なんか先生拾ったんだが…… (かわいそうはかわいい)
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プロフィール&番外編など
モブ子プロフィール ※一章六話後にお読みください


名前:モブ子って呼んでください。お気にのあだ名なんで。

 

年齢:高校二年生でーす。だから十六か十七。

 

所属:有名じゃない学校の帰宅部。マジで目立たないとこっすよ。あー、でも他のでかい学園の影響が受けづらいです。すごい。

 

親族:一人っ子の一人暮らし。ああ、最近同居人が増えましたけど。

 

使用武器:あるっちゃありますけど……肥やしになってますねータンスの。あ、でも使ってみたいの二個あります。コンテンダーとサンダーって言うんですけど……

 

好きなもの:ゲームとか……アニメとか、漫画とか、特撮とか。オタクって感じっすかね……基本一人でいるので。

 

嫌いなもの:うーん……面倒なこと?私は面倒が嫌いなんだ……ってね。

 

好きなタイプ:……好きなタイプぅ?えー……そういうの考えたことないからなぁ…………見た目だけなら、黒服さ、先生?なになに怖い怖い待って待ってなんか喋ってよ先生ねえ分かったごめんてせんs

 

先生のイメージは?:はぁ……はぁ……今何とか窘めた後なんすけど……そうですねぇ……手のかかる私より年上の可愛い妹?すかね……昔の姿知らないんで……え?映像?あるんすか?じゃあ……

……えー、先生みたい。凄い頑張ったんすねぇ……そりゃモテモテな訳だ……足舐めてるとこは知らね。

 

ファンクラブは?:昔は普通に悪いことしてたらしいですけど……今してないんでしょ?ならあんまり悪いイメージは……私多分淡白な奴なんで私とか知り合い傷つけてないなら別に……

あ、でも……ゴルコンダさんだけなんか私に対して、他の人とは違う感じで接してきてる気が……

 

世界と先生、どちらを選ぶ?:急に極端なこと言ってきたな……えぇー?じゃあどっちも消します。片方だけ助けて、抱え込みたくないですし……それに、助けるくらいなら全部助けてこそでしょ。

 

 

 

先生の反応:私にとって……なんなんだろう。初めて、頼った……?シャーレで働いてる時から皆を頼ってたし……えーっと……初めて、心の底から甘えた、人?かな……

……好きか、って言われると……先生としては、愛する生徒だし……私としてなら……え、へへ……

黒服ぅ……!

 

黒服の反応:面白い方です。まさか、我々と対話できる存在が子どもにいるとは……この出会いは嬉しいものですよ。

ですが好みだけはいただけませんね。このような見た目が好きだとは……ですから先生、そのタバスコは置いてください目に向けないでください失明するんですよ危n

 

マエストロの反応:先生とは違う、だが理解を示す特殊な存在だ。芸術に興味を示し、共に思考する存在……ある意味彼女は平等に人と接する。言い換えてみれば、他人に興味が薄いのだろう。

だから誰とでも、驚きこそすれど、接することが出来――後ろ?ア"ア"目がぁ!?

 

ゴルコンダ&デカルコマニー:……ノーコメント、でしょうか。……私が、彼女を?……気のせいですよ。ああ、言えることがありました。彼女は力も知恵も、特出したものはありませんが……

精神力だけは、彼女を超えるものはいないでしょう。「そういうこった!」

ところであの人達は何を……逃げてくださいデカルコm



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モブ子プロフィールvol.2 ※一章の後にお読みください

使用武器:コンテンダーです。名前は酔狂……なんで酔狂?

 

他に使ってみたい武器は?:前も言いましたけど、サンダーと……最近は、近接武器も気になっちゃって……

例えば、チェーンソーが四つ繋がって、回転して、突撃するやつとか。使えねーよ。

 

アビドスのイメージは?まずシロコ:……思ったんすけど、これただの感想会じゃね?いいけど。

……シロコさんかぁ、運動好きっすよねぇ。私もたまに一緒に参加してやってますよ。最近体力必要なことに気付きましたし。

で、話してみてっすけど……たまに物騒なこと言いますねくらい……?

 

ノノミ:すっげぇ……柔らかかった。デカいマシュマロってあんな感じなんでしょうねー。ミニガン持ってるのもグッド。

金持ちっぽそうですよね~。あとおっとりした感じ可愛くないすか?でも声色に申し訳なさが入ってるっていうか……アビドス全員に言えることなんすけどね?別に気にしてないって……

 

セリカ:ザ、ツンデレ、みたいな見た目してますよね。なぜか私と先生にだけは滅茶苦茶素直なんだけど……だいたい分かるけど理由。

後は……アルバイト頑張ってますよねぇ。なんで借金抱えてるとか知らないけど、たまに手伝いますよ。いい子じゃん?

 

アヤネ:メガネちゃん。よく他のメンバーのストッパーしてますよね……なぜ襲う時に止められなかったのか……まあ過ぎたことはしゃーない。

そうだな……たまに手伝いをしたり、してもらったりをよくする……いや、二番目によくする子っすね。

 

ホシノ:バカ、アホ、ロリ。頭もよくて強いくせにどうして間違えんだよバカめ。次間違えたら胸ぐらで終わらせないからなロリ……えっ、年上?うるせぇ年上のめんどくさいやつはもう一人抱えてんだから関係ねぇよ。

……まあそれ抜きにしたらいい先輩だと思いますよ。先生はともかく、なぜか私の近くで寝始めますけど……めっちゃ起きてない?

 

 

 

シロコの反応:おかしい。どうしてあんなに……いや、公私を分けるとかなら、分かる。でも、彼女は、平等に接する。

どんな時にも、誰にでも……あのとなりにいるのが私じゃなくて、彼女なのが、分かる。

強いてあの二人に誇れることがあるなら、計画がばっちり決まったことで誰にも……トリニティにもゲヘナにもバレてないこと。

…………そんなこと言ったらぶん殴られるね、おとなしく謝ってくる。

 

ノノミの反応:……とても厳しくて、お優しい方です。先生がお母さんなら、お父さんのような方です。

殴ってしまったのに、全然気にしていなくて……気にしていると、いつも怒られて……「気にしてないって言ってんのに気にすんなよ。そのおっぱいは飾りか?揉むぞ」って……

……やったことを思えば、胸を揉まれたことくらい、なんてことないですよね……そうです、私達が、先生に行ったことを考えれば――も、モブ子さん!?どうしてここにくさっ!?なんでくさやを!?待ってくだs

 

セリカの反応:……なんでこの部屋臭いの?……あっ、そう……ノノミ先輩が……

モブ子さんって、私達が落ち込んでいるところを見つけると、すぐにやめさせようとしてくるの。

優しさとかじゃなくて、多分そうあるべきだから。そんなことやってる場合だったら、誰かのためになることをやれ……みたいな。

後は、よくバイトしてるとこに来て、忙しそうだったら助けてくれるんだ。給料もなしに。理由は「顔と名前知ってるじゃん。それ以外にいるか?」だって。……すごいよ、ホントに。

 

アヤネの反応:……すごい人です。よくお弁当とか、いろいろ貰うんですけど……私達はなにも返せていないのに、「困ってるんでしょ?お互い様だよ。こっちも護衛してもらったりしてるし、ええやろ」と……やっぱり考えれば考えるほど、おかしいですあの人。

異常なほど、心が強いです。

そんな人に、私達は助けられました。だから、返す……いえ、捧げる勢いでないといけません。じゃないと、あの人の渡すものに押し潰されます。

でもよく学校の仕事を手伝ってくれます……どうして……

 

ホシノの反応:私の全てを捧げないといけない一人。もう一人は先生。

彼女に教えられ、救われ、守る力の意味をやっと理解した。私は本当にマヌケだよ。

彼女が望むなら私は体を売るし、死ににいくし、なんでもする。……絶対そんなこと言わないし、提案したら殴られるだろうけど。言えるのはあの二人のためなら命を捧げられる。

いつもは、暇なときとかはできるだけ近くにいるようにしてる。戦う力は無いから(?)、先生と同じくらい、狙われる可能性があるからね。

 

 

 

 

 

先生の反応:…………私も、胸くらいあるよ。



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設定集(二章二話まで)

モブ子

メンタルヤバめ身体能力普通の女の子。

実は元は普通の女の子にするつもりだった。盛ったらこうなった。(ガバ1)

なんなら戦闘もなく、味方もそこまで増やすつもりもなかった。(ガバ2)

あれ……?

 

腕貫かれようがなんだろうが自分の行いで怪我した場合は特に気にしない。

いつか腹にパイルしたいと思う今日この頃。お前はトリコ?

 

見た目のイメージは無し。各自思い付いてください。もしくは描いて……やっぱなんでもないっす。

でも先生より数センチ大きいつもりで書いている。

 

地味子

メンタル普通感覚ヤバめの女の子。

実は元は戦闘ありになってしまったため多少戦える女の子増やしたろ!ついでになんか盛れるかな……で天与呪縛忍になってしまった。(ガバ3)

だからモブ子その2みたいな感じでツッコミ担当になるはずだった。(ガバ4)

うん……?

 

すごい距離まで見えるし聞こえるしすごい。

速撃ちと○○と○○が得意。

 

見た目のイメージは無し…だけどメガネっ子なのは確定。

外すね……(火種投下)

 

先生

よわよわちょい幼児退行先生。

本来はメンタルヤバめになった先生とノンケモブ子のなんとなく日常ストーリーになるはずだった。(ガバ5)

曇ってもらうつもり。

 

見た目のイメージは原作者様……なんだけど、こう、さぁ……うーん……いいのかこれ言って……設定の許可は取ったけど……あっ、作者様いつでも削除しますのでいつでも言ってください!出来れば消さないでください!(矛盾)

 

ワカモ

常識人枠。

個人的にはさらったりとかはしそうだけど嫌われる可能性大(先生は絶対嫌わない)の行為はしないと思ったので折角ならと。

銃剣いつ使ってんの?超カッケェ。

 

黒服

ギャグ万能枠その一。

折角なら仲間にしちゃったその一。

頭いい台詞は書けないのではっちゃけてもらった。

 

マエストロ

その二。

上に同じ。

 

ゴルコンダ&デカルコマニー

その三その四。

上に同じだが、作者のガバで復活しちゃった……(ガバ6)

いつか復活した理由をこじつけてやろうかと虎視眈々としている。

 

ヒナ

常識苦労人枠。

部下が犯罪者ばっかりで泣きそう。でも泣いてる暇はないから働くね……

強いけど立場上ポンポン出れない。

後でワカモからワープ装置を受け取った。

 

ホシノ

ガバでモブ子の右腕になろうとしちゃった……(ガバ7)

すぐ近くで寝るのはすぐ壁になるためじゃない?かわいくない?

先生と一緒にモブ子の膝で寝て……

 

シロコ・ノノミ・アヤネ・セリカ

ん、私とも、贖罪するべき。

でかくて柔らかい。

メガネー!

ちょくちょく名前を忘れてしまうセリカの四人。まじでなんでだろうね?

止めて機会をくれたモブ子に頭が上がらない。

 

クロコ

書くのを忘れてました。(ガバ8)

モブ子の取り計らいで先生の近くにいれるようになった。

代償として多少の戦闘力低下があるとかみたいな設定あるんだけど本編で描写できる気がしない。(ガバ9)

モブ子に対して尊敬と恐怖と感謝が混じってる。

私の立場にモブ子いたらどうなってたんだろう~みたいなことは考えてそう。

 

 

作者

メガトンコイン

親の顔より見た親譲りのガバ

親のメガトンもっと見ろ

よく原作者様も許してくれたな



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番外編:仲間ゼロルート

続きが難航してるので、なんとなく思いついた話を。


出会って早一か月。

先生は見つかる気配はない。先生のタブレットすげー。

しかし、先生が苦しそうなのもまったく治らねぇ。何にも解決してねぇ。

横で寝てる先生の顔を見る。うーん苦しそう。私に抱き着いて離れない。

いや私も苦しいぞこの野郎!野郎じゃねぇわ女だわ。

ご飯を作らないといけないので無理矢理剥がして抜け出そうとする。

 

「やっ、はなれないで……」

 

が、強い力(笑)で掴んでくる。しょうがない、起きるまで待ってやろう。

んー、起きてからはある程度大丈夫なんだが、寝てる時はどうも離れられない……

 

結局起きたのは数分後。レンチンメインの手料理で助かった。うーんツッコミがいない。

 

「ほれ、焼き鳥ですよー」

「やった、焼き鳥だー!」

「焼き鳥好きなんです?」

「普通」

 

惣菜でも美味いもんは美味い。パックご飯と一緒に掻き込む。

パパっと食べ終わり、学校の準備をする。先生邪魔引っ付くな。

 

「じゃ、私学校行ってくるんで、好きなようにしてくださいねー」

「うん……早く」

「帰りますよ。じゃ、いってきまーす」

「……いってらっしゃい」

 

 

 

 

 

時はかなり飛んで下校時間。ぼっち学生に学校の面白い話なんぞ無いのである。

じゃ、言われた通り早く帰りますかね。ただしスーパーには寄る。

……一応、グレネード買っとくか。

 

 

特に問題なく家に着いた。先生何してんだろ。

荷物を持って玄関を開ける……あれ?いつも出迎えてくれるのにこない……

嫌な予感を感じながら、中に入ると……

 

「……」

 

全てが荒らされ、見るも無残になっていた。

そして……

 

「……いない」

 

先生も、いなくなっていた。

……十中八九、攫われたんだろう。

 

「……はぁ、慣れないことを……」

 

私は、崩れたタンスから、二丁の銃を引っ張り出す。ついでに、買ってきたグレネードもポケットに無造作に突っ込む。

……先生はどこに?

ふと、振動音が聞こえた。その振動を探してみると、崩れた机の下にあるタブレットからと分かった。

拾って見てみると、一つの地図、そしてその中心に赤い小さな丸が写っていた。

 

「……ここに、先生が?」

 

私の言葉に応えるように震える。

……行ってみよう。

 

 

 

 

 

写っていた場所は外れの廃墟。まあなんとも誘拐なら良さそうな場所だこと。

スマホを見てみれば、電波は届いてる。これを使って見つけた?や、そんなことはいいか。

カバンから銃――ベレッタM93Rを取り出す。火力主義な私だが、当たらなければ意味が無いのである。だからってバースト二丁て……待てよ、ある意味これも火力……?

二丁で扱うため、グリップを外し、代わりにレーザーポインターを付けたカスタム品。作って意気揚々と持ち歩いて、使うことが無いことに気付き、肥やしになっていた相棒……

しかし使うことになるとは、思ってもいなかった。

……じゃ、行きますか。

 

ゆっくりと屈みながら進んでく。蛇で習った潜入術を舐めるなよ?

警備兵とかはいないご様子。ゲノムより無能じゃん。

逆に言えば、数はいない。上手くやれば、アホほど強い奴がいない限り、対処できる……かなぁ?

一階、二階、と虱潰しに探していく。が、人っ子一人いない。

 

そして、最後の階。

階段の一番上の段、そこに足を置いた瞬間、何か聞こえた。

……叫び声?いいや……喘ぎ声だ。

走りたくなる気持ちを抑え、ゆっくりと近づいていく。

そしてその音、それは一つの部屋からだった。見張りも無しって……

こっそり覗いてみれば、そこには四つの影。三人の不良生徒が、一つの影を取り押さえている。

声が、聞こえる。

 

「やっ、やめ……ぁ……」

「そんなこと言って、気持ちよさそうじゃねえか、ああん?」

「もういいだろ、早くヤろうぜ」

「だな、おもちゃはもう終わりだぞ、マゾ先生」

「あ”っ……た、助け……」

 

モブ子。そう口が動いた気がした。

 

私はすぐにグレネードを投げる。安心安全フラッシュグレネードだ。

 

「なっ、なんだ!?」

「目がっ……!」

 

全力で走って不良に向かう。そして不良の一人の腹に二つの銃口を当て

 

「……あ?」

 

トリガーを引く。

 

「がはっ……!」

「て、てめぇ!」

 

三発三発、計六発を喰らった不良は呻き声をあげて倒れていく。

続けて右手の方で一人を狙い、攻撃される前に撃つ。

胴体二発、頭一発でダウン。

実はもう一つ、カスタムしている部分がある。それは火力だ。近距離フルヒットなら多少の奴はKO出来る。

問題点は火力が高すぎて反動がおかしいことになってるがな!バースト片手なら撃つ奴が馬鹿!近距離フルヒットが前提なんです……

サブマシンガンとか持て?そうだね……

 

「動くな!こいつを撃つぞ!」

 

最後の一人はどこかなと探すと、先生の頭に銃を押し付けて、人質にしていた。

 

「も、モブ子……?」

「……拉致、強姦、挙句の果てには殺人か?救えない奴だな」

「……」

「まあ、しょうがないか。ほらよ」

 

銃をそいつの足元に投げる。私は手を上げる。

 

「よくも舐めた口をききやがったな!」

「っ、げほっ!」

 

私は手を上げられた、に言い換えた方がいいか?無防備な私に近づいてきた不良は全力の暴行。

綺麗な腹パンだ、感動的だな。

 

「けほっけほっ……だが無意味だ」

「ああ”?」

「一緒に地獄に落ちようぜ」

 

 

次の瞬間私は爆発した。

 

 

「モブ子ぉ!!」

「……その言い方するとシリアス抜けません?……げほっけほっ……」

 

小範囲高火力グレネード、買っておいてよかった……うーんご都合。

自爆した私に駆け寄る先生。格好が……おセンシティブだ。

シャツは全力ではだけ、ズボンは遠くに落ちてる。

 

「だ、大丈夫!?怪我は……」

「服がボロボロになった以外は、軽傷です」

 

さながら気分は恐竜帝国を道連れに自爆する武蔵。

ありがとう謎のタブレットさん。

 

「というかそっちの方が大丈夫なんです?その……襲われてたじゃないですか」

「う、うん……おもちゃまでだから……」

 

よかねーじゃん。……まだマシってこと?

先生は私の服の袖を引っ張る。

 

「ど、どうして……」

「え?なんです?」

「どうして、助けに来てくれたの……?前に、戦うの、苦手だって……」

「……同居人がピンチなら、助けるもんですよ。ほら、帰りましょう?」

 

なんでやろなぁ……先生の優しさに、触れたから?……なんてね。

そのまま私は振り返って、一緒に帰ろうとすると、身動きが出来なくなった。

下を見れば、二つの腕。先生に抱き着かれてるっぽい。

 

「ねぇ、モブ子」

「……なんすか?」

「この先も、助けに来てくれる?」

「まぁ……また攫われたら。でも私強くないんで次も助けられるとは……」

「そうだよね……」

 

なんか、様子がおかしい……

 

「先生?」

 

 

「呼ばないで」

 

 

「……へっ?」

「もう……それでは呼ばないで……」

「……先生、ってですか?」

「うん……もう、辞めたから……今、この時……」

 

……やめた?なにを?

 

「せ、せんせ」

「――」

「は?」

「――、私の、名前」

「……――、さん?」

「うん……うん……!」

 

あら嬉しそう。じゃないが?

どういうこった!?

 

「私、辞めるよ。あなたが傷つくなら、もう、やらない。だから、一緒に、逃げよう?」

「……oh」

 

ウッソだろお前……ウソぉ?

 

「お願い……私と、一緒に……」

 

……私は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぃ~荷物の運び込み終わり~」

「後は、整理するだけだね」

「すね~」

 

私は結局、先生……いや、――さんと、逃げた。

初めてのキヴォトスの外だけど、結構似たり寄ったりなんすね~

……はぁ。

 

「これが正しかったのか……」

「どうしたの?」

「んや、なんでも」

 

……ま、いっか。友人もいないし。

 

「……いいの?もう先生じゃないのに…………そっか、ありがとう、アロナ、プラナ」

 

――さんは仲間を連れてきたみたいだけど。えっ、二人いるの?

……さて、と。新しい生活は、どうなるかな?よろしく、新生活。

 

 

 

そして……さよなら、キヴォトス、先生。

 



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番外編:モブ子先生ルート

超短め番外編。
~もしも原作者様の先生がモブ子だったら~
ほぼギャグです。

Q.この作品って原作者様のいいとこ全部消してない?(自問)
A.そうだね……(自答)


―シロコ―

 

ぱっと説明!

シロコさんに跨られている!

以上!

 

「なんでだよ……で、何の用です?」

「先生……」

 

あらトロトロフェイス。じゃねーんだわ。

 

「すいません、仕事あるんで退いてもらんんんん!?」

「……くちゅ……れろ……」

 

すっげぇディープなキスされたんだが?よだれ塗れよ?口周り。

 

「っげほっえほ……急に何すんの!?」

「ん……無理矢理にでも、スる……」

「オーケー犯罪者落ち着け。銀行強盗以外に増やしてどうする」

 

何言ってんだこいつ……

 

「あのですね、こういうのは好きな人にやんなさ、いややるなやるな。正規の方法でやれ。性器だけに」

「先生のことが好きだから」

「するなっつっただろ!えー!?」

「……先生はいつも助けてくれた……借金のことも、あのことも……いろんなことを……」

「……はあ」

「でも、そんな先生は、私よりも断然弱い……だから、刻み付けさせて。私を」

「だからにはつながらんやろがい!冨野節かよ!」

 

……たく、しゃーない。

 

「シロコ、離せ」

「嫌だ」

「よし、分かった」

「え……?」

「おらぁ!」

「ぐぇ!?」

 

力いっぱいの頭突き。なんか知らんがキヴォトス人は銃弾には強いくせに打撃には弱いのだ!

怯んだ隙にすぐに立ち上がらせる感じで掴む。そして、

 

「いだ……っ!?」

 

アームロックを掛けます。

 

「いいかシロコ。性交をする時はね、誰にも邪魔されず、自由で、なんというか救われてなきゃあいけないんだ。独りで静かで豊かで……」

「独りじゃできないだだ……!?」

「じゃかあしい。あんな、別にそういうことをしちゃいけないわけじゃないんだ。流石に止める立場だからさ、見たら止めるけど。でもな?強姦は、無法地帯なキヴォトスでもマズいのは分かるだろ?」

「う、うん……いっ……」

「だからな?次からは聞くんだぞ。いいな?」

「わ、分かったから、そろそろ……!」

 

アームロックを解除する。センキューゴローちゃん。

 

「はぁ……はぁ……い、痛かった……」

「流石にやりすぎたか……よし、次を今やろう。さ、言ってみ?」

「……せ、先生……」

「うん」

「わ、私と……付き合って……」

 

あっそっちなんだ。

なおさら何で強姦なんだよ!

 

「へ、返事は……」

「ノンケなんで無理」

 

死ぬほど追いかけられたので死ぬほど逃げました。

 

 

 

 

 

―リンside・アオイ―

 

仕事をしていると、スマホが鳴った。誰からだと思いながら見てみると、先生からだった。

内容は短く、

 

『すぐにセミナーの休憩室まで来てください』

 

とだけ書いてあった。

 

きゅ、休憩室……!

少し手鏡を見て、身だしなみを整えてからそこへ向かう。

 

少し歩けば着き、目の前には休憩室の扉。

高鳴る胸を抑えながら、開けると

 

 

「……」

「……」

 

 

先生と、汗を拭きだしているアオイが、正座で向かい合っていた。

・・・?

私が頭を真っ白にしながら立ちすくんでいると、先生は声を掛けてくる。

 

「来たね、じゃあ、ちょっと、その横に座ってくれる?」

「えっ、あっ、はい」

 

先生に促されるままアオイの横に正座する。

 

「……えーっと、じゃあ、はい。先生らしいことするけど許してね」

「それはいつもやってもらいたいのですが、はい」

「えっと、まず、この子にね、ごめんね?言うよ?問題だから」

「はい」

「声ちっさ。えっとね……

 

襲われました。性的に」

 

私は勢いよく横を見る。

アオイの汗は更に増す。

 

「そ、それは――」

「ストップ、これに関しては、いいんだよ。気にしてないし、未遂だし」

「み、未遂って……」

「通信教育で空手習っててよかった。なぜベストを尽くさないのか」

 

それで何とかなるものですか……?

 

「でよ、話したいのは、関係あるけど、それじゃないのよ」

「そ、それは一体……?」

 

「ストレス発散の暴行」

 

汗が大量に出てきた。

 

「そ、それはですね……!」

「いや、うん、いいの。聞いたし。合意なんでしょ?合意」

「えっ、まあ、はい」

「いいのよ、SMぐらいね?腕使えなくなったりとか、目を潰したりとか、日常生活に問題が無かったらいいんすよ。でもね、最近やってない……らしいじゃん」

「……はい、そう、ですね……」

「それもいいよ、私関係ないし……それまでだったらよ?なんか詳しいことはさ、知らないけどね?それでよ、彼女の言い分ね?アオイさんの言ってることよ。リンさんが先生と仲良くなって……パートナーみたいにね?見えてね?暴力振られなくなってね?まあ……よく分かってないから端折るけど……最近私とリンさんでここでさ、運動したじゃん。ゲームの」

「……はい」

「それが、彼女には性行為した後に見えたらしくてさ」

「……はい?」

「私……アオイさんのことね?の方がずっと一緒だったのに、あんなに一緒だったのに~♪で、なんでだなんでだってなったから、先生犯せば分かる?みたいになって襲われたわけなんだけど」

 

・・・?

今私の頭の中で宇宙が広がっていっている。

どうして……?

 

「何とか止めれたけどさぁ……君らね?ちゃんと話しあおうな?もし仮に私とリンさんがやってたとして、そこからさらにアオイさんが私を襲ったとしたら、最悪の間接キスになるからね?」

「はい……」

「はい」

「声ちっさ。……ともかく、言いたいことはね?話し合ってね?じゃ、私帰るから……」

 

そう言って先生は、休憩室から出ていった。

 

部屋には、気まずい雰囲気の、私とアオイだけがいた……



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番外編:モブ子暴行ルート

またまた超短編。

自分で書いておきながら本編迷走してないか?と思って悶々とストレスがたまったのでモブ子には傷ついてもらいました。


「……げほっ!えほっ……」

 

現状の説明!

何処か分からんとこで(多分廃墟)両手を鎖で拘束され、三人の不良に暴行されてます!

イテェ。

一人で歩いて帰ってただけなのに……

 

「……あ”ー……悪いけど、こんなことされる覚えないんだけど?不良ちゃん」

「あたし達にもねーよ。けど、金渡されてやれって言われたんだからしょうがねえだろ」

「いや別にしょうがなくはなくなかはっ……!?」

 

いってぇー!?凄い綺麗な腹パンだぁ……

てゆーか右腕になんか刺さってんだけど……痛ぁ……

 

「……げほっ……げほっ……」

「なぁ、いつまでやるんだこれ?こいつ面白い反応もしねえから飽きてきたぞ」

「そうだぞー飽きたって言ってるぞー止めない?痛いのは痛いんぁ”……」

「うるせぇちょっと黙ってろ」

 

首!首絞まってる!

 

「それがな、面白そうなもん貰ってきてんだよ」

「何だ?」

「じゃーん……」

 

うーん前が霞んできたよぉ……

どうしよっかなぁ……あいつらいるし大丈夫かぁ……

 

「がっ!?」

 

急に首絞めが解かれたと思ったら口に何か入れられました。

間違って飲み込んじゃったけど何!?虫だったらちょっと泣くよ!?

……?

なんか、体が、熱い……闘争を求めている……?

いや冗談言ってる場合じゃない、ホントになんか……あつい……ぽわぽわする……

 

「超強力な媚薬だってよ。おもちゃもこんだけあるから、開発してやろうぜ」

「ぁ……つ……」

 

なんか……ぶぶぶって……おとが……

 

 

 

 

 

モブ子が消えた。

数時間前までは普通に帰っていたはずなのに、急に消えたらしい。

今は、ファンクラブやワカモ、クロコにアビドスの皆も探してくれている。

なのに、私は……ここで……

 

そのとき、突然暗い空間が現れた。

ファンクラブのワープだ。現れたのはマエストロ。

 

「今すぐ来てくれ。……かなり目に毒かもしれないが……モブ子が見つかった」

 

私はすぐに空間に走り込む。

 

 

空間の先は廃墟らしき部屋だった。

そこにはクロコだけがいた。

 

「他の皆は?」

「ファンクラブとホシノ先輩以外のアビドスは協力して周りの警備。ワカモは……後で説明する」

「……モブ子は」

 

クロコは黙って、振り返り、歩く。

……私は、とても嫌な予感を感じながらついていく。マエストロは警備に参加しに行った。

廊下を歩くほど、嗅いだことのある匂いが鼻につく。

嫌な予想が頭を埋め尽くす。

 

そして、五つほど隣の部屋まで歩くと、そこには――

 

 

「先生……」

「……」

 

 

――血を含んだ、体液にまみれた、モブ子がいた。

 

「……ぁ」

 

私は走って駆け寄る。

 

「モブ子……?モブ子!」

「落ち着いてください先生、気絶してるだけですから……ファンクラブが既に治療済みです」

「……いったい、だれが?」

「……だれかに雇われた、不良でしょうね」

「どこにいるの」

「……生きてはいます……生きては……」

 

ファンクラブは手を出さない契約をしている。多分、アビドスの皆だ。

 

「連れて、帰ろう」

「その前に一つだけ……」

 

クロコが私の後ろから、そう声をかける。

 

 

「……落ち着いて聞いて、モブ子の……右腕は……

 

もう、使えない」

 

 

 

 

 

私は、作ったうどんを机に運ぶ。

 

「出来たよ……はい、食べよ」

「うっす。いただきます」

 

お箸でうどんをつかんで、ふうふうする。

 

「あーん」

「あーん……」

 

そして、モブ子の口に持っていく。

モブ子は大人しく、食べてくれる。

 

「……美味しい?」

「んむ、うまいっす。ありがとうごさいますね」

「いいんだよ」

 

モブ子はそのまま続けて食べてくれる。

 

……モブ子が見つかった時には、三人の不良に……犯されている状態で見つかったらしい。

見つけた瞬間その不良達は制圧し、モブ子を保護、治療したと。

 

それでも、右腕はもう無い。

 

右腕は特殊な杭を刺されていたらしく、刺されてすぐならともかく、時間が経った状態だとファンクラブでも元には戻しづらいと……

今でも治す方法を探してくれているらしいので、私はモブ子を支えることしかできない。

 

食べ終わり、食器を片付ける。

片付けたらすぐにモブ子のそばに行く。

 

「……モブ子」

「……どうしました?」

「ごめんね……」

 

不意にそんな言葉が出る。

……どうして……わたしは……どうすれば……

 

頭に何か感じる。

モブ子の左の手だった。

 

「私は気にしてないっすよ」

 

そう言って、モブ子は笑った。

 

 

 

 

 

あー義手ほしー。スネークごっこしてー。ロケットパンチしてー。

はい、全部は記憶してないけど、なんだったか、右腕刺された状態で媚薬を飲まされておもちゃやら性処理させられたんだったか。

いやー私も被害を受けるとは思わんかったわ。おくすりの力かあいつらのスキルか知らないけど意外と気持ちよかったな。気分最悪だけど。

 

今は先生と二人で家にいる。

暇だな~。先生も今トイレだし、スマホでも見るか。

机の上にあるし取ろ……

()()で取ろうとする。

 

「あっ」

 

しかし、それはスカッと空振る。

そうだったわ。

 

「右手無いんだった」

 

がたん、と後ろから倒れる音がした。

急いで振り向くと、先生が女の子座りみたいになってた。

 

「大丈夫!?」

「ぁ……あ……」

「ちいかわ……?じゃなくて、どうしたんすか!?」

「…………う、うん、気にしないで……どうにか、しないと

 

大丈夫ならいいんだけど……なんだったんだ?

まあいいか。ファンクラブの人達に義手のこと相談してみよっと。




多分この後は先生がモブ子を個室に呼び出して後ろ手で鍵カチャルートか先生が先生に戻るけど優しさがほとんど無くなったルートになると思います。


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ショートネタ:修羅場

今日は余裕があるので、なんと……二つも上げちゃいます!
でも千文字程度の超ショートネタ。思いついちゃったもんで……
時系列は謎。多分色々終わった後じゃね?


ワカモさんと同じ布団で裸で寝てました。

 

・・・?

 

「なんで?」

「こっちのセリフなんですが???」

「ままままれおりるくのら」

「なんて言ってるんですか?」

「ままままておちつくのだ」

「言えるならそっちで言ってくれません?」

 

 

ひとまず昨日の夜を思い出せ。

 

 

『何かワインあったで』

『なんでですか……』

『先生は飲むとこ見てないですし……ビール派らしいし……』

『そういえば先生は?見かけませんでしたが……』

『地味子んち。なんか女子会みたいな?』

『……あぁ』

『どういう反応だよ。……で、どうします?捨てるの持ったないですよ。私は……別に飲めますけど』

『不良』

『あんたに言われたかねーよ……料理に使うっても流石にこの量はな……』

『わたくしも飲めますし……しょうがありませんし、少しだけわたくし達で減らしましょうか』

『すね、そうしましょか』

 

 

…………

 

「あれかぁ……」

「あれですね……」

 

股間見てっ、と……よし。

 

「未遂っぽいで!」

「それは良かったです……先生達が帰ってくる前に早く「なにしてるの?」終わった……」

 

声の方に錆びついたブリキのように首を動かすと、例の二人がいた。

いや気配的に奥にまだいろいろいるな?ファンクラブか。あ、ファンクラブにあげりゃよかった!

 

「こここ、これはですね……落ち着いてください、そういうことは一切「私のこと好きっていったくせにモブ子としちゃったんだ……」アアアアアアアア!?」

「すげー奇声w」

「モブ子?」

「ヒッ……そんな声出せたんだ地味子……」

「なんで?」

「何が?」

 

やばいやばいやばいやばい、二人の気迫がやべーぞ!

 

「どうしますワカモさん」

「ど、どおどおどおおどおおどおおっどどど」

「よし一旦落ち着け」

「さてどうしましょうか」

「うわぁ急に落ち着くな!」

「「とりあえず服着たら?」」

「「はい」」

 

近くに脱ぎ捨てられてた服をすぐに着る。

 

「……申し開きは?」

「……背に腹は代えられぬね……ワイン飲んじゃって……」

「なるほ、ど……」

「もちろん!未遂でございます!確かに裸ではありましたが!この身、あなた様のために純潔でございます!」

「そっか……私はもう違うけどね」

「急にブラックなこと言ってきたな……」

 

奥の部屋どんよりしてきたぞ。加害者の会もいるのか。

 

「じゃ、お前が犯したのはワカモさんじゃなくて酒を飲んだことだけか?」

「そっすね……」

「へー……ま、私は先生じゃないからそのことについては咎めないよ」

「そうだね、それは私の仕事だ」

「ふぅ……助か、ってはないけど、助か「でもさ」なんだよもう!」

 

 

「ワカモさんの肩のキスマーク、なに?」

 

 

「「……えっ」」



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ショートネタ:ただの買い出し

唐突に思い付いた超ショートネタ。
この次メインストーリー書こっと……
気分でいろんなの書いてごめんね……

そういえば最近気づいたんですけど毎日千五百程度書いたら、一週間で一万近く書けますよね。
何が言いたいかと言いますと、前から言ってる他の作品書いてますから……(小声)


ワカモさんと買い出しに出ていた。

 

「今日の夜何食べたいです?」

「別に、何でも」

「困るんすけどそれ。今日ワカモさんに選んでもらおうと思ってたんですけど」

「先生や地味子さんに聞けばよかったではないですか」

「そろそろループしてきたんすよ……」

「問題ないでしょうそれぐらい……えー、では和食で」

「魚?」

「魚で」

 

分かりましたよ。えーっと……ほっけあんじゃん。ほっけにしよ。あとは……

これとこれとこれ、っと。

 

「ティッシュと洗剤も無くなっていたので、取ってきますわね」

「ありがとざいやーす。あっ、シャンプーもおなしゃす。いつもので」

「分かりました」

「アイスもいいですよ」

「別にいりませんよ」

 

私なら持ってくるけどな。

じゃあ私は、残りの材料を~。

 

 

「ほら、取ってきましたよ」

「うーっす……あれ、アイス持ってきたんすね」

「先生が好きなアイスを見つけたので」

「不服になる人出ると思うんでもうちょい取ってきてくれます?箱の奴でいいんで」

「誰が召使いですか」

「言ってねーよ。じゃ、取ってくるんで端んとこで待っててください」

「箸より重たいもの持てないんです」

「はしだけにか?銃背負っておきながら何言ってんだ」

 

ほら、持って。すげーめんどくさそう。

 

 

まあまあ持ってきたけど、ファンクラブから後で強請(ゆす)ろ。

……あれ、ワカモさんがなんか迫られてる。

 

「なあ~いいだろ?お金出すしさぁ」

「……」

「おい、聞いてんのかぁ~?」

「……下郎が」

「あ?今なんつった?」

「はいはいどうしましたそこの二足歩行犬さん……酒くさっ」

「あ~?お前こいつの友達かぁ~?ん~……まあ普通かぁ~……おいこいつを説得してくれよ~」

「大人しく風俗行けよ短足短小」

「……てめぇ調子に「動くな」ひっ!?」

「ワカ……バさん。斬っちゃだめですよ。後処理めんどいので」

 

首にナイフを押し当てるワカモさんを制止する。

 

「おっさんさぁ、金あんだったら風俗行きな?学生とヤろうとすんのは犯罪だぜ?」

「わ、分かったから、こ、これを……!?」

「……」

 

あの、顎をくいってするやつして合図する。

ワカモさんが渋々開放すると、走って逃げてった。……外出た瞬間めっちゃ撃たれてる……天気もいいし風も無風なのにな。

 

「……ちっ」

「ワカモさんわからせ系ぽい台詞吐いてましたね」

「せっかくならあなたを斬りましょうか」

「何がせっかくだよ。まあ手出してないだけで偉いっすよ」

「……先生になら気分も上がるんですけどね」

「狐が……たく、ささっと帰りましょ。ちょい時間掛かってますし」

「ですね」

 

 

レジ通して店を出る……までは良かったんだけど、急に軽い雨が……

 

「今日雨降らない予報だったのに……嘘知らん。見てないもん予報」

「適当な……どうします?強くなるみたいですよこの後」

 

ワカモさんがスマホを見ながらそう言ってくる。

んならば……

 

「さっきのことあったばかりで申し訳ないんすけど、近道通りますね」

「?さっきの……?」

 

 

要はホテル街。ここを通れば多少近道になるはず……

 

「だったんやけどなぁ……」

「予想以上に大雨になるの早かったですわね」

「ワカモさんと一緒にホテルに入るとは思いませんでした」

「私もですよクソが」

「そこまで言う?……まあすぐに入ったおかげでそこまで濡れなくてよかったっす。せっかくなんでシャワー入ってきたらどうです?汗は掻いてる筈ですし」

「ならお先に」

 

そう言って部屋の中のシャワー室に入ってく。

……あ、ここ透明ガラスなんだ。丸見えじゃん。ソシャゲのログインしとこ。

 

「出ました」

「ういーっす」

 

十数分もすれば出てきたんで、次は私が入る。私はリンスとかよくわかんないから雑にやるわよ。性転換系であるわよねそういうの。

だから私は数分で終わる。……あ、中からだと見えないんだ。マジックミラーなんだ。

 

「出ましたー」

「ここマジックミラーだったんですね。言ってくれればよかったのに」

「別興味ないでしょ見ようが見られようが」

「見られるのはあれですが見るのはそうですね、先生以外。そうそう、雨は短い通り雨みたいなのですぐ出れますわ」

「うす。じゃあ用意しとこ」

 

ワカモさんの言う通りすぐ上がった。とはいえ、また降るかもしんないんでさっさと帰る。

 

 

 

 

 

「なんで二人でホテルに入ってたの?知ってるよ。つけてもらってたし」

「この疫病神」

「その言葉そっくりそのまま返してやるよ」



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ショートネタ:いつかちゃんと書きたいな……編

ほぼネタ置き場。
注意:喫煙描写があります。つまりキャラ崩壊に近いです。今さら?そうだね……


《モブ子先生VSアビ・エシュフ》

 

やべーぞあれ!?DXとヘビーアームズ合体してんじゃん!?いや、同じ枠組みにいれるならレオパルドか……?

シャイニングアサルトホッパー並の演算もあるみたいだし……面倒だな……

で、隠れて皆で作戦会議してんだけども……

 

「ちょっと行ってくるわ」

「行ってくる……って、どこに!?」

 

「え?足止め&弱点探し」

 

 

 

というわけでトキさんの目の前に堂々と来たよ。一人で。

 

「よう、負ける気ない?」

「……」

「ないよね~……なあリオさん」

『何かしら?降参なら受け入れるけれど?』

「そりゃこっちもそうだよ……聞きたいことあってさぁ……必要以上の殺しはしないんだよね?」

『ええ、当たり前よ……何をする気?』

「いや?なら……

 

私を攻撃はそうそう出来ないよなって」

 

私はそう言ってトキさんに近づく。

 

『それぐらい、予見していたわ。あなたが、自身の体を気にしないことぐらい』

 

すると、回りががしゃんがしゃんと動いてなんかが出る。クロスボウっぽい。

そしてそれから発射された何かは私に飛んでくる。

避けれないよね。小さい針みたいなのが私の首に刺さる。

……ねむ……

 

『対先生用の睡眠弾よ。先生にしか効果は無いけれど……それでも、あなたさえ捕らえれば他の人も捕らえられ「えいっ」……え?』

 

 

私は自分の腹に隠し持っていたナイフを突き立てる。

 

 

「あーいてぇ。まあ目が覚めたからいいや」

『まさか……そこまで……!?』

「それもたくさん撃ったら流石に私に害あるでしょ?撃てないよねぇ?」

『でも……トキ、捕らえなさい。そしてすぐに連れてきて、治療しなければ』

「……はい」

 

近づいてくるトキさん。

突っ立ってる私。

 

私は迷い無くガトリング部分を抱き締めるように掴む。

 

「!?」

「へーい、我慢比べしよう。私を遠ざけたらそっちの勝ち。あいつらが勝つ方法見つけたら私の勝ち。簡単だな?」

「……っ」

 

さ、なんとかしてくれよ。ゲーム開発部&メイドチーム?

 

後でぼこぼこに怒られました。

 

 

 

エリドゥ「えっ、お腹に、えっ?なんで近づいて、えっ?」

 

 

 

 

 

《喫煙するモブ子とワカモ》

 

夜中になんとなく目が覚め、軽く運動と思って散歩する。

家の近くにある公園を見れば、一つの見たことのある影が見える。

 

「……なにしてんすか、この不良娘」

「……モブ子さん」

 

ワカモさんだ。それも喫煙中の。

 

「いけないんだぁ」

「不良にそんなこと関係ありませんよ」

「さいで……吸うんすね」

「……最近ですよ。先生は吸わないようなので、絶対に嗅がせませんが」

「……なんでです?」

「何がですか」

「吸い始めた理由」

「……さぁ、なんででしょう?」 

 

こいつ……

 

「……一本ください」

「あら、あなたも吸うんですか?」

「私も真面目ではないので~」

「……誰にもバレないようにしてくださいませ。はい」

「分かってますよ……どうも。火は?」

「ん……」

 

ワカモさんは口元のタバコを近づけてくる。

 

「……たく、普通にライターでいいでしょ……」

 

私はタバコを咥え、煙を生み出した。




最近隙あらばモブワカ書いちゃう……やばい


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ショートネタ:TwitterのTLに流れてきそうな脈略がない話①

《ふふふ……S〇X!しないと出られない部屋――モブ先編》

 

「どういう状況でどういう部屋だよ」

「……」

「……先生、私がなんとか脱出の糸口探すから、寝てていいっすよ。丁度ベッドあるし」

「……わ、私は……いいよ。モブ子なら……」

「それ言うなら震えを止めてからにしてください。私、意外とあなたのこと大切に思ってるんで」

「……」

「つーか窓も無いしカメラも無い……誰が見てんだよこれ……扉は……おらっおらっ!ダメだうんともすんとも言わんな。押し戸?引き戸?」

「…………モ、ブ子」

「なんす、うわぁ!?」

「私は……大丈夫だから……」

「引っ張るな押し倒すな嘘つくな!」

「モブ「先生!ご無事ですか!?」……」

「あ、ワカモさん!……扉が無残にも……」

「……えーっと、先生?あの……大丈夫ですか?」

「……ありがたいような、悲しいような」

 

 

 

 

 

《ふふふ……S〇X!しないと出られない部屋――モブ地味編》

 

「……どうする?」

「……ど、どうするって何が」

「地味子は私と出来んの?」

「い、いやー私もノンケだからなー!出来ないかなー!」

「なんでそんなしどろもどろなんだよ」

「き、気にするなって!あ!ちょっと待って!近づくな!いいな!?」

「お、おう」

「いいか、絶対だぞ、フリじゃないからな!」

「分かってるって……めっちゃ下がるじゃん」

「ホントに分かって――ひゃっ!?」

「あぶなっ!?」

「ぁっ♡!?」

「はぁ~……危なかった……そら後ろ見ずに下がってたらコケるわ……何で立たねえの?」

「……び、びっくりして腰抜けて、漏れちゃった」

「えぇ……しゃーねーな、ベッドまで運ん「モブ子が触ったら漏らすからいい!」私ウイルスか何かなの?」

 

 

 

 

 

《ふふふ……S〇X!しないと出られない部屋――モブホシ編》

 

「……ごめんね死ぬね」

「急にやめろ大馬鹿最後の希望が消えるだろ……ホシノさん扉殴って壊せません?」

「いやー……銃も取り上げられてるし、流石にきついかな……」

「ですか……さて、どうするか……ホシノさんいい案ありません?」

「……ホントに開くか分かんないけどしてみるのは……最後の策として、案となると……まず何があるのここ?」

「ベッド、丸見えシャワー室、えっちなおもちゃ、ローション……」

「うーん……脱出に使えそうな物は……」

「私は別にやってもいいんだけどさぁ……ホシノさんの意思もあるし、うーん……」

「!?ゴホッゴホッ……」

「大丈夫すか!?どうしたんです!?」

「げほっ……い、いや……モブ子ちゃんは、いいの?」

「別に……私はノンケですけど、人助けやら意味のある仕事だったらやりますよ。今んとこそういう経験はないですけど」

「じゃ、じゃあ……おじさんと……私と、シてって言ったら、やるの?」

「いいですよ」

「!?」

 

 

 

 

 

《ふふふ……S〇X!しないと出られない部屋――モブワカ編》

 

「また妙な部屋に……どうします?」

「どうもこうも、武器も通信出来るものもありませんし、先生達も被害に遭っていないとは限りません」

「つまり?」

「そこに書いてあるではないですか。脱出する方法が。本当に出られるかは分かりませんが」

「なるほどね……確かにそうですね。開いたら上々程度にやりますか。……でも私そういう経験ないんですけど」

「私もですが?はぁ……ハジメテは先生が良かった……」

「悪かったな私で」

「ほら、さっさとベッドに横になってください」

「へーい……んむ――」

 

 

 

 

 

《ふふふ……S〇X!しないと出られない部屋――モブアリ編》

 

「……」

「どうしたんですかアリスさん」

「アリスは、嫌いです。あれ……」

「あー……まあいい思い出じゃなさそうですもんね……どうします?」

「開けます!」

「出来るの?「ふんっ!」出来ちゃった……」

「帰ってゲームしましょう、モブ子さん!」

「ですね。狭間の王になりに行きましょうか」

「はい!」




②は今のところ未定です。


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ショートネタ:修羅場2nd

パラレル設定です。
皆モブワカ好きすぎじゃない?ほうれ、プレゼントだよ……
時系列は……全部解決してるんじゃない?


「……ふぁぁ」

 

あくびをしながらわたくしはベッドから起きる。

寒い、身に何も纏ってないからだろうとはすぐに分かる。近くに脱ぎ捨てられたシャツを拾って着る。

喉が渇いていることに気づき、部屋に備え付けられた冷蔵庫から

ペットボトルの水を取り出す。

飲もうとしたところで、シャワー室の扉が開いた。

 

「あ、ワカモさん。おはようございます」

 

裸にタオル姿のモブ子さんが出てきた。

 

「……おはようございます」

「シャワー開きましたけど、使います?」

「……ええ、せっかくなら」

 

 

説明し忘れていたが、ここはラブホテルだ。

そして、わたくし達はいわゆるセフレだ。

 

 

シャワーを浴びながら、どうしてこうなったんだったかを思い出す。

確か、たまたま二人でスることになって、意外にも体の相性が良く、そのままずるずると……

……そういえば、彼女の気持ちを聞いていない。

わたくしはすぐに体を流し、シャワー室から出る。

出る頃には、もう既にモブ子さんは帰る準備が整っていた。

 

「……あれ、どうしました?私もう帰るんですけど」

「いや……その、聞いていなかったなと……」

「何をです」

「……気持ち、でしょうか」

「気持ち……ふふっ」

「……どうして笑ってるのでしょうか」

「いや?あの災厄の狐が人の気持ちを聞くとはーとね」

 

あ、すごいムカつく。

 

「別に、ワカモさんならいいよ。知らんやつじゃないし」

「そんな簡単に……」

「それに、始まりは偶然だったとはいえ、これがワカモさんのストレス解消になることが分かったんでしょ?じゃやらない手はない」

「……あなたの気持ちが出てきていないではありませんか」

「え?あー……っとね……」

「なんです」

「…………私も気持ちいいし、別に……」

 

そう言って顔を背けるモブ子さん。

すこしだけ見える横顔は赤い。……そういう感情あったのですね……

 

「……そうですか。なら良かったです」

「そんなことより、早く着替えたらどうです?風邪引きますよ」

「……分かってますよ」

「ホントかぁ?……ふふっ」

 

……恋人とも、親友とも呼べる仲ではない。かといって、他人とも呼べるほど遠くもない……

こんな関係にわたくしは、案外心地よさを感じていた。

 

「これで先生で、恋人だったら最高だったのに……」

「ぶれねえなお前……」

 

 

「……じゃ、数分後に出てきてください。さすがに知り合いにバレるのもあれなんで」

「分かっていますよ。わたくしも知られたいわけではありませんし」

「それでは、お先に失礼――」

 

 

 

天井が爆発した。

 

 

 

「なんでだよ」

「敵襲!?」

 

わたくしはモブ子さんを庇うように愛銃を構えると、そこには

 

「……」

「地味子……?どうして今ここに……!?」

 

ターミネーターのように膝立ちの地味子さんがいた。

……?どうして?

と、とりあえず、穏便に済むように……

 

「……ワカモ」

「呼び捨て?……どうしたのですか、なにかご用事……」

 

「お前を、殺す」

 

「デデンッ!」

「乗ってる場合ですか!わたくしの命がかかっているんですが!?」

「それはそう。とりあえず逃げま――」

「っ、危ない!」

 

咄嗟に手を引いてモブ子さんに届きかけていた何かから守る。

 

「……ワイヤー?」

「ん……ごめん、外した」

「大丈夫、まだチャンスはあるから」

 

 

扉の方には、シロコさんと先生が。

 

 

「せ、先生!?あっ、あのですね、これはその……」

「……あはは……」

「なんですかその笑い!?」

 

ま、まずい、とにかくまずい……どうする?

どうする?ではない、逃げなくては!

 

「失礼!」

「え?うぉっ!?」

 

わたくしはモブ子さんを抱え、飛んで開いた天井から逃げる。

 

きっとそれが間違いだった。

 

「……やっぱりあの二人は……どうして……どうして……」

「ワカモ……!貴様は存在してはならないものだ……!」

 

ど う し て

 

考えている暇はない、とりあえず逃げなければ……!

 

 

 

 

 

そのせいで、全ての学校と生徒と、鬼ごっこすることになるとは、このときはまだ知らなかった……



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ショートネタ:モデル

思いついちゃったネタ。
いろいろおかしいけどショートネタだから気にしないでね。


「……モブ子さんはともかく、なんであなたと買い物に……」

「別にいいではありませんか。荷物持ちはいくらいてもいいですからね」

「おーい、二人ともー。ソフトクリーム買ってきたよー」

 

わたくしは、モブ子さんと黒服(女性バージョン)とで、買い物に行っていた。

 

「別にわたくしは……」

「えーじゃん私の金だし。少しくらい、いい思いしてもいいと思うぜ?」

「なら帰らしてくださいませ。先生といることが幸せなので」

「ぶれませんね……私はいただきます。はむっ」

「イチゴにしたんですけどどうです?イチゴ乗ってるバージョン」

「おいひいです」

「付いてますよほっぺに……あむ、あめぇ」

 

黒服の頬に付いたクリームを舐めるモブ子さん。

せっかく買ってきてもらいましたし、私も食べましょうか。

 

「わたくしはキウイですか……はむ……意外と美味しいですね、ありがとうございます」

「いやいや、美味しいならよかったです」

「そういえば、モブ子さんの分は見つかりませんが、買わなかったのですか?」

「?手は二つしかないすよ?」

 

知ってはいましたがこの人バカですね。

それを見かねたのか黒服がモブ子さんにソフトクリームを近づけて言った。

 

「では、一口どうぞ」

「じゃあいただきます……んむ……あまっ」

「……わたくしの分もどうぞ」

「なしてよ。もらうけど……んっ、垂れちゃった……」

 

モブ子さんの口の端からソフトクリームが溢れていく。

……

 

「…………扇情的ですね」

「別に言わなくてもいいことを……」

「何の話?」

 

バカ黒服……

 

その時だった。

 

 

「君達ぃ!モデルしないぃ!?」

「「「!?」」」

 

 

本当に突然、そんなことを言われた。

誰だと見てみれば、ロボットだ。

 

「なんでなんでなんで?」

「君達のそのソフトクリーム食べ差し合い……inspirationが沸いてきたのよ!でどうするのかしら!?受ける!?受けない!?」

「オカマ口調だ……」

「どうしますか?」

「私は別に。今日の買い物が早く終わったんでどっちでも」

「モブ子さんが良いなら別に私も……ワカバさんは如何しますか?」

「三人の方がいいけど二人でも構わないわ!」

 

……わたくしは……

 

 

 

 

 

不安なので行きました。わたくしから見てもかなりの問題児なので……

ということで来たのは近くの撮影所らしい場所。

 

「ポーズは指定するから、そこまで難しくないはずよ!行くわね!まずはそこの狐ちゃん!そこの子の顎をくいってやって!」

「えっ」

「やって!」

 

自分から来たため、拒否するわけにもいかないので、しぶしぶモブ子さんに顎くいをする。

 

「次に黒ちゃん!反対側から手を取って!」

「黒……?はい」

 

黒服がわたくしとは反対の方に立ち、モブ子さんの手を取る。

 

「最後にモテモテちゃん!そこの椅子に座って!」

「モテモテ?うす……」

「もうちょい……そうそうそうそんな感じ!いくわよ!」

 

ぱしゃ。

 

「……完璧ね……!」

「何がですか?」

「もう少しほしいわ、付き合ってちょうだい!」

 

何故???

 

その後も、次々と撮られていった。

どの内容も、まるでわたくしと黒服がモブ子さんを奪い合うような……

 

何故???

 

 

 

 

 

あれから数日後。

 

「なにこれ?」

「嫌な予感がしてきました」

 

先生が雑誌を見ながら某三人チーム制のバトロワをしているわたくし達の方に声をかけてきた。

 

「……なんで三人が雑誌に?」

「それはですね、モブ子さんあれローです……前にモデルをしないかと言われ……不都合もなかったので受けたのです」

 

そう黒服が説明する。

 

「おっけーやられた任せた」

「何やってるんですか???」

「へー、だから二人がモブ子をと り あ うようにして写ってるわけだ……」

 

地味子さんも参加してきてしまった……冷や汗が止まらなくなってきた。

 

「……ぷっ、あはは!ワカモさんどうしてそんな顔してるんすか」

「え?い、いや……」

「そんなことじゃ怒らないよ、頼まれてやっただけみたいだしね」

 

地味子さんと先生は笑いながらそう仰る。なんですか、よかった……

 

「もー二人とも何やってんのら、やられちったじゃん。まあ私の置いたシーラでやられたんだけど……というか何の話してんすか?」

「いや?モブ子には関係ないこと」

「?そうすか」

 

……ああ、良かった。キレられるかと思いました……

 

 

「ただし黒服」

「オメーは駄目だ」

「!?」

 

 

「お土産持ってきたぞ」

「マエストロ!いいところに!ガードベント!」

「は?目がぁ!?」

 

二人はタバスコをどこからか取り出し、黒服を追いかけ回しながら、途中でやってきた者達を含めた大乱闘が始まってしまったのだった……




ワカモ「わたくしってはたから見たらこう……?」
モブ子「何してんの?」
地味先「待てぇ!」
黒服「ど う し て」
マエストロ「目がぁ!?」
その他「とばっちりぃ!?」


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IFストーリー
ハイテンポストーリー:モブ子先生(転移編)


息抜きIFストーリー編、始めました。
記念すべき第一弾はモブ子先生です。シリアスはもうちょい待ってね……
番外編のは繋がっていてもいいですし繋がらなくてもいいです。番外編とIFの違い?なんやろね?
良ければ感想などで評価お願いします。息抜きなので雑かもしれませんが……

PS.アークナイツとENDER LILIESのクロスオーバー思いついたんで誰か書きませんか?リリィちゃんCエンディング後最強状態で……
リリィちゃん頑張ったんだからこれ以上苦しませるな!(矛盾)


すやぁ……んー……そろそろ起きて朝ごはん作らないと……

 

「……い……んせい……先生!

「ドワァ1700!?」

 

なになになに!?びっくりしたぁ……

……あ?

 

「ここどこ?」

「なにを言ってるんですか?」

 

あれ、私ソファで寝てたか……?てか持ってないし、畳だし。

つーかなにこの格好、スーツ?

 

「少々待っていてくださいと言いましたのに、お疲れだったみたいですね」

「……リンさん?」

 

えっ、なんで?

えー……どういう……えー?

 

「あら、寝てしまっていても、名前は憶えてくださったんですね。今の状況は把握していますか?」

「いやー……昨日の夜破壊王やってたのは憶えてるんですけど……」

「……では、もう一度、あらためて今の状況をお伝えします」

 

長いんで簡潔に言うと。

ここキヴォトス!

私リン!

あんた多分先生!

多分ってつくのは連邦生徒会長が指名したけどそいつがいねぇ!

そしてキヴォトスやべぇ!

 

らしいよ。大変だね。

 

……いや、何で私だよ。

 

 

 

 

 

はい、多分パラレルワールド、平行世界ですここ。

まぁた面倒な……

で、私の目の前には四人の少女が。太もも、閃光、眼鏡、デッカー!……うーん、見たことある。

リンさんに用があるみたいなんでボーっと立ってます。

 

「――この先生こそが、フィクサーになってくれるはずです」

 

人の話は聞くべきだながはは。

 

「ちょっと待って。そういえばこの先生はいったいどなた?どうしてここにいるの?」

「なんでやろね」

「キヴォトスではない所から来た方のようですが……先生だったのですね」

「だったらしいですね」

「……」

「ごめんて」

 

ヘイヘイ黙ってますよ。

しっかしどうしたもんかねぇ……急に転移は止めてくれよー。

 

「……先生、聞いていますか?」

「えなに?エターナル克己のこと考えてたわ」

「誰ですかそれは……も、もう一度言いますね。私はミレニアム「ユウカさんでしょ?」……って……聞いてたんじゃないですか!」

「私の名前は……まあいいや、モブ子って呼んでくださいね」

「……話の途中なのですが」

「えっとたしか……あれだろ?シャーレの部室が遠くにあって、そこで何かがあっていろいろ解決できんでしょ?」

「あら、連邦生徒会長から聞いていましたか?」

「会ったことないから違うっす」

「え……ではなぜ……」

 

そんな話を先生から聞いててよかった。

え、何?平行世界の匂わせ?別にバレても困らなくない?おかしな人扱いされるだけよ。

 

「とりあえずそこ行きません?今大変らしいし」

「そ、そうですね……モモカ、シャーレの部室に直行するヘリが……」

「ど、どこか変な先生ね」

「失礼ですよユウカ。気持ちは分かりますが……」

 

 

 

 

 

歩きになりましたクソが。いや途中までは車なんだけどね?

不良達が飛び出してすったもんだの大騒ぎだってよ。ああ怖い。

そんなことより今更ながらなんだけど私大人になってる……ヘイローもない。えー……

つーわけで、さっきの場所にいた四人の力を借りることになったんですけども。

 

「参ったな、私シミュゲーで突撃しちゃうタイプなんだよなぁー……」

「凄い不安が……」

「うーん……あっ、そうだ」

「……どうしました?」

「ちょっと皆ここで待機……あ、チナツさんそれ貸して」

「えっ……あ、はい」

 

チナツさんから拳銃を借りて一人で前に出る。なんか後ろから聞こえる気がするけど無視無視。

ヴァルキューレが使ってたのか、丁度良く拡声器もあるし……

 

「あー、マイクテスマイクテス……みなさーんいっかい戦うのやめてこっち見てくださーい」

「先生何を!?」

 

お、見た見た。

 

「私そっちに用事があるんですけどねー?ドンパチされると困るんすよー」

「まさか、言葉で止めるおつもりを?無茶です!」

 

気持ちは分かるよ閃光さん。

でもそんなつもりはないんだよねー。

 

 

実はキヴォトス人って不良でも殺すの嫌いなの多いんだよね。

私は自分の太ももに一発弾丸を撃つ。

 

 

「な……」

「見ての通り私脆いんでー……殺しは、嫌だろ?」

 

お、どんどん引いてく引いてく。

……ん、でもあれ、私の声でじゃなさそうだな……

 

「先生!何をやっているんですか!?」

「戦闘を止めた」

「そうではなくて!」

 

チナツさんに銃を無理矢理取られ、治療される。

えー。合理的だと思ったのにー。

 

「っ、誰か来るわ!」

「……」

「あなたは……!」

「七囚人の……!」

 

あれ……

 

ワカモさん?

 

「少し、その方とお話を……」

「それを許すと思ってる?」

「いやすいませんが、早めにしておかなければいけないので……」

 

んー……まさか。

 

「鋼鉄の!」

「ですから七囚人です。海賊ではありません」

「……やっぱり、そういうこと?」

「そういうことですね」

「あー、はーん」

「……え?先生、知り合いなんですか?」

「まあ一応。え、どのタイミング?家んちで寝てたよね?」

「ええ。それで目が覚めたら、捕まっていて、脱出して……」

「何で戦闘してたんだよ。あー……他の人は?」

「今のところわたくし達だけみたいですね……いやそうではなく……その、自分撃つのやめてください。先生泣きますよ?」

「やっぱまずい?」

「まずいですね」

 

「待ってください!」

 

なによ太もも。人が話してる時に~。

 

「どういうことですか!?先生の家で寝ていたとか、あの七囚人が他人を制止するとか……」

「えー……戦闘も止めましたし、とりあえず、シャーレまで行きませんか?その道中でも話は出来ますし……」

「そうっすね、そうしましょう」

「背負いますから、来てください」

「……せ、先生、大丈夫なんですか?」

「ダイジョブなんじゃね?」

「ええ……」

 

 

 

 

 

「えーっと……実は七囚人、災厄の狐はキヴォトスの外で過ごしたことがあり、その時の知り合いで……?」

「そうです、その時にお世話になったので、先生の任をお手伝いさせていただこうかと……」

 

ワカモさんがでっち上げの嘘をポンポン放っていく。すげー。

 

「……なるほど、ですがそれが事実であるという証拠は?」

「モブ子さん」

「事実ー」

「はい」

「はいじゃないですが……」

「気持ちは分かります。ですが、事実がどうであろうと、ハスミさん。この人から目を離すと何をしでかすか分かりませんから」

「……それはそうですね」

「何をいっとんじゃい!私は私のできることをしただけぞ」

「だからって自分の足を撃ちますか?」

「戦闘止まったじゃないっすか」

「先生がそれをやろうとしたら「止めるが?」わたくしもそうです。あなたも今同じ状況なんです」

「えー……でもさぁ、私は先生ほどの指揮能力もないからさ、滅茶苦茶子どもら傷つけてしまいそうじゃん?ならこれがいいかなって……」

「……そのメンタル、先生に向いていて向いていませんね……皆様、良ければモブ子さんを支えてくださ……目を離さないでください」

「赤ちゃん扱い?」

「わ、分かったわ……」

 

えー、不服ー。



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ハイテンポストーリー:モブ子先生(交流編①)

あーコッペパンうめー。

不肖私め、お金を使いすぎて金欠です。

やはりプレバンは悪い文明……ジャム欲しいなこれ。

 

「こんにちは先生」

「あ、ユウカさん。こんちは」

 

パンをむしりながらぼーっとしてると、ユウカさんがやってきた。

あれだ、書類の雛形を持ってきてもらったのだ。

 

「あ、お食事中でしたか、お邪魔してすいません」

「んぐんぐ……むぐ。いや、お気になさらず」

「……このまま待っているのもあれですし、せっかくなら、先生がお食事の間、机を片付けておきましょうか?」

「いいすか?じゃーおなしゃす」

 

やっさしー。じゃあパパっと食べちゃおっと。

 

「ところで……先生、お昼はそれだけですか?」

「ん?ああ、最近使いすぎて。一か月はパン生活ですね」

「そこまでの買い物をしてしまうなんて……どれくらいの買い物をしてしまったんですか?」

 

私は机の上にある領収書を指差す。

 

「え……っと……じゅ、十万!?」

「ベルトにガンプラにクソゲーに……いやー今月は豊作ですねぇ……」

 

「……せ、先生!」

 

「うるさっ。なんすか?」

「これだけあれば、一か月の食事代は余裕にあるじゃないですか!?」

「ありますが?」

「おもちゃなんかのために、食事を抜くなんて、言語道断です!」

「人の趣味に口を出すのはどうなんすかね……」

「ご飯を食べて、元気だからこそおもちゃで遊べるんです!」

「くっそ論破された」

 

正論過ぎて何も言えねぇ。

 

「これではいけません!先生の支出記録を確認させてください!家計簿はどこですか!?」

「家計簿……?」

「まさか……つけてないんですか!?」

「駄目なん?」

「だからこんな衝動的な買い物をしてしまうんです!……はあ」

 

えー、私の趣味なのにー。

 

「……しょうがないですね、先生、手伝ってあげますから先月の領収書を全部集めてください。私がチェックします!」

「えー」

「えーじゃありません!」

 

 

そうして家計簿をつけることになりました。めんどくさいな……

でも、元んとこでは普通につけてたんだけどね、余裕なかったんですよ、急に飛ばされたからね……

 

「まったく……いい大人なんですから、お金の管理くらい計画的にしてください」

「……」

「何で黙るんですか」

 

こっちは学生気分から抜けてないんだが?

 

「もう、お小遣いをもらって、パーって使っちゃう子どもじゃないんですから……こんなこと手伝ってくれるのは私くらいなんですからね……次はありませんよ!」

「へいへい、ありがとうございます」

「ちゃんと感謝してください!……あれ、これって……」

「どうしました?」

「『ぬきたし』……!?先生、なんですかこれは!?」

「ぬきたしの領収書」

「そうじゃありません!生徒の模範となる教育者が、こんな、い、いかがわしいお店に行くだなんて……!」

 

何言ってんだこいつ……

 

「ユウカさんユウカさん」

「な、なんですか!」

「それゲーム」

「……え?」

「いかがわしいのは合ってるけど、ゲームだぜ?逆にいかがわしい店ってなんだよ」

「そ、それは……べ、別にいいじゃないですか!」

「よかねーよ。教育者として未成年がそういうとこ行ってるの見つけたら止めなきゃいけねーの」

「……そ、それは……み、ミレニアムに同じ名前のお店があって……」

「えぇ……作った奴絶対頭おかしいだろ……」

「そ、そんなことより!このゲームもいい値段するじゃ「あと一つ聞きたいんすけど」なんですか!」

 

「なんで行っちゃ駄目なん?いかがわしいお店」

 

「そ、それは、教育者として……」

「いや、教育者も普通に性欲はあるだろうし、そういうのを収めるためにあるじゃないですか。逆に溜めすぎて子どもとか襲うよりよっぽどいいじゃないですか?なんでです?」

「……それ、は……」

「それ以上虐めるのは良くないですよ」

 

急な第三者が現れたと思ったら、扉にワカモさんがいた。

 

「どうしたんです、何か急用?」

「どうせあなたが散財してるでしょうからお弁当買ってきました。まだお腹空いてるでしょう?」

「助かる~」

「休憩室で食べてきなさい。これはわたくしがお手伝いしますから」

「ありがとざいやーす。じゃ、すぐ戻ってきますねー」

 

ワカモさんにお礼を言って私は休憩室に行った。

……ところで、何で駄目なん?

 

 

 

 

 

「……朴念仁ですね」

「な、何が!?」

「分かりやすいですよ、あなた。……ふふっ」




モブ子先生編はモブ○○じゃなくて実質モブワカ編かも。多分恋愛要素は(本人らには)ないけど。


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ハイテンポストーリー:モブ子インパラレルワールド(プロローグ編)

Q.どうして本編もモブ子先生も終わってないのに、なんならシリアス編始めてないくせに新しいの書いてるんですか?しかもなんでこんな短いんですか?

A.息抜きだから。大奥記RTA見てるから許して……ラッコ頭おかしいよ


「ん……おはよぉぉぉ!こんにちはぁぁぁ!こんばんはぁぁぁ!おやすみぃぃぃすやぁ……」

 

今日はせっかくの休みだし寝ます。ぐぅ……

 

「あれ……起きた声が聞こえたんだけど……」

「むにゃぁ…………待てここどこだ?」

 

知らない天井じゃん……後さっきの声って……

 

「あ、やっぱり起きてた」

「……先生?」

 

先生だ。でもなんか違う……

 

 

「知ってた?私のこと。うん、知っての通り、シャーレの先生だよ。よろしくね」

 

 

あー……パラレルか(超速理解)。

 

 

 

 

 

「朝来たら、入口で倒れてたから、どこか怪我したのかと思ったんだよ。寝言で『英雄と青い果実皆どっちが好き?』なんて言ってたから多分大丈夫だろうなって思ったけど」

「どういう基準だよ」

 

僕はー、全部ー!(キャシャーン)

ともかく、目の前の先生は私のことを知らず、元気そう。襲われてないわけだ。そりゃ安心。

 

「とりあえず、シャーレの休憩室で横にしてたけど……どうして倒れてたの?」

「さあ?知らないっす。私も家で寝てたはずなんすけどね」

「えぇ……じゃあ、一体誰が?」

 

知らなーい。とはいえ、ここにいつまでもお邪魔してるわけにもいかないし、どっか行くか。

 

「んー、よく分かんないですし、帰りますね?」

「え……大丈夫なの?本当に何にも持って……銃だけは持ってたけど、お財布とか無かったよ?」

「えーえっち」

「まさぐった訳じゃないよ!?」

「冗談ですよ……しっかし、その通りなんでどうしまそ……帰るべき家もなさそうだし……」

「……え?それってどういう……」

「お気になさらずー。んじゃま……おじゃーしたー」

「ま、待って!」

「……何すか?」

 

「深くは聞かないけど……手伝わせてくれない?君の問題を」

 

……何でもかんでもすぐに首を突っ込むなぁ?

 

 

というわけで、先生に私の現状を言ってみる。聞かないって言ってたけど言う。

 

「……家で寝てたはずなのに、いつの間にかここにいて、多分パラレルワールドから来た……?」

「ハイ!(^q^)」

「うーん……信じるけど……元に戻る方法は分からないな……」

「あら、無条件で信じるんすね?」

「もちろん、子どもを疑うことはしたくないからね。一部例外はあるけど……それに、平行世界があるのは知ってるから……あれ、そういえばどうしてパラレルって分かったの?」

「先生を見てですね。雰囲気が全然違う」

「……肩幅広かったりする?」

「別世界の先生ロボだったの?見た目はほぼ同じですが?」

「そっか……で、どうしようか?このまま住まわせてあげたいけど……」

 

すげーとんとん拍子。これが先生……よくこれを壊したなあいつらは……

うんうんと二人で唸ってると、誰かが入ってくる。

 

「おはようございます、先生……ってあれ、お客さんですか?」

 

太ももさんだった。ちがったユウカさんだった。

 

「うん、ちょっと困りごとがあるみたいで……しかも結構大変みたいなんだ……」

「そうですか……先生は問題解決のプロだから、心配しなくて大丈夫よ。ええっと……」

「モブ子っす」

「モブ子さんね……ああ、名乗るのが遅れたわね、早瀬ユウカよ。よろしくね」

「うっす、オナシャス」

 

ふ、普通だ……!太もも以外……!

あれ、もしや元のあいつらって相当バカ?分かってたけどそっか……

あの先生が問題解決ね……いや元でも相当やってるだろうけど、何ともそのイメージ湧かねえな……

 

そんな時だった。

 

またもう一人、ノックをして入ってきた。

見た目は、長い黒髪に、長身スーツ姿。瞳孔の色は白に近かった。

 

「失礼、ここがシャーレでお間違いないでしょうか」

「うん、合ってるよ。何か、問題があったのかな?」

「そうですか……おや、あなたは……」

 

……なんか見たことあんだよね……性別とか、男だったはずだけど……

 

「そこの方。少し、質問よろしいでしょうか」

「はいなんでしょう?」

 

 

「想いは?」

「テクノロジーを超える」

「物語の結末は?」

「俺が決める」

「一気に?」

「いや、一緒に決めるぜ」

「ここからが?」

「ハイライトだ」

「ナイスですモブ子さん」

「何で女になってんだよ

 

黒服さん」

 

今回のバディは黒服さんか。

……あれ、そういえば黒服さんって男?女?



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ハイテンポストーリー:モブ子インパラレルワールド(プロローグ編②)

飽き性だからちょくちょくいろんなネタ書いちゃうけど許してね……
ネタ提供とかしてもらいたいけど、どうしたらいいのか、というかしたい人いるのかとか考えちゃう。
ということで皆さん性癖を言ってください(露骨なコメ稼ぎ)
噓ですしなくでいいです。
いつも感想評価ありがとね……

あ、いつの間にかお気に入り3000言ってました。
皆の性癖って……


「……で、二人はどういう仲なの?」

「どういう仲に見えます~?」

「その言い方いろんな人を敵に回すので止めてください……というかこの縄、ほどいてくれませんか?」

 

あの後黒服さんが五秒で椅子に縛られ、事情聴取を取られていた。ちなみに黒服さんはユウカさんに銃を向けられている。

 

「駄目。あなたは何をしでかすか分からないからね……子どもを、消耗品にしか見えていないあなたが」

「今は違う、と言ったら?」

「信用できない」

「お手厳しい」

「つーかなぜ女?ヘイローもあるし……なにしたんすか」

「私もあなたと同じようなものです。いつの間にかここにいて、何故かこの姿になっている……神秘ですね」

「神秘ってそんな便利な言葉じゃないよ」

「……ということは、モブ子と同じ世界から来たってこと?」

「てことになるなぁ……」

「ハンチョウ!?」

「なにそのコンビプレイ?」

 

いえーいとハイタッチしようとしたら縛られてるんだった……なにやってんの?

ずっと黙ってたユウカさんが口を挟む。

 

「私はこの人が何をしたのかは、詳しくは知りませんが、先生がこれほどまで敵意を剥き出しにするのは初めてです。……モブ子さん、あなた騙されてるんじゃないの?」

「酷い……私のどこが悪いのでしょうか……少し子どもを道具としか思っていないくらいの倫理観なだけなのに……」

「今日からあだ名失敗した型抜きな」

「そこまで言います?」

「……ともかくモブ子、縁を切った方がいいよ。君もただの道具としか「たとえ道具だったとしても」……」

 

「私は一緒にいるさ」

 

だっておもろいしこいつ。

 

「……分かった。君の意見を尊重する。でももし傷つけられたら……」

「ぶん殴るからたいてーぷ」

「えぇ……」

「……安心してください。今の私は子どもを傷つけませんよ。取引ですし、それに……」

「それに?」

 

「先生大好きファンクラブ会員№00ですので」

 

「……」

「先生ドン引きじゃん。ウケる」

「せ、先生大好き……!?い、一応聞くけど、入るための条件とか……」

「ユウカ……」

「は、入りませんからね!?聞くだけです!」

 

 

次の瞬間、先生のタブレットから警報音がした。

 

「なになに?」

「これは……近くで不良達が暴れてるみたい。ユウカ」

「はい、分かりました」

「ごめん、ちょっと鎮圧してくるね。……でもユウカだけで大丈夫かな……」

「大丈夫です先生。私だけでも計算上は対処できます」

「し、知らない数値ですって!?とか言いそうですよね」

「私のデータに無いわよ!?とかも言い出しそう」

「データキャラ止めちまえ!」

「聞こえてるわよ!」

 

ん-、なら……

 

「私も協力しましょか?」

 

 

 

 

 

というわけで、四人で暴動現場まで来たわけだけども。

 

「私縛られたままなんですか?」

「そういうプレイだと思ったらええんちゃう?」

「……先生との束縛プレイ……ふむ」

「ふむじゃないけど?」

「先生はそういういやらしいことしませ……んよね!ね、先生!?」

「……」

「二人がそういう態度ならもう無理でしょ」

 

じゃなくて、問題は不良でしょ。

 

「おーおーやってるねー。で、どうします?結構いるみたいですけど」

「うーん……数で負けてるし、戦車もあるし……各個撃破できたらいいんだけど……まだバレてないみたいだし」

 

 

「……ん?あれシャーレじゃないか?」

 

 

「……どうしよっか」

「親の顔より見たガバ」

「実質親の顔だからセーフだろ」

「何の話してるの?」

「ま、いいや。時間稼ぎしてきますねー」

「は?」

 

突撃ー!バンザーイ!ヤマト魂見せてやる!敵の潜水艦を発見!

 

「ま、待って!」

「……仕方ありませんね」

「えっ?なんでこっちも!?縄ちゃんと持ってたのに!」

 

 

適当に撃ちながら撃たれないように壁から壁を通ってく。……無駄に強くなってるな私。

でも武器的に集団戦得意じゃないし戦闘得意じゃないし。あー、固有時制御(タイムアルター)使えねえかな。速さが足りない!start up……ティウンティウンティウン。

 

「いてっ」

 

左腕に砲弾当たったわめっちゃいてぇ。

……あー、これちょっと動かないな、まいっか。

でもリロードどうするか……

 

「えへへ……待った?」

「……」

「何で無言なんですか」

「いや……結構可愛かったなって思ったけど元の姿で考えたらキモイなって……」

「普通に傷つきます」

「うふふとかの方が良くない?美人系ですし」

「ギャップ萌え狙ってみたんですが、次はそうしてみましょうか」

 

何でいるとかはもう考えません。もう来てんだから考えても無駄だろ。

 

「で、作戦は?」

「さあ?なんとなく来てしまっただけなので知りません」

「頭いいんじゃないの?……たくもー、戦わないんでしょ、取引で」

「正確には、傷つけません。……ですから」

 

黒服さんは何かを投げた。

 

「こうすることが出来ます」

 

 

「おい、グレネードdあばっ!?

「ウワーッ!?」

「グワーッ!?」

 

 

「ニンジャ?」

 

一瞬光ったかと思ったら、次の瞬間光の範囲内の不良達は縄で拘束されてた。あら便利。

 

「拘束なら、どうとでも」

「戦車は?」

「……てへっ!」

「このこの~!」

 

戦車の砲弾が飛んでくる。

 

「時間稼ぎさえできれば援軍が来てくれるはずです!そんなことを言っていたはずです!多分!」

「不安~!っ、危な!いてぇ!」

 

飛んでくる銃弾から黒服さんを庇いながら走って逃げる。

 

「……私は感謝しかしませんよ」

「感謝もいらねえよ!頭下げとけ!」

「……」

 

 

 

 

 

そこから十数分ほど、逃げ続けると、突然戦車が爆発したり、不良が飛んだり、爆発したり……援軍が来たと理解したのはちょっと後だった。

で、今何をしてるのかと言うと。

 

「もう……絶対こんなことしないでね?危ないから」

「「へい」」

「返事ははい!」

「「はい」」

 

先生に滅茶苦茶怒られてました。黒服さんと一緒に。正座で。

 

「すぐに治療したし、骨折もしてなくてよかったけど……体は大切にしなくちゃだめだよ?」

 

包帯を巻かれた左腕を見ながら先生は言う。

 

「……」

「黒服はなんでにやにやしてるの?」

「いえモブ子さんが受けた今までの傷を言うとどれぐらい怒られるのかな、と……」

「言ったら脱ぐからな」

「どういう脅し?」

「……次に、黒服」

「なんでしょう?」

「あなたが考え無しに突っ込むとは思わなかった。あなたもむやみやたらに行かないように。あと……

 

ありがとう、モブ子を守ろうとしてくれて。信頼はしないけど……少しだけ、信用することにする」

 

「……」

 

黒服さんがあっけにとられた顔をしている。

そして、すぐに笑った。

 

「……ククク、これは……なかなか……」

「なにわろとんねん」

「まだ説教は終わってないからね!」



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本編―第一章―
第一話


出会いとは、突然である。

そして、人生は出会いの連続である。物しかり、人しかり、物事の始まりしかり。

つまり出会いが無かったら、人は何もない生き物じゃないのだろうか。

 

そんなことを何処かで聞いた気がする。覚えてない。

まあ、そんなことは今はどうでもよくて。要は出会ったのだ、初めての存在と、死ぬほど降ってる雨の中で。

それが誰かと言うと―

 

 

「ぁ……ぅ……」

 

 

―かの有名なシャーレの先生だ。我が家の前で怯えてる、先生だ。

 

 

 

 

 

私の名は……まあモブ子でいっか、特に知る必要もないただの学生Bだ。

このキヴォトスでちっちゃい学校に通っている。まあトリニティやゲヘナに比べりゃ何処も大概ちっちゃくなるか。

そんな訳でドンパチがよく起こるこのキヴォトスでも大した問題は起こっていない。

せいぜい不良が暴れるくらい。それもヴァルキューレを呼べば解決する。

だから、問題解決のプロ、シャーレの先生と出会うことなんてないのだ。

 

「いや出会ってるんだよなぁ……」

 

帰ってきたら家の前に成人女性がうずくまってるなんて思うわけないでしょ。

いやぁ、どうしたものか。目がちょっと合っただけで凄い震え出したし。

 

「ヴァルキューレかぁ?」

 

困った時の警察である。

そう思いポケットからスマホを取り出そうとすると―

 

「やっ、やめて!」

「うぉ!?」

 

―と、先生に縋りつかれ、止められてしまった。

その力は、とても弱々しい。ガチで嫌みたいだ。

でもヴァルキューレの狂犬だったか、なんか偉い人と仲良さそうに歩いてるの聞いたことあるんだけど……

えーどうしよ。放置するわけにもいかないし……

 

「……あのー、よかったら(ウチ)、入ります?」

「……ぇ?」

 

仕方なく、家に入れることにしたのだった。

 

 

 

 

 

玄関に入れてから気づいたけど、すごいボロボロ……というか、なんというか……スケベだ。

この女……スケベすぎる!

冗談はさておき、ホントにやらしい格好だ。特にスーツがはだけてるのがエッチだ。

……あれ?なんではだけてんの?

ままええわ、とりあえずやることは、っと。

 

「今からお風呂沸かしますんで、よかったら入りませんか?このままだと、風邪引いちゃいますし」

 

そう靴を脱いでいる先生に呼びかける。

先生は緊張しているのか、カチカチな動きで目が凄い泳いでる。

 

「え……と」

「まあ無理に言わない……やっぱ入ってください部屋が濡れる」

 

畳多めだから濡れてるのはまずいっす。

 

「ほらほら、こっちですこっち」

 

そう言いながら手を引っ張ってお風呂場にまで連れていく。

小さい悲鳴は聞こえるけど、素直について来てくれる。

 

「えーっと、沸かしながらシャワー使えるとこなんで、ばんばん使っちゃってください。……体格私よりちょい小さいくらいか……服、置いときますから、じゃまた後で」

「ぁ……うん……」

 

私はそのまま台所に歩いていく。普通にお腹空いて帰ってきたからご飯を作る。あっスーパーよっときゃ良かった!

深い悲しみと後悔に襲われながら、パックご飯と卵スープの素と惣菜の餃子を見つける。あ、コーラも。

鍋に水を入れ、お湯を作りながらご飯と餃子をレンチンする。ポイントは別々にチンすること。複数だと丁度良くならないから。温度が。

そういや、先生はご飯いるかな……?

ここまで先生を気に掛けるのには理由がある。

 

単純に媚び売っときたい。

 

いやそんな必要になることも無いだろうけど、一応あったらいいじゃん?安定は大事だよ。だから、媚びを売っておく必要があったんですねって。あっ、服置いとかなきゃ。

 

そんなこんなでご飯ができた。できたご飯をリビングに……リビング?リビングか……?

リビングって言うかは分からないけどリビングって言おう、に持っていく。

タイミングよくリビングに先生が私の服を着てやってきた。

 

「あ、あの……お風呂、ありがとう……」

「いえいえ、媚び売るためにやってるだけあっやべ言っちゃった」

「えぇ……」

 

完全に可哀そうな子を見る目だ……やめろ、そんな目で見るな!

話を変えよう。ご飯食べたいし。

 

「ん”ん”、そういえばごはんはどうします?一応、簡単なやつならありますけど」

「……それ……って、て、手作り?」

「え?えーっとですね、こっちはパックで、こっちは半額シールで……こっちは卵スープの素だから……はい!手作りです!」

「…………」

「ハイ嘘です文句あんのかちきしょー!」

「い、いやないけど……じゃあ、もらっても、いい……?」

 

私ははーいと言って台所から片方にパックのご飯を、もう片方にスープを入れたお椀を持ってくる。あと箸。

それを机に置いてはい完璧。

いただきますと食事の号令をかけてご飯を口に運ぶ。うんうまい。早々マズくなんないんだパックご飯は。

先生の方を見てみると小さく卵スープを啜ってる。

そしてほっと一息。

 

「……おいしい」

 

と小さな声で言う先生。市販品の溶かすだけのやつっすよ?

超分かる。

 

このまま静かにご飯を食べてても良かったけど、なんとなく話を振ってみる。

 

「あの、一つ聞きたいんですけど、いいですか?」

「う、うん……答えれることなら……」

「なんで私の家の前にいたんです?」

「……」

 

黙って俯いちゃった。聞かない方が良かったかぁ?

すぐに言わなくてもいいと言おうとしたが、その前にゆっくりと口を開かれた。

 

「逃げ……てて……休む……ために……たまたま……」

「はーん……」

 

逃げてて、か……まあシャーレの先生って命狙われそうな職業だし、逃げることもあるんでしょう!はっはっは!

 

うん。

 

尚更ヴァルキューレの方がいいでしょ!?なんで止めたの!?

止めたってことは言えない理由が……!?

 

「えーっと、やっぱりヴァルキューレとか、トリニティとかゲヘナとか、連絡取って守ってもらった方がいいんじゃないですか?何に追われてるか知らないですけど」

 

先生は凄く言いづらそうにしていた。

無理に聞くことでもないし、いいですよと言いかけたところ、先生は口を開いた。

 

 

「に、げてるのは、そこ……から……なんだ」

 

 

……へー、ヴァルキューレとか、トリニティとか、ゲヘナとかか~

一瞬目の前が真っ暗になった。

何したら追われることになるん!?はぁ!?

 

「ミレニアムとか、百鬼夜行とかは!?」

「そこも……だね……」

「なんで?????」

 

マジで何してんの?

 

「いや追われてることにもびっくりしてますけど、よく今まで逃げられましたね……」

「光学迷彩とか、シッテム……このタブレットとかで、なんとか、ね……」

 

すごいなシャーレの先生。なんで光学迷彩とか持ってんの?

しかし……結構大変そうな話だし、続けるのは良くないかな……

別の話題にするために、テレビをつける。

 

『――繰り返します!現在、シャーレの先生が行方不明になっているとのことです!トリニティやゲヘナ、ミレニアムなど、各マンモス校が協力して、捜索に当たっているとのこと!もし先生らしき人を見た方は以下の連絡――』

 

テレビを消す。

おかしい……明るい話題にするはずだったのに絶対良くない奴引いちゃった……

汗を全身から溢れ出してると、先生が急に立ってこっちを見る。

 

「……これ以上、長くいると君に迷惑を掛けちゃう。ちょっとだったけど、ありがとう」

 

そうして頭を下げる先生。

うーーーーーん……………

 

よし、しゃーない。

 

「よかったら、好きなだけ居ていいですよ」

 

そう言うと、先生は目を丸くして私を再度見る。

 

「え?でっ、でも……」

「流石にそんな悲しそうな顔をしてる人をさよならバイバイはできないっすよ。誰も味方がいないってのは、辛いですから……」

「……もしかして、君も……」

 

回復キャラを一時離脱させるの勘弁な!

 

「まあ最後に決めるのは先生ですから、どうぞ、好きに決めちゃって」

 

先生は悩みに悩み、悩んだ姿を数分続け、ついに口を開いた。

 

「名前、教えてもらっても、いい?」

「モブ子って呼んでください。お気になんで」

「えぇ…………も、モブ子。……少しでいいから、いても、いい?」

 

私は微笑んで

 

「はい、いいですよ」

 

と言った。

こうして、私達の奇妙な共同生活が始まったのだった。

 

 

ちょっと冷めたご飯を温めなおして、食べ終わった後、洗い物をしようとすると、先生が手伝うよと言ってきた。

私はせっかくならと手伝ってもらうことにした。

ゴミを捨て、お椀を洗う。先生には洗ったお椀をキッチンペーパーで拭いてもらう。拭くことなんてほぼやらないけど、そうじゃないと仕事がないのでやってることにする。

そんなことをしながら先生と喋る。

 

「……ねぇ、なんで逃げてるのか、気にならない?」

「気になるけど無理に聞くことではないので気になりません」

「……つまり?」

「超気になる」

「そっか……ちょっと、ショッキングだけど、いい?」

「グロじゃなかったら大丈夫ですけど……まさか、エッチなことですか~!?」

「うん」

「は?」

「無理矢理、いろんな子から、襲われてて……それだけなら、まだよかったんだけど、ご飯とか、いろんなものに薬を盛られたりして……一番嫌だったのは、私も、まんざらじゃなかった、ってとこなんだけど……」

「待って待って情報が多い情報が多い急に情報で殴ってくるな!」

 

 

とても奇妙な話をぶら下げた先生との、生活が始まったのだった。




好評だったら続きます。


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第二話

評価付くの速くない?そしてみんな好きすぎない?
ネタパクってるみたいで申し訳なさが凄い。
でもみんなかかないんだからしょうがないじゃん!


前回までの三つの出来事!

一つ、先生を拾った!

二つ、先生はいろんなとこから狙われていた!

三つ、先生と暮らすことになった!

四つ、先生はドスケベな目にあっていた!

 

そうはならんやろ!

 

先生は超有名人で、数々の問題を解決して来たそうな。ゲヘナとトリニティのなんか……ヘブン条約?とかなんかいろいろ。

最近だと宇宙戦艦に乗って宇宙に行って世界の運命を賭けた決闘(デュエル)もしたらしい。

波乱万丈な人生送ってんなーと思いました。

……いやいやいや、主人公だなその人生。プライバシーの関係で詳しくは聞かなかったけど、それでも分かるモテそうな行動。

それも無意識っぽい。おいおい無意識系は人を選ぶぜ?

本人が言うには

 

「セクハラとか足舐めたりしてたから好かれるはずないと思って……」

 

らしい。は……?

 

 

 

 

 

教科書やノートをカバンに詰め込みながら今日買うものを考える。

洗剤は買った、トイレットペーパーの予備……ご飯は……魚にするか。

 

「ねえ、まだ見つかってないんだって、シャーレの先生」

「マジ?超やべーじゃん。通りで最近ヴァルキューレとかよく見かけるわけね」

「ちくわ大明神」

「なんかいろんな学園の諜報?機関とかミレニアムのやべーハッカー集団とか総出でも見つかってないらしいよ」

「「誰だ今の」」

 

そんな話を耳に入れながら教室を出る。こわ~……

 

学校を出てスーパーに寄る。

洗剤、トイレットペーパー、鮭安いな……これ焼くだけ?じゃあこれにするか……トイレットペーパーいらないんだっけ。お菓子も買っておこっと。あとジュース。コーラとーオレンジとー……

 

「すいません、ちょっといいですか?」

「はい?」

 

かごに買うもの入れてると、後ろから肩を叩かれる。

なんだなんだと思いながら振り返る。

 

「ヴァルキューレ公安局です」

「ヒュッ」

 

ケバイン

心臓から口が出そうになってる。二人もいるのなんで?バディシステム?

 

「どうしたんです、かぁ……?」

「いえ、ちょっとお伺いしたいことがありまして……お分かりだと思いますが」

「……シャーレの?」

「そうですそうです。ネットとかテレビで顔ご存じになられてると思うんですけど、見てませんか?」

「いやー……それらしい人は見てないです、けどー……」

「そうですか、すいませんお時間取らせて」

「いえいえ……」

「また見かけたりしたら、お電話していただけるとありがたいです。すいません、それでは我々はこれで」

「あぁはい……」

「局長まだ怒ってっかなー……」

 

ヴァルキューレはそうしてどっか行った。

怪しまれてないといいな……

 

そんなことがありながら買った物を入れたレジ袋持って帰路につく。

帰りは特に誰にも絡まれることなく、家につくことができた。

玄関を開けようとすると勝手に開いた。

そこから現れたのは

 

「おかえり」

 

微笑んでいる先生だった。

あんた追われてんだから出てきちゃダメだろ。

 

 

 

 

そんなこんなで早一週間。先生が来てからもうそんなに経っていた。

 

「はい、袋」

「おなしゃーす」

「今日は魚?やったっ」

「先生魚好きなんすか?」

「普通」

 

先生も慣れた様子で過ごしてる。

洗濯炊事と家で出来ることはやってくれるので普通に助かる。

最初の方ではおどおどというか、怯えてる様子が多かったけど今はだいぶ良くなった。

問題は――

 

「うーん……お菓子食べてもいい?」

「いいですけど……服ちゃんと着なさいよ」

 

――超無防備。

シャツのボタンが全開なのは当たり前、酷いときはズボンを履いてなかったりする。ははーんさては襲われたがりだな~?

んやまてよ、本人まんざらでもないとかなんとか……調教?

よーし下手に地雷を踏まないようにするため考えないようにしよーう。傷つけちゃうかもだからね!

 

「いつもお惣菜とかばっかり頼んでごめんね?凝った手料理だと吐くようになって……」

 

地雷はフリスビーじゃねーんだぞ。

しかしグッと堪える。一度ツッコミで強く言ったことがあるけど

 

『ご、ごめん……不快にさせた?どこを直せばいい?どこでも直すから、ここにいさせてほしい、ねえ、お願いどこが悪かったの……悪かったんですかお願いします教えてください何でもしますから許してくださいごめんなさいごめんなさいごめんなさい――』

 

となってしまったことがある。やべーぞ何したんだ問題児達は。数十分かかったぞ元に戻すの。

今もそうなるか分からんけど精神の根っこは不安定なのは間違いない。私もそうだそうだと言っています。

しかしホントにどうしたものか。リビングに行って制服から部屋着に着替えながら考える。

キヴォトスには変な……凄い集団が多いし、見回り的なのも増えて長くは隠せなさそうだし……

 

一番の問題は先生のメンタルっぽいんだけど……

私が学校に行ってる時とかトイレとかお風呂以外は私の近くにいるんだよね……今も着替えてるすぐ近くでざくざくサンダー食ってる。超邪魔。

いろんな人に襲われたって話だし、普通一人になりたくならない?いや逆に襲われたからこそ襲ってこない人に寄っちゃうのかね……

まあ私女の人そんな目で見れないから妥当かもしれん。襲わないって意味なら。

 

着替え終わり時計を見るともう五時半くらい。ご飯の準備をしよう。

 

「ん、ご飯?」

「そうですよ。だからお菓子食べるのやめなさーい」

「はーい」

「いい子だね、っと……手伝ってくれます?」

「うん、喜んで」

 

台所に二人で行ってご飯を作る……んだけど二人はちょいせま台所。ごめん嘘かなり狭い。でもいらないって言うとすげー悲しそうになるから言えねぇ。

洗剤じゃなくてトイレットペーパー必要なんだったと絶望しながら冷蔵庫から焼くだけ鮭、出すだけサラダを出して、食べ物入ってる棚からチンだけご飯と注ぐだけ味噌汁を出す。

先生にはご飯のチンや箸を持っていってもらい、私はフライパンと水を入れた小鍋をコンロに置く。おい誰だ今『湯沸かし器ないの?ぷぷぷーwww』って言ったやつ出てこい歯ぁ食いしばれ修正してやる。

 

ぶっちゃけお湯は火つけるだけ、鮭も油引いて焼くだけなんでぱって焼いてぱって注いではい完成。

なんちゃって定食的な。あれ全部手作りしてるとこすげーわ。

いっしょに運んで迎え合わせに座り、いっしょにいただきますと言って食べ始める。うめぇ。

ご飯を食べてる最中は学校であったこととかを話す。

 

「計算は一万二千歩くらい譲って良いとして、図形はすげーいやっす」

「でも、図形も計算の基礎と応用を使えば出来る問題だよ」

「いや描くのが嫌いです。やり始めると数ミリずれてたりしたらいらってする。それでテストが終わる」

「えぇ……ふふっ」

 

間違っても公安の人に話しかけられたとかはしない。笑ってもらえるような話題だけチョイスする。

これが!出来る女、ってやつぅー?フゥー!

六回くらい失敗してるんですけどね。成功例が出来たし次もできるやろ。

 

ご飯を食べ終わり、お皿とゴミを持っていく。

先生もついてくるけどお風呂に入りなさいと言って向かわせる。私も入るから沸かしといてくださいって。

ぱって洗ってぱって拭いてぱってしまう。ハイ終わり。一人増えようが特に何の問題も無いのである。

 

先生が出てくるまで暇になったのでネットサーフィンでもしよーと手に取る。

よく出てくる記事はやっぱり先生関連ばっか。人気者も大変そうだ。

大変すぎて警察も犯罪犯してるみたいなんですが?

 

数分ほど経つと先生は出てきた。

 

「気持ちよかった……空いたよお風呂」

「じゃー入ってきますねー」

 

今の気持ちよかったすっごい煽情的だったな……興奮はしないけど。

タオルだけ持って風呂場に行く。着替えは面倒だから持っていきません。さっき着替えたし。

風呂場に入ってお湯をひと浴び。シャワーより桶派です。

ぱって頭を洗ってぱって体を洗ってお風呂に浸かる。めっちゃ気持ちい。

長風呂はしない方なので数分ボーっとしたらさっさと上がる。

体を拭いて、服を着て、タオルを首に巻いてリビングに戻ればあら不思議、壁を背にして体育座りしてる先生が私を捉えた瞬間近づいてくるじゃありませんか!

 

「もう、まだ体濡れてるよ。頭かして」

「あっはい」

 

言われるがままに頭を差し出す。凄い楽しそうに頭を拭くね。

ごしごしとしながら、丁寧に。そんな風にして頭を拭いた先生は笑顔でよし、と溢す。

 

「ほら、出来たよ。これ、かごに入れてくるね」

「うす」

 

先生は小走りでかごに入れに行く。

うーむ……やっぱり私に構うことが多いな……別にいいけども。

 

その後も宿題を手伝ってもらったり、持ってるゲームをいっしょにやったりして過ごし、寝る時間になった。

 

「なんで寝る前にホラーゲームなんてやっちゃったんだろう……」

「でもほら、最後はUFOが全部破壊してくれたじゃないですか」

「それ込みで怖いんだけど?」

 

そんな感じで今日の出来事とかを話しながら眠りの体勢に入る。

布団を二つ並べて、一つの布団に入る。並べた意っ味っ!

しょうがないので枕に手を伸ばして頭の下に置く。そして会話の続きをする。

 

眠くなってくるころには会話はほぼゼロになってる。

けれど、一つだけ。

 

「おやすみなさい、先生」

「……おやすみ」

 

それだけ言って、目を閉じる。そして、明日へ向かう。

問題が起こりませんように……



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第三話

「終わ、ったぁ~」

 

背筋を伸ばして気持ちよくなる。なんで背筋を伸ばすと気持ちよくなるんだ?筋肉?筋肉が引き伸ばしてるから?

そういつものようにくだらないことを考えながら帰宅の準備をする。帰りにトイレットペーパー買わなきゃ。

 

「ねぇ、あれ誰?」

「さぁ?誰かの知り合いかな?」

 

不意に教室の窓に集まってるグループが騒ぎ出す。窓の外……場所的に校門を見てそうなってるみたいだ。

私も気になるけど、先生のためにも急がないといけないし、さっさと教室を出る。校門通るし運が良かったら見れるでしょ。

 

そして靴に履き替え外に出る。玄関から校門が見える位置にあるため、遠目から件の人影を見つける。

白とピンクの傘と和服が目立つ美人さん。そんな風に感じた。顔が見えないから断定はできないけど。

でもそんな目立つ格好した……百鬼夜行っぽい子には知り合いにいないから私じゃないか、いこーっと。あわよくば顔が見えたらいいなーくらいだった。

歩いていって、ついに横を通る瞬間――

 

「お待ちください」

 

――顔を見る前に話しかけられてしまった。

 

「は、はい……なんでしょう?」

 

見知らぬ人に呼び止められるの超怖いんだけど!?

ま、まあまだ私が目的の人じゃないかもしれないしね、ダイジョブダイジョブ平常心。

 

「少し、お時間を取らせていただいてもよろしいでしょうか、モブ子様」

 

ハイもうダメそー!

 

 

 

 

 

謎の美女に連行されたのは近くにある焼肉屋の個室。

 

「いやなぜ焼肉!?」

「個室がある店がここにしかなかったもので」

 

なるほど……なぜ個室!?

いやこれ以上ツッコんでいてもしょうがない。本題を聞くことにする。

 

「で……私に何か用でふか?モグモグ」

「……まずは、精一杯の誠意を」

「せいいだけに……?」

「は?」

「黙ります」

 

目だけで人を殺せるぞこの人!

一呼吸置き、美女は言った。

 

「わたくしの名は、狐坂ワカモでございます」

「へー、いい名前ですnワカモぉ!?

 

私はキュウリを置かれた猫のように飛びあがる。

まさか、かの有名な!?

 

「鋼鉄の七人の……」

「七囚人です。七と人しかあってないではありませんか」

「でも、なぜワカモ……さんが?というか顔を隠してたはずじゃ?」

「これが、誠意です」

 

狐坂ワカモと言えば、超やばい犯罪者で有名な人で、何度捕まえても逃げるし顔も分かっていない、という超危険人物。

そんな人が、なぜ私に?

 

「疑問に思っていることでしょうが、心当たりはあるのでは?」

「心当たりー?なんの事だろー?」

「……」

「マジで思いつかねぇ」

 

目を合わせ続ける。

何故か息苦しいけど、黙って合わせる。

数十秒無言でいると、ワカモさんから口を開いた。

 

「合格です。そう簡単に口を割られては困りますから」

 

そう言うと息苦しさから解放された。マジで何だったの?

 

「わたくしが持ちうる最大の殺気であなたを包んでいたので、さぞ苦しかったでしょう」

「何してくれてんの?」

「さて、本当に本題に入ります。先生のことです」

「……」

 

下手なこと言えないので黙って聞く。誠意は見せてくれても何するかはまだ分からないから。

 

「言葉だけでは信じてはいただけないかもしれませんが、わたくしは先生を襲おうとは思ってはいません。……会おうとも」

「……」

「お願いはただ一つ……先生を、守っていただきたいのです」

「……!」

「わたくしにはやるべきことがあります。それをしながらでは、悔しくも守れません。ですから、きっと、唯一心を許しているあなたに……お願いします」

 

そう言ってワカモさんは頭を下げた。

私は気になってたことを聞く。

 

「ワカモさんにとって、先生はなんですか?よく分かってないんですけど、シャーレってあなたの敵じゃ?」

「……わたくしにとって、初恋の人、と言えば、笑いますか?」

「……ぶっちゃけ半分しかホントって信じてないけど……信じる。だって、先生が目的なら、私を知ってるってことは、先生の居場所も知ってるってことでしょ?それでも手を出してないってことは……たぶん大丈夫と思う」

 

多分!自分の推理に自信がない!ナルホドできない女なんです……

ワカモさんはホッと息を吐いて顔を綻ばせた。

 

「良かった……先生以外に頭を下げるなんて腹を掻っ捌いても嫌でしたが……背に腹は代えられません」

「掻っ捌くならどのように?」

「三文字です」

「滅茶苦茶嫌じゃん……そういえば、どうやって見つけたんすか?先生のこと」

「先生は逃げる際、光学迷彩など、数々の道具を用いて逃亡しました。便利ですが、どうしてもそれらには充電が必要……上手くやりくりしていたようですが跡は残ってしまいます。それを誰よりも先に追い、痕跡を消していきながら追いかけたのです。時折、捜索隊の邪魔をしながら」

 

すっげー優秀じゃん……通りで七囚人と呼ばれるわけだ。

 

「あなたの先生への接し方も見ていました。……襲う気は無さそうですね」

「私は女に興奮しないし……あっ、別に否定してるわけじゃないですよ。……思えば、ワカモさんも襲わなかったんですね?好きならやってそうなのに」

「……私は先生が好きです」

「はい」

「バレンタインで一対一でチョコを渡すために暴れるくらいには好きです」

「あれワカモさんのせいだったのかよ」

「ですが、その時は拒否されてしまいました。周りに迷惑を掛けるのはいけないと」

「ど正論」

「わたくしは泣き喚きました。先生に嫌われてしまったと、怖くなり、悲しくなり」

「はあ」

「……つまり、言いたいことはですね」

「はい」

「強姦して、好かれますか?」

「なるほどなぁ」

 

そらそうだ。すっげー分かりやすい。

 

ともかくして、私とワカモさんはこうして仲間……仲間?仲間となった。

買い物やいろいろあるため、もう帰ろうとしたところ、ワカモさんに呼び止められる。

なんでも、先生がやられたことを知っておいた方がいいだろうとのこと。

そうしてワカモさんのスマホを覗く。

 

「……動画には撮ってるんですね」

「わたくしではありません。裏サイト、というのがあるのです」

「……撮ってネットに上げてる人たちがいる、ってことっすか」

「ええ。……忌々しい」

 

隣から殺気が来るけど気にしません。死ぬので。

とりあえず再生する。

 

……一言、最悪だ。

一部抜粋する。

 

『ぁ……も……やめ……』

『先生ってー、無理矢理されるのが好きなんでしょ?くふふっ、じゃあ、お望みどお、り!』

『あ”っ』

『可愛がってあげるね?せ~んせ♪』

 

首輪を繋がれ目隠しされ、嬌声を上げる先生。

相手は加工されて分からないけど……なんか小さそう。

 

「……これって、バレたらまずいんじゃ?」

「ミレニアムの天才達が隠してるそうですよ」

「そりゃ質が悪い」

 

……はぁ~、もっと優しくした方がいいのか……?

 

「……きっと、いつもどおりがあの人にとっていいと思います」

「ナチュラルに心読まれた……そうっすか、分かりました。今日はありがとうございました」

「いえ、こちらこそ……これ、わたくしのモモトークです」

 

ワカモさんから英数字が書いてある一枚の紙を渡される。言われた通りモモトークの交換用のあれだろう。

 

「じゃあ、また何かあったら」

「ええ、お願いします」

 

そうして個室を出ようとしたが、少し止まってワカモさんに一言言うことにする。

 

「いつでも来てください。説明すれば、先生も落ち着けるでしょうし、安心出来る人は多いに限る」

「……ええ、考えておきます」

「それじゃ」

 

そうして私は個室を出て、ダッシュでスーパーに走っていった。トイレットペーパーあああ!!!

 

 

 

 

 

「……そう簡単にはいかないでしょう」

 

 

 

 

 

急いで買い物をして家に帰る。

ダッシュで玄関を開けて叫ぶ……前に閉めてから叫ぶ。

 

「ただいま!」

 

しかし返事は返ってこない。リビングに行ってみても、誰もいない。

何でだぁ?と思いながらトイレットペーパーをトイレに持っていこうとすると――

 

「……モブ子?」

 

――ずぶ濡れの先生がいた。

畳!ここ畳!つーかなんで服ごと!?なんて言えたら良かったんだけど、先生の纏う雰囲気に押しつぶされる。

 

「せ……んせ……?」

「……帰ってきてくれたの?」

「えっ、あっはい……家なんで……」

「……私、悪いことした?」

「いや、何も……」

 

いつもより帰るの遅くなったんだけど、それのせいか……?

先生はゆっくりと私に近づく。

後退りしそうになるも、意地で止める。

 

「……まだ、いっしょにいてくれる?」

「もちろん……ですけど……」

「よかったぁ!」

「おぅ!?」

 

先生は私に飛び込んで抱き着く。

 

「よかったぁ……よかったぁ……」

 

私の胸の中で泣く先生。私は困惑で泣きそうなんですけど。

 

「きらわれた、かとおも、って……」

「嫌いませんよ」

「ほんと?」

「ほんとほんと」

「よかった……」

 

泣き続ける先生の頭を撫で続けること数分、先生は顔を枕に隠していた。

その隙間から見える色は赤色。私は腕が赤くなりそうなんだがー?

 

「ごめん」

「声ちっさ」

 

それでも頑張って捻り出した言葉なんで素直に受け取ろう。

タオルで拭きながら質問する。

 

「濡れてた理由は?」

「……黙秘は」

「畳腐るんすけど」

「笑わないで聞いてね。……あの時と同じだったら、帰ってくれるかなって」

 

あの時ぃ?濡れた状態であったことなんて……あっ。

 

「出会ったあの日、ですか?」

「…………うん」

 

そういや雨で馬鹿みたいに濡れてたな。あれを再現したら戻ってくるって?

別にそんなことしなくても帰ってくるよ……

 

「すいません、私も遅れること連絡してなかったですね、次からちゃんとしますね」

「う、うん……ちなみに、何してたの?」

「……友達と、ちょっと遊んでて」

「……ふーん」

 

なんかちょっと不機嫌になった?……気のせいか。

というか服はまだ濡れたままなんだが!?風邪ひいちゃうから着替えてもらわないと。

無理矢理服を脱がすか悩んだけど、多分トラウマになってそうだしやめておこう。お風呂にも入ってもらおっと。

 

「じゃ、お風呂入ってきてください。着替え、置いとくので」

「分かった。……置いていかないでね」

 

先生はそれだけ言ってお風呂へ向かっていった。

……うーん、なんだかなぁ。

言葉にしがたいものを抱えながら、私は晩御飯の準備を始めた。

 

 

 

 

 

逃れられようのない深い闇、まさに地獄と呼べる場所にいるとき、人は、か細い、クモの糸より細い糸を掴むのでしょうか。

……いえ、糸ですらない、実体の無い光でさえ掴んでしまうでしょう。

あるいは光だからこそ、掴むのでしょうか。暖かい光だからこそ。

その横に、地獄から逃れられる太い縄があったとしても。



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第四話

今日はお休みの日。自由だあああああ!

まあ宿題とかあるんですけど。おクソが!

それも込みでやらないといけないことが多い。まず買い物だ。できるだけ平日に買い物しなくてもいいように買い込んでおく必要がある。

というわけで朝軽く食べ、私服に着替え、スマホをポケットに入れ、準備万端と行こうとする。

するんですけどー……

 

「……」

「……先生」

 

玄関で足にでっかいひっつき虫がくっついて動けません邪魔です。

割と弱く掴んでるからパって振り払ってもいいんだけど……待てよ。

 

「それって全力?」

「うん、絶対に離さない」

「お、おー……」

 

よ、よえぇぇぇ……

キヴォトスでは結構致命的だ。通りでポンポン犯されるわけだ……嫌だなこの言い方。

怪我させてもいけないし話し合いで解決してみるか。

 

「先生、なんで止めんの?買い物終わらせたらすぐ帰ってくるって」

「……せっかくの休みなのにいっしょにいれないのさびしいから」

「ちょっとだけ、ちょっとだけだから外居るの。すぐ帰るって」

「……ホント?」

「ほんとほんと」

 

数秒葛藤した後、大人しく手を放してくれる先生。

 

「早く帰ってきてね」

「はいはい」

「いってらっしゃい」

「いってきます」

 

ちょっとだけ先生の頭を撫でて、私は外に出た。

 

 

 

 

 

「思いましたが、やっぱり少し様子がおかしいような気がします」

「ぬるって現れるのやめません?普通に叫ぶかと思ったんですけど」

 

スーパーまで歩いていると突然横に現れたワカモさん。忍者かよ。

横並びでスーパーまで歩く。

 

「慣れなさい。いつもやってることでしょう」

「まだ三回目くらいですよ。……というか聞いてたんですね、私達の会話」

「ええ、あなたのポケットから」

「……えっ、盗聴?」

 

ポケットにはスマホが……何やってくれてんだあんた!?犯罪者かよ!犯罪者だった……

んなこたどうでもよく……よかないけど、もっと気になることがある。

 

「様子がおかしい……って言っても私あの状態しか知らないんすけど」

 

年上の妹くらいにしか感じてないぞ。一人っ子だけど。

 

「ええ、前までの先生は、もっと落ち着きを払い、論すような喋り方をし……要は大人でした。ですが、今のあの方はまるで子どものようです」

「……」

「もしかしたら、私達が思うよりも深く心を壊しているかもしれません。わたくしは精神科医ではありませんので、詳しいことは言えませんが……」

 

急にそんなシリアスなこと言われても困るぜ。結構ギャグキャラだと思ってるんだけど私。

しかし、子どもっぽい、ねぇ……なぜそうなったのか、ワカモさんの考えを聞いてみる。

 

「……一つ考えうるのは、あれのせいでしょうか」

 

あれって言うのは、性行為の事だろう。

 

「下郎どもの素性を少しでも探るため、色々見たのですが、大体はあのように無理矢理というものが多かったのです。そのような行為の連続の反動、それが今来たのではないのでしょうか」

「反動って……それがなんで子どもに」

「傷つけられ続け、なんとか逃げた先にいたあなたに、優しくされた。それが、染み渡ったのではないのでしょうか。体や、心に」

「……甘くされたから、つい子どものように、って?」

「そうです。やっと理解しましたか」

 

めっちゃむかつく。でも勝てるわけないので黙って受け入れます……

で、先生の事なんすけど……

幼児退行……とまではいかないけど、メンタルが結構ヤバいわけだ。マジでぇ?

……あ。

 

「だから朝……」

「ええ、駄々をこねたわけです。とはいえ、予想でしかないので、もっと別の理由があるかもしれませんが。もともとシャーレの仕事も大変のようでしたし、かつ子どもを助ける、ということで甘えることが出来なかったから……ということもあり得ます」

「はあ……この状態を続けるのはまずいっすよねぇ……かと言って大人として接するのは……」

「……もっとまずい」

 

だよねぇ……

今更だけど、ただの一般人の私が大変な目に遭ってなーい?

投げ出したりしないつもりだけどさ……私で守り切れるかぁ?

間違いなくヤバいやつらばっかなんでしょ、シャーレに関わってる人達って。私戦えないよ?

 

「……あなたが何を考えているか、少しは分かりますよ。あなたのやるべきことは先生の心を癒すこと。戦いは私の役目です」

「ワカモさん……今めっちゃ輝いて見えてる。超かっけーっす!」

「本当はわたくしがそちらが良かったです」

「なんですぐ素出しちゃったの?」

 

 

 

 

 

道中でワカモさんと別れた後、今日の目的であるスーパーで買い物を始める。

特に問題なく欲しいものは全てかごに入れられた。後はレジを通すだけ。なんだけど……

 

「……」

「……」

「……あのー?」

 

後ろから凄い視線が私を貫いている。冷や汗止まんないんだけど!?

でもレジの人は困惑した様子で声かけてくるし……私だけかチクショー!

かごをレジ台に置いて財布を出し、すぐに払えるようにする。

 

「――になります」

「カードで!」

「分かりました。こちらにタッチし「はい!」早っ!?えっ、えっと、はい、大丈夫です……?」

 

かごを持ってあの、袋詰めるとこ!なんていうか分かんないけどそこで袋に詰める。

何年も続けてきた袋詰めはまさに名人の所業……言うてる場合じゃねえ!すぐに入れてスーパーを出て走る。

……よくよく考えたら勘違いかも。落ち着いて周りを見てみよう。

誰もいない。いやいない事はいないんだけど私を見る人はいない。はー、良かったぁ。

 

視線はまだあるけどなぁ!

 

良くなーい!全然良くなーい!

ままっまま待って待て、まだだ、まだこの美貌に目を引かれた一般変態かもしんないから!

素数を数えようサンッ!( 0M0)「あの」

 

「ウワアアアアアァァァァァ!?」

「うわビックリしたぁ!?」

 

恐怖心、私の心に、恐怖心……

って、声をかけられただけだ私ぃ!失礼でしょうが!

頭を下げて謝罪する。

 

「すいません急に大声上げて。ちょっと最近ピリピリしてて……」

「い、いえ、こちらこそすいません、突然話しかけてしまって。気になることがあったものですから。それを聞いたらすぐに退散しますので」

 

なんだ、良かった良かった。ただの悩める人だった。悩める人ではないだろ。

そう思いながら頭を上げるとそこにいたのは――

 

「……?どうしました?」

 

――横乳を出した不審者だった。

……よし。

 

「えっと、ヴァルキューレの電話番号は……」

「なんで通報しようとしてるんですか!?」

「露出狂の変態が何の用ですか!?」

「なっ!?失礼な!私のどこが露出してるって言うんですか!?」

「下見たらわかるだろド変態!」

「下?……!む、胸のことを言ってるんですか!?た、確かに少し出てるかもしれませんが」

「少しじゃないよ!側面ガッツリ出てるよ!」

「よ、横ぐらい普通ですよ!百鬼夜行の上層部も出してるじゃないですか!なんならミレニアムに本当の露出狂がいますからね!?」

 

えっマジ?もう百鬼夜行とミレニアムに近寄らんとこ。

 

「というかあなた誰!?」

「……ん”ん、いったんお互いに落ち着きましょう」

「はい落ち着きました」

「武術の達人か何かですか?……とりあえず、自己紹介を。私の名前は天雨アコ、以後お見知りおきを」

 

天雨アコ……どっかで聞いたような……まあいいや。

 

「私はモブ子って呼んでください。お気にのあだ名なんで」

「そ、そうですか……と、お時間を取らせるつもりはありません。少し聞きたいことがあるだけです」

「そういや言ってましたね。なんです?」

 

アコさんは一呼吸置いて……最近皆一呼吸置きすぎじゃない?いいけども。

じゃなくて、アコさんは口を開いた。

 

「一人で暮らしているんですか?」

 

ナンパかな?いやこれどっちかっていうと街中アンケだな。

追いかけてくるアンケって超怖いな。

 

「えっと、なんでそんなことを?」

「一人暮らしにしては、よく買ってるな、と、思いまして」

「ああ、学校とかあるんで、休みの今日に買い込んでおこうかな、と思いまして……」

「へぇ……そうなんですか」

 

なんだこの人……怪しさ百パーセント。

と、唐突にスマホが振動する。

アコさんに断りを入れてスマホを見る。

なんだなんだと思って見てみれば、ワカモさんからのモモトークだった。

届いたのは一言。

 

『敵です』

 

驚いてアコさんを見る……のを意地で我慢する。意地があんだよ、女の子にも。

ちゅーかどっから見てんだよ……しかし、敵か……

このまま会話を続けてもいいけど……やってみるか。

 

「すいません、会話止めちゃって」

「いえ、いいんですよ。失礼ですが、どなたから?」

「学校の友達です。お金貸せって言ってきたんですけど、自分で増やせって言っておきました」

「そうですか……個性的なご友人ですね」

 

あんたの見た目ほどじゃねーよとは言わない。死ぬかもしんないので。

じゃ、仕掛けるか。

 

「……で、話の続き、と行きたいんですが……」

「どうしました?」

「気付いちゃいました。あなたの質問の意味。……先生ですよね?シャーレの」

「!」

 

引くのが怖いので押してみろ!作戦だ。押すのも超怖いけどね!

だが大丈夫。プランBがある!

あぁ?内容?ねぇよんなもん。

 

「まだ見つかってないそうですね?」

「……」

「で、もしかしたらどこかの誰かに攫われてるんじゃないか……それで他の人より多く買う私が、怪しく見えた……どうです?私の推理」

 

ほぼ全部ハッタリなんすけどね!畜生この後なんも考えてねぇ!

私の推理(笑)を聞いたアコさんは数秒私のことを見つめた後、笑いだす。こわ……

 

「面白い推理です。ですが、私の所属している学園、部活も分かっていないのにそのような考えは早計ではないでしょうか」

「半分は当たってる、耳が痛い。いや半分どころじゃないな?」

「しかし、面白い話なのは間違いありません。ですから、教えてあげましょう」

 

そう言ってアコさんは名乗った。

 

「ゲヘナ学園、風紀委員行政官、天雨アコ。改めて、お見知りおきを」

「……」

「あら、驚きすぎて声も出せませんか?」

「なんでそんな偉い人がこんなとこ来てるんです?暇なんすか?」

「あなたの歯は服を着ない主義なんですか?」

 

思い出した、天雨アコってゲヘナの風紀委員会のナンバー2じゃん……

噂によれば、かなりの頭脳派とかなんとか……っは!だからか!

相手を惑わせるために、横乳を……!?もしくは脳の処理のための排熱か、どっちかだな。

趣味だったらただの変態じゃん。

 

じゃねえ!クッソ慣れない駆け引きとかするんじゃなかった、下手したら口を割りかねんぞい……!

 

「少し用事があってこの辺に来ていただけです。それで必要なものがあって、スーパーに寄っていただけです」

「へぇー」

 

見てみれば普通に袋持ってんじゃん。気付かなかった……

中の事は聞かない。動物用の首輪が必要な事象とか深淵以外の何ものでもないからね。イッツクレイジー……

だけど無理矢理切り上げて帰ったりしたら逆に怪しまれるよな……追われて先生が見つかりでもしたらまずい。

ワカモさんに殺される。

……待てよ。

 

「……もしかして、先生が好きなんですか?」

「は、はぁ!?急に何をいっ、言ってるんですか!?」

「んや、よくよく考えてみたらシャーレの先生がいないって、結構あなた達にとってきつくないですか?有能って聞いたことありますし……だから、用事って本当に先生を探すことじゃないかなーって」

 

私の言葉に顔を赤くし、狼狽えて言葉が出ないアコさん。全世界の頭脳派に謝れ横乳。

この状態のアコさんにも口撃は止めない。

 

「だって、それぐらいじゃないとこんなとこ来ませんって。こんな特になんもないとこ」

「だ、だとしても私が先生を好きって証拠はないじゃありませんか!」

「探すにしたって下っ端に任せりゃよくないですか?現場指揮ならって思いましたけど、設備が整ってるとこで指揮が一番だと思いますし……どうです?今回は、知ってますよ、あなたのこと」

 

アコさんはついに顔を下に隠してしまった。マジで頭脳派とは……まるで頭悪い作者が考えた頭いいキャラみたいなことしてんな!

……なんか知らんけど今の言葉で私が痛くなったんだけど、心。

顔上げるまでそこそこ時間がかかった。

そして、顔を上げたアコさんは言う。

 

「……違います」

「何が?」

「私が好きなんじゃなくてあの人が私のことを好きなんです!ええあの人はいつもそうです私のこと分かってるふりしながらホントは私にただ会いたいだけなのがバレバレですもう仕方がない人なんですから勝負も最後の一回以外は勝ちを譲りましたがもう負けませんからええ!だというのに何処に行ったんですかあの人はもう逃げられないように繋いでおかなければ……今度は、私が」

 

……絶句。見た目だけじゃなくて中身もイカれてる……

だけどこれで確信した。こいつもあっち側だ。纏う雰囲気があの動画の奴と一緒だ。

絶対に口を割らないようにしなきゃ……

てことで、とりあえず逃げたいんだけど……どうすれば怪しまれずに逃げられる……?

 

と、考えてると、アコさんの後ろから一人の影が見えた。

誰という前にその存在は口を開いた。

 

 

「何してるの、アコ」

 

 

一人で喋ってたアコさんの動きが止まる。

ブリキみたいな動きで振り返るアコさんは、すっごい面白……ビビってる顔をしてる。

 

「ひ、ヒナ委員長……」

 

……あれが、なんて言葉は出ない。

小さい見た目だけど、分かる。あれはワカモさんと同じ、いやそれ以上の殺気を出せるんだもん。一般人つってんだろ馬鹿!

 

「あ、あのですね、怪しい奴がいまして、それでですね……」

「人のせいにするな横乳」

「言い訳は後で聞く。さっさと帰るよ。先生の居場所、分かったかもだから」

「!?」

「本当ですか!?早くいきましょう!それでは失礼しました!」

 

止める暇も無く、二人は行ってしまった。

……マジかよ……どうする……!?

再度、スマホが震える。

急いで見てみれば、また一言。

 

『あれは、味方です』

 

見てるんだったらもっと早く何とかせえや!

 

 

 

 

 

散々な目にあった……

くたくたになりながらも玄関を開ければそこにはふくれっ面の先生が。

 

「おそい」

「え?まだ昼前ですよね……」

 

スマホで時間を確認しつつ、玄関を素早く閉める。

 

「早く帰るって言ってたよね?」

「だから昼前って……何時間以内だったら良かったんです?」

「一分」

「カップラーメンお湯入れない派か?」

 

そんなことを言いながら買った物を、特に食料を仕舞っていく。

 

「……流石に一分は嘘だけど、やっぱり遅かったと思う」

「さようで……今日はもう外でないんで、ずっと一緒にいれますよ」

「ホント?やったっ……!」

「じゃ、一緒に過ごすために仕舞うの手伝ってください」

「うん!」

 

……先生のメンタル回復、先生を狙うものからの防衛。

やることは二つだけっていうのに、こんな絶望的なことある?

 

……やるけどさ。




おかしい……最初は三千文字くらいだったのに増えてってる……
あ、あと投降頻度ですがゴールデンウイーク終わるのでかなり遅くなると思うので、気長にお持ちください。

追記:露出凶のくだり、私のイメージではエイミイメージでしたが、ハナコイメージの方もいたとみたいなので好きな方でイメージしてください。
キヴォトスってクレイジーじゃね?


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第五話

えー、皆様のおかげで、評価真っ赤っか、お気に入りは千越えでございます。
皆様、ありがとうございます。励みになります。
そんな皆様に、一言。

もしかして性癖歪んでる?


今私は、私史上最大に焦っている。

焦りすぎて目の前のパフェの味がしない。キャラメルマーボーサーターアンダギーパフェの味が。

いやこれ普通に味覚殺されてるだけだな?

じゃないんすよ、マジで胃が痛い。汗もびっしょり。

 

まず整理しよう、ここはどこ?カフェだね。室内だね。

何でいるんだっけ?ここに入ろうって言ってくる子がいたからね。

じゃあ、誰?入ろうって言ったの。

 

「いちごのパフェなんて久々。美味しいな……」

「……ソッスカ」

 

変装した先生だよ。

 

 

 

 

 

事の始まりは昨日の夜だった。

布団を敷いてさあ寝ようとしたときに、先生がぽつりと呟いた一言からだった。

 

「モブ子と出かけてみたいな……」

「へ?なんか言いました?」

「う、ううんなんでもない!」

 

ごめん聞こえてた。聞こえてても聞き返す時ってあるじゃん許して。

その時はすぐに布団に入ったんだけど……だから二枚敷いてるって言ってるでしょそっち行きなさいよ!……そのすぐ後に頭上に置いてあったスマホが震えた。

 

「先寝ててください」

「待ってるね」

「寝ててって言ったのに?」

 

とりあえず睡眠の邪魔にならないよう離れてから見てみると、まあやっぱりというかワカモさんからのモモトークだった。

 

『わたくしにいい考えがあります』

『気が早いよまだ行くって言ってないよ』

『は?行きませんの?』

『喜んで行かさせていただきます。でも普通に出たら即バレしそうじゃないっすか?』

『玄関まで来なさい』

 

言われた通りに玄関に行くと、二つの箱が置いてあった。

 

『扉空いた音しなかったんすけど。あと不法侵入』

『は?』

『さすがにそれは横暴ですって!……で、中身は何です?』

『知っていますか?』

『知りません』

『女は、メイクで変わるものですよ』

 

片方の箱を開けてみれば、メイク道具一式とカツラだった。

 

『出来ますか?一応説明書はついていますが』

『多少ならできますし、あるなら出来ると思います。多分。で、もう片方は?』

 

それを送ってから、後ろから何が迫ってきてることに気付いた。

 

「……トイレすか?」

「誰と連絡してるの?友達って子?」

「……まぁ、そうっすね」

「ふーん……私を差し置いて会話するくらいの仲なんだ……へー……」

 

別にそこまでの仲でもないし先生ともそういう関係じゃないでしょ、なんて言ったら死ぬなこれ。

つーかさらに子どもっぽくなってない?

どうしようか……あ、そうだ。

 

「別に、私はただの居候だし、モブ子が誰と仲良くしようと関係ないけ「先生」……ど……?」

「明日デートしません?」

「……ふぇ?」

 

 

 

 

 

というわけで、二人で出かけてる訳なんだけど……うん、普通に胃が痛てぇ!

多分キャラメルマーボーサーターアンダギーパフェが半分原因だわ。なんでこんなの頼んじゃったんだよ……

とはいえ、実際変装しているって言っても、絶対バレない訳じゃないし……

ま、目の前で美味しそうにパフェを食べてる顔見たら、いいかなって思……思う!うん!

 

その美味しそうに食べてる先生はいつもとは大分違う見た目になってる。

服装もファンシーな感じ強め、メイクとカツラで別人感アップと、やれることを全部やってる。……もしかしてカツラよりウィッグって言った方がいい?

一番違うのは、頭の上の輪っか、ヘイローだ。

そう、もう片方の箱に入っていたものは『ヘイロー偽装装置』だった。なんでこんなもんあんの?

本来はすでにあるヘイローの見た目を一時的に変更するものらしいけど、なんやかんやしてそういう風にできるようにしたらしい。すごい。

で、そうして当てのない散歩を開始して、このカフェを見つけた先生と一緒に入ってきた、というわけ。

 

思ったんだけど、先生は凝ったもの食べれないんじゃなかったけ?と思う人もいるだろう。私だ。

だから聞いてみたんだけど先生はこう言ってきた。

 

『……あーん、ってしてくれる?』

 

おかしくなーい?なんで?

しかし拒めばどうなるか分からない。今日はワカモさんは用事があって護衛ができなかったらしく、もし万が一泣かしたり可哀そうな目に遭ったら……

『殺す』って。オブラートって百均でも売ってるんでバンバン使ってください。

としょうがないので食べさせようとしたんですけど……

 

『……ぅ』

『無理に食わなくても……体質的に無理なんでしょ?』

 

やっぱり駄目でした!近づけただけで吐き気に見舞われるみたい。

しょうがないと思いながら私が代わりに食べる。うん甘……分からんマーボーが邪魔してくる。

 

『……もう一回だけ、お願い』

 

するとそれを見てた先生がそう言ってきた。

悩んだけど先生が言うならと思ってもう一度掬って持っていくと

 

『はむっ』

『えっ、なんで?』

『……美味しい』

 

普通に食べた。んんー?

 

『大丈夫ですか?その、吐き気とか』

『……うーん、今はない、けど……次はモブ子が食べてくれる?』

『えっはい』

 

言われた通りに食べて、次は先生が食べる。

食べた。

試しに連続で食べようとすると

 

『……っ』

 

駄目だった。

つまり、なぜか私が食べた後は食べられるらしい。

外に出てから気付いたけど、結構良くないな?どうにか……たって、今のところはメンタルを回復しなきゃいけないかぁ……?メンタルがヤバいから無理なのか……

そんなことを考えながらいちごのパフェを食べたり食べさしたりサーターアンダギーを食べたりしてた。水くれ水。

 

でもせっかくこうやって来たんだから会話でもしてみる。

 

「やっぱこの店おかしくないっすか?なんだよキャラメルマーボーサーターアンダギーパフェって。キャラメルほとんど無かったぞ」

「それを頼んじゃうのもおかしくない?……ごめんね」

「どうしたんです?急に謝って」

「……めんどくさい、でしょ」

 

さっきまでニコニコしてたのに、暗い表情になる。

 

「急に押しかけて、わがまましか言わなくて、今日も、食べさしてもらったり……私は、大人で、先生なのに……」

「めんどくさっ」

「ひぅっ……」

「あっやべ……いやまあ、はい、そっすねぇ……めんどくさいっすよ。全部が全部ってわけじゃないけど」

「……」

「でも、私は好きですよ。そのめんどくさいところ。嫌じゃないです」

「……ほんと……?」

「嘘だったら構ってないですよ。それに、家ではお手伝いしてくれるし、言う事もちゃんと聞くし。全部ひっくるめて好きですよ、先生のこと」

 

そう言うと先生は俯いてしまった。

ところで焦ってるのは収まってない……え?慣れろ?はい……

 

「……ねぇ、スプーン、貸して」

「えっ、あっはい」

「……あーん」

「話の流れ的にどうなの?いやいただきますけど……あむっ」

「……どう?」

「味しないんすけど」

「それはそのパフェ食べてるからじゃないかな!?……ふふっ

 

その時、やっと先生の素の笑いが見れた気がした。

ほんの少しだけ、一秒ほどの笑い。

 

綺麗だと思った。

 

……よしっ、決めた。今までなんとなくで助けてたけど、ちゃんとした理由が思いつけた。

先生の素を取り戻す。多分、そっちの方が綺麗で、らしいから。

 

そうして、食べさしあいながら、笑いあえる会話をした。

 

 

 

 

 

「それで、飲まされたんだ。その子は紅茶って言い張ってたけど、どう考えても……お、おしっこで……」

 

笑いあう会話の筈が、先生の過去のトラウマの話を聞いています。あるぇ?

いや最初は大丈夫だったはずなんだよ、長居するのもあれだからお会計して出て、あんまり人がいないとこを歩いて話すことにした。

そしたらいつの間にかヤバい奴らの性癖聞くことになってた……

ていうか、マジでヤバいな……首輪を付けてきたり、足舐めさせたり、挙句の果てにはおしっこって……うわぁ……

 

「ごめんね……気持ちのいい話じゃないよね……でも、聞いてほしかったんだ……一人で抱えるには、ちょっとだけ、疲れちゃった……」

 

……ワカモさん経由で、動画の事とか知ってるとはいえ、本人からしたらもっときついか。

しかも先生は優しいから誰がやったかは絶対に言わない。

 

「いいですよ、全然。気が楽になるなら、喜んで……喜んで聞くのもおかしいな。変態の一員にはなりたくねぇ」

「ですが、酷い話ですね。文字通り、身を削り、自身の全てを捧げて守った存在から、その様なことをされるとは」

「だよねー、愛するにしてももっと方法が……誰だお前!?」

 

もっと分かるように出てこい!ぬるりと出てくるの流行りなの?

声の主は目の前から。

ここには私達とそいつの三人しかいないようだ。忍者でもいない限り多分そう。

そいつは黒いスーツに身を包んだ、一定のマニアに受けそうな異形の姿をしていた。

 

「……黒服……!?」

「そのまんまな名前だな……えっ、マジで?」

「お久しぶりです、先生」

 

先生は黒服さんを捉えた瞬間、私を庇うように前に出る。

 

「……何の用」

「そう焦らずとも、落ち着いてください。私は、取引をしたいだけです」

「取引?」

 

私は黒服さんの言葉をそのまま返す。

今更ながら私は武器を持たない派だ。理由は持ってても使う前にやられるから。そもそもここら辺でドンパチは少ないのもある。

何が言いたいかと言うと、戦闘できません。

先生は論外で守るべき対象なので、なんとか会話で解決したい。戦闘仕掛けてくるタイプかすら分からんけど。

 

「ええ、取引です」

「モブ子、下がって。ここは、大人の話だから」

「……いつになく真剣だ。まあ落ち着いて。先生戦う力ないんだから前出ない方がいいって」

 

自分のことは棚上げしていくスタイル。でも幾分かマシなので……

 

「……大丈夫、任せて」

 

そう言って取り出したのは、一枚のカード。

 

「……決闘(デュエル)?」

「モブ子さん今すぐそれを取り上げてください。今の先生が使えば、きっと死ぬことすら出来なくなる」

「ですって、先生。それホント?」

「……あいつのことは信用しないで。大丈夫だから、安心して?」

「ハイ没収」

「ぁっ、ああ!?」

 

すぐにパって取る。握る力もあんまりな……全く無いな。

 

「か、返して!」

「嘘分かりやす過ぎるわ。使うにしてももっと情報聞いてからにしましょ」

「……使わないから返して」

「はい」

 

渋々仕舞う先生。聞き忘れたけど、何だあれ?

 

「気を取り直して、もう一度。取引を提案しに来ました」

「内容は?」

 

「先生と、モブ子さん。あなた達をお守りします」

 

「強いの?」

「直接的な攻撃力はありませんが、対処する力はありますよ。モブ子さん」

 

ふーん……なるほどねぇ。でも、気になるのは。

 

「……対価は」

「私のやり方に口を出さないでいただきたい。それだけです。欲を言えば、あなたと語り合いたいのですが……」

 

なるほどなるほど……個人的には全然オッケーだ。

でも、取引相手は先生。私は黙っておこう。

 

「……黙ってればいい、ってこと?」

「はい。語り合ってくれてもいいですよ?」

「そう……分かった」

「決めましたか?」

 

「絶対に拒否させてもらう」

 

「……それは、何故?」

「警護とか言って、彼女達の神秘を狙ってるんでしょ。彼女達を……大切な子ども達を、絶対に傷つけさせない。断らさせてもらう。それでもやるというなら……」

 

先生は再び、カードを取り出す。

大人達は睨みあう。片方全然表情分かんないけど多分睨みあってるでしょ。

沈黙は、長く続く。

 

「牙を折られ、心を抉られ、それでもあなたは……魂から、先生であろうとするのですね。……なるほど、心と魂、似ているようでその実違う……面白い解釈です」

 

かと思ったけど、黒服が五秒ぐらいで終わらせた。

 

「分かりました、内容を変えましょう。お二人をお守りするのは変わりません。ですが、絶対にあなたの愛する子ども達を傷つけないとお約束いたしましょう」

「……虫が良すぎる話」

「もちろん、対価は別にあります。時折、私達と語り合っていただきたい」

「複数人いるのね」

「……なぜ、そこまで……」

「あなたがまだ、先生であったから、それだけです」

「……いつもの黒服なら、もっと上手く舌を回すはず……最初から、このつもりで?本当に、本心なの?ゲマトリアでしょ?」

「ゲマトリアは今は一時解散しています。今の私は違いますよ、先生。それで、どうしますか?この取引、応じていただけますか?」

「……少しでも傷つけたら、容赦はしない」

「分かっています」

 

どうやら、取引は成功みたいだ。

大人の会話だからなんとなくしか聞いてなかったけど……ま、良かった良かった。

 

「お時間を取らせてしまい、申し訳ございません。時間もよいでしょうから、送りましょう」

 

そう言う黒服さんは、怪しいながらも、頼もしく見えた。

 

 

 

 

 

「ところでゲマトリア?ってやつは解散してるらしいですけど、今何やられてるんですか?」

「ククク、こちらです」

「カード……?えーっと、『先生大好きファンクラブ』……?」

「№00です」

「……」

「ステイ、先生ステイ」



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第六話

おかげさまで、評価者百人越え、お気に入りも二千人でございます。ありがとうございます。

あっ、今回微妙かも……

追記:次につなげようとするとおかしくなることに気が付いたので追加しました。面倒をおかけしますが良ければ見ていってください。


「……だから、神秘の――が――なんじゃね?」

「なるほど、では――であり、――ならば」

「だが、それでは――が――ではないか?」

「ですね、――となるわけですが……」

「そういうこった!」

「ふむ、先生は、どう思われますか?」

 

「……なんでモブ子も参加してるの!?」

「えっ今更?」

 

私は今、先生と黒服さんと愉快なお仲間と面白い話をしていた。

メンバーは黒服さんを始め、双頭のタキシード仮面マエストロさん。それどうなってんの?ゴルコンダ&デカルコマニーさん。

そして私と先生の六人で行っていた。

神秘ねぇ、確かにヘイローのこととか深く考えてなかったな。

 

「はー、もっと早く会ってみたかったです。こんなおもろい話できるなんて」

「ええ、私も同じ気持ちです。ここまで話せるとは思いませんでした」

「……止めておいた方がいいよ、そいつら子どものこと道具にしか思ってないから」

「今は思っていませんよ」

「……」

「こんなキレてるとこ初めて見た。それって本当っすか?」

「我々にとっては目的のために最大限の事をおこなっているだけだった」

「……よし」

「よしじゃねーよやめなさい。あんたらも煽るようなことしないでください」

 

こいつら……問題児五人組め。

犯罪なら私でも止めるけど……今はやんないなら、まだいいんじゃない?よくないか……

今にもファンクラブの人達を攻撃しそうな先生を羽交い締めしながら、時計を見ると、もうお昼の時間だった。

 

「ご飯作りますけど、皆さん食べていきます?」

「食べない」

「じゃあ先生抜きね」

「あいつらが!」

「よしよし」

「……」

 

キレ散らかしてる先生の頭を撫でて落ち着かせる。

キレてる雰囲気出してるつもりだろうけどふにゃっとしてるぞ顔。

 

「それで黙るのか……なるほど」

「お前がやったらぶん殴るから」

「前から思ってましたが、マエストロは少しあh……馬鹿ですよね」

「そういうこった!」

「は?」

「ふんっ!」

「がっ、ごっ!?」

「ぐぇっ!?」

 

喧嘩してる三人に拳骨を喰らわせる。

が、ゴルコンダさんは写真なので無し。

 

「な、なぜ私だけ二回……」

「頭二個あるし……あっ確かにそれだと不憫だな。おらっ!」

「げぇっ!」

「相棒の罪は相棒に取ってもらった」

「……申し訳ありません、デカルコマニー」

「……」

 

凄い、頭ないのにすっげー目で見てるのが分かる。

 

「で、どうすんです?」

「私は少し用事がある。惜しいがまた今度にしよう」

「我々も同じです。またいずれ」

「そういうこった!」

「じゃあまたー」

 

そうして、三人は謎の黒い空間から帰ってった。行きも使ってたけど、凄い技術だ。

 

「では、食べるのは私だけですか。モブ子さん、お手伝いしますよ」

「マジすか?じゃあ今日はカツ丼に先生ステイステイ」

「帰れ!」

「先生」

「……うぅ……」

「はぁ、よしよし……守ってもらってるんだから、少しは優しくしなさい」

「だって……モブ子に何かあったら」

「しませんと約束しましたが……そもそもお守りするのはモブ子さんも入っていますよ。私は嘘はつきません」

「……ホシノ」

「それは教えなかっただけですよ、分かっているでしょう?」

「分かってるから文句言いたいんだよ」

「……とりあえず、ご飯作ってくるから待っててください」

 

ホントに嫌なんだな。子ども大好き先生なら、傷つける存在を許さないか。

傷つける存在と、守る存在……守ってくれる存在でもあるか。

現状逆転してるがな!ホントどうなん?

 

そうして黒服さんと二人で台所に向かい、ご飯の準備をしながら、会話をする。

 

「で、どうです?先生の様子」

「……私とあなた達で、取引を交わしたあの時のように、先生として行動する時もあり、先程のように駄々をこねる子どものような時もあり……なんとも、ちぐはぐですね」

「前の状態知らないんだけど、やっぱり違う?……あっ、お米よそっといてください」

「分かりました……ええ、違います。前の方が、先生として活動するあの姿が好みでした」

「異性として?」

「いえファンとしてはの話です」

「恋愛よりタチが悪いな」

「好きなのは完璧で究極の先生ですので。……ともかく、やはり精神面、そこが危ういのでしょう。……想像の域を出ませんが、考えうるのは精神の負荷、それがありそうですね」

「また……そりゃそうですけど」

「失礼、言葉足らずでした。先生があのように子どもになる、それは一定の精神の負荷が先生に掛かるとそうなるのではないでしょうか。今回の場合ですと、我々が押し掛けたからではないかと」

「自覚あるのかよ」

「ですから、無意識的にあなたに甘え、精神の安定を図ったのではないでしょうか」

 

なるほどねぇ……

 

「じゃあ、あんまり負荷をかけないようにした方が……」

「いえ、先生の限界以上の負荷は流石にいけませんが、かけない、と言うのも良くないでしょう。でなければ、先生が、先生で無くなるかもしれません」

「……うーむ、あー……」

 

黒服さんの言う通り、甘やかし続けても、それはそれで子どもになるわけで……

……なるほど。

 

「まさか結構危ないバランス?」

「そういうこった……ですね」

 

 

 

 

 

「はぁ~食った食った」

 

カツ丼を食べ終わり、背筋を伸ばす。

二人も食べ終わったようで、黒服さんは片付けを始めてる。……そういやどう食ってたんだ……?

 

「美味しかったですね……お二人とも、運びますね」

「ありがとーございやーす」

「……く、黒服」

「?どうしました?」

 

「あ、ありがとう……あと、ごめん……」

 

「……いえ、大丈夫ですよ。出来れば、あの三人にも言ってあげてください」

 

黒服さんはそのまま台所へお皿を持ってった。

私は先生に近付き、頭を撫でる。

 

「……偉いな」

「大人で、先生だし……ちゃんと、やることはやった方がいいよね……」

 

丁度を取って、成長を促す……本当に子どもだなぁ。

でも、絶対に今の先生に必要なことだ。……あーやだやだ、私はシリアスタイプじゃねーっての。

……あれ、考えてみたら、こんな風にした奴ら(不特定多数)がいるわけで……

いや、今は先生と遊ぶことを考えよう。行動はワカモさん達の仕事だ。

 

「……ゲームします?」

「うん」

「黒服さんも一緒でいいっすか?」

「……うん」

「じゃ、呼んできますね」

 

ということで三人でゲームすることになったのだが……

 

「なんか来てません?」

「後ろから走ってきてる!やばいやばい」

「先生、後ろです!」

「え?ああああああ!!」

「黒服さんカバー!」

「任せてください!……よしやりました!」

「ありがとう、助かった……」

「回復は?」

「もうない……」

「私も。黒服さんある?」

「ええ、後方で撃ってたので余ってます。使いますね」

「ありがとう……」

「ただその代わり弾が無いですね、補給ポイントはまだですか?」

「たしかもうちょいだったはず。回復もあった気がする」

 

普通に楽しんでる。ちなみにやってるのはゾンビゲー。いっぱい出てくるゾンビをなぎ倒しながら目的の場所やアイテムを集めたりして脱出するゲーム。今は車の部品を集めてる。

最初はギクシャクしてたけど、今では普通に話しかけてる。

 

「……ねぇ、黒服」

 

ゲームを進めながら先生が黒服さんに話しかける。

 

「なんでしょう?」

「ホントに、その、ごめん。いろいろ、してくれてるのに、邪険にして……」

「いえ、先生の反応が正しいです。元々、敵対していましたからね」

「それでも、前からちょっと助けてもらったことあるし……」

 

私は口を挟まないようにする。多分今の状態が素に一番近いのかね。

 

「確かに、子どもを傷つけるのは許せない。けど、それとは別だから……その……あの……」

「ゆっくりでいいですよ」

「……一つくらい、何でも言うこと聞くよ」

 

駄目です口を挟みます。

 

「何言ってんのあんた!?優しすぎるぞ!?優しさと弱さは紙一重って一文字君言ってたじゃん!」

「では一つだけ」

「しかも言うんだ……」

「早く、しかしゆっくりでも良いので、本調子を取り戻し、先生としての活動を再開してください」

「……え?」

「私達は、先生大好きファンクラブです。あなたが、先生としているその瞬間が、我々にとって最も素晴らしいのです」

 

黒服さんの言葉に目を丸くする先生。ごめんいい話なんだろうけど先生大好きファンクラブの語感に気を取られるわ。

 

「とはいえ、今戻ったとしても、ではありますが……」

「あー……」

「だからこそ、我々がいるわけです。来たるべき日まで、どうか休息を」

「……ありがとう」

「お礼を言われることではありませんよ。その間まで我々と語り合ってさえもらえれば……」

「それがメインだろ」

 

 

 

 

 

ゲームをクリアした後、黒服さんは用事があると言って帰っていった。

黒服さん達、やっぱ先生のこと、大好きなんだって実感した。公言してたわ……

 

で、現在何してるかと言うと。

 

「なでて」

「……へいへい」

 

座ってる私に向かい合わせで抱き着く先生を撫でています。

話しの!繋がり!おかしいやろがい!

今日わりと撫でてたからなぁ、癖になったか?

 

「で、どうしたんです?疲れました?」

「うん……なんというか……自己嫌悪……」

 

自己嫌悪て。どう考えても被害者側でしょあんた。

 

「何に、嫌悪感が?」

「……先生なのに、逃げたこと」

「逃げた、ねぇ……」

「……うん」

 

先生は何かを覚悟したような空気を出す。

 

「話すよ。私が、逃げた、その日のこと」

 

 

 

私がいつものように、シャーレで仕事をしていた日のこと。

いつ犯されるか分からない、誰が味方か分からない状態で過ごしていたから、神経もすり減らしてて、後ろから迫る人に気付かなかったんだ。

 

「……ぁ……!?」

 

急に目の前が真っ暗になってね……目隠しをされたんだと思う。

その状態で、私は抱えられ、運ばれた。後で目隠しが取れた時に、隣の仮眠室って分かったんだけど、その時はまたヤられるのかって、怖くなって、パニックになったんだ。すぐ、力で押さえつけられたんだけど。

その後は、普通に、犯された。

何度も何度も、私に刻み付けるように。

私は、恐怖と、快楽と、みたいな感じで、いろんなものが私の中で渦巻いてて……

 

終わったのは、二時間後ぐらい。

 

その時には目隠しは外れてたんだけど、結局誰にヤられたかは分からなくて……なんでかな、その時ポキって何かが折れる音がしたんだ。

脱がされた服を着て、逃げるのに役立ちそうなもの持って、それで、走って逃げた。

シャーレには盗聴器とかたくさんあるから、バレる心配もあったけど、そこはアロナ達に協力してもらって……

 

それで、誰もいない方へ走っていって、それで……

 

 

 

「私の家の前で倒れていた……というわけですか」

「うん……」

 

うわぁ……絶句が止まらんぞ……

でも、急に、なぜそれを……

先生は立って、服を脱ぎ始める。

 

そこには、傷だらけの上半身があった。

 

多分、その行為でつけられた……だから頑なに裸を見せなかった……

噛み跡や押さえつけられたような傷……

 

「そういう、SMみたいなことはされなかったけどね。逃げようとする私を抑える時についた傷。ほとんどそう」

「……」

「それで、聞いてほしいことがあるんだけど……今の私、二つあるんだ」

「……どんな感じですか」

 

「先生に戻りたいっていう私と……このまま、あなたとずっといたいって私」

 

「先生……」

「ねぇ、決めてくれる?先生に戻るか、戻らないか」

 

そう言って先生は微笑んだ。

……どぅえぇぇぇ……!?

先生に戻るか、戻らないか。

それを決めてくれと、私に言う。

えぇ……ど、えぇ……なんで笑ってるの……?モブリネ・モンブラン……

えー……?何で私ぃ……?あー……えー?

……とりあえず。

 

「風邪引きますよ」

「ぁ……」

 

先生が脱いで落とした服を取って着させる。ハイばんざいして~。

心が二つある、ねぇ……多分めっちゃ悩んでるだろうなぁ。

責任感強いんでしょ、元の先生。だからさ、ずーっと抱え込んできた。良くも悪くも個性的な子多いからねキヴォトス。

キャパオーバーに近いんじゃねーかな。それでも、私に選ばせるのは、まだ戦う覚悟があるってこと。

自分で選んだら逃げちゃうからかな。私なら公平に選ぶと思ってる。

……でも。

 

服を着せた後にすぐに抱きしめる。

 

「ぇ……?」

「ほら、よしよし……」

 

頭も撫でる。よーしよしよしよしよしゃよしゃ。

それも、一種の逃げだぜ?

 

「先生なら、なんて言う?悩んでて、決めてくれって言ってくる子に対して」

「……わたし、は……」

「なんて、教えてきた?」

「……考えを、尊重する、って……」

「じゃあ、教えるくらいなら自分でやらないとね。……はいおしまい」

 

先生から離れる。惜しそうな顔してる先生は見えません。

 

「黒服さんは戻ってほしそうだったけどさ、自分で決めていいんだよ」

「モブ子……」

「それまで、何してもいいよ。甘えても、何でも。気分によって対応するから」

 

……あー……慣れねぇ。ギャグキャラだっつてんだろ。

 

「……うん、分かった。選ぶよ、自分で。自分で、悩むよ。……だから、その時は……」

「へいへい、受け入れますよ。……はい、この話終わり!遊ぼう遊ぼう!」

「……うん!」

 

そう言う先生の顔は、少し晴れやかだった。

少しずつ、成長していってるんだな先生も。ソシャゲの転生システムかな?

……そういやなんかゲームで同じようなヒロインいたよね野球のゲームのポケット版のやつで。風来坊の。それやるか、今から。



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第七話

前回(プロフィールを退けて)の話の最後に文を追加しました。じゃないと繋がりあれだなっと思って……
良ければ申し訳ありませんがそちらの方を先に読んでいただけると嬉しいです。

今回は、イチャイチャが選ばれました。のでイチャイチャ回だぞぉ!
ま、曇らせしないとは言ってないんですけどね(暗黒微笑)


「ん……ふぁあ……」

 

よく寝たぁ……

スマホの時計を見てみれば午前七時。まあまあ早いんじゃなかろうか。

布団から出ようとすると、何かに服の裾を掴まれる。

 

「……んぅ……」

 

先生の手だった。いつまで同じ布団なんだ……いいって言ったからいいけどぉ……

朝ご飯を作らなきゃいけないので無理矢理剥が、剥が……もういいや脱ぐ。

上半身下着のみという姿で台所まで行き、卵焼きとインスタントの味噌汁を作る。

あっ、これ有名なとこのちょっとお高いやつじゃん。えーっと、マエストロさんからか、後でお礼用意しとこ。

お味噌汁のグレードが上がったことに喜びながら作っていく。ご飯はすでに炊いてあるから大丈夫。

炊いたご飯を食べれるようになったとは……感慨深いな……炊飯器買ったの最近の話だけど。

 

二人分のご飯を机に置く。

その頃には先生は起きてくる。

 

「……ぉはよ」

「おはようござーす。ご飯できますから食べましょ。あと服返せ。風邪引くぞ」

「はーい」

 

なんで私の服着てんだ。着てもいいから脱いだわけじゃねーよ。

返してもらった服を着て、いただきますと言って食べ始める。

 

「このお味噌汁美味しいね」

「ちょっとお高いやつです。マエストロさんからいただきました」

「ふーん捨てていい?」

「それしたらご飯抜くからな教育者」

「今は違うもん。捨てないけど」

 

そんな感じで喋りながらご飯を食べていく。うまうま。

数分もしたら食べ終わり、二人で食器を片付けていく。

その間に今日の予定を考える。……先生にも聞いておくか。

 

「今日は休日なんでちょっと買い物してきますけど、来ます?」

「うん、やることもないしね」

「ゲームあるじゃないっすか」

「モブ子と一緒じゃなきゃ嫌かな」

「そっすか」

 

片付けを終わらせ、着替える準備をする。

先生も行くならと先生の分も準備を開始しておく。ヘイロー偽装装置にーウィッグにー。

 

「もう行くの?もう少し休憩してからで……」

「準備だけですよ。行くのは午後です」

 

その時、黒い空間が出てくる。

 

「二人とも、起きていましたか。どうです、体調は?」

「好調ー」

「キレそう」

「それは上々」

 

大きな紙袋を持って現れたのは黒服さん。

 

「どしたんです、それ?」

「先生のウィッグや服です。多い方が楽しめるでしょう?」

 

そう言って中を見せてくれるけど、多種多様なものが結構な量入ってる。

 

「結構かかったんじゃないんすかこれ」

「いえ、これくらいなら大した金額ではないですよ」

「……下着も入ってるのはどういうこと?」

「着けていない状態を続けるのはいけませんからね、用意しておきましたよ。もちろん、サイズは合って」

「ふんっ!」

「危なっ!?」

「馬鹿だろお前」

 

どうして嬉々として言うんだよ……

先生が投げたはさみはギリギリ回避され、壁に刺さる。

 

「どっちでもいいんで修復してくださいねー」

「……じゃーんけん」

「「ぽん!」」

「ホントは仲良しだろあんたら」

「勝ちました」

「負けた……」

 

ぶつくさ言いながらも壁の修復に取り掛かる先生とじゃんけんに勝ちつつもそれを手伝う黒服さんを見ながら、私はその間に準備を進める。

スマホが鳴った準備させろや!

渋々見てみるとワカモさんからだった。

 

『今日はこの辺にはほとんどいません。好きに行動しなさい』

『うーっす。まだ決心はつきません?』

『何のことです』

『分かってるくせに……』

 

それ以上は返ってこなかった。会いたいなら会えばいいのに……

 

 

 

 

 

時は進んで午後、現在スーパー。

ただし、いつも使っているスーパーじゃなくて、今日はちょっと大きいスーパーに来ていた。

適当に食材とー、あ、マエストロさんのお礼買っとこ。クッキー缶でいっか。そんな風にかごに入れてく。

先生は大人しく私の服の裾を掴みながら後ろに付いてくる。

やっぱ外はちょっと怖いか。

あっ、お菓子売り場。

 

「先生、好きなだけ持ってきてくれます?ここで待ってるんで」

「分かった、絶対に動かないでね?」

「待ちますって」

「一コンマも動かないでね?」

「サイボーグにでもなれってか?」

 

小走りでお菓子を取ってくる先生。急がんでも行かねーよ。

先生はチョコやらポテチやら両手から零れそうなほど持ってくる。意外とお菓子好きだよね先生って。

しかし……背が低めなのもあるかもだけど子どもっぽい……よくて中学生だな。私もちょっと大きいくらいだけど。

 

「はいっ、持ってきたよ」

「じゃあかごに入れてー」

 

一気にお菓子の山になったかごを持ってレジを通る。そして、先生と一緒に袋に買った物を詰める。

詰め終わり、小さい方の袋を持った先生が私に尋ねる。

 

「じゃあ、後はどうする?」

「んー、興味あるか分からんですけど……ちょっとあっち行ってみますか」

「あっち?」

 

先生を連れて来たのはおもちゃ売り場。プラモや変身アイテムなど、いろいろある。

あーでも、先生いい大人だし、そこまで興味ないkめっちゃ目キラキラさせてる……

 

「こ、これって、六十分の一スケールのフルクロス……!?こっちはアーリヤ!」

「え嘘、マジである……買お。先生も作ります?」

「えっ?いいの……?」

「いいっすよ。あーでも作ったの結構前だからなぁ……それ用の道具も買っとくか。あ、他に良さそうなのあったら言ってくださいねー」

 

ニッパーとかも取っとく。

 

「へ、変身ベルトも……いいかな……?」

「どんどん持ってきていいすよー。当分来ませんからねー」

「お金とか……」

「あとでファンクラブにせびります」

「じゃあいっか!」

 

 

帰る頃には結構な大荷物になっていた。おめーなこれ、車の免許取ろうかな……

 

「そういや、こういうの好きなんすね、昔からっすか?」

「うん。……シャーレで働いていた時はなかなかできなかったけど……」

「忙しいみたいですしねぇ」

「ううん、生徒に財布握られてたから……」

「人権」

「一気に使っちゃって一か月コッペパン生活になったところバレちゃったからね……」

「それはそれでどうなの?」

 

いや自分の金だから好きに使えばいいけども……

生徒さんら先生を自分達の所有物だと思ってないかい?

 

「お母さんみたいだったな、あの子……あの時までは……」

「今日の晩御飯はラーメンにするつもりなんすけど何味がいいですか?」

 

パンジャンか何か?

話変えよ話。

 

まあその次に銃声が話を変えてくれたんですけどね。嬉しくねぇ。

 

「どこからだー?これ被って」

「ひゃっ」

 

ジャケットを着てたからそれを先生の頭に被せる。

音的に……帰宅の方じゃんどうしよ。遠回りにするにも結構な距離になるからなぁ……あ。

スマホを出してモモトークを開く。

 

『今暇っすか?』

『何です?一応その辺にはいますが……』

『帰る方向に銃撃戦が始まったみたいで……ヴァルキューレ呼ぶわけにもいかないんで』

『分かりました、急ぎますので隠れててください』

 

よし、じゃあ待っとくか……近づいて来てるなこれ。

 

「先生こっちです」

 

先生の手を引いて隠れる場所を探す。

あー……あそこにするか。

 

「入って、早く」

「う、うん」

 

路地の方へ先に歩かせ、後ろからついてく。

奥まで行くと別の面倒がやってきそうだからちょっとだけにしておく。

……先生、気分悪そうだな。

 

「大丈夫です?」

「あんまり、こういう人が寄り付かないとこ得意じゃなくて」

 

後でウナギゼリーとマーマイトの刑受けるから許して。

って、もっと近くに来てんじゃん!まだか……?

 

「ひっ……」

「大丈夫」

 

銃声と怒声に怯える先生を抱きしめて落ち着かせる。どうしたもんかなぁ……!?

 

「……あ?」

「あ」

 

見つかった。

先生を隠すように立って、あからさま不良な見た目に話しかける。

 

「こんちは、どうしたんです?抗争っすか?」

「あ?ああ、あいつら、ぴょこぴょこかえる団があたし達のプリンを奪いやがったんだ!あたし達ぴょんぴょんウサギ団のプリンを!」

 

ふぁ、ファンシー!見た目と銃声さえ気にしなければ童話かな?欠点が二つしかないのにデカすぎるだろ。

 

「全部賞味期限切れのやつで、それを格安で売って儲けようとしたのを、横から搔っ攫っていきやがった!」

 

欠点が三つになったな……パズルのピースは集まるのが普通だぞ。

 

「へ、へー。後は頑張ってくださいね……」

「おう!取り返したら買ってくれよな!」

「う、うす」

「じゃあnぐへぇ!?

「あ、あー……」

 

何処からか来た銃弾が頭にクリーンヒットして気絶してしまった。

穏便に行くはずだったのに……ナムサン、ぴょこぴょこウサギ団……なんか違うような。

スマホが震える。

 

『退路はできましたので、急いでください。通報があったのか、ヴァルキューレが集まっていますので』

 

げっ、めんどいな……

 

「先生、もう大丈夫ですよ。ただちょっと走りますから」

「わ、分かった」

 

荷物を全部持って先生を前にして走る。後ろは気にしない、どうせ全部やってくれるでしょ。

だから大爆発も知りません気付いていません。

 

 

 

 

 

なんとか無事に家にたどり着いた。

家に入って、着替えながら先生に無事か聞く。

 

「先生、怪我とかしてません?」

「うん、大丈夫……」

 

良かった、先生はヘイローはあるように見えて、あるだけだから一発でアウトだからなぁ。怪我して無事だったとしても病院はいけないし……

シャツを着た私の肩に衝撃が。

 

「先生?」

「あ、あのね……ありがとう。かっこよかった」

「かっこよかったって、特になんも……どういたしまして」

 

分からんが、お礼なら貰っておこう。

しかし……武器無しって、結構あれかもなー。もしなんかあった時あれだし……ファンクラブに相談しよ。

そんなことを考えながら買った物を冷蔵庫やなんやらに片付けていく。時間は三時半過ぎ、ご飯には早いな……

 

「良かったらゲームしません?せっかくプラモ買いましたし、あれやりましょあれ、4」

「うん、やろう」

 

そうして二人でゲームを始める。ロケットパイルタンク使いの私に勝てるかな?アッ当たらねぇ!

たまにファンクラブの暇人達がやってきてヤジを飛ばしたり交代でバトルしたりする。

 

 

午後五時半、そろそろご飯の準備を始める。

ファンクラブの人達は今日は皆用があるらしいので帰った。クッキーは渡せたんでよし。

 

「何味にします?」

「んー、せっかくなら別々にしてシェアしない?」

「いいっすね、じゃあ醤油にしよー」

「じゃあ塩にしよっと」

 

お湯を沸かし、インスタント麺を茹で、ゆで卵や野菜、ハムを切って用意しておく。

茹でた麺をお皿に移して、粉末スープや切ったやつを乗っける。

 

「自分の持っていってくださーい」

「はーい」

 

二人で持っていき、いただきますと言って食べ始める。

 

「ズルズル……美味しいなこれ」

「こっちも美味しいよ。待ってて……ふぅ、ふぅ……あーん」

「あーん、んむんむ……んまいっすけど、取り皿持ってくれば……まあいいか。私のもいる?」

「……」

「言葉で教えなさいよ」

 

口を開けて待機してる先生。雛鳥かよ、口移しはせんぞ。食べさせるけどさぁ。

あーんする。

 

「……美味しい、モブ子が食べさせてくれてるからかな?」

「そんなこと言われてもハムしかあげませんよ」

「わーい」

 

 

そんなこんなで食べ終わり、お風呂の用意をする。

 

「今日はどうします?先、後?」

「……一緒に、とか?」

「え、狭いのに?別いいっすけど」

「いいの!?」

「良くないと思ってたのか……」

 

別に女同士だし、気にすることでもないでしょ。この人女から襲われてるんだった……言うのやめよ。

 

「でも二人洗うスペースはないんで先に入ってきてください。先生が湯船浸かるくらいに行くんで」

「分かった、待って、るね?」

「なぜしどろもどろ」

 

いやあのカチコチ感ロボットだな。

数分は掛かるはずなんで、その間にいろいろやっておく。布団敷いたり、今日の日記を書いたり。

日記は最近始めて、先生の様子や、好きなことを書き記している。

 

「……最近どうです?先生と話せて……ないっすか。そうっすか……多分、怖がらせないようにしてたんじゃないすか?……あー、それはねぇ……いつも持ち運んでいたんですか?守れるのに?……あちゃ~、なるほどなぁ……」

 

ついでに、近くに置いてあるタブレットに話しかける。

そこには青と紫の文字が浮かんでいる。

先生が持ってた、超スゴタブレット。二つ意思があるみたいで、日記を始めた日ぐらいに初めて話しかけてきた。

この二人も、悲しんでいるご様子。できるだけ話せるように協力するつもり。

 

っと、シャワーの音が終わった。二人に別れを告げてお風呂に入りに行く。

パパっと脱いで扉を開ける。

 

「うーっす」

「ど、どうぞ!?」

 

どうぞて。お風呂の主か。

入って、頭や体をさささっと洗い、湯船に浸かる。

 

「はっ、早くない?」

「ちゃんと洗いましたけど?」

「そ、そう言う事じゃなくて……ま、まあいいけど」

「?変な……入りまーす……やっぱ狭くね?」

「……温かいよ」

 

一気にお湯が抜けていくが、先生がいいならいいんでしょう。いや狭いか聞いてんだけど。

……まあ、確かに、温かい気はする。

 

「……ありがとう、今日は。買い物とか、守ってくれたり」

「いいんですよ。先生いてくれるだけで助かるし」

「そんな……何にもしてないよ。何にも……」

 

先生は俯く。先生って意外と卑屈になりやすいというか……

しょうがない。

 

「……私、今まで一人で暮らしてきて、友達もいなくて、それでも別段悲しくもなかったんですけど……先生がこの家に来てから、一人の時と比べて楽しいっていうか、その……感謝してますよ。……結構恥ずかしいなこれ!?」

 

今度は私が俯く。どころか顔を湯船につける。あー、あっつい。

 

「……ふふっ、ありがとう」

「……こちらこそ」

 

意外と、楽しい生活が続いている。

これが、続くといいなと、窓の外から見える月を見ながら思った。



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第八話

選ばれたのは、ヒナちゃんでした。


はぁ……終わらない……

目の前の書類の山は、一向に減る気配がない。クソ。

今日三本目の栄養ドリンクを一気飲みする。ここまで来たら疲労なんて感じない。

嘘だ今すぐにでも帰りたい寝たい甘えたい。

甘えたい……先生に……

……でも、無理だ。

 

「い、委員長、大丈夫ですか?」

「大丈夫だからアコも手を動かして」

「はっはい!」

「少々お休みに……」

「チナツも働いて……イオリも」

「は、はい!凄いピリピリしてる……

 

誰のせいだと思ってるのこの性犯罪者ども。

でも言わない。今敵を増やすことに意味なんてない。でも滅茶苦茶言いたい。

 

溜息を吐きながら、想い人のことを、考える。

 

 

先生が消えた。

 

その情報は瞬く間に広がった。情報規制する暇も無かったから、仕方なく、逆に公開し、見つけてもらうことにした。

消えた理由は分からない。ネットではいろいろな憶測が流れてくる。攫われたとか、帰ったとか、酷いものには殺された、なんてものもある。

正確な理由を知っている者は少ないだろう。

 

そして、私がその数少ない知っている者の一人。

 

 

ポケットに入れていたスマホが震える。

規則的ではなく、ランダムな震え方。このバイブの設定にしてるのは一人しかいない。

 

「……ちょっと飲み物買ってくる」

「それなら私が」

「アコは私が帰ってくる前にその束を終わらせて」

「え”これ軽く私の顔ぐらいあるんですけどいいんちょ」

 

アコが言い切る前にさっさと部屋を出て、目的の場所に行く。

 

 

 

 

薄暗い場所に痛々しいほど光る自販機の光。

人通りも少なく、()()()監視カメラが壊れてるから、直さないといけないわねー。

そこに置いてあるベンチに、風紀委員の制服を着た、狐面がいた。

 

「お元気ですか?随分とやつれているように見えますが」

「元気に見えるなら病院に行ったら?頭の」

「なら、正常であることが証明されましたね」

「……ねぇ」

「なんですか?」

「虚しくない?」

「そうですね、やめましょう……」

 

二人そろってため息を吐く。

狐面の正体はワカモ、七囚人の一人。現時点での協力者だ。

 

 

出会いは先生がいなくなってすぐだった。

私が一人で探し回っていた時に、目の前に現れた。

 

『……狐坂、ワカモ』

『銃を下ろしてくださいまし。あなたにお話がありますのに、そんなことをされてしまっては、出来ませんわ』

『話すことなんか……『先生の居場所』……!?』

『わたくしは知っております。ですが、その前に……これを』

 

そう言って、三つの盗撮動画を見せられた。

首輪を付けられて、外を歩かされる先生。

足を舐めさせられる先生。

旅館で……されている先生。

 

それは、全て違う人物で、全て知っている者達だった。

違うと叫びたかった。

でも、情報部だった時の経験が言っている。

フェイク映像ではないと。

 

 

そこからいろいろあり、今は先生のために、ワカモと渋々協力している。

 

「……どう?先生は」

「楽しそうですよ。ただ、まだまだ精神の安定は大変そうです」

「へー……何で私じゃないんだろう……」

「寝てるところをキスしたからじゃないですか?起きてましたよ」

「ワカモ」

「なんですか?」

「今あなたは私を殴る権利を得たわ」

「殴る方なんですか?嫌です意味無いので……真面目に考えてみれば、あなたの元だと一週間持てばいい方でしょう」

 

そうよね……力があるっていうのも考えもの……

先生の話はそこそこに、ワカモが調べていた情報を聞く。

 

「で、仲間になりそうな人、いた?」

「トリニティの方ですと、確定的なのは正義実現委員会の委員長でしょうか。先生と会っている時は初心な少女のようでしたし、そんなことも考えられないでしょうし」

「そう……えっ、正実の委員長?」

「はい」

「あの……個性的な叫び声を上げる?」

「かなりオブラートに包みましたね……ええそうです」

 

えっ……今かなりの衝撃が来た……

人って見た目だけで判断しちゃいけないわね……

 

「ほ、他には?」

「ミレニアムはセキュリティが強すぎて探れませんでした。百鬼夜行は微妙でしたね……忍者、ぐらいでしょうか。確かな確認は出来ませんでしたが」

「ふーん……ヴァルキューレは?」

「無理です」

「即答……レッドウィンターは」

「クーデターです」

「なんで……」

「というかもう無いですよ。まあ、一応、一人心当たりが……」

「誰?」

「同じ七囚人の慈愛の怪盗です。連絡取ったことが無いので詳しくは知りませんが……」

 

なるほど、ね……

 

「クソ」

「もう少しきれいな言葉使えません?気持ちは物凄く分かりますが」

「味方の少なさにもう笑いが込み上げてくるわ……」

「……何か、飲みます?」

 

あのワカモに気を遣われるなんて世も末ね、あっはっは!

 

「……はぁ、先生に甘えたい……」

「……分かりますよ……」

「「はぁ……」」

 

……先生がいなくなって、その分仕事も増えて……それぐらい働いてくれていたことが分かる……

それなのに、襲われて……本当に……気付けなかった私も悪いけど……

 

「……そうなる前に、助けられなかったの?」

「その時には運悪く、ヴァルキューレに死ぬほど追いかけられてたんです。わたくしが気付く頃には、もう……」

「そう……聞いて悪かったわね……」

「いいんですよ……」

 

……なんか、仲良くなってきてる気がする……

 

……そういえば……聞いてみようかな……

 

「先生の、あの子は……どう?」

「ああ、モブ子さん……戦闘能力はありませんが、人とのやり取りが上手なので、今の先生には良いと思います」

「アコを言い負かしてたし、強いわよね……会えないかしら」

「あー……言っておきましょうか?会ってみたいと言っていたって」

「え……ビックリしない?」

「わたくしが初めて会った時は一度ビックリして終わりでしたよ。あの人一度ビックリしたら何故か耐性つくので……わたくしと一緒なら大丈夫でしょうし」

 

ええ……変な子……

 

 

そろそろ、疑問に思われる時間かしら……

 

「じゃあ、そろそろ……」

「えぇ……また、何か分かったら連絡します」

「いつもありがとう……できること少ないけど、必要なことがあったら、何か言って」

「分かりました、それでは……」

 

ワカモはそのまま暗闇の中に消えていった。

……私も戻ろう……栄養ドリンク買お……

 

 

 

 

 

「ごめん、遅くなった」

「いえ、大丈夫ですよ。お疲れでしたでしょうし……イオリとチナツは今日の捜索に参加しました」

「そう……書類は終わった?」

「あっ、あと半分です……」

 

見当違いのとこを捜索してるし、まだ悩むほどじゃないわね……アコは何してるの早く終わらして。

書類仕事しながら、あれの事を思い出す。

……アコ。

先生に首輪を付けて、外を徘徊……おもちゃを付けて。そのまま、公園のトイレで……

……イオリ。

足を舐めさせ、罵倒し、そのまま……

……チナツ。

温泉にそのまま、布団でそのまま、帰りのバスでそのまま……

 

ふふふ、こんなことが世にバレたら風紀委員会のプライドが傷つくわね……

何がプライドよ、風紀委員が風紀守ってない時点で無いわよそんなの。

 

あ”ー……終わる気がしない。暴れまわる奴も増えてきたし……最近狙って撃つの嫌になったから、近づいて銃で殴るばっか……

 

……ある意味、罰なのかもしれないわね……甘えすぎた、その罰。先生だってスーパーヒーローじゃない。悩んで、苦しむ人間。

なのに甘えすぎて、あまつさえ傷つけた……

…………

 

「ふんっ!」

「うわぁ!?」

 

自分の頬を思いっきり叩く。

私は風紀委員長、風紀を守る立場。風紀を乱すものがいるなら、それを正さなければいけない。

だから私は、戦う。

そして、先生が戻ってこられるように、する。それが、私の役目。

 

「ど、どうしたんですか?」

「気合を入れただけ。じゃあ続きをやろう」

「えっあっはい」

 

そう気合を入れて、私は書類仕事を進めた。

 

 

 

 

 

はずだった……

私は見るも無残な景色からどう現実逃避するか考えていた。

 

が、上から隕石が降ってきたため、中断せざるをえなくなった。

 

隕石、って何……?そう簡単に降ってくるものなの……?

あのピンク髪のトリニティが降らしてるみたいだけど……はぁ……

 

 

イオリからの緊急連絡で呼ばれた私は、それを見た。

聖園ミカ。

元ティーパーティーで、噂によればかなり強いとか。

 

だからって隕石は違うと思うの。何で?

 

「い、委員長、あ、あれ……!」

「イオリ、全員下がらして。対処してみる」

 

めんどくさい……めんどくさいってレベルじゃないよ。

とりあえず、話しかけてみる。

 

「これはトリニティの侵略行為として見られるわよ。今なら大して問題にならない。早く帰って」

 

対して問題にならないわけないでしょ。でも早く帰ってほしいからそう言う。

それに対して聖園ミカは。

 

「帰ってほしいなら先生を返して?」

「何言ってるの?」

「あなた達が隠してるんでしょ、先生のこと。あなた達が隠してさ、酷いことしてるんでしょ?許せない絶対に取り返すから待ってて先生早く助けるから。―規制―とか―規制―なんてされる前に必ずそれまでゲヘナの全てを破壊してやるでも先生はそんなこと望まないよね許して嫌わないでもう絶対にあんな事しないからでも先生が弱いのが悪いんだよ軽く抑えただけで動けなくなるなんてもうダメなんだから私が守ってあげなきゃでもその前に勝手に消えちゃったんだからお仕置きしなきゃ」

「」

 

私はスマホを取り出して連絡を取る。

 

「もしもし」

『その声……ゲヘナの委員長がティーパーティーに何の用ですか?』

「引き取りに来てくれない?」

『は?誰の……』

「テレビに映ってると思うけれど」

『何言って……ブフーッ!?』

「出来れば早く来て、あっ暴れ出した、私止めなきゃいけないからよろしく」

 

私は電話を切り、銃を構えて聖園ミカに突撃する。

この戦闘は数時間にわたり、トリニティが来てからも長い時間を要した……

 

 

先生、戻ってこない方がいいかもしれない……私が良くない……




スペシャルゲストとして、聖園ミカさんにも来てもらいました!
感想だと結構声が大きかったので……
ホルスさんは、アビドスとしてメイン回やるつもりだから許して……

ここからは雑談なんですけど、原作者様の新作見ました?
ケイちゃんですよケイちゃん。

プロット壊れる~!作ってないですけど。

おかしい……無いはずだったんだ……アリスちゃんにそういう感情は(決めつけ)
よくよく考えたら例外ありですが高校生ばっかなんであるに決まってますか……
でもアリスちゃんと罪滅ぼしのために現れたリオ会長と共闘してミレニアムと戦う展開が消えました。あーあ。
え?別にそういう風にすればいいじゃないかって?
できるだけ齟齬が無いようにしたいんです……だとしたら黙っておくのも駄目だよな。

原作者様!見ておられるのでしたら、pi〇ivの新作のコメント欄に現れますので、どうか謝罪を受け取ってもらえると嬉しいです!


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第九話

原作者様の新作が出る→先生が傷つく→私が仲間になりそうな子が減っていくのを見て頭を抱える

つまり、この作品は実質ワイ曇らせ作品なんや!


「すいませーん回復おなしゃーす」

「分かった。……あ、黒服、先生のカバーを」

「はい、こっちに来てください」

「……」

「露骨に嫌そうな顔を……勝手に引き寄せますが」

 

私は今、先生、黒服さん、マエストロさんと一緒にゲームをしていた。タンクだけど暗黒柔らかくね?かっこいいから問題ないけど。

ついでに悩んでいた。

それは、ワカモさんのことだ。

だってぇ……このままじゃあの人会わんでしょ……別に襲ってないなら胸張って来たらいいじゃん。

なーにが七囚人じゃ。好き勝手暴れてた頃のお前はもっと輝いていたぞ!

 

「うーん、どうしたもんかなぁ……」

「何が?レアドロ全然出ないこの状況が?」

「本当に、申し訳ございません。んやそうじゃないんすけど……やべっ」

「蘇生」

「はやっ、あざます……ワカモさんのことなんすけど」

「ぶふぉ!?」

 

誰かが噴き出す音が聞こえた。

びっくりしてその音の方を見てみれば、先生だった。

 

「ど、どうしたんです!?大丈夫ですか!?」

「げほっ、げほっ……い、今なんて……」

「え?ワカモさんのこ……と……」

 

……やっちゃったZE!

 

 

もう、一から百までの勢いで説明をした。

出会いから、会話まで。もう正座よ正座。おいそこのファンクラブ、何呑気にお菓子食って見てんだ。関係ない?それは……そうなんですが……

先生からしたら、裏切り行為に見えるんじゃなかろうか。そう思えば、ワカモさんの気持ちも分かる。めんご……

 

「……だから、そのーですね、ワカモさんは悪くないと言いますか……」

「うん、分かってるよ」

「ですから……へ?」

「ワカモが、私を襲ってなかったのも、知ってる。だから、会うべきだったよね……分かってたはずなのに」

 

おろ?おろろ?

 

「ホントですか!?」

「うん、出来ることならまた、会いたい」

「ですってワカモさん!良かったですね!」

 

ポケットから取り出したスマホに向かって、そう叫ぶ。

 

『ぶん殴ります』

「あっ決定なんすね」

『感謝だけはしておきます』

「素直じゃないなー」

『蹴ります』

「私でコンボ確認するつもりか?」

「もうそんな仲良しなんだ……ワカモにも、そういう子ができて嬉しいな」

「暴力振られそうになってんだけど?……そういや、何で会わなかったんですか?」

「別の、襲ってこない子がいたんだけど、その子を頼ってたら、後々その子にも」

「ワカモさんといつ会います?今の内に決めときましょか」

 

もはや地雷で殴ってきてね?それを引き出したのは私なんだけどさ……

 

 

 

 

 

そして次の休みの日。

お昼からとある場所で会うことになってるんで、予定の時間の五分前に私達は来ていた。

 

「はふっ、はふっ……美味いっすね」

「……いやなんで焼肉屋!?」

「個室がここしかないからですって。お金はファンクラブが出してくれるんですしいいじゃないですか」

「……まあ、そうかな……」

 

ご飯もう一杯頼も。

そう思ってタブレットを取ろうとすると、個室の扉が開いた。

 

「まだ頼んでないのに!?」

「誰が店員ですか」

 

入ってきたのは、ワカモさんだった。

今日のファッションは……ジャージにスカート?不良かな?不良だわ……

 

「なんだ……超能力でも持ってる店員がいるのかと……あ、ライス一つ」

「手元のタブレットを使いなさいど阿呆」

 

そう私に暴言を吐きながら隣に座ってくる。

 

「なぜ隣……」

「先生にとってわたくしはいつ襲ってくるか分からない獣ですよ?近くにいてほしいと思いますか?」

「そういう人を思いやる気持ちあるんすね、知らなかったです」

「そういえば殴るんでしたね」

「後にしません?先生おろおろしてるんで」

 

誰のせいで……とか聞こえるけど気にししししません。痛くないといいなぁ……

 

「おほん……先生、お久しぶりです」

「うん……ひ、久しぶり……」

「……やはり、怯えていらっしゃいますね……モブ子様、隣へ」

 

ワカモさんに促され、先生の隣に座る。

先生はすぐに私の袖を掴む。そうすることで、多少楽になるんだろう。

 

「……申し訳、ございませんでした」

 

ワカモさんは頭を下げる。もう机に付きそ、いや付いてるわこれ、ちょっと上げて髪の毛大変なことになるよ?

 

「傲慢な考えですが、わたくしがお守りできなかったこと、そして、あなた様を傷つけた子ども達の代わりに、お詫びします」

「……頭を上げて、ワカモ」

「ですが」

「ワカモは、違うでしょ?それに私……皆のこと、嫌いになってないから。だから、上げて?」

「……」

 

ゆっくりと頭を上げるワカモさん。その顔からは、困惑が伝わる。

 

「嫌いになっていない……というのは?」

「どっちかって言うと、私、皆のこと好きなんだ。怖いとは、感じちゃったけど……一番悪かったのは、私が、否定できなかったこと。私が……弱かったから……だから……」

「……ズズッ」

 

まーた、この……さぁ……優しいな。

 

「いえっ、あなた様は傷つけられた側なのです。怒っても、わたくし達を傷つけても良いので――」

「たとえ良かったとしても、私はやらないよ。したく、ないから」

「……モブ子様」

「私は意見尊重するタイプ~」

「……そうですか」

「でも、償いが欲しいなら、守ろうとするしかない。じゃないと、絶対自分では止めらんないでしょ。先生自身が言ってたけどさ」

「それは……ええ、分かっています。いえ、分かりました」

「先生も、自分を追い詰め過ぎないように」

「……うん」

 

先生はそれがな……拒否の姿勢は見せるけど嫌う姿勢は見せないから、相手に伝わってないみたいなんだよなぁ……それでちゃんと無理って言えなかった自分が悪いってなるタイプみたいだし……

 

……よしっ、今回の目的はワカモさんに合わせることだし、とりあえずだけど、いいと思う。

じゃあ食べよ食べよ!と声を掛けようとする。

 

「もう少し、よろしいでしょうか?」

 

が、ワカモさんに止められる。そろそろ食べるの再開したいんだけど?

 

「……実は、もう一人、会ってほしい方がいます。ですが、事前の知らせも無しでしたので、今回でなくとも……」

「私は、大丈夫だよ」

「先生がいいなら」

「……では」

 

ワカモさんはスマホをいじって誰かを呼んだみたい。

あっ、ご飯頼むの忘れてた。今のうちに頼んどこ。

 

「……失礼するわ」

「まだ頼んでないですけど!?」

「店員じゃない」

 

そう扉を開けた小柄な少女は言った。

……

 

「見たことある気がするんだけど。気のせい?」

「一度会ったことがあるわね」

「やーん運命……」

 

空崎、ヒナ。

ゲヘナの超強い人だったよね……そういや前味方って言ってたわワカモさん。

 

「こちらへ」

「分かった……先生、久しぶり」

「うん……久しぶり」

「ねぇこれ繰り返しになんない?」

 

また同じこと言うのめんどいよ?

 

「……さっきまでの会話は聞いてた。だから、同じことを言うつもりはない……けど、謝罪だけは、させてもらう。ごめんなさい」

「ヒナ……」

「部下の……友人達の蛮行を止められなかった。……私は、この事態を解決することに尽力するつもり。それとは別に、何でも言って。……先生には、その権利がある」

「……」

「はぐっ、もぐっ……こういうのでいいんだよこういうので」

「今真面目な会話しているのに気づいていないのですか?」

 

うぇぇ、ワカモさんの目がやべぇ。真の囚人は目で殺す。

 

「先生はそういうので要求しないでしょ。それより、言うべきことがあると思うんすよ」

「何?」

「これからのこと。解決するつもり、ていうのは聞きましたし、具体的にどうするかですよ。私はともかく、先生は当事者です。なら、言っておくべきですよ」

「……そうね、その通り。……なら、まず今やってることを話すわ」

「では、その話はわたくしから。ヒナさんは風紀委員長ということもあり、大きくは動けません。風紀委員会をある程度動かせる程度なので、先生とは関係のない方へ動かしてもらっています」

「あれ?前なんか来て「……」黙ります」

「わたくしは、その間に、仲間になりそうな、人材を探していたのです。出来うる限り集め……」

 

誰かが息を呑んだ音がした。

 

 

「敵対勢力を全部ぶっ潰します」

「耳の先から尻尾の先まで脳筋すぎる」

 

 

馬鹿なの?犯罪者なの?犯罪者だった……

 

「なにそれ、聞いてない」

「ホウレンソウ食ったことあります?」

「は?」

「喧嘩は、やめて……?」

「確かに一理ありますわね……」

「手のひらが速い」

 

とりあえず、仲間を増やしてる、ってことだけは分かった。

 

「目星はついてるんです?」

「一応、ですが……先生ならお分かりになると思いますが、まず正実の委員長。これは確定と言って問題ないでしょう」

「へー、強いんすか?」

「ヒナと同じくらいかな」

「超心強い。で、他に確定しそうな人は?」

「以上です」

「……?耳、遠くなったかな……」

「以上「分かった私が悪かったです……えぇ……」」

 

うっそぉ……四面楚歌ってレベルじゃないぞ?

 

「確定でなければ、いますよ」

「あ、そうなんすか?良かった……待て、何人です?」

「……四人です」

 

ハイクソー、もうやらんわこんなクソゲー……

マジで言ってんの?相手学園×X(かけるエックス)だよ?多いよ?

 

「……やろうと思えば、先生の指揮があれば相手できなくもないけど……流石にそこまでは……」

「出来んの?0.1も可能性あんの?」

「間違いなく、ヒナさんレベルの敵も出ますでしょうし……」

「……ごめん、私のせいで……」

「ほら、さっき約束したでしょ。追い詰めない」

「……うん」

 

「……羨ましいわね……」

「そうですね……これも罰として受け入れましょう……」

 

なんでだよ。さっきから先生が近づいて来てるから?もうくっついてんだけどこっち……狭ぇ。

 

「……とりあえず、死ぬほどピンチってことは分かりました。お二人は、この先どうします?ああ、やることとかじゃなくて、先生と会いますか?」

「私は、会いたいと思ってるけど……」

「……わたくしは会いたいです」

「……ワカモはともかく、私はそう簡単に会えないから。今まで面識の無かった……えっと」

「モブ子っす」

「モブ子の家に急に何度も行き始めたら、怪しまれそうだから……」

 

そっかぁ……ん-、でもそれじゃあ……あ。

 

「先生、ファンクラブに相談してみません?」

「なるほど、確かにあいつら腕と知能だけはいいもんね」

「ファンクラブ……あの、異形達の?」

「たしか、協力者とか言う……?」

「ワカモさんの盗聴で知ってましたか。犯罪だってこと覚えとけよ犯罪者」

 

普通にビビるんだからね?

 

「うん……怪しくて、性格悪くて、ろくでなしだけど、今は絶対に裏切らないから、安心して?」

「ボロッカスに言うね」

「……ええ、分かったわ。また、何かあったら……」

「うす、これ、私のモモトークっす」

「ありがとう……ねぇ」

「?なんすか?」

「先生を……よろしく」

「もちろんです」

 

 

そうして私達は焼肉を食べ、解散した。

ヒナさんが仲間になった!ってね。



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第十話

おわあああああああ!?(新作見ながら)
クロコォ……クロコォ……

いや待て、あれなら……!


「ふんふふーん」

 

今日は~肉が安かったから~ミルフィーユ鍋にしよ~っと。皆にも伝えとこ。

……先生と出会って、もう一か月か……濃いな一か月……

ただの一般人だった私が先生と出会い、ワカモさんやファンクラブ、ヒナさんとも出会った。

やー、濃いな……

 

ホントに普通の女の子やぞ我!

 

なのにどうして……

 

「ふふっ……」

 

楽しいな……

 

いや先生からしたら結構苦しい状態かもしんないけど、ずっと一人だったからな……複数で暮らして遊ぶなんて初めてだしなんか、こう、いいよね?

さ、今日はファンクラブの人達も来るらしいし、さっさと帰って準備しなきゃなー。鍋ってのは自分達の手で作るから尊いんだ絆が深まるんだ。

……ん?

今前の路地んとこに誰か入らなかった……?

……見てない見てないっと。こういうのは首を突っ込まない方がいいんだ。

キヴォトスで安全に暮らすにはそれが一番なんだ。それができない人が身近にいるけど。

 

「帰ろ帰ろ」

 

そうして通ろうとすると――

 

 

「ぐぇ!?」

 

 

――引っ張られました。路地の方に。

 

「なんでだむー!?」

 

口も手で塞がれる。クッソ強すぎだろ!舐めることもできねぇ!

全力で体を動かすが、綺麗に固められて動けないてててて!

 

「むー、むー!」

「動かないで」

「む」

 

全力で力を抜きます。あっすげぇ楽。

何の用だろうなーとか思いながら相手を待ってると、私を抑えてない奴が声を出した。あっ、複数人いるのね。

 

「……簡潔に言います。先生の所へ案内してください」

 

……真面目に考えるか。

私が戦えずとも情報はいる……数は……少なくともここには二人。

先生の情報はどこから?何度か外に出たとはいえ、そうそう見破れるもんじゃないはず……

そもどこの学園だ?

 

「何のこと、すか!」

 

会話で時間稼ぎしながら、考える。

 

「分かってるで、しょ!」

「いででででで!?」

 

痛いっつの!尋問はルールで禁止っすよね!

キヴォトスはルール無用だろ(自問自答)

 

「お願いです、案内して……いえ、教えるだけでいいです。教えてください。そして、関わらないでください。そうすれば、もう痛いこともしませんし、私達もこれ以上あなたに関わりません」

 

……そうなんだ。

 

「ホント?」

「はい。本当です」

「居場所を吐いたら、もういいんだね?」

「はい、教えてくれるだけで、いいのです」

「……そっか。分かった」

「!分かっていただけましたか、それでは……」

 

 

「だが断る」

 

 

「!?」

「このモブ子の最も好きなことの一つは自分の方が上だと思ってる奴に、NOを突き付けることだ!」

 

教えてやんねー!

最悪私が死のうがファンクラブもワカモさん達もいる、なんとかなるだろ多分。

 

「……そうですか、分かりました」

「ホントはあんたに教えられなくても、知ってるの。あんたん家でしょ?」

「……へー、どうやって知ったのか、これからのために、ご教示願い、たいね!」

「次なんて無いわ。でもそうね……無いなら教えてあげる」

 

こいつアホやぞ。

 

「焼肉屋、あんたあそこでゲヘナの風紀委員長に会ってたでしょ?たまたま見かけただけなんだけど、あんな影響力が凄い奴がゲヘナじゃないとこで一人で焼肉なんておかしいと思ってね。そこから出てくるとこまで見張って、その中の三人を調べ上げて……てね。変装しても分かりやすかったって、風紀委員長は」

 

マジかよバレてたんじゃん。

ワカモさんあの日もいないって言ってたじゃん!

 

「ホント、たまたま来てただけなんだけどね……休日に見回りに来てた先輩のおかげ」

 

オーケー幸運がファンブったってことね。

責められんな、責める気ないけど。

 

「セリカちゃん」

「分かってますって。……じゃ、寝てて」

 

よしアホ二人目、名前を言うな名前を。慢心かコノヤロー!

もう一人が固められた私の前に来て、デカいミニガンを振り上げて……いやおっぱいでk

 

 

 

 

 

「これが、お約束の品ですよ」

「……どうも」

 

わたくしは、とあるビルの屋上で、怪しさ満点の男、黒服から例の、スマホを一回り大きくした見た目の装置を受け取っていた。

 

「これで、モブ子さんの家まで直接?」

「ええ、行けますよ」

「理屈は知りませんが……こんな小型化できるのですね」

「その分、基点を一つしかつくれませんが、今は問題ないでしょう?」

「帰りはどうするんですか」

「起動した場所が帰り用の基点になります」

 

それはまた便利な……

そういえば、聞きたいことがありました。

 

「モブ子さんの家をあなた達の技術で隠せないのですか?そうすれば、安定性が増しそうですが……」

「下手に我々の力を多用すれば、逆に探知されかねません。多少の気配遮断などは張っていますが……多くは無理ですね」

「なるほど……難しいものですね……」

「おじさん達にとっては、ありがたいけどね~」

 

わたくしはすぐさま声の方向へ銃を向ける。

 

「あなたは……!」

「やー久しぶりー……片方は、もう会いたくなかったけど」

「……お久しぶりです、ホシノさん」

 

小鳥遊、ホシノ……!

 

「何の用です?」

「まあまあ落ち着きなって。要件は今のところ一つ。……先生を渡してよ」

 

そんなことだとは思っていましたが……素直に渡すと思って?

 

「勘違いしないでほしいのは、襲うつもりはないってこと」

「……襲うつもりが」

「ない?」

「うん。……先生って、いろんな子に優しくしてさ、それで、襲われてるわけでしょ?」

「あなたを含めて……」

「……うん、分かってるよ。だから、守りたいんだ」

 

……守りたい、ですか。

 

「私達も、襲わない。ちゃんと話し合って、決めたから」

「……それがなぜ、先生を渡すことに?」

「だってさ、モブ子ちゃんだっけ?彼女、戦う力ないじゃん。なら、充分あると思う私達が、隠して守っていく方が良いと思わない?」

 

…………なるほど、一理ありますね。

 

「流石に、先生も抵抗すると思うからさ、協力してくれない?説得に」

「……そうですか。黒服さんはどう思います?」

「確かに、モブ子さんは隠し通せないでしょうし、戦う力もない。言われてみれば、合理的です」

「だったら」

 

「ですが」

 

「……ですが、何?」

「彼女はあなた達にはできないことができます。例えば、先生を笑顔にできる。例えば、先生を癒すことができる。例えば……」

「先生の心を、守ることができる。悔しいですが、彼女にしかできません」

「ええ。対してあなた達は……先生を襲い、傷つけ、あまつさえ守るという『傲慢』な考えに至った。……そんなあなた達が先生を保護したところで、結末は目に見えていますよ」

 

『先生』が死ぬ結末が。

 

「……ふーん、そっか。要件が増えちゃったかー。ま、しょうがない

 

足止め、させてもらうよ」

 

!まさか……

 

「黒服!」

「分かっています!」

「おっと、行かせないよ!」

 

黒服が先生のところへ向かおうとしましたが、ホシノが射撃し、邪魔をする。

 

「……チッ、まずはこいつを片付けませんと……戦えますか?」

「先生との取引で傷つけるなと……」

「無能!」

「ですが」

 

「!?」

 

ホシノの足元に謎の空間のようなものが現れ、さらにそこから鎖が飛び出した。

それはまるで意思を持っているかのようにホシノに絡みつく。

 

「動きを封じることはできます。作っておいてよかった特殊兵器」

「有能ですね。もっと早くできないのですか?」

「褒めるのか貶すのか……」

「……ふっ!」

「来ますよ!」

 

ホシノは力技で拘束を解き、こちらへ跳んでくる。

早く向かいます、先生……!

 

 

 

 

 

「ふんふふーん♪」

 

今日はお鍋ー久々のお鍋―♪

ファンクラブ達がいるのだけはあれだけど、せっかくなら準備しとかなきゃ……ワカモとかも、来るかな……

お鍋を出してー、調味料とかも出してー。ふふっ、早くモブ子帰ってこないかなー。

そうやって準備をしていると、突然チャイムが鳴った。

……どうしよう、モブ子は帰ってくる途中で、黒服はワカモに用事、マエストロとゴルデカは鍋のための準備しに行ってる。

つまり、私以外いない……よしっ。

 

パパっとメイクやウィッグなどを用意してすぐに着替える。

声もちょっと変えて……大丈夫、すぐに終わらせたら……うん、行こう。

 

「すいません、待たせ……て……」

「……」

 

シロ……コ……?

どうしてここが……い、いやまだ大丈夫……!

 

「ど、どうされました……?」

「……先生、だよね」

「っ……」

 

バレてる!なんで!?

 

「ち、ちがっ」

「もう知ってる、隠さなくていい。……ごめん、先生」

 

シロコは頭を下げる。なんで……?

 

「私達は……先生を傷つけた。だから……その償いをしたい」

「つぐ、ない?」

「うん。あなたを……守らせてほしい」

 

私を、守る……?

 

「私達以外にも、先生を襲い、今でもそうしようとする人はいる……だから……」

「……アビドスの皆で?」

「うん。だから……この手を……」

 

シロコは手を差し出す。

私は……私、は……

 

手を伸ばして――

 

 

 

『先生』

 

 

 

「っ!ごめん……」

 

――振り払う。

 

「……先生」

 

ごめん、私は……モブ子に……

 

「……分かった」

「うん……だから」

「ごめんね」

「え?」

 

バチッという音を捉えたすぐ次の瞬間、意識が暗闇に落ちていった……

 

 

 

 

 

「――うん、分かった。じゃ、こっちの目的は終わったから。じゃあね」

「逃がすものかっ!」

 

ホシノはビルから飛び降り、逃げる。

わたくしは追おうとするが、黒服に肩を掴んで止められる。

 

「今は、先生を」

「……分かっています」

 

黒服から渡された機械を使う。

すると、一瞬の暗転、次の視界には見知らぬ……いえ、モブ子さんの家の中が映っていた。

 

「先生!」

「先生はいない」

 

そう言ったのは、二つ頭の異形……マエストロだった。

その背には、気絶したモブ子さんが。

 

「……クソっ!」

「私が言ったところで、何の意味が無いだろうが……申し訳ない」

「取引をしたと言うのに、モブ子さんは傷つけられ、先生も奪われるとは……ファンクラブ失格、ですね」

「今は、後悔をしている暇はない、モブ子さんならそう言うでしょう」

 

そう言葉を発する写真と、それを持った頭無しが現れた。

 

「……ええ、そうですわね。先生の居場所は?」

「もう私達が調べ上げています。場所は……ここ、アビドス区域の砂漠地帯のようです」

 

写真……ゴルコンダが説明をしながら、頭無し……デカルコマニーがタブレットの地図を起動する。

 

「なるほど、ここならば他の学園の影響も受けづらい」

「では早速……!」

「待て、気が早すぎる。計画を立てねば」

「ですね……モブ子さんは、どうしますか?」

 

モブ子さん……

 

「置いていくべきです。彼女は戦えないのでしょう?なら……」

 

 

「私抜きでやるなんて、ちょっと酷くなーい?」

 

 

「……モブ子さん?」

「はいはい、モブ子ですよ。そろそろ下ろして?」

 

よいしょ、っと声を出しながらマエストロの背から下りるモブ子さん。

 

「で、状況から見るに先生攫われたんでしょ。じゃ、どうする?」

「……あなた、ボロボロになっていますよ」

「そらミニガンで殴られましたからね。胸のでけーねーちゃんに」

「助けに行けば、それ以上の痛みが感じるかもしれませんよ」

 

「同居人助けるのに痛みとか気にする必要あります?」

 

「……」

 

さらっと、何事も無いように、モブ子さんは言った。

 

「ね、言ったでしょう?精神力が凄いと」

「そういうこった!」

「あなた……本当に一般人ですか?」

「もしかして私暴言言われてる?」

 

だからこそ、先生を……

 

こうして私達は、先生救出作戦を考え始めたのだった……




モブ子のヤバイとこ:先生だからでも大切な人だからでもなく、同居人だから助けると言うところ。(本心)


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第十一話

本格的戦闘回!かも?

ps.こっそり変えちゃったとこあるけど許して


「……先生、分かってほしい」

「……」

 

ホシノの言葉は、壁を背にして座ってる私に飛んでくる。

でも、私は反応しない。

 

「……ご飯、置いとくね」

 

そう言ってホシノはご飯が乗ったお盆を机に置いて、部屋から出ていった。

私は部屋から完全に出ていったホシノを見てから、椅子に座る。

……なんだか、慣れないな。ずっと、畳で過ごしてたからか、椅子はなんか、気持ち悪く感じる。

部屋は綺麗だけど、窓が無いから何処か分からない。

……お鍋、食べたいな。

 

 

 

 

 

部屋を出て、皆のところへ行く。

そこでは、シロコちゃんとセリカちゃんが武装の整備、ノノミちゃんが先生の部屋の監視カメラを見ていて、最後に残ったアヤネちゃんはタブレットを弄っていた。

私はそのアヤネちゃんに声を掛ける。

 

「どう?アヤネちゃん。システムに異常はない?」

「はい、半径25㎞のオートマタ、ドローン、タレット、全て問題なく稼働しています」

 

そう言ってもらえると、嬉しいな。でも……

 

「なんだか、不安そうだね?」

「不安というか……やっぱり、来るんでしょうか」

「来るよ。絶対ね。……ゲヘナもトリニティも、どっちもこっちに気付いた様子はない。今の問題は、彼女達だけだよ。ま、私達とこれだけの兵器があれば、問題は無いと思うけどねー」

 

私は確信に満ちた声でそう答える。

 

「……そう……ですね……」

 

それでも、アヤネちゃんの不安そうな声は消えない。

……分かってるよ、これが正しいか、でしょ?

 

正しいわけないじゃん。

 

でも……狂ってしまった歯車は、変えない限り、回らない。

なのに、回ってしまったのが、私達なんだよ。

だから……進むしかない。

 

私はそんなことを考えていると、突然アヤネちゃんが大声を上げる。

 

 

「こ、高速で動く物体が接近してます!速すぎて、正確に捉えられない!?……!?う、嘘……

 

時速、300、いえ、400㎞以上……?」

 

 

……え?

 

 

 

 

 

『……では、作戦前のブリーフィングを開始します。前線に出るのは、モブ子さん、ワカモさん、そして私、黒服の三人です。オペレーターはゴルコンダ。

まず最初の行動ですが、兎にも角にも近づかなければ話になりません。近づくためにはこの広大な砂漠を時間をかけて、尚且つ仕掛けられているであろう罠を越えなければいけません。

ですが、それの解決策はすでに用意してあります。それは――』

 

 

 

「――その策が、これ、と」

「はい」

 

見たことあるー。このクソでかたくさんブースター見たことあるー。

 

「……これさぁ、人じゃなくてロボにつける前提のやつでしょ?」

「原作では、そうですね」

「使ったら死なないこれ?」

「安心してください。風圧、人体に掛かるG、その他諸々……全て解決してあります」

 

そりゃサイコー……

 

ぶ、VOBだこれー!?

 

「違いますそっくりさんです」

「あんたさっき原作って言ったろ!……なんでこれ作ろうと思ったの?」

「フォーアンサーをファンクラブの皆でしたら楽しくて……」

「意外と暇なんですねあんたら……待て、これ全員で作ったの?」

「はい」

 

やり口がネットでたまに見る謎の天才のそれ。

 

「実際、面白そうと思い、作った訳ですが、原理や構造は違います。見た目も違うでしょう?」

「……っすね……」

「ツッコミ放棄……これを使って、敵陣まで突っ込む……のでしたわね」

「はい、前にコックピットがありますので、我々はそこに乗り、突っ込みます」

「脳筋すぎませんか?」

「前あんた仲間集めて敵ぶっ倒すって言ってたんですよ」

「でもこの作戦の一部を考えたのはあなたですよ?」

 

なんてこったここには脳筋しかいねぇ!

まあ頭使わなくていいならそれでいっか……私通常モンスターしか使えないんだ……モブ之内君……

嘘全然使えるわ。シューティングスターはいいぞ。

 

「さて、最終確認です。ちゃんと持ちましたか?」

「へいへい、持ちましたよ」

 

腰に差してあった銃を取り出しながら、返答する。

 

「ワカモさんも、大丈夫ですか?」

「ええ、ズレも無し……流石、技術だけはあると言われた存在達ですね」

 

お面を触りながらワカモさんはそう言う。

 

「そんな……強いて言うなら倫理が無いだけですよ」

「最も重要なもんが抜けてんだよ。神様が失敗したジェンガで作ったのか?」

 

締まらないなー……ま、こんな感じでいっか。

 

 

と、そんなこんなでVOB……擬きに乗って砂で埋まった建物ばかりの砂漠を飛んでいるわけですが。

 

「めちゃくちゃ撃たれてるんすけど」

「無敵バリアー」

「小学生か!もっと理知的なこと喋れるだろあんた!」

「今更では」

「……それはそうっすね」

『……そろそろ、到着です』

 

通信のゴルコンダさんの言葉で私達は気を引き締め……

 

「待ってこれどうなんの?普通に着陸すんの?」

「あっはっは、時速400㎞で動いているのが簡単に止まるわけないじゃないですか。パージですよ」

「諸々解決してねーじゃん!」

 

不意に体が投げ飛ばされる感覚に陥る。

 

が。

 

「ぐぇっ」

「よいしょ、っと」

 

ワカモさんが私を捕まえて着地してくれたおかげで、ノーダメー嘘吐きそう。

 

「今ヘロヘロになっていても仕方がありませんよ。ほら、前を見てください」

「え……?あっ、あそこにあの時の巨乳が!」

「覚え方」

 

「……やっぱり、来たね」

「誰?」

『空崎ヒナと同レベルの強者です』

『そういうこった!』

「デカルコマニーさんもいたのね。というかここどこよ」

「目的の建物の中です。この砂漠の中でも無事だった施設を極秘裏に改造していたみたいですね……やり口がどこかのカイザーとそっくりですね」

「いやー、おじさんびっくりしたよー。せっかく用意したのに、無駄になっちゃったねー」

「私はすでに建物ん中の事にびっくりしてる」

「面白い話しますね。あの人達、借金あるんですよ」

「えっ、なのにあんな数の兵器を?馬鹿じゃねぇの?」

 

銃声が響いた。

 

「聞こえてる」

「そら聞こえてるように言ってますし……」

「やっぱりこの人メンタルおかしくないですか?いつぼこぼこにされるか分からないのに」

「聞こえてるぞコノヤロー」

 

なるほどこれイラってするな。普通のメンタルの女の子って言ってるでしょ!

 

「で、いらないと思うけど。一応ね……今なら、無事に帰してあげるよ」

「返してくれるんすか?先生を」

「……なるほど、帰るつもりはないんだね……じゃあ!」

 

一斉に銃が構えられる音がした。

やーこわい。

 

だけど。

 

「っ、スモーク!?」

 

端から真面目に相手する気ねーよ。

 

「決着、つけましょうか!」

「っく……!」

「ホシノ先輩!」

 

ワカモさんが相手のヤバい人を掴んでぶん投げて、さらに飛んでった。あのマスクすげー。見えるんだね。

あのヤバい人はワカモさん一人で相手するらしい。お礼参りですって。

じゃあ残りの四人……一人はタブレットだから、三人か。

 

「右からツインテアサルト、巨乳ミニガン、狼アサルト……なんとかなるか」

「調子に乗って……!」

 

ツインテアサルトは撃ってくる。

 

「なっ……!?」

「バリア……!」

 

まあ戦えない私だから対策くらい取ってるよね……センキュー黒服さん。

三方向からボコボコ撃たれるが、特に動かない。まだかなー

 

「……モブ子さん。準備、終わりましたよ」

「おっ、じゃあ行きますね」

 

私は銃――酔狂(コンテンダー)を引き抜いて、一発、上に放つ。

 

「……なに?」

「音楽……ですか……?」

 

すると、どこからか音楽が鳴り始める。

 

 

じゃあ、歌います。

 

 

「白く、明けてゆく空に、浮かぶ、不知火~♪」

「な、何を……!」

 

どんどん撃ってくるけど気にしない。バリアさまさまだぜ!

お返しに歌いながら酔狂(コンテンダー)をリロードしながら撃っていく。

 

「っ、避けたはずなのに……!」

「陽気な、夢に灯された、赤い、幻~♪」

 

撃った弾を避けようとしたツインテだが、不自然に曲がった銃弾に対応できず、当たってしまう。

 

「当たらぬのなら、当たるようにすればよいのです。それが、モブ子さん専用の銃弾。狙うことはしてくださいね?九十度以上は曲がらないので」

 

オッケー次からは先説明してね。相手聞いてるからね。

 

「選ビ損ネタ、モウ片方ハ♪」

「……その歌を、やめろ!」

 

狼は私じゃなく、黒服さんを狙うが……

 

「まあ、ありますよね、こちらにも」

「ちぃっ……!」

 

そっちにもバリアで防がれる。

 

「アナタガ笑ウ、ヤワラカナ旅路(ミチ)♪」

 

私は歩きながら近づき、歌いながら撃っていく。

 

「今コノ総テ、置イテイッテモ♪」

「……う、うぅ……!」

 

効いてる効いてる。

 

「届カナイ、夢ノ果テ♪」

「……っ……」

 

「教えて、あてどもなく、踏み出した足はどこへ続くの~♪」

 

「あなたを、沈めていく、虚の淵♪」

 

「ウタカタ、揺れる♪」

 

そこまで歌って、音楽はフェードアウトしていく……

 

そこで、現状を説明します!

 

こちらの状況!

私!音楽一番まで歌いました!

黒服さん!私の音楽を聴かせるようにしました!

 

相手の状況!

ツインテ!疲労してます!

巨乳!疲労してます!

狼!疲労してます!

 

以上!誰も倒せてねぇ!

 

「すいません、バリアの充電が切れました」

 

追加情報です!バリアも張れなくなりました!

 

「わーお大ピンチ。……あっ、弾切れの事も言っとく?」

「なおさらピンチ感が増しましたね」

「……なんだったの、さっきまでのは!?歌った意味ある!?」

 

「あるさ。何も感じないわけじゃないでしょ?」

 

「……」

「そこのメガネちんも、ホントはおかしいことに気づいてるはず」

「そ、れは……」

「私の勘だけどさぁ、あんたら先生のこと、好きでしょ」

「……ええ、そうよ、大好きだよ!それが何!?大好きな人を守りたいって思うことは悪い事なの!?」

「そう思うなら、お前らは一生、先生を思いやれないよ」

「……もういい、もうお前達は戦えない。負け犬の……「確かに」……?」

 

 

「私達は戦えません、が……彼女は、どうでしょうか?」

 

 

黒服さんが言い切った途端、数多くの銃弾が私達がぶち破った壁から飛んできた。

すぐに近くの壁に隠れた私と黒服さんは当たらなかったが、他の四人にはもろに当たった。

 

「誰……!?」

 

 

「……ん、久しぶり」

 

 

そう言って現れたのは、狼を大きくして黒くしたような美女だった。

 

「時間稼ぎきつかったんすけど」

『これでも急いだほうだ』

 

そう、私達の目的は時間稼ぎだった。

一人別行動していたマエストロさんは、援軍を呼びに行っていたのだ!

ただ来るかどうかは分かんないし見つかるかどうかも分かんなかったのでかなりの大博打だったみたい。運ゲーはクソゾ。

一応、プランBもあったし、大丈夫だったでしょ知らんけど。

 

「……いろいろ、聞いたし、知ってた。……一度、お灸を据えなきゃ」

「……っ、来る!」

 

そうして、狼(黒)とその他の戦いが始まった。




途中の歌は天野月子さんの『ウタカタ』だ!
名作ホラゲー零シリーズのエンディングを担当してる人と言ったら分かるかな!
せっかくなら聞いてみてね!


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第十二話

簡潔に言います。ボロ勝ちでした。

数的不利をものともせずとはああいうこと言うんすね。

 

「いやぁ~私達いる?うぁ伸びてる……」

「時間稼ぎしたという事実は消えませんよ」

「それいるか?」

「……実績解除?」

「ようゲーム脳」

 

このままだべっててもいいけど、やることやらないと。

黒服さんと歩いて狼(黒)に近づく。

 

「うす、初めましてっすね」

「……そうだね」

「……エロいな」

「モブ子さん」

「分かってますよ……黒服さんに促されると腑に落ちねぇな」

「なんでですか」

「んじゃ、私モブ子っす。あなたは?」

「……そうだね、クロコ、とでも呼んで」

「じゃああっちシロコっすか?」

「そうだね」

「合ってた……」

 

安直だけど合ってた……

クロコさんは真剣な顔で私を見る。

 

「モブ子」

「はい?」

「……先生を、お願い。私には、出来なかったことを」

「一人じゃ無理なんで協力してくれますか?」

「……うん、分かった……強いね」

「なんでだよ」

「二人とも、終わりましたよ」

 

黒服さんはここの四人を拘束していた。鎖……天の鎖?

 

「このタブレットで、オートマタ等を動かしていたみたいですね……えいっ」

「いい大人の男がえいって言うなよ……なんしたんすか?」

「再使用できないように自爆させました。破壊しておくに限りますね」

「……驚いた。お前なら、それを使ってアビドスを奪おうとしそうなのに」

「前の私なら、そうしたでしょうが……先生がいた方が、面白いことに気が付いたもので」

「……そう」

「ルパンととっつぁんかよ」

 

目的が変わってんじゃん。

まあんなことはいいんだよ、ワカモさんとこ行くか。

 

「どうします、クロコさん行きます?」

「うん、恩人の悪行を、止めに行かないと……そっちこそ、先生のところに行かなくていいの?」

「すぐ行きますよ。でもちょっと我慢を覚えてもらいます。どんだけ私に引っ付きたいんだよってくらい来るんで……」

「……もっと酷くなりそうな気がしませんか?」

「うん、する」

「仲いいのかてめーら」

 

そんな軽口を叩きながら、向かっていった。

 

 

 

 

 

場所は、私達がダイナミック入室したところから、かなり離れた所っぽい。

戦ってる音が超する。

で、それっぽい壊れた壁の中を覗いてみると。

 

「よっ、やってる?」

「今戦ってるのが見えませんかっ!」

「……少し押されていますね」

「やっぱりライフルとショットガンじゃ、室内戦の差は激しいね」

「そこ!うるさい!」

 

今のワカモさんはファンクラブの作ったお面で強化されてるっぽい。

詳しくは知らねーけど超凄いレンズとファンクラブのメンバーの補佐でなんか凄いらしいよ。だから、私達にゴルコンダさん来なかったんですね。

そして、元から強いワカモさんだから、かなり強いはずなんだけど……

 

「押されてますね」

「何やってんだ狐ー。あんた鋼鉄の七人でしょー」

「七、囚、人!」

「頑張れー」

「あなたは何!」

「――シロコちゃん?」

 

クロコさんの声を聞いて、動きを止めるロリ。

 

「あれ、シロコ?……ああ、見た目激似だったしパラレルの人?」

「よくそこまで分かりましたね、正解です」

「うっそぉ合ってた」

 

「……ホシノ先輩」

「やーまいったな……今の状況、分かってる?」

「分かってる。……ホシノ先輩達が間違ってるってことも……ホシノ先輩が、これが間違いだって気付いてることも」

「……」

 

雰囲気ぶち壊しにして申し訳ないんだけどワカモさんよく待ってくれるね。名乗りは邪魔しないのと一緒か。アバレキラー……

 

「どうして……こんなやり方しか、出来なかったの?」

「……これしか、無かったんだよ。傷つけた私達が、先生を守って、一緒にいるには、これしか無かったんだよ」

「……」

「ねぇ、分かってほしい。間違いだって、分かってるけどさ……好きな人と、一緒にいたいって、思うのは、まちが「間違いって自分で言ってんじゃん」……なに?」

 

流石に、これは口が出るよ。

 

「本当に伝わってくるよ。あんまり会話してないけどさ、あんたらの先生好き好きオーラが。いやーラブコメでも見てるのかって思うくらいには」

「なら」

 

「だが好きと愛してるは違うぞ」

 

「……」

「お前達は結局、先生の事が好きなだけなんだよ。自分の想いにしか気づけず、相手を思いやれない。好きは愛することに進化する。だけどお前らは、進もうと、進化しようとしなかった。なんでだろうな……きっと、怖かったんだろ。見えないその先が」

「知ったような口を……!」

「知るわけないじゃんお前らの事も恋もよく知らん私が知るわけが。全部妄想だよ。でもな……一つだけ、なんとなく分かるよ。

 

あんた大切な人無くしたことあるだろ?」

 

「っ、お前ぇ!」

 

ショットガンロリはそのショットガンをこっちに向け、撃とうとするが……

 

「隙あり、ですわ」

「……悪夢は、終わり」

 

ワカモさんがショットガンを蹴り上げ、クロコさんが滅茶苦茶速い速度でロリを押さえつけた。

ちなみに今の一連は早すぎて分かんなかった。後で教えてもらってやっと分かった。ドラゴンボール状態じゃん。

 

「ぐっ、うっ……!お前……!」

「……さて、気絶させますか」

「待ってくださいワカモさん。拘束だけにしましょうか……やってもらうことがある」

 

 

 

 

 

……この扉の先に、先生がいるのね。

 

「その前に……一つ」

「なんですか?」

「絵面ヤバくね?」

 

私達は歩いてきたわけなんだけど……

私、黒服さん、ワカモさん、鎖付きロリ、それを持ったクロコさんという並び……

 

「これ奴隷商人じゃね?」

「あなたが連れていくって言ったんじゃないんですか。もう認知症ですか?」

「ナチュラルに口悪いよねワカモさんって。まあそうなんだけどぉ……」

 

まいっか、捕まえてんのも犯罪者だし。

 

扉を開け、中に入るとそこには……

 

 

「…………ぇ?モブ……子……?」

 

 

壁に背を当て体育座りをしていた先生がいた。うーんデジャブ。

てか椅子あんじゃん。

私を捉えた先生は立ち上がり、ゆっくりと私に歩いてくる。

そして、目と鼻の先ほどの距離になると先生は

 

「モブ子……!」

 

抱き着いてきた。

 

「はいはい、モブ子ですよ」

「モブ子……モブ子……!」

「ねえ感動薄れないこれ?」

「そう呼べとあなたが言ったのでしょう」

「……ア感動……」

「黒服ってつまらないダジャレ言えるんだね」

 

抱き着いたまま、私の名前を呼び続ける先生の頭を、優しく撫で続ける。

……しょうがないなぁ。

 

「……ぁ」

「分かりますか、小鳥遊ホシノ。守り、救うというのは……ああいうことを言うのですよ」

「く、ろふく……」

「襲い、拉致し、監禁し……身体(しんたい)は、心と体、二つの意味が籠っています。あなた方は、体だけしか、守れなかったのですよ」

「……あ、ぁあ」

「そもそもあれぐらいで守れるのか、という話なのですが……」

 

数分ほどその状態が続いた後、やっと先生は離れた。

そして、私以外の人物を見る。

 

「ほ、しの……」

 

先生はロリを見つけ、私の裾を掴みながら後ろに隠れる。

ロリは悲しそうな顔をするが、それも当たり前だろうと分かった風の顔にすぐに変えた。

……

 

「で、どうするんすか、先生」

「……」

「分かってるよ、自分で何をしたかってくらい。だから「黙りなさい」……ワカモ?」

「あなたは、先生ではありません」

 

先生は、怯えながらも、ゆっくりと前に出る。裾は掴んだままだけど。

 

「…………すよ」

「え……?」

「……許すよ、皆のこと」

「……なっ、何言って」

「私は、皆のこと、嫌いになってないから。怖いけど、怖いと思ってしまったけど……

 

好き、だから」

 

「ヒューッ、やっさしー」

「ククク……流石、先生です」

「ん……いつまでも、変わらないね」

「ああ……このワカモ、嫉妬と感動と殺意が混ざり合っていますわ……!」

「おい今すぐこの人も括りつけろ闇鍋爆弾だ」

 

「……わ、わたし、わたしは……な、なんて、ことを……あ、ああ、あぁ」

 

……ん?なんか様子……

 

「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!」

 

「!?うっ……!」

「なっ、ああっ!」

 

ロリが急に暴れ出して、拘束を解きやがった!クロコさんが持ってたのに、やられたってマジ!?

しかもワカモさんの銃を奪って――違う!

 

目的は銃剣!それを……!

 

 

 

「――さよなら、先生――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「させるかぁ!」

 

 

 

「……え……?」

 

ホシノが首に突き立てようとした銃剣を右腕で受け止める。

切れ味がいいおかげで綺麗に貫通してる。貫通しすぎてそのまま喉に刺さるかと思ったわ。腕ごとずらして何とか事なきをえたけどさぁ。

 

「あーいってぇ」

「なっ、何してグェッ」

 

左腕でホシノの胸ぐらを掴む。

 

「死んで楽になろうと思うな。罪から逃げるな。背負え、抱えろ、だからお前は好きどまりなんだよ」

「だっ、だって」

「だってじゃねーよバカか?人傷つけることしか出来ねーのかお前は。いやこの腕のはノーカンだけどな?そもそもあんたが死んで悲しむやつが何人いるか分かってんのか?先生はもちろん、あの四人……クロコさんだっているだろ。どんな仲かは知らないけどさ……

罰が欲しいなら、生きろ」

 

「…………ぐすっ」

「……まさか泣くとか「うぇえええええええええん!」クソったれ!」

 

泣き始めたホシノを面倒に思いながら下ろし、抱える風にしながら座る。

あ”ー、子どもはもう一人いるっての……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅れに遅れ、次の日になっちゃったけど!ミルフィーユ鍋パ、始めるぞおおおお!!」

「「「「「おー!」」」」」

「「「「「……」」」」」

「へいそこの五人元気がないじゃん!エビバディセイ!?」

「「「「「お、おー……」」」」」

「ねぇ、モブ子もそうだけどあそこの異形もなんかおかしくない?」

「お気づきになってしまいましたか……」

 

そこの狼と狐、何喋ってんじゃい!

あの後、いろいろあって、現在!

 

家で皆で鍋食っています。

 

……どこか間違いでも?

 

「モブ子。はい、あーん」

「あーん……んぐ、ウッーウッーウマウマ……へいへいそこの彼女達!なんで暗くなってんの!?」

 

利き手が動かないんで先生に食べさしてもらいながら、アビドス五人組に声を掛ける。

 

「……ほ、ホントに、いていいの、私達……?」

 

ツインテ……セリカさんがそう言ってくるけど……

 

「家主の私はいいと言った。で、直接的な被害者の先生は」

「……だいじょう、ぶだよ」

「はい問題なし」

「どこが……?」

 

いいって言ってんならいいんだよ。先生も私が近くにいたら大丈夫らしいし。

 

「んー、まだ気になるなら、パッパッと終わらせましょうよ。鍋食いたいし。で?あんたらはどうしたいの?」

「……まず、私達から……モブ子さん、その……」

「「ぼ、暴力を振るって、ごめんなさい!」」

 

セリカさんと巨乳……ノノミさんが謝ってくる。

でも聞いたわそれ。

 

「別にキヴォトスだと普通ですし、気にすることじゃないっすよ」

「でも……」

「あーめんどくせぇ!ちょっとお前らそこ並べ!速く!ハリー!」

 

アビドスの五人を横一列に並ばせる。……アビつか。

そして私は端の方から

 

「歯ぁ食いしばれよ」

 

ごつ、ごつ、ごつ、むに、ごつ。そんな感じで頭突きをしていった。

 

「い、痛い……」

 

メガネのアヤネさんがそんなことを抜かしてるが四人連続で頭突きした私の方が痛いよ?

 

「な、なぜ私だけ胸を……!?」

 

ノノミさんが顔を赤らめるけどしょうがない。罰です。

 

「一回でいいから巨乳の胸揉んで見たかったんだよね……あとあんたらは先生の胸好き勝手したじゃん」

「……」

「暗いな~」

「気にしてることを言われたらそうもなりますよ」

「そういうこった!」

 

たく……めんどくさいな……

じゃ、よし。

 

「私はもう終わりましたっと、お前ら元に戻れー」

「え……こ、これで終わりなの?」

 

狼のシロコさんがそう言ってくるけどはい、終わりです。

 

「私にとっちゃあんたらに攻撃されようが大したことじゃないの。……でも、絶対に先生との仲は取り繕ってはやらん。自分で何とかしろ」

 

それは、自分達でやることだ。

 

「とはいえ、先生はどうするか、それは言ってませんね」

「黒服……」

「どうするんだ、先生?もちろん我々は関与しない……あなたが望まない限りは」

「……私は、変えてないよ」

 

先生は立って……私の裾は掴んだままでだけど、まあ立って、皆の目を見る。

 

「私は、皆に罰を与えるつもりはない。皆のことが好き……ううん、愛してるから」

 

鍋食いてぇ。

 

「……分かった。私達は今度こそ、先生を……ううん、二人を、守ってみせる。……モブ子ちゃん」

「なんすか?」

「……私は、多分まだ好きなんだ……でも、その先を……愛してるを、目指す」

「なんで私に……はぁ、ま、それぐらいなら、サポートしてやるよ。よーし、これで話おわ……あ、そこの二人はあります?」

「わたくしは先生に従うだけですわ」

「……じゃあ一つだけ。もう二度と私に銃口を向けさせないで」

 

わぁお重く感じるその言葉。

……それだけ、愛してるんだろうな、クロコさんは。

 

「……うん。分かった」

 

シロコさんがその言葉に返事し、他も頷く。

これで、ホントに……いや、言っとくか。

 

「今更で悪いけど、二つだけ約束してもらう。一つが、死のうとすること。それは先生に対して最低の行いだからな。ねぇホシノさん」

「……うん」

「で、二つ目が……泣かないことだ。泣いてしまったら、お前達は被害者擬きになる。だから、泣くな。一つの事以外には」

「……それは、何?」

 

 

「人を、想って泣くことだ。何があっても泣かない奴を、私は信用しない。

 

 

……あー、慣れねぇことするもんじゃないね。さ!食べよっか!鍋!」

 

そう言って無理矢理話を切り上げ、私達は鍋を食べることに専念した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凄い。本当に……モブ子ちゃんは。

多分、確かに弱いかもしれない、体の戦いでは……でも。

彼女は、人の心の強さを持ってる。

ある意味で、心の戦いの強さは異次元だ。

 

私じゃなく、彼女だったら、なんて考えそうになる。

けど、彼女はそんなことを知ったら殴ってくるはずだ。

 

だから、私にできることは

 

 

先生の盾になり、彼女の右腕になることだ。

なる、なってみせる……!




一章、完!
ちょうどキリがいいので、小説欄の整理、現実世界のなんやかんやをするつもりなのでこんどこそ投稿が遅れると思います…
待ってろ他の小説ー!


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―第二章―
第一話


アビドスとの激戦(笑)と鍋パから数日、私達は普通の日常に戻っていた。

いやー、大変だった……一番めんどくさかったのは学校で右手をどう誤魔化すかだった……

運悪くヤバめな不良に襲われたと言ったら何とかなったけど。今更だけどキヴォトスってヤバくね?

 

まあ、そんなこんなで私は、学校に行っていた。

怪我した腕で四苦八苦しながら、荷物を整理してると、声を掛けてくる眼鏡がいた。

 

「うーっすモブ子ー。元気―?」

「おーこの右腕を見て元気だと思うならお前が病院に行けー。頭の」

「じゃあ当分行かなくていいことが証明されたなー。で、そうじゃないんだよ。約束してたろ、遊びに行くの。その腕でも行けんの?」

「んー……行けるだろ」

 

そう、私は放課後、友人と遊びに行こうとしていた。

 

 

 

 

 

その話をする前に、朝の出来事。

いつも通り朝食やら学校の準備をしよう……としたんだけど、流石にこの腕だと、ちょいめんどいことに気付いたので、()()に任せる。

 

「ん、先生。魚焼けたよ」

「ありがとう、クロコ。じゃあ、これと一緒に持っていってくれる?」

「うん、任せて」

 

というわけで、我が家にクロコさんがやってきました!

そうなったのは、あの鍋パの時。

 

 

『そういやクロコさんってどこ住んでるんすか?』

『ん……野宿?』

『なぜ……?地上最強にでもなるつもりっすか?』

『それはですね』

『あっ、鍋が食えないゴルコンダさん』

『……』

『ごめん』

『いえ、大丈夫ですよ……おほん、説明を続けますね。クロコさんは知っての通り、平行世界のシロコさんです。詳しい説明は省きますが、同じ人が同じ世界にいると、いろいろ問題が起こるわけで……』

『……それを何とかしようと模索してたのが、私でもあるんだけど……』

『えっ、あんたらそんな恩人襲ったの?』

 

『『『『『ごめんなさい』』』』』

 

『で、それが何で野宿に?』

『……今の私が普通の存在じゃない、って言うのもあって……同じところに居続けるのは……』

 

『ほーん。じゃあうちん家住みます?』

『話聞いてた?それに、この家大きくないみたいだけど……』

 

『ふっふっふ、いるじゃないですか、専門家達が、そこに』

 

『我ら』

『『『『先生大好きファンクラブ!』』』』

『クロコさんの問題をある程度解決し!』

『家の大きさも何とかし!』

『ついでに神秘もちょっと調べて見せましょう!』

『そういうこった!』

『タバスコタバスコ……』

 

『鍋に入らないようにしてくださいねー。……とまぁ、あいつらアホで悪人かもしんないすけど、今は、絶対裏切りませんよ』

『……』

 

 

と、あの後いろいろファンクラブがなんやかんやしてくれたおかげで、一緒に住めることになりました!

外から見たら変わんないのに中だけ形を変えるとか、凄いな。鍋パの時もやってくれてたけど。

ゲームの謎ポーチかな?

まあそれは本題じゃなくて。

ご飯を食べながら、今日の予定を二人に話す。

 

「今日友達と遊びに行ってくるんで帰り遅くなります」

「嘘だ!」

「うるさっ、そして失礼だな」

 

先生はなぜかそう言ってくる。マジで失礼だな……レナ?

 

「だってモブ子、前から一人だって……!」

「ほとんど一人ってだけっすからね?流石に友達くらいいるわ。じゃないとこのあだ名誰が付けたの?ってなるじゃん」

「うぅ……」

「ですから、今日は二人とも先に夜食べててください。ファンクラブの人達も来るんで」

「……分かった」

「クロコさん、後は任せました」

「うん、任せて」

 

とまあ、そういうわけで、クロコさんに先生を任せ、登校した。

 

 

 

 

 

……そして、放課後、なのだが。

逆に不安になってくるな……先生大丈夫かな……?年の離れた妹家に置いてく時ってこんな感じか。

まあ……大丈夫だろ、多分。

 

「おーい、モブ子。どした?」

「いや、何でも。もう着いてんじゃんゲーセン。んじゃ行こか()()()

「おう」

 

友人、地味子と一緒にゲーセンに入っていく。

たまにこいつとゲーセンで遊ぶ。それが昔一番の他人との交流だったけど、今は先生やらなんやらで交流増えたんだよなぁ……

 

「やべっ、頭ん中が……」

「お?何?頭痛?」

「んや……別に……お、空いてるな、やるか」

「おう、私はいつも通りビルドストライク使うわ」

「私もデスティニーで行くわ」

 

ま、今は普通に遊びますかね……やっぱこの腕で行けっかな……右手だけだしボタンだし、行けるか……

 

 

そうして遊ぶこと数十分。

 

「あっやべ誤射ったw」

「なにわろてんねん!……ブースター!」

「勝ったな」

「おらゲロビ!……しゃっあ!」

「ナイスゥ!」

「おめーが誤射らなかったらもっと楽だったんだよ!」

「ごめんごめん腕がw」

「怪我してなくても誤射するじゃねーか!」

「「へへへへへw」」

 

いやー楽だなこいつ……私と似て淡白だからか?白身魚か?

……んー、あいつらおもろいけどなー……味濃いからな……

一度休憩して自販機でジュースを買う。

 

「……なぁ、モブ子」

「おん?どうした?」

「お前なんか隠してるだろ……強いて言うなら人関係」

「……えっ、急に何」

 

……まさか。

 

「勘だけど……理由付けるとそうだな、お前さん雰囲気柔らかくなったな」

「……それがまた、何で……」

「何年おめーの友人やってると思ってんだよ。……その怪我も、それ関係だろ?」

「……そうだ、な」

「お前は積極的に交流しないくせに、一度知り合ったらすぐ身を粉にしちゃうからな~?」

「そうでもねぇよ」

「あるんだよ……なぁ、お前が良かったら、教えてくれないか?」

「……んー……私の一存じゃ決められないからな」

「そっか。じゃあ無理には聞かねーよ。……だけど、いつでも頼れ。運動だけは得意だからな」

 

本当に、ただ運動が得意なだけかぁ……?

 

「……ふふっ、ありがと。助かる」

「いいってことよ。

 

ところでそこの二人は知り合い?」

 

「「!?」」

 

えっ、誰?

 

「……ごめん」

「え、えっと……」

 

と、出てきたのはシロコさんとアヤネさんだった。

軽くお互いの挨拶を済ませ、なぜいるのかを聞いてみた。

 

「なんで二人がここに?」

「えっと……頼まれて……」

「誰に……まさか……」

「ええ、あの人です。……本当は自分で行きたかったみたいなんですけど、モブ子さんがいないと難しいらしくて……」

 

まぁたなぜ……

 

「あれじゃね?誰かは知らないけど、想い人が誰と遊んでるか気になる、みたいな?」

「んなアホな……いやあいつならあり得るか……?」

「自分への自信が凄い」

「そう意味じゃねーよ」

「ま、その人が一番の理由と見たね。そして、その人が嫉妬深いってのも分かった……帰ってやれよ、寂しがってるだろうから」

「……やだよ。たまにしかお前と遊ばないからな。我慢を覚えてもらうさ」

「いつか刺されるぞお前」

「なんでだよ」

 

「……まだそこまで長い付き合いじゃないけど、こんなに楽しそうなのは初めて見た」

「ですね……やっぱり、ご友人だからでしょうか……」

 

何を話しとるんだ。好きに話したらいいけども。

……んー、しかし、先生のわがままでやってきたのに、こいつに見つかって……うーん。

 

「二人とも、夜は済ませたんすか?」

「いや」

「まだ……ですね、お互い」

「ちょいと早いけど……地味子、今から行ってもいいか?」

「いいぜ。私も出すよ」

「別いいけど……まあいっか」

「あの……話が見えないんだけど……」

 

「飯、食いに行きましょう」

 

 

 

 

 

んな訳で、四人でファミレスに来ていた。

 

「私らで出すんで、好きなもん頼んでください」

「えっ、いいの?」

「私はお世話になってますし、いいんですよ」

「いや、お世話になってるのは私達の方じゃ……」

「めんどくせーなさっさと奢られろ」

「はい……」

「ごり押し過ぎる。じゃあ私チーズハンバーグ定食~」

「ん……じゃあ、焼き魚定食」

「わ、私は……とんかつ定食で」

「じゃあ頼みますね」

 

店員を呼んで、注文する。で、注文が来るまで雑談することにした。

 

「味噌ニンニクトマトソーダ焼きそば定食って何?」

「お前いい加減変なやつ頼む癖治せよ」

「だって気になんじゃん!」

「それでいつも後悔してんだろうが!」

「……お二人は、いつからの付き合いなんですか?」

「えっとねー……小学ん時にはもう会ってたっけ」

「おん、それで、席が隣で、一人で過ごしてたらこいつが『私地味子!しくよろモブ子!』って言ってきてさ。なんだこいつと思いながら、なんか面白く感じてさ、それでズルズルと遊ぶようになった……だったよな?」

「そうそう、懐かしいな……」

「なー……」

「へぇ……親友ってこと?」

「しん」

「ゆう?……確かにそー言えるかもな、な!モブ子!」

「は?」

「は?」

 

そんな感じで楽しく談笑してると一つの邪魔が入った。

 

「お前らっ、動くな!」

 

そう言ったのは、ヘルメットを被った不審者だ。六人いるな。

 

「あれは……!?」

「ヘルメット団……!」

「割と直球な名前なんだね?」

 

「大人しくしてたら、何もしない!おいっ、そこの店員!金を出せ!早く!」

「は、はい!」

 

「……強盗?」

「またなんでファミレスを……みみっちいな」

「そ、そんなこと言ってる場合ですか!止めないと……」

 

流石に、「先生襲ったのにこういうのは止めるんだ」とは言わなかった。それはちょっと可哀そうだもんね……

んー、私も酔狂持ってきてるけど……でも、そう焦ったりする必要は無いだろ。

 

「へーいそこのヘルメットgirl?何してんのー?」

 

地味子がいつの間にかヘルメットの奴らに近づいてた。なんであいつら複数いるのに固まってんだ……?

 

「じ、地味子さん!?」

「何を……私達はともかく、一人じゃ危ない……!」

「まあまあ、見ててくださいって……私は弱いですけど……」

 

 

「あ?なんだてめぇ。ぶっ飛ばされてぇのか?」

「何してんのって聞いてるだけだけど?教えてくれたっていーじゃーん!」

「見て分からねぇのか?金を集めてんだよ金を!集めて私達のヘルメットを一新あばっ!?

「り、リーダー!?」

「おいおい、敵かも分からん奴にペラペラ喋るなよ。後な……」

 

一度に五回、爆音が鳴り響いた。

 

「あまり強い言葉を使うな。弱く見えるぞ?」

 

 

「あいつは、そこそこ強いんで」

 

リボルバー……シャイニングスター(SAA)をクルクル回してる地味子を指しながら、私は言った。




新キャラ登場!


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第二話

いつも感想評価ここすきなどありがとうございます。
で、どうでもいい飛ばしていい雑談なんですけど、三つほど書きたい……というより書いてる小説があるんですけどね?(そのうち二つブルアカ)この小説にかまけてて、遅くなってるんですよ、はい。
だから本格的に遅くなる……って言いたいんですけどね?モブ子書きやすいんですよ。
やだあああ書かなきゃいけないのにぃぃぃ!!!

はい。


「――いやー、ラッキーでしたね。ご飯半額とか。サンキュー地味子」

「もっと感謝しろよ非戦闘員」

「は?戦えるが?」

「嘘つけ誤射野郎が」

 

あの後、店長だかなんだかが出てきてそうしてくれた。マジラッキー。

安くなった定食を食べ終わった後、私達は歩いていた。

 

「でも、地味子さんが被害を抑えて倒したおかげでそうしてくれた訳ですよね」

「ん、凄い早撃ちだった」

「そんな、凄い事でもないよ。練習したらできることさ」

「これでSAAじゃなかったらなぁ……リロードに手間かかりすぎだろ」

「でもお前も好きじゃんそういうの」

「大好き」

 

こいつの早撃ちにはよく助けられてたなぁ……一緒にいる時に襲われたら大体何とかしてくれたし。

それよりも凄い技術をあと二つぐらい持ってるんだけどなこいつ。

 

「でも、二人も強いでしょ?なんとなく分かる」

「私はそこまでですが……シロコ先輩は、はい、とてもお強いです」

「照れる……やっぱりお腹痛くなってきた」

「なんでだよ」

 

あー……強いもんな。()()より。

 

「じゃー……ここぐらいで私は帰りますわ。あっちなんで、家」

「そうですか、では、また機会がありましたら」

「うん、また」

「おう、またね。モブ子もまた」

「ああ……またすぐ遊ぼうな、地味子」

「……おう」

 

そう言って私達は手を振り、別れた。

 

「先生には、いい人だったって伝えておこう」

「そうですね」

「そういやあんたら先生に頼まれて来たんだったな……」

 

 

 

 

 

「……」

「ごめん、さっきからこの調子で……」

 

家に帰ってきて、リビングまで行くと、口を膨らました先生が顔を背け、どこかを見ていた。

クロコさんはそれを見ておろおろしながら報告してくれる。

 

「はぁ……すいませんね、先生。晩ご飯食べてきちゃいました」

「……別に、いいし。家で食べたらいいとか思ってないから」

「めんどくせーなお前」

「先生にそうやって言う人初めて見ました」

「こうなる先生も」

「たく……他人使ってまでやることじゃないだろ。そういうことは自分でやりなさい。っても一人じゃ厳しいかぁ……しゃーない。今度会うとき紹介しましょうか?」

「いいの!?」

「あいつが良かったらですよ……何でそこまで気になんだよ」

「え”っ、それは……」

 

あ、黙った。

言えないことなら別に言わんでもいいけども……

 

「とりあえず、このまま帰ってもらうのもあれなんで……えーっと、台所か、ちょっと待っててください」

 

アビドスの二人には待ってもらって……

 

「これ、お菓子の詰め合わせです。皆で食べてください」

「え、いいですよ、奢ってもらったの「持って帰れ」はい……」

 

「あれ新手のいじめじゃ?」

「ん……まぁ……うん……先生襲ってあれなら凄い優しい、っていうか……

「?」

 

そのままシロコさんとアヤネさんは帰っていった。またねー。

 

「……そういえば、その、地味子っていう子との出会い、聞いてみたいかも」

「先生ならまだしも、クロコさんがそう言うってなんか、違和感すげーな」

「私ならまだしも……?」

「ま、話しますよ」

「確か、小学からの付き合いなんだっけ?」

「あー……実は……」

 

 

それよりも前に一回、あるんすよね。

 

 

 

あれは、小学よりも前……三、四歳の頃だったか。

あの時は妙に人が多くて多くて……うるさい日でした。今思えば祭りだったのか……

私はその時、散歩をしてたんですけど……ああ、ここら辺です。昔からここ住みなんです。

それでなんとなく歩いていると、道の端でうずくまって耳を塞いでる、妙に厚い恰好したマスクメガネっ子がいて……私とおんなじくらいの。

まあ分かってると思いますけど、あいつっす。地味子。

気になって近づいてみたんですよ、こんな風に。

 

「へーいそこのうずくまってるgirl?何してんのー?」

 

『あっ、昔からそんな感じだったの?』

 

こんな感じです。続けますよ。

そんな風に声を掛けてみたら、顔を上げて私を見たんです。

で、耳を塞いだまま話しかけてくれました。

 

「だれ……?」

「私?あー……モブだよ。ただの」

「モブ……?モブちゃんっていうの?」

「えっ?……ああ、そうだよ。イッパイアッテナかよ

「イッパイアッテナ?」

 

結構ちっさい声で言ったんすけど、聞こえたみたいで、そこでなんとなく気付いたんです。

 

「いっぱい名前がある猫の事だよ……うるさいだろ?」

「え……?」

「今日いっぱい人いるしなー。大変だな」

 

多分、耳が過敏なんだろうなーとふわっとした感じですけど。

横に座ってできるだけ小さな声で話しかけ続けました。

 

「うん…みみだけじゃなくて、はだもいたくて……」

「肌?……ああ、全体的にあれなのか。目は悪いんだな?」

「うーん、たぶんそう。めがねつけてないととおくまでみえちゃうから……」

「まさかの逆。……もしかしてだけど、濃いもの食べれる?」

「こいもの?」

「あー……チーズハンバーグとか」

「あっ、なまえだけきいたことある!わたしには、はやすぎるって……いまはしおをなめれるようになること、だって」

「塩無理はマジでヤバいじゃん。……マスクは、においが?」

「うん、ちょっとすうだけで、きもちわるくて……」

「また辛いなそれ」

 

ずーっと、話しかけました。大体一つの音に集中した方が楽かなーみたいな感じで。

そんな風にしてると、名前の話になりましてね。

 

「なんで、モブちゃんはモブちゃんっていうの?どういういみ?」

「それはね、私が目立った人間じゃないからだよ。だから、モブ。サブみたいな意味かな……」

「めだたない……?いいな、わたしもモブちゃんみたいなあだながほしいな」

「別にいい意味じゃないんだけど。みたいなったって、響きが?意味が?意味なら地味とか、そこら辺だけど……」

「じみ……?……うん、わたし、じみ!」

「凄い自信たっぷりな自虐みたいになってる……というか地味でいいの?」

「うん、じみがいい!モブちゃんといっしょがいい!」

「ええ……いやそれでいいならいいけど……でも地味はなぁ……あ。

 

地味子は、どう?」

 

「じみこ……?うん、わたしじみこ!

 

じゃあ、モブちゃんはモブこちゃんだね!」

 

「モブ子?……いいな、それ。私はモブ子だよ。よろしく、地味子」

「よろしくね、モブこちゃん!」

 

これが、私と地味子のあだ名のルーツっすね。

 

『へぇ……だからどう考えてもおかしいあだ名なんだ』

『地味子って子が、モブ子の名付け親なんだね』

 

そうなりますねぇ……

後は、そこまで重要な話でもないんすけど……

その後、人の声とかが更に大きくなったんです。

 

「ひっ……!」

 

で、地味子が怯えて縮こまって、震え始めて……

 

私はすぐに抱きしめて『は?』邪魔すんな……抱きしめて……軽くですよ、肌弱いんで。で私の手を耳に当てて。

 

「大丈夫……大丈夫……」

 

小さくそう言い続けました。今思えばもうちょい良い方法あった気がしますねぇ。

 

『う、うらやま……!』

『先生……』

 

「大丈夫……大丈夫……」

「ぁ……」

 

小さく悲鳴っぽいのも出してましたし、やっぱり間違いだったのか……

 

数分ぐらいそれを続けて、やっと声が小さくなっていって、それで離れられたんですけど。

で、丁度その時遠くから高校生っぽい人がやってきて、地味子もその人の名前言ったんで、病院関係の人だったんでしょう。一人っ子らしいのに手も繋ぎましたし。

それで、ですね……

 

「……モブこちゃん」

「どうした?」

「……またあえる?」

「縁があったらな。いや、こういう時は……また会えるよ」

「!じゃあ、またね!」

「おう、また」

 

 

 

「――そう言って、手を振って別れたんです。小学生まで会わなかったですけど」

 

それで、話しは終わり。

 

「へぇ、なんだかロマンチック」

「どこがだよ……ま、この話あいつにしてないんすけどね。全然印象違ったし、あいつ覚えて無さそうだし」

「……悔しい」

「本当になんでだよ」

 

しかし……久々に思い出したなぁ。

私にとって、珍しく……

 

「重要な思い出だよ」

 

 

 

 

 

「……私にとってもだよ」

 

そう言いながら顔を俯かせる。あー暑い。

私は、近くにあった一番デカいビルの屋上であいつの方向を見ながら、声を聞いていた。

大体五㎞……それでもあいつの声は良く聞こえる。

 

「つーか、覚えてるよ。じゃなきゃ、あだ名なんて言わねーだろ……」

 

ったく、こっちが覚えてないかと思ってビビってたんだぞ。もー……言ってくれよぉ……

 

 

……はぁ、せっかくいい気分だったのに。

 

「私に何か用か?」

 

後ろに隠れてる奴にそう言う。

 

「……気付いていましたか」

「ちょっとばかり、五感が強くてね……なんでメイド服なの?」

 

振り返り、出てきた奴を見て、ちょっと……かなり引く。マジでなんでだよ。

 

「これは私の仕事着ですから」

「仮にメイド服を仕事着だとしても尾行はメイドの仕事じゃないだろ。ロベルタか何かか?」

 

あいつ全然目立ってたけど。

 

「ロべ……?いえ、あなたに何かしようというわけではありません。少しお伺いしたいことが」

「だったらおかしいことが二つあるな?まず一つ、名前を言ってない」

「それはそうですね、私は室笠アカネと申します。それで、もう一つは?」

 

「私から見て後ろ、約二キロ先」

 

「!?」

「人に銃口向けて話し合いましょう、ってのはおかしくないかい?……まだあったか。後は、横、数メートル一人」

「……どこまで気付いて」

「あんたが爆弾背負(しょっ)ってて、サイレンサータイプの拳銃を持ってる。横の奴はアサルト、G11のカスタム品か?また珍しい……後ろは対物か……いや、それにしちゃでけー口径だな?」

「……本当に、一般生徒ですか?」

「言ったろ、五感が強いんだ。文字通りな……ま、いいや。何の用だ?」

 

どうせあいつの事だろうけど。

 

「……あなたのご友人、モブ子様の事を、少々お聞きしたいのです」

 

ほらな。

 

「メイドとあいつ、関係なさそうだけどなー?」

「確かに、私達とは関係ありませんが……シロコさん、アヤネさん……アビドスの皆様が、モブ子様と突然関わり始めた……そのことをお聞きしたかったのです」

「そうか。本人に聞けよ」

「そうも思いましたが……少々、込みあった事情がありまして」

「なるほどな……で、あいつのこと聞きたいんだって?」

「ええ、良ければ……最近の変化、特に人との関わりをお聞きしたく……」

「アビドスっていうとこと関わり始めたってことしか知らねえよ。じゃあな」

 

「もしあなたの五感がその言葉通り、強いのなら……聞こえているのではないのですか?彼女の家の中まで。

もう一度言いますね。お話、お伺いしても?」

 

私はふっ、と笑い

 

「やだよ」

 

そう言ってそいつの横を通り過ぎる。

誰がモブ子の生活を壊すかよ。あいつから、壊していってるけどな……



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第三話

うわああああん他の作品の続き書けてないくせにまた書いちゃったあああああ!!!
ごめん……サオリ先生……ユニ……少しずつだけど進めてるからね……



あー、あー、今日は晴天なりー。雲一つない……いやあるやん、あそことか、あそことか。

で、今。何をやっているのかと申しますと。

 

「怜さん……」

「う……ひぐっ……」

 

私、先生、ノノミさん、セリカさん、ホシノさんの五人でゲームをしていました。ノノミさんとセリカさんがぼろ泣きしてらっしゃる。

っぱ名作だなこれ……つっこさんの曲もいい……

で、やっている理由だけど、結構ぎくしゃくしてたじゃん?先生とアビドスの仲。それが気になったんでゲームに誘いました。

仲を取り持たない?ゲームしてるだけですが?

ごちゃごちゃなんか言ってたけど無理矢理連れて来たぞ!暇そうだったし。

クロコさんはファンクラブと事態の解明だって。

そういえばなんで一人用のゲームを五人でやってんだ……?

 

「よーし次何やるー?月蝕かAIRか選ばしてやろう。個人的には濡鴉もいいんだけど評価……どうなんだろわかんね。あ、ACシリーズもありますよ。あと四八(仮)」

「なんでジャンル全部違うの?あと最後のはクソゲーじゃん」

「いいじゃんクソゲー。私もやったんだからさ……つーかお前は一旦降りろよ。邪魔だよ」

「……やだ」

 

先生は胡坐をかいてる私の上に座ってる。邪魔ぞ。

 

「やだじゃねえよ……あっ、もうお昼じゃん、お昼作ってきますね」

「あっ……じゃ、じゃあおじさんも手伝うよ。まだ腕、痛むでしょ?」

「……まあ確かに。今日冷やし中華なんで簡単ですけど、せっかくなら……ほら、そういうことだから降りろ」

「……わ、私も手伝う」

「じゃあ手伝ってください。二人は他のゲーム選んでてください……あ、DVDもありますよ。あれとかいいっすよ、ネクサス」

「う、うん……ありがとう」

「な、流れるように行きましたね……」

 

台所で三人で冷やし中華の準備をする。

いや三人もいらねえよ。部屋大きくしたっつっても台所は変えてないしコンロとかも増やしてないのよ?

こん中なら私が邪魔かぁ……?でも今の二人を二人っきりにするのもなぁ……

まあしゃーないか、包丁取ってーっと、野菜切ろ……

 

「「ダメ!」」

「喧しっ」

 

急に大声出されてホシノさんに組み敷かれ、先生に包丁を取り上げられる。

 

「危ないからっ、私がやるから、ね?」

「そうだよ、後はおじさん達がやるから……」

 

……そっかぁ。

 

 

 

 

 

「お前ら普通に考えて狭い台所でさ、刃物持ってる私をなんやかんやした方が危ないのは分かるな?」

「「はい……」」

「つーか止めるんだったら普通に声かけろよ。それぐらいなら離すよ普通に。そこまで人の言うこと聞かないわけじゃねえよ」

「「はい……」」

 

私は二人(バカ)を正座させて説教する。お前らホントに学生と教師だったの?

 

「あんな?二人ともな?特にホシノ。お前最近妙に私のことを守ろうとしてる節あるけどさ、言ったろ?自分本位過ぎるんだよって。あのね、相手の気持ちを――」

 

「チュルチュル……凄く怒られてる……」

「……んぐっ、私達は怒らせないようにしましょう……」

 

「――とにかく、分かったか?分からなくてもいいから覚えとけ?先生は私にべったり過ぎだ」

「「はい……」」

「……今日はこんなもんでいっか。昼食え」

 

こんのバカが……

……ん-でも、先生いいの目印になるな。ちょっと前までならちょっと怒っただけで泣きそうになってたけど、今なら耐えられるか……

大人に戻ってる……ってことなのかなぁ……

 

「ね、ねぇ……」

「ん?」

「足……痺れちゃった……」

「……ホシノさんも?」

「……う、うん」

「……まあ、これは私のせいか」

 

怒らせなかったらいい話だったんだけどな!

 

「先にホシノさんな」

「え?わ、わぁっ!?」

 

脇を持って机まで運ぶ。かる……ちゃんと食ってる?

先生も同じように運ぶ。かる……ちゃんと食っていや普通に重いわ。食ってるもんな先生。

私も食お……いただきます。ウマウマ……

 

 

食べ終わり、ノノミさんとセリカさんが食器を洗ってくれるそうなんでくつろぐ。

うーん……お腹いっぱいだ。

で、残りの二人というと。

 

「……」

「……」

「……」

 

左にホシノさん、右に先生、両手に花だな。重いよ。

肩に頭を乗せて寝るな、とは言わないけどさぁ……君ら喋らない?思えば先生あんまりアビドスと喋ってないじゃん。

……どーしよっかなー……あ。

 

「よいしょ……っと」

「きゃっ!」

「何!?」

 

二人の頭を仰向けに私の膝に乗せる。

はい、膝枕。

 

「これなら顔も見えないし、言いたい事も言えるでsyめっちゃこっち見るじゃん……」

「だっ、だって……」

「何話したらいいか分かんないし……!」

 

子どもか。先生はそういうの得意だったでしょうが知らんけど。

 

「しょうがねぇな……じゃあ二人の出会いが聞きたいです。どういうことがあったんすか?」

「……えっと、あれは――」

 

 

 

「先生背負われて運ばれたんすね……」

「うん、迷子になってね……」

「あの時はすっごいダメな大人が来たなーって思ったよー」

「否定できないっすね」

「あはは……」

 

 

 

「……それで、柴関まで来て、もう迷惑だったんだから!」

「ツンデレさんなんすね~」

「誰が!」

 

 

 

「……よくもまぁ、無事でしたね、銀行強盗なんかして……」

「ええ、シロコちゃんの強盗スキルが無かったら危なかったです!」

「何を言ってるんだクリスティーナ……」

 

 

 

途中で戻ってきた二人も混ぜて、昔の話を聞く。

へー、かなりの冒険譚じゃん。轟轟戦隊。

……あれ、何で数年も経ってるのに年を取って

 

「ぐふぉ!?」

「どうしたのモブ子!?」

「き、気にしないで……」

「本当に何が……?」

 

ど、どこからかぶん殴られた感覚が……!

 

「と、ともかく……先生はアビドスの大変な問題を解決した、いわば救世主みたいなもんなんすね」

「そうだね、恩人だよ」

「……」

「目だけでも言いたいことは分かるよ」

 

これしかり、クロコさんしかり、お世話になってばかりなのになぜ……?なんて思ってるわけ無いだろがはは。

 

「しかし、先生凄いっすね。そらシャーレなんだから得意かもしれませんけど」

「えへへ……そ、そんな凄い事じゃないよ……」

「じゃあ凄くないな」

「えっ!?」

「冗談だよ」

「なんだ、冗談かぁ……」

「……二人は、どんな風に出会ったんですか?」

「え?そうだな……せっかくなら話しましょか」

 

今度は逆にこっちの話をする。

て言っても、大した期間は過ごしてないし面白い話は無いと思うけど……

 

 

 

「最初のころはご飯も簡単なもんばかりでしたねー」

「……ごっ、ご飯は何もしてないからね!?」

「何も言ってないやろがい」

「そうだよ、他の学園だしね」

「何も聞いてないやろがい……」

 

 

 

「……モブ子って怖いもの無しって思ってたけど、ヴァルキューレにはビビるのね?」

「犯罪者と警官どっちにビビる?」

「……そうね……」

「どっちも怖いと思いますけど……」

 

 

 

「――よく黒服も言うこと従ってくれてるね」

「うん、むかつくことも多いけど、よくゲームで遊ぶし」

「遊ぶのはいいんだけどことあるごとにタバスコとかハサミ投げるのやめなさい。確かにデリカシーなし集団だけど」

「先生もそういう攻撃的なとこあるんですね」

 

 

 

「……えっ、ホシノ先輩が、の、えっ?」

「……」

「痛かったすね普通に。まああれぐらいなら耐えられますけど」

「本当にどういうメンタルしてるのよ……」

 

 

 

「……うーん、そこまで濃くないですね」

「「どこが(ですか)!?」」

 

いやー、アビドスに比べると普通も普通だな!

 

「でも、いつも一人……地味子を除けばですけど、でしたから結構新鮮で面白いですよ。こんな感じなんすね、他の人と暮らしたり、遊ぶのって」

「……モブ子は」

「?」

「どうしてモブ子は一人でいたの?」

 

ん……どうして、か。そろそろ足痛くなってきた。

二人の頭を持ち上げ、座らせる。

 

「大した理由はないですよ。……ただ」

「ただ?」

 

「一人のほうが楽だった。それだけです」

 

私は、そうだった。

 

 

 

 

 

私は昔から……自分で言うのもあれだけど、妙に頭が良かったんです。

いろいろ達観してたっていうか……まあ、いろんな人と関わってたこともあるんですけど……

これは、保育園のころの話っすけど。

 

「ねぇ……モブちゃん、あそぼ?」

「ん、いいっすよ。何する?」

「おままごと!モブちゃんおとうさんね!」

 

「まった!」

 

「なになにびっくり」

「モブちゃんはわたしとあそぶの!」

「いや!わたしと!」

「あらあら、三人ともどうしたの?」

「あ、優しそうな先生。すいません、なんか二人とも私と遊びたいみたいで……」

「けっこんするのはわたし!」

「わたし!」

「この数秒で何があった」

「あらあら……二人とも、気持ちは分かるけど、モブちゃんを困らしたらダメでしょ?嫌われるわよ?」

「「ううぅ……」」

「ありがとうございます先生。助かりましt待て気持ちは分かるってどういうことだ」

「あ、あらあら……」

「なんで顔を赤らめんの!?」

 

こんな感じのことがあったり、小学の時のバレンタインでは

 

「ねっ、ねぇ……モブ子ちゃん」

「ん?どしたんすか?」

「これ!バレンタインチョコ!」

「えっ、私作ってないんだけど」

「い、いいの!受け取ってもらえたら、それだけで……」

「どうしてそんな失恋みたいな……じゃあ、ありがたく」

 

「待った!」

 

「なになにびっくり」

「わ、私のを受け取りなさい!」

「そんな……!も、モブ子ちゃん、どっち選ぶの!?」

「どっちも受け取れられないの?ペルソナ方式なの?」

「そこの三人!何をしているのですか!」

「あっ、厳しそうな先生。そういやこの学校食べ物持ち込み禁止だったな……」

「そうです!ですから二人とも、これは放課後まで没収です!そしてすぐに教室に戻りなさい!」

「「は、はい……」」

「……行きましたね。モブ子さん」

「何で私も行こうとしたら腕掴まれてんの?そしてなぜ指が怪我しまくりなの?」

「こ、これを……」

「最後になぜ顔を赤らめながらチョコを!?」

 

っていうこともありまして……あとは

 

 

 

 

 

「ごめんちょっと待って」

 

話を続けようとするとセリカさんに止められる。なんでだよまだ中学あるぞ。

 

「……モテすぎじゃない?」

「モテすぎ」

「なんで!?確かにアンタがヤバい行動力の持ち主なのは知ってるけど!何したの!?」

「えー?保育園のミユキちゃんとユリちゃんは何だったか……せいぜい悩み聞いてあげたくらい?」

「ま、まあ、それぐらいの年ならそうなるか……小学の時は?」

「レミちゃんとリーちゃんか。不良に絡まれてたんで通報したりしてなんとかしたくらい?」

「小学生もそんなもんか…………いや教師は?」

 

教師ぃ?あの二人か……確か保育園の方は。

 

「メンタル弱いくせに保育士になったせいで精神病みそうになった時に慰めたくらいか……?二人きりになった時だけママと呼び始めた瞬間は流石にビビったな……」

「……もう一人は」

 

小学の方は……えーっと。

 

「犯罪に巻き込まれてたとこを助けたくらいか?エッチなビデオ撮られかけてましたね……あれはぎりぎりでした。二人っきりになった時だけお姉ちゃんって呼び始めた時はまたかってなったな……」

 

……うんまあ自分でも分かってるけどさぁ……

 

「なるほどね……これは確定ね」

「そうですね、モブ子さんは……」

「とんでもない人たらしだね」

「浮気者……」

 

うわー言い返せねえー。でもそんな簡単に落ちる方が悪くない?(クズ並感)

あと先生とも付き合ってねえからな。

 

「……んまぁ、そんな感じで、いろいろ人と関わるのがあれみたいなので、最低限にしてたんですよね、関わり。思えば地味子はそんな気は無かったな……?」

「……まるで主人公みたいだね」

 

だとしたらご都合みたいな主人公だな、二次創作キャラかよ。

……嬉しくねぇ。



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第四話

作者です。いつもお世話になっております。
アンケート、感想ありがとうございました。
アンケートや、皆様の感想を参考にして考えまして、結果はですね、
このまま続けます。意外と皆ハッピー好きなんだ……皆傷つくとこだけ好きなんだと思ってた……
ですが、このまま続けるだけでなく、ifルートとして、二の案のストーリーをこの小説のif欄に投稿したいと思っています。そちらは少し遅めの投稿になると思います。
感想は全ては返せませんでしたが、全て読んでいます。これから先もよければお願いします(批判含め)

皆様、いろいろとご迷惑をお掛けし、申し訳ございませんでした。

R-18は書きません。荒れたら怖いから。

あと本編でモブ子が傷つかないとは言ってません。


住む場所よりも高い建物が多く立ち並び、道行く人も何となく少し未来に生きているように見える。

見慣れないそんな場所にも、河川敷というのはあるそうで。

 

「やっぱり、最強武器はKARASAWAです!」

「何を言ってるんだ、とっつきなんだよなぁ……」

 

わたくしモブ子、ミレニアムの河川敷で最強論争をしております。

なーんーでー?

 

 

 

 

 

始まりは学校の授業でだった。

 

「――というわけで、ミレニアムサイエンススクールさんのところにお邪魔することになりました!」

 

担任がそう嬉しそうに言った。

何がというわけで?まあ私が話を聞いてなかっただけなんすけど。

というかなんでお邪魔?ゲヘナとトリニティとかじゃない限り、誰でも入れるでしょ学園って?

そんなことを考えてると、頭に何か当たった。

当たった物は上手に机に落ちる。何かと思えばくしゃくしゃに丸められた紙だった。

広げてみれば、文字が。

 

『ミレニアムの人の創設やらなんやらの話を聞きながら有名人や部活の紹介をするらしい。だとしてもなぜ?』

 

私はこれを投げてきたことになぜを浮かべるぞ地味子。んやまぁ助かりますけども。

忘れがちだけど、ほとんどの学園は先生捜索中で慌ただしいはず……

 

……私かぁ?

 

いやいや、考え過ぎか……アビドスの件もあったしなぁ……

 

「明日ですから、今渡したプリントに書いてあるものを準備してくださいね!」

 

前もって言えや!

 

 

そうして学校が終わり、家に帰って先生達に説明する。

ごねるだろうなぁと思いながら説明すると

 

「分かった、気を付けてね」

 

意外とさっぱり。

理由を聞いてみれば……

 

「……最近、べったりだなー、と思って、モブ子に。だから、自分を変えるためにも……どっちかっていうと元に戻るだけど、だから、頑張ってみようかなって。皆の為にも」

「ククク……今までの行動を動画にしてたのでそれを見せたら急にこんなhあぶなっ!?」

「余計なことを言うな黒服我々にも被害がくr目がぁ!?」

 

面白集団め……キヴォトス外の大人って皆こうなの?

ともかく、大丈夫そうなんで普通に行くことになった。アビドスもなんとか折り合い付けろよ。

 

 

 

 

 

そうして来たわけだけども、案内は太ももが太い女の子だった。

学校の中に入っていろいろ聞いたりするけども、実際五割も聞いていない。

だって……あんまり興味ないし……なんか凄いのは知ってる。

時々聞こえる爆発音とそれを聞いた太ももさんが死んだ目になってることは知らない聞こえてない。

数十分ほど話を聞いた後、自由行動になった。興味のある部活を見に行ってもよし、気になることを聞いてもよし、いろいろよし。

そういうことらしいので、地味子と一緒に回ろうと言うと。

 

「悪い、ちょっと気になることがあって……一人で行ってもいいか?」

 

と言われたので悲しく一人で回ることになりました。でも一人慣れてるしいいや。

 

 

私はいろいろ見て回る。

なんかおもろいものないかな~そんなことを考えながら歩いていると、いい匂いがしてきた。

焼き芋だ。秋じゃないのに?

まあそんなことはどうでもよく……どこかなと探す。

 

めっちゃ遠かった。

 

どこだどこだと探してみれば、河川敷にトラック型の屋台が。

なんで?どう考えてもそこやりづらいだろと思いつつも買いに行こうとすると、急に発進し、どこかへ行ってしまった。

うーん踏んだり蹴ったり。

どうしよっかなーと思いつつ、その場に立っていると、

 

 

「……ぐすっ、うぅ……」

 

 

近くから泣いてる声が聞こえた。

なんとなく気になって探してみると、下の方、河川敷の坂になっているところから聞こえた。

五秒考えた後、近づいてみた。

 

「……うぅ……うぇえ……」

「あのー……大丈夫ですか?」

「う……誰ですか?」

「ただの一般人、モブですよ……髪長っ」

 

ほとんどの髪の毛地面についてない?身長的に立っても付くでしょそれ。

 

「ぐず……モブ……つまり村人ですか?」

「いえ町人です。じゃなくてぇ……横、いいです?」

「はい、大丈夫です」

「よっこいしょっと……」

 

私は横に座り、遠くを見る。

話しかけはしない。

すると、彼女から話しかけてくる。

 

「……あの、アリスに何か用があったのでは?」

「別に?イベントがありそうだから近づいただけですよ」

「確かに、イベントがありそうなところにはついつい近づいてしまいます。でも、きちんと準備をしていないと、急な戦闘に対応できませんよ!」

「そう思ったんですけどね、どうやら時間制限があったみたいなんで」

「むむむ、それなら仕方ないですね……」

 

こいつおもろいな……

そんな感じで、雑談だけ、繰り広げる。

 

 

アリスさん。

口を開けばゲームみたいな言葉が出る系少女。

いい子な雰囲気を感じ取れるこの子がなぜ泣いていたのか。

ゲームが好き、かわいい。

その他一切のことは分かりません!

 

「……モブ子さんは、どうしてアリスに話しかけたのですか?」

 

アリスさんが先に聞いてきた。

 

「真実を言うなら、泣いてるのが聞こえたから。……まあ、理由は聞きには来てないですけど」

「どうしてですか?気になるなら、聞いた方がいいのではないですか?」

「大して仲良くもない、それこそ会ったばかりの奴に言う人なんてほぼいないでしょ。だから、好感度を上げに来たんですよ」

「なるほど……とてもいい考えです!」

 

さすがの私でも、泣いてる小さな子を見放せないんだよなぁ。

……え?高校生?マジ?

 

「……では、少しだけ、聞いてくれますか?」

「いいですよ」

「……アリスは、大切な人を傷つけてしまったんです」

「大切な、人?」

「はい、

 

先生です」

 

……おん。

 

「あれは……ケイが……いえ、アリスの体で、アリスにもそういう心は少しは、ありました。……謝りたいんです、先生に。でも……」

「いなくなってしまった……と」

「はい……」

 

なんだこの子、まだいい子じゃないか……聞こえるかアビドスー?

いやあいつらも反省してるから責めるつもり無いけども。

 

「……アリスは、間違いばかり起こしてしまいました……勇者になると、誓ったのに……」

「……勇者?」

「はい、アリスは勇者になりたいです!……でも……アリスは……これじゃ……魔王です……あの頃に戻ってしまう……勇者になってもいいと、先生は言ってくれたのに……」

 

……よく分からんが、多分普通の子じゃないな。

少し、彼の話をしてみようかな。

 

「……とあるところに、とある少年がいました」

「モブ子さん?」

「その少年は、親の顔も知らず、育っていきました。少年は、そんな自分に悩みながらも、普通の少年のように、ヒーローに憧れて育ちました。とある日のことです。少年の住む町に怪物が現れました。町を破壊する怪物。ですが、少年はひょんなことから戦う力を手に入れ、無事に倒しました」

「……」

 

私の突然の語りを静かに聞いてくれるアリスさん。

 

「少年は、その力を手に入れた後、とあることを知りました。……少年は、過去に消えたはずの、悪の皇帝の息子、正確に言えば、クローンでした」

「魔王……みたいなですか?」

「はい。言い換えれば魔王の子どもですね。しかも、生まれた理由は皇帝を復活させる器にすぎませんでした。怪物との戦いも、全て仕組まれたものでしかなかった」

「そんな……」

「それを知った少年は、諦めてしまいました。憧れていた、ヒーローを。ですが……彼には、仲間がいました。励まし、助け合った仲間が。彼には、子どもの頃から憧れたヒーローがいました。親がいない自分にも、勇気をくれたヒーローが。そうして少年はもう一度立ち上がり、皆を守るために。そして、悪の存在である、父から逃げず立ち向かい、その名を背負うために」

 

私はここまで話して、背筋を伸ばす。

 

「それで、どうなったのですか?」

「別に?ありきたりな話ですよ。父を倒し、世界を守った。……私が言いたいのは、あなたがどのように生まれようが、結局は行動し、どう生きるか。何を目指すか。

 

ジーッとしてても、ドーにもならないっすよ?

 

それで、どうしますか、あなたは。ここで泣いているか、それとも……」

「……一人じゃ、アリスは何もできません。でも、アリスにも、仲間がいます。アリスの罪を話して、一緒に探すのをお願いしに行きます」

「……そうですか」

 

罪に向き合い、行動しようとする……やばいやばい好きになっちゃう。

だってここまで自分で正しい道を……いやまあ多少助言したけど、それでもこんなすぐに行動できるとは……

アリスさんか私が男だったら告白してたな……

 

「モブ子さん!」

 

そんなことを考えていると、アリスさんから声を掛けられた。

 

「モブ子さんも、仲間に、なってくれませんか?」

「なるなる喜んで」

 

あったり前田のクラッカーじゃん……

 

 

 

 

 

というわけで、パンパカパーン。

モブ子は勇者アリスのパーティーに入りました。職業(ジョブ)は暗黒騎士です。コンゴトモヨロシク。

 

今はアリスさんに連れられ、彼女の所属するゲーム開発部に向かっていた。

 

「ここです。アリス達はいつもここでゲームをしています!」

「開発は?」

「いつもギリギリです!」

 

すっごくいい笑顔。

地獄を見ることにになるから直した方がいいぞその癖。

アリスさんが扉を開けて入り、私がその後ろについて入る。

中には、二人のそっくりな少女がいた。

 

「……アリス!?元気になったの?……あれ、その人は?」

「紹介します。パーティーに入ったモブ子さんです。モブ子さん、ピンクがモモイ、緑がミドリです」

「新人のモブ子です。コンゴトモヨロシク」

 

……ゲームで、赤系統と緑系統の姉妹……?妙だな……

 

「あっ、どうも……モモイです」

「ミドリです」

「後はあそこのロッカーに部長のユズがいます!」

「蛇かな?」

 

ガタガタと揺れるロッカー。どっちかってーとホラーだなあれ。

 

「それで、アリスちゃん。どうしたの、その人を連れて?」

「……アリスは、今から罪を告白します。……多分、先生が消えた理由です」

「また早速だな」

「……どういうこと!?先生が消えた理由って……」

 

 

「……アリスは先生を……襲いました」

 

 

なんかこの部屋暑くね?換気してる?




久々に楽しく書けた気がする…


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第五話

アリスさんは語った。

どのようなことをしたのか、どのような結果になったのか。

苦しそうに、それでも一生懸命に。

 

そして、話が終わる頃には、泣きそうになりながらも、気丈に振る舞っていた。

……なるほど。

 

「アリスさんはスペリオルドラゴンなんすね」

「ちゃんと話聞いてた!?」

 

勇者と魔王が一つにとか、もうそれしかないじゃん。

いまんとこ、その魔王さんがやらかしたみたいだけど……

 

「聞かれてるんですよね?ケイさんって人に」

「はい。でも、あの頃からずっと出てくる気配はなくて……」

「それってどっちが主導権握ってるんす……あー、すいません」

 

そもそもアリスさんが制御できるなら止めてるか……

それより、他の子だ。

……多分、同じだろうけど。

 

「アリスちゃん、それって……本当、なんだよね」

「はい」

「そんな……アリスとケイが……」

 

「あんたらはやってないんすか?」

 

「……え?」

「別に、アリスさんが襲うなら、あんた達もやってそうだなー、と」

「モブ子さん、皆はそんなこと「やらない、って確定できますか?」あ……うぅ……」

「私は別に、先生やあなた達のこと深く知りませんよ。だけど、私はアリスさんのパーティーメンバーで、アリスさんの手助けをしたい。なら、心苦しいですが、疑います。アリスさんが想う、先生の害にならないか」

 

私はそう言って、そこにいる全員の目を……ロッカーは除き穴を見る。間違えてたら本当に申し訳ないけど、アリスさんのためだから我慢して。

変わろうとする子に私は優しいぞ。

 

「わ、私は……」

「……私達も、やりました」

 

どもるモモイに被せるようにミドリがそう言葉を放つ。

……えっ。

 

「言うの?」

「聞いたのそっちからじゃないですか!」

「いや聞いたけど、大人しく言うとは思わなかった……それで、どうしたいんすか?」

「…………私は……

 

もう一度、先生を手に入れたい」

 

「ミドリ!?」

「私は先生が好き。誰にも……渡したくない。ホントなら、お姉ちゃんもだけど……お姉ちゃんは、欲しくないの?」

「そ、れは……」

 

なるなる

ほどほど

 

駄目だな?どうしようか、説得しかないが……

 

「モブ子さんこそ、そんなことしてないんですか?」

「なんで私が先生やらなきゃいけないんすか」

「……妙に、知ってる風ですね」

 

やっべぇ、ガバった。なんとか話を……

 

 

「……アビドス」

 

 

……どこでそれを。

 

「な、なんでアビドスが?」

「C&Cの人達がそんなことを言っているのを聞いたの。……他には……

モブ子、というのも」

 

最近すごく見つかるみたいなんだけど何?あれ?こういうのないと進展しないみたいな?アニメとかゲームとかのストーリーで起こるガバみたいだね。

 

「先生の居場所、知ってるんじゃないですか?」

「……さあね」

 

どうする?この場所も離れられないだろ……

どうしようかと頭の中をフル回転させる。

 

 

 

瞬間、部室の扉がぶっ飛んだ。

 

 

 

「なんで???」

「モブ子!」

「なんで?????」

 

そして現れたのは地味子だった。

なんで??????????

地味子は私の首根っこをつかみ、引っ張りながら、どこかへ走る。

 

「逃げるぞ!もうバレてるからな!」

「バレてるって……」

「盗聴器だ!早くしないといろいろ来るぞ!」

「いやだから何がバレてるって!?」

 

「先生だよ!」

 

「なっ、なんでそれ知って……」

「……絶対、後で話す」

「……分かったよ」

 

とりあえず今は逃げることか。

 

 

 

 

 

「っ、やっぱり何か知ってる!追いかけようお姉ちゃん!」

「えっ、あっ、うっうん!」

「ミドリ、モモイ!……行ってしまいました…………

 

……?これは……」

 

 

 

 

 

私は全速力で地味子と廊下を走る。

 

「で!いまどこ!?」

「とりあえず、出口を目指してる……!止まれ!」

 

地味子の言葉で止まあっぶねっ!コケるかと思った。

 

「あれ?気づかれてた?」

「さすがの感覚ですね」

 

前から、人影が二つ現れる。

 

メイドだった。

 

「……なんでメイド服なの?」

「これが私達の仕事着ですので……」

「仮にメイド服が仕事着だとしても捕縛はメイドの仕事じゃないだろ。ロベルタか何かか?」

「……前に似たようなのを聞きましたね」

 

よく見てみれば、片方はメガネに服越しからでも分かる巨乳。

そしてもう片方は凶器だった。

 

「えっ、エッチだーー!!??」

「やかましい!……気持ちは分かるけど」

「……とりあえず、名乗らさせてもらいますね。私、C&Cのコールナンバー03でございます」

「01のアスナだよ!」

「……エージェント?」

「うんっ!」

 

ごめん待って待ってめっちゃ言いたいことあるわ。

まずエージェントでメイドはもうエロゲじゃん。でエージェントって言っていいの?そしてなんで名前言ったの?で01?私を止められるのはただ一人ってこと?

 

「……やべぇ言いたいことあるけど纏まらねぇわ」

「ギャグみたいだよねあれ」

 

そう言いながら地味子は二発撃ち込んだ。

03さんは避けながらもかすってしまったが、01さんは余裕そうに笑いながら避けた。

 

「あはは!すごい早撃ち!」

「……なるほど、奴さんヤバイな?」

「ちっ、面倒だ」

 

地味子は手早く二発リロードする。

私も腰から酔狂を引き抜く。

 

「話し合いを入れるつもりでしたが……あなた達がそういう判断ならば、しょうがありませんね」

 

そう言って03さんは何かを投げてきた。だが、地味子がすぐにそれを撃ち抜く。

穴を空けられた何かは、爆発した。

 

「ダイナマイトか……」

「どこに仕舞ってんねん」

 

つーかそれを人に投げるなや!作った人が悲しむぞ!

悪いけど、こっちも撃たせてもらう。きっと面倒なのは……

 

「っ!?」

 

01さんだ。野生の勘か知らないが、某ニュータイプみたいにギリギリ避けするなら、追尾する銃弾でどうだ!

 

「いたた……すごい!曲がった!」

「すごいよねこれ、どうやって作ってんだろね?」

「特注品なの?」

「そうそう」

「仲良く喋っとる場合か!」

 

それはそう。

……だけど、これどうする?

地味子はともかく、私は戦闘の素人、相手はプロっぽい。

……そういや逃げたらええじゃん。でも、どうや……消火器あるな。

私はすぐに消火器を撃って爆発させる。

 

「!?けほっ、けほっ」

「今だ!」

「やめろぉないすぅ!」

 

今のうちに私達は走って横を通りすぎる。

 

「逃がさ「おらっ!」わっ!」

 

なぜかこっちを捉えてた01さんは地味子の早撃ちで足止めする。

 

 

わっせ、わっせ、やべぇ死にそう。こちとら普通のおにゃのこやぞ。こんな走れんわい。

 

「待ちなさい!」

 

でも後ろから追手が来てるしなー。あぶねぇな!弾丸!

……あれ、あの太もも……ああ、あの時の。

 

「あの太もももお前が目的だったんだろうよ。正確には先生か」

「やっぱそうか、急な交流は」

 

んー、そもそも大した防衛やらもしてなかったし、妥当か。

 

「しかし、邪魔だな」

 

地味子は天井に構え、何発か撃つ。

それは何度か跳ねる音を出して、最後には

 

「きゃっ!?ちょ、跳弾!?」

 

全弾、目的に命中する。

地味子の得意技その二、『跳弾』。大した計算もせず無意識的に出来るらしい。

そこまでいったらもうあれじゃん、山猫じゃん。

 

「……そういうことか」

 

だけども件の地味子は険しいお顔。

ガラス張りの廊下に出たからか?確かにこんな開放的だと落ち着かないよね。

 

「もっと早く分かったでしょ、私……!」

「どしたん、話聞こか?」

「追手にしては、足の遅い太もも一人っておかしく感じない?近くにはメイドもいたのに」

「……まさか」

「うん、誘い込まれた……!やらせない!

 

庇うように私とガラスの間に飛び出し、ガラスの方に一発放つ。

ガラスが割れる。超こえぇ。

 

「……で、当てた?」

「うん、困惑してるうちにさっさと行こう」

 

 

 

 

 

「……私の弾丸を、弾丸で……弾いた?」

 

 

 

 

 

地味子の得意技その三、『弾丸弾き』。相手の弾丸を自身の弾丸で弾く。

……あれ、よくよく考えたらヤバくね?

だってさ、今もかなりの距離の奴に気付いてたみたいだし、それを狙撃したし……

 

「撃ってきた奴どんな格好?」

「褐色ぴっちりメイド」

「頭ちんちんかな?」

 

こいつ確か五感が……まあいいや。

 

「それより、早く逃げよう。すぐに撃ってくるはずだから」

「あいあい」

 

地味子に促されるようにまた走ろうとすると

 

 

「お待ちください」

 

 

またメイドが現れた。

 

「そろそろ飽きてk今度は薄着だな」

 

メイドって多種多様~。

 

「このまま、捕獲されてくださいますか?」

「されるなら逃げてないでしょ」

「そうですね。では……」

 

先輩。

そう言ったメイドさんの後ろから何かが飛んでくる。

すぐに私の前に地味子が出る。

 

「おらぁ!」

「くっ……!」

 

飛んできた何かは地味子に蹴りを放ったみたいだ。

両腕をクロスして受けたみたいだが……!?

私は何かに向かって撃つ。

 

「チッ……」

「……助かった、モブ子」

 

そのまま地味子に二丁のサブマシンガンを放とうとしたみたいだから、遮るために撃ったが……それは正解だったみたいだ。サスペンシブアクト……

 

「で、またメイドと……えっ、なんでスカジャン?」

「ああ”?文句あんのか?」

「なんでキレ気味なんだよ。アスカか。あっ、ダイナとか運命じゃないよ?」

「何の話だよ」

 

ていうかメイド多くね?そして武闘派すぎね?

 

「そういえば、さっきもメイドに会ったんすけどね」

「……そいつらがどうした」

「コールナンバーてのを名乗ってくれたんすよ。一人は名前も言ってましたけど」

「……おう……アスナか

「ちゅーことで、あんた達にもあるんすか?そういうの」

「よくそういうの物怖じせずに言えるね……あの人強いよ」

 

気になるものは気になるんです。

 

「コールナンバー04です」

「あ、言うんだ」

 

ぶい、とピースしながら教えてくれる04さん。きゃわー。

 

「てめぇな……はぁ、コールナンバー00(ダブルオー)だ」

「そっちも教えてくれるんだ……モブ子?」

「……ガンダムか!?」

「「は?」」

「そうか……未来を切り開く……!俺が、俺達が、ガンダムだ!」

 

「……そいつヤバくないか?」

「……」

 

おーい、かわいそうな奴を見る目をやめろー。

 

「はぁ、もういいだろ。行くぞ、04」

「別に私一人でも問題ありませんが?」

「めんどくせぇな!」

「リーダー!」

「はぁ、はぁ……早いですね……」

 

なんかわらわら現れてきたな。メイド勢ぞろい。

 

「少し計算が狂ったけど、問題ないわ!」

「太ももも来た」

「誰が太ももよ!朝名乗ったでしょ!ユウカ!」

 

うーん四面楚歌。どうしよっかなー。

 

「もうあなた達に勝ち筋は無いわ。大人しく捕まりなさい」

「聞きたいことあるんだけど太もも」

「ユウカ!」

「こいつ、関係ないんだよね。こいつだけ逃がしてくんない?」

「モブ子!?」

「へぇ……」

 

「こいつは私の唯一無二だ。私が腹を抜かれようが頭を潰されようがそんな些細なこと気にしないがこいつだけは駄目だ」

 

「モブ子……」

「……そうしたら、捕まってくれる?」

「おう、捕まるだけな」

 

口を割るとは言っていない。

そんなことを考えていたら、手を握られる。

 

「絶対離れないから」

「やっぱ無しってよ」

「まあ、逃がすつもりもないから、関係ないけれど」

 

駄目じゃぁん。

まいっか。やることは一つ。

 

「どうにかして逃げるかー。超ピンチだけど」

「……じゃあ、やるか」

 

そう00さんはそう言い、全員が戦闘態勢に入る。

 

が、何かが降ってきた。

一枚の紙だった。

 

「……何これ?怪盗の予告状?……『巨大な光の剣が混乱の地に現れる時、同じく私も現れます。

――慈愛の怪盗』?なんこれ」

「……まさか!」

 

 

 

どこからか、青白く、太いビームが飛んできた。

 

 

 

そのビームで周りに砂煙がすっごいごとになってる。

下手に動けないな、と思いながらこのまま警戒しながら、地味子の横に立っていると

 

「こっちです」

 

聞きなれた声が。

 

「ワカモさん!?」

「早く!」

 

ワカモさんに促され、私と地味子はついていった。

よく分からないけど、逃げれられたんか?



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第六話

いつも誤字報告感想評価ここすき(デビルマン)していただきありがとうございます。
個人的に聞きたいことあるんですけど、感想評価お願いしますってどういう風に見えますかね?がめつく見えない?(考え過ぎちゃう人)


ワカモさんに連れられて来た場所は、外と空が見える開放的な場所だった。

つまり屋上っぽいとこ。まだ上の階があるから屋上ではないはず。じゃあ何て言うのここ?

 

「何て言うのここって考えてる場合じゃないでしょ」

「そっすねー……ナチュラルに心読まれたな。で、ワカモさん?なんでここに?飛び降りて逃げるとしたら私無理よ?アサクリ履修してないもん。Dishonoredはやったけど」

「ジャンルどっちかというとメタルギアじゃないそれ?」

「なんの話をしているんですか……まだ敵は混乱状態になっていますから、協力者と落ち合うのです……が……」

 

その口ぶりからして遅れてるのか?

いったい誰だろなーと考えてると、何かが近づいてきた音がした。

 

「……来ましたか」

「失礼、飛んでこようかとも思ったのですが、意外に重く……」

 

扉から現れたのは、二つの影。

 

仮面とアリスさんだった。

 

「なんかキャラ被りしてません?てかだ……あっ、慈愛の……」

「お初にお目にかかります、私の名は慈愛の「勇者!」……は?」

「慈愛の怪盗。違法取引された芸術品だけを盗む、七囚人だよ」

「鋼鉄の方か」

「もうツッコミませんわよ」

 

急いでるって言ってるのにこのくだりいらんだろ。元凶わたしや。

 

「と、悪いっすね、怪盗さん。私はモブ子です。こっちが地味子」

「どうも」

「……少し、面食らいましたが、改めて。私の名は慈愛の怪盗。先生という美術品を保護するために参上いたしました」

「そっすか。私が言うのもあれですけど、詳しい話は後にしましょう」

「本当にね」

 

だまらっしゃい。

今は……こっちかな。

 

「アリスさん」

「……モブ子さん。本当、なんですか?」

「ええ。本当ですよ。先生の居場所を知っています」

「なら……!」

 

「魔王を押さえ込めますか?」

 

「ぁ……」

 

私はアリスさんの目を見る。

もう一度試す、その覚悟を。

 

「……分かりません。ですが……」

「……」

「……ですが……!」

 

 

「見つけたわ!」

 

 

見つかっちゃった。

次々と現れるメイドと太ももとロボット。オートマタっていうやつ?ヘリまで来やがった。

あ、開発部のやつもいんじゃん。

時間が無いな。

 

「アリスちゃん……話は後で聞くわ。だから、そいつを捕まえて」

「ゆ、ユウカ……」

 

「さあどうする!今こそ決断する時だ!」

 

「……モブ子さん……」

「あっちについて、楽に先生を奪い取るか!私達について、苦しみながら、友と戦うか!自分の心に感じたままに、物語を動かす時だ!」

 

さあ、どうする勇者!

 

「……アリスとモブ子さんは、仲間です。仲間は、間違いを止めてくれますか?」

「当たり前だ」

 

「なら、お願いします。先生を傷つける時は、仲間として!」

 

よっし任せろ!

 

「ワカモさん!」

「分かりました!」

「何をする気、逃げ場は――撃って!」

 

遅いわバーカ!

私の視界はすぐに暗闇に落ちていった。

 

 

 

 

 

「ファンクラブ制作、ワープ装置……わりと大人数運べるの便利ね……」

「さらに、使用者の意思によって選べるように改良しておきました」

「ヒュー、後付けみてぇ」

「それより退いてくれない?私一番下で重いんだが?つーかなにこの重さ?三桁以上ない?」

 

私達は雑に重ねられたように倒れていた。大人数だと不具合起きんのね。

ところでファンクラブ見てないで助けて?

 

数分掛かってやっと抜け出せた……背中いてぇわ。

ここ、リビング……あっ、やっと分かった!居間だ!居間にいるのは、私、地味子、ワカモさん、怪盗さん、アリスさん。ファンクラブは他の用事……時間稼ぎとか買い出しに行った。

 

「さて、やることが多いけど……まず、重要人物を呼ばなきゃ話にならないか。二人とも、覚悟はよろしくて?」

「……はい」

「いつでもどうぞ」

 

私は立ち上がって廊下に出て、先生を呼びに行こうとする。……どこいんの?

 

「ここだよ」

 

そう聞こえた方を見ると、先生がいた。びっくり。

 

「アビドスの方にお邪魔しててね……直通のワープも作ってもらったから」

「私の家がどんどん魔改造されてくことにツッコミいる?……先生、行けるようになったんですね」

「……ちょっと怖がりながらだけどね」

「それでも偉い」

 

頭を撫でる。ちゃんと成長している……

と、それより……

 

「先生、行ける?」

「……うん」

 

先生の手を引っ張って、居間まで戻る。

 

戻れば、そこにいる人の視線が先生に集まる。

 

「先生……」

 

一番最初に声を出したのは怪盗さん。

 

「……久しぶり、だね」

「……はい」

「ありがとう、モブ子達を助けてくれて……」

「いえ、先生に会うためならこのような些細なこと……これ以上、話を長くするのも良くないでしょう。先生、私は一つ提案を――」

 

「私を連れていく、でしょ?」

 

「……さすが先生。よく、お気付きで」

「あ……怪盗は、優しいからね。私を、守ってくれようとしてるんでしょ?」

「私は、価値の分からないものに、美術を独占されたくはありません。ここで、あなたを守れるのでしょうか?……問題を解決するまで……」

 

「うへ、止めといた方がいいよ」

 

さらに現れたのはホシノさん。んぐんぐ……どんどん来るな。チョコうめぇ。

 

「先生がそれで心が安らぐと思う?体を守れても、心は守れないよ、それじゃ……少なくとも、無理矢理じゃないから私達よりマシだけどねー」

「分かっています。それでも、心安らぐ場所なら」

「無理だよ、ここ以外。……ちょっと言い方を変えると、モブ子ちゃんがいないとね。後は畳かなー……君頭良さそうだし、多く言わなくてもいいでしょ?」

「……今は、諦めましょうか」

「ニュータイプの会話かよ」

 

もっとちゃんと会話しろよ。

まあいっか、次だ次。

 

「次は……アリスさん、今のところどうです?」

「……大丈夫、です」

「そうですか……ほら、一緒に行きましょ」

 

そう言って私はアリスさんに手を伸ばす。

アリスさんは手を取って、ゆっくりと先生に近づく。

 

「……先生」

「アリス……」

「ごめんなさい!アリスが……アリスが、先生を傷つけなかったら……先生は……」

 

頭を下げるアリスさんに、先生は

 

抱きしめた。

 

「せ、先生……?」

「ううん、アリスは、悪くないよ。もちろん、ケイもね」

「でも、震えて」

「はい、話はここで終わり!……モブ子なら、そういうでしょ?」

「私はな。先生はどうなんです?」

「……気持ちが伝わったから」

「……そうか」

 

私は空いてる手の方で先生の頭を撫でる。

先生がいいなら、文句はないよ。本心ならね。

 

「……」

「何だよ」

「別に」

 

どうしたんだよ地味子~、嫉妬か~?

……そういえば。

アリスさんの手を放し、先生の頭を撫でるのを止める。

 

「地味子」

「……なんで、知ってるか、でしょ?」

「……」

「分かってる、言うよ……私は「苦しそうだな」え?」

「嫌なら言わなくてもいい。重要でも、お前が言える時にでいい」

「モブ子……」

「包み隠さずいるんじゃなく、隠し事をしていても許せる。

 

それが、親友、だろ?」

 

私は拳を突き出す。

地味子はクスッと笑い、拳を合わせた。

 

「……」

「何すか」

「別に」

 

どうしたんだよ先生~、嫉妬か~?

あっ、地味子が先生の前に立った。

 

「……はじめまして。親友の、地味子です」

「……知っての通り、シャーレの先生だよ。先生って呼んでね。今はモブ子の同居人だけど」

 

なんやこいつら。

 

「あの方私達七囚人より罪じゃないですか?」

「あら、意外と上手いこと言いますね」

「ある意味先生に似てるよね」

 

そこの仮面二人ロリ一人、追い出すぞー。

 

 

よーしよし、これで問題の大半は解決したな。

後は……

 

「ミレニアム、か……」

「そ、そういえば追われていました!追放イベントです!」

「追放イベでイメージするのって例えば?」

「なろう」

「14」

「なるほど、じゃあ私はカーパルス占拠かな」

「それは……騙して悪いがだから違くね?」

「三人とも何の話をしてるの」

 

先生は普通にオタクタイプよねー。地味子も強いよなサブカルチャー。

私?最近新作来るからそれ思い浮かべちゃうんだよね……ともに壁越えと行こうじゃないか。

 

「……ともかく、今はファンクラブや私以外のアビドスの皆が時間稼ぎしてくれてる。先生のタブレットさんにも協力してもらってるしね」

「二人がいれば、電子戦で負けないはずだからね」

「へー。凄かったんだあの人ら。人か知らんけど」

「……えっ、会話したことあるの?」

「チャット形式ですけどね」

 

というか話せるようになったんすね三人とも。相談受けてたし、良かった良かった。

ワカモさんは咳払いをして、人差し指を立てる。

 

「じゃあ、どうするか、ですが……思いつくのは二つ。まず一つが逃げる、です。急なこととはいえ、こういうこともあろうかとファンクラブとわたくしが既に目星をつけています」

 

次に中指を立てる。

 

「二つ目は、ここで防衛するか。こちらのテリトリーですし、いくつかの罠さえあれば、出来ないこともないでしょう……あなた様が指揮できるのであれば、が付いてしまいますが……」

 

私達は先生を見る。

先生は瞼を少し閉じ――

 

 

「三つ目。攻めよう」

 

――目を開いてそう言った。



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第七話

すっごい失礼なことを言います。
モブ子と地味子の見た目ってどんな感じだと思います?
地味子は眼鏡かけてる、っていうのは決まってますけどそれ以外が無し!
モブ子に関しては女以外無し!

ということで、ばんばん皆のイメージを送って……こういうのってマズい気がしてきた。利用規約見ても分かんねえ。でも怖いからやっぱやめて。


「点呼!」

「いち」

「2」

「さーん」

「数多いからここまでにしない?」

 

私が点呼を開始すると、先生、地味子、ホシノさんまでは言ってくれたけどセリカさんに止められる。うーん正論。

先生が私の横に立って皆に呼びかける。

 

「全員準備はいい?」

「アビドス、全員オーケーだよ」

「こちらも同じく」

「ええ、私達も」

 

ワカモさんとファンクラブも問題ないみたいだ。

 

「……」

「アリスさん」

「……分かってます。でも……」

「別にいいんすよ、行かなくても。でも……それはお前の本心か?」

「……いえ、アリスは……アリスが、やらなきゃいけない、やりたい事です。行きます!」

「よしっ、いい返事だ。……先生、OKです」

 

先生は頷いて、叫ぶ。

 

「モブ子チーム、出動!」

「ねえ今からでも変えない?主役先生よ?」

 

 

 

 

 

先生がいなくなってから随分時が経つ。

どこもかしこも、酷い有り様だけれど、ここ、ミレニアムも、酷いものだ。

 

「先生……どうして……」

「先生がいなくなってから二か月二十五日十三時間――」

 

セミナーの二人は既に壊れかけている。後の一人は

 

「うわぁ……どうして……?」

 

その二人を見てドン引きしている。まあ妥当。

もちろん、セミナーだけでなく

 

「はぁ、はぁ……やっと完成しましたね!」

「先生探知機mark2セカンドリバイだ」

「よし……これでもう一度探してみよう」

 

エンジニア部、

 

「……この区域も駄目。そっちは?」

「こちらも、です。次はE6の区域を調べてみましょう」

「先生……絶対に見つけ出すから」

 

私が所属していたヴェリタスまでも。

……まぁ、この超天才清楚系病弱清水ウォーター美少女ハッカーも、先生をお慕いしていないわけではない。

だけれど……

 

 

「デトロ!開けろイト市警だ!」

「もう中に入ってるし、ワープだし……」

「細かいことはいいではないですか」

「そういうこった!」

「!?誰ですkきゃっ!?」

「コトリ!くっ……!」

 

 

「……私達を縛り上げてどうするつもり……!?」

「クックック……ヴェリタスの皆さん、どうするつもりだと思いますか?」

「その話、時間掛かります?」

「……七囚人の!?」

「災厄の狐……!?」

「……いい子ですね」

「名前を間違わないだけで?」

「……先生を「最低ですね」早いですね……話を戻しますが、今からあなた達には……」

「……っ」

 

「お小遣い大作戦をクリアしてもらいます」

 

「……えっ何それは」

 

 

私は、様子を見ましょうか。勝ち馬に乗るために……

 

 

 

 

 

「……どっちも拘束、並びに制御奪取完了だって」

「それは上々」

 

ホシノさんからの報告を聞いて頷く。サスガダァ

マエストロさん、ゴルデカさん、クロコさんチームと黒服、ワカモさん、怪盗さんチームに別れて面倒な部を初手で拘束する。流石の作戦だ。

 

「ファンクラブの特殊な兵器があったから楽にできたことだよ……これでずっと味方だったらな……」

「こんな状況でもなきゃならないみたいですしね……アビドスー、今落ち込まれると戦力下がるからやめろー」

「……ん、そうだね。今から相手するのは一筋縄ではいかないし」

「いい心がけだシロコさん。地味子もいけるか?」

「余裕だ。私は楽な方だしな」

「信じるぜその言葉……じゃ、行きますか、先生、リーダー」

「うん!」「はい!」

 

ホシノさんは盾を展開し、

アヤネさんはドローンを展開する。

シロコさんとセリカさんはマガジンをライフルに装着し、

ノノミさんとアリスさんが得物を持ち上げる。

私は酔狂を引き抜き、

地味子はシャイニングスターに一発を込める。

そして先生がタブレットを起動し……

 

「転送装置、起動」

 

と言う。

私達の出番だ。

 

 

 

 

 

「ちわー、三河屋でーす」

 

私達は目的の奴らがいると噂の指令室的なとこに来た。これアビドスの時使えなかったの?実はちゃんとしたの初めてだから?今回やっと使えた?あそう……

まあそんなことはどうでもよく、そこにいた三人は驚いた表情でこっちを見る。

 

「!?どこから……!」

「よう太もも。さっきぶりだな?」

「……C&C!」

「残念ながらこねーよ。そいつらは」

「なんですって……!?」

 

 

「ちぃ……!」

「悪いけど、足止め……いや、倒させてもらうよ」

「ほざけ、私は、負けねえんだよ……!」

 

 

アビドスチームがメイドさんらを止めてくれてる。

強敵だけど、まあ大丈夫だろあいつらなら。勝てる勝てる。

 

「くっ……!」

「でもまあ、飽きはしなさそうだし……なあ、そこの三人」

 

地味子は後ろの三人にそう声を掛ける。

 

「……気付いて……」

「因みにだが、ここで戦えるのはお前たち六人だけ。他はもう制圧済みだ」

「クソゲーをプレイしないと全身がくすぐられる感覚になる装置をファンクラブが作っててよかったっすね。暇だろあいつら」

 

だからここにも三人しかいないんすね。どうにかして他を連れってったみたい。優秀。

 

「モモイ……ミドリ…………ユズ……」

「アリス……」

「アリスちゃん……先生……」

「……」

「ヴェーダ……」

「ガンダム……」

「二人共邪魔しないの」

 

へーい。

 

「アリスちゃん、やっぱり……」

「はい。アリスは今だけは、皆の敵になります。だって、おかしいです!どうして好きな、大切な人を傷つけられるんですか!?」

「……」

「……いえ、そんなこと聞かなくても、アリスは分かります。アリスも、同じことをしたから……」

「もう、言葉は意味を持たないよ……私達は、戦わなきゃいけないの」

「……アリス、ごめん……」

 

双子は私達に銃を向ける。

 

「……っ」

「最後の確認。いけるか、勇者?」

「……」

 

アリスは目を開き、前を見る。

 

「はい。アリスは……アリスは!

 

 

モモイを殴ります!」

 

 

「何で私だけ!?」

「締まらねぇ~」

 

後ろからも銃を持ち上げる音がする。

 

「……三人はあいつらを相手してていいよ。この三人は私が引き受けるから」

 

地味子が太ももとタイツと明らかやる気ない子の相手をするらしい。

 

「怪我だけすんなよ」

「そっくりそのまま返してやる」

「じゃ、先生。指揮をよろしく!」

「うん。行こう、モブ子、アリス!」

 

 

 

 

 

私は手始めに歩いて詰め寄る。

 

「くっ、退きなさい!」

「やだよ。あいつを守らなきゃいけないんでな」

「なら、押し通るっ!!」

 

そう言って突っ込んでくる太ももに二発撃ちこむが、弾かれる。

……バリアか。なら……

もう一度、今度は残りを全弾ぶつける。

 

「意味のない、そんな攻撃!」

「それはどうかな?」

 

「きゃっ!?」

「ぐぇ!?」

 

「ノア、コユキ!?」

「跳ね返るタイプのバリアなのが仇となったな」

 

太もものバリアを利用して跳弾させ、後ろの二人を攻撃した。うーん骨が無い。

その代わりか、太ももが乱射してくる。

弾切れなんでリロードしながら射撃を躱す。

 

「なんで……!?」

「リコリコ見てねえのか?それくらいなら余裕だ、ぞっ!」

「うっ……」

 

その隙を突いて近づき、膝蹴りをかます。

怯んだところで、回し蹴り……といきたかったが

 

「させません!」

 

後ろのタイツに遮られた。

感じていたから避けれはしたが

 

「この……!」

 

さらにグレらしき物を投げられた。しょうがないから離れて回避する。

はあ……

 

「めんどくさいなお前達」

 

私は左手に眼鏡を持った。

 

 

 

 

 

戦闘開始の合図と共にアリスさんがその銃と言うにはあまりにもデカすぎる大砲をぶちかまし、廊下へと追いやった。

私は構えてすぐに撃てる用意をする。

 

「モブ子、左にミドリ!」

「うーっす」

 

言われた通りに放つと、悲鳴が聞こえた。

……なるほど。

 

そら先生やべーわ!戦闘すっげー楽!

ま、私のやることは……

 

「へい配管工弟!興行収入やばいなお前!」

「誰がっ……!」

「お前、なんでそんなに先生好きなんだ?」

「それは……先生に助けられたから……!」

「そうかよ……どうしてこう、助けられた奴はこう……襲うんだよ」

「……っ」

「お前が独占欲強かろうが知ったこっちゃないが、お前のやったことはどう足掻いても負けだよ。負けイベ」

「……るさい……!」

 

私は牽制しながらそう声を掛け続ける。出来るだけ大きな声で、他の奴にも聞こえるように。

 

「恋愛ゲームやったことないのか?あれをクリアする基本は寄り添うことなんだよ」

「……」

「お前達は自身の欲望を押し付ける、ただの雑魚モンスターだよ」

「うるさい……!」

 

「うるさくても聞け!お前達は変わり続けられる!お前達には仲間がいる!間違えあったら、正すために戦いあえる仲間が!分かってるんだろう!?自身の間違いを!それでも認めないなら……!」

「アリス達は戦います!対話するために、友達を、大切な人を、助けるために!!」

 

そう言ってアリスさんは大砲をぶん投げ、駆ける。

 

 

 

「え……?」

「えいっ!」

「あばぁ!?」

 

 

 

そしてモモイを殴った。

 

「ホントに殴るんだ……」

「ゲームで学びました、間違えた仲間を元に戻すのは拳だと!」

「どれだ元ネタ?」

「……ミドリ」

「……分かってた。おかしなことくらい。お姉ちゃんが、私のために一緒に戦ってくれたことも……はぁ……どこで、間違えたのかな……」

「どうせ考えても多くの間違いを見つけるだけだ。それより今、どう変わるかを考えておけ。……先生が許すなら……いや、話し合えるだろ。先生だし」

 

ミドリは唖然とした顔をした後、

 

「……そうかな……」

 

と言って、倒れた。

……メンタル的に、やられてたみたいだからな。疲れで気絶したんだろう。ちゃんとした会話は起きてからでいっか……

 

「……終わったんですか?」

「案外早かったな。アビドスん時は大体小説にするなら六千文字くらいかかったんだけどな……あ、逃げる時とか含めると入るかそれくらい」

 

んー、前は人数とか考えると私も強い奴らと戦わなきゃいけなかったけど、今回はまあ楽だったからかしら?

 

「どういうこと?……ともかく、終わった……いや、まだ皆が戦ってるのか」

「……」

「……っと、協力ありがとうございました

 

……ユズさん」

 

実は協力者の中にユズさんもいたのだ!何やら怪盗さんのあれらしいけど。だから、こんな敵の配置とか分かったんですね。随一教えてくれてありがとね。

 

「……あ、あの、先生……」

「なあに?」

「ご、ごめんなさい……!私は、襲わなかったとはいえ、襲われてるところを見てるだけで、止めもせず……」

「ううん、今日助けてもらったし、何も問題ないよ」

「先生……」

 

そうだ、地味子は「モブ子ー!」ちょうどいいや、聞こ……

 

「えっ、それどういう状況?」

「三人を縄に縛って引きずってる」

「やめんかこら」

 

女の子ぞ。

しょうがねぇなぁ、抱えるか……おもっ、いいやもう。

とりあえず、皆の状況を……

 

 

『こちらアビドス!結構苦戦してるから、援護お願い!』

 

 

……これは、意外と面倒そうだな。




制圧メインで話し合いは少なかったね!
そして知ってると思うけど私は戦闘苦手だよ!だから次は九割(三千ぐらい)戦闘にするつもりだよ!


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第八話

「よっ、やってる?」

「居酒屋かよ」

 

アヤネさんのナビのもと、言われた通りの場所……外の広場的な場所に来てみれば。

シロコさんがでっ……!なメイドと。

セリカさんがでっ……褐色……!なメイドと。

ノノミさんがでっ……眼鏡……!なメイドと。

 

 

そしてホシノさんは高機動ロリメイドとロボメイドと戦っていた。

 

 

アヤネさんは皆のサポートみたい。

……。

 

「が、ガンダムだぁぁぁぁぁ!?ヘビーアームズ!?レオパルド!?五号機!?グフカス!?」

「後半になるほどガトリングしか要素無くなってるじゃん」

「割と最初からじゃないかな……?」

「援護に来たんですよね!?」

 

まあまあそう慌てるなよアヤネさん。

先生はすぐにアヤネさんの近くに行って指示を出し始める。

因みに来たのは私、地味子、先生、アリスさん。ユズさんは倒れてる奴らの監視。

 

「先生、誰の援護に?」

「……誰に、行きたい?」

「ガンダムと戦いたい」

「欲望全開だな……分かった。残りは私が援護に行くわ」

「分かった。アリス、モブ子と一緒に行ってくれる?」

「はい。アリス行きます!」

 

 

 

「……ちっ!」

「オラオラぁ!」

「そろそろ、やられてくだ……!?」

 

あ、アリスさんの約束された勝利の剣(エクスカリバー)外れた。

 

「必中積んだ方が良かったっすかね」

「大丈夫です!集中ならあります!」

「信用度低いな~」

「……あなたは」

「モブ子ちゃん!」

 

絶賛ロリメイドと戦闘中のホシノさんに軽く手を振る。

 

「こっち相手すんでロリメイドおなしゃーす」

「誰がロリメイドだゴラァ!?」

「鏡見たことねえのかよF・セイエイ。……あっ、合法ロリ系嫌いなタイプ?だったらごめん」

「よし頭にきたてめぇの相手は「私、だよ!」クソっ!」

 

お、離れて行ってくれてる。流石の強さっすねぇ。

 

「じゃ、やりますか。ガンダムさん」

「……飛鳥馬トキです」

「げっ、トキぃ!?ジョインジョイントキィ!?」

 

即死は卑怯だぞゴラァ!

 

「訳が分かりませんが、とりあえずやられてください」

 

トキさんはそう言って両腕のガトリングをぶっ放してくる。

もちろん私は対応出来ないんでアリスさんに任せると、私の前に出て光の剣を地面に刺すように立てる。マリグナントバリエーションで見たことあるわこの防御。YASAIGUNだったか。

じゃ、どうしよっかな。

 

 

 

 

 

こんな奴らに時間かける必要もないし、パッパッとやるか。モブ子の方に行かなきゃだし。

こっちに意識を向けるために上に何発か()()()()()()()を放つ。

 

「……地味子様」

「ようデカパイ眼鏡。最近ぶり」

「……!?それ、ユウカの銃じゃん!」

「借りてきた。流石に相棒だけじゃキツそうだからな。降参するかさっさとやられてくれ」

 

私の頭を狙った弾丸を避けながらそう言う。

 

「……っ」

「流石にこの距離でスナイパーは無理あるだろ。でも借りるな」

「やらせないよ!」

 

褐色メイドまで歩こうとすると、横から撃たれる。

私はその方向を見ずに左手のサブマシを撃つ。

 

「えっ!?」

「嘘、全部撃ち落とした……!?」

「唖然としてる場合か。シロコさんやっちゃいな」

「……う、うん!」

 

少し動きを止めがらもシロコさんは攻撃してくれる。

おっぱいも遅れながら対応しようとするが、その遅れは結構致命的だ。どんどんシロコさんが攻勢に出る。

んー、作戦変更だ。眼鏡の方行こう。

 

「……!」

「とも、思ったが……相手、いたな?」

「えっ……」

「ノノミ、撃ちまーす!」

 

ヒュー、壁に隠れても無駄と言うかのようにどんどん破壊する。巨乳VS巨乳、巨乳の勝利だながはは。

こっちもすぐ終わるな。

 

「なんでこっちを見てないのに全部避けるんだ……!?五感が強いからって……!」

「あんたの、相手は、私っ!」

「くっ……!」

 

……あれ、私いらなくない?

 

「……少しの介入だけで形成逆転を……!?」

「なろうみたいに聞こえるな……なんかやだ」

 

そもそもさっきまでどんな戦闘だったか知らないし。これが小説の戦闘シーンだったら五流もいいとこだよぺっ。

……ん?この音……

機械か……雑魚のやつとはいえ、別働隊は何やってんの。制御奪ったんじゃないのかよ……はぁ……

黙っていくのもあれだし先生とアヤネさんに伝えとこ。

 

「ちっと行ってくる」

「え?どこに?」

「モビルドールじゃね。処理してくる」

「……索敵しても、そんな反応は……」

「後任せた」

「あ、あの!」

「……任せよう」

 

……時間を取らせるなよ、もう……

眼鏡を外しながら私は向かった。

 

 

 

 

 

私は散弾をばら撒きながら、どう対応するか考える。

 

「……おい、お前はなんで私達と戦う」

 

すると、相手は話しかけてくる。

 

「どういう意味」

「そのままの意味だよ、なんで戦う。先生を独占したいからか?」

 

弾丸の雨を盾で受け流しながら答える。

 

「……そっちこそ、なんで。先生のこと好きだから?」

「……はっ、C&Cはミレニアムにご奉仕しなきゃいけないからな」

「だから仕方なく?……くだらないね。まるで昔の私だ」

「……」

「私は先生を襲っておきながら、守ると言った。しかも、攫いもした。……モブ子ちゃんが叱ってくれなきゃ、その間違いを続けてただろうな」

「あいつか」

「うん。あの子……で、戦う理由か……」

 

私は距離を取って、目を見る。

 

「罪を数えるため」

 

そして言う。

……ああ、だから、戦ってるんだ。やっと分かったよ……私と同じことをする子達を見て……やっとだ、やっとなんだ……

やっと、罪の重さと、私のやるべきことが分かった。

……モブ子ちゃんに見せてもらった、あれみたいに言ってみようかな。

 

「一つ、私はやっと信じれた大人を裏切った。二つ、しかも、二回も。三つ、そして、救ってくれたモブ子を傷つけてしまった……私の罪は数えたよ。

 

さあ、君達の罪を数えて」

 

私のやるべきことは、これ以上私を増やさないことだ。

それが、先生とモブ子に対しての最大の償いだ。

 

「罪、か……はっ、今更、数えられるかよ……!」

 

 

 

 

 

「おっぶえ!?うおっ、そおい!」

 

やばいやばい、あれ対人兵器じゃないだろうが!

 

「へいアリス!あれの対処法は!?」

「知りません!戦っていた時はアリスは捕らえられてました!」

「なるほどお姫様だった訳かよ!」

「ロリメイド先輩が足の腱を切られながら倒したのは知ってます!」

「それ多分人じゃないよ?」

 

じんたいのほうそくがみだれる!

それにしても……速くねあいつ?バリバリバリバリ撃ちながら追いかけてきてんじゃん。隠れながら時間稼いでるけど……

本当にどうし……よし思いついた。

 

「アリスさん、ごにょごにょ……」

「……ごにょごにょじゃ分かりません!」

「だろうね。じゃ、我がリーダー?

 

ぶん殴るか」

「分かりました!」

 

壁の陰からばっとレオタードガンダムの前に出る。

 

「愚直な……!」

「トキ!」

「……アリス、ごめんなさい」

 

トキさんはバリバリ撃ってくるが、同じように光の剣で防ぎつつ、前に進む。

……が。

 

「う、うぅ……!」

 

流石に、難しそうだな……全然進まねぇ。

……あ、そうだ。

 

「アリスさんアリスさん、光の剣をチャージしてもらえます?」

「え?で、でも、それじゃ攻撃を防げません!」

「忘れました?私のジョブ」

 

私はそう言って

 

 

庇うようにアリスさんの前に出た。

 

 

「!?」

「駄目ですモブ子さん!」

「私のジョブは暗黒騎士。私の身であなたを守れる!……げほっ……」

「モブ子さん!」

「早くやれ!お前のやるべきことを!」

「……ぅぅううああああああああああ!!!

 

アリスさんは叫びながら、光の剣を構える。

後ろからチャージする音が聞こえる。

てかいででででで!?流石に超いてぇ!?あ、頭から血が出てきた。

 

 

「……どうして……なら!」

 

 

……お、射撃が止まった……

 

と思ったら、肩からなんか砲門が……

だ、DX(ダブルエックス)だー!?

なんでメイドには主人公後継機が二人もいんの!?

 

「あ、あれは……」

「……アリス!撃ち勝てるか?」

「……い、今のチャージじゃ……」

「よし分かった耐えりゃいいのね」

「何を「アリスさんが撃つまでは耐えますよ」そういうことじゃ……!」

 

「お前を信じてる。死にもしないさ」

 

私は駆ける。

 

「チャージ完了、ファイア!」

 

ツインサテライトキャノンは綺麗に私に飛んでくる。

そして――

 

 

「……!?」

 

 

――バリアに防がれる。

今回も持ってきてるに決まってるよね。改良されて長時間使えるようにもなっている!

まあそれ使うの瀕死になってからの方が良くね?と思って使ってなかったけど。戦いの基本その一。手札を隠すこと。

 

「……!」

「はっはっはっ、余裕のよっちゃ『シールド残り50%――30%です』あるぇ?」

 

予想以上に火力高いわあれ!?

生身で何秒だ?撃てたら死のうがいいんだけど……!

 

 

「モブ子さん!」

 

 

その声を聞いた瞬間、私は右に飛ぶ。いてっ

そして、新たな光が全てを飲み込まんと突き進み、

 

「くっ――」

 

トキさんを吹き飛ばした。いたそー……

遠くの壁に激突し、気絶したみたいだ。ラッキー。

 

「やりましたね、アリスさん……アリスさん?グェッ」

 

アリスさんに話しかけると、抱き着かれた。

 

「……すいません」

「……」

 

私は左手……は動かないんで右手で頭を撫でる。

さっき避けた時丁度バリア解除されたみたいで、左腕が丸焦げみたいになってる。その上から血塗れになってるからぱっと見分かんないけど。

 

「……」

「よしよし」

「……あなたの働きに免じて、今回は動かないであげましょう」

「――」

 

一瞬手が止まる、がすぐに撫でる。

そりゃ、嬉しいですこと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

背中に、銃を突きつけられる。

 

「……誰だ」

「名乗るとすれば、超天才清楚系病弱美少女ハッカーです」

「あなたは……!?」

「モブ子さん。あなたはトリニティ、ゲヘナ、百鬼夜行……既に指名手配済みです。ので……

 

逮捕、しちゃうゾ!」

「古くないそれ?」



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第九話

評価感想ここすきありがとうございます!良ければ今回もお願いします!(思い出したかのようなおねだり)


「ですから!どうして面会が許されないのですか!?」

 

そう叫ぶアコを横目に私は腕を組んでソファに座っている。

この問答も何度目だろう。

 

「何度も言ったはずです。先生の療養、そして犯罪者の尋問は我々ミレニアムが行い、何か分かればすぐにお伝えすると」

「理由になっていません!それに、それなら我々ゲヘナが行った方が早いと思いますが!?」

「アコ、止めなさい」

 

黒髪の、学生と言うにはいろいろ……大きい女性に噛みつくアコを窘める。

 

「ですが」

「ここにはトリニティの方もいるの。迷惑を掛けるものじゃないわ」

「……」

 

そう、ここにはトリニティの正実の委員長、副委員長もいる。……大きいわね。

 

「……っ」

「アコ」

「……分かりました」

 

はあ、めんどくさい……

このままいつまで話を続けるのかしら。

その思いを感じ取ったのか、正実の副委員長が話を進める。

 

「で、我々を呼んだ理由をお聞きしていないのですが?」

「それは、一つの提案です」

「提案……?」

「我々、ミレニアムの提案なのですが……

 

お二方の、委員長だけ面会をする、というのはいかがでしょう」

 

「委員長……だけ?」

「ええ、先生はともかく、例の犯罪者は……言い方は陳腐ですが、凶悪です。一人で我々ミレニアムに大立ち回りをし、主要人物を次々と無力化……捕らえた今も、厳重に拘束し、複数人での監視体制でなければいけないほどです」

「……だから、咄嗟の戦闘に対応できるよう?」

「ええ。……いかがでしょうか」

 

私は――

 

 

 

 

 

噂の犯罪者がミレニアムに捕らえられてから一週間が経った。

捕らえられたのは、ミレニアムから先生を誘拐した者の情報が出て、僅か数時間後のことだった。

……名は出ておらず、公表されたのはあだ名らしき『モブ子』というものだけ。

 

エレベーターの中には、私、正実の委員長、セミナーの会長だけ。言葉はない。

どうやら地下に進んでいるらしい、それもかなり深い……

数分かかって、ようやく到着した。

エレベーターを出て、さらに長い廊下を歩く。

さらに数分歩くことになる。

 

「こちらへ」

 

ようやく扉が見え、セミナーの会長に促されるように入ると、そこには

 

 

 

「モブ子、あーん」

「あーん……んぐんぐ、うまいなこれ、先生が作ったんすか?」

「うん……どうかな?」

「右手使えるんで普通に食べさしてくれ」

「じゃ、次はおじさんだよー、あーん」

「聞けよバカどもんぐんぐ……」

 

 

 

布団で、先生と小鳥遊ホシノにあーんされているモブ子がいた。

…………なんで和式?

 

 

 

 

 

こいつらマジで話……ごめんて、分かった分かったもう自分を傷つけるようなことしないって。

……ん、来たのか。

 

「おひさっす、ヒナさん」

「元気そうで何よりね」

「こいつら邪魔なんすけど」

「……そう言えるのはあなただけよ」

「…………?」

 

あ、見知らぬ人が困惑してる……とりあえず名乗るか。

 

「ドーモ。モブ子です」

「………………?」

「やーん宇宙猫……誰?」

「ツルギって言って、トリニティの風紀みたいなところの委員長で、トリニティで襲わなかった数少ない子かな……」

「お嬢様校の話はどこ行った」

「……せん、せい?」

「……久しぶり、ツルギ」

「どうして、そいつと……誘拐されたんじゃ……?」

「……少し長くなるし、衝撃もすごいだろうけど……聞いてくれる?」

 

先生はことの顛末をツルギさんに話していった。すげーころころ顔変わるな……あっ、えっちなとこでめっちゃ顔赤らめてる。初心……

話し終わり、事実を知ったツルギさんは。

 

「……まさか……ハスミ達が、そんな……!?」

「信じたくないだろうけど……ごめん、本当なんだ……」

「…………分かりました、先生の言うことなら……」

 

お、よかったよかった、信じてくれた。強いらしいから嬉しい。厨パかな?

 

「お話は終わりましたか?」

 

後ろから声が聞こえたので見てみればそこには!

 

「超てんっさい美少女ハッカー!美少女ハッカーじゃないか!」

「はい、超天才儚くも美しいまるで桜のような美少女ハッカーです」

「死体でも食ってんの?」

 

ヒマリさんだ。

 

「先生、モブ子さん、ホシノさん、下水道、ヒナさん、ツルギさん……皆様、集まっていますね」

「下水道て。ほらー男子ぃリオちん泣いちゃったじゃーん」

「泣いてないけれど」

「男子もいないけどねー」

「……話続けますね。まずは現状の説明を」

 

 

 

先週の戦闘の時、詳しく言えばモブ子さん二人とトキの戦闘後、私はモブ子さんを拘束しました。

疑問はあるでしょうが、まず話しますので、お聞きください。

 

まず一つ、なぜあの場面で捕らえたのか。理由は単純、治療のためです。

すぐにでも治療しなければその腕は使い物にならなくなっていたでしょうから。

 

二つ、捕らえた理由。ミレニアムが先生を捉えた時、私はまだ動かずにいました。それは、優勢な、将来が明るい方に乗るため。

そして私は、モブ子さん達の方へ乗りました。

ですが、流石に防衛などでは我々に劣る……つまり、こういうことです。

先生とモブ子さんを守るために、先生は療養のために、モブ子さんは尋問のためにという理由をつけて保護するためでした。

隠し通すにも、長くは無理がありますからね。自由も失われているでしょうし。完璧な作戦でしょう?

 

三つ、この一週間は何をしていたのか。これはいくつかあり、モブ子さんの腕の治療、説教、そして、そこの下水道を呼び戻そうとしていたのです。無駄に隠れるのがうまいんですから……

 

最後に四つ、なぜモブ子さんを捕らえたままにせず、協力者に……いえ、協力するようしたのか……それは

 

 

 

「このキヴォトスの救世主になり得るからです」

 

そう言ってヒマリさんは話を終えた。

腕を組んで話を聞いていたヒナさんが質問する。

 

「いろいろ聞きたいけど……治療と、会長の呼び出しは分かるけれど……説教って?」

「モブ子による説教です。何人かを日に分けて、先生を襲った者と対話し、反省させました。その成功率驚異の100%!」

「胸囲?」

「……まさか、それって」

「はい、救世主の話に繋がります」

 

暑い……

 

「……その話の前に、もう一つだけ。なんでそのまま拘束して、先生を手に入れなかったの?」

「……短く纏めるなら。

 

贖罪ですよ。襲えはしてませんが」

 

「……そう」

「ねえそろそろこの横の人達離してくんない?暑いんだけど」

「こら、モブ子。大切な話の途中だよ」

「言い様の無い怒りが私の体を支配する」

 

引っ付くな引っ付くな。

 

「では、これからの話を。救世主、というのはですね……」

「ぶん殴って勝ってモブ子ちゃんの話を聞かせる。簡単じゃん?」

「……」

「めっちゃ不服そう。いや纏めたらそうなんだけどね?ちゃんと話聞いてあげよ?」

「私達がガンダムなんだよ」

「じゃいっか!」

「……分かってはいたけど、マイペースね、ある意味」

 

リオさんごめんね、身内ノリばっかして……暗いの嫌いだからね。

 

「はぁ……とりあえず、皆さんのやるべきことは」

「私がゲヘナを」

「私がトリニティの抑制をする。そういうことだな?」

「ええ、お任せしても」

「ああ……それが少しでも、先生の助けになるのなら。モブ子」

 

ツルギさんが私を見る。

 

「任せたぞ」

「任された、ってね……無理だけはしないでくださいね」

 

 

その後、いくらか話をした後、リオさんに連れられヒナさんとツルギさんは帰っていった。

んー……てて……背筋を伸ばすと腕が痛いな。大丈夫だからはらはらした目で見なくてもいいよ。

 

「しっかし……腕なー……これ使えなくなってたらどうするつもりだったんです?」

「ここはミレニアム。この地の全ての叡知を使って最高の義手を送るつもりでした」

「マジか、壊した方がよかったか?」

「「……」」

「うそうそごめんうそ確かに今のはよくなかったなだから睨むの止めて結構怖いんだぞ!」

 

でもほしぃ~。コスモガン撃ちたい~アームパンチで腕から薬莢だしたい~換装もありだな。

……だからうそだって!

 

 

 

 

 

ホシノさんがアビドスに用事で戻り、先生もやるべきことがあると言ってどっか行ってしまい、暇になった。ヒマリさんも用事だって。

だけどここいいな~、私のために和室になってる。素晴らすぃーわー。

なんか見よっかなと思ってテレビまで行こうとすると、誰か来た。因みにここ味方専用の直通路があるんだって。

 

「どうも、お元気ですか?」

「ワカモさん。それに、ゲーム開発部の皆さんも」

「お見舞いに来ました!」

「ど、どうも……」

 

あら、双子の声が聞こえないぞ?

 

「どうも、モモイさん、ミドリさん」

「こ、こんにちは……」

「……こんにちは」

 

しどろもどろというか、なんというか……

 

「ま、アビドスも最初あんなんだったしいっか。で?ワカモさんはどうしたんです?」

「包帯を変えに来たんですよ。暇でしたので」

「いやあんた先生第一じゃん。そっちじゃなくていいんですか?」

「今あの人の近くには戦える者が大勢いますし、大丈夫でしょう」

「本音は?」

「行きたかった……」

「行けよ」

「あなた辛気臭い顔で包帯巻かれるの嫌がるではないですか。地味子さんは戦闘訓練中ですし」

「えっ、何してんのあいつ……いいけどさ。じゃ、よろしくお願いします」

「!アリスもお手伝いします!」

「分かりました。では、こちらを持って――」

 

ワカモさんとアリスさんは私の包帯を変える。

うーん、話したいけど邪魔するのもな……でも他は辛気臭いし……あ。

 

「三人とも、やってほしいことがあるんですけど」

 

 

 

「びっ、BTぃぃぃ!!」

「そんな……どうして……」

 

モモイさんとミドリさん泣いてるわ。やっぱ名ストーリーだわ……3まだ?

 

「……いやマルチの方がいいのでは?なぜ一人しか出来ないのに……」

「ここテレビ一台しかないもん。せっかくならこのストーリー見てほしかったし」

「一台で出来るパーティーゲームくらい沢山あるでしょう」

「うるせぇ!」

「……」

「分かった私が悪かったからつねらないで」

 

はい、ゲームをしていました。やはりゲーム……ゲームは全てを解決する……

 

「あ、あの……」

 

ユズさんが話しかけてくる。

 

「どうしました?」

「あの、その、腕怪我してるのに、いいのかなって……」

「私が頼んだことですし、全然モーマンタイですよ。それに、ゲームして笑ってる方が似合う」

「泣いてますが」

「だーらっしゃい!……言いたいことはこの一週間で言いましたし、もういいんです私は。後は……そうだな、仲良くしたい。それくらいですよ」

「……優しい、ですね……まるで……」

「先生みたいです!」

「どこがだよ」

 

仲良くしたい、か……私も変わったかな?

パーティーゲームを起動して、皆でやるところ見ながら、話す。

対話は大事。

私はそう思いながら、モモイさんが蹴落とされるのを見ていた。



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第十話

あああああ!!すっげえ暇だ!

それもそのはず寝てることしか許されてないんです。

先生やヒマリさんからは休むことが今のあなたの仕事とか言ってきて動くこと禁止にしてるし、ゲームは片腕死んでるから出来ないし、地味子は最近全然来てくれないし、タカキは頑張ってるし……

 

「よし抜け出そう」

 

私も頑張らないとな!抜け出すために。

 

「……ふふーん、見張りもいないし楽々ちんち「お邪魔するねー」はいお邪魔されます」

 

しまったホシノさんがきちった。どうしよ……あ、暇じゃなくなったからいいや。

 

「どうしたんですか急に。やることあったんじゃ?」

「えっとねー、モブ子ちゃんのこと見てきてって、地味子ちゃんにね」

「なしてよ。まあ、暇だったんでいいですけど」

「じゃー、一緒に寝よっか~」

 

え、私さっきまでずっと寝てたんだけど……

 

「問答無用~」

「ちょ、ちょっ!」

 

想いは届かず布団に運ばれる。ちくしょう!

私の横にホシノさんが横になる。

でも眠くはならない。そらね。

しょうがないんでホシノさんに話しかける。

 

「ホシノさんは最近何やってるんです?」

「最近?そうだね……寝てたりー寝てたりー……」

「ねせさりー?」

「別に特訓はしてないよ」

「あそう……ゴールデンエッグスって実質きんた「やめなさい」はい……」

「……そーいえばさ」

「はい」

「感謝……理解……って言っていいか分かんないけど……こういうやり取りを、望んでたの?」

「支離滅裂な言動。……最後の言葉に反応するなら、そうですね」

「そっか……さっき運ぶ時ね、ちょっと不安だったんだ」

「はあ」

「だって、傷つけてくる敵だった奴に、無理矢理運ばれるんだよ?嫌なはずだよ」

「また今更な……」

「モブ子ちゃんにとって今更でもおじさんにとってはまだ大ごとなんだ。そもそもおかしいだけだよモブ子ちゃんが」

 

めっちゃ失礼なこと言ってきてる……

 

「敵対しててもそれっきり。その状態が終われば普通に接する……まるで、先生みたいだ」

「それ先生おかしいって言ってない?……別に、今までは私がキレるべき案件じゃなかったし……」

「……え?」

「アビドスの時も、ミレニアムの時も、襲われてたのは先生と地味子とかだけじゃん。私は横からちゃちゃ入れてただけだぜ?その結果怪我しても、自己責任」

「……うーん、その認識は危なくない?」

「どこがっすか?」

「ちゃんと、自分がそこにいる。それを理解してなきゃ、いつか痛い目を見るよ?」

「……」

 

それは……そうだな。今のは良くない思考だった。

 

「それに、傷つかない方がいい。君は、愛されてるから」

 

えー……そうかねぇ……その自覚あんまりないけど……

……私はどこまで行っても、普通の人だよ。

 

「えっとね、おじさんが言いたかったことは、ミレニアム(ここ)の大勢の人もおじさんみたいに、悩んでる人がいるってことだから……」

「オーライ……私には普段通りでいいって言やいいんですね?」

「うーん……なんだかなぁ」

「なんでそんな反応?」

 

ともかく、目標が出来たのはいい。

でもぉ……仲良くなった人以外来ないんだよね……

うーん……あ、そうだ。

 

「京都行こう」

「どこそこ?」

「さあ?じゃなくて……頼みがあるんですけど……」

 

 

 

 

 

「たのもー!」

 

ホシノさんが扉を開け、私は中に入りながら中の人にそう呼びかける。

 

「……も、モブ子さん?」

「うーすアカネさん。元気―?」

 

そう、来たのはメイド部の部室。ホシノさんに頼んで連れてきてもらった。

いやー、表向きは犯罪者だから隠し通路使わなきゃいけなかったんだけど、結構楽しいなあれ。

私は右手を振りながら、そこにいる人を見る。

 

「うーん、巨乳しかいな……ごめん」

「なんでおじさん見て謝るの?」

「いやホントごめん」

 

いや、中にいた奴だけ数えれば巨乳か。

 

「アスナさんとカリンさんも、元気?まあ皆暗い顔してるから元気じゃなさそうだけども」

「え……っと」

「その……腕は……」

「ん?ああ大した怪我じゃないっすよ。たかが片腕……へいへいもう言いませんからホシノさん……まあ大丈夫ですよ」

「それで、何か御用で……?」

 

アカネさんが聞いてくれると話がスムーズ。

 

「落ち込んだままのエロ同人引っ張りだこグループがいるって聞きましてね。……君達を笑いに来た。そういえば気が済みます?」

「なんでサングラスなの?」

 

サボテンに花が咲いてたからね。

 

「ここにいるのは……三人だけです?」

「リーダーはどっか行ったけど、トキちゃんは……」

「……」

 

アスナさんが不自然に揺れるダンボールを見る。

 

「なんだ、ただのダンボールか」

「いや絶対あそこにいるよね?バレバレだよね!?」

「……何言ってんの?」

「なんでおじさんがおかしいみたいな反応するの!?」

「冗談はともかく。……こんこん、入ってますかー?」

「入ってません」

 

ノックしてみれば、そう返事が返ってくる。

 

「そっか、いないのか。……じゃあ独り言にはうってつけだな」

「私達の存在は?」

「うるさいぞ褐色美人……私の知り合いにな、なーぜか落ち込んだままのおバカさんが十数人くらいいるの」

「多くないですか?」

「別に落ち込んだり、反省するのは構わないんだけどさ、向きがおかしいのよ。とあるいろんな人を救い、いろんな人に襲われた某先生ならともかく、私にもだぜ?気にしてないって言ってるのにな……」

「……」

「一番の問題は、落ち込んだままで変わろうとしないとこだな。人は良くも悪くも変わり続けられる。止まったままじゃいけないんだ……まあ、変わらず未来に進んだ炭酸水とかいるけど……さて、あいつらはどうするのかね……」

「……確かに、変わりたい。未来に進みたい。ですが……」

「……」

「ですが、怖いのです。また、同じ間違いを犯し、大切な人や恩人を傷つけてしまうのではないかと……」

 

そっか……

 

じゃあ、傷ついてないことにするか。

 

私は包帯をほどいていく。

後ろから慌てたような声が聞こえるが、ホシノさんが静かにさせる。

……ん、まぁ……大丈夫か。

右手でダンボールを上げると、体育座りのトキさんが。

 

「おや、こんなとこにいたんですね」

「……っ」

 

左腕を見て、息を吞むトキさん。

お構いなしに私は左手でトキさんの手を握る。

 

「何を」

「温かさ、伝わりますか?……ほら、握れる」

 

ほんのちょっとだけだけど。

 

「……」

「私は傷ついてない。これで重さ減ったろ?」

「……あなた、変ですね」

「なぜかよく言われる」

「分かりました。……遅い速度かもしれませんが、動いてみます」

「それで私は結構。……他はどうする?」

 

言わなくていいんで行動で言ってくださいね、と締めくくる。

だからこういうキャラじゃねーってのタコメンチども。

 

「なるほど、だからあの方は……」

「え?なんすか?」

 

 

「いえ、こんなことを聞き続けたら地味子さんもあなたが好きになりますね」

「トキちゃん!?」

 

 

……え?

 

 

 

 

 

地味子がいると言うトレーニングルームだかなんだったかに来た。

 

「……おーい、地味子ー?来てるの分かってんだろー?」

 

そう言っても誰も出て来な……あれ。

 

 

「引っ張らないで!引っ張らないで!」

「どうせあいつのことだし会えるまで追いかけてくるぞ」

「……」

 

ネルさんに引っ張られて出てきた。

 

「……じゃ、どっか行ってるぞ」

「うす、すいません助かります」

 

で、ネルさんは出て行った。

二人きりになるが、両者なかなか口を開かない。

……えーっと、どうするかな……あれにしようか、いやでもこれにしようか……

 

「……」

「……」

「……き、気持ち悪いだろ」

「……」

「知らないところでも聞かれてさ、それに、お前、ふ、普通で、私に、そういう目で見られてたなんて「私さ、初めてオナったの中一なんだよね」…………は?」

「待て、これだと知ってるか、他のだと……あ、そうだ、しかもそれでな?使ったのNTR系の漫画だったんだよね……でもあの時口に出してたかもな。別にあったか秘密……」

「ま、ままま、待って!?急に何!?」

「私が他の人に言ってない秘密」

「なんで急に!?」

 

「だって親友の秘密勝手に聞いちゃったし……」

 

最低じゃん、わざとじゃないとはいえ本人いないとこで聞くなんて。あなたって最低ね。ドロシー……

 

「え、いや、でも、わたしが、さきに」

「というかなんだよ~そんな強い五感になってるんだったら、もう少し小さい声で喋ろか?うるさいだろわたs「そんなことない!」声でか!」

 

うさぎかな?

 

「あっ、えと、ごめ、ひゃっ!?」

 

私は軽く抱きしめ、両手で地味子の両耳を抑え、

 

「大丈夫……大丈夫……」

 

小さくそう言い続けた。

地味子は驚いた顔から、どんどん惚けた顔になっていく。

 

「だいじょーぶ……だいじょーぶ……」

「ぁ……」

「……私は、お前がどんなことを考えてても、ずっと、ずーっと私の、唯一の親友だから……お前からしたら、不本意かもしれないかもだけどな……」

「……」

「だから、そうだな……オトしてみせろ。誰よりも早くな……」

「……うん、うん……!」

 

地味子も抱きしめてきて、それが十数分と、数十分と続いた……

 

 

 

 

 

「メ~イ~ド~さ~ん~?あっそびまっしょお~?」

「散開!集まったらハチの巣にされますよ!」

 

あの後、地味子がメイド部に用事があると言って、\デェェェェェェェン/と言いそうな量の武器を持ってメイド部まで走っていった。元コマンドーかな?てかどこに置いてたんだそれ。

地味子がネルさん以外のメイドを追いかけまわしながら撃ちまくってる。あいつつえーな。流石親友。

それを見ながらポップコーンを食べてると、後ろから声をかけられる。

 

「よお」

「ネルさん。元気です?」

「おう、怪我はしてねえからな。お前こそ無事……いや、聞かれまくったか」

「うす。見りゃ分かりますよね無事って」

「……」

「なぜ黙る……許されたんすねネルさんは」

「まあ喋ったのはあいつらだしな……地味子、流石にあたしには負けてたがあいつら相手にして互角とかすげーな。……あたしとロボのトキ相手にして防戦一方とはいえ互角に戦ってたチビはやべーけど」

「あんたら変わらんだろ」

「あ?」

「ごめんて」

 

そういやホシノさんは他に用事があると言ってどっか行った。私がメイドいるし大丈夫だろって言ったし。一人で行動したけど。

 

「で、どうしたんすか?」

「あいつから伝言だ」

 

ネルさんは地味子を見ながらそう言う。

 

「『私と同じように、先生も悩んでる』とさ」

 

……あいつ、またさぁ……天丼は二回までだろうが。胃もたれするからね……



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第十一話

皆さんいつも感想評価ここすきありがとうございます。よければ今回もよろしくお願いします。
感想返すの遅くてごめんね!お前の返信いらない?それはそうだね……


「……拘束具は、きつく締め付けないようにしても、そう簡単には外れ「何読んでんのお前」モブ子!?」

 

先生を探してみれば、空き部屋らしき部屋で多くの本を積み重ね、読んでるところを見つけた。

拘束て……まさかとは思うけどさ……

 

「それ私にか?」

「い、いやそれはそのあれだよそうまた捕まった時に脱出に使えるか調べてて私がするわけじゃないし自分がされて嫌な事……嫌な事はしちゃ駄目なのは分かってるから「……」…………ごめんなさい」

 

白状が早い。

えぇ……なんでそう、縛りたがる……

 

「あんた何が「あ!ごめんゲーム開発部の皆に呼ばれてたんだった!また後でね!」おっと」

 

先生は私の横を走り去る。いやこの本達は……まあ誰かが片付けるだろ。

……うむ。

 

 

 

 

 

「ということで、拘束などのプロに集まっていただきました。実況は私、モブ子と、解説の地味子でお送りいたします」

「ナチュラルにSだよなモブ子って……ほら集まった人皆暗い顔をしてるぞ?」

「集まったというより私達がここに来たの方が合っている気がするが」

 

セミナーの委員会室?まあそういとこにやってきた。ついでに通りで会った地味子とマエストロさんも連れて来た。

中にはセミナー四人組がいた。一人泣いてるけどなんだあいつ。

 

「……一応仕事中なんだけれど」

「……」

「……」

「リオさんって凄い人妻感あるな……でけーおっぱいだ……」

「!?」

「セクハラでは?」

「……私も、あるけどね胸くらい」

「おっとツッコミが一人消えてしまった」

 

じゃないんだよ、悪いけどそこの二人に聞きたいことがあるのよ。

 

「で、聞きたいことがあるんですけど」

「無視?……な、何かしら?」

 

声を返してくれたユウカさんの方を向く。

 

「なんで犯したのかなって……」

「……」

「目が死んでる。ついでにノアさんも死んでる」

「……あの、なんでそれを」

「興味本位……だとあれか。まあ少し、気になりましてね。あんたら普通に反省できるほど、どころか後悔できるくらいには感性が普通の筈なんですが……なして?」

「それは……私は、襲った私達は、怖かったんだと、思う」

 

怖かった?

 

「先生は、キヴォトスを、私達を、いつも守ってくれていたの。ミレニアムだけでなく、キヴォトスの学園は全てそう」

「話だけは聞いてます。中々の活躍だそうで……ですがそれがなぜ?それで好きになったから、だけですか?」

「……自分の、体と心を、顧みず」

「……」

「そう、きっと、そうなんだ……縛りたかった……どこか、手の届かない場所へ行ってしまいそうな、先生を、離れないように、傷つかないように……」

「その結果が、傷つけていた……何とも皮肉な結果だな」

「マエストロさん」

「いえ、大丈夫。見なきゃいけない現実だから……まあ、好きになったから、自分のものにしたかったっていうのも嘘じゃないと思うけど……細かいところは、個人で違うと思うわ」

 

離れないように、傷つかないように、か……

 

「……分かる。その、気持ちは」

「地味子……」

「私の知り合いのどっかのバカは、すぐ誰かを助けて、傷つきながら私と会う。それで、すっげ―心配になるのにさ、本人は全然その心に気付かない……止めたくなるよ。当事者のくせにさ」

 

当事者のくせに……

 

 

『ちゃんと、自分がそこにいる。それを理解してなきゃ、いつか痛い目を見るよ?』

 

 

そっ、か……

 

「そういうことか。たくっ……私も理解しきれてなかったか……話、ありがとうございました」

「いいの、仕事中っていうことを除けばね……ところで、最初に戻るんだけど、何でこの話「すいません後で!やることあるんで!」ちょ、ちょっと!」

「モブ子ー。開発部んとこじゃなくて、反対の一の三のとこ」

「助かる」

「後な~」

「なんだよ」

 

「過ちを、繰り返させるな」

 

「……おう」

 

 

 

 

 

「……行ったか……いやー、何だったんでしょうね?」

「あなたなら聞こえてますよね……」

「人の話はぽんぽんするもんじゃないですよ。ノアさん。というか最近忙しそうですね」

「いろいろ、後処理が大変ですからね」

「だから、今来られても困ったのだけれど」

「思い立ったが期日な奴なんであいつ」

「期日になる前にやりなさいよ……」

「どうして私もこんなことを……先輩達のせいなのに……」

「……」

「言い返せない……」

「……ところでマエストロさん。さっきからずっと黙ってますけど、どしたんすか?」

「いや……人が一時の感情で動くこともあるが……急にキヴォトス全域の子ども達が、そんな暴走を起こすものだろうか……?」

「……何?」

「もしかしたら、あなた達の誰かがそういう装置……例えば感情を増幅させるものとか使ったんじゃないの?」

「ここに来て他人のせいにしようとするのは恥ずかしい事ですよユウカちゃん」

「分かってるわよ……」

「……まさか」

「え!?ホントにそう!?」

「いや、そんな装置を作ったところで、神秘にたどり着けそうにも無いのは分かっている……だが……」

「だが?」

「先生に恨みがあり、我々と同レベルの技術を持つ者、その者がいたら……」

「……その言い方は、心当たりがある言い方だな」

「ああ、一人いる。しかし……

 

このキヴォトスにはもう既に、いないはずだ」

 

 

 

 

 

「お邪魔するわよ~、っと」

「わっ、わぁ!?モブ子!?」

 

地味子の言っていた部屋の中に入れば、また同じ本を読んでた先生がいた。読み方が隠れてエロ本読む学生のそれ。

私は万一逃げられないように扉の前で立ったままになる。

 

「今度は、逃がさないゾ♡……最後の文字だけカタカナにしたらいん「それ以上いけない」アッガイ」

「……それで、どうしたの?」

「最後の確認。事実を言ってほしい。先生は、私を……縛ろうとしてるのか?心も、体も……」

「そ、そんなわけ……」

 

言い淀むなー。じゃあ……

 

「……じゃ、私の推理を聞いてほしいです。先生が急にそんな本を読み始めたわけ。自意識過剰に聞こえるかもですけど、私が……先生を守ったり、救おうとしたときに、右手やら、左手やら怪我して帰ってくる。で、出会った時から自分を守ってくれるそんな子がこれ以上傷つくところを見たくない……」

「……」

 

先生は大人しく聞いてくれている。

 

「そこで思い出した。自分がされてきたことの一つに、縛り上げるというものがあったことを。これなら、止めることが出来るかもしれない。だけど……それはよくないことだ、分かってる。けれども、読むくらいなら…………どうです?」

「……面白い、話だね」

「あいつらも似たようなもんだってよ」

「え?」

 

先生があっけにとられた眼で私を見る。

 

「先生が傷つくのはもう嫌だった。だから……人によって異なるやり方だったけど、先生を縛ろうとした。失うのが怖いから……少しでも、自分の傍を離れないように」

「……」

「そこで、やった奴らは自分の想いを制御しきれなかった。だからやっちった。……先生も、どこまで制御できる?自分の想いを」

 

時が止まったように、静かになる。

だけど、それも数十秒で、先生の声で終わった。

 

「そう、だよ……そうっ!私も今彼女達と同じ気持ち!モブ子が傷つくところをもう見たくない!私なんかのために、モブ子がっ、傷ついて、ほしくなっ、グスッ、ほしくないっ……!」

「……よしよし」

 

私は先生を抱きしめ、頭を撫でる。

 

「……どうして?君を、傷つけようとしてた人なんだよ……?」

「まだどっかの誰かさん達みたいに傷つけられてないので~」

「……変なの……」

「あんたもそうでしょうが。傷つけてきたあいつらと接しようとしてる。昔のように」

「だって、あの子達は、悪くないし……私が、勝手に傷つい……あ……」

 

やーっと気付いたか……と言いたいけど、私も気付いてなかったから何も言えないな……

そうだ、私達は、やっと理解しようとした。言い換えれば、行間を読めた、かな?ジェラミー……

 

「……そうなんだね、今の私の気持ちは、あの子達の気持ち……」

「そして、私が持っていた気持ちは先生とそっくりだった」

「……ありがとう、モブ子。あなたのおかげで、私のやるべきことが分かった」

「なんです?」

「まだ他にも、この気持ちを持っている子が必ずいる。……自分で言うのは、恥ずかしいけどね。だから、止めて、伝えなきゃ。この気持ちの苦しさを、分かってあげられなくて、ごめんねって。それで……もう、自分を簡単に傷つけない。私は先生に戻る……ううん。

 

先生に、なる」

 

そう言って、先生は手に持っていた本を破り捨てた。

先生の顔は、瞳は、私が見惚れたあの顔と、同じ雰囲気だった。

 

「……じゃあ、私も。もう自分を安売りしません。無理矢理襲われるのは好きじゃないっすからね」

「皆の前で言っちゃダメだよ?繊細だから」

「分かってますよ。……じゃ、この後どうします?」

「えーっとね……これ、捨てとかなきゃ」

「……これ、破って良かったんすか?」

「通販で買った物だし、大丈夫。……その後は、皆にこの心を伝えに行こう。やっと分かったよ、今まで気付かなくてごめんねって」

「そりゃいい考え。」

 

私達は、一歩を踏み出した。きっとこの一歩は、陳腐だけれど、大きな一歩だ。



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