニについで教えている。

 

「カニさん、可愛いね!」

 

「カニさん?」

 

「そう!カニさんだよ。チョキチョキチョキチョキ!」

 

「カニさん!カニさん!」

 

それを見てあさひ達も一度海を楽しむべきだと認識。ソラへと話しかける。

 

「「そうだよ!楽しまないと!!」」

 

「ええ……ですが」

 

「心配しなくても大丈夫。じきに泳げるようになるからさ」

 

「うぅ……」

 

それでもソラはまだまだ暗い顔のままで泳げない自分に嫌気がさしているほどであった。

 

「………じゃあさ、これとか使ってみる?」

 

それからあさひが出したのはシュノーケルであった。これならば水中でも呼吸可能であるし、泳げずとも水の中を見る事ができる。

 

それからあさひ、ソラ、ましろ、アイの四人はシュノーケルを使って水の中を見る事になった。そこには魚達が海を泳ぐ水の世界を見る事になる。

 

「溺れるのに必死で気づきませんでしたが、とっても綺麗です!海!」

 

「はーい、浮き輪。レンタルしてきたよ!」

 

それからあげはが浮き輪をレンタルしてくるとそれを使って海を満喫する事に。

 

「し、沈まない……浮いてますよ?」

 

「浮き輪には空気を溜め込んでいるので、水に浮くんですよ!」

 

「なるほど……」

 

「さぁ、海を思い切り楽しんじゃうよ!」

 

「「「「「「「おー!」」」」」」」

 

それから一同は浮き輪を使って泳いだり、浜辺でビーチフラッグをやったり、ソラがスイカ割りに挑戦したりと楽しい思い出を作っていく。そうして時間はあっという間に過ぎていった。

 

他にもスイカやかき氷を食べたりボールを使ってビーチバレーに挑戦したり、あさひやツバサが砂に埋められてあげはやエル達の手で砂で作った筋肉ムキムキの姿にさせられたり……。とにかく楽しい時間を過ごすのだった。

 

そして、今はあさひとあげはがエルと遊ぶ中、ソラとましろ、ツバサとアイがそれぞれ話をしている。

 

「どうですか?人生初めての海は」

 

「とても楽しいです……私が小さい時はこんな楽しい事なんてさせてもらえませんでしたから……」

 

アイは俯くと暗い過去を思い出す。とても苦しく、辛い日々を送っていたアイにとってそれは封印してしまいたい禁断の思い出であるのだが、それでもどうしても考えずにはいられないのだ。

 

「……そんなに思い詰めたらダメですよ」

 

「ツバサ君……」

 

「アイさんは今まで辛かった分、沢山楽しい事をしないと!それがアイさんの心にある嫌な思い出を全て消し飛ばしてくれますから」

 

「そうだね……ありがと、ツバサ君」

 

アイは頬を紅潮させながらツバサに笑いかける。それを見たツバサは胸が少しチクッとする感覚に見舞われた。それはすぐに消えてしまうものの、ツバサにとって初めての感覚であるために胸に手を当てる。

 

「ツバサ君、どうしたんですか?」

 

「……いえ、何でも無いですよ……まさかね」

 

ツバサは自分の中に芽生えたその気持ちを誤魔化す事にした。その気持ちを隠す事はあまり良くないことだとわかっていながら……。

 

するとソラは我に帰ると泳ぎの練習ができていないとその場で叫ぶ。

 

「大丈夫だよ。泳げると思う」

 

「えぇ!?でも、遊んでいただけですよ!!」

 

「だからだよ」

 

そう言うましろの元にあさひがやってくるとソラへと言葉を付け加える。

 

「そうそう。ソラは固くなり過ぎ。さっきも言ったけど、緊張も焦りも泳ぎには必要ない。泳ぎは壁を越えるとかそういう話じゃなくて、楽しむ心がまず必要だからさ」

 

その言葉にましろは同意するように頷く。すると突然後ろから声が聞こえてきた。

 

「呑気なものだな!」

 

「ッ!?」

 

「はぁ!?あんたは!」

 

「ミノトン!」

 

「海とは心身を鍛える神聖な場!にも関わらず、修行もせずに遊び呆けているとは……プリキュア!我が修行の成果を見せてくれるわ!」

 

そう言っているとあさひの体が突然警報を鳴らすように身震いをする。その直後にミノトンの後ろを見るとそこにはローブの影が立っており、あさひ達を冷たい目で見据えていた。

 

「アイツ……ここにまで来てたのかよ!!」

 

「ふん、どうやら今回はあの方も加勢に来たらしい。まぁ良い。プリキュア、勝負といこう!」

 

それを聞いて一同はミラージュペンを手にして構えを取る。それから二人の敵を見据えるのであった。




また次回もお楽しみに。


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ローブの影の実力

六人がミラージュペンを構えるとそれがスカイミラージュへと変化。プリキュアへと変身する。

 

「「「「「「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!」」」」」」

 

「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」

 

「ふわりひろがる優しい光!キュアプリズム!」

 

「天高くひろがる勇気!キュアウィング!」

 

「アゲてひろがるワンダホー!キュアバタフライ!」

 

「夜明けにひろがる眩い朝日!キュアサンライズ!」

 

「空にひろがる数多の天気!キュアウェザー!」

 

「「「「「「レディ……ゴー!ひろがるスカイ!プリキュア!」」」」」」

 

六人が変身を完了すると早速ミノトンがアンダーグエナジーを召喚してランボーグを呼び出す。

 

「来たれ!アンダーグエナジー!」

 

するとエネルギーが浮き輪へと吸い込まれると浮き輪のランボーグに変身する。

 

「ランボーグ!」

 

「がんばえ!」

 

すると早速ランボーグがパンチを仕掛ける。六人はそれを躱すものの、スカイ一人は五人とは別の方向に飛んでしまう。そして、その先にあるのは……。

 

「スカイ!そっちは……」

 

「うーみぃー!しまったぁ!!」

 

「スカイ!」

 

そこにウィングがカバーしに行ったその瞬間、先程までミノトンの後ろにいたローブの影が飛び出すのが見えた。

 

「くっ!まさか……」

 

サンライズはすぐに反応するとローブの影を後ろから攻撃しようとする。だが、ローブの影は一瞬にして消えるとサンライズの真下に移動しておりガラ空きの腹を思い切り膝蹴りした。

 

「ごふあっ!?」

 

「サンライズ!!」

 

サンライズはたった一撃で意識が飛びそうになるが、ギリギリ持ち堪える。しかし、息は荒く一発もらうだけでも今のサンライズを追い詰めるのには十分すぎるような威力だった。

 

「はぁ……はぁ……」

 

「サンライズが……たった一撃であそこまで……」

 

「あの影、力が半端じゃありませんね……」

 

そして、スカイはウィングに抱えられると近くの岩場に着地。そこにランボーグが追いかけてきた。

 

「ランボーグ!」

 

「やあっ!」

 

それに対してスカイは戦う中、浜辺に残された三人はサンライズを助けようとする。

 

「来るな!」

 

「でも……サンライズが!」

 

「俺の事は良い……むしろ、コイツに人数を割くぐらいならランボーグをさっさと浄化してくれ」

 

「……くっ。絶対にやられないでよ!」

 

それからプリズム、バタフライ、ウェザーはそれぞれ気弾、盾、小さな雲を足場にしてスカイとウィングの元に移動していく。

 

一人残されたサンライズはローブの影と向き合った。

 

「………これでダブルドライブスタイルは封じた」

 

ローブの影はそう低い声で言い放つ。それにサンライズは少し顔を歪めた。

 

「ダブルドライブスタイルはバタフライとの連携がカギとなる……まさか、それを知っててこうしたのか」

 

「もうお前は私に勝つ術はない」

 

するとローブの影は一瞬だけ目を見せるとその眼光にサンライズは全身が身震い。警報を鳴らし始める。

 

「何だ、コイツ……気配が……ヤバすぎる」

 

サンライズはローブの影からの冷たいオーラに危険を感じた。そして、その正体を問う。

 

「お前は……何者だ」

 

「……名乗る必要は無い」

 

「じゃあ吐かせてやるよ。スタイルチェンジ!ドラゴン!」

 

サンライズはドラゴンスタイルとなると跳びあがる。そして、あっという間に背後に回り込むとキックを放つ。しかし、ローブの影はそれを読んでいたかのように躱す。

 

「だっ!」

 

更にすぐに手の双剣で影を斬りつけようとするがローブの影は簡単に防御してしまう。

 

「……遅い」

 

その直後、サンライズは身の危険を察知するとすかさずスタイルを変化させる。

 

「スタイルチェンジ!フェニックス!」

 

サンライズがフェニックススタイルとなると手に構えた盾で影の攻撃を防御する。しかし、その出力でサンライズは吹き飛ばされると近くの岩場に叩きつけられた。

 

「がふうっ……」

 

更にその直後、目の前にワープした影が追撃として回し蹴りを叩き込んだ。

 

「ぐっ……」

 

サンライズはこの前の時と同じように未来予知を捨てて相手の出方を探る事に神経を注いでいたが、それさえも全く通用しない。

 

「やっぱり偽物とオリジナル……その差は歴然か」

 

「スタイル……チェンジ」

 

サンライズがスタイルを変えるためにそう言った瞬間、腹に衝撃が走ると一撃をもらってしまう。

 

「ゲホッ……ゴホッ……」

 

サンライズがむせる中、ローブの影はサンライズの頭を掴むとそのまま地面にめり込ませる。

 

「ぐふっ……」

 

「……この程度か」

 

影は淡々とそう言い放つ。サンライズはそれに悔しさを滲ませた。まるで通用しない自分の力。このままでは確実にやられる。

 

「まだだ……終わってない!」

 

サンライズは立つと影へと向かっていく。影はそんなサンライズを冷めた目で見てきた。まるで興味すら無いと言わんばかりの冷たい顔で。

 

「ひろがる!サンライズアサルト!」

 

サンライズが炎の不死鳥となって影へと突撃する。しかし、その瞬間、ローブの影はアンダーグエナジーによって生成された障壁を展開すると攻撃を防御してしまう。

 

「ッ!?」

 

「やはりこの程度……」

 

その直後、障壁は爆発と共に砕け、サンライズは吹き飛ばされると傷だらけになる。

 

「あ……かぁ……」

 

サンライズは立とうとするが身体中が悲鳴を上げるようになり、立つのも一苦労だった。

 

「……お前では何も救えない」

 

サンライズはそう宣告される。それでも必死に立ち上がって戦おうとするサンライズ。影はサンライズの目の前にワープすると胸ぐらを掴んで持ち上げた。

 

「ぐうっ……」

 

「……注告しておこう。もうじきあのお方の我慢が限界に達する。今ここでプリンセスを渡そうが後から我々が奪おうが結果は変わらない。もうプリンセスは我々の物と決まっている」

 

「そんな訳……あるか!」

 

サンライズは手にした剣を振るうと影を下がらせる。しかし、影はその直後に前に出るとサンライズの背後に一瞬で移動。サンライズはそれに反応して剣を後ろに突き出すが影はそれを躱しつつサンライズを後ろからアンダーグエナジーで拘束する。

 

「……お前は大人しく見ていろ。今、プリンセスを奪ってやる」

 

そして、影はチラリと隠れているエルを見やる。それを見たエルは恐怖に震えた。

 

「やめろ!逃げろエル!逃げてくれ!!」

 

サンライズが叫ぶがエルは恐怖で体がすくんで動かない。今は他のプリキュアもランボーグを相手しているためにこちらには来れない。絶体絶命だとサンライズは考える。

 

「ホーリーサンライズにチェンジするしか……」

 

サンライズがそう思っていると突如としてホーリーサンライズのスカイトーンが飛び出すとその中から黒いエネルギーが飛び出す。そしてそれはキュアトワイライトとして出てくるとローブの影の前に割って入った。

 

「……貴様」

 

「トワイライト!?何で……」

 

「はあっ!」

 

トワイライトは斬撃波を放つとローブの影はそれを躱す。しかし、真の狙いはローブの影ではなくサンライズの拘束を破壊する事。拘束が解けたサンライズは降り立つとすぐにホーリーサンライズのスカイトーンを手に取る。その直後、トワイライトの姿は消えるとホーリーサンライズのスカイトーンに吸い込まれていく。

 

「プリキュア!ホーリーコネクト!ひろがるチェンジ!ホーリーサンライズ!」

 

サンライズはホーリーサンライズに変身すると手に白い炎の剣を構えて突撃する。ローブの影はサンライズの攻撃が決まる直前にその姿を消すと後ろから不意打ちしようとする。しかし、今度はサンライズもそれを読んでおり、白い羽を舞い散らせながらワープ。真上からオーバーヘッドキックを叩きつけた。

 

「む!?」

 

そのまま白い炎のエネルギー弾を連射。影を怯ませてからすぐに浄化技を使う。

 

「これで終わらせる!ひろがる!ホーリーカリバー!」

 

サンライズはホーリーカリバーを放つとエネルギーの奔流が影へと向かっていく。

 

「……跳ね返せ」

 

するとローブの影の目の前に穴が開くとその中にエネルギーが全て吸収。その直後、穴が反転するとアンダーグエナジーに染められたエネルギー砲として跳ね返されてしまう。

 

「なっ!?」

 

その一撃はサンライズに命中するとサンライズは砂浜に落下。そのままホーリーサンライズを維持できなくなってしまい普通のサンライズに戻ってしまう。

 

「あ……うぅ……」

 

「……私に勝てるとでも思ったか?隙を見せて大技を誘発させることなど私にとっては造作もない」

 

「く……」

 

サンライズはローブの影によって誘導されていたのだと、自分一人ではどう頑張っても勝てないのだと思い知らされてしまう。

 

「まだだ……俺は、負けてなんか……」

 

「なら負けにしてやる」

 

その瞬間、ローブの影は瞬間移動するとサンライズを足払い。態勢を崩した所にアンダーグエナジーを濃縮したエネルギー弾を発射。そのままサンライズを吹き飛ばすとサンライズは叩きつけられて深い傷を負ってしまう。

 

「ぐうう……」

 

「………手加減しているとはいえ以前よりは成長したようだな」

 

サンライズはその言葉に目を見開く。つまり、今までのは全部手を抜かれていたのだと思い至ると怒りが込み上げる。

 

「舐めるなよ……俺はまだまだ戦え……」

 

その直後、影はサンライズの髪の毛を掴むとそのまま持ち上げる。

 

「あうっ……」

 

「舐めてなどいない。お前には力の半分で十分倒せるというだけの事だ」

 

「半分……だと!?」

 

「その通り。だが何も恥じる事はない。私が力の半分も出している時点でお前にはそれだけの力があるという事だ」

 

「……ふざけるなよ……あぁああ!」

 

サンライズはノーモーションから回し蹴りをして影を離れさせるとそのまま剣を構える。

 

「ひろがる!サンライズ……カリバー!」

 

サンライズは炎のエネルギー斬を放つ。しかし、影は無言で手を翳すと障壁を使うまでもなく片手で受け止めるとそのままアンダーグエナジーを注入して押し返す。

 

「うわぁああああ!!」

 

そのままサンライズは直撃を喰らうと倒れ込んでしまう。影はそのまま振り向く事なくサンライズに背を向けた。

 

「……今回はお前の健闘を讃えて見逃してやる。この私に力の半分も使わせたのだからな」

 

「ッ……」

 

サンライズは悔しさのあまりに地面を殴る中、ローブの影はあっという間に姿を消してしまう。その場にはサンライズの叫びと嗚咽のみが残った。

 

「ちくしょおおおお!!」

 

サンライズが自分の弱さを呪う。今までの努力をこの戦いの中で全部否定されてしまったような気持ちになったのだ。ふとサンライズがランボーグと戦う五人の方を向くとそこにはランボーグに捕まったプリズム、ウィング、バタフライ、ウェザーがおり、スカイはどこかにいなくなってしまっている。サンライズは軋む体を動かすと仲間の元にフラフラと歩いていくのであった。




また次回もお楽しみに。


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ソラとの絆 動き出す帝国

ローブの影がサンライズ相手に圧倒的な勝利を収め、撤退。その少し前、サンライズがローブの影との戦いを繰り広げている頃。スカイ達五人とランボーグの戦いに場面は移る。

 

「はあっ!」

 

スカイは何度もランボーグを蹴り付けて怯ませる。そこにプリズム、バタフライ、ウェザーの三人が同時にパンチをぶつけた。

 

「「「はぁああっ!」」」

 

しかし、それを喰らっても尚、ランボーグは倒れる事なく浮き上がる。その理由は単純明快。

 

「そうか、浮き輪だから……」

 

「沈まない!」

 

「水の上もスイスイ動けるわけですね」

 

「やりづらい事この上ない……」

 

「プリキュア、海上においてはランボーグに手もバタ足も出まい!」

 

ミノトンがランボーグの強さを誇っているとスカイはある事を考えつくとランボーグへと飛び乗った。

 

「何の!」

 

「スカイ?」

 

するとスカイはランボーグの体の上にある空気栓を引っ張ると引き抜き、その瞬間ランボーグから空気が抜けていく。

 

「ラ、ラ、ラン!?」

 

そのままランボーグは空気が抜けつつしぼんでいくと両足で思い切り体の上に乗っているスカイを挟み込んだ。

 

「くっ!?」

 

「「「「ああっ!!」」」」

 

そして、ランボーグとスカイは海の中へと沈んでいってしまう。それを見たミノトンはスカイを巻き込めた事に笑みを浮かべる。

 

「空気を抜き、共に海中にドボンか。策士策に溺れるとはまさにこの事。愚かなり、プリキュア!」

 

ランボーグは沈みながらスカイを道連れにするために沈み続ける。スカイは何とか脱出しようとするが、なかなか出られない。その時、プリズムとバタフライがランボーグの体を掴んでから引っ張って沈むのを防ぎつつウィングとウェザーがランボーグを攻撃。しかし、スカイは解放されたものの泳げないために沈んでいってしまう。

 

「「「「!!」」」」

 

「ランボーグ!」

 

ランボーグは沈むスカイを助けられないように海中を動いて立ちはだかる。ウェザーは邪魔をするなとばかりに前に出た。

 

だが、ウェザーも泳ぎは会得したばかりで上手いとは言えない。機動力が鈍った所をランボーグに捕まってしまう。

 

「!?」

 

そのままランボーグは海上に出るとプリズム、バタフライ、ウィングも海の上に出るが、ウェザーが捕まっているために迂闊に攻撃を仕掛けられなかった。

 

「くっ……」

 

「このっ、離してよ!」

 

ウェザーは暴れて何とか抜け出そうとするが、ランボーグはウェザーを強制的に海中に沈めるとウェザーは海水を飲んでしまいむせてしまう。

 

「ゲホッ……ゴホッ……」

 

「やめろ!」

 

「ウェザーを……」

 

「離しなさい!」

 

更に同時にランボーグを攻撃しようとした三人だったがそれすらもランボーグは見切って捕まえてしまう。

 

「「「うぐっ!?」」」

 

「ふはは!勝負あったな、プリキュア!」

 

そこにドラゴンスタイルとなってジャンプ台により空中を跳んできたサンライズが到着。しかし、その体は先程ローブの影によってボロボロにされており無理を通しての移動だったがためにサンライズはかなり疲弊していた。

 

「はぁ……はぁ……」

 

「ふん。今更お前が来た所で何になる。それにその体、よほど無理をしているのだろうな。その体で我のランボーグに勝てるとでも?」

 

「勝ってやるよ……スタイルチェンジ……あうっ!?」

 

サンライズはスタイルチェンジをしようとするが、体が痛むとそのままドラゴンスタイルが解けて通常の姿になってしまい海に落ちる。

 

「「「「サンライズ!!」」」」

 

そのままサンライズは意識を遠のかせていき沈み始めた。それを見たミノトンはサンライズを笑う。

 

「ふはははは!これで完全に我の勝ちで……」

 

「まだです!」

 

すると突如としてスカイが海面に顔を出すと沈みかけていたサンライズを抱えて海上に飛び出す。

 

「何だと!?」

 

それからサンライズを近くの岩場に降ろすとそのまま海にまた飛び込んで泳ぎ始める。

 

「スカイ……」

 

「泳いでる!?」

 

「やったね!」

 

「あんなに速く泳げるようになったんだ……」

 

「皆を離しなさい!」

 

スカイは泳ぎながらランボーグに近づくと飛び出してパンチを叩きつけてからランボーグの体を掴むとそのまま海面へと投げ飛ばした。

 

「うぉりゃああ!」

 

ランボーグは海に叩きつけられてからすぐに飛び出すとスカイへと襲いかかる。その時、バタフライがミックスパレットで支援した。

 

「二つの色を一つに!レッド!ホワイト!元気の力!アゲてこ!」

 

それからスカイがランボーグへとアッパーを叩きつけるとミックスパレットによって得たパワーの差も相まってスカイが打ち勝ち、ランボーグは近くの岩場に叩きつけられる。

 

「ほう。中々やるではないか、プリキュア!だが、ランボーグ!」

 

するとランボーグは起き上がると共に海中へと姿を消す。このままではスカイ達の狙いが定まらずに浄化する事ができない。

 

「このままじゃ……」

 

「まだ……だ」

 

その時、倒れていたサンライズはまた目を覚ますと起き上がる。しかし、体へのダメージが抜け切ってないためにこのままでは足手纏いとなってしまう。

 

「バタフライ、サンライズに癒しの力を!」

 

「オッケー!二つの色を一つに!イエロー!ブルー!癒しの力!アゲてこ!」

 

その瞬間、サンライズに癒しの力が届いてサンライズが復活。元気を取り戻した。

 

「ありがとう、バタフライ。これなら!スタイルチェンジ!ヤタガラス!」

 

するとサンライズはヤタガラススタイルにチェンジ。手に槍を持つとそのまま目を閉じる。

 

「何をするつもりだ?」

 

サンライズはその瞬間未来視を発動。未来を見て海中にいるランボーグが泳ぐ事で海面に起きる僅かな波の流れを感じ取るとそこに槍を投げつけた。

 

「そこだ!」

 

サンライズが投げた槍は見事ランボーグに命中。その直後、サンライズはヤタガラススタイルの特性でワープ。海中へと移動するとランボーグを思い切り蹴り上げて海上にまで吹き飛ばす。

 

「やった!」

 

「海上にいれば!これが使える!」

 

ウェザーが手を翳すと竜巻が起こり、ランボーグを閉じ込めつつ砂浜へと押し出した。

 

「やった!砂浜ならランボーグもそこまで速く動けませんよ!」

 

「馬鹿な、こんな事が……」

 

「皆が海の素晴らしさを教えてくれたから……皆との、チームの輪のおかげです!チームの輪があればもう浮き輪なんて必要ありません!」

 

「む、寝ている場合か!行くのだランボーグ!」

 

「ランボーグ!」

 

「させねーよ!スタイルチェンジ!グリフォン!」

 

そこにサンライズが陸に上がるとグリフォンスタイルとなってランボーグを大剣で斬りつける。

 

「俺達チームを……舐めるなよ!」

 

その瞬間、サンライズの胸に輝きが宿ると新たなスカイトーンが出現。そしてそれはスカイの元にも飛んでいき、スカイ二人揃ってそれを手にする。

 

「これって……」

 

「ああ、スカイと俺の絆の力だ」

 

「早速使いましょう!」

 

「ああ!」

 

それから二人はスカイトーンを同時にスカイミラージュへと装填し、技を発動した。

 

「「スカイミラージュ!」」

 

その瞬間、サンライズの大剣にエネルギーが高まるとそれを地面に突き刺す。すると地面から炎のエネルギーの柱が横一列に次々湧き上がっていきランボーグの前に太陽の表面を模した炎の壁のような物を作り出す。

 

「青くひろがる晴れた空!」

 

「熱き力よ、空に宿って闇を照らす光となれ!」

 

スカイはサンライズの後ろから走り込むとそのままスカイパンチのように青い流星のような力を纏って突撃。そのままサンライズが展開した炎のエネルギーの壁を突き破るように飛び込むとそのままスカイは加速しつつ赤い炎の流星となる。

 

「「プリキュア!プロミネンスブロー!」」

 

二人が叫んだ直後、スカイはサンライズのエネルギーを上乗せした状態で灼熱の炎の力を模した拳をランボーグへと叩きつける。そして、その力によってランボーグは浄化されていった。

 

「スミキッタァ〜」

 

これにより、サンライズ達はランボーグ相手に勝利を収める事になる。そして、残されたミノトンは……。

 

「ぐぬぬ……まだ修行が足りなかったか。どこかで我が筋肉を鍛え直すとしよう。ミノトントン」

 

ミノトンが撤退し、サンライズ達は変身解除すると海の家へと移動。それから夕日を見つつ皆でゆっくりする事になる。

 

「きれ〜い!」

 

「ホント綺麗だね」

 

「まるで、空と繋がっているかのようです」

 

「……あの、あさひ君は?」

 

アイがそう言う中、ツバサ達もそういえばとばかりに辺りを見渡す。しかし、あげははあさひが何をしているのかを何となく察して答える。

 

「……今はそっとしておいてあげよう」

 

「「「……え?」」」

 

その頃、あさひは一人他の人がいない所で悩んでいた。本気の力でもローブの影に手も足も出なかった自分を責めていたのだ。

 

「……俺は、俺はどうすれば……」

 

するとあさひの心の中から突如として、カゲロウの声が響いてくる。

 

「おいおい、お前……何を悩んでるんだ?」

 

「カゲロウ!?」

 

あさひが驚いて胸に手を当てた。しかし、それ以上彼の声は聞こえてくる事は無い。あさひは無言になると悔しそうな顔つきを浮かべる。

 

「……俺は、どうすれば良いんだ……」

 

あさひの悩みは尽きる事なく増え続けていく。このままでは不安に押しつぶされると考えたあさひは深呼吸するが、それでも不安はまだ消えない。そこにあげはがやってきた。

 

「あげは……」

 

「もう、また悩んでるんでしょ?わかりやすいな」

 

「あげは、俺は……」

 

「大丈夫。あさひならきっといつかはその壁を越えられる。その時までポジティブに頑張ろ?」

 

「……うん」

 

それからあさひとあげはの二人は皆の元に戻るとソラ達は笑っている。それにつられてあさひ達も笑顔になるのであった。

 

同時刻、アンダーグ帝国ではローブを纏った二人の人物が顔を揃えている。二人共ローブを纏っているためにわかりづらかったが、その目は冷たかった。

 

「……何を勝手に仕掛けている」

 

「別に良いだろう。ラブを倒したキュアサンライズの力を見るぐらい」

 

「忘れるな。あくまで我々の目的は……」

 

「勿論だ」

 

すると二人の前に紫のゲートが開くと共に女性の声が二人へと聞こえてくる。

 

「……ミノトンも手こずっているようだな。……そろそろ二人にも出撃を命ずる。その時まで待つが良い」

 

それからゲートは閉じると二人のローブの影はそれぞれが主命を達成するために行動を開始する。この二人の正体とは、そして二人へと命令を下した女性とは何者なのか……。それがわかる日は近い。




また次回もお楽しみに。


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不機嫌なエル 新たなる刺客襲来

楽しい夏休みも終わり、新学期が始まって数日。今現在あさひは落ち込んだソラと頬を膨らませているエル、そしてその様子を見守るましろ、ツバサ、あげは、アイの四人と共にいた。

 

「えっと、話を纏めると姉さんが絵本を描きながら読み聞かせをしていて、姉さんが少し離れた間にエルが勝手に落書き。そしてソラがそれを見てエルに注意したら嫌われたと……」

 

簡単に状況を説明するとこのような感じとなる。そして、エルに嫌いと言われたソラはメンタルブレイク。こうなってしまったのだ。

 

「これはプチイヤイヤ期かもしれないね」

 

「プチイヤイヤ期?」

 

「こうしたい、ああしたい。自分の意思が通らないと拗ねたり泣いたり。大きくなる中でどんな子も通る道。だから、ソラちゃんが落ち込む事は無いよ」

 

あげはにそう言われたソラだが、完全に落ち込んでしまうとあさひは苦笑いする事になる。

 

「まぁ、見てて。エルちゃんの事も書いて欲しかったんだよね?でも勝手に書いたらましろんがエエンしちゃうよ。だからダメ。わかった?」

 

するとエルはあげはの前から離れるとましろの足にしがみつきあげはへとムッとした顔で言い放つ。

 

「あげは、きらい」

 

これにはあげはもメンタルブレイク。最早収集不可能な状態になってしまう。

 

「……あげはでもダメかぁ……。これ、どうしよう」

 

「とにかくエルちゃんの機嫌を直さないと……でも、どうすれば……」

 

「このチラシが役に立つかもしれないわね」

 

そこにヨヨが入ってくると一枚のチラシを差し出す。そこにはソラシド写真館という文字の他にあるイベントがある事が記されていた。

 

「ソラシド写真館?」

 

「お子さんのとっておきの写真を残しませんか?」

 

「レンタル衣装が百種類以上」

 

「おしゃれキッズもニッコニコ……」

 

それを見たエルは興味を持ったのか行きたいとばかりに手を伸ばす。

 

「なるほど、確かにおしゃれ好きなエルにはぴったりのイベントだな」

 

それから早速六人とエルは向かう事になる。今回もツバサがプニバードの姿であさひの膝の上に乗るとあさひにアイが憑依して全員で移動。

 

「まだ?」

 

「もう少しだから良い子で待っててね」

 

「まだ?」

 

「早っ……」

 

するとエルは待ちきれずに駄々をこね始める。それにあさひはやれやれとばかりの顔つきになってしまった。それから何とかエルの機嫌を取りつつ写真館に到着すると早速係の人から衣装を見せられる。

 

「それではこちらの中からお衣装をお選びください」

 

「ゆ、夢みたいな可愛さだよ!」

 

「これ、私これにします!」

 

「お二人のために来たんじゃ無いんですけど?」

 

「「あ……」」

 

「まぁまぁ、とにかくエルの気持ち次第だから」

 

「どれにする?

 

あげはが画面をスクロールしていくとエルはある衣装を見た途端目を輝かせる。

 

「!!」

 

「ちょっ!?これ?」

 

そこにあったのはプリキュアをモチーフにした衣装であり、あさひ達六人分が用意されていた。

 

「こちら当館のオリジナル衣装となります。街で噂の謎のヒーロー。その名は……」

 

「ぷりきゅあ!」

 

「あら?知ってるのね!」

 

「子供に人気なのは知ってたけど……」

 

「まさかマジで衣装として作る人がいるなんて」

 

あさひがそう言う中、突如としてあさひにだけ聞こえるように声が聞こえてくる。

 

「おいおい、キュアウェザーの分はあるのに俺のキュアトワイライトの分が無いんだよ」

 

「……?」

 

あさひはまた幻聴かと驚いた顔をすると自分の胸を見るがそれ以上は何も聞こえてこず。係の人はその間にエルへとタブレットを近づけた。

 

「どのプリキュアが一番好き?」

 

「える?」

 

それを聞いたエルは考え始める。そんな中、ソラ、ましろ、ツバサ、あげは、アイの五人は考え込むエルをソワソワした様子で見始めた。そして、そんな五人を見たあさひは無言になる。そしてエルの出した結論は……。

 

「みんなすき!」

 

その様子に五人は安心したようにホッとする。それから早速写真撮影が始まり、六人とエルが次々に衣装を変えながら写真を撮っていく。

 

「無限にひろがる青い空!」

 

「きゅあすかい!」

 

「ふわりひろがる優しい光!」

 

「きゅあぷりずむ!」

 

「天高くひろがる勇気!」

 

「きゅあうぃんぐ!」

 

「アゲてひろがるワンダホー!きゅあばたふらい!」

 

「夜明けにひろがる眩い朝日!」

 

「きゅあさんらいず!」

 

「空にひろがる数多の天気!」

 

「きゅあうぇざー!」

 

「「「「「「レディ……ゴー!」」」」」」

 

「「「「「「「ひろがるスカイ!プリキュア!」」」」」」」

 

最後に七人で写真を撮って終わりとなった。そして、七人は車に乗って家に戻る事になる。

 

「……プリンセスのために行ったのに何だかこっちの方が楽しんじゃったな」

 

「ましろん、エルちゃんはどう?」

 

「おねんね。はしゃぎ過ぎちゃったのかも……」

 

エルは完全に機嫌を取り戻すと眠り始めており、六人は安心したような表情に変わっていた。

 

「ふふっ」

 

それからソラがエルの頭を優しく撫でるとエルは薄らと目を開ける。

 

「しょら?」

 

「はい?」

 

「だいすき……」

 

そのままエルはまた寝てしまう。そしてソラは嬉しそうに微笑んでからエルの小さな手を握り返した。

 

「私も大好きですよ……。いつの日か、アンダーグ帝国との戦いが終わって。世界に平和が訪れて……もう、プリキュアが要らなくなった時。エルちゃんはスカイランドに帰って。私達のプリンセスから皆のプリンセスになる。それがエルちゃんのためです……」

 

ソラの目には薄らと涙が浮かんでおり、彼女の抱える悲しさが周りに伝わるようであった。

 

「なのに、エルちゃんが大きくなるのを隣でずっと見ていたい……今、そう思ってしまいました。未熟です」

 

ソラの言葉にあさひは頷くとソラの言葉に優しく反応する。

 

「確かにいつかはそうなるだろうな。でもさ、それは今この瞬間ってわけじゃ無い」

 

「……いつかは離れ離れになるけど、それは今日じゃ無いよ」

 

「その日が来るまで僕達のプリンセスを、一緒に守っていきましょう!」

 

「私も尽力します!」

 

それから全員で微笑みあっているとあさひの未来視が強制的に発動。あさひは反射的にミラージュペンを手にする。その直後、あげはの運転する車の前に二人のローブの影が出現した。

 

「!?」

 

あげはは咄嗟にブレーキを踏むと車は急停車。乗っていた六人はビックリする。

 

「アイ、分離だ。憑依を解いてくれ」

 

「で、でも……」

 

「良いから早く解け!」

 

あさひはすぐにシートベルトを外すとツバサとアイを残して車を降りる。そして、車の後ろに移動した。

 

「あさひ!?」

 

「ッ、まさか……」

 

あげはが車内のミラーを確認するとそこには車の後ろに出たあさひの前に二人のローブの影がいた。そのローブの影からは鋭く冷たい眼光が光っており、あげはは本能のままにアクセルを思い切り踏み込む。

 

「あさひ君は!!」

 

「今は逃げるよ!」

 

車はあさひを残して走り去り、あさひは二人のローブの影を見据えたままミラージュペンを構えた。

 

「まさか、ローブの影が二人いたなんて……」

 

「いいや、違う。私は君とは戦っていないし初対面だ」

 

「戦ったのは私の方だ」

 

「どっちでも良い。お前ら二人はここで足止めする!」

 

「「無駄だ」」

 

その瞬間、突如としてあさひの足元に穴が開くとあさひは強制的に吸い込まれ始める。

 

「何!?」

 

「悪いがお前の相手をする暇など無い」

 

あさひはそのまま穴の中に完全に消えると二人のローブの影の内、片方はあげはの車を追跡。それからもう一人は穴を開けて消えてしまった。

 

「……く……うぅ……」

 

あさひが目を覚ますとそこは薄暗い山の中、目の前には古びた駐車場が広がっており、あさひが立ち上がった直後。近くで車の急ブレーキ音が鳴り響き、あげは達の乗ったハマーが急停車した。

 

「あげは達もここに……ッ!?これって……」

 

あさひが未来視をした直後、あげは達も車から降りてきた。そして、エルの名を叫ぶ。どうやらエルが連れ去られてしまったらしい。あさひはそんな五人の元に行く。

 

「皆!」

 

「あさひ!!」

 

「エルちゃんは……」

 

「あそこだ!」

 

あさひは未来視の力で指差すとそこには既にエルがシャボン玉のような物に捕まっており、そのままゲートを通って連れて行かれてしまう。

 

「エルちゃん!!」

 

「ここまで鮮やかに奪い取るかよ……アイツら……」

 

すると六人の近くに先程のローブの影が現れると二人は六人を見据える。それと同時に六人はミラージュペンを取り出して臨戦態勢を整えた。

 

影は冷たい目で六人を見据える中、六人はすぐにプリキュアへと変身する。

 

「「「「「「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!」」」」」」

 

「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」

 

「ふわりひろがる優しい光!キュアプリズム!」

 

「天高くひろがる勇気!キュアウィング!」

 

「アゲてひろがるワンダホー!キュアバタフライ!」

 

「夜明けにひろがる眩い朝日!キュアサンライズ!」

 

「空にひろがる数多の天気!キュアウェザー!」

 

「「「「「「レディ……ゴー!ひろがるスカイ!プリキュア!」」」」」」

 

六人が変身を完了すると二人のローブの影へと問い詰めるために質問を叫んだ。

 

「エルちゃんを返しなさい!」

 

「答えろ、プリンセスはどこだ!」

 

「……アンダーグ帝国に送った」

 

「今頃あのお方の前にいる」

 

「エルちゃんがアンダーグ帝国に?」

 

「そんなの嘘に決まってる!!」

 

「いや……アイツらの言ってる事は嘘じゃ無い……」

 

「サンライズ……?」

 

サンライズは視てしまった。エルがアンダーグ帝国に連れ去られる未来を。そして、サンライズの未来視が正しいことを知っている五人は絶句する。

 

「その通り。嘘は吐かない。私達が求めるのは真実のみだ」

 

そう言って二人のローブの影は身に纏ったローブを脱ぎ捨てる。一人は右目にモノクルを掛ており、頭には一対の角が生えている。また、鬼を想起させる長身痩躯の男性であり黒いフード付きの外套の下には紫紺色のローブと、魔導士か邪教徒のような佇まいが特徴であった。

 

もう一人は金色の髪を怒髪天のように逆立てて体は防具のような鎧に覆われており、まるで戦闘服を彷彿とさせる白とベージュを基調とした服に身を包んでいる。そして、彼の左目には眼帯がされており強者の風格を醸し出していた。

 

「……くっ、コイツらが……俺達の新たな敵なのか?」

 

「私の名はスキアヘッド」

 

「私はドハツテンダー」

 

「「帝国の支配者、カイゼリン・アンダーグ様の命によりプリンセス・エルを頂いた」」

 

スキンヘッドの方の名はスキアヘッド。もう片方の怒髪天の髪の方はドハツテンダー。二人は冷たい目で六人を見据えたまま自己紹介を終えるのであった。




また次回もお楽しみに。


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絶望と奇跡 新たなプリキュア

サンライズ達の前に現れてエルを連れ去ったスキアヘッドにドハツテンダー。二人がサンライズ達を見据える中、六人は構えを取る。そして遂にわかった敵の首領、その名はカイゼリン・アンダーグ。

 

「カイゼリン・アンダーグ?」

 

「私達はプリンセスを連れてくるようにしか命じられていない。今日の所はここで帰ろう」

 

「カイゼリン様のお気持ちが変わらなければお前達は助かるかもしれない」

 

「そんな事言って……はいそうですかと言うかよ!」

 

それと同時にスカイとサンライズが飛び出すとスキアヘッド及びドハツテンダーへと攻撃を仕掛ける。しかし、二人の攻撃は二人共がワープする事で躱されてしまう。

 

「ッ!?」

 

「ふん。何度やっても結果は同じだ。キュアサンライズ」

 

「俺は諦めが悪くてね……それなら勝てるまで何度でもお前を倒しに行くだけだ!」

 

サンライズはそのままドハツテンダーとの戦闘を開始。それと同時に他の五人もスキアヘッドへと攻撃をしていく。まずはウィングの突撃だ。

 

「はあっ!」

 

しかしこれは連続ワープで回避されてしまう。次はプリズムによる気弾攻撃だ。スキアヘッドはヒラリヒラリと気弾を躱すものの、その中の一発がスキアヘッドの腕に命中。その隙を逃す事なくウェザーが突撃。スキアヘッドを蹴り飛ばす。

 

「……開け」

 

するとスキアヘッドは吹っ飛ばされた勢いを利用してゲートを開くとその中に入る。その後、五人の後ろに出てくるとエネルギー弾を放つがそれはバタフライが盾で防ぐ。

 

「………」

 

それを見た五人は緊迫した表情でスキアヘッドを見る中、スカイが拳を握りしめる。

 

「……返しなさい私達のエルちゃんを……」

 

「「「「「返せ!!」」」」」

 

五人は同時に突撃する中、スキアヘッドは余裕の顔つきですぐに対抗策を発動。

 

「……守れ」

 

それは以前バッタモンダーがスカイ達三人を閉じ込めたアンダーグエナジーによるバリアである。五人は同時にパンチをぶつけるものの、全く通用しない。

 

そして、サンライズがドハツテンダーとの戦いの最中に一瞬だけ未来視を使うとその後何が起きるか知って青ざめる。

 

「皆、離れろ!それは……」

 

「余所見をしてる場合か?」

 

その瞬間、サンライズはドハツテンダーによる蹴りが腹に命中。サンライズは吹き飛ばされてしまう。

 

「サンライズ!」

 

「……弾けろ」

 

その言葉と共にスキアヘッドを覆っていたバリアが弾けて周囲にエネルギー弾として飛び散る。五人はそれに巻き込まれると弾かれてその中の流れ弾が停まっていたハマーに命中するとハマーが壊されてしまう。そのまま地面へと叩きつけられて倒れ込む五人。それをスキアヘッドは高所から見下ろした。

 

「無いのだ。最早プリンセス・エルを助ける方法など」

 

しかし、まだ元気なプリキュアは残っていた。サンライズは気合と根性で立ち上がるとスキアヘッドへと突撃する。

 

「まだ終わったなんて言わせない!プリキュア!ホーリーコネクト!ひろがるチェンジ!ホーリーサンライズ!」

 

サンライズは一瞬にしてホーリーサンライズに変化するとそのまま切り札を解放。

 

「バーストタイム!」

 

それは現時点のサンライズが出せる最高出力。ホーリーサンライズにバーストタイムの掛け合わせだ。これで勝てないのならもう打てる手は無いに等しい。

 

「ぁあああああ!!」

 

サンライズが手にした白い炎に赤いオーラが纏った剣を振り下ろす。しかし、その一撃はドハツテンダーがスキアヘッドとの間に割って入ると何と片手だけで受け止めた。

 

「……え?」

 

「……この私に八割の力を使わせるとは。だがそれがお前の限界だ」

 

その直後、サンライズの腹にドハツテンダーが漆黒のエネルギーボールを押し当てるとそのままエネルギーボールはサンライズを包み込み、サンライズの体をエネルギーボールに満たされたエネルギーで蹂躙する。

 

「ぐあああああ!!」

 

サンライズはたった一撃でバーストタイム及びホーリーサンライズが解けるとボロボロの状態で他の五人の元に叩きつけられる。

 

「はぁ……はぁ……」

 

「結局はその程度。お前に私は超えられない」

 

「既に全ては終わっているのだ」

 

スキアヘッドとドハツテンダーがそう冷たく言い放つ中、サンライズは傷だらけの体を動かしてフラフラと立ち上がる。

 

「もう終わり?そんなわけあるかよ……俺は、俺達は……諦めるつもりは無い!」

 

「……お前一人で何ができる?仲間は皆倒れているのに……」

 

「倒れてる?何を見てるんだよお前らは……スカイ達がそう簡単に諦めるわけないだろ!」

 

サンライズがそう言った直後、他の五人もフラフラと立とうとした。プリズムとスカイ、ウィングとウェザーが手を繋ぎ互いを支え合いながら……。

 

「絶対に取り戻す!」

 

「そうよ、私達はまだ終わってない」

 

バタフライが一人立とうとする中、先に立っていたサンライズがバタフライの手を取ると引っ張り上げる。

 

「……バタフライ、まだ動ける?」

 

「ええ、勿論よ」

 

「最後の切り札だ。ダブルドライブスタイルのバーストタイム同時発動で行くよ」

 

「一歩間違えれば二人共やられる諸刃の剣……。でも今はやるしかない!」

 

二人は何とか持ち直してからダブルドライブスタイルに持ち込もうとした。しかし、そんな事許さないとばかりにスキアヘッドとドハツテンダーは手を上に掲げると超巨大なエネルギーボールをそれぞれ生成する。

 

「エルちゃん……」

 

「エルちゃん!」

 

「プリンセス……」

 

「エルちゃん!」

 

「俺達で……」

 

「取り戻す!」

 

六人は立とうと必死に足掻く中二人は尚も冷たい目で六人を潰そうとしてくるのだ。

 

「俺は……力が欲しい。自分の欲剥き出しだけど……それでも良い!今更過去に縋ったってダメかもしれない。俺は失われた己の闇を……取り戻すんだ!」

 

そう言った瞬間だった。サンライズとバタフライが立ち上がると同時にサンライズの姿が光となってその場から消え去る。

 

「……!?」

 

「「「「「サンライズ!?」」」」」

 

五人が消えたサンライズに驚く中、今度は空に眩い光が照らすと周囲を覆っていた暗雲は消え去っていく。そこに現れたのは紫の光に包まれて空に浮かぶ少女であった。髪は薄紫の髪にウェーブのかかったツインハーフアップで目を閉じ、祈りを捧げている。

 

「「……来たか」」

 

スキアヘッドとドハツテンダーはこの登場をまるで予想していたかのように何事もなく振る舞う。しかし、それは次の光景を見た途端二人に動揺が走る事になる。

 

「見てください!」

 

「あれは……」

 

すると少女と隣に白い翼を背中に生やし、羽を舞い散らせながら降りてくるあさひの姿があった。

 

「あさひ君!?」

 

「どうして……」

 

その瞬間、あさひの背中に生えた翼の片方が黒く染まるとあさひからホーリーサンライズのスカイトーンが飛び出し、それが人の姿を形成。そして、あさひと全く同じ姿形をしたかつてあさひの中に存在した彼の影、カゲロウが登場したのだ。

 

「……カゲロウ……」

 

「どうしてあそこに?確かにあの時、カゲロウは……」

 

五人のプリキュアが動揺する中、二人のアンダーグ帝国の幹部もこれには流石に驚きを隠せなかった。

 

「馬鹿な……」

 

「己の闇を復活させたと言うのか」

 

そして、当のあさひはこうなる事を知っていたかのようにカゲロウへと声をかけた。

 

「……お帰り、カゲロウ」

 

「ふん、ようやくお前は気がついたようだな」

 

「……あの時からずっとお前はホーリーサンライズの力の一部として俺を支えてくれていたんだ。消えたと思っていたお前はずっと俺の側にいてくれたんだ」

 

「ま、そう言う事だ。わかっただろ?何で消えたはずの俺が度々お前の前に姿を現したのか」

 

「ああ」

 

「っと、長々と話している場合じゃないな。あさひ、やるぞ」

 

「……それと、君もね」

 

あさひは隣で静かに祈り続ける少女に声をかけると少女は目を開けてあさひの方を向き、小さく頷く。

 

「「……消し飛ばせ」」

 

二人の幹部はその瞬間、掲げたエネルギーボールを三人へと投げつける。そのエネルギーボールが近づいていくその刹那、三人はある言葉を口にする。

 

「ひろがるチェンジ……」

 

「「プリキュア!エビリティコネクト!ひろがるチェンジ!エビリティサンライズ!」」

 

三人が言葉を発した直後にエネルギーボールは三人に命中。爆発を起こす。しかし、その場に佇んでいたのは二人の戦士の姿であった。一人は先程の少女が変身したであろう姿で髪型はウェーブのかかったツインハーフアップに唇には薄ピンクのリップをつけている。また、女王が着るドレスのような服に頭の飾りも王冠を思わせていた。スカートの裏地等至るところに星の意匠があり、夜の星空のような服になっている。そして足元は足首までのニーハイソックスに低めのヒールを履く。

 

もう一人はあさひが変身したであろう姿でホーリーサンライズをベースに白がメインだった服が所々黒く変化。そして胸部、足、腕にそれぞれ装甲が上から追加されると赤と白がメインのカラーリングに黒の差し色が入る。そして頭の白い鳥の飾りに黒のラインが入り、髪の毛が白からまた赤に染まった。最後に背中の白いマントが黒い漆黒の翼のような意匠が追加されたそれは以前一度だけ変身したエビリティサンライズその人である。

 

「まさか!?」

 

「新しいプリキュア!?」

 

「しかもあさひが……」

 

「新しい姿に」

 

「ですが、さっきまでいたカゲロウがいません!」

 

「「……守れ」」

 

二人は同時にアンダーグエナジーによるバリアを生成。それとそのタイミングで新たなプリキュアが電撃を纏った拳で、エビリティサンライズが背中から生やした白に黒いラインが入った翼に加えて白、黒、赤の炎を纏った拳で攻撃を仕掛ける。それはバリアが押し留めるが少しずつそれに亀裂を入れていく。

 

「「問おう、汝の名は?」」

 

「キュア……マジェスティ!」

 

「「俺はエビリティサンライズ!」」

 

キュアマジェスティと名乗った少女にあさひとカゲロウ、二人分の声が重なったエビリティサンライズ。その一撃はバリアを浄化し始める。その出力を見た二人は即座に撤退を決意した。

 

「キュアマジェスティ。その名前、知識の宮殿に記憶しておこう」

 

「エビリティサンライズ……か。面白い。覚えておこう」

 

二人が撤退するのと同時にバリアは二人によって完全浄化。破裂すると光が降り注ぐのであった。その様子を五人は見ていたが、光が溢れて周囲が直されていくと壊されたハマーも元に戻る。

 

「……終わったの?」

 

「キュアマジェスティとエビリティサンライズは?」

 

すると五人の元にエビリティサンライズが降り立つと変身解除。その瞬間、あさひのみならずカゲロウも出てきた。

 

「あさひ!」

 

「カゲロウも……何で……」

 

「俺の生命力舐めんなよ。ま、俺が何でここにいるかはあさひに言っておいたから後から聞きな。今はそれよりも」

 

「はっ、エルちゃん!」

 

そう、エルは連れ去られたままなのだ。五人が深刻そうになる中、あさひはその心配は無いとばかりにある方向を向いていた。

 

「ぷりずむ!」

 

その方向から聞き慣れた赤ちゃんの声がすると木の影からひょっこりとエルが顔を見せる。

 

「エルちゃん!」

 

それを見たスカイは駆け出すと変身解除し、歩いてきたエルを抱き上げた。そして、同じく変身解除したあげは、ツバサ、アイもソラとエルの元に駆け寄る。

 

「エルちゃん!」

 

「よくぞご無事でプリンセス!」

 

「良かった……本当に良かった……」

 

「はい……」

 

そして、その様子を見ていたプリズムはましろに戻るとその場にへたり込む。そして泣きながら謝った。

 

「エルちゃん、怖かったよね……ごめんね、守ってあげられなくて……ごめんね」

 

するとエルはましろの元に歩くと優しくましろの頭を撫でつつ声をかける。

 

「なかないで……ましろ」

 

そして、エルへとましろは抱きつくともう絶対に離さないとエルに話す。それを聞いたエルは嬉しそうであった。

 

「……ローブの影の正体に加えて新たな敵。そして帝国の支配者まで明かされたな」

 

「問題は山積み。だけど俺達で絶対に止めるぞ。また力を貸してくれ、相棒」

 

「……おう」

 

そして、あさひとカゲロウは拳を突き合わせて再び相棒として再出発する事を誓い合う事になる。そして、夕焼けの太陽がそんなあさひ達を照らすのであった。




また次回もお楽しみに。


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マジェスティの正体 暴れるミノトン

キュアマジェスティが現れた翌日、あさひ達は虹ヶ丘家で朝食を摂るためにましろを待っていると少し焦げたパンを持ってましろがやってきた。

 

「えるぅ!」

 

「ごめんね、少し焦げちゃった。昨日の事、色々と考えちゃって……」

 

「無事に戻ってきたから良いものの、プリンセスを守る事ができなかった」

 

「スキアヘッドもドハツテンダーも恐ろしい強さでした」

 

「うん、これからの事を考えると心配だよね」

 

口々にソラ達が胸の内の不安を話していくとあげはがそれに気がついて他の皆をフォローするために口を開く。

 

「まぁ、でもさ。クヨクヨ考えても仕方ないよ。今の私達にできるのはエルちゃんを守るためにもっと強くなる事!前を向いて、気持ちアゲてこ!」

 

「やっぱりあげはは凄い……俺達を引っ張る大人って感じだね」

 

するとエルが上機嫌でスプーンで混ぜ混ぜしながら話していた。

 

「まぜまぜ!まじぇすてぃ!」

 

「そういえば、キュアマジェスティって誰なのかな?」

 

アイが素朴な疑問を話す中、ましろは何かを思いつくとあさひへと向き合う。

 

「あさひ、カゲロウなら何か知ってるんじゃないの?」

 

「え?」

 

「ほら、あの時一緒に出てきたし」

 

「いやいや、確かにそうだけど……」

 

「よし、スカイパンチであさひ君を気絶させてカゲロウを呼び出しましょう!」

 

「え?待て待て、その前に俺の体が吹っ飛ぶんだけど!?」

 

そんな事を言っているとあさひと交代したカゲロウが表面化する。

 

「おい、そんな事しなくても交代して出てきたぞ。マジェスティの正体は……」

 

カゲロウはそう言いながら無言になる。その場の全員がその続きの言葉を固唾を飲んで見守った。

 

「……俺にもわからん」

 

そう言った途端全員がズッコケてしまう。流石のカゲロウでもわからないものはわからないようだ。

 

「える!」

 

「どうしたの?」

 

「キュアマジェスティの正体を知ってたりして?」

 

「あー、そういう事か」

 

カゲロウと交代したあさひは未来視を使うまでもなく何となく正体を察したためにそう言った。

 

「あさひ?」

 

「……カゲロウも意地悪だなぁ、何でわざわざ知ってて答えを濁すの?」

 

「ふん。これは俺から言うことじゃない。エルに言わせた方が良いからな」

 

どうやらカゲロウは知ってて答えを濁したようで、わざとエルに言わさせるためにそうしたようなのだ。

 

「じゃあ、エルちゃん。マジェスティの正体は誰?」

 

「えるだよ!」

 

「「「「「………え?」」」」」

 

「える、きゅあまじぇすてぃなの!」

 

その言葉を聞いてあさひ以外の全員の顔が固まる。流石にこの答えは予想していなかったらしい。

 

「エルちゃんが……」

 

「キュアマジェスティ!?」

 

「える!」

 

エルが更に上機嫌になる中、ツバサ達は困惑したような顔つきに変わっている。

 

「でも、キュアマジェスティは……」

 

「エルちゃんよりずっと年上だったはずなのに……」

 

「だとしてもあり得るかもね。だって運命の子だもの!」

 

あげはの言う通りだ。エルは一番星から生まれた運命の子、そんな彼女ならプリキュアに変身できてもおかしくないのだ。

 

「そういえば、カバトンがエルちゃんの力を狙っているような事を……もしそれが最強のプリキュアに変身する力だとしたら……」

 

「プリンセスがキュアマジェスティだとしてもおかしくないです!」

 

「エルちゃん、今キュアマジェスティに変身できる?」

 

「える!」

 

それからエルがキュアマジェスティになれるかとあげはに聞かれて頷くと皆の前で変身を披露する事になる。

 

「える!ひーろーがーる!ちぇんじ!」

 

そう言うと薄紫の光が輝く……のだが、何も変化は起きなかった。それもそのはず。エルが持っているのはスカイミラージュでは無くスプーンだったのだから。

 

「あれ……」

 

「エルちゃん」

 

「スプーンで変身は……」

 

「える!?ぷりきゅあ!ぷりきゅあ!える、へんしん!つよいの、うそないの!」

 

エルはこのままでは嘘つきになってしまうと思ったのか焦ると共に涙目になってしまう。

 

「……大丈夫。嘘だなんて思ってないよ」

 

「エルちゃん」

 

「僕らもです」

 

「うん!」

 

「でも、今は何故か変身できなくて困った困った。なんだよね」

 

「える……」

 

エルがそれに頷くとあげはは張り切るとエルを抱き抱えて立ち上がる。

 

「よっしゃ!ここは最強の保育士を目指してる私の出番かな!どうすれば変身できるか一緒に考えてみよう!皆はもっと強くなるために頑張る!」

 

あげはにそう言われて他の皆も自分のやるべき事をやる事になった。するとふとアイが気になった事を口にする。

 

「そういえば、あさひ君が変身したえっと、エビリティサンライズ?それには自由になれるの?」

 

それを聞いた他の皆は気になってあさひの方を向くとあさひは困ったような顔つきに変わった。

 

「それが、それに変身する用のスカイトーンがどれだけ探しても見つからなくて……」

 

「ふん。そもそもあの姿は俺とあさひ、二人の心が完全に一つになる事で初めて変身可能になるんだ。力も高い分、あさひの意思だけで変身できるホーリーサンライズよりは変身へのハードルも上がる」

 

「そうなんだ……」

 

「とにかく俺は常時エビリティサンライズに変身できるように特訓してみるから……あの姿になれないと正直スキアヘッドやドハツテンダーに対抗できないからな」

 

それからそれぞれに別れて特訓を進める事になる。あさひはカゲロウを分離した状態になると二人で自室に籠り、精神を統一していた。

 

「あさひ、何の真似だ」

 

「何って精神統一すれば心が一致するかなって……」

 

その直後、カゲロウがあさひの頭が叩くとあさひへの文句を口にする。

 

「おいおい、何でそうなるんだよ。てか、そんなので一致するわけ無いだろうが」

 

するとあさひの部屋の入り口がノックされると中にあげはとエルが入ってきた。

 

「あさひ、カゲロウ」

 

「あげは?エルは変身できたのか?」

 

「うーん、まだ変身できてないよ。色々試したけどどれも変身には繋がらなくて」

 

「そっか。あ、じゃあ精神統一やってみる?」

 

「おい、何でそうなるんだよ」

 

カゲロウがあさひへとツッコむ中、あさひはカゲロウへと耳打ちする事になる。

 

「あげはは多分変身するための鍵を知っててエルに考えさせてるんだ。ここで答えを言ったらエルのためにならない」

 

「える?」

 

「いや、何でも無いよ」

 

「まぁ良い。それならエル、やるか?」

 

「える!」

 

それからエルは精神統一を始めるのだが……まだまだ心が未熟なエルに耐えられるような物ではなく……あえなく失敗に終わってしまう。

 

「えるぅ……」

 

「精神統一したら変身できると思ったけど、ダメだったね……。じゃあ次は少年とアイちゃんの元に行ってみる?」

 

「える!」

 

「じゃああさひもエビリティサンライズに変身できるように頑張ってね」

 

「うん」

 

それから少し経ったが、あさひは変身の糸口が掴めずにいた。と言うのも変身の条件は二人の心が一つになる事。そもそも話が抽象的すぎるのだ。

 

「うーん。カゲロウ、何か思い浮かぶ?」

 

「ふん、俺がそんなに万能かと言ったらそうでもねーよ。てか、お前にわからないんだ。俺が知るかよ」

 

「だよね……」

 

「……そもそもそんなに気にする必要は無いだろ」

 

カゲロウのその言葉にあさひは疑問を抱く。変身できるようになるために特訓しているのだが、その特訓は必要ないと言っているからである。

 

「え……」

 

「俺とお前の心を一つにする。それは戦いになれば自動的に満たされるんじゃないのか?」

 

「そういうものなのかな……」

 

あさひが悩んでいると突如としてエルの泣きだす声が家中をこだました。慌ててあさひとカゲロウが行くとそこにはツバサのミラージュペンを手に泣くエルがいたのだから。

 

「よーしよーし、エルちゃん、凄く凄っごく頑張ったんだよね。でも、中々上手くいかなくて悲しくなっちゃったんだよね」

 

「える」

 

「エルちゃんにはエルちゃんだけのミラージュペンがあるはずだよ」

 

あさひはそれを聞いてやっぱりあげはは上手くエルを誘導しているなと考えた。最初から答えを言わずに少しずつでも自分から答えに近づかせていく事でエル自身の成長に繋げているのだと。

 

「それは、エルちゃんにしか見つけられない物なんだ。でも、きっとエルちゃんなら見つけられる」

 

その言葉に皆が頷く中、窓からツバサの鳥仲間である小鳥達が慌てた様子でやってきていた。

 

「どうしたんです?そんなに慌てて」

 

ツバサが窓を開けてプニバードの姿に変身すると鳥達から事情を聞く。それを聞いてツバサは目を見開いた。

 

「大変です!巨大な怪物が街で暴れてるって……」

 

「そうか、とにかく行こう!」

 

カゲロウがあさひの元に戻るとエルを含めた七人は急いで現場へと急行する事になる。そこで待っていたのは自我を失っていて巨大な姿となり凶暴化しているミノトンであった。

 

「破壊!破壊!もっと破壊してやる!」

 

「いました!鳥さんが言っていたのはアイツです!」

 

「プリキュア!」

 

「ミノトン!?」

 

「あの姿……」

 

「来たか」

 

その言葉の主で建物の上から七人を見下ろすスキアヘッドの姿がいた。

 

「お前だけ……ドハツテンダーは……」

 

「ドハツテンダーはいない。今回は私だけだ。そしてミノトンはアンダーグエナジーで生まれ変わった」

 

そう言うスキアヘッドにソラは怒りを露わにする。その手段は以前シャララ隊長やサンライズになったあさひに使った物と同じだからだ。しかも今回は人間であるシャララ隊長達とは違って元々アンダーグエナジーを多く取り込めるミノトンに使っているのだ。加えてミノトン自身の戦闘力が高いためそれだけ圧倒的なパワーを見込む事ができる。

 

「彼は我らの目的を果たす忠実な僕となった」

 

「プリキュア!倒す!」

 

「そんな手を使って……許せません!」

 

「エルちゃんはあなた達には渡さない!」

 

「最早我らはプリンセスを連れ去る事に拘っていない」

 

するとあさひが未来視を発動。そこに見えた未来は自分達が負けてエルが消し去られてしまう未来だった。

 

「これって……まさか、お前らの目的はエルを消し去る事……」

 

「その通り。ここで貴様ら諸共消えてもらう」

 

「そんな事は……」

 

「させない!」

 

「プリンセスは安全な場所に!」

 

「える……」

 

それから六人はエルを退避させる。するとあさひの内から声がかけられた。

 

「ちょっと待ったぁ」

 

「……カゲロウ、お前にも出番をやるよ」

 

その瞬間、あさひはカゲロウと交代すると全員でミラージュペンを持つ。

 

「「「「「「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!」」」」」」

 

「スカイ!」

 

「プリズム!」

 

「ウィング!」

 

「バタフライ!」

 

「トワイライト!」

 

「ウェザー!」

 

その瞬間、六人は光に包まれる中、カゲロウは今まで変身する際に闇の空間に移動するのだが、今回は他の五人と同じようにステージへと移動した。それから髪は小豆色から黒く染まると共に銀の靴が装着される。

 

「煌めきホップ!」

 

煌めきホップではカゲロウの髪に蝙蝠を模した小さな髪飾りが付き耳にはターコイズのピアスがつく。そして目の色が緑からターコイズへと変化。

 

「爽やかステップ!」

 

爽やかステップでは体にスーツのような服や足にはズボンが装着され、その色は黒いが差し色にターコイズや紫のラインが走っている。

 

「晴々ジャンプ!」

 

晴々ジャンプでは両手に黒のグローブが装着されて更に背中から黒い翼が生えてからそれがマントへと変化し、それが腰の辺りまで垂れ下がった。六人は変身を完了すると名乗りを始める。

 

「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」

 

「ふわりひろがる優しい光!キュアプリズム!」

 

「天高くひろがる勇気!キュアウィング!」

 

「アゲてひろがるワンダホー!キュアバタフライ!」

 

「夕暮れにひろがる黄昏の闇!キュアトワイライト!」

 

「空にひろがる数多の天気!キュアウェザー!」

 

「「「「「「レディ……ゴー!ひろがるスカイ!プリキュア!」」」」」」

 

こうして六人が変身を完了し、凶暴化したミノトンとの戦いが始まるのであった。




今回からキュアトワイライトが正式加入したため、変身のセリフやらが変わりました。また次回もお楽しみに。


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降臨 キュアマジェスティ

六人が変身を完了するとスキアヘッドは穴を通って即撤退。ミノトンはプリキュア達へと襲いかかる。

 

「やれ、ミノトン」

 

「御意御意!」

 

ミノトンは両腕を地面に叩きつけるとその衝撃で地面が抉れる。それを六人はジャンプで躱し、プリズムとバタフライがミノトンの腕を駆け上がった。

 

「む!」

 

ミノトンはすぐに腕を振り上げるがそのタイミングで二人は跳び、プリズムは気弾を、バタフライは蝶が飛んでいくエネルギー弾を使う。それがミノトンに命中する。しかし、あまり効いてないのか仰け反りすらしない。

 

「スカイ!」

 

「トワイライト!」

 

その間にウィングとウェザーがスカイ、トワイライトの足場となって二人はそれぞれ突撃。浄化技を使う。

 

「ヒーローガール!スカイパンチ!」

 

「ひろがる!トワイライト・ジ・エンド!」

 

二人同時の浄化技をミノトンは腹に受ける。しかし、ミノトンは自慢の耐久力で受け止めるとそのエネルギーを掻き消してしまう。

 

「なっ!?」

 

「チッ!」

 

トワイライトは咄嗟にスカイを蹴り飛ばして緊急離脱させると自分も逃げようとするが、トワイライトは間に合わずに捕まってしまう。

 

「ぐっ……」

 

「トワイライト!!」

 

「捕まえたぞ!まずはお前から始末してやる」

 

トワイライトは何とか抜け出そうとするが、ミノトンのパワーが強すぎて抜け出す事ができない。

 

それを遠くから見ていたエルは何とか変身しようとするがやはりできずに涙目になってしまう。

 

「トワイライト、交代だ。サンライズの光で……」

 

「ああ、その方が良さそうだ」

 

「ひろがるチェンジ……サンライズ!」

 

その瞬間サンライズに変化した際に発生する光でミノトンの目を眩ませるとサンライズは脱出する。

 

「良し、次はホーリーサンライズで……」

 

「待て、今は俺がスカイトーンから抜けた影響で力を失ってる。ホーリーサンライズにはなれない」

 

今までホーリーサンライズになれていたのはカゲロウが力の供給源として留まっていたからできた事なのだ。つまり、カゲロウが復活してスカイトーンからいなくなったために今はもう変身ができない。

 

「だったらスタイルチェンジ!ヤタガラス!ウェザー、合わせてくれ!」

 

「はい!」

 

「ヒーローガール!ウェザーボール!」

 

ウェザーがエネルギー弾を発射してミノトンはそれを受け止める。しかし、本命はアンダーグエナジーに取り込まれたミノトンを救う事。そしてヤタガラススタイルならそれができる。

 

「ひろがる!サンライズシャドー!」

 

サンライズはミノトンへと連続キックを繰り出して彼を救い出そうとした。しかし、ミノトンはそれを喰らっても尚平気なのかウェザーボールを粉砕するとそのままサンライズを吹き飛ばしてしまう。

 

「ぐあああ!」

 

「そんな、サンライズシャドーでもダメなの!?」

 

サンライズは壁に叩きつけられると目の前にミノトンの太い腕が迫る。そこにプリズムからのプリズムショットが命中してミノトンの腕を弾き飛ばした。

 

「小癪な真似を……」

 

ミノトンは五人の方を向くとアンダーグエナジーの紫のオーラを纏い構える。

 

「否!否、否、否!」

 

「アレは……不味い!」

 

サンライズは何とか体を動かして槍を投げるとそれは五人の近くに着弾。すかさず瞬間移動する。

 

「喰らうが良い。最強となった我の攻撃を!」

 

するとミノトンは両腕を合わせてエネルギー波を放出。それをバタフライが盾を召喚して防いだ。しかし、そのエネルギーはあまりにも強くバタフライ一人ではまるで歯が立たない。

 

「バタフライ!」

 

サンライズはバタフライの後ろから彼女の体を支えるように押し込む。

 

「サンライズ……」

 

「バタフライ一人に背負わせたりなんかさせないよ」

 

「無駄だ無駄無駄!」

 

だがそれでも防ぎ切るには力不足。そのまま二人纏めて押し込まれ始める。

 

「諦めろ!貴様らにプリンセスを守ることなど叶わん!」

 

するとスカイ、プリズム、ウィングの三人がバタフライの盾を支え、ウェザーが手を翳すと盾そのものにエネルギーを流し込んで厚みを強化。何としてでも耐えようとする。

 

「諦めたりなんか……」

 

「しない!」

 

「そうです!」

 

「私達で力を合わせて……耐えて見せます!」

 

ミノトンはそれを見て更にエネルギーを放出。盾は少しずつヒビが入り壊れ始める。

 

「エルちゃんは……」

 

「プリンセスは……」

 

「私達が……」

 

「絶対に……」

 

「守る!」

 

「スタイル……チェンジ!フェニックス!」

 

サンライズはそのタイミングでスタイルをチェンジ。フェニックススタイルとなると左腕の盾をバタフライの盾に重ねるように召喚。そのままサンライズは五人を巻き込むように浄化技を発動した。

 

「ひ……ろ……が……る!フェニックス……アサルトォオ!!」

 

その瞬間六人の体が炎に包まれると同時に巨大なフェニックスのエネルギーが纏われる。そのまま突撃し、アンダーグエナジーのエネルギー波と互角の勝負に持ち込む。

 

「まも……る?」

 

「「「「「「はぁあああ!!」」」」」」

 

六人の叫びと共にパワーが限界点に到達するとお互いにエネルギーは相殺。何とか防ぎ切った。しかし、代償は大きく……六人共体力を消耗してしまい傷だらけとなる。

 

「ぐ……ここまでやるとは敵ながら褒めて……ぐ!?」

 

ミノトンもエネルギーを大量消費した影響か、一瞬だけ正気に戻るもののすぐにまた意識を奪われてしまう。

 

「否!否!始末するのみ!もう力は残っていまい!」

 

ミノトンが二撃目を放とうとまたエネルギーを高めていく。それに対して六人はもう限界ギリギリ。このままではやられてしまう。

 

「そら、ましろ、つばさ、あげは、あさひ、あい、かげろう……いや、いやいや!」

 

エルが不安で押し潰されそうになる中、ミノトンが紫のエネルギーを腕に集約するとそのまま殴りかかる。それを見たサンライズは一人前に出るとそれに対抗するために浄化技を使おうとした。

 

「「終わるかよ……絶対に!」」

 

その言葉はサンライズとカゲロウ。二人が発した言葉である。二人共まだ諦めない気持ちを絶やしてなどおらず、最後まで抵抗する覚悟であった。

 

「だめぇ!」

 

するとエルは我慢しきれずに六人の前に飛び出す。それを見た六人は驚きの目を向けた。

 

「エルちゃん!?」

 

「いけません!」

 

「いやいや!みんな、だいじ!だいすき!えるも……まもる!」

 

その言葉と心に応えたのかエルの胸にミラージュペンが生成。その光が表面化して小さな光が宿った。

 

「みつけたの……えるもぷりきゅあ!」

 

「サンライズ、俺達も」

 

「ああ、心を一つに!」

 

その瞬間、ホーリーサンライズのスカイトーンが変化し、白、黒、赤のスカイトーンに変わる。

 

「「プリキュア!エビリティコネクト!ひろがるチェンジ!エビリティサンライズ!」」

 

それと同時にサンライズからトワイライトが一度分離。サンライズに白の翼が生えてからカゲロウが黒い粒子となってサンライズの左の翼に融合。そのまま光と共にエビリティサンライズに変身した。

 

「共にひろがる光と闇!エビリティキュアサンライズ!」

 

そしてエルもプリキュアになるためのシークエンスを開始。まずは赤ちゃんの姿から急成長して少女となると胸から出したミラージュペンがスカイミラージュに変化。

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!」

 

エルはいつの間にか手にしていたスカイトーンをスカイミラージュに装填。掛け声を言い放つ。

 

「ひろがるチェンジ!マジェスティ!」

 

するとマイクにMAJESTの文字が出てエルがステージの上に降り立つ。同時に髪が紫のウェーブのかかったツインハーフアップ変化。足にはニーハイソックスに低めのヒールを履く。

 

「煌めきホップ!」

 

煌めきホップでは頭に王冠のような飾りを付けてから耳に刺々しい金のイヤーカフが装着される。

 

「爽やかステップ!」

 

爽やかステップでは体に紫と白を基調としたお姫様のようなドレスが着せられて更にスカートの内側には煌めく夜空のような星々が付いていた。

 

「晴々ジャンプ!」

 

晴々ジャンプでは両腕に白いロンググローブが装着されるとスカートにどこからとも無く飛んできた一番星が付与される。

 

そして、変身を完了すると他のプリキュア同様に名乗りを挙げるのであった。

 

「降り立つ気高き神秘!キュアマジェスティ!」

 

こうして、エルの変身するプリキュア、キュアマジェスティが降臨する事になる。

 

「キュア」

 

「マジェスティ!」

 

「やりましたね!」

 

「見つけたんだね、エルちゃんだけのミラージュペン!」

 

「あのペンは自分の中の気持ちが形になった物です!」

 

「バタフライ、最初からわかってて……」

 

プリズムがそう言う中、バタフライは得意げに笑う。そして、サンライズもスカイトーンが発現した事によって条件さえ揃えばエビリティサンライズにいつでもなれるようになった。

 

「信じてくれてありがとう!」

 

マジェスティがそう言ってお礼を言う中、サンライズもマジェスティの隣に並ぶ。

 

「「俺の事も忘れてもらったら困るね」」

 

「あさひ君もカゲロウも力を手にしましたね!」

 

「「マジェスティ、一緒に戦っても良いか?」」

 

「えぇ、喜んで」

 

サンライズはニッと笑うと二人はミノトンに向きあう。するとミノトンは早速闇のエネルギー弾を飛ばしてきた。

 

それを二人は軽い身のこなしで躱すとミノトンへと接近。ミノトンは咄嗟にガードするが、二人の拳はそれを軽々と弾き飛ばす。

 

「ぐうっ!?」

 

そのまま二人は跳び上がってキックを叩き込む。その反動を利用して二人は後ろに飛び退いた。

 

「むぐぅ、小癪な……!?」

 

ミノトンが二人の居た場所を見やるとそこには誰もおらず、その直後ミノトンの背後に二人が一瞬にして移動すると首あたりに回し蹴りを同時にぶつけた。そのままミノトンは近くの線路にあった電線に触れると電気が流れて黒焦げになる。

 

二人はその間に悠々と着地。その姿はまるでお姫様とそれを守る騎士であった。

 

「ふっ……」

 

マジェスティが髪を掻き上げる中、サンライズは手に白、黒、赤のラインが入った銀の長剣を召喚すると手にする。

 

「ぬう、あり得ぬ……我は最強!」

 

ミノトンが拳を突き出す中、それをサンライズが銀の剣で受け止めるとその剣に炎が宿ってミノトンの攻撃を押し留めた。その間にマジェスティがミノトンの腹を殴り飛ばす。

 

「はあっ!」

 

「やっぱ強すぎ」

 

「これがプリンセスの、キュアマジェスティの力」

 

「サンライズも、私の記憶の中にだけいるはずのリブデビル様を見ているよう……」

 

それからサンライズとマジェスティの猛攻を受けてミノトンは崩れる中、マジェスティは目にも止まらぬ速さで連続で拳を放つとミノトンは吹き飛ばされる。

 

「今よ!サンライズ!」

 

「「ああ!」」

 

サンライズは背中の翼を広げて飛び上がるとそのまま加速しつつキックの態勢に入る。

 

「「ひろがる!エビリティフィナーレ!」」

 

サンライズは脚に赤、黒、白のエネルギーが高められ、その状態でミノトンへと攻撃を命中させると浄化のエネルギーを一度に注入。そのままミノトンを完全に浄化した。

 

「スミキッタァ〜」

 

これにより、壊された街は元に戻ったのだが、落ちてくるミノトンはその真下にスキアヘッドが召喚したであろう穴が空いてその中に吸い込まれていく。

 

「まだお前には戦ってもらう」

 

それを見たスカイは顔を強張らせる中、マジェスティは力を使い尽くしたのかそのまま倒れ込むように変身解除。エルの姿に戻ると飛んできた抱っこ紐の中に入る。そこにスカイ達五人が駆け寄る中、サンライズは大丈夫とばかりに声を上げた。

 

「「安心して良いよ。多分疲れて寝ただけだから」」

 

五人はそれを聞いて安心した顔になるとサンライズは変身解除。今回は変身前がサンライズだったからかあさひの人格として戻る。それから全員で帰路についた。

 

「プリンセス、ぐっすりです」

 

「こんな小さな体にあんな力があるなんて」

 

「皆、どう思う?心配は心配だけど、これからは私達の手が届く所で……」

 

「一緒に戦った方が良い。でしょ?あげは」

 

「うん!」

 

「確かにそれが一番ですね」

 

「はい!」

 

あさひ達の意見がエルと共に戦う事を受け入れる中、ただ一人ましろは不安そうな顔をしていた。

 

「姉さん?どうしたの?」

 

「え?あ、ううん。何でもないよ……」

 

「最強のエルちゃんを守るために私達はもっともっと強くなるのみです!」

 

ソラがそう意気込む中、ましろの顔が曇ったのをあさひは見逃さなかった。この不安が後にプリキュア達を窮地に追い込むトリガーとなるのを知らずに。




お知らせです。今回でアニメ32話が終わりましたが、次回からはプリキュアオールスターズFに当たる私なりのオールスターズの話をやって行こうと思います。それではまた次回もお楽しみに。


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見知らぬ世界 新たな出会い

今回からプリキュアオールスターズFに当たるストーリーとなります。読む前に注意です。このストーリーの中にプリキュアオールスターズFの中のシーンの幾つかがこの物語の中に取り入れられているので読む際はそれでも良いという事前提でお願いします。


夢を見ていた。世界が青い粒子となって消えていく。そんな夢を。サンライズになっていたあさひが周りを見渡すとそこには自分へと無我夢中で手を伸ばすバタフライの姿がいる。近くにはスカイ、プリズム、ウィング、ウェザーもおりそれぞれが何が何でも離れまいと手を伸ばす。サンライズはそれを見て手を伸ばすが一人、また一人と目の前から消えていく。そして自分の姿さえも消えていったその時。彼は目を覚ました。

 

「……うぅ………」

 

あさひは起きると周りを見渡す。……見た事もない大地だった。起きたあさひがまず始めに思った事。それは何故自分はここにいるのかと言う事だ。

 

「ここ、どこだ?」

 

あさひは立ち上がって周りを見渡す。しかし、地図も無ければ自分の居場所を特定する手段も無いためにあさひは困り果ててしまった。

 

「カゲロウ、俺達……何でここにいるんだろ?」

 

そうやってあさひは胸の内にいるカゲロウに問いかける。だが、そのカゲロウからの返事は無くシーンとするだけだった。

 

「……取り敢えず、何か無いか探してみるか……」

 

一人あさひが歩き出そうとするとその瞬間、突如として何かが吹き飛んでくると自分の目の前に叩きつけられる。

 

「……え?」

 

そこにいたのは一人の少女だった。服装はピンクのドレスのような姿に髪は金髪で魔法使いのような帽子の髪飾りを付けている。体はボロボロで何者かに痛めつけられてしまったのだと察せられた。

 

「ッ!あなた、今すぐ逃げて!」

 

少女はあさひを見た途端そう叫ぶ。するとその近くに何かが隕石のように上空から落下してくると降り立った。その正体は中性的な見た目だが女の子である。姿は黒と赤を基調としたドレスを身に纏い、更に髪はショートヘアで黒い牙の髪飾りを付けている。また、背中には黒い翼のような飾りも付いていてその姿は紛れもなくプリキュアそのものであった。

 

「……お前、プリキュアなのか?」

 

「……え?プリキュアを……知ってるの?」

 

あさひの問いに金髪の少女は驚いたような目をする。しかし、少女は淡々とした顔つきであさひを見つめていた。

 

「……違う。僕はプリキュアでは無い……簡単に言えばプリキュアを倒す者。名前はキラー」

 

「く……なら、その子を襲っているのは……」

 

「そう。彼女がキュアミラクル……プリキュアだからだ」

 

「ったく、知らない世界で目覚めたと思ったらプリキュアを倒す者?笑わせてくれるな。だったらお前を倒してこの世界の出口を聞こうか」

 

「待って!一般人が勝てるような相手じゃ無い!」

 

ミラクルがそう言う中、キラーはニヤリと笑みを浮かべる。それもそのはず。彼女は知っているからだ。あさひもプリキュアに変身できる事を……。

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!サンライズ!」

 

あさひは光に包まれるとプリキュアへとその姿を変えていく。そして、キュアサンライズへと変身すると降り立った。

 

「夜明けにひろがる眩い朝日!キュアサンライズ!」

 

「嘘……あの子もプリキュアだったんだ……」

 

ミラクルが驚いた目をする中、サンライズはミラクルの元に行くと手を差し伸べる。

 

「まだ立てるか?」

 

「うん……ありがとう」

 

それからサンライズはミラクルを引っ張り上げて立たせると自分は手に炎の剣を構える。するとキラーも構えを取った。それを見てサンライズは警戒心を露わにする。

 

「……隙のない構え、これは油断できなさそうだ!」

 

するとキラーは一瞬にしてサンライズの背後に回り込む。サンライズはそれを感じ取ると後ろへと肘打ちをして対応。キラーの動きを見切った。

 

「……!!」

 

「生憎だけど、そう簡単にやられるつもりは無い!」

 

サンライズはすぐにキラーへと足払いをかけ、キラーを後ろに飛び退かせる。

 

「………」

 

「はあっ!」

 

そのままサンライズはキラーへと肉薄して剣を振るう。そのスピードにキラーは防戦一方になっていた。

 

「押してる……の?」

 

ミラクルは信じられないと言った様子で見ていた。何しろ自分は手も足も出なかったのにキラーと互角に渡り合っているのだ。

 

「へっ、何がプリキュアキラーだ。そんな物かよ!」

 

サンライズがそう言うが次の瞬間、キラーはサンライズの一撃を何と素手で受け止めるとカウンターを顔面に叩き込んだ。

 

「ぐうっ!?」

 

「お前の動きは見切った。他のプリキュアよりはデータとの修正に時間がかかったがその程度なら問題無い」

 

「くっ……」

 

サンライズは次第にキラーに押し込まれるようになり始めると被弾回数が徐々に増えていく。

 

「だったら、ひろがる!サンライズカリバー!」

 

サンライズが浄化技で一撃必殺を狙う。しかし、キラーはそれを見た途端すぐに対応してきた。

 

「プリキュア!サファイアアロー!」

 

その瞬間、水のエネルギーがキラーの手に集約されると水の弓矢を形成。それを放つとサンライズカリバーに命中。水の力でサンライズカリバーの威力を相殺してしまう。

 

「ッ!?なんだ、コイツ……俺の技を……知っているのか?」

 

「しかもプリキュアって……まさか、他のプリキュアの技が使えるの!?」

 

サンライズはあまりの対応速度の速さに驚きを隠せない。そもそもサンライズの弱点が水属性の攻撃だとは本来なら相手は知らないはずである。それなのに何故かキラーは知っている。まるで、誰かに吹き込まれたかのように……。

 

「……くっ、仕方ない。スタイルチェンジ!ドラゴン!」

 

「……?」

 

サンライズはドラゴンスタイルへと変化すると地面へと炎弾を撃ち込み、キラーの視界を奪う。その直後、ジャンプ台を連続使用して近くにいたミラクルを抱えるとそのまま撤退していった。

 

「………逃げたか。だが、この世界にいる以上、僕からは逃れられない」

 

その頃、ソラは一人地面に倒れている。そして彼女は目を覚ますと見覚えのない景色に疑問を浮かべていた。

 

「ここは……どこでしょうか?」

 

ソラは立ち上がって辺りを見渡すものの、周りには岩場が広がるばかりで何も無い。すると彼女の前に地響きを響かせながら何かが近づいてきた。ソラが構えを取るとそこにいたのは一体の真っ黒な怪物である。

 

「あれは……ランボーグじゃない?」

 

すると怪物はソラへと拳を叩きつけようとしてきた。ソラは咄嗟の事で回避が間に合わない。

 

「くっ!?」

 

ソラが少しでもダメージを抑えようとガードを固めるがプリキュアでは無い状態では大怪我は避けられない。その時だった。

 

「「危ない!!」」

 

そこに現れたのは二人の少女だった。一人はピンクの髪にエプロンのようなドレス、更に腰には妖精のような物を付けており、髪のツインテール部分はお米のような形状をしている。もう一人は金髪とピンクの髪が混ざっているポニーテールで白を基調としたドレスを身に纏う。

 

二人は怪物にキックを打ち込むとそのまま近くの岩場の壁面に立って前を向く。

 

「「やあっ!」」

 

更に二人は同時に攻撃をぶつけて怪物を吹き飛ばした。そして、ソラの前に降り立つ。

 

「「大丈夫?」」

 

ピンクの方のプリキュアの名はキュアプレシャス。もう一人はキュアサマーだ。

 

「がああっ!」

 

怪物は再び起き上がるとプレシャス達に攻撃しようとする。するとソラが一人前に出た。

 

「え!?」

 

「あなた、危ないよ!」

 

二人が止めようとするが、ソラとしては仲間のプリキュアが戦っているのに自分が行かないわけにはいかなかったのだ。

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!スカイ!」

 

ソラは跳び上がりつつ変身するとキュアスカイへと変わり、怪物を殴り飛ばして降り立った。

 

「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」

 

「あなたも……」

 

「プリキュアだったの!?」

 

二人は驚く中、スカイは二人の方へと振り向くと二人へ声をかける。

 

「初めまして!私、キュアスカイ!」

 

「私はキュアプレシャス。この子はコメコメ!」

 

「コメ!」

 

「私はキュアサマーだよ!」

 

三人で自己紹介をしていると怪物は立ち上がり、三人を見据えた。それを見て三人も構える。

 

「行くよ、二人共!」

 

「うん!」

 

「はい!」

 

怪物は口からエネルギー弾を連続発射。それを受けて三人はそれぞれ躱すと怪物の周囲を跳び回りつつ撹乱。隙を作ってスカイが突撃すると怪物の腹に一撃を加える。

 

「だあっ!」

 

「がっ!?」

 

怪物が怯んだその瞬間を二人は逃さずに追撃の蹴りを叩き込む。しかし、怪物もただ黙ってはやられない。すぐに態勢を立て直すと腕で薙ぎ払い、スカイを吹き飛ばす。

 

「くっ!?」

 

「だったら!」

 

二人は近くにあった岩を投げ飛ばすと怪物はそれをすぐに破壊。だが、それによって発生した煙が煙幕となって周囲を覆う。それからプレシャスとサマーは怪物の両側に回り込むと連続でパンチをぶつける。そして、トドメを飾るのはスカイだ。

 

「ヒーローガール!スカイパンチ!」

 

スカイから繰り出されたスカイパンチは怪物に命中すると怪物を近くの岩場へと吹き飛ばして叩きつけさせた。

 

「ぐ……ここは退くとしよう」

 

怪物は三人相手には到底敵わないと感じたのか撤退していく。それを見届けた三人は変身を解除して向き合った。

 

「助けていただいてありがとうございました。えっと……」

 

「和実ゆいだよ!」

 

「私は夏海まなつ!」

 

「ゆいさんにまなつさんですね。私はソラ・ハレワタールです」

 

「ソラちゃん!良い名前だね!」

 

三人はそれからガールズトークを始めようとするが、突如としてゆいのお腹がグゥーっと鳴り響く。

 

「腹ペコったぁ……」

 

「そういえばここ……何も無い!?」

 

「ひとまず何か無いか探しましょう」

 

こうして、三人は行動を共にする事になりまずは食べられる物が何か無いか探す事になった。それから少し時間が経ってとある洞窟の中、あさひは目を覚ます。

 

「うぅ……」

 

「あ、気がついた!!」

 

そこにいたのは二人の少女と熊のぬいぐるみで一人は先程助けたであろう金髪の少女。もう一人は紫のロングヘアが目立つ少女であった。

 

「ここは?」

 

「え!?覚えてないの?私を助けてくれた後にここに逃げ込んで……あなたが急に倒れて気を失ったから」

 

「そうだったのか……」

 

あさひが起き上がるとひとまず彼女達へとお礼を言うことにする。

 

「助けてくれてありがとう。俺は虹ヶ丘あさひ」

 

「ううん。お礼を言うのは私の方だよ。ね、リコ」

 

「ま、まぁ。ピンチになってたみらいを助けてくれたし感謝してるわよ」

 

「あ、私は朝日奈みらい!」

 

「十六夜リコよ」

 

「よろしくね、二人共」

 

あさひはそう言ってから少女の近くにいる熊のぬいぐるみを見やる。

 

「可愛いぬいぐるみだな」

「この子はモフルン。私が小さい頃からずっと一緒にいるの。可愛いでしょ?」

 

「ああ。あ、そういえばこの世界について二人は何か知ってる?」

 

それを聞いた二人は顔を見合わせると難しい顔つきに変わって否定の意を示した。

 

「それが、私達も気づいたらここにいて……」

 

「私だってさっきまで一人で彷徨っていたから」

 

二人の返事に対してあさひは考え込んでから二人へと次の質問をする事になる。

 

「じゃあさ、さっき現れたキラーについて何か知ってる?」

 

そう言った瞬間、二人はビクンと体を震わせる。どうやら、二人共キラーに相当酷くやられたせいかキラーの事になると緊張した面持ちになった。

 

「……ゆっくりで良いから教えて欲しい。アイツに勝つ方法を少しでも見つけたいんだ」

 

あさひの言葉に二人は小さく頷くとキラーについて二人が知っている事を話す事になる。




また次回もお楽しみに。


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散らばった仲間 集まるプリキュア達

みらいとリコの二人はキラーについて話し始めた。時はあさひが目覚める少し前にまで遡る。この世界で目覚めた二人は自分の友達がいないか探し回った。その最中に二人は他のプリキュアと出会った……のだが。

 

「そんな時にいきなり私達の前に現れて攻撃してきて……」

 

「私とリコも他のプリキュアと一緒に戦ったんだけどまるで歯が立たなかったの」

 

そして、立ち向かったプリキュアの中には力尽きて倒れた者もおりそのプリキュアは粒子となって消滅してしまったらしい。

 

「く……」

 

あさひはそれを聞いて拳を握りしめた。キラーを許せない気持ちでいっぱいなのである。

 

「二人はここで待ってて。俺がそのキラーを倒してくる」

 

「そんな、無茶よ」

 

「さっきだって対応されてしまったのに……」

 

「……だとしても俺は負けっぱなしで諦めるのは嫌だから」

 

そう言うあさひを見て二人も頷くと手を差し伸べる。それは、二人も覚悟を決めた証だった。

 

「じゃあさ、私達にも手伝わさせて」

 

「!!」

 

「私たちだって仲間のプリキュアがやられたのに黙ってなんていられない」

 

「それに、私達がいるって事はまだ他にも仲間のプリキュアがいるかもしれない。だからその人達も救うためにも」

 

「俺達で協力する……か」

 

あさひの言葉に二人共肯定の意を示す。するとコツコツと洞窟内を歩く音がしてきた。それを聞いて三人は構える。

 

そこにやってきたのは紫の髪をストレートに下ろした少女でキリッとした目が特徴的であった。

 

「あなたは……」

 

「もしかして、あなた達もプリキュア?」

 

少女からの問いに三人は頷く。すると少女は強張らせていた顔つきを緩めた。

 

「……私の友達を探している中で他にもプリキュアがいる事は知っていたから、他のプリキュアと会えて良かった」

 

彼女の名は氷川いおな。キュアフォーチュンに変身が可能である。また、彼女の傍らには妖精もおり、名前をぐらさんと言う。

 

四人はそれぞれ自己紹介を終えると行動を共にする事になり、一旦洞窟から出ると遠くにお城が見えた。

 

「あれは……」

 

「随分と大きな城だな」

 

「城があると言う事はもしかすると他の皆もそこに向かってるのかも」

 

「ひとまずそこを目指して行ってみよう」

 

それから四人は移動を開始する事になる。その頃、ジャングルの中に二人のプリキュアが怪物の軍団からから逃げるように走っていた。

 

「ちょっとピース!逃げないでくださいよ!」

 

「だってだってあんなにいたら怖いんだもん!」

 

一人はキュアウェザーことアイ。もう一人は黄色を基調としたドレスに髪を高い位置で纏めてポニーテールにし、腰にパクトを付けたプリキュア、キュアピースである。

 

「ヒーローが逃げたらカッコ付かないよ!」

 

「そうなんだけど、こんなに出てきたらキリが無いよ!」

 

二人は森の中を疾走しながら怪物達に追われており、何とか一息つこうとしていた。

 

すると二人の前に少女が現れる。その少女は赤を基調としたドレスを纏い、更にピンクの髪をポニーテールに纏めている。その髪はポニーテールの途中から四本に枝分かれし、縦巻きになっていた。耳はトンガリで更に足はハイヒールを履いている。その姿はさながらお姫様のようだった。

 

「羽ばたけ!炎の翼!プリキュア !フェニックスブレイズ!」

 

すると少女の後ろから炎を纏った不死鳥、フェニックスが現れると共に怪物達へと突撃。怪物達を焼き尽くしていく。

 

「凄い……」

 

「もしかして、あなたもプリキュアなんですか!?」

 

「ええ、私はキュアスカーレット。あなた達は?」

 

「私はキュアウェザーです」

 

「キュアピースです」

 

スカーレットは上品な笑顔を浮かべると他のプリキュアに会えた事をまずは喜ぶ。すると先程焼かれていたはずの怪物はいつの間にか態勢を立て直しており、三人を睨みつける。そこに緑のリングが飛んでくると怪物を拘束した。

 

「こっちよ!」

 

そう言うのは青いドレスを纏った少女で髪は紫のサイドテール、青いサイハイブーツを履いていた。また、袖はパフスリーブでフリルスカートを履いている。その少女に導かれるままに三人も離脱すると怪物達を撒いた。

 

そして、ある程度離れた場所で一息つくとウェザー達はお礼を言うことになる。

 

「あの、助けていただきありがとうございました」

 

「どういたしまして」

 

「あなたもプリキュアですよね?」

 

「そうよ。私はキュアビート。黒川エレンよ」

 

そう言ってキュアビートは変身解除すると暗い紫の長髪の少女の姿となる。それと同時に三人も変身解除し、それぞれ改めて自己紹介をした。

 

「私は紅城トワ」

 

「黄瀬やよいだよ」

 

「アイです」

 

四人は一旦情報共有及び、元々の目的であった城を目指しつつ進む事になる。その頃、海の上では二人の少女が移動していた。一人は虹ヶ丘ましろ、そしてもう一人は人魚のローラである。

 

「それにしても災難だったわね。目が覚めたらあんな無人島に一人だなんて」

 

「ホントだよ。どうしてあんな所にいたんだろ……」

 

どうやらましろは絶海の無人島で目覚めてしまったらしく、しかも島には何も無かったためにどうする事もできなかったのだ。

 

「でも、初めて会えた子があなたで良かったぁ。あのまま無人島で生活なんてできないもの。それに、海の上をスイスイ動けるって凄い」

 

「ふふっ、もっと褒めてくれても良いのよ」

 

それから二人は陸地の見える場所にまで到着するとそこにはとある光景が映った。それは、プリキュアと思える一人の少女が何十体はいるであろう人型の怪物と戦いつつ彼女の近くにいる小さな妖精を守っているのだ。金髪のポニーテールにエプロンのようなドレス。ドレスにはスイーツやお菓子のような装飾が多々付いており、まるで上品なお嬢様を連想させた。妖精は灰色と白を基調としたタレ耳のウサギのような姿で怪物達に怯えている様子である。

 

「あれは……」

 

「急いで助けないとだよ!」

 

「え!?危ないわ!ここは私に!」

 

するとましろはミラージュペンを、ローラは何かのパクトを取り出す。そして、二人は変身した。

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!プリズム!」

 

「プリキュア!トロピカルチェンジ!」

 

「ふわりひろがる優しい光!キュアプリズム!」

 

「ゆらめく大海原(オーシャン)キュアラメール!」

 

ローラが変身したのは肩やへそを出したドレスで先程まで魚のようなヒレだった部分は足に変化し、手や足の爪にネイルが入っている。また、髪はピンクと水色の二色で下半身にはレギンスを履いていた。彼女の名はキュアラメール。海の力を持つプリキュアである。二人は変身すると先程まで上で戦っていた少女も含めて驚きの顔に変わる。

 

「「「えぇ!?」」」

 

「あなたも……」

 

「プリキュアなのか……?」

 

「だったら先にそれを言いなさいよ!」

 

「えぇ!?」

 

ひとまずプリズムとラメールの二人は丘の上にいるプリキュアと合流するために怪物達へと突撃。丘を登りつつ迫り来る怪物を相手していく。

 

「はあっ!」

 

「やあっ!」

 

二人は怪物を跳ね除けて丘の上に到着するとそこにいたプリキュアと合流。そして近くにいる怯えた妖精とも会った。

 

「私の仲間以外にもプリキュアがいたなんてな」

 

「えっと、あなたは?」

 

「私はキュアフィナーレだ。あと、この子も何故かここにいて襲われていたから一緒に守ってくれ」

 

「はい!」

 

それから三人は怪物達と戦闘を再開。迫り来る敵を片っ端から倒していく。だが、それでも浄化までには至らないのかゾンビのように湧いて出てきた。

 

「キリが無いわね!」

 

「ひとまず逃げた方が良いかもだよ!」

 

するとプリズムは怖がる妖精へと手を差し伸べる。妖精はそれを見て更に怖くなったのか手を取るのを躊躇した。

 

「プカ……」

 

「プカ?」

 

「その子はプカしか言えないみたいなんだ!」

 

「そうなんだ……」

 

「って、二人共何を呑気に話してるのよ!」

 

「そうだったぁ!」

 

ラメールは仕方ないとばかりに妖精を無理矢理抱えると三人で逃げの態勢に入る。すると怪物達は三人を追いかけ始めた。

 

「やはり追ってきたな……」

 

「何とか撒けそう?」

 

「なら!ヒーローガール!プリズムショット!」

 

プリズムが巨大なエネルギー弾を放つとそれが怪物の中の一体に命中。そして弾けると大量の小さな気弾が飛び散った。

 

「煌めけ!」

 

その瞬間、気弾は光を発して怪物達の視界を奪うと三人は一目散に逃げ出す事になる。

 

それと時を前後して、ここでも四人の少年少女達が合流していた。一人はツバサ、一人はエル、一人は青いロングヘアの一部を左耳の上でシニヨン状にまとめている少女、薬師寺さあや。一人は薄いピンクのロングヘアをして魔法の箒を片手に持った花海ことは。

 

「綺麗な景色!」

 

「この辺りは紅葉のエリアみたいですね」

 

「えるぅ!」

 

エルはツバサが抱いているため、残りの三人が歩くのは話にもあった通り紅葉に色めく森の中であった。

 

「私達の友達、今どこにいるんだろう……」

 

「バラバラで目覚めたからきっと皆も私達を探していると思う」

 

「気長に探しましょう」

 

するとガサガサと音が鳴るとともに四人が警戒するとそこに一人の少女が姿を現す。それは紫の髪を下ろした少女で名を美々野くるみ。彼女もプリキュアの仲間である。

 

「あなた達……誰?」

 

「えっと、プリキュアの仲間ですか?」

 

ツバサの問いにくるみは頷くとそれぞれ自己紹介を済ませてから合流する。するとツバサ達はドクンと何かの感覚に襲われる。

 

「何……今の?」

 

「何だが、大切な事を忘れているような気がする……」

 

しかし、今は理由さえもわからないために五人は移動しようとするとその瞬間。突如として近くから轟音が聞こえてきた。

 

「何!?」

 

「行ってみよう!」

 

それから五人が移動するとそこにはプリキュアを倒す者、キラーが立っていたのだ。それを見てツバサ達は近づこうとするが、くるみは正体を知っていたために叫ぶ。

 

「近づいたらダメ!」

 

「……え?」

 

「ふふっ、ここに五人も獲物がいるなんて。ラッキー」

 

するとキラーは手を翳すと衝撃波を放つ。五人はそれを躱すがそれは近くの木を叩き折った。

 

「ッ………」

 

「何あれ!?」

 

「えるぅ……」

 

「戦え。殺されたく無かったらな」

 

そう言って挑発するキラー。くるみ以外の三人は変身しようと構えるが、くるみは一言言い放った。

 

「……アイツの強さは半端じゃ無い。気をつけて」

 

それを聞いた三人は小さく頷く。そして、変身の光に包まれた。

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!ウィング!」

 

「スカイローズ・トランスレイト!」

 

「キュアップ・ラパパ!エメラルド!フェリーチェ・ファンファン・フラワーレ!」

 

「ミライクリスタル!ハート、キラッと!」

 

すると四人の姿はプリキュアへと変化。そして、名乗りを挙げていく。

 

「天高くひろがる勇気!キュアウィング!」

 

「青いバラは秘密の印!ミルキィローズ!」

 

「あまねく生命に祝福を!キュアフェリーチェ!」

 

「みんなを癒す!知恵のプリキュア!キュアアンジュ!」

 

四人が変身を完了するとくるみは紫のロングヘアに白と紫を基調としたドレスに胸に青いバラの飾りが付いている戦士、ミルキィローズに。ことははピンクで編み込まれた髪型で緑を基調とはしつつも体の至る所に色んな色の花が咲き誇るドレスを纏いつつ背中には羽を生やしているプリキュア、キュアフェリーチェに。さあやは薄い水色のアップ髪にナースをモチーフとした水色や白を基調とするドレスを纏い天使のような姿をしたキュアアンジュに。それぞれ変身。

 

「僕を楽しませろよ、プリキュア」

 

それを聞いて四人はキラーと向かい合うと戦闘を開始する事になるのであった。




また次回もお楽しみに。


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キラーの恐怖 噛み合わない二人

並び立つ四人のプリキュア。それに対してキラーは手にエネルギーを高めると漆黒の気弾を生成。先制攻撃を仕掛ける。

 

「フレフレ!ハートフェザー!」

 

それをアンジュが生成した青いハートのバリアで防御。その間に機動力の高いウィングが突撃した。

 

「はあっ!」

 

「ふんっ」

 

それに対してキラーはウィングの一撃を片手で受け止めるとそのまま投げ飛ばす。すかさずフェリーチェが接近しつつ蹴りを放つがそれをキラーは軽く防御。そのまま真上へと蹴り飛ばす。

 

「受けるが良い。プリキュア!ハピネスハリケーン!」

 

その瞬間、赤いハート型のエネルギーが高められた旋風が吹き荒れてフェリーチェを吹き飛ばして叩きつけさせる。

 

「はぁあっ!」

 

その直後、ミルキィローズが地面を殴って陥没させるといきなり足場が消えたことでキラーはバランスを崩す。そこに浮いている事で地面の影響を受けにくいウィングがパンチを叩きつける。

 

「……少しはやるな。……だが!プリキュア!ビューティーブリザード!」

 

その瞬間、キラーが雪の結晶のようなエフェクトと共にウィングへと吹雪を発生させるとウィングの体を凍り付かせた。

 

「ウィング!」

 

「やあっ!」

 

「たあっ!」

 

そこにアンジュとミルキィローズが連続攻撃を仕掛けるが、それでもまるで通用していない。

 

「温いな。その程度では僕には勝てない」

 

更にキラーは跳び上がりつつキックを二人へとぶつけて吹き飛ばす。更に続けて技を発動。

 

「シの音符のシャイニングメロディ!プリキュア!スパークリング・シャワー!」

 

すると黄色い泡のエネルギーが大量に生成されるとそれが四人へと容赦なく降り注ぐ。四人はこれをまともに喰らって大ダメージを受けてしまう。

 

「う……くぅ……」

 

「えるぅ………」

 

「お前もプリキュアなんだろう?変身しろ」

 

エルが怯える中、キラーはエルへとそう言い放つ。しかし、四人はまだ諦めてないのか立ち上がる。

 

「……何のつもりだ?」

 

「まだ、終わってなんかいませんよ!」

 

「えぇ……」

 

「あなたなんかには絶対に負けない」

 

そう言うが四人は直感していた。今のまま戦っても勝ち目など無いに等しいのだと。何しろ自分達の動きは読まれている上に他のプリキュアの技までコピーしているのだ。こんな敵が弱いわけがない。

 

「……三人共、一旦退いて」

 

そう言ったのはミルキィローズだ。しかし、ウィングは納得しない様子である。

 

「……どうしてですか!まだボク達はやれますよ」

 

「……今はアイツとまともにやり合うのは厳しいわ」

 

「そうね……悔しいけどこのままじゃ勝てない」

 

それを聞いてウィングは悔しそうに拳を握りしめる。するとミルキィローズがキラーの前に立ち塞がった。

 

「ここは私が引き受けるから三人はそこにいるエルちゃんを連れて逃げて……必ず私も後から追いかけるから」

 

その言葉にウィングは悔しそうにしつつ撤退のために構える。そして、それを見たキラーは逃がすまいと範囲攻撃を仕掛ける。

 

「プリキュア!マーチシュート!」

 

するとキラーの周囲に無数の風のエネルギーボールが生成されるとそれを連続で蹴り飛ばす。それによって雨のように降り注ぐエネルギーボールが四人を襲う。

 

「「「「うわぁああああ!!」」」」

 

「みんなぁー!!」

 

エルは叫ぶがその後には四人が倒れ込んでいる様子が映った。……強すぎる。四人がかりでも勝てない。それ程の実力差が彼女との間にはあった。

 

「………こんなものか」

 

キラーは半ば失望したような顔つきに変わると手を翳す。するとエネルギーが高まり始めた。

 

「う……くぅ……」

 

ウィング、アンジュ、フェリーチェは立とうとするが、体が痛んで立つことができない。このままではやられてしまう。その時だった。

 

「はあっ!」

 

咄嗟にミルキィローズが再度地面を陥没させるとその威力と衝撃波で他の三人のプリキュアを吹き飛ばす。加えてキラーを下がらせるとミルキィローズは決死の覚悟で叫んだ。

 

「行きなさい!私が止めている今のうちに!」

 

「ですが……」

 

「早くしなさい!」

 

ミルキィローズはそのままキラーへと組み付くとそのタイミングでフェリーチェ、アンジュは頷きエルを連れて撤退。ウィングも苦しい顔になりつつ逃げる事になる。

 

「ふん。わからないな。先程お前を逃した奴らと同じことをして何になる。お前らでは結局僕には勝てないのに」

 

「勝てるとか勝てないとか関係ない。私は今やるべき事をやるだけよ!」

 

「……そうか。ではそれを終わらせてやる。お前の仲間の力でな」

 

するとキラーはミルキィローズを掴むと投げ飛ばす。そして両手に蝶のエネルギーを纏わせると合体させ、巨大な蝶型のエネルギーを前に召喚して突撃する。

 

「プリキュア!シューティング・スター!」

 

「それはドリームの……くっ、私だってただではやらせない!」

 

するとミルキィローズは手にミルキィミラーと呼ばれるリング状のパーツが付いたアイテムを持つ。

 

「邪悪な力を包み込む、煌くバラを咲かせましょう!ミルキィローズ・メタルブリザード!」

 

それはミルキィローズ単体で放てる彼女の持つ最強の必殺技。青いバラを召喚してからそれを一度分解。金属のような煌きを帯びた青い花びらが飛んでいく。

 

「はぁあああ!」

 

「無駄だ」

 

二つの技はぶつかると拮抗するがそれでもミルキィローズの技は打ち破られてしまいミルキィローズへとシューティング・スターが命中。それと同時にミルキィローズは吹き飛ばされて叩きつけられるとそのまま青い粒子となって消えていく。そして、そのエネルギーをキラーは吸収してしまった。

 

「……これで最強にまた一歩近づけたな。さてと、逃した奴等をどうするか……いや、奴等では僕に勝てないのは明白。となると、やはり次は僕に一番力を使わせたキュアサンライズを探すとしよう」

 

そう言ってその場からキラーは姿を消していく。その頃、冬の大地では四人のプリキュアの変身者が顔を揃えていた。

 

一人はキュアバタフライこと聖あげは。一人は金髪に紫の瞳をした大人びた女性でキュアアースこと風鈴アスミ。一人は青緑色の髪をボブカットにし。右側にピンクと水色のメッシュが入っている少女、キュアミルキーこと羽衣ララ。一人は腰まである紫色のウェーブヘアで、すらっとしていて大人びているキュアマカロンこと琴爪ゆかりだ。その中のララとゆかりが言い争っていた。

 

「どうして一緒に行動しようとしないル!バラバラになったら余計キラーの思う壺ル!」

 

「この場の全員がプリキュアなのはわかったわ。けど、だからと言って一緒に行動しなければならない道理は無いわ」

 

「キラーの強さは半端じゃ無いル!バラバラじゃあ勝てないル!」

 

ララが必死にゆかりを説得しようと躍起になるが、ゆかりは聞こうともしない。この辺りはキラーと一度でも交戦したかしてないかの差だろう。

 

「まぁまぁ、ゆかりんはララルンよりも年上だから話ぐらいは聞いてあげないと」

 

「子供扱いしないで欲しいル。これでも私の星では大人扱いル」

 

「疲れる子ね。良いわ。そっちは三人で行動。私は一人でも構わないわ」

 

そう言ってゆかりは行ってしまう。それをララは止めようとするがそれでもゆかりの姿は遠のくばかりだ。

 

「勝手にするル!」

 

それから三人揃って歩いているとララは後悔の顔つきになっていた。更に吹き荒れる吹雪がそれに拍車をかける。

 

「寒っ……アスミさん大丈夫なんですか?」

 

「はい、私は平気ですよ。……ただ、心配なのは……」

 

アスミはチラリとララの方を向くとあげはも心配そうにする。するとアスミが連れていた子犬の妖精、ラテがいきなり雪道を引き返していく。

 

「ワン!」

 

「ラテ!?」

 

「何々、一体どこに行くの!?」

 

三人がラテを追いかけていくとその先にあったのは大きめな洞窟であり、中に入るとそこにはゆかりが寒さを凌ぐために一人うずくまっていた。

 

「ゆかり!見つけたル……」

 

「ご無事でしたか」

 

「………余計なお世話よ」

 

そう言うゆかりだが内心は心細かったのか嬉しい気持ちもある。そして、あげははある事を思い出す。

 

「あ、そうだ。さっきここに来るまでに良い所見つけたんだ。ゆかりんも行く?」

 

ゆかりはそれに賛成するとそれから四人はその場所に移動。そこにあったのは冬の大地の中で場違いとも思えるような足湯がそこに都合よく存在した。

 

「暖かいル!」

 

「まさかこんな所に都合良く足湯があるなんてね」

 

「はい、私のいた街にも似たような足湯はありますが」

 

四人は足湯に浸かって心も体も癒す事にしており、そんな中ララはゆかりへと謝る。

 

「……ごめんル。私、自分のことばかり考えてたル」

 

「そうね。……でも、心配してくれてありがとう」

 

するとララは頭から生えているコードのような物の先端に球体が付いている何かを差し出す。

 

「これは?」

 

「ララルンの星の挨拶みたいな物らしいよ」

 

「ふふっ、面白いわね」

 

それにゆかりは指を合わせると二人は仲直り。それを見た二人もホッとした顔つきに変わる。するとゆかりは何かを見つけたような顔に変わると立ち上がった。

 

「ッ!?」

 

「ゆかり?」

 

「どうしたの?」

 

「……アレは」

 

ゆかりはジッとそれを見つめるが、それが自分の思っている物である保証は無い。そのために確信までは持てなかった。

 

「………あさひ、大丈夫かな」

 

あげはは不安そうに小声で呟く。あげはも表面上は取り繕ってはいるものの、内心では周りに気を使わせまいと考えていた。

 

「あげは。無理しないでください」

 

「あはは……ごめん。でも……ちょっと無理かも……」

 

あげははあさひがいない事でどうしても不安な気持ちが拭えない。あげははそれほどまでにあさひの事を想っているのだ。

 

「心細いのはお互い様です。今はキラーから逃れつつあの城を目指す事を頑張りましょう」

 

「ありがと……」

 

その頃、あさひ達四人は城へと移動を続けていた。そんな中、四人の前にも怪物達が出現する。

 

「ここで足止めか……」

 

「やるしか無いわね!」

 

「えぇ!」

 

四人はそれぞれ変身のためにアイテムを取り出す。あさひはスカイミラージュを、みらいとリコは手を繋いでモフルンにリンクルストーンを付け、いおなはフォーチュンピアノにプリカードをセットする。

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!サンライズ!」

 

「「キュアップ・ラパパ!ダイヤ!ミラクル・マジカル・ジュエリーレ!」」

 

「プリキュア!きらりんスターシンフォニー!」

 

三人はそれぞれ光に包まれるとその姿を変え、変身を完了していく。

 

「夜明けにひろがる眩い朝日!キュアサンライズ!」

 

「二人の奇跡!キュアミラクル!」

 

「二人の魔法!キュアマジカル!」

 

「夜空に煌めく希望の星!キュアフォーチュン!」

 

あさひはキュアサンライズ、みらいはキュアミラクルになる中、リコは紫を基調とした肩出しのドレスに頭にはトンガリ帽子の髪飾り、更に胸にはダイヤの装飾が付いたキュアマジカルに。いおなは紫の髪のポニーテールに腰にはリボンのような小さな羽、更に胸にはネクタイの付いた黒と白を基調としたドレスを着たキュアフォーチュンになった。

 

「行くよ、皆!」

 

サンライズのその掛け声と共に四人は怪物へと立ち向かうべく飛び出す事になる。




また次回もお楽しみに。


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キラーの猛攻 運命の出会い

サンライズ達が変身して怪物達がそれを迎え撃つ。四人は即席のチームではあったが、サンライズとフォーチュンは単独でも強いのに加えてミラクルとマジカルは元々連携ができているので怪物達を圧倒していく。

 

「「はあっ!」」

 

ミラクルとマジカルは同時に拳を繰り出して怪物を吹き飛ばす。それに合わせるようにサンライズが炎弾で追撃を仕掛けた。

 

「だあっ!」

 

そのまま炎を体に纏ったまま突進して怪物達を焼き尽くす。だが、やはり浄化までには至らないと言ったところで怪物達はまだまだ健在である。

 

「キリが無いわね……」

 

「どうする?」

 

「こうなったら!スタイルチェンジ!グリフォン!」

 

サンライズはその姿をグリフォンスタイルに変化させるとパワーと出力で怪物達を倒そうと試みた。

 

「あなたも姿が変えられるのね」

 

「という事は三人も?」

 

サンライズの言葉に三人共頷く。サンライズは大剣を振るって敵を薙ぎ払い、吹き飛ばす。怪物達もそのパワーの前には手も足も出ない。しかし、それでも倒すまでには至らなかった。すると突如として漆黒のエネルギー弾が四人の前に着弾すると爆発する。

 

「「「「うわぁああ!!」」」」

 

四人はその威力を前に叩きつけられるとそこにキラーが降り立った。サンライズが目的のキラーは戦いの騒ぎを聞きつけてやってきたらしい。

 

「く……」

 

「ここに来てキラーが相手だなんて……」

 

「お前、何のためにこんな……」

 

「僕はこの世界で一番強い。プリキュアを倒すごとに僕の力は高まっていく。だが、それと同時に有象無象のプリキュアでは僕の相手にすらならなくなる。だから早いうちに良い勝負ができそうな奴と戦っているわけだ」

 

キラーの言葉を聞いているうちにサンライズの胸に怒りの気持ちが込み上げていく。そんな自分の快楽のために仲間を、人を殺しているのだと思うとどうしても気持ちが抑えられなかった。

 

「黙れよ……」

 

「「「え?」」」

 

「………」

 

「黙れぇえ!スタイルチェンジ!ヤタガラス!」

 

サンライズはソウヤとの絆の姿、ヤタガラススタイルとなると手に漆黒の槍を持って突撃する。カゲロウがいない今、一番彼女に勝てる可能性を秘めているのはこれだと判断したからである。

 

「………プリキュア!ロゼッタリフレクション!」

 

すると目の前に四葉のクローバー型の盾が出現。サンライズの一撃を防御する。その直後にキラーは反撃を放つ。

 

「プリキュア!ヒーリング・ストリーム!」

 

その瞬間、激流が発生するとサンライズへと命中。彼を一撃で吹っ飛ばすと近くの岩に叩きつけさせる。

 

「がはっ!」

 

サンライズが反撃するために前を見るとそこには既にキラーの姿はおらず、もう既に自分の目の前にまで来ていた。

 

「え……」

 

「ルミナス・ハーティエル・アンクション!」

 

その瞬間、サンライズの動きが強制的に停止させれてしまう。この技はシャイニールミナスの技であり、味方には能力アップ。敵には動きを停止させる効果を持つ……が、基本的にキラー側には強化する仲間がいないので動きを停止する技として運用している。

 

「動け……ない……」

 

「ときめきなさい。エースショット!ばきゅーん!」

 

キラーのその言葉と共にサンライズの体に特大の衝撃が走るとサンライズはボロボロの姿で岩へとめり込む。ここでようやく時間停止が解けるがもう遅すぎた。

 

「う……くぅ……」

 

サンライズの体は限界が近く、立ち上がる気力も殆ど残っていない。ミラクル達は何とかサンライズを助けようとするものの、怪物に邪魔をされて助けに行けなかった。

 

「……お前、何故手を抜く?エビリティサンライズを使えば僕相手に良い勝負ができただろう?」

 

「お生憎様……今は変身できなくてね……」

 

それを聞いたキラーは一度溜息を吐くとつまらなさそうな顔へと変わる。

 

「……じゃあ君がエビリティサンライズになれるようになるまでの間、他のプリキュアを潰して待ってるよ」

 

そう言った途端、キラーのターゲットがフォーチュンへと向く。フォーチュンは自分がターゲットにされたと思うとすぐに防御態勢に入るがそれさえも関係無いとばかりに一撃で地面に叩きつけられた。

 

「あぐっ!?」

 

「弱い。やっぱりこの程度?ラブリー!パンチングパンチ!」

 

その瞬間、キュアラブリーの技の特大のパンチがフォーチュンを襲おうとする。その直後、いきなり漆黒の影が横から迫ると不意打ちとは言えキラーを吹き飛ばす。

 

「ッ……」

 

「あれは……」

 

「サンライズと顔が……全く同じ……?」

 

「もしかしてアイツも敵じゃ……」

 

しかし、今彼はキラーを吹き飛ばした所だ。少なくとも今この時は味方と言えるだろう。

 

「あ?サンライズ、何コイツ相手に無様に負けてるんだよ」

 

「来るのが遅すぎなんだよ……トワイライト!」

 

そこにいたのはカゲロウが変身したキュアトワイライトである。サンライズは何とか立ち上がるとトワイライトの元に行く。それを見たキラーはニヤリと笑うと言葉を発する。

 

「……ふふっ。なるほど、お前か。エビリティサンライズになるための鍵は。……面白い。ではこうしよう」

 

キラーは五人のプリキュアへとある提案をする事にした。その提案と言うのが……。

 

「お前らはあの城を目指しているんだろ?僕はあの城の主だ。もしこの僕を倒したければ多くの仲間と共にあの城にまで来い。そこでお前らを纏めて始末してやる」

 

「なっ!?」

 

つまりはこの場は見逃すと彼女は言い放ったのだ。するとキラーが指を鳴らす。その瞬間、襲っていた怪物達は突如として撤退。城の方向へと戻っていく。

 

「お前らはこの世界に散らばる仲間を集めて僕にかかって来い。そうすれば届くかもしれないぞ」

 

「そんな事言って俺達が素直にお前を帰すとでも……」

 

「じゃあここで戦って全滅する?僕はそれでも構わないが」

 

その言葉に全員が苦しい顔をする。そう、今のままでは負けが濃厚な状態なのだ。それはトワイライトがいても変わらないだろう。しかし、各地のプリキュア達が揃えば勝てるかもしれない。それは紛れもない事実だ。

 

「……約束は守れよ」

 

「勿論だ」

 

そう言ってキラーは撤退。その場は何とか収められた。サンライズ達は変身を解くとあさひにカゲロウが融合。元の一人に戻る。

 

「大丈夫?あさひ……」

 

みらい達があさひを心配して駆け寄るがあさひは悔しそうにして俯いていた。あんなに勝つつもりで挑んでいたのに結局は彼女に見逃された。自分の弱さを責めているのだ。

 

「俺は、俺達は見逃された……。あんな奴に……勝てるのか?」

 

あさひが自問自答する中、リコといおなはあさひへと声をかける。

 

「それでも、戦うしか無いわよ」

 

「男ならそんな風にメソメソしないの!」

 

あさひはその言葉に小さく頷く。四人はそれからまた城を目指す事になり、歩き始めた。その少し前、腹が減ったソラ、ゆい、まなつの三人は腹ごしらえのために食料を調達している。

 

「うぉおおりゃあああ!!」

 

まずはまなつが高い木の上にある木の実を直接木を登って掴み取った。

 

「取ったよ!」

 

それに二人とコメコメは歓喜の声を上げた。そして、次はゆいの番だ。ゆいは崖の上にあった果実を崖をよじ登って手にする。

 

「やぁあああ!取ったよ!」

 

またもや歓喜の声が響く中、次はソラの出番となり、茂みの向こうにある木の実を取るために茂みへと突っ込む。

 

「私が行ってきます!」

 

「「頑張って!ソラ……ってえぇえ!?」」

 

だが、ソラは運悪く茂みの中にいた水牛のような生物に飛び乗ってしまうと怒らせ、茂みから飛び出す。そのため、ゆい、まなつ、コメコメは必死に水牛から逃げる羽目に……。ちなみにソラは振り落とされないように水牛にしがみついていたが水牛が岩に激突した衝撃で振り落とされてしまう。

 

「ドンマイ!ソラちゃん!」

 

「は、はいぃ……」

 

するとゆいとまなつは明らかに毒キノコと思わしきキノコを見つけると目をキラキラさせる。

 

「「これ、美味しそう!!」」

 

「それは何となくダメだと思います!」

 

それから暫くして三人は休憩と共に腹ごしらえをする事に。三人の真ん中に木の実等を並べて食し始める。

 

「デリシャスマイル〜!」

 

ゆいは木の実をかじるとそんな声を上げる。それはゆいが美味しい物を食べる時に決まっていう台詞だ。

 

「でりしゃすまいる?」

 

「うん。ご飯は笑顔だよ!」

 

「良い言葉ですね……ですが、こんな事している場合なのでしょうか……?」

 

ソラはそう言って俯く。彼女としては自分の仲間達が心配になっているようなのだ。

 

「……ソラちゃん」

 

「私達がここにいると言うことは他の皆さんもきっとこの近くにいるかもしれない。そう思うとのんびりとご飯を食べる時なのかなって……」

 

ソラがそう言う中、二人は顔を見合わせてからソラの言葉に返す。

 

「それでもご飯を食べないと力が出ないし歩けないよ」

 

「私だってトロピカル部の皆が心配だけど、今一番やるべき事をやる。だから全力で腹ごしらえしてるの!」

 

「それにホラ、おばあちゃんが言ってたの。人の力も出汁も合わせるのが味噌だって。私達で協力すればきっと探し出せるから!」

 

その言葉にソラは励まされると暗くなっていたソラの顔が明るく変わる。

 

「そうですよね……。お二人とも、励ましていただきありがとうございました!」

 

ソラがそう言うと二人共ニッコリと笑う。すると突如として何かの音がして三人が空を見上げるとそこに先程三人を襲ってきた怪物が飛んでいた。

 

「あれは……」

 

「見て!何か様子がおかしい……」

 

「あれ!!」

 

その瞬間、白いエネルギービームが怪物へと飛んでいくと怪物は撃墜されて落ちていく。三人がその方向を見るとそこには一人の少女が飛び出しており、怪物へと飛びつくと連続で拳を叩き込む。それからオーバーヘッドキックで怪物を地面へと打ち付けさせる。

 

「何!?」

 

「あの子、強い!」

 

それから少女は指を突き出すとピースサインの間にエネルギーが高められ、それがビームとして怪物へと命中。怪物は粒子となって消えていくのだった。

 

それから三人がその少女の元へと走っていくと少女は小さく何かを呟いている。

 

「……こんな物じゃ無い。彼女達の強さはもっと……」

 

「あの!」

 

「あなたもプリキュアなの!!」

 

少女がそちらを振り向くと驚いたような顔を浮かべる。そして、また小さく呟いた。

 

「……どうして。あの時確か……」

 

「……はい?」

 

「いや、何でも無い。僕はシュプリーム」

 

その少女の姿は水色寄りの淡い緑と白を基調としたドレス。髪型はツーサイドアップとは別にウサミミのように束ね、髪色は水色寄りの緑だが毛先がマゼンタ。側頭部から白い耳が出ており、人間の耳は確認できなかった。服装はベアトップのワンピースにかぼちゃパンツ、腕にアームカバー。脚に白いタイツとショートブーツを履いている。胸元は虹色の帯で囲われており全体的にうさぎの意匠が取り入れられていた。更なうさぎ型の髪留め、アームカバーやスカート、手甲のマゼンタのペイント等様々な箇所にうさぎの要素が取り入れられている。

 

これがプリキュア達とシュプリームによる運命の出会いである事をこの時のソラ達はまだ知らない。




また次回もお楽しみに。


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深まる絆 欠けた記憶

シュプリームと出会ったソラ達三人の質問にシュプリームは頷くと答える。

 

「僕もプリキュアだよ」

 

「キュアシュプリームコメ!」

 

どうやら彼女もプリキュアらしい。そしてシュプリームは変身を解くと淡い緑色と紫の混じったショートヘアーで、耳元辺りには白い髪の束が手のように伸びた髪をしていた。

 

「この姿の僕はプリムと呼んで欲しい」

 

プリムのその言葉に三人は嬉しそうに笑うと手を伸ばす。それを見たプリムは首を傾げる。

 

「……これは?」

 

「えっと、よろしくねの挨拶だけど……」

 

「そっか。じゃあ、よろしく」

 

そう言ってプリムは三人とそれぞれ握手をした。それから四人は行動を共にする事になる。その頃、ましろ達の方では三人がプリキュアから変身解除しており、それぞれましろ、ローラ、そして菓彩あまねの姿で灼熱の砂漠を歩いていた。ローラは人魚ではあるが、人間の姿にもなれるので尾ビレの代わりに足に変えている。

 

「暑いな……」

 

「何でこんな砂漠を歩かないとならないわけ?」

 

「プーカ、大丈夫?」

 

「……プカ」

 

ましろの問いかけに先程の妖精が返す。それにローラが疑問を抱く事になる。

 

「プーカ?」

 

「そう、プカプカ言うからプーカ」

 

どうやら先程の妖精に付けた仮の名前らしい。プーカもかなり疲れた様子で力無く歩いていた。

 

「そうだプーカ、私が背負ってあげようか?」

 

そう言ってましろがプーカへと手を差し伸べる。しかしプーカはそれを拒否するように手を引っ込めると嫌がってしまう。

 

「あれ……」

 

「触られるのが苦手らしいな」

 

「というか、そろそろ水が飲みたいわね……」

 

「仕方ないだろう。ここは砂漠なんだから」

 

「それはわかってるわよ」

 

三人が話しながら歩いていると目線の先にオアシスが見つかった。それを見て三人は歓喜の声と共にオアシスへと入るとようやく水分補給をする。

 

「ぷはあっ!やっぱりオアシス最高!」

 

「そうだな」

 

「ね、本当に……」

 

「生きてるって感じ!」

 

すると三人とは別の聞き覚えのない声がすると三人がその方向を向く。そこにいたのはピンクブラウンのボブヘアーをした少女で髪には二本のヘアピンをしている。

 

「あれ?」

 

「………あ」

 

それから三人は少女と一緒になると話をする事になった。少女の名は花寺のどか。彼女もプリキュアである。

 

「ごめんね、急に大声出しちゃって」

 

「ううん。大丈夫だよ」

 

「それにしても大変ね。パートナーの妖精とはぐれるなんて……」

 

「うん。大丈夫かな、ラビリン……」

 

ラビリンとはのどかのパートナーでのどかはラビリンがいないとプリキュアになれないために現状では戦う事ができない。そんなのどかにましろが優しく話しかける。

 

「きっと大丈夫だよ!ラビリンって子もきっとのどかちゃんを探してるから」

 

「うん、ありがとう」

 

「それで、話している所悪いんだけど、この子はどうするの?」

 

そう言ってローラがプーカを指差す。そのプーカはまだ何かに怖がっている様子であった。

 

「ここに置いていくのも可哀想だし旅は道連れだ。一緒に行こう。勿論、嫌なら無理強いはしないが」

 

そう言ってプーカの方を見るとプーカは一緒に行くと言わんばかりにブンブンと頭を振る。

 

「決まりだね!」

 

それから四人は一息ついてから移動する事になった。その頃、ツバサ達は空の上を花海ことはが魔法の杖にさあやとプニバードのツバサの乗せて、尚且つエルはさあやが抱っこする形で移動している。

 

「空の上を飛んでる……」

 

「私、魔法って初めて見るわ!」

 

「ひとまずこれならキラーからも距離を取れますね」

 

「……でも、私達ではキラーに勝てなかった……。もっと仲間を探さないと」

 

「そうだね」

 

それから三人とエルは仲間のプリキュアを探しつつ城を目指す。すると何かの音が聞こえてきた。

 

「この音……」

 

「まさか、近くに他のプリキュアが!?」

 

それからその音の方向へと向かっていく。その先にいたのは怪物とピンク色のメッシュが入った金髪のロングヘアにピンクのドレスを纏い、胸部と腰部には赤いリボンが付いている。また、白い手袋をしており、その姿はキュアスカーレット同様にお姫様のようだった。

 

「はあっ!」

 

少女の名はキュアフローラ。フローラは怪物相手に立ち向かうと華麗な動きで翻弄しつつ圧倒。怪物も負けじと反撃するが、軽くいなされてから蹴りを叩きつけられる。

 

「があっ!」

 

怪物はエネルギー砲をチャージし始めるとフローラへと放とうとしたその時、フローラも負けじと技を発動させる。

 

「舞え!バラよ!プリキュア・ローズ・トルビヨン!」

 

フローラがドレスの形をしたキー……ドレスアップキーを手にしたクリスタルプリンセスロッドと呼ばれるアイテムに装填。そのままバラの力を模したエネルギーを放出する。

 

技の撃ち合いはフローラに軍配が上がり、ダメージを負った怪物は怯むとすかさずフローラは距離を詰めて連続でパンチを決めた。怪物は反撃のために噛みつこうと口を開けるがそれはフローラにすかさず対処される。

 

「モードエレガント!」

 

するとフローラのスカートが更にボリュームを増した物に変わり、激しい動きはまず不可能と言えるほどにまで伸びる。その瞬間、フローラが両手を前に突き出す。

 

「舞え、花よ!プリキュア!フローラル・トルビヨン!」

 

フローラの叫びと共に無数の花びらが螺旋状に飛んでいき、怪物の口の中に命中して爆発。怪物は勝てないと踏んで撤退していった。

 

「ごきげんよう!」

 

するとそれを見ていたツバサ達三人の中のツバサがフローラの姿を見てハッと思いつくとフローラへと話しかける。

 

「プリンセス!」

 

「……え?」

 

「あなたはもしかしてこの世界のプリンセスですか?」

 

その言葉にフローラは若干戸惑いつつも嬉しそうになるが、実際は違うので否定の言葉を口にした。

 

「すみませんでした!ボクの勘違いで……」

 

ツバサはフローラへと謝る。しかし、フローラとしては悪い気持ちにはなってないようで……。

 

「気にしないで。私としてもプリンセスって思われたのは嬉しかったから」

 

「……え?」

 

「私、将来はプリンセスを目指してるから」

 

こうして、ツバサのチームの中にまた一人メンバーが加わる事になる。少し時間が経ってアイ達のチームでは四人で雑談をしつつジャングルを進んでいた。

 

「中々深いジャングルね」

 

「……出口が見つかると良いけど……」

 

「プリキュアになって時々方向を確認しているから良いものの、まだかなり距離があるわよ」

 

「……でもさ、何だか嫌な予感がするんだよね」

 

アイがそう言うと他の三人も頷く。彼女達としても城に何かあるのは感じ取っていたが、それが良いものだとは思えなかった。

 

「でも、確かキラーだっけ。あの化け物みたいな強さを持つ奴相手に私達だけで勝てるかな……」

 

「弱気になったらダメ。それに、他の皆も向かってきてると思うから大丈夫よ」

 

それから四人が更に進むと何故かジャングルの中にも関わらず、広い空間に出た。そこはまるで本棚に囲まれたような地形で中央には大きな家のような場所がある。

 

「どうして……こんな所に家が?」

 

「あれ?でも何だかふしぎ図書館に似てる……」

 

ふしぎ図書館とは、やよいとその仲間達がプリキュアの活動をする上で秘密基地として使っていた場所なのだ。

 

「って事は構造も一緒だったりしないかな」

 

それから四人が一度念の為に家の入り口をノックしてから入るとそこは予想通り全く同じような構造になっていた。

 

「良かった。構造も殆ど同じだね」

 

「なるほど、中はこんな感じになってるのね」

 

それから四人は夜も近いために一旦この家で一泊する事になる。そして、各地の仲間達もそれぞれ夜に備えての準備を始める。

 

「……そういえば、アイちゃん。アイちゃんの友達ってどんな人達なの?」

 

「私の友達……優しい人達だよ。……元々私は洗脳されてたはいえ、皆の敵だった」

 

それを聞いてトワとエレンが反応する。二人も元々はプリキュアの敵であったが改心してプリキュアになった者だからだ。

 

「私が洗脳されていた時も諦めずに助けようとしてくれて……仲間になってからもこんな私を気遣ってくれる。そんな優しい友達」

 

「そっか」

 

「私も皆に救われた側の人よ」

 

「ええ。闇に染まっていた私を救ってくれたわ」

 

「やよいちゃんは?」

 

「私の友達も皆良い人達だよ。中でもみゆきちゃんはウルトラハッピーを探してるんだって」

 

「ウルトラ……ハッピー?」

 

アイの聞き返しにやよいは頷く。幸せだと感じるとよくその言葉をみゆきは使うらしい。

 

「私もいつか、感じてみたいな……」

 

「きっと感じられるよ」

 

その頃、シュプリームことプリムと合流したソラ達は近くにあった食材等を掻き集めて四人で鍋を食べていた。

 

「「「デリシャスマイル〜!!」」」

 

三人が幸せそうにそう言う中、プリムは一人遠慮がちに食べている。そんな中、三人が他愛もない会話をしているとプリムが質問した。

 

「そういえば、君達はなんでプリキュアになったの?」

 

そう聞かれて三人はそれぞれプリムへとその経緯を話していく。

 

「私は今一番やりたい事、大事な事を思い浮かべて変身できたね!」

 

「私はブンドル団からレシピッピを守るために変身したなぁ」

 

「私は元々ヒーローを目指していて……仲間達から色んな事を教わりながらヒーローの心得を日々書き足してます……」

 

そう言ってソラはヒーロー手帳を取り出すと開く。そして、そのページをギュッと握りしめた。そこかららソラは仲間が、友達がいなくてとても心細いのだということが伝わる。

 

「……ましろさん」

 

「きっと会えるよ」

 

「え……」

 

「そのために私達は頑張ってるんだから!」

 

二人からそう励まされてソラは笑顔になった。そんな中プリムはそれを見つつ一人何かを考えている様子で、そこにコメコメがやってくる。

 

「プリム、プリムもおかわりは欲しいコメ?」

 

しかし、プリムはそんなコメコメを横目で睨むと冷たく言葉を返した。

 

「……要らない」

 

「コメ……?」

 

同時刻、あさひ達の方でも話をしているとあさひは心の中で胸騒ぎがしていた。

 

「あさひ君、どうしたの?」

 

「……何かがおかしい」

 

「……え?」

 

「何よ、言ってみなさい」

 

「キラーの奴、プリキュアを倒して強くなるならさっさと各個撃破してしまえば良いのに何でわざわざ集めてる?」

 

あさひのその言葉に三人は考える。キラーの強さがプリキュアを倒した数ならば確かにバラバラな内に倒す方が良いはずだ。だが、わざわざ今回は集める方向に動いている。まるで何者かに仕組まれているように。

 

「……それに、記憶の中で一つ大事な事が抜け落ちてる。それが何かがわからないのが不気味でしかたない……」

 

「そうね……」

 

「仲間の事や夢とかは覚えてるのにそれ以外の中で何かが抜けてる気がするわ」

 

「……もしかすると俺達がここで目覚めたのに関係しているのかも」

 

あさひはそう言いつつ夜の空を見上げるのであった。そしてそれから暫くして、あさひ達は眠りにつく事になる。




また次回もお楽しみに。


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集結したプリキュア達 再びの分断

夜が明けた翌日、今現在ましろ達四人は砂漠の真ん中を走る電車を走って追いかけていた。

 

「待ってぇ!」

 

「私達がいるんだから止まりなさいよ!」

 

「とは言ってもここには駅が無いから止まらないのも仕方ないのでは……」

 

「そんな事言ってる場合じゃ無いよ!」

 

四人は何としてでも電車に乗るために走る。そして、ローラ、あまね、ましろの三人とプーカが次々に乗り込む中一番運動が苦手なのどかがどうしても追いつけない。

 

「のどかちゃん!頑張って!」

 

「あと少しだ!」

 

「のどか、掴まりなさい!」

 

そう言ってローラが人魚の姿になると出入り口から乗り出して尾ビレをのどかのいる方へと伸ばす。しかし、それでもギリギリ届かない。しかも、元々体力の無いためにのどかの体力ももうすぐ限界だ。

 

「のどかちゃん!」

 

すると突如として電車の中から何か小さな妖精が飛び出すとのどかの方へと向かっていく。

 

「のどかぁあ!!」

 

そして、ローラの尾ビレとのどかの手を繋ぐように間に入ると何とかのどかを電車に乗せる事に成功。その妖精はピンクの体色をした小さなうさぎであった。

 

「ラビリン!良かったぁ……」

 

「のどか!やっと会えたラビ!」

 

妖精の名はラビリン。のどかが探していた彼女のパートナーである。二人は再会すると喜びを分かち合った。

 

「その子がラビリンなんだね」

 

「うん!」

 

「あれ?でも何だかその子とラビリンの声が似てるような気がするラビ」

 

「え?気のせいじゃない?あはは……」

 

ひとまず四人と妖精達は一息つけた事に安堵する。そんな中、プーカはのどかとラビリンを見ているうちに何かを思い出したのかその顔つきが怯え始めた。

 

「あれ?プーカ、どうしたの?」

 

「どこか具合が悪いのか?」

 

するとプーカの右手に青白いエネルギーが宿っていく。それを見たプーカはまるでその光を怖がるように手を隠そうとするがもう片方の手にも同じ光が宿ってしまった。

 

「プカ!?」

 

「え……」

 

全員の視線がプーカに向くとプーカはそれにビクリと体を震わせて後ずさる。そして、その拍子に片手で電車の壁に触れるとその瞬間電車の壁が粉々に粉砕。それを見た四人は唖然とする。

 

「「「「えぇ!?」」」」

 

「プカ!?」

 

更にプーカはそのままおっかなびっくりすると今度は逆側に触れてしまいまた壁を粉砕。そのタイミングで連結部にも干渉してしまったのか前方車両から切り離されてしまう。

 

そしてトドメと言わんばかりバランスを崩したプーカは両手で車両の床に触れると残っていた車両が粉々に消えてしまった。そのために四人は思い切り地面に落下してしまう。

 

「嘘だよね?」

 

「ハチャメチャにも程があるわね……」

 

「だから手を繋ぐのを嫌がったのか」

 

それからプーカの脳裏にある光景が浮かぶとプーカは恐怖に包まれる。そして、そのまま逃げ出そうとしたその時だった。

 

「……大丈夫だよ」

 

「……プカ?」

 

声をかけたのはましろだった。彼女はプーカを気遣うように手を差し伸べるとプーカは戸惑う。何故自分を助けようとするのか。そう思っているのだ。

 

「ちょっとびっくりはしたけど、それでもあなたを見捨てるなんてできない。それに、私達はもう友達だから」

 

それを聞いてプーカは安心したのか手に光らせた何かの光は消えていく。そして、ましろ達は先へと進む事になるのであった。

 

それから数日の時が過ぎていく。プリキュア達は他愛もない話に花を咲かせつつ中央の城へと歩みを進めていった。ソラ達は野原を駆けながら。ましろ達は新たに見つけた電車に揺られながら。ツバサ達はことはの魔法で出現した風船で空を飛びながら。あげは達はゆかりが手懐けた動物に乗って移動しながら。アイ達はジャングルの中を絶叫しつつターザンで進みながら。そしてあさひ達はみらいとリコの魔法の箒に乗せてもらいながら。

 

「やっと街に着いたぁ……」

 

あさひ達四人が街に到着するとそこでは人々が普通に生活をしていた。しかし、その顔に笑顔は無く恐らくはキラーによって恐怖政治をされているのだと感じ取る。

 

「ひとまず情報収集をしよう」

 

「そうね。それが良いと思うわ」

 

「なら早速行くんだぜ、いおな」

 

「えぇ、ぐらさん」

 

四人は手分けして情報を集めていると幾つか分かった事があった。それは前にキラーの言ってた通り、キラーは街の中心にある城に拠点を構えている事。そして、街の人々はキラーに支配されて生活をしている事。更に街の人々は全く同じような事しか言わない事だ。

 

「うーん、できれば色んな情報が欲しかったけど……」

 

「でも、どうしてこんな機械みたいな同じ事を話す装置みたいになってるんだろ」

 

謎は深まるばかりである。更に言えばまだ欠けた記憶のカケラさえも見つかっていないのだ。要するにわからない事だらけなのである。

 

「……他の皆が来ていると良いんだけど……」

 

それからいおなが周りを見渡していると何かを見つけた。そして、三人に声をかける。

 

「皆!あれを!」

 

するとそこにいたのはあげは達のチームであった。それを見たあさひは目を見開く。

 

「あげは!」

 

そう言って駆け出したあさひ。それを見たあげははその顔を見て笑顔を浮かべるとあさひへと抱きついた。

 

「良かった……あさひ……無事でいてくれたんだ」

 

そして、それを見たアスミ、ゆかり、ララも合流。それから八人で情報共有する事になる。

 

「なるほど、取り敢えずプリキュアが八人に増えた事だし行く?それとももっと仲間を集める?」

 

「できるだけ仲間は欲しいわ。街で一旦態勢を整えましょう」

 

八人がそれぞれ話していると突如として街の一角から轟音が聞こえてきた。八人が慌ててその方に行くとそこには巨大な大穴が開いていたのだ。

 

「な、何これ……」

 

「やっば。落ちたらひとたまりも……」

 

「あさひ君!?あげはさん!?」

 

二人は聞き覚えある声を聞いて振り向くとそこにはソラ、ゆい、まなつの三人に加えてプリムが揃っていた。四人と合流した途端、あげははソラを抱きしめる。そのあまりの力の強さにソラは苦しそうにしたが。

 

「また仲間が増えたル」

 

「そういえば、この穴って何だ?」

 

「それなんですけど……」

 

ソラが事の顛末について話し始める。街に着いたソラ達四人は情報を集めがてら腹ごしらえしようと歩いていたらましろ達やアイ達のチームと合流。それから再会を喜ぼうとしたその時、突如として見た事のない妖精(プーカ)が怯えだすといきなり力を解放して地面を崩落させてしまったらしい。

 

「なるほど、ひとまず姉さん達も城に向かうとは言ったんだよね?」

 

「はい。なので城で合流する形になります」

 

「……なら、もうこれ以上は待ってられないわね」

 

「うん、城に行こう」

 

あさひ達十二人のプリキュアの変身者達が城に向かう中、地下へと落下したましろ達とアイ達は何とか運良く怪我せずに済んだ。

 

「あ、あれだけ高い場所から落ちれば怪我すると思ったけど……」

 

「何とか運良く助かったわね」

 

「……それにしてもその子、えっと……」

 

「プーカよ。あんた、メチャクチャな力を出したわね」

 

するとプーカは慌てた様子で逃げ出そうとする。また自分のせいで迷惑をかけてしまったと、そう思っていてもたってもいられないのだ。

 

「大丈夫、大丈夫だからね」

 

怖がるプーカの手はまた光っており、その手をのどかが優しく握る。その反対の手をやよいが握った。プーカは触ったら破壊してしまうと思い込んで暴れようとするが何も起きずに済んだ。

 

「そんな顔したらハッピーが逃げちゃうよ」

 

「怖かったんだよね……でも大丈夫」

 

「プカ……」

 

すると光も消えてプーカはのどか達を破壊せずに済んだことを安堵する。

 

「さ、皆が待ってるだろうし行こう!」

 

「はい!」

 

「そうね」

 

それから八人も移動を開始。とは言え、道は閉ざされているのであまねがプリキュアになって道を作る事になるが。

 

場面は戻って再び城の外。そこには入り口を開けて叫ぶソラ、ゆい、まなつがいた。

 

「キラーさん!」

 

「お邪魔しに来ました!」

 

「出てきてくださーい!」

 

それを見たララはギョッとした顔つきに変わる。まさかの正面突破する事になるとは思わないからだ。

 

「な、何で正面から行くル!」

 

「良いね!」

 

「嫌いじゃないわ」

 

「手っ取り早くて助かる」

 

すると城の中にアナウンスのような響く声が聞こえてきた。それは奥の部屋にいるキラーの声である。

 

『待ちくたびれたよ。それだけ僕を楽しませてくれるよね?……ま、僕を倒したければコイツらを倒して僕のいる部屋まで来てごらん』

 

その瞬間、城の中から大量の目が赤く光るとキラーの手下と思わしき怪物達が姿を現した。

 

「流石にそう簡単に言うことは聞いてくれないわね」

 

「やる気十分ってわけか」

 

「皆、行こう!」

 

その瞬間、あさひ達は光と共にプリキュアへと変身すると爆発から飛び出すように前に出て戦闘を開始。同時刻、ましろとアイのチームも城の一室に穴を開ける形で突入するとプリキュアへと変身して戦闘を開始する。プリキュア達は迫り来る敵を次々と倒しながら城を攻略していった。

 

「喰らえ!ひろがる!サンライズカリバー!」

 

サンライズカリバーによって立ちはだかる怪物を一瞬にして吹き飛ばすと更に出てきた怪物をフォーチュンやアースが撃退。一気に進んでいく。

 

「ひろがる!バタフライプレス!」

 

そして、プリズム達も先へ先へと走っていた。勿論敵は倒しつつである。

 

「実りのエレメント!」

 

「プリキュア!スカーレットプロミネンス!」

 

「プリキュア!オーシャンバブルシャワー!ビクトリー!」

 

そして、プリキュア達はとうとう最上階にあるキラーのいる部屋に到達するとその扉を開いた。するとそこにはキラーが玉座に座っており、拍手をしている。

 

「よく辿り着けたな。褒めてやる」

 

「キラー……」

 

その直後、最上階の壁の一部を粉砕してウィング、フェリーチェ、アンジュ、フローラの四人も合流した。

 

「正規ルートから来なかったら連中もいたみたいだけど……まぁ良い。ひとまずようこそ、王の間に」

 

「キラーさんよ、流石にこの人数相手に勝てるなんて冗談言わないよな?」

 

そう言うサンライズに対してキラーはニヤリと笑みを浮かべると指を鳴らす。その瞬間、突如として空間が歪み始めると6つの穴を生成。そして、プリキュア達は次々とその中にバラバラに吸い込まれていく。

 

「なっ!?」

 

サンライズ達プリキュアが気がつくとそこにはサンライズチーム、スカイチーム、プリズムチーム、ウィングチーム、バタフライチーム、ウェザーチームの6つに分断されて別々の空間に閉じ込められてしまう。

 

「……6人なら行けるな」

 

するとキラーの姿が6人に分身するとそれぞれがその空間の中に顕現。

 

 

「おいおい、何の冗談だよこれは……」

 

「見ての通り、僕を6人に増やした。使える能力の数は減るが……四人相手ならちょうど良いだろう?」

 

そう言うキラーの目はまるで戦いを楽しむ戦闘狂のようである。ここに四人のプリキュア対キラーの構図が6つできるのであった。




また次回もお楽しみに。


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キラーとの決戦 前半戦

各チーム四人ずつで6つに分断されてしまったプリキュア達。その各空間ごとにキラーが出現してプリキュア達に襲いかかる事になる。

 

スカイチームside

 

「まさかここで分断してくるなんて……」

 

「早くコイツを倒して皆と合流しないと!」

 

「皆、やろう!」

 

「………」

 

三人がそう言う中、シュプリームは一人無言を貫いていた。そして、キラーは目を光らせると手を翳す。

 

「プリキュア!ルージュバーニング!」

 

その瞬間、キラーの手から炎が飛び出すと四人は躱す。それから二人ずつに別れると両サイドから走っていき、攻撃を仕掛ける。

 

「やあっ!」

 

「はあっ!」

 

しかし、キラーはそれを簡単に受け止めてから投げ返してしまう。するとキラーは突如として地面へと拳を叩きつけた。

 

「だあっ!」

 

するといきなり地面が陥没して四人はいきなり空中へと放り出される。三人が驚く中、シュプリームはまだ平然としていた。

 

「ふん!」

 

その瞬間、キラーの姿が一瞬にして消えたかと思うとスカイの背後に回り込む。そして、その背中に一撃を入れた。

 

「うぐっ……」

 

「2000キロカロリーパンチ!」

 

攻撃が決まった直後で反撃できないタイミング。その瞬間にプレシャスからの重いパンチが繰り出される。

 

「プリキュア!エメラルドソーサー!」

 

その時、緑の盾が出てくるとプレシャスのパンチを受け止める。それによって攻撃は防がれるかと思えた。

 

「はあああっ!」

 

プレシャスが気合を込めるとそのパンチは盾を貫通。そのままキラーの顔面に一撃を入れた。

 

「なっ……」

 

「やっと一発決まった!」

 

それからキラーはすぐに立て直すと困惑する。つい数日前までなら一人でも圧倒できていたのだ。それなのに攻撃を受けた事を疑問を持つ。

 

「何故だ?分散した時に使えるプリキュアの技の数は減ったがそれでも戦闘力が落ちたわけではない……なのにどうして……」

 

すかさずサマーがキラーへと接近するとラッシュを繰り出す。そこにスカイも加わってキラの余裕を無くさせる。

 

「小賢しい!」

 

キラーが回し蹴りで二人を飛び退かせるが、そのタイミングで高く跳び上がったシュプリームからの蹴りがぶつけられるとキラーはたまらず吹き飛ばされた。

 

「シュプリーム強っ!」

 

「あのキラーを吹き飛ばしたコメ!」

 

「今なら!プリキュア!おてんとサマーストライク!」

 

サマーが巨大な太陽を生成するとそれを投げつける。それをキラーは片手で受け止めるがそれでも抑えきれない。

 

「ぐっ……まさか、威力が上がってる!?そんな事が……」

 

「はぁああ!」

 

そのまま技は爆発してキラーが怯むとその間にシュプリームが接近しつつ次々とラッシュを叩き込む。

 

「がふあっ……」

 

しかもシュプリームは激しく動きながらも涼しい顔つきで、息一つ乱さずに戦っているのだ。

 

「行くよ!プリキュア!プレシャストライアングル!」

 

プレシャスが正三角形型のエネルギーを放出するとキラーに命中してキラーは更に押し戻される。

 

「ぐ、こんな奴らに負けるかぁ!プリキュア!スパイラル・ハート・スプラッシュ!」

 

キラーが反撃の技を放つものの、それをプレシャスは一人で抑え込む。そして、サマーが叫ぶ。

 

「決めちゃって!スカイ!」

 

「はい!ヒーローガール!スカイパンチ!」

 

トドメはスカイのスカイパンチだ。プレシャスのエネルギーの中を通過しながら普段よりも更に威力が上乗せされたパンチがキラーの技を打ち破るとキラーに決まり、キラーの体はそれに耐えきれずに消失していく。

 

プリズムチームside

 

プリズム、フィナーレ、ラメール、グレースの四人とキラーの対決はプリズム、グレースが飛び道具の気弾やステッキからの浄化の光でキラーを攻めつつ、フィナーレとラメールの肉弾戦で連携する。

 

「はあっ!」

 

「葉っぱのエレメント!」

 

するとラメールの攻撃に合わせてグレースが葉っぱの形を模したエネルギー弾を弾幕のように張るとキラーの逃げ道を封鎖する。

 

「ふん。ならば!プリキュア!シルバーフォルテウェイブ!」

 

するとキラーは銀のエネルギー弾を生成し、ラメールをそれで迎え撃つ。ラメールはそれを喰らって吹き飛ばされるが、その隙を補うようにフィナーレが突撃して至近距離から技を放つ。

 

「プリキュア・フィナーレ・ブーケ!」

 

流石のキラーもこれには対応できずに数歩下がる。そこにグレースが接近して拳をぶつけた。

 

「なかなかやる。でも、僕にはそれでは勝てない」

 

その拳は防御されてしまっており、お返しとばかりに攻撃を喰らってしまう。

 

「はあっ!」

 

そこにプリズムが気弾を連射。キラーは対応するために構えるものの、その瞬間気弾はキラーを包囲するように留まり、一斉に発光してキラーの目を眩ませた。

 

「ぐっ!?」

 

「やあっ!」

 

「だあっ!」

 

そこに追撃とばかりにフィナーレとラメールが両側から同時に蹴りをぶつけて吹き飛ばす。更にプリズムからの気弾の連射がキラーを襲った。

 

「……調子に乗らない事だな。プリキュア・ミュージックロンド・スーパーカルテット!」

 

その瞬間、キラーがプリズムからの気弾を耐え切ると5つのリングが生成。そこから高出力のエネルギーが四人に向けて放たれる。それを見た四人のうち、グレースが手にしたステッキを翳すと攻撃を凌ごうとした。

 

「プニシールドラビ!」

 

その瞬間、グレースの前にピンクのバリアが張られる。しかし、それだけでは強度が足りないのか少しずつヒビが入っていく。

 

「くっ……」

 

「やっぱりラビリンだけじゃ防げないラビ!」

 

「ううん。まだだよ!」

 

するとプリズムが手に気弾を生成するとそれをプニシールドを支えるようにエネルギーとして注入。プニシールドが巨大化するとその一撃を防ぎ切った。

 

「なっ!?」

 

「今よ!プリキュア!オーシャンバブルシャワー!」

 

ラメールがその瞬間を待っていたとばかりに反撃の浄化技を発動させるとキラーへと一気に放出。その攻撃をキラーは受け止める。しかし、こちらもスカイ達と同様に威力が想定を上回っておりキラーはそのまま押し込まれていく。

 

「こんな技ごときに負ける訳が……」

 

「じゃあもっと上乗せするよ!プリキュア!ヒーリングフラワー!」

 

そこにグレースからの浄化技が加わるとキラーはそれを受け止めるのに精一杯となる。

 

「ぐうっ……ならば、プリキュア!トリプルフレッシュ!」

 

その瞬間、キラーの前にハート、スペード、ダイヤのエネルギーが生成されるとそこからエネルギー波が放たれて二人の浄化技とぶつかり合う。

 

「「ううっ……」」

 

「この技は元々三人の合体技。お前だけでは超えられまい!」

 

「ならば、こちらも三人目だ!プリキュア!デリシャスフィナーレ・ファンファーレ!」

 

フィナーレがクリーミーフルーレを使った浄化技を発動。その光はエネルギーの奔流となって突き進んでいく。これにより、三人分の浄化技が重なる事になりキラーの力を押さえ込むとお互いに技は相殺される。

 

「この程度か?ならば拍子抜けにも程が……」

 

「まだだよ!」

 

そこには三人が時間を稼いだ事によって既にエネルギーを最大限にまで高め、超巨大化させた光のエネルギー弾を掲げたプリズムがいた。そして、それを見たキラーはその本能が警告を告げ始めるがもう遅い。

 

「ヒーローガール!プリズムショット!はあっ!」

 

プリズムから放たれた特大のエネルギー弾が飛んでいくとそれは防御の構えが間に合わなかったキラーに命中。そのままキラーは地面へと叩きつけられるとひとたまりもなくその体を消滅させていくのであった。

 

ウィングチームside

 

こちらではウィング、アンジュ、フェリーチェ、フローラの四人がキラーとの戦闘を進めていた。以前と異なる点はミルキィローズがフローラに変わった所だろう。

 

「ふん、前に僕にボロ負けしたメンバーで勝てるとでも?」

 

「この前のボク達と同じだと思ったら痛い目を見ますよ!」

 

「ならば見せてもらおうか」

 

それからキラーは手を翳すとそこにハート型のエネルギーが高まっていく。

 

「気合、込めてやるか。プリキュア!ハッピーシャワー!」

 

するとハート型の発射口からピンクのエネルギー波が解き放たれる。それをアンジュがハート型の盾で防ぐ。

 

「フローラ!」

 

「任せて!舞え!百合よ!プリキュア!リィス・トルビヨン!」

 

その瞬間、百合の花が開くとそこから花びらがマシンガンのように解き放たれる。

 

「それで対抗できるとでも?プリキュア!スパークルソード!」

 

キラーは光の剣型のエネルギー弾を連射。二つの攻撃はぶつかって爆発。その煙幕を利用してウィングとフェリーチェが接近してラッシュを繰り出す。それをキラーはそれぞれ捌くが少しずつ攻撃の密度が上がっていき、防げなくなっていく。

 

「何故だ……前の連携なら防げたはず……」

 

「確かに前の私達の連携なら勝てなかったでしょう。ですが」

 

「私達の絆が深まった今ならあなたに遅れなんて取りません!」

 

そう、キラーはあるミスを冒していた。それはプリキュア達に余裕を見せて時間を与えてしまった事。それにより、プリキュア達は絆を深めて連携力を向上させたのだ。

 

「行きます!プリキュア!エメラルド・リンカネーション!」

 

するとフェリーチェからピンクのエネルギー波及び草花によって生成された二つのリングが召喚。それが飛ぶとキラーへと向かっていく。

 

「くっ、ならば!ハニースーパーソニックスパーク!」

 

キラーから出された技はクローバー型のエネルギー弾を連射すると言ったもの。これにより、最初の数発ではビクともしなかったが何発か命中するうちに威力が殺されていくと技は完全に防がれた。

 

「そう簡単には行きませんか……」

 

「だったら!」

 

そこにウィングが空を浮かびながらキラーの周囲を飛び回りつつ撹乱。キラーはウィングの動きを見切るためにそちらに意識を割くがその瞬間、アンジュが技を使う。

 

「フェザーブラスト!」

 

アンジュから繰り出された羽のエネルギー弾はキラーに命中すると怯ませていく。

 

「クソッ、こんな奴らにやられるわけには……」

 

「はあっ!」

 

そこに間髪入れずにフローラが接近しつつ蹴りを叩きつける。更にアンジュ、ウィングが同時にパンチをぶつけていく。

 

「おのれ!」

 

キラーが思わぬプリキュア達からの攻撃を受けて押し込まれていく。キラーは状況を打開するために大技を使う。

 

「ならば!プリキュア!ラブリーフォースアロー!」

 

その瞬間、キラーの前に生成された四つの弓からエネルギー波が放出。それは合わさると巨大なエネルギー光線と化して四人を襲う。

 

「これでお前らはまた敗北する。僕の勝ちだ!」

 

「させません!ひろがる!ウィングアタック!」

 

「リンクル!ピンクトルマリン!」

 

それに対応するためにウィングがフェリーチェから支援を受けて目の前にピンクの花型の盾を展開しつつ突撃。そこにフローラからも追撃が放たれる。

 

「それだけでお前らに僕は倒せない!」

 

「それはどうかしら?プリキュア!サクラ・トルビュランス!」

 

フローラからの技の威力、フェリーチェの盾の防御力を乗せたウィングアタックはキラーの技を押し返しつつ貫いていく。そしてキラーにその一撃が叩き込まれるとキラーの体はそのまま押し込まれて技の威力に耐えきれず消失。これにより、ウィングチームも勝利を収める事になる。

 




また次回もお楽しみに。


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キラーとの決戦 後半戦

バタフライチームside

 

他のチームと同様に分断されたバタフライ、アース、マカロン、ミルキーの四人がキラーと戦っている。

 

「はあっ!」

 

「やあっ!」

 

バタフライとアースの二人が接近しつつ攻撃を繰り出す中、キラーはそれを見て技を使い撹乱する。

 

「リンクル!タンザナイト!」

 

その瞬間、二人へと眩い光が発光してその視界を奪ってしまう。二人はそれで怯んで足が止まり、キラーからの反撃を喰らった。

 

「「ぐっ……」」

 

「だったら!プリキュア !かに座!ミルキーショック!」

 

二人の隙を補うためにミルキーがカニのハサミを模した電撃を放つとキラーの腕を拘束する。

 

「無駄だ。ショコラ・アロマーゼ!」

 

するとキラーの体から放出されたエネルギーがミルキーの電撃を無効化してしまう。それを見たマカロンは怒りに拳を握った。

 

「それは、ショコラの技……よくも!」

 

マカロンは突撃するとキラーは手からエネルギー弾を連射する。バタフライはすかさず盾を出すとその攻撃を防いだ。

 

「ッ!」

 

「はあっ!」

 

そして、マカロンからの蹴りも決まり、キラーは後ろに下がる。そんな中、アースもエレメントを使い反撃。

 

「空気のエレメント!」

 

するとアースウィンディハープから発生した空気を纏った攻撃がキラーを襲う。

 

「チッ!」

 

キラーはそれを片手で受け止めるとそのまま受け流す。そこにバタフライとミルキーが同時攻撃。相手に休む間もない攻撃を仕掛けることで一気に押し込みに行った。

 

「プリキュア!ミーティア・ハミング!」

 

しかしこれはキラーからの返しの技で防がれた上にカウンターされてしまう。

 

「やっぱり相手の技のバリエーションが多すぎるル」

 

「せめて絞り込めれれば」

 

「いや、その逆よ。相手は力の大半を技にしか頼ってない。技なら隙も生まれるわ!」

 

マカロンの言葉に三人も頷くと今度は四人同時に突撃する。それを見たキラーは飛び上がると範囲攻撃で仕留めようとした。

 

「一箇所にわざわざ集まってくれてありがとう。喰らえ!プリキュア!サファイア・スマーティッシュ!」

 

キラーの言葉と共に巨大な魔法陣が出現。そのまま四人へと激流が襲いかかった。

 

「ふふっ、こちらこそ誘いに乗ってくれてありがとう」

 

「何!?」

 

するとその攻撃を読んでいたかのようにバタフライが盾を何重にも召喚するとそこにミルキーが技を重ねる。

 

「プリキュア!しし座!ミルキーショック!」

 

ミルキーから繰り出された獅子の形を模した電撃が激流の中に突っ込むとそのまま水を伝いながら電気が飛んでいき、キラーへと命中。体を痺れさせる。

 

「うぐっ……まさか、僕の技を逆手に……」

 

「今よ!」

 

「エレメントチャージ!」

 

するとアースがアースウィンディハープにエレメントボトルを装填。そのまま浄化技を発動。

 

「プリキュア!ヒーリングハリケーン!」

 

アースから繰り出される巨大な竜巻はキラーを巻き込むとそのまま吹き飛ばして叩きつけさせる。更にそこにマカロンが追撃をかけた。

 

「マカロン・ジュリエンヌ!」

 

マカロンを模したエネルギーはキラーを挟み込むと身動きを封じつつダメージを負わせる。

 

「くそ……こんな技にこの僕が……」

 

キラーは何とかマカロン型のエネルギーを粉砕すると拘束を振り解く。しかし、そこにバタフライが接近するとキラーは攻撃に備えるがバタフライはニッと笑うと何もせずに跳び上がる。それをキラーは目で追うがその瞬間こそがバタフライの狙いだ。

 

「はあっ!」

 

バタフライがいなくなった直後に後ろから来ていたミルキーからのパンチをキラーは防げずに喰らってしまう。

 

「ひろがる!バタフライプレス!」

 

トドメは勿論キュアバタフライだ。真上に跳び上がったのもこれに繋げるためである。

 

バタフライからの一撃をまともに喰らったキラーはそのまま押し潰されて消失してく事になった。

 

ウェザーチームside

 

こちらでもウェザー、ピース、スカーレット、ビートの四人がキラーと交戦中である。

 

「やあっ!」

 

まずはピースがキラーへと攻撃を仕掛ける。それをキラーは軽くいなすと次はウェザーが手を翳し、吹雪を発生。キラーの足元を凍結させる。しかし、これもキラーは簡単に粉砕。そのまま二人へと掌底を喰らわせる。

 

「「ぐうっ……」」

 

「ビートソニック!」

 

そこにすかさずビートからの音符によるエネルギー弾が連射。キラーはそれを防御するものの、スカーレットからのオーバーヘッドキックを叩きつけられて怯む。

 

「「はあっ!」」

 

すぐに立て直したピースとウェザーの二人が拳をぶつけてキラーへとダメージを与えていく。

 

「………この程度なら僕は何発でも受け切れる」

 

そう言うキラーに対してビートはそれならばとばかりに技を発動。手にしたラブギターロッドにフェアリートーンをセットする。

 

「駆け巡れ!トーンのリング!プリキュア!ハートフルビートロック!」

 

それからビートはエネルギーのリングを射出。それがキラーへと飛んでいく。

 

「ふん。ならば!ツインラブ・ロックビート!」

 

その瞬間、二つのハートからエネルギーが放出。それが合体してビートの技と激突。そのまま大爆発と共に技は掻き消された。

 

「はあっ!」

 

しかし、まだプリキュア達の心は折れてなどいない。スカーレットがすぐに追撃を仕掛ける。

 

「プリキュア!スカーレットスパーク!」

 

スカーレットの手にしたバイオリンの弓から炎が放たれるとキラーの体を焼き尽くす。

 

「これしきの炎!雨のエレメント!」

 

キラーはすぐに雨の力で炎を消すとすぐに飛びかかってスカーレットとビートを吹き飛ばしてしまう。

 

「強い……」

 

「でもまだよ!」

 

「はあっ!」

 

今度はウェザーが近づいてのラッシュを仕掛ける。その間にピースは気合をパクトへと込めていく。ピースの個人技は体力を使うためにあまり乱発はできない。だが、エネルギーを込めるだけ威力も上がるので今回は消耗度外視で一発を決めるつもりなのだ。

 

「そんな技、撃たせるとでも……」

 

「やあっ!」

 

「たあっ!」

 

それを他の二人もわかっているため、全力でピースがエネルギーを溜める時間を稼ぐ。そして、とうとうエネルギーは充填された。

 

「皆、行くよ!」

 

それを聞いた三人はすぐにキラーから距離を取る。そして、ピースは手をチョキにして天に掲げた。

 

「プリキュア!」

 

その直後に雷がピースの体に降り注ぐがそれにピースは耐える。そして技を放つ。

 

「ピースサンダー!」

 

更にウェザーが手を翳すとピースサンダーに重ねるように雷を放出。威力が上乗せされていく。

 

「プリキュア!ソレイユシュート!」

 

キラーは何とか技を相殺しようと灼熱のエネルギーボールをシュートするものの、威力の面で勝てるはずもなくキラーの技は破壊されて直撃を喰らってしまう。

 

「ぐあああ!」

 

「やった!」

 

「……いえ、まだよ」

 

するとキラーはまだまだ健在とばかりに立ち上がり、構えを取る。あと少しで倒せる事には変わりないのだがそれでも渾身の一撃でも倒し切れなかったためにプリキュア達は動揺する。

 

「そんな……」

 

「これで……終わりにしてやる。プリキュア!ヒーリングオアシス!」

 

するとピンク、青、黄色の三色の光が混ざりあった強力なエネルギー波を放出。一気に四人を倒そうとした。

 

「ヒーローガール!ウェザーボール!」

 

それに対してウェザーが自らの浄化技をぶつけるが、威力は向こうに分がある。

 

「うう……」

 

「プリキュア!スカーレットフレイム!」

 

そこにスカーレットからの炎が加わるとその瞬間、ウェザーボールのエネルギーの中に存在する晴れの力が急速に上昇。……それはウェザーボールの真価、ウェザーボールの中に含まれている属性と同じ属性を掛け合わせる事で更なる威力を発揮できるのだ。

 

「はぁあああ!」

 

そのままウェザーボールで押し切るとキラーはそのまま粉砕されて消失するのであった。

 

サンライズチームside

 

最後はサンライズ、ミラクル、マジカル、フォーチュンの四人だ。キラーが四人へと襲いかかる中、ミラクルとマジカルの二人が前に出るとその攻撃を二人がかりで受け止める。

 

「「くうっ……」」

 

「今だ!スタイルチェンジ!ペガサス!」

 

サンライズはすぐにペガサススタイルに変わると炎弾を連射。それはミラクルとマジカルの体を迂回するような軌道で二人を躱すとキラーに命中。キラーはその威力に後ろへと下がった。

 

「チッ……」

 

「プリキュア!きらりんスターシンフォニー!あんみつこまち!」

 

その瞬間、フォーチュンの姿がフリルをあしらった着物のスタイルに変わると技を発動する。

 

「プリキュア!桜吹雪の舞!」

 

フォーチュンが手にしたフォーチュンタンバリンを使いつつ舞い踊り、それによって発生した竜巻がキラーを吹き飛ばす。

 

「やられたままじゃないよ。プリキュア!もこもこコーラルディフュージョン!」

 

するとキラーがハート型のエネルギーから成長するサンゴのように伸ばすと四人を同時に攻撃する。

 

「そんな手を喰らうか!スタイルチェンジ!フェニックス!」

 

サンライズはすぐにフェニックススタイルへと変わると攻撃を盾で防御。防いでしまう。

 

「ミラクル!マジカル!」

 

「「えぇ!」」

 

その直後二人が飛び出すとリンクルストーンを使用しての攻撃を仕掛ける。

 

「リンクル!アメジスト!」

 

「リンクル!ペリドット!」

 

ミラクルがそう言った直後、マジカルの姿が消失。そして声が後ろから聞こえると吹雪による攻撃が飛んでくる。これはアメジストの効果で瞬間移動しつつペリドットの効果で吹雪を発生させたのだ。

 

「ぐっ……僕一人ではこんな使い方はできない……」

 

これはキラーの弱点。一度に技を複数使用できないのだ。この辺りは一人で戦うキラーと複数人で戦うプリキュアの差だろう。

 

「良し、次はこれだ!」

 

サンライズは跳びあがると炎を纏い炎で生成した剣を持つとそのまま連続で斬撃波を放つ。

 

「炎牙無限衝!」

 

キラーはそれをまともに喰らうと撃墜され、すぐさまフォーチュンからの追撃が入る。

 

「やぁああっ!」

 

フォーチュンからの連続攻撃にキラーが対応に追われる中、すぐにフォーチュンがゼロ距離での攻撃を放つ。

 

「プリキュア!スターライトアセンション!」

 

無数の星形エネルギー弾をキラーへと叩き込み、キラーを吹き飛ばす。更にミラクルとマジカルがリンクルストーンを装填。浄化技を使う。

 

「「プリキュア!ダイヤモンドエターナル!」」

 

「くっ、ならば!クラスティ・パン・バリア!」

 

二人から使われたダイヤモンドのエネルギーの嵐に対してメロンパン型のバリアが生成されるとそれを防ぐ。だが、その威力はキラーの想定を上回り、パンは砕けるとキラーはエネルギーの中に閉じ込められる。

 

「「サンライズ!決めて!!」」

 

「ああ!ひろがる!サンライズカリバー!」

 

サンライズは元のスタイルに戻るとそのまま浄化技を発動。キラーへと炎のエネルギーの奔流を発射する。

 

それをキラーは辛うじて受け止めるが、ダイヤモンドエターナルのエネルギーが自身を包んでいた事に加えて更にサンライズの技の威力も上がっている事からキラーはその姿を少しずつ消失させていく。

 

「馬鹿な……僕が……プリキュアに負ける……うわぁああ!!」

 

それと同時に空間にヒビが入ると光と共に元の城の中の王の間へと戻った。

 

「ここは……さっきの……」

 

するとそれと同時に近くに五つのヒビが入ると他のプリキュア達も出てきた。

 

「……これは、出られたの?」

 

「スカイ!サンライズ!」

 

「皆!」

 

それからプリキュア達はキラーに勝利できた事と自分の仲間とようやく合流できた事で喜びを分かち合う。それから仲間と会えたプリキュア達が会話をする中、それ以外の残ったプリキュア達も集まってこれからの話を始めていた。

 

「さて、キラーを倒せたのは良いけどまだ何も解決してないのよね」

 

「ええ、この世界から脱出する手段もわからないし……」

 

そう話していると突如としてドサリという音と共にキラーが落ちてきた。だがその姿はボロボロでもう虫の息である。

 

「はぁ……はぁ……」

 

プリキュア達はそれを見て構えるがそこに無造作に近づく影が一人。キュアシュプリームであった。

 

「……」

 

「お前……」

 

「あーあ。結局プリキュアの力を束ねた君を相手にしても何も得られなかったね」

 

そう言うシュプリームの声色は冷たく、キラーへと期待外れの目を向けていた。

 

「君、何を言って……」

 

バタフライがそう言って近づこうとした瞬間、サンライズの目に未来視が発動。マカロンと共に叫んだ。

 

「「近づくな(かないで)!」」

 

その直後、シュプリームからエネルギーがバタフライに向けて放たれる。それを庇ってマカロンが吹き飛ばされると近くの壁に叩きつけられた。

 

「……え?」

 

「ッ!?はあ!?」

 

流石にこれにはその場のプリキュア達も驚きが隠せない。そして、シュプリームが手を翳すとキラーの姿が光となってシュプリームへと取り込まれていく。

 

「……この世界もキラーもあの怪物達も作ったのは僕だ。ここは僕の作った実験場。それなのに……」

 

その言葉にその場のほぼ全員が困惑する中、マカロン一人は状況を理解したのか小さく声を上げる。

 

「……くっ。そういうことだったのね……。いちご山」

 

「……え?」

 

「私達の街にあった物よ」

 

「ッ……じゃあ、ふしぎ図書館も……」

 

「すこやか市の痕跡もありました」

 

「えぇ!?」

 

「……何より、この世界から感じられた気配は地球そのもの……」

 

ピース、アースも口々にそう言う中、シュプリームは溜息を吐くとこちらも小さく口にした。

 

「……本当に覚えてないんだ。じゃあ、思い出させてあげるよ」

 

そう言って手を翳すと力を解放する。そして、その力にプリキュア達は見覚えがあった。

 

「この力……知ってる?」

 

「まさか……これは!!」

 

そして、衝撃波が周囲を駆け巡るのと同時にプリキュア達は欠けていた記憶の断片を思い出す事になる。




また次回もお楽しみに。


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失われていた記憶 世界が滅んだ日

今回の話を読む前に注意です。この話は映画、プリキュアオールスターズFの重要シーンの話となります。まだ映画を観ていない方はネタバレに繋がりますのでそれでも良いよという方のみ読まれる事を推奨します。それではどうぞ。


それは、サンライズがあさひ達が平穏な一日を過ごすと思っていた何気ない日常のある日の出来事だった。空……いや、宇宙に巨大な敵の影が姿を現したのは。

 

その姿は背丈は巨大。頭部は白いウサギに似ているが黄色く光る目が四つ。胴体は六枚の尖った翼を広げ、下半身は人魚のようにも見えた。その長く伸びた全体像はさながら白竜のようである。そんな未知の敵の襲来。あさひ達六人は外に出るとミラージュペンを構えた。

 

「何なんですか!?あの敵は……」

 

「大きすぎるよね!?」

 

「……ボク達だけでもやるしかありませんよ!」

 

「私達にできる事を精一杯やります!」

 

「行こう!皆!」

 

「どんなに強大な敵が相手でも正しい事をやり抜いてみせる!」

 

それからエルを含めた七人は光と共にプリキュアへと変身。そして、降り立った。

 

「「「「「「「レディ……ゴー!ひろがるスカイ!プリキュア!」」」」」」」

 

その瞬間、遥か宇宙にいる敵は戦いの場として巨大なフィールドを生成。そして、プリキュア達を光と共にそこへと転送した。

 

「ここは……?」

 

「って、えぇ!?」

 

そこにいたのは自分達の知らない総勢七十三人のプリキュア達だ。彼女達も困惑したような様子だったが、自分達以外は全員顔見知りだったのか特に他のプリキュアがいた事について驚く様子は無かった。そして、敵へとそれぞれ名乗りを上げていく。

 

「「ふたりはプリキュア!」」

 

「輝く命!シャイニールミナス!」

 

「「ふたりはプリキュア!」」

 

「「「「「Yes!プリキュア5!」」」」」

 

「青いバラは秘密の印!ミルキィローズ!」

 

「「「「フレッシュプリキュア!」」」」

 

「「「「ハートキャッチ!プリキュア!」」」」

 

「「「「スイートプリキュア!」」」」

 

「「「「「スマイルプリキュア!」」」」」

 

「「「「「ドキドキプリキュア!」」」」」

 

「「「「ハピネスチャージプリキュア!」」」」

 

「Go!」

 

「「「「プリンセスプリキュア!」」」」

 

「「「魔法使いプリキュア!」」」

 

「「「「「「キラキラプリキュアアラモード!」」」」」」

 

「「「「「HGUっと!プリキュア!」」」」」

 

「「「「「スタートゥインクルプリキュア!」」」」」

 

「「「「ヒーリングっどプリキュア!」」」」

 

「「「「「トロピカル〜ジュ!プリキュア!」」」」」

 

「「「「デリシャスパーティプリキュア!」」」」

 

こうやって並ぶと圧巻の一言である。それからやってきた強大な敵との戦闘が始まった……だが。

 

「ひろがる!サンライズカリバー!」

 

サンライズから放たれた炎の奔流は敵に命中するが全く通用しない。そして、反撃のエネルギー波が飛ぶ中、サンライズは辛うじて躱すものの、跳び上がったその時には無惨な光景が見えてしまう。

 

……プリキュア達が八十人という数を束ねてもまるで勝ち目が見えない。すでに八十人の中の数割は倒れて気を失っており、残っているプリキュア達も必死に戦うがまるで歯が立たない。

 

「こんな化け物……どうやって倒せば……」

 

「それでも諦めない。そうでしょ?サンライズ!」

 

そう言うのはバタフライ。彼女も既に傷だらけでいつ倒れてもおかしくない状況だったがそれでも力を振り絞って戦っている。

 

「……そうだったな」

 

「おい、サンライズ。俺も出せ。こんな奴にやられっぱなしで黙っていられるかよ」

 

するとサンライズから強制的に闇のエネルギーが分離。キュアトワイライトとして出てくる。

 

「トワイライト……」

 

「何こんな奴に手こずってやがる。俺にもやらせろ」

 

「わかった。頼むぞ、トワイライト」

 

だが、一人増えた所で何も変わるわけがない。それからプリキュア達は更に戦いを進めるが仲間は次々と倒れていき力も尽きて地面に伏していく。

 

「ここまで圧倒的かよ……くっ。だが、負けてたまるか!」

 

するとサンライズの持っていたグリフォン、ドラゴン、ペガサス、フェニックスの四つのスカイトーンが出てくるとそれがそれぞれのスタイルのサンライズとして具現化。

 

「伝説の生物様達も助けてくれるってか?」

 

「これなら、スカイ達と同時に技を使える!」

 

四人は頷くとそれぞれのペアとの合体技を発動させていった。

 

「「プリキュア!プロミネンスブロー!」」

 

「「プリキュア!シャイニングサンピラー!」」

 

「「プリキュア!フレアバードストライク!」」

 

「「プリキュア!ダブルウィングスタンプ!」」

 

「俺達も行くぞ!」

 

「あぁ!」

 

「「プリキュア!ツインフレイムバースト!」」

 

サンライズとトワイライトは手を繋ぐとそれぞれ白の炎と黒の炎を噴出。合体技五つ同時なら対抗できる……そう考えていた。そう思いたかった……でも、現実は無情で残酷だ。

 

怪物が何かの声を発したかと思うと衝撃波を発生させて五つの合体技を全て一瞬にして粉砕。スカイトーンが変化したサンライズ達はスカイ達四人を庇って消失。消し去られてしまった。

 

「そんな……」

 

「まだだ!スタイルチェンジ!ヤタガラス!」

 

サンライズはヤタガラススタイルへとスタイルチェンジを試みる。しかし、その力は何故か使えなくなってしまうとスカイトーンが砕け散ってしまう。そしてそれはソウヤの身にも何かがあったのだと察した。

 

「そんな……まさか、ソウヤの世界にもコイツが来たって事なのか……?」

 

そして、サンライズが切り札を切っては次々と失う中。他のプリキュア達も全力で立ち向かっていた。しかし、ミルキィローズが無惨にも落下していく姿を見てスカイはその場に座り込むと絶望顔に変わる。

 

「プリキュア!スターパンチ!」

 

「2000キロカロリーパンチ!」

 

プレシャスとスターが怪物の顔を両側から思い切り殴るが全くダメージにすらならず。簡単に吹き飛ばされてしまった。

 

「一体……何者なの!?」

 

アンジュの問いにとうとう怪物がサンライズ達にも伝わる声で話し始める。

 

「僕はシュプリーム」

 

その直後、光のエネルギー光線を放つシュプリームと名乗る怪物。それをフェリーチェが対応する。

 

「リンクル!ピンクトルマリン!」

 

だが、シュプリームのパワーは規格外だった。ありとあらゆる防御は意味を成さない。盾にヒビが入る中、フェリーチェもシュプリームへと問うた。

 

「何が目的なのですか!?」

 

「あらゆる世界で僕が最強になるために戦い続けている」

 

その言葉にサンライズは拳を握りしめる。そんな事で自分達のいる地球を狙ってきたのかと……ただ自分の快楽を満たすためだけに……。

 

「ウィング!」

 

「はい!」

 

「プリキュア!タイタニックレインボー!アタック!」

 

バタフライがウィングとの合体技、タイタニックレインボーアタックを繰り出す中、それと同時に他のプリキュア達も技を繰り出した。

 

「「「「「プリキュア!ロイヤルレインボー!バースト!」」」」」

 

「「「「ラッキークローバー!グランドフィナーレ!」」」」

 

「「「「「プリキュア!レインボー・ローズエクスプロージョン」」」」」

 

四つの技が同時に放たれる中、多少効きはしてもそれでも致命傷には程遠く。

 

「確かに君達は強い。だが」

 

それさえも簡単に掻き消すと技を放ったプリキュア達を返り討ち。バタフライとウィングも傷ついて落ちていく。それをウェザーとサンライズがそれぞれ受け止めた。

 

「ウィング!しっかりしてください!」

 

「バタフライ……嘘だろ?」

 

二人共辛うじて息はあるものの、もう体を動かせないぐらいにはダメージを負ってしまっていた。そこに更なる追撃。それに対してウェザーが前に出ると技で対抗する。

 

「ヒーローガール!ウェザーボール!」

 

その技も一瞬にして破られるとそのままウェザーも叩きつけられて崩れ落ちてしまう。

 

「ウェザーまで……」

 

サンライズはそれを見て怒りに拳を握りしめるとフラフラと立ち上がってトワイライトへと叫ぶ。

 

「トワイライト、まだ行けるな?」

 

「ああ……アレをするんだろ?」

 

「もうそれしか勝てる手段は無い」

 

サンライズの言葉にトワイライトは頷くとサンライズがスカイトーンを取り出す。それと同時にキュアブラック、そしてキュアホワイトも立ち上がると手を繋いで握りしめた。

 

「あなたの目的のために……」

 

「私達のこの世界を……」

 

「「壊させない!」」

 

その瞬間、黒と白の雷が二人に落ちるとエネルギーが高まる。それは、二人の誇る最大出力。プリキュアの原点にして頂点の技だった。

 

「「プリキュア!エビリティコネクト!ひろがるチェンジ!エビリティサンライズ!」」

 

二人の姿がまた一つに重なり、サンライズも最強形態、エビリティサンライズへと変身する。

 

「「ブラック!ホワイト!俺に合わせてくれ!」」

 

「「ええ!」」

 

「「ひろがる!エビリティフィナーレ!」」

 

サンライズが飛び上がって翼を広げるとキックを繰り出す。そして、二人のプリキュアからもそれを援護するように技が発動された。

 

「「プリキュア!マーブルスクリューマックス!」」

 

黒と白の雷が重なり、その威力は相乗的に強化。その一撃はサンライズの一撃と重なり今まで放った技の中でも最大の出力を誇る。更にそこに両側から同時にプリキュア達が技を放って援護した。

 

「プリキュア!ハッピーシャワー!」

 

「プリキュア!ヒーリングハリケーン!」

 

「プリキュア!フローラル・トルビヨン!」

 

「プリキュア!ラブサンシャイン・フレッシュ!」

 

「プリキュア!ハートシュート!」

 

「ハート・フォー・ユー!」

 

その攻撃でも倒れないシュプリーム。それどころか余裕そうな顔つきさえ見せる。だが、そんな中でもプリキュア達の心は折れてなどいない。残っている戦士達は手と手を繋ぎ、お互いを気遣って立ち上がったのだ。

 

「見事だ。僕の戦ってきた敵の中で一番の強さだ」

 

そうシュプリームは賞賛する。それを見たサンライズは更にパワーを上げるために自分の力をもっと解放した。

 

「「バーストタイム!」」

 

「「スパーク!」」

 

それと同時にマーブル・スクリュー・マックスも更なる上位互換技、マーブル・スクリュー・マックス・スパークへと強化。そしてバーストタイムの発動により単純な出力なら先程までの三倍……いや、技同士の掛け合わせでそれ以上の出力を叩き出す。

 

「ぐうっ……」

 

ここまでやってようやく苦しそうな声を上げるシュプリーム。だが、それでも隠していた力の量は圧倒的にシュプリームが上だった。

 

「よくぞ僕をここまで追い詰めた……ならば、僕もそんな君達に敬意を払おう。光栄に思え。僕のこの力を見せるのは君達が初めてだ!」

 

次の瞬間、シュプリームの胸にマークが輝いたその時。一瞬にして全ての技が打ち砕かれるとサンライズ達は全員吹き飛ばされてしまう。そして、エビリティサンライズはただのサンライズに戻るとサンライズは辛うじて残った意識でカゲロウへと問いかける。

 

「カゲロウ……大丈夫……か?」

 

しかし、カゲロウからの返答は無い。……カゲロウは今の一撃を跳ね返された時に一時的にサンライズと主導権を変わると攻撃を自分だけに喰らうようにしたのだ。これにより、カゲロウは完全に気を失う共にサンライズは辛うじてだが意識を残す結果となった。

 

「そんな……ハッ!!」

 

そして次の瞬間、シュプリームは自身の周囲に星のような煌めきを展開すると地球を、今プリキュア達が存在したステージを、プリキュアを、全てを青い粒子となって破壊し始める。

 

サンライズは青い粒子となって消えゆく全ての物を見ながら、愛する人を……気を失ったバタフライ(あげは)をも救えずに絶望のままに消滅する事になった。




また次回もお楽しみに。


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戻った記憶 諦めない気持ち

こうして、サンライズ達プリキュアは全てを思い出した。強大な力を持ったシュプリームを前にサンライズ達は一度負けて死んだのだ。

 

「思い出した……」

 

「そうだ、ボク達は……」

 

「シュプリームに……負けたんだ」

 

サンライズ達先程放たれた衝撃波で全員倒れており、シュプリームは無言でそれを見下ろしていたが口を開いた。

 

「……君達は強かった。本当に。だから僕は君達に興味を持った。だからこうやって分解した世界を再構築し、悪役、弱い人々、街等を作った。僕の実験場としてね」

 

そして、シュプリーム自身も姿を変えて人間の姿となりプリキュアに変身して戦う事でプリキュアの強さの一端がわかると思ったのだ。

 

「でも、わからなかった。プリキュアの力を束ねた力を持ったキラーと戦っても何も感じなかった」

 

「そのためだけに……アイツを作ったのか……」

 

「そうだよ?」

 

「じゃあ、パパやママ、私達以外の他の人達は……」

 

プリズムからの質問にシュプリームは冷酷に“必要無い物は作ってない”と答えた。

 

「そんな……」

 

「酷い……」

 

「そういえば必要無いと言えば君もだったね」

 

そう言ってシュプリームは近くの柱に隠れているプーカに目を付ける。プーカは怯えている様子だった。

 

「プーカは……」

 

「君達が連れてるパートナーの妖精を真似て作ったけど、僕の力を分けたにも関わらず、戦おうともしない。……無駄な存在だ」

 

それを聞いたサンライズは怒りを高めていく。そして、シュプリームはプリキュア達を見据えた。

 

「まぁ、消してから再構築しなかったはずの君達まで復活したのは驚いたけど……」

 

シュプリームにとってプリキュアの復活は想定外の出来事であったらしい。そのためプリキュアと行動を共にする事にした。

 

「……でも、それでも何も感じなかった。蓋を開けてみればただ仲間と他愛もない話ばかりして。もっと特別な何かをしていると思ってたから。……まぁ、僕の中で一番印象に残ったのはキュアサンライズ。君だよ」

 

そう言ってシュプリームはサンライズを指差す。その目には未だに好奇の目が光っていた。

 

「君は唯一僕に痛手を与えた一人だ。あとの二人はもういないみたいだし、他のプリキュアなんか興味は無い。でも君だけは僕へ明確にダメージを与えた。その強さの秘訣、君と戦って証明するとしよう」

 

それを聞いてシュプリームはサンライズへとターゲットを定める。サンライズは立ち上がると構えた。

 

「良いぜ。お前だけは……絶対に許さない!」

 

サンライズは未来視を発動するとシュプリームの攻撃の軌道を予測。そしてその直線上に仲間がいない事を確認してから攻撃を躱しつつ走っていった。

 

「………」

 

「だあっ!」

 

サンライズは手に炎の剣を出すと斬りかかる。しかし、シュプリームはそれを片手で受け止めた。

 

「……?」

 

シュプリームはその威力の低さに困惑する。……あの時サンライズがシュプリームへと明確にダメージを与えられたのはエビリティサンライズになった上でブラック、ホワイトの援護があったからこそだ。サンライズだけではこれがせいぜいなのである。

 

「はあっ!」

 

それからサンライズは連続で斬りつけるが全て片手で止められてしまう。

 

「そんな……」

 

「この程度?ガッカリだよ」

 

次の瞬間、サンライズは腹に一撃を貰うと吹き飛ばされて壁に叩きつけられてしまった。

 

「ごふっ……ゲホッ、ゲホッ……」

 

「はぁ……期待したのが馬鹿らしく思えてきた。そろそろ終わりにしよう。この不毛な時間を。結局、僕が一番強い事に変わりはないのだから」

 

それからシュプリームは白いコスチュームを黒を基調とした物に変化させるととてつもないオーラを迸らせる。

 

「まだ……負けてねーよ」

 

「……?」

 

するとサンライズは立ち上がり、まだまだやる気十分と言った様子で構えていた。

 

「だあっ!」

 

それを見た他のプリキュア達も一緒に攻撃を仕掛ける。だが、シュプリームはそれをも軽くいなしてしまう。

 

「消えてもらおうか」

 

シュプリームが反撃する度に一人、また一人と吹き飛ばされては倒れていく。

 

「はあっ!」

 

プリキュア達が立ち向かう中、スカイはまた絶望しかけていた。このままでは今度こそ確実に全滅する。

 

「一体どうしたら……」

 

「方法はわかりません。それでも、まだ手はあります」

 

そう言うのはアースだ。アースの頭の中にはある仮説が浮かんでおり、それを他のプリキュア達に伝える。

 

「今現在、この世界はシュプリームの力で無理矢理捻じ曲げられています。ですが……」

 

「そっか、無理矢理捻じ曲げられているのなら元に戻す事も可能って事ね!」

 

「はい」

 

するとピースとスカーレットが叩きつけられるとそのまま気を失う。更にフェリーチェ、アンジュ、ミルキー、ミラクル、マジカルと次々やられていく。

 

「……じゃあ、私が隙を作らないとね」

 

そう言うバタフライ。それから覚悟を決めると突撃しようとした。その瞬間、サンライズが吹き飛ばされるとバタフライの前に叩きつけられる。

 

「くぅ……」

 

サンライズは立ち上がるが、その視界に突撃しようとするバタフライを見るとその手を掴む。

 

「ダメだ!」

 

「ッ……」

 

「……そんな事をしないでくれ。バタフライ……あげは!」

 

サンライズは変身前の名前で彼女を呼ぶ。それを聞いてバタフライは止まった。

 

「もう二度と、あげはを失いたくないんだ。俺はあげはを二回も見殺しにしたんだ……。これ以上、俺の前からいなくなるような真似はしないでくれ……」

 

サンライズの目には恐怖が宿っている。……怖いのだ。目の前から大切な彼女が消えてしまうのを見るのは。するとバタフライはニッと笑うとサンライズへと小さく返す。

 

「ごめんね……。またサンライズを一人にするような真似をして」

 

その瞬間、バタフライはサンライズを思い切りビンタして手を無理矢理離させるとそのまま走っていった。

 

「やめろ……やめてくれ!!」

 

「大人にだってカッコ付けさせてよね!」

 

その瞬間、バタフライはシュプリームの懐に潜り込むとゼロ距離から投げキッスによる蝶型のエネルギー弾命中させると自爆。その煙が晴れるとバタフライは倒れ伏していたがシュプリームは無傷だった。

 

「……わからない。どうしてそこまでして自分の命を犠牲に大切な人を守ろうとするのか」

 

シュプリームが淡々と告げる中サンライズは怒り狂う。

 

「黙れ……黙れぇええ!」

 

サンライズは体に炎を滾らせると突進。シュプリームへと拳を繰り出す。それはシュプリームの顔面に命中するがシュプリームは微動だにしなかった。

 

「………そこまでして守った大切な人も無惨に消えるのに……」

 

次の瞬間、サンライズの腹にエネルギーボールがぶつけられるとそのまま押し戻され、壁に叩きつけられるとボールは爆発。サンライズは深い傷を負ってしまう。

 

「がはっ……」

 

「サンライズ……」

 

「「プリム!」」

 

「……シュプリームだ」

 

そう言って飛びかかるプレシャスとサマー。しかし、無情にも二人纏めてシュプリームは返り討ちにしてしまった。

 

するとそれを見たウィングは覚悟を決めるとスカイとプリズム、そしてエルやプーカの真下の地面を思い切り殴ると崩落させる。

 

「ここはボクに任せてください……。後はお願いします!」

 

落下していくスカイ達を尻目にウィングは飛び上がると技を発動。少しでも時間を稼ごうとする。

 

「ひろがる!ウィングアタック!」

 

「私も……ウィング一人には背負わせない!ヒーローガール!ウェザーボール!」

 

二人が技を使うとそのエネルギーがシュプリームへと激突。しかし、シュプリームはそれをそれぞれの手で軽く止めるとウェザーボールは跳ね返し、ウィングアタックはエネルギーを受け切ってからウィングの本体を掴んで叩きつけさせてしまう。

 

「うわぁああ!」

 

「あああぁあ!」

 

ウィングもウェザーも倒れて残ったのはサンライズだけ。サンライズは立ち上がるとシュプリームを睨む。

 

「……睨んでもどうにもならないよ?僕には勝てない」

 

「わかってる……だがな。それで諦めるほど俺は諦めが良くないんだわ」

 

するとサンライズからトワイライトが分離するとプリキュアが二人になる。

 

「サンライズ、手を貸すぜ」

 

「ああ、助かる」

 

それから二人はシュプリームへと突撃すると二人がかりでラッシュを仕掛ける。だがシュプリームからすればまるで相手にならないとばかりの顔つきである。

 

「その程度の力で僕に及ぶとでも?」

 

「思ってねーよ」

 

「だが、俺達は絶対に諦めない」

 

「「絶対にスカイが、プリズムが立ち上がって思いを繋いでくれるって信じてるから!」」

 

二人の気迫に一瞬押されるシュプリーム。だがそれでも形勢は変わらない。

 

「だからどうした?結局君達だけでは勝てないのに……」

 

その直後、サンライズとトワイライトは手を繋ぐとゼロ距離で技を発動。

 

「「プリキュア!ツインフレイムバースト!」」

 

白と黒の炎が合わさり相乗的なパワーを引き出すそれはシュプリームを襲うがシュプリームは前にそれは受け切ったとばかりに無言で立っている。

 

「「はぁあああああ!!」」

 

「………それで終わりか?」

 

その直後、二人はシュプリームからの衝撃波で吹き飛ばされて壁を突き破るとそのまま叩きつけられてしまう。

 

「「う……ぐぅ……」」

 

するとシュプリームは外に出て二人のプリキュアを見下ろすと手にエネルギーを掲げた。

 

「……もう終わりにしよう。この世界は僕の手で破壊する」

 

「「そんな事……させるかぁああ!」」

 

二人は跳び上がるとその姿が合体。エビリティサンライズとなる。そしてそのままキックを発動した。

 

「「バーストタイム!ひろがる!エビリティフィナーレ!」」

 

その一撃がシュプリームに命中する。だが、マーブル・スクリュー・マックス抜きでは威力は激減して決定打には至らない。

 

「……愚かな。それで僕に勝てるとでも……」

 

するとその瞬間、サンライズの後ろに光が灯るとサンライズのパワーが向上した。

 

「「はぁあああ!」」

 

そこにはスカイとプリズムが二人手を繋いでアップ・ドラフト・シャイニングを発動していた。

 

そのパワーがサンライズに上乗せされているのである。

 

「ヒーローは……絶対に諦めません!」

 

「私達が残ってる限り……希望は消えてなんかない!」

 

「なら消してあげるよ」

 

シュプリームがパワーを上げるとサンライズ達のエネルギーを飲み込み始める。それでも三人は諦めなかった。その直後、紫の光が飛び出すとシュプリームへと一撃を入れる。

 

「ッ……」

 

そこに降り立ったのはエルが変身したプリキュア、キュアマジェスティだ。そして、その近くに両手にエネルギーを持たせたプーカもいた。

 

「プーカぁあ!!」

 

するとプーカはシュプリームから分けられた破壊の力を発動すると周囲にヒビが入っていく。それを見たシュプリームは困惑した。

 

「何?破壊の力をわざわざ使って……お前がこの世界を破壊してどうする?」

 

「いいえ、これは破壊じゃない。きっかけよ!」

 

その時、世界は光に包まれると分解されていき、サンライズはエビリティサンライズが解けると元のサンライズに戻る。それと同時にピンクの光が宿った空間にサンライズ達は投げ出されるのであった。




また次回もお楽しみに。


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蘇る奇跡 プリキュア完全復活

プーカの力によって空間は壊れた。そして、そのまま世界はバラバラになる。……かに思えた。

 

「ッ……これって……」

 

すると何故か世界は壊れる事なく再生を始めたのだ。その理由は……プリキュア達の思いである。そこに映ったのはプリキュア達の記憶である。

 

『私はあなたの友達。あなたが心配なんだよ?助けたいよ。気持ちは同じ。これって、一緒に戦う理由にはならないかな?』

 

「この記憶……あの時の!!」

 

「まさか、この空間は……」

 

そして、四人の元に流れていくプリキュア達の思いの軌跡。それが、破壊された世界をまた繋げようとし始めたのだ。

 

「ッ、どちらにしてもこの四人を倒せば僕の勝ちだ」

 

「させるかぁあ!」

 

サンライズは立ち上がり、シュプリームへと一撃を入れる。その威力は先程までよりも高く、シュプリームは驚愕した。

 

「馬鹿な、まるで先程とは別人の力……」

 

「この世界を終わらせたりなんかさせない。何としてでも止めてやる!」

 

サンライズはシュプリームへと果敢に立ち向かう。そんな中、プーカは自身の胸に光を宿すとそれはペンライトのような物に変化した。

 

「「これは……」」

 

それからそれをスカイとプリズムが手にするとそれを掲げる。すると更にプリキュア達の軌跡が流れていった。

 

「はぁあああ!」

 

サンライズはそれをバックに戦いを進めていく。しかし、一人では戦うのにも限界がある。

 

「ひろがる!サンライズカリバー!」

 

サンライズからの斬撃がシュプリームを襲うがシュプリームはそれを片手で受け止めると防いでしまう。

 

「君では僕には勝てない!」

 

その直後、サンライズはシュプリームからの拳を腹に喰らって吹き飛ばされてしまった。そのままサンライズが叩きつけられるその時、二つの光が輝くと何者かが飛ばされるサンライズを受け止める。

 

「……え?」

 

「お待たせ!」

 

「遅くなってすみません!」

 

そこにいたのはキュアハート、キュアブロッサムである。二人は傷だらけのサンライズを優しく立たせると話しかけた。

 

「もう大丈夫だよ」

 

「ここからは私達も戦います」

 

「ハート、ブロッサム……」

 

「何だと……コイツら、どうして」

 

困惑するシュプリーム。そして、復活した二人はシュプリームを見据えると立ち向かった。

 

「愛の力、今度こそ教えてあげる!」

 

「私、堪忍袋の緒が切れました!」

 

それからサンライズ、ハート、ブロッサムの三人が同時に攻撃を仕掛ける。

 

「「「はあっ!」」」

 

「チッ!」

 

シュプリームが三人のプリキュアを相手するが、それでも余裕の顔つきを崩すことは無い。だが、奇跡はそれだけには留まらなかった。

 

「ラブリー!パンチングパンチ!」

 

「プリキュア!ハッピーシャワー!」

 

今度は巨大なピンクの拳とピンクの光線でシュプリームの視界を奪いつつ合流。戦士が五人へと増える。

 

「なっ……」

 

「私達は幸せを諦めない!」

 

「ウルトラハッピーな明日を目指して頑張るんだから!」

 

更に先程吹き飛ばされたミラクルとフローラも立ち上がって二人同時に蹴りを叩きつける。

 

「ッ!?お前らまで……」

 

「サンライズ、皆、ごめん」

 

「私達も加勢するよ!」

 

「リンクル!ガーネット!」

 

ミラクルが大地の力を発動する魔法で岩を連続で発射。シュプリームに命中させて下がらせつつフローラが追撃。ダメージを与えた。

 

「くっ……この程度で……」

 

「スタイルチェンジ!グリフォン!ひろがる!サンライズボルケーノ!」

 

サンライズが地面から巨大な火柱を発生させるとシュプリームを上空へと吹き飛ばす。シュプリームはすぐに持ち直すが、そこにサンライズはすぐに跳び上がって追撃をかける。

 

「スタイルチェンジ!ドラゴン!ひろがる!サンライズドロップ!」

 

サンライズからのドロップキックが命中する中、シュプリームはそれをうさぎの顔を模した盾で防ぐとそのまま竜巻を発生させて周囲にいたプリキュアを吹き飛ばす。

 

だが、それだけでは終わらない。そこにまた思い出が流れるとキュアブルーム、キュアピーチ、キュアメロディの三人が飛び出した。

 

「なっ!?」

 

「私達の絆を甘く見ないで!」

 

「奇跡のメロディ、響かせましょう!」

 

「皆で幸せゲットだよ!」

 

三人による同時攻撃でシュプリームは咄嗟に防御姿勢を取る。そこに持ち直したサンライズは攻撃をかけた。

 

「スタイルチェンジ!ペガサス!ひろがる!サンライズレイン!」

 

サンライズから繰り出される光のエネルギーの雨がシュプリームを押し込んでいく。

 

「何故だ、どうしてこんな力がコイツらに宿っているんだ……」

 

「花のエレメント!」

 

「プリキュア!おうし座!スターパンチ!」

 

今度は復活したグレースと召喚されたキュアスターによる連撃がシュプリームへと命中。

 

「キラやばだよ!」

 

「私達は今生きてるんだ!」

 

「どこまでも鬱陶しい存在だ!」

 

「スタイルチェンジ!フェニックス!ひろがる!サンライズアサルト!」

 

そこにサンライズがフェニックスの力を模した突撃を敢行。シュプリームを押し込んでいく。

 

「はぁあああ!」

 

「あぁあ!!」

 

しかしシュプリームはまだ健在でサンライズは押し返されてしまう。

 

「消えろ!消えろぉお!」

 

シュプリームから光線が放たれてサンライズは盾で防ぐが防ぎ切れずに盾が粉砕されるとそのまま吹き飛ばされてしまう。

 

「ぐあああ!」

 

その直後、サンライズは何者かによって受け止められた。そこにいたのは倒れたはずのバタフライである。

 

「バタフライ……どうして……」

 

「私がサンライズを置いて逝く訳ないでしょ。でも、心配してくれてありがとう」

 

「お前らの見出した奇跡、全部消してやる!」

 

「「させないよ!」」

 

その言葉と共にまた思い出が流れていく。そこに現れたのはキュアホイップ、キュアエールの二人だ。更にキュアサマー、キュアプレシャスも戻ってくる。

 

「はあっ!」

 

「やあっ!」

 

「ソウヤ、行くよ!スタイルチェンジ!ヤタガラス!ひろがる!サンライズエクリプス!」

 

サンライズから投げられた巨大な槍をシュプリームは受け止めるが、その威力の前に押し込まれていく。だが、それだけではシュプリームを追い詰めるには至らない。

 

「こんな物で……終わると思うな!」

 

「だあっ!」

 

すかさずサンライズは通常の姿で突撃するとラッシュを叩き込む。そして、他のプリキュア達も連携しつつ攻撃を仕掛けてダメージを蓄積させていった。

 

「サンライズ!私の力を使って!」

 

すると先程までスカイやプリズムと共に光を灯していたマジェスティの胸から光と共にスカイトーンが射出。サンライズがそれを掴むと新たなスカイトーンとして目覚めた。

 

「これは、エルの……マジェスティの力が入ってるスカイトーン……使わせてもらうよ!」

 

サンライズはその新たなスカイトーンをスカイミラージュに装填するとその力を解放する。

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!スタイルチェンジ!サンダーバード!」

 

その瞬間どこからともなく雷を纏った鳥、サンダーバードが飛来し、その姿がアーマーに変化するとサンライズへと纏われる。赤を基調としたコスチュームに金のラインやアクセントが入りまるで王様のような威厳を物にかわっていく。手には雷をも切ったとされる刀、雷切を模した刀を持っていた。

 

「キュアサンライズ・サンダーバードスタイル!」

 

これがサンライズとマジェスティの力を束ねた姿、キュアサンライズ・サンダーバードスタイルである。

 

「はあっ!」

 

するとサンライズの刀から雷が迸ると攻撃に雷属性が付与。シュプリームは前の戦いでこれを見ていなかった上にその力は他のスタイルチェンジとは一閃を画する存在であるが故に対応が遅れた。

 

「くっ……」

 

「喰らえ!雷撃残光!」

 

サンライズからの雷撃を纏わせた斬撃波がシュプリームを襲うとシュプリームはそれをまともに喰らって体を麻痺させる。

 

「ぐうっ……」

 

「行くぜ!ひろがる!サンライズライトニング!」

 

サンライズから繰り出された電撃の一閃がシュプリームを切り裂くとその直後に何発も斬撃が決まり、シュプリームは冷や汗を流す。

 

「こんな……馬鹿な……」

 

するとサンライズの姿が元に戻るのと同時にサンダーバードのスカイトーンが消失。どうやら一時的な力だったようだ。それでもプリキュア達が勢いづくには十分すぎる活躍をしたと言える。そして、スカイとプリズムの灯した光による再生も佳境に差し掛かっていた。

 

「くっ……これ以上好き勝手は……」

 

シュプリームが技を放つとスカイとプリズムを狙う。しかし、それは二つの光が阻止。そこに現れたのはキュアブラック、そしてキュアドリームだ。

 

「お待たせ!」

 

「私達はどうすれば良い?」

 

「世界をもう一度繋げたいんです!」

 

「プリキュアの力で壊れた世界をまた一つに!」

 

「よくわからないけどなるべく頑張るぞ!」

 

「やるぞー!決定〜!」

 

それからこの世界に蘇ったプリキュア達は光が導くままに天へと登っていく。そして、最高の奇跡が光を放った。

 

プリキュアの変身アイテムが次々と出現して光を放っていくと消されていたプリキュアが次々と復活を遂げていく。

 

「ブラック!」

 

「ホワイト!」

 

キュアブラックとキュアホワイトが光の中で手を繋ぐと同時に壊されていた世界が完全に復活。そして、プリキュア達が戦っていたフィールドも再生し、シュプリームの前に総勢八十人のプリキュアが勢揃いするのであった。

 

「ぷっ……くく……あははは!!これだから君達プリキュアは面白い……。前言を撤回しよう。これこそが僕が求めていた力だ。そして、その力の一つがわかった気がするよ」

 

その瞬間、シュプリームが手を翳すと突如として周囲に黒い雷が降り注ぐ。そしてプリキュアのような姿をした大量の兵士達が姿を現す事になる。加えて、その兵士を統率する十八体の一際大きな怪物も出てきた。

 

「仲間が多ければ強いんだろう?なら、これで僕もプリキュアと同じ力を手にした事になる」

 

「そういう問題じゃないからね!?」

 

「私達は一人じゃない……皆の想いが読んだ奇跡の意味をまだあなたは知りません」

 

「じゃあ教えてもらおうか。本当の強さというものを」

 

「ああ、たっぷりと教えてやるよ」

 

「おい、サンライズ。こんな良い雰囲気の場面に俺を呼ばないなんて無いよな?」

 

するとサンライズからトワイライトが登場。プリキュア側が一人増えた所で全員が出揃う。そして、シュプリームが手を翳すとエネルギー砲が放たれる。プリキュア達はその爆発と同時に飛び出すと目の前にひろがる敵との交戦を開始。こうして、決戦の火蓋は切って落とされるのであった。




また次回もお楽しみに。


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総力戦!プリキュア対怪物軍団

シュプリームが召喚した兵士達に怪物達。それらは総勢八十一人のプリキュア達との交戦を開始する。

 

「だぁああっ!」

 

プリキュア達はシュプリームの出した兵士達よりも数は少ないがその力はプリキュア達が上回っており、次々と蹴散らされていく。

 

ブラックとホワイト、ルミナスの三人の中でブラックとホワイトの黄金コンビが前に出て無双する中、ルミナスが支援を行う。

 

「ルミナス!ハーティエル・アンクション!」

 

ルミナスの技によって兵士達と怪物はその動きを強制停止させられるとそのまま突撃したブラックとホワイトが蹴散らしていく。

 

「ホワイト、ルミナス、三人で決めるよ!」

 

「ええ!」

 

「はい!」

 

三人は怪物の前に集結するとブラックとホワイトが手を繋ぎ、ルミナスがエネルギーを照射する。

 

「漲る勇気!」

 

「溢れる希望!」

 

「光輝く絆とともに!」

 

「「エキストリーム!」」

 

「ルミナリオ!」

 

それは三人による合体技。ブラックとホワイトが突き出した手の前にハート型のマークが出ると光のエネルギーが解放された。その一撃は怪物と兵士達を一瞬にして光の力で粉砕する事になる。

 

ブルームとイーグレットの二人は大地と大空の力で兵士を接近しつつ相手取る。すると兵士達は接近されないように遠距離からエネルギー波を使って攻撃するようになってきた。

 

「この姿のままじゃ不利ね」

 

「だったら姿を変え……」

 

その瞬間、兵士達はチャンスと見たのか一斉に攻撃を仕掛けてくる。だが、それが命中する寸前に光と共に二つの影が現れた。それは月の力を取り込んだ満に風の力を取り込んだ薫である。

 

「満さん!」

 

「薫さん!」

 

「「私達四人の力を合わせるわよ!」」

 

「「はい!」」

 

四人は並ぶとそれぞれの精霊の力を解放。浄化技を発動した。

 

「精霊の光よ!」

 

「命の輝きを!」

 

「希望へ導け!」

 

「全ての心!」

 

「「「「プリキュア!スパイラルハート!スプラッシュスター!」」」」

 

四人が同時に両手を突き出すと精霊の光が四つ同時にエネルギー波として飛んでいき、兵士と怪物を浄化する事になる。

 

ドリーム、ルージュ、レモネード、ミント、アクア、ミルキィローズの六人はそれぞれが自分のスタイルで敵を殲滅していく。

 

「はあっ!」

 

まずはミルキィローズが地面を殴りへこませると兵士達が足場を失って宙に浮く。そこに五人が次々と蹴りをぶつけて倒していった。

 

「皆!行くよ!」

 

「「「「「Yes!」」」」」

 

するとプリキュア5の五人の手にキュアフルーレが、ミルキィローズの手にミルキィミラーが変化した青い剣が手にされる。

 

「希望の!」

 

「「「「赤いバラ!」」」」

 

「奇跡の青いバラ!」

 

プリキュア5の五人の上に五つの赤いバラが召喚されると続けてミルキィローズの上にも青のバラが出現。

 

「「「「「「伝説の力を今一つに!」」」」」」

 

そして、六つのバラは一つになると巨大なつぼみに変化。そして六人が同時に剣を突き出す。

 

「「「「「「プリキュア!ミルキィローズ!フローラル・エクスプロージョン!」」」」」」

 

それは六人の力が合わさった技でありそのつぼみが花開くと巨大なバラが怪物を包み込む。そして、その体を浄化するのだった。

 

ピーチ、ベリー、パイン、パッションの四人は一列に並ぶと既に技のモーションに入っていた。

 

「プリキュア・フォーメーション!レディー……ゴー!」

 

ピーチの掛け声と共に四人は兵士達を倒しながら親玉の怪物目掛けて掛けていく。

 

「ハピネスリーフ!セット!」

 

まずはパッションがハートのエネルギーを手にするとパインに投げる。

 

「プレアーリーフ!セット!」

 

次はパインが二枚目をセットしてベリーへ、更にベリーが三枚目を装填する。

 

「エスポワールリーフ!セット!」

 

三人が繋げたバトンは最後にピーチへと渡されてピーチが最後の一つのセットした。

 

「ラブリーリーフ!セット!」

 

そして最後はエネルギーは四葉のクローバーの形となり、四人がそれに乗る。そして怪物をスキャンするように上から下に移動するとそのまま技が発動された。

 

「「「「ラッキークローバー!グランドフィナーレ!」」」」

 

これにより怪物はエネルギーに包まれて完全に浄化されていく事になる。

 

ブロッサム、マリン、サンシャイン、ムーンライトの四人はブロッサムとマリンがコンビで、サンシャインとムーンライトは個人でもかなりの強さなので一人ずつで兵士達を相手取る。

 

「今回も暴れるっしゅよ!」

 

「程々にね……」

 

いつも通りマリンが張り切る中、ブロッサムは宥めるがこの調子ならいつも通り暴れるだろう。

 

ブロッサムとマリンが二人揃って怪物と戦う中、サンシャインとムーンライトが格闘戦であっという間に兵士を殲滅していく。

 

「「プリキュア!フローラルパワー!フォルテッシモ!」」

 

そんな中ブロッサムとマリンの同時攻撃が怪物に決まり、怪物は怯む。そしてその隙を四人は見逃さない。

 

「一気に決めます!」

 

それから四人はスーパーシルエットと呼ばれるフォームへとチェンジ。すかさず技を発動した。

 

「「「「花よ、咲き誇れ!」」」」

 

その言葉と共に四人の背後に巨大な女神が現れると四人はそれぞれフラワータクトとシャイニングタンバリンを手に演奏を始める。

 

「「「「プリキュア!ハートキャッチオーケストラ!」」」」

 

四人の叫びと共に女神は怪物の真上に移動すると巨大な拳を振り下ろす。そして、怪物は浄化されていった。

 

メロディ、リズム、ビート、ミューズの四人は呼吸を合わせて連携しつつ敵を倒していく。そんな中、怪物がエネルギー砲を放とうとチャージを開始した。

 

「来るよ!」

 

「四人の息を合わせて!」

 

「私達のメロディを!」

 

「響かせましょう!」

 

「「「「プリキュア!パッショナート・ハーモニー!」」」」

 

四人が同時に叫ぶと目の前にト音記号を模したエネルギーから光の閃光波が飛び出す。そしてそれは兵士を薙ぎ払いながら怪物に肉薄。怪物はそれをエネルギー砲で抑えようとするがエネルギー同士の激突はプリキュアに分があり、そのまま押し込まれていく。

 

「「「「はぁああっ!」」」」

 

そして、怪物にエネルギーがぶつかると爆発して怪物を弱らせる。そこにすかさず四人の最大の技を発動した。

 

「「「「出でよ、全ての音の源よ!」」」」

 

その瞬間、ヒーリングチェストから黄金に輝く巨大なクレッシェンドトーンが登場。

 

「「「「届けましょう。希望のシンフォニー!」」」」

 

すると怪物に向かって走る光の鍵盤の道が伸びると四人がその上に浮かび上がる。

 

「「「「プリキュア!スイートセッション・アンサンブル!クレッシェンド!」」」」

 

そのまま四人がクレッシェンドトーンに吸い込まれると一気に加速して怪物へと突撃。それが命中すると怪物の体は粉砕され、浄化される事になる。

 

「「「「フィナーレ!」」」」

 

ハッピー、サニー、ピース、マーチ、ビューティの五人はそれぞれの持つ属性を活かしつつ敵を倒していく。

 

「プリキュア!サニーファイヤー!」

 

「プリキュア!マーチシュート!」

 

サニーが炎のエネルギー弾をバレーのスパイクのように打ち出すとそれを怪物へと放つ。怪物はそれをエネルギー弾で押し返そうとするがそれをされないためにマーチがマーチシュートを連発。全ての攻撃が命中してダメージを負う中、ピースとビューティも兵士達を蹴散らしていた。

 

「プリキュア!ピースサンダー!」

 

「プリキュア!ビューティブリザード!」

 

「皆!プリンセスフォームだよ!」

 

ハッピーの言葉に全員がプリンセスキャンドルを使用。そのままプリンセスフォームへと変化。すると五人にロイヤルキャンディの力が上乗せさせる。

 

「届け!希望の光!」

 

「「「「「羽ばたけ!光り輝く未来へ!」」」」」

 

五人は召喚されたペガサスに乗ると不死鳥の輝きを宿す。そして、描かれた不死鳥が実体化すると五人の後ろに現れた。

 

「「「「「プリキュア!ロイヤルレインボーバースト!」」」」」

 

不死鳥の口から虹色のエネルギー波が放たれると怪物を飲み込んでその体を浄化。勝利する事になる。

 

「輝け!」

 

「「「「「ハッピースマイル!」」」」」

 

ハート、ダイヤモンド、ロゼッタ、ソード、エースの五人も他のプリキュアに負けまいと敵を相手する。

 

「プリキュア!ダイヤモンドシャワー!」

 

ダイヤモンドが発動した氷のエネルギーが込められた技は相手の足を凍結させて身動きを取れなくする。

 

「プリキュア!スパークルソード!」

 

「エースショット!ばきゅーん!」

 

ソードとエースが繰り出した技が合わさると敵を粉砕していく。それを見た怪物が五人を踏み潰そうと足を振り上げるが、そこをハートとロゼッタが同時に蹴ることで跳ね返す。

 

「皆!」

 

「「「「うん!」」」」

 

ハートが手にマジカルラブリーハープを手にするとそれを奏でる。その瞬間、五人の背中に白い翼が生えて五人は五角形を描くように配置につく。そして、そこに魔法陣のようなものが現れた。

 

「「「「「プリキュア!ロイヤルラブリーストレートフラッシュ!」」」」」

 

魔法陣からプリズム状のエネルギー波が飛ぶと怪物を浄化。撃退する事になる。

 

ラブリー、プリンセス、ハニー、フォーチュンの四人は常時発動可能な腰についた翼を使い、空を舞いながら攻撃を仕掛けていく。

 

「プリンセス!弾丸マシンガン!」

 

「ラブリーライジングソード!」

 

「ハニースタンプ!」

 

「プリキュア!スターダストシュート!」

 

プリンセスが連続で放つエネルギー弾で撹乱する中、他の三人も次々と技を使い、混乱した相手を倒していく。そして、怪物からの攻撃が放たれようとする中、その攻撃のタイミングで四人はその姿をイノセントフォームに変えていく。

 

「「「「ハピネスチャージプリキュア!イノセントフォーム!」」」」

 

それから突如として四人はイノセントハーモニーマイクを手に歌い始める。その間にエネルギーが高まっていき、四人の体はそれぞれのモチーフカラーに染まる。

 

「「「「プリキュア!イノセントプリビケーション!」」」」

 

四人は光のエネルギーとなって怪物に突撃。その光は四人で出せる技の中では最高の出力を誇る。

 

そして、四人の攻撃が着弾した瞬間、四人の光が順番に輝き怪物は撃破される事になった。

 

フローラ、マーメイド、トゥインクル、スカーレットの四人はお姫様らしい優雅な戦いぶりで兵士を薙ぎ倒す。

 

「プリキュア!バブルリップル!」

 

マーメイドから放たれた泡による弾幕攻撃が兵士達を惑わせている間にトゥインクルが続けて技を放つ。

 

「プリキュア!ミーティアハミング!」

 

無数の流れ星が次々と兵士に命中して倒されていく中、フローラとスカーレットは同時に地面に拳を叩きつける事で発生する衝撃波で兵士を吹き飛ばしていく。

 

すかさず四人は最強の浄化技を使うためにプリンセスパレスを召喚。そして、キーをセットすると四人の姿が変化していく。

 

「「「「ドレスアップ・ロイヤル!」」」」

 

そして、怪物をエネルギーの中に閉じ込めると四人は遥か上空からエネルギーを纏い突撃。

 

「「「「プリキュア!グラン・プランタン!」」」」

 

プリキュア達が四つの魔法陣を通過してから虹の輝きとなって怪物にぶつかると怪物が桜の花びらが舞うエネルギーボールに包まれる。

 

そのまま怪物は浄化され、最後は花火となって消え去るのであった。

 

「ご機嫌よう」

 

ミラクル、マジカル、フェリーチェの三人は魔法を駆使しつつ敵である兵士と怪物を圧倒。

 

「「プリキュア!ドリルキック!」」

 

ミラクルとマジカルが手を握ってドリルのように回転しつつ敵へと蹴りを繰り出す。すると怪物は二人が着地した直後を狙って拳を叩きつけようと振りかぶった。

 

「リンクル!ピンクトルマリン!」

 

そこにフェリーチェが盾を召喚して防御する。更に二人は呼吸を合わせて同時に拳を怪物に打ち込むと怪物はよろける。そのまま三人の姿を変化させた。

 

「「「キュアップ・ラパパ!アレキサンドライト!」」」

 

三人はその姿をアレキサンドライトスタイルへと変化。これにより、三人での浄化技を使えるようになる。

 

「巡り合う奇跡よ!」

 

「繋がる魔法よ!」

 

「育まれし幸せよ!」

 

「「「今、私達の手に!」」」

 

するとモフルンが乗ったレインボーキャリッジが開き、中に全てのリンクルストーンが装填。そこから三人の元にプレシャスブレスが装着される。

 

「「「フル・フル・フルフルリンクル!プリキュア・エクストリーム・レインボー!」」」

 

その瞬間、怪物が三人を攻撃しようと突撃するが、それは三人が召喚した魔法陣によって封じられると共に魔法陣から虹のエネルギーが放出される。

 

「「「キュアップ・ラパパ!虹の彼方に!」」」

 

そのまま怪物はエネルギーによって遥か彼方に飛ばされると浄化され、虹がかかると三人は微笑むのであった。

 

ホイップ、カスタード、ジェラート、マカロン、ショコラ、パルフェの六人は手にしたキャンディロッドとレインボーリボンによる遠距離からの攻撃で怪物を対処していた。

 

「マカロン、待たせて悪かったな」

 

「いいえ、退屈はしなかったし、大丈夫よ」

 

「それは良かった」

 

ショコラとマカロンがそう話す中、ジェラートは氷を纏わせた腕で何発か怪物を殴ると怪物は部分的に凍りついて動きが鈍る。そこにカスタードが技を使った。

 

「カスタード・イリュージョン!」

 

それによって怪物が混乱。そこにホイップとパルフェがクリームを模したエネルギーで怪物にダメージを与えていく。

 

「キラキラルクリーマーで決めるよ!」

 

ホイップの言葉に全員が頷くと六人はキラキラルクリーマーを出し、スイーツキャッスルを装填。その姿を変えていく。

 

「「「「「「レッツラお着替え!」」」」」」

 

 

六人はアラモードスタイルに変わると自らの心にあるキラキラルを絞り出してクリスタルアニマルに込める。

 

「「「「「「キラッと輝け!クリスタルアニマル!」」」」」」

 

その瞬間、それぞれのモチーフとなった動物が具現化すると六人はそれに乗り、怪物の周りを飛び回りながら怪物へとキラキラルによる集中砲火を行い、浄化していく。

 

「「「「「「プリキュア!ファンタスティックアニマーレ!」」」」」」

 

六人による浄化技を受けた怪物はその体の周りをスイーツの形をしたエネルギーに閉じ込められて浄化されていく。そして最後は動物達が綺麗に整列して完全に消失する事となった。

 

エール、アンジュ、エトワール、マシェリ、アムールの五人もそれぞれで連携を取りつつ攻撃を仕掛けていく。

 

「皆!これを使って!スタースラッシュ!」

 

するとエトワールの周囲に星々が飛んでいく。他の四人もそれに飛び乗るとそのまま怪物や兵士を撹乱。そのまま五人はそれぞれの技で敵を蹴散らした。

 

「皆、このまま決めるよ!」

 

するとメモリアルキュアクロックを使い、五人はその姿をマザーハートスタイルに変化。手にプリキュアミライブレスを付けるとはぐたんが現れ、そのまま六人での浄化技を解き放つ。

 

「「「「「HGUっとプリキュア!今ここに!」」」」」

 

その瞬間、五人の後ろに巨大な黄金の女神が出現。それから五人が円陣を組んでそれぞれ一人ずつ声を放つ。

 

「ワン・フォー・オール!」

 

「オール・フォー・ワン!」

 

「ウィー!アー!」

 

「プリー!キュアー!」

 

「あしたにー!エールをー!」

 

「「「「「ゴー………ファイッ!」」」」」

 

最後に五人は重ねていた腕を天に掲げて更に声を合わせて叫ぶ。

 

「「「「「皆でトゥモロー!」」」」」

 

そのまま女神は閃光のエネルギーに変化すると怪物に突撃。怪物に命中するとその体を完全に浄化していくのであった。

 

スター、ミルキー、ソレイユ、セレーネ、コスモの五人はそれぞれが持つプリンセススターカラーペンを使いつつ技を発動していく。

 

「プリキュア!おひつじ座!スターパンチ!」

 

「プリキュア!しし座!ミルキーショック!」

 

「プリキュア!さそり座!ソレイユシュート!」

 

「プリキュア!いて座!セレーネアロー!」

 

「プリキュア!レインボースプラッシュ!」

 

五人の技が一列に並ぶと次々と直線上の兵士を倒していき、残るは怪物のみだ。するとそこにユニコーンの姿をしたフワが出てくると五人の力を束ねるために十二本のプリンセススターカラーペンを一つに結集。それはシャイニートゥインクルペンとなる。

 

「シャイニートゥインクルペン!」

 

「声を重ねるフワ!」

 

「キラキラ〜!」

 

「「「「「トゥインクル!」」」」」

 

「キラキラ〜!」

 

「「「「「トゥインクル!」」」」」

 

フワの言葉と共に五人は声を重ねるとフワの言葉に続いていく。するとフワから星の光が飛び出すとそれが弾ける。

 

「「「「「イマジネーションの輝き!なりたい自分に!」」」」」

 

そのまま五人の頭にティアラが被さるとその姿をトゥインクルスタイルに変化。

 

「星の力輝くフワ〜!」

 

「「「「「想いを重ねて!」」」」」

 

フワやプリキュアの叫びと共にプリキュア達の前に巨大な星のエネルギーと十二星座のマークが現れる。

 

「「「「「プリキュア!スタートゥインクル・イマジネーション!」」」」」

 

そのまま巨大な星が怪物へと命中し、その直後に十二星座の力が次々と吸い込まれると怪物は浄化されて倒される事になった。

 

グレース、フォンテーヌ、スパークル、アースの四人はエレメントの力を借りつつ兵士を倒していく。

 

「葉っぱのエレメント!」

 

「氷のエレメント!」

 

「火のエレメント!」

 

アースを除く三人がエレメントのエネルギーで攻撃する中、アースは一人怪物を相手する。

 

「はあっ!」

 

アースは怪物からの攻撃をことごとく躱すとそのままダメージを蓄積させていく。しかし、一瞬の隙を突かれてエネルギー砲が放たれてしまった。

 

「「「プニシールド!」」」

 

だがそれは三人のプニシールドによって防がれる事になり、そのままラテの力で最強の技を発動する。

 

「「「「ヒーリングっどアロー!」」」」

 

その言葉と共にエレメントボトル、ヒーリングアニマル、アースウィンディハープの力が結集。

 

「「「「ヒーリングアニマルパワー全開!」」」」

 

そのままヒーリングっどアローのダイヤルが回転し、それぞれパートナーに対応するヒーリングアニマルの顔が上になる。そのまま四人はその姿をスペシャルヒーリングっどスタイルに変えた。

 

「「「「アメイジングお手当て準備OK!」」」」

 

それからアローの引き金を引くと虹色のエネルギーがチャージされていく。

 

「「「「OK!」」」」

 

するとアローから半透明のアニマル達が飛び出してパートナーの肩に乗ると技をいよいよ発動する。

 

「「「「プリキュア!ファイナルヒーリングっど・シャワー!」」」」

 

叫びと同時にアローから四色の螺旋状のビームを放ち、それが怪物を包み込むとその体を一気に浄化。怪物は撃破される事になる。

 

「ヒーリングッバイ〜」

 

「「「「お大事に!」」」」

 

サマー、コーラル、パパイア、フラミンゴ、ラメールの五人は元気いっぱいに走っていくと迫り来る敵を次々と倒していく。

 

「どんどん行っちゃうよ!」

 

「「はあっ!」」

 

サマー、フラミンゴ、ラメールは前衛として力強い戦いを展開。それをフォローするようにコーラルのペケバリア、パパイアの目からビームを放つ攻撃で撹乱していく。

 

「皆、マリンビートダイナミックだよ!」

 

「「「「オッケー!」」」」

 

五人は怪物相手にいきなり最大出力の技を使うためにトロピカルハートドレッサーにマリンハートクルリングをセットする。

 

「「「「「おめかしアップ!エクセレン・トロピカルスタイル!」」」」」

 

五人の言葉と共に五人はその姿をエクセレン・トロピカルスタイルへと変えていく。

 

「「「「「5つの力、海に響け!」」」」」

 

五人の言葉と共に巨大なジンベエザメが出現。五人はそれを纏いつつ相手へと突撃。直線上にいた兵士達は怪物を守ろうとするがまるで歯が立たずに次々とやられていく。そして、五人は技を発動した。

 

「「「「「プリキュア!マリンビートダイナミック!」」」」」

 

サメが怪物の前に辿り着くと怪物を尾ビレで思い切り打撃をぶつけるとその体をV字型のエネルギーで包む。

 

「「「「「ビクトリー!」」」」」

 

そのまま五人ははっちゃけた顔になると勝利を宣言。それと同時に怪物は浄化される事になる。

 

プレシャス、スパイシー、ヤムヤム、フィナーレはそれぞれの持ち技を活かしつつ攻撃を仕掛けていた。

 

「バリバリカッターブレイズ!」

 

ヤムヤムの斬撃波で道を切り開き、そこを三人が駆けていく。そこに怪物はエネルギー砲を繰り出してきた。

 

「はあっ!」

 

それをスパイシーが盾を召喚して防ぎつつ二人が前に出る。そして、更に出てきた兵士をフィナーレが引き受けて最後にプレシャスが突撃する。

 

「プリキュア!3000キロカロリーパンチ!」

 

それは2000キロカロリーパンチを更に強化した一撃でそれが怪物に命中するとあまりの威力に吹き飛ばされる。その隙を四人は見逃さない。そして、プレシャスに付いていてコメコメが人の姿に変わると技を発動した、

 

「コメコメの力を皆に!」

 

「「「「パーティキャンドルタクト!」」」」

 

四人がパーティキャンドルタクトを手にするとそれぞれ言葉を叫んでいく。

 

「笑顔のパワー!」

 

「分け合うパワー!」

 

「情熱のパワー!」

 

「正義のパワー!」

 

「プリキュア!パーティアップ!」

 

四人はその姿をパーティアップスタイルへと変化。それぞれの力を増幅させる。

 

「「「「心を一つに!」」」」

 

四人がハートを描くとそれがエネルギーとして飛んでいき、そのままプリキュア達もエネルギーの元に移動。

 

「「「「プリキュア!ライト・マイ・デリシャス!」」」」

 

四人がエネルギーを纏って突撃すると怪物の周りがハートで埋め尽くされ、浄化のエネルギーに当てられていく。

 

「オナカイッパ〜イ!」

 

そして四人がキャンドルの火を消すとコメコメと共に最後にお決まりの言葉を言い放つ。

 

「「「「「ご馳走様でした!」」」」」

 

サンライズ、スカイ、プリズム、ウィング、バタフライ、ウェザー、マジェスティ、トワイライトはそれぞれペアを組むと二人一組で次々と出てきた敵を倒していく。

 

「やあっ!」

 

「たあっ!」

 

マジェスティとサンライズが前に出ると怪物と戦い、その間に他の六人が敵を倒していく。

 

「「プリキュア!アップ・ドラフト・シャイニング!」」

 

「プリキュア!タイタニックレインボー!アタック!」

 

「ひろがる!トワイライト・ジ・エンド!」

 

浄化技が次々と決まる中、それでも怪物は八人を倒してしまおうと迫ってくる。

 

「スカイ、プリズム、あの技で決めよう!」

 

「……ウィング、バタフライ、ウェザー、マジェスティ、俺達五人であの技行くぞ」

 

「あの技?」

 

「今の俺達五人がかりならあの技の反動を抑えられる」

 

「もしかしてアレですか!?」

 

「えっと、取り敢えず頑張ってみます!」

 

それから五人はそれぞれエネルギーを放出するとそれが五人の足元に巨大な円盤を生成。そのまま空へと上昇しつつ円盤から巨大な下降気流が発生する。

 

「「「「「プリキュア!ダウンバーストインパクト!」」」」」

 

五人が同時に突撃すると怪物を押し込んで一気に叩きつけせる。そこに三人からの技が発動された。

 

「「「プリキュア!クリアスカイ・サンシャイン!」」」

 

そのまま三人からの浄化技も上乗せされて怪物はその体を浄化されていく事になる。

 

「スミキッタァ〜」

 

これにより、召喚された怪物と兵士達は全滅し、残すはシュプリームのみとなるのであった。




また次回もお楽しみに。


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シュプリームとの決着 新たなる一歩

怪物達が倒されてただ一人残ったシュプリーム。シュプリームはそれを見てすかさず自らの体を黒く染め上げて巨大化する。

 

「流石にやるねぇ。でも、結局僕には勝てないよ!」

 

そう言うシュプリームはエネルギー弾を連射。それを見たロゼッタ、ミント、ルミナス、コーラルの四人がそれぞれ盾を展開し、防御する。

 

「アゲアゲで行くよ!」

 

「夢見る乙女の底力!受けて見なさい!」

 

バタフライが盾を召喚するとそれを前に蹴り出し、それに合わせるようにドリームがプリキュア・シューティングスターを発動。二つの技が合体してシュプリームに激突する。

 

「「はあっ!」」

 

続けてブルームとイーグレットがその姿をキュアブライト、キュアウィンディに変化させるとそのまま技を放つ。

 

「「プリキュア!スパイラルスター・スプラッシュ!」」

 

そこに重ねるようにしてミラクルとマジカルもトパーズスタイルに変化。更に想いが重なった結果、ダイヤ、ルビー、サファイアスタイルのミラクル、マジカルが同時に召喚されると八人が一気に攻撃を仕掛ける。

 

「チッ!」

 

シュプリームはそれを腕をクロスして受け止める。そこに続けるようにホイップ、カスタード、パルフェ、パイン、フィナーレ、スパイシー、ヤムヤム、レモネードの八人が技を使うとシュプリームをケーキ型のエネルギーに閉じ込める。

 

「なっ!?」

 

「プリキュア!ぱんぱかパパイアショット!」

 

そして、シュプリームがケーキを粉砕する直前にパパイアの技が上から決まり、大爆発と共にシュプリームはダメージを受ける。

 

「何故だ。前の時はプリキュアの技は大して効かなかったはずなのに……」

 

シュプリームは反撃のための技を放とうとすると突如としてその体に電撃が走り、動きを僅かに遅くさせられる。理由はミルキー、ピースが電撃を喰らわせたからだ。そのタイミングでマーメイドとラメールが激流を足に命中させてシュプリームのバランスを崩す。

 

「ぐっ!?」

 

「良し、ひろがる!トワイライト・ジ・エンド!」

 

そこにトワイライトが強力な一撃を叩き込んでシュプリームを怯ませた。更にハート、ビューティ、アクア、マーチ、ルージュ、サニー、フラミンゴの飛び道具持ちのプリキュア達が次々と攻撃を加えていく。

 

「次は私が!ヒーローガール!ウェザーボール!」

 

「「プリキュア!フローラルパワー・フォルテッシモ!」」

 

追撃としてウェザー、ブロッサム、マリンが同時に技を放つ。今回は前回の反省を活かしてプリキュア達はシュプリームに反撃させないために流れるような連続攻撃で一撃でも多く相手にダメージを与えていく。

 

「ぐ……だが、その程度の攻撃で……」

 

「「はあっ!」」

 

シュプリームが拳を繰り出すものの、マジェスティとミルキィローズの二人が同時にパンチを繰り出して対抗。拳を相殺する。

 

「このっ!」

 

シュプリームは足を上げて踏み潰そうとするが、その動きが強制的に止まる。シュプリームがそれを見るとそこにはフォンテーヌ、ジェラート、ダイヤモンドの三人がシュプリームの足を凍結させて動きを止めていた。

 

「ひろがる!ウィングアタック!」

 

更にウィングが突撃し、シュプリームの腕を弾き飛ばすとそのままスター、ソレイユ、セレーネ、アース、サンシャイン、ムーンライト、エトワール、トゥインクルの八人による星々が煌めくような攻撃にシュプリームはダメージを負う。

 

「プリキュア!ピンキーラブシュート!」

 

「プリキュア!ハッピーシャワーシャイニング!」

 

シュプリームが反撃しよう起き上がった瞬間、その胸にラブリーとハッピーの技が激突。すかさずビート、マカロン、コスモ、スパークルからの攻撃も命中する。

 

「ここで退いたら女がすたる!」

 

「私達のメロディを響かせよう!」

 

その言葉に応えるようにメロディ、リズム、ミューズ、マシェリ、アムール、パッションの楽器を使うプリキュア達も追撃をかけた。

 

「この僕がここまで押されるなんて……」

 

「プリキュア!オリエンタルドリーム!」

 

「プリキュア!リボンハートエクスプロージョン!」

 

「プリキュア!ラブサンシャイン・フレッシュ!」

 

「プリキュア!エスポワールシャワー・フレッシュ!」

 

フォーチュン、ハニー、ピーチ、ベリーらも技を使いつつシュプリームを滅多打ち。シュプリームも流石にここまでやられて黙ってる訳にはいかないのか反撃する。だが、その瞬間、サンライズのスカイトーン達が輝くとグリフォンスタイル、ドラゴンスタイル、ペガサススタイル、フェニックススタイルのサンライズが同時降臨。サンライズの本体と共に技を放つ。

 

「「「「「ひろがる!アニマルハート!」」」」」

 

グリフォン、ドラゴン、ペガサス、フェニックスの姿をしたエネルギー弾とサンライズ本体からの強力な火炎のエネルギーが合体し、シュプリームからの技を受け止める。

 

「なっ……」

 

技が相殺されたタイミングでエース、プリンセス、フローラ、スカーレットが飛び出すと四人同時に技を出してシュプリームを下がらせる。

 

「ホーリーソード!」

 

「ショコラ・アロマーゼ!」

 

ソードとショコラからの技が放たれると持ち直そうとしたシュプリームの足に命中。続けてプリズムとグレースから同時に技が放たれる。

 

「ヒーローガール!プリズムショット!」

 

「プリキュア!ヒーリングフラワー!」

 

技が命中して爆発を起こす。そしてシュプリームは怒りを露わにしていた。

 

「クソッ……何で前は倒せたはずの相手にここまで苦戦するんだ……」

 

するとシュプリームの目にプーカが映る。それを捉えたシュプリームはプーカへと攻撃を放った。

 

「お前がいるせいだ。お前がいなければ僕が勝っていたのに!!」

 

しかし、その攻撃はアンジュとフェリーチェが受け止める。

 

「プーカは……悪くなんかない!」

 

「あまねく生命は祝福されるものです!」

 

二人はそれでもシュプリームからの攻撃を防ぎ切る事はできずに吹き飛ばされてしまう。それをサンライズの分身達が受け止めると分身達は役目を終えて消えていく。

 

「ならここで終わらせてやる!」

 

シュプリームからの腕が迫る中、サンライズとスカイとプリズムが腕の中に割って入るとプーカが潰されてしまわないように緩衝材になる。

 

「ぐううっ……プーカは今生きてるんだ。それを気に入らないからってお前が潰す権利はねーんだよ!」

 

「そうです!」

 

「絶対にやらせはしない!」

 

「何でもできる!何でもなれる!フレッ!フレッ!プーカ!」

 

エールがプーカを応援。するとプーカの元に光が集っていくとプーカの姿が変化。その輝きにシュプリームが目を眩まされるとプーカは人の姿になるとピンクと白を基調としつつ、キュアシュプリームと瓜二つの容姿であった。

 

「キュア……プーカ!」

 

「喋った!?」

 

「やったじゃねーかよ。俺も……俺達も負けてられない!」

 

その瞬間、トワイライトがサンライズと姿を重ねるとエビリティサンライズにパワーアップ。

 

サンライズとプーカはシュプリームへと拳を叩きつけるとそのタイミングでスカイ、プレシャス、サマーが同時に技を放つ。

 

「プリキュア!おてんとサマーストライク!」

 

「プリキュア!プレシャス・トライアングル!」

 

「ヒーローガール!スカイパンチ!」

 

三人の技が合わさると共にシュプリームの核となる胸にある緑のエネルギー体に亀裂を入れさせられる。

 

「ぐあああ!!」

 

「プリキュアの 美しき魂が!」

 

「邪悪な心を打ち砕く!」

 

「「プリキュア!マーブルスクリュー・マックス!」」

 

「「ひろがる!エビリティフィナーレ!」」

 

それは前回の戦いのリベンジと言うべきエビリティサンライズとプリキュア・マーブルスクリュー・マックスの合体技でその一撃は先程亀裂の入ったシュプリームの核の亀裂を更に深める。シュプリームはこれを受けて恐怖を感じ始めていた。

 

「馬鹿な、お前達は何なんだ!?」

 

シュプリームはヤケクソとばかりに全方位にエネルギー弾を連射する。だが、プリキュア達は手分けしてそれに対抗。攻撃を完全に凌ぎ切る。

 

「ッ!?」

 

「皆の想いを一つに合わせるんだ!」

 

サンライズの叫びと共にプリキュア達は光を放つとサンライズへと重なっていく。そして、その光は地上にいるプリキュアを応援する人々の想いを束ね、サンライズの姿を黄金の光で包んでいく。

 

「俺の名はレジェンドキュアサンライズ!」

 

それは全ての力を束ねたキュアサンライズの究極形態と言うべき姿である。

 

「お前ら如きに……僕が負けるはずがない!」

 

シュプリームが攻撃を放つ中、サンライズは手を翳すと盾が出現。攻撃を簡単に相殺するとシュプリームへと拳を叩きつける。その一撃はシュプリームを後ろへと後退させ、その隙を逃さずにサンライズは技を出す。

 

「シュプリーム、これが俺達プリキュアの力だ!」

 

それはサンライズが全てのプリキュアの幻影と共に繰り出すありとあらゆる敵を倒す事が可能となる一撃。

 

「プリキュア!オールスターズ・パンチ!」

 

プリキュア達による最大最強のパンチをシュプリームはまともに喰らうと核を完全に砕かれてその姿を元のキュアシュプリームに戻す。そして、周囲を光が包み込んだ。

 

それから無限にも思えた一瞬の後、サンライズ達は変身を解除した状態で地上に戻っており、シュプリームも地面に倒れていた。

 

「……僕が……負けたのか」

 

「ああ。……何で俺達に負けたのか、わかるか?」

 

あさひからのその言葉にシュプリームは小さく頷く。それは、プリキュア達の力の源を理解したような顔つきだった。

 

「なら、もう俺達は友達だ。よろしく、プリム」

 

それからあさひが差し出した手をシュプリームは掴む。その隣にはキュアプーカも立っており笑みを浮かべた。

 

「さてと、皆。一緒に鍋パーティ、しよっか!」

 

あさひがそう言うと早速プリキュア達はその準備に取り掛かる事になる。そして、プリキュア達が準備している間にシュプリームはプーカと話していた。

 

「プーカ、僕は……」

 

「大丈夫プカ。……シュプリームは変わった。だからもう一度歩みなおそう。僕達二人で……」

 

「そうだね」

 

それからあさひ達は平和な鍋パーティを始める。こうして、シュプリームの襲来に始まった一連の出来事は終わりを告げた。シュプリームはプーカと共に新たな一歩を踏み出すだろう。それがどのような道になるのか。それはまだ誰も知らない。




今回でプリキュアオールスターズF編も終了となります。それではまた次回もお楽しみに。


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番外編 しょうたの恋愛 ソウナとのデート

これはあさひ達が大人になり、あさひとあげはの間に生まれた息子、しょうたが中学二年生。つまり、あさひ達がソラ達と出会った頃ぐらいの年齢の話である。

 

「え!!ソウナちゃんと二人だけでお出かけするの!?」

 

そう言うのはしょうたの母のあげは。あげはの大きな声にしょうたは恥ずかしそうに頷く。

 

「そっか。しょうたも遂にソウナちゃんとデートかぁ……」

 

「ち、違うよ!デートなんかじゃないし……それに、向こうはそう思ってくれてないよ」

 

しょうたは自信なさげに俯く。それもそのはず。ソウナは中学生になった今でも父親であるソウヤを尊敬しており、血が繋がって無ければソウヤと結婚したいと言う程なのだ。

 

「……僕なんかソウナさんの恋愛対象にはとってもらえないよ……」

 

「しょうた、昔ソウナちゃんに会ったあの日からずっとソウナちゃんの事が好きだったものね。……大丈夫。きっとしょうたの気持ちは通じるよ」

 

そう言ってあげははしょうたの頭を撫でる。それをしょうたは恥ずかしそうにしていた。

 

「その撫でるのもうそろそろやめてほしい……。僕ももう子供じゃないんだから……」

 

「私やあさひにとってしょうたはいつまでも可愛い子供だよ」

 

「おにーちゃん、ソウナさんとのデートがんばって!」

 

そこにやってきたのはしょうたの妹のゆめだ。名前の由来は夢に向かって羽ばたいて欲しいというあげはの想いからつけられたらしい。

 

「ありがと、ゆめ。じゃあ、行ってくるよ」

 

それからしょうたはましろから借りたミラーパッドを使い、並行世界へと移動。それから並行世界のソラ達の住む王城の中に移動する。

 

「やっぱりここは広いな……。っと、こうしていたらダメだ。ソウナさんの所に行かないと」

 

それから行こうとすると並行世界のソラがしょうたの姿を見つけて声をかけた。

 

「あ、しょうた君!」

 

「ソラさん、こんにちは」

 

「こんにちは。ソウナなら部屋で準備してるので少しだけ待ってあげてください」

 

「はい!」

 

しょうたがそう返事するとソラがしょうたの事をジッと見る。それを受けてしょうたは恐る恐る聞いた。

 

「ソラ……さん?」

 

「やっぱり、ソウナの事が気になるんですか?」

 

「はい……昔からずっとソウナさんの事が好きだと自分で思ってます。でも、ソウナさんにとってはきっと僕なんか恋愛対象としては眼中にも無いと思えてしまって……」

 

しょうたは自信なさげな顔つきでいたが、そんなしょうたを見てソラは首を横に振る。

 

「大丈夫ですよ。しょうた君が諦めずにソウナにアプローチし続ければきっとソウナも振り向いてくれますから」

 

そう言っているとガチャリとドアが開く音がしてソウナが出てくる。この日のソウナは青を基調としつつ煌めく星々を模した服を着ており、その姿はとても可愛らしかった。

 

「待たせてすみません、しょうた君!」

 

するとしょうたはソウナのあまりの可愛らしさに見惚れてしまうとボーッとする。

 

「……しょうた君?」

 

「え!?あ、うん!ソウナさん……今日も綺麗だね」

 

そう言われてソウナは嬉しくなったのか微笑むとお礼の言葉で返す。

 

「ありがとうございます!しょうた君もカッコいいですよ」

 

ついでにしょうたはソウナからのカウンター(無意識)を喰らってしまい更に緊張してしまう。

 

「そ、ソウナさん。行こうか」

 

「はい!」

 

「ふふっ、しょうた君。頑張ってくださいね」

 

そう言って二人を見送るソラ。二人は街へと出ていくとスカイランドの出店を回っていく。

 

「ソウナさん、どこに行きたいとかある?」

 

「えーっとですね、私は服を一緒に選びたいです!」

 

「そっか……って一緒に!?」

 

「はい!しょうた君ってあげはさんの血を引いてるのでファッションセンスとかも良さそうですし、きっとパパの好みの服を選ぶのにも良いと思うので!」

 

その言葉を聞いてしょうたは心にダメージを負う。やはりソウナの頭の中にはソウヤの事が深く刻み込まれているのだ。

 

「……わかった。じゃあ、ソウヤさんが気に入る服を僕が探してみるね」

 

しょうたはソウナのためならばと引き受ける事を決意。ソウナと共に幾つもの服を見て回る。

 

「そういえば、ソウナさんはソウヤさんに昔森で助けられてそこから好きになったんだよね?」

 

「はい!パパは私が困っていたり寂しかったりした時に私の隣で親身になってくれて……。私はパパみたいな人とお付き合いしたいんです」

 

「あはは……大分ハードルが高そうだね……」

 

それを聞いてしょうたはかなり自信を無くしてしまう。今の自分はソウヤと比べると何もかも劣っている。優しさも強さも魅力も……自分にはどう頑張っても超えられない壁としてソウヤが立ち塞がっているように見えた。

 

「……でも、しょうた君の何事にもひたむきな所、私は好きですよ」

 

「そっか。ありがと。僕はパパみたいな立派な人になりたい。そう思って日々頑張ってるけど、でもパパの背中は遠くて。どんなに走って追いかけても追いつけない。そんな差があるように思えるんだ……」

 

そう言うしょうたの目は自分に自信を持てていない目であり、それを見たソウナはしょうたの手を取るとしょうたを激励する。

 

「大丈夫ですよ。しょうた君ならきっとあさひさんみたいなカッコいい大人になれます!あさひさんとあげはさんの血を継いでいるんですから」

 

しょうたはそう言われると自分が良い所を見せるべきなのにソウナにフォローされる自分が情けないと感じていた。

 

「ごめん、ソウナさん。少し顔を洗いに行ってくるね」

 

「わかりました!」

 

それからしょうたは洗面所の前に立つと顔を水で洗ってから自分を奮い立たせる。

 

「大丈夫、大丈夫。今度は自分がソウナさんの力になるんだ。いつまでもソウナさんに甘えたらダメだ。僕も頑張らないと……」

 

しょうたが気合いを入れていると突如として叫び声が聞こえてきた。しょうたが慌てて外に出ていくとソウナが人質として首元にナイフが突きつけられており、その後ろには不審者と思わしき人物がソウナを後ろからヘッドロックして拘束している。

 

何故こうなったのか。理由としては単純で、この付近で強盗をした不審者が追手から逃げる最中、一人しょうたを待っていたソウナを後ろからナイフを突きつけてから瞬く間にヘッドロックして捕まえてしまったからである。流石のソウナも不意打ちには弱かったようで殆ど抵抗する間も無かったのだ。

 

「ソウナさん!」

 

「くっ……離しなさい!」

 

ソウナがそう言う中、不審者はソウナの首元にナイフをちらつかせるとソウナは大人しくせざるを得なかった。

 

「くっ……どうしたらソウナさんを救える……?ソウヤさんならこんな時どうする……?」

 

しょうたが考える中、不審者はソウナを人質に今にも逃げ出そうとしている。このままではソウナを連れ去られてしまう。そう思ったしょうたは考えるのを放棄。

 

「こうなったら一か八かだ!」

 

しょうたは不審者の死角に回り込むと不審者へと思い切り体当たり。不審者はその衝撃で拘束していたソウナを手放すと大きく仰け反る。

 

「太陽の……鉄拳!」

 

そのタイミングでしょうたはあさひ直伝、太陽の鉄拳を腹へと叩きつけた。

 

「がふっ!?」

 

これにより、不審者は倒れ込むと周りにいた人々によって拘束されて事なきを得る。

 

「ソウナさん、大丈夫?怪我は無い?」

 

そう言ってしょうたはソウナへと手を差し伸ばす。ソウナはそんなしょうたを見てボーッとしていたが、大丈夫と返事をしてしょうたの手を取って立ち上がった。

 

「ありがとう、しょうた君。でも、どうしてあんな無茶を……」

 

ソウナの問いにしょうたはソウナへと優しく微笑んで答えを返す。

 

「ソウナさんにあんな酷い事をした奴を許せなかっただけ。それに、ソウナさんとしてもアイツを……自分達の平和を乱す奴を許せないんでしょ?その気持ちは僕も同じだから……」

 

そう言ってしょうたはソウナに見栄を張るが、少し経って自分がいかに恥ずかしい台詞を口にした事を自覚。顔を真っ赤に染める。

 

「ご、ごめん。ソウヤさんでも無いのに知ったような事を言って……恥ずかしい……」

 

しかし、ソウナとしては嬉しかったようでしょうたへと笑って答えを返した。

 

「ふふっ。何だかしょうた君にパパが重なったような気がして……。しょうた君ってカッコいいんですね!」

 

「そんな事無いよ……。あれは咄嗟にソウナさんを助けたくて……」

 

「逆の立場なら私もきっとそうしてます。それ程までにしょうた君は私にとって大切な人になりつつあるんです」

 

しょうたはソウナからの言葉を聞いて心がポカポカと温かくなるような感覚に見まわれた。

 

「さぁ、ショッピングの続きです!」

 

「そうだな。そういえばそれが目的でここに来てたんだっけ」

 

それから二人はショッピングを続けていく。ソウナの好みのカードゲームショップやしょうたが前々から行きたいと言っていたスカイランドのヒーロー物のショップ等、二人は楽しい時間を満喫。そしてあっという間に時間は過ぎて夕方になってしまった。

 

「今日はありがとうございました。しょうた君のおかげで楽しい一日になりましたよ」

 

「こちらこそ、ソウナさんが楽しいって思ってもらえたのなら嬉しいよ」

 

しょうたはそう言う一方で内心少し残念そうな気持ちになっていた。結局ソウナの気持ちは父親のソウヤ一筋だという事が変わらないと感じだからである。

 

「やっぱり、ソウヤさんの壁は高いよ……」

 

そうボソッと呟くしょうた。すると突然しょうたの頬に柔らかい感触がすると目の前にソウナの顔がある。そして、ソウナはほんのり頬を赤らめておりソウナがしょうたにキスをしたのだと思い至った。

 

「そ、そ、ソウナさん!?」

 

「ふふっ、顔を赤くするしょうた君も可愛いですね!……パパ以外ならしょうた君が初めてですよ」

 

「……え?」

 

ソウナの言葉にしょうたは一瞬硬直するが、その意味を理解するとソウナへと声をかける。

 

「え!?でもこう言うのって、もっと親密な人相手にするんじゃ……」

 

「……しょうた君は私にとって親密な人だと思ったからしたんですよ。パパやママ達家族の次に大好きなんですから!」

 

 

しょうたはソウナの笑顔に見惚れると一瞬固まってしまうがそれでもその気持ちが収まるとしょうたの顔も自然と笑顔になる。

 

「ソウナさん。僕はソウナさんの事が……」

 

しょうたがそう言いかけるとソウナはその言葉を抑えるようにピタッと唇に指を置いた。

 

「そこから先はもう少し先に取っておきますね。しょうた君がパパと並べる自信を持つその日まで。私はいつでも待ってます」

 

ソウナの言葉にしょうたは頷くと二人は未来への約束をしてこの日のデートを終える事になる。




本編を待たせているのにすみません。次回からまたオリジナルストーリーです。それではまた次回もお楽しみに。


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遺跡探索へ!究極の力を手にせよ!

オリジナルストーリーを書くと言ったのにすみません。案が浮かばずに結局本編を進める事にしました。それではどうぞ!


シュプリームとの決戦が終わり、世界に平穏が戻った頃、スカイランドではある異変が起きていた。それはスカイランドに浮かぶ島々の中の一つに存在する湖から太古の遺跡が現れたのだ。

 

それから一週間後、虹ヶ丘家ではあさひが起きると何故か目の前にあげはが眠っていた。

 

「………え?」

 

急な展開にあさひの頭の中が混乱する。何故なら昨日寝た時に彼女はいなかったからだ。だが、現に目の前にあげはが寝ている。

 

「これどうしたら……もし変に起こしてあげはに変態とか言われたら……」

 

あさひはそれだけで死ねる自信がある。するとあさひの杞憂を他所にあげはも目を覚ました。

 

「ん……」

 

「あ、あげは……おはよう」

 

「あ、あさひ。おはよー。ってあれ?何でここにあさひが……」

 

それからあげはがキョロキョロと周りを見渡すと確かにあさひの部屋である事を確認。そして、あげはは大慌てで飛び起きた。

 

「ヤバっ!?部屋間違えてあさひの部屋に来ちゃってた!!」

 

「……は?」

 

あげはは前日の夜、夜中に目が覚めてしまいお手洗いに入って出た所までは意識があったのだがそのタイミングで寝ぼけてしまうと間違えてあさひの部屋に来て寝てしまったのだ。

 

「ごめんあさひ!ビックリしたよね……何でこんな事しちゃったんだろ」

 

「大丈夫、あげはだったらまだ許せるから……」

 

それを聞いてあげははホッとすると同時に嬉しくなったのかあさひへと思い切り抱きつく。

 

「ちょっ!?」

 

あさひはあげはの豊満な胸に埋められると赤面し、混乱する。年頃の男子にこんな事をすればこうなるのも当然だ。

 

「あげは!?取り敢えず落ち着いて!」

 

「……あさひ、これでも私、我慢してるんだよ?」

 

そう言うあげはの言葉は少し寂しそうだった。何しろまだあさひは中学生。対してあげはは大人である。あげはとしてはあさひが成年になっていたら今すぐにでも色んな行為をしたいのだ。

 

「あさひが大人になるまでまだ最低でも五年は待たないといけない私の気持ちをわかってよ……」

 

「ごめん……俺が子供なばかりにあげはに我慢させて……」

 

「良いよ。その代わり、あさひが大人になったら私、もう我慢しないからね」

 

そう言ってあげははあさひを離すとそれからソラ達に呼ばれて二人で下に降りていく。それから朝食を摂ると早速あさひ達六人とエルはスカイランドに行く事になった。

 

「ぱぱぁー!」

 

「プリンセス!」

 

スカイランドのお城で王様とエルが抱き合うと再会を喜ぶ。そこにはあさひ達に加えてヨヨもおり、エルと王様の様子を見てましろは不安そうな顔つきになっていた。

 

「……姉さん?」

 

「大丈夫?」

 

あさひとヨヨがましろを心配するような声を上げるとましろは大丈夫だとばかりに取り繕う。

 

「え?あ、ううん。それで、私達の力を借りたい事って?」

 

「王様に呼び出されて私はスカイランドである物を調べていたの」

 

「……あるもの?」

 

「……それは一週間前に湖の底から現れた大昔の遺跡よ。不思議よね。どうしてそんな物がいきなり現れたのか。一体それが何なのか」

 

それからあさひ達プリキュア達とヨヨは遊覧鳥に乗るとその遺跡のある島に移動し、遺跡の外に着陸した。

 

「問題が一つ。この遺跡には入り口が見当たらないの」

 

「つまり、どこから入れば良いのかわからないわけですか」

 

湖の中も調べてもらったらしいがそれでも見当たらない。こうなると何かが鍵となっていると考えるのが自然だ。すると外に青い翼のような形をした石碑があり、そこには見た事も無いような文字で何かが書かれていた。

 

「何でしょう?」

 

「古代スカイランド文字ですか?」

 

「……そうだな。俺の中のリブデビルの記憶がそう言ってる……」

 

「私の中のヒメさんの力も……」

 

「流石ね。全ての人を救う究極の力がこの地に眠っている。その力を手に入れなさい。運命の子よ」

 

運命の子……というのはエルの事であると思われる。つまり、鍵はエルの可能性が高い。

 

「……全ての人を救う究極の力……?」

 

それを聞いてましろは更に不安な顔つきに変わる。あさひはそんなましろの精神状態を危険だと考えた。

 

「……姉さん、本当に大丈夫?」

 

「大丈夫……心配しなくても平気だよ」

 

明らかに取り繕ってる。あさひはましろの態度を見てそう思った。しかし、それをここで言うわけにはいかないと考えて言わない事に。

 

「えるぅ〜!」

 

その一方でエルはやる気満々なのか笑顔を浮かべるとノリノリで手を石碑に付ける。すると石碑が光り輝くと共に石碑の奥に下へと続く階段が現れた。

 

「……やはり、鍵はエルちゃんだったみたいね」

 

「となると、やっぱりエルちゃんが手にするための力なのでしょうか」

 

「える!」

 

それからエルは上機嫌で先に行こうとするとツバサとアイが慌てて出ていく。

 

「プリンセス待って!」

 

「ここは先に行きます!」

 

それに続くようにソラ、あげはも行こうとする。そんな様子を見てましろはまだ不安気な顔つきだった。

 

「ねぇ!ここって危ない場所かもしれないよね?」

 

「ましろさん?」

 

「だってさ……」

 

ましろは遺跡の中のトラップを心配してその可能性を他の皆に伝える。それを聞いたあさひはやはり今のましろは危険だと感じた。

 

「とかがあるかもしれないよ?」

 

「……姉さん、エルが心配なのなら素直にそう言って」

 

「え……?」

 

「何年姉さんと一緒にいると思ってるの?姉さんの思考なんて俺にはお見通しだから」

 

「………」

 

「ましろさん、そうなんですか?」

 

ソラからの問いにましろは観念したかのように小さく頷く。どうやら当たりらしい。

 

「……ましろ?」

 

「やっぱり、エルちゃんを連れていくわけにはいかないよ。私達だけで行こうよ」

 

ましろからの言葉に少し間をおいてあげははましろへと優しく話しかける。

 

「……ましろん、エルちゃんを危ない目に遭わせたくない。その気持ちは皆一緒だよ。王様達だってそう」

 

それを聞いてましろは王様達が心配しつつもエルを見送った事を思い出す。

 

「……遺跡がエルを呼んで、エルが自分の運命と向き合おうとしてるんだ」

 

「勿論、難しい事まではエルちゃんは理解できてないかもだけど、今私達にできるのはエルちゃんを守ってサポートする事だと思うんだ」

 

それを聞いても尚、ましろはまだ不安な様子なのか俯くと小さく言葉を発する。

 

「それは、キュアマジェスティになったエルちゃんは凄く強いし、けど……」

 

「えるいきたい!いっしょにいこ!ましろ!」

 

そう言って笑顔で詰め寄ってくるエル。それでもましろの不安そうな顔は変わらず、なかなか頷くことが出来ない。それを見たエルは悲しそうな顔に変わる。

 

「ごめんね、ごめんね、一緒に行こうね。……エルちゃんの顔を見たらダメって言えないよ」

 

それから皆で遺跡の階段を降りていく。そして突き当たりに達するとまたエルの手形で道が開ける。そこには下は奈落まで続いているであろう大穴に前には橋のような物は無く、これ以上先に進めなさそうな雰囲気を出していた。

 

「えぇ!?どうやって渡るの?」

 

するとエルが前に出た途端その場に宙に浮かぶ床が出てくる。これに乗るしか先へは進めなさそうだ。

 

「プリンセス気をつけて!床の上!」

 

「……乗れるのかな?」

 

「多分大丈夫。エルが正当な継承者ならきっと俺達も乗れるから」

 

それからあさひとツバサが乗ると床は壊れる事なく浮かんだままであり、それを見て他の面々も乗る。全員が乗った所で床は先に進み、反対側の道にまで移動。

 

「おぉ!床が勝手に動いてる!!」

 

それから八人が更に進むとソラが究極の力について疑問を持ち質問を投げかけた。

 

「全ての人を救う究極の力って何でしょう?」

 

「プリンセスがこれ以上どんな風に強くなるんでしょうか?」

 

「……例えば巨大化とか?」

 

「……あげは、何かとつけては巨大化させないで……」

 

あげはの冗談にあさひがツッコむ。そして、八人は雑談をしつつも先に進む。そんな中、外では異変が起きていた。遊覧鳥が休んでいると突如として何か巨大な物体が落下してくる。それは凶暴化したミノトンだ。

 

「プリキュアぁあ!」

 

当然邪悪な者であるミノトンを排除するために遺跡の防衛システムが起動するとミノトンを弾き出そうとする。

 

外でそんな事が起きているとは梅雨知らず。遺跡の最奥部ではとある壁画の前に辿り着いていた。それは一人の少女が本へと手を伸ばす絵である。

 

「これって、まさかエルちゃん!?」

 

「みて!ほん!」

 

それからエルが本にタッチするとその瞬間、あさひ、ソラ、ましろ、ツバサ、あげは、アイが光り輝く。

 

「「「「「「え?」」」」」」

 

少女の周りにソラ、ましろ、ツバサ、あげは、アイ、そして白と黒の翼を生やしたあさひのような絵が描かれると同時に七人は中へと吸い込まれてしまう。

 

「これは……どうやら、最後に入れるのはプリキュアだけのようね……。皆、後は任せたわ」

 

七人が最後の部屋に入ると一番奥にある祭壇のような場所にまで移動。するとそこには光り輝く何かがあり、エルが触るとそれは本へと変化した。

 

「……なるほど、さっきの壁画にあったのはその本か」

 

カゲロウの言葉にあさひは頷く。それからエルはその本を手にした。

 

「本だ……本が究極の力なのか?」

 

「えるぅ!まじぇすてぃくるにくるん!」

 

「マジェスティクルニクルン?」

 

「エルちゃんわかるの?」

 

「うん!」

 

それからエルが本を開こうとするが全く持ってして開けられない。まるで固く鍵がかけられているようだ。

 

「あれ?あれ?あれ?」

 

「貸してくれるか?」

 

それからあさひがエルから受け取って思い切り本を開けようとする。しかし、あさひの腕力を持ってしても全く開く気配が無い。

 

「ダメだこれ……」

 

「封印されてるみたいですね……」

 

そう話していると突如として遺跡が揺れ始める。外にいるミノトンが結界をもうすぐ壊しそうになっていたのだ。そして、とうとうミノトンは石碑を粉砕。結界を破壊すると同時にマジェスティクルニクルンはあさひの手から離れると元の位置に戻る。

 

その頃ミノトンは階段をゴロゴロと転がりながら移動すると遺跡の中の機構を無理矢理力で突破しながら奥の部屋に到達。それを見てエル以外の六人はミラージュペンを構える。同時にミノトンが最奥部の部屋に突入。アンダーグエナジーを漲らせていた。

 

「プリキュア!」

 

「アンダーグエナジーになんか負けてはいけません!」

 

「お前は誇り高き武人だろうが!」

 

「ブジン?」

 

するとミノトンら頭を押さえ込むと苦しそうにするが、結局アンダーグエナジーに支配されてしまう。

 

「プリキュア倒す!プリキュア!」

 

「行きます!」

 

「「「「「「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!」」」」」」

 

 

「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」

 

「ふわりひろがる優しい光!キュアプリズム!」

 

「天高くひろがる勇気!キュアウィング!」

 

「アゲてひろがるワンダホー!キュアバタフライ!」

 

「夜明けにひろがる眩い朝日!キュアサンライズ!」

 

「空にひろがる数多の天気!キュアウェザー!」

 

六人は変身完了すると並び立つ。そして、エルもそれを見てプリキュアへと変身する。

 

「えるも!でばんです!」

 

その瞬間、エルの姿が少女へと変化。スカイミラージュを手にした。

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!マジェスティ!」

 

それからその姿をキュアマジェスティへと変化させていく。そして、名乗りを言い放つ。

 

「降り立つ気高き神秘!キュアマジェスティ!」

 

ここに七人のプリキュアが集い、凶暴化したミノトンとの戦闘が開始されるのであった。

 

 




また次回もお楽しみに。


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重なる心 目覚める究極の力

七人はミノトンと向き合うと構えを取る。それを見たミノトンは吠えるように叫んだ。

 

「決着を付けてやる!」

 

「良いでしょう!でもそれはあなたからアンダーグエナジーを追い出した後の話です!」

 

「それは同感だ。自分の力じゃない借り物の力で威張るお前との決闘は御免だしな!」

 

すると早速ミノトンは七人へと突進。拳を繰り出そうと腕を引く。それに合わせてスカイとプリズムが前に出る。

 

「はあっ!」

 

スカイがミノトンと拳をぶつけ合わせるとその衝撃で二人共後ろに下がった。

 

そのタイミングで再びスカイ、ウィング、バタフライが次々と飛び出す。そしてプリズムとウェザーがエネルギー弾で援護する中、ミノトンはあまりダメージを受けてない様子だった。

 

「雑魚が!」

 

「「「はあっ!」」」

 

今度は三人がかりで攻撃を仕掛けるために前に出る。ミノトンはそれを迎え討とうとするが、スカイはバタフライの足の裏を踏み台にして上に跳び、ウィングとバタフライも別方向に散る。

 

「かかった!」

 

「何!?」

 

その瞬間、マジェスティとサンライズが高速で移動すると二人揃って拳を叩きつける。

 

「「はっ!」」

 

それから二人は再度超スピードによるラッシュをミノトンに叩きつけるとミノトンは吹き飛ばされてミノトンは壁に激突。

 

「流石サンライズにマジェスティ!」

 

「まだよ」

 

「ああ、奴の強さはあんなものじゃない」

 

マジェスティとサンライズがそう言うとミノトンは何かを手にしていた。それは黒いビンでミノトンはそれの蓋を開ける。

 

「我こそは……最強!」

 

そして、ビンの中身を一気に飲み干すとその瞬間、ミノトンの筋肉が増大。口からさっき飲んだ液体を垂らしながら更にパワーを増すと赤黒いオーラを纏う。

 

「これはヤバそうだな……スタイルチェンジ!フェニックス!」

 

サンライズは咄嗟に防御力強化のフェニックススタイルにチェンジ。そして、ミノトンは両手を翳すと暗黒のエネルギー弾を連射する。

 

プリキュア達は攻撃を躱すためにバラバラに散るが、そのためにプリズムはマジェスティと離れてしまう。

 

「マジェスティは!?エルちゃんはどこ!?」

 

その瞬間、プリズムに向かってエネルギー弾が飛んでくる。するとプリズムの前にマジェスティとサンライズが出てくるとサンライズが盾で防御し、マジェスティがそれをエネルギーで支えた。

 

「マジェスティ!サンライズ!」

 

「プリズム、マジェスティの事を気にしすぎだ!まずは周りをしっかり見て……」

 

「そんな!サンライズはエルちゃんが傷ついて良いとか思ってるの!?」

 

「……チッ」

 

サンライズはプリズムへと舌打ちする。それは今までずっとプリズムへとして来なかった行為。姉と弟として生きてきた中で初めてサンライズがプリズムに対して反抗心を見せた瞬間だった。

 

「プリズム、もっとマジェスティを信じてやれよ!何でそんなに不安がるんだ!」

 

そんな姉弟による喧嘩を見てマジェスティは不安そうになる。その瞬間、エネルギー弾は爆発すると三人纏めて吹き飛ばされてしまう。

 

「皆!」

 

更に余所見をしてしまったバタフライ、スカイ、ウィング、ウェザーもミノトンによって次々と吹き飛ばされると近くに叩きつけられてしまう。

 

「「「うわぁああ!」」」

 

するとミノトンは数歩下がるとその場に膝をつく。どうやら先程のパワーアップは一時的なようである。

 

「く……」

 

「サンライズ、代われ!」

 

「任せた!」

 

その瞬間、サンライズはトワイライトに変身するとミノトンへと突撃。サンライズとトワイライトの長所は二人の人格を切り替える事でダメージを負った方を休ませつつもう片方が戦いを継続できる点だ。これによりミノトンはトワイライトの連撃を受けて怯み、その間に他の六人が立て直す時間を稼ぐ。

 

「ぬうぅ……」

 

トワイライトは咄嗟に後ろに下がるとミノトンは手にまた大量のビンを持つとそれの蓋を開けて口の中に流し込む。このままではまた先程の攻撃が来る。

 

「クルニクルン!私達に究極の力を!クルニクルン!お願い!」

 

マジェスティの言葉に応えるように古代のスカイランド語が出てくる。そしてその内容が紫のオーラとして流れていく。

 

「……今の?」

 

「プリキュアの心を一つに重ねた時」

 

「クルニクルンの奇跡のページは開かれる!」

 

つまり、この場にいる七人のプリキュアの力を束ねる必要があるとクルニクルンはそう言っているのだ。ミノトンは先程のドーピング剤とでも言うべき液体を飲んだ影響でまだ攻撃準備が整わない。やるなら今しか無いのだ。

 

「心を一つに……。あっ!」

 

マジェスティはどうすべきか考えると先程の壁画の絵を思い出して声を上げる。

 

「皆!クルニクルンに手を重ねて!」

 

「そっか!あの壁画の通りにすれば……」

 

「あさひ、二人の力を束ねるぞ」

 

「「プリキュア!エビリティコネクト!ひろがるチェンジ!エビリティサンライズ!」」

 

その瞬間、エビリティサンライズに変化したトワイライト。すかさずサンライズは背中に翼を広げると近くに倒れていたスカイ、バタフライの手を取ってマジェスティの元に移動。ウィングもウェザーを抱えて移動し、七人が揃う。

 

「ぐおお!」

 

するとミノトンはエネルギー弾を放とうと構える。もう一刻の猶予も無い。

 

「皆さん、手を!」

 

それと同時に七人はマジェスティクルニクルンへと手を翳す。しかし、それでもクルニクルンは一瞬光を放つがそれもすぐに消えてしまう。

 

「どうして……私達の心は一つのはず!」

 

それを聞いてプリズムに動揺が走る。それを見たサンライズは顔を曇らせる。彼は薄々気がついていた。今の自分達には心を一つに束ねられないと。

 

するとミノトンはビンの液体を追加投入して更なるエネルギーを纏う。

 

「我の勝ちだ!」

 

そして、口から紫のエネルギー砲が放たれる。それを見たサンライズは前に出ると手を翳す。その瞬間、グリフォン、ドラゴン、ペガサス、フェニックス、ヤタガラスの五体の伝説の生物がエネルギーを放つと共に攻撃を防ぐ。更にそこにクルニクルンのバリアが重なって強固な防衛線を築いた。

 

「クルニクルンとサンライズのスカイトーンが守ってくれた?」

 

しかし、ミノトンの攻撃は強大でバリアにもヒビが入ってしまう。

 

「ッ……バリアが……」

 

「クルニクルン達の力でもダメなのか……」

 

「私のせいだ!エルちゃんを戦いに巻き込みたく無いって思ってるから……だからクルニクルンの力が目覚めないんだよ!」

 

「そんな事言ってる場合ですか!?」

 

「このままじゃマジェスティも私達も皆纏めて……」

 

「わかってる!」

 

するとバリアに更なるヒビが入るとバリアは砕けてしまった。それを止めたのはマジェスティとサンライズである。

 

「「「はぁあああ!」」」

 

「「「「「サンライズ!マジェスティ!!」」」」」

 

マジェスティとサンライズは二人がかりでエネルギーの障壁を作るとそれを支えていた。しかし、それだけでは守るのにも限界がある。

 

「くううっ……」

 

「あっ!」

 

バタフライは咄嗟に盾を展開すると障壁を大きくしてそれを七人で支える。

 

「ぬぁあああ!」

 

ミノトンはそれもろとも打ち破ろうとエネルギーの出力を上げる。そんな中、プリズムは謝っていた。

 

「エルちゃんごめんね、私が守ってあげなくちゃいけないのに!」

 

「……ましろさん、エルちゃんの気持ちを信じてあげてください」

 

「姉さん、俺がカゲロウに乗っ取られた時……姉さんが姉さんを戦わせたく無いと言ったソラに向かって言った事を覚えてる?」

 

「……え」

 

それは、二人の絆が芽生えたあの時にプリズムがスカイに言った言葉だった。

 

「ましろ、あなたが心配なんだよ?助けたいよ。気持ちは同じ。それって、一緒に戦う理由にはならないかな?」

 

それを聞いてプリズムはハッとする。そして、それはようやくバラバラになってしまっていた七人の心を一つにさせる言葉だった。

 

「「クルニクルン!」」

 

その瞬間、クルニクルンの表紙が完成して王冠のような紋章が浮かび上がる。そして、クルニクルンは七つの光を放った。そして、ミノトンからのエネルギー弾をキラキラエナジーのエネルギー弾として撃ち返す。

 

「ぬうああ!」

 

流石のミノトンもこれには堪らずその場に膝をつく。そして、七人の前にクルニクルンが降りてくるとまた七人は手を翳した。

 

「「「「「「「マジェスティクルニクルン!」」」」」」」

 

すると夜空にオーロラが輝くのをバックにマジェスティクルニクルンが空に上がり、七人が手を翳す。するとクルニクルンが開いて中から紫のエネルギーと共に緑のペンのような物が出現。そしてマジェスティがクルニクルンを手にするとクルニクルンの左のページにあるハートマークをなぞる。

 

それからスカイ、プリズム、ウィング、バタフライ、ウェザー、サンライズ、マジェスティが次々と自らを示す紋章をタッチしていった。

 

そして、七人はそれぞれ自分のモチーフカラーのオーラを纏いつつポーズを決めていく。

 

「「「「「「「「ひろがる世界にテイクオフ!」」」」」」」」

 

その言葉と共に七人はオーラと共に青空へと飛び立つとまずスカイが半円を描き、次にプリズムが更に半円を描く。それからウィング、バタフライ、ウェザー、マジェスティが星を描き、最後にサンライズが星の周囲にラインを引いて七人が横一列に並ぶと今描いたマークが起き上がると共にひろがるスカイプリキュアのクレストに変化。

 

「「「「「「「「プリキュア!マジェスティックハレーション!」」」」」」」」

 

七人が手を翳して叫ぶとそこからまずエビリティサンライズの白と黒の炎のエネルギーが集まると共にエネルギーが螺旋を描くとその中央を突き進むように虹のエネルギーが放出。それが雲を吹き飛ばしてミノトンへと降り注ぐ。

 

「スミキッタァ〜」

 

ミノトンは青空、ハート、羽、蝶、雲、太陽そして星のエフェクトと共に浄化される事になる。

 

最後にマジェスティがクルニクルンを優しく閉じて終わり、プリキュア達の勝利となるのだった。

 

それからプリキュア達とミノトンは外に出るとミノトンはプリキュア達へと話しかける。

 

「見せてもらったぞ、プリキュア・マジェスティックハレーション。我の負けだ。我に武人の心を取り戻してくれたこの恩、いつか返す。また会おう、好敵手達。ミノトントン」

 

そう言ってミノトンはどこかへと消えていく。それを見たウィングは半ば呆れ顔で話す。

 

「一方的な奴だなぁ。聞きたい事は沢山あるのに」

 

「きっと武人には武人のやり方というものがあるのでしょう」

 

「そうだね」

 

「はい!」

 

「「……で、プリズム。こうなったらもうマジェスティに一緒に戦ってもらう事でも良い?」」

 

「うん。私も吹っ切れたよ」

 

「良かった……」

 

するとマジェスティはプリズムへと頬を擦り寄せる。姿はこうなってもやはり元は赤ちゃんなのだ。

 

「ふふっ、プリズム。大好きよ」

 

「私もだよ、マジェスティ」

 

こうして、サンライズ達は新たなる力であるマジェスティクルニクルンを手にするのであった。しかし、同時に新たなる脅威がこの世界に迫っているとはこの時のサンライズ達は知らない。




また次回もお楽しみに。


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復活した幹部達 並行世界のソウヤ

マジェスティクルニクルンを手に入れた日の翌日、あさひ達はいつものような平穏な日々を過ごしていた。すると突如としてあさひ達の住む虹ヶ丘家の裏山で轟音が鳴り響く。

 

「何!?」

 

「裏山の方からです!」

 

「とにかく行こう!」

 

それからあさひ達プリキュアに変身できる七人は走って裏山の音がした方へ行った。するとそこに待ち受けていたのは五つの影である。

 

「これは……」

 

「どうして、あなた達がここに……」

 

「だって、あなた達は……」

 

そこに存在したのは黒いオーラを纏ったカバトン、バッタモンダー、ミノトン、ラブ、そしてこの世界にいるはずの無い存在、アンノウンだ。

 

「そこの四人は見覚えあるんだけど……そっちのローブを被ってる奴は?」

 

「アンノウン……ソウヤの世界にいて、ソウヤの中に眠るプリンセスに因縁のある相手だ」

 

あさひの言葉に六人は気を引き締める。すると五人は言葉を話し始めた。

 

「来たね、プリキュア」

 

「今日こそ今までの借りを返すのねん!」

 

「我らと勝負せよ!」

 

「あなた達にやられた恨み」

 

「晴らさせてもらうぞ」

 

五人は次々とそう言う中、あさひは疑問を浮かべる。それは、全員に言える事なのだが、その言葉はとてもでは無いが本人達とは思えない点だ。

 

「……あれ?でもミノトンってカバトンと仲が悪いんじゃ無かったっけ?」

 

「カバトンも改心して以降、エルちゃんを狙いには来ませんでした」

 

「なのに今更来るのはおかしいよね」

 

「それに、アンノウンはこっちの世界に来て悪さをする理由が無いよね?」

 

「バッタモンダーとラブは恨みから動いてもおかしくないですけど……」

 

どうにも不可解な点が多い。カバトン達が何故一同に介しているのか。今まではずっとバラバラに攻めてきたはずである。なのに何故今更纏まって攻めに来ているのか。

 

「……とにかく、戦いましょう。誰が相手でも私達は負けるわけにはいきません!」

 

ソラの言葉に全員が頷くとミラージュペンを出す。しかし、カバトン達はニヤリと笑みを浮かべると手を翳す。その瞬間、突如として七人の前にエネルギーのゲートが開くと七人はその中に吸い込まれ始める。

 

「え!?」

 

「うわっ!?」

 

「なっ!!」

 

それから七人は次々と中に吸い込まれていくとゲートは閉じてしまう事になるのだった。そして、カバトン達五人は笑みを浮かべると先程あさひ達を吸い込んだゲートとは別のゲートを開くとどこかへと消え去る。

 

あさひが目を覚ますとそこはただ荒野が広がるのみであった。あさひが辺りを見渡すものの、誰かがいる様子は無い。

 

「くっ、完全に分断されたって訳か……これ、どうしよう」

 

あさひは困り果ててしまう。この空間から出るには恐らくカバトン達を倒す必要があるだろう。ただ、倒してそれで終わりかと思えばそうでは無い気もするのだ。

 

「とにかく、ここがどこなのか探らないとな……」

 

あさひがそう言って立ち上がると近くからコツコツと何かが歩く音が聞こえてきた。

 

「くっ!?このタイミングで敵か……って、あれ?」

 

そこに現れたのはあさひの良く知る並行世界の友達、ソウヤだったのだ。

 

「ソウヤ!?どうしてここに……」

 

「あさひ!!あさひこそどうして……」

 

それからソウヤに事情を聞くとどうやらソウヤもあさひ達と同じ方法でこの世界にやってきたようでこちらは自分一人だけの時を狙われてしまったらしい。

 

「……とにかく、他の皆を探すのを手伝ってくれるか?」

 

「勿論だよ。仲間は多い方が良いしな」

 

それからあさひとソウヤが行動を開始する事になる。それからあさひとソウヤの二人が歩いていると遠くに何かの巨大な影が見えていた。

 

「あれは……何かの城のように見えるな」

 

「まさかと思うけどまたシュプリームの時みたいなパターン?」

 

「うーん、でも今回は記憶がハッキリしてるしなぁ……」

 

今回は前のシュプリームの時とは違ってここに来る際の記憶もハッキリとしている。つまり、ここは前のような地球が崩壊して生成された場所では無いと思われるのだ。

 

「とにかくあそこを目指していくのが……」

 

あさひとソウヤがそう言っていると突如としてあさひ達の前にランボーグとその配下の兵士のような物が出現。行手を阻んだ。

 

「ランボーグ!」

 

「ランボーグ……こんな所にまで」

 

「とにかくやろう!」

 

それからあさひとソウヤはそれぞれミラージュペンを手にするとプリキュアへと変身する。

 

「夜明けにひろがる眩い朝日!キュアサンライズ!」

 

「静寂ひろがる夜の帷!キュアナイト!」

 

二人が並び立つと早速ランボーグと兵士達へと向かっていく。サンライズは剣を手に、ナイトは槍を手にするとまずは先に攻めてきた兵士達を蹴散らしていく。

 

「コイツら、やっぱりそこまでの強さじゃないな!」

 

「油断したらダメです。ここは慎重に……」

 

「確かにそれもそうだな」

 

キュアサンライズとキュアナイトは久しぶりの共同戦線ということもあって連携については多少不安はあったものの、それでも問題なく戦うことができている。

 

「喰らえ!ひろがる!サンライズカリバー!」

 

サンライズから放たれた炎の奔流が敵を次々と飲み込むと倒していく。そして、ランボーグまでの道が開かれた。

 

「ナイト!」

 

「任せてください!ヒーローガール!ナイトミラージュ!」

 

「スミキッタァ〜」

 

ナイトから繰り出された蹴りがランボーグに命中するとランボーグは浄化されると呆気なく勝利する事になる。

 

「案外あっさりでしたね」

 

「……やっぱりおかしい。このランボーグ、何から生み出したんだ?」

 

「そういえば、浄化した時に何も残りませんでしたよね」

 

普通なら浄化した際に素体となっていた物が元の姿で出てくるはずなのだ。サンライズとナイトが疑念を抱いていると突如として前にアンノウンが登場する。

 

「アンノウン……」

 

「やはり私の世界のアンノウンとは違うようですね」

 

「ナイトがそう言うならそうなんだろうな。ひとまずやるしか無さそうだけどやれそう?」

 

「勿論です!」

 

それからサンライズとナイトは現れたアンノウンと戦闘を開始する事になるのであった。

 

その頃、ましろの方ではましろが紅葉の山の中にいる状態でこちらでもある人物と合流する直前だった。

 

「うぅ、皆と逸れちゃった。とにかく他の皆と合流しないとだよ」

 

するとガサガサと音が鳴り、ましろがその方を向くとそこにはソウヤがやってきていた。

 

「……え!?ソウヤ君!?」

 

「ましろ!ましろなのか!?」

 

ましろが知ってる人と会えて喜ぼうとしたその瞬間、ソウヤはいきなりましろに詰め寄ってくるとましろが無事で安堵したような顔つきになっていた。

 

「ソウヤ君はどうしてここに?」

 

「それが、俺もカバトン達に無理矢理連れてこられて」

 

「そっかぁ。取り敢えずあさひ達と合流しないと」

 

それを聞いた途端突如としてソウヤの顔つきが怪訝なものに変わる。それを見たましろはソウヤの様子がおかしい事に気がつく。

 

「……ソウヤ君?行くよ?」

 

「なぁ、ましろ。あさひって誰だ?」

 

ソウヤから飛び出したのは衝撃の言葉だった。ソウヤから出た言葉がまさかのあさひを知らない発言。一体どういうことなのか。その理由がわからなかった。

 

「……一つ聞いても良いかな?」

 

「何?」

 

「ソウヤ君って誰と付き合ってる?」

 

ましろがその質問をした途端ソウヤは明らかに動揺したような顔つきへと変わる。ましろはその質問の答えから確信した。どうやらこのソウヤは自分達が知ってるソウヤとは別人だという事である。

 

「何言ってるんだよましろ。俺とましろは恋人じゃん」

 

「……待って、多分私はソウヤ君の知ってる私じゃない」

 

「……え?」

 

ソウヤはそれを聞いて動揺が隠せない。それからましろは自分がこのソウヤが思っているましろとは違う人物だという事を話す事になった。

 

同時刻、別の場所でもソウヤが出現していた。こちらはあさひの世界のツバサである事をソウヤに説明した所、ソウヤはあさひを知らないことが発覚。そこでツバサはこのソウヤの世界の経緯を聞く事にした。

 

「なるほど、つまりそちらの世界ではソウヤさんはあげはさんとお付き合いしてるんですね?」

 

「うん。俺はあげはに一目惚れしたんだ。それで、今少しずつお互いの事を知っていってる所」

 

「そうですか……ひとまずソウヤさんは元の世界に戻りますよね?」

 

「できるならそうしたいかな」

 

「でもやっぱり戻り方がわからないんですよね……」

 

二人で考え込んでいるが結局答えは出てこず、行動を共にして遠くに見える城を目指す事になる。

 

「ツバサ、そういえばツバサの仲間は来てるのか?」

 

「はい。ただ、どこにいるかまではわからないんですよね」

 

「そっか……」

 

その頃、あげはが一人歩いているとここにもソウヤが姿を現す。あげははそれを見てソウヤへと詰め寄ろうとするとソウヤの方からあげはに抱きついてきた。

 

「あげは!あげは……良かった、無事だったんだ」

 

「え!?何、何!?ソウヤ君!?なんか変じゃない!?」

 

「何言ってるんだよ、あげはは俺の恋人で……」

 

「……え?」

 

ソウヤはあげはから返ってきた反応が思っていたのと違う事に違和感を覚える。そして、あげははソウヤへと問いかけた。

 

「もしかして、私の知ってるソウヤ君とは別人?」

 

「……それって……」

 

あげはにそう言われてソウヤはサッと血の気が引くような感触がした。理由は何も知らない人にいきなり抱きついたのだ。相手から不審がられても文句は言えない。

 

「ごめんなさい!あげはさん……俺、てっきり自分の世界のあげはさんだと思って……」

 

「あはは……私も最初ビックリしたけど大丈夫だよ。間違いは誰にでもあるし……」

 

あげはの言葉にソウヤはホッとする。それから二人で行動をしつつお互いの事情を聞く事になった。

 

「え!?じゃあそっちのソウヤ君はシャララ隊長を救えなかったの!?」

 

「はい……でも、そんな時に寄り添ってくれたのは俺の世界のあげはで……それで俺もそんなあげはに惹かれていったんです」

 

「なるほどね。だから私を見るなりいきなり抱きついたんだ。……ふふっ」

 

「ちょっと、笑わないでくださいよ!」

 

「ごめんごめん、でも私の知ってるソウヤ君からは考えられなかったから」

 

あげはの言葉にソウヤは恥ずかしそうな顔つきをする。そんなソウヤをあげはは微笑ましい顔つきで見るのだった。

 

場面は変わり、世界の中心部にある城の内部。とある部屋何者かがあさひ達の映像が映っている水晶玉を見つめていた。

 

「……どうやら計画は順調のようだな」

 

「はい、この世界に虹ヶ丘あさひの世界のプリキュア及びソウヤという人間を数ある並行世界から何人か抜粋して連れてきました」

 

「ふふっ、ソウヤの持つあの力を我が頂けばあさひの世界のプリキュアを倒すのは容易い。何しろソウヤ相手にあさひ達の世界のプリキュアでは太刀打ちできないからな」

 

「ひとまずソウヤを片っ端から捉えますか?」

 

「いや、その必要は無い。まずはどのソウヤの力が強いか見極めなくては……」

 

それから謎に包まれた二人の会話は続く事になる。果たして、ターゲットとなるソウヤはどのソウヤになるのであろうか。




また次回もお楽しみに。


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闇の戦士登場!?狙われるプリンセスの力

アンノウンと交戦するサンライズとナイト。二人はアンノウン相手に善戦していたが、二人共違和感を感じていた。

 

「やっぱりおかしい……コイツ、どこを攻撃してもダメージが入らないはずなのに普通にダメージとして受けてる……」

 

「私達の知るアンノウンとは別人だという事がハッキリしましたね」

 

二人がアンノウンと交戦していると突如としてアンノウンは手を翳し、アンダーグエナジーで生成した刀を手にした。

 

「だったらこっちも!スタイルチェンジ!ドラゴン!」

 

「ミライコネクト!βナイト!」

 

するとサンライズはドラゴンスタイルに、ナイトの方は和装に刀を握るとキュアナイトβスタイルにチェンジする。

 

「はあっ!」

 

「だっ!」

 

二人による連携でアンノウンは追い詰められていく。しかし、それでとまだ二人はアンノウンに勝てるとは思っていなかった。

 

「良し、一気に攻めよう」

 

「いえ、ここは慎重に……。無理をしてはいけません」

 

「そっか。ならそうしよう」

 

それからアンノウンは二人と向き合っていたが、暫くするとそのまま姿を消してしまう。

 

「「……え!?」」

 

いきなりアンノウンが撤退して邪悪な気配が消えたので二人は変身解除するが、混乱していた。

 

「アイツ、何で……」

 

「ただ逃げ帰っただけには見えなさそうだな」

 

しかし、これ以上考えても時間が惜しいために一度また周囲を警戒しつつ先に進む事になる。

 

その頃、一人で歩いていたソラはお腹が空いたために腹ごしらえをしていた。

 

「どうしましょう。私一人では少し心細いですね……」

 

ソラがそう考えているとガサガサと草むらを掻き分ける音が聞こえてくるとソラは敵の可能性を考慮して構える。

 

それから草むらから出てきたのは白いセミロングの髪を低い位置でポニーテールに纏めた可愛らしい顔をした少女が姿を現す。

 

「あなた……ソラちゃん!?」

 

「誰ですか!?私の事を知ってるみたいですが私はあなたを知りませんよ!!」

 

二人はひとまず警戒はしたままだったが、敵では無い事を確認してから自己紹介をする事にした。

 

「私、ユキ。ユキ・アラーレだよ!」

 

「ユキさん……ですか。ご存知だとは思いますが私はソラ・ハレワタールです」

 

「さっきはごめんね。驚かせちゃって」

 

「いえ、こちらこそです」

 

するとユキのお腹がグゥーっと鳴り、お腹が空いてしまった事を示している。

 

「あ!ごめんなさい!こんな所で……」

 

「だったら、私のご飯を分けてあげます!」

 

それからソラから食べ物を分けてもらったユキはそれを被りつく。そして、仲良く談笑しているとユキは寂しそうな顔をした。

 

「ユキさん?」

 

「ソウヤ君……どこに行ったんだろう」

 

「え!?ソウヤ君って……」

 

「知ってるの!?」

 

「はい。あ、でも恐らくユキさんの知ってるソウヤ君じゃないと思いますよ」

 

「……え?」

 

それからソラはぎこちない説明だったが、並行世界について話すとユキは頷いて納得する。

 

「そっか。……ソウヤ君。大丈夫かな」

 

「ソウヤ君の事が好きなんですか?」

 

「え?私、そんな事言ったっけ?」

 

「いえ、何となくそんな気がして……」

 

「そっか。ハズレだよ。私はソウヤ君の彼女だよ」

 

ソラは最初その言葉を聞き流したがそれから意味を理解すると驚きの声をあげた。

 

「えぇっ!?そうなんですか!?」

 

「うん。まぁ、私がソウヤ君に惚れて告白したら受けてもらえたってだけだけどね」

 

ユキは昔虐められていた時にソウヤに救ってもらい、支えられた事でソウヤに惚れたのだ。

 

「そうだったんですね……」

 

「だから私にとってソウヤ君はヒーローで憧れの存在。そして、どうしようもないくらいにソウヤ君に依存してると思う」

 

「依存ですか?」

 

「うん。ソウヤ君が隣にいないとすぐに不安になっちゃうし、ソウヤ君が他の女の子と仲良くしてたら嫉妬しちゃうし……私って愛が重いから……」

 

ソラはそれを何とか受け止めようとするが、想像以上に重い話だったために今にも脳がパンクしそうである。

 

「……ソラちゃん?大丈夫?」

 

「は、はい……大丈夫……ですよ」

 

「ごめんね、私のせいでこんな……うっ!?」

 

するとユキは突如として胸を抑えると体に湧き上がるドス黒い何かを押さえ込む。

 

「ユキさん!?大丈夫ですか!?」

 

「平気……ちょっと胸に痛みが走っただけ。……そんなに気にしなくて良いよ」

 

「そんな、放っておけません」

 

「ううん。本当に大丈夫だから」

 

それからユキは別の事を話す事でソラの意識を逸らし、それから二人は楽しい事を話して良い空気を作り出すのだった。

 

同時刻。ましろと行動するソウヤは自分の世界のましろの事を話していた。

 

「ええっ!?そっちの世界の私って凄く愛が重いの!?」

 

「あはは……そうなんだよね。他の女の子と仲良くするだけでも結構嫉妬してきちゃうし……。でも、それでも俺はましろが好きなんだ」

 

「そうなんだ……うぅ……」

 

「ましろさん?」

 

「私も好きな人と付き合ったらそうなるのかなと思っちゃってね……でも、まだ私には好きな人とかいないから多分まだまだ先の事にはなると思うけど」

 

それを言われてソウヤも苦笑いする。世界が違えど同じましろならあり得ると思ってしまうのだ。

 

「まぁ、その時はその時だと思うけど……」

 

「そうだね!ほ、ほら。先に行こ!」

 

それと前後して。エルを抱いて彷徨うアイは一人で心細い気持ちになりつつ歩いていた。

 

「はうぅ……何でこんな事に……」

 

「えるぅ?」

 

「あ!ごめんね。私が不安になんかなってたらエルちゃんも不安になるよね……」

 

アイは何とか頑張って前を向こうとする。するとその瞬間、近くで何かが落ちるような轟音が鳴り響く。

 

「何!?」

 

それからアイがその方向へと走っていくとそこにはその姿は腋が露出してる黒い鎧のようなものに黒の長手袋、黒のロングブーツを付けて、右肩にはキュアスカイと同じようなヒーローのマントが垂れ下がっていた。それは全体的に黒が多い格好で青みがかった黒髪のショートヘア。ルビーのような赤い瞳をしている男の子だった。

 

「……え?キュアナイトにそっくりの姿……でもキュアナイトになると確か女の子なはず。じゃあソウヤ君とは違……」

 

「おい、お前。何で俺を知ってる?」

 

それを聞いてアイは驚いたような顔つきに変わる。どうやら男の子の姿をしてはいるが彼は紛れもないキュアナイト……ソウヤらしい。

 

「……多分私の知らないソウヤ君……。だけど何だろう……彼から溢れ出ているのはとてつもないぐらいにヤバい感じがする!!」

 

アイが構えをとる中、ナイトは構えを取る。アイはすぐに変身するためにミラージュペンを手にした途端、ナイトが手を翳す。すると何かのエネルギーが突如としてエルを包み込むとエルから何かを吸い取っていく。

 

「えるぅ!?」

 

アイはエルを遠ざけようとするがもうどうする事もできずにエネルギーを全て吸われてしまった。

 

「……チッ。やはりソウヤから得るプリンセスの力とエルから得るプリンセスの力ではソウヤに軍配があがるか。だがこれで彼女の力はいただいた」

 

「何を言って……」

 

するとエルの方に異変が起きていた。エルがプリキュアに変身するために姿を変えようとするが、何も変化が起きないのだ。

 

「える!?ぷりきゅあ!ぷりきゅあ!えるなんで!へんちんできない!」

 

「え!?」

 

エルが必死にキュアマジェスティになろうとするものの、まるで上手くいかない。

 

「当たり前だ。何しろ、プリンセスとしての力は俺が奪ったんだからな」

 

「なっ!?」

 

「くっ……その力、返してください!」

 

「断ると言ったら?」

 

「あなたを倒します」

 

「……ふん。笑えない冗談だ」

 

アイはエルを空中に浮遊する抱っこ紐に預けるとペンを構える。幸い、プリンセスとしての力を全ては失ってないのか何とか抱っこ紐を浮かせるだけはできるようだ。

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!ウェザー!」

 

その瞬間、アイの姿がキュアウェザーとなるとナイトへと殴りかかる。

 

「……お前、何物だ?」

 

「空にひろがる数多の天気、キュアウェザーよ。プリンセスの力を返してもらうわ」

 

「……それは無理だ。お前には俺は倒せない」

 

するとナイトは次々繰り出されるウェザーの攻撃を全て簡単に捌いてしまう。まるで動きがわかっているかのように。

 

「なっ!?私の動きなんて初めて見るはずなのに……」

 

「その通り。だが、その程度の力では俺には届かない」

 

そう言って簡単に蹴り飛ばしてしまうとウェザーは叩きつけられる。

 

「うぐうっ……」

 

するとナイトはスカイトーンを取り出すとそれを装填。その瞬間、ナイトの鎧が禍々しい光に包まれるとそこに青空を模した色が付与。そして、体の至る所にスカイブルーの差し色が入って髪に水色の筋が光る。

 

「それは……」

 

「はあっ!」

 

その瞬間、ナイトは先程よりも素早い動きで突撃すると近距離で百裂拳を繰り出す。

 

「くっ……」

 

ウェザーは咄嗟に防御を固めるがその上からでも凄まじい威力がビリビリと伝わるほどでウェザーは痛みに耐える。

 

「うぐうっ……」

 

更にウェザーを吹き飛ばすとそのままナイトが技を放ってきた。

 

「ひろがる!スカイパンチ!」

 

それは紛れもないキュアスカイの技だ。ただし、スカイのスカイパンチとは違い、男子が技を言うからかヒーローガールがひろがるとなっている。

 

「はあっ!」

 

ウェザーはその一撃を雲の障壁で受け止めようとするが一瞬にしてそれは砕かれると腹に攻撃が命中。ウェザーは激痛共にその場に倒れると変身解除してしまう。

 

「あ……うぐうっ……」

 

そのまま痛みに腹を抑えて悶える中、ナイトはアイを無視して去っていく。

 

「待って……あなたの目的は……」

 

「……それを言う義理はない」

 

それからナイトは姿を消してしまうとアイはそのまま気を失う。ナイトはそれから飛び移りながら高台に立つと変身を解いてソウヤの姿に戻る。その目には禍々しい光が宿っており、ある人物を呟いていた。

 

「……ユキ」

 

するとその後ろに一人の影が出てくるとソウヤはノールックで話しかける。

 

「プリンセスの力の一旦、持ってきた。これを使えば良いんだろう?」

 

「確かにいただいた。だが、これっぽっちでは足りない。そうだな。ソウヤの中に眠るプリンセスの力を全て集めよ。後ソウヤは四人いる。全員から搾り取ればお前の持つプリンセスの力は絶対的な物になるんだ」

 

「……そうすれば、ユキの中に入れたアレを取り除いてくれるんだな?」

 

「約束しよう」

 

「………」

 

ソウヤは無言で自分自身の放つプリンセスの力を共鳴させて他の世界の自分を探しに行くのだった。




お気づきだと思いますが、今回登場したユキは私の小説に登場するユキとは別の世界のユキです。一応呼称としてはアナザーのユキと思ってもらえるとわかりやすいと思います。それではまた次回もお楽しみに。


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闇ナイトの進撃 消えゆく者

ここは雪原地帯。その中をあげはとソウヤ、二人が歩いている。しかし、何故だか雪の中だと言うのに寒さをあまり感じられなかった。

 

「どうしてこんな雪の中なのに寒くないんだろ……何だか不気味」

 

「ですが、寒いよりはまだマシだとは思うよ」

 

「それはそうなんだけど……」

 

二人が雑談をしながら進んでいるとソウヤは嫌な気配を感じ取ったのかキョロキョロと辺りを見回す。するとそれを見たあげはが気にかける。

 

「ソウヤ君?どうしたの?」

 

「……今なんだか嫌な予感がして……ッ!?あげはさん!伏せて!」

 

それを聞いた途端二人が伏せるとそこにいたのは鞭を手にした女性、ラブだった。

 

「ラブ!?こんな所に……」

 

「この人は?」

 

「えっと、簡単に言うと私達の世界にいる敵だよ」

 

「なら、戦って倒すまでです!」

 

それから二人は光と共にプリキュアへと変身。キュアナイトとキュアバタフライへ変わる。

 

「気をつけて。コイツと目を合わせたら操られるから!」

 

「そうなんですね!気をつけます!」

 

早速ラブは漆黒のエネルギー弾を連射してくるとバタフライが盾で防ぎ、ナイトが手に召喚した槍で攻撃を仕掛けた。しかし、ラブにそれは当たらず。逆に鞭による反撃をしてきた。

 

「くっ!?」

 

ナイトはそれを躱すとそのタイミングでバタフライからの蝶型の投げキッスが命中して爆発。ラブは防御したもののダメージを受けた様子だ。

 

「はあっ!」

 

更に槍を連続で突き出すことでラブに反撃の隙を与えない。だが、バタフライはこの時点で違和感を覚えていた。

 

「……どうして?ラブはこんなに弱かったっけ?」

 

バタフライはそんな違和感を感じる。確かに自分はあの時よりは更に強くなったという自覚がある上に今はナイトと一緒なのだ。前よりは苦戦しないと考えてはいたのだがそれでもこの程度かと拍子抜けしてしまう。

 

「バタフライ、相手も弱ってきました!このまま決めましょう!」

 

「え、えぇ……」

 

それから二人が同時に飛び出すと拳を叩き込む。ラブは吹き飛ばされると近くの岩に叩きつけられる。その瞬間、ラブの姿は霧のようになって消えた。

 

「え!?」

 

「まさか、これもアイツの……」

 

「いいえ、あんな能力。前に戦った時は無かったわ」

 

「だとしたらどうして……」

 

二人の心は混乱するばかりである。するとどこからかザクザクと雪の上を歩く音が聞こえてきた。

 

「……誰!?」

 

バタフライが振り向くがそこには誰もいない。するとナイトが何かを感じ取るとバタフライを突き飛ばしながら自分もその場から倒れるように離れる。その直後、轟音と共に何かが降り立つ。

 

「……危険を察知して躱したか。流石は俺だな」

 

そこにいたのはアイことキュアウェザーを襲った闇のナイトである。だが、二人は初めて見るのでキュアナイトそっくりの姿に驚きを隠せなかった。

 

「キュアナイト!?いや、ですが……」

 

「男の子のキュアナイト……」

 

「やっぱり俺を知ってる。お前はどの世界の聖あげはだ?」

 

そう聞いてくる闇ナイトにアナザーナイトとバタフライは言い返す。

 

「ちょっと、いきなり何するのよ!」

 

「初対面の相手にいきなり呼び捨てだなんて」

 

「……それは済まなかった。だが、答える気が無いのならそれでも構わない。用があるのは俺と同じキュアナイトだけだからな」

 

「「……え?」」

 

いきなりのキュアナイトに用事がある宣言に二人は困惑を隠せない。だが、それでもやるしか無いと考えた二人は頷くと闇ナイトと戦う事になる。

 

「「はあっ!」」

 

二人が同時に前に出ると闇ナイトへとラッシュを仕掛けた。だが、闇ナイトは二人分の攻撃が相手でもまるでわかっているかのように攻撃を全て躱してしまう。

 

「そんな……攻撃が当たらない」

 

「まさか、第六感もあるの!?」

 

二人は第六感持ちだと瞬時に見分けると闇雲に攻撃をするのではなく、数の有利を活かして闇ナイトの意識を散らせる事に集中した。

 

「二つの色を一つに!ホワイト!ブルー!温度の力!サゲてこ!」

 

するとミックスパレットの効果で闇ナイトの足元が凍結。これにより、闇ナイトの動きが瞬間的に止まる。その隙をアナザーナイトは見逃さない。

 

「ヒーローガール!ナイトミラージュ!」

 

アナザーのナイトからの連続蹴りが決まると闇ナイトはダメージを負う。しかし、闇ナイトはその上でも平気なのか平然としていた。

 

「そんな……」

 

「殆どノーダメージだなんて」

 

「………その技を出すならこのくらいはやってみな。ひろがる!ナイトミラージュ!」

 

カウンターの闇ナイトからの技をバタフライが盾を重ねて防ごうとする。しかし、それは瞬く間に破られるとバタフライが大ダメージを受けてしまう。

 

「ああっ!?」

 

「バタフライ!」

 

バタフライは地面に叩きつけられると痛みに悶える。そんなバタフライを見てアナザーナイトは怒りに震えた。

 

「あげはに……バタフライに……よくもこんなことを!」

 

アナザーナイトにとってバタフライことあげはは恩人だ。そんなあげはを傷つけられれば怒るのも無理は無い。しかし、そのせいでアナザーナイトは完全に冷静さを失ってしまう。

 

「いくら私でも……許しません!」

 

それからアナザーナイトは猛攻撃を仕掛けるが、闇ナイトは簡単に躱していく。

 

「攻撃が単調すぎ。その程度では俺を崩せない」

 

「ううっ……」

 

その間にバタフライが立つとアナザーナイトと共に闇ナイトへと攻撃する。だが、それでも闇ナイトの対応力を上回れない。

 

「お前らの相手にはこれを使う方が良いな」

 

すると闇ナイトは衝撃波で二人を一旦下がらせるとスカイトーンを取り出してそれを装填。その瞬間、ナイトの鎧が禍々しい光に包まれるとそこにベイビーピンクの色が付与。そして、体の至る所にピンクの蝶の模様が入って髪にピンクの筋が光る。

 

「それは……まさか……」

 

「ああ、あげはの。キュアバタフライの力だ」

 

それを聞いてアナザーナイトは歯軋りするとアナザーナイトの奥の手を解放した。

 

するとアナザーナイトの衣装が赤と黒のセパレートタイプのミニスカドレスに変わる。更に青みがかった長い黒髪は金色の髪に変化し、瞳がルビーのような赤い瞳とアメジストのような紫のオッドアイに変化した。

 

「こっちのナイトも変わった!?」

 

「これはキュアナイトαスタイルとキュアナイトバタフライスタイルを融合させたキュアナイト・デュアルスタイル!」

 

「ならこちらはさしずめキュアナイトフュージョンバタフライ」

 

「……え?」

 

「フュージョンって確か……」

 

フュージョンの意味を知っている二人は困惑する。何故ならその言い回しだとキュアバタフライと一つになっているような物だと言わんばかりだ。

 

「……ああ、そう思ってくれて構わない。何故ならこれはキュアバタフライの成れの果て……彼女の形見だからだ」

 

それを聞いて二人は更に混乱する。闇ナイトの言葉通りだとすればもう闇ナイトの世界のキュアバタフライはそのスカイトーンになっているという事だ。

 

「まさか……あなたが……」

 

「勘違いするな。俺は仲間を傷つけるような事はしない。だが、俺の世界のスカイ、プリズム、ウィング、バタフライ……マジェスティでさえも……皆奴の前に敗れて……このスカイトーンになってしまったんだ」

 

そう言う闇ナイトの声は震えており、二人はそれを聞いて目の前で仲間を失ったのだと察しが付いた。

 

「……お喋りが過ぎたな。さっさとお前からプリンセスの力を奪うとしよう」

 

闇ナイトはアナザーナイトへと攻撃を仕掛ける。アナザーナイトは無数の槍を展開するとそれを闇ナイトに投げつけた。

 

「はっ!」

 

すると闇ナイトは盾を召喚して自らに当たるものだけを防ぐ。だが、槍達は着弾した瞬間に爆発して煙幕となる。

 

「ひろがる!バタフライプレス!」

 

その瞬間、闇ナイトの真上からバタフライからのシールドアタックが発動して闇ナイトを押し潰そうとするが、闇ナイトはそれを体にピンクのオーラを纏って受け止める。

 

「これは……ミックスパレットの!!」

 

「……正解」

 

その瞬間、盾を押し返すとそれが空中にいたバタフライに直撃。バタフライは悲鳴と共に落下。それをアナザーナイトが受け止めるが、その隙を闇ナイトは逃さない。

 

「喰らえ」

 

ナイトが投げキッスするとそれによって発生した蝶が二人へと飛んでいく。アナザーナイトは咄嗟に槍を投げるとそれが闇ナイトから距離が取れる場所に刺さり、その瞬間アナザーナイトはそこに移動する。

 

「……逃さない」

 

そのまま闇ナイトは目を閉じると何かを始めた。そして移動した二人は一旦体勢を立て直すべきだと退く事を選ぶ。

 

「このままじや勝てない……」

 

「悔しいけど退くべき時ね」

 

二人が逃げようとしたその瞬間、突如として真上に影が現れるとそこから闇ナイトが落下してくる。

 

「「なっ!?」」

 

「残念だが俺には同じプリンセスの力を察知する能力があってな。その場所に向かって移動する事も可能だ。ただ、少々着地が荒いのが厄介なんだがな」

 

「つまりあなたを倒す以外に逃げる手は無いってわけですね」

 

「ものわかりが良くて助かるな」

 

闇ナイトは手に槍を出すとそれを持って突進してくる。バタフライはそれを何とか手で受け止めるが、パワーの差は歴然でそのまま近くの岩にまで押し込まれてしまう。

 

「くうっ……」

 

「………」

 

「ナイト、今だよ!」

 

「はい!ヒーローガール!ナイトスタンプ!」

 

アナザーナイトが召喚した盾を蹴り飛ばすとそれが闇ナイトに命中する。しかし、それは闇ナイトが召喚した盾によって防がれてしまっていた。

 

「……やはり私……。侮れない」

 

闇ナイトは一度溜息を吐くと一旦バタフライから離れてアナザーナイトの前に立つ。

 

「ッ……」

 

「お前。一度恋人を失っただろ?」

 

「どうしてそれを……」

 

「そんな目をしてる……俺と同じだ。だが、だからと言って情けはかけない。躊躇なくお前の大切なものを奪ってやる」

 

すると闇ナイトはスカイトーンを出すとそれがキュアウィングの幻影へと変化。そして、バタフライの力とウィングの力が揃えばやる事はただ一つ。

 

「全ての色を一つに!レッド!イエロー!ブルー!ホワイト!」

 

その瞬間、闇ナイトから四色の色のエネルギーが出るとそれが混ざり合い、虹のエネルギーとなって幻影のウィングに降り注ぐ。そして、放たれる二人の合体技。

 

「プリキュア!タイタニックレインボー!アタック!」

 

そのまま闇ナイトが不死鳥となったウィングの上に乗るとそれがプニバードの姿へ。バタフライへと落下を始める。

 

「不味い!」

 

アナザーナイトは槍を投げるとそれがバタフライの近くに落下。そのまま瞬間移動しようとした。

 

「……ッ!?ダメ!こっちに来たら……」

 

バタフライが闇ナイトの狙いに気がつくと制止するがもう遅い。アナザーナイトがバタフライを庇うように覆い被さるとそのタイミングで攻撃が命中。二人は変身解除して倒れ込むと闇ナイトが手を翳した。

 

「まず一人」

 

するとソウヤからプリンセスとしての力を粒子として吸収するとソウヤの姿は点滅を始める。

 

「そんな……ソウヤ君!しっかりして!」

 

「……無駄だ。そのソウヤのプリンセスとしての力は頂いた。そして、ソウヤはこの世界に二人と要らない。だからそのソウヤにもスカイトーンとなってもらう」

 

「酷い……あなた!本当にそれで良いの!?今やってる事はあなたが憎んだ相手と同じ事じゃ‥‥」

 

「そうだ」

 

闇ナイトの目は本気だった。本気で自分以外のソウヤを消そうとしている。あげははそれをただ見届けるだけしかできなかった。

 

「あげは、お前には用はない。もう会うことは無いだろう」

 

そう言って闇ナイトは去っていく。そして、あげははソウヤを助けようと考えるがソウヤは首を横に振った。

 

「俺の事は良いから。今は他の俺にこの事を伝えてくれ……あげはさん。短い間だったけど楽しかったです」

 

そう言ってソウヤはスカイトーンへと姿を変えてしまうとあげはの手に収まる。あげははそれを見ると悔しそうに拳を握りしめた。

 

「皆にこの事を伝えないと……次の犠牲者が出てしまう前に……」

 

そう言ってあげはは急いで他に存在するであろうソウヤや仲間達を探しに歩き出した。その手にソウヤの形見を持って。




また次回もお楽しみに。


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闇ナイトの猛攻 通用しない力

お久しぶりです。他の小説を書いていたら投稿がこんなにも遅くなってしまいました。ブランクもあるので色々違和感が出るかもですがよろしくお願いします。それではどうぞ!


その頃、アナザーのソウヤが消滅したという事実を知らないましろとましろと付き合うソウヤ。二人は歩きながら話をしていた。

 

「そういえば、ソウヤ君は私と付き合っているって言ったけどどうして私の事を選んでくれたの?」

 

「えっと、それはましろの優しさに救われてきたからかな。ましろは春の陽気みたいにポカポカとして……俺はそんなましろの優しさに惹かれたんだと思う」

 

「あはは……何だか話を聞いていると私の事なのに私じゃ無いって言うのがこそばゆいなぁ」

 

それを聞いてましろは苦笑いを浮かべる。それにつられてソウヤも笑った。すると二人の前から影が見えてくる。するとそこに現れたのはツバサとあげはと付き合っているソウヤだった。

 

「ツバサ君!!」

 

「あ、ましろさん……と、ソウヤ君!?」

 

「「嘘だろ、俺が……もう一人!?」」

 

二人は姿が全く同じために困惑する。ひとまずこのままだと見分けが付かないのでましろの方のソウヤは腕にシュシュを、あげはの方のソウヤは髪に蝶の髪留めを付ける形で見分ける事にした。

 

「なるほど、状況を整理するとましろさんやツバサ君は同じ世界から。二人の俺はバラバラの世界からこの変な世界にやってきたと」

 

「そして、今まで倒してきた敵であるカバトン、バッタモンダー、ミノトン、あとラブ……?それとアンノウンが敵として現れた訳だな」

 

ひとまず四人は状況を整理しつつこの世界が何のために作られたのかを考える。しかし、暫く考えてもその答えは出てこない。ただ一つハッキリしているのは奥に見える城を目指して進んでいるという事だけだ。

 

「シュプリームの時と状況は似てますけど色々と違う点がありますよね」

 

「うん。取り敢えずあの城を頑張って目指すしか無いよ」

 

それから四人は先へと進む事になった。その頃、ソウヤとの戦いで傷ついたアイが目を覚ますとそこには彼女を心配そうに見つめるソラ、アナザーのユキ、エルがいた。

 

「アイさん!大丈夫ですか!?」

 

「うぅっ……大丈夫。心配かけてごめんなさい。ソラちゃん、エルちゃん……えっと……」

 

「私はユキ。ユキ・アラーレだよ」

 

「そうなんだね……」

 

「お二人はソウヤ君にやられたんですよね?」

 

ソラからの問いにアイはその事を思い出すとガバリと体を起こすと共にソラへと問い詰めた。

 

「ソラちゃんは!?あの男の子のキュアナイトには会った?」

 

「え!?アイさん、キュアナイトは女の子の姿の筈ですよ。男の子のキュアナイトだなんて……」

 

それを聞いた途端、ユキは胸がズキンと高鳴る。そして頭に激しい痛みが走った。

 

「うぐうっ……」

 

「ユキさん!大丈夫ですか!?」

 

「大丈夫……それよりも男の子のキュアナイトってその姿を覚えてたりする?」

 

ユキからの問いにアイが特徴について事細かく伝えるとユキは顔を青ざめさせる。

 

「そんな……」

 

「どうかしたんですか?」

 

「……多分そのソウヤ君は私の恋人のソウヤ君だよ」

 

「「ええっ!?」」

 

「える!?」

 

三人が驚きの声を上げる中、ユキはひとまず頭の記憶に薄らと残っている事を話し始めた。

 

それはシュプリーム事件を解決してから少し経ったある平和な日の事だ。突如として現れた漆黒のエネルギー。そこから何かの影が出てきた。

 

ソウヤ達はプリキュアに変身してその影と戦闘を繰り広げる事に。しかし、その影は圧倒的な強さでプリキュア達を蹂躙するとプリキュアの繰り出した最終奥義、プリキュア・マジェスティックハレーションさえも通用せず。ユキとソウヤ以外の全てのプリキュアをスカイトーンとして消し去ってしまったのだ。

 

「そんな……」

 

「酷い……」

 

「それから……ゔっ……」

 

するとユキの記憶にノイズがかかるとそのまま記憶が途切れてしまう。彼女にわかるのはここまでらしい。

 

「……ごめんなさい。私達が弱かったばかりに他の世界のプリキュアにまで迷惑を……」

 

「そんなの気にしていません!」

 

「そういえば、闇のソウヤ君の狙いがプリンセスの力って言ってましたけどそれとは何か関係はありますか?」

 

「わからない……でも確かなのはこの世界に私の世界のソウヤ君がいるって事です。早く彼を止めないと……」

 

しかし、ユキはさらに胸が苦しくなると息が荒れ始める。症状がどんどん重くなっていく証拠だった。

 

「くうっ……」

 

それから何とかユキは持ち直すとフラフラと立ち上がる。それを見てソラ達は無理しないように言う。

 

「今無理したら傷が……」

 

「大丈夫。私は何とかできる。でも、ソウヤ君はそちらの世界の皆さんを襲うかもしれない。だから……」

 

「……ッ。わかりました。でも約束してください。無理だけは絶対にしないと」

 

「える!ゆき、むりしない!」

 

「エルちゃんもだよ。マジェスティの力は絶対に私達で取り返すから」

 

こうして、ソラ達四人も合流して移動を開始する事になる。そんな中、場面は再び戻り、ましろやツバサ達の方へ。四人が城へと近づいていく中、突如として空から光が瞬く。

 

「あれ?今何か光ったような」

 

「ッ……皆、よけて!」

 

その瞬間、四人が後ろに飛び退くとそこにいきなり巨大なクレーターが出現。そこにいたのは闇のキュアナイトであった。

 

「嘘!?何あれ……」

 

「まさかキュアナイト!?いや、キュアナイトは女の子のはず!」

 

「いいや。俺こそが正真正銘のキュアナイト。それにしてもまさかここに二人が揃っているとはな。丁度良い。お前らの力も貰うぞ」

 

そう言って闇ナイトは二人を睨みつける。四人はミラージュペンを構えるとプリキュアへと変身。プリズム、ウィング、そして二人のキュアナイトへと変わる。

 

「悪いが俺の狙いはキュアナイトだけ。プリズム、ウィング。お前らには退場してもらう」

 

「「だったら私達が相手です!」」

 

そう言って二人のナイトは闇ナイトに立ち向かう。しかし、二人がかりでも闇ナイトは攻撃を躱し続ける。

 

「ッ!?まさか第六感……」

 

「それでも二人がかりで当てられないなんて」

 

それだけ闇ナイトの力は半端では無いということだろう。そして、闇ナイトはエネルギーを手に込めるとそれを槍の形状にして投げつける。それに対してプリズムが気弾で応戦し、防いだ。

 

「大丈夫?」

 

「ありがとう!」

 

「はあっ!」

 

更にウィングも空を飛びつつ突撃し、ここに来てようやくダメージを与えた。

 

「流石に四人がかり、しかもその内二人が俺だと苦戦はするか。でも……」

 

その直後、闇ナイトの姿が消えると四人の裏を取り、槍を振り抜く。これにより、四人はダメージを受けて吹き飛ばされた。

 

「ぐっ……流石に強い」

 

「……どうした?さっきの奴みたいにデュアルスタイルは使わないのか?」

 

闇ナイトはアナザーのナイトのようなデュアルスタイルは使わないのかと質問する。しかし、こちらの二人のナイトはそれができないのかやろうとすらしなかった。

 

「ふん。どうやらやりたくともできないみたいだな。ならば面白いものを見せてやる」

 

するとスカイトーンが光り輝くと共にその姿が変化。ナイトの鎧がオレンジのカラーリングに変わると髪にオレンジの筋が入り、背中には薄らと翼が展開された。

 

「なっ!?あれは……」

 

「キュアナイト……フュージョンウィング」

 

「だったらこっちも!」

 

すると二人のキュアナイトはそれぞれ姿を変えていく。一人は白いドレスにポニーテールの髪型になったキュアナイト・プリズムスタイル、そしてもう一人は髪がショートヘアに変化しつつ纏う服がドレスからオレンジの執事服のような姿になったキュアナイト・ウィングスタイルである。

 

「こっちも変わった……」

 

「私とウィングの力を得たんだね」

 

するとプリズムスタイルになったナイトは手に銃を構えると闇ナイトへと撃ちかける。それに対して闇ナイトは背中の翼から羽を射出して迎え撃つ。

 

「「はあっ!」」

 

そのタイミングでウィングとウィングスタイルのナイトの二人が前に出ると拳を繰り出す。しかし、その瞬間に闇ナイトは羽を舞い散らせながら瞬間移動。プリズムの背後を取ると回し蹴りを叩きつける。

 

「うわあっ!?」

 

「プリズム!?よくもプリズムを!ヒーローガール!ナイトバースト!」

 

ナイトプリズムは合体させた拳銃をスナイパーライフルの形にして狙撃。それは闇ナイトへと向かっていく。

 

「……ひろがる!ウィングアタック!」

 

その瞬間、ナイトから放たれたのはキュアウィングの技であるウィングアタックであった。そして、それはナイトバーストを打ち破るとナイトプリズムに命中。そのままナイトプリズムは崩れ落ちて変身解除してしまう。

 

「ナイトプリズム!?そんな……」

 

あっという間に仕留められてしまったナイトプリズムを見てプリズムとウィングは頷くと連携技で闇ナイトを倒すべく攻撃を仕掛ける。

 

「はあっ!」

 

プリズムが弾幕を張ると敢えてそれを命中させずに闇ナイトの逃げ道を塞ぐように展開する。そして、それと同時にウィングが突撃した。

 

「ひろがる!ウィングアタック!」

 

「ふん。逃げ道を塞いだ上で大技……ならば!」

 

すると闇ナイトはエネルギーバリアを展開すると攻撃を全て防いでしまう。

 

「なっ!?」

 

そして、辛うじてバリアを打ち破ったウィングをオーバーヘッドキックで地面へと叩きつけさせるとそのままウィングも変身解除。

 

「くっ……だったらこれだ!ヒーローガール!ナイトラッシュ!」

 

するとナイトウィングがオレンジの光を纏いつつ突撃。しかし、闇ナイトはそれを片手で受け止めてしまう。

 

「なっ!?これは……」

 

「流石に少しは効いた……が、この程度で倒せると思うなよ」

 

その瞬間、闇ナイトがナイトウィングを抑えている方とは逆の手を振り上げるとエネルギーの槍が大量に生成。そしてそれはナイトウィング、プリズムに降り注ぐと二人は悲鳴と共に変身解除。そのまま闇ナイトは落ちかけるあげはのソウヤからプリンセスの力を奪い取ってしまう。

 

「くそっ……ごめんあげは……ここまでみたいだ……」

 

そして、そのままソウヤはスカイトーンとして落ちてしまう。それを闇ナイトは見届けてからすぐに移動するとましろのソウヤの前に現れる。

 

「ッ……」

 

「逃げ……て」

 

「ソウヤ君……」

 

傷ついたましろとツバサが声をかけるがもうソウヤに逃げ道は無い。そのままそのソウヤもスカイトーンに変えられてしまった。

 

「どうして……どうしてこんな事をするんですか!」

 

「あなたの身勝手のせいで傷ついている人達がいるんですよ!心が痛まないんですか!」

 

「……俺は俺の大切な人を全て失った。アイツには手も足も出なかった……お前らもそうだ。俺に勝てないのにアイツに勝てるわけがない。それに、俺の唯一の希望を救えるかもしれないのに……その邪魔をするな」

 

そう言って闇ナイトは消えてしまう。ましろとツバサの二人は落ちていたスカイトーンを拾うとそれを握りしめる。

 

「私達だって諦めない……」

 

「絶対に取り戻すから……待っててください。ソウヤ君」

 

こうして、二人のソウヤも吸収されて残すはあと一人。果たして、この先どうなってしまうのか。




この小説が更新停止になった際に自身の書いていた雪のヒーローガールシリーズとこの作品を合わせた合作を書いています。よろしければ読んでみてください。

URL
https://syosetu.org/novel/330971/

それではまた次回もお楽しみに。


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諸悪の根源 奪われたプリンセスの力

ソウヤが次々とスカイトーンへと変えられていく中、あさひとソウヤの二人はもうすぐ城へと到達する所にまで来た。

 

「やっとここまで来れた……」

 

「なかなか大変だったな」

 

というのもここに来るまでの道のりはかなり険しく、森や川、酷い時は崖道を通ってきたので二人はかなり疲れていたのだ。

 

「皆、無事ていると良いけど……」

 

「大丈夫だろ。皆なら平気だと思うし」

 

そんな事を言っているとソウヤが何かを感じ取る。それと同時にあさひが未来予知を発動するとそこにあげはがフラフラと歩いてくる様が見えた。

 

「あげは!?」

 

「大丈夫ですか!」

 

二人があげはに駆け寄るとあげははかなり無理をしてここに来たようで体の傷を引き摺っていたために二人は慌てて駆け寄る。

 

「ううっ……二人共、大丈夫?」

 

「取り敢えずこの怪我を治すよ」

 

「え?そんな事できるの?」

 

あさひが効くとソウヤが自らの中に眠るプリンセス……エトの力を使う。するとあげはの体に付いていた傷が癒えたのだ。

 

「嘘!?何で?あんなに怪我してたのに……」

 

「私の時間操作能力で傷が無い状態に戻しただけですよ」

 

「……ん?今しれっととんでもない事言わなかった?」

 

あさひがそう言う中、あげはは急いでここまで来た目的を思い出すと二人へと伝えようとする。

 

「そうだ!ソウヤ君。今すぐ逃げて。あなたと同じキュアナイトが……」

 

その瞬間だった。闇ナイトの声がその場に響いたのは。その声と共に闇ナイトが降りてくると三人の前に立ちはだかる。

 

「……後はお前だけだ。異世界の俺」

 

「どうやら遅かったみたい」

 

「俺の事を狙ってるみたいだけど……アイツは本当に俺なんだよな?」

 

「うん。あの強さはキュアナイトそのものだったよ」

 

「マジか……アレとやり合うなんて考えたく無いんだけど……」

 

あさひ達が構えを取る中、闇ナイトはソウヤを睨みつける。その瞬間、ソウヤへと手を翳そうとした。

 

「ヤバイ!ひろがるチェンジ!サンライズ!」

 

あさひは急いでサンライズにへ変身すると闇ナイトへと殴りかかる。それを見て闇ナイトはソウヤからプリンセスの力を奪うのを中断した。

 

「……何故俺の動きがわかった?」

 

「何となく嫌な予感がしたからね。お前、ソウヤからプリンセスの力を奪って何をする気だ」

 

「……お前に言う義理は無い」

 

そのままサンライズと闇ナイトが殴り合いを始める中、ソウヤもキュアナイトに、あげはもキュアバタフライに変身して三人での同時攻撃を仕掛ける。

 

「「はあっ!」」

 

「ッ!?」

 

ソウヤの変身するキュアナイトはこれまでのナイトとは別格なのか闇ナイトをあっという間に押し込んでいく。

 

「馬鹿な……何故ここまでの力が……」

 

「私には仲間がいる!私と手を繋げる仲間がいればそれだけ私は強くなれる!」

 

それを言った途端闇ナイトの地雷を踏み抜いたのか闇ナイトは怒り狂う。

 

「ふざけるな……だったらお前から全てを奪って……同じ事が言えるか聞いてやる!!」

 

闇ナイトはスカイトーンを取り出すとそれを使ってその姿を変えていく。それは白とピンクのカラーリングが入り、髪には白い筋が入ったキュアナイトフュージョンプリズムに変わった。

 

「それは!!」

 

「キュアプリズムと一体化した力だよ。あっちのキュアナイトは仲間の力と融合できるみたい!」

 

「マジか。だったら!スタイルチェンジ!ヤタガラス!」

 

サンライズはヤタガラススタイルへと変わると手に槍を持つ。闇ナイトはプリズムの気弾を放つ中、サンライズは槍を振るってそれを叩き落とす。更に槍を投げつつ手に炎の剣を構えた。

 

「そうはさせない!」

 

闇ナイトは槍を弾いてから即それを破壊。それを見たナイトは考える。

 

「やっぱりアイツは私と同じキュアナイトですね。特性もしっかり熟知している……」

 

「これでも喰らえ!ひろがる!プリズムショット!」

 

すると闇ナイトはプリズムショットを放つ。それをバタフライが盾を召喚して防御するが、盾はあっという間に打ち破られてしまった。

 

「くっ!?」

 

しかし、その瞬間サンライズが先回りするとプリズムショットを炎の剣で両断して防ぐ。

 

「ありがとうキュアサンライズ!」

 

「どうしてだ……何故俺の動きが……第六感が無いのに」

 

「悪いな。俺には未来視がある。それのおかげで少し先の未来がわかるんだ」

 

今回もバタフライが盾を出してそれが破られる事がわかった上で行動をしたというわけである。

 

「なるほど、だとしたらこれは防げるかな?」

 

すると闇ナイトの隣にキュアスカイの幻影が現れる。そのまま二人は手を繋ぐと上空に円盤が生成された。

 

「これは……不味い!」

 

サンライズは咄嗟にナイトに槍を投げて射程外に押し出しつつバタフライを突き飛ばして庇うとそのままサンライズは光に飲み込まれてしまう。

 

「プリキュア!アップ・ドラフト・シャイニング!」

 

それをサンライズはまともに喰らうとヤタガラススタイルが解除されて倒れ込む。

 

「はぁ……はぁ……」

 

「サンライズ!今癒すから!二つの色を一つに!イエロー!ブルー!癒しの力!アゲてこ!」

 

その光がサンライズに降り注ぐとサンライズは体力を回復させる。それを見た闇ナイトは顔を歪めた。

 

「くっ……何故だ。何故そこまでして……」

 

「俺は、俺達は君を救いたいんだ!だからもう一度手を伸ばしてくれ!」

 

しかし、闇ナイトにその言葉は届かない。それどころか更に怒り狂う。

 

「ふざけんな……ふざけんなよ!お前らは一度も大切な人を失った事が無いんだ……だからお前らには何もわからない。わかるわけがない」

 

「わかるよ。俺達は何度も大切な人を失ってる。だから同じ事を繰り返さないように今を必死に生きてるんだ。だから……君も」

 

サンライズの言葉に闇ナイトが心を開こうとしたその時だった。突如として空に暗雲が立ち込めると雷が落ちてくる。そして闇のゲートが開くと二人の人間が出てきた。一人は魔王のような鎧姿に二本のツノが頭から生えた巨漢。もう一人はその執事とでもいうべきスラリとした男である。

 

「あ……あなたは……」

 

闇ナイトはそれを見た途端体をガタガタと震えさせ始めた。その様子から見て余程怖いのだろう。

 

「お前は誰だ!」

 

「まさか、あなたがそこのソウヤを変えた人ですか?」

 

「……いかにも。我はイカロス。全ての世界を統べるためにやってきた」

 

「そして私はイカロス様の執事でタウロスと申します」

 

二人が名前を言うと闇ナイトが二人へと声をかける。それはまるで命乞いをするような弱々しさだった。

 

「お願いだ……俺は使命を全うする。だから俺の大切な人には」

 

「手は出さない……。わかっている。だが、背信行為をしたら……」

 

「あの小娘の命は無い」

 

「ッ……ああ。おかげで吹っ切れた」

 

それを聞いて闇ナイトはサンライズ達に殺気を向ける。つまり、対話には失敗してしまったという事だ。

 

「クソッ……アイツが出てきた途端対話をしてくれなくなるなんて」

 

「ですが、ここからでも感じます。アイツの力……半端ではありません」

 

すると闇ナイトはフュージョンスタイルを解除するとその手に四つの光を出した。それは今まで奪ってきたプリンセスの力である。

 

「あれは……」

 

「全ての力よ、俺と混ざれ!」

 

そのまま四つのプリンセスの力を吸収するとその力はより一層強大化。そして、手を翳すと巨大なエネルギー砲がチャージされる。

 

「ッ!?不味ですね……エト!」

 

「はい、ここは任せてください!」

 

その直後、エネルギー砲が放たれると同時にナイトの姿が光り輝く。そして、それは長い銀色の髪に白い瞳を持つ少女で、純白のドレスアーマーを身に纏っていた。ナイトから姿を変えた彼女の名は……

 

「降臨する古代の奇跡!キュアエンシェント!」

 

「……ほう」

 

そしてその瞬間闇ナイトから放たれたエネルギー砲は消滅すると同時に強制的に闇ナイトが取り込んだプリンセスの力を分離する。

 

「な!?お前、何を……」

 

「その力は誰かを守るための力……誰かを傷つけるために使うなど許されません」

 

するとそこに各地に散らばっていたソラ、ましろ、ツバサ、エル、アイ、そしてユキが到着する。

 

「皆さん!お待たせしました!」

 

「ごめん!遅くなっちゃって……」

 

「その感じだとまだ大丈夫ですね?」

 

「ここからは私も戦うよ!」

 

「える!」

 

すると闇ナイトが持っている力の一つがエルの中に戻っていく。持ち主が現れたために力が戻ったのだ。

 

「「「「「ひろがるチェンジ!」」」」」

 

そして、プリキュア達は変身するとスカイ、プリズム、ウィング、ウェザー、マジェスティへと変化する。

 

「どうして……どうして……」

 

すると闇ナイトの姿を見たユキは闇ナイトへと叫んで呼びかける。

 

「もうやめて!ソウヤ君!」

 

「ッ……ユキ……どういう事だ!ユキはここに来てないと言っただろ!」

 

「ふん。お前が裏切った時に人質にするために決まってるだろ?」

 

その瞬間、タウロスがユキを拘束すると黒いエネルギーをユキの中に注入する。

 

「ッ!?きゃあああああっ!!」

 

ユキは悲鳴と共に激しい苦しみに襲われるとそれを見てイカロスは闇ナイトへと言い放つ。

 

「さぁどうする?お前がさっさとあのプリキュアを仕留めなければそこの小娘は死ぬぞ」

 

「クソッオオッ!」

 

闇ナイトはエンシェントへと襲いかかる。それと同時にサンライズもイカロスへと飛びかかっていた。

 

「んな事させるかよ!お前さえ倒せば万事解決だろうが!」

 

それと同時にウィング、バタフライ、ウェザー、マジェスティの四人もイカロスとの戦闘を開始。スカイとプリズムはユキを解放するためにタウロスへと挑む。

 

エンシェントは闇ナイトの攻撃を軽くいなすと闇ナイトはムキになってラッシュを仕掛けるがまるで無意味とばかりに攻撃が当たらない。

 

「どうして……何で攻撃が……」

 

「あなたは一つ過ちを犯しました。それは守るべき力で誰かを傷つけようとした事です。そんなあなたを……私は許さない!」

 

それからエンシェントは闇ナイトを気絶させない程度に手加減しつつ圧倒。闇ナイトからの攻撃をことごとく防ぎつつ闇ナイトへとダメージを与えていく。

 

「そんな……そんなはずはない!ひろがる!ナイトミラージュ!」

 

「はあっ!」

 

エンシェントはナイトミラージュを簡単に受け止めると逆にカウンターの連撃を命中させて地に伏させる。

 

「ぐうっ……」

 

そして、闇ナイトはとうとう限界にまで来てしまう。そのタイミングでエンシェントは再度キュアナイトに戻った。

 

「どういう事だ……何故トドメを刺さない?」

 

「……私はあなたを救いたい。あなたの事情は知らないけど、それでも私達ならきっと……」

 

その時だった。先程までサンライズ達を相手にしていたイカロスがキュアナイトの前に現れたのは。

 

「ッ!?」

 

「貰うぞ、プリンセスの力」

 

「しまっ……」

 

ナイトはどうにかしようとするが、突如として現れたイカロスに手も足も出す事ができず、力をあっという間に吸い取られるとスカイトーンになってしまった。

 

「ナイトッ……」

 

そして、いつの間にか瞬殺されたのか傷ついたあさひ達が地面に倒れており声をかけるがもう遅い。こうして、全てのキュアナイトの力が奪われてしまうのであった。




また次回もお楽しみに。


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闇ソウヤの過去 取り合う手

全てのソウヤの中に宿るプリンセスの力は奪われた。そして、闇ナイトはイカロスへと声をかける。

 

「これで俺の中のプリンセスの力が絶対的な物になった。……イカロス様、約束通りユキを……」

 

「ああ。この小娘は助けてやる」

 

するとイカロスが指を鳴らす。その瞬間、ユキの中に取り込まれていた闇のエネルギーが出ていくとユキはそのまま気を失って倒れていく。

 

「ユキ!大丈夫か?しっかりしてくれ!」

 

闇ナイトがユキの小さな体をゆするとユキは薄らと目を覚ます。しかし、突如としてユキの胸にまた闇の力が宿ると同時にユキは再び苦しみ始める。

 

「ああああああっ!?」

 

「ユキ!?どうしたんだよユキ!どういう事だ!話が違うじゃないか!」

 

闇ナイトが猛抗議する中、イカロスはニヤニヤとした笑みを崩さない。それを見て闇ナイトは自分はイカロスに騙されたのだと知った。

 

「お前……どうして……」

 

「イカロス様はプリンセスの力を欲しておられた。そして、プリンセスの力を持つ者を集めてその力を一つに束ね、強大な力を得ようとしていたのだ」

 

「だが、最初に襲ったお前らの世界にいるキュアナイト、ソウヤから感じるプリンセスの力は私が求めていた力に達しなかった。だからお前に力を与える事にした」

 

それを聞いて闇ナイトは何のことだかわからなかったが、前と比べて自分に増えた力を自覚する。

 

「まさか、俺達の世界の皆をこんな姿にしたのは……」

 

「ああ。お前を手駒にするための一手だ」

 

それを聞いて闇ナイトは拳を握りしめた。最初から自分は利用されていたのだ。プリンセスの力を集めるための道具として。

 

「俺の仲間をよくも……そして、よくもユキをこんな目に遭わせやがって!」

 

闇ナイトが怒るが、イカロスは手にエネルギーを高めると闇ナイトへとぶつける。闇ナイトはそれを喰らうと奪ったプリンセスの力をイカロスの手へと渡してしまう。

 

「あぐうっ……」

 

更にイカロスは指を鳴らすとカバトン、バッタモンダー、ミノトン、ラブ、アンノウンの五人の模造を召喚する。

 

「ッ!?」

 

「もうお前に用は無い。だが、そこの小娘には用がある」

 

するとイカロスが手を翳すとユキは浮かび上がる。そして、ユキの中に全てのプリンセスの力が入るとそのままユキの体はイカロスへと取り込まれてしまう。

 

「なっ!?」

 

「プリンセスの力は邪悪な者には宿らないからなぁ。こうやって一人の人間を器にしてそれごと取り込めば私でも力を使える」

 

「ふざけんな……ユキを返せ!」

 

闇ナイトが飛びかかるがタウロスが出てくると闇ナイトへと金縛り攻撃を発動。闇ナイトは動きを強制停止させられてしまう。

 

「ぐうっ!?」

 

「お前はそこで大人しくして……」

 

その瞬間、闇ナイトの金縛りがエネルギー弾で強制的に破壊される。イカロスとタウロスがそちらを向くとそこには先程倒されたものの、何とか立ち上がったサンライズ達がプリキュアとして立ち上がっていた。

 

「もうこれ以上お前らに好き勝手させるかよ」

 

「まだまだ私達はやれます!」

 

そんなサンライズ達を見たイカロスはそんな彼らを見て高笑いする。そして、サンライズ達へと話しかけた。

 

「ほう。まだ闘志は失ってないか。ならばまずはコイツらに勝ってみろ」

 

イカロスの言葉と共に五人の闇の戦士達がプリキュア達へと襲いかかる。するとスカイがカバトン、プリズムがバッタモンダー、ウィングがミノトン、ウェザーがラブ、マジェスティがアンノウンと激突。サンライズとバタフライがイカロスへと攻撃しようとする中、そこにそうはさせないとばかりにタウロスが出てくる。

 

「イカロス様には手を出させませんよ」

 

「「邪魔すんな(しないで)!」」

 

そのまま戦いが始まる中、闇ナイトは一人項垂れていた。彼の中にあるのは利用されていたという事実と彼の野望のために無理矢理力を奪ってしまった並行世界の自分への罪悪感である。

 

「俺は、俺はなんて事をしてしまったんだ……自分の大切な人を助けるために……こんな、こんな事を……」

 

闇ナイトの心は折れかけてしまうと変身解除。闇ソウヤとして崩れ落ちる。そんなソウヤを見たサンライズはバタフライへと話しかけた。

 

「バタフライ……」

 

「サンライズの言いたいことはわかるよ。だから、行ってらっしゃい!」

 

「ごめん、ありがと!」

 

サンライズは一度戦線離脱すると闇ソウヤの前に行き、彼へと手を差し伸べる。

 

「ソウヤ」

 

「……何故だ?俺はお前の友達を傷つけて、奪ったんだぞ……今更救われるわけがない。それに、俺の事を許せないはずだ。なのに何で」

 

「……悲鳴を上げて悲しそうにしている奴が目の前にいるのにそれをただ黙って見過ごす程俺は他人相手に冷たくなれないみたいだ。それに、ソウヤはソウヤ。世界が違っても俺の大切な友達だ」

 

それを聞いて闇ソウヤは目を見開く。するとその瞬間、イカロスは不意打ちとばかりにエネルギー弾を飛ばす。そして、それはサンライズの背中へと飛んでいく。

 

「ッ!?」

 

サンライズへとエネルギー弾が命中するその時。突如としてサンライズから何かが分離するとそれを弾き飛ばす。

 

「おいおい。そんな簡単に俺に不意打ちが効くと思うなよ?」

 

そこにいたのはキュアトワイライト……カゲロウその人である。トワイライトを見た闇ソウヤは驚きの顔をした。

 

「よっ、初めましてだな。並行世界のソウヤ。お前、いつまでもメソメソして俯くつもりか?」

 

「……無駄だ。アイツには勝てない……。俺は俺の仲間は……」

 

「だからって諦めるのは早すぎるだろ。まだ希望は残ってる。だったら少しでも賭けてみるべきじゃないのか?」

 

サンライズからの言葉に闇ソウヤの心はまだ晴れない。どうしても自分達を蹂躙したイカロスへの恐怖が抜けないようなのだ。その時、トワイライトは闇ソウヤを殴った。

 

「ちょっ!?トワイライト!?」

 

「ッ……」

 

「さっきから聞いてりゃよ、お前。アイツと戦うのをそんなに避けて……逃げてんのか?」

 

「そんなつもりじゃ……」

 

「じゃあ何で戦おうとしない?それは逃げ以外の何物でも無いだろ」

 

「ッ……」

 

闇ソウヤもわかっていた。自分がイカロスという存在から目を背けているという事に。そして、このまま何もしなければ絶対に友達を救えないという事実に。

 

「でも、どうやって勝てば……あんな化け物達に……」

 

「大丈夫。俺達がいる。もし、俺達にできることがあれば何でも言ってくれ。俺達はソウヤの力になるから」

 

闇ソウヤはそれを聞いて考え込む。その時思い出されたのは自分の目の前でスカイトーンとして消えゆく仲間達の姿とその最期だった。

 

〜回想〜

 

少し前、闇ソウヤの世界に来たイカロスと戦ったプリキュア達。しかし、まるで歯が立たずにズタボロにされてしまう。

 

「「「「「プリキュア!マジェスティック・ハレーション!」」」」」

 

プリキュア達は最強の技で倒しにかかるが、イカロスはそれを片手で受け止めると逆にエネルギー砲をぶつけて粉砕。プリキュア達は傷つき、地面に叩きつけられた。

 

「あ……ううっ……」

 

「皆!」

 

そこに駆け寄るユキ。その瞬間、イカロスは不気味な笑みを浮かべるとそんな彼女を見る。

 

「………丁度良い。お前を使うとしよう」

 

するとイカロスは闇のエネルギー弾を放つとそれはユキの体に取り込まれ、その瞬間ユキの体は闇に侵されると共に悲鳴を上げた。

 

「ッ……ああっ!?」

 

「ユキ!?」

 

ユキは苦しむ中、胸を抑えて必死に抵抗する。しかし、それでも闇の進行は止まらない。

 

「止めろ……止め……」

 

闇ナイトが何とかしてユキから闇のエネルギーを追い出そうとするが、当然どうする事もできない。そのために悔しさが募るのみだ。

 

「……キュアナイトよ、私の目的のために働け。そうすればこの小娘は解放してやる」

 

「ッ……」

 

「ダメです……そんな事」

 

「そうだよ。きっと碌な事じゃ……」

 

その瞬間、イカロスは目障りとばかりにエネルギー弾をスカイ、プリズムへとぶつけるとその体が光と共にスカイトーンへと変化してしまう。

 

「スカイ!?プリズム!?」

 

「このっ!」

 

「プリキュア!タイタニックレインボー!アタック!」

 

ウィングとバタフライは何とか抵抗しようとするが、五人がかりの技でさえ効かなかったのに二人の技が通用するはずもなくあっという間に掻き消されると二人もスカイトーンへと変えられてしまった。

 

「キュアナイトよ、早く決めろ。でなければ……」

 

イカロスはユキへの闇の侵食を更に強める。するとユキはその苦しさに悶えた。

 

「ううっ……ああ……」

 

「止めろ!ユキは関係無いだろ!」

 

闇ナイトが攻撃しようとする中、イカロスが闇ナイトをスカイトーンへと変えるためのエネルギー弾を放つ。

 

「ッ……」

 

その瞬間、残っていたマジェスティが前に割って入るとエネルギーバリアを展開。攻撃を防ごうとする。

 

「マジェスティ……」

 

「ナイト……。後はお願い。私達の分まで……アイツを」

 

その直後、バリアは破られるとマジェスティさえもスカイトーンへと変えられてしまう。そして、イカロスは闇ナイトへと再度答えを求めた。

 

「俺は……俺は……」

 

こうして、闇ナイトはイカロスの軍門に降った。そして、彼は自分の大切な人のために他人から大切な人を奪うという最低の行為に手を染めることになってしまう。

 

〜現在〜

 

「俺だってこんな事は間違ってるってわかってる。でも、俺は、俺はもう引き返せないんだよ!」

 

闇ソウヤの言葉にサンライズは無言で彼の両手を取ると小さく言い放つ。

 

「皆の気持ちを……無駄にしたらダメだ」

 

「ッ……」

 

それを聞いて闇ソウヤはハッとする。それは、自分を何としてても残してくれた友達への想いだった。

 

「皆……俺は」

 

「大丈夫。まだやり直せるよ!だから、一緒に戦おう」

 

「………」

 

それから闇ソウヤはサンライズの手を取ると立ち上がる。それを見たイカロスは闇ソウヤへと語りかけた。

 

「……どうやらお前は選択を間違ったな。私に従っていれば命までは取らなかったのに……愚かな奴だ」

 

「愚かだと思うならそう言えば良い……俺はもう間違えるつもりはない。だから……お前を倒す!」

 

闇ソウヤ……ユキのソウヤはとうとう迷いを吹っ切るとプリキュアに変身するための光に包まれる。

 

「静寂ひろがる夜の帷!キュアナイト!」

 

キュアナイトとして変身完了するとサンライズの隣に並び立つ。そして、彼へと声をかけた。

 

「サンライズ……」

 

「大丈夫って言っただろ?やろう。俺達で!」

 

「ああ!」

 

トワイライトはもう自分が出ていなくても大丈夫だと考えるとサンライズの中へと戻っていく。そして、そのままサンライズとナイトは手分けして敵と戦う仲間達の元に行くのであった。




また次回もお楽しみに。


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