王と音 (リル)
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ジン・ペンドラゴン

 

29歳

二つ名『剣聖』

 

所属派閥︰クロノス・ファミリア

 

種族・・・人間

 

Lv.7

 

力:SS1010

 

耐久:S999

 

器用:S999

 

敏捷:S999

 

魔力∶SSS1177

 

 

耐異常:C

 

魔防:C

 

精癒:C

 

斬撃:A

 

神秘:B

 

剣聖:C

 

 

 

《魔法》

 

『エンペラー・カタストロフィ』

 

詠唱文【王の血筋、王の災禍、王の恵み、解き放たれる力。我は悼む、ブリテンの過去、父の罪、母の罪、我は望まれぬの子。災の我に天罰を、罪と罪をこの手に、遥か彼方の永久に。望む力を与えてくれ、力を開放せよ】

 

炎、光、闇の力を混ぜ合わせた超広範囲殲滅魔法。

威力を最大限出せば国を潰せるほどの威力を持つ。

 

 

『イニティウム』

 

・速攻魔法

・付与魔法

 

精神力を使い自身の身体能力を向上させる魔法。

精神力を使えば使うほど身体能力を向上させられる。

敏捷性を上げたいときなどは敏捷性だけを向上させることが出来る。

※部分的に向上させることが可能。

 

 

 

『完璧模倣』

 

詠唱式【顕現せよ】

 

・任意で見た魔法をコピーしてストックし、使用することが出来る。

コピーした魔法は何度でも使える。

コピーしてストックする数には限りがある。

コピー出来る数は5個。

それ以上の魔法をコピーしようとすると、今までにコピーしていた魔法と入れ替える必要がある。

一度入れ替えると再び見てコピーしないといけない。

 

 

 

コピーした魔法

 

・『ジェノス・アンジェラス』

【祝福の禍根、生誕の呪い、半身喰らいし我が身の原罪。禊はなく。浄化はなく。救いはなく。鳴り響く天の音色こそ私の罪。神々の喇叭、精霊の竪琴、光の旋律、すなわち罪禍の烙印。箱庭に愛されし我が運命よ砕け散れ。私は貴様を憎んでいる!代償はここに。罪の証をもって万物を滅す。哭け、聖鐘楼】

自身の頭上に灰銀の巨大な『鐘』を顕現させ、咆哮に似た轟音で全てを滅する。効果範囲は100M超。

アルフィアからコピーした魔法。

 

 

・『ヴィア・シルヘイム』

詠唱文【舞い踊れ大気の精よ、光の主よ。森の守り手と契りを結び、大地の歌を持って我等を包め。我等を囲え大いなる森光の障壁となって我等を守れ--我が名はアールヴ】

リヴェリアの第三階位防護魔法。 

翡翠色の魔法円を、物理と魔法の攻撃を全て遮断するドーム状の結界に変える結界魔法。

リヴェリアからコピーした魔法

 

 

・『ヴァリアン・ヒルド』

詠唱式【 永伐せよ、不滅の雷将 】

超短文詠唱の雷魔法。

ヘディンからコピーした魔法。

 

 

・『エアリエル』

詠唱式【目覚めよ】

風属性の付加魔法。

アイズからコピーした魔法。

 

 

・『ディア・フラーテル』

詠唱式【癒しの滴、光の涙、永久の聖域。薬奏をここに。三百と六十と五の調べ。癒しの暦は万物を救う。そして至れ、破邪となれ。傷の埋葬、病の操斂。呪いは彼方に、光の枢機へ。聖想の名をもって——私が癒す】

 

傷の治療、体力回復、状態異常及び呪詛の解除と比喩ではなく、文字通り全てを癒すとまで言われる最上位の全癒魔法。

五Mの範囲内に純白の光輝が立ち上がり、光を受けた者に例外なく回復を行うことが出来、その効力は万能薬を超えるとされる。

アミッドからコピーした魔法。

 

 

 

《スキル》

 

『剣聖』

・状態異常無効

・剣を装備していると全能力超上昇。

・瀕死時に全能力超上昇。

 

『魔法剣士』

・戦闘時、魔法の威力超上昇。

・戦闘時、剣を使用するたびに攻撃力上昇。

 

『魔導戦火』

・魔法の効果上昇。

・精神力自動回復。

 

『王の血筋』 

・自身の出生を認め続けると早熟する。

・思いの丈により効果向上。

 

 

《武器》

聖剣エクスカリバー…不壊属性の剣

ジン以外は持つことが出来ない。

とある国より持ってきたもの

 

 

クロノス・ファミリア団長であり唯一の団員。

オラリオでもトップクラスのカッコよさを持つイケメン。

アルフィアのことは恋愛的に好意を持っている。

戦闘ではオラリオで一二を争うほどではあるが恋愛事に関しては鈍感で根性もないヘタレである。

ロキ・ファミリアとは良好で良く遠征を共にする。

自身の出生はクロノスしか知らない。

オラリオに来た目的は手っ取り早く強くなることとお金を稼ぐこと。

数年後には旅に出たいと考えている。

最近の趣味は魔導具の作成。

 

 

 

 

クロノス

 

時間の神。

美しい容姿をしている女神。

16年前にジンと共にオラリオへとやってきた。

ジンがお金を稼いでくれこともありのんびり暮らしている。

かなりの酒好き。

かわいい女性には目がない。

眷属もジン一人いれば十分と思っており眷属を増やす気はない。

最近ハマっていることは料理。

だが、とても食えたものではない。

 

 

 

アルフィア 

 

本作のヒロイン。

7年前、ザルドと共にオラリオを攻めるつもりでいたがベルの顔を見てベルとこれからも一緒に生きていくことを決めた。

それ以来、ベルと共に暮らしていた。

ベルがオラリオに行くことになり一緒についていくことにした。

病はスキルが変化してほとんど治っており、オラリオに行けばジンやオッタルよりも強い最強の存在となる。

ジンは初恋相手であり、ジンに今でも好意を持っている。

ジンが他の女と仲良く話しているのを見ると苛つく。 

 

 

ベル・クラネル

 

英雄願望を持つ純粋な少年。

義母であるアルフィアと祖父であるゼウスと共に暮らしていた。

7年前まではザルドも一緒に住んでいた。

オラリオには英雄になりに来た。

 

 

 

イーディス

 

7年前、オラリオに反旗を起こしたレベル6の冒険者。

エレボスに誘われて次世代の為に散っていった者。

最期はジンの手で安らかに眠った。

故人。

 

 

 

 

『周りから見たジンの印象』

 

 

『クロノス』…大切な家族。大事なときはいつも頼らせてくれる頼もしい存在。

 

『アルフィア』…初恋相手。愛おしい存在。

 

『フィン』…大切な友人。自身の野望を笑わず応援してくれた人。

 

『アイズ』…強い人。昔、挑んでボロ負けした。

上位経験値。

 

『リュー』…強い人。5年前助けてくれた恩人。

 

『アリーゼ』…恩人!

 

『輝夜』…恩人。偶に挑むがボロ負けする。

 

『オッタル』…強い。いつか追い越す。

 

『フレイヤ』…誘ったけど断られて少しショック。

 

『ウラノス』…これからのオラリオに必要な人材。

 

『ヘルメス』…会うたびに殺されると思うくらい殺気を向けてくる。

 

『ゼウス』…クロノスの着替えを覗こうとしたとき、遥か彼方にぶっ飛ばされた。敵に回すと恐ろしい存在。

 

 

 

 

 

 



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親子の訪問

 

 

 

 

 

迷宮都市オラリオ。

 

ダンジョンと通称される地下迷宮を保有する 。いや、迷宮の上に築き上げられた巨大都市。 

都市、ひいてはダンジョンを管理する『ギルド』を中核にして栄えるこの都市は、ヒューマンも含めあらゆる種族の亜人が生活を営んでいる。

 

ダンジョンにもぐり、そこから得た収入で生計を立てている人たちを冒険者という。

そんなオラリオへ足を踏み入れた二人のヒューマン。

一人は灰色の髪にとても美しい顔立ちの女性、もう一人はまだ子供で幼い兎のような少年。

 

「よし!ハーレムを目指すぞ!」

 

少年は勢いよく宣言するが隣りにいた女はそんなことを言う少年の頭を殴った。

少年は痛みによって悶え転がっている。

 

「お義母さん、痛いよ!」

 

「お前がバカなことを言うからだ。だいたい、何がハーレムだ。まったく!ゼウスのやつ、余計なことを吹き込んでくれたな。」

 

ゼウス、かつてはオラリオ最強と呼ばれたファミリアの主神であったが今は訳あって絶賛逃げ回っている最中である。

本来ならゼウスもオラリオに来るべきなのだが、ヘラに居所が見つかったと言って雲隠れしたのである。

 

「それにしても、さっさっと進まないのか。この検問は!」

 

女はとても苛立っていた。

オラリオに入るには検問を済ませなければならないが今日は特に行列であり、かれこれ30分は待っている状態だ。

 

「アルフィアお義母さん!僕たちはどこのファミリアに入るの?」

 

「候補はいくつかあるがまだ決めていない。お前も神に騙されないようにしておけベル。神などろくなやつはいない。」

 

アルフィアと呼ばれた女性。

かつては最強ファミリアの一角ヘラ・ファミリアに所属しており、Lv.7の実力者である。

【静寂】の二つ名を持ち、神時代以降眷族達の中で最も才能に愛された女と称される程の圧倒的な強さから、『才能の権化』『才禍の怪物』と恐れられていた存在。

 

そしてもう一人ベルと呼ばれた少年。

彼はアルフィアの甥に当たるがアルフィアを伯母さんと呼ぶと容赦なくぶっ飛ばされるのでお義母さんと呼ぶことにしている。

ベルはオラリオへ来た目的は可愛い女の子と出会い、そして英雄になること。

 

アルフィアはベルの付き添いということでオラリオへとやってきたが他の目的もあった。

それは初恋相手と会うことも目的の一つであった。

 

「あいつは今もオラリオにいるのだろうか…」

 

「お義母さん?」

 

アルフィアの何処か遠くを見ていた表情にベルは少し心配そうにしながら話しかけた。 

 

「いや、何でもない。」

 

それから少しするとアルフィアたちの番になった。

今日、検問しているのはとても美しい女性たちだった。

一人はガネーシャ・ファミリア所属Lv.5の第一級冒険者で【象神の詩】の二つ名を持つアーディ・ヴェルマである。

もう一人はガネーシャ・ファミリアでは無いが手伝いと言うこともあり検問をしているエルフの女性である。 

 

金髪(長髪)エルフということもあり、少年ベルの好みにドストライクな女性。

アストレア・ファミリア所属Lv.6の第一級冒険者で【疾風】の二つ名を持つリュー・リオンである。

ベルは顔を赤くしながら目を輝かせている。

 

「お義母さん!僕は運命に出会ったよ!」

 

「そうか。」

 

ドコン!

 

アルフィアのげんこつをまともに受けたベルは地面にノックダウンした。

その様子を見ていた二人はとても恐ろしいものを見た目でアルフィアを見ている。

 

「私は手を出すのが早い。さっさっと検問を済ませろ。」

 

「は、はい!」

 

とばっちりを受けないようにアーディはすぐさま手続きを始めた。

 

「で、では神の恩恵の確認をさせてもらいますね!」

 

「そこで寝ているベルは神の恩恵を持っていない。私は元ヘラ・ファミリアで神の恩恵は持っている。」

 

「も、元ヘラ・ファミリア!?」

 

アルフィアがかつて最強と呼ばれたファミリアの者であったという事実がアーディたちを驚かせた。

 

「問題は無いな。」

 

「ええっと…オラリオには何をしに来たので?」

 

「この子がオラリオに来たいと言い出したのでな保護者として同行しただけだ。」

 

「そ、そうですか…。一応お姉…団長と主神に報告しないといけないのでもう少し待ってもらえることは可能でしょうか?」

 

その言葉を聞いてアルフィアは更に苛立った。

長く待たされたあげく更に待てと言うのだからアルフィアのストレスゲージはすでに半分を超えていた。

アーディとリューもアルフィアが苛立っていることは何となく察しているが検問をしている以上引くことは出来ない。

 

「す、すぐに済ませますから!リオン、後はお願いね!」

 

「ちょっ!アーディ!」

 

残されたリューはとりあえず別室にアルフィアとベルを連れて待機している。

残りの検問はガネーシャ・ファミリアの団員に引き継がせた。

 

別室で待機しているアルフィアは気絶しているベルを膝に乗せて本を読んでいる。

リューは見張っているだけだが何処となく気まずい。

何よりもアルフィアがレベル7と聞いたので緊張感がすごい。

 

しばらくするとアーディが帰ってきた。

主神と団長である姉に確認を取り、急いで戻って来た。

 

「ええっと…ガネーシャ様と団長から許可がありましたので検問は通過になります!」

 

「やっとか。おい、起きろ!」

 

アルフィアは中々起きないベルを叩き起すとオラリオの地へと足を踏み入れた。

 

「ここがオラリオ!」

 

「ベル君はオラリオへは何をしに来たの?」

 

「僕は英雄に憧れて英雄になりに来ました!」

 

どこまで真っ直ぐ純粋な子にアーディとリューはとても好感を持った。

アルフィアはどこか嬉しそうにベルを見ている。

 

「頑張ってね!お姉さんは応援してるよ!」

 

「ひゃっ、ひゃっい!」

 

アーディはかなりの美人である。

そんなアーディに手を握られて応援していると間近で言われればベルは当然の如く照れてしまっている。

その様子を見ていたアルフィアは頭を抱えていた。

ゼウスの変な考え方がベルに悪影響を与えてしまっている。

そのことがアルフィアの頭痛の種でもあった。

 

「一つ聞きたいことがある。クロノス・ファミリアはまだ存在しているのか?」

 

「あっ!はい!団員数は相変わらず一人ですが団長のジンさんは都市最強と呼ばれていますよ!」

 

「そうか。」

 

アルフィアは昔の知り合いたちが相変わらずなことにどこか嬉しそうにしている。

 

「さてと、ファミリアを探しに行くぞ。」

 

「う、うん!アーディさん、リューさん!さようなら!」

 

「気をつけてね!」

 

「ご武運を!」

 

アルフィアとベルはファミリアを探しに行った。

アーディとリューは何処となく縁がありそうだなぁと考えていた。

 

「アルフィアさんってジンさんの知り合いなのかかなぁ?どう思うリオン。」

 

「それは分かりませんがジンさんの知り合いなら悪い人では無いでしょう。」

 

5年前リューたちアストレア・ファミリアはジンに助けられたことがある。

それ故にアストレア・ファミリアの者たちは全員クロノス・ファミリアに恩を感じている。

アーディ自身も7年前助けられたことがあるので

好印象を持っている。

 

「っていうかあの少年は可愛かったよね。何だか純粋な子だったし、ああいう子はリオンのタイプじゃないの?」

 

「ア、アーディ!?急に何を言ってるのです!」

 

「私はああいう子は好きだけどな。英雄に憧れて英雄になるってはっきり言うところなんて好感持てるよ!」

 

「ま、まぁ、良い子ではありましたが…。アーディ、間違っても手を出さないように。おそらく、アルフィアさんに殺されますよ。」

 

「手を出すのはリューかもしれないけどね。」

 

「そ、そんなことは無い!」

 

アーディとリューは出会って間もない少年のことで盛り上がるのであった。

後にこの二人は少年と深く関わっていくのであった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

アルフィアは知り合いのファミリアを訪ねていた。

その場所にある建物はとても大きく何十人くらい住んでいるのかと思えるくらいだ。

そこは『聖戦の館』。

クロノス・ファミリアの本拠地である。

アルフィアはドアをノックすると一人の美しい女神が酔っ払いながら出てきた。

 

「なんのようだ〜?ヒック!」

 

「相変わらず酒が好きなようだなクロノス。」

 

クロノスは話しかけたきたアルフィアを酔っ払いながらもじっと見つめた。

そして、勢いよくアルフィアに抱きつこうとした。

だが、アルフィアはクロノスをぶっ飛ばした。

突然の二人の行動に何も知らないベルは慌てふためいている。

 

「まったく!煩わしい!どこまでも変わらないな!」

 

「アルフィアよ!久しいな!相変わらず良いパンチで私は気分が良いぞ!それで何ようだ?それにそこの子供は誰だ?」

 

殴られたのにもかかわらずめちゃくちゃ喜んでいるクロノスを見てベルはドン引きしている。

アルフィアは昔から変わっていない知り合いをあらためて見て頭を抱えている。

 

「この子はベル・クラネル。私達はファミリアを探していてな。誰か良い神はいないか?」

 

「ほう!?この子があのときの幼子か!!月日が経つのは早いな。」

 

クロノスはベルをまじまじと見て納得している。

そんなクロノスに見られてベルは少し照れている。

クロノスは女好きの女神であり、美しいと思う女性にはグイグイアタックする、とても残念な女神である。

とはいえ、見た目はとても美しく思春期の男には刺激が強過ぎる。

 

クロノスとベルは過去に出会っている。

無論、ベル自身は幼子の頃なのでまったく覚えていない。

 

「ファミリアを探していると言っていたな。アストレアのところなどはどうだ?あやつのところはまともだぞ。」

 

「では、案内を頼む。」

 

「私のファミリアに入りたいとは言わないのだな。」

 

「お前がジン以外を眷属にしないことは昔から分かっている。」

 

クロノスはジン以外を眷属にはしないと決めている。

そのことを知っていたアルフィアは最初からクロノスの眷属になれるとは思っていなかった。

 

「クロノス。ジンはどうしている?」

 

「ジンならしばらく帰っておらんぞ。ロキ・ファミリアの遠征に同行している最中よ。」

 

「そうか。」

 

「何だ何だ。まだ、ジンのことが好きなのか?」

 

クロノスはアルフィアがジンのこと恋愛的に好いていると知っていた。

だが、アルフィアは中々アタック出来ないでいる。

ジンはジンでヘタレであり、更に鈍感過ぎるのでアルフィアの気持ちに気づいてすらいない。

二人を見てきたクロノスは早くくっついて欲しいと思っているのであった。

 

「知らん!」

 

ドゴッ!

 

アルフィアはクロノスの腹を思いっきり殴った。

普通なら恐れるか喧嘩案件だがクロノスはとても嬉しそうにしている。

クロノスは女好きの残念な女神というだけでは無くドMなのである。

お気に入りの女の子に殴られるのが最近の好みで、いわゆる変態である。

クロノスを知る者たちは口々にあいつは残念な女神であると口にする。

 

「アルフィアよ!私をこんな体にするとは!もっと楽しもうぞ!」

 

「良いからアストレアのところへ案内しろ!!」

 

仕方ないとばかりにクロノスはアルフィアとベルをアストレア・ファミリアの本拠地に案内した。

ベルはゼウス以外に神を見たのは二度目であり、神って変だなぁと思うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





ジン「あれ、俺登場してねぇ!!」

クロノス「気にするな。私は出たからな!」

ジン「いや!フォローしろよ!」


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ステイタス

 

 

 

 

 

アストレア・ファミリア本拠地『星屑の庭』

 

アストレア・ファミリアはロキ・ファミリアやフレイヤ・ファミリアよりは構成員が少なく、わずか11人しかいない。

しかし、全員が第二級冒険者以上であり、第一級冒険者が四人もいるという強豪ファミリアである。

 

神アストレアは神クロノスとかなり交流があり、クロノスの紹介となれば無下にはされない。

クロノスの案内の元アルフィアとベルはアストレア・ファミリアの本拠地についた。

 

クロノスがノックをすると美しい女神が出てきた。

その女神こそアストレアである。

ベルはアストレアの顔を見ると照れて下を向いている。

 

「クロノス、今日はなんのようかしら?」

 

「私の知り合いを貴様のファミリアに入れてもらおうと思ってな。」

 

「知り合いというのはこの子たちね。」

 

アストレアはアルフィアとベルを見て言った。

アルフィアはアストレアの印象はとても良かった。

神にしてはまともだと。

すると、アストレアの後ろからツインテールの女の子がやってきた。

 

「アストレア!その子達ファミリアを探しているんだろう!だったら君たち!僕の眷属になってくれ!」

 

「貴様はヘスティアか?下界に来ていたのだな。」

 

「そ、そういう君は時間の神クロノスじゃないか!?」

 

クロノスとヘスティアは面識は殆どない。

クロノスからしてみればこいつ下界にいたんだな程度である。

ヘスティアは天界で一度クロノスと出会っており、その時、こいつは恐ろしい存在と思ってしまった。

 

「それよりも貴様の眷属にしろというのか?一応は私の紹介だ。中途半端には出来ない。アルフィア、ベル…そこの判断はお主たちに任せる。」

 

「僕はヘスティア様でも構わないですけど…お義母さんは?」 

 

「はぁ~。お前がそう決めたのならそれで構わない。」  

 

ベルとアルフィアがヘスティアの眷属になることが決まった。

そのことにヘスティアは歓喜している。

 

「やったぞ!これで僕もファミリアを持てるんだ!!」

 

「はぁ~。ヘスティアよ、ベルは神の恩恵を持っていないがアルフィアはヘラのところの眷属だぞ。アルフィアよ、改宗するのか?」

 

「改宗はしないぞ。私は保護者としてベルと来ただけだからな。」

 

「な、何だってぇ!!!アルフィア君!君はヘラのところの子だったのかい!?」 

 

ヘラという言葉にアストレアとヘスティアは驚いていた。

特にアストレアはヘラ・ファミリアは壊滅しており、生き残りがいたとは知らなかったのだ。

 

「さてと、貴様に本拠地はあるのかヘスティア?見たところ居候をしているみたいだが。」

 

クロノスの的確な言葉にヘスティアは口笛を吹いて目を逸らしている。

こいつは駄目かもしれないとアルフィアは悟った。

 

「確かにクロノスの言う通りヘスティアは私のところに居候しているわ。前はヘファイストスのところに居候していたのだけれど愛想つかされて追い出されたのよ。仕方なく私が居候させてあげてるのよね。」

 

「ぐっ!事実だけど言われるとキツイ!」

 

「じゃあ、僕たちはどこに住めば良いんですか?」

 

ベルの疑問は最もである。

ヘスティアの眷属となるのは構わないがアストレア・ファミリアに神と眷属が居候するなど恥ずかしすぎる話である。

よほど神経が図太くなければ居候など出来るはずもない。

しかし、ヘスティアは神経が図太かった。

 

「アストレアのところは部屋が多いし広いから僕たち三人が住むのなんてへっちゃらさ!」

 

事実だが、そんなことを言うとは思っていなかったアストレアは頭を抱えていた。

ヘスティアはどこまで厚かましい神であった。

 

「はぁ~。ヘスティアの言う通り部屋は余ってるし構わないわ。でも、ベル君は男のだからアリーゼたちに確認を取らないといけないわ。私のところはみんな女の子だから。」

 

アストレアの言う通りアストレア・ファミリアは女性しかいない。

そんなところに子供とはいえ、男の子と一緒に住むことは本人たちの了承がいる。

今アストレア・ファミリアは全員外に出ているので帰ってくるまでリビングで待つことになった。

そして、その間にベルは神の恩恵を貰いヘスティアの眷属となった。

 

「これがベル君のステイタスか…。なんというかだな。アルフィア君、これを見てくれよ。」

 

ヘスティアはベルのステイタスをアルフィアに見せた。

ヘスティアにとって最初の眷属ベル・クラネル。

彼のステイタスははっきり言って恵まれていた。

 

 

 

ベル・クラネル

 

14歳

 

所属派閥︰ヘスティア・ファミリア

 

種族・・・人間

 

Lv.1

 

力:I0

 

耐久:I0

 

器用:I0

 

敏捷:I0

 

魔力∶I0

 

 

《スキル》

 

『誓いの英雄』

・早熟する。

・懸想が続く限り効果持続。

・懸想の丈により効果向上。

 

 

『英雄願望』

・能動的行動に対するチャージ実行権。

 

 

 

「何なんだい、このスキルは?」

 

ヘスティアはベルに聞こえないようアルフィアに話しかけた。

アルフィアもベルのステイタスを見て少し驚いていた。

 

「レアスキルだな。」

 

「ベル君には隠していたほうが良いんじゃないのかい?この『誓いの英雄』は。」

 

「そうだな。」

 

アルフィアとヘスティアはベルのスキル『誓いの英雄』を隠すことにした。

もし、こんなレアスキルがあると他の神たちに知られれば面倒なことになるは明白だからだ。

そして、ベル自身に隠す理由はベル本人も子供であり隠し事には向かないからである。

 

「アリーゼたちは夕方くらいに帰ってくるからそれまでゆっくりしていてね。」

 

それから数時間経つとアストレア・ファミリア全員が本拠地へと帰還した。

アストレアがことの成り行きを伝えるとアリーゼたちは迷うことなく許可をした。

一番反対しそうなリューはベルと再会したことを内心とても喜んでおり二つ返事で了承した。

クロノスはアルフィアとベルの住む場所が決まったと安心して自身のホームへと帰った。

 

ベルとアルフィアは別々の部屋だがベルはアルフィアと一緒に寝ることが多いのでアルフィアの部屋にいた。

 

「お義母さん、アリーゼさんたちとても優しそうな人だったね。」

 

「そうだな。少し拗らせているエルフがいるから気をつけておけ。」

 

アルフィアの言う通りリューはかなり恋愛感を拗らせている。

 

「お義母さん、ジンさんってどんな人?」

 

「なんだ、気になるのか?」

 

「うん!」

 

「とてもカッコイイ奴だ。」

 

惚れた女の顔をしているアルフィア。

ベルはジンという人にアルフィアは惚れているのだと悟った。

 

「じゃあ、僕のお義父さんになるかもしれないね!」

 

「知らん!」

 

照れ隠しなのかアルフィアは自らの拳をベルの頭に落とした。

ベルはノックアウトし、気絶した。

アルフィア自身もリューのことを言えないくらい初恋を拗らせていた。

 

 

 

 

 

そして、場所は変わってダンジョン50階層に問題のジンはいる。

 

ダンジョン50階層

 

深層二つ目の「安全階層」。

噴火した火山灰に覆われたように、森林が灰色に染まった大樹林。

 

そこではロキ・ファミリアの遠征隊がキャンプを張っていた。

そのテントの一つにロキ・ファミリアの団員では無いが、今回の遠征に同行しているクロノス・ファミリア所属のジン・ペンドラゴンが頭を悩ませている。

目の前に座っている【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインに困っているのだ。

 

「どうしたらそんなに強くなれるんですか?」

 

アイズは強くなりたいと思っている。

モンスターを殺す為に今以上の力が必要なのだ。

故に目の前にいる都市最強と呼ばれる片割れのジン・ペンドラゴンの強さを知りたいのだ。

 

「ゼウスやヘラの時代からいたからだろうな。あのときは格上が周りにゴロゴロいたからな。」

 

「ジンさんは…【猛者】よりも強い。私を鍛えてほしい。」

 

「断る!」

 

ガーン!

 

アイズは断られるとは思っていなかったのでめちゃくちゃ凹んでいる。

ジンはアイズに剣を教える気は無かった。

他ファミリアというのもあるがそれ以前に自身の剣とアイズの剣はまったく別物なのだ。

ジンの剣は人を斬るための剣、アイズの剣はモンスターを斬るための剣。

斬るというのは似ているが本質的にはまったくの別物なのだ。 

 

アイズが落ち込んでいると一人の小人族がテントへと入ってきた。

入ってきた小人族はロキ・ファミリア団長【勇者】の二つ名を持つフィン・ディムナである。

 

「アイズ、少し話があるから僕のテントまで来てくれるかい?」

 

「分かった…」

 

フィンはアイズを連れて出ていった。

ジンはやっとゆっくりすることが出来る。

 

「ふぅ~、やっと寝れるな。」

 

ジンはダンジョンに来てからあまり寝ていない。

というよりも他ファミリアとの遠征は油断しないようにしている。

ジンが寝ようとすると外から叫び声が上がった。

ため息をこぼしながらもジンは声が上がった方に急いで向かった。

 

そこでは芋虫型のモンスターが大量発生していた。

ロキ・ファミリアの者たちに話を聞くとどうやら下の階層から出てきたらしい。

 

「フィン、あのモンスターは何なんだ?」

 

「僕も知りたいところだよ。新種か…。まぁ、そんなことよりも僕たちのキャンプ地は3割ほどやられてしまったね。」

 

フィンの言う通り先程までしっかりと立っていたテントや置いてあった物資はモンスターによって破壊されていた。

 

「ジン、あのモンスターは武器を溶かす。君の不壊属性の武器なら溶けることもないだろう。アイズと共に前衛を頼めるかい?」

 

「無論だ。」

 

そう言ってジンは目の前にいるモンスターの大群へと突っ込んで行った。

ジンは聖剣エクスカリバーを振りモンスターを斬り伏せている。

その剣技は完璧であり、一瞬にしてモンスターたちは灰となって消えていく。

アイズも一緒に前衛をしているが圧倒的にジンが敵を倒している。

 

そして、最後はロキ・ファミリア幹部【九魔姫】の二つ名を持つリヴェリア・リヨス・アールヴの魔法で殲滅した。

 

「ジン、奥にいるあのモンスターは何だ?」

 

「さぁな。だが、良くないものなのだろうな。」

 

ジンとフィンの目の前にいる巨大な見たことのないモンスターがいた。

 

「ジン、任せても良いかい?」

 

「良いだろう。だが、今度酒を奢れよフィン。」

 

「了解。」

 

ジンは真っ直ぐ進んで目の前のモンスターに向かって行った。

勝てると確信しているジンは緩やかにモンスターの体を魔石ごと真っ二つにした。

その光景を見ていたロキ・ファミリアは流石、都市最強と思うのであった。

 

「さてと、フィン…撤退するのか?」

 

「ああ。ここまでやられたらね。」

 

フィンは物資などモンスターにやられたら現状を見て撤退という選択をした。

それに不満を漏らす者もいるが物資や武器などが溶けて無くなっているのでどうしようもない。

遠征隊は荷物をまとめて帰る準備を始め、準備が整うと地上へと向かって進んだ。

 

「すまないね。せっかく遠征に参加さてもらったのに中途半端で終わってしまって。」

 

「気にするな。というよりもイレギュラーは仕方のないことだ。」

 

「次は参加してくれるのかい?」

 

「わからん。まぁ、クロノスと相談だな。今回の遠征だってほとんどクロノスの奴が決めた…いや、買収されたことだからな。」

 

ジンは遠征までの経緯を思い出して、怒っているからなのか拳を握りしめている。

ジンがクロノスに怒っているのは酒で買収されてジンを遠征に参加させたことである。

あろうことかクロノスはロキの秘蔵の酒を上げるからジンを遠征に貸してくれと言う言葉に一瞬で了承したのだ。

 

ジンは次の遠征のときも買収されるのではないかと不安でしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





ジン「やっと、登場出来た!」 

クロノス「遠征などに行っておるからだ。」

ジン「お前が酒で買収されたからだろ!」

クロノス「テヘペロ!」

ジン「苛つかせるな!」

クロノス「まぁ、良いではないか。」


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まさかの再会

 

 

 

 

 

 

ベルがヘスティアの眷属になってから一週間。

今日ベルはダンジョンへ初めて行くことになる。

というのも最初はベル自身、冒険者登録をしてダンジョンへ行くものだと思っていたが現実は厳しかった。

まず、アルフィアの『特訓』という名の地獄を生き抜かなければならなかった。

 

まず一日目は木刀での打ち合いだったが、打ち合いなどにはならずアルフィアが一方的にベルを叩きのめすと言うことになった。

 

二日目はひたすらアルフィアの手加減?した魔法を避ける訓練であった。

いくら手加減しているとはいえ当たったらノックダウンしてしまう狂気の訓練であった。

 

三日目、四日目、五日目、六日目、全て暴君アルフィアの地獄を味合わされたベルであった。

その甲斐もあってかベルのステイタスは尋常じゃないほど上がっていた。

 

ベル・クラネル

 

14歳

 

所属派閥︰ヘスティア・ファミリア

 

種族・・・人間

 

Lv.1

 

力:C681

 

耐久:A855

 

器用:C625

 

敏捷:B777

 

魔力∶I0

 

 

《スキル》

 

『誓いの英雄』

・早熟する。

・懸想が続く限り効果持続。

・懸想の丈により効果向上。

 

 

『英雄願望』

・能動的行動に対するチャージ実行権。

 

 

「君は鬼かアルフィア君!!こんなにステイタスが上がるとか君の特訓はイカれてるよ!」

 

「ベルを鍛えただけだ。」

 

アルフィアは鍛えただけである。

普通なら絶対にしない訓練方法だが。

アルフィアの訓練方法を見ていたアストレア・ファミリアの団員たちは流石に厳しすぎないかと思い進言したところ一緒に鍛えられた。

いや、蹂躙された。

 

特にムカついて『ババア』とアルフィアに言ってしまったアストレア・ファミリア副団長ゴショウノ・輝夜は半殺しにされた。

 

そんなことがあり、ようやくベルはダンジョンへと足を踏み入れることが出来るのである。

初めてのダンジョンということもあり、アルフィア、アリーゼ、リュー、輝夜、アーディが付き添いすることになった。

 

アルフィアは他の者たちなどついてくる必要はないと言ったがアストレアはアルフィアだけに任せると大変なことになるから誰か付き添ってと言ったのである。

そのことを聞いてアリーゼ、リュー、輝夜は立候補したのである。

ちなみにアーディは暇だったので遊びに来たら、ダンジョンへ行くことを知り、同行することになった。 

 

 

そして、ダンジョン五階層に来ているベルたちの前には大剣を持ったミノタウロスが一体いる。

 

「何故、ここにミノタウロスが?」

 

リューの疑問は最もであり、ミノタウロスは中層にいるはずなのだが何故か上層にいる。

アリーゼたちはベルを庇うように前へ出た。

 

「ベル、下がっていて。私達があっという間に倒してあげる!」

 

「待て。ベルにやらせる。」

 

アリーゼたちがミノタウロスを倒そうとするのをアルフィアは静止した。

そして、ベルに戦うよう指示した。

 

「ちょ、ちょっと!いくらなんでも今日ダンジョンに来た駆け出しの子にミノタウロスは倒せないわ!」

 

アリーゼの言う通り駆け出しの冒険者ではミノタウロスを倒すことなどほぼ不可能だ。

 

「ベル、英雄となりたいのならば、これもまた試練。乗り越えてみせろ。私やザルド、ジンを…過去の時代の者たちを超えてみせろ。」

 

「うん!」

 

ベルは剣を構えた。

ベルの剣は特注性。

アルフィアが用意した不壊属性の長剣である。

額は3億ヴァリスという高額の値段である。

ベルはそのことを聞いて驚いて最初は触れなかったとか。

 

 

ミノタウロスはベルに応えるかのように構える。

両者の間に何故かは分からないが懐かしい感覚が蘇る。

まるでかつて戦った好敵手のような感覚。

 

ミノタウロスの大剣とベルの剣がぶつかり合う。

圧倒的有利なのはミノタウロスであり、ベルは後手に回っている。

とはいえ、ベルの動きは駆け出しのものでは無い。

一週間アルフィアの地獄と言う名の訓練をこなしたベルからすればミノタウロスは恐ろしい存在ではない。

 

「はああああ!!」

 

「グオオオオ!!」

 

ベルとミノタウロスの激しい攻防。

ベルには魔法も無く、あるのは己の力と願望。

【英雄願望】によって鐘の音が響き渡る。

英雄になりたいと思う意思。

それがスキルにも影響した。

チャージした一撃がミノタウロスの大剣を砕き、ミノタウロスの体を真っ二つに斬った。

 

「やったよ!お義母さん!」

 

「良くやったな。」

 

ミノタウロスをレベル1の冒険者が倒すという珍しい出来事に見ていた者たちは心を踊らせた。

アリーゼ、リュー、輝夜、アーディは先程までの戦いに見惚れていた。 

 

「凄かったわね。」

 

「ええ。」

 

「凄いものだったな。」

 

「まるでアルゴノゥトみたいだったね。」

 

アリーゼたちとは別に奥からその光景を見ていた者たちがいた。

ロキ・ファミリアの幹部陣とジン・ペンドラゴンである。

ミノタウロスが現れた原因とはロキ・ファミリアのせいである。

 

 

遡ること一時間前、遠征隊は帰っている道中、ミノタウロスの大群が現れた。

ミノタウロスたちを倒そうとしたところミノタウロスたちは逃走してしまった。

それを追って行って最後の一体がベル・クラネルと退治していたものだった。

最初は自分たちの不始末なのでさっさっと倒そうと思っていたロキ・ファミリアだが、ジンの静止によって傍観していた。

そして、ジンは知り合いの顔を見つけて話しかけた。

 

「久しぶりだな、アルフィア。」

 

「そうだな、ジン。元気にしていたか?」

 

「ああ、アルフィアも元気そうだな。安心したよ。」

 

二人はどこか懐かしむようにお互いを見つめている。

そんな二人を特にアルフィアを見てあんな優しい表情が出来るのかとアストレア・ファミリアの者たちはまじまじと見ていた。

 

「ゴホン!そろそろ良いかな?」

 

フィンの言葉を聞いてアルフィアとジンはどこか気まずそうになった。

方や中々踏み出せない女、方や鈍感ヘタレ。

二人は久しぶりの再会に嬉しさと気恥ずかしさが混じっている。

 

「【静寂】のアルフィア。まさか、オラリオに来ているとはね。それにアストレア・ファミリアまでいるとは。今回は迷惑をかけてしまった。ファミリアの団長として謝罪する。申し訳なかった。」

 

「気にしないでよ【勇者】。誰も怪我してないし。というかアルフィアさんが無茶をしたんだけどね。」

 

「そう言えばそこの少年は君たちのところの子かい?」

 

フィンはベルを見てアリーゼたちに訪ねた。

アリーゼはベルがヘスティアの眷属でアストレア・ファミリアに居候していることを話した。

 

「すまないベル・クラネル君。僕たちの不手際で危険な目に合わせてしまった。」

 

フィンに頭を下げられてベルは慌てている。

まさか、第一級冒険者の【勇者】の二つ名を持つフィンに謝られるとは思っていなかった。

 

「いえ!気にしないでください!僕も良い経験が出来たので!」

 

レベル1でミノタウロスとイレギュラーで戦ったことを良い経験と言うのは余程の戦闘狂か善人かのどちらかである。

ベルは善人の部類である。

そんなベルを見てジンはどこか懐かしそうにしていた。

 

それからフィンたちは後から来る残りの遠征隊を待つことにした。

ベルたちはイレギュラーでミノタウロスと戦うということもあったので地上へと帰還することにした。

ジンもアルフィアとベルと話したかったのでベルたちと帰還することにした。

 

「ベル君、大きくなったね。」

 

「ジンさんは僕のことを知っているんですか?」

 

「ああ。君が幼い頃に会ったよ。昔のことで覚えていないのも無理はないが。」

 

ジンがベルと出会ったのは今から十年前。

クロノスと共にメーテリアの子供を見に行ったのである。

 

(赤い瞳以外はメーテリアによく似ている男の子、ベル・クラネル。ゼウスは英雄の器では無いと言っていたがさっきの光景を見てしまってはな。)

 

「ベル君は何をしにオラリオへ来たんだ?」

 

「英雄になりに来ました!それとおじいちゃんが男ならハーレムを目指せとも言っていたのでそれも目指したいです!」

 

「そ、そうか。相変わらずだなあのジジイ。」

 

「でも、男の夢ですよね!」

 

「【福音】!」

 

アルフィアの魔法サタナス・ヴェーリオン。

音を放って攻撃する魔法。

余波だけで平衡感覚をズタズタにする絶望的な破壊力、破壊力に釣り合わぬ超短文詠唱による隙の無さ、長射程、そもそも音なので攻撃が視えないというチート級の魔法である。

それがベルを直撃した。

 

「お義母さん、痛い。」

 

「加減はした。そんなことよりもまだハーレムなどと口にしているのか。まったく、あのクソジジイ!どこまでもベルに悪影響を与えて!」

 

ジンは相変わらず凄い魔法だなぁと思うのであった。

ジンは怒っているアルフィアを見るのは久しく昔に戻っている気分になっていた。

 

「相変わらずだな。変わっていないようで安心した。」

 

「そうか。私はお前たちも変わっていないと知って良かったと思っている。まぁ、クロノスのあれは何とかしてほしいと思うがな。」

 

何となく察したジンは苦笑いをしていた。

 

そして、地上へと帰還するとそれぞれのホームへと帰った。

帰り際、アルフィアとジンは何かを話していた。

 

ベルたちはホームに帰ると今日あった出来事をみんなに話した。

ヘスティアは慌てふためき、アストレアたちは驚いていた。

 

「そう言えばお義母さんはジンさんと何を話していたの?」

 

「少しな。」

 

どこか楽しそうにしているアルフィアを見て絶対に何かあるなと、この場にいる全員が思った。

それぐらい普段のアルフィアが絶対にしない嬉しそうな表情をしていたからだ。

 

 

 

場所は変わって『聖戦の館』

クロノス・ファミリアの本拠地。

 

「帰ったぞ、クロノス。」

 

「おお!よく帰ったのぅ~!久しぶりのジンじゃ〜!」

 

抱きついてこようとするクロノスを蹴り飛ばしてホームへと入るジン。

 

「蹴るなど酷いではないか!!それに蹴られるのなら私はかわいい女に蹴られたいのだ!」

 

「どうしてこんな女神の眷属になったんだろうな。」

 

「何を落ち込んでおる?それよりもアルフィアには会ったのか?」

 

「ああ、会ったよ。」

 

「どうだったんだ?」

 

クロノスは久しぶりに会った二人が何か進展していないかと期待していた。

二人共良い年なのでさっさっと結婚すれば良いのにと思っていたりもする。

 

「久しぶりに話せて楽しかったよ。」

 

「そ、そうか。」

(こいつらさっさっとくっつけ!というかジンよ、良い加減気づけ!告れば間違いなく付き合えるぞ!)

 

その後、ジンはクロノスと酒を飲みながら今回の遠征のことを話した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





ジン「遠征疲れた。」 

クロノス「アルフィアに会えたのだから疲れなど吹っ飛んだろう?」 

ジン「知らん!」

クロノス「素直じゃないのう。」


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ほんのひととき





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ベルがミノタウロスと戦った次の日。

ヘスティアはベルのステイタス更新を行っていた。

 

ベル・クラネル

 

14歳

 

所属派閥︰ヘスティア・ファミリア

 

種族・・・人間

 

Lv.1

 

力:B759

 

耐久:S995

 

器用:A821

 

敏捷:S995

 

魔力∶I0

 

 

《スキル》

 

『誓いの英雄』

・早熟する。

・懸想が続く限り効果持続。

・懸想の丈により効果向上。

 

 

『英雄願望』

・能動的行動に対するチャージ実行権。

 

 

 

「なんというかミノタウロスを倒したせいもあるんだろうけどレベルアップ可能だ。」

 

レベルアップ、本来ならば一年以上かかるものだがベルは一週間で成し遂げてしまった。

 

「やったー!お義母さん!僕、レベルアップ可能だって!」

 

「そうか、ミノタウロスとの戦闘のおかげだな。早速レベルアップしてもらえ。」

 

アルフィアの指示の下ベルはヘスティアにレベルアップをしてもらった。

ベルは新しい発展アビリティに幸運が加わった。

 

 

ベル・クラネル

 

14歳

 

所属派閥︰ヘスティア・ファミリア

 

種族・・・人間

 

Lv.2

 

力:I0

 

耐久:I0

 

器用:I0

 

敏捷:I0

 

魔力∶I0

 

 

幸運:F

 

 

《スキル》

 

『誓いの英雄』

・早熟する。

・懸想が続く限り効果持続。

・懸想の丈により効果向上。

 

 

『英雄願望』

・能動的行動に対するチャージ実行権。

 

 

「お義母さん!僕、魔法を使ってみたい!!どうすれば使えるかな?」

 

「魔法か…。そうだな、手っ取り早く使えるようになるには魔導書が一番だな。」

 

魔導書は魔法を強制的に発現させたり、スロット数を増やすことができる。

魔導書の製作には神秘のアビリティと高ランクの魔導のアビリティも必要になるため貴重であり、その値段は数千万ヴァリスを軽く越える。

 

「だが、魔法よりもレベルアップによる感覚のズレを直さないといけないな。」

 

「そ、それって!?」

 

ベルは何かを察したのかダラダラと汗を流している。

アルフィアは手をパキパキと鳴らして準備を始めている。

 

「さぁ、いくぞ!」

 

ベルはアルフィアに地獄を味合わされた。

木刀での半殺し、魔法での半殺し、素手での半殺し、最早生きているのが不思議なくらいである。

そのおかげかベルのステイタスは通常ではありえないくらい上がった。

 

ベルが調整という名の地獄を味わった日の夜。

アルフィアから夜ご飯は外で食べることにすると言われ、ベルはアルフィアと共に店に向かっている。

 

「お義母さん、どこに向かってるの?」

 

「昔の知り合いが営んでいる店だ。今日はクロノスとジンと一緒に食べようと約束をしていた。」

 

「ジンさんと話していたことってこれのことだったんだ。」

 

ベルとアルフィアが向かった先は豊穣の女主人。

そこは冒険者向けの酒場である。。

【ロキ・ファミリア】のようなオラリオ最大派閥から末端冒険者、その他恩恵を持たない一般人までが訪れる人気店。

料理の質が高いことと、店員たちがかわいいことで評判である。

 

店に入ると薄鈍色の髪をした人当たりの良さそうな少女が案内をしてくれた。

 

「いらっしゃいませ!」

 

「ほう?貴様、何処かで私とあったことがあるか?」

 

ウエイトレスを見てアルフィアはどこか知り合いにでも会ったような感じを出していた。

決して嬉しい知り合いでは無いが。

ベルは綺麗な店員さんだなぁと惚けている。

 

「な、何を言っているんですか!?わ、私達は初対面ですよ!」

 

「そうか。クロノスとジンと待ち合わせをしている。案内を頼めるか?」

 

「は、はい!クロノス様とジンさんは来ています。ご案内します!」

 

ウエイトレスの案内の元、アルフィアとベルはクロノスたちがいる席へと向かった。

そこではめちゃくちゃ酔っているクロノスとクロノスに絡まれまくっているジンがいた。

 

「よっ!アルフィア、ベル君!」

 

「二人共〜よく来たのぅ〜!さぁ、さぁ、座れ!」

 

アルフィアとベルは席につくと注文を済ませて話を始めた。

 

「まさか、ミアがやっている店とはな。」

 

「こっちもまさかあんたがオラリオにいるとは知らなかったよ、【静寂】のアルフィア。」

 

ミアと呼ばれた店の店主。

彼女はフレイヤ・ファミリアの元団長という経歴を持っている。

現在は半脱退の状態ながらも神の恩恵はあるので強さは変わっていない。

この店ではミアが法であり、粗相を起こすものは彼女に叩きのめされる。

 

「不出来な子を心配して来たに過ぎん。」

 

「子ってあんたが産んだのかい?」

 

「いや、妹の子だ。」

 

「何処となく似てるね。眼はあいつに似ている。」

 

ミアはベルの姿にかつてのメーテリアを見た。

そして、眼はゼウスと共に逃げていたサポーターを思い出させる。

 

「坊主は何をしに来たんだ?」

 

「英雄になりに来ました!」

 

「男ならそれぐらいの威勢がなくちゃね!まぁ、たらふく食べてお金を落としていきな!!」

 

豪胆な人だなぁとベルはミアを見て思った。

それから話題は変わりベルのレベルアップの話になった。

 

「それにしてもこの子がレベルアップか!早いな。発表したらオラリオ中が大騒ぎだろうな。」

 

「愚かな神共にベルを渡す気はない。」

 

「相変わらず変わらんのぅ、アルフィアよ。どうじゃ、今晩私と愛を確かめないか?」

 

「ふざけるな、断る。」

 

いつもの調子でアルフィアをナンパするクロノス。

それを見てやはりヤバい女神なのではと思うベル。

 

「そ、そう言えばジンさんってレベルはどれくらいなんですか?」

 

「俺か?俺はレベル7だ。」

 

「お義母さんと同じレベル!?」

 

アルフィアと同じレベルだと知りベルはとても驚いている。

普段からアルフィアの強さを知っているベルからすれば当然の反応だが。

 

「ベル君はアルフィアから戦い方を教わっているのか?」

 

「教わっているというよりもボコボコにされてます。」

 

「「ああ、納得!」」

 

ジンとクロノスはアルフィアの性格を知っているのでひたすらの戦闘でボコボコにしているのだろうなぁと予想していた。

訓練を受けている本人に聞くまでは分からなかったがベル君の様子からしてマジであった。

 

「ジンさんは独学ですか?」

 

「剣術は独学だな。何なら教えてやろうか?」

 

「良いんですか!」

 

「ああ。」

 

このときクロノスは思った。

ジンは誰かに剣を教えたことが無いが大丈夫なのかと。

 

 

次の日

 

アストレア・ファミリアの本拠地にクロノスとジンが訪ねた。

昨日の約束通りベルに剣を教えるためである。

 

「よろしく、ベル君。」

 

「は、はい!よろしくお願いします、ジンさん!」

 

「やはり、アストレアたちの子達は美しいな!どうだろう、今夜私と激しくぶつかり合おうぞ!!」

 

「クロノス、私の子たちに変なことしたら容赦しないわよ。」

 

アストレアはドスの効いた声でクロノスに言った。

クロノスもアストレアを怒らせたらヤバいと思い、汗をダラダラ流していた。

 

「ア、アストレアよ!私は欲望に忠実なだけなのだ!」

 

「そうなのね。」

 

何のフォローにもなっていない説明であった。

アストレアはクロノスの首を絞めてクロノスをノックアウトさせようとしていた。

その様子を見ていたアストレア・ファミリアの者たちは主神の珍しい光景にどこか嬉しそうにしていた。

 

 

 

本拠地の中庭でベルとジンは剣を構えた。

アルフィアとクロノス、ヘスティアそれにアストレア・ファミリアの者たちは面白そうなので見学している。

 

そして、ジンはベルに剣を教えた。

教え方はとても丁寧で分かりやすかった。

何よりもアルフィアの訓練よりも少しマシだった。

 

だが、問題もあった。

教え方は確かに丁寧だが、教えた後はひたすら打ち合うという地獄であった。

それも加減はするがベルをボコボコにしたことに変わりはない。

アルフィアよりはマシだが、かと言って最高というわけでもなかった。

 

クロノスはやはりこうなったかと何故か一人納得していた。

アルフィアは少し優しすぎないかと思っていたりもしていた。

アストレアたちはアルフィアと同じくらいの厳しさに若干引いていた。

 

その日、ベルは確かに剣術を学べたがそれ以上にステイタスの耐久がとても上がった。

 

「第一級冒険者ってお義母さんやジンさんみたいな人たちばっかりなのかなぁ…」

 

「ち、違うからね!ベル!そんなことはないからね!」

 

アストレアたちはかなりフォローに費やしたとか。

クロノスとジンはこの日、何故か泊まることになった。

クロノスが泊まりたいと言ったことが原因であるが。

 

現在、ジンとクロノスは料理をしていた。

ジンとクロノスの料理は絶品だと、アストレアが言ったせいである。

みんなも食べて見たいと言い、泊めってもらう身として断るわけにもいかなかったジンはしぶしぶ料理を始めた。

 

「ジンよ!私はアストレアの子たちとキャッキャウフフするぞ!!」

 

「なんか、表現が古いな。」

 

「やかましい!お主だって誰かタイプのやつなどおらんのか?」

 

「さぁな。」

 

「お主と私の中だろう!さぁ、さぁ、教えろ!」

 

グイグイ来るクロノスに少しうっとうしさを感じながらもジンは料理を続けている。

クロノスは早くジンの口からアルフィアが好きと言わせたかった。

 

「はぁ~、クロノス何で恋愛話をしたいんだ?」

 

「鈍感ヘタレ野郎に言わせたいから!」

 

「その鈍感ヘタレ野郎ってのは俺のことか?」

 

「そうに決まっておろう。お主は恋愛の気持ちに鈍感過ぎるぞ。何よりもヘタレだ。」

 

何となく的を得ているクロノスの発言に押し黙るジン。

 

「お主には幸せになってもらいたいのだ。」

 

「クロノス、柄にもないことを言うな。率直に言って気持ち悪いぞ。」

 

「貴様〜!言ってはならんことを!」

 

ジンとクロノスは言い合いながらも楽しそうにしている。

その後、ジンとクロノスの料理を食べた一同はあまりの美味しさに感激していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





クロノス「ジンと少しイチャイチャしてしまった!イチャイチャするなら女の子のほうが千倍は良い!」

ジン「イチャイチャしてない。」



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怪物祭

 

 

 

 

 

怪物祭

 

年に一回開かれる【ガネーシャ・ファミリア】主催の催し。

闘技場を一日使用して、ダンジョンから連れてきたモンスターの調教を行うショーなどが行われる。

【ガネーシャ・ファミリア】が主だって進行させているが、企画はギルドが行っている。

 

 

怪物祭の前日、アストレア・ファミリアの本拠地でアルフィアとジンは剣をぶつけ合っていた。

アルフィアは自身の剣の腕を確かめるためにジンと勝負しているのだ。

 

「どうした、その程度かジン?」

 

「なら、もう少しギアを上げる。」

 

二人の剣の速度が更に加速した。

アリーゼたちは少し離れたところで見ているが、目で追えない剣の速度に驚愕している。

 

「ちょっ、ちょっと!あの二人、どうなってるのよ!私達でも見えない速度なんて!」

 

「流石はレベル7ですね。」

 

「いや、それで済まねえだろ!風圧がこっちにまで来てるじゃねぇか!そろそろやめさせろ!」

 

ライラの静止の元、全員がアルフィアとジンを止めに入った。

しかし、最強と最強…アリーゼたちには止められるはずもなく返り討ちにあった。

 

「こんなものか。」

 

「調整は終わったか?」

 

「ああ。感謝するぞ、ジン。」

 

「そう言えばもう少ししたら怪物祭だな。アルフィアはベル君と回るのか?」

 

「いや、煩いところは好まない。」

 

「僕、お義母さんと一緒に行きたい!」

 

普通の親なら子供のこの言葉を聞いて了承するが、アルフィアは普通では無かった。

 

「そうか。だが、断る。アストレアのところの者たち、もしくはヘスティアと回っておけ。私は部屋でのんびりと過ごす。」

 

「鬼だわ、アルフィアさん。」

 

アリーゼは皆が思っていたことを口に出した。

そして、地面に埋まるというドンマイなことになった。

アルフィアが部屋に戻るとジンが訪ねた。

 

「まったく、相変わらず素直じゃないなアルフィア。」

 

「何がだ?」

 

「ベル君と他の子たちを仲良くさせるために怪物祭を利用したんだろう。自分にだけ頼らないように。」

 

「どうだろうな。いや、そうだな。ベルには交友関係を広げてほしい。あの小娘共は生意気だが信頼に値する。」

 

「そうか。なら、怪物祭の日は暇なんだな。」

 

「まぁな。何だ、私と回りたいのか?」

 

ジンは真剣な表情をして、からかうように言うアルフィアを見つめた。

 

「ああ。アルフィアさえ良ければ怪物祭、一緒に回らないか?」

 

「なっ///」

 

「嫌か?」

 

「嫌ではない…その、よろしく頼む。」

 

「ああ。」

 

そう言ってジンは部屋を出てクロノスと合流した。

そして、クロノス・ファミリアの本拠地へと帰った。

ジンとクロノスはリビングで酒を飲んでいる。

 

「それにしても、お主から誘うとはな。」

 

「お前、立ち聞きしていたのか?」

 

「お主の恋は応援してやるぞ。」

 

「そうかよ。」

 

「にしてもよく誘ったな(ニヤニヤ)。『アルフィアさえ良ければ怪物祭、一緒に回らないか?』なんて何をカッコつけておるんだか?ぷっははは!!!」

 

ジンをからかいながら笑い続けるクロノス。

そんなクロノスにだんだんとムカついたジンはクロノスを蹴り飛ばした。

 

「何をする!?」

 

「うるせぇ!めちゃくちゃからかいやがって!」

 

「面白いじゃろ!あのヘタレなお前がデートに誘うなど!こんな面白いことがあるか!」

 

「うぜえー。」

 

ジンはこの日ほとんどクロノスにからかわれた。

 

 

 

怪物祭当日

 

ジンはアルフィアを迎えにアストレア・ファミリアまで向かった。

ベルはアリーゼ、輝夜、リュー、アーディ、アストレア、ヘスティアと出かけた。

 

「では、行こうかアルフィア。」

 

「エスコートは任せるぞ。」

 

二人は祭りを回った。

二人の認識的にこれはデートであるが、相手がどう思っているか分からないのでデートだとは言わない。

それでも二人はとても楽しく祭りを回った。

 

「とても楽しいな。」

 

「ああ。こんな日が来るとは思っていなかった。にしても怪物祭なんてどうしてあるんだろうな。」

 

「モンスターと触れ合おうとでもいうのか?もしそうなら意味が無い。」

 

「確かに人々がモンスターを見ても恐怖が大きいからな。」

 

アルフィアの言う通りモンスターと人々は決して相容れない。

人々は遥か昔からモンスターに苦しめられてきた。

だからこそ、モンスターと人々は敵であり続ける。

 

「そうだな。それより、フレイヤ・ファミリアやロキ・ファミリアは成長してるのか?」

 

「それこそ分からない。だが、マシにはなってるだろう。」

 

「そうだな。…アストレア・ファミリアの者たちは性格はともかく実力はあった。」 

 

「時代の流れかもな。」

 

アルフィアとジンが話していると少し離れたところから悲鳴が上がった。

 

『きゃあああああああああああ!!!!』

 

悲鳴が上がったところではモンスターが暴れている。

 

「今年の怪物祭は気合が入ってるな。」

 

「ああ、ここまでするなんて思い切ったことをするものだ。」

 

「そんなわけないだろう!」

 

ジンとアルフィアに話しかけてきたのはガネーシャ・ファミリア団長のシャクティ・ヴァルマ。

【象神の杖】の二つ名を持つLv.5の冒険者である。

 

「相変わらず、呑気だなジン。今回のこれはおそらく誰かがモンスターたちを開放したんだ。」

 

ジンたちがのんびり話しているとモンスターたちはジンたちの方に向かってきた。

ジンたちは向かってきたモンスターを瞬殺した。

 

「ギルドの者に聞いたところモンスターが複数体脱走したそうだ。ロキ・ファミリアも討伐を開始したみたいだ。目撃情報によるとシルバーバックが街中に行ったそうだ。」

 

シャクティがギルドの人から聞いて内容をジンたちに話した。。

 

「ジン、アルフィアさん、モンスター討伐に参加してくれないか?私はこれからファミリアとギルドと一緒に住民たちへの避難誘導をしないといけない。」

 

「…まぁ、ほっとけないしな、アルフィア…討伐に行こうか。」

 

「そうだな。それにしても誰がこんなバカなことをしたんだ?見つけ次第そのバカには痛い目を見てもらわないとな。」

 

アルフィアとジンはダイダロス通りに向かった。

少しだけ寒気がしてしまう女神がいたとか。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ベルside

 

 

ベルはアリーゼ、輝夜、リュー、アーディ、アストレア、ヘスティアと一緒に祭りを回っていた。

傍から見ればハーレム状態のベルだが、実際は特に何もなかったりする。

 

「ベル君!今度はあのりんご飴を食べようぜ!」

 

「か、神様!離れたら危ないですよ!」

 

「微笑ましいわね。」

 

「アストレア様!私達も食べましょう!」

 

アリーゼはアストレアの手を引いて屋台へと向かった。

しばらくすると、市民たちが騒がだした。

 

アーディがガネーシャ・ファミリアの団員に聞いたところモンスターが脱走したらしい。

アーディとアストレア・ファミリアの団員たちはモンスター討伐に向かった。

アストレアはガネーシャと合流の元、指示を出している。

 

残ったベルとヘスティアはとりあえず避難に向かおうとしていた。

すると、シルバーバックが一体ベルとヘスティアを見つめている。

ベルは反射的に狙われていると分かり、ヘスティアを抱えて安全なところまで逃げた。

 

シルバーバックは何故かベルを正確にはヘスティアを狙っており、追いかけている。

 

「ベル君、どうやら僕たちは狙われてるみたいだぜ。」

 

「大丈夫です!神様は僕が守ります!」

 

「カッコいいよ!ベル君!」

 

ベルの言葉にヘスティアは顔を赤くしてめちゃくちゃ照れている。

 

「神様、このままでは住民に被害が出そうです。」

 

「確かにそうだね。にしても他の冒険者が現れないなんてどうなってるんだ!」

 

ヘスティアの言う通り、この騒ぎなのに冒険者が現れないのはとてもおかしい。

他の冒険者が現れそうに無いのでベルはある決断をした。

 

「神様、シルバーバックを倒します。」

 

「うん…わかったよ。でも、無茶はしないでくれよベル君!」

 

「はい!」

 

ベルはシルバーバックに向かった戦いを始めた。

ベルのレベル的には倒せない相手ではない。

ただ、場所が問題なのだ。

ここは街中であり、ヘスティアも近くにいる。

大きく動き回ることが出来ないのだ。

よって、ベルが取る行動は最小限の動きでシルバーバックを倒すということ。

 

ベルはシルバーバックのパンチを避けるとベルは護身用のナイフをシルバーバックの腕を斬った。

 

このナイフもアルフィアが用意した特注性であり、不壊属性である。

普段使っている長剣は部屋においてあるのでベルはこの護身用ナイフしか武器を持っていない。

 

シルバーバックはベルに連続の攻撃を繰り出した。

それをベルは避け、シルバーバックの頭を刺した。

シルバーバックは灰となり消滅した。

 

「ふぅ~。」

 

「やったな!ベル君!とてもカッコ良かったよ!!」

 

ベルに抱きつこうとするヘスティア。

ベルはそれを受け止め、二人で喜びを分かち合っている。

 

 

 

 

ベルがシルバーバックを倒す少し前、アリーゼ、輝夜、リュー、アーディはモンスター討伐を終えると最後のモンスターシルバーバックを倒すためにシルバーバックがいるであろう場所に向かっていた。

 

すると、目の前に【女神の戦車】と【炎金の四戦士】が現れて足止めをしてきた。

 

「【女神の戦車】、【炎金の四戦士】!なんのようだ。」

 

「うるせぇな、【大和竜胆】。邪魔はするな。」

 

「ちょっと、ちょっと!今はイレギュラーな事が起きてるんだから邪魔しないでよ。」

 

「黙れ、残念女。」

 

「黙ってろ、残念女。」

 

「喋るな、残念女。」

 

「残念女。」

 

ガリバー兄弟はめちゃくちゃアリーゼをディスるのであった。

輝夜は邪魔をされて苛ついてるのか攻撃を仕掛けようとしたがアリーゼによって静止された。

 

「何故止める団長!」

 

「駄目よ。ここでフレイヤ・ファミリアと抗争でも起こしたら私達は負ける。」

 

「ちっ!」

 

「他の冒険者が行くことを願いましょう。それまでは私達がこの人たちを見張りましょう!」

 

「仕方ないな。」

 

ベルがシルバーバックを倒したときフレイヤ・ファミリアたちは退散した。 

 

 

そして、別のところでは今回の一番不幸な者がいた。

オラリオの冒険者最強と呼ばれる一人であるフレイヤ・ファミリア団長であり、【猛者】の二つ名を持つオッタルである。

オッタルは目の前の最強たちの足止めをしなければならないことに頭を悩ませていた。

 

オッタルの目の前にいるのはシルバーバック討伐をしようとしているジンとアルフィアである。

オッタルにとって、不運だったのはジンとアルフィアの機嫌があまり良くなかったことである。

ジンとアルフィアは怪物祭を二人で回れることを楽しみにしていた。

それを邪魔された二人はかなり不機嫌だった。

 

「オッタル、何のつもりか知らないが退け。」

 

「貴様、邪魔をするなら殺すぞ。」

 

オッタルは殺気を向けられてかなり焦っている。

フレイヤの為ならば死ねるが、だからといって今はこの二人を敵に回したくないとも思っている。

 

「退けない。」

 

「そうか、【福音】!」

 

アルフィアの魔法によってオッタルは吹き飛んだ。

何とか立ち上がったオッタル。

 

「【イニティウム】」

 

魔法で身体能力を上げたジンはオッタルを蹴り飛ばした。

オッタルはアルフィアの魔法とジンの強化された蹴りをくらいダウンした。

  

「まったく、お前一人で俺たちに勝てるわけ無いだろう。」

 

「違いない。そして、こいつが現れたことによってフレイヤの仕業だと判明したな。」

 

ジンとアルフィアは先へ進むとベルがヘスティアと抱き合っている姿を見た。

それを見たアルフィアはヘスティアを引きはがしてげんこつを落とした。  

 

「痛いじゃないか!」 

 

「知らん。」

 

「お義母さん、祭りに来てたんだ。」

 

「まぁな。どこかのバカがモンスターを逃したみたいだがな。」 

 

それからベルたちはホームへと帰った。

 

 

ベルがシルバーバックを倒す様子を見ていた今回の原因でもある女神フレイヤはとても嬉しそうにしていた。

 

ミノタウロスとベルの戦いを見逃したのが悔しかったフレイヤは少しちょっかいをかけたのが今回の理由だったりする。

 

「ふふふ。楽しみにしているわ、私の伴侶。」

 

「相変わらず、力でねじ伏せるのぅ。その魅了を使われたらひとたまりもないわ。」

 

フレイヤの横でくだらなそうにしている女神クロノス。

クロノスはフレイヤに邪魔をしないでくれと言われたが『私は見るだけよ、決めるのはジンよ。』と言ってフレイヤの願いを断った。

そして、フレイヤが暴走しないように見張っていたのだ

 

「私は欲しいと思ったものは必ず手に入れるわよ。私の伴侶なら尚更ね。」

 

「くだらぬことはせぬことだ。」

 

「ねぇ、クロノス。私はあの子が欲しいの。でも、あなたに邪魔されると非常に厄介なのよね。だから、私に協力してほしいの。もし、協力してくれれば、あなたの望みを叶えてあげるわ。」

 

「それは嘘じゃろう?」

 

「本当よ。私の全てを賭けて誓うわ。」

 

「良いぞ。その約束違えるな。」

 

そう言ってクロノスはホームへと帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 






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憐れなサポーター

 

 

 

 

 

 

 

「ジン、腹が減った。なにか作ってくれ。」

 

「普通に嫌だ。」

 

クロノスの頼みを普通に断るジンであった。

二人は相変わらず、お互いに減らず口を叩いている。

 

「そういえば〜、アルフィアとのデートはどうじゃった?流石にキスくらいはしたんじゃろ?」

 

「してねぇよ。」

 

「このヘタレ!まったく、貴様は恋愛事に関しては奥手すぎるわ!」

 

叱責するクロノスの言葉を何とか心に刺さらないようにして聞き流すジンであった。

ジン自身もアルフィアとの関係を友人では無く恋人になりたいと思ってはいる。

 

しかし、根性はない。

先日の怪物祭でアルフィアを誘ったのが一番頑張った結果である。

 

「はぁ~、お前だけのせいでは無いがヘタレだのう。」

 

クロノスは少し拗らせているアルフィアのことも思い浮かべてため息をついていた。

 

 

 

そのアルフィアはベルと共にダンジョンへと足を踏み入れていた。

アルフィアはベルを鍛えると同時にもう一人の小人族の少女の心を鍛え直していた。

 

「そんなものか?もっと、素早く動け。敵は待ってくれないぞ。【福音】」

 

アルフィアの魔法が小人族の少女に直撃して小人族の少女は吹き飛んだ。

 

「リリを殺す気ですか!?」

 

「貴様のネジ曲がった考えを変えてやろうと言うのだ。」

 

リリと名乗った小人族の少女リリルカ・アーデは酷く後悔していた。

噴水の前のベンチでカモれそうな男の子を見つけて取り入ろうとしたら、まさかの保護者登場。

 

リリルカの本能が逃げようとしたがアルフィアに捕まり、洗いざらい吐かされた。

ベル自身は気にしていなかったが、アルフィアはベルをカモにしようとしたリリルカのことを許さず、ダンジョンでの地獄を味あわせている。

 

まず、アルフィアの魔法を避けながらモンスターと戦わなければならない。

モンスターに殺られそうになるときはギリギリ助けられて再び地獄を始めてくる。

死ぬこともできず逃げることも出来ない、まさに地獄のような更生プログラムが用意された。

 

「さっさっと起き上がれ。」

 

「お義母さん、少しやり過ぎなんじゃ…。それに昨日から少し不機嫌だし…」

 

「やり過ぎではいない。本来なら深層へと放り投げるところだが、加減をして中層にしてある。ベル、お前も他人の心配をしている暇はないぞ。」

 

「えっ!?それって…」

 

「【福音】」

 

ドゴンッ!

 

アルフィアの魔法がベルを直撃した。

明らかにリリルカに放ったのよりも威力が上がっていた。

 

「レベル2となったからにはさらにシゴいて行くぞ。剣を取れ。」

 

「やっぱり不機嫌!」

 

アルフィアが不機嫌なのは先日の怪物祭でジンとのデートを邪魔されたせいだ。

三十を越えての拗らせた恋。

デートを邪魔されたアルフィアの怒りはMAXを超えていた。

怪物祭のときはベルの手前、怒りをあまり見せていなかった。

しかし、怪物祭が終わるとフレイヤ・ファミリアを襲撃し幹部たちを血祭りにあげた。

 

クロノスがフレイヤ・ファミリアから帰るときその光景を見てゾッとしたとか。

フレイヤもアルフィアと敵対したくは無いので何とか幹部たちが半殺しにされるというので事なきを得た。

 

だが、いくらフレイヤ・ファミリアの幹部たちを半殺しにしたからといってアルフィアの機嫌が直るということにはならない。

せいぜいマシになるというだけである。

 

故に面倒だが、ベルの訓連のついでにベルをカモにしようとしたリリルカで憂さ晴らしをしている。

ベルはレベル2となったことでアルフィアと少し戦えるようになっている。

無論、かなりの手加減をされているがそれでもレベル2になったばかりとは思えないほどの強さである。

 

そして、時が経つとベルとリリルカの訓練は終わった。

ベルは慣れているので疲れた程度だが、リリルカは目が死んでいた。

 

「おい、小人族の小娘。貴様、どこのファミリアだ?」

 

「ソーマ・ファミリアです。」

 

「あぁ、そうか。だから、冒険者をカモにして金を得ようとしたのか。酒を飲む欲しさに。」

 

「お義母さん、どういうこと?」

 

アルフィアはソーマ・ファミリアの実態をベルに明かした。

ベルはお酒のためにそこまでやるんだと少し辛そうにしている。

 

「さて、貴様はどうしたいんだ?」

 

「どうとは?」

 

「これからも盗みをして生きていくのかと聞いている。ファミリアから抜けるためとはいえ、人のものを盗んで自由を手に入れてもそれは自由などではない。」

 

「あなたにリリの何が分かるというのですか!!」

 

リリルカはアルフィアの言葉が気に障り苛立った。

アルフィアに言い返したもののアルフィアの言葉は正しかった。

 

「分からんな。貴様の気持ちなど分かりたくもない。」

 

アルフィアはどこまでも厳しかった。

世の中が残酷でどうしようもない事なのはアルフィア自身が分かっている。

 

「さて、憂さ晴らしも済んだことだ。ベル、帰るぞ。リリルカ・アーデ、次、ベルを騙そうとしたら容赦はしないぞ。」

 

ベルとアルフィア、そしてリリルカは地上へと帰還した。

地上へと帰還した三人は魔石を換金した。

 

「これが貴様の取り分だ。」

 

リリルカの目の前に置かれた袋にはお金が入っている。

そのお金は今日魔石を換金したお金の半分である。

 

「こんなに…何が目的ですか!リリは何もしていない!憐れみですか!同情ですか!」

 

どこまでもバカにされたと思ったリリルカは怒鳴った。

ベルの目にはどこか辛そうに見えていた。

 

「憐れみや同情などはしない。私からすればこれでベルと関わるなという意味もある。ではな。」

 

アルフィアはベルを連れてホームへと帰った。

二人の後ろ姿を見てリリルカは袋を握りしめている。

 

「リリは…どうすれば良いんですか…」

 

 

 

ベルは隣に歩いているアルフィアに話しかけた。

 

「お義母さん…その、良かったの?リリルカさんのこと…」

 

「お前は優しいな。メーテリアのように優しい。」

 

懐かしむように優しい瞳を向けるアルフィア。

ベルはそんなアルフィアを見るのは久しぶりでどこか嬉しかった。

何よりも母と同じで優しくと言われたのがベルにとっては誇らしかった。

 

「あの少女が盗みを続ける限り救われはしないだろう。だが、盗みを辞めて英雄を求めるのならば、救ってやれ。」

 

「うん!でも、良かったぁ。お義母さんの機嫌が直って。」

 

「私は不機嫌では無かったぞ。」

 

「そ、そうなんだ…」

 

絶対に不機嫌だったアルフィアだが、それを追求することはベルには出来なかった。

 

 

 

次の日

 

再びダンジョンで訓練をしているベルとアルフィア。

ある程度して地上へと戻ろうとするとリリルカがモンスターに殺されかけていた。

 

「リリルカさん!」

 

ベルはリリルカとモンスターの間に入りモンスターを倒した。

 

「どうして…どうして助けたりするんですか!昨日、会ったばかりのリリを助けるんですか!リリは助けられる資格もないんです!騙して!盗んで!汚い道を歩いて来たんです!助けられる資格なんて無いんです!」

 

「確かにリリルカさんは盗みをしたのかもしれない。でも、だからといって見捨てるなんて僕には出来ないんです!」

 

「ベル様はお人好しのバカですね。」

 

リリルカは泣きながらベルに抱きついた。

ベルは泣き止むまで胸を貸した。

 

ドゴンッ!

 

「痛いです!!」

 

アルフィアはいつまでも抱きついて動かないリリルカの頭を殴った。

 

「いつまで抱きついているつもりだ。さっさっと帰るぞ。」

 

「リリも良いのですか?」

 

「貴様が死のうが生きようが知ったことではない。だが、ベルが助けると決めたのならば助けられておけ。」

 

アルフィアは地上へと帰還するとベルをホームに帰らせてアルフィアとリリルカでソーマ・ファミリアへと向かった。

そして、アルフィアはソーマ・ファミリアの連中を半殺しにした。

 

「貴様、こんなことをしてタダで済むと思うな!」

 

ソーマ・ファミリア団長のザニス・ルストラがアルフィアに向かって言った。

 

「知らん。」

 

レベル7のアルフィアに勝てるものなどソーマ・ファミリアにはいなかった。

団長であるザニスを倒してアルフィアはソーマの元へと向かった。

 

「ソーマだな。リリルカ・アーデの改宗を許可しろ。」

 

「興味ない。」

 

「そうか。お前がファミリアを放置したせいで、ほとんどの団員たちは問題行動を起こしている。今頃はギルドやガネーシャ・ファミリアに伝わっているはずだ。お前の酒作りは出来なくなるな。」

 

その言葉を聞いたソーマは顔を真っ青にしている。

ソーマにとって酒作りは命であり、それができなくなるのは死も同然。

 

「だが、最後に良いことをしろ。リリルカ・アーデの改宗を認めろ。」

 

「ならば、その子の覚悟を見せてもらう。私の酒を飲んで正気を保つことが出来れば認めよう。」

 

リリルカの前にソーマの酒が置かれた。

普通の者ならその酒を飲むと正気を失う。

耐えることが出来るのは一握りだ。

 

「分かりました。」

 

リリルカはソーマの酒を飲んだ。

気が狂いそうになるのを耐えようとするがリリルカには耐えられそうにも無かった。

 

「やはり、だめか…」

 

ソーマは興味無さそうに再び酒を作ろうとした。

すると、リリルカは泣きながら懇願した。

 

「耐えました!お酒なんていりません!」

 

リリルカが耐えれたのはアルフィアの訓練で心が強くなったおかげか、はたまたベルの言葉を思い出したおかげか。

リリルカは様々な理由で何とか耐えることが出来た。

 

「そうか…改宗を認めよう。」

 

その後、リリルカはヘスティア・ファミリアへと改宗した。

ソーマ・ファミリアの問題を起こしていた団員たちは捕まり牢へと入れられた。

残ったまともな団員たちはソーマと共にファミリアをまともなものにしていくと誓った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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魔法

 

 

 

 

 

リリルカがヘスティア・ファミリアに改宗して数日。

ベルはアストレア・ファミリアのリュー・リオンと朝稽古をしていた。

 

その理由としてはアルフィアにアストレア・ファミリアの者たちと戦って経験を積んでおけと言われたからだ。

 

リューとベルの戦いはリューの優勢ではあるが、ベルはレベル2の動きをしていない。

明らかにレベル3以上の動きを兼ね備えている。

 

「はぁ!」  

 

リューの木刀がベルの腹に当たりベルは後ろへと吹き飛んだ。

やり過ぎたと思ったリューはすぐにベルの元へと駆け寄った。

 

「大丈夫ですか!クラネルさん!」

 

「だ、大丈夫です。かなり痛いですけど。」

 

その光景を見ていたアリーゼと輝夜はリューに少し呆れていた。

いくらベルが強くてもレベル2だ。

レベル6の攻撃をまともに受けてしまえばひとたまりもない。

 

「アホか!お前は!ポンコツエルフはどこまで行ってもポンコツだな!」

 

「リュー…流石に擁護できないわよ。」

 

「すみません。」

 

輝夜とアリーゼに注意されて、少しガックリしているリューであった。

アルフィアはリューたちに近づいてきた。

リューはやり過ぎて怒られるのではないかと思ったが予想の斜め上をいくことを言われた。

 

「おい、拗らせたポンコツエルフ。これは訓練だ。加減など不要だ。さっさっとベルを鍛えろ。」

 

アルフィアはやり過ぎたとは思っておらず、さらにベルを鍛えろとリューに言ったのである。

この人は鬼だとアリーゼたちは思った。

 

「いや、あのアルフィアさん。それ以上やるとベル、死んじゃうわよ。」

 

「そんな半端な鍛え方はしていない。私の魔法を加減しているとはいえ、毎日受けているんだ。半端な攻撃など耐えるはずだ。」

 

どこまでも厳しいアルフィアであった。

それから、ベルの訓練は続いたが、甘いやり方のアリーゼたちに少し苛立ったアルフィアはアリーゼたちごと鍛えるのであった。

 

アリーゼたちはアルフィアの強さに叩きのめされた。

そして、訓練が終わるとアルフィアはベルを連れてクロノス・ファミリアの本拠地へと向かった。

 

「お義母さん、どうしてここに来たの?」

 

「お前に魔法を発現させるためだ。」

 

「魔法!」

 

ベルは魔法を使うことに憧れを持っており、魔法を発現させると聞いて喜んでいる。

 

「で、でも…どうやって?」

 

「クロノスのところには魔導書が多少ある。それらの中から一つお前に譲って貰おうと思ってな。クロノスのことだ譲ってくれるだろう。」

 

アルフィアがノックをするとクロノスが勢いよく飛び込んできた。

そして、勢いよくアルフィアに抱きつこうとした。

だが、アルフィアはクロノスをぶっ飛ばした。

なんか、デジャブだなぁとベルは達観していた。

 

「何ようだ、アルフィア。」

 

「魔導書をくれ。ベルに魔法を発現させる。」

 

「良いぞ。二人共、昼飯はまだか?」

 

「ああ。」

 

「ならば、ごちそうしてやる。」

 

クロノスは二人を部屋に招くと二人の目の前に料理を持ってきた。

 

「さぁ、遠慮せず食べよ。」

 

ベルは料理を一口食べたが、あまりの不味さに気絶した。

アルフィアも一口食べたが不味くて食えたものでは無かった。

 

「おい、何を食べさせた?」

 

「何とは心外だのぅ!私の手料理よ!」

 

「先日、お前とジンが作った料理はこんなに不味くなかったぞ。」 

 

「不味くなどないわ!」

 

ジンとクロノスは以前、アストレア・ファミリアで料理を作ったときは絶品だった。

しかし、クロノス一人で作るととても食えたものではない。

それを知らなかったベルとアルフィアはクロノスの料理の犠牲となったのだ。

 

「クロノス、誰か来ているのか?」

 

外から帰ってきたジンがクロノスの部屋を訪ねた。

そして、気絶しているベルと顔色を悪くしているアルフィアを見てしまった。

 

「おい、ベル君が気絶してるぞ。アルフィア、大丈夫か?顔色が悪いぞ。」

 

ジンはアルフィアに顔を近づけて声をかけた。

 

「だ、大丈夫だ///…クロノスの料理を食べてしまっただけだ…」

 

「そ、そうか…」

 

少し近すぎたかとジンは少し照れてしまった。

その二人を見てヤキモキしているクロノスであった。

 

「クロノス…一人で料理をするな。」

 

「どういうことだ!まるで私の料理が不味いと言っているようなものだぞ!」

 

「そのとおりだ。お前が一人で作った料理はとても食えたものではない。しかし、不思議だ。俺と作るときはしっかり美味しい料理が出きるのにな。」

 

何故、クロノスが一人で作った料理がこんなにも不味いのかを考えながらジンは淡々と言った。

 

「ジン!…冷静に分析するな!」

 

「とりあえず死者出る前に一人での料理はやめておけ。」

 

「私の料理は死者が出るレベルなのか!?」

 

それから少しして、ベルがやっと目を覚ました。そして、ジンが作った料理を食べた。

 

「ジンが一人で作った料理は問題なく上手いな。何故、クロノスが一人で作る料理は不味いのか不思議だ。」

 

「お主ら!見ておれ、必ず度肝を抜かす料理を作って見せるぞ!」

 

「違う意味で驚かされそうだ。」 

 

ベルとアルフィアも心の中でジンに同意した。

それから、食べ終わるとアルフィアは今日、来た理由をジンに話した。

 

「魔導書は確かにあるぞ。クロノスが良いと言うなら全然使ってくれて構わない。」

 

「これをやろう。」

 

クロノスは一冊の本を持ってきた。

 

「こんなもの以前まであったか?」

 

「まぁ、つい最近手に入れたものよ。」

 

ジンには見覚えのない魔導書であった。

それもそのはず。

これはクロノスがフレイヤから貰ったものである。

正式にはフレイヤからベルへのプレゼントであるが。

 

「これが魔導書…どうすれば良いの?」

 

「読めば良い。」

 

ベルはアルフィアに言われた通り魔導書を読み始めた。

すると、ベルの意識が遠のいていく。

 

『僕にとって魔法って何?僕にとって魔法って?僕にとって魔法はどんなもの?魔法に何を求める?』

 

「僕にとって魔法は力であり理想。」

 

『それだけ?君の望みは?』

 

「英雄になりたい。」

 

ベルが意識の中から目を覚ました。

アルフィアたちの話によると一時間くらい眠っていたらしい。

 

「魔法が発現したのかなぁ?」

 

「おそらく、したはずだ。帰ってヘスティアにステイタスの更新をしてもらえ。」

 

「うん。」

 

ベルとアルフィアはクロノス・ファミリアをあとにした。

そして、帰るとベルはヘスティアにステイタスの更新をしてもらった。

 

 

ベル・クラネル

 

14歳

 

所属派閥︰ヘスティア・ファミリア

 

種族・・・人間

 

Lv.2

 

力:A889

 

耐久:SSS1125

 

器用:S954

 

敏捷:SSS1155

 

魔力∶I0

 

 

幸運:F

 

 

《魔法》

 

『アンゲロス・ヴィリオ』

 

詠唱式【ロスト】

白い雷を放って攻撃する魔法。

スペルキー【エクリクシス】を唱えることでその場に残っている雷の魔力を起爆することも可能。

 

 

 

《スキル》

 

『誓いの英雄』

・早熟する。

・懸想が続く限り効果持続。

・懸想の丈により効果向上。

 

 

『英雄願望』

・能動的行動に対するチャージ実行権。

 

 

「これが僕の魔法!」

 

「私の魔法と少し似ているな。」 

 

 

次の日、アルフィアとベルは魔法の練習のようなものをダンジョンで行っていた。

 

「ベル、さっそく魔法を使ってみろ。」

 

「うん。【ロスト】!」

 

ベルが詠唱式を言うと目の前のモンスターに白い雷が発射された。

モンスターは白い雷を浴びて消滅した。

 

「威力があるな。これなら下層に放り込んでも問題無いだろう。」

 

とんでもない事を言うアルフィアであった。

そして、本当にするとベルは何となく察していた。

その日はベルが精神疲弊するまで魔法を連発させられた。

 

 

 

一方、クロノス・ファミリアにはロキとフィンが訪ねていた。

二人は次の遠征にジンも同行してほしいと言うものであった。

 

「遠征か…悪いが今回は駄目だ。」

 

「理由を聞いても良いかな?」

 

「少し用事があってな。まずはこちらの用事を済ませないといけない。」

 

フィンも用事があるなら仕方ないと割り切り諦めた。

ロキはその用事を聞き出そうとしていたがジンは答えることはなかった。

フィンとロキが帰ると、クロノスはジンの部屋に入り話を始めた。

 

「遠征は断ったようだのぅ。」

 

「お前の用事を優先しただけだ。それが早く終われば、フィンたちと合流も可能かもしれない。」

   

本来ならジンは遠征に同行しようと思っていたが、フィンたちが来る直前、クロノスに遠征を断っておけ言われたからである。

 

「悪いがそれは無理だぞ。今回はかなり骨が折れる。」

 

今回は骨が折れるとクロノスが言うのは珍しく、ジンは少し緊張していた。

 

「今回の相手はジン…お主だけでは厳しい。だから、アルフィアを連れて行く。」

 

「アルフィアを?」

 

「言っておくがデートでは無いからな。くれぐれも気を抜くでないぞ。」

 

「わかってる!」

 

ジンとクロノスはアルフィアがいるであろう、アストレア・ファミリアへと向かった。

アストレアに聞くと、ダンジョンへと向かったらしいので二人は待つことにした。

しばらくすると、アルフィアとベルは帰ってきた。

 

「アルフィアよ、明日から約2週間、私の護衛を頼みたい。」

 

「護衛だと?ジンだけでは駄目なのか?」

 

「駄目だ。お主が同行してやっとの戦力よ。」

 

レベル7であり、都市最強とも名高いジンだけでは駄目だということにアルフィアや他の者たちは驚いていた。

そして、一体クロノスはどこに向かっているのか気になってもいた。

 

「報酬は払おう。何か望みのものはないか?」

 

「いや、今すぐには浮かばない。というか、引き受けるとも言っていないがな。」

 

「お主は必ず引き受ける。長い付き合いよ。」

 

アルフィアは少しベルの方を向いて考えながらも、クロノスの依頼を引き受けた。

 

「良いだろう。ベル、私が留守の間はアストレア・ファミリアの者たちと同行しておけ。どうにもお前を狙っている愚かな女神がいるかな。」

 

「うん、分かった。」

 

「それでどこに向かうんだ?」

 

「それは秘密よ。旅立った時に話そう。」

 

その日はそれで終わり、クロノスとジンは帰った。

 

「クロノス…俺にも目的地は言えないのか?」

 

「オラリオの外に行ってから話そう。それとアルフィアにも言ったが万全の準備を整えておけ。敵は太古の獣よ。」

 

クロノスは真面目そうに呟いた。

 

 

アルフィアはアストレア・ファミリアのアリーゼ、輝夜、リューを何故かしばいていた。

 

「貴様ら、私がいない間にベルに手を出してみろ。息の根を止めるからな。」

 

「そんなことはしませんよ。ふふふ…っ。」

 

いかにも嘘くさく話す輝夜にアルフィアは鉄拳制裁を入れた。

 

「お前たちがベルとミノタウロスの戦闘以降ベルを見る目が男を見る目に変わっていることは知っている。」

 

「そ、そんなことは…あ、ありません!」

 

「黙れ、特に拗らせているお前が一番要注意だ。」

 

それに関しては同意だとアリーゼと輝夜は頷いていた。

意図的にやるアリーゼと輝夜…しかし、リューは暴走してことにいたろうとするかもしれないのでかなり危険である。

 

「お義母様!」

 

「貴様にお義母様と呼ばれる言われはない!」

 

その後、アリーゼ、輝夜、リュー対アルフィアの激しい戦闘が行われた。

結果はアルフィアの勝ちであるが、何度も立ち向かってくるアリーゼたちに少し疲れたとか。

 

 

 

 

 

 

 

 



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旅立ち

 

 

 

 

 

 

アルフィアは準備を整えてベルと別れを済ませた。

とはいえ約2週間ほどで帰れるのだが。

 

クロノス、ジン、アルフィアはオラリオの外へと出た。

しばらく歩くとクロノスから今回の目的を話された。

 

「今回、私はアルテミスを救わねばならない?」

 

「アルテミスを救う?話の意図が読めないぞ。」

 

「そうであろうな。ジンは知っているが私は時間の神であり、この外界でも少し先の断片的な未来を見ることが出来る。」

 

ジンはそうだなと頷いているが、アルフィアにとっては初めての話なので驚いている。

 

「クロノス…貴様、未来が見えるのか!?」

 

「断片的によ。それも都合の良いものでは無いぞ。見たいときに見たいものを見れるものではない。眠っているとき断片的な未来が見えてしまうことがある。」

 

「今回は何を見た?」

 

ジンの問いにクロノスは少し複雑そうな顔をしていた。

それほどまでに今回の未来は良くないものだったらしい。

 

「アルテミスを知っているだろう。」

 

「ああ、知っている。」

 

神アルテミス…オラリオの外で活動する【アルテミス・ファミリア】の主神で、モンスターを相手にした狩猟を生業としている。 

弓矢とナイフの名手で、神でありながら自身も眷族の【アルテミス・ファミリア】のメンバーと共に前線で戦っているものである。

 

「アルテミスは太古の蠍型魔獣『アンタレス』に喰われてしまい、魂と能力のほとんどを奪われていた。そして、アンタレスは『神の力』を行使し、空には無数の魔法陣で作った『アルテミスの矢』を下界に向けて発射しようとしているのを予知した。」 

 

「大事だな。アルフィアを呼んだのも納得のいく話だ。ということは今向かっているところにアンタレスがいるんだな。」

 

「ああ、アルテミスがやられる前に止めねばならん。それにそれ以上の未来は見えなかったからどうなったかは分からぬしな。止めねばならない必ず!」 

 

いつになく真剣な表情をしているクロノス。

それほどまでに今回のことは重要だとアルフィアとジンは悟った。

 

「場所はエルソスの遺跡。そこにアンタレスは封印させれている。」 

 

三人はアルテミスを守るためにエルソスの遺跡へと向かった。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

一方のベルは輝夜と訓練していた。

二人共、剣を持ちぶつけ合っている。

 

「ベル、レベル2とは思えないくらい強いぞ!」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

しばらく、打ち合うと二人は休憩を始めた。

ベルは輝夜に後ろから抱きつかれている。

 

「あの…輝夜さん…その…この体制は///」

 

「嫌か?」

 

「嫌じゃないですけど…その、僕、汗かいてますし、臭うかも…」

 

少し照れているベルに輝夜は微笑ましいと思う。

そして、ベルの匂いを嗅ぎ出した。

 

「特に匂わんぞ。それに汗をかいているなら私もだ。なんなら、匂うか?」

 

「い、いえ!結構です!」

 

「なんだ、なんだ。私は臭いと言うことか?」

 

ベルに悪気は無いと知りながらも少しからかうように言う輝夜であった。

ベルはからかわれてるとも知らずに必死に弁明するのであった。

 

「い、いや違います!その…女性の匂いを嗅ぐなんて少しためらうっていうか…」

 

「私は気にしないぞ。」

 

「で、でも…」

 

「あ~あ、ベルはそんなに私の匂いを嗅ぎたくないのか。少し傷ついてしまうぞ。」

 

いかにもわざとらしく言う輝夜。

しかし、ベルは本当に輝夜が傷ついてしまうと思い輝夜の匂いを嗅ぐ決意をした。

 

「わ、分かりました。その…失礼します。」 

 

クンクンとまるで犬のように匂いを嗅ぐベル。 

輝夜は命じておいて少し恥ずかしくもなっていた。

それと同時にベルがとても可愛く思えている。

 

「どうだ?」

 

「とてもいい匂いです。なんというか、お義母さんと違ってどこか気持ちの良い匂いです。」

 

正直な感想を言うベルに輝夜はとても恥ずかしくなり、柄にもなく顔を赤くしている。

ベルも発言したあとに自身がとても恥かしいと言ったことに気づいて顔を赤くしている。

 

「そ、そうか///」

 

二人は少しの時間くっついた状態で過ごすのであった。

それを見たリューは羨ましがるのであった。 

 

 

次の日、アストレアとヘスティアは神会へと行っていた。

 

『神会』

 

それは神々の情報け共有の場であり、ファミリアやギルドが提携して都市全体を巻き込む催しである。

そして、今日は冒険者の二つ名を決める場でもあり、ヘスティアは覚悟を決めた顔をしてやってきた。

 

だが、その場は混沌としており、ヘスティアは隣りにいるアストレアと神友のヘファイストスと共に呆れていた。

 

「さて、次は命名式の時間やで!資料は行き渡ってるな!トップバッターはセトの所のセテュっちゅう冒険者からや!!」

 

お手柔らかにと言うセトを無視して神々たちは酷いセンスの二つ名を与えるのであった。

神々から与えられた二つ名とは強さと名声の象徴であるが、神々のセンスはとても酷いものである。

 

「決まった。セトのところの子は【暁の整竜騎士】!」

 

『イテェェェェェ!!!』

 

そして次から次へとレベルアップした冒険者たちの痛々しい二つ名が決まっていった。

 

アイズ・ヴァレンシュタインの二つ名も好き勝手に決められると思いきやロキのドスの効いた声に神々たちはビビリそのままにしておこうということになった。

 

「次が最後やな。二つ名決める前になぁ、ちょっと聞かせろや!約一週間で『恩恵』を昇華させるちゅうのは一体どういうことや?」

 

「(ギクッ)」

 

ヘスティアとは仲が悪いロキは詰めいるようにヘスティアに言った。

ヘスティアもレアスキルのことを言うわけにはいかないと黙っている。

 

それからもロキの問答は続いたがアストレアと珍しくフレイヤが庇ったことにより事なきを得た。

 

フレイヤは場を収めて出て行った後、ベル・クラネルの二つ名【リトル・ルーキー】が決まった。

 

数日後、ベルはアリーゼ、ライラ、リリルカと共にダンジョンへと向かった。

本当はベル、アリーゼ、リリルカだけで行く予定だったが、ベルに何をするのか分からないのでライラが見張ることになった。

 

「ったくよ…団長、ベルに変なことはするなよ。」

 

「しないわよ!」

 

「変なことって何ですか?」

 

ベルは本当に分かっていないらしく、ライラは教えようか教えまいか悩んでいた。

教えれば後でアルフィアに怒られるのは確定であり、教えなければベルが知る前にアリーゼ、輝夜が襲う可能性がある。

ちなみにリューは暴走してそれ以上のことをする可能性がある。

故にライラはとても悩んでいた。

 

「今度…アルフィアさんにでも教えてもらえ。私の口からは言えねぇ。」

 

「そ、そうですか。」 

 

四人はダンジョンへと向かおうとするが、ガネーシャ・ファミリア団長のシャクティ・ヴァルマに引き止められた。

 

「ちょうど良かった。アリーゼ、ライラ少し手伝ってくれないか。下水道に謎のモンスターが出ていると通報が入った。ガネーシャ・ファミリアの団員たちは出払っていてアストレア・ファミリアに要請しようと思っていたところだ。」

 

「そういうことなら分かったわ!ベル、リリルカ、あなたたちは一旦帰ったほうが良いわ。」

 

「大丈夫ですよ、そんなに深く潜らないですから。」

 

ベルの強さならほとんど問題無いだろうと考えた二人はベルとリリルカだけでダンジョンへ行くことを許可した。

 

「くれぐれも無茶なことはしないようにね。」

 

「はい!」

 

それからベルとリリルカはアリーゼたちと分かれてダンジョンへと向かった。

ベルの成長スピードは目を見張るものがあり、上層のモンスターなど敵ではなかった。

 

ダンジョン中層に入るところで一人の男がソロで戦っていた。

不器用ながらも必死で戦っている男だったが、モンスターに後ろを取られた。

避けるのが間に合わず、ダメージを負うところをベルが庇いモンスターを倒した。

 

「悪い、助かった。」

 

「いえ、怪我が無いようで良かったです。僕はベル・クラネル。ヘスティア・ファミリアです。」

 

「同じくヘスティア・ファミリア所属のリリルカ・アーデです。」

 

「俺はヘファイストス・ファミリア所属のヴェルフだ。」

 

自己紹介が終わり、話をした三人はパーティを組む話になった。

ベルとリリルカは特に問題なく、ヴェルフも願ったりかなったりの事だった。

 

「いや~助かったぜ。ここから先一人で進むのはしんどかったからな。それよりもベルの剣は誰が作ったものなんだ?」

 

「これはお義母さんが買ってくれたものだよ。確か…3億ヴァリスしたとか…」

 

「3億ヴァリス…すげぇな。」

 

それから3人は先へと進んだ。

進んだ先にはタケミカヅチ・ファミリアの者たちがモンスターに囲まれており、ベルたちを見つけると『怪物進呈』を仕掛けてきた。

 

ベルたちがモンスターの相手をしているうちにタケミカヅチ・ファミリアの者たちは地上へと逃げた。

普通ならベルたちは全滅してしまうが、ベルたちは全滅していない。

逆にモンスターたちが全滅した。

 

「お前ら…めちゃくちゃ強いな。本当にレベル2とレベル1か?」

 

ヴェルフはベルの強さとリリルカの強さに感服していた。

特にベルはモンスターたちを瞬殺しており、下層でも問題無いと思えるほどだった。

 

「大げさだよヴェルフは。」

 

「リリはともかくベル様の成長スピードは恐ろしいです。」

 

ベルとリリルカはアルフィアに訓練という名の地獄を味合わされており、そこら辺の弱いモンスターに負けることは無い。

3人はそのまま18階層へと向かい休憩をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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