ハーレム系ラノベ主人公を修羅場に突き落とすのが愉しくて止められない。 (夢泉)
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【キャラ設定集】
キャラクター設定1【ニセ十字・竜骨】


【必読】

☆本編ではありません。こちらは登場人物の紹介です。

☆本編を読んで、より詳しく知りたい方のみ閲覧してください。

☆なお、挿絵は一部AIを使用して描いています。
 あくまでもイメージです。苦手な方は無視してください。

☆最後に。PC閲覧推奨です。




諸注意は以上です。



 

★偽十字 来栖

 

名前 偽十字(にせじゅうじ) 来栖(くるす)

一人称 俺

年齢 16 誕生日 10月10日 

身長 171㎝ 体重 61.2㎏ 
司る星座なし
所属組織オカルト研究会(幽霊部員)、時金グループ(アルバイト)
必殺技M(マイクロ)W(ウェーブ)M(マスター)

▼今までの経験則から、あらゆる冷凍食品をピッタリの時間で温める事が出来る。追加で温める必要なし。冷凍食品と共に生きてきた人間だけが辿り着ける奥義。

好きなもの親友を修羅場に突き落とすこと。楽しいこと。

嫌いなもの退屈。クソ親父。 

 本作主人公。

 星雲高校2年α(アルファ)組の男子生徒。

 基本的にパーソナルスペースが0のため顔は広い。ただし、生徒・教師からは専ら“傍迷惑で騒がしい奴”として認識されている。

 高校生活の全てを生活資金稼ぎのアルバイトと、後述する『趣味』に捧げているため学業の成績は悪い。ただし、何故か英語だけは話せる。本人曰く「クソ親父の影響」。

 バイト先は、「時金(ときかね) 貨月(かげつ)」の口利きで時金グループ直営の職場。アルバイトにしては給料が良いため、(父親が生活資金を一銭も出さないにも関わらず)生活はそこそこ安定している。

 部活動は強制参加だったので、廃部寸前だった「オカルト研究会」に名前だけを貸している状態。

~趣味~

 親友の「白鳥(しらとり) (せい)」を“修羅場に突き落とすこと”及び“巻き起こる惨状を想像してニヤニヤすること”に青春の全てを捧げている。

 その熱意は常軌を逸しており、稼いだ生活資金全てを擲つことになろうとも、面白い修羅場が作れるのであれば微塵も躊躇しない。

 尚、“想像”に留めているのは直接観察して万が一にも目的(=修羅場生産)がバレることを避けるため。

 将来の夢は、親友と伴侶の結婚式で友人代表スピーチをし、出席者の誰より高くライスシャワーを撒いて、図々しくもブーケトスをキャッチすること。

 

容姿黒髪黒目の青年。

 

以下、挿絵(作成過程でAI使用、閲覧注意)

【挿絵表示】

 

▼強キャラ感漂うポーズは、修羅場を想像してニヤニヤしている顔を隠しているだけ。

人間関係
偽十字(にせじゅうじ) 九栖狸(くずり)父親。世界で一番嫌う存在。“クソ親父”。

偽十字 レクシィ偽りの妹。趣味嗜好が完全に同じ。もはや魂レベルのシンクロ率。 

白鳥 星親友にして、生きる糧。

鷹刈(たかかり) 麻琴(まこと)友人にして、生きる糧。

鷲平(わしひら) 韻子(いんこ)友人にして、生きる糧。

時金(ときかね) 貨月(かげつ)(アルバイトの)雇い主。眠る時は彼女の自宅方向に足を向けないよう、細心の注意を払っている。

狐咲(こざき) てう(無自覚だが)勘違いミラクルの果て、命を救ったことがあるらしい。

夜白(やしろ) (きわみ)故人であり、親友の母親。小学生時代、年齢差も気にせずナンパしたがアッサリ振られた。事故で亡くなったと聞いた時はガチ泣きした。

 

 

★星空豆知識

『ニセ十字』

 南半球の空に輝く十字型の星の配列。決して星座ではない。

 『ほ座』から2つと『りゅうこつ座』から2つの、2等星4つで構成される。

 旅の道標として『みなみじゅうじ座』と間違えるとエライ事になる傍迷惑な奴。

 

 


 

★偽十字 レクシィ

 

名前 偽十字(にせじゅうじ) レクシィ本名レクシィ・X・ディアマンテ

一人称 ワシ

年齢 ???

(少なくとも3000以上) 

誕生日 10月10日(仮) 

身長 138㎝

(全長約1200㎝、

体高約500㎝) 

体重 35.0㎏

(約6000㎏)

※( )内は変身時の数値であり、星群少女としての本来の姿の数値。

星群少女名『ドラゴンボーン』

司る星座りゅうこつ座

(ダイヤモンドクロス)

所属組織南天

ARGO同盟(破棄済)

必殺技なし

▼余計な小細工など不要。単純な体当たりと噛みつきが一撃必殺。重量6tは伊達ではない。

好きなもの楽しいこと。強敵との死闘。カップ焼きそば。焼きそば専用コーラ。

嫌いなもの退屈。横から獲物を掻っ攫う存在。

 星雲高校1年α組の女子生徒にして、2年の偽十字 来栖の腹違いの妹。

 ……ということだが、正体は人々の想念の具現化存在『星群少女』。数千年を生きる人外の怪物。

 

 星群少女としての本来の姿は“ダイヤモンドで構成されたティラノサウルスの骨格”。

 恐らく、死の象徴として畏怖された「骨」、富の象徴として欲された「宝石」、天敵として恐怖された「肉食獣」「怪物」「竜」……などの概念が基礎となっている。遥かな昔、誰かが星空にソレらを描き、何かの想いを託した結果として彼女が――星群少女『ドラゴンボーン』が生まれたのだろう。

 その時点では脆弱な存在でしかなかったが、『トレミー48星座』で『アルゴ座』が考案されたことを機に明確な星群少女として成立。強大な力を得て、現在に至る。

 この様な経緯であるため「船」の星座としての力も持ち合わせている……はずだが、彼女はそれを決して使おうとはしない。理由は不明。

 

 星群少女の中でも最古参の一角であり、膨大な戦闘経験に裏打ちされた高い戦闘力を誇る。

 あらゆるモノを防ぎ弾くダイヤモンドの肉体(骨格)と、圧倒的な質量と巨体から繰り出す徹底的な物理攻撃。完成された無駄なき戦闘スタイルは、脳筋と言い捨てるには少々美しすぎる。

 唯一弱点があるとすれば、身体が大きすぎて超高速のヒット&アウェイは対応が難しい点。それ故、高速戦闘を得意とする「はくちょう座」とは何度も死闘を繰り広げたライバル関係だった。

 

 長すぎる生の中で「娯楽」に飢えている。

 常に退屈を紛らわせる「楽しいこと」を求めており、至上の娯楽の為ならば如何なる労苦も厭わない。

 最近の一番のお気に入りは、偽りの兄となった「偽十字 来栖」を観察すること。

 

容姿長い銀髪と青い瞳の(見た目は)幼女。

 

以下、挿絵(作成過程でAIを使用。閲覧注意)

 

【挿絵表示】

人間関係

偽十字 来栖偽りの兄。趣味嗜好が完全に同じ。もはや魂レベルのシンクロ率。 

白鳥 星

 

鷹刈 麻琴

 

鷲平 韻子

宿敵の後継者。

時金 貨月同じ南天の存在だが面識はない。レクシィ本人が南天という括りに興味関心が一切ない故。

狐咲 てうこぎつね座……? そんな星座あったのか?

 

★星空豆知識

『りゅうこつ座』

 88星座の一つ。

 元々は、ギリシャ神話のアルゴー船を象った『アルゴ座』の一部。あまりに大き過ぎた為に分割された。

 

『ダイヤモンドクロス』

 『りゅうこつ座』の中に含まれる、4つの星による十字の形。

 『みなみじゅうじ座』や『ニセ十字』と間違える事がある。

 

 



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キャラクター設定2【夏の大三角】

【必読】
本編ではありません。
本編を読んで、より詳しく知りたい方はご利用ください。

なお、挿絵は一部AIを使用して描いています。
苦手な方は無視してください。


PC閲覧推奨。





★白鳥 星

 

名前 白鳥(しらとり) (せい)

一人称 ボク

年齢 16 誕生日 6月6日 

身長 151㎝ 体重 44.5㎏ 

星群少女名『キュクノス・リグリア』

司る星座はくちょう座

(ノーザンクロス)

所属組織極星機関

チーム七夕

必殺技『ウィングス・フォー・パエトーン』

▼白き翼を展開し、大空を自在に飛ぶことを可能とする。また、翼を用いて敵の攻撃を弾くことも、羽を飛ばして攻撃することも可能。

 その移動速度と持久力、および翼の耐久力は「護りたいモノ」への想いに応じて際限なく強化される。

『サマー・トライアングル』

▼「はくちょう座」「わし座」「こと座」。3人の星群少女が心を1つにして放つ奥義。

好きなもの友達。仲間。料理。

嫌いなもの自分の弱さ。

 星雲高校2年α組の男子生徒。社交的でお人好し、スポーツ万能で成績優秀、おまけにイケメン。全てを兼ね備えたモテモテ美少年――

 ――というのは借りの姿。正体は3代目ノーザンクロス、キュクノス・リグリア。正真正銘の女の子であり、星群少女であることを隠すために男装をして、戸籍も偽って生活している。

 

 星群少女とは、人間の「想い」が集まった「アステリズム・エネルギー(AE)」の実体化存在。当然、発生源である人間も微弱なAEを生成・保有している。

 このAEの生成量・貯蓄上限が通常よりも遥かに高い存在は「適正者」と呼ばれる。適正者は、星群少女の心臓――AEの高純度結晶体『コア』を使用することによって、人間でありながら星群少女に変身することが可能。

 白鳥 星はその一人であり、託された「はくちょう座」のコアを使用して、星群少女『キュクノス・リグリア』となって戦う。

 

 10年前の事件から『災厄』と化した星群少女。それを殲滅すべく活動する『極星機関』に所属し、日夜生死を懸けた血生臭い戦いを続けている。

 この事件で両親を亡くし、引き取って育ててくれた「夜白 極」も5年前に殺されてしまった。

 しかし、友人たちとの交流を通して成長。過去を背負って戦うことを決めた。

 現在の彼女は、大切なモノを失わないために、誰かが大切なモノを奪われないように、その信念を胸に戦っている。

 

 偽十字 来栖とは小学校2年生以来の幼馴染。大切で失いたくない、何があっても守り抜きたい親友だと考えている。

 淡い恋心にも似た感情を抱いており、本人も自覚している。……が、それを決して明かすつもりも実らせるつもりもない。

 いつ死ぬかも分からない身であること。男として生きていること。為さねばならぬ使命があること。こうした理由から、恋愛は諦めている。

 最近、どうも「鷹刈 麻琴」が彼を異性として意識し始めている気がするので、静かに見守るつもりでいる。チクリとした胸の痛みに気付かないフリをしながら。

 

 

容姿白い短髪と金色の瞳の少女。

 

以下、挿絵

 

【挿絵表示】

 

▼変身時は、ウエディングドレスに似た衣装を身に纏う。

人間関係

偽十字 来栖親友。最初の友人にして、全てを変えてくれた恩人。淡い恋心。 

鷹刈 麻琴大切な友達で仲間。彼女の“可愛いものコレクション”を自宅で預かっている。

鷲平 韻子大切な友達で仲間。かなり早い段階で性別は見抜かれた。

時金 貨月大切な友達で仲間。最初は誤解して敵対していた。

狐咲 てう大切な友達で仲間。最初は殺しにかかってきた。

夜白 極育て親。自分を庇って殺されてしまった。

 

★星空豆知識

『はくちょう座』

 北天の星座。夏の大三角を構成する。北十字とも呼ばれる。

 

 

 


 

 

★鷹刈 麻琴

 

名前鷹刈(たかかり) 麻琴(まこと)

一人称 オレ

年齢 16 誕生日 7月7日 

身長 170㎝ 体重 57㎏ 

星群少女名『ベガ・ヴァルチャー』

司る星座こと座

(織姫)

(はげたか座)

所属組織極星機関

チーム七夕

必殺技『コンドル・パンチ』

▼本来の「こと座」は防御に秀で、伸縮自在の羽衣であらゆる攻撃を弾き飛ばす。

 これを転用し、拳にグローブのように巻き付けて全力で殴る――正に脳筋の一撃。

 通常の運動エネルギー+羽衣の反射する力となる為、その威力は凄まじい。

『サマー・トライアングル』

▼「はくちょう座」「わし座」「こと座」。3人の星群少女が心を1つにして放つ奥義。

 

好きなもの小さくてカワイイもの。ピンク色のもの。少女漫画。

嫌いなもの自分の高い身長。自分の家。酒・たばこ・入れ墨・ドラッグ・チャカ。

 星雲高校2年α組の女子生徒。

 指定暴力団『鷹刈組』の組長の一人娘。組の「跡取り」になるべく「男」として育てられる。

 名前の「麻琴」は、彼女が生まれる前に亡くなった兄の名前「誠」から。名前・振る舞い・言葉使い・趣味……徹底的に「男らしさ」を押し付けられ続けてきた。

 

 しかし、本人は「小さくてカワイイもの」や「ピンクのもの」が好き。バレれば叱られるので隠し続けている。

 なお、漫画アプリで大量の少女漫画を購入・ダウンロードしており、そのデータでスマホ容量が限界に近い。

 髪をピンクに染め長く伸ばしているのは、せめてもの抵抗。荒れた不良っぽくも見えるが、女の子っぽくて可愛らしくもある……その絶妙なラインを見極めている。

 父と母の遺伝子を色濃く受け継いだ高身長がコンプレックスで、ロングスカートは長い足を隠したいから。

 

 威圧感のある高身長と、ヤクザの娘という肩書……その、本人にはどうしようもない特徴のせいで幼少期から避けられ続けて来た。

 ……が、小学校3年の時、「偽十字 来栖」の「ナンパごっこ」の標的にされる。

 それ以来、「偽十字 来栖」・「白鳥 星」・「鷲平 韻子」の3人とは良き友人であり続けている。

 

 星群少女としては、『こと座』のコアを使用して『ベガ・ヴァルチャー』へと変身して戦う。

 『織姫』と『琴』というモチーフを選びつつも、一方で戦闘スタイルは完全なステゴロ。

 誰より“女らしく”ありたいと願いながら、同時に、その生き方は“似合わない”と誰より信じている。男らしく生きることが“似合い”だと確信している。

 それ故、彼女は『ヴァルチャー』を名乗るのだろう。『こと座』の古き名を――忌み嫌う血筋の名(『鷹』)を。

 

 

 

容姿ピンクに染めた髪を長く伸ばした高身長の少女。

ロングスカートが特徴的な往年のスケバンスタイル。

 

以下、挿絵

 

【挿絵表示】

人間関係

偽十字 来栖大切な友人。ずっと男友達のように接してきたが、高校生になって身長を抜かれてから異性として意識し始めた。 

白鳥 星大切な友達で仲間。男として育った同士でなにかと気が合う。

鷲平 韻子大切な友達で仲間。変なとこ触るな。

時金 貨月大切な友達で仲間。自分の欲望(主に金銭欲)に正直に生きている姿を羨ましく思っている。しょっちゅう突っかかるのは、その憧憬の裏返し。

狐咲 てう大切な友達で仲間。ケモミミとケモシッポを可愛いと思っている。自分も付けてみたいと思ってさえいるが、絶対に似合わないと諦めて黙っている。

夜白 極命を救ってもらった大恩がある。

 

★星空豆知識

『こと座』

 北天の星座。夏の大三角を構成する。

 大昔には『はげたか座』だったとの記述があるとか無いとか。

 

 

 


 

 

★鷲平 韻子

 

名前鷲平(わしひら) 韻子(いんこ)

一人称 私

年齢 16 誕生日 8月8日 

身長 145㎝ 体重 42.0㎏ 

星群少女名『アルタイル・イーグル』

司る星座わし座

(彦星)

所属組織極星機関

チーム七夕

必殺技『ナンバー・ルール・ユニバース』

▼空間を捻じ曲げ、羽衣を任意の位置に出現させる。仲間たちの足場となり、攻撃にも回避にも力を発揮する。

『サマー・トライアングル』

▼「はくちょう座」「わし座」「こと座」。3人の星群少女が心を1つにして放つ奥義。

 

好きなものかわいい女の子。

嫌いなもの『普通』。

 星雲高校2年α組の女子生徒。

 学校一の秀才。学業成績は常にトップで、芸術分野にも秀でる。ただし運動神経は絶望的。

 いわゆる“エリート”の両親に厳しく躾けられて育つ。物心ついた時から、あらゆる習い事を強制されて自由な時間が存在しなかった。

 両親は、可愛い一人娘が「良い学校を出て、安定した職について、高学歴・高収入の男性と結婚して、子供を産むこと」を願って(強要して)いる。

 

 だが、彼女自身はそんな未来に少しも惹かれていない。

 戦地や内戦地、発展途上国などに行って危機にある人を救う――そんな活動に一生を捧げたいとすら考えている。そんなことを言えば、両親は「危険だ」「運動もロクに出来ないくせに」「まずは地に足を付けろ」「夢ばかり見るな」……と哀しむ(怒り狂う)ことは火を見るよりも明らかなので絶対に口には出さないが。

 

 結婚願望もほぼ壊滅的に無いし、ぶっちゃければ同性愛者のレズビアンである。……こちらも言えば哀しむ(怒り狂う)ので両親には明かしていない。

 「鷹刈 麻琴」を筆頭として、仲間たちへセクハラを頻繁に行う。このセクハラモード時の彼女は仲間たちから“淫子”と呼ばれる。

 ……が、彼女たちが自分と同じ性的少数者でない事は知っているので、じゃれ合い・戯れに過ぎない。押し付けるつもりは微塵も無く、本気で嫌がることは絶対にやらない。

 彼女曰く「性的な興味はある」が「恋愛的な興味は皆無」とのこと。

 

 星群少女としては、『わし座』のコアを使用して『アルタイル・イーグル』へと変身して戦う。

 

 

容姿黒いショートヘアと黒い瞳の少女。何かに没頭する時は黒縁の眼鏡をかける。

 

以下、挿絵

 

【挿絵表示】

人間関係

偽十字 来栖気心の知れた友人。テスト前になると勉強を教えてあげている。

白鳥 星大切な友達で仲間。最初の友達。性別は割と早めに見破った。

鷹刈 麻琴大切な友達で仲間。なにこの可愛い生き物。

時金 貨月大切な友達で仲間。欲望に忠実に生きる姿を格好良いと思っている。

狐咲 てう大切な友達で仲間。可愛い。全力でモフりたい。

夜白 極命を救ってもらった大恩がある。

 



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キャラクター設定3【時計・子狐】

【必読】
本編ではありません。
本編を読んで、より詳しく知りたい方はご利用ください。

なお、挿絵は一部AIを使用して描いています。
あくまでイメージです。苦手な方は無視してください。


PC閲覧推奨。



★時金 貨月

 

名前 時金(ときかね) 貨月(かげつ)

一人称 私(わたくし)

年齢 16 誕生日 6月10日 

身長 165㎝ 体重 54.5㎏ 

星群少女名『タイム・イズ・マネー』

司る星座とけい座

所属組織時金グループ

極星機関

チーム七夕

南天

必殺技『スター・タイム・トラベラー』

▼自身が触れた物体(生物以外)の時間を加速または減速させる。

 全身をピッチリ覆うラバースーツは、この能力で肉体を加速させる為のモノ。スーツを加速させることにより、包まれた肉体ごと加速することを可能とする。

 

好きなもの時間。金。自分。

嫌いなもの無駄な時間。

 星雲高校2年β(ベータ)組の女子生徒。

 天下の巨大企業グループ『時金グループ』、その元締めたる『時金ホールディングス』CEOの娘。正真正銘のお嬢様である。

 時金グループの歴史は長く、始まりは小さな時計の専門店からだった。正確無比な時を刻む、緻密な装飾の時計を作り続けて来た老舗。その先祖代々継承・発展されてきた技術を様々な分野に応用させ、世代を重ねるごとに事業を拡大していった結果が、現在の時金グループである。

 実は()()()()()()()()()家系。数百年前、「とけい座」の星群少女が時計職人の男性と恋に落ち、子を成した。その血脈を受け継ぐ一族が時金である。その星群少女は愛した男の死と共に自ら命を絶ち、悠久の時を終わらせた。

 その後、星群少女の遺言に従い、彼女のコアを息子が懐中時計に加工。それを代々の当主が受け継いでいる。

 こうした経緯から、時金の一族は星群少女のことも熟知しており、人間と星群少女の間の調停・仲介役として歴史の裏で暗躍し続けて来た。それ故、各国政府や機関とも太いパイプを有し、その影響力は一企業の枠に収まらない。

 時金 貨月はそんな時金一族の末裔であり、時金グループ次期当主。

 口癖は、時金家に伝わる唯一絶対の家訓『時は金なり』。無駄な時間を何より嫌い、マルチタスク(ながら作業)をこよなく愛する。

 彼女の日常は同時並行的に進行する。常に“ながら”が当たり前。髪をセットしてもらいながら食事をし、風呂に入りながら勉強をし、授業を受けながら経営を行う。それが彼女の日常。

 そんな彼女にとって、「友人」とは例外なく「ビジネスパートナー」を意味するのであり、利用価値があるか否かで判断される存在――だった。

 しかし、「偽十字 来栖」「白鳥 星」「鷹刈 麻琴」「鷲平 韻子」「狐咲 てう」の5人との出逢いと交流を通して考えを改めた。この5人と過ごす時間は、彼女にとって損得勘定度外視で浪費して構わない掛け替えのない時間である。

 現在は、仲間たちと共に星群少女として北天の異変を解決するべく戦っている。その傍ら、学生としても経営者としても全力投球。彼女なりの「青春」を全力全開で謳歌しており、来栖と遜色ない程に人生を楽しんでいる。

 なお、その来栖とは同じ時計店で働いている。時金家の方針で“下積み”として働いており、生活に困窮していた来栖を雇った。

 

容姿金髪金眼の少女。

高過ぎず、低過ぎず。大き過ぎず、小さ過ぎず。瘦せ過ぎず、太り過ぎない――正に、完璧な黄金比の肉体を有する。

 

以下、挿絵

 

【挿絵表示】

 

▼金一色で、全身にピッチリと張り付いたラバースーツを身に纏う。

 彼女はスーツを時間操作で加速させ、肉体の移動速度を増して戦う……が、その為には肉体へ隙間なく張り付いている事が必要な故の恰好である。

 凄まじく恥ずかしい格好だが、本人曰く「私の身体に恥ずべき所など一切ありませんわ」とのこと。

 また、巨大な金時計を出現させ、その長針と短針を『剣』のように振るう事も可能。

 

 

人間関係

偽十字 来栖大切な友人。生活に困窮しているのを知り、自分が働く店舗で雇った。

白鳥 星大切な友人で仲間。最初は敵対していた。

鷹刈 麻琴大切な友人で仲間。もっと素直に生きれば良いですのに。

鷲平 韻子大切な友人で仲間。自分の未来は自分だけのモノ。両親に憚らず羽ばたけばよろしいのでは?

狐咲 てう大切な友人で仲間。時々避けられている気がする。

 

 

 


 

 

 

★狐咲 てう

 

名前狐咲(こざき) てう

一人称 てう

年齢 16 誕生日 7月17日 

身長 146 体重 42.0㎏ 

星群少女名『テウメッサ』

司る星座こぎつね座(仮)

所属組織極星機関

チーム七夕

(過去)『Typhon(テューポーン)

必殺技『フェウゴンタス・デュナタイ』

▼AEが持続する限り、森羅万象あらゆる脅威(攻撃)を絶対に回避する。この際、あらゆる物理法則も、たとえ運命ですら捻じ曲げる。

 

好きなもの星型のストラップ。稲荷寿司。油揚げ。

嫌いなもの犬・狼。怖いモノ全般。『Typhon』。

 星雲高校2年α組の女子生徒。

 

 正体は、謎に包まれた組織『Typhon』によって造り出された生体兵器。

 ……ただし、その製造法は強制的にAEを肉体に流し込むだけという杜撰な方法に過ぎない。ほとんどの人間が耐えられず、注入した直後に黒い泥(ダークマター)となって溶けて消える。万が一耐えたとしても決して長くは生きられない。そういう代物であり、生体兵器というよりは“実験動物(モルモット)”と表現する方が正しい。

 

 彼女は偶々、注入されたAEに()()()()適応できた。そして『テウメッサの狐』の――「何者にも絶対に捕まらない」という能力を発動して研究所から逃げ出す事に成功する。

 とはいえ、その“適応”は()()()()()()()()()()()()()程度でしかなく、保有するAEは正規の星群少女とは比べるべくもなく少ない。直ぐに能力発動に必要なAEが底を尽き、研究所の追手に捕まった。

 その際、研究者たちから『星群少女のコアがあれば死ななくて済む』、『本来の星群少女の足元にも及ばない弱さの、人間の星群少女が居る』という2つの情報を教えられる。

 彼女は死なないため、自由の身になるため――組織の思惑通りと知りながら動いた。人間の星群少女を殺し、そのコアを奪って逃げる(生きる)ために。

 

 こうした経緯で『はくちょう座』『こと座』『わし座』の命を狙ったが、紆余曲折を経て敗北。

 そのまま泥となって死にゆく運命だったが、そこで奇跡が起きた。長らく空席となっていた『こぎつね座』の枠に割り込む形で、『星群少女』として生きる事が可能となったのである。

 そんな事は絶対に有り得ず、原理も未だに解明されていない。全ては、少女たちの強い想い(願い)が結集し、膨大なAEの奔流となったが故に生じた奇跡だった。

 

 そうして少女は一命を取り留め、今は命の恩人である少女たちと共に平和を守るべく戦っている。受け取った戸籍と名前で、笑って泣いて青春を謳歌しながら。

 

 なお、口調がたどたどしいのは、長く研究と称して監禁されていたから。

 3年を経て流石に身についてきたが、未だに慣れない所が残っているようだ。

 

 

容姿茶髪ツインテールの少女。茶色の瞳。

 

以下、挿絵

 

【挿絵表示】

 

▼変身すると、狐の耳と2本の狐の尾が出現する。また、喪服のような黒い着物を身に纏う。

 なお、元暗殺者だけあり、この着物と尻尾の内側には暗器が詰まっている。

人間関係

偽十字 来栖友人(だと思う)。良く分からない不思議な人。命の恩人であるらしいが、直接見た訳ではなく実感は湧かない。ただ、一緒にいると落ち着く。少なくとも逃げようとは思わない。

白鳥 星仲間であり友人(と思ってくれていたら嬉しい)。大切な恩人。

鷹刈 麻琴仲間であり友人(と思ってくれていたら嬉しい)。大切な恩人。ただ、ちょっと見た目と言葉使いが怖い。不機嫌な時は逃げたい。

鷲平 韻子仲間であり友人(と思ってくれていたら嬉しい)。大切な恩人。モフってくる時は逃げたい。

時金 貨月仲間であり友人(と思ってくれていたら嬉しい)。マネーパワーが怖いので逃げたい。

 

★星空豆知識

『テウメッサの狐』

 ギリシャ神話に語られる雌狐の怪物。

 如何なる存在にも決して捕まらない……そんな運命を持っている。

 

 この狐は、里に降りては人間を殺戮して悪さをしていた。

 当然、人々は退治しようとするが、「如何なる存在にも決して捕まらない」という運命を持つ狐を捕まえる事は不可能。

 そこで、猟犬ライラプスに白羽の矢が立つ。「狙った獲物を絶対に逃がさない」運命を有する猟犬に。

 「絶対に捕まらない狐」と「絶対に逃がさない猟犬」。

 此処に矛盾が生じ、終わらない追いかけっこが続く――事は無く。どう転んでも運命に反してしまう結末を認めなかったゼウスによって、狐も犬も石に変えられてしまったのである。

 

 なお、「こぎつね座」は新しい星座。

 「テウメッサの狐」の説話の方がずっと古く、「こぎつね座」から考案された説話ではない。

 

 

 

 

 

 





以上。メインとなるキャラ7名の紹介でした。

今後とも当作品をお楽しみ頂ければ幸いです。


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【序章】
1話:商店街の福引で当たったチケットを渡してくるクラスメイト、現実で見たことない。


 

「おい(せい)、これやるよ」

「……なにコレ?」

 

 俺――偽十字(にせじゅうじ) 来栖(くるす)が話しかけるのは、教室で帰り支度をする白鳥(しらとり) (せい)

 背も小さいし、声も高いし、体つきは丸みを帯びているし、目はクリっとしているし、眉は細いし、なんか良い匂いもする……けど、正真正銘の男だ。

 幼馴染の俺ですら時々疑わしくなるが、幼い頃にちゃんと付いているのを確認している。この目でバッチリと。超凄い技術で作られた精巧なレプリカか、逆に非科学的な魔法で作られた幻影とかでも無い限りは本物だった。そして、そのどちらも現実的に考えて有り得ない。

 なので、彼が男であるのは間違いない。どっからどう見ても少女にしか見えないけれど、そういう美少年であるのだ。

 

「ほら、新しく出来た遊園地あるだろ? あれのチケットだよ。日にちは今度の日曜」

「え、凄い! 全然取れないって有名なのに!」

 

 会話を続けながら、チケットを入手するまでの道のりを思い出す。

 いやー実に大変だった。

 PCの前に張り付いて予約キャンセルを待ち、それでも無理だったから最終的に転売ヤーから高額で買い取る羽目になった。

 おのれ転売ヤー共、足元見やがってからに。バイト代が吹き飛んだじゃないか。

 というか、そもそも奴らが買い占めるせいで買えないのであり、本当に転売ヤーとは醜悪な存在だ。頭の上に鳥の糞でも落ちやがれ。

 とはいえ。そんな苦労話を明かす必要はない。

 

「なんか、たまたま商店街の福引で当たってな」

「……また? 来栖って運良いよね。色んな所の福引とか懸賞とか当ててばかり」

 

 ふむ。流石に使い過ぎたか。なんやかんやで嘘に使わせて貰うのは3回目くらいだしな。

 商店街の福引云々という文言は暫く控えるとしよう。懸賞も駄目となると……あとは来店100万人目とか、親戚から譲り受けたとか、SNSのお年玉企画に当選したとか……うーむ。全部何度も使ったことがあるぞ。困ったな。

 次までには新しい嘘を考えておかなければならない。

 

「ま、なんてったって俺はサザンクロスの男だからな」

「はは、またそれ。でも、君が当てたんだから君が行きなよ」

「いや。これも毎度の如く、用事があって行けない。捨てるのも勿体ないんで貰ってくれると助かるんだわ」

「なんというか……流石は“クロスラッキー”だね。二つ名に恥じない」

「うるせぇ」

 

 「クロス」に近しい「来栖」の名と、「十字」の姓。そこから自称して「願いを叶える花(サザンクロス)の男」……なのだけど、皆には「Close(今一歩の) Lucky(幸福)」と呼ばれている。誰が上手いこと言えと。座布団全部持ってって。

 

「うん、でも。そういうことなら有難く貰っておくね。ありがとう、来栖」

「良いって事よ。……あぁ、そうだ。1つ言い忘れてたんだが――」

「……?」

 

 だが! 無論、この俺が時間と手間となけなしの金をかけてチケットを入手したのは善意からではない!

 人間はそんな利他的な生き物では無いのだよ! 性善説など片腹痛し! 全ては俺の人生の楽しみの下ごしらえに過ぎんのだ!!

 

「――これ2人用だからさ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 瞬間。教室内でガタガタっと幾つかの椅子が激しい音を立てる。

 ククク、釣れた釣れた。大漁、大漁。チョロくて助かる。

 やべぇ、顔がニヤけそう。

 耐えろ。耐えるんだ、俺。ここで笑ったら怪しまれてしまう。

 

「遊園地デートしたいヤツ……?」

「隠さなくても良い。俺は知ってるぜ。誘いたいヤツがいるって。ソイツを誘って行けよ」

 

 数℃教室の温度が下がった気がする。いや、むしろメラメラと燃えているのかもしれない。

 そう。我が幼馴染はモテる。女みたいな顔だが、それは非常に整っているという事の裏返し。友人としての贔屓目無しでも彼はイケメンである。

 それに加え、性格は社交的で天真爛漫のお人好し、スポーツ万能で成績優秀と来ている。これがモテないはずがなく、彼の周りには常に女の子がワラワラと群がっているのである。何なら男より女と居る方が多い。良く一緒にいる同性の友人なんて俺くらいのものだ。

 そして、その少女たちの中には彼に惚れている……ガチ恋勢が何人もいるのであって。故にこそ、彼の周囲ではハーレム系主人公の運命とでも言うべき修羅場タイムが日常的に繰り広げられているのである。

 

「ふっ。それじゃあ、邪魔者は去るとしますかね。馬に蹴られたくはないしな」

「馬? 馬って何…」

 

 命短し恋せよ乙女。

 一斉に星の所へ向かう少女たちを尻目に、俺は颯爽と教室を去る。

 さてさて。今回は誰が一緒に行く権利を握るのだろうか。そこに至るまでのドタバタ劇を想像するだけで楽しくて仕方がない。

 

 

★★★

 

 

「せせせせ星サマ!? で、ででででででデートとは何です!?」

「まさかの、恋人、スキャンダル」

「おぉ!? 何処のどいつだ!? もうヤッたのか!?」

 

 “クールに去るぜ”とばかりに矢鱈と格好つけた仕草で少年が去って行った教室。

 そこでは少女たちが一人の生徒に詰め寄っていた。

 発言は順に、茶髪のツインテールが愛らしい狐咲(こざき) てう。乱雑に伸びた黒の前髪で目元を隠した少女、鷲平(わしひら) 韻子(いんこ)。長髪をピンクに染めた高身長の少女、鷹刈(たかかり) 麻琴(まこと)

 詰め寄られている生徒の名は、白鳥 星。白い肌に珍しい白髪。色素の薄い中にキラキラと金の瞳が映える。少女に見える男子……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「違うってば! ボクに恋人も好きな異性もいないよ! 多分、来栖が何か勘違いしてるだけだって!」

「ちっ、なんだ。いつものかよ。相変わらず意味不明だな、アイツは」

「納得、いつもの、お騒がせ。目的は、不明」

「あの人、本当に何がしたいのです……?」

 

 三人の疑問の声を聞いて、白い髪の少女は昔日を思い出すかのような遠い目をしながら呟いた。

 

「ボクも分からない。分からないけど、1つだけ分かる。どうせ今回も多分――」

 

 

☆☆☆

 

 

 はーはっはっは!!!

 今頃、教室では修羅場が繰り広げられている事だろう!

 だが、まだだ。まだ俺の下ごしらえは終わらない。

 俺はグルメなのだ。デザートまで含めたフルコースでなければ満足など出来ない。

 

「よぉ、時金(ときかね)

「あら、偽十字さん。ご機嫌よう。本日は(わたくし)に如何なる御用件で?」

 

 教室を去った流れのまま隣の教室へと向かい、そこにいる金髪の少女へと話しかける。

 お嬢様然とした彼女の名は時金(ときかね) 貨月(かげつ)。天下の巨大企業グループ『時金グループ』、その元締めたる『時金ホールディングス』CEOの娘。つまるところ、正真正銘のお嬢様である。

 

「星がデートをするらしいんだが、詳細を聞くか?」

「…っ! 聞きましょう」

 

 ふっ。計画通り食いついた。

 何を隠そう。こいつもまた、我が親友に好意を寄せるハーレムメンバーの一人である(俺調べ)。

 星のデートなんて話を持って来れば、時金は必ず遊園地へ向かうだろう。チケットが取れないとか関係ない。この女の財力なら遊園地を貸し切る事くらい造作も無いのだから。

 まぁ、時金は絶対にそんなことしないだろうけど。ちゃんとチケットを買った人たちの楽しみを奪ったりしない。ただ大株主として特別枠で招待されるだけだ。

 しかも。時金は正々堂々と戦うことを信条としている。唯一のデート相手に選ばれなかった哀れな敗残兵たちにも平等に機会を与えようとするのは間違いない。彼女はライバルである他の少女たち全員を招待することだろう。

 つまり、結果的にどうなるのかと言うと――

 

 

★★★

 

 

「――ほら、やっぱり。また今回も揃った」

 

 日曜、遊園地にて白鳥 星は呟いた。

 そこに集った仲間たちを見渡しながら。

 

「この時金 貨月ともあろう者が踊らされたようで癪ですわ」

「これこそ彼が意図的に仕組んでいる事だと、星サマは思うのです?」

「分かんない。ボクは長く彼と一緒にいるけど、彼が本当に考えている事が分かった事は一度も無いのかもしれない」

 

 そこで白髪の少女は一度言葉を切る。

 そして――

 

「なー、どうでも良いけどよ。オレって浮いてねーか? 遊園地とかガラじゃねぇんだよ。この服ヒラヒラして落ち着かねーしよー」

「はぁはぁ……。へへへ、大丈夫。麻琴は、誰より、可愛い」

「ぅひゃぁ! てめっ、韻子! どこ触ってんだ!」

「ぐへへ。麻琴の、公衆の面前では、言えないトコ」

「相変わらずキモイんだよ! この淫子! 離せ、離せぇえええええ!」

 

 普段はロングスカートと竹刀袋で往年のスケバンスタイルで過ごす鷹刈 麻琴は、今日は打って変わってミニスカートを軸とした女の子らしい格好をしている。

 そして、その恰好を恥ずかしがる彼女に向かって突撃し、荒い息を吐く鷲平 韻子。

 強い口調で嫌がってみせるピンク髪の少女だが、どことなく楽しんでいるようにも見える。そもそも、高身長の彼女が本気で抵抗すれば、小さな黒髪の少女など簡単にあしらえるはずなのだ。

 そんな見慣れた、けれど得難く大切な光景を見ながら、白髪の少女は「でも」と続けた。

 

「もしかしたら、ボクたちが少しでも一緒に居られるようにしてくれてるんじゃないかなって。そんなことを時々思うんだ」

 

 その言葉を聞いた少女たちは互いの顔を見合わせる。

 直前までワチャワチャと揉めていた少女2人も馬鹿騒ぎを止めて皆と目線を合わせ、そして――

 

「ぷふっ」

 

 ――誰ともなく小さく吹き出して笑い合う。

 

「まぁ、いつだって血生臭ぇ事ばかりだもんな」

「こういう、息抜きは、大切」

「思えば。(わたくし)たちの楽しい思い出はいつも彼が提供してくださっている気がしますわね」

「確かに、そうかもです!」

 

 そんな風に、大切な仲間たちが笑い合う姿を見て、白髪の少女も笑う。

 そして、彼女は皆に呼び掛けるように言葉を紡いで――

 

「じゃあ、せっかくだし! 日々の戦いを忘れて今日は目一杯遊んで――」

 

 ――瞬間。遊園地に響き渡る、絹を裂くような悲鳴。

 誰かが助けを求める声を耳にして、少女から笑顔が消えた。

 彼女の表情は既に友達と休日を楽しむ女の子のものではなく、過酷な戦いに身を投じる戦士のソレとなっていた。

 

「ちっ。また来やがったか。クズ共が」

「残念ですわね。休暇はここまでのようですわ」

「最悪の気分です。ボコボコにしてやるです」

「塵も、残さない」

 

 それは他の少女たちも同じ。

 彼女らは、それぞれ星型のネックレスを握りしめると叫んだ。

 

「――変身っ!」

 

 

☆☆☆

 

 

 そして、その頃。少年は――

 

「ねぇ、君。ヒロインになってみる気はない?」

「……なんじゃ、人間の小童。ワシは貴様如き小物に構っている暇はないのじゃ。ワシの気が変わらぬうちに去れ」

「おぉ! のじゃロリ属性か! 最高じゃん! うんうん、そこそこヒロインの数が増えてきた段階で加わるダークホースとしては最高だな!」

「……お主、何を言っておる?」

「ちなみに、主人公の写真はこんな感じ。かなりのイケメンだろ?」

「な!? 其の首飾りは…! 貴様、此奴を知っておるのか…っ!」

「あ、なに。もう知ってる感じ? 流石イケメンは顔が広くて助かる」

「知ってるに決まっておろう…! 此奴らはワシらから大切なモノを奪ったのじゃ……!」

「ふむふむ。ツンデレ系ヒロインか。まぁ、アイツが人様のモノを盗むわけも無いし。すれ違いや誤解を乗り越えて深い信頼関係を築くパターンで間違いないな。素晴らしい」

「おい小童! 此奴は今どこにおる…!」

「あそこの新しく出来た遊園地にいるはずだぞ」

「感謝する、小童! 後で必ず褒美を取らせるでな!」

「いってらっしゃーい」

 

 ――なんか敵を増やしていた。

 

 

 

 



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2話:シリアスな場面で呑気に日常の話題を持ち出してくる奴、現実にいたら相当ウザくて仕方がない。



9点評価と感想…!? 感謝感激です!
ありがとうございます!






 

「アストロラーベ・フィールド展開!」

 

 白髪の少女、白鳥 星の一言で世界が変わる。

 昼から夜へ。日常から非日常へ。

 雲一つない晴天は満天の星空へと塗り替えられた。

 この領域は、名をアストロラーベ・フィールド。彼女たち星群(せいぐん)少女のみが展開できる特殊な空間にして、彼女たちが命を懸けて戦う戦場だ。

 

「あの日の傷を星に変えて! 白き翼で北天に舞う!」

 

 白髪の少女の言葉に呼応するように、造られた星空の中で9つの光が一際強く輝いた。

 星々は白い光の線で結ばれていき、1つの星座を象っていく。

 その星座、『はくちょう座』が完成した時――

 

「変身っ! 星群少女『キュクノス・リグリア』!」

 

 ――少女は消え、戦士が舞う。純白のドレスに身を包んだ戦士が。

 

「鼓動せよ、牽牛の心臓。羽ばたけ、荒鷲の翼」

 

 黒髪の少女、鷲平(わしひら) 韻子(いんこ)が歌うように紡げば、11の星が輝き、繋がり、『わし座』が形成される。

 そして――

 

「変身、星群少女『アルタイル・イーグル』」

 

 ――青い羽衣を翼のように広げ、蒼き少女が降り立つ。

 

「悲劇のヒロインも哀しみの音色もオレには似合わねぇ! 引き離されたら飛んできゃ良い! 誰より速く、力強く!」

 

 桃色髪の少女、鷹刈(たかかり) 麻琴(まこと)が吼えれば、5つの星が『琴座』を描き――

 

「変身、星群少女『ベガ・バルチャー』!」

 

 ――桃色の羽衣を拳に巻き付け、紅き少女が飛び立つ。

 

「逃げるだけの力でも誰かを守れるです! そう教えてくれた人たちがいるのです! だから…! だから、てうは逃げずに戦うのです!」

 

 茶髪の少女、狐咲(こざき) てうがフンスと意気込めば、5つの星がグネグネ曲がりながらも真っ直ぐに『こぎつね座』となって――

 

「変身、星群少女『テウメッサ』!」

 

 ――耳と尻尾をはやした狐少女が宙を跳ねる。

 

「時は金なり。最短最速で片を付けさせて頂きますわ」

 

 金髪の少女、時金(ときかね) 貨月(かげつ)が高らかに宣言すれば、6つの星が煌めき『とけい座』として時を刻み始め――

 

「変身、星群少女『タイム・イズ・マネー』!」

 

 ――黄金のラバースーツに身を包んだ、金色の戦士が君臨する。

 

 ここに5人の戦士が揃った。

 星が最後に一層強く光るように。流星が燃えながら煌めくように。

 死と隣り合わせの闘争の中、彼女たちは誰より美しく輝く。

 

 

★★★

 

 

「ひゃあああああああ! この力はスゲェ! まさにチート! 俺は主人公になったんだぁああああ!」

 

 悲鳴が聞こえた方へ向かえば、案の定。

 適正も無いのに無理矢理AE…アステリズム・エネルギーを摂取してしまった人が暴れている。

 壊された遊具は…メリーゴーランド1つ。倒れている人が2人。生死・怪我の詳細は共に不明。

 悔しい。少しだけ遅かった。守り切れなかった。

 でも。普段よりずっと被害は少ない。ボクたちが近くに居たから、直ぐにアストロラーベ・フィールドを展開できたから。

 この固定された領域内なら、これ以上の被害は出ない。ボクたちの命が尽きない限りは。

 

「今まで俺を見下していた奴らぁああああ! 俺より幸せな奴らぁあああ縺ゅ≠あ!! 全員、ぜ繧いん、縺カ縺」縺薙o縺励※縺医∴縺医∴縺医∴!!!!」

 

 あぁ。

 もう人格の崩壊が始まってしまっている。……この人は、もう手遅れだ。

 真っ黒な泥…『ダークマター』が体中から溢れ出して元の姿を判別する事も出来ないけれど、恐らく大人の男性。

 AEの力は年若い少女の…それも適正のある極々一部の者にしか扱えない。大人の男性なんて絶対に無理。ましてや、彼に渡されたであろう劣化版…いや、失敗作なら尚更。

 ……悔しくて、辛い。こうなる前に彼を救えなかったことが何より悲しい。

 

「わりぃが、オレに譲ってくれねぇか。奴は一発殴らねぇと気が済まねぇ」

「構いませんわ。ただし2分以内で頼みますわよ」

 

 やり切れぬ思いに折り合いをつけていたら、いつのまにか話がまとまっていた。

 麻琴ちゃん……否、ベガ・バルチャーが桃色の羽衣を手にグルグルと……グローブのように巻きつけて前へ出る。

 

「へっ、1分もいらねぇよ!」

 

 そして。高く高く跳躍すると、そのまま上空から――

 

「必殺! コンドォォォォォォォル・パーンチッ!!!!」

「縺ェ繧薙□縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠!!!!!??????」

 

 桃色の流星が炸裂し、その一撃で戦闘は終了した。

 

 

★★★

 

 

「相変わらずパッとしない妙なネーミングの必殺技ですのね」

「ハヤブサのキャプテン様リスペクトに決まってんだろうが! てか、『タイム・イズ・マネー』なんてヘンテコな名前のテメェにだけは言われたくねぇよ!」

「あら? これが時金家の唯一絶対の家訓でしてよ。恥じる必要などありませんわ」

「それを名前にするのが変だっつってんだよ!」

 

 周囲に他の敵性存在がいないか、何か黒幕への手掛かりはないか、そういったことを調べて帰ってくると、ベガ・バルチャー(   麻琴ちゃん   )タイム・イズ・マネー(   貨月ちゃん   )が何やら言い合っていた。

 まぁ、いつものことではある。あの二人は事あるごとに衝突してばかり。

 ……でも、戦闘の時の息はピッタリだし、何やかんや言っても信頼し合っているのは傍目にも明らか。2人とも素直じゃないだけなんだよね。

 そんな心温まる光景を尻目に、テウメッサ(てうちゃん)アルタイル・イーグル(   韻子ちゃん   )と情報を共有していく。

 

「一応、倒れていた人たちは、無事。治療すれば、大丈夫」

「そっかぁ、良かった。……あの暴れていた人は?」

「死んでは、いない。けど、生きているとも、言わない。言えない」

「………………そっか」

「機関への連絡はしておいた、です! 後処理、治療、記憶処理諸々全て恙なく。到着までフィールドは維持されたし……とのこと、です!」

「ありがとう、てうちゃん」

「えへへ~、です!」

 

 苦々しいモノも残るけど、それでも普段よりずっと軽い。

 被害がずっとずっと少なかったから。

 

「もしかして、だけど。彼は、偽十字 来栖は、これを狙っている? 襲撃があることを、知っていて、それで」

「……まさか。彼は正真正銘一般人の()()高校生だよ。AEにだって関われる訳ない」

「そうだと、良い。でも、警戒は、忘れちゃ駄目」

「…………うん、そうだね」

 

 そうして。

 嫌なモノを飲み干して、また日常へ戻って行こうとして――

 

「見つけたのじゃ! 喰らい尽くすは、金剛の(あぎと)反正(はんせい)、星群少女『ドラゴンボーン』!」

 

 ――銀髪の少女の声で再び非日常が加速していく。

 

 

★★★

 

 

 少女は一瞬で竜となった。

 全身が()()()()()()()()()()で出来た、全長10メートルはくだらない()()…ティラノサウルスに。

 

『GaAAAAAAAAAAAAA!!!!』

「なんッだよ、コイツは!」

「恐らくは()()()の星群少女ですわね!」

「おいおい、それって南天の!」

「えぇ! 南天最強の一角! 最も硬き者、不動の金剛竜に違いありませんわ!」

 

 軽口を叩き合いながらも、息の合ったコンビネーション、怒涛の連続攻撃で攻め立てる2人。

 でも、金剛の竜はビクともしない。全ての攻撃がまるで効いていないかのよう……いや、実際に効いていないのだろう。

 

「そもそも竜骨って船の部品じゃねぇのかよ! っぶね…!」

「滅茶苦茶なのは毎度のこと! そんなの今更ですわ! くっ…!」

 

 対して、向こうの攻撃は正に必殺。あの巨体に眠るパワーと、硬く鋭利なダイヤモンドの牙。一度でも噛まれれば絶体絶命。

 そもそも、タックルされるだけで無事では済まない。

 ……つまり、出し惜しみをしている場合じゃない。なんで襲って来たのかとか、全部全部分からないことだらけだけど。そんなのは後回しだ。

 

「ベガ! アルタイル! サマー・トライアングルで決めよう…っ! テウメッサとタイムは発動までの時間を稼いで…!」

「へへっ! そう来なくっちゃな…!」

「愛の、共同作業」

「時間稼ぎは任せて、です!」

(わたくし)の時間は高いですわよ! なるべく早く終わらせて下さいまし!」

 

 正直、この技が通じるかどうかも分からない。

 なにせ相手は南天最強の一角。正真正銘の怪物。

 それでも、ボクたちは……ボクはこんな所で終わるわけにはいかないから。

 ボクに力を託してくれた2代目『ノーザンクロス』、『キュクノス・ヒュリエ』の想いに応えるためにも……!

 

「じゃあ、いくよ……!」

 

 そうして。

 ボクたちの最大火力の大技、その発動へ繋げようとして――

 

「……え?」

 

 ――そのタイミングでボクの電話が鳴った。

 そして、何を隠そう、この着信音は親友の来栖だ。

 まぁ、普通は出るわけがない。命懸けの戦闘中に電話になんか応じるわけがない。

 けれど。

 

「……えっと、どうしよう?」

「…………出た方が、良い。これまでの、アレコレを、考えると」

 

 アルタイルの言葉に、各々戦闘を続けながらも全員が大きく頷く。

 そう。彼には謎の信頼がある。

 こういう時の彼は、いつだって重要な情報を投下していくのだ。

 日常100%の会話をしながら、謎の言い回しで状況打開のヒントを残していく。

 だから、今日もボクは。足止めを他の星群少女に任せて。

 戦闘中にも拘わらず、通話を繋げた。

 

 

☆☆☆

 

 

「やーやー! マイフレンド! どうだい、調子は!?」

『どうだいも何も、修羅場真っ最中だよ……!』

 

 おー! 想定通りに修羅場ったらしいな!

 重畳重畳。親友の修羅場で飯が美味い!

 だが、それを声音にも言葉にも絶対に出さない! 悟らせない! 絶交されたら楽しめないからな!

 

「修羅場……? あぁ、そうそう。そっちに銀髪のロリっ子が向かったんだがな。チケットなんか持ってないはずだって気付いてさ。そっちで何とか上手くやってあげて欲しいんだわ」

 

 本来ならデート相手選びからの全員集合という2段階の修羅場で終わる予定だったのだが、そこにダークホース参入という3段階目まで用意できたのだ。

 忘れずに伝えておいて、ちゃんと合流してもらわねばならない。まぁ、時金のマネーパワーがあれば問題なかろう。

 

「え? もしかして来栖の知り合いなの……?」

「ありゃ? もう合流してたのか?」

「合流といえば、合流してるけど……」

 

 なんだ。何がどうなったのか不明過ぎるけど、グッジョブだ。

 言葉の歯切れが悪くて言いよどむ感じは、間違いなく眼前で修羅場を目の当たりにして当惑しているが故の反応だろう。

 ニヤニヤが止まらないぜ。

 

「合流してるなら良かった。その子、悪い子じゃ絶対にないからさ。仲良くしてやってくれると助かるわ」

「悪い子じゃ、ない……?」

 

 おや。変な反応だな。

 なるほど、泥棒猫メスガキムーブで飛ばしまくったんだな。そら第一印象も悪くなっちゃうのも無理ないわ。

 このままでは銀髪のじゃロリがヒロインレースから脱落してしまいかねない。

 というわけで、少し背中を押してやるとしよう。何かしらの因縁が過去にあった感じだったので、それを上手く利用する方向で。

 

「――あ、そういえば、お前に何かを盗まれたとか言ってたぞ。駄目じゃないか、どうせハートでも盗んだんだろ、罪作りな奴だな!」

『盗む……?』

「そうそう。確かにそう言ったぜ、お前の写真に写ってた星型の首飾りを見て――」

『そうか……! ありがとう、来栖! 今は忙しいから切るね!』

 

 ……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………ふひっ。

 これは? これはこれはこれは??

 これは間違いなく大成功ですね! ありがとうございます!

 今の反応、100%過去の出来事を思い出した感じじゃん。ポッと出のヒロインが実は……的な展開じゃん。ダークホース現るじゃん。

 これは明日、学校で人間関係の変化を観察するのが愉しくなりそうだな!

 

 ただ、ちょっと後ろの音が激しすぎる気がしたんだけども。

 あの遊園地は、そんなに激しいアトラクションがあるのだろうか?

 それとも、殴り合い上等のキャットファイト修羅場に突入しているのだろうか?

 流石に怪我人がでちゃうのは勘弁してほしんだけどな。でないと、俺が心の底から楽しめなくなっちゃう。

 

 



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3話:帰宅して“おかえり”言ってくる美少女、夢シチュ過ぎて通報とか出来るわけない。

 

「……盗む。そっか、そういうことか」

「何か、分かった、キュクノス? ……キュクノス?」

 

 確かに、本当の星群少女からすれば、ボクらは88の席を卑怯非道で奪った敵に見えるのかもしれない。いや、もしかしたら先ほど暴走していた男の人と大差なく捉えられている可能性すらある。

 まして、()()と交流があった存在からすれば尚の事。たとえそれが北天と南天という敵同士の関係性であろうとも、それでも好敵手として認めていた者がいても何も不思議じゃない。

 だって初代は、あんなに素晴らしい人だったから。

 

「星サマ、何をしているです!?」

 

 変身を解除。

 そのまま、両手を広げて竜の前へ仁王立つ。

 

「おい、キュクノス! この馬鹿……!」

「皆さん。ここは彼女に任せてみましょう」

「ですけど…!」

「彼女のことを信頼していないんですか?」

「っ…!」

「……くそっ。卑怯だろ。その言い方は」

「申し訳ありませんわ。ですが今は、私たちの北十字を信じましょう」

 

 皆を止めてくれてありがとう、タイム(貨月)

 思えば、君にはいつも助けられてばかりだ。

 その信頼に応えられるかは分からないけれど。でも、ボクはボクの全力を尽くすよ。

 それに。来栖が“悪い子じゃない”と言ったから。それなら、きっと大丈夫。

 

「聞いてください! ボクたちのAE結晶は譲り受けたモノです! 先代の星群少女から!」

『…………ほう? それが事実だとして、奴らは何処じゃ。何故、貴様ら脆弱な人間如きに力を託した』

 

 ほら、ちゃんと止まって聞いてくれる。

 ボクの親友の言った通りだ。

 

「初代ノーザンクロスは死にました」

『死んだ、じゃと? ……戯言を。奴が容易く死ぬわけがあるまい』

 

 その通りだ。

 それでも。それでも死んだ。殺された。

 あの誰より強くて優しい戦士たちは、もう何処にもいない。

 それが事実。まごうこと無き、ただの真実。

 そして――

 

「ヘルクレスたちが狂気に堕ちた日、北天が闇に染まった日。白鳥、鷲、琴は最後まで気高く戦い、そして――ボクを庇って死にました」

 

 そんな悪夢を生み出したのは、他ならぬボクだ。

 

『……畢竟、貴様のせいで奴らは死んだのじゃな?』

「はい」

 

 その通りだ。

 初代はボクを護って死に、その後ずっと修行をつけてくれた母親代わりの2代目も死んだ。

 全てはボクの弱さ故。ボクが無力だった故に、彼女たちは死んだ。

 

『人間とは斯くも愚かであったのか。それを告げて如何な末路を迎えるかも分からぬとはな』

 

 金剛の顎が迫る。

 でも逃げない。目を閉じない、逸らさない。

 あの人(初代)がそうだったように。あの人(2代目)が教えてくれたように。

 

「ボクは3代目ノーザンクロス、キュクノス・リグリア! この受け継いだ名に誓って、貴女に嘘偽りを述べるわけにはいかない! あの十字の輝きに恥じぬ為に!」

 

 そう言いきれば、彼女は。

 

『…………。…………くっ。くく、くははははははは!!』

 

 笑った。

 

『くくく。何とも奴ららしいのぅ。奴ららしく愚かで、滑稽で、間抜けで――何より美しい最期じゃ』

 

 空洞の、涙流れぬ瞳で。

 肉のない、歪まぬ口で。

 どこか悲しそうに、寂しそうに哄笑した。

 

『そして主もまた、実にノーザンクロスらしい。奴は実に良き後継を持った』

 

 そして彼女は。

 変身を、金剛の鎧を解いていく。

 巨大な骨が微細な粒子となって散っていく。ダイヤモンドダストのように輝きながら。

 

「よかろう。3代目ノーザンクロス、キュクノス・リグリア。こちらの名乗りがまだじゃったな。非礼を許せ」

 

 そのまま、銀髪の少女の姿となった彼女は告げた。

 

「ワシは竜骨とダイヤモンドクロスを司る者、レクシィ・X・ディアマンテじゃ」

 

 

★★★

 

 

「――なるほどのぅ。ヘルクレス共が。確かに、奴らが相手であれば流石のノーザンクロスといえども苦戦は当然じゃが……しかし、まさか北天が斯様な惨状になっていようとは」

 

 過去10年で起きたことを掻い摘んで話終えると、骨だけで出来た椅子に座りながら黙って聞いていたレクシィさんは難しそうな顔で唸り始めた。

 でも、それも当然か。当事者として関わってきたボクたちも分からない事の方が圧倒的に多い。なぜヘルクレスたちが反旗を翻したのかも、何も分からないままだ。

 

「そもそも、黄道(こうどう)どもは何をしておるのじゃ。普段から散々威張り散らしておるのは、こういう時の為じゃろうに」

「十二星座は静観を決め込んでいます。この10年間、解決に動く事は一度もありませんでした」

 

 それどころか不可思議な動きをし続けている。

 2か月前まで10年間ずっと。南天と北天を完全に分断して交流を絶っていたのは、他ならぬ黄道たちだったのだから。

 

「どうやら知らねばならぬ事が山積みのようじゃな。……よっと」

 

 そして。そこまで聞くと、レクシィさんが椅子から立ち上がる。

 椅子は彼女が離れると同時にバラバラと崩れ、キラキラと光る粒子になって消えていった。

 

「有益な情報、感謝するのじゃ」

 

 そして彼女は一度にこやかに感謝を述べると、直後に表情を一変させて告げた。

 

「此度は情報提供への感謝と、誤解したまま名乗りもせず戦ったワシの非礼に関する詫び、それらを合わせて貴様らを見逃す。じゃが、次は別じゃ」

 

 それは正に獰猛な肉食獣の笑み。獲物を見つけた竜の顔。

 

「確かに、貴様らは未熟極まりなく、ワシの足元にも及ばぬかもしれぬ。されど、ノーザンクロスと認めた以上ワシの宿敵。次に相争う時は容赦せぬぞ」

 

 それは恐怖の宣告だった。間違いなく、そのはずだった。

 今のボクたちでは逆立ちしたって勝てない相手から敵として認識されたのだから、当然。

 だけど、不思議と恐怖よりも高揚感が勝った。初代の宿敵であり続けたダイヤモンドクロスから、ノーザンクロスを継ぐ者と認められたことへの。

 

「――あぁ、そうじゃった。最後に1つ、主らのバックにいる者らに話がある。ここで待っていれば会えるんじゃったな」

 

 バックにいる? 極星機関のことだろうか?

 確かに、後処理の為に機関の専門部隊がやってくることになっている。いるけれど……。

 

「会えるはずです。ですが、一体どんな話を?」

「なに、実に簡単な頼み事じゃよ。ワシが北天で好き勝手に暴れ回るよりは遥かにマシな、のぅ」

 

 

☆☆☆

 

 

 少し時給の上がる日曜のバイトを終えた俺は、最高の気分で帰路についていた。

 それというのも、修羅場突き落とし計画がオマケまでついて順風満帆に進んだからに他ならない。

 正直、明日学校に行くのが楽しみ過ぎる。

 一体全体どんなふうに拗れてるのだろう? それとも一夜で覚悟を決めてハーレムルートに突き進んでいたりするのだろうか?

 もし仮に、一人に決めて将来的には結婚まで行ったとしたら、その時は何気ない顔で友人としてスピーチがしたい。修羅場製造に青春を捧げていたことなど決して悟られること無く、厚顔無恥にもライスシャワーを撒いて結婚を祝したい。

 

「しゅらばらら~しゅしゅらばらばら~ばらしゅららら~♪」

 

 上機嫌に即興の鼻歌を歌いながら、誰もいない家の扉に鍵を差し込――む?

 開いている。閉め忘れたのか?

 ………………。

 ………………………………………………………………ええい、ままよ!

 

「おお、おかえりじゃな」

 

 ――バタン。家に入らず扉を閉める。

 んんんんんんんんんんんん????????

 おかしいな。バイトで疲れているのかな。昼間のダークホース(予定)のじゃロリ少女がいたんだけど??????????

 家は――間違えてないな。じゃあ、俺は間違えていないな。

 いやでも、それならそれでどういうこと? 遊園地で星たちと遊んで、その後で何があったら俺の家に来るんだ?

 うーーーーーーん。分からん。これあれだな、考えても絶対に分からんやつだな。

 それなら、もう俺の選択肢は決まっている。やることなんて1つだけだ。

 

「なんじゃ開けたり閉めたり忙しない奴じゃな。ほれ、さっさと家に入れ」

 

 ガチャリと扉を開けて。

 すぅーっと息を吸って、全力全開で一言。

 

「ただいま!」

「うむ、おかえり」

 

 この全男子高校生の夢のシチュを楽しむしかあるまい。

 

 

 








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4話:“妹属性”キャラ0人の大所帯ハーレムもの、ほぼほぼ存在しない。


あわわ…凄く伸びてる……



 

☆☆☆

 

 

 その少女の容姿は人並み外れていた。……まぁ、当然といえば当然だ。この俺がダークホース足りえるNewヒロインとして、警察に通報される危険を冒してまでスカウトした人材なのだから。

 最も目を引くのは、その特徴的な髪色。一番近い色は銀だと思うが、それを銀髪と称して良いかは甚だ疑問が残る。

 銀には違いないのだろう。しかし、やけに透明感があって、どことなく青みがかっていて、光を反射して艶やかな光沢を放つのだ。

 例えるならば、そう。まるでダイヤモンドのような髪色。俺の語彙では適切な言葉が浮かばないから、銀髪と称するしかない……そういう髪色をしている。

 肌は新雪のように白く、瞳は夜空を閉じ込めたような深い深い蒼。瞳の奥にキラキラと星が瞬いているような、そんな錯覚にすら陥る。

 つるぺたでこそあるが、それを補って余りある圧倒的な美。

 そんな人外の美貌を有した少女が小さな口を開いて紡いだ言葉は――

 

「ワシは偽十字 レクシィ。其方(そなた)の腹違いの妹にあたる。出来れば、この家に住まわせて欲しいのじゃ」

 

 妹、だと……?

 

 

★★★ 

 

 

 偽十字(にせじゅうじ) 来栖(くるす)

 この少年の言動が不可思議であるのは誰の目にも明らか。それは僅かな会話を交わしただけのワシにすら分かる程であり、長く共にいた今代のノーザンクロスたちは尚更強く感じていることだろう。

 そもそも、ワシは10年間ずっと南天にいたし、何なら寝ていた。30年程前にノーザンクロス……初代ノーザンクロスと戦った傷を癒すべく眠りにつくこと10年。起き上がるのが面倒くさかったので10年追加で微睡み、20年ぶりに起きてみると南天と北天の行き来が禁止されていた。

 当然、黄道どもに抗議してみたが糠に釘。ブチ切れて喧嘩を売ったが、12対1では多勢に無勢。加えて、何故か“  南冠  (みなみのかんむり)”と“祭壇”がワシを叱責し、謹慎まで命じてきたのだ。不貞腐れたワシは再び眠りについた。

 そのまま10年眠り、目覚めてみれば封鎖は既に解除されていた。故、喜び勇んでジパング観光も兼ねて再戦に来たのだ。

 だが、そこで白鳥の力を用いて戦う見知らぬ戦士を目撃、不思議に思ってノーザンクロスを探しても見つからず。あの戦士が力を奪ったに違いない……そう誤解して探し回っていたという経緯がある。

 

 ……まさか正体が人間で、しかも表向きは“男”として生きているとは思わなかったが。道理で見つからないはずだ。

 

 なんにせよ、ワシがダイヤモンドクロスとして人前に姿を顕すのは3()0()()()()。当然、普通の人間ではワシが何者かなど分かるはずがない。ましてや十数年しか生きていない小童が知っているはずがないのだ。

 だというのに、この小童は…偽十字 来栖はワシをノーザンクロスと引き合わせた。探し求めていた存在へと。

 これを偶然と片付けるのは流石に無理がある。

 だが、そうであるなら尚のこと不可思議極まりない。人間で、幻術詐称の類ではない正真正銘の男で、しかも齢僅か16。そんな小童が、星群少女の事情を当の本人たちよりも把握している……そんな奇妙奇天烈な状況が見えてきてしまうのだから。

 無論、未来視や読心といった特殊な力の持ち主である可能性もゼロではない……ないが、やはり性別が問題となってくる。

 ともあれ。この少年がワシすら知らない何らかの情報を持ち、未知の目的の為に行動しているのは間違いない。

 そうなってくると、決して無視できない重要なことが1つ。それ即ち、少年が()()()()()()()()()()()()()、だ。

 北天、南天、黄道。その大別の中にも複数の派閥や対立が存在する。また、近頃は88の座に属さない未知の星群少女まで確認されているそうだ。暴れ回るだけの劣化星群少女まで存在するらしい。

 そうした情勢下にあって、少年が何れの陣営に属しているかは非常に重要だ。なにせ彼は北天・南天双方の情報を把握しているのであり、後々敵対する場合に厄介な存在となりかねない。

 

 ……もっとも、その程度のことは“極星機関”とやらも危惧し調べていた。だが結局、いくら調べても何処かの陣営と繋がっている事実は確認されなかったそうだ。

 それ故、現状は完全グレーな存在として野放しにされている。迂闊に引き入れれば内部情報が流されてしまう可能性もあるし、かといって手荒な手段は開戦の口実となりかねない。

 畢竟、少年が真に所属する陣営が明らかとならない限り、自由にさせておくしか手段がないのだ。泳がせていると言えば聞こえは良いが、実際は打つ手なしの傍観に過ぎない。

 これこそが狙いなのだとしたら、少年と彼が属する陣営は実に狡猾で戦上手と言えよう。

 

 そんなわけで。ワシは此処に来た。少年が住む家へ。要求を受け入れなければ暴れ回ると機関の連中を脅して偽りの戸籍を入手して。

 全ては少年が所属する陣営を明らかとするため…………()()()()

 それを知りたいだけなら少年を力で脅して聞き出せば良いだけだ。

 ワシからすれば北天や極星機関の事情など関係ない。もっと言えば南天すら正直どうでも良い。開戦の口実になる危険性など知った事か。如何なる陣営であれ、対立するなら正面から戦って叩き潰す。

 むしろ、強敵となってくれるのならば望むところ。どんどん暗躍して強大になってくれれば良い。強ければ強い程、打ち倒す喜びは大きくなる。

 

 では何故、此処に来たのか。少年の“妹”と偽ってまで家に上がり込んだのか。

 決まっている。

 

 ()()()()()()()。それだけ。

 

 そもそもの話、何故ワシら星群少女が数千年も戦い続けているのか。北天と南天が争い続けているのか。

 それには古代の約定やら協定やら法やら、ワシらの使命やら存在理由やら諸々が関わってくる。関わってくるが、全ては些事。無視しようと思えば無視できる些末事に過ぎない。

 詰まる所、根幹にあるのは()()。果てしなく続く命が生み出す、停滞という名の地獄。

 身も蓋も無く言ってしまえば暇なのだ。暇だから戦っている。ルールやら陣営を定めて戦い続けて来た。

 故、ワシは愉しいことを求める。娯楽を求める。悠久の倦怠を吹き飛ばす悦楽を。

 

 加え、少年には1つ恩がある。ワシをノーザンクロスの後継と引き合わせてくれた恩が。

 今代のノーザンクロスは未熟極まりないが、将来的な楽しみが出来たのは間違いない。宿敵(トモ)たちの最期も知る事が出来た。

 

 更に、今の北天で起こっている事態の詳細を把握する必要があるのも事実。

 ……ワシの獲物(はくちょう)を横から掻っ攫った不届き者(ヘルクレス)どもにケジメも付けねばならんし。背後に黒幕がいるなら牙を突き立ててやらねば気が済まない。

 そして、その為には北天における拠点が必要不可欠。人ならざる不老の身であっても、肉の器に縛られている以上は腹も減るし、雨風に晒されれば風邪もひく。故、寝床となる場所を早急に用意しなければならないと思ってはいたのだ。

 

 これら全てを総合的に勘案した結果、ワシは偽十字 来栖の家に居候すると決めた。

 この少年の傍にいれば、必ず波乱が起きて面白い。

 目的も陣営も分からずとも、それだけはハッキリとわかるのだ。確信できてしまうのだ。

 何故なら――

 

 

☆☆☆

 

 

「――というわけじゃ」

 

 銀髪ロリの話をまとめると、こうだ。

 彼女の名前は偽十字 レクシィ。俺とは腹違いの兄妹という関係性らしい。

 あっちにふらふら、こっちにふらふら、世界中を放浪して家に帰ろうともしないクソ親父が、どこぞの国で誰ぞとニャンニャンして彼女が誕生したらしい。

 それで、なんやかんやあって天涯孤独になった為、紆余曲折を経て晴れて日本国籍を取得。ここに住む許可を貰いにやってきた、と。

 ふむふむ。いや、どう考えても怪し過ぎでしょ。たまたま出逢った銀髪のじゃロリが俺の腹違いの妹で、1つ屋根の下で同棲生活スタートとか。

 普通に考えて、信じる方がどうかしている内容。……なんだけれど。

 

「あのクソ親父なら普通にあり得るな」

 

 この一言で全て片付く。奴ならやりかねないという最低最悪の信頼がある。俺の想定を軽々超えて面倒を引き起こすのがマイファーザーなのだ。

 いつ何時も自分の欲望が最優先。周りの迷惑なんか考えずに好き勝手して、周囲の人間を振り回すだけ振り回して。それで満足したら去っていく台風みたいなクソ野郎。何があろうともアイツのような人間にだけは絶対になりたくない、そう思いながら日々を()()()()生きている。

 

「それで、どうじゃろうか?」

 

 しかし、一つ屋根の下に住む……か。

 それは――

 

 

★★★

 

 

「無論、無理強いはせん。難しければ諦めて野宿をしつつ家を探すとしよう」

 

 こう告げれば、貴様は絶対に否とは言うまい?

 長く生きていると色々な事が分かるようになる。例えば、そう。()()()()()、とかな。

 目的も陣営も不明のままなれど、ワシの竜の鼻は確かに嗅ぎ分けた。感じ取った。

 ひたすらに娯楽を求めて彷徨い続ける。至上の悦楽の為なら、如何なる苦痛も労苦も喜んで受け入れる。……そんな同族(破綻者)の臭いを。

 

 のぅ、偽十字 来栖。

 ――貴様、根本的にはワシと同類じゃろう? 

 

 

☆☆☆

 

 

「いや、別に良いぞ? ボロだけど、スペースだけは余ってるしな」

 

 ――腹違いの妹? 一つ屋根の下? 全然OKです!

 

「……良いのか?」

「もちのろん。善は急げだ、部屋の準備をしてくるよ」

 

 断る理由なんか一切ない。あるわけがない。

 だって、だってさ――

 

「感謝するのじゃ。それと、己の部屋くらいワシ自ら整えよう。手土産に夕飯を用意してる故、それを食しておれ」

「おぉ、まじか。サンキュー。ただ、それなら尚のこと、2人でやってパパっと終わらせようぜ」

「……何故じゃ?」

「家族ってのは一緒にご飯を食べるものなんだろ? 一緒に食おうぜ、妹よ」

「クク、成程のぅ。相分かったのじゃ、兄上殿」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()! キャラ立ちまくりじゃん! 超有用じゃん!

 ずっとずっと足りないと思っていたのだ。今の星のハーレムは同年代だけで構成されていて味気ないと。

 修学旅行とかイベントでライバルたちに差を付けられてしまう……そんなヤキモキを代表例に、年の差がある故に生み出される展開は無数にある。この義妹がいれば、それらが楽しめるのだ。断る筈が無いではないか。

 そして何より。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことが素晴らしい! 今まで以上に深く関われるし、立ち回りの幅が広がる……!

 今日は最高の日だな。生まれて初めてクソ親父に感謝したかもしれない。

 明日から更に楽しくなるぞ……!

 

 

 

 

 







簡潔に要約。
自己中な快楽主義者2人が出逢っちゃいました。



【ご報告】

6/19(16:00時点)
オリジナル日間1位
総合日間2位

達成しました。凄く凄く嬉しいです。
全ては皆様の応援のおかげです。ありがとうございます!

ー追記ー
22:00 総合日間1位達成!



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5話:“飯マズ”キャラを好きって言ってる奴、結婚相手が“飯マズ”だったら100%そのまま放置したりしない。

総合日間1位取れました! ありがとうございます!


今話で序章が終了です。






 

「今更だけど、せっかく作ってくれた料理が冷めちゃったかもしれないな。先に食えば良かった、すまん」

「安心せい。したのは下準備までじゃ。最後の仕上げは食べる直前にするのじゃ」

「ほほぅ。何かは分からないけど凄く楽しみだな」

「期待して構わんぞ。なにせワシが知る唯一にして最高の料理じゃからな」

 

 うーん。

 初めて会った時から思っていたが、この妹(自称)の根は凄まじく善良である。

 “感謝する”“褒美を取らせる”などとヘンテコな口調でこそあったが、それでも“礼”という人として大切なモノがしっかり備わっている。

 これから住む家の住人へ手土産も忘れず、部屋の準備でも懸命に働いていた。とてもじゃないが、あのクソ親父の血を引いているとは思えない。

 ……とはいえ、それは俺もか。俺だって父親とは似ても似つかない善なる人間だ。やはり人間は遺伝子なぞに縛られない自由な生き物なのだろう。

 そんなことを考えながら、整えた2階の部屋から1階のダイニングまで移動する。

 

「其処ではない。外じゃ外」

「庭か? ……バーベキューか何かか?」

 

 この時点で軽く嫌な予感はしていた。していたが、やけに自信満々な妹の姿を見て気のせいだと思うことにしたのだ。

 そして、そのまま促されるまま庭へと向かい……。

 

「おい、マイシスター。これは何だ」

「夕飯じゃが?」

「この巨大な樽に詰まった大量の塩と、その中に埋もれた腐臭のする肉が?」

「そうじゃぞ。これを火で炙って食うんじゃ」

「お前は大航海時代の海賊か?」

 

 以前、テレビか何かで聞きかじったことを思い出す。

 当時の海賊たちは保存食として塩漬け肉を食べていたが、どんどん腐っていくから酷い臭いがした上に味もクソ不味かったと。確か、そんな内容だった。

 栄養が足りなくて何かの病気になってしまうことも多かったらしい。……俺の目の前にあるコレは、そういう類の食べてはいけない料理ではないだろうか?

 

「ほれ、何をしておる。美味じゃぞ」

 

 しかし、我が妹はバクバクと食べている。

 我が家の庭で焚火をメラメラ燃やして、ジャンジャン焼いては口に運んでいる。

 ……これ。もしや俺が知らないだけで伝統料理の類か? 彼女の生まれ故郷に伝わる由緒正しい料理であり、食べてみれば意外と美味しいのかもしれない?

 考えてみれば、腐った料理も臭い料理も世界中に溢れている。納豆然り、シュールストレミング然り。

 それに、これは焼き肉の塩味のような物と考える事もできるのではないか?

 ……そもそも出された料理に口をつけないわけにもいかない。バイト終わりで空腹なのも事実だしな。

 

「…………いただきます」

「うむ。たんと食うが良いのじゃ」

 

 なんやかんやと無理矢理に理由を付けて覚悟を決めた。

 さぁ、いざ実食…………●※%★□▲◎∬♯◆☆ッ!!!???

 

「硬いッ! 臭いッ! 不味いッ!!!!!」

 

 何っっっっだ、コレ!?

 顎と歯が壊れると言っても過言ではない硬さ! 物理的に痛い程の尋常ならざる塩辛さ!

 そして何より!

 

「普通に腐ってんじゃん! 発酵とかの次元じゃないじゃん!」

「そりゃそうじゃろ。ずっと運んで長旅をしておったからのぅ」

「そんなもん捨てろ!」

「何でじゃ! 多少腐ってても無問題じゃろ!」

「問題あるに決まってんだろ! アホか! はい没収! 全部捨てる!」

「ぬぁあああああ!!?? 何という事を!? 命が惜しく無いようじゃな!」

「うるせぇ、家主命令だ! 捨てなきゃ住むの禁止な!」

「何っ!? それは卑怯じゃぞ……! あーーーーっワシの肉ぅうううううう!!」

 

 前言撤回。

 この想像の斜め上を行く滅茶苦茶さ。方向性こそ異なるが、やはりクソ親父の血を引いている。

 

 

☆☆☆

 

 

 さて、参ったぞ。

 まさか、こんな欠陥を抱えていようとは思わなかった。

 “メシマズ”は確かに創作物において魅力的な属性の1つかもしれない。大所帯ハーレムもののヒロインには必ずと言って良い程メシマズの女の子がいる。

 だが、しかしである。実際問題、これは流石に駄目だろ。毎食が殺人未遂だ。幸せ一杯の結婚エンドではなく、保険金殺人狙いの偽装結婚エンドになってしまう。

 まぁ、“女が食事を作る”なんて時代遅れな考えであるのも事実。男が……星が料理をつくれば何も問題はない……が、それはそれとして作れないよりは作れる方が良いに決まっている。

 俺の楽しい日々の為、我が妹にはダークホースとして場を掻き乱して貰わねばならんのだ。それ故、早々にヒロインレースから脱落してもらっては困るわけで。

 『お弁当作って来ちゃった』とか『チョコ受け取って』とか『あーん』とか、そういうのをガンガンしてもらいたいわけで。

 とりあえず料理は追々しっかりと教え込むとして……

 

「ほれ、これ食ってみろ」

「なんじゃこれ?」

「カップ焼き蕎麦だ。これフォークな」

「……むむむ。初めて見るが、こんなモノが美味いとは思えんのじゃが」

「いいから、つべこべ言わず食ってみろ。」

 

 ……問題は彼女の味覚そのものが狂っている場合だ。“腐った肉でも無問題”と考えるほど過酷な環境に生きてきた結果、ストレスで味覚障害になっている可能性もある。

 その場合は対応が変わってくる故、まずは味付けが濃い食べ物で反応を調べる事にした。

 したのだが――

 

「なんじゃコレ美味すぎるぞ! これと比べたら先の肉はゴミじゃな!」

「だから言っただろうが」

「じゃな!」

 

 ――何も問題なかった。

 なら、あんなクソ不味い物を食べれてたのは何故だ。

 余計に謎が増えた気がするものの、正直もう疲れた。考えるのも面倒くさい。

 今後、この妹関連の疑問は全て“クソ親父の娘だから”で納得してしまおう。そう決めた。

 

 

★★★

 

 

 ――そうして夜は更けていく。

 

「任務は覚えているな?」

「あァ。この写真の星群少女を殺せば良いンだロ。ソッチこそ約束は覚えてンだろうナ?」

「無論だとも。達成の暁には、必ず彼女の治療を成し遂げよう。精々その身体が朽ちる前に成し遂げる事だ」

「言わレ無くとも」

 

 ――煌めく星々が無数の悲劇と絶望を隠しながら。

 

「今更ですけど~。こんなトコにいても良いんですか~、先生~。怒られちゃいますよ~」

「ノープロノ―プロ! どうせ愚生(ぐせい)は十二星座じゃないしさ!」

「でも~、誉れ高き黄道じゃないですか~」

「いっつも仲間外れにする癖、非常時だけ黄道扱いしてくる……そんな奴らなんか知らないさ」

「ま~、ですよね~。それで~、この街には何を~?」

「すこし気になる存在がいるのさ。もしかしたら、凄く面白くなるかもしれないぜ?」

「お~、駄目元で期待しておきます~」

 

 ――日常は再び、何事もなく続いていく。

 

 

 

 









自分の未熟が原因とはいえ、やっぱり低評価は辛いですね。平均が流星群でガクッと下がってモチベがががががが(豆腐メンタル)
せめて少しでも評価が上がるように頑張ります。これからも応援お願いします。




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幕間:GROUP CHAT 〈Tanabata〉


総合週間1位達成…! すごく嬉しいです!

弱音を吐いてすみません。
たくさんの評価と応援のメッセージをいただきました。本当にありがとうございます。
励みになりました。これからも頑張ります。





 

◆◆◆

 

 

 いつも通り、ボクたちはグループトークで今日の戦闘の反省や、傷病者と犯人の経過報告などを終えた。

 遊園地に行った日の最後に共有するのが、遊んだ感想じゃなくて戦闘の反省で、笑顔溢れる集合写真じゃなくて破壊跡生々しい事件現場の写真。その辺り、どこまでも血生臭くて、いっそボク達らしいなと自嘲気味に思う。

 すると、ややあって韻子ちゃんが話題を切り出した。

 それはずっと有耶無耶に流してきたこと。意図して目を逸らしていた謎について。

 即ち、来栖の目的を明らかにしようと、彼が何を思って何の為に意味不明な行動をするのか聞き出そうと……そういう内容だった。

 

 < チーム七夕っ!(5) 
◎ TEL ≡ 

 

 4月30日(日) 

 

  鷲平 韻子

 
.やっぱり、問い詰めるべき.
22:24

 

22:25(既読4)
.来栖の助言はいつも役に立ってるよ?.
 

 

  鷲平 韻子

 
.その信頼が怖い。

.裏切られた時、全てが手遅れかも.

22:25

 

22:26(既読4)
.それは……そうかもだけど.
 

 

  Kagetsu TOKIKANE

 
.仮に偽十字さんが私たちの敵だったとして。

.如何するのですか?.

22:26

 

  鷲平 韻子

 
.無論、倒す。説得でも力づくでも駄目なら

.命だって奪う.

22:27

 

22:27(既読4)
.え…?.
 

 

  鷹刈

 
.おい。韻子てめぇ、それは.
22:28

 

  鷲平 韻子

 
.麻琴、黙ってて。.
22:28

 

  鷹刈

 
.あ?.
22:29

 

  鷲平 韻子

 
.麻琴が彼に恩義を感じている事は知ってる。

.でも、それが邪魔.

22:30

 

  鷲平 韻子

 
.聞くけど。みんな、

.多かれ少なかれ彼に恩があるんでしょ?.

22:31

 

  鷲平 韻子

 
.星と麻琴は分かり切ってるから良い。.
22:32

 

  Kagetsu TOKIKANE

 
.私と貴女たちの和解に関しては

.彼の功績が大きいですわね。.

22:32

 

  てう

 
.てうが皆サマと一緒にいられるのは、

.あの人のおかげと聞いてるです.

22:34

 

  鷲平 韻子

 
.ほら、これがマズいの.
22:34

 

  鷲平 韻子

 
.彼が敵だった時、

.私たちはマトモに戦えなくなる.

22:35

 

22:36(既読4)
.そうかもだけど、でも.
 

 

  鷹刈

 
.テメェだって恩はあんだろうが.
22:36

 

  鷲平 韻子

 
.そう。私だって彼は大切な友人だと思ってる

.何度も救われたのも事実.

22:37

 

  鷹刈

 
.じゃあ.
22:37

 

  鷲平 韻子

 
.でも皆ほど決定的な借りじゃない。

.だから、ずっと疑って見てた.

22:38

 

  Kagetsu TOKIKANE

 
.韻子さんの考え方は

.リスクマネジメントとして正しいですわ。.

22:38

 

  鷹刈

 
.おい!.
22:39

 

  鷲平 韻子

 
.今回の事で確信した。

.彼が何かの勢力と繋がってるなら把握すべき.

22:40

 

  てう

 
.りゅうこつ座、ですか?.
22:41

 

  鷲平 韻子

 
.そう。あんなビッグネームと

.知り合いとか流石に見過ごせない.

22:42

 

 

 思い出すのは、レクシィさんとの別れ際。

 彼女に来栖との関係性を聞いたけれど、彼女は不敵な笑みを浮かべるだけで答えてはくれなかった。「直ぐに分かる」と、それだけ告げて。

 ……まぁ、見逃されているのはボクたちであって、彼女がボクたちに情報を与える道理もメリットもないのは明白だったけど。

 でも、それだけじゃない。あの笑みには何か引っかかった。漠然とした不安が拭えなかった。

 彼女が告げた言葉の真意も気になる。直ぐとはいつで、何が分かるというのか。

 来栖は一体、どこの誰なのか。ボクたちの友情は本物で、永遠のものなのか。分からないことだらけだった。

 

 < チーム七夕っ!(5) 
◎ TEL ≡ 

 

22:44(既読4)
.……結局、はぐらかされちゃったもんね.
 

 

  鷹刈

 
.おい星、テメェ、昔馴染みだろ!.
22:44

 

  鷲平 韻子

 
.麻琴、いい加減にして.
22:45

 

  鷲平 韻子

 
.私たちは託されたの。救われた私たちは

.遺志を継がなきゃならない.

22:46

 

  鷲平 韻子

 
.好悪善悪、仁義流儀より何より

.優先される絶対の使命。そうでしょ?.

22:47

 

  Kagetsu TOKIKANE

 
.麻琴さん、

.今回は韻子さんが全面的に正しいですわ。.

22:48

 

  鷹刈

 
.……納得はしねぇ.
22:53

 

  鷹刈

 
.けど、反対もしねぇ。それで良いか.
22:54

 

  鷲平 韻子

 
.十分。ありがと。……それで、星?

.貴女が出来ないなら私がするけど.

22:55

 

22:56(既読4)
.ありがとう、韻子ちゃん。でも、大丈夫.
 

 

22:57(既読4)
.ボクがやる。親友として、一番長い付き

合いのボクがやらなきゃいけない。  .

 

 

  鷲平 韻子

 
.辛いことを押し付けてごめん.
22:58

 

22:59(既読4)
.ううん。韻子ちゃんがボクたちのこと

を考えてくれてるのは知ってるから .

 

 

23:00(既読4)
.明日、朝一でボクが来栖を問い詰めて来る.
 

 

  Kagetsu TOKIKANE

 
.よろしくお願い致しますわ。.
23:00

 

  てう

 
.頑張ってください、です!.
23:02

 

  鷹刈

 
.……何かあればフォローする.
23:06

 

 

 

 ……ふぅ。

 やっぱり、いつかはこうなると思っていた。こうしなければと思っていた。

 でも、彼はボクの幼馴染で、最初の友達で、唯一無二の親友で、何度も窮地を救ってくれた恩人。

 麻琴ちゃんがボクや韻子ちゃんと仲良くなれたのも、彼が間に入って動いてくれたからだし。

 てうちゃんだって最初はボクたちの命を狙って罠に嵌めてきたけど、そんな彼女の真意を知って和解できたのは来栖のおかげ。

 貨月ちゃんも、そう。来栖がいなければ、南天の彼女と北天のボクたちは分かり合えずに今も対立していたかもしれない。

 そんな彼だから、ボクたちも意図的に触れないようにしていた。何かが致命的に変わってしまうのが怖くて放置していた。

 けど、それじゃ駄目だ。ボクたちには大切な使命がある。託された想いがある。

 ここで韻子ちゃんが切り出してくれて良かったと思う。仲良しな麻琴ちゃんと険悪になるのも承知で、それでも彼女は嫌われ役を買って出てくれたのだろう。

 きっと、そのことを麻琴ちゃんも察して退いてくれた。飲み込んでくれた。

 ……そんな皆の想いを無下にするわけにはいかない。

 

「……これでよし」

 

 いつもより20分早く目覚ましをセットする。準備は出来た。

 明日、ボクは長年の謎に蹴りをつける。

 もしかしたら、親友と永遠に決別してしまう危険を承知で。

 

 ――その日、ボクは全く寝付けなかった。

 

 

◆◆◆

 

 

 < チーム七夕っ!(5) 
◎ TEL ≡ 

 

 5月1日(月) 

 

6:57(既読4)
.なんかレクシィさんと同棲してた.
 

 

  Kagetsu TOKIKANE

 
.はい?.
6:57

 

  鷲平 韻子

 
.え?.
6:57

 

  てう

 
..
6:57

 

  鷹刈

 
.はぁ?.
6:57

 

 

 

 

 

 






感想などお待ちしております。

追記
PC準拠で書いたものをスマホ閲覧にも対応するよう改良しました。
未だに読み辛かったり変になっている所があったら教えて下さい。

また、改良に伴って「ここすき」がズレてしまっています。大変申し訳ありません。


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【一章】
1話:過去回想で良いことをしていても、悪事はチャラにならない。(前)




「設定が分かりにくい」との指摘がありました。
なので、当初の予定を変更。過去回想を捻じ込んでから進めます。
明日の投稿で過去回想を終えて元の時間軸に戻ります。ご理解いただけますと幸いです。






 

 

★★★

 

 

「…………寝れない」

 

 全然寝付けない。

 右に寝返り、左に寝返り。何度も続けて、もう諦めて起き上がった。

 少しでも眠くなれば、と電子レンジで牛乳を温めて飲んだけれど、かえって目が覚めた気がする。

 

「来栖を問い詰める、か」

 

 そう。ボクは明日、長年見て見ぬふりをしてきた謎に終止符を打つ。来栖の目的を明らかとする。

 正直、憂鬱だ。でも、なあなあで流すのも限界だとは薄々感じていた。

 彼が敵だとは思えないし、裏切るとも思わない。けど、彼の行動が不自然であるのも事実。偶然という言葉では片付けられない事が続き過ぎている。

 だから、問い詰める。彼が敵ではないという確認をするために。ずっと友達でいられるという、その確信を得るために。

 

「…………なんか腹立ってきた」

 

 こうして悩んで寝る事も出来ずにいる間、来栖は間抜けな顔でグースカ寝てると思うと無性にムカつく。

 だいたい、彼は昔からそうだ。いつも無茶苦茶やってボクを振り回して。

 …………昔。昔、か。

 思えば、彼との付き合いも随分と長くなる。小学校2年生からだから……かれこれ9年になるのか。

 ふと、写真立ての写真が目に入った。

 映っているのは3人。ブスッとして不機嫌そうなボクと、何が楽しいのか満面の笑みでピースをする来栖、そして、小学2年生とはいえ子供2人を軽々と抱きかかえる背の高い女性。

 真っ黒で綺麗な髪を、こだわりなんか無く乱雑に切った女性。化粧っ気なんか微塵も無くて、でも無駄なく鍛えられた筋肉が美しい女性。身体中に生々しい傷があって、でも全く気にせずに、来栖に負けじと快活に笑う女性。

 名を夜白(やしろ) (きわみ)。彼女こそは2代目ノーザンクロス『キュクノス・ヒュリエ』。5年前に28才の若さで亡くなった、ボクの育て親だ。

 

 

★★★

 

 

 10年前。5歳の時、(ボク)は両親を失った。

 2人とも星群少女の戦いに巻き込まれて死んでしまった。

 そういう悲劇を防ぐべく、星群少女たちは戦う時に『アストロラーベ・フィールド』を展開する。これは古来より守られ続けてきた絶対の法。

 だけど、あくまでも星群少女同士の戦いにのみ適用される決まり。星群少女が普通の一般人を殺戮する……そんな場合には適用されない。

 それでも問題なんて無かった。数千年の間、問題が起きる事は無かったのだ。

 何故ならば。星群少女は人間を無暗に殺そうとは考えない。元より、()()()()()()()()()()()

 そもそも、イレギュラーのボクたちを除いて、普通の星群少女は()()()()()()。『AE』……『アステリズム・エネルギー』の結集存在だ。

 AEとは『想い』の力。古来より地上の人々が星々を見て馳せた想い……願い、夢、畏怖、絶望、希望、怒り、悲しみ、喜びといった想念が集まって物理的な力を得たもの。

 星群少女は、このエネルギーが結集して生まれた生命体。星々へ捧げられた無秩序で無際限の想いが飽和し、溢れ落ちた存在。その際に、多くの人々が共通して信ずる形として……即ち「星座」という依り代を得て顕現した結果が、星群少女である。

 彼女たちにとって人間は、『脆弱で下等な生物』であると同時に『生みの親』でもあるという特殊な立ち位置となる。それ故、可能な限り人間には危害を加えないというのが、古来よりの不文律であったらしい。

 だけど、10年前は違った。10年前から違ってしまった。

 あの日、最強の大英雄を象った『ヘルクレス座』の星群少女が突如として暴走。目についたものを片端から壊し続ける殺戮者となり。引きずられるように、何体もの星群少女が理性を失って暴走し始めて。

 この暴走に巻き込まれて父さんと母さんは死んだ。(ボク)を庇うように倒れていた2人の姿は、今でも瞼に焼き付いている。

 当然、狂わなかった北天の星群少女たちは暴走する彼女たちを止めに入った。これ以上の被害を出さないよう、フィールドを展開して。

 でも――

 

 

★★★

 

 

「彦星様! 白鳥様! 人間の童が領域内に…っ!」

「適正者にござるか…! よりにもよって斯様な時分に……!」

「オッケー、何としても守り抜くよ! 織姫は後方で彼女を庇いながら支援! 彦星は私に続いて攻撃!」

「お待ちくだされ、白鳥殿! へるくれす殿を相手に童を庇いながら戦うと!?」

「女の子たちの憧れ彦星様が、なーに弱音なんか吐いてるの! 堂々と仕事放棄してイチャついてた根性見せなさいな!」

「それは作り話であって拙者のことではないと何度も……!」

 

 その時、(ボク)はずっと呆然としていた。

 目の前で両親が死んだ事実を心が受け入れられなかったのもあるが、目まぐるしく変わる事態に頭が付いていけていなかった。

 ただただ、目の前の非現実的な光景を……人が空を飛びながら炎や雷を飛ばして戦う光景を、アニメでも見るみたいな心地で眺めていた。

 

「いやー、君は強い子だ! こんな状況でも落ち着いている! 将来有望だな! あ、逃げられると守りにくいから出来ればそのままで!」

 

 戦っていたのは4人。

 一人は、天使のような白い翼を広げて空を翔る白髪の少女。

 

「有望も何も、単純に理解が追いつかぬだけかと存じますが!」

「七夕の星が夢の無いことを言うんじゃないよ、バカタレぇ!」

 

 もう1人は、青い髪を頭の後ろで1つに束ね、日本刀を巧みに扱う少女。

 身に纏った青い羽衣を自由自在に大きくしたり伸ばしたりしながら、それを足場にして空を()()()()()

 

「ちょっと彦星様! 白鳥様! 軽口を叩いている場合ではありませんよ!」

「軽口でも叩いてなきゃ、やってらんないよ! ……うおっ、あぶなっ!」

「ほらぁ! 攻撃を弾く妾のことも考えてくれませんか!?」

「ありがとう! 相変わらず良い音色だね! 惚れちゃいそう!」

「話を聞いてくださいません!?」

 

 手に持った楽器……琴を鳴らすだけで、飛来する矢の雨を全て弾き返すのは、桃色の髪の少女。当時の(ボク)は知らなかったが……十二単と呼ばれる煌びやかな着物を纏っていた。 

 そして――

 

「危ないじゃないか、この怪力ゴリラ女! ずっと家畜小屋掃除でもしてろ! 今度はズル無しで糞まみれになってな!」

「挑発するのは止めるにござる!」

「……む。鳥退治か。3羽だけとは拍子抜けだな」

「え、待って。今まで認識すらされてなかったの!? それであの強さ!? 大英雄ヤバ過ぎない!?」

 

 巨大な大弓を軽々と放つ、金髪の女性。

 優に3メートルはある巨躯を躍らせ、3対1でありながら圧倒的優位に立ち続ける。

 

「とりあえず、あと5分耐えるよ! (きわみ)ちゃんが来てくれるから! そしたら子供預けて全力戦闘!」

「2分でも厳しそうでござるが!」

「このネガティブ彦星! 365日も織姫を待つより余程短いぞ!」

「それは伝承だと何度も……否。そうでもござらぬな、確かに」

「ちょっとお!? 前に約束すっぽかしたのは謝りましたよね!」

 

 それでも。それでも3人は引かない。挫けない。

 彼女たちこそは星群少女。人が憧れ、怖れ、夢を馳せた遥か彼方のアステリズム。

 星の輝きが曇らぬように、彼女たちも輝き続ける。

 

 ――その気高い輝きを目に焼き付けて、少女は過剰なストレスに耐え切れず意識を手放した。

 

 

★★★

 

 

 目が覚めた時、(ボク)は病院のベッドの上にいて。

 両親が死んだこと。あの3人が自分を庇って殺されたことを教えられて。

 

「選べ。このまま全てを忘れて仮初の平穏を生きていくか。両親の仇を討つため戦い続けるか」

 

 1つの問いを、見知らぬ女性から投げかけられた。

 正直、全く理解ができていなかった。そもそも「仮初」だの「平穏」だの「仇」だのと言葉が難しくて、何を言っているのかさえ不明だった。そういうところ、女はあまりにガサツで配慮に欠けていた。

 でも。

 

「戸惑うのも無理はない。だがな、失ったものを覚えていたいのならば――戦え。アタシに言えんのは、それだけだ」

 

 その言葉に(ボク)は決意を固めた。

 父と母と、あの3羽の輝きを忘れたくないと思ったから。

 だから。

 この日、「私」は「ボク」になった。住む街も変え、白鳥 星は「男」としての人生を歩み始めた。

 

 

★★★

 

 

 その女は『極星機関』所属、星群少女殲滅特殊部隊『CLOUD』の若きエース、夜白 極。

 彼女はボクを養子とし、自分の家に迎え入れた。

 全ては、AE適正者であるボクを「星群少女」とするために。既存の兵器で太刀打ちできず、それでいて甚大な被害を振り撒く存在……「災厄」と化した星群少女を駆逐し、人々の命と平和を、人の社会を守るために。そのために人間の手で制御可能な、人間を守る、人間の星群少女が必要だった。

 故に。彼女はボクを養い、星群少女に関するあらゆる知識と、そして戦うための術を授けた。

 あとは、極が回収した「はくちょう座」「わし座」「こと座」の3つの『核』……星群少女の心臓部分に存在する超高濃度のAE結晶体を受け取るだけ。

 それだけで、ボクは星群少女として戦うことが可能となる。両親を殺された復讐を果たすべく戦える。

 だけど――

 

「どうして!? どうして渡してくれないの!?」

「駄目だ。お前はまだ相応しくない。もっと輝いてから出直してこい」

「意味わかんないよ! じゃあ何でボクを拾ったんだ! ボクに色々教えたんだ! 極の言ってること、全っ然わかんないよ!」

 

 2年経っても、ボクは星群少女に成れずにいた。

 

 

★★★

 

 

 仇の存在を教えて、復讐心を植え付けて、そのための才能があることを教えて、力の使い方を教えて。……それで肝心の力そのものを授けない。

 極のやっていることは、そういうことだった。そういう残酷なことを彼女はしていた。

 結局与えないのなら、いっそ何も知らないままでいたかった。星群少女のことも、仇のことも知ってしまえば止まれない。それなのに走りだすことすら許されない。

 走り出す準備を整えてスタート地点にいるのに、いつまで経っても号砲が鳴らない。そういう状態が2年も続いていた。

 

「今日は転校生を紹介しまーす!」

 

 その当時のボクは非常に荒れていた。極への不信感と、何もできない自分の無力感、そして暗くてドロドロした復讐心。それらが綯交ぜになって、目に映る全てを憎らしく思うほどの精神状態だった。

 

「みんなー仲良くしてあげてねー!」

 

 クラスメイトとも常に距離をとっていて。基本的に一言も交わさず、友達なんて一人もいなかった。

 普通に家族と暮らせている、星群少女のことなんて何も知らずに笑っていられる……そんな同年代の子供たちを見ると憎らしくて仕方なかったというのが理由の1つ。

 少女しかなれない星群少女……その前提を利用した「男の子」という嘘がバレてしまう危険を回避するというのが2つ目の理由。

 そして、3つ目は……もう二度と大切な人を失いたくなかったから。両親のように、守ってくれた3人のように。かけがえのない友人をつくって、それを失ってしまうことが怖かった。あんな悲しみを感じるくらいなら、ずっと独りでいれば良いと信じて疑わなかった。

 

「じゃあ、来栖くん。自己紹介できるかな?」

 

 だから、小学校2年生の6月、奇妙な時期にやってきた転校生にも興味なんてなかった。教室の一番後ろの窓側の席で、流れる外の雲を眺めているだけ。自己紹介とやらも聞き流して終わらせるつもりだった。

 ただ。1つだけ誤算があったとすれば――

 

「俺は、にせじゅーじ くるす! 好きなことは楽しいこと! 嫌いなことは楽しくないこと! よろしくな!」

「……っ!?」

 

 その声がボクの耳元にて、大音量で炸裂したことだった。

 そう。一体何を考えたのか、彼はわざわざ教室の一番後ろまで歩いてきて。それで面識なんてないボクの耳元で自己紹介をしたのだ。

 

「お前、つまらなそうだな! 名前は!」

 

 非常識な奴だと思った。星群少女の事が無くても仲良くなりたいとは思えないタイプだったし、徹底的に無視する事にした。

 無視を続けていれば、その内に諦めて帰るだろうと。

 今思えば、実に最悪の対処法を選んでいる。偽十字 来栖はその程度で諦める男では無いのだから。

 

「名前!」「お名前は!」「氏名!」「ネーム!」「名前!」「名前!」「名前ーーーーーーっ!!!」

 

 言葉が通じていないとでも思ったのだろうか。1つ1つ語彙を変えていたが、そのうちに尽きて最初に戻った。

 その微妙な変化に意識を持っていかれる。無視したくても出来ない。それが腹立たしくて、ムカついて。

 

「うるさいなぁ!!!!」

 

 それでボクは遂に耐え切れなくなって、声を荒げた。

 その時、ボクは初めて彼の顔をちゃんと見た。黒髪の少年は、黒い瞳を星のようにキラキラ輝かせて笑っていたのを覚えている。

 

「そうか! ()()()()()ちゃんか! よろしくな!」

「もう放っといてくれ! ボクは一人で静かに過ごしたいんだ!」

 

 何故それを名前だと思うんだとか言いたかったけど堪えた。

 可及的速やかに彼との会話を終わらせたかったから。

 

「どうして!? 一人はつまらないじゃないか! うるさいなちゃん!」

「そんなのボクの勝手だろ! 君こそ、なんでボクに構うんだ!」

 

 もう一言も会話を続けたくなかったが、ずっと付きまとわれたら最悪だ。

 だから、何が彼をここまで駆り立てるのか明らかにしようとしたのだけれど。

 

「教室に入って来た時、うるさいなちゃんが空を見ているのが見えた! それが理由だ!」

「……は?」

 

 意味が分からなかった。

 

「俺は楽しいことが好きだ! 転校生として来れば教室がわーわーきゃーきゃーなると思っていたのに、お前は超つまらなそうだったからな!」

「……え?」

 

 彼が何を言っているのか、これっぽっちも理解できなかった。

 

「つまらなそうな奴がいると俺は本気で楽しめない! そんなわけで俺は、うるさいなちゃんの友達になると決めた!」

「なんでだよ!」

「はーはっはは! 俺の勝手だ!」

 

 もう理解しようとするだけ無駄だと悟った。

 この男の子はバカなのだ。ボクが今まで見てきた人の中で一番のバカなのだと、それだけを理解した。

 そして。何がどう転がっても、失って辛い友人になんてならないと確信できたから。だから、せめて名前だけは訂正しようと決めた。これからもずっと“うるさいなちゃん”なんて騒がしい名前で呼ばれたくは無かったから。

 

「……はぁ。ボクは“うるさいな”じゃなくて、白鳥 星。それと女の子じゃなくて男の子だよ」

「なぬぅ!? 男ぉおおおおおお!? ……じゃ、星でいいや」

 

 この世の終わりとでも言いたげに大声で叫んだかと思えば、次の瞬間には落ち着いて馴れ馴れしくも呼び捨てにしてくる。

 さては情緒不安定なのではないか。彼は何かしらの心の病気を抱えているのではないか。そう本気で疑った。

 そして、そのように割り切ってしまえば驚かない。もう何を言われても、彼はそういう子なのだと納得できる。そう思った。

 

 ――あぁ、本当に当時のボクはバカだった。自分の小さな物差しで彼を理解できると考えるとは。

 

「男ってなら、やることは1つだな! ()()()()()()()()()()、星!」

「…………は?」

 

 これが偽十字 来栖との出逢いだった。

 

 

 

 

 

 

 



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2話:過去回想で良いことをしていても、悪事はチャラにならない。(後)



細かい所は飛ばして、一旦これで過去回想は終了。
後々もう少し詳細を書くかもしれませんが。今はともかく本編。




 

 

★★★

 

 

 少年の言う「ナンパ」とは、ずばり女の子と仲良くなることを意味していた。彼曰く、「大人の階段」だそうだ。

 当然、ボクは強く拒絶した。だけど、彼はいくら振り払っても付きまとって来て。常に周囲をウロウロし続けた挙句に、遂には帰宅するボクの後をこっそり追って、図々しくも家の前まで来やがったのである。

 

「こういうのストーカーって言うんだよ。知らないの?」

「大丈夫だ! 男同士なら問題ない!」

「男同士のストーカーもいるんだよ」

「まじか!」

 

 そうやって家の前で騒いでいると、その声が聞こえたのだろう。家の中から極が出てきた。

 

「おう、星。おかえり。……なんだ、オマエ」

「ふっはっは! 聞いて驚け、俺こそは星の親友――」

「違うよ。ただのストーカーだよ」

「――親友になる予定の男! 人造人間Xマンだ!」

 

 昨日は銀河戦隊スーパーXマンを名乗っていたくせに、そんなにコロコロ名前を変えるな。

 いや、そもそも一人なのに戦隊って変だし。スーパー取れてるから劣化してるし。ツッコミどころしかない。

 

「……つまり、どういうことだ? このクソガキは星の友達ってことか?」

 

 直ぐに否定の言葉を発しようとしたけれど、それよりも来栖の意味不明な返答の方が速かった。

 

「ガキじゃねぇ、カミだ!」

「……神?」

「そうだ! かっこいいだろ、あがめ垂れて待つ!」

 

 もしかしなくても、「あがめたてまつれ」と言いたいのだろうか。

 そもそも「人造人間」じゃなかったのか。何で急に「神」になるんだ。設定が滅茶苦茶じゃないか。

 

「ははっ! 何だクソガキ、超面白いなオマエ! 」

「クソガキじゃねぇ、クソカミだ!」

「ひぃーーー! 笑い過ぎて腹痛ぇ! じゃ、寄ってけよ、クソカミ!」

 

 ただ、その支離滅裂さが、極の何かしらの琴線に触れたらしい。

 来栖と極は意気投合し、来栖はボクの家に入り浸るようになった。

 

 

★★★

 

 

 以来、家でも学校でも。更に来栖が付きまとうようになって。

 その頃にはボクも色々と諦めていた。彼を振り払うことは不可能だし、いっそ彼の思うままにさせた方が楽だと考えるようになっていた。無駄に抵抗して疲れるくらいなら、流されていた方が楽だと。

 それで、遂に彼が当初より言っていた「ナンパ」とやらを一緒にすることとなって。

 

「よし。最初のターゲットはアイツだ! いっつも教室の隅に一人でいて気に食わねぇ!」

 

 その時、最初の犠牲者になったのが「鷲平 韻子」。良くも悪くも、これが切っ掛けとなってボクらの友情は始まった。

 それからも彼は、学校中の人間に声をかけて回った。年齢差も何も関係なく、ただ無作為に。「ナンパ」という名目なので女子ばかりだったが、条件はそれくらいだった。

 そう。本当にそれだけ。たとえ、どれだけ暗かろうが、嫌われていようが関係ない。本人自ら、または周囲が壁を作って距離を取っている子でも関係なかった。その壁をブチ破って距離を詰めていくのが偽十字 来栖という非常識な少年だったから。

 だから、街で恐れられるヤクザ「鷹刈組」組長の一人娘……鷹刈 麻琴であっても、彼の無差別ナンパの魔の手からは逃れられず。ずっと周囲から避けられてきた彼女は、来栖に手を掴まれてボクたちと知り合った。

 そうやって、人の輪が広がっていって。ボクの世界は色づいていった。

 再び失ってしまう恐怖が消えたわけじゃない。でも、その恐怖があって尚、ボクは彼らと繋がっていたいと思うようになっていた。

 失わないために離れるのではなくて。守るために強くなりたいと、そう思うようになっていた。

 

 ――そして、5年前。小学生最後の年。再びの悲劇は起きた。

 

 

★★★

 

 

「……無事みたいだな。しっかし、3人全員が適正者ってどうなってんだよ」

 

 アストロラーベ・フィールド。

 自身を含め、周囲の星群少女全てを強制的に別位相へと移す術。

 それは、星群少女たちが戦う為だけに作られた、専用の世界への招待状。

 しかし、AEに高い適正を持つ者……「適正者」と呼ばれる者たちも、星群少女と誤認されて飲み込まれてしまう。

 両親を失った日のボクように。今日この日、迷い込んだ3人の少女……ボクと、韻子ちゃんと、麻琴ちゃんのように。

 

「こちとら薬漬けになって、やっと()()()止まりだってのに。まったく、才能の差ってのは理不尽だよな」

 

 燃え盛るフィールドの中で。

 女は――夜白 極は()()()()()穿()()()()()()()、普段と変わらぬ軽口を叩く。

 目の前で泣く少女たちを安心させるように。

 

「はは、これじゃ白鳥じゃなくてカラスだな。まだまだオバサンには程遠いと思ってたんだが、流石に少女ってのは無理があったか」

 

 いつか見た、はくちょう座の星群少女と同様、女の背には巨大な翼がある。

 ただし、あの白い翼とは異なり、ドス黒い泥を……“ダークマター”を吐き出し続けて黒く染まっていた。

 

「良いか、星。アタシがくたばったら、クソジジイを……極十郎(きょくじゅうろう)を頼れ。お前をとことん利用するだろうが、後ろ盾にはなってくれるはずだからな。利用される以上に、骨の髄まで利用してやりゃあ良いさ。孫のアタシが許可する」

「何を言ってるの…! ねぇ、極っ! 極ってば!」

 

 ボクはずっと彼女の名前を呼んでいたけれど、彼女はまるで何も聞こえていないかのように話を続けた。

 いや、事実として聞こえていなかったのだろう。

 その時には既に、腹部の穴を始め、口や耳、目といった場所からコールタールに似た泥が流れ出し始めていた。もう視力も聴力もまともに働いていないのは明白で。

 それでも、ボクは彼女の名前を呼び続け。

 それでも、女はいつも通り快活に笑った。

 

「アタシは戦いの道に引きずり込む事しか出来なかった。復讐心を植え付けて、焚きつけて。……はは、改めて言葉にすると酷ぇな」

「違う…! 違うでしょ…! もう分かってるんだよ! 何年一緒にいたと思ってるんだ!」

 

 彼女はいつだって悪人として振舞った。常にボクから嫌われるように立ち回っていた。

 でも、5年も一緒に居たんだ。もう流石に分かる。彼女の真意くらい理解できる。

 適正者であるボクは、自分の意思に関わらず戦いに巻き込まれる。

 近くで星群少女の戦いが始まれば……フィールドが展開されれば、否が応でも飲み込まれてしまう。高いAEのせいで星群少女と誤認されて。

 それに、極星機関を始めとした人間側の組織・団体もボクを放っておかない。

 だから、彼女は。夜白 極はボクを養子にした。極星機関・極東支部()()()、夜白 極十郎の孫娘という立場を最大限に利用して。

 せめて自衛できるように。生き残れるように。道を選べるように。

 男と偽らせて、あらゆる脅威や組織から隠しながら鍛えてくれていた。

 

「聞け、星。お前は……お前たち3人は、これから否が応でも巻き込まれる。だから、覚えておけ」

 

 そこで彼女は数度咳き込んだ。

 血の代わりに、真っ黒な泥が吐き出される。

 それこそは、適正無き身でAEに手を出した者の末路。薬物で無理やり適応させるのも流石に限界のようだった。

 

「星、韻子、麻琴。失うモノがない強さ、守るモノがない強さ。それは確かに強い。捨て身で何かを為せることだってある」

「だがな、それじゃあ個人の力の限界にしか至れない。当たり前だ、一人なんだから」

「守るモノがあれば、守ってくれる奴がいれば。一人じゃ無ければ、人の可能性はどこまでも広がる。あの遠い星々にも飛んで行ける」

「だから、星。韻子に麻琴。繋がることを恐れるな。守るモノをつくれ。失うことを恐れながら強くなれ。――失わない為に戦え」

 

 そこまで言って。

 彼女は懐から3つのペンダントを取り出した。

 

「星、これを託す。使い方は教えたよな」

 

 付いている星型の結晶体は、「はくちょう座」「わし座」「こと座」の3体の星群少女のコア。

 夜白 極が、あの日に散った戦友たちより譲り受けた形見。

 ずっと持つことを許されないでいた、星群少女になるための鍵。

 

「神なんか信じちゃいないが、あの()()()()のおかげなのかね。痛みを乗り越えて、また大切なモノを抱えて生きようとしている……今のオマエなら、託せる。アタシが奴の注意を引き付けている間に、それを使って脱出しろ」

 

 嫌だと言いたかった。

 聞こえていないと分かっていても、一緒に逃げようと言いたかった。

 誰かが囮にならなければ逃れられないことなど理解しながら。全員無事に逃げ切ることなど不可能だと知りながら。

 それでも、ボクは否定の言葉を紡ぎたかった。

 だけど――

 

「――韻子と麻琴のことを、()()()()()()()()()()

 

 ――続く言葉は、余りにも卑怯に過ぎた。

 

 

★★★

 

 

 少女は走った。

 理解及ばぬ状況に困惑する2人の手を無理やり引いて、走らせて。

 

「待っていてくれて感謝するよ」

「構わぬ。今生の別れを邪魔するほど無粋ではない」

 

 もう聞こえていない耳を、聞こえているように偽りながら。女は僅かでも時間を稼ぐ為、会話を続けていく。

 そんなことも、共に暮らしていた少女は手に取るように理解できていた。

 

「せっかくだ。最初で最後の名乗りをさせてもらうが、構わないよな?」

「無論だとも」

 

 理解していながら、その声を後ろに少女は走った。

 ただ真っ直ぐ、振り返らずに。

 

「アタシは2代目ノーザンクロス! キュクノス・ヒュリエ! 友としても母としても、どっちも落第のアタシには似合いの名だろ!」

「確かに聞き届けた。キュクノス・ヒュリエ、誉れ高き母よ。我が名はペルセウス、いざ尋常に死合おうぞ」

 

 その後。少女3人は逃げきり、女は二度と帰ることはなかった。

 それが結末。残酷な、2度目の悲劇。

 

 ――この日、ボクは再び親を失った。

 

 

★★★

 

 

「……あれから、もう5年か」

 

 あれ以来、ボクたち3人は星群少女となって戦い続けている。

 ただただ、自分たちの平和な日常を、人々の平和な暮らしを守るために。

 その過程で、助けて助けられて、色んな人と繋がっていった。

 てうちゃんに、貨月ちゃん。他にもたくさん。

 ……まぁ、大概は来栖がきっかけになっているけれど。

 

「来栖が敵だったら、か……」

 

 その時、ボクはどうすれば良いのだろう。

 守りたい存在が敵になってしまうのだとしたら。

 

「もう分からないよ。ボクはどうすれば良いのかな。教えてよ、極……」

 

 呟いても、独りきりの家に答える者はいなかった。

 

 

 

 

 

 













諸事情により、前回のAI絵は消しました。
大変申し訳ありません。



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3話:転校生が来て「可愛い子か!?」って騒いでる奴、そうそう見かけない。

 

☆☆☆

 

 

 ――目を覚ます。

 なんだか、随分と懐かしい夢を見ていた。

 朝のヒンヤリとした空気を肌で感じながら、(過去)現実()の境界が定まっていくのを自覚する。

 まるで堰き止められていた水が流れ込むように。2つの記憶が別たれていく。9年という時間の隔たりが、想い出を彼岸へと連れ去っていく。

 

「……そうか。あのまま寝落ちしたのか」

 

 どういう流れでなったか良く覚えていないが、親睦を深めようと兄妹でのテレビゲーム大会に突入。

 これが大いに盛り上がり、ズルズルと深夜まで続けてしまって。もういっそ徹夜しようか等とレクシィと話していたのだけど。やはり案の定というか、俺も彼女も耐え切れずに寝てしまったらしい。

 下にはソファ、上には爆睡中のマイシスター。珍妙なサンドイッチ状態で眠っていたせいだろうが、身体中が痛い。

 

「でも、これは起こせないよなぁ……」

 

 レクシィは何とも幸せそうな寝顔を晒している。

 一体全体、何の夢を見ているのやら……

 

「焼きそばの…城…むにゃ」

 

 ……なるほど。焼きそばの夢か。あのカップ焼きそばが余程お気に召したらしい。

 ただ、焼きそばの城って何だ。どんな城だ。

 和風なのか、洋風なのか。焼きそばで出来た城なのか、焼きそばが城主の城なのか。駄目だ、超絶気になる。

 ……気にはなるが、起こしたところで覚えているとは限らないのが夢というもの。それに、これほど気持ちよさげに眠る人間を起こすのは流石に忍びない。

 時刻は未だ午前5時45分。残念ながら眠気は既に無い。

 とはいえ、このままボーっとしているのも退屈だ。せっかくだから、さっきまで見ていた夢のことでも考えることとした。

 あの9年前の日の事を。星と初めて出逢った、小学2年の初夏の記憶を。

 思い出すたびに恥ずかしい黒歴史。大馬鹿者の若さゆえの過ちの記憶を掘り起こすとしよう。

 

 

☆☆☆

 

 

 ――あの頃の俺は、救いようのない大馬鹿者だった。

 なにせ、恥ずかしくも「自分がハーレムの主になる」ことを本気で夢見ていたのだから。

 まぁ、誰でも一度は抱く願望だ。モテモテになりたい、チヤホヤされたい、女の子にキャーキャー言われたい……そういう、ありふれた願いを幼少期の俺は抱いていた。

 だから、転校するとなった時に期待した。

 だって、そうだろう? 転校生なんて物語性の塊じゃないか。古今東西いついかなる時も、転校生は新しい物語の始まりと相場は決まっている。

 転校して、たくさん友達をつくって、女の子たちにモテモテになって。そういう小学生ライフを期待していた。

 

 ――本当に、馬鹿げている。

 今の俺なら分かる。断言できる。

 ハーレムというのは、眺めてこそ楽しいものだ。漫画小説ゲームで散々描かれて、それでも尚ハーレムものが好まれ続けるのは、あれらが眺めて楽しいものだからに他ならない。

 主人公がいったい誰を選ぶのか。ヒロインたちは如何なるアプローチを仕掛けるのか。正々堂々真正面から対決するのも、権謀術数渦巻くのもワクワクする。プレゼントにデート、誕生日、体育祭に文化祭、ハロウィン・クリスマス・バレンタイン・ホワイトデー……目白押しのイベント。夏に水着に祭りに花火。せめぎ合う『女の戦い』と『女の友情』。突如として現れる幼馴染やら憧れの人、ダークホースの大暴れ。“推し”のヒロインを応援する時は娘を見守るような心地にさえなり、その子の敗色が濃厚となれば作者を憎みさえする。〇〇派□□派などと派閥に分かれて仁義無き争いを繰り広げる事もしばしば。一発逆転の波乱の展開が巻き起これば手に汗握り。最後の最後に“推し”が勝とうものならガッツポーズを掲げて喜んで、同好の士と共にSNSにて大いに盛り上がる。

 ――翻って。自分が当事者となる場合を考えてみよう。そもそもあり得ないという話は置いておいて、億が1にも実現してまった場合を考える。

 まず世間の目が厳しい。軟派な奴として見られるのは間違いなく、二股三股の誹りを受けるかもしれない。民衆は不倫に厳しい。SNS炎上待ったなしである。

 そして、何より心労が凄まじかろう。誰かを選ぶといういうのは誰かを選ばないということ。言葉を飾らずに言えば“捨てる”ということに他ならない。また、その選択によって人間関係は決定的に変化する。勝者/敗者の境界が生まれ、選んだ者・選ばれた者・選ばれなかった者はそれまでと同じではいられない。「誰が選ばれても恨みっこなし」は現実にそうそう遭遇する台詞ではないのだ。

 誰を選んでも角が立つし、すべてを選ぶのは法的にも倫理・道徳的にも経済的にも世間的にも不可能。

 そも、ハーレムがドロドログチャグチャの地獄であるのは少し歴史を紐解けば誰でも理解できる。

 畢竟、言いたいことは1つ。ハーレムなるものは見て楽しむものだということ。

 誰かが言った。ハーレムは男の夢だと。

 だが、それはアメリカン・ドリーム的な『夢』を指すのではない。一富士ニ鷹三茄子的な『夢』を指すに過ぎないのだ。徹頭徹尾、見て楽しむものなのだ。

 そんな単純明快な真理に、当時の俺は全く気付いていなかった。愚かにも転校から始まる学園ラブコメに心躍らせていたのである。

 そんな訳で。

 期待に胸を膨らませ、教室の外で名前を呼ばれるのを今か今かと待っている時のこと。これから仲間入りする教室を覗き見た、その時。俺は雷に打たれたような衝撃を受けた。

 教室の一番後ろ、窓際の席。そこに今まで見たこともない美少女がいたからだ。

 白髪金色のアニメキャラ的なカラーリング。物憂げな眼差し、小さな唇。

 その瞬間、彼女こそ俺のハーレム物語のメインヒロインだと直感した。

 だが、その子は転校生に…俺に全く興味を示すことはなく。ならばと直接口説きに行った。

 ……まさか「男」だとは思わなかったが。

 こうして。俺の初恋は儚く散った。見るも無残にバラバラになった。

 これが俺の黒歴史。ハーレムという夢に惹かれ、メインヒロインと見定めた女の子に全クラスメイト+先生の前で特攻をかました挙句、見るも無残に爆発四散した恥ずかしい記憶。

 今思い出しても身悶えする黒歴史。

 しかし、これで終わるならば救いようはあった。まだマシだった。

 そう。俺の暗黒時代はまだ終わらない。天下泰平の世たる『修羅場ニヤニヤ時代』の幕開けは未だ遥か遠い。

 ハーレムの夢は折れず曲がらず燻り続け、次なる暗黒の時代の火種となる。

 あれは名付けるならば、そう『当て馬ナンパ産業革命時代』――

 

「……もう6時か。そろそろ起きないとな」

 

 だが、かの激動の時代を語るには、今は時が足りなさ過ぎる。

 なにせ今朝は妹に料理を教え込まねばならぬのだから。

 あの時代は、いずれ来たるべき時に語るとしよう。

 

「ほら、起きろマイシスター。朝食と弁当を作るぞ」

「むにゃ…?」

 

 あの頃の無知で愚かな少年はもういない。

 時代はとっくに変わった。今の俺の全ては修羅場を想像し眺める為にこそある。

 さあ、新しい一日が始まる。

 日曜の遊園地デートを巡って起きた3度のインパクトを経て、新世紀へと突入した修羅場を楽しむとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 



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4話:毎朝必ず起こしに来てくれる幼馴染、リアルでは存在しない。

 

 

★★★

 

 

 “ゲーム”とやらは初めて触れたが、成程、人間は相変わらず興味深いものを考える。

 最初はヒゲのオジサンを車に乗せて走らせることの何が面白いのかと思ったが、やってみると中々奥が深い。

 特に、骨の亀が気に入った。これで星空貫く虹の道を爆走する爽快感は素晴らしい。

 ……それと。

 

「貴様、レクシィイイイイイイ!!!」

「油断大敵じゃぞ、兄上!」

 

 首位で浮かれていた兄上を、空飛ぶ青い甲羅で爆発四散させるのが最高に楽しい。これは癖になる。

 ふむ。これは中々良い娯楽を見つけた。今は兄上の観察で十分に足りているが、人間の一生は短い。いずれ、そう遠くない内に必ず別れの時は来る。

 この男が天に召された後の暇つぶし候補の1つとしておこう。

 そんなことを考えながら夜遅くまで遊び、いつのまにか眠っていた。

 そして、朝になってみると――

 

「さぁ、一緒に朝食と弁当を作るぞ! 共にメシウマ正妻系ヒロインを目指そうではないか!」

 

 兄上が意味不明な事を言い始めた。

 

「なぜじゃ。なぜ、ワシが料理なぞせねばならんのじゃ」

「昔っから言うだろ。胃袋を掴んだ奴が勝者だって」

 

 ……? 何を当たり前のことを?

 内臓を鷲掴みにすれば勝利は確定だろう。腹を穿って胃袋を引きずり出せば、流石の星群少女も無事では済まない。

 しかし、それが料理を作る事と何の関係が?

 

「他にも、戦の前の腹ごしらえ。腹が減っては戦は出来ぬ……」

「戦? ……戦があるのか?」

「……? 何を当たり前のことを。これからは毎日が戦争みたいなモンだろ。少なくとも、そういう心持でいなきゃ敗北は確定だろうが」

 

 ……ほう。確かに、北天の情勢は一触即発。風雲急を告げるという言葉が相応しい有様。

 いつ何時、どんな死闘が始まるかも分からない。それ故、常在戦場の心構えでいろ、と。そういうことか。流石はこのワシの兄、分かっているではないか。

 

「全く、しっかりしてくれよ。これから始まるのは、誰が選ばれるかって仁義なき修羅場の日々なんだからな」

 

 “選ばれる”というのは……勝利の女神に、ということか。

 そして、その為にも万全の準備を整えよ、と。成程、筋が通っている。

 しかし――

 

「兄上はワシを勝たせたいのか? 既に勝たせたい者がいるのではないのか?」

「おいおい、誰を勝たせるとか野暮すぎるって。今の時点で入れ込んでたら面白くも何ともないだろ。俺は全員の味方で、最後に輝くのが誰かを見届けたいだけさ」

 

 なるほど、中々に上手い言葉を選ぶ。最終的な勝者を、最も輝く存在と例えるとはな。ワシら星群少女にとって、これ以上ないほど相応しい言葉ではないか。

 しかし……全員の味方、か。

 もしや、偽十字 来栖は個人の勢力? 或いは、まさかワシのような戦闘狂がバックにいるのか?

 ――どちらにせよ、その価値観は実にワシ好み。

 誰が勝つと分かった出来レースほど退屈なモノもない。最後の最後まで勝敗の分からぬ戦い……正しく死闘とは斯く在るべきだ。気に入った。

 

「相分かったのじゃ。ならば兄上の言う通りにしよう。して、兄上は料理が達者なのか?」

「いや全く。基本的にインスタント生活だし」

「……なんじゃと?」

 

 

★★★

 

 

 足が重い。

 何度も何度も通った来栖の家へ向かう道。それが今日はいつもと違って見える。

 朝のスッキリした空気を吸っても、ちっとも気分が明るくならない。それは決して寝不足だけが原因じゃなくて、これから為そうとしている事が重く重く心を縛っているからだ。

 右手に持った鍵を――来栖の家の合鍵を見る。

 昔。ボクの家に入り浸っていた来栖に、極が合鍵を渡した。その時に交換だと来栖が差し出してきたカギだ。

 来栖曰く、「俺がいない時も勝手に入って良いぞ。我が家と思って寛げ」とのこと。極もだが、来栖も大概だ。そう容易く合鍵を預けちゃ駄目だろうに。

 ただ、この鍵には随分と世話になった。来栖は食生活が壊滅的に破綻していて、放っておくとインスタントしか食べない。だから、しょっちゅうボクがご飯を作りに行っている。

 ……でも。今日の来栖の答え次第では、この鍵ともお別れになるかもしれない。

 

「……着いちゃった」

 

 来栖の家は歩いて5分程度。いくら重い足取りであろうと、そう時間がかかる所ではない。

 

「すぅー………はー………っよし!」

 

 深く深呼吸を1度。頬を叩いて覚悟を決めた。

 そのまま、鍵穴に鍵を差し込もうとして――

 

「この塩“少々”って何じゃ! どれくらいじゃ!」

「1つまみなら1つまみって書けば良いんだし……多分、10粒くらいじゃないか?」

 

 ――え? 中から、来栖と……女の子の声?

 

「ならば“適量”とは一体どれくらいなのじゃ!」

「うーん? ……多分だけど、お好みと同じ意味では?」

 

 あれ? これって昨日戦ったレクシィさんの声じゃない?

 聴こえてくる会話内容から察するに……2人で料理してる?

 一体全体どういうこと?

 

「成程じゃな! ならば、どばーっと行くのじゃ!」

「おう行ったれ!行ったれ!」

 

 ――マズイ。

 こんな朝から男女が一つ屋根の下とか、なんで一緒に料理してるのとか、ボクが入っちゃ駄目なのではとか。そういう疑問とか躊躇は一瞬で吹き飛んだ。

 この典型的な料理下手の会話の先に待つ、約束された惨状を回避しなければならない。そんな使命感が全てに勝った。

 

「その料理、ちょぉおおおおおっと待ったああああああ!!!!」

 

 結論だけ述べるならば。

 食材が無駄になる事は回避できた。

 

 

 



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5話:どんな大義名分があろうとも、犯罪行為(覗き)を正当化してはいけない。

 

 

 偽十字 来栖を問い詰める。彼の目的および勢力を明らかとする。

 その為に来栖サマの家に行った星サマは、そこで昨日戦った『竜骨座(レクシィさん)』と――彼女と来栖サマが共に料理をする場面に遭遇。

 謎の状況ながら、とりあえず大惨事になる直前だった食材を間一髪でレスキューし。その後、星サマが教えながら3人で料理。一緒に朝食を食べて、作ったお弁当を持って登校して来たとのこと。

 なお、その過程でレクシィさんは来栖サマの「腹違いの妹」と名乗ったらしいのです。

 数千年も生きる星群少女が「妹」。100%嘘であることは明白であるのに、来栖サマは平然と受け入れていた。

 そんな、理解不能のイレギュラーだらけな状況で、星サマは遂に来栖サマを問い詰める事は出来ず。結局、今までと同じように“何となく”“流されるように”“なあなあ”で済ませてしまった。そういうことのようでした。

 てう達は、その顛末を星サマから聞いていました。この星雲高校の部室棟4階、『天文部』の部室である部屋で。

 

「ふざけんじゃねぇよ」

 

 その話を聞いて最初に言葉を発したのは麻琴サマ。

 ただ端的に不満を述べる彼女は、苦虫を噛み潰したような表情をしています。

 最後まで反対していた麻琴サマだからこそ、この顛末には思う所があるのかもしれません。

 どうせ有耶無耶のまま済ませてしまうならば、来栖サマを……友人を疑う必要なんて無かったのではないか。そのように考えているのかもしれないです。

 

「…………ごめん」

 

 そして。星サマ自身、来栖サマを疑うという所に思う所があったのでしょう。一切の弁明もなく、麻琴サマの批判を受け止めています。

 なんだか、嫌な感じです。

 てう達の……長く一緒に戦ってきた仲間たちの絆に亀裂が入り始めている。そんな気がします。

 ……そこまで考えて、ふと思う。

 かつて、その“絆”や“友情”を利用してまで罠に嵌めて――星サマ達を抹殺しようとしていた自分が、こんなことを考えるようになるなんて、と。

 

 

★★★

 

 

 そもそも、自分は正規の星群少女ではないのです。88星座の『こぎつね座』の星群少女――その座を一時的に借りているだけの紛い物。

 「狐咲てう」が宿す力の名は『テウメッサ』。星座(こぎつね)ではなく、怪物(ばけぎつね)

 人の世に災いを為すべく生み出された存在。人為的に作られた、星群少女モドキ。遊園地で暴れていた男性と根っこは一緒。違いがあるとすれば、肉体に流し込まれたAEへ適応できたか否か、それだけ。

 そう。謎に包まれた組織『Typhon(テューポーン)』が生み出した生体兵器――それが自分です。

 自分は組織の計画通りに星サマたちを殺そうとして、無様にも敗北。暴走した怪物の力に飲み込まれ、黒い泥と化す運命でした。

 それを、死にゆく寸前で救われたのです。来栖サマの助言を受けた、星サマ達の機転によって。

 以来、「数少ない貴重な戦力」兼「謎に包まれた組織の内情を知る情報源」として生かされています。

 自分は、“狐咲てう”は今、「友達」と共に笑って泣いて日々を生きているのです。

 他ならぬ、彼女たちのおかげで。

 だから――

 

 

★★★

 

 

 贖罪、なんて思わないですけれど。

 それでも。

 

「麻琴サマ、麻琴サマの怒りは正しい…です。でも、結果的に星サマの行動も正しかった。てうはそう思う…です」

 

 それでも、今は。てうの恩人たちの為に言葉を紡ごう。

 この恩人達の……友達の仲を取り持とう。命令ではない己の意思で、今の自分は動くのです。

 

「てうテメェ、それは一体どういう意味だ?」

「え、えっと……そ、そのですね……えっと、その場にはレクシィさんが居たわけ、です。だから、つまり、その……」

「あぁ?」

「ひぃ……」

 

 ……ぐすん。駄目でした。

 やっぱり、麻琴サマは怖いです。

 彼女が可愛い物好きの、誰より女の子らしい内面の人だとは知っています。

 知っていますが、それはそれとして、やっぱり目つきとか言葉とか……極道の家で培われた外面の怖さは本物なのです。狐にはちょっと刺激が強すぎるのです。

 

「麻琴、脅かしちゃ、駄目。てうが、怯えてる」

「…………ちっ。すまん、悪かった。……で?」

「ひぇっ」

「こら、麻琴。また威圧した」

「はぁ? 今のドコが威圧してんだよ、普通に会話してんだろうが」

「麻琴の普通は、普通じゃない。空気を、読んで」

 

 170㎝の長身と、桃色に染めたストレートの長髪、切れ長の瞳。そんな容姿の麻琴さんは、ただ立っているだけで威圧感が凄まじい。

 そんな方が怒りオーラ全開で話せば、それはもう威圧兵器なのです。

 ……多分、なのですけれど。

 最近、どうも麻琴サマは異性として来栖サマを意識している様なのです。

 だからこそ余計に彼女は不機嫌になっている。想い人を裏切り者と疑わねばならない状況に憤怒しているのです。

 

「まぁ、でも。麻琴のそういうところ、私は、大好きだけど」

「このっ! テメッ、淫子! どさくさ紛れに変なトコ触ってんじゃねぇ! テメェこそ空気を読みやがれ!」

 

 ……ありがとうございます、韻子サマ。

 いつも彼女が、こうやって場の空気を調整してくれているのです。……方法は彼女の趣味全開、ですが。

 それでも。方法はともかく、彼女が調停役として自然に振る舞ってくれているからこそ、このチームは保っているのでしょう。

 荒っぽくて不良みたいな見た目の織姫(麻琴)と、マイペースで優等生な見た目の彦星(韻子)。正反対でチグハグな二人は、しかし、それ故にパズルのピースの如く上手く嵌る。

 内心で韻子サマへ感謝しつつ、てうも心を落ち着けていく。

 

「今レクシィさんと明確に敵対してしまうのは避けるべき、です。彼女が来栖サマの家に、妹として……家族として居る。いつでも傍に控えている。これは一種の警告だと思う、です」

 

 そう。これは恐らく、これ以上“踏み込むな”“詮索するな”という警告。

 裏を返せば、手出しすれば容赦しないというメッセージ。全力を以て叩き潰すという宣言でもあるのです。

 そう考えれば多くの辻褄が合う。

 南天と来栖サマの繋がりが明確になり、こちらが動き出すタイミングだったことも。それも「腹違いの妹」などという、騙す気ゼロの建前を掲げた杜撰な計画であることも。

 

「そっか。現状、彼女は中立。見逃して、()()()()()。そして。私たち5人、束になっても、彼女には――勝てない。そういうことね?」

 

 良かった。てうの拙い言葉選びで伝わるかは不安でしたけれど。

 韻子サマは自分の言わんとすることを完全に理解してくれたようです。

 流石は、星雲高校一の秀才。神童と呼ばれる頭脳の持ち主。

 

「確かに。彼女の……レクシィの行動は、釘を刺す為だと、そう考えれば納得も、しやすい」

「おい、どういうことだよ韻子。勝手に納得してないで、オレにも分かりやすく説明してくれ」

「要するに、『此処はウチらの島』『来栖はウチの構成員』、手ぇ出したら、分かるよな? ってこと」

「……成程な。ドンパチする覚悟がねぇならスッこんでろってことかよ。腹立たしいが、納得だ」

 

 麻琴サマは相変わらず納得の仕方が怖いです。ヤクザ丸出しじゃないですか……。

 

「……すまなかった、星、てう。オレが暴走した。今回は完全にオレが悪ぃ」

「違うよ、麻琴ちゃん! 今回は誰が悪いとかじゃなくて……!」

「そうです! そうです! だから頭を上げて欲しいです!」

 

 命の恩人の一人である麻琴サマ。そんな方に頭を下げさせるとか、申し訳なさ過ぎて逃げ出したくなるので止めて欲しいのです。

 ……それはそれとして。

 仮に今回の話で悪い人がいるとしたら、それは思わせぶりな行動を続ける来栖サマではないでしょうか? と、てうは訝しむのです。

 

「……今、調査結果が届きましたわ。『偽十字 レクシィ』の戸籍は正規の手続きを経ています」

 

 すると。貨月サマが通知音の鳴ったスマホを見て、言葉を発し始める。

 「時間」を何より大事に考える彼女は、いつだって議論へ率先して参加します。そんな彼女が、今回はずっと静観を続けているので不思議には思っていたのですが。まさか、情報の裏取りを行っていたとは。

 ……この短時間で調べ上げるあたり、やっぱり金の力は恐ろしいです。てうは麻琴サマとは別の意味で貨月サマが怖いです。

 

「じゃあ、極星機関が」

「間違いないですわね、韻子さん。あの戦闘の後、あの場に残って機関の者と交渉した結果ですわ」

「つまり、これは機関も黙認している。そういうことだね、貨月ちゃん?」

「えぇ。そうなりますわね、星さん」

 

 その情報だけで韻子サマと星サマは完全に理解したようですが……。

 正直、てうと麻琴サマは置いてけぼりです。

 ……えっと。つまり?

 自分たちの後ろ盾でもある極星機関。それが裏で手をまわした結果であり、ならば直ぐに危険な状況に陥るとは考えにくい。そういうことでしょうか?

 ふぅ……。頭脳明晰な3人の思考について行くのは大変なのです。

 

「つまり、どういうことだ?」

「ともかく、偽十字さんとはこれまで通りで構わないという事ですわ」

「特に、麻琴は何も、考えなくて良い。疑うなりは、私たちが担当する」

「……そうか! 分かったぜ!」

 

 こうして。貨月サマと韻子サマが麻琴サマを丸め込み、一先ずの議論(非日常)は終了。

 そのまま、それぞれが1時限の授業(  日常  )へと向かって行った。

 

 

★★★

 

 

 ――その様子を覗き見る、不届き者が居るとも知らずに。

 

 

☆☆☆

 

 

『あの女は誰なんだよ! どういう関係だよ!』

『知らないってば!』

『でも今朝は一緒に料理をして、朝食も食べて来たのですよね?』

『男女が、一つ屋根の下、不潔』

『まるで夫婦ですわね』

『それは来栖の妹だからで来栖も一緒だったよ!』

『家族、公認』

『違うって!』

 ――って感じか?」

 

 俺の双眼鏡の先に映るは、天文部の部室で何らかの言い争いをする5人組。

 俺なりの声真似でアテレコしてみたが、なかなかにクオリティの高い仕上がりな気がする。今度アイツらに披露してみようかな。

 

「いやー、良い感じに修羅場ってるようで重畳重畳」

 

 ここは半年前に見つけた俺の聖域。

 この校舎裏に生えた樹の、一際太い枝の上。生い茂る葉に身を隠しながら、天文部の部室を覗き見る事が可能な絶好の場所。

 難点を上げるとすれば。校舎から離れているせいで場合によっては1時限に遅刻してしまう事くらいだが。まぁ、構うまい。遅刻の10や100、修羅場を観察することに比べれば何てことはない。

 

「まぁ、声が聞けないのも難点の1つではあるが……」

 

 こちらは大して重要な問題では無い。

 会話内容も、先ほどのアテレコで概ね正しいだろう。この修羅場マイスターである俺に間違いはないのだ。

 一度は盗聴器でも仕掛けようかと思ったこともある。が、市販の盗聴器程度は時金のマネーパワーで呆気なく見つかりそうだし、そうなってしまえば警戒されて修羅場鑑賞が難しくなる。

 ならば、この形式が最も持続可能性がある修羅場鑑賞方法。SDGsの世だからね。限りある資源(修羅場)は大切に楽しまないと。

 ……おや?

 星たちが解散するらしい。なるほど、既にこんな時間。至福の時は一先ず終わりらしい。

 そろそろ1時限が始まる。俺も急がねば。

 そう思って、木から飛び降りようとした。その瞬間――

 

「見つけタ。アイツをヤれば、あの子は……」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 







序章1話の前にキャラクター紹介を2つ設置しました。
登場人物の事を更に詳しく知りたい場合にのみ、ご利用ください。
(※読まなくても、後々本編で触れる内容ばかりです)
また、残りの2人の紹介は明日投稿します。



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6話:タケノコ派である以上、キノコ派などという存在を容認するわけにはいかない。



※タイトルは主人公の主観に基づき、彼の独断と偏見で構成されたモノです。





 

 

☆☆☆

 

 

 突然だが。

 俺、偽十字 来栖には愛して止まぬ魚がいる。

 名を、ニセ()()()ジギンポ。なんといっても、名前に『クロス』が入っているのが素晴らしい。『ニセクロス』というのも、俺の姓に似ていて親近感が湧く。

 ……クロスじゃなくて“黒筋(クロスジ)”じゃないのか等という野暮なツッコミは知らん。細かいことは割とどうでも良い。小3の俺が何となく好きになったのだから、それで良いのだ。

 ともかく。俺はこのニセクロスジギンポが好きだ。生憎と実物を見たことは無いが、一方的に好いている。

 で、だ。

 この魚、実に奇妙で不思議な生態をしていることで知られている。

 驚くべき事に。こやつ、自分より遥かに大きな魚へ難なく近付くと、その体表を齧り取ってムシャムシャ食べてしまうのである。

 何故こんな事が可能なのかと言えば、この魚が『掃除魚』に擬態しているからに他ならない。

 掃除魚とは、他の魚の寄生虫などを食べる魚。魚たちは皆、掃除魚の掃除を拒むことはない。警戒心も抱かず身を委ねてしまう。

 ニセクロスジギンポは、これに擬態。スイスイと悠々自適に泳いで魚たちへと近づき、バクリとご馳走にありつくのである。

 本当に素晴らしい生き方だ。

 俺も()の魚のように完璧な擬態をしながら、修羅場というご馳走を心行くまで堪能したい。

 そう考えて日々を生きているのであり、ニセクロスジギンポは正に人生の指標とでも呼ぶべき存在なのだ――

 

 

☆☆☆

 

 

 ――さて。マイフェイバリットフィッシュの話は脇に置いておくとして。

 一般人が犯罪者と遭遇した際、まず真っ先に為すべき事は何か分かるだろうか。

 通報? 取り押さえる? 説得する? はたまた命乞い? あるいは動画を取ってSNSに投稿?

 違う。どれも間違っている。正解とは程遠い。

 答えは単純明快。一目散に「()()()」、だ。

 犯罪の内容に関わらず、逃走こそが最も賢明で安全な道である。テロや強盗といった凶悪犯罪であろうとも、万引きや未成年飲酒といった軽犯罪であろうとも、この答えは決して覆る事は無い。

 何故ならば、()()()()()()()()()()()()()()

 犯罪を犯罪と知らなかったり、意図せず巻き込まれたり……そういう特殊な事例を除けば、普通の人間は犯罪に手を染めたりしない。

 誰もが日夜それぞれの艱難辛苦を抱えている。俺だって毎日のように悩み苦しんでいるのだ。最高の修羅場とはどんなものか、どうすれば生み出せるのか、バレずに楽しむには何が必要か……等々、悩みが尽きることはない。

 だが、それでも。それでも、誰もが歯を食いしばって生きている。定められたルールの中、必死に我武者羅に足掻いている。俺も含めた誰もが、そうしてルールを守ってきた。

 だというのに。犯罪者はそれを平然と破る。自らの不運不幸を理由に、他者へ悲劇を押し付ける。犯罪者なる存在はそういう異常者なのだ。逸脱者であり、冒涜者であり、裏切者なのである。

 当たり前のことだが、異常者は()()であり普通ではない。我ら凡庸万歳一般人のザ・パンピー思考で推し量れる存在ではないのだ。

 服の下にナイフを数十単位で隠しているかもしれない。拳銃を躊躇いなく撃ってくるかもしれない。身体に爆弾を巻き付けているかもしれない。どっかのマジシャンの如く日本刀を飲み込んでいるかもしれないし、胃の中が毒物で一杯かもしれない。目玉焼きにケチャップをかけて食べる邪教徒かもしれないし、タケノコよりキノコの方が素晴らしいと考えているかもしれない。

 そういう異常者なのだ、彼らは。通報やら撮影やらをしようとした瞬間、殺しにかかってくる可能性も決して否定はできない。

 だから逃げるのだ。

 古代ギリシアにおいて最大の弁論家とも称されたデモステネスは言った。『逃げた者はもう一度戦える』と。

 通報は逃げてからでも出来る。だが、殺されてしまえば何1つ成し遂げることは出来ない。それ故、逃げるのだ。脇目も振らず一目散に。脱兎のごとく逃げるべきなのだ。

 

 ……当然、今回もそれは変わらない。

 目の前にいるのは、「覗き」などという犯罪行為に手を染めている異常者。

 身長は160くらいだろうか? 真っ黒でブカブカのパーカーを身に纏い、フードを目深に被って顔を隠している。どっからどう見ても怪しさ100%の不審者だ。

 そんな存在を前に俺がすべきことは逃走。その一択である。

 

 だが、しかし。

 生憎と、今の俺は逃げられない。

 というのも、俺が登っている樹、その真下に不審者がいるからである。

 逃げようとすれば不審者に補足される。100%確実に。

 樹から降りる時に音を立てないなど、忍者でもない俺には不可能だ。

 それでは、このまま動かず息を殺して、不審者が立ち去るまでやり過ごすことが正解であろうか?

 否。これもNG。

 例えば、不審者が振り返ったり周囲を確認したりした場合を考えてみよう。その時、樹の上に必死に気配を殺す人物が――目撃者がいたらどうするか。異常者がどんな行動に出るだろうか。想像するだけでも恐ろしい。デッドエンドまっしぐらである。

 故に。今の俺が為すべき事は――

 

「やぁ、お前さんも誰かを消しに来たのかい?」

 

 ――眼前の不審者以上の異常者を演じる事だ。

 我が敬愛するニセクロスジギンポのように。完璧な擬態で窮地を乗り切ってみせよう。

 

 

 

 



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7話:人類全てを愛する博愛主義者になりたければ、あらゆる性癖を搭載した変態になるしかない。

 

 

☆☆☆

 

 

 かつて研究所から脱走した()()()を抹殺する。

 それがワタシに与えられた仕事。ソレさえ達成すれば、あの子は救われる。治療を受けられる。

 あの子が救われれるのなら自分はどうなっても構わない。他の誰がどうなっても構わない。

 だから、ワタシはここに居る。ターゲットの……「狐咲てう」を監視し、その隙を伺うために。

 だが。

 

「ナ、なんダ、おまエ…! どこかラ…!?」

「よっと」

 

 突如として、謎の男が樹の上から飛び降りてきたのだ。

 不覚だった。完全に背後を取られた。

 この身体は既に殆どが()と化している。

 声がカタコトになっているのは泥で喉がグチャグチャだから。そして実は、自慢の鼻も使い物にならなくなっていて――これが災いしてしまった。

 

「おいおい、動揺し過ぎだぜ、御同輩?」

 

 そんなことを言いながら、男はニヤニヤと笑う。“誰かを消す”と宣った口を楽し気に歪ませている。

 一目で分かる。まともな存在ではない。この世の不条理を煮詰めたような研究所にさえ、こんな雰囲気の男はいなかった。

 

「ははっ、さてはアンタ初心者だな。いけねぇよ、そんなド素人丸出しじゃあ」

 

 “ド素人”。確かに、男の言う通りだ。

 ワタシはずっと研究所にいて、今日が初めてで最後の任務。

 どこまでいっても使い捨ての駒であり、大した訓練が施されているわけではないのだ。

 隠密、変装、咄嗟の嘘でまかせ……全て素人に毛が生えた程度でしかない。

 対して、この男はどうだ。これほどまでに堂々として、まるで常日頃から偽りの中で生きてきたかのようでは無いか。

 ……いや、事実そうなのだろう。

 いつ何時も気を休めることなく仮面をかぶり続けて来た……そんな人間でなければ、これ程の境地には至れまい。

 この男は全てが偽りで出来ている。生まれた時の名前など誰も知らない程に、嘘を重ねて重ねて生きているに違いない。

 

「アナタの指摘は正しイ。コレがワタシの最初の任務ダ」

「何? 初めてだと? ……ったくよ。それじゃあ見捨てるのも後味悪ぃな」

 

 何より、これだけは忘れてはならない。

 彼が筋金入りの“プロ”で、ワタシが筋金入りの“素人”であるからこそ、現在の会話は成立している。

 彼はワタシ如き小物を始末しようとはせず、ワタシは無謀にも歯向かおうとは考えないから。

 もしも、ワタシが劣化版のパチモノとはいえ、星群少女モドキの力を有している……そのことを知られたらマズイ。きっとワタシはこの男に殺されてしまうだろう。

 そうなれば任務は失敗。あの子も治療をしてもらえずに死ぬ。それだけは絶対に避けなければならない。

 ――だから今は、素直に会話に応じよう。何も知らない“ド素人”で通そう。

 

「全く、こんな奴を送り込むたぁ、一体どこの組織だ。困るんだよ、足を引っ張られるとさ」

 

 やはり間違いない。この男は何らかの組織または国のエージェント。

 星群少女の力を軍事利用したいと考える者は多い。アストロラーベ・フィールドを展開して別位相へと移動すれば、核兵器すら無視できる存在なのだから当然だ。

 ただし、人間を遥かに超えた存在である星群少女は、下等な人間如きに力を貸すことはなく。それ故に、ずっと人間と星群少女の世界は別たれてきた。2つの世界は交わることなく、相互に不干渉を貫いて並立してきたのだ。

 だが、北天で10年続く内戦、及び、それに伴って誕生した人間の星群少女……この2つが均衡を崩してしまった。まともな統制を失った北天に、扱いやすい人間の星群少女がいる……そんな状況を黙って見過ごすバカはいない。

 この現状を受けて送り込まれた刺客の1人が、この男。高校の制服が似合うくらい若く見えるのも変装だろう。

 ……或いは、幼少期から特殊な訓練を施された少年兵の類かもしれないが、その違いは些細なもの。今のワタシにはどちらでも大差ない。

 

「……む? その視線、この格好が気になるのか? 俺からしちゃあ、アンタの格好の方が気になるがね」

 

 すると、制服をジロジロと見ていた視線を勘違いしたのだろう。男はワタシの恰好を……黒一色のパーカーを指差し、使い道の無いガラクタに向けるような呆れた眼を向けた。

 

「この稼業なら変装なんて基本のキ。だのに、アンタの恰好はどうだい。こんな真昼間から黒一色。不審者丸出し、どうぞ怪しんでくださいって言ってるようなモンじゃねぇか」

 

 ……そういうものか。

 流石はプロの視点。ワタシの恰好は悪目立ちし過ぎるし、対して男はどこからどう見ても一般学生にしか見えない。とても参考になる。

 ……ただ、これはどうしようもないのだ。

 ワタシはこの一着しか持っていないし、何よりフードの下の素顔を見られる訳にはいかない。

 何故ならワタシの顔は――

 

「特に駄目なのがコレだな。まさに怪しさの塊。取っちまえよ、こんなフード」

「……っ!」

 

 だが、パーカーは無情にも男によって払いのけられて。

 そして――

 

「オマエさん、その顔……」

「見ないでっ!!」

 

 ――ワタシは叫び、男を突き飛ばして逃げた。

 ただ一目散に逃げだした。

 

 

★★★

 

 

 見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。

 見られてしまった。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

☆☆☆

 

 

 突き飛ばさて地面に尻もちを付いた体勢で、既に姿の見えなくなった少女の……あの黒髪と赤い瞳の少女のことを考える。

 否。考える等という表現では生温い。

 俺の内心は叫んでいた。()()()()()吠え立てていた。

 

 ――そう。

 

 スカーフェイス属性きたあああああああああああ!!!!

 

 と――。

 

 合格だ! 合格だよ、名も知らぬ少女!

 おめでとう! 今日をもって君はモブからヒロインに昇格した!

 最近の俺はなんて幸運なんだろうか!? 2日続けてニューヒロインを発見できるとはな!

 傷のある顔を恥じらう少女。容姿にコンプレックスを抱えた少女。間違いなく辛い過去を抱えた少女。

 ……完璧だ。最高すぎる。最上級のヒロインの原石じゃないか。

 正直、マイシスターが霞む程のダークホース。超級レアの逸材である。

 あの少女の傷付いた心を心優しきイケメン……星が時間をかけて癒やしていくのだ。シリアスな場面を挟みながらも、ゆっくりと日常が彼女の心を温めていく。聳え立つ心の壁が壊れていく――あぁ、やはり素晴らしい。

 起き上がるまでの間に少女は居なくなってしまっていたが……。

 まぁ、関係ない。俺の執念を舐めるな。俺は絶対に彼女をスカウトする。修羅場要因として、ハーレムメンバーとしてキャスティングする。そう決めた。

 となれば善は急げ。

 ……ふむ。授業開始まで後3分。流石に遅刻は確定だが、電話1本するくらいの余裕はある。

 ポケットから相棒(ガラケー)を取り出し、電話帳に記された1つの連絡先を選ぶ。

 コール音が鳴れば、目当ての人物は直ぐに出た。

 流石は「時は金なり」の体現者。時間を無駄にせずに済む。

 

『――何か御用でしょうか、偽十字さん?』

「時金、頼みが1つある」

 

 



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8話:持つべきは金持ちの友人って、古事記にも書いてあったような気がしないでもない。

★★★

 

 

 ――時金。

 其は、星と人の狭間にある者。

 遥かな昔。時計職人の青年と、「とけい座」の星群少女が恋に落ち子を成しました。

 その子孫こそが我ら時金。長く星群少女と人間の『調停役』を果たしてきた一族。

 星の世界と人の世界。これらは世界の裏表。

 決して、星々の争いが人々に害を及ぼさないように。

 間違っても、人が星の力を悪用しないように。

 2つの世界を別つことこそ、我らの使命。

 各国政府機関をはじめ大小様々な組織とパイプを繋ぎ、星群少女の存在を徹底的に隠匿し続けてきました。

 代々の当主が商いを拡大して富を蓄えたのも、全ては影響力を高めるため。金が集まる場所に情報と力が集まるは自明の理。事業を拡大するとともに、調停者としての立場を盤石としたのです。

 ですが。

 10年前。あの事件から全てが狂ってしまったのです。

 ヘルクレスを筆頭とした北天の星群少女たちの暴走。これに端を発する数多の事件。

 災害と見紛う程の大規模な被害もあれば、戦争と表現するしかない地獄もありました。

 一般人が闇ルートでAEへと触れ、その身を破滅させる事例も後を絶ちません。

 もはや民草に隠し続けること自体に限界が訪れようとしています。

 そう遠くない未来、ほんの些細なきっかけで全てが瓦解してしまうことでしょう。

 

 それでも。

 それでも我ら時金は……時金家次期当主たる(わたくし)は決して諦めません。

 絶望する時間、弱音を吐く時間、慌てふためく時間、泣きわめく時間――全てが無駄の極み。

 最後の最後の、その一瞬まで。我ら一族は調停者として全力を尽くし続けるのです。

 

 ――それに。

 今の私には頼れる仲間たちがいます。

 “ビジネスパートナー”という意味でのソレではなく。損得を念頭に置かない、浪費される時間すら愛おしい存在。金では買えない宝物。

 星さん、麻琴さん、韻子さん、てうさん。

 初めは北天における異変の象徴として、問答無用で排除しようとしてしまいましたが……。

 ですが、対話によって相互理解を果たし、今は共に戦っています。

 この北天の異常事態を究明・解決するべく、「人」の世界を守るべく。

 そう。今の私は、かけがえのない友人と共に戦っているのです。

 

 そして、大切な友人は()()()()――。

 

 

★★★

 

 

「貨月お嬢様、ターゲットを見失いました。申し訳が……」

「謝罪の言葉を紡ぐ暇が?」

「……はっ!」

 

 ――偽十字さん。……偽十字 来栖さん。

 私の唯一の殿方の友人。

 私と友人たちの対話のきっかけを作ってくれた方。私に産まれて初めての友人をくださった男の子。

 どれだけ金を積んで調べても、その全てを見通すことは出来ない謎に満ちた存在。

 時金の次期当主としては、裏切者かもしれないと疑わなくてはならなくて。

 されど友人としては、この命果てる時まで敵対したく無いと願ってしまう存在。

 不思議で面白い、私の友人。

 そんな方から託された“頼み事”。

 “時金(調停者)”としても、“貨月(友人)”としても。この信頼には何としても応えねばなりません。

 その一心で学校を飛び出してきてしまいましたが……まぁ、構わないでしょう。

 なにせ、あの星雲(ほしくも)高校は我が時金の息のかかった教育機関。遅刻・欠席・早退……その全てに“理由”を後付けする事など造作もないのです。

 それに高校程度の学問ならば、とっくに頭脳に叩き込んであります。あの場所は唯々友人たちと青春を謳歌する……その為だけに通っているに過ぎませんから。

 故に、こうして飛び出してきたことに何ら問題はありません。

 えぇ、何の問題もないのです。そのこと自体には。

 ですが――

 

「お嬢様。流石に今回の任務は……ターゲットの“救命”は不可能と断ずるしかありません。早々に“排除”へと方針を転換すべきです」

「その様な事とっくに承知しておりますわ。無駄口を叩く暇があれば打開策について思案を巡らせなさい」

「しかし……!」

「これは命令です。時金の名に懸けて、この任務を放棄する事は許されません」

「……はっ!」

 

 ……部下の忠言は正しい。

 私の理性的な部分は既に諦めるべきと結論を出してしまっている。

 この身体に流れる時金の血が……『時は金なり』の信念が早々に見切りを付けろと叫んでいます。

 偽十字さんから“見つけて欲しい”と頼まれた少女。彼が語った少女の容姿はAEを無理やり注ぎ込んだ非適正者特有のモノ。……それも末期も末期。

 惜しくも逃げられてしまいましたが、部下が一度姿を確認しました。既に肉体のほとんどが黒い泥(ダークマター)と化している。そんな状態だったのです。

 そこまで進行しているのなら、もう救えません。

 

 ――確かに、かつて同じような状態から救われた少女がいるのは事実。

 私は当時合流していませんでしたが……聞きしに及んだ、てうさんが救われた時の状況と酷似しています。

 しかし、あれは奇跡に等しい御業。未だに解明されていない未知の現象です。

 泥となって死にゆく直前、星さん・麻琴さん・韻子さんの願いの力が……AEが尋常ならざる値に上昇。その力を受けて「化け狐(テウメッサ)」の力が、長らく空席となっていた「星座(こぎつね)」の力へと変質した……否、世界の仕組み自体が“誤認した”。

 そうとしか説明できない未知の現象が起き、それによって“狐咲てう”は一命を取り留めたらしいのです。

 

 ですけれど。

 今回の少女に宿る能力は“ケルベロス”。

 その星座は既に存在せず、存在しない星座を依り代として星群少女が顕現する事は不可能。

 近い星座として南天の『おおいぬ座』、北天の『りょうけん座』が存在するものの、この2星座の星群少女は健在。

 てうさんが救われた当時、『こぎつね座』の星群少女は既に死亡していて空席だった。今回とは前提が全く異なります。

 ……それに。

 仮に、条件が同一だったとしても、当時と同じ奇跡はきっと起こせない。

 あれは、なぜ救えたのか本人たちすら分からない正真正銘の奇跡。奇跡は何度も起こらない故に奇跡なのです。

 

 ……悔しい。

 悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。

 でも。

 ――申し訳ございません。偽十字さん。

 

「……確かに。これ以上は時間の無駄、かもしれませんわね」

 

 ――時は金なり。

 我が家の家訓は初めから破綻しています。

 何故なら、金で過ぎ去った時を買い戻す事は不可能なのだから。

 それでも。その致命的な破綻を理解した上で。それでも尚、この言葉を掲げて突き進むことこそ『時金』の在り方。

 いくら金を持っていても。力を持っていても。それでも出来ない事が世界には溢れています。

 失った命は買い戻せないように、金の力には限界があるのです。

 「時」と「金」を扱い続けて来た時金の血筋は、それを良く良く知っています。誰より深く知っています。 

 

「お嬢様、それでは」

「えぇ、方針を転換いたします。ごめんなさい、私の意地で無茶を押し付けてしまいましたね」

「いえ。お嬢様の願いを最大限叶える事。それこそが我ら時金家使用人の誇りであります故。此度は私共の力が及ばず、誠に申し訳ございません」

「ふふ。お互いに謝罪していては切りがありませんわ」

 

 今回も、その類。

 そろそろ結論を出しましょう。絶望的で、屈辱的で、最悪の結論を。

 ――あそこまで泥に浸食されてしまえば、もう絶対に救えない。

 星群少女の振るう“魔法(奇跡)”は勿論、現代の人間が誇る“医療(科学)”でも――

 

「――()()()()()?」

 

 何かが引っ掛かった。

 これは、もしかして――

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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9話:ホイホイ死者蘇生するとドキドキがバイバイするので、コロコロして止めたゼウスさんは間違っていない。

 

 月曜日、放課後。

 ボクらは天文部の部室に集まって今後の方針を話し合っていた。

 というのも、貨月ちゃんが来栖から“頼み事”をされたそうなのだ。

 ある少女を“見つけて欲しい”“出来れば友人になってやって欲しい”と。

 それで蓋を開けてみれば、件の少女は既に瀕死の状態。身体は泥に侵され、生きているのが奇跡と言える状況だったらしい。

 

「その子、もしかしたら知ってるかも、です」

 

 そして。少女の容姿と能力を聞いて、てうちゃんには思い当たる節があったようで。

 

「黒髪と赤い瞳の女の子。あの頃、一度だけ見たことがあるかも、です」

 

 てうちゃんが『Typhon』の研究所にいた頃、日常的に非道な“実験”を押し付けられていた頃。

 同じような境遇の少女たちの中に、そんな容姿の子がいたらしく。

 常に番号で呼ばれていたから名前も知らないし、互いに別の檻にいたから面識もなかったそうだけれど。

 でも、きっと彼女はそのまま酷い実験をされ続けて。それで今ボクたちの前に“刺客”として現れた。

 

「もしかしたら、だけど。何か奴らの情報を、知っている、かも」

 

 昔。てうちゃんを助けて、直ぐにボクたちは研究所を探した。極星機関も全力を注いだ。

 でも、駄目だった。最終的には広大な更地が見つかっただけ。『Typhon』は影も形も掴ませず、今も社会の裏で暗躍を続けている。悲劇を拡大し続けている。

 そんな組織から送り込まれた刺客。てうちゃんと同じく“使い捨ての駒”なのだとしても、それでも何らかの情報を知っている可能性は高い。

 もしかしたら来栖は、それをボクたちに掴ませたいのかもしれない。彼女を救って仲間に引き入れる事が、ボクたちに有利に働くのかもしれない。

 ……或いは、彼の優しさ故の単なる同情なのかも知れないけれど。

 何れにせよ。ただ1つ確かな事は、来栖は彼女を救おうとしているということ。悲劇の中で生きてきた少女を、ボクたちに救って欲しいと願っている。それだけは確かだ。

 だって、わざわざ死にかけの少女を指して“見つけてくれ”“友達になってくれ”なんて、それが言葉通りの意味である訳が無いのだから。

 そして、今のボクたちには――

 

「へびつかい座の星群少女、か」

「えぇ、かの星座のモチーフとなったのは医神アスクレピオス。死者さえ蘇らせたとされる伝説を有しております。その星群少女ならば、或いは」

 

 貨月ちゃんが思いついた、この打開策がある。

 太陽の道筋に存在する13の星座、『黄道星座』の1つ“へびつかい座”。

 医術の神と神話に謳われるアスクレピオスを象るアステリズム。そんな星群少女の有する力ならば、もしかしたら少女を死の運命から救えるかもしれない。

 もっとも――

 

「とはいえ。これは蜘蛛の糸より尚細い可能性。加え、繋がっている先が希望かどうかも分からない有り様ですわ」

 

 そもそも『黄道』は南天にも北天にも属さない。

 常に中立……と評すれば聞こえは良いが、実際は高みの見物を決め込んでいる傍観者に過ぎない。誰かの為に善意で動いたという話は全く聞かない存在だ。面識もないボクらに快く手を貸してくれる……とは考えにくい。

 また、真偽不明ではあるものの、へびつかい座は他の12星座から嫌われている。仲間外れにされている……との情報もある。

 ともかく、へびつかい座の星群少女は『黄道』の定例会合にも出席する事は無く、何処にいるのかも完全に不明。既に死亡しているとも、そもそも最初から存在していないとも噂されているとのこと。

 そんな存在である故、当然ながら力を振るった場面を見た者も皆無。

 船の部品である“竜骨”を司るレクシィさんの能力が、ティラノサウルスの骨だったように。星群少女の力は星座が象るモチーフそのものとは限らない。むしろ、そんな事例は少数派。折角見つけても、少女を救う“医術”の力を有しているかは未知数だ。

 しかも、最悪な事に。

 

「どれだけ多く見積もっても、リミットは精々1週間が限度。それも彼女が力を発動しなければ、の話でしかありません」

 

 少女の肉体は既に限界を迎えようとしている。

 あと1週間で確実に死んでしまうし、僅かでもAEの力を使用すれば浸食は加速度的に速まる。リミットは急速に縮まってしまう事だろう。

 そんな時間制限の中で、何処にいるかも分からない少女1人を、この広い世界から見つけ出して連れて来なければならない。

 更に、助けてくれるよう説得しなければならないし、ボクたちの命を狙っている少女本人も説得する必要がある。

 まさに絶望的。

 だが、それでも――

 

「それでも、やる以外の道は無ぇ。だろ?」

「えぇ。その通りですわ、麻琴さん」

 

 それでも、膝を屈する理由にはならない。苦しむ少女を見捨てる理由にはならない。

 ボクの……キュクノス・リグリアの白き翼は、『護りたいモノ』への想いに応じて際限なく加速できる。どこまでだって速くなれる。

 貨月ちゃんの……タイム・イズ・マネーの金色の鎧は時間を加速する。ボクの翼に劣らぬ速度を実現できる。

 ボクたち5人の力を合わせれば不可能なんて無い。奇跡だって起こせるはずだ。

 

「決まりだね! へびつかい座の星群少女を探そう! そして、その女の子を絶対に助けよう!」

 

 ボクの言葉に、仲間たちは力強い肯定で応じた。

 

 

☆☆☆

 

 

 一方その頃。

 真っ直ぐ帰宅した来栖は――

 

「さっさと出て行け変態」

「いやいや、一先ずは話を聞いて欲しいのさ」

「生憎だが。白衣一枚しか羽織ってない変質者。そんな奴の言葉を聞く耳は持ち合わせてない」

「……ん? じゃあ聞くけどさ。こういう格好は嫌いかい?」

「いや、嫌いではないけれども。むしろ好きだけれども」

「ほらねー!」

「黙れ変質者。何が“ほらねー”だ。さっさと俺の家から出て行け」

「んぎゃーー! イダダダっ!! 愚生(ぐせい)の髪がああ!! 引っ張られるぅううう!!」

 

 ――変態と戯れていた。

 

 

 

 

 









いつも感想ありがとうございます。
とても励みになっています。



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10話:ベッドの下にエロ本隠してる奴、もはや乱獲されて存在しない。



ちょっとホラー(無果汁)かも?
夏だし良いかな。





 

 

★★★

 

 

 うーむ。

 

「暇じゃな」

 

 ワシは機関の奴らを脅して、キュクノスらと同じ高校の1年生の身分を手に入れた。

 が。流石に昨日の今日では通うことは出来ないらしい。制服も用意できていない有り様なのだから当然ではあるが。

 そんなわけで、今日は兄上がキュクノスと一緒に登校していくのを見送り、あとは家でゴロゴロとゲームをしていたのだが。

 

「暇じゃー暇じゃー暇なのじゃー」

 

 確かにゲームは面白い。が、独りきりでは面白さも半減する。

 兄上を攻撃したり、その逆に兄上に攻撃されたり……それが愉快だったのだ。あの面白さを知ってしまったあとでは、一人でピコピコやっていても盛り上がりに欠ける。

 なので。

 

「もはや漁るしかないのじゃ」

 

 レッツ家宅捜索。

 恥ずかしいモノやら何やら、兄上の全てを白日の下に晒してやるとしよう。

 名探偵ダイヤモンド・レクシィ始動――。

 

 

★★★

 

 

「むむむ。ベッドの下には何も無いのじゃ」

 

 あてが外れた。てっきり欲望の捌け口でも隠してあるかと思ったのだが。

 そういえば、今朝もくっついて寝るワシに……この絶世の美少女に触れようともしなかったな。

 暫く狸寝入りで観察しておったが、何とも紳士的な振る舞いだった。

 ……さては兄上は不能なのだろうか?

 

 まぁ、ワシは見目が幼すぎて、()()()()対象として見られることが殆ど無いのだけども。寄ってくるのは度し難い変態ばかりで生理的に受け付けないし。

 暇を紛らわす娯楽の1つとして、そうした行為にも興味はあるのだが。如何せん、プレミアが付き過ぎた感がある。

 3000年も売れ残った……もとい、3000年も守った故、そんじょそこらの男に捧げるのはプライドが許さないのだ。

 ……おっと。思考が逸れた。今は捜索だったな。

 

「むぅ。しかし、何とも奇妙な部屋じゃな」

 

 ()()()()()部屋としては普通に過ぎる……否。明らかに普通以下だ。

 ベッドの下だけでなく、この部屋そのものに物品が無さ過ぎる。

 机と椅子、ベッドと布団、小さな洋服ダンス……それくらいしかない。あとは確か……パソコンといったか? それくらい。

 

「む?」

 

 布団やらが詰まった押し入れの奥を探っていると、1つの箱が出てきた。

 段ボール製の箱で、縦横高さ30cm程度の立方体。側面にはデカデカと『く』の文字……違う。ぐるりと他の側面に『る』『す』『の』の文字が書かれている。繋げれば『くるすの』……“来栖のモノ”という意味なのだろう。

 つまり、間違いなく兄上のモノ。まるで隠すように奥の奥にあったのが実に怪しい。

 さてさて、中身は……?

 

「……書物?」

 

 出てきたのは、たくさんの書物。

 大きさは比較的小さく、精々10cm×15cm程度だろうか。全て大した厚さではない。

 それがギッシリと隙間なく詰まっている。

 兄上は好き好んで勉学へ励むタイプには見えなかったが……。

 

「なんじゃコレ」

 

 開いてみると、どの本も()()()()だった。

 時間による劣化……()()()()。紙自体は決して古くない故、何度も何度も読まれた結果なのだろう。

 一体何百、何千回読めばこうなるのか……皆目見当もつかない程の劣化具合である。

 あちこちページは破れているし、無数の書き込みで元の文章もほとんど読めない有り様だ。

 そして、その書き込みの文字が何とも酷い。尋常ではなく汚くて、何を書いているのか全く分からない。

 下手糞な絵らしき落書きも無数にある。幼い頃の兄上が書き込んだのだろうか?

 

「ま、読めない物を読もうとしても無駄じゃな。次に行くとするのじゃ」

 

 気にはなるが、考えて分かる類の物では無いだろう。直接兄上に聞いた方が手っ取り早い。

 そう考えて、兄上の部屋の捜索を終了。

 その後、家中を隈なく物色したのだが……

 

「なんじゃ、この()()()。何かが絶対に変じゃぞ」

 

 この家を見ていると、何かが引っ掛かる。在るべき物が存在しないような、そんな違和感を。

 なんだ? 一体何が……?

 む。

 むむ。

 むむむむむむむむ、ぐぅぅぅぅぅぅぅ。

 

「……腹が減ったのじゃ」

 

 とりあえず、朝つくった弁当を食べてから考えるとしよう。

 

 

★★★

 

 

「さて、お待ちかねのシンキングタイムじゃ!」

 

 いやー、しかし美味い弁当じゃったな。

 全部素晴らしかったが、何より“タコさんウインナー”とやらが特に良かった。

 パリッとした外側と柔らかな中身、その楽しい食感の違いもさることながら、噛めば溢れ出す肉汁が実にジューシー。まさに至高の一品。

 それに、見た目がスキュラやらクラーケンに似てるのも良い。憎き奴らを一方的に噛み殺している気分に浸れる。

 ……おっと。また思考が逸れた。今は家の違和感を解明する時。

 

 物が少なすぎるのは家中で共通。これも不思議ではあるが、こればかりは“そういうもの”と納得するしかないだろう。無駄な物を置かないのが兄上の方針なのかもしれんし、或いは単純に貧乏なだけかもしれない。

 だが、先程から付き纏う違和感は異なる。決して安易に無視して良い類のソレではない。

 これは明確な欠落。この家には、あるはずの“ナニカ”が存在しない。

 ………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………そうか。

 

()()()()()のじゃ」

 

 そう。この家には『鏡』と『写真』が何処にもない。虚像を映し出す物が無い。

 風呂場にも洗面所にも鏡が無かった。想い出を残す写真の一枚すら見当たらなかった。

 そう気づいて見れば様々な事に気付く。

 例えば、テレビゲームをしたソファも、弁当を食べた食卓も、兄上の机も……それら全てが窓ガラスから不自然に距離を取って配置されている。

 ……まるで自分の姿が何かに映るのを恐れるかのように。

 

「なんじゃ? まさか兄上はゴルゴンの類じゃったのか?」

 

 否、普通に考えてソレは無いだろう。あれは唯の人間に過ぎない。

 しかし、鏡が無いのは揺るがぬ事実。何かしら大きな秘密が隠されているのは間違いなかろう。

 流石は我が兄上。実にワシを飽きさせない男だ。ますます気に入ったぞ。

 

「さて、あとは兄上を問い詰めて答え合わせをすればよかろう。問題があるとすれば――」

 

 目の前に広がる惨状。

 物色に夢中になり過ぎて、家の中がグチャグチャである。

 これはマズい。怒られて追い出されたら大変だ。さっさと片付けて――

 

「む? この音は?」

 

 ――呼び鈴の音。来客らしい。

 そこで思い出す。

 郵便物が来たらハンコを押して受け取っておいてくれ、と。そんなことを兄上は言っていた。

 ふっふっふ。その程度のこと、このレクシィ様にかかれば朝飯前。

 完ぺきに遂行して褒めてもらうとしよう。

 

 

★★★

 

 

「おや、これは意外で懐かしい顔が出てきたのさ! 覚えてるかい!? 愚生は“へびつかい座”の――んぎゃああああああ!!」

 

 ドアを開けたら、ほぼ全裸の変態がいた……ので。

 とりあえず、その右目にハンコを押しつけておいた。

 多分、兄上の言いつけは守れたと思う。

 

 

 

 

 






一番のホラーは玄関開けて立ってる全裸白衣の女。


答え合わせは次回にでも。



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11話:どれだけ憎み嫌おうとも、遺伝子から逃げることは最後の最後まで出来ない。



【お詫びと訂正】

1章9話(18ページ目)『ホイホイ死者蘇生するとドキドキがバイバイするので、コロコロして止めたゼウスさんは間違っていない。』

が、編集時のミスで1時間(7/06/23:30頃~7/07/00:30頃)ほど、今回の話と全く同じ内容になっていました。
大変申し訳ございません。
今は直っており、内容が丸ごと変更して(復元して)あります。お手数ですが、読んでいない方はそちらを先にお読みください。




★★★

 

 

「それで何をしに来たのじゃ。ヒューカス。ヒューカス・アスクレピオス」

 

 淡い紫色のサイドテール。アメジストの瞳。

 そして、何よりインパクトのある服装(全裸白衣)

 一見すれば、2周りは大きいブカブカの白衣を、きちっとボタンを留めて着ている……()()()()()

 が、それは()()だけ。

 露出した胸元に、艶めかしく見え隠れする生足。……そう。この女は、白衣の下に何1つ身に着けていない。

 “叡智の象徴たる衣服”の下に“知性の欠片も無い痴態”――それこそが彼女の在り方。

 

「ごめんなのさ。生憎と、今日は君に用があって来たんじゃないんだ、()()()()()

「――成程、()()()()()()()()()?」

 

 そうか。

 よりにもよって、その呼び名を口にするとは。

 良く分かった。永劫の生に飽いて、遥々知己の元へ殺されに来たのだな。

 それならそうと早く言え。とびきりの苦痛を与えて噛み殺してやろう。

 

「おお、怖い! でも怒った顔も可愛いね! 昔みたいに乗って乗られて、夜の大航海に出港する?」

「妙な言い回しをするでない。貴様とそのような関係性になった覚えはないのじゃ」

「酷い! 愚生(ぐせい)とは遊びだったのさ! ヨヨヨ……」

 

 ……ちっ。調子が狂う。

 あぁ、ようやっと思い出した。久しく会わなかった故に忘れていた。

 この女は()()()()奴だと。

 へびつかい座の星群少女ヒューカス・アスクレピオス。

 其は黄道13星座の一角にして、仲間外れの除け者。

 そして、()()の星群少女であり――

 

「……相も変わらず頭のイカレタ芝居を続けておるようじゃな。それほど(いかづち)が恐ろしいか」

「さてね。数千年間、途切れず継続した芝居は芝居なのかな?」

 

 ――愚者として生き、愚者として死ぬ、()()

 

「ワシが知るか。少なくとも、今の貴様は頭の先から爪の先まで、変態以外の何者にも見えぬがな」

「にはは! そりゃ重畳! 愚生には最高の誉め言葉なのさ!」

 

 良くもまぁ、難儀な生き方を飽きもせず続けるものだ。ワシなら数刻と持たない。そこだけは、素直に賞賛しよう。

 が。

 コイツの性根も生き方もどうでも良い。知己も過去も関係ない。目的も経緯も知った事か。

 今この瞬間、問題とすべきは1つだけ。

 

「先程、貴様はワシに用がある訳ではない。そう宣ったな。それは即ち――」

「うん、そうさ。この家の家主に……偽十字 来栖くんに用があって来たのさ」

「殺す」

 

 ワシの獲物に手出しするというのなら、容赦なく殺す。それだけだ。

 

 

★★★

 

 

 ほほーう。これはこれは

 想像以上に御執心みたいだね、我らが船は。

 さっきの冗談……“船”呼び時の殺気も本物だったが、これは比較にならない。

 言葉での脅しだけだった最初とは異なり、今はダイヤモンドの剣が愚生の喉元に突き付けられている。

 けれど――

 

「……そこまでにして~頂けますか~?」

「やはり居ったか、()()

「いちお~、こんなヒトでも~。私にとっては~『先生』なので~」

 

 ――突如として出現した幼女が止める。

 金剛の剣を掴んで止めたのは、若草色のショートヘアーをした幼女。ツチノコを模した緑色の着ぐるみが愛らしい。

 ふっふっふ。流石は我が『生徒』にして護衛、“へび座”のサぺアちゃん。

 

「にははは! これぞ愚生の誇る最強の盾にして矛! たとえ君でも容易に突破は出来ないいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!???」

「うるさいです~。守ってもらえるのが~当たり前とか~、思ってんじゃねぇぞです~」

 

 ぐふ。まさか(へび)に攻撃されるとは……。

 見事な尻尾の一撃だったぜ……。

 

「あー、また散らかっ……そうじゃ! よし、貴様ら此処に居ても良いぞ! 代わりに、全部お主らの仕業にするのじゃ! これでワシは叱られなくて済む! 我ながら最高の名案じゃな!」

「なんか~良く分かりませんが~。すっごく怠そうですね~。私は離脱するので~、あとは先生に押し付けます~」

 

 最後に、そんな会話が聞こえて愚生の意識は途絶えた。

 

 

☆☆☆

 

 

「……この惨状は一体全体どういうことだ?」

 

 遊園地インパクト後のギスギスを堪能し、新たなヒロインまで見つけて。

 ウキウキルンルン気分で帰ってきたら、家の中が凄まじい事になっていた。泥棒がダース単位で入って来た感じである。

 クソ親父が一銭も生活費を出さないせいで、極貧生活が続いた我が家にはロクな家具も無い。

 そんな我が家に盗む価値の有るものなんて……いや、1つだけある。2階の俺の部屋、押し入れの奥。そこには、我がバイブルが存在する。

 俺の原点にして根源。何百回と繰り返して読み、重要な箇所には線を引いたし、思いついたアイデアを乱雑に書き連ねもした書物。

 この俺に「ハーレム」と「修羅場」の素晴らしさを教えてくれた、()()()()()()()()の数々が――ある。 

 

「レクシィ、大丈夫か? 何があった?」

 

 ……とまぁ、心を落ち着けるための冗談はこのくらいで良い。

 第一、あれは既に俺ですら解読不可能な程にボロボロになっていて――じゃなくて。

 今はマイシスターの安否確認だ。本当に泥棒が入ったのなら、彼女が恐ろしい目にあった可能性がある。

 一見すると彼女の身体に怪我は無い。涙の跡も無いし、着衣の乱れも無さそうだが……。

 

「聞いて欲しいのじゃ兄上! 郵便物かと思って扉を開けたら、そこに転がっている変態が押しかけて来たのじゃ! 無力化には成功したんじゃが、この通り家の中は滅茶苦茶になってしまったのじゃ!」

 

 なにそれ怖い。どういう状況か全くわからんけど、普通にヤバ過ぎない?

 レクシィの指差す先には、白衣姿の……え? よくよく見たら白衣しか着てなくない? あの下、完全な真っ裸じゃない?

 こんな変態が突撃して来たなんてヤバ過ぎる。

 常識では考えられない。アンビ○バボーに応募したいくらいだ。

 

「お前は何とも無いんだな? 大丈夫なんだな?」

「心配してくれて有難うなのじゃ、兄上。この通りワシは無傷。何ともないのじゃ」

 

 ふむ。心配させまいと嘘を吐いている、という感じでは無さそうだな。一先ずは安心だ。

 しかし、今回は奇跡。ただの女の変態だったから何とかなっただけ。

 か弱い少女に過ぎないマイシスター。仮に屈強な男が押しかけてきたら為す術もあるまい。

 今度からは絶対に鍵を開けないようにさせなければ。

 

「……はっ! 意識が飛んでいたのさ!」

 

 さて、と。この変態、どうしてくれようか。

 正直なところ、警察は呼びたくないんだよな。クソ親父のせいで少々面倒な事になる。

 ……本当、どこまでいっても迷惑しかかけない奴だ。

 

「おい。さっさと出て行け変態」

「ん!? 君はもしかして偽十字 来栖くんなのさ!?」

「さっさと出て行けと言っているんだ」

 

 なぜ俺の名前を、とか今はどうでもいい。

 無事であろうとも、レクシィはきっと大きなショックを受けているはず。

 その心のケアをしなければならず、こんな変態は早々に外へ追い出したいのだ。

 

「いやいや、一先ずは話を聞いて欲しいのさ」

「生憎だが。白衣一枚しか羽織ってない変質者。そんな奴の言葉を聞く耳は持ち合わせてない」

「……ん? じゃあ聞くけどさ。こういう格好は嫌いかい?」

「いや、嫌いではないけれども。むしろ好きだけれども」

「ほらねー!」

「黙れ変質者。何が“ほらねー”だ。さっさと俺の家から出て行け」

「んぎゃーー! イダダダっ!! 愚生の髪がああ!! 引っ張られるぅううう!!」

 

 正直、女の子に手荒な真似をするのは主義に反するが。

 しかし、相手が犯罪者なら話は別だ。髪を引っ張ってでも外に放り出そう。

 

「聞いて欲しいのさ! 愚生は君の父親、偽十字 九栖狸(くずり)の知り合いだよ! あの男のことで話が合ってお邪魔したのさ!」

「よし、なら容赦いらないな」

「なんでなのさ!?」

「あのクソ親父の知り合いとか、100%クソしかありえない」

 

 俺は自らの父親を世界で最も忌み嫌っている。

 どれくらいかと言えば、鏡に映った自分の顔を見て強烈な殺意を覚えるくらい。

 遺伝子の悪戯とでも呼ぶべきか、災厄とでも呼ぶべきか。俺の顔はクソ親父と瓜二つ。鏡でも水面でも、映った自分の顔を見ると粉々にしてしまいたくなるのだ。

 それ程に俺は奴を嫌っている。どんな嫌な人間でも、あのクソ親父と比べれば聖人に見える。

 そんなクソ親父の知り合いなら、情け容赦など要らない。

 

「違う、違う! 知り合いといっても、憎き存在として知っているってこと! 愚生も被害者の一人だよ!」

「……何だって?」

 

 

 



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【七夕SP】:鈍感ハーレム主人公、頭のネジがダース単位でイカレているとしか思えない。【番外編】


こちらは七夕スペシャルの番外編です。
時系列は本編の1年前。
来栖たちが高校1年生の頃の物語です。ですが、本編とは関係ありません。


皆様の願いが、夢が、叶いますように。



 

 夏。――其は正に修羅場フェスティバル。

 俺は常々思っている事がある。「修羅場」は夏の季語として歳時記に登録されても不思議ではない、と。

 無論、修羅場は年中を通して楽しめる極上の果実である。

 しかし、忘れてはならないのは「修羅場」が「ハーレムラブコメ」の一部であるという事。そして、ハーレムラブコメには往々にして“王道”が存在する事だ。

 出逢いの春から増え続けた“火種”は、ギラつく夏の太陽によって一気に燃え上がる。ここで深めた“絆”を秋でじっくりと育て、冬の“クリスマス”や“バレンタイン”で決着をつける――これこそが1年構成タイプのハーレムラブコメにおける“定番”なのである。

 確かに、2年・3年かけて熟成させるハーレムラブコメも多々あるが、これも基本的な流れは変わらない。

 夏休みこそは良質な修羅場を育てる土壌。この長期の休みを土台として、数え切れないほどの修羅場イベントが実るのだ。

 燃え盛る恋が灼熱の太陽に照らされて、夏だけの魅惑の味を演出する。

 夏は修羅場の季節。これは絶対の真理なのである。

 

 そして時は、高校生最初の夏休み。

 中学時代の子供っぽさは鳴りを潜め、その恋は更に本気度を増してゆく。そんな時期の、夏。そんな時期の、修羅場。

 あぁ、世界が輝いて見える……!

 だが。

 そんな素晴らしい夏に――

 

「ほら、これなんかどうかな!」

 

 なんでコイツ(主人公)は、男の俺と過ごしている?

 どうして、あんなに魅力的なハーレムメンバーの女子たちを放っておいて 男2人でショッピングなぞに興じているんだ。馬鹿だろ。馬鹿なんだろ。

 この世の全てのモテない男子に謝れ。土下座して詫びろ。

 

「このブレスレット! 麻琴ちゃんに似合うと思うんだけど!」

 

 ……まぁ、今回ばかりは仕方がないか。

 今日は7月6日。明日7月7日は鷹刈のバースデー七夕パーティ。彼女への誕生日プレゼントを一緒に選ぼう……俺は星にそう誘われたのだ。

 恋敵への誕生日プレゼントの相談……当然、他の少女たちが快く協力する訳もなく。そういう意味では、俺を選んだのは賢明と言えよう。

 故に、普段であれば“俺じゃなくて女子を誘え”と突っぱねる所を、こうして律儀に付き合っている。

 

「良いんじゃね? すごく似合うと思うぜ。買ってやれよ、星」

 

 こうなったら、特大の火種となるプレゼントを買わせよう。そんなことを考えてアクセサリーショップに星を誘導した。

 ブレスレットとか最高じゃん。「せっかくなら着けて♡」みたいな超オイシイ展開が期待できるし、貰った方は常に身に着けてライバルへのマウントが取れる。なんて素晴らしい爆弾だろうか。

 そう思っていたのだが――

 

「ボクのじゃなくて、来栖の! 来栖が買ってあげるの!」

 

 はぁ~~~~~~~~~?????????

 馬鹿か? 馬鹿だよな? 馬鹿なんだよな?

 はぁ~~~~~~~~~(クソデカ溜息)。

 鈍感系ハーレム主人公ってのは、直で見ると本当に馬鹿だ。頭のネジが数本抜けてるって感じがする。

 

「いや星、お前が買ってやるべきだ。お前が似合うって思ったんだからな」

 

 なんで俺が買うんだよ。いくら仲が良くても、友人に過ぎない異性からアクセサリープレゼントとか重すぎるだろ。引くわ。ドン引きだわ。

 だけど、それも惚れている男からとなれば話は別だ。鷹刈が惚れているのは星。星から貰えば、鷹刈は絶対に喜ぶ。

 プレゼントにおいて最も重要なのは、“何を貰うか”では無く、“誰から貰うか”なのだ。

 

「それに、俺はもう買ってあるんだよ」

「……え? そうなの?」

 

 勿論だとも。

 これまで数々の修羅場スポットを調査してきた、この俺のリサーチ力を舐めるな。

 今回の場合、俺に求められる役割は本命()の引き立て役。ハーレム主人公の踏み台となる、ネタ・賑やかし要因に徹すれば良いのだ。

 その為にあらゆる物品を調べ上げ、何度も何度もシミュレートを重ねた。正直、一般モブ親友として、これ以上ない最高のセレクトが出来たと自負している。

 俺の計画に狂いはない! ぬぅわはははははは!!

 

 

★★★

 

 

 7月7日、夜。

 毎年恒例、(わたくし)の邸宅での七夕を兼ねた麻琴さんのバースデーパーティーは恙なく進行しております。

 といっても、私が皆さんと友人になったのは中学2年の冬でしたので、まだ2回目なのですが。

 ともかく。麻琴さん、星さん、韻子さん、てうさん……皆様とても満足してくださっているようで何よりですわ。時金の総力を結集したパーティですので、当然と言えば当然ですけれど。

 ……それでも、何かが足りないと感じてしまう。大切なピースが1つ欠けていると感じてしまう。それはきっと私だけではなく、他の皆さんも同じで。

 それもそのはず。ここには偽十字さんが居られない。成績が悪くて補習漬けになっているらしく、到着が遅れているのです。

 とはいえ。どれだけ遅刻しても顔だけは出すと仰っていたので、今は彼の言葉を信じるとしましょう。

 

「さて、皆さん。願い事を笹に吊るしましょう。この特製の純金の笹に……!」

「何度見ても慣れねぇな、それ。天の川よりギラついてんじゃねぇか」

「当然ですわ! どうせ願うなら絶対に見逃されないようにすべきでしてよ!」

「むしろドン引きしてスルーされる気がするんだが」

「こんなに、裕福なら、後回しでも、良い。そう思われ、そう」

 

 ……一理あるかもしれませんわね。

 まぁ、良いでしょう。別に構いませんわ。

 麻琴さんと韻子さんからの野暮な発言は無視です。こんなもの、どうせ形だけなのですし。

 願いとは己の力で叶えるモノ。神頼みなんて時金には似合いませんもの。

 ですから、私は――

 

 ――Time is Money. 時金 貨月

 

 己の決意を込めて、自らの信念を刻むのみ。

 さて。皆さんは如何なる願いを捧げるのでしょうか。

 気にはなりますが、他者の願いを覗き見る……そのような無粋な真似はいたしません。

 掲げた願いを知るは、本人と星空のみ。それで良いのですわ。

 

 

★★★

 

 

 ボクの願いは……やっぱり、これかな。

 もう何も失いたくないから。失わせたくないから。

 ずっとずっと、今日みたいに笑い合っていたいから。

 だから――

 

 ――友人みんなが笑って過ごせますように。

白鳥 星

 

 

★★★

 

 

 オレの願い、か。

 恋愛成就………………………

 ……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………

 ……………………っておい!

 オレは一体全体なにを書こうとしてんだ!

 アイツ(来栖)は唯の幼馴染で…………………………

 …………………………って、別にアイツと何かなりたいわけじゃ………………………………でも最近身長が抜かれてドキッとして……

 ………………って違う! ぬわあああああああああああああああああああ!!!!

 

 ―― ■■■■ 誰よりも強くなる。

鷹刈 麻琴

 

 

★★★

 

 

 彦星の力を持ってる私が、七夕に願いを書くのは変な気もするけど。

 ま、細かいことは良いか。

 そうだな……どうせ書くならコレかな。

 

 ――世界平和。 鷲平 韻子。

 

 あぁ、そうだ。一応。

 

 ――追伸。存分にイチャつけ、彦星&織姫。

 

 そういえば。

 1年ぶりに1日だけ会えた彦星と織姫って何するんだろう。

 恋人らしく、初々しいデート?

 それとも夫婦らしく、情熱的な情事?

 すっごく気になる。

 

 

★★★

 

 

 皆サマ、とっても楽しそうで良かったです。

 この光景を見ていれば願いは1つしか思いつかないですね。

 てうの願いは1つだけ。ただ――

 

 ――ずっと皆と一緒に居られますように。

狐咲 てう

 

 

★★★

 

 

 そして。皆が願いを吊るし終わり。

 続いて、各々が麻琴さんにバースデープレゼントを渡していきます。

 私は世界中から厳選した美容用品の詰め合わせ。……といっても、殆どが我が時金ブランドですが。贔屓目無しに最高の物を選んだら、たまたま自社製品ばかりになってしまったのですわ。流石、お母様が直々に指導・経営する美容部門。

 ともかく。スキンケア・化粧品から小道具まで、ほぼ一通りが揃っています。鷹刈さんは元より美しい方ですが、その美が更に磨かれる事でしょう。美に終わりは無いのですわ。

 てうさんは、星さんと一緒に作ったという手作りお菓子の詰め合わせ。とっても美味しそうでした。

 韻子さんは、可愛らしいミニスカート。麻琴さんは口では「オレには似合わない」などと仰っていましたが、満更でもなさそうで。流石は韻子さん。付き合いが長いだけあって、麻琴さんの好みを熟知していますわね。

 そして星さんは――

 

「これ、来栖と一緒に選んだブレスレット。2人で、麻琴に一番似合いそうなのを選んでみた」

「っ……! ……そ、そうか! ありがとうな、星!」

 

 ……? 何だか、麻琴さんの反応が妙な気が……?

 

「みんな、本っ当にありがとうな! すっげぇ嬉しい!」

 

 …………ふーむ?

 皆さんのプレゼントが嬉しくて感極まっているだけ、でしょうか?

 えぇ、多分そうですわね。他に理由も思いつきませんし。

 そして。このタイミングで――

 

「……っ! すまねぇ、遅れた!」

 

 ――最後の一人、偽十字さんが到着。

 よほど無茶をして走って来たのでしょう、息も絶え絶え、汗だくになりながら。

 まったく……信じていましたわよ、貴方は必ず約束を守る殿方だと。

 これでやっと全員集合ですわね。

 

 

☆☆☆

 

 

「よぉ、鷹刈。誕生日おめでとう」

「あ、ありがとう、来栖。……その、えっと。それで、これ、どうだ?」

 

 む?

 とりあえず、全力疾走で失った水分を時金家特性の高級ジュースで潤していると、鷹刈が妙にモジモジしながら話しかけてくる。

 ……何だ? 腕に付けたブレスレットを見せつけてきているような気もするが。

 

「来栖が星と選んでくれたって聞いて、さ。その……似合ってる、か?」

 

 星の野郎ぉおおおおおおおおお!!!!

 怖気づきやがったな、このチキン野郎!

 そこは「ボクが選んだんだ。君の美しい手に似合うと思ってさ☆」とか言っとけば良いんだよ! 律儀に同行者の……(モブ)の名前を出す必要なんか無いだろ! 有難みが半減するじゃねぇか馬鹿野郎が!

 

「選んだのも買ったのも星だよ。俺は軽く相談に乗っただけで。……ま、凄く似合ってるぜ。流石は星の見立てだな」

「そ、そうか……!」

 

 よし、これで良いだろ。ほとんど星の功績ですよ、俺は関係ないですよってアピールできたはず。

 全く、世話の焼ける親友だな。鈍感ハーレム系主人公の尻ぬぐいは大変だぜ。

 

「んで、こっちが俺からのプレゼントだ。良かったら受け取ってくれ」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 ふははははははははは!!!!!

 何を隠そう! このピンクのぬいぐるみ、名前を『ガンヒヨ』! 『ガンを飛ばすヒヨコ』なる意味不明なシリーズの一体だ!!

 何でヒヨコなのにガンを飛ばしたイカツイ顔なのか! なんで仙台土産でもないのに眼帯を付けて独眼竜なのか! ツッコミどころしかないピンクヒヨコ!

 どうだ、この完全ネタグッズ! 正に『好感度教える系友人キャラ』が選ぶプレゼントに相応しかろう! 完ぺきに(主人公)の引き立て役に……!

 

()()()()……」

「ん?」

「……あ、あー!! コホン! いや、随分と可愛らしい……来栖っぽくはないプレゼントだと思ってさ!」

「ははっ、だよな。俺もそう思う。ただ、これを見た瞬間、これしかない! って思えてなー。嫌だったか?」

「い、いや! 全っ然! すごく…すごく嬉しい! ありがとうな!」

 

 ちょっとコメントに戸惑ってる感じ、まさに狙い通り!

 どうやら俺は、無事に完全無欠の引き立て役になれたようだな!

 

「偽十字さん。ようこそいらっしゃいました」

「おう、時金。すまねぇ、挨拶もしないで。それに、こんな豪邸に汗だくの制服で駆け込んできちまって。流石に非常識過ぎたわ」

「いえ。それでこそ貴方ですわ。ちゃんと間に合ってくださいました。――改めて、時金は貴方様を歓迎いたします。至福の一時を刻んでくださいませ」

 

 でた、時金家の挨拶。

 何度見ても、礼の姿勢とか美しすぎてビビるんだよな……。パンピーには刺激が強い……。

 

「そうだ。偽十字さんも願い事を書いて行きますわよね?」

「あぁ、そうだな。せっかくだし書いて行くか」

「それでは、これが短冊とペンですわ」

「サンキュ」

 

 

☆☆☆

 

 

 ――時金から渡された短冊を眺めながら、思う。

 七夕とは実に良く分からない行事だ、と。

 だって、この短冊に書いた願いを一体誰が叶えるというのだ?

 織姫と彦星? 馬鹿な。奴らは一年ぶりのイチャイチャタイムに忙しい。

 元々仕事をサボってイチャつくようなバカップル。バイトテロの元祖みたいな奴らだ。そんな奴らが、自分たちのイチャイチャタイムを削ってまで見ず知らずの奴らの願いを叶えるわけがあるまい。

 では、織姫の父だという天帝? それも有り得ない。だって、仕事もせずにイチャついていた二人を叱って罰を与えるような良識ある方だぞ。努力もせず願うだけの存在に手を差し伸べる訳が無い。

 故に。もしも、この唯の紙切れに――短冊に願いを書く行為に意味があるとすれば。

 それは、自分の願いを絶対に叶えるという決意表明に他ならない。

 きっと、ここに集った少女たちは、自らの恋の成就を願い文字にしたことだろう。絶対に勝者になってみせるという強い決意と共に。

 それなら、俺が書く願いは――

 

 ――全ての願いに幸あれ。

 

 ()おう。彼女たちの願い()の行き着く先が、決して悲劇では無いことを。

 俺は最後の最後まで、この修羅場あふれるラブコメを――最高の喜劇を堪能するのだ。

 

 

★★★

 

 

 あぁ、やっぱり凄いな、来栖は。

 麻琴ちゃんは男勝りで、身長も高くて喧嘩も強くて、口調も荒っぽくて、常に男の子みたいに振舞っているけれど。それは家で無理やり男の子として育てられたから。そう振舞うことを押し付けられ続けたから。

 彼女の本質は、小さくてカワイイ物や、ピンク色で可愛い物が大好きな、誰より“女の子らしい”女の子。

 その趣味嗜好はバレたら家の人に叱られるから隠し続けていて。知っているのはボクら星群少女の仲間だけ。

 彼女はヤクザの跡取りとして“強くて”“男らしい”“カッコイイ”仮面を被り続けている。

 

 けれど、来栖は。

 そんな偽りの姿じゃなくて、彼女の本当の姿を見ているんだね。

 だから、あんなに彼女の好みドストライクな物を選べたんでしょ?

 

 そして。

 さっき、ぬいぐるみを渡された麻琴ちゃんの顔は凄く幸せそうだった。“女の子”の顔をしていた。

 ……やっぱり、勘違いじゃない。麻琴ちゃんは来栖を異性として意識し始めている。

 

 お似合い、だと思う。

 来栖なら、ヤクザの家だろうが何だろうが自分の思い通りに振り回せるだろうし。気に食わなければ組長だろうが何だろうが、全力でブン殴るだろうし。

 ボクは戸籍が男だし、いつ死ぬかも分からないし………………だから、だから――だから、なんだ? ボクは一体何を考えているんだ?

 ………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………やめよう。これ以上考えてもなにも良い事は無い。この思考の先に幸福は無い。

 だから、全て気のせいだ。

 このチクリとした胸の痛みも、全て。

 

 

 

 

 

 

 

 







星空の物語書いてるくせに、今日が何の日か忘れていた……
なんとか、間に合いました。



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12話:出会い頭に毒使ってくる奴、オブラートに包んでカスでしかない。








 

★★★

 

 

 思えば、愚生の命も随分と長く続いている。

 二千年近くの時を生き、星群少女の中でも古参に分類される存在となった――が、そんな愚生の存在を知る者は限られる。精々、十二星座と数名の星群少女が知っている程度だ。

 愚生は徹底して、そのように生きてきた。己の存在を隠し続けて来た。

 何故ならば、愚生は……“へびつかい座”の星群少女ヒューカス・アスクレピオスは、“最弱”の星群少女なのだから。

 “人間の星群少女”……そんなイレギュラーを含めて考えても、最弱は文句なしに愚生。いっそ最近あちこちで好き勝手暴れている星群少女モドキよりも弱い。なんなら、完全な一般人にすら負けるかもしれない。

 それもそのはずで。愚生は特別な能力を何1つ振るうことが出来ないのだ。

 竜に変ずることも、空を飛ぶことも、火を出すことも――癒すことも。如何なる超常の力も、この身には許されていない。

 正確に言えば、能力はある。が、ワケあって使えない。永遠に使用を禁じられている。

 使えぬ力は初めから無いのと等しい。それ故、愚生は『最弱』の星群少女と呼ばれている。

 ちょっと体が丈夫で、不老ではあるけれど。通常の星群少女ならば共通して有している能力に過ぎない。愚生だけの特別な力では無いのだ。

 

 それでも。愚生は生き残り続けて来た。誰にも殺されることなく。この二千年の時を生き続けた。

 そんな事が出来たのは、ひとえに――

 

 

★★★

 

 

「……というわけさ。あのド畜生に一泡吹かせたくてね。ずっと同志を探していたのさ」

 

 ――磨き上げたペテンの技術があったから。

 

「そういうことなら早く言ってくれ! ヒューカスさん、だっけ? 一緒に奴を地獄に突き落としてやろうぜ!」

 

 ほら、この通り。愚生の嘘をもってすれば、敵意100%だった存在でも容易に丸め込めてしまう。

 この家の所有者が「偽十字 九栖狸」であり、その息子の「偽十字 来栖」が事実上の独り暮らしをしている……その程度の事は少し調べれば直ぐに分かる。

 もっとも、この父親とされる人物。いくら調べても足取りがつかめず、どこで何をしているのか全く分からない不気味な存在だった。“極星機関”や“時金”を始め、如何なる組織も情報を掴めていない有り様。

 そのせいで事前情報が不足し、少々アドリブが多くなってしまった……が、その程度はハンデにもならない。二千年の研鑽は伊達ではないのだ。

 既に意識は覚醒していたにもかかわらず、あえて気絶した振りを続けて。それでレクシィが来栖クンを「兄上」と呼んだのを聞いた。

 これだけで“妹”と偽って転がり込んだことは容易に想像がつく。それ故、まずは“父親の知り合い”を名乗って反応を見た。

 ……まさか「クソ親父の知り合いならクソ」という暴論で、そのまま外へ投げ捨てられそうになるとは思わなかったが。

 しかし、これによって彼が父親を蛇蝎の如く嫌っている……どころか、いっそ殺したいほどに憎んでいることは明らかとなる。

 そこからは簡単。お涙頂戴の話をでっちあげて、被害者の振りをすれば良い。今回は“九栖狸のせいで家庭が崩壊した”、というエピソードをドラマチックに仕立て上げて話した。

 あとは敵意の源泉たる“妹に危害を加えようとした”という誤解を解くだけ。言葉巧みに話を誘導して終了。ほら、簡単だろ?

 まぁ、他にも小細工を弄してはいたが……。

 

「……おっ?」

「よっと。おいおい、気を付けてくれよ。せっかく見つけた同志が何も無い所で転んで死んだ……なんて笑い話にもならないさ」

「はは、支えてくれたのか。ありがとうな、ヒューカスさん」

 

 危ない危ない。バラ撒いて吸わせた『毒』が効きすぎてしまったようだ。

 AEを主原料として調合した、愚生特製の『毒』。

 最近は『Typhon』なる組織が何やらAEを悪だくみに使っているらしいが……愚生から言わせれば“まだまだ”だ。使い方がまるで駄目、未熟極まりない。

 一度に過剰に摂取すれば、人間の肉体など直ぐに崩壊する。当たり前、基本中の基本だ。精々が使い捨ての駒が出来る程度。

 だが、AEは元を辿れば人間から……人間の願いから発生したエネルギー。用法容量を見極めて使えば、様々な使い道が存在する。例えば、今回のように。

 この『毒』を吸い込んだ()()は、軽い暗示状態にかかる。軽く酒に酔った様な状態となって他者の言葉を信じやすくなるのだ。

 後々人体へ悪影響が出る事もないし、時間が経てば直ぐに消え去るので証拠も残らない。

 しかも便利な事に。この『毒』、AEの結集存在である星群少女には効かない。使用者である愚生に効果が出ないのは勿論のこと、レクシィにも影響が全く出ないのだ。

 AEと共に生きてきた星群少女には効かず、AEに触れる機会が殆ど無い人間にだけ効果を発揮する。

 それ故にバレない。そういう代物である。

 

「せっかくだ! もっと詳しく話を聞かせてくれよ、ヒューカスさん!」

「あぁ、勿論さ」

 

 こうして。愚生は来栖クンの案内でリビングへと通されることとなり、()()()()偽十字家に上がり込むことに成功したのだ。今現在、明らかな世界の“特異点”となっている少年の家へと。

 いやー、なんともチョロいものである。簡単すぎて欠伸が――

 

「……賢者様の嘘は巧妙じゃな。完全にしてやられたのじゃ」

「やっと手に入れた唯一の武器でね。そう睨まないで欲しいのさ」

「少しでも妙な真似をすれば殺す」

「大丈夫、大丈夫。安心して欲しいのさ。君の獲物を奪うような真似はしないよ」

 

 ――ありゃりゃ。そうそう上手くは行かないか。

 すれ違いざまに小声で告げられた警告。どこまでも冷たい声音と眼差しは、正に“絶対零度”。

 うーん。これじゃあ、あんまり大それたことは出来そうもないな。

 なるべく大人しくしていよう。まだ死にたくはないしね。

 

 

★★★

 

 

 机を挟んでヒューカスと兄上が会話を進めていく。その様子を兄上の横に座って眺めながら、思う。

 

 してやられた、と。

 

 そもそもの発端は、ワシが兄上に無断で家宅捜索を敢行したことにある。加えて、嘘でまかせで罪を押し付けた負い目も有る。バレたら兄上に叱られることは明白。最悪の場合は追い出されてしまうかもしれない。

 ヒューカスは、そんなワシの負い目を利用して話を進めていったのだ。

 視線やら何やらを駆使して“バラされたくなければ”とワシの言葉を封じ、むしろ思い通りの言葉を引き出した。全てのイザコザは“誤解だった”という言質を取られたのだ。

 

 ……成程。ワシがヒューカスと最後に出逢ってより千と数百年。

 まさか、賢者が詐欺師となっていようとは思わなかった。その類まれな頭脳をフル活用し、千年の研鑽の果てに至ったのが()()か。

 あぁ、全く。つくづく、本当に、どうしようもなく、つまらん奴だな。

 どいつもこいつも星群少女というのは退屈な奴ばかり。例外的に面白かった白鳥たちも死んだ今、ワシの心を揺さぶる存在は残っていないのだろう。

 もはや完全に興味も失せた。ワシと兄上の家から早々に失せてもらいたい……が。この女が何の目的で訪れたのか。それだけは明らかにする必要があるだろう。

 それ故、兄上が家へと招き入れるのを止めたりしなかった。

 だが。

 だが、もしも。少しでも不審な動きを……兄上に手を出すような動きを見せたら、殺す。

 兄上の眼前だろうが関係ない。本来の姿となって、金剛の牙で噛み殺す。

 そんな事を考えながら、兄上とヒューカスの会話を眺めていたのだが。

 ……何故だろうか。無性にイライラする。内容は“どこから来たのか”“どうやって来たのか”程度の他愛無い会話なのだが、見ていると不自然に腹が立って仕方がない。

 口内で、奥歯がダイヤモンドと化していくのを自覚する。これは怒りが抑えられずにいる証拠。ここまで腹が立ったのは数百年ぶりかもしれない。

 一体何が原因なのだろう?

 

「のぅ、兄上」

「お、どうしたレクシィ?」

 

 原因は分からないままだが、目の前の光景が……ヒューカスと兄上がにこやかに談笑する光景が原因であることは疑いようがない。

 それ故、無理やり話しに割って入った。兄上がワシの方を振り返って言葉を紡げば、不思議とイライラは収まった。ダイヤモンドの牙も普通の歯へと戻ったのが分かった。

 

「父上とは如何なる人物なのじゃ? ワシ自身は名前しか知らぬ故、詳しく教えて欲しいのじゃが」

「奴には敬意なんて払う必要ない。父上なんて呼ばず、クソ親父で十分だぜ」

 

 ……む。ここまで憎しみが深いか。

 まだ出逢って2日目だが、兄上の基本的な性格は温厚だ。それくらいは分かる。

 そんな兄上が斯様に憎しみを露わにするとは。一体、偽十字 九栖狸とは如何なる人物なのだろうか?

 

「そうだな、ヒューカスさんもいることだし。良い機会だから話しておくか。奴の……クソ親父のことを」

 

 

 

 

 

 

 

 






簡単な要約。カス(ペテン師)とカス(快楽主義者)が出逢っちゃいました。



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13話:おちゃらけた奴のシリアス回想、温度差にグッピーは死ぬしかない。



【警報】
シリアス(?)かも。温度差注意。




 

☆☆☆

 

 

「正直な話。語ると言っても、俺は奴の事を良く知らない。小学生の頃から家には帰らない事がほとんどで、年に10日も居ればマシだったと思うよ。中学に上がったくらいからは顔も合わせていないしな。だから、それほど語れることは多く無いんだ」

 

 兄上は静かに語り始めた。

 自らの“父”のことを。

 

「ただ1つだけ分かっているのが、アイツが正真正銘のド畜生であること――それだけだ」

 

 燃え盛るマグマのような、或いは纏わりつく汚泥のような……そんな、内にあるドロドロとした感情を必死に抑え込もうとしている。彼の姿はそのように映った。

 

「物心ついた時、クソ親父は俺に言葉を教えていた。毎日毎日ワンツーマン。懇切丁寧に、熱心に教えていたよ」

 

 そして、彼は語っていく。

 自らの“父”との過去を。あたかも、“親の仇”について語るように。

 

「恐らく、生まれた直後から継続してたんだろうな。俺は随分と早く言葉をマスターしていた。きっと、他の子供達とは比較にならないほど早く」

 

 だが――。

 

「ある日、奴は言った。その言葉で色んな人と会話して来い、とな」

 

 ……?

 おかしい。ここまで、どう聞いても憎悪に繋がりそうな点が見当たらない。

 一体全体、兄上は何を話そうとしているのだろう?

 

「俺は嬉々として外へ繰り出した。初めての外出だった。たくさんの友達を作りたいと思っていた。けど――」

 

 しかし。

 そこから話の流れが変わっていく。

 

「――けど、そうはならなかった。誰一人として俺の言葉を理解してくれる奴がいなかったからだ」

「……? どういうことじゃ?」

 

 思わず、疑問の言葉が飛び出した。今から説明していく事など明白なのに。それでも尋ねずにはいられなかった。 

 

「随分と昔の事だけど、今でも鮮明に思い出せる。不思議で奇妙で、そして怖かった。不気味だった。声を上げてワンワン泣いたよ」

 

 兄上はワシの言葉に目線だけを返し、そのまま話を続けていく。

 そして、その答えを明かした。

 

「奴が俺に教えていたのは()()()()()()()()()()()。――()()()()()()()()()()

「ちょっと待つのさ。確認だけれど、君は日本生まれ日本育ちなんだよね?」

「あぁ。その通りだぜ、ヒューカスさん」

「……それで“ギリシャ語”、か。それは何とも」

 

 ギリシャ。その地は、ワシら星群少女にとって縁深い場所。

 全ての始まりの地であり、ほとんどの星群少女が彼の地で生まれる。“聖地”と呼ぶ者さえいる土地。

 そのような国の……この極東の国から遥かに離れた異郷の地の言語。

 ワシらにとっては生まれついて修得している言語に過ぎない。しかし、この国で生まれ育った兄上にとっては――

 

「ギリシャ語を馬鹿にする訳では無いけど、あえて言う。よりにもよって、だ。英語なら、日本であっても会話できる者はいただろうさ。同年代の子供は無理でも、その親には話せる人だっていたはずだ」

 

 ――ただの無用の長物だったことだろう。

 

 

☆☆☆

 

 

「実に巧妙だよ。児相とかに通報が行っても“英才教育の一環”とでも言えば良いしな。そう言われちまえば、周囲の奴はとやかく言えないし」

 

 泣きわめく俺の姿を見て、クソ親父は爆笑していた気がする。

 正直その辺りはあんまり覚えていないけれど。まぁ、多分笑ってたんだろう。アイツはそういう奴だ。何も疑問は無い。

 

「奴は俺を……多分、()()だとでも思っていたんじゃないか」

 

 今でこそ俺のバイブルとなっているラノベ。あれも奴が買い与えたものだ。

 絵本を読む年齢のガキに漢字だらけの小説。断じて、まともな親がする事じゃない。間違いなく嫌がらせ目的だった。

 奴の思い通りになるのが嫌だったからこそ、あの手この手で解読したのだ。近所の人に読み方を教わり、読み仮名を振り、意味を書き込み――最後にはバイブルにしてやった。

 書かれていた“ハーレム”の面白さが最大の理由ではあったが、しかし最初の出発点は奴への反骨精神だったのだ。

 ともかく。奴にとって俺は、愛を注ぐべき“息子”ではなかった。それだけは確かな事実だ。

 だから俺は奴を敬わない。

 愛されなかった故に、憎む。

 “子”として扱われなかった故に、“クソ親父”と呼ぶ。

 これは、それだけの単純な話なのだ。

 

「奴からの嫌がらせを日常的に受けながらも俺はすくすく成長。小学校に入学して、そして初めての友人が出来た」

 

 友人との……()()()との一年間はかけがえのない日々だった。

 ギリシャ語から始めたせいで下手糞だった俺の日本語は、アイツとの会話を通して日常生活へ支障を来さない水準にまで至った。

 ……思えば。今の俺を形作るのは、アイツの影響が大きい。

 俺の黒歴史……小学生時代の俺が全力を注いだ“モテモテハーレム計画”。あの見果てぬ夢も、元を辿ればアイツとの交流の中で芽生えたものだった。

 アイツは俺の初めての友人であり、俺の世界を変えた救世主。クソ親父と俺だけで完結した、閉じた地獄に射した一筋の光だった。

 だが――

 

「ある日。クソ親父は唐突に引っ越しをすると言い出した。理由も語らず、有無も言わせずな。携帯なんて持っていなかったから、仲の良かった友達ともそれっきり」

 

 そういや、アイツは今頃どうしているだろうか。

 最後の最後で喧嘩別れのようになってしまった、あの子は。

 

「しかも、その後で奴は家に帰ってこなくなった。それなら引っ越しをした意味なんて無いじゃないか、と。一人っきりの家で恨みを募らせたものさ」

 

 冷凍食品やらカップ焼きそばやらに囲まれて。家に独りきりでいると、どうしようもない孤独に襲われたことを覚えている。

 友人との楽しい日々を知ってしまった後だからこそ、余計に辛かった。

 だからこそ俺は“ハーレム計画”などという無茶で愚かな夢に縋ったのだろう。

 全ては、女の子(誰か)からモテ(愛され)たかった故。

 星に簡単に家の合鍵を渡したのも、星の家に入り浸ったのも。誰かと一緒に居たかったから。

 思えば、ぼっち街道まっしぐらだった鷲平や鷹刈を放っておけなかったのも、どこかで自分と重ねていたから……なのかもしれない。誰とも言葉が通じず、一人ぼっちで泣いていた頃の自分と重ねていたから。

 ともかく。引っ越し以降、奴は家に居る事がほとんど無くなったわけだが。

 

「以降の奴の嫌がらせは少し趣向を変えた。度々姿を現しては俺を振り回し、周囲の人々を巻き込んで大惨事を引き起こした挙句、後始末もせずに去っていく……そんな感じになった」

 

 このころの騒動においては、警察の手を煩わせたことも一度や二度ではない。

 まぁ、警察が動く段階には既に奴は行方をくらませていたので、俺が対応する羽目になっていたのだが。

 というか、奴は(育児放棄を除けば)法を犯す事がない。決して犯罪にならないギリギリを見極めている。ただの傍迷惑なクソ野郎でしかないのだ。

 そんな奴も、中学生になってからは一切顔を見せなくなった。その理由は、おそらく――

 

「俺以外の玩具を見つけたんじゃないかな、とは推測していたんだが。それがヒューカスさんへ迷惑をかけていたとは。本当にすまなかっ……」

 

 そこで、紡ごうとした謝罪の言葉は途切れた。

 ふわりと広がる何かの花の香りと、柔らかく温かな感触。

 そう。

 俺はヒューカスさんに抱きしめられていた。

 

 

 

★★★

 

 

「外れ、ですわね」

 

 星群少女『タイム・イズ・マネー』の能力は“物体の時間を加速または減速させる”というもの。

 非常に強力な能力であり、剣――もう1つの能力で出現させる、時計の針を模した二振りの剣――を加速・射出すれば凄まじい威力となります。

 ただし、当然ながら万能ではありません。

 この能力の対象となるのは、発動者が一定時間内に触れたモノ。加え、生物は発動対象となりません。

 それ故。タイム・イズ・マネーのコスチュームは、肢体にピッタリと張り付いた“金色のラバースーツ”なのですわ。

 このスーツを加速させることで包まれた肉体も加速。高速での移動を実現し、回避や攻撃に活用可能となるのです。

 

「この国にも手掛かりなし。(わたくし)は次の国へ移ります。皆様は引き続き、この国での情報収集に励んでくださいませ」

「はっ。貨月お嬢様の御武運をお祈りいたします」

 

 現在は、その能力を駆使して日本を飛び出し、へびつかい座の星群少女を捜索しています。

 世界中の時金グループを総動員して情報を収集しているのです。

 また、星さんは白鳥の翼で世界中を飛び回って捜索。韻子さん・麻琴さん・てうさんは、(わたくし)たちが不在の街を守りつつ、身近な場所を捜索してくれています。

 ――けれど。手掛かりは未だ1つも見つからない。

 本当に存在するのか。とっくの昔に死亡しているのでは。そんな疑問が拭え切れなくなってきた頃。

 

子夜(しや)さんから?」

 

 1つの電話が届いたのです。

 師走(しわす) 子夜(しや)。12ある時金の分家の1つ師走一族。その跡取り娘にして、(わたくし)にとっては姉のような存在。

 今は私の護衛をする傍ら、偽十字さんの動向を監視する任務に当たっています。

 その 子夜さんから連絡。偽十字さんを監視していた彼女から、このタイミングで。

 

「如何しましたか、子夜さん?」

 

 不思議に思う気持ちはあれど、それ故に躊躇なく電話に出ます。

 即断即決。時は金なりこそ我が家の家訓。

 

『その……実は先ほどの来訪者に関してなのですが……』

 

 来訪者。

 その人物についての報告は受けています。なんでも、偽十字さんが学校に行っている間に訪れたそうで。全裸の上に白衣という、なんとも奇抜極まる格好だったとのことでした。

 子夜さんには監視を続行させ、時金の傘下に素性調査をさせていたはずですが……。

 

「正体が判明したのですか?」

『いえ、それは目下調査中とのことで……ですが……』

 

 何でしょう? 随分と言葉に詰まって、子夜さんらしく在りませんわ。

 彼女もまた、時金の血を引く者。幼少より“時は金なり”の信条を叩き込まれてきています。

 特に彼女は仕事一筋。誰よりも真面目で、効率重視な人。

 そんな彼女です。このように時間を無駄にする訳が無いのですが……。

 

「要領を得ませんわね。ハッキリと結論だけ述べて下さいませ」

 

 余程の事態が起こっているのではないか。そんな不安を抱きつつも、努めて冷静に促す。

 さすれば。一瞬の沈黙の後、彼女は――

 

『現在、偽十字 来栖は全裸白衣の女性と抱き合っています!」

「どういうことですの!?」

 

 

 

 

 





【後書き】

皆様の考察を読むのが楽しい今日この頃。
いつも励みになっております。

なお、重要な伏線はあらかた設置し終えた感があります。
感想・考察等お待ちしております。



以下、オマケ。
カスさんの挿絵。

※一部AI使用。見たくない人は下へスクロールしないで下さい。
※全年齢バージョン。


↑苦手な人


↓見たい人






カスさん(ヒューカス・アスクレピオス)
全年齢Ver.


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14話:ママ属性は色々と業が深すぎるけど、やっぱり魅力的なのは否定できない。



何度でも言います。ヒューカスさんはカスです。





 

★★★

 

 

 愚生には願いがある。

 願いより生まれた星群少女の身でありながら、決して譲れぬ願望を抱いている。

 強くなることではない。

 富でもない。

 名声でもない。

 

 ――ただ、()()()()()()

 

 愚生は死にたくない。生きていたい。ずっとずっと生きていたい。

 怠惰でも良い、惰性でも良い、退屈でも孤独でも構うものか。どんなに過酷でも、惨めでも、地獄のような日々であろうとも。

 それでも、愚生は生きていたい。

 例えば、この星が滅亡する時が来ようとも、最後の最後まで生き残りたい。

 例えば、愚生を“先生”と慕い、守り続けてくれているサペアちゃん。彼女が眼前で惨たらしく殺されようとも――

 ――それでも愚生は仇討ちもせず逃げ出すだろう。

 ――助かるのならば、その仇の靴だって舐めるだろう。

 ……まぁ、その類の経験は無いのだが。それでも断言できる。できてしまう。

 だって。愚生は1分1秒でも――否。永遠に生きていたいのだから。

 

 遥かな昔、医神とさえ呼ばれた男がいた。

 命を愛し、慈しんだ男。

 あらゆる傷を、病を癒したいと……叶う事なら死すら覆したいと望んだ男。

 果てに悲願たる死者蘇生を実現し、世の理を壊す者として――世界の病理として抹殺された男。

 名を“アスクレピオス”。

 

 そして。愚生はヒューカス・アスクレピオス。

 ()の者を象りし星座……“へびつかい座”より生まれた星群少女。

 この身には流れているのだ。願望、渇望、無念、執着……医神の抱いた、あらゆる“想い”が血潮となって。

 それ故に。愚生は知っている。知り過ぎている。

 “生”の(いた)みを。その価値を。

 “死”の(おも)みを。その価値を。

 この世には、決して崩してはならぬ理がある事を知っている。

 死んでしまえば、何も成せぬ(救えぬ)事を知っている。

 『生』と『死』を知る故に『命』の重みを知っている。この身に宿る奇跡(いのち)の価値を知っている。

 

 だから愚生は死にたくない。

 この唯一無二の命を失いたくない。

 それだけが、たった1つの願い。

 

 

★★★

 

 

 来栖クンの話を聞きながら、思う。

 そもそも、なぜ愚生が彼の元を訪れたのか。

 愚生なんか足元にも及ばない、圧倒的強者である星群少女がバンバン死んでいく……そんな地獄染みた北天なんぞに、わざわざ来たのか。

 隠れる事を止めてノコノコ出て来たのは何故なのか。

 

 簡単なこと。生き残るため。それだけだ。

 

 思い出すのは、千年以上も昔のこと。まだ“アルゴ座”として活動していたレクシィと……ほか数名と共に行動していた、あの頃。

 あの頃も同じ理由で愚生は動いていた。

 荒れ狂う台風は地上の全てを吹き飛ばし、押し流して進む。この最弱の身に抗う術はない。

 だが、その中心には比較的()()な領域が存在している。

 それこそは台風の目。時代・世界の中心地。

 そこは危険なように見えて、実は最も生存可能性が高い。何故ならば、そこには英雄(怪物)たちが集うから。あらゆる理不尽を跳ねのけ、運命すら捻じ曲げる逸脱者たちが。

 その中で上手く立ち回れば、最弱の身であろうとも嵐を乗り越える事が出来る。生き残る事が出来る。死なずに済む。

 だからこそ、愚生は今ここに居る。

 今の世界の中心だと予測した場所。偽十字 来栖の近くへ。

 

 今、この世界は激動の時代を迎えようとしている。

 10年前の事件とやらも、今の北天の惨状も、全ては前座に過ぎない。それらが、そよ風に思える程の嵐が……大いなる災いが訪れようとしている。少なくとも、愚生はそう確信している。

 それは恐らく、これまでに無い……ともすれば神話の時代さえ凌駕する厄災となるかもしれない。

 

 故に。愚生は何としても彼の……来栖の“仲間”になる必要がある。

 彼が守ろうとする存在に。彼の仲間たちが助けようとする存在にならなければならない。

 だから――

 

「俺以外の玩具を見つけたんじゃないかな、とは推測していたんだが。それがヒューカスさんへ迷惑をかけていたとは。本当にすまなかっ……」

 

 愚生は彼を優しく包み込んだ。

 あたかも、我が子を慈しむ“母”のように。

 

 

★★★

 

 

「ヒューカス、さん……?」

「良いさ。それ以上、何も言わなくて」

 

 正直、レクシィは上手くやったと思う。

 “妹”なんて庇護欲を掻き立てる最高のポジションじゃないか。彼女がなっていなければ愚生がなりたかったくらいだ。

 でも。二番煎じは駄目だ。貴重さが半減してしまう。生き残れなくなるかもしれない。

 ならば、どうするか。

 簡単だ。それ以外の大切なポジションに収まれば良い。

 彼の話の中には徹頭徹尾“母”が存在しなかった。理由は分からないが、彼を慈しむ“母親”が不在だった。

 そして。父親を憎んでいる……そう語る彼の中には“父親(おや)に愛されたかった”という感情があるのは明白。

 そこに、つけこむ隙がある。

 

「な、貴様、何を……!」

 

 当然のように抗議しようとするレクシィへは、1つジェスチャーを送る。

 来栖クンの背に回した右手を口元へ。人差し指を立てて、唇に当てる。

 “静かに”、と。

 そのまま、その指で来栖クンの後頭部を指す。

 “彼を見ろ”、と。

 

「……っ!」

 

 レクシィの表情が驚きと……幾分かの悔しさが混じったようなソレになる。

 抱きしめている体勢ゆえ、生憎と愚生からは伺えないが。どうやら、レクシィにはハッキリと見えたらしい。

 彼の和らいだ顔が。母に抱かれる幼子のように、安堵し落ち着いた顔が。

 

「来栖クン。今は唯、愚生に身を委ねていれば良い。何も考えず、静かに。それで良いのさ」

 

 まぁ、種明かしをすれば。

 そういう気持ちにさせる()()を……『()』を愚生が放っているからこそ、なのだが。

 ともかく。これでレクシィは手を出せない。

 いくら嫉妬しようとも、“兄”の平穏を壊すなんて彼女()には出来ない。

 安らぐ彼の眼前で、恐ろしい竜の姿となって、愚生を噛み殺す……そんなこと、絶対に出来ない。

 

 白状しよう。

 愚生は、彼の境遇に同情なんて全く抱いていない。

 親に愛されなかった子など、この長い生で数えるのも馬鹿らしくなるほど見てきたし。

 何より、愚生にとっては自分の命が一番大事だ。それ以外は割と()()()()()()

 それ故。彼の過去に対し、同情も、慈しみも、母性も何も無い。

 けれど、その過去()を利用できると――それだけは思った。

 

「……どうやら眠ったらしいのさ。よほど安心したのかもね」

 

 どれくらい、そうしていただろうか。いつのまにか、彼はスヤスヤと眠ってしまっていた。

 母の腕の中で眠る、無垢な赤子のような表情で。何とも無防備に。そういう『毒』だったから仕方ないのだが。

 

「だから、その剣をしまって欲しいのさ。彼が起きてしまうよ」

「ぐ、ぬ……」

 

 おーおー、怒ってる怒ってる。

 辛うじて人間体は保ってるけど、身体中がダイヤモンドになりかけているじゃないか。

 けど、手は出せない。愚生の予想通りだ。

 あとは静かに彼から離れて、今日の所はお暇するとしよう。これ以上レクシィを刺激すると、後々に支障を来すから……ん?

 あれ? 離れられない? あれれ? これ、もしかして来栖クンも愚生にしがみついてる? いつの間に?

 

 ――そして。そのタイミングで、()が。

 ()()()()()()()()()()が、鳴った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 






それでも。そんなヒューカスさんが作者は好きです。


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15話:やっぱり修羅場は良いものだ、異論は認めなくもない。

 

 脳が回転する。

 このタイミング、訪れた者は何者か?

 噂をすれば影ではないが、まさかの“偽十字 九栖狸”? ……否。それはないだろう。数年間一度も姿を見せなかった男だ。このタイミングで現れるとは考えにくい。

 それに、父親ならば好都合でもある。いっそ親公認の“彼女”ポジに収まるのも悪くは無い。

 父親でないとすれば、誰だ? 近所の人間? 宅配? ……ならば何の問題もない。レクシィが対応して終わり。部屋まで押し入ってくるわけがないし。仮に見られても、精々が近所で噂になるくらいだ。

 問題があるとすれば……“女”。

 来栖クンに好意を寄せる女が、こんな場面――想い人が全裸白衣の女と抱き合っている――を目撃したら? うん、間違いなく終わる。愚生は死ぬ。

 神話の時代より、女の嫉妬の恐ろしさは誰もが知るところ。わざわざヘラの例を持ち出すまでもない。

 だが、落ち着け。

 調べた限り、来栖クンには妻も恋人も愛人も許嫁もいなかった。それなら安心……。

 

 ……いやいや。

 いやいやいやいや。

 考えてもみろ。出逢って2日のレクシィがあの有り様なのだ。十数年も生きていれば、女の100や200惚れさせている可能性だってあるだろう。

 だとすれば、まずい。本当にまずい。

 事前調査が甘かったのは事実。この町は時金と極星機関、2つの勢力の目が隅々まで張り巡らされていて。そのせいで好き勝手に動く事が出来なかったのだ。だから……

 

 ……ふぅー。違うな。

 ビークール。今は悔いている時ではない。後悔など後で十分。この瞬間は窮地を生きて乗り切る事、それだけを考えねばなるまい。

 

 よし。こうなれば腹を括ろう。

 まず、来栖クンに好意を寄せる女が侵入してくる場合を想定する。

 これが普通の……星群少女に関係の無い一般人であれば問題はない。フィールドを展開して逃げればいいだけ。

 あれ(フィールド)は周辺にいる、AEに一定以上の……非常に高い親和性を有する者だけを飲み込む異空間。

 空間内の存在からは、それまでの世界と何ら変わらない景色で見える。――今回の場合、レクシィ視点では愚生と来栖クンが抱き合ったままで見える。

 しかし。空間外の存在(一般人)からは、空間内の様子は伺えない。――つまり。仮に来栖クンが目覚めたとしても、眼前に愚生とレクシィの姿は無いこととなる。

 これを利用すれば、愚生は来栖クンのホールドから逃れる事も可能だし、訪問者に目撃されることもない。

 

 だが。この作戦には致命的な欠陥がある。

 訪問者が彼と親交のある星群少女だった場合は――詰む。

 フィールドは展開と同時、周囲の星群少女を強制的に集めてしまう。それは即ち、この姿がバッチリ目撃されてしまうことを意味している。

 

 …………こうなれば賭け、か。

 2つに1つ。一般人か、それ以外か。

 前者ならセーフ、後者ならアウト。

 そして。何れにせよ、このまま何もしなければアウトなのは明白で。

 ならば――。

 

「アストロラーベ・フィールド、展開」

 

 呟きと同時、愚生を中心として球刑の空間が形成され広がっていく。

 賭けの結果は――

 

「やっぱり、星群少女……!」

「何さらしてんだ、テメェは!」

 

 そこには、白髪の少女と桃色髪の少女。

 

「あーあ。だから賭けって嫌いなのさ」

 

 敵意剥き出しの“こと座”と“はくちょう座”が、いた。

 

 

★★★

 

 

 展開されたフィールド内。招かれたのは4人。

 まず展開者たる愚生。“へびつかい座”の星群少女、ヒューカス・アスクレピオス。

 次に、至近距離で会話していた“りゅうこつ座”、偽十字 レクシィ。

 そして。招かれざる客2名。

 “こと座”、鷹刈 麻琴。

 “はくちょう座”、白鳥 星。

 

 …………何故だろうか。この顔ぶれを見ていると不可思議な寒気が止まらない。

 愚生の直感が凄まじい警鐘を鳴らしている。あるいは、この二千年の生でも1、2を争うかもしれない程に。この先に“死”があると吠えたてている。

 一体、このメンツに何があるのだ……?

 

 ……いや。今はそんなこと関係ない。考えるべきは、生き残る手段。それだけ。

 愚生は絶対に死にたくないのだ。生きていたいのだ。

 ここは磨き上げたペテンと芝居の技術で――

 

「何だい、君たちは。男と女の仲にズケズケ踏み入ってくるなんて、非常識にも程が――」

「嘘じゃぞ。ただのデマカセじゃ」

「ぬぁ!?」

 

 おのれレクシィーーーー!!!!

 さては先程までの意趣返しか……! そんなに嫉妬してたのか、君は!

 フィールドの融通の利かなさが恨めしい。招待客を選べるのなら良かったものを!

 

「…………なんか良く分かんねぇが。とりま一発ぶん殴って無力化すりゃ良いよな?」

「えぇ!? まずは話し合いをしようじゃないか! きっと愚生たちの間には大きな誤解が……」

「良いぞ、ワシが許可する。一発お見舞いしてやるのじゃ、今代の織姫よ」

「ファ!?」

 

 火に油を注ぐのは止めるのさ、レクシィ!

 愚生、最弱ぞ? 一発食らったら死亡確定だって分かってる?

 

「……ふ」

 

 あ! レクシィの奴、笑いやがったのさ!

 勝ち誇ったようにニヤリと! 100パーセント確信犯なのさ!

 ならば! まだ話の通じそうなノーザンクロスに……!

 

「はくちょうクン! 話し合いは素晴らしいものさ! 文化的で建設的、平和的にして理性的! 対話とは愛だ! そうだろ!?」

「……。無力化してからでも対話は出来ると思うな、ボクは」

「これだから血生臭い戦いを続けてる奴はぁああああああああ!!」

 

 何その蛮族思考!

 確かに、普通の星群少女なら無力化で済むかもだけど! 愚生は違うの!

 でも、それを理解してもらえるとは思えない! 今まで隠し続けて来たのが裏目に出た!

 てか、言ってもレクシィが「嘘だ」と断ずれば終わりじゃん! 完全に詰んだ……!

 

「必殺! コンドル――」

 

 桃色髪の少女が、両の手に羽衣を巻き付けて跳躍した。

 さながらグローブの如き形となった羽衣。それが深紅の輝きを放っている。

 ……その光景を見ながら、思う。

 愚生の短……くもないけれど。ともかく、愚生の生涯もここで終わりらしい。

 しくじった。心の底から口惜しい。

 でも、こうなったら何も出来ないしな。諦めて死を受け入れよう。

 さようなら世界。こんにちは冥府。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………………なんて、ね。

 時間は十分過ぎる程にあった。

 ()()なら、既に目的を達成して戻って来ているのは間違いない。

 そう。優秀極まりない、愚生の()()ならば。

 

「そこまでですよ~」

 

 紅き流星の如き一撃は、愚生に届くことなく()()()()()

 突如として出現した、着ぐるみの幼女によって。

 

 ――“へび座”の星群少女サペアちゃんが、()()()()()必殺の一撃を受け止めていた。

 

 

 

 

 

 

 








【後書き】

チャートガバ常習犯が生き残れたのには理由(チート仲間の力押し)があったわけです。

現時点での、大まかな戦闘力(当社比)
白鳥 ……2000
竜骨 ……12000
 蛇 ……11000
蛇使い……2
来栖 ……1

以下、オマケ。
サペアの挿絵。

※一部AI使用。見たくない人は下へスクロールしないでください。




↑苦手な人


↓見たい人










サペア(へび座)



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