ハリー・ポッター ヴォルデモート部分殺害RTA 二重スパイチャート (matsumatsu)
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Part 1/8 キャラクリ~入学直前

初投稿です


 

 お辞儀大好きおじさんをぬっ頃すRTA、はーじまーるよー。

 

 と言う訳で今回は、あの超有名児童文学「ハリーポッター」シリーズのRTAを走っていきたいと思います。

 

 キャラメイク前にレギュレーションの確認です。

 計測開始はトム・リドルがホグワーツに入学する1938年の7月、タイマーストップはお辞儀様が霞以下になったときとします。

 計測時の参考タイムは舞台内時間とします。例えば参考記録として計測終了時間が1981年10月31日であった場合、これより早い時期にクリアすれば最速となるわけです。一人の人生をそのまま操作する都合上、セーブやロードといった要素は含まれないことにご注意ください。

 

 では早速キャラクリエイトに入っていきます。

 

 年齢はリドルと同じ、性別は男、血統は純血を選択します。名前については入力速度を考慮せず、諸事情より「ハワード・モーフィン・ゴーント」とします。あだ名は、英字表記の「Howard Morfin Gaunt」から「HoMo」、つまりホモ君が良さそうですね。魔法適正は「闇の魔術」と「魔法薬学」に補正をかけておきます。

 

 入力を終えたらいよいよRTA開始です。イクゾー! デッデッデデデデ(カーン)デデデデ

 

 操作が可能になるまで少し時間がかかります。

 退屈な時間をお過ごしのみ な さ ま の た め に ぃ ~

 

 先程のレギュレーションの補足をしておきます。

 

 タイマーストップはお辞儀様の霞化とありますが、これに分霊箱の破壊は含まれません。

 分かりやすく説明すると、原作において一歳の赤ん坊ハリーが闇の帝王(笑)を消滅させたのと同じように、霞以下の存在までにすればオーケーです。

 というか予言の関係上、ヴォルデモートに完全に勝つことは通常プレイではほぼ望めないでしょう。予言に関しては、かなり話がややこしく長くなってしまうのでまた別の機会にします。

 

 ハリポタRTAは星の数ほど存在しますが、本レギュレーションの記録は何故か原作準拠の1981年10月31日が最速記録となっています。どうして誰も走ってないんでしょうね~(すっとぼけ)。

 つまり原作幼少期ハリーより早くお辞儀様を倒せれば私が最速です。

 ここで熟考試行検討を繰り返した走者の努力により、計測終了時期を数年程度短縮することに成功しました。

 

 はい、今コメントが「は?」であふれているような気がしますが事実です。

 

「はぁ~~~アホクサ…数年ってなんやねん。なんでそんなガバガバなん。辞めたらこのRTA?」

 

 とお思いの方もいるかもしれません。すいません許してください!何でもしますから!

 冗談はこのくらいにして、もう少しまじめに話しておきましょう。

 

 実のところ最強爺ことダンブルドアがもう少し融通が利けばもっと安定したチャートになるのですが、このハリポタ世界には特別なマスクデータが存在します。

 説明のために、再殺RTAで有名な先駆者であるノット兄貴の言葉を借りさせていただきます。これはもはや公然の事実と化していますが、ダンブルドアには(GG)値、正式名称「Greater Good(より大きな善の)値」が設定されています。

 

 ダンブルドアは基本的に善側の人間ですが、同時に善のためなら冷静に合理的な判断を下すことのできる人物です。しかし、「過去の思想」や「かつての親友」、「妹の死」に関して取り返しのつかない過ちを繰り返し過ぎたがために、自らの選択で再び過ちを犯すことに対して恐怖し臆病であるという性質も同時に持っています。

 つまりGG値とはダンブルドアが行動するときに「より大きな善のために」どこまでの悪行を許容するかの指標を指すわけです。

 GG値が低ければ悪逆非道の敵にすら愛を持って接し、反対にGG値が極端に高ければ敵に対して開幕アバダケダブラを放ち、味方にも開心術とインペリオをかけるなどの冷酷で非倫理的な行為すらも息をするかのように使ってきます。

 

 本RTAで関わるダンブルドアは正史よりも前の時代であるために、ダンブルドアは過去の事件に対して向き合うことができていません。また闇の帝王(笑)もまだ事件は起こしていないため、積極的に動くことはないと思われます。

 このチャートではダンブルドアの助力を得ることが前提となるため、マスクデータであるGG値を確かめられないことがタイムのブレにつながってしまうのです。

 

 

 やっとホモ君を操作できるようになりました。早速ホモ君の状況を確認します。

 

 賢い皆さんはもう察していると思いますが、キャラクリ時の設定によりホモ君は「モーフィン・ゴーント」の息子であることが確定します。ぶっちゃけスリザリン家系の純血一家であればどこでもいいのですが、この設定のほうが面白そうじゃん?

 ゴーント家は近親相姦により血を煮詰めに煮詰めまくっているため、一見デメリットの方が大きそうですが心配はいりません。というのもゴーント家は没落しきっている現状から、人数が少なく近親相姦を行う相手が現在はいないんですね。その結果として、モーフィンが子供を産む場合は外部から新たな純血の魔女の血を取り入れることになるのです。

 これにより生まれたホモ君はその血のポテンシャルを十全に発揮できるだけの才能を備えて生まれることになります。まあ、天才リドル君には到底かないませんが。

 

 ええと今回は精神異常のバッドステータスが発生していますね。もちろん想定内です。ゴーント家スタートである時点で8割は肉体か精神に異常をきたしています。身体異常ならリセです。

 バッドステータスの内容は「感情が極端に薄い」というものですね。異常としてはだいぶ軽度なものですが、おそらく複雑な家庭環境により情緒が成長してくれなかったんですかね。

 しかし問題は、ないです。というのもホモ君は走者により操作されているからです(激ウマ)。

 鋭い人間は多少違和感を覚えることもありますが、人と関われば徐々に正常になっていくはずなので、無視です。

 

 過去ログを参照したところ、ホモ君は屋敷しもべ妖精のホリー君♂と二人(?)で暮らしているそうです。ゴーント家って屋敷しもべを雇えるほどのお金なんてあったんですかね(適当)。彼らの価値観はお金では量れないのでよくわかりませんが。

 おそらく祖父のマールヴォロが孫可愛さにちょっと張り切っちゃったんでしょ多分

 その祖父はもう死んでるらしいんですがね、頑張り過ぎんなよじじい!(手遅れ)

 父親のモーフィンは原作よりも長くアズカバンに服役した結果、既に獄中で死んだらしいです。ちなみにモーフィンの服役期間が長くなるのはゴーント家チャートなら確定事項です。精神と身体に異常を持った犯罪者が子供を作る方法なんてそうそうありませんからね。今回は長期のアズカバン収監に耐え切れず、会うこともありませんでした。

 ですから母親も不明のまま、と。

 どちらにせよこのチャートで親はフヨウラ!と言う訳でさっさと切り替えましょう。

 

 ちなみに屋敷しもべ妖精ですが、ゴーント家での出現率は2割程度です。更に言うなら、ホリー君がいることによりチャートは安定しますが、必ずしも加速要素にはならないことを付け加えておきます。

 

 ええと、持ち物は…ああ、カドマスの指輪だけですか、どうでもいいわ(レ)

 このチャートでは使いません。

 

  現在は1938年の7月ですが、そろそろホグワーツの入学届けがフクロウ便で来るはずです。それまで家にある本などを読んで適当に暇をつぶします。こんなとこ倍速だ倍速!

 

 

 そろそろフクロウ便で入学許可証が届くころです。ちなみに届かなかったらリセです、当たり前だよなぁ?

 ん、どうしたホリー君?はあ、来客ですかこの家に。フクロウ待ちで忙しいのにやめてほしいですね。もしかしたら父親の服役関係で役人が来ているのかもしれません。適当にあしらってお帰りいただきます。

 

「君がハワード・ゴーント君かな?」

 

 来客は身長180センチ程のイカしたおじさん、はぇ^~すっごい大きい…

 いい体してんねぇ!さてはお前、ホモだな?(正解)

 アイスティーでも振舞ってあげましょう。

 

 冗談はさておき、もちろんダンブルドアが来るのは想定内です。新入生に対する入学許可証の届け方はフクロウ便で来ることが多いですが、親がいない場合は教員が直接訪ねてくることがあります。

 ちなみに訪問してくる教員の中で当たりはスリザリン寮の寮監であるスラグホーンです。スラグホーンは才能のある生徒をとことん可愛がってくれるので、早めに出会うことがあればその後の学校生活に対して融通を利かせてくれます。

 対してダンブルドアですがこの場合は、う~ん、なんとも言えませんね。現在悪いことを企んでいるわけではないのですが、GG値が高すぎて開心術をかけられてしまうと、いわゆる予言者チャートへと移行する場合が考えられますので、RTAが崩壊します。おじさんやめちくり~(懇願)。

 ですが実のところ心配はいりません。現在ダンブルドアは昔のごたごたの影響でGG値が最底辺です。ダンブルドアのリドルに対する警戒の強さは、孤児院での噂と実態を実際に目にしていたことにより生じたものであり、普通の人に対して開幕から開心術をかけたりすることはありません。普通にしていれば平気です。普通ってなんだ?(哲学)まぁいいや、大丈夫だって安心しろよ〜。ヘーキヘーキ、ヘーキだから。

 

 入学に関する話も終盤に差し掛かってきているので、ダンブルドアに金の無心をします。

 ホグワーツには教科書や制服を買うのに援助の必要な者のために資金や物品を貸し出す制度があります。お金を受け取ったら早速買い物に行きましょう。

 え、案内してくれるんですか?ダンブルドアと一対一になることはそう多くありません。いい機会なのでゴチになります。タダ飯ほど旨いものはないぜ!

 

 では予定を合わせて二人でダイアゴン横丁へ買い物に行く日程を決めたら、ダンブルドア先生を丁寧にお見送りします。

 

 

 はい、ダンブルドアとの横丁デートの日になりました。テーマパークに来たみたいだぜ。テンション上がるなぁ~。持ち物は先日ダンブルドアにせびって得たお金があれば十分です。

 

 ダンブルドアに手伝ってもらいながら、学用品を買い集めます。

 見ててもつまらないので、オリバンダーの店に到着するまで杖についてのお話をしておきます。

 

 杖とは魔法使いにとって魔力を打ち出すための砲台のようなもので、それが持つ特性と持ち主の双方の相性によって性能は千差万別となります。

 オリバンダーは杖と魔法使いの相性を見抜く力が飛び抜けており、また杖自体も優秀であることから、イギリスにおける杖事情はオリバンダーによって支配されているといっても過言ではありません。

 

 RTAにおいても杖の特性はかなり重要な要素です。

 杖は魔力の核となる芯材とそれを伝達する木材によってつくられます。

 木材に関しては軽く調べただけで50は超えるので割愛しますが、杖の芯材についてはオリバンダーの店では最高級の芯を使うことを信条としているため、ほぼ3つの素材に限定されていることが知られています。

 一つ目は一角獣のたてがみです。これは最も安定した魔法を生成し、変動や障害の影響をほとんど受けないが、闇の魔術に変えるのが困難で、魔法力が弱いという欠点を持ちます。

 二つ目はドラゴンの琴線で、強力な魔法力を持ち、早熟であると無難な強さを持つメリットに対して最も事故が起こりやすく、やや気まぐれである等のデメリットがあります。

 三つ目は不死鳥の尾羽で、「生き残った男の子」や「闇の帝王」の杖に使われている芯材です。特徴として最も希少な芯材で、幅広い魔法が可能であるが、忠誠を勝ち取るのは困難、さらに自らの意志で行動することがあるらしいです。

 杖の素材として優秀なものには他にヴィーラの髪、セストラルの尾毛、バジリスクの角、サンダーバードの尾羽、妖精の羽などがありますが、オリバンダー本人が積極的に用いることはあまりありません。

 

 では、今回のRTAに向いた芯材はどれかというと、消去法でドラゴンの琴線一択となります。

 一角獣のたてがみは安定していることからRTA向けではありますが、対ヴォルデモート用として考えた場合、闇の魔法無しに加え魔法力の制限もあるのはさすがにキツ過ぎます。決して使えないわけではないのですが、闇の帝王相手ならチャートの安定よりも魔法力の強さの方をとった方が精神的に安定します。

 また、不死鳥の尾羽に関しては論外です。「自らの意志で行動する」とかいう明らかにガバムーブを誘ってきそうなものに頼ってはいけません。実際、原作においてハリーとヴォルデモートの杖が繋がったり、7人のポッター作戦においてハリーの杖が勝手に動いたのはこれが原因だとする説があります。

 そんな訳でドラゴンの琴線一択です。

 え?特徴に「最も事故が起きやすく、気まぐれ」って書いてあるだって?

 ま、まあ多少の事故なら機転を利かせたオリチャーによるガバのリカバリーを図るつもりですが、そんな簡単に事故なんて起きんやろ(慢心)。

 勝手にチャートをぶち壊されるよりはマシです。

 

 

 お、オリバンダーの店に着いたようですね。

 

「おや、おや。杖をお探しですかな?少しお待ちくださいな」

 

 オリバンダー君オッスオッス!

 今生の相棒を決めます。しっかりと時間をかけて相性の良い杖を探してもらいましょう。

 

「これはどうかな?セコイアと一角獣のたてがみ、26センチ、軽軟」

 

 ええとセコイアですか、なかなかニッチな奴ですね。Wikiによると「運に恵まれ、適切な選択をする能力や災難から有利な状況をつかむ能力を持つ人を好む」ですか。一角獣のたてがみが少し残念ですが、安定要素と考えれば悪くない、RTA走者の私にピッタリでは?

 あ、暴発しました。

 

「合わんようじゃな」

 

 うるせぇ!まあ杖の特性なんてエッセンス程度に考えとけば十分です(矛盾)

 

「では、おそらくこれでしょう。黒檀とドラゴンの琴線、28センチ、しなやか」

 

 黒檀は「戦闘魔法や変身魔法に非常に適している。所有者は非順応的、非常に個性的であり、しばしば集団から浮く(RTA走者は常に孤独)、しかし外部の圧力(コメ欄の揶揄)に関係なく自分の信念(完走)を堅持し、軽々しく目的から逸れない」という性質を持つRTA走者御用達の木材です。

 ですが…ダメみたいですね(諦観)。振ってもうまく反応していません。

 

「ではもしかすると…。いや、まさかあれか?」

 

 オリバンダーさんが何か思い当たるように店の奥を探し始めました。これはもしかするともしかするかもしれません(言語障害)。オリバンダーのお店では極低確率で超レアものが混じる場合が確認されています。

 しかし私はRTA走者です(鋼の意思)。

 実況プレイだったら面白そうなんですが、正直なところ不確定要素を出されても困ります。

 

「イチイとセストラルの尾毛、34センチ、適度な弾力性」

 

 イチイの木はお辞儀様の杖にも使われている木材です。

 特徴は「珍しい杖材の一つである。決闘やあらゆる呪いの分野において突出した評判を持ち、闇の魔術に高い適性を持つ。所有者に生と死の力を与え、死と復活の両方を象徴する。平凡な者や臆病なものを主人に選ぶことはない。所有者は悪名高いものであることが多いが、時に英雄が持つ場合もある」

 これは…当たりじゃな?(疑心暗鬼)

 

「この杖は私が作ったものではないのですが、誰の手にも渡らず倉庫の奥に眠っていたのです」

 

 セストラルの尾毛は「死を受け止める事の出来る魔法使いにしか扱えない」というピーキー性能を持つ芯材です。本来なら致命的ですが本チャートの終着点的に問題はありません。走者にとって完走後のホモ君の生死についてはどうでもいいので杖もきっと「死を受け入れている」と判断して力を貸してくれるはずです。

 

「この杖で間違いない。――――幸運を祈ります」

 

 はい、やっと決まりました。オリバンダーからお墨付きもいただいたことですし、大事に使ってあげましょう。

 

 

 杖選びはハリポタ世界の醍醐味の一つですから、毎回ワクワクしてしまいますね。今回出てきた杖以外にも多くの杖があるから、画面の向こうの君も是非その目で確かめてみてくれ!(攻略本)

 

 ではすべての買い物も終わったことですし、ダンブルドアへのお礼もそこそこにして帰るとします。ホグワーツ入学までは一か月と少しありますが、やる事もないので教科書でも眺めながら暇をつぶしておきます。

 

 

 俺たちの戦いはここからだ!と言う訳で今回はここまで。

 次回はホグワーツに向かいます。

 ご視聴ありがとうございました。

 



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Part 2/8 1年生

ホモガキ特有の見切り発車故、投稿ペースが落ちます
つまり初投稿です


 

 倍速パートが多すぎるRTA、続けていきます。

 

 

 突然ですが問題です、私はどーこだ。

 はい、正解は、9と4分の3番線の煉瓦の中でした。

 

 

 前回はダイアゴン横丁での買い物まで済ませたところです。一か月間特に何も起きずにダラダラと過ごしていたところ、ようやく入学の日がやってきたという次第です。

 

 ホグワーツ特急ではリドル君と同じコンパートメントに入れると良いですね。

 学校に到着した後でも交流はするのですが、やはり最初が肝心です。リドル君の最初の友人(笑)になってあげましょう。

 

 しかし、この混雑した駅構内でリドル君を探すのは至難の業。実際に会える確率はそう高くありません。だから、9と4分の3番線ホームに入るための唯一の壁で待ち伏せする必要があったんですね(メガトン構文)。

 

 

 リドル君を発見しました。

 ですが、ここで声をかけてはいけません。というのも、ここで声をかける正当な理由がないからですね。だいたい変人認定されてしまいます。

 故にここで行うミッションは、そう、スニーキングです。

 まだ麗しい頃のショタを付け回します。どのコンパートメントに入ったかを確認した後、さりげなく他のコンパートメントが開いてないことをアピールして同席します。

 おっ、空いてんじゃ~ん!(大嘘)俺も仲間に入れてくれよ~(マジキチスマイル)。

 

 他に特急内でやることは何もありません。車内販売もスルーだ!お金ないからね、しょうがないね。

 強いて言うならリドル君とのお話を楽しむことでしょうか。ホモ君もリドル君と同じパーセルタングであるという事を明かせば好感度は上がりやすいです。

 

 ここで今後の学校生活におけるリドル君との関係も説明しておきます。

 リドル君は肝っ玉の小さい男なので、自身に並び立つ存在を基本的に許容しないという特性が知られています。

 そのため、対等な関係になるためには細かいフラグ管理が必須になります。と言っても前提条件としてリドル君と同じくらい優秀である必要があるので、ホモ君では話になりません。原作チートが強すぎてやめたくなりますよ~このRTA。

 しかし、このRTAではそこまでの関係になる必要はありません。リドル君がヴォルデモートになった際に、闇の帝王の右腕、もしくは忠臣ポジを確保できていれば進められます。

 

 

 ホグワーツに着きました。ホモ君とリドル君はちゃんと仲良くなっていますね。

 

 次は組分けの儀式です。

 

 配属寮についてはやはり…王道を往く、スリザリンですかね。他寮は論外です。

 

 本RTAの遂行条件は「お辞儀様の部分的札害」ですが、単独でこれができる人物は予言により実力が保障されているハリーだけです。

 ダンブルドアは積極的に自分から動こうとはしませんし、仮に動いたとしてもGG値の高すぎるダンブルドアに怖気づいたヴォルデモートがしっぽ巻いて逃げます。

 

 つまりこのRTAを完走するにあたってのホモ君の理想的なムーブとは次のようなものになります。ヴォルデモートの有能部下の地位をキープ、ホモ君と闇の帝王の二人がかりでダンブルドアを襲撃、土壇場でホモ君が裏切り、闇の帝王をホモ君とダンブルドアの二人がかりで逆襲する、という原作スネイプ君のようにダンブルドアの二重スパイを務めることです。

 ダンブルドアの力を借りると言うだけで簡単になった気がしますが、逆襲に至ってもダンブルドアはヴォルデモートを殺そうとはしないので、彼にはサポートに徹してもらいます。

 実際に闇の帝王と戦うのはホモ君であるため、ここが本チャートの見せ場(一瞬)です。

 

 話が少しずれましたが、結局何が言いたいかと言う話ですが、スリザリン以外の寮ではリドル君と十分な交流ができずにチャートが崩壊します。

 ゴーント家がスリザリン家系であるのは言わずもがななので心配はありませんが、もし組分け帽子が頓珍漢なことを言い出したらその場で破り捨ててあげましょう。

 

「ゴーント・ハワード!」

 

 ホモ君の順番が来ました。

 なんか帽子が考え込んでます。

 

 

 少し待ちそうなので、ハットストールについてお話をば。

 

 ハットストールとは組分け困難者を指す用語で、組分け帽子がホグワーツの各寮に同様に適した性格を持っていると判断したため、組分けに 5 分以上かかった生徒を指します。多くの場合、各個人が持ちうる資質に応じて帽子がそれを判断しますが、それが拮抗している場合は帽子が生徒に選択をゆだねることも確認されています。

 本当の組分け困難者はごく稀で50年に一回程度しか発生しません。実際にそれである事が確認されている生徒はミネルバ・マクゴナガルとピーター・ペティグリューです。前者はグリフィンドールとレイブンクローで、後者はグリフィンドールとスリザリンのハットストールです。

 とは言え、5分もかかる人が珍しいだけで、複数の寮に適性がある事自体はそれほど珍しいことではないらしいです。

 

 ここまで考えればRTAにおけるハットストール調整の利点も自ずと見えてきます。その利点とは、各個人が持つ資質に対応した寮からの好感度補正です。ホグワーツでは授業以外で他寮の生徒と関わる機会はそう多くありません。そのため多くの人と関わる場合はハットストールの調整が不可欠となるわけです。

 本チャートではスリザリン以外の寮生と関わるつもりがないので、わざわざ調整はしていません。手を抜けるところでは手を抜く、それがRTAだ!

 

 

 まーだ時間かかりそうですかねえ?

 

 ゴーント家チャートだから特に寮調整とかしてないんですけど…

 スリザリンに一瞬で決まるはずなんですよね普通は。

 

 もしかして、ガバ?

 やめろやめろやめてくださいお願いします!

 

「――――ならば君が入るべき寮はこれしかあるまい。スリザリン!!」

 

 ふぅ…心臓に悪すぎるぞ~これ

 あやうくリセの危機かと思いましたが問題なしです。

 落ち着いて続きを見ますか。

 

 

「リドル・トム!」

 

「――――スリザリン!」

 

 リドル君も無事にスリザリンに入りました。

 ここでリドル君が他寮に入ってしまった場合、すでに主人公にかかわらない別イベントが進行中の可能性が高いため、問答無用でリセです。無理に続けた結果、リドル君が闇の帝王になりませんでした、とかだったら目も当てられません。

 

 

 この時代のスリザリンの寮監はスラグホーンです。

 上級生になってから彼のイベントで重要なものがあるのでそれまでに優秀さをアピールしておくと後々楽になります。

 まあリドル君が優秀すぎるせいでホモ君の才能も霞んで見えてしまいますが、そのためのゴーント家チャートです。優秀さで目立たなくても保険はあります。リドル君は基本的にパーセルタングを吹聴しませんから、ゴーント家の特徴としてのパーセルタングだけでも人材蒐集家の彼の琴線に触れるだけのレアリティーはあるでしょう。

 どちらにせよスラグホーンは優秀な生徒には甘いので、アピールするに越したことはありません。

 

 

 さてホグワーツではすでに授業が始まって慌ただしい雰囲気です。

 最初の授業はダンブルドアの変身術ですね。猫姉貴の授業と同じく、最初は講義が行われ、授業の後半に課題として「マッチ棒を金属の針へ変える」が出されました。

 もちろんこの程度は余裕です。

 

「おや、ゴーントとリドルはもう出来たのか!素晴らしい!スリザリンに10点!」

 

 この調子で他の教科もぼちぼち頑張りましょう。

 低学年のうちにやることはほぼありません。コネづくりも大事ですが、まずは優秀さのアピールです。そうすれば大抵あちら側から粉をかけに来ます。つまり一年次の成績が出るまでは勉強以外にすることがないんですね。つまり授業に集中します。

 

「あっ、おい待てぃ(江戸っ子)。必要の部屋で特訓しないとか怠惰もいいとこだろ!」

 

 と言う声が聞こえてきますが、現時点でのホモ君では無理です。ダイアゴン横丁での買い物時にダンブルドアが同伴していたので、デミガイズ製透明マントを買えませんでした。

 それ以前にゴーント家チャートは貧乏なので高級品の透明マントは買えません。つまりガバではない(鋼の意思)。

 選択科目による自由時間が発生する3年生以降の探索と、潜伏呪文の習得による夜の探索解禁まで待ちましょう。

 

 と言うわけで見てても仕方ないのでこのまま学年末まで加速です。

 

 

 授業でトムより劣ってしまうのは仕方ありませんが、モブよりは優秀でなければなりません。

 将来はダンブルドアの二重スパイとなるべくホグワーツ教員になりますが、このチャートではそれ以前のキャリアとして魔法省で勤めることになります。出世は早い方が良く、成績が良いほど安定します。

 

 成績に関連して教科の説明に入ります。

 

 ホグワーツの1, 2年生は全員、変身術、呪文学、魔法薬学、魔法史、闇の魔術に対する防衛術、天文学、薬草学の 7つの科目の履修が必要で、これに加えて1年生のみ飛行訓練をとる必要があります。

 3年生からは選択科目として占い学、マグル学、数占い学、魔法生物飼育学、古代ルーン語の中から少なくとも2つの科目を選択することになります。もちろんホモ君はすべては取りません。当たり前だよなぁ?確かに恩恵として得られる「逆転時計」は素晴らしい特典なのですが、使いどころが難しすぎて特別な事情がない限り労力に合いません。詳しくは後ほど。

 5年生学期末では普通魔法レベル試験、通称O.W.L試験を受けることになり、この成績によって応用レベルN.E.W.Tの授業をとることができるようになります。加えて副教科として錬金術などを学べるようにもなります。

 7年生末期では応用魔法レベル試験、通称N.E.W.Tを受けることになります。

 

 O.W.L試験とN.E.W.Tの結果は就活にもろに影響するので頑張ります。RTAやってる時も勉強かよ、しけてんな~。

 

 

 二つの試験は「優・O」「良・E」「可・A」「不可・P」「落第・D」「トロール並み・T」の6段階評価から成り、A以上が合格であり、1科目合格なら1ふくろう、5科目合格なら5ふくろうと数え、魔法使いの優秀さを示す指標となります。受けられる最大科目数は12であるため、理論上最高成績は12ふくろうです。

 

 これからの予定としては「闇の魔術に対する防衛術」「魔法薬学」については「優・O」を必ず取る予定です。その後の進路に影響します。

 他の科目に関して、ホモ君のスペック的に「良・E」は余裕でしょうから、とれるところは「優・O」も目指します。

 

 はい、早くも学年末試験の時期になりました。

 試験の成績は操作キャラの知力ステータス及び各科目の勉強行動の累積時間または習得呪文によって左右されます。それなりに優秀なホモ君には楽勝です。

 

 

 試験の結果はトムが首席、ホモ君は次席でした。

 公式チートに勝てるわけないだろ!いい加減にしろ!

 

 しかし力を入れていただけあって、魔法薬学は一位でした。これがないとRTA走者ご用達の三種の神器の一つが手に入らないからね。

 あとはリトル・ハングルトンに帰るだけです。

 

 

 ハリポタRTA三種の神器に関する話が出ましたが、少し補足を加えます。

 RTAにとって何が大事かという話ですが、これは運の固定化と、時間の短縮に他なりません。それらを達成できるアイテムは、ズバリ「幸運の液体(フェリックス・フェリシス)」「逆転時計(タイムターナー)」です。これらはぶっ壊れアイテムであるため、入手方法が限定されています。

 前者はスラグホーンレベルの魔法薬調合者であっても6か月の醸造期間が必要です。

 後者に至ってはエロイーズ・ミンタンブルの事件から魔法省により使用を制限されています。逆転時計の力は作者の手にも余るほどの力を持っているため、原作軸1996年の6月18日つまり「神秘部の戦い」で全て壊され、運命操作の可能性の削除を試みたことが作者により明かされています。呪いの子?知らない子ですね(痴呆)。

 

 残り一種類については走るRTAの種類やチャートによって結構変動します。よく挙げられるのは「透明マント」「忍びの地図」ですが、チートという意味では「ニワトコの杖」「賢者の石」、お辞儀様抹札に対する短縮要素という意味では「深い闇の秘術」なんかも神器に含まれるかもしれません。

 

 どれも効力が凄まじい分、入手難易度はバグっています。これらがないと倒せない敵ってゲームバランスがおかしいと思うんですけど(正論)。

 

 リドル君と別れて家に着いたら屋敷しもべ妖精のホリー君が迎えてくれました。休暇中は家でひたすら魔法の練習をするだけです。

 

 ちなみに「臭い」についてはパスできます。RTA走者なら誰でも知っている法律の穴を突きます。ンギモヂィィィ!!

 

 ちなみに「臭い」の正式名称は「十七歳未満の者の周囲での魔法行為を嗅ぎ出す呪文」で、その効果は分かりやすく言うと追跡呪文です。

 なんか凄そうな名前ですが、実はこの呪文ガバガバです。思わず「なんだよお前の穴ガバガバじゃねえかよ」と言いたくなるぐらいに簡単に抜くことができます。

 

 というかそのためのホリー君です。愛してるぜ、おじいちゃん!(唐突)

 親愛なるおじい様がホリー君を用意してくれたおかげで、実家では魔法が使い放題になります。

 どういうことかと言いますと、呪文の正式名称をよく確認してください。

 この呪文はあくまで未成年者の周囲で派生した魔法を嗅ぎ出すだけの呪文なので、実家でホモ君が魔法を使っても、無能なお役所の役人にはこの魔法が登録されている屋敷しもべ妖精、すなわちホリー君の魔法であるか、もしくはホモ君の魔法であるかを判別できないわけです。

 実際に正史ではリドル君が5年生の夏季休暇にリトル・ハングルトンを訪れて魔法を使いますが、魔法省はリドル君が魔法を使ったことを認識できていませんでした。

 遠慮せずにたくさん練習してあげましょう。

 

 新学期まではまだまだ時間があります。リトル・ハングルトンのような辺鄙な田舎には誰も訪ねてこないでしょうし、今がチャンス!倍速倍速~!

 

 

 おや、来客を知らせるベルが鳴っていますね。

 おそらくアズカバンで亡くなった父親の関係で役人が来ているのかもしれません。適当にあしらってお帰りいただきましょう。

 

 たしかこの流れPart1でもあったような…(フラグ)

 

 

「やあハワード、元気していたかい?」

 

 なんでダンブルドアが来るんですか(迫真)

 

 

 





やめて!ダンブルドアのGG値が高すぎて開心術を使われたら、この先の結末と繋がってる走者のチャートまで燃え尽きちゃう!

お願い、死なないでホモ君!

あんたが今ここで倒れたら、走者や視聴者さんとの約束はどうなっちゃうの!?

チャンスはまだ残ってる。ここを耐えれば、完走できるんだから!

次回「ホモ君 死す」 デュエルスタンバイ!(大嘘)



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スリザリンの血を継ぐ者

小説パートです。爺じゃないダンブルドアの口調がわからない件について

あっ、そうだ(唐突)
小説内では走者の存在はないものと思ってもらって構いません。
また走者とハワード・ゴーントが別存在であることを考慮した上で、地の文における走者の発言がハワードのものとは必ずしも一致するわけではないことにもご注意ください。
そりゃあ語録を日常で使う奴なんていないからね。


 

善人はこの世で多くの害をなす

彼らがなす最大の害は、人びとを善人と悪人に分けてしまうことだ

――オスカー・ワイルド「ウィンダミア卿夫人の扇」より一部改変――

 

 

 

 

 

「僕は自分が特別だって判っていた」

 

 マグルに紛れて生活する魔法族にはよくある傲慢さだ

 

「僕を困らせる奴には嫌な事が起こるようにできる。僕が望めば傷つける事だって可能だ。」

 

 自分本位で残酷な性質は生来のものだろうか

 

「お前が魔法使いであることをこの場で証明しろ」

 

 他者への不信感、更に強い支配欲、自分が犯した罪に対する反省意識はまるでなし

 

「あなたは必要ない」

 

 ここまで言うか、一瞬で嫌われすぎだろ、わたし

 

 

 

 

 その日ウール孤児院を訪れた彼の心情は察するに余りあるものだった。

 

 孤児院にホグワーツの入学許可証を届け、それに関する案内をした帰り道、ダンブルドアは寂れた村を歩きながら先程の少年のことを思い返していた。

 その子供―トム・リドル―には魔法族としての力が十分に発現していた。そのため魔法学校への入学を勧めにトムが暮らしている孤児院を訪ねたわけだが(マグル生まれや孤児には説明のため教師が直接説明をしに足を運ぶのが普通だ)、結果は惨憺たるものだった。

 トム・リドルと実際に話す前に孤児院の院長から少しばかり話を聞いていたため、ある程度の予想は出来ていたが、まさかこれほどとは。

 ただでさえ昔の友人のことで大変だというのに、少し先の未来を考えるだけで胃が痛い。

 

 

 こうなった要因は様々だろう。

 彼は彼自身が孤児という弱者であるという事実を認めることを嫌がっていた。魔法という力を得た彼が真っ先にしたことは己と他者との区別だったのだろう。凡庸であることを恐れ、他者を信じず自分の力のみを信じ、周りの子供を意識的に虐げることで己が強者であると自分に言い聞かせている。きっと彼だけがすべて悪いわけではない。

 

 だからと言ってそれを野放しにするわけにはいかないのだが。

 彼の性格は些か毒が強すぎる。このままホグワーツで好き勝手することを許すのは、ヤギの群れに空腹のマンティコアを放すようなものだろう。周囲の子が傷つくことがないようにしなければ。

 

 最後に渾身の一撃として放たれた言葉は

 

「――僕は蛇と話せる」

 

 だったか。鼻を明かしてやろうという気持ちが見え透いているのは、まだ可愛げがある行動と言えるのかもしれない。

 

 君は素晴しい才能を持っているね。それで終われたらどれほど気楽なことか。

 付け加えて言うならば、パーセルタング自体は警戒すべきものではない。パーセルタングにも偉大な魔法使いや善良な心の持ち主は存在するし、それ自体が悪に直結するわけではないのだから。

 

 ただ彼の生来の性格とも言うべきものがひたすらに問題なのだ。

 彼の本性についてもどれか1つであれば、ただの個性として処理をしていた。

 しかし、現実は非常である。

 

 彼のこの性格は愛を知らないが故に生じたものなのだろうか。私が言えた義理ではないが、彼はきっと大きな過ちを犯す。他の子のためにも彼には注意すべきだ。

 

 

 パーセルタングと言えば、今年は入学名簿にゴーント家の子も載っていたか。

 きっとトムとも関係があるのだろう。

 

 

 

 

 一度ホグワーツへ帰り、仕事に区切りがつき次第調べてみると、その子供も現在親が不在であると。なるほど純血家系は郵送を用いての報告が通例であるから見逃していたか。

 であれば丁度良い。おそらく案内は必要ないとは思うが、こちらの子供にも興味が湧いた。直接会ってみてみるのも悪くはない。

 少しばかりのため息とともに彼は次の訪問の支度にとりかかった。

 

 

 

 

 

 数日後の昼下がり、額にうっすらと汗を滲ませながら彼は小さな田舎町を独り歩いていた。

 

 

 村の住民に聞き込みをすると、程なくして情報は集まった。

 曰く、村の外れに屋敷があり子供の幽霊が住んでいる

 曰く、そこは昔狂人の住処であった

 曰く、彼らは総じて恐ろしいナニカであった

 

 きっとその場所がゴーント家に違いないだろう。

 村の外れへと向かっていくと、森が見えてきた。近づいてよく見ると、絡み合った木々の中に半分隠れた建物があるのがわかる。家を建てるには不思議な場所だ。それは思っていたよりもずっと寂れた屋敷だった。いやこの場合むしろ小屋と言った方が適切かもしれない。

 

 昔は栄えていた純血一族が今ではこれか。盛者必衰を感じずにはいられなかった。

 

 

 

 小屋の玄関は悪趣味にも死んだヘビが釘付けされている。

 ドアベルを鳴らすと、どうやら玄関を歩いている音がしてきた。少し待てば中から小さな子供が出てくる。

 

「君がハワード・ゴーント君かい?」

 

「はい、そうです。あなたはどちら様ですか?」

 少年は訝しげにダンブルドアに尋ねた

 

「私はアルバス・ダンブルドア。ホグワーツで教鞭をとっている。つまり君の先生ってことになるね。今日は君に入学の案内をするために来たんだ」

 

 少年は得心したようで家の中へと入れてくれた。

 家の中は外観に比べるとキレイに片付いているように思われた。決して豪華ではなくむしろ質素で家具も少ないのだが、誰かが管理しているのだろうか。

 

「君は一人で暮らしているのかい?」

 

「いえ、屋敷しもべ妖精と二人です。ここでお待ちください、今お茶を淹れて来ます」

 

 案内された部屋は客間と言うよりはリビングなのだろう。

 古びたテーブルが置かれている。椅子に座り少し待っていると、少年は冷えた茶を出してきた。

 

「大したおもてなしは出来ませんが、外はまだ暑いでしょう。どうぞお飲み下さい」

 

 

 そんな感じで入学に関する説明を始めることになったわけだが、話を進めていくと気付くことがあった。この少年は根本的にリドルとは違う。

 リドルは面会直後において、その悪辣な性格を隠そうともしなかった。少し懲らしめるつもりで魔法を使い、彼の犯した窃盗について咎め、魔法界のルールを説いたときですら反省する気さえなかったようだった。しかしダンブルドアが魔法界の権力者であることを知れば、わずかに逡巡したものの彼は見事に優等生の仮面をかぶってみせた。

 一方この少年はどうだろうか。不思議なことに感情というものがあまり見られなかった。その少年に子供に特有の活発さはなく、そのみすぼらしさも相まって弱々しく感じられる。

 ゴーント家としての血が原因か、それとも成長する過程で周囲に人がいなかったためか。実情を知ることは叶わないが、ダンブルドアはそれをひどく寂しいものだと思った。

 

 

 二人の少年は愛を知らずに育ち、常に孤独であったという共通点を持っていた。おそらくその体に流れる血も近いのだろう。

 しかしその本質とも言うべき内面には大きな違いが生じている。

 一人は魔法の使い道を自分で生み出した。魔法を用いて弱者を虐めることで相対的に強者へとなった。自分は特別だ、自分こそが特別なのだと増長していき現在の性格へと変わっていく。誰も彼を止められない。だからこそ彼はそのまま成長していった。もちろん元々そのようになる素質があったのだとも考えられるが。

 対してもう一人は本当に孤独だった。誰と関わる事もなく、それ故あまりにも純粋で、どんな些細な影響も受ける透明な真水のようでもある。まだ一度も手をつけられていない、何色にも染まる真白なキャンバスとも言えるかもしれない。そのキャンバスに何を描くか、それを決めるのは彼自身でなければならない。しかしその人生が毒に染まらず、キレイなものを描いてほしいと思うのは間違いなのだろうか。

 

 

 彼らはきっとスリザリンに入る。血筋、才能、性質、様々な要因からそうなることが予想される。私が何もしなければ、ハワードは間違いなくトムの影響を受ける。

 成長して自分だけの芯を持ち、簡単に他人の考えに染まらない程の歳になり、その結果彼が自分の意志で暗い道を歩むとするならば、私がそれに口を出す権利はない。彼の敵として立ちはだかるのみである。

 しかし彼の心はまだ生まれたばかりの赤子にも等しい。それが健やかに成長できるように、そう願うのであれば、少しばかりのお節介は構わないだろう。

 

 

 入学に関する説明が終わると、彼は少し言いづらそうに申し出てきた。

 

「すいません、学用品を揃えられるほどのお金を僕は持っていません」

 

 なるほど、そんなことか

 

「心配いらない。ホグワーツには教科書や制服を買うのに援助の必要な者のための資金がある。ただし君は呪文の本など幾つかを古本で買わなければならないかもしれないよ。」

 

「いえ、親切にありがとうございます」

 

「ダイアゴン横丁という場所で揃えられるのだが...どこに何があるか探すのも私が手伝おう」

 

 そんな話をしてその日はお開きになった。

 

 

 

 

 買物へ行く日になり再びリトル・ハングルトンを訪れれば、既にハワードは出かける準備が出来ていた。

 前回会ったときは感情のない人形のようだったが、今日はどうやら少し緊張しているらしい、顔に少し表れている。

 

「楽しみにしていたかい?」

 

「はい先生。この村を出るのは初めてなもので」

 

 村を出る機会もなく、彼の世界は家の中がすべてだったのだろうか

 

「ならば君はその目で多くのものを見なさい、きっと君の心を育ててくれる」

 

 付き添い姿現しを用いてロンドンの漏れ鍋の前まで移動する。

 はじめて魔法界を訪れるならここからの入場は外せない。きっと彼も喜んでくれるに違いない。

 

 

 こちらの期待通りの反応をしてくれるハワードに自分の顔が自然と綻ぶのを感じながら、魔法使いでにぎわう町へと足を進めた。

 きっと初めて見るこの光景はずっと忘れることのない思い出になるだろう。

 

「さあハワード、ここが魔法使いの町 ダイアゴン横丁だ。学校で必要なものはここで全て買える。案内しよう」

 

 他愛もない話をしながら買い物を始める。途中で休憩としてティータイムをはさみ、二人で鍋、教科書、その他必要な小物、そしてローブを買い進め、最後に向かうのはオリバンダーの店。

 

 

 

「いらっしゃいませ」

 

「久しいね、ギャリック。新入生に杖を見繕ってほしい」

 

 つい10数年ほど前にホグワーツを卒業した店主に声をかける。

 

 杖選びは順調にはいかなかったが、暴発したときの彼の焦りようは実に面白いものだった。無であった少年が新たな経験に戸惑いつつも、それを表に出せているのがわかると、少し安心した。

 

 最終的に店主が取り出したのは、店の奥深くでほこりを被っていた箱だった。

 

「これは私が作ったものではないのですが、誰の手にも渡らず眠っていたのです」

 

 どこか蠱惑的で死の物悲しさを感じさせるような不思議な杖だ。少年が杖を振れば、なるほど、杖の主人が少年以外にあり得ないことがよくわかる。それはおそらく必然とも言うべき運命だったのだろう。

 

「この杖で間違いないでしょう」

 

 店主は続ける。

 

「イチイの木でできた杖にはいくつかの言い伝えがあります」

 

「昏い噂では、闇の魔法使いに多いというものがありますが、それは必ずしも正しくありません。その持ち主に偉大な人物がいたこともまた真実です」

 

「一つ言うことがあるとすれば、あなたが何を成し遂げるのか、稀代の悪人となるかそれとも英雄となるか。それを決めるのはあなた自身です。幸運を祈ります」

 

 

 

 

 家まで少年を送り、さあ解散だ、となるときダンブルドアはふと少年に尋ねた。

 

「君に夢はあるかい?将来やりたいことだ」

 

「夢、ですか」

 

 少年は少し考えているようだった。

 

「夢とよべるものは今は特にありません」

 

 彼の心の中にいまだ他者が存在しないのならば、彼を善悪という価値基準に当てはめるのはあまりにも難しい。彼がどんな道を歩むかはこの時点では全く定まっていない。

 だからこそ、今それをどうしても聞かなければならない気がした。

 

「なんでも構わないさ、友達を作りたい、楽しく生きたい、そんなことでいい。君が思うことを言ってみなさい」

 

 数分の沈黙の後、彼はようやく口を開いた。

 

「すいません僕には少し難しいです、将来を想像するというのは。」

 

「でもこの人生が何か意味のあるものになれば、誰かの役に立つことが出来るならば、きっとそれは...とても幸せなことだと思います。」

 

 答えた少年の頬には赤味がさしていた。

 

 

 

 

 

 彼を再び見たのは組分けの儀式のときであった。

 

 

 彼の組分けは予想していたものよりもずっと長かった。

 

 

 帽子の声が大きかったのか、それとも無意識に帽子の心を覗いてしまったのか

 声が聞こえてくる

 

 

――――その身に流れる血は間違いなくスリザリンを示しているが…君は持つべき資質を備えていない、いわば中身の入っていないグラスだ。しかし裏を返せばそれはどんな者にもなれるという事でもある。

 

 

――――グリフィンドールでは人を助ける勇気を

――――ハッフルパフでは弱者に寄り添える優しさを

――――レイブンクローでは皆が尊敬する叡智を

――――スリザリンでは目的を達するための狡猾さを

 

――――さて君は何を求める?

 

「僕が選ぶのか」

 

――――私が選んでも良いがね。きっと君はどの寮でもうまくやれる、君がその人生を幸せだと思うかは別の話だが

 

「手段を。何かを成し遂げられるだけの力を。」

 

「僕にはまだ目的と思えるものを持っていない。でもそれを成し遂げるための手段はあっても困らないはずだ」

 

――――ほうなるほど、人生に意味を求めると。そのための手段を欲するか。それを野心と呼ばずになんという!ならば君が入るべき寮はこれしかあるまい。

 

「スリザリン!!」

 

――――君はこの世界の行く末すらも選ぶことのできる人間になる、その世界は君の人生の意義そのものだ、だがその道は困難で恐らく君は苦しむだろう。君が何を目的とするか、きっとそこに君の生き方は隠されている。健闘を祈るよ

 

 

 

 

 長い時間だった、もしかすると自分だけがそう感じていたのかもしれない。組分けは次々に進んでいく。スリザリンのテーブルへと目を向ければ、いつの間にか彼は組分けを終えたもう一人の少年と仲良く話している。

 

 

 スリザリンの組分けにはこんな言葉がある

「スリザリンに入れば君は真の友を得る」

 

 他人の人生を無理やり捻じ曲げるような大それたことは私にはできない。であるならば私が願うべきは、彼らが心からの友人となり共に歩んでいくことだ。

 一人が立ち止まれば一人が肩を貸し、一人が道を違えれば一人が正しい道を示す、そんな関係に。一滴の毒がすべてを汚染することもあれば、一滴の毒から薬ができることもまた事実。

 願わくは彼が苦しむことなく健やかに成長できることを。

 

 いつか夢見た決して訪れることのない親友との未来を思い、少し感傷に浸りながらダンブルドアは心に少しばかりの疲れを感じ、目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 新学期が始まれば一年生の生徒だけに目を向けるわけにもいかない。

 二人の少年とは変身術の授業を通してしか関わる事はなく(彼らは優秀な生徒だった)、あっという間に時は過ぎていく。

 ようやく落ち着き、少年らのことを深く考える頃には、すでに夏季休暇であった。

 

 

 彼らはまだ手のかかる子供だ、教師として彼らの歩む道を見届ける必要がある。

 そう考えるも、既に一人に関しては彼が持ちうる手段ではどうにもならないことに気づいた。リドルにはかなり嫌われてしまっている、一人で会っても心を開いてはくれないだろう。

 

 ならばまず優先すべきはもう片方か。

 思い立ったが吉日、ハワードの家に行こう。

 彼が人と触れ合い何を思ったのか、どのように成長しているか、年甲斐もなく気持ちが高揚している自分に驚く。

 

 最近ひそかにマイブームのマグルのお菓子を持っていけば喜んでくれるだろうか。まるで久しぶりに孫に会いに行くおじいさんのようだ、まさかこれが父性か。

 教師としては一人の生徒に対して少々入れ込みすぎているのを自覚しながら心の中で自分を笑い、家を出た。

 




 ダンブルドアは悪人を更生させるよりも、悪人から人を守ることに力を使う。
 それはその時点においては最も確実に周囲を守れる選択だったが、最も正しい選択であったかはわからない。
 少年に寄り添い、道を踏み外すのを防ぐことができればそれ以上のことはない。だが、もし踏み込んでも失敗したらどうなる。彼への対策の薄さが裏目に出れば、結果として更に被害が大きくなるだろう。
 既に彼は古い親友の説得に失敗している。最終的には杖をとり完全に立場を別にすることになった。自分は最も深い仲にあった人でさえ止めることができない。ならばどうして全くの赤の他人を更生するなどと考えられようか。
 彼は他人に踏み込むことを恐れる。自分が最も信用ならない人間である、と自分自身が一番よくわかっているから。それでも動かなければならない。その気持ちの表れが一見中途半端にすら見える彼の行動を起こしているのだろう。
 ダンブルドアはきっと誰よりも臆病だったが、誰よりも正義に責任を持った人間だった。



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Part 3/8 2年生~4年生

誤字報告、お気に入り登録、評価、感想、大変ありがとうございます!
おかげ様で日間ランキングにも載り、励みになっているので初投稿させていただきます(混乱)


 

 一体いつから――――チャート通りに進んでいると錯覚していた?なRTA、もうはじまってる!

 というわけで前回の続きからです。

 

 

 

「やあハワード、元気していたかい?」

  

 あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!(ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!!!!)

 思わず少し漏らしかけた気もしたけれど、私は元気です。

 

 とりあえず悔い改めてから、アイスティーを振舞ってあげます。

 

「いやなに、一人の家では寂しかろうと思ってね。少し様子を見に来たんだ。」

 

 他人の心情を読み取る魔法は開心術と呼ばれますが、ホモ君がダンブルドアに対して開心術をかけることは育成面から考えて不可能です。むしろ術をそのままお返しされてしまうでしょう。

 つまりダンブルドアがホモ君を訪ねた経緯は推測するよりほかはありません。

 

 ええと、原作ではたしかリドルに対しての警戒心が天元突破していましたが…。

 前にも話した気がしますが、この警戒心がウール孤児院でリドルの本性を垣間見たことで生じたことは原作にも書かれている事実です。

 ダンブルドアが現在ホモ君とリドルを結びつけるキーはパーセルタングくらいのものでしょう。チャートによると天性の邪悪さを隠し持つリドル君のみを滅茶苦茶に警戒するはずなんですけどね。

 パーセルタングに対してダンブルドアがどのような認識をしているのか、確認のため原作の文章を引用してきました。

 

「 『いかにも稀有な能力であり闇の魔術に繋がるものと考えられている能力じゃ』

知っての通り偉大にして善良な魔法使いの中にも蛇語使いはいる。ダンブルドアはむしろリドルの残酷さや秘密主義、支配欲というリドルの明白な本能のほうがずっと心配だったとそう言う」

 

 これは少し怪しいラインですね。

 

 

 ……はい、頑張って現実を直視しないようにしていましたが、時間の無駄なので進めます。

 話を総合して推察するにダンブルドアはホモ君の監視のために来たという事でしょう。

 

 そういえば先程ちょろっと開心術の話をしましたが皆さんはこんな話を知っているでしょうか。

 

「優れた開心術士は、呪文も杖も使わずに相手の心に入り込むことができる」

 

 ふざけんじゃねぇよお前これどうしてくれんだ!

 

 はい、実は現在危機的状況に陥っています!どうしたらいいんですかね(無責任)

 目を見られなければ基本セーフではありますが、だからと言って目をそらし続けるわけにもいきません。どちらにせよこの時点で開心術を使ってくるのであれば、実情はどうあれチャートが崩壊するためリセットは不可避です。

 むしろGG値と再走案件であるかの確認のためにも目を見た方がいいかもしれません…。

 悩みどころですね。

 

 ええいままよ!こうなったらこっちから目を合わせてやります。

 見たけりゃ見せてやるよ(震え声)

 

 

 どう、ですかね?大丈夫か大丈夫か?(確認)

 

「どうした、ハワード。私の顔に何かついているかい?」

 

 カスが効かねぇんだよ(無敵)

 つまり今回のダンブルドアの観察結果からわかることは、GG値は少し高くホモ君を警戒しているが、無暗に開心術を使うほど極端に高くはない、という事です。

 

 予定よりGG値が高いことにかなり焦りましたが、考えようによってはかなりの短縮要素になります。GG値の高さはすなわち積極性を意味しますが、GG値が低ければダンブルドアはヴォルデモートの討伐に動いてくれないことを既に話しましたね。逆に言えばGG値が高いほど闇の帝王の迅速な討伐を決断してくれるはずです。

 

「マグルのお菓子を持ってきたんだ、一緒に食べよう。」

 

 なんかお菓子で釣ろうとしているところを見ると、ホモ君を対リドル用の肉壁にしようと画策しているのかもしれません。人間の屑がこの野郎…。

 まあ私としてはその方が都合が良いので構いませんが(人間の屑)。

 

 ダンブルドアが持て来たお菓子は…ブラウニーですか。生地がしっとりしていて、それでいてべたつかないすっきりとした甘さだ。ココアはバンホーテンのものを使用したのかな?(適当)

 イケオジとショタのティータイムなんて見ていてもつまらないので飛ばしましょうか。

 

 

 ダンブルドアが帰ったら呪文練習の続きです。少しでも安定要素を増やしていきます。

 

 

 

 さて2年生になりますが、カットです(無慈悲)。いやほんと1年のころと何も変わらないんで。やることは1年次と同じように適度にリドル君と仲良くして、上級生の知り合いを増やしていくぐらいですかね。という訳で学年末まで倍速倍速。

 

 はい、学年末になりました。試験結果は1年生のころと何も変わりません。

 

 あと、潜伏呪文をもう覚えていましたね。リドル君と一緒に勉強していたからかな?

 そんなわけで来年からは夜の探索も開放されます。

 

 再びリトルハングルトンに帰ったら呪文の練習です。先程と全く同じ流れなので倍速。なんかまたダンブルドアが訪ねてきた気がしますが気のせいでしょう(気のせい)。楽できるところは自動に切り替えます。これがRTAの試行回数を増やす秘訣です。ガバの回数も増えてるって?なんのこったよ(すっとぼけ)

 

 時が流れるのは早いものでもう3年生です。

 

 ここで小ネタですが、3年生ごろからダイアゴン横丁での買い物が解放されます。お金持ちの家に生まれているならば学年に関係なく自由な買い物ができますが、普通の学生は学業以外のものを買うほどのお金を持ち合わせていないことが大半です。3年生以降、能力の上昇によりステータスによっては学内での内職でお小遣い稼ぎが可能になっているため、様々なものを入手することができるのです。流石に新型の箒などの高級品には手が出ませんが、あまり質の良くないデミガイズ製の透明マント程度ならば頑張れば入手できるはずです。

 ですが、今回は必要なさそうですね。既に潜伏呪文を覚えているので透明マントの出番はなさそうです。本チャートではあまり役に立たなそうな透明マントですが、それでも学外などの魔法を使えない状況下で潜伏する際はとても有能なアイテムです。

 

 

 ホモ君やリドル君も成長してきました。そろそろ仲間内で闇の魔術の練習が始まる頃でしょうか。リドル君との魔法練習は闇の魔術に対して補正がつきます。

 というわけで積極的に絡んでいきましょう。俺も仲間に入れてくれよ~(マジキチスマイル)

 

 ちなみに同学年のネームドキャラにはエイブリー、レストレンジ、ロジエール、マルシベール、ノットなどの、通称リドル君のお友達(笑)がいます。少し学年をずらせばマルフォイにブラックなど錚々たる面子です。彼らは家柄は優秀ですが所詮リドル君の手駒でしかないので、彼らのようなネームドモブと同レベルでは全くダメです。

 併せて付け加えると、彼らは後の死喰い人の前身組織として「ヴァルプルギスの騎士」とかいうグループを名乗ります。ヴァルプルギスの夜(Night)と騎士(Knight)をかけたリドル君渾身の激ウマギャグです。笑ってあげましょう。

 ここぞというときにギャグセンスが光るところもお辞儀様の魅力の一つですね。

 

 

 一つ前のpartで触れましたが、今回から選択科目を少なくとも2つとることになります。

 

「逆転時計」はスルーだ!「逆転時計」はうまく使いこなせればいいアイテムなんですけどね、本チャートの決着まであと30~40年ある事を考えると今無理して短縮する必要はないんですね。少しの安定のために最大で12教科もとるのはさすがに労力に見合ってないし、むしろ空きコマがなくなって自習できないとかだったら本末転倒です。チャート上絶対に必要であるとき以外は使わない方がいいでしょう。

 

 

 今回履修するのは「数占い」と「占い学」です。

「数占い」は知力ステータスに補正がかかるため履修しますが、もう一つは何でもいいです。

「マグル学」は純血一家に生まれたゴーント君には不適。選択肢からは除外します。

「魔法生物飼育学」についてですが、この時期の担当教授はケトルバーン兄貴です。魔法生物学に関してはよくハグリッドの暴走が話題になりますが、ケトルバーンはその比ではありません。彼は、研究し世話をしていた危険な生き物への深い愛が、彼自身、そして時には他人に重傷を負わせ、学校勤務中に62回もの保護観察期間が課せられた、という猛者です。クビだクビだクビだ!とはなりません。不思議ですねぇ。

 つまり、ケトルバーンの授業なんか受けていたら、いつリセの危機が訪れてもおかしくありません。RTA走者としてはここでわざわざ運試しする必要は、ないです。

 ところで今年はハグリッドが入学する年ですが、大丈夫ですかね。ハグリッドが3年次に退学しなかった場合、ホグワーツが魔法生物で滅茶苦茶になりそうです。

 

 話がずれたので戻します。

 

「古代ルーン文字学」の履修メリットは古の魔法の習得率に補正がかかるというものです。本チャートには関係ありません。

 消去法で残った「占い学」ですが、原作ではとんでもなく評判が悪く、あのハーマイオニー姉貴ですら履修を途中で断念するほどの教科です。しかし、この時代の教授はトレローニーではないので比較的マシな授業になるでしょう。しかも他の教科より単位をとるのが簡単そうですね(優をとれるとは言っていない)。場合によっては本RTAの今後の運なんかも占えるかもしれませんから損にはならないでしょう。

 

 履修科目を決定しましたが、ここで朗報です。

 授業の空きコマ及び夜の時間を利用して必要の部屋特訓を解禁します。

 ようやく様々な呪文の練習ができるようになりますね。

 はじめのうちはリドル君に部屋の存在と使い方に関して気づかれてはいけません。見つかってしまうと、リドル君の呪文習得率がえげつないことになり、最悪倒せなくなります。

 授業が始まったらストーキングに気を付けて早速使いましょう。イクゾー! デッデッデデデデ

 

「必要の部屋」は別名「あったりなかったり部屋」と呼ばれるホグワーツの隠し部屋です。

 出現方法は天文台棟8階の廊下で自分が必要だと感じるものを強く思い浮かべながら3回往復することです。

 必要の部屋を用いた呪文練習で習得する予定の魔法を下に列挙します。

「閉心術」「開心術」「忘却術」「錯乱の呪文」「服従の呪文」「悪霊の火」「各種防衛術呪文」です。

「閉心術」はもちろんリドルとダンブルドア対策です。開心術をかけられた瞬間すべてがパーなので油断しないようにしましょう。

「開心術」「忘却術」「錯乱の呪文」「服従の呪文」は精神に作用し、「悪霊の火」は分霊箱すら破壊する最強の魔法です。どちらも本チャートを走る上で最重要呪文ですのでしっかり練習しておきます。

「各種防衛術呪文」については、普段使い用です。流石に闇の魔術は日常では使い勝手が悪すぎますし、一応教師志望ですからね。

 あっ、そうだ(唐突)呪文ではありませんが、ここでは魔法薬学の練習も入れておかなければなりませんね。材料は必要の部屋由来のものであるため、外に持ち出すことは出来ませんが、希少な材料の入手を気にする必要なく練習できますので。

 

 育成方針を説明し終えたところで、ホモ君が必要の部屋がある階の左の通路に到着しました。目印はバカのバーナバスがトロールにバレエを教えている絵が描かれたタペストリーの向かい側です。

 では3回繰り返しましょう。3回だよ、3回。

 

「閉心術練習に向いている部屋で、自分以外の人間が侵入しない部屋」「閉心術練習に向いている部屋で、自分以外の人間が侵入しない部屋」「閉心術練習に向いている部屋で、自分以外の人間が侵入しない部屋」

 

 はい、部屋が出現しましたね。おっ、開いてんじゃ~ん!ということでお邪魔します。

 

 ホモ君が特訓をしている間に、必要の部屋について補足しておきますか。

 

 必要の部屋はその特性と使用難易度の低さからRTAではほぼ確実にチャートに組み込まれます。部屋の仕掛けは古の魔法によるものなので、大抵の無茶ぶりや要求にも応えてくれる素晴らしい場所です。

 しかし同時に注意も必要です。必要の部屋はその特性まで知っている人は少ないですが、存在自体はかなりの人間に知れ渡っています。

 どういうことかと言いますと、この部屋はかなり切実に必要なものを思い浮かべなければ出現しない仕様であるからこそ、発見者が再び必要の部屋を訪れる場合は「前回出現した部屋に再び入りたい」などの希望を出すことになります。この結果、普通の発見者は必要の部屋が希望に応じて姿を変える可能性に行き当たることはなくなるという訳です。

 

 繰り返しになりますが部屋から出るときは、人との接触に気を配ることを忘れずに。

 

「閉心術」がある程度形になったら他の呪文の練習も始めていきます。

 新要素の紹介も終わったので再び加速です。こいついつも加速してんな(手抜き)

 

 

「ハワード、この後時間空いているかい?」

 

 また君か壊れるなぁ。ダンブルドアが変身術の授業後に話しかけて来ました。どしたん話聞こうか?

 

「学校生活を楽しんでるか、聞きたくなってね。奥の部屋が空いてるからそっちを使おう」

 

 特に言うべきこともないんでお菓子を食べながら適当に話します。現時点においてはホモ君がリドル君を危険に思う正当な理由はないので友情アピールをするのが妥当でしょうか。GG値が上がりすぎても困るのでマイナスの話題は一切なしにしておきます。

 

「来たくなったらいつでも遊びに来るといい。」

 

 おっ、そうだな。じゃあ俺、飴もらって帰るから。

 学生時代にダンブルドアと関わる予定はあまりないですが、これでいつでも会えるようになりました。一応頭の隅にでも覚えておきます。

 

 

 そんなこんなでまた学期末試験の時期がやってきました。

 必要の部屋特訓も解禁されているため、ホモ君の才能を考慮すると、防衛術に関しては上級生も含め既にホグワーツの大半よりも優秀ではないでしょうか。リドル君には負けるんですけどね(諦め)

 

 パパっと試験をおわらせたら結果を確認。

 魔法薬学のみ1位でした。6年生まではこの成績を維持する必要があります。

 

 

 

 さて、4年生になりました。

 長期休暇はどうしたのかって?加速だよ、当たり前だろ!

 

 今年のイベントは「スラグクラブ」ですね。

 上級生になったことで誘われます。スラグホーンは魔法省就職のためのコネ要員です。

 

 スラグホーンの人物データを見てみましょう。

 彼は非常に俗物的な人物で、著名な人物や特別な才能を持つもの、または将来的に期待できる人間と関係を結ぶことを至上の喜びとする人材マニアです。また優れた魔法薬学者かつ閉心術士で、その強力な閉心術によって閉じられた心はダンブルドアでさえ覗くことができません。お前意外とやるな(賞賛)。また闇の魔術にも深い造詣があり、あの分霊箱の知識すら持っています。お前何者だよ、いやほんとに。

 ホモ君レベルの優秀さなら風聞が悪くない限り声がかかるでしょう。

 適当に時間をつぶして仲良くなります。彼の好感度を最も簡単に稼ぐ方法は定期的に砂糖漬けパイナップルや高級ワインを贈る事です。

 

「ゴーント家はたしか生まれつきパーセルタングらしいじゃないか」

 

 スラグクラブにてスラグホーンがホモ君に話しかけてますが、同時にリドル君も少し反応しています。自分の出生に関連していそうな情報ですから、彼としては是が非でも知りたい情報でしょう。リドル君が自分の魔法族としての血筋に気づくと、親族のホモ君に対して更に親近感を持つようになるので、それに関するイベントが近々発生するかもしれません。

 

 

「最近ダンブルドアによく呼び出される。僕のことをかなり警戒しているみたいだ」

 

 リドル君に対するダンブルドアの監視もかなり強くなってるみたいですね。

 きっと愛に関しての個人授業もされているはずです。

 おっ、大丈夫か大丈夫か?とか言って慰めてあげましょう。

 

 あえて触れなかったんですが、実はホモ君もあの呼び出し以降もちょくちょくダンブルドアに呼び出されています。リドル君とは違って授業をするわけでもなく、お菓子を食べながら世間話をしているだけなんですけどね。

 やはりホモ君を懐柔することにした説が濃厚ですが、二重スパイチャートとしては特にデメリットもないのでそのまま続行だ!

 

 

 再び学年末です。結果は前回と変化がないので省略。

 

 

 

 特に進展はありませんが長くなったので今回はここまで。

 ご視聴ありがとうございました。

 



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Part 4/8 5年生~7年生

初投稿です(挨拶)


 

 いつかは終われるといいなぁ…なRTA、続けていきます。

 

 

 5年生になりました。

 今年のイベントで重要なものは二つあり、まず一つ目は「秘密の部屋事件」です。

 

 授業を終えてトイレへ向かうマートルは、疲れからか、不幸にも黒塗りの高級蛇に追突してしまう。怪物をかばいすべての責任を負ったハグリッドに対し、学校の主、ディペット校長が言い渡した示談の条件とは…

 

 というのがこの事件の概要になりますが、「秘密の部屋事件」により連鎖して発生するイベントには「マートル死亡」「ハグリッド退学」「最初の分霊箱作成」などがあります。前から2つのイベントに関してはGG値の上昇に必要なキーで、最後の一つ「分霊箱の作成」はヴォルデモート弱体化のために必要となります。

 

 ダンブルドアがいるホグワーツで殺人事件を起こすとかリドル君はバカかな?(直球)

 きっと若気の至りでしょうが、その中二病精神は見事デジタルタトゥーとして日記帳に残ります。普通の人だったら恥ずかしくて死にたくなるよね。でも大丈夫、闇の帝王は普通ではないのでその中二精神は年をとるごとに磨きがかかっていきます。

 

 ホモ君の今年の立ち回りですが、先に述べたように秘密の部屋の発見や事件そのものには直接関わりません。しかし、このままでは事件がリドル君によって起こされたものだということが誰にも明かされないままになり、リドル君の秘密主義が更に加速してしまいます。

 これを防ぐためにはある程度の親密度を獲得したうえで、某頭脳は大人な小学生探偵ばりの推理を披露する必要があります。自白まで引き出す必要はなく、こちらはお前のした事を理解しているぞ、という事が示せれば十分です。親密度については、既にある程度の関係を築いていることに加え、パーセルタングという秘密の部屋を開くことのできるスリザリンの血を引いていることもあり、心配はいりません。

 

 もう一つのイベントは「O.W.L試験」ですが、ほとんどここで今後のキャリアが決定するといっても過言ではないので全力で頑張ります。ホモ君の能力なら次席程度は余裕で行けるとは思いますが、油断は禁物です。育成状況を考慮しながら必要の部屋特訓を一時的に休止する場合もあるかもしれません。

 

 O.W.L試験の話が出始めたところでおそらく就職に関する話も仲間内でされるようになるでしょう。リドル君は心の中では闇の魔術に対する防衛術の教授のポジションを狙っています。ですが本チャートでその座に就くのはホモ君と決まっているので、哀れリドル君には闇の帝王を勧めてあげましょう(そんな職業はない)きっと彼の琴線にも響いてくれるはずです。

 ただしこの段階でホモ君がホグワーツで働くことは明かさないことに注意です。時期を待たないと二重スパイになれないからね。

 

 

 

 おっ、決闘イベントが発生しました。これは魔法練習を進めていればある程度の確率で起こるイベントです。

 リドル君がチート級の強さである事はさんざん話した気がしますが、視聴者の皆さんにはこの時点でどの程度強いのかがあまり伝わっていないでしょう。ちょうどよい機会なのでホモ君が現時点でどれだけリドル君に対抗できるか見ていこうと思います。

 あっ、そうだ(唐突)リドル君と決闘する際は必ず事前にレギュレーションを決めてからやりましょう。今回の決闘では使用できる魔法を防衛術及びその他授業で習ったもののみとします。そうじゃないとどんな危険な呪文をかけてくるかわからないので。

 ちなみにこの条件の場合、おそらくホモ君はリドル君相手でもかなり粘ることができるはずです。リドル君の強さの秘訣は圧倒的な魔法力及びそこから放たれる強力な呪文によるところが大きく、呪文をルールで縛ってさえしまえば勝敗はほぼセンスによって決まります。幾度となく決闘を制してきたRTA走者の腕の見せどころじゃい!

 

「決闘は作法通りにやろう。まずはお辞儀、それから三秒経ったら開始だ」

 

 オッスお願いしま~す。

さん…に…いt「エクスペリアームス 武器よ去れ!」「プロテゴ 護れ!」

 

 残念、フライング奇襲は失敗のようです。

 

「へえ、勝つためには手段を選ばないってわけか」

 

 というわけで仕切り直しです。真面目にやりますか。

 はい、よーいスタート(棒読み)

 

「君がそのつもりならこっちだって本気で行くよっ!」

 

 おう打ってこい打ってこい(強者の余裕)。

 

 リドル君は流石の勢いで呪文を放ってきています。

 基本的にこの年になると決闘に用いる呪文はほとんど無言呪文です。魔法の撃ち合いにおいて有言呪文なんていい的でしかないので優先すべきは速攻性になります。そこで決定的な隙ができたときなどは有言呪文を使うことで威力を高めた魔法を放ち、決着をつけるといったものが一番スタンダードな戦い方でしょう。

 ちなみに自分より強い相手との決闘時、呪文を呪文で相殺し杖を繋げる時はなるべく早めに繋がりを切った方がいいです。魔法力の強さがもろに均衡に影響を与えてしまうからですね。ここに関してはプレイヤースキルでは如何ともし難い部分です。

 

 爆破、粉砕、失神、切断 etc...

 あの、ちょっと殺意高すぎませんかね?もしかしてズルしたこと怒ってます?

 

「いいやそんなことないさ!そもそも君はこの程度じゃくたばらないだろっ!」

 

 いやそういう問題じゃないんですけど(呆れ)。

 避ける相殺守る避ける防ぐ打つ……

 

 こちらも黙ってやられるわけにはいきませんが、このままでは埒が明きません。

 打開策としてまずはリドル君の足元めがけて呪文を打ちます。

 コンフリンゴ 爆発せよ!

 これによりフィールドを破壊、対象の動きを制限できます。さらにこれにより生じた瓦礫は障害物のみならず目くらましと呪文に対するデコイとしても働かせることができます。

 マメ知識ですが、魔法そのものに攻撃力が内包されているような呪文は意外と物理的に防ぐことが出来たりします。例えば死の呪いなんかの対処法はもろにそれを用いることが多いです。当たらなければどうということはないのだよ!

 

 更に妨害呪文を追加していきます。

 オブスキューロ 目隠し! 

 グリセオ 滑れ!

 これで体の自由は奪ったも同然よ!

 

 最後は爆破によって生じた大小様々な瓦礫に呪文をかけてフィニッシュだ!

 オパグノ 襲え!

 

 多くの瓦礫が弾丸のようなスピードでリドル君に降り注いでいきます。

 

「プロテゴ 護れ!」

 

 なんで杖の一振りで全部防げるんですか、強すぎて頭にきますよ!

 

 再び無言呪文の撃ち合いに戻りましたが、先程よりも均衡がだいぶリドル君の方に傾いてきました。再びなんらかの打開策を考えなければこのまま押し切られるか、奇策によって足を掬われ大きな隙を晒すことになるでしょう。ならば一体どうするか…。

 ファッ!?なんで足元にこんな大きな石が――⦅これによりフィールドを破壊、対象の動きを制限できます⦆――あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛も゛う゛や゛だ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!

 

「インセンディオ 燃えよ!」

 

 アツゥイ!これはアカン!

 まさか自分の策に足を掬われ隙を晒すことになるとは思いもよりませんでした。

 フィールドに作用する系統の魔法は盾の呪文では防げません。

 つまりこの場で選択する呪文は終了呪文一択です。

 

 フィニーt――「インペディメンタ 妨害せよ!」

 

 あっこれは……間に合わなくなっても知らんぞーっ!(手遅れ)

 

「デパルソ 吹き飛べ!」

 

 ちーん()

 ホモ君が後方の壁に叩きつけられてしまいました。これはもうその場から一歩も動けませんね。

 

「僕の勝ち、かな?」

 

 まだ終わっちゃいねえ!最後っ屁に一発くらいな!

 アクシオ 瓦礫よ、来い!

 

「―――ぐはっ」

 

 リドル君が後ろから急接近する瓦礫に気付かずに吹き飛んでいきました。

 まるで転生トラックだぁ。

 

 生きてる^~↑(略)ああ^~生きてるよぉ~!すっげえキツかったゾ~。

 試合には負けたけど勝負には勝ったので実質引きわけです(ゆで理論)。

 

「アッハッハッハ、流石ハワードだ。まさか最後油断したときにやってくるなんて」

 

 まあ今回のような結果を出せたのはレギュレーションを縛っているからに他なりません。闇の魔術あり、殺傷性の考慮の必要なし、となったら一発食らっただけでお陀仏でしょう。まあそれでもRTA走者の底意地を見せられて良かったです。これって、勲章ですよ…?

 

「こんな清々しい気分はなんだか初めてだ…」

 

 最後が気持ちよかったな(小並感)

 

「なあ、ハワード。僕たちは似た者同士だと思わないかい?」

 

 なんだか河川敷で殴り合った高校生みたいな会話ですね(直喩)

 

「スリザリンの遺産を調べているうちに自分の出生に心当たりがついてね」

 

「どうやら僕の母は君の叔母にあたる人物らしい、つまり君と僕は親戚だったわけだ。父親は調べてもわからなかったが、片親がわからないといった意味でも君と僕は似ているな」

 

 出生に関するカミングアウトですか。この時期のリドル君はすでに自身が半純血であることを知っているはずですが、流石にそれは隠していますね。ちょうどホモ君の母親も身元が不明ですから、これ幸いと誤魔化すつもりのようです。それでもある程度は打ち明けてくれていることから、リドル君の好感度はなかなかのものではないでしょうか。

 

「ちなみに見つけた遺産は秘密の部屋だよ、僕はスリザリンの後継者だ」

 

 これは恐らく名探偵の出番はありませんね。勝手に自爆してくれそうです。まあいい機会なのでゴーント家の秘宝であるカドマスの指輪を彼に譲りましょう。君の方がこれを持つに相応しい、とか言えば彼の好感度も上がるし、闇の帝王についても、魔法界の王になれるのは君だけだ、と煽てることで更にやる気になってくれるでしょう。

 

「これからはこう名乗ることにしよう」

 リドル君が杖で文字を宙に書いた後、それを動かしてみせました。

 

 

TOM MARVOLO RIDDLE(トム・マールヴォロ・リドル)

I AM LORD VOLDEMORT(私はヴォルデモート卿だ)

 

 

 

 

 

 遂に秘密の部屋が開かれ、最初の犠牲者が石となって発見されました。犠牲者が出ても人が死なない限りホグワーツは休校になりません。どうなってんだこの学校(正論)

 さらに進展があるまで倍速です。

 

 

 6月になりました。

 もちろん未だ事件を起こした怪物は見つかっていません。ホグワーツは隠蔽気質であるため、事件は外に公表されず試験も通常通り行われます。という訳でO.W.L試験を頑張っていきましょう。

 

 はい、結果が出ました。受講科目すべて「優・O」です。これで就活も余裕よ!

 

 

 6月13日、ついに秘密の部屋事件は女子生徒が死亡する事態にまで発展してしまいました。

 

 犯人が見つからない限りホグワーツが閉鎖されるという噂を聞いたリドル君が絶望していますね。まあ自業自得ってやつですよ。ここで特に手助けする必要はありません。

 リドル君はアクロマンチュラを秘密裏に飼育していたハグリッドに事件の全責任を負わせ、彼を犯人とすることで華麗にこの事態を回避します。誰か一人ぐらい、ハグリッドがスリザリンの継承者では有り得ないことに気付かなかったんですかね、きっとリドル君も簡単にことが進んで拍子抜けしていることでしょう。

 ですがガバガバすぎる計画なので他の人は騙せてもダンブルドアの目は欺けません。結果としてリドル君はホグワーツ在学中は派手に動けなくなります。それを惜しく思った彼は、日記に自身の魂を封じて分霊箱とすることで自身の成果を後世に継ごうとします。分霊箱の確認はさすがにできませんが、ここまで事件が起これば予定調和です。そのうち作成することになるでしょう。

 

 めでたく事件を解決したリドル君がホグワーツ特別功労賞をいただいたところで5年生は終わりです。

 

 

 帰りのホグワーツ特急内では秘密の部屋事件の真相に関する推理をリドル君に披露します。といっても今回は既にリドル君本人から部屋を開いたのが自分であることを明かされているので、ほとんど手間ではないです。

 

「なんだいハワード、僕に聞きたいことがあるって?」

 

 おうリドル君よぉ、今年の事件、おまえだろ?

 あぁいいっていいって。別に真相を探ろうってわけじゃねぇ...

 もっと他のやり方があったんじゃねえかって言いてぇだけだ。

 

「確かにそうだな。君の言う通り僕は少し功を焦りすぎていたようだ」

 

 これでリドル君もこちらを共犯者だと認めてくれるはずです。もしものためにお互い言質を取らないような会話をしています。

 

 

 長期休暇になりました。

 

 案の定今年もダンブルドアが訪ねて来ましたが、今回はその訪問を利用します。

 チャートには書いていませんが、柔軟に対応して最速や安定を狙うこともRTA走者の義務です。まずはアイスティーを振舞い、お菓子をつまみながら話も盛り上がってきたところで爆弾を投下!

 今年、死亡事件あったじゃないですか。あのー、多分リドル君が犯人だと思うんですけど(名推理)どうすっかな~俺もな~。つーかあいつ絶対近い将来やらかしますよ(予言者)やべえよ…やべえよ…

 あくまで可能性でしかないという事を念頭に置きつつも、リドル君の行動に疑問を持ち彼を危険視しているというアピールをすることで、のちの二重スパイへの道がスムーズになってくれるはずです。

 

 

 ゴーント家チャート以外であれば5年生の休暇中にリドル家が壊滅するはずですが、このチャートではそうはなりません。ゴーント家の生き残りがホモ君しかいないことはリドル君もわかっているので、わざわざ情報を求めてリトル・ハングルトンに来ることがないんですね。

 もしかしたら卒業後にリドル君がリドル家を発見し殺害することがあるかもしれませんが、誤差だよ誤差。ホモ君には関係ないです。

 

 

 

 6年生になりました。

 

 今年から選択できる副教科ですが、「応用数秘術」「錬金術」「古の魔術」「姿現し」の四教科が存在し、その年の需要によって開講されるかが決まります。

 ホモ君が受講するのは「応用数秘術」「姿現し」です。

「応用数秘術」は「数占い学」の発展教科であるため、こちらも同様に知力ステータスに補正がかかるため受講します。ここまで来ると補正なんてぶっちゃけ誤差程度ですが、授業を受けても損はないでしょう。

「姿現し」は移動手段としても戦闘補助魔法としても滅茶苦茶優秀なので絶対にとります。ホモ君なら自力で習得することは可能ですが、わざわざ法律違反をする意味もないので授業内でライセンスを取得します。

 

 

 さらに今年は「幸運の液体」入手イベントが発生する年でもあります。

 このイベントはO.W.L試験を乗り越え、上級魔法学を受講することを許された優秀な生徒のみに与えられる挑戦権のようなもので、6年次の魔法薬学の教授がスラグホーンであるときにほぼ必ず発生します。

 作る魔法薬は教科書の中からランダムで選ばれますが、スラグホーンは最初は誰にも完璧を期待していないため、受講者の中で最も優れたものを作り出すことができれば構いません。更に授業時間内に完成させる必要があるため、選ばれる魔法薬の選択肢をかなり絞ることができるでしょう。

 ホモ君はすでに短時間で作ることのできる上級魔法薬は必要の部屋でマスターしています。何も問題はありません。

 

 得られる入手アイテムについても詳しく見ていきます。

 幸運の液体とは極低確率の運要素すらも味方につける超有用アイテムです。

 

 その魔法薬の効能は「限られた時間内で服用者に幸運をもたらし、その間服用者のポテンシャル内で成功する可能性のあるすべての事象についてその発生を確定させる。摂取量が多ければ多いほどその幸運は長く続く」とあります。

 

 幸運の液体は服用者に新たな力を与えているわけではありません。つまり服用者本人が持つ力では成し遂げることができない事象については、幸運の液体を服用したところで実現できません。

 例えばホモ君が決闘において闇の帝王に勝利することは、ホモ君の持ちうる全ての力を持ってしても無理であるため、幸運の液体を服用したとしても単独で勝利することは万に一つもありません。

 しかし、望む事象を「お辞儀様が放った死の呪いを一度だけ避ける」とするならどうでしょうか。これなら起こり得ない確率ではないでしょう?幸運の液体を服用することでこれらの可能性として起こり得る事象を確定して起こすことができます。実際に原作6巻「謎のプリンス」における天文塔の戦いでは、ロン、ジニー、ハーマイオニーの3人は予め幸運の液体を服用することで、死喰い人が放った死の呪いを含む多くの呪文を無傷で躱しています。

 流石に「お辞儀様の放つ魔法をすべて避ける」という事象はホモ君の力では不可能ですが、これも場を整えてあげて実現する可能性を少しでも出してあげれば、薬の効果が勝手にその事象を引き起こしてくれるようになるわけです。

 チャートがちゃーんとしているほど結果は出てくるってことですね。

 

 しかしこの超有用アイテムにも注意すべき点は2つ存在します。

 1つは大量に服用すると多幸感に包まれすぎて、運ではカバーができないガバが生じてしまうことです。RTA走者の中に運に頼り切るような愚か者はいないと思いますが、用法・容量を守って安全に使用しましょう。

 2つ目の注意点は、予期せぬ幸福により多少チャートの変動が起きる可能性がある事ですかね。これに関してはあまり起きませんし、たとえ起こってしまったとしても、基本的に服用者の不利になる事は起きませんので、高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に対応していきます。

 

 今回の調合薬は原作でお馴染みの「生ける屍の水薬」でした。調合は危うげなく成功しています。力を入れて取り組んできた甲斐があったというものです。

 

「おめでとう。幸運の液体は君のものだ。上手に使いなさい。」

 

 リドル君が少しもの欲しそうな顔をしていますが、無視だ無視!

 ホモ君がいなければおそらくリドル君が手に入れていたでしょう。使い道はスラグホーンに分霊箱について尋ねるときでしょうか。こちらとしても分霊箱は作ってもらった方が都合が良いので、「どんな効果があるのか自分も試してみたい」などとリドル君に言われたら一滴ほど融通してあげましょう。

 

 

 

 さて、ついに青春時代の最後を飾る7年生になりました。

 イベントは「N.E.W.T」及び「就職」です。

 

 5月から6月にかけて実施されるN.E.W.T(Nastily Exhausting Wizarding Test)通称いもり試験とは、名前の通り「滅茶苦茶疲れる」ほどの難易度を持つ試験で、要求されるレベルがとても高いことで知られています。

 有名な呪文には「盾の呪文」「変幻自在術」「守護霊の呪文」、魔法薬では「魅惑万能薬」「幸運の液体」「真実薬」があります。未来では「ダンブルドア軍団」なるものがこれらの呪文をいとも簡単に唱えていますが、魔法薬のラインナップを見るとかなり難しい基準であることが伺えます。つまり最優秀の成績をとるのはかなり難しいという事です。

 

 ですが、ホモ君は難なくクリア。

 という事で試験は終わり!閉廷!…以上!皆解散!

 

 就職についてですが、ホモ君の志望は前にも述べた通り魔法省です。

 

 おや、ダンブルドアが何の用ですかね。

 

「ハワード、もう就職は決まっているのかい?もし行きたいところがなかったら、ホグワーツで教鞭をとるのもいいだろう」

 

 これはまさかダンブルドア側から二重スパイを提案してくれているのでしょうか。

 しかし、残念。準備が全く足りてないので、この時点で二重スパイになったところでチャートの短縮はおろか、完走すらできないでしょう。今はやりたいことがあるので10年ほど経ったらまた来ます、って伝えます。

 

「そうかそうか、やりたいことが見つかったのか。それはめでたい!」

 

 おっ、そうだな(適当)

 そういえば杖はまだニワトコに変わっていません。おそらくグリンデルバルドとの決闘もあと数か月後には起こるはずでしょう。頑張ってほしいですね(他人事)

 

 

 

 他の同級生も続々と就職先が決まっていってます。

 正史ではホグワーツ教授志望でありながらボージン・アンド・バークスで勤めたリドル君ですが、他に道がなかったわけではありません。事実、スラグホーン含む多くの教授から魔法省への推薦をもらっていたらしいのですが、彼はすべて断ったそうです。

 

 今回もそうだと思いますが、念のためリドル君に進路を確認しておきます。

 リドル君、君これからなんか予定ある?

 

「ちょっと調べたいものがあってね、旅に出ようと思っているけど」

 

 ほーん。

 最初の旅の行き先はきっとアルバニアでしょうか。その後はきっとボージン・アンド・バークスで働くと思われますが、ボージン・アンド・バークスはホグワーツ主席が行くとこじゃねえよな?

 ともかくこれで10年ほどはリドル君と会うこともないでしょう。

 

「ハワードはどうするんだい?」

 

 とりあえず魔法省の国際魔法協力部で出世を目指すという形になりますかね。お辞儀様を殺害するという崇高な目的のためにもこれは外すことは出来ません。

 

 

 振り返ってみると、ホグワーツの7年間は大した事件もなく無事に終わりましたね。

 まあ自分から事件に首を突っ込まない限りこんなものでしょう。毎年事件が起きた1990年代がおかしいだけです。あんなことが毎回起こってたまるかってもんですよ。

 

 

 そんなわけでお世話になった教師陣にお礼を言って卒業です。

 

 

 リドル君との青春物語に一区切りついたところで今回はおしまい。

 ご視聴ありがとうございました。

 



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果たされぬ誓い

小説パートです。


 

人生で本当に重要な瞬間は、手遅れになるまでわからない

――アガサ・クリスティ――

 

 

 

 

 

「他のコンパートメントが空いてないんだ、ここ入ってもいい?」

 

 その日少年と出会ったのはきっと運命だった。

 

 そいつの第一印象はあまりにも平凡な雰囲気の少年だった。緊張しているのだろうか、かなり静かなやつだ。まあ僕自身もそんなに騒ぐタイプの人間ではないから有難い話ではあったのだが。

 初めて話す同年代の魔法使いであったからそれなりに話は盛り上がったが、そのときはそいつが自分に相応しい人間だとは思えなかった。

 しかし驚くべきことになんとソイツも蛇と話せるらしい。

 やはりあのいけ好かない教授の言っていた事は正しかったのか。蛇語はあまり特別な能力という訳ではないのだろう、第一村人が特殊だと考えるよりはそちらの方が確率は高い。

 少し残念な気持ちを覚えつつも、これからの生活を考えれば胸は膨らむばかりだった。

 

 

 スリザリンへと組分けされ、学校生活を過ごしていくうちにある事実に気が付いた。

 あの糞爺、嘘をつきやがった。なーにが「稀ではあるがいないことはない」だ。あんなに人数がいるのにハワード以外に蛇語を話せそうな奴なんていないじゃないか!

 ダンブルドアに嘘をつかれた(嘘ではない)のは癪だったが、自分が特別であることの証だと思えばむしろ胸はすっきりした。

 

 ハワードは自分には一歩及ばないがとても優れた生徒だった。家柄に関しても、ゴーント家という生まれで今では廃れてしまいハワードしか生き残りがいないらしいが、血筋は十分に優秀だとか。他の学生を見れば意外にもハワードより優れた人間はいない。ならば彼を友人として認めてやるのもそんなに悪いことじゃないだろう。口ではそう言いながらも、初めて出来た友人というのになんだか気持ちがむず痒くなった。

 

 ホグワーツでの生活は毎年孤児院に帰らなければならないことを除けば概ね満足のいくものだ。自分の才能を発揮できること、自分が他の人間よりも優れていること、それが孤児院にいたころの弱い自分を忘れさせてくれた気がしたから。このホグワーツでなにか偉大なことを成し遂げる、それが今の目標だ。

 

 

 三年生のある日の防衛術の授業では少し変わったものを実習として取り扱った。

 その授業では闇の魔術に対抗する術を学ぶことが目的だが、魔法生物に対する対処法も同時に学ぶことになる。とはいっても所詮授業なのであまり危険なものは扱わない。

 

「今日の授業はボガートを使っていく。ボガートの特性を知っているものは?」

 

 幾人かが挙手をし、答えを述べる。

 

「よろしい、その通りだ。今言ってくれたようにボガートは通常は不定形であるが、人と遭遇するとその個人の最も恐怖するものの形をとる。」

 

 はて、自分は何を恐れているのだろう。今まで何かに恐怖するという体験はしたことがない。また自分が何かに恐怖するような弱い人間だとは思わなかった。もしかしたらボガートが何にも変身しないという事もあるかもしれないな。そんな風にも考えていた。

 

「それらは人の恐怖の感情によって存在していると言っても良いだろう。つまりボガートの撃退方法はその恐怖を払拭すること、そして笑うこと、これに限る。」

 

「リディクラス。どうしたら恐怖が笑いに変わるか、それを思い浮かべながらこの呪文を唱えれば簡単に退散させることが可能だ」

 

「ではやってみよう、一列に並んで!」

 

 演習は順調に進んでいく。あるものは大蜘蛛、あるものは大蛇。それぞれが恐怖するものに対して呪文をかけて対処していく。ある生徒の時にボガートがケトルバーン先生になったときはみんな笑った。確かにあの先生は無茶をするからある意味では怖いと言えるのかもしれない。

 

「では次はトム、いってみよう!」

 

 遂に自分の順番が回ってきた。一気に注目が集まる。優等生の僕が何に恐怖しているか、ボガートにどんな反応をするのか、彼らの気持ちが手に取るようにわかる。

 

 ボガートが変身したのは『自分の死体』だった。

 なるほど、これが僕の恐怖するものか。

 すぐさまその結果に納得することは出来たが、思いのほか腹が立つ。

 

「リディクラス!」

 

 怒りのままに呪文を唱えればボガートは他人の死体へと変化した。自分としてはそれで十分スッキリしたのだが、周りを見れば少しばかり引いてるようだ。笑いのセンスを求められて他人の死体を出されてもそりゃあ反応に困るわな。

 

「えーと、じゃあ次の人に変わろうか。ハワード、前に出て!」

 

 ちょっと失敗したと思いながら今度は友人の様子を見守れば、すぐさまボガートは他人の死体から姿を変えようとしている。ボガートは少し悩んでいるように変身をためらった後、今度はハワードの死体へと変わった。

 

 彼はその結果に僅かに戸惑っていたが、杖を構えると、すぐにはっきりとした口調で呪文を唱えた。

 

「リディクラス!」

 

 死体はムクリと起き上がりその杖で花火を打ち上げながら楽しそうに踊り始める。

 先程までの暗い雰囲気は消え、ちょうど授業の時間は終わりになり、生徒たちは自分たちのボガートについて級友とともに思い思いに話していた。先生は少し疲れたような顔をしていた気がするがきっと気のせいだろう。

 教室を出ていくハワードを追いかけた。

 

「さっきのボガート、見たよ。君も僕と同じように『死』を恐れているのかい?」

 

「あー、うん。多分僕の恐怖はトムが恐れる『死』とは少し種類が違うと思う。僕が恐怖したのは『死』そのものじゃない。言葉にするのは難しいけど、死ぬこと自体が怖いわけじゃないからね。どう死ぬか、多分それだけだよ」

 

 その答えはあまり要領を得ないものではあったが、『死』を恐怖するという同じ価値観にリドルはハワードを少し理解したような気がした。

 

 

 

 学校生活は楽しいものではあったが、歓迎できないこともある。例えばダンブルドアと一対一で話すこと。

 

「おおトムじゃないか。………最近はどうだ。友人は大事にしているか?」

 

 ついにこの爺、耄碌としたか。いきなり愛やら友情やらの話をされて戸惑わない奴はいないだろ。奴はすれ違えば話しかけようとしてくるものの、奴自身が何を話せばよいかあまりわかっていないようだった。

 

「ああいや、あまり危険なことにハワードを巻き込んでくれるなよ、とね」

 

 おそらく僕自身を監視していたいという気持ちと、ハワードの友人関係にどこまで口を出すべきかで悩んでいるらしい。どちらにせよ僕のことが気に入らないのだろう。

 

「彼のことは僕が一番わかってますよ、ダンブルドア先生。あなたが心配する必要はないと思いますが」

 

「そう、か。ならいいんだ」

 

「ハワードはあなたが気にするほど弱いやつじゃない」

 

 ダンブルドアがハワードを妙に気にかけていることは知っていた。確かに入学当初は静かな奴だった。今思い返してみればあれは人生に熱意が持てていなかったのだろう。そんな生徒をダンブルドアが放っておくとも思えない。今でも熱意があるかと言われればそれは微妙なところだが、目の前にある物事に対しては一生懸命取り組み成果を得ようとするようにもなっている。僕が唯一その力を認めている人間を他の人間が見縊るのは我慢ならなかった。

 

 自分とは違って魔法を使える世界で育った奴らも実力で僕に敵うことはない。それでもそいつだけは必死に僕に追いつこうとしている。他の愚図どもが思考を停止して僕を褒めたたえることだけに夢中になっている中、彼は僕を追い抜くべき好敵手(ライバル)として見ている。間違いなく僕の方が才能も実力もあったが、努力をすることでなんとか一つの教科だけでも僕に勝ってみせた。

 

 この前の決闘だって僕と引き分けにまで持ち込んだんだ。確かに使用魔法を縛ったりしなければ結果は違っていたかもしれないが、そんなことはどうでもいい。

 杖を交わしたあの時は、本気で相手を倒す、ただそれだけしか頭になかった。あの瞬間はお互いの考えていることが手に取るようにわかっていた。カウントが終わる前に魔法を撃ってきたときは少し驚きもしたが、それだけ本気で闘おうとしていることがよくわかったからこちらも本気でやるべきだとそれに応えた。魔法と魔法がぶつかる衝撃は言葉なんかよりも多くのことを僕に伝えた。

 最後に不意打ちを喰らい、吹き飛ばされた時ですら不快感は覚えずむしろ爽快ですらあった。最初で最後の友人である彼が自分に並び立つ人間だと再び理解できた気がしたから。

 

 そんな彼だからこそ、自分がホグワーツで偉大なことを成し遂げたらそれはハワードに最初に言おうと決めていた。

 

「君こそが僕たちの王に相応しい」

 

 僕の挙げた成果に対して彼がこういってくれたときは、なんか嬉しかった。初めて出来た魔法界の友達、最初汽車で出会ったときはなんかパッとしない奴だったけれど、他のやつよりもずっと僕のことをわかってくれていたから。

 

 だからこそ自身がそのとき感じたのは「喜び」だけではなかった。

 なぜお前がそっち側にいる、そうじゃないだろ、お前がいるべきはこっち側だ、と。

 

 唯一と言ってもよい親友にも認められたのは確かに嬉しかった。それでもそのことに満足することはなかった。数だけはいる有象無象の能無しに讃えられることよりも、たった一人の友人と一緒に上を目指すことの方が何倍も価値のある事だったから。

 

 今のままではきっと彼はきっと凡人に埋もれてしまう。普段自身が友人と呼んでいる取り巻きのように彼がなってしまう事だけは絶対にあってはならない。

 ならば僕がお前をこっちまで引っ張り上げてやる。お前がこっち側に来れるようにしてやる。

 僕ができることは何だ、彼に何を見せれば隣に立ってくれる、僕が偉大なことをすれば彼は興味を持ってくれるのか?考えろ、考えろ。考えればきっといい答えが見つかるはずだ。

 

 ああ、秘密の部屋を開ければいいじゃないか。その偉業を達すればきっと彼もすごいものを見せてくれる。だって彼はもう一人のスリザリンの後継者なのだから。

 

「ならばその時は君が隣に立ってくれ」

 

 唯一親友以外に信じることのできるもの――イチイの杖――に誓いを立て、そう言った。

 

 

 

 遂に秘密の部屋の扉を開けたものの、できたことと言えばマグル生まれをたったの一人殺すことだけだった。まさかホグワーツが閉鎖になるとは。いや深く考えずとも人が死ねば学校が閉鎖になるのは当たり前か。何をしてるんだ僕は。

 閉鎖を防ぐため早急に事件を解決する必要があり、ハグリッドに全ての罪を擦り付けることでなんとか事なきを得たわけだが…

 なんでアクロマンチュラなんか飼ってるんだ、なんで教師陣も簡単に信じるんだ。

 

 一人はトム・リドルという、貧しいが優秀な生徒。孤児だが勇敢そのものの監督生で模範生。片やもう一人は、図体ばかりでかくて、問題行動の多いハグリッド。狼人間の子をベッドの下で育てようとしたり、こっそり抜け出して禁じられた森に行ってトロールとレスリングをしたりして、一週間おきに問題を起こす生徒。

 どちらを信じるかは目に見えていた。だが誰か一人ぐらい、ハグリッドが『スリザリンの継承者』では有り得ない、と気づくに違いないと思っていた。この僕でさえ、『秘密の部屋』についてできるかぎりのことを探り出し、秘密の入口を発見するまでに五年もかかったんだぞ。ハグリッドにそんな脳みそがあるか!そんな力があるか!

 

 いや違う、落ち着け。怒るところはそこじゃない。

 おそらく僕が犯人だと気づいているのはダンブルドアとハワードだけだ。

 ハワードに関しては既に秘密の部屋のことを既に打ち明けていた。その時は部屋をどう使うかを彼には教えていなかったが、事件の概要を聞いていれば僕が犯人だと推測するぐらいわけはないだろう。だがこちらは特に気にする必要もない。彼は僕が王に相応しいと言ってくれていた。作戦が雑過ぎたことを多少言われるかもしれないが、彼にとってはマグル生まれ一人のことなんてどうでもいいだろう。

 だが問題はダンブルドアの方だ。

 ダンブルドアは最初から僕をかなり警戒していた。やはり入学案内時の対応が悔やまれる。今からでも過去に戻ってあの時をやり直したいが、後悔先に立たずとはこのことか。

 なんとか白を切って誤魔化したが、これからどうするか、それについて決めていかなければ。

 

 

 帰りの汽車内でハワードと二人となったときに、やはり秘密の部屋について聞かれた。

 

「今年の事件、君だろう?」

 

 僕が答える間もなく彼は続けた。

 

「別に答えを聞きたいわけじゃない……ただ少し…言いたいことがあって…ね」

 

 その先を促すようにそちらに顔を向ければ、彼は遠慮がちに続けた。

 

「その……もっと…別のやり方は…なかったのかい?」

 

「ホグワーツで死者が出ればこうなることは予想できたはずだ」

 

 確かにもっとスマートな方法があったはずだ。スリザリンの後継者として名を残すことばかりに意識を割きすぎたか。せっかく魔法界を支配すると話をしたばかりなのにダンブルドアが見張っているうちは学校では動けない、今は諦めるしかない。

 

「そうだな、ハワード。君の言う通り僕は少し焦りすぎていたようだ。卒業してからもまだ時間はある、大事なのはこれから何をするかだ」

 

「いやそういう話では……」

 

 友人は他にも何か言いたそうであったが、この話を続けることにはあまり意味がない。

 そうだ、やるべきことは他にもある。死の克服についてももう少しで掴めるところにいる気がする。今はそちらを優先するべきだな。

 

「気にしても仕方ないさ。時期が来ればもっとすごいことをやってやる!ちゃんと見といてくれよ、親友!」

 

「ああ…そうだな……」

 

 

 

 

 図書室の禁書棚に入り浸っていると、ようやくそれらしき記述を見つけた。

『深い闇の秘術』その本には様々な闇の魔術の深淵とも言うべきものが多く書かれていた。その記述のうちの一つ、分霊箱。これこそが自身の求める死の克服方法ではないか。

 ただここに書いてあるだけでは足りない、もっと具体的な知識が必要だ。今まで何のために優等生を演じてきた。今がそのときだろう。

 

「――――先生、お伺いしたいことがあるんです」

 

 

 その後は語るまでもない。スラグホーンは結局最後まで話してくれた。こちらも欲しい情報は手に入れた。彼は途中から話したことを後悔していたようだったが、ああいう人間は本当に御しやすくていい。きっと心労がひどいだろうから砂糖漬けパイナップルでも送ってやろう。到底釣り合うとは思わないが、僕の役に立ってくれたことに対するせめてもの感謝だ。

 

 

 

 7年生にもなると、ほとんどの生徒は就職場所の目星をほとんどつけているのが普通だ。僕自身も多くの先生から魔法省への推薦を受けているが、魔法省に行くつもりはない。これからの目的のための下準備と言ったところか。まずはアルバニアに行った後、闇の魔術に関する見識を深める必要がある。

 

「ハワード、君はこれからどうするんだい?」

 

「僕かい?僕はそうだね、まずは魔法省で経験を積もうと思っている。やりたいこともあるしね」

 

「やりたいこと?」

 

「ああ、何て言うのかな。正しきことと容易きことの選択、つまりそういう事だよ。僕だけが出来ること、僕にしか出来ないこと、それをようやく見つけたんだ」

 

「何を言ってるのかよくわからないんだが」

 

「有り体に言えば僕が生きる意味さ――――なるほど組分け帽子が言っていたのはこれか」

 

「えらく遠回しに言うじゃないか、君はいつから詩人になったんだい」

 

 僕の返答にハワードは少し笑っていた。

 

「トムにとって分かりやすく言うならば、あー、君はマグル生まれに対して否定的だろ?それらから発展する思想を達成するためにどれだけの努力をするか。正しき道っていうのはきっと困難だけど、それを自分が正しいと思えるなら努力する価値があると僕は思うんだ。だからこそ僕がその選択を誤ることはない。君の隣に立つ準備は出来ているよ」

 

 ―――ようやくだ。これから僕と親友との新しい未来が始まる。彼が自分からこちら側に立つと言ってくれた。ならばあとは僕が応えるだけだ。

 

「こちらも準備ができ次第、声をかけるよ」

 

「「―――また数年後に!」」

 

 

 僕は一度ハワードに嘘を吐いている。

 自分の生まれについて本当のことを言うのが少し怖かった。きっとハワードはそんなことは気にしない。しかし一度芽生えた不安とは容易く摘み取ることは想像以上に難しく、結果として僕は自身の出生について一部嘘を含んだことを彼に教えた。僕のマグルの血筋は彼に見つからないように痕跡を消す必要がある。

 彼に対する嘘はそれが最初で最後だ。

 自分が吐いた嘘に対する負い目から彼とは深く話すことができなかった。

 その決着がついたら彼にしっかりと向き合おう。正直に生きてみよう。

 

 ここに戻ってくる予定は今のところない。

 7年間の思い出を振り返ると本当にいろいろなことがあった。このぬるま湯も良かったが、二人で歩む未来、その誓いのためにも今は進まなければ。

 少し寂しさや名残惜しさを覚えつつもホグワーツを後にした。

 

 そう言えば彼はいつだかの汽車の中で何を言おうとしていたのだろう。そのときの友人はどんな表情をしていたのだろう。もはや思い出すことは出来ない。

 まあきっと大した事じゃない、気にする必要もないか。

 

 



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Part 5/8 魔法省官僚

初投稿です(痴呆)


 

 バレなきゃ犯罪じゃないんですよ!なRTA、続けていきます。

 

 

 前回ようやくホグワーツを卒業して大人になったホモ君ですが、現在は魔法省の官僚として働いています。出世するまでは魔法研究及び育成は最小限にして、全力で社畜する予定です。

 つまり今回はほぼホモ君の仕事風景を眺めるだけ、見所さんどこ行った状態となるため、かなり退屈な時間に思われるでしょう。そんなみ な さ ま の た め に ぃ ~ 

 雑談でお茶を濁すことにします。上映会はキャンセルだ!

 

 まあ雑談とは言いつつ毎度の補足になるわけですが、この魔法省経由ルートは通常プレイでもあまり取り上げられることのない要素であるため、丁度いい話のタネになるかなと思った次第です。

 

 

 さてホモ君の職場である魔法省ですが、魔法省の組織は基本的に魔法大臣をトップとして8つの部署を従えることで成り立っています。

 

 魔法省は、マグルに対する秘密保持を目的として制定された法律:国際魔法秘密法を適用するために、魔法族を取り締まる組織を作る必要があったという背景から「魔法法執行部」が最も大きな権力を握っています。

 この部署には「闇祓い局」や「魔法不適正使用取締局」などの局が入っており、半ば独立しているとはいえ司法の役割を担う「ウィゼンガモット法廷」もこの管轄であることを考えると、その権力の強さがわかるというものです。

 え、三権分立はどうしたのかって?そんな概念は倫理観の終わっている英国魔法省にはありません。まあそもそも政府機関でもないただの自治組織であるため当然と言えば当然ではありますが。

 

 他の部署としては「魔法事故惨事部」「魔法生物規制管理部」「国際魔法協力部」「魔法運輸部」「魔法ゲーム・スポーツ部」が存在し、これらは基本的に「魔法法執行部」の采配で動くような体制になっています。

 例外として「神秘部」がありますが、ここは魔法大臣ですら一部権力が及ばないような独立した研究機関で、全体像を把握できている人物は存在しないとか。あまり突っ込むのも藪蛇になりそうなのでやめておきましょう。好奇心は猫をも殺すという言葉もありますしね。

 

 つまり権力(魔法大臣)が目的である場合は、基本的に「魔法法執行部」から出世していくことになります。例えば入省して20年ほどのスピードで魔法大臣まで上り詰めたハーマイオニーは、最初こそ本人の希望により「魔法生物規制管理部」に配属されましたが、すぐに「魔法法執行部」へ異動し頭角を現すことになります。このような理由から通常プレイ含めたほとんどの場合において魔法法執行部以外の選択肢は上がりません。

 魔法省ルートは基本的に権力・人脈・経歴のいずれかを得るために用いますが、これらは出世を前提に組み立てることになります。ここにかかる膨大な時間があまりリターンに見合っていないことが攻略速度を競うRTAにおいて魔法省ルートが敬遠される主な原因ではないでしょうか。

 

 本チャートでホモ君が入省した「国際魔法協力部」はいわゆる外務省としての働きをしています。「国際魔法貿易基準機構」「国際魔法法務局」といった局が入っており、国際的な出来事全般に関わりがある部署です。原作では三大魔法学校対抗試合の開催にも一役買っていました。さらには「国際魔法使い連盟 英国支部」も「国際魔法協力部」の管轄です。国際魔法使い連盟とはマグルでいうところの国際連合ですね。

 本編では窓際部署だなんだと犬っころに言われていますが、魔法法執行部に比べればそりゃあどこも窓際みたいなもんです。低レベルな煽りに乗ってはいけません。

 

 

 話は変わりますが、権力の要である魔法省を調べているとダンブルドアの肩書のすごさが次第にわかります。彼がもつ肩書のうち主なものとして「ホグワーツ魔法魔術学校 校長」「マーリン勲章 勲一等」「上級大魔法使い」「ウィゼンガモット主席魔法戦士」がありますが、それぞれについて見ていきましょう。

 

 校長職は今更言うまでもありませんね、実質治外法権の許された領地を示す肩書です。

 マーリン勲章 勲一等は魔法界における“傑出した勇気や優れた功績”に贈られる勲章。グリンデルバルドの決闘で貰ったのかな?これに関してダンブルドアは皮肉にしか思ってなさそうですが。

 上級大魔法使いとは国際魔法使い連盟における最高指導者を指します。

 ウィゼンガモット主席魔法戦士はイギリス魔法界の司法を担う者。

 これらの肩書を総合するに、彼が魔法界にかなりの影響力を持っていることが伺えます。優れた魔法使いで、外部から不可侵の領土を持ち、イギリス魔法界の司法に関してかなりの融通を利かせられ、更には国際的にも認められている。なんだこれは……たまげたなあ。

 弟の悪評(性癖)というマイナス部分に負けずよくやっていますね。

 

 とはいえ、ダンブルドアが一人で好き勝手出来るかと言うと、そんなことはありません。基本的にこれらの役職は強権を振舞えないような制度になっています。

 自分の愚かさを誰よりも信じているダンブルドアがそれらの役職に就くことを了承したのはこの制度のためですが、そのせいで正史では無能ファッジに対ヴォルデモート戦略を妨害される羽目に陥ってしまうわけなんですね。ファッジくんさぁ…辞めたらこの仕事?(正論)

 実際のところ正史ルートでもファッジ君がいなければ、分霊箱システムのためにタイムの短縮はないとしても、かなり安定してヴォルデモートを倒せたことが予想されます。ほんとに邪魔しかしねえねこいつ。

 

 まあここまでいかにもダンブルドアに期待している感を出していますが、本チャートではその権力は目当てではありません。彼にはチート級の最強アイテムであるニワトコの杖を振ってもらえば十分です。そもそも彼にその権力を振るわせるのが難しいんでね。

 

 一部ではダンブルドアは魔法大臣が向いているとの声が上がることが稀によくありますが、彼が魔法大臣になることは絶対にありえません。

 事実1950年代の段階で既に3回もの魔法大臣のオファーが来ているにも関わらず、全て断っています。これはヴォルデモートが教職に就くことを防ぐという理由が本人の口から語られていますが、最大の理由は別に考えられます。

 彼は過去の過ちから自身が名誉や権力を求めると碌なことにならないことを既に知っています。そのため自身の愚かさを省みることを忘れない彼は、己が権力を振るうことを良しとしません。未来ある若者が自分のような過ちを犯さないように、と考えた結果がホグワーツで教師を続けるという事だったのかもしれませんね。

 もし彼が魔法大臣になる世界線があるとすれば、その世界は彼が己の間違いを自覚することのない世界であるため、既にダンブルドアとグリンデルバルドが協力して世界を支配してしまっていることでしょう(絶望)

 また戦略的な面においても、魔法界で籠城戦が可能となる場所が実質ホグワーツだけであることから、彼が魔法大臣になるメリットは少ないので避けた方が良いです。

 

 

 

 

 閑話休題(それはさておき)

 ホモ君が「国際魔法協力部」で出世を目指す理由は前述のとおり権力が目的ではありません。

 既に察しのいい人は気づいているかもしれませんが――――

 

 ――――はい、正解は「賢者の石の入手」です。

 

 数多くの先駆者様はダンブルドアのコネや学生時代のツテから入手していますが、今回に限って言えばそれはあまりいい手段とは言えません。

 確かに入手にかかる手間が少なく時間に関して大幅な短縮を狙えるという明確なメリットはありますが、欠点としてダンブルドアにニコラス・フラメルとの繋がりを把握されてしまいます。その場合、賢者の石の使用難易度は爆増するでしょう。これはダンブルドアが賢者の石の使用を認めることが基本的にないことからですね。

 

 では、ダンブルドアにフラメル氏との関係を把握されたうえで、内密に賢者の石を使用するのはどうでしょうか。

 これについてはリスクがかなり大きいです。少しでも疑われた時点で良くて警戒、悪ければ速攻で敵認定されてしまいます。初めから敵対ルートへ移行するつもりならばこの手法はあまり問題になりませんが、本チャートはダンブルドアの助力が前提なので少しでも疑われるような行為は避けたいです。

 

 その結果として生まれたのがこの魔法省ルート。ここで独自のコネクションを築き、ダンブルドアを経由せずに賢者の石に関する情報を入手するといった手法になります。

「国際魔法協力部」の特徴として、国際的なつながりを持ちやすいという点があります。

 先程も述べたように出世しにくいのは事実ですが、今回は出世が目的じゃないからね。国外の魔法使いの情報を得やすく関係を結びやすいという利点を活かしてニコラス・フラメルに関する情報を手に入れるわけです。

 

 説明している間に7年ほど時間が過ぎたようですが、今のホモ君の役職は局次長です。まもなく局長になれる頃合いではないでしょうか。

 20年ほどでハーマイオニーが魔法大臣、パーシー・ウィーズリーが魔法運輸部部長の役職に就いたことを考えると、かなりいいペースで出世できたことがわかります。

 例外的にハリー・ポッターは出世競争が激しい闇祓い局の中で、たった7年の早さで局長まで出世している化け物ですが、あれは彼が英雄であることに加え、時代背景や所属部署の特徴として上司に当たる人物が死にまくっていることも原因です。

 いくらホモ君でも通常でそこまでの出世スピードは出せません。

 

 余談ですが、出世RTAなどは時期を選ぶことでかなり早く終えることができます。

 考えられるものとしては異動が多くある時期で、例えば1980年代や1990年代は闇の帝王による混乱と失脚により上層部ががら空きになることから候補に挙がります。

 ではいくつか例にとって考えてみましょう。

 1980年前であれば、闇陣営に所属しお辞儀様に上司を皆殺しにしてもらうといった手法を用いて楽に魔法大臣になる事ができるはずです。まあこの方法は闇陣営内で十分な権力を得る必要があるので、大して短縮にはならないかもしれませんが。

 第一次及び第二次魔法戦争中は、出世自体はかなり楽でしょう。上司がかなりの確率でアズカバンに行くか闇の勢力に殺されるからですね。更に対抗勢力のクラウチ君は息子の不祥事で失脚、ファッジ君は能力値がお察しなので簡単に蹴落とせるはずです。自分も殺されないように気をつける必要がありそうですが、うまく立ち回ればかなりいいタイムを出せそうです。

 最後に戦争後について、これも人員不足のため出世は楽です。がしかし対抗勢力に公式チートのハーマイオニーがいるため、そこの辺りで苦労しそうです。彼女が魔法省をキャリアに選ばないようフラグを調整するチャートを構築するのも面白そうですが。

 権力に興味がある方は考えてみるのもいいかもしれませんね。

 

 

 

 どうやらホモ君がようやく持ちうるコネすべてを利用してニコラス・フラメルの居住地を調べられたようです。就職してから10年以内に探し出せれば十分ですね。それ以上時間をかけてしまうと後のイベントに支障をきたしてしまうので注意が必要です。

 

 では直接お家を尋ねに行きましょう。訪問の理由は何でも構いません。時代背景的に現在はグリンデルバルドの時代が終わり数年が過ぎたころで、残党もほぼ捕まり魔法界全体で戦勝ムードになっています。つまり平和ボケで油断しているので、警戒されることは屑運を引かない限りありません。

 

 それほど神経質になる必要はないとは思いますが、念のため幸運の液体を数滴飲んでおきます。ここまで来てリセとか流石に嫌なので。

 と言う訳で早速イクゾー!

 

 ここでフラメル訪問時の注意点ですが、ホモコップよろしく「魔法省だ!(インパルス板倉)」などの行為をやってはいけません。初対面で敵認定された場合、勝ち目がなくなるからですね。穏便にことを進めます。

 ニコラス・フラメルは魔法技能に関しては素晴らしいものですが、身体機能については流石に爺です。完全に衰えてしまっているので俊敏な動きなどまずできません。

 つまり攻略手段は不意打ち一択になります。

 

 

 フラメル君、おっはー!!!(クソデカボイス)

 

「おやおやこんなところに何の御用ですかな?」

 

 ドアを開けてくれました。

 おっ、開いてんじゃ~ん!(確認)ということでお邪魔します。

 

 ――――あたし魔法省の役人なんですが、実は今、魔法省で海外の人とつながりたいキャンペーンをやってまして(適当)

 

「わざわざ遠いところからご苦労様です。どうぞ座ってください」

 

 彼がお茶(アイスティー)を淹れている間にちょちょいと自分に目くらまし術をかけます。

 かけたら後ろからそろりそろりと近づき、暴れるなよ…暴れるなよ……今だっ!

 

「インペリオ!服従せよ」

 

 堕ちろ!…堕ちたな(確信)。あぁ^~いいっすね~。うまくかかってくれました。

 あとは賢者の石の作成に関する記憶を提出してもらい、おさらばです。証拠隠滅を忘れないように。ダンブルドアにばれたらリセです。

 まずは忘却術で今日の記憶を念入りに削除したうえで、代わりに錯乱呪文で日常の記憶を差し込めば、工事完了です…(達成感)。これで盗人落としの滝のような魔法解除をかけられたとしても、フラメルはおよそ600年の日常のうちのたった一日の記憶を失うだけになります。今までの経験的に気づかれたことはないので大丈夫でしょう。

 

 

 さて残りのタスクはホグワーツに戻り賢者の石を完成させることだけになりました。

 今回はダンブルドアに対して安定をとるチャートを選びましたが、場合によってはここでニコラス・フラメルを殺害、賢者の石を強奪するルートでもいいかもしれません。

 先に述べたように賢者の石の入手タイミングが早くなることが第一のメリットですが、うまくやればヴォルデモートに全ての罪を擦り付けることでGG値の上昇も見込めるため、最終決戦を早めることもできるかもしれません。

 しかし運が悪いとダンブルドアがヴォルデモートの実力(架空の賢者の石)を過大評価することで積極的には動けず予言前に決着がつかなかったり、最悪ホモ君の犯行であることが露見してダンブルドアとヴォルデモートの両名を相手取る事態が発生することも場合によっては考えられます。魔法界最強の2人に勝てるわけないだろ!いい加減にしろ!

 馬鹿野郎お前俺は勝つぞお前!!(天下無双)という方は挑戦して、どうぞ。

 RTAでそこまでの博打をやる勇気は私にはありませんので。お兄さん許して。

 

 

 あっ、そうだ(唐突)。

 ホグワーツに戻る前にリドル君に声をかけておきましょう。と言いたいところですが、彼は現在自分探しの旅ならぬ自分隠しの旅に出ています。分霊箱は彼にとって秘すべき不死の法であるため、このときのリドル君を見つけるのは並大抵の努力では不可能です。

 そんなわけで今のホモ君には、リドル君の愉快なお友達に言伝を頼むか、リドル君が帰還するのを待ち直接話すかの二つの選択肢がありますが、今回は前者を選びます。時期的にそろそろボージン・アンド・バークスで働き始めるようになるのでそんなに待つことはないはずです。

 

 

 ………………………………………。

 ……………………………。

 ………………。

 

 

 

 はい、数か月が経ちリドル君が戻ってきました。

 リドル君オッスオッス。

 久しぶりに会ったリドル君は頬が痩けていますが、そこが大人の色気を出していることでむしろイケメンになっていますね。私はノンケなので興味ありませんが。

 ホモなのにノンケとはこれいかに?

 

「ダンブルドアは今どうしているかな」

 

 お前もしかして、あいつの事が好きなのか?(青春)

 恋する乙女みたいなこと言ってますね。

 

「いや、いつかは消さなければならない敵だが、どうしたものかと思ってね」

 

 何で会話が成り立つんだよ。まあいいや。

 排除する手法も考えてないの?そんなんじゃ甘いよ(棒読み)。

 じゃあ自分、監視いいっすか?

 

「スパイとしてあちらに潜り込むってことかい?」

 

 そうだよ(便乗)。

 リドル君側から提案してくれたのでとても楽にいきましたね。この部分に関しては好感度が高ければ高いほど楽になります。もともとの予定ではもうちょい拗れるはずだったんですが、ランダムイベントの引きが良かったのか今回はかなり好感度が高いです。嬉しい誤算ですよこれは。

 

 

 

 伝え終わったら次はホグワーツに向かいます。

 じゃけん…面接しましょうね~。

 実はホグワーツで十分な成績をとっている場合、面接を行わずともフクロウ便で希望を伝えるだけで学校側が便宜を図ってくれることがあります。

 しかしホモ君の場合は同期のリドル君が優秀すぎたせいで、ホモ君の優秀さがあまり目立っていませんでした。なのでホグワーツに自分を直接売り込みに行きます。成績優秀者かつ官僚としても成功していたホモ君ならきっと採用してくれるでしょう。

 雇ってくれよな~頼むよ~。

 

 

 ここで働かせてください!(千尋)

 

 ――――じゃあ、まず年齢を教えてくれるかな?

 

 えっと、26歳です。

 

 ――――26歳?もう働いてるの、じゃあ?

 

 官僚をやってました。

 

 ――――官僚?あっ、ふーん……うん、オッケー!

 

 

 はい、雇ってもらえました。

 ここからは完走するまでホグワーツで過ごすことになります。まとまった時間は取れなくなるため、私的な用事がある場合は忘れずにこなしておきましょう。

 

 

 今回はここまで。

 ご視聴ありがとうございました。

 




読み飛ばして構いません。設定に関わる補足を少し。

次のPartにおいてとある事件が発生する詳細な年代を独自に決定する必要が出てしまいました。
というのも、特定の出来事の正確な年表は公表されておらず、次の2つの説がネット上では存在していることが原因です。

[1]1945~1946年:ヘプジバ・スミス殺害, 1956年:ヴォルデモート就活
[2]1955~1961年:ヘプジバ・スミス殺害, 1965~1971年:ヴォルデモート就活

以下の年表は今後この小説内で起こるであろう出来事を示しています。
年代について小説内で言及することは恐らくないのでこの機会に載せました。
知っていた方が流れを掴みやすいかもしれないです。
(※は出典)


・1899年8月下旬
 アリアナ・ダンブルドア死亡
・1945年6月
 リドルがホグワーツ卒業後、旅に出る(第一回秘密の部屋事件から計算)
・1945年11月2日
 ダンブルドアとグリンデルバルドの決闘
 ※「Fantastic Beasts: The Secrets of Dumbledore」- David Yates 映画誌取材より
・1956年12月 
 ミネルバ・マクゴナガルがホグワーツに就職
 このときダンブルドアは変身術の教授で、マクゴナガルは補佐・助教として指導
 ※「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」第15章
 ※Writing by J.K. Rowling:“Professor McGonagall”- Pottermore
・1960年
 親世代誕生
 ※「ハリー・ポッターと死の秘宝」第16章
・1965年
 リーマス・ルーピンがフェンリール・グレイバックに噛まれ人狼症を発症
 ※Writing by J.K. Rowling:“Remus Lupin”– Pottermore
・1965年以降(詳細は不明)
 ダンブルドアが校長職に就任
 ※「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」第18章
・1967年以降(詳細は不明)
 闇払いがヴォルデモート逮捕のための活動を開始
 ※「ハリー・ポッターと謎のプリンス」第1章
・1970年
 第一次魔法戦争勃発
 ※「ハリー・ポッターと賢者の石」第1章
・1970年以降(詳細は不明)
 戦争勃発後、不死鳥の騎士団結成
・1971年
 親世代ホグワーツに入学(誕生時期から計算)

・トム・リドルの動向(年代に関する直接の言及がない)
(※「ハリー・ポッターと謎のプリンス」第20章)
①卒業時点では年齢を理由に就職を断られる。数年後に教職の希望が残っていれば再度就活することを勧められる
②アルバニアに旅に出た後、ボージン・アンド・バークスに就職(旅の期間についての記述がない)
③就職後すぐにその商売に対して才覚を発揮し、ヘプジバ・スミスと知り合う
④ヘプジバ・スミス殺害から就活までは10年間
⑤就活時、ダンブルドアは校長に就任している。
 ディペット校長が期待していたよりも遅く、雪が積もる時期。このとき、死喰い人という名称はそれほど有名ではないが既に使われていた。闇の勢力が台頭する最初期と考えられる。



これらの情報から[1]は時期が早すぎる、[2]は後半になるほど遅すぎる、という事がわかります。そのため本小説では[2]の最も早い時期を基準にし、次の年表に従うこととします。

1955年:ヘプジバ・スミス殺害
1965年:ヴォルデモート就活

独自設定だけど原作とは矛盾しない範囲だから許して


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Part 6/8 ホグワーツ教授

めての予約投稿です。


 

 立って歩け、前へ進め、あんたには立派なチャートがあるじゃないか。なRTA続けていきます。

 

 

 

 前回はホグワーツに就職するところまでやりました。

 ホグワーツはこれからのホームになります。交友関係などには適度に気を配っておいた方が今後のためになるので、まずはダンブルドアに挨拶をしに行きましょう。

 

「――――久しぶりじゃのうハワード」

 

 ダンブルドア君オッスオッス。約束通り戻ってきましたよ。

 だいぶおじいちゃんになりましたね。ですが彼はまだ変身術の教授です。

 

「やりたいことは出来たかの?」

 

 まだ達成したわけじゃないんですけど、私がここに来た理由は……多分あと10年もすればわかると思いますよ(倍速の予感)。

 適当に話してみた感じ、特に違和感はなさそうですが、おそらく卒業時点と比べても目立った変化はないんじゃないかな?(ガバガバ目視)

 

 えーと、他に挨拶しておく人は……一応スラグホーンにもしておきますか。

 魔法薬学の成績はスラグホーンが担当した中ではホモ君が最優秀だったので、きっとホモ君の帰還を喜んでくれるでしょう。

 

「――――おおハワードじゃないか、ここで働くのかね?」

 

 今後彼と関わる予定は今のところないけど、まあ挨拶ぐらい手間でもないしね。それに急なチャート変更なんかで予定が狂った場合に備えてリカバリー手段は多い方が安心できます。彼はなにかと便利で有能なキャラなのでご機嫌伺いのためにも多少のお願いは聞くことにします。

 

「君のつくる魔法薬は物によっては私のものよりも優れている。偶にでいいから調合を頼むよ。……ついでにパイナップルもね」

 

 かしこまり!(KBTIT)っと挨拶回りが終わったところで現状の確認を確認していきます。

 ホモ君の担当する科目はもちろん「闇の魔術に対する防衛術」です。

 この教科を担当しているだけで防衛術に補正がかかるのは皆さんご存じだと思いますが、この教科を受け持つ利点としてもう一つ挙げられるのが、闇の魔術の研究をしても咎められることはあまりないことです。「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」という言葉が表すように、「闇の魔術に対する防衛術」を教えるには闇の魔術に精通している必要がある、というわけです。

 こんな理由でホグワーツは研究場所としても最適な場所となっているので大人になってからの育成場所の候補に挙がりやすいです。

 はじめのうちは授業の準備などで大変ですが、一度プロトコルなんかを組み立ててやればだいぶ自由時間は確保できます。

 

 ではどのように授業を進めるかという話ですが、「闇の魔術に対する防衛術」は担当する教師によって教え方が異なり、その内容にはその教授の本質などがよく表れます。

 ホモ君の場合は対ヴォルデモートを想定とした防衛術しか研究してないので、授業内容は選択の余地なく対人戦オンリーになります。対人戦以外を教えられないわけではありませんが、生徒にとってもこれからの激動の時代を生き抜くにあたってはこちらの授業の方がためになるでしょう。

 もちろんRTA的な意味でも防衛術を教えていくメリットはあります。ホモ君が防衛術を受け持つことで、先に述べた理由により生徒の防衛術の水準、より細かく言うならば「闇の魔術に対する実践的な闘い方」のレベルが通常と比べて高くなります。これにより死喰い人と闇祓いの戦闘レベルが高くなり、第一次魔法戦争の抗争が激しくなります。

 これが意味するところは………はい、そうです。不死鳥の騎士団の結成時期が早まるんですね。

 ほとんどの場合において不死鳥の騎士団は第一次魔法戦争勃発後に結成することが確定していますが、その結成時期はGG値や魔法界の情勢によって左右されます。うまくやれば第一次魔法戦争が勃発してからさほど時間をかけずに不死鳥の騎士団が結成されるでしょう。

 

 ですが教授職が戦闘ビルドにおける最適解とは口が裂けても言えません。

 闇の魔術に対する防衛術の教職により熟練度ボーナスがつくとはいえ、最前線で戦うような人たちと比べると入ってくる経験値自体は雀の涙みたいなもんです。

 まあ馬鹿正直にステータスを上げても正攻法ではヴォルデモートに勝つことは出来ないからこそ、他者の助けや一芸が必要になるわけですが。

 

 

 

 ちなみに防衛術の授業は学年が上がるにつれ、座学を減らし実技や実戦を増やした方が生徒の能力値は伸びやすいことが多いです。ハーマイオニーなどは例外的に座学で伸びるタイプですが、あんな天才は通常出てこないので気にしない方がいいでしょう。

 

 さて今回は久しぶりの育成要素としてミニゲームをやっていきます。

 ホモ君対生徒40人ほどでの魔術戦です。

 ルールは単純。呪文が身体に当たったら一発退場、敵陣営を全て退場させた時点で勝利です。

 この魔術戦では瞬発力、選択力、杖捌きなど多くの能力を鍛えることができます。これは生徒に限らずホモ君も同様です。熟練度稼ぎと生徒の育成の一石二鳥とか誇らしくないの?(自画自賛)

 

 今更かもしれませんが、死の呪いが使われない決闘での防衛呪文はほぼ盾の呪文だけで十分です。理論上、盾の呪文は熟練の魔法使いが使えばほぼすべての呪いに対する逆呪いとしてはたらくことが知られています。グリンデルバルドとMACUSAの戦闘がいい例ですね。

 学生時代にリドル君と決闘したときとは異なりホモ君はかなり成長しているので生徒の呪文はほぼ全て盾の呪文で防げるようになっています。

 またリドル君のように機転を利かせた魔術戦をしてくる人はいないので楽勝です。

 

 というわけで、ほらほらいくどー!

 

 

 ………………………………………………。

 ………………………………………。

 ………………………………。

 

 

 

 授業の方が落ち着き最優先に行うことは、Part5でも話したとおり「賢者の石の作製」です。

 現在が1954年であることを考慮すると、ヴォルデモートが戦争を始める1970年まで15年以上の猶予があります。こちらにはすでにニコラス・フラメルの記憶があるので、必要の部屋も併せて使用しぼちぼち作っていきましょう。

 

 悪霊の火の熟練度上げも並行して進めます。

 悪霊の火とは高火力に広範囲といった特徴から殺人・殲滅・証拠隠滅・物体破壊までなんでも使える超有能呪文で、攻撃的な闇の魔術としてはこれ一つでだいたい事足ります。

 この魔法は最終決戦でも活躍するはずなので時間が許す限りいくらでも練習します。

 死の呪い?障害物で防げちゃうような雑魚呪文に用はありません(無慈悲)無言で放つとまともな火力が出ないから暗殺にも向かないしね。

 

 他にやることは………ああそうだ!守護霊の呪文も忘れず習得しておきましょう。

 もちろん吸魂鬼(ディメンター)対策などではありません。ぶっちゃけ吸魂鬼なんてものは普通の生活をしていれば会うことなどありませんからね。積極的に習得するヤツはアズカバンの看守にでもなりたいのかな?

 冗談はさておき、守護霊の呪文の習得目的は不死鳥の騎士団結成時における好感度稼ぎの一環としてです。滅多に使用する機会がないのにも関わらず多くの優秀な魔法使いが守護霊の呪文を習得しているのは、それを習得しているだけで善の魔法使いであるとお墨付きを得られるからです。詳しくは後ほど話しますが、それらの理由で魔法省の役人は箔付けのために習得することがままあるとか。分霊箱でバフをかけたガマガエルが習得できている時点でかなり信憑性のない与太話ですが、スタンダードな死喰い人が使えないのは事実ですし…。

 そんなわけでホモ君もこれを利用し、善なる魔法使いであることをビシバシとアピールしていく予定です。

 

 そのくらいでしょうか。

 もし、学生の頃に幸運の液体を入手できていなかったら、それを教職時代に作るのもいいかもしれません。かなり時間と労力を使いますが、あった方が安心でしょう。今回はまだ数滴しか使っておらず、少なくとも9時間分は残っているので十分です。

 

 

 

 

 

 

 ホグワーツに就職してから1年ほど経ちました。

 

 一部ではトム・リドル失踪の噂が流れ始めています。ちょっと前までボージン・アンド・バークスで働いていたのですが、手がかりも残さず蒸発していますね。

 おそらくグリフィンドール以外のホグワーツ創設者に関する遺産の回収を終えたのでしょう。

 これ以降、トム・リドルという人物が現れることはなく、彼はヴォルデモートと名乗ることになります。実際にその名が出てくるのは10年ほど後の話ではありますが。

 ともかく直近の数年で彼と出会う用はないので、彼について気にする必要はありません。

 もしリドル君の行方を尋ねてくる人がいても、素知らぬ顔をして「知wらwなwいwよw」と答えておきましょう。実際、ホモ君はリドル君の所在を知りませんので。

 

 

 

 

 

 

 

 更に1年ほど経ちましたが、今度はマクゴナガル姉貴(年下)が就職してきました。

 彼女は不死鳥の騎士団の創設メンバーではありませんが、ダンブルドアの部下としてよく働く超有能スパイです。能力としては動物もどきの隠密性をいかした潜入調査が多く、死喰い人の会合などにも参加し重要な情報を持ち帰ることなどにも成功している手練れです。

 彼女はこのチャートでは最終決戦には参加しませんが、スパイとしてバディを組むことが多くなるので時間をかけて仲良くなります。

 

 

 ――おいにゃんにゃんにゃん!お茶でもしようや。バタービール冷えてるか〜?

 うん、美味しい!仲良くなるにはまず食事から、基本中の基本だよね!

 

 ――その毛並み、ちょっとモフらせて。ちょっとでいいから、先っちょだけでいいから!

 なんだかんだでやらせてくれるとこ、嫌いじゃないぜ。

 

 ――へいへーい、今暇してるー?クィディッチやってんだけど見に行かん?

 おう二つ返事かよ。流石クィディッチ狂は伊達じゃないという事ですね。

 

 ――おいダンブルドアー!今日は猫姉貴も誘って飲もうや。

 二人で猫姉貴の部屋に行くと……おっと泣いてんじゃん、これは失恋イベントですねぇ。申し訳ないが本当に悲しいのはNG。しっかりと慰めてあげましょう。

 

 

 結構仲良くなれたんじゃないですかね。動きがあるまで倍速します。

 

 

 ………………………………………………。

 …………………………………。

 ……………………。

 

 

 

 10年ほど経ちリドル君がホグワーツに面接をしに来ました。

 もちろんホモ君はただの一教師でしかないので面接に踏み込むことは出来ません。どのような面接が行われているかを把握することは叶いませんが、リドル君改めお辞儀様が現在行っている所業及び風聞は正史と変わらずひどいものなのできっと就活は失敗するはずです。

 そもそも防衛術の教職の座はホモ君のものだって何度言えばわかるんだよこの野郎。

 

 またお辞儀様自身も就職できるとは思っていないはずです。それでも彼がホグワーツの教職を希望した理由はいくつか存在します。

 ――――一つ、ホグワーツを心から愛していたこと。

 ――――二つ、ホグワーツには多くの神秘や遺産・秘密が隠されていたこと。

 ――――三つ、その立場は信奉者を作るのに都合がいいこと。

 これらの理由が存在しますが、重要なのは二つ目ですね。多くの神秘や遺産・秘密、つまりグリフィンドールの遺産探しです。彼は自尊心、自分の優位性に対する信仰、魔法史に載るほどの名声などを強く意識しているため、分霊箱の器には名誉にふさわしい品々を選ぼうとします。

 そのため防衛術の教授職にホモ君が就いていようが面接には来るでしょう。あらかじめホモ君が防衛術を担当していることを話しておかなければ、「闇の魔術に対する防衛術の教授職に対する呪い」をかけられてしまいます。これはお辞儀様が就職を拒否された恨みからその職業には1年以上在職できなくなるように仕向けた呪いです。

 正式な名前がないため呪文がしょぼく感じますが、効果は絶大です。どんな辞め方をするかは正史の方で十分に例が出ているため割愛しますが、教授職を辞める原因に死が関係する場合すらあります。ただの嫉妬でここまでされるのは流石に迷惑ですよ(一般被害者)。

 今回は十分に好感度を稼いでいるのに加えて、ダンブルドアの監視という順当な理由から防衛術の教授職に就いていることはお辞儀様もちゃんと理解しているはずなので、彼が逆恨みで教授職を呪うようなことはしないでしょう。

 

 更にこのイベントはフラグ的な面でいえば、この面接はダンブルドアがお辞儀様を見極めて判断する最終的な関門としての役割を持ちます。つまりこの段階を経た後に後日ダンブルドアが自分の考えをまとめることがGG値の上昇に最低限必要なキーになるわけですね。

 

 どうやら面接が終わったようなのでお辞儀様に会いに行きます。

 

「久しぶりだな。少し話さないか?」

 

 リドル君オッスオッス。

 久しぶりに会いましたが顔立ちがかなり変わっています。顔面がまるで焼かれたようにぼやけている上にろう質で奇妙に歪み、目の白目は血走ったような色味をしていますが、瞳孔はまだ蛇のような細長い形にはなっていませんね。しかーし髪なんか必要ねぇんだよ!と言わんばかりのツルッパゲは見間違えようもなく「名前を言ってはいけないあの人」の人物像と一致しています。シッ!見ちゃいけません!(母親)

 小ネタですが、お辞儀様の顔つきから分霊箱の作製個数のおおよその見当をつけることが可能です。この感じを見るにどうやら分霊箱づくりは順調に進んでいるようですね。おそらく魂は6個に分割し終え、5個の分霊箱は既に作り終わっている頃でしょうか。

 

「名前を正式に変えた。トム・リドルはもういない。俺様のことはヴォルデモートと呼んでくれ」

 

 おかのした。死の飛翔ですか、良いセンスしてますね(苦笑)。

 必要の部屋に着くまではダンブルドアの盗聴の恐れがあるため重要な話はできません。

 あまり変なことは口走らないようにしましょう。

 

「お前に会うのも久しぶりだな」

 

 たしかに10年近く会ってなかったんですよね。時が流れるのは速いものです(倍速)

 ようやく必要の部屋へとたどり着き、多くのものが隠された部屋が出現しました。

 二人で中へと入っていきます。

 

 理論上この部分殺害RTAの最速タイムはこのタイミングで部分殺害を行う事で達成できると現時点では考えられています。

 第一次魔法戦争を起こす前のヴォルデモートは基本的に神出鬼没ですが、ホグワーツ就職はほとんどの場合に確定で起こるイベントです。ホグワーツという姿くらましが禁止されており逃げる手段が封じられている状況である上に、分霊箱が予言前の最大分割個数になっているこのタイミングはヴォルデモートを殺害する絶好のチャンスというわけです。

 

 しかしここで決戦となった場合は最大の問題があります。

 まず一つはダンブルドアの助力がほとんど期待できないことです。この時点でダンブルドアがお辞儀様を積極的に処すほどダンブルドアのGG値が高くなることはないので、独力でお辞儀様を倒す必要があります。

 ダンブルドアをホモ君とお辞儀様の決闘に巻き込むことは出来なくはないのですが、巻き込んだ後は地獄の様相を見せることになるでしょう。

 

 ではまず無理やり戦闘に巻き込む方法を二つほど紹介します。

 

 一つ目はお辞儀様の面接途中に校長室に乗り込みその場で決闘を始める、といった方法です。

 当然ですが面接途中に校長室に入ることなど普通に考えてできませんし、おそらくドアも施錠されているでしょう。

 つまり力技でドアを蹴破り校長室に入室した後、お辞儀様と闘うことになります。校長室のセキュリティの強度は中々なものなのでホモ君は悪霊の火でドアを焼き払うことになるんですかね。

 では、その状況をダンブルドアの視点に立ってよく想像してください。

 ――――校長室で就職の面接をしている最中、在籍している教授がいきなり悪霊の火でドアを焼き払い部屋に侵入、更に就職希望者を襲って魔法の撃ち合いを始める――――その場でホモ君とお辞儀様の二人とも拘束されるのがオチです。

 

 もう一つの巻き込み方はお辞儀様が髪飾りを必要の部屋に隠しに行く道中に襲撃する方法です。

 校舎内で騒ぎを起こせばダンブルドアに限らず多くの教師陣をその場に集めることが可能です。この場合もそれまでホグワーツで築いた信頼関係などからなんとか共闘にまで持ち込めるかもしれませんが、殺害するのには高確率で邪魔が入ります。

 

 つまり巻き込むことは出来ても、基本的に三つ巴の戦いになりヴォルデモートを殺すに至らないという事態が発生してしまうんですね。

 

 この事態を防ぐためには、髪飾り隠しに同伴し必要の部屋内で決闘をすることで乱入者の可能性を排除する必要がありますが、これはかなり難しいです。

 そもそも必要の部屋に同伴するためには、ホグワーツ教授であるという条件に加え、リドル君の同級生でかなり親密度が高く秘密を共有できる間柄である必要があります。

 リドル君の同級生という設定でRTAを始める場合、どんなに頑張っても彼を超えるような育成チャートを生みだすことは走者には出来ませんでした。

 これは同世代チャートでは彼を独力で倒すことが実質不可能であることを意味します。結果としてこの理論上最速チャートは机上の空論で終わってしまいました。悲しいなぁ…(諸行無常)。

 

 面接を終えた直後が一番狙い目なのに、面接から少し時間をおかないとダンブルドアが考えを整理する時間を確保できずにGG値が上昇してくれない、このチャートにおける最大の矛盾かつ遅延場所です。

 ここでダンブルドアが自らの意思で戦闘に参加するようにできさえすれば現時点での最速から更に10年近くタイムを短縮することができるはずなんですけどね。

 

 

 

 髪飾りを隠し終えて、今後の予定を少し話したら解散です。

 

 おっ、まだ何か用でもあるんか?

 

「これはハワード、やはりお前に持っていてもらいたい」

 

 お辞儀様にカドマスの指輪を渡されました。そんなことしなくていいから(良心)。

 正直なところ、分霊箱は扱いに困るのであまり受け取りたくないんですよね。

 見たところ正史の様な指輪をつけただけで死の危険がある呪いがかかっているわけではなさそうだし、魂の欠片ごときに負けるような貧弱な育て方はしていませんが、それでも厄ネタであることに変わりはありません。

 まだ魂を切り離してからそれほど時間は経っていないはずなので、この時点で壊してしまうと誰がどこで壊したかを把握される恐れがあります。

 更にダンブルドアに分霊箱を所持していることがバレると少なからず不信感を持たれることになりますし、肌身離さず持っていれば精神汚染の危険すらあります。

 結果として対処法は自分の研究室に封印しておくぐらいしかありません。

 

 まあ愚痴っても仕方ないので、本RTAにおける分霊箱の扱いについて確認していきます。

 

 分霊箱とは人がその魂の一部を隠すために用いる物体でホークラックスとも呼ばれます。

 それを作ることで身体が攻撃されたり破滅したりしても死ぬことはない、すなわち疑似的な不死を作り出すことができるんですね。

 通常の人間であれば身体がなくなった場合その内側に存在する魂は行き場をなくして消えてしまいます。しかし分霊箱が存在すれば、本来なら消えてしまう魂を現世に強制的につなぎとめることができるわけです。

 分霊箱は魂の容れ物としての役割が主体であるため、身体そのものの消滅は防げず、もし大本の魂を保護している身体が消えてしまえば魂は剝き出しの状態で現世に存在することになり、霊魂にも満たないゴーストの端しくれにも劣る存在になってしまいます。

 

 過程はどうであれ分霊箱は不死を一部実現できるすごい魔法なわけですが、こんな魔法に副作用が存在しないわけがありませんね。果たしてどんなものがあるか見ていきましょう。

 霞以下の存在になること。これは魂を物体に閉じ込めたことで発生する作用です。

 死後魂が永遠に輪墓に囚われ続けること。これは魂が欠損した状態で死ぬことによる効果です。

 どちらも魂を分割したことに対する副作用としては適当ではありません。

 

 これを考えるにあたり重要な記述を見つけました。

 

 アドルバート・ワッフリングの魔法基本法則の第一法則によれば「生命の源・自己の本質といった最も深い神秘に手を加えるのは最も極端で危険な結果を覚悟した場合に限る」とあります。

 これは分霊箱という己の魂を切り裂く行為の危険性や副作用の重さについて知ることのできる法則ですが、これを理解するにはまず魂が完全な一体であるはずだという前提が必要になります。

 元は一つである魂を分断することは暴力行為であり自然に逆らうことで、これはほとんどの場合最も邪悪な行為、すなわち利己的な殺人によってなされます。

 そんな自然の摂理に逆らうような方法をとれば、どうなってしまうかは自ずとわかるはずです。

 魔法族と非魔法族の違いは魂の構造であるとする説がある事からもわかるように、魂の欠損は魔法の使用に著しい影響を与えることがあります。

 わかりやすい欠点として容姿が変わっていくというものがありますが、その程度の副作用で済むわけがありませんね。魔法に対して鈍感になる、魔法の繊細さが失われる、魔法力そのものが衰えてしまう……お辞儀様は気づいていないようですが、前者二つに関しては正史でもその事実が確認されています。

 長々と述べましたが簡単に言うと分霊箱を作製するときの悪影響は間違いなく存在するという事です。一度分離した後はその魂を壊そうが本人に影響を与えることはありませんが、魂を裂くという自傷行為のリスクには気をつけましょう。正直あまり割に合わない魔法なので進んで使いたがる人はいないと思いますが。

 

 お辞儀様が己の魂を7つに分割し6つの分霊箱を作製しようとしていたのは、彼が「7」が最強の魔法数字であると確信していたためです。

 現時点では5つの分霊箱しか作られておりませんが、最後の一つが作られることはあまりありません。というのも彼は最後の分霊箱を偉大な人物の殺害によって完成させることを企んでいるからですね。正史においてお辞儀様が分霊箱を完成させずに予言の子を倒そうとしたのはこれが理由です。予言が示した危機を打ち砕き、その死を最後の分霊箱に用いることで自分を無敵の存在にできると信じていたとか。本末転倒というか、ある意味でお辞儀様らしいというか反応に困ります。

 分霊箱を作りすぎていた彼の魂は既に不安定だったため、最後に無抵抗の幼子を自分の目的のためだけに殺す、という今までよりも更に罪深いその行為に魂が耐え切れずに自壊してしまったというわけです。さらに興味深いことにこの話にはオチがあります。実は「7」が最強の魔法数字というわけではないんですね。お辞儀様が大量に分霊箱を作ったのは理論的には全くの無意味であったという、呆れを通り越していっそ哀れですらありますよ。

 とは言え、多くの分霊箱を作るのは実践的には十分に役に立つものです。分霊箱の作製個数が多ければ多いほどにその安全性は高まるわけですからね。

 しかし、本RTAではその点については気にする必要すらありません。分霊箱の大量作製はむしろ本体の弱体化を招くだけなので、分霊箱をわざわざ壊さない本走の様な場合においては作製してくれた方が都合がいいというわけです。

 

 

 

 お辞儀様と別れ、次にすることはダンブルドアとの話し合いです。今後の作戦会議を行っていきます。

 ヴォルデモートの現状をダンブルドアに知ってもらった今がホモ君の本当の目的を話す最良のタイミングなので、畳みかけるようにお辞儀抹殺を薦める予定です。

 彼との会話では『ヴォルデモート』などという仰々しい呼び名は用いず、学生時代の呼び名を用いて会話した方がダンブルドアとの間に意識の差が生じにくくなります。

 

「――――のう、ハワードよ。おぬしはこれからどうするつもりじゃ」

 

 どうするも何もホモ君のやることが変わることはありません。当たり前だよなぁ?何のために今まで準備してきたと思ってるんですか。

 

「まさかはじめからこうなることが分かっておったのか」

 

 そりゃあ学生時代にあんな事件起こしてんだから警戒すんのは当然だろ。

 

「おぬしにとってそれはそんなにも――――」

 

 何って僕のLIFEですよ、人生そのものですよ(ONDISK感)。

 倍速の多用であまり意識してきませんでしたが、RTAが始まってからあと少しで30年も経つことになると思えば感慨深いものがあります。RTAは苦行ってはっきりわかんだね(悟り)。

 

「しかしそれでは君は親友を手にかけることになる」

 

 え、そんなん関係ないでしょう(正論)。

 彼は確かに親友ですが、悲しいけどこれ殺害RTAなのよね。

 過去の友情なんてものはフヨウラ!というわけで早く殺害しなきゃ(使命感)。

 

 ……なんだかあまり反応が芳しくありませんね。おそらく信用されてないんでしょうか。

 予期せぬGG値の高さがここに来て響いてきました。

 とはいえ大した問題ではありません。予定より早いですがここで守護霊召喚!

 これによりアラインメントが善であることをアピールします。本来であれば不死鳥の騎士団結成時にお披露目予定だったんですけどね。まあ早い分にはデメリットもないのでいいでしょう。

 

 守護霊の呪文の習得者は必然的にアラインメントが善へと傾くため、不死鳥の騎士団メンバーからの好感度稼ぎを手軽に行えるものでもあります。わざわざ自分でフラグ管理をする必要がなくなるのが利点ですね。

 ホモ君と同じような立場の二重スパイであったスネイプ君はリリーへの思いを周囲に悟られないように有形の守護霊を用いませんでしたが、ダンブルドア以外の不死鳥の騎士団員の彼に対する信用度の低さの一因ともなっています。ホモ君の場合は守護霊の姿を隠す必要は特にないので十分に信用を得ることができるはずです。

 

 どう?いけそう?(期待の眼差し)

 

「それほどまでにトムのことを…」

 

 そうだよ(便乗)。ホモ君はいつでもリドル君を殺りたがっています。

 守護霊召喚によりホモ君の行動が善からくるものであると認識してもらえたはずです。

 

 

 お辞儀様に対する自分のスタンスをダンブルドアに表明したところで今回はおしまい。

 ご視聴ありがとうございました。

 



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真っ白な人生と真っ赤な嘘

小説パートです。
時系列がかなり戻ります。


 

事実というものは存在しない

存在するのは解釈だけである

――フリードリヒ・ニーチェ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 学校は既に長期休暇へと突入していた。

 生徒たちは思い思いの夏を満喫している頃だろうか。対して私は毎年のように訪れている教え子の家に行き、奮発して買った少し高めのお菓子でティータイムを楽しんでいた。

 ただそんな時間は始まってすぐに終わりを迎えることになる。

 

「――――秘密の部屋を開いたのは、きっと…トムだと思います」

 

 青年の告白はその場の空気を一瞬で変えた。

 彼の顔は苦げに歪んでいる。声は震えて辛うじて聞き取れるかというものでしかない。しかし聞き間違えるはずもなく、言葉は音となってはっきりと自分の耳に届いていた。

 それほどまでに彼が苦しげな表情をしたのはきっとそれが最初のことだったと記憶している。

 

 談笑中の彼はいつもよりわずかに口数が少ない気がしていた。

 とはいえ普段からそう多くを話す性格でもない。そんなときも偶にはあるだろうと思っていた矢先のことだ。

 

 世界から音が消えたのではないかと錯覚するほどにその場は静まりかえった。

 

「今、自分が何を言ったか………わかっているのかい」

 

 きっと自分の声も震えていたのだろう。思考がうまくまとまらない。

 彼は僅かに首肯き、言葉を続けた。

 

「あの事件の犯人はトム以外にはあり得ない………」

 

 その事実には大した驚きを覚えなかった。

 ただ、なんというか…彼の口から事実を聞かされることを頭が拒んでいるような感覚。

 それを認めてしまえば彼の未来が決まってしまうようで――――

 

「僕のせいだ、僕があんなこと言わなければ」

「なにも君のせいということは…」

「もうおしまいだ。もはや取り返しはつかない」

 

 何が起きているか、まるで分からない。分かりたくない。

 それでも彼がやり場のない怒りをどうにかしようと足掻ていることだけは理解できた。

 

「……少し落ち着くといい」

「落ち着くことなんてできるか!人が一人死んでいる!この先彼がどうなるかなんてわざわざ言うまでもない。でもそれを知ってどうしろと!僕に何をしろと言うんだ!気づいたときには手遅れだっていうのに!」

 

 かけるべき言葉を失い、沈黙が場を支配する。

 自分が何も言わないのを見ると彼は自嘲気味に続けた。

 

「『きっとトムだと思う』何故こんな曖昧な表現しか出来ないと思います?――――――――問い詰めなかったんですよ……そうだ、僕は弱い人間だ……友人から真実を聞くのを怖がった、関係を壊すことを我が身可愛さに恐れた臆病者だ……」

 

 熱を全て吐き出したかのように声に力は入っていなかった。

 

「――――『魔法界の王』……あんなこと言わなければなにかは違ったのだろうか……」

 

 独り言のようにつぶやく彼の眼は既に光を映してはいない。

 溜め込んでいた感情が全て流れた先は絶望だったのか、項垂れている彼からそれ以上を知ることは出来ない。しかしそれを黙って見過ごせるほど、彼は無関心にも無感動でもいられない――――

 

「――――よく言ってくれた。辛かっただろう」

「辛かっただろう!?貴方に僕の何がわか――――」

「いいや、分かるさ。分からぬはずがないとも」

 

 記憶が、過去が、想いが。この瞬間、全てが脳内を駆け巡る。

 

「――――なんせその道は私が既に歩いた道だからな」

 

 ――――その人が大切であると思えるのならば尚更。

 ダンブルドアは懐かしむように、しかし少し寂しそうな顔でそう答えた。

 彼には分っていた。青年の感じている想いは自分にしか理解出来ない、彼が相談するのが自分で良かった、と。それが同情か、はたまた後悔からくるものか。生じた感情こそいざ知らず、青年の気持ちを理解できた、できてしまった彼には選択肢などあってないようなものだったのだろう。

 

 かけられた言葉に顔を挙げた彼の眼には微かに光が戻っている。

 それでも不安げな様子は青年がまだ子供であることをより強く意識させる。

 

「大丈夫だ。そう心配するな」

 

 青年に近づき頭をわしわしと撫でまわせば、彼は恐る恐る言葉を紡ぎ始めた。

 

「でも僕はあなたとは違う、空っぽの人間だ」

「そんなことはない。君はホグワーツで何を得た?」

「――――友人。たった一人の僕だけの友人を…」

「そうだ。ほら、君は独りじゃない」

「既に間違えた僕に何が出来ると……?」

「――――確かに君は間違えたかもしれない。臆病者だったかもしれない。だが君が未だ彼の友人であることに変わりはない、そうだろう?」

「……トムを何とか出来るんですか?」

「それが出来るとしたら……きっとそれはハワード、君だけだ。君にしかできない」

 

 彼はまだ迷子のような顔をしていた。

 

「そう心配することじゃない。正しき事と容易き事の選択、それを間違えるな。しっかりと君自身が考えろ」

 

 彼はきっと間違えない。

 愚かな私とは違う。だからトムに流されることはない。

 

 トムは確かに危険だ。だが必ずしもそうなると誰が言えるだろうか。未来とは我々の複雑で多様な行動の因果として現れる。予測できない不確定なものだからこそ世界は美しいのだ。

 私がトムに何か出来る時期は疾うの昔に過ぎている。洋箪笥を燃やして怖がらせたあの時は遥か昔、彼が犯した罪を償わせたりすることはもはやできない。このままではハワードの言う通り、彼の未来は決まっているようなものだ。

 しかし今の彼にはハワードがいる。ハワードが彼の隣にいるならば必ずしもそうなるとは思わない。だから彼を疑うのは私だけでいい。ハワードが私のような人間になる必要はない。それをするのは我々大人の役目だ。

 

 他人の正しさを許すより、間違いを許す方がずっとたやすい。その他人が私のようなものだったら言うまでもないだろう。彼が道を誤るならその道を正せるのは彼の友人だけなのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハワードたちの卒業時期が近付いてきた。

 自分の監視が利いていたのか、それとも彼が友人としてうまくやったのか。それを知ることは叶わないが、トムが在学中に再び問題を起こすことはなかった。

 もしまだハワードが二年前のような迷子であるならまだ面倒を見る必要がある。私にとって自分の教え子はいつまでも生徒だ。その関係はこれからも変わらない。

 

「ハワード、もう就職は決まっているのかい?もし行きたいところがなかったら、ホグワーツで教鞭をとるのもいいだろう」

 

 彼はもういつかの状態ではなかった。

 しっかりとした顔つきで少し誇らしげに胸を張り私の質問に答える。

 

「先生、僕はやりたいことを見つけられました。きっとこれは僕にしかできないことだ」

 

 そうか、ようやくハワードにも人生の意味と思えるような夢を見つけられたのだろう。それを見つけるまでは苦しさを感じていたのかもしれない。初めてハワードとあった日からの彼との思い出が走馬灯のように頭を駆け巡る。昔のような弱々しかったころに比べてどれだけ成長してきたか。きっとその変化は外面だけではない。彼が何を思うようになったのか。雛が巣立つのを見るような気持ちとでもいうのだろうか、少し寂しさを感じながら卒業する彼を見送った。

 

「あーでも、もしかしたら10年ぐらい経ったらまたお世話になるかもしれないです」

 

 先の言葉を訂正するのが少し恥ずかしいのだろう、照れながらはにかんで笑う彼を見て、彼らが自分たちのような結末を辿らずに済む未来、それを願わずにはいられなかった。

 

 

 彼らは卒業する。

 きっとすぐ後に私も自分の過去を清算するときがやって来るだろう。そんな予感がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 言葉通り彼は再びホグワーツに戻ってきた。

 

「久しぶりじゃのうハワード、10年ぶりぐらいな気がするよ」

「9年ですよ、ダンブルドア先生」

「そうかそうか。――――これからは同僚なのじゃ、名前で呼んでも構わぬよ」

「いえ、私にとってダンブルドア先生はずっと僕の先生ですから」

「そうか、ここで立ち話も何じゃろう、昔みたいにお茶を飲みながらはどうかな?」

 

 こうして久しぶりの再会と相成った。

 しばらくは旧交を温めるようにお菓子をつまみながら他愛無い話を続ける。

 最近の流行りはなんだ、この前買った靴下がどうだ、最近目が遠くなった、とか。

 

 そして遂に本題へと移り変わった。

 

「それでやりたいことは出来たのかの?」

 

 目を向ければ彼は窓の外へと目線を移し、遠い声で続けた。

 

「そうですね、終わったわけではありませんが、布石を少々。といってもこれ以上はどうしようもないので先生の力をお借りしようかと思いまして」

「わしにできることなら協力してやりたいところじゃが……」

「いえ、今ではありません。そうですね……おそらくあと10年もすれば自ずとわかると思います」

「ふむ、そういうもんかのう」

 

 ちょうどお茶も菓子もなくなり、茶会はそれで終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 更に10年と少しが過ぎたころ、彼は校長になっていた。

 その日は雪が降っていた。外は暗く、青みがかった雪片が窓をよぎって舞い、外の窓枠にも積もっているのがいっそう寒さを感じさせる。

 しばらくのち、老人は少し前から校長室に入っていた来客へとようやく顔を向けた。

 

「――――今日は遠いところからよく来たのう」

 

 20年ほど前とはまるで顔立ちが異なり、外の雪のような不気味な青白さを顔に浮かべ、黒くて長いマントを纏う男に語り掛ける。

 

「あなたが校長になったと聞きましてね、ええほんとに素晴らしいことだと思いますよ」

「君がそう言ってくれてわしは嬉しいよ。飲み物はどうかね?」

「ありがとうございます。なにぶん遠くから来たものでして」

 

 棚から少し高級なワインを取り出し、自分のものとそして相手の杯とに注ぐ。

 

「それでトムよ、今日は何の要件じゃ?」

「私はもう『トム』と呼ばれていません。今は――――」

「ああ知っているとも、ただわしにとっては君はずっとトム・リドルなのじゃ。不快に思うかもしれぬがこれは年寄りの教師にありがちな癖でのう。生徒たちの若い頃のことを完全に忘れることができんのじゃ」

 

 老人は愛想よく微笑みながら言うのに対し、男は無愛想にワインを傾けるだけ。

 会話の主導権は既に老人が握っていた。

 

「あなたほどの魔法使いがこれほどまで長い間ここにとどまり、更に校長にまでなるとは………正直驚いていますよ」

「わしにとって優先すべきは、昔からの技を伝え若い才能を磨く手助けをすることじゃ。君はたしか――――わしの記憶に間違いがなければ、じゃが――――こちらの方面にはあまり興味を持っていなかった気がするんじゃがのう」

「少し心変わりがありましてね………ただ、なぜあなたほどの方が、と疑問に思っただけです。噂では魔法省の方でも何度かオファーがあったとか」

「そうじゃな。たしかに今の時点で三度はされておるのう。更に増える気もするが………なんにせよわしは魔法省には一度も惹かれたことはないし、おそらくこれからもないじゃろうよ」

 

 二人は少し息を吐き、奇妙な沈黙があたりを支配する。

 二人のあいだに張り詰めている沈黙を老人は自ら破ることはせず、男が口を開くのをただ待ち続けていた。

 

「――――それで改めてお願いなのですが、私にこの学校で教えさせてください。ここを去って以来、私は多くのことを学びそして成し遂げたことをあなたはご存知でしょう。私であれば生徒たちに、他の魔法使いからは学ぶことのできないことを教えることができるはずです」

 

 男は演説するように身振り手振りで己を評価した。

 老人は男が話す様子を注意深く観察している。男が一通りの演説を終えると老人は試すように話を切り出した。

 

「いかにもわしは君が何を成してきたかを知っておる。君の母校にまで風の噂として届いておるのでな。実際はその半分も信じたくない気持ちじゃが」

「――――偉大さは妬みを招き、妬みは恨みを、恨みは嘘を招く。愚かなことよ」

「それを『偉大さ』と君は呼ぶのかね。なるほどなるほど。それは大層『偉大』なことなのじゃろうな」

 

 男はまるで自分に酔っているかのように続け、老人の念押しに軽蔑と嘲笑が含まれていることにすら気付いていない。

 

「私は魔法についてその深淵へと進んでいった。誰も成し得ぬほどに――――」

「ある種の魔法、と言うべきじゃな」

 

「君はほかのことに関して、そう君は――残念じゃが――嘆かわしいまでに無知じゃ。友人からなにか学ぶことはなかったのかと」

 

 そのとき初めて男は不快感を顕わにした。

 話に水を差されるのがそれほど癪に障ったのか、それが男にとっての地雷であったのか。

 

「くだらんな、ハワードが俺様のやり方に反対するわけがないだろう」

 

 男はもはや最低限の礼儀すら捨て、荒々しい口調で己の感情を叩きつけた。

 

「やつにどんな幻想を抱いてるかは知らんが、彼は俺様の唯一の理解者だ、お前如きが彼を語るな」

 

 吐き捨てるように言った後、男は今度は表情と口調をうわべだけ取り繕い、嘲笑の意を込めて再び話し始める。あまりに似合わないそれは彼の本性を知るものが見れば、鳥肌が立つような気味の悪さを覚えたことだろう。

 

「私が学んでいる魔法よりも愛とやらが持つ力のほうがはるかに強い、あなたはたしかそんな意見をお持ちでしたね。ええ、結構なことですとも。ですが残念なことに私が見てきた中でそれを支持する者は皆無でしたよ」

「君はおそらく間違ったものを見てきたのであろう。それとも単に理解するだけの脳が足りていないのか」

 

 老人は愚かな子供(大人)を見るような目でそう言った。言葉こそ憐れんではいたが、そこに込められたものは軽蔑の方が大きかった。顔にはもはや先のような笑みなどは浮かんでいない。

 

「なんにせよわしが君をホグワーツの教授として採用することはなさそうじゃの。互いにわかっていることじゃが、望んでもおらぬ仕事を求めるために君が今夜ここを訪れたのはなぜなのじゃ?」

 

 グラスの中身はとうに消え、会話は既に終わりへと差し掛かっている。

 

「まさかホグワーツが恋しくなったか、そんなことあるまいに。わしが受け入れることは全く考えられぬことぐらい君にもわかっとるはずじゃろう。それにも関わらず君はやって来た。はてさて不思議なこともあるもんじゃのう」

「――――それが最後に言い残すことか?」

 

 それを最後に男は立ち上がった。

 

「そうじゃよ」

「ならば私が言う事は何もない」

「……そうであるか」

 

 老人の眉間には深い皺が刻まれている。

 その口は既に背を向け扉の方へと歩き始めている男へと伝えることを迷っているかのようで、口の中で言葉を転がし、結局引き留めるような形で一方的に話すことになった。

 

「―――わしが今更君にできることは何もない。昔のように罪を自覚させ反省させることすらも。できれば何とかしてやりたかったんじゃがのう。ハワードが何かを変えてくれることを願うよ」

 

 男は一瞬憤怒に包まれローブ下の杖へと手が伸びかけたが、実際にそれが行動に移されることはなく、そのまま振り返らずに部屋を出ていった。

 

 後には老人が独り残されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 老人が先のことに思い巡らしていると扉が開かれた。

 

「――――先程トムが来たのが見えましてね。どうでしたか」

「わざわざ分かり切ったことを聞くとは、君も大人になったのう。むろん悪い意味でじゃが」

 

 青年は老人の嫌味を無視して自分の話題を進めていく。

 

「先生なら私がここに来た理由もある程度察しがついているのでは?」

 

 老人も答える必要すらないと感じたのか、青年の問い掛けに対する答えを示さなかった。

 

「のう、ハワードよ。おぬしはこれからどうするつもりじゃ」

「私のやることは最初から何一つ変わりませんよ。今までの努力(人生)を無駄にするつもりはありませんから」

 

 軽く答える青年の様子を見て、そのとき老人はようやく己の間違いに気が付いた。

 

「まさかはじめからこうなることが分かっておったのか」

「――――ええ、トムが五年生の時に起こした事件はもちろん覚えているでしょう。その時先生は言ってくださいました。『君が未だ彼の友人であることに変わりはない』『それが出来るとしたら、きっと君だけだ』と。それを考えに考え抜いて、やっと7年生の卒業する頃に全て計画したのです、これならうまくいくと」

 

 彼が何故ここに来たか、老人は即座に思い当ってしまった。

 老人は理解力がありすぎた、それが最も効率がいい方法であることに気付けてしまったのだから。

 

「トムには何と言ってここに?」

「――――貴方の監視をするため、と」

 

 一言。伝える言葉が短く少ないものであるのにも関わらず、全てが理解できてしまう。まるで鏡を通して己の心を見ているようだ。

 しかし教え子に、最も愛を与えた人間にその道を歩かせるわけには、自分よりも酷い過ちを犯させるわけにはいかなかった。

 

「しかしそれではおぬしがトムを…」

「全て承知の上です。きっとそのために私は…いえ…僕は生きてるんですから」

 

「トムは僕の最初で最後の唯一の友人です。僕は彼がとても好きだ。それはいつだって変わらない。きっとこれからも。――――でもけじめは私がつける」

 

 青年は杖を振って呪文を唱えた。

 

「――――エクスペクト・パトローナム(守護霊よ 来たれ)――――」

 

 杖から漏れ出た銀色の光が幾重にも重なりその姿を顕わにする。

 猛禽類――――鷲、だろうか。おおよそスリザリンらしくない、どこか親近感を感じさせるそれは、校長室をぐるりと飛び回ったあと、窓の外に広がる暗がりへと吸い込まれるように消えていった。老人は飛んで行く鷲を見つめ、それが見えなくなったとき思わずといったように呟いた。

 

「――――それほどまでにトムのことを…」

 

「――――ええ。」

 

 

 

 

 

 ――――守護霊の呪文は使用する者の本質を示す性質を持つ。

 彼の覚悟も、そして彼の後悔も。その魔法にはきっと彼の全てが詰まっていた。

 故に老人はそれら全てを言葉通り()()()()のだ。

 彼がどんな思いで守護霊を出したのか。

 どんな幸せを願って守護霊を生みだしたのか。

 誰の言葉が彼にその道を歩ませたのかなど、もはや明白だ。

 ――――己を重ねて見ていた彼が己とは全く異なる人間であることを知った。

 ――――己の葛藤が見当違いな後悔を押し付けるだけのエゴであることも知った。

 

 

 それでも――――たとえ彼がそれほどの気持ちを持っていたとしても――――否!だからこそ、己が最も信ずる愛のためにも、老人には彼にそれをさせるつもりなど微塵もなかった。

 



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Part 7/8 ヴォルデモート台頭

初投稿です(鋼の意思)


 

 喋れば語録、ガバれば再走、行き着く先はエターナル。なRTA、続けていきます。

 

 

 

 前回はお辞儀様の就職に関連したイベントをこなしたところで終わりました。

 あえなくお祈り申し上げられてしまった彼ですが、次は魔法界に大規模な戦争を仕掛けるために動きはじめます。人間の屑がこの野郎、そんなことしちゃってさ、恥ずかしくないのかよ?

 ホモ君の積極的な介入によって戦争時期を早めることは可能ですが、あまり良い選択とは言えません。時期が早まった結果、準備が完全にできていない状態で戦争が始まるため、戦争の規模自体がしょぼくなります。それによりダンブルドアのGG値が思うように上がってくれないという弊害が起きてしまいます。つまりホモ君は戦争を直接煽ったりはせず間接的に影響を与えることで、彼らが自主的に戦争を始めるまで時期を待った方がいいというわけです。

 

 今後の討伐方針ですが、基本的にダンブルドアに一任します。これが二重スパイチャートによるお辞儀様の殺害が簡単にできる主な要因です。

 ダンブルドアはおそらく魔法界で最も強い人間ですが、その強さは単に魔法力によるものだけではなく、彼が謀略に関しては並ぶことのない天性の才能を持っているからに他なりません。まあその才能が完全に生かされるのはGG値が最高値付近であるときに限定されますが、たとえその策略が完全でなくとも走者がすべてを考えるよりははるかにマシです(思考放棄)

 

 というわけで次に動きがあるまでは、今までと何らやることが変わらないので倍速してしまいます。

 

 正史においてこれほどまでに他を圧倒する才能を持っていたダンブルドアがヴォルデモートを積極的に倒そうとしなかった理由は、戦力的な問題に加え、シビル・トレローニーの予言が関係しています。とばしている間にお辞儀様討伐の最大の要素である予言の仕様を確認していきましょう。

 

 魔法界における予言の扱いはかなり複雑なものですが、実際のところほとんどの予言はただの占いと違いがないという経験的事実が広く知られています。

 予言とは未来予測の手法の一つでしかなく、あくまでその未来の可能性を示しているにすぎません。事実、魔法省神秘部の予言の間に収められた予言の多くは実現することがありませんでした。

 しかし数ある予言の中でもシビル・トレローニーによってもたらされる予言は他のものとは一線を画すものになっています。

 彼女は普段は詐欺師紛いのインチキ占い師ですが、予言者として有名なカッサンドラの曾孫であり、局所的にその才能を発揮することがあります。その際の予言は世界に対してある種の力を持ち、トレローニーが予言をした時点でその予言が実現する未来が確定します。

 ここまで来ると彼女の予言が世界に影響を与えているのか、それとも彼女が正確に不変の未来を予言したのか、このどちらであるかを知ることは叶いませんが、ある意味で強制力が働くことは事実です。

 

 ほんへでされた一つ目の予言を覚えているでしょうか。

「闇の帝王を打ち破る力を持った者が近づいている。――(中略)――一方が他方の手にかかって死なねばならぬ。一方が生きるかぎり、他方は生きられぬ」

 この予言によりハリーとヴォルデモートの二者による決着が決定づけられています。

 ヴォルデモートは一度ハリーに倒されますが、予言を知っていたダンブルドアはヴォルデモートが完全には死んでいないことを予測します。不死の法を見つけるまではヴォルデモートを殺害することに意味がなく、またその殺害も予言の子による決着が必要であると悟るわけです。ヴォルデモートがアルバニアに潜伏しているのを知りながらも見逃していたのはこのためです。

 つまり予言の子以外がヴォルデモートの殺害を試みることのできる時期はダンブルドアの邪魔が入らない予言前に限られるわけです。ハリポタRTAにおける最大の障害は爺だったのか(驚愕の事実)

 

 まあ予言について考えるのが面倒くさい人はトレローニーを殺害するのも一つの手かもしれませんね(説明放棄)予言者を殺害するメリットとデメリットについてはまた考える必要がありそうですが。

 

 

 

 

 

 等速に戻りました。現在は1968年です。

 賢者の石がようやく完成したようなので本チャートにおける活用法を少々説明していきます。

 

 賢者の石の効能には、卑金属を純金にすることと、不死の水薬である命の水を生成することが知られています。この二つの効能は全く違う種類の性質であるように感じられますが、実は広義的な面でほとんど同じことをしているにすぎません。

 ポイントは命の水が寿命を延長する効果があるものの、老化を止めることができるわけではないという点です。

 科学的な面から言えば卑金属から純金に物質を変えるには莫大なエネルギーがあれば不可能とは言えませんし、また老化を無視して寿命を延ばすことも外部からエネルギーを確保していると考えることができるでしょう。

 つまり賢者の石の正体は「超高濃度エネルギー体」「魔力生成器」「魔力増幅器」などを基盤に追加の性能を加えた代物であると考えられます。実際にそれらの正体が今挙げたもののうちのどれかであるかは大した問題ではありません。重要なのは賢者の石を外付けのハードディスクとして用いることでホモ君の魔力保有量の強化を図ることができるという点です。

 とはいっても魔力の伝達経路が賢者の石→ホモ君→杖というものである以上、ホモ君の魔力容量以上の魔力を一度に引き出すことができないという問題は相変わらず残っています。現状では魔力切れの心配がなくなり経戦能力が向上する程度のメリットしかないわけですが。

 

 なんにせよ現在の賢者の石の形では普通に扱いにくいので少し手を加えていきます。

 戦闘中に賢者の石がどこかに行ったとか壊されたとかになったら悔やんでも悔やみきれないので、自身の体内に埋め込んで融合してしまいましょう。

 自由に魔力を引き出せるのが確認出来たら準備完了です。

 

 

 

 

 

 

 現在は1970年、第一次魔法戦争が勃発したようです。

 巨人、狼人間、吸血鬼など数多くの闇の魔法生物が闇の陣営に味方し、毎週のように事件が発生しています。最初のうちは闇祓い局含める魔法省が彼らと抗争を繰り広げます。

 ホモ君は相変わらず教職を続けていますが、特筆するような事件は起きていません。

 変わらず倍速してしまいましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦争が始まって一年が経ち、いわゆる親世代が入学してきました。

 不死鳥の騎士団が結成されるまでホモ君ができることはほとんどありませんのでスニベルス君に絡んで暇をつぶします(露骨な尺稼ぎ)

 

 

 

汚い子供を見つけたので虐待することにした。

他人の目に触れるとまずいので自分の部屋に連れ帰る事にする。

嫌がる子供を風呂場に連れ込みお湯攻め。

充分お湯をかけた後は薬品を体中に塗りたくりゴシゴシする。

薬品で体中が汚染された事を確認し、再びお湯攻め。

 

お湯攻めの後は布でゴシゴシと体をこする。

風呂場での攻めの後は、全身にくまなく熱風をかける。

 

その後に大して味も油分もないような飯を与える。

そして俺はとてもじゃないが飲めない甘すぎる飲み物を飲ませる。

もちろん、蜂とかいう虫けらの分泌液も入れる嫌がらせも忘れない。

 

その後は異臭のする薬品をかき混ぜる仕事を代わりにやらせる。

子供の仕事嫌いを著しく刺激し、体力を消耗させる。

 

疲れてぐったりとした子供を寮に連れ帰り、白い布の上に放置してやった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 不死鳥の騎士団がようやく結成されました。ようやく終わりも近づいてきましたね。

 創設メンバーに加入するかはダンブルドアの作戦に従いましょう。今回はがっつり入ってますね。とはいってもホモ君には教授という仕事があり、また闇の勢力に表立って抵抗するのは立場的にまず味しかないので、やることは基本的にスパイ活動です。

 

 というわけで猫姉貴~、散歩にでも行こうや!目的地は死喰い人の会合場所です。

 お辞儀君オッスオッス。ご機嫌はいかがかな、え、この猫はどうしたのかって?ああ最近飼い始めたんだよ、いいゾ~コレ。

 

「――――ほう、お前がペットを飼うなど珍しいこともあるものだな」

 

 猫姉貴が固まってますね、くっそ笑える。そこらへん散歩してきていいぞ(放し飼い)

 上層部はホモ君の調査でどうにかなるので、彼女にはホモ君では手の回らないような死喰い人本部での下っ端の調査をやってもらうのがいいですね。

 

 さてスパイ活動により得た情報は騎士団へ横流しです。

 不死鳥の騎士団という組織は闇の勢力に対する防衛組織であるため、闇の帝王を討伐することよりも、どうすれば被害を減らせるかという方向に力を入れています。

 どんな情報を渡すかはホモ君が決定することになりますが、今回はダンブルドアの信用が第一なので与える情報に特別な小細工を加えたりはしません。

 死喰い人対不死鳥の騎士団の勢力は時期によって変動しますが戦争終盤ではおよそ20対1と言われているので、間違っても不死鳥の騎士団を全滅させるようなことがないようにしましょう。闇陣営の勝利がほぼ確定するようになるとダンブルドアがホグワーツを拠点に本気で籠城戦を始める恐れがあるので、予言前に終わらなくなります。

 闇の帝王と団員が鉢合わせするような事態はなるべく避けるべきです。

 

 二重スパイなのに闇の陣営に情報を渡さなくていいのか?という疑問があると思いますが、実は情報を渡す必要はありません。なぜならホモ君の今の使命はダンブルドアの監視だからですね。そもそもお辞儀様はホモ君が不死鳥の騎士団入りしている事実さえ知らないはずです。故にダンブルドアの動向を偶に報告するだけで十分な働きになります(職務怠慢)

 

 あとはダンブルドアのタイミングで最終決戦となるはずです。あと数年気長に待ちます。

 

 

 

 暇なので再びマローダーズにちょっかいをかけて時間をつぶしますか。

 ホモ君はスリザリン出身ですが、マローダーズの好感度を得るのは意外に簡単です。

 まずホグワーツの教授であり、ダンブルドアと仲が良い。これだけで嫌われない程度の関係になります。加えて彼らを罰するだけの力を持ちつつも、いたずらに寛容かつ頼りになる大人という立ち回りをすることにより、学校内では最も信用できる教授のポジションを得られます。

 本RTAにおいて彼らから好感度を得る実用的な意味?…ナオキです。

 ぶっちゃけ個人的な趣味でしかないのですが、特にやる事もなく時間を持て余しているのでロスにはなりません。ホモ君の学生時代はリドル君に対抗するため勉強漬けの毎日だったので青春と呼べるような生活を送っていないし、若い子に交じって楽しむ時間があってもいいでしょう。

 

 ところで誰と一番関わるのがいいかという問題ですが、シリウス一択、次点でリーマスです。

 

 シリウスは純血一家のスリザリン家系ですが、親に対する反抗心などからグリフィンドールに入ったため、スリザリンそのものに対してはそれほど大きな悪感情を抱いていません。

 家との関係や思想に関して思春期らしく悩んでいるので、それについて相談に乗ってあげたり一緒に考えてあげたりすれば親密度は上がっていくはずです。

 

 リーマスは人狼であるため、それに対して親身になってあげれば簡単に好感度を稼げます。

 ホモ君の能力であれば脱狼薬の開発ぐらいわけないですが、それでも数年は費やすことになると思われます。ただの息抜きにそこまでの手間をかけるほどRTA走者は暇でもお人好しでもないので、適度に気にかけてあげるぐらいにしておきます(人間の屑)

 

 ジェームズはかなり気まぐれな性格をしており、スリザリンに対する偏見(8割ぐらい事実)がかなり酷いため、スリザリン出身の場合では蛇蝎の如く嫌われることはほぼ間違いないです(ガバ判定)

 操作キャラが女であれば、リリーと仲良くすることで恋愛に関するイベントを発生させやすく好感度も上げやすいわけですが、男キャラではそうはいきません。外聞や悪評を払拭してから接触しなければ好感度はマイナススタート固定なので、積極的に関わるよりは外堀を埋めた方がいいです。シリウスとの親密度を上げたうえで狼人間イベント、つまり動物もどきの練習を手伝うことが一番確実でしょうか。

 

 ピーター?個別ルートまで進めようと思ったことがないのでよくわかりません。もともと関わる予定もなかったのでスルーで。

 まあ彼の特性を一言で表すならば、無理矢理舞台に上がらされた憐れなモブ、と言ったところでしょうか。闇の帝王がいなければそれなりに幸せな生活を送れていたと思うんですけどね、あまりに運と間が悪い人です(本気の同情)

 

 最後にみんな大好きスネイプ先生ですが、ホモ君の育成状況的には一番関わりやすいです。実際ホモ君が最初にかかわりを持ったのもスネイプ君です。

 彼は様々な面で優れており、一年生の時点で既にほとんどの上級生よりも多くの呪いについて知っています。更に学生時代に魔法薬の改善、呪文の開発も独自に進め、最終的にはヴォルデモートを欺くほどの閉心術の使い手になるという超絶才能マンです。これでモテないとか、おかしいと思うんですけど。やはり外見は重要だという事ですね(差別主義からは目逸し)

 最初から最後まで面倒を見てあげれば彼の恋を成就させることもできるとは思いますが、それを見たい奴なんているか、って感じなのでやりません。彼がBSSによって脳破壊される様を愉しんで見守ります。これも青春を彩るスパイスの一つに過ぎないんだよ(何様)

 

 やはり親世代はイベントが盛沢山で楽しいですね。官僚や教師としてただ虚無な時間をひたすら待ち続けていた時とは大違いです。そもそもこのRTA、かかる時間の割にやる事少なすぎんだよ。

 というわけで青春を謳歌する若者にちょっかいをかけつつ時期が来るのを気長に待つわけですが、この先の決戦イベントは、いくつかのフラグを建てなければ発生が確定しません。

 だから前もってGG値をある程度上げておく必要があったんですね(親の顔より見た構文)

 とはいえ今回は運良く最初からGG値が高いことが確認されていたので、わざわざ自分からGG値を上げるような行動はとりませんでしたが。

 

 そんなわけで、遊んでいくぞー!

 

 

 

 

 …………………………………。

 

 …………………………。

 

 ………………。

 

 

 

 

 夜の見回りをしていると、そこにはシリウス君の姿が……

 ただ声をかけるのでは芸がないですね、後ろから驚かしますか。

 デデドン!(絶望)

 

「うおっ!なんだ先生かよ、びっくりするじゃねえか」

 

 いや普通に夜の徘徊は校則違反なんですけど…

 グリフィンドール、1点減点!

 お堅い教師だと思われないように減点を少なくして散歩に付き合います。

 

 

 

 

 ……………………………………。

 

 …………………………。

 

 ………………。

 

 

 

 

 おや今度はリーマス君が一人で暗い顔をしていますね

 どしたん、体調でも悪いんか?(無神経)

 

「体質、同室の子に隠せなくなってきました。多分次の満月にはバレているかもしれません。どうすればいいですかね」

 

 はえー、そんな悩むことですかね。

 親友を騙しているホモ君が言う事ではないかもしれませんが、もっと友達を信じてあげろよ!

 

 

 

 

 

 ……………………………………。

 

 …………………………。

 

 ………………。

 

 

 

 

 スニベリー君オッスオッス。

 そんな絶望した顔してどったの?お菓子でも食べるかい?

 

「実は――――」

 

 え、口が滑ってリリーちゃんに穢れた血って言っちゃったの?

 ウッソだろお前、まあそれも青春だな!(他人事)

 正直なところ自業自得でしかないので同情の余地などありませんが、放っておくと何をしでかすか分からない怖さがあるんで適当にフォローしておきます。

 

 今度違う人紹介してあげるから元気出せって!

 ………その人、巷では闇の帝王って呼ばれてるんだけどさ。

 

 

 

 

 ……………………………………。

 

 …………………………。

 

 ………………。

 

 

 

 

 

 

 まーだ時間かかりそうですかねー。

 もうスネイプ君たちも6年生になっちゃってますよ。ちょっと遅いんじゃなーい?

 チャート通りであればダンブルドアから決戦を提案されるはずなんですけどね。GG値の高さ的にもうとっくにされていてもおかしくないんですが………これじゃあ結局試走と同じ時期になっちまう。せっかく良いGG値を引けていると思ったのによ。

 

 流石にこれ以上は待てません。ダンブルドアに作戦の進捗を聞くと同時に、実行を急かした方がいいかもしれませんね。

 

 おうダンブルドア君よぉ、お前やる気あんのか?

 こっちは焦らされまくってもう我慢の限界なんだよ、さっさと()りに行こうや!

 

「――――おぬしにそれをさせるわけにはいかんのじゃ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 は?(威圧)

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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日常から見えるもの

小説パートです。


 

 

「やあ、君がミネルバかい?先生から話は聞いているよ、優秀な生徒だったってね」

 

 ハワード・ゴーント。闇の魔術に対する防衛術教授

 担当科目こそ違うものの、教職に就いた時期の近さから関わることは多かった。

 初対面の時からやたらと馴れ馴れしく絡んできたのを今でも思い出せる。

 

 

 

 ――――彼はなんというか、自由な人間だ。

 

「ミネルバ、お茶でもどうだい?」

「まだ仕事が残って―――」

「そんなものは後回しだ!」

「えぇ…」

 

 意外にも彼の淹れる紅茶は美味しかった。

 彼の語ることはなかなかに愉快だ。

 校長と仲が良いからその影響もあるのだろうか。あるいはただの類友か。

 ………たまにはこんな時間も悪くない。

 

 

 

 ――――彼の考えることはよく分からない。

 

「ミネルバ、猫になってくれ」

「急にどうしたんです?」

「モフりたいなと思って」

「意味がわかりません」

「君は何のために動物もどきになったんだい?」

「断じてそのようなことをするためではないです」

 

 そう言うと彼は見るからに落ち込む。こちらが悪いわけではないのにどこか罪悪感を感じてしまい、結局猫の姿へと変わることになった。打って変わってはしゃぐ彼に呆れてため息が出る。

 それはそうと目の前で猫じゃらしを振るのはやめてほしい。

 変身しているときは心も猫に近くなっているのだ。

 

 

 

 ――――もしかしたら結構気の使える先輩なのだろうか。

 

「ミネルバ、一緒に行きたいところがあるんだけど…今は暇かな?」

「そんな暇はないと何度言えば――」

「クィディッチの試合なんだけど」

「それを最初に言ってください!さぁ行きますよ!」

「………………。」

 

 本当は忙しいんですけど、誘われたから仕方なく行ってあげますよ。

 え?クィディッチが見たいだけでは?

 そ、そんなわけないじゃないですか。嫌ですわよーおほほほほ。

 

 

 そんなふうに少しずつ仲を深めていった。

 同じ職場の同僚、あるいは先輩。

 一言で表せる程度の関係でしかない。

 しかしミネルバ・マクゴナガルにとってハワード・ゴーントはその言葉以上の存在だ。

 良い意味でも悪い意味でも。

 そうなったのはきっと、あの夜の語らいを経てからだろう。

 

 

 

 

 勤め始めてから数年が過ぎたある日の夜の教室。

 次の日の授業の準備に追われ、やっと休める時間が出来た。

 昼頃に届いた実家からの手紙を開封する。

 差出人は母親だ。

 

 手紙の文字は彼女の近況とこちらを気遣う言葉、そして地元のくだらない噂話を伝えている。

 母のコミュニティは村で完結していた。

 近所間での下世話なことをぐらいしか娯楽がないのだろう。

 呆れながらも目を通していくと、かつての知り合い(昔の恋人)の事が書かれていた。

 手に力が入るのを自覚しながら読み進める。

 

 すべてを読み終えたころには手紙は皺でくしゃくしゃになっていた。

 独りの教室にすすり泣く声だけが虚しく響く。

 震える肩を抑えるものは何もなかった。

 

「ミネルバ――――」

 

 そんな教室へ無遠慮に入ってくる足音が二つ。

 彼らは独り泣く彼女を見ると互いに顔を見合わせ、どうしたものかと伺っている。

 

「その、なにかあったのかい?」

「お二人とも、来ていらしていたんですね。私ったら………」

 

 言葉が続かない。

 

「わしらでよければ話を聞くよ。きっと話すことで整理もつくじゃろう」

「………そうですわね。では少しよろしいですか?」

 

 彼女は一度目を瞑り、そして開く。

 その目は過去を懐かしむように遠くを見ている。

 

「とてもつまらない話ですよ。ええ本当につまらない――――」

 

 彼女が語ったのは()()()悲劇だった。

 魔法族と非魔法族の間に生まれた子供ならば珍しくもない、ありふれた悲劇。

 

 完全には信用されていなかったことを自覚した父親。

 愛に生きることを決めるも完全には魔法を捨てることのできなかった母親。

 表面上は何事もなく成り立っていた家庭にはもはや手遅れなほどに亀裂が入っていた。

 

 魔法の世界へと旅立つ自分に、母親が祝福からではなく羨望あるいは嫉妬から涙を流した時。

 あるいは父と母、魔法族と非魔法族の超えられない壁をその目で見た時。

 彼女が家族と言うものに期待を抱くことなど未来永劫あり得るはずがなかった。

 

 

 

 恋は一種の精神病、とはよく言ったものだ。

 過去の失望を完全に忘れたかのように、彼女は村の青年に恋をした。

 たった数か月間の短い時間。

 それは思い返せば何よりも楽しく刺激的で、そして何よりも狂っていた。

 

 どんな時間にも終わりは来る。

 彼はその時間を深めるために勇気を出してプロポーズをしてくれた。

 その時の自身の気持ちはどんなものだっただろう。

 ああ、確かに幸せだった。

 だがその申し出を受け入れられるかは別の話だ。

 

 彼女はその生活がどのようなものになるかを身をもって知っていた。

 虚飾にまみれた薄っぺらい家庭。

 魔法族としての人生の終焉。

 自分はそんな思いをするなど御免だ。杖を失い、無力に生きる母親とは違う。

 ましてや愛した人を身勝手にもそんな生活に巻き込むことなど考えられるはずもない。

 

 はっきりとした理由など説明できるはずもなく。

 簡単な別れを告げ、数日後にはその地を離れていた。

 自分の選択は正しかったはずだ、と己に言い聞かせて。

 

 あとは詳しく語るまでもない。

 彼は別の人と結婚し、自分はそれを全く関係のないところで知った。

 自分が彼の選択を今更何か言うことのできる立場ではないことなど重々承知だ。

 だが、この想いは。この気持ちは――――。

 

「後悔………なのでしょうか」

 

 漏れだした心は音になって空へと消えていく。

 己の過去を語り終えると心は凪いでいくが悲しみは消えない。

 彼らは口を挟むことなく静かに聞いていた。

 落ち着いた心はむしろ虚しさを増したように感じた。

 

「すいませんね。こんな――――」

「きっと!」

 

 話を畳もうとした彼女に悲痛な叫びがかかる。

 声の主に目を向けると彼は既にこちらを見ていない。

 

「………きっと君は間違えてなんかいない」

 

 小さくそう言った切り、拳を握り締めたまま目を伏せ口を固く閉じる彼を見かねたのか老人が後を継ぐ。

 

「――――人生は後悔の連続じゃよ。わしの人生はそうじゃった」

 

 老人らしく過去を振り返りながら笑うその顔にはどこか空虚さが見え隠れしていた。

 

「それはある程度年を積んだ者は皆覚えがある。――――かつて選んだ道が正しいかなんてことはその時に分かるはずはない。しかし選ばなかった道が正しいかという事が今現在分かるはずがないこともまた道理じゃ。」

 

「年を取りすぎればたいしたことでは後悔しないくらいに鈍感になるんじゃがの」

 

 ほっほっと髭を撫でつける姿からその老人の内心までを完全に読み取ることは出来ない。だが、彼らしい振舞いというべき何かを見せている。

 口を閉じていた彼も言うべきことが固まったのか、今度はしっかりと彼女の眼を見て話し始めた。

 

「――――私も…私も多くの後悔をしてきた。いや、今でもしている。――――でもどうしたって後悔した過去が変わるわけじゃない。多分違う道を選んだとしても同じように私は後悔するだろうさ。なら精一杯足掻く方が“らしい”と私は思うよ」

 

 一言一言噛み締める様に言葉を紡ぐ彼もきっと彼にしかわからない苦しみを持っているのだろう。

 それでも進もうとする意志は彼女にも輝いて見えた。

 

「そうですわね。自分で選んだ結末なんですもの。それを誇れなくてどうしましょう」

 

 そう笑う彼女の眼は未だ濡れていたが、先の悲壮感は薄れている。

 

「なんだか喉が渇いてしまいましたわ」

「それは丁度良かった。良いものを持ってきたんだ」

 

 そう言った彼はローブの中からボトルを取り出す。

 

「あらあら、それは。でもいいんですか?少しお高いのではなくて?」

「もともとそのつもりで来たんじゃよ」

 

 にこりと笑いそう言う老人に彼女も笑顔で返した。

 杯に注がれたワインは波打つように踊っている。

 

 その日ホグワーツの一室から明かりが消えることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 その夜を超えてからも彼との関係に目立った変化はない。

 とは言っても以前のように暇があれば彼は構ってきたし、それを断らずに時間を作るようにした。心の底では今までにはなかった絆のようなものを互いに感じていた。

 信頼――――それが今の関係を正しく表している。強くそう思えるのは決して嫌なものではないからだ。

 

 もう過去に囚われたままの魔女ではない。

 後ろを振り返り後悔するばかりの人生ではない。

 だって今の生き方が最高に自分らしいと思えるようになったから。そんな自分を誇りに思える自分が今ここにいるから。

 

 彼女の胸の中にはいつだって頼れる仲間がいる。

 ユーモラスでお茶目な上司。

 不器用だけど優しい同僚。

 彼らに振り回されるのも悪くないと今では思えるようになった。杖を閉じ込めた未来では決して味わえないような刺激的な毎日を送らせてくれる。

 

 ほら、今だって――――

「ミネルバ、少し散歩と洒落込もう」

「あらハワード。今度はどこに行くんです?」

「それはまだ内緒だ。大丈夫、ダンブルドア先生の許可はちゃんと貰ってるから」

 

 どこかあどけなさを感じさせるその笑顔。

 アルバスに通じる不思議な愉快さ。

 彼は何を見せてくれるのだろうか。

 

 今日も楽しい一日になりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ホグワーツに行けば何かが変わると思っていた。

 窮屈な家から抜け出し、自由に魔法を使って、リリーと一緒の学園生活を送る。――――そんな都合のいい夢は儚くもすぐに霞のように消えてしまった。

 

 リリー・エバンズはグリフィンドールに入り、自分はスリザリンへと入った。

 リリーとの関係は消えなかったものの、その関係のせいかスリザリンでの居場所はなかった。

 グリフィンドール寮とスリザリン寮は考えのスタンスや多くのことが原因となって対立しているため、表立って関係を続けることも難しかった。

 

 自分の血筋だって誇れたものではない。

 純血主義の思想が蔓延るスリザリン寮ではマグル生まれの者も混血の者も全てがさも自分は純血ですよといった顔で生きる。

 寮外に対する建前はそれで完結していたが、寮内ではもちろん格差があった。

 

 今まで生きてきて身に着いたみすぼらしさは行動に現れる。

 外見などをあまり気にすることはなく、また虐待同然の環境で育った彼にはそれを気にする注意力も観察力もなかった。

 呪いなどの学業の面では優れていたが結果として寮内での立場は弱いものだった。

 

 そんな中ホグワーツにはいらぬお節介を続ける教師が一人いる。

 寮でうまく馴染めていなかったからか、それとも他の理由があったのか、ただの気まぐれか。

 理由は何であれ、なにかとこちらを気にかけてくる。

 幾度かその施しを断ったこともあったのだが、困った顔をしながらもそれを続ける彼を完全に拒絶することは出来なかった。

 寮内で孤立することもなくなった現在でもその関係は続いている。

 

 

 

 ある日彼の研究室で魔法の練習をしていた時。

 彼は教授の中でも間違いなくトップクラスに優秀だったため、その研究室を使うことができるのは間違いなく利点と言えた。

 

「セブルス、少し休憩にしてお茶でもどうだい?」

「ありがとうございます、先生」

 

 茶葉のいい香りが部屋を満たしている。

 バターケーキを一切れつかみ、口へと放り込めば、濃厚で芳醇なバターの風味が口の中いっぱいに広がった。

 基本的に勉強のことしか頭にない彼もその時間は嫌いではなかった。

 

 教授は窓の外を眺めながらお茶を飲んでいる。

 外ではクィディッチの練習をやっているのか、微かに子供たちの黄色い声が聞こえてきた。

 教授はセブルスに向き直り、やわらかい笑みを浮かべながら彼に話しかけた。

 

「このバターケーキはお口に合ったかな?」

「ええ、これはかなり好きな味です」

「それは良かった。これはね、校長に紹介してもらったんだ」

 

 お菓子を味わいながら自分の世界に入り込みかけていた彼に、教授はぽつりと尋ねる。

 

「――――セブルスは将来やりたいこととかあるのかい?」

「いえ、特には。……そういえば先生はどうやって進路を決めたんですか?」

 

 急な質問に大した返答も返せず、ならばと思い世間話のように適当な話題を振る。

 

「私の場合か。私は……そうだね、成り行きっていうのが近いのかな」

「成り行き、ですか」

「そう、成り行きだ。まあいろいろ事情もあったし」

 

「でもこの場所が好きだったからっていうのが一番の理由だったのかもしれないね」

 

 さして興味があるわけでもないので他人事のように聞き流す。お茶がウマい。

 

「今の君は将来がどうこうよりも他のことの方が大事か――――例えば女の子のこととか」

「ゴフッ!」

 

 いきなりのことに思わずお茶を口からこぼしてしまった。

 教授が杖を一振りすればたちまちこぼしたお茶は消える。

 

「ああ、すまない。デリカシーに欠けていたね」

「いやそういうわけじゃ――」

「学生らしくていいと思うぞ、先生はな」

 

 少年は誤魔化すことに意味がないと悟り、諦めて勝手に話を続ける彼に耳を傾けることにした。もしかしたら人生の先輩として有益なことを聞けるかもしれないのだから。そこに願望が含まれていることは多少なりとも自覚はしている。

 

「でも恋愛かぁ。私は学生の頃にそんな経験はしなかったしねえ」

「お茶美味しかったです。ではまた」

「まあ待て、そう結論を急ぐな。多分それは私がしてきたことに通ずるものがあると思うよ。」

「してきたこと?」

 

 教授は頷き、そのまま続ける。

 

「結局恋愛ってのはどうやって相手の心に潜り込むかってことだろう?」

 

 違うと思います、という彼の意見は黙殺された。

 

「相手にどう思われるか、重要なのはそれだけだよ」

「どう思われるか、ですか………」

「そうだ。君が思う君自身の強みは何だい?」

「魔法の技能が優れていること、特に闇の魔術が」

「うん。それは君の立派な強みだ。君が僕の職に就きたいのであればもちろん応援するとも」

「何が言いたいんですか」

「つまり君の言う強みは恋愛において強みには成り得ないってことだ」

 

 己の努力を否定されたように感じてムッとするも、見つめられると自分が悪いような気がしてくる。テーブルに目を落としカップに手を伸ばすことで居心地の悪さを誤魔化した。

 

「別に闇の魔術を勉強するのが悪いと言ってるわけじゃあない。それは間違いなく君の財産になる」

 

 慰めるようなその言葉に顔を向ければ教授は諭すように続ける。

 その顔は柔らかく微笑んでいた。

 

「自分の長所を相手に好きになってもらおうとするだけでは意味がないんだ。だってそれは相手が求めているものとは限らないからね」

 

 そんなことは分かっている。

 カップを握る手から軋むような音が聞こえた。それ以上力が入ると割れてしまいそうだ。

 

「まあそんな難しく考えるな。人生ってのは上手く行かないことのほうが多いもんだ。辛いこともあるし、時には泣きたい時もある。もちろん私にだって」

 

 そこで教授は一息ついて区切った。

 

「でもそう思うだけで都合良く変化するほど世界は甘くない。

 だったらどうにもならないことを嘆くより、世界をどうにかできるように自分を変えていけばいいのさ。そうすればたとえそれが本物の自分ではなくても、自分の動かしたい方向に世界は動いてくれる」

 

 教授が一体どんな気持ちで、なぜそんなことを自分に話しているのかを推し量ることは出来ない。

 それは目の前の彼に言っているようにも聞こえるし、違う誰かに言っているようにも聞こえる。

 それでも実感のこもったその言葉は不思議と胸に響く力強さを持っていた。

 

「君は“持っている側”の人間だ。才能がある」

 

 教授はもうお茶を片付けようとしている。

 

「心を偽ると良い」

 

 聞き返そうとするも、流しへと向かう彼はこちらを見ていない。

 先程までの熱さは消え、どこか無責任に、そしてどこか悲しげな声が聞こえてくる。

 

「それはほとんどの場合では必要にはならないが、ある場面では役に立つ。――――スリザリンらしく狡猾であれ!ってわけさ。それに君はまだ若いんだ。いろいろ失敗して経験するのが君のためになる」

 

 最後にこちらを振り返り呟いたときにはその声にまた柔らかさが戻っていた。

 

「さっ今日はもう寮に戻りな」

「はい先生」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 暗闇が広がる深夜の学校。

 微かな月明りだけが城を照らし、静寂が空間を支配している。その時、一人の少年が期待と緊張を胸にベッドを抜け出した。

 

 夜の校舎は不思議な魔力を持っている。昼間とは全く異なるその光景に少年は取り憑かれたように進んでいく。足跡を響かせないように静かに廊下を歩くのは、まるで禁忌の領域を進む探検家のようでもあった。

 

 時たま見回りの先生が歩いてくるのがその足音からわかる。咄嗟に自分に呪文をかけ、暗闇に息をひそめた。足音が通り過ぎるまでの一瞬は永遠のように感じられる。静かに壁に身を寄せ、呼吸を抑えるために口を手で覆う。心臓の鼓動が自分の鼓膜にうるさく響き、見つかってしまいそうな気すらしていた。

 

 先生の足音が遠ざかると、少年は安堵に包まれ息を吐いた。先生を出し抜いたことで有頂天になりかけるも、探索の途中であったことを思い出す。彼は恐怖と興奮の最中、再び静かな足取りで歩きだした。夜はまだ長い。

 

 

 

 探検の末、彼は天文塔の屋上へと辿り着いていた。

 そこから見える夜空は、星々が煌めき、無数の輝きで満たされていた。彼はただただ立ち尽くし、宇宙の神秘に圧倒された。授業で空を見上げるのとは違う、一人で何となく星を見ることなど初めてだった。

 この一瞬のために、夜中の学校を探検した甲斐があったのだとそう思った。

 

「――――夜中の徘徊」

「うおっ!」

 

 突然背後から声を掛けられる。振り向けば防衛術の教授だ。

 

「グリフィンドール1点減点だ。やあ、驚いたかい?」

 彼は少し笑いながらそう言った。

 

「なんだよ先生か。脅かすんじゃねえって」

「ははは悪いね。君が星に見惚れて背後に立つ私にいつまでも気づかないから仕方なくさ」

 

 教師としてそれでいいのか、とも思うがこの性格に助かっている部分もある。気やすく話せるような間柄の教師とは、得ようと思っても意外に得られないものなのだ。

 

「俺の目くらまし、どうだった」

「まだまだ甘いね。慣れている人にはわかる」

「そっか、まあいいや。ちょっと話に付き合ってくれよ」

「………ああ。もちろんいいとも」

 

 そう言うと教授は杖を振り、空がよく見える位置に寝椅子を置いた。

 少年は椅子に寝転がり、空を見上げる。

 教授も同じように椅子に座った。

 

「今日はよく晴れているね。星が凄く綺麗だ」

「………………。あの空に光る一番明るい星。俺の名前はあそこからとったらしい」

 

「………いい名前だ」

 

 教授の言葉に頷き、少年はまた星空を見上げた。

 風がそよぎ、星々が煌めく中、時間がゆっくりと流れていく。

 

「先生はさ、純血主義ってどう思う?」

 

 少年は起き上がり、静かに呟いた。

 

「………………。君は私の姓を知っているかい?」

「そりゃあもちろん。ゴーント、だろ?」

「そうだ。その家系について知っていることは」

「聖28一族の一つってことぐらいしか。」

「そう。おまけにスリザリン寮。あとは言わなくても分かるな?」

「俺が聞きたいのはそういう事じゃねえよ。そうじゃねえって知ってるから聞いてんだ」

 

 教授は少し驚いたような顔をしていた。

 

「ほう、それはまたどんな理由で?」

「スニベルス。あいつ純血じゃないだろ」

「なるほど。……君は聡い子だね」

「ほとんどの生徒は気づいていないけどな。でもあいつに可愛いところなんてあるか?」

「生徒はみんな可愛いさ。もちろん君もだよ?」

「………………。」

「わかった、わかったからそんな顔するな」

 

 胡散臭い答えに無言で返してやれば、降参といったように両手を挙げる。

 

「えーと特別扱いしている理由だっけ?」

「いや、言いたくねえんだったら別にいいんだけど」

「隠しているわけじゃないさ。………彼はね、昔の僕に少し似ている気がしたんだ」

 

 少し遠い目でそう言う教授に少年は俄然興味が湧いた。

 どこまで踏み込んで良いかはわからなかったが。

 

「ほーん、先生がね?」

「結局全然違かったんだけどね。一度面倒を見たら最後まで見るべきだろう?」

 

「ずっと昔の話だ。私が今の君よりももっと若いときのこと。

 僕はある人に救われた………ダンブルドア先生だよ。その時、僕は彼に多すぎるものを貰ったんだ、返せないほどにね。だから僕がそれを彼に返す代わりに、私が誰かにそれを与えるべきだと思った、それだけだ」

 

 それを話す彼の顔はとても穏やかだった。

 少年が言葉を失っているうちに彼の話は終わっていたらしい。

 

「話を戻そうか。純血主義についてどう思うか、だったね。私の家はさっきも言った通り聖28一族の一つだが、とっくに没落している。彼らは血を守ることに躍起になっていた。それ故の行き過ぎた近親婚により、すべてを失ったってわけさ」

 

「結果論として彼らはあまりにも愚かだったよ………。でも彼らの愚かさのおかげで私の今の人生があったならば、全てを否定することは出来ない。そんなところかな」

 

「先生って、なんていうかさ…優しい、な」

「――――君は私をそう思ってくれるのか………」

 

 衝撃を受けたような愕然とした彼の表情を見るのは初めてだった。

 普段から余裕たっぷりの彼からそんなものを見れるのはなんだか不思議な気分だ。

 

 一呼吸おいて気持ちを落ち着ける。

 

「………………俺さ、家族と仲が悪いんだ」

 

「どいつもこいつも純血純血って馬鹿みたいに。血がそんなに大事なら一生家の中で引き籠ってろって思ってた。――――そんな家に嫌気がさして俺はグリフィンドールに入ったんだと思う」

 

「俺はね、先生。あいつらを理解しようと思えるほど優しくはなれないんだ」

「………いや、君は自分では気づいていないようだけど優しい子だよ」

 

 相変わらずふざけたことを言う教師だ。

 でもまあ、悪くない。

 

 二人はその後、取り留めもない話を続けた。

 最近流行りのマグルのバイク、無鉄砲な親友であるジェームズ、今度挑戦する新しい悪戯計画、まだ探索できていない隠し部屋のこと、苦手な科目の勉強について――――。

 教授は少年の話をただ楽しそうに聞いていた。

 星の光も淡いものになってきたころ、ようやく少年は部屋に帰ることになった。

 

「――――家族とうまく話が付くといいね」

「そんな簡単に済むんだったらここまで悩んでねえよ」

「それもそうか………。また何かあったらいつでも来るといい」

「ああ。先生もありがとな。なんか気が楽になった気がするわ」

 

 

 

 

 

 渡り廊下を歩いていると空の端が少し明るくなってきた。まだ静寂に包まれた学校の中庭には、微かな風が吹き抜けている。木々の葉がそよぎ、小鳥たちのさえずりが耳に心地よく響く。少年は立ち止まり、そこから見える陽が昇る前の朝焼けをぼんやりと眺めた。

 しばらくのち水平線から太陽が顔を出し、城を明るい陽光が照らし始めた。赤い光に少し眩しさを感じた少年は目をすぼめる。

 少年は深呼吸をして太陽を背に再び歩き出し、その場を後にした。

 

 

 

 

 

 



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Part 8/8 最終回

初投稿です(初志貫徹)


 

 計画通りいかないから人生なんだ!よく覚えておきやがれ!なRTA、遂に最終回になりました。

 では早速前回の続きから見ていきましょう。

 

 

 

 

 

 

「おぬしにそれをさせるわけにはいかんのじゃ」

 

 なんで?なんで?なんで?GG値高いはずじゃーーーん!

 1年生の頃から高かったし、この前まで変わらなかったじゃーーーん!

 このクソゲー!フラグまでイカレてるんじゃないだろうな!

 

 お、落ち着け!まだ慌てるような時間じゃない。まずは現状の確認といきたいところですが……これは非常にまずいです。何を間違えたのかすら分かりません。つまり何が悪かったのかすらわからないという事ですね(小泉構文)

 まあどーせ屑運でも引いたんでしょ(適当)

 とりあえず何もしないわけにはいかないので説得フェイズに入っていきます。

 

 こんなんじゃ、被害がひどくなりますよ~

 ダンブルドアよ、お前だけが頼りなんじゃ(人任せ)

 

「わしは君が思っとるほどきれいな人間ではない」

 

 あ、これはまさか…

 

「――――聞いてくれぬか、ハワードよ」

 

 はい、何故か超レアイベントが引けましたが、今はお呼びではないです。

 これは個別ルートに入らずに見ることの出来る最後のイベントで、ダンブルドアが己が過去に犯した過ちを告白するというものです。このイベントを起こすには多くのフラグとそれなりの努力が必要になるわけですが、なんでいつの間にかそんなイベントが進行しているんだ?(純粋な疑問)

 まあいいや(よくない)、話が長いので要約すると「わしと同じような間違いをしないでくれ」――――おそらくそういう事でしょうか。

 これは…ガバじゃな?(絶望)

 

 ここでダンブルドアが遅延行為をしてくるとは思いもよりませんでしたよ。

 どうやらダンブルドアはお辞儀様殺害にホモ君がかかわる事にかなり消極的なようです。

 まさかとは思いますが、これGG値の高さが全く足りていないという事があり得るんですかね………いや待って下さい、これすらもダンブルドアの策略である可能性があります(希望)

 つまり一見無駄に思えるこの遅延行為すらもお辞儀様殺害の一連の流れには必須である、とダンブルドアが判断した可能性があるということです。

 やっぱりガバじゃないか(呆れ)

 

 以前も話しましたが、本チャートはチャート構築をダンブルドアに任せるという手法を用いています。渡す情報を制限しているという意味では変則的な予言者チャートとも言えますね。

 討伐の主導権をダンブルドアに握らせる都合上、自ずとチャートが走者の手から離れるという可能性が生じるわけです。で、これの何が問題であるかと言うと、ダンブルドアが何を考えているか、コレガワカラナイ。走者がダンブルドアの思惑を完全に理解できるわけではないのでチャートの修正が困難になっています。致命的だな(白目)

 お前のチャート、ガバガバじゃねえかよ?あーあー聞こえない聞こえない(難聴系主人公)

 ダンブルドアの手を借りるなんてまどろっこしい手法を使う必要がなくなればまた話も違うんでしょうけどね。それについては後続の走者さんに任せましょう(お前も走れ)

 

 一応今からでもGG値を改めて確認する方法がないわけではありません。

 その方法とはダンブルドアに()()()鳩派な提案をするというものです。もしGG値が低ければこちらの提案を吞んでくれるため、ダンブルドア監修のクソチャート(熱い手のひら返し)の修正を図ることが可能になりますが、もし高かった場合はダンブルドアから戦力外と見做されてしまいます。つまり、もしダンブルドアのGG値が高く、この遅延行為すらも彼の戦略であるとしたら、この提案をした時点でリセとなってしまうわけですね。

 普段ならこんな博打をRTA中にやりたくはないんですが、これ以上遅延されるとどちらにせよ最速が狙えなくなってしまう恐れがあるので、GG値の確認作業を行います。

 

 余談ではありますが、RTA走者には続行かリセの二択しかありません。

 というのも起きてしまったことを悔やんでも仕方ないからですね(ガバの原因)

 そんなわけで過去は振り返らない主義なので前を向いてひたすら進みましょう。奇跡を待つより捨て身の努力と言う言葉もありますし、何よりもあきらめたらそこで試合終了ですよ…?

 

 あのー先生、やっぱりリドル君を殺すってのはなんか違う気がしてきました。

 もう一度彼とはしっかり話し合ってけじめをつけた方がいいですよね。

 

「おおハワード、分かってくれたか!」

 

 GG値低すぎィ!そんなんじゃ虫も殺せねぇぞお前。

 これは方針を変えるしかないですね。こんなんじゃRTAになんないよ~

 

 今までのダンブルドアの行動を振り返ってみてもGG値はかなり高いと結論は出ているはずなんですけどね。いったいどこでガバったんでしょう。

 とりあえずここからの挽回方法を考えるのが先ですが……どうしよっかなー。なんか使えるものはないかなー。今の状況をひっくり返せるような素晴らしい案があったりしないかなー。

 

 …………あ、そうだ。いいこと思いついた(ゲス顔)

 さっきのイベントでたしかアリアナ関連のイベントが解放されていましたね。

 それを利用しましょう。

 

 なあダンブルドア君、妹さんのお墓参りついていかせて♡

 先生の話を聞いて彼女にちょっと手を合わせたくなりましたよ。

 

「ああ、ありがとう。きっと彼女も喜ぶ」

 

 というわけで墓参り中にお辞儀様に襲撃してもらいましょう。

 えっへっへっ、こんなことを思いついてしまう自分の機転の良さが恐ろしいですね。

 素晴らしきかなオリチャー、私には勝利への道筋がバッチリ見えてます。

 

 もともとは戦闘そのものの助力をダンブルドアに頼むもしくは自発的にやってもらう予定だったのですが、ここに変更を加えていきます。

 まずダンブルドアにはリドル君の説得(大嘘)に対する協力を頼みます。そして予期せぬ会敵を経て説得に失敗、やむなく交戦という過程であればきっとホモ君を助けるために杖をふるってくれるでしょう。

 ふるってくれなきゃ困りますが、これなら強引にダンブルドアとヴォルデモートを戦わせることが出来そうです。漁夫の利を狙って目的を達成する計画です。

 

 なんだか視聴者の不安そうな声が聞こえますが、まああれですよ。

 ――――俺が信じるチャートを信じろ!(ゴリ押し)

 

 

 

 さて方針が定まったところで次はお辞儀様に決戦のアポイントメントをとっていきます。

 

 そろそろダンブルドアを始末しようや。

 お前もしかして、あいつの事が怖いのか?(煽り)

 

「まさかな、そんなことがあるはずもない」

「俺様とお前の二人ならばできぬことなど何もないのだ」

「結果などとうに見えている」

 

 お、そうだな(嘲笑)

 世迷言を言ってる彼は無視して決戦日まで倍速です。

 

 

 

 

 

 

 さて今日は1977年8月30日、墓参りデート当日になりました。

 場所はゴドリックの谷ですが、ここはかの偉大な魔法使いゴドリック・グリフィンドール生誕の地でもあります。いい観光名所になってそうですね。今日は存分に遊びつくしましょう。

 

「――――こんなところで何をしている、ダンブルドア?」

 

 ダンブルドアとホモ君が二人仲良くデートをしていると、なーぜーかヴォルデモートが出現してしまいました。

 どうしてこんなところに闇の帝王がいるのかなー?不思議ですねぇ。謎は深まるばかりです。墓参りも済んでおらずダンブルドアも災難だとは思いますが頑張ってほしいですね(他人事)

 またしても何も知らないダンブルドアさん(96)、っていうテロップをそろそろ出した方がいいんじゃないかな?

 

 はい、冗談はさておき役者は揃いました。

 こちらは既に幸運の液体もとっくに服用済みで準備は出来ています。

 あとはタイミングで戦闘に入ると思いますが、どうやら今はお辞儀様がダンブルドアとレスバしているようです。

 

「愚かなのは変わらんようじゃの、トム――――」

「――――その時にはお前は既に死んでおろう、俺様の手によってな」

 

 お辞儀様とダンブルドアが決闘しているところを、後ろから不意打ち(アバダケダブラ)で終わらせる事が出来ればそれが一番楽で――――

 

「おぬしの最も信用する部下の心が既にそちにないとしても、かの?」

 

 ファッ!?あんた何言ってんすか!

 せっかくの不意打ち戦法が意味を成さなくなりました。あーもうめちゃくちゃだよこれ。

 はじめから成功するとは思っていなかったけども苛つきますね(運試し要素)

 

 ん……?あーなるほどね、完全に理解した(理解した)

 私ったらチャートを変更していたのをうっかり忘れていましたよ(てへぺろ)

 ダンブルドアはお辞儀様の更生を期待しているんでしょうか、ホモ君はその役目を負うことで合意していたんですね。どうせ無意味なのにやる必要あるこれ?

 

 おん?なんかお辞儀様が動揺してますよ…?さっさと切り替えてホモ君を殺しにかかると思ったんですが。思っていたよりもだいぶ好感度が高かったようです。

 

 まあいいや。ちゃっちゃと誰得な説得パートを終わらせて戦闘に移りましょう。

 おーいお辞儀君よぉ、君更生する気ある?ないよね!じゃ、今までのちかえしをたっぷりとさせて貰おうじゃねえか。二度とこの世界にいられないようにしてやる(敗走の恨み)

 学生時代の頃の焼き直しのようですが、あの時とは前提条件が全く違っています。間違ってもふざけて手を抜いたりなどはしないように。文字通り首が飛んでしまいますので。

 ちなみに今はあまり関係ない話ですが、お辞儀様の格下戦闘時のコマンドは死の呪文しかありません。なんだコイツ。

 

 というわけで最終決戦です。

 うおおーやってやんよー!

 

 お辞儀様がめっちゃ動揺してるんで案外楽に倒せるかもしれませんよコレは(久しぶりの朗報)

 とりあえず言葉で動揺を誘いながら魔法の撃ち合いで相手の様子を見ていきます。

 お前のことが好きだったんだよ!(大胆な告白)

 

 あれ、なんか思ったよりもキツいような………なんかさっきより激しくなってませんかね。

 

 おいダンブルドア!お前も手伝えよバカ野郎!

 どうやら入るタイミングを伺っていたようです。

 

 ダンブルドアの助力が入ると一気に楽になりますね。

 圧倒的じゃないか、我が軍は(手のひらクルーシオ)

 あ、待ってやっぱ無理かも。調子に乗って正面戦闘しちゃいましたが――

 

「――――アバダケダブラ

 

 あっぶえ!いま死の呪文が顔の横を通り過ぎました。完全に油断してましたよ。

 なんで殺す覚悟なさそうなのに死の呪文を放ってんですか。お前精神状態おかしいよ…(小声)黄色い救急車でも呼んでやろうか?

 でも今のは本気で焦った。幸運の液体を飲んでなかったら終わっていたかもしれませんね。あぶないあぶない。

 

 やはり正面戦闘は分が悪いですね。

 ならば……ダンブルドア君、5秒でいいから時間稼いでちょ。

 

「何をする気じゃ」

 

 いいから早く時間稼げ(嘆願)

 

 おし、ダンブルドア君が時間を稼いでいるうちに本命の魔法を準備します。

 使う魔法は――――はい、悪霊の火です。

 くらえ、これがあたしの全力(大嘘)だー!!

 

「その程度の魔法で俺様を倒せるとでも――」

 

 残念、これはただの悪霊の火ではありません。

 悪霊の火の特性は知っているでしょうか。

 それは非常に強力な火の呪文で、術者の杖から絶え間なく炎が流れ出ます。

 制御に失敗すると術者すら燃やしてしまいますが、うまくやれば周囲の生命体や物質を巻き込み更に大きくなっていきます。

 つまり餌となる魔力を注ぎ込んであげることで無限に火力を高めることができるんですね。

 

 普通の呪文は賢者の石を所有していたとしても自分の魔力容量以上の魔力を一度に放つことは出来ませんが、悪霊の火は意思を持って魔力を吸い上げてくるので、本来ホモ君が出せる力以上の魔力がこもった魔法になっています。

 お辞儀様はホモ君が賢者の石を所有していることを知りませんから、呪文の威力を勘違いしています。だから無謀にもこの悪霊の火を受け止めてしまったんですね。

 

 彼の唯一の勝利方法は魔法を受け止めずに逃げることなんですが…彼にその手は選択できません。まずは己のプライドから、そしてダンブルドアの存在。

 準備にかけた時間が違うのだよ!せいぜい悪霊の火に抵抗するんだな!

 

「ハワード、もう良いじゃろう。そのままでは彼を殺してしまう!」

 

 なんのことやら、はじめからそのつもりですよ!

 

 GG値の低いダンブルドアは殺人を良しとはしませんが、ここに至っては何もできません。

 彼が現在とれる選択肢としては四つほどあるわけですが、少し見ていきましょう。

 まず一つ目。ダンブルドアが死の呪文を使い、漁夫の利を狙って積極的にお辞儀様を殺害すること。ぶっちゃけこれが一番楽でいいんですけど、GG値の関係上起こることはあり得ません。

 次にお辞儀様に何らかの呪文を放つこと。武装解除や衝撃、妨害など何でもいいですが、これにより意識を逸らされたお辞儀様は為す術なく悪霊の火にのみ込まれるでしょう。愛を謳う彼が教え子の親友殺しを幇助するなんてことはねえよなあ?

 三つ目はホモ君を力づくで止めること。これによるダンブルドア側のメリットは教え子に親友殺しをさせずにすむことですが、同時にデメリットも存在します。制御を失った悪霊の火によりホモ君は焼かれてしまい、運が悪ければお辞儀様には逃げられてしまいます。ホモ君の一生の努力を無駄にするなんてことがダンブルドアにできるんですかね?(ゲス顔2回目)

 最後の選択肢は最も現実的でダンブルドアが一番選ぶ可能性の高い選択肢です。これはダンブルドアがお辞儀様の逃走を防ぎつつ、ホモ君がお辞儀様を殺すのを黙って見ていること。教え子が親友殺しをするのを見つつも、自分が動くともっと酷いことになると自覚し何も動けない、という心理の表れですかね。消極的正義として生きた彼に相応しい選択ではないでしょうか(皮肉)

 つまりここまで来た時点でほとんどホモ君の勝利は確定しているわけです(慢心)

 

 ただあまり時間をかけすぎるのも良くないですね。

 現在ホモ君の体内には魔力が激流のごとく流れています。通常流れる魔力よりもよほど多くのものが流れており、その負担は想像を絶するものでしょう。おそらく許容量なんてとっくに超えてしまっています。今はアドレナリンがドバドバ出てるのでなんとか耐えてますが、戦いが終わればそれほど時間が経たずに死ぬのでは?

 

 どちらにせよここで倒しきれなかったら今後の殺害は絶望的になるのでリセ確定ですし、本気を出すほか手段はないわけですが……まあRTAが終わってからのことなんて関係ねえ!

 これで終わってもいい(ていうか早く終われ)

 だから…ありったけを……

 おらっ! すごいまりょく だせ!!(げしげし)

 

「な、なぜだ。なぜ俺様が――――」

 

 ついにお辞儀様が悪霊の火に対抗できずに炎にのみ込まれてしまいました。ここでタイマーストップ。記録は1977年8月30日。ザ・エンドってね。

 

 

 

 

 

 

 いやー終わった終わった終わりましたよ。すっげぇキツかったゾ~。

 というわけで「ヴォルデモート部分殺害RTA」これにて完結です。

 

 なんとか無事に完走することが出来ましたね、よかったよかった。

 ここまで続けられたのもひとえに視聴してくださった皆さんのおかげです。

 ご視聴ありがとうございました。

 

 早速ですが振り返りに入っていきます。

 

 まずは本RTAを走るに相成った経緯について。

 理由は単純で、おぼろげながら浮かんできたんです、本RTAのチャートが……ってのは冗談で完結したハリポタRTA小説を作りたかった、ただそれだけです。

 ハリポタRTAには面白い作品がとても多いのですが、如何せん話数も多くなり途中で更新が止まってしまうことも少なくありません。そこで読みたいなら自分で作るしかないじゃない!となり、何となく考えてみました。そんでせっかくプロットが完成したんなら小説にして載せてみるか…という完全な自己満足の結果から生まれたのがこの作品ですね。

 途中、書くことがつらくなる時期もあり、こんな小説なんて失踪・削除しても誰も気にせんやろ、とか思ったこともありました。伸び悩むお気に入り数、閑古鳥の鳴く感想欄、低評価につられて徐々に下がっていく平均評価、それらを見て心と筆が折れかけていただけではありますが……。自己満足と言いつつ自己顕示欲もそれなりに持ち合わせていたのが厄介でしたね。やはり現実はそう甘くないのだなあと初心者ながらに悟ったわけです。

 それでも感想を書いてくださった方や高評価をつけてくれた方、お気に入り登録をして待ち続けている方が少ないながらもいるのならと思い、なんとか完走まで漕ぎ着けました。

 感想や評価、お気に入り登録、ほんとうに心の支えになりました。ありがとうございます。

 

 次に完走した感想ですが、いやーー疲れましたね。

 途中変なところが少しあった気がしますが、ま、多少はね?イベントはほとんどチャート通りに進んでいたので良かったんじゃないですか(適当)

 ただチャートに関しては、振り返ってみても無駄な部分や短縮できる部分が多かったような気がするところが反省点です。

 反省を次に活かすかはまた別の話ですが(本音)

 

 まあ最終的には走り切ることが出来ただけでも十分満足していますね。

 完走することが大事ってそれ一番言われてるから(言い訳)

 

 もしこの小説を読んでRTAに興味を持ったら君も走ってみよう!

 俺も走ったんだからさ(隙あらば勧誘)

 

 

 では最後になりますが、この小説が完結した全てに感謝の意を表し、お辞儀をもって締めとさせていただきます。本当にありがとうございました。

 また違う小説で会えることを楽しみにしています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――すぺしゃるさんくす―――

 

 

 

 

 

 

 

 

ハーメルン様 

J.K.Rowling様 

Wizarding Worldのみなさま 

先駆者様 

 

 

 

 

 

 

最後まで応援してくださった方々

読んでくださったすべての方々

 

 

 

 

 

 

 

And…YOU!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

THANK YOU FOR WATCHING!!(ご視聴ありがとうございました!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




もうちっとだけ続くんじゃ(あと二話ほどお付き合いください)


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遥か遠き夢幻の果てに

小説パートです。
次回最終話の予定です。


 

人間は努力する限り過ちを犯す

――ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――昔、一度だけ不思議な夢を見たことがある。

 ホグワーツに入学するよりもずっと前の話だ。

 

 

 

 一日目。

 耳を塞ぐほどの悲鳴。

 目を疑うような光景。

 鼻にこびりつく死臭。

 

 どこか遠い地で起きている非現実的な出来事。

 きっと地獄の方が幾分マシだとさえ思えるその現実離れしたそれは、働いていないはずの五感に直接語りかけてきているようで――――――――俯瞰では本来感じることのないそれらすべてを、まるで本物であるかのように錯覚した。

 

 人が泣いていた。

 人が苦しんでいた。

 人が……死んでいた。

 

 世界がどれほど残酷であるか、それを見せつけるための世界とでもいうのか。ただ自由に生きていくことすらも困難となる、そんな時代。

 

 見るものを竦み上がらせるような蛇の顔をした恐ろしい人間。果たしてそれを人間と呼ぶことができるのかすらも怪しい。そんな人間を頭領とした派閥によってそれらは引き起こされた。

 

 世界はただ混沌の渦に巻き込まれ、たった一人の怪物が定める秩序に全てが従う。

 

 その戦いに大義などない。

 およそ人間に考えつく悪逆の限りが尽くされている。自分が助かるために人を裏切り、そして裏切られる。悲嘆と悲鳴のうちに全てが消える。

 

 その思想に論理はない。

 すべては彼の思う様に。彼の匙加減一つで人の生死は決まる。逆らうものは皆、次から次へと殺された。

 

 その世界に優しさはない。

 人間の醜悪さと悲しみがすべてを覆う。光すらも差さない完全な黒。絶望という名の暗闇が世界を染め上げていた。

 

 人々はその時代を耐えて、耐えて、耐えて………耐えていた。終わるかもわからないその惨劇(悪夢)を。

 

 

 

 二日目。

 あるとき、その時代を作った元凶とも言うべき存在が忽然と姿を消す。

 激動の時代は終わりを告げ、世界は様子を変えた。

 

 人々は泣いて喜び、踊り狂う。

 空には大量の梟と火花とが飛び交う。

 闇は取り払われ、ようやく世界に光が差した。

 

 空は澄み渡り、太陽が人々を優しく包み込む。

 

 誰もが日常を噛み締めていた。

 

 誰かにすれ違えば、互いの生を祝福し合い――――その日に周囲で起きた幸福を自分のことのように喜び――――そして最後には笑って明日(未来)の話をする。

 そんな些細なことを全員が特別なことだと考えた。

 家族や友人、そして恋人。それぞれが大切な人との時間を大切にし、思い出を共有しながら喜びや悲しみを分かち合う。そうすることで失った時間を少しでも取り戻そうとした。

 

 その世界には色が、情が、そして愛があった。

 そんな世界はどんなものよりも美しいのだと。

 そこには何にも代え難い温かさに溢れていた。

 

 しかしその平和は――――――長くは続かなかった。

 

 

 

 三日目。

 最後は一人の少年の物語。運命に選ばれた子供が蘇った悪を打ち倒す御伽噺の一つ。

 

 無論、その過程が全て美しかったわけではない。

 彼は多くの困難に直面する。

 時には泣き、時には挫けそうになる事もあった。

 

 しかしその少年には仲間がいた。

 一緒に困難に立ち向かってくれる仲間が。

 

 多くの人にその人生を祝福された彼に、その時の私はいったい何を思ったのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 自分の過去を振り返ると、驚くほどに何もない。

 物心がつくころには既に唯一の血縁である祖父は死んでいた。家の中にはたった数歳の子供と屋敷しもべ妖精だけ。屋敷しもべ妖精は一族の血を残すために自分を生かす存在。

 自分と彼にはそれ以外の存在理由はなかった。

 

 誰かにその生を望まれているわけではない。

 自分の人生がこれからどうなるかなんて興味がなかった。自分の価値を正しく理解していたから。

 

 生きる。

 ただそのために毎日ひたすら無為な時間を過ごした。朝になったら起きて、エネルギーを補給するために食事をとり、表紙が擦り切れるほどに読んでしまった本で暇をつぶして、夜になれば死んだように眠る。

 肉体以外は死んでいるのと大して変わらない。それらの行為に意思はなく、無意味に、そして無感動に毎日を生きていた。

 家の中で全てが完結していたが故に外の世界に何かを求めようと思ったことすらない。

 

 

 そんな生き方が明確に変わったのは11歳の夏のことだった。

 

 魔法学校への入学。

 話には聞いていたが、まさか自分にも来るとは思ってもいなかった。

 

 案内に来た教師に誘われるように村を出た。

 村の外は全くの別世界だった。

 

 今までの無味乾燥が嘘であるかのように世界が色づき始める。

 そこには多くの魔法使いがいた。

 通りの喧騒が耳の奥にまで響く。

 古い本の匂いが積み上げてきた歴史を感じさせる。

 その賑わいは寂れた村とは正反対で何もかもが違っていた。

 

 最後に問われた――――自分のやりたいこと。

 そんなもの、自分にあるはずがない。

 このときまで何も感じずに生きてきた自分が目指すべきものなど何も――――。

 なんとかして自分に答えを求める。

 

 感じたこと――――この世界の素晴らしさを知った。

 そして、いつか夢で見た少年を瞼の裏に幻視する。

 

 そうか、僕は彼に憧れているんだ。

 闇の魔王だか、悪の帝王だったか。そんな悪い人をやっつける英雄譚。

 今となってはそんな一言で表せるくらい薄っぺらいものでしか語ることができない。もはやその夢のほとんどを覚えていないから。そもそも本当にそんな夢を見たのかも疑わしい。昔に読んだ古い童話を変な覚え方をしていたのかもしれない。

 でもそんなことはどうでも良かった。

 

 誰かに必要とされる人生。

 誰かに認められる人生。

 自分がそんな大それた人間になれるとは思っていない。それでもそんな生き方を羨ましいと思った。全てが空白の自分とはまるで違うその在り方が、どうしようもなく輝いて見えた。

 

 

 

 

 

 

 ホグワーツに入学した。

 それまでとは全く異なる生活が始まった。

 

 そこにいる人は全て生きていた。

 自分だけが取り残されている。

 ただ目的意識もなく毎日をぼんやりと生きている。これでは家の中で閉じこもっていた頃と何も変わらない。

 

 そんな自分にも友人と呼べる存在ができていた。

 

 そこからの自分は少しは変わったのだろうか。

 何もない自分を隠すようにただ才能だけはあった魔法に全力で取り組んだ。

 親友は自分に期待していた。その期待は自分には重すぎた。自分と言う存在が彼にまるでふさわしくないことを自分が一番わかっていた。だからそんな自分のつまらない本性を隠すための努力を惜しんだことはない。

 

 そうしているうちにそんな時間も悪くないと思えるようになった。

 二人で一緒に勉強したこと。夜中に学校の探索をしたこと。魔法の神秘を語り合ったこと。

 それら全ての記憶は今でもはっきりと思いだせる。

 彼との時間はとてもいいものだった。

 彼は何かを変えてくれる人間だ、こんな僕でも変われそうだと、そう思わせてくれるようなものを彼からは感じたのだ。

 

 だから自分の道が定まるまでは彼についていこうと思えた。その時間は代え難いほどに大切なもので、ずっと続けばいいと。

 

 ただ、違和感(既視感)――――――――何かを忘れているような気がした。

 

 

 

 

 

 気づいたときには既にすべてが手遅れだった。

 私は己を呪うよりほかはなかった。

 自分が、自分だけが知り得たにもかかわらず、愚かにも自分は何を成すこともしなかったのだ。

 

 夢の正体をようやく悟るには少し遅すぎた。

 事が起こってしまってはどうすることもできない。

 出来ることは彼の起こした事実が夢と重なっていく様を見届けるだけ。

 

 ――――――――本当に?本当にそれだけ?

 

 いつかは失踪することを知っている。

 それによって一時の平和が訪れることも。

 最後は英雄によって倒されることも。

 自分がわざわざやる必要はないのかもしれない。

 

 ――――――――多くの人が苦しんでいた。

 

 だが黙って受け入れるという選択をするわけにはいかなかった。

 救われた世界があるのと同時に救われなかった人が大勢いることもまた知っていたから。

 

 度し難い。一体なんのためか、理解に苦しむ。

 もし夢を見せたのが神だとすれば生涯をかけて恨んでやろう。

 まあでも、運命を嘆いたところでなにも変わらない。

 

 それに――――道を示されたのだ。

 自分だけが歩める自分のための道を。

 

 

 

 

 自分が何のために生きるのか。

 魂の色は既に定まった。

 だからこそ、この結末は必然だったのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜もかなり更けたどこかの郊外の小道。

 静寂の世界に突然破裂するような音が小さく響き、誰もいなかった空間に男が一人現れる。

 男はあたりを見回した後、きっちりと刈り揃えられている高い生垣に沿って足早に歩き始めた。

 

 歩いていた小道はいつの間にか広い馬車道に変わっていた。

 行く手には重厚な黒い錬鉄の門が見え、生垣とともにその先を阻んでいる。

 男は特に気にした様子もなく、門にぶつかるように歩くと、門はまるで煙のように男の邪魔をすることなくその先へと男を通した。

 

 門の先には洋館が一つ不気味に佇んでいる。かなり古く朽ち果てた感じがありながら、荘厳さも同時に備えたそれからは年月と歴史を深く感じ取れる。

 庭のどこかで噴水の音が聞こえるが、暗さで何も見えない。昼であれば美しい庭が見えるのだろうか。洋館の一階からわずかに漏れ出る明かりの方へと足を早めた。

 

 扉を開けると、肖像画が並ぶ玄関ホールがある。床は豪華なカーペットで覆われていた。

 肖像画からの不躾な目線をものともせず、大股にそこを通り過ぎていく。

 男は躊躇うことなくホールに続く部屋の扉を開け、奥の広間へと入っていった。

 

 広間は明かりが絞られ、装飾の凝らした長いテーブルが無造作に一つ置かれている。

 そこに座るものは異様なほどに静けさを保っていた。どうやら彼らは男を待っていたらしい。

 

「遅れてしまったね、急いではいたんだけど」

「なに、構わぬよハワード。その程度のことを俺様が気にするはずもない」

「ハハハ、期待に添えるように頑張りますって言えばいいかな?」

 

 軽口を叩きつつ席へと座れば、会議はつつがなく始まった。

 

「次のマグルの襲撃は――――」

「しかし最近は消耗も少なくはない――――」

「やはり抵抗勢力である不死鳥の騎士団を――――」

「そちらよりも魔法省を掌握した方が――――」

「どの程度の時間がかかると――――」

 

 多くのことが議題に上がる。

 戦争が始まってからおよそ7年。多くの血が流れた。既に魔法界は混乱の真っ只中にある。

 にもかかわらず闇の勢力による支配は当初予想していたものよりはるかに難航している。

 ほとんどの人間は逆らうことを辞めているが、少数の精鋭が反抗を諦めず、更に抗争が激しくなっているのだ。

 この組織は幹部を除けば寄せ集めが大部分を占める。数による利も少しずつ人数を減らされることで薄れていく。替えが効くとは言え時間は更に必要だ。

 確かに帝王本人が出張ればうまくいくのだが、全てをやるには彼一人では身体が足りない。力あるものであれば十分に相手に痛手を負わすこともできるが、そうでない者は捕らえられてアズカバンへと入る始末。

 いずれにしても喜ばしい状況とは言い難く、他に代案があるわけでもない。結果として人数的有利を活かした物量によるゴリ押し、それが現時点での最善の策と言うほかなかった。

 

 

「最後になったけど私の方からひとつ、いいかな?そろそろかと思ってね」

 

 特に目新しいことが話されるわけでもなく会議が終わろうとしているとき、ほとんど口を開くことのなかった男が動いた。

 

「お前からとは珍しいこともあるのだな」

「まあそうだね。こちら側にも転機が訪れそうだって話だ」

 

 男はそこで区切りを入れ、部屋の人間を一通り見遣る。

 最後に部屋の主人をその目で捉え、言葉を告げた。

 

「ダンブルドアが一人になる機会が巡ってきた。これを逃せば次はいつになるかはわからない」

 

 突然のことに周囲はざわついた。

 あるものは己の主人に期待の眼差しを向ける。

 あるものは発言者から事の真意を読み取ろうとする。

 隣の者と二言三言話す様子も見受けられる。

 

 言葉を掛けられた本人は一瞬言葉を失う。

 しかしほとんどの者がそのことに気付かぬうちにその動揺を隠しきり、口を開いた。

 

「ふっ、ようやくか」

「怖いのかい?」

「まさかな。そんなことがあるはずもない。俺様とお前の二人ならばできないことなど何もないのだ」

 

 焚きつけるような発言、場合によっては無礼であるとして命すら取られかねないその言動にはたしかに友情を感じさせるものがあった。

 

「それで、詳しく話してくれるな?」

 

 部屋の主が続きを促せば、男は淀みなく簡潔に答える。

 

「やつがゴドリックの谷に行く。それに僕も同行することになった。」

「そこを俺様が襲撃し二人で殺る、そう言いたいわけだな?」

「話が早くて助かる、あとは君次第だ」

 

 今度は男が相手を試すように言葉を投げる。

 

「答えなどわかりきっているだろうに――――結果などとうに見えている」

 

 蛇の様に顔を引き攣らせるようにして嗤う彼の言葉は、自信と傲慢に満ち溢れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――数か月後。

 

 

「こんなところで何をしている、ダンブルドア?」

「それはこちらの言葉じゃよ、一体わしに何の用じゃ?」

 

 突然の襲撃に際してもダンブルドアは落ち着いていた。

 ヴォルデモートは嘲るような口調であったのに対してダンブルドアは諭すように語りかける。

 

「むろん貴様を殺すためだ。貴様の死をもって己の力の完成とする」

「ほう、おぬしが?今までわしから隠れていたおぬしに果たしてそれができるかのう?」

「その間俺様が何もしていなかったとでも思うか?」

 

「たとえ時間をかけて学んだとしても愚かなのは変わらんようじゃの、トム」

「危機感が足りていないぞ、ダンブルドア。既にボケはじめているようだな」

 

「それはどうかの。既に手はうった、じき闇祓いが来るじゃろう」

「その時にはお前は既に死んでおるわ、俺様の手によってな!」

 

 闘う前から既にヴォルデモートは自分が勝者である事を疑っていなかった。

 嗤う彼にダンブルドアが水をさすように鋭くそして彼にとっては致命的な言葉を投げかける。

 

「……おぬしの最も信用する部下の心が既にそちにないとしても、かの?」

「――――――――――――」

 

 沈黙。

 彼はそれが意味するところを理解できなかった。

 最も信を置いているはずの男に目を向けると彼は頭を抱えていた。

 

「やれやれ、うまくいかないものだね。段取りの重要さを痛いほどに知ったよ」

「おいハワード。何の話をしている」

「まだ分からないかい?それとも分かりたくないのか」

「………なるほどな。貴様裏切ったのか」

「裏切る?」

 

 ただの復唱。言っている意味が分からないとでもいうようにただその言葉を繰り返す。

 暫く考えたのち彼は乾いた笑いをあげた。

 

「何がおかしい」

「その言い方は語弊がある、と言いたいところだが……もうなんでも構わないさ」

 

 ハワードが杖を取り出し構える。

 

「君は僕がここで倒す」

「……本気で言っているのだとしたらなかなかに滑稽だぞ?」

 

「もちろん本気だとも。君の歩む世界に希望はない、未来も」

「くだらんな、そこの老いぼれ爺に愛とやらの説法でもされたか」

「……やっぱり君は変わっていないね」

「愚かなことだ。ダンブルドアならいざ知らず、お前が俺様に勝てると思うか」

「やってみるかい?」

 

 その言葉を皮切りに二人は杖を素早く動かす。

 双方の杖から閃光が噴き出ては互いの呪文を打ち消しあう。

 空を切り裂き弧を描く杖が止まることはない。

 

「君とこうするのも久しぶりだ、30年ぶりかな」

「口を動かす暇はあるようだが、どこまでその余裕がもつか見物だな」

「今回は勝敗がつくまでやろう」

「昔とは何もかもが違うというのに」

 

 本気の者同士の決闘ではごく短時間の交錯で勝敗が決まる。

 それらは基本的に当事者の技量に左右される。

 例えば強い者と弱い者が戦えば前者が勝つ。

 単純な話だ。

 

 ゆえに条件が学生時代となんら変わらないのであれば結果は見るまでもないだろう。

 

 しかしこれはあくまで基本的な一般論でしかなく、それ以外の前提条件がない場合に限られる。この場では瞬きの回数、呼吸の頻度すら勝敗を分ける要因に成り得るほどに、多くの事象が絡み合っていた。

 

 第1の要因 成長率

 

 ヴォルデモートが戦争が始まるまでのこの30年をどう過ごしていたか。ヴォルデモートは表舞台から姿を消している間、常に闇の魔術に関する知見を深めていった。その時間に見合うだけの成長を彼は遂げている。

 しかし成長しているのはハワードも同じ。戦場の最前線ではないとはいえ、闇の魔法使いに対する魔術の研究は誰よりも進んでいる。

 

 ここで要因2 使用魔法の違い

 

 決闘時とは異なり、ヴォルデモートが使用する魔法を制限していない。積極的に用いられる強力な呪文を全て捌き切るにはハワードには少し荷が重すぎた。

 

「貴様の罪を教えてやろう。俺様の前で欺瞞を働いたこと…俺様に逆らったこと…そして俺様の過去を穢したことだ!!」

 

 幾度か呪文が交差するときには既に地力の差が見えてくる。

 あきらかにハワードが追い付いていない。

 対してヴォルデモートは己の怒りをぶつけるように、甚振るように魔法を使う。

 あと数瞬で決着はつくかと思われた。

 

 しかし――――

 

「トムよ、わしがおる事も忘れてはいまいな?」

 

 要因3 第三者による援護

 

 ヴォルデモートからハワードに向かって放たれた致命的な呪いは決闘に乱入したダンブルドアによって防がれる。

 

「貴様はすっこんでろ!後で相手をしてやる」

「先生は援護を、まずは逃げ道を塞いで!ここで逃げられるわけにはいかない!」

「これでもまだ勝つ気でいるとはな………いっそ憐れですらあるぞ」

 

 ダンブルドアが作った隙を狙って呪いを放つもすべて防がれる。

 危機は脱したとはいえ差は未だ歴然としていた。

 ダンブルドアは補助に意識を割く必要があり、思うように攻勢へと移ることができていない。

 不意に呪文が途切れ、支えを失いバランスを崩しかけたそのとき―――――

 

 

――――アバダケダブラ

 

 

 呪文は――――――――当たらない。

 

 要因その4 魔法薬の服用

 

 事前に幸運の液体を飲んでいたこと。

 たとえ奇跡の様な確率であってもそれを引き起こせるだけの幸運を既に彼は持っている。

 

「………貴様、なにをした」

「さあね、自分で考えるといい。次回までの課題だ」

 

「ふざけるなよ………そもそもなぜ今更動き始めた」

「君の未来(過去)が僕の過去(未来)を作り上げたのさ……逆に君の現在、その責任が僕にないわけでもない。―――――だから私がここで君を殺す」

「矛盾しているな」

 

 彼の宣言にヴォルデモートは嘲笑で返し、杖を振るう。

 再び呪いの応酬へと戻った。

 ダンブルドアが守りに徹することで一方的な展開には持ち込まれていない。

 

「そうであるとすればなぜ貴様は今まで俺様を止めることをしなかったのだ?」

「それを君が言うのか」

「そもそも貴様は俺様が王になる事を認めていたではないか!」

「ああ認めていたとも!僕は君こそが魔法界の王にふさわしいと本気で思ってたんだぞ!」

「ならばなぜ――――」

「もっと!もっと…別の方法はなかったのか」

 

 ハワードの悲痛な声を最後に、呪文の嵐は突如として消え去った。

 先程までの激しさは鳴りを潜め、今では風のざわめきだけがその場を彩っている。

 その場から動く者はいない。

 

「君だって魔法界を、ホグワーツを愛してたはずだろう!?君はッ――――」

 

 ヴォルデモートは自分の杖を撫でながらため息を吐き、続く言葉を遮った。

 

「言いたいことはそれで最後か?」

 

「………先生、少しでいいから時間を稼いでくれ」

「何をする気じゃ?」

「潮時だよ。やることはいつだって変わらない」

 

 ――――一度熱した頭が急激に冷やされていくのがわかる。代わりに心に漏れ出てくるのは、笑い(嘲笑)。いやほんとうに馬鹿馬鹿しい。

 この期に及んで自分はいったい何をしようとしていた。己の愚かさに呆れ自嘲する。

 

 救う術を持たず、救おうと考えたことすらなかった自分が何かを言う立場か。

 ははは………確かに彼をここで殺せば多くの人が救われるだろうよ。それで“僕”は道を踏み外した親友を苦難と苦悩の中でその手で殺した悲劇の英雄ってところか。あとはめでたしめでたし、ハッピーエンド。観客もさぞかし沸いてくれるだろう。

 ……くだらない。まるでマッチポンプ、ひどい三文芝居だ。

 

 誰かに必要とされる人生、か。それを得るための手段としてあの英雄に憧れた。誰かのため、それだけを目指して生きてきた。だが所詮は偽物。手段と目的を取り違えていることにも気づかず無様に走り続け、その結果がこれだ。偽善にすらなっていない。むしろ悪以外の何であると言えようか。誰かのためと言いながら、その誰かを見ることなくただ己のために利用した。

 

『――――稀代の悪人となるかそれとも英雄となるか。それを決めるのはあなた自身です』

 

 ああ、私はいつも気づくのが遅い………。

 己の醜さをこんなところで見せつけられることになるとは思いも寄らなかった。

 どちらにせよ今更気づいたところで何かが変わるわけでもない。今となっては己の罪深きエゴに従うほうが全てに対して良い結末になる。私が善であるか悪であるか、正義であるか外道であるか。そんなことはどうでもいい。それを論じることにもはや意味などないのだから。私は私でしかなく、彼を倒す、そのために私はここにいる。戦う理由は――――必要ない。

 

 だから自分がすることを間違えるな。

 お前がするべきは――――

 

 5つ目の要因 事前の準備

 

 彼が先生との決闘を想定していたのに対して、私は長年の間トムと戦うことを想定していた。

 既に相手を倒すヴィジョンを持っていたこと、それはこの戦いが始まったときから変わる事のないアドバンテージだ。

 ふと己の杖に目を落としてみれば、それはいつもと同じようにそこにあるにもかかわらず、なぜか今までよりもよく馴染んでいるようにすら思える。

 先生が稼いでくれている数秒のうちに息を整え、改めて杖を構える。

 

 杖に想いを乗せれば、杖からは禍々しい炎が噴き出し、周囲を一瞬で囲い尽くした。

 

「大口を叩いて放つ魔法がその程度とはな………。わざわざ避けるまでもない。簡単に打ち消してくれるわ!――――ッ!?」

 

 炎を彼に向けてみれば思った通りに彼は受け止めてくれる。

 彼がこの程度の魔法にどう対処するかなど手に取るようにわかる。幾度となく考えてきたことだ。彼のことが分からないはずがない。

 きっとここまで彼の行動を予測できるのは自分だけだろうし、それがこの戦いの勝利にどれだけ関わっているかも分かっている。

 ただ今は、自分の思い通りに進んでいることがあまりにも腹立たしく感じられた。

 

 そして要因6 魔力容量

 賢者の石を所有していること。

 今までの戦闘はすべて彼に実力を誤認させるための布石でしかない。

 この魔法に全身全霊の魔力を込める。

 

「なぜだッ!なぜ俺様が押されている!?」

「まだ分からないのかい?」

「いかんハワード!それ以上は殺してしまう!」

 

 最後の要因 覚悟の有無

 相手を殺す覚悟を己はとうに持っていたこと。

 己だけが初めから相手を殺す覚悟でこの場にいたこと。

 

 無言を以て返された答えに彼らはようやく、ようやくその心を視た。

 

「まさか貴様はじめからッ――」

 

 口元がつり上がり顔が笑みを湛えるのがわかる。

 視界が霞み、不思議な未来(過去)をどこかで視た。

 ――――――その世界に英雄はいなかった。英雄が必要となるような事が起きていないのだから。三人の男で机を囲んでいる。二人の少年が楽しそうに話しながらお菓子をつまんでいるのを、一人の男性が柔らかい笑顔で見つめてお茶を飲んでいた。ただそれだけの優しい世界――――――

 頬を伝う雫が空に溶けていく。

 

 

 炎がすべてを包み込んだ。

 

 

 



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終幕

最終話です。


 

暗闇の中でこそ星は見える

――マーティン・ルーサー・キング・ジュニア――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 1977年9月1日

 

「新たな年度が始まる。

宴の前に一つ知らせなければならんことがある。既に知っている者もおるじゃろうが、君たち全員がそれを知るべきだと考えた」

 

 闇の帝王の終わりはその経緯とともに、魔法界すべてにすぐに伝わった。

 決着はあっけないものだった。

 闇の帝王がホグワーツ校長アルバス・ダンブルドア、防衛術教授ハワード・ゴーントの両名を襲撃、戦闘になるも両者は善戦、最後にはゴーント教授が自身の命と引き換えに帝王を撃破。

 

 防衛術の教授を知っている者はその報せに心を痛めつつも祝福の杯を交わした。

 また彼を知らない者はその功績がダンブルドアの力によるものであることを信じて疑わなかったが、いずれにせよめでたいことに変わりはなかった。

 

 梟が夜明けとともに四方八方へと飛び交う光景がいたるところで見られた。

 多くの魔法使いはローブのままマグルの街へと出歩いた。

 夜になれば大量の流星が空を駆ける。

 

 まるでお祭りのように多くの人がパーティーを開き、そして騒いでいる。

 およそ七年間もの間、祝い事はほとんどなかったのだ。そうなることも仕方ないのだろう。

 

 魔法界にも活気が戻り始めてきた。

 

 ダイアゴン横丁の商店も開かれ、魔法の道具や書物が陳列されるようになった。

 仕事が忙しいと嬉しそうにぼやく声がどこからか聞こえる。

 

 ホグワーツの生徒たちにも笑顔が溢れている。

 もともとホグワーツは一番安全だと言われていたが、やはりホグワーツにいない家族のことなどはどうすることもできなかったのだ。

 その心配が消えたとなれば安心したことだろう。

 ようやく気持ちよく新入生を迎えられる。

 

 魔法省は人員整理でかなり大変なことになっているらしい。

 多くの部署で昇進と投獄が相次いだとか。

 

 彼らは既に闇の帝王の勢力の残党に対する対応も進めている。

 徹底的な調査を行い、既に捕らえた者との司法取引を通じて幹部のみならず支援者や関与者を特定しているという話だ。彼らは厳正な裁判のもとで罪を償うことになるだろう。

 ただし闇の帝王に心酔していた者たちの動向には依然として警戒が必要だが。

 

 どこもかしこも忙しそうだがその顔には笑顔が浮かんでいた。

 

 戦争で死んだ人は数知れず、彼らが何を思って死んだのかそれすらも今になっては分からない。

 心に深い傷を負ったもの、体に治らない怪我をしたものだっている。

 傷ついたもの全てがすぐに良くなるわけではない。

 それでも戦争は終わった。

 欧州魔法界全土を巻き込んだ戦争は終結したのだ。

 

 これが彼が命を懸けて守ったものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 新学期の式典を終えたダンブルドアは大広間につながる玄関ホールから外を眺めていた。

 もう新入生はベッドの中で寝ている時間だろうか。

 外はすっかり暗く、ぬるい風が城の石壁をなぞる。

 彼の眉間には皺が寄っていた。

 

 しばらくすると足音が複数近づいてくる。

 そこにいる人の数が四人になったとき、ようやくダンブルドアは口を開いた。

 

「ミネルバ、セブルス、そしてシリウス。よく来てくれた。少し時間いいかの?」

 

 そう言うと、彼は城の中を歩き始めた。

 彼の背後では二人の学生が目も合わせずに話し始める。

 

「なぜお前がここにいる、ブラック」

「知るかよ、ダンブルドアにでも聞いてみればいいじゃねえか」

 

 その様子に女教授はため息をつき、頭に手をやった。

 

「貴方たち、こんな時ぐらいおやめなさい」

 

 そう言うと一人は片方を睨めつけるが、もう一方は気にした様子すら見せず口笛を吹く余裕すら持っていた。

 

 しばらく無言の時間が続き、廊下を歩き続ける。

 

 ようやくダンブルドアはある部屋の前で立ち止まった。彼が杖を振ると扉が開く。

 

「おぬしらはこれを知っておく権利がある。故に今日ここへ呼び出した。」

 

 ダンブルドアが先に入ったのを見ると、残りの三人は顔を見合わせて頷き彼と同じように入室した。

 

「アルバス、これは一体…?」

 

 そこにはベッドに横たわる壮年の男の姿があった。

 彼にはおおよそ外傷と呼べるものはなく、ただ眠っているようにしか見えない。

 声をかければそのまま起きそうなほどに彼の容態は穏やかだった。

 

「彼は……死んだのではないですか?その…『例のあの人』との決闘で」

「そうじゃよ、ミネルバ。彼は死んだことになっておる」

 

 ダンブルドアは深くため息をついた。

 

「厳密には今も生きてはおらんのじゃが………」

「俺たちはこれを見て何をすればいいんだ?ダンブルドア」

「いいや、おぬしらに何かを求めているわけではないのじゃ…………ただ、おぬしらが知っておいた方が彼にとってはいいことじゃろう」

 

 彼らは男の眠った様子をしばらく見つめていた

 

「何が………あったんですか、先生の体に…」

 

 そう言う青年の声は少し震えていた。

 

「わしにも詳しいことまでは分からんのじゃ。無理をし過ぎたという事までしかの」

 

 大きすぎる力に彼の体は耐えられなかったのか。

そういえば彼の最期の魔法は明らかに普通のものと異なっていた。あり得ないほどに膨大な魔力。その力を得るための仕掛けが、今もなお彼を生かしているのだろうか。

 身体だけは生き続け、まるで魂だけがぽっかりどこかへ行ってしまったかのように彼が反応を見せることもない。

 

 彼を見るたびに昔の記憶が幾度となく思い出される。

 

『このお菓子はどこで?僕は結構好きです!』

『今日はミネルバも誘って飲みましょうよ』

『先生、僕はいつまでも子供じゃないんですよ』

 

 あの戦いが始まる前は何と言っていたか。

 

『僕にしかできないこと。やっと見つけたんです』

『それが僕の人生なんだって。そう思えるくらいに大事なことができたんだ』

 

 彼の瞳には強い意志が宿っていた。

 誇らしげに胸を張っていた。

 彼はこの結果をどう思っているのだろうか。

 

 結局自分は彼のために何かしてあげることができたのか。何が正解だったのだろうか。自分はいったいどこで間違えたのか。

 

 多くの疑問が次々に湧き出てくる。

 

「ではなぜ死んだという事になっているのですか」

「わしがそう伝えたからじゃ」

 

 そんなことは知っているという非難めいた視線が突き刺さる。

 

「彼は決して死んだわけではない。じゃがこれから回復する見込みもないのだよ。ゆえに彼を死んだという事にするより他はなかった。彼の体を守り続けるにはこちらの方が何かと都合がいいわけじゃ。……軽蔑するかの」

 

 彼らは複雑そうな表情をみせている。

 

「彼は、偉大な人でしたわ」

「――――そうじゃな」

 

「……彼の最期を教えてください」

「ああ。それについても話しておかなければ―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 新学期の業務も粗方片付き、ようやく休息に時間を取れるぐらいには落ち着いてきた。

 

 時計を見ると、お茶を飲むにはいい時間だ。

 戸棚から茶葉を取り出し、銀製のポットに入れる。

 湯を入れた容器を魔法で沸かしながらカップも同時に用意する。

 

 沸きたてのお湯を勢いよく入れ、すぐに蓋をして少しの間蒸らす。

 時間を見計らいカップにお茶を注ごうとしたその時、何気なく用意した二つの容器を見て体が固まった。

 

 しばらく立ち尽くした後、彼は何を思ったのか使う予定のないそのカップにもお茶を淹れた。

 椅子に座り一息つく。

 カップを手に取り口元へ運ぶと、芳しい香りが湯気とともに鼻先に触れる。

 口に含めば、その味がいつもと何ら変わらないことを教えていた。

 ただただ静かな時間だけが流れ続ける。

 

 ふと窓の外に目をやると、まだ新学期も始まってすぐだというのに外で箒に乗って遊ぶ生徒が見える。

 彼らの黄色い声はどの時代でも変わらない。

 しばらくの間、なんとなしに外を見続けていたため、茶は既に冷め、香りも消えかかっている。

 それを気にすることなく一息で飲み干す。

 もう一つのカップは温度以外は入れたときと何ら変わりなかった。

 

 それを横目に椅子から立ち上がり、校長室の戸棚を開けた。

 中にはルーンの刻まれた水盆が仕舞われている。

 憂いの篩(ペンシーブ)

 その魔法具の目的は記憶の保全と再生にある。

 

 こめかみに杖を当て、曇った銀色の液体を取り出し試験管に入れる。――――何回も何回も。数えるのが嫌になるほどにその操作を繰り返した。

 なんでもないただの日常。彼と卓を囲い、多くのことを話した。その記憶を取り出すことにきっと意味はないのだろう。ただそれはとても懐かしく、すぐそばにある過去だというのに、手を伸ばしても届かない。彼と向かい合い、そして紅茶を楽しむような時間は、二度とこない。

 

 他者を悼むことは決して悪いことではない。しかしそれは、その行為から何かを得ることができる場合に限られる。

 ただ記憶に縋ることがどれほど愚かなことであるかを彼は知っている。過去に想いを馳せることの無意味さも。それがただの代償行為でしかないことも。

 にも関わらず彼はそれをした。そうでなければ己の罪を忘れてしまう。それだけは避けなければならない。きっとただの自己満足でしかないとしても――――それでも彼はそうすることしかできなかった。

 

 ――――偉大。その言葉にいったいどれだけの価値があると言うのか。またしても自分だけが残り、群衆は虚像のダンブルドアを讃える。誰が彼にその道を歩かせた?

 ――――私だ。結局のところ自分は何も変わってはいなかったのだ。

 過去を後悔したが故、教え子に同じ道を歩ませたくなかった。だから彼には自分が得ることのできなかったものを得てほしいと、そう願ったのだ。結果として私の言葉はしっかりと彼に届いていたらしい――――間違った方向で。私の言葉がきっかけとなり、彼は私が望んでいたものとは全く異なる道を選んだ。私の言葉が彼の人生を変えてしまった。私が何もしなければ彼は幸せでいられたのだろうか。

 そんなことを思ってしまったのが悪かったのか。最後の最後で私は動くことができなかった。彼が命を賭して魔法を放ったときに、動くことが怖くなってしまった。また何かを壊してしまう気がした。そうこうしているうちに彼は目的(親友殺し)を達し、そのまま眠るようにその場で倒れ伏した。その場で私が動けば何かが変わったのだろうか。

 ――――私が動いたことで彼を不幸にした。

 ――――私が動かなかったことで彼を不幸にした。

 だが、それらを後悔することは許されない。そうしてしまえば彼の覚悟を他ならぬ私が全くの無駄だったと否定するようなものだとも知っているから。ただ今は己の罪をひたすら懺悔する。

 

 彼の肉体は死んではいないと彼らには言った。ただ老人はそれをどうにかする術を持ち合わせていない。死者を呼び戻す魔法。魂を呼び戻す魔法。そんなものがあるわけもなく――――手詰まりだった。それは死んでいるのと何が違うのだろうか。

 死者は生き返らない。これは覆る事のない原則だ。それに生あるものであれば、必ず別離は訪れる。たとえ家族――兄妹そして親子――であってもそれは変わらない。

 今回のだってきっとそういう事なのだろう。

 自分ももういい歳だ。今までに多くの別れを経験してきている。

 思想の違いから二度と会うことはなくなった者。老衰でなくなってしまった者。行方知れずの者。先の戦争で別れを言う間もなく消えていった者。

 数え切れぬほどの別れのうちのただの一つ。

 己の心にそう区切りをつけ、最後の記憶を入れ終えた。

 

 

 二人での墓参りはついぞ行かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから幾年か経ったある日の夜。

 外は冷たい雨がしとしとと降り続けており、一向に止む気配を見せない。

 老人は馴染みのパブへ行こうとしていた。

 

 その店は表通りから少し外れた人気のない横道を進んだ先にある。

 外に出るのも嫌になるような空模様のせいか、あるいはもう遅い時間だからか。

 家屋から漏れ出る明かりは小さいものしかなく、活気はまるで感じられない。

 

 老人は慣れたように中へと入る。

 店内は小さく、薄汚く、見窄らしいことが蝋燭の火でかろうじて見渡せる。

 獣臭が漂う店内に老人以外の客はいないようだ。

 

「少し、上を使わせてもらうよ」

 

 店主に一言断りを入れるが、返答はない。

 それを了承と受け取った老人は部屋の隅の階段から二階へと上った。

 老朽化と湿気でひどい音を鳴らす廊下を進み個室へと入る。

 

 部屋は一階と同じように汚いが、獣臭さは僅かにマシだろうか。

 寒さでかじかむ手を気にせず、暖炉に火を入れると部屋は暖かい色に包まれた。

 彼は椅子に座り時間が過ぎるのを待つことにした。

 

 時間になればある女性が来るはずである。 

 老人は彼女の面接を予定していた。

 彼女は「占い学」の教職を希望しているようだ。

 彼の持論として、もともと「占い学」とは才能によってほとんど決まってしまうものである。だからこそ彼はそれを授業として続けることに疑問を抱いていた。故に老人に彼女を採用する気など初めから塵ほどもなかった。

 

 ならばなぜわざわざ時間を作って彼女に会うことにしたのか。

 聞くところによるとその人物は卓越した能力のある非常に有名な予言者の曾々孫であるらしい。

 何も言わずに追い返すわけにはいかず、彼は礼儀として会うことを決めた。

 正直な内心は興味が半分、厄介だと思う気持ちが半分といったところか。

 

 暖炉の火がゆらゆらと揺れるように燃え続けている。

 部屋には暖炉の中で火花がはじける音と雨が窓に打ち付ける音とが薄らと響いている。

 予定よりも早く来たことを少しばかり後悔しながら彼は目を閉じて待つことにした。

 

 

 

 やがて時計の針が夜の深い時間を告げるとドアが軽く叩かれた。

 扉の先には細身の女性が立っている。

 無数の鎖とビーズが彼女の細い首んぶら下がっており、手には多くの指輪や腕輪が取り付けられている。不自然に大きい眼鏡は彼女の眼を不気味なほどに大きく見せていた。

 

 なるほど。“らしい”姿だ。

 その時点で面接をするまでもなく結果は見えていたが、彼は彼女に椅子へ座ることを促す。

 

 老人は彼女の話を聞いた。

 結果は彼を十分に失望させるものだった。

 いや、失望という言葉は正しくないのだろう。なにせ()()()()()ものだったのだから。

 良く言って凡庸、誤解を恐れずに言うなれば虚言癖の塊。

 その女性には才能の欠片すら見て取ることが出来なかった。

 

 とは言え、彼女は自分の才能に自信を持っていた。

 故に老人は礼を欠かさぬよう注意を払って採用の見合わせを伝え、先に部屋を出ようとしたとき

 

 

―――――彼女はかすれた荒々しい声で話し始めた。

 

 

 

 

 闇の帝王を打ち破る力を持つはずであった者が、七つ目の月が死ぬときに生まれるであろう

 いつしか闇の帝王は立ち上がり、時代は闇へと戻る

 眠りし英雄が目覚めんとするとき、予言は予言に還り新たな物語を紡ぐ

 死を覆す力が彼に死をもたらすだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 宿を出ると既に雨は止んでいた。

 芯に響くような寒さが身に染みるのは変わらず、思わず身体が震えて宿の前で立ち止まった。

 ふと天を見上げれば、澄んだ空の中で無限の星が煩いほどに輝いている。

 

 吐いた息が白い霧となって空へと昇るのを見届け、老人は再び確かな足取りで歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 




これにて完結です。
最後までお付き合いくださり本当にありがとうございました。
よろしければ感想や評価などを頂けると嬉しく思います。

今後は気が向けばもしかしたら本作を前日譚としたハリポタ本編、あるいはイベント分岐によるifルートをおまけとして書くかもしれないし書かないかもしれません。構想だけはあるので…
まあでもとりあえずは完結ということでここらで締めさせて頂きます。
繰り返しになりますが、読んでいただき本当にありがとうございました。


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