果実纏う武神 (黒影・贋)
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0、こう言うのをテンプレ(ありきたり)っていうのか

今作が初投稿となります。


0、こう言うのをテンプレっていうのか

 

さて、この状況は一体なんなんだろうかと自分の過去を振り返る。

 

突然目の前が真っ白になった。

 

うん、まるで意味が分からんぞ。

 

「・・・あの」

 

と言うよりここは何処だ?

まず、どう考えても俺の知ってる場所じゃない

 

「あの‼」

 

第一こんな真っ白で上下左右もわからない所に気がついたら居たって・・・

 

「すいません‼話を聞いてください‼」

 

・・・はぁ

 

余りにも煩いのでおれは今まで無視して来た幼女に目を向けた。

 

「なに?」

 

「あっ、今ため息吐きましたね⁈

わかってて無視してたんですか⁈」

 

「うん」

 

俺が肯定すると、目の前の幼女はさっき以上に騒ぎ立てる。面倒臭いので暫く幼女放置する事にした。

 

 

それから暫く幼女は騒ぎ続けたが、疲れたのか途中でゼェゼェと肩でを揺らしながら止まった。

 

「落ち着いたか?」

 

「誰のせいだと思ってるんですか」

 

「それで?何故俺はここにいるそして、お前は誰だ」

 

幼女の恨みがましい目を無視して本題に無理やり転換させる。

 

「よくぞ聞いてくれました!

ここは魂を転生させる空間で私は貴方たちの世界を管理する神様です!」

 

先ほどまでの疲労はどうしたのか。エッへん!と無い胸を張ってどや顔をかましてくる幼女をみてこんなのが神様か世も末だなと思わずにはいられなかった。

 

「まあ、お前が神様かどうかはいいとして、俺はなんの為にここにいる」

 

「えーっと、それはですね・・・」

 

途端に顔と声の色が変わる彼女に若干の苛立ちを覚える。

 

「いいから、さっさと言え」

 

「怒りません?」

 

「お前の返答次第だ」

 

「その・・・ごめんなさい‼」

 

彼女はぎゅっと目を瞑って俺に頭を下げて来た。

 

・・・ん?

何に対してのごめんなさい?

 

「頭を上げろそして、取り敢えず説明しろ」

 

「・・・はい」

 

さっきまでと見違えるくらいしょんぼりとした顔で口を開いた。

 

 

途切れ途切れながらも説明する彼女の言葉に耳を傾け、彼女の言葉を汲み取る。

 

彼女の説明を簡単に言うのであれば、神様にも善と悪が存在し、ごく稀に悪の神が人間に影響を及ぼす事があるらしく、それを防ぐのが善の神の役目だった。しかし、悪の神は俺に説明出来ないなんらかの影響を与えた為苦肉の策として俺を殺したらしい。

 

「成る程な、だいたい分かった。

だが、それがお前の謝罪とどう関係ある?」

 

「えっ?」

 

「お前はするべき事をやっただけだ、俺はお前を責める気は無い」

 

「ーーっ、でも!」

 

「それで?俺をここに招いた理由は?」

 

いまだに食い下がる神様に見兼ねた俺は無理やり話題を転換する。

 

俺の意図に気づいたのか神様の方も何か返す事はなく俺の質問に返答した。

 

「・・・貴方の死は正当な物ではありません。ですので貴方には転生して貰います」

 

「転生?転生ってあのよく二次創作であるような転生のことか?」

 

「はい、その転生です」

 

「それはいいんだが、それはどんな世界に転生するんだ?」

 

ここは重要な所である。此の手の話どうりに進むのなら、俺は死亡フラグが蔓延する世界に落とされる事になりかねない。

 

「えっと、それはまだ分からないんです」

 

脱力した、それはもう目に見えて脱力した。そんな俺の姿にに神様は慌ててた様子で「っでも!」とつけたした。

 

「代わりにどんな能力でも差し上げます!」

 

能力、能力ねぇ。

 

「なんでもいいのか?」

 

「はい!どんな物でもご希望に沿いましょう!」

 

どんとこいっといった態度で胸を叩く彼女に対して、少し考えた後で自分の要求を口にした。

 

「じゃあ、アーマードライダー斬月で」

 

「えっ?それだけですか?」

 

「ん?他にもいいのか?」

 

「はい!いくらでも言ってください!」

 

だったらお言葉に甘えて遠慮なく言わせてもらおう。

 

「なら、ロックシードの力を最も使いこなす体質とヘルヘイムの森に行く能力。そして、戦極ドライバーを作る頭脳と技術力だ」

 

「はいはーい♩オッケーでーす!

他にはありますか?」

 

「えっ、なに?まだいけるの?」

 

「全然いけますよ?」

 

結構な量を注文したはずだけどなぁ。

 

当の神様は問題無いと言った様子で次の注文を促してくる・・・が。

 

「ううむ、特に無いな」

 

「そうですか?意外と欲が無いんですね。以前の転生者は【王の財宝】とか【無限の剣製】とか持って行きましたけど」

 

ほうほう、なかなかのチートだな。

参考までに他の《特典》とやらも聞いてみる。

 

「えっと・・・【十二の試練】とか・・・あ、あと【ニコポ・ナデポ】なんか持って行った人も居ましたよ?」

 

そいつらは一体何がしたいのだろうか

 

参考にはならなさそうなのでここまでで切らせる。

 

「なら、残りの願いはまた追い追いといくのはどうだ?」

 

「まあ、私はそれでも構いませんけど」

 

「よし、なら決まりだな」

 

っと、そこである事に気づき俺は彼女にある提案をしてみる。

 

「なんなら暫くここで修行させてくれないか?自分がどの程度の力か知っておきたい」

 

「もちろん構いません!じゃあ、準備が出来たら言ってください。いつでもお送りします。あと、これを」

 

そう言って彼女は俺に戦極ドライバーとメロン・ロックシードを差し出した

 

「どうも、ありがとう」

 

・・・あの変身出来るのかねぇ。

失敗したら恥ずかしいな

 

能力はもう使えるのか、目の前にヘルへイムの森につながる【クラック】を作り出し、戦極ドライバーを身につける。

 

「変身」

 

《メロン!》

 

そのままメロン・ロックシードを上に投げて、受け取り戦極ドライバーに取り付ける。

 

《ロック・オン》

 

カッティング・ブレードを振り下ろす

 

《ソイヤッ!

メロン・アームズ!天・下・御・免‼》

 

おぉ、うまい事行ったな。

 

一度、貴虎主任の変身ポーズをやってみたかったので真似してみたら上手く出来てやや達成感が生まれる。

 

では、行ってくるとしよう。

 

後ろで「行ってらっしゃいませー!」と大きく腕を振る幼女を尻目に俺はクラックの中に入って行った。

 



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1、斬・月・転・生

今回は独自の設定や解釈が多量に含まれています


1、斬・月・転・生

 

「おい、そろそろ俺を向こうの世界に送ってくれ」

 

ヘルヘイムの森でそれなりに満足する程度に修行を終えた俺は神様に転生するとの旨を伝える。

 

「もう、いいんですか?」

 

「あぁ、こいつの使い方もだいたいは分かった」

 

戦極ドライバーをトントンと叩いて神様に言う。ヘルヘイムの森に篭っていたのはひたすら戦極ドライバーの研究のためでもある。あとは、ロックシードの乱獲をしていたぐらいか。

 

今はメロン・ロックシードではなく向こうの実をもぎ取って作った【ヒマワリ・ロックシード】をつけている、ロックシードは戦極ドライバーの組み合わせて使う事で使用者は戦極ドライバーを介してロックシードの養分を吸い取り食料を摂取しなくても生きていけるように作られている。

 

以上、上記の情報がこのロックシードと戦極ドライバーの本来の使用方法である。

 

そして、この機能がどの程度の物なのか知る為にこの最低ランクである【ヒマワリ・ロックシード】でどれだけ生きていけるかと試していたのだが。

 

「しかし、このヒマワリ・ロックシードだけで数百年も持つとはな」

 

「・・・って、言う事は貴方はその間なにも食べてなかったんですか⁈」

 

「うん?まあ、そうなるな。

たが、ヘルヘイムの果実を食う訳にもいかないだろう?」

 

そう言う俺に神様の方はキョトンとした顔を見せる・・・ん?

 

「いや、食べるもなにも貴方はインベスじゃないですか?」

 

・・・・なんだと?

さすがの俺も動揺を隠せず思考が停止してしまった。

 

「・・・えっ?」

 

「えっ?言ってませんでしたっけ?」

 

「いや、聞いていない」

 

「えっ?ロックシードに最も適正する体質じゃなかったんですか?」

 

「・・・で、その答えがインベス化の事なのか?」

 

「正確に言うなら《オーバーロード・インベス》ですよ?」

 

「そう言う問題では無い」

 

・・・はぁ。

心身ともにため息が出てしまった。

 

「分かった、もう良い。

一つ聞いておくが・・・俺の身体はインベスと同じ構造と認識で良いのか?」

 

「はい!だから植物操る事も出来ますし、ロックシードとの相性も抜群です」

 

はあ、知らないうちに人外にされていたなんて笑えない。

 

「はぁ、もうなんかどうでもいいわ。

さっさと送ってくれ」

 

「わかりました!あ、あとこれを渡しておきます」

 

そう言って、彼女は俺にスマートフォン型の端末を渡した。

 

「これは?」

 

「この端末には私に連絡出来るようになっています」

 

「成る程、話し相手には困らないだろうな、それに他に願いを伝えたいときに使えばいいのか」

 

「はい!いつでも連絡をお待ちしております!」

 

彼女の言葉を最後に俺の視界が暗くなっていく。

 

「では、三神影虎さん。貴方の人生に幸運が訪れる事をお祈りします」

 

「・・・どう、も、あり、がとう」

 

急速な眠気に口が回らなくなってきた。そして、すぐに視界が真っ暗になってしまった。

 

 



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2、二天龍と激突

ここで簡単な主人公の設定
【名前】三神影虎
【種族】人間/オーバーロード・インベス
【能力】クラック創造
【武器】戦極ドライバー※1
ロックシード※2

※1、斬月の物だけでは無く、他のアーマードライダーの物もある。
※2、乱獲ナウ


2、二天龍と激突

 

暗い視界から目を開けた時に目に飛びついてきたのは・・・

 

「なんと言う事だろうか、目の前一面が木々だらけだ」

 

要するに森の中なのだ、森に入った覚えも無いのに森の中で遭難するとは、笑えない、本当に笑えない。

念のために戦極ドライバーを装着してヒマワリ・ロックシードを着ける。

 

《ロック・オン!》

 

これで食料面は問題ない、後はここから出てどう言う世界か情報収集しなければ・・・さて、どうするか・・・あ。

 

「あの神様に聞けばいいじゃないか」

 

思い立って直ぐに端末を取り出し彼女に連絡しようとした時

 

ドゴオオオオン‼

 

「うん?何だ?」

 

巨大な爆音とともに地面が揺れる。

 

好奇心につられて爆音の方へ歩を進める。

 

 

 

これは、何と言えばいいのか。

端的に説明するなら、赤い龍と白い龍が羽の生えた人外共を巻き込んで大げんかをしていた。

 

「これまた派手にやるなぁ」

 

~♪~♪

 

ポケットからあの神様から渡された端末から音がする。

 

「・・・ん?」

 

取り出してみると、満面の笑みを浮かべる神様がフェイスフォトになっていたので誰からのものかすぐに分かった

 

「ふむ、可愛らしい着信音だ。

・・・私だ」

 

電話に応答する。

思ったとうり相手はあの神様だった。

 

『すみません!貴方を送ったのはいいんですけど、貴方がどんな世界に行ったかまでは分からなくて・・・えっと、そっちに何か特徴的なものとかあります?』

 

特徴・・・特徴ねぇ?

 

「赤い龍と白い龍が人外共を巻き込んで大げんかをしている所以外、特に変わった所はない」

 

『そういうのを特徴って言うんですよっ‼』

 

また向こうから息切れを起こしたかのようにハァハァと肩を揺らしている。

 

「それで?此処がどんな世界かわかるのか?」

 

『はぁ、はぁ、ふぇ?あぁ、はい。

どうやら其処は「ハイスクールD×D」という作品を元にした世界だそうです』

 

「は、「ハイスクールD×D」?」

 

聞いた事の無い作品だ。まぁ、前世では小説や読書なんて殆どしてなかったが。

 

『はい、あっ!それよりもその二頭の龍の喧嘩を止めてください‼』

 

「何故?事が物語どうりに進むのなら私が何かしなくても彼らが解決するだろう」

 

そうだ、この世界が「作品」を元に作られたのなら俺が介入しなくても物語どうりに事が進むだろう。

だったら、変に干渉しな方がいい。

それが俺の判断だった。

 

『違うんです・・・この大戦が物語どうりに進むとこの世界の神が死んでしまうんです』

 

「・・・それを私に阻止しろと?」

 

『勝手な事を言ってるのは分かってます!・・・でも・・・』

 

徐々に声に力がなくなっていく神様に思わずため息と脱力感が生まれた。

 

「分かった、いいだろう。但し、貸し一つだぞ」

 

『影虎さん・・・ありがとう』

 

 

 

なんでこんな事を受けてしまうのかね。自分の愚行に自己嫌悪を感じながら端末をポケットにしまう

 

さて、行くとしよう。

 

俺はヒマワリ・ロックシードを外し、メロン・ロックシードを取り出す。

 

《メロン》

 

「変身」

 

相変わらずの貴虎主任のポーズである

 

《ロック・オン!ソイヤッ!メロン・アームズ!天・下・御・免‼》

 

「はぁ、何故こんな事になったのか」

 

ため息混じりの愚痴を零しながら、未だに爆音が響く方へと向った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

さて、ついたのはいいんだが。

 

「なんて地獄絵図だ」

 

見えるものはあたり一面にある人外共を死体、そしてその人外共を蹴散らす赤と白の二天龍の姿があった。

 

「さて、彼女の言っていたこの世界の神様は・・・あぁ、あれか」

 

あの軍勢の中でスバ抜けて高い能力を持った者を一人見つける。

ドレスアーマーを身につけた金髪の美しい女性が天使達を引き連れて果敢に龍に戦いを挑んでいた。

 

「成る程、あれがこの世界の神か」

 

俺の知ってる神とはずいぶん違うなと頭の中であの幼女を思い浮かべる。

 

そうこうしている間に天使達は地上で赤い龍、悪魔と堕天使は上空で白い龍と戦っていた。

 

天使達は神の統制力があるのか、絶妙な連携で赤い龍を追い込んで行く。

 

「この調子でいくと私の出番はなさそうだな」

 

「ガァァア‼中々ヤルナ、ダガッ!」

 

赤い龍の宝玉が光を放つ

ーー瞬間、赤い龍の力が倍になった。

比喩でもなんでもなく、敏捷性も攻撃力も全てのスペックが倍加した。

 

「ほう、凄いな」

 

力が倍加になった赤い龍は先程までの苦戦を見せず圧倒的な力で天使達を薙ぎ倒していった。

 

ーガァァアっ⁈ー

ー嫌だ‼死にたくないっ‼ー

ー助けてくれーっ‼ー

 

辺り一帯が叫び声に包まれる中、神は狼狽していた。その様子を見た龍は嘲笑った様子で目を細めた。

 

「目障リダ、虫ケラ!」

 

赤い龍は呆然としている神に巨大な尻尾を振り下ろした。

 

さて、そろそろ出るか。

 

俺は虚空から幾つかのクラックを出現させ其処からヘルヘイムの蔦で赤い龍の尻尾を神に振り下ろされる寸前で縛り上げて止めた。

 

「・・・えっ?」

 

「何者ダッ‼」

 

この世界の神が驚いた様子で、赤い龍は怒りを含めた形相でこちらを見た。

・・・意味も無く逃げ出したくなる衝動に駆られるが寸前でとまる。

 

あ~あ、目の敵にされちゃった。

 

じゃあ、取り敢えずぶちのめすか。



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3、お前が殺したも同然だ

今回の主人公はやりたい事、言いたいこと好き放題に暴れます。


3、お前が殺したも同然だ

 

上手くいっていたはずだった。

今まで争い合っていた三勢力が力を合わせて二天龍に挑み、順調にいっていた・・・筈だった。

 

私と天使達の力で漸く赤龍帝と呼ばれる赤い龍を寸前まで追い込んだと思った。しかし、その矢先に赤龍帝の身体にある宝玉が輝いた・・・瞬間、赤龍帝の力が倍加した。

 

今までの私達の有利と思われていた私達の状況が一変して天使達が瞬く間になぎ倒されてしまう。

 

ーガァァアっ⁈ー

ー嫌だ‼死にたくないっ‼ー

ー助けてくれーっ‼ー

 

そんな地獄絵図を私は呆然と見ている事しか出来ず、そんな私を嘲笑うように目を細めて赤龍帝が私を見下す。

 

「目障リダ、虫ケラ‼」

 

巨大な尻尾が私の頭上から振り下ろされようとしている。

身体が強張って動けない。

 

私、こんな所で死ぬのでしょうか?

・・・多くの天使達や信徒を残して、なにも出来ないまま。

 

どうしようもない悲しみと悔しさに思わずぎゅっと目を瞑ってしまう。

 

そして、頭上の巨大な尻尾は私に振り下ろされた。

 

・・・

・・・・

・・・・・

 

何時までたってこない衝撃に不信に思った私わ少しずつ目を開ける。

 

「・・・えっ?」

 

尻尾は私の寸前で虚空から伸びる植物に止められていた。

 

「何者ダッ⁈」

 

赤龍の向ける敵意の目を辿り、私も龍の見る方を見る。

 

全身を包むフルアーマーに緑色の鎧と盾、そして腰には剣を携えた騎士が立っていた。

 

目視して始めて判る圧倒的な存在感、

一歩進むだけでも震える空気。

 

「・・・」

 

騎士が一瞬私を見た後、龍を見据えた

 

身体が震え出した、たった一瞬見られただけで全身に恐怖心が纏わりついた。

 

次元が違いすぎる

 

きっとあの男(?)は私やこの龍より遥かに凌駕している。

 

勝てる訳が無い

 

赤龍もその事に気付いたのか気付いていないのか赤龍は今までに無いほどの怒りを孕んだ目で騎士を睨んでいた。

 

「何ヲ見テヤガルッ⁈ニンゲンガッ‼」

 

今まで以上に怒りだした赤龍が蔦が巻きついていた尻尾を無理矢理振りほどき騎士に振るう。

 

ドォォォオオン‼

 

辺りに砂塵が舞う、たった一撃でも世界が震える程の尻尾の鞭を叩きつけられた人間は一瞬で肉片になっただろう・・・ただの人間であれば

 

「グァッ⁈ナニッ⁈」

 

あの白い騎士はそんな赤龍の尻尾を盾を使う事なく"掴んだ"のだ。

 

「・・・・」

 

「なっ、グォッ⁉」

 

白い騎士はそのまま赤龍の尻尾を引っ張った、引っ張られた赤龍は軽々と引き寄せられ・・・

 

「・・・ハァッ‼」

 

「ガアァァア⁈」

 

同時に白い騎士の放つパンチ一撃で盛大に吹っ飛んでいった。

 

「人間如キガ‼粋ガルナッ‼」

 

体制を立て直した赤龍の口から炎か迸る。

 

何千何万もの天使、堕天使、悪魔を葬ってきた必殺のブレスが白い騎士き襲いかかる。

 

「逃げてっ‼」と私が叫ぶ前に口から放たれるブレスは白い騎士を包んだ。

 

「クククッ、コレデハ流石ニ生キテハイマイ」

 

赤龍は炎を睨めながら言う。

しかし、私は気付いていた、赤龍の声が震えていた事、そして、あの炎の中から放たれるあの圧倒的な威圧感が未だに消えていなかった事を・・・

 

「・・・ハッ‼」

 

それは一瞬の出来事だった、炎の中から一閃よぎると同時に彼の身体を包んでいた炎が雲散したのだ。

 

炎を葬った彼の手にはさっきまで腰に掛けてあった一振りの剣が握られていた。

 

その光景を見た赤龍は今までの虚勢が剥がれたかのように恐怖の声をあげる。

 

「ッ⁈コイツハマズイ‼」

 

赤龍は羽を広げ此処から大空に逃げようとするが・・・

 

「グウゥゥウ⁉何ダッ⁈」

 

途端に痛みからくる苦悶の声をあげたかと思うと自身の羽を見た。

 

「ナン・・・ダト?」

 

「なっ⁉」

 

赤龍の目に導かれるように私も赤龍の羽に目を向ける。

 

ーー赤龍の羽が見るも無惨に切り刻まれていた。

 

さっきの炎を薙ぎ払った一閃は自身に纏う炎だけではなく、あの赤龍の羽も切り裂いたのだと、私と恐らく赤龍も気付かされた。

 

そして、それだけではなかった。

 

「⁈ッ・・・グゥッ⁈」

 

突然赤龍が力が抜けたかの様に倒れ込んだ。見ると、手足にも裂かれていたのだ。

 

白い騎士は赤龍にはもう用は無いと言う様に空を飛ぶ白龍に目を向ける。

 

瞬間ーー空に羽ばたく白龍が全身を切り裂かれ地上に墜ちた。

 

騎士の血に塗れた盾を見て私は漸く気付いた・・・あの騎士は白龍に向かって盾を投げつける"だけ"であの龍を落とせるのだ。

 

「これがあの神が恐れた二天龍の力・・・弱すぎる」

 

ーー弱すぎる。

 

この言葉はあの龍だけではなく私の心にも深く突き刺さる。

 

「もう此処には用は無い、後はお前達の好きにするがいい」

 

そう一方的にいい残して騎士は私に背を向けた。

 

「・・・どうしてですか」

 

「なに?」

 

「どうしてもっと早く現れてくれなかったんですかっ‼」

 

自分がどれだけ理不尽で自分勝手な事を言っているのかは分かっている。

  

ーーーでも、叫ばずにはいられなかった。

 

「貴方がもっと早く来てくれれば彼らは死なずに済んだっ‼」

 

一度出て来た理不尽の言葉はまるで湧き出た水のように次々と言葉が出てしまう。

 

「彼らも死なずに済んだかもーー」

 

「・・・言いたい事はそれだけか?」

 

彼のたった一言の言葉で私の激情は冷水を浴びせられたかのように冷めていった。

 

「最初に言って置いてやるが、私はお前達を助けようなどと考えた訳ではない」

 

そうだ、そもそも彼が私達を助けに来た訳ではない。

だったら・・・なんの為に彼は此処に来て私達の脅威である二天龍を薙ぎ倒し私達を救ったのか。

 

「そして、もう一つ言うのなら・・・お前の仲間達が此処で死体に慣れ果てたのはお前の責任だ」

 

「・・・どういうこと、ですか?」

 

自分の声が震えている事が嫌でもわかってしまう。言って欲しくない、言わないで欲しい、お願いだから言わないで・・・必死に心で祈り続けるのにもかかわらず、彼は淡々とした口調で言葉を続けた。

 

「彼らが死んだのはお前が弱いからだ」

 

「・・・・めて」

 

「あの赤龍の力が倍加したとき、お前は恐怖のあまり統制を捨て、結果彼らは自身の目的を失い同時に戦意も喪った」

 

「・・・やめて」

 

「彼らは自分がどうすればいいのか分からなくなり最後はあんな様になったわけだ」

 

「・・・やめて!」

 

「結果、彼らは自身を見失い、一途に信じたお前にも見捨てられた訳だ」

 

「やめてッ‼」

 

「足元を見てみろ」

 

彼に促されて言われたとうりにする。

 

「ーーーッ⁈」

 

思わず口を手で抑えてしまった。

そこにあるのは地面一面を覆うように血に濡れて、天使達の死体と羽が転がっていた。

 

「い、い、イヤアアアアアアっ‼」

 

途端に恐怖心と後悔と罪悪感が声にならない声になって私の口から出てしまった。

 

「彼らは皆お前に見捨てられた故にこの場で殺された・・・お前が殺したも同然だ」

 

残酷にそして淡々となんの感情を感じさせない口調で私の罪を一つ一つ宣告するように言った。

 

「さて、後はお前がどうするかだ」

 

話は終わりだと言わんばかりに彼は私に背を向け歩を進めた。

 

「・・・わたしにどうしろっていうんですか?」

 

自分でも驚く程の精気の無い声が私の口から出てくる。

 

私の問いかけに彼は背を向けたまま言葉を紡ぐ。

 

「自分で決めろ。死んでいった者の意思を継ぐのも、見て見ぬ振りをするのも残された者の権利だ」

 

そう言って彼は空間の裂け目を入り込み姿を消した。

 

ーー私はどうすればいいんだろう。

自分の目的が見えなくなってしまった私は、周りを・・・天使達の亡骸を見回す。

 

どうすれば彼らに対して償えるのか、どうすれば彼らは報われるのか、

今までの鮮明に見えていた筈の物が一瞬で見えなくなってしまった。

 

「・・・私は一体、どうすれば」

 

私のそんなつぶやきは誰の耳にも届かないままバラバラになって霧散した。

 

 

 




やりたい事だけやって、言いたいこと言ってさっさと帰る主人公。やっぱ悪者っぽく見えてしまうかな。


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4、あれから長い年月⇦便利な言い回しである

4、あれから長い年月

実に便利な言葉である。

 

あの二天龍とかいう白い龍と赤い龍を一方的に叩きのめした挙句、偉そうに神様に説教という皮を被った言葉責めを浴びせてから長い年月が過ぎ去った今、俺はなにをしているかというと・・・

 

「何故、私はこんなに暑い夏の最中にお前と釣りなどしているのだ?

・・・アザゼル?」

 

「随分と遅い疑問だな、もう始めて三時間は経っているぞ?」

 

「・・・確かに。

どうやら私はこの暑さで頭がやられたらしい・・・帰っていいか?」

 

「まあ、そう言うなって。

こんなに釣れるのも珍しいんだ、もう少し付き合えよ」

 

俺は今現在、堕天使の総督(より分かりやすく言うのならば親玉)であるアザゼルと一緒に夜中に海辺で釣りをしている。

これが夜だからまだ少なからず風が吹くからいいが昼だったらこいつを埋めて帰っていただろう。

 

「なあ、お前いま何かすげぇ不穏なこと考えなかったか?」

 

「いや、もしお前が私を呼んだのが昼だったらお前を埋めて帰れたのにな、と考えていただけだ」

 

「あっぶねぇ!一歩間違えれば今日が俺の命日ってことかよっ⁉」

 

慌てふためく堕天使の肩を叩きながら俺は安心させるように言い聞かせる。

 

「なに、そう深刻に捉えることはない"理由の無い悪意"なんて、この世には幾らでも転がっている」

 

「いやいやいや!お前のはどう見ても"理由のある悪意"だろうが!」

 

どうやらうまくいかなかったらしい、

さっきよりも騒ぎ出した。

面倒になったので俺はぶっきらぼうにち言い放つ。

 

「五月蝿い黙れ。魚が逃げるだろうが」

 

「えっ、なに?これ俺が悪いの?

ていうかお前さっきまで釣りには消極的だったろうが‼」

 

「そんなことはない。だが、敢えて言うなら・・・お前の交友関係内では誰もお前の釣りにすら付き合ってくれないのだな・・・と、お前に対して哀れみの感情を持っている」

 

「だから嫌々付き合ってやったてか⁈

それじゃあ何か俺が友達少ない寂しい奴みたいじゃねぇか‼」

 

アザゼルの必死の叫びに俺は首を傾ける。

 

「違うのか?」

 

「違う・・・とは言い切れねぇけど!

なんかお前に言われるとムカつくわ‼

大体、お前は友達多いのかよ?」

 

意趣返しのつもりなのだろう、疑いの眼差しで俺に質問してきた。

 

「少ないな、それはもう」

 

あっさり肯定されたのが意外だったのかアザゼルはキョトンとした表情してがすぐに冷静になり手元の釣竿に意識を向ける。

 

「・・・いや、なんかごめん」

 

「気にするな」

 

暫く微妙な無言が続く中、俺は少し竿の先をぼうっと見てみる。

 

「・・・影虎」

 

「・・・・んん?」

 

だからなのか、背後から呼ばれた声に気づくのに少し時間が掛かった。

 

「どうした?オーフィス」

 

私の言葉にオーフィスは数本の串を差し出して小さな口を動かす。

 

「お腹へった」

 

焚き火の方を見ると、先程まで身が残っていた魚が今や骨のみの死に体に早変わりしていた。

 

釣った魚の入ったバケツを覗き込み、残る在庫を確認する。

在庫に余裕があると確認した俺はオーフィスに向き釣竿を差し出す。

 

「焼いてやるから釣竿持っていろ」

 

「ん」

 

オーフィスに釣竿を持たせ、バケツから一匹取り出し口から尻尾に串を刺す、この作業をあと数回。

そして、串刺し状態の魚に向かって塩を刷り込み焚き火の火が当たるように角度を調節して串を地面に刺す。

 

そして待つこと数分。

 

 

 

 

「オーフィス、出来たぞ」

 

「ん、ありがと」

 

簡単な礼を述べた彼女は俺に釣竿を手渡し焚き火に向かって、正確には焚き火付近の魚に向かって歩いて行った。

 

その一連の様子を見ていたアザゼルがため息と苦笑い混じりに言葉を発した

 

「まさか、暫く見なかったオーフィスがお前の所に居るとはな。

お前ら、一体どう言う仲だよ?」

 

そう言えば、こいつの前でオーフィスが現れたのは初めてだったな。

 

どういう仲か、という質問に対する答えをどう説明したものか考えて言葉を選ぶ。

 

「・・・言い方や答え方は様々だが、強いていうのであれば・・・オーフィスとは一つのメロンパンを分け合った仲だ」

 

「やべぇよ、ますますわかんねぇよ」

 

俺の説明が分かりにくかったのかとうとう頭を抱え出した。

 

「ふむ、私はできるだけ分るように説明したつもりなんだがな・・・」

 

「今ので分かるわけねぇだろ」

 

間髪入れない返答に少し困らされた俺は黙り込む。

 

そんな空気の中、その沈黙を破る軽快な音楽が影虎の懐から流れ出した。

 

~♪~♪

 

「・・・む?」

 

三神影虎の携帯電話である。

 

画面を見て誰からの連絡か確認する。

もし、非通知であれば無視るつもりなのだが、残念なのかそうでもないのか相手は影虎をこの世界に送ったあの幼女だった。

 

「・・・ああ、私だ」

 

『あぁ、良かった繋がった~。

お久しぶりです影虎さん』

 

心底安心したような声にすこし口角を歪めてしまいそうになるが、すぐに戻す。

 

「あぁ久しぶりだな。

それで、何の用だ?」

 

『うぅ、相変わらず冷たいですねぇ。

もう何百年ぶりなんですから、少しは・・・』

 

「さっさと用件を言え」

 

『はぁ、少しはもっとこう・・・友好的にしてくれてもいいのに』

 

「切るぞ」

 

『あー!分かりましたよ、話します!話しますから切らないで下さい!』

 

「最初からそうしろ」

 

『う~、実はですね、あなたの居るその世界に別の転生者が送り込まれました』 

 

思わず釣竿を落としそうになる。

えっ?なに?君ら神様はそんな頻繁にやらかしてるの?

 

「・・・お前の仕業か?」

 

俺の質問に向こう側は慌てたように返答してきた。

 

『いえいえ!そんなまさか!

その転生者を送ったのは私とは別の神です。なんでも・・・暇潰しのつもりで転生させたと』

 

「はぁ、全くお前たちはいいご身分だな?そんなことをしても許されるのか?」

 

『そんなわけありません。基本的に私達は人間個人に影響を及ぼしてはならないと決められているんです』

 

「はぁ・・・まぁいい。

それで?それを知った上で私に何をしろと?」

 

俺の苛立ちを含めた声に神はバツの悪そうな言い方で返してきた。

 

『その・・・その転生者を此方に戻してきてほしいんです』

 

「・・・つまり?」

 

『簡単に言うのであれば、殺してほしいんです』

 

彼女の言葉に内心怪訝になる。

 

「何故だ?そいつは定められた物ではないだろう?」

 

『えぇ、まあ、本来はそうなんですけど。その、件の転生者の人格に問題がありまして・・・』

 

なるほど、そういうことか。

 

「分かった、いいだろう、そいつは此方で始末してやる。その代わり私の頼みを一つ聞け」

 

『頼み?頼みってなんですか?』

 

「それは追い追い説明する、ではな」

 

『あ、はい、よろしくお願いします』

 

通話を切ると今度はメールが送られてくる、見てみるとそれは今現在その転生者のいる座標と今後先の行方が書かれていた。

 

「・・・行くぞ、オーフィス」

 

「ん、分かった」

 

俺がオーフィスを呼ぶと、両手に魚を持ったオーフィスが此方に駆け寄ってくる。

 

「なんだ?また面倒事ってやつか?」

 

「はぁ、まあ、そういうことだ。

悪いがアザゼル、私は失礼する」

 

「また今度、アザゼル」

 

「あぁ、じゃあな影虎、オーフィス」

 

俺はクラックを出現させオーフィスを連れて中に入った。

 

 

 



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5、"公爵"

5、"公爵"

 

転生者がいる座標を確認して、背後にクラックを出現させる。

そこは、あたり一体が森で転生者は迷ってるらしく、視線を彼方此方にキョロキョロさせていた。

 

「オーフィス、お前はここで待ってろ」

 

「分かった、気をつけて」

 

オーフィスの言葉に頷き、戦極ドライバーを装着してロックシードを取り出す。今回は少し趣向を変えてみるとしよう。

 

《バナナ!》

 

「変身」

 

《ロックオン!》

 

今回は何時もの法螺貝では無く、西洋風のファンファーレが鳴り響く。

俺はそのままカッティングブレードを振り下ろす。

 

《カモンッ!バナナアームズ!

ナイト・オブ・ス~ピアー‼》

 

「ふむ、悪くない」

 

新しいアーマードライダーの着心地を確認した俺はそのままクラックを通り抜け転生者を蹴飛ばす。

 

「ぐァッ⁈・・・なんだっ⁉

なっ、仮面ライダーデュークだと⁈」

 

そう、今の俺の姿はデュークのアンダースーツにバナナアームズを被った状態だった、まあつまり戦極ドライバーでデュークを再現して見たのだ。

 

ようするに、アーマードライダーデューク・バナナアームズといった所か。

 

「・・・ハアッ!」

 

特に何か言う事もないのでそのまま転生者に向かってバナスピアー突き刺す・・・が、

 

「ーーっ⁈、投影開始!」

 

転生者の手に突然、剣が出現され槍の突きを弾かれた。

 

「ほう、それは確か・・・無限の剣製だったか。」

 

この世界に飛ばされる前にそんな能力を願った人間がいると聞いた事がある。たしか・・・

 

「様々な宝具の剣を投影する。だったか?」

 

俺の言葉に転生者はその端正な顔を醜く歪めて、勿体ぶったように口を動かした。

 

「へへっ、それだけじゃねえよ。

この能力はな、投影する剣をオリジナルと同等のスペックで作り出せるんだぜ」

 

なるほど、こいつを送った神の仕業かはたまたこいつが願った物なのか。

だが・・・

 

「そうか。だがその剣、皹がいってるようだが?」

 

「なにっ⁈」

 

俺の言葉に驚くと同時に転生者は反射的に自身の作り出した剣を確認した。そこには確かに皹があった。

 

「あ、ありえねぇよ、こ、これはあのエクスカリバーと同等のスペックと強度を誇ってるんだぞ⁈」

 

さっきまでの余裕は何処へやら見苦しい程慌てふためいた転生者に俺は無慈悲に槍を突き立てる。

 

「ーーッ、くゥッ⁈」

 

転生者は間一髪の所で剣で槍を捌く、ただし、また剣に皹が入った。

が、突きが防がれると同時に瞬時に横腹へ蹴りを放つ。

 

「ガァッ‼・・・うぐっ!」

 

それは流石に予想出来なかったのか蹴りを受けた転生者は木々を薙ぎ倒して吹っ飛んで行った。

 

「やったか?」

 

こういう台詞を使う時は大抵やってない。今回もその例に漏れずボロ雑巾同然の転生者はノロノロと立ち上がった

 

「クッソ、これでも食らいやがれッ‼」

 

「・・・む?」

 

転生者は自身に向かって皹の入った剣を投げつけてきた。

だが、剣を投げつけた転生者の顔が一層醜く歪める所を見逃す程、俺の目も節穴でもなかった。

 

「ーー壊れた幻想」

 

途端に自分の眼前まで迫った剣が爆発した。

 

 

 

 

 

 

 

「くくっくくく、アッハハハハハハハハ・・・ざまぁみろッ‼」

 

爆風に塗れた目の前を見て転生者は高笑いを抑えられなかった。

 

自分は神によって殺され、神によって生き返った、本来人間の手では余る能力を身につけて。

 

神は暇潰しで自分を殺したと言っていた、だが、それでも自分は選ばれた者だ、例えどんな理由があったとしてもそれだけは確実だと思っていた。

 

自分が選ばれた主人公だと信じて疑わなかったのと同じように、自身の勝利も疑わなかった。

 

故に・・・

 

「この程度か、身構えて損した」

 

爆風の中から声に心の奥底から絶望した。

 

「な、んで?・・・なんで、てめぇ・・・生きてやがるッ⁈」

 

「うん?わからないか?

お前のその力では私のアーマーに傷一つつけられなかったと言うわけだ。」

 

「あぁ、あ、あぁぁぁぁあああっ‼」

 

この男の精神は壊れた。

圧倒的な力の差と絶望が彼の精神を粉々にしたのだ。

 

転生者の背後に大量の剣が精製される。精神が壊れてしまいまともな判断すら出来なくなった転生者は自身の魔力量を考えずに大量の魔力を消費してこれだけの剣を作り出したのだ。

 

「強大な力を持っていたとしても所詮は精神が未熟な人間・・・この程度で心が壊れたか」

 

黄色の騎士はベルトのカッティングブレードを一度振り下ろした。

 

《カモンッ‼バナナ・スカッシュ‼》

 

「あ、アアアアアアアアアアアアア‼」

 

転生者によって放たれた無数の剣は真っ直ぐに黄色の甲冑を纏う騎士に向かっていく。

 

 

 

「・・・ハアッ!」

 

しかし、騎士の槍にロックシードのエネルギーを纏っめ作られた巨大な槍が

転生者の矢の如く打ち出された無数の剣を一瞬で粉々にした。

 

「ーーーーーっ、あ、ああ」

 

自身の作り出した無数の剣は騎士の一振りで粉々にされ、最早、戦意喪失を通り越して精神が完全に壊れてしまった。

 

「さあ、転生者、覚悟を決めろ」

 

そんな壊れた人形とかした転生者にとどめの槍を突き刺そうと槍を構えたそのーーーー刹那

 

「・・・む?」

 

騎士は首を傾けると同時に背後から何者かによって槍が投擲された。

その槍は先程まで騎士の頭があった所を通り過ぎーーー

 

「ーーっガァッ⁉」

 

ーーー転生者を串刺しにした。

 

「・・・」

 

騎士は何も話さず静かに槍を引き抜く。すると、槍は一人でに動き投擲された物を巻き戻すように通った所を引き返した。

 

「お久しぶりですね・・・斬月」

 

斬月と呼ばれた騎士は振り返り槍の持ち主の姿を確認する。

 

艶のある黒髪はまるで川のように背中に流し、万人の女性が羨むような美しい身体つき、そして意思の強い黒曜石のような瞳。10人に10人が口を揃えて「美しい」と口にするであろう絶世の美女がそこにいた。

 

「またお前か・・・曹操」

 

ただ一人、うんざりとしたように口にする騎士を除いて。

 

 

 

 

 

 

 

 




ACシリーズでデュークにバナナ・アームズを装着したら、思った以上にかっこよかったので出してみました。
補足
曹操が影虎を斬月と呼んだのは、影虎と曹操がはじめてあったとき影虎は自身をアーマードライダー斬月と名乗っていたからです。


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6、貴方が欲しい

 

 

転生者の屍を傍に二人の人間が互いに向き合っていた。

 

片方は全身を包む鎧にランス(槍)を持つ男、三神影虎。

そしてもう一方は槍を携え、黒髪の女性、曹操。

 

「そんなに目に見えて嫌な態度を取られると私でも傷つきますよ、斬月、折角会いに来たというのに」

 

黒髪の女性、曹操は影虎の脱力した不満を笑顔で受け流す。

 

「会いに来た?殺しに来たの間違いじゃないのか?さっきも殺されかけた」

 

対して影虎の方は仮面の外側からでも分かるぐらい面倒臭そうにため息を吐いた。

 

「あの程度で死ぬ程、貴方は甘くないと思っていますが?」

 

「・・・何故、この場所が?」

 

 

 

クラックを通して来たので痕跡は残らない筈なんだがな。

 

俺の問いに曹操は手品を披露する子供のような笑みを垣間見せ説明する。

 

「そこで死んでいる男は、我々『禍の団(カオスブリケード)』の一員です」

 

「ほう、この雑魚がか?」

 

「雑魚・・・てすか」

 

俺の言葉の何が面白かったのか、曹操は肩を震わせてクスクスと笑った。

 

「・・・うん?」

 

「あぁ、いえ、気を悪くなさらないで下さい。ただ、その男は禍の団でもかなりの勝率を誇っていたもので・・・」

 

「対界兵器を数にもの言わせて大量に打ち出す。そんな簡単な戦術なのにか?」

 

「えぇ、あんな大量の剣を一太刀で全て粉々にしたのは貴方が初めてです」

 

それは光栄な事で。

 

「しかし、解せない。

それ程の実力者(仮)を何故わざわざ殺すような事をした?」

 

俺の疑問に彼女は少し思案に耽った顔を見せると、俺に言葉を選ぶように口と喉を震わせた。

 

「その男が今生きて帰る事は"私にとって"都合が悪かったのです」

 

「都合?」

 

一点の言葉を鸚鵡返しに聞くと彼女は肯定を表し言葉を続ける。

 

「えぇ、彼は私達とは別の目的があったようでその一つが禍の団を乗っ取る計画だったそうです」

 

へぇ、こんなやつがねぇ。

 

俺は死に体となった転生者を一瞥して考える。

 

この男は禍の団を乗っ取って何をするつもりなのか?三大勢力を本格的に叩き潰し新たな世界を創るという禍の団の根本思想を実現しようとしたのか?

そこに一体なんの意味と思惑があったのか?そもそも、この転生者は本当にそんな事に興味はあったのか?

 

・・・やめだ、やめだ。

 

俺は様々に連なる思考を強制的に終了させる。まず、そんな事を考えて何になるこの男がどんな計画を立ててどんな思惑があったなんて俺には関係のない事だ、考えても分からない事を考えてどうする。

 

「それに・・・」

 

「それに?」

 

もう一つ理由があったようで彼女は言葉を・・・少々躊躇いをもったように続けた。

 

「・・・私を見る目付きも不愉快でしたし」

 

・・・・・・・・おい、おい、おい、おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおおい

 

「それ、完全な私情じゃないのか?

いや、待てよー"私にとって"都合が悪かったーまさか?こいつを殺したのって・・・」

 

「はい、私の独断です」

 

いや、本当にこいつなにやってんの?

 

「大丈夫ですって、私が来た時にはもう殺されてたって言えば良いですし」

 

いや、こっちは大丈夫じゃねぇし。

うん?そういえば俺はこいつを殺しに来たんだったよな?

・・・なら問題ないか。

 

「まぁ、いい。

それで?お前がここに来た目的はなんだ?残念だが、オーフィスはここにはいないぞ?」

 

以前この女が俺の前に現れた時の目的は俺と行動を共にしていたオーフィスを奪還する事が目的だった・・・と、彼女は言っていた。

だが、今回はオーフィスは不在だそれはさっきまで隠れて俺たちを見ていたなら分かった筈だ・・・にも関わらず、俺の前に姿を現した理由とは。

 

「オーフィスは現在、私にとっては最重要ではありません。私はそれよりもっと優先する事がある。」

 

「なんだと?」

 

「貴方ですよ、斬月・・・いえ、三神影虎」

 

「・・・」

 

一瞬心臓が止まりかけた。

 

色々疑問がある、なんで俺の名前知ってんの?なんで無限放ったらかしなの?

 

そんな疑問を知ってるのか知らないのか彼女は得意げな顔で説明する。

 

「貴方は人間です、にも関わらず圧倒的な力を持ち観察眼も優れており知力も高い、これだけで私達、英雄派には喉から手が出る程欲しい人材です」

 

騙して御免なさい俺、人間じゃありませんオーバーロード・インベスです。

 

喉に出かかった言葉を飲み込む。

そんな俺の様子に気付いてないのか、彼女は言葉を続ける。

 

「それに、貴方を引き込めばオーフィスも自ずと戻って来るでしょう」

 

一体どう考えたらそう言う結論に至るのか、聞きたくなったがやめて置いた。

 

「それになにより・・・」

 

「なにより?」

 

俺が聞き返すと彼女は一瞬、目を伏せ、頬を桜色に染める。

 

「私は貴方が欲しい」

 

「・・・・・」

 

うん?いや、人材的な意味だよね?

なんでこんな高校時代の校舎裏の告白イベントみたいな空気なの?

いや、されたことないから分らないけどさ・・・

 

「・・・因みに、私が頷くと思ってるのか?」

 

念のために聞いておく、とくに他意はない。

 

「残念ですが、そうは思えないません」

 

彼女のあっさりとした言葉に目を丸くするが仮面の中なのでばれないだろうとポーカーフェース(仮)で振る舞う。

 

「ほう、だったらどうする?」

 

「こういう手は望みませんが、実力行使です」

 

俺の言葉に曹操は槍の矛先をこちらに向け宣言した。

 

彼女の言葉に俺もつい仮面の中で口角を釣り上げる。

 

「ほう、あの時私に手も足も出ずに10秒も経たぬ内に地面にひれ伏した者の言葉には思えないな」

 

「あの時の私とは違います、人は進化するんですよ・・・影虎」

 

先程までの柔和な声とは正反対の鋭い言葉で俺の言葉に答える。

 

だが、彼女は肝心な事を忘れている。

 

「確かに人間は進化を重ねる存在だ・・・しかし、同時に退化も重ねる存在だ」

 

「私は違う」

 

「試してみるとしよう」

 

彼女が槍を構えると同時に俺もバナスピアーを構える。

 

「・・・行きます‼」

 

「来い・・・」

 

神をも殺す槍を携えた英雄の子孫が俊足の速さで俺に突撃した。




相変わらず外側と内心の口調が一致しない主人公


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7、私の物になれ

今回は少し長めになっています。



7、私の物になれ

 

広い森の中で黒髪の美女、曹操が手に持つ必殺の槍撃を黄色の騎士、影虎に繰り出す。

 

「やあっ‼・・・ハァッ‼」

 

「・・・・」

 

対して影虎は口を動かさず手に持つランスで槍撃を捌く。

 

「どう、しました⁈守って、ばかりじゃ!いつまでたっても・・・終わりませんよッ‼」

 

槍撃を繰り出しながら言う曹操に影虎は漸く口を開いた。

 

「そうか・・・なら、私も攻撃に移るとしよう」

 

瞬間、曹操の繰り出す連続の槍撃が一瞬で弾かれ、同時に影虎からの掌底が放たれた。

 

「ーーくッ⁈」

 

防ぐ手立てが無かった曹操はたった一撃の掌底で遥か後方へ飛ばされ、思わず膝を着く・・・が。

 

「セイッ!」

 

「ーーッ⁈」

 

態々相手の回復を待つことも無く今度はランスによる追撃が曹操を襲った。

 

「ーーハッ‼」

 

が、その槍撃は間一髪の所で回避された。

 

「くっ、以前よりも確実に強くなっていますね」

 

「そっちは、大して変わっていないように見えるが?」

 

影虎の言葉を聞いた曹操はキッと影虎を睨み槍を構える。

 

「まあいい。どの程度変われたか試してやろう」

 

言葉と同時に影虎は戦極ドライバーのカッティングブレードを二回振り下ろす。

 

《カモンッ‼バナナ、オーレッ‼》

 

「ハァッ‼」

 

影虎がバナスピアーを地面に突き立てた途端、曹操を囲むように無数の刃が地面から突き出された。

 

「なっ⁈」

 

「さぁ、お前はどの程度変われた?」

 

《カモンッ‼バナナ、スカッシュ‼》

 

ロックシードのエネルギーによって巨大化した必殺の槍が自身で生み出した無数の刃ごと曹操を薙ぎ払う。

 

「やったか?」

 

以前にも記したことだが、この台詞が出てきた場合は大抵やってない、無論今回もその例に漏れず・・・

 

「ーー禁手」

 

「うん?」

 

「極夜なる天輪聖王の輝廻槍‼」

 

やってない。

 

「象宝(ハッテイラタナ)、私の持つ七つの能力の一つで空を飛ぶ事が出来ます」

 

大きな球体に乗った曹操が地上の影虎を見下ろし彼に自身の能力の一端説明する

 

「ほう、確かに進歩はしたらしいな。だが、空なら私の攻撃が届かないと思ったら大間違いだ」

 

影虎はもう一つ、別のロックシードを取り出した。

 

《ブドウ‼》

 

「なっ⁉まだ、別の姿があると言うのですか⁈」

 

《ロックオン!カモンッ‼

ブドウアームズ‼

龍・砲!ハッハッハッ‼》

 

バナナアームズが消え去り、代わりにブドウが頭上から出現し、影虎の頭から装着する。

 

仮面ライダーデューク ブドウアームズの完成である。

 

 

 

 

 

 

「なんというか、毒々しい色の組み合わせですね」

 

曹操の言葉に思わず俺は苦笑してしまった。

 

「まあ、本来ベースとなる物が違うからな」

 

本来は龍玄との融合を想定しているからな、合わないのは仕方ない。

 

「ベース?」

 

「何でもないこっちの話だ」

 

ブドウ龍砲を構え弾丸を装填する。

そして、射出。

 

「ーーハッ!」

 

辺りに大きな銃声を響かせ、弾丸が空に浮かぶ曹操に音速の速さで突撃する・・・が

 

「馬宝(アッサラタナ)」

 

曹操は唐突に消え弾丸は空を切った。

 

「なに?ーーむ」

 

後ろから闘気を感じ取り即座にブドウ龍砲を構えると、同時に目の前に槍の矛先が迫っていた。

 

「おぉっと!」

 

間一髪の所で槍の軌道をずらす。

同時に掌底を放つがまたしても曹操はその場から姿を消した。

 

「なるほど、転移系統の能力か」

 

「えぇ、馬宝(アッサラタナ)は任意の物体を転移させることが出来ます」

 

思わず舌打ちしそうになる、これでは"生け捕り"が難しくなってしまう。

 

「仕方ないか」

 

ドライバーからブドウロックシードを取り出し、別のロックシードを取り出した。

 

《マツボックリ!》

 

《ロックオン!カモンッ‼マツボックリアームズ‼一撃!インザシャドウ‼》

 

「また、別の姿に・・・」

 

「さあいくぞ?ここからは私のステージだ」

 

影松を構え相手の出方を伺う。

 

「私相手に槍で挑もうなど、なめられたものですね」

 

失笑を含めた言葉を残し曹操は転移で姿を消した。

 

「・・・・ハッ!」

 

背後の闘気に反応して槍を突く・・・・が

 

「残念、ブラフです」

 

再び背後に回られ曹操は俺に槍を突き立てる。

 

「残念、残像だ」

 

「ーーなっ⁈」

 

《カモンッ‼マツボックリ・スカッシュ‼》

 

瞬時に曹操の背後に回った俺はロックシードのエネルギーを溜め込んだ影松を曹操に振るう。

 

「・・・ハァッ‼」

 

「キャアアアアア⁉」

 

俺の一撃は曹操ごと木々を薙ぎ倒し辺り一体を更地に変えた。

 

・・・殺したか?

 

死なない程度に手加減はしたのだが・・・目の前の惨劇にちょっとした不安に駆られた。

 

「おい!生きてるか?

返事をしろ!曹操!」

 

「生きてますよ」

 

声のする方に目を向けると倒れ伏した曹操が仰向けの状態で手を振った。

ため息が出ると同時に変身を解除した。

 

少し早足で曹操の元に向かい傷を確認する。衣類が無残に引き裂かれていたので、目のやり場に困ったが、気にしていられないのでそのまま曹操の身体を見回す。

 

「・・・あ、あの、そんなに舐め回すように見られると恥ずかしいのですが」

 

「・・・」

 

煩い黙れ、と喉まででかかった言葉を無理やり押し込めた。

 

 

ある程度見回し特に大きな怪我がないと確認した俺はクラックを開き、そこから適当な布を引っ張り出して曹操に被せる。

 

「あの一撃を受けて掠り傷程度ですむとは・・・お前はしぶとい人間だな」

 

「よく言いますよ、手加減した癖に」

 

「気づいていたのか?」

 

「何となく分かります。あの白い姿であれば、私ではとても相手にはならなかったでしょう。」

 

少し、拗ねたような言い方に引っかかりを感じたが、俺はなにも言わなかった。

 

暫く経つと、曹操はさっきまでの拗ねたような態度を戻し俺に質問をぶつけてきた。

 

「それで?何の為に手加減したんですか?・・・まるで、私に死なれたら困るように見えますが」

 

「そのとうりだ。正直な話、お前に死なれるのは私にとって損害でしかなくてな」

 

「何が言いたいのですか?」

 

俺の言葉の真意が分からないといった様子で曹操が俺に簡潔に言うように要求してきた。

だから曹操の要求どうりに出来るだけ簡潔に分かりやすく言葉にした。

 

「曹操」

 

「は、はい」

 

俺の纏う雰囲気が変わったことに気づいたのか曹操はやや圧倒されたように

俺の言葉をまっていた。そんな曹操の様子を確認した俺は口を開く

 

「私の物になれ」

 

言ってから考える

 

あれ?この言い方ってもしかしたらとんでもない誤解を招くのではないだろうか?

 

俺がその事に気づいた時にはすでに遅かったらしい。

 

「なっ、な、なーーー」

 

曹操は顔を真っ赤に染めて口をパクパクと魚のように開閉させていた。

 

さて、どうやって弁明しようか。

 

今すぐヘルヘイムの森に逃げ出したい衝動に駆られるが、何とか抑え込み曹操になんて説明しようかと思考に耽った。

 

 

 

 

 

木々が無残に薙ぎ倒された森の中で三神影虎は目の前の女性、曹操に先程の自身の言葉の意味を弁明していた。

 

「つまり、私に貴方の下に仕えろという意味で、その・・・決して貴方の女になれという意味ではないと」

 

後半は少し顔を紅潮させて言う曹操に対して影虎はややうんざりした顔で彼女の言葉を肯定する。

 

「あぁ、そのとうりだ。

・・・誤解を招く言い方をしたのは私だが、そこまで取り乱すことか?」

 

影虎が発した言葉に曹操は一瞬、影虎を睨むが直ぐに呆れたようにため息を吐いた。

 

「あぁ、そうですね。貴方はそう言う人なんですね」

 

「どういう意味だ?」

 

何でもないです、とプイッとそっぽを向いた曹操を影虎は疑念の目で見ると曹操は眼球だけを動かして影虎に質問を重ねた。

 

「それで?どういう心境の変化で私を引き込もうと?」

 

今まで見向きもしなかった癖にと内心で悪態をつく。

そんな彼女の内心を知ってか知らずか影虎は曹操の質問に答えた。

 

「まあ、そうだな、強いて言うなら君は私の研究の実験台だ」

 

「実験台?」

 

影虎の不穏極まりない言葉に曹操は鸚鵡返しに聞く。

 

「そうだ、実験台だ・・・こいつのな」

 

影虎は自分の戦極ドライバーをトントンと叩いて言った。

曹操は首を傾け影虎の言葉をまった。

 

「この戦極ドライバーは試作品だ。より完成に近い物を作りたいんだが、その為にはもっとこの戦極ドライバー運用データを採取する必要がある」

 

「だから私にその運用データを採取する為に協力しろと?」

 

「まあ、そういうことだ」

 

「因みに拒否権は?」

 

「あると思っているのか?」

 

やや威圧を含めた言い方に一瞬圧されるが表情に出さずに敢えて同じ質問をした。

 

「それでも、私が断ったら?」

 

「お前が頷くまで痛めつけるまでだ」

 

なんてことないように言う影虎に初めて曹操は恐怖した。

 

この男は最初から意見など求めていない。そもそも、初めからそれは分かり切っていたことだった。頼んでいる訳でも提案しているわけでもない・・・命令しているんだ。

 

そこまで考えに至ったらもう、曹操には諦めることしか出来なかった。

 

「貴方の仰せのままに」

 

「それでいい」

 

影虎は服従の意を見せる曹操を見下ろし、満足気に頷いた。




相変わらず主人公とは思えない黒っぷり。
今回は少し展開が強引だったかもしれませんね
そして、ブドウはなん為に使われたのか


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8、二人目のモルモット

前回が長めだったのに対して今回は短めになっています。


8、二人目のモルモット

 

曹操は影虎が開いた奇妙な森の中で彼の後をついて行った。

 

「曹操、お前にこいつを渡しておく」

 

そう言って影虎は曹操にある物を差し出した。

 

「これは・・・?」

 

それは果実が描かれた手のひらサイズの錠前とカッティングブレードが搭載されていない戦極ドライバーだった。

 

「ロックシードだ、それと戦極ドライバーを合わせて使うことでアーマードライダーに変身する事ができる。

まぁ、お前に渡した戦極ドライバーでは無理だが」

 

「なるほど・・・所で、このロックシードも貴方が作った物なんですか?」

 

「半分正解だ」

 

「半分?」

 

首を傾ける曹操に影虎は戦極ドライバーを取り出し自身に装着する。

 

「ロックシードは元々このヘルヘイムの森に存在する果実そのものだ」

 

「ヘルヘイムの果実?」

 

影虎はそこらじゅうにある果実を適当に指で示した。

 

「この果実はそのまま口にすると猛毒に侵され理性を失い破壊衝動に飲まれる」

 

想像したのか曹操は少し怯えたように果実から一歩引いた。

そんな曹操の様子を見て影虎は少し口角がを釣り上げたが直ぐに戻す。

 

「そんな危険な果実から栄養分を安全かつ効率的に摂取する為に作られたのがこの戦極ドライバーだ」

 

影虎は適当な果実をもぎとる、すると果実は形を変えヒマワリロックシードへと変化した。

 

「これが、戦極ドライバーの機能の一つだ。戦極ドライバーを装着した状態でヘルヘイムの果実をもぎ取るとそのままロックシードに加工される」

 

影虎はそのままヒマワリロックシードを戦極ドライバーに装着する。

 

「そのロックシードを戦極ドライバーに装着すれば、戦極ドライバーを介してロックシードの養分を吸い取る事が出来る。まあつまり、このロックシードと戦極ドライバーの両方が揃っていれば極端な話、人間は一切の食料が不要となるということだ」

 

「では、このロックシード単体では何ができるんですか?」

 

影虎の戦極ドライバーと自身のロックシードを見比べて聞く曹操に影虎はロックシードを取り出して答える。

 

「ロックシード単体の機能はこの森に生息する怪物を使役する物だ・・・が、お前に渡したロックシードはちょっとした細工をしてある。ヘルヘイムの入口と出口を開く機能だ」

 

影虎は曹操の持っているロックシードを手に取り開錠するとクラックが開いた。

 

「こいつがあればこのヘルヘイムを自由に出入りが出来る」

 

ロックシードに錠をかけるとクラックも同時に閉じる。

 

「ふむ、では怪物とは?」

 

「怪物とはこのヘルヘイムの森に生息する"インベス"と呼ばれる種族だ」

 

「インベス?」

 

「インベスとはさっき言ったこの果実を口にして変貌した怪物のことだ。

ヘルヘイムの果実を口にした生物は遺伝子レベルで変異させ内側から支配する、そして支配されたインベスは胞子を持ってクラックを辿り、別の世界に種を振りまいてその世界をヘルヘイムと同じように侵食する」

 

「ということは・・・もしかしてこの森は・・・」

 

何かに気づいた曹操は怯えたように辺りの森を見渡しながら言う、影虎は淡々と答える。

 

「あぁ、このヘルヘイムも何処からか侵食された文明だったということだ」

 

「なら、ここにいるインベスは私達のいた世界も・・・」

 

「それはない」

 

"ある可能性"に気づいた曹操の言葉を間髪いれることなく否定する。

 

「何故そういえるんです?」

 

「私が奴らを"根絶やしに"にしたからだ。他に質問は?」

 

「いえ・・・もう結構」

 

「そうか、お前のアーマードライダー用の戦極ドライバーを制作するのには少し時間がかかる、それまでお前はこの森で待機してろ。

出るのは自由だが、面倒ごとは起こすな・・・いいな?」

 

「仰せのままに・・・」

 

曹操からの返事を確認した影虎は、彼女を残し森の奥に消え去った。残された曹操は影虎から渡されたロックシードと戦極ドライバーを見つめていた。

 

 

 

 

 

曹操から離れた影虎は携帯を取り出し、唯一登録されている番号に発信した。

 

『はいもしもし、影虎さんですか?』

 

「あぁ、私だ。

転生者はそちらに来たか?」

 

『はい、確かにこちらに来ました。

影虎さん、ありがとうございます』

 

「あぁ、それで頼みなんだが・・・私に忠実な手駒が欲しい」

 

『手駒?例えば?』

 

「オーバーロード・インベス」

 

影虎は電話越しに神様が驚いた事を聞くまでもなく感じた。

 

『なんの為にオーバーロードを?』

 

「念のためだ。もし私がいなくなった時に、この森を支配する者が必要だろう?」

 

この森を今、影虎によって支配され別世界への侵食は防がれているが、もし仮に影虎という支配者がいなくなったら?その先の事は影虎もわかっていない。この森は新たに別の世界に侵食するのか?それとも影虎が消えると同時にこの森も枯れ果てるのか?

後者なら別に構わないが前者だったら

面倒な事になる。

少なくともこの世界でヘルヘイムの侵食を防ぐ方法はない、そうなればこの世界も数年もしないうちにヘルヘイムの仲間入りだ。

別にこの世界のことは心底どうでもいいが自分で蒔いている責任を背負うことを拒否する程、影虎は自分勝手でもない。

 

故に影虎は神様に要求した。

例え自身が消えることになっても、このヘルヘイムが枯れ果てるまでこの森を支配する自身の亡霊を。

 

『分かりました、オーバーロードは此方で用意してそちらのヘルヘイムにお送りします』

 

「あぁ、悪いな」

 

『いえいえ、影虎さんには色々面倒をおかけしましたから、その恩返しにということで・・・』

 

「あぁ、ありがとう」

 

簡単な礼を述べた後、影虎は携帯の切ってオーフィスのもとに向かった。

 

結構またせてしまったから怒ってるだろうな

 

とどうやって彼女の機嫌をとるか頭の片隅で考えながら・・・

 



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9、彼女は誰よりも今の自分を知っている

今回はかなり短めです。
まあ、今までが序章みたいなかんじだったので締めくくり的な意味で短くさせてもらいました。


9、彼女は誰よりも今の自分を知っている

 

「遅い」

 

曹操をヘルヘイムに保護(軟禁ともいう)し神様に頼みごとを終えた後、影虎は漸くオーフィスのいるところまで戻ったものの最初の言葉がそれだった。

 

「すまなかった。面倒なことがおきてな」

 

流石に影虎も悪いと思っているのか素直に謝罪の言葉を口にした。

 

「面倒なこと?」

 

「曹操が私の前に現れた」

 

「それで?」

 

「こちらに引き込んだ」

 

オーフィスの疑問に影虎が答えると、オーフィスは目に見えて機嫌を悪くした。これには、流石に影虎も戸惑いの表情を浮かべた。

 

「オーフィス?」

 

「影虎」

 

いつもよりも気迫のある表情を浮かべるオーフィスに影虎はやや圧された。

 

「な、何だ?」

 

「浮気はだめ」

 

オーフィスの言葉を聞いた影虎は呆れたようにため息を吐いた。

彼の目は語る「いったい何処でそんな言葉を覚えたのか」または「彼女はその言葉の意味を理解しているのか」というところだろう。

 

「分かっている」

 

が、彼女の機嫌を損ねない為にも影虎は何も言わずオーフィスの言葉に頷いた。

 

「ならいい」

 

影虎の肯定に機嫌を直したのかオーフィスは少しの笑みを浮かべる。

 

「では、帰るとするか。今日は疲れた」

 

「ん」

 

クラックを開き、出口に向かって歩き出す影虎にオーフィスは彼の袖を掴み並んで歩く。

 

最初は彼女の要望で手を繋いでいたのだが、その際に勘違いを起こしたお巡りさん達にお世話になってしまい手を繋ぐ事を拒否したのだが、彼女が影虎を引かせるくらい食い下がったので結果袖を掴むまでならと互いに妥協したのだ。その際、互いに妥協出来る部分を必死で討論してたことは二人の名誉の為に伏せさせてもらおう。

 

所で、と影虎は今回のことで得られる物と今後すべきことを考えてみる。

 

これからはこのヘルヘイムの森の研究を続けながら戦極ドライバーの改良を行いロックシードを増やさなければならない。

 

その代わり

こちらには曹操という新しい実験台が手に入り、戦極ドライバーのデータ収集の効率は以前よりも格段に上がるだろう。

 

たが・・・

 

「するべきことがありすぎる」

 

うんざりしたかのような口振りをする影虎にオーフィスは意外そうな顔をした。

 

「でも影虎、楽しそう」

 

「そうか?」

 

今度は影虎が意外そうな顔をする。

 

「楽しそう」

 

そんな影虎の言葉をオーフィスは続けて肯定した。

 

「・・・そうか」

 

やや納得がいかないが、オーフィスが言うのだからそうなんだろうと自分を頷かせた。なにせオーフィスは"今の影虎"を自分より知っているのだから。

 

 

 

 

 



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10、曹操で実験

お待たせした分今回は少し長めにさせていただきました。



10、曹操で実験

 

「お呼びですか?影虎」

 

ヘルヘイムの何処かにある巨大な砦に曹操は自分を呼びたした男、影虎と対面した。

影虎の研究室(のようなところで)では様々な器具やヘルヘイムの植物が入った気味の悪く巨大なフラスコがならんでおり、影虎と曹操の間には仕事用のデスクが設置されており大量の設計図や研究レポートなのが並んであった。

 

「あぁ、お前の戦極ドライバーがようやく完成してな」

 

影虎はデスクの上に戦極ドライバーを置いて、曹操に差し出す。

 

「そしてこいつもだ」

 

次に影虎はバナナロックシードを曹操に投げ渡した。

 

「これが私の・・・」

 

曹操は自分の両手に持っている戦極ドライバーを交互に見つめる。

 

「性能を試してみるか?」

 

曹操の返答を待たずに研究室を出て行く。

 

「あっ、ちょ、待ってくださいよ」

 

影虎が研究室を出た途端に我に返った曹操が影虎のあとを追った。

 

 

 

 

 

影虎と曹操がたどり着いた先は古い闘技場のようなところだった。蔦がそこらじゅうに絡まって所々朽ちてはいるが曹操にも、もちろん影虎にもそこが闘技場だということは分かった。

 

「さて、では始めるぞ」

 

そう言った影虎の手には二つのヒマワリロックシードが握られていた。

影虎はロックシードを開錠した。

 

すると、そこに二体の怪物が闘技場に現れる。

 

「影虎、こいつらは一体?」

 

「こいつらがインベスだ」

 

驚いた様子で影虎に聞く曹操に影虎は顔色一つ変えずに言った。

 

「インベス?でもインベスは貴方が根絶やしにしたと」

 

「あぁ、あいつらはそのインベスのデータを元に作ったクローンだ。無駄な能力を省いて戦闘力に力を注いだ・・・さあ、はじめろ」

 

影虎の言葉に曹操は頷き戦極ドライバーを装着して自身のロックシードを開錠する。

 

《バナナ!》

 

《ロックオン‼︎カモンッ‼︎バナナアームズ‼︎

ナイトオブスピアー‼︎》

 

赤いアンダースーツにバナナの鎧を装着したデュークと何処か似ているが全く別の戦士

 

アーマードライダー・バロン

 

バロンとなった曹操が闘技場に入ると闘技場全体が結界のようなもので隔離される。

 

「さあ、お前の力を見せてみろ曹操」

 

《バトルスタート‼︎》

 

「「シャァアア‼︎」」

 

開始の合図がなると同時に二体のインベスがバロンに突進する。

 

バロンはそれをジャンプすることでかわそうとするが・・・

 

「ーーっキャ!」

 

自身が予想していた以上のジャンプ力が発揮され上空に貼られた結界に直撃した。

 

「くっ・・・ハァッ‼︎ 」

 

なんとか体制を立て直したバロンは手に持つバナスピアーを地上に待ち構えるインベスに振り下ろすが。

 

「愚か者め」

 

ガンッという鈍い音が響く。

ーー曹操の振り下ろされたバナスピアーをインベスの硬い体が防ぎきったのだ。

 

「ーーなっ⁈」

 

「シャァアアっ‼︎」

 

驚いて一瞬呆気に取られたバロンにもう一体のインベスがバロンにドロップキックをかました。

 

「キャアアア⁈」

 

吹っ飛ばされた挙句、体制を立て直すことができずゴロゴロと地面に転がりまたしても結界に強打する。

 

「馬鹿かお前は?バナナアームズの特色はバナスピアーによる圧倒的な貫通力だ、ぱっと見て皮膚が柔らかい相手なら未だしも未知数の相手に槍をバットのように振り回す奴があるか」

 

影虎の言葉を聞いて曹操は自己嫌悪に陥った。

今までの相手には自身の神器に宿る力で一方的に戦えたが、今回は違う。

自分の持つ武器は高い貫通力を持つだけのランス(バナスピアー)なのだ。

 

そう思うと自分がいかに神器に依存していたか嫌でも思い知らされた。

 

だからこそ・・・

 

「シャァアア‼︎」

 

こちらに突進してくるインベスにバロンはその場を動かず寸前でバナスピアーの矛先をインベスに向ける、と

 

「シャッ⁈」

 

自身から矛先に突進する形になったインベスは急には止まれずその厚い皮膚にバナスピアーが突き刺さる・・・が

 

「シャァ‼︎」

 

致命傷ではなかったらしく、インベスは自身の体に刺さったバナスピアーを物ともせず近距離での反撃に移った。

 

「ーーっ⁈」

 

それにいち早く気付いたバロンは瞬時にバナスピアーを引き抜き退避する。

勢いよく抜かれた傷口からは緑の血液が流れ出しインベスは痛みに悶える。

 

血を流すインベスを放置してバロンはもう一体のインベスに向かう、同時にインベスもバロンの突撃に迎え撃つ。

 

「ハァッ‼︎」

 

最初にバロンがインベスに対して突きを放つがインベスは体を回転させ突きを受け流す。

 

「シャッ‼︎」

 

今度はインベスがバロンに爪を突き立てるがバロンは回避し・・・

 

「セイッ‼︎」

 

「ーーっ⁈」

 

無防備となったインベスの足にランスをぶつける。バランスを崩したインベスは派手に横転して体を地面に叩きつけた。

 

「シャァアア‼︎」

 

もう一体のインベスは痛みを押さえつけながら立ち上がり、バロンに突進する。

 

対してバロンは戦極ドライバーのカッティングブレードに手をかけた。

 

《カモンッ‼︎バナナスカッシュ‼︎》

 

「ハァアアア‼︎」

 

インベスに対して放たれた強力な突きはインベスの硬い皮膚を貫通する。

そして、今度はバナスピアーの向きを反転させ背後にいるインベスに突き刺した。

 

「「シャァアアっ⁈」」

 

一定量を超えるダメージを受けたインベスは体を維持出来ず粒子となって霧散した。

 

「はぁ、はぁ、終わりましたか?」

 

「あぁ、終わりだ」

 

影虎の言葉と共に闘技場を囲っていた結界は音を立てずに消えていく。

それを確認した曹操は大きく息を吐き、その場に座り込んだ。

 

「どうだ、戦極ドライバーの性能は」

 

「今だに扱いが難しいですね、この鎧の動きに私自身が着いてこれません」

 

「それはもう慣れるしかないだろうな」

 

鎧の動きについて来れない。

この現象は始めて変身したとき三神影虎も体験したものだった。その際にヘルヘイムのあちらこちらをボロボロにしてひどいことになったのは影虎自身にも忘れられない苦い記憶でもある。

 

「さて、早速だが曹操、お前に仕事がある」

 

「仕事?」

 

あぁ、と頷いて影虎は曹操に仕事の内容を説明する。

内容はとある地域にいるはぐれ悪魔の討伐である。これはアザゼルからの頼みでありまた、影虎の取引でもある。

 

「その際に教会側の祓魔師との接触かあったら協力に持ち込め」

 

影虎の提案に曹操は首を傾ける。

影虎のこの仕事の意味は曹操でも想像はつく、戦極ドライバーの試験運用だ。

 

そもそも、これが元々の目的だったはずだ、私を実験体にして戦極ドライバーのデータを集める。それ自体は私も承諾してなに一つ不満はないのだが、一つだけ不可解な点があった。

 

「なぜ教会側に協力を持ち込む必要が?

戦極ドライバーのデータが欲しいのなら私一人で戦う方が効率がいいはずです」

 

「私の目的は戦極ドライバーのデータだけではないからだ」

 

しかし、影虎の答えは曹操の疑問を増幅させるだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

曹操を見送った後、影虎は研究室で”ある物”の運用データを纏めていた。

 

「影虎、何をしている?」

 

影虎の背中を見つめるオーフィスが、やや不機嫌気味に影虎に声を掛けた。

影虎が曹操を引き入れてから影虎は曹操ばかりにかまって漸く曹操が何処かに行ったと思ったら今度は本の虫の如く研究にへばりついた。

 

ようは嫉妬である、ヤキモチなのである。

 

無論、影虎は忙しくなってもオーフィスを邪険に扱ったことも雑に扱ったこともない、むしろ影虎にとって今一番大事なのは?と聞かれれば迷いなく”オーフィス”と答えるだろう。

そういうことはオーフィスにも分かっていた、しかし、オーフィスは無垢ゆえに頭で理解していても心では納得出来なかったのだ。

 

構って欲しい、だけど邪魔したら影虎はきっと困る。

 

そんな自身の矛盾と葛藤がぐるぐる回るオーフィスは人間にとっては永遠に等しい年数を生きているのにも関わらず誰よりも無垢で、そして幼い心の持ち主なのだ。

 

そんなオーフィスが考えに考えた結果が先程の言葉である。

影虎は面倒ごとが嫌いたが、何処か自己顕示欲の強いところがある、きっと研究者特有のものなのだろう。だからオーフィスが影虎に研究のことを聞くとは出来るだけ分かるように説明してくれる。

 

「曹操に渡していた戦極ドライバーのデータ調べていた」

 

モニターから目を離し、背後にいたオーフィスに体を向けながら影虎は説明する。

 

「あのとき、曹操に渡した戦極ドライバーにはちょっとした細工が施してあってな、彼女の中にある神器を調べていた」

 

と、カッティングブレードが使われていない戦極ドライバーを見せて説明を続けた。

 

影虎は分かりやすく説明はしているのだが、実のところオーフィスは半分程しか理解していなかった、要するに影虎は戦極ドライバーを介して曹操の神器を調べていたとしか、認識できていなかったのだ(まあ、影虎もオーフィスが全て理解しているとは思っていなかったが)。

 

淡々としているが何処か楽しげに説明する影虎がオーフィスは好きだった。

オーフィスには、その時だけ影虎が幼い子供に見えるのだ。

 

「オーフィス?どうかしたか?」

 

説明を終えてもずっとぼーっとしていたオーフィスを訝しんだ影虎が彼女の目を覗き込んだ。

 

「なんでもない」

 

そうか、とそれ以上追求せずに影虎は自身の研究データに向き合った。

 

オーフィスは影虎に懐いている、それはもう酷いくらいに、オーフィスにとって三神影虎という存在は必要不可欠。

 

だからこそオーフィスは時々考える、いずれ影虎は自身から離れる時が来るのだろうか?

 

「ーーっ」

 

想像しただけで体が震えて目が回る視界が真っ黒に染まっていく

 

嫌だ、嫌だ、嫌だ

 

影虎がいなくなるなんて・・・嫌だ

 

オーフィスは自身の想像したことのおぞましさに思わず自分の腕に手を回し、まるで泥沼の底のような瞳で影虎の背中を見つめた。

 

「影虎、我を裏切らないで」

 

オーフィスの呟きは影虎の耳に届くことなく空気に消えた。

 

 

 

 

 

 

 




一応、曹操もヒロインの筈なのにこの扱いの差とは・・・どうしてこうなった(´・_・`)


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11、曹操のお使い 上 /平穏で平和な町

更新が随分と遅れて申し訳ありませんm(_ _)m
一週間に一話のペースで考えていたのですが、中々上手く行きませんね。

今回の主人公は曹操です。


11、曹操のお使い 上 /平穏で平和な町

 

とある国とある田舎町の駅に曹操はフラフラと降りた。

 

「本当にこの町で合っているのでしょうか?」

 

影虎に渡された資料と目に入る町並みを見比べる。

 

のどかで、穏やかで美しい町だ。

 

「とてもはぐれ悪魔がいるとは思えませんね」

 

とは言ったものの、そんな理由だけで収穫もなしに帰るわけにも行かないので調査を開始する

 

「まずはどこから行きましょうか」

 

まずは駅から出ることである。

 

 

 

それから曹操は調査として聞き込みをする他なかった。質問は二つ、最近変わった噂はないか?この町に失踪者は出ていないか?町の人間、町長から公園の子供まで余すことなく隅から隅まで聞いて回ったのだが・・・

 

 

「おかしい」

 

簡単な調査を終え、適当な宿をとった曹操は調査結果を纏める・・・のだが。

 

「本当にこの町は平和そのものだ・・・」

 

この町にははぐれ悪魔どころかそういった怪物類の噂すらなく、失踪の報告すらない。

 

しかし、影虎から渡された資料には気になる項目があった。

 

「幻惑を操る悪魔」

 

幻惑や幻術類を操れるのなら誰にも悟られずに人を攫うことは出来る筈。

 

「それでも噂一つ出てこないなんておかしいですよねぇ」

 

失踪者もいなかったみたいですし・・・

 

「もしかして、はぐれ悪魔自体ここにはいなかったのだろうか?」

 

口に出して直ぐに否定する。

 

影虎が間違った情報を渡したとは思えない、それに・・・

 

「なんだか試練を与えられたようにも思えるんですよね」

 

私の何かを試すために影虎が私に与えた試練

 

そう考えるのが一番自分にとって納得出来てしまう。

 

もし曹操の考えているとうりなら必ずこの町には何かがある筈だ。

 

いまの曹操にはそれだけが何かの確信だった。

 

 

 

 

 

 

結局なんの収穫もないまま曹操は眠りに就く・・・が

 

ーーアウオオォォォォォン‼︎

 

「っ⁈」

 

夜の暗く静寂に包まれた町を引き裂くような咆哮に曹操は眠っていた体を無理矢理起こした。

 

まさか、本当にこの町にはぐれ悪魔が現れたのだろうか。

 

曹操は荷物の中から戦極ドライバーとロックシードを取り出し宿を飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

「ーーっ、これは」

 

町を離れた森付近に来た曹操は目の前の光景に絶句する。

 

三頭の頭を持ち二本の脚で立つ白い猛獣が青い髪をもった祓魔師と戦っていた。

 

「なんですか?あのはぐれ悪魔は・・・」

 

今までも何度かはぐれ悪魔と戦って来たが、あんなはぐれ悪魔は見たことがなかった。

 

「今はそんなこと言ってられませんよね・・・変身‼︎」

 

《バナナ》

 

《ロックオンッ!カモンッ!バナナアームズ‼︎

ナイト・オブ・スピアー‼︎》

 

「ハァーッ‼︎」

 

アーマードライダーバロンとなった曹操ははぐれ悪魔に突撃する。

 

曹操の不意打ちによる突きが六つあるはぐれ悪魔の眼球を一つ潰した。

 

ーーガアアァァァアアッ⁈

 

「お前は⁈」

 

「話は後です‼︎」

 

驚く祓魔師を尻目に曹操はバナスピアーを構える。祓魔師も警戒心を抱いたものの曹操に敵意がない事を悟り目を曹操からはぐれ悪魔に移した。

 

こうして曹操は影虎の命令どうり、祓魔師と共闘するのとになった。

 

 

 

 

 

「ハアァァァアア!」

 

先手を打った曹操は俊足の速さで悪魔に突撃するが、はぐれ悪魔は信じられない程の脚力で夜空に飛び上がる。

 

そして、それだけではなかった。

空から落ちてきたはぐれ悪魔は”二頭”いたのだ

 

「ーーっ⁈」

 

「なんだとっ⁈」

 

祓魔師は驚いたように声を上げたが曹操は冷静に状況を整理した。

 

頭に思い浮かべるのはこのはぐれ悪魔のデータ・・・このはぐれ悪魔の能力は・・・

 

「このはぐれ悪魔のどちらかは幻影です‼︎」

 

「幻影?」

 

祓魔師の言葉を肯定し、曹操はドライバーのカッティングブレードを二回振り下ろす。

 

《カモンッ!バナナオーレッ!》

 

曹操がバナスピアーを地面に突き立てると同時に片方のはぐれ悪魔の地面から無数の刃が突き出された・・・が、刃ははぐれ悪魔を貫通したのではなく通り過ぎた。

 

「成る程、こいつが幻影か・・・行くぞ、エクスカリバーッ‼︎」

 

「ーー⁈」

 

恐らく今が曹操にとっての一番の驚きだっただろう。まさか、この祓魔師の少女が聖剣エクスカリバーの使い手だったとは考えもしなかった

 

少女の聖剣が一振りされるだけで周りの木々は薙ぎ倒され、地面は抉れる。

 

ーガァアア‼︎

 

しかし、はぐれ悪魔は億することなく祓魔師に飛び掛かる。

 

「ーくっ、ハアァァァアア!」

 

即座に回避行動を起こした祓魔師ははぐれ悪魔の下に潜り込み腹部に必殺の聖剣を叩き込む。

 

ーーっ、グウゥッ⁈

 

「流石はエクスカリバー、欠片であってもその強さですか」

 

曹操は祓魔師には聞こえないように呟き、カッティングブレードを振り下ろす。

 

《カモンッ!バナナスカッシュ‼︎》

 

「ーっ!ヤアァッ‼︎」

 

曹操のバナスピアーから作られる巨大なエネルギーの塊がはぐれ悪魔を貫く・・・筈だった。

 

「えっ⁈」

 

「何だと?」

 

曹操によって放たれた必殺の槍撃ははぐれ悪魔に貫通することなく”通過”した。

 

「そんなっ・・・幻影?でもさっきの聖剣は・・・」

 

「おい!まずいことになったぞ‼︎」

 

「ーーっ⁈」

 

思考に没頭しそうになったところで祓魔師の声が聞こえ曹操を現実に引き戻した。

 

周りを見回すとはぐれ悪魔が”三頭”二人を囲んでいた。

 

ーガァアア‼︎

ーグウゥッ‼︎

ーガゥッ‼︎

 

曹操と祓魔師は同時に駆け出す。

 

「ハアァァァアア!」

 

祓魔師の剣がはぐれ悪魔をすり抜ける。

 

「ヤアァッ‼︎」

 

曹操のバナスピアーがはぐれ悪魔をすり抜ける

 

「「だったらっ‼︎」」

 

《カモンッ‼︎バナナオーレッ‼︎》

 

「エクスカリバーッ‼︎」

 

二人の巨大な剣と槍が最後のはぐれ悪魔を襲う・・・が、その攻撃もはぐれ悪魔はすり抜けた。

 

「ーーっ⁈」

 

「どういうことだっ⁈あれが実態じゃなかったのか⁈」

 

狼狽える曹操と祓魔師に三頭のはぐれ悪魔の口から炎が噴き出す。

 

「ーーっ失礼」

 

「ん⁈おっおい!何をする⁉︎」

 

嫌な予感がした曹操は祓魔師を脇に抱えてその場を”飛んだ”

 

バロンのアーマーによって強化された脚力はたった一飛びで遥か上空まで駆け上がる。

 

「おいっ!離せ!・・・いやっ、やっぱり離すな!絶対離すな!」

 

「どっちですか」

 

呆れたように呟く曹操は三頭のはぐれ悪魔を見る。はぐれ悪魔の炎によって周りの木々が燃え、一部が灰になっていた

 

「・・・やはり、でも何故?」

 

脇で震える祓魔師を見た後、曹操は次にどうするかを考えた。

 

結果、曹操と祓魔師の最初の共闘戦線は敗北という幸先悪い物となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




気づいたらお気に入り登録して下さった方が200人。
嬉しくて少し泣けました。


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12、曹操のお使い 中 /彼は謎解きが好き

遅れて申し訳ありませんm(_ _)m

あえて言い訳をさせてもらうなら大学受験云々で忙しかったもので・・・

まあ、要するにこれからも遅れるかもしれないということです。

重ね重ね、申し訳ありませんm(_ _)m


12、曹操のお使い 中 /彼は謎解きが好き

 

あのはぐれ悪魔に敗北した曹操と祓魔師の少女は一度撤退し曹操が借りている宿に戻った。

 

「いったいあのはぐれ悪魔は何者だ?

祓魔師達の中でもあんな悪魔の話なんて噂でも聞いたことがないぞ」

 

動揺した祓魔師を放置して曹操は影虎から渡された資料を見直す。

 

「ん?これは・・・?」

 

「どうした?」

 

曹操が渡された資料の中に一枚だけ白紙のものがあった。

 

「ただの間違いか?」

 

白紙を覗き込んだ祓魔師が至極真っ当な言葉を口にした、そんな言葉を曹操は首を振って否定する。

 

「彼はそんな間違いは犯しませんよ。

必ず何かがあるはずです」

 

「随分と信頼しているんだな、その”彼”に」

 

祓魔師の言葉に笑みを返し、曹操は白紙を天井の光で透かしてみる。

 

「この白紙には意味がある。少し他の資料とこの白紙も調べてみます」

 

「手伝えることはあるか?」

 

祓魔師の言葉に曹操は少し思案に耽ると口を開く。

 

「なら少しでも体を休めて下さい、肝心な所で動けないなんて笑い話にもなりませんよ」

 

「なら、遠慮なく」

 

曹操の言葉に頷いた祓魔師は早々にベッドに入り数秒もしないうちに規則正しい呼吸をたてた

 

「早いですね」

 

祓魔師の寝つきの良さに少し唖然とした曹操は備え付けの机に向かい、資料を漁った。

「・・・んむぅ」

 

暫く資料と向かい合っていたがいつのまにか自身が寝ていたことに気付いたのは深い眠りに就いてから約30分後のことだ。

 

「・・・レモンの香り・・・ん?」

 

寝起きに感じた薄く鼻をつく柑橘類の匂いに曹操は違和感を覚える。

 

机の上、というよりこの部屋にはフルーツの類は置いていない、ならいったいどこからこの匂いは来ているのか?

暫く辺りを見回し、ある品物に目がついた。

 

「・・・影虎の資料?」

 

まさか、と感じながら資料に顔を近付けてすんすんと鼻を鳴らすと微かだが確かに甘酸っぱい柑橘類特有の匂いがする。

 

「もしかして・・・」

 

机の引き出しに(恐らく災害対策で)常備されていた蝋燭を取り出し火を点け、そして恐る恐る白紙の資料を火で炙ると・・・

 

「フ、フフフッ、必死に考えた私がバカみたいじゃないですか」

 

焦げたような色で浮かび上がる文字が現れた。

 

あぶり出し、一昔前の小学生であれば手品の類として知った人間もいるだろう。

 

レモンの汁やお酢などで紙に文字を書き乾いた後に火で炙ると文字が浮かび上がる。

 

酷く幼稚で古典的で小学生でも思いつく様な種・・・だからこそ、複雑でわかりにくい。

 

曹操の脳裏には人の悪い笑みを浮かべた三神影虎が映る。

 

彼を脳裏からはじいた曹操は裏の資料がまだ断片であることを知り・・・

 

「ちょっとすみません。起きてください‼︎」

 

ベッドの上で眠りこけた祓魔師を起こした。

 

「っ、何事だ?どうした?」

 

目をこすりながら言う祓魔師に曹操は微かな苛立ちを覚えるがそんなもの彼方に追いやり、やや興奮気味に要件を話す。

 

「手伝って下さい!厨房に行きましょう!」

 

祓魔師の少女は曹操の突然の言葉に首を傾けるだけだった。

 

 

「で?厨房を借りたのはいいがここで何をするつもりだ?」

 

安眠を妨げられた祓魔師は曹操に不機嫌だということを隠そうともせずジト目で睨む、曹操はそんな祓魔師の視線を気にすることなく分厚い資料を嗅ぎ分けていく。

 

「一部資料をそちらに渡すのでオーブンの中で2〜3分程焼いてください」

 

嗅ぎ分けた資料の数枚を祓魔師に渡し曹操は引き続き資料を嗅ぎ分ける

 

「資料を焼く?・・・まあ、いいか」

 

寝起きで頭が回らない祓魔師はどこかおぼつかない動きで資料を掴みオーブンのあるところへ向かって行った。

曹操が全ての資料を嗅ぎ分け、祓魔師がそれらの資料の文字を炙る出したのはそれから二時間程たった後だった、外はすっかり日の光に照らされ町人の言葉が壁や窓越しに聞こえてくる。

 

曹操は資料の並び替えと閲覧、祓魔師は町で聞き込み二手に別れてこの町に住むはぐれ悪魔の調査に勤しんでいた。

 

「どうですか?何か分かりました?」

 

曹操は筆記用具を片手に目の前で揺られている人形に目を向ける。

 

『いいや、はぐれ悪魔どころか昨日の出来事すら、この町の住民は気づいていないようだ』

 

その人形からは祓魔師の声が聞こえてくる。この人形は一種の通信端末で同じ物を祓魔師に渡し、連絡手段を持たない祓魔師に即席で作った品物である。

 

「何もきづいていない・・・ですか」

 

祓魔師の言葉に違和感を感じた曹操は少し首を傾けて考えるが、何もわからず結局放棄する。

 

『そういえば、お前は何故ここに来たんだ?』

 

「私はある人物にここで祓魔師と共にはぐれ悪魔を討伐しろと指示をうけたんです」

 

祓魔師の質問に出来るだけ影虎の名前を出さないように言葉を選んで答える。

 

『私がここに来ることを知っていたのか?』

 

「さあ、どうでしょう?少なくとも私は知りませんでしたよ?」

 

『その男は一体何者なんだ?』

 

祓魔師の言葉に首を傾けて考える。

 

そういえば私は影虎について知っている事なんて殆どない、ただ知っているのは

 

影虎はオーフィスを籠絡して側に置いている

ヘルヘイムという奇妙な森に出入りできる

そして・・・

 

「この戦極ドライバーを開発した男」

 

曹操は傍に置いてある戦極ドライバーを指で撫でて無意識に呟いた。無論、祓魔師はその声を聞き逃すことはなく

 

『なに?あの鎧はその男が作った物なのか?』

 

曹操は内心で悪態をつく。今のは言い逃れようのない失態だ、開発者を出さなければ最悪神器ということで済ますことが出来た物を・・・

 

「・・・えぇ、どうやってか知りませんが」

 

『成る程、その男がお前にあの鎧を渡した目的は、なんなんだろうな?』

 

「実験体らしいですよ、私」

 

・・・沈黙が痛い。

人形の向こうにいる祓魔師が驚きの表情を作ったことは見るまでもなく分かった。

 

『・・・わかってて実験体になったのか?』

 

信じられないと言いたげの声色に曹操はあっさりと肯定する。

 

「えぇ」

 

『どうして?』

 

祓魔師の言葉に曹操は少し考えた後

 

「彼のことが好きだからです」

 

簡単な理由のみを口にした。

 

『・・・は?』

 

当然、それだけ聞いた祓魔師は理解出来る筈もなく首を傾けるだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




曹操のお使いは恐らくあと二作で完結すると思います。
それもあとどれくらいかかるのやら・・・


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13、曹操のお使い 下/ 美しい町よさようなら

予定していた日よりかなり遅れてしまいました、申し訳ありませんm(._.)m


13、曹操のお使い 下/ 美しい町よさようなら

 

深夜、草木も眠る丑三つ時。

件の町で曹操は資料の閲覧、祓魔師は町での見回り、それぞれの役割を担っていた。

 

『一ついいか?』

 

人形端末から聞こえる祓魔師の声に曹操はどうかしたのかと疑問の声をあげる。

 

『いや、なにかあったわけではないだがな、私も暇でね。すこし話に付き合ってくれないか』

 

祓魔師の珍しい申し出に曹操は無言で続きを促した。

 

『アーシア・アルジェントという聖女と呼ばれた少女の話だ』

 

その名前に曹操は聞き覚えがあった。

 

「あぁ、傷を癒す神器を持った少女ですね?

たしか、悪魔を治療して追放されたと」

 

『あぁ、教会の信徒でありながら敵対する悪魔の傷を癒した結果、魔女の烙印を押され追放された』

 

その話であれば曹操も影虎に聞いていた、なんと勝手な話だろう、と曹操は内心で穏やかではなかった。

 

傷を癒す力があったがために教会から聖女として祭り上げ、悪魔を癒す力があると分かった途端に手のひらを返して魔女と蔑み追放した。

 

『だが・・・』

 

祓魔師は疑問に満ちた声で続ける。

 

『私にはまだ分からない』

 

「なにがです?」

 

『アーシア・アルジェントは悪魔を癒せば追放されると分かっていた筈だ、何故そこまでしてあの悪魔を救ったのか』

 

祓魔師の言葉を聞いて曹操は内心呆れていた、簡単なことなのにそんなことも分からないのか、と言いたげの目を人形に向けていた

 

「それは、彼女が本当の意味で聖女だったからじゃないですか?」

 

『どういう意味だ?』

 

「聖女の資格は全てのものに対する愛と慈悲。

それであればアーシア・アルジェントは十分聖女の資格を有しているということですよ」

 

今だに理解出来ないといった表情を作っているであろう祓魔師にわかるように砕いて説明する

 

「あなた方、教会の人間が忌み嫌い見捨てたものにすら慈愛を持って手を差し伸べる。

まさしく隔てのない慈悲と愛を持った心優しい少女です。”彼”もアーシア・アルジェントのことは高く評価していましたよ、”彼女は数千年に一度の最も高い素質を持った人間だ”って」

 

『成る程、そういう見方もあるのか』

 

祓魔師の言葉に曹操は内心拍子抜けした。

正直な話、こんなに簡単に納得されるとは思ってもいなかったのだ。

 

『まて・・・この気配は』

 

「どうしました?」

 

突然声色を変えた祓魔師に曹操は戸惑いながらも雰囲気で感じ取る。

 

『どうやらあのはぐれ悪魔が現れたようだ』

 

曹操は思わず舌打ちをしてしまう。

今だに影虎の資料を閲覧出来ていない、このままなんの手がかりもなく向かうのは得策ではない。

 

ーーどうする

 

曹操が対策を練ろうとしているところに人形ごしに祓魔師が口を開いた。

 

『私が先に行こう』

 

「本気ですか?いまなんの対策もなしに行くなんて死ににいくような物ですよ?」

 

祓魔師の言葉を諭すように否定する曹操に祓魔師は怯むことはなかった。

 

『だが、このままではこの町にも被害が来るかもしれないぞ?』

 

「・・・」

 

いまだ食い下がろうとする曹操に少し苦笑しながら祓魔師は続ける。

 

『大丈夫だ、私も死にたくはない、お前が資料を読み取るまで時間稼ぎがしたいだけだ』

 

「分かりました」

 

結局、曹操は折れる他なかった。

 

『よし、決まりだな。

出来るだけ早く頼むぞ?こちらも長くはもたないだろうからな』

 

「言われるまでも」

 

曹操の言葉に祓魔師は口角を釣り上げ人形の通信を切断した。

 

 

「はぁ・・・さて」

 

曹操は傍にある冷めた紅茶を一気に煽った。

祓魔師が死ぬ前に資料の暗号を読み解き対策を立てなくてはならない。

 

曹操はため息を交えながら文字の羅列と向き合った。

「さて、大見栄はって一人で挑んだのだが・・・」

 

聖剣を持った祓魔師の目前には三体に分身したはぐれ悪魔が威嚇するように祓魔師に吠えている。

 

「やはり、彼女を待つべきだったかな」

 

自分の行動に少しの後悔を感じながら祓魔師は聖剣を構え、三体のはぐれ悪魔を睨め付ける。

 

「彼女が対策を探し出すか、私がお前に敗北するか、どちらが先だろうな」

 

祓魔師の言葉と同時にはぐれ悪魔は動き出す、合計で九つとなった頭に空気中の熱気が集まり、ついには巨大な火の玉となる。

 

「ガァァアアアッ‼︎」

 

はぐれ悪魔の咆哮とともに口から九つの巨大な火の玉が祓魔師を襲う。

 

「ーーっ、ハアアアッ‼︎」

 

祓魔師も負けまいと破壊の聖剣を大振りに振り回し火の玉を捌く・・・が、九つの火の玉の内の一つが弾け、小さな火の玉の大群となって祓魔師に襲いかかった。

 

「・・・なッ⁈」

 

想定外の事に一瞬動きが止まってしまう、そして、その一瞬が命取りとなった。

 

祓魔師は咄嗟に破壊の聖剣を盾にするように自分の前に立て、火の玉の大群を受け止めようとする。

 

しかし、今度は火の玉がまるで爆弾の様にそれぞれ爆発した。

 

「ーーッ⁈」

 

爆発の衝撃までは防ぐことができず、決して大柄ではない体が宙を舞う。

 

「・・・ぐっ⁉︎くっ」

 

ゴロゴロと地面に転がりながらもなんとか受け身を取り、体制を立て直す。

 

体制を立て直した祓魔師は聖剣を片手に三体に分離したはぐれ悪魔に突撃する。

 

三体のはぐれ悪魔に突撃しすれ違いと同時にはぐれ悪魔を斬りつける・・・が、それら全ての攻撃ははぐれ悪魔に何一つ傷を作らずすり抜けていく。

 

先ほどからずっとこんな状況だった、相手の攻撃に対して為す術なく逆にこちらの攻撃は全てすり抜ける、防戦一方で状況は完全に不利だった。

 

はぐれ悪魔が健全であることに対し祓魔師の体はもう限界に達し思わず膝をつく。もう聖剣を振り回すほどの力も殆ど残されていない。

 

はぐれ悪魔が再びその九つの頭に炎を集める。

今の祓魔師には先ほどの砲撃の嵐を回避する体力もその巨大な聖剣で防御する力も残されていない・・・まさに詰みだ

 

「・・・これまでか」

 

祓魔師が諦めの言葉を呟くと同時にはぐれ悪魔の九つの頭から無数の砲弾が放たれた・・・が

 

「諦めるには少し早すぎますよ!」

 

《カモンッ‼︎バナナ・オーレッ‼︎》

 

突然現れた第三者によって砲撃は全て叩き降ろされた。

 

「グゥウ‼︎」

 

「・・・?」

 

祓魔師は驚き戸惑い、はぐれ悪魔は止めを邪魔されたことに対する怒りを持ってその第三者の下へと目を向ける。

 

そこにはバロンの鎧を持った曹操が槍をはぐれ悪魔に向けて立っていた。

 

「曹操っ!」

 

予想外のタイミングで現れた援軍に喜びの声を上げる祓魔師に曹操は笑みを返す(まあ、仮面で相手には分からないだろうが)。

 

「いいタイミングだったでしょう?」

 

少し、悪戯心の入った口調で言う曹操に祓魔師は不満げに返す。

 

「もう少し早くても良かったと思うが」

 

祓魔師の言葉に苦笑を浮かべながら祓魔師に手を差し出す。

 

「まあ、そう言わないでくださいよ。確りと対策は立ててきたんですから」

 

曹操が差し出す手に祓魔師は握り返し立ち上がる。

 

「ガァァアアアッ‼︎」

 

様々な出来事に怒り頂点になったはぐれ悪魔に祓魔師と曹操は自身の得物を構える。

 

「さあ、ここからは私達のステージです‼︎」

 

怒りに満ちたはぐれ悪魔は再び口から砲弾を放つ。

 

対して曹操と祓魔師は目の前に向かってくる砲弾を捌く。

 

「それで?あの幻影をどうする気だ?」

 

「それなんですけど、そもそもそこから間違いだったんです」

 

捌ききれないと判断した二人は回避行動に移行する。

 

「間違い?どういうことだ?」

 

疑問の声を上げる祓魔師に曹操ははぐれ悪魔に目を向けたまま説明する。

 

「元からあの三体のはぐれ悪魔に偽物なんていなかったんです」

 

「・・・?、どういうことだ?」

 

「つまり、あの分身したはぐれ悪魔の三分の一が本物なんです」

 

説明を終えた曹操は動きを止め戦極ドライバーのカッティングブレードを振り下ろす。

 

《カモンッ‼︎バナナ・スパーキングッ‼︎》

 

「だから、あのはぐれ悪魔に対抗するには・・・」

 

ロックシードのエネルギーを最大まで溜め込んだバナスピアーをまるで叩きつけるかのように地面へ振り下ろす。

 

「・・・三体を同時に攻撃するんです」

 

三体のはぐれ悪魔の足元から同時に巨大なエネルギーの刃が突き抜け三体のはぐれ悪魔に直撃する

 

「「「ガァァアアアッ」」」

 

曹操の攻撃を受けたはぐれ悪魔は痛みにのたうちながらやがて一体の形に変化する。

 

「あのはぐれ悪魔の本当の能力は「幻惑」と「分担」。幻影を作り出し、その幻影に自身の一部を譲渡するんです」

 

「なるほど、だからあのはぐれ悪魔は攻撃するときにも三体同時だったわけか」

 

祓魔師は先ほどの戦闘を思い出す。三体に分身していた時はあのはぐれ悪魔は必ず三体が同じタイミングで攻撃していた。

 

「ガァァアアアッ‼︎」

 

一体に戻ったはぐれ悪魔は今度は痛みではなく怒りの声を上げる。

 

「随分と怒らせてしまったようだな」

 

「そのようですね」

 

曹操はバナスピアーを祓魔師は破壊の聖剣をはぐれ悪魔に向ける。

暫しの静寂、二人と一体が睨み合う。

 

先に動いたのははぐれ悪魔の方だった。はぐれ悪魔は自身の4本の足で全力で地面を蹴り、二人に接近する。

 

対するは祓魔師、自身の聖剣を地面に叩きつける、破壊の聖剣によって衝撃を与えられた地面は砕けマキビシのような無数の破片がはぐれ悪魔を襲う。

 

「グゥウッ‼︎ガァァアアアッ‼︎」

 

若干速度が遅くなったものの、だからどうしたと言わんばかりにはぐれ悪魔は二人に襲いかかる。

 

迎撃するは曹操、曹操はカッティングブレードに手をかける。

 

「かかって来なさい、フルーツジュースにしてあげます」

 

《カモンッ‼︎バナナ・スカッシュ‼︎》

 

「ガァァアアアッ‼︎」

 

はぐれ悪魔は自身の大きな顎を振わんと一直線に曹操に向かい、曹操は迎撃のためにバナスピアーを構え、祓魔師ははぐれ悪魔を誘導するために地面を聖剣で叩く。

 

はぐれ悪魔は周りの地面がえぐれマキビシを作ることも厭わず曹操にその3つの顎を近づける・・・が、それは曹操に取ってこの上なく好機な展開だった。

 

「ハアアァァッ‼︎」

 

声を上げたのは曹操、自身の槍術を遺憾無く発揮し、まず最初に突き出された頭の一つを叩き、次にもう片方の頭も潰す。

 

「ーーッガァァアアア⁈」

 

痛みに叫んだ真ん中の頭の口の中に貫く勢いでバナスピアーを突き刺す。

 

「ーーッーーーッ⁈」

 

喉を潰されたはぐれ悪魔は叫ぶこともできずにのたうち回り、ついにはピクリとも動かなくなった。完全に死んだと確認してから曹操はバロンの鎧を解く。

 

「終わったか?」

 

背後から恐る恐ると言った様子で声をかけてくる祓魔師に曹操は背中越しにそのようですねと返す。

 

 

 

 

 

 

 

「これは・・・」

 

「・・・っ」

 

はぐれ悪魔を無事討伐し、町に戻ってきた2人を迎えたのは穏やかだった町ではなく人影のない荒れ果てたゴーストタウンだった。

 

「これは、どういう・・・ことだ・・・?」

 

唖然とする祓魔師に対して曹操は冷静にこの事態を考え、一つの答えにたどり着いた。

 

「まさか、あの町自体が、あのはぐれ悪魔の幻影?」

 

「幻影だと?」

 

曹操が呟いたことは祓魔師の耳にも届き、彼女は驚きに満ちた顔を作った。

 

「それなら説明はできます。

ずっとこの辺りにいたはずのはぐれ悪魔が誰にも認識出来ていないことや、はぐれ悪魔がこの小さな町を襲わなかったことも」

 

曹操の説明に祓魔師は考える素振りを見せる

 

「少なくとも私にはこの事態は手に余るものだ」

 

「そうですね、取り敢えず私は彼に詳細を聞いてみます」

 

「そうだな、私も教会に戻って聞いてみるとしよう彼らも詳細は知っている筈だ」

 

曹操は三神影虎のいる研究所へ祓魔師は教会へもどった。はぐれ悪魔とこの幻影の町の真実を聞き出すために。

 

 




鎧武がとうとうおわりましたねぇ、最初は受け入れがたい作品だと思っていたんですけどね。
そして次の仮面ライダー『ドライブ』
∑(゚Д゚)「とうとうバイクに乗らなくなったよ」
ま、まあライダーって乗り手って意味だし(震え声

曹操のお使い編は次の後日談で終幕にします。


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登場人物設定

そういえば登場人物の細かい設定をしていなかったぁ、と思い執筆。


登場人物設定

 

名前

・三神影虎(ミカミ カゲトラ)

 

種族

・オーバーロードインベス

 

好きなもの

・研究/オーフィス

 

嫌いなもの

・綺麗事

 

能力

・オーバーロードの能力全般

・アーマードライダー

 

備考

・この人主人公

悪神に取り憑かれた結果、神様達の最終手段として殺された人間(そのことは殆ど気にしていない)。戦闘技術はかなり高く、それに加えてオーバーロードの能力もあるので事実上無敵。

現在はヘルヘイムの森の中に研究所を作りそこに籠っている。因みに、ヘルヘイムの中にある黄金の果実も既に影虎が確保しているのでもう何も怖くない状態。

 

性格

・どちらかというと現実主義で自分勝手。

自分や身内意外がどうなろうと知ったことではないと顔色変えず言えるタイプの人間、ただし、自分が蒔いた種で無関係の人間が死んでも構わないと割り切れるほどでもないので一概に非情とは言い切れない。

 

戦闘

・今は戦極ドライバーのデュークでバナナアームズ、斬月は作中での知名度が知名度などで中々変身できない。戦闘スタイルはバナナアームズで敵の戦闘技術を見極めそこから相性のいいロックシードでアームズチェンジして有利に立つと言う所謂《オーズ戦法》が主な戦い方(を予定している)。勝つだけなら強いロックシードとオーバーロードの能力を使えばいいのだが、影虎の目的は戦闘ではなく戦極ドライバーのデータ収集なので本気では滅多に戦わない。

 

使用されたロックシード

 

・メロンロックシード

《天下御免!》

影虎が最初に使用したロックシード。

攻防一体の盾メロンディフェンダーと遠近両用の無双セイバーを使った戦い方が主。

余談ではあるがこの小説の製作方針では影虎はこの斬月でのメロン変身が中心だったが、現在の方針は恐らく主要キャラの前では当分使われない。

 

・ヒマワリロックシード

アーマードライダー御用達の栄養源。

ロックシードであることに変わりはないので内包されているエネルギーもかなりある・・・筈だから何かしらの使い道を見つけることはできるかもしれない。現在は影虎と筆者で検討中。

 

・バナナロックシード

《ナイト・オブ・スピアー》

デュークで使われたロックシード。

何故デュークで使われたかは早い話、ACシリーズでデュークにバナナをつけたらカッコ良かったから。

 

・ブドウロックシード

《龍・砲!ハッハッハッ‼︎》

デュークで使われたロックシード2。

遠距離での戦闘が目的だったが直ぐに別のロックシードに変えらた。正直、何故このロックシードを使ったのかは筆者にも分からない。

あと、割と龍玄は好き、えっ聞いてない?あっそうですか。

 

・マツボックリロックシード

《一撃!インザシャドウ‼︎》

デュークで使われたロックシード3。

多分こいつが一番優遇されていたロックシード、攻撃力と防御力を捨ててスピードに特化されている・・・筈なのに何故か「仮面ライダー鎧武」本編ではそんな設定は忘れられてしまった悲しいアームズ(低ランクロックシードの運命なんて言っちゃダメ)なので本当にスピードに特化させてみました。スピードで相手を翻弄してその隙に一気に必殺技を決める翻弄型一撃必殺タイプの戦い方が主。ロックシードのランクの差は戦いの決定的な差ではないということを教えてあげたい。

 

人物関係(影虎視点)

 

・オーフィス

影虎曰く彼女とは一つのメロンパンから始まった。今現在、影虎にとって最も大事な存在。

そこに恋愛的な感情があるかは不明、まあ、あるよきっと。

 

・神様(転生させた方)

自分をここに送った存在。

自分を殺したことを悔やんでいるようだが、影虎本人はそんなこと全く気にしていない。

極稀に面倒事を運んでくるが同じくらい見返りを貰っているので関係としてはビジネスパートナーのそれに近い。

 

・曹操

作中では実験台とかなんだかんだ酷いこと言ってるが割と期待しているし少なくとも他よりは特別に見ている。

 

・アザゼル

釣り仲間、ヘルヘイムのメンバー以外でオーフィスと影虎が行動を共にしていることを知っている唯一の人物。

 

・神様(大戦時の方)

なんか逆ギレしてきたので言いたいことだけ言ってさっさと退散した。あのあと彼女がどうなったかは知らない、本当に知らない。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

名前

・オーフィス

 

種族

・無限の龍神

 

好きなもの

・影虎

 

嫌いなもの

・影虎の敵

 

備考

・この人(?)ヤンデレ?

空腹時に影虎にメロンパンを分けてもらったのが始まり。その後に影虎に誘われるままヘルヘイムに入りそれ以降は影虎にかーなーり懐いた。因みに過去に一度ヘルヘイムの実を口にしたが影虎が吐き出せと言うまでもなく吐き出した、どうやら口に合わなかったようである。

ヤンデレスキーな筆者的にはヤンデレにしたいと切実に思う人物(?)

 

性格

・とにかく影虎が一番大好きだと言えるほどの懐きっぷり、もはや恋愛感情を超えた何かがある。でも最近、影虎は研究やらなんやらで構ってくれないので頬を膨らませながらむくれていたりする、かわいい。

 

人物関係(オーフィス視点)

 

・三神影虎

大好きな人、デレデレを通り越した何か。

でも最近構ってくれないので寂しい。

 

・曹操

影虎に構ってもらえてるのでヤキモチを焼いている。でも彼女のお陰で影虎は助かっているのでそこまで嫌いじゃない。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

名前

・曹操

 

種族

・人間

 

好きなもの

・三神影虎

 

嫌いなもの

・不明

 

能力

・黄昏の聖槍

・アーマードライダー・バロン

 

備考

・この人実験台

恐らくと言うか絶対、原作から一番変化した人物、というより最早誰だお前状態。

初めは影虎を禍の団に勧誘するつもりだったが逆に引き込まれてしまった人。

最初は影虎の元に転がり込んだオーフィスを連れ戻すだけのつもりだったがその際に影虎に打ちのめされて何故か彼に惹かれた。

 

・性格

どちらかというと他人思いなところが多く、そして凝り性。

戦闘においても相手の事を調べて入念に対策を立ててから挑み、また利用できるものをなんでも利用するなどしたたかな面もある。

 

・戦闘

戦闘では影虎に渡された戦極ドライバーをアーマードライダーバロンとして戦う・・・が、未だにアーマードライダーの性能に慣れることができず、まだまだ見習いレベル。

それを補う形で槍術のスキルがあるので、ある意味曹操とバロンを相性がいい。

他にも神滅具で最強の槍、黄昏の聖槍もあるが、当分は現れない。

 

使用したロックシード

 

バナナロックシード

《ナイト・オブ・スピアー》

曹操が最初に変身した時に使われたロックシード。元々が槍使いの曹操なので相性的には最高レベル。ただし、曹操がバロンの性能についてこれていなので力は出しきれていない。

 

ヒマワリロックシード

最早説明は不要。アーマードライダー皆さんの非常食。

 

・人物関係

 

三神影虎

・恋愛、尊敬、憧れ、様々な感情の対象。

自身が実験台として利用されていることを分かってて影虎に協力している辺りもう手に負えないぐらい惚れ込んでいる。

 

オーフィス

・影虎にあそこまで入込まれていることが嫉妬とまでいかなくても羨ましいと思っている。

 

 

 



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14、曹操のお使い 終幕/気高い番犬にお疲れ様

取り敢えず目下の問題は大方片付いたので投稿。
一ヶ月も経ってしまうとは・・・酷く遅くなって本当に申し訳ありませんm(_ _)m


14、曹操のお使い 終幕/気高い番犬にお疲れ様

 

 

「ただいま戻りました」

 

「その様子では与えた任務は達成出来たようだな。ご苦労だった」

 

影虎の言葉に会釈だけかえした曹操は戦極ドライバーとロックシードを取り出し影虎に手渡す。

 

影虎が曹操に対して提示した義務である。

理由としては影虎による戦極ドライバーのメンテナンスとデータ収集と銘打っていいるが曹操自身は別の目的があると思っている(そしてその考察は当たっていたりする)。

 

閑話休題(ソレハトモカク)

 

曹操が影虎にある疑問をぶつけようとした時に・・・

 

「なにか、引っかかることがあるようだな?」

 

意外にも切り出してきたのは影虎からだった。

 

「はい、あのはぐれ悪魔のことです」

 

「だろうな」

 

曹操の言葉に即座に察したように言う影虎に曹操続けて言う。

 

「あの町や、はぐれ悪魔。いままで私が見てきたものとは全てが違います。影虎、貴方なら知っているのでしょう?あの町の真実を、あのはぐれ悪魔の正体も」

 

「あぁ、知っている」

 

あっさりと認めます影虎に曹操は食ってかかるように続けた

 

「教えてください」

 

「知ってどうする?あのはぐれ悪魔はお前と祓魔師が殺し、その結果あの虚構の町は消えた。

・・・今更お前があれの真実を知ったところで何が出来る?」

 

いつもならここで曹操は止めていた。

彼の容赦の無い正論と試すような目に押されてしまって次の言葉を失ってしまうからだ。

 

しかし、今回はそうはいかなかった。

 

「・・・それでも」

 

「・・・」

 

「それでも、”彼”をただの「欲望に屈したはぐれ悪魔」にしたくないんです」

 

一体なにが彼女をそこまで衝き動かすのだろう、と影虎は曹操の今までにないような目を正面から受けながら考えてみた・・・無論、分かるわけがないのは百も承知なので即座に放棄し、口を動かす。

 

「・・・いいだろう、教えてやる。あのはぐれ悪魔とあの町の真実を」

 

 

 

 

今ではいつのことか知るものは誰もいない、が確かにあった以前の話。

 

何処かのどかな空気が流れる所に一つの町があった、小さく不便な町ではあるが人が住み、一日一日の時が確かに流れる町が。

 

ある日その町に奇妙な流行病が蔓延した、原因も発生源も分からない伝染病で町の人は次々と命を落とす。最初は老人から、次に生まれて1年も経たない幼い赤子、そうやって病は止まることを知らずに延々と広がっていった。

 

このままでは町が死んでしまう、そう危惧していた頃に一人の悪魔が現れた。

 

ある悪魔はある優しい青年に取引を持ちかける。

「自身の眷族になればこの町を救ってやる」と、青年はこれから先の自分とこの町の人達を天秤にかけ・・・結論はすぐに出た。

 

青年は悪魔の取引を承諾し、自身の魂を売った。

そして、青年は町の人々に何も言うことなくこの町を去った。伝染病の傷跡を残す町が再び元に戻ることを信じて。

 

 

 

しかし、青年は知らなかった自身に目をつけた悪魔は伝染病よりも遙かにタチが悪い悪魔だったことを・・・

 

再び青年が町に戻った時に見たものは、人一人存在しない「死んだ」町そのものだった。

 

青年は悪魔に詰め寄った、約束が違うと。

しかし、悪魔はそれよりも恐ろしい真実を突きつけた。

 

あの伝染病を流行らせたのも自身だと

 

青年はこの目の前のモノが何を言っているのかわからなかった。

呆然とする青年を見下ろし悪魔は言う。

 

あの町には強大な力を持つ神器があると、そして、その神器を持つ人間を見つけ出すためにあの伝染病を流行らせたと。

 

一定の力を持つ者以外を死に至らせる毒をこの悪魔はあの町にばら撒いたのだ。

 

そして、悪魔はその青年に取引を持ちかけ、自身の眷族として迎える。

 

全てが仕組まれたことだった。

あの伝染病も死んでいった人達も、全てがこの悪魔が自身の為だけに起こした悲劇。

 

ー自分の所為であの町は死んだー

 

ここからは悪魔の誤算・・・いや慢心だったのだろう。

 

一つは今までに怒ることを知らなかった青年が身の毛がよだつ程の殺気を発したこと。

 

もう一つは、青年が持つ神器は悪魔が想定していたものよりま凄まじい力を持っていたこと。

 

《神器は所有者の想いに反応してその想いに見合った力を引き出す》

 

青年の持つ神器が悪魔も圧倒する程の力を生み出した・・・所有者である青年の身体を変えてしまうほど。

 

怒りに満ちた三つの頭。

悪魔やその眷族を見下す程の巨体。

そして、いままでの青年であれば決した見せなかったであろう殺意と憎しみを孕んだ目。

 

本来、幻術を使うはずだった青年の神器はあまりにも強大な幻術故に現実をも歪めてしまったのだ。

 

最早この《怪物》に理性など微塵も残っていない。ただ、目の前に存在する虫螻共を蹴散らすためだけに己の力を使う。

 

悪魔が自身の眷族に戦闘の指示を出す時にはすでに遅かった。

 

悪魔の眷族達は既に物言わぬ人形となっていたのだ。

 

決して死んだわけではなく、《怪物》が見せた強大な幻術が眷族達の小さな精神を容赦なく粉々に砕いた。

 

自身の不利を知った悪魔は先程とは掌を裏返し、必死に命を乞うた「全て自分が悪かった、赦してくれ」と、《青年》であれば命を奪うことまではしなかっただろう。

 

しかし、悪魔の目の前にいるのは最早《青年》ではない《怪物》なのだ。悪魔が何を言ったところで《怪物》には虫螻が汚い鳴き声をあげているようにしか聞こえない。

 

《怪物》は『耳障りな虫螻』を黙らす為に凶悪な爪をもつ自身の手を振り下ろした。

 

こうして、虫螻共を蹴散らした《怪物》は主人を殺した《はぐれ悪魔》となって追われる身となった。

 

そして、《はぐれ悪魔》はかつての故郷に戻り、幻術で再び町を取り戻した。今度は自分の身を削って町に実体を与えながら。

 

無論、《はぐれ悪魔》の中には《青年》はもう存在しない。しかし、《青年》の想いは《はぐれ悪魔》の中に存在する。

 

もし次に邪悪な意思を持つモノがこの町に入ろうとするならば、今度は必ず阻止する。

 

《はぐれ悪魔》は潜在意識にある《青年》の声に従いながら。自身の作り上げた虚構の町を守る《番犬》となった。それが、どれだけ無意味なことであっても、自身の贖罪の為に。

 

 

 

「これが真実だ」

 

「・・・・」

 

影虎から告げられた真実に曹操は何も言うことが出来なかった。

 

それは、余りにも哀しい話だ。

 

強大な力を持ったが故に質の悪い悪魔に目をつけられ全てを奪われた。

 

愛した町も家族も友人も、自分さえも・・・

 

「何故、彼だけがこのような悲惨な目にあうのですか?」

 

「理由など無い。偶々質の悪い悪魔が、偶々あの町に目をつけ、偶々あのはぐれ悪魔を見つけただけだ。全ては不条理によって作られた偶然だよ」

 

悲痛な声をあげる曹操に影虎は容赦ない正論を突きつける。

 

そう、全ては偶然なのだ。

あの《はぐれ悪魔》となった《青年》は運が悪かっただけ。

 

「では、彼は決して報われない」

 

「そうでもない」

 

「えっ?」

 

曹操は思わぬ反論に訝しげに声をあげ、影虎を見た。

 

「あのはぐれ悪魔はお前と祓魔師が救ったじゃないか。”彼”も本当は無意味な事だとわかっていたはずだ。一度失った物を幻術で取り戻してもそこにあるのは《虚構》でしかない。どれだけ精巧に復元したとしてもそれが幻である以上決して触れることも触れられることも許されない。そんな”彼"の無意味な行為を止め、お前は彼を《眠らせた》。それでいいんだ」

 

「・・・・」

 

「それでも足りないと思うなら、せめてお前だけでも分かってやれ。あの《番犬》の事を。

真実を知ってなお、あの《番犬》と向き合うことが出来たのなら、理解することが出来るのなら・・・少しは報われるだろう「欲望に屈したはぐれ悪魔」ではなく、それが幻影によって作られた物だったとしても「町を守り続けた気高い番犬」として」

 

影虎の言葉を聞いた曹操は何も言わずに影虎の研究室から出た。

 

 

 

 

 

 

「影虎、今日は曹操いない?」

 

背後からオーフィスの声を聞いた影虎は一度手を止め、振り返った。

 

「あぁ、どうやら今日は「やっておきたい事」があったらしい・・・まあ、凡その検討はつくが」

 

昨日、あの町の真実を知った曹操は次の日に何かを決心したように今日は留守にすると言ってきた。

 

別にそんなことをは一々言わなくても良かったと思いながらも承諾し、曹操を送り出した影虎は目の前の資料や研究データと向き合っていた。

 

「しかし、曹操が手こずったとはいえはぐれ悪魔の討伐にデュランダル使いを送り込んでくるとは・・・教会の考えることは分からん」

 

「・・・?」

 

独り言でぼやく影虎にオーフィスは首を傾げ、影虎はなんでもないと返す。

 

最近になって彼方此方に力を感じる、おそらくは二天龍のものだろう。

 

黄金の果実の研究。戦極ドライバーのデータ収集、などと面倒ごとは山のように転がっている。

 

しかし、と影虎は首を傾けたオーフィス見ながら思う。

 

まあ、たまには目の前の問題から目を背けよう。

 

「オーフィス、良ければこれから二人でどこかに出かけるか?」

 

「それは、でーと?」

 

本当にどこでそんな言葉を覚えてくるのか、と思いながらも影虎はあえて否定はしなかった。

 

「まあ、そう言う解釈でも構わない」

 

「行く」

 

珍しく食いついてくるオーフィスに少し押されながらも資料を放置し机から離れる。

 

少し、というよりかなり嬉しそうなオーフィスは影虎と手を繋いで急かすように引っ張り、影虎はそんなオーフィスを微笑ましく思いながら素直に引っ張られる。

 

たまには目下の問題を忘れてみようと思いながら影虎はオーフィスとどこに行こうかと頭の片隅で考えた。

 

 

 

無人となった研究所の机には幾つかの資料が転がっておりその内の一つには曹操と共闘した祓魔師の資料があった。

 

祓魔師、デュランダル兼破壊の聖剣使い

ゼノヴィア

 

そしてもう一つ、別の資料には・・・・

 

今代赤龍帝、兵藤一誠

 

 

 

 

どこかの国の、かつて虚構の町と呼ばれた場所があったところには一つの墓が建てられた、誰が建てたのか、誰に建てたのか不明だが一つだけ石でできた十字の墓石にその国の文字で言葉が彫ってある『気高き番犬に捧ぐ』と。

 

 

 




祓魔師の名前に関してはみんなが思ったであろう「うん、知ってた」と。

取り敢えず、曹操のお使いはこれで終わりです。
後は小噺を挟んだ後、原作に入ろうと思ってます

感想・誤字があればよろしくお願いします。


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