ヘブンバーンズレッド 地を這う少年 (名無しのおもちゃ箱)
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1戦目 出会い?

4章後編クリアし泣いたので書いてみました。
流れとかよく考えずに勢いだけで作り始めたので完全な見切り発車です。

間に挟まる男は許さない


1人の少年が荒れた大地を走っていた。見たところ17,8歳くらいの少年は全身汗だくになりながらとにかく走っていた。ランニングや、ジョギング等という平和なそれではない。何からか逃げている様な、何から必死で離れようとしている様だった。

 

「まだ、まだだ。もっとドームから離れないと・・・」

 

誰が聞いている訳でもないが1人でそんなことをボヤいていた。まるで自分に言い聞かせるように。

 

ドームというのは人が集まり生活している場所だ。アパートやマンション等という集合住宅とは違い、人類が生き残るための場所だ。

 

突如として現れた地球外生命体、通称キャンサーにより人類は滅亡の一途を辿っていた。唯一対抗出来る方法としてセラフと呼ばれる武器がある。しかし、扱えるのは何らかの才能を持った少女達であり、普通の人には扱うことの出来ないモノ。そんなセラフを用いて戦う組織をセラフ部隊と呼ばれていた。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

走っていた。ドームには居られないから走っていた。ドーム内だけでは無い、ドーム近くにいる訳にはいかなかった。

 

地面はひび割れ、建物は倒れている道を走るのは簡単では無い。疲労も溜まり、足も上がらなくなっている。汗も出てこなくなってきているのが感じ取れていた。

 

「不味いな・・・水分取らねぇと・・・けど止まってる暇ねぇ・・・」

 

自分が置かれている状況が不味いものだと理解出来てはいるが足を止める訳にはいかなかった。一刻も早くドームから離れなければならない。まだうっすらだがドームは見えていた。

 

「ッア!!」

 

辺りに散乱している瓦礫に足を取られ転倒してしまう。息を切らしながら立ち上がり再び走ろうとするがもう遅い。逃げていたそれは既に取り囲むようにそこにいた。

 

笑うしかなかった。ドームでは暮らせずドームから離れなければならない事は幼い頃から理解していたからどうでもよかった。キャンサーに生活圏を追われ、襲われないようドームに人々が集まってる中、自分だけがどうしてこんな目に合わなければならないのか、どうして自分はこう生まれてきてしまったのか、どうして父と母はこんな自分を見捨てず命を賭してまで助けてくれたのか、分からない事だらけの人生だった。それもここで終わりなのだと、学がなくても分かる。せめて、両親と同じように笑おうと思った。

 

目を閉じ静かにその時を待った。次に聞こえてくるのはヤツらの鋭利な爪のようなものが自分の体を貫く音、全身に伝わる痛み自らの呻き声だろう。

 

パリンッ! と言う何かが割れる様な音がした。予想していたものとは明らかに違うそれに目を見開いた。

 

「ユッキーとつかさっちはその人保護しつつ援護!あたしとカレンちゃんで前に出るから、めぐみんとおたまさんは続いて!」

「「「「「了解!!」」」」」

 

初めて見る光景だった。ずっと逃げ続けていたそれが6人の少女たちの手によって砕け散っていた。夢にも思わなかった。目の前にセラフ部隊が来る事など。

 

気がつけば辺りを囲んでいたキャンサーは全滅していた。

 

「周辺警戒よろしく!あたしは司令部に報告してくる」

「あぁ、頼んだ」

「こちら茅森、司令部応答してくれ」

『司令部です』

「一般人を保護し「月歌!報告は後だ!!また来やがった!!」ッ!」

 

新たに現れたキャンサーが辺りを囲んでいた。

 

「もう来おったんかい!!」

「なんなのこの量!」

「殺る!殺る!殺る!殺らせてぇ!!」

「怖い!怖い!怖い!」

「落ち着けお前ら!この量相手に保護しつつ戦わなくちゃいけねぇんだ!判断ミスったら取り返しのつかないことになるぞ!」

「待て!その保護対象が逃げおったぞ!!」

「「「「「はぁ!?」」」」」

 

だてにキャンサーが蔓延ってる中を走り続けてはいない。この量に囲まれたらどうなるか位分かる。戦える人間だとしても誰かを守りながらではやりずらいだろう。その場から上手く離れ走り去る。キャンサーはもちろんのごとく追いかけてくるが、少し変だ。

 

「待ってください!キャンサーが!!」

「えぇ!?あたしら無視!?」

「そんな事カレンちゃんの沽券にか・か・わ・るぅ!!」

「いいから追うぞ!東城後ろから数減らすぞ!」

「えぇ!!」

 

少女達が追いかけながら1体ずつ減らしていく。銃を持っていたのが2人、残りは剣と鎌だ。近づいての攻撃は無理だと思っていたが、何やらワープ的なもので追いつき一体づつ倒していった。

 

「はぁ・・・はぁ・・・これで終わりか」

「そうじゃな・・・いや!まだおるぞ!!」

「なんでや!?まさか・・・コイツ狙っとるんか!?」

「さっきの動き見て明らかだろ!クッソこんな立て続けに!月歌!司令部に報告だ!増援と撤退を申請しろ!!」

「わかった!こちら茅森!司令部応答してくれ!!」

『司令部です』

「キャンサーの集団に襲われた!保護した一般人を狙ってる模様!多分今来てるのを倒してもまた来る!援軍と撤退を願いたい!!」

『了解しました。30Gを援軍として向かわせます。それまで耐えてください』

「了解!通信終了。みんな聞いた通りだ!!」

 

 

「ぜぇ・・・ぜぇ・・・これで終わりかいな」

「今のところはな、さっきは小型ばかりで助かった」

「ちょっとユッキー!フラグ立てないでよ!!」

「皆さんキャンサーが来ました!しかもあれは・・・ヘイルホース!?」

「ほらー!ユッキーがフラグ立てるから!!」

「あたしのせいかよ!!」

『こちら30G聞こえるか?』

「ユイナ先輩!」

『近くまで来た。援護する』

 

新たに6人の少女が現れ先程までの少女たちと共に戦い始めた。人数が増えたことにより速度も上がり先程よりもかなり早くに全滅した。

 

「これで全部のようだな」

「なんだいこの数?初めて見るよ」

「我の記憶にもない」

「説明はあとだ!急いで離れねぇとまた来る!」

「なんだと?わかった帰投に移ろう」

 

1人の少女が力無くへたりこんでいる自分に視線を送っていた。そして手を差し出し

 

「何が起こってるか、うちにはようわからん。とにかく一緒に来るんや」

 

少女は手を引こうとした

 

「もう・・・疲れた・・・ほっといてくれ」

「ッ!!いいから行くで!!」

 

何を思ったのか、掴んでいるその手に力が入ったのがわかった。そのまま力づくで立たされヘリに押し込まれた。




るか×ゆきに挟まっていいのはひぐみんだけ!
異論は認める!!


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2戦目 止められた波

名前考えてねぇ・・・
どうすれば・・・
続きも終わりも考えてねぇ・・・


「お疲れ様、大変だったみたいね。詳しい事は和泉さんから報告を受けてるから単刀直入に聞くわ。大量のキャンサーを呼び寄せたのはあなた?」

 

セラフ部隊の基地。ヘリに乗せられ連れらてきたその場所の司令官室に連行された。軍服を身にまとった司令官と呼ばれていた女性が問いかけてくる。だが、その質問に答える必要は無い

 

『基地周辺にキャンサー多数出現!動けるセラフ部隊は出てください!!』

 

放送が入り、部屋の中に緊張が走ったのが分かる。

 

「疲れてるところ申し訳ないけど31A30G両部隊掃討に当たりなさい」

「えぇ〜!!今帰ってきたばかりなのにぃ〜!」

「気持ちは分かるが、放っておいたら大変なことになるぞ、さっき体験しただろ。さっさと行くぞ!」

 

12名の少女達が足早に部屋から出ていった。残った女性はこちらを見て再度訊ねてくる。

 

「これはあなたが原因?」

「・・・聞かなきゃ分からないか?」

「・・・七瀬、キャンサーの外殻を持ってきなさい。ありったけね」

「わかりました」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

《31Aside》

基地の外へ向かうと31Cが応戦していた。

 

「ワッキー!今どんな状況?」

「茅森!どうもこうもないわよ!!倒してもキリないわよ!!」

「このままじゃジリ貧でござるよ!!」

「さっきと同じだな・・・月歌、やっぱりあいつが関係してるとみて間違いないな」

「やっぱりか・・・」

「あいつ!?何!なんか知ってんなら何とかしなさいよ!!」

 

31Cの部隊長でもある山脇が悪態をついてくるが、原因がわかっても要因が分からない為どうしようもない。かと言って、このままではジリ貧で負けるのは目に見えている。

 

「クッ!とにかくやるぞ!!今は耐えるしかない!!」

 

 

約1時間後

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・終わったか」

「離れた所に数体おるわ・・・」

「まだ来るって事!?」

「いや、帰ってったな・・・」

「えっ?終わりってことでいいの?」

「一応な・・・」

「もう・・・無理ぽ・・・」

「しっかりせぇ・・・って言いたいとこやけど、うちも疲れたわ・・・」

 

キャンサーが去り安堵してるかと思えば山脇が話しかけてくる。いや、怒鳴りかけてくる。

 

「ちょっと茅森!何を知ってるか知らないけど何か知ってるなら何とかしなさいよ!!」

「待ってワッキー!【何】が多すぎて何言ってるのか全然わかんない!!」

「あたし達も詳しくは分からないんだよ。原因は予想つくけど、要因が全然分からないから、どうしようもないんだ」

 

茅森に代わり、和泉ユキが説明をする。しかし、山脇は不服そうだ。疲れているだろうに、大声で叫びながら詰め寄っているがそれを止めるかのように放送が入る。

 

『31A総員、司令官室に出頭してください』

「・・・あんた達何したのよ」

「何もしてねぇよ・・・むしろ被害者だわ」

「十中八九、彼の事でしょうけどね」

「司令官も人遣い荒いなぁ〜」

 

司令官室につくと、部屋の中に何やら山積みになってるのが見える。この部屋には似つかない明らかに異質なそれは注目を集めるのは必至だ。

 

「お疲れ様、悪かったわね。早速だけど、報告貰えるかしら」

「その前に司令官、アレ何」

「今は気にしないで」

「いや気になるよ!さっきまでなかったじゃん!あたし達が戦ってる間に何してたのさ!!」

 

はぁ、と溜息つき司令官は説明を始めた。

 

「アレはキャンサーの外殻よ。アレで彼を覆ったの」

「えっ?じゃあ、中に居るってこと?」

「そうなるわね」

「酷くない?」

「お陰でキャンサーの波は止まったわ」

「本当に呼び寄せてたのかよ」

「確証はなかったのだけど、上手くいってよかったわ」

 

キャンサーはお互いを外殻から発する波長で敵味方を識別する為キャンサー同士で襲うことは無い。ドームの外壁にも使用され、キャンサーの驚異から身を守ることが出来る。

 

「でもさ、外殻で何とかなるならドームにいればいいのに」

「ドームの外壁に使われる外殻程度じゃ足りないのでしょうね。今も、基地にある外殻の半分近くを使って何とかなってるのよ」

「どんだけだよ・・・」

「本題だけど、彼をここに置くことになったわ。外殻を大量に使ってキャンサーを引き寄せない何かを作って貰い、暫くはここで生活してもらうことになるわ」

「じゃあ、それができるまでこのまま?」

「そうなるわね」

「可哀想過ぎない!?」

「仕方ないのよ。外に出すわけにも行かないし、かと言って普通にさせておくとさっきみたいにキャンサーがよってくるでしょ。それに此方としては彼の力を分析、解明し再現したいの」

 

キャンサーが寄ってくる力が解明出来れば利用価値は大いにある。人工的に再現し、キャンサーを集め一網打尽にする事も夢では無い。それが出来れば任務の危険性が減る可能性すらある。

 

「という訳だから、暫くこのままね」

 

 

翌日

 

 

「出来たわ」

「速っ!!」

「研究所からしてもあんなのはごめんという事らしいわ。ものすごいスピードで作ってくれたのよ。コート・・・どちらかと言うとローブね。来てみてくれるかしら」

 

司令官は外殻の山の中にその黒いローブを押し込み渡す。因みにインカムを渡してあるらしく、ちゃんと会話が出来るようにしてある。

 

「へぇ〜あんな硬いのが服みたいに柔らかくなるんだ・・・って硬!!」

 

茅森がそのローブに触れる。想像以上に硬かったらしい。元はキャンサーの外殻ということもあるためそれもそうだ。むしろよく服のようにできたものだ。

 

「まぁ、普通の服に比べれば多少はね」

「多少どころじゃないよ!?すっごいパリパリだよ!?いや、もうバリバリだよ!?」

「着てくると柔らかくなるそうよ」

「これが?」

「えぇ、着心地はどうかしら?」

「・・・硬いし重い」

「やっぱり硬いんじゃん!しかも重いとかいう要らないおまけ付きじゃん!」

「我慢してちょうだい。この後は身体検査を行ってもらうのだけど、それ絶対に脱がないでね」

 

要らない忠告が着いてきた。茅森が「お風呂の時も?」等という「なぜお前が聞く?」と言いたくなるような事を言っていた。

 

「それ着とけばキャンサーに襲われなくなるってことでいいんか?」

「そうよ。少なくとも今のところわね」

「・・・良かったやん、これで死ぬ必要ないで」

「・・・死にたいなんて言った覚えないが?」

「放っておけって行ったの誰や?」

「アレは俺が乗ったら落とされる可能性があったから」

 

キャンサーにも多様な種類がいるが中にも遠距離攻撃が可能なものもいる。ヘリに乗っていたら撃ち落とされる可能性は十分にある。

 

「・・・そうやん、普通に危ないことしとったやん!」

「今気づいたのかよ・・・」

「いいから早く検査に行きなさい」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

翌日

 

「これはまた・・・面倒なことになったわね」

 

司令官室にて司令官が検査結果を見て頭を抱えた。




外殻の山の中での生活

飯・・・ゼリー飲料を押し込み供給
水・・・ボトルを押し込み供給
会話・・・インカムを渡し可能に
風呂・・・我慢して
着替え・・・我慢して
トイレ・・・聞くな!!!


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3戦目 研究材料、血を抜くか腕ごと渡すか

?な部分が多くあると思います
あれ?おかしくね?
みたいなところあると思いますが無視してください
わざとです(←ネタバレ)


「集まってもらって悪いわね。手短に済ませるわ」

 

司令官室に31Aと件の少年が集められていた。内容というのは、少年の身体検査結果。

 

「結論から言うと、異常なし。更には私達との差異も見られなかったわ」

「要は、キャンサーが寄ってくる理由は分からずか・・・」

「えぇ、今のところ再現は無理。引き続き研究は続くけど、再現が出来るのはかなり先になりそうね。という訳だから彼をここに置く事は変わらずね。それと定期的に検査を行う事になったから承知して」

「これ作ってくれ恩もあるし、それは別に」

「助かるわ。それじゃこれを渡しておくわね」

 

そう言って手渡されたのは何かの端末らしき物だった。見た事あるなと思っていたが、セラフ部隊がいじってる物と同種だった。

 

「コレは?」

「電子軍人手帳よ。他の子達と違ってセラフは呼び出せたりはしないけど通信機器としては十分に使えるわ。少しだけどGPもチャージしてあるから使ってね」

 

GPとはこの基地で使用出来る通貨であり、それが無ければ買い物すらできない。確認すると30,000GPが入っている

 

「つまりこれがなくなったら一文無しか」

「ショップや、軍の手伝いでGPが入るようにしてあるわ。要はバイトね。それと茅森さんこの後彼に基地の案内をお願いできるかしら?」

「うん、構わないよ」

「ありがとう。それと、樋口さんが彼に会いたいと言っていたから寄ってあげて」

「りょ〜か〜い」

 

 

「っと、こんなもんかなぁ〜何か気になったことある?」

「あの、4つくっつけると消えそうなぷよぷよしたのなんだ?」

「答え言ってんじゃねぇか」

 

別に世界的に有名な落ちゲーの事なんて言ってないです。

 

「アレはナービィだよ。危険性はないから安心してね。でもぞんざいに扱わないでね」

「星のナービィか」

「星のは言ってねぇよ!言ってたら大問題だよ!てかなんでお前までその反応なんだよ!!」

「何さユッキー、前にも聞いたみたいに」

「聞いたんだよ!というかお前だよ!お前が言ったんだよ!!」

「そうだっけ?」

「そうだよ!忘れたのかよ!」

「・・・てへぺりんこ!」

「やめろぉぉぉ!!!」

 

ここで1つの答えに辿り着いた。それと同時に申し訳なくなってくる。やはり自分はここにいては行けないのだ。

 

「あ〜そういう・・・」

「お前はお前でなんだよ!何を理解した!!」

「間に挟まる気はないから安心してくれ」

「「「「この一瞬で理解し(おっ)た!?」」」」

「違ぇから!!」

「照れ隠しか」

「そうね」

「うんうん」

「なんでそっち側に行くんだよ!!」

「ほら、さっさとひぐみんのとこ行くぞ」

 

道中誤解を解けだのなんだの聞こえてきたが無視の方向で大丈夫だろう。照れ隠しに同意したのが2人もいたし

 

なんやかんやあり研究所に着いた。

 

「やっほ〜ひぐみん!来たよぉ〜」

「やっと来たか、待ってたぞ」

「ひぐみんに待たれてた!」

「お前じゃなくそっちの男だ」

「そんな・・・!月歌ちゃーーーん、ショック!!」

 

研究所内には色々な機械があり、モニターにはセラフが映し出されていた。

 

「来てくれて感謝する。私が樋口聖華だ。よろしく頼む」

「あぁ、俺は藤堂命だ。こちらこそ・・・」

「どうした?」

「俺自己紹介したっけ?」

「されてねぇな」

「あたし達もしてなかったね」

 

今まで自己紹介などと言うして当然なことをしていなかった。何やってんだと思いつつも、よく生活出来たなと思う。

 

「むしろ今までよく行動できてたなお前ら・・・まぁ、それは後にしてくれ、私はお前の力に興味があってな。とりあず血を貰えないか?」

「血ならこの間身体検査で抜いたばかりなんだが・・・」

「それなら別にまた抜いたところで構わないだろう。1Lも2Lも変わらん」

「なぁ、今ナチュラルに殺害発言された?」

「それがひぐみんだから」

「イカれてんのか?」

「なんならお前を外に出て本当にキャンサーが寄ってくるか見てみたいがな。もっと言うとお前の腕でも切り落としてキャンサーが寄ってくるか見てみたいものだ」

 

イカれてんのかでは無い、イカれている。マッドサイエンティストだ。殺される。

 

どうやら樋口は、人の死にも興味があるようだ。ついでに基地に来た時大量にキャンサーが来た際には別任務に出ており、目撃できなかったらしい

 

「いつからそんな体になった?先天性か後天性か、どっちだ?」

「それについてはわからん。物心着いた頃には両親と走り回ってたらからな」

「ほぉ、それにしては知識があるようだな。血を抜くくだりで殺害予告なんて出てくる程度には学があるようだ」

「母親が先生やってたらしくてな。生前教えて貰ってたんだよ」

「・・・死んだのか」

「あぁ、キャンサーに両親ともやられたよ。興味のある話だろ?」

「あぁ、そうだな。・・・おかしな話だ。キャンサーはセラフ部隊すら無視してお前を追うと聞いた。なぜ両親が?」

「襲われてるところ身を呈して庇ってくれたんだよ。随分と昔の話だからな、もう親の顔すら覚えてねぇよ」

「・・・そうか、それはそれとして、とりあえずなんでもいいからよこせ。研究材料にする」

「あれぇ、昔の負の思い出話してたはずなんだけど」

「いいから血をよこすか腕ごとよこすか選べ」

 

二択のようで一択だった。腕欠損するくらいなら血を渡す。流石に1L・2L抜かれるのはまずいが。

 

 

血を抜かれると、追い出されるように研究所を後にした。一応案内はこれで終了らしい

 

「まぁ、これで基地案内は終わったが、明日からはどうするんだ?あたしらはまた作戦になるが」

「まぁ司令官に頼んでバイトしてくるわ」

「それより自己紹介済ませた方がいいんじゃない?」

「それもそうだな。あたしは和泉ユキ、オーキッドってとこでハッカーやってた」

「・・・睾丸だっけ?」

 

オーキッドはギリシャ語で睾丸の意味がある。要はキン〇マだ。

 

「ほら〜やっぱりキ〇タマじゃん!!」

「ランだよ!花のランだ!!」

「次、あたしね。朝倉可憐、FPSが得意なだけな普通のゲーマー」

「・・・こんな子いたっけ?なんか物騒なこと言ってた子と似てるけど」

「それはワシの事か?」

「かれりんは二重人格だからね。こっちの方はカレンちゃんって呼ぶといいよ」

「お主はキャンサーを引き寄せてくれる。殺り足りなくなる事は無いだろう!!」

「・・・何このサイコキラー」

「実際そうなんだよ・・・」

 

聞けばカレンちゃんの方は連続殺人犯らしい。よくもまぁそんな人物を手懐けられているものだ。

 

「次はわたしね。東城つかさよ。こう見えて凄腕の諜報員よ」

「ダウト!絶対ポンだろ!!美容とかどうでもいい事しか知らなそうだ!!」

「正解・・・というか、まだあってまもないってのにもうバレるようなことしたのかよ」

「そんなことしてない!!」

 

朝倉に美肌のコツを教えては悦に入ってるもよう。ちなみに31Aメンバーと初顔合わせ時にもポンを発揮して見せたらしい。

 

「次はうちやな!うちは、「逢川めぐみだろ?」!うちのこと知っとるんか!?」

「動画サイトで見たな。どんな手品なんだろうって」

「手品ちゃうわ!サイキックや!!」

「へぇ〜戦闘に役立ちそうだな」

「役に立ってるとこ今んとこねぇけどな」

 

見せてくれと頼んだら断られたので「本当はできないんだな」と煽ると瞑想始めたので次

 

「続いて、不肖、國見タマ参ります!!」

「すごい気合いだな」

「私は!「國見タマってのはわかったぞ」なぜ名前を!!まさか、つかささんと同じく諜報員!?」

「えぇ!?」

「さっき自分で名前言ってただろ。というか絶対違うってわかるんだから東城も反応すんなよ」

 

國見タマ、幼い容姿をしていながらも戦艦虎徹丸の船長をやっていた人物。つまるところ頭はいいと思いきや、デザイナーベビーらしい

 

「最後は、あた「茅森月歌は有名だからいいわ」えぇ!!」

 

茅森月歌、伝説的バンド『She is Legend』の天才ボーカリスト。

作詞作曲もこなし、メジャーデビューアルバムはその年の新人賞を総なめ。

天才という言葉をほしいままにした。

ここまで有名なら流石に知っている。

 

「自分の才能を恨むんだな」

「こんな事で才能恨みたくない!!」

「というかよくわかったな。あたしもファンだったけど、コイツ見ても分からなかったぞ。ギャップありすぎて」

「父親が、シーレジェのファンでな。耳にタコできるくらい聞かされたからな」

「へぇ、それは嬉しいな。ちなみに好きな曲は?」

「曲までは知らないけどよく口ずさんでたのは

ギャイアグレイーイボドドドゥドオー!!

だったな」

「それ違う!!」

「本当にファンだったのかお前の父親・・・」

「よっしゃ!見せたるでぇ!!」

 

瞑想を終えた逢川がサイキックを見せようと手をバチバチさせていた。もうそれで十分な気がする。

 

「それはそうと、もう飯の時間だしカフェテリア行こうぜ」

「男の俺行って騒ぎになんねぇか?」

「フードかぶっておけばいいんじゃない?」

「余計目立つだろ・・・」

「おい待てや!無視すんなや!!」

 

 

《カフェテリア》

「刀削麺を知ってるか?」

「ああ、あの、片手に生地、片手に包丁を持って湯の沸いた鍋の前に立ち、生地を細長く鍋の中に削ぎ落としてゆでる奴だよな」

「なんで一語一句同じで答えられるんだよ!!」




七瀬「星のナービィとは何ですか?」
命「知らないよ。何となくそこにハマるんじゃないかと思っただけだよ。聞かないでおくれよ」

七瀬「4つくっつけると消えるぷよぷよした物とは何ですか?」
命「だから知らないよ。何となくそんな落ちゲーがありそうな気がしただけだよ。落ちゲーも知らないよ。何となくそこにハマりそうな気がしただけだよ聞かないでおくれよ」

七瀬「その口調はなんですか?」
命「ネコのまね」
七瀬「くるくるぱーですか?」
命「うん、くるくるぱー」


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4戦目 無休の連勤術師フルタイムアルバイター

タイトルはいつも考えても思いつかないので適当につけてます

「」だけの時は会話
「()」の()内は頭の中って感じで書いてます


この基地に来てから何日か経った。今ではバイトとして、ショップでの接客、風呂など共有スペースの掃除、カフェテリアでの皿洗いetc.....を行い、基地中を走り回っている。ちなみに一日休みの日など今のところない。

 

そんな日常の中で自分の力について調べてもいる。幸い基地内に図書館があるので自力で調べる事も出来る。図書館にはライトノベル、マンガだけでなくオカルト雑誌やグラビア等の趣味全開の物から、セラフ、キャンサー等の調査結果まで幅広く置かれている。余談だが、司令官のグラビアを見つけた時はそっ閉じした。中々のものをお持ちで

 

知識は人並みにはあるがやはり専門家には敵わない訳で、餅は餅屋に頼む事にする。

 

「ひぐみん!!実験結果教えろ!!」

「こんの数日で出るわけないだろ!!」

 

あれから血だけでなく皮膚の一部、髪の毛etc.....を渡して入るが進展がない

 

「お前の方はどうなんだ!図書館に入り浸ってるそうじゃないか!」

「ふっ!・・・

何の成果も!!得られませんでした!!

「騒ぐな!!・・・まぁ、元よりお前に期待してなどない!!」

「そんな!・・・みこくーーーん、ショック!」

「・・・なんだそれは」

「尊敬すべき天才、茅森月歌のまね」

「お前、あいつに毒されてないか?初めて会った時に比べてバカになっている気がする」

「・・・否定できん」

 

その頃の茅森

「なんかバカにされてる気がする!!」

「気のせいだろ。・・・いや、う〜ん」

「ちょっと!考え込まないでよ!!」

 

場所戻して研究所

これ以上は時間の無駄と追い出されてしまう。

樋口と別れ、ショップへと向かう。バイトの時間だ。まぁ、バイトで稼いだところであまり使わないのだが。

 

バイト内容は割とシンプルなもので、品出し接客レジ打ち等、まぁ品出しや、重いものの運搬が主になっている。理由としてはローブを着ているせいか、怪しすぎるらしく人が離れていく。シックスセンスに怪しさの項目があれば恐らくカンストしてるだろう。

 

「商売あがったりです。コノヤロー♪」

「仕方ねぇだろコノヤロー♪」

 

ひっどい口調で話すのがショップのスーパー店員 佐月マリ。スーパー店員というのはここで生活すれば自ずと分かるが、複数の店で店員をしており、行くと必ずいる。真っ直ぐ別の店に行くともういる。自分が出た時にはまだ店の中にいたはずなのに。高速移動に関しては企業秘密らしい。

 

彼女の品出しは商品を投げて棚に入れるというアグレッシブなもの。しかもそれがちゃんと入る。忍者を思わせる手腕だ。

 

「・・・あんたさては忍者だろ」

「そうですよ♪」

 

忍者でした。まぁ、納得出来る事を見せられてはいる。今も商品を投げようとしていた。なんかの缶詰

 

「待て!それは辞めろ!!洒落にならん!!」

「冗談です♪」

 

ニシンの塩漬けした缶詰、シュールストレミングと呼ばれる世界一臭いで有名な缶詰でした。寧ろ何故そんなものがあるのか、キャンサーに効くのか?

 

「この間茅森さんが買っていきました♪」

「この間の悪臭騒ぎはそれか・・・」

「そう言えば、この間お客さんがお礼言ってましたよ」

「は?何故に?」

「いい物選んでもらえた。と、上手く言葉に出来なくて困っていたらしいです」

 

先日友人と喧嘩したから仲直りの品を買いたいと言ってきた客がいたが恐らくそれだろう。しかし、友人のことはあんたがよく知ってると返したので特に何もしていない。

 

「接客、最近評判いいですよ」

「ついさっき、商売あがったりです。コノヤロー♪って言ってたよな!?」

「前に比べれば評判良くなったってことですよ。コンチキショーめ♪」

「笑顔で毒吐くの相変わらず慣れねぇ・・・」

「なんでも、共感してくれる。分かってくれてる。と言う意見が多いですね。次いで、なんか嫌だって意見も多いですよ。何したんですかバカヤロー♪」

「なんもしてないんだけど!?」

「あっ、ちょっと行ってきますね」

 

それだけ言い残すと目の前からアッサリと消えた。やはり忍者だ。

 

 

 

ショップでのバイトも終わり、今日のバイトはもうないので図書館へと向かう。あまり期待は出来ないが調べる。勿論、力のことも調べてはいるが他にも気になる事を調べる。思うと力よりこっちの方が進展がない気がする。気のせいだろうか。

 

『人が持つ不思議な力』などと言うストレートな名前をした本から目線を外すと、立ち入り禁止区域に入っていく人影が見えた。

 

「あれは・・・お〜い茅森!!」

 

声をかけるべきでは無いとわかっている。けどかけずにはいられなかった。こんな面白そうな案件見逃すわけには行かない。

大声で呼ばれた茅森はギョッとした顔を見せつつも近づいてきた俺を禁止区域に押し込み中に入った。

 

「なしてんの!?バカなの!?空気読んでよ!!」

「いや、空気読んだ上での行動ですが?」

「タチ悪すぎない!?」

「で、なんで30Gの月城までいんの?」

 

茅森だけでなく、月城までいる。セラフ部隊最強と言われる御方だ。

 

「イージスタワーについて調べ事でな・・・この際だ、お前にも手伝ってもらおう」

「そいつはちょうどいい。俺もそこについては調べたかった」

「なに?」

「軍が手放した研究施設だ。俺の力について分かることがあるかもしれない」

「ふむ・・・利害は一致しているか」

 

イージスタワー、軍が放棄した研究施設。取り返そうとはしたようだが、キャンサーに邪魔され断念したそうだ。中にも入れていないらしく、中にキャンサーがいるかどうかまで確認できていない。

 

月城が調べる理由は、軍に違和感を感じているという事から。なんでも仲間の死体を見た事がないらしい。一方で茅森達は、東城の母親の死にイージスタワーが関係しているのではないかという事らしい。また、訓練中東城が別人のように変わった事についても調べるためだと言う。別人のようになる事を『覚醒』と呼んでいるらしい。

 

「イージスタワーって誰も入れてないんだよな?」

「らしいよ」

「じゃあ、問題はキャンサーだけじゃないんだよな、多分イージスタワー自体にロック的な物があると予想していいんじゃないか?和泉説得した方がいいだろうな」

「えっ!?なんで知ってんの!?」

「不安がこっちにまで伝わってるわ。何があったかまでは知らんがちゃんと話し合えよ」

 

茅森、月城と調べたが何の成果も得られませんでした状態で終わってしまった。茅森は自分でも考えてみるとは言っていた。まぁ、悩むだけ悩んで答えは出ないのは明白なのだが自分には何も出来ない。

 

後日、茅森がお礼を言ってきた。なんでも和泉とちゃんと話し合えたそうな。明日、作戦が始まるらしく態々伝えに来た。基地内で生活しているが軍人では無いため、作戦など知らないし聞くことも出来ない。誰が何処に行くなんて知る由もない。

 

 

 

翌日、茅森達を見送り図書館へと向かう。今日はバイトは何も無い。いや、無理を言ってなしにしてもらった。禁止区域に入り、読み漁った結果気になる事ができた。

今日一日で調べられるか分からないが出来るだけやる。

 

結局、日が沈んでも結果が出ないままでいる。だが、おかげでわかったこともある。

 

「やっぱりだ。なんも無い・・・」

 

情報を整理するように言葉に出す。この図書館には趣味全開な本から、セラフ、キャンサーまでに至るまで多くの本が所蔵されたいるというのにとある生物に関しての本がない。力について調べている中、一緒に調べていた進展が全くない気になる事。

 

「(なんでナービィについて無い・・・危険がないから?だったらそれを調べた研究結果ぐらいあってもいいはず・・・キャンサー同様今までいなかった奴らだ。調べないはずがない・・・セラフの材料・・・いや、それなら外に放り出してるはずがない、完全な管理下に置くはずだ。というか、こんな存在ここに来るまで知らなかった。ドーム住人も知らない可能性がある・・・伝えてない?なんで?知られるとまずい?キャンサー同様得体の知れない生物・・・処分するように言われると困るから?なんで困る・・・可哀想だから?いや、人類の為に戦ってるんだから不安は取り除くべき・・・軍にとって不都合だから?セラフ部隊がドーム住民との接触を禁じられてるのもそのせい?本が見れないようにされてるのはセラフ部隊にも見せることが出来ないから?なんで・・・)」

 

必死に思考をめぐらす。恐らく未だかつて無いほどに頭を使っているのだろう。そう思えるほどに考え込んでいる。

 

「(見られると不都合がある?知られては不味いことがある?ぞんざいに扱ってはいけない・・・態々言うのはなぜ?・・・頭にシュシュを乗せたナービィがいたな。元々は蒼井って子の物で、葬式の時に現れて奪っていったらしい。危険は無いのにイタズラをするってことか?死体を見た事がないって月城言ってたな、じゃあその時も死体は・・・)」

 

数少ない情報を整理して抜き出す。

 

「(セラフ部隊にナービィの情報を知られてはいけない

死体は見たことが無い

セラフ部隊はドーム住民との接触は基本的に禁止、知られると不味い

ナービィをぞんざいに扱ってはいけない)」

 

もう一つおかしな点がある

 

「(なんで茅森について書いてある本が少ない。いや、茅森だけじゃない、セラフ部隊員の有名人の年代が書いてある本がない)」

 

セラフ部隊員には茅森はもちろんの事、カレンちゃんの様に有名人が多くいる。囲碁で前代未聞の50連勝を成した最年少名人なんかもいる。そういった人間に書いてある本なら話題の年月が書かれていてもいいはずなのにそれがない

 

一つとんでもない想像が頭に浮かんだ。突拍子もない、普通考えられない事、理屈も分からない。けれどそれはナービィという生物なら、と仮定してしまえばどうとでもなる。物語のようなトンデモ理論

 

「(死体が見れないのはそもそも存在しないから。ドーム住民との接触禁止は顔を見られると不都合があるから。その不都合からセラフ部隊を離すために本がない。だからセラフ部隊員の年代が書いてある本がない。ぞんざいに扱っていけない。

 

まさか・・・ナービィは人を作れる・・・)

 

セラフ部隊はクローン?」




最後、無理矢理すぎるな


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5戦目 ナービィ

感想ありがとうございます!

ゲームの方ではシャロイベント始まりましたね。
どっかで書ければいいなぁ〜


「セラフ部隊はクローン?」

 

そんな物語の中だけにありそうな答えに辿り着いた。そんな訳が無い、そう思う。そう思いたいと願望が出てくる。いくらナービィという正体不明の生物だからと言えどそんな無茶が通るわけないと考える。

 

クローン人間の製造は日本では法律で禁止される程のものだ。いくら法律が機能してないとはいえ越えてはならない一線ではあるだろう。

 

「(いくらなんでもファンタジーがすぎる。ありえない、有り得ていいはずがない。いくらナービィだからってこじつけても、コピー元の情報がなきゃ作れない。通常なら体細胞を必要とするはず・・・嘘だろ、非人道的すぎる)」

 

クローン牛の作成が成功した事があるのは知っていた。クローンを作る際に必要となるのがコピー元の体細胞、同じ物を作るためにそれの情報媒体が必要となる。生きてる人間からそんな物を採取できるわけがない、不可能では決してないがしないだろう。ならどうするか、考えれば答えが出てきてしまった。死体だ。

 

どうやって入手しているか分からないがそれならば可能だ。最悪墓を開けて中の骨から骨細胞を採取すればいい。キャンサーは生物は襲うが無機物までは襲わない。死体は生きている物ではない、襲わないのなら墓にそのまま残されてる事は予想できる。

 

「(生きてる人間からは軍が健康診断とか言えば細胞ぐらい手に入る。けど、それでクローンを作ればドーム住民に見つかる。下手したら同じ存在が同時に居合わせる事になる。だから死人を使った。ナービィの本がないのも、年代が書かれた本がないのも、バレる可能性を排除する為)」

「東堂さん。もう閉館時間です」

 

後ろから七瀬に声をかけられた。開館時間からずっと篭っていた為時間が分からなかった。余りにも大量の本を出していたので七瀬も片付けを手伝ってくれた。おかげで割と早くに片付く。

 

「まもなく茅森さん達が帰還します。迎えに行ってあげてはいかがですか?」

「あぁ、そうさせてもらう」

 

ナービィ・クローンのことも気になるがイージスタワーの事も大切だ。元々、力について調べる次いでだったはずなのだ。

 

 

 

ヘリポート前に着き茅森達を待つ。数分後31Aのメンバーがやって来た。それほど待つ事がなくて良かった。待っていたら、ナービィについて考え込んでしまう。けれど、そんな事は関係なかった。彼女らの顔を見ればいやでもわかる。

 

「・・・誰か死んだのか?」

「・・・蔵っちが」

 

30Gの蔵里見、お米に対して尋常ならざる愛着と技術を持っているそんな人。月城とコンビでセラフ部隊最強と言われるそんな人物が死んだと言う。

 

「そうか、見れたか死体」

「・・・」

「・・・星のか?」

「・・・え?」

「4つくっつけるやつか・・・」

「おい・・・なんで知ってる!!」

 

初めて案内してくれた時ふざけて言ったナービィに対する言葉。31Aにのみ通じるナービィを示す言葉。

 

周りに知られてはいけないのは分かる。司令官や七瀬もセラフ部隊上がりらしい。葬式を執り行ってるのも司令部の人達だ、その2人が知らないはずがない。そしてここまで執拗に隠しているなら真実を漏らさないようにするはず。監視されていると考えて間違いない。だから31Aにだけ通じる言葉で話す。

 

「質問に答えろ!あの場にいなかったお前がなんで!!東堂、お前は何を知ってる!!」

「なんも知らねぇよ・・・ついさっき可能性に気付いただけだ」

「気付いたって・・・有り得ねぇだろ!軍が「ユッキー!!」ッ!!」

「落ち着けって、多分話ちゃ不味いから隠してあたしらに伝えたんだ。ユッキーが気付かないわけないだろ?」

「あぁ、悪い取り乱した」

「落ち着いてからでいい、詳しく聞きたい。俺も頭ん中整理してくる」

 

茅森が静止てくれなければ和泉はそのまま話して居ただろう。自分も冷静でいられていない自覚がある。頭の中を整理する為に落ち着ける場所を探す。

 

まずは時計塔

 

「山脇様、またやって欲しいでゲス」

「バルス」

 

滅びの呪文を唱える先客がいたので別の場所を探す。時計塔の前のベンチに座る。

 

「はぁ…はぁ…任務で疲れた状態で走るの気持ちいい!」

 

ドMがセルフSMしてたので別の場所を探す。カフェテリアで一息着くことにする。

 

「殺すぞ」

「ありがとうございます!」

 

赤い修道服を着たシスターがいた。女の子が来ては懺悔(?)を聞き最後には殺すぞを言う。女の子らはありがとうございます!と返す謎の光景が。

 

「(・・・もしかして、落ち着ける場所ない?)」

 

この基地にはろくな人間がいないとわかった。

 

仕方なく自室でくつろいでいると七瀬が訪ねてきた。

 

「お疲れ様です。こちらをどうぞ」

 

渡されたのは一冊の本、渡される理由が分からない。

 

「図書館で仰っていたので、私からのオススメです」

「???」

 

意味がわからない、図書館で言っていた?七瀬との会話は全くと言っていいほどしていない。そもそも何かを声に出した記憶すらない。七瀬が話しかけてきたのは閉館時間と片付けの時だけだ。

 

「なるべく早めに読んでくださいね。失礼します」

 

意味がわからないまま受け取った本を開く。中には1枚の紙切れ、手紙の様なものでは無い。紙切れには司令官室までの道順が書かれていた。それもかなり複雑なルート

 

「(こうやって渡すってことはマジで監視されてんのか)そーいや、考えを整理する時声に出す癖あるわ・・・七瀬に聞かれたか(罠・・・じゃないよな。31A2名と合流って書かれてるしあっちにも同じ感じで来てるのか)」

 

時間まで自室でいつも通りに過ごす。

 

 

予定時刻、指示の通りに司令官室までの道を辿る。合流地点では丁度31A和泉&茅森も来た。

 

「・・・るか×ユキとはわかってらっしゃる」

「ふざけたこと言ってねぇで行くぞ」

「ねぇ、これ帰りも同じ道じゃないよね」

「俺は割と楽な道だけど?」

「えっ!?ずるい!!」

「そりゃ、あたしらと違って鍛えてねぇからな」

 

司令官室に着く。続々と31Aメンバーが揃い始める。ローブが黒いおかげで視認しずらいらしい。よく、るかユキに衝突された。途中から最後尾走らされたが

 

「わざわざ悪いわね・・・どうしたの?」

「コイツ服黒いから見えねぇんだよ」

「何回か頭突きしたし」

「俺は衝撃あったけど痛みは無いな」

「全然柔らかくなってないよ!鋼鉄並だったよ!!」

「よくそんなの着て走れるなお前・・・」

「慣れじゃね?というか、虫は追い出したのか?」

 

その質問には「もちろん」とだけ帰ってきた。長くは隠すことは出来ないだろう。早速本題に入ってもらう。

 

「こちらの話をする前に、七瀬に聞いたわ。東堂さん、自力で答えに辿り着いたそうね。どうやったの」

「始まりは、図書館にナービィの本がなかったことだ。司令官のグラビアや心霊雑誌、司令官のグラビアとかあんのになんでか身近にいるナービィの本がなかった」

「なるほどね。・・・ところで、なんで私のグラビアを2回も言ったの?」

 

無視して続ける。茅森が「えっ!グラビア!?グラビアやってたの司令官!?」とうるさいが無視

 

「次に、セラフ部隊員の本がない。茅森やカレンちゃんぐらい有名ならあっていいはず」

「茅森さんが載ってる本ならあるわよ」

「あっても年代がない。それに加え、月城から死体を見た事がない、セラフ部隊はドーム住民との接触が基本的に禁止等々を含め、図書館でわかる範囲で調べて出た答えが、ナービィは人を作れる。セラフ部隊員はクローンってことだ。それも、死者のクローン」

「概ね正解。隠した結果、答えに行き着いてしまったのね。正直あなたの事、侮ってたわ。樋口さんから聞いた茅森さんに毒されて馬鹿になった、というのも間違いのようね」

「えっ?ひぐみんそんな事言ってたの?」

「いや、そこについては間違ってねぇよ。あってる。否定しない」

「うん、否定しよ。あたしのせいみたいになるじゃん。ていうか!なんであたしが貶されてんのさ!?」

 

そこから、ナービィについて詳しく聞いた。

基地にいる人間のような生物は司令官含めてすべてナービィ。それをヒト・ナービィと呼んでいる。

DNAを取り込むことでその人になれる。

環境に順応する為違和感を覚えない。

極小量のDNAでヒト・ナービィ化出来るが、人為的に作ると保存しているDNAを一度で使い切ってしまう。

 

知性や記憶を持ってヒト・ナービィ化した際、元の人格と周囲の環境にズレが生じる。時代が違えば当然のこと。だが、ナービィは違和感を覚えない為、普通に生活が出来る。セラフを扱えるのもその性質によるものらしい。また、死者のコピーの為、茅森のように知名度があると死者が蘇ったように映る。そのためドーム住民との接触は禁止されている。

 

「一つ聞きたい。俺は少しだけドームにいたことがある。翌日には追い出されたけど・・・そこじゃ、セラフ部隊の戦いがテレビで見れた。どうやって撮影してる?」

「作戦中に飛ばしているドローンよ」

「そんな・・・うちらが必死で戦ってるんを、外の連中はショーを観るような感覚で楽しんでた言うんか!」

 

もっともな怒りだ。戦うために作られ、その事を隠されていた。自分達が守っていた人間はそれを楽しんでいた。 知らないとはいえ、数少ない娯楽とはいえど許し難いことだ。

 

司令官は説明を続けた。もう、蔵をナービィとして作り出すことは出来ないこと、一方的にナービィはやって来ており、帰す方法等何も分かっていない。

 

そして何よりも腹立たしいのが上層部は、北の最果てにあるシェルターに数万人の人間と避難、もとい逃げたという事。形式的な命令が来るだけで、キャンサーとの戦い、基地の運営などすべて司令官に任されている。しかし、予想通り監視されているらしい

 

司令官は誇りの為に戦っていると言っていた。茅森達も自分にとっての正解を探すようにと告げた。この場で唯一人間である自分はここにいるべきでは無い。そう思い、部屋を出ていこうとする。

 

「待て東堂。お前に言わないといけないことがある。イージスタワーで東城が覚醒した時、お前を連れてイージスタワー地下に行けって言った」

 

その言葉に胸が高鳴った。そこに行けばあるかもしれないということ。

 

「お前の力、分かるかもしれねぇ」




とある日の日常
東堂「なんか飛んできたけど何があった?否、否、否とか聞こえてきたけど?」

白河「すまない、桐生が何やら飛ばしたのでな」

東堂「マジで何があったし」

桐生「ネコをあやす白河さん・・・売れる!!」

白河「桐生、お前は何を言っているのだ」

桐生「東堂さんも想像してみてください!ネコと戯れる白河さんの姿を!!」

東堂「同人誌として出たらいいねで買おう!!」

桐生「流石は同志!!」

白河「お前達は何を言っているのだ?」


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6戦目 てぇてぇ邪魔する悪い子はいねぇが〜

Twitterでも出したんですが、書いてる時に思ったのですが、DNAキメラの人の異なってる方のDNAをナービィが取り込んだらどうなるんでしょう?


あっ、今回で主人公君の処刑が決定しました♪
東堂「!!?」


「行くのは認めないわ」

 

イージスタワーに自分の力について分かるかもしれないという情報を和泉から聞いた瞬間、司令官が止めに入った。

 

「ッ!なんで!!」

「あなたの力は私も気になる。だけど、自分が戦えないってわかってる?」

「このローブ、キャンサーの外殻使ってんだろ!だったら気付かれずに入れる!」

「その可能性は大いにある。けれどあなたがここに来た時の事忘れてないわね。大量の外殻を使ってようやくキャンサーは寄ってこなくなった。あなたの力は、外殻が発する波長のようなものすら意に返さない。幾らあの時と同じ量を使って作ったと言っても、あくまで普通の人達と同じになっただけかもしれない」

「俺は外で生きてきた!キャンサーなら問題ない」

「行先はイージスタワー内、外とは違う。それに、ここに来てから働いているとはいえその頃と同じ動きは無理でしょうね」

 

確かに31Aに拾われるまではキャンサー蔓延る外の世界を武器を持たずに生き延びてきた。しかも人一倍キャンサーの方から寄ってくるおまけ付きだ。だが今では過去の話、ここに来てからキャンサーの脅威から離れていると言ってもいい。あの頃と同じ精神で同じ動きは無理だろう。体が訛っていておかしくない。

 

「それにね。行くとしたらどうしても31Aに同行してもらう事になる。今の彼女達に付いてきてもらうつもり?」

 

自分とは違い、ヒト・ナービィがナービィになるところを見てしまった者達、自分がナービィだと伝えられた者達、心身共に疲弊している。休む時間が必要なのは馬鹿でもわかる。

 

「・・・何も行くな。とは言っていない。今後、イージスタワー付近に拠点を設けます。行くとなるとそれ以降、それまでにあなたはその訛った体を鍛え直しなさい」

「・・・わかった」

「悪いわね。こちらも早く手筈を整えるから」

 

それを最後に司令官室を後にする。自室に戻り少し考えた。近いうちに自分の力がわかるかもしれない。それを頭の中で反芻していると、ふつふつと怒りが湧いてきた。自分でナービィの事を見抜いておいて、31Aの事を心配するでもなく、自分の事しか考えていない。きっとどこかで、自分は違って良かったと思ってしまっていた。それが許せなかった。

 

 

翌日、寝不足の状態で自室から出ると31Aメンバーが集まっていた。これから月城のお見舞いに行くらしい。手には1匹のナービィがいる。蔵だとすぐに分かった。

 

行っていいのか悩んだが、同行させてもらうことにする。ナービィについて知ってる者としていくべきだと思ったからだ。

 

医務室につき、扉を開ける。中にはベットに体を起こした月城がいた。何ともなさそうな顔をして、体の方は問題なさそうだ。

 

「もなにゃん、おはよう」

「茅森達か、それに東堂までも見舞いに来てくれるとわな」

「一緒に調べたしな・・・その、蔵のことはなんて言ったらいいか・・・」

「無理をするな、お前が優しいことは知っている。それに司令官に聞いたぞ、自力で辿り着いたそうだな」

「・・・ごめん、もっと早くに気づけてれば」

「いや、それは我の方だ。お前より長くいたはずなのだがな」

 

既に聞いていた月城は過去の仲間もこうなっているのだと察していた。確証自体はないが、確率を考えれば今も人間の姿で暮らしているなんてことはほぼありえない。月城もわかっていた。

 

長いしても悪いので部屋を出ていく。その時に後ろから声をかけられた。

 

「東堂、イージスタワーにヒントがあるのだろ?我は手伝えぬが応援をしている」

「・・・こんな時ぐらい他人の心配しなくていいんじゃないか?」

 

そう返し部屋から出る。そのまま31Aと共に建物から出た。聞こえないはずの泣き声が聞こえた気がした。

 

今は、自由時間だ。各々好きなように過ごす。司令官が気を使ってくれたのかは知らないが、自分も強制的に休みにさせられた。本当はバイトの日である。何かしないと余計な事を考えてしまいそうなので、ぶらぶらと基地内を歩く。ゲームセンターや、映画館などの娯楽施設はあるが行く気になれない。

 

ふと、ナービィ広場の近くを通りがかった時、歌声が聞こえた。聞きいるほどの綺麗な声。引き寄せられるように声のする方へ足を向けた。

 

ナービィ広場の奥、外見はオンボロだが中は綺麗なスタジオがある。今は歌声は止まっているが確かにそこから聞こえた。そっと仲を覗く。

 

「お前はお前だ。そう信じさせて欲しい」

「じゃ、あたしはユッキーはユッキーだって信じさせて欲しい」

 

中で、茅森と和泉が背中合わせで語り合っていた。自分がナービィだと知り、自分自身を見つめ直していた。茅森の歌が魂は自分の物だと信じられた。そう和泉が言ったところでこちらに気づいた。

 

「・・・何してんだよそんなとこで」

「いやぁ〜、綺麗な声が聞こえたもんで吸い寄せられるように・・・すまん!覗く気はなかったんだ!!」

「いや、別にいい。というか、お前はお前で気負いすぎだ。あたしは生きることにした。だから大丈夫だ」

「つまり・・・るか×ユキてぇてぇって言うことを期待されてる?」

「なんか久々に聞いた気がする♪」

「違ぇけどな・・・」

 

るかユキは大丈夫そうだった。というか、間に挟まるどころかてぇてぇを邪魔してしまった。みんな許してくれ、わざとじゃないんだ。茅森の歌のせいなんだ。

 

「もしこれが同人誌とかなら俺叩かれてんだろうな」

「何言ってんだ?」

「和泉!勘違いしないでくれ!間に挟まる気はもちろん、邪魔する気はないんだ!!今回に限っては茅森の歌声が綺麗すぎるのがいけないんだ!!」

「いやいやいやいや〜」

「そうだったな、お前は本来そっち側だったな。昨日は滅茶苦茶、頭よさげだったのによぉ」

 

昨日は真面目モードでしたので。普段は、31Aメンバー同様るか×ユキを期待しているだけの一般人です。

 

「天才キャラと思ってくれていいぞ!」

「昨日はマジでそうかと思ってたよ。いや、賢いんだろうけど普段がなぁ。こいつに毒されたってのはマジみたいだな」

「そうだよ!あたしのせいみたいになってんじゃん!どうなってんだよ!!」

「樋口のことひぐみん呼びして、みこくーーーん、ショック!って言っただけなんだけどなぁ〜」

「月歌に毒されたな」

「あたしのせいじゃないよね!?」

 

その後再度てぇてぇを邪魔した事を謝罪し、2人と分かれる。今回の事のように考える時間が必要なのは分かりきっている。そして、それを邪魔してはいけないことも分かっている。でも何かしていないと落ち着かない。司令官に言われた通りに体を鍛える事にしようと思いジムへと向かう。

 

ジムに来たはいいものの何をすればいいか、それに関しての知識は何も無い。先立っては体力だ。外にいた時はずっと走り続けられるだけの体力はあった。ここに来てからは走る事なんてほとんどしてない、落ちた体力を戻す目的にランニングマシンを使う。走る為の足も鍛えられるだろうし一石二鳥だ。

 

「おっ、東堂じゃねぇか。ここにいるなんて珍しいな」

「水瀬姉じゃねぇか。珍しいも何も初めてですが?」

 

水瀬姉こと、水瀬いちご。31Bの部隊長ではないがその位置と言っても過言では無い気がする。姉と言うだけあって、妹に水瀬すももがおり、2人で殺し屋をしていた。が、人情に厚いいい人。

 

「で、お前はなんで走ってんだ?」

「詳しい事は省くが司令官に、鍛え直せと言われたからな」

「ふ〜ん・・・なぁ、なんでその速度で普通に喋れてんだお前?」

「は?普通だろ?」

 

ランニングマシンからはありえないほどのモーター音が鳴り響いていた。

 

「普通じゃねぇよ!それ最高速だろ!!ずっと見てたけど結構走ってるだろ!!あたしだってついてくの精一杯なんだぞ!!」

「時速20km出せるんだなここの」

「なおも普通に会話してるお前の方が普通じゃねぇよ!!見ろよ!周りのヤツらドン引きしてんじゃねぇか!!」

「いやまぁ、これを長時間保てないと逃げれなかったしな」

「お前がどうやって生きてきたか、分かった気がするわ」

 

しばらくの間、ランニングマシンを続けていた。バイトは週2に減らしその間はとにかく走った。しかし、悲劇が起こってしまった。体と心に鞭を打って走り続けていた俺は

 

カフェテリアで起こった、かれ×つか てぇてぇを見逃してしまった!!

 

「チクショオオオオオオ!!!なんて世界は残酷なんだ!!!」

「なんか、この間とのギャップがすごい・・・」

「そうね・・・」

「いやまぁ、これ正常運転なんだろうけどさ・・・ところでさ、トレーニングの方はどうなったの?」

「あ〜、そっちなら時速20kmを3時間キープ出来るようになったぞ。水瀬姉の補給有りでギリギリだけど」

「もはやバケモノじゃん!!」

 

ちなみにフルマラソン(特殊な補助有り)の非公認記録で1時間59分40秒という記録がある。時速にすると約21km/h




ある日の日常
茅森「よし、カレンちゃん、すがやん、いちごは揃った!後はアイツだけだ!行くぞビャッコ!!」

ビャッコ「ヴァウ!」

茅森「いたぁーー!!20km3時間!!」

東堂「人をタイムで表すな!」

茅森「行くぞ!ビャッコと競走だ!!」

東堂「状況説明をしろ!!」



茅森「なんで20km3時間キープ出来るのに最後尾なんだよ!!」

東堂「一定のリズムで走れる屋内と・・・アップダウンある・・・屋外じゃ・・・話が違う!」

菅原「ロリータに何やらせんだ!!」

カレン「カレンちゃんの沽券にか・か・わ・るぅーー!!」

いちご「まさか東堂に勝てるとはな・・・」

茅森「よし!もう一周だ!!」

東堂「やめろ!敵襲と勘違いされてただろうが!!」


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7戦目 東堂命

前書きや後書きはシリアスぶっ壊すためにあると私は思うんですよね!

ヘブバンGIGOで、
ロングクッション×2
アクリルイラストボード×3
B2タペストリー×1
キーホルダー×1
部隊缶バッチ×1
取れました!
もやし生活スタートです!!


ナービィの真相が分かり、和泉からイージスタワーで何かわかるかもと言われてから何日か経った。

既に野営地は建てられており、31Aメンバーもフラットハンド対策の任務に動いていた。

 

「なぁ、めぐみんさんや」

「・・・なんやねん」

 

司令官からイージスタワー侵入の許可がおり、野営地へと行く。たまたま近くにいた逢川に声をかける。

 

「フラットハンドってなんぞ?」

「そこからかいな!今までにも何回も話に出とるやろ!なんでその時聞かへんのや!!」

「いや、聞くに聞けなくてさ」

 

そもそも軍人でない自分に作戦内容など来るわけがなく、標的の名前を出されたとて分かるわけが無い。フラットハンドは今討伐を目的としたキャンサーである。なんでも空間を歪める能力を持っているらしくその対策として、イージスの鎖という機械の設置の為の任務が行われているとか。もう既に4つ設置済みで残り2つ。

 

「これから侵入って時に、なんてまぁ気の抜けた話をしてるんだか」

「作戦内容とか知らねぇしな。敵の名前出されてもわからん」

「ならせめて察しろよ。頭いいんだから出来るだろ」

「和泉からの評価が地味に高いの謎なんだが」

「図書館にある膨大な情報群から必要なものを精査し抜き取り、整理して答えを出す。言っておくが、普通は無理だぞ」

 

褒めてくれるのは普通に嬉しいが、なんか違う気がするのは何故なのだろう。

 

出撃の時間になり、31Aメンバーに護衛されながらイージスタワー内を進む。地下に行くまでにキャンサー達に会敵し、戦闘が始まる。茅森、カレンちゃん、逢川、國見の4人が前に出て、和泉、東城が自分を守るように下がって連携をとる。流石と言えばいいのだろうか、流れるような連携でキャンサーを倒していく。

道中分かったことだが、最初のうちはキャンサーはこちらには気付いている様子は無い。しかし、ある程度時間が経つと気付いたようにこちらへと標的を変えてくる。キャンサーの性質として、標的を変える際動きを一瞬止めるらしく、その隙を狙われ倒されている。

 

「やっぱり、それ着てても狙われるな」

「前みたいに、すぐに来るわけじゃないから、かなりマシだ」

「初めて会った時はやばかったなぁ〜」

「あの時は死ぬかと思いました!」

「WAVE制のゲームかと思ったし」

「波で来てたおかげで助かった。ってのもあるんだろうな。あれがひとつの塊で来てたらと思うと、ゾッとするわ」

「お!地下着いたね。・・・なんか嫌な感じがする」

 

目的の地下まで来た。覚醒東城に言われたのは地下に行くこと、ここから先は全ての部屋を虱潰しに探すことになる。だが、妙な感じがする。茅森の言う通り、嫌な雰囲気が漂っている。

 

「東城が覚醒ってのすればどの部屋か分かるんじゃね?」

「いや、やめとこう。覚醒すると戻った時に頭痛を起こすんだ。つかさっちの覚醒に頼るのは最終手段ってことにしよう」

「なるほど、結局虱潰しか」

「前来た時は、部屋の中にキャンサーがいた事もあった。月歌、東堂を守りながらだ。部屋を見るのは慎重にした方がいい」

「お荷物なのは十分自覚してるけど、なんかスマン」

 

その分索敵で協力しようと思うが流石は31A、こちらが気づくよりも先に発見。討伐。出る幕がまるでない。出来るとすれば、戦闘中死角から近づいてくる敵を伝える程度。それも先に気づかれることの方が多いが。

 

「また来おったで!」

「今度は大量ではないか!!」

「後ろからも来てます!!」

「くっ!東堂!お前は少し下がれ!後ろが来るまでにまだ時間がある!それまでに前の敵をやる!」

 

状況判断も的確で、従う他ない。後ろから来ている敵はまだ距離があり、来るまでには時間がかかる。

 

「くっそ!!キリがねぇ!!」

「ユッキー!つかさっち!!」

「あっ!!」

「しまった!抜かれた!東堂逃げろ!!」

 

和泉、東城を抜き出てきたキャンサーの一体がこちらに向かってきた。和泉の掛け声に反応するように後ろへ跳躍、後方から来ているキャンサーと丁度間くらいに立つ

 

「馬鹿!離れすぎだ!」

「(・・・1・・・2・・・今!)」

 

首を振り、前と後ろの状況を把握する。それぞれのキャンサーの速度を目測で図り、タイミングを合わせる。

 

丁度、避けた瞬間前後にいたキャンサーが同士討ちをした。避けた体勢のまま、和泉たちの方へと駆け寄る。その間に和泉、東城が討伐。

 

「お前・・・狙ったのか、アレ」

「キャンサー相手に走力だけじゃ太刀打ちできないからな」

「それはそうだけど・・・」

「ここ通路広くて助かったわ」

「お前が生き残れた一端を見たわ」

 

そうこうしているうちに、前衛組も討伐を終えていた。

 

「ごめん、みこっち!大丈夫?」

「お〜無問題ラ!・・・みこっち?」

「うん、東堂命だからみこっち」

「和泉、違うからな・・・」

「なんも思ってねぇし、なんも言ってねぇだろ・・・まぁ、31Dの命吹雪と被りそうだったから丁度いいんじゃないか」

 

31Dの命吹雪、ガスマスクを被った少女。関わりはさほどないが、茅森同様音楽をやってるらしく茅森とはそれなりに関わりがあるらしい。余談だが、ガスマスク取った命吹雪はかなりの美少女。

 

「よっし!次はこの部屋だな!」

「キャンサーいませんように!」

「國見さんや、それはフラグと言うのですよ」

「やめてください!東堂さんが言ったら本当になりそう!」

 

結果、キャンサーはいなかった。

 

「この部屋には何があるかな?」

「・・・あ〜、うん、なるほどね〜」

「東堂、何見つけたんや?」

「研究員も性欲はあるんだなぁ〜って」

「は?」

 

手に持っていた冊子には、あられもない姿をした女の子が書かれている本だった。要するにエロ本。

 

「な、な、な、なんでそんなもんがあんだよ!!」

「ここにある物なら東城の方が詳しいだろ」

「知らないわよそんなの!!」

「おぉー!えっろい!!」

「とりあえず國見は外でとけ」

「それは違うと思います!」

「違わねぇよ、合法ロリは外に出とけ」

「違うと思います!」

「あってるだろ、見た目完全にロリだからな。何処ぞのロリータが反応しそうな体型だからな。悪いけど」

「「違うと思います!」」

「これ和泉がやるべきだと思うんだけど」

「あたしに振るなよ!」

「くっ!やはり東堂さん!手強い!!」

「というか、セクハラ発言されてんだからお前は怒っていいだろ」

「安心しろ。俺はお前らを性的な目で見た事ないし、異性としても認識してないから」

「それはそれで問題だろ!てか、かなり失礼だからな!!」

「ここは特に何も無いみたい」

 

朝倉だけは真面目に仕事してた。

 

「さっすが、かれりん!みんながわちゃわちゃしてる間に仕事してる!!」

「隠れてエロ本読んでる時にキャンサーに襲われたんかね?」

「だとしたら悲惨すぎるわ」

 

エロ本部屋から出て先へと向かう。今の所、大した資料は何も無い。地下だからだろうか、物を隠したいのか変なものが出てくることが多々あった。先程のエロ本もそのひとつだろう。

 

進んで行くと一際厳重そうな扉があった。ロックがかかっており開かない。和泉がハッキングでこじ開けてくれるそうなので周囲の索敵しつつ待機。

 

「俺、ここに資料あったらそれはそれで嫌なんだけど」

「なんでや?手に入るんならなんでもええやろ?」

「こんな厳重にされる程の物があるって事だし、ぶっちゃけ、俺の資料はあって欲しくないな」

「は?欲しくてきたんやろ?」

「いや、ここにあるってことはさ…」

「開いたぞ」

 

会話の途中で和泉が扉のロックを解除してくれた。中に入るために扉を開く。すると、中から見覚えのある生物がピョコンと、飛び出してきた。黒くて、頭に星がつきそうで、4つくっつけると消えそうなアレ。

 

「ナービィ?なんでこんなところに?」

「これは・・・嫌な予感的中・・・か?」

「嫌な予感って、お前何考えてた」

「東城が、名指しでここに来いって言った辺りでちょっとな」

 

ナービィを拾い上げ、中に入る。中には他にも数体のナービィがいた。キャンサーが入ってこないよう扉を閉め、部屋内を探す。探す以前に、テーブルの上に不自然に置かれているそれに手を伸ばす。

 

「これ、セラフか?」

「おい、危ねぇから触るな」

「俺なら触ったところで使えねぇよ。ただの鈍」

 

セラフに気を取られているあいだ、國見が何かを見つけたらしい。日記のような、研究成果のまとめのような物。そのまま読み上げてもらう。

 

「『東堂命という少年の存在が発覚した』」

「はぁ〜、予感的中。まず間違いないだろうな」

「だからお前は何に気づいてんだよ」

「國見さんや続きをどうぞ、多分書いてあるだろうに」

「は、はい!」

 

國見が続けて読む。

 

「『彼は、キャンサーに襲われやすいという特徴がある。しかし、他の人よりという程度である。もしも、その特徴がなんらかによるものであれば、軍事利用が出来るのでは無いかと考えられる。我々は、彼と接触を図ることにする』」

「他の人よりはって、そんなレベルじゃないぞ」

「明らかに群を抜いてるし」

「はぁ〜」

「だからお前は何を知ってんだよ」

 

 

「『彼との接触は成功したと言える。しかし、我々が出会った頃には既に彼は息絶えていた』・・・えっ?」

「やっぱりか・・・」

「どういうことや・・・」

「東堂お前がさっきから言ってたのコレか?」

「これ以外あると思うか?」

「みこっち・・・いつ気づいたの?」

「さっきも言ったけど名指しされたからな、俺がここで研究されたわけだ、けど俺の記憶には無い。俺の研究資料がなければ、ただの言葉の綾になったんだけどな」

 

何となくだが最悪の可能性を考えていただけあって、自分は案外平気だった。まぁ、くるものはあるがまだ平気だ。

 

「『幸いにも彼の体は綺麗な状態で残っていた。我々はこれを持ち帰り研究材料とする事に決めた。肉体に電気を流し、生きている時に限りなく近い状態へと近づけ、キャンサーの反応を確かめる。結果、失敗。キャンサーは見向きもしなかった』」

 

生きていることがキャンサーが寄ってくる最低条件。生に近づけても死している事には変わりない。

 

「『彼の家庭環境、友人関係などわかる範囲で調べることとなった。

名前は東堂命。

父母の3人暮らし。

身長176cm

体重60kg

全体的に線が細く華奢

手術歴無し、輸血・献血経験なし

学力、中の上、時折周りを驚かせる程の頭の回転を見せることがある。

運動神経、見た目によらず良い方だが飛び抜けて高い訳では無い。動体視力は高め。武道経験有り。

友人関係は極めて良好。が、意味もなく嫌われる事が多々あり。彼の友人と接触成功。嫌われる理由は「なんか嫌だ」と曖昧な表現。また、共感性が高いらしく、相手の感情を理解してくれると言われていた。

友人関係から、彼は【エンパス】または、【逆エンパス】の能力を持っている可能性が高い。意味もなく嫌われる点から【逆エンパス】であると予想する』

・・・逆エンパスってなんでしょう?」

「【エンパス】は、他者の感情を自分の物のように感じられる力、【逆エンパス】はそれに加え、自身の感情を他者に送信できる能力ね」

「えっ?東城さん?どうしました?」

 

突如東城が真面目な顔になり、饒舌に説明を始めた。

 

「これが東城の覚醒だよ。見るの初めてだったな」

「【逆エンパス】は受信と送信両方できるけど送信優位よ。他人から意味もなく嫌われるって言うのは【逆エンパス】の特徴の一つね」

「受信は要するに、感受性が高くて共感しやすいってことだろ。送信ってのは?」

「他人に自分の感情を送り付けるのよ。そうすると送られた人は同じ感情を抱くの。例えば、【逆エンパス】保持者が怒りの感情を送信すれば、受けた側はイライラし始めるって感じね。タチが悪いことに、【エンパス】や【逆エンパス】保持者はそれを自覚していない、そのせいでうつ病になる人もいる」

 

以前、ショップでのバイトの際「なんか嫌だ」と、意見があったと言われた。これも【逆エンパス】と言う物のせいなのだろう。

 

「続き読みますね。

『彼がキャンサーに襲われる理由を【逆エンパス】によるものだと仮定する。彼のナービィを作ろうと思うが、DNAを多く使う為、時間は掛かるがクローンを作成し、キャンサーに対して恐怖を抱くように洗脳を施す。クローンが人の幼体まで育ったので実験を始める。結果、キャンサーは寄ってきた』

・・・この後はひたすらクローンを作って、実験の繰り返しのようです」

「クローンって、いくら法が機能してないとはいえ・・・」

「『幼体のクローンではあるものの、大人の人間と比較しても彼の方にキャンサーは集まった。今後【逆エンパス】が放つエネルギーを増幅出来ないか実験を行っていく』

そんなことできるんですか!?」

「無理でしょうね。感情なんて理解しきれない物を解析しようとしているものよ」

「確かに、この後の資料全て失敗となってますね。あっ、セラフは次いでに扱えるかのテストを含めていたみたいです。次は感情の操作ですね。

『彼の【逆エンパス】とキャンサーの関係性。彼をキャンサーの外殻で覆ってみる。結果引き寄せは弱くなった。キャンサーが放つ波長のようなもので彼が出すエネルギーを誤魔化しているのだろう。時間経過で彼の方へ集まって行くのが確認された。クローンにキャンサーに対して恐怖ではなく喜び等プラスの感情を持つよう洗脳を施す。結果、引き寄せは弱くなった。この事から彼がキャンサーに持つ恐怖が関係していると考えられる。彼が発信した恐怖の感情をキャンサーが受信、自分の物と錯覚し彼を恐怖の対象、脅威であると判断してると考える。研究を続けていくうちに、彼の【逆エンパス】は人間への影響が極端に少ないとわかった。それに対し、キャンサーへの影響は群を抜いている。これもキャンサーに狙われる理由の一つだろう』」

 

キャンサーの外殻でマシになるのはここでの研究でも明らかになっていた。しかし、キャンサーに対する感情の抱き方で寄ってくるのが変わってくるという。つまりはキャンサーにも感情があるという事だろうか。

 

「あれ?次で最後ですね。

『失敗した。いや、成功だと言えるが失敗だ。気づけなかった。彼の体をいじくりまわしたというのに。ナービィにDNAを取り込ませた。多少だが、エネルギーの増幅に成功したからだ。しかし、採取場所が悪かった。入れたDNAが悪かった。

彼にはもう1人いた』」




ありし日の日常

天音「待っておったぞ東堂」
東堂「いきなり呼び出されるとはな。なんの用?」
天音「新たな魔法薬を作ってな、試してくれないか?」
東堂「いつも茅森がやってんじゃん、あっちに頼めよ」
天音「いや、無理だ。お前ではないとな」
東堂「して、その薬は?」
天音「一時的に男を女にする薬だ」

シュッ・・・・・・パリンッ

天音「何をする!!?」
東堂「TS関しては俺は見る専だ。というかTS薬なら茅森に渡せ、ビジュアル的にもそっちの方が売れる。というか売る!連写して和泉に高値で売りつける!!」
天音「お前は何を言っている!!そもそもコレは男を女に変える物であって女には効果がないのだ!!」
東堂「何故だ!!茅森を月歌ちゃんから月歌くんにした方が良いだろ!!片方TSのるか×ユキ同人誌出たら基地内の人間黙ってねぇぞ!!いいか!今からお前にるか×ユキの尊さとは何か説明してやる!!」
天音「えぇい!うるさいわ!!お前に頼んだわしが馬鹿だった!!」
東堂「待て!るか×ユキがダメなら、かれ×つかならどうだ!めぐ×タマでもいいぞ!もしくはもっと身近なアー×マリはどうだ!!」
天音「身近な人間でそんな妄想するでないわ!!」


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8戦目 縺ィ縺�←縺�∩縺薙→

タイトルの文字化け部分再翻訳しても元に戻らなかったんですが何故なんでしょう?

今回途中かなり無理矢理感半端ないです

主人公くんの特性ですがイメージとしてはRewrite主人公 瑚太郎君の「リライト能力」を無意識下で実行している感じです。剣を創り出すとかは出来ないです。


「もう1人?可憐さんみたいに二重人格って事ですか?」

「いえ、この場合なら恐らくキメラね。珍しい」

「キメラって言うと伝説上の合成生物か?」

「・・・DNAキメラ」

 

DNAキメラ、簡単に言うと2つ以上の異なるDNAを持つ人間を指す。移植などで異なるDNAがはいり、自分本来のDNAが変化しドナーのDNAの方が多くなったと言う事例もある。

 

「知ってるのなら話は早いわね」

「つまり・・・俺は、東堂命ですらない」

 

もう1人、体の中に誰かがいた。そしてそれに気づかずナービィへと渡してしまった。そして出来たヒト・ナービィが自分。

 

「細胞分裂の不具合でもなるわ、それなら東堂命と言っても差し支えないでしょ」

「それだと人為的にヒト・ナービィ化されるDNAが足りないだろ」

「そうね。考えられるとしたら移植、もしくは胎児の時に双子の片方を吸収してしまったか」

「だったら、病院でわかってるはずだろ?東堂が聞かされない理由がない」

 

和泉のもっともな発言に東城が不敵に笑った。

 

「あら、和泉さんでも気付けないのね。もしくは、それがナービィの性質なのかしら」

「・・・なんだよ」

「彼の過去、おかしすぎるのよ。樋口さんのところでは物心着く頃には両親と走ってた。って言っていたのに、茅森さんのことも知っているし、逢川さんに至っては動画サイトで見たですって、無理に決まってるでしょ」

「!確かに・・・」

「それに、両親と走って逃げていたのなら名字を知ってることにも違和感があるわ。家族間でフルネームで呼び合うことなんて殆どないでしょうしね。・・・東堂命の記憶は混濁、欠落が激しい。いえ、そもそもその記憶自体あなたの物では無いのよ」

 

東城が1つづつ過去を否定していく。自分が持っている自分の物だと思っていた記憶は別の人間の記憶。

 

「ごめん、難しすぎて話ついていけてないんだけど」

「彼は東堂命ではなく、別の誰かって事」

「で、でもさ、まだナービィって決まったわけじゃないじゃん?クローンなら・・・」

「キャンサーに殺されてるわ。それにあっちの部屋見れば分かるわよ」

「わかるって・・・何が・・・」

 

部屋奥にあるもうひとつの扉、そこへ東城が足を進める。無機質な扉の前で止まりこちらを向く。目で覚悟はいいかと問いかけてくる。ゆっくりと頷き返事をする。

 

「開けるわよ」

 

それだけ言い扉を開けた。

 

中の空気が流れ込んでくる。ずっと止まっていた時間が動き出したように。

 

中には複数のガラスの円筒があった。映画やマンガなどで出てきそうな悪の科学者が居るような研究室。ただ、かなりの数が割られており、床にはおよそ人間とは言えない物が散らばっていた。無事だったものは中央の一つだけだった。中に何かが入っている。予想は簡単につく、心を落ち着かせてそれを見ることにする。

 

あぁ、やっぱりか。と、分かりきっていたことを心の中で呟いた。

 

「・・・なんやねん・・・コレ」

「相当弄られてるようね。注射痕に、いくつもの傷跡、オマケに片眼もないしね」

「あ、あの、床に落ちてるのって・・・」

「・・・死体・・・その肉片、だよな」

「ギィィヤァァァァァ!!!」

「ん?おい、東堂何する気だ?」

「コレ見たら分かったよ。双子なんだって、俺は弟でこっちは兄貴だ」

「おい、答えになってないぞ」

 

置いてあったセラフを両手で力強く握りしめ頭の上まで上げる。両足を肩幅程度に開き、左足を前に出す。右足を前に出しつつセラフを振り下ろす。

 

ガッシャン!と音をたて円筒を力任せに叩き割る。円筒内を満たしていた液が零れ、中に入っていた人間だった物が倒れてきた。

 

「なっ!?」

「今更だけどゆっくり休んでくれ、兄貴」

 

兄と呼ぶそれを肩に担ぎ部屋を出ようとする。

 

「おい!どこ行く気だ!!」

「・・・埋めてくる。最後ぐらい人として終わらせる」

 

和泉からの静止を聞かずに部屋を出ていく。外にはまだキャンサーがいるとわかっているのに。

 

「ちょっ!不味いでしょ!!」

「東堂戻れ!」

「大丈夫よ。彼は今キャンサーに気づかれないわ」

「は?なんで」

「書いてあったでしょ。彼のキャンサーに対しての恐怖がキャンサーを寄せ付ける理由だって、今の彼にそんなものないわよ」

「いや、いくらなんでも!」

「・・・ほんまや、見向きもせぇへん」

 

周りにキャンサーがいるのはわかってる。けど、不思議と恐怖は感じないし、脅威とも思えない。多分、存在を否定されたせいで、生きてる事がおかしいと思えてるからだ。

 

キャンサーに襲われることも無く外に出る。幸いなことに誰にも会うわず外に出れた。イージスタワーの裏へと向かいセラフを器用に使い穴を掘る。

 

時間はかかったが人1人が入ることの出来る穴は掘れた。中に、兄と呼ぶそれと、セラフを入れる。

 

「・・・流石にそれは入れるなよ」

「他の奴らは?」

「まだ研究室で調べ中、あたしとユッキーだけこっちにきさせてもらったんだ」

「一応、セラフは軍のもんだからな。埋めるのはやめとけ」

 

 

《イージスタワー地下研究室》

「(この培養器だけ無事だっただけの事はあるわね。ガラスが分厚い、キャンサーでも割れないくらい・・・いや、他のはクローンがいたから狙われただけかしら。でも、他のとは比べ物にならない程に頑丈な作りね。コレを彼が?・・・あぁ、真に肉体がないから)」

 

東城が東堂命の肉体が入っていた機械を見て考察をしている。何故これだけ無事に残っていたのか、死体が入っていたから、それを守るために他より頑丈に出来ていたから。そして、そんなものをいとも容易く破壊したアレに対して考える。

 

「おい、諜報員」

「あら、何かしら?まさか今ここでやり合うつもり?」

「違うわ!貴様との再戦は別の機会にする!・・・何故奴がコレを破壊できた。奴のセラフは起動していない。それに、奴の肉体ではコレを破壊できぬ」

 

イージスタワー侵入の為体を鍛えたと言え、華奢な体格、男と言えど厚いガラスの円筒を叩き割るだけの力はどう見てもない。

 

「へぇ、あなたと同じ事を考えるとはね。私の想像だけど、あの体は東堂命のものであって彼の物では無いわ。胎児の時点で東堂命に吸収されているからね。彼の肉体は存在しない、ナービィの性質によって違和感なく実行する事が出来る。つまり・・・」

「・・・!適した肉体を創り出せるということか!?」

「多分だけどね。時速20kmを3時間キープだなんて普通に無理、しかも走れるようになるまで大して時間がかかっていない。それなら筋が通るわ」

「いや、待て!そもそも奴が双子という確証がないぞ!」

「双子で間違いないわ。手術どころか、輸血を受けたことも無いみたいだからね。生まれるはずのないヒト・ナービィ」

「なら、セラフが使えるようになる可能性もあるのではないか?」

 

セラフ部隊がセラフを扱え、普通に戦えるというのもナービィが違和感を覚えないという性質を持っていることに起因している。東堂命がヒト・ナービィであれば使えてもおかしくはない。

 

「それはおそらく無理ね。彼の中ではセラフ使えない物と決定づけてしまっている。ナービィでも今から扱える様になったらおかしいでしょう」

「やつは体を変えられるのではないのか!!」

「あくまで肉体の変化、老いはしないけど衰えはするし、成長はしないけど学習はする。形のないものだから常識の範囲内で自由自在になんにでもなれる」

「ならば何故、あの姿なのだ?」

 

なんにでもなれると言うのであれば、あの姿をしている理由がない、もっといい姿があったはずだ。

 

「恐らくDNAを取り込ませる際、本来のDNAも混ざったのね。そちらから肉体を再現、肉体の大半を占めてるのが異なる方じゃないかしら。オリジナルと真逆状態ね」

「・・・あの〜、めぐみさんと調べましたがこれ以上のものは期待出来そうにないです」

「ここ完全に東堂について調べてただけみたいやな」

「そっ、じゃ出ましょう。っと、ちょっと待ってもらえるかしら・・・痛っ」

「つかささん大丈夫?」

「えぇ、何とか・・・とりあえず出ましょう」

 

 

《野営地》

「おっ♪みんなおかえり」

「ただいまです!あの、東堂さんは・・・」

「あいつなら司令官と話してる。ついでにあのセラフどうするかとかもな」

「自分ら行かなかったかいな」

「1人になりたいって言われたから」

 

《司令部》

「・・・という訳だ」

「・・・そう」

「コレどうする」

 

左手に持ったセラフを軽く持ち上げ見せつける。司令官は何とも言い難い表情をしていた。

 

「あなたはセラフは使えないけど、セラフと言うだけで危険がある。こちらで預からせてもらう」

「・・・わかった」

「本当なら、軍事設備の破壊に、東堂命を勝手に持ち出し埋めた事に罰を与えるべきなのでしょうけど、必要なさそうね」

「・・・」

「私からあなたに言えることはもう無い。茅森さん達にもう言ってあるから」

 

基地の司令官室で言われた、自分の生きる意味を考えると言うこと。他人事のように聞いていたそれを考える事になるとは夢にも思わなかった。

 

「とりあえず今日はもう休みなさい」

「・・・あぁ」

 

その後一度基地に帰された。夜まで自室に篭って漠然と考えていたが息が詰まる気がしたので外に出る。特に行くあてもなく彷徨う様に歩く、気づくと葬儀場に来ていた。ここに来るのは蔵の葬式以来だ。そうは言ってもナービィとして生きている訳だが。

 

ベンチに腰掛けボーッと考える。頭が回らず、無駄に時間を消費していくのが何となくわかる。

 

「なんやねん、先客ありかいな」

「・・・逢川じゃん、女の子が夜中に出歩くのは危ないぞ」

「何言うてんねん、危険なんてあらへんやろ」

「そうだな」

 

無言の時間がしばらく流れた。その静寂を破ったのは逢川の方だった。

 

「・・・なぁ、聞いてもええか?自分、ドームにいた事あるんやろ。どんなところなんや?」

「なんも知らねぇよ。無理矢理入れられて、寝て起きたらキャンサーに襲われておしまい」

「放送みたって言ってたやろ」

「あぁ〜、セラフ放送ね。キャンサーと戦って勝つところ流してたよ。人類の希望にして、生活の潤いって言えばいいんかね」

「楽しんでるんか」

「楽しいって言うか、不安なんだろうな自分達は何も出来ないから。狭い箱の中に押し込まれた生活だもの」

 

キャンサーなんて楽しめるものなんかでは決していない。それでも、自分達は何も出来ないから見て不安を和らげるしかない。

 

「セラフ放送で盛り上がって寝て起きたら、キャンサーの襲撃で、奈落へ一気に落とされた気分だったな。俺をドームに入れてくれた女の子の家に泊まらせてもらったけど、あの子今生きてんのかねぇ」

「それいつの話や?うちらが自分拾った時か?」

「ここにも、外にも年代を知る物はねぇよ。感覚じゃ、数年前だと思うけど、もしかしたら1年も経ってないかもしれないし、数十年経ってるかもしれない」

 

思い出を語っていると、遠くに誰かが隠れて見ているのが分かった。特徴的な帽子をかぶった女の子

 

「さて、俺のドーム話は以上です。邪魔者は帰るとするわ」

「・・・待ぃや、自分なんでそんなに平気なんや」

 

今日、自分がヒト・ナービィだと分かった。そして、自分が本来存在しない人間だと分かった。記憶も、感情も、肉体も全て自分ではなく東堂命の物、考えても答えが出ないのは分からないからじゃなくてもう既に答えが出ているから

 

「いつだか、どっかの誰かさんが手を引いてくれたおかげ」

「はぁ?」

「今の俺は多分そっから始まったから」

 

誰かが手を引いてくれた、キャンサーを引き寄せる自分を受け入れてくれる人達がいた、身も心も震わせてくる歌を聴いた。だからいつの間にか答えが出ていた。らしくもない、というか素直に言うのが恥ずかしいので多くは語らず、ラノベ主人公が言いそうなくっさいセリフを吐き、その場を去る。隠れている誰かにこっそり言葉をかける。

 

「隠れるならそれ脱げよ」

「それは違うと思います!」

「見えてたからな」

「そんなバカな!!」




司令官報告時裏側

東堂「・・・という訳だ(説明ムズいわコレ)」

手塚「・・・そう」

東堂「コレどうする(出来れば貰えねぇかな)」

手塚「あなたはセラフは使えないけど、セラフと言うだけで危険がある。こちらで預からせてもらう」

東堂「・・・わかった((´・ω・`)ショボンヌ)」

手塚「本当なら、軍事設備の破壊に、東堂命を勝手に持ち出し埋める事に罰を与えるべきなのでしょうけど、必要なさそうね」

東堂「・・・(よっしゃ!ナイス演技俺!!)」

手塚「私からあなたに言えることはもう無い。茅森さん達にもう言ってあるから」

東堂「(どこぞの人等のおかげで大丈夫です)」


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9戦目 RINNE着信で○○ボイス

最近寝る時にかれりんとつかさっちのロングクッションの間で寝てるんですが、今日起きたら左側にあったかれりんのクッションがなくなっていて、つかさっちの上にあったんですよ!
しかも顔を向き合うように!

かれつかてぇてぇ!!


イージスタワー侵入から数日後、時計塔前のベンチで1人黄昏ていた。

 

「よっ!そこのお兄さん♪良かったらお茶しない?」

「逆ナンみたいに話しかけてくんな、なんの用だ?」

 

茅森が話しかけてきた。現在バイト休憩中である。

 

「むしろそっちこそ何してんの?」

「見ての通りバイトの休憩中ですが?」

「えっ!?無休の連勤術士フルタイムアルバイターが休憩!?」

「ちょっと待て、誰だそんなあだ名つけたやつは」

「あたし」

「よし表出ろ」

「もう既に表だよ?」

 

不名誉なあだ名をつけられてた事に驚きだ。ココ最近は休んでいたんだが、休んでジムで走ってただけなんだが。

 

「いやまぁ〜、この間のこともあったし大丈夫かなァ〜って」

「安心しろ、どこぞの誰かさんの歌声聴いた挙句、名シーンを見せられれば影響されるもんよ。てぇてぇ邪魔したのはマジでスマン」

「せっかく濁してたのに台無しじゃん」

「とにかく、お前らに習って勝手に信じさせてもらうわ・・・お前らのてぇてぇが本物になるその日まで」

「ほんと、台無しだね。でも、あの部屋から出てからキャンサーに襲われなかったから、結構ダメージはきてたんだ」

「まさか穴掘ってたら、色々整理できるとは思わなかったけどな」

 

流石は31Aの部隊長と言うだけはある。同じ部隊でもなく、セラフ部隊員ですらない自分のことを気にかけてきた。コレが切り込み隊のリーダーのなせる技なのか、それともミュージシャンとしてのカリスマによるものなのか気になるところだ。

 

「ところでさ、研究室の物壊したりしたけどづかっちゃんに怒られなかった?」

「そこはモーマンタイ!兄貴埋める当たりから始めた演技で、司令官殿に精神的に参ってる様に振る舞った事により!お咎め無し!!」

「・・・あ〜、そっか」

「なんだよそのにえきらねぇ反応」

「・・・ごめん、後ろ」

「後ろ?」

 

茅森がおずおずと指を指した先を見ると、見た事のある軍服に身を包んだ女性がいた。グラビアが図書館にあったあの人。こんな漫画みたいなことがあってたまるかと叫びながら逃げようとしたがもう既に遅し、1週間のタダ働きが決定した。

 

「ブラックだ・・・セラフ部隊はブラック企業だ」

「会社じゃないけどね」

「ところでお前はなんでここに?」

「明日最終作戦当日だから息抜きにみんなで遊ぼうと思って向かってる途中」

「なら、俺ナンパしてないでさっさと行けよ。・・・逢川も一緒か?」

「めぐみん?なんで?」

「【逆エンパス】ってのは受信も出来るみたいだからな」

 

最近、といってもナービィの事を聞かされてから逢川の様子がおかしい。悩んでいる、焦っているそんな感じだ。時折、変な感覚になる事がある。【逆エンパス】との受信の方なのだろうと思う。自分にそんな力があると知ってからか、受信に関しては何となく他人のものなのかどうかわかるようになった気がする。気がするだけだが。

 

「気になるんならみこっちも一緒にどう?」

「バイト中だっての、休憩ももうすぐ終わりだ。今日はフレバー通りにも行くから会うかもな・・・というかみこっち呼びなんだな」

「あっ、変えた方がいい感じ?」

「うんや、東堂命じゃないけど東堂命として生きてきた過去は偽物じゃないから、これからも俺は東堂命だ」

「えっ・・・くっさ!!」

「やめろ!俺だってポエミーだって自覚してんだよ!!突っ込むなよ!!恥ずか死するぞ!!」

「恥ずか死って何!?」

 

わちゃわちゃしてたが休憩時間も終わるので茅森と別れた。今からの仕事が無給だと思い出したらやる気が出なくなった。これじゃあ無休ではなく無給の連勤術士になる。そもそも連勤術士じゃないが・・・絶対に認めないが。

 

ジム隣のショップバイトが終わり、フレバー通り雑貨屋バイトへ向かう。その途中逢川が1人どこかに行くのが見えた。

 

「・・・(動画サイトで見た時は確か、コーラだか浮かせてたな。一応用意しておくか)」

 

雑貨屋に着くとバイト始めるより先にタオルを大量に買い込んだ。

 

「そんなに爆買いして何する気だ、コノヤロー♪」

「いや、杞憂だといいんだがな・・・」

「言い返してこないんですね・・・」

「スマン、少し抜ける」

「始まってもいないですが、まぁ何かあるみたいですから良いですよ」

 

佐月から許可を貰い逢川が向かった方へ走る。動画サイトで見たサイキックの情報を頼りに水がある場所だと予想する。

 

丁度噴水近くに来たところで中から悲鳴らしきものが聞こえた。31Aメンバーもその声が聞こえたらしく来ていた。杞憂だと願ったが叶わなかったらしい、ずぶ濡れの逢川がそこにいた。

 

「・・・風邪ひく前に風呂連れてけ、ここは俺がやっとく」

 

逢川の頭にタオルを被せると和泉にタオルを放り投げる。

 

「東堂!?なんでいんだ、バイト中だろ?」

「これからフレバー通りの雑貨屋バイトなんだよ。逢川が1人でこっち来てたからタオル買い込んで向かっただけ」

「・・・さっきあたしと喋った時おふざけモードだったよね?この短時間で何があったのさ」

 

別に真面目モードになる条件なんてないのだが

 

「いいから、タオル持ってきたから拭いてやれ。大方サイキック試して噴水の水持ち上げたんだろ。動画投稿してた時みたいに、焦るのは分かるけど落ち着けよ」

「何がわかるんや・・・うちと違うて一回目やろ!」

「それ言われると耳が痛いわ」

「何?1回目?」

 

他の人達と違う部分として、これが最初の人生と言うこと。東堂命に吸収された事によりヒト・ナービィとして生まれたのが1回目の人生、他の人間は2回目の人生ということになる。

 

「あんまそのこと口走るなよ。熱くなって周りに人がいること忘れてるだろ」

「うっさいわ!」

「とにかく風呂入れてこい、落ち着くだろ」

「うん!ごめんみこっち!ここ頼んだ!!」

「へいへい・・・はぁ〜佐月に毒吐かれそうだわ。我々の業界ではご褒美に、なんて言えるレベルになってないしな。モップ持ってこよ」

 

この後佐月に毒吐かれたのは言うまでもなかった。どこぞの末っ子さんなら喜ぶんだろうけど自分はその域に達していない。というか、末っ子さんは自ら言われに来るレベルだ。そこまではさすがに行きたくない。そして、ついでと言わんばかりにタダ働きが半日伸びた。

 

「・・・疲れた、容赦ないわ。無休はともかく無給はやめてほし・・・おや、末期か俺?」

 

日が沈んだあと、バイトから解放された。自室に向かおうと歩いていると31A(逢川除く)メンバーがやってきた。

 

「やめろ、バイトで疲れてんだ。巻き込むな」

「まだ何も言ってないんだけど・・・」

「なんかお題付きで買い物だろ?」

「うん!めぐみん安眠グッズ買いに行く!」

「面白そうだからついて行っていいか?」

「ネジ切れんばかりの掌返しだな」

 

《フレバー通り》

「(う〜ん、安眠ねぇ〜。やはりコレか?いやでも1週間タダ働きだしなぁ〜。稼いだGP大量にあるけど、円になおしたら家一括で数軒購入出来る金額はあるけどなぁ〜・・・問題ねぇわ!)」

 

問題なかった。伊達に無休の連勤術士(以下略)とは言われていない。認めないが、認めたくないが。

 

他のメンバーはまだ来ていない。今のうち買ったコレを使い準備をする。何故か防音室があるのでそこを借りる。丁度準備が終わると他メンバーも買い終わったらしく集まってきた。1人やたらとデカイなんかを持っているが、突っ込まない方がいいだろう。因みに自分が買ったものは知らない人が見れば生首に見えるヤツ。

 

「よっし!うんじゃ1つづつ試そうぜ!先ずはユッキーからよろしく♪」

「あたしはコレだ」

 

和泉が出したのはももひき。それもベージュ色。年寄り臭いもん押し付けるなと一蹴された。

 

「次!つかさっちよろしく」

「私はこれよ!」

 

東城が出したのは冷蔵庫の取説。無駄に分厚いうえ、この部屋には無い。というかどこで取説だけ売ってるんだと思う。バイト中見かけた記憶ないんだが。

 

残りメンバーは、五円玉、ハンモックといった。真面目なのかふざけているのか判断しずらいものを持ってきていた。そしてやたらとデカイ物があると思ったがキャンサー型抱き枕だった。安眠ではなく悪夢を見るアイテムだ。

 

「次!みこっちお願い!!」

「なんやねん!自分までおるんか!!」

「だって面白そうなんだもの。とりあえずこれどうぞ」

 

ヘッドホンを逢川に渡し装着させる。スイッチON

 

『めぐみん、ゆっくりおやすみ♪(茅森月歌風イケボ)』

「なんやコレ!?耳がゾワゾワする!!?」

「えっ?何それ?」

「なにそれちゃうわ!!コレ自分の声やろ!!手伝っておいて何言うとんねん!!」

「えっ!?あたし何もしてないよ!?」

「いや〜、兄貴の体何でも出来るな」

「お前何した」

「茅森の声真似(イケボ)で『めぐみん、ゆっくりおやすみ♪』って言った」

「はぁ!?本人かと思う位似とったで!!」

「お前何買ったんだよ」

「コレ」

 

両手で買ったそれを見せる。人の頭部の形をしたマイク。ダミーヘッドマイク等と言われるASMR音声を作る道具。1,000,000円以上するらしい。

 

「それ、滅茶苦茶高いやつだよな!よくそんな金あるなお前!!」

「まだ、新築の家一括購入出来るだけはあるから」

「流石、フルタイムアルバイターね」

「うん、茅森お前後で屋上な。まぁ悪ふざけのお詫びとしてコレやるから」

 

そう言って電子軍人手帳を操作しRINNEを送る。

 

『みこっちからのメールのお知らせ♪無視したら許さないぜ♪(イケボ)』

「RINNE着信で俺ボイス!」

「腹立つぅぅぅ!!!」

「というか、いつ弄ったんだよ」

「なんやコレ!どうやって変えるんや!!」

『みこっちからの『みこっちからの『みこっちからのメールのお知らせ♪無視したら許さないぜ♪(イケボ)』

「送ってくんなや!操作させぇ!!」

 

どうやらお気に召さないようで、今回の安眠グッズ大会はDrawとなった。因みに逢川は、結局変え方分からず床に叩きつけてた。

 

部屋に戻ると目覚ましの時間をいつもより5分はやめて寝た。

 

 

《翌日》

「・・・さて、やるか」

 

目覚ましの音に起こされ電子軍人手帳を手に取る。普段は寝起きが悪いが今日は妙に良い。とても良い。すこぶる良い。時計を見て普段の起床時間残り10秒位に和泉へRINNEを送る。

 

《31A部屋》

『ユッキー、早く起きな。起きないなら・・・(茅森月歌風イケボ)』

「東堂お前ぇぇぇ!!いつ弄ったぁぁぁ!!!」

 

逢川の方は骨が折れたがこっちは楽だった。やり方としてはとても単純だ。KETSUに頼んだ。




数秒後

和泉「東堂お前!!どうやった!いつやった!言え!!答えろ!!東堂!!!」

茅森「ユッキー落ち着けって」

和泉「落ち着けるか!!みんながいる前で流れたんだぞ!!」

東堂「KETSUに頼んだだけ」

和泉「お前らいつの間に結託してたんだよ!!というか!なんでお前がKETSUの存在知ってる!!」

茅森「ごめんユッキー、あたしが前に教えちゃった」

和泉「お前のせいかァァァァ!!!」


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10戦目 かれ×つかの代わりにアー×まりを

久々の投稿失礼しますm(_ _)m

書いては消して書いては消してを繰り返し結局5回位全文書き直ししてました。

気づけば5章前編開始しているというのに此方は4章後編。

見切り発車で始まった作品なので「いつの間にやら投稿してるな」程度の気持ちでいてください。

断章はスキップしてますのでご了承ください。


懐かしい夢を見た。

学生だった頃、友人達と遊んでいる時の夢だった。ゲームセンターで遊び、そのまま流れるようにカラオケへと移動したり、ラーメン屋で昼食をとったり、何の変哲のない普通の日常。そんな時、急に周りが騒がしくなったかと思えば「化け物が出た!」なんて声が聞こえた。初め聞いた時は、「薬でもやってる奴」か「ヤバい奴」の認識だったが直ぐに「まともな人間だ」と改める事になる。此方へと向かってきたそれは、明らかに今までに発見されていない生物だとすぐに分かった。そして、近くの人間から手当り次第に飛びかかり襲い始めた。中には、箒や何処から持ってきたのか分からない鉄パイプで迎え撃とうとしていた人もいたが総じて化け物に体を貫かれ死亡していった。平凡な日常を送っていた最中、唐突に訪れた非日常に困惑し逃げるしかなかった。

誰もがそれを見かけると逃げるようになった頃、何故か自分だけが皆と逆方向へと走り出した。化け物は1匹残らず自分の方へと向かいその鋭い爪、太い腕、硬い肉体を振るってきた。

 

「·····頭痛てぇ」

 

酷い頭痛に頭を抑えながら目が覚めた。余りにもリアルすぎる夢を反芻しながらベットから出る。

セラフ部隊総力戦とも呼べるフラットハンド戦を終え全員無事帰還し、翌日逢川めぐみがセラフ部隊を辞めた。そして、茅森から石井色葉にヒト・ナービィについてバレたと伝えられた。知り合いがいなくなり、重大な秘密が他者にバレる等、話題が詰め込まれ過ぎている数日が過ぎ頭痛が酷い中、31Cに捕まった。

 

「聞いたわよ!あなた、探し物が得意のようね!」

「·····逢川探したいなら素直にそう言ってくれ」

「だ、誰も逢川殿のこことなんて、いい言ってないでござるよ!!」

「·····ほら神崎を見習え、このツンデレが」

「ツンデレちゃうわ!!」

 

曰く、以前神崎が助けられた恩を返したいらしく逢川めぐみの捜索をしているらしい。31Aは任務に出ておりしばらく帰ってこない為、今話を持ってきたそうだ。

 

「まぁ、俺も逢川に対してムカついてるから探すのはやぶさかでは無いが·····」

「何よ、何かあるなら早く言いなさい内容次第では取引に応じわよ」

「かれ×つか見逃したからアー×まりを見せろ!!優れない体調もそれ見りゃイッパツだ!!」

「うんじゃ、捜索頼んだわよ」

「アレ?無視??」

 

無慈悲にも要求はスルーされ強制的に捜索隊に入れられた。もしやアー×まりではなくまり×アーだったのかもしれない。解釈違いだったのなら申し訳なかった。カップル論争は戦争を産むからね仕方ないね。

 

やはり自分の解釈はまり×アーではなくアー×まりだと再認識している所で司令官とすれ違った。現在司令部では31A行軍任務に対して、交代しながらサポートに当たっているらしく、今司令官が休憩、昼食の時間らしい。

 

「あら、東堂さん。顔色悪いけれど大丈夫?」

「ご心配どうも。やはりまり×アーではなくアー×まりでした」

「いつも通りで安心したわ」

「そーいや、31A行軍任務って聞いたけど何処行ってんの?」

「濃尾平野よ。そこから琵琶湖の方へ抜けるわね」

「軍人じゃない俺に言って良いんすかねソレ。あ〜、確か彼処だと·····」

 

今まで聞かれなかった事が不思議でしょうがない。恐らく今この基地、ひいては日本国内で自分以上に外の世界を知っている者はいないだろう。長年キャンサー蔓延る世界で生きて来た人間の情報は貴重な物だ。ましてや、キャンサーにしつこく狙われる人間だ。情報だけなら人一倍だろう。

 

「比叡山の方角から狙撃?してくるヤツがいたな」

「·····は?」

「いや〜、俺の能力が広範囲なのは知ってるけど、琵琶湖挟んでたと思うんだけどな〜、まさか補足されるとは」

「·····おい」

「そういや、静岡の中田島砂丘だっけ?彼処結構広いのな。なんかドデカイミミズみたいなのがいて砂嵐起こすわ電気帯びてるわ。あそこ行くまでに倒壊したビルやら何やらから避雷針抜き取ってなかったら危なかったわ」

「·····く」

「避雷針囮に電撃避けなかったらマジで命無かったと思うな。··········どした司令官?」

「くるくるぱーーかーーーー!!!」

 

何故怒られたのか訳の分からぬまま、脇に抱えられたかと思うと司令部まで連行された。あの司令官さん。一応男抱えて走れるってどんなパワーしてるんすか。どことなくあの七瀬さんが驚いた顔してる気がするんですけど。ポーカーフェイスだから分からないけど多分驚いてるよね。

 

「七瀬!31Aは今何処!!」

「琵琶湖周辺、比叡山の方角から攻撃を受けました。31A総員無事です」

「アレ?31Aですら補足されんの?俺だったからとかじゃ無く?」

「·····つまり過去に襲われていたと」

「濃尾平野のキャンサーについても知っていたわ」

 

濃尾平野は砂丘では無い事くらい知っている。反論しようとすると濃尾平野が砂漠しており、その原因があのドデカイミミズだったらしい。そして、自分が通った場所が中田島砂丘で無く濃尾平野だったと指摘され、比叡山のキャンサーについて何故黙っていたのか怒気を含んだ声で聞かれた。理由はただ一つ、聞かれていないから。




カプ論争怖いのでまり×アー派の人許してくださいお願いします!!


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