ガンプラオリジナルストーリー 【制作設定小説】 (LUCIOLE)
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第1話 【マリン・ハイザック】
コポコポと泡と吐き出しながら青い巨人はゆっくりと海底を目指していた。
大きな音を立てず、海流を乱さず・・・。
「慎重に頼むよ」
老齢だが覇気の有る声がスピーカーから聞こえる。
「特に海底の砂は出来るだけ巻き上げない様に」
「分っています!」
クルス軍曹は慎重に機体を操作していた。普段あまり使わない繊細な技術を求められて少し緊張し、イラついてもいる。
いや、それだけじゃない。ここが嘗て自分の祖父が暮らしていた場所であり、両親の故郷でもあった場所だからだ。戦争の爪あとと言うにはあまりにも大き過ぎる場所。そこは嘗てシドニーと呼ばれていた。
10年以上経ったその場所の自然環境調査の手伝いが今回の任務だった。
(なんで俺がこんな・・・)
クルスは連邦軍、トリントン基地所属のMSパイロットである。しかし、今は何処かの有名な大学の海洋調査に政府の命令で出向しているのだ。
『MS-06Mマリン・ハイザック』
水中用のこの機体は勿論戦闘用の機体なのだが、汎用性の高さからこの様な調査や救難救助から建設まで使われていた。
確かに高性能とはいえ、マニピュレーターが爪のゴッグやズゴックでは細かな作業は難しいと言うか無理な話である。
その為、最初ジオン公国から摂取した水中用ザクをそのまま使っていたが、途中からハイザックに搭載予定だったジェネレーターを水冷式化して搭載した。その為見た目と形式番号は水中用ザクのままなのにマリンハイザックの名を与えられた。
それから数年、その機体達もガタが来た為ジオン共和国に売る程余っていたハイザックをベースに少数が生産されたのだ。
深度83m。海底まで残り10mの所で上手く浮力を調整して機体を安定させた。
「予定通り深度83mに到着。指示を!」
「あっ!?はい!えっと・・・そのままの状態でライトを付けて海底の映像を送って下さっ!?」
ドン!ガラガラガシャーン・・・・・・。
クルスは呆気に取られた。
「ずびばぜん・・・」
「あ、いや・・・」
「サミー君、大丈夫かね?」
教授の声が後ろから聞こえる。
「はい、ちょっと鼻を打ちましたが大丈夫です」
そんな遣り取りが開きっ放しの回線から聞こえてくる。
「あの、大丈夫ですか?」
「はいっ!?あっすみません!すみませ、」
ドカ!
また不穏な音が・・・頭を下げた時に何処かにぶつけたのかとその状況を思い浮かべ、クルスの口元に笑みが浮かぶ。
「はう~」
可哀想にと思いつつもクスリと笑ってしまう。
「落ち着いて、今から映像を送りますね」
そうクルスが言った時、音響センサーから聞きなれない音がした。
「これは・・・?」
モニターやセンサーで状況を確認しているクルスに先程の女性が声を掛けてきた。
「クルス軍曹、上を、海面の方を見て下さい。あっ!映像もお願いしますね」
クルスは画像の録画と転送を始めてからメインパネルに後方の映像を映した。
「これは・・・」
其処にはMSより遥かに大きなシロナガスクジラがキラキラとした光りの中、まるで空を飛ぶ様に泳いでいた、しかもその隣には小さな子供の姿も。
「凄いですね・・・始めてみました」
素直な驚きと感想が漏れる・・・。
「はい、素晴らしいです」と彼女も答えたのだった。
最期まで読んでくれてありがとうございます。
こんな感じで、短いお話を書いてます。
ブックマーク、ご意見ご感想、アドバイス、、突っ込み、疑問等有りましたら気軽にお書き下さい。
作者が喜びます。拡散も勿論喜びます。
よろしくお願いします。
ほんの少しでも
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・続きが気になる
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第2話 【陸戦型マラサイ】
キットはなかなかの強敵でイメージ通り作れて、子供の頃の雪辱を果たしましたw
【挿絵表示】
他の写真はこちらで見れます。
https://gumpla.jp/old/328672
「隊長~!隊長~っ!」
丁度砂埃を上げて飛び立つ輸送機のエンジンの轟音に負けじと大声を張り上げながら手を振り走り寄ってくる青年がいた。
「おう」
と、手を上げて答える無精髭を生やした30代半ばの男、ティターンスパイロットのエドワルド大尉はその横に立つ巨大人型兵器を見上げた。
『RMS-108マラサイ』その陸戦用改良機。
地上用に熱核ロケットエンジンを熱核ジェットエンジンに換装。各部に防塵フィルターを施し、宇宙用の装置は外してある。
「隊長、こいつは?」
エドワルドの横まで来た青年アッシュも感嘆の声を上げてそのMSを見上げる。
「新型機ですか!?隊長」
「ああ、マラサイ。その陸戦改良型だそうだ」
へ~っと感心しながらMSの周りをぐるりと見て回るアッシュが走り戻って来た。
「隊長、こいつシールドが背中に付いてますよ。それにあのアーム!」
「新機構のテストだそうだ。サブアームで保持して展開するらしい。基本コンピューター制御だそうだが」
「おお~」と感動しているアッシュに水を差す言葉が投げかけられる。
「体の良い実用実験ですね」
声の主に振り向くと、2人の側まで来ていた女性隊員が隊長に向かってピシッと敬礼をする。
「お帰りなさい隊長」
ああ、と生真面目な印象の女性に敬礼を返す。
「マラサイ・・・ですか、アナハイムからの賄賂品ですよね」
またジオン製みたいな機体をと表情を曇らせる。
見た目の印象に違わず性格も真面目な彼女は、アナハイムがエゥーゴとの関連を誤魔化す為に無償供給された機体に嫌悪感を抱いていたのだ。
勿論そのジオン製っぽい外観にもだ。
「向こうで完熟訓練をやったが性能は良いぞ。それに使うのはオレだ」
ここ第38小隊は地上のゲリラ『カラバ』を追撃している部隊だったが最近になってカラバがエゥーゴと接触、MSの供給を受けただけでなく、その規模を拡大させ新型MSの開発まで行なう様になってきた。
これまでは数も少なく、型落ちの機体ばっかりだったカラバのMSも手強くなり始めた事で、隊長のエドワルドは単身北米基地指令の所まで赴きこの新型機を捥ぎ取って来たのだ。
新機構や地上用への改装機のテストを請け負う形ではあったが。
「じゃあ隊長のハイ・ザックは♪」
アッシュは期待の篭った目で隊長を見た。
アッシュは先日カラバとの戦闘で愛機のハイザックを大破させている。
爆発寸前に脱出装置を機動させたお蔭で身体はむち打ちと打撲程度で済んだが、自分の乗る機体が無いのだ。そこに新型機の配備である。
『使うのはオレだ』という言葉を聴くまでは、このマラサイを使わせて貰えるのかとも期待していたのだが。
「ああ、お前が使え。だが今度は壊すなよ」
「ありがとうございます!」と勢い良く頭を下げると、それじゃあと走ってMSハンガーへと走って行った。
「あのお調子者・・・」と呆れる女性隊員の肩を叩き、「仕方無い、すまないがマラサイをハンガーに運んでくれ」と告げた。
一瞬嫌な顔をした女性隊員に「壊すなよ」と笑い掛けながらw
最期まで読んでくれてありがとうございます。
こんな感じで、短いお話を書いてます。
(苦手な戦闘シーン5話からw)
ブックマーク、ご意見ご感想、アドバイス、、突っ込み、疑問等有りましたら気軽にお書き下さい。
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第3話 【GMエインセル(Ainsel)】
順番を入れ替えて、少し長く、戦闘シーンのあるこの話を3話に持ってきました。
【挿絵表示】
こちらで、ほかの写真も見れます。
https://gumpla.jp/hg/1157161
ここは嘗て巨万の富を求めて多くの人間が夢を夢想し、散華させ、極一部がその夢を掴んだ幻想と欲望の街ラスンベガス。
荒野を包む暗闇を排除しようと、煌々と照らされたネオンも今は時代に涙して沈黙して、闇をより一層暗くしている気がする。
そんな、嘗ての地上の楽園に1人、尚も静寂を求める女性が居た。
「グランド・ソナーに感無し、エコーロケーションを使います」
彼女の独り言は、ワイヤーで繋がった僚機に伝わっている筈だが返事は無い。そして、それは肯定を意味している。
ピコーーーン!
ピンが打たれ、跳ね返ってくる振動で周囲を確認したが、やはり敵の存在は確認出来なかった。
この場所に陣を引いて2日。この辺りを根城にしているジオン残党の噂を聞いてやって来たのだが・・・。
「ハズレだったかな?」
「さぁな、隊長はどう思います?」
「取り敢えず、朝まで沈黙して待つだけだ」
その言葉にやっぱりな、と2人は項垂れた。
「3時間交代で休憩する。最初はバッツだ」
「こんな時間から寝るのか・・・」
「寝れなくても体は休めておけ」
了解、とバッツは返事をした後は、また沈黙が世界を制した。
聞こえるのは微かな機械音だけ。
隊長は持ち込んだ本でも読んでいるのだろう。ソナーを装備したGMエインセルを駆るアリエルはただ静かに周囲の音を聴いていた。
バッツの番が終わりアリエル、そして最後の隊長と交代して、10分程経った頃だった。
ズン・・・。
遠くの音をグランド・ソナーが捕らえた。
一定の間隔で響く重い足音が2つと、車の走行音が3つ。情報通りだ。
「まったく、運の悪い」
うとうとしだしたタイミングで起こされた隊長はヘルメットを被り直しながら、状況を求めた。
「4時の方向、MSが2機と・・・トラックが3台だと思われます」
「500まで近付いたら、行動開始だ。バッツはトラックを押さえろ。俺が後ろ、アリエルは前だ」
(私は雑魚か・・・)
「拗ねるなよ。あとは何時も通りだ油断はするな」
これで、通信は終った。
(何故、あの隊長は私の考えが分かるのか・・・)
ソナーの音と過去の音紋から、ザクⅡのJ型が2機、普通の軍事用トラックが3台が近付いてくる。
先頭のザクが500mまで来た時、バッツのGM改とアリエルのGMエインセルが飛び出した。
MS戦では目の前と言って良い距離からの奇襲で、相手の動揺がモニター越しに伝わってくる。
ドン!
隊長のGMキャノンの砲撃が、後方のザクの上半身を吹き飛ばし、その同様は恐怖に一変した。
だが、もう遅い。同様と恐怖で初動の遅れた敵に活路は無かった。
アリエルのエインセルはスラスター全開で飛び出し、ザクが此方に振り向くより早く左腕のビームダガーがザクの手を切り落とし、右腕のビームダガーで、コックピットを貫いてた。
その間、僅か3秒。
今更ながらに逃げ出そうとしている、トラック2台をバッツが牽制し、残り1台の目の前に超硬ブレードを突き刺して逃走を止めたのだった。
「よし、運転手以外のジオン兵を拘束してトラックに乗せろ。そのまま近くの基地まで連行する」
隊長がそう指示を出した時、爆発が起こった。
「隊長!?」
隊長のGMキャノンが左腕を吹き飛ばされ倒れていく。
「大丈夫だ!攻撃は何処からだ!?」
アリエルは発射角から、遠くの空を見上げた。そこにバーナーの青白い炎が見ええる。
バッツは目を細めてモニターを睨みつけた。
「ドダイです、上に載ってるのはグフか?」
バッツは隊長がやられて熱くなっている。
「1機だけか!?」
隊長はGMキャノンを動かすがどうにも動きが悪い。
「くそっ!?俺の機体はまともに動けない、アリエル先行しろ、バッツはバックアップだ!」
「「了解!」」
「俺は精々、射線に入ったら撃つくらいしか出来ない。頼んだぞ」
隊長は相手にまだ動ける事を悟られない様に姿勢を少しづつ動かした。
ドダイの上からマシンガンを撃つグフにマシンガンで応戦するアリエル、その後ろから同じ様にマシンガンの射線が見えた。
アリエルの射撃を躱す為に軌道を変えたその先に攻撃をされ、急旋回をしたドダイからバランスを崩したグフが落下した。
「よし!」
そう叫んだバッツだったが、逆さまに落下したグフはそのままの姿勢でバッツのGMの右腕と頭部を撃ち抜いたのだった。
「バッツ!?」
グフはドダイから落ちる様な間抜けではなかった。そう見せかけたのだ。
「大丈夫だ!其れより気を付けろ!奴は強い!」
「分かってる!そして、後であんたを殴ってやる!」
「なんでだよ!」
「アレの何処がグフよ!あれはイフリートよ!」
だが、アリエルは恐れてはいなかった。それどころか地上に落した事で自分に有利になったとさえ思っていた。
GMエインセル。地上戦専用に作られた幻のガンダムと同じコンセプトで作られた機体だ。地上での高速戦闘に特化しているこの機体で、旧式の機体に負ける気は無かった。
ただ、相手も改良を施しているかもしれない。しかもベースとなっているのは此方も幻の機体、イフリートだ。交戦記録の少ない、向こうも地上戦の専用機。油断は出来ない。
アリエルは各所のスラスターを使って、右に左にとステップを踏む様に機体を動かし建物を盾にしつつ間をすり抜け、マシンガンを連射させる。
向こうは向こうで同じく建物を建てに大きく円を書く様に回避してアリエルの右側後ろを取る様に移動しながらマシンガンを撃ってきた。
「いやらしい!」
アリエルは突然右後ろに機体を捻ると大通りをフルブーストでイフリートに迫る!
マシンガンをイフリートに投げ付け、左手で超硬ブレードを抜いた。
投げ付けられたマシンガンをヒートサーベルで薙ぎ払う!その先にGMエインセルが肉薄する!
「速い!?」
イフリートのパイロットの経験測を遥かに上回る速度でエインセルが迫り、擦れ違い様に超硬ブレードを薙ぎ払った!
辛うじて反応し、コンマ何秒の差でどうにか致命傷を回避したイフリートは切り裂かれた脇から異音を立てながら全開で距離を取りつつ、後方のエインセルにミサイルをばら撒き、マシンガンを乱射した。
それは、エインセルにダメージを与える物ではなく、近づけさせない為の弾幕でしかなかったが、其れすらも無意味だった。
エインセルはヘッドバルカンでミサイルを撃ち落し、その爆煙をも利用してまたビルの陰に入り、他のミサイルを回避しつつイフリートに肉薄する。
高速移動中、ビルとビルの隙間から超硬ブレードを投げ付け、マシンガンを破壊するとその爆発で怯んだイフリートを背中から引き抜いた2振りのビームダガーで斬り付け、その場から急速離脱した。
ギギギ、と錆び付いた機械の様な動きで振り返ろうとしたイフリートが爆散して戦闘は終った。
「隊長」
アリエルが戦闘終了を告げ様として、通信を繋いだ時頭上で爆発が起こった!
「きゃ!?」
戦闘中とはかけ離れた、かわいい声がレシーバーをくすぐる。
「気を付けろ」
呆れた様な隊長の声がして、顔を赤くしてアリエルは落ちていくドダイを見た。
悲鳴を上げたのは、失敗したが赤面した顔を見られていないのは不幸中の幸いだと言い聞かせ、アリエルは自分の頬を叩いた。
エインセルとイフリートの動きに着いて行けず、何も出来なかったバッツと違い、隊長は碌に動けないGMキャノンで、イフリートを倒して動きを止めていたエインセルを狙ったドダイを撃ち墜したのだ。
「アリエル、周辺警戒!ソナーとエコーを使え!」
「バッツ!こっちに来い」
隊長は壊れたGMキャノンをバッツに担がせると、自身はジオンのトラックに乗って運転を始めたのだった。
最期まで読んでくれてありがとうございます。
こんな感じで、短いお話を書いてます。
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作者が喜びます。拡散も勿論喜びます。
よろしくお願いします。
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第4話 【ネモ・ハイマニューバ】
HGネモと百式のミキシングです。
GM系を3つ続けて作った中野1つで、このネモ・ハイマニューバはディテールで苦労しましたw
【挿絵表示】
こちらでほかの写真も見れます。
https://gumpla.jp/hg/1081615
サイド3の有る外壁区画に作られた簡易ハンガーに2人の男が1機のMSを見上げていた。
「隊長、コイツって・・・」
ウォーレン軍曹は新しく配備されたMSを見上げて訊ねていた。
「ああ、今日の物資と一緒に送られて来たよ」
そこにあるのはエゥーゴが使っている量産型MS『ネモ』だ。ただ隊長機は性能向上を目指した簡易改良機だそうだ。
「リックディアスを申請したんだがな~」
この部隊の小隊の隊長、フーバーは頭をガシガシ掻いて、上層部を呪った。
先日遂に乗機のGMⅡを中破させてしまった。辺境とは言え最近は敵のMSも新型に代替わりしていて腕だけでは対処しきれなくなったのだ。
そして無理を承知でリックディアスを申請したのだが、その代わりに送られて来たのがこの機体だった。
部下の2人にも通常のネモが支給されている。
ネモは確かにGMⅡより高性能な第二世代量産型MSだが、元ジオンのパイロットとしてはジオン系MSに近いリックディアスを使いたかった。
況してやサイド3で連邦系MSを使うのにも何と言うか抵抗が有った。
「あれ!?こいつのバックパックって百式じゃないですか!?」
「ああ、ジェネレーター出力も上がってるらしい。簡易改良型だそうだ」
「カタログスペックだけならリックディアスにも負けてないんですよ」
ネモを持ってきた、そばかすに三つ編み、更にメガネと云ったそれだけ聞いてるとまるで田舎娘の様な格好のアナハイムの若い技術者に受領確認のサインを求められた。
「あ~、まぁそれは有り難いんだがね」
タブレットにサインを書いて渡すともう一度、ネモを見上げるフーバー。するとウォーレンが妙な事に気が付いた。
「あれ?こいつ随分はっきりとアナハイムのロゴが入ってますね」
「まぁ、アナハイム製ですから」
そばかす娘がさも当然と答える。
「公然の事実とは言え不味くないんですか?」
確かに反連邦組織の機体に大企業のロゴは不味いだろう。だがそれはついこの前までの話だ。
「この間の演説で、連邦の主権を取ったから問題ないというか主張したいんだろ?」
「ああ、あのクワトロ大尉の、ってあれシャア・アズナブルかな?」
「ダイクンの忘れ形見でもあるがな。普段はクワトロ・バジーナ大尉を通すらしいぞ」
「それってどうなんですかね?名乗っちまったんならダイクンの息子として指導者になるべきなんじゃなんすか?」
ウォーレンはサイド3出身者として何か思う所が有るらしいが・・・。
「まぁ、今も燻ってるダイクン派は歓喜の涙を流してるだろうけどな・・・」
(案外あの人は指導者には向かないのかもな)
パンパン!
話はここまでと手を叩き、気持ちを切り替える。
「さぁ、政治はお偉いさんに任せて慣熟訓練行くぞ!グウェンの奴も叩き起こせ!」
2人は作業員がシーリングを外し、火が入ったばかりの機体に乗り込んで行った。
最期まで読んでくれてありがとうございます。
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第5話 【ザンジバル・モンスター】
ビー!ビー!ビー!
激しく鳴る高度計に俺はハッとなって計器を確認する。
高度は1200を切り、目標地点ももう直ぐ目の前だった。
「こんな時に居眠りとは大物だな」と後ろから声がする。
「すみません!」と後ろを振り返らずに俺は後ろの艦長に答え、自分の職務を全うする為状況を再確認した。
「ザンジバル・モンスター変形開始!」艦長の号令に「ザンジバル。モンスター変形開始!」と復唱する。
第一シークエンス開始!と最初のレバーを引き倒す。すると機体全体から様々に振動が起こり、ザンジバルの背が割れていく!
ゴオン!
取り分け大きな音と振動と共に第一シークエンスが完了した事を告げる緑のランプが点灯する。直ぐ様2本目のレバーを引いて第二シークエンスを開始、ガコンとロックが外れ、主翼が展開し始めた所で第二シークエンスの完了を待たずに第三シークエンス開始のレバーを引いた。
ザンジバル後部に納められた4本の巨大な砲が展開、180度回転しつつザンジバルの後部も折り畳まれる。主翼の展開が終了して、巨大な足となり4本の主砲は機体上部に展開して固定された。
地上到達ぎりぎりで異形の化け物、『ザンジバル・モンスター』は巡洋艦から正にモンスターへと姿を変えたのだ!
「変形完了!逆噴射!ザンジバル・モンスター着陸します!」
「各員、衝撃に備えろ!」と云う艦長命令が轟く。
そして、その3秒後激しい衝撃と共にザンジバル。モンスターは地表へと降り立った。
「着陸完了!」
「よし!各部チェックと同時に主砲発射準備!」
「了解!」各員から返事が帰ってくる。
「7m低反動砲、装填完了!」
「よし!照準合わせ!目標、敵主力部隊及び旗艦ビックトレー!」
「照準よし!」砲手から最後の連絡が来た。
その時、正面に敵MS部隊が現れた。
「艦長!?」
「慌てるな!4mミサイル発射!」
「4mミサイル発射!」
ザンジバル・モンスターの両腕に装備された4mサイズのミサイルが発射され、敵MSを粉砕されていく。
「今だ!主砲発射!」
「主砲発射!」砲手はトリガーを引くとザンジバル・モンスターの装備された口径7mの4連装低反動砲が轟音を上げて発射された。
その衝撃は低反動砲と言っても凄まじく、この巨体を50mも後退させた。
とその時、躁舵手カインの後頭部を衝撃と激痛が走る!
「っ~~~~~~!?」
頭を抱えるカインは涙を浮かべながらゆっくり後ろを振り返った。其処には腕組をしながらこめかみを引き攣らせ教官が立っていた。
「操縦訓練中に居眠りとは大した度胸だな~え、カイン候補生」
「あ、いえ・・・」
「馬鹿者!」ともう1発頭を殴られたカインはその痛みの中、(あれは夢か・・・そうだよな巡洋艦が変形する訳無いよな)と自笑した。
最期まで読んでくれてありがとうございます。
思いっきりネタ回です。
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第6話 【デザート・グフ】
乾燥と灼熱の大地アフリカ砂漠。この大地にも人々は糧を求めて足を踏み入れ開拓をしていた。
宇宙に拠点を置くコロニー国家ジオン公国。地球侵攻作戦を行なった理由の1つは地球連邦軍の本拠地を叩く事。そして資源の調達である。
このアフリカ戦線では勢力圏の拡大と資源奪い合いが常に行なわれていた。
そんな砂漠の戦場に今、3体の巨人が永遠と思える砂の大地に影を落す。
「少尉!新型の乗り心地はどうでありますか?」
左後方を歩くデザート・ザクのパイロットがなんの変わり映えの無い風景に遂に我慢ならず、そんな軽口が口を吐いた。
「軍曹、貴様分って言っているだろう?」
先頭を行く新型機。正確には試作1号機のデザート・グフのパイロット、グライム少尉が苦い顔をして見えない軍曹の顔を睨む。
戦闘中に高速で動いてる分には気にならないのだが、こうやって他のMSに合わせて低速で走ってるとその振動は決して快適なものではなかった。
こっそり厚手のクッションを尻に敷いてるのだがまだ足りない。
(ここの改善は最初に言ってたのだがな・・・)
試作型砂漠用MS、MS-07D『デザート・グフ』
まだ仮称のこのMSの実戦テストの為、デザート・ザクを2機従えてグライム少尉はこのMSの脹脛に追加されたキャタピラユニットからの振動に耐えていた。
「少尉、そろそろ作戦ポイントです」
もう1人の伍長がモニターに表示された地点に近付いたことを知らせた。
「ああ、」
周りを見回して、グライムは指示を出す。
「よし、ではここに潜伏して敵を待つ。潜伏後は通信は切れ」
「「了解!」」
デザート・グフはキャタピラユニットから下りるとそのユニットを地面に突き刺した。
そのままキャタピラを回転させて地面の砂を掘り始める。さらに脚部スラスターを使って砂を吹き飛ばして徐々にデザート・グフは砂の中に消えていった。
デザート・ザクもスラスター等を使って潜っていくが、グフより時間が掛かっている。
完全に砂の中に潜ったデザート・グフは頭部に装備したグランド・ソナーをONにして、静かにその時を待った。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
同時刻:キャルフォルニアベース
「大尉、どうかされたのですか?」
ジオン公国の地球前線基地、キャルフォルニアベースの第三兵器開発部、第三課を預かる技術大尉は複雑な表情で1枚の指令書を見ていた。
「ん?いやなに、やっと完成したと思ったのにお蔵入りとはなんとも言えんでな」
机の上に放り出された書類を見た秘書がその内容を見て少し悲しそうに表情を曇らせた。
「上の指示ですから仕方ありません。本国で完成した・・・ドムでしか?」
「ああ、陸戦MSとしては画期的だな。」
熱核ジェットホバーを装備した重MSドムが次期量産型MSとして決定した事により、キャタピラで走るグフ・デザートの開発凍結が決定したのだ。
「全く、ツィマッドの執念を感じるね」
「何処が作ろうが、良い物が出来れば良いではないですか。それだけ戦死者が減って、戦争も早く終る訳ですし・・・」
「それだけ沢山、相手が死ぬんだがな・・・」
「・・・」
更に顔色を曇らせ顔を背けた秘書の態度にハッとなった。
「すまない・・・そんなつもりは無かったのだが・・・」
「いえ、私も軍事に関わってる以上理解はしてますから・・・」
主任室に沈黙が流れる。
「所で大尉、この事はグライム少尉や開発主任には?」
今度は大尉が複雑な顔をして天井を見上げて「それもまた気の重い話だよ・・・」と嘆いた。
温くなったコーヒーを飲み干すと大尉は立ち上がり背伸びをする。
「大尉どちらへ?」
「嫌な事はさっさと済ませてくるよ」
そう言いながら軍帽を被ると擦れ違い様に秘書の御尻を叩いた。
「きゃっ!?」
持っていたファイルで御尻を隠し、恥ずかしそうに大尉を睨む。
「大尉、一体何を・・・」
「お前もそんな顔をするくらいならさっさと男でも見付けて軍人なんて辞めてしまえ!」
セクハラ発言にキツイ表情をしたが大尉は意に介せず「若い娘が戦争なんてするもんじゃない」と呟いて部屋を後にした。
1人残された秘書官は頬を紅くしながら「馬鹿親父・・・」と口にするのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
北アフリカ
待つ事、小一時間。
デザート・グフの振動センサーに反応が有った。モニターに赤いマーカーが2つ表示される。
「第13地上機動歩兵師団だったか?良い仕事をする」
2つのマーカーは真っ直ぐこちらへと近付く。残り約1㎞、500m、100m・・・。
マーカーがほぼ真上に来た時グライムは攻撃を仕掛けた。
突然盛り上がる地面、その砂の中から飛び出した何かが目の前のGMの持つビームスプレーガンを叩き落した。
驚くGMのパイロット、見ればMSの右手が切断されている。更にもう一度伸びてきたそれが左腕に巻きついた。
「ヒートロッドか!?」
機体を下げ、引き千切ろうともがくGM。
「改良されたヒートロッドは優秀だな!」
グライムはヒートロッドに電流を流して、動きを止め、左腕に装備されたヒートサーベルを1段階展開して切り裂いた。
「グフか!?」
もう1機のGMが爆発して巻き上がった砂目掛けて銃を撃ちながら後ろへとジャンプして回避行動をとる。
手応えを感じず苛立ちが跳ね上がる。
敵部隊から逃げた先に得体の知らないMSと遭遇して最後の僚機がやられたのだ。
「くそったれが!」
叫んだ時、爆発の左側から砂煙を上げて砂漠迷彩のグフが滑り出て来た。
まるでスケートでも吐いてる様に、足を揃えたまま砂上を滑るグフ。
GMの着地を狙ってマシンガンを放つ!
シールドで防ぐが機動力が違いすぎた。
一気に距離を詰めたグフが目の前に迫る、ヘッドバルカンとビームスプレーガンで応戦するがまるで当たらない。
「機動力が違う!」
右へ左へと交わしながら迫るグフ擦れ違い様にヒートサーベルを薙ぎ払ったがこれはギリギリ躱しされた。
「な!?」
なんとか回避したが喜ぶ暇は一瞬も無かった。GMの腕にヒートロッドが巻き付いていたのだ。
「これで終わりだ!」
ヒートロッドを引いてGMの体勢が崩れた所にヒートサーベルで斬り掛かる!
「くそ!」
GMのパイロットは機体を捻って紙一重で回避した。
(躱した!)と思った刹那、機体に衝撃が走りGMの胴体は逆袈裟で斬られていた。
グライムはヒートサーベルをもう一段階伸ばしVの字を書く様に振り下ろした剣を斬り上げたのだ。
巻き付けていたヒートロッドを解いて、後方に大きくジャンプして距離を取った所でGMは大爆発を起こした。
「やりましたね、少尉!」
「お見事です」
グフから遅れて砂中から出て来て周囲を警戒していた2機のデザート・ザクが近寄って賛辞を送る。
「ありがとう。これでこいつの量産も近いな」
「自分にも配備されるのが楽しみです」
「その時迄に乗り心地が改善されるのを祈ってますよ」
「そこはしっかり上に伝えておくさ」
無事生き残り、テストも終了した3人は、GMを追い立てた『第13地上機動歩兵師団』と合流後、帰路に着いた。
この後、デザート・グフの開発凍結を聞いたグライムはそのままアフリカ戦線に残り、受領したグフ・デザートで多くの戦果を上げ無事1年戦争を生き抜いたのだった。
最期まで読んでくれてありがとうございます。
こんな感じで、短いお話を書いてます。
ブックマーク、ご意見ご感想、アドバイス、、突っ込み、質問、疑問等有りましたら気軽にお書き下さい。
作者が喜びます。拡散も勿論喜びます。
よろしくお願いします。
ほんの少しでも
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※無断転載・無断翻訳を禁止します。
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第7話 【ザクキャノン・タンク 第一形態】
そこはジオン地上軍のアフリカ戦線の基地の1つだった。
中規模の鉱山基地でMS2個小隊と戦車中隊からなっている。
採掘の為に刳り貫いた岩山の中に基地を作り自然の要塞と化していた。勿論採掘はジオンの手で続けられ、資源の少ないジオン本国へと送られている。
そんな基地の外の施設へと呼び出しを受けたMSパイロット、ヴァイス曹長の気分は落ち込んでいた。
前の戦闘で始めてザクキャノンで出撃したものの、行き成り片足を破壊され、大切なMSを中破させてしまったのだ。本人も左腕を負傷し、2日間の安静の後、全治2週間を言い渡されたのだ。
そして、2日間の病室生活が開けた今日、MS整備班長から早速呼び出しを受け指定された場所へとやって来た。
MSハンガーを抜け基地の外側へと重い足を動かす。唯一配備された最新のザクキャノンを砲撃の腕を見込まれて任されたのに、この体たらくである。基地指令や整備班長の心中は想像もしたくなかった。
そうこうしている内にも歩は進み、短い滑走路のわきにその異様な物体が姿を現した。
その姿に、驚いたヴァイス曹長はその物体の側で大声で指示を出している整備班長に声を掛けた。
「おやっさん、あれ!?あれは何なんだよ・・・」
「ああ?・・・あれって、あれはザクタンクだろ」
「ザクタンクって、上半身は俺のキャノンじゃないか」
「おう、お前が完治する頃には改造も終わってるだろうよ」
「改造って・・・」
折角の新型MSが、戦車モドキになった様を見てなんとも情け無い表情になるヴァイス。
「じゃあ頼んだぜ」
「え!?何がだよ?」
「何がって、お前が乗るんだよ。司令官にそう言われて来たんだろ?」
「ここに行けって言われただけで・・・、そもそも俺は・・・」と三角巾に吊られた左腕を見る。
「んなこた~知ってるよ。完治したらって話だ」
「それにMSには・・・」
「それも知ってる。お前さんMSだと滅茶苦茶酔うんだってな。マゼラアタックでの戦果が認められて折角与えられたザクキャノンを初陣で行き成り左足を大破させやがって」
ぐ・・・その迫力にたじろぐヴァイス。何か言い返そうとしたが何も言い返せず、自分の情けなさに項垂れてしまう。
宇宙での訓練ではそこそこの数値を出していた。特に射撃の精度は良く、地球に下りてからは戦車の砲手としてかなりのスコアを叩き出していた。マゼラアタックを与えられてからは尚更だった。
そして、やっと追加配備されたMSのパイロットに選ばれた初戦でヴァイスはMSの歩行に酔った。戦車をどれだけ走り回しても平気だったのに・・・。
そして、その隙を付かれてMSの弱点である足を破壊されたのだ。
宇宙なら兎も角、こと地上に置いては足は生命線である。胴体の様に爆発、大破とはならないが自力で動く事が出来ない。更に最高機密であるMSを放置する事も出来ず、その大きさと重さで回収する為にまたMSが必要となる始末である。当然回収作業中に敵に襲われたら堪った物ではない。
自分はそれだけの損害を出し、仲間に危険を強いたのだ。しかも自分はその間病室でのうのうと寝ていたのである。悔しさで泣きたくなり、負傷した左手を握り閉めた。
そんなヴァイスの右肩を班長はバン!と叩いた。
「だがこいつを見ろ!こいつの足回りは戦車だ!無限軌道だ!キャタピラだ!」
その言葉にヴァイスはハッとなって、班長の顔を見た。
「班長・・・」
「まぁ、単に新型のザクキャノンの交換パーツが無かっただけとも言うがな!はーはっはっはっはっ!」と、笑いならまたヴァイスの肩を叩いた。
「それにな、足をやられた状態で戦車4両、戦闘機3機、MS1機を落としたお前の射撃の技量を隊長も高く買っての事だ。でなきゃ司令官もこんな改造許可しないって」
ぐっと親指を立てて、にっと笑う班長。
「そうか・・・隊長、司令官・・・」
皆の心遣いに目頭が厚くなるヴァイスに「完治する迄にはこいつも完成しているさ。まぁ、其れまでは基地内全てのトイレ掃除と資料整理だそうだし、がんばれや♪」
と、最後に思いっきり背中を叩かれ、渇いた大地にヴァイスの悲鳴が響いた。
最期まで読んでくれてありがとうございます。
ザクキャノン・タンクは三話構成です。
続きも読んでやって下さい。
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第8話 【ザクキャノン・タンク 第二形態【連邦製ビーム兵器実射実験機】】
実は、GMはGMではなく、旧キットのGMⅡだったりします。
お話は2話目です。
【挿絵表示】
こちらがザクキャノン・タンク、第一、第二形態の制作日記になります。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1964373731&owner_id=19862347
そして、10日過ぎにはヴァイスのギプスは取れ、司令官に復帰を報告に行くと直ぐにMSハンガーに行くようにと言われた。
片手でのトイレ掃除と慣れない資料整理にぐったりだったが、それでも前回と違って足取りは軽かった。
しかしMSハンガーに付いたヴァイスは自分の機体の状態を見て、立ち尽くしてしまった。
本来ザクキャノンの名前を象徴する長大なキャノン砲が無いのだ。左後ろから見てるから見えない訳じゃないよな、と前に回るがやはり無い。
「それにあのキャノン(キャノンは無いのだが・・・)が抱えてる奴あれは連邦のMSの胴体じゃないのか!?」
ザクの前には頭も腕も無い敵MSの胴体部分が抱えられ、その背中からはケーブルが数本出ていてザクキャノンの背中側へと繋がっていた。
その姿を理解出来ず見上げていたヴァイスに整備班長が声を掛けた。
「よう、やっと完治した様だな」
日に焼けた浅黒い顔に白い歯が目立つ笑顔で班長が手袋を外しながらやって来た。
「班長!?俺のキャノンが・・・」
自分は砲撃の腕を買われているのに、その砲が無いのだ。
「ん?あぁキャノンな、ちょっと外させて貰ってるぜ」
「外させてって・・・」
「大丈夫、ちゃんと直してやるからw ところでよぉ連邦のMS、ビーム砲を持ってたろ?」
項垂れた状態から首だけで班長を見上げる。
「ああ、報告では聞いてたけど、ガンダムだっけ?赤い彗星を退け、ガルマ様を討ったっていう・・・あれが装備してるって資料を読んだ時は信じられなかったけどな」と言って上体を上げ、腰に手を当て溜息を吐く。
「まぁな、本国でも開発はしているが、MSが携帯出来るサイズまで小型化出来てないからな」とボリボリと短い髪の頭を掻いた。
「しかし、連邦のMS、ビーム砲は確かに驚異だったけど噂ほどじゃなかったな」
「多分、量産する為にダウングレードしたんだろう。あとはパイロットの腕だな」
「ガンダムのパイロットはニュータイプなんじゃ?って噂かい」と疑いの表情を見せるヴァイス。
そんなヴァイスに班長は急に声を潜めて「ああ、公式じゃないが青い巨星がやられたらしい」と耳打ちしてきた。
「!?」
驚きの余り固まるヴァイスの背中をバン!と叩いておやっさんは話を続けた。
「で、あれだがな。向こうのビーム兵器の実射試験をしようって訳だ。調べたが手の平から銃へのエネルギー供給が必要でな、しかもザクのジェネレーター出力じゃ動かねぇときた」と手の平を指して説明をしてくれる。
「そこで、敵のMS、GM(ジム)と言うらしいがこいつの本体からビーム発射に必要なエネルギーを得ようって訳さ」
「なるほどね・・・」
「で、当然ザクの手にエネルギーの供給ソケットは無いからな、無理やりケーブルを接続して砲撃の反動に耐えられる様に固定して発射するのに改造中のお前のキャノンが丁度良かったんだよ」
班長の説明に納得しかけたヴァイス。
「まぁ、これで次の定期便で実験データが送れるってもんだ。じゃあ頼むぜ!」
「何がだい?」
「なにがってお前のキャノンだろ、お前が試射するんだよ」
何を当たり前の事をという顔で見る班長。なるほどここに呼ばれた理由はこれか、と頭を掻いたがピタリと動きを止めて班長を見た。
「なんだ?」
「これ、爆発とかしない・・・よな?」
不安げなヴァイスの質問に班長は、にやりと悪戯っぽい笑顔を返したのだった。
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
ガガガ・・・・ッ!重い音でゆっくりと進むザクキャノンタンクはなんとか試射の所定の位置に辿り着いたが、ヴァイスは不満たらたらだった。
「班長!なんだよこれは!?めちゃくちゃ遅いじゃないか」
班長のレシーバーにヴァイスの声が響く。
「だ~っ!うるせいな、仕方無いだろうそれでも急遽出力は上げたんだよ」
「こんなに遅いんじゃいい的だぞ!」
通常の足が無い分機敏性に欠けるタンクにとって速度は命である。通常のマゼラアタックが最速80㎞出るのにこのタンクはがんばっても50㎞そこそこなのだ。
「んなこた~分ってるよ。今は試射さえ出来れば良いんだ!これが終わったらちゃんとしてやるから黙ってテストに協力しろ!あと4発分しか撃てないんだからな、外すなよ!」
負けずにマイクに叫ぶ班長。その迫力に何も言えなくなったヴァイスは渋々「じゃあやるぞ!」と的に照準を合わせるのだった。
最期まで読んでくれてありがとうございます。
明日、最後の3話目を上げる予定です。
砂漠部隊の話はもう少し続きます。
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第9話 【『ザクキャノン・タンク』第三形態 ヴァイス専用【現地改装ビーム砲装備型】】
砂漠部隊の話はもう少し続きます。
【挿絵表示】
今回はボツにしたけど、勿体ないので残してたお話も載せてます。
なので、実質2話分です。
他の写真はこちらで見れます。
https://gumpla.jp/old/326880
殺人的な日差しが蜃気楼を生み出す灼熱の大地アフリカ、サハラ砂漠。
その砂漠に12人の巨人達が陽炎を纏いながら歩を進めていた。
連邦軍MS機動部隊第4MS大隊はアフリカ北部の岩山に有るジオンの中規模の鉱山基地を目指していた。
「クソッ!この暑い中MSに歩かせるなんて」
陸戦型GMのコクピットの中で悪態を吐くパイロットは、この強行軍にうんざりしていた。
「伍長、熱いのはお前だけじゃねぇ~よ」
「空挺で突っ込んだ方がマシだろ!」
「輸送機ごと墜とされるのはご免だろ?」
「お前ら、私語は慎め。そろそろ、ドガッ!なっ、バシュ!うわっ!?うわーーーっ!」
ドゴォォォーーーン!
突然の衝撃と爆発音にパイロット達は騒然となった。
慌てふためきながらも周囲を警戒する11機のMS。
「左!3番機がやられたぞ!」
「敵は何処だ!?何処から撃ってきやがった!」
盾を構え、全周囲警戒体勢を取る陸戦型GMの群れ。しかし見えるのは海原の様に隆起する砂漠だけだった。
ー・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
「よし!」
ヴァイスは狙撃用スコープを覗いたまま、狙い通り胸部を爆散させて倒れ込む陸戦型GMを見て今日の調子を確かめた。
「次・・・」
スコープの中で狼狽える様子が見て取れる敵MS、その中から動きの悪い1機を選びターゲットスコープの中心に捕らえる。
ドシューーーッ!
2射目が1機の陸戦型GMを貫き、更にその後ろの陸戦型GMの腕を吹き飛ばした。
しかし、全周囲警戒をしていた敵に射線を見られこちらの大まかな位置もばれた。隆起した砂漠に身を潜めて居る為こちらの姿は見えていないが砲はそうは行かない。
大凡の位置を定め左右に分かれて迫る陸戦型GM、だがまだ距離に余裕がある。ヴァイスは慎重に照準を合わせると更に先頭の2機を落とした。
ー・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
「敵の射線を見たか?」
「はい、見ました!あれはビーム砲です!」
まだジオンが実用していない筈のビームに因る攻撃に連邦パイロット達の動揺は激しかった。
ガシャン、ガシャンと走る陸戦型GMに体を揺らしながら隊長は苦虫を噛んだ。
「なるほど、こっちが向こうの技術を学べば向こうも然りという事か、射線の数からビームを撃ってるのは1機だ、全機回避行動を取りつつ距離を詰めろ!周囲への警戒も忘れるな、必ず伏兵が居る筈だ!」
「了解!」
伏兵に注意しつつ、8機の陸戦型GMは正面のビームを撃つ敵に迫った。
ー・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
更に1機のGMを落としたヴァイスは一息吐いて迫り来る陸戦型GMを見た。残り7機、内1機は中破である。
「半分やられてまだ逃げないとはね、作戦の第二段階に移行する」
ヴァイスはスモークをばら撒き、視界を塞ぐと次の行動を開始した。
そして、そのスモーク発射が合図の様に砂の中に隠れていたデザートカラーのザク5機とトロピカルテストタイプドムが飛び出して奇襲を掛けた。
警戒していたとはいえ砂の中からの奇襲に驚き、戸惑う連邦軍パイロット達。その中でスモークの方に注意していたMS部隊の隊長は信じられない物を見た。
広がるスモークの端から飛び出したのは、異形の怪物だった。
ザクの上半身にタンクの下半身。更に後ろには上半身だけになったGMが載せられたいた。
「なんだあれは!?」と驚き叫ぶ連邦のパイロットの姿が想像出来る。
奇襲してきたドム達とは反対側に旋回しつつこちらに気が付いている隊長機ではなく、背中を向けている陸戦型GMに対してマシンガンと後方に設置された高角砲が火を噴いた。
隊長機も応戦するが、信じられない速度で疾走するザクキャノンタンクに全く照準が付けられないでいた。
動揺し統制の取れていない反撃は1分と持たず、連邦軍MS部隊11機は大破した。
残った隊長機は最後の抵抗と、ジャンプしてザクキャノンタンクに突撃を掛けた!
「この、キメラがっ!」
「無駄だ!」
ヴァイスは後方のミサイル12発を発射しつつ、重地雷を巻く。
突撃した陸戦型GMはマシンガンで迎撃し、撃ち漏らしたミサイルをシールドで凌いだ。しかし、全てを受け切れなかった陸戦型GMは爆炎の中からシールドは失い、右肩は吹き飛び、左足首も破戒された状態だったがどうにかバランスを取って無事着地をしたと思った瞬間更に足元で爆発が起こった。
「ぐわっ!?」
重地雷に気付かず、踏みつけた右足は吹き飛ばされ後方に倒れ尻餅を突いた形になった。
「この!?」
まだ辛うじて動く機体を起こした連邦軍パイロットはザクキャノンタンクから放たれたビームの閃光に包まれた。
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
こっちはボツ茶番。戦闘シーンで、『こっちが向こうの技術を学べば向こうも然りという事か』というセリフを言わせたいが為に書き直したのですが、勿体無いので載せますw
上での戦闘より前の話ですねw
因みに上の話はトロピカルテストタイプドムの話の後になります。
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
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GMのビームスプレーガンの試射実験から約2週間が経った。
アフリカの容赦の無い熱気の中、MS整備班長はじめ整備班第1班は連日の作業で疲労困憊といった状態で働いていた。疲労は濃厚に顔に現れ、遂にはハンガーの端で死んだ様に寝る者も現れた始めた頃、やっと班長の手が止まった。
「よしっ」
整備用ハッチが閉められ、一息吐いた班長が整備スタッフを見回すと「今はここまでだな、みんなご苦労だった。どのくらい時間が取れるかは分らないが休んでくれ」と親指を立てて見せた。
「やった~」「終った~」膝を折り倒れ込むスタッフ。
「これで休める・・・」と言いながら倒れ込んでそのまま眠る者まで居た。
班長は工具箱を椅子代わりに腰を下ろし、手拭いで汗と油に塗れた顔を拭いた。
「ご苦労さん」
顔の前に突然出された冷えたビールに、「おっ♪」と喜びの声を上げるが、ノンアルと気付いて肩が落ちる。
「なんだ、ノンアルかよ」と文句を言いながらも一気にビールモドキを飲み干した。
「当たり前だろ」とノンアルを持ってきた張本人は起きている他の作業員にも労いの言葉を掛けながらノンアルを配って班長の所に戻って来た。
「完成かい?」
「本体は大体な」と言って作業を中断しなければならない現状に不満そうな顔を見せた。
「連邦のビームライフルの資料と一緒に本部に送ったパーツの請求書がいつ受理されて帰って来るか分らないが、そいつが届かない限りは完成はお預けって訳だ」と手をひらひらと振る。
連邦のオデッサ侵攻の噂がある中、アフリカの1部隊から普通ではない発注書が送られて来て向こうの処理も滞ってるのかもしれない。そもそも不許可の判を付いて送り返されるかもしれない、そんなただ待つしかない状況に苛立ちも出てきているのだ。
「まぁ、そん時は連結外して元の形に戻すだけだがな」
「でも、ザクキャノンタンクも結構弄ったんだろ?」親指でザクキャノンタンクを指す。
「まぁな、駆動系は残して強化したが元のガスタービン・エンジンは外してある。変わりにザクの核融合炉から動力を貰ってるからパワーは段違いに上がってる。更に前より軽くもなってるから速度はかなり上がってる、ドムにだって着いて行ける筈だ」
後ろにお荷物が付いているのにホバーで高速移動するドムに着いて行けるとは大げさだな、とそのお荷物を見る。
「速度が上がったのは本当に助かるよ。でも後ろにあんなの牽引してて本当に大丈夫かい?」
「実際に動かしてみないと分らないがな、後ろのヤツもGMの核融合炉から動力を貰ってるから大丈夫だろ」
「やっぱり分らないんじゃん・・・」
「計算上は出るんだよ!それに今の問題は武装だよ武装、司令部からパーツが届かなかったら本当に元に戻さんと・・・」と、そう言うと親方は立ち上がった。
「兎に角今はここまでだ、少し休ませて貰うぜ」と手を振る親方に「ああ、ゆっくり休んでくれ」と返してザクキャノンタンクを見上げた時だった、徐々に近付いて来る大型ローターの音に気が付き外を見た。
「あれはファットアンクルの音だな」
そう言って部屋に戻りかけていた班長とヴァイスはハンガーの外へと向かった。
着陸した3機のファットアンクルは、大きなコンテナとタンク、そしてデザートカラーのドムタイプを降ろして帰ってしまった。
「ありゃぁ、トロピカルテストタイプって奴だな」
「トロピカル?」その名前から南国の海を思い浮かべるヴァイス。
「まぁ、砂漠戦専用ってやつだよ。カラカル隊が使ってたがこっちにも回って来たんだな」
「ふ~ん」とヴァイスが返事をしていると、1人の作業員がやって来た。
「整備班長に通達!」
「なんだ?」
「先程の便でメガ粒子の充填装置とロケットランチャー、MS用重地雷等が届いてます」という連絡を聞いて疲れて覇気の無かった目に光りが戻る班長と、げっ!?と嫌そうな顔をする整備員達。
「野郎共!仕事の時間だー!!」という班長の号令に「えーーーっ!?」と答えた。
最期まで読んでくれてありがとうございます。
前書きにも書きましたが、砂漠部隊の話はもう少し続きます。
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第10話 【トロピカルテストタイプ・ドム】
結構切ったり貼ったりしました。
南国っぽい名前なのに、砂漠用のアイツです。
【挿絵表示】
他の写真はこちらで見れます。
https://gumpla.jp/old/325709
「隊長!西側からも新手が!?」
「ちっ!後退するぞ、遅れるなよ!」
第5地上機動歩兵師団第1MS大隊第一小隊。通称カラカル隊のMS部隊は連邦軍の策略により誘き出され、遂に投入された連邦軍のMS部隊に劣勢を強いられていた。
隊長ほか歴戦の戦士達の部隊だが、さしものカラカル隊も自陣から遠く誘き出され、物量に物を言わせた波状攻撃に疲弊し、またそのタイミングで現れたMS部隊に後退を余儀なくされたのだ。
現在カラカル隊は大きな岩山に身を隠して束の間の休息と今後の対策に頭を悩ませていた。
「隊長、やはり増援が来るまでには時間が掛かりそうです」
MSのコックピットから顔を出したパイロットが首を振り、苦々しく基地からの通信内容を伝えた。
「そうか・・・回線は開けたままにしておけ」と返し、一口水筒の水を飲んだ。
そして、MSのセンサーが短い休息の終わりを告げるのだった。
「隊長!敵のMS部隊が来ました。南西方向、距離4000!」
隊長は自身の愛機を見上げると、戦闘準備を告げた。
岩陰から覗くカメラがMSの部隊を捕らえると、其処には陽炎に揺らめきながら歩を進める8機の巨大な人影と10台程の戦車の姿が有った。返すこちらの戦力はと言うとデザートザク2機とザクⅡが1機、マゼラアタックが4機である。しかもデザートザクの1機は片足を失っている。
デザートザクを置いてここから急いで逃げ出すか、それとも地の利のあるこの岩山で篭城戦をするか。ここならば敵の戦車は自由に動けない、だがこちらのマゼラアタックはマゼラトップを分離させて空中から砲撃する事も出来る。
迷っている時間は無く覚悟を決めた時、開きっ放しの無線から雑音混じりに声がした。
「ガ、ガガ・・・聞こえているなカラカル隊」
答え様とした隊長を無線の男が静止した。
「答えなくていい、位置を察知されるからな」
連邦軍はこちらを探す為にミノフスキー粒子を散布していない。こちらもまた位置を特定されない為に散布していなかった。
「敵が岩山を登り始めたらこちらは敵後方より攻撃を開始する。MSを4機は責任を持って落としてやる」
「後は其方で決めてくれ」そう告げると無線は切れてしまった。
「其方で決めてくれ、か・・・」
そして、間も無く61式戦車の無差別な砲撃が始まり敵MS、GMが斜面を登りだした時、敵後方より砂煙を上げて突進してくる2つの影が有った。
「2機だけか?」
隊長が援軍の戦力を測る為、最大望遠でその姿を確認しようとした。「あの砂の巻き上げ方1機はドムだな。しかしもう1機は・・・」
「ドムの動きに付いて来れる機体か」と目を凝らした瞬間モニターの中を閃光が走った!
「ビーム兵器!?」
そのビームはGMを背中から貫いた!
爆散するGM!
突然の後ろからの攻撃に動揺する敵MS部隊。不安定な斜面で回避行動を取る事も儘ならず、その間に更にもう1機がビームによって貫かれた。
この混乱を隊長は逃さなかった。
後方から高速で接近する2機のMSに注意が集中した敵に対して、山頂側から突撃を開始したのだ。
カラカル隊の2機が斜面を滑り降りながらマシンガンで牽制、左腕のラッツリバー3連装ミサイルポッドで止めを刺した。更にマシンガンを撃ちながら斜面を下る勢いを生かしてすれ違い様、ヒートホークでGMの右腕と胴体を半分切り裂いた。
4機のGMを葬り、最後のGMに照準を合わせた時そのGMが突然爆発して戦闘は呆気無く終了した。
「4機は責任を持つと言ったろう」
無線に入って来た楽しげな声に「そうだったな」と返す隊長。
岩山を降りた隊長はそこで待つ2機のMSに驚いた。4機のGMを落しながら61式戦車の部隊も壊滅させていたのだ。
「救援に駆け付けてくれて助かった、ありがとう」
コクピットから出て、MSの手の平に立ち敬礼をする隊長に、同じ様にコクピットから出てきた男が返礼をする。
「なに、偶然無線が聞こえただけだ、気にするな」
そう言うと、その2機は西の方角へと帰って行くのだった。
「トロピカルドム。配備されてるのは我が第5地上機動歩兵師団だけかと思ったが。それにあのザクタンク・・・」
夕日に消える2機に隻眼を細めながら、もう一度敬礼をする隊長だった。
最期まで読んでくれてありがとうございます。
砂漠部隊のお話も現時点で残り1話となりました。
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第11話 【ザク・デザートタイプ】
人類は長く戦争をしていた。それは宇宙に巨大なシリンダーを浮かべ、其処を新天地として生活し、命を重ねても尚変わらなかった。
UC:0079 1年戦争に始まりデラーズ戦争、グリプス戦役、2度に渡るネオジオン紛争、ラプラスの箱を巡る戦い・・・小さな物まで数えればキリがない・・・。
そしてUC:0121・・・私は戦争を直接には知らない。ミネバ・ラオ・ザビの演説以降大きな戦争は無かったらしい。
だが私は戦争専門のジャーナリストになった。それは私のおじいちゃんの所為かも知れない。
小さい頃に聞かされた戦争の話。その話に怖がり高揚もした。おじいちゃんは国の為、家族の為に戦った。そして生き残ったのだ。ある意味勝者だが生き残ったおじいちゃんは、そう言う私の顔を見てなんとも言えない困惑した笑みを良く浮かべていたのだ。
当然子供の私はその意味は分らなかった、今も分らない。だから私は戦争専門のジャーナリストになったのかもしれない。
そしてここ数年、宇宙に不穏な空気が漂っている。詳しい事が分っている訳ではないが先輩は既に宇宙に上がって取材を開始している。
そして、私も宇宙に、サイド2に行く決心をしたがその前にどうしても行きたい所が有って、今この砂漠の大地を訪れていた。
ガコン、オートジャイロのドアを開いてアリシアはヘリの巻き上げる砂塵の中その大地に降り立った。
「ここがジオンの元鉱山基地・・・」
おじいちゃんが所属していたジオン公国、北アフリカ方面、第13地上機動歩兵師団 第1MS小隊。その部隊の所属していた基地である。
そこは嘗ての活気は勿論、人の姿も無い。
外に作られた建物は破壊され、岩山を刳り貫いて作られた施設も爆発によって抉られた様に破壊されていた。写真を撮りながらその施設の中に入って行く。すると其処に1体の巨人が膝を着き沈黙していた。
「これは・・・」
その巨体を見上げてその存在感に圧倒される。
錆び付き、もう動く事の無い過去の遺物。その姿は何度も写真で見ていた。
『MS-06D』ザクデザートタイプ。
「おじいちゃんの部隊の機体かな?」
くるりと周囲を回りその痕跡を探すとサビでかなり見づらいがジオンのマークと『01』の数字が見えた。
「1番機、おじいちゃんのだ・・・」
他にも探したが流石にMSの姿は無かった。
アリシアは基地内を散々見て回ったあと、再びザクデザートの所に戻ってくるとその巨体によじ登り始めた。
砂埃と浮いたサビがそれを拒む、しかしアリシアは汗だくになりながらもどうにか胸のコックピットへと辿り着いた。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
開きっぱなしのハッチからコックピットの中を覗く。
勿論パイロットは居ない・・・そのコックピットの端に1枚の写真を見付けた。安堵と懐かしさ、そして驚きの入り混じった感覚に戸惑いがちにその写真を手に取った。
「忘れ物、持って返るね・・・」
アリシアはその1枚の古ぼけた写真を手に、遥か上空を見上げた。遠い宇宙に浮かぶ故郷に居る祖父に思いを馳せて。
最期まで読んでくれてありがとうございます。
今回で『第13地上機動歩兵師団 第1MS小隊』のお話は終了です。
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第12話 【グフカスタム・イェーガー】
ズン・・・ズン・・・。
遠くから響く振動、それを地面へと突き刺したアンダーグラウンド・ソナーによって捕らえた。
「大尉、来ました」
誰に聞かれる訳でもないのに、自然と声を潜める男に「分った」とだけ答え、コックピットで小説を読んでいた男は読んでいた本に栞を挟むと、一つ息を吐いて送られて来たデータに目を通した。
(良い所だったんだけどな・・・)小説の続きに気を取られながら。
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
ズン・・・ズン・・・。
「隊長!あれ」
カン曹長のGMが指差す方向に目をやると深い木々の間に揺れるMSの姿が見えた。
直ぐに見えなくはなったがやっと追い着いたオデッサからの敗走部隊だ。
「カン、ロバート、行くぞ!」
3機のGMはスラスターを噴かすと小さくジャンプを開始した。
ズウウウンンン・・・。
敵MSの姿を見た場所に降り立つGM。しかし、其処にトラックやMSの姿は無かった。
「何処へ行った?」
周囲を警戒し、更に奥へと続く道を確認しているとロバートから通信が入る。
「ガ、ザ・ザザザー隊・長・・・ミノフザザザ・・・ガ、ザザ撒かれて・・・」
「ミノフスキー粒子か!?」
コンソールを見るとミノフスキー粒子の濃度の数値が跳ね上がっていた。
そして、こちらの動揺を見据えた様に砲撃が始まった。
ズドーン!ズドーン!
「待ち伏せか!?」
距離があるのか、至近弾が降り注ぐ。
命中精度が悪いと判断した隊長は伏兵を警戒して防御姿勢を取り耐えていたが、運悪くその中の1発がロバートのGMの盾を吹き飛ばし、左腕をもぎ取った。
「うわーーー!?」
「大丈夫か?」
機体を接触させて通信を確定させる。
「はい、腕を持っていかれましたが大丈夫です、まだやれます!」
「よし!」
10秒程続いた砲撃が止まった瞬間を見逃さなかった隊長は射線から敵の射撃地点を予測して行動を開始した。予測される敵の射撃ポイントは2つ向こうの山の中腹の森の中。
「今の内に山を盾に距離を詰めるぞ!」
「了解!」
3機のGMが移動を開始した瞬間、左翼のカンのGMに衝撃が走った!
ガガガガガン!
一呼吸置いてGMが爆散する!
「カン!?」
叫ぶロバートのGMもまた背中を撃たれて爆発した。
「カン!ロバート!?」警戒する隊長機、すると森の中から射撃されたが1・2発当たったものの咄嗟にスラスターを吹かし体勢を変えシールドで防いだ。
機体をMSよりも高い木々にぶつけながらも森の中に身を隠し周囲を警戒しているGM。そこにパシュ!パシュ!とスモーク弾が発射された。
「くっそ!」
視界が一瞬にして遮られていく。
回りの木が邪魔で思う様には動けない。上に飛び出せば狙い撃ちされる可能性が高い。逡巡していると予想とは裏腹に突然後方で爆発が起こった。
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
放物線を描きGMの後方に着弾したグレネードに反応したその隙をフーバーは見逃さなかった。フルスロットルで森から飛び出したのだ。
GMのパイロットがグレネードが隙を作る為の牽制だと気が付いた時には既に遅かった。
飛び出した緑色の狩人は左腕の90mm速射砲を撃ちつつ接近し、右腕のライトニングサーベルで振り向き直ったGMの左腕を斬り付けた。この攻撃は盾で受け止められたが、その瞬間走る高圧電流に機体とパイロットが悲鳴を上げる。そして、左腕のショートヒートサーベルがこの戦いに終止符を打った。
「フーバー大尉お疲れ様です」
「ああ、そっちはどうだ?」
「友軍部隊は無事です。このまま予定通りのルートで基地に向かいます」
「了解、こちらも合流する」
森の中に隠れていた指揮車と共に緑の狩人は再び森の中へと消えるのだった。
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第13話 【ビグロ シャア専用】
宇宙要塞ア・バオア・クーの整備ブロック。そこに新型MAビグロが最終チェックを受けていた。
その整備ブロックに現れる2人。
1人は仮面を付けた赤い軍服の青年。もう1人はビグロを担当している整備員だ。
「80パーセント? 冗談じゃありません。現状でビグロの性能は100パーセント出せます」
ファイルを片手にビグロの性能に付いてレクチャーをする整備員が反論する。
「足は付いていない?」
「あんなの飾りです。偉い人にはそれがわからんのですよ」
「話は信じるがな・・・取り敢えず角を付けて赤く塗ってくれ」
「えっ!?」
既に発信命令が出ているのに?と、驚く整備員。
今正に連邦軍の大艦隊に寄ってこの・アバオア・クーが攻撃を受けている最中だと云うのに、MA1機を塗り替えるのにどれだけの時間が掛かると思っているのか。
「加速力を3倍にしないとな!」
整備員の困惑などお構い無しに良い笑顔で親指を立てる赤い男。
「立ちました!」
笑顔の男と困惑する整備員の前に旗を持った小さな少女が何処とも無く突然現れた。
「ん、なんだ君は?」
怪訝な表情の赤い男、
「ビグロの加速力を3倍にするのは死亡フラグです!」
「あと、角付けて赤く塗っただけじゃ3倍にはなりませんよ」
「なに!?」
驚愕する赤い男の反応に、驚愕する整備員だった。
ー・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
さて、今回文字数が足りなかったので、キットの解説を入れて文字数を稼ぎたいと思います。
シャア専用ビグロを作ってる時に(あ、ビグロも足がない)と思ってジオングでの遣り取りをそもそも足の無いビグロでやりました。
腕はKPSランナーやポリキャップで関節を改造してます。
キットは100均のLEDライトを使ってモノアイとメガ粒子砲とメインエンジンを光らせてます。
電池ボックスを切り詰め、LEDも4つだけ残してビグロの中に詰め込みました。
後部のパーツを接着せず、蓋代わりにして電池ボックスのスイッチを入れれる様にしてます。
クチバシは挿し換え式。
本体下部にネオジウム磁石を仕込み、スタンドの方に金属を内蔵しておきました。
なので、メタルラックなどにもくっ付きます。
先日、GUNSTAさんにアーティファクトのグフフライトタイプ、Z版 連邦カラーを投稿しました。
GUNSTA
https://gumpla.jp/dashboard
MIXI
https://mixi.jp/view_diary.pl?owner_id=19862347&id=1965833884
他にも小説を書いていない作例がGUASTAとMIXIに色々投稿してます。
もしよろしければ、其方も見てやって下さい。
さぁ、これでやっと1000文字に届いたぞ!
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第14話 【G-ディアス】
陸戦型のリックディアスで、某なろうロボットアニメのテレスターレ、リスペクトです。
【挿絵表示】
他の写真はこちらで見れます。
https://gumpla.jp/hg/662345
ジッ!
「アインからレオン・ベルガー小隊各機、配置に着いたか?」
レシーバーから聞こえる隊長の声は実に穏やかで、これからMS戦をやるとは思えない雰囲気を出していた。
「ツヴァイOK」抑揚の無い冷たい印象の女性の声。しかし少し硬い感じがする。
「ド、ドライもOKです」こちらはまだ幼さの残る少年の様な声で分りやすく緊張していた。
女性の方は新しく受領した新型に慣れていない為の緊張だろうか?何事にも慎重な彼女らしい。ジーディアスの慣熟訓練は終っているのだが実戦は初めてだ。まぁ、それは隊長も同じなのだが。
少年の方は、こちらも新型のディジェの改良機を任された上に、実戦経験そのものが乏しいのだ。
(そりゃ、緊張もするわな。まぁ、俺はディアスに慣れてるし、アイツもディジェの方がまだ慣れてるんだから仕方無い)
「よし、では無線封鎖前におさらいだ。宇宙(そら)では決戦をやってるそうだが俺達の仕事は変わらない」
最近は戦場が宇宙に移ったお蔭でティターンズの動きは減ったが、アクシズの地球圏帰還に呼応したジオン残党の動きが活発になっている。
「旧オデッサ基地に向かう部隊をこの町で待ち伏せする。俺が正面から攻撃して敵を引きつける、お前達は俺の攻撃に合わせて敵を挟撃しろ。なんて事は無い、隠れて後ろから狙って撃つ簡単な仕事だ」
「「了解!」」
「良い返事だ、では暫しプライベートな時間を楽しんでくれ」
そう言うと隊長は無線を切って、持ち込んだミュージックプレイヤーのスイッチを入れ、傍らの編み針に手を伸ばした。
潜伏して小一時間程した時、町の反対側に仕掛けたセンサーの一つが敵の接近を、けたたましく知らせる。
「さて」
編み掛けのあみぐるみをカバンに直し、プレーヤーを止めて同じカバンに押し込めると、一口水を飲んで息を潜めた。
警報が鳴って暫くすると町並みの向こうに動く巨大な人影が見えた。全長約20mの巨人、MS。
旧式のザクⅡ3機、グフ飛行試験型1機、そしてドムトローペンが2機に大型トラックが3台。
「情報通りだな」
モニターを狙撃モードに切り替え、大通りをゆっくり進む敵部隊の後ろに一際大きな影が現れた。
「なんだあれは?」
その姿を照合すると、1つの機体がディスプレイに表示される。
『YMS-16M ザメル』
「骨董市だな・・・しかし」
中身は最新かもと云う可能性を部下の2人は分っているのかと、少し不安になりつつ先頭のドムに狙いを定めた。
ドシュ!
放たれたメガ粒子はドムを貫き、その爆発が戦闘開始の狼煙となった。
トラックを守る様に固まるザクと前方に飛び出すドムとグフ、そしてザメルは射線から敵の位置を割り出し背中のキャノンを展開している。
「遅いな」
2射目がザメルを撃ち抜くと、ジーディアスは移動を開始した。
ビルの後方から地上に降りると、敵の予測進路を大きく迂回して回り込む。
遠くで爆発音が聞こえる。2人は上手くザクを倒してるらしい。
程無くビルの隙間から疾走するドムの姿が見えた。
「真っ直ぐ突っ込んで来るとはね」
迂闊な奴めとドムの後方に回り込むが、そこで一緒に前に出た筈のグフが居ない事に気が付いた。
その瞬間、後方のセンサーが鳴り響く!
「やる!」
背後のビルの陰から飛び出したグフのガトリングガンが唸る。
6本の銃身が高速回転を始め75mmの弾丸をこれでもかとばら撒くグフ飛行試験型。
その攻撃を滑る様に機体を捻り、左腕にマウントされたシールドで防御しつつ後退する。
「愚かな!」
グフのパイロットが自身の役目を完遂した事を確信した。後退したジーディアスの後ろ、踵を返して戻って来たドムトローペンが意表を突いて低いビルを飛び越え、頭上からジーディアスに襲い掛かった。
「獲ったぞ!」
真後ろを取ったドムが逆手に持ったヒートサーベルを突き下ろす。
「甘い!」
素早く、セーフティーを解除、自動攻撃と攻撃指定マーカーのボタンを押すと自動的に動き出したサブアームが迫るドムに照準を合わせビームサブマシンガンの3点バーストが火を噴いた。と同時にビルの側から離れる。
横目で確認すると先程まで居た場所に落ちたドムが爆発を起こした。
「よくもっ!」
完全に勝ったと思ったグフが仲間をやられて怒りに狂う。
ガトリングを撃ちながら突撃してくるグフに対し、シールドで防御しつつショートバズーカと背中のビームマシンガンで応戦するジーディアス。
右に左にと攻撃を躱していたが、ビームマシンガンで右足を撃ち抜かれ、体勢を崩した所をバズーカでガトリングシールドを装備した左腕も吹き飛ばされた。
倒したか?と思った瞬間、グフがバーニアを吹かして飛び掛ってきた。
「まだだーっ!」
右肩のスパイクを突き出し、迫るグフ飛行試験型!がその捨て身の突撃をジーディアスはシールドを突き立てて受け止めた。
バシュ!
シールドの後方から勢い良く排気して、伸縮式のシールドが打ち出されグフの胴体を貫いた。
「すまんな・・・」
そう言い残して、レオン・ベルガー小隊隊長、フーバー・ボナパルトは部下の元へとジーディアスを滑らせた。
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第15話 【GMキャノンパワード】
「タイヨウ、マナカ、作戦通り頼むぞ」
レシーバーから響くヒロシの声。
「ああ、任せとけ!」
「そっちこそしくじらないでね」
「ああ、善処するよ」
冷静に、しかし楽しそうに素っ気無いセリフを返す。
「そこは『任せとけ!』っでしょ!」
何時も通りなマナカの元気っぷりに思わず頬が緩む。
「わかった、任せとけ」
「よしっ行くぞ!バルバトス・フリーダム!」
「じゃあ行って来る」
「ああ、気を付けてな」
「分かってる。アカツキ・シルバリオン行きます!」
2人の機体が宇宙を駆ける!
ヒロシの駆るGMキャノンパワードは最小限の軌道で別方向へと身を翻した。
県予選準決勝。この試合に勝てばついに決勝戦だ。競合が犇き合う都道府県に比べればレベルが低いとはいえ、1年生だけで良く此処までこれたものだ。と、思いながら予定位置に着いて準備に入る。
程無くビームの閃光が遠くに見えた。
「2人共上手くやってくれてる様だな」
デブリの多い暗礁宙域。そのデブリの中を戦いの閃光が徐々に此方に近付いてくる。
「流石だな」
長距離射撃用スコープを覗いてタイミングを計る。
「あれ、1機少ない・・・倒したのか?」
2人は左右に分かれて白と赤のキュベレイを包囲する様に距離を取った。
背中合わせとなり、応戦するキュベレイ。
ファンネルは残っているが、使う余裕が無い。
「機体の相性が最悪だ!」
相手の1人が咆えた!
NT専用機とはいえ、ビーム兵器しかないキュベレイに対してバルバトスとアカツキである。
そして、タイヨウとマナカは機体の相性の良さも有って無事、指定ポイントに敵を誘導した。
このタイミングをヒロシは待っていた。
これまで1人隠れてエネルギーをチャージしていたビームキャノンは、剥き出しのライフリングシリンダーが溢れるエネルギーを押さえきれずバチバチと放電させながら回転していた。
「行け!」
限界まで蓄積したエネルギーを一気に開放したビームキャノンがデブリと化したコロンブスの装甲を貫き、そのまま2機のキュベレイをそのビームの波に飲み込んだ。
「なに!?」
「ばかなー!?」
極太のビームが宇宙を貫き、沈黙が訪れる。
「これはダメだな、たった1発でエネルギーが残り2割を切ったよ」
「しかも、私達の負担が酷い!」
「1発はデカイけど、それまでは2体3で不利だからな」
「うん、やっぱりダメだな、分かってたけどw」
本人はやりきって満足と云った感じだが、付き合わされた2人はゲンナリしてる。
「兎に角終った、終った」とタイヨウが機体をヒロシの方に向けたがヒロシは「まだだよ」と、振り返った。
「そんな所に隠れてたのかーーー!」
デブリの間を隠れる様に動いて回りこんでいた黒いキュベレイが偶然にもGMキャノンパワードの後ろに飛び出したのだ。
「せめて、貴様だけでも!」
残り少ないファンネルを吐き出し、迫るキュベレイ。そのキュベレイとファンネルを右胸の拡散メガ粒子砲で迎撃する。
「ダクトじゃないのか!?小賢しい!」
残ったファンネルの攻撃を前面に展開したシールドで防ぐ。
「そこだ!」
シールドが目隠しになって此方が見えない筈だと判断したマサはシールド共切り裂いた。
やった!と思ったマサの目の前に真っ二つになったシールドの隙間からビームサーベルを振るGMキャノンパワードが見えた。
「しまった!?」
全力でスラスターを吹かし、後退したキュベレイだったがそれま間に合わなかった。通常の倍程あるサーベルが頭上から振り下ろされ、本体を庇った両腕を切断、何も出来なくなった所をビームライフルで撃ち抜かれてこの戦いは終った。
「いや~危なかったなw」
ヒロシはやりたい事をやりきった事で満足気だったが、残り二人は不貞腐れてた。
「何が危なかったな~よ!」
「まったくだぜ、ヒロシお前ももっと強い機体をベースに作ったらどうだ?」
県大会準決勝を無事勝ち上がり祝勝会の場で2人はヒロシに詰め寄った。
「そうよ、キャノンが好きならダブルエックスとかフラウロスとかあるじゃない!」
「いや、いや、俺はGMキャノンが好きなんだよ~」
シールドが真っ二つになったGMキャノンパワードを手に緩んだ表情だ。
「確かに拘りは大事だと思うけどさ。折角の大会なんだし、やっぱり勝ちたいじゃん」
「そうよ、私は3人で優勝したいの!」
立ち上がって、ヒロシを説得する2人。
タイヨウの言う事はもっともだ。マナカの気持も尊重したい。しかし、信念は曲げられない。
ヒロシはキャノン系ではなく『GMキャノン』が好きなのだ。
「確かにタイヨウやマナカの言う事も分かるけどさ、俺はGMキャノンが好きだし、そのGMキャノンでガンダムや元から強い設定の機体に勝つのが楽しいんだよ」
楽しそうに微笑むヒロシに2人は何も言えない。自分達だって好きな機体で勝つ楽しさは知っている。実際マナカはアカツキが好きだから使ってるし、タイヨウも本当は非人型が好きなのだ。
「だからさ、今年だけは俺の我儘に付き合ってくれないか?」
愛おしく見ていたGMキャノンパワードをケースに戻す。
「ヒロシ・・・」
「来年は、ちゃんと強い機体で出るからさ」
そう微笑んで言われると何も言えなくなった。2人はいろいろ諦め椅子に座ると分かったと納得した。
「今年だけは、好きにしろ!ただし負ける気はねぇからな!」
「そうよ、今年も全力で優勝狙うんだから!」
「分かってるって」
軽く返すヒロシに少しだけ腹が立ったマナカは「来年、新入生が入ったらヒロシはメンバーから外されるかもしれないしね」と、少しだけ、嫌みっぽさを含んだ笑顔で持ってたコテでヒロシを指した。
ふふん!と不敵に笑うマナカを見つめるヒロシ。
その視線に照れて目線を外したマナカにヒロシはフッと笑った。
「その時は部長権限で2人を外して新入生と出るよ」とのたまった。
「なっ俺は何も言ってないだろう!?」
「私を外すなんて横暴よ!」
ギャーギャー言う2人を置いて、ヒロシは次のGMキャノンのコンセプトを考えつつ、おいしくお好み焼きを食べるのだった。
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第16話 【ガルバルディβ-R 宇宙用高機動型】
HGのGMでも買って、ミキシングしようと思ってたのですが、HGガルバルディβが発表されて、断念。
ならばと、オリジナル改修機に改造しました。
【挿絵表示】
他の写真はこちらで見れます。
https://gumpla.jp/old/493292
「副隊長、予定宙域はそろそろの筈ですが、見当たりませんね」
「模擬戦だからって気を抜くな。こちらのガルバルディと違って向こうは新型だからな」
「なに完熟訓練って事はまだ慣れてないって事でしょう?熟練度の違いを見せてやりますよ」
兎に角集中しろと嗜めた副隊長だったが、自分も同じ考えだった。
突然ティターンズの艦が来たかと思うと、こちらの都合も考えず新型MSの完熟訓練を手伝えとの申し出に、誰しもが憤りを感じていたのだ。
こちらの機体は『ガルバルディβ』
戦後の財政難の中疲弊した戦力回復の為に、ジオン製MSのガルバルディαを改修、開発した機体である。装甲の軽量化と推進器、ジェネレーターの強化により運動性が上がっている。後に全周囲モニターとリニアシートも採用され近代化改修もされたが、今となっては旧式の部類である。
ビーッ!ビーッ!ビーッ!
突然、敵機接近を告げる警告音がヘルメットの中に響いた。
回りを探すが敵影は無い。
(ミノフスキー粒子は散布されてない筈だが・・・)
焦りを感じ始めた時、副隊長が叫んだ!
「上か!?ブレイクッ!」
3機と2機に別れ、回避行動をとる5つの光跡。
その光跡を見ていたティターンズの隊長は、判断の早さに感心していた。
「隊長!敵は二手に分かれましたが、どうします?」
「そんなのは決まっている」
更に加速すると6機の青いMSは逃げた3機を追い掛けたのだ。
「しかし5機か、1機足りないな・・・」
ティターンズの新型機『バーザム』
高コストで操縦困難な可変機とは別に、一般兵向けに開発された汎用MSだ。
とは言え可変機に着いていけるだけの性能を持っている第2世代MSである。
第2世代とは、ムーバルフレーム、ガンダリウム合金、全周囲モニターとリニアシートが採用されたMSでこのバーザムが連邦製では初の第2世代量産型MSとなる。
「こっちに来たか・・・」
中隊規模、6機の光跡が漆黒の宇宙に曲線を描き綺麗な螺旋を形作る。
3機のガルバルディは振り返って応戦、ビームを放つが当たらない。
別れた2機のガルバルディは反転してバーザムを横から攻撃するが速度で翻弄され当たらず、逆に3機の内の端の1機が集中砲火を受けて爆散した。
勿論実際に爆発した訳ではない。各機のモニターにCGの爆発が表示されただけだ。そして、落とされたガルバルディは動きを止め、パイロットのヘルメット内では撃墜を告げるアラームが鳴り響いた。
「副隊長!?」
「焦るな!落ち着け!」
1機落とされた事に動揺する部下を落ち着かせて、バーザムの動きを警戒する。
そこで気が付く、バーザムの航跡が5つしかない!?
もう1機は?
周りを警戒するが、5機のバーザムの再攻撃に注意が殺がれる。
各個で応戦を始めたその時、左下後方にバーニアの光りを見付けた!
「くそ!」咄嗟に振り返る副隊長のガルバルディ。
「遅い!」と、狙いを定めトリガーを引こうとした瞬間、当のバーザムが爆散した。勿論CGだが。
「何だと・・・!?」鳴り響くアラームの中バーザム部隊の隊長は何が起きたのか理解出来ずにいた。
ズキューーーン!ズキューーーン!
後方から2発、強力な火線が残りのバーザムを襲う。
そして、その火線を追う様に1機のMSが戦場に現れた!
「オルソン隊長!?」
そのMSはガルバルディβだった。ただ塗装が一般機と少し違う、何より背中には大きな2本のブースターユニットが増設されていた。
そのブースターの先端のメガ粒子砲が、突然隊長機を落とされ動揺しているバーザムを更に1機落とした。
「何をしている!動け!動け!戦場で止まれば落とされるぞ!」
ティターンズの部隊も直ぐに立て直したが、勢い付いたガルバルディ部隊に分が有った。
結局更に2機のガルバルディが落とされたが、バーザム部隊は全滅し模擬戦はルナツー駐屯部隊の勝利に終わった。
機体の調整に手間取り、模擬戦に遅れたお蔭で相手の隙を付き戦況を変えたのは部隊長、オルソン大尉の駆るガルバルディβ-Rだった。
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第17話 【ヤクト・ドーガ 陸戦強襲型】
「おい、ノイマンもう時間が無いぞ!」
「分っている!分っているが、こうも連中の抵抗が激しいとはな」
ノイマン曹長とアルド曹長の2機が残骸に隠れて迎撃をするも効果が上がらない。
北米のネバダ州に有る連邦軍のミサイル基地。大気圏外、衛星軌道上の敵を迎撃する能力を持つこの基地を強襲して叩くのが今回の任務だった。
宇宙ではネオジオン総帥シャア・アズナブル大佐自ら先陣を切って5hsルナを落す作戦を指揮している。その作戦の一環として各地の迎撃ミサイル基地を襲撃して作戦を確固足る物にする為に地上に残っているジオン残党に作戦参加の要請が来たのがたったの一週間前。
だが、1年戦争以降久々の大きな作戦だ。デラーズの紛争の時も、ハマーン・カーンの起こした第一次ネオジオン戦争も大きく参加する事は無かった。
13年。コロニーに帰らず地上で燻っていた彼らにとってこの要請は心躍るものだった。しかも総帥があの赤い彗星であり、ダイクンの忘れ形見なのだ。
ネオジオン総帥の直々の要請に応えて、近隣に居た2つの部隊のMSを整えて2機のファットアンクルと1機の鹵獲したミデア輸送機で部隊を輸送、ミサイル基地を強襲したのだが、事前に情報が漏れていたのか激しい抵抗に見舞われていた。
既に落されたミデアを盾にジリ貧の迎撃を行なう2機。
「他の奴らはどうした?」
「2機やられたのは見たが他は分らん!まぁ、向こうで頑張ってるだろうよ!」
「そうだな!」
ファットアンクルに乗っていた連中も同じ様な状況で、北と西から基地に迫った計9機のMSは其々善戦しているらしい。
「もう少しの我慢だ!」
「分っちゃいるがな、コイツもガタガタだ!」
ノイマンのデザートザクもアルドのハイザックも少ない補給と資材で整備を続けた機体なのだ。装備もバラバラである。
タイミングを見計らって瓦礫の陰から体を出しバズーカを放つ!
直撃を受けたGMⅢが上半身を吹き飛ばされ後ろへと倒れていった。
「連邦製のバズーカも悪くないなw」
ノイマンが喜ぶ暇も無く、攻撃が集中する。
「クソッ!」
慌てて機体を瓦礫に隠して悪態を吐いた。
「そろそろヤバイな」
マシンガンを連射して直ぐに隠れるアルドのハイザック。
「ああ、他の奴らもまだ基地に辿り着いてないみたいだしな」
腕のラッツリバー3連装ミサイルを撃つ。
「あいつ等は何やってんだ!」
ミサイルに怯んだGMⅢをマシンガンで撃とうとした時、基地の方からサイレンが鳴り響いた。
敵機発見のサイレン、その報告に注意が反れたGMⅢを2人は同時に撃破した。残りは3機だ。
「やっと来た様だな」
「ああ、あのサイレンは俺達には騎兵隊のラッパに聞こえるぜ」
ジオン残党軍が攻める北と西の反対側、南東に3つの光りを見付けたのは管制塔に居た職員だ。
ミノフスキー粒子が散布されてない中なら、レーダーはその性能を十二分に発揮する。だが今迫っている3機は地面スレスレレーダー網の下を高速で飛んで来たのだ。
MSN-03ヤクト・ドーガ。その陸戦強襲型と地上での強襲飛行用ユニットを背負った2機のズサだ。
管制塔が3機を視認してサイレンを鳴らしたその直後管制塔がビームで貫かれた。
基地の各所から放たれる対空砲火。だがその時遂に基地の迎撃ミサイルが轟音を放ち打ち上げられた。
1発が地下のサイロから這い上がり、300m程上昇した所で更に加速して目標に向かって機動を変えていく。その頃に2発目が同じ様に打ち上げられ、同じ様に300m程で機動を変えると3発目が撃ち上がる。お互いのロケット噴射の影響を受けない様に順番に撃ち上がる迎撃ミサイル。
ミサイルの打ち上げを苦々しく見上げるヤクト・ドーガ達3機は急上昇する事で基地からの対空砲火を躱すとまだ打ち出され続けているミサイルサイト目掛け上空から有りったけのミサイルをばら撒いた。
ヤクト・ドーガはビームスマートガンで初速の遅いミサイルを打ち落としている。
MSのミサイル攻撃で破壊された迎撃ミサイルの一部が落下して地下の施設で誘爆を始めた。
その爆発を背に上空の3機を迎撃しようと2機のネモが急上昇を掛けてきた。
「その機体で良くやる!」
「作戦は終了した。ズサは後退しろ!」
ヤクトは翼で有り、スタビライザーでも有るウイングシールドを翻し急反転、急降下をしながらビームを回避しつつ手前の1機を落した。
「機動性が違う!」
もう1機の攻撃をスラスターを吹かして加速しつつ旋回して後ろに回ると、ネモのバックパックを蹴り飛ばし、姿勢を崩して落ちる所を撃ち抜いた。
その間にも基地の爆発は広がり、ミサイルの打ち上げも止まっている。
回りを確認すると、協力してくれたジオン地上部隊も撤退を初めていた。
と、その時一際大きな爆発が起こり、基地を守るMS部隊をも呑み込んだ。
爆発から逃れてたGMⅢが撤退する友軍を狙っていた所を上空から狙撃して、ヤクト・ドーガも撤退した。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
集結地点に急ぐジオン残党軍の面々は作戦成功に沸いていた。
数名の戦友を亡くしてしまったが、倍以上の敵を倒し基地も破壊。十数発のミサイルは打ち出されてしまったがあの程度では5thルナは破壊されないだろう。
10年以上共に戦った戦友の死に涙しながらもこの勝利に歓喜の声を上げた。先に空に帰った戦友に聞こえる様に。
そんなノイマンのザクに接触して来たのはあのヤクト・ドーガだ。
「こちらネオジオンのカイル中尉です。ご協力感謝します」
接触回線で通信してくる。
「こちらこそ助かりました中尉。それとこちらの方が階級は下なので敬語は不要です」
「いえ、皆さんに比べれば私は若輩者ですので」
「若輩者か・・・」
ノイマンの胸に過ぎるかつての仲間達。
「何か?」
「いえ、この作戦で平和になってくれればと・・・」
敢えて言葉を濁す。
「連邦の独裁と弾圧もこれまでですよ。総帥が必ず連邦軍を打ち倒してくれます!」
若いな・・・。
「ではまた平和になった宇宙(そら)で会いましょう」
「はい、また」
互いに敬礼をして、機体を離した。
ホバー走行で並走していたヤクト・ドーガはスラスターを噴かして翼を広げると地面スレスレを飛び去るのだった。
「また会える事を楽しみにしているよ、中尉」
ノイマンはせめてあの若者がこの戦争を生き残る事を願わずにはいられなかった。
最期まで読んでくれてありがとうございます。
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第18話 【ザクⅡリペア】
当時、汚しや修理部分を頑張りました。
【挿絵表示】
他の写真はこちらで見れます。
https://gumpla.jp/other/723732
カラン、カラン、カラン・・・。
ドアベルが渇いた音を奏で、前世紀のスローバラードが流れる店内に来客を告げる。
店主が入り口を見ると、其処にはこの街には不釣合いなスーツ姿の男が立っていた。年の頃は30手前といった所か。
「・・・いらっしゃい」
スーツの男はカウンターに座るとマティーニを注文する。
「どうぞ」
男は渇いた喉を潤すと、もう一杯頼んで店の中を見回した。
客はスーツの男1人だけ。
出て来たマティーニを一口飲んで店の主人を見た。
「流石にこの時間だと客が少ないんだな」
「・・・」
店の主人は男を見定める様に見た後、寂れた街だからな、この時間は何処もこんな物だ。と目線を落してグラスを洗い出した。
少しの沈黙、古いスピーカーから流れるのはこれまた古いジャズのメロディーだけだ。
曲の切れ間を狙って沈黙を破り、最初に口を開いたのスーツの男だ。
「なぁマスター、この辺にジオンの基地が有ったって本当かい?」
スーツの男の目は笑っているが、その奥に値踏みをする様な色が見える。
主人は磨いていたグラスを棚に戻しながら訊ねる。
「あんた、連邦の人かい?」
落ち着きのある穏やかな声だ。
「まさか、俺はしがないフリーのジャーナリストだよ」
スーツの男はおどけて、手を振った後、懐から名刺を取り出した。
「フリージャーナリスト・・・」
「そっ!」
名刺を付き返すと、主人は水を飲んでジャーナリストを名乗る男に向き直った。
「で、そのジャーナリストさんがこんな寂れた鉱山の街に何の用だい?」
主人は煩わしそうな表情を隠さない。
「ちょっと人を探していてね」
「こんな所に、記事になる様な人間は居ないと思うがね」
主人の目付きが鋭くなったが、スーツの男は意に介せずマティーニを呷る。
「昔、ここにジオンの基地が有ったんだって?」
「昔の話だ、小さな鉱山の中に有ったらしい」
「その小さな鉱山基地に連邦軍がやって来たとか」
「基地なんて呼べる様な物じゃなかったさ、ただの採掘場だったからな」
「詳しいね」
スーツの男は口元を微かに上げた。
「この街は鉱山で潤っていたからな。今は登山と観光客が少し来る位だがな」
「へぇ、でも戦後そんな街に連邦のMS小隊がやって来たそうじゃないか?」
興味津々といった感じで話す。
「知らないな、そもそもジオンの連中なんて戦時中に鉱石を掘り尽くしたら直ぐに出て行ったからな」
「そいつはおかしい?」
主人はスーツの男の目を見据えた。この男の真意を探る様に。そしてもしもの時は・・・。
「その連邦のMS3機をたった1機のザク、それもボロボロの機体で倒したって聞いたんだがな」
「・・・そのパイロットを探していると?」
主人に緊張がにじり寄る。
「まぁね、スカウトってやつよ」
「スカウト?」
想像外の答えに、思わず聞き返した。
「それだけの凄腕なら、パイロットとしてスカウト出来ないかって頼まれたのさ」
「ジャーナリストはそんな事もするのか?」
「まさか、ヨーロッパに行くなら途中まで送ってやるからここに寄って探してくれないか?だとよ」
(まったく、ハヤトの奴・・・)
男は心の中で悪態を吐いた。
「そうか、だが無駄足だったな。どこの誰だか知らないがそのパイロットなら連邦と相打ちしてる」
スーツの男は確信を得て心の中でフッと笑った。
「相打ちか・・・それは残念だ。街を守る為に一人で闘ったジオンのパイロットなら、あの演説を聴いたら協力してくれるかもしれないって言ってたんだが・・・」
「演説・・・ダカールの」
男はニヤリと笑ってる。
「あんた・・・」
主人が1歩前に出た時、勢い良く奥の扉が開いた。
「パパ、ただいまー!」
小さな女の子が店に入ると一直線に主人に駆け寄り抱き付いた。
「ただいま、あらお客さん?いらっしゃい」
後ろから現れたのは、この土地独特の衣装を着た女性だった。
「・・・あんたのお子さんかい?」
「あ、ああ・・・」
「ロナです!5才です!」
少女は右手を上げ大きな声で自己紹介をした。にっこり笑った笑顔が眩しい。
男は屈んで目線を合わせると、ロナの頭を撫でて、ちゃんと挨拶出来るのか、偉いなと優しく笑って見せた。
立ち上がると、やれやれと言った感じで最後に店の主人を見て困った様に笑った。
「さて、それじゃ失礼するよ。話ありがとな」
スーツの男はお金をカウンターに置くと店を出た。
その男を店の外まで追いかけた男が呼び止める。
「・・・良いのか?」
「俺には無理だからな、家族を大事にしな」
スーツの男は肩を竦めて、立ち去って行くのだった。
最期まで読んでくれてありがとうございます。
こういう話の方が好きですね。戦闘シーンは大変ですw
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第19話 【グフフライトタイプ】 『Mitternacht owl』2番機
「ジョン、聞こえるか!?」
「はい、ノイズも無く良好です」
ジョン・カークス軍曹はMSで空を飛ぶ感動に声を微かに震わせながら答えた。
6000・・・6500・・・7000・・・。
アフリカの熱く、青い空を貫く様に1機のMSが上昇を続けていた。
『MS-07H8B』はグフフライトの改装機である。単独飛行能力を有したMSとして一応の完成をみたH8タイプを更に独自改良し、空戦能力をより高めたのがこのグフフライトタイプBである。
その改良機を昨日受領した隊長は早速機体のテストを開始していた。現在は全力での上昇能力のテストを行なっている。
「隊長、グフフライト1万mに到達しました」
「よし、ジョン次だ」
隊長の言葉に対して少し間が開いて答える。
「・・・隊長、本当に大丈夫なんですか?」
先程までとは打って変わって不安気な声。
「マニュアル通りにやればな。もしダメなら脱出しろ」
その言葉に少し安堵した瞬間「が、出来るだけするな!俺の連れが手を回して調達してくれた新型だぞ、お前もテストパイロットならぶっ壊すなよ」と釘を刺された。
「うぐ・・・」と唸ったが、諦めて覚悟を決めた。
テストパイロットに不測の事態は日常茶飯事である。勿論こんなやり取りもだ。が、ジョンは地上で戦闘機を操縦した経験が無い。
上昇テストの時は上だけを見て、自由に空を飛ぶ事に感動していたが重力の有る地球での急降下は別である。
「ではジョン軍曹、『プログラム2』急降下を開始して下さい」
「伍長~」何事も無かった様に指示を出す通信士のクレア伍長の言葉で試験は再開される。
「うう・・・ジョン・カークス急降下試験開始します!」
急降下を開始したグフフライト。高度計は上昇の時とは比べ物にならない速度で回転していく。
6000、5000、4000、3000・・・。
ビーッ!ビーッ!ビーッ!
突然アラームが鳴り出し、ジョンは慌てる事無く状況を判断して、無理せずゆっくりと機体を持ち上げ水平に戻しながら速度を落とした。
「ジョン軍曹、大丈夫ですか?」
クレア伍長の少し焦った声がヘッドホンに響く。
「オレは大丈夫」と答えるとすかさず「機体はどうだ?」と隊長が聞いて来た。
「少しはオレの心配もして下さいよ~」と泣きつく軍曹に「それは伍長がしたろ」と軽くあしらった。
そして、このやり取りで深刻な事態では無い事も確認している。
「機体にガタが来る前に表面温度が上がり過ぎてアラームが鳴った様です」
「そうか、問題無いならこのまま続けるが、いけるか?」
ビーッ!ビー・・・。止まるアラーム。
「問題無い様です、行けます」
各部のチェックを素早く終えて、続行可能を告げる。
「そうか、ならポイント3でバネッサ伍長がターゲットを設置して待っているから向かってくれ。射撃テストをやるぞ」
「了解です!」
砲撃が好きで得意な軍曹は、喜び勇んでポイント3へと進路を変更した。
「その後はドップとのドッグファイトだ」
「え~・・・」とジョン軍曹は上昇した気分が急降下していった。
最期まで読んでくれてありがとうございます。
次回はミッターナハト・アウルの隊長機です。
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第20話 【グフRシュトゥルムアングリフ】『Mitternacht owl』1番機
ここはアフリカ、カイロ近郊の砂漠地帯。この灼熱の大地を黒い弾丸が飛んでいた。
「隊長、調子はどうですか?」
「・・・今の所問題は無さそうだ」
少し機嫌の悪そうな雰囲気をオペレーターのクレア伍長は敢えて流した。
兵器技術実験部隊『Mitternacht owl(ミッターナハト・アウル)』の隊長は今、配備されたばかりの実験機、MS-07RS『グフRシュトゥルムアングリフ』の慣熟訓練を行なっていた。
この機体は新設されたにも関わらず、MSが1機も配備されていなかったこの部隊に届いた機体である。
ただ、その機体の設計開発者が隊長の友人であり、技術者としてのライバルだった男で、更には隊長と違い本国で働いている男だったのだ。
感謝も有ったが、ライバルは今もMSの開発に携わっているのに自分は地球まで来てパイロットをしているという境遇に、なんとも割り切れない複雑な気持ちを抱えていた。
隊長は地面ギリギリを飛びながら表示される機体各部のデータを見た。
ライバルの仕事は信頼しているが、何が起こるか分らないのがこの仕事である。しかも試作装備で地面スレスレを亜音速で飛行するのはかなり肝の冷える作業だ。
「これよりターッゲットに突撃、攻撃を仕掛ける」
そう言うと隊長は機体を翻し射撃場に向かった。
亜音速の黒い弾丸と化したグフRシュトゥルムアングリフは目標地点に近付くと翼下のミサイルポッドからミサイルを吐き出し、空になったミサイルポッドをパージする。
ミサイルの爆発で巻き上がった土煙の中に突っ込むと機体を起こして脚のスラスターと翼をエアブレーキとして使って急制動を掛け射撃場に黒い巨人が降り立った。
すぐさま脚部装備のシュトゥルムファウストを発射、更に両手に持ったジャイアントバズーカでターゲットを破壊して行く。
撃ちつくしたバズーカを放り投げると背中のショットガンを抜き去り、残ったターゲットを全て撃ち抜いた。
周りを確認。
ビルの陰に隠れたGMを発見すると仮設のビルを飛び越え、既に撃ちつくしたショットガンを捨て腕に装備された3連装バルカンをGMに叩き込む。そして振り向き様に腰の2本のヒートサーベルを抜いて後ろに現れたターゲットを溶断した。
「隊長、訓練終了です」
クレアの言葉にふぅ、と一息吐くと安全な温度まで下がったヒートサーベルを収めた。
射撃場の外に設置された、指揮所に戻ると各座させたグフから搭乗用ウィンチで降りてきた。
「伍長、データはどうだった?」
「凄いですよ、隊長!」
簡易的にだがデータを纏めた画面を表示させ、クレアはタブレットを隊長に渡した。
「ふむ・・・」
ほぼ全てのデータがMS-07B3を超えていた、それは開発者の試算とほぼ一致していたのである。
「実働テストなんてほとんどやってないだろうに」
隊長は悔しさの混じった言葉にしたが、その口元が僅かに上がっていた。
そんな中、上空から1機のグフフライトが爆音と爆風を上げて降下してきた。
クレアは髪とスカートを押さえ、それを背中で庇う様に立った隊長もタブレットで自分の頭を庇っている。
降りて来たのはもう1人のパイロット、ジョン軍曹である。
ジョンは既にグフフライトの慣熟訓練を終えていて、大型の滑空砲を装備しての飛行訓練が主体となっていたが、今は隊長機のテストの補佐として、上空からの監視の役目を担っていた。
「しっかし、このクソ熱いのに真っ黒の機体って大変ですね隊長。かっこいいけどw」
隊長の側に来たジョンはグフRシュトゥルムアングリフを見上げた。
「この黒は奴のパーソナルカラーだ」
「え!?隊長の友達って技術者なのにパーソナルカラー持ちなんですか?」
「正式な物じゃ無い。だが自分の手で完成させた機体は全部この黒とグレーのツートンに塗ってたよ」
「ほえ~・・・」と感心しながらもう一度ジョンはグフを見上げた。
「所で隊長、実際に動かして何か気になる所とかは有りませんでしか?」
隊長からタブレットを受け取り、細かくチェックをしながら訊ねるクレア。
「今の所は無いな。あれだけの重武装なのに飛行も安定しているし」
「そうですか。では、ここでのテストはこれで終了ですね」
ここにサインをと再び渡されたタブレットを受け取った隊長だったが、逡巡したのちタブレットをクレアに返してジョンを呼んだ。
「空戦のテストをするぞ、軍曹付き合え!」
「え!?待って下さい隊長。この機体は空戦が出来る様には作られてないんじゃ?」
「ああ、だが翼が有ってこれだけの推力が有るんだ、飛べないなんて事は無いだろうよ」
「しかし、隊長!」と止め様としたクレアの肩を叩いて「データ収集を頼む」と言って再びグフのコックピットに戻るのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
アフリカの荒野を1発の黒い弾丸が地面スレスレを飛んで行く。
高度15m。機体が地面に触れそうに感じるギリギリの高度を飛ぶ黒いMS。
MS-07RS『グフRシュトゥルムアングリフ』
重武装を施したそのMSは、背部に取り付けられたフライトユニットと強化されたスラスターの驚異的な推力により、亜音速の弾丸と化して飛んでいた。
『グフRシュトゥルムアングリフ』は強襲用MSの運用テストとして作られた機体である。その機体の実戦テストの為、現在単機での突撃を行なっていた。
「あれか?」
敵レーダー網の下を亜音速で飛んでいたグフはその速度のまま、翼下のミサイルを吐き出した。音速で飛び出したミサイルは敵の施設や戦車を爆破していく。
突然の攻撃に蜂の巣を突いた様に慌てふためく連邦軍の補給基地、その基地に漆黒のMSが舞い降りる。
爆発の煙の中、その黒いMSは死神の様に見えただろう。
両足に装備されたシュトゥルムファウストと両手に装備したジャイアントバズーカで管制塔、格納庫、作業車、輸送機等を破壊していく。
突然の攻撃にまともに対応出来ていない連邦軍だったが、徐々に対応する者も現れた。
61式戦車が動き出したが砲塔がグフに向けられる前にショットガンで破壊され爆散した。残りの戦車もショットガンと両腕の75mm3連装バルカンで破壊していく。
突入から2分弱で炎と黒煙に包まれ、壊滅した連邦軍補給基地。
「こんな物かな・・・」
随分と物足りないがグフの性能を確かめたその時、燃え盛る格納庫から何かが飛び出した!
「よくもっ!」
ビームを放つ赤と白のMS。
「こんな所にももうMSが配備されたのか!?」
驚きと僅かな高揚感の中、地面を滑る様にビームを左右へと躱しながら敵MSを確認する。
連邦製MSが確認されていると云う報告は来ていたが、それは大きな戦線や基地での話でこんな小さな補給基地にまでとは予想出来なかったのだ。
「確かGMだったか、連邦の生産能力は流石だな」
ビームを躱しながらGMの後ろへと回ったグフは2本のヒートサーベルを引き抜くと、振り返った連邦製MS、GMを真っ二つにしのだった。
最期まで読んでくれてありがとうございます。
さて、過去作はここまでです。
今後は新しく書いた(作った)時に上げていきます。気長にお待ちください。
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第21話 【グフ・カスタム レッド・オーガ】 『紅鬼』
人生初のMGや、GGGカラーのトライオン3とか作っていたのでが、お話は考えてなかったのですよ。
【挿絵表示】
この『紅鬼』(コウキ)も紆余曲折あって時間が掛かりましたが、やっと完成しました。
「シズ!メグ!ラム!セイ!、守護陣形『ツヴァイ』!」
「「「「ヤー!」」」」
掛け声と共に、式典での警戒陣形から素早く移動を開始。巨大な盾を掲げ、後ろに横並びになっていた4機の白いドムが守護対象の周り、2時、4時、8時、10時の位置に陣取り、守護対象の右後方に控えていた隊長機の『蒼鬼』が12時、そして、左後方に控えていた俺の『紅鬼』が6時の位置に陣取り全周囲警戒の態勢を取る。
陣形が完成すると空かさず守護陣形『ドライ』の掛け声がレシーバーから響いた。
隊長機の『蒼鬼』は陣形から飛び出して先行して敵を迎撃、俺は警護対象の前に出て『蒼鬼』の討ち漏らした敵を迎撃し、4機のドムで守護対象を守る。
6機は次々と陣形を変え、そして最後はドム4機が前面で壁を作り敵を迎撃し、その間に蒼鬼と紅鬼で護衛対象を先導してその場から離脱する陣形が取られた。
連日の苛烈な訓練は、この部隊が編成されて間もない為だ。
宇宙世紀0079、10月。新生ジオンはドズル中将の治める宇宙要塞ソロモンとガルマ総帥が駐屯していた北アメリカ大陸を拠点として、宇宙地上の両面から、連邦軍及び長兄ギレン・ザビの率いるジオン公国を相手に宣戦布告したのだ。
新生ジオンはガルマ様を旗頭に、宇宙軍総司令のドズル中将が賛同したお蔭でジオン公国を2分する程の兵力となった。
そして、急遽設立したのが総帥ガルマ・ザビを守護する護衛部隊『Stahl・Schutz・Ritter』スチル・シュッツ・リッター(鋼の守護騎士)は、新生ジオンの総帥ガルマ・ザビ様を守護する騎士だ。
俺達『Stahl・Schutz・Ritter』が編成されてから連日協議と会議が繰り広げられ、今は素早く陣形を組み替える訓練に明け暮れている。
俺はこの部隊の副隊長でレオン・シュマウザー。新生ジオンの建国と同時にこの部隊に任命されたその日の内に召集会議とテストが行なわれ、部隊の内容と部下の選別が行なわれた。
隊長に任命された俺の双子の兄、ルイスは直ぐに4人の部下を選抜、機体の改良を申請した。
4人の部下、シズ、メグ、ラム、セイの4人は上半身と脚部の装甲を強化し、専用のランドセルと巨大な盾を装備した防御に特化した白いドムを与え。
そして、俺達兄妹は其々の戦闘スタイルに合わせたグフ・カスタムの改良機を手配したて貰ったのだ。
MS-07CRグフカスタム、レッド・オーガ『紅鬼』は親衛隊特権で俺用にカスタムされた紅い機体だ。
元々左肩にガトリング・シールドを装備した改良機だったが、更なる改良を申請した。その際ルイスと話有って、ブルー・オーガから必要なパーツを貰い思った以上に早く完成した。
ヒートロッドを外し、両手に35mm3連装ガトリングガンを装備。更に両肩のスパイクアーマーに短いアームを追加しガトリング・シールドを2枚装備した紅いグフカスタム、レッド・オーガ『紅鬼』へと改修したのだ。
『紅鬼』の役割は面制圧である。
ヒートサーベルを2本装備はしているが、これはオマケで2本のガトリング・シールドと2つの35mm3連装ガトリング砲で弾幕を張るのだ。
「レオン、2人を連れて試験場に出てくれ」
「了解、シズ、ラム行くぞ」
「「了解!」」
MS開発工場の有るカルフォルニアベースには性能テストをする為の試験場が有る。
本当なら実戦で慣熟訓練をしたい所だが、ガルマ総帥のニューヤークでの建国パレードまで時間が無い。うっかり機体を傷付けてしまっては、格好が付かないので今は試験場での訓練なのだが・・・。
装備重量は増えたが、大型化されたランドセルと高出力のスラスターを装備した『紅鬼』は2機のドムを置いて、障害物の隙間を掻い潜り、不意に現れる敵機のパネルを撃ち抜いていった。
「シズ!ラム!遅れるな!」
それに引き換え巨大な盾と癖の有るホバー走行にまだ慣れない2人は、レオンに遅れていた。レオン自身は全てのパネルを撃ち抜いているにも係わらずだ。
シズとラムもパネルへの命中率は高いのだが迎撃に集中する余り、慣れないドムの挙動に振り回され機体制御が負い付いていないのだ。
本来なら守護対象を中心に三角陣形を取らなければならないのだが・・・。
「シズ、ラム、迎撃は大事だが守護対象に置いて行かれては意味が無いぞ」
「「了解!」」
守護対象のガルマ総帥の駆る機体は総帥専用にカスタムされたギャンだ。
ホバー走行こそ出来ないが、この『紅鬼』と同等の機動性を持っているらしいので今の状態では困るのだ。
「防御姿勢を崩すな!敵を倒してもお前達が落とされたら、意味がないんだぞ!」
「「了解!」」
「射撃時に一々速度を緩めるな、全て最大戦速で行なえ」
「「了解!」」
「後2日だ。其れまでに自分の機体を自身の手足の様に使える様にするんだ」
「「了解!」」
無理を言っている事は分かっているが、今はそんな事も言わないといけない立場には少しだけうんざりしていると、やっと追い付いたドムに向き直った。
『紅鬼』は綺麗なままだが、2人のドムはシールドは勿論、頭部や肩部、特に足に数発のペイント弾が付着していた。
「まぁ、焦るな。常に冷静に落ち着いて周囲に気を張るんだ」
そう言いながらレオンの『紅鬼』は両肩のガトリング・シールドを2人に向ける。
「!?」「え!?」
息を呑む2人のその後ろのパネルを撃ち抜いた。
「ただ、油断はするなよ」
「は・・・はい」「了解しました・・・」
シズとラムの2人は群れるヘルメットの中、冷や汗を流した。
「ああ、ペイントは自分で落せよ」
そのレオンの言葉に、更に体が重くなるのを感じた。
レオン達がハンガーに戻ると、入れ替わりでルイスのグフカスタム、ブルーオーガ『蒼鬼』が動き出していた。
「レオン休んでおけ。この後は3対3で模擬戦をやるぞ!」
入れ替わる様にハンガーを出て行く『蒼鬼』は拳を見せてそのままメグとセイのドムを伴って試験場へと飛び出して行ったのだった。
最期まで読んでくれてありがとうございます。
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第22話 【水中用ザク】
完成してから大分経ってから書きました。
あくまでもイメージですw
「よくぞここまで辿り着いた、大○少年」
「レビル総統、お前達の悪事もここまでだ!」
「それはどうかな、出ろ!GM79(ジャイアントマシンセブンティナイン)!」
宇宙世紀0079。
地球から最も遠いサイド3の金曜の夕方、街から子供達の姿が消えた。
それは5:30から始まるTVに子供達が夢中になっていたからだ。
ズウウウンン・・・・。
至当の末、ザクMの攻撃で遂に対され爆散するGM79!
「これでもうお前を守るものは居ないぞ!レビル総統!」
「ふ、よもやGM79が倒されるとはな。だがこれで勝ったと思うのは早いぞ○作少年」
「なにっ!?」
ギギギ・・・。
勝つには勝ったがザクMもまた慢心相違だった。胸と左足には大きな傷を負い、武器も全て使ってしまった。
レビル総統を倒すため、立ち上がろうとするが再び膝を着いてしまう。
「負けるなザクM!」
「ふふふ、その様子ではザクMはもう戦えまい」
「くそ!どうすれば・・・」
「名残惜しいが、私達の因縁もそろそろ終わりにしようじゃないか」
カンッ!と手にした杖で床を鳴らすとレビル総統の玉座の周りの大広間の床が開き、巨大な影がせり出してきた。
「そ、そんな・・・」
その姿に大○少年は絶望の表情を露にする。
せり出した来た巨大な影は7つ。
それはザクMが傷付きながらもやっとの思いで倒したGM79だった。
意思の無いザクMがまるで睨み付ける様に顔を上げる。
「ザク・・・」
まともに動けない体に鞭打ち、○作少年を守る為立ち上がるザクM。
そんなザクMを心配する大○少年の後ろで爆発が起こった。
「何が起こった!?」
突然の爆発にレビル総統の注意が、注がれた其処には赤い影が立っていた。
「あなたは、赤い人」
「うむ、良く頑張ったな○作君!」
赤い人の姿に表情を輝かせる大○少年。
「おっと、少年よワシ達も忘れてくれるなよ」
「貴方は青い人!それに黒い人達と白い人まで!」
他支部のエージェントが揃い、表情にも元気が戻る○作少年。
その少年の横から別の影が現れた。
「よっ、俺の事も忘れて貰っては困るな少年」
「貴方はあの時の・・・」
「ふ、紅の人とでも呼んで貰おうか」
「はい!」
ここに、世界各支部のエージェントが揃ったのだった。
「何故貴様達がここに。全世界で起こした陽動作戦で動けない筈」
「レビル総統よ、戦いとは常に一手、二手先を考えて行なう物だよ」
ザクMと大○少年を庇う様に立ちはだかる7人のエージェントと7体のGM79が対峙する。
「ふ、なるほど流石だエージェント諸君。だが勝ったつもりで居るのはまだ早い」
レビル総統が右腕を高々と上げ指を鳴らした!
パチンッ!
「来い!RX78---!」
その音に呼応する様に、更に大きな地鳴りが起こり総統の前の地面から一際大きな白いロボが現れた。
「見よ!これが我等の最強兵器、RX78(アールエックスセブンティエイト)だ!」
「そんな・・・」
その巨大な白いロボに慄くも自身も闘おうとする少年を後ろから美しい女性が抱き止めた。
「ダメよ○作君」
「キシリアさん!?どうしてここに?」
「私もエージェントなのよ」
「しかし・・・」
「キシリアさんは身体が・・・」
「私は大丈夫。だからここは私達に任せて貴方は下がりなさい」
「そんな、皆さんが闘うって言うのにボクだけ逃げるなんて!」
「大丈夫よ弟が、いえ司令官が動いてくれたわ」
そうして、後ろを見る様に促すと海の向こうから巨大な船が近付いて来るのが見えた。
「大○君。早くこのドロワに戻りたまえ!整備班長達が待っているぞ!」
「司令官!・・・はい!」
遂にレビル総統との最後の戦いが始まった。
エージェント達はGM79に勝てるのか!?
傷付いたザクMの修理は間に合うのか!?
次回、最終回。
進め!ザクM。倒せ!ザクM。
『コロニーが静止する日(後編)』に乞うご期待!
サイド3の子供達は金曜の夕方に街から姿を消す。それは人気特撮番組を見る為だった。
それは一部の大人も同意だった。
「ところでギレン」
「どうかしましたか、父上」
「この漫画にはワシは出て来んのか?」
「・・・・・・・・」
(アニメや特撮を全て漫画と称するとは、老いたな父上)
ジ〇イ〇ン〇・ロ〇が最初からイメージと有って、こんなお話を考えてましたがなかなか踏ん切りがつかなくて、今頃書きました。
最後まで読んでくれて本当に有難う御座います。
しおり、ブックマークも有難う御座います。
誤字脱字の指摘修正とても感謝してます、ありがとうございます。
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第23話 【デミ・セントリー】
https://gumpla.jp/hg/1889210
デミ・セントリー。L4フロント73区、アスカティシア高等専門学園で採用された警備ドローンMSだ。
学園襲撃事件後、配備される事になったがMSだがそのMSが目の前で縦横無尽に飛び交っている。
バシュッ!
バシュッ!
ビームライフルで狙うが全く捕捉出来ない。
ガガッピ!
「なんなんだ、その動きは!?」
ブゥーーーン!
銃身が高速で回転しながらビームガトリングガンの銃口が光ったと思ったら、俺の機体は行動を停止してLOSSの文字が表示された。
MSハンガーで俺は叫んだ。
「なんだあのMSは!?」
「なかなかの物だろう?」
ブリオン社のチームで新規採用された警備MSのテストを請け負った俺達だが正直舐めていた。
俺達はこれまで使っていたデミ・トレーナーから新型の訓練機に乗り換えた。そして、使われなくなったデミ・トレーナーを再利用して作られたのがあのデミ・セントリーだ。
デミ・トレーナーのパーツはそのままにドローン技術を導入、無人機として再設計された無人警備MSだ。
その旧式の改良機に負けたのだ。
「あんな動き、もう初見殺しだろう」
「ドローン機だからな、パイロットが耐えられない急加速、急制動は勿論急旋回も可能だ」
そう、まるでアクロバットの様な動きに圧倒されて俺は落とされたのだ。
「しかし、無人機なんだろう?大丈夫なのか」
「10機単位でコマンダーを1人付けて制御させるから特殊な事態でも対応出来るさ」
この10機、8部隊をフロント外周に配備する予定だそうだ。
「こいつ等で一次対応して無理そうなら時間稼ぎをして、常駐している警備部隊が来るまでの時間稼ぎをさせるそうだ」
「こいつ等だけで十分な気がするが・・・」
「旧式なのに強いだろう?」
その言い方にむっとした。
「もう一度再戦だ!待ってろ」
そう言って俺は同じチームの仲間に話を付けて出撃した。
そして、目の前に悪夢が連なる。
「其方の方が数は多いのだ。文句はないだろう」
目の前に装備の違う4機のデミ・セントリーが待ち構えていた。
こちらは8機。文句など言える訳が無い。
「コイツはネットワークを使って情報を共有しながら集団戦をするんだ」
そして、始まった模擬戦は地獄だった。数の有利でどうにか後ろをとっても別の機体からの情報で回避し、信じられない動きで迫り、こちらを撃ち落していく。
4機が一体の動物の様に連携して動いてくる。
ロングレンジライフルで袖撃をする機体が全体を見ているので、他の機体の後ろをとっても意味が無い。
ならば、離れた狙撃役を倒そうと思っても、ビームガトリングガンとミサイルの面制圧でこちらの動きを牽制してくる。
そんな牽制役の攻撃の間をすり抜けながら2機のデミ・セントリーが接近してビームガンで撃ち落し、アンカークローで拘束、高圧電流でこちらの機体の動きを止める。
模擬戦なので本当に電気が流れる訳ではないが、流れた設定で機体が機動を停止するのだ。
格闘が蹴りだけなので3機で囲んで接近したら、アンカークローで1機を拘束して振り回された。
そして、別の機体にぶつけられ動きを止めたところを狙撃された。
こうして俺達はものの2分と掛からず全滅した。
「どうです、隊長さん」
そんな模擬戦を別の管制室で見ていた隊長はうれしそうにしている。
「良いね、俺達の仕事が少なくなりそうだ」
本当に嬉しそうに手を叩き喜ぶ隊長を見て、少し不安になるブリオン社の社員だった。
最後まで読んでくれて本当に有難う御座います。
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