遊戯王ARC-V 戦士の鼓動 (ナタタク)
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第1章 名無しの少年と身寄り無き少女
第1話 始まりの少年


「あ…あ…」

暗くて冷たい空間の中で息苦しい。

何も見えず、何も聞こえない。

ただ、冷たい感覚だけが伝わってくる。

「なんで…俺はここにいるんだ?そもそも…俺は誰なんだ…?」

答える者はいない。

少年は次第に意識を失っていった。

 

「ふあああ…今日の授業は大変だったなー」

浜辺付近の道を制服姿の少女が歩いている。

制服は白を基調としたノースリーブと青いミニスカート。

パッチリとした二重の双眸、すっと通った鼻梁で白い肌で、髪は後ろに括っている。

少女は決まって帰りは浜辺付近を歩いて帰る。

「あーー!!今日は私が晩御飯を作る番だった!!急が…ん?」

走ろうとしたが、浜辺に存在する変な光景に目を丸くする。

地中から左腕だけが伸びていて、デッキがすでにセットされたデュエルディスクが装備されている。

「こ…これはどーいう状況なんだろう?うーーーん?」

少女は周囲を見渡すが、誰もいない。

このまま放っておくわけにもいかず、少女は穴を掘って誰が埋まっているのかを確かめた。

そして、数十分後…。

「きゃあ!!」

顔を真っ赤にしながら、少女は顔を砂だらけの手で隠す。

埋まっていたのは黒い長髪で白い肌の少年で、何も着用していなかった。

「な…なんでこうなってるのこの人!!そ…それよりも何とかしないと!!」

少年はまだ息をしていて、脈もある。

携帯で病院に連絡すると、数分後に救急車が到着した。

 

「う…ん…?」

少年はゆっくりと目を覚ます。

白い天井と明るいLEDが最初に目に入る。

少年の髪はポニーテールになっていて、服装は青い病衣だ。

「ここは…?」

「気が付いた?」

「うわっ!!」

少女の笑顔がいきなり視界に入り、少年は動揺する。

「いやー、びっくりしたよ。だって左腕以外全部埋まってたし、しかも服も着てなかったから…」

「…?な…何を言っているんだ…君は…?」

「え?あなた、何も覚えてないの??」

「覚えているって…何を…??」

「もーーー!!じゃあ名前から聞くよ!!私は永瀬伊織!あなたは誰?」

「…。知らない」

「へ?」

「俺の名前は…何だ?」

少年の衝撃的な言葉に伊織はポカンとする。

「じゃ…じゃあ、何で埋まっていたの?」

「覚えてない」

「好きな食べ物は?」

「知らない」

「好きなカードは?」

「分からない」

その後も十数個の質問をするが、いずれも分からない、知らないという答えしか返ってこなかった。

「じゃあ、最後の質問!!これはあなたのものでしょ??」

彼の腕に装備されていたデュエルディスクとデッキを見せる。

「これ…俺の??」

受け取ったデッキをじっと見る。

「それにしても、珍しいカードを使うんだね。エクシーズモンスターに融合モンスター、シンクロモンスターも…しかもこのカード、見たことが…」

「な…なあ、伊織さん…」

「伊織でいいよ。どうしたの?」

「じゃあ…伊織。これ…どうやって遊ぶんだ?」

「えーーー!?もしかして、遊び方も覚えてないの??うーん…」

デュエルのルールすら覚えていない少年に伊織は頭を抱える。

教えたいのはやまやまだが、これ以上少年と一緒にいると職員長に怒られてしまう。

「明日は学校が休みだし…明日デュエルのこと教えてあげる!!だから、今日はしっかり寝ること!!また明日!!」

「あ…ああ」

荷物を手に取り、大急ぎで病室から出て行った。

床には若干砂が散っている。

(これが…俺のカード?)

40枚の束と15枚の束をすべて眼に通す。

(上がオレンジで下が緑色のカード…一体何のカードなんだ?)

よく見ると、そのカードは彼のデッキの中には複数枚存在する。

(ペンデュラムモンスター…?まあ、明日伊織に聞いてみるか…)

少年はカードをそばにあるテーブルに置くと、ゆっくり目を閉じた。

 

「ということは…罠カードは伏せた次のターンまで発動できないということか?」

「そうそう!!飲み込みが早いじゃん!やっぱり、教える私の素質がいいからかな?」

「そうとも言えるな」

「おっとっと!!こーゆーときは何か否定しないと、ちょっと調子狂うなー」

わざとらしくずっこけそうな状態になる伊織。

1,2時間かけた説明でどうにかルールがわかってくれた様子で内心ほっとしていた。

「だけど、これの使い方は伊織も分からないのか?」

「うーん、施設のみんなとよくデュエルするけど、こーゆーカードは見たことないなぁ」

「施設…?」

「あ、私小さいころから親がいないの。だから、施設で生活してるんだー」

「そ…そうなのか…ごめん…」

聞いちゃいけなかったのかと思い、少年はシュンとする。

「いいっていいって別に!…うーん、やっぱりなんて呼べばいいかわからないと変な感じになるなー」

「名前か…」

少年は伊織が来るまで何度も自分のことについて思い出そうとした。

しかし、何も思い出すことができなかった。

自分についても、最近のことについても…。

「そうだ!!名前は翔太にしよう!!」

「翔太…?」

「うん。この前終わった朝ドラで出てた男の子の名前だよ!!これで決まり!」

「ま…まあ、伊織がそう呼びたいならそれでいいけど…」

「あーーー!!そういえば、今ストロング石島のエキシビションマッチやってるんだった!!テレビつけてもいい?翔太君!!」

「あ…ああ。構わないけど…」

伊織は大急ぎでテレビをつける。

(ストロング石島…誰なんだ?)

テレビにはジャングルのような空間で棍棒を持った巨大な悪魔のような戦士である《バーバリアン・キング》の掌に乗っている紫の3つのドリルのような頭で、筋肉質の男が少年を追い詰めていた。

少年はトマトのような髪の色をしていて、白服をマントのようにしている。

また、彼のゴーグルの右側には青色の五芒星がついている。

「伊織、この人たちは…?」

「ええっと、紫色の髪の人がいるでしょ?その人が今のデュエルチャンピオン、ストロング石島。それと、今追いつめられてるのが榊遊矢。榊遊勝の息子だって」

「榊…遊勝??」

「えーーー!!?その人のことも知らないの?その人は…」

「俺はスケール1の《星読みの魔術師》とスケール8の《時読みの魔術師》でペンデュラムスケールをセッティング!!」

「何!?ペンデュラムスケール…!?」

遊矢の言葉を聞き、驚いた翔太はテレビにかじりつく。

「ちょっとちょっと!!見えないよ翔太君!!」

(ペンデュラムスケール…俺が持っているカードに関係するのか??)

「揺れろ!魂のペンデュラム!天空に描け光のアーク!ペンデュラム召喚!! 現れろ、我が下僕のモンスターたち!!」

遊矢から見て右側に白いローブを着た青い瞳の魔術師が、左側に黒いローブと金色のデュエルディスクのようなものを装備しているオレンジ色の髪の魔術師が浮遊する。

浮遊する2人の魔術師は1本ずつ光の柱を生み出し、《星読みの魔術師》のには1が《時読みの魔術師》のには8が表示される。

そして、上空に振り子が動くエフェクトが発生すると、彼の場に3体のモンスターが同時に現れた。

1体はリーゼントがついた青筋がたっている剣のような形をした青魚。

もう1体は派手な蝶ネクタイと黒いシルクハット、両頬に異なる色の五芒星がある紫色のコブラ。

そして、最後の1体は4つの緑色の玉石が付いた半月のような形の白い翼のようなものを背中につけ、オッドアイの赤い二足歩行の竜だ。

「これが…ペンデュラムモンスターの力…」

翔太はただただ一度にレベル2とレベル4、そしてレベル7のモンスターを特殊召喚したペンデュラム召喚に驚いていた。

 

 




まあ、短いですが最初はこんな感じになりました。
では、ここでキャラについて少し

翔太
今回の主人公です。
文字通りの意味での記憶喪失者で、本当に何も覚えていません。

永瀬伊織
今回のヒロイン。容姿はココロコネクトの彼女そのままで、性格に関しては違和感なく明るいです。
設定としては孤児に変更してあります。

次回はデュエルさせようかな…?


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第2話 砕かれたダーツ

「うーん…」

「どうしたの翔太君。あのデュエルを見てからずっとそんな感じだよ?」

数日後、無事退院した翔太は伊織と共に施設へ足を運んでいた。

入院している間、警察や医師からいろいろと調べられたが、結局自分が何者なのかわからなかった。

「ペンデュラム召喚…2体のペンデュラムモンスターのペンデュラムスケールの間のレベルのモンスターを同時に召喚できる召喚方法…」

「翔太君!!」

「あ…ごめん。ええっと、何か俺に言っていたのか?」

「あのデュエルを見てからずっとそーゆー感じだねって言ったの!女の子を無視するなんてひどーい」

「ごめん…」

すっかり落ち込んでしまった。

ちなみに今の翔太の服装は赤いTシャツと茶色いチノパンで、いずれも伊織が施設長からもらってきてくれたものだ。

「見えてきた。ここが私が住んでる施設!」

海沿いから少し離れたところにある少し大きめの鉄筋コンクリートの建物で、複数の遊具が中庭にある。

「伊織…」

「何?翔太君」

「その…いいのか?どこの馬の骨とも知らない俺を…」

「困ったときにはお互い様でしょ?さ、みんなにあいさつしないと!!」

「あ…ああ」

伊織に背中を押され、施設に入って行った。

 

「うう…」

「翔太君。気にしない気にしない」

「気にするだろう?恥ずかしすぎる…」

2階の自室で、翔太は真っ赤になった顔を隠している。

入った後、すぐに施設長と伊織によって集会室へ連れて行かれ、いきなり施設に入っている子供たちの前であいさつさせられたのだ。

そして、緊張と動揺によってかんでしまい、子供たちから大爆笑されてしまったのだ。

ちなみに、もともと彼の部屋は中学生くらいの男子が複数入る部屋なのだが、今施設にいる子供は伊織以外全員小学生以下で、実質的に個室となってしまっているのだ。

「あーあ、カメラがあったらさっきの撮影できたのになー」

「勘弁してくれ…。そうだ、カード屋は近くにあるか?」

「うん。歩いて5分くらいのところにあるよ。一緒に行く?」

「ああ。早くこのことを忘れたい…」

 

「それにしても、なんで急にカード屋へ行きたいと思ったの?」

「少し、気になることがあったからな」

「ペンデュラムモンスターのこと?」

「…。ああ、そうだ」

「やっぱり!!それにしてもすごかったよねー、ペンデュラム召喚」

あのデュエルを見て以来、ペンデュラム召喚がずっと彼の心に引っかかっていた。

ペンデュラム召喚で3体のモンスターを呼び出した遊矢はあの後、ペンデュラムスケールをセッティングした2体の魔術師の力を利用してストロング石島を撃破してしまった。

(ペンデュラムモンスター…あれは俺のデッキにも入っていた。そのモンスターは元々量産されているのか?それとも、彼と俺のデッキにしか入っていないカードなのか…?)

伊織はペンデュラム召喚について知らないといっていたため、量産されている可能性は低いが、翔太はどうしてもペンデュラムモンスターがどういう存在かの確証がほしかったのだ。

「わーん!!返してよぉーーー!!」

「うるせえ!!アンティルールで俺が勝ったんだ。だから、このカードは俺のものだ!」

黄色い髪で、少し乱れた感じに制服を着た少年が子供からレアカードを奪っている。

「ちょっと待ちなさいよ!!アンティルールなんてひどいよ!!」

頭に来たのか、伊織がその少年に詰め寄る。

「あぁん?部外者が口出しするなよな」

「そういうことそういうこと。沢渡さんの言うとおり」

「お嬢さんはさっさと消えな」

その少年の取り巻きかと思われる3人の同じ制服を着た不良が伊織の前に立つ。

「大丈夫か?」

伊織が抗議する中、翔太は泣いている子供をあやしている。

「お兄ちゃん…僕のカードが…僕の《暗黒恐獣》がとられたんだ!!」

「アンティルールでデュエルをしたのか?」

「そんなこと、一言も言ってないよ!!あのお兄ちゃんが僕に勝った後勝手に言いだしたんだ!!」

「ふう…そういうことか」

「返して!!それはあの子の…」

「うるせえ!!いい加減にしろよ!!」

「キャア!!」

取り巻きによって、伊織が突き飛ばされる。

尻餅をついた伊織を見て、翔太はゆっくりと立ち上がった。

「待て、お前ら」

「あん?だれだ、お前?」

「翔太だ。この子の《暗黒恐獣》を返してもらうぞ?」

「何言ってやがるんだ?これは正当な…」

「なら、それを賭けてデュエルをしろ。俺はデッキを賭ける」

「な…?」

「ええ!?」

「え…?翔太君!?」

翔太の言葉に一同が騒然とする。

しばしの沈黙ののち、沢渡が大笑いし始める。

「ハハハハハ!!お前、相手がわかってるのか?俺はLDSのデュエリスト、いわばエリートなんだぜ?」

「知らないな。そんなこと」

沢渡だけでなく、取り巻きたちも笑っている中、デュエルの準備を整える。

「お兄ちゃん…」

「安心しろ。お前のカードは必ず取り戻す」

「ヒーロー気取りかよ?あいつ」

「沢渡さんを相手にするなんて、こいつバカだ!!」

「ヒーロー君、そんなにこのカードを取り返したいなら相手になってやるよ。ただし、アクションデュエルで」

「アクションデュエル…?」

聞いたことのない単語に翔太は首をかしげる。

 

翔太たちはカード屋地下のデュエルフィールドへ移動した。

翔太と沢渡が対峙し、伊織と取り巻き、そしてカードを奪われた子供は簡易的な観客席で待機する。

「ここは…?」

「さて…まずはフィールド魔法を発動させてもらおうか。フィールド魔法《ダークタウンの時計塔》発動!」

足元に設置された大型のソリッドビジョンシステムが起動する。

すると、デュエルフィールドが夜のアメリカの都市をモチーフとした空間に変化し、中央には巨大な時計台がある橋がある。

そして、取り巻き達がデュエル開始の宣言をする。

「戦いの殿堂に集いしデュエリストたちが」

「モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い」

「フィールド内を駆け巡る!」

「見よ、これぞ、デュエルの最強進化形、アクション…」

「「デュエル!!」」

 

翔太

手札5

ライフ4000

 

沢渡

手札5

ライフ4000

 

「これが…アクションデュエル専用のフィールド…」

リアリティあふれる空間に翔太は驚きを隠せずにいる。

「おいおい、こいつアクションデュエルを知らないのかよ?」

「それで沢渡さんと戦うなんて、笑えるぅ!!」

「先攻は譲ってやる。分かっているとは思うが、先攻は最初のターン、ドローできない」

「あ…ああ。俺のターン、俺は手札から《魔装獣ユニコーン》を召喚」

緑色の傷のない角と胸部に五芒星が刻まれていた鎧を装備している老いた一角獣が場に現れる。

 

魔装獣ユニコーン レベル4 攻撃1600

 

「えっ!?触れるのか…??」

急にそばに近づいた《魔装獣ユニコーン》に触れることができ、翔太は大いに驚く。

「翔太君!!アクションデュエルでは1分以内にカードのプレイングをしないと失格になるよ!!」

「え…?あ、そ…そうか。俺はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

翔太

手札5→3

ライフ4000

場 魔装獣ユニコーン レベル4 攻撃1600

  伏せカード1

 

沢渡

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「おいおい、アクションカード探さないのかよこいつ!!」

「ア…アクションカード??」

「翔太君!アクションカードはフィールド中に散らばっているアクションデュエル専用のカードだよ!1枚まで手札に加えることができて、いつでも発動できるの!!」

「おいおい、こいつ本当にアクションデュエルを知らないんだな。俺のターン、ドロー」

 

沢渡

手札5→6

 

「俺は《ライトニング・ボード》を召喚」

電気を纏い、ダーツボードを咥えた悪魔の頭部が現れる。

そのカードはタバック加工が施されたレアカードだ。

 

ライトニング・ボード レベル4 攻撃1400

 

「さてっと、あの死にぞこないの馬を倒せるアクションカードを探すとするか」

沢渡を乗せた《ライトニング・ボード》はフィールド中を駆け巡る。

「翔太君!!早くアクションカードを探さないと!!」

「わ…分かった!」

翔太を乗せた《魔装獣ユニコーン》が沢渡を追いかける形で走り始める。

そのスピードは《ライトニング・ボード》よりも少しだけ速い程度だ。

「ちっ!老いぼれのくせにすばしっこい。だが…」

電線に引っかかっているアクションカードを沢渡が回収する。

「ハハハ!!いいカードが手に入った!アクション魔法《スピン・ショット》を発動!相手モンスター1体の攻撃力を500ポイントダウンさせる」

《スピン・ショット》から文字通り強烈なスピンがかかったバリヤードのボールが《魔装獣ユニコーン》に向けて放たれる。

「俺の魔装モンスターが相手の魔法・罠カードの対象となったとき、そのモンスターを手札に戻すことで、こいつは手札から特殊召喚できる。俺は《ユニコーン》を手札に戻し、《魔装鳥ガルーダ》を特殊召喚」

《魔装獣ユニコーン》が姿をけし、五芒星が中央に描かれた青いアーマーを装備し、炎を纏っている怪鳥が現れると、そのモンスターは翔太を掴み、飛翔する。

 

魔装鳥ガルーダ レベル3 攻撃1200

 

「ハハハ!!せっかく特殊召喚したモンスターの攻撃力がたった1200かよ!?」

「沢渡さん!そんなモンスターやっつけちゃってください!!」

「更に、このカードの特殊召喚に成功した時、相手モンスター1体の攻撃力を500ポイントダウンさせる」

「何!?」

《魔装鳥ガルーダ》の口から放たれた火球を受けた《ライトニング・ボード》のスピードがダウンする。

 

ライトニング・ボード レベル4 攻撃1400→900

 

スピン・ショット

アクション魔法カード

(1):相手モンスター1体の攻撃力を500ポイントダウンさせる。

 

魔装鳥ガルーダ

レベル3 攻撃1200 守備1200 効果 炎属性 鳥獣族

(1):自分フィールド上に表側表示で存在する「魔装」モンスター1体が相手の魔法・罠カードの対象となったときに発動できる。そのモンスターを手札に戻し、このカードを手札から特殊召喚する。

(2):このカードの特殊召喚に成功した時、相手モンスター1体を選択する。選択したモンスターの攻撃力を500ポイントダウンさせる。

 

「ちっ…小賢しい真似を!」

《魔装鳥ガルーダ》はスピードが先ほどの《魔装鳥ユニコーン》よりも速く、更に立体的に行動することができる。

これにより、翔太のアクションカード捜索範囲が広がった。

「ちっ…これじゃあ攻撃できないか。なら俺は《ライトニング・ボード》の効果発動。このカードをリリースすることで、デッキからレベル5以上のモンスター1体を手札に加える!俺はデッキから《アーマード・ダーツ・シューター》を手札に加える!」

損傷した《ライトニング・ボード》が姿をけし、沢渡の手に《アーマード・ダーツ・シューター》が加わる。

 

ライトニング・ボード(アニメオリカ・調整)

レベル4 攻撃1400 守備1200 効果 光属性 雷族

(1):このカードをリリースして発動できる。デッキからレベル5以上のモンスター1体を手札に加える。

 

「ふん…さらに、このカードは相手フィールド上にのみモンスターが存在するとき、手札から特殊召喚できる。《アーマード・ダーツ・シューター》を特殊召喚」

右手にマシンガンのようなダーツ発射装置を装備している紫色の細身な人型機械が現れる。

 

アーマード・ダーツ・シューター レベル5 攻撃1700

 

「この効果で特殊召喚された時、俺はデッキからダーツモンスター1体を手札に加える。俺はデッキから《アルティメット・ダーツ・シューター》を手札に加える。ただし、この効果を発動したターンこのモンスターは攻撃できない。次のターンまでその鳥は生かしておいてやる」

「いよ!!さすがは選ばれたデュエリスト!!」

「沢渡さん、最高ッス!!」

「俺はカードを1枚伏せて、ターンエンド」

 

アーマード・ダーツ・シューター

レベル5 攻撃1700 守備1900 効果 闇属性 機械族

(1):相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しないとき、このカードは手札から特殊召喚することができる。この効果で特殊召喚に成功した時、自分はデッキから「ダーツ」と名のつくモンスター1体を選択して、手札に加えることができる。この効果を発動したターン、このカードは攻撃できない。

 

翔太

手札3(うち1枚《魔装獣ユニコーン》)

ライフ4000

場 魔装鳥ガルーダ レベル3 攻撃1200

  伏せカード1

 

沢渡

手札6→5(うち1枚《アルティメット・ダーツ・シューター》)

ライフ4000

場 アーマード・ダーツ・シューター レベル5 攻撃1700

  伏せカード1

 

「俺のターン」

 

翔太

手札3→4

 

「俺は手札に戻した《魔装獣ユニコーン》を再び召喚」

上空に再び《魔装獣ユニコーン》が現れ、ビルの上に着地する。

老齢であるにもかかわらず、着地の際に少しも体勢が崩れず、強い足を持っている。

 

魔装獣ユニコーン レベル4 攻撃1600

 

「おいおい、わざわざ《アーマード・ダーツ・シューター》よりも攻撃力が低い老いぼれをまた召喚するのか?」

「更に、俺は《ユニコーン》と《ガルーダ》を墓地へ送る」

「何!?」

急に《魔装獣ユニコーン》と《魔装鳥ガルーダ》が姿を消し、翔太は橋の中央の時計塔の上に着地する。

「精錬されし一角獣よ!炎の怪鳥よ!魔導の力によりて、今1つとならん。融合召喚!王家の獣、《魔装鳥獣グリフォン》!!」

デュエルディスクに搭載されているエクストラデッキ収納スペースが開き、《魔装鳥獣グリフォン》が排出され、翔太の手でモンスターカードゾーンに置かれる。

翔太の背後から五芒星が刻まれた赤い鎧を装備している伝説上の生物であるグリフォンが現れ、時計塔を旋回する。

 

魔装鳥獣グリフォン レベル6 攻撃2400

 

「何!?融合召喚だと??」

「嘘だろ!?融合召喚は融合魔法がないとできないはずだろ!?それに…そもそも融合召喚はLDSでもまだまだ教え始めたばかりの…」

(教え始めたばかり…?)

取り巻き達の発言に伊織は若干違和感を感じる。

「お前…まさかズルでも…」

「ズルはしてないぞ。このカードは俺の魔装モンスター2体を墓地へ送ることで、融合魔法無しで融合召喚できる!」

時計塔から飛び降り、《魔装鳥獣グリフォン》の背に乗り、縦横無尽にフィールドを駆け巡る。

「くそっ!!なんてスピードなんだ!?」

あっという間に中央に流れる巨大な河川に浮かぶ孤島に落ちているアクションカードを翔太が回収する。

「こうやって使うのか…?俺はアクション魔法《緊急召喚》を発動。手札からレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚できる。俺は手札から《魔装銃士マゴイチ》を特殊召喚!」

五芒星が刻まれた火縄銃と八咫烏が描かれた茶色いマントをつけたカラスのような人型モンスターが現れる。

 

魔装銃士マゴイチ レベル4 攻撃1600

 

緊急召喚

アクション魔法カード

(1):手札からレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚する。

 

「うんうん!翔太君、お見事!」

「バトルだ。《魔装鳥獣グリフォン》で《アーマード・ダーツ・シューター》を攻撃。ノックダウン・ストライク」

《魔装鳥獣グリフォン》が再び時計塔上空まで飛ぶと、そこから猛スピードで《アーマード・ダーツ・シューター》に向けて落下し、鷲掴みしようとする。

「く…!!」

攻撃が届く前に、沢渡は周囲を見渡し、アクションカードを探す。

すると、攻撃の勢いで浮かんだアクションカードを見つけ、手に取る。

「ハハハ!!甘いぜ、アクション魔法《奇跡》!俺のモンスター1体は戦闘では破壊されず、俺が受ける戦闘ダメージも半分になる!」

《アーマード・ダーツ・シューター》が鷲掴みされ、河川に向けて放り投げられたものの、破壊だけは免れた。

 

沢渡

ライフ4000→3650

 

奇跡

アクション魔法カード

(1):自分フィールド上のモンスターが攻撃対象となったときに発動できる。そのモンスターは戦闘では破壊されず、自分が受ける戦闘ダメージは半分になる。

 

「まだだ!《魔装鳥獣グリフォン》は1ターンに2度攻撃することができる!」

「なら俺は罠カード《ブレイクスルー・スキル》を発動!このターン、《グリフィン》の効果は無効になる!」

「攻撃はここまでか…。なら俺はこれでターンエンド」

 

魔装鳥獣グリフォン

レベル6 攻撃2400 守備1200 融合 風属性 鳥獣族

「魔装」モンスター×2

(1):自分フィールド上の上記のカードをリリースすることでのみ、エクストラデッキから特殊召喚できる(「融合」魔法カードは必要としない)。

(2):このカードは1ターンに2度攻撃することができる。その場合、2回目の攻撃で発生する相手への戦闘ダメージは半分になる。

 

翔太

手札4→2

ライフ4000

場 魔装銃士マゴイチ レベル4 攻撃1600

  魔装鳥獣グリフォン レベル6 攻撃2400

  伏せカード1

 

沢渡

手札5(うち1枚《アルティメット・ダーツ・シューター》)

ライフ3650

場 アーマード・ダーツ・シューター レベル5 攻撃1700

 

「やった!翔太君が先制した!!」

「あの沢渡さんが先制された!?」

「嘘だろ…?」

伊織が喜ぶ中、取り巻き達はお通夜ムードだ。

どうやら、今まで沢渡のライフが先に削られたことがなかったのだろう。

「よくも俺のライフを…。俺のターン、ドロー!!」

 

沢渡

手札5→6

 

「俺を相手にしたことを後悔させてやる!俺は手札から魔法カード《ダーツ・ゲットライド》を発動!俺のライフが相手よりも低いとき、俺のフィールドに存在するレベル5以上のダーツモンスター1体を墓地へ送ることで、手札からダーツモンスター3体を攻撃表示で特殊召喚する!現れろ、《ロケット・ダーツ・シューター》、《パワー・ダーツ・シューター》、《アルティメット・ダーツ・シューター》!!」

ピンク色の装甲で、右腕がミサイルランチャーのようなダーツ発射装置を装備した女性型人型機械とオレンジ色の装甲で、3門のガトリングガンのようなダーツ発射装置が右腕になっている少し太目な人型兵器、そして青い装甲で、《ロケット・ダーツ・シューター》と同じ装備をしている細身の人型機械が現れる。

3機とも空は跳べないものの、対空防御としてはこれでどうにかなるだろう。

 

ロケット・ダーツ・シューター レベル6 攻撃1900

パワー・ダーツ・シューター レベル5 攻撃1800

アルティメット・ダーツ・シューター レベル7 攻撃2400

 

ダーツ・ゲットライド

通常魔法カード

「ダーツ・ゲットライド」は1ターンに1度しか発動できず、発動したターン自分はモンスターを通常召喚できない。

(1):自分のライフが相手よりも少ないとき、自分フィールド上に表側表示で存在する「ダーツ」モンスター1体を墓地へ送ることで発動できる。手札から「ダーツ」モンスターを3体選択し、表側攻撃表示で特殊召喚する。

 

「一気にダーツモンスターが3体!?」

「気を付けてお兄ちゃん!僕、それにやられたんだ!!」

少年の目に先ほどのデュエルの光景がよみがえる。

3体のダーツモンスターの連携攻撃によって、一気にライフを奪われてしまったときの光景を。

「まだあるぜ、俺は手札から永続魔法《ボム・ダーツ》を発動。これで、俺のダーツモンスターの攻撃力はそのモンスター1体につき500ポイントアップする」

3体のダーツモンスターのダーツはすべて爆薬が入ったものに交換される。

 

ロケット・ダーツ・シューター レベル6 攻撃1900→3400

パワー・ダーツ・シューター レベル5 攻撃1800→3300

アルティメット・ダーツ・シューター レベル7 攻撃2400→3900

 

ボム・ダーツ

永続魔法カード

「ボム・ダーツ」はフィールド上に1枚しか存在できない。

(1):自分フィールド上に表側表示で存在する「ダーツ」モンスターの攻撃力は自分フィールド上の「ダーツ」モンスター1体につき500ポイントアップする。

 

「すっげぇ!!これぞ沢渡さんの十八番!」

「ヒーロー君、諦めてデッキを差し出した方がいいんじゃないかーい?」

先程までのムードはどこへ行ったのか、取り巻き達が盛り上がる。

「翔太君…」

「お兄ちゃん…」

「さあ、ヒーロー君。このまま倒れてもらおうか?《ロケット・ダーツ・シューター》で《マゴイチ》を攻撃!」

《ロケット・ダーツ・シューター》の右腕から3発の爆発性のあるダーツが発射される。

《魔装銃士マゴイチ》はそのうちの2発を火縄銃で撃ち落すが、最後の1発を受けて爆散した。

「く…!!(《マゴイチ》…)」

 

翔太

ライフ4000→2200

 

「俺は《マゴイチ》の効果発動。このカードが戦闘で破壊された時、俺はデッキから魔装モンスター1体を手札に加える。俺はデッキから《魔装亀テンセキ》を手札に加える」

 

魔装銃士マゴイチ

レベル4 攻撃1600 守備1600 効果 闇属性 鳥獣族

(1):このカードが戦闘によって破壊され、墓地へ送られた時、デッキから「魔装」モンスター1体を選択して手札に加える。

 

「今更そんなカードを手札に加えようと、無駄だ!!《アルティメット・ダーツ・シューター》で《グリフォン》を攻撃!」

上空を飛び回る《魔装鳥獣グリフォン》にむけて追尾機能を追加したダーツを発射する。

「お前を空から落としてやるぜ!!」

「翔太君!!」

「俺は手札から《魔装亀テンセキ》の効果を発動」

翔太の目の前に五芒星が刻まれている青い甲羅がついた小柄な亀が現れる。

そして、五芒星を中心にバリアが展開され、ダーツがそれに阻まれる。

「何!?」

「このカードは手札から墓地へ送ることでこのターン、俺の魔装モンスターは戦闘では破壊されず、発生するダメージも0となる」

バリアで受け止められたダーツを手に取り、河川に投げ捨てる。

「計算外なことをしやがって!!俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド!!(だが、俺の《パワー・ダーツ・シューター》と《ロケット・ダーツ・シューター》はそれぞれ攻撃力強化と貫通効果を与えるユニオンモンスター。たとえ、次のターンに守備表示モンスターを召喚してきても、これでダメージは与えられる。下がった分の攻撃力は他のダーツモンスターの召喚で埋め合わせればいい)」

沢渡の脳裏に勝利の方程式が完成しつつあった。

攻撃力3000以上のモンスターが3体いる状況を覆す力をアクションデュエルを初めてやる翔太にあるはずがないとも思っている。

次のターンになっていないのにもかかわらず。

 

魔装亀テンセキ

レベル1 攻撃0 守備0 効果 水属性 水族

(1):自分フィールド上に「魔装」モンスターが表側表示で存在するとき、このカードを手札から墓地へ送ることで発動できる。このターン、自分フィールド上の「魔装」モンスターは戦闘では破壊されず、そのモンスターの戦闘で発生する自分へのダメージは0となる。

 

パワー・ダーツ・シューター(アニメオリカ・調整)

レベル5 攻撃1800 守備2000 ユニオン 地属性 機械族

(1):1ターンに1度、だけ自分のメインフェイズに装備カード扱いとして自分の「ダーツ」モンスターに装備、または装備を解除して表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。この効果で装備カード扱いになっている時のみ、装備モンスターの攻撃力は1000ポイントアップする。(1体のモンスターが装備できるユニオンは1枚まで。装備モンスターが戦闘によって破壊される場合は、代わりにこのカードを破壊する。)

 

ロケット・ダーツ・シューター(アニメオリカ・調整)

レベル6 攻撃1900 守備1000 ユニオン 地属性 機械族

(1):1ターンに1度、だけ自分のメインフェイズに装備カード扱いとして自分の「ダーツ」モンスターに装備、または装備を解除して表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。この効果で装備カード扱いになっている時のみ、装備モンスターが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。。(1体のモンスターが装備できるユニオンは1枚まで。装備モンスターが戦闘によって破壊される場合は、代わりにこのカードを破壊する。)

 

アルティメット・ダーツ・シューター(アニメオリカ・調整)

レベル7 攻撃2400 守備1800 効果 地属性 機械族

(1):このカードはユニオンモンスターを2枚以上装備することができる。

(2):自分のターンのエンドフェイズ時に1度、このカードにユニオンモンスターが装備されているときに発動できる。そのユニオンモンスターの装備を解除し、可能な限り自分フィールド上に特殊召喚する。

 

翔太

手札2

ライフ2200

場 魔装鳥獣グリフォン レベル6 攻撃2400

  伏せカード1

 

沢渡

手札6→0

ライフ3650

場 ロケット・ダーツ・シューター レベル6 攻撃3400

  パワー・ダーツ・シューター レベル5 攻撃3300

  アルティメット・ダーツ・シューター レベル7 攻撃3900

  ボム・ダーツ(永続魔法カード)

  伏せカード1

 

「そんな…こんなの逆転できるわけないよ…」

「そういうことだ。安心しろよ、沢渡さんか俺たちが大事に使ってやるからよ」

勝利を確信した取り巻き達がせせら笑う。

「翔太君…」

不安げな目で伊織は翔太を見つめる。

だが、翔太にあきらめの色はない。

(今の俺の手札では逆転できない。だが…)

今の翔太の手札にはペンデュラムモンスターが2枚ある。

だが、この2枚をセッティングしても何も意味がない。

(今俺がほしいのは…あのカードだけだ)

病室の中で伊織と一緒にデッキを調べて見つけた、一番スケールの幅が大きい組み合わせの片輪となるカード。

そのカードが来れば、状況が大きく変わる。

何も言わず、そのカードが来ることを願いながらカードを引いた。

 

翔太

手札2→3

 

ドローしたカードを見て、笑みを浮かべた。

「きた…。俺は手札からスケール2の《魔装槍士タダカツ》とスケール9の《魔装剣士ムネシゲ》でペンデュラムスケールをセッティング」

「何!?ペンデュラムだと…??」

翔太から見て右側に胸部に五芒星が刻まれている傷一つない鎧、角が左右に2本ずつついた兜、そして蜻蛉切という天下三名槍のうちの1本をモチーフとした槍を装備した巨漢が現れ、左側に紫の南蛮甲冑、五芒星が刻まれた丸楯と片刃の長剣を装備した茶髪の若武者が現れる。

「これで、俺はレベル3から8までのモンスターを同時召喚できる!そして、俺は手札から魔法カード《魔装の宝札》を発動。俺の攻撃力2000以上の魔装モンスター1体をリリースし、デッキからカードを2枚ドローする」

《魔装鳥獣グリフォン》が消え、翔太は時計塔から落下する。

「翔太君!?」

「おいおいこいつ、投身自殺する気かよ!?」

翔太はそのまま河川の一番深い位置に落下する。

そしてそこから顔を出し、そのまま向こう岸まで着衣水泳することで無事を証明した。

 

翔太

手札3→4

 

魔装の宝札

通常魔法カード

(1):自分フィールド上に表側表示で存在する攻撃力2000以上の「魔装」モンスター1体をリリースすることで発動できる。デッキからカードを2枚ドローする。

 

翔太の紫色の瞳が青白く光り始める。

「来たれ、時の果てに眠りし英雄の魂。希望の道を照らし、勝鬨を上げろ!ペンデュラム召喚!!現れろ、俺のモンスターたち!!」

遊矢とは異なり、上空に振り子のエフェクトは出現しなかったが、翔太の場に2体のモンスターが現れる。

「《魔装黒鮫サッチ》!」

額に五芒星が刻まれている黒い鮫が河川から顔を出す。

体中に刻まれた傷跡がそのモンスターが生粋の戦闘狂であることが感じられる。

 

魔装黒鮫サッチ レベル4 攻撃1400

 

「死を司る青き騎士、《魔装騎士ペイルライダー》!!」

時計塔の真上に青白い鎧と兜、そしてフェイズガードがついた騎士が現れる。

両腰には魔力で刃を作る光剣を、両手にはマシンガンと青い楯が装備されている。

五芒星は鎧の中央に刻まれている。

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

 

「すごーい!!ペンデュラム召喚大成功!」

伊織が嬉しそうに翔太がペンデュラム召喚したモンスターを見る。

肝心の翔太は上空にいるため、目の色が変わったことには気づいていない。

「な…何がペンデュラム召喚だ!攻撃力は俺のダーツモンスターにははるかに及ばないじゃないか!!」

「罠発動!《リビングデッドの呼び声》。俺の墓地に存在するモンスター1体を攻撃表示で特殊召喚する。俺は墓地から《魔装獣ユニコーン》を特殊召喚する」

どこからともなく、《魔装獣ユニコーン》が現れ、沢渡を飛び越えてると時計塔へ向けて走り出す。

 

魔装獣ユニコーン レベル4 攻撃1600

 

「《ユニコーン》の効果発動。このカードは1ターンに1度、装備カードとなって魔装騎士に装備することができる。このカードを装備したモンスターの攻撃力は800ポイントアップする」

《魔装騎士ペイルライダー》は突然、時計塔から飛び降りて《魔装獣ユニコーン》に騎乗する。

その瞬間、《魔装獣ユニコーン》の毛が青く染まって行った。

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500→3300

 

「更に、《魔装鮫サッチ》の効果。このカードが存在する限り、俺の魔装モンスターの攻撃力は400ポイントアップする」

《魔装鮫サッチ》が咆哮すると、翔太のモンスターたちの五芒星が輝き、彼らの持つ魔力が活性化する。

 

魔装黒鮫サッチ レベル4 攻撃1400→1800

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃3300→3700

 

魔装黒鮫サッチ

レベル4 攻撃1400 守備200 効果 水属性 魚族

(1):このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、自分フィールド上に表側表示で存在する「魔装」モンスターの攻撃力は400ポイントアップする。

(2):自分フィールド上に他のモンスターが存在する場合、相手は表側表示で存在するこのカードを攻撃対象に選択する事はできない。

 

「攻撃力3700だと!?」

「バトル!俺は《魔装騎士ペイルライダー》で《ロケット・ダーツ・シューター》を攻撃!第4の騎士、敵を死へ誘え!!クアトロ・デスブレイク!」

《魔装騎士ペイルライダー》を乗せた《魔装獣ユニコーン》がクールベットした後、全力疾走し始める。

そして、その速度を保ったまま手持ちのマシンガンを《ロケット・ダーツ・シューター》に向けて発射する。

「なら俺は罠カード《ダーツ・ブラスト》を発動!俺のダーツモンスターを攻撃対象としたモンスター1体を破壊し、そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージをお前に喰らわせてやる!!」

《ロケット・ダーツ・シューター》が反撃のために無数のダーツを《魔装騎士ペイルライダー》に向けて発射する。

「ハハハハ!!敵の動きを読んで先にわなを仕掛けた俺の勝ちだ!!」

「それはどうだろうな?」

「何?」

どこからともなく五芒星が刻まれた丸楯が《魔装騎士ペイルライダー》の前に現れ、すべてのダーツを受け止める。

「い…一体どうなっているんだ!?」

「《ムネシゲ》のペンデュラム効果だ。このカードは俺のペンデュラムモンスターを1ターンに1度破壊から守る」

丸楯が自動的に《魔装剣士ムネシゲ》の手に戻ると、動揺する彼に向けてそのモンスターはシニカルな笑みを浮かべた。

 

魔装剣士ムネシゲ

レベル3 攻撃0 守備2000 地属性 戦士族

【Pスケール青9:赤9】

(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。

(2):1ターンに1度、自分のモンスターゾーンのPモンスター1体を選択して発動する。そのモンスターは1度だけ破壊されない。この効果は相手ターンでも発動できる。

【モンスター効果】

「魔装剣士ムネシゲ」の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードが破壊されたときに発動できる。デッキから「魔装」と名のつくPモンスター1体を手札に加える。

 

ダーツ・ブラスト

通常罠カード

(1):自分フィールド上に表側表示で存在する「ダーツ」モンスター1体が攻撃対象となったときに発動する。攻撃モンスター1体を破壊し、破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。

 

「また計算外なことを!!」

ダーツが尽きた《ロケット・ダーツ・シューター》にマシンガンの銃弾が叩き込まれる。

そして、弾が尽きると腰の光剣を抜き、そのままそのモンスターを切り裂いた。

「うわああああ!!」

 

沢渡

ライフ3650→3350

 

「だ…だが、もうお前にはほかに攻撃できるモンスターはいねえ!こんなの悪あがきにしか…」

「いいや、もう終わりだ。《魔装獣ユニコーン》の効果発動。このカードを装備した魔装騎士が戦闘で相手モンスターの破壊に成功した時、そのモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える」

「え…ええーーーー!?」

沢渡の目に涙が浮かぶ。

「ま…待て待て!!1ターンだけ待ってくれ!!」

「誰が待つかよ!?とどめをさせ、《魔装獣ユニコーン》!」

《魔装獣ユニコーン》は先ほど老いぼれや死にぞこないと馬鹿にされたことを根に持っていたのか、沢渡を思いっきり後ろ足で蹴り飛ばした。

「ギャグァ!!」

蹴り飛ばされた沢渡は思いっきり吹き飛び、上半身がビルにめり込み、そのまま気絶した。

 

沢渡

ライフ3350→0

 

魔装獣ユニコーン

レベル4 攻撃1600 守備800 効果 地属性 獣族

(1):1ターンに1度、自分フィールド上に表側表示で存在する「魔装騎士」モンスター1体を選択して発動できる。このカードは攻撃力800アップの装備カード扱いとしてそのモンスターに装備する。

(2):(1)の効果で装備カード扱いとなったこのカードを装備したモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊して墓地へ送ったとき、そのモンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。

 

魔装槍士タダカツ

レベル5 攻撃2300 守備1600 地属性 戦士族

【Pスケール青2:赤2】

「魔装槍士タダカツ」の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。

(2):自分フィールド上のPモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊した時、発動できる。そのモンスターは続けてもう1度だけ攻撃できる。

【モンスター効果】

(1):このカードは1ターンに1度、戦闘では破壊されない。

 

魔装騎士ペイルライダー

レベル7 攻撃2500 守備2000 闇属性 戦士族

【Pスケール青4:赤4】

「魔装騎士ペイルライダー」の(1)のP効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に表側表示で存在するPモンスターの攻撃宣言時に発動できる。その戦闘で発生する相手への戦闘ダメージは倍になる。

(2):このカードをPゾーンに置いた状態でP召喚に成功した時、相手フィールド上に存在するカードを1枚破壊する。

【モンスター効果】

(1):このカードと戦闘を行った相手モンスターをダメージステップ終了時に破壊する。

 

デュエル終了と同時に、翔太の目の色が元に戻ったが、本人も含めてだれも気付かなかった。

「やったーーー!!翔太君の勝ち!!」

「お…お姉ちゃんちょっと!!」

うれしさのあまり伊織に抱きつかれた子供はかなり顔を赤くする。

デュエルが終わり、ソリッドビジョンが消えても沢渡は気絶したままだった。

「じゃあ、返してもらうぞ」

沢渡のカードケースから《暗黒恐獣》を取り出す。

「さ…沢渡さーん!!」

「お前、よくも沢渡さんを!!」

「覚えていろ!!」

突然デュエルフィールドに入ってきた取り巻き達が沢渡をタンカに乗せ、そそくさとその場から立ち去ってしまった。

 

「ほら、取り返したぞ」

店の外に出た翔太の手で、子供にカードが渡される。

翔太の首には伊織が持ってきてくれたタオルがかけられている。

「お兄ちゃん、ありがとう!」

笑顔でお礼を言うと、子供は迎えに来た両親の元へ走って行った。

「翔太君、アクションデュエル初陣ご苦労様であります!」

「あ…ああ、ありがとう…」

わざとらしい言葉とともに敬礼した伊織を見て、苦笑いする。

「そういえば、やっぱりペンデュラムモンスターは店に置いてなかったな」

「うん。ペンデュラムモンスターもペンデュラム召喚も今まで見たことも聞いたこともなかったし…」

「となったら、直接行って確かめたほうがいいか。遊勝塾へ…」

《魔装騎士ペイルライダー》を手に取る。

(それにしても、どうして俺はペンデュラムモンスターを持っているんだ…?)

 

一方、翔太がペンデュラム召喚を行った直後の別の場所では…。

「社長…」

「入れ」

「はい、失礼します」

灰色の髪で、赤いメガネをつけた、赤いマフラーがトレードマークの長身の少年がいる部屋へ黒髪で、メガネとスーツを身に着けたガッシリとした男が入ってくる。

「どうした、中島」

「社長、再びペンデュラム召喚の反応が確認されました」

「そうか…場所は遊勝塾か?」

「いいえ、それが…」

タブレット端末をだし、中島は召喚反応が出た地点を少年に見せる。

「遊勝塾とは全く異なる地点か。そこに偶然榊遊矢がいたのか、それとも全く別の人物が…。中島、そのデュエルの当事者、もしくは目撃者を見つけろ」

「分かりました、では」

中島が出ていくと、少年は手元のパソコンで再び遊矢とストロング石島のデュエルを見る。

ただし、遊矢がペンデュラム召喚を行った場面だけを。




主人公である翔太が使うのは魔装モンスターで、完全オリジナルです。
ちなみに魔装機神シリーズとは一切関係ありませんのであしからず。
名前は歴史上の偉人や伝説上の生物、武器をモチーフとしています(特別なカード以外は…)。
あと、主人公が使うオリカを募集しますので、思いついた方は是非メッセージに書いてください。


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第3話 伊織のデュエル

「ふう…」

中庭で遊ぶ子供たちを自室の窓から見ながら、翔太はため息をつく。

伊織は学校だ。

部活には入っていないものの、高校生であるため帰ってくるのは午後5時から6時当たりだ。

その間同年代の人物が周りにいないため、翔太はひどく退屈している。

やることとしたら、たまに誘ってくる子供たちと一緒に遊ぶか部屋でデッキを見ることくらいだ。

予定としては、明日実際に遊勝塾へ行くことになっている。

「やっほー、翔太君、みんな!!」

「戻ってきたのか…」

正門の前で手を振る伊織の姿を見て、ほんの少しだけ翔太の口元が緩んだ。

 

「ああ!!火加減が強すぎ!これだけお肉が焦げちゃう!」

「そ、そうか…ごめん…」

若干焦げてしまった牛肉を見て、かなり申し訳ない感じになる。

施設に住み始めてから、翔太は何か手伝いたいと思っていた。

少しでも恩返しをしたいという思いで、洗濯や今のように料理の手伝いを始めたがどうもうまくいかない。

「もういいから、翔太君は生ごみをお願い!」

「分かった…」

伊織がカレー作りをする中、翔太は生ごみを集め、外のごみ箱へ捨てに行く。

(まるで、全然できないな。これだと逆に迷惑をかけているだけだ…)

 

「はあ…」

夕食と風呂を済ませた翔太が再び溜息する。

これで、今日のため息の回数は10を超えた。

どうにも恩返しをしたいという気持ちが空回りしてしまうのだ。

「おーい、翔太君起きてる?」

「ああ、入るか?」

「お邪魔しまーす!」

青いパジャマ姿の伊織が部屋に入ってくる。

その手には自分のデッキとデュエルディスクを持っていた。

「あのさ、ちょっとこのデッキで相談したいことがあるんだけど…」

「相談?」

「そうそう、最近手札事故が多くて困ってるんだ。でも、どう手直ししたらいいかわかんなくて…」

「ふう…。デュエルを教わったばかりの相手に普通相談するか?」

そう言いながら、翔太は伊織のデッキを見る。

「HEROデッキ…?」

「うん。よくは分からないんだけど、施設に来たころから持ってたんだ」

「そういえば、伊織が施設に来たときの話を聞いたことなかったな」

「あんまり話せることがないからね。物心ついた時からここにいたし…。もしかしたら、このデッキは私とお父さんとお母さんを結び付けてくれるたった1つの物かもって…」

「…」

少しだけさびしげな表情になった伊織の額を翔太が指でつつく。

「ひゃっ!!」

「おいおい、そんな暗い表情は似合わないぞ。いつも通り、明るく能天気でいればいいんだよ。きっと、そのことをお前の親が一番願っているはずだからな」

「翔太君…」

「ふう…似合わないこと言ったな。ああ、融合主体なら、もしかしたらこのカードを入れたら…」

(翔太君…ありがとう)

心の中で翔太に礼を言うと、伊織は彼の助言に耳を傾けた。

 

そして、しばらく経ち…。

「ううん…?」

目を覚ますと、伊織は翔太のベッドの中にいた。

「あれあれ?なんで私、翔太君の…」

ベッドから出て、時計を見るとまだ午前4時だ。

改造を終えた伊織のデッキのそばで、翔太は壁を枕にして寝ている。

「そっか、翔太君が私を…。でも、他にもベッドがあるのに…」

デッキをそばに置いてあったデュエルディスクにセットし、翔太のそばに近寄る。

(わあ…翔太君の寝顔、可愛いなあ)

あどけない表情で眠る翔太の頬を面白半分に指でつく。

「おお、柔らかい。ちょっと遊んでみよう」

翔太の両の頬を伸ばす、動かすなどして楽しみ始める。

「お…おい、何が楽しくて寝ている人間を遊ぶんだ?」

「ひゃあ!!」

急に目を覚ました翔太を見て、びっくりする伊織。

「ふああ…まだまだ暗いし、もう少し寝かせてくれ…」

「ま、待ってよ翔太君!私とデュエルしよ!」

「俺と…?」

「そうそう!デュエルしてくれないと、みんなに私と翔太君が同じベッドで寝たって言いふらしちゃうぞー?」

「いや、俺が寝ていたのは…」

「決まりだね?」

「…はあ、分かった」

顔を洗って眠気を覚ますと、翔太と伊織は誰もいない遊戯室へ向かった。

 

遊戯室には絵本やおもちゃなどが置かれている。

また、大きなスペースがあるため、アクションデュエルはできないものの、通常のデュエルはできる。

「手加減は無しだぞ、伊織」

「イエッサー!」

翔太と伊織がデュエルの準備を整える。

「「デュエル!!」」

 

翔太

手札5

ライフ4000

 

伊織

手札5

ライフ4000

 

「俺の先攻、俺はモンスターを裏守備表示で召喚。ターンエンド」

 

翔太

手札5→4

ライフ4000

場 裏守備モンスター1

 

伊織

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「うーん、前のデュエルとは違って少し消極的だなー。まあいっか。私のターン、ドロー!」

 

伊織

手札5→6

 

「いきなり翔太君が言ってたカードが来た!私は手札から《E・HEROブレイズマン》を召喚!」

オレンジ色のアーマーとバイザーのような仮面をつけた炎のヒーローが現れる。

 

E・HEROブレイズマン レベル4 攻撃1200

 

「このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、私はデッキから《融合》を1枚手札に加えるよ!」

いきなり伊織の手札に《融合》が加わる。

これで、彼女は手札に他の素材モンスターがいれば融合召喚ができる状況だ。

「そして、私は手札から魔法カード《融合》を発動!手札の《バブルマン》とフィールドの《ブレイズマン》を融合!」

右腕に水鉄砲、そして背中に2つのタンクをつけている水色のアーマーのヒーローが現れ、《E・HEROブレイズマン》と融合する。

「炎の切り込み隊長よ、水のトリックスターよ、今こそ1つになりて、新たなヒーローに進化せよ!融合召喚!現れて、紅蓮の申し子、《E・HEROノヴァマスター》!!」

炎を模った装飾がいくつもある赤いアーマーと仮面をつけた赤いマントのヒーローが現れる。

 

E・HEROノヴァマスター レベル8 攻撃2600

 

「いきなり攻撃力2600の融合モンスターか…」

「バトル!《ノヴァマスター》で裏守備モンスターを攻撃!バーニング・ナックル!!」

両拳に炎を宿した《E・HEROノヴァマスター》が裏守備モンスターにスピードラッシュを浴びせる。

しかし、いくら攻撃しても手ごたえがない。

「あ…あれれ??」

「裏守備モンスターに対して少し迂闊じゃないか?」

裏守備モンスターの正体は背中に五芒星が刻まれている青いマントをつけた実体のない亡霊だった。

「《魔装霊レブナント》はリバースしたターン戦闘では破壊されない。そして、このカードがリバースされた時、俺はデッキから魔装モンスター1体を手札に加える。俺はデッキから《魔装槍士タダカツ》を手札に加える」

「あーーー!!ずるい!!」

「サーチも戦略の内だろ?それに、《エアーマン》もサーチ効果を持っているぞ」

「あ…そうだった!!」

わざとなのか、天然なのか分からず、翔太の頭が少しだけ痛くなる。

 

魔装霊レブナント レベル2 守備500(チューナー)

 

魔装霊レブナント

レベル2 攻撃600 守備500 チューナー 闇属性 アンデッド族

(1):このカードがリバースした時、デッキから「魔装」モンスター1体を選択して手札に加える。

(2):このカードはリバースしたターン、戦闘では破壊されない。

 

「けど、このままじゃ終わらないよ!私は手札から速攻魔法《ヒーロー・パーシチェイス》を発動!HEROと名のつく融合モンスターの攻撃で相手モンスターを破壊できなかったとき、その相手モンスター1体を破壊して、デッキからレベル4以下のHEROを守備表示で特殊召喚するよ!」

急に《魔装霊レブナント》が消滅し、代わりの伊織のフィールドに2つのファン、青いアーマー、戦闘機の頭部を模した仮面をつけたヒーローが現れる。

 

E・HEROエアーマン レベル4 守備300

 

ヒーロー・パーシチェイス

速攻魔法カード

(1):自分フィールド上に表側表示で存在する「HERO」融合モンスターが攻撃し、攻撃対象とした相手モンスターを破壊できなかったときに発動できる。そのモンスター1体を破壊する。その後、デッキからレベル4以下の「HERO」モンスター1体を表側守備表示で特殊召喚する。

 

「そして、《エアーマン》の効果発動!私はデッキからHEROを1体手札に加えるよ!私はデッキからもう1枚の《ブレイズマン》を手札に加える!」

「2枚目の《ブレイズマン》か…。これでまた《融合》をサーチするのか」

「そーゆーこと!私はカードを2枚伏せてターンエンド!」

 

翔太

手札4→5(うち1枚《魔装槍士タダカツ》)

ライフ4000

場 なし

 

伊織

手札6→1(《E・HEROブレイズマン》)

ライフ4000

場 E・HEROエアーマン レベル4 守備300

  E・HEROノヴァマスター レベル8 攻撃2600

  伏せカード2

 

「俺のターン!」

 

翔太

手札5→6

 

「俺は手札から《魔装陰陽師セイメイ》を召喚」

五芒星が刻まれた扇、そして白い式服を身に着けた黒髪の陰陽師が現れる。

彼の右肩には小さなカバンを背負った小さな白い狐の式神がいる。

 

魔装陰陽師セイメイ レベル3 攻撃1000(チューナー)

 

「チューナーモンスター!?」

「このカードの召喚に成功した時、俺は手札からレベル4以下の魔装モンスター1体を特殊召喚できる。俺は手札から《魔装獣ユニコーン》を特殊召喚」

《魔装陰陽師セイメイ》が指を鳴らすと、《魔装獣ユニコーン》を乗せた巨大な紙の人形が姿を現す。

 

魔装獣ユニコーン レベル4 攻撃1600

 

魔装陰陽師セイメイ

レベル3 攻撃1000 守備1000 チューナー 闇属性 魔法使い族

(1):このカードの召喚に成功した時、手札からレベル4以下の「魔装」モンスター1体を特殊召喚することができる。

(2):このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、相手は他の「魔装」モンスターを攻撃対象とすることができない。

 

「いくぞ!レベル4の《ユニコーン》にレベル3の《セイメイ》をチューニング。黄金の剛腕を持つ漆黒の戦士、その気高き力で道を拓け。シンクロ召喚!現れろ、《魔装剛毅クレイトス》!」

黄金のアームガードを右腕だけに着け、上半身が裸で浅黒い肌をした禿頭の大男が現れる。

五芒星は手甲のあたりに刻まれている。

 

魔装剛毅クレイトス レベル7 攻撃2600

 

「このカードは加減を知らない!常に本気で敵を倒す!」

「けれど、私の《ノヴァマスター》と攻撃力は同じ。倒せるのは《エアーマン》だけだよ!」

「俺は手札から魔法カード《ナイト・ショット》を発動!相手フィールド上にセットされた魔法・罠カード1枚を破壊する」

《ナイト・ショット》から放たれた光線によって伊織の《次元幽閉》が破壊される。

「バトルだ!俺は《クレイトス》で《ノヴァマスター》を攻撃!」

「え…!?相討ち狙い!?」

《魔装剛毅クレイトス》右腕に力をためながら、《E・HEROノヴァマスター》に向けて走り始める。

「《クレイトス》の効果発動!このカードはエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターを攻撃するとき、ダメージ計算終了時まで攻撃力を1000ポイントアップする!」

《魔装剛毅クレイトス》の雄たけびと共に彼の五芒星が光り輝く。

 

魔装剛毅クレイトス レベル7 攻撃2600→3600

 

「こ…攻撃力3600!?」

「ゴールデン・アッパー!!」

《魔装剛毅クレイトス》のアッパーが《E・HEROノヴァマスター》を吹き飛ばした。

「きゃあああ!!」

 

伊織

ライフ4000→3000

 

魔装剛毅クレイトス

レベル7 攻撃2600 守備2000 シンクロ 地属性 戦士族

「魔装」チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

(1):このカードがエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターと戦闘を行う時に発動する。このカードの攻撃力はダメージステップ終了時まで1000ポイントアップする。

 

「なら…私は罠カード《ヒーロー・シグナル》を発動!私のモンスターが戦闘で破壊されて墓地へ送られた時、私は手札・デッキからレベル4以下のE・HERO1体を特殊召喚するよ!私は《フォレストマン》を特殊召喚!」

体の右半分が樹木となっている緑色の原始人が現れる。

 

E・HEROフォレストマン レベル4 守備2000

 

「俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

翔太

手札6→3(うち1枚《魔装槍士タダカツ》)

ライフ4000

場 魔装剛毅クレイトス レベル7 攻撃2600

  伏せカード2

 

伊織

手札1(《E・HEROブレイズマン》)

ライフ3000

場 E・HEROエアーマン レベル4 守備300

  E・HEROフォレストマン レベル4 守備2000

  伏せカード1

 

「うう…《クレイトス》は私のデッキにはきついなあ」

シンクロモンスター、エクシーズモンスター、そして融合モンスター。

いずれもエクストラデッキから特殊召喚するモンスターだ。

伊織のエースカード達も例外ではない。

そんな彼女にとって、《魔装剛毅クレイトス》の効果は致命的だ。

「(あのカードなら!!)私のターン、ドロー!」

 

伊織

手札1→2

 

「来た!!まずは《フォレストマン》の効果発動!私のターンのスタンバイフェイズ時にデッキ・墓地から《融合》を1枚手札に加える。私は墓地の《融合》を回収!」

「ということは、《フォレストマン》を止めなければ毎ターン《融合》がお前の手札に加わるということか」

「そーゆーこと!私は手札から魔法カード《E-エマージェンシー・コール》を発動!デッキからE・HERO1体を手札に加えるよ。私はデッキから《E・HEROバイオマン》を手札に加える!そして、そのまま《バイオマン》を召喚!」

水色のアーマーで、バッタをモチーフとした仮面をつけたヒーローが現れる。

 

E・HEROバイオマン レベル3 攻撃800

 

「このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、私はデッキ・墓地から融合、もしくはフュージョンと名のつく魔法カードを手札に加えるよ!私はデッキから《ミラクル・フュージョン》を手札に加える!さらに、このカードをリリースすることで、デッキから《マスク・チェンジ》1枚を手札に加えることができる!」

《E・HEROバイオマン》がゲル状の液体になって姿を消した。

そして、伊織の手には《ミラクル・フュージョン》と《マスク・チェンジ》が手札に加わる。

 

E・HEROバイオマン

レベル3 攻撃800 守備800 効果 水属性 戦士族

「E・HEROバイオマン」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか発動できず、(2)の効果を発動したターン、自分は融合召喚または「マスク・チェンジ」以外の方法でモンスターの反転召喚・特殊召喚は行えない。

(1):このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから「フュージョン」魔法カードまたは「融合」魔法カード1枚を手札に加える。

(2):このカードをリリースすることで発動できる。デッキから「マスク・チェンジ」1枚を手札に加える。

 

「そして、私は《フォレストマン》の効果で手札に加えた《融合》を発動!その効果で私は手札の《ブレイズマン》とフィールドの《フォレストマン》を融合!炎の切り込み隊長よ、大木の番兵よ、今こそ1つになりて、新たなヒーローに進化せよ!融合召喚!現れて、すべてを貫く大地の力、《E・HEROガイア》!!」

漆黒のアーマーを着用している巨大なヒーローが姿を現す。

 

E・HEROガイア レベル6 攻撃2200

 

「《ガイア》の融合召喚に成功した時、相手モンスター1体の攻撃力を半分にして、エンドフェイズまで減らした分の攻撃力を得るよ!」

 

E・HEROガイア レベル6 攻撃2200→3500

魔装剛毅クレイトス レベル7 攻撃2600→1300

 

「《クレイトス》の攻撃力が!?」

「まだ終わらないよ!私は手札から魔法カード《ミラクル・フュージョン》を発動!私のフィールド・墓地に存在するモンスターを除外し、新しいE・HEROに融合するよ!」

「2度目の融合!?」

「私は墓地の《バイオマン》と《ノヴァマスター》を融合!水の戦士よ、紅蓮の申し子よ、次元の彼方で1つとなり、新たなヒーローに進化せよ!融合召喚!現れて、永久凍土の申し子、《E・HEROアブソルートZero》!!」

解けない氷でできたアーマーと白いマントを装備した白銀のヒーローが現れる。

彼が着地すると、その周囲が凍って行った。

 

E・HEROアブソルートZero レベル8 攻撃2500

 

「まだまだ!!さらに手札から魔法カード《マスク・チェンジ》を発動!私のフィールドのHEROをM・HEROに変身させるよ!」

「何!?」

「私は《アブソルートZero》を変身させるよ!永久凍土の申し子よ、今こそ酸の力を宿し、新たなヒーローに進化せよ!変身召喚!《M・HEROアシッド》!!」

雪の結晶のような飾りがある仮面をつけると、《E・HEROアブソルートZero》のアーマーが砕け散り、更に細身な青いアーマーをつけたヒーローに変化する。

そして、右手には小型の水鉄砲が新たに装備された。

 

M・HEROアシッド レベル8 攻撃2600

 

「せっかく融合召喚した《アブソルートZero》を変身させただと!?」

しかし、翔太はまだ気づいていなかった。

これはHEROデッキ必殺コンボの発動トリガーだということを。

「私は《アシッド》と《アブソルートZero》の効果を発動!《アシッド》は特殊召喚に成功した時、相手の魔法・罠カードをすべて破壊し、相手モンスターの攻撃力を300ポイントダウンさせるよ!そして、《アブソルートZero》がフィールドから離れたとき、相手モンスターをすべて破壊するよ!」

「何!?」

「いっけーーー!酸の氷河!!」

翔太のフィールドに強い酸がこもった氷塊が大量に落下する。

氷塊を受けた《魔装剛毅クレイトス》と2枚の伏せカードが破壊されていった。

 

破壊された魔法・罠カード

・攻撃の無力化

・エクストラ・ミラージュ

 

「これが…伊織のデュエル…」

この2ターンで伊織のフィールドに2体の融合モンスターが現れ、翔太の場のカードが一掃された。

このまま2体の直接攻撃を受けたら、翔太の負けとなる。

「これで決まり!《E・HEROアシッド》でダイレクトアタック!Acid bullet!」

《E・HEROアシッド》の銃から強い酸がこもった弾丸が発射される。

「甘いぞ伊織!俺は墓地から罠カード《エクストラ・ミラージュ》を発動!」

「墓地から罠カード!?」

弾丸は確かに翔太を貫いた。

しかし、貫かれた翔太の姿が白い霧となり、その隣に翔太の姿が見える。

「このカードは墓地から除外することで、このターン相手がエクストラデッキから特殊召喚したモンスターの数だけ攻撃を無効にする!」

「あうう…これじゃあ攻撃できない。じゃあ、私はこれでターンエンド」

 

エクストラ・ミラージュ

通常罠カード

「エクストラ・ミラージュ」の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できず、(1)の効果を発動したターン、発動できない。

(1):相手フィールド上のエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターの攻撃宣言時に発動できる。その攻撃を無効にし、デッキからカードを1枚ドローする。

(2):相手フィールド上のエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターの攻撃宣言時、墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。このターン、相手がエクストラデッキから特殊召喚したモンスターの数だけ相手モンスターの攻撃を無効にする。

 

翔太

手札3(うち1枚《魔装槍士タダカツ》)

ライフ4000

場 なし

 

伊織

手札2→0

ライフ3000

場 E・HEROエアーマン レベル4 守備300

  E・HEROガイア レベル6 攻撃3500→2200

  M・HEROアシッド レベル8 攻撃2600

 

「俺のターン!」

 

翔太

手札3→4

 

ドローしたカードを少し見ると、再び伊織に目を向ける。

「伊織、このターンで終わらせるぞ」

「へっ?」

「相手フィールド上にのみモンスターが存在するとき、このカードはリリースなしで召喚できる。《魔装近衛エモンフ》を召喚!」

穂先に五芒星が刻まれている槍、そして古墳時代の豪族が装備するような鎧を装備した髭面の男が現れる。

 

魔装近衛エモンフ レベル5 攻撃1000

 

「このカードをエクシーズ素材とするとき、他のエクシーズ素材は手札の魔装モンスターでなければならない。俺はレベル5の《エモンフ》と手札の《タダカツ》でオーバーレイ」

「まさか…エクシーズ召喚!?」

「万物を測りし漆黒の騎士よ、むさぼりし者たちに飢餓をもたらせ!エクシーズ召喚!!現れろ、《魔装騎士ブラックライダー》!!」

漆黒のローブをまとい、右手には黒い天秤を持つ騎士が姿を現す。

左腰にはレイピアがさしており、顔が骸骨を模した仮面で隠されている。

その額部分には五芒星が刻まれている。

 

魔装騎士ブラックライダー ランク5 攻撃2800

 

魔装近衛エモンフ

レベル5 攻撃1000 守備2000 効果 地属性 戦士族

(1):相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しないとき、このカードはリリースなしで召喚できる。

(2):このカードをエクシーズ素材とする場合、他のエクシーズ素材は手札の「魔装」モンスターを選択しなければならない。

 

「あ…あれ!?翔太君」

「??俺の顔に何かついてるのか?」

「ううん。翔太君、鏡を見て!!」

パジャマのポケットから出した手鏡に翔太の顔を映す。

彼の紫色だった眼が黒に染まっていた。

「眼の色が変わった!?」

「もしかしたら、このカードのせいかも」

《魔装騎士ブラックライダー》をじっと見つめる。

「(《ブラックライダー》…もしかして、このカードが俺の記憶の…)伊織、このことはデュエルが終わってから考えよう。俺は手札から《魔装槍士ロンギヌス》を特殊召喚。このカードは俺のフィールドに魔装騎士が存在するとき、手札から特殊召喚できる」

穂先が赤く染まった槍を持ち、古代ローマ帝国軍の鎧を着た男が現れる。

彼の両目は赤い布で隠されていて、その布の中央には五芒星が刻まれている。

 

魔装槍士ロンギヌス レベル3 攻撃800

 

「そして、《ブラックライダー》の効果発動。メインフェイズ1にオーバーレイユニットを2つ取り除くことで、このターン、相手フィールド上のすべてのモンスターに攻撃できる」

天秤に2つのオーバーレイユニットが宿り、《魔装騎士ブラックライダー》の周囲に黒い隕石が3つあらわれる。

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・魔装槍士タダカツ

・魔装近衛エモンフ

 

魔装騎士ブラックライダー

ランク5 攻撃2800 守備2000 エクシーズ 闇属性 戦士族

「魔装」レベル5モンスター×2

(1):自分のターンのメインフェイズ1に、このカードのX素材を2つ取り除くことで発動できる。このターン、このカードは相手フィールド上に存在するすべてのモンスターに1回ずつ攻撃することができる。

 

「ええっ!?」

「バトルだ。俺は《ブラックライダー》で《エアーマン》を攻撃!ブラック・リブラ・メテオ」

《魔装騎士ブラックライダー》の天秤が動くと、それに合わせて隕石の1つが《E・HEROエアーマン》に向けて降ってくる。

「更に《ロンギヌス》の効果発動」

《魔装槍士ロンギヌス》はその場に座り込み、槍を天に掲げる。

「俺の魔装騎士が守備モンスターを攻撃するとき、貫通効果を与える」

「え…ええーーー!?」

《E・HEROエアーマン》に向けた隕石が巨大な鏃のようなものに変化する。

そして、そのまま《E・HEROエアーマン》を貫き、伊織に襲う。

「きゅあああ!!」

 

魔装騎士ブラックライダー ランク5 攻撃2800

 

伊織

ライフ3000→500

 

更に、伊織に追い打ちをかけるように残り2つの隕石が伊織のモンスターを撃破していく。

「あーあ…負けちゃった」

 

伊織

ライフ500→300→0

 

魔装槍士ロンギヌス

レベル3 攻撃800 守備0 光属性 戦士族

「魔装騎士ロンギヌス」はモンスターゾーンまたはペンデュラムゾーンに1枚しか存在できない。

【Pスケール青3:赤3】

(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。

(2):1ターンに1度、自分フィールド上に表側表示で存在するPモンスターが相手の守備モンスターを攻撃した時に発動できる。その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

【モンスター効果】

(1):このカードは自分フィールド上に「魔装騎士」モンスターが表側表示で存在するとき、手札から特殊召喚できる。

(2):自分フィールド上に表側表示で存在する「魔装騎士」モンスターが相手の守備表示モンスターを攻撃するとき、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

 

「すう…はあ…」

デュエルが終わり、ゆっくりと深呼吸をする。

「あーあ、負けちゃった。なんだか落ち込むなー」

がっかりした様子で座り込み、チラっと翔太を見る。

「伊織はすごいな、一歩間違っていたら俺が負けていた」

座っている伊織に手を差し出すと、一瞬で彼女が笑顔に戻り、手を握って立ち上がる。

「そうでしょそうでしょ?次は絶対負けな…あれ?」

「どうしたんだ?」

「翔太君の目が元に戻ってる」

ぐいっと伊織が顔を近づけ、目をじっと見る。

翔太の目は彼女の言うとおり、何事もなかったかのように元に戻っている。

「おっかしいなー、さっきまで黒だったのに」

「ふああ…おはよー、伊織おね…」

「あ…」

オレンジ色の髪で、鉢巻をつけた小学生が入り口前で固まっている

「い…伊織、後ろ…」

「うん?」

可愛らしく首をかしげ、後ろを向く。

「え…あぁ!!た…太一君…??」

全てを悟ると、伊織は顔を真っ赤にしながらその場に座り込んでしまい、太一は何も言わずに部屋へ戻って行った。

「伊織…大丈夫か?」

「あうう…私、お嫁にいけないよー」

今の翔太には彼女への慰めの言葉を見つけることができなかった。



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第4話 ペンデュラム合戦 翔太VS遊矢

「はあーーーー…」

「伊織、過ぎたことだろう。もう元気を出せよ」

「見られた…見られた…」

落ち込んだ伊織に案内される形で翔太は遊勝塾へ向かっている。

自分以外にペンデュラム召喚を使う唯一の人物、榊遊矢に会うために。

「翔太君は分かってないんだよ…。女の子のハートってすっごくデリケートなんだよ…」

「ふう…ポテトチップス食べるか?」

「ポテトチップス!?うん、食べる!!」

(施設長の言うとおりだな…。大好きな菓子を食べると機嫌がよくなる)

どこから持ち出したのか、箸でポテトチップスをとても幸せそうに食べる伊織を見つつ、翔太は水筒の水を口に含んだ。

 

「ここが遊勝塾…」

「うん。元デュエルチャンピオンでアクションデュエルのパイオニア、榊遊勝が作ったデュエル塾なの」

翔太は正直に言うと、拍子抜けしている。

今の塾長は榊遊勝の後輩で元プロデュエリストの柊修造だということはすでに伊織から教えてもらっていたが。

多くのデュエル塾が大通りにあるのに対し、その塾があるのは川沿いの小道。

そして、規模もそれほど大きくない。

(ここが遊勝塾なのか…?)

「じゃあ、さっそく中に入ろ!」

「ああ…」

伊織に手を引かれ、遊勝塾の中に入る。

「ごめんくださーーい!」

「は…はい。どちら様でしょうか?」

伊織の大声を聞いた少女が近づいてくる。

ピンク色の髪と青い2つの髪飾り、髪と同じ色のノースリーブな制服を着用していて、腕には宝石が付いたブレスレッドがある。

年齢は伊織よりも2つくらいしただろう。

「私は永瀬伊織。で、今私の後ろにいる男の子が…」

「秋山翔太だ」

秋山は翔太が戸籍発行の際に自分でつけた便宜上の苗字で、特に意味はない。

「翔太さんと伊織さんですね。あたしは柊柚子、この塾の見学に来たんですか?でも、今お父さんは留守で…」

「ううん、私たちは…」

「榊遊矢に会いたい」

伊織が言う前に、翔太が単刀直入に伝える。

「遊矢に…?」

「ああ。このカードについてだ」

デッキから《魔装騎士ペイルライダー》を柚子に見せると、彼女の目が大きく開く。

「これは…ペンデュラムモンスター!?」

「そうだ。榊遊矢に聞いて確かめたいことがある」

「…。分かりました。呼んで来ます」

カードを手にしたまま、柚子は足早に休憩室へ向かう。

(ここで分かるのか…?俺のことが…)

「なんで…?なんであんたがペンデュラムモンスターを!!?」

休憩室からかなり動揺している遊矢が飛び出してくる。

その手には柚子から受け取った翔太のペンデュラムモンスターが握られていた。

「答えてくれ!!なんであんたが…」

「お前が榊遊矢か…。実は、俺にも分からない。少なくとも、俺のペンデュラムモンスターはすべてお前とストロング石島のデュエルを見る前からあった」

「そ…そんな…」

多大なショックを受け、遊矢の膝が折れる。

「え…ええっと、遊矢君。ちょっといい?」

蚊帳の外になっていた伊織がようやく声を上げる。

「え…?」

「なんで遊矢君はペンデュラムモンスターを手に入れたの?」

「そ…それは…」

遊矢はペンデュラムモンスターを手にした経緯を述べた。

ストロング石島とのデュエルで窮地に陥った次の自分のターンのドローフェイズ時に首にぶら下げている水色の不思議な鉱石でできたペンデュラムが光った。

そして、その光によって遊矢が所持していたモンスターの一部がペンデュラムモンスターに変わってしまった。

また、ペンデュラムは幼いころに遊勝からもらったもので、彼がどこから手に入れたのかは遊矢自身も分からない。

「なら、ペンデュラムモンスターについてはお前もよくわからないということか…?」

「ああ。残念だけど…」

「なら、残るはお前にそれを託した榊遊勝か…」

遊矢の口調から、彼もペンデュラムモンスターのことだけでなく翔太自身の過去も知らないと理解した翔太にとっての残る手段は榊遊勝に会うことだった。

しかし、榊遊勝はストロング石島とのチャンピオンの座を賭けたデュエルの前に行方不明となっている。

こうなっては、手詰まりとしか言いようがない。

「くそ…!」

「…。あ、いい手があるよ!翔太君と遊矢君がデュエルをするのは??」

「俺とあいつで…」

「デュエル?」

「うん!ペンデュラムモンスター使い同士のデュエルなら、もしかしたら翔太君の記憶が戻るかもしれないし!」

「…。そうだな。駄目元でやるか」

伊織の提案には確証がない。

しかし、なすすべのない今の翔太にはそうするしかなかった。

「榊遊矢、デュエルしてくれるな?」

「ま…まあ、せっかくうちの塾に来てくれたし、それにあんたのデッキにも興味があるからな。あと、俺のことは遊矢って呼んでくれ」

「助かる、遊矢。なら、俺のことは翔太でいい」

 

翔太と遊矢がデュエルフィールドに出て、伊織と柚子がコントロールルームへ向かう。

フィールドは前に翔太がデュエルをしたカード屋のそれとは変わらない。

「柚子---!!早くフィールドを用意してくれよーー!」

「分かってるわよ!そんなに急かさないで、遊矢!」

「ねえ、柚子ちゃん。質問なんだけど…」

「…?なんですか?」

「遊矢君と柚子ちゃんって…恋人同士?」

「ぶっ…!?そ…そんなわけないじゃないですか!!?」

顔を真っ赤にしながら必死に否定する柚子。

「えーーー?残念」

「ざ、残念って…。はあ…。じゃあ改めて…フィールド魔法《ルネッサンスシティ》発動!!」

デュエルフィールドがソリッドビジョンにより、ルネッサンス期のフィレンツェをモチーフとした都市の一部に変化していく。

ルネッサンス期、それはイタリアでギリシャ・ローマの文化再興の運動が行われ、文化が大きく開花した時代。

ペンデュラム召喚という新たな召喚方法を持つ2人がぶつかり合うにはふさわしいフィールドだろう。

そして、伊織と柚子がデュエル開始の宣言を行う。

「戦いの殿堂に集いしデュエリストたちが」

「モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い」

「フィールド内を駆け巡る!」

「見よ、これぞ、デュエルの最強進化形、アクション…」

「「デュエル!!」」

 

遊矢

手札5

ライフ4000

 

翔太

手札5

ライフ4000

 

「俺の先攻、俺は《EMディスカバー・ヒッポ》を召喚!」

蝶ネクタイとシルクハット、タキシードと星形のペイントが特徴的なピンク色のカバが現れる。

 

EMディスカバー・ヒッポ レベル3 攻撃800

 

「攻撃力800のモンスターを攻撃表示?何か策があるのか?」

「ご名答!このカードは召喚したターン、通常召喚に加えてもう1度だけ俺は手札からレベル7以上のモンスターをアドバンス召喚できる。俺は《ディスカバー・ヒッポ》をリリースし、《EMカモンキー》をアドバンス召喚!」

《EMディスカバー・ヒッポ》がシルクハットを外し、気取ったお辞儀でフィールドを後にする。

そして、屋根から屋根へと飛び移りながら虹色の星が体の各部分にペイントされた小猿が現れる。

 

EMカモンキー レベル7 攻撃2000

 

「あ…あれ??レベル7以上のモンスターのアドバンス召喚には2体のリリースが必要なはずじゃ…」

「《EMカモンキー》はEM1体のリリースでアドバンス召喚できる特殊なモンスター。そして、このカードは1ターンに1度、俺のモンスターたちの攻撃を放棄する代わりにデッキから魔術師と名のつくペンデュラムモンスター1体をペンデュラムゾーンに置くことができる。俺はデッキから《時読みの魔術師》をペンデュラムゾーンに置く!」

どこからかサングラスを取り出した《EMカモンキー》は《ルネッサンスシティ》で一番大きい教会へ向かい、鐘を鳴らす。

すると、その音を聴きつけた《時読みの魔術師》が《EMカモンキー》をにらめつけた後、遊矢の左側で浮遊する。

 

EMカモンキー

レベル7 攻撃2000 守備2000 効果 光属性 獣族

(1):このカードは特殊召喚できない。

(2):このカードは自分フィールド上の「EM」モンスター1体をリリースすることでもアドバンス召喚できる。

(3):1ターンに1度、自分のターンのメインフェイズ1にのみ発動できる。自分のデッキから「魔術師」Pモンスター1体を選択し、自分フィールド上のPゾーンに置く。この効果は両方のPゾーンにカードがあるとき発動できず、発動したターン自分のモンスターは攻撃できない。

 

「更に、俺は手札から《星読みの魔術師》を発動!」

続けて遊矢の右側に《星読みの魔術師》が現れ、浮遊を始める。

「これで、俺はレベル2から7までのモンスターを同時に召喚可能!」

「ワオ!!いきなりペンデュラム召喚!すごいね、遊矢君は」

「当然ですよ。遊矢は必死になってペンデュラム召喚をマスターしたんですから」

「あーそうだ、柚子ちゃん。これからは敬語なし、さん付けなしでお願いね。なんだかよそよそしいし…」

「え…?わ…分かったわ、伊織」

「うん、よろしい!翔太くーーん!君のペンデュラム召喚も見せてよー!」

強化ガラス越しに伊織の声が翔太の耳に届く。

(伊織…今は遊矢のターンだぞ?)

「揺れろ!魂のペンデュラム!天空に描け光のアーク!ペンデュラム召喚!! 現れろ、俺のモンスター、《EMソード・フィッシュ》!《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!!」

 

EMソード・フィッシュ レベル2 攻撃600

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

「う…いきなり《ソード・フィッシュ》か…」

《EMソード・フィッシュ》の登場に翔太は露骨に嫌な顔をする。

このモンスターは自身が現れたときだけでなく、コントローラーがモンスターを特殊召喚する度に相手モンスターの攻撃力・守備力を600奪っていく。

ペンデュラム召喚主体の遊矢のデッキにとってはありがたい存在で、事実として翔太はモンスターとして現れた《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》よりも《EMソード・フィッシュ》を先につぶしたいと考えている。

「俺はこれでターンエンド!」

ターン終了宣言と同時に遊矢は《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》の背に乗り、アクションカードを探しはじめた。

 

遊矢

手札5→0

ライフ4000

場 オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500

  EMカモンキー レベル7 攻撃2000

  EMソード・フィッシュ レベル2 攻撃600

  星読みの魔術師(青) ペンデュラムスケール1

  時読みの魔術師(赤) ペンデュラムスケール8

 

翔太

手札5

ライフ4000

 

「アクションカード…どこにある」

自分の手札を確認すると、周囲を見渡しながら翔太も探し始める。

カードを口に咥え、屋台を踏み台にし、窓やわずかな建物のでっぱりやへこみを利用して屋根の上に到達する。

「俺のターン!」

 

翔太

手札5→6

 

「俺はスケール2の《魔装槍士タダカツ》とスケール9の《魔装剣士ムネシゲ》でペンデュラムスケールをセッティング」

「出た!!翔太君のペンデュラムモンスター!」

「あれが…翔太さんの…」

翔太の左右に2体のペンデュラムモンスターが現れる。

「これで俺はレベル3から8のモンスターを同時召喚可能。来たれ、時の果てに眠りし英雄の魂。希望の道を照らし、勝鬨を上げろ!ペンデュラム召喚!!現れろ、俺のモンスターたち!!《魔装銃士マゴイチ》!《魔装鮫サッチ》!《魔装騎士ペイルライダー》!」

 

魔装銃士マゴイチ レベル4 攻撃1600

魔装鮫サッチ レベル4 攻撃1400

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

 

ペンデュラム召喚成功と同時に、翔太の目が青白くなる。

「お、おい!?翔太の目の色が変わってるぞ!」

「分かっている。これについても俺にはよくわからない。《魔装鮫サッチ》の効果発動。このカードがいる限り、俺の魔装モンスターの攻撃力は400ポイントアップする」

 

魔装銃士マゴイチ レベル4 攻撃1600→2000

魔装鮫サッチ レベル4 攻撃1400→1800

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500→2900

 

「《ペイルライダー》の攻撃力が《オッドアイズ》を上回ったわ!」

「バトル。《ペイルライダー》で《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を攻撃。クアトロ・デスブレイク」

《魔装騎士ペイルライダー》の五芒星が光ると、彼が赤いオーラに包まれ、猛スピードで《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》に向けて突っ込む。

「急げ、《オッドアイズ》!!」

遊矢の命令を受け、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が走るスピードを上げる。

そして、煙突の上にあるアクションカードを発見した。

「頼むぞ、アクションカード!!」

《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が高く飛び、遊矢はそのアクションカードを手にする。

「よし、アクション魔法《論争》を発動!俺のモンスターが戦闘を行う時、そのモンスターの攻撃力を戦闘を行う相手モンスターと同じにする!」

《論争》の力を受けた《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が反転し、《魔装騎士ペイルライダー》に突進する。

それを視認した《魔装騎士ペイルライダー》は真剣勝負を望んでいるのか、手にしているマシンガンを捨て、2本の光剣を抜く。

 

論争

アクション魔法カード

(1):自分のモンスターが相手モンスターと戦闘を行う時に発動できる。そのモンスターの攻撃力を戦闘を行う相手モンスター1体と同じにする。

 

「迎え撃て、《オッドアイズ》!!」

「斬れ、《ペイルライダー》!!」

《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》の牙と《魔装騎士ペイルライダー》の光剣がぶつかり合う。

すると、2体の間から不思議な波紋が発生し、道路や建物にひびを入れながら遊矢と翔太を襲う。

「こ…これは…!?」

「《オッドアイズ》と…」

「《ペイルライダー》が…」

「「共鳴している!?」」

波紋はいつまでも消えず、本来なら相内となって消滅するはずの2体のモンスターもいつまでたっても消滅しない。

「なぜ…《オッドアイズ》と《ペイルライダー》が…!?」

突然、翔太荷凄まじい頭痛が襲い掛かる。

「ぐ…う…うわああ!!」

「翔太君!?一体どうしたの!?」

「まさか、これが原因!?柚子!ソリッドビジョンを消してくれ!!」

「分かったわ!!」

遊矢の言葉を聞いた柚子は大急ぎで緊急停止スイッチを押した。

《ルネッサンス・シティ》と両者のモンスターは消滅し、共鳴は止まった。

しかし、頭痛によって翔太は気を失ってしまった。

 

「こ…ここは…?」

目を開くと、そこは何もない闇。

どこを向いても、どこを歩いても闇が広がるばかり。

何も言わず、歩き回っていると翔太の目の前に1枚のカードが現れる。

「《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》…」

なぜそのカードがあるのかわからなかったが、無意識にそのカードを手に取る。

すると、それから不思議な光が放たれ、翔太の体に取り込まれていく。

「四騎士が…鍵となるモンスターと戦えば、記憶が…」

 

「う…ん…」

休憩室のソファの上で翔太が目を覚ます。

「翔太君!大丈夫?熱はない??」

伊織が心配そうにしながら近づき、額を当てる。

「うん!熱はないみたい、良かったよかった!」

「い…伊織…」

伊織の大胆な行動で、翔太の顔が赤くなる。

彼女のかわいらしい顔が間近に迫り、更に自分が少しでも動いたら唇が重なっていた。

「翔太!!大丈夫か!?」

「遊矢…」

「一体どうしたんだよ?俺とお前のモンスターの共鳴が原因なのか!?」

「おそらくな…。そして、あの共鳴が教えてくれた。鍵となるモンスターと俺の四騎士が戦えば記憶がよみがえると…」

4体の魔装騎士を手に取る。

《魔装騎士ホワイトライダー》、《魔装騎士レッドライダー》、《魔装騎士ブラックライダー》、そして《魔装騎士ペイルライダー》。

それぞれ召喚方法も効果も能力値も異なるカード。

(俺の記憶を呼び覚ます四騎士…か…)

「あ、そうだ翔太君!柚子ちゃんが遊勝塾に入るかって言ってたよ!」

「塾に入る…?」

「もしよかったらでいいの。実をいうと、あなたと伊織が持っている特殊な召喚方法が気になって…」

「融合召喚とかのことか?」

「ええ。あたし達、アドバンス召喚以外に強力なモンスターを呼び出す方法がわからなくて…」

「えーーー!?融合召喚がわからないの!?」

今まで普通のことのように融合召喚を使っていた伊織がかなりびっくりしている。

「ええ…。最近入ってきた子も融合召喚を使っているけど、なかなか教えてくれなくて…。良かったら…」

「いいよ」

「え…?」

「教えてあげる!私の融合も、翔太君のシンクロとエクシーズも!」

ニコニコ笑い、即座に承諾する。

「ね、翔太君。いいでしょ?」

「まあ…俺は構わないけど」

「ありがとう、翔太さん、伊織!じゃあ、お父さんが帰ってくるまで待っていて!!」

「よーし、新しい仲間ができたってことで、さっそくアイスを…」

冷凍庫へ行こうとした遊矢にどこから取り出したのか、柚子のハリセンツッコミが炸裂する。

ハリセンを受けた遊矢はそのまま気を失ってしまった。

「遊矢君、大丈夫かな?」

「大丈夫だろう。死にはしない(鍵となるモンスター…。ペンデュラムモンスターのことなのか…?)」

その後、翔太と伊織は修造に会い、正式に遊勝塾の塾生となった。




ペンデュラム合戦と言っておきながら、デュエル中断ということになってしまいました(笑)。
さて、まだデュエルで活躍していない残り2体の騎士はどのような力を持っているのか、楽しみにしていてくださいね…と言いたいところですがまだ効果が決まっていません。
こういう効果がいいなと思った人は是非メッセージで送ってください。


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第5話 LDS襲来

魔装モンスターに関する真澄のセリフを変更しました。(2014年9月8日)


「よーし、じゃあまずは基本的な召喚方法の授業を始めよう。タツヤ、レベル5以上のモンスターの召喚は分かるな?」

今、授業を行っている赤いジャケットとオレンジ色の髪の壮年男性が柊修造だ。

そして、青い髪でカジュアルな服装の少年が起立して質問に答える。

「はい。レベル5から6までのモンスターは自分フィールドのモンスター1体のリリースが必要で、レベル7以上は2体のリリースが必要です」

「よし!よく復習してきたな…っておい!どうしたんだみんな!!」

タツヤの隣で授業を受けている黄色い髪でカバのペイントがある服を着た小太りな少年、フトシと赤い髪で白のシャツと赤とピンクのストライプが特徴の服を重ね着した少女、アユがつまらなそうな表情になっている。

「だって、同じ授業でつまらねーし…」

「そんなの知ってるしー」

そして、水色の髪で青い服を着た少年に限っては授業を全く聞いていない。

彼は紫雲院素良で、年齢はおそらく遊矢とタツヤの間くらいで、最近入ってきたばかりだ。

実力は遊矢に匹敵していて、伊織と同じ融合召喚使いだ。

「僕はバニラアイスとカスタードプリンで融合召喚ー」

「おい、不味いって…」

「不味くないよ、おいしいよー」

そして、伊織に限っては…。

「zzz…」

眠っている。

更に、柚子は腑抜けた感じになっている。

(一体、どうなっているんだ?)

翔太と伊織が遊勝塾に入ってから1週間が経過した。

あのデュエル以来記憶はまだ戻っていないが、遊矢たちとは仲良くなった。

柚子がこのような感じになったのは昨日からだ。

沢渡が遊矢への報復をたくらんでいたのを彼女は1人で止めようとした。

ちなみに、沢渡は翔太に負けた後、ペンデュラムモンスターを手に入れようとしていて、遊矢からそれを奪おうとした。

しかし、デュエル中に取り戻され、挙句の果てには敗北という屈辱を味わったようだ。

遊矢が助けに来たときはすでに事態は収束していて、残ったのは沢渡とその取り巻きの隠れ家であった倉庫の焼け焦げた跡と腑抜けた柚子だけだった。

「お父さん!エクシーズって?」

「え…?」

急に飛び出した柚子の質問に修造が驚く。

そんな中、ドーナッツを食べている素良が何か知っていそうな目で柚子を見るが、誰にも気づかなかった。

「ウチで…エクシーズ召喚を教えたこと、ないわよね…?」

「そ…そりゃあないよ。やったことのないものは教えられんし。それに、LDSも最近教え始めたばかりで、その召喚に関しては翔太がよく知っているだろう?」

「ううん…ちょっと…」

柚子の目に遊矢が入ると、急に別の怖いものが見えたような感じで怯え始める。

「え…何?」

「い…いえ、なんでも…」

「闇討ちだとーーー!?遊矢がそんな卑怯な真似をするわけがない!!」

外から大声が聞こえる。

「闇討ち?」

「ふぇ!?」

変な声を出しながら伊織が目を覚ます。

「権現坂!?」

「権現坂?だれだ、そいつは?」

「権現坂君はうちのライバルである権現坂道場の跡取り息子だ。一体どうしたというんだ?」

翔太たちは真相を確かめるため、外へ飛び出した。

 

外ではリーゼント頭で白い学ランと赤い鉢巻、金属製の下駄をつけた、生まれる時代を間違えたような大男が見覚えのある3人組と言い争っている。

おそらく、その男が修造が言っていた権現坂のようだ。

「どうした!?」

「おお、塾長!この男、権現坂、足腰鍛錬のためランニング中、遊勝塾を除く怪しい3人の男に気付き、問い詰めたところ、夕べ遊矢が闇討ちを仕掛けたとけしからんことを」

「闇討ち!?」

「俺が…!?」

修造と遊矢が驚く中、翔太が前に出る。

「よお、また会ったな」

「この前はよくも沢渡さんを…!!」

「沢渡…?誰だそいつは。そしてお前たちも誰だ?」

「翔太君忘れたの!?前にカード屋でデュエルをした…」

「ああ、あいつらか。悪い、あまりにも印象に残らなかったからな」

「と…とにかく沢渡さんは榊遊矢に闇討ちされた!」

「証人は4人、いや…5人だ!」

翔太からの屈辱的な言葉を何とかスルーし、本題に戻す。

「もう1人の証人…?」

「沢渡さんと俺たち、そしてそいつだ!」

取り巻き達が柚子を指さす。

「だよねー?柊柚子ちゃーん?」

「そうなのか、柚子!?」

「見たって…一体何を!?」

「犯人の顔だよ!次期市長の息子、沢渡シンゴを襲った榊遊矢の顔を!!」

「ええ…!?」

遊矢が戸惑う中、素良達が前に出る。

「嘘を言うな!!」

「遊矢兄ちゃんがそんなことをするはずがない!」

「襲おうとしたのは沢渡の方よ!そして、柚子お姉ちゃんはそれを止めるために…」

「ちょ…ちょっと待て!デュエルをしたのは遊矢じゃなくて、柚子!?」

「そう、その相手は沢渡!」

「塾長、ちょっと静かにしてくれ」

ため息をつきながら、翔太が前に出る。

「翔太君…」

「ええっと、名前は…どうでもいいか。ろくでなしだってことは分かっているし」

「お前、また俺たちと沢渡さんを馬鹿にして!!」

「こんな幼い女の子にまで呼び捨てにされるんだ。否定できないだろ?それと、ろくでなしが襲われた時間帯は俺たちは遊矢と一緒に塾にいた。そんな彼がどうしてろくでなしを襲えるんだ?ぜひ、教えてくれないか?」

「そ…それは…」

「それと柚子。君がそこで何を見たのかはっきり教えてくれないか?そうやって黙っているからややこしくなる」

「…」

翔太の言葉を受けて、柚子は沈黙した。

「まあ、お前たちが説明できないということは証拠不十分。謝罪や補償がほしいなら真犯人を見つけて、そいつに言え」

「ああーーー!!何が何だか、最初から説明してくれーーー!!」

完全に乗り遅れた修造の言葉に一同は絶句する。

「説明は…私からさせていただきます」

黒い高級車の中から紫の髪で豪華な装飾品、そして紫色の高級スーツを着た女性が出てくる。

「これは…自分の家に土足で入られた気分だな」

「あ…あなたはLDSの…」

「理事長を務めている、赤馬日美香と申します」

 

取り巻き達が去り、遊矢たちは休憩室で日美香から話を聞く。

「彼らが話していたことはすべて真実です。我がLDSの生徒である沢渡シンゴが襲撃されたことも、そして犯人は遊勝塾に所属している榊遊矢であることも、彼が証言しています」

「しかし、うちの生徒である翔太君が言うとおり、その時遊矢は塾にいた。アリバイがあります」

「この男、権現坂は遊矢を、友を信じる!皆もそうだろう?」

「当たり前だ!!」

「当然、遊矢君がそんなことするはずないもん!」

「柚子は?」

「あ…あたしは…」

柚子は沈黙してしまう。

沈黙は遊矢を信じていないことを証明してしまうことであるにもかかわらず。

幼いころから彼を知る柚子の沈黙は遊矢の心を傷つけるものだ。

「ねえ…遊矢はやってないのよね?」

確認するかのように、遊矢に問いかける。

自分を納得させたいという思いと共に。

「柚子が何を見たか知らないけど…俺は沢渡を襲っていない!」

「分かった…あたしも遊矢を信じる」

(あ…あれ?翔太君はまだかな?電話にしたら長すぎるけど…)

 

塾からLDSへ戻っている取り巻き達は日美香が乗っていた車の運転手である中島から渡されたカードを見て、にやにや笑っている。

「へへへ…レアカードゲットだ!」

「まさか、こんな演技をするだけで手に入るなんて」

「なるほどな。どんなカードをもらったか、見せてもらえないか?」

「え…!?」

聞き覚えのある声に震えながら3人は振り返る。

「その会話、しっかり録音させてもらった。これをばらされたらお前たちは終わりだな」

伊織から借りた携帯をだし、再生ボタンを押す。

すると、先ほどの会話が再生された。

「な…何を言っているんだ!?俺たちは…」

「ふう…。俺は遊勝塾に世話になってる身だからな、こういうのはいただけないな」

そして、数分が経過した…。

「じゃあ、お前たちが先ほど手に入れたカードは補償替わりにもらっていくぞ。それと、記憶喪失にならないようにな」

3枚のカードをポケットにしまい、翔太は塾へ戻る。

川の中には3本の左腕が同じような形で出ており、それぞれに『ただいま精神修行中 助けないでください』と書かれたプラカードがかけられていた。

 

「結束力が硬いようですねぇ、それでは遊矢君を引き渡せというわけにはいきませんね。ですが、我々も引き下がれないのですよ。業界ナンバー1であるLDSのデュエリストが負けたといううわさが流れれば、こちらとしては不利益になりますから…」

「だから、遊矢がやったわけでは…」

「そんなことは問題ではない!問題はLDSの看板に泥を塗られたこと!!この汚名をそそぐには、塾生同士が戦って勝つしかありません!」

日美香から放たれる凄味のあるオーラ。

長い間、様々な業界のライバルと戦い続けたことで培われたものだろう。

「デュ…デュエルで勝負を!?」

遊矢と柚子、そして修造が驚く中、素良は怪しい笑みを浮かべる。

「そちらが勝てば、沢渡君のことは不問にします。しかし、我々が勝てば、この塾は我々LDSのものとさせていただきます!」

「な…なんだって!?」

「そんな…!!」

「汚名をそそぐだけでは飽き足らず、遊勝塾の看板まで奪うだと!!?」

「なんだか怖いなー、私、この人のような大人にはなりたくないよ…」

「目的は遊勝塾よりも、ペンデュラム召喚だろう?」

「あ…翔太君!」

休憩室に入ってきた翔太に全員の目が向く。

「ペンデュラム召喚を持つデュエリストがいるのはここだけ。そして、ペンデュラム召喚が手に入ればあんたらは勢いづく。違うか?」

「そうです。この塾ではペンデュラム召喚は宝の持ち腐れ。レオコーポレーションの技術力があれば、ペンデュラムモンスターを解析・開発し、更にLDSでカリキュラム化することができる。我々は1つになるべきなのです」

「まあ、あんたらのターゲットは遊矢が持つペンデュラムモンスター。なら、どうするかはお前が決めればいい」

遊矢の肩を軽くたたき、伊織の隣に行く。

少しばかり悩んだ後、遊矢は答えを出した。

「デュエルは…喧嘩の道具じゃない!だけど、ペンデュラム召喚も遊勝塾もあんたたちに渡すつもりはない!ここは、父さんのエンターテインメントデュエルを教える場所だ!金谷力でなんでも言うことを聞かせようとするあんたたちには絶対に渡さない!!」

遊矢の言葉を受け、日美香は静かに彼を睨む。

「よくぞ言った遊矢!この男、権現坂も遊勝塾を守るために共に戦うぞ、友よ!」

「でも君、部外者だよね?」

素良の部外者発言で権現坂が固まる。

「塾生同士で戦うなら、僕と遊矢、柚子で戦えばいいんじゃない?僕もLDSのデュエリストと戦ってみたかったし」

あまりにもショックだったのか、真っ白になった彼を差し置いて、素良が話を進める。

「こ…この男、権現坂を除外するとはけしからーーん!!!」

「まあまあ、権現坂君」

「待てーーー!!まだこの男、権現坂のーーー!!」

伊織とタツヤ、フトシ、アユによって権現坂は観客席まで連行されていった。

「どうやら、塾生たちの気持ちは固まったようですけど」

「私の気持ちも固まっています。遊勝塾は渡さない!」

「はあ…では、始めましょうか」

 

デュエルフィールドで遊勝塾とLDSの生徒が対峙する。

LDS側には紫色の髪で北斗七星をもした飾りを額につけた、紫と青の服を着た少年とボサボサの茶髪でジャージ姿、そして竹刀をもった八重歯の少年、そして黒髪で黒目の肌、重ね着された青と白のシャツとスパッツというスポーティーな服装の少女。

遊勝塾側には柚子と素良、そして翔太だ。

伊織たちは観客席で待機をしている。

「先に2勝した方の勝利ということで、よろしいわね?では、そちらは誰から?」

「僕ーーー!!」

「いや、俺から行く」

素良を差し置き、翔太が前に出る。

「いいでしょう。残りの2人は頼りなさそうですし、なぜ遊矢君は彼と交代しようと思ったのでしょうねぇ…」

「ちょっとおばさん!!何それーー!?僕の力知らないくせにーーー!」

「いいからいいから…」

「プー…」

苦笑する柚子に頭をたたかれ、不満げになる素良。

「頼む…翔太」

「ねえ、遊矢君。どうして翔太君と交代したの?」

「翔太に頼まれたんだ。きっと、あの3人の中に記憶の鍵になるモンスターを持っているデュエリストがいるかもしれないって…。それに、俺がペンデュラム召喚を使うとLDSが知っている以上、必ず対策してくるって…」

「ふーん…。なら、私も柚子ちゃんか素良君に代わってデュエルしたかったなー」

伊織はつまらなさそうにデュエルフィールドを眺める。

そんな中、LDSも一番手のデュエリストを決めた。

「LDSエクシーズコース所属、志島北斗」

紫髪の少年が前に出る。

日美香が連れてきた3人は遊矢と同じジュニアユースのデュエリストだが、それぞれのコースで優秀な成績を上げている。

そんな彼らを連れてきただけでも、彼女がどれだけ本気で遊勝塾を奪おうとしているのかがうかがえる。

観客席では伊織が志島北斗の戦果を携帯で調べていた。

「あった!志島北斗。今年の戦績は58戦53勝!?」

「ジュニアユース選手権の出場資格を完全にクリアしてるじゃん!」

「それに、今年の優勝候補らしいよ!」

「勝てるのか…?翔太…」

「エースだろうが、優勝候補だろうが関係ない。強さは俺の目で見極める」

翔太はすでにデュエルの準備を整えていた。

そして、デュエルフィールドには翔太と北斗だけが残り、残りは全員観客席へ移る。

「うちのデュエリストはどんな状況でも対応できるから、お好きにどうぞ」

「塾長、フィールドはランダムで頼むぞ」

「どんな状況でも対応できるだとーーー!?本当かどうか確かめてやる!!」

フィールド選択設定をランダムにし、修造はソリッドビジョンを起動する。

百種類以上存在する専用フィールドからランダムで選択されたのは《星の聖域》だ。

翔太たちのフィールドが古代ギリシャ風の遺跡と星の海が特徴的なものへと変化していく。

ぽっかりと空いた大穴の中央には巨大な足場が1つ、そしてそこから神殿へ向かうための浮石が複数。

落下への不安とも戦う必要があるフィールドだ。

「ハハハハ!!まさか、僕が一番得意とするフィールドになるとは…」

「な…何ーーー!!?」

とんでもないフィールドになってしまったことに修造が真っ青となるが、翔太は余裕なままだ。

「じゃあ、さっさと始めるか。沢渡のようなデュエリストでないことを祈りたいな」

タツヤ達年少3人組がデュエル開始を宣言する。

「戦いの殿堂に集いしデュエリストたちが」

「モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い」

「フィールド内を駆け巡る!」

「見よ、これぞ、デュエルの最強進化形、アクション…」

「「デュエル!!」」

 

北斗

手札5

ライフ4000

 

翔太

手札5

ライフ4000

 

「僕の先攻、僕は手札から《セイクリッド・グレディ》を召喚!」

 

セイクリッド・グレディ レベル4 攻撃1600

 

「このカードの召喚に成功した時、手札からレベル4以下のセイクリッドモンスター1体を特殊召喚できる。僕は手札から《セイクリッド・カウスト》を特殊召喚!」

 

セイクリッド・カウスト レベル4 攻撃1800

 

「これでレベル4のモンスターが2体。ランク4のエクシーズモンスターをエクシーズ召喚する気か!?」

浮石を次々と飛び越え、背後の神殿に到達しつつ、北斗の動きを見極める。

「いいや、僕は《セイクリッド・カウスト》の効果発動!このカードは1ターンに2度まで僕のセイクリッドモンスターのレベルを1つ変動させることができる。僕はその効果で《カウスト》と《グレディ》のレベルを1つずつアップさせる」

《セイクリッド・カウスト》が空に放った矢が光の雨となり、2体のセイクリッドモンスターのレベルが変化する。

 

セイクリッド・グレディ レベル4→5 攻撃1600

セイクリッド・カウスト レベル4→5 攻撃1800

 

「ランク5か…!?」

「僕はレベル5の《セイクリッド・グレディ》と《カウスト》でオーバーレイ!エクシーズ召喚!星々の光よ!今大地を震わせ降臨せよ!エクシーズ召喚!ランク5!《セイクリッド・プレアデス》!」

 

セイクリッド・プレアデス ランク5 攻撃2500

 

(沢渡君を襲った襲撃犯はエクシーズ召喚を使っていた…。もし、犯人が榊遊矢なら何か反応があるはず…)

日美香の目がデュエルに注目している遊矢に向く。

しかし、遊矢はまるで初めてそれを見るような目をしていた。

「僕はこれでターンエンド。さあ、君のターンだ」

 

北斗

手札5→3

ライフ4000

場 セイクリッド・プレアデス(オーバーレイユニット2) ランク5 攻撃2500

 

翔太

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「俺のターン!」

 

翔太

手札5→6

 

「このカードはフィールドのオーバーレイユニットを2つ取り除くことで、手札から特殊召喚できる。俺は《セイクリッド・プレアデス》のオーバーレイユニット2つを取り除き、《魔装暗殺者ラシード》を特殊召喚」

「何!?オーバーレイユニットをコストにするモンスターだと…!?」

《セイクリッド・プレアデス》の背後に長く伸びた白いひげが特徴的な黒いローブの老人が現れる。

そして、両手に持つ柄に五芒星が刻まれているナイフでオーバーレイユニットを刺し、消滅させると翔太のそばに移動する。

「更にこの効果で特殊召喚に成功した時、俺はデッキからレベル4以下の魔装モンスター1体を特殊召喚する。俺はデッキから《魔装詩人ダンテ》を特殊召喚」

五芒星が右手袋に刻まれていて、左目が隠れるほど長い青髪が特徴的なルネッサンス期イタリアの服を着た青年が現れる。

 

魔装暗殺者ラシード レベル3 攻撃1000

魔装詩人ダンテ レベル3 攻撃500

 

魔装暗殺者ラシード

レベル3 攻撃1000 守備1000 効果 闇属性 戦士族

「魔装暗殺者ラシード」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードはフィールド上のエクシーズ素材を2つ取り除き、手札から特殊召喚できる。この方法で特殊召喚に成功した時、デッキからレベル4以下の「魔装」モンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターは攻撃できず、表示形式の変更もできない。

 

「く…!《プレアデス》のオーバーレイユニットが…」

「エクシーズモンスターは大抵の場合、オーバーレイユニットがないと真価を発揮できないからな。そして、《魔装詩人ダンテ》の効果発動。このカードを魔装と名のつくシンクロモンスターのシンクロ素材とするとき、このカードをチューナーとして扱うことができる」

「何!?ということは!!?」

「俺はレベル3の《ラシード》にレベル3の《ダンテ》をチューニング。神の血を身に宿す槍士、雷鳴のごとき苛烈さを得て戦場で踊れ!シンクロ召喚!現れろ、《魔装槍士クーフーリン》!!」

五芒星が刻まれた黄金のブローチを首にかけ、茶髪な黒いケルト神話風の鎧を着た戦士が現れる。

右手には灰色の銛のような形をした槍が握られていて、それを天に掲げた瞬間、彼の髪が電流のように逆立つ。

 

魔装槍士クーフーリン レベル6 攻撃2100

 

魔装詩人ダンテ

レベル3 攻撃500 守備500 効果 地属性 魔法使い族

(1):このカードを「魔装」Sモンスターのシンクロ素材とするとき、このカードはチューナーとして扱うことができる。

(2):このカードは「魔装」モンスター以外の融合素材・X素材とすることができない。

 

「嘘だろ…?こんな小さい塾でシンクロ召喚を使う奴がいるのかよ!?」

「それに、何なの魔装モンスターって!?それって通常モンスターをサポートするモンスター群でしょ!?なのに、彼が持っている魔装モンスターは全くコンセプトが違う!!」

見たことのないカードにLDSの生徒が動揺する。

「だ…だが、攻撃力はたったの2100。僕の《セイクリッド・プレアデス》よりも下だ!」

「俺は《クーフーリン》の効果を発動。1ターンに1度、俺のフィールドの魔装モンスターと相手フィールドのモンスターを1体ずつ選択し、選択した相手モンスターの攻撃力・守備力をエンドフェイズまで俺の魔装モンスターのレベルかランク1つにつき400ポイントダウンさせる!」

「何!?」

「ゲイ・ボルグ」

《魔装槍士クーフーリン》が高く跳躍し、《セイクリッド・プレアデス》に向けて槍を投擲する。

手から離れたその槍は一瞬で30本近くの銛に変化し、次々と《セイクリッド・プレアデス》に刺さる。

そのモンスターは刺さった銛を抜こうとするが、抜こうとすればするほどどんどん深く刺さっていく。

 

セイクリッド・プレアデス ランク5 攻撃2500→100

 

「この効果を発動したターン、このカード以外のモンスターは攻撃できない。バトルだ!《クーフーリン》で《セイクリッド・プレアデス》を攻撃。ニードル・スピア!」

《魔装槍士クーフーリン》の手に新たな槍が現れると、彼はそのまま浮石を飛び越え、苦しむ《セイクリッド・プレアデス》に迫る。

「く…!だが、甘い!」

「何?」

急に上空から流れ星がフィールドに向けて降ってくる。

「《プレアデス》!!」

北斗の命を受けた《セイクリッド・プレアデス》は北斗を流れ星が落ちると思われる神殿の屋根に向けて投擲した。

「う…嘘…!?」

「飛んでるーー!!」

飛んで行った神殿に流れ星が落ちると、それはアクションカードとなり北斗の手に渡る。

「僕はアクション魔法《コスモ・バリア》を発動!僕のエクシーズモンスター1体への攻撃を無効にし、ライフを1000回復する!」

急に《魔装槍士クーフーリン》の進路上に隕石が降り注ぐ。

次々と降り注ぐ隕石を見て、彼は攻撃は不可能と判断し翔太の元へ戻る。

 

北斗

ライフ4000→5000

 

魔装槍士クーフーリン

レベル6 攻撃2100 守備500 シンクロ 光属性 雷族

「魔装」チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

「魔装槍士クーフーリン」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できず、発動したターンこのカード以外の自分のモンスターは攻撃できない。

(1):自分フィールド上に表側表示で存在する「魔装」モンスター1体と相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。選択した相手モンスターの攻撃力・守備力をエンドフェイズまで選択した自分のモンスターのレベルまたはランクの数×400ダウンする。

 

コスモ・バリア

アクション魔法カード

(1):自分のエクシーズモンスターが攻撃対象となったときに発動できる。その攻撃を無効にし、自分のライフを1000回復する。

 

「あーあ、あと少しで2000ポイントのダメージを与えられたのに!」

「《クーフーリン》の効果はエンドフェイズに消える。このままだとせっかくシンクロ召喚した《クーフーリン》が破壊されるぞ!」

他の遊勝塾メンバーが真剣に観戦している中、素良はまるで対岸の火事を見ているような目でポッキーを食べながら観戦している。

(ふぅん…まさか、こんなモンスターがあるなんてね)

 

「ハハハ。せっかくのチャンスがなくなって残念だったね。ちなみに、僕はエクシーズ召喚を習得してから50連勝中。そして、この《星の聖域》でどのタイミングで、どの場所にアクションカードが出現するか熟知している。次はお前を倒して51連勝だ」

「興味ないな。俺はモンスターを裏守備表示で召喚し、ターンエンド」

ターン終了と同時に、《セイクリッド・プレアデス》に刺さっていた銛が抜ける。

そして、《魔装槍士クーフーリン》の左手に集結し、槍に戻って行った。

 

北斗

手札3

ライフ4000

場 セイクリッド・プレアデス ランク5 攻撃100→2500

 

翔太

手札6→4

ライフ4000

場 魔装槍士クーフーリン レベル6 攻撃2100

  裏守備モンスター1

 

「僕のターン、ドロー」

 

北斗

手札3→4

 

「僕は手札から魔法カード《オーバーレイ・チャージ》を発動。僕のフィールドに存在するモンスターがエクシーズモンスター1体だけの場合、僕は手札を2枚までオーバーレイユニットに変換することができる!」

手札2枚が北斗の手から離れ、オーバーレイユニットとなって《セイクリッド・プレアデス》の周囲を旋回し始める。

 

オーバーレイユニットとなった手札のカード

・セイクリッド・ハワー

・セイクリッド・ダバラン

 

「そして、僕は《セイクリッド・プレアデス》の効果を発動。1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、フィールド上のカード1枚を手札に戻す!」

《セイクリッド・プレアデス》の左手にオーバーレイユニットが宿ると、《魔装槍士クーフーリン》が光の粒子となって消滅する。

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・セイクリッド・ハワー

 

「《クーフーリン》が…!」

「更に、僕は手札から《セイクリッド・アクベス》を召喚」

白と金を基調とした鎧とマントをつけた蟹の姿をした騎士が現れる。

 

セイクリッド・アクベス レベル4 攻撃800

 

「このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、僕のセイクリッドモンスターの攻撃力は500ポイントアップする」

 

セイクリッド・プレアデス ランク5 攻撃2500→3000

セイクリッド・アクベス レベル4 攻撃800→1300

 

「バトルだ!僕は《セイクリッド・プレアデス》で裏守備モンスターを攻撃!」

《セイクリッド・プレアデス》が右手の剣で裏守備モンスターを切り裂こうとする。

(…!アクションカード!)

すると、翔太から見て右斜め上の柱の上に流れ星が落ちる。

北斗がそれを見逃すはずがないことを知りつつ、翔太は大急ぎでその柱まで向かう。

「間に合うか…!?」

柱が目の前で、あとはよじ登るだけという時に目の前に《セイクリッド・プレアデス》が現れる。

「ふう…やはり、見逃すはずがないな」

「当たり前だ。ここは僕が一番得意なフィールドだとさっきも言っただろう?」

《セイクリッド・プレアデス》の背後から現れた北斗の手にはアクションカードが握られていた。

そして、翔太のそばにいる裏守備モンスターを切り裂こうとする。

しかし、刃は裏守備表示モンスターをすり抜け、地面に刺さる。

「な…何!?」

「お前が攻撃しようとしていたモンスターは《魔装霊レブナント》。こいつはリバースしたターン戦闘では破壊されず、更にリバース効果で俺はデッキから魔装モンスター1体を手札に加える」

 

魔装霊レブナント レベル2 守備500(チューナー)

 

デッキから手札に加わったカード

・魔装騎士ムネシゲ

 

「くそ…!破壊耐性とサーチだと!?」

「これは…不用意だったね」

目を細めながら、素良はにやりと笑う。

これは翔太がペンデュラムモンスターを手札に加えるための二重の罠だったのだ。

「くそっ!僕はこれでターンエンド」

 

北斗

手札4→1(アクションカード込)

ライフ4000

場 セイクリッド・プレアデス(オーバーレイユニット1) ランク5 攻撃3000

  セイクリッド・アクベス レベル4 攻撃1300

 

翔太

手札4→5(うち1枚《魔装騎士ムネシゲ》)

ライフ4000

場 魔装霊レブナント レベル2 守備500(チューナー)

 

「俺のターン!」

 

翔太

手札5→6

 

「俺はスケール2の《魔装槍士ダダカツ》とスケール9の《魔装剣士ムネシゲ》でペンデュラムスケールをセッティング」

「な…何!?」

「シンクロ召喚だけでなくペンデュラム召喚まで…何者なの?彼は…」

翔太のペンデュラムモンスターが2本の光の柱を生み出す。

「これで俺はレベル3から8までのモンスターを同時に召喚可能。来たれ、時の果てに眠りし英雄の魂。希望の道を照らし、勝鬨を上げろ!ペンデュラム召喚!!現れろ、俺のモンスターたち!!《魔装妖ビャッコ》、《魔装郷士リョウマ》、死を司る青き騎士、《魔装騎士ペイルライダー》!!」

翔太の目が青く染まるのと同時に、3体のモンスターが現れる。

桔梗と五芒星が合わさった家紋がついた、史実で坂本竜馬が所持していたS&Wモデル1/2 32口径5連発をモチーフとした拳銃と青い袴、茶色いブーツを装備した幕末の武士、《魔装陰陽師セイメイ》の肩に乗っていたモンスターが翔太の前に現れる。

そして、《魔装騎士ペイルライダー》は近くにある一番高い柱の上で、北斗を見下ろすように立っている。

しかし、その装備は前のデュエルの時と異なり、両脚部に五芒星が刻まれたミサイルポッド、右手にはマシンガンの代わりにキャノン砲が装備されている。

 

魔装妖ビャッコ レベル3 攻撃400

魔装郷士リョウマ レベル4 攻撃1900

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

 

「わぁ…可愛い!!」

「アユちゃんもそう思う?あの《ビャッコ》ってモンスター」

「なんだか和むよねー、こういうモンスターがいると…」

女性陣が翔太のフィールドに現れた《魔装妖ビャッコ》を見て、メロメロ状態になっている。

そのマスコットのようなモンスターが鞄からみたらし団子を取り出し、食べ始めるとさらに歓声を上げる。

「はあ…」

彼女たちの緊張感のない様子に翔太は頭を抱える。

「これがペンデュラム召喚…。だが、せっかくのペンデュラム召喚もこのカードの前では無意味だ!僕はアクション魔法《コスモ・シャワー》を発動!相手フィールド上にモンスターが3体以上存在するとき、相手モンスターをすべて破壊する!」

上空に次々と流星が現れ、翔太のフィールドに降り注ぐ。

「ハハハハ!!これでお前のモンスターは全滅だ!!」

「俺は手札から罠カード《魔装障壁》を発動!」

「手札から罠カードだと!?」

「このカードは俺のフィールドに魔装モンスターが3体以上存在するとき、手札から発動できる。俺のフィールド上のカードを破壊する効果を無効にし、破壊する」

《魔装騎士ペイルライダー》と《魔装郷士リョウマ》がキャノン砲とミサイルポッド、拳銃で次々と流星を破壊し、《魔装妖ビャッコ》が鞄から弾薬を取り出して2人に補給した。

「《コスモ・シャワー》をかわしただと…!?」

「ふう…《魔装障壁》が手札にあって助かった」

 

コスモ・シャワー

アクション魔法カード

「コスモ・シャワー」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):相手フィールド上にモンスターが3体以上存在するときに発動できる。相手フィールド上に存在するモンスターをすべて破壊する。

 

魔装障壁

通常罠カード

(1):自分フィールド上に「魔装」モンスターが表側表示で存在する場合にのみ発動できる。相手の「フィールド上のカードを破壊する効果」を持つ魔法・罠・モンスター効果を無効にし、破壊する。

(2):自分フィールド上に存在するモンスターが「魔装」モンスター3体のみの場合、このカードは手札から発動できる。

 

「更に、俺は《リョウマ》の効果を発動。このカードのペンデュラム召喚に成功した時、墓地から魔装モンスター1体を手札に加えることができる。俺は墓地から《魔装詩人ダンテ》を手札に加える。バトル!《魔装騎士ペイルライダー》で《セイクリッド・プレアデス》を攻撃」

「何!?攻撃力は《プレアデス》のほうが上だぞ!?」

《魔装騎士ペイルライダー》の複数のミサイルが《セイクリッド・プレアデス》に襲い掛かる。

「《ペイルライダー》は戦った相手モンスターをダメージステップ終了時に破壊する。そして、《魔装剣士ムネシゲ》の効果で1ターンに1度、俺のペンデュラムモンスターを破壊から守る」

「狙いはそっちか!!?だが、まだ《プレアデス》にはオーバーレイユニットが残っている!《セイクリッド・プレアデス》の効果発動!1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除くことでフィールド上のカード1枚を手札に戻す!」

《魔装騎士ペイルライダー》が光の粒子となって消える。

そして、ミサイルは《セイクリッド・プレアデス》から外れて後方の神殿に着弾した。

「ハハハハ!!無駄だ無駄だ!今のお前のフィールドには攻撃力3000となった《プレアデス》を止める手段はない!」

「ああ…そうだな。俺は《リョウマ》で《セイクリッド・アクベス》を攻撃。ドラゴン・バレッド」

《魔装郷士リョウマ》の銃弾が《セイクリッド・アクベス》を貫き、撃破した。

「ちっ…!50戦もの間一度も削られたことのない僕のライフが…」

 

北斗

ライフ4000→3400

 

「そして、俺はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

北斗

手札1→0

ライフ3400

場 セイクリッド・プレアデス ランク5 攻撃3000

 

翔太

手札6→2(《魔装詩人ダンテ》《魔装騎士ペイルライダー》)

ライフ4000

場 魔装霊レブナント レベル2 守備500(チューナー)

  魔装郷士リョウマ レベル4 攻撃1900

  魔装妖ビャッコ レベル3 攻撃400

  魔装槍士タダカツ(青) Pスケール2

  魔装剣士ムネシゲ(赤) Pスケール9

  伏せカード1

 

魔装郷士リョウマ

レベル4 攻撃1900 守備1200 風属性 戦士族

【Pスケール青5:赤5】

(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。

(2):1ターンに1度、自分フィールド上に表側表示で存在する「魔装」モンスターが攻撃対象となったときに発動できる。攻撃モンスター1体を手札に戻す。

【モンスター効果】

(1):このカードを手札からP召喚に成功した時に発動する。自分の墓地から「魔装」モンスター1体を手札に加える。

 

「すげぇ…。LDSのデュエリストが相手なのに、翔太のライフがまだ1ポイントも減ってない」

「それに、《セイクリッド・プレアデス》にはオーバーレイユニットがないから、もう翔太君のモンスターを手札に戻すことはできないよ!」

「でも、《セイクリッド・プレアデス》の攻撃力は3000。翔太のフィールドにはそのモンスターを倒せるモンスターはいないよ。ということは、翔太の伏せカードは…」

素良の目は翔太の伏せカードに向けられていた。

「僕のターン、ドロー!」

 

北斗

手札0→1

 

「僕は手札から《セイクリッド・ソンブレス》を召喚!」

 

セイクリッド・ソンブレス レベル4 攻撃1550

 

「《セイクリッド・ソンブレス》の効果発動!1ターンに1度、墓地のセイクリッドモンスター1体を除外し、墓地からセイクリッドモンスター1体を手札に加える」

 

墓地から手札に加わったモンスター

・セイクリッド・カウスト

 

墓地から除外されたモンスター

・セイクリッド・アクベス

 

「更に、この効果を発動したターン、手札からセイクリッドモンスターを召喚できる。僕は手札に加えた《セイクリッド・カウスト》を召喚!」

 

セイクリッド・カウスト レベル4 攻撃1800

 

「《セイクリッド・カウスト》…。ということは…」

「そうだ!《セイクリッド・カウスト》の効果で《ソンブレス》と《カウスト》のレベルを1つずつ上昇させる!」

 

セイクリッド・ソンブレス レベル4→5 攻撃1550

セイクリッド・カウスト レベル4→5 攻撃1800

 

「僕はレベル5の《セイクリッド・ソンブレス》と《カウスト》でオーバーレイ!エクシーズ召喚!星々の光よ!今大地を震わせ降臨せよ!エクシーズ召喚!ランク5!《セイクリッド・プレアデス》!」

 

セイクリッド・プレアデス ランク5 攻撃2500

 

「もう1体の《セイクリッド・プレアデス》!?」

「お前は《セイクリッド・プレアデス》の効果はもう使えないと思っていたのだろう?すべて計算の範囲内だ」

「…。君もね」

素良にとっては予想できるありきたりの対応だ。

セイクリッドデッキの中でも高い戦闘力を持つ《セイクリッド・プレアデス》を複数入れるのは当然の行為だ。

「《セイクリッド・プレアデス》の効果発動!1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、フィールド上のカード1枚を手札に戻す!」

《セイクリッド・プレアデス》にオーバーレイユニットが宿ると、《魔装霊レブナント》が光に包まれつつあった。

「罠発動!《魔装共鳴》!!」

《魔装霊レブナント》を包む光が消え、3体の魔装モンスターの五芒星が光り始める。

「何!?」

「このカードは相手ターンに発動でき、魔装と名のつくモンスターをシンクロ召喚、またはエクシーズ召喚する。俺はレベル3の《ビャッコ》、レベル4の《リョウマ》にレベル2の《レブナント》をチューニング。勝利と支配をもたらす第2の騎士よ、終戦を告げるその矢で敗者を鎮めよ!シンクロ召喚!《魔装騎士ホワイトライダー》!!」

白銀の鎖帷子とフルフェイスのフェイスガード、そして五芒星が刻まれた弓矢を装備した騎士が現れる。

現れた瞬間、翔太の目が今度は白に変化した。

 

魔装騎士ホワイトライダー レベル9 攻撃3100

 

魔装共鳴

通常罠カード

(1):相手のターンに発動できる。「魔装」Sモンスター、または「魔装」Xモンスター1体をS召喚、またはX召喚する。

「魔装共鳴」は1ターンに1度しか発動できない。

 

「お…おい!?今まで気づかなかったが、なんでお前の目の色が変わってるんだ!?」

かなり驚いた様子で北斗は翔太に指をさす。

(今度は白…)

(シンクロ召喚にエクシーズ召喚、更にペンデュラム召喚…。敵にするにはかなり厄介だけど、もしかしたら…)

かなり真面目な表情になっている素良は菓子を食べるのをやめた。

それよりも、彼の謎を少しでも探ろうとデュエルを見た。

「それについては俺にもよくわからない。デュエルを続けるぞ。俺は《ビャッコ》の効果発動。魔装と名のつくモンスターのシンクロ素材、もしくはエクシーズ素材となったとき、デッキからカードを1枚ドローする」

「くそ…!だが、次のターンにならば《セイクリッド・プレアデス》の効果でそのモンスターを…」

「残念だが、《魔装騎士ホワイトライダー》は魔装と名のつく装備カード以外のカード効果を受けない」

「なんだと!?それじゃあ、今の僕にできることはないというのか!?僕はこれでターンエンド」

 

北斗

手札1→0

ライフ3400

場 セイクリッド・プレアデス ランク5 攻撃3000

  セイクリッド・プレアデス(オーバーレイユニット1) ランク5 攻撃2500

 

翔太

手札2→3(うち2枚《魔装詩人ダンテ》《魔装騎士ペイルライダー》)

ライフ4000

場 魔装騎士ホワイトライダー レベル9 攻撃3100

  魔装槍士タダカツ(青) Pスケール2

  魔装剣士ムネシゲ(赤) Pスケール9

 

魔装妖ビャッコ

レベル3 攻撃400 守備400 効果 闇属性 アンデッド族

「魔装妖ビャッコ」の(3)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードは「魔装」モンスター以外のS素材・X素材・融合素材にすることはできない。

(2):このカードを「魔装」モンスターのS素材・X素材とするとき、レベルを4として扱うことができる。

(3):このカードがS素材・X素材となったとき、デッキからカードを1枚ドローする。

 

魔装騎士ホワイトライダー

レベル9 攻撃3100 守備3000 シンクロ 光属性 戦士族

「魔装」チューナー+チューナー以外の「魔装」モンスター2体以上

(1):このカードは「魔装」装備カード以外の魔法・罠・モンスター効果を受けない。

 

「やった!!翔太君の《ホワイトライダー》の攻撃力は3100!これなら攻撃力が3000になっている《セイクリッド・プレアデス》を倒せる!」

「何か…アクションカードは!!」

北斗は《魔装騎士ペイルライダー》の攻撃によって崩れた神殿に向けて走り始める。

無事かどうかは分からないが、その中にはアクションカードが供物としてささげられている。

「俺のターン!」

 

翔太

手札3→4

 

「俺は手札から魔法カード《マジックコード:α》を発動。俺のフィールドに魔装モンスターが存在するとき、相手モンスター1体の効果をエンドフェイズまで無効にする!」

《セイクリッド・プレアデス》の胸にαを模した文字が刻まれ、そのモンスターの力の一部が封印される。

 

マジックコード:α

通常魔法カード

(1):自分フィールド上に「魔装」モンスターが表側表示で存在する場合、相手フィールド上のモンスター1体を選択して発動できる。そのモンスターの効果をエンドフェイズまで無効にする。

 

「そんな…この僕が押されている!?」

バウンスができなくなり、翔太の場にはまだ《魔装騎士ホワイトライダー》が残っている。

(せめて…あのアクションカードの効果で戦闘を無効にできれば!!)

「俺は《魔装獣ユニコーン》を召喚」

召喚と同時に翔太は《魔装獣ユニコーン》に騎乗する。

すると、その老いた一角獣は瞬時に無理のないコースを見つけ、全速力で走る。

老いにより視力は衰えているが、熟練の経験がその馬の武器なのだ。

(これだ…アクションカード!!)

神殿が破壊されたにもかかわらず、無事だった祭壇の上にはアクションカードがある。

北斗はその一縷の希望を手にしようとした。

しかし、背後から猛スピードで翔太が迫る。

「何!?」

「悪いな、けどこれはデュエルだ」

北斗が手にしようとしたアクションカードが翔太の手に渡る。

「(このカードか…。使わなくても勝てるけど、せっかくだから使うか)俺は手札からアクション魔法《ティンクル・コメット》を発動。フィールド上のモンスター1体の攻撃力を1000ポイントダウンさせ、相手に500ポイントのダメージを与える」

カードから大きな赤い隕石が現れる。

それは一直線に《セイクリッド・プレアデス》に命中し、そのモンスターは体勢を崩す。

 

セイクリッド・プレアデス ランク5 攻撃3000→2000

 

北斗

ライフ3400→2900

 

ティンクル・コメット(アニメオリカ)

アクション魔法カード

(1):フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。 そのモンスターの攻撃力をエンドフェイズまで1000ダウンし、相手に500ダメージを与える。

 

「あ…ああ…」

アクションカードの発動を終えた翔太はすぐに《魔装獣ユニコーン》から降りる。

「《ユニコーン》の効果発動。このカードを装備カードとして魔装騎士に装備し、そのモンスターの攻撃力を800ポイントアップさせる」

《魔装騎士ホワイトライダー》が翔太の代わりに騎乗する。

 

魔装騎士ホワイトライダー レベル9 攻撃3100→3900

 

「こ…攻撃力3900…!?」

「バトルだ。《ホワイトライダー》で《セイクリッド・プレアデス》を攻撃。アロー・オブ・ルール」

《魔装騎士ホワイトライダー》を乗せた《魔装獣ユニコーン》が空高く跳躍する。

そして、月をバックにして第2の騎士が白銀の矢の雨を放つ。

矢の雨が次々と《セイクリッド・プレアデス》に命中し、そのモンスターは消滅した。

「うわあああ!!」

 

北斗

ライフ2900→1000

 

「まだだ。《魔装獣ユニコーン》の効果発動。このカードを装備したモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊した時、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与える」

「そ…そんな…僕の51連勝が…」

北斗は真っ白になって膝を折る。

そして、そんな彼を上空から着陸した《魔装獣ユニコーン》に踏みつけられた。

 

北斗

ライフ1000→0

 

「やった!まずは1勝!!」

「やったーーー!!」

「さすが翔太君!」

「熱血だーーーー!!」

遊勝塾の面々が先制に喜ぶ中、LDSの面々は穏やかではなかった。

「まさか…あの北斗が敗れるなんて…」

(秋山翔太…彼は一体何者なの?)

デュエルの間、彼女は中島に翔太について調べてもらっていた。

しかし、翔太が記憶喪失であること、遊勝塾に最近入ったばかりで今は児童養護施設で生活していることだけしかわからなかった。

「…。いいデュエルを見せてもらった。秋山翔太」

いつからそこにいたのか、観客席の物陰でこっそりとデュエルを観戦していた黒いフードをつけた男が静かに呟いた。



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第6話 苦い痛み

「ふう…」

勝利を収めた翔太が観客席に戻ってくる。

「よくやった翔太!まずは一勝だな!」

「翔太君すごい!!」

遊矢と伊織が駆け寄り、彼を称賛する。

「あれ…?翔太、どうしたんだよ?」

「どうしたって…何がだ?」

「勝ったのに、あまり嬉しそうじゃないから…」

「まあ、そうだな。期待外れだったのが大きいな」

敗北し、日美香から説教を受ける北斗を見る。

(奴の《セイクリッド・プレアデス》は記憶の鍵じゃなかった…)

「…」

遊矢たちが喜ぶ中、柚子はなぜか不安な表情を見せている。

(柚子…)

「あ…」

急に彼女の耳に幻聴が聞こえる。

遊矢と似ているが、若干彼よりも低い声だ。

そして、遊矢の姿が黒いマントとマスク、青い髪をした遊矢そっくりの少年とダブって見えてしまう。

彼こそが昨日、沢渡とデュエルをした少年で、その実力は圧倒的だった。

そんな彼を見て、今回の事件、そして自分の中に芽生えてしまった遊矢への疑念。

それらが彼女の集中力を鈍らせ、不安を呼び起こす。

「柚子…!」

「な…何!?遊矢」

「次はお前の番だ、頼んだぞ」

「う…うん」

真剣な表情となり、デュエルフィールドへ向かう。

そこにはすでに黒い髪の少女が待機していた。

「私は融合コース所属の光津真澄」

「へー、あのお姉ちゃん融合使いなんだ」

(遊矢の無実を証明するためにも…絶対に負けられない。でも…)

急に彼女の頭にあの少年がよぎる。

「ふふふ…」

そんな柚子を見て、真澄は見下した目で髪をはらう。

一方、修造はフィールドの選択を行っていた。

「うちの娘が戦うのにふさわしいフィールドは…よし、これだ!!アクションフィールド、オン!フィールド魔法《クリスタル・コリドー》発動!」

フィールドがクリスタルや宝石によって彩られた教会となる。

「柚子--!!煌めくお前の可愛さに似合うフィールドを選んだぞ!ここで存分輝いてこーい!」

「ちょっと…お父さん!」

修造にとっては娘である柚子への最大限のエールのつもりだったようだが、彼女の取っ手は有難迷惑だった。

「ふふふ…あなたのような子が輝いて見えるなんて…とんだ親バカね」

「なんですって!?」

「あなたの目…くすんでるわ」

「な…なによ!?いきなり」

「私のパパは宝石商なの。私も子供のころからたくさんの宝石を見てきたわ。本物の輝きを持つ、本物の宝石をね。だから、私にはわかるの。今のあなたには輝きがない。心に迷いがある証拠よ」

「…!!」

完全に見抜かれていた。

絶対的な自信を持つ真澄と迷いで集中力を失っている柚子。

精神状態は雲泥の差だ。

そして、真澄は柚子ではなく、観客席の翔太と遊矢を見る。

(秋山翔太…榊遊矢、あなた達なら思う存分にデュエルができたかもしれないわね…)

そんな中、遊矢と権現坂、そして年少3人組がデュエル開始を宣言する。

「戦いの殿堂に集いしデュエリストたちが」

「モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い」

「フィールド内を駆け巡る!」

「見よ」

「これぞ」

「デュエルの最強進化形!

「「「アクション…」」」

「「デュエル!!」」

 

真澄

手札5

ライフ4000

 

柚子

手札5

ライフ4000

 

「先攻は私よ。私は手札から魔法カード《ジェムナイト・フュージョン》を発動。このカードはジェムナイト専用の融合魔法よ」

「なんですって!?」

(いきなり融合か…)

柚子は驚いているものの、翔太は全く驚いていない。

伊織とのデュエルで何度も融合召喚を見てきたため、普通にしか見えなかったのだ。

もっとも、伊織の場合は1ターンに何度も融合召喚や変身召喚するのだが。

「私が融合素材とするのは《ジェムナイト・ルマリン》と《ジェムナイト・エメラル》!雷帯びし秘石よ!幸運を呼ぶ緑の輝きよ!光渦巻きて新たな輝きと共に一つとならん!融合召喚!現れよ!勝利の探求者《ジェムナイト・パーズ》!」

 

ジェムナイト・パース レベル6 攻撃1800

 

「まさか1ターン目から融合召喚を使ってくるなんて…」

「あなたの輝きのない眼でも、手札融合のすごさがわかったようね」

「だ…だけど、手札融合をしてまで呼び出したモンスターの攻撃力は1800。倒せないモンスターではないわ」

「侮らないことね、このモンスターへの対処であなたの運命が変わるのよ。私はカードを2枚伏せて、ターンエンドよ」

 

真澄

手札5→0

ライフ4000

場 ジェムナイト・パーズ レベル6 攻撃1800

  伏せカード2

 

柚子

手札5

ライフ4000

場 なし

 

柚子の心に真澄の言葉が引っ掛かる。

《ジェムナイト・パーズ》への対処…。

どの言葉の意味を柚子はどう理解するのか?

「あたしのターン、ドロー!」

 

柚子

手札5→6

 

「あたしは手札から魔法カード《独奏の第1楽章》を発動!あたしのフィールドにモンスターが存在しないとき、手札・デッキからレベル4以下の幻奏モンスター1体を特殊召喚するさあ、出番よ!あたしはデッキから《幻奏の音女アリア》を特殊召喚!」

音符をもした飾りが体の各部分についていて、背中にはハープがある紫髪の歌手が歌いながら現れる。

 

幻奏の音女アリア レベル4 攻撃1600

 

「更に、このカードはあたしのフィールドに幻奏モンスターが存在するとき、手札から特殊召喚できる。《幻奏の音女ソナタ》を特殊召喚!」

今度は《幻奏の音女アリア》と似ているが、彼女とは異なり長髪で、青を基調とした歌手が現れる。

 

幻奏の音女ソナタ レベル3 攻撃1200

 

「特殊召喚された《ソナタ》がフィールドに存在する限り、私の天使族モンスターの攻撃力・守備力は500ポイントアップするわ!さらに特殊召喚された《アリア》が存在する限り、私の幻奏モンスターはカード効果の対象にならず、戦闘では破壊されない!さあ…コンサートの始まりよ!!」

2体の女性歌手がデュエットを始め、互いの能力を高め合う。

 

幻奏の音女アリア レベル4 攻撃1600→2100

幻奏の音女ソナタ レベル3 攻撃1200→1700

 

「まだよ!更にあたしは手札からもう1体の《ソナタ》を特殊召喚!」

更に柚子のフィールドに《幻奏の音女ソナタ》が現れ、コンサートに加わる。

 

幻奏の音女アリア レベル4 攻撃2100→2600

幻奏の音女ソナタ×2 レベル3 攻撃1700→2200

 

「ふうん…。たった1ターンで3体のモンスターを特殊召喚しつつ、強化させるなんてね。くすんだ輝きなのに、やるわね」

「まだよ!あたしはまだ通常召喚を行っていないわ!あたしは手札から《幻奏の音女セレナ》を召喚!」

ピンク色の髪で、黄色と赤の豪華なドレスを身に着け、ハープのような片翼がある歌手が現れ、コンサートがカルテットとなる。

 

幻奏の音女セレナ レベル4 攻撃400→1400

 

「バトルよ!《幻奏の音女アリア》で《ジェムナイト・パーズ》を攻撃!シャープネス・ヴォイス!!」

《幻奏の音女セレナ》の口から強烈な音波が放たれる。

すると、真澄はすぐに周囲を見渡し、長椅子の陰に隠れていたアクションカードを回収する。

「私はアクション魔法《クリスタル・コート》を発動!私のレベル5以上のモンスターへの攻撃を無効にし、ライフを800回復する!」

《ジェムナイト・パーズ》がクリスタルでできた鎧をまとい、音波をはじく。

 

真澄

ライフ4000→4800

 

クリスタル・コート

アクション魔法カード

(1):自分フィールド上に表側表示で存在するレベル5以上のモンスターが攻撃対象となったときに発動できる。その攻撃を無効にし、自分のライフを800回復する。

 

「なら…《幻奏の音女ソナタ》で《ジェムナイト・パース》を攻撃!」

《幻奏の音女アリア》が後方にさがり、《幻奏の音女ソナタ》が前に出て音波を放つ。

1度は音波をはじいた《クリスタル・コート》も2度目は耐えきれずに《ジェムナイト・パーズ》もろとも砕け散る。

「く…!!」

 

真澄

ライフ4800→4400

 

「まだ攻撃が残ってるわ!もう1体の《ソナタ》と《セレナ》でダイレクトアタック!!」

《幻奏の音女ソナタ》と《幻奏の音女セレナ》が手を取り合い、デュエットを始める。

その歌は柚子にとっては心地よいものだが、真澄にはなぜかひどいノイズにしか聞こえなかった。

 

真澄

ライフ4400→2200→800

 

「やったー!一気に4000ポイントのダメージ!」

「なぁんだ、大したことないじゃん」

タツヤとフトシが余裕な表情を浮かべる。

しかし、ライフが残り800になったにもかかわらず真澄も余裕な表情を浮かべている。

「惜しかったわね、あと一歩だったのに」

「な…何?」

「私は罠カード《ショック・ドロー》を発動!このターン、私が受けたダメージ1000ポイントごとに1枚渡しはカードを1枚ドローする。私がこのターン受けたダメージは4000。よって、私は4枚のカードをドローする!」

 

真澄

手札0→4

 

「一気に4枚のカードが手札に…」

融合主体のデッキにとって、手札増強やサーチは生命線と言える存在だ。

逆に、大量の手札を所持しているとエクストラデッキに存在する融合モンスターによってはかなり多彩な動きができる。

そして、今の柚子には追撃の手段がない。

「あたしは…これでターンエンド」

 

真澄

手札4

ライフ800

場 伏せカード1

 

柚子

手札6→2

ライフ4000

場 幻奏の音女アリア レベル4 攻撃2600

  幻奏の音女ソナタ×2 レベル3 攻撃2200

  幻奏の音女セレナ レベル4 攻撃1400

 

「やったぜ、これで次のターンがくれば柚子の…」

「いや遊矢、よく見ろ。柚子の今の対処は失敗だ!」

「何!?」

《ジェムナイト・パース》が破壊され、大幅にライフを削られたにもかかわらず、真澄は不敵な笑みを浮かべている。

「少しはやるようね。けど…これで勝ったと思わないことね。私のターン!」

 

真澄

手札4→5

 

「私は手札から《ジェムナイト・アレキサンド》を召喚!」

アレキサンドライトを体の各部に装飾している白銀の宝石騎士が現れる。

 

ジェムナイト・アレキサンド レベル4 攻撃1800

 

「このカードをリリースすることで、私はデッキからジェムナイトと名のつく通常モンスター1体を特殊召喚できる。《ジェムナイト・クリスタ》を特殊召喚!」

《ジェムナイト・アレキサンド》の外装が砕け散り、その中から《ジェムナイト・クリスタ》が姿を見せる。

 

ジェムナイト・クリスタ レベル7 攻撃2450

 

「攻撃力2450?」

「まだよ。まだ攻撃力は《アリア》の方が上。それに、《アリア》の効果であたしの幻奏モンスターは戦闘では破壊されないわ」

「ふふ…。私は罠カード《廃石融合》を発動!墓地のジェムナイトを融合させる!私は《ジェムナイト・アレキサンド》、《ルマリン》、《エメラル》を融合!昼と夜の顔を持つ魔石よ!雷帯びし秘石よ!幸運を呼ぶ緑の輝きよ!光渦巻きて新たな輝きと共に一つとならん!融合召喚!現れよ!全てを照らす至上の輝き!《ジェムナイトマスター・ダイヤ》!」

 

ジェムナイトマスター・ダイヤ レベル9 攻撃2900

 

「罠カードで融合だと!?」

大抵の場合、融合召喚の引き金となるのは魔法カード。

罠カードによる融合召喚はあまりにも珍しく、遊矢たちにとっては大きな驚きだ。

「これこそが、私の真のエースモンスター!私はさらに、《ジェムナイトマスター・ダイヤ》の効果を発動!1ターンに1度、墓地のジェムナイトと名のつくレベル7以下の融合モンスター1体を除外し、そのモンスターの効果をエンドフェイズまで得る。私は墓地の《ジェムナイト・パーズ》を除外!」

《ジェムナイト・パーズ》が消滅すると、《ジェムナイトマスター・ダイヤ》の大剣が双剣へと姿を変える。

「《ジェムナイト・パース》は1ターンに2度攻撃でき、そして戦闘で破壊した相手モンスターの元々の攻撃力分のダメージを与える」

「で…でも私の幻奏モンスターは《アリア》の効果で…」

「柚子--!!油断するな!!」

柚子の耳に遊矢の声が届き、その方向に目を向ける。

(何か仕掛けてくるぞ…)

目を向けた瞬間、遊矢の声と姿があの黒マスクの少年に変化してしまう。

集中力の欠落故の幻視と幻聴だ。

「よそ見しているとは余裕ね。私は手札から装備魔法《ジェムナイトの霊気》を発動!このカードはジェムナイトと名のつく融合モンスターにだけ装備でき、装備モンスターの攻撃で相手モンスターを破壊できなかったとき、戦った相手モンスターの攻撃力分のダメージをあなたに与えるわ」

「ええ…!?」

「このカードは《ショック・ドロー》の効果で手札に加わった…あなたが私にくれたカードよ」

《ジェムナイトマスター・ダイヤ》の双剣に紫色の霊気が纏う。

「バトルよ!《ジェムナイトマスター・ダイヤ》で《幻奏の音女アリア》を攻撃!」

《ジェムナイトマスター・ダイヤ》の双剣が《幻奏の音女アリア》に襲い掛かるが、不可視のバリアが攻撃を防ぐ。

しかし、そのバリアを霊気は貫通し、霊気を吸い込んでしまった《幻奏の音女アリア》は主である柚子に向けて音波攻撃を仕掛ける。

「ううう…!!」

 

柚子

ライフ4000→3700→1100

 

「柚子お姉ちゃんのライフが…!」

「…。お前の負けだ、柚子」

《ジェムナイトマスター・ダイヤ》、《ジェムナイト・パーズ》、そして《ジェムナイトの霊気》のコンボが成立した以上、もはや柚子の敗北は決定的となった。

「柚子---!燃えろーーー!!熱血だーーーー!!」

(ダメ…このままじゃ…あたし…)

焦りの色を隠せないまま周囲を見渡す。

すると、クリスタルの柱のそばにあるアクションカードを発見する。

(アクションカード!!一か八か…!!)

大急ぎでアクションカードを手にするために駆けだす。

その間にも、《ジェムナイトマスター・ダイヤ》の2回目の攻撃が《幻奏の音女アリア》を襲う。

(とった!!)

攻撃が届く寸前にアクションカードを手にしたと思われた。

しかし、触れたにもかかわらずその手に伝わるのは冷たい鉱石の感触。

よく見ると、アクションカードは彼女の背後の柱のそばにある。

柚子は柱に映ったアクションカードを取ろうとしていたのだ。

「そんな…」

「クリスタルの虚像に映ったアクションカードを取ろうとするなんて…あなたの目、相当に曇っているようね」

「ああ…」

呆然とする柚子を霊気を受けた《幻奏の音女アリア》の音波が襲う。

 

柚子

ライフ1100→800→0

 

ジェムナイトの霊気

装備魔法カード

このカードは「ジェムナイト」融合モンスターにのみ装備可能。

(1):このカードを装備したモンスターによる攻撃で相手モンスターを破壊できなかったとき、攻撃した相手モンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える。

(2):このカードを装備したモンスターが戦闘で破壊されるとき、代わりにこのカードを破壊することができる。

 

「あーあ、やっぱやられちゃったか」

他人事のようにデュエルを見ていた素良をよそに、遊矢は呆然と座り込む柚子に駆け寄る。

「柚子…!!しっかりしろよ柚子!!」

呆けた彼女の体を何度も揺らす。

目の前に遊矢がいるにもかかわらず、柚子には相変わらず黒マスクの少年と彼がダブって見えてしまう。

「柚子…おい、大丈夫か!?」

遊矢と一緒に立ち上がるが、ふらついて遊矢の胸の顔をうずめてしまう。

(あたし…何やってるんだろう?遊矢は今ここにいる。けど、目の前にいる遊矢の言葉を信じないで、一人で悩んじゃって…。あの子が言ってたように、虚像にとらわれていたようね…)

「ずいぶん見せつけてくれるじゃない?」

「あ…!!」

「うん?」

真澄の言葉で我に返った柚子は先ほどの行動を思い出し、顔を真っ赤にする。

「きゃあ!!」

「うわあ!!!」

急に柚子によって突き飛ばされ、遊矢は腰を強く打ってしまう。

「いきなり何するんだよ!?」

「ご…ごめんなさい!!」

「謝るくらいなら、最初から突き飛ばすな…」

 

遊矢と柚子のやりとりを他のメンバーが見ている中、翔太は真澄を見る。

(《ジェムナイトマスター・ダイヤ》…。あのカードが俺の記憶の鍵なのか?)

「翔太君…?」

「な…何だよ!?」

急に後ろから伊織が面白そうに声をかけてくる。

「あの真澄ちゃんって女の子を見ちゃって…。ふーん、翔太君はあーゆー女の子が好みなんだー」

「そういうわけじゃない!あの《ジェムナイトマスター・ダイヤ》が俺の記憶の鍵かもって思って…」

「まーまー、そんな言い訳しなくてもいいのに!」

「な…何だよそれ…?」

 

「遊矢…負けられないデュエルだったのに…私…私…」

「気にするなよ。次勝てばいいだけだから」

「遊矢…」

「次勝てばいいだと?ずいぶん気軽に言ってくれるじゃねえか」

すでにLDS側は3人目をデュエルフィールドに出していた。

「LDSシンクロコースの刀堂刃!さあ…俺の相手はどいつだ?」

 

「くぅーーー!!この男、権現坂!できれば俺が出て柚子の仇を討ちたいところだが、遊勝塾の命運をかけたこの勝負に置いて、権現坂道場跡取りである俺は部外者!いいか、素良!ここが正念場だぞ!必ず勝ってこい!!」

しかし、当の素良はデュエルの準備もせず、キャンディを舐めている。

「うーん…こういう暑苦しいの、僕苦手なんだよね。出たいんなら、権ちゃんがでてもいいよ」

「ご…権ちゃん!!?って、ええ!?俺が出ていいのか!?」

「うん。それに僕、あの人に向かない気がするんだー」

デュエルフィールドでは、刃は準備運動をしている。

1勝1敗、もはやどちらも敗北が許されない中、なんとも無責任な発言。

だが、なんとしてでも遊勝塾の力になりたい権現坂にとってはまさに幸運だ。

「頼むぜ、権現坂。親友であるお前にならこの勝負、託すことができる!」

「任せておけ!権現坂道場における不動のデュエルをもって、必ず勝利して見せる!!」

闘志を燃やしながら、権現坂はデュエルフィールドへ向かった。

「ぶーー…。私に交代してほしかったなー…」

不機嫌になり伊織を横目で見ながら、翔太は待機している刃に目を向ける。

(《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》と《魔装騎士ペイルライダー》が戦闘を行うまで、俺はそのモンスターがカギであることは分からなかった。ということは、こうしてみているだけでは無意味だというのか?)

「俺の相手はお前か。言っておくが、俺を今までのお行儀のよい連中だと思っていたら痛い目を見るぜ?なんせ俺は…あいつらと違って、本当に強いからな」

「刃の奴、まるで僕たちが弱いような言い方を…」

「確かにむかつくけど、負けたあなたはそう言われても仕方がないんじゃない?しかも、圧倒されていたし」

「グサーーー!!」

先程のデュエルでの見事な負けっぷりを思い出し、観客席の隅っこで体操座りする北斗だった。



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第7話 不動のデュエル

権現坂と刃が対峙する中、修造は目を閉じてフィールドを何にするか考え始める。

負ければ終わりな決戦の舞台にふさわしいフィールドを選ぶことで権現坂へのエールとしたいのだ。

「(刃…刀…剣…)よし!!ならばこれだ!!アクションフィールドオン!フィールド魔法《剣の墓場》!」

枯れ木と無造作に野に捨てられている刀の数々。

戦国時代の古戦場を舞台としたフィールドで権現坂と刃はぶつかり合う。

「権現坂君!この《剣の墓場》で刀堂刃を葬るんだ!」

「よーーし!じゃあ、今度は私と翔太君でデュエル開始の宣言を…」

「な…!?お…俺も!?」

「当たり前だよ!ほらほら、私がちゃんと教えるから…」

「ふう…仕方ないな」

そして数分である程度頭に叩き込むと、2人はデュエル開始の宣言をする。

「戦いの殿堂に集いしデュエリストたちが!!」

「モ…モンスターと共に…地を蹴り宙を舞い」

「フィールド内を駆け巡る!」

(な…何だ?このすごい温度差は…)

元気いっぱいな伊織に対して、少し淡々としている翔太。

これでいいのか?という周囲の空気をよそに、宣言は続く。

「見よ!これがデュエルの最終進化系!」

「…アクション」

「「デュエル!!」」

 

権現坂

手札5

ライフ4000

 

手札5

ライフ4000

 

「先攻は俺だ!俺は手札から《超重武者カブ―10》を召喚!」

大鎧と茶色い両手槌を装備した重量感のある人型機械が現れる。

 

超重武者カブ―10 レベル4 攻撃1000

 

「俺はこれでターンエンドだ」

 

権現坂

手札5→4

ライフ4000

場 超重武者カブ―10 レベル4 攻撃1000

 

手札5

ライフ4000

 

「おいおい、攻撃力がたった1000のモンスターを召喚しただけでターン終了かよ!?」

「本当に強い男は無駄に動かんものよ」

「へっ!好きにしてろよ、この木偶の棒が!俺のターン、ドロー!」

 

手札5→6

 

「俺は《XX-セイバーボガーナイト》を召喚!」

レイピアを持ち、赤いマントと機械で改良された鎧を着たゴブリンの戦士が現れる。

 

XX-セイバーボガーナイト レベル4 攻撃1900

 

「このカードの召喚に成功した時、俺は手札からレベル4以下のX-セイバー1体を特殊召喚できる。俺は手札からチューナーモンスター、《XX-セイバーフラムナイト》を特殊召喚!」

ビームの鞭に変形できる機械の剣と両腰にXXと描かれた楯のような飾りのある鎧、そして赤いマントをつけた金髪の若者が現れると、《XX-セイバーボガーナイト》と刃をぶつけ合う。

 

XX-セイバーフラムナイト レベル3 攻撃1300(チューナー)

 

「チューナーモンスター?それって、翔太が持っていた…」

「ああ。シンクロ召喚には必ず必要となるモンスターだ。シンクロコース所属の彼が持っていても当然だ」

「この瞬間、《超重武者カブ―10》の効果発動!」

権現坂の宣言等同時に、《超重武者カブ―10》が両手槌を地面にたたきつける。

すると、そのモンスターの周囲に岩石の壁が出現した。

「相手がモンスターの特殊召喚に成功した時、俺のフィールドの超重武者を守備表示にし、ターン終了時まで守備力を500ポイントアップさせる!」

 

超重武者カブ―10 レベル4 攻撃1000→守備2000→2500

 

「残念だったな。特殊召喚しなければ、《カブ―10》を倒せたものを…。このデュエル、無駄に動いた方が負けとなる。覚えておけ!」

「いいぞ、権現坂!お前の不動のデュエルを見せてやれ!!」

「ハッ!何が不動のデュエルだ?俺はジャンジャン行かせてもらうぜ!俺のフィールドにX-セイバーが2体以上存在するとき、こいつは手札から特殊召喚できる。俺は《XX-セイバーフォルトロール》を特殊召喚!」

機械で構築された青い刃の剣と赤い鎧とゴーグルをつけた筋肉質の男が現れる。

 

XX-セイバーフォルトロール レベル6 攻撃2400

 

「あっという間にモンスターが3体の!?」

「すっげー…」

あっという間な召喚劇にタツヤ達は驚きを隠せずにいた。

しかし、刃はまだまだ動き続ける。

「驚くのはこれを見てからにしやがれ!俺はレベル4の《ボガーナイト》にレベル3の《フラムナイト》をチューニング!交差する刃持ち屍の山を踏み越えろ!シンクロ召喚!出でよレベル7!《X-セイバーソウザ》!」

ボロボロな赤いマントと鎧を身に着けた、額にX字の傷がある歴戦の戦士が現れる。

両手には長剣が装備されていて、腰のベルトのバックルにはXという文字が刻まれている。

 

X-セイバーソウザ レベル7 攻撃2500

 

(これがLDSのシンクロ召喚か…)

必要最低限の動きの権現坂と無駄のない行動を繰り返す刃。

相反する特徴を持った両者のデュエルがもし塾の存亡をかけたものでなかったら面白く観戦できただろう。

「まだまだ行くぜ!俺は《フォルトロール》の効果発動!1ターンに1度、レベル4以下のX-セイバー1体を墓地から特殊召喚できる!俺は再び《フラムナイト》を特殊召喚!」

《XX-セイバーフォルトロール》が剣を地に突き立てると、彼の背後に紫色の魔法陣が生まれ、そこから《XX-セイバーフラムナイト》が飛び出した。

 

XX-セイバーフラムナイト レベル3 攻撃1300(チューナー)

 

「これでまた、チューナーモンスターが現れた!」

「それって…もしかして…」

「そのもしかしてだぜ!俺はレベル6の《フォルトロール》にレベル3の《フラムナイト》をチューニング!白金の鎧輝かせ刃向かう者の希望を砕け!シンクロ召喚!出でよレベル9!《XX-セイバーガトムズ》!」

年齢の問題なのか、先程のXX-セイバー達よりも機械で強化された面の強い白金の鎧と大剣、そして兜を装備した戦士が赤いマントを纏って現れる。

 

XX-セイバーガトムズ レベル9 攻撃3100

 

「攻撃力3100!?翔太君の《ホワイトライダー》と同じ攻撃力!!」

「なんて奴だ…1ターンに2回のシンクロ召喚…」

攻撃力2500の《X-セイバーソウザ》と攻撃力3100の《XX-セイバーガトムズ》。

伏せカードがない権現坂の手札に攻撃阻止のカードがなければ確実にダイレクトアタックを許してしまう。

しかし、権現坂は相変わらずどっしりとした構えを崩していない。

「どうした?ビビっちまって声も出ねえか?」

「男はどっしり構えて、あわてず騒がず!!ちょこまか動く輩に勝利をつかむことはできん!」

「知った風な口を!ならいかせてもらうぜ。バトルだ!俺は《XX-セイバーガトムズ》で《超重武者カブ―10》を攻撃!」

鎧からエネルギーを送り込まれ、白いビームの膜につつまれた大剣で《XX-セイバーガトムズ》は大振りする。

岩石の盾は今の彼の敵ではなく、《超重武者カブ―10》もろとも真っ二つに切り裂いた。

「どうだ?X-セイバーの切れ味は!?まだまだいくぜ!俺は《X-セイバーソウザ》でダイレクトアタック!」

笑い声を上げながら、《X-セイバーソウザ》は権現坂の目の前まで走り、X状に2本の長剣で権現坂を切り裂いた。

「うう…!!」

巨体と日々の訓練の賜物なのか、シンクロモンスターによる凄まじい攻撃を受けたにもかかわらず、権現坂は吹き飛ばされず、わずかに仰け反るだけで済んだ。

 

権現坂

ライフ4000→1500

 

「2500のダメージを…」

「耐えきった…!!」

「うおーーー!!熱血だ!さすがは我が遊勝塾のライバル、権現坂道場の跡取りだ!!」

「ハッ!何言ってやがんだ?俺はカードを1枚伏せてターンエンドだ」

 

権現坂

手札4

ライフ1500

場 なし

 

手札6→2

ライフ4000

場 XX-セイバーガトムズ レベル9 攻撃3100

  X-セイバーソウザ レベル7 攻撃2500

  伏せカード1

 

「俺のターン、ドロー!!!」

 

権現坂

手札4→5

 

手にしたカードを見て、権現坂は笑みを浮かべる。

「(来たか…!我が不動のデュエルの要!)《超重武者テンB-N》は相手フィールド上にモンスターが2体以上存在し、俺のフィールドにモンスターが存在しないとき、手札から特殊召喚できる!」

緑色の道着と天秤を持った人型機械が現れる。

 

超重武者テンB-N レベル4 攻撃800

 

「更にこのカードの召喚・特殊召喚に成功した時、墓地に存在する《超重武者テンB-N》以外のレベル4以下の超重武者1体を守備表示で特殊召喚する。俺は墓地から《超重武者カブ―10》を特殊召喚」

何度か振り回した後、天秤から緑色の光が発する。

すると、真っ二つになっていた《超重武者カブ―10》が自動修復され、再起動する。

 

超重武者カブ―10 レベル4 守備2000

 

「動かざること山の如し…。不動の姿、今見せん!俺は《超重武者テンB-N》と《カブ―10》をリリースしてアドバンス召喚!」

2体の超重武者が消え、権現坂の目の前に巨大な緑色の光の柱が現れる。

「現れろ、レベル8!《超重武者ビッグベン-K》!」

光の柱が消えると、そこにはさすまたのような武器を持ち、胴体に複数の計測器がついていて、僧兵の装備が施されている巨大な超重武者がいた。

 

超重武者ビッグベン-K レベル8 攻撃1000

 

「こ…攻撃力がたったの1000?」

「そんなモンスターでどうやって戦うんだろう?」

超重武者についてあまり知識のない翔太と伊織は首をかしげる。

「《超重武者ビッグベン-K》の効果発動!このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、このカードの表示形式を変更できる」

 

超重武者ビッグベン-K レベル8 攻撃1000→守備3500

 

「へっ!そんなことができて、どうやって勝つつもりだ?」

「動かずして、勝つ!これが我が権現坂道場の真髄!バトルだ!!俺は《ビックベン-K》で《ガトムズ》を攻撃!」

「何!?守備表示のまま攻撃だと!?」

「《ビッグベン-K》がいる限り、俺の超重武者は守備表示のまま攻撃できる!その場合、守備力を攻撃力として扱う!」

《超重武者ビッグベン-K》の計測器が大きく揺れ、関節部分とマスクから蒸気が発せられる。

そして、左腕に力を集中させると、そのまま地面にたたきつける。

叩きつけた地面から地割れが発生し、それは《XX-セイバーガトムズ》に襲い掛かる。

「それじゃあ、3500対3100で…」

「「《ビッグベン-K》の勝ちだーーー!!」」

地割れが《XX-セイバーガトムズ》に迫ると、そこから火柱が上がり、機械騎士を焼き尽くしていった。

「しびれるーーーー!!」

「うう…!!」

 

ライフ4000→3600

 

与えたダメージはわずか、しかしエースカードを倒したことで権現坂にデュエルの流れが向き始めた。

そのことを感じながら、権現坂は手札を確認する。

「(よし…!これで布陣は整った!)俺はこれでターンエンドだ!」

 

権現坂

手札5→3

ライフ1500

場 超重武者ビッグベン-K レベル8 守備3500

 

手札2

ライフ3600

場 X-セイバーソウザ レベル7 攻撃2500

  伏せカード1

 

「俺のターン、ドロー!」

 

手札2→3

 

「俺は手札から《XX-セイバーボガーナイト》を召喚!」

 

XX-セイバーボガーナイト レベル4 攻撃1900

 

「《ボガーナイト》の召喚に成功したことで、俺は手札からレベル4以下のX-セイバー、《XX-セイバーレイジグラ》を特殊召喚!」

2本の短剣を逆手に装備し、赤いマントと機械で強化された鎧を装備したカメレオンが現れる。

 

XX-セイバーレイジグラ レベル1 攻撃200

 

「なーんだ!攻撃力200の雑魚モンスターじゃん」

「《レイジグラ》の効果発動!このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、墓地に存在するX-セイバー1体を手札に加えることができる。俺は《フォルトロール》を手札に戻すぜ」

(ということは…再び《フォルトロール》を特殊召喚し、更にその効果でチューナーを呼び出してシンクロ召喚するということか…!)

「更に俺のフィールドにX-セイバーが2体以上存在することにより、俺は手札から《XX-セイバーフォルトロール》を特殊召喚するぜ!」

 

XX-セイバーフォルトロール レベル6 攻撃2400

 

「俺は《フォルトロール》の効果発動!墓地に存在するレベル4以下のX-セイバー、《XX-セイバーフラムナイト》を特殊召喚!」

先程と同じく、再び《XX-セイバーフォルトロール》が生み出した魔法陣から《XX-セイバーフラムナイト》が現れる。

 

XX-セイバーフラムナイト レベル3 攻撃1300(チューナー)

 

「えーーー!?また特殊召喚?」

「一人でやってるよー…」

何度も続く特殊召喚にアユとフトシがうんざりとしている。

これがX-セイバーシリーズの恐ろしさ。

あの手この手で仲間を次々と呼び出してシンクロ召喚で一気にたたみかけてくる。

「俺はレベル6の《フォルトロール》にレベル3の《フラムナイト》をチューニング!白金の鎧輝かせ刃向かう者の希望を砕け!シンクロ召喚!出でよレベル9!《XX-セイバーガトムズ》!」

再び刃のエースカード、《XX-セイバーガトムズ》が現れる。

 

XX-セイバーガトムズ レベル9 攻撃3100

 

「そんな…せっかく倒した《ガトムズ》が…」

「だが、《ガドムズ》の攻撃力は3100。《ビッグベン-K》の敵じゃない」

「確かにそうだ!!」

フィールドを駆けながら、刃は竹刀を振るう。

それにより発生した風で刀と刀の間に挟まっていたアクションカードが宙に浮く。

「こいつ次第でどうなるか…?」

手にしたアクションカードを見て、刃は笑みを浮かべる。

「(よし!おあつらえ向きのカードが来やがった)俺はアクション魔法《エクストリーム・ソード》を発動!フィールド上のモンスター1体の攻撃力をバトルフェイズの間、1000ポイントアップさせる!」

《XX-セイバーガトムズ》の大剣が変形し、純粋な光剣へと姿を変えた。

 

XX-セイバーガトムズ レベル9 攻撃3100→4100(バトルフェイズ中のみ)

 

エクストリーム・ソード(アニメオリカ)

アクション魔法カード

(1):フィールド上のモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターの攻撃力はバトルフェイズの間、1000アップする。

 

「これがアクションデュエルの醍醐味だぜ…。バトルだ!俺は《ガドムズ》で《ビッグベン-K》を攻撃!」

《XX-セイバーガトムズ》の光剣の刀身がどこまでも伸びていき、最終的にはそのモンスターの身長の3倍程度の長さとなる。

「ああ…このままだと《ビッグベン-K》が…」

「けど、守備表示だからダメージは受けない」

「甘えんだよ!罠カード発動!《メテオ・レイン》!このターン、俺のモンスターが守備表示モンスターを攻撃するとき、貫通ダメージを与える!」

《X-セイバーソウザ》のダイレクトアタックで大幅にライフを失った権現坂にとっては危険なカードだ。

上空から降り注ぐ複数の流星を受け、不動明王の如き堂々と構えていた権現坂のエースモンスターが大きく態勢を崩す、

「砕け散れーーー!」

《XX-セイバーガトムズ》の光剣がそのまま《超重武者ビッグベン-K》に向けて振り下ろされる。

しかし、急に権現坂のフィールドに炎を纏った鎧が出現し、その巨大な光の刃を受け止めた。

「何!?」

「俺は手札の《超重武者装留ファイヤー・アーマー》の効果を発動!このカードを手札から墓地へ送ることで、俺のフィールドに存在する守備表示の超重武者1体の守備力をターン終了時まで800ポイントダウンさせる代わりにこのターンの間、戦闘やカード効果による破壊から守る!」

 

超重武者ビッグベン-K レベル8 守備3500→2700

 

「くそっ!!だが、守備力が下がったことでお前へのダメージが増えるぜ!」

「ぐ…ううう!!」

攻撃の衝撃が権現坂につたわり、更に光剣を受け止め続けている《超重武者装留ファイヤー・アーマー》がオーバーヒートを起こして周囲に炎がまき散らされる。

 

権現坂

ライフ1500→100

 

「(ちっ!!《ソウザ》の効果を使ってりゃあ…)なら…こいつでどうなるか!!」

再び刃は竹刀を振るう。

すると、権現坂の目の前に落ちていたアクションカードが浮き上がる。

「アクションカード!」

「ちっ!!奴の近くに…!!」

権現坂の手に渡るのを避けるため、全力で走り始める。

「あれを取れば!!」

「走れ、権現坂!!」

「俺は動かん」

「「えーーー!!?」」

(アクションカードを取らないだと…?)

ここまでのデュエルを見て、権現坂はずっとフィールドか手札しか見ていない。

アクションカードを探すようなしぐさが少しもないのだ。

「アクションカードを取らないのが不動のデュエル…ってこと?」

「いや、そうじゃない」

伊織の言葉を遊矢が否定する。

「あいつのデュエルは…」

そんな中、刃がアクションカードを手に取る。

「何!?こいつは…!!」

カードを見て、刃の顔色が悪くなる。

すると、急に彼のモンスターたちが持っていた砥ぎ石で自分の武器の手入れを始める。

「お…おいお前ら!!」

「手にしてしまったようだな、アクション罠を」

「くそっ!《エクストリーム・ソード》だったら、このまま勝てたのに!!」

「なあ、伊織。今のがアクション罠なのか?」

「そう!アクションカードは必ずしも使う人にとっていい影響を与えるわけじゃないんだ。さっき発動されたアクション罠、《砥直し》はこのターン自分のモンスターが攻撃できなくなっちゃう嫌なカードなの」

 

砥直し

アクション罠カード

(1):このターン、自分フィールド上のモンスターは攻撃できない。

 

攻撃不能となったモンスターたちを見ながら、刃は次の戦略を考える。

「(今までのターン、あいつがカードを伏せたことも、魔法・罠カードを発動したこともねえ。ただたんに手札に来ていないってことか?それに、《メテオ・レイン》の効果が終了した今、またあいつの手札にさっきみたいなカードがあったら…)なら俺はメインフェイズ2に《ガトムズ》の効果を発動!自分フィールド上のX-セイバー1体をリリースして、相手の手札1枚をランダムに選択して捨てさせる!まず俺は《ボガーナイト》をリリース!」

大剣に戻った自らの武器を地面に差した《XX-セイバーガトムズ》に《XX-セイバーボガーナイト》は自らの武器を渡すとその場を後にする。

そして、部下の武器を《XX-セイバーガトムズ》は権現坂に向けて投擲する。

「何!?手札破壊効果だと!!」

飛んできた武器は急に紫色の光線に変化して権現坂から見て右側の手札に直撃する。

光線を受け、紫色に染まったカードは自動的に墓地へ送られた。

 

手札から墓地へ送られたカード

・超重武者装留ビッグバン

 

「あーーー!!権現坂の手札が!!」

「権現坂君の手札はあと1枚で、刃君のフィールドには《レイジグラ》がいるよ」

「ということは、このターンで権現坂はすべての手札を失うということか…」

「さあ、いくぜ!今度は《レイジグラ》をリリースして《ガトムズ》の効果を発動!」

《XX-セイバーレイジグラ》の双剣が変化した光線を受け、権現坂は最期に残った手札も墓地へ送ることになった。

 

手札から墓地へ送られたカード

・超重武者装留バスターカノン

 

「これでお前の手札は0、打つ手なしということだな。俺はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

権現坂

手札3→0

ライフ100

場 超重武者ビッグベン-K レベル8 守備2700→3500

 

手札3→0

ライフ3600

場 X-セイバーソウザ レベル7 攻撃2500

  XX-セイバーガトムズ レベル9 攻撃3100

  伏せカード1

 

「どうしよう!?このままだと権現坂、絶対に負けちゃう!」

「それにしても、どうしてこの状況になってもアクションカードを探さないんだろう?」

「そうだよ!!なんでアクションカードを取らないんだよ!?しびれるくらいおかしいよ!!」

確かに、先ほどはアクション罠カードで権現坂がとった行動は正解だ。

しかし、そのカード以外にもまだまだアクションカードが存在する。

うまく使えば今の状況を打開できるカードもあるはずだ。

それでも権現坂はその場を動かず、アクションカードに見向きもしない。

そんな彼のデュエルがフトシにはあまりにもおかしく見えた。

「いや、いいんだ。これがあいつのデュエルなんだ…」

遊矢の言葉に遊勝塾のメンバー全員が注目する。

幼いころから権現坂とは親友であった遊矢には彼の不動のデュエルについて誰よりも理解できた。

といっても、初めて彼のデッキを見せてもらったときはかなり驚き、これで勝つことができるのかと疑問に思ったこともある。

しかし、権現坂はそのデッキを本気で信じ、本気で今LDSと戦っている。

やり方が違うだけで、決して権現坂は負けるつもりで今立っているわけではないのだ。

(権現坂…お前の信じる不動のデュエルで戦い抜いてくれ!)

「俺のターン、ドロー!!」

 

権現坂

手札0→1

 

「俺は手札から《超重武者装留フルバースト》を召喚!!」

2門のキャノン砲や多数のミサイルポッド、レールガンやガトリング砲などの重火器が搭載されている巨大な大鎧が現れる。

 

超重武者装留フルバースト レベル2 攻撃0

 

「フィールドに存在するこのモンスターは超重武者に装備でき、守備力を2500ポイントアップさせる!」

大鎧が消滅し、《超重武者ビッグベン-K》にすべての重火器が装着される。

 

超重武者ビッグベン-K レベル8 守備3500→6000

 

「守備力6000!?」

「バトルだ!!俺は《ビッグベン-K》で《XX-セイバーソウザ》を攻撃!!」

搭載されたすべての重火器に弾薬が装填され、一斉射撃される。

ありとあらゆる種類の弾丸を受けた《XX-セイバーソウザ》が崩れ落ちる。

しかし、さすがはX-セイバーのシンクロモンスターというべきか、消滅したそのモンスターのそばには折れた2本の剣とその剣によって破壊されたおびただしい数の弾丸が存在した。

 

ライフ3600→100

 

「「「やったーー!!」」」

「いいぞ、権現坂!!」

「やりやがったな…このくたばり損ないがーー!!罠発動!《ガトムズの緊急指令》!!俺のフィールドにX-セイバーが存在するとき、俺かお前の墓地からX-セイバー2体を俺のフィールドに特殊召喚する!!蘇れ、《X-セイバーソウザ》、《レイジグラ》!!」

《XX-セイバーガトムズ》が自らの大剣を天に掲げる。

すると彼の左右に2つの魔法陣が生まれ、2体のX-セイバーが飛び出した。

 

X-セイバーソウザ レベル7 攻撃2500

XX-セイバーレイジグラ レベル1 攻撃200

 

「更に、《レイジグラ》の効果で俺は墓地から《フォルトロール》を手札に加える!」

「せっかく倒した《ソウザ》が復活しちゃった…」

「それに、《フォルトロール》も手札に加わったぞ!!」

「相手のターンであるにもかかわらず、芋づる式に蘇ってくるモンスター…。この爆発的展開力こそがX-セイバーデッキの恐ろしさだ」

いつの間にか立ち直っていた北斗がX-セイバーのすごさを自慢げに解説するが、真澄にはそんな彼の姿が滑稽に見える。

「あなたが他人のデッキをほめるなんて…負けて、弱気になったの?」

真澄の容赦ない言葉を受けた北斗のガラスのハートが砕け、再び先程の状態に戻ってしまった。

そして、先ほど攻撃を行った《超重武者ビッグベン-K》がオーバーヒートを起こし、その場に座り込んでしまう。

更に、装着されていた火器も強制排除されてしまった。

 

超重武者ビッグベン-K レベル8 守備6000→0

 

「あれ!?なんで急に《ビッグベン-K》の守備力が下がったの!?」

「《超重武者装留フルバースト》はバトルフェイズ終了時に墓地へ送られ、装備モンスターの守備力は次の俺のターンが終わるまで0となる…」

 

超重武者装留フルバースト

レベル2 攻撃0 守備0 効果 炎属性 機械族

「超重武者装留フルバースト」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分メインフェイズに自分フィールドの「超重武者」モンスター1体を対象として発動できる。自分のフィールドのこのモンスターを守備力2500アップの装備カード扱いとしてそのモンスターに装備する。この効果を発動したターンのバトルフェイズ終了時、このカードは墓地へ送られ、装備モンスターの守備力は次の自分のターン終了時まで0となる。

(2):自分の墓地に魔法・罠カードが存在しないとき、墓地に存在するこのカードをゲームから除外することで発動できる。自分フィールド上に表側表示で存在する「超重武者」モンスターの守備力がターン終了時まで倍となる。この効果は相手ターンでも発動できる。

 

「あーあ、相手のフィールドには3体のモンスター。それに《ビッグベン-K》の守備力は0。これで権ちゃんに勝ち目はないね」

面白くなさそうに言いながら、新しいペロペロキャンディを口にする。

《超重武者装留フルバースト》を用いた捨て身の攻撃も一歩届かず、柚子や年少組はあきらめムードとなる。

しかし、遊矢は権現坂の勝利をまだ信じている。

「いや、まだだ。まだあいつは諦めていない」

(諦めていない…?だが、守備力0のモンスターしかフィールドにいないこの状況をどう覆すんだ…?)

 

権現坂

手札0

ライフ100

場 超重武者ビッグベン-K レベル8 守備0

 

手札0→1(《XX-セイバーフォルトロール》)

ライフ100

場 X-セイバーソウザ レベル7 攻撃2500

  XX-セイバーガトムズ レベル9 攻撃3100

  XX-セイバーレイジグラ レベル2 攻撃100

 

「俺のターン、ドロー」

 

手札1→2

 

「守備力がなくなったお前のエースモンスター、今ここで叩き斬ってやるぜ!!バトルだ!俺は《XX-セイバーガトムズ》で《超重武者ビッグベン-K》を攻げ…」

「それを待っていたぞ!!」

「な…!?」

「俺は墓地の《超重武者装留バスターカノン》の効果発動!!」

「何!?そのカードは…」

刃は《XX-セイバーガトムズ》の効果で破壊した2枚の手札を思い出す。

そのうちの1枚が《超重武者装留バスターカノン》だ。

「このカードは墓地にあってこそ真価を発揮する!《バスターカノン》は自分の墓地に魔法・罠カードが無いとき、攻撃対象となった俺の超重武者1体の元々の守備力分のダメージを相手に与え、攻撃モンスターを破壊する」

「何ぃーーーー!?」

巨大な火縄銃のような形のキャノン砲を《超重武者ビッグベン-K》が最期の力を振り絞って手にする。

「《ビッグベン-K》の元々の守備力は3500…刃のライフは100。これが通れば…」

「やったーー!!権現坂君の勝ち!!」

「お…おい、伊織!?」

翔太の腕にしがみつき、満面の笑みで喜ぶ中、素良は驚きのあまり持っていたペロペロキャンディを落としてしまう。

堕ちて砕けたペロペロキャンディが彼の驚きの大きさを物語っていた。

「嘘…!?」

「超重武者モンスターの一部には破格な効果を持っているけれど、魔法・罠カードが墓地に存在すると発動できないモンスターがいる。だから権現坂はすべてのモンスターが全力を発揮できるように、魔法・罠カードが入っていないフルモンスターのデッキを組んでいたんだ!」

「モンスターカードだけで構築したフルモンデッキ!?」

「正気の沙汰じゃないぞ…」

権現坂のとんでもない秘密を知り、真澄たちも素良と同じくらい驚いている。

そして、刃は笑みを浮かべながら今までの権現坂の行動に納得する。

「そうか…アクションカードを取らなかったのもすべてはこのため…」

「そうだ。アクションカードも魔法・罠カードの1種だからな。見たか!?これが不動のデュエルの真髄!!」

《超重武者装留バスターカノン》から大出力のビームが発射される。

 

超重武者装留バスターカノン

レベル4 攻撃1000 守備1000 効果 地属性 機械族

「超重武者装留バスターカノン」の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分メインフェイズに自分フィールドの「超重武者」モンスター1体を対象として発動できる。自分の手札・フィールドのこのモンスターを装備カード扱いとしてそのモンスターに装備する。装備モンスターが戦闘で相手モンスターを破壊した時、攻撃力が500アップする。

(2):自分の墓地に魔法・罠カードが存在せず、自分フィールド上に守備表示で存在する「超重武者」モンスターが攻撃対象となったとき、墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。攻撃対象となったモンスターの元々の守備力分のダメージを相手に与え、攻撃モンスター1体を破壊する。

 

「面白いことやってくれるじゃねえか!!俺は手札から速攻魔法《痛魂の呪術》を発動!俺が受ける効果ダメージを代わりに相手に与える!!」

「あいつ!!まだそんな手を!!」

「これで最後だ!!!」

ビームが急に軌道を変え、権現坂に襲い掛かる。

「(く…南無三!!)俺は墓地の《超重武者装留ビッグバン》の効果発動!!」

「また俺が墓地送りにしたカードか!!」

「自分フィールド上に超重武者が守備表示で存在し、相手がバトルフェイズ中にカード効果を発動した時、このカードを墓地から除外することで、その発動を無効にし、破壊する!!」

2つのブースターが上部に装備されている青い球体が現れ、ビームを吸収していく。

「ぐ…!!《痛魂の呪術》》が無効に!?」

「それだけではない!!さらにフィールド上のモンスターを全滅させ、1000ポイントのダメージを互いに受ける!!」

「何!?俺たちのライフは100!!」

「死なばもろともだ!!刀堂刃!!」

ビームを吸収し終えた《超重武者装留ビッグバン》の自爆装置が起動する。

吸収したビーム、そして球体の中にある膨大なエネルギーにより、大規模な爆発となる。

権現坂と刃のモンスターたちは爆発の中に消え、2人は凄まじい爆風に吹き飛ばされる。

「「うわあーーーーーーー!!!」」

爆発が収まり、煙が晴れると同時にソリッドビジョンが消える。

2人は互いの背後にある壁にもたれた状態で気を失っていた。

 

権現坂

ライフ100→0

 

ライフ100→0




引き分けに持ち込まれた権現坂と刃。
そして、次はいよいよ…。
それにしても、《EMディスカバー・ヒッポ》も《超重武者装留ビッグバン》もOCGでは効果が変更されていて驚きました。
この小説ではOCG効果を採用しますので、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》がレベル4以下のモンスターと戦っても戦闘ダメージが2倍になっても驚かないでください。
あと、アニメオリカの中で強すぎだと思うカードに関しては効果調整または変更を行います。(といっても、前の小説でもそれはやっていましたが)
となると…《EMリザードロー》の効果はどうするか…。


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第8話 もう1人のペンデュラム使い

「これって…」

「引き分け…?」

ライフが0となり、気絶している2人をタツヤ達は驚きながら見る。

「権現坂!!」

遊矢が大急ぎでデュエルフィールドへ入り、権現坂の肩を揺らす。

「うう…」

「権現坂、大丈夫か?しっかりしろ!!」

「すまん…。権現坂流不動のデュエルをもってしても、奴に勝つことができなかった…」

塾を守るための大事なデュエルに勝つことができず、自分のふがいなさを痛感する。

しかし、遊矢からかけられたのはねぎらいの言葉だ。

「引き分けにできたのはお前のおかげだ、権現坂!お前の信じるデッキの力、見せてもらったよ!」

「遊矢…」

権現坂は遊矢に、刃は北斗と真澄に支えられる形でデュエルフィールドを後にする。

「うーーん、でもこれどうなるのかな?」

「互いに1勝1敗1分け…となると…」

「延長戦です!!」

急に日美香が声を上げる。

「互いに1勝した生徒同士で決着をつける。よろしいですね?」

「そ…そんな勝手に!!」

「なら、俺がもう1度やればいいってことだな?そして相手は…」

翔太の目が真澄に向けられる。

「どうやらあなたはやる気みたいね?」

「ああ…。だが、北斗ってやつのようなレベルなら勘弁してくれ。それだとLDSのレベルの低さをさらすだけだからな」

「安心して。私は少なくとも沢渡や志島よりも強いわよ…秋山翔太」

「どうせ僕なんか…僕なんか…」

「お…おい、しっかりしろよ…」

真っ白になり、うつぶせに倒れる北斗を目覚めた刃が慰める。

あそこまでけなされた仲間をさすがに見捨てることができなかったのだ。

「待て…!!」

急に物陰から聞いたことのない声がする。

全員が注目する中、物陰から零児が姿を見せる。

「決着は私がつけよう…」

「…。あんたもLDSの生徒か?」

「関係者と言っておこうか」

翔太と零児が互いをじっと見る中、ゴーグルをかけた遊矢が翔太の肩をたたく。

「遊矢…」

「決着をつけるというなら…俺がつける!!」

「おいおい、俺の出番を取るつもりか?」

「このデュエルは遊勝塾の…父さんやみんなの塾を賭けたデュエル!!これ以上みてるだけなのはいやだ!」

「…。分かった、やるからには勝てよ」

遊矢の目を見て、翔太はため息をつくと彼の肩をたたき、伊織たちの元へ戻る。

「翔太君…いいの?もしかしたらこの人のデッキの中に…」

「鍵となるカードがあるかもな。けど、あいつは本気だからな。また別の機会を狙うさ」

普段のお気楽な目ではなく、本気に闘争心を燃やしている目。

それは翔太とデュエルをしている時には見せなかった目だ。

「そうだ!!ペンデュラム召喚は負けない!!」

「絶対に遊矢兄ちゃんが…」

「それはどうかしらね?あなた達、うちの零児さんがどれだけ強いか知らないのね?」

(零児…?)

デュエルディスクで観客席の声を聞いていた修造の脳裏にあるプロデュエリストの名前が浮かぶ。

赤馬零児…名字からわかるが、現在レオコーポレーション理事長を務める赤馬日美香の息子。

13歳でジュニアユース選手権、14歳でユース選手権優勝を果たし、15歳でプロデュエリストとなった天才で、現在はレオコーポレーションの社長を務めている。

(もしあいつが本当に赤馬零児なら…遊矢、本当に勝てるのか?)

「もういいでしょう、応援合戦は。あとは黙って見ていただきたい。私と彼のデュエルを…」

零児の言葉に両サイドは沈黙する。

そして、遊矢と零児がデュエルフィールドに出る。

デュエルフィールドで零児と対峙する遊矢はさらに険しい表情となる。

そんな彼にアユは恐怖を抱き、無意識に柚子にしがみつく。

「遊矢…どうしちゃったのかしら?」

「勝つことだけを考えているんじゃないのか?楽しむことよりも、あいつを倒すことに…」

「でも…あれは遊矢じゃない…」

柚子が知っている遊矢は常に明るく楽しくデュエルをしている。

険しい表情の遊矢はあまりにも彼らしくないと柚子には思えた。

「遊矢、笑って!!ここは明るく楽しいエンタメデュエルを教えるための塾でしょう!?忘れないで、笑顔を!!」

それは柚子が今できる精いっぱいのことだった。

「笑顔…」

柚子の言葉により、険しい表情が消えていく。

遊矢は小さいころからずっと遊勝のデュエルを見てきた。

彼はどんな状況でも笑顔を忘れず、デュエルを楽しんだ。

自分もそうならなければ、遊勝のようなデュエリストにはなれない。

ゴーグルを外し、笑顔になる。

「そうだよな…明るく楽しむのが俺のデュエル…。俺が笑顔にならなきゃ、楽しいデュエルはできない。よーし見せてやる!!最高の笑顔と楽しいエンタメデュエルを!!」

遊矢の言葉に柚子たちが歓声を上げる。

しかし、日美香は不敵な態度を崩していない。

「ふん…。その笑顔がいつまで続くかしら?」

「アクションフィールドはどうする?」

「君の好きにしてくれて構わない」

零児の言葉を受けた遊矢は修造に合図を送る。

修造はうなずくと、アクションフィールドを選び始めた。

「(遊矢は俺に任せるといっている。相手はプロデュエリスト…。たとえ卑怯と言われようとも、今は遊矢のため、そして遊勝塾を守るため、あいつが最も得意とするアクションフィールドを…)最高の舞台で、最高のエンタメデュエルを見せてくれ、遊矢!アクションフィールドオン!フィールド魔法《アスレチック・サーカス》を発動!!」

色とりどりのバルーンと派手なデザインの柱、そして空中ブランコとトランポリン、巨大なステージ。

さまざまな障害物と高低差のあるフィールドで、遊矢にとっては最も得意なフィールドだ。

これは修造が今できる彼への精いっぱいのエール。

必ず勝てというメッセージ。

「うわあ…サーカスだ!!」

「私、こういうの初めて見た!!」

「男気あふれる援護射撃だ、塾長!!」

「後は任せたぞ…遊矢」

「期待に応えるのがエンターテイナー!最高のデュエルを見せてやる!!」

2人はデュエルの準備を整える。

そして、柚子とタツヤ、フトシ、アユがデュエル開始の宣言をする。

「戦いの殿堂に集いしデュエリストたちが!」

「モンスターと共に地を蹴り宙を舞い!」

「フィールド内を駆け巡る!」

「見よ、これがデュエルの最強進化系!」

「「「「アクショーーーン…」」」」

「「デュエル!!」」

 

零児

手札5

ライフ4000

 

遊矢

手札5

ライフ4000

 

「フィールドを選ばせてもらったお礼だ。先攻はあんたに譲るよ」

「お礼…?譲る…?なるほど、君はそういう思考をするのか?」

「へ…?」

遊矢にとって、これはきわめて当たり前の行動でしかない。

だが、レオコープレーションの社長であり、経営者として、そしてプロデュエリストとして数々の戦いを潜り抜けた零児とは異なる思考だ。

「まあいい、申し出は受け取っておこう。では私のターン。私は手札から永続魔法《法皇の契約書》を発動。このカードは私のターンのスタンバイフェイズ毎に1000ポイントのダメージを私は受ける」

「え…?」

「自分のターンが来る度に…」

「1000ポイントのダメージを受けるだと!?」

初期ライフ4000では、1000ポイントのダメージはあまりにも大きい。

そんなカードを通常のデュエリストはデッキに入れるのをためらう。

だが、そういう普通の考え方ではプロにはなれない。

「《法皇の契約書》は発動した時、デッキからレベル4以下のDDモンスター1体を手札に加える。私はデッキから《DDシーホース》を手札に加える」

「DD…?」

聞きなれない単語にフトシが首をかしげる。

「Different Dimention。異次元のことだよ」

「更に私は永続魔法《地獄門の契約書》を発動。このカードも自分のターンのスタンバイフェイズごとに1000ポイントのダメージを私に与える効果を持つ」

「何!?これで次のターン、奴は!!」

「2000ポイントのダメージを…!?」

リスクを全く顧みない零児の戦法に遊矢と柚子、権現坂は驚きを隠せずにいる。

(スタンバイフェイズごとに自分のライフを1000減らす契約書…おそらく、それに釣り合うほどのメリットを奴に…)

「《地獄門の契約書》は1ターンに1度、デッキからDDモンスター1体を手札に加えることができる。私はデッキから《DDリリス》を手札に加える。そして、私は更に永続魔法《魔神王の契約書》を発動。このカードも他の契約書と同じダメージ効果を持つ」

「これで3000ポイントのダメージ…?こんなリスクを冒して何を…??」

「《魔神王の契約書》は1ターンに1度、手札・フィールド・墓地のモンスターを素材に悪魔族融合モンスターを融合カードなしで融合召喚できる」

「えーーー!?《フュージョン・ゲート》みたいな効果を持ってるの!?」

「私が融合するモンスターは《DDシーホース》と《DDリリス》」

馬の上半身と魚の下半身を持つ、灰色のモンスターと薔薇でできた女性のような体つきのモンスターが現れる。

「大地と海を駆ける獣よ、闇より誘う妖婦よ!冥府に渦巻く光の中で、今ひとつとなりて新たな王を生み出さん。融合召喚!生誕せよ!《DDD烈火王テムジン》!」

赤いタワーシールドと剣、そして馬を模した鎧を身に着けた王が炎を纏って現れる。

 

DDD烈火王テムジン レベル6 攻撃2000

 

DDシーホース

レベル4 攻撃2200 守備1500 効果 闇属性 悪魔族

(1):このカードは自分フィールド上に他の「DD」モンスターが存在しないとき、攻撃できない。

 

「すげえ…」

「あいつ、融合使いか!?」

「でも、あのモンスターを呼び出すためにあんなリスクを…」

「DDD…?」

「今度はDが3つ?」

「どういう意味だ?」

零児の戦法を疑問に思う柚子たちとは異なり、素良は険しい表情で見ている。

「なんか…全然違う。もしかして本物?でも…」

(3000ポイントのダメージを覚悟で呼び出したのは攻撃力2000の融合モンスターだけだと…!?奴の狙いは本当にそれだけなのか?)

一方、修造は零児の戦績を確認している

「過去の試合で、赤馬零児が融合召喚を使ったという記録はない。それを使わずに圧倒的な強さを見せた彼がさらに力をつけたというのか…?」

「私はカードを2枚伏せて、ターンエンドだ」

 

 

零児

手札5→0

ライフ4000

場 DDD烈火王テムジン レベル6 攻撃2000

  地獄門の契約書(永続魔法)

  法皇の契約書(永続魔法)

  魔神王の契約書(永続魔法)

  伏せカード2

 

遊矢

手札5

ライフ4000

 

「手札を使い切っちゃった…」

ターンを終えた零児は眼鏡を整え、顔にわずかに付着した埃を払う。

更に、挑発するかのような少し見下した目を遊矢に向ける。

「何よあの態度、偉そうに!!」

「4番目に出てきた補欠のくせに!!余裕か!!?」

「余裕?それはあるかもね。自分から3000ポイントのリスクを負ったのも遊矢を舐めてるからなのかも…」

素良の予想に柚子と権現坂、そして伊織も腹を立てる。

「そんな…!!」

「けしからん!!対戦相手を舐めるなど、勝負師の…デュエリストの風上にも置けん!!」

「そーだそーだ!!」

「遊矢兄ちゃん!あんな奴、やっつけちゃえ!!」

「ケチョンケチョンにやっちゃって!!」

「しびれまくるくらいぶちのめしてやれ!!」

怒ったタツヤ達が声援を送る中、翔太は2枚の伏せカードをじっと見ている。

(これで考えられるのは…あえて3000ポイントのダメージを受けてそれを引き金に新たなカードを発動する…もしくは契約書を破壊してリスクを踏み倒す…そのどちらか…。だが…)

《魔装騎士ペイルライダー》を握り、零児の《DDD烈火王テムジン》を見る。

(なんだ…?この遠い昔に別れた仲間と再会するようなこの感じは…)

そんな疑問を翔太が抱く中、遊矢は達也たちの声援にこたえる。

「ああ!!だが、しびれさせるのは俺のエンタメデュエルでだ!」

そして、アクションカードを探すために走り始める。

「俺のターン、ドロー!!」

 

遊矢

手札5→6

 

「俺は手札から《EMウィップ・バイパー》を召喚!」

 

EMウィップ・バイパー レベル4 攻撃1700

 

「《ウィップ・バイパー》の効果発動!1ターンに1度、フィールド上のモンスター1体の攻撃力・守備力をターン終了時まで入れ替える!そしてこの効果はお互いのターンのメインフェイズに発動できる!混乱する毒!!」

《EMウィップ・バイパー》が尻尾についているハートマークが先端にある紐を揺らす。

すると《DDD烈火王テムジン》が催眠術にかかり、剣を置いて眠ってしまう。

 

DDD烈火王テムジン レベル6 攻撃2000→1500

 

「《テムジン》の攻撃力が下がった!!」

「《ウィップ・バイパー》の攻撃力は1700!これなら勝てる!」

「しびれるーー!!」

「バトルだ!《ウィップ・バイパー》で《烈火王テムジン》を攻撃!」

《EMウィップ・バイパー》は眠っている《DDD烈火王テムジン》の首にかみつこうと相手に飛びかかる。

「永続罠《戦乙女の契約書》を発動!このカードが発動している間、私の悪魔族モンスターの攻撃力は相手ターンの間1000ポイントアップする。そして、このカードも他の契約書と同じリスクを持つ」

「これで…次の奴のターンのスタンバイフェイズ時に合計4000のリスクか」

 

DDD烈火王テムジン レベル6 攻撃1500→2500

 

「どーしよう!!このままだと《ウィップ・バイパー》が返り討ちにされちゃうよ!!」

急なパワーアップに驚き、のけぞる《EMウィップ・バイパー》に目覚めた《DDD烈火王テムジン》の剣が襲い掛かる。

そんな中、遊矢は黄色いバルーンの上にあるアクションカードを回収し、他のバルーンを行き来して空中ブランコの出発点まで移動した。

「アクション魔法《ハイダイブ》を発動!フィールド上のモンスター1体の攻撃力をターン終了時まで1000ポイントアップさせる!」

《EMウィップ・バイパー》はかろうじて《DDD烈火王テムジン》の迎撃をかわすと、真下に出現したトランポリンを使って大きく飛び上がる。

 

EMウィップ・バイパー レベル4 攻撃1700→2700

 

ハイダイブ(アニメオリカ)

アクション魔法カード

(1):フィールド上のモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターの攻撃力をターン終了時まで1000ポイントアップする。

 

「よーし、いいぞ!!」

「これでまたまた逆転よ!」

「しびれるーーー!!」

(あいつ…こんなに動いてなんで痩せないんだ…?」

体を激しく動かすフトシを見て、翔太の頭にどうでもいい疑問が浮かぶ。

「私は《法皇の契約書》の効果を発動。1ターンに1度、私のDDモンスターが攻撃されるとき、そのモンスターは戦闘では破壊されず、自分が受ける戦闘ダメージを0にすることができる」

「何!?」

《DDD烈火王テムジン》の目の前に激しい炎の壁が生まれる。

攻撃不可能と判断した《EMウィップ・バイパー》はおとなしく引き下がり、遊矢の右腕に巻きつく。

 

法皇の契約書

永続魔法カード

(1):このカードを発動するとき、自分はデッキからレベル4以下の「DD」モンスター1体を選択して手札に加える。

(2):1ターンに1度、自分フィールド上の「DD」モンスターが戦闘を行う時に発動できる。そのモンスターは戦闘では破壊されず、その戦闘で発生する自分への戦闘ダメージは0となる。

(3):自分スタンバイフェイズに発動する。自分は1000ダメージを受ける。

 

「く…!!結構見せてくれるじゃん!」

「うーん…ここまでは互角。問題は…」

バトルが終了した今、修造の目は零児の4枚の契約書に向けられる。

「おそらく、最後の伏せカードは…」

修造は成績はあまり良くなかったが、元プロデュエリスト。

零児がむやみにハイリスクのカードを使うわけがないことはよくわかっている。

「互角じゃないわ!!」

「次の奴のターンのスタンバイフェイズ時、合計4000のダメージを負うことになっている!つまり…」

「ここで遊矢がターンエンドすれば、遊矢の勝利に…!!」

「あっけねーの」

「それはどうかな?」

「え…?」

「なんかあいつ、そういう単純ミスをするように見えないけど…」

素良はこれまでのデュエルとは異なり、かなり大真面目に遊矢と零児のデュエルを見ている。

まるで、零児の実力を少しでも多く知るためかのように…。

「…」

「ふっ…」

「何がおかしい!?」

「失敬。最初に君がお礼とか譲るとかいう言葉を口にしたのを思い出してね。君は心の優しい人間のようだ。だが、そんな優しさなど、戦いの舞台では一切通用しない!!」

「な…!?」

「君はターンエンドすることで勝利を得られる状況にいながら、それをためらっている。おそらく、それはその優しさゆえ。そんな甘さがどのような結果をもたらすのか…」

遊矢の人間性をここまで確かめていたかのような言動。

そして、零児の2枚目の伏せカードが彼の言った甘さがもたらした結果を示す。

「私は罠カード《契約浄化》を発動!」

発動と同時に、零児の4枚の契約書が消滅する。

そして、《DDD烈火王テムジン》の攻撃力が下がる。

 

DDD烈火王テムジン レベル6 攻撃2500→1500

 

「何!?」

「これで契約は無効となった。このカードは私のフィールドに存在する契約書をすべて破壊し、破壊した数だけデッキからカードをドローする。更にその効果でドローしたカード1枚につき、1000ポイントライフを回復する」

 

零児

手札0→4

ライフ4000→8000

 

「ライフが一気に8000に!?」

「しかも、4000ポイントのダメージを無効にし、4枚もカードをドローしただと!?」

零児はこれでリスクを回避しただけではなく、いずれ背負うであろう新たなリスクに対処するためのライフを手にしたのだ。

まるで、手にした利益の一部を企業内に蓄積する内部留保のように。

「俺は…カードを1枚伏せて、ターンエンド。それと同時に《ウィップ・バイパー》と《ハイダイブ》の効果は消える」

 

零児

手札4

ライフ8000

場 DDD烈火王テムジン レベル6 攻撃1500→2000

 

遊矢

手札6→4

ライフ4000

場 EMウィップ・バイパー レベル4 攻撃2700→1700

  伏せカード1

 

「甘い…か…」

零児の言葉はある意味正しい。

今のような塾をかけた戦いでは、甘さを捨てなければならないだろう。

「でも、もしそれで勝てたとしてもうれしくはないな。みんなが期待する、俺のエンタメデュエルがないまま終わったんじゃ…。あんたから見れば、これも甘ったれた考えかもしれないけど…だけど、俺は俺のデュエルで…父さんから教わったエンタメデュエルで勝ってみせる!」

しかし、遊矢はエンターテインメントデュエリストを目指している。

みんなが楽しめるデュエルをどんな状況でもできるようにならないとそんなデュエリストにはなれない。

そのことを、デュエルの前に柚子が思い出させてくれた。

「榊遊勝のデュエルでか…?」

「父さんを…父さんを知っているのか!?」

「ハハハ、そりゃ知ってるさ。お前の父ちゃんは有名人だからな」

「逃げ出した元チャンピオンとしてね…」

「ぐ…!!」

刃といつの間にか立ち直っていた北斗に尊敬する父親を愚弄されたことに怒りを覚える。

しかし、怒りを覚えたのは遊矢だけではなかった。

「黙れ!!!!」

「「う…!!」」

怒る零児に北斗と刃はおびえ切った表情となる。

「失礼。もちろん、君の父上のことは存じ上げている。現在のアクションデュエルの隆盛を築き上げたパイオニアとして、心から尊敬している」

「…」

今まで、身近な人々とは異なり、自分の周りでは遊勝を逃げ出した元チャンピオンとして愚弄する声がほとんどだった。

実際彼が行方不明となった後、メディアはそろって遊勝を貶めた。

学校では遊矢はそれがきっかけでいじめのターゲットにされ、半分不登校になってしまったこともある。

そんな彼にとって、今の零児はどこか新鮮で、他の人とは違うように思えた。

「今日は見せてもらうよ、君が父上から継承したデュエルを…。であるならば、私も君に本気を見せなければならない」

「本気って…じゃあ、今までは!!」

手加減をしていたのか…そう続くはずだった遊矢の言葉を遮り、零児はターンを開始する。

「私のターン、ドロー!!」

 

零児

手札4→5

 

「私は手札からチューナーモンスター、《DDナイト・ハウリング》を召喚」

紫色の大きな口が異次元から現れる。

 

DDナイト・ハウリング レベル3 攻撃300(チューナー)

 

「チューナーだと!?」

「このカードの召喚に成功した時、墓地からDDモンスター1体を特殊召喚できる。その効果で私は墓地から《DDリリス》を特殊召喚」

急に遊矢のそばに次元の渦が生まれる。

「な…うわあ!!?」

するとそこから急に《DDリリス》が現れ、遊矢はびっくりして柱にしがみつく。

「ただし、この効果で特殊召喚されたモンスターの攻撃力・守備力は0となり、効果も無効化される。更に、そのモンスターが破壊された時、私は1000ポイントのダメージを受ける」

 

DDリリス レベル4 攻撃100→0

 

「これで、レベル7か9のシンクロモンスターをシンクロ召喚できる…」

「まさしく…ここからが本番」

「私はレベル4の《DDリリス》にレベル3の《DDナイト・ハウリング》をチューニング!闇を切り裂く咆哮よ。疾風の速さを得て新たな王の産声となれ!シンクロ召喚!生誕せよ!レベル7!《DDD疾風王アレクサンダー》!」

姿は《DDD烈火王テムジン》に若干似ているが、右手に剣を持ち、青い鎧と緑のマントを身に着けた王が姿を現す。

 

DDD疾風王アレクサンダー レベル7 攻撃2500

 

「今度はシンクロ召喚を…!?」

融合召喚だけでなく、シンクロ召喚まで使いこなす。

遊矢と零児のデュエリストの力量の差がどれだけ大きいかそれだけでもわかる。

だが、零児のデュエルはさらに想像できない方向へ進んでいく。

「まだ終わりではない。私は《烈火王テムジン》の効果を発動。1ターンに1度、このカード以外のDDモンスターの特殊召喚に成功した時、墓地からDDモンスター1体を特殊召喚できる。私は墓地から《DDシーホース》を特殊召喚」

《DDD烈火王テムジン》が剣を天に掲げると、上空に炎の渦が生まれ、そこから《DDシーホース》が降りてくる。

 

DDシーホース レベル4 攻撃2200

 

「そして、《疾風王アレクサンダー》の効果発動。1ターンに1度、このカード以外のDDモンスターのの特殊召喚に成功した時、墓地からレベル4以下のDDモンスター1体を特殊召喚できる。蘇れ、《DDリリス》!!」

《DDD疾風王アレクサンダー》が《DDD烈火王テムジン》と同じやり方で上空に風の渦が生まれ、そこから《DDリリス》が現れる。

 

DDリリス レベル4 攻撃100

 

「レベル4のモンスターが2体…まさか!?」

「私はレベル4の《DDシーホース》と《リリス》でオーバーレイ!この世の全てを統べるため、今 世界の頂に降臨せよ!エクシーズ召喚!生誕せよ!ランク4!《DDD怒濤王シーザー》!」

青い亀のような重装な鎧を身に着け、鋼の大剣を持った王が現れる。

 

DDD怒濤王シーザー ランク4 攻撃2400

 

「ああ…」

「エクシーズ召喚まで…」

「なんて奴だ…」

「まさか、あの人のデッキって翔太君と…」

「ああ…おそらく、俺と同じタイプのデッキだ…」

融合、エクシーズ、シンクロのギミックをすべて搭載したデッキ。

ある意味では、そのようなデッキは正気の沙汰ではないだろう。

だが、少なくとも零児は現にそれを十二分に使いこなしている。

「DDDとはすなわち、Different Dimention Daemon。異次元をも制する王の力。たっぷり味わうがいい」

3体の王を前に、《EMウィップ・バイパー》はすっかり怖気づいて遊矢の腕から離れない。

「いくぞ、バト…」

「ちょ…ちょっと待った!俺は《ウィップ・バイパー》の効果を発動!フィールド上のモンスター1体の攻撃力・守備力を入れ替える!その効果で俺は《怒涛王シーザー》の攻撃力と守備力を入れ替える!混乱する毒!!」

首を思いっきり降って恐怖を紛らわせた《EMウィップ・バイパー》が催眠術を使い、《DDD怒涛王シーザー》を軽い睡眠状態にした。

 

 

DDD怒濤王シーザー ランク4 攻撃2400→1200

 

「私は《烈火王テムジン》で《ウィップ・バイパー》を攻撃!」

《DDD烈火王テムジン》の炎を纏った剣が《EMウィップ・バイパー》を丸焼きにした後、真っ二つに切り裂いた。

「くっ…!!《ウィップ・バイパー》!!」

 

遊矢

ライフ4000→3700

 

「なら俺は罠カード《EMアドバンスチケット》を発動!俺のフィールドのEMが破壊された時、そのモンスターを墓地から守備表示で特殊召喚する!蘇れ、《ウィップ・バイパー》!!」

遊矢の目の前に《EMディスカバー・ヒッポ》が描かれている大量のチケットが降ってきて、それと共に《EMウィップ・バイパー》が舞い降りる。

 

EMウィップ・バイパー レベル4 守備900

 

「更に、俺はデッキからレベル4以下のペンデュラムモンスター以外のモンスター1体を特殊召喚する!俺はデッキから《EMソード・フィッシュ》を守備表示で特殊召喚!」

 

EMソード・フィッシュ レベル2 守備600

 

EMアドバンスチケット

通常罠カード

(1):自分フィールド上に表側表示で存在する「EM」モンスター1体が戦闘・効果で破壊され墓地へ送られた時、そのモンスター1体を対象にして発動できる。そのモンスターを守備表示で特殊召喚する。その後、デッキからレベル4以下のPモンスター以外のモンスター1体を選択し、特殊召喚する。

 

「ほう…」

「そして、《EMソード・フィッシュ》の効果発動!このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、相手モンスターの攻撃力・守備力を600ポイントダウンさせる!」

《EMソード・フィッシュ》の分身が18体現れ、6匹で1体の王を包囲する。

 

DDD烈火王テムジン レベル6 攻撃2000→1400

DDD疾風王アレクサンダー レベル7 攻撃2500→1900

DDD怒涛王シーザー ランク4 攻撃1200→600

 

「ならば私は手札から速攻魔法《DDDの評議会》を発動。私のフィールドにDDDモンスターが存在するとき、フィールド上に存在するすべてのモンスターの攻撃力・守備力を元に戻し、私のライフを1000回復させる」

「何!?」

「ストロング石島とのデュエルは私も見させてもらったよ。《ソード・フィッシュ》の効果は厄介だ。対処させてもらう。」

 

DDD烈火王テムジン レベル6 攻撃1400→2000

DDD疾風王アレクサンダー レベル7 攻撃1900→2500

DDD怒涛王シーザー ランク4 攻撃600→2500

 

零児

ライフ8000→9000

 

DDDの評議会

速攻魔法カード

(1):自分フィールド上に「DDD」モンスターが表側表示で存在する場合にのみ発動できる。フィールド上に存在するすべてのモンスターの攻撃力・守備力を元々の数値に戻し、自分は1000LPを回復する。

 

「《疾風王アレクサンダー》、《怒涛王シーザー》、残りのモンスターを攻撃しろ!」

2体の王は自らの剣で《EMソード・フィッシュ》と《EMウィップ・バイパー》を切り裂いた。

「くっそーーー!!遊矢兄ちゃんのモンスターが全滅した!!」

「私はカードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

零児

手札5→2

ライフ9000

場 DDD烈火王テムジン レベル6 攻撃2000

  DDD疾風王アレクサンダー レベル7 攻撃2500

  DDD怒涛王シーザー(オーバーレイユニット2) ランク4 攻撃2400

  伏せカード2

 

遊矢

手札4

ライフ3700

場 なし

 

「すごいな…これがあんたの本気か。3つの召喚法を操るなんて、正直驚いたよ」

翔太の零児と同じように3つの召喚法を操り、更にペンデュラム召喚も使いこなす。

しかし、彼が1回のデュエルでその3つすべてを使ったところは見たことがない。

零児がこの2ターンで3つの召喚法をすべて使い切ったのはある意味では新鮮だった。

「今度は俺のターンだ!俺は融合もシンクロもエクシーズもできないけど、俺にはペンデュラム召喚がある!お楽しみはこれからだ!!」

 

遊矢

手札4→5

 

「(来た…!!)レディースアンドジェントルマン!!ご来場の皆様、長らくお待たせしました!!これより榊遊矢によるエンターテインメントデュエルをお見せします!!」

「うおーーー!!」

「待ってました!!」

「いっけーー!遊矢君!!」

伊織たちは盛り上がりを見せるが、なぜか日美香は陳腐なものを見るような目をしている。

「俺はスケール1の《星読みの魔術師》とスケール8の《時読みの魔術師》でペンデュラムスケールをセッティング!これでレベル2から7までのモンスターを同時に召喚可能!揺れろ!魂のペンデュラム!天空に描け光のアーク!ペンデュラム召喚!! 来い、俺のモンスター達!!《EMファイア・マフライオ》!《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!!」

シルクハットと蝶ネクタイ、そして炎のマフラーを身に着けた白いライオンが《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》と共に姿を見せる。

 

EMファイア・マフライオ レベル3 攻撃800

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

「出たーー!ペンデュラム召喚!」

「新しいモンスターも出た!」

「しびれるーーー!!」

「さあ、反撃よ!遊矢!」

「いけーー!!」

「頼むぞ、遊矢!!」

ペンデュラム召喚により、柚子達のテンションが高まる。

「さあさあご注目!これより我が一座が誇るスーパースター、《オッドアイズ》による炎の曲芸をご覧に入れます!!」

ゴーグルをかけた遊矢は飛び降り、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》の背に乗る。

「いくぞ、《オッドアイズ》!まずは《烈火王テムジン》を攻撃だ!その2色の眼で、とらえたすべてを焼き払え!!螺旋のストライク・バースト!!」

《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》の口からその名の通りドリル状に回転する炎のブレスが放たれ、《DDD烈火王テムジン》を破壊する。

「《オッドアイズ》が相手モンスターを攻撃するとき、相手に与える戦闘ダメージは倍になる!」

「…」

 

零児

ライフ9000→8000

 

「やった!!500の倍で1000のダメージ!」

「更に、《ファイア・マフライオ》の効果発動!このカードが攻撃表示で存在し、俺のペンデュラムモンスターが戦闘で相手モンスターの破壊に成功した時、バトルフェイズ終了時まで攻撃力を200ポイントアップしてもう1度だけ攻撃できる!」

《EMファイア・マフライオ》は炎のマフラーを空へ飛ばすと、それは自然に炎の輪となってそのモンスターの真上に浮遊する。

「いけ、あの炎の輪をくぐるんだ!《オッドアイズ》!!」

遊矢の命令を聞いた《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》は力強く跳躍し、炎の輪をくぐる。

輪をくぐり終えると炎はマフラーとなって《EMファイア・マフライオ》の元へ戻った。

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500→2700(バトルフェイズ中のみ)

 

「火の輪くぐりだ!!」

「あんな技を使ってパワーアップさせるなんて…」

「まさに猛獣使い、いや、ドラゴン使い!!」

柚子達が面白そうに眺める中、修造に限っては窓に顔を張りつかせるくらいにじっと遊矢のデュエルを見ている。

「これこそエンタメだ!燃えるぜ遊矢、熱血だーーー!!」

「2回目の攻撃の対象は《疾風王アレクサンダーだ!!」

再び《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が螺旋のブレスを放ち、《DDD疾風王アレクサンダー》を焼き尽くす。

そして、ダメージは倍となって零児を襲う。

「…」

 

零児

ライフ8000→7600

 

「くーーー!!しびれすぎてたまらなーい!!」

「これで、あいつの連続復活コンボを封じたな…」

先程のシンクロ召喚と融合召喚の連続技は《DDD烈火王テムジン》と《DDD疾風王アレクサンダー》があったからこそできた芸当。

その2体を先に倒したことで、零児のさらなる展開を封じ込めることができた。

攻撃を終えた後も《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》は走り続ける。

そして、ステージの端にあるアクションカードを遊矢は大きく体を傾けて回収する。

「よーし、今日の俺はきてるぞ!!俺はアクション魔法《ワンダー・チャンス》を発動!このターン、俺のモンスター1体はもう1度攻撃できる!今度は《怒涛王シーザー》だ!!」

再び放たれた螺旋のブレスにより、3体目の王も破壊されてしまった。

その時、《DDD怒涛王シーザー》のオーバーレイユニットが1つ消えたことを遊矢達は気づかなかった。

「…」

 

零児

ライフ7600→7000

 

ワンダー・チャンス(アニメオリカ)

アクション魔法カード

(1):自分フィールド上のモンスター1体を選択して発動できる。選択されたモンスターはこのターンのバトルフェイズ中、もう1度攻撃できる。

 

「やったーー!!全部やっつけた!」

「おまけに相手のライフを2000も減らした!!」

「もう、しびれすぎだよーー!!」

遊勝塾側がまるでもう勝利したかのようなムードとなる。

しかし、翔太は日美香がいまだに不敵な笑みを浮かべていることを疑問に思う。

(確かに。奴のDDDモンスター3体は撃破した。だが、彼女はまだあの男の勝利を確信してる…。まだまだ序の口ということか…?)

攻撃を終え、走り終えた《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》から遊矢が降りる。

「皆様、ご喝采ありがとうございます!《ファイア・マフライオ》は自身の効果により、攻撃できません!これにて、このターンの《オッドアイズ》の攻撃は終了し、攻撃力は元に戻ります。よく頑張ったな…」

3度も攻撃し、若干疲れを見せる《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》をやさしくなでる。

「私は《怒涛王シーザー》と《烈火王テムジン》の効果を発動。《烈火王テムジン》は戦闘または相手のカード効果で破壊された時、墓地から契約書を1枚手札に加えることができる。そして、《怒涛王シーザー》はフィールドから離れたとき、デッキから契約書を1枚手札に加えることができる。よって、私は墓地から《法皇の契約書》、デッキから《契約書の更新》を手札に加える」

「何!?また契約書を…」

「まだだ。更に私は《怒涛王シーザー》のもう1つの効果を発動。そしてそれにチェーンして罠カード《DDDの先行投資》を発動。まずは《先行投資》の効果だ。このターン戦闘で破壊された私のDDDモンスターの数だけデッキからDDモンスターを手札に加える。そして、《怒涛王シーザー》の効果だ」

急に零児のフィールド上空に3つの次元の裂け目が生まれる。

「このカードのオーバーレイユニットを1つ取り除くことで、このターンのバトルフェイズ終了時にこのターン破壊されたモンスターを可能な限り私の墓地から特殊召喚することができる」

「そんな!!せっかく倒したモンスターが全部復活するなんて…」

「うわぁ…なんだかすごくえげつない効果…」

(《アブソルートZero》と《アシッド》の全滅コンボを使うお前が言うな…)

次元の裂け目から3体の王が無傷な姿で現れ、零児のフィールドに舞い戻る。

更に、零児の手札に3枚のDDモンスターが加わる。

 

DDD烈火王テムジン レベル6 攻撃2000

DDD疾風王アレクサンダー レベル7 攻撃2500

DDD怒涛王シーザー ランク4 攻撃2400

 

零児

手札2→7(うち2枚《法皇の契約書》、《契約書の更新》)

 

EMファイア・マフライオ(アニメオリカ・一部創作)

レベル3 攻撃800 守備800 炎属性 獣族

「EMファイア・マフライオ」の(1)のモンスター効果は1ターンに1度しか発動できない。

【Pスケール:青3:赤3】

(1):1ターンに1度、自分フィールド上に表側表示で存在するPモンスター1体を選択して発動する。選択されたモンスターはこのターン、相手に与える戦闘ダメージが0となる代わりにバトルフェイズ中もう1度だけ攻撃できる。

【モンスター効果】

(1):このカードが自分フィールドに表側攻撃表示で存在し、自分フィールドのPモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊して墓地へ送った場合、自分モンスター1体を対象として発動出来る。対象モンスターの攻撃力をバトルフェイズの間200アップし、もう1度だけ続けて攻撃する事が出来る。この効果の発動ターン、このカードは攻撃出来ない。

 

DDDの先行投資

通常罠カード

「DDDの先行投資」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に表側表示で存在する「DDD」モンスターが戦闘で破壊されたターンのバトルフェイズ終了時に発動できる。このターン、戦闘で破壊され墓地へ送られた「DDD」モンスターの数だけデッキから「DD」モンスターを手札に加える。

 

「3体の王がよみがえったか…」

「それに、《DDDの先行投資》であの人、3枚もDDモンスターをサーチしたよ。それに、また契約書も手札に加えたし…次のターン、まずいことが起こるかも…」

《DDD怒涛王シーザー》の効果はあまりにも凄まじく、インチキ効果に等しい。

そのような抗議を想定してなのか、零児はその効果の代償を説明し始める。

「ただし、それだけの利益を得るためにはリスクがある。この効果を発動した次の自分のターンのスタンバイフェイズ時にこの効果で特殊召喚したモンスター1体につき1000ポイントのダメージを受ける」

「なるほどな…《契約浄化》と《DDDの評議会》でライフを回復したのはすべてはこのため…」

あえて3体のDDDモンスターを投資して3体のDDモンスターと2枚の契約書という利益を得て、更に投資したモンスターを《DDD怒涛王シーザー》の効果ですべて回収、そしてそのリスクを2枚のカードで得たライフで埋め合わせる。

結果、零児は元本を減らすことなく大幅な利益を得ることに成功した。

そして、遊矢は零児に利益を与える手伝いをしてしまったことになる。

「なら…俺は手札から魔法カード《苦渋の宝札》を発動。俺の手札がこのカードだけで、相手の手札が4枚以上存在するときに発動でき、俺はデッキからカードを2枚ドローする」

 

遊矢

手札5→1→2

 

苦渋の宝札

通常魔法カード

「苦渋の宝札」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分の手札がこのカードのみで、相手の手札が4枚以上存在する場合にのみ発動できる。自分はデッキからカードを2枚ドローする。

 

「そして…カードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

零児

手札7(うち2枚《法皇の契約書》、《契約書の更新》)

ライフ7000

場 DDD烈火王テムジン レベル6 攻撃2000

  DDD疾風王アレクサンダー レベル7 攻撃2500

  DDD怒涛王シーザー ランク4 攻撃2400

  伏せカード1

 

遊矢

手札2→0

ライフ3700

場 オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500

  EMファイア・マフライオ レベル3 攻撃800

  星読みの魔術師(青) ペンデュラムスケール1

  時読みの魔術師(赤) ペンデュラムスケール8

  伏せカード2

  

「あんた本当にすごいな!やることなすこと、全部おれの想像を超えてる!これから先あんたがどんなことをして俺を驚かせてくれるのか楽しみだよ!」

遊矢にとって、これだけの驚きを見せてくれたデュエリストは3人目だ。

1人目は父親である榊遊勝、2人目は自分とは異なるペンデュラムモンスターを持つ翔太、そして3人目は零児だ。

唯一の不満は塾を賭けたデュエルであることだけだ。

「君こそ見事だ。ペンデュラムモンスターがどのようなものか確かにこの身で実感させてもらった。次は…君の番だ」

「え…?」

まるで自分のペンデュラム召喚が零児を驚かせるほどのものではないような言い方。

遊矢がきょとんとする中、零児の言葉は続く。

「ペンデュラム召喚をここで使えるのは君だけなのか、この目で確かめるがいい!私のターン、ドロー!!」

 

零児

手札7→8

 

「私は《DDD怒涛王シーザー》の効果により、3000ポイントのダメージを受ける」

 

零児

ライフ7000→4000

 

「そして、私はスケール1の《DD魔導賢者ガリレイ》とスケール10の《DD魔導賢者ケプラー》でペンデュラムスケールをセッティング!」

「なんだって!?」

遊矢だけでなく、LDSと遊勝塾の生徒も零児のサプライズに驚きを隠せずにいる。

「あれってまさか…」

「ペンデュラムモンスター!?」

「嘘…」

今まで驚きをあまり見せてこなかった素良も板チョコを口にするのを忘れるほど驚いている。

「しょ…翔太君…これって…」

「3人目の…ペンデュラム使い…」

遊矢から見て零児の左右に2体のモンスターが現れ、光の柱を生み出す。

金色の装甲で腹部の左側に歯車の一部が露出している、手足のない機械とそのモンスターと左右対称な形で白い装甲と惑星の動きを現したような軌道をする複数の球体を腹部の右側に持つ機械。

「わが魂を揺らす大いなる力よ、この身に宿りて闇を引き裂く新たな光となれ!ペンデュラム召喚!!出現せよ、私のモンスター達よ!!すべての王をも統べる3体の超越神の2体!《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》!!」

上空から肢体のない青いクリスタルの像が2体降りてくる。

その像の中にある紫色の球体がコアだと思われる。

零児の発言から予測すると、おそらく3体このカードがデッキに入っているのだろう。

 

DDD死偉王ヘル・アーマゲドン×2 レベル8 攻撃3000

 

「攻撃力3000が2体も…!?」

「なんで…あいつまでペンデュラムを…!?」

すさまじい驚きが遊矢を貫く。

翔太という自分以外のペンデュラム使いの存在によって、ペンデュラム召喚が自分の専売特許ではないことは理解できていた。

そのため大きな精神的ショックにはつながらなかったものの、やはり驚きは驚き。

「なあ、あんたどうやってペンデュラムを!?翔太が…俺の仲間が持っているペンデュラムモンスターについて何か知っているのか!?」

「今はデュエルの途中だ。もし、私に勝てたならば好きなだけ君の質問に答えよう。バトルだ!まずは《ヘル・アーマゲドン》で《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を攻撃!」

紫の球体から膨大なエネルギーが数多くの光線に変換され、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》に向けて発射される。

「く…!!罠発動!《ペンデュラム・フラッシュ》!!俺のフィールド上に攻撃表示で存在するペンデュラムモンスターが攻撃されるとき、相手の表側表示で存在するモンスターをすべて破壊する!」

《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が虹色のバリアに包まれ、光線はすべて零児のモンスターに跳ね返される。

「《ヘル・アーマゲドン》の効果。このカードを対象としない魔法・罠カードの効果では破壊されない」

「何!?」

2体の超越神は光線を球体の中に吸収する。

そして残り3体の王は光線を受けて破壊された。

 

ペンデュラム・フラッシュ

通常罠カード

「ペンデュラム・フラッシュ」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に攻撃表示で存在するPモンスターが攻撃対象となったときに発動できる。相手フィールド上に表側表示で存在するモンスターをすべて破壊する。

 

「この瞬間、破壊されたDDDモンスターのうちの2体の効果により、デッキから《地獄門の契約書》を、墓地から《戦乙女の契約書》を手札に加える」

《DDD烈火王テムジン》と《DDD怒涛王シーザー》の効果がここで使わることは予測できた。

しかし、このターンの敗北を防ぐためには、《ペンデュラム・フラッシュ》を使わざるを得なかった。

そして、バリアが消えると2体の《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》が再び光線を発射し、遊矢のモンスターを全滅させる。

「うわあああ!!!」

 

遊矢

ライフ3700→3200→1000

 

すると、破壊されたはずの2体のモンスターは遊矢のエクストラデッキに表向きの状態で収納された。

「なるほど…。フィールドで破壊されたペンデュラムモンスターはエクストラデッキで休眠状態に入るということか…」

「ああ…。そして、ペンデュラム召喚するときにはエクストラデッキのペンデュラムモンスターも召喚できる」

「一気に遊矢兄ちゃんのライフが…」

「何者なんだ、あいつ!!」

モンスターをすべて失った遊矢はじっと零児を見る。

なぜ彼がペンデュラムモンスターを持っているのかはわからない。

それを知るためにも、塾を守るためにも、そして仲間である翔太の記憶の手掛かりを得るためにも、零児に勝たなければならない。

しかし、零児が手にした契約書が更に遊矢を追い詰める。

「私は《法皇の契約書》と《地獄門の契約書》、そして《契約書の更新》を発動。《法皇》の効果で《DDケルベロス》を、《地獄門》の効果でもう1体の《ヘル・アーマゲドン》を手札に加える。更に、《契約書の更新》は契約書の効果で私が受けるダメージを0にする。そして、カードを1枚伏せてターンエンド」

 

零児

手札8→3(うち2枚《DDケルベロス》《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》)

ライフ4000

場 DDD死偉王ヘル・アーマゲドン×2 レベル8 攻撃3000

  DD魔導賢者ガリレイ(青) Pスケール1

  DD魔導賢者ケプラー(赤) Pスケール10 

  伏せカード2

  地獄門の契約書(永続魔法)

  法皇の契約書(永続魔法)

  契約書の更新(永続魔法)

 

遊矢

手札2→0

ライフ3700

場 星読みの魔術師(青) ペンデュラムスケール1

  時読みの魔術師(赤) ペンデュラムスケール8

  伏せカード1

 

契約書の更新

永続魔法カード

「契約書の更新」はフィールド上に1枚しか存在できない。

(1):自分フィールド上に存在する「契約書」カードの効果で発生する自分へのダメージが0となる。

(2):自分のモンスターゾーンに「DDD」Pモンスターが存在する場合、このカードは1ターンに1度、魔法・罠・モンスター効果では破壊されない。

 

「見事だわ、零児さん」

静かに拍手をしながら、零児の圧倒的なデュエルを称賛する。

「ペンデュラム召喚をここまで完璧に使いこなすなんて…。となればもう遊勝塾など…(必要なければ潰してしまえばいいわ。融合もシンクロもエクシーズも儀式もペンデュラムもすべてLDSのもの)」

「くそ…!これでやつはリスクなしで契約書を使えるようになってしまった。どうする…?遊矢」

更に、零児が伏せたカードは十中八九、《戦乙女の契約書》だ。

それが発動されたら最後、遊矢は攻撃力4000の《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》を相手にしなければならなくなる。

そして、ダメ押しに手札にもう1枚の《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》、そして《DDケルベロス》が加わった。

遊矢は自分の伏せカードを確認する。

(今、俺が伏せているカードは《ワン・ツー・ジャンプ》。俺のターンのバトルフェイズ中に相手モンスターを2体以上戦闘で破壊した時、俺のフィールドのモンスターと相手フィールドのモンスターを1体ずつ選択し、選択したモンスター同士をバトルさせることができる。更に、その戦闘のダメージステップの間選択された相手モンスターの攻撃力は半分になる)

しかし、遊矢の手札にはカードがなく、ペンデュラム召喚に成功したとしても《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》の攻撃力は2500。

攻撃力3000の《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》には及ばない。

更に、《法皇の契約書》のせいで必ず1回は攻撃を防がれてしまう。

 

ワン・ツー・ジャンプ(アニメオリカ)

通常罠カード

(1):自分のターンのバトルフェイズ中に相手モンスターを2体以上戦闘で破壊した場合、お互いのフィールドに攻撃表示で存在するモンスターを1体ずつ選択して発動できる。選択したモンスター同士で戦闘を行い、ダメージ計算を行う。更に、洗濯された相手モンスターの攻撃力は半分になる。

 

(このドローにすべてがかかってる!!)

遊矢はじっとデッキトップを見る。

「俺のターン、ドローーーー!!」

 

遊矢

手札0→1

 

「私は永続罠《戦乙女の契約書》を発動」

「何!?このタイミングで《戦乙女の契約書》を…」

「私は《戦乙女の契約書》のもう1つの効果を発動する。1ターンに1度、手札のDDカード、または契約書を墓地へ送ることで、フィールド上のカードを1枚破壊する。私は《DDケルベロス》を墓地へ送り、《時読みの魔術師》を破壊する!」

「な…何!?」

《戦乙女の契約書》からレイピアが発射され、《時読みの魔術師》の左胸を貫く。

《時読みの魔術師》は遊矢に自らの非力を詫びるような目を見せながら消滅し、エクストラデッキへ送られた。

「そ…そんな…《時読み》が…」

ペンデュラム召喚が不可能になり、遊矢の膝が折れる。

「そんな…《時読みの魔術師》が破壊されるなんて…」

「ペンデュラム召喚はPスケールに2体のペンデュラムモンスターがいなければ発動できない。そして、《星読みの魔術師》はもう片方が魔術師かオッドアイズと名のつくペンデュラムモンスターでなければスケールが4になる。これでは召喚できるレベルが狭まる」

「ってことは…遊矢兄ちゃん、負けちゃうの?」

「遊矢…」

柚子達が意気消沈する。

特に権現坂は引き分けとなり、遊矢に零児と戦わせることになってしまったために罪悪感が人一倍強い。

(すまん、遊矢!俺が決めきることができればこんなことには…!!)

「どうした?まだ君のターンだぞ?」

「…。俺はこれでターンエンド…」

ターン終了宣言と同時に遊矢の手からカードが落ちる。

《EMパートナーガ》、今の状況では役に立たないカードだった。

 

零児

手札3→2(うち1枚《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》)

ライフ4000

場 DDD死偉王ヘル・アーマゲドン×2 レベル8 攻撃3000

  DD魔導賢者ガリレイ(青) Pスケール1

  DD魔導賢者ケプラー(赤) Pスケール10 

  伏せカード1

  戦乙女の契約書(永続罠)

  地獄門の契約書(永続魔法)

  法皇の契約書(永続魔法)

  契約書の更新(永続魔法)

 

遊矢

手札1

ライフ3700

場 星読みの魔術師(青) ペンデュラムスケール1

  伏せカード1

 

「私のターン、ドロー!!」

 

零児

手札2→3

 

零児がドローした瞬間、《DD魔導賢者ガリレイ》と《DD魔導賢者ケプラー》が暴走を始める。

動作がおかしくなり、電気系統が混乱し、その影響で2体のPスケールが変化する。

 

DD魔導賢者ガリレイ(青) Pスケール1→3

DD魔導賢者ケプラー(赤) Pスケール10→8

 

「ペンデュラムスケールが狭まった…。やはりプロトタイプ、まだまだ安定しないか…」

今、零児が使用している2体の魔導賢者は遊矢が持つ2体の魔術師を元に作られたカード。

レオコーポレーションではペンデュラム召喚普及を1つの目的として遊矢のペンデュラムモンスターについての研究を行っている。

その結果、プロトタイプは完成したものの今のように安定せず、使用はできるがデュエルディスクへの負担が大きい。

現に零児のデュエルディスクはそれに耐えられるように改造されていて、普通のデュエルディスクではペンデュラム召喚成功と同時に壊れてしまう。

(だが…この状況は…)

このままバトルフェイズに突入し、遊矢にとどめをさすことはできる。

しかし、零児には自分のフィールドの状況を見て、何かが頭の中に芽生えつつある。

「…。ハハハハ…」

芽生えたものが見えた瞬間、零児は笑い始める。

笑う理由は自分の能力への賞賛ではない。

まだまだ自分の目が節穴だということに気が付いたためだ。

「なぜ今まで気づかなかった…?ペンデュラムはまだ完成形ではないことに」

「何!?」

「私には見えた!ペンデュラム召喚の新たな可能性を!今からそれを実証して見せよう!」

零児の言っていることを、そこにいる全員が理解できなかった。

日美香と翔太も含めて…。

(ペンデュラム召喚の新しい可能性だと!?一体それは…)

「いくぞ!!私は…」

「なんですって!!?」

日美香の驚きに満ちた声に注目が集まる。

中島から話を聞き、日美香と真澄達が動揺する。

「マルコ先生が!?」

「零児さん!!」

その一言と中島からのデュエルディスクを通じた連絡で事の重大性を悟った零児はカードをしまい、その場から立ち去ろうとする。

「な…ちょ、ちょっと!!」

「この勝負預ける」

完全に勝てる状況下でのデュエルの放棄。

なぜそんなことをするのか事情を知らない遊矢には理解できなかった。

「ま…待って!あんた、名前は!?」

「赤馬零児。この非礼の侘びとして1つだけ質問に答えよう。石倉純也」

「は…?」

「私が知っている魔装モンスターの使い手だ」

それだけ言い残すと零児は日美香たちとともに出て行った。

「赤馬…零児…」

圧倒的な実力、そしてペンデュラム召喚。

今の実力にはこえることができない壁。

彼には立ち去る彼らの後ろ姿を見ることしかできなかった。

(石倉純也…?)

零児が残した名前を翔太は思い出す。

自分とはコンセプトの全く異なる魔装モンスターの使い手と零児が称する人物。

(彼が…俺の記憶を…?)




OCG版に直すと、DDシリーズはかなり強いですね。
まあ、《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》の効果範囲が縮小されてはいますが。
さて、ここで登場した石倉純也という名前。
それが翔太のペンデュラムモンスター、そして記憶の鍵となるのか??


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第9話 栄次郎

「…。やはり、榊遊矢は犯人ではなかったか…」

社長室で、零児はLDSのエリートチーム、通称制服組から提出された写真や書類、そして破損したデュエルディスクとデッキを見る。

エクストラデッキの中には《異星の最終戦士》が入っていて、それはLDS融合コース講師のマルコのエースカードだ。

制服組からの報告によると、襲撃現場にはそれらと爪痕や燃えた段ボール箱が残っていて、マルコの消息は不明となっている。

また、その時間帯は遊勝塾とLDSの塾対抗戦で、更にLDSがレーダーで識別した召喚反応がエクシーズ召喚であったことから、沢渡襲撃で疑われていた遊矢がマルコを襲うことはもちろん不可能。

その結果、制服組は同じ人物が沢渡とマルコを襲撃したと判断して、遊矢への疑いは晴れた。

「それにしても、なぜ私はあの人の名前を…」

遊勝塾からの去り際に遊矢と翔太に伝えた石倉純也という名前。

零児にとってはどうしても忘れることのできない人物だ。

彼のノートパソコンには石倉純也についての記録が表示されていた。

 

「石倉…純也…」

パジャマ姿で施設の屋上から夜空を見上げる。

あの戦いから数日経つが、未だに彼の名前が頭から離れない。

ネットでは、彼は通常モンスターを軸に戦う異色のプロデュエリストで、彼のデッキの中には《魔装戦士テライガー》、《魔装戦士ヴァンドラ》などの魔装モンスターがサブとして入っている。

しかし、彼は数年前に突然行方不明になってしまっている。

「お前なら…こたえられるのか?《ペイルライダー》…」

月を明かりにして《魔装騎士ペイルライダー》をかざす。

「翔太くーん!!」

屋上の出入り口から伊織の声が聞こえる。

「伊織…」

「翔太君、まーた1人でいる!駄目だよ、もっとみんなと一緒にいないと…」

「分かってる」

「分かってない!ほら、まずは私と一緒に来る!」

強引に伊織が翔太の腕を引っ張ろうとするが、すぐに振り払って横になる。

「あと10分横になってからだ」

「ダ・メ!!!」

こうして、翔太は伊織に強引に引っ張られる形で中へ入って行った。

 

「ペンデュラムの新しい可能性…」

それと同時刻、遊矢は自室で零児の言葉を頭に浮かべる。

(私には見えた!ペンデュラムの新たな可能性を!!)

(なぜ今まで気づかなかった…?ペンデュラムはまだ完成形ではないことに)

「うわあーーー!!あいつはあの状況で何が見えたんだーーーー!?」

頭が痛くなるほど考えたが、全く彼が言っていた新たな可能性が見えてこない。

まるで、真っ暗な部屋の中で黒い懐中電灯を探しているような感覚だ。

「赤馬零児…プロデュエリストで、レオコーポレーションの社長か…」

あのデュエルの後、修造から零児について聞いた。

彼の会社であるレオコーポレーションは舞網市に本社を置く巨大企業で、現在使っている質量を持ったソリッドビジョンシステムを開発したこと、そしてデュエシスト養成塾であるLDSを持っていることで有名だ。

そこの社長であり、彼がペンデュラムモンスターを使った以上、いずれペンデュラムモンスターが世界中にばらまかれ、誰もがペンデュラム召喚を使えるようになる。

「ペンデュラム召喚は俺だけの物じゃない…か。翔太が来た時から、そのことは分かりきっていたはずなのにな」

今、遊矢の手には見たことのない魔術師のカードがある。

このカードは今朝、遊勝塾のポストの中で見つけた封筒の中に入っていたカードだ。

その封筒の中にはほかにも、遊矢が沢渡襲撃の犯人でないことが分かったことと遊矢を疑ったことを謝罪する内容の手紙があった。

(俺も見つけないと…ペンデュラム召喚の新たな可能性を。そうじゃないと、赤馬零児には…)

 

「翔太兄ちゃん!!」

「遅いぞーー!!」

「早くデュエルしようよー!!」

施設の遊具室では、パジャマ姿の子供たちと昭和風の茶色い地味なセーターと蝶ネクタイ、鼻眼鏡をつけた白髪の老人が待っていた。

彼が施設長の鮫島栄次郎

「待っていたよ、翔太君。さあ、私とデュエルをしようか」

「なんで俺とだ?伊織かこいつらでもいいだろ?」

「いやいや、この子達が君がすごく強いといっていてね、ぜひとも私と君のデュエルを見てみたい見てみたいって…」

「ねーねー、おじいちゃん、翔太兄ちゃん、早くデュエルしてよー!」

「デュエルデュエルー!!」

「そーそー!翔太君ファイト!」

「…たくっ、仕方ないな」

味方がいないことを一瞬で理解した翔太は自分のデュエルディスクが部屋に置いたままであるため、伊織からデュエルディスクを借りる。

「それにしても、君は伊織ちゃんからデュエルを教えてもらったばかりなんだってね。けど、聞いた話によると全くやり始めたばかりに思えないなぁ…?やっぱり、昔からやっていたんじゃないかな?」

「さあな」

両者はデュエルディスクを構える。

「言っておくけど、私は強いよ。若いころはデュエルでやんちゃをしていたからね」

「関係ない、相手がだれでも全力でやるだけだからな」

「「デュエル!!」」

 

栄次郎

手札5

ライフ4000

 

翔太

手札5

ライフ4000

 

「私の先攻。私はモンスターを裏守備表示で召喚。そして、カードを1枚伏せてターンエンド」

 

栄次郎

手札5→3

ライフ4000

場 裏守備モンスター1

  伏せカード1

 

翔太

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「俺のターン!」

 

翔太

手札5→6

 

「俺は《魔装竜ファーブニル》を召喚!」

翔太のフィールドに財宝が現れ、その中から金色の目と鱗、そして爪を持つ細身な翼竜が現れる。

 

魔装竜ファーブニル レベル4 攻撃1900

 

「バトルだ。《魔装竜ファーブニル》で裏守備モンスターを攻撃」

《魔装竜ファーブニル》の口から金色の炎が放たれる。

しかし、裏守備モンスターは炎をはじき、弾かれた炎が翔太を襲う。

「ぐう…!!」

 

翔太

ライフ4000→3800

 

裏守備モンスターの正体はクリスタルでできた六角形の盾を複数周囲に展開させている、重装な黄色い鎧を着たサイだった。

「うかつな攻撃はしてはいけないよ、翔太君。裏守備モンスターの正体は《剣闘獣ホプロムス》、守備力2100だよ」

「出たーーー!!おじいちゃんの剣闘獣デッキ!!」

剣闘獣デッキ、ライトロードデッキに並んでかつて猛威を振るったデッキだ。

「ちっ…」

「こらこら、年寄り相手に舌打ちはいけないよ。《ホプロムス》の効果発動。このカードは戦闘を行ったバトルフェイズ終了時にデッキに戻すことで、デッキから《ホプロムス》以外の剣闘獣モンスター1体を特殊召喚できる。私は《剣闘獣ムルミロ》を特殊召喚!」

《剣闘獣ホプロムス》が拳を地面にたたきつけると、そのモンスターが地面から隆起した岩石に身を隠す。

そして、それが砕けると周囲に水が飛び散り、それと共に巨大なほら貝を持つウツボと魚が融合したような青いモンスターが現れる。

 

剣闘獣ムルミロ レベル3 守備400

 

「更に、《ムルミロ》の特殊召喚に成功した時表側表示モンスター1体を破壊する」

「何!?」

《剣闘獣ムルミロ》のほら貝が飛び散った水を掃除機のように吸収していく。

ほら貝の吸引力は次第に強力になっていき、《魔装竜ファーブニル》までも飲み込まれてしまった。

「私の剣闘獣は戦闘を行ったターンのバトルフェイズ終了時にデッキで待機する仲間とバトンタッチする。強力な効果を持ってね。気を付けて戦ったほうがいいよ」

「だが、破壊すればバトンタッチすらできないだろう。俺は手札から速攻魔法《魔装の輝き》を発動。俺の魔装モンスターがカード効果で破壊された時、そのモンスターを墓地またはエクストラデッキから攻撃表示で特殊召喚できる。更に、この効果で特殊召喚されたモンスターの攻撃力は500ポイントアップする。蘇れ、《ファーブニル》」

五芒星を模した魔法陣がフィールドに描かれ、そこから《魔装竜ファーブニル》が現れる。

 

魔装竜ファーブニル レベル4 攻撃1900→2400

 

「更にこのカードを俺のターンに発動した場合、特殊召喚したモンスターと相手モンスター1体を強制戦闘させる」

 

魔装の輝き

速攻魔法カード

「魔装の輝き」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に表側表示で存在する「魔装」モンスターが効果によって破壊された時、そのモンスターを対象にして発動できる。選択したモンスターを墓地またはエクストラデッキから攻撃表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの攻撃力は500ポイントアップする。

(2):このカードを発動したのが自分のターンの場合、相手フィールド上のモンスター1体を選択し、選択したモンスターと(1)の効果で特殊召喚したモンスターで戦闘を行いダメージ計算を行う。

 

「再攻撃だ。《ファーブニル》」

《魔装竜ファーブニル》が放った金色のブレスが《剣闘獣ムルミロ》を焼き払った。

「更に《ファーブニル》が戦闘で相手モンスターを破壊した時、デッキからレベル4以下の魔装モンスター1体を攻撃表示で特殊召喚できる。俺はデッキから《魔装妖ビャッコ》を特殊召喚する」

「キュイー!!」

《魔装妖ビャッコ》がかわいらしい鳴き声を出しながら《魔装竜ファーブニル》の背中に乗り、はりきる。

それを見た伊織を含めた女性陣が歓声を上げる。

 

魔装妖ビャッコ レベル3 攻撃300

 

「ただし、この効果で特殊召喚されたモンスターは攻撃できず、ターン終了と共にデッキに戻る」

《魔装竜ファーブニル》の効果の後半を読み上げると、はりきっていた《魔装妖ビャッコ》がショックを受ける。

 

 

魔装竜ファーブニル

レベル4 攻撃1900 守備1200 効果 炎属性 ドラゴン族

(1):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した時に発動できる。自分のデッキからレベル4以下の「魔装」モンスター1体を攻撃表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの攻撃できず、ターン終了時にデッキに戻る。

 

「とは言うけれど、ただでデッキに戻すことはないんだろうね?」

「ああ。このカードを魔装モンスターのシンクロ素材かエクシーズ素材とするとき、レベルを4として扱うことができる」

「キュ!?キュイーーー!!キュイーーー!!」

その言葉を聞いた瞬間、《魔装妖ビャッコ》が嬉しそうに飛び跳ねて自身のレベルを変化させる。

 

魔装妖ビャッコ レベル3→4 攻撃300

 

「俺はレベル4の《ファーブニル》と《ビャッコ》でオーバーレイ。エクシーズ召喚!現れろ、魔装の力を宿した紅蓮の番犬、《魔装獣ケルベロス》!」

3つの頭を持った、大きさが2メートル近くある赤い犬が現れる。

そのモンスターの額にはいずれも五芒星が刻まれている。

 

魔装獣ケルベロス ランク4 攻撃2300

 

攻撃力は《魔装竜ファーブニル》よりも低いものの、これで《魔装妖ビャッコ》をデッキに戻す必要がなくなった。

「《ビャッコ》の効果発動。このカードを魔装モンスターのシンクロ素材かエクシーズ素材としたとき、デッキからカードを1枚ドローする。そしてカードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

栄次郎

手札3

ライフ4000

場 伏せカード1

 

翔太

手札6→3

ライフ3800

場 魔装獣ケルベロス(オーバーレイユニット2) ランク4 攻撃2300

  伏せカード2

 

(あれ…?でも、翔太君のデッキには…)

伊織は前にデュエルをしたときにシンクロ召喚された《魔装剛毅クレイトス》を思い出す。

エクストラデッキから特殊召喚されたモンスターに対して抜群の破壊力を持っていて、先ほど《魔装竜ファーブニル》の効果で《魔装陰陽師セイメイ》を特殊召喚すればすぐに呼び出せた。

にもかかわらず、攻撃力2300の《魔装獣ケルベロス》のエクシーズ召喚を選択した。

(《ケルベロス》って、どんな効果があるんだろう…)

「では、私のターン、ドロー」

 

栄次郎

手札3→4

 

「私は手札から《剣闘獣ラクエル》を召喚」

6つの赤いビットを展開させている炎の鎧を装備した虎と人間が融合したような剣闘獣が現れる。

 

剣闘獣ラクエル レベル4 攻撃1800

 

「そして、手札から魔法カード《テイク・オーバー5》を発動。私はその効果でデッキトップから5枚のカードを墓地へ送る」

 

デッキから墓地へ送られたカード

・剣闘獣ベストロウリィ

・パリィ

・貪欲な壺

・休息する剣闘獣

・剣闘獣アウグストル

 

「墓地肥やしかよ…」

墓地へ送られたカードの中に2枚の剣闘獣が存在する。

先日、塾で修造が墓地肥やし戦術についての授業を行っていた。

それ以前にも、伊織が墓地を利用した融合召喚を見せ、苦い思いをしたことから墓地肥やしの重要性を嫌というほど思い知っている。

「更に手札から《スレイヴタイガー》を特殊召喚。このカードは私のフィールドに剣闘獣が表側表示で存在するとき、手札から特殊召喚できる」

赤い模様が付いた青い鎧を身に着けた虎が《剣闘獣ラクエル》の口笛を聞きつけて現れる。

 

スレイヴタイガー レベル3 攻撃600

 

「《スレイヴタイガー》の効果発動。このカードをリリースし、私の剣闘獣をデッキに戻すことで、デッキから剣闘獣1体を特殊召喚できる。私はデッキから《剣闘獣ダリウス》を特殊召喚」

《スレイヴタイガー》に乗り、《剣闘獣ラクエル》がデッキへ戻る。

そしてそのモンスターと入れ替わるように、左手に鋼の鞭を持つオレンジ色の鎧を着た馬の剣闘獣が現れる。

 

剣闘獣ダリウス レベル4 攻撃1700

 

「更に《スレイヴタイガー》の効果で特殊召喚されたモンスターは剣闘獣の効果で特殊召喚されたモンスターとして扱われるため、《ダリウス》の効果を発動。私の墓地から剣闘獣1体を効果を無効にして特殊召喚する。私は《剣闘獣ベストロウリィ》を復活」

鋼の鎧を身に着けた緑色の鳥の剣闘獣が上空から現れる。

 

剣闘獣ベストロウリィ レベル4 攻撃1500

 

(レベル4の剣闘獣が2体。エクシーズ召喚するのか?)

「うわあ…この組み合わせって…」

2体の剣闘獣を見て、伊織の顔が青くなる。

「では、いくよ。私は《ダリウス》と《ベストロウリィ》を融合」

「何!?」

栄次郎が《融合》を使用していないにもかかわらず、2体の剣闘獣がフィールドから消える。

「この融合モンスターは融合素材モンスターをフィールドからデッキに戻すことで、《融合》なしでエクストラデッキから特殊召喚できる。天駆ける鳥よ!鎖を振るいし馬よ!今こそ結束し新たな闘士を覚醒させよ。剣闘召喚!天からの破壊者、《剣闘獣ガイザレス》」

より重装な鎧をまとい、頭部の赤い鬣がある、若干太めになった《剣闘獣ベストロウリィ》が現れる。

 

剣闘獣ガイザレス レベル6 攻撃2400

 

「あーあ、出ちゃった…」

「これが剣闘獣の融合モンスター…」

「《ガイザレス》の効果発動。このカードの特殊召喚に成功した時、フィールド上のモンスターを2枚まで破壊する。私は君の伏せカード1枚と《ケルベロス》を破壊させてもらうよ」

《剣闘獣ガイザレス》の両翼からすさまじい勢いの竜巻が発生する。

その竜巻に飲み込まれ、《魔装獣ケルベロス》と伏せカードを砕こうとする。

「く…!罠発動!《威嚇する咆哮》!」

破壊されたそうになった伏せカードが発動し、《剣闘獣ガイザレス》が動きを止める。

「おやおや、これで私のモンスターは攻撃できないなあ…」

《サイクロン》や《砂塵の大竜巻》などでも阻止できないフリーチェーンのカード。

《ナイト・ショット》にはかなわないが、《攻撃の無力化》や《炸裂装甲》とは違った良点がある。

「では、私は手札から永続魔法《剣闘獣の闘気》を発動。このカードが発動している限り、剣闘獣以外のモンスターを特殊召喚できない代わりに、剣闘獣の効果で特殊召喚されたモンスターの攻撃力は800ポイントアップする」

どこからともなく鬨の声が上がり、《剣闘獣ガイザレス》に宿る闘争心が激しく燃え上がる。

 

剣闘獣ガイザレス レベル6 攻撃2400→3200

 

「私はこれでターンエンド」

 

栄次郎

手札4→0

ライフ4000

場 剣闘獣ガイザレス レベル6 攻撃3200

  剣闘獣の闘気(永続魔法)

  伏せカード1

 

翔太

手札3

ライフ3800

場 伏せカード1

 

(ちっ…!《ガイザレス》は絶対に召喚させたくないな)

先程の栄次郎の説明が正しければ、《剣闘獣ガイザレス》の効果は普通に特殊召喚しても発動する。

つまり、これからそのモンスターを倒そうが、自身の効果でエクストラデッキに戻ろうが強烈な破壊効果におびえながらターンを進めなければならなくなる。

「俺のターン!」

 

翔太

手札3→4

 

「俺は手札から魔法カード《死者蘇生》を発動。その効果で墓地から《魔装獣ケルベロス》を特殊召喚」

 

魔装獣ケルベロス ランク4 攻撃2300

 

「でも、攻撃力2300の《ケルベロス》を特殊召喚しても攻撃力3200の《ガイザレス》は倒せないよ」

「更に俺は手札から魔法カード《五芒星の鼓動》を発動。俺のフィールドに存在するオーバーレイユニットのない魔装と名のつくエクシーズモンスターを選択、俺の墓地に存在するカード2枚を選択したモンスターのオーバーレイユニットにする」

《魔装獣ケルベロス》が咆哮すると、墓地から《魔装竜ファーブニル》と《魔装妖ビャッコ》が現れ、咆哮する番犬のオーバーレイユニットとなる。

 

五芒星の鼓動

通常魔法カード

「五芒星の鼓動」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に表側表示で存在するX素材のない「魔装」Xモンスター1体を選択して発動する。自分の墓地に存在するカード2枚を選択したカードの下に重ねてX素材とする。

(2):自分フィールド上にセットされているこのカードがカード効果で破壊され墓地へ送られた時、自分はデッキからカードを1枚ドローする。

 

「そして、俺は《魔装学者エヴェレット》を召喚」

赤いあまり整っていない短髪で、右側と左側にそれぞれ別々の世界の地図が描かれたローブを着た学者が現れる。

また、彼のローブの背中には大きな五芒星が刻まれている。

 

魔装学者エヴェレット レベル3 攻撃1000

 

「《エヴェレット》の効果発動。このカードを2ターン後まで除外することで、俺の魔装モンスター1体の攻撃力を1000ポイントアップさせることができる。次元の壁を超えろ、《エヴェレット》」

《魔装学者エヴェレット》が右手に巨大な世界地図を広げると、それで自らの身を包み込む。

そして地図と共に《魔装学者エヴェレット》が消え、それと共に《魔装獣ケルベロス》とうり2つのモンスターが現れる。

 

魔装獣ケルベロス ランク4 攻撃2300→3300

 

「おやおや、もう1体の《ケルベロス》かぁ…」

《魔装獣ケルベロス》の攻撃力が《剣闘獣ガイザレス》を上回ったにもかかわらず、のんきな言動の栄次郎。

「バトルだ。《ケルベロス》で《ガイザレス》を攻撃。ブラッド・ファング!」

2体の《魔装獣ケルベロス》が一斉に《剣闘獣ガイザレス》にかみつく。

「けれど、そうはいかないね。私は《剣闘獣の闘気》の効果を発動。私の剣闘獣が相手モンスターに攻撃されるとき、このカードを墓地へ送ることでそのモンスターは戦闘では破壊されず、私への戦闘ダメージも0となる」

「何!?」

2体の番犬にかみつかれ、出血しているにもかかわらず《剣闘獣ガイザレス》が肉体からすさまじいプレッシャーを放ち、番犬たちが吹き飛ばされる。

獲物を倒し損ねた2体の《魔装獣ケルベロス》は怒りのこもった目で相手を見る。

 

剣闘獣ガイザレス レベル6 攻撃3200→2400

 

剣闘獣の闘気

永続魔法カード

(1):フィールド上に存在する「剣闘獣」カードの効果で特殊召喚されたモンスターの攻撃力は800アップする。

(2):自分フィールド上に存在する「剣闘獣」モンスターが攻撃対象となったとき、このカードを墓地へ送ることで発動できる。そのモンスターはその戦闘では破壊されず、発生する自分へのダメージは0となる。

 

「ちなみに、戦闘を行った《ガイザレス》はバトルフェイズ終了時にエクストラデッキに戻り、デッキから《ベストロウリィ》以外の剣闘獣モンスター2体を特殊召喚できる。いやあ、手伝ってくれてありがとう翔太君」

(く…あのじじい、できる!)

すっかり栄次郎のペースに乗せられてしまった。

的確に行動を阻害し、確実にキーカードを潰してくる。

「うー相変わらず強いなあ、栄次郎おじいちゃん…」

観戦している伊織も今まで一度も彼に勝ったことがない。

「さあさあ、次はどんなものを見せてくれるのかな?翔太君」

「ああ…見せてやる。俺は罠カード《ケリュケイオンの毒牙》を発動。俺のフィールド上に存在する魔装と名のつく融合モンスター、シンクロモンスター、エクシーズモンスターの攻撃回数を1度増やす」

フィールド上に2匹の蛇が巻かれ、頭部に翼のある杖が現れる。

そして、頭部から放たれた紫色の光を受けた《魔装獣ケルベロス》の五芒星はそれと同じ色の光を発する。

 

ケリュケイオンの毒牙

通常罠カード

(1):自分フィールド上に攻撃表示で存在する「魔装」融合・S・Xモンスター1体を選択して発動できる。このターン、選択されたモンスターはもう1度攻撃できる。

 

「ほぉほぉ…」

「さあ、楽しい狩りの時間だぞ。《ケルベロス》」

翔太の言葉に2体の《魔装獣ケルベロス》が嬉しそうに咆哮すると、一斉に《剣闘獣ガイザレス》にとびかかり、容赦なく喰らいついていった

 

栄次郎

ライフ4000→3100

 

「更に《魔装学者エヴェレット》の効果を発動。このカードが自身の効果で除外されたターンに魔装モンスターが戦闘で相手モンスターを破壊した時、そのモンスターを除外できる。これで、《ガイザレス》を墓地から召喚できない」

2匹の番犬の攻撃で弱った《剣闘獣ガイザレス》の前に突然巨大な地図が現れ、その中からもう1体の《剣闘獣ガイザレス》が姿を現す。

すると2体のモンスターが重なり合い、苦しみながら消滅してしまった。

 

魔装学者エヴェレット

レベル3 攻撃1000 守備0 効果 闇属性 魔法使い族

「魔装学者エヴェレット」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードを除外し、自分フィールド上に表側表示で存在する「魔装」モンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターの攻撃力は1000アップする。

(2):(1)の効果を発動したターン、自分フィールド上の「魔装」モンスターが戦闘で相手モンスターを破壊したとき、そのモンスターを対象に発動できる。対象となったモンスターをゲームから除外する。

(3):(1)の効果を発動してから2回目の自分のスタンバイフェイズ時に発動する。ゲームから除外されているこのカードを自分フィールド上に特殊召喚する。

 

「うーん、ここまで力任せにやるとは…」

「まだ続くぞ。俺は《ケルベロス》の効果を発動。このモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊した時、オーバーレイユニットを1つ取り除くことでもう1度攻撃できる」

《魔装獣ケルベロス》がオーバーレイユニットを1つ噛み砕くと、五芒星が光り、肉体が活性化する。

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・魔装妖ビャッコ

 

魔装獣ケルベロス

ランク4 攻撃2300 守備1200 エクシーズ 炎属性 獣族

「魔装」レベル4モンスター×2

「魔装獣ケルベロス」の(1)の効果は1ターンに2度まで発動できる。

(1):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した時、このカードのX素材を1つ取り除くことで発動できる。このカードはこのターン、もう1度攻撃できる。

 

「デザートにはもってこいだろ?」

2体の《魔装獣ケルベロス》が強欲にも栄次郎をも喰らおうとした。

「罠発動、《レジスト》。デッキからレベル4以下の剣闘獣1体を守備表示で特殊召喚する」

上空から《剣闘獣ベストロウリィ》が現れ、栄次郎の盾となる。

 

「更にこの効果で特殊召喚されたモンスターはこのターン、戦闘では破壊されない」

楯となった《剣闘獣ベストロウリィ》は傷だらけになった。

だが、凄まじい精神力で倒れることはなかった。

 

レジスト

通常罠カード

(1):自分のデッキに存在するレベル4以下の「剣闘獣」モンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターを自分フィールド上に表側守備表示で特殊召喚する。その後、手札1枚をデッキに戻す。

(2):(1)の効果で特殊召喚されたモンスターはターン終了時まで戦闘では破壊されない。

 

「く…これでまた剣闘獣の力を」

「そうだよ。私はバトルフェイズ終了時に《ベストロウリィ》をデッキに戻し、デッキから《剣闘獣ダリウス》を特殊召喚する」

《剣闘獣ダリウス》に介抱され、《剣闘獣ベストロウリィ》はその場を後にする。

「《剣闘獣ダリウス》の効果は分かっているね」

「ああ…。剣闘獣の効果で特殊召喚された時、墓地から剣闘獣1体を効果を無効にして特殊召喚する」

「そういうこと。私は墓地から《剣闘獣アウグストル》を特殊召喚」

紫色の魔法陣から背中に青い飛龍を宿した青い鎧を着た緑鳥の剣士が《剣闘獣ダリウス》の鎖で引っ張られる形で現れる。

 

剣闘獣アウグストル レベル8 攻撃2600

剣闘獣ダリウス レベル4 攻撃1700

 

「うわぁ…翔太君のターンなのにおじいちゃんのフィールドに2体のモンスター…」

2体とも攻撃力は《魔装獣ケルベロス》には及ばない。

しかし、翔太にはここまでの栄次郎の動きを見ていて1つだけわかることがある。

次のターン、《魔装獣ケルベロス》が無事で済むかわからないということだ。

「…。俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

栄次郎

手札0

ライフ3100

場 剣闘獣アウグストル レベル8 攻撃2600

  剣闘獣ダリウス レベル4 攻撃1700

 

翔太

手札4→0

ライフ4000

場 魔装獣ケルベロス(オーバーレイユニット1) ランク4 攻撃3300

  伏せカード1

 

「私のターン、ドロー。更にスタンバイフェイズ時に《テイク・オーバー5》を除外し、デッキからカードを1枚ドロー」

 

栄次郎

手札0→2

 

「私は手札から《E・HEROプリズマー》を召喚」

竜と人が融合したようなプリズム状の肉体の戦士が現れる。

 

E・HEROプリズマー レベル4 攻撃1700

 

「な…?HERO??」

なぜ剣闘獣デッキの中に伊織が使用するHEROがあるのか分からず、伊織に目を向ける。

「あー…あのカードすっごく便利なんだよ」

「便利…?」

「私は《プリスマー》の効果を発動。1ターンに1度、エクストラデッキから融合モンスター1体を選択し、選択したカードに書かれている融合素材モンスター1体をデッキから墓地へ送ることで、エンドフェイズまでそのモンスターの姿と名前を得る。リフレクト・チェンジ」

《E・HEROプリスマー》の体に《剣闘獣ベストロウリィ》と《剣闘獣ガイザレス》のカードが映し出される。

そして、肉体が見る見るうちに《剣闘獣ベストロウリィ》の同じ形に変化していく。

「なるほどな…。確かに便利だ」

「うん。けど、モンスターの名前が記されていない融合モンスターしかエクストラデッキになかったら使えないって弱点があるんだよ」

伊織から《E・HEROプリスマー》の解説を聞きつつ、栄次郎のフィールドを見る。

「さて…。私は《アウグストル》と《ベストロウリィ》をデッキに戻し、融合!天かける鳥よ!尊厳ある鳥よ!今こそ結束し新たな闘士を覚醒させよ。剣闘召喚!天からの破壊者、《剣闘獣ガイザレス》」

エクストラデッキから2体目の《剣闘獣ガイザレス》が姿を現す。

栄次郎のエクストラデッキには有用性の高い《剣闘獣ガイザレス》が3枚入っているのだ。

 

剣闘獣ガイザレス レベル6 攻撃2400

 

「あ…あれ?なんで栄次郎おじいちゃんは攻撃力2600の《アウグストル》を融合素材にしたんだろう?」

あくびをしながらデュエルを観戦している太一が栄次郎の行動を疑問を抱くが、伊織がきちんと解説する。

「《剣闘獣ダリウス》はフィールドから離れたとき、そのモンスターの効果で特殊召喚された剣闘獣がデッキに戻ってしまうんだ。あ、太一君キャンディ食べる?」

「あーーー!!伊織お姉ちゃん、少し前には歯磨きしたばっかりじゃん!!」

「いーじゃんいーじゃん。後でまた磨けば」

「おやおや、お菓子かあ…。じゃあ、後でコーヒーと牛乳を出さないとなあ…」

「おい、じいさん。《ガイザレス》の効果はどうするんだよ?」

「ああ…失礼。私は《ガイザレス》の効果により、《ケルベロス》と伏せカードを破壊し…」

「罠発動。《ブレイクスルー・スキル》。こいつは相手モンスター1体の効果をエンドフェイズまで無効にする」

竜巻を起こそうとした《剣闘獣ガイザレス》が動きを止め、ゆっくりと地に降りる。

「なら、私はさらに《ガイザレス》と《ダリウス》をデッキに戻す」

「何!?」

2体の剣闘獣が姿をけし、栄次郎のフィールドに強烈な風の柱が発生する。

「来るよ、翔太君!栄次郎おじいちゃんのエースカード!」

「破壊の翼よ!戦友を救う鎖よ!今こそ結束し新たな闘士を覚醒させよ。剣闘召喚!雷鳴の狩人、《剣闘獣スキピオ》」

ライオンの髪飾りと重装な鎧と槍、盾を装備した緑鳥の戦士が現れる。

左目に切り傷があり、右腕と左腕が機械となっているところから数々の決闘を繰り広げてきた剣闘獣であることがよくわかる。

また、槍には稲妻が、盾には風がそれぞれ宿っている。

 

剣闘獣スキピオ レベル9 攻撃2800

 

「これがじいさんのエースカード…?」

「このカードは《ガイザレス》とレベル4以上の剣闘獣をデッキに戻すことで呼び出せるモンスター。このカードにはエクストラデッキに戻る力はないよ。《スキピオ》の効果発動。このカードは攻撃を行わない代わりに相手モンスター1体を破壊し、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与えることができる」

「何!?」

《剣闘獣スキピオ》が空高く舞い上がり、ナイフ以上の鋭さを持った羽の弾丸を放つ。

弾丸を受けた《魔装獣ケルベロス》は消滅し、翔太にも羽が襲い掛かる。

「更に、破壊したモンスターの元々の攻撃力の半分のダメージを与える」

 

翔太

ライフ4000→2850

 

剣闘獣スキピオ

レベル9 攻撃2800 守備2300 融合 風属性 鳥獣族

「剣闘獣ガイザレス」+レベル4以上の「剣闘獣」モンスター

このカードはエクストラデッキからのみ融合召喚できる。

このカード以下の方法でのみ特殊召喚できる。

●自分フィールドの上記カードをデッキに戻した場合にエクストラデッキから特殊召喚できる(「融合」は必要としない)。

(1):1ターンに1度、相手フィールド上に存在するモンスター1体を選択することで発動できる。選択したモンスターを破壊し、そのモンスターの元々の攻撃力の半分の数値のダメージを相手に与える。この効果を発動したターン、このカードは攻撃できない。

 

(くそ…ライフが逆転された。あのじじい…)

心の中で悪態をつけ、空になった手札とフィールドを見る。

「このまま追撃したいけど、《スキピオ》はもう攻撃できないからね…。私はこれでターンエンド」

 

栄次郎

手札2→1

ライフ3100

場 剣闘獣スキピオ レベル9 攻撃2800

 

翔太

手札0

ライフ2850

場 なし

 

「うわあ…これじゃあ翔太兄ちゃん勝ち目がない…」

「《剣闘獣スキピオ》の効果、すごいからね…」

子供たちが全員すでに雌雄は決したかのような発言を口々にする。

彼らも何度か栄次郎とデュエルをしたことがあるが、《剣闘獣スキピオ》を見たことがあまりない。

つまり、エースカードが現れる前に彼らは負けている。

「ううん…。まだまだ分からないよ」

「え…?」

子供たちの目が伊織に向く。

「だって、翔太君は強いんだもん!」

あまりに根拠がない言葉。

だが、彼女は今まですべての翔太のデュエルを見てきた。

だからこそ、はっきりとそう言えるのかもしれない。

彼女の言葉に若干表情を緩める。

「おやおや、どうやら翔太君と伊織ちゃん、なかなかいい関係になっているみたいだね。もしかして…」

「勘違いするなよ。俺と伊織はそういう関係じゃない。俺のターン!」

(そんなにはっきり否定しなくても…)

 

翔太

手札0→1

 

「相手フィールド上に《魔装幻影トークン》2体を特殊召喚することで、手札から魔法カード《魔装門》を発動」

栄次郎のフィールドに青い炎で構築された騎士が2体現れる。

その騎士の胸のあたりに五芒星が刻まれている。

 

魔装幻影トークン×2 レベル6 攻撃2000

 

「私のフィールドにトークンを?」

「《魔装門》は相手フィールドにトークン2体を特殊召喚する代わりに、デッキから魔装と名のつくカード1枚を手札に加えることができる。その効果で俺はデッキから《魔装融合》を手札に加える」

「《魔装融合》?」

「魔装モンスター専用の《融合》だ」

 

魔装門

通常魔法カード

「魔装門」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):相手フィールド上に「魔装幻影トークン」2体を特殊召喚することで発動できる。デッキから「魔装」カード1枚を手札に加える。

 

魔装幻影トークン

レベル6 攻撃2000 守備2000 トークン 炎属性 アンデッド族

「魔装門」の効果を特殊召喚される。

 

「え…?でも…」

翔太のフィールドにも手札にも素材となるカードはない。

もしそのカードが手札・フィールドのモンスターしか素材にできないならば、全くの死に札になる。

「けれど、わざわざ無駄なカードをサーチするはずがないんだろう?」

「ああ…。俺は《魔装融合》を発動。手札・フィールド・墓地に存在するモンスターを素材に、魔装と名のつく融合モンスター1体を融合召喚する。俺が素材とするのは《ケルベロス》、《ファーブニル》、《ビャッコ》」

墓地から3体のモンスターが現れ、渦の中に消えていく。

「灼熱の番犬よ!財宝を守る飛竜よ!可憐なる式神よ!魔導の力によりて、今1つとならん。融合召喚!真紅の騎士、《魔装騎士レッドライダー》!!」

赤いフルプレートを装い、背中に赤い刀身の大剣を下げている騎士が現れる。

五芒星はフルプレートの胸部分に刻まれている。

 

魔装騎士レッドライダー レベル8 攻撃3000

 

魔装融合

通常魔法カード

(1)自分の手札・フィールドから「魔装」融合モンスターカードによって決められた融合素材を墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。また、自分の墓地に存在するカードを除外することで融合素材とすることもできる。

 

「おや…?翔太君、花粉症なのかい?」

李次郎が《魔装騎士レッドライダー》召喚と同時に目の色が赤に変化した翔太を心配そうに見つめる。

「眼のことは気にするな。《レッドライダー》は俺のターンにモンスターの特殊召喚に成功した場合、そのターンのバトルフェイズ時のみ攻撃力を1000ポイントアップさせることができる。バトルだ。《レッドライダー》で《剣闘獣スキピオ》を攻撃。必殺真剣」

《魔装騎士レッドライダー》の五芒星が凄まじい光を発し、両腕の筋肉を強化していく。

そして、真紅の大剣は一撃で《剣闘獣スキピオ》を両断した。

 

魔装騎士レッドライダー レベル8 攻撃3000→4000(このターンのバトルフェイズのみ)

 

栄次郎

ライフ3100→1900

 

「やったね、翔太君!!《剣闘獣スキピオ》をやっつけた!!」

「更に《レッドライダー》の効果発動。このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した時、続けてもう1度だけ相手モンスターを攻撃できる」

「なるほど…そのために私のフィールドにトークンを…」

自身の敗北を悟り、栄次郎はゆっくりと腕を降ろす。

「《魔装騎士レッドライダー》で《魔装幻影トークン》を攻撃」

《剣闘獣スキピオ》の消滅を見届けた《魔装騎士レッドライダー》はすぐに《魔装幻影トークン》に目を向ける。

すると、《魔装幻影トークン》はわずかにうなずき、青い炎でできた剣で栄次郎を切り裂いた。

 

栄次郎

ライフ1900→0

 

魔装騎士レッドライダー

レベル8 攻撃3000 守備2300 融合 炎属性 戦士族

「魔装」モンスター×3

このカードが融合召喚でのみ自分フィールド上に特殊召喚できる。

(1):自分のターンにモンスターの特殊召喚に成功した場合、そのターンのバトルフェイズ時に発動できる。このカードの攻撃力はバトルフェイズ終了時まで1000ポイントアップする。

(2):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した時、続けてもう1度だけ相手モンスターを攻撃することができる。

 

「ふう…」

デュエルが終わり、目の色が元に戻ると、翔太が若干疲れたかのような表情を浮かべる。

「翔太君、大丈夫?」

「どうってことない。にしても、とんでもないじいさんだな」

「当然だよ!だって、おじいちゃんは昔ユース選手権まで行ったんだから!」

「ユース選手権…?」

「あ…そういえば翔太君はまだ知らなかったね。ユース選手権は…」

伊織が翔太にプロデュエリストになるまでの道筋に1つであるジュニアユース選手権とユース選手権について説明を受けている間に、栄次郎はコーヒーづくりを始める。

「うーん…それにしても…」

「どうしたんだよー、太一」

なぜか紫色のリーゼント頭をしている小学生の典亮が太一に話しかける。

伊織曰く、親から虐待を受けていた時に助けてくれた高校生がリーゼントをしていて、その少年にあこがれてこのような頭にしたらしい。

「いや、翔太兄ちゃんが来てから、伊織お姉ちゃんの笑顔が増えたなって思って…」

「んー?そうかー。気のせいだと思うけどなー。それより太一、じいちゃんがコーヒー作ってる間にデュエルするか?」

「うん!手加減なしだ!典亮!!」

「…。とにかく選手権で好成績を収めればいいってわけだな」

「そういうこと!そうすれば、プロデュエリストになれるんだよ!あ、太一君と典亮君がデュエルをしてる!!一緒に観戦しよ!!」

「ふう…どうせ拒否権がないんだろ?」

「当然!」

翔太が逃げ出さないように腕にしがみつく。

そんな伊織に呆れながら、翔太はデュエルを観戦することにした。

太一のフィールドには《BKベイル》、典亮のフィールドには《ゴブリン突撃部隊》が存在した。




疲れが抜けず、眠ってばかりで創作にかなり時間がかかってしまったナタタクです。
さて、これで四騎士がすべてそろいました。
しかし、ここからどのような展開にしようか…うーーーん…。
ちなみに、栄次郎の苗字が鮫島の理由については今は内緒ということでお願いします。


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第10話 闇からの目覚め

「それで…その石倉純也って男の家が舞網市郊外に?」

(そうだ、まさかそこに彼の自宅があるとは思わなかった。けど、そこならもしかしたら…)

「俺の記憶の手掛かりがある…だろ?」

(ああ…。詳しい地図は後でメールで送る。明日、行って来い!)

「言われなくてもな」

電話を切ると、すぐにデュエルディスクに修造から送られた地図が表示される。

「石倉純也…か…」

翔太が石倉純也について調べている間、様々なことが起こった。

遊矢はジュニアユース選手権出場のために残り4戦の公式戦に勝利しなければならない。

しかし、ストロング石島に勝利してしまった影響は想像以上に大きく、彼が通学している舞網第二中学校では公式戦の相手になってくれるデュエリストは一人もいなかった。

そんな中、遊勝塾にストロング石島のマネージャーであった男、ニコ・スマイリーが現れた。

先程、彼のプロフィールを過去形で書いたのには理由がある。

実をいうと、ストロング石島は遊矢に敗北した後、一から修行をやり直すと言い残してチャンピオンの座を返上し、旅に出てしまったのだ。

そこで、マネージャーを解雇されたニコは特別推薦でジュニアユース選手権に出場できるという話を手土産に遊矢のマネージャーになろうとした。

しかし、特別推薦での出場は何かズルのように感じると言って遊矢はそれによる出場を拒否した。

そのかわりに、彼に残り4戦の相手になってくれるデュエリストを探してもらうことにした。

「ジュニアユース選手権出場のための条件は60戦以上の公式戦で、6割以上の勝率。または公式戦で6連勝する…か…」

遊矢の今までの成績は56戦32勝。

残り4戦にすべて勝てばちょうど勝率6割となる。

一方、公式戦6連勝は高い実力を持っていながら公式戦の機会があまりないデュエリストのために特例で認められたシステムで、素良はそのシステムを利用してジュニアユース選手権出場を目指しているようだ。

(あいつらは前へ進もうとしている…。だが、記憶のない今の俺はマイナスだ。記憶を取り戻すことで、ようやく俺はゼロになり、前へ進むことができる)

デュエルディスクをしまうと、ベッドへ向かう。

しかし、なぜか伊織がそこでぐっすりと眠っている。

「まったく…なんでこいつはここまで奔放になれるんだ?」

 

そして、翌日の施設前にあるバス停。

「おーい、翔太君早くー!!」

「ふああ…。朝っぱらからでかい声を出すなよ。つばが顔に当たる」

元気いっぱいの伊織と眠気が抜けない翔太。

結局翔太は椅子に座った状態で眠り、熟睡できなかった。

その原因が目の前の少女にあるために、機嫌が悪くなる。

「…それにしても、他に服がなかったのか?」

「えー?私の服って変なの?」

「当たり前だろ?こんな…」

青いジャケットに腹部が露出した紫のタンクトップ、更に下に青いスパッツをはいているとはいえ、白いミニスカートという無防備すぎる服装。

「うーん…でも、動きやすいよ?」

「そういう問題じゃないだろ?」

「そういう翔太君も、この格好はちょっと変だと思うよ?」

黒い長ランに赤シャツ、更に黒いベルト。

これらは翔太にと権現坂が道場から調達したもので、自身も何かと気に入っている。

だがどこか昭和風な部分があり、更にいうと冬用の学ランであるため暑苦しい。

「どうでもいいだろ?俺の服装は…。バスに乗るぞ」

「え…!?待ってよ、翔太君!!」

数十秒前にバスが来ていることにようやく気付いた伊織は置いて行かれないように急いで乗車した。

 

「…。ここが石倉純也の家か」

「うん。その人が行方不明になってからは誰も来てないけど…」

バスを乗り継いで1時間、2人は石倉純也の家につく。

白い木造2階建て住宅で、庭は数年手入れされていないためか荒れている。

「けど、どうやって中に入るの?」

「簡単だ」

ドアの前で背をかがめ、ゴム手袋をつけるとポケットからピッキングツールを取り出す。

そして、数秒で開錠した。

「よし、これで入れるな」

「翔太君…犯罪だよ?」

「別にいいだろ?お前は外で待ってろ」

「えーー!?なんで??」

「邪魔になるからだ」

「プーー!!」

頬を膨らませ、不満げな伊織に目を向けず、翔太は家の中へ入って行った。

 

「…」

家の中をくまなく見る。

アルバム、料理本、鍵箱、財布、雑誌、小説、トイレ…。

何を見ても、何も頭に浮かばない。

懐かしい感覚が一切わかない。

分かったこととすれば、石倉純也の残った肉親が妹のみということだけだ。

「あとは…ここだな」

2階にある純也の自室に足を踏み入れる。

蜘蛛の巣や蠅、そしてゴキブリが彼を出迎える。

「ちっ…気持ち悪い」

新聞紙を丸め、蠅などをたたきながら純也の机を見る。

机の上にはデュエルに関する数年前の雑誌、そして彼の手帳サイズの日記が置かれていた。

雑誌の表表紙には色黒で黒い短髪、青いジャケット姿の男が載っていて、石倉純也の名前が大きく書かれている。

「こいつを見れば、何かわかるか?」

埃を払い、虫がいない居間で日記を読む。

7月19日 ようやく休みが取れる アメリカからようやく戻ることができた 聖子が掃除をしてくれたおかげで家は快適 今度、お礼に何かを奢ろう

「聖子…それが妹の名前なのか?」

7月22日 今日はひどい夢を見た なぜか真夜中の戦場にいて、たくさんの血でできた人間が追いかけてくる 一体どういうことだ?

7月29日 この1週間ずっと寝ると悪夢を見る 聖子が快眠まくらをネット通販で購入し、送ってくれた しかし、あの夢を見るくらいならずっと起きたままの方がいい

8月2日 耐えられず、結局今日1日眠ってしまった またあの悪夢 血でできた人間が誰かの名前を言っていた気がするが、どうしても思い出せない いったい俺はどうしてしまったんだ? 休暇が終わるまであと一週間 それまでに何とかしないと

8月5日 聖子が気分転換に海水浴をしようと誘ってきた あの悪夢を見てから、買い物以外で外に出ることがなくなっていた もしかしたら、こうして気分転換すればあの悪夢を見なくなるかもしれない

「日記はここで終わっているな…」

後のページをいくらめくっても白紙。

一文字も書かれていない。

「だが…悪夢だと?」

悪夢という言葉がどうしてもひっかかる。

そして、8月5日以降の記述がない。

おそらく、その日に行方不明になったのだろう。

「そろそろ、外に出るか。伊織がうるさくなる」

日記をポケットに入れると、玄関へ向かう。

 

「…。伊織…?」

外に出ると、そこには誰もいない。

本来なら、伊織がその場で待っているはずだ。

「あいつ…へそまげて帰ったか?」

財布は伊織に預けていて、今の翔太には金がない。

つまり、帰りのバスに乗れないということだ。

だが、翔太にとって半分幸運で、半分不幸な事態がすでに起こっていたのだ。

「こいつは…」

足元に落ちているのは伊織がはいていたブーツ、それも片方だけだ。

「これを落として帰るなんてな、あいつ、そろそろボケたか…?」

「キュイ!!」

急に聞き覚えのある鳴き声が聞こえ、耳を引っ張られる感覚が襲う。

「痛っ!!なんだよお前!?」

「キュイーー!キュイキュイ!!」

犯人はなんと翔太のモンスター、《魔装妖ビャッコ》だった。

「なんだこいつ…?なんで俺の肩の上に…」

「キュキュイ!!」

肩から飛び降りたビャッコは純也の家の郵便受けの前に立つ。

数年家主が不在であるにもかかわらず、そこだけきれいに片付いている。

「この中に、何かあるのか?」

翔太の言葉にビャッコがうなずく。

仕方なく、中を見ると封筒だけ入っていた。

中身は手紙と地図が1枚ずつだ。

「お前の妹は預かった。返してほしければ、指定する場所へ来い…?こいつ、石倉純也が行方不明だってこと知らないのか?」

誘拐犯の間抜けさにあきれながら、翔太は同封された地図を見る。

地図にはここから東へ30分程度歩いたところにマークされている。

「ふう…あいつがいないと帰れないからな」

ため息をつきながら、翔太は指定された場所を目指した。

 

「さあーーーー来いーーー!!石倉純也!!」

廃ビル1階で、坊主頭で緑色の分厚いジャンバーを着た男が頭を抱えている。

彼の目の前には白を基調とし、赤と黒のラインがあるオートバイがあり、それに装着されているサイドカーには伊織が眠っている。

彼は翔太が家に入った10分後、伊織を気絶させて拉致したのだ。

「6年前の恨み、晴らしてやるぞーーー!来なかったら、妹がどうなるか…。じゃあ、まずは…」

「おいおい、こいつは俺の妹じゃねえぞ」

「な…!?」

廃ビルに入ってきた翔太を見て、男はかなりびっくりしている。

男はすでに伊織のジャケットに手をかけていた。

「気持ち悪い奴だな…」

「石倉純也…じゃねえ…少し似てるが…違う…」

「石倉純也を知ってるのか?なら、教えてくれよ。ついでに、あいつも返してもらうぜ。あいつがいないと、帰れないからな」

「そ…そんなわけにはいかねえよ!!絶対お前かこいつが警察に通報するからよぉ…」

「当然だろ?誘拐犯。それとも、変態か?」

「黙れ!!俺には佐藤浩一っていう立派な名前があるんだぞ!!」

憤慨する佐藤をみるが、翔太は全く怖がっていない。

ただ…ただかわいそうな人間を見るような目になっているだけだ。

「サイドカーの中にデュエルディスクがあるみたいだな。なら、俺とデュエルをするのはどうだ?」

「な…!?デュエル…?」

「ああ、あんたが勝ったらこのまま引き下がる。警察には何も言わねえ。だが、俺が勝ったら石倉純也について、いろいろ聞かせてもらうぜ」

「おいおい、一応俺はプロ試験までいってるんだぜ?勝てると思ってんのか?しかも、こんな女のために俺と…」

「俺ほど女に優しいデュエリストはいないと思うぜ?変態デュエリストさん」

「てめえ…ああいいぜ、やってやろうじゃねえか!!!」

互いにデュエルディスクを装着した瞬間、佐藤は拘束装置を互いのそれに取り付ける。

「こいつは…?」

「こいつはちょっと変わった装置でよ…負けた方のデュエルディスクが破壊されるって代物だ!!」

「まあ、どうでもいいな。俺が勝つから」

「ほざいてろ!!今のお前は石倉よりも許せねえ!!覚悟しろ!!」

「「デュエル!!」」

 

佐藤

手札5

ライフ4000

 

翔太

手札5

ライフ4000

 

「俺の先攻!ドロ…」

「ちょっと待て。先攻は最初のターン、ドローできないぞ。そんなことも知らないのか?」

「う…うるせえ!!5年近く牢屋にいて、つい最近シャバに出たばかりなんだよ!!俺はモンスターを裏守備表示でセット!カードを2枚伏せてターンエンド!」

 

佐藤

手札5→2

ライフ4000

場 裏守備モンスター1

  伏せカード2

 

翔太

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「俺のターン!」

 

翔太

手札5→6

 

「(裏守備モンスター…。どんなモンスターが伏せられたかわからないが、やることは1つだ!)俺は手札から《魔装獣ユニコーン》を召喚!」

 

魔装獣ユニコーン レベル4 攻撃1600

 

「更に、このカードは俺のフィールドに存在する魔装モンスターをリリースすることで、手札から特殊召喚できる。俺は《ユニコーン》をリリースし、《魔装鳥フェニックス》を特殊召喚!」

《魔装獣ユニコーン》が嘶くと、上空に炎の渦が生まれ、そこから炎でできた若い孔雀が姿を見せる。

 

魔装鳥フェニックス レベル7 攻撃2300

 

「バトルだ!俺は《フェニックス》で裏守備モンスターを攻撃!」

《魔装鳥フェニックス》は羽を広げると、大量の丸い模様に1つずつ火球が生まれる。

そして、その火球は一斉に裏守備モンスターに襲い掛かった。

「へっ…」

佐藤が笑みを浮かべると同時に、裏守備モンスターは銀色の鎧を着た白い犬となり、火球を受けながらも強い光を発しながら《魔装鳥フェニックス》にかみついた。

そして、2体は相打ちという形で消滅する。

「《ライトロード・ハンターライコウ》のリバース効果はフィールド上のカード1枚を破壊できるだ」

「その効果で、俺の《フェニックス》が破壊されたってことか…」

翔太は《ライトロード・ハンターライコウ》の効果よりも、彼のデッキがライトロードデッキであることに苦い表情を浮かべる。

「更に俺のデッキトップから3枚のカードを墓地へ送るぜ」

この効果のように、ライトロードカードはデッキから次々とカードを墓地へ送る効果を持っている。

それゆえ、デッキ切れによる敗北というリスクがあるものの凄まじいスピードで墓地肥やしができ、場合によっては一瞬で相手を粉砕することができるのだ。

 

デッキから墓地へ送られたカード

・ライトロード・パラディンジェイン

・ネクロ・ガードナー

・終末の騎士

 

「だが、俺の《フェニックス》のも効果はある。このカードがカード効果で破壊された時、そのターンのエンドフェイズ時に墓地から蘇る。俺はカードを1枚伏せてターンエンド。そして蘇れ、《魔装鳥フェニックス》」

突然、翔太のフィールドに火柱が上がり、そこから《魔装鳥フェニックス》が舞い戻る。

 

魔装鳥フェニックス レベル7 攻撃2300

 

「なら、俺は罠カード《針虫の巣窟》を発動。その効果でデッキトップから5枚のカードを墓地へ送る」

 

デッキから墓地へ送られたカード

・ライトロード・サモナールミナス

・死者転生

・ソウル・チャージ

・ライトロード・ドラゴングラゴニス

・強欲な瓶

 

魔装鳥フェニックス

レベル7 攻撃2300 守備1700 効果 炎属性 鳥獣族

このカードは通常召喚できない。

このカードは以下の方法、および(1)の効果でのみ特殊召喚できる。

「魔装鳥フェニックス」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

●このカードは自分フィールド上に表側表示で存在する「魔装」モンスター1体をリリースすることで手札から特殊召喚できる。

(1):このカードが効果によって破壊され墓地へ送られた場合、そのターンの終了時に発動できる。墓地に存在するこのカード1枚を自分フィールド上に特殊召喚する。

 

佐藤

手札2

ライフ4000

場 伏せカード1

 

翔太

手札5→2

ライフ4000

場 魔装鳥フェニックス レベル7 攻撃2300

  伏せカード1

 

先程の《ライトロード・ハンターライコウ》、そして《針虫の巣窟》の効果で合計3枚のライトロードモンスターが墓地へ送られた。

更に、《ネクロ・ガードナー》が墓地へ送られたために翔太への攻撃妨害策が1つできた。

「俺のターン、ドロー」

 

佐藤

手札2→3

 

「俺は手札から魔法カード《ソーラー・エクスチェンジ》を発動。手札のライトロードモンスター1体を墓地へ送り、デッキからカードを2枚ドロー。その後、デッキからカードを2枚墓地へ送る」

 

手札から墓地へ送られたカード

・ライトロード・エンジェルケルビム

 

デッキから墓地へ送られたカード

・ゾンビキャリア

・エクリプス・ワイバーン

 

「また墓地肥やしか…」

「この効果で墓地へ送られた《エクリプス・ワイバーン》の効果発動。デッキからレベル7以上の光属性か闇属性のドラゴン族モンスター1体を除外する。俺はデッキから《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》を除外!さあって…これで準備は整った。そろそろ俺の本気を見せてやろうか…」

佐藤はニヤニヤしながら自分の手札を見る。

「さぁて、このデュエルが終わったら、どうするかなあ。まずはあの娘を…」

「さっさとやれよ、気持ち悪い考えはするな」

「くそっ!人がいい気分になっているときに…。俺の墓地にライトロードモンスターが4種類以上存在するとき、このカードは手札から特殊召喚できる。俺は《裁きの龍》を特殊召喚!」

純白で巨大な翼竜が強烈な光を発しながらフィールドに現れる。

 

裁きの龍 レベル8 攻撃3000

 

「更に俺の墓地に闇属性モンスターが3体存在するとき、《ダーク・アームド・ドラゴン》は手札から特殊召喚できる」

棘付きの尾と鎧、そして体の至る部分に刃がついている漆黒のティラノサウルスみたいな竜が現れる。

 

ダーク・アームド・ドラゴン レベル7 攻撃2800

 

「そして、このカードは墓地の光属性モンスターと闇属性モンスターを1体ずつ墓地へ送ることで手札から特殊召喚できる。《終末の騎士》と《エクリプス・ワイバーン》を除外し、《ライトパルサー・ドラゴン》を特殊召喚!」

 

ライトパルサー・ドラゴン レベル6 攻撃2500

 

「そして、《エクリプス・ワイバーン》の効果により除外されていた《レッドアイズ》が手札に加わる」

たった1ターンで3体の上級モンスターが現れた。

ライトロードカードをここまで使いこなしているところから、実力は前に戦ったLDSの生徒以上であることがうかがえる。

「ハハハ!俺のことを舐めた罰だぜ、兄ちゃん。お仕置きだ!!俺は《ダーク・アームド・ドラゴン》の効果発動!墓地の闇属性モンスター1体を除外することで、フィールド上のカード1枚を破壊できる。俺はお前の頼みの綱である最後の伏せカードを破壊する!」

《ゾンビキャリア》を闇の破壊エネルギーに変換し、《ダーク・アームド・ドラゴン》の右手に宿る。

そして、その手で拳を作り翔太の伏せカードに振り下ろされる。

「罠発動!《威嚇する咆哮》!」

伏せカードが砕けた瞬間、どこからともなくすさまじい咆哮が起こり、佐藤のモンスター達がひるむ。

「フリーチェーンの罠カードか…。まあ、1ターン生き延びただけだ!俺はこれでターンエンド!」

それと同時に、《裁きの龍》の効果で佐藤のデッキが墓地へ送られる。

 

デッキから墓地へ送られたカード

・ジャスティス・ワールド

・ライトロード・バリア

・貪欲な壺

・ライトロード・ウォリアーガロス

 

佐藤

手札3→1(《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》)

ライフ4000

場 ライトパルサー・ドラゴン レベル6 攻撃2500

  裁きの龍 レベル8 攻撃3000

  ダーク・アームド・ドラゴン レベル7 攻撃2800

  伏せカード1

 

翔太

手札2

ライフ4000

場 魔装鳥フェニックス レベル7 攻撃2300

 

(ちっ…プロテストまで行ったデュエリストとだけあるな…一切のミスがない)

先程、佐藤は2回《ダーク・アームド・ドラゴン》の効果を使うことができた。

そして、フリーチェーンのカードを想定して先に伏せカードの破壊を選択した。

《魔装鳥フェニックス》の復活効果はすでに知っているため、そして墓地の《ネクロ・ガードナー》という隠し球を温存するために。

「俺のターン!」

 

翔太

手札2→3

 

「(…!よし!!)俺は手札から魔法カード《不死鳥の獄炎》を発動!俺のフィールドにレベル7以上、もしくはランク7以上の魔装モンスターが存在するとき、俺たちのフィールド上のモンスターをすべて破壊し、デッキからカードを1枚ドローする!」

「何!?」

「《フェニックス》、その炎で敵を浄化しろ!!」

《魔装鳥フェニックス》が上空を舞い、地中から巨大な火球を呼び出す。

そして、佐藤の3体のモンスターが《魔装鳥フェニックス》と共に火球に飲み込まれていった。

「だが…このカードを発動したターン、俺のモンスターは攻撃できない。…何!?」

火球が消えると、佐藤のフィールドは灰色のバリアに包まれていた。

「バカな!?なぜ奴のモンスターが破壊されていない?」

「俺は罠カード《混沌の障壁》を発動した。光属性モンスターと闇属性モンスターを1体ずつ除外することで、このターンの間俺のモンスターは破壊されない。これで、お前の逆転の一手は不発だ。ハハハハ!!!」

 

除外されたカード

・ライトロード・パラディンジェイン

・ネクロ・ガードナー

 

腹を抱えて笑い始める佐藤。

そして、苦い表情の翔太。

これが今の2人の状況、2人の差だ。

「俺は…カードを1枚伏せ、ターンエンド」

ターン終了と共に、《不死鳥の獄炎》で破壊された《魔装鳥フェニックス》が舞い戻る。

 

佐藤

手札1(《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》)

ライフ4000

場 ライトパルサー・ドラゴン レベル6 攻撃2500

  裁きの龍 レベル8 攻撃3000

  ダーク・アームド・ドラゴン レベル7 攻撃2800

 

翔太

手札3→2

ライフ4000

場 魔装鳥フェニックス レベル7 守備1700

  伏せカード1

 

不死鳥の獄炎

通常魔法カード

「不死鳥の獄炎」は1ターンに1度しか発動できず、発動したターン自分のモンスターは攻撃できない。

(1):自分フィールド上にレベル・ランクが7以上の「魔装」モンスターが表側表示で存在する場合にのみ発動できる。フィールド上のモンスターをすべて破壊する。その後、デッキからカードを1枚ドローする。

 

混沌の障壁

通常罠カード

(1):自分の墓地に存在する光属性と闇属性モンスターを1体ずつ除外することで発動できる。このターン、自分フィールド上のモンスターは戦闘および効果では破壊されない。

 

「おいおいおい、さっきまでの生意気な態度はどうしたんだよ?兄ちゃん?」

「く…」

翔太のフィールドには《魔装鳥フェニックス》と伏せカード1枚のみ。

対する佐藤のフィールドには3体の竜、手札には《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》。

ライフは4000あるとはいえ、この状況では風前の灯。

「分かってるよな?敗北したほうのデュエルディスクが破壊される。カードはどうなるんだろうなぁ…」

「カードも…ただでは済まないってことか?」

「そういうことだ!!それから、サレンダーもないからな!!(へっ…俺の方のは破壊されないように設計されてるんだぜ?審判と手を組んだチームって一番怖いよなぁ、バカな兄ちゃんよぉ)」

もはや勝った気になっている佐藤は再び気を失ったままの伊織に目を向ける。

(へへっ…あいつはデュエルの後で痛めつけるとして、この娘は…)

再びいかがわしい考えを頭に浮かべる佐藤。

(思えば、あいつのせいで俺は刑務所行きになったんだったなぁ。その時できなかったことをこいつに…)

「何を考えている!?早くターンを進めろ!!」

「ちっ…生意気な。俺のターン、ドロー!!」

 

佐藤

手札1→2

 

「俺は《裁きの龍》の効果を発動!ライフを1000支払うことで、このカード以外のフィールド上のカードをすべて破壊する!」

佐藤から生命エネルギーが放出され、それが光となる。

そして《裁きの龍》はその光を増幅させ、強力な破壊光線にしてフィールドを薙ぎ払う。

破壊光線を受けたカードはすべて灰となった。

 

佐藤

ライフ4000→3000

 

破壊された伏せカード

・ペンデュラム・ミラージュバリア

 

「くそっ…!このままでは…」

「更に、俺は手札から《ライトロード・マジシャンライラ》を召喚」

黒い長髪で、白いローブをまとった女性が現れる。

 

ライトロード・マジシャンライラ レベル4 攻撃1700

 

これで、2体のモンスターの攻撃力の合計は4700。

攻撃を受ければ、翔太の敗北が決定する。

「これでおしまいだ!!《裁きの龍》でダイレクトアタック!!!」

《裁きの龍》が口から白いブレスを放つ。

ブレスはそのまま翔太を無慈悲に焼き尽くした。

 

翔太

ライフ4000→1000

 

「ハハハハ!!派手に受けたな!さあ、《ライラ》!こいつにとどめを刺せ!!」

「翔太…く…ん…」

気を失っていた伊織がゆっくりを目を覚ます。

最初に視界に入ったのは、ライラの杖から放たれた光の球が翔太に襲い掛かる光景だ。

「翔太君!!」

しかし、突然翔太の前に現れた《魔装剣士ムネシゲ》が盾で受け止める。

「何…!?」

「俺は墓地へ送られた《ペンデュラム・ミラージュバリア》の効果を発動した…。ダイレクトアタックを受けたとき、デッキからペンデュラムモンスター1体を手札に加え、バトルフェイズを終了させる…」

翔太の手に《魔装剣士ムネシゲ》が加わる。

皮肉にも、先ほど翔太のライフを大きく削った《裁きの龍》に救われることになった。

 

ペンデュラム・ミラージュバリア

通常罠カード

(1):自分フィールド上のPモンスターが攻撃対象となったときに発動できる。その攻撃を無効にする。

(2):相手の直接攻撃を受けたときに自分の墓地に存在するこのカードを含む「ペンデュラム・ミラージュバリア」をすべて除外することで発動できる。自分のデッキからPモンスター1体を選択して手札に加え、バトルフェイズを終了させる。

 

「くそっ…!運のいい奴め!!俺はこれでターンエンド!」

それと同時に、佐藤はデッキからカードを合計7枚墓地へ送る。

そして、翔太のフィールドに《魔装鳥フェニックス》が舞い戻る。

 

デッキから墓地へ送られたカード

・ライトロード・モンクエイリン

・ライトロード・レイピア×2

・光の援軍

・ボルト・ヘッジホッグ

・貪欲な壺

・聖なるバリア―ミラーフォース―

 

「その瞬間、デッキから墓地へ送られた《ライトロード・レイピア》2枚の効果発動!こいつはデッキから墓地へ送られるとき、俺のライトロードモンスターに装備できる!」

 

佐藤

手札2→1(《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》)

ライフ3000

場 裁きの龍 レベル8 攻撃3000

  ライトロード・マジシャンライラ(《ライトロード・レイピア》×2装備) レベル4 攻撃1700→3100

 

翔太

手札2→3(うち1枚《魔装剣士ムネシゲ》)

ライフ1000

場 魔装鳥フェニックス レベル7 守備1700

 

「…」

翔太はこれまでにないくらい追いつめられている。

今の佐藤には2回《裁きの龍》の効果を使うことができる。

たとえこのターン生き延びたとしても、次のターンは全滅し、ライフをすべて失う。

実質、これがラストターンだ。

「勝てないのか…俺は…」

「翔太君…?」

初めて、翔太が弱音を吐く。

あれほどまで自信たっぷりだった彼の言葉とは思えない。

「俺には…記憶を取り戻す力も…人一人助ける力もないのか…!!?」

「ハハハ!!当たり前だろ?お前は餓鬼だ!!なら、敗北の前に更にお前の無力さを教えてやるよ!!」

佐藤がサイドカーから出ていた伊織を押し倒す。

「キャ!!な…何を…!?」

「それは…お前が一番よくわかってるだろ?」

「い…いや…」

ゆっくりと近づく佐藤に恐怖を覚え、伊織の足の震えが止まらない。

涙を浮かべる伊織に愉快そうで邪悪な笑みを浮かべる。

「や…めろ…」

(おい、力がほしいか!?)

「…!?」

急に視界が暗くなり、周囲が光景が廃ビルではなく廃墟と化した王座の間となる。

「…。誰だ、お前…」

(誰だはないだろ?まあ…今の俺はお前にとっては神様みたいなものだぜ?)

目の前にはどこまでも続く玉座への階段で、玉座には誰かが座っているが暗くて見えない。

「神…だと?」

(ああ、そうさ。これから自分の非力を呪い哀れなヒーローさんに力をやるよ。お前の手に握ってあるものを見な」

「…?」

翔太の右手には見たことのないエクシーズモンスターカードがある。

(こいつは俺の持つ力の一部だ。お前にやるよ。そいつでお前の大切な娘を助けてやりな)

「…。何が望みだ?」

(あぁん?)

「ただで力を貸すはずがないだろ?」

(まあ…そうだな。じゃあ、これからも今まで通りお前の記憶を探し続けろ。それを俺は見学させてもらうぜ。おっと…もう時間みたいだな)

急に周囲の壁や床が崩れていく。

「待て!?お前は何者だ!!?」

(さっきも言っただろう?お前にとっては神様みたいなものだって…)

その言葉を最後に翔太の意識が一気に現実へ押し戻されていく。

「いや…いや!!」

「ハハハ!そういう言葉はもっと言ってほしいなあ!!」

嫌がる伊織のジャケットをついにつかむ佐藤。

しかし、その腕を翔太が握りしめる。

「な…!?」

「伊織に…手を出すな。まだデュエルは…終わっていない!!」

(こ…こいつ!?)

急に恐怖を感じ、伊織から離れる。

先程までの翔太と別人のように思えてしまうほどの恐ろしい何かを感じた。

「翔太…君…?」

「伊織…お前を助ける。俺のターン、ドロー!」

 

翔太

手札3→4

 

「俺はスケール2の《魔装槍士タダカツ》とスケール9の《魔装剣士ムネシゲ》でペンデュラムスケールをセッティング!!」

左右に2体の翔太のペンデュラムモンスターが光の柱とともに現れる。

「これで俺はレベル3から8までのモンスターを同時に召喚できる!来たれ、時の果てに眠りし英雄の魂。希望の道を照らし、勝鬨を上げろ!ペンデュラム召喚!!現れろ、死を司る青き騎士、《魔装騎士ペイルライダー》!!」

廃ビルの天井が砕け、そこから《魔装騎士ペイルライダー》が現れる。

もちろん、ソリッドビジョンでの演出であるため本当に砕けたわけではない。

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

 

「へっ…!今更そんなモンスターで何ができるんだ!?」

「見せてやる…」

「何?」

「俺が手に入れた力を…」

急に翔太が紫色のオーラに包まれる。

「しょ…翔太君!?」

「な…なんだよお前、ソリッドビジョンにさ…細工したのか?」

オーラはエクストラデッキに溶け込んでいき、新たなカードが創造されていく。

「俺はレベル7の《魔装騎士ペイルライダー》とペンデュラムゾーンの《魔装槍士タダカツ》、《魔装剣士ムネシゲ》でオーバーレイ!」

「な…何ぃ!?」

3体のモンスターによって、フィールドにオーバーレイネットワークが構築させる。

「ペンデュラムエクシーズチェンジ!!現れろ、ペンデュラムエクシーズ!次元を超え、新たな力を宿せ!《魔装騎士フェラーレ・カヴァリエーレ》!!」

純白に染まった鎧姿となり、そして右手に漆黒の玉石を持った《魔装騎士ペイルライダー》がオーバーレイネットワークから出てくる。

玉石と鎧にはルネッサンス風の細かい装飾が施されている。

 

PX魔装騎士フェラーレ・カヴァリエーレ ランク7 攻撃2500

 

「そして…俺は《カヴァリエーレ》の効果を発動。1ターンに1度、ペンデュラムオーバーレイユニットを1つ取り除くことで相手モンスター1体の攻撃力を0にし、ターン終了時まで選択した相手モンスターの元々の攻撃力を得る。デス・ドレイン!」

「あ…あああ…」

《PX魔装騎士フェラーレ・カヴァリエーレ》の玉石にペンデュラムオーバーレイユニットが宿る。

すると、それに《裁きの龍》の力が根こそぎ吸収されていく。

力を失った《裁きの龍》は力なく崩れ落ちた。

 

裁きの龍 レベル8 攻撃3000→0

PX魔装騎士フェラーレ・カヴァリエーレ ランク7 攻撃2500→5500

 

PX(ペンデュラムエクシーズ)魔装騎士フェラーレ・カヴァリエーレ

ランク7 攻撃2500 守備2000 エクシーズ 闇属性 戦士族

「PX魔装騎士フェラーレ・カヴァリエーレ」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できず、発動に成功したターンこのカード以外のモンスターは攻撃できない。

このカードは下記の方法でのみ特殊召喚することができる。

●このカードはこのターンP召喚された「魔装騎士ペイルライダー」1体とPゾーンに表側表示で存在する「魔装」Pモンスター2体の上に重ねることでX召喚できる。

(1):自分のライフが1000以下の時、このカードのX素材となっているPモンスターを1つ取り除き、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターの攻撃力は0となり、ターン終了時まで選択したモンスターの元々の攻撃力をこのカードに加える。

 

「そ…そんなバカな…!?こんなカード、見たことねえ!!」

「バトルだ!《カヴァリエーレ》で《裁きの龍》を攻撃!ブラックスフィア・スラッシュ!」

《PX魔装騎士フェラーレ・カヴァリエーレ》の2本の光剣に黒い玉石に納められた《裁きの龍》の力が注ぎ込まれる。

そして、その力を受けて白銀に染まった光が《裁きの龍》をいともたやすく切り裂くと、その竜は苦しむことなく消滅した。

「うわああああ!!」

 

佐藤

ライフ3000→0

 

「はあ…はあ…はあ…」

デュエルが終わり、疲れ果てた翔太は《PX魔装騎士フェラーレ・カヴァリエーレ》を見る。

「ペンデュラムエクシーズ…か…」

「翔太君!!」

伊織は思いっきり翔太に抱きつく。

「い…伊織…!?」

「翔太君!怖かったよぉ!!」

よっぽど恐ろしかったのか、翔太の胸に顔をうずめ、泣き続ける。

「…。ふう…泣き止むまで胸を貸してやる」

「翔太くーん…」

「そ…そんな…この俺が…」

負けたショックが大きかったのか、佐藤がその場に座り込む。

数分で伊織が泣き止むと、翔太は佐藤に詰め寄る。

「話せ…。石倉純也のことを」

「あ…ああ…。6年前のことだ…」

佐藤は窃盗や暴行などの犯罪を繰り返していた。

6年前は列車でいかがわしい行為をしようとしたが、石倉純也によって取り押さえられ、御用となった。

その結果彼は懲役刑となり、先日保釈されるまで純也へ復讐することを至上目的とした。

「それで、石倉純也の妹をさらおうとして…」

「私を間違えてさらった…ってこと?」

「ああ!そうだ!!くそっ!まさか、5年前に行方不明になっているとは…」

更にいうと、純也の妹、聖子の容姿を佐藤は知らずにこのような犯行に及んだ。

逆恨みを晴らすためにしては、何ともお粗末。

「ってことは、俺たちには何も恨みがないってことだな?」

「そ…そうだ。だから、警察には何も言うなよ?な、な!!?」

「…。伊織、ちょっと後ろ向いていてくれ」

「う…うん」

後ろを、バイクがある方向に顔を向けたのを確認すると、翔太は砂糖をじっと見る。

「な…何だよ!?」

「お前は伊織をさらい、挙句の果てに…。駄目だな」

翔太の拳が思いっきり佐藤の頬にめり込む。

「ギャワン!!」

変な悲鳴を上げながら佐藤は吹き飛び、気絶してしまった。

「これが鍵か…。伊織、帰るぞ」

「え…?でも、ここからバス停は…」

「大丈夫だ。こいつで帰る」

「え…えーーー!?」

ヘルメットをつけ、なんでもないようにバイクに乗る翔太を見て目を丸くする。

「しょ…翔太君。でも、免許は…?」

「奴のを使う。戻ったら改造すればいい」

「…いいの…かな?」

無免許運転、先ほどのピッキングツール所持、そして有印公文書偽造罪。

もはや、翔太も立派な罪人じゃないかと目を丸くしながら思い始めた。

「ああ、そうだ。バイク代だけは払っておくか」

一旦バイクから降りた翔太はピッキングツールが入ったケースに思いっきり佐藤の汗と指紋を付着され、彼の懐に入れる。

「じゃあ、帰るぞ」

「う…うん…」

サイドカーで苦笑いする伊織を見ずに、翔太はバイクを発進させた。

(それにしても…あいつは一体誰だったんだ…?)

自分の力を与えた男、そして行方不明になった石倉純也が見た悪夢。

翔太の中に浮かぶ疑問は増える一方だ。




翔太が手にしたペンデュラムの新しい可能性、ペンデュラムエクシーズ!!
多分、アニメでこれから出てくるかも…(汗)。
あと、翔太たちが住んでいる施設の名前を募集します。
思いついたら、オリカ同様メッセージをお願いしますね。


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第11話 反逆者との遭遇

「ふああ…最近青い制服の奴が増えたような…」

朝の車道をママチャリで走る翔太の目には青い制服を着た人物が町中で聞き取り調査を行っている光景が何度も飛び込んできた。

翔太自身も調査対象となり、スーパーからレオコーポレーション前の大通りへ来るまでにすでに4回捕まった。

(ちっ…、バイクならあいつらに捕まらずに済むが…)

昨日の伊織の言葉が脳裏で蘇る。

(いい、翔太君!バイクとか自動車とかはちゃんと勉強して、免許を取らないと乗れないの!だから免許の改造は禁止!それに免許取るまでバイクも禁止!いい?)

「そして、施設にあるのはママチャリだけ…」

ママチャリの籠の中には先述したスーパーの商品が入ったスーパーの袋がある。

施設では2・3日に1回食料などの買い物をすることになっていて、当番制だ。

翔太が登板になったのは今日が初めてで、ポケットの中には伊織直筆のスーパーまでの地図がある。

本来ならば、たとえ翔太が拒否したとしても伊織が一緒に行くはずなのだが、生憎今日は熱で寝ている。

「…。静かだな」

車のエンジン音や通行人の話し声が嫌でも耳に入るのだが、なぜかそれでも静かとしか思えない。

よく考えると、これまで1人で外出したことがなく、外出するときはいつも伊織がそばにいた。

「いないと静かで、いるとうるさい奴だな…あいつは…。うん…?」

早く帰ろうとママチャリで走る彼の目に妙な服装の男の姿が映る。

黒いマントで身を包んだ青と黒の髪の少年で、鉄道橋の近くにある裏路地へ入り込んでいく。

「妙な服装だな…」

翔太は古いマフィア物であるロード・トゥ・パーディションを思い出す。

先日なぜか栄次郎と一緒に見ることになった映画だ。

とはいうもののそのマフィアは黒いスーツとシルクハット姿で、先述の少年とは大違いだ。

彼を追うため、翔太もその裏路地へ入った。

 

「遅かったか…」

小さなゴミ捨て場付近で、少年は足を止めてそばに敷かれている鉄道橋を見る。

コンクリートでできているにもかかわらず、その橋には鳥の鉤爪でできたかのような巨大で深々とした傷跡がある。

普通の人には不可思議ではあるが、それだけで思考が止まってしまうようなもの。

だが、その少年にはそれだけでここで何が起こったのかを理解できた。

「隼…いつまでそんな無謀なことをするんだ…?」

「妙な服装だな、あんた」

「…?」

翔太の声を聞いた少年は急いで彼に振り向く。

少年の顔は黒いマスクとゴーグルで隠れている。

「見ない顔だな…。何者だ?」

「それは俺のセリフだ。妙な服装のガキ。こいつを見て、何かあるのか?」

翔太の目線が傷跡に向けられる。

そこまでの高さは8メートル以上あり、いたずらで作るにしては大胆すぎる。

「(待てよ…?あいつの髪型、遊矢に似ているが…気のせいか?)まあ、深くかかわらないほうがいいか。興味ないしな」

ここまで来た男のセリフかとつっこませる発言をし、翔太は引き返そうとする。

「待て。何者だ、貴様」

「俺はただの記憶喪失のデュエリストだ」

ママチャリを止め、少年の質問に答える。

「デュエリスト…。まさか、LDSの生徒か!?」

「俺はLDSとは関係ない。もう行っていいか?」

「いいや、まだだ」

少年はマントで隠していた両腕を出す。

左腕には黒い円盤状のデュエルディスクが装備されていた。

「デュエルか?悪いが、俺は買い物帰りだ。断る」

「そうはいかない。俺には事情がある。(なぜだ…?あの男から妙な力を感じる。俺たちの脅威になりうるかもしれない…)」

「はあ…やってられねえな」

少年の言葉を無視し、再びママチャリを走らせようとする。

「待て!!」

先程よりも強い口調。

それと共に、強い向かい風が翔太に襲い掛かる。

あまりの強さに、ママチャリを進めることができない。

「はあ…何なんだお前は?超能力者か?」

「…」

「だんまりか。ったく、しつこい男は嫌われるぞ?」

観念し、ママチャリから降りた翔太はデュエルディスクを構える。

「こうなった以上、先攻は俺にしてもらうぞ?」

「…。構わない」

「「デュエル!!」」

 

翔太

手札5

ライフ4000

 

少年

手札5

ライフ4000

 

「俺の先攻。俺はモンスターを《魔装竜ファーブニル》を召喚。カードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

翔太

手札5→3

ライフ4000

場 魔装竜ファーブニル レベル4 攻撃1900

  伏せカード1

 

少年

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「俺のターン、ドロー」

 

少年

手札5→6

 

「俺は手札から魔法カード《ソリッド・オーバーレイ》を発動。このカードはランク4以下のエクシーズモンスターの素材とすることができる」

オーバーレイユニットが収納されている結晶が現れる。

 

ソリッド・オーバーレイ(アニメオリカ・調整)

永続魔法カード

「ソリッド・オーバーレイ」はフィールド上に1枚しか表側表示で存在できない。

(1):このカードはランク4以下のXモンスターのX素材にできる。

 

(エクシーズ素材にできる永続魔法…。エクシーズ使いか?)

「更に、俺は手札から魔法カード《幻影模写》を発動。このカードはフィールド上のエクシーズモンスター以外のモンスター1体に変身する」

少年のフィールドに青い炎を放つ黒い水が現れる。

そして、その水は《魔装竜ファーブニル》そっくりな姿に変化した。

 

幻影模写 レベル4 攻撃0

 

幻影模写(ファントム・イミテーション)

通常魔法カード

「幻影模写」は1ターンに1度しか発動できず、このカードを発動したターン自分はエクシーズ召喚以外の方法でエクストラデッキからモンスターを特殊召喚できない。

(1):相手フィールド上のモンスター1体を選択して発動できる。発動後、このカードは通常モンスター(水族・闇・星?・攻/守0)となり、モンスターゾーンに攻撃表示で特殊召喚される。その時、このカードのレベルは選択したモンスターのレベルと同じになる。

 

「これで、レベル4のモンスターは2体か」

「俺はレベル4の《ソリッド・オーバーレイ》と《幻影模写》でオーバーレイ!漆黒の闇より愚鈍なる力に抗う反逆の牙!今、降臨せよ!エクシーズ召喚!ランク4!《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》!」

紫色の稲妻を宿した漆黒の竜が現れる。

「何!?こいつは…」

現れた竜を見て、翔太の目が大きく開く。

その竜の姿は色彩を除くと遊矢の《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》にあまりにも近かったからだ。

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ランク4 攻撃2500

 

(遊矢の《オッドアイズ》そっくりのモンスター…ますます怪しいな、あいつは)

「俺は《エクシーズ・ドラゴン》の効果発動!オーバーレイユニットを2つ取り除くことで、相手モンスター1体の攻撃力を半分奪う。トリーズン・ディスチャージ!!」

「何!?」

《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》の両翼から紫色の電撃が放たれ、《魔装竜ファーブニル》が拘束される。

拘束された《魔装竜ファーブニル》は力を根こそぎ奪い取られていく。

 

魔装竜ファーブニル レベル4 攻撃1900→950

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ランク4 攻撃2500→3450

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・ソリッド・オーバーレイ

・幻影模写

 

「ちっ…いきなり跳ね上がったか」

「バトルだ!《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》で《魔装竜ファーブニル》を攻撃!反逆のライトニング・ディスオベイ!!」

《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》が電磁浮遊をしながら、弱った《魔装竜ファーブニル》に高速接近する。

そして、膨大な稲妻を帯びた牙でその竜の黄金色の体を貫いた。

「罠発動!《ガード・ブロック》。俺が受ける戦闘ダメージを0にし、デッキからカードを1枚ドローする」

行き場を失った稲妻が翔太を襲おうとしたが、バリアによって弾かれる。

そしてそれは翔太の周囲に飛び散り、付近に捨てられていた新聞を燃やす。

「こいつは…モンスターの攻撃が実体化しているのか?」

「キュイーー!キュイ!!」

翔太の右肩にビャッコが現れ、おびえながら《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》を見る。

「そんなに怖いなら、出てくるな」

「俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

翔太

手札3→4

ライフ4000

場 なし

 

少年

手札6→2

ライフ4000

場 ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ランク4 攻撃3450

  伏せカード2

 

「やれやれ、いやなモンスターが出たもんだな」

レベル4モンスター2体を素材とする比較的使いやすい部類のエクシーズモンスターである《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》。

その場合、攻撃力はそれほど高く設定されることはないがこのカードの場合、相手モンスターが強ければ強いほど真価を発揮し、すさまじい攻撃力を得る。

少年が言っていた愚鈍なる力に抗うという言葉に似あう効果だ。

「俺のターン、ドロー」

 

翔太

手札4→5

 

「俺は罠カード《闇のデッキ破壊ウイルス》を発動」

「な…何!?」

「このウイルスは俺のフィールドに存在する攻撃力2500以上の闇属性モンスター1体をリリースすることでばら撒かれる」

《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》がその身を緑色のウイルスに変化させ、翔太の手札・デッキに取りつく。

「どういうつもりだ?わざわざ攻撃力3450のモンスターを捨ててまで…」

「貴様が知る必要はない。このカードを発動するとき、俺は魔法・罠のどちらかを宣言する。そして、相手の手札・フィールド・発動後3ターンの間に相手がドローしたカードを確認し、宣言した種類のカードをウイルスが破壊する。俺は魔法カードを宣言する!」

「ちっ…」

翔太は手札を公開すると、手札に存在する2枚の魔法カードを墓地へ送る。

 

翔太の手札

・魔装祭事クリスト

・魔装亀テンセキ

・魔装融合

・貪欲な壺

・針虫の巣窟

 

手札から墓地へ送られたカード

・魔装融合

・貪欲な壺

 

(《融合》…まさか奴は!!)

少年は墓地へ送られた《魔装融合》に対して露骨な嫌悪感を見せる。

(まさかと思ったが…もしかしたら奴は…)

「俺はモンスターを裏守備表示で召喚。そして、カードを1枚伏せ、ターンエンド」

「貴様のターン終了直前に、俺は罠カード《反逆者の信条》を発動。このターン、カード効果でリリースした闇属性・ドラゴン族モンスター1体を墓地から表側守備表示で特殊召喚する。蘇れ、《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》!!」

空気中に残留したわずかなウイルスが増殖し、集結。

そして、ウイルスは次第に《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》へと姿を変えていった。

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ランク4 守備2000

 

「更にこの効果でエクシーズモンスターの特殊召喚に成功した場合、手札2枚をそのモンスターのオーバーレイユニットにする」

 

手札からオーバーレイユニットとなったカード

・死霊騎士デスカリバー・ナイト

・幻影騎士団シャドーベイル

 

翔太

手札5→1(うち1枚《魔装亀テンセキ》または《魔装祭事クリスト》)

ライフ4000

場 裏守備モンスター1

  伏せカード1

 

少年

手札2→0

ライフ4000

場 ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン(オーバーレイユニット2) ランク4 守備2000

 

反逆者の信条

通常罠カード

「反逆者の信条」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このターン、カード効果でリリースされた闇属性・ドラゴン族モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスター1体を墓地から表側守備表示で特殊召喚する。

(2):(1)の効果で特殊召喚されたモンスターがエクシーズモンスターだった場合、手札を2枚選択する。選択したカードをそのモンスターの下に重ねてエクシーズ素材とする。

 

(《融合》…。ということは奴は融合使い、ならば!!)

少年から徐々に殺気のようなものを翔太は感じるようになる。

(一体何なんだ?あいつは…)

「俺のターン、ドロー!」

 

少年

手札0→1

 

「俺は《エクシーズ・ドラゴン》を攻撃表示へ変更」

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ランク4 守備2000→攻撃2500

 

「バトルだ!いけ、《エクシーズ・ドラゴン》!反逆のライトニング・ディスオベイ!!」

《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》の稲妻の牙が裏守備モンスターに襲い掛かる。

「罠発動、《針虫の巣窟》。その効果で俺はデッキの上から5枚を墓地へ送る」

 

デッキから墓地へ送られたカード

・魔装騎士ペイルライダー

・次元幽閉

・魔装共鳴

・魔装鳥フェニックス

・魔装獣バステト

 

「構うな、《エクシーズ・ドラゴン》!攻撃を続行しろ!!」

稲妻の牙が翔太の裏守備モンスターを貫く。

そして、裏守備モンスターはイバラの冠と真っ白なトゥニカを身に着けた茶色い長髪の若者となり、消滅した。

 

魔装祭事クリスト レベル1 守備0

 

「《魔装祭事クリスト》の効果発動。こいつが相手によって破壊され墓地へ送られた時、墓地から魔装騎士1体を特殊召喚できる。俺は《魔装騎士ペイルライダー》を特殊召喚する!」

上空に虹色の裂け目が生まれ、そこから《魔装騎士ペイルライダー》が現れる。

その装備は電磁浮遊する《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》に対応するためか、ライフルとシールド、そして魔力で機能するスラスター、更に折り畳み式のガトリングガンという装備に変わっていた。

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

 

「《針虫の巣窟》の効果で墓地へ送っていたか…。ならば、俺は《エクシーズ・ドラゴン》の効果を発動!オーバーレイユニットを2つ取り除き、そのモンスターの攻撃力を半分奪う!トリーズン・ディスチャージ!!」

《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》の両翼からすさまじい稲妻が発生する。

《魔装騎士ペイルライダー》は何度も回避するが、追尾性を持つその稲妻から逃れることができず、スラスターに命中する。

そしてその稲妻に魔力を奪われていき、翔太のフィールドに落下した。

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500→1250

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ランク4 攻撃2500→3750

 

「俺は…カードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

翔太

手札1(うち1枚《魔装亀テンセキ》)

ライフ4000

場 魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃1250

 

少年

手札1→0

ライフ4000

場 ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン(オーバーレイユニット2) ランク4 攻撃3750 

  伏せカード1

 

「俺のターン!」

 

翔太

手札1→2

 

「(この手札じゃあな…)俺がドローしたカードは罠カード、《捨て身の宝札》だ。俺は墓地に存在する《魔装獣バステト》の効果発動。俺のフィールド上に魔装モンスターが存在するとき、このカードは手札・墓地から特殊召喚できる」

翔太のフィールドに砂嵐が発生し、その中から砂時計を鈴の代わりに着けている茶色い猫が現れる。

 

魔装獣バステト レベル1 攻撃0(チューナー)

 

魔装獣バステト

レベル1 攻撃0 守備0 チューナー 光属性 獣族

「魔装獣バステト」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1)自分フィールド上に「魔装」モンスターが存在する場合、このカードを手札・墓地から特殊召喚できる。この効果で特殊召喚されたこのカードがフィールドから離れたとき、ゲームから除外される。

 

「そして、カードを1枚伏せてターンエンド」

 

翔太

手札2→1(うち1枚《魔装亀テンセキ》)

ライフ4000

場 魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃1250

  魔装獣バステト レベル1 攻撃0(チューナー)

  伏せカード1

 

少年

手札0

ライフ4000

場 ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン(オーバーレイユニット2) ランク4 攻撃3750 

  伏せカード1

 

「俺のターン、ドロー」

 

少年

手札0→1

 

「罠発動、《捨て身の宝札》。俺のフィールド上に存在する攻撃表示モンスター2体以上の攻撃力の合計が相手の一番攻撃力の低いモンスターよりも低い場合、俺はデッキからカードを2枚ドローできる。《ペイルライダー》と《バステト》の攻撃力の合計は1250。《エクシーズ・ドラゴン》の攻撃力よりも低い。よって、カードを2枚ドローする」

 

翔太

手札1→3

 

ドローしたカード

・死者蘇生

・魔装陰陽師セイメイ

 

「《闇のデッキ破壊ウイルス》の効果で、《死者蘇生》は墓地へ送られる」

「俺は手札から装備魔法《メテオストライク》を発動。これで、《エクシーズ・ドラゴン》は貫通効果を得る」

《メテオストライク》が装備された瞬間、《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》の背後に隕石が降り注ぐエフェクトが発生する。

「バトルだ!俺は《エクシーズ・ドラゴン》で《魔装獣バステト》を攻撃!反逆のライトニング・ディスオベイ!!」

《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》が再び牙に稲妻を宿す。

そんな姿を見た《魔装獣バステト》はおびえながら翔太の後ろに隠れる。

「俺を盾にするな。俺は手札から《魔装亀テンセキ》の効果を発動。こいつを手札から墓地へ送ることでこのターン、俺の魔装モンスターは戦闘では破壊されず、発生する俺へのダメージが0となる」

《魔装亀テンセキ》の五芒星のバリアが稲妻の牙を受け止める。

「だが、これでお前は俺の攻撃を防ぐ手段を失った。これでターンエンドだ」

 

翔太

手札2→1(うち1枚《魔装陰陽師セイメイ》)

ライフ4000

場 魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃1250

  魔装獣バステト レベル1 攻撃0(チューナー)

 

少年

手札1→0

ライフ4000

場 ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン(オーバーレイユニット2 《メテオストライク》装備) ランク4 攻撃3750 

  伏せカード1

 

「俺のターン!」

 

翔太

手札1→2

 

ドローしたカード

・魔装銃士マゴイチ

 

「俺は手札から《魔装陰陽師セイメイ》を召喚」

 

魔装陰陽師セイメイ レベル3 攻撃1000(チューナー)

 

「このカードの召喚に成功した時、手札からレベル4以下の魔装モンスター1体を特殊召喚できる。俺は《魔装銃士マゴイチ》を特殊召喚」

 

魔装陰陽師マゴイチ レベル4 攻撃1600

 

「レベル4の《マゴイチ》にレベル3の《セイメイ》をチューニング。。黄金の剛腕を持つ漆黒の戦士、その気高き力で道を拓け。シンクロ召喚!現れろ、《魔装剛毅クレイトス》!」

 

魔装剛毅クレイトス レベル7 攻撃2600

 

「シンクロ召喚!?融合だけではないのか…??」

「…何言ってるんだ、お前」

少年の発言に何かギャップのようなものを感じ始める。

確かに以前戦ったLDSのデュエリストは1つの召喚方法に特化したデッキになっていた。

しかし、零児のように様々な召喚方法を1つのデッキで使うデュエリストも存在する。

「排除しなければ…お前は必ず俺たちの脅威になる!」

「だから、何を言っているんだ?全く訳が分からねえよ。バトル。俺は《ペイルライダー》で《エクシーズ・ドラゴン》を攻撃」

「攻撃力の低い《ペイルライダー》で攻撃だと?」

《魔装騎士ペイルライダー》は魔力を失ったスラスターを強制排除し、ガトリングガンを構える。

「この瞬間、俺は墓地の《魔装祭事クリスト》の効果を発動。俺の魔装騎士が相手モンスターを攻撃するとき、このカードを除外することで、ダメージ計算時のみその攻撃力を他の魔装モンスター1体の元々の攻撃力分アップさせることができる」

《魔装騎士ペイルライダー》と《魔装剛毅クレイトス》の五芒星が共鳴し、強大な魔力が発生する。

その魔力がガトリングガンの銃弾1発1発の破壊力を増してゆく。

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃1250→3850(ダメージステップのみ)

 

魔装祭事クリスト

レベル1 攻撃0 守備0 効果 闇属性 魔法使い族

「魔装祭事クリスト」の(1)(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードが相手によって破壊され墓地へ送られた時、自分の墓地に存在する「魔装騎士」1体を選択して特殊召喚できる。

(2):自分フィールド上に表側表示で存在する「魔装騎士」モンスターが相手モンスターを攻撃するとき、このカードを墓地から除外し、自分フィールド上に存在する他の「魔装」モンスター1体を選択して発動できる。ダメージステップ時のみ、そのモンスターの攻撃力を選択したモンスターの元々の攻撃力分アップさせる。

 

「何!?」

「これで《エクシーズ・ドラゴン》の攻撃力を上回った」

ガトリングガンから弾倉が空になるまで銃弾が発射される。

「罠発動!《パワー・フレーム》。俺のモンスターが自身よりも高い攻撃力を持つモンスターの攻撃対象となったとき、その攻撃を無効にする」

《パワー・フレーム》のカードが《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》の盾となり、銃弾をすべて吸収していく。

「その後、攻撃対象となった俺のモンスターに装備され、装備モンスターの攻撃力を攻撃モンスターと攻撃対象モンスターの攻撃力の差分アップさせる」

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ランク4 攻撃3750→3850

 

「結局、そのモンスターの攻撃力アップの手助けをしてしまったか…」

《魔装祭事クリスト》の効果はダメージステップ時のみ、ここからは再び《魔装騎士ペイルライダー》の攻撃力は1250に戻ってしまう。

しかし、これで心置きなく翔太は次の行動をとれる。

「俺はレベル7の《ペイルライダー》と《クレイトス》でオーバーレイ!」

「バカな…!?まさかエクシーズ召喚まで…」

「俺はそれができる奴を一人知っている。エクシーズ召喚!現れろ、大地より生まれし神討ちの竜、《魔装竜テュポーン》!」

翔太のフィールドに地割れが起こり、そこから百の頭部を持つ4本足で緑色の巨竜が現れる。

現れると同時に互いのフィールドに激しい風が吹く。

 

魔装竜テュポーン ランク7 守備2000

 

「ランクの高いエクシーズモンスターにしては攻撃力が低いな」

「このカードは1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除き、俺のモンスター1体をリリースすることで、墓地から魔装モンスター1体を特殊召喚できる。俺はオーバーレイユニットと《魔装獣バステト》をコストに、《ペイルライダー》を復活させる!」

《魔装竜テュポーン》の頭部の1つがオーバーレイユニットを飲み込み、《魔装獣バステト》が消滅する。

すると、上空に緑色の五芒星が発生し、そこから《魔装騎士ペイルライダー》が現れる。

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・魔装騎士ペイルライダー

 

「更に、《テュポーン》のもう1つの効果を発動。俺の魔装騎士にこのカードを装備することで、装備モンスターの攻撃力を2000ポイントアップさせることができる」

「何!?」

《魔装竜テュポーン》の肉体がすべて緑色の風に変化する。

そして、《魔装騎士ペイルライダー》の五芒星に吸収されていき、その鎧の色が緑色の変化していく。

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500→4500

 

魔装竜テュポーン

ランク7 攻撃2000 守備2000 エクシーズ 風属性 ドラゴン族

レベル7モンスター×2

「魔装竜テュポーン」の(1)(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、自分フィールド上のに存在するほかのモンスター1体をリリースすることで発動できる。自分の墓地に存在する「魔装」モンスター1体を特殊召喚する。

(2):自分フィールド上に表側表示で存在する「魔装騎士」モンスター1体を選択して発動できる。このカードを攻撃力2000アップの装備カード扱いとしてそのモンスターに装備する。

(3):(2)の効果でこのカードを装備したモンスターが破壊されるとき、このカードを墓地へ送ることでこのターン、そのモンスターは破壊されない。

 

「攻撃力4500!?」

「だが…今はメインフェイズ2。攻撃はできない…」

(融合、シンクロ、エクシーズ…。まさか奴は!?)

「おい!!そこで何をしている!!?」

翔太の背後から声がする。

そこには3人の制服組がいた。

「2体のエクシーズモンスター!?」

「いずれのモンスターからも、強力な召喚エネルギーが検知されているぞ!!」

「お前たち、詳しく話を聞かせてもらおうか…」

「エクシーズ…?召喚エネルギー…?」

何を言っている、と続くはずだったが、その前に周囲が煙に包まれる。

「ゴホッゴホッ…一体何がどうなって…!?」

急に腹部に鈍い痛みが走る。

翔太は何も理解できないまま意識を失った。

 

「おっそいなー、翔太兄ちゃん、道に迷ったのかー?」

眠っている伊織の額に典亮が冷えピタをつける。

「伊織姉ちゃんが書いた地図があるから、迷うことはないと思うけど…」

「けどよー、もう3時間くらいたつぜ?何かあったのか?」

太一と典亮は心配そうに窓から外を見た。

 

「う…うう…」

翔太はゆっくりと目を開く。

「ここは…?」

そこは公園で、時計は午後1時。

周囲を見渡すがあの少年の姿はどこにもなかった。

ママチャリは公園の入り口に置かれている。

念のためドライアイスを入れていたため、冷凍食品は無事だ。

「それにしても、何者だったんだ?あいつは…」

マスクとゴーグルで顔はよく見えなかったが、口調で融合とシンクロを敵視しているように思えた。

そして、何よりも気になったのが《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》。

遊矢の《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》に似た竜、そして召喚エネルギーという言葉。

「はあ…あまり面倒事にはかかわりたくないな」

早く戻り、伊織の看病をしなければならない。

幸い、ここからなら施設までの道は分かる。

翔太はママチャリを走らせた。




今回は黒マスクの男登場です!
それにしても、彼のデッキの全容がいまだにわかりません。
せめて、沢渡とのデュエルの時に《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》以外のモンスターカードも出てほしかったです。


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第12話 眠り

「うわあ…これが翔太君の免許…」

「そんなに目をキラキラさせても、何も起こらないぞ」

翔太の自動二輪免許を伊織がうらやましそうに眺める。

黒マスクの少年と邂逅してからしばらく、翔太は伊織の言うとおり自動車学校に通うことになった。

ちなみに、教習料は栄次郎が自腹で支払ってくれた。

記憶喪失になる前に乗ったことがあったのか、教習も試験も順調に進み、先日正式に免許が発行された。

「ねえねえ、さっそくどこか行こうよ!!山とか、海とか!!」

「そうだな。なら、さっそく行くか?」

にやっと笑いながら、サイドカーからヘルメットを2つ取り出し、そのうちの1つを伊織に投げ渡す。

「やった!!じゃあ、どこへ行くの?」

「さあな、少なくとも、海や山じゃあないぞ」

伊織がサイドカーに乗ったのを確認すると、翔太はバイクを走らせた。

 

「ふああ…」

猛スピードで走る中、座りっぱなしの伊織が欠伸をする。

バイクは時速80キロ。

道はまっすぐで、伊織のカバンの中には黄色い通行券がある。

2人は今、高速道路を走っている。

「眠たいなら、寝てていいぞ」

「翔太君、いつになったら到着するの?」

「あとはたったの1時間半だ」

「えーーー!?じゃあ、サービスエリアでスイーツ買おうよー!」

「スイーツは帰ればいくらでも食えるだろ?」

「分かってないねー翔太君は。たまーに限定のスイーツがあったりするんだぞー?興味ないー?」

確かに、伊織の言うとおりすうぃ~と芋大福や白うさぎフィナンシェ、和歌山蜜柑チーズケーキなど、サービスエリア限定のスイーツがネットを中心にPRされている。

ちなみに、舞網市内のサービスエリアではアクションカードクレープが1つ200円で売られている。

文字通りアクションカードの形をしたクレープで、季節の果物がトッピングされた人気スイーツだ。

「興味ない」

「もー、相変わらずつれないなー翔太君は…zzz…」

「ふう…ようやく寝たか」

寝たのを確認すると、カーナビを少しだけ見る。

サービルエリアを1つはさんで、目的のインターチェンジまであと3つだ。

 

「ん…んん…」

「ようやく起きたか。着いたぞ」

「ほへ…?」

目をこすりながら、伊織は周囲を見渡す。

広い駐車場と多くの車いす、そして建物に掲げられた赤い十字マーク。

「ここが翔太君の行きたい場所?」

「ああ、YS県立病院だ」

翔太はその病院のパンフレットを見る。

それは純也の日記になぜか挟まっていたものだ。

(今は石倉純也のことからあたるしかないからな…。手当たり次第だ)

 

「はあ…では、あなたは石倉さんの親せき…」

「ええ。それで、容態は…」

「残念ながら、未だに意識を回復していません。4年前からずっと…」

看護師に案内され、翔太と伊織は304号室に到着する。

そこには白い肌で黄色くて長い髪の若い女性が眠り続けている。

彼女は石倉純也の妹、聖子。

5年前、海水浴中に純也は行方不明となり、その翌年の同じ日に聖子は意識不明の重体となっている。

目立った外傷もなく、肺に海水が入ったわけでもなく、脳にダメージがあるわけでもない。

ただただ、昏々と眠り続けているのだ。

当時の医師達は懸命に彼女の意識を回復させようと努め、アメリカやイギリスからも名医が派遣されたが何の成果もなく、今では点滴と生命維持装置により回復するまで待つしかないという状態だ。

もちろん、翔太が2人の関係者だということは嘘だ。

「では…ごゆっくり」

看護師が病室から出ていく。

「翔太君…この人が」

「ああ、こいつが石倉聖子だ。まさかこういう状態になってるとは思わなかったがな」

正直に言うと、翔太は今まで聖子がここで勤務をする医者か看護師かと思っていた。

だが、現実はご覧の通りだ。

(こいつに手がかりがあるというのか…?)

ベッドのそばにある椅子に座り、無意識に彼女の手を取る。

「…!う…こ…これは…!?」

「翔太君!?どうしたの!??」

「わ…分からない…。何かが…頭に!!」

叫びとも悲鳴とも怒号ともとれるわけのわからない声が耳ではなく脳に直接届く。

伊織が動揺する中、翔太は次第に意識を失っていく。

 

「こ…ここは…?」

声が消え、目を開くとそこは伊織と初めて会った砂浜だった。

しかし、違うのは広がるのは青空ではなく赤い空だということだ。

「だ…誰!?あなたは…!!」

背後から声がする。

翔太はゆっくり振り返る。

「あんたは…」

彼の目が大きく開く。

そこにいるのはベッドで眠っているはずの聖子だった。

「あ…あなたは…」

驚きとおびえに満ちた目で聖子は翔太を見る。

「俺を知っているのか!?答えくれ!俺は一体誰なんだ!!?」

「違う…そんなはずない!!あなたが…あなたがこんなところにいるはずがない!!」

「いるはずがないだと!?どういうことなんだ!!?」

「いや…もう来ないで!!私の前から消えて!!!」

両手で顔を隠しながら、聖子は町へ向かって逃げ出す。

「待て…!!答えてくれ!!」

大急ぎで彼女を追いかけようとする。

しかし、再び脳裏に声がする。

「おいおい翔太ちゃーん」

その声は前に翔太に力を与えた存在の物だ。

「邪魔をするな!!今は彼女を…」

「駄目だぜー?ストーカーみたいなことをやったらよお、女の子は優しく扱わねえと!」

突然、翔太の目の前に黒い球体が現れる。

「お前…一体何を!?」

「お仕置きだよ…女の子を泣かせたお仕置きさー!!」

球体が砕けると、そこにアメリカ国旗を模したバンダナと黒いグラサン姿で無精ひげの男性が姿を現す。

その男の左腕には数世代前の型の黒いデュエルディスクが装備されている。

「なんだよ、こいつは!?」

「さあさあ、ついに始まります世紀の一大勝負!!次元を超えた対決が今ここにーー!」

「ふざけるな!!俺に何をさせたい!!」

「赤コーナー、記憶を求める孤高のデュエリスト、秋山翔太!!青コーナー、数々の大会で優勝をかっさらった盗賊!バンデット・キースこと、キース・ハワードーーー!!」

「キース・ハワード…?」

キースがデュエルディスクを展開すると、突然翔太の左腕にデュエルディスクが現れ、更にデッキもセットされる。

「こいつをデュエルをしろっということか?」

「ご名答!こいつに勝てたら、また追わせてやるよ!ああ、それとここでやるのはアクションデュエルだぜ!じゃ、頑張ってねー」

あの声が徐々に聞こえなくなっていく。

周囲を見渡すと、路上やビル、看板などにアクションカードがある。

「やるしかないということか…」

あの声の主の目的が何なのかはわからない。

しかし、分かっていることはキースを倒さないと先へ進めないということだ。

「キース・ハワード。どこの誰だか知らないが、倒す」

「俺を倒すだと…」

初めて、キースの口から言葉が発せられる。

「ヘヘヘ…舐めた口きく餓鬼だな…。俺をコケにしやがった城之内とペガサスをぶっ倒す邪魔がしてえのか?」

「城之内…ペガサス…誰だ?」

「ま、ちょうどカードが足りないと思ってたところだ。お前をぶっ倒して、カードを頂く!!」

「わけのわからないことをごちゃごちゃと…もう老化が始まってるんじゃないのか?」

城之内もペガサスも翔太にとっては聞いたことのない名前だ。

その2人が今も生きているのか、そもそも存在しているのかもわからない。

「後悔させてやるぜ…バンデット・キース様の相手をしたことに!!」

「俺の邪魔をするな、おっさん!!」

「「デュエル!!」」

 

翔太

手札5

ライフ4000

 

キース

手札5

ライフ4000

 

「俺の先攻。俺は手札から《魔装獣ユニコーン》を召喚」

召喚と同時に、翔太は《魔装獣ユニコーン》に乗って路上へ向かう。

 

魔装獣ユニコーン レベル4 攻撃1600

 

「(デュエル中でも、こうして動いていれば居場所がわかるはずだ!!)俺はカードを1枚伏せてターンエンド!」

 

翔太

手札5→3

ライフ4000

場 魔装獣ユニコーン レベル4 攻撃1600

  伏せカード1

 

キース

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「へ…へへへ…あのわけのわからねえ小僧のいうとおりだ。ソリッドビジョンがここまでなあ…。俺のターン、ドロー!」

 

キース

手札5→6

 

「俺は《モーターシェル》を召喚!」

両手に灰色の円盾を装備し、一輪で装甲とする白い機械が現れる。

 

モーターシェル レベル4 攻撃1300

 

「こいつに乗りゃあいいんだな…」

キースは《モーターシェル》に乗るが、このモンスターの大きさは彼の3分の2で、乗せて走行するための馬力がないことから、十分な速度を出せない。

「ちっ…!このポンコツがぁ!!」

不機嫌になったキースは飛び降りると、《モーターシェル》を蹴り飛ばす。

そのモンスターは大きな凹みをつけて倒れた。

「こいつで強化してやるよ。俺は手札から永続魔法《エンジンチューナー》を発動!俺のモーターモンスターはこいつがある限り守備表示に変更できねえ、守備力の半分を攻撃力に加える!《モーターシェル》の守備力は1800!よって、攻撃力は900ポイントアップだ!」

《エンジンチューナー》から3体のつなぎを着た小人が姿を現す。

そして、自身の倍近くの大きさのスパナを使い、《モーターシェル》のエンジンを強化。

加えて2つの円盾を合体させてボール状の兵器に改造した。

 

モーターシェル レベル4 攻撃1300→2200

 

エンジンチューナー(漫画オリカ・調整)

永続魔法カード

「エンジンチューナー」は自分フィールド上に1枚しか表側表示で存在できない。

(1):自分フィールド上に表側表示で存在する「モーター」モンスターの攻撃力はそのモンスターの守備力の半分の数値分アップする。

(2):自分フィールド上の「モーター」モンスターを守備表示に変更することはできない。

 

「攻撃力2200!?」

「バトルだ!!《モーターシェル》で《ユニコーン》を攻撃!!キャノン・ボール!!」

再び騎乗したキースの命令を受けた《モーターシェル》がレーダーで街中を走る《魔装獣ユニコーン》をロックオンする。

そして、エンジンを温めるとボールを発射した。

強烈なパワーと回転でビルを次々と突き破る。

「く…ここは…」

翔太はちょうど視界に入ったアクションカードに向けて《魔装獣ユニコーン》を走らせる。

交差点のど真ん中だが、車が走っていないため容易に回収できた。

「よし…アクション魔法《奇跡》!!こいつで《ユニコーン》を破壊から守り、戦闘ダメージを半減させる」

ボールは《魔装獣ユニコーン》を外し、右側の信号機に接触した。

 

翔太

ライフ4000→3700

 

「ちっ…!これがアクションカードの威力か!なら俺も…」

ボールが戻ってくるのを確認すると、《モーターシェル》は砂浜から路上へ移動する。

そして、ガードレースに張り付けられたアクションカードをキースは手に取る。

「へえ…lこいつぁいい。俺はこれでターンエンド!」

 

翔太

手札3

ライフ3700

場 魔装獣ユニコーン レベル4 攻撃1600

  伏せカード1

 

キース

手札6→5(うち1枚アクションカード)

ライフ4000

場 モーターシェル レベル4 攻撃2200

  エンジンチューナー(永続魔法)

 

「俺のターン!」

 

翔太

手札3→4

 

「俺は《魔装壁ゴルゴー》を召喚」

細身で女性的な体つきになっているレンガの人形が地中から現れる。

 

魔装壁ゴルゴー レベル2 守備1000(チューナー)

 

「レベル4の《ユニコーン》にレベル2の《ゴルゴー》をチューニング!」

「チューニング?なんだそりゃ?」

翔太を降ろした《魔装獣ユニコーン》は《魔装壁ゴルゴー》が変化した緑色の2つの輪に飛び込んでいく。

「神の血を身に宿す槍士、雷鳴のごとき苛烈さを得て戦場で踊れ!シンクロ召喚!現れろ、《魔装槍士クーフーリン》!!」

シンクロ召喚された《魔装槍士クーフーリン》はビルの壁をよじ登り、屋上へ向かう。

 

魔装槍士クーフーリン レベル6 攻撃2100

 

魔装壁ゴルゴー

レベル2 攻撃0 守備1000 チューナー 地属性 岩石族

(1):このカードを素材としてシンクロ召喚されたモンスターは相手のカード効果では破壊されない。

 

「シンクロ召喚!?どんな召喚かは知らねえが、攻撃力は《モーターシェル》の方が上!!」

「《クーフーリン》の効果発動!1ターンに1度、俺のフィールドの魔装モンスターと相手フィールドのモンスターを1体ずつ選択し、選択した相手モンスターの攻撃力・守備力をエンドフェイズまで俺の魔装モンスターのレベルかランク1つにつき400ポイントダウンさせる!ゲイ・ボルグ」

「何!?」

《モーターシェル》の姿を確認した《魔装槍士クーフーリン》はそのモンスターに向けて槍を放つ。

30本近くの銛に変化した槍は次々と《モーターシェル》に刺さり、機能を低下させた。

「くっそーー!!動けよ、このポンコツ!!」

悪態をつくキースの足が再び《モーターシェル》に凹みを生んだが、結果はただそれだけだ。

 

モーターシェル レベル4 攻撃2200→0

 

「バトルだ!俺は《クーフーリン》で《モーターシェル》を攻撃!ニードル・スピア!」

新たな槍を手に、《魔装槍士クーフーリン》は《モーターシェル》めがけて飛び降りた。

そして、落下スピードを利用してその槍で頭部を貫く。

コアを貫かれた《モーターシェル》は爆発し、爆風がキースを襲う。

「うわああ!!俺はアクション魔法《治癒》を発動!俺が戦闘ダメージを受ける時、そのダメージを無効にして受けるはずだったダメージの半分の数値分、ライフが回復する!」

 

キース

ライフ4000→5050

 

治癒

アクション魔法カード

(1):自分が戦闘ダメージを受ける時に発動できる。ダメージを受ける代わりにその数値の半分だけ自分はLP回復する。

 

「へへへ…そして俺のフィールドにパーツが残る」

爆風が晴れると、《モーターシェル》がいた場所にそのモンスターのエンジンだけが残っていた。

 

モータートークン レベル1 攻撃200

 

モーターシェル(漫画オリカ)

レベル4 攻撃1300 守備1800 効果 闇属性 機械族

(1):このカードが戦闘で破壊され墓地へ送られた時、自分フィールド上に「モータートークン」を1体攻撃表示で特殊召喚する。

 

「まあ、こいつも一応モーターモンスターだから攻撃力が上がるぜ。そいつの守備力は200。アップするのはたったの100だがな」

 

モータートークン レベル1 攻撃200→300

 

「そいつを使って、新たな上級モンスターを呼び出すつもりか?」

「ああ!全く、あのポンコツはいいブツを残して行ってくれたぜ!!」

「キュイーーー!!キュイキュイ!!」

キースの言動に怒ったビャッコがデッキから出てくる。

「落ち着けビャッコ。それにしてもお前、こんなところにまで出てくるのか?」

「キュイ!」

彼の質問を肯定するかのようにうなずく。

「伊織みたいにうるさくなるなよ?俺はこれでターンエンド」

 

翔太

手札4→3

ライフ3700

場 魔装槍士クーフーリン レベル6 攻撃2100

  伏せカード1

 

キース

手札5→4

ライフ5050

場 モータートークン レベル1 攻撃300

  エンジンチューナー(永続魔法)

 

「へへっ…俺のターン!」

 

キース

手札4→5

 

「俺は《モータートークン》を生贄に、《モーターバイオレンス》を召喚!」

キースの目の前に三連速射ビーム砲を両腕に装備している2足歩行の機会が現れる。

 

モーターバイオレンス レベル6 攻撃2100

 

(生贄…?)

現在は生贄ではなく、リリースという用語になっているにも関わらず、キースは生贄と口にした。

そのことで、彼の頭の中に3つの可能性が予想される。

1つはただ単にキースが生贄という用語を使い続けているだけということ。

1つはリリースとアドバンス召喚という用語をそもそも知らないということ。

もう1つは彼が言い換えが行われる前の時代のデュエリストだということだ。

「更に、《エンジンチューナー》の効果で攻撃力アップだ!そいつの守備力は1200。よって、攻撃力は600ポイントアップだ!」

再び小人の手で《モーターバイオレンス》が改造されていき、ビーム砲の出力が跳ね上がる。

 

モーターバイオレンス レベル6 攻撃2100→2700

 

「攻撃力2700!?」

「さあ…いくぜ!!《モーターバイオレンス》で《クーフーリン》を攻撃!!!モーターカノン!!」

出力強化された2門のビーム砲から放たれた高圧縮ビームによって、ビルごと《魔装槍士クーフーリン》が消滅する。

「くそ…!!」

 

翔太

ライフ3700→3100

 

「ハハハハ!跡形もなく吹き飛んだぜ!」

「だが、これでこいつを出せる!罠発動!《魔装光》!!俺のフィールド上に存在するレベル5以上の魔装モンスターが相手によって破壊された時、俺は手札から魔装モンスター1体を特殊召喚できる。俺は手札から《魔装鳥キンシ》を特殊召喚!」

三本の足を持ち、黄金色の輝きを放つ黒い鳶が現れる。

そして翔太はその鳶の背に乗った。

 

魔装鳥キンシ レベル7 攻撃2400

 

魔装光

通常罠カード

(1):自分フィールド上に存在する「魔装」モンスターが相手によって破壊されたときに発動できる。手札から「魔装」モンスター1体を特殊召喚する。

 

「苦し紛れにモンスターを出したか?なら…」

キースが騎乗すると同時に《モーターバイオレンス》がビーム砲を逆噴射する。

すると、そのモンスターは凄まじいスピードでビル屋上まで飛んで行った。

「まさか、こんなやり方が…!?」

「バンデット・キースを舐めるなぁ!!」

《モーターバイオレンス》から飛び降り、屋上に着地する。

そして意気揚々とアクションカードを手にした。

「アクション魔法《爆破》!こいつは相手の特殊召喚されたモンスター1体を破壊する!」

「何!?」

「くたばれーーー!!」

どこからともなく《ブラック・ボンバー》そっくりの爆弾が次々と《魔装鳥キンシ》に襲い掛かる。

それらは翔太たちを包囲した瞬間、一斉に爆発した。

「ハハハハ!!このまま落っこちちまえよ!!」

「ペンデュラムモンスターは破壊された時、墓地ではなくエクストラデッキへ行く!」

「何!?またわけのわからねえモンスターを!!」

《魔装鳥キンシ》をエクストラデッキに収納すると、すぐに翔太は近くのビルにしがみついた。

 

爆破

アクション魔法カード

「爆破」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):相手フィールド上に表側表示で存在する特殊召喚されたモンスター1体を破壊する。

 

「全くよぉ…どいつもこいつも俺をコケにしてえようだな…。城之内…ペガサス…夜行…」

「何ぶつぶつ言っているんだ、おっさん。ターンを進めろ」

「だまれぇ!俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド!」

 

翔太

手札3→2

ライフ3100

場 なし

 

キース

手札5→2

ライフ5050

場 モーターバイオレンス レベル6 攻撃2700

  エンジンチューナー(永続魔法)

  伏せカード2

 

ターン終了宣言がなされ、翔太のターンとなる。

しかし、片手で壁を掴んでいる状態ではカードを使用することができない。

それでも、1分以上プレイしなければ失格となることに変わりはない。

「くそ…!フィールドはがら空き、そしてあいつの姿を見失ってしまった…」

デュエルをしながら誰かを探すというのは無理があるのだろう。

それがアクションデュエルであればなおさらのことだ。

「(やはり、奴を倒ししかないか)俺のターン!」

すぐ近くのビルの壁に飛び移りながら、翔太はカードをドローする。

 

翔太

手札2→3

 

「ハハハ!!苦し紛れなプレイだなあ、おい!!」

屋上から必死な動きをする翔太を見ながら、キースはせせら笑う。

そんな彼を気にすることなく、今度は隣のビルに飛び移る。

その間もプレイをすることは忘れない。

「俺はエクストラデッキに存在する《魔装鳥キンシ》の効果を発動。このカードが表向きでエクストラデッキにあるとき、1度だけこのカードを手札に戻すことができる」

「エクストラデッキから手札に戻る…だと!?」

「そして、俺は!!」

何を思ったのか、翔太は手を離し、重力に身を任せる。

「なんだよ、コイツ!?敵わねえと思って自殺する気か??」

「俺はスケール1の《キンシ》とスケール9の《魔装剣士ムネシゲ》でペンデュラムスケールをセッティング!来たれ、時の果てに眠りし英雄の魂。希望の道を照らし、勝鬨を上げろ!ペンデュラム召喚!!現れろ、俺のモンスターたち!!《魔装黒鮫サッチ》!死を司る青き騎士、《魔装騎士ペイルライダー》!!」

真下に《魔装黒鮫サッチ》が現れたのを確認すると、翔太はそれをトランポリン代わりにして飛ぶ。

そして、上空でスラスターを起動させて飛んでいる《魔装騎士ペイルライダー》の腕に捕まり、そのままキースのいるビルまで移動した。

 

魔装黒鮫サッチ レベル4 攻撃1400

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

 

「ペンデュラム召喚!?なんだよそれ!?」

見たことのない召喚方法に驚きながら、キースはデュエルディスクを見るが、何も異常が出ていない。

「何動揺してるんだ、おっさん。まだデュエルの途中だぞ。《魔装黒鮫サッチ》は俺の魔装モンスターの攻撃力を400ポイントアップさせる」

翔太と彼のモンスターが屋上でキースと対峙する。

 

魔装黒鮫サッチ レベル4 攻撃1400→1800

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500→2900

 

「攻撃力2900!?」

「バトル!《魔装騎士ペイルライダー》で《モーター・バイオレンス》を攻撃!クアトロ・デスブレイク!」

上空を旋回する《魔装騎士ペイルライダー》がマシンガンの代わりに装備しているライフルを撃つ。

ライフルから放たれた青い光線は的確に《モーターバイオレンス》のコアを貫き、それを爆散させた。

「うぐ…!!」

 

キース

ライフ5050→4850

 

「だ…だが、《モーターバイオレンス》が相手によって破壊された時、俺のフィールドにパーツが2つ残るぜ…」

爆散した《モーターバイオレンス》のパーツが集まっていき、2つの塊となる。

 

モータートークン×2 レベル1 攻撃200→300(《エンジンチューナー》の効果)

 

モーターバイオレンス(漫画オリカ)

レベル6 攻撃2100 守備1200 効果 闇属性 機械族

(1):このカードが相手によって破壊され墓地へ送られた時、自分フィールド上に「モータートークン」2体を攻撃表示で特殊召喚する。

 

「構うな!《サッチ》で《モータートークン》を攻撃!マジック・バイト!!」

無防備なパーツを《魔装黒鮫サッチ》がダイヤモンド並みの硬度の歯で噛み砕く。

そして、体内でそれを魔力の弾丸に変換してキースに発射する。

「ぐわあああ!!」

 

キース

ライフ4850→3350

 

「よし…これで《治癒》で増えたライフを帳消しにできた。俺はこれでターンエンド。そして、《魔装鳥キンシ》のペンデュラム効果発動。俺のターンのエンドフェイズごとに、このカードのスケールが2つ上昇する」

 

翔太

手札3→0

ライフ3100

場 魔装黒鮫サッチ レベル4 攻撃1800

  魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2900

  魔装鳥キンシ(青) Pスケール1→3

  魔装剣士ムネシゲ(赤) Pスケール9

 

キース

手札2

ライフ3350

場 モータートークン レベル1 攻撃300

  エンジンチューナー(永続魔法)

  伏せカード2

 

魔装鳥キンシ

レベル7 攻撃2400 守備1700 光属性 鳥獣族

「魔装鳥キンシ」の(1)の効果はデュエル中1回しか発動できない。

【Pスケール青1:赤1】

(1):自分のターン終了時、このカードのPスケールが2つ上がる(最大10まで)

【モンスター効果】

(1):自分のエクストラデッキにこのカードが表向きで存在するときに発動できる。そのカード1枚を自分の手札に加える。

 

「なんだよ…なんだってんだよ…こいつはよぉ…」

「何ぶつぶつ言ってるんだおっさん。あんたのターンだぞ」

「ふざけるんじゃねえよ…どいつもこいつも俺をコケにしやがって…」

まるで翔太の声が耳に入っていないかのように独り言を続ける。

「はあ…やってられねえな。失格になりたいのか?」

「ふざけるな…ふざけるな…ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな!!!!」

狂ったかのようにふざけるなを連呼する。

すると、彼の体から黒いオーラが発言する。

「ふざけるな…お前まで、何も知らねえお前まで俺をコケにするのかーーー!!!?」

激昂と同時にオーラが強大化していく。

「なんだ!?あの禍々しいオーラは…???」

「キュイキュイー…」

おびえるビャッコが翔太の足にしがみつく。

「俺のターン、ドローーー!!」

 

キース

手札2→3

 

「俺は手札から魔法カード《モーターリバース》を発動!!俺のフィールドの《エンジンチューナー》を墓地へ送り、墓地から機械族モンスター2体を特殊召喚する!蘇れ、《モーターシェル》、《モーターバイオレンス》!!」

キースの周囲に2体のモーターモンスターのパーツが現れる。

そして、10体近くの小人がそれらを組み立てていく。

 

モーターシェル レベル4 攻撃1300

モーターバイオレンス レベル6 攻撃2100

 

モーターリバース

通常魔法カード

(1)自分フィールド上に存在する「エンジンチューナー」1枚を墓地へ送ることで発動できる。自分の墓地に存在する機械族モンスター2体を自分フィールド上に特殊召喚する。

 

(今更《ペイルライダー》よりも攻撃力の低いモンスターを呼び出して、何をする気だ?)

「ヘ…ヘヘヘ…うずいてるぜ…このカードが…何もかもぶっ壊してえって…」

キースの手札のうちの1枚から同じオーラが発現する。

「カードからオーラだと…!?」

「見せてやるよ…神のカードってやつを…。俺は3体のスクラップどもを生贄にして、現れろ!!全てを破壊する愚かな神、《邪神イレイザー》!!」

3体のモンスターが溶け、漆黒の血だまりへと変化していく。

「血…?」

「ああ…来るぜ、俺を蘇らせてくれた神がよぉ!!」

そして、血だまりの中から薄い赤の肉体を持つ黒翼の蛇竜の姿をした邪神が姿を現す。

その神はあまりの巨体で、すべての肉体を血だまりから出すと同時にビルの周囲を飛び回る。

 

邪神イレイザー レベル10 攻撃?

 

「攻撃力が決まっていない…?」

「こいつの攻撃力は相手フィールド上のカードの数×1000ポイントになる。今てめえのフィールドには4枚のカード!よって、攻撃力は4000ポイントアップだ!!」

「ギャオーーーーーン!!!」

翔太のフィールドに存在する獲物たちを見て、邪神は狂気に満ちた鳴き声を上げる。

 

邪神イレイザー レベル10 攻撃?→4000

 

「攻撃力4000!?」

「そして俺は罠カード《スキルブレイク》を発動!このターン、フィールド上に存在するレベル4以下のモンスターの効果を無効にする!」

「何…?」

《スキルブレイク》から放たれた波動によって、《魔装黒鮫サッチ》の力が失われていく。

 

魔装黒鮫サッチ レベル4 攻撃1800→1400

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2900→2500

 

スキルブレイク

通常罠カード

「スキルブレイク」は自分のターンにのみ発動できる。

(1):このターン、フィールド上に存在するレベル4以下のモンスターの効果を無効にする。

 

「いけ、《邪神イレイザー》!!まずはあのクソ鮫を葬れ!!ダイジェスティブ・ブレス!!!」

《邪神イレイザー》の口から黒いブレスが放たれる。

ブレスを受けた《魔装黒鮫サッチ》は次第にその姿を黒い血に変換させられ、邪神の一部となる。

そして、そのすさまじいブレスの余波が翔太を襲う。

「《サッチ》…!?うわあああ!!(ば…バカな…!?こいつは…)」

 

翔太

ライフ3100→500

 

余波によって吹き飛んだ翔太が向かいのビルのガラスを突き破り、屋内の床にたたきつけられる。

「く…そう…!!」

口にたまった血を吐きだし、ゆっくりと立ち上がる。

「おっと、今の攻撃でてめえのフィールドのカードが減っちまったなぁ…これで攻撃力は3000だ」

《邪神イレイザー》の背に乗ったキースが傷ついた翔太に愉快な笑みを浮かべる。

 

邪神イレイザー レベル10 攻撃4000→3000

 

「ほらほら、攻撃力3000なら頑張りゃ倒せそうな数値じゃねえか!!」

(《ペイルライダー》は戦った相手モンスターを破壊する効果がある。そして、《ムネシゲ》の効果で破壊から守れば、わずかにダメージを受けるだけで済む。問題は…)

翔太にとって気がかりなのはキースの2枚の伏せカード。

《魔装騎士ペイルライダー》の効果は相手を確実に死に誘う効果。

だが銃弾の殺傷能力が相手に命中することで初めて発揮されるように、その効果でモンスターと戦わなければ発動できない。

残りライフはたったの500。

効果を使うにはまずはライフを回復するしかない。

更にもしその2枚の伏せカードが攻撃妨害の物であれば敗色が濃厚になる。

(《キンシ》のペンデュラムスケールが7になるまであと2ターン…か…)

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンドだ!!さあさあ、もっと足掻いてくれよ!!」

 

翔太

手札0

ライフ500

場 魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

  魔装鳥キンシ(青) Pスケール3

  魔装剣士タダカツ(赤) Pスケール9

 

キース

手札3→0

ライフ3350

場 邪神イレイザー レベル10 攻撃3000

  伏せカード2

 

カードをドローする前に、翔太は自分の体に手を当てる。

(肋骨にひびが入ったか…。腕と足が折れていないだけましか。アクションカードはどこに…?)

屋内を駆けまわりながら、翔太はデッキトップに指を掛ける

「俺のターン」

 

翔太

手札0→1

 

「(このカードは…!!)俺はカードを1枚伏せ、《ペイルライダー》を守備表示にしてターンエンド。そして《キンシ》のペンデュラムスケールが上昇する」

 

翔太

手札1→0

ライフ500

場 魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500→守備2000

  魔装鳥キンシ(青) Pスケール3→5

  魔装剣士ムネシゲ(赤) Pスケール9

  伏せカード1

 

キース

手札0

ライフ3350

場 邪神イレイザー レベル10 攻撃3000→4000

  伏せカード2

 

「おいおいカードを1枚伏せたか…《イレイザー》をパワーアップしてくれてありがとよ!」

「…」

キースの言葉を無視し、翔太はアクションカードを探す。

(それにしても…無様なモンスターだぜ、こいつは…)

優位に立ったにもかかわらず、キースは心の底からの楽しさを得られずにいる。

(《エンジンチューナー》の対象じゃねえし、それに攻撃力は相手に依存。そして神のくせに悪魔族かよ…)

自分にこのカードを渡した人物の言葉を思い出す。

(キース・ハワード。あなたは邪神の力によって蘇りました。そして、あなたの命はその邪神によってつなぎとめられていることをお忘れなく)

「(ああ…イライラするぜ。なにもかもに!!)俺のターン、ドロー!!」

 

キース

手札0→1

 

「まずはその真っ青な騎士を葬ってやるぜ!ダイジェスティブ・ブレス!!」

翔太のそばを走る《魔装騎士ペイルライダー》に向けて、《邪神イレイザー》が黒いブレスを放つ。

触れたすべてのものを黒い血に変えながら、ブレスは刻一刻と《魔装騎士ペイルライダー》に迫る。

「(来た…!!)《魔装剣士ムネシゲ》の効果発動!1ターンに1度、俺の魔装と名のつくペンデュラムモンスターを1度だけ破壊から守る!」

《魔装剣士ムネシゲ》が投げた円盾が《魔装騎士ペイルライダー》を黒いブレスから守る。

五芒星の力は円盾の黒血化を防いでいる。

「そして、《ペイルライダー》の効果発動!戦った相手モンスターを破壊する!」

「何ぃ!?」

「《ペイルライダー》!!」

ブレスが収まったのを確認した《魔装騎士ペイルライダー》がスラスターをきかせ、外にいる《邪神イレイザー》を光剣で切り裂こうとする。

死の騎士は今、まがい物の神にすら死を与えようとしていた。

「へっ…」

キースがにやっと笑うと同時に、外へ飛び出した《魔装騎士ペイルライダー》に稲妻が襲う。

稲妻を受けた死の騎士はそのまま邪神の首を切ることなく消滅してしまった。

「何!?まさか…」

「ああ!発動させてもらったぜ。カウンター罠《天罰》をな!!」

 

手札から墓地へ送られたカード

・デモニック・モーターΩ

 

邪神イレイザー レベル10 攻撃4000→3000

 

「く…《ペイルライダー》はペンデュラムモンスター。ペンデュラムモンスターは破壊された時、墓地へは行かずエクストラデッキへ行く(まだだ…このカードを今発動するわけにはいかない)」

翔太は前のターンに伏せたカードを見る。

「へへ…惜しかったな!もう少しで倒せるところだったのにな!俺はこれでターンエンドだ!」

 

翔太

手札0

ライフ500

場 魔装鳥キンシ(青) Pスケール5

  魔装剣士ムネシゲ(赤) Pスケール9

  伏せカード1

 

キース

手札1→0

ライフ3350

場 邪神イレイザー レベル10 攻撃3000

  伏せカード1

 

《魔装騎士ペイルライダー》の効果は不発し、更に追い詰められてしまった。

そして、《魔装騎士ペイルライダー》をペンデュラム召喚できるのはあとこのターンのみ。

「(残りライフ500…この状況ならやれる!)俺のターン!」

 

翔太

手札0→1

 

「俺はここでスケール5の《キンシ》とスケール9の《ムネシゲ》でペンデュラム召喚を行う!」

「バカか!?今のお前の手札はたった1枚!そんな状況で…」

「いや、ペンデュラム召喚の対象はエクストラデッキに眠るペンデュラムモンスターもだ!」

エクストラデッキが解放され、《魔装騎士ペイルライダー》が現れる。

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

 

「エクストラデッキからも呼び出せるだと…!?だが、それがどうした!《イレイザー》の攻撃力がお前のフィールドにカードが増えたことでアップするぞ!」

新たな獲物を確認した《邪神イレイザー》は狂気の笑みを浮かべる。

 

邪神イレイザー レベル10 攻撃3000→4000

 

「まだだ!俺は《ペイルライダー》、《キンシ》、《ムネシゲ》でオーバーレイ!」

「何!?またわけの分からねえことを…!」

再び聞いたことのない用語を聞き、キースの機嫌が更に悪くなる。

「ペンデュラムエクシーズチェンジ!!現れろ、ペンデュラムエクシーズ!次元を超え、新たな力を宿せ!《魔装騎士フェラーレ・カヴァリエーレ》!!」

 

PX魔装騎士フェラーレ・カヴァリエーレ ランク7 攻撃2500

 

「エクシーズ…ペンデュラム…一体どうなってんだ…!?」

「フィールド上のカードが減ったことで、《イレイザー》の攻撃力は下がる!」

 

邪神イレイザー レベル10 攻撃4000→2000

 

「そして、俺は《カヴァリエーレ》の効果を発動。1ターンに1度、ペンデュラムオーバーレイユニットを1つ取り除くことで相手モンスター1体の攻撃力を0にし、ターン終了時まで選択した相手モンスターの元々の攻撃力を得る。デス・ドレイン!」

オーバーレイユニットを宿した玉石が神の力を吸収しようとする。

「バカが!!罠カード《蟲惑の落とし穴》を発動!このターンに特殊召喚されたモンスターの効果の発動を無効にし、破壊する!これでせっかくのペンデュラムエクシーズチェンジってのはおしまいだ!!」

《邪神イレイザー》が黒い血に姿を変え、《PX魔装騎士フェラーレ・カヴァリエーレ》の足元へ向かう。

そして、その血で巨大な穴を生み出すと、《PX魔装騎士フェラーレ・カヴァリエーレ》が飲み込まれていった。

「ハハハハ!!またカードが減っちまったから、《イレイザー》の攻撃力は下がる!だが、ペンデュラムモンスターとかいう訳の分からないモンスターがもうないお前にはこいつは倒せねえ!!」

 

邪神イレイザー レベル10 攻撃2000→1000

 

たしかに、オーバーレイユニットと化したペンデュラムモンスターはエクストラデッキに戻ることはない。

そして、ペンデュラムモンスターはもはや翔太の手札にはない。

しかし、キースはある重大なことを忘れていた。

エクストラデッキへ向かうことがなかったペンデュラムモンスターがどこへ行くのかを。

「いいや、俺のペンデュラムモンスターは…《ペイルライダー》は何度でも立ち上がる。敵に死を与えるまでな。罠発動!《闇夜を駆ける騎士》!!俺のフィールドのモンスターが破壊された時、手札・デッキ・墓地・エクストラデッキから《ペイルライダー》を特殊召喚する!」

「何!!?」

急に上空が満月の夜へと変化していく。

そして、《邪神イレイザー》が生み出した穴の中から《魔装騎士ペイルライダー》が現れた。

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

 

闇夜を駆ける騎士

通常罠カード

(1)自分フィールド上のモンスターが破壊されたターンにのみ発動できる。手札・デッキ・簿p地・エクストラデッキから「魔装騎士ペイルライダー」1体を自分フィールド上に特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化され、ターン終了時に破壊される。

 

「俺のフィールドに存在するカードは《ペイルライダー》のみ。よって、《イレイザー》の攻撃力は1000のままだ!!」

《ペイルライダー》がライフルのカートリッジを交換する。

その姿を見て、キースは密かににやっと笑った。

「《ペイルライダー》!!神を殺す時が来たぞ!!」

《ペイルライダー》のライフルから青い光線が放たれる。

そして、その光線は《邪神イレイザー》の額を見事に撃ちぬいた。

 

キース

ライフ3350→1850

 

「ハ…ハ…ハハハ…」

急にキースが狂ったように笑い始める。

「どうした?切り札がやられてついにイカれたか?」

「いいや…そうじゃねえ。うれしいんだよ。これでてめえにも死の感覚を教えることができるからなぁ…」

「何!?」

キースは《邪神イレイザー》から飛び降り、翔太の前に立つ。

額を撃ちぬかれ、絶命したはずの《邪神イレイザー》が自らの手で首を飛ばす。

すると、傷口から黒い血が四方八方に飛び散る。

「気味の悪いモンスターだな…」

「ああ…こいつの本体はこの黒い血なんだよ…。こいつは破壊されるとき、フィールド上のすべてのカードを道連れにする…」

不覚にも血を浴びてしまった《魔装騎士ペイルライダー》が溶けていく。

それだけでなく、血がどんどん増えていき、最終的には翔太とキースの視界がそれに塗りつぶされていく。

次第にそれは暗黒空間となり、2人を閉じ込めて行った。

「な…なんだよ…これは…!?」

漆黒の空間の中で、翔太は自分の視覚以外のすべての感覚が消えていくような感じがした。

体温も色も痛みもすべてが邪神に奪われていく。

「ヘヘヘ…どうやら近づいてるようだな…死に…」

「俺は…カードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

翔太

手札1→0

ライフ500

場 伏せカード1

 

キース

手札0

ライフ1850

場 なし

 

「死なせてやるよ…てめえの騎士さんが《イレイザー》を殺したように…。俺のターン、ドロー…」

 

キース

手札0→1

 

「俺は手札から魔法カード…《死者蘇生》を発動…。その効果で蘇らせるのは…《デモニック・モーター・Ω》…」

闇の中から両手足と頭部に刃を備えた赤い装甲に人型ロボットだ。

 

デモニック・モーター・Ω レベル8 攻撃2800

 

「死んで来い…てめえ…!!」

《デモニック・モーター・Ω》の刃が翔太に襲い掛かる。

このような暗黒空間ではアクションカードを探すことはできない。

「く…!罠発動!《ガード・ブロック》!!」

不可視のバリアが翔太を攻撃から守る。

「まだ…やられていない…うぐ…!」

ドローした瞬間、急に《邪神イレイザー》の攻撃で受けた傷が痛み始める。

いや、正確には邪神によって暗黒空間に閉じ込められる前から痛みを感じていたが、デュエルに集中するためあまり気にしないようにしていた。

(不幸中の幸いか…この痛みで大分感覚が戻ってきたな…まるで、死の世界に引っ張られたかのようだったな)

「なんで…なんで死なねえんだ…?」

「何?」

先程は愉快そうにしていたキースが急におびえた表情になる。

「俺だけが死んで…あいつだけが生き残る…そんなことあるか…ああ…!!」

急に頭を抱え、手で視界を覆う。

サングラスの下から涙が零れ落ちている。

「き…消えるのか?俺はまた…復讐を果たせねえまま…こんな訳の分からねえガキに…」

偶然、キースのひじがデュエルディスクのターン終了スイッチに触れ、ターンが翔太にかわる。

そして、《デモニック・モーター・Ω》の効果で《モータートークン》が現れる。

 

翔太

手札0→1

ライフ500

場 なし

 

キース

手札1→0

ライフ1850

場 デモニック・モーター・Ω レベル8 攻撃2800

  モータートークン レベル1 攻撃200

 

「俺のターン」

 

翔太

手札1→2

 

「悪いが、あんたの都合はどうでもいい。すぐにここから出ていくぜ。手札から魔法カード《死者蘇生》を発動。その効果で俺は《魔装槍士クーフーリン》を特殊召喚」

 

魔装槍士クーフーリン レベル6 攻撃2100

 

「バトルだ。《クーフーリン》で《モータートークン》を攻撃!ニードル・スピア!!」

《魔装槍士クーフーリン》の槍が《モータートークン》を貫き、更にキースの胸を貫いた。

「…!!!」

攻撃を受けたキースはよろよろと座り込んだ。

 

キース

ライフ1850→0

 

「はあ…はあ…はあ…」

デュエル終了と同時に暗黒空間が消え、元の空間に戻る。

それと同時にキースの姿も消えてしまった。

「消えた…!?」

「アハハハハハ!まあまあなデュエルだったな!!」

再び翔太の脳裏にあの声が響く。

「おい!!一体何のつもりだ!!?奴は…!?」

「安心しなよ、こいつはキースってやつをモチーフに居眠りしながら作った虚像。別にどうってことねえよ。ああ…それと、これからお前に1つアドバイスしてやるよ」

「アドバイスだと!?それよりも…」

「聖子ちゃんのことかぁ?残念ながら、時間切れーーー!!これからすぐに元の場所へお前を強制送還するからなー!」

「ふざけんな!!なぜ俺の邪魔をする!?」

「それよりもー教えてやるよ。記憶の鍵となるモンスターを10体倒せば、聖子ちゃんの意識が戻る。ええっと、今までに倒したのは1体だけ。あと9体倒せばいいのさー!じゃあ、頑張ってねーー」

「待て!!貴様…あの時は俺を助け、今回は俺の邪魔をする!!一体何なんだ!!?」

その質問への答えが脳裏に響くことはなかった。

そして、まぶしい光に包まれて翔太は目を閉じた。

 

「…!!ハア…ハア…」

「翔太君!?どうしたの??急に汗を一杯出して…」

「い…伊織…?」

目を開くと、そこは聖子の病室だった。

「それにしても、頭は大丈夫なの?」

「ああ…問題な…!?」

伊織の腕時計を見て、翔太の目が大きく開く。

「2時21分…だと…!?」

「翔太君…?」

「伊織、俺はどれくらい意識を失っていた…?」

「え?気絶なんてしてないよ?ただ瞬きしてただけだよ。それにしてもすごいねー、瞬きする間にもう頭が痛くなくなったなんて。でも、どうしてこんなにいっぱい汗を一瞬で…」

伊織の言葉に動揺しながら、翔太は眠っている聖子を見る。

(違う…そんなはずない!!あなたが…あなたがこんなところにいるはずがない!!)

(俺が存在するはずがない…?一体どういうことなんだ…?記憶の鍵をあと9体見つけることで、それがわかるというのか…?)




権現坂のシンクロモンスターの効果に興味津々になっているナタタクです。
今回はペガサスと城之内によって奈落の底へ落ちたというキースの登場でした。(虚像ですが…)
いろいろ変な部分があるかと思うますが、その点はご容赦ください。


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第13話 権現坂の覚悟

「なるほどな、素良がジュニアユース選手権出場決定か」

「うん!!すごいよね、素良君って。遊矢君よりも早く決まっちゃうなんて!!」

「事情が事情だ。仕方ないだろ?」

翔太と伊織が翔太の部屋で雑談をしている。

聖子のいる病院へ行ってから、すでに2日が経過した。

その間に素良はジュニアユース選手権出場を決め、遊矢もあと1勝となっている。

「あ…そうだ、翔太君。これからどうするの?」

「これから…?」

「うん。だって、記憶の鍵になるモンスターの手掛かりがないんでしょ?それだと見つけようが…」

「…」

あの時に聞いた声を思い出す。

聖子の意識を回復させるにはあと9枚の鍵が必要だ。

その9枚がなんなのかはノーヒントだ。

(最初の記憶の鍵は《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》だった…。もしかしたら、ペンデュラムモンスターなのか?記憶の鍵は…)

しかし、現段階でペンデュラムモンスターを所持しているのは翔太、遊矢、零児のみ。

そして、切り札クラスのペンデュラムモンスターの種類はそれほど多くない。

「とにかく可能な限り、多くのデュエリストと戦うしかないか…」

「それなら、塾長に相談…」

「今のあいつが相談に乗ると思うか?」

「あ…」

現在、修造は娘である柚子が融合召喚の特訓のため、ほとんど塾に来なくなったことがショックで自分を痛めつけるような特訓を繰り返している。

その結果、授業が完全にストップしていて翔太と伊織が代わりに授業を行うことになるほど状況が悪化している。

「としたら…」

「あと協力してくれるとしたら、あいつしかいないだろう」

翔太の頭に浮かんだのは権現坂だ。

権現坂道場跡取りである彼に頼めば、情報を集めることができるかもしれない。

「だったら、さっそく権現坂君にお願いしに行こう!」

「伊織、道案内は頼む」

「イエッサー!」

2人はバイクで権現坂道場へ向かう。

 

「はあ…はあ…はあ…」

「もうバテたのか?」

「はあ…はあ…だって、すっごく長い石段なんだもん…」

夕方の石段を2人は上って行く。

果てしなく長い石段を上った先に権現坂道場がある。

権現坂曰く、権現坂道場へ向かうその時から不動のデュエルの修業が始まるらしいが、見学者や相手となるデュエリストには少し酷に思える。

(まあ…心を無にするという形ではいいのか?)

何とか登り終えると、古い日本式の屋敷をモチーフとした道場が見えた。

管板には墨で権現坂道場と書かれている。

「ついたか…」

「ご…ごめんくださーい…」

疲れ果てた伊織が門をくぐり、中へ入る。

しかし、誰も来ず、足音すら聞こえない。

「おーーい、誰かいないのか――!?」

大声で人を呼ぶが、帰ってくるのは外の風の音だけ。

「留守なのか…?」

「でも、それなら門は閉めてるよね?」

「なら、いるということだな?勝手に奥へはいらせてもらうぞ」

「あ…ちょっと、翔太君!!」

靴を脱ぐと、ズカズカと廊下を歩く。

そして、修行場へ足を踏み入れる。

「やっと見つけたぜ。相当不用心なんだな」

修行場のど真ん中で1人座禅をする権現坂を見て、翔太はあきれた表情を見せる。

「おい、客が来たのにその態度は何だ?」

背中をたたくが、全く動じず、何も反応を返さない。

「ちっ…」

「翔太君駄目だよ、そういうことをしたら。ここはこの伊織様に任せなさい!」

「はぁ?」

伊織はこっそりと権現坂の背後に行く。

そして、彼の耳に息を吹きかける。

「なぁ…うわあああ!!」

急にゾクゾクとした感覚に襲われた権現坂は派手に倒れてしまう。

「ひゃっほーい!作戦大成功!」

「こ…この男、権現坂の座禅を邪魔するとは…け…けしからーーーん!!」

「顔、真っ赤だぞ?」

「う…うるさい!!な…な…何の用だ!?」

「ええっと、実はね…」

伊織の口から権現坂に事情を説明する。

「うーむ…多くのデュエリストと戦うのであれば、舞網チャンピオンシップくらいだが…」

「でもそれってプロへ進むためのでしょ?それに、翔太君は公式戦に6連勝しないと出れないよ?」

選手権出場選手の決定は8日後。

それまでに6人相手を見つけ、公式戦をするのは酷な話だ。

「だが、それ以外にも多くのデュエリストと戦える舞台はある。8日後から静岡で行われるタッグデュエルカーニバル、通称TDCだ」

「タッグデュエルカーニバルだと…?」

「そうだ。タッグデュエルの世界大会で、そこでは無条件で大会に出ることができる」

(それにしても、なぜ静岡で…?)

「じゃあじゃあ、私と翔太君がタッグを組めばいいってことだよね?」

「な…!?」

伊織の発言に驚く翔太。

「ちょっと待て、なんでお前が一緒に出るんだよ?」

「えー、だって私がいないと翔太君、いっぱいトラブル起こしそうだし」

「問題児扱いか、俺は…」

口が悪いことは自認しているが、どうやら問題児、トラブルメーカーであることは認めたくないようだ。

「翔太君…私と一緒にデュエルしたくないの?」

「何?」

「したくないの…?」

急に涙目と上目使いの連係プレーで翔太に攻撃する。

異性に関して基本的に無関心な翔太だが、そんな伊織を不覚にも可愛いと思ってしまう。

「ちっ…勝手にしろ」

「やったーー!!」

「権現坂、他の奴らはどこにいる?」

「親父殿達は今、隣町の山で修行をしている。そして、俺は不動のデュエルの新たな地平を見出すため、こうして修行をしている」

「修行…なぁ」

そんなのでデュエルが強くなれるわけないだろという野暮な発言をしそうになるが、何とか抑え込む。

「そして、翔太殿と伊織殿。1つ俺からも頼みがある」

「頼み?」

「俺はとある御仁からの教授により、新たな可能性を見出した。その可能性がはたして正しいのか間違いなのかは分からん。故に、明日のデュエルのためにも確かめたいのだ」

「なら、伊織とやれ。俺は見学する」

「え?いいの!?」

「最近お前のデュエルを見てないし、暑苦しいのは苦手だからな。権現坂、ソリッドビジョンの制御室はどこだ?」

「制御室はここの地下室だ。階段は億を右に曲がればある」

「じゃあ、準備してくる。下手なデュエルは見せるなよ?」

翔太は伊織の肩を軽くたたくと、制御室へ向かった。

「翔太君…よーし、頑張るぞー!」

嬉しそうにデュエルディスクを構える。

「クリクリー…」

「え…?」

デュエルディスク起動と同時に、デッキから可愛らしい鳴き声が聞こえる。

「ねえ、権現坂君。何か言った?」

「いや、俺は何も言ってはおらんぞ」

「そ…そう…??」

(おい、さっさと準備をしろ。ソリッドビジョンを起動するぞ)

「はーい!!」

権現坂もデュエルディスクを構える。

そして、両者は距離を取り、対峙する。

「フィールド魔法は勝手に決めるぞ」

翔太はランダムにフィールド魔法を選択する。

コンピュータは《剣の墓場》を選択する。

「よりによって、《剣の墓場》か…」

「じゃあ、権現坂君!全力で行こー!」

権現坂と伊織がデュエル開始を宣言する。

「戦いの殿堂に集いしデュエリストたちが」

「モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い」

「フィールド内を駆け巡る!」

「見よ、これぞ、デュエルの最強進化形、アクション…」

「「デュエル!!」」

 

伊織

手札5

ライフ4000

 

権現坂

手札5

ライフ4000

 

「よーし、私のターン!!手札から《E・HEROエアーマン》を召喚!」

 

E・HEROエアーマン レベル4 攻撃1800

 

「このカードの2つ目の効果発動!このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、デッキからHEROを手札に加えるよ。私は《ブレイズマン》を手札に加える!そして、カードを1枚伏せてターンエンド!」

 

伊織

手札5→4(うち1枚《E・HEROブレイズマン》)

ライフ4000

場 E・HEROエアーマン レベル4 攻撃1800

  伏せカード1

 

権現坂

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「俺のターン、ドロー!!」

 

権現坂

手札5→6

 

「俺は《超重武者ワカ―O2》を召喚!」

武士を模した青い重装甲で、両腕に傘と盾を融合させた防具を持つ機械が現れる。

 

超重武者ワカ―O2 レベル4 攻撃0

 

「このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、表示形式を変更できる」

 

超重武者ワカ―O2 レベル4 攻撃0→守備2000

 

「俺はこれでターンエンド」

 

伊織

手札4(うち1枚《E・HEROブレイズマン》)

ライフ4000

場 E・HEROエアーマン レベル4 攻撃1800

  伏せカード1

 

権現坂

手札6→5

ライフ4000

場 超重武者ワカ―O2 レベル4 守備2000

 

「どちらもまずは無難な立ち上がりだな」

伊織のフィールド上には融合素材となるHEROをサーチする《E・HEROエアーマン》と伏せカード。

そして権現坂のフィールドには守備力2000の《超重武者ワカ―O2》。

更にその超重武者は戦闘では破壊できない。

「私のターン、ドロー!」

 

伊織

手札4→5

 

「(よーし!今日の私、ついてる!!)私は手札から魔法カード《精神操作》を発動!このカードは相手モンスター1体のコントロールをターン終了時まで得るよ!私は権現坂君の《ワカ―O2》を選択!」

「な…何ーーーー!?」

急に《超重武者ワカ―O2》が立ち上がり、スタスタと伊織のフィールドへ移動してしまう。

「そして、手札を1枚捨てて手札から速攻魔法《マスク・チェンジ・セカンド》を発動!私のフィールドの表側表示モンスターをそのモンスターよりもレベルが高い同じ属性のM・HEROに変身させるよ!」

「おのれ…そのための《精神操作》であったか!!」

「《精神操作》を受けたモンスターはコントロールが戻るまで攻撃もリリースも禁じられている。だが、抜け穴はかなりあるな…」

「さあ、お願い!《ワカ―O2》!2つの盾を構えし武者の機械よ、今こそダイヤの力を宿し、新たなヒーローに進化せよ!変身召喚!《M・HEROダイアン》!!」

《超重武者ワカ―O2》の装甲が砕け散り、その中からダイヤモンドの鎧と西洋槍、そして青いマントをつけた細身の騎士が現れる。

 

M・HEROダイアン レベル8 攻撃2800

 

手札から墓地へ送られたカード

・E・HEROネクロダークマン

 

「それが…伊織殿の…」

「そう!これが私のHEROだよ!」

自慢げに《M・HEROダイアン》を見つめる伊織。

「いくよ、権現坂君!私は《M・HEROダイアン》でダイレクトアタック!!ディスバーション!!」

《M・HEROダイアン》が槍を構え、権現坂に向けて突撃する。

「この攻撃と、《エアーマン》の攻撃が通ったら、伊織の勝ちだな」

「させぬわ!!俺は手札から《速攻のかかし》を捨て、効果発動!!自分がダイレクトアタックを受ける時、このカードを手札から墓地へ送ることでその攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了させる!」

パチンコのような形の木片2本と魔女の帽子、そして赤いサングラスをつけた機械のかかしがダイヤモンドの槍を受け止める。

「まさか、《速攻のかかし》を入れていたなんてな…」

「くうう…決められなかった。私は手札から《E・HEROブレイズマン》を召喚!」

 

E・HEROブレイズマン レベル4 攻撃1200

 

「《ブレイズマン》の効果発動!このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから《融合》を1枚手札に加えるよ。そして、フィールドの《ブレイズマン》と《エアーマン》を融合!炎の切り込み隊長よ、疾風の戦士よ、今こそ1つになりて、新たなヒーローに進化せよ!融合召喚!現れて、紅蓮の申し子、《E・HEROノヴァマスター》!!」

 

E・HEROノヴァマスター レベル8 攻撃2600

 

「く…1ターンに2度もの融合召喚…。さすがは伊織殿」

「えへへ…今日の私はすごいよー?私はこれでターンエンド!」

 

伊織

手札5→1

ライフ4000

場 E・HEROノヴァマスター レベル8 攻撃2600

  M・HEROダイアン レベル8 攻撃2800

  伏せカード1

 

権現坂

手札5→4

ライフ4000

場 なし

 

「俺のターン、ドロー!!」

 

権現坂

手札4→5

 

「《超重武者テンB-N》は相手フィールド上にモンスターが2体以上存在し、俺のフィールドにモンスターが存在しないとき、手札から特殊召喚できる!」

 

超重武者テンB-N レベル4 攻撃800

 

「更にこのカードの召喚・特殊召喚に成功した時、墓地に存在する《超重武者テンB-N》以外のレベル4以下の超重武者1体を守備表示で特殊召喚する。俺は墓地から《超重武者ワカ-O2》を特殊召喚」

《超重武者テンB-N》から放つ光の中から《超重武者ワカ-O2》が姿を現す。

 

超重武者ワカ―O2 レベル4 守備2000

 

「これで召喚権を行使せずにモンスターが2体。来るな…」

この状況で権現坂が呼び出すモンスターは1体しかいない。

「動かざること山の如し…。不動の姿、今見せん!俺は《超重武者テンB-N》と《カブ―10》をリリースしてアドバンス召喚!現れろ、レベル8!《超重武者ビッグベン-K》!」

 

超重武者ビッグベン-K レベル8 攻撃1000

 

「来たーーー!!権現坂君のエースモンスター!!すっごく大きい!!」

自分を聞きに落としれるモンスターが現れたにもかかわらず、キラキラした目で《超重武者ビッグベン-K》を見る。

(たく…。こいつとタッグを組むと相当苦労するな…)

「《超重武者ビッグベン-K》の効果発動!このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、このカードの表示形式を変更できる」

 

超重武者ビッグベン-K レベル8 攻撃1000→守備3500

 

「そして、《ビッグベン-K》は守備表示のまま守備力を使って攻撃できる!バトルだ!《ビッグベン-K》で《M・HEROダイアン》を攻撃!!」

《超重武者ビッグベン-K》に左拳が叩きつけた地面から火柱が発生し、《M・HEROダイアン》に襲い掛かる。

火柱野凄まじい熱がダイヤモンドの鎧をドロドロにとかし、破壊する。

「くぅーーー…やりますなあ、権現坂君」

 

伊織

ライフ4000→3300

 

「罠発動!《ヒーロー・シグナル》!!私のモンスターが戦闘で破壊され墓地へ送られた時、デッキからレベル4以下のE・HERO1体を特殊召喚できる!《フォレストマン》をデッキから特殊召喚!」

 

E・HEROフォレストマン レベル4 守備2000

 

「むぅ…破壊されても即座に新たなモンスターを…。俺はこれでターンエンド!」

 

伊織

手札1

ライフ3300

場 E・HEROノヴァマスター レベル8 攻撃2600

  E・HEROフォレストマン レベル4 守備2000

 

権現坂

手札5→3

ライフ4000

場 超重武者ビッグベン-K レベル8 守備3500

 

「私のターン、ドロー!」

 

伊織

手札1→2

 

「更に、《フォレストマン》の効果発動!私のターンのスタンバイフェイズに1度、デッキ・墓地から《融合》を1枚手札に加えるよ!」

 

伊織

手札2→3

 

「更に私は手札から魔法カード《マスク・チャージ》を発動!私の墓地からHERO1体とチェンジと名のつく速攻魔法1枚を手札に加えるよ。私は墓地から《ブレイズマン》と《マスク・チェンジ・セカンド》を手札に!」

今の伊織の手札には《マスク・チェンジ・セカンド》と《E・HEROブレイズマン》、そして《融合》。

(もし、伊織がドローしたカードがあのカードなら…おそらくは《ビッグベン-K》を…)

「私は手札から魔法カード《融合》を発動!手札の《E・HEROフェザーマン》とフィールドの《フォレストマン》で融合!」

鳥獣をモチーフとした緑色のマスクとスーツを着ていて、更に白い翼が付いたHEROと《E・HEROフォレストマン》が融合する。

「翼の制裁者よ、大木の番兵よ、今こそ1つになりて、新たなヒーローに進化せよ!融合召喚!現れて、竜巻の王者、《E・HERO Great TORNADO》!!」

伊織のフィールドに凄まじい竜巻が起こる。

そして、その中から黒いマントを身に着けた緑と黄色のスーツ姿のHEROが現れ、右手に装備されている鉤で竜巻を切り裂いた。

 

E・HERO Great TORNADO レベル8 攻撃2800

 

「《Great TORNADO》の効果発動!このカードの融合召喚に成功した時、相手フィールド上のモンスターの攻撃力・守備力を半分にする!」

「な…何ぃーーーー!?」

「ダウン・バースト!!」

《E・HERO Great TORNADO》が切り裂いた竜巻が復活し、権現坂のフィールドに襲い掛かる。

竜巻は周囲の刀剣を次々と吹き飛ばし、《超重武者ビッグベン-K》に次々と突き刺さった。

それにより、関節部分や頭部のカメラにひびが入り、《超重武者ビッグベン-K》はその場に座り込む。

 

超重武者ビッグベン-K レベル8 守備3500→1750

 

「バトル!私は《ノヴァマスター》で《超重武者ビッグベン-K》を攻撃!!バーニング・ナックル!!」

炎のスピードラッシュが《超重武者ビッグベン-K》に襲い掛かる。

「炎ならば、この男、権現坂も負けておらん!俺は手札の《超重武者装留ファイヤー・アーマー》の効果発動!このカードを手札から墓地へ送ることで、俺の超重武者1体はこのターン、破壊されない!ただし、その効果を受けた超重武者の守備力はターン終了時まで800ポイントダウンする」

炎のラッシュを受け止めるのは炎の装甲。

互いの炎がぶつかり合い、その影響で伊織と権現坂の周囲が炎上する。

 

超重武者ビッグベン-K レベル8 守備1750→950

 

「けれど、まだアクションカードって手があるよ!」

《E・HEROノヴァマスター》のラッシュが続いている間に、伊織は枯れ木の枝に引っかかっているアクションカードを手に取る。

「私はアクション魔法《フレイム・ソード》を発動!私のモンスター1体は守備表示モンスターを攻撃するとき、貫通ダメージを与えるよ!」

《E・HEROノヴァマスター》の体が更に燃え上がる。

そして、その炎が権現坂に襲い掛かった。

「むうううう!!!!」

 

権現坂

ライフ4000→2350

 

フレイム・ソード

アクション魔法カード

(1):自分フィールド上のモンスター1体が戦闘を行う時発動しなければならない。そのモンスターは下記の効果を得る。

●このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

 

「破壊には及ばなかったが、貫通ダメージだけは与えることができたか…」

《超重武者装留ファイヤー・アーマー》の効果で下がった守備力はターン終了と同時に元も戻るとはいえ、それでも《超重武者ビッグベン-K》の守備力はたったの1750。

権現坂にとって不利な状況が続くことに変わりはない。

「へっへーん、次のターンで《超重武者ビッグベン-K》とはおさらばだよ!私はこれでターンエンド!」」

 

伊織

手札3→4→2(《H・HEROブレイズマン》、《マスク・チェンジ・セカンド》)

ライフ3300

場 E・HEROノヴァマスター(《フレイム・ソード》の影響下) レベル8 攻撃2600

  E・HERO Great TORNADO レベル8 攻撃2800

 

権現坂

手札3→2

ライフ2350

場 超重武者ビッグベン-K レベル8 守備950→1750

 

これで、伊織と権現坂のライフは逆転し、貫通効果を得たことで《E・HEROノヴァマスター》の手札補充効果が使いやすくなった。

しかし、さすがは権現坂道場跡取り。

この状況でもその場を一歩も動かない。

「俺のターン、ドロー!!!」

 

権現坂

手札2→3

 

ドローしたカードを見て、権現坂が笑みを浮かべる。

「(来たか…我が不動のデュエルをさらなる高みへ導くカードが!!)俺は手札からチューナーモンスター、《超重武者ホラガ-E》を召喚!」

「何…?」

「権現坂君がチューナーモンスターを!?」

赤い胴丸と茶色い傘を装備した小型の足軽型の機械がほら貝を模した機械の笛を持って現れた。

 

超重武者ホラガ-E レベル2 攻撃300(チューナー)

 

「そして、俺は《ビッグベン-K》に《ホラガ-E》をチューニング!!」

《超重武者ホラガ-E》がほら貝を吹くと同時に2つのチューニングリングとなり、《超重武者ビッグベン-K》がその中へ入っていく。

「荒ぶる神よ、千の刃の咆哮と共に砂塵渦巻く戦場に現れよ!シンクロ召喚!!いざ出陣レベル10!《超重荒神スサノ-O》!!」

背中と両肘にスラスターをつけ、全身が大鎧で包まれた鬼神が左手に薙刀を持って現れる。

 

超重荒神スサノ-O レベル10 守備3800

 

「まさか、権現坂がシンクロ召喚を使うなんてな…」

LDSとのデュエルの後、権現坂がさらに力をつけることは予想できた。

しかし、まさかシンクロ召喚を使うとは思わなかった。

そして、シンクロ召喚を自分以外で教えることができる人間は1人しか思いつかない。

「すっごーい!シンクロ召喚が新しい力なんだね!」

「そうだ!その場に立ち止っていては、いずれおいていかれる。ならば、一歩踏み出して新たな不動のデュエルを見出すのみ!バトルだ!《スサノ-O》は《ビッグベン-K》と同じく、守備表示のまま守備力を使って攻撃できる!まずは《フレイム・ソード》で強化された《ノヴァマスター》を攻撃!草薙ソード・斬!!」

《超重荒神スサノ-O》がその場で胡坐し、手に持っている薙刀を振るう。

《E・HEROノヴァマスター》は炎の拳で迎え撃つが、極限まで強化された薙刀になすすべなく切り裂かれた。

「キャア!!」

 

伊織

ライフ3300→2100

 

余波を受けた伊織が大きく吹き飛ぶ。

「くぅー…さすがだね、権現坂君!」

「俺はこれでターンエンド!!」

 

伊織

手札2(《H・HEROブレイズマン》、《マスク・チェンジ・セカンド》)

ライフ2100

場 E・HERO Great TORNADO レベル8 攻撃2800

 

権現坂

手札3→2

ライフ2350

場 超重荒神スサノ-O レベル10 守備3800

 

「これで、伊織は一気に不利になったな…」

権現坂の《超重荒神スサノ-O》の守備力は3800。

伊織のデッキにはそれ以上の攻撃力を持つモンスターはいない。

攻守を半減させることのできる《E・HERO Great TORNADO》は今はフィールド、そして彼女のデッキには1枚しかない。

《E・HEROアブソルートZero》を召喚しようにも、手札に水属性モンスターがいない。

(《マスク・チェンジ・セカンド》を使って、《Great TORNADO》を《カミカゼ》に変身召喚しても、その場しのぎにしかならないかなあ…)

権現坂の《超重荒神スサノ-O》の実力は未知数。

たとえ戦闘では破壊されない《M・HEROカミカゼ》でも何ターンしのげるかわからない。

「(まあ、いっか!ドローしてからでも遅くない遅くない!)私のターン、ドロー!」

 

伊織

手札2→3

 

「…。私はカードを1枚伏せ、《Great TORNADO》を守備表示にしてターンエンド!」

 

伊織

手札3→2(伏せカードを含め、そのうち2枚《H・HEROブレイズマン》、《マスク・チェンジ・セカンド》)

ライフ2100

場 E・HERO Great TORNADO レベル8 攻撃2800→守備2200

  伏せカード1

 

権現坂

手札2

ライフ2350

場 超重荒神スサノ-O レベル10 守備3800

 

(あの伏せカードに賭けているのか?伊織…)

「俺のターン、ドロー!!」

 

権現坂

手札2→3

 

「俺は《スサノ―O》の効果を発動!俺の墓地に魔法・罠カードがないとき、1ターンに1度、相手の墓地から魔法カードを1枚選択して俺のフィールドにセットすることができる!俺は伊織殿の墓地から《フレイム・ソード》を手札に加える!」

「え…えーーーー!?」

伊織の墓地から自動的に《フレイム・ソード》が排出され、権現坂の手に渡る。

「アクションカードは元々の持ち主を回収したプレイヤーとして扱われる。考えたな、権現坂」

魔法・罠カードを相手の墓地から調達することで、フルモンデッキでも新たな戦い方が可能になる。

まさにフルモンデッキの戦術の縛りを薙ぎ払うカードと言えよう。

「そして、俺は手札から《超重武者装留グレート・ウォール》の効果を発動!このカードを《スサノ-O》に装備し、装備モンスターの守備力を1200ポイントアップさせる!」

《超重武者装留グレート・ウォール》が《超重荒神スサノ-O》の右腕に装着される。

 

超重荒神スサノ-O レベル10 守備3800→5000

 

「これで次のターン、《スサノ-O》は貫通効果を得る。一気にけりをつける気だな。権現坂」

「バトルだ!!《スサノ-O》で《E・HERO Great TORNADO》を攻撃!!草薙ソード・斬!!」

《超重荒神スサノ-O》の薙刀が《E・HERO Great TORNADO》に襲い掛かる。

しかし、急に目の前に現れたクリスタルの仮面がその攻撃を受け止める。

「何!?」

「私は罠カード《マスク・バリア》を発動したよ!相手モンスター1体の私のHEROに対する攻撃を無効にする!」

「むうう…俺はこれでターンエンド!」

 

伊織

手札2(《H・HEROブレイズマン》、《マスク・チェンジ・セカンド》)

ライフ2100

場 E・HERO Great TORNADO レベル8 守備2200

 

権現坂

手札3→2

ライフ2350

場 超重荒神スサノ-O(《超重武者装留グレート・ウォール》装備 《フレイム・ソード》の影響下) レベル10 守備5000

  伏せカード1(《フレイム・ソード》)

 

「私のターン、ドロー!」

 

伊織

手札2→3

 

「私は墓地から《マスク・バリア》の2つ目の効果を発動!」

「何!?先ほど発動した《マスク・バリア》を…」

「このカードを墓地から除外することで、手札に存在するチェンジと名のつく魔法カードか《融合》をデッキに戻し、デッキからチェンジと名のつく魔法カードか《融合》を手札に加える!私は《マスク・チェンジ・セカンド》をデッキに戻して、デッキから《マスク・チェンジ》を手札に加えるよ!」

 

マスク・バリア

通常罠カード

(2)の効果はこのカードが墓地へ送られたターン、発動できない。

(1):自分フィールド上の「HERO」モンスターが攻撃対象となったときに発動できる。その攻撃を無効にする。

(2):このカードを墓地から除外することで発動できる。自分の手札の「チェンジ」魔法カードまたは「融合」を1枚デッキに戻し、デッキから「チェンジ」魔法カードまたは「融合」を1枚手札に加える。

 

「そして、手札から《ブレイズマン》を召喚!」

 

E・HEROブレイズマン レベル4 攻撃1200

 

「私は《ブレイズマン》のもう1つの効果を発動!1ターンに1度、デッキから《ブレイズマン》以外のE・HEROを墓地へ送り、エンドフェイズまでそのモンスターの力と属性を得る。私は《オーシャン》を墓地へ送るよ!」

青いイルカのような姿で、半月状の飾りがついた杖を持ったHEROの幻影と《E・HEROブレイズマン》の姿が重なり合う。

 

E・HEROブレイズマン 炎属性→水属性 レベル4 攻撃1200→1500 守備1800→1200

 

「そして、手札から速攻魔法《マスク・チェンジ》を発動!その効果で《ブレイズマン》を変身させるよ!水を宿した切り込み隊長よ、今こそ酸の力を宿し、新たなヒーローに進化せよ!変身召喚!《M・HEROアシッド》!!」

 

M・HEROアシッド レベル8 攻撃2600

 

「《アシッド》の効果発動!このカードの特殊召喚に成功した時、相手の魔法・罠カードをすべて破壊し、相手モンスターの攻撃力を300ポイントダウンさせる!Acid rain!!」

「何ぃ!?」

《M・HEROアシッド》の銃から強い酸がこもった弾丸が複数放たれる。

《超重荒神スサノ-O》は右腕の《超重武者装留グレート・ウォール》でそれを防ぐが、その強い酸が強靭なはずだった装甲をドロドロに溶かしていった。

 

超重荒神スサノ-O レベル10 守備5000→3800 攻撃2400→2100

 

「だが、まだ《アシッド》と《Great TORNADO》の攻撃力は《スサノ-O》の守備力には及ばない…」

このままではせっかく呼び出した《M・HEROアシッド》が無駄になってしまう。

「私は《Great TORNADO》を攻撃表示に変更!」

 

E・HERO Great TORNADO レベル8 守備2200→攻撃2800

 

「それがどうした!?どちらのモンスターも俺の《スサノ-O》の足元にも及ばん!」

「そっれはどうでしょー?」

「何ぃ?」

「忘れたの、権現坂君。私のHEROは融合と変身によって真価を発揮するんだよ。私は手札から魔法カード《ホープ・オブ・フィフス》を発動!墓地のE・HERO5体をデッキに戻し、デッキからカードを2枚ドロー!」

 

伊織

3→1→2

 

墓地からデッキに戻ったカード

・E・HEROエアーマン

・E・HEROブレイズマン

・E・HEROオーシャン

・E・HEROフォレストマン

・E・HEROフェザーマン

 

「来たー!まずは手札から魔法カード《ヒーローズルール3―バーニング・ストライク》を発動!このカードは私のフィールド上のHEROと名のつく融合モンスターの攻撃力を1000ポイントアップさせる!」

2体のHEROが灼熱の炎に包まれる。

 

E・HERO Great TORNADO レベル8 攻撃2800→3800

M・HEROアシッド レベル8 攻撃2600→3600

 

ヒーローズルール3―バーニング・ストライク

通常魔法カード

「ヒーローズルール3―バーニング・ストライク」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に表側表示で存在する「HERO」融合モンスターの攻撃力を1000アップする。

 

私は手札から魔法カード《合体攻撃―ダブル・アタック》を発動!私のHEROの攻撃力に私のM・HERO1体の攻撃力を加えるよ!」

《E・HERO Great TORNADO》が竜巻を発生させると、《M・HEROアシッド》がその中に酸の弾丸を放つ。

弾丸が砕け、強い酸と更に炎が竜巻と一体化していく。

 

E・HERO Great TORNADO レベル8 攻撃3800→7400

 

「攻撃力7400!?攻撃力を融合させただとーーーー!?」

「バトル!私は2体のHEROで《スサノ-O》を攻撃!!HERO BURNING DOUBLE ATTACK!!」

《E・HERO Great TORNADO》が鉤を《超重荒神スサノ-O》に向ける。

すると、酸の竜巻が胡座している鬼神に襲い掛かり、バラバラに砕いていった。

「《合体攻撃―ダブル・アタック》の効果発動!この効果を受けたモンスターが守備表示モンスターを攻撃した時、貫通ダメージを与える!!これでおしまいでござーい!」

「うわああああ!!」

炎と酸の竜巻によって、権現坂が天井まで吹き飛ばされていった。

 

権現坂

ライフ2350→0

 

合体攻撃―ダブル・アタック(漫画オリカ・調整)

通常魔法カード

「合体攻撃―ダブル・アタック」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に表側表示で存在する「HERO」モンスター1体を選択して発動できる。そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで自分フィールド上に表側表示で存在するそれ以外の「M・HERO」モンスター1体の攻撃力分アップする。この効果を受けたモンスターが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

 

「ふう…やっと終わったか」

ソリッドビジョンを解除し、2人の元へ向かう。

「くぅ…まだまだ修行が足りんか…」

「そうとも言えないよ。《合体攻撃―ダブル・アタック》がさっきのターンドローできなかったらどうなってたか…。すっごく強かったよ、権現坂君!」

「伊織殿…」

(それにしても、どうやってそんなカードを手に入れたんだ?)

召喚方法は教われば習得できる。

しかし、カード自体は自分で見つけなければならない。

そして、超重武者のシンクロモンスターが都合よく存在する。

(まあ…聞かないことにするか)

「それで、明日デュエルをする相手って?」

「遊矢だ。俺はジュニアユース選手権に出場する前に、どうしてもあいつと全力でデュエルをしなければならない」

「遊矢君と!?」

「それで、あいつのペンデュラム召喚に対抗するためにシンクロ召喚を…?」

翔太の言葉に権現坂が何も言わずにうなずく。

「伊織殿のおかげで、改良すべき点は分かった。あとは明日のデュエルのために、できることをするだけだ」

「どういう風の吹き回しなんだ?本選で戦うって手もあるだろう?」

「それでは駄目なのだ、翔太殿。どちらも後がない状況でなくば、真剣勝負などできん。俺たちは今まで何度もデュエルをしてきたが、全力で戦ったことはなかった」

「まあ…そうだろうな」

公式戦は別として、これまで2人が戦ったときはおそらく楽しむことを主な目的としていただろう。

だが、権現坂の公式戦のデータを見ていると、あと1勝で出場決定という状態になっている。

「まあ、俺には関係ないか」

「え…?翔太君!!」

翔太が帰る準備を始める。

「遊矢達が自分自身のための戦いを始めるなら、俺も同じことをするだけだ。じゃあな、無様なデュエルはするなよ」

「翔太君、待ってよー!じゃあ、権現坂君、これにて失礼!」

翔太と伊織が道場から出ていく。

権現坂は《超重荒神スサノ-O》をじっと見る。

(遊矢、必ず俺に全力で立ち向かってこい。そうでなければ、プロの夢はかなわんぞ!)




《超重荒神スサノ-O》の効果をどうしようか考えた結果、すっかり更新が遅くなってしまいました。
さて、翔太と伊織は遊矢達とはしばらく別行動になります。
TDCで2人は何を見るのか?
そして、伊織のデッキから聞こえたあの鳴き声の主とは?

2014年10月21日
《超重荒神スサノ-O》と《超重武者ホラガ-E》のOCG版効果が決まったので、能力値と効果を変更しました。権現坂おめでとうございます!!勝手にここでお祝いします。


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オリカ紹介

第1話から第13話までのオリカと非公式オリカ(効果調整あり)を紹介。


スピン・ショット

アクション魔法カード

(1):相手モンスター1体の攻撃力を500ポイントダウンさせる。

 

魔装鳥ガルーダ

レベル3 攻撃1200 守備1200 効果 炎属性 鳥獣族

(1):自分フィールド上に表側表示で存在する「魔装」モンスター1体が相手の魔法・罠カードの対象となったときに発動できる。そのモンスターを手札に戻し、このカードを手札から特殊召喚する。

(2):このカードの特殊召喚に成功した時、相手モンスター1体を選択する。選択したモンスターの攻撃力を500ポイントダウンさせる。

 

アーマード・ダーツ・シューター

レベル5 攻撃1700 守備1900 効果 闇属性 機械族

(1):相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しないとき、このカードは手札から特殊召喚することができる。この効果で特殊召喚に成功した時、自分はデッキから「ダーツ」と名のつくモンスター1体を選択して、手札に加えることができる。この効果を発動したターン、このカードは攻撃できない。

 

緊急召喚

アクション魔法カード

(1):手札からレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚する。

 

奇跡(アニメオリカ)

アクション魔法カード

(1):自分フィールド上のモンスターが攻撃対象となったときに発動できる。そのモンスターは戦闘では破壊されず、自分が受ける戦闘ダメージは半分になる。

 

魔装鳥獣グリフォン

レベル6 攻撃2400 守備1200 融合 風属性 鳥獣族

「魔装」モンスター×2

(1):自分フィールド上の上記のカードをリリースすることでのみ、エクストラデッキから特殊召喚できる(「融合」魔法カードは必要としない)。

(2):このカードは1ターンに2度攻撃することができる。その場合、2回目の攻撃で発生する相手への戦闘ダメージは半分になる。

 

ダーツ・ゲットライド

通常魔法カード

「ダーツ・ゲットライド」は1ターンに1度しか発動できず、発動したターン自分はモンスターを通常召喚できない。

(1):自分のライフが相手よりも少ないとき、自分フィールド上に表側表示で存在する「ダーツ」モンスター1体を墓地へ送ることで発動できる。手札から「ダーツ」モンスターを3体選択し、表側攻撃表示で特殊召喚する。

 

ボム・ダーツ

永続魔法カード

「ボム・ダーツ」はフィールド上に1枚しか存在できない。

(1):自分フィールド上に表側表示で存在する「ダーツ」モンスターの攻撃力は自分フィールド上の「ダーツ」モンスター1体につき500ポイントアップする。

 

魔装銃士マゴイチ

レベル4 攻撃1600 守備1600 効果 闇属性 鳥獣族

(1):このカードが戦闘によって破壊され、墓地へ送られた時、デッキから「魔装」モンスター1体を選択して手札に加える。

 

魔装亀テンセキ

レベル1 攻撃0 守備0 効果 水属性 水族

(1):自分フィールド上に「魔装」モンスターが表側表示で存在するとき、このカードを手札から墓地へ送ることで発動できる。このターン、自分フィールド上の「魔装」モンスターは戦闘では破壊されず、そのモンスターの戦闘で発生する自分へのダメージは0となる。

 

パワー・ダーツ・シューター(アニメオリカ・調整)

レベル5 攻撃1800 守備2000 ユニオン 地属性 機械族

(1):1ターンに1度、だけ自分のメインフェイズに装備カード扱いとして自分の「ダーツ」モンスターに装備、または装備を解除して表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。この効果で装備カード扱いになっている時のみ、装備モンスターの攻撃力は1000ポイントアップする。(1体のモンスターが装備できるユニオンは1枚まで。装備モンスターが戦闘によって破壊される場合は、代わりにこのカードを破壊する。)

 

ロケット・ダーツ・シューター(アニメオリカ・調整)

レベル6 攻撃1900 守備1000 ユニオン 地属性 機械族

(1):1ターンに1度、だけ自分のメインフェイズに装備カード扱いとして自分の「ダーツ」モンスターに装備、または装備を解除して表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。この効果で装備カード扱いになっている時のみ、装備モンスターが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。。(1体のモンスターが装備できるユニオンは1枚まで。装備モンスターが戦闘によって破壊される場合は、代わりにこのカードを破壊する。)

 

アルティメット・ダーツ・シューター(アニメオリカ・調整)

レベル7 攻撃2400 守備1800 効果 地属性 機械族

(1):このカードはユニオンモンスターを2枚以上装備することができる。

(2):自分のターンのエンドフェイズ時に1度、このカードにユニオンモンスターが装備されているときに発動できる。そのユニオンモンスターの装備を解除し、可能な限り自分フィールド上に特殊召喚する。

 

魔装の宝札

通常魔法カード

(1):自分フィールド上に表側表示で存在する攻撃力2000以上の「魔装」モンスター1体をリリースすることで発動できる。デッキからカードを2枚ドローする。

 

魔装黒鮫サッチ

レベル4 攻撃1400 守備200 効果 水属性 魚族

(1):このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、自分フィールド上に表側表示で存在する「魔装」モンスターの攻撃力は400ポイントアップする。

(2):自分フィールド上に他のモンスターが存在する場合、相手は表側表示で存在するこのカードを攻撃対象に選択する事はできない。

 

魔装剣士ムネシゲ

レベル3 攻撃0 守備2000 地属性 戦士族

【Pスケール青9:赤9】

(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。

(2):1ターンに1度、自分のモンスターゾーンのPモンスター1体を選択して発動する。そのモンスターは1度だけ破壊されない。この効果は相手ターンでも発動できる。

【モンスター効果】

「魔装剣士ムネシゲ」の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードが破壊されたときに発動できる。デッキから「魔装」と名のつくPモンスター1体を手札に加える。

 

ダーツ・ブラスト

通常罠カード

(1):自分フィールド上に表側表示で存在する「ダーツ」モンスター1体が攻撃対象となったときに発動する。攻撃モンスター1体を破壊し、破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。

 

魔装獣ユニコーン

レベル4 攻撃1600 守備800 効果 地属性 獣族

(1):1ターンに1度、自分フィールド上に表側表示で存在する「魔装騎士」モンスター1体を選択して発動できる。このカードは攻撃力800アップの装備カード扱いとしてそのモンスターに装備する。

(2):(1)の効果で装備カード扱いとなったこのカードを装備したモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊して墓地へ送ったとき、そのモンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。

 

魔装槍士タダカツ

レベル5 攻撃2300 守備1600 地属性 戦士族

【Pスケール青2:赤2】

「魔装槍士タダカツ」の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。

(2):自分フィールド上のPモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊した時、発動できる。そのモンスターは続けてもう1度だけ攻撃できる。

【モンスター効果】

(1):このカードは1ターンに1度、戦闘では破壊されない。

 

魔装騎士ペイルライダー

レベル7 攻撃2500 守備2000 闇属性 戦士族

【Pスケール青4:赤4】

「魔装騎士ペイルライダー」の(1)のP効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に表側表示で存在するPモンスターの攻撃宣言時に発動できる。その戦闘で発生する相手への戦闘ダメージは倍になる。

(2):このカードをPゾーンに置いた状態でP召喚に成功した時、相手フィールド上に存在するカードを1枚破壊する。

【モンスター効果】

(1):このカードと戦闘を行った相手モンスターをダメージステップ終了時に破壊する。

 

魔装霊レブナント

レベル2 攻撃600 守備500 チューナー 闇属性 アンデッド族

(1):このカードがリバースした時、デッキから「魔装」モンスター1体を選択して手札に加える。

(2):このカードはリバースしたターン、戦闘では破壊されない。

 

ヒーロー・パーシチェイス

速攻魔法カード

(1):自分フィールド上に表側表示で存在する「HERO」融合モンスターが攻撃し、攻撃対象とした相手モンスターを破壊できなかったときに発動できる。そのモンスター1体を破壊する。その後、デッキからレベル4以下の「HERO」モンスター1体を表側守備表示で特殊召喚する。

 

魔装陰陽師セイメイ

レベル3 攻撃1000 守備1000 チューナー 闇属性 魔法使い族

(1):このカードの召喚に成功した時、手札からレベル4以下の「魔装」モンスター1体を特殊召喚することができる。

(2):このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、相手は他の「魔装」モンスターを攻撃対象とすることができない。

 

魔装剛毅クレイトス

レベル7 攻撃2600 守備2000 シンクロ 地属性 戦士族

「魔装」チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

(1):このカードがエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターと戦闘を行う時に発動する。このカードの攻撃力はダメージステップ終了時まで1000ポイントアップする。

 

E・HEROバイオマン

レベル3 攻撃800 守備800 効果 水属性 戦士族

「E・HEROバイオマン」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか発動できず、(2)の効果を発動したターン、自分は融合召喚または「マスク・チェンジ」以外の方法でモンスターの反転召喚・特殊召喚は行えない。

(1):このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから「フュージョン」魔法カードまたは「融合」魔法カード1枚を手札に加える。

(2):このカードをリリースすることで発動できる。デッキから「マスク・チェンジ」1枚を手札に加える。

 

エクストラ・ミラージュ

通常罠カード

「エクストラ・ミラージュ」の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できず、(1)の効果を発動したターン、発動できない。

(1):相手フィールド上のエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターの攻撃宣言時に発動できる。その攻撃を無効にし、デッキからカードを1枚ドローする。

(2):相手フィールド上のエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターの攻撃宣言時、墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。このターン、相手がエクストラデッキから特殊召喚したモンスターの数だけ相手モンスターの攻撃を無効にする。

 

魔装近衛エモンフ

レベル5 攻撃1000 守備2000 効果 地属性 戦士族

(1):相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しないとき、このカードはリリースなしで召喚できる。

(2):このカードをX素材とする場合、他のX素材は手札の「魔装」モンスターを選択しなければならない。

 

魔装騎士ブラックライダー

ランク5 攻撃2800 守備2000 エクシーズ 闇属性 戦士族

「魔装」レベル5モンスター×2

(1):自分のターンのメインフェイズ1に、このカードのX素材を2つ取り除くことで発動できる。このターン、このカードは相手フィールド上に存在するすべてのモンスターに1回ずつ攻撃することができる。

 

魔装槍士ロンギヌス

レベル3 攻撃800 守備0 光属性 戦士族

「魔装騎士ロンギヌス」はモンスターゾーンまたはペンデュラムゾーンに1枚しか存在できない。

【Pスケール青3:赤3】

(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。

(2):1ターンに1度、自分フィールド上に表側表示で存在するPモンスターが相手の守備モンスターを攻撃した時に発動できる。その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

【モンスター効果】

(1):このカードは自分フィールド上に「魔装騎士」モンスターが表側表示で存在するとき、手札から特殊召喚できる。

(2):自分フィールド上に表側表示で存在する「魔装騎士」モンスターが相手の守備表示モンスターを攻撃するとき、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

 

EMカモンキー

レベル7 攻撃2000 守備2000 効果 光属性 獣族

(1):このカードは特殊召喚できない。

(2):このカードは自分フィールド上の「EM」モンスター1体をリリースすることでもアドバンス召喚できる。

(3):1ターンに1度、自分のターンのメインフェイズ1にのみ発動できる。自分のデッキから「魔術師」Pモンスター1体を選択し、自分フィールド上のPゾーンに置く。この効果は両方のPゾーンにカードがあるとき発動できず、発動したターン自分のモンスターは攻撃できない。

 

魔装暗殺者ラシード

レベル3 攻撃1000 守備1000 効果 闇属性 戦士族

「魔装暗殺者ラシード」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードはフィールド上のエクシーズ素材を2つ取り除き、手札から特殊召喚できる。この方法で特殊召喚に成功した時、デッキからレベル4以下の「魔装」モンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターは攻撃できず、表示形式の変更もできない。

 

魔装詩人ダンテ

レベル3 攻撃500 守備500 効果 地属性 魔法使い族

(1):このカードを「魔装」Sモンスターのシンクロ素材とするとき、このカードはチューナーとして扱うことができる。

(2):このカードは「魔装」モンスター以外の融合素材・X素材とすることができない。

 

魔装槍士クーフーリン

レベル6 攻撃2100 守備500 シンクロ 光属性 雷族

「魔装」チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

「魔装槍士クーフーリン」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できず、発動したターンこのカード以外の自分のモンスターは攻撃できない。

(1):自分フィールド上に表側表示で存在する「魔装」モンスター1体と相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。選択した相手モンスターの攻撃力・守備力をエンドフェイズまで選択した自分のモンスターのレベルまたはランクの数×400ダウンする。

 

コスモ・バリア

アクション魔法カード

(1):自分のエクシーズモンスターが攻撃対象となったときに発動できる。その攻撃を無効にし、自分のライフを1000回復する。

 

コスモ・シャワー

アクション魔法カード

「コスモ・シャワー」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):相手フィールド上にモンスターが3体以上存在するときに発動できる。相手フィールド上に存在するモンスターをすべて破壊する。

 

魔装障壁

通常罠カード

(1):自分フィールド上に「魔装」モンスターが表側表示で存在する場合にのみ発動できる。相手の「フィールド上のカードを破壊する効果」を持つ魔法・罠・モンスター効果を無効にし、破壊する。

(2):自分フィールド上に存在するモンスターが「魔装」モンスター3体のみの場合、このカードは手札から発動できる。

 

魔装郷士リョウマ

レベル4 攻撃1900 守備1200 風属性 戦士族

【Pスケール青5:赤5】

(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。

(2):1ターンに1度、自分フィールド上に表側表示で存在する「魔装」モンスターが攻撃対象となったときに発動できる。攻撃モンスター1体を手札に戻す。

【モンスター効果】

(1):このカードを手札からP召喚に成功した時に発動する。自分の墓地から「魔装」モンスター1体を手札に加える。

 

魔装共鳴

通常罠カード

(1):相手のターンに発動できる。「魔装」Sモンスター、または「魔装」Xモンスター1体をS召喚、またはX召喚する。

「魔装共鳴」は1ターンに1度しか発動できない。

 

魔装妖ビャッコ

レベル3 攻撃400 守備400 効果 闇属性 アンデッド族

「魔装妖ビャッコ」の(3)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードは「魔装」モンスター以外のS素材・X素材・融合素材にすることはできない。

(2):このカードを「魔装」モンスターのS素材・X素材とするとき、レベルを4として扱うことができる。

(3):このカードがS素材・X素材となったとき、デッキからカードを1枚ドローする。

 

魔装騎士ホワイトライダー

レベル9 攻撃3100 守備3000 シンクロ 光属性 戦士族

「魔装」チューナー+チューナー以外の「魔装」モンスター2体以上

(1):このカードは「魔装」装備カード以外の魔法・罠・モンスター効果を受けない。

 

マジックコード:α

通常魔法カード

(1):自分フィールド上に「魔装」モンスターが表側表示で存在する場合、相手フィールド上のモンスター1体を選択して発動できる。そのモンスターの効果をエンドフェイズまで無効にする。

 

ティンクル・コメット(アニメオリカ)

アクション魔法カード

(1):フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。 そのモンスターの攻撃力をエンドフェイズまで1000ダウンし、相手に500ダメージを与える。

 

クリスタル・コート

アクション魔法カード

(1):自分フィールド上に表側表示で存在するレベル5以上のモンスターが攻撃対象となったときに発動できる。その攻撃を無効にし、自分のライフを800回復する。

 

ジェムナイトの霊気

装備魔法カード

このカードは「ジェムナイト」融合モンスターにのみ装備可能。

(1):このカードを装備したモンスターによる攻撃で相手モンスターを破壊できなかったとき、攻撃した相手モンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える。

(2):このカードを装備したモンスターが戦闘で破壊されるとき、代わりにこのカードを破壊することができる。

 

エクストリーム・ソード(アニメオリカ)

アクション魔法カード

(1):フィールド上のモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターの攻撃力はバトルフェイズの間、1000アップする。

 

砥直し

アクション罠カード

(1):このターン、自分フィールド上のモンスターは攻撃できない。

 

 

超重武者装留フルバースト

レベル2 攻撃0 守備0 効果 炎属性 機械族

「超重武者装留フルバースト」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分メインフェイズに自分フィールドの「超重武者」モンスター1体を対象として発動できる。自分のフィールドのこのモンスターを守備力2500アップの装備カード扱いとしてそのモンスターに装備する。この効果を発動したターンのバトルフェイズ終了時、このカードは墓地へ送られ、装備モンスターの守備力は次の自分のターン終了時まで0となる。

(2):自分の墓地に魔法・罠カードが存在しないとき、墓地に存在するこのカードをゲームから除外することで発動できる。自分フィールド上に表側表示で存在する「超重武者」モンスターの守備力がターン終了時まで倍となる。この効果は相手ターンでも発動できる。

ィールド上のモンスターは攻撃できない。

 

超重武者装留バスターカノン

レベル4 攻撃1000 守備1000 効果 地属性 機械族

「超重武者装留バスターカノン」の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分メインフェイズに自分フィールドの「超重武者」モンスター1体を対象として発動できる。自分の手札・フィールドのこのモンスターを装備カード扱いとしてそのモンスターに装備する。装備モンスターが戦闘で相手モンスターを破壊した時、攻撃力が500アップする。

(2):自分の墓地に魔法・罠カードが存在せず、自分フィールド上に守備表示で存在する「超重武者」モンスターが攻撃対象となったとき、墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。攻撃対象となったモンスターの元々の守備力分のダメージを相手に与え、攻撃モンスター1体を破壊する。

 

DDシーホース

レベル4 攻撃2200 守備1500 効果 闇属性 悪魔族

(1):このカードは自分フィールド上に他の「DD」モンスターが存在しないとき、攻撃できない。

 

ハイダイブ(アニメオリカ)

アクション魔法カード

(1):フィールド上のモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターの攻撃力をターン終了時まで1000ポイントアップする。

 

法皇の契約書

永続魔法カード

(1):このカードを発動するとき、自分はデッキからレベル4以下の「DD」モンスター1体を選択して手札に加える。

(2):1ターンに1度、自分フィールド上の「DD」モンスターが戦闘を行う時に発動できる。そのモンスターは戦闘では破壊されず、その戦闘で発生する自分への戦闘ダメージは0となる。

(3):自分スタンバイフェイズに発動する。自分は1000ダメージを受ける。

 

DDDの評議会

速攻魔法カード

(1):自分フィールド上に「DDD」モンスターが表側表示で存在する場合にのみ発動できる。フィールド上に存在するすべてのモンスターの攻撃力・守備力を元々の数値に戻し、自分は1000LPを回復する。

 

ワンダー・チャンス(アニメオリカ)

アクション魔法カード

(1):自分フィールド上のモンスター1体を選択して発動できる。選択されたモンスターはこのターンのバトルフェイズ中、もう1度攻撃できる。

 

EMファイア・マフライオ(アニメオリカ・一部創作)

レベル3 攻撃800 守備800 炎属性 獣族

「EMファイア・マフライオ」の(1)のモンスター効果は1ターンに1度しか発動できない。

【Pスケール:青3:赤3】

(1):1ターンに1度、自分フィールド上に表側表示で存在するPモンスター1体を選択して発動する。選択されたモンスターはこのターン、相手に与える戦闘ダメージが0となる代わりにバトルフェイズ中もう1度だけ攻撃できる。

【モンスター効果】

(1):このカードが自分フィールドに表側攻撃表示で存在し、自分フィールドのPモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊して墓地へ送った場合、自分モンスター1体を対象として発動出来る。対象モンスターの攻撃力をバトルフェイズの間200アップし、もう1度だけ続けて攻撃する事が出来る。この効果の発動ターン、このカードは攻撃出来ない。

 

DDDの先行投資

通常罠カード

「DDDの先行投資」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に表側表示で存在する「DDD」モンスターが戦闘で破壊されたターンのバトルフェイズ終了時に発動できる。このターン、戦闘で破壊され墓地へ送られた「DDD」モンスターの数だけデッキから「DD」モンスターを手札に加える。

 

苦渋の宝札

通常魔法カード

「苦渋の宝札」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分の手札がこのカードのみで、相手の手札が4枚以上存在する場合にのみ発動できる。自分はデッキからカードを2枚ドローする。

 

ペンデュラム・フラッシュ

通常罠カード

「ペンデュラム・フラッシュ」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に攻撃表示で存在するPモンスターが攻撃対象となったときに発動できる。相手フィールド上に表側表示で存在するモンスターをすべて破壊する。

 

契約書の更新

永続魔法カード

「契約書の更新」はフィールド上に1枚しか存在できない。

(1):自分フィールド上に存在する「契約書」カードの効果で発生する自分へのダメージが0となる。

(2):自分のモンスターゾーンに「DDD」Pモンスターが存在する場合、このカードは1ターンに1度、魔法・罠・モンスター効果では破壊されない。

 

魔装の輝き

速攻魔法カード

「魔装の輝き」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に表側表示で存在する「魔装」モンスターが効果によって破壊された時、そのモンスターを対象にして発動できる。選択したモンスターを墓地またはエクストラデッキから攻撃表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの攻撃力は500ポイントアップする。

(2):このカードを発動したのが自分のターンの場合、相手フィールド上のモンスター1体を選択し、選択したモンスターと(1)の効果で特殊召喚したモンスターで戦闘を行いダメージ計算を行う。

 

魔装竜ファーブニル

レベル4 攻撃1900 守備1200 効果 炎属性 ドラゴン族

(1):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した時に発動できる。自分のデッキからレベル4以下の「魔装」モンスター1体を攻撃表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの攻撃できず、ターン終了時にデッキに戻る。

 

五芒星の鼓動

通常魔法カード

「五芒星の鼓動」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に表側表示で存在するX素材のない「魔装」Xモンスター1体を選択して発動する。自分の墓地に存在するカード2枚を選択したカードの下に重ねてX素材とする。

(2):自分フィールド上にセットされているこのカードがカード効果で破壊され墓地へ送られた時、自分はデッキからカードを1枚ドローする。

 

剣闘獣の闘気

永続魔法カード

(1):フィールド上に存在する「剣闘獣」カードの効果で特殊召喚されたモンスターの攻撃力は800アップする。

(2):自分フィールド上に存在する「剣闘獣」モンスターが攻撃対象となったとき、このカードを墓地へ送ることで発動できる。そのモンスターはその戦闘では破壊されず、発生する自分へのダメージは0となる。

 

ケリュケイオンの毒牙

通常罠カード

(1):自分フィールド上に攻撃表示で存在する「魔装」融合・S・Xモンスター1体を選択して発動できる。このターン、選択されたモンスターはもう1度攻撃できる。

 

魔装学者エヴェレット

レベル3 攻撃1000 守備0 効果 闇属性 魔法使い族

「魔装学者エヴェレット」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードを除外し、自分フィールド上に表側表示で存在する「魔装」モンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターの攻撃力は1000アップする。

(2):(1)の効果を発動したターン、自分フィールド上の「魔装」モンスターが戦闘で相手モンスターを破壊したとき、そのモンスターを対象に発動できる。対象となったモンスターをゲームから除外する。

(3):(1)の効果を発動してから2回目の自分のスタンバイフェイズ時に発動する。ゲームから除外されているこのカードを自分フィールド上に特殊召喚する。

 

魔装獣ケルベロス

ランク4 攻撃2300 守備1200 エクシーズ 炎属性 獣族

「魔装」レベル4モンスター×2

「魔装獣ケルベロス」の(1)の効果は1ターンに2度まで発動できる。

(1):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した時、このカードのX素材を1つ取り除くことで発動できる。このカードはこのターン、もう1度攻撃できる。

 

レジスト

通常罠カード

(1):自分のデッキに存在するレベル4以下の「剣闘獣」モンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターを自分フィールド上に表側守備表示で特殊召喚する。その後、手札1枚をデッキに戻す。

(2):(1)の効果で特殊召喚されたモンスターはターン終了時まで戦闘では破壊されない。

 

剣闘獣スキピオ

レベル9 攻撃2800 守備2300 融合 風属性 鳥獣族

「剣闘獣ガイザレス」+レベル4以上の「剣闘獣」モンスター

このカードはエクストラデッキからのみ融合召喚できる。

このカード以下の方法でのみ特殊召喚できる。

●自分フィールドの上記カードをデッキに戻した場合にエクストラデッキから特殊召喚できる(「融合」は必要としない)。

(1):1ターンに1度、相手フィールド上に存在するモンスター1体を選択することで発動できる。選択したモンスターを破壊し、そのモンスターの元々の攻撃力の半分の数値のダメージを相手に与える。この効果を発動したターン、このカードは攻撃できない。

 

魔装門

通常魔法カード

「魔装門」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):相手フィールド上に「魔装幻影トークン」2体を特殊召喚することで発動できる。デッキから「魔装」カード1枚を手札に加える。

 

魔装幻影トークン

レベル6 攻撃2000 守備2000 トークン 炎属性 アンデッド族

「魔装門」の効果を特殊召喚される。

 

魔装融合

通常魔法カード

(1)自分の手札・フィールドから「魔装」融合モンスターカードによって決められた融合素材を墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。また、自分の墓地に存在するカードを除外することで融合素材とすることもできる。

 

魔装騎士レッドライダー

レベル8 攻撃3000 守備2300 融合 炎属性 戦士族

「魔装」モンスター×3

このカードが融合召喚でのみ自分フィールド上に特殊召喚できる。

(1):自分のターンにモンスターの特殊召喚に成功した場合、そのターンのバトルフェイズ時に発動できる。このカードの攻撃力はバトルフェイズ終了時まで1000ポイントアップする。

(2):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した時、続けてもう1度だけ相手モンスターを攻撃することができる。

 

魔装鳥フェニックス

レベル7 攻撃2300 守備1700 効果 炎属性 鳥獣族

このカードは通常召喚できない。

このカードは以下の方法、および(1)の効果でのみ特殊召喚できる。

「魔装鳥フェニックス」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

●このカードは自分フィールド上に表側表示で存在する「魔装」モンスター1体をリリースすることで手札から特殊召喚できる。

(1):このカードが効果によって破壊され墓地へ送られた場合、そのターンの終了時に発動できる。墓地に存在するこのカード1枚を自分フィールド上に特殊召喚する。

 

不死鳥の獄炎

通常魔法カード

「不死鳥の獄炎」は1ターンに1度しか発動できず、発動したターン自分のモンスターは攻撃できない。

(1):自分フィールド上にレベル・ランクが7以上の「魔装」モンスターが表側表示で存在する場合にのみ発動できる。フィールド上のモンスターをすべて破壊する。その後、デッキからカードを1枚ドローする。

 

混沌の障壁

通常罠カード

(1):自分の墓地に存在する光属性と闇属性モンスターを1体ずつ除外することで発動できる。このターン、自分フィールド上のモンスターは戦闘および効果では破壊されない。

 

PX(ペンデュラムエクシーズ)魔装騎士フェラーレ・カヴァリエーレ

ランク7 攻撃2500 守備2000 エクシーズ 闇属性 戦士族

「PX魔装騎士フェラーレ・カヴァリエーレ」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できず、発動に成功したターンこのカード以外のモンスターは攻撃できない。

このカードは下記の方法でのみ特殊召喚することができる。

●このカードはこのターンP召喚された「魔装騎士ペイルライダー」1体とPゾーンに表側表示で存在する「魔装」Pモンスター2体の上に重ねることでX召喚できる。

(1):自分のライフが1000以下の時、このカードのX素材となっているPモンスターを1つ取り除き、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターの攻撃力は0となり、ターン終了時まで選択したモンスターの元々の攻撃力をこのカードに加える。

 

ソリッド・オーバーレイ(アニメオリカ・調整)

永続魔法カード

「ソリッド・オーバーレイ」はフィールド上に1枚しか表側表示で存在できない。

(1):このカードはランク4以下のXモンスターのX素材にできる。

 

幻影模写(ファントム・イミテーション)

通常魔法カード

「幻影模写」は1ターンに1度しか発動できず、このカードを発動したターン自分はエクシーズ召喚以外の方法でエクストラデッキからモンスターを特殊召喚できない。

(1):相手フィールド上のモンスター1体を選択して発動できる。発動後、このカードは通常モンスター(水族・闇・星?・攻/守0)となり、モンスターゾーンに攻撃表示で特殊召喚される。その時、このカードのレベルは選択したモンスターのレベルと同じになる。

 

魔装獣バステト

レベル1 攻撃0 守備0 チューナー 光属性 獣族

「魔装獣バステト」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1)自分フィールド上に「魔装」モンスターが存在する場合、このカードを手札・墓地から特殊召喚できる。この効果で特殊召喚されたこのカードがフィールドから離れたとき、ゲームから除外される。

 

魔装祭事クリスト

レベル1 攻撃0 守備0 効果 闇属性 魔法使い族

「魔装祭事クリスト」の(1)(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードが相手によって破壊され墓地へ送られた時、自分の墓地に存在する「魔装騎士」1体を選択して特殊召喚できる。

(2):自分フィールド上に表側表示で存在する「魔装騎士」モンスターが相手モンスターを攻撃するとき、このカードを墓地から除外し、自分フィールド上に存在する他の「魔装」モンスター1体を選択して発動できる。ダメージステップ時のみ、そのモンスターの攻撃力を選択したモンスターの元々の攻撃力分アップさせる。

 

魔装竜テュポーン

ランク7 攻撃2000 守備2000 エクシーズ 風属性 ドラゴン族

レベル7モンスター×2

「魔装竜テュポーン」の(1)(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、自分フィールド上のに存在するほかのモンスター1体をリリースすることで発動できる。自分の墓地に存在する「魔装」モンスター1体を特殊召喚する。

(2):自分フィールド上に表側表示で存在する「魔装騎士」モンスター1体を選択して発動できる。このカードを攻撃力2000アップの装備カード扱いとしてそのモンスターに装備する。

(3):(2)の効果でこのカードを装備したモンスターが破壊されるとき、このカードを墓地へ送ることでこのターン、そのモンスターは破壊されない。

 

反逆者の信条

通常罠カード

「反逆者の信条」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このターン、カード効果でリリースされた闇属性・ドラゴン族モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスター1体を墓地から表側守備表示で特殊召喚する。

(2):(1)の効果で特殊召喚されたモンスターがエクシーズモンスターだった場合、手札を2枚選択する。選択したカードをそのモンスターの下に重ねてエクシーズ素材とする。

 

エンジンチューナー(漫画オリカ・調整)

永続魔法カード

「エンジンチューナー」は自分フィールド上に1枚しか表側表示で存在できない。

(1):自分フィールド上に表側表示で存在する「モーター」モンスターの攻撃力はそのモンスターの守備力の半分の数値分アップする。

(2):自分フィールド上の「モーター」モンスターを守備表示に変更することはできない。

 

魔装壁ゴルゴー

レベル2 攻撃0 守備1000 チューナー 地属性 岩石族

(1):このカードを素材としてS召喚されたモンスターは相手のカード効果では破壊されない。

 

治癒

アクション魔法カード

(1):自分が戦闘ダメージを受ける時に発動できる。ダメージを受ける代わりにその数値の半分だけ自分はLP回復する。

 

モーターシェル(漫画オリカ)

レベル4 攻撃1300 守備1800 効果 闇属性 機械族

(1):このカードが戦闘で破壊され墓地へ送られた時、自分フィールド上に「モータートークン」を1体攻撃表示で特殊召喚する。

 

魔装光

通常罠カード

(1):自分フィールド上に存在する「魔装」モンスターが相手によって破壊されたときに発動できる。手札から「魔装」モンスター1体を特殊召喚する。

 

爆破

アクション魔法カード

「爆破」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):相手フィールド上に表側表示で存在する特殊召喚されたモンスター1体を破壊する。

 

モーターバイオレンス(漫画オリカ)

レベル6 攻撃2100 守備1200 効果 闇属性 機械族

(1):このカードが相手によって破壊され墓地へ送られた時、自分フィールド上に「モータートークン」2体を攻撃表示で特殊召喚する。

 

魔装鳥キンシ

レベル7 攻撃2400 守備1700 光属性 鳥獣族

「魔装鳥キンシ」の(1)の効果はデュエル中1回しか発動できない。

【Pスケール青1:赤1】

(1):自分のターン終了時、このカードのPスケールが2つ上がる(最大10まで)

【モンスター効果】

(1):自分のエクストラデッキにこのカードが表向きで存在するときに発動できる。そのカード1枚を自分の手札に加える。

 

モーターリバース

通常魔法カード

(1)自分フィールド上に存在する「エンジンチューナー」1枚を墓地へ送ることで発動できる。自分の墓地に存在する機械族モンスター2体を自分フィールド上に特殊召喚する。

 

スキルブレイク

通常罠カード

「スキルブレイク」は自分のターンにのみ発動できる。

(1):このターン、フィールド上に存在するレベル4以下のモンスターの効果を無効にする。

 

闇夜を駆ける騎士

通常罠カード

(1)自分フィールド上のモンスターが破壊されたターンにのみ発動できる。手札・デッキ・墓地・エクストラデッキから「魔装騎士ペイルライダー」1体を自分フィールド上に特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化され、ターン終了時に破壊される。

 

フレイム・ソード

アクション魔法カード

(1):自分フィールド上のモンスター1体が戦闘を行う時発動しなければならない。そのモンスターは下記の効果を得る。

●このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

 

マスク・バリア

通常罠カード

(2)の効果はこのカードが墓地へ送られたターン、発動できない。

(1):自分フィールド上の「HERO」モンスターが攻撃対象となったときに発動できる。その攻撃を無効にする。

(2):このカードを墓地から除外することで発動できる。自分の手札の「チェンジ」魔法カードまたは「融合」を1枚デッキに戻し、デッキから「チェンジ」魔法カードまたは「融合」を1枚手札に加える。

 

ヒーローズルール3―バーニング・ストライク

通常魔法カード

「ヒーローズルール3―バーニング・ストライク」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に表側表示で存在する「HERO」融合モンスターの攻撃力を1000アップする。

 

 

合体攻撃―ダブル・アタック(漫画オリカ・調整)

通常魔法カード

「合体攻撃―ダブル・アタック」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に表側表示で存在する「HERO」モンスター1体を選択して発動できる。そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで自分フィールド上に表側表示で存在するそれ以外の「M・HERO」モンスター1体の攻撃力分アップする。この効果を受けたモンスターが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

 

EMアドバンスチケット

通常罠カード

(1):自分フィールド上に表側表示で存在する「EM」モンスター1体が戦闘・効果で破壊され墓地へ送られた時、そのモンスター1体を対象にして発動できる。そのモンスターを守備表示で特殊召喚する。その後、デッキからレベル4以下のPモンスター以外のモンスター1体を選択し、特殊召喚する。

 



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第2章 TDC 動き出す戦い
第14話 TDC 新たなライバル登場?


「ふああ…ああ…」

午前8時、モーニングコールによって伊織が目を覚ます。

「あーー!!良く寝たー!」

青いパジャマ姿の伊織が腹部が見えるくらい大きく背伸びをする。

「ふかふかのベッドにおいしいお菓子…もう言うことなしだね!」

少し大きめなテレビとテーブル、そしてきれいに清掃された部屋。

今、伊織はとあるホテルの一室にいる。

「あれ…?翔太君はどこだろう??」

隣で寝ていたはずの翔太がいないことに気づき、周囲をきょろきょろする。

「あー…もしかして…」

居場所に見当がついた伊織はすぐに私服に着替えると、カードキーを持って部屋を出た。

 

「ここが会場か…」

ホットドックと缶ジュースを手に持った翔太が会場となるエコパスタジアムをじっと見ている。

昨日は舞網から静岡まで長時間バイクを走らせたため、かなり疲れをためてしまった。

(TDC…無条件で参加できるタッグデュエル大会…か…)

急にふわりとした手が彼の視界をふさぐ。

「…だーれだ?」

「伊織」

「えーーっ?なんですぐにわかるの?」

「この町でお前以外にこんなことする奴がいるか?」

「おおーーーさすがは翔太君、名探偵!」

「バカでもわかる。それと、そろそろ手をどけろ」

「はーい…」

つまらなそうに伊織は翔太を解放する。

「明日が大会か…」

1週間前に2人はネットでエントリーを済ませた。

この大会はまず2日かけて予選を行い、その後2つの形式で本選を行い最後に残ったペアが優勝するという仕組みだ。

「うーん…明日が楽しみだね!翔太君!!」

「まあ、勝つのは俺だからどうでもいいがな」

「私たちが…でしょ?」

「…。行くぞ」

食べ終えた翔太がホテルへ戻るために歩き始める。

「あーーー!!翔太君、こーゆーときはそうだな、とか俺たちがって言うものだよー?」

「悪いなー!そういう言葉、持ち合わせてないからな!!」

「もーう!翔太君のいけず!!」

「いけずで結構!!」

周囲からは痴話げんかのようにしか思えない争いが数分続いた。

 

「うーん…パンおいしー!!ねえねえ、翔太君!!次はあそこの…」

「食べながらしゃべるな。パン粉が飛ぶ」

いろんな食べ物屋を嬉しそうに見る伊織に対して、翔太は早くホテルに戻りたいという気持ちでいっぱいだった。

「うん…?」

ホテルまであと少しというところで、小さなカード屋を見つける。

張り紙には『アクションデュエル用のフィールドもあります』と書かれている。

「何か掘り出し物があるかもな…」

「翔太君、ここに入るの?なら私も!!」

「…。勝手にしろ」

いつの間にいろんなお菓子を手に持っている伊織にため息をつきながら、翔太は店に入る。

デュエルフィールドは地下に設置されている。

「もう先客がいるのか…」

「あーーー!!」

「なんだよ、いきなり大声を出すな」

「翔太君…左側を見て…」

「はぁ?」

伊織の言うとおり、フィールドの左側をみる。

黒く前にとがった髪で長いもみあげと浅黒い肌、そしてかなり筋肉質な肉体を軍服のようなもので包んだ男性がデュエルの準備をしている。

「誰だ?こいつ」

「コブラだよ!南米のプロリーグで上位争いをしてるデュエリストだよ」

「で、そいつの相手をするこいつは?」

翔太が指を差したのは水色の長い髪で茶色いロングコートを着た少年だ。

身長はコブラには及ばないものの、翔太よりも高い。

「さあ…?あの人もTDCに参加するのかな?」

 

「坊主、名前は?」

「鬼柳…。鬼柳一真だ。さあ、満足させてくれよ」

「そうだな。手加減はしないぞ」

「ああ…。そうしてくれ」

両者がデュエルの準備を終えると同時にアクションフィールド《深緑の熱帯雨林》が発動する。

アマゾンの熱帯雨林のようなフィールドで、ターザンロープや10メートル近い高さを持つ反りたつ石の壁、筏が浮かぶ巨大な皮なども存在する。

そして、2人はデュエル開始を宣言する。

「戦いの殿堂に集いしデュエリストたちが」

「モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い」

「フィールド内を駆け巡る!」

「見よ、これぞ、デュエルの最強進化形、アクション…」

「「デュエル!!」」

 

一真

手札5

ライフ4000

 

コブラ

手札5

ライフ4000

 

「俺のターン。俺は《インフェルニティ・ネクロマンサー》を召喚。このカードは召喚に成功した時、守備表示となる」

青いボロボロのローブをまとった屍術士の骸骨が姿を現す。

 

インフェルニティ・ネクロマンサー レベル3 攻撃0→守備2000

 

「そして、手札から永続魔法《ワンダー・バルーン》を発動。このカードは1ターンに1度、手札を任意の枚数墓地へ送る。俺は残り3枚の手札すべてを墓地へ送る」

緑色のプレゼントボックスに一真の3枚のカードが入り、それと同時に3つのバルーンが彼の周囲を守る。

「《ワンダー・バルーン》はこの効果で墓地へ送ったカードの数だけバルーンカウンターが乗り、その数×300ポイント、相手の攻撃力をダウンさせる」

「バルーンカウンターは3つ。よって、私のモンスターの攻撃力は900ポイントダウンするか」

 

手札から墓地へ送られたカード

・インフェルニティ・デーモン

・インフェルニティ・アーチャー

・インフェルニティ・ビートル

 

「インフェルニティ…?」

「さあ…聞いたことないよ??」

舞網市のカード屋には何度も足を運んだが、そのカテゴリーのカードを見たことがない。

「《ネクロマンサー》の効果発動。1ターンに1度、手札が0の時、墓地からインフェルニティモンスター1体を特殊召喚できる。俺は《インフェルニティ・デーモン》を特殊召喚」

オレンジ色の髪で、人型の悪魔が《インフェルニティ・ネクロマンサー》が生み出した魔法陣から姿を見せる。

 

インフェルニティ・デーモン レベル4 攻撃1800

 

「このカードの特殊召喚に成功した時、手札が0の場合、デッキからインフェルニティカードを1枚手札に加えることができる。俺はその効果で《インフェルニティ・ガン》を手札に加え、そのまま発動。発動したこのカードを墓地へ送ることで、俺が墓地からインフェルニティモンスター2体を特殊召喚できる。俺は《インフェルニティ・ビートル》と《インフェルニティ・アーチャー》を特殊召喚」

黒が勝った緑の鎧をまとい、クロスボウを武器とする騎士と同じ色のヘラクレスオオカブトのような小さな昆虫が現れる。

 

インフェルニティ・アーチャー レベル6 攻撃2000

インフェルニティ・ビートル レベル2 攻撃1200(チューナー)

 

「チューナーだと!?」

「おっと、驚くのはまだ早いぜ。《インフェルニティ・ビートル》の効果発動。手札が0の時、このカードをリリースすることでデッキから《インフェルニティ・ビートル》を特殊召喚できる」

《インフェルニティ・ビートル》がさなぎに戻る。

そして、脱皮するとその中から2体の《インフェルニティ・ビートル》が姿を見せる。

 

インフェルニティ・ビートル×2 レベル2 攻撃1200(チューナー)

 

「いくぜ!俺はレベル6の《アーチャー》にレベル2の《ビートル》をチューニング!そしてレベル4の《デーモン》にレベル2の《ビートル》をチューニング!!」

「う…嘘!?」

「1ターンでレベル8と6のシンクロモンスターをシンクロ召喚するだと…!?」

1ターン目の先行であるにもかかわらず、とてつもない爆発力。

彼の力量なのか、インフェルニティモンスターそのものの力なのか、どちらにしてもとんでもない強さだ。

「ダブルシンクロ召喚!《煉獄龍オーガ・ドラグーン》!《天狼王ブルー・セイリオス》!!」

体の各部分に膨大なエネルギーがこもった玉石が埋め込まれている禍々しく黒い翼竜と複数の刃物が付いた鋼の鎧をつけた、両腕が頭部になっている青い人狼が同時に現れる。

 

煉獄龍オーガ・ドラグーン レベル8 攻撃3000

天狼王ブルー・セイリオス レベル6 攻撃2400

 

「俺はこれでターンエンド」

 

一真

手札5→0

ライフ4000

場 インフェルニティ・ネクロマンサー レベル3 守備2000

  煉獄龍オーガ・ドラグーン レベル8 攻撃3000

  天狼王ブルー・セイリオス レベル6 攻撃2400

  ワンダー・バルーン(バルーンカウンター3)(永続魔法)

 

コブラ

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「たった1ターンでここまで…」

翔太も何度か遊勝塾メンバーや伊織とのデュエルでペンデュラム召喚から連続シンクロ召喚、もしくはエクシーズ召喚や融合召喚をしたことがある。

しかし、一真のインフェルニティデッキはペンデュラム召喚なしに墓地を利用してすさまじい回転力を見せつけてくる。

「私のターン、ドロー!」

 

コブラ

手札5→6

 

ドローすると同時に、反りたつ壁を1回で越えて木にかかっているアクションカードを取る。

「アクション魔法《スネーク・バイト》を発動。フィールド上の特殊召喚されたモンスターを破壊する!」

草むらの中から大量の毒蛇が現れ、《煉獄龍オーガ・ドラグーン》にかみつこうとする。

「《オーガ・ドラグーン》の効果発動。1ターンに1度、手札が0の場合、相手の魔法・罠カードの発動を無効にし破壊する!」

「何!?」

《煉獄龍オーガ・ドラグーン》が放つブレスで、毒蛇たちが一瞬で消滅する。

 

スネーク・バイト

アクション魔法カード

(1):フィールド上の特殊召喚されたモンスター1体を選択して発動する。選択したモンスターを破壊する。

 

「ふん…。私は永続魔法《ヴェノム・フォレスト》を発動」

発動と同時に、周囲の木から蛇の毒が混じった樹液があふれ出る。

「そして、手札から魔法カード《テイク・オーバー5》を発動。デッキトップから5枚のカードを墓地へ送る」

「《オーガ・ドラグーン》の効果は1ターンに1度しか使えない…」

「アクションカードをけん制に使ったってことだね」

 

デッキから墓地へ送られたカード

・ワーム・ヤガン

・貪欲な壺

・ダメージ=レプトル

・ワーム・カルタロス

・ワーム・テンタクルス

 

墓地に送られた5枚のうち、3枚がワームモンスター。

「伊織、ワームって何だ?」

「爬虫類族モンスターで、強力なリバース効果を持ってるんだ」

「更に、私は手札から《ワーム・ゼクス》を召喚」

緑色のX状の肉体で、4つの触角に目、中央に巨大な口がある不気味な爬虫類が姿を現す。

 

ワーム・ゼクス レベル4 攻撃1800→900

 

「このカードの召喚に成功した時、デッキから爬虫類族モンスター1体を墓地へ送る。私は《ワーム・グール》を墓地へ送る。更に、《ヴェノム・フォレスト》の効果発動。私のフィールドに爬虫類族モンスターが召喚・反転召喚・特殊召喚された時、フィールド上の爬虫類族モンスター以外のモンスターにヴェノムカウンターを1つ置く」

再び草むらから毒蛇が現れ、《煉獄龍オーガ・ドラグーン》と《天狼王ブルー・セイリオス》、《インフェルニティ・ネクロマンサー》の足にかみつく。

毒を受けた煉獄の龍と蒼き狼が毒で苦しみ始める。

そして、屍術士の死霊は毒でバラバラとなった。

 

煉獄龍オーガ・ドラグーン レベル8 攻撃3000→2500

天狼王ブルー・セイリオス レベル6 攻撃2400→1900

 

「《ヴェノム・フォレスト》は置かれているヴェノムカウンター1つにつき、500ポイント攻撃力をダウンさせる。そして、攻撃力が0のモンスターは破壊される」

 

ヴェノム・フォレスト

永続魔法カード

「ヴェノム・フォレスト」はフィールド上に1枚しか存在できない。

(1):このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、自分は「ヴェノム・スワンプ」を発動できず、このカードの発動に成功した時、フィールド上に存在する「ヴェノム・スワンプ」は破壊される。

(2):自分フィールド上に爬虫類族モンスターが召喚・反転召喚・特殊召喚された時、フィールド上に表側表示で存在する爬虫類族モンスター以外のモンスターにヴェノムカウンターを1つ置く。ヴェノムカウンター1つにつき、攻撃力は500ポイントダウンする。

(3):攻撃力が0のモンスターは破壊される。

 

「そして、《ワーム・グール》の効果を発動。このカードを墓地から除外することで、墓地からワームモンスター1体を攻撃表示で特殊召喚できる。現れろ、《ワーム・テンタクルス》」

黄色い以下のような姿をした爬虫類が土色ににごった川から出てくる。

 

ワーム・テンタクルス レベル4 攻撃1700→800

 

「更に、《ヴェノム・フォレスト》の効果を受けてもらおう」

「くそっ…!!」

再び毒蛇にかまれる一真のモンスター。

毒が少しずつ彼らを蝕んでいく。

 

煉獄龍オーガ・ドラグーン レベル8 攻撃2500→2000

天狼王ブルー・セイリオス レベル6 攻撃1900→1400

 

ワーム・グール

レベル5 攻撃1500 守備1100 効果 光属性 爬虫類族

「ワーム・グール」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):墓地に存在するこのカードを除外し、自分の墓地に存在する「ワーム・グール」以外の「ワーム」モンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターを特殊召喚する。

 

「これでレベル4のモンスターが2体!」

「更に手札から魔法カード《サイクロン》を発動。その効果で《ワンダー・バルーン》を破壊。そして私はレベル4の《ワーム・ゼクス》と《テンタクルス》でオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろ、《キングレムリン》」

川から複数の水泡が現れる。

そして、その水泡と共に緑色で屈強な肉体の人型爬虫類が現れた。

 

キングレムリン ランク4 攻撃2300

 

「さあ、《ヴェノム・フォレスト》の効果を受けろ」

3度毒を受けた一真のモンスターはもはや立ち上がれないくらいに弱っていた。

 

煉獄龍オーガ・ドラグーン レベル8 攻撃2000→1500

天狼王ブルー・セイリオス レベル6 攻撃1400→900

 

「《キングレムリン》の効果発動。1ターンに1度オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、デッキから爬虫類族モンスター1体を手札に加える。私はデッキからもう1体の《ワーム・ゼクス》を手札に加える。バトルだ。《キングレムリン》で《オーガ・ドラグーン》を攻撃!」

《キングレムリン》が再び水中へもぐり、猛スピードで泳ぎ始める。

毒で弱りきった《煉獄龍オーガ・ドラグーン》にはそのモンスターを追うことができず、突然目の前に現れたそのモンスターの頭部を攻撃され、消滅した。

 

一真

ライフ4000→3200

 

「あーあ…せっかくシンクロ召喚した《オーガ・ドラグーン》が倒されちゃってるよ」

「爬虫類族モンスターを連続で特殊召喚し、着実に相手モンスターの力を奪っていくのか…」

唯一、一真のフィールドに残った《天狼王ブルー・セイリオス》の肉体は噛まれた痕跡と紫色に変色した肌で弱りきっている。

これが王の名の持つモンスターなのかと思えるくらいだ。

「私はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

一真

手札0

ライフ3200

場 天狼王ブルー・セイリオス(ヴェノムカウンター3) レベル6 攻撃900

 

コブラ

手札6→1(《ワーム・ゼクス》)

ライフ4000

場 キングレムリン(オーバーレイユニット1) ランク4 攻撃2300

  ヴェノム・フォレスト(永続魔法)

  伏せカード1

 

「俺のターン!」

 

一真

手札0→1

 

「このカードは手札が0の場合にドローした時、相手に見せることで特殊召喚できる。《インフェルニティ・デーモン》を特殊召喚」

 

インフェルニティ・デーモン レベル4 攻撃1800

 

「更に、《インフェルニティ・デーモン》の特殊召喚に成功した時、手札が0の場合、デッキからインフェルニティカードを1枚手札に加える!手札から魔法カード《インフェルニティ・ブラスト》を発動!俺の墓地に存在するレベル4以下のインフェルニティモンスター2体を特殊召喚し、その後、俺のフィールド上に存在するシンクロモンスター1体を破壊する。俺は《デーモン》と《ネクロマンサー》を特殊召喚し、《ブルー・セイリオス》を破壊する」

「何!?自らシンクロモンスターを破壊するだと!?」

紫色の魔法陣から2体のインフェルニティモンスターが現れると同時に、《天狼王ブルー・セイリオス》が爆破される。

 

インフェルニティ・デーモン レベル4 攻撃1800

インフェルニティ・ネクロマンサー レベル3 守備2000

 

「更に、この効果で特殊召喚されたモンスターの攻撃力は500ポイントアップする」

 

インフェルニティ・デーモン レベル4 攻撃1800→2300

 

インフェルニティ・ブラスト

通常魔法カード

このカードは自分の手札がこのカードの時にのみ発動できる。

(1):自分の墓地に存在するレベル4以下の「インフェルニティ」モンスター2体を選択し、自分フィールド上に特殊召喚する。その後、自分フィールド上に存在するシンクロモンスター1体を破壊する。この効果で特殊召喚されたモンスターの攻撃力は500ポイントアップする。

 

「《インフェルニティ・デーモン》の効果発動。デッキから《インフェルニティ・リバース》を手札に加える。そして、《ブルー・セイリオス》の効果発動!」

「何…!?」

上空から《天狼王ブルー・セイリオス》の精神体が現れ、《キングレムリン》に食らいつく。

「《ブルー・セイリオス》は破壊され墓地へ送られた時、相手モンスター1体の攻撃力を2400ポイントダウンさせる」

 

キングレムリン ランク4 攻撃2300→0

 

「そして手札から魔法カード《インフェルニティ・リバース》を発動。俺のフィールドに存在する攻撃力1600以上インフェルニティモンスター1体をリリースすることで、墓地からインフェルニティモンスターもしくは《煉獄龍オーガ・ドラグーン》1体を特殊召喚する。俺は《デーモン》をリリースし、《オーガ・ドラグーン》を復活させる!」

「グオオオオオン!!!」

《インフェルニティ・デーモン》が煉獄の炎に包まれ、炎の中から《煉獄龍オーガ・ドラグーン》が現れる。

そして、煉獄龍の咆哮と共に炎は縦横無尽にはじけ、熱帯雨林を熱で包む。

 

煉獄龍オーガ・ドラグーン レベル8 攻撃3000

 

インフェルニティ・リバース

通常魔法カード

「インフェルニティ・リバース」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に表側表示で存在する攻撃力1600以上の「インフェルニティ」モンスター1体をリリースすることで発動できる。自分の墓地からリリースしたモンスターと異なる名前を持つ「インフェルニティ」モンスターまたは「煉獄龍オーガ・ドラグーン」1体を特殊召喚する。

 

「ぐぅぅ…」

「更に《インフェルニティ・ネクロマンサー》の効果で墓地から《インフェルニティ・デストロイヤー》を特殊召喚」

浅黒い人型悪魔が両手の爪を研ぎながら姿を現す。

 

インフェルニティ・デストロイヤー レベル6 攻撃2300

 

「バトルだ。《インフェルニティ・デストロイヤー》で《キングレムリン》を攻撃」

爪を研ぎ終えた悪魔が水中に潜る《キングレムリン》に狙いをつける。

「くぅ…!!」

現在、コブラが伏せているカードは《次元幽閉》。

だが、攻撃モンスターを除外する罠も《煉獄龍オーガ・ドラグーン》の前では無意味だ。

急いでアクションカードを探す。

しかし、カードを見つける前に《キングレムリン》が爪でバラバラにされてしまった。

「うわあああ!!」

 

コブラ

ライフ4000→1700

 

「更に、《インフェルニティ・デストロイヤー》の効果発動。手札が0の状態で相手モンスターを戦闘で破壊した時、相手に1600ポイントのダメージを与える」

《インフェルニティ・デストロイヤー》は《キングレムリン》の消滅を見届けると、一瞬でコブラの前へ向かい、爪で切り裂いた。

「く…うう…!!」

 

コブラ

ライフ1700→100

 

「これで終わりだ。《オーガ・ドラグーン》でダイレクトアタック。煉獄の混沌却火!」

毒が消え、本来の動きができるようになった《煉獄龍オーガ・ドラグーン》が黒いブレスを放つ。

ブレスに触れた草木は炭となり、水は蒸気と化す。

「うわああああ!!」

 

コブラ

ライフ100→0

 

「う…嘘…」

一瞬でプロデュエリストであるコブラのライフを0にしてしまった。

「はあ…こんなんじゃあ、満足できねえぜ」

少しがっかりした表情となった一真が店を出ていく。

(伊織のデッキが融合デッキとしたら、奴のデッキは手札0の状態でシンクロモンスターを大量に展開する高速シンクロデッキ…)

手札が0となることを引き金に、強力な効果を発揮するカードたち。

そして、彼のエースカードはおそらく《煉獄龍オーガ・ドラグーン》。

「鬼柳一真…。もし、TDCで戦うことになったら、気をつけたほうがいいな」

「なあ、お宅らもTDCの前にデュエルしに来たんか?」

「うん…?」

翔太と伊織に声をかけたのはピンク色のパーカーと緑色の半ズボンを着た茶色いポニーテールの少女。

「楽しみやなぁー、TDC。優勝してみんなをあっと言わしたいわぁー」

「だ…誰だ?この中学生か小学生っぽい奴?」

「さあ…?」

「むう…これでも高校生や!!真田里香、今年から高校生や!!」

「1年前まで中学生なら、あまり変わりねえだろ?」

「なんやとぉ!!」

かなりムキになって、翔太に迫る。

「はあ…、伊織。あの女子中学生をなんとかしてくれ」

「高校生や!!こうなったら…あんたに昨日できたウチの新デッキの実験台になってもらうで!!」

「なんで俺がそんなことを…」

「まあまあいいじゃん、頑張れ翔太くーん」

「伊織、お前…」

唯一味方になると思われた伊織がこの態度。

知り合いが1人もいないこの場所ではもはや孤立無援。

「はあ…なら、軽く倒してやるよ」

「それはウチのセリフや!この性悪男!!」

「ああ…俺は性悪だ」

2人はフィールドに出ると、アクションフィールド《砂の城塞》が発動する。

シリアにある中世都市であるマシャフをモチーフとした、石と風とわずかな緑で構成されたフィールドだ。

そして、里香と伊織(翔太がこのようなことをする気がないことをよく知っているため)がデュエル開始の宣言をする。

 

「戦いの殿堂に集いしデュエリストたちが」

「モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い」

「フィールド内を駆け巡る!」

「見よ、これぞ、デュエルの最強進化形、アクション…」

「「デュエル!!」」

 

里香

手札5

ライフ4000

 

翔太

手札5

ライフ4000

 

(それにしても、翔太君大丈夫かな…?)

翔太から預かったデッキケースを手に、心配そうに見つめる伊織。

「ウチの先攻!ウチは手札から儀式魔法《影霊衣の万華鏡》を発動!」

発動と同時に上空から万華鏡のように、回転する度に映る光景が変化する丸い鏡が姿を見せる。

「このカードは手札・フィールドからモンスターを1体リリースするか、エクストラデッキのモンスター1体を墓地へ送ることでそのモンスターと同じレベルになるように手札から影霊衣と名のつく儀式モンスターを特殊召喚できる!」

「何!?」

「たった1枚で複数の儀式モンスターを同時に儀式召喚できるカード!?」

エクストラデッキのカードを儀式の素材にできるだけでも驚きなのに、条件さえ整えば複数の儀式モンスターの儀式召喚ができるカードに2には驚きを隠せない。

「見て驚き!これがウチの影霊衣デッキ、儀式召喚が時代遅れだとはだれにも言わさんでぇ!ウチはエクストラデッキの《氷結界の龍グングニール》を墓地へ送る!!」

《影霊衣の万華鏡》に溶ける気配のない氷で肉体が構成されている翼龍が映し出される。

「ウチのモンスターに近づいたらアカンで、氷漬けになるでー!儀式召喚!レベル3《クラウソラスの影霊衣》!レベル4!《ユニコールの影霊衣》!!」

砕けた万華鏡から、緑色で赤い瞳の怪鳥を模した鎧と剣を持つ赤と灰色の髪の少年と白いグリーブと赤い腰巻が付いた白いローブ、紫色のマントと白い槍を装備し、馬の尾のような飾りがある灰色の髪の魔導士が現れる。

 

クラウソラスの影霊衣 レベル3 守備2300

ユニコールの影霊衣 レベル4 攻撃2300

 

「いきなりの儀式モンスターか…」

「ふっふっふ…この程度でびっくりしたらあかんで。《クラウソラス》、頼むで!!」

《クラウソラスの影霊衣》から怪鳥の部分が分離し、その足を掴んで空を飛ぶ。

そして、古代シリア地方では伝統的な泥レンガの家の屋根にあるアクションカードを取る。

「よっしゃ!これはいいカードやで!ウチはこれでターンエンドや!」

 

里香

手札5→3(アクションカード込)

ライフ4000

場 クラウソラスの影霊衣 レベル3 守備2300

  ユニコールの影霊衣 レベル4 攻撃2300

 

翔太

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「俺のターン!」

 

翔太

手札5→6

 

「手札から《真六武衆―カゲキ》を召喚」

背中に2本の副腕をつけ、左目と黄色い甲冑の一部が機械化している武士が姿を現す。

 

真六武衆―カゲキ レベル3 攻撃200

 

「六武衆…あんたのデッキ、六武衆なん?」

「ああ。手加減して勝てる相手だと思うなよ?」

このデッキは今伊織に預けている魔装デッキとは異なり、一から構築したデッキだ。

「このカードの召喚に成功した時、手札からレベル4以下の六武衆1体を特殊召喚できる。俺は《六武衆の影武者》を特殊召喚」

緑色の甲冑をつけ、目以外を仮面と兜で隠している槍使いが《真六武衆―カゲキ》の隣で正座する。

 

六武衆の影武者 レベル2 守備1800(チューナー)

 

「レベル3の《カゲキ》にレベル2の《影武者》をチューニング。シンクロ召喚!現れろ、《真六武衆―シエン》!」

背中に竜の羽根を模した飾りがついている赤い甲冑とノコギリ刀を装備した若き武将が現れる。

 

真六武衆―シエン レベル5 攻撃2500

 

「甘々や!《ユニコールの影霊衣》の効果発動やで!!このカードが表側表示で存在する限り、エクストラデッキから特殊召喚されたモンスターの効果は無効になるんやでぇ!!」

《ユニコールの影霊衣》が上空に槍を掲げると、雨雲が生まれる。

そして、その雲から大量のあられが降り注ぎ、《真六武衆―シエン》の体力を奪う。

「だが、倒してしまえば問題ないだろ?《シエン》で《ユニコール》を攻撃。天下布武!!」

《真六武衆―シエン》がノコギリ刀で《ユニコールの影霊衣》に斬りかかろうとする。

「それも駄目やで!《クラウソラスの影霊衣》の効果発動や!1ターンに1度、エクストラデッキから特殊召喚されたモンスター1体の攻撃力と効果をターン終了時まで封じる!」

「何!?」

《ユニコールの影霊衣》をかばうかのように《クラウソラスの影霊衣》が前に出て、《真六武衆―シエン》とつばぜり合いをする。

すると、ノコギリ刀から徐々に《真六武衆―シエン》の体が氷漬けになっていく。

 

真六武衆―シエン レベル5 攻撃2500→0

 

「冷凍だと!?く…」

翔太は走り始める。

「そうそう、アクションカードを早よ探さんと」

「ちっ…あのデッキよりはましか…」

エクストラデッキからの特殊召喚が主体となってしまう魔装デッキでは影霊衣デッキに言いように使われてしまっていただろう。

自分はまだ運がいいと言い聞かせながら、翔太は要塞の入り口に張り付けられているアクションカードを手に取る。

「アクション魔法《論争》を発動!俺のモンスターが戦闘を行う時、そのモンスターの攻撃力を戦闘を行う相手モンスターと同じにする!」

「お見通しや!ウチはアクション魔法《砂嵐》を発動や!」

「何!?」

「このカードは相手のターンのバトルフェイズ中に発動したアクションカードの発動を無効にするんや!」

《論争》の効果で冷凍から解放されそうになっていた《真六武衆―シエン》の目を《砂嵐》が塞いでいく。

嵐が起こっている間、2体の影霊衣は後方へ退避する。

 

砂嵐

アクション魔法カード

(1):相手のバトルフェイズ時、相手がアクションカードを発動した時に発動できる。その発動を無効にし、破壊する。

 

「さあ、反撃やで!《ユニコール》!!」

視界がふさがれ、身動きが取れない《真六武衆―シエン》を《ユニコールの影霊衣》が槍で貫こうとする。

「く…だがこれであのカードを回収できる!」

翔太は近くに転がっていたひびが入った壺の中にあるアクションカードを手に取る。

「アクション罠《失踪》を発動!このカードは俺のフィールド上のモンスター1体を破壊する!」

槍が接触する前に、《真六武衆―シエン》がフィールドから姿を消す。

「そんな…せっかくシンクロ召喚したモンスターを自分で破壊しなきゃいけないなんて」

本来なら、自分に対してはデメリット効果しか与えないアクション罠だが、今回だけは助けとなったと言えよう。

 

失踪

アクション罠カード

(1):自分フィールド上に存在するモンスター1体を破壊する。

 

「く…」

「ええか?確かにシンクロ、エクシーズ、融合は強力な召喚方法やで。せやけど、デュエルに勝つ絶対条件って訳やないで?」

《ユニコールの影霊衣》が効果を、《クラウソラスの影霊衣》が攻撃力を奪う。

幸いなことは《クラウソラスの影霊衣》の効果が1ターンに1度のみということくらいだ。

(儀式召喚…。遊矢もこういうモンスターに苦戦したと言っていたな)

遊矢から聞いた話を思い出す。

彼は儀式モンスターとリバースモンスターのコンボで敗北寸前まで追い込まれたという。

もし、その時にあるカードを手にしていなければ本当に敗北していただろう。

「さあ…ウチをバカにした報い、たっぷり受けてもらうでぇ…」

 

(翔太のターンのバトルフェイズ中)

里香

手札3→2

ライフ4000

場 クラウソラスの影霊衣 レベル3 守備2300

  ユニコールの影霊衣 レベル4 攻撃2300

 

翔太

手札6→4

ライフ4000

場 なし




2人の新キャラ、鬼柳一真と真田里香登場です!
インフェルニティの影霊衣、どちらがえげつないのか!?(笑)


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第15話 風の少年

(翔太のターンのバトルフェイズ中)

里香

手札2

ライフ4000

場 クラウソラスの影霊衣 レベル3 守備2300

  ユニコールの影霊衣 レベル4 攻撃2300

 

翔太

手札4

ライフ4000

場 なし

 

(エクストラデッキから特殊召喚されたモンスターを弱体化させる《クラウソラスの影霊衣》、《ユニコールの影霊衣》…。だが、抜け道はある)

《ユニコールの影霊衣》はエクストラデッキから特殊召喚したモンスターの効果を封じ、《クラウソラスの影霊衣》は1ターンに1度、エクスとエアデッキから特殊召喚されたモンスターの効果と力を封じる。

しかし、効果対象になるのはあくまでもエクストラデッキから特殊召喚されたモンスター。

そして、《失踪》の効果で《真六武衆―シエン》は墓地に存在する。

「俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

里香

手札2

ライフ4000

場 クラウソラスの影霊衣 レベル3 守備2300

  ユニコールの影霊衣 レベル4 攻撃2300

 

翔太

手札4→2

ライフ4000

場 伏せカード2

 

「なんやなんや、結局伏せカードを残しただけで終わるんか?だらしない男やなぁ。ウチのターン、ドロー!」

 

里香

手札2→3

 

ドローしたカードを見て、里香の表情が更に明るくなる。

「ウチは《クラウソラス》を攻撃表示に変更!」

 

クラウソラスの影霊衣 レベル3 守備2300→攻撃1200

 

「バトルや!ウチは《ユニコール》でダイレクトアタック!!」

《ユニコールの影霊衣》が槍を翔太に向ける。

「更に、ウチは手札から《ディサイシブの影霊衣》の効果を発動や!このカードを手札から墓地へ送ることでウチの影霊衣モンスター1体の攻撃力・守備力をターン終了時まで1000ポイントアップさせる!!滅光霊気注入(アンチライト・サプライ)!!」

背中に黒い、両腕に金の砲台を装備している筋肉質な魚人が背後から《ユニコールの影霊衣》に力を注入する。

 

ユニコールの影霊衣 レベル4 攻撃2300→3300

 

「攻撃力が3300に!?」

「《ユニコール》と《クラウソラス》の攻撃でおしまいや!!」

《ユニコールの影霊衣》の槍を翔太がデュエルディスクで受け止める。

「く…!!」

 

翔太

ライフ4000→700

 

「さあ、《クラウソラス》でとど…」

「罠発動!《ダメージ・ゲート》!!更に《ショック・ドロー》!!」

「何やて!?」

「《ダメージ・ゲート》は俺が戦闘ダメージを受けたとき、そのダメージ以下の攻撃力を持つモンスターを墓地から特殊召喚できる。その効果で俺は墓地から《真六武衆―シエン》を特殊召喚!」

剣を振り上げていた《クラウソラスの影霊衣》の背後に《真六武衆―シエン》が現れる。

そして、脇差を喉元に突き立てて剣を降ろさせた。

 

真六武衆―シエン レベル5 攻撃2500

 

「墓地から特殊召喚されたなら、2体の影霊衣からの束縛を受けない」

「うぐぐ…」

せっかく排除できた《真六武衆―シエン》がすぐに現れたことで悔しげな表情を浮かべる。

このモンスターの効果は彼女のデッキにとってもかなり都合が悪いのだ。

「更に《ショック・ドロー》の効果。このカードは俺がこのターン受けたダメージ1000ポイントごとに1枚デッキからカードをドローする。俺が受けたダメージは3300。よって、3枚カードをドローする」

 

翔太

手札2→5

 

(この状況じゃあ…このカードを使うことができへん…)

里香が大急ぎでアクションカードを探す。

家屋の中の水がめやかまどの中などを探るがなかなか見つからない。

「くぅ…ウチはカードを1枚伏せてターンエンド!」

 

里香

手札3→1

ライフ4000

場 クラウソラスの影霊衣 レベル3 攻撃1200

  ユニコールの影霊衣 レベル4 攻撃3300→2300

  伏せカード1

 

翔太

手札5

ライフ700

場 真六武衆―シエン レベル5 攻撃2500

 

「俺のターン!」

 

翔太

手札5→6

 

「俺は手札から永続魔法《六武の門》を発動。このカードは六武衆モンスターの召喚・特殊召喚に成功するたびに武士道カウンターが2つ乗る」

翔太の背後に6つの丸が中心部にある家紋が大きく描かれた門が現れる。

見た目は日本屋敷風のものだが、一部が機械化している。

「このカードは俺のフィールド上に六武衆モンスターが存在するとき、手札から特殊召喚できる。《真六武衆―キザン》を特殊召喚」

黒い甲冑を身に着け、若干細い刀身の日本刀を持つ武士が長い黒髪をなびかせながら姿を現す。

 

真六武衆―キザン レベル4 攻撃1800

 

「おお…中々のイケメンやな」

《真六武衆―キザン》に見とれている間に、門の前に2本の刀が現れる。

この刀こそ武士道カウンター、いわば武士の魂だ。

 

六武の門 武士道カウンター0→2

 

「そして、このカードも《キザン》と同じ条件で手札から特殊召喚できる。《六武衆の師範代》を特殊召喚!更に《キザン》は俺のフィールドにほかの六武衆モンスターが2体以上存在するとき、攻撃力が300ポイントアップする」

右目に眼帯をつけ、《真六武衆―キザン》と同じ日本刀を持つ白髪の老武士が現れる。

そして同時に再び2本の刀が現れる。

 

六武衆の師範代 レベル5 攻撃2100

真六武衆―キザン レベル4 攻撃1800→2100

六武の門 武士道カウンター2→4

 

「う…うわぁ…これはすごくまずい展開やで…」

冷や汗を流しながら、里香はアクションカードを探し始める。

「そして、俺は手札から魔法カード《六武式三段衝》を発動。俺のフィールド上に六武衆モンスターが3体以上表側表示で存在するとき、3つの効果のうち1つを発動できる。俺は1つ目の効果を発動する。その効果は相手フィールド上に表側表示で存在するモンスターをすべて破壊する」

「まずい…ごっつうまずいでぇ!!」

家屋内で探すのをあきらめた里香は要塞へ足を踏み入れる。

そして、剣術練習用に人形の上にあるアクションカードを手に取る。

「アクション魔法《鷹の目》を発動や!このカードはフィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を1度だけカード効果による破壊から守るんや!!」

「《シエン》の効果発動。1ターンに1度、魔法・罠カードの発動を無効にし、破壊する」

《真六武衆―キザン》が左手で脇差を投げる。

それは《鷹の目》のソリッドビジョンに突き刺さり、共に砕けた。

 

鷹の目

アクション魔法カード

(1):自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。選択したカードは、このターンに1度だけカードの効果では破壊されない。

 

3体の武士が散開し、2体の影霊衣に狙いを定める。

そして、《真六武衆―シエン》の号令と共に一斉に切りかかった。

連携攻撃を受けた影霊衣はあっという間に撃破されてしまった。

 

「くぅぅ…《シエン》の効果強すぎやろ!!?」

「バトルだ。3体の武士でダイレクトアタック」

「無視かーーー!!?」

要塞の壁を軽々と飛び越えてきた《真六武衆―シエン》に斬られ、片膝をつく。

 

里香

ライフ4000→1500

 

「これで終わりだな。《師範代》でダイレクトアタック」

《真六武衆―キザン》と共に要塞の門を切り裂いた《六武衆の師範代》が里香にとどめを刺そうと急速に接近する。

「罠発動!《影霊衣の水盾》!!ウチのフィールドにモンスターがいない状態でダイレクトアタックを受け取るとき、墓地から影霊衣モンスター1体を特殊召喚し、デッキからカードを1枚ドローや!!復活せい、《ディサイシブの影霊衣》!!」

上空から《ディサイシブの影霊衣》が降ってきて、《六武衆の師範代》に大砲を向ける。

 

ディサイシブの影霊衣 レベル10 攻撃3300

 

影霊衣の水盾(ネクロスのアクアシールド)

通常罠カード

「影霊衣の水盾」は1ターンに1度しか発動できない。

(1)自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、相手の直接攻撃宣言時に発動できる。墓地から「影霊衣」モンスター1体を召喚条件を無視して特殊召喚し、デッキからカードを1枚ドローする。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果はターン終了時まで無効化される。

 

「く…《師範代》、攻撃中止だ!」

大砲を向けられ、危険な状況と判断した《六武衆の師範代》が他の武士と共に翔太の元へ戻っていく。

「《ディサイシブ》って、前のターンに里香ちゃんが墓地へ送ったカード。それに、攻撃力3300って…」

今の翔太のフィールドには攻撃力2500の《真六武衆―シエン》と攻撃力2100の《六武衆の師範代》と《真六武衆―キザン》。

どれも《ディサイシブの影霊衣》の攻撃力には及ばない。

「俺はカードを1枚伏せてターンエンド!」

 

里香

手札1→2

ライフ1500

場 ディサイシブの影霊衣 レベル10 攻撃3300

 

翔太

手札6→2

ライフ700

場 真六武衆―シエン レベル5 攻撃2500

  六武衆の師範代 レベル5 攻撃2100

  真六武衆―キザン レベル4 攻撃2100

  六武の門 武士道カウンター4

  伏せカード1

 

「ウチのターン、ドロー!」

 

里香

手札2→3

 

「《ディサイシブの影霊衣》の効果発動や!1ターンに1度、相手フィールド上にセットされているカード1枚を破壊し、除外するで!」

「えーーー!?攻撃力3300で、更にデメリットなしでセットカードを除外できるって、強すぎでしょ!?」

《ディサイシブの影霊衣》が真っ黒な砲弾を伏せカードに向けて発射する。

砲弾が伏せカードに接触すると、そこにブラックホールが生まれてそれが飲み込まれていった。

 

破壊された伏せカード

・攻撃の無力化

 

「これで生き延びる術がなくなったで?さあ、おとなしく負けえや!!《ディサイシブの影霊衣》で《シエン》を攻撃や!!!」

《ディサイシブの影霊衣》の3つの大砲にすべての砲弾が装填される。

そして、《真六武衆―シエン》に狙いを定めるとすべて発射した。

「これでウチの勝…」

「俺は手札から罠カード《六武流剣術―真空斬》を発動!」

「え…ええーーーー!?」

「手札か罠カード!?」

「このカードは俺のフィールド上に存在する武士道カウンターを4つ取り除くことで手札から発動できる」

《六武の門》の前にあった4本の刀が光となり、《真六武衆―シエン》の刀に宿る。

そして、力の宿った刀を猛スピードで振るう。

「え…えええ!?一体どうなってるんや???」

刀を振った瞬間、周囲の風が集結して巨大な鎌鼬となって《ディサイシブの影霊衣》ではなく里香に襲い掛かる。

「このカードは俺のフィールド上の六武衆モンスターが攻撃対象となったとき、その攻撃を無効にし、攻撃モンスターの攻撃力分のダメージを与える!」

「う…嘘やろ…?」

里香の手札に存在するのは《儀式の準備》と《サイクロン》、そして《影霊衣の術士シュミット》。

仮に《サイクロン》で《六武の門》を破壊することができれば《六武流剣術―真空斬》の発動を止めることができた。

鎌鼬は里香をフィールドの端まで吹き飛ばしていく。

「嘘やぁーーーーー!!?」

 

里香

ライフ1500→0

 

六武流剣術―真空斬

罠カード

(1):自分フィールド上に存在する「六武衆」モンスターが攻撃対象となった時に発動できる。その攻撃を無効にする。

(2):自分フィールド上に存在する「六武衆」モンスターが攻撃対象となった時、自分フィールド上に存在する武士道カウンターを4つ取り除くことで手札から発動できる。その攻撃を無効にし、攻撃モンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。

 

「ふう…」

デュエル終了と同時に、翔太は《六武流剣術―真空斬》を見る。

「認めたくないが、こいつが無かったらどうなってたことかな」

「もー、翔太君。油断しすぎだぞー?」

フィールドに入ってきた伊織がなぜかニヤニヤしながら翔太に声をかける。

「もしかしてー、相手が女の子だから手加減したー?」

「できたばかりのデッキで、なじんでなかっただけだ」

「おい!!!!!」

急に大声を出した里香に2人が驚く。

「なんだよ?ご近所迷惑って言葉を知らないのか?」

「性悪男!!覚えときや!!!今度会ったときはコテンパンに、ぐうの音が出んなるくらいやっつけたる!!」

リベンジ宣言と共に、里香が店から出ていく。

「はあ…やってらんねえ」

里香の後を追うように、翔太も店から出ようとする。

「えーーー!?翔太君、私とはデュエルしないの?」

「当たり前だろ?お前と何回デュエルをやったと思ってんだ?」

「じゃあ、僕とやってくれる?」

「何!?」

急に声をかけられ、うんざりしながら後ろを向く。

虎をモチーフとしたプロ野球団の帽子に黒いサングラス、緑色のTシャツとジーパンの少年。

背丈は翔太よりも若干高く、顔は見えないが、しわがないところから年齢は同じくらいだと思える。

「さっきの伊織よりもギャーギャーうるさい女と同類か?」

「うーん、どうだろうね。それにしても、君って強いんだね」

「ふん…当たり前だろ?」

「あーーー翔太君、照れてる照れてる」

「う…うるさいぞ、伊織!!」

「アハハハ!!にやついてたじゃんかー」

「お前…!!」

痴話げんかのようなことをする2人を見せ、彼は苦笑いをする。

「そ…それよりも、これから僕とデュエルをしてくれないかな?」

「はぁ?」

「もちろん、さっき使ってたデッキじゃなくて本気のデッキで」

少年は左腕に緑色の羽根をモチーフとしたデュエルディスクを装着する。

「変わったデュエルディスクだな」

「いろいろあってね」

「お前…なんでさっき使ったデッキが本気のデッキじゃないと思った?」

「ええっと…少し、ぎこちない感じがしたから…かな?」

(そんなにぎこちなかったのかな?)

サングラスの少年の言葉に伊織は首をかしげる。

彼女には翔太が普通にデュエルをしているようにしか見えなかった。

「ま、軽く倒してやるよ。伊織、デッキを」

「う、うん。頑張りたまえ、翔太隊員!」

「た…隊員?」

また妙な言動をする伊織に頭を痛めながら、デッキを交換する。

「2人とも、仲がいいんだね」

「はあ…?仲がいいわけないだろ?」

「えーーー?」

「えーーじゃねえよ」

少し不機嫌になる伊織の服の裾を掴み、観客席へ連行する。

そして、翔太が戻ってくるとアクションフィールド《風の渓谷》が発動する。

暖かい風が絶え間なく吹き、上空にはさまざまな鳥が飛ぶ緑あふれる渓谷。

渓谷の間には浮遊石が浮かんでいて、向かい側の足場にはそれを使っていくようだ。

そして、伊織がアクションデュエル開始を宣言する。

「戦いの殿堂に集いしデュエリストたちが」

「え…え…?」

少年が急に何を言い出すといいたげな表情になり、戸惑う。

「えーーー!?この人、知らないの!!?」

「知らないって…さっきの戦いの殿堂がどうのこうのって言葉のこと?」

「なら、その言葉省略だな。俺も毎回毎回こうはうんざりだ。デュエル!!」

「え…ええ!?デュ…デュエル…」

「もーーーー!!翔太君、空気読んでよーーー!!」

 

少年

手札5

ライフ4000

 

翔太

手札5

ライフ4000

 

(さてっと…この世界のルールは頭に入ったけど、アクションカード集めかぁ。僕、体力に自信ないんだけどなぁ…)

「おい、何やってんだ?お前の先攻だぞ?」

「ごめんごめん。じゃあ、僕のターン!僕は《ガスタ・ガルド》を召喚」

「ピー!!」

嬉しそうに現れた《ガスタ・ガルド》は彼の周りを飛ぶ。

 

ガスタ・ガルド レベル3 攻撃500(チューナー)

 

「ええっと…ここから…」

「ピーピー!!」

「見つけてくれたの?ありがとう、ガルド」

「ピィ!」

(なんだ?こいつ…)

まるで友人のようにモンスターに声をかける少年。

更にモンスターの言葉がわかるようだ。

そんな彼に翔太は首をかしげる。

少年は花畑の中に隠れたアクションカードを手に取る。

「よし…僕はアクション魔法《緊急召喚》を発動!手札からレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚できる。僕は《ガスタの巫女ウィンダ》を特殊召喚!」

翔太のそばに《ガスタの巫女ウィンダ》がウインクをしながら現れる。

 

ガスタの巫女ウィンダ レベル2 攻撃1000

 

「僕はレベル2の《ウィンダ》にレベル3の《ガルド》をチューニング。族長の意思を代行する少女よ、友たる鳥獣の背に乗り、今こそ飛翔せよ。シンクロ召喚!《ダイガスタ・ガルドス》!!」

巨大化した《ガスタ・ガルド》の背に《ガスタの巫女ウィンダ》が乗る。

その時、翔太は一瞬《ガスタの巫女ウィンダ》が少年に声をかけたように見えた。

 

ダイガスタ・ガルドス レベル5 攻撃2200

 

「じゃあ、乗せてくれる?ウィンダ、ガルド」

少年が《ガスタ・ガルド》に乗ると、《ガスタの巫女ウィンダ》が後ろから腕を回す。

そして、彼は手馴れているかのようにその鳥を自在に操り、空中を移動し始める。

「僕はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

少年

手札5→2

ライフ4000

場 ダイガスタ・ガルドス レベル5 攻撃2200

  伏せカード1

 

翔太

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「俺のターン!」

 

翔太

手札5→6

 

「俺は手札から《魔装獣ユニコーン》を召喚」

召喚と同時に、翔太は《魔装獣ユニコーン》に乗り、フィールドを駆け始める。

 

魔装獣ユニコーン レベル4 攻撃1600

 

「わあ…鳥と馬の対決だ…」

速度では2体はほぼ互角。

しかし、立体的に動ける《ダイガスタ・ガルドス》に対して平面な動きしかできない《魔装獣ユニコーン》は不利。

「よし…アクションカード」

低い位置にあった鳥の巣に入っているアクションカードを手に取る。

「アクション魔法《そよ風》を発動」

《魔装獣ユニコーン》の足がそよ風を受け、わずかに速度が上がる。

「このカードは俺のフィールドに存在するモンスター1体の攻撃力・守備力を300ポイントアップさせる」

 

魔装獣ユニコーン レベル4 攻撃1600→1900 守備800→1100

 

そよ風

アクション魔法カード

(1):自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。そのモンスターの攻撃力・守備力を300アップさせる。

 

「まだ足りないよ!《ガルドス》の攻撃力には!」

「なら、もう1枚追加すればいいだけだ。俺にそよ風は似合わないからな」

《魔装獣ユニコーン》が2メートル近くある岩を飛び越える。

そして、翔太は雲に似た小さな浮石に置かれているアクションカードを取る。

「俺にはこいつがお似合いだな。アクション魔法《追い風》を発動。このカードは俺にフィールドに存在するモンスターの攻撃力をエンドフェイズまで800ポイントアップさせる」

翔太と《魔装獣ユニコーン》の背に強い追い風が発生する。

そして、《ダイガスタ・ガルドス》と同じ高度にある浮石まで飛ぶことができた。

 

魔装獣ユニコーン レベル4 攻撃1900→2700

 

追い風

アクション魔法カード

(1):自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。そのモンスターの攻撃力をターン終了時まで800アップさせる。

 

「やった!!これで《ユニコーン》の攻撃力が《ガルドス》を上回った!!」

「バトル。俺は《ユニコーン》で《ダイガスタ・ガルドス》を攻撃!!」

《魔装獣ユニコーン》が大きく跳躍し、《ダイガスタ・ガルドス》を踏みつけようとした。

「読んでいたよ、その動き」

「何!?」

急に翔太と《魔装獣ユニコーン》に向けて強い向かい風が発生する。

それによって、元と浮石のところまで戻されてしまった。

更に侑斗の隣に《ガスタ・イグル》が現れる。

 

ガスタ・イグル レベル1 守備400(チューナー)

 

「僕は罠カード《ガスタの追い風》を発動したよ。このカードは僕のガスタと名のつくシンクロモンスターかエクシーズモンスターが攻撃対象となった時、その攻撃を無効にしてデッキからレベル2以下のガスタと名のつくモンスター1体を特殊召喚できる」

「ピィ!!」

《ガスタ・イグル》が肩に止まると、少年は耳打ちする。

すると、そのモンスターはうなずくと同時に河原で森の中でアクションカードを探しはじめた。

「ちっ…!!俺はカードを1枚伏せてターンエンド。《追い風》の効果は消える」

 

少年

手札2

ライフ4000

場 ダイガスタ・ガルドス レベル5 攻撃2200

  ガスタ・イグル レベル1 守備400(チューナー)

 

翔太

手札5→3

ライフ4000

場 魔装獣ユニコーン レベル4 攻撃2700→1900

  伏せカード1

 

「僕のターン、ドロー!」

 

侑斗

手札2→3

 

「ピーピー!!」

「見つけたの?ありがとう、イグル」

戻ってきた《ガスタ・イグル》に頭をなでると《ダイガスタ・ガルドス》の進路を森へ向ける。

そして、森の入り口からはそのモンスターから降り、走って《ガスタ・イグル》が言っていた場所へ向かう。

「(このままだと1分経過しちゃうな。なら、もう少し助けをもらおうかな?)僕は手札から《ガスタの神裔ピリカ》を召喚!」

 

ガスタの神裔ピリカ レベル3 攻撃1000

 

「ピリカ!この岩の周りを探して!」

召喚したモンスターに指示をすると、少年はさらに森の奥へ行く。

「させるかよ!」

翔太も《魔装獣ユニコーン》を地上へ戻し、森へ向かう。

そんな中、少年は木の穴に木の実と一緒に入っていたアクションカードを取る。

「僕は《ピリカ》の効果を発動!このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、墓地から風属性チューナー1体を特殊召喚できる。《ガスタ・ガルド》を特殊召喚!」

「ピー!!」

《ガスタの神裔ピリカ》の杖の上に《ガスタ・ガルド》が止まる。

 

ガスタ・ガルド レベル3 守備500(チューナー)

 

「くそ…またモンスターを!!」

「僕はレベル3の《ピリカ》にレベル3の《ガルド》をチューニング!機械天使に与えられし鎧を装備した風の女戦士よ。その報いの精神で仲間を守れ!シンクロ召喚!《ダイガスタ・スフィアード》!」

 

ダイガスタ・スフィアード レベル6 攻撃2000

 

「《ダイガスタ・スフィアード》の効果発動!このカードのシンクロ召喚に成功した時、墓地からガスタカード1枚を手札に加えることができる。僕はデッキから《ピリカ》を手札に戻す。そして、《ガスタ・イグル》を攻撃表示に変更」

 

ガスタ・イグル レベル1 守備400→攻撃200(チューナー)

 

「はあ?攻撃力たった200のモンスターを攻撃表示だと?」

「バトル。僕は《ガスタ・イグル》で《ユニコーン》を攻撃!」

「何!?」

《ガスタ・イグル》が回転しながら嘴を《魔装獣ユニコーン》に刺そうとする。

「反撃しろ!《ユニコーン》」

《魔装獣ユニコーン》はそんな緑の小鳥を角を串刺ししようとした。

しかし、《ガスタ・ガルド》はすぐにバレルロールして反撃を回避し、森の中へ姿を消す。

そして、背後から突然放たれた緑色の羽根の弾丸が翔太の肩をかすめる。

「な…!?」

 

翔太

ライフ4000→2300

 

「なんで翔太君の方にダメージが!?」

「《ダイガスタ・スフィアード》はガスタと名のつくモンスターが戦闘を行う時、発生する僕へのダメージを相手に跳ね返すんだ。そして、《イグル》が戦闘で破壊された時、デッキからレベル4以下のチューナー以外のガスタと名のつくモンスター1体を特殊召喚できる。僕は《ガスタの静寂カーム》を特殊召喚!」

銛の中でも一番の老木の近くで、《ガスタの静寂カーム》がオカリナを吹きながら現れる。

 

ガスタの静寂カーム レベル4 攻撃1700

 

「これって、もしかして翔太君の負け…?」

今の少年のフィールドには《ダイガスタ・スフィアード》と《ダイガスタ・ガルドス》、《ガスタの静寂カーム》。

翔太のフィールドは《魔装獣ユニコーン》のみ。

このまま一斉攻撃をされたら敗北は確実。

「次は《ダイガスタ・スフィアード》で《ユニコーン》を攻撃!」

《ダイガスタ・スフィアード》が緑色の旋風が宿った杖を《魔装獣ユニコーン》にたたきつけようとする。

「くっそぉ!うん…!?」

翔太の目に少しだけ盛り上がった土が見える。

一か八か盛り上がった部分を掴むと、土の中からアクションカードが出てきた。

「こんなところにもアクションカードがあるのかよ?アクション魔法《回避》を発動!相手モンスター1体の攻撃を無効にする!」

「なら、僕はこのカードを使おうかな?」

少年はいつの間に《ガスタの静寂カーム》が持ってきたアクションカードを発動する。

「よし!僕はアクション魔法《ワンダー・チャンス》を発動!僕のモンスター1体の攻撃回数を1回増やす。僕は《ダイガスタ・ガルドス》を選択する!」

《魔装獣ユニコーン》が切株を踏み台にして飛び跳ね、《ダイガスタ・スフィアード》の攻撃を回避する。

しかし、回避した場所にはすでに《ダイガスタ・ガルドス》が待機していた。

「《ダイガスタ・ガルドス》で《魔装獣ユニコーン》を攻撃!ウィンディ・ストーム!!」

《ダイガスタ・ガルドス》のウィンダが杖から緑色の旋風を放つ。

攻撃を受けた《魔装獣ユニコーン》は破壊され、翔太は地面に落下する。

「うわあ!!痛てて…」

 

翔太

ライフ2300→2100

 

回避(アニメオリカ)

アクション魔法カード

(1):相手モンスター1体の攻撃を無効にする。

 

「これで終わりだよ!《ガルドス》でダイレクトアタック!!」

ウィンダの杖に即時に新たな旋風が生まれる。

その旋風はそのまま翔太を襲い掛かる。

「罠発動!《ピンポイント・ガード》!!相手のダイレクトアタック宣言時、墓地からレベル4以下のモンスター1体を守備表示で特殊召喚できる。《魔装獣ユニコーン》を特殊召喚!」

地中から岩石の鎧をまとった《魔装獣ユニコーン》が現れ、旋風を受け止める。

「ああ…《ピンポイント・ガード》の効果で特殊召喚されたモンスターはこのターン、破壊されないんだったね。なら攻撃はおしまい。僕はカードを2枚伏せてターンエンド」

 

少年

手札3→1(うち1枚《ガスタの神裔ピリカ》)

ライフ4000

場 ダイガスタ・ガルドス レベル5 攻撃2200

  ダイガスタ・スフィアード レベル6 攻撃2000

  ガスタの静寂カーム レベル4 攻撃1700

  伏せカード2

  

翔太

手札3

ライフ2100

場 魔装獣ユニコーン レベル4 守備800

 

「俺のターン!」

 

翔太

手札3→4

 

「俺は手札から魔法カード《マジックコード:α》を発動!!俺のフィールドに魔装モンスターが存在するとき、相手モンスター1体の効果をエンドフェイズまで無効にする!」

「何!?」

《ダイガスタ・スフィアード》が《マジックコード:α》の力で一時的の能力を封じ込められる。

「やるね…。だけど、《魔装獣ユニコーン》の攻撃力は1600!これだと僕のモンスターは倒せないよ」

「ああ…。なら、こうすればいい。俺は《ユニコーン》をリリースし、《魔装近衛エモンフ》をアドバンス召喚!」

 

魔装近衛エモンフ レベル5 攻撃1000

 

「攻撃力がたった1000のモンスターをアドバンス召喚!?」

「そっか!!あのモンスターを召喚するんだね?翔太君!!」

「俺は《エモンフ》の効果を発動。このカードをエクシーズ素材とするとき、他のエクシーズ素材は手札の魔装モンスターでなければならない。俺はレベル5の《エモンフ》と手札の《魔装槍士タダカツ》でオーバーレイ!万物を測りし漆黒の騎士よ、むさぼりし者たちに飢餓をもたらせ!エクシーズ召喚!!現れろ、《魔装騎士ブラックライダー》!!」

 

魔装騎士ブラックライダー ランク5 攻撃2800

 

「攻撃力2800のエクシーズモンスター!?いや…あれは…」

翔太の目の色が黒に変わり、少年は不思議そうに《魔装騎士ブラックライダー》を見る。

(この力は…?ありえない、彼は僕たちの目の前で…)

「《ブラックライダー》の効果発動!メインフェイズ1にオーバーレイユニットを2つ取り除くことで、このターン、相手フィールド上のすべてのモンスターに攻撃できる」

オーバーレイユニットを天秤に宿し、上空に3つの黒い隕石が現れる。

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・魔装近衛エモンフ

・魔装槍士タダカツ

 

「そんな…!!」

《ダイガスタ・スフィアード》は戦闘では破壊されない効果も持つ。

だが、《マジックコード:α》の効果でダメージ反射能力もろとも封じ込められてしまった以上役に立たない。

「バトル!俺は《ブラックライダー》で奴の3体のモンスターを攻撃!ブラック・リブラ・メテオ」

3つの隕石が少年のモンスターに向けて降り注ぐ。

「くぅ…!!」

少年の目の前で3体のモンスターが次々と隕石の餌食となっていく。

その時、《ダイガスタ・ガルドス》が攻撃を受ける直前に消えたことを翔太と伊織は気づかなかった。

 

少年

ライフ4000→3400→2600→1700

 

「やったーーー!これで逆転!!」

「まだだよ!僕は罠カード《ガスタの救命劇》を発動!」

「何!?そんなカードが…??」

「このカードはこのターン、戦闘で破壊されたガスタと名のつくモンスターを2体まで特殊召喚できる。僕は《ダイガスタ・ガルドス》と《ダイガスタ・スフィアード》を特殊召喚!」

破壊されたはずの2体のモンスターが上空から降りてくる。

その時、ソリッドビジョンのはずの《ガスタの巫女ウィンダ》と《ガスタ・ガルド》は嬉しそうにしていた。

 

ダイガスタ・ガルドス レベル5 攻撃2200

ダイガスタ・スフィアード レベル6 攻撃2000

 

「うわあ…これで振出しじゃん!!」

再び《ダイガスタ・スフィアード》が現れたことによって、ダメージ反射が可能になった。

「さあ…ここからどうするの?」

「俺は手札から速攻魔法《マジックコード:β》を発動!!」

「何!?」

《魔装騎士ブラックライダー》の五芒星にβの文字が浮かび上がる。

「俺のフィールド上に存在する魔装モンスターの攻撃力以下の特殊召喚された相手モンスター1体を破壊し、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える!」

 

マジックコード:β

速攻魔法カード

「マジックコード:β」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に「魔装」モンスターが存在するとき、相手フィールド上に特殊召喚されたそのモンスターの攻撃力以下のモンスター1体を選択して発動できる。そのモンスターを破壊し、破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを与える。

 

天秤が揺れると同時に、上空に巨大な隕石が現れる。

「これでとど…」

急に電気がきれ、ソリッドビジョンが消滅する。

「お、おい!?なんで停電してるんだ!?」

びっくりしている中、放送が流れる。

(お客様に申しあげます!ただ今、システムの不具合でソリッドビジョンが機能しなくなっております。復旧までには2時間程度時間がかかります。お客様には大変ご迷惑をおかけしましたことを…)

「うーん…そうなるかぁ…。じゃあ、このデュエルは預けるよ」

「何!?」

少年がデュエルディスクをしまうと、店から出ようとする。

「待て!まだデュエルは終わってないぞ」

「ごめん、1時間後に用事があるから。じゃあね」

申し訳なさそうに少年はそのまま出ていく。

「惜しかったね、翔太君。なんでこんな時にソリッドビジョンが動かなくなっちゃうのかなー?」

「さあな、あいつのフィールドにはもう1枚伏せカードがあった。もしかしたら、《マジックコード:β》の対策だったかもしれない」

「ふーん…。それよりも翔太君!待っている間にカードを買いに行こうよ!新しいパックが出たって!!」

「はあ…仕方がないな」

 

「ううん…」

翔太たちが止まっているのと違うホテルで、少年は帽子とサングラスを取る。

黒い髪と黒い眼が露となり、更に彼の隣に《ガスタの巫女ウィンダ》が現れる。

そして、彼女が口を動かし始める。

「うーーん!!やっと話ができるね!」

「ウィンダ、ごめんね?窮屈だったかな?」

「ううん!それより、2人っきりの時はいっぱいお話しよ!それと今夜は…」

(ふう…。これはいっぱいお願い事をされそうだなぁ…)




アクションカードおよびアクションフィールドのアイデア募集です!
アイデアのある人はぜひメッセージを!


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第16話 開幕の狼煙

(レディースアンドジェントルマン!!大変長らくお待たせいたしました!!これより、レオコーポレーション主催タッグデュエルカーニバルの開幕でございまーーーす!!!)

MCの軽快な言葉と共に、花火が打ちあがる。

エコパスタジアムには舞網チャンピオンシップに勝るとも劣らない数の観客、そしてデュエリストが集まっている。

(レオコーポレーション…こんなでかい大会を2つ同時にやる。どういうつもりだ…?)

「おーーい、翔太君ビックニュースだよーー!!フトシ君と柚子ちゃんが初戦突破だって!!」

「そうか」

「えーーー?翔太君反応薄いぞー?あ、でもアユちゃんが敗退しちゃった…」

「…」

「今度は無反応!?ひどいよ、翔太君!!」

顔を俯かせ、涙声を出す。

「はあ…それで、アユを倒した相手は?」

「やっといい反応してくれた!それがLDSの零羅って子で、ちょっとコンセプトが違うんだけど、私と同じ融合召喚を使うんだって」

「違うコンセプトなぁ…。そろそろ対戦表が出るぞ」

「え!?」

翔太たちの前に巨大なスクリーンが現れ、数多くの出場チームが表示される。

そして、それらには1から100までの番号が割り振られる。

「俺たちの番号は42か…」

「うう…不吉な数字」

「13よりはましだろう?そして、俺たちの相手の番号は47か…う…」

「翔太君、どうしたの?」

急に変な声を出した翔太を心配そうに見つめる。

「よりにもよって…あの女だ…」

「へ?」

13番のタッグは昨日翔太と戦った里香と手ぬぐいを額に巻き、頬に傷跡がある漁師のような服装をした色黒な少年だ。

「デッキの相性が悪いあいつとはできればデュエルしたくなかったな…」

「まあまあ、大丈夫だよ翔太君。今回は私も一緒なんだし?」

「だから不安なんだよ。お前のデッキのエースはほとんどエクストラデッキにあるだろ?」

「あ…」

早くも初戦敗退の可能性が頭に浮かび始める。

「ま、まあ大丈夫だよ!さあ、早く行こ?」

「はあ…言われなくてもな」

ため息をつきながら、翔太は伊織についていく。

 

「ふう…」

選手用観戦席で、2人はようやく落ち着くことができた。

本来、野球の試合のために使われるフィールドである分、かなり広範囲なアクションフィールドでタッグデュエルが行われる。

そして、1つのデュエルが決着する。

「これで終わりだ。《インフェルニティ・ジェネラル》でダイレクトアタック」

「「ぐああああ!!」」

赤いマントと黒い鎧を装備した巨大な騎士が曲刀で男性デュエリスト2人を切り裂いた。

 

デュエリスト

ライフ1000→0

 

「勝者、鬼柳一真&ロットン・バーネルのタッグだーーー!!」

デュエル終了とともに歓声が上がり、無反応な鬼柳とは対照的に色黒な肌で西部劇のガンマンのような男性が手を振ってこたえる。

(あいつが鬼柳のパートナーか…)

彼のモンスター、《ガトリング・オーガ》は先攻1ターンキルを成立させる可能性があり、場合によっては鬼柳の手に残ってしまった魔法・罠カードの処理に使うことができる。

そして、次のデュエルでは…。

「《ヴォルカニック・デビル》でダイレクトアタック!!」

灼熱の炎が噴き出す脳が露出している竜人のような悪魔が口から大量の溶岩を発射する。

溶岩はアクションフィールドをドロドロに溶かしていき、容赦なく相手に襲い掛かる。

「うわーーーー!来るなーーーー!!!」

 

デュエリスト

ライフ2200→0

 

「決まったーーー!!勝者、オスロ・オブライエン、ボマー・オブライエン兄弟!!」

褐色な肌で、どちらもかなり鍛えられた肉体を持つ兄弟が静かにフィールドを後にする。

弟のオスロの方は黄色く巨大な銃型デュエルディスクを持ち、ひろげた扇をさかさまにしたような形の黒い髪をしている。

兄のボマーは背中まである長い黒髪で、身長はオスロよりも20センチ近く高く、黒い彼と同じ形のデュエルディスクを所持している。

次々と勝者と敗者が決まっていく。

そして、翔太たちの出番である6回戦が目の前となる。

「いくぞ、伊織」

「うん!」

2人はフィールドへ出る。

到着した数十秒後に里香と色黒の少年が到着する。

「まさか1回戦からリベンジできるなんてなぁ…ウチ、運がいいわ」

「はあ…。もう俺たちの不戦勝でいいだろ?お前、負けてるからな」

「おーい、俺を忘れんなよ!」

「里香ちゃん、この人は?」

「こいつは梶木漁介。ウチの幼馴染や!」

「おう。お互い正々堂々全力で戦おうぜ!」

満面の笑みで漁介が右手を差し出す。

「…」

翔太は何も言わずに握手を交わす。

(さーあ!6回戦が始まりまーーす!赤コーナー、融合と変身で変幻自在!美少女デュエリスト、永瀬伊織!!)

「び、美少女って…」

「お世辞だな」

「翔太くーん!!」

余計なひと言に伊織が不機嫌となる。

(そして、そのパートナーは今大会最大のダークホース、秋山翔太ーー!!)

「ふん…」

ポカポカ叩いてくる伊織を抑え、歓声を無視する。

(続いて青コーナー、エクストラキラーである影霊衣を操る浪花のデュエリスト、真田里香ーー!!)

「なんでや!?なんで伊織だけ美少女やねん!?」

「俺に聞くな、俺に!」

(そして、見習い漁師でもあり、デュエルの腕も一流!浪速の鮫、梶木漁介ーーー!!)

パートナーと一悶着起こした後、4人はそれぞれ所定の位置へ向かう。

翔太は北の端、伊織は西、漁介は東、里香は南だ。

(さあ…今回のフィールドはこれだーーー!!フィールド魔法《パイレーツ・シー》発動ーーー!!」

海賊の黄金時代のカリブ海をモチーフとした澄んだ海と大量の海賊船のフィールドが展開される。

船の上だけでなく、漂流している筏や船内、更には水中にもアクションカードが存在する。

そして、伊織と里香がデュエルの開始を宣言する。

「戦いの殿堂に集いしデュエリストたちが」

「モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い」

「フィールド内を駆け巡る!」

「見よ、これぞ、デュエルの最強進化形、アクション…」

「「「「デュエル!!」」」」

 

漁介&里香

手札

漁介5

里香5

ライフ4000

 

翔太&伊織

手札

翔太5

伊織5

ライフ4000

 

「俺のターンからじゃ!俺は手札から《セイバー・シャーク》を召喚!」

 

セイバー・シャーク レベル4 攻撃1600

 

「《セイバー・シャーク》!アクションカードを取りに行くんじゃ!」

漁介を乗せた《セイバー・シャーク》が泳ぎ始める。

そして、漂流している木箱を頭部についている剣を破壊すると、中からアクションカードが現れる。

「よっし、アクションカードゲットじゃ!アクション魔法《緊急召喚》発動!手札からレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚する!俺は《ハンマー・シャーク》を特殊召喚じゃ!」

 

ハンマー・シャーク レベル4 攻撃1700

 

「これでレベル4のモンスターが2体」

「行くぜーーー!!」

漁介が《セイバー・シャーク》から海賊船の大砲に飛び移る。

「俺はレベル4の《セイバー・シャーク》と《ハンマー・シャーク》でオーバーレイ!未知なる轟と共に、水の戦士たちを統べよ!エクシーズ召喚!ランク4!《バハムート・シャーク》!!」

 

バハムート・シャーク ランク4 攻撃2600

 

(出たーーーー!!梶木漁介選手のエースモンスター、《バハムート・シャーク》----!)

召喚と同時に観客が歓声を上げる。

「エクシーズがLDSの専売特許なわけあるか!そのことを俺が示してやる!更に《バハムート・シャーク》の効果発動!1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、エクストラデッキから水属性・ランク3以下のエクシーズモンスター1体を特殊召喚できる。ゴッド・ボイス!!」

オーバーレイユニットを宿した《バハムート・シャーク》が咆哮すると同時に、海中から2頭の緑とオレンジの色がついた鮫が大正期の飛行機のような形で合体しているモンスターが浮上する。

「ゴッド・ボイスの効果で、俺は《潜航母艦エアロ・シャーク》を特殊召喚!」

 

潜航母艦エアロ・シャーク ランク3 攻撃1900

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・ハンマー・シャーク

 

「1ターンで2体のエクシーズモンスター!?」

「まだだぜ…。このカードは俺のフィールドに水属性エクシーズモンスターが2体以上存在するとき、手札から特殊召喚できる!俺は《スカー・シャーク》を特殊召喚!」

海中から体中に傷があり、左目にも深い傷跡がある鮫がボートを喰らいつくしながら現れる。

 

スカー・シャーク レベル4 攻撃1200

 

「更にこのカードの特殊召喚に成功した時、墓地から魚族・水属性・レベル4モンスター1体を特殊召喚できる。俺は墓地から《ハンマー・シャーク》を特殊召喚じゃ!」

《スカー・シャーク》の咆哮と同時に、そのモンスターの目の前に渦潮ができる。

そして、その中から《ハンマー・シャーク》が現れた。

 

ハンマー・シャーク レベル4 攻撃1700

 

スカー・シャーク

レベル4 攻撃1200 守備900 効果 水属性 魚族

「スカー・シャーク」は1ターンに1度しか特殊召喚できない。

(1):自分フィールド上に水属性エクシーズモンスターが2体以上存在するとき、このカードは手札から特殊召喚することができる。

(2):このカードの特殊召喚に成功した時、自分の墓地から魚族・水属性・レベル4モンスター1体を選択し特殊召喚することができる。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。

 

「レベル4のモンスターがまた2体!?」

「まだまだじゃ!俺は手札から魔法カード《ゴッド・ボイス》を発動!このカードは俺のフィールドに《バハムート・シャーク》が存在するとき、手札・フィールドに存在する水属性モンスターを2体まで選択し、それらのモンスターのレベルを1つ変動させるんじゃ!俺は2体の鮫のレベルを1つアップ!!」

《バハムート・シャーク》の咆哮と共に、《ハンマー・シャーク》と《スカー・シャーク》の精神が高揚する。

 

ハンマー・シャーク レベル4→5 攻撃1700

スカー・シャーク レベル4→5 攻撃1200

 

ゴッド・ボイス

通常魔法カード

「ゴッド・ボイス」は1ターンに1度しか発動できない。

このカードは自分フィールド上に「バハムート・シャーク」が表側表示で存在する場合にのみ発動できる。

(1):自分の手札・フィールド上に存在する水属性モンスター2体を象として以下の効果から1つを選択して発動できる。

●選択したモンスターのレベルを1つ上げる。

●選択したモンスターのレベルを1つ下げる。

 

「行くぜ…俺はレベル5になった《ハンマー・シャーク》と《スカー・シャーク》でオーバーレイ!この世のすべての魚を仕留める伝説の漁師よ、荒波を超え、俺の前に現れろ!エクシーズ召喚!!ランク5!《大海の王者フィル》!!」

地平線の彼方から、青い髪で全身に傷跡があり、背中には十数本の銛をさげている漁師が青い鮫に乗って現れる。

よほど鍛え抜かれているのか、彼の肉体には無駄な脂肪が一切なく、服装はボロボロなズボンだけになっている。

 

大海の王者フィル ランク5 攻撃1850

 

「嘘だろ…?」

「たった1ターンで3体のエクシーズモンスターを…」

里香は1ターンで2体の儀式モンスターを呼び出した。

そして彼は今ここで3体のエクシーズモンスターを呼び出した。

だが、漁介のターンはまだ終わっていない。

「《フィル》の効果発動!このカードは俺のフィールドに存在する水属性エクシーズモンスター1体に付き、攻撃力・守備力が500ポイントアップするんじゃ!」

 

大海の王者フィル ランク5 攻撃1850→3350 守備1600→3100

 

「更に手札から魔法カード《エクシーズ・トレジャー》を発動!フィールドに存在するエクシーズモンスターの数だけカードをドローできる!俺はデッキから3枚カードをドローじゃ!そして、カードを1枚伏せてターン終了!」

 

漁介&里香

手札

漁介5→2

里香5

ライフ4000

場 バハムート・シャーク(オーバーレイユニット1) ランク4 攻撃2600

  潜航母艦エアロ・シャーク ランク3 攻撃1900

  大海の王者フィル(オーバーレイユニット2) ランク5 攻撃3350

  伏せカード1

 

翔太&伊織

手札

翔太5

伊織5

ライフ4000

場 なし

 

長い、長すぎる漁介のターンが終わった。

終わってみると伏せカード1枚と3体のエクシーズモンスター。

これほどの展開にもかかわらず、《エクシーズ・トレジャー》によって手札切れを抑えている。

「ちっ…1体でも減らさないと、あとにひびくな。俺のターン、ドロー」

 

翔太

手札5→6

 

「俺はスケール2の《魔装槍士タダカツ》とスケール9の《魔装剣士ムネシゲ》でペンデュラムスケールをセッティング!」

「何!?ペンデュラム召喚やと…!?」

翔太の両サイドを守るかのように現れた2体のモンスター。

そして、遊矢しかできないと考えられていたペンデュラム召喚を彼が使用したことに2人は驚きを隠せずにいる。

「来たれ、時の果てに眠りし英雄の魂。希望の道を照らし、勝鬨を上げろ!ペンデュラム召喚!!現れろ、俺のモンスターたち!!《魔装騎士ペイルライダー》、《魔装間諜ゾルゲ》」

翔太の前には口元をスカーフで隠し、更には青い帽子と茶色い昭和風のコートを着用した白い肌の中年男性が現れ、そしてフィールド中央にある一番高いメインマストの上に《魔装騎士ペイルライダー》が空間戦闘用の装備で現れた。

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

魔装間諜ゾルゲ レベル3 守備900(チューナー)

 

「足りん足りん!いくらペンデュラム召喚に成功したモンスターでも、攻撃力が《バハムート・シャーク》にも《フィル》にも及んどらん!!」

「なら、足りるようにすればいい。それだけだろ?」

そういうと、翔太は海中へもぐっていく。

そして、沈没船から出ていた宝箱を開けて中にあるアクションカードを手にする。

「(よし…!)俺はアクション魔法《鎖弾》を発動!このカードは次のお前のターン終了時まで相手モンスター1体の攻撃力・守備力を1000ポイントダウンさせる!」

海から出て、そばにあったボートに乗った翔太がアクション魔法カードを発動させる。

すると、一番近くにあった船が《大海の王者フィル》に向く。

そして、前方に装備された2門の大砲から鎖弾を発射する。

鎖弾を受けた《大海の王者フィル》は身動きが取れなくなった。

 

大海の王者フィル ランク5 攻撃3350→2350 守備3100→2100

 

鎖弾

アクション魔法カード

(1):相手フィールド上に存在するモンスター1体を選択して発動できる。次の相手のターン終了時まで選択したモンスターの攻撃力・守備力を1000ダウンさせる。

 

「やったー!これで、《ペイルライダー》の攻撃で《大海の王者フィル》を倒せる!」

「バトルだ。俺は《ペイルライダー》で《フィル》を攻撃!クアトロ・デスブレイク!」

《魔装騎士ペイルライダー》がメインマストからスラスターで飛行する。

そして、《大海の王者フィル》の頭部に向けて光線を発射した。

「…。海を舐めるなよ、兄ちゃん!」

「何!?」

急に《大海の王者フィル》の前に《潜航母艦エアロ・シャーク》が現れる。

そして、彼の代わりにビームを受けて消滅した。

「く…!《フィル》は破壊されるとき、代わりに俺の水属性エクシーズモンスター1体を破壊できるんじゃ!」

「だが、お前のライフは減り、そして《フィル》の攻撃力も下がる」

 

漁介

ライフ4000→3850

 

大海の王者フィル ランク5 攻撃2350→1850 守備2100→1600

 

「そして、《ペイルライダー》の効果を…!!」

「させんのじゃ!罠カード《ブレイクスルー・スキル》を発動!これで《ペイルライダー》の効果を無効に!」

「ちっ…」

《魔装槍士タダカツ》の効果は戦闘破壊しなければ使えない。

《大海の王者フィル》の身代わり効果のせいで、翔太のもくろみの一部が外れた。

(身代わり効果があるのはつらい。そして、奴の《バハムート・シャーク》にはまだもう1つだけオーバーレイユニットが残っている)

アクションカードを探しつつ、里香を見る。

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド…」

「この瞬間、《フィル》の効果発動じゃ!相手のターンのエンドフェイズ時に1度、このターン破壊された俺の水属性エクシーズモンスター1体を復活させる!」

「何!?」

「また《エアロ・シャーク》が戻ってきちゃう!!」

《大海の王者フィル》が銛を太陽に向けて投げる。

太陽光で、銛が見えなくなると上空から《潜航母艦エアロ・シャーク》が現れる。

 

漁介&里香

手札

漁介2

里香5

ライフ3850

場 バハムート・シャーク(オーバーレイユニット1) ランク4 攻撃2600

  潜航母艦エアロ・シャーク ランク3 攻撃1900

  大海の王者フィル(オーバーレイユニット2) ランク5 攻撃1850→2350

 

翔太&伊織

手札

翔太6→1

伊織5

ライフ4000

場 魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

  魔装間諜ゾルゲ レベル3 守備900(チューナー)

  魔装槍士タダカツ(青) Pスケール2

  魔装剣士ムネシゲ(赤) Pスケール9

  伏せカード1

 

(《魔装間諜ゾルゲ》…。新しい魔装モンスター…)

伊織も《魔装間諜ゾルゲ》は見たことがない。

翔太曰く、眠っている間にいつの間に空のデッキケースに入っていたらしい。

「さあ…あいつには借りがある。せやから、絶対に勝つ!ウチのターン、ドロー!」

 

里香

手札5→6

 

「ウチは手札から儀式魔法《影霊衣の氷鏡》を発動や!このカードはエクストラデッキのモンスターを素材に影霊衣モンスターを儀式召喚できるんや!《A・O・Jディサイシブ・アームズ》を墓地へ送るで!儀式召喚!レベル9!《トリシューラの影霊衣》!!」

溶けない氷でできた3つの頭の竜が永久凍土でできた飾りのない鏡に映し出される。

そして、それが砕けると中から《氷結界の龍トリシューラ》を模した鎧と剣を持つ赤い髪の青年が現れる。

 

トリシューラの影霊衣 レベル9 攻撃2700

 

影霊衣の氷鏡

儀式魔法カード

「影霊衣」儀式モンスターの降臨に必要。

「影霊衣の氷鏡」の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):手札に存在する「影霊衣」儀式モンスター1体を相手に見せることで発動できる。自分のエクストラデッキからレベルの合計が公開したカードのレベル以上になるようにモンスターをリリースすることで、そのモンスターを手札から儀式召喚する。

(2):自分の手札に存在する儀式魔法カード1枚を墓地へ送ることで発動できる。墓地に存在するこのカード1枚を手札に加える。

 

「影霊気モンスター…」

前のデュエルで煮え湯を飲まされたため、影霊衣儀式モンスターに拒否反応が現れる。

「《トリシューラ》の効果発動や!このカードの特殊召喚に成功した時、相手の手札・フィールド・墓地のカードを1枚ずつ除外するで!!」

「何!?」

「破壊されてもエクストラデッキへ行くペンデュラムモンスターでも、この効果には手も足も出んやろ?」

《トリシューラの影霊衣》の尾から翔太の手札1枚と《魔装騎士ペイルライダー》に向けてそれぞれ1本ずつ氷の針を発射する。

氷で貫かれた2枚のカードが氷漬けとなり、海底へと沈んでいく。

 

手札から除外されたカード

・貪欲な壺

 

「このままいくでぇ…!ウチは漁介のモンスター達と《トリシューラ》でダイレクトアタック!!」

4体のモンスターが一斉に翔太に襲い掛かる。

「甘い!俺は罠カード《聖なるバリア―ミラーフォース》を発動!相手の攻撃宣言時、相手攻撃表示モンスターを全滅させる!」

「な…なんやってーーーーー!?」

「里香…油断しすぎじゃ」

頭を抱える漁介。

虹色のバリアが《魔装間諜ゾルゲ》への《潜航母艦エアロ・シャーク》のミサイル攻撃を防ぎ、反射する。

反射したミサイルは《トリシューラの影霊衣》、《潜航母艦エアロ・シャーク》、《バハムート・シャーク》、《大海の王者フィル》に着弾、爆破した。

「おーーー!翔太君、ナイス!」

「ふん…」

4体の攻撃モンスターをすべて失ったことで、もう里香は攻撃できなくなった。

「くぅーーー、このターンで決めたかったわー!でもまだや!ウチは墓地の《影霊衣の万華鏡》の効果を発動!ウチのフィールドにモンスターが存在しないとき、墓地からこのカードと影霊衣モンスター1体を除外し、デッキから影霊衣魔法カードを1枚手札に加えるで!」

霊体となった《トリシューラの影霊衣》が砕けた《影霊衣の万華鏡》の破片を集め、それを左右対称に設置された青と金の刃が特徴の鏡、《影霊衣の降魔鏡》に変えていく。

「そして手札から魔法カード《影霊衣の降魔鏡》を発動!レベルの合計が儀式召喚する影霊衣儀式モンスターと同じになるように手札・フィールドのモンスターをリリースするか、墓地の影霊衣モンスターを除外するで!ウチは手札の《影霊衣の大魔道士》をリリース!儀式召喚!レベル4!《ユニコールの影霊衣》!!」

漆黒のローブと帽子、そして鏡が付いた杖を装備した老魔道士が映った《影霊衣の降魔鏡》が砕ける。

そして、そこから《ユニコールの影霊衣》が現れる。

 

ユニコールの影霊衣 レベル4 攻撃2300

 

「また影霊衣か…!」

「更に《影霊衣の大魔道士》の効果発動や!このカードをカード効果でリリースした時、デッキから魔法使い族の影霊衣儀式モンスター1体を手札に加えるで。ウチはデッキから《グングニールの影霊衣》を手札に加えるで。ウチはカードを2枚伏せてターンエンドや」

「まだじゃ!俺はこのターン破壊された《大海の王者フィル》の効果発動!オーバーレイユニットを持つこのカードがカード効果で破壊された場合、その数だけ墓地からこのカード以外の水属性・エクシーズモンスターを特殊召喚できるんじゃ!」

「何!?」

「蘇るんじゃ、《バハムート・シャーク》、《エアロ・シャーク》!!」

《ユニコールの影霊衣》を挟むように、2体のエクシーズモンスターが現れる。

 

漁介&里香

手札

漁介2

里香6→1(《グングニールの影霊衣》)

ライフ3850

場 バハムート・シャーク ランク4 攻撃2600

  潜航母艦エアロ・シャーク ランク3 攻撃1900

  ユニコールの影霊衣 レベル4 攻撃2300

 

翔太&伊織

手札

翔太1→0

伊織5

ライフ4000

場 魔装間諜ゾルゲ レベル3 守備900(チューナー)

  魔装槍士タダカツ(青) Pスケール2

  魔装剣士ムネシゲ(赤) Pスケール9

 

大海の王者フィル

ランク5 攻撃1850 守備1600 エクシーズ 水属性 水族

水属性レベル5モンスター×2

このカードはX召喚でしか特殊召喚できない。

「大海の王者フィル」の(2)(3)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードは自分フィールド上に存在する水属性Xモンスター1体に付き500ポイントアップする。

(2):相手のターン終了時に自分の墓地からこのターンに破壊された水属性Xモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターを特殊召喚する。

(3):X素材を持つこのカードが破壊され墓地へ送られたターン終了時、その数だけ自分の墓地に存在する水属性・Xモンスターを特殊召喚する。

 

(おおーーー!!さすがは梶木漁介選手と真田里香選手!《ミラーフォース》によってモンスターが全滅となりながらも容易く戦線を立て直したぞーーー!!)

「うう…《ユニコール》は出てきてほしくなかったなー」

《ユニコールの影霊衣》の効果は融合主体の伊織のデッキにはあまりにもきついカードだ。

「さぁーてっと、あんたらが考えてる間にウチはアクションカードを探すでー!」

「里香は船の中を頼む!俺は潜って探す!」

「おう!!」

言われた通り、里香はまずは船の弾薬庫へ入り、漁介は《バハムート・シャーク》に乗って海上を動き回る。

「私のターン、ドロー!」

 

伊織

手札5→6

 

「翔太君のペンデュラムモンスターの効果、使うね!」

「勝手にしろ」

「よーし!これより起こるはヒーローたちの大行進!見逃さないようご注意あれ!ペンデュラム召喚!出てきて、私のモンスター達!《E・HEROエアーマン》!《E・HEROエッジマン》!!」

《E・HEROエアーマン》と共に両腕の刃がついている黄金の鎧を着たヒーローが現れる。

 

E・HEROエアーマン レベル4 攻撃1800

E・HEROエッジマン レベル7 攻撃2600

 

「《エアーマン》の効果発動!このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、デッキからHEROを1体手札に加えるよ!私はデッキから《E・HEROブレイズマン》を手札に!」

ペンデュラム召喚は当然のことながら、通常召喚ではない。

そのため、このまま伊織が《ユニコールの影霊衣》を倒せば《E・HEROブレイズマン》から《融合》へつなげることができる。

「バトル!《エッジマン》で《ユニコール》を攻撃!パワー・エッジ・アタック!!」

《E・HEROエッジマン》が《ユニコールの影霊衣》に向けて突撃する。

「甘いで!ウチは手札の《グングニールの影霊衣》の効果を発動や!このカードを手札から墓地へ送ることで、ウチのフィールドの影霊衣1体をこのターン、破壊から守るんや!」

「えーーーー!?」

《E・HEROエッジマン》が《ユニコールの影霊衣》を切り裂く。

しかし、切り裂いたのは氷でできたただの彫像だった。

 

漁介&里香

ライフ3850→3550

 

「くぅーやりますなぁ、里香ちゃん。翔太君、アクションカードは!?」

「そんなに急かすな。逆に見つからなくなる」

昇降機を使い、一気にマストの上部まで上る翔太。

そして、それの一番上にある旗の裏に貼られたアクションカードを入手する。

「俺はアクション魔法《臼砲》を発動。フィールド上の相手モンスター1体の効果を次の俺たちのターンのエンドフェイズ時まで無効にする!」

「何やて!?そんなところにアクションカードが??」

翔太がいる船に設置された臼砲から上空に向けて数十発の弾が発射される。

そして、《ユニコールの影霊衣》がそれの雨をよけるのに必死になって効果を維持する暇がなくなってしまった。

 

臼砲

アクション魔法カード

(1):相手フィールド上のモンスター1体の効果を次の自分のターンのエンドフェイズ時まで無効にする。

 

「よーし、これで私のHEROは全力を出せる!私は手札から《ブレイズマン》を召喚!」

 

E・HEROブレイズマン レベル4 攻撃1200

 

「《ブレイズマン》の効果発動!このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから《融合》を手札に加える!そしてフィールドの《エアーマン》と《ブレイズマン》を《融合》!疾風の戦士よ、炎の切り込み隊長よ、今こそ1つになりて、新たなヒーローに進化せよ!融合召喚!現れて、竜巻の王者、《E・HERO Great TORNADO》!!」

 

E・HERO Great TORNADO レベル8 攻撃2800

 

「《E・HERO Great TORNADO》の効果発動!このカードの融合召喚に成功した時、相手フィールド上のモンスターの攻撃力・守備力を半分にする!ダウン・バースト!!」

《E・HERO Great TORNADO》が起こした竜巻が船を砕き、吹き飛ばしたながら漁介と里香のモンスター達に襲い掛かる。

竜巻を受けた3体のモンスターは竜巻が運んできた船の破片で大きな傷を負った。

 

バハムート・シャーク ランク4 攻撃2600→1300

潜航母艦エアロ・シャーク ランク3 攻撃1900→950

ユニコールの影霊衣 レベル4 攻撃2300→1150

 

「ずるいでずるいでーーー!!《ユニコール》の効果を無効にするなんてーー!!」

「立派な戦略だ。とやかく言うな」

里香のいちゃもんをスルーしつつ、昇降機を使って下へ降りていく。

「ごめんね、里香ちゃん。けど翔太君は優しいんだよ。前は悪い人は取ったカードを取り返して…」

「やめろ、柄じゃない」

「はいはい。私はカードを1枚伏せてターンエンド!」

 

漁介&里香

手札

漁介2

里香1→0

ライフ3550

場 バハムート・シャーク ランク4 攻撃1300

  潜航母艦エアロ・シャーク ランク3 攻撃950

  ユニコールの影霊衣 レベル4 攻撃1150

 

翔太&伊織

手札

翔太0

伊織6→3

ライフ4000

場 魔装間諜ゾルゲ レベル3 守備900(チューナー)

  E・HEROエッジマン レベル7 攻撃2600

  E・HERO Great TORNADO レベル8 攻撃2800

  魔装槍士タダカツ(青) Pスケール2

  魔装剣士ムネシゲ(赤) Pスケール9

  伏せカード1

 

「やってくれる…!じゃが、まだまだ俺たちを倒すには及ばんのじゃ!俺のターン、ドロー!」

 

漁介

手札2→3

 

「俺はフィールド上の《バハムート・シャーク》と《エアロ・シャーク》でオーバーレイ!!」

「嘘!?ランクが違うエクシーズモンスターでエクシーズ召喚を!?」

「こいつは少し特殊な奴じゃ!俺のフィールドに存在するエクシーズモンスターを2体以上、合計ランクが7になるようにオーバーレイすることでしか召喚できない!いくんじゃ、《バハムート・シャーク》、《エアロ・シャーク》!!」

2体の鮫が上空に現れた鏡写しのようになっているもう1つの海へ向かう。

「俺の切り札は《フィル》でも《バハムート・シャーク》でもない!クロスエクシーズチェンジ!!現れろ、失われし海に眠りし牙、ランク7!《アトランティス・シャーク》!!」

2つ目の海の中からジンベエザメよりも3倍近く大きい、傷だらけで赤と青のオッドアイの白い鮫が降りてくる。

翔太たちのいる海に入った瞬間、周囲に大波が発生し、多くの船や小島、ボートが飲み込まれていく。

「くぅ…!!」

「キャア!!」

翔太と伊織が波にのまれそうになるが、《E・HERO Great TORNADO》と《E・HEROエッジマン》に守られる。

「助かった…」

「どういたしまして!」

「お前に言ったんじゃないぞ?」

「またまたー」

大波が収まると、多くの船の残骸が漂い、小島の木も根元から流されていた。

 

アトランティス・シャーク ランク7 攻撃3800

 

「攻撃力3800…!?」

「こいつは俺のフィールドに存在するカードの効果を受けん。よって、影霊衣の効果を受けることなく大暴れできるんじゃ!バトル!《アトランティス・シャーク》で《エッジマン》を攻撃!」

《アトランティス・シャーク》が《E・HEROエッジマン》を丸呑みにしようと大きく口を開いて迫ってくる。

「罠発動!《マスク・バリア》!!このカードはHEROに対する相手の攻撃を無効にするよ!」

「無駄じゃぁ!このカードはオーバーレイユニットの数だけ攻撃できるんじゃ!!!」

「えーーー!?」

「く…《Great TORNADO》!!」

翔太は《E・HERO Great TORNADO》から飛び降り、残骸に引っかかっているアクションカードを取ろうとした。

「ウチを忘れたらあかんでぇ!」

「何!?」

いつの間に先回りしていた里香が翔太が手にしようとしていたアクションカードを取る。

タッグアクションデュエルは各プレイヤーが1枚ずつアクションカードを持つことができる。

そのため、両者の役割分担を行うこと、そして一方が相手をひきつけている間にもう一方が密かにアクションカードを回収することが重要だ。

「ウチはアクション魔法《散弾》を発動や!このカードは戦闘を行う相手モンスター1体の攻撃力をダメージ計算時のみ600ポイントダウンさせるで!」

北西から赤い帆の船が現れ、《E・HEROエッジマン》に向けて側面から散弾を発射した。

「キャアアア!!」

「伊織!!」

散弾を受けて傷ついた《E・HEROエッジマン》は伊織を離してしまう。

伊織はそのまま船の残骸の上を滑って海へ転落してしまった。

 

E・HEROエッジマン レベル7 攻撃2600→2000

 

散弾

アクション魔法カード

(1):相手フィールド上のモンスター1体はこのターン戦闘を行う時、ダメージステップ時のみ攻撃力が600ポイントダウンする。

 

「あぷぷ…私、泳げないのー!!溺れるーーー!!」

「はあ…こういうことで世話やかせんな、伊織!」

溺れそうになった伊織を翔太が抱え、共に小島へ向かう。

そんな中、傷ついた《E・HEROエッジマン》は《アトランティス・シャーク》に《マスク・バリア》もろとも丸呑みにされた。

 

翔太&伊織

ライフ4000→2200

 

「《アトランティス・シャーク》の効果発動じゃ!このカードが戦闘で相手モンスターを破壊したターンのエンドフェイズ時、俺の墓地に存在する水属性エクシーズモンスター1体をこのカードのオーバーレイユニットにできるんじゃ!」

「ということは、戦闘で破壊するたびに攻撃回数が増えていくのか!?」

「そうじゃ!これが海の恐ろしさ、荒々しき海の中で生きてきた鮫たちの強さじゃ!更に俺は《ユニコール》を守備表示に変更し、ターンエンドじゃ!そして、《アトランティス・シャーク》の効果で手札をすべて墓地へ送る!!」

それと同時に2つ目の海から《大海の王者フィル》が現れ、《アトランティス・シャーク》のオーバーレイユニットとなる。

 

手札から墓地へ送られたカード

・ビッグ・ジョーズ

・オーバーレイ・チャージ

・ジョーズマン

 

漁介&里香

手札

漁介3→0

里香0

ライフ3550

場 アトランティス・シャーク(オーバーレイユニット3) ランク7 攻撃3800

  ユニコールの影霊衣 レベル4 攻撃1150→守備500

 

翔太&伊織

手札

翔太0

伊織3

ライフ2200

場 魔装間諜ゾルゲ レベル3 守備900(チューナー)

  E・HERO Great TORNADO レベル8 攻撃2800

  魔装槍士タダカツ(青) Pスケール2

  魔装剣士ムネシゲ(赤) Pスケール9

 

アトランティス・シャーク

ランク7 攻撃3800 守備2000 エクシーズ 水属性 魚族

このカードは下記の方法でのみ特殊召喚できる。

●自分フィールド上に表側表示で存在するX素材のない水属性Xモンスターを2体以上、ランクの合計がこのカードと同じになるように選択することで、それらをX素材とすることでX召喚できる。

(1):このカードは1度のバトルフェイズにこのカードに重ねられているX素材の数だけ攻撃できる。

(2):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊したターンの終了時に発動できる。自分の墓地に存在する水属性Xモンスター1体をこのカードのX素材にすることができる。

(3):このカードは自分フィールド上に存在するカードの効果を受けない。

(4):自分のターン終了ごとに自分は手札をすべて墓地へ送らなければならない。その効果で手札を墓地へ送ることができなかった場合、次の自分のターンこのカードは攻撃できない。

 

「く…!俺のターン、ドロー!」

 

翔太

手札0→1

 

(《臼砲》の効果が切れて、《ユニコール》の効果が復活した。だが、《アトランティス・シャーク》は自身の効果でその制約を受けない)

《アトランティス・シャーク》の攻撃力は3800。

当然、翔太たちのデッキにはそれを超える攻撃力を持つモンスターはいない。

「翔太君…」

「うん?」

急に伊織が声をかけてくる。

その伊織の表情はピンチであるにもかかわらず、笑顔そのもの。

更にサムズアップまでしている。

「(何か手があるのか…?)俺は手札から魔法カード《アドバンス・ドロー》を発動。俺のフィールドに存在するレベル8以上のモンスター1体をリリースし、デッキからカードを2枚ドローする」

《E・HERO Great TORNADO》が風と共に姿をくらまし、翔太はカードを2枚ドローする。

「俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

漁介&里香

手札

漁介2

里香0

ライフ3550

場 アトランティス・シャーク(オーバーレイユニット3) ランク7 攻撃3800

  ユニコールの影霊衣 レベル4 守備500

 

翔太&伊織

手札

翔太1→0

伊織3

ライフ2200

場 魔装間諜ゾルゲ レベル3 守備900(チューナー)

  魔装槍士タダカツ(青) Pスケール2

  魔装剣士ムネシゲ(赤) Pスケール9

  伏せカード2

 

(やはり圧倒的攻撃力を持つ《アトランティス・シャーク》に太刀打ちできないのか?翔太選手、伏せカードを2枚出しただけでターンを終えてしまったーーーー!!)

(だが、これで探す時間ができた)

翔太はアクションカードを手にするため、再び水中へもぐる。

空気樽で呼吸をしつつ、更に深く潜っていく。

(翔太君、お願い!!なんとか持ちこたえて…)

「何がやりたいんか知らんけど、このターンで決着をつけるで!ウチのターン、ドロー!」

 

里香

手札0→1

 

「バトルや!ウチは《アトランティス・シャーク》で《魔装間諜ゾルゲ》を攻撃や!」

《アトランティス・シャーク》が《魔装間諜ゾルゲ》を丸呑みにしようと2つ目の上から飛び出してくる。

それと同時に、翔太は貝に挟まれていたアクションカードを取り、水中から出る。

「俺はアクション魔法《回避》を発動!これで相手モンスター1体の攻撃を無効にする!」

《魔装間諜ゾルゲ》が煙玉で相手の視界をふさぎ、その隙に行方をくらます。

「まだや!今の《アトランティス・シャーク》ならあともう1回攻撃できるんや!もう1度《ゾルゲ》を攻撃!!」

《魔装間諜ゾルゲ》を見失った《アトランティス・シャーク》が大きくその身を動かす。

すると、そのモンスターを中心に大波が発生し、船の残骸に隠れていた《魔装間諜ゾルゲ》が飲み込まれる。

「《ゾルゲ》の効果発動!このカードが相手の攻撃で破壊された時、相手の手札1枚をランダムで確認し、そのカードの種類によって効果が発動する」

「な…!?ウチのカードを見るだけやなくて、他の効果も発動やて!?」

「そうだ。今のお前の手札は1枚。さあ、はやく見せろ!」

「やかましいわ!見たいんやったら、さっさと見い!!」

里香が頬を膨らませ、不満げに手札を公開する。

公開したカードは《テイク・オーバー5》だ。

「魔法カードか…。公開したカードが魔法カードの場合、次の俺たちのターンのスタンバイフェイズ時に俺は墓地または除外されている魔装と名のつくペンデュラムモンスター1体をエクストラデッキに加える。俺は除外されている《ペイルライダー》をエクストラデッキへ」

 

魔装間諜ゾルゲ

レベル3 攻撃900 守備900 チューナー 闇属性 魔法使い族

「魔装間諜ゾルゲ」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードが相手モンスターの攻撃によって破壊され墓地へ送られた時、相手の手札をランダムに1枚選択し、そのカードを互いに確認する。その後、確認したカードの種類によって以下の効果を発動する。

●モンスターカード:このターン、相手モンスターは攻撃できない。

●魔法カード:次の自分のターンのスタンバイフェイズ時にに自分の墓地、もしくはゲームから除外されている「魔装」ペンデュラムモンスター1体を表向きで自分のエクストラデッキに置く。

●罠カード:確認したカードを墓地へ送る。

 

「ペンデュラムモンスターをエクストラデッキに加えてもな、今のあんたらのフィールドにはモンスターはおらん!このまま決めたるで!!《アトランティス・シャーク》でダイレクトアタックやーーー!!」

《アトランティス・シャーク》が翔太に狙いを定めると、彼に向けて一直線で突っ込んでいく。

「罠発動!《ペンデュラム・ウォール》!!相手の直接攻撃宣言時、今の俺のペンデュラムスケールで召喚可能なレベルを持つモンスター1体を俺かお前の墓地から特殊召喚する!俺はお前の墓地から《ハンマー・シャーク》を特殊召喚する!」

目の前に《ハンマー・シャーク》が現れると、彼はそのモンスターを蹴り飛ばし、《アトランティス・シャーク》にぶつける。

ぶつかった鮫は目を回しながら消滅し、ぶつけられた鮫は怒り狂う。

 

ペンデュラム・ウォール

通常罠カード

(1):自分のPゾーンにカードが2枚存在する場合、相手の直接攻撃宣言時に発動できる。そのPスケールでP召喚可能なレベルを持つ、自分か相手の墓地に存在するモンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する。

 

「くぅぅ…漁介のモンスターを壁にして、もはや悪党やこいつは!!」

「悪党で結構だ」

(うーん…あのやり方って完全に悪者にやり方だよね、翔太君)

最近見たヒーロー番組で、伊織は子供を人質にする怪人を見た。

その分、その時の翔太とその怪人がなぜかダブって見えてしまった。

「くぅーーー!ウチはこれでターンエンド!そして、それと同時にウチは《アトランティス・シャーク》の効果で手札をすべて捨てる!」

 

漁介&里香

手札

漁介2

里香1→0

ライフ3550

場 アトランティス・シャーク(オーバーレイユニット3) ランク7 攻撃3800

  ユニコールの影霊衣 レベル4 守備500

 

翔太&伊織

手札

翔太0

伊織3

ライフ2200

場 魔装槍士タダカツ(青) Pスケール2

  魔装剣士ムネシゲ(赤) Pスケール9

  伏せカード1

 

(なんとか猛攻をしのいだ、翔太、伊織ペア!しかし、フィールドに存在するのは伏せカード1枚とペンデュラムモンスター2体のみ!漁介、里香ペア、このまま押し切るのかーーーー!!?)

今の状況は明らかに翔太たちが降り。

《ユニコールの影霊衣》のせいでエクストラデッキから特殊召喚されるモンスターの効果は封じられ、《アトランティス・シャーク》が連続攻撃をかけてくる。

墓地に水属性エクシーズモンスターはもういないとはいえ、それでも攻撃回数は3回。

次のターン、その猛攻をしのぎ切れるかは疑問だ。

「(《ペイルライダー》はスタンバイフェイズ時に私の元に来る…。あとはあのカードが来ればいいだけ!)私のターン、ドロー!!」

 

伊織

手札3→4

 

伊織はドローしたカードを確認する。

「(うん…!これならいける!!)私はスタンバイフェイズ時に《ペイルライダー》をエクストラデッキに加えるよ!そして手札から魔法カード《エクストラ・フュージョン》を発動!このカードはエクストラデッキのモンスターを素材に融合召喚ができるよ!」

「エクストラデッキで融合じゃと…!?そんなことが!!」

「私が融合素材にするのは《E・HEROアブソルートZero》と《魔装騎士ペイルライダー》!!永久凍土の申し子よ、第4の騎士よ、今こそ1つとなりて、新たなヒーローに進化せよ!融合召喚!現れて、地獄門からの使者、《E・HEROロスト》!!」

エクストラデッキに眠る2体の戦士が融合し、漆黒のローブで全身を包んだ男が姿を現す。

ローブには何の装飾もなく、それでも質素というよりは何か奇妙さを感じさせる。

 

E・HEROロスト レベル8 攻撃0

 

エクストラ・フュージョン(漫画オリカ:調整)

通常魔法カード

「エクストラ・フュージョン」は1ターンに1度しか発動できず、発動したターン、自分は融合召喚以外の方法でモンスターを召喚・特殊召喚することができない。

(1):自分のエクストラデッキから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体を融合召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

 

「攻撃力0?拍子抜けするモンスターやな!《ユニコール》!そいつの力を封じたれ!」

「ううん、このカードの効果は封じられないよ!《ロスト》は自身をリリースすることで、相手フィールド上に表側表示で存在するすべてのモンスターの攻撃力を半分にし、更に効果も無効にするの!」

「何!?」

《E・HEROロスト》がローブを脱ぎ捨てる。

しかし、ローブの中には実体がなく、黒い霧しか存在しない。

その霧は漁介と里香の2体のモンスターを包み込む。

しばらくしれ霧が晴れると、《アトランティス・シャーク》と《ユニコールの影霊衣》はかなり疲れ切った状態でその場にいた。

 

アトランティス・シャーク ランク7 攻撃3800→1900

ユニコールの影霊衣 レベル4 攻撃1150→575

 

E・HEROロスト

レベル8 攻撃0 守備0 融合 闇属性 戦士族

レベル6以上の「HERO」融合モンスター+「魔装騎士ペイルライダー」

「E・HEROロスト」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードをリリースすることで発動できる。相手フィールド上に表側表示で存在するモンスターの効果を無効化し、攻撃力を半分にする。

 

「更に私は手札から魔法カード《フュージョニック・リバース》を発動!手札・フィールドのモンスターを素材に、墓地の融合モンスターを融合召喚できるよ!私は手札の《E・HEROフェザーマン》と《バブルマン》を融合!翼の制裁者よ、水のトリックスターよ、今こそ1つとなりて、新たなヒーローに進化せよ!融合召喚!蘇って、竜巻の王者、《E・HERO Great TORNADO》!!」

2体のモンスターがブラックホールの中へ消えると、入れ替わるように《E・HERO Great TORNADO》が現れる。

 

E・HERO Great TORNADO レベル8 攻撃2800

 

フュージョニック・リバース

通常魔法カード

「フュージョニック・リバース」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体を融合召喚扱いとして墓地から特殊召喚する。

 

「墓地から融合召喚…ということは…!!」

里香の顔が真っ青になる。

「うん。《Great TORNADO》の効果が発動するよ!ダウン・バースト!!」

再び発生する竜巻。

それは海の王者であろうとも無慈悲に滅びの運命を与える。

 

アトランティス・シャーク ランク7 攻撃1900→950 守備2000→1000

ユニコールの影霊衣 レベル4 守備500→250 攻撃575→278 

 

(なんということだーーー!あれほどまでの攻撃力を誇っていた《アトランティス・シャーク》が伊織選手のあざやかなコンボで一気に950にーーー!!)

「まだまだーー!私は手札から魔法カード《H-ヒートハート》と《アサルト・アーマー》を発動!《H-ヒートハート》は私のモンスター1体の攻撃力を500ポイントアップさせ、更に貫通効果も与える!」

《E・HERO Great TORNADO》の体が炎に包まれる。

 

E・HERO Great TORNADO レベル8 攻撃2800→3300

 

「更に装備された《アサルト・アーマー》の効果発動!このカードを墓地へ送ることで、このターン装備モンスターは2回攻撃できるよ!」

炎に包まれた《E・HERO Great TORNADO》が竜巻を起こす。

するとそれはみるみると凝縮されていき、最終的には《E・HERO Great TORNADO》そっくりな形となる。

「んなアホな…ウチらが負ける…?」

「…」

呆然とする里香に対して、漁介は静かにデュエルディスクを下げる。

敗北を認め、潔く攻撃を受ける覚悟を固めたようだ。

「バトル!《Great TORNADO》で攻撃ーーー!!」

《E・HERO Great TORNADO》とその幻影が力を合わせて炎の竜巻を起こす。

それは船を次々と焼きつくし、《アトランティス・シャーク》と《ユニコールの影霊衣》を灰にした。

 

漁介&里香

ライフ3550→1250→0

 

(決まったーーーー!!海賊の海での激戦を制したのは、翔太&伊織ペアだーーーー!!)

デュエル終了と同時に歓声が上がり、ソリッドビジョンが解除されていく。

「なんとか1回戦突破か…」

「ハハハ!!強いデュエリストじゃなあ!2人とも」

「悔しいわぁ…まさか1回戦負けって…」

敗北したにもかかわらず、大笑いする漁介と悔しそうにしている里香が翔太たちの元へ寄る。

「ううん、漁介君と里香ちゃんもすごかったよ!もしかしたら、私たちが負けていたかもしれないから」

「確かに今回は俺たちの負けじゃ。じゃが…次は絶対に負けん!!!」

「当たり前や!儀式モンスターの実力はまだまだこんなもんやない!!それを証明したる!」

盛り上がる3人。

完全に翔太は蚊帳の外だ。

 

「ふう…」

シャワーを浴びた翔太がデュエルを終えた選手専用の控室へ戻ってくる。

そこにはシャワーだけでなく、スポーツドリンクや氷、菓子などが置かれていて、疲労回復にもってこいだ。

「ねぇねぇ、翔太君。次はどんなデュエリストとデュエルができるのかなぁ?」

「関係ないな。相手がだれでも勝つだけだしな」

「もー…そんなことばっかりー…」

不満げな発言をする伊織だが、突然棒王環境が整っているはずのここまで聞こえるほど大きな歓声が聞こえる。

「何かあったのかな…?行こう、翔太君!」

「俺は忙しいんだ。ここでポカリを飲むっていう重要な仕事がある」

「そんなの後でもいーじゃん!!」

伊織に引っ張られる形で、翔太も控室を出ることになった。

控室を出て、観戦席へ向かう。

「う…嘘!?」

「…」

そこで2人が見たのは、LDS制服組の2人が相手のライフを1ポイントも削れないまま敗北しているところだった。

「…大したことのない相手だ」

彼らを相手としたのはたった1人。

白い鉢巻と茶色い厚着のコート、右手には杖を持ち左腕に手札を置くスペースが追加で取り付けられた赤いデュエルディスクをつけた黒いボサボサな髪の青年だった。

そして、彼の目は全く開いていなかった。




1回戦を無事に突破した翔太たち。
ここでまた新キャラが登場!
彼は一体…?


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第17話 盲目のデュエリスト

「…なんでこうなった?」

「あははは…なんでだろ?」

「キュイー」

苦笑いする伊織と想定外の事態に目を丸くする翔太。

そして、その2人の目の前で嬉しそうに油揚げが入った汁かけ飯を食べている《魔装妖ビャッコ》。

そして、そのビャッコは実体化している。

「ええっと、私が起きたときは翔太君のお腹の上でスヤスヤ寝てたよ?」

「少し腹が重いと思った理由がそれかよ…」

「最初見たときはぬいぐるみかと思ったけど、まさか本当にモンスターが出てくるなんて…」

伊織は汁かけ飯に夢中になっているビャッコに頭をなでる。

撫でられたビャッコは伊織を見て、微笑んだ。

(一体どうなってるんだ?こいつ…)

「あ、そうだ。翔太君!今日はどうしようか?」

「今日は俺たちの試合はないが、次の対戦相手について知りたいな」

「じゃあ、朝ご飯食べたらビャッコちゃんと一緒に行こうか!」

「おいおい、こいつを見られたら大騒ぎになる。こいつはホテルに置いて…」

「キュー!」

食べ終わったビャッコが鞄から葉っぱを取り出し、頭に乗せる。

そしてそのまま空中で一回転すると白い子猫に変化した。

「すごーい!変化できるんだね」

「狐は変化ができるって話をじいさんが言っていたな」

「ニャーン」

猫になったビャッコが伊織の足元でスリスリし始める。

(こいつ…俺のモンスターなのに、俺よりも伊織に懐いてないか?)

 

スタジアムにつくと、昨日デュエルを行っていない残りの組によるデュエルが行われていた。

「これでとどめだ!!《究極宝玉神レインボー・ドラゴン》でダイレクトアタック!!オーバー・ザ・レインボー!!」

七色の宝玉を体に埋め込み、青い翼をもつ白い蛇竜が虹色のブレスを相手に向けて放つ。

「ま、負けたぁ…」

 

デュエリスト

ライフ4000→0

 

「決まったーーーー!!勝者はハンス・アンデルセンとジェイク・クロコダイルだー!」

「よしっ!!よく頑張ったな、俺の宝玉獣たち」

「ウィナーは俺たちか。さあ、休憩室でレストしようぜ」

青い逆立った髪で、それと同じ色の服を着た少年と黒いジャケットと茶色いテンガロンハットを身に着けたハンスよりも身長が数センチ高い少年がハイタッチし、歓声が沸く中で休憩室へ向かう。

 

そして、1回戦の最終戦では…。

「《XYZ-ドラゴン・キャノン》でダイレクトアタック!X・Y・Zハイパーキャノン!」

青と黄色が基調のキャノン砲が2門ついた人型ロボットと赤い翼竜を模したロボット、そして黄色いキャタピラが合体した兵器から放たれた大出力な光線が壁のない相手デュエリストを焼き払った。

「ぐはああああ!!」

 

デュエリスト

ライフ1900→0

 

「決まったーーー!勝者、ジョー・ハインリヒとカイル・ディクソン!!」

左目だけメガネで隠していて、緑色のスーツを着た金髪の青年と金髪で伊達メガネとアメリカの軍服姿の青年が歓声を上げる観客たちに手を振ってこたえる。

そして、間髪入れることなく次のデュエルが始まる。

「さあ、残った50組のデュエリストのうち、本選へ出場できる組は25組のみ!さあ、本選へ出場できるのはどのタッグなのかーーー!!?さあ、記念すべき2回戦第1試合で戦うのは…彼らだーーーー!!」

青コーナーからは鬼柳とロットンが現れる。

そして、赤コーナーからはLDS制服組を破ったあのデュエリストが現れる。

「青コーナーは鬼柳一真選手とロットン・バーネル選手、そして赤コーナーはタッグデュエル大会であるにもかかわらず、たった1人で参加した盲目のデュエリスト、ジョンソン・オーベル!!」

ジョンソンは指定された場所につくと、その場で座り、杖を右耳の後ろに当てる。

(あいつ…なんで単独で参加したんだ?確かにこの大会は1人での参加も認められているが、その場合はデッキは1つだけでアクションカードに関してもかなりのハンデになるぞ…?)

「鬼柳!さっさとこいつを倒して、本選へ行こうぜ?」

「油断するなよ、ロットン。あいつは1人でLDSのエリートを倒すほどの力量だ。手加減なしで行かなきゃ勝てねえ」

「安心しろ。俺は鼻っから手加減する気はねえ。デュエルをする以上は全力で相手をハチの巣にしてやるぜ」

3人はデュエルの準備を整える。

(さあ、今回のデュエルフィールドはこれだーーーー!!フィールド魔法《深緑の熱帯雨林》発動ーーー!!)

「おお…こりゃあ幸先いいなぁ。お前がプロデュエリストのコブラを倒したときのフィールドじゃねえか」

「さあ、いくぜ」

MCがデュエル開始を宣言する。

「戦いの殿堂に集いしデュエリストたちが…モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い、フィールド内を駆け巡る!見よ、これぞ、デュエルの最強進化形、アクション…」

「「「デュエル!!」」」

 

ジョンソン

手札5

ライフ4000

 

ロットン&鬼柳

手札

ロットン5

鬼柳5

ライフ4000

 

「私の先攻、私は《シャドー・スパイダー》を召喚」

目が見えない状態で、《シャドー・スパイダー》のカードを的確に手に取り、デュエルディスクに置く。

彼はカードのわずかな感触の違いでそれが何のカードなのかわかるのだ。

すると、ジョンソンの影が伸びてその中から黒い蜘蛛が現れる。

 

シャドー・スパイダー レベル3 攻撃500

 

「更に手札から永続魔法《大樹海》を発動。このカードは表側表示で存在する昆虫族モンスターが破壊された時、そのコントローラーはデッキから同じレベルの昆虫族モンスター1体を手札に加えることができる。更に《シャドー・スパイダー》の効果発動。攻撃表示で存在するこのカードを守備表示にすることで、デッキからレベル4以下のスパイダーモンスター1体を特殊召喚できる。現れよ、《グランド・スパイダー》」

地中から土色の蜘蛛が現れ、ジョンソンの杖に糸をつけ、そこからフィールド上のいたるところに糸をまき散らす。

 

グランド・スパイダー レベル4 守備1500

シャドー・スパイダー レベル3 攻撃500→守備1600

 

「なんだ…!?蜘蛛の糸でいっぱいじゃねえか??」

《グランド・スパイダー》は川越えし、鬼柳とロットンがいるフィールドにまで糸をひろげはじめた。

(まずはこれで彼らの動きを見る。そして、《シャドー・スパイダー》が…)

ジョンソンがわずかに指を動かすと、《シャドー・スパイダー》は姿を消す。

「私はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

ターン終了と同時に、ジョンソンは再びその場に座る。

アクションカードを探す気配が一向にない。

 

ジョンソン

手札5→2

ライフ4000

場 グランド・スパイダー レベル4 守備1500

  シャドー・スパイダー レベル3 守備1600

  大樹海(永続魔法)

  伏せカード1

 

ロットン&鬼柳

手札

ロットン5

鬼柳5

ライフ4000

場 なし

 

「守備表示の蜘蛛が2匹かよ…気味が悪いぜ。俺のターン、ドロー!」

 

ロットン

手札5→6

 

「俺は手札から《ガトリング・オーガ》を召喚!」

 

ガトリング・オーガ レベル3 攻撃800

 

「《グランド・スパイダー》の効果発動」

ジョンソンが言葉を発すると同時に《グランド・スパイダー》が糸を吐き、《ガトリング・オーガ》を縛り付ける。

「何!?」

「《グランド・スパイダー》が表側守備表示で存在する状態で相手がモンスターを召喚・特殊召喚に成功した時、そのモンスターを守備表示にすることができる」

 

ガトリング・オーガ レベル3 攻撃800→守備800

 

「更に永続罠《ポイズン・ウェブ》を発動。1ターンに1度、スパイダーモンスター以外の守備表示モンスター1体を破壊する。私はその効果で《ガトリング・オーガ》を破壊する」

「何!?」

《ガトリング・オーガ》を包む糸が猛毒を放ち始める。

猛毒によって、弾薬が錆び、ガトリング砲もボロボロになっている。

そして、最終的には苦しみながら消滅してしまった。

「ちっくしょう!!よくも《ガトリング・オーガ》を!!」

「《ガトリング・オーガ》はお前のフィールドにセットされている魔法・罠カードを墓地へ送ることで、1枚につき800ポイントのダメージを与える効果がある。もし、お前の手札5枚がすべてそれなら、対処するに越したことはない」

翔太は当然知らないが、ロットンに後攻を取らせてはいけないという言葉があるらしい。

なぜならロットンに後攻を取らせたら最後、《ガトリング・オーガ》の効果で1ターンキルされる恐れがあるからだ。

しかし、《ガトリング・オーガ》はそれほどの強さゆえに制限カードとなっていて、現在では1枚がそれで残り5枚が魔法・罠カードとなる可能性は低くなっている。

「(ふん、だが俺の切り札は《ガトリング・オーガ》って訳じゃねえ。油断したところで弾丸を撃ち込んでやるぜ)俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド」

ターン終了宣言と同時に、ロットンはジョンソンとは対照的にフィールドを走り始める。

 

ジョンソン

手札5→2

ライフ4000

場 グランド・スパイダー レベル4 守備1500

  シャドー・スパイダー レベル3 守備1600

  大樹海(永続魔法)

  ポイズン・ウェブ(永続罠)

 

ロットン&鬼柳

手札

ロットン6→3

鬼柳5

ライフ4000

場 伏せカード2

 

ポイズン・ウェブ

永続罠カード

「ポイズン・ウェブ」の(1)の効果はメインフェイズ1にのみ発動できる。

(1):1ターンに1度、フィールド上に守備表示で存在する「スパイダー」モンスター以外の守備表示1体を破壊する。

 

(《ガトリング・オーガ》が破壊され、ロットンの1ターンキルは幻と消えたーーー!!《グランド・スパイダー》と《ポイズン・ウェブ》のコンボを封じない限り、ロットン選手と鬼柳選手は次々とモンスターを破壊されてしまうぞーーー!!)

「私のターン、ドロー」

 

ジョンソン

手札2→3

 

(ロットン…川の近くにある岩場に上り、そこから飛んで川を越えたか…)

杖を額に当て、ロットンの動きを予測する。

ロットンの行動で起こす風で起きた糸の揺れ、そして彼の足音がジョンソンの聴覚を刺激する。

「《シャドー・スパイダー》。ロットンのいる場所から東50メートルにある大木の上へ行け」

「よし!!アクションカード…何!?」

アクションカードのある大木の上へ手を伸ばそうとしたロットンの前に《シャドー・スパイダー》が現れる。

そして、蜘蛛の糸でアクションカードを封印してしまった。

「なんで俺の居場所がわかるんだ!?こいつ…」

「(盲目の人間を舐めてもらっては困る。アリは目が見えないが、触角が研ぎ澄まされているように、私は聴覚や触覚、更に味覚まで不思議と常人よりもいいのだ。そして、《グランド・スパイダー》が私のフィールドを作り出してくれた。ロットン、鬼柳。私のフィールドの中でもがくがいい)私は《代打バッター》を召喚」

人間以上の大きさの緑色で青い羽のバッタが現れる。

 

代打バッター レベル4 攻撃1000

 

「バトルだ。《代打バッター》でダイレクトアタック」

「ちっくしょう!!」

《代打バッター》が木から降りようとしているロットンに襲い掛かる。

(《代打バッター》の攻撃ーーー!!当たれば地上へまっさかさまだーーー!!)

「やらせるかよ!?罠カード《ガード・ブロック》!!俺への戦闘ダメージを0にし、デッキからカードを1枚ドローする!!」

バリアによって、《代打バッター》の攻撃を防いだが大木が大きく揺れる。

「くぅぅ…攻撃力1000でもこれか!?」

「ロットン!!」

「鬼柳!俺のことは気にするな、これくらいどうにでもなる!!!」

両腕が使えないロットンは口でカードをドローする。

 

ロットン

手札3→4

 

(必死だな…。だが)

攻撃の影響で、蜘蛛の糸に包まれたアクションカードが地に落ちる。

いつの間にか大木の下まで移動していたジョンソンは《グランド・スパイダー》に糸を処理させ、アクションカードを手に取る。

「《シャドー・スパイダー》は特殊召喚する効果を発動した次の私のターン終了時まで表示形式を変更できない。私はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

ジョンソン

手札3→2(うち1枚アクションカード)

ライフ4000

場 グランド・スパイダー レベル4 守備1500

  シャドー・スパイダー レベル3 守備1600

  代打バッター レベル4 攻撃1000

  大樹海(永続魔法)

  ポイズン・ウェブ(永続罠)

  伏せカード1

 

ロットン&鬼柳

手札

ロットン4

鬼柳5

ライフ4000

場 伏せカード1

 

シャドー・スパイダー

レベル3 攻撃500 守備1600 効果 闇属性 昆虫族

「シャドー・スパイダー」の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、相手は「シャドー・スパイダー」以外の昆虫族モンスターを攻撃対象にすることができない。

(2):攻撃表示で存在するこのカードを表側守備表示にすることで発動できる。デッキからレベル4以下の昆虫族モンスター1体を表側守備表示で特殊召喚する。この効果で守備表示となったこのカードは次の自分のターン終了時まで表示形式を変更できない。

 

「ふう、ふう…」

カードを咥えたまま、ロットンは無事に木から降りることに成功する。

その時、ジョンソンは再び座り、杖を当てていた。

(こいつ…聴覚だけで俺の行動を見ていたというのか!!?)

「俺のターン、ドロー」

 

鬼柳

手札5→6

 

「俺はカードを1枚伏せ、手札から魔法カード《煉獄の契約》を発動。手札が3枚以上存在するとき、手札をすべて墓地へ送る」

 

手札から墓地へ送られたカード

・インフェルニティ・ジェネラル

・インフェルニティ・ビートル

・インフェルニティ・ビースト

・インフェルニティ・アンカー

 

「4枚のカードを墓地へ送ったか…」

「そして、墓地からシンクロモンスター以外のインフェルニティモンスター1体を特殊召喚する。俺は《インフェルニティ・ジェネラル》を特殊召喚」

 

インフェルニティ・ジェネラル レベル7 攻撃2700

 

煉獄の契約(アニメオリカ・調整)

通常魔法カード

「煉獄の契約」は自分の手札が3枚以上で、メインフェイズ1の時にのみ発動できる。

(1):自分の手札をすべて墓地へ送り、墓地からSモンスター以外の「インフェルニティ」モンスター1体を選択して自分フィールド上に特殊召喚する。

 

「(《インフェルニティ・ジェネラル》…攻撃力2700の上級モンスター…)私は《グランド・スパイダー》の効果を発動。《インフェルニティ・ジェネラル》を守備表示にする」

《グランド・スパイダー》が糸で自身よりも何倍も大きい《インフェルニティ・ジェネラル》を縛り付ける。

そして同時の糸から紫色の毒があふれ出す。

「更に《ポイズン・ウェブ》の効果で守備表示の《インフェルニティ・ジェネラル》を破壊する」

毒によって、《インフェルニティ・ジェネラル》が《ガトリング・オーガ》と同じ運命をたどることになった。

「これでいい。《インフェルニティ・ジェネラル》の効果発動。俺の手札が0枚の時、このカードを墓地から除外することで墓地からレベル3以下のインフェルニティモンスター2体を効果を無効にして特殊召喚できる。俺は墓地から《インフェルニティ・ビースト》と《インフェルニティ・ビートル》を特殊召喚」

 

インフェルニティ・ビースト レベル3 攻撃1600

インフェルニティ・ビートル レベル2 攻撃1200(チューナー)

 

(《ポイズン・ウェブ》を逆手に取ったか…。そして、2体のうちの1体はチューナー…)

「レベル3の《ビースト》にレベル2の《ビートル》をチューニング。死神の刃、今こそ現世に降臨し、咎人を狩れ。シンクロ召喚!《インフェルニティ・デス》!!」

目が両頬や額にもついていて、左腕がない黒マントの死神が姿を現す。

 

インフェルニティ・デス レベル5 攻撃2200

 

「《インフェルニティ・デス》は手札が0枚の時、1ターンに1度相手フィールド上のこのカードの攻撃力以下のモンスター1体を墓地へ送り、相手に1000ポイントのダメージを与える」

「何…?」

「俺が墓地へ送るのは《シャドー・スパイダー》。死神の鎌!!」

《インフェルニティ・デス》は右手だけで鎌を振るう。

《シャドー・スパイダー》はその巨大仲間で両断され、消滅した。

「ちっ…!」

 

ジョンソン

ライフ4000→3000

 

「ならば私は手札からアクション魔法《日光浴》を発動。私は効果ダメージを受けたとき、そのダメージの倍の攻撃力を持つモンスター1体を手札から特殊召喚できる。私は手札から《クラッシュ・スパイダー》を特殊召喚」

背中に鎖付きの鉄球を複数装備している黒い蜘蛛が《グランド・スパイダー》の糸を伝って現れる。

そして、その糸を中心に更に糸のフィールドを展開した。

 

クラッシュ・スパイダー レベル5 攻撃2000

 

日光浴

アクション魔法カード

(1):自分が効果でダメージを受けたときに発動できる。その時受けたダメージの倍の数値の攻撃力を持つモンスター1体を手札から特殊召喚する。

 

「《インフェルニティ・デス》は効果を発動したターン、攻撃できない。俺はこれでターンエンドだ」

 

ジョンソン

手札2→0

ライフ3000

場 グランド・スパイダー レベル4 守備1500

  クラッシュ・スパイダー レベル5 攻撃2000

  代打バッター レベル4 攻撃1000

  大樹海(永続魔法)

  ポイズン・ウェブ(永続罠)

  伏せカード1

 

ロットン&鬼柳

手札

ロットン4

鬼柳6→0

ライフ4000

場 インフェルニティ・デス レベル5 攻撃2200

  伏せカード1

 

インフェルニティ・デス

レベル5 攻撃2200 守備1000 シンクロ 闇属性 悪魔族

「インフェルニティ・デス」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分の手札が0枚の時、相手フィールド上に存在するこのカードよりも攻撃力が低いモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターを墓地へ送り、相手に1000ダメージを与える。この効果を発動したターン、このカードは攻撃できない。

 

(ついに現れました、新たなインフェルニティシンクロモンスター、《インフェルニティ・デス》!!大ガマを振るう姿はまさに死神!!!)

「私のターン、ドロー」

 

ジョンソン

手札0→1

 

「私は《クラッシュ・スパイダー》の効果を発動。1ターンに1度、相手攻撃表示モンスター1体を守備表示にすることができる」

《クラッシュ・スパイダー》の背中から鉄球が飛ぶ。

そして、《インフェルニティ・デス》に近づくとそれが砕けて大量の糸となる。

その糸に縛り付けられた死神はそのまま地に落ちる。

 

インフェルニティ・デス レベル5 攻撃2200→守備1000

 

「そして、《ポイズン・ウェブ》の効果で《インフェルニティ・デス》を破壊する」

死神であっても毒にはかなわないのか、《インフェルニティ・デス》は砂となって消滅した。

「更に《クラッシュ・スパイダー》の効果発動。守備表示モンスターが破壊された時、相手に400ポイントのダメージを与える」

「何!?」

《クラッシュ・スパイダー》は鉄球を鬼柳に向けて発射する。

「ぐう…!!」

 

ロットン&鬼柳

ライフ4000→3600

 

クラッシュ・スパイダー

レベル5 攻撃2000 守備2000 効果 地属性 昆虫族

「クラッシュ・スパイダー」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):相手フィールド上に攻撃表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターの表示形式を表側守備表示に変更する。この効果は相手ターンでも発動できる。

(2):フィールド上に守備表示で存在するモンスターが破壊された時、相手に400ダメージを与える。

 

「バトルだ。私は《クラッシュ・スパイダー》と《代打バッター》でダイレクトアタック」

2体の蜘蛛が鬼柳に向けて突撃を仕掛けてくる。

「アクションカードは…」

近くに木に張り付けられた形でアクションカードが存在するが、すでに《グランド・スパイダー》が蜘蛛の糸で覆い隠していた。

「やらせるかよ!?罠カード《ピンポイント・ガード》を発動!相手の直接攻撃宣言時、墓地からレベル4以下のモンスター1体を守備表示で特殊召喚できる。《ガトリング・オーガ》を特殊召喚!!」

《ガトリング・オーガ》が鬼柳の前に立ち、2体の蜘蛛の攻撃を受け止める。

そして、ガトリング砲でアクションカードを覆っていた蜘蛛の糸を破壊する。

 

ガトリング・オーガ レベル3 守備800

 

「更にこの効果で特殊召喚された《ガトリング・オーガ》は戦闘およびカード効果で破壊されない!」

「助かったぜ、ロットン、《ガトリング・オーガ》!」

アクションカードを手に取り、2人に礼を言う鬼柳。

「だが、次のターンに《ポイズン・ウェブ》で破壊するだけだ」

「いいや、もうお前は次のターン《ポイズン・ウェブ》の効果を使えないぜ?」

「何?」

「俺はアクション魔法《ラフレシアの補食》を発動!相手フィールド上に表側表示で存在する魔法・罠カードを1枚破壊する!」

地中からラフレシアが現れ、《ポイズン・ウェブ》のソリッドビジョンが捕食されてしまった。

 

ラフレシアの補食

アクション魔法カード

(1):相手フィールド上に表側表示で存在する魔法・罠カードを1枚選択し、破壊する。

 

(おおーーー!!鬼柳一真選手とロットン・バーネル選手の見事な連携により、ジョンソン選手のスパイダーコンボを崩したぞーーーー!!!!)

《ポイズン・ウェブ》が失われ、このターン攻撃できるモンスターはいない。

「やるな…。私はこれでターンエンド」

 

ジョンソン

手札1

ライフ3000

場 グランド・スパイダー レベル4 守備1500

  クラッシュ・スパイダー レベル5 攻撃2000

  代打バッター レベル4 攻撃1000

  大樹海(永続魔法)

  伏せカード1

 

ロットン&鬼柳

手札

ロットン4

鬼柳0

ライフ3600

場 ガトリング・オーガ レベル3 守備800

 

「ジョンソンのフィールドには3体のモンスター。いずれも攻撃力が低いが…」

翔太は《代打バッター》に注視する。

ジョンソンの手札は1枚。

おそらく、その1枚は最上級の昆虫族モンスターだろう。

「俺のターン、ドロー!」

 

ロットン

手札4→5

 

「俺は《ガトリング・オーガ》をリリースし、手札から《マシンピストル・オーガ》を特殊召喚!」

《ガトリング・オーガ》がフィールドから消え、中から胸や腰、足に2つずつホルスターがあり、背中に大量の弾丸が入ったバッグがある悪魔が現れる。

 

マシンピストル・オーガ レベル6 攻撃2200

 

「ほう…」

「《ガトリング・オーガ》はまだまだ俺の力の一部でしかないぜ?更に俺は《マシンピストル・オーガ》の効果を発動。メインフェイズ1に手札を1枚捨てることで、攻撃力を次のお前のターン終了時まで800ポイント攻撃力がアップする。そして、この効果は1ターンに2回まで使うことができる!」

ロットンの手から2枚のカードが墓地へ送られる。

すると《マシンピストル・オーガ》がホルスターから2丁のマシンピストルを取り出して銃弾を補充する。

 

マシンピストル・オーガ レベル6 攻撃2200→3800

 

手札から墓地へ送られたカード

・リロード

・ダメージ・ダイエット

 

「あいつ…墓地から発動できる罠カードを墓地へ送ったぞ」

「それだけじゃないよ。あの人、鬼柳って人のインフェルニティモンスターの効果を自分でも使えるようにしているんだよ」

「ニャーン…」

緊張感のあるデュエルであるにもかかわらず、ビャッコはおいしそうにみたらし団子を食べるだけだった。

「バトルだ!《マシンピストル・オーガ》で《クラッシュ・スパイダー》を攻撃!!マシンピストル発射!!」

《マシンピストル・オーガ》がマシンピストルから数十発の弾丸を発射する。

「だが、《クラッシュ・スパイダー》の効果は…」

「《クラッシュ・スパイダー》の効果発動。1ターンに1度、相手攻撃表示モンスター1体を守備表示にする」

《クラッシュ・スパイダー》から発射された鉄球が銃弾を撃ち落とし、更に蜘蛛の糸が《マシンピストル・オーガ》の身動きを封じる。

 

マシンピストル・オーガ レベル6 攻撃3800→守備1800

 

「だが、こいつならどうだ!?俺は手札の《カービン・オーガ》の効果発動!こいつを手札から墓地へ送ることで、俺のオーガモンスターの攻撃力の半分の数値分相手にダメージを与える!《マシンピストル・オーガ》の攻撃力は3800。よって、てめえに1900のダメージを与える!!」

ドイツで作られたカービン銃と軍服を着た悪魔が《マシンピストル・オーガ》から弾丸を借り、それをジョンソンに向けて撃つ。

「…」

 

ジョンソン

ライフ3000→1100

 

カービン・オーガ

レベル1 攻撃400 守備400 効果 炎属性 悪魔族

「カービン・オーガ」の(1)の効果を発動したターン、自分はカードをセットすることができない。

(1):手札に存在するこのカードを墓地へ送り、自分フィールド上に存在する「オーガ」モンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターの攻撃力の半分の数値分のダメージを相手に与える。

 

「更に俺は手札から魔法カード《ディメンジョン・スナイプ》を発動!相手フィールド上の攻撃表示モンスター1体をゲームから除外する!」

《ディメンジョン・スナイプ》のソリッドビジョンから黒い銃弾が放たれる。

それを受けた《代打バッター》はそれを中心に生み出されたブラックホールに飲み込まれていった。

 

ディメンジョン・スナイプ

通常魔法カード

「ディメンジョン・スナイプ」は自分のターンのバトルフェイズ中に攻撃宣言した回数が1回以下の場合、そのターンのメインフェイズ2に1度だけ発動できる。

(1):相手フィールド上に攻撃表示で存在するモンスター1体をゲームから除外する。

 

(《代打バッター》の効果は墓地へ送られたときにしか発動できない。これで、あいつは上級昆虫族モンスター召喚のチャンスを1度逃した)

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド!(これであいつのライフは残り1100!あと少しで本選進出だ!)」

 

ジョンソン

手札1

ライフ1100

場 グランド・スパイダー レベル4 守備1500

  クラッシュ・スパイダー レベル5 攻撃2000

  大樹海(永続魔法)

  伏せカード1

 

ロットン&鬼柳

手札

ロットン0

鬼柳0

ライフ3600

場 マシンピストル・オーガ レベル6 守備1800

  伏せカード1

 

「私のターン、ドロー」

 

ジョンソン

手札1→2

 

「うーん…ライフ3600と1100かぁ…。勝負が見えてきちゃったね」

「いや…どうだろうな?」

「え?」

ジョンソンの表情を見るが、彼からは動揺の色が全くない。

そのわずかな笑みには自分の敗北をシナリオに入れていないように感じられる。

「私は《クラッシュ・スパイダー》を守備表示に変更。そして手札から《シャドー・スパイダー》を召喚」

 

シャドー・スパイダー レベル3 攻撃500

クラッシュ・スパイダー レベル5 攻撃2000→守備1900

 

「更に《シャドー・スパイダー》の効果を発動。このカードを守備表示にし、デッキからもう1体の《グランド・スパイダー》を特殊召喚」

 

グランド・スパイダー レベル4 守備1500

シャドー・スパイダー レベル3 攻撃500→守備1600

 

「更に手札から魔法カード《平蜘蛛の宝札》を発動。相手フィールド上の攻撃力3000以上のモンスターが存在し、私のフィールドに表側守備表示の昆虫族モンスターが3体以上存在するとき、デッキからカードを2枚ドローする」

 

ジョンソン

手札2→1→2

 

平蜘蛛の宝札

通常魔法カード

「平蜘蛛の宝札」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):相手フィールド上の攻撃力3000以上のモンスターが存在し、私のフィールドに表側守備表示の昆虫族モンスターが3体以上存在するとき、デッキからカードを2枚ドローする。

 

「来た…。私のエースカード」

ジョンソンは手にしたカードのうちの1枚の感触からさらに笑みを浮かべる。

そのカードは自分をデュエルの世界を導いた最初のカードだ。

「このカードは私のフィールドに表側守備表示で存在する昆虫族モンスター3体をリリースすることで、手札から特殊召喚できる。《シャドー・スパイダー》、《グランド・スパイダー》2体をリリース」

3体の蜘蛛が一斉に糸を吐き、巨大な繭の中に自分たちを包み込む。

「ま、繭だと…!?」

「気をつけろ…あいつのエースモンスターが来るぞ…!」

「熱帯雨林に潜む蜘蛛の王よ、獲物たちに死の糸を与えろ!!《土蜘蛛王ルブロン》!!」

繭がはじけ飛ぶと、その中から20メートル近くある巨体を持つ土蜘蛛型のモンスターが姿を現す。

 

土蜘蛛王ルブロン レベル10 攻撃2000

 

「な…攻撃力たった2000?」

(レベル10で攻撃力2000か…。何かあるな?)

「それより翔太君!!」

「うん…?」

伊織に顔を向けると、急に口にポッキーが1本入ってくる。

思わず口に咥えると、もう片方から伊織がポッキーを口にする。

「ポッキーゲーム…しよ?」

「・・・・!!!!?????」

なぜだ、なぜそんなことを俺とするんだ!?といいたげな顔の翔太を尻目に伊織がポッキーをゆっくりと食べていく。

(や…やめろ!!?ちょっと待て、まだ恋人じゃないだろ!!?何があったんだ!?いくら11月11日はポッキーの日だとはいえ、今作者が書いているときはもう過ぎてるぞ!?最後まですると彼女がいない作者が泣くぞ!!!?)

ここから翔太がどうなったのかは読者の想像に任せよう。

ポッキーゲームの結末を書く勇気が今の作者にはないのだ。

一つだけ言えるのは、こうしている間もビャッコは大好物のみたらし団子を食べていることだけだ。

 

「《ルブロン》の効果発動。1ターンに1度、相手の表側守備表示モンスター1体を攻撃力1000アップの装備カードとしてこのカードに装備することができる」

「なんだと!!!?」

《土蜘蛛王ルブロン》が大量に糸を吐き、《マシンピストル・オーガ》の身動きを封じる。

そして、それを繭にして自身のそばへ移動させた。

 

土蜘蛛王ルブロン レベル10 攻撃2000→3000

 

(くそ…!《マシンピストル・オーガ》は戦闘で破壊された時、墓地から《ガトリング・オーガ》を特殊召喚できるが、装備カードにされたら無理だ!!)

 

マシンピストル・オーガ

レベル6 攻撃2200 守備1800 効果 炎属性 悪魔族

このカードは通常召喚できない。

このカードは自分フィールド上に表側表示で存在する「ガトリング・オーガ」1体をリリースすることでのみ手札から特殊召喚できる。

(1):手札を1枚墓地へ送ることで発動できる。このカードの攻撃力は次の相手のターン終了時まで攻撃力が800アップする。この効果は1ターンに2度まで使用できる。

(2):このカードが戦闘で破壊され墓地へ送られた時、墓地から「ガトリング・オーガ」1体を特殊召喚できる。

 

「終わりだ…。《土蜘蛛王ルブロン》と《クラッシュ・スパイダー》でダイレクトアタック」

2体の蜘蛛が鬼柳とロットンめがけて大量の糸を吐く。

「く…!!罠発動!《くず鉄のかかし》!!こいつで《ルブロン》の攻撃を無効にする!!」

《くず鉄のかかし》が鬼柳の前に出て《土蜘蛛王ルブロン》の攻撃を防ぐ。

しかし、《クラッシュ・スパイダー》の糸がロットンを大木に縛り付ける。

「ぐうう…!!」

 

ロットン&鬼柳

ライフ3600→1600

 

「ほう…相棒を守ることを優先したか」

「当たり前だ…!次に動くのは鬼柳。なら、俺への攻撃を防ぐわけにはいかないだろ…?」

「…。私はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

ジョンソン

手札2→0

ライフ1100

場 土蜘蛛王ルブロン(《マシンピストル・オーガ》装備) レベル10 攻撃3000

  クラッシュ・スパイダー レベル5 攻撃2000

  大樹海(永続魔法)

  伏せカード2

 

ロットン&鬼柳

手札

ロットン0

鬼柳0

ライフ1600

場 伏せカード1(《くず鉄のかかし》)

 

「ロットン!!」

ロットンを縛る糸をほどこうと、鬼柳が駆けつける。

「何やっているんだ鬼柳!俺のことより、まずはてめえのターンを進めろ!」

「ロットン…」

「生憎俺は疲れてるんだ。てめえのターンの間くらい休ませろ」

「…。俺のターン、ドロー」

 

鬼柳

手札0→1

 

「俺は手札から《インフェルニティ・デーモン》を特殊召喚。このカードは俺の手札が0枚の状態でこのカードをドローした時、特殊召喚できる」

 

インフェルニティ・デーモン レベル4 攻撃1800

 

「更にこのカードの特殊召喚に成功した時、デッキからインフェルニティカード1枚を手札に加える」

「罠発動。《毒蜘蛛の晩餐》。私のフィールドの昆虫族モンスター1体と相手フィールド上のカード2枚を破壊する」

「何!?」

《クラッシュ・スパイダー》が毒を纏って突撃し、鬼柳とロットンの2枚のカードが破壊される。

「更に《大樹海》の効果を発動。デッキから《マザー・スパイダー》を手札に加える」

 

毒蜘蛛の晩餐

通常罠カード

(1):自分フィールド上に表側表示で存在する昆虫族モンスター1体と相手フィールド上に存在するカード2枚を破壊する。

 

「ちっ…!だが俺はまだまだ止まらねえ。俺は手札から《インフェルニティ・ミラージュ》を召喚!」

暗い色彩のポンチョを身に着けた赤い髪のネイティヴアメリカン風の悪魔が現れる。

 

インフェルニティ・ミラージュ レベル1 攻撃0

 

「このカードは手札が0枚の時、このカードをリリースすることで墓地からインフェルニティモンスター2体を特殊召喚できる。俺は《インフェルニティ・デーモン》と《インフェルニティ・アンカー》を特殊召喚」

《インフェルニティ・デーモン》と共に左腕にアンカーをつけた水夫姿のゴリラが現れる。

 

インフェルニティ・デーモン レベル4 攻撃1800

インフェルニティ・アンカー レベル5 攻撃1800

 

「更に《インフェルニティ・デーモン》と《インフェルニティ・アンカー》の特殊召喚に成功したことで、俺はデッキから《インフェルニティガン》と《インフェルニティ・ビショップ》を手札に加える。そして、手札から《インフェルニティガン》を発動!このカードは1ターンに1度、俺の手札からインフェルニティモンスター1体を墓地へ送ることができる」

鬼柳の手札から《インフェルニティ・ビショップ》が墓地へ送られ、再び手札が0枚となる。

 

インフェルニティ・アンカー

レベル5 攻撃1800 守備2300 効果 闇属性 悪魔族

(1):このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから「インフェルニティ」モンスター1枚を選択して手札に加える。

 

「始まるね、翔太君。鬼柳って人の逆襲が」

「…ああ…」

ドキドキしながら観戦する伊織の隣で、翔太は真っ赤に染まった顔を必死にパンフレットで隠していた。

「《インフェルニティ・ガン》の効果発動。手札が0枚の時、このカードを墓地へ送ることで墓地からインフェルニティモンスターを2体まで特殊召喚できる。現れろ、《インフェルニティ・デス》!《インフェルニティ・ビートル》!!」

 

インフェルニティ・ビートル レベル2 攻撃1200(チューナー)

インフェルニティ・デス レベル5 攻撃2200

 

「更に《インフェルニティ・ビートル》の効果発動。手札が0枚の時、このカードをリリースすることでデッキから《インフェルニティ・ビートル》を2体まで特殊召喚できる」

 

インフェルニティ・ビートル×2 レベル2 攻撃1200(チューナー)

 

(なんという展開!!鬼柳選手、たった1ターンで5体ものインフェルニティモンスターを呼び出したぞ!!これが無手札必殺の恐ろしさだーーー!!)

「5体のモンスターのうち、2体がチューナーモンスター。シンクロ召喚が少なくとも2回できる。しかし、《オーガ・ドラグーン》のレベルは8。この状況での召喚は無理だ」

今の鬼柳のデッキで最強の攻撃力を持つと思われるモンスターは攻撃力3000の《煉獄龍オーガ・ドラグーン》。

しかし、今の彼のフィールドの状況ではシンクロ召喚できるモンスターのレベルは6、7、9、10、12のいずれかだ。

「俺はレベル5の《インフェルニティ・デス》にレベル2の《インフェルニティ・ビートル》をチューニング。奈落の底より這い上がりし死霊の騎士よ、煉獄の炎を纏って今こそ降臨せよ。シンクロ召喚!現れろ、《煉獄騎士インフェルニティ・ボーンナイト》」

鬼柳の目の前に巨大な穴が現れ、そこから赤い炎に包まれた黒鎧の骸骨騎士が姿を現す。

その炎は周囲の蜘蛛の糸に燃え移っていく。

(ちっ…。炎で私のアドバンテージを崩すか)

 

煉獄騎士インフェルニティ・ボーンナイト レベル7 攻撃2100

 

(攻撃力2100?レベル7のシンクロモンスターにしては低すぎる)

「《インフェルニティ・ボーンナイト》の効果発動。手札が0枚の時にこのカードの特殊召喚に成功した時、俺のフィールドに存在するモンスター1体に付き500ポイント攻撃力がアップする。俺のフィールドには4体のモンスターが存在する。よって、攻撃力が2000ポイントアップする!」

《煉獄騎士インフェルニティ・ボーンナイト》が更に燃え上がると、炎の一部がロットンを包んでいた糸に燃え移る。

「熱い熱つつつつつ!!鬼柳!もっとマシな助け方があっただろう!?」

 

煉獄騎士インフェルニティ・ボーンナイト レベル7 攻撃2100→4100

 

「よし…!攻撃力4100なら、あのでかい蜘蛛を倒せるぜ!」

「バトルだ。《インフェルニティ・ボーンナイト》で《ルブロン》を攻撃」

《煉獄騎士インフェルニティ・ボーンナイト》の両手剣に宿っていた炎が更に燃え上がり、《土蜘蛛王ルブロン》を切り裂こうとする。

「罠発動。《進入禁止!No Entry!!》。フィールド上に攻撃表示で存在するモンスターをすべて守備表示に変更する」

 

土蜘蛛王ルブロン レベル10 攻撃3000→守備2000

インフェルニティ・デーモン レベル4 攻撃1800→守備1200

インフェルニティ・アンカー レベル5 攻撃1800→守備2300

煉獄騎士インフェルニティ・ボーンナイト レベル7 攻撃4100→守備2000

インフェルニティ・ビートル レベル2 攻撃1200→守備0(チューナー)

 

守備表示になったためか、《煉獄騎士インフェルニティ・ボーンナイト》の炎が消えてしまった。

「《ルブロン》。再び蜘蛛の巣を作れ」

《土蜘蛛王ルブロン》が体のいたるところから糸を吐き、巨大な巣を生み出しはじめる。

「こいつは…!!」

そんな中、ロットンが川を流れるアクションカードを見つけ、走り始める。

(この足音…走っているな。西…川か!?)

ジョンソンは立ち上がり、走り始める。

両者の走るスピードは互角だが、ロットンの方が川に近かった。

「よし…!!」

ロットンはアクションカードを手にする。

「俺は手札からアクション魔法《挑発》を発動!バトルフェイズ中にのみ、互いのフィールドの守備表示モンスターをすべて攻撃表示にする!」

「何!?」

守備表示になっていた5体のモンスターが攻撃表示となり、《煉獄騎士インフェルニティ・ボーンナイト》の体が再び燃え上がる。

 

土蜘蛛王ルブロン レベル10 守備2000→攻撃3000

インフェルニティ・デーモン レベル4 守備1200→攻撃1800

インフェルニティ・アンカー レベル5 守備2300→攻撃1800

煉獄騎士インフェルニティ・ボーンナイト レベル7 守備2000→攻撃4100

インフェルニティ・ビートル レベル2 守備0→攻撃1200(チューナー)

 

 

挑発

アクション魔法カード

(1):バトルフェイズ中にのみ発動できる。お互いのフィールドに表側守備表示で存在するモンスターをすべて攻撃表示に変更する。

 

「決めろ、鬼柳!!」

「ああ…ロットン!!俺は《インフェルニティ・ボーンナイト》の効果発動!手札が0枚の時、もう1度だけ攻撃することができる!再び《土蜘蛛王ルブロン》を攻撃!」

《煉獄騎士インフェルニティ・ボーンナイト》が燃え上がる両手剣で《土蜘蛛王ルブロン》を切り裂こうとする。

しかし、切り裂いたのは《土蜘蛛王ルブロン》ではなく繭に閉じ込められた《マシンピストル・オーガ》だった。

「何!?」

「《土蜘蛛王ルブロン》の効果発動。このカードが攻撃対象となった時、このカードの効果で装備されたカードを墓地へ送ることで戦闘を無効にし、バトルフェイズを終了する」

「く…!2回目の攻撃宣言を行った《インフェルニティ・ボーンナイト》はバトルフェイズ終了と同時に破壊される。だが、《インフェルニティ・ビショップ》の効果を発動。手札が0枚でこのカードが墓地に存在するとき、1ターンに1度だけ俺のモンスター1体をカード効果による破壊から守る」

 

土蜘蛛王ルブロン レベル10 攻撃3000→2000

 

煉獄騎士インフェルニティ・ボーンナイト

レベル7 攻撃2100 守備2000 シンクロ 闇属性 アンデッド族

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

「煉獄騎士インフェルニティ・ボーンナイト」は1ターンに1度しか特殊召喚できない。

(1):このカードの特殊召喚に成功した時、手札が0枚の場合、このカードの攻撃力を自分フィールド上に存在するモンスター1体につき500アップする。

(2):このカードが攻撃を行ったダメージステップ終了時、もしくは攻撃が無効にされた時、手札が0枚の場合に発動できる。続けてもう1度だけ攻撃できる。この効果を発動したターンのバトルフェイズ終了時にこのカードは破壊される。

 

「さあ…次に何をする?」

「俺はレベル4の《インフェルニティ・デーモン》にレベル2に《インフェルニティ・ビートル》をチューニング。シンクロ召喚。現れろ、《天狼王ブルー・セイリオス》。俺はこれでターンエンド」

 

ジョンソン

手札0→1(《マザー・スパイダー》)

ライフ1100

場 土蜘蛛王ルブロン レベル10 攻撃2000

  大樹海(永続魔法)

 

ロットン&鬼柳

手札

ロットン0

鬼柳1→0

ライフ1600

場 煉獄騎士インフェルニティ・ボーンナイト レベル7 攻撃4100

  インフェルニティ・アンカー レベル5 攻撃1800

  天狼王ブルー・セイリオス レベル6 攻撃2400

 

「私のターン、ドロー」

 

ジョンソン

手札1→2

 

「私は手札から《ブレイク・スパイダー》を召喚」

テントウムシのような模様になったいる片目の蜘蛛が現れる。

 

ブレイク・スパイダー レベル1 攻撃0

 

「このカードをリリースすることで、相手フィールド上のモンスター2体の表示形式を変更する」

「何!?」

《ブレイク・スパイダー》が自らの体を巨大なクモの巣へ変化させる。

そして、《煉獄騎士インフェルニティ・ボーンナイト》と《天狼王ブルー・セイリオス》が巣に囚われてしまう。

囚われた《煉獄騎士インフェルニティ・ボーンナイト》は炎で巣を焼き払おうとするが、糸から放たれた魔力で炎を封じられてしまう。

 

煉獄騎士インフェルニティ・ボーンナイト レベル7 攻撃4100→守備2000

天狼王ブルー・セイリオス レベル6 攻撃2400→守備1500

 

ブレイク・スパイダー

レベル1 攻撃0 守備0 効果 闇属性 昆虫族

「ブレイク・スパイダー」の(1)の効果は相手ターンでも発動できる。

(1):このカードをリリースし、相手フィールド上に存在するモンスター2体を選択して発動できる。選択したモンスターの表示形式を変更する。

 

「くそ…!!《ブルー・セイリオス》と《インフェルニティ・ボーンナイト》が!!」

「更にこのカードは私の墓地に存在するモンスターが昆虫族モンスターのみで、相手フィールド上に表側守備表示で存在するモンスター2体をリリースすることで手札から特殊召喚できる。《マザー・スパイダー》を特殊召喚」

「し、しまった!!?」

紫色で大きなメスの蜘蛛が現れ、2体のシンクロモンスターを刀のような6本の足でバラバラにして頬張った。

 

マザー・スパイダー レベル6 攻撃2300

 

「鬼柳一真、ロットン・バーネル。ここまでだ」

2体の蜘蛛が鬼柳とロットンに狙いを定める。

アクションカードを探そうにも、2人は2体が作った蜘蛛の巣に包囲され、逃げ道を失っている。

「くっそう!!ここまでか…」

「《インフェルニティ・アンカー》でも蜘蛛の糸が切れない!!」

2体の蜘蛛から大量の糸が放たれる。

「「うわあああ!!」」

 

ロットン&鬼柳

ライフ1600→1400→0

 

土蜘蛛王ルブロン

レベル10 攻撃2000 守備2000 効果 地属性 昆虫族

このカードは通常召喚できない。

このカードは自分フィールド上に表側守備表示で存在する昆虫族モンスターを3体リリースすることのみ手札から特殊召喚できる。

(1):1ターンに1度、相手フィールド上に表側守備表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。選択したカードを攻撃力1000アップの装備カード扱いにしてこのカードに装備する。

(2):このカードが攻撃対象となった時、(1)の効果で装備カードとなったカード1枚を墓地へ送ることで発動できる。戦闘を無効にし、バトルフェイズを終了させる。

(3):(1)の効果で装備カードとなっているカードが2枚以上存在する場合、このカードは効果では破壊されない。

 

(決まったーーーー!!本選出場を最初に決めたのはジョンソン・オーベル選手だーーーー!!)

「まさかあの鬼柳がここで消えるなんてな…」

プロデュエリストであるコブラを破るほどの力量の鬼柳がここで敗北するということを翔太はいまだに信じられなかった。

「しかもたった1人で…」

(スパイダーデッキ…表側守備表示モンスターを倒すのに特化したデッキ…。めんどくさい相手が予選通過した…!!)




鬼柳&ロットンペア敗退!!
ジョンソンのスパイダーデッキと翔太と伊織は戦うことになるのだろうか…!!?


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第18話 灼熱兄弟

「はーい、ビャッコちゃん。お昼御飯だぞー♪」

「キュイーーー!!」

昼になってホテルへ戻ると、伊織は和菓子屋の屋台で購入した厄除け団子をビャッコに食べさせる。

ちなみに、今のビャッコは猫ではなく元の姿だ。

一方、翔太は近くのファーストフード屋で購入したハンバーガーを口にする。

「もー、翔太君。せっかく愛知まで来たんだから、ここでしか食べれないものを食べようよー?」

「腹に入ったら全部同じだろ?」

「ハンバーガーばっかりだと栄養偏るよ?ほら!!」

伊織は袋から厄除け饅頭を翔太に見せる。

「食わない」

「えーー?優勝祈願だと思って食べてよー」

「お前が食べればいいだろ?」

「…」

頬を膨らませた伊織が団子を食べ終えたビャッコを抱き上げる。

「ビャッコちゃん、お願い!」

「キュイ!!」

「何する…!!?」

翔太の口が勝手に開く。

ビャッコの目はなぜか青く光っていた。

「ビャッコ…こんな力が…!?」

「ありがとねー。さあ、観念せい!!」

伊織が翔太の口に厄除け団子を入れると、今度は口が勝手に閉じる。

(…本当にコイツ、俺のモンスターか?)

恨めしそうにビャッコを見ながら、翔太は口を動かした。

 

(さあさあ、昼の休憩は終わりだ!!これから2回戦第10試合が始まる!!さあ、デュエリストの登場だーーー!!)

「さあ行こう!翔太君!!」

「はあ…言われなくてもな」

団子のことを根に持つ翔太が伊織とともに赤コーナーに出る。

それに対し、対戦相手であるオブライエン兄弟が青コーナーに出てきた。

「兄さん、奴らはジョンソンを除くと大きな不安材料だ」

「問題ない。もし相手が危険ならば、隠し球を使えばいい」

「だがあれは本選のために…」

「相手が相手なら、それも仕方がないだろう?」

(今回のフィールドは…これだーーーー!!フィールド魔法《辺境の牙王城》発動!!!」

中央に古代の岩城が中央にある森が現れる。

そして、MCがデュエル開始の宣言をする。

「戦いの殿堂に集いしデュエリストたちが…モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い、フィールド内を駆け巡る!見よ、これぞ、デュエルの最強進化形、アクション…」

「「「「デュエル!!」」」」

 

伊織&翔太

手札

伊織5

翔太5

ライフ4000

 

ボマー&オスロ

手札

ボマー5

オスロ5

ライフ4000

 

「私の先攻!私は手札から《E・HEROフレイムバッシャー》を召喚!」

炎を宿した刀を差した野武士が姿を現す。

頭髪と無精髭、そして目の色は赤く、手甲にも炎は宿っている。

 

E・HEROフレイムバッシャー レベル4 攻撃1800

 

(《フレイムバッシャー》…。伊織の新しいHEROか)

「更に、私は手札から《E・HEROスノーピクシー》の効果発動!このカードと私のフィールドのE・HERO1体を素材に融合召喚することができる!」

黒い長髪と瞳、そして真っ白な花びらのようなドレスと雪の結晶を模した髪飾りが特徴的な妖精が現れ、《E・HEROフレイムバッシャー》と共に融合していく。

「炎の野武士よ!雪の妖精よ!今こそ1つになりて、新たなヒーローに進化せよ!融合召喚!現れて、永久凍土の申し子、《E・HEROアブソルートZero》!!」

 

E・HEROアブソルートZero レベル8 攻撃2500

 

E・HEROスノーピクシー

レベル3 攻撃200 守備200 効果 水属性 天使族

「E・HEROスノーピクシー」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):エクストラデッキに存在する融合モンスター1体を選択して発動できる。融合素材として手札に存在するこのカードと自分フィールド上に存在する「E・HERO」モンスター1体を墓地へ送ることで、その融合モンスター1体を融合召喚する。

 

(《融合》なしで融合召喚…)

「更に融合素材になった《フレイムバッシャー》の効果発動!このカードを融合素材とした融合モンスターの攻撃力は400ポイントアップして、更に貫通効果もゲット!」

《E・HEROアブソルートZero》の拳に炎が宿る。

仲間の炎であるためか、体を覆う氷は解けることがない。

 

E・HEROアブソルートZero レベル8 攻撃2500→2900

 

E・HEROフレイムバッシャー

レベル4 攻撃1800 守備200 効果 炎属性 戦士族

(1):このカードは「HERO」融合モンスター以外のモンスターの融合素材にすることができない。

(2):このカードを融合素材として融合召喚に成功した時、そのモンスターを対象に発動する。そのモンスターの攻撃力は400ポイントアップする。更に、守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

 

今回、伊織が新たに手にしたE・HERO達は施設の子供たちが誕生日プレゼントとして小遣いをためて手に入れたカードだ。

その新しいHERO達は融合に更に特化していて、それが彼女のデッキの爆発力を高めている。

「そしてこのカードは通常召喚できないけど、私のフィールドにHEROと名のつく融合モンスターが存在するとき、手札から特殊召喚できるよ!《E・HEROスカイランナー》を特殊召喚!」

胸元が開いた白い服と緑のマントを装備した金髪の少女が現れる。

伊織の前に立つと、腰にさしていた長剣を抜く。

 

E・HEROスカイランナー レベル3 攻撃1200

 

「更にこのカードの特殊召喚に成功した時、デッキ・墓地から融合またはフュージョンと名がつく魔法カード1枚を手札に加えることができるよ。私はデッキから《ミラクル・フュージョン》を手札に加えるよ!」

 

E・HEROスカイランナー

レベル3 攻撃1200 守備1000 効果 風属性 戦士族

このカードは召喚できない。

自分フィールド上に「HERO」融合モンスターが表側表示で存在するとき、手札から特殊召喚できる。

「E・HEROスカイランナー」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードの特殊召喚に成功した時、デッキ・墓地から「フュージョン」、「融合」魔法カード1枚を手札に加える事ができる。

 

「そして、《ミラクル・フュージョン》発動!このカードは墓地とフィールドのモンスターを素材にE・HEROを融合召喚するよ!墓地の《スノーピクシー》と《フレイムバッシャー》を融合!炎の野武士よ!雪の妖精よ!今こそ1つになりて、新たなヒーローに進化せよ!融合召喚!現れて、紅蓮の申し子、《E・HEROノヴァマスター》!!」

 

E・HEROノヴァマスター レベル8 攻撃2600

 

「そして、このカードも《フレイムバッシャー》の効果を受けるよ!」

 

E・HEROノヴァマスター レベル8 攻撃2600→3000

 

(最初のターンに2体の融合モンスター…。さすがだ、伊織)

「私はこれでターンエンド!さ、《Zero》!!力を貸して!!」

《E・HEROアブソルートZero》が待機中の水分を集め、それで氷の滑り台を作る。

「じゃあ翔太君、アクションカードを探してくるね」

軽く肩をたたくと、伊織は滑り台を滑り、森の中へ入って行った。

 

伊織&翔太

手札

伊織5→2

翔太5

ライフ4000

場 E・HEROスカイランナー レベル3 攻撃1200

  E・HEROノヴァマスター(《E・HEROフレイムバッシャー》の影響下)レベル8 攻撃3000

  E・HEROアブソルートZero(《E・HEROフレイムバッシャー》の影響下) レベル8 攻撃2900

 

ボマー&オスロ

手札

ボマー5

オスロ5

ライフ4000

場 なし

 

「3体のE・HEROか…」

城のベランダから伊織の動きを見る。

彼女の左右を守るように《E・HEROノヴァマスター》と《E・HEROアブソルートZero》が展開し、《E・HEROスカイランナー》が上空でアクションカードを探し続ける。

「オスロ、アクションカードを探せ。可能であれば、それで援護を頼む」

「了解だ、兄さん」

いつの間に森の中にいたオスロはデュエルディスクで通信を受けると、走り始める。

「私のターン!」

 

ボマー

手札5→6

 

「私は手札から魔法カード《融合》を発動」

「ええ!?あの人も融合を…?」

「手札の《ヴォルカニック・バレット》と《トラップ・リアクター・RR》を融合する」

薄い緑色で目がなく、手足のある炎を纏った小さなワニ型モンスターと人間と戦闘機が融合したかのような緑色の機械が現れ、融合する。

「灼熱の弾丸よ!罠を撃ちぬく機銃よ!今こそ1つとなりて、敵に張り付く爆弾となれ。融合召喚!現れろ、《起爆獣ヴァルカノン》!!」

 

起爆獣ヴァルカノン レベル6 攻撃2300

 

「ウゲゲ…!!」

《起爆獣ヴァルカノン》の姿を見て伊織の顔が青くなる。

「《ヴァルカノン》の効果発動。このカードの融合召喚に成功した時、このカードと相手モンスター1体を破壊し、破壊した相手モンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える!」

《起爆獣ヴァルカノン》が《E・HEROアブソルートZero》に張り付くと、尾が点火する。

「融爆!!」

爆発までのタイムラグは5秒。

伊織は木の枝に引っかかっているアクションカードを取り、発動する。

「アクション魔法《透明》!!私のモンスター1体はこのターン、相手のカード効果を受けず、その対象にもなら…」

《起爆獣ヴァルカノン》を引きはがし、透明になろうとした《E・HEROアブソルートZero》が突然発生した砂嵐に飲み込まれ、姿が隠せなくなる。

「何!?そういえば…」

翔太は自らの迂闊さに舌打ちする。

伊織のターンの間にオスロがすでにアクションカード捜索に森へ入ったことに気付いていなかったのだ。

そして、オスロが今どこにいるのか森のせいで分からない。

「アクション魔法《砂嵐》。バトルフェイズ中の間に相手が発動したアクションカードの発動を無効にし、破壊する」

「これで《アブソルートZero》は隠れることはできない。散れ!!!」

再び取りついた《起爆獣ヴァルカノン》。

それと同時に大爆発し、燃え上がる《E・HEROアブソルートZero》と共に森へ落ちる。

「キャア!!」

「伊織!!」

 

伊織&翔太

ライフ4000→1100

 

透明(アニメオリカ)

アクション魔法カード

(1):自分フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。このターンそのモンスターは相手の効果の対象にならず、効果も受けない。

 

(なんという見事なプレー!!伊織選手の切り札、《E・HEROアブソルートZero》を葬り、更に2900ものダメージを与えたぞーーーー!!)

《E・HEROアブソルートZero》にはフィールドから離れたときに相手フィールド上のモンスターをすべて道連れにする効果がある。

しかし、《起爆獣ヴァルカノン》無き今彼らのフィールドにはモンスターがいない。

「手札から《リアクター・リペアラー》を召喚」

赤いゴーグルをつけ、緑色の帽子と作業着をつけたエンジニアの老人が姿を現す。

 

リアクター・リペアラー レベル3 攻撃1300

 

「このカードをリリースすることで、手札・墓地からリアクターモンスター1体を特殊召喚できる。私は《トラップ・リアクター・RR》を特殊召喚!」

《リアクター・リペアラー》が《起爆獣ヴァルカノン》の残骸で《トラップ・リアクター・RR》の修復を行う。

修復を受けた《トラップ・リアクター・RR》は《リアクター・リペアラー》を乗せて飛行し始める。

 

トラップ・リアクター・RR レベル4 守備1800

 

リアクター・リペアラー

レベル3 攻撃1300 守備1700 チューナー 闇属性 機械族

「リアクター・リペアラー」の(1)の効果はメインフェイズ1にのみ発動できる。

(1):このカードをリリースすることで発動できる。手札・墓地から「リアクター・リペアラー」以外の「リアクター」モンスター1体を特殊召喚する。

 

「そして私は手札から魔法カード《闇工房との取引》を発動。手札の闇属性・機械族・レベル5以上モンスター1体を墓地へ送り、デッキからカードを2枚ドローする。そしてカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

手札から墓地へ送られたカード

・サモン・リアクター・AI

 

闇工房との取引

通常魔法カード

(1):手札の闇属性・機械族・レベル5以上モンスター1体を墓地へ送ることで発動できる。デッキからカードを2枚ドローする。

 

伊織&翔太

手札

伊織2

翔太5

ライフ1100

場 E・HEROスカイランナー レベル3 攻撃1200

  E・HEROノヴァマスター(《E・HEROフレイムバッシャー》の影響下)レベル8 攻撃3000

 

ボマー&オスロ

手札

ボマー6→1

オスロ5

ライフ4000

場 トラップ・リアクター・RR レベル4 守備1800

  伏せカード1

 

(《トラップ・リアクター・RR》…。リアクターモンスターをフィールドに残すわけにはいかないな…)

召喚や発動に反応して相手に効果ダメージを与えるのがリアクターモンスターの特徴だ。

《起爆獣ヴァルカノン》の効果で大ダメージを折った翔太と伊織にはこれ以上ダメージを受ける余裕はない。

そして、《トラップ・リアクター・RR》には1ターンに1度相手が罠カードを発動した時、そのカードを破壊して相手に800ポイントのダメージを与える効果を持つ。

罠カードの効果自体は無効にならないが、今の状態では2度その効果を受けたらお陀仏だ。

「俺のターン!」

 

翔太

手札5→6

 

「(まずは《トラップ・リアクター・RR》をたたく!)俺は手札から《魔装陰陽師セイメイ》を召喚!」

「キュイーー!!」

《魔装陰陽師セイメイ》の肩の上にいるビャッコが嬉しそうな鳴き声をする。

「おーい、ビャッコちゃーん!!」

「キューー!!」

伊織が手を振ると、ビャッコも嬉しそうに手を振った。

 

魔装陰陽師セイメイ レベル3 攻撃1000(チューナー)

 

「…。俺は《セイメイ》の効果を発動。このカードの召喚に成功した時、手札から俺は手札からレベル4以下の魔装モンスター1体を特殊召喚できる。俺は手札から《魔装獣ユニコーン》を特殊召喚」

紙の人形に乗った《魔装獣ユニコーン》が翔太の隣に着陸する。

 

魔装獣ユニコーン レベル4 攻撃1600

 

「俺は《ユニコーン》と《セイメイ》を融合!」

「何!?奴も《融合》なしで融合召喚を行うのか!?」

「このカードはフィールド上の素材となるモンスターをリリースすることで融合召喚できる。妖魔を統べし術使よ、精錬されし一角獣よ、魔導の力によりて、今1つとならん。融合召喚!王家の獣、《魔装鳥獣グリフォン》!!」

融合召喚された《魔装鳥獣グリフォン》の背中に翔太は乗り、上空を飛行する。

 

魔装鳥獣グリフォン レベル6 攻撃2400

 

「このカードは1ターンに2度攻撃することができる。ただし、2度目の攻撃で発生する相手へのダメージは半分になる。バトルだ!俺は《グリフォン》で《トラップ・リアクター・RR》を攻撃。ノックダウン・ストライク」

《魔装鳥獣グリフォン》が更に高く飛び、そこから《トラップ・リアクター・RR》に向けて猛スピードで落下する。

「ならば…!!」

ボマーは城の中へ入り、窓にあるアクションカードを手にする。

「アクション魔法《奇跡》を発動。これで《RR》は破壊されない」

《トラップ・リアクター・RR》が煙幕弾を発射し、《魔装鳥獣グリフォン》の視界を封じる。

「ちっ…煙幕を吹き飛ばし、もう1度攻撃しろ!!」

翔太の命令を受けた《魔装鳥獣グリフォン》が風を起こして煙幕を払う。

そして、いつの間に距離を離した《トラップ・リアクター・RR》に向けて電撃を口から放つ。

「ふん…」

「何!?」

急に《トラップ・リアクター・RR》の前に黄土色で2つのプロペラがついた爆撃機と人間が融合したような形のモンスターが現れ、爆弾で電撃を相殺する。

「罠カード《フェイク・エクスプロージョン・ペンタ》を発動。このカードは相手の攻撃宣言時に発動でき、私のモンスターの戦闘による破壊を無効にする。そして手札・墓地から《サモン・リアクター・AI》を特殊召喚できる!」

 

サモン・リアクター・AI レベル5 攻撃2000

 

「このカードは1ターンに1度、相手がモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚した時、相手に800ポイントのダメージを与える。そしてこの効果を使用したターンに1度、相手モンスター1体の攻撃を無効にする」

「罠カードだけでなく、モンスターにまで爆弾を仕掛けたか!?なら先に《サモン・リアクター・AI》を破壊してやる!《ノヴァマスター》で《AI》を攻撃!バーニング・ナックル!」

《E・HEROノヴァマスター》が右拳に身にまとっていたすべての炎を宿す。

そして、飛び上がりながら《サモン・リアクター・AI》をアッパーで打ち砕いた。

「うぐおおお!!」

 

ボマー&オスロ

ライフ4000→3000

 

「ここで私はアクション魔法《祈祷》を発動!」

「お前いつの間に…」

なぜか全身びしょ濡れになっている伊織がアクションカードを発動する。

「このカードは相手にダメージを与えたとき、それと同じ数値だけ私たちのライフを回復させるんだよ!」

 

伊織&翔太

ライフ1100→2100

 

「これでライフ差は縮ま…」

伊織の笑顔は上空に目を向けたのと同時に固まる。

彼女の真上に破壊したはずの《サモン・リアクター・AI》が完全修復された状態で飛行していたのだ。

「またアクションカードか…!?」

「そうだ。どうやらオスロはアクション魔法《再生》を発動したようだ」

「《再生》は戦闘で自分のモンスターが破壊された時、そのモンスターを復活させる…」

 

サモン・リアクター・AI レベル5 攻撃2000

 

祈祷

アクション魔法カード

(1):相手にダメージを与えたときに発動できる。それと同じ数値分自分はLP回復する。

 

再生

アクション魔法カード

(1):戦闘で自分のモンスターが破壊され墓地へ送られたときに発動できる。そのモンスター1体を墓地から特殊召喚する。

 

(これぞアクションデュエルの醍醐味であるアクションカードの応酬!!伊織選手の《祈祷》で回復したと思ったら、オスロ選手の《再生》が兄の《サモン・リアクター・AI》を復活させたぞーーー!!)

「ちっ…!」

せっかく《祈祷》得た1000ポイントのライフだが、2体のリアクターモンスターの前では焼け石に水だ。

「俺は《ノヴァマスター》の効果を発動。このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した時、デッキからカードを1枚ドローする」

ドローしたカードを見て、翔太はわずかに笑みを浮かべる。

「おい、大男。お前の弟がこのターン発動したアクションカードは2枚だったな?」

「ボマーだ。開始前の放送で聴かなかったのか?まあいい…。確かにオスロは2枚のアクションカードをこのターン発動させた」

「そうか…なら俺は手札から速攻魔法《マジックコード:γ》を発動!こいつは相手が魔法カードを発動したターン、発動したカードの数だけフィールド上のモンスターを破壊する」

「何!?」

《サモン・リアクター・AI》と《トラップ・リアクター・RR》に五芒星が刻まれる。

そして2機は互いに照準を合わせ、機銃で互いに銃撃戦を始める。

数十秒の銃撃戦の末、2機は蜂の巣状態で墜落した。

「何!?私のリアクターモンスターが…!!」

「これでお前の壁モンスターはいないな?《E・HEROスカイランナー》でダイレクトアタック!」

《E・HEROスカイランナー》は猛スピードで森の中を飛び回り、アクションカードを探すオスロを発見する。

そして、手にしていた剣で彼を切り裂いた。

「うわああ!!」

 

ボマー&オスロ

ライフ3000→1800

 

マジックコード:γ

速攻魔法カード

「マジック・コード:γ」は1ターンに1度、相手が魔法カードを発動したターンにのみ発動できる。

(1):このカード相手が発動した魔法カードの数だけフィールド上に存在するモンスターを破壊する。

 

「やった!!これで逆転だー!」

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

伊織&翔太

手札

伊織2

翔太6→3

ライフ2100

場 E・HEROスカイランナー レベル3 攻撃1200

  E・HEROノヴァマスター(《E・HEROフレイムバッシャー》の影響下)レベル8 攻撃3000

  魔装鳥獣グリフォン レベル6 攻撃2400

 

ボマー&オスロ

手札

ボマー1

オスロ5

ライフ1800

場 なし

 

「俺のターン!」

 

オスロ

手札5→6

 

「俺は手札から永続魔法《ブレイズ・キャノン》を発動。更に手札から魔法カード《ヴォルカニック・ドライブ》を発動。このカードは俺のフィールド上のブレイズ・キャノンと名のつく魔法・罠カード1枚を墓地へ送ることで、デッキから《ヴォルカニック・デビル》を召喚条件を無視して特殊召喚できる」

森の中に突然火柱が上がり、そこから燃え上がる脳が露出していて、一部の肉体が溶岩になっている悪魔が姿を現す。

召喚完了と同時に火柱がはじけ、多くの木々を焼き払っていく。

 

ヴォルカニック・デビル レベル8 攻撃3000

 

ヴォルカニック・ドライブ

通常魔法カード

「ヴォルカニック・ドライブ」は1ターンに1度しか発動できず、このカードを発動したターン自分は他のモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚することができない。

(1):自分フィールド上に表側表示で存在する「ブレイズ・キャノン」魔法・罠カード1枚を墓地へ送る。その後、自分のデッキ・墓地から「ヴォルカニック・デビル」1枚を選択し、召喚条件を無視して特殊召喚する。

 

(《ヴォルカニック・デビル》…ヴォルカニックデッキのエースモンスター!!)

何もない状況から、オスロは召喚条件に厳しい《ヴォルカニック・デビル》をいともたやすく特殊召喚した。

リアクターとヴォルカニック、まさに2人のデッキは効果ダメージを与え続けるまさにバーンダメージ地獄だ。

「バトルだ!!俺は《ヴォルカニック・デビル》で《スカイランナー》を攻撃!!ヴォルカニック・キャノン!!」

《ヴォルカニック・デビル》の口から巨大な燃える岩石が《E・HEROスカイランナー》に向けて発射される。

「ちっ…!!」

攻撃が届く前に翔太は木の一番上に引っかかっているアクションカードを取る。

「俺はアクション魔法《慈愛》を発動!このターン俺たちが受けるダメージはすべて0になる!!ただし、このカードを発動した次の俺たちのターンの終了時まで俺たちはアクションカードを手にすることができない」

火炎弾を受けた《E・HEROスカイランナー》が悲鳴を上げながら消滅する。

そして、《E・HEROノヴァマスター》と《魔装鳥獣グリフォン》が真下から発生した火砕流に飲み込まれる。

「《ヴォルカニック・デビル》は戦闘によって相手モンスターを破壊した時、相手モンスターを全滅させ、その効果で破壊したモンスター1体につき500ポイントのダメージを与える。もしお前が《慈愛》を発動していなければ、合計2800のダメージを受け、敗北していた」

「そして、俺たちのターンのバトルフェイズ中攻撃可能なモンスターはすべて《ヴォルカニック・デビル》を攻撃しなければならない」

「そうだ。《ヴォルカニック・デビル》を倒さない限り、お前たちは炎にのまれ続ける」

《魔装鳥獣グリフォン》から飛び降り、城のベランダに着陸した翔太。

彼の目の前にはボマーがいる。

 

慈愛

アクション魔法カード

(1):このターン、自分が受けるダメージはすべて0となる。このカードを発動してから次の自分のターン終了時まで、自分はアクションカードを手札に加えることができない。

 

「ボマー…」

「秋山翔太…」

互いに相手の目を見る2人。

「なるほど…言い目をしたデュエリストのようだな」

「良く言われる。あんたはさしずめ暑苦しいデカブツだろ?」

「生意気な口をこの状況でも叩けるとはな…」

「周りがうるさいやつばかりだからな、嫌でもこうなる」

わずかに会話をすると、翔太はベランダから飛び降り、ボマーは城内へ向かう。

翔太と伊織は《慈愛》の代償としてアクションカードを手にすることはできないが、探すことまで禁止されたわけではない。

何とか次のボマーのターンを生き延びるためのアクションカードの場所を把握しなければならない。

「俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

伊織&翔太

手札

伊織2

翔太3

ライフ2100

場 なし

 

ボマー&オスロ

手札

ボマー1

オスロ6→2

ライフ1800

場 ヴォルカニック・デビル レベル8 攻撃3000

  伏せカード2

 

(何とか《慈愛》の効果で生き延びた翔太選手と伊織選手!!しかし、フィールドにはカードがなく伊織選手の手札はたったの2枚。この状況で《ヴォルカニック・デビル》を撃破することができるのかーーーー!!!?)

「私のターン、ドロー!!」

 

伊織

手札2→3

 

「伊織、俺がアクションカードを探す!!このターンの間は自分のカードのプレイに集中してろ」

ベランダにいたことで、翔太はオスロが今は森の東側にいることを知った。

としたら、今の状況では西側でアクションカードを探すしかない。

伊織の現在位置は森の東南部。

アクションカードを見つけたとしても、オスロに取られるのは目に見えている。

「翔太君…。私は手札から《E・HEROエアーマン》を召喚!」

 

E・HEROエアーマン レベル4 攻撃1800

 

「このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、デッキからHEROと名のつくモンスター1体を手札に加えるよ。私はデッキから《E・HEROグランドメイサー》を手札に!!更にこのカードがカード効果で手札に加わった時、ターン終了時まで公開することで、デッキ・墓地から《融合》を1枚手札に加えるよ」

ピンク色の髪で、胸の部分に赤いリボンがある赤と白が基調のドレスと鋼製のメイスを装備した少女が現れ、地面にメイスをたたきつける。

すると、彼女の目の前で地割れが発生してその中から《融合》が飛び出し、伊織の手札に加わる。

 

E・HEROグランドメイサー

レベル5 攻撃800 守備2000 効果 地属性 戦士族

「E・HEROグランドメイサー」の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードは「HERO」モンスター以外の融合素材とすることができない。

(2):このカードが自分のカードの効果で手札に加わった時、ターン終了時まで手札のこのカードを相手に見せることで発動できる。デッキ・墓地から「融合」を1枚手札に加える。

 

「そして、魔法カード《融合》を発動!手札の《グランドメイサー》と《ドラゴンガール》を融合!!」

《E・HEROグランドメイサー》と青い子供の翼龍を肩に乗せ、赤い服と黒いミニスカートを装備した茶色いツインテールの少女が上空に現れ、融合する。

「英雄の剣を作りし鍛冶屋よ!竜を愛でる少女よ!今こそ1つになりて、新たなヒーローに進化せよ!融合召喚!現れて、竜巻の王者、《E・HERO Great TORNADO》!!」

 

E・HERO Great TORNADO レベル8 攻撃2800

 

「《Great TORNADO》の効果発動!このカードの融合召喚に成功した時、相手フィールド上のモンスターの攻撃力・守備力を半分にするよ!ダウン・バースト!!」

《E・HERO Great TORNADO》の鉤に風が集まっていく。

「そうはさせない!!俺はカウンター罠《ヴォルカニック・バックファイア》を発動!このカードは俺のフィールドに《ヴォルカニック・デビル》が存在するとき、相手のモンスター効果を無効にし、破壊する!!」

「ええ…!?」

「更に、相手に800ポイントのダメージを与える!!」

《ヴォルカニック・デビル》が火炎弾を放つのと同時に《E・HERO Great TORNADO》が鉤を振るうと、巨大な竜巻が発生する。

《ヴィルカニック・デビル》から放たれた火炎弾は竜巻を貫き、《E・HERO Great TORNADO》の腹部を貫通する。

「キャアア!!」

 

伊織&翔太

ライフ2100→1300

 

ヴォルカニック・バックファイア

カウンター罠カード

(1):自分フィールド上に「ヴォルカニック・デビル」が存在するときに発動できる。相手のモンスター効果の発動を無効にし、破壊する。その後、相手に800ダメージを与える。

 

「うう…でもまだまだ!!私は融合素材にした《ドラゴンガール》の効果を発動!このカードを融合素材としてHEROと名のつく融合モンスターの融合召喚に成功した時、デッキからカードを2枚ドローして、その後で手札を1枚墓地へ送るよ!!」

 

手札から墓地へ送られたカード

・E・HEROシャドーウィンド

 

「私が手札から墓地へ送ったのは《E・HEROシャドーウィンド》!!このカードがカード効果で手札・デッキから墓地へ送られた時、デッキからチェンジと名のつく速攻魔法を1枚手札に加える!!」

伊織の手札に《マスク・チェンジ》が加わる。

 

E・HEROドラゴンガール

レベル3 攻撃500 守備500 効果 炎属性 戦士族

「E・HEROドラゴンガール」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードを融合素材として「HERO」融合モンスターの融合召喚に成功した時、デッキからカードを2枚ドローし、手札を1枚墓地へ送る。

 

E・HEROシャドーウィンド

レベル3 攻撃1600 守備500 効果 闇属性 戦士族

「E・HEROシャドーウィンド」の(1)の効果はデュエル中1回しか発動できない。

(1):相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にカードが存在しないとき、デッキから「融合」1枚を手札に加えることで手札から特殊召喚することができる。

(2):手札・デッキに存在するこのカードが効果によって墓地へ送られたとき、デッキから「チェンジ」速攻魔法カードを1枚手札に加える。

 

「《マスク・チェンジ》だと…!?あの少女はまだ融合召喚を行うつもりか??」

「私は手札から速攻魔法《マスク・チェンジ》を発動!このカードで私のHERO1体を同じ属性のM・HEROに変身させるよ!!私は《エアーマン》を選択!疾風の戦士よ、今こそ風の力を宿し、新たなヒーローに進化せよ!変身召喚!《M・HEROカミカゼ》!!」

白いマントとバッタをモチーフとしたと思われるスーツと仮面をつけたHEROが颯爽とフィールドに参上する。

 

M・HEROカミカゼ レベル8 攻撃2700

 

「《カミカゼ》は戦闘では破壊されず、フィールドに存在する限り相手は1度のバトルフェイズにつき1回しか攻撃できないよ!」

「何!?」

《M・HEROカミカゼ》右手をかざすと、追い風が発生する。

その凄まじい勢いの風は《ヴォルカニック・デビル》の炎をわずかに吹き飛ばし、客席ギリギリのところにまで届いていく。

「そして手札から魔法カード《ヒーローズルール3-バーニング・ストライク》を発動!このカードは私のHEROと名のつく融合モンスターすべての攻撃力を1000ポイントアップさせるよ!」

《M・HEROカミカゼ》の右足の炎が宿る。

 

M・HEROカミカゼ レベル8 攻撃2700→3700

 

「攻撃力3700!?」

「バトル!!《カミカゼ》で《ヴォルカニック・デビル》を攻撃!必殺、神風火炎キーーーック!!」

《M・HEROカミカゼ》が空高く跳躍し、1回回転すると、《ヴォルカニック・デビル》に向けて炎が宿った右足で飛び蹴りをする。

落下スピードと炎によって大幅に威力が高まったその蹴りは《ヴォルカニック・デビル》を貫き、撃破した。

「く…!!」

 

ボマー&オスロ

ライフ1800→1100

 

「やったーー!《ヴォルカニック・デビル》撃破!!」

(よし…。予定通り俺の《ヴォルカニック・デビル》を破壊してくれた。これで俺たちの勝利条件が整う)

「更に私は《カミカゼ》の3つ目の効果を発動!このカードが戦闘で相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、デッキからカードを1枚ドローするよ。そして、カードを1枚伏せてターンエンド!」

 

伊織&翔太

手札

伊織3→0

翔太3

ライフ2100

場 M・HEROカミカゼ(《ヒーローズルール3-バーニング・ストライク》の影響下) レベル8 攻撃3700

  伏せカード1

 

ボマー&オスロ

手札

ボマー1

オスロ2

ライフ1100

場 伏せカード1

 

「翔太君、これで勝利確定だよー!!」

「はあ…」

ご機嫌な伊織にため息をつく。

翔太は勝利を確信したデュエリストが敗北した光景をこれまで多く見てきたため、相手が勝ち誇った時が敗北の予兆となることを学んだ。

小言を言いたくなるが、今はデュエル中であるためやめておいた。

今の伊織の笑顔を可愛いと思ってしまったという理由もあるが…。

「私のターン」

 

ボマー

手札1→2

 

「私は手札から魔法カード《埋葬呪文の宝札》を発動。墓地に存在する魔法カード3枚を除外し、デッキからカードを2枚ドローする」

 

ボマー

手札2→3

 

墓地から除外された魔法カード

・砂嵐

・奇跡

・再生

 

「私は手札から魔法カード《テイク・オーバー5》を発動。デッキの上から5枚のカードを墓地へ送る」

 

デッキから墓地へ送られたカード

・マジック・リアクター・AID

・ジャイアント・ボマー・エアレイド

・エナジー・ボム

・リミッター解除

・融合

 

「《マジック・リアクター・AID》と《ジャイアント・ボマー・エアレイド》が墓地へ…?」

「そして私は手札から《チューニング・リアクター・SS》を召喚」

緑色の輪が3つ描かれた白い零戦のような形の戦闘機が現れる。

SSはおそらく、シンクロ召喚の略だろう。

 

チューニング・リアクター・SS レベル3 攻撃0(チューナー)

 

「このカードの召喚に成功した時、墓地からリアクターモンスター1体を特殊召喚できる。私は墓地から《サモン・リアクター・AI》を特殊召喚!」

《チューニング・リアクター・SS》が上空に向けて茶色い信号弾を発射する。

それに反応するかのように、どこからともなく《サモン・リアクター・AI》が現れ、並行飛行する。

 

サモン・リアクター・AI レベル5 攻撃2000

 

チューニング・リアクター・SS

レベル3 攻撃0 守備0 チューナー 闇属性 機械族

(1):このカードの召喚に成功した時、自分の墓地に存在する「リアクター」モンスター1体を対象に発動する。そのモンスターを攻撃表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。

 

「レベル5の《サモン・リアクター・AI》にレベル3の《チューニング・リアクター・SS》をチューニング!!闇したたる黄泉に沈みし戦船よ、怨念の碇を捨てて、光の世界に浮上せよ!シンクロ召喚!現れろ、《ダーク・フラット・トップ》!!」

急に上空が曇り空へと変わっていく。

「な、なんだよ??急に曇りになったぞ!?」

「でも、ここの天気は今は晴れだって…」

急な事態に観客たちが動揺する。

そして、その雲を破るかのように上空から飛行機の翼がついた黒い巨大な空母が降りてくる。

 

ダーク・フラット・トップ レベル8 守備3000

 

(なんとボマー選手!!ここで《ダーク・フラット・トップ》を召喚だーーー!!)

「《ダーク・フラット・トップ》の効果発動。1ターンに1度、私の墓地からリアクターモンスター、もしくは《ジャイアント・ボマー・エアレイド》を召喚条件を無視して特殊召喚できる!!」

「何!?」

「召喚条件を無視して《ジャイアント・ボマー・エアレイド》を!!?」

《ダーク・フラット・トップ》から3機のリアクターモンスターが次々に発進する。

そして、上空で3機がドッキングを行い、その姿を《ジャイアント・ボマー・エアレイド》へと変えていく。

 

ジャイアント・ボマー・エアレイド レベル8 攻撃3000

 

「バカな…!?蘇生制限をクリアしていないはずだ…」

「私は墓地の《エナジー・ボム》の効果を発動した。このカードが墓地に存在するとき、1度だけ機械族モンスターの蘇生制限を無視することができる」

 

エナジー・ボム

レベル1 攻撃0 守備0 効果 風属性 機械族

「エナジー・ボム」の(1)の効果はデュエル中1回しか発動できない。

(1):このカードが墓地に存在するときにのみ発動できる。自分の墓地に存在する機械族モンスターの蘇生制限を無視する。

 

「攻撃力3000!?でも、攻撃力3700の《カミカゼ》には届かないよ!」

「《ジャイアント・ボマー・エアレイド》の恐ろしさは攻撃力だけではない。《ジャイアント・ボマー・エアレイド》の効果発動。1ターンに1度、手札を1枚墓地へ送ることで相手フィールド上のカード1枚を破壊することができる。私は《カミカゼ》を破壊する!!デス・ドロップ!」

《ジャイアント・ボマー・エアレイド》が《M・HEROカミカゼ》の真上まで移動する。

そして、股関節部分についている《マジック・リアクター・AID》のミサイルを爆弾代わりに投下する。

《M・HEROカミカゼ》が降ってくるミサイルを避けるが、《ジャイアント・ボマー・エアレイド》のそれは大量に入っていて、避けても避けても襲ってくる。

「このままだと《カミカゼ》が…!!」

伊織は大慌てでアクションカードを探す。

そして、木陰に隠れていたアクションカードを手にする。

「やった!!これなら《カミカゼ》を…!?」

発動しようとすると、いつの間にアクションカードを手にしていたオスロが彼女の前にいる。

彼は彼女のアクションカードを見つつ、不敵な笑みを浮かべた。

(も…もしかしてオスロって人が持っているアクションカードって…)

伊織は以前手にしたアクションカード《透明》を思い出す。

そのカードを使われれば、今持っているアクションカードで《M・HEROカミカゼ》の破壊を防ぐことができない。

(うう…悔しいけど、これは発動できないよ!!)

伊織は悔しげに眼を閉じると同時に《M・HEROカミカゼ》はミサイルに接触して散った。

 

手札から墓地へ送られたカード

・サイバー・ドラゴン

 

「これでお前たちのフィールドからモンスターは消えた!この勝負は我ら兄弟の勝利だ!!《ジャイアント・ボマー・エアレイド》でダイレクトアタック!デス・エアレイド!!」

《ジャイアント・ボマー・エアレイド》が装備されているすべての機銃を乱射する。

「伊織!!」

「ト…罠発動!!《ヒーローズ・ガード》!!相手がダイレクトアタックするとき、デッキ・墓地からレベル4以下のHEROを守備表示で特殊召喚できる!私はデッキから《E・HEROフォレストマン》を特殊召喚!!」

伊織をかばうように《E・HEROフォレストマン》が現れ、その背中ですべての銃弾を受け止める。

「この効果で特殊召喚されたモンスターはこのターン、破壊されないよ!!」

機銃が撃ちやむと、《E・HEROフォレストマン》は背中の痛みに耐えながら《ジャイアント・ボマー・エアレイド》に対峙する。

 

ヒーローズ・ガード

通常罠カード

(1):相手モンスターの攻撃宣言時、自分のデッキ・墓地のレベル4以下の「HERO」モンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターを表側守備表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターはそのターン、戦闘及びカードの効果では破壊されない。

 

「よし…これでこのターンはなんとか…?」

「この程度で俺たちがターンを進めると思ったか?罠発動《フェネクス・ビッグ・エアレイド》。このカードは俺たちのフィールドにレベル8の機械族または炎族モンスターが2体以上存在するとき、エクストラデッキから《重爆撃禽ボム・フェネクス》を融合召喚することができる。ただし、この効果で特殊召喚された《ボム・フェネクス》はこのターン攻撃できない」

「ちっ…そのために《ダーク・フラット・トップ》を…」

《ダーク・フラット・トップ》が鳥をイメージさせる黒い戦闘機を発進させる。

発進し、離陸すると同時にその戦闘機が炎を纏い始め、最終的には《ジャイアント・ボマー・エアレイド》に匹敵するくらいの大きさの火の鳥へと変貌を遂げた。

 

重爆撃禽ボム・フェネクス レベル8 攻撃2800

 

フェネクス・ビッグ・エアレイド

通常罠カード

「フェネクス・ビッグ・エアレイド」は1ターンに1度、自分のターンにしか発動できない。

(1):自分フィールド上にレベル8の機械族・炎族モンスターが表側表示で2体以上存在する場合に発動できる。エクストラデッキから「重爆撃禽ボム・フェネクス」1体を融合召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターはこのターン、攻撃できない。

 

「くそ…このターンだけでレベル8モンスターを3体も…!!」

「《ボム・フェネクス》の効果発動!このカードは1ターンに1度、攻撃を放棄する代わりにフィールド上のカード1枚につき300ポイントのダメージを相手に与える!!今フィールドに存在するカードは合計4体のモンスター。よって、お前たちに1200ポイントのダメージを与える!!不死魔鳥大空襲(フェネクス・ビッグ・エアレイド)!!!」

《重爆撃禽ボム・フェネクス》が4発の爆発性のある火球を生み出し、翔太と伊織に向けて発射する。

その時、オスロは既に城まで退避していた。

「ちっ…これで森ごとアクションカードを灰にする気か!?」

「キャーーー!!怖いよ翔太君、助けてー!」

「俺のところへ来い!!岩を盾にしろ」

走り回る伊織の腕を引っ張り、大岩の後ろへ一緒に身を隠す。

4発中3発が岩石に命中し、そのたびにそれを熱で溶かしていく。

(本当に当たっていたら、死ぬよな…?このデュエル…」

 

伊織&翔太

ライフ2100→900

 

「私はこれでターンエンド」

 

伊織&翔太

手札

伊織0→1(うち1枚アクションカード)

翔太3

ライフ900

場 E・HEROフォレストマン レベル4 守備2000

 

ボマー&オスロ

手札

ボマー3→0

オスロ2→3(うち1枚アクションカード)

ライフ1100

場 ダーク・フラット・トップ レベル8 守備3000

  ジャイアント・ボマー・エアレイド レベル8 攻撃3000

  重爆撃禽ボム・フェネクス レベル8 攻撃2800

 

(これで一気に翔太選手と伊織選手のライフが900まで減った!!次のターン、再び《ボム・フェネクス》の効果が発動すると、オブライエン兄弟の勝利だーーーー!!!)

翔太と伊織を包囲するように3体のモンスターが展開する。

(今、オスロと伊織の手札にはアクションカードがある。そして、俺のフィールドには伊織が残した《フォレストマン》がいる)

翔太は自分の手札を見る。

(次にドローするカード次第だな。《フォレストマン》の効果が使えるか否かは)

ゆっくりとデッキトップに指を駆ける。

「俺のターン!!」

 

翔太

手札3→4

 

ドローしたカードを見て、翔太は笑みを浮かべる。

「俺はスタンバイフェイズ時に《フォレストマン》の効果を発動。このカードは俺のターンのスタンバイフェイズ時に1度、デッキ・墓地から《融合》を1枚手札に加えることができる。俺は墓地から《融合》を手札に加える」

「《融合》を…?」

「そして、俺は手札から《魔装獣剣スイモウ》を召喚」

白い手ぬぐいをバンダナのように頭に着け、右手には青い刀身の剣を持った青い獣人が現れる。

彼の目は黒く、顔に巨大な痣がある。

 

魔装獣剣スイモウ レベル3 攻撃1200

 

「このカードは相手プレイヤーに直接攻撃することができる。そして、直接攻撃したターン終了時に手札に戻る」

「やったー!!ボマーさんとオスロさんのライフは1100!この一撃で…」

「その程度、予測していなかったと思うか?私は《ジャイアント・ボマー・エアレイド》の効果発動!1ターンに1度相手がモンスターの召喚・特殊召喚、もしくはカードをセットした時、そのカードを破壊して相手に800ポイントのダメージを与える!シャープ・シューティング!!」

「何!?」

《ジャイアント・ボマー・エアレイド》から巨大なミサイルが発射される。

《魔装獣剣スイモウ》は剣で切り裂くが、中身は炸裂弾で、露出したと同時に爆発する。

「《スイモウ》!!くっ…!」

 

伊織&翔太

ライフ900→100

 

魔装獣剣スイモウ

レベル3 攻撃1200 守備0 効果 水属性 獣戦士族

(1):このカードは相手プレイヤーに直接攻撃することができる。

(2):このカードは直接攻撃を行ったターン終了時、持ち主の手札に戻る。

 

「その程度のカードで止められると思ったか?秋山翔太!!」

「かかったな、ボマー」

「何!?」

「俺は手札から魔法カード《融合》を発動。この効果で俺は手札の《ペイルライダー》、《ファーブニル》、《マゴイチ》を融合する!!死を司る第4の騎士よ!財宝を守る飛竜よ!天かける銃士よ!魔導の力によりて、今1つとならん。融合召喚!真紅の騎士、《魔装騎士レッドライダー》!!」

 

魔装騎士レッドライダー レベル8 攻撃3000

 

「出たーー!!《レッドライダー》!!…ってあれ?」

《魔装騎士レッドライダー》の召喚を喜ぶ伊織だが、翔太の目を見てキョトンとする。

「なんだよ?素直に喜べよ」

「ええっと、翔太君。なんで眼の色が変わってないの?」

「後で話す。《レッドライダー》の効果発動」

「えーーー!!ここで話してよーー!!」

広義の声を無視し、翔太はデュエルを続ける。

「このカードは俺のターンの間にモンスターの特殊召喚に成功した時、そのターンのバトルフェイズの間のみ攻撃力が1000ポイントアップする!」

 

魔装騎士レッドライダー レベル8 攻撃3000→4000(バトルフェイズ中のみ)

 

「攻撃力4000だと!?」

「バトルだ!俺は《レッドライダー》で《ボム・フェネクス》を攻撃!必殺真剣!!」

《魔装騎士レッドライダー》が大剣を一回転させると、そのまま《重爆撃禽ボム・フェネクス》めがけて跳躍する。

「くそ…!!俺はアクション魔法《訓練》を発動!このカードは相手モンスターと戦闘を行う時、戦闘を行う俺のモンスター1体の攻撃力・守備力をダメージ計算時のみ800ポイントアップする!」

「ええ…!?《透明》じゃなかったの??」

「ちっ…だからそのアクションカードを発動しなかったのか?」

《訓練》により、《重爆撃禽ボム・フェネクス》の炎の勢いが高まるが、《魔装騎士レッドライダー》をしのぐことができず、そのまま真っ二つにされた。

「ぐ…ぐおおおお!!」

 

重爆撃禽ボム・フェネクス レベル8 攻撃2800→3600(ダメージ計算時のみ)

 

ボマー&オスロ

ライフ1100→700

 

訓練

アクション魔法カード

(1):自分フィールド上のモンスターが戦闘を行う時に発動できる。そのモンスター1体の攻撃力・守備力をターン終了時まで800アップする。

 

「《ボム・フェネクス》は倒されたが、我々のライフは残っているぞ!」

「いや、これで終わりだ。《レッドライダー》は戦闘で相手モンスターを破壊した時、続けてもう1度だけ相手モンスターを攻撃できる」

「何!?」

《魔装騎士レッドライダー》の目が《ジャイアント・ボマー・エアレイド》に向けられる。

「《レッドライダー》で《ジャイアント・ボマー・エアレイド》を攻撃!!」

《ジャイアント・ボマー・エアレイド》のミサイルと機銃を大剣で防御しながら、《魔装騎士レッドライダー》は直進する。

そして、その巨体に肉薄すると大剣で一刀両断した。

切り裂かれた《ジャイアント・ボマー・エアレイド》は小さな爆発を複数回発生させると、残った弾薬に火が回ったことで大爆発を引き起こす。

「「うわああああ!!」」

 

ボマー&オスロ

ライフ700→0

 

「勝てた…。…!?」

《ジャイアント・ボマー・エアレイド》が消えるのと同時に翔太を激しい頭痛が襲う。

「こ…これは…あのモンスターが…記憶の鍵…!?」

翔太の目にある光景がフラッシュバックする。

オレンジ色の髪の赤ん坊を抱えた青い髪の女性が広いベランダを歩いている。

そのベランダがあるのは今デュエルを行ったフィールドにある城ではなく白いきらびやかな城だ。

「あなたには見せてあげたいわ…みんなが幸せな…平和な世界を…」

女性が静かに眠っている赤ん坊の額にキスをする。

唇が離れたのと同時に視界に広がる光景が元にもどった。

「ハアハアハア…」

「翔太君、まさか…」

「ああ…。《ジャイアント・ボマー・エアレイド》が記憶の鍵だった…それより…」

頭痛が消えた翔太は伊織からアクションカードを取る。

「ちっ…あいつのハッタリを見抜いていたら、もっと楽に勝てたな」

「うう…ごめんなさい」

 

狙撃

アクション魔法カード

(1):相手ターンのメインフェイズ1に相手のモンスター効果が発動した時に発動できる。発動を無効にし手札に戻す。

 

手に取り、テキストを確認すると同時に《狙撃》もソリッドビジョンと共に消えて行った。

「見事だ…秋山翔太、永瀬伊織」

ボマーとオスロが2人の元へ歩いてくる。

「ああ…。本選への切符はもらったぞ?」

「それは構わない。勝者はお前たちだからな。それよりも…」

オスロは懐から封筒を取り出し、翔太に差し出す。

「こいつは…?」

「先ほど敗退した鬼柳から君に渡せと言われたものだ」

「…?」

訳が分からないと言いたげな表情のまま、翔太は封筒を手に取る。

(鬼柳一真…なぜ俺に…?)




今回登場したE・HEROのオリカは深夜に放送されている某アニメキャラをモチーフとしています。


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第19話 闇夜のデュエル

「…」

夜のホテルの中で、翔太は1人封筒を手にしていた。

封は切られていて、机の上には何も書かれていない紙が入っているだけだ。

(鬼柳、一体どういうつもりなんだ?)

伊織はホテル内のお菓子が高いという理由で外へ買いに行っていて、まだ戻ってきていない。

「ふう…シャワーを浴びるか」

考えるのをやめ、風呂場へ向かおうとする。

「…何!?」

偶然目の入ったあの紙に驚きを隠せずにいる。

徐々に黒いインクが紙に浮き上がり、文章が形成されていく。

『永瀬伊織は預かった。この文章が浮き上がってから1時間以内にスタジアムのそばにある八幡宮へ来い。 鬼柳』

「…手の込んだことを…」

悪態をつきながら、手紙を破り捨てる。

そして、バイクで指定された場所へ向かった。

 

「…。ここだな?」

古い八幡宮の前でバイクを停める。

近くには青を基調としたバイクも停まっている。

「鬼柳…どこにいる?望みどおり来てやったぞ」

しばらく待つが、何の反応も帰ってこない。

「正直、俺も暇じゃないんだ。帰って晩御飯を食ってシャワーを浴びて寝なきゃならない」

「待っていたぜ、秋山翔太」

背後から声が聞こえ、翔太は近くにあった石をそこへ向けて蹴り飛ばす。

「さっさと伊織を返せ。今なら3倍返しで許してやる」

「ああ…お前のガールフレンドだったな。それを知りたければ…」

静かに鬼柳はデュエルの準備を整える。

「はあ…。こんなコミュ障はさっさと倒すに限るな。あ…予選落ちって言うのも付け足さないとな」

ため息をつきながら、翔太もデュエルの準備を整える。

(秋山翔太…お前があの男なのか見極める!!)

(さっさと倒して、伊織を連れて帰るか)

「「デュエル!!」」

 

翔太

手札5

ライフ4000

 

鬼柳

手札5

ライフ4000

 

「俺の先攻。俺は手札から《魔装竜ファーブニル》を召喚」

 

魔装竜ファーブニル レベル4 攻撃1900

 

「そしてカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

翔太

手札5→3

ライフ4000

場 魔装竜ファーブニル レベル4 攻撃1900

  伏せカード1

 

鬼柳

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「かなり消極的なスタートじゃねえか。お前のガールフレンドは1ターン目から融合召喚を連発しているぜ?」

「俺はあいつと違って慎重だからな。それに…」

「それに?」

「なんでもない。お前のターンだ。さっさと進めろ」

「…。俺のターン」

 

鬼柳

手札5→6

 

「俺は手札から魔法カード《無の煉獄》を発動。俺の手札が3枚以上存在するとき、デッキからカードを1枚ドローし、ターン終了時に手札をすべて捨てる」

(やはり無手札必殺で来るか…)

翔太の脳裏に浮かんだのはコブラとのデュエルで彼が見せた連続シンクロ召喚。

これから翔太はそれらのシンクロモンスターの猛攻に対処しなければならない。

「そして俺はモンスターを裏守備表示で召喚。カードを2枚伏せ、ターンエンド。それと同時に《無の煉獄》の効果で残りの手札はすべて墓地へ送る」

 

手札から墓地へ送られたカード

・インフェルニティ・アーチャー

・インフェルニティ・ドワーフ

・インフェルニティ・デーモン

 

翔太

手札3

ライフ4000

場 魔装竜ファーブニル レベル4 攻撃1900

  伏せカード1

 

鬼柳

手札6→0

ライフ4000

場 裏守備モンスター1

  伏せカード2

 

「俺のターン」

 

翔太

手札3→4

 

「俺はスケール2の《魔装槍士タダカツ》とスケール9の《魔装剣士ムネシゲ》でペンデュラムスケールをセッティング!!」

2体のペンデュラムモンスターが翔太の左右に浮かび、光の柱を生み出す。

(ペンデュラム召喚…か…)

「これで俺はレベル3から8までのモンスターを同時に召喚可能だ。来たれ、時の果てに眠りし英雄の魂。希望の道を照らし、勝鬨を上げろ!ペンデュラム召喚!!現れろ、俺のモンスターたち!!《魔装鳥キンシ》!《魔装騎士ペイルライダー》!!」

上空から《魔装鳥キンシ》が現れ、翔太のフィールドに急降下する。

その背にはマシンガンと盾だけを装備している《魔装騎士ペイルライダー》がいる。

 

魔装鳥キンシ レベル7 攻撃2400

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

 

「ペンデュラム召喚で上級モンスターを2体か。まあ、俺の無手札必殺には無用の長物だな」

「バトルだ。俺は《魔装騎士ペイルライダー》で裏守備モンスターを攻撃。(たとえ奴の守備モンスターが戦闘では破壊されない効果でも、《ペイルライダー》には戦った相手モンスターを破壊する効果がある)クアトロ・デスブレイク!!」

《魔装騎士ペイルライダー》がマシンガンで裏守備モンスターを攻撃する。

すると、裏守備モンスターは髑髏の装飾があり、体の大部分が煉獄の炎となっている盾型の悪魔となり、銃弾を受けるどころか炎で溶かしてしまった。

「《インフェルニティ・ガーディアン》は手札が0枚の時、いかなる方法でも破壊されない」

「ちっ…。厄介なモンスターを」

マシンガンの弾が尽きた《魔装騎士ペイルライダー》は即座に弾倉を交換する。

「(奴を破壊できるタイミングはドローして、そのカードをプレイするまでの間だけか…)俺はこれでターンエンド」

 

翔太

手札4→0

ライフ4000

場 魔装竜ファーブニル レベル4 攻撃1900

  魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

  魔装鳥キンシ レベル7 攻撃2400

  魔装槍士タダカツ(青) ペンデュラムスケール2

  魔装剣士ムネシゲ(赤) ペンデュラムスケール9

  伏せカード1

 

鬼柳

手札0

ライフ4000

場 インフェルニティ・ガーディアン レベル4 守備1700

  伏せカード2

 

「俺のターン」

 

鬼柳

手札0→1

 

「罠発動!《クアトロ・デスブレイク》」

「…?」

「こいつは俺のフィールドに《ペイルライダー》がいる時、相手フィールド上に表側表示で存在するカード1枚を破壊する。俺はその効果で《インフェルニティ・ガーディアン》を破壊する」

《魔装騎士ペイルライダー》が暗闇の中へ姿をくらます。

不気味に思った《インフェルニティ・ガーディアン》は周囲を見渡す。

そして、気配を感じ後ろへ振り返った時にはすでに《魔装騎士ペイルライダー》の光剣で頭部を切り裂かれていた。

「ドローして手札が1枚になった隙を狙ったか」

「そうだ。そして《クアトロ・デスブレイク》は発動後ゲームから除外され、発動から2回目の俺のスタンバイフェイズ時に手札に加わる」

《クアトロ・デスブレイク》が異次元への渦にのまれ、消えて行った。

 

クアトロ・デスブレイク

通常罠カード

「クアトロ・デスブレイク」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に「魔装騎士ペイルライダー」が表側表示で存在する場合にのみ発動できる。相手フィールド上に表側表示で存在するカードを1枚破壊する。発動後、このカードはゲームから除外される。

(2):このカードはその効果で除外されてから2回目の自分のターンのスタンバイフェイズ時に手札に戻る。

 

「これで無敵の盾はあっけなく消えたな」

「だが、俺の無手札必殺はその程度では崩せないぜ。手札が0枚の時にこのカードをドローした時、このカードは特殊召喚できる。《インフェルニティ・デーモン》を特殊召喚」

 

インフェルニティ・デーモン レベル4 攻撃1800

 

「《インフェルニティ・デーモン》の効果発動。このカードの特殊召喚に成功した時、手札が0枚の場合、デッキからインフェルニティカードを1枚手札に加える。手札から《インフェルニティ・ビートル》を召喚」

 

インフェルニティ・ビートル レベル2 攻撃1200(チューナー)

 

「《インフェルニティ・ビートル》の効果発動。手札が0枚の時、このカードをリリースすることでデッキから《インフェルニティ・ビートル》を2体まで特殊召喚できる」

 

インフェルニティ・ビートル×2 レベル2 攻撃1200(チューナー)

 

(これで2回のシンクロ召喚を行えば、《オーガ・ドラグーン》が現れる。あのカードは手札が0枚の時、1ターンに1度相手の魔法・罠カードの発動を無効にし、破壊する。ペンデュラムスケールにセッティングすることは魔法カード発動と同じ。だから《オーガ・ドラグーン》の効果を受ける)

「俺はレベル4の《インフェルニティ・デーモン》にレベル2の《インフェルニティ・ビートル》をチューニング。重力を操りし蛮勇よ、敵に弔いの十字架を与えよ。シンクロ召喚!現れろ、《グラヴィティ・ウォリアー》」

青と銀を基調とした装甲で、狼の頭をした戦士が姿を現す。

 

グラヴィティ・ウォリアー レベル6 攻撃2100

 

「《グラヴィティ・ウォリアー》の効果発動。このカードのシンクロ召喚に成功した時、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体につき300ポイント、このカードの攻撃力をアップさせる。蛮勇引力(パワー・グラヴィテーション)」

《グラヴィティ・ウォリアー》が翔太のフィールドに存在する3体のモンスターを見て、咆哮しながら自身の両手の爪に重力を与える。

 

グラヴィティ・ウォリアー レベル6 攻撃2100→3000

 

「ちっ…。攻撃力3000。だが《魔装剣士ムネシゲ》は1ターンに1度、俺のモンスターゾーンに存在するペンデュラムモンスターを破壊から守る効果がある」

「ああ…。だが戦闘ダメージまでは防げない。《グラヴィティ・ウォリアー》で《魔装鳥キンシ》を攻撃。超重力十字爪(グランド・クロス)」

《グラヴィティ・ウォリアー》が咆哮しながら、《魔装鳥キンシ》に向けて突撃する。

飛んでよけようとするが、そのモンスターの爪から発する重力で地面に落ち、思うように動けない。

「ちっ…!《ムネシゲ》、《キンシ》を守れ!!」

頷いた《魔装剣士ムネシゲ》は《グラヴィティ・ウォリアー》の前に立ち、盾で爪を受け止める。

そして、攻撃の衝撃が翔太へと向かう。

「く…!」

 

翔太

ライフ4000→3400

 

「メインフェイズ2だな。俺はレベル6の《グラヴィティ・ウォリアー》にレベル2の《インフェルニティ・ビートル》をチューニング」

(来るか…?《オーガ・ドラグーン》…!!)

「死者と生者、ゼロにて交わりしとき、永劫の檻より魔の竜は放たれる!シンクロ召喚!いでよ、《インフェルニティ・デス・ドラゴン》!!」

脳が露出し、4つの目とハサミのような手の腕を持つ不気味な黒竜が姿を現す。

(何!?《オーガ・ドラグーン》じゃないのか…?)

 

インフェルニティ・デス・ドラゴン レベル8 攻撃3000

 

「《インフェルニティ・デス・ドラゴン》の効果発動。手札が0枚の時、1ターンに1度相手モンスター1体を破壊する」

「何!?」

「《ペイルライダー》は戦った相手モンスターを破壊する。だが、この場合はどうだろうな?インフェルニティ・デス・ブレス!!」

《インフェルニティ・デス・ドラゴン》の口からドリル状に回転する黒いブレスが放たれる。

《魔装騎士ペイルライダー》は避け、マシンガンで牽制射撃するが、その黒竜はブレスを放ち終えると構うことなく直進し、その腕で相手を切り裂いた。

「更に、破壊したモンスターの攻撃力の半分のダメージを相手に与える」

 

翔太

ライフ3400→2150

 

「破壊されたペンデュラムモンスターは表向きでエクストラデッキへ送られる」

悔しげな表情を浮かべながら、翔太は《魔装騎士ペイルライダー》をエクストラデッキへ送る。

「どうやらお前が俺にシンクロ召喚してほしかったのは《オーガ・ドラグーン》だったようだな…」

「…」

「図星だな。だが俺もお前の都合にあった行動をとるほどお人好しじゃねえからな。俺はこれでターンエンド」

 

翔太

手札0

ライフ2150

場 魔装竜ファーブニル レベル4 攻撃1900

  魔装鳥キンシ レベル7 攻撃2400

  魔装槍士タダカツ(青) ペンデュラムスケール2

  魔装剣士ムネシゲ(赤) ペンデュラムスケール9

  伏せカード1

 

鬼柳

手札2→0

ライフ4000

場 インフェルニティ・デス・ドラゴン レベル8 攻撃3000

  伏せカード2

 

「俺のターン!」

 

翔太

手札0→1

 

「もう1度頼む。《タダカツ》、《ムネシゲ》」

2体のペンデュラムモンスターはうなずき、力を込める。

「ペンデュラム召喚。現れろ、《魔装騎士ペイルライダー》、《魔装獣ユニコーン》」

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

魔装獣ユニコーン レベル4 攻撃1600

 

「性懲りもなくペンデュラム召喚か…。ということは、この老馬に何か効果があるんだな?」

「そうだ。このカードは俺の魔装騎士の足となり、攻撃力を800ポイントアップさせる」

《魔装獣ユニコーン》の体毛が青白く染まり、《魔装騎士ペイルライダー》をその背に乗せる。

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500→3300

 

「攻撃力3300…。《インフェルニティ・デス・ドラゴン》を倒すには打倒な攻撃力だな」

「バトルだ。俺は《ペイルライダー》で《インフェルニティ・デス・ドラゴン》を攻撃!」

《魔装騎士ペイルライダー》を乗せた《魔装獣ユニコーン》が猛スピードで《インフェルニティ・デス・ドラゴン》に突っ込む。

そして、死の騎士は自らを一度死へ誘った黒竜に至近距離からマシンガンを叩き込み、リベンジを果たす。

「《ユニコーン》の効果。このカードを装備したモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊した時、そのモンスターの攻撃力分のダメージを与える」

「…」

 

鬼柳

ライフ4000→3700→700

 

「もう少し遊ばせてくれてもよかったのにな」

ロシアンルーレットのように、自分の人差し指を銃口に見立て、こめかみに当てる。

現在ではお笑い番組でよく行われているゲームだが、それと現実のものとは全く違う。

本物は鬼柳がやったように、自分のこめかみに銃弾が1発だけ入ったリボルバーの銃口を当て、実際に引き金を引くというあまりにも命知らずなゲームだ。

「《オーガ・ドラグーン》を出さないなら、これで終わりにする。《ファーブニル》でダイレクトアタック」

《魔装竜ファーブニル》の口から黄金のブレスが放たれる。

「罠発動。《邪神の大災害》。このカードは相手の攻撃宣言時、フィールド上の魔法・罠カードをすべて破壊する」

「何!?」

《邪神の大災害》から黒い大嵐が発生し、翔太と鬼柳の魔法・罠カードを薙ぎ払う。

そして、《魔装槍士タダカツ》と《魔装剣士ムネシゲ》も吹き飛ばされてしまった。

 

破壊された伏せカード

翔太

・金満で貪欲な瓶

 

鬼柳

・煉獄との交信

 

「俺は破壊された《煉獄との交信》の効果を発動。このカードが効果によって破壊され墓地へ送られた時、手札が0枚の場合、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスターをすべて破壊し、エクストラデッキから《煉獄龍オーガ・ドラグーン》をシンクロ召喚する」

「何!?」

鬼柳のフィールドが真っ赤な炎に包まれる。

そして、その炎の中から《煉獄龍オーガ・ドラグーン》が姿を現し、闇夜に向けて咆哮する。

 

煉獄龍オーガ・ドラグーン レベル8 攻撃3000

 

煉獄との交信

通常罠カード

「煉獄との交信」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に存在するこのカードが破壊され墓地へ送られた時、手札が0枚の場合に発動できる。相手フィールド上に表側表示で存在するモンスターをすべて破壊する。その後、自分のエクストラデッキから「煉獄龍オーガ・ドラグーン」1体をS召喚扱いで特殊召喚する。

 

「ちっ…。《煉獄との交信》の効果を使うためにわざと《ペイルライダー》の攻撃を…」

まんまと鬼柳の捨て身の策にはまってしまった翔太。

4体のペンデュラムモンスターをエクストラデッキへ送る。

「そうだ。そして、これでお前のフィールドにモンスターはいなくなり、フィールドもがら空きになった。そして手札も俺と同じ0枚。次のターン、《オーガ・ドラグーン》のダイレクトアタックで俺の勝利が決まる」

「いいや、俺はお前が破壊した罠カード《金満で貪欲な瓶》の効果を発動する」

翔太のフィールドに表面が翔太と遊矢のデッキに入っている《金満な壺》で裏面が制限カードである《貪欲な壺》という変わったデザインの瓶が現れる。

「このカードがカード効果で破壊され墓地へ送られたターンのメインフェイズ時、これをゲームから除外することで墓地に存在するモンスター、もしくはエクストラデッキに表向きで存在するペンデュラムモンスターを合計3枚デッキに戻し、デッキからカードを2枚ドローする」

 

翔太

手札0→2

 

墓地からデッキに戻ったカード

・魔装獣ユニコーン

・魔装竜ファーブニル

 

エクストラデッキからデッキに戻ったカード

・魔装槍士タダカツ

 

金満で貪欲な瓶

通常罠カード

「金満で貪欲な瓶」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):効果によって破壊され墓地へ送られたターンのメインフェイズ時に墓地からこのカード1枚を除外することで発動できる。自分のエクストラデッキの表側表示のPモンスター及び自分の墓地のモンスターを合計3枚選び、デッキに加えてシャッフルする。その後、デッキからカードを2枚ドローする。

 

「更に俺はエクストラデッキに存在する《魔装鳥キンシ》の効果を発動。1度だけ、そこから俺の手札に戻すことができる」

翔太のエクストラデッキから炎が噴き出て、それと共に《魔装鳥キンシ》が排出される。

「だがペンデュラム召喚は1ターンに1度しか行えない。とはいっても、お前はまだモンスターを召喚していなかったな」

「ああ…。よって、俺はカードを2枚伏せ、ターンエンドだ」

 

 

翔太

手札1(《魔装鳥キンシ》)

ライフ2150

場 伏せカード2

 

鬼柳

手札0

ライフ700

場 煉獄龍オーガ・ドラグーン レベル8 攻撃3000

 

「俺のターン」

 

鬼柳

手札0→1

 

「俺は手札から魔法カード《バレット&カートリッジ》を発動。このカードはデッキの上から4枚を墓地へ送り、デッキからカードを1枚ドローする。そして、発動後このカードはデッキの一番上へ置き、デッキに戻ったこのカードをドローした場合、俺はそのカードを墓地へ送る」

実質手札消費なしで4枚ものカードを墓地に肥やすことができるカード。

しかし、考えなしで発動すると次のターンのドローを潰してしまう。

そんな扱いの難しいカードを使う鬼柳の実力の高さがうかがえる。

 

デッキから墓地へ送られたカード

・インフェルニティ・ジェネラル

・インフェルニティ・フォース

・ダッジ・ロール

・インフェルニティ・リベンジャー

 

「バトルだ。俺は《オーガ・ドラグーン》でダイレクトアタック」

《煉獄龍オーガ・ドラグーン》の口に煉獄の炎が集結していく。

「煉獄の混沌却火!」

攻撃名宣言と同時に炎が黒く染まり、翔太に向けて放たれる。

「伏せカード発動!!」

「無駄だ。このカードは俺の手札が0枚の時、1ターンに1度相手の魔法・罠カードの発動を無効にし、破壊する!」

《煉獄龍オーガ・ドラグーン》の鋭い尾が翔太の伏せカードを貫こうとする。

しかし、鬼柳は1つ見落としていた。

翔太が発動を宣言したのが伏せカードだということを。

そして、発動された伏せカードから強風が発生し、尾で貫くことができなくなる。

「何!?こいつは…」

「そうだ。こいつはモンスター、《魔装軍師コウメイ》だ」

緑色の帽子と白い中国軍師風の服を着た黒い整った髭を持つ男が静かに魔法・罠ゾーンからモンスターゾーンへ歩いて移動する。

その手には羽の1つ1つに五芒星が刻まれている羽扇が握られている。

 

魔装軍師コウメイ レベル3 守備1600

 

「モンスターを魔法・罠ゾーンにセットだと?」

「ああ…。このカードは魔法・罠ゾーンにセットすることができる。そして、相手がダイレクトアタックをするとき、セットされているこのカードを俺のフィールドに特殊召喚することができる。そしてこの効果で特殊召喚されたターン、俺のモンスターは破壊されず、俺が受けるダメージも0になる」

《魔装軍師コウメイ》が羽扇を振ると翔太のフィールドの前に強烈な風の障壁が設置される。

 

魔装軍師コウメイ

レベル3 攻撃500 守備1600 効果 風属性 魔法使い族

「魔装軍師コウメイ」の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードは手札から魔法・罠ゾーンにセットすることができる。この効果でセットされている間のみ、このカードは魔法カードとして扱う。

(2):相手の直接攻撃宣言時、このカードが(1)の効果によってセットされている場合に発動できる。このカードを自分フィールド上に特殊召喚する。この効果で特殊召喚に成功したターン、自分フィールド上のモンスターは戦闘および効果では破壊されず、自分が受けるダメージは0となる。

 

「俺は手札から魔法カード《インフェルニティ・ロシアンルーレット》を発動」

発動と同時に、リボルバーが空中に現れ、その銃口が鬼柳のこめかみに向けられる。

「ロシアンルーレットだと…?」

「これから俺はカードの種類を1つ宣言し、カードを1枚ドローする。宣言したカードが宣言した種類のカードであれば、そのカードを墓地へ送り、墓地からインフェルニティモンスターおよび《煉獄龍オーガ・ドラグーン》を2体まで墓地から特殊召喚できる。外れた場合は俺のフィールド上に存在するモンスターをすべて破壊する」

銃口を向けられているにもかかわらず、鬼柳は笑っている。

それに対し、翔太は苦い表情を浮かべる。

当然のことだ。

鬼柳も翔太も次にドローするカードの種類がわかっている。

「当然、宣言するのは魔法カードだ」

ドローし、そのカードを見ないまま墓地へ送る。

「当然、ドローしたカードは《バレット&カートリッジ》。よって、俺は墓地から《インフェルニティ・デス・ドラゴン》と《インフェルニティ・デーモン》を特殊召喚」

リボルバーが上空に向けて発砲すると、地中から2体のインフェルニティモンスターが現れる。

 

インフェルニティ・デス・ドラゴン レベル8 攻撃3000

インフェルニティ・デーモン レベル4 攻撃1800

 

インフェルニティ・ロシアンルーレット

通常魔法カード

(1):自分はカードの種類(モンスター・魔法・罠)を1つ宣言し、デッキからカードを1枚ドローし、互いに確認する。当たりの場合、そのカードを墓地へ送り、自分の墓地から「インフェルニティ」モンスター及び「煉獄龍オーガ・ドラグーン」を合計2体まで特殊召喚することができる。ハズレの場合、自分フィールド上に存在するモンスターをすべて破壊する。

 

「そして、《インフェルニティ・デーモン》の効果により、俺はデッキから《インフェルニティ・ガン》を手札に加える。そして、手札から永続魔法《インフェルニティ・ガン》を発動。手札が0枚の時、このカードを手札から墓地へ送ることで、墓地からインフェルニティモンスターを2体まで特殊召喚できる。現れろ、《インフェルニティ・ビートル》、《インフェルニティ・ドワーフ》!」

《インフェルニティ・ビートル》と共に灰色の肌をしたヨーロッパの木こりの姿のドワーフが現れる。

 

インフェルニティ・ビートル レベル2 攻撃1200(チューナー)

インフェルニティ・ドワーフ レベル2 守備500

 

「《インフェルニティ・ドワーフ》…?」

「このカードは手札が0枚の時、俺のモンスターすべてに貫通効果を与える。これでお前は守備モンスターを出す意味がなくなった。レベル4の《インフェルニティ・デーモン》にレベル2の《インフェルニティ・ビートル》をチューニング。青き瞳を持つ狼よ、天と地を喰らい、魂を煉獄へ導け。シンクロ召喚。現れろ、《天狼王ブルー・セイリオス》」

 

天狼王ブルー・セイリオス レベル6 攻撃2400

 

「俺はこれでターンエンドだ」

 

翔太

手札1(《魔装鳥キンシ》)

ライフ2150

場 魔装軍師コウメイ レベル3 守備1600

  伏せカード1

 

鬼柳

手札1→0

ライフ700

場 煉獄龍オーガ・ドラグーン レベル8 攻撃3000

  インフェルニティ・デス・ドラゴン レベル8 攻撃3000

  インフェルニティ・ドワーフ レベル2 守備500

  天狼王ブルー・セイリオス レベル6 攻撃2400

 

このターンはしのぐことができたが、鬼柳のフィールドには貫通効果を持ったシンクロモンスターが3体。

そして《煉獄龍オーガ・ドラグーン》と《インフェルニティ・デス・ドラゴン》によって、確実に1体のモンスターと1枚の魔法・罠カードが灰にされてしまう。

翔太の手札に存在するのは《魔装鳥キンシ》のみ。

この状況を打開できるカードとして、翔太の頭に浮かんだのはあの1枚だ。

(《魔装獣剣スイモウ》…)

そのモンスターは相手プレイヤーに直接攻撃できる。

今の鬼柳のライフを考えると、そのモンスターの一太刀で翔太の勝利が決定する。

このドローで引き当てることができればの話だが…。

「俺のターン!。このターンのスタンバイフェイズ時に、俺は除外されている《クアトロ・デスブレイク》を手札に加える」

 

翔太

手札1→3

 

「…。俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

翔太

手札2→1(《魔装鳥キンシ》)

ライフ2150

場 魔装軍師コウメイ レベル3 守備1600

  伏せカード3

 

鬼柳

手札0

ライフ700

場 煉獄龍オーガ・ドラグーン レベル8 攻撃3000

  インフェルニティ・デス・ドラゴン レベル8 攻撃3000

  インフェルニティ・ドワーフ レベル2 守備500

  天狼王ブルー・セイリオス レベル6 攻撃2400

 

「どうやら望んでいたカードが来なかったようだな…。俺のターン」

 

鬼柳

手札0→1

 

「罠発動、《威嚇する咆哮》」

「また俺の手札が1枚ある状態で魔法・罠を発動したか…」

「これでお前はこのターン攻撃できない」

これで翔太は3体のシンクロモンスターから攻撃を受ける心配はなくなった。

しかし、鬼柳がこのままターンを終えるはずがない。

「俺はカードを1枚伏せ、《インフェルニティ・デス・ドラゴン》の効果発動。《魔装軍師コウメイ》を破壊する。インフェルニティ・デス・ブレス!!」

《インフェルニティ・デス・ドラゴン》の口から放たれた炎によって、《魔装軍師コウメイ》が消滅する。

「《コウメイ》の攻撃力は500。よって、お前は250のダメージを受ける」

「…」

 

翔太

ライフ2150→1900

 

「これでお前のフィールドにモンスターはいない。ターンエンドだ」

 

 

翔太

手札1(《魔装鳥キンシ》)

ライフ1900

場 伏せカード2

 

鬼柳

手札1→0

ライフ700

場 煉獄龍オーガ・ドラグーン レベル8 攻撃3000

  インフェルニティ・デス・ドラゴン レベル8 攻撃3000

  インフェルニティ・ドワーフ レベル2 守備500

  天狼王ブルー・セイリオス レベル6 攻撃2400

  伏せカード1

 

「俺のターン!」

 

翔太

手札1→2

 

「俺は《魔装獣剣スイモウ》を召喚!」

 

魔装獣剣スイモウ レベル3 攻撃1200

 

「罠発動。《インフェルニティ・ブレイク》。手札が0枚の時、墓地のインフェルニティカード1枚を除外することで、相手フィールド上のカードを1枚破壊する」

「何!?」

突然上空から落ちてきた雷を受け、《魔装獣剣スイモウ》が破壊されようとした。

「これでお前の望みが絶たれたな…」

「望みが絶たれたのはお前だ。俺は罠カード《アサシン・ブレイク》を発動。俺のターンに俺のフィールド上に存在する魔装モンスターが効果で破壊された時、俺の墓地・エクストラデッキに存在する《ペイルライダー》をデッキに戻すことで、相手フィールド上で最も攻撃力の高いモンスター1体を破壊し、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与える」

「無駄なことを…。《オーガ・ドラグーン》の効果発動。俺の手札が0枚の時、1ターンに1度相手の魔法・罠カードの発動を無効にし、破壊する!」

《煉獄龍オーガ・ドラグーン》の尾が《アサシン・ブレイク》を貫こうとする。

「俺は《アサシン・ブレイク》のもう1つの効果を発動。俺のフィールド上にセットされている《クアトロ・デスブレイク》を墓地へ送ることで、このカードの発動に対して、相手はカードを発動できなくする」

「何…!?」

尾は確かに《アサシン・ブレイク》を貫いた。

しかし、その時には《アサシン・ブレイク》が蜃気楼だったかのように姿をけし、代わりに霊体となっている《魔装騎士ペイルライダー》が姿を現す。

「死の騎士の魂が煉獄の竜を冥界へ誘う。クアトロ・デスブレイク!!」

《魔装騎士ペイルライダー》が《煉獄龍オーガ・ドラグーン》を光剣で真っ二つにした。

 

鬼柳

ライフ700→0

 

アサシン・ブレイク

通常罠カード

「アサシン・ブレイク」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分のターンに自分フィールド上に表側表示で存在する「魔装」モンスターが効果によって破壊されたとき、自分のエクストラデッキ・墓地に存在する「魔装騎士ペイルライダー」1体をデッキに戻すことで発動できる。相手フィールド上で最も攻撃力の高いモンスター1体を破壊し、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える。

(2):このカードを発動するとき、自分フィールド上にセットされている「クアトロ・デスブレイク」1枚を墓地へ送ることができる。そうした場合、相手はこのカードの発動に対して魔法・罠・モンスター効果を発動できない。

 

「…。やるな、秋山翔太」

負けたにもかかわらず、鬼柳はにやりとしている。

「(《オーガ・ドラグーン》…。こいつは違うのか…?)約束だ。伊織がどこにいるのか教えろ」

「さあ…どこにいるだろうな?」

「とぼけるな!!」

怒声を浴びせながら、鬼柳の胸ぐらをつかむ。

すると、急にデュエルディスクが鳴る。

「こんな時に…」

鬼柳を突き放し、電話に出る。

「もしもし…」

(やっほー、翔太君。今どこにいるの?)

「伊織…!?お前今どこに…」

(やっだなー翔太君。今はホテル。10分くらい前に戻ったよ。それに、コンビニへお菓子を買いに行くって言ったじゃん。翔太君はどこに…?)

「はあ…。散歩していただけだ。これから戻る」

電話を切り、すぐに鬼柳がいると思われる方向に目を向ける。

しかし、そこに鬼柳の姿はなかった。

「ちっ…あいつどこへ行った!?」

大急ぎでバイクを置いた場所へ向かうが、すでに鬼柳のバイクは消えていた。

(一体何が目的だったんだ…?あいつは…)

 

「…」

自身が滞在するホテルの一室で、鬼柳はポケットから写真を出す。

写真には少し幼い自分自身とその頃一緒にいた友人たち、そして聖子と純也の姿が映っている。

(顔立ちがあの人に似ている…。それに…)

「鬼柳。頼まれてたものを見つけたぜ」

ノックもせずにロットンが部屋へ入り、書類を机に置く。

「それで、秋山翔太が見つかった場所は」

「ああ…。6年前に純也さんが行方不明になったところと同じだ。もしかして、あいつは…」

「どうだろうな…。もしそうじゃないとしても、あいつが手掛かりになるはずだ…」



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第20話 駆けろ 飛べ 泳げ

ついに始まったTDC本選!!昨日までの激戦を潜り抜け、この戦場に現れた25組のデュエリストたちが入場するぞーーー!!!!)

MCの実況と共に、翔太と伊織、そして本選出場を果たした25組が観客からの完成を受けて入場する。

 

本選出場組

●遊勝塾のダークホース 秋山翔太&永瀬伊織

●Mr.マシンブラザーズ ジョー・ハインリヒ&カイル・ディクソン

●盲目の毒蜘蛛 ジョンソン・オーベル

●アメリカからやってきた流浪のデュエリスト ハンス・アンデルセン&ジェイク・クロコダイル

●砂漠の王者 リシド・ヴァショス&マリク・ヴァショス

●デュエル警察 牛尾哲夫&風間走兵

●デュエルの科学者 三沢大樹&アルバート・アインシュタイン

●チーム黒蠍 マグレ&チック

●黒き翼と白き刃 ロベルト・ピアスン&クリス・ボルガー

●凸凹兄弟 プラシド・イリアス&ルチアーノ・イリアス

●沈黙のデュエリスト アモス・ガラム&シド・ガラム

●意外性の鬼神 枢密院セクト&山上太郎

その他もろもろ…。

 

「っておい!!!!!」

作者に紹介を省略されたデュエリストたちが抗議してくる。

仕方ないだろう、モブキャラの名前と顔、デッキを考えるほど暇じゃないのだから。

「(サボるな作者…)それで、こいつらとこれからタッグアクションデュエルをするのか?」

「翔太君、こいつらって…」

(では、これから行うのはビークルデュエルだーーーー!!)

「ビークルデュエル…?」

聞いたことのないデュエルの名前に首をかしげ、伊織を見る。

しかし、伊織も知らない様子で首をかしげていた。

(これから行うのはこの町全体をコースとするレース!!2人のプレーヤーが1体のモンスターに乗り、デュエルをする!!そして、乗っているモンスターはビークルモンスターとなり、ビークル効果が与えられる。例えば…!!)

画面に《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が表示される。

(たとえばこの《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》は地上を走るモンスター!このモンスターに与えられるビークル効果は1ターンに1度、攻撃を行う自分のモンスターの攻撃力を600ポイントアップさせる!!そして、与えられるビークル効果はモンスターによって異なるぞーーー!!)

「となると…選んだビークルモンスターによって明暗が分かれることもあるということか…」

「ええっと、俺たちはどれを…」

選手たちがそれぞれのパートナーと話しあい、ビークルモンスターを決める。

「うー…私のデッキには乗れるモンスターは《フレンドック》しかないよ…。翔太君、いいモンスターある?」

「こいつなら、伊織も乗れるな」

翔太がデッキから出したのは《魔装船ヴィマーナ》。

船の先に五芒星が刻まれ、6枚の翼がついている黄金の戦闘機だ。

 

魔装船ヴィマーナ

レベル7 攻撃2400 守備1500 光属性 機械族

【Pスケール青3:赤3】

「魔装船ヴィマーナ」の(2)のP効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。

(2):自分か相手がP召喚に成功した時、自分はデッキからカードを1枚ドローする。

【モンスター効果】

(1):自分フィールド上に表側表示で存在する「魔装」モンスターの攻撃力は相手フィールド上・エクストラデッキに存在するPモンスター1体につき300ポイントアップする。

 

デュエルディスクに設置すると、《魔装船ヴィマーナ》のビークル効果が表示される。

「こいつのビークル効果は1ターンに1度、相手モンスター1体の攻撃を無効にする…」

「《くず鉄のかかし》と同じ効果だね」

(なお、ビークルモンスターはコース上に設置されているチェンジポイントで変更できる。また、ダメージを受ければ受けるほどビークルモンスターはスピードダウン。それでもレースは続行でき、チェンジポイントでビークルモンスターを変更すればそれを解消できる。しかし、ライフが0になればその時点で脱落。そして、第2回戦に出場できるのは上位8組のみ!!ビークルモンスターは1組につき1体!慎重に選んでくれーーー!!)

「8組だけだと…!!?」

「ってことはこのレースで17組は脱落するのか…?」

その発言は少し語弊がある。

確かにこのレースでは少なくとも17組が脱落する。

しかし、少なくともだ…。

例えばすべての相手のライフを0にし、たった1組だけゴールした場合はその瞬間優勝が決まる。

更に17組を超える数の組が脱落すれば、その分だけ次へ進める組の数が減ることになる。

(ここで注意!!選択したビークルモンスターは自分のターン中に特殊召喚することができる。その場合でも本来の効果に加えてビークル効果を使用することができるが、ビークルモンスターがフィールドから離れたとき、チェンジポイントまでは自力で向かわなければならない!!)

それぞれの組がビークルモンスターを決めると、それに乗ってスタートラインに立つ。

(これより第1チェンジポイントまでのフィールドが決定する!!フィールド魔法発動!!)

コンピュータが数多く存在するアクションフィールドから1つを選択する。

選択されたフィールドは《ルネッサンスシティ》だった。

その瞬間、第1チェンジポイントまでのコースとなる道とその周囲の風景がルネッサンス期のイタリアのそれに変化していく。

ちなみに、コースとなる道路付近はあらかじめ一般人の立ち入りを禁止にしている。

(ここまでやるのか…?本当にとんでもない財力があるんだな…)

(このビークルデュエルではアクションカードは存在しない!!己のデッキとパートナー、そしてビークルモンスターを信じ、戦い抜いてくれーーーー!!では…ビークルデュエル、スタートーーーー!!!)

設置されている信号機が赤から青に変わる。

それと同時にすべてのビークルモンスターが動き出した。

 

伊織&翔太

手札

伊織5

翔太5

ライフ4000

 

翔太が《魔装船ヴィマーナ》を操縦する。

「伊織、最初のターンはお前がデュエルをしろ。可能な限りライフとスピードを削ってやれ」

「はーい。私のターン、手札から《E・HEROエアーマン》を召喚!」

 

E・HEROエアーマン レベル4 攻撃1800

 

「《エアーマン》の効果発動!このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、デッキからHEROを1体手札に加えるよ!私はデッキから《E・HEROブレイズマン》を手札に!そして、カードを2枚伏せてターンエンド!」

 

伊織&翔太

手札

伊織5→3(うち1枚《E・HEROブレイズマン》)

翔太5

ライフ4000

場 E・HEROエアーマン レベル4 攻撃1800

  伏せカード2

  魔装船ヴィマーナ(ビークル)

 

(まあ、最初のターンはこれでいいか)

ビークルデュエルでは最初のターン、全員のプレイヤーは攻撃できない。

そして、今の伊織の伏せカードと《魔装船ヴィマーナ》であればある程度攻撃に耐えることができる。

更にフィールドは複雑な街並みである《ルネッサンスシティ》。

空中を移動できる《魔装船ヴィマーナ》に有利だ。

「どけどけどけぇ!!」

「ちっ…後ろから来たな」

《ダーク・ダイブ・ボンバー》に乗った組が翔太たちの前に出る。

「さっさと退場させてやる!!《ダーク・ダイブ・ボンバー》のビークル効果!こいつは俺のフィールドに存在する闇属性モンスターの攻撃力を1000ポイントアップさせる!《ガンナードラゴン》でダイレクトアタック!!」

キャタピラがと砲台のある赤い竜を模した機械《可変機獣ガンナードラゴン》が翔太たちに狙いを定め、火炎弾を発射する。

 

可変機獣ガンナードラゴン レベル7 攻撃2800→3800

 

「《魔装船ヴィマーナ》のビークル効果。こいつは1ターンに1度、相手の攻撃を無効にする」

《魔装船ヴィマーナ》がバレルロールをし、火炎弾を回避する。

「くっそぉ!!俺たちはこれでターンエンド!!」

「俺のターン」

操縦を伊織に交代させた翔太がカードをドローする。

 

翔太

手札5→6

 

「俺は手札から《魔装獣剣スイモウ》を召喚」

 

魔装獣剣スイモウ レベル4 攻撃1200

 

「このカードはダイレクトアタックをすることができる。いけ、《スイモウ》!」

《魔装獣剣スイモウ》が《可変機獣ガンナードラゴン》の弾幕を潜り抜け、《ダーク・ダイブ・ボンバー》に乗る2人の相手を切り裂く。

「うわああ!!」

ダメージを受けたことにより、《ダーク・ダイブ・ボンバー》が失速する。

 

敵タッグA ライフ4000→2800

 

「よし…これで距離は稼げたな」

バトルフェイズが終了し、相手の失速を見届けながら《魔装獣剣スイモウ》が手札に戻る。

「しょ、翔太くーん!!どうやって操縦すればいいの??」

「車と同じ感覚だ。それで分かるだろ?」

「分かるだろって…私、免許取ってないよー!」

《魔装船ヴィマーナ》が訳の分からない動きを取り始め、危うく近くの建物に当たりそうになる。

「ちっ…。よく聞け。こいつの操縦は…」

 

「…」

《グランド・スパイダー》に乗ったジョンソンは杖を額に当てたままで特に行動を起こす気配がない。

「なんだコイツ?フィールドに何もカードがねえぞ?」

「ならやることは1つだ!!」

2組のデュエリストがジョンソンに狙いを定める。

「俺のターン、ドロー!俺は手札から《ゴブリンエリート部隊》を召喚!」

銀色の鎧と将剣を装備したゴブリンの集団が現れる。

 

ゴブリンエリート部隊 レベル4 攻撃2200

 

「そして、《ジャッカルの霊騎士》のビークル効果は1ターンに1度、俺のフィールドに存在するレベル4以下のモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊した時、そのモンスターを墓地から表側守備表示で特殊召喚できる。これで手札からモンスターを特殊召喚しようが関係ねえ。やれ、《ゴブリンエリート部隊》!!」

《ゴブリンエリート部隊》が丸裸同然のジョンソンに向けて剣を掲げて突撃する。

「《グランド・スパイダー》のビークル効果発動。相手の直接攻撃宣言時、デッキからスパイダーモンスター1体を特殊召喚し、攻撃対象をそのカードに変更させる。この効果はデュエル中2回まで使用できる」

地中から6本の足が現れ、《ゴブリンエリート部隊》を捕縛する。

そして、口がシュレッダーのようになっている巨大なクモの頭がその哀れな兵士たちを捕食した。

「このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した時、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える」

「う…嘘ーーーー!!!?」

シュレッダーのような口から放たれた赤い光線が《ジャッカルの霊騎士》もろとも敵タッグを焼き尽くす。

 

敵タッグB

ライフ2500→2200→0

 

「ふう…これで分かったな?こいつの操縦の仕方は」

「うん、さっすが私のパートナー!」

「お前が頼りないだけだ」

嬉しそうに操縦する伊織に少々うんざりしている。

《魔装獣ユニコーン》や《魔装獣剣スイモウ》の攻撃、そして罠カードで他のプレイヤーをけん制しつつ、前へ進んでいく。

「ええっと、ここまででもう2組が脱落していて…!!翔太君!!」

「なんだよ、伊織」

「翔太君、あれを見て!!」

「な…!?」

伊織が指差した方向には2本の光の柱、ペンデュラム召喚時に発生するエフェクトが見える。

翔太から見て右側に金髪で青と白の制服のような服装の片手剣士が、左側には青髪で黒い袖なしのローブを着た魔道士がいる。

そして、これからペンデュラム召喚されるのは…。

「これで俺はレベル3から4のモンスターを同時に召喚可能!宝玉の力を持つ聖なる獣たちよ、今こそ大いなる力の元に集結せよ!ペンデュラム召喚!!現れろ、俺の友達!!《宝玉獣サファイア・ペガサス》、《宝玉獣トパーズ・タイガー》!!」

サファイアでできた角と宝玉がついた白銀のペガサスと足と額に鋭い刃がある白と黒のストライプの虎が現れる。

「またペンデュラムモンスター…!?」

「俺と赤馬、遊矢、沢渡以外にもペンデュラム召喚を…一体どこで…?」

昨日に修造からの連絡で、沢渡がペンデュラム召喚を使ったということは知っているが、まさかここで新しいペンデュラム使いと出会うとはどうして思えただろう。

「ハンス、LDSが貸したっていうニューカードの調子はどうだ?」

「いい調子だ…。俺の宝玉獣にすごくなじんでる!」

《古生代化石マシンスカルコンボイ》に乗るハンスが笑顔でジェイクの言葉に答えた。

(それにしても、あのペンデュラムモンスター…。ハンスにそっくりだぜ)




アニメがまだ2日目の夜なので、今回はここまでです。
それにしても、まさかこの時期に新しい宝玉獣シリーズのカードが出るとは思いませんでした。
もしかして、GXのデッキが原作者のマイブームだからでしょうか…?


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第21話 狙われる者

「俺たちの邪魔をするな、伊織!!」

「はいはい。《E・HEROエアーマン》でダイレクトアタック!エアー・ストライク!!」

《E・HEROエアーマン》が右拳を前に出すと、それを軸に回転しながら相手のビークルモンスターである《サイコ・コマンダー》を貫いた。

「うぎゃあああ!!」

 

デュエリスト

ライフ1700→0

 

ライフを失ったデュエリストがその場で座り込む。

「よし…これで少しは…」

「翔太君、そろそろチェンジポイントだよ。ビークルモンスターの変更はどうするの?」

「俺たちはダメージを受けていない。このままでいい」

「はーい」

《魔装船ヴィマーナ》がチェンジポイントを通過する。

(これで本選通過した25組のうち12組が通過したぞーーー!!ここからコースにサプライズが起こるーーー!!)

MCが手元にある赤いスイッチを押す。

すると、第2コースの上空に雨雲と雷雲が発生する。

「ここまでソリッドビジョンで再現するのか??」

短時間でコースには豪雨と落雷が発生する。

「翔太君!!豪雨のせいで前がよく見えないよ!!」

「分かっている、黙ってろ」

鋭い水滴が何度も顔に当たり、翔太の視界を制限する。

レオコーポレーションのことだから、この点に関する安全対策は施されているだろうとは思うが、やりすぎではないかと思えてしまう。

「見つけたぜ…秋山翔太、永瀬伊織!!」

「…?」

聞きなれない声が2人の耳に届く。

背後から《ダーク・アームド・ドラゴン》に乗った《首領・ザルーグ》そっくりな男と《黒蠍―逃げ足のチック》そっくりな少年が追いかけてきている。

「さあ、本選出場のためにもまずはお前たちをコースアウトさせる!!」

「翔太君!振り切ってよ!!」

「無理を言うなよ、今の状況じゃあこれで精いっぱいだから、嫌でも必死な顔をしてるんだよ」

視界が制限されている以上、無理にスピードを上げるとコースから外れて自滅するのがオチだ。

そして次のチェンジポイントまでまだ距離がある。

「伊織、俺と操縦を代われ」

「えーーー!?ここで私が操縦するの??」

「俺があいつらをなんとかする。それに、素人であるお前なら意外な動きが取れるかもな」

「もう…どうなっても知らないよ!!」

翔太君だって素人のくせにと言いたくなったが、もう翔太が操縦をやめてデュエルの準備をしていたため、仕方なく操縦を代わる。

「いい覚悟だな、坊主」

「俺たちにはこのまま勝ち進まなきゃならない理由があるからな。お前ら雑魚にかまってられねえ」

「ふん…いってくれる。いくぞ、チック!!」

「はい、マグレの親父!!まずは俺のターンからだ!!」

 

チック

手札3→4

 

「俺はモンスターを裏守備表示で召喚!そして、カードを2枚伏せてターンエンド!」

 

チック&マグレ

手札

マグレ5

チック4→1

ライフ4000

場 裏守備モンスター1

  伏せカード2

  ダーク・アームド・ドラゴン(ビークル)

 

翔太&伊織

手札

翔太5

伊織1

ライフ4000

場 E・HEROエアーマン レベル4 攻撃1800

  魔装船ヴィマーナ(ビークル)

 

「俺のターン!」

 

翔太

手札5→6

 

「俺は手札から《魔装獣ユニコーン》を召喚」

召喚された《魔装獣ユニコーン》が目を閉じ、己の勘だけを頼りに全力疾走する。

 

魔装獣ユニコーン レベル4 攻撃1600

 

「《ユニコーン》がこんなにすごい走りをしてるんなら…あれにビークルモンスターを変えればよかったーーー!」

「うるさい。俺は《エアーマン》で裏守備モンスターを攻撃。エアー・ストライク」

《E・HEROエアーマン》のドリルパンチが裏守備モンスターである《キラー・トマト》を貫く。

 

キラー・トマト レベル4 守備1100

 

「《キラー・トマト》の効果発動!このカードが戦闘で破壊され墓地へ送られた時、デッキから攻撃力1500以下の闇属性モンスター1体を攻撃表示で特殊召喚できる!頼むぜ、俺たちのエースモンスター、《首領・ザルーグ》!!」

《首領・ザルーグ》は召喚されると自分の足で翔太たちを追いかけはじめる。

 

首領・ザルーグ レベル4 攻撃1400

 

「ならば俺は《ユニコーン》で《ザルーグ》を攻撃する」

《魔装獣ユニコーン》が反転し、《首領・ザルーグ》めがけて突撃する。

「させるか!罠発動《ドゥーブルパッセ》!!相手モンスターが俺の攻撃表示モンスターに攻撃するとき、攻撃対象モンスターの攻撃力分のダメージを相手に与えることで、その攻撃を俺へのダイレクトアタックにする」

「何!?」

攻撃対象となっている《首領・ザルーグ》がズボンポケットに入っている音爆弾を2つ投擲する。

音爆弾の強烈な音響によって《魔装獣ユニコーン》が動揺する間に、盗賊の首領は《魔装船ヴィマーナ》の下部へ向かい、そこから右翼の1つを銃で破壊する。

「ちっ…!」

ダメージにより《魔装船ヴィマーナ》が減速する。

「ふふふ…これで更にチェンジポイントが遠くなったな」

「だが、それはお前たちも同じだろ?」

《首領・ザルーグ》を逃した《魔装獣ユニコーン》がビークルモンスターである《ダーク・アームド・ドラゴン》に角で攻撃する。

「うわああ!!」

 

チック&マグレ

ライフ4000→2400

 

翔太&伊織

ライフ4000→2600

 

「更に…《ダーク・アームド・ドラゴン》のビークル効果発動!1ターンに1度俺が戦闘ダメージを受けたとき、俺のフィールド上に存在する闇属性モンスター1体の攻撃力をそのダメージ分アップさせる!!」

 

首領・ザルーグ レベル4 攻撃1400→3000

 

「ええーーー!!?攻撃力が一気に3000に???」

「それだけじゃないぜ!《ドゥーブルパッセ》の効果を受けた俺のモンスターは次のターン、ダイレクトアタックすることができる!」

「これで次のターン、攻撃力3000となった《首領・ザルーグ》でダイレクトアタックすれば、お前たちはおしまいだ」

「ちっ…《ダーク・アームド・ドラゴン》のビークル効果を知っていれば…」

翔太は《ダーク・アームド・ドラゴン》の効果が破壊効果だろうと予測していた。

これで分かったことはビークル効果は本来のモンスター効果とかみ合うわけではないということだ。

「だが、このまま終わるつもりはない!俺はレベル4の《ユニコーン》と《エアーマン》でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!現れろ、《ズババジェネラル》」

「何!?魔装モンスターではないだと…??」

(あの取り巻き共に今回だけは感謝しないとな)

青白い鎧と赤いマント、そして大剣という正統派の騎士とも言うべきモンスターが現れる。

このカードはあの時、遊勝塾とLDSの三本勝負(諸事情で4本勝負となったが)の原因を作った沢渡の取り巻きから没収したものの1枚だ。

とはいうものの、エクシーズの戦術を理解できていないであろう彼らには宝の持ち腐れになるかもしれなかったカードでもある。

 

ズババジェネラル ランク4 攻撃2000

 

「《ズババジェネラル》の効果発動。1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで手札の戦士族モンスター1体をこのモンスターに装備できる。俺は《魔装騎士ペイルライダー》を《ズババジェネラル》に装備する」

オーバーレイユニットのうちの1つが《魔装騎士ペイルライダー》の2本の光剣に変化する。

それを装備した《ズババジェネラル》の鎧の青白い部分が若干暗くなる。

「《ズババジェネラル》の攻撃力はこの効果で装備されたモンスターの攻撃力分アップする」

 

ズババジェネラル ランク4 攻撃2000→4500

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・魔装獣ユニコーン

 

(攻撃力の上げ幅は多いけど、ここではあのカードの方がいいな…)

翔太の脳裏に《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》が浮かぶ。

これは今朝聞いたことだが、前日は権現坂と遊矢が無事に初戦を通過した。

素良はLDS所属の黒咲の常に先を行く戦略で完敗した。

しかし、敗北したことが重要というわけではない。

そのデュエルで使用されたアクションフィールド、《未来都市ハートランド》で黒咲が動揺し、融合召喚を行った素良に怒りを見せるなど不審な点が多い。

更に黒咲は素良達融合召喚の勢力が自分たちの仲間を次々と倒したと言っていて、更には素良はそのデュエルの中でエクシーズ使いである彼を見下し、敗北寸前まで追いつめられたことで狂気的な面を見せた。

彼らの謎はデュエル内では留まらない。

その日の夜に素良が脱走、そのまま行方不明となってしまったという。

そして、公園で柚子が《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》を持つ遊矢が意識を失っているのを発見したという。

彼はいまだに意識を回復していない。

(遊矢…一体何があった?)

「おーい翔太くーん、早くターンを進めてよー!!」

「あ…ああ。俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

チック&マグレ

手札

マグレ5

チック1

ライフ2400

場 首領ザルーグ レベル4 攻撃3000

  伏せカード2

  ダーク・アームド・ドラゴン(ビークル)

 

翔太&伊織

手札

翔太6→3

伊織1

ライフ2600

場 ズババジェネラル(《魔装騎士ペイルライダー》装備 オーバーレイユニット1) ランク4 攻撃4500

  伏せカード1

  魔装船ヴィマーナ(ビークル)

 

「親父!次のターンは任せたぜ!」

「任せてもらおうか」

マグレがゆっくり立ち上がり、翔太の《ズババジェネラル》を見る。

(なるほど…奴のデッキは魔装モンスターだけだと思っていたが、タッグデュエルでの連携を考えたな)

(《ダーク・アームド・ドラゴン》は生物。しかも手綱なしで動くのか)

翔太の《魔装船ヴィマーナ》は機械で、タッグデュエルの場合は自動操縦ができなくなっているため自分で操縦しなければならない。

伏せカードなどでフィールドのカードが増えたために交代は難しい。

タッグビークルデュエルでは必ずしも次の自分たちのターンはパートナーに交代する必要がない。

《魔装船ヴィマーナ》に自動操縦装置がない分、今は翔太1人で戦うしかない。

「私のターン、ドロー」

 

マグレ

手札5→6

 

「私は手札から魔法カード《黒蠍団召集》を発動。私のフィールドに《所領・ザルーグ》が存在する時、手札の黒蠍団を可能な限り特殊召喚できる。さあ、出てこい野郎ども!!」

発動と同時に《所領・ザルーグ》が上空に信号弾を撃つ。

信号弾は一瞬青く光ると、次第に色が黒に変化し、形が蠍そっくりとなった。

そして信号弾を確認した4体のモンスターが客席やコースのそばにあるビル、そしてマンホールから飛び出してくる。

「黒蠍団一番の力持ち、《強力のゴーグ》!!」

右腕に黒蠍の入れ墨をつけ、モーニングスターのように棘のある両手槌を持つ茶色い袖なしジャケットと赤いズボンの大柄で色黒の禿男だ。

 

黒蠍-強力のゴーグ レベル5 攻撃1800

 

「黒蠍団の紅一点、《棘のミーネ》」

棘の鞭を装備し、《黒蠍-強力のゴーグ》と同じ刺青と服装で茶色い長髪の女性だ。

 

黒蠍-棘のミーネ レベル4 攻撃1000

 

「どんな罠も朝飯前、《罠はずしのクリフ》!」

鉄の短剣を装備した他の2体と同じファッションの眼鏡をかけた青年だ。

 

黒蠍―罠はずしのクリフ レベル3 攻撃1200

 

「お宝いただきゃ、あとはとんずら!《逃げ足のチック》!」

身の丈と同じ大きさの木槌を持つ、3体と同じファッションで金髪の小柄な少年だ。

 

黒蠍―逃げ足のチック レベル3 攻撃1000

 

「「我ら、黒蠍盗掘団!!」」

召喚された5体のモンスターがレース中にもかかわらず、《黒蠍団召集》のイラストと同じポーズをとる。

…とっている間に翔太たちに置いてけぼりにされてしまった。

「…伊織、LDSのソリッドビジョンは一体どうなってんだ?」

「うーん、あんまり分からないよ」

そんなことを言っている間に5体が全力疾走で追いかけてくる。

あまりに全力だったのか、追いついた時には全員ヘトヘトになっている。

そのため、5体全員《ダーク・アームド・ドラゴン》に乗る。

「…。おっさん、どうつっこめばいいか教えてくれ」

「つっこまんでやってくれ。彼らには彼らなりの考えがあるのだ」

(アホな動きになったが、4体のモンスターを同時に召喚だと?遊矢のP召喚並みだな)

「バトルだ!まずは《首領・ザルーグ》でダイレクトアタック!」

「喰らえ、ダブルリボルバー!!」

《首領・ザルーグ》が2丁のリボルバーを取り出し、《魔装船ヴィマーナ》に向けて発射する。

「高度を上げろ、伊織」

「う、うん!!《ヴィマーナ》のビークル効果発動!1ターンに1度、相手モンスター1体の攻撃を無効にするよ!」

左腕で視界をある程度確保しながら、《魔装船ヴィマーナ》の高度を上げ、銃弾を回避する。

「これで、俺たちにとどめを刺せなくなったな」

「ええい。だが、我らにはこの手もある。罠発動!《必殺!黒蠍コンビネーション》!!このカードは我々のフィールドに黒蠍団が勢ぞろいしているとき、このターンのみこれらのモンスターはダイレクトアタックをすることができる。ただし、相手プレイヤーに与えるダメージはそれぞれ400ポイントとなる」

「えーーーー!!?」

「ゆけ!!《ゴーグ》、《ミーネ》、《クリフ》、《チック》!!」

疲れの取れた4体の黒蠍団員が《魔装船ヴィマーナ》を追跡する。

《ズババジェネラル》が2本の光剣で4体のモンスターを追い払おうとするが、《黒蠍―強力のゴーグ》が両手槌で左の剣を受け止め、《黒蠍―棘のミーネ》の鞭が右腕を封じる。

その後、《黒蠍―強力のゴーグ》が力一杯両手槌を《ズババジェネラル》の足元に振り下ろす。

それによって足場が崩れ、《ズババジェネラル》が転倒している間に《黒蠍―罠はずしのクリフ》、《黒蠍―逃げ足のチック》がそのモンスターを踏み台にして跳躍する。

それでも、高度を上げた《魔装船ヴィマーナ》には届かない。

そこで《黒蠍―逃げ足のチック》が木槌を上へ向けて振るい、《黒蠍―罠はずしのクリフ》が更にそれを踏み台とすることでついに《魔装船ヴィマーナ》に取りつく。

「くそ…取りつかれた!!伊織!!」

「ふぇぇ!!」

長年盗掘を繰り返してきたのか、翔太並みの身体能力を持つ《黒蠍―罠外しのクリフ》が操縦席まで到達し、伊織にナイフで切りつけようとする。

「キャアアア!!」

「その程度でギャーギャーいうな、やかましい」

伊織に近づいたそのモンスターを翔太が蹴りで地表へ叩き落とす。

落下する《黒蠍―罠外しのクリフ》は《黒蠍―強力のゴーグ》が受け止めたため無事だった。

 

翔太&伊織

ライフ2600→2200→1800→1400→1000

 

「うわあ、翔太君かっこいい」

「伊織!!さっさと操縦席に…!!」

操縦者を失った《魔装船ヴィマーナ》が雷雲に突っ込みそうになる。

「わ…わ…!!」

あわてて操縦したことでなんと地表へ垂直落下を始めてしまう。

「操縦のやり方は教えただろ?どうしてこういう操縦になる!?」

「だってだってー」

幸いダメージを受けたことで速度が下がっていたため、なんとか通常の飛行状態に戻すことができた。

(もう二度と…タッグビークルデュエルはやらない)

「ただ、ダメージを受けただけではない。お前たちは黒蠍団によってフィールドが崩壊している」

「何!?」

「まずは《強力のゴーグ》の効果。このカードが戦闘で相手にダメージを与えたとき、相手フィールド上のモンスター1体をデッキの一番上に戻す」

転倒した《ズババジェネラル》がフィールドから消えていく。

「それだけじゃない。《逃げ足のチック》の効果発動!このカードが戦闘で相手にダメージを与えたとき、相手フィールド上のカード1枚を手札に戻すことができる!」

翔太の伏せカードが《黒蠍―逃げ足のチック》がいつの間にか設置したバネの罠で吹き飛ばされていく。

「ということは、残り2体にも効果があるのか?」

「そういうことだ。《罠はずしのクリフ》の効果発動。このカードが戦闘で相手にダメージを与えたとき、相手のデッキの上から2枚のカードを墓地へ送ることができる」

《黒蠍―罠外しのクリフ》が投げたナイフが翔太のデッキに刺さる。

翔太がそれを引き抜くとそれには2枚のカードが刺さっていた。

ソリッドビジョンの演出であるため実際に刺さっている訳ではないが。

 

デッキから墓地へ送られたカード

・魔装祭事クリスト

・融合

 

「そして、《棘のミーネ》の効果発動。このカードが戦闘で相手にダメージを与えたとき。デッキ・墓地から黒蠍カード1枚を手札に加える」

マグレの墓地から《必殺!黒蠍コンビネーション》が自動的に排出される。

「このままだと、次のターンにまたそのカードでダイレクトアタックされちゃう!」

「そう。そしてとどめを刺すまで行かずともあっという間に効果で戦略がぼろぼろになる。私はカードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

チック&マグレ

手札

マグレ6→0

チック1

ライフ2400

場 首領ザルーグ レベル4 攻撃3000

  黒蠍-強力のゴーグ レベル5 攻撃1800

  黒蠍-棘のミーネ レベル4 攻撃1000

  黒蠍―罠はずしのクリフ レベル3 攻撃1200

  黒蠍―逃げ足のチック レベル3 攻撃1000

  伏せカード2

  ダーク・アームド・ドラゴン(ビークル)

 

翔太&伊織

手札

翔太3→4

伊織1

ライフ1000

場 魔装船ヴィマーナ(ビークル)

 

黒蠍たちの攻撃により、翔太のフィールドからモンスターがいなくなった。

そして2枚の伏せカードのうち1枚は《必殺!黒蠍コンビネーション》。

今できることは可能な限り相手モンスターを減らすことだ。

「俺のターン!」

 

翔太

手札4→5

 

「(よし…!)このカードは相手フィールド上にのみモンスターが存在するとき、リリースなしで召喚できる。俺は《魔装近衛エモンフ》を召喚!」

 

魔装近衛エモンフ レベル5 攻撃1000

 

「レベル5の魔装モンスターが2体!あれを出すんだね、翔太君!」

「俺はレベル5の《エモンフ》と手札の《魔装槍士タダカツ》でオーバーレイ!」

「何!?手札のモンスターをエクシーズ素材にするだと??」

「こいつをエクシーズ素材とするとき、他の素材は手札の魔装モンスターでなければならないからな。万物を測りし漆黒の騎士よ、むさぼりし者たちに飢餓をもたらせ!エクシーズ召喚!!現れろ、《魔装騎士ブラックライダー》!!」

 

魔装騎士ブラックライダー ランク5 攻撃2800

 

「攻撃力2800!?だが、攻撃力3000の《首領・ザルーグ》には届かん。それに、《ダーク・アームド・ドラゴン》の効果を忘れたわけではないな?」

「当たり前だ。少し黙っていろ」

5体の黒蠍団に対抗するためのカードを翔太は既に手にしていた。

「俺は手札から魔法カード《死者蘇生》を発動。墓地から《魔装獣ユニコーン》を復活させる」

《魔装獣ユニコーン》が地上を疾走し始め、《魔装騎士ブラックライダー》に騎乗されると、その体毛を黒く染める。

「《ユニコーン》の体毛が変化を!?」

「《魔装獣ユニコーン》は魔装騎士の装備カードとなることができ、装備モンスターの攻撃力を800アップさせる」

 

魔装騎士ブラックライダー ランク5 攻撃2800→3600

 

「そして《ブラックライダー》の効果を発動。メインフェイズ1にオーバーレイユニットを2つ取り除くことで、このターン、相手モンスターすべてに1回ずつ攻撃できるようにする」

《魔装騎士ブラックライダー》の天秤にオーバーレイユニットが宿ろうとする。

「ちっ…罠発動!《黒蠍団潜伏》。俺のフィールド上に存在する黒蠍団をターン終了時まで除外する。そして、この効果で除外したモンスター1体につき1000ポイント俺のライフを回復する」

《首領・ザルーグ》がリボルバーから閃光弾を発射する。

それにより、《魔装騎士ブラックライダー》の目がくらんでいる間に5体のモンスターが姿を消した。

同時に、マグレとチックのライフも回復する。

 

チック&マグレ

ライフ2400→7400

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・魔装槍士タダカツ

・魔装近衛エモンフ

 

黒蠍団潜伏

通常罠カード

(1):自分フィールド上に存在する「首領・ザルーグ」「黒蠍」モンスターをすべてゲームから除外する。その後、除外したモンスター1体に付き1000LP回復する。この効果で除外されたモンスターはターン終了時に自分フィールド上に特殊召喚される。

 

「ちっ…なら俺は《ブラックライダー》でダイレクトアタックだ。ブラック・リブラ・メテオ」

黒蠍団を殲滅するために生み出された5つの隕石がすべてマグレとチックを襲う。

「うわあああ!!」

「ぐおおおお!!」

 

チック&マグレ

ライフ7400→3600

 

「俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド」

ターン終了宣言と同時に、黒蠍たちが主の元へ戻ってくる。

 

チック&マグレ

手札

マグレ0

チック1

ライフ3600

場 首領ザルーグ レベル4 攻撃1400

  黒蠍-強力のゴーグ レベル5 攻撃1800

  黒蠍-棘のミーネ レベル4 攻撃1000

  黒蠍―罠はずしのクリフ レベル3 攻撃1200

  黒蠍―逃げ足のチック レベル3 攻撃1000

  伏せカード1

  ダーク・アームド・ドラゴン(ビークル)

 

翔太&伊織

手札

翔太5→0

伊織1

ライフ1000

場 魔装騎士ブラックライダー(《魔装獣ユニコーン》装備) ランク5 攻撃3600

  伏せカード2

  魔装船ヴィマーナ(ビークル)

 

ライフは大幅に回復したものの、一度に大量のダメージを受けたせいで《ダーク・アームド・ドラゴン》のスピードが低下している。

「今のは効いたぜ…だが、お前は黒蠍たちを止めることができなかった。我らの勝利は決した!!」

「とどめは俺がさしてやる!!俺のターン、ドロー!」

 

チック

手札1→2

 

「罠発動!《必殺!黒蠍コンビネーション》!!再び黒蠍団全員はダイレクトアタックできるようになる!」

黒蠍団が再び《魔装船ヴィマーナ》に狙いをつけ、武器を構える。

「バトルだ!!必殺!黒蠍コンビネーション!!!」

《黒蠍―強力のゴーグ》が投擲用ハンマーに装備を変え、それを投擲する。

残り4体の黒蠍団は建物や信号機などを利用して高く跳躍する。

「翔太君!」

「ギャーギャー騒ぐな。罠発動《聖なるバリア―ミラーフォース》」

「な…!!!?」

「分かっているな?これで黒蠍団は全滅だぜ?」

虹色のバリアが5体の攻撃をすべて受け止め、攻撃エネルギーを光線に変換して黒蠍団に襲い掛かる。

光線を受けたモンスターたちは相次いで消滅していった。

「そんな…黒蠍団が全滅!?」

「盗掘団が罠にはまってどうすんだ?」

「くぅぅ…けど、まだだ!!俺は手札から魔法カード《失楽園への切符》を発動!俺のフィールド上に存在する闇属性モンスターが2体以上墓地へ送られたターンにのみ発動でき、デッキからカードを2枚ドローし、手札を1枚墓地へ捨てる!」

 

手札から墓地へ捨てられたカード

・ダーク・ジャッジ・マン

 

失楽園への切符

「失楽園への切符」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に存在する闇属性モンスターが2体以上墓地へ送られたターンにのみ発動できる。デッキからカードを2枚ドローし、手札を1枚墓地へ捨てる。

 

「更にこのカードは俺の墓地に闇属性モンスターが5体以上存在し、俺のフィールド上にモンスターが存在しないとき、手札から特殊召喚できる!《ダーク・クリエイター》を特殊召喚!!」

黒い岩石でできた肉体とオレンジ色の岩石でできた翼の巨人が姿を現す。

闇に落ちたものの、《創世神》としての風格は健在だ。

 

ダーク・クリエイター レベル8 守備3000

 

「ダークモンスターを使ってきたか!!」

闇属性・戦士族と属性と種族が統一されている黒蠍はこのようにダークモンスターと相性がいい。

キーカードが集まらないと真価を発揮できないそれらの手助けとなりえるのだ。

「《ダーク・クリエイター》の効果発動!1ターンに1度、墓地の闇属性モンスター1体を除外することで、墓地から闇属性モンスター1体を特殊召喚できる。俺は《キラー・トマト》を除外し、《ダーク・ジャッジ・マン》を特殊召喚!」

骸骨を模した装飾のある裁判官用の服を着た《ジャッジ・マン》が現れる。

 

ダーク・ジャッジ・マン レベル5 守備1500

 

「《ダーク・ジャッジ・マン》がフィールド上に存在する限り、俺の闇属性モンスターは戦闘では破壊されない!」

《ダーク・ジャッジ・マン》が棍棒を地面にたたきつけると、巨大な岩石の障壁が生み出され、2体の闇属性モンスターを守護し始める。

 

ダーク・ジャッジ・マン

レベル6 攻撃2200 守備1500 効果 闇属性 戦士族

(1):このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、自分フィールド上の闇属性モンスターは戦闘では破壊されない。

 

「俺はこれでターンエンドだ!」

 

チック&マグレ

手札

マグレ0

チック2→0

ライフ3600

場 ダーク・ジャッジ・マン レベル6 守備1500

  ダーク・クリエイター レベル8 守備3000

  伏せカード1

  ダーク・アームド・ドラゴン(ビークル)

 

翔太&伊織

手札

翔太0

伊織1

ライフ1000

場 魔装騎士ブラックライダー(《魔装獣ユニコーン》装備) ランク5 攻撃3600

  伏せカード1

  魔装船ヴィマーナ(ビークル)

 

「ちっ…余計にてこずらせる状況を作りやがって…」

2体のダークモンスターに悪態をつきながら、次の手を考える。

《ダーク・クリエイター》の効果で闇属性モンスターの除外と復活が行われ、《ダーク・ジャッジ・マン》が防御を行う。

更に貫通ダメージを与えたとしても、《ダーク・アームド・ドラゴン》によって闇属性モンスターの強化が行われ、返り討ちにされるというオチがお待ちかねだ。

「俺のターン!」

 

翔太

手札0→1

 

「あまりこいつだけを相手したくないな…」

この2人とデュエルをしている間に、すでに2組に抜かれている。

これ以上相手をしていたら順位の都合で敗退となってしまう。

「マグレの親父、次のターンくらいで決着をつけないと…」

「ふふ、そうだな。だが、おそらく次の我々のターンはないかもしれんぞ?」

「それって…このターンで逆転されるってことか!?」

「きっとだがな…」

「俺は手札から魔法カード《忌まれし天魔の右手》を発動。俺のフィールド上に存在するモンスターが闇属性モンスター1体のみの時、ライフを半分支払うことでデッキからカードを3枚ドローし、手札の闇属性モンスター1体を墓地へ送る。手札に闇属性モンスターが存在しなかった場合、手札をすべて墓地へ送る」

「翔太君のデッキにはいろんな属性のモンスターがいる!もし、これで闇属性モンスターをドローできなかったら…」

通常、こういう《闇の誘惑》のようなタイプの魔法カードは手札に代償となるカードが用意できている状況下で発動するべきカードだ。

ドローするカードの中にそういうものが確実にあるような状況であるならば話は別だが、翔太の場合は明らかにギャンブルだ。

(ドローした3枚のカードで…勝たなければならない…か…)

(おいおい翔太ちゃーん、あんまり状況が良くないんじゃないかー?なんなら、また俺が力を…)

翔太の脳裏にまたあの声が聞こえてくる。

(黙っていろ…)

(うわぁー怖い怖い。まあいいか。今の俺は邪魔が入っているせいであんまり力出せねえし。ここは見物させてもらうぜー?)

声が脳裏から消えていく。

それと同時に翔太はデッキからカードをドローする。

 

翔太

手札1→3

ライフ1000→500

 

忌まれし天魔の右手(小説オリカ・調整)

「忌まれし天魔の右手」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に存在するモンスターが闇属性モンスター1体のみの場合に、LPを半分払って発動できる。デッキからカードを3枚ドローし、その後手札から闇属性モンスター1体を墓地に送る。手札に闇属性モンスターが存在しない時、手札を全て墓地に送る。

 

「俺は手札の《魔装鬼ヨシヒロ》を墓地へ捨てる。そして、手札から魔法カード《魔装天啓》を発動!俺の墓地に存在する魔装ペンデュラムモンスター2体を手札に戻す」

翔太の墓地から2枚の逆転のカードが自動排出される。

 

墓地から手札に加わったカード

・魔装騎士ペイルライダー

・魔装槍士タダカツ

 

魔装天啓

「魔装天啓」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分のエクストラデッキ・墓地に存在する「魔装」Pモンスター2体を対象として発動する。そのモンスターを手札に加える。

 

「そして俺はスケール2の《タダカツ》とスケール4の《ペイルライダー》でペンデュラムスケールをセッティング!」

「何…!?」

「翔太君!このスケールだとレベル3のモンスターしかペンデュラム召喚できないよ!」

「それで十分だ。来たれ、時の果てに眠りし英雄の魂。希望の道を照らし、勝鬨を上げろ!ペンデュラム召喚!!現れろ、《魔装獣剣スイモウ》!!」

 

魔装獣剣スイモウ レベル3 攻撃1200

 

「ふん。せっかくのペンデュラム召喚だけど、召喚されたのは攻撃力1200の雑魚モンスターじゃないか!」

「俺は《魔装騎士ペイルライダー》のペンデュラム効果を発動」」

《魔装騎士ペイルライダー》がキャノン砲を召喚し、狙いを《ダーク・ジャッジ・マン》に定める。

「な…!?」

「このカードをペンデュラムゾーンにセッティングしている状態でペンデュラム召喚に成功した時、相手フィールド上のカードを1枚破壊する。俺が破壊するのは《ダーク・ジャッジ・マン》だ」

キャノン砲から漆黒の銃弾が発射され、《ダーク・ジャッジ・マン》の心臓を貫いた。

「け、けどこの程度なら次のターンに《ダーク・クリエイター》の効果で…」

「俺は墓地に存在する《魔装鬼ヨシヒロ》の効果を発動。俺のフィールド上に存在する魔装カードが戦闘またはカード効果によって相手モンスターを破壊した時、墓地から特殊召喚できる」

日本の鬼をイメージさせる角と赤い肌の巨大な肉体で、右腕には自身の倍近くの重さを持つ槌を持つ男が現れる。

槌の柄には五芒星が刻まれている。

 

魔装鬼ヨシヒロ レベル3 攻撃800

 

「そして、《ヨシヒロ》は魔装モンスター専用のユニオンモンスター。《スイモウ》に装着する」

「何!?」

《魔装鬼ヨシヒロ》が雄たけびとともに霊体に変化する。

そして、《魔装獣剣スイモウ》の剣に宿ると刀身が赤く染まっていく。

「これで装備モンスターの攻撃力は800ポイントアップする」

 

魔装獣剣スイモウ レベル3 攻撃1200→2000

 

「この効果で装備カードとなった《ヨシヒロ》はターン終了時に墓地へ送られる。しかし、装備モンスターが戦闘で相手に与えるダメージを2倍する!そして、《スイモウ》はダイレクトアタックをすることができる」

「何!!!?」

「ということは、《スイモウ》がこのままダイレクトアタックをすれば、2000の倍の4000のダメージで私たちの勝ち!!!」

「バトルだ。《スイモウ》でダイレクトアタック!」

《魔装獣剣スイモウ》が《ダーク・アームド・ドラゴン》に向けて突撃する。

《ダーク・クリエイター》が主を守るために行く手を阻む。

しかし、《魔装獣剣スイモウ》の鬼を宿した剣は闇の創世神を一刀両断する。

そして、その余波がマグレ達に襲い掛かる。

「「うわあああああ!!!」」

 

チック&マグレ

ライフ3600→0

 

魔装鬼ヨシヒロ

レベル3 攻撃800 守備800 ユニオン 地属性 悪魔族

「魔装鬼ヨシヒロ」は1ターンに1度しか特殊召喚できず、(1)の効果はこのカードが特殊召喚されたターンにのみ発動できる。

(1):1ターンに1度、自分のメインフェイズに攻撃力800アップの装備カード扱いとして自分の「魔装」モンスターに装備することができる。この効果で装備カードとなっているこのカードを装備したモンスターが戦闘を行う場合、このカードが相手に与える戦闘ダメージは倍になる。この効果で装備カードとなったこのカードはターン終了時に墓地へ送られる。

(2):自分フィールド上に存在する「魔装」カードが戦闘または効果によって相手モンスターを破壊した時に発動できる。このカードを墓地から表側攻撃表示で特殊召喚する。

 

ライフが0になると同時に《ダーク・アームド・ドラゴン》が消え、2人はコースから強制排除される。

「ふう…なんとか勝てたか。伊織、今の順位は」

「今は15位だよ。急がないと…」

「ああ。だが…」

このデュエルによって、翔太たちのライフはわずか500となり、《魔装船ヴィマーナ》の速度低下も著しい。

まずはチェンジポイントで乗り換えを行う必要がある。

「問題は次のビークルモンスターだな…」

「《ユニコーン》は翔太君を乗せるので限界だし…」

「《ビャッコ》は論外だ。ふう…」

頭を抱えながら、翔太は《魔装鬼ヨシヒロ》を墓地へ送り、《魔装獣剣スイモウ》を手札に戻す。

これ以上追撃が来ないことを願いながら。

 

「あーあ、結局脱落しちゃったな。マグレの親父」

「ふん…だが、これでデータを取ることができた」

「データ…?」

「ああ、こいつだ」

マグレが懐から出した携帯型ゲーム機のような機械には翔太がセッティングした2体のペンデュラムモンスターの放出エネルギーや状態などを表示されていた。

「おー。けど、これが何か意味でも…」

「あるとも。これで更にペンデュラムモンスターの正式な生産への準備が加速する…」

マグレはその記録をUSBメモリを経由して携帯に転送する。

そして、メールでそれをとある人物へ送った。




今回はウォーミングアップのような感じです。
しばらく更新できなかったので…。
ちなみに、これから作者はおそらく半年くらい更新スピードがダウンすると思います。
その点はご了承ください。


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第22話 友との約束

「ふうう…やっと到着!」

「早くビークルモンスターを変えるぞ」

チェンジポイントに到達した翔太と伊織。

幸か不幸か、ここまでくる途上で他の組と遭遇することがなかった。

「翔太君、次のビークルモンスターを早く!!」

「分かっている!」

フィールドから離れたビークルモンスターは融合モンスター、シンクロモンスター、エクシーズモンスターの場合はエクストラデッキへ、それ以外はデッキへ戻される。

また、チェンジポイントにいる時点でフィールドにいるモンスターを新たなビークルモンスターにすることができない。

「キュイー!」

「な…!?」

急に伊織の服の中からビャッコが飛び出してくる。

「お前…ホテルにいるんじゃなかったのか!?」

「あはは…ごめんね。私がこの子を連れてきちゃって」

「伊織、お前なぁ…」

「キュイキュイーー!」

ビャッコが翔太のデッキから自分のカードを出すと、勝手にセットする。

「な…!!」

「ビャッコがビークルモンスターになってくれるの!?」

「キュイ!」

胸を張りながら鳴くビャッコ。

どうやら、ビークルモンスターをする気まんまんのようだ。

「お前にビークルモンスターができるか!?第一俺たちを乗せるだけの大きさじゃねえだろ?」

「キューーーー!!」

ランドセルから葉っぱを取り出し、頭に乗せる。

するとビャッコが白と赤をベースとした二人乗りの車に変化する。

「わあ…車だね、翔太君!」

「見ればわかる。はぁ…」

一応、ビャッコが変化しているため自動操縦みたいなことはできるだろう。

ため息をつきながら、翔太は運転席に座った。

 

第3コースの後半あたりでは…。

「なるほど…ここからは障害物が多いな…」

ジョンソンの杖にビークルモンスターである《クラッシュ・スパイダー》が放った糸がついている。

彼の目の前には多くの楔や岩、ワイヤートラップなどがあり、それらが多くの出場組の行く手を阻んでいる。

「だが、この程度のコースならば問題ない。《クラッシュ・スパイダー》、糸で道を作れ」

《クラッシュ・スパイダー》が岩から岩へと続く道を糸で作り始める。

「おーっと待ってもらうぜぇ?俺たちが先にとおるからなぁ!」

ジョンソンの背後から二足歩行型に改造された《マシンナーズ・フォートレス》に《マシンナーズ・キーパー》と《マシンナーズ・ギアフレーム》を取り付けた巨大な兵器が近づいてくる。

(この音と振動音…《マシンナーズ・メガフォーム》…。雑音も入っているが、この声はジョー・ハインリヒ)

「俺たちのタッグが世界一ィ!!鬼柳一真とロットン・バーネルを倒したというジョンソン・オーベルだな?相手にとって不足なぁぁぁし!!!!」

「うるさいですよ、ジョー。少し静かにしていただきたい」

カイルがうんざりしながら懐からテレビのリモコンを取り出し、音量を下げる。

すると、ジョーの声がだんだん小さくなっていった。

「私の相棒がうるさくてすみません。まあ、現在あなたが1位。ここからゴールまでのんびりデュエルをするというのは…」

「…そのデュエルで私の力量を測ろうとでも…?」

「まあ、このレースは上位8位の中に入ればいいというだけのもの。このまま我々を振り切ってしまっても結構。しかし…」

「いいだろう。お互いに少々ダメージは受けているが、宣戦布告されたからには全力で相手をする」

ジョンソンが杖を置き、《マシンナーズ・メガフォーム》の方向に顔を向ける。

 

ジョンソン

手札2

ライフ3400

場 ダーク・スパイダー(《ダーク・スパイダー》の影響下) レベル3 守備0

  グランド・スパイダー レベル4 守備1500

  クラッシュ・スパイダー(ビークル)

 

ジョー&カイル

手札

ジョー2

カイル4

ライフ2900

場 マシンナーズ・ギアフレーム レベル4 攻撃1800

  マシンナーズ・メガフォーム(ビークル)

 

「私のターン…」

 

ジョンソン

手札2→3

 

「このカードは…」

ドローしたカードの感触がジョンソンに過去のことを思い出させる。

 

10年前、当時10歳だったジョンソンは生まれつき盲目でそのかわりに他の感覚は研ぎ澄まされていた。

更に誰よりも勤勉に励んで、成績が良かったことから周囲の嫉妬を買うことになり、本人にとって友人と言える人物がいなかった。

そんな中、彼は親友と言える人物と出会う。

「なあ…隣、いいか?」

それが彼が初めてジョンソンに言った言葉だ。

彼の名前は猪田富雄。

ジョンソンが目が不自由なのに対し、彼は交通事故が原因で手足が不自由だった。

同じような境遇であるためか、2人はすぐに仲良くなった。

デュエルは富雄から教えてもらい、カードの感触と効果、名前も彼との特訓ですべて覚えた。

そして、遊勝のデュエルをテレビで見たときに2人でアクションデュエルの頂点に立つことを誓った。

富雄がデッキを作り、ジョンソンが戦うという不思議なタッグとなったのだ。

 

(富雄…俺は必ず勝つぞ)

富雄は今、スタジアムの客席で観戦している。

彼との夢のためにも、負けるわけにはいかない。

「私は《トリプル・スパイダー》を特殊召喚。このカードは相手フィールド上に《スパイダートークン》2体を守備表示で特殊召喚することで、手札から特殊召喚できる」

小型の蜘蛛が2体、《マシンナーズ・メガフォーム》の前に現れると同時にジョンソンのそばに赤い3つの目を持つ巨大で白い蜘蛛が現れる。

 

トリプル・スパイダー レベル3 攻撃600

スパイダートークン×2 レベル1 守備0

 

トリプル・スパイダー

レベル3 攻撃600 守備600 効果 闇属性 昆虫族

このカードは通常召喚できない。

(1):相手フィールド上に「スパイダートークン」(昆虫族・闇・星1・攻/守0)2体を守備表示で特殊召喚して、手札のこのカードを特殊召喚することができる。

 

「そして、《ダーク・スパイダー》の効果を発動。1ターンに1度、私のフィールド上に昆虫族モンスター1体のレベルを2つ上げることができる。私は《ダーク・スパイダー》のレベルを2つ上げる」

 

ダーク・スパイダー レベル3→5 守備0

 

「私は手札から魔法カード《ライフ・スター・リロード》を発動。私のフィールド上に存在するモンスターの種族が1つのみで、レベルの合計が10以上の時、デッキからカードを2枚ドローする」

 

ライフ・スター・リロード

通常魔法カード

「ライフ・スター・リロード」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に存在するモンスターの種族が1つだけで、レベルの合計が10以上の時にのみ発動できる。自分はデッキからカードを2枚ドローする。

 

「そして、手札から儀式魔法《地獄蜘蛛の儀式》を発動」

3体の蜘蛛が電柱やビルを利用して高所へ向かい、糸を吐く。

その糸がジョンソンの頭上に集まり、巨大な塊となる。

「このカードはレベルの合計が8以上になるように、手札・フィールド上に存在する私の昆虫族モンスターをリリースする」

《ダーク・スパイダー》と《トリプル・スパイダー》が合計8つの紫色の炎の玉となって塊の中に入り込む。

「なぁぁにぃぃぃ!!?こいつ、儀式召喚を使うのかぁぁぁ!!」

「これまでの公式戦で使った記録はないぞ??」

「地獄の炎纏いし闇の蜘蛛よ、私と富雄の夢の道を生み出せ。儀式召喚!《ヘルフレイム・スパイダー》!!」

糸の塊が砕け、その中から紫色の炎を纏った白くて巨大な6つ目の蜘蛛が現れる。

 

ヘルフレイム・スパイダー レベル8 攻撃2700

 

「《ヘルフレイム・スパイダー》の効果発動。1ターンに1度、フィールド上に存在する昆虫族モンスター1体の表示形式を変更することで、このカードにスパイダーカウンターを1つ置く」

《ヘルフレイム・スパイダー》と同じ炎を纏った《スパイダー・トークン》が攻撃表示に変化する。

そして、《ヘルフレイム・スパイダー》の頭上に『1』と刻まれた紫色の炎が現れる。

 

ヘルフレイム・スパイダー スパイダーカウンター0→1

スパイダートークン レベル1 攻撃0

 

「ちぃぃ!!」

「バトル。《ヘルフレイム・スパイダー》で《スパイダー・トークン》を攻撃」

《ヘルフレイム・スパイダー》の口から紫色の炎でできた糸が放たれる。

「《マシンナーズ・ギガフォーム》のビークル効果を発動します!1ターンに1度、私が最初に受けるダメージを0にする!!」

《マリンナーズ・ギガフォーム》が装備されているキャノンを発射する。

放たれた質量弾と糸が相殺するが、その爆風で《スパイダートークン》が消滅する。

「更に墓地の《地獄蜘蛛の儀式》の効果を発動。このカードの効果で儀式召喚された私の昆虫族儀式モンスターが相手モンスターを攻撃した時、スパイダーカウンターが1つ現れる」

再び紫色の炎が頭上に現れ、数字が『1』から『2』に切り替わる。

 

ヘルフレイム・スパイダー スパイダーカウンター1→2

 

地獄蜘蛛の儀式

儀式魔法カード

「ヘルフレイム・スパイダー」の降臨に必要。

「地獄蜘蛛の儀式」の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):レベルの合計が合計8以上になるように自分の手札・フィールド上に存在する昆虫族モンスターをリリースすることで、手札から「ヘルフレイム・スパイダー」1体を儀式召喚する。

(2):このカードの効果で特殊召喚されたモンスターが相手モンスターを攻撃した時、そのモンスターの上にスパイダーカウンターを1つ置く。

 

「やってくれるな…。《ヘルフレイム・スパイダー》の攻撃をしのぐとは」

「ブァカ者がぁぁぁ!!その程度の攻撃で俺たちを倒せると…」

再びジョーの声がリモコン操作で小さくなっていく。

「全く…。ですが、その程度で私たちは倒せませんよ?」

「…。私は《クラッシュ・スパイダー》のビークル効果を発動。1ターンに1度、デッキから昆虫族モンスター1体を墓地へ送ることで、デッキからカードを1枚ドローすることができる。私はデッキから《リング・スパイダー》を墓地へ送り、カードを1枚ドロー。ただし、この効果は私のフィールド上に昆虫族モンスターが存在しないとき、発動できない」

慣れた手つきでジョンソンが自動排出されたカードを墓地へ捨て、カードをドローする。

「さすがですね。目が見えないというのに」

「…訳あって5年近くアクションデュエルの特訓をしたからな。私はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

ジョンソン

手札3→1

ライフ3400

場 ヘルフレイム・スパイダー(スパイダーカウンター2) レベル8 攻撃2700

  グランド・スパイダー レベル4 守備1500

  伏せカード1

  クラッシュ・スパイダー(ビークル)

 

ジョー&カイル

手札

ジョー2

カイル4

ライフ2900

場 マシンナーズ・ギアフレーム レベル4 攻撃1800

  スパイダートークン レベル1 守備0

  マシンナーズ・メガフォーム(ビークル)

 

一方、第2コースでは…。

「うーん、快適快適!クーラーもあって気持ちいいね!」

ビャッコが変身した車の環境は良く、クーラーだけでなくラジオまでついている。

伊織が聞いている音楽はジブリ映画の主題歌だ。

「集中しろ。いつ相手が出てくるかわからないぞ?」

「キュイーー!!キュキュキューーー!!」

車内にビャッコの鳴き声が響き渡る。

正面には3つの頭を持つ青と白の翼龍、《モンタージュ・ドラゴン》に乗った2人の警官がいる。

2人ともヘルメットをつけていて顔や髪型は良く見えない。

分かることは、1人は少し日焼けした肌で筋肉質な肉体であること、もう1人は白い肌の優男だということだけだ。

前者がおそらく牛尾、後者が風間だろう。

来ている青い制服は警察の物だ。

「げっ…こんなところで減速できっかよ!!」

「伊織、こいつを倒すぞ!」

「うん!!」

「「デュエル!!」」

 

「私のターン、ドロー」

 

カイル

手札4→5

 

(奴らは予選、VWXYZのユニオンモンスターデッキで戦った。奴らの特徴は同じデッキでタッグデュエルを行うところにある…本選のためにデッキを変えたということか…)

「私は手札から《マシンナーズ・コマンダーコヴィントン》を召喚します」

赤いアーマーを纏い、下半身が青い4本足の義足、2丁の拳銃を持つ両手とともに光剣を持つ隠し腕を2本装備した指揮官が現れる。

どうやら自らも前線で戦うために改造を施したようだ。

 

マシンナーズ・コマンダーコヴィントン レベル4 攻撃1000

 

「このカードの召喚に成功した時、手札から《マシンナーズ・フォートレス》を特殊召喚することができます」

《マシンナーズ・コマンダーコヴィントン》が上空に向けて信号弾を発射する。

すると、上空にヘリコプターが出現してカイル達の前に《マシンナーズ・フォートレス》を投下する。

 

マシンナーズ・フォートレス レベル7 攻撃2500

 

「更に、《マシンナーズ・コマンダーコヴィントン》はマシンナーズモンスターの攻撃力をフィールド上に存在する機械族モンスター1体につき300ポイントアップする!」

 

マシンナーズ・ギアフレーム レベル4 攻撃1800→2700

マシンナーズ・コマンダーコヴィントン レベル4 攻撃1000→1900

マシンナーズ・フォートレス レベル7 攻撃2500→3400

 

マシンナーズ・コマンダーコヴィントン

レベル4 攻撃1000 守備600 効果 地属性 機械族

「マシンナーズ・コマンダーコヴィントン」はフィールド上に1体しか存在できない。

(1):このカードの召喚に成功した時、手札から「マシンナーズ・フォートレス」1体を攻撃表示で特殊召喚することができる。

(2):このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、自分フィールド上に存在する「マシンナーズ」モンスターの攻撃力はフィールド上に存在する機械族モンスターの数×300ポイントアップする。

 

(これで…《マシンナーズ・フォートレス》の攻撃力は《ヘルフレイム・スパイダー》を上回った…)

「バトルです!《マシンナーズ・フォートレス》で《ヘルフレイム・スパイダー》を攻撃!スタン・キャノン!!」

《マシンナーズ・フォートレス》のキャノン砲からすさまじい電気でできた巨大な弾丸が発射される。

「罠発動、《ライヤー・ワイヤー》。私の墓地に存在する昆虫族モンスター1体を除外することで、相手フィールド上のモンスター1体を破壊する」

《ダーク・スパイダー》の幻影が槍のように鋭い糸を放つと、それが《マシンナーズ・フォートレス》のコアを貫いた。

コアを砕かれた《マシンナーズ・フォートレス》はその場で機能を停止させた。

 

マシンナーズ・ギアフレーム レベル4 攻撃2700→2400

マシンナーズ・コマンダーコヴィントン レベル4 攻撃1900→1600

 

「《マシンナーズ・フォートレス》が…!!やりますね…。私は墓地の《マシンナーズ・フォートレス》の効果を発動!このカードは手札の機械族モンスターをレベルの合計が8以上となるように墓地へ送ることで、このカードを手札・墓地から特殊召喚することができる。今こそ再起動を、《マシンナーズ・フォートレス》!!」

応急処置で簡易的なコアが装備されたことで機能停止していた《マシンナーズ・フォートレス》が再び動き始める。

 

マシンナーズ・フォートレス レベル7 攻撃2500→3400

マシンナーズ・ギアフレーム レベル4 攻撃1800→2700

マシンナーズ・コマンダーコヴィントン レベル4 攻撃1000→1900

 

手札から墓地へ送られたカード

・マシンナーズ・メガフォーム

 

「私はカードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

ジョンソン

手札3→1

ライフ3400

場 ヘルフレイム・スパイダー(スパイダーカウンター2) レベル8 攻撃2700

  グランド・スパイダー レベル4 守備1500

  クラッシュ・スパイダー(ビークル)

 

ジョー&カイル

手札

ジョー2

カイル5→0

ライフ2900

場 マシンナーズ・ギアフレーム レベル4 攻撃1800

  マシンナーズ・コマンダーコヴィントン レベル4 攻撃1900

  マシンナーズ・フォートレス レベル7 攻撃3400

  スパイダートークン レベル1 守備0

  伏せカード2

  マシンナーズ・メガフォーム(ビークル)

 

「バトル!!《M・HERO闇鬼》でダイレクトアタック!!妖魔会心撃!」

「な…なんでこの娘までそのカードを…うわああああ!!」

鋼の角を1つ額につけた日本の鬼をイメージさせる漆黒のHEROの闇の拳が回転しながらビークルモンスターである《モンタージュ・ドラゴン》毎、牛尾と風間を貫いた。

 

牛尾&風間

ライフ1400→0

 

「うーん…絶好調!!」

「伊織、だいぶそのカードとデッキがなじんだみたいだな」

「当然!徹夜で頑張ったんだぞー?」

「付き合った相手の身にもなれ」

眠気防止のため、コンビニで購入したフリスクを口にする。

ちなみに翔太は刺激の強いブラックミント派だ。

(だが…赤馬零児。どういう風の吹き回しだ?)

少しスピードを落としながら、伊織のデュエルディスクの両端にセットされているカードを見る。

そのカードは昨晩、ホテルに突然訪問してきた中島という男から渡されたものだ。

「まーいいじゃんいいじゃん。おかげでパワーアップしたんだから」

「お前だけがな」

「キュイーキュイー!」

「ふう…また一組見えてきた。伊織、このコースはお前だけで何とかしろよ。そのカードを利用した戦術の特訓だ」

「えーーーー!!?」

頬を膨らませながら不満げな表情となる伊織を見ずに、翔太はビークルモンスターである《ドラグニティアームズ―レヴァテイン》に向けて突っ込んでいく。

 

「私のターン」

 

ジョンソン

手札1→2

 

「私は《ヘルフレイム・スパイダー》の効果を発動。《スパイダートークン》を攻撃表示に変更させる」

 

スパイダートークン レベル1 攻撃0

ヘルフレイム・スパイダー レベル8 スパイダーカウンター2→3

 

「《ヘルフレイム・スパイダー》の効果発動。このカードをリリースすることで、手札・デッキからスパイダーカウンターの数だけ昆虫族モンスターを特殊召喚する。私は手札から《ジェノサイド・スパイダー》、《トリケロス・スパイダー》、そして墓地から《ダーク・スパイダー》を特殊召喚」

《ヘルフレイム・スパイダー》の肉体の炎が勢いを増し、爆発を引き起こす。

そして、爆発と共に全身にダイナマイトやクラスター爆弾などを装備した機械化した蜘蛛と黒い騎士盾と剣を背負った銀色の甲冑の蜘蛛と、そして《ダーク・スパイダー》が姿を現す。

 

ジェノサイド・スパイダー レベル7 攻撃2400

トリケロス・スパイダー レベル8 攻撃2800

ダーク・スパイダー レベル1 守備0

 

ヘルフレイム・スパイダー

レベル8 攻撃2700 守備0 儀式 闇属性 昆虫族

「地獄蜘蛛の儀式」により降臨。

(1):1ターンに1度、フィールド上に存在する昆虫族モンスター1体を選択して発動できる。そのモンスターの表示形式を変更し、このカードにスパイダーカウンターを1つ置く。

(2):自分のターンのメインフェイズ1に、このカードをリリースすることで発動できる。このカードに乗っているスパイダーカウンターの数だけ手札・墓地から昆虫族モンスターを可能な限り自分フィールド上に特殊召喚する。この効果を発動したターン、自分はモンスターを召喚できない。

 

「何…!?まさか、《ヘルフレイム・スパイダー》は…」

「そうだ。このカードは通過点に過ぎない。勝利のための…。いずれペンデュラム召喚が多くのデュエリストたちによってつかわれる日が来る。これはそれの対策の1つだ…。…どうやら、私たちの決着はここではつかないようだ」

「…。ええ、そうですね」

ゴールラインを通過すると同時に、デュエルディスクに何着目に到着したかを示す数字が表示される。

ジョンソンが『1』、カイルとジョーが『2』だ。

「まあ、ここでは8着目までに到着すればいいだけのレース。1位か2位かは別に気にしませんよ」

「…。失礼する」

《クラッシュ・スパイダー》が消えると、ジョンソンは杖で足元を確認しつつ、案内人の手を借りながら控室へ向かった。

「さあ、私達も行きましょうか。ジョー」

「わ…私の出番はなかったが…まあいい!!ここからが私のステー…」

「ちょっとここからは問題になりますのでストップしてください」

リモコンでジョーは消音状態にされ、一切しゃべれなくなった。

 

「ここからが第3コースか…」

第2コースを走り終えた翔太が車から降りてコースを見る。

障害物となる岩や瓦礫が多く、これ以上ビャッコのまま進むのは無理だろう。

「ビャッコ。お前の出番は終わりだ」

「キュー…」

元の姿に戻り、しょんぼりする。

「ここまでありがとう、ビャッコちゃん!帰りにみたらし団子買いに行こうねー?」

「キュイー!」

「また空を移動かと突っ込むのは禁止だぞ」

翔太の目の前に《魔装鳥キンシ》が姿を現す。

「こいつのビークル効果は1ターンに1度、フィールド上のペンデュラムモンスターのスケールを1つ変動させる…??」

「じゃ、出発進行ー!」

「キュイー!」

2人と1匹が《魔装鳥キンシ》の背中に乗る。

ビャッコは伊織の服の中に入り込む。

「結局ついてくるのか…落ちるなよ?」

どうせ自分が言っても、絶対に従ってくれないだろうと思った翔太は《魔装鳥キンシ》を飛翔させる。

現在の翔太と伊織の順位は10位。

少し急がないと脱落する可能性がある。




今回は忙しい日々が続いたので短めになってしまいました…。
次の話は少し長くするつもりなのでそれでご勘弁を。
第3コースで翔太と伊織を待つものとは…?


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第23話 炎の星

「…おかしい…おかしすぎる」

「確かにそうだね…」

2人が《魔装鳥キンシ》に乗って第3コースを飛んで十数分。

未だに他の組とすれ違うことがない。

「伊織、今の順位を確認してくれ」

「うん。ええっと順位は…9位だって…ってええ!?」

「9位か…すれ違っていないことを考えると、1組が無様にも脱落したみたいだな…!?」

急に瓦礫が《魔装鳥キンシ》に向けて飛んでくる。

「ちっ…!!《キンシ》!!」

翔太の声に反応し、《魔装鳥キンシ》が瓦礫を避ける。

(あの瓦礫…間違いなくコースの物だな。それを投擲できるパワーのあるモンスターが…!)

地表を確認すると、ビークルモンスターと思われる《天狼王ブルー・セイリオス》が2人のデュエリストを乗せて疾走している。

乗っているのは宋時代の中国の武人が着用するような着物姿の男だ。

1人は緑色の頭巾をつけていて、もう1人は数珠を首にかけている。

「あれは…梁山泊塾の制服!!」

「梁山泊塾…それもデュエルの塾か!?」

「当然!プロ輩出量はLDSに続くほどの力があるけど勝つためには手段を選ばないって方針の…」

「ってことは、倒しても問題ない奴らだな。大体分かった」

デュエルディスクで彼らの詳細を確認する。

緑頭巾の男が林、数珠の男が花栄だ。

彼らだけで8組が倒されていて、そのうちの3組がコースアウトで脱落している。

「おい、もう6組がゴールしてるぜ?この状況だと、俺たちのどちらかが脱落ってことになりそうだな」

高度を下げ、翔太が彼らを挑発する。

「そういうことになるな。だが、それは貴様らを倒せば問題のないこと!!」

林がそういうと同時に、花栄がコース上にある石を拾い、翔太に向けて投擲する。

「そういうやり方な…。なら、徹底的にできるな」

投擲された石を掴み、あきれたように2人を見る。

そして、《魔装鳥キンシ》が再び高度を上げていく。

「(《キンシ》なら、ある程度自動で動いてくれる。アクシデントが無い限りは…)伊織、一緒にやるぞ」

「え…!?う、うん!」

自分に操縦を任せるだろうと、準備を整えていた伊織がびっくりする。

「俺たちのライフは心もとない。それに、最低野郎とはいえ、かなりの力量なんだろ?」

「イ…イエッサー!」

少しだけ敬礼したのを見ると、翔太が《魔装鳥キンシ》から飛び降りる。

「え…えーーーーー!!!?」

「奴め、何を!?」

飛び降り、落下していく翔太を《魔装鳥キンシ》が掴む。

両肩を掴まれたことで、翔太はつるされる形になる。

「(これで、伊織に空間的なゆとりができる)いくぞ、最低野郎」

「「デュエル!!」」

 

翔太&伊織

手札

翔太2

伊織2

ライフ500

場 伏せカード1

  魔装鳥キンシ(ビークルモンスター)

 

林&花栄

手札

林3

花栄2

ライフ2800

場 なし

  天狼王ブルー・セイリオス(ビークルモンスター)

 

「俺のターン!俺は手札から魔法カード《貪欲な壺》を発動。墓地から5体のモンスターをデッキに戻し、デッキからカードを2枚ドローする」

 

翔太

手札2→3

 

墓地からデッキに戻ったカード

・魔装獣剣スイモウ

・魔装亀テンセキ

・魔装鳥ガルーダ

・魔装騎士ペイルライダー

・魔装獣ユニコーン

 

「(よし…!)俺はスケール2の《魔装槍士タダカツ》にスケール9の《魔装剣士ムネシゲ》でペンデュラムスケールをセッティング!これで俺はレベル3から8のモンスターを同時に召喚可能。来たれ、時の果てに眠りし英雄の魂。希望の道を照らし、勝鬨を上げろ!ペンデュラム召喚!!現れろ、俺のモンスターたち!!手札から《魔装騎士ペイルライダー》、エクストラデッキから《魔装槍士ロンギヌス》!!」

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

魔装槍士ロンギヌス レベル3 攻撃800

 

「攻撃力2500と800か…」

「悪いがお前らのような奴とのデュエルは楽しめないからな、さっさと消え失せろ。2体の魔装モンスターでダイレクトアタック!」

《魔装騎士ペイルライダー》の光剣と《魔装槍士ロンギヌス》の聖なる槍がビークルモンスターである《天狼王ブルー・セイリオス》を切り裂こうとする。

しかし、突然現れたスラスターつきのかかしが2体を妨害する。

「ちっ…《速攻のかかし》か!!」

「そうだ、これでお前のバトルフェイズは終了だ」

「俺はこれでターンエンド」

 

翔太&伊織

手札

翔太3→0

伊織2

ライフ500

場 魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

  魔装槍士ロンギヌス レベル3 攻撃800

  魔装槍士タダカツ ペンデュラムスケール青2

  魔装剣士ムネシゲ ペンデュラムスケール赤9

  伏せカード1

  魔装鳥キンシ(ビークルモンスター)

 

林&花栄

手札

林3

花栄2→1

ライフ2800

場 なし

  天狼王ブルー・セイリオス(ビークルモンスター)

 

「私のターン」

 

手札3→4

 

「私は手札から魔法カード《テイク・オーバー5》を発動。デッキの上から5枚のカードを墓地へ送る」

 

デッキから墓地へ送られたカード

・炎王の強襲

・貪欲な壺

・立炎星-トウケイ

・死者蘇生

・微炎星―リュウシシン

 

「更に手札から魔法カード《炎舞―「天璣」》を発動。このカードは発動した時、デッキからレベル4以下の獣戦士族モンスター1体を手札に加えることができる。またこのカードが発動している限り、私のフィールド上に存在する獣戦士族モンスターの攻撃力を100ポイントアップさせる。私はデッキから《暗炎星―ユウシ》を手札に加える。そして、手札から《熱血獣士ウルフバーグ》を召喚!」

 

熱血獣士ウルフバーグ レベル4 攻撃1600→1700

 

「このカードは1ターンに1度、自分の墓地の獣戦士族・炎属性・レベル4モンスター1体を特殊召喚することができる。私は墓地から《微炎星―リュウシシン》を特殊召喚」

杖から9匹の炎の竜を召喚している、暗い緑の軽鎧の男が現れる。

 

微炎星―リュウシシン レベル4 攻撃1800→1900

 

「私はレベル4の《リュウシシン》と《ウルフバーグ》でオーバーレイ!義人の魂宿りし王、炎の導き手となりて再臨せよ!エクシーズ召喚!ランク4!《魁炎星王-ソウコ》!!」

オーバーレイネットワークから青い炎の獅子が飛び出し、その口から獅子のような髪型の白髪で真紅の武人鎧、そして青い炎を宿した刀を持った王が現れる。

 

魁炎星王-ソウコ ランク4 攻撃2200→2300

 

「炎星デッキ…でいいんだよな?あいつのは」

「うん。炎舞カードを利用して展開と除去を行うのが得意なデッキだよ!!」

「《ソウコ》の効果発動。このカードのエクシーズ召喚に成功した時、デッキから炎舞カード1枚をセットすることができる。私はデッキから《炎舞―天璇》をセットする。天魁星の導き!」

急に上空が夜空となり、108個の星が現れる。

そして、その中の1つが永続罠カードに変化してフィールドにセットされる。

「《天璇》は発動時に私のフィールド上に存在する獣戦士族モンスター1体の攻撃力をターン終了時まで700ポイントアップさせる。そして、表側表示で存在する限り私のフィールド上に存在する獣戦士族モンスターの攻撃力を300ポイントアップさせる。更に、《ブルー・セイリオス》のビークル効果発動。1ターンに1度、私のターンにカード効果でセットされた魔法・罠カードはそのターンに発動することができる」

「何!?」

「私は《ソウコ》の効果で伏せた《炎舞―「天璇」》を発動する!!」

《炎舞―「天璇」》の力でさらに刀の炎が燃え上がり、闘志を高めていく。

 

魁炎星王-ソウコ ランク4 攻撃2300→3300

 

「攻撃力3300!?」

今の翔太たちのライフは500。

このまま《魁炎星王-ソウコ》が攻撃したらどうなるかは明らかだ。

「バトル!《ソウコ》で《魔装槍士ロンギヌス》を攻撃!天魁星の炎!」

燃え上がる刀を両手で持ち、《魔装槍士ロンギヌス》を一刀両断しようとする。

「罠発動、《ドレインシールド》!相手モンスター1体の攻撃を無効にし、その攻撃力分俺たちのライフを回復させる」

緑色の障壁が刀とぶつかり合い、それにより発生する波動が翔太たちをいやしていく。

 

翔太&伊織

ライフ500→3800

 

「ちっ…そのようなカードを!!私はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

翔太&伊織

手札

翔太0

伊織2

ライフ3800

場 魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

  魔装槍士ロンギヌス レベル3 攻撃800

  魔装槍士タダカツ ペンデュラムスケール青2

  魔装剣士ムネシゲ ペンデュラムスケール赤9

  魔装鳥キンシ(ビークルモンスター)

 

林&花栄

手札

林4→1(《暗炎星―ユウシ》)

花栄1

ライフ2800

場 魁炎星王-ソウコ(オーバーレイユニット2) ランク4 攻撃3300→2600

  炎舞―「天璣」(永続魔法)

  炎舞―「天璇」(永続罠)

  伏せカード1

  天狼王ブルー・セイリオス(ビークルモンスター)

 

なんとか絶体絶命の状況を回避することができ、《魁炎星王-ソウコ》の攻撃力は2600に下がった。

《魔装騎士ペイルライダー》は戦った相手モンスターを破壊する効果を持っている。

《ドレインシールド》で回復したライフがあれば、多少のダメージはどうにでもなる。

「伊織、頼んだぞ」

「ラジャー!私のターン、ドロー!!!」

 

伊織

手札2→3

 

「私は手札から《E・HEROブレイズマン》を召喚!」

 

E・HEROブレイズマン レベル4 攻撃1200

 

「このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから《融合》を1枚手札に加えるよ!」

《融合》を手札に加えると同時に、急に伊織が立ち上がる。

「伊織…何をする気だ?」

「うーん、今まで融合召喚するとき、ポーズとかとってなかったでしょ?」

「どうでもいいな、さっさとデュエルを進めろ」

「ノンノンノン。こういう時こそかっこいいポーズが必要じゃん。特にHEROを出すときはさ」

「はあ…」

恰好など気にしたことのない翔太には伊織の理論が全く理解できず、頭を抱えるだけだった。

「私は手札から魔法カード《融合》を発動!私が融合素材にするのは《ブレイズマン》と手札の《スカイランナー》!炎の切り込み隊長よ、神速の美少女よ、今こそ1つになりて、新たなヒーローに進化せよ!」

2体のモンスターが融合の渦にのまれると、左腕を腰の位置へ、右腕を左斜め上方向へ伸ばす。

「融合召喚!」

右腕を円を描くようにして、右斜め上へもっていき、右腕を腰の位置へ、左腕を右斜め上へ伸ばすと同時に叫ぶ。

「現れて、竜巻の王者、《E・HERO Great TORNADO》!!うーん、決まり!!」

 

E・HERO Great TORNADO レベル8 攻撃2800

 

「…くだらねえ」

「ひどっ!!もっと他に言いようがあるでしょ!?」

「くだらねえものはくだらねえ。その一言で終わりだろ?」

「くぅぅぅ…今度はもっとかっこいいポーズをして…」

(なんでそういう発想になる??本当に…おかしな女だ)

「《Great TORNADO》の効果発動!このカードの融合召喚に成功した時、相手フィールド上のモンスターの攻撃力・守備力を半分にするよ。タウン・バースト!!!」

《E・HERO Great TORNADO》が鉤を振るうと同時に巨大な竜巻が生まれ、林のフィールドを包み込む。

 

魁炎星王-ソウコ ランク4 攻撃2600→1300

 

(よし…!これで《ソウコ》を倒すことができるが…)

翔太は前のターンに林が伏せたカードをじっと見る。

仮のそのカードが《聖なるバリア―ミラーフォース》だったら、《E・HERO Great TORNADO》と《魔装騎士ペイルライダー》が破壊されるが、《魔装騎士ペイルライダー》はペンデュラム召喚ですぐに復活でき、切り返しが可能。

更に、《魔装剣士ムネシゲ》のペンデュラム効果により《魔装騎士ペイルライダー》を1ターンに1度だけ破壊から守ることができる。

《次元幽閉》であっても、次の攻撃で《魁炎星王-ソウコ》を倒すことができる。

「バトル!《Great TORNADO》で《魁炎星王-ソウコ》を攻撃!スーパー・セル!!」

《E・HERO Great TORNADO》の鉤に風が凝縮されていく。

「甘い…。《ブルー・セイリオス》のもう1つのビークル効果を発動!」

「えーーー!?もう1つのビークル効果??」

「ビークル効果は1つだけとは限らない。《ブルー・セイリオス》は1度だけ発動できるビークル効果がある。俺のフィールド上にセットされている永続魔法カードを相手ターンの間、永続罠カード扱いにして発動することができる!その効果を使い、《炎舞―「揺光」》発動!このカードは発動時、手札の獣戦士族モンスター1体を捨てることで、相手フィールド上に表側表示で存在するカード1枚を破壊する」

「ちっ…!あいつの手札には《炎舞―「天璣」》で手札に加えた《ユウシ》がいる」

「そうだ。俺は《ユウシ》を墓地へ送り、《Great TORNADO》を破壊する!」

《炎舞―「揺光」》から虎を模した高熱の炎が発射される。

炎は《E・HERO Great TORNADO》を貫くとともに、その肉体を炎で炭化させる。

「更にこのカードが表側表示で存在する限り、俺のフィールド上に存在する獣戦士族モンスターの攻撃力を100ポイントアップさせる」

 

魁炎星王-ソウコ ランク4 攻撃1300→1400

 

「まだまだ!!私は《ペイルライダー》で《ソウコ》を攻撃!!」

《魔装騎士ペイルライダー》がミサイルランチャーを召喚すると、それで誘導ミサイルを数発発射する。

1発目から3発目は回避に成功した《魁炎星王-ソウコ》だが、4発目は背後から迫ってきたために避けることができず、撃破された。

 

林&花栄

ライフ2800→1700

 

「やった!!《ソウコ》を倒せた!!」

「その程度で勝った気になるな!俺は《魁炎星王-ソウコ》の効果を発動!このカードがフィールドから離れたとき、俺のフィールド上に表側表示で存在する炎舞カードを3枚墓地へ送ることができる!」

3枚の炎舞カードが炎と化し、巨大な中華風の門を形作っていく。

「そして、デッキから同じ攻撃力を持つレベル4以下のモンスターを2体守備表示で特殊召喚する。《英炎星-ホークエイ》と《捷炎星-セイヴン》を特殊召喚」

鷹を模した炎と共に黒い長髪で宋時代の副指揮官が装備していたと思われる鎧と兜を装備した弓使いとカラスを模した炎を肩に乗せた《英炎星-ホークエイ》とよく似た髪型の戦士が炎の門から出てくる。

 

英炎星-ホークエイ レベル3 守備1500

捷炎星-セイヴン レベル3 守備1800

 

「一気にレベル3のモンスターを2体デッキから召喚するだと!?」

「あうう…けど、《タダカツ》のペンデュラム効果を発動するよ!!」

《魔装槍士タダカツ》が蜻蛉切を天に掲げると、ミサイルランチャーが消滅し、キャノン砲が新たに装着される。

「《タダカツ》のペンデュラム効果は俺のフィールド上に存在するペンデュラムモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊した時、続けてもう1度だけ攻撃することができる」

「じゃあ、今度は《英炎星-ホークエイ》を攻撃!!」

キャノン砲から弾丸がドリル状に回転しながら発射される。

避けられぬと悟った《英炎星-ホークエイ》は矢で応戦するが、弾丸は矢を砕き、そのまま彼の胴体を貫いていった。

「《英炎星-ホークエイ》の効果発動。このカードが相手によって破壊された場合、デッキから炎舞と名のつく魔法カード1枚をセットすることができる。俺はデッキから《炎舞―「天枢」》をセットする」

「私はカードを1枚伏せて、《ロンギヌス》を守備表示に変更。これで、ターンエンド!」

 

翔太&伊織

手札

翔太0

伊織3→0

ライフ3800

場 魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

  魔装槍士ロンギヌス レベル3 攻撃800→守備0

  魔装槍士タダカツ ペンデュラムスケール青2

  魔装剣士ムネシゲ ペンデュラムスケール赤9

  伏せカード1

  魔装鳥キンシ(ビークルモンスター)

 

林&花栄

手札

林1→0

花栄1

ライフ1700

場 捷炎星-セイヴン レベル3 守備1800

  伏せカード1(《炎舞―「天枢」》)

  天狼王ブルー・セイリオス(ビークルモンスター)

 

「花栄…あとは任せる」

「ああ…儂のターン、ドロー」

 

花栄

手札1→2

 

「更に《テイク・オーバー5》の効果を発動。このカードを墓地から除外することで、デッキからカードを1枚ドロー」

 

花栄

手札2→3

 

「儂は永続罠《炎舞―「天枢」》を発動!このカードが存在する限り、儂らは通常召喚に加えて1度だけ獣戦士族モンスター1体を召喚できる。儂は手札から《炎星師-チョウテン》と《孤炎星-ロシシン》を召喚!」

他の炎星モンスターと異なり、自らの肉体が紫色の炎となっている魔導士とイノシシを模した紫色の炎を召喚できる鋼の錫杖を持った太った破戒僧が現れる。

 

炎星師-チョウテン レベル3 攻撃500(チューナー)

孤炎星-ロシシン レベル4 攻撃1100(チューナー)

 

「更に《チョウテン》の効果を発動。このカードの召喚に成功した時、儂の墓地から守備力200以下の炎属性・レベル3モンスター1体を守備表示で特殊召喚することができる。儂は墓地から《立炎星-トウケイ》を特殊召喚!」

《炎星師-チョウテン》が上空の108の星の1つに紫色の炎を放つと、上空から鶏を模した紫色の炎を宿した2本の短槍を持つ黒い鎧の男が降りてくる。

 

立炎星-トウケイ レベル3 守備100

 

「《トウケイ》の効果発動。このカードが炎星モンスターの効果で特殊召喚に成功した時、デッキから炎星モンスター1体を手札に加えることができる。儂はデッキからもう1体の《暗炎星―ユウシ》を手札に加える。儂はレベル3の《トウケイ》と《セイヴン》にレベル3の《チョウテン》をチューニング!」

「レベル9のシンクロモンスター!!?」

《炎星師-チョウテン》が紫色の炎でできた3つの輪となり、2体の炎星モンスターがその中に入っていく。

「水滸の伝説を刻みし隠者、混沌の影より今こそ前へ!シンクロ召喚!!現れよ、《炎星師-シタイアン》!!」

紫色の炎でできた書物と刀を手にした、元時代の文官風の服装で長い白髭の老人が現れる。

彼が現れると、《孤炎星-ロシシン》が静かに彼にひざまずく。

 

炎星師-シタイアン レベル9 攻撃2800

 

(おお…!!ここで梁山泊塾の花栄選手がシンクロ召喚だぁーーー!!)

「《炎星師-シタイアン》の効果発動。このカードのシンクロ召喚に成功した時、墓地に存在する炎舞カード2枚をセットする!」

《炎星師-シタイアン》が空白のページに《炎舞―「天璇」》と《炎舞―「揺光」》のイラストを描きこむ。

すると、花栄の目の前にその2枚のカードがセットされた状態で復活する。

「《セイヴン》の効果発動!このカードがフィールド上から墓地へ送られた時、デッキから炎舞と名のつく魔法カード1枚をフィールド上にセットすることができる。儂はデッキから《炎舞―「天璣」》をセットする!」

「このターンだけで3枚の炎舞カードを!?」

「それだけじゃねえな…《ブルー・セイリオス》のビークル効果がある」

「そうだ。このカードのビークル効果は1ターンに1度、自分のターンにカード効果でセットされた魔法・罠カードをそのターンに発動させることができる。儂は《炎舞―「揺光」》を発動!手札の《暗炎星―ユウシ》を墓地へ送り、《魔装剣士ムネシゲ》を破壊する!」

「ちっ…直接ペンデュラムゾーンのカードを破壊しに来たか!」

虎を模した高熱の炎が《魔装剣士ムネシゲ》に襲い掛かる。

高温の炎によって、盾をドロドロに溶かされた《魔装剣士ムネシゲ》には守るだけの力は残されておらず、そのまま撃破された。

「ちっ…フィールド上のペンデュラムモンスターは墓地へは行かず、エクストラデッキへ行く」

翔太は自らの手で《魔装剣士ムネシゲ》を伊織に投げ渡す。

カードを受け取った伊織は飛ばされないように気を付けながら、エクストラデッキに置く。

「また、《ロシシン》の効果を発動。1ターンに1度、エクストラデッキから炎星モンスターが特殊召喚された時、デッキから炎舞と名のつく魔法カード1枚をセットすることができる。儂は《炎舞―玉衡》をセットする。更に《シタイアン》の効果発動!1ターンに1度、フィールド上に存在する炎舞カード1枚を墓地へ送ることで、手札・デッキ・墓地からレベル4以下の炎星モンスター1体を特殊召喚することができる!儂は《炎舞―「揺光」》を墓地へ送り、墓地から《暗炎星―ユウシ》を特殊召喚する!」

 

暗炎星―ユウシ レベル4 攻撃1600

 

炎星師-シタイアン

レベル9 攻撃2800 守備2200 シンクロ 炎属性 獣戦士族

「炎星」チューナー+チューナー以外のモンスター2体以上

(1):このカードのS召喚に成功した時、自分の墓地に存在する「炎舞」魔法・罠カードを2枚を対象に発動できる。そのカードを自分フィールド上の魔法・罠ゾーンにセットする。

(2):1ターンに1度、自分フィールド上に存在する「炎舞」魔法・罠カード1枚を墓地へ送ることで発動できる。自分の手札・デッキ・墓地からレベル4以下の「炎星」モンスター1体を特殊召喚する。

 

「レベル4の《ユウシ》と《ロシシン》でオーバーレイ!天間星より転生を果たした英雄よ、道術をもって危機を吹き飛ばさん。エクシーズ召喚!!ランク4!《間炎星-コウカンショウ》!!」

紅冠鳥を模した青い炎を腕に乗せ、白と赤の道着を着た仙人が姿を現す。

 

間炎星-コウカンショウ ランク4 攻撃1800

 

「レベル9のシンクロモンスターとランク4のエクシーズモンスターだと!?」

「それだけではない。《コウカンショウ》の効果発動!オーバーレイユニットを2つ取り除くことで、儂のフィールド・墓地に存在する炎星、または炎舞カード合計2枚と相手の墓地、または相手フィールド上に表側表示で存在するカード合計2枚をデッキに戻す!」

「何!!?」

《間炎星-コウカンショウ》が持つオーバーレイユニットをすべてとりこんだ紅冠鳥が激しい突風を発生させる。

すると、フィールド上の《魔装騎士ペイルライダー》と《魔装槍士タダカツ》が伊織のデッキへ追放されていく。

「くそ…俺のデッキならともなく、伊織のデッキに…」

 

墓地からデッキに戻ったカード

・立炎星-トウケイ

・捷炎星-セイヴン

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・孤炎星-ロシシン

・暗炎星―ユウシ

 

「更に、炎舞カードの効果は儂のフィールド上に存在する獣戦士族モンスターの攻撃力を100ポイントアップさせる」

 

間炎星-コウカンショウ ランク4 攻撃1800→1900

炎星師-シタイアン レベル9 攻撃2800→2900

 

翔太と伊織のフィールドから伏せカード1枚以外のカードが失われた。

今の2人のライフは3800。

攻撃力1900の《間炎星-コウカンショウ》と攻撃力2900の《炎星師-シタイアン》の前では風前の灯。

「このデュエルもらった!!儂は《炎星師-シタイアン》でダイレクトアタック!!魔星の裁き!!」

《炎星師-シタイアン》が上空に剣を掲げると、108つの星が紫色に輝き始める。

そして、翔太たちに向けてすさまじい勢いで落下を始めた。

「うわあああ!!」

「キャアアア!!」

 

翔太&伊織

ライフ3800→900

 

「まともに受けたか…!!さあ、とどめを刺せ!《コウカンショウ》!!」

《間炎星-コウカンショウ》の手から風の弾丸が発射される。

「伊織!!」

「う、うん!!罠発動!《ガード・ブロック》!!この戦闘で受ける戦闘ダメージを0にして、デッキからカードを1枚ドローするよ!」

翔太たちを透明な障壁が守護し、伊織はカードを引く。

 

伊織

手札0→1

 

「ええい…しのぎきるとは。儂はこれでターンエンド!」

 

翔太&伊織

手札

翔太0

伊織1

ライフ900

場 魔装鳥キンシ(ビークルモンスター)

 

林&花栄

手札

林0

花栄3→1

ライフ1700

場 間炎星-コウカンショウ ランク4 攻撃1900

  炎星師-シタイアン レベル9 攻撃2900

  炎舞―「天枢」(永続罠)

  伏せカード3(《炎舞―「天璇」》《炎舞―玉衡》《炎舞―「天璣」》)

  天狼王ブルー・セイリオス(ビークルモンスター)

 

(今の俺の手札は0。そして、《ペイルライダー》達は伊織のデッキの中…)

翔太はカードをドローするしぐさを見せることなく、伊織を見る。

(ビークルデュエルの場合、必ずしもパートナーと交代する必要はない。伊織…)

翔太の視線に気づいた伊織はニコッと笑顔を見せる。

(ちっ…この状況でも笑うのか)

「私のターン、ドロー!」

 

伊織

手札1→2

 

「更に《テイク・オーバー5》を墓地から除外して1枚ドロー!」

 

伊織

手札2→3

 

「私は手札から魔法カード《黄金の錬金書》を発動!このカードはサイコロを1回振って、その後で私のデッキの上から6枚を除外する!そして、その中に存在するモンスターの数が出た目と同じの時は私が、違う場合は相手が出た目の数だけカードをドローするよ!」

「何…!?」

「伊織…そんなカードを!!?」

確率的に考えると、《黄金の錬金書》は相手に大量ドローを許してしまいがちで多くのデュエリストが敬遠するカード。

デッキ破壊やグリードバーンならばともかく、伊織の場合は除外を利用できるカードが《平行世界融合》しかない。

「(お願い…私のHERO!私の翔太君のウィニングロードを…!!)いくよ!!」

伊織はサイコロを振る。

出た目が6で、伊織はそのままデッキの上から6枚のカードを確認する。

「1枚目!《E・HEROフォレストマン》!!」

「2枚目!《E・HEROフレイムバッシャー》!!」

「3枚目!《E・HEROスノーフェアリー》!!」

「4枚目!《E・HEROグランドメイサー》!!」

「5枚目!《E・HEROシャドーウィンド》!!」

「何…!?」

「そんな…バカなことが…!?」

まだ6枚目の確認は済んでいないが、上から5枚がすべてモンスターになっていることに2人は驚きを隠せない。

実を言うと、翔太も驚いている。

(確かに、絶対に起こらないということはないが…このタイミングでそれが起こるのか!?)

(あと1枚…お願い!!!)

祈るように、伊織が最後の1枚を確認する。

「来たーーーーー!!!6枚目は《魔装騎士ペイルライダー》!!!よって、私はデッキから6枚をドロー!!」

 

伊織

手札3→8

 

黄金の錬金書(小説オリカ)

(1):サイコロを1回振る。自分のデッキの上からカードを6枚ゲームから除外する。この効果で除外されたモンスターカードの数が出た目と同じ場合、自分は出た目の数だけドローする。この効果で除外されたモンスターカードの数が出た目の違う場合、相手は出た目の数だけドローする。

 

「そして、私はスケール2の《E・HEROホワイトフェンサー》とスケール7の《E・HEROブラックセイバー》でペンデュラムスケールをセッティング!」

「何!?彼女までペンデュラムモンスターを!!?」

伊織の左側には茶色い長髪で青い金属でできたレイピアを装備する白と赤のドレスを着た少女が、右側には漆黒の服で左手には青白い長剣、右手には黒い長剣を持っている黒い短髪の戦士が現れ、光の柱を生み出す。

「更に、ここで《魔装鳥キンシ》のビークル効果を発動するよ!このカードは1ターンに1度、フィールド上のペンデュラムモンスターのスケールを1つ変化させるよ!私はこの効果で《ブラックセイバー》のペンデュラムスケールを8に!!」

 

E・HEROブラックセイバー ペンデュラムスケール7→8

 

「これで、レベル3から7のモンスターを同時に召喚可能!みんなを守るため、遠い異世界からただいま参上!ペンデュラム召喚!!」

翔太と同様、振り子のエフェクトは発生しないものの、上空からモンスターが召喚される。

「《E・HEROオーシャン》!」

三日月を模した杖を持つイルカの戦士。

 

E・HEROオーシャン レベル4 攻撃1500

 

「《E・HEROシャドー・ミスト》!」

 

青い長髪以外の全身を黒いアーマーで包んだ戦士。

 

E・HEROシャドー・ミスト レベル4 攻撃1000

 

「《E・HEROエッジマン》!」

 

E・HEROエッジマン レベル7 攻撃2600

 

「そして…これが私の新しいHERO!《E・HEROセラフィム》!!」

最後の現れたのは腰まで届く金髪にエメラルドの様な緑色の瞳、頭には白いベレー帽、そして赤いネクタイが付いた白いセーラー服を着た少女だ。

 

E・HEROセラフィム レベル6 攻撃2400

 

「は…はうう…!!」

ペンデュラム召喚された《E・HEROセラフィム》が恥ずかしそうにしている。

「あれれ??《セラフィム》がしゃべってる?」

「こいつ…精霊か?」

「は…恥ずかしいので、説明は後にしてください…!」

顔を真っ赤にしながら、腰のホルスターに入れている2丁の銃を取り出す。

「まあ、俺にはどうでもいいことだな。伊織、さっさと決めろ」

「う…うん。私は《セラフィム》の効果を発動!このカードの特殊召喚に成功した時、相手フィールド上に表側表示で存在する特殊召喚されたモンスター1体を除外するよ!」

「何!?」

「い…いきます!!ディメンジョン・シュート!」

2丁の銃を合体させ、対物ライフル形態に変化させると魔法陣が刻まれた黒い弾丸を装填し、そのまま発射する。

弾丸が《炎星師-シタイアン》に命中すると、そのモンスターが姿を消してしまった。

 

E・HEROセラフィム

レベル6 攻撃2400 守備2000 光属性 戦士族

【Pスケール:青4/赤4】

「E・HEROセラフィム」のP効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):Pゾーンに存在するこのカードを破壊し、自分フィールド上に表側表示で存在する「HERO」融合モンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターの攻撃力をターン終了時まで1000ポイントアップさせる。

【モンスター効果】

「E・HEROセラフィム」はP召喚でしか特殊召喚できない。

「E・HEROセラフィム」のモンスター効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードの特殊召喚に成功した時、相手フィールド上に表側表示で存在する特殊召喚されたモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターをゲームから除外する。

 

「更に《シャドーミスト》の効果発動!このカードの特殊召喚に成功した時、デッキからチェンジと名のつく速攻魔法カードを1枚手札に加える。私はデッキから《マスク・チェンジ》を手札に加えるよ!そして、《E・HEROホワイトフェンサー》のペンデュラム効果発動!閃光融合(ライトニング・フュージョン)!!」

《E・HEROホワイトフェンサー》がレイピアを天に掲げると、上空に《融合》特有の渦が現れる。

「自分がペンデュラム召喚に成功した時、自分フィールド上に存在するモンスターを素材にしてHEROと名のつく融合モンスター1体を融合召喚できるよ!私は《オーシャン》と《シャドー・ミスト》を融合!深海の偵察者よ、影の戦士よ、今こそ1つとなり、新たなヒーローに進化せよ!融合召喚!現れて、永久凍土の申し子、《E・HEROアブソルートZero》!!」

 

E・HEROアブソルートZero レベル8 攻撃2500

 

「ここで《E・HEROブラックセイバー》のペンデュラム効果発動!孤高の黒(アローフネス・ブラック!)」

《E・HEROブラックセイバー》が光の柱から出ると、2本の剣で《間炎星-コウカンショウ》のX状の切り傷を与える。

傷を負った《間炎星-コウカンショウ》が手でそれを抑えながら、その場に座り込む。

「このカードは1ターンに1度私がHEROの融合召喚に成功した時、相手モンスター1体の攻撃力をターン終了時まで半分にするよ!」

 

間炎星-コウカンショウ ランク4 攻撃1900→950

 

E・HEROホワイトフェンサー

レベル3 攻撃800 守備1200 光属性 戦士族

【Pスケール:青2/赤2】

「E・HEROホワイトフェンサー」の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):もう片方の自分のPゾーンに「HERO」カードが存在しない場合、このカードのPスケールは3となる。

(2):自分がP召喚に成功した時に発動できる。自分フィールド上から「HERO」融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

【モンスター効果】

(1):自分フィールド上に表側表示で存在するこのカードをリリースすることで発動できる。自分フィールド上に表側表示で存在する「HERO」モンスター1体はこのターン、相手プレイヤーに直接攻撃することができる。この効果を発動したターン、自分の「HERO」モンスター以外のモンスターは攻撃できない。

 

E・HEROブラックセイバー

レベル5 攻撃2000 守備800 闇属性 戦士族

【Pスケール:青7/赤7】

「E・HEROブラックセイバー」の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):もう片方の自分のPゾーンに「HERO」カードが存在しない場合、このカードのPスケールは5となる。

(2):自分フィールド上に「HERO」融合モンスターが融合召喚された時、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を対象に発動できる。選択したモンスターの攻撃力をターン終了時まで半分にする。

【モンスター効果】

(1):相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上に融合モンスターが存在するとき、このカードは手札から特殊召喚することができる。

 

「バカな…!?」

「我々が…負ける!?認められるかぁ!!」

「いっけぇ!私のHEROた…!?」

伊織が攻撃宣言しようとする前に、《天狼王ブルー・セイリオス》が巨大化した紅冠鳥に乗り、翔太たちに直接攻撃しようとした。

「こうなれば、攻撃される前に貴様らをコースアウトしてやる!!」

「そんな…そこまで卑怯なことをして勝ちたいの!?」

「デュエルは勝つことこそすべて!勝てばよかろうなの…!!!?」

「くだらなすぎて、欠伸が出るぜ。雑魚」

次の瞬間、《天狼王ブルー・セイリオス》が翔太によって蹴り飛ばされる。

林と花栄は自分たちの敗北を受け入れられず、動揺したためか、バランスを崩して共に転落してしまう。

数秒後、路上には落下し気絶した2人の姿があった。

「全く…素直にとどめを刺されたらこうならずに済んだのにな」

「翔太君…どうする?まだ相手のライフは残ってるけど…」

「ほっとけ。こいつらはデュエリストじゃない。それに、もう再起不能で病院行だ」

「う、うん…」

「いくぞ、ゴールまであと少しだ」

《魔装鳥キンシ》がうなずき、ゴールへ向けて全力で進む。

ダメージにより、スピードは低下しているもののもう追ってくる相手はいない。

(翔太君…ちゃんとデュエリストとしてのプライドはあるんだ。感心感心)



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第24話 とある一室で

「…ここは…?」

目を開くと、翔太は普段着の状態で赤い水晶でできた部屋の中にいた。

「ウヒヒヒ…またお邪魔させてもらったぜ?翔太くーん」

今度はテレパシーではなく、はっきりと耳に彼の言葉が聞こえてくる。

「俺の睡眠時間まで邪魔するなんてな…とんでもなく暇な奴だ」

「ああ…俺は四六時中退屈なんだよな。お前と違ってよぉ」

翔太はビークルデュエルの後、伊織と共にホテルへ戻った。

そして夕食を楽しみ、一緒に舞網チャンピオンシップの録画中継を見た後、深夜になってやっと寝床に着いた。

声がする方向には同じ水晶でできた階段があり、その一番上に恐らく彼がいる。

彼の姿を見るため、階段を上ろうとするが段差はいつまでも続いている。

「どれだけ俺に姿を見られたくないんだ?」

「今ここでお前に姿を見せるわけにはいかねえからよ。ま、お楽しみは取っといたほうがいいんじゃねえか?」

「それで、今度は何のようだ」

「特別サービスだよ、左手を見な?」

「…!?」

左手を見た瞬間、急に緑色の光が発生する。

光と同時に激痛が翔太に襲い掛かる。

「ぐおおお…くっ…!!」

「こいつはお前が元々持っている力だぜ。そいつを俺が目覚めさせた」

「ぐぅ…何のために…?」

「大丈夫だぜー?だんだんこいつはお前の体になじんでくる。すぐに痛みは治まるさ」

彼の言うとおり、十数秒たつと痛みが消えて行った。

そして、光が収まると左掌には横一線の太くて赤い痣ができていた。

「この光といいこの痣といい…お前は何をしたい!?」

「それは秘密だ。はじめっから全部知ってたら面白くねぇだろ?」

「あくまで…すべて語るつもりはないってことかよ」

「いずれ俺に感謝するときがくる…とだけ言っておくぜ?あばよ!!」

急に周囲の水晶が赤い輝きを放ち、翔太の視界をふさいで行った。

 

一方、舞網市レオコーポレーション社宅では…。

「…ふう」

フードをかぶっているようにも見える金色の目の男がベッドの端に腰掛けている。

青い服装をしていて、首には赤いスカーフが巻かれている。

さすが大手企業であるレオコーポレーションだけあってか、置かれている家電製品も家財もすべて最先端の物で、住み心地もいい。

彼が黒咲隼、LDS代表という肩書で舞網チャンピオンシップに参加している男だ。

「RUM…」

最後の逆転の一手として使った《RUM-レヴォリューション・フォース》をじっと見る。

「この力さえあれば…必ず瑠璃を…」

目を閉じ、ほんの少し前の事を思い出す。

 

「いたぞ!!囲め囲め!!」

「エクシーズの奴らを根絶やしにしろ!」

崩壊した町の中で、黒咲は追い詰められていた。

赤や黄色、青の制服を着たデュエリストたちが《古代の機械兵士》などのアンティークモンスターを次々と召喚し、黒咲のモンスターを次々と破壊していく。

ダメージは実体化し、攻撃を受ける度に彼の体が傷ついていく。

男たちの手にはおびえた表情の人々がイラストとなっているカードが握られている。

「死ね、エクシーズの奴め!!」

「くっ…!」

手札もなく、フィールドには何もない。

ライフも残りわずか。

(済まない…瑠璃。俺は…)

目を閉じ、静かに滅びを待っていたが、次に聞こえたのはその男たちの悲鳴だった。

「うわあああ!!」

「た、助けてくれーーー!!」

「何が…起きて…」

目を開くと、既に多くの男たちが気を失い、残った男たちはおびえながらその場から逃げだしていった。

そして、黒咲の前には茶色いマントを着た少年が立っていて、羽を模したデュエルディスクを装備している。

また、その少年のそばには天使がつけるような白い翼をつけ、緑色の金属でできた鎧を装備した緑色の髪の戦士がいる。

「あ…あんたが…やったのか?たった一人で…」

少年は振り向くと、肯定するかのように静かに首を縦に振った。

そして、彼に向けてこう言った。

「君たちの次元を…滅ぼさせるわけにはいかない」

 

「それにしても、あの人はどこでこんなものを…」

回想を終えた黒咲はカードをデッキに入れ、静かにいまだに慣れないふかふかのベッドに横になる。

彼が先ほど手にしていたカードはその少年から渡されたものだ。

その少年は更に他の黒咲の仲間たちを救った。

そして、あの時自分たちを襲った存在に対抗するための力を教えてくれた。

その一つがRUMで、それは元々黒咲たちの知らないカードだった。

なぜ、彼がここまで助けてくれたのかわからない。

ある程度教え、彼らと対等に戦えるようになると、自分にはまだやるべきことがある、と言い残して姿を消してしまったのだ。

「…」

横になった黒咲はデュエルディスクの通信機能を手に取り、ある人物に電話をする。

しかしいつまでたってもつながらない。

スクリーンには黒い髪で遊矢そっくりの少年、かつて翔太が一度戦ったことのある人物が映っていて、名前欄にはユートと書かれていた。

「ユート…なぜ連絡が取れない…?」

 

「おーい翔太くーん!」

「ん…?」

「もーいつまで寝てるの?もうお昼だよ?」

目を開くと、頬を膨らませる伊織の姿が視界に入る。

「伊織…」

「もー、今日と明日はお休みになってるからって寝坊はだめだよ?さ、早く支度して!!」

「ああ、分かった分かった。顔ぐらい洗わせろ」

あの夢を見たからか、不機嫌な翔太はクローゼットから着替えを取り出し、脱衣所へ向かう。

脱衣所で、再び左掌を見る。

(やっぱりか…)

手には夢で見たのと同じ痣ができている。

(俺に元々備わっている力…?俺の記憶に関係するのか?)

ともかく、これを見られたらまた伊織に何か言われるかもしれない。

そう思った翔太は着替え終えると手袋で両手を隠す。

 

「へへへ…これでちょっとは俺の計画が進むぜ」

翔太が夢の中で見たあの結晶の部屋の中で、彼は笑いながら翔太の姿を水晶から見ている。

「まだあまり体がなじんでいねえが、あいつがかけらを集めてくれりゃあ何とでもなる。…ぐっ…!」

急に胸に痛みを感じた彼は膝を床に着ける。

たっぷり深呼吸をし、胸をなでると痛みは治まっていった。

「まだ抵抗しやがんのか?ったく、しぶとい野郎だぜ」

 

「プハア…はあ…はあ…」

翔太が目覚めたころ、舞網市の海岸からウェットスーツを着た少年が出てきた。

スーツはレオコーポレーション製だ。

「ふう…あの人の言ったとおりだ」

彼がいる海岸は翔太が発見された場所であり、石倉純也が行方不明となった場所だ。

その手には青白く光る、クリスタルでできているかのようなカードが入ったカプセルがある。

(もし僕の仮説が正しければ、このカードは…)

 

ここで、大きく舞台が移る。

絶海の孤島に建てられた、そこには似つかわしくない中世ヨーロッパ風の白い城。

海岸沿いには港があり、上空には青い浮遊物が複数存在する。

その中には紫色の玉座しかない大きな部屋が存在する。

玉座の背後にはガラスがあり、そこからは緑色の光を放つコロッセオのような建造物が見える。

そして、上から降ってくる大量のカードをその建造物が吸収している。

「プロフェッサー、紫雲院素良の記憶の検証を終了しました」

その部屋の中に、白衣の男が入ってくる。

玉座には黒い肌で頭部が機械化していて、赤いマントがついた紫色の制服を着たスキンヘッドの男が座っている。

「そうか…結果は」

「はい、エクシーズの残党と思われる人物がスタンダードにいることがわかりました。そして、興味深い情報が…」

「何?」

「はい、こちらです」

白衣の男がソリッドビジョンをプロフェッサーと呼ばれた黒い肌の男に見せる。

「ほう…」

それには遊矢と柚子、《魔装騎士ペイルライダー》を召喚している翔太、そして伊織の姿があった。

「この…青い騎士を使うデュエリストの名は?」

「は…秋山翔太です。彼が舞網市に現れたのはつい先日。それ以前についての記録は何も…」

「すぐに情報を収集せよ。特にその秋山翔太という人物については徹底的に」

「はっ!」

白衣の男が退室すると、プロフェッサーは立ち上がり、背後のガラスをじっと見る。

(秋山翔太…例の3人は分かるが、奴は何者だ?場合によっては排除しなければ。そして…)

彼はデュエルディスクからある写真を表示する。

その写真は黒咲を救った少年とその少年が使ったモンスターが映っている。

(RUMなどという余計な力を与えおって…。奴の存在自体が私の計画を大幅に遅らせることになる)

デュエルディスクの電話機能を起動させる。

「私だ…。一両日中に部隊の準備をせよ。できれば、隠密行動能力の高いメンバーを選抜してほしい。派遣先はスタンダードの…」




今回は展開上、かなり短くなってしまいました。
アニメでは急に展開が早くなったり遅くなったりで大変です。
さあ、プロフェッサーに目をつけられた翔太と伊織。
一体どうなってしまうのかぁ????


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第25話 動きだす物語

「何!?遊矢が目を覚ました??」

「ふぇぇ!?」

柚子からの連絡に翔太と伊織が驚きと喜びが融合した感情にひたる。

3日近く肉体に異常がないにもかかわらず眠りについていた遊矢が突然目をさまし、すぐに外出できるくらいに元気になっている。

そして、彼女からさらに衝撃的な言葉が告げられる。

(ええ…。それで遊矢、素良が行方不明になった現場である公園で会ったの。その…ユートっていう遊矢そっくりの人と)

「ユート…」

遊矢そっくりの人という言葉で最初に頭に浮かんだのが《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》を使うあの少年だ。

「それで…4つの次元というのは?」

「私達がいる世界がスタンダード次元、すべての世界の基礎となっている世界よ。そして、ユートがいるエクシーズ次元、素良がいた融合次元、そしてシンクロ次元が存在するって…」

「スタンダード次元…エクシーズ次元…融合次元…シンクロ次元…!!?」

急に翔太の頭に激痛が発生する。

「な…んだ…この痛みは…うわああ!!」

「翔太君!?」

デュエルディスクを落とし、痛みで床で転げまわる翔太を伊織が必死になって呼びかける。

痛みに苦しむ翔太の目に次々とビジョンが浮かび上がる。

かなり近代化が進んだ都市に現れる赤・黄・青の制服のデュエリストたち。

アンティークモンスターや融合モンスターによって次々と襲われ、カードに変えられていく人々。

そんな彼らに対抗するために、生き残った人々が召喚するエクシーズモンスター達。

(融合次元…エクシーズ次元…侵攻…??)

移り変わるビジョンの数々が翔太の脳に何かを語りかける。

そして、真夜中の舞網市の公園の光景が目に浮かぶ。

ユートとホワイトタイガーを連想させるDホイールに乗る、バナナのような形の黄色い前髪と青い少し長めの髪が融合した髪型で遊矢そっくりの顔をした少年が対峙する。

彼らの表情は憎悪に満ちていて、両者の瞳が青白く染まっている。

「やれ!《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》」

「迎え撃て!!《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》!!」

白と青を基調としていて、体の至る部分に青がかった緑色のパーツがついている蛇竜、《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》と《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》がぶつかり合い、それに《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が飛び込んでいく…。

「…!?はあ…はあ…」

「翔太君…大丈夫…?」

「あ、ああ…」

ビジョンが途切れると同時に翔太に襲い掛かる激痛が消えていく。

(翔太さん、伊織!!何かあったの!?)

「大丈夫だ…何でもない…」

(そ、そう…けど、急に物音が…)

「なんでもないから話を進めろ!!」

(…。分かったわ。融合次元はエクシーズ次元を滅ぼそうと動いていて、エクシーズ次元から来たデュエリストである黒咲が彼らに妹の瑠璃をさらわれたって…)

「なぜそれを俺たちに話すんだ?」

(分からないわ…けど、翔太さん達には知らせた方がいいと思って。とにかく、気を付けて)

柚子との電話が切れる。

この時、2人はまだ知らなかった。

これから始まる長い戦いの運命に巻き込まれてしまったことを。

 

わずかに時間が流れ、スタジアム…。

(レディースアンドジェントルメン!!みなさんお待たせいたし貸した!!今ここに、ビークルデュエルを制したデュエリストたちが集まっています!!)

観客の歓声の元、翔太たち15人が入場してくる。

オーロラビジョンには入場した組の顔写真と名前が表示される。

 

●遊勝塾のダークホース 秋山翔太&永瀬伊織

●Mr.マシンブラザーズ ジョー・ハインリヒ&カイル・ディクソン

●盲目の毒蜘蛛 ジョンソン・オーベル

●アメリカからやってきた流浪のデュエリスト ハンス・アンデルセン&ジェイク・クロコダイル

●黒き翼と白き刃 ロベルト・ピアスン&クリス・ボルガー

●意外性の鬼神 枢密院セクト&山上太郎

●凸凹兄弟 プラシド・イリアス&ルチアーノ・イリアス

●沈黙のデュエリスト アモス・ガラム&シド・ガラム

 

「今日からは本選2回戦!がんばろう、翔太君!」

(気持ちの切り替えの早い奴だな…)

未だに電話で聞いたことを引きずっている自分に対し、再びやかましいくらいの明るさを見せる伊織。

そんな彼女を翔太はうらやましく思っている。

(では、第2回戦は…これだーーーー!!!!フィールド魔法《戦神の迷宮》だーーー!!)

スタジアム中央にいる翔太たちを中心に、複雑怪奇な石造りの迷路がソリッドビジョンで構築されていく。

(第2回戦で行われるのはダンジョンデュエル!!このデュエルでは1人がデュエルを行い、もう1人は実際にダンジョンを進んでいただきます!なお、単独参加であるジョンソン選手についてはダンジョンを攻略しつつ、デュエルをしていただきます。このデュエルではライフは存在せず、そのデュエルによって発生するダメージによってその選手のパートナーにとって悪いイベントがダンジョン内で発生します。なお、ライフを回復した場合はパートナーにとって良いイベントが発生します!パートナーとなるデュエリストはダンジョン内である2枚のカードを回収したのち、ゴールを目指していただきます!そして、先にパートナーがゴールした組が勝者となり、敗者が手にした、もしくは手にするはずだった2枚のカードをアンティとして手に入れることができる!!ちなみにそのカードというのは…レオコーポレーションが制作したペンデュラムモンスターだーーーー!!)

(ペンデュラムモンスター…そして、アンティルール??)

MCの言葉に選手と観客は驚きを隠せずにいる。

翔太と伊織もこれほど早くペンデュラムモンスターがばら撒かれることになるとは思わなかった。

もっとも、その原因の一部には伊織や沢渡のようなLDSから渡された試作ペンデュラムモンスターを使用したこともあるが。

「ダンジョンデュエル…楽しみーーー!!」

「伊織、デュエルは俺がやる。お前はダンジョンで動き回ってろ」

「え…?けど翔太君の方が動きが…」

「お前のデュエルはあてにならないからな」

「えーーーー!!」

(第2回戦開始は明日から、その日に組み合わせも決定いたします。そしてここからは…エクシビションマッチを行います!!)

《戦神の迷宮》が消滅すると同時に映像が切り替わる。

映像に表示されたのは赤馬零児だった。

「「わぁーーーー!!」」

「「零児様ーーー!!」」

零児の姿が出ると、客席が猛烈な熱気に包まれる。

(そういえば、奴はプロデュエリストだったな…)

(では、エキシビションマッチの相手を赤馬零児自身に決めていただきましょう!!)

(私のデュエルの相手は…君だ。秋山翔太)

指を差しながら、零児が相手を宣言する。

「俺でいいのか?お前が負けるかもしれないぞ?」

(それはそれで一興だろう。君もまた榊遊勝のエンタメデュエルを見せてくれることを期待している)

「いいなー、翔太君が赤馬零児とデュエルができるなんてー」

(サーカスの見世物をさせられるのがうれしいわけがないだろう…!!)

零児と一度は戦ってみたいと思っていたが、自分が目立つのが嫌いな翔太にとってはエキシビションマッチという形での対戦はしたくなかった。

そのため、不機嫌の方が強くなる。

 

伊織たちが特設席まで移動すると、翔太とソリッドビジョンの零児が中央へ行く。

(アクションデュエルではないことを先に詫びておこう)

「関係ないな。どちらでも俺のデュエルをするだけだからな」

(そうか…では始めよう)

「「デュエル!!」」

 

翔太

手札5

ライフ4000

 

零児

手札5

ライフ4000

 

「先攻はもらう。俺は手札から《魔装陰陽師セイメイ》を召喚」

 

魔装陰陽師セイメイ レベル3 攻撃1000(チューナー)

 

「このカードの召喚に成功した時、手札からレベル4以下の魔装モンスター1体を特殊召喚することができる。俺は手札から《魔装妖ビャッコ》を特殊召喚」

「キュイーー!」

可愛らしい鳴き声と共にフィールドに飛び出したビャッコを見て、女性陣が歓声を上げる。

「わあ、狐さんだーーー!」

「可愛いなぁ」

 

魔装妖ビャッコ レベル3 攻撃400

 

「《ビャッコ》が魔装モンスターのシンクロ素材、もしくはエクシーズ素材となるとき、このカードのレベルを4としても扱うことができる。俺はレベル4の《ビャッコ》にレベル3の《セイメイ》をチューニング。黄金の剛腕を持つ漆黒の戦士、その気高き力で道を拓け。シンクロ召喚!現れろ、《魔装剛毅クレイトス》!」

 

魔装剛毅クレイトス レベル7 攻撃2600

 

(いきなりのシンクロ召喚!翔太選手、相手がプロだろうとお構いなしかーーーー!?)

「更に《ビャッコ》の効果発動。このカードをシンクロ素材、もしくはエクシーズ素材としたとき、デッキからカードを1枚ドローする。俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

翔太

手札5→3

ライフ4000

場 魔装剛毅クレイトス レベル7 攻撃2600

  伏せカード1

 

零児

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「私のターン…ドロー」

 

零児

手札5→6

 

「私は手札から魔法カード《魔神王の契約書》を発動。私のターンのスタンバイフェイズ時に私が1000ポイントのダメージを受ける。だが1ターンに1度、手札・フィールド上に存在するモンスターを素材に、悪魔族融合モンスターを融合召喚することができる。私が素材とするのは手札の《DDリリス》と《DDD反骨王レオニダス》。闇より誘う妖婦よ、大軍に抗いし王よ!冥府に渦巻く光の中で、今ひとつとなりて新たな王を生み出さん。融合召喚! 生誕せよ!《DDD烈火王テムジン》!」

ソリッドビジョンの零児の前に《DDD烈火王テムジン》が現れる。

タイムラグなしでこのようなことができることからもレオコーポレーションの技術の高さがうかがえる。

 

DDD烈火王テムジン レベル6 攻撃2000

 

(ちっ…《反骨王レオニダス》を墓地に落としたか…)

観客が《DDD烈火王テムジン》に注目する中、翔太は融合素材となった《DDD反骨王レオニダス》を見る。

攻撃力2600で、《魔装剛毅クレイトス》と相討ち覚悟で攻撃することができる。

合理的な零児ならば、《魔装剛毅クレイトス》を後の禍根となることを避けるために《DDD反骨王レオニダス》を犠牲にしてでも倒すはずだ。

「更に私は手札から《DDナイト・ハウリング》を召喚」

 

DDナイト・ハウリング レベル3 攻撃300(チューナー)

 

「このカードの召喚に成功した時、墓地からDDモンスター1体を攻撃力・守備力を0にして特殊召喚できる。私は墓地から《DDリリス》を特殊召喚する」

《DDナイト・ハウリング》の咆哮がスタジアム中に響き渡り、地中から《DDリリス》が現れる。

 

DDリリス レベル4 守備2100→0

 

「更に《烈火王テムジン》の効果発動。1ターンに1度、私のフィールド上にDDモンスターが特殊召喚された時、墓地からDDモンスター1体を特殊召喚できる。私は《DDD反骨王レオニダス》を特殊召喚」

黄金の円盾と剣、鎧に赤いマントをつけた王が《DDD烈火王テムジン》と並ぶ。

 

DDD反骨王レオニダス レベル7 攻撃2600

 

「更に私はレベル4の《DDリリス》にレベル3の《DDナイト・ハウリング》をチューニング。闇を切り裂く咆哮よ。疾風の速さを得て新たな王の産声となれ!シンクロ召喚!生誕せよ!レベル7!《DDD疾風王アレクサンダー》!」

 

DDD疾風王アレクサンダー レベル7 攻撃2500

 

零児のフィールドに3体の上級モンスターが並び、《魔装剛毅クレイトス》が迎撃のために拳を構える。

「《クレイトス》と《レオニダス》の攻撃力は2600…それに《レオニダス》はエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターじゃないから、攻撃力アップの効果が使えない!」

「このまま《レオニダス》と《クレイトス》が相討ちして、続けざまに2体のモンスターの攻撃が通ったら、ライフは0になるね。問題は…」

伊織が《魔装剛毅クレイトス》と《DDD反骨王レオニダス》を見るのに対して、ハンスは翔太の伏せたカードに注目している。

たった1枚の伏せカードによって、状況が変化したケースが多いことを理解しているためだ。

無論、零児もそれは分かっている。

そうでなければ、プロとして戦うことはできない。

「私は手札から魔法カード《DDDトラスト》を発動。《魔神王の契約書》を墓地へ送り、このターン、私のフィールド上に存在するDDモンスターが攻撃するとき、相手はダメージ計算終了時まで魔法・罠カードを発動できない」

《魔神王の契約書》が消滅し、羊毛紙でできた契約書がくくりつけられた長剣が翔太の伏せカードを突き刺す。

契約書には『DDモンスターが攻撃する際、秋山翔太は魔法・罠カードを発動できない』と書かれている。

 

DDDトラスト

通常魔法カード

「DDDトラスト」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分の魔法・罠ゾーンの「契約書」カード1枚を墓地へ送ることで発動できる。このターン、自分フィールド上に存在する「DD」モンスターが攻撃するとき、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。

 

「そんな!翔太君の伏せカードが封じられちゃった!!」

「バトルだ!《反骨王レオニダス》で《クレイトス》を攻撃!!」

《DDD反骨王レオニダス》の剣と《魔装剛毅クレイトス》の拳がぶつかり合う。

両者ともに力は互角で、ぶつかり合いによって生じた衝撃波によって仲良く吹き飛ばされていった。

「これで翔太君のフィールドががら空き!!」

「罠発動、《刹那の調律》」

「え…!?」

「ほう…そのカードを伏せていたか」

「俺のフィールド上に存在するシンクロモンスターが破壊された時、そのモンスターと手札のチューナーモンスターを使って、シンクロ召喚をする!俺は破壊された《クレイトス》に手札の《魔装猫バステト》をチューニング!茨の園より生まれし稲妻の竜よ、空を振るわし、大地に鉄槌を。シンクロ召喚!現れろ、《魔装雷竜リンドヴルム》!」

翔太の目の前に落雷のエフェクトが発生すると同時に、上空から薔薇の花びらと共に蛇のような胴体とコウモリのような羽を持つ青い竜が降りてくる。

その竜の腹部に五芒星が刻まれている。

 

魔装雷竜リンドヴルム レベル8 攻撃3000

 

「すごーい!!破壊されてもすぐに上級モンスターを呼び出した!」

「私は手札から魔法カード《異次元の契約》を発動。私のフィールド上にDDDが2体以上存在するとき、デッキからカードを2枚ドローし、手札を1枚墓地へ捨てる」

 

手札から墓地へ送られたカード

・DDD壊薙王アビス・ラグナロク

 

異次元の契約

通常魔法カード

(1):自分フィールド上に「DDD」モンスターが2体以上存在する場合にのみ発動できる。デッキからカードを2枚ドローし、その後手札を1枚捨てる。

 

「私はこれでターンエンド」

 

翔太

手札3→2

ライフ4000

場 魔装雷竜リンドヴルム レベル8 攻撃3000

 

零児

手札6→1

ライフ4000

場 DDD烈火王テムジン レベル6 攻撃2000

  DDD疾風王アレクサンダー レベル7 攻撃2500

 

「俺のターン」

 

翔太

手札2→3

 

「なるほど…君は《クレイトス》をすぐに倒されることを想定していたようだな」

「ああ、お前は他の奴らとは違って生半可なことは通用しないと思ったからな」

「光栄だな、それほど評価されているとは…」

「バトルだ。俺は《魔装雷竜リンドヴルム》で《疾風王アレクサンダー》を攻撃。ライトニング・ストライク」

《魔装雷竜リンドヴルム》が咆哮すると、《DDD疾風王アレクサンダー》の足元から大量の棘が現れ、そのモンスターを拘束する。

なんとか剣で切り裂こうとするが、棘が想像以上に固く、風を纏わせても斬ることができない。

拘束したのを確認すると同時に、《魔装雷竜リンドヴルム》が全身に雷を纏い、そのモンスターに向けて突撃した。

突撃と同時に、纏っていた雷が《DDD烈火王テムジン》にも襲い掛かり、結果的に《魔装雷竜リンドヴルム》は2体のモンスターを同時に破壊する形となった。

「《魔装雷竜リンドヴルム》は攻撃するとき、戦闘を行う相手モンスターの攻撃力以下の攻撃力を持つこのカード以外のモンスター、もしくは魔法・罠カード1枚を破壊する」

「なるほど…だから《テムジン》も破壊されたということか…」

 

零児

ライフ4000→3500

 

「だが、《テムジン》の効果は忘れたわけではないだろう?このカードが先頭または相手のカード効果で破壊された時、墓地から契約書を1枚手札に加える。私は墓地から《魔神王の契約書》を手札に加える」

「ああ…。俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

翔太

手札3→1

ライフ4000

場 魔装雷竜リンドヴルム レベル8 攻撃3000

  伏せカード2

 

零児

手札1→2(うち1枚《魔神王の契約書》)

ライフ3500

場 なし

 

魔装雷竜リンドヴルム

レベル8 攻撃3000 守備1000 シンクロ 光属性 ドラゴン族

「魔装」チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

「魔装雷竜リンドヴルム」の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードが相手モンスターを攻撃するときに、フィールド上に存在する攻撃対象となったモンスターの攻撃力以下の攻撃力を持つモンスター、もしくはフィールド上に存在する魔法・罠カードのいずれか1枚を対象に発動する。そのカードを破壊する。

 

「すげえ…あの赤馬零児に先制ダメージを与えたぞ!!」

「それになんだよあのモンスター、見たことないぞ!?」

翔太のモンスター、そして彼自身の力量に客席が動揺する。

(今のあいつの手札には《魔神王の契約書》がある。そして、《異次元の契約》の効果で《アビス・ラグナロク》が墓地へ送られた)

(《リンドヴルム》の破壊効果は脅威だ。だが、そのおかげで《魔神王の契約書》を手札に戻すことができた。あとは、攻撃事態を無効にするか、そのモンスターを除去する手をうてばいい)

(今の俺の墓地には《魔装猫バステト》を含めて、魔装モンスターは4体)

「(彼の伏せカードは2枚…どのような動きを見せるか…)私のターン、ドロー」

 

零児

手札2→3

 

「私は手札から永続魔法《魔神王の契約書》を発動。その効果で私は墓地のモンスターを素材に、DD融合モンスターを融合召喚できる」

(動くか…《リンドヴルム》を倒しに…)

「私が除外するのは《烈火王テムジン》と《疾風王アレクサンダー》!闇を焼く炎よ、風纏いし征服王よ!異次元の中で1つとなりて、新たな王を生み出さん!融合召喚!生誕せよ、《DDD氷塊王ピョートル》!」

零児のフィールドに次元の裂け目が現れ、そこから全身が永久凍土で構築された鎧に包まれ、右手には錫杖を装備している金髪の若き王が現れる。

 

DDD氷塊王ピョートル レベル8 攻撃2800

 

「《ピョートル》の効果発動。このカードの融合召喚に成功した時、墓地か除外されているDDモンスター3体をデッキに戻し、デッキからカードを2枚ドローする」

《DDD氷塊王ピョートル》が錫杖を天に掲げると、除外されていた《DDD烈火王テムジン》と《DDD疾風王アレクサンダー》そして墓地の《DDナイト・ハウリング》が氷の彫像となった状態で消滅し、零児はカードをドローする。

 

零児

手札3→4

 

DDD氷塊王ピョートル

レベル8 攻撃2800 守備2300 融合 水属性 水族

融合・S・Xモンスターを含む「DDD」モンスター×2

「DDD氷塊王ピョートル」の(1)(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードが融合召喚に成功した時、自分の墓地か除外されている自分の「DD」モンスター3体を対象に発動できる。そのカードをデッキに戻し、自分はデッキからカードを2枚ドローする。

(2):フィールド上に存在するこのカードが破壊され墓地へ送られた時に発動できる。デッキから「契約書」カード1枚を手札に加える。

 

「そして私はスケール1の《DD魔導賢者ガリレイ》とスケール10の《DD魔導賢者ケプラー》でペンデュラムスケールをセッティング」

(来た…!遊矢を倒したペンデュラムモンスター…)

零児の左右に2体の魔導賢者が現れ、光の柱を生み出す。

「嘘だろ…!?」

「赤馬零児までペンデュラム召喚を??」

「わが魂を揺らす大いなる力よ、この身に宿りて闇を引き裂く新たな光となれ!ペンデュラム召喚!!出現せよ、私のモンスター達よ!!誇り高き殉教者、《DDプラウド・マーター》!流れに抗いし王、《DDD反骨王レオニダス》!!」

白銀のフードと白銀のローブをまとった皺だらけで盲目の老人と《DDD反骨王レオニダス》がフィールドに現れる。

 

DDプラウド・マーター レベル5 攻撃1900

DDD反骨王レオニダス レベル7 攻撃2600

 

「これで3体…!!」

「更に《DDプラウド・マーター》の効果発動。このカードの特殊召喚に成功した時、このカードをリリースすることで墓地またはエクストラデッキに存在するDDペンデュラムモンスター1体を特殊召喚できる。今こそ現れよ、異次元を操りし王、《DDD壊薙王アビス・ラグナロク》!」

頭部と両肩に角がついた漆黒の鎧と兜を身に着け、各所に青い宝玉が埋め込まれている王が現れる。

それと同時に彼の背後からナイフがついた黒い縄が数本出現する。

 

DDD壊薙王アビス・ラグナロク レベル8 攻撃2200

 

「《アビス・ラグナロク》…赤馬零児、また新たなペンデュラムモンスターを…」

「《アビス・ラグナロク》の効果発動。1ターンに1度、私のDDモンスター1体をリリースすることで、相手フィールド上のモンスター1体を除外する。私は《氷塊王ピョートル》をリリースする」

「何!?」

《DDD壊薙王アビス・ラグナロク》のすべてのナイフに霊体となった《DDD氷塊王ピョートル》が宿る。

氷の宿ったナイフはすべて《魔装雷竜リンドヴルム》を貫き、氷像にした後で粉々に打ち砕いた。

「ちっ…!!」

「これで再び君のフィールドからモンスターはいなくなった…。さあ、どのような動きを見せてくれる?バトルだ!!《反骨王レオニダス》でダイレクトアタック!!」

《DDD反骨王レオニダス》の剣が翔太を縦一線に切り裂く。

「ぐう…!!」

 

翔太

ライフ4000→1400

 

「俺は罠カード《ダメージ・コンデンサー》を発動!俺が戦闘ダメージを受けたとき、手札を1枚墓地へ捨てることで受けたダメージ以下の攻撃力を持つモンスターをデッキから攻撃表示で特殊召喚できる。現れろ、第4の騎士、《魔装騎士ペイルライダー》!!」

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

 

手札から墓地へ送られたカード

・魔装詩人ダンテ

 

「出たーーー!《ペイルライダー》!」

翔太のエースカード登場に伊織は大喜びだ。

「更に俺は罠カード《クアトロ・デスブレイク》を発動。俺のフィールド上に《ペイルライダー》が存在するとき、相手フィールド上に表側表示で存在するカード1枚を破壊し、このカードを除外する!」

《クアトロ・デスブレイク》から射出されたガトリング砲を受け取った《魔装騎士ペイルライダー》はそれを《DDD反骨王レオニダス》に向けて発射する。

ガトリングの猛攻により、丸楯が砕け、鎧もろとも肉体がハチの巣にされていった。

「フィールド上に存在するペンデュラムモンスターは墓地へは行かず、エクストラデッキへいく」

零児の手で《DDD反骨王レオニダス》がエクストラデッキへ送られる。

「私はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

翔太

手札1

ライフ1600

場 魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

  伏せカード1

 

零児

手札2→0

ライフ3500

場 DDD壊薙王アビス・ラグナロク レベル8 攻撃2200

  DD魔導賢者ガリレイ(青) ペンデュラムスケール1

  DD魔導賢者ケプラー(赤) ペンデュラムスケール10

  魔神王の契約書(永続魔法)

  伏せカード1

 

「俺のターン」

 

翔太

手札1→2

 

(実際に戦ってみてわかる…。なぜ遊矢が彼に敗れたのかがな。だが…)

翔太はドローしたカードと墓地に存在する《魔装猫バステト》を見る。

「(俺のキャラじゃないが、なぜか楽しくなる。あいつを本気で倒したくなる…。俺は…あいつに勝ちたい!)俺は墓地に存在する《魔装猫バステト》の効果を発動。俺のフィールド上に魔装モンスターが存在するとき、手札・墓地から特殊召喚できる」

 

魔装猫バステト レベル1 攻撃0(チューナー)

 

「更に手札から魔法カード《魔装融合》を発動!俺の手札・フィールド・墓地に存在するモンスターを素材に魔装融合モンスターを呼び出す。俺が素材とするのは墓地の《魔装雷竜リンドヴルム》と《魔装剛毅クレイトス》。雷鳴を呼ぶ棘の竜よ、征服王の従者よ、魔導の力によりて、今1つとならん。融合召喚!炎の聖女、《魔装聖女ジャンヌ》!」

首にロザリオをかけ、青い騎士の鎧を身に着けた金髪の少女が翔太の前に現れる。

右手には刀身に五芒星が刻まれた剣があり、左手には十字架が刻まれた青いカイトシールドがある。

 

魔装聖女ジャンヌ レベル8 攻撃?

 

「このカードの攻撃力は融合素材となった魔装モンスターの攻撃力の合計となる」

2体のモンスターの魂が剣に宿り、刀身が赤い炎に包まれる。

 

魔装聖女ジャンヌ レベル8 攻撃?→3000→5600

 

「攻撃力5600!?」

「更に俺は手札から魔法カード《魔装旋風》を発動。俺のフィールド上に魔装モンスターが3体以上存在するとき、相手の魔法・罠カードをすべて破壊する。このカードの発動に対して、相手はカード効果を発動できない」

《魔装猫バステト》が巨大な砂嵐を引き起こし、《魔装聖女ジャンヌ》がそれに炎を宿す。

更に《魔装騎士ペイルライダー》がミサイルランチャーで視界を封じると、その竜巻は零児のフィールドを襲う。

砂嵐が消えると、零児のフィールドから光の柱と伏せカードが消滅していた。

 

魔装旋風

通常魔法カード

「魔装旋風」は1ターンに1度しか発動できない。

このカードの発動に対して魔法・罠・モンスターの効果は発動できない。

(1):自分フィールド上に「魔装」モンスターが3体以上存在する場合にのみ発動できる。相手フィールド上に存在する魔法・罠カードをすべて破壊する。

 

「更にこのカードが攻撃するとき、相手は魔法・罠カードを発動できない。バトルだ!俺は《ジャンヌ》で《アビス・ラグナロク》を攻撃!」

《魔装聖女ジャンヌ》の炎の剣が《DDD壊薙王アビス・ラグナロク》を斬る。

すると異次元の王の肉体が灼熱の炎に包まれ、一瞬で灰化していった。

「ぐうううう!…くっ!!」

 

零児

ライフ3500→100

 

魔装聖女ジャンヌ

レベル8 攻撃? 守備? 融合 炎属性 天使族

レベル5以上の「魔装」モンスター×2

このカードは融合召喚でのみ特殊召喚できる。

(1):このカードの元々の攻撃力・守備力はこのカードの融合素材としたモンスターの元々の攻撃力を合計した数値になる。

(2):このカードが戦闘を行う場合、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠・モンスターの効果を発動できない。

 

「一気にライフを100に!?」

「このままとどめをさしちゃえ、翔太くーん!」

「《ペイルライダー》、あいつにとどめを刺せ!」

《魔装騎士ペイルライダー》が2本の光剣で零児を切り裂こうとする。

刃が彼を切り裂こうとするのと同時に、翔太と零児を包み込むような巨大な爆発が発生する。

「爆風が…!?」

「デュエルの結果は…一体!?」

煙が晴れると、同時に翔太が片膝を地面につける。

彼の肩にはレイピアが深々と刺さっていた。

それに対して、零児は何事もなかったかのようにその場に立っていた。

「ちっ…俺の負けか…」

「その通りだ。私は墓地から罠カード《ペンデュラム・ショック》を発動した。私のフィールド上に表側攻撃表示で存在するペンデュラムモンスターが破壊された時、そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを君に与える。《アビス・ラグナロク》の元々の攻撃力は2200だ」

 

翔太

ライフ1600→0

 

ペンデュラム・ショック

通常罠カード

「ペンデュラム・ショック」は相手によって破壊されたターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に攻撃表示で存在するPモンスターが相手の攻撃・効果によって破壊された時に発動できる。このカードを墓地から除外し、そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。

 

「見事なデュエルだった…秋山翔太」

零児のソリッドビジョンが翔太の傍に向かう。

「ちっ…あと少しで勝てたところを」

ゆっくりと立ち上がりながら、悪態をつく。

「そうだな…だが、君の実力は正直私の想像をはるかに超えていた。そして、君についていろいろ知ることができた」

「俺に…ついて?」

「また会おう、秋山翔太。そして8組のデュエリストたち、君たちのデュエルが多くの人々を楽しませてくれることを願う」

それだけ言うと、零児のソリッドビジョンが消えた。

「翔太君、惜しかったね」

駆け寄った伊織が心配そうに翔太を見る。

「ああ…だが、記憶を取り戻す以外にデュエルをする理由ができた」

「え…?」

「赤馬零児を倒す。あいつを超えたい」

「…う、うわあ、翔太君がそんなことを…明日嵐が来るかも…」

「はぁ、何を言ってんだ?俺がそういうのがおかしいってのか?」

「うん、絶対おかしい!翔太君、全然そういうキャラじゃないもん」

「伊織、お前!!」

エキシビションデュエルの後に開催された2人の喧嘩。

観客の前だというのに…。

大勢が沈黙する中、ハンスが次のようなことを口にした。

「これが日本でいう痴話喧嘩っていうのかー」



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第26話 宝玉の結束 翔太VSハンス

「よし…これで道は開けた!私は《WW-鉄槌のヘイル》でダイレクトアタック!」

金色のソフトモヒカンで、紺色のジャケットと赤いシャツの男、クリス・ボルガーが攻撃命令を出す。

すると、自分と同じ大きさの鉄槌を持つ青い髪と白いトガの男がダイレクトアタックする。

「うわあああ!!」

ダメージ発生と同時に、ダメージを受けたデュエリストのパートナーに向けて強い向かい風が発生する。

「な…なんて風だ!これじゃあ前へ進めない!!」

彼の手にはすでに2枚のペンデュラムカードがあり、ゴールまですぐそこだ。

そこでこのギミックは痛い。

「よし…よくやってくれた、ボルガー!」

一足遅れてペンデュラムカードを回収した赤いくしゃくしゃな髪で緑色のコートの青年、ロベルト・ピアスンが別の通路からゴールへ向かう。

「し、しまった!!この攻撃を防いでいたら…!!」

「ゴールだ!!」

ピアスンがゴールゾーンに設置されているデュエルディスクの前に立ち、《PSホワイト・バタフライ》と《PSホワイト・フラワー》をセッティングする。

これは実際にペンデュラムカードを2枚回収したうえで到着しているかを確認するためであり、ゴールしたことを証明するためでもある機能だ。

(ロベルト・ピアスン選手!!ゴーーール!!これにより、準決勝進出決定だーーー!!)

勝利したピアスンとボルガーがアンティとして《PSパープル・ソード》と《PSパープル・シールド》を手にする。

 

PS(ペンデュラムスタチュー)ホワイト・バタフライ(アニメオリカ・調整)

レベル10 攻撃1000 守備1000 光属性 岩石族

【Pスケール:青3/赤3】

(1):1ターンに1度、自分フィールドの昆虫族モンスターの攻撃力を200アップできる。

【モンスター効果】

「PSホワイト・バタフレイ」のモンスター効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードがエクストラデッキからP召喚に成功した場合に発動できる。 デッキから「PSホワイト・バタフレイ」以外の「PS」モンスター1体を手札に加える。

 

PSホワイト・フラワー(アニメオリカ・調整)

レベル4 攻撃400 守備400 光属性 岩石族

【Pスケール:青9/赤9】

(1):1ターンに1度、自分フィールドの植物族モンスターの攻撃力を200アップできる。

【モンスター効果】

「PSホワイト・フラワー」のモンスター効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードがエクストラデッキからP召喚に成功した場合に発動できる。 デッキから「PSホワイト・フラワー」以外の「PS」モンスター1体を手札に加える。

 

PSパープル・ソード(アニメオリカ・調整)

レベル2 攻撃200 守備200 闇属性 岩石族

【Pスケール:青10/赤10】

(1):1ターンに1度、自分フィールドの戦士族モンスターの攻撃力を200アップできる。

(2):もう片方の自分のPゾーンに「PS」カードが存在するとき、このカードのPスケールは11になる。

【モンスター効果】

「PSパープル・ソード」のモンスター効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードがエクストラデッキからP召喚に成功した場合に発動できる。 デッキから「PSパープル・ソード」以外の「PS」モンスター1体を手札に加える。

 

PSパープル・シールド(アニメオリカ・調整)

レベル8 攻撃800 守備800 闇属性 岩石族

【Pスケール:青5/赤5】

(1):1ターンに1度、自分フィールドの戦士族モンスターの守備力を200アップできる。

「PSパープル・シールド」のモンスター効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードがエクストラデッキからP召喚に成功した場合に発動できる。 デッキから「PSパープル・シールド」以外の「PS」モンスター1体を手札に加える。

 

 

「それにしても、ペンデュラムモンスターをこんな形で手に入れることになるとはな」

「これで私たちもあの榊遊矢のような大量展開ができるということだな」

「うーーん、早く私たちの出番が来ないかなーー!」

「全くうるさい奴だな」

(続きまして第2試合、秋山翔太選手、永瀬伊織選手ペアとハンス・アンデルセン選手、ジェイク・クロコダイル選手によるダンジョンデュエルだーーー!!)

「いくぞ伊織」

「うん!!」

2人は控室から出て、フィールド行のエレベーターに乗る。

「そういえば、翔太君はどうして手袋をつけてるの?今は夏なのに、熱いでしょ?」

「どうでもいいだろ?別に…」

「けど…」

「それよりも少し準備運動でもしてろ。怪我するぞ?」

「あ、そうだった!!1・2・3・4!」

その場で準備運動を始めると同時にエレベーターの扉が開く。

「する時間すらなかったな」

「むー…もっと早く準備運動しておけばよかった…」

(まぁ…運動音痴じゃないから、大丈夫だろうな)

少し遅れて、向かい側のエレベーターの扉が開く。

そこからはハンスとジェイクが出てくる。

デュエルディスクを装着しているのがハンスだけだとすると、ダンジョンへ向かうのはジェイクのようだ。

「やあ、君のデュエル見たよ!俺もあんなデュエルやってみたいぜ!」

「お前は…?」

「俺はハンス。よろしくな、翔太。それとキツネさん」

「何…?」

翔太のポケットの入っているハンカチをハンスがなぜかキツネさんと呼んでいる。

「お前、気でも狂ったのか?」

「そんなことないぜ。そのハンカチ、精霊が変化しているんだろ?ビークルデュエルのことを考えると、そいつは《魔装妖ビャッコ》じゃないか?」

彼の言うとおり、ハンカチはビャッコが化けたものだ。

普通の人であれば見分けることができないため、どうやら彼は精霊を見ることができるのかもしれない。

だが、ここで話すわけにはいかないと考えた翔太はここで話を終える。

「早くデュエルの準備をしろ。話はその後でもいいだろ?」

「はあ…もうちょっと話したかったのにな。さあ、頼むよ。俺の宝玉獣たち」

デュエルディスクに入っているデッキに語りかける。

そして、翔太とハンスはもう1つのエレベーターに乗り、ソリッドビジョンで構築された空中の無重力デュエルリングへ向かう。

伊織とジェイクはそれぞれのスタート地点で開始を待つ。

(無重力までソリッドビジョンは再現できるのか…!?)

(ではでは皆様!!準備は整いました。これより、デュエルが開始されます!!)

「さあ、楽しいデュエルをしようぜ!!」

「…」

「「デュエル!!」」

 

ハンス

手札5

 

翔太

手札5

 

「よーし、出発ーー!」

デュエル開始と同時に伊織がダンジョンへ向けて走り出す。

「あ…ここにアクションカードが!」

走って3秒後に曲がり角でアクションカードを見つけ、それを手に取る。

ダンジョンデュエルでは、ダンジョンにいるプレイヤーはペンデュラムモンスターを回収するだけでなく、従来のアクションデュエルのようにアクションカードを1枚だけ手札に加え、発動することができる。

お互いの状況は目の前に表示されるソリッドビジョンで確認できるが、互いに声をかけることができないためにアクションカード発動はダンジョンにいるプレイヤーの任意となる。

「やった!これで翔太君を援護でき…」

手に取ったアクションカードを見て、伊織が固まる。

 

「俺の先攻!俺は手札か…」

(おーーっとここで伊織選手、アクション罠《平手打ち》を手にしてしまったーーー!!)

「何!?伊織…いきなりしくじったか!?」

翔太の前に白い大きな手袋が出てきて、翔太の手をたたく。

すると彼の手から《魔装陰陽師セイメイ》が落ち、墓地へ送られてしまう。

 

平手打ち

アクション罠カード

(1):自分の手札をランダムに1枚選択して墓地へ送る。その時、墓地へ送られたカードの効果は発動できない。

 

「ああ…やっちゃった…」

「アクション罠があるのは当たり前だぜ、お嬢さん!」

ポケーッとしている伊織を置いて、ジェイクが高い身長を生かして段差を越える。

「ああ…ぬかされちゃった!!ペンデュラムモンスターは…??」

あわてた伊織は走りながら周囲を見渡す。

 

「俺は手札から《宝玉獣サファイア・ペガサス》を召喚!」

 

宝玉獣サファイア・ペガサス レベル4 攻撃1800

 

「ハンス、敵の力は未知数だ。私達の力を存分に使ってくれ」

「ああ。《ペガサス》の効果発動!このカードの召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、手札・デッキ・墓地から宝玉獣1体を宝玉化する。俺は《ルビー・カーバンクル》を宝玉にし、魔法・罠ゾーンに置く!サファイア・コーリング!」

「ルビー!」

ルビーを尻尾につけ、赤い瞳と青いからだと4つの耳が特徴的な4本足の小動物のようなモンスターがかわいらしく鳴くと、ルビーとなってフィールドに置かれる。

「宝玉獣は魔法・罠ゾーンにあるとき、永続魔法として扱われるんだ。俺はカードを2枚伏せてターンエンド!」

 

ハンス

手札5→2

場 宝玉獣サファイア・ペガサス レベル4 攻撃1800

  宝玉獣ルビー・カーバンクル(永続魔法)

  伏せカード2

 

翔太

手札5→4

場 なし

 

「俺のターン!」

 

翔太

手札4→5

 

「俺は手札から《魔装竜ファーブニル》を召喚」

 

魔装竜ファーブニル レベル4 攻撃1900

 

「バトルだ。俺は《ファーブニル》で《サファイア・ペガサス》を攻撃!」

《魔装竜ファーブニル》の黄金の炎が《宝玉獣サファイア・ペガサス》を焼き尽くす。

「くぅっ…!!」

 

ハンス

ダメージ100

 

ハンスがダメージを受けた瞬間、ジェイクの足元の床が急に落ちる。

「な…うわああああ!!」

「ええ!?人が落ちた??」

急に目の前からジェイクの姿が消え、驚きを隠せない。

「痛たた…ダメージ100でこれか。クレイジーだぜ」

尻をさすりながら、ジェイクはゆっくりと立ち上がる。

そして、目の前にあるはしごを使って元の場所へ戻る。

落ちて戻るだけでもわずかなタイムロスにつながる。

その間に伊織がジェイクを抜かしていた。

「おっさきー!あ、これは…?」

十字路に到達した伊織の足元にはレンガのような模様のデュエルディスクが2つある。

それを装着すると、ここまで歩いた場所だけがマップで表示された。

「わあ…これは便利だね!まるで不○議のダンジョンみたい!」

 

「痛たた…これはジェイクに迷惑をかけたなぁ。けど…!」

「何!?」

焼き尽くされたはずの《宝玉獣サファイア・ペガサス》がサファイアとなってハンスのフィールドに残る。

「宝玉獣はモンスターゾーンで破壊されると、宝玉となるのさ。更に俺は永続罠《宝玉の集結》を発動。1ターンに1度、俺のフィールド上に表側表示の宝玉獣が戦闘・効果で破壊された時、デッキから新たな宝玉獣を特殊召喚できる。俺はもう1体の《ペガサス》を特殊召喚!」

 

宝玉獣サファイア・ペガサス レベル4 攻撃1800

 

「更に俺は《ペガサス》の効果を発動し、デッキから《宝玉獣トパーズ・タイガー》を宝玉化する。サファイア・コーリング!」

今度はトパーズがハンスのフィールドに現れる。

「宝玉化した時に…宝玉獣の真価が発揮されるということか?」

「そういうこと」

「厄介なカードだな!俺は《ファーブニル》の効果を発動!このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した時、デッキからレベル4以下の魔装モンスター1体を攻撃表示で特殊召喚できる。現れろ、《魔装妖ビャッコ》」

「キュイー!」

嬉しそうに鳴きながら、ビャッコがフィールドに現れる。

 

魔装妖ビャッコ レベル3 攻撃400

 

「このカードが魔装モンスターのシンクロ素材・エクシーズ素材となるとき、レベルが4としても扱うことができる。俺はレベル4の《ファーブニル》と《ビャッコ》でオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろ、魔装の力を宿した紅蓮の番犬、《魔装獣ケルベロス》!」

 

魔装獣ケルベロス ランク4 攻撃2300

 

「更に《ビャッコ》が魔装モンスターのシンクロ素材・エクシーズ素材となったとき、デッキからカードを1枚ドローする。そして、カードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

ハンス

手札5→2

場 宝玉獣サファイア・ペガサス レベル4 攻撃1800

  宝玉獣サファイア・ペガサス (永続魔法)

  宝玉獣トパーズ・タイガー(永続魔法)

  宝玉獣ルビー・カーバンクル(永続魔法)

  宝玉の集結(永続罠)

  伏せカード1

 

翔太

手札5→3

場 魔装獣ケルベロス(オーバーレイユニット2) ランク4 攻撃2300

  伏せカード2

 

「よいしょ、よいしょ…」

地図を手にした伊織はそのまままっすぐ進み、蔦を使って上へ昇っている。

「きっと、上から見下ろした方が何か見つかる気がする…!」

一方のジェイクは地図を入手した後、左へ進む。

そこからはなぜかプールになっていて、彼は泳いで進まなければならなかった。

「おっと、ここにアクションカードが…!」

もぐりながら、アクションカードを手に取る。

(こいつはいいカードだ。あとはハンスが…)

 

「俺のターン、ドロー!」

 

ハンス

手札2→3

 

「俺は3つの宝玉を墓地へ送り、エクストラデッキから《宝玉騎兵クリスタル・パラディン》を特殊召喚!」

「何!?宝玉騎兵…??」

「宝玉騎兵は宝玉を墓地へ送ることで、1ターンだけフィールドに存在できるのさ!」

3つの宝玉が空中で1つとなると、すべてがクリスタルでできた戦車と重装な鎧の騎士が現れる。

なお、その戦車はクリスタルの馬が引いている。

 

宝玉騎兵クリスタル・パラディン レベル8 攻撃2800

 

「《クリスタル・パラディン》の効果発動!このカードの特殊召喚に成功した時、デッキから宝玉獣モンスター1体を手札に加えることができる。俺はデッキから《アメジスト・キャット》を手札に加える。そして、《アメジスト・キャット》を召喚!」

胸に鳥を模した、アメジストの飾りをつけたピンク色の猫が現れる。

 

宝玉獣アメジスト・キャット レベル3 攻撃1200

 

「よし…このタイミングだ!俺はアクション魔法《援助》を発動!」

(おっと!!《クリスタル・パラディン》によって魔法・罠ゾーンに穴が開いたところですかさずジェイク選手がアクション魔法だーー!!)

「《援助》はデッキからカードを1枚ドローするんだったな。ジェイク、サンキュー!バトルだ!俺は《クリスタル・パラディン》で《ケルベロス》を攻撃!クリスタル・ブレード!」

《宝玉騎兵クリスタル・パラディン》のクリスタルでできた透き通った透明な剣で《魔装獣ケルベロス》を切り裂こうとする。

「罠発動!《くず鉄のかかし》。こいつは相手モンスター1体の攻撃を無効にする」

《魔装獣ケルベロス》の前に現れた《くず鉄のかかし》が盾となり、剣を防ぐ。

《宝玉騎兵クリスタル・パラディン》は再びかかしに向けて剣で切り裂こうとするが、結果は同じだ。

「防がれた…!?だけど、《アメジスト・キャット》は戦闘ダメージを半分にする代わりに相手にダイレクトアタックできる!いけ、《アメジスト・キャット》!!」

《宝玉獣アメジスト・キャット》がフィールドの外周を疾走し、翔太の背後を取る。

そして、そのまま翔太の背に向けて頭突きをした。

「ぐっ…!!」

 

翔太

ダメージ600

 

援助

アクション魔法カード

(1):自分はデッキからカードを1枚ドローする。

 

「よーし、位置確認位置確に…」

下へ降りた伊織がマップを確認しようとする。

しかし、画面にこれまで表示されていたはずの部分がすべて消えてしまっていた。

「えーーー!?どうしてーー??あ…」

画面の隅を見ると、そこにはダメージペナルティと表示されている。

「うう…翔太君ダメージを受けちゃったんだ。あ…」

先程昇降に利用した蔦の隙間にカードが隠れている。

「あー!もしかしてー?」

蔦をどかし、隠れているカードを確認する。

「やったーー!!ペンデュラムモンスター1枚目!」

《閃光の騎士》を手にし、嬉しそうにはしゃぐ。

「よーし、もう1枚のペンデュラムモンスターはどこかなー?」

 

(おーーー!!ここで伊織選手、ペンデュラムモンスターをゲットだー!)

「早いな…」

「おお、早いなぁ。ジェイク、急いでくれよー?俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド。それと同時に《クリスタル・パラディン》の効果発動。このカードは俺のターン終了時にエクストラデッキに戻り、墓地から宝玉獣1体を手札に加える。俺は墓地から《サファイア・ペガサス》を手札に加える!」

《宝玉騎兵クリスタル・パラディン》が光となって消滅し、ハンスの手に《宝玉獣サファイア・ペガサス》が加わる。

 

ハンス

手札3→4(うち1枚《宝玉獣サファイア・ペガサス》)

場 宝玉獣サファイア・ペガサス レベル4 攻撃1800

  宝玉獣アメジスト・キャット レベル3 攻撃1200

  宝玉の集結(永続罠)

  伏せカード2

 

翔太

手札3

場 魔装獣ケルベロス(オーバーレイユニット2) ランク4 攻撃2300

  伏せカード2(うち1枚《くず鉄のかかし》)

 

宝玉騎兵クリスタル・パラディン

レベル8 攻撃2800 守備2000 融合 光属性 岩石族

「宝玉騎兵クリスタル・パラディン」は1ターンに1度しか特殊召喚できない。

このカードは自分フィールド上に存在する「宝玉獣」魔法カードを3枚墓地へ送ることで、エクストラデッキから特殊召喚できる。

(1):このカードの特殊召喚に成功した時に発動できる。デッキから「宝玉獣」カード1枚を手札に加える。

(2):自分のターン終了時に発動する。このカードをエクストラデッキに戻し、自分の墓地に存在する「宝玉獣」カード1枚を手札に加える。

 

「俺のターン!」

 

翔太

手札3→4

 

「プハァ!!」

ジェイクがプールを泳ぎ終え、向こう岸に出てくる。

手には水中で手にしたもう1枚のアクションカードがある。

「お…こいつは何だ?」

少し歩くと行き止まりになっていて、壁にはスイッチがついている。

「ここからだと戻るしかないからな、ここはプッシュだ!」

押すと同時にプールの底に下り階段が出現し、水が引いていく。

「こいつはユニークな仕掛けだな。さすがは高校生ゲームプログラマーの御伽竜三が作ったダンジョン・ダイス・モンスターズを参考にしただけあるな」

階段を下りると、そこは完全に水で満ちていた。

しかし、中央には宝箱がある。

「もしかしたら、ここにペンデュラムモンスターが…」

 

「相手フィールド上にモンスターが存在し、俺のフィールド上に魔装融合モンスター、シンクロモンスター、エクシーズモンスターが存在するとき、このカードはリリースなしで召喚できる。《魔装剣士ローラン》を召喚」

赤い長髪で黄色い鎖帷子を身に着け、右手には傷が一つもない刃で黄金の柄のロングソードを持つ剣士が現れる。

 

魔装剣士ローラン レベル5 攻撃1700

 

「バトルだ。俺は《魔装獣ケルベロス》で《サファイア・ペガサス》を攻撃」

《魔装獣ケルベロス》が牙に炎を宿す。

そして、迎撃しようととびかかる《宝玉獣サファイア・ペガサス》の喉元に食らいついた。

「く…うううう!!!」

 

ハンス

ダメージ500

 

「ふうう…ペンデュラムモンスターゲットだ!」

宝箱から《銅鑼ドラゴン》を回収し、階段を上り終えたジェイクだが、急にプールの床がある場所では高くなり、ある場所では低くなる。

「ここまでやるのか!?」

平面な床とは異なり、無作為に高低差が付いた床のせいで余計に戻るのに時間がかかる。

 

「ふう…ちょっと休憩」

反り立つ壁を登り終えた伊織がその場に座り、あたりを見渡す。

ダメージで発生するもの以外にも様々な障害物が存在し、そのすべてが彼女の体力を奪っていく。

「あ…アクションカード!」

壁の後ろに設置された滑り台に貼りつけられたアクションカードを見つけると、すぐにそこへ向かう。

「今度はアクション罠じゃありませんよーに!」

滑りながらカードを手にとり、それを確認する。

「やった!!あとは発動タイミング!」

 

「俺は永続罠《宝玉の集結》と《サファイア・ペガサス》の効果を発動。まずはデッキから《宝玉獣エメラルド・タートル》を特殊召喚!」

背中に3つの大きなエメラルドの塊を背負っている青い亀が現れる。

 

宝玉獣エメラルド・タートル レベル3 守備2000

 

「そして、宝玉獣は宝玉化する」

ハンスのフィールドに新たにサファイアが現れる。

「《ケルベロス》の効果発動。このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した時、オーバーレイユニットを1つ取り除くことでこのターン、もう1度攻撃することができる。今度は《アメジスト・キャット》を喰らい尽くせ」

オーバーレイユニットをかみ砕いた《魔装獣ケルベロス》が今度は《宝玉獣アメジスト・キャット》を捕食しようとする。

(ハンス!私の力を…)

「ああ、宝玉となった《サファイア・ペガサス》を墓地へ送り、罠カード《宝玉の祈り》を発動!相手フィールド上のカード1枚を破壊する。俺は《ケルベロス》を破壊する!」

 

「お…ここはヘルプしてやるぜ!アクション魔法《封鎖》を発動!」

(ここでジェイク選手、またもアクション魔法を発動だーーー!!このカードはターン終了時までお互いにカウンター罠カードを発動できなくするー!)

「ちっ…!俺は《ローラン》の効果を発動。俺にフィールド上に存在する魔装モンスターがカード効果で破壊されるとき、代わりのこのカードを手札に戻すことができる!」

サファイアがドリル状に回転しながら《魔装獣ケルベロス》に襲い掛かる。

しかし《魔装剣士ローラン》がかばい、愛用の剣でサファイアを受け止める。

力尽きたサファイアは姿をけし、疲れ果てた剣士が翔太の手札に戻る。

すさまじい回転を受けながらも、彼の剣は無傷のままだ。

 

魔装剣士ローラン

レベル5 攻撃1700 守備2100 炎属性 戦士族

【Pスケール:赤6:青6】

(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。

(2):1ターンに1度、Pゾーンに置かれているカード1枚を対象に以下の効果から1つを選択して発動できる。

●そのカードのPスケールを2つ上げる

●そのカードのPスケールを2つ下げる

【モンスター効果】

「魔装剣士ローラン」は自分のモンスターゾーンに1体しか存在できない。

(1):相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上に「魔装」融合モンスター、Sモンスター、Xモンスターが存在するとき、このカードはリリースなしで召喚できる。

(2):自分フィールド上に存在する「魔装」モンスターが相手の効果によって破壊されるとき、代わりにこのカードを手札に戻すことができる。

 

封鎖

アクション魔法カード

(1:このターン、互いのプレイヤーはカウンター罠カードを発動できない。

 

「バトル再開だ。《ケルベロス》!!」

《魔装獣ケルベロス》が咆哮し、再び《宝玉獣アメジスト・キャット》に襲い掛かる。

かみつかれた猫は消滅すると、アメジストとなってフィールドに現れる。

 

ハンス

ダメージ1100

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・魔装竜ファーブニル

 

「な…!?1100のダメージ!?」

最初の十字路に戻ったジェイクの周囲を壁がつつむ。

北方向の壁にはなぜかテレビがついている。

「ホワッツ?」

(アタックデュエルクイーズ!これからデュエルに関する問題を出題します。問題に3問連続で成功したら壁が消えます。ただし、クリアするまでここから出ることはできませーん!!)

「なんてクレイジーな仕掛けだ!」

(問題、最近禁止カードとなった《大嵐》。それで飛ばされている人は何人?)

「オウ!シンプルなクイズだ。正解は2人!」

回答と同時にブーッと音が鳴る。

「嘘だろ!?不正解??」

(はい、不正解。答えは3人)

解説として《大嵐》のイラストに描かれている人を矢印で示す。

奥の影となっているシルエットも人だったのだ。

(では、次の問題…)

 

「まだだ!もう1つのオーバーレイユニットを1つ取り除き、《エメラルド・タートル》を攻撃する!」

最後のオーバーレイユニットを喰らいつくした《魔装獣ケルベロス》が炎を爪に宿し、《宝玉獣エメラルド・タートル》をひっかく。

引っかかれた場所から高温の炎が発生し、水色の亀が焼きつくされる。

炎が消えると、そこにはエメラルドが現れた。

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

ハンス

手札4(うち1枚《宝玉獣サファイア・ペガサス》)

場 宝玉の集結(永続罠)

  宝玉獣エメラルド・タートル(永続魔法)

  宝玉獣アメジスト・キャット(永続魔法)

  伏せカード1

 

翔太

手札4→3(うち1枚《魔装剣士ローラン》)

場 魔装獣ケルベロス ランク4 攻撃2300

  伏せカード3(うち1枚《くず鉄のかかし》)

 

「俺のターン、ドロー!」

 

ハンス

手札4→5

 

「次はこいつだ。俺は宝玉化した《エメラルド・タートル》と《アメジスト・キャット》を墓地へ送り、エクストラデッキから《宝玉騎兵クリスタル・エクィテス》を召喚!」

「2体目の宝玉騎兵か!?」

2つの宝石が上空で1つになり、青い魔法陣となる。

そして、その魔法陣から《宝玉騎兵クリスタル・パラディン》に似た姿ではあるが、装備が左腕が露出した軽装甲の鎧と槍になっているモンスターが現れる。

 

宝玉騎兵クリスタル・エクィテス レベル4 攻撃1900

 

「《クリスタル・エクィテス》の効果発動!このカードの特殊召喚に成功した時、デッキから究極宝玉神1体を手札に加える。俺はデッキから《レインボー・ドラゴン》を手札に!」

「《レインボー・ドラゴン》…?」

「こいつは俺のエース。召喚するには7種類の宝玉獣がフィールド・墓地に存在しなければならない」

ハンスのフィールド・墓地に存在する宝玉獣は《宝玉獣サファイア・ペガサス》、《宝玉獣アメジスト・キャット》、《宝玉獣トパーズ・タイガー》、《宝玉獣ルビー・カーバンクル》、《宝玉獣エメラルド・タートル》。

召喚するにはあと2種類不足している。

しかし、ハンスの手札には《宝玉獣サファイア・ペガサス》が存在するため、実質的にはあと1種類だ。

「(よし…まずはこれでびっくりさせてやる)俺はスケール2の《宝玉の守護者》とスケール5の《宝玉の先駆者》でペンデュラムスケールをセッティング!」

「ちっ…ペンデュラム召喚か!?」

「そういうこと!これで俺はレベル3と4のモンスターを同時に召喚できる!宝玉の力を持つ聖なる獣たちよ、今こそ大いなる力の元に集結せよ!ペンデュラム召喚!!現れろ、俺の友達!!《宝玉獣アンバー・マンモス》!《宝玉獣サファイア・ペガサス》!」

《宝玉獣サファイア・ペガサス》と共に額にアンバーがついた巨大なマンモスが現れる。

(ちっ…この状況は!!)

 

宝玉獣サファイア・ペガサス レベル4 攻撃1800

宝玉獣アンバー・マンモス レベル4 攻撃1700

 

「更に、《サファイア・ペガサス》の効果発動!俺のフィールドに《宝玉獣コバルト・イーグル》が宝玉化して現れる」

「これで準備が整った…ということか?」

「ああ、今ここで見せてやるぜ。俺のエースを!!現れろ、《究極宝玉神レインボー・ドラゴン》!!」

ハンスのデュエルディスクから七色の光が発生する。

それと反応するかのように、上空にオーロラが現れ、7種類の宝玉をその身に宿した、白銀で翼をもつ蛇竜が舞い降りる。

 

究極宝玉神レインボー・ドラゴン レベル10 攻撃4000

 

(ついに現れたーーーー!!宝玉獣の切り札、《レインボー・ドラゴン》----!!」

スタジアムを1周するように旋回する《究極宝玉神レインボー・ドラゴン》に観客は言葉も出ず、ただただ眺めるだけだ。

「ここで俺は罠カード《宝玉神の慈悲》を発動!こいつは発動後、装備カードとなって《レインボー・ドラゴン》に装備される。そして、このカードを装備したモンスターは相手の魔法・罠カードの効果を受けない!」

(《くず鉄のかかし》まで封じてきたか!?)

「バトルだ!俺は《レインボー・ドラゴン》で《ケルベロス》を攻撃!オーバー・ザ・レインボー!!」

《究極宝玉神レインボー・ドラゴン》の宝石が輝きを放ち、それと同時に口から七色のブレスが放たれる。

ブレスに対して、《魔装獣ケルベロス》は高い跳躍で回避したものの、それをよんでいた神の尾による薙ぎ払いをうけて、消滅した。

「ぐううう!!」

 

翔太

ダメージ1700

 

宝玉神の慈悲

通常罠カード

(1):このカードは発動後、装備カードとなり、自分フィールド上に存在する「レインボー・ドラゴン」モンスター1体に装備する。

(2):このカードを装備したモンスターは相手の魔法・罠カードの効果を受けない。

 

「ああ、翔太君!(ダメ…このカードじゃ防げない)」

ダメージを受けた翔太を見ていると、背後からソリッドビジョンの《切り込み隊長》が近づいてくる。

「お嬢さん、失礼」

「え…ええ!!?」

振り向き、何が何だか分からずにいる伊織の右足に《切り込み隊長》が枷をつける。

枷には巨大で四角い石が付けられていた。

「えーーーーー!!?」

「ダメージペナルティです。お許しください」

そういって伊織に頭を下げると、煙のように消えてしまった。

ジャングルジムやアスレチックの要素のあるダンジョンデュエルでこのペナルティは痛い。

「ううーーーー、翔太君、助けてーーー!!」

 

攻撃終了と同時に、なぜかハンスのフィールドに《宝玉獣アメジスト・キャット》が現れる。

 

宝玉獣アメジスト・キャット レベル3 攻撃1200

 

「ちっ…またアクション魔法か?」

「おー…またジェイクが発動してくれたんだな。となると…これはアクション魔法《召喚スイッチ》だな」

 

召喚スイッチ

アクション魔法カード

「召喚スイッチ」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分のモンスターが戦闘で相手にダメージを与えたときに発動できる。自分の墓地から与えた戦闘ダメージ以下の攻撃力を持つレベル4以下のモンスター1体を表側攻撃表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。

 

「気を取り直して…次は《サファイア・ペガサス》でダイレクトアタック!」

「罠カード《くず鉄のかかし》を発動!こいつで攻撃を防ぐ!」

《宝玉獣サファイア・ペガサス》の突撃をかかしが受け止めるが、《宝玉獣アメジスト・キャット》が跳躍し、翔太をひっかこうとする。

「…。フン」

「何!?」

翔太の笑みを不審に思ったのと同時に翔太のデュエルディスクから激しい光が発生する。

「この光は!?」

「罠カード《コンフュージョン・チャフ》を発動した。これで《アメジスト・キャット》は《サファイア・ペガサス》に攻撃する」

光で目がくらんだ《宝玉獣アメジスト・キャット》が見境なく仲間である《宝玉獣サファイア・ペガサス》に襲い掛かる。

やむなく《宝玉獣サファイア・ペガサス》は《宝玉獣アメジスト・キャット》を蹴り飛ばした。

「ぐう…!!」

蹴り飛ばされた宝玉獣が上空でアメジストに変化する。

 

ハンス

ダメージ600

 

「ようやくクリアしたぜ…」

クイズを突破したジェイクがもう1枚のペンデュラムモンスター入手のために前へ進もうとした。

その第一歩でダメージペナルティが発生する。

「へ…?」

一歩歩くと同時に足元でカチッという音が鳴る。

恐る恐る足をどかすと、そこにはドクロマークがついたスイッチがあった。

「ま…まさか、ここまでやることはないよな…??」

あまりにも危険性の高さを伝えるスイッチであるため、地雷と思ったジェイクだが、予想は違った。

急に足元の床がばねがついていたかのように思い切り跳び、ジェイクが上空へ吹き飛ばされる。

(このダメージペナルティはばねの罠!!ランダムで別の場所へ飛ばされてしまいまーーす!!)

「うわあああああ!!」

派手に吹き飛ばされたジェイクはそのまま西の端にある小部屋まで落ちて行った。

 

「すごい跳び方だなあ、やっぱり俺がやったほうが良かったかなー?」

派手にとんだジェイクを面白おかしく眺めるハンス。

やっている方からしたらあまり面白くないだろうが。

「おい、よそ見をしている場合か?」

「おっと、そうだった。今度は《クリスタル・エクィテス》と《アンバー・マンモス》でダイレクトアタック!」

「くっ…」

伏せカードを見るが、それでは攻撃を防ぐことができない。

《宝玉獣アンバー・マンモス》の鼻が翔太を弾き飛ばし、飛ばされた翔太の腹部を《宝玉騎兵クリスタル・エクィテス》が槍で叩きつける。

「がはぁ…!!」

 

翔太

ダメージ1900&1700

 

「きゃあ!!翔太君、ダメージ受けすぎだよぉ!」

最初のダメージペナルティにより、伊織だけ重力変動が発生したために体が重くなっていく。

更に次のダメージペナルティでは伊織がいる床が高速で回転する。

「うええ…気分が悪いよぉ…」

体が重くなり、枷で動きが制限され、そして高速回転で目を回した伊織がフラフラになりながら歩く。

「あうう…そういえば相手はもう2枚のペンデュラムモンスターを手に入れちゃったかなぁ?」

 

「伊織…悪い」

やむなくダメージを受けたとはいえ、あまりにきつい状況を生み出してしまったため、さすがの翔太も詫びずにはいられなかった。

それが彼女に聞こえるわけではないが。

「更に追撃したいところだけど、もう攻撃できるモンスターはいないな…。俺はこれでターンエンド!それと同時に《クリスタル・エクィテス》の効果発動!こいつは俺にターン終了と同時にエクストラデッキに戻る」

「俺は罠カード《ショック・ドロー》を発動!このターン受けたダメージ合計1000毎にカードを1枚ドローする!(入れておいて正解だったな…伊織には悪いが)」

このターンに翔太が受けたダメージの合計は5900。

いくらライフダメージを受けても、どちらかがゴールをしない限り敗北にはならないためにこのカードのアドバンテージが上昇する。

そのため、特別ルールで《ショック・ドロー》はこのデュエルでは制限カードとして扱われる。

 

ハンス

手札5→0

場 宝玉の集結(永続罠)

  宝玉獣サファイア・ペガサス レベル4 攻撃1800

  宝玉獣アンバー・マンモス レベル4 攻撃1700

  究極宝玉神レインボー・ドラゴン(《宝玉神の慈悲》装備中) レベル10 攻撃4000

  宝玉獣アメジスト・キャット(永続魔法)

  宝玉の守護者(青) ペンデュラムスケール2

  宝玉の先導者(赤) ペンデュラムスケール5

 

翔太

手札3→8(うち1枚《魔装剣士ローラン》)

場 伏せカード1(《くず鉄のかかし》)

 

宝玉騎兵クリスタル・エクィテス

レベル5 攻撃1900 守備1000 融合 光属性 岩石族

「宝玉騎兵クリスタル・エクィテス」は1ターンに1度しか特殊召喚できない。

このカードは自分フィールド上に存在する「宝玉獣」魔法カードを2枚墓地へ送ることで、エクストラデッキから特殊召喚できる。

(1):このカードの特殊召喚に成功した時、デッキから「究極宝玉神」カード1枚を手札に加える。

(2):自分のターン終了時に発動する。フィールド上に存在するこのカードをエクストラデッキに戻す。

 

「よいしょ…よいしょ…」

何とか落ち着いた伊織はゆっくりと前進する。

思うように進めない分、注意深く周囲を見渡しながら。

「あ…あった…!」

はしごを上った先に配置されているペンデュラムモンスター。

体は重いが、ジェイクとの差を縮めるにはそのカードを取らなければならない。

「よいしょ、よいしょ…」

重力のせいで、上るための体力がいつもの数倍になる。

枷が片足だけでなく、両腕や首にもついているかのようだ。

 

「はあはあ…ダンジョンデュエル、デンジャラスだぜ…」

疲れ果てたジェイクが砂場で穴を掘り、隠されていた宝箱を手に取る。

中身はペンデュラムモンスターである《マンドラゴン》だ。

「グッド!これでゴールへ…」

 

「お!ジェイクも伊織ちゃんもペンデュラムモンスターをゲットできたみたいだな」

「だな。だがゴールまでの距離も走るスピードもお前の相棒の方が有利だな」

「そりゃあそうさ。宝玉獣たちの攻撃でいっぱいダメージを与えたんだしな」

このままでは翔太たちの敗北が目に見えている。

できることとしたら、ハンスに大ダメージを与え、ペナルティを負わせるしかない。

それも1ショットキルレベルのダメージを。

「俺のターン!!」

 

翔太

手札8→9

 

(ヒヒヒ!分かってるよな?こういう状況で一番いいカードが何か…?)

また夢で聞こえた声が翔太の脳裏に響く。

「(黙れ…!今はお前の力を借りる気はない!!)俺はスケール2の《魔装槍士タダカツ》とスケール9の《魔装剣士ムネシゲ》でペンデュラムスケールをセッティング!これで俺はレベル3から8のモンスターを同時に召喚可能。来たれ、時の果てに眠りし英雄の魂。希望の道を照らし、勝鬨を上げろ!ペンデュラム召喚!!現れろ、俺のモンスターたち!!《魔装騎士ペイルライダー》!《魔装剣士ローラン》!《魔装軍師オリヴィエ》!《魔装郷士リョウマ》!」

《ショック・ドロー》によって大量に手札に加わったモンスターたちが出てくる。

その中には、青い長髪で腰に金でできた刀身と柄であるにも関わらず、《魔装剣士ローラン》の剣に負けずとも劣らない切れ味と硬さを持つ剣を差した水色の鎧の青年がいる。

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

魔装郷士リョウマ レベル4 攻撃1900

魔装軍師オリヴィエ レベル4 攻撃800(チューナー)

魔装剣士ローラン レベル5 攻撃1700

 

魔装軍師オリヴィエ

レベル4 攻撃800 守備800 チューナー 水属性 魔法使い族

「魔装軍師オリヴィエ」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

このカードをS素材とする場合、「魔装」モンスターのS召喚にしか使用できず、他のS素材モンスターはすべて「魔装」モンスターでなければならない。

(1):このカードの召喚に成功した時、自分のエクストラデッキに表向きで存在する「魔装剣士」モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを攻撃表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。

(2):この効果で特殊召喚されたモンスターが「魔装剣士ローラン」の場合、このカードは以下の効果から1つを選択して発動できる。

●このカードのレベルを1つ上げる。

●このカードのレベルを1つ下げる。

 

「《魔装郷士リョウマ》の効果発動!このカードを手札からペンデュラム召喚した時、俺の墓地に存在する魔装モンスター1体を手札に加える。俺は墓地から《魔装妖ビャッコ》を手札に加える」

「おっ!ここでお前の精霊登場ってことか??」

「そうだ。俺は手札から《魔装妖ビャッコ》を召喚」

「キュイーーーー!!」

フィールドにソリッドビジョンで現れるビャッコ。

危機的状況にもかかわらず、のんきにみたらし団子を食べている。

 

魔装妖ビャッコ レベル3 攻撃400

 

「一気に5体もモンスターを出した…やっぱりすごいぜ、ペンデュラム召喚!!」

「驚くのはまだ早いぞ。俺は更にレベル5の《ローラン》にレベル4の《オリヴィエ》をチューニング。勝利と支配をもたらす第2の騎士よ、終戦を告げるその矢で敗者を鎮めよ!シンクロ召喚!《魔装騎士ホワイトライダー》!!」

 

魔装騎士ホワイトライダー レベル9 攻撃3100

 

「おお…ご自慢の魔装騎士がもう1体!ワクワクするぜ!」

「更に俺は手札から魔法カード《黙示録の悪夢》を発動。俺のフィールド上に名前の異なる魔装騎士が2体以上存在するとき、相手フィールド上のカードをすべて破壊する!」

「何!?」

2体の魔装騎士が互いの武器をぶつけ合う。

すると上空に黒い大嵐が発生し、風と雷がハンスのフィールドを蹂躙しようとする。

「く…俺は《宝玉の守護者》のペンデュラム効果を発動!1ターンに1度、俺の究極宝玉神と宝玉獣をカード効果による破壊から守る!!」

《宝玉の守護者》が《究極宝玉神レインボー・ドラゴン》をかばい、落雷を受ける。

そして受けた落雷のエネルギーを剣に宿し、それを天に掲げる。

剣から放たれた七色の光は漆黒の嵐を一瞬のうちに消したものの、その時には2体の宝玉の名を持つペンデュラムモンスターの姿が無かった。

「破壊されたペンデュラムモンスターはエクストラデッキにいく。ありがとうな、俺の新しい友達」

エースの呼び水となるだけでなく、破壊から守ってくれた新たな友に礼を言いながら、そのカードをエクストラデッキに置く。

 

黙示録の悪夢

通常魔法カード

(1):自分フィールド上に元々のカード名が「魔装騎士ホワイトライダー」「魔装騎士レッドライダー」「魔装騎士ブラックライダー」「魔装騎士ペイルライダー」となるモンスターのうち2種類以上のモンスターが存在する場合にのみ発動できる。相手フィールド上のカードをすべて破壊する。

 

「さあ、これで《レインボー・ドラゴン》も宝玉獣も無傷だ!さあ、ここからどうする?もっとデュエルを楽しもうぜ!あいつらのためにもさ」

ハンスがダンジョン内における2人の姿が映ったソリッドビジョンを見る。

「ああ…そうだな」

ジェイクも伊織も2枚のペンデュラムモンスターを既に手に入れている。

しかし、ダメージペナルティのせいでお互いに既にボロボロでフラフラになりながら走っている状態だ。

距離で見ると、今はジェイクの方が有利だ。

そして、アクションカードを持っているのは伊織だけだ。

「2人ともアクションカードは持っていない…俺たちのことを信じてるみたいだな」

「伊織に関しては、ただ単に疲れているだけだと思うけどな。俺は手札から魔法カード《蘇生融合》を発動。俺の墓地に存在するレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚する。俺は墓地から《魔装竜ファーブニル》を召喚」

 

魔装竜ファーブニル レベル4 攻撃1900

 

「そして、俺の手札・フィールド上に存在するモンスターを素材に融合召喚を行う。俺が素材とするのは《ファーブニル》、《ビャッコ》、《リョウマ》だ。財宝を守る飛竜よ!可憐なる式神よ!大海を駆ける郷士よ!魔導の力によりて、今1つとならん。融合召喚!真紅の騎士、《魔装騎士レッドライダー》!!」

 

魔装騎士レッドライダー レベル8 攻撃3000

 

蘇生融合

永続魔法カード

「蘇生融合」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分の墓地に存在するレベル4以下のモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。その後、自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められたからこの効果で特殊召喚されたモンスターを含む融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

(2):このカードがフィールドから離れたとき、この効果で融合召喚されたモンスターは墓地へ送られる。この効果は無効化することはできない。

(3):このカードは墓地に存在する場合、カード名を「融合」として扱う。

 

(なんとここで翔太選手が3体目の魔装騎士を召喚したーーー!!)

しかし、3体の魔装騎士を召喚したとしても《究極宝玉神レインボー・ドラゴン》の攻撃力の方が上回っている。

更にそのモンスターはまだ効果すら見せていないことから、危険性は未知数だ。

とはいっても、このままでは先にゴールするのはジェイクになってしまう。

「バトルだ!俺は《魔装騎士レッドライダー》で《サファイア・ペガサス》を攻撃!」

《魔装騎士レッドライダー》の五芒星から力を受けた大剣が白き天馬を切り裂こうとする。

「《レッドライダー》は俺のターンにモンスターの特殊召喚に成功した場合、バトルフェイズ終了時まで攻撃力を1000ポイントアップさせることができる」

 

魔装騎士レッドライダー レベル8 攻撃3000→4000

 

「攻撃力4000!?」

「更にこいつは戦闘で相手モンスターを破壊した時、続けてもう1度だけ相手モンスターを攻撃できる。このまま《アンバー・マンモス》を破壊すれば、ダメージは2200と2300。2重のペナルティが発生する!これなら、今の伊織でも先にゴールできる」

《魔装騎士レッドライダー》の刃が《宝玉獣サファイア・ペガサス》を両断しようとしていた。

「…それはどうかな?」

「何?」

「俺は《レインボー・ドラゴン》の効果発動!俺のフィールド上に存在する宝玉獣をすべて墓地へ送ることで、1枚につき1000ポイント攻撃力がアップする!《サファイア・ペガサス》、《アンバー・マンモス》!!」

《宝玉獣サファイア・ペガサス》と《宝玉獣アンバー・マンモス》がそれぞれ身に着けている宝玉と同じ色の光を放ちながら姿を消す。

そして光は《究極宝玉神レインボー・ドラゴン》に宿り、その力を限界まで高めていく。

 

究極宝玉神レインボー・ドラゴン レベル10 攻撃4000→6000

 

「攻撃力6000!?《レッドライダー》、攻撃をやめろ」

翔太の命令を受けた《魔装騎士レッドライダー》は五芒星の光を消すと、元の位置へ戻っていく。

「これで俺のフィールドのモンスターは《レインボー・ドラゴン》だけ。けれど、お前のフィールドにはそれを上回る攻撃力を持つモンスターはいない」

ハンスの言うとおり、今の翔太のフィールド上に存在する最も攻撃力の高いモンスターは攻撃を中断した《魔装騎士レッドライダー》。

《魔装騎士ペイルライダー》の効果を使えば倒すことは可能だが、返ってくる3500のダメージによるペナルティで敗北は確実となる。

「《ペイルライダー》…」

翔太がエースの名を呼ぶと、そのモンスターは彼に顔を向け、静かにうなずいた。

「バトルだ!俺は《ペイルライダー》で《レインボー・ドラゴン》を攻撃!」

《魔装騎士ペイルライダー》が2本の光剣を取り出し、《究極宝玉神レインボー・ドラゴン》に向けて突撃する。

「迎え撃て!《レインボー・ドラゴン》!!」

《究極宝玉神レインボー・ドラゴン》の口から虹色のブレスが放たれるが、《魔装騎士ペイルライダー》の装甲はひび割れを起こしたものの崩壊には至らない。

「何!?」

「《魔装剣士ムネシゲ》は1ターンに1度、俺のモンスターゾーンに存在するペンデュラムモンスター1体を破壊から守る。そして、《ペイルライダー》は戦った相手モンスターをダメージステップ終了時に破壊する!」

「たとえ破壊されたとしても、反射ダメージ3500は…」

「ああ…そうだな。今の俺の手札には対策のためのカードはない。けどな、忘れるなよ?ダンジョンデュエルにはアクションカードがあるってことをな!」

「な…!?」

アクションカードという言葉にハンスがはっとする。

 

《魔装騎士ペイルライダー》の剣が《究極宝玉神レインボー・ドラゴン》に届く直前に、伊織がアクション魔法を発動する。

「アクション魔法《反射》!!自分に発生する戦闘ダメージを反射する!!」

 

「は…《反射》だって!?」

「ああ。これでダメージ3500は俺ではなく、お前が受ける!!」

ブレスをしのぎ切った《魔装騎士ペイルライダー》の光剣が《究極宝玉神レインボー・ドラゴン》を真っ二つに切り裂く。

それと同時に、戦闘で発生した嵐のようなエネルギーが刃となってハンスに襲い掛かる。

「うわあああああ!!!」

 

ハンス

ダメージ3500

 

反射

アクション魔法カード

(1):自分フィールド上のモンスターが相手モンスターと戦闘を行う時に発動できる。その戦闘で発生する戦闘ダメージは代わりに相手が受ける。

 

 

「ホワッツ!?一体なんだこのロープは!!?」

突然、四方八方から飛び出したロープがジェイクの体を縛り上げる。

「やった!!おおおおーーーーー!!」

ジェイクが動けなくなったのを見計らい、伊織がラストスパートをかける。

「いけ、伊織!!」

「よーし!私はスケール2の《フーコーの魔砲石》とスケール7の《閃光の騎士》でペンデュラムスケールをセッティング!!」

デュエルディスクが2枚のペンデュラムモンスターの存在を確認する。

(決まったーーーー!!準決勝戦第2試合を通過したのは秋山翔太選手と永瀬伊織選手だーーーーー!!)

デュエル終了と同時にソリッドビジョンが消え、4人は元の場所へ浮遊しながら移動する。

(浮遊…??レオコーポレーション、何に金をかけてるんだ?)

「いやぁー、面白かったよ。まさか《レインボー・ドラゴン》の攻撃力アップを逆手に取られるなんてな」

「へっへーん。翔太君、今回はこの伊織様に感謝しなさーい!」

「マグレだろ。今回の…!?」

急に翔太に襲う激しい頭痛。

「翔太君!?もしかして…」

「ああ…記憶の…鍵だ…!!」

頭痛とともに新たな光景がフラッシュバックする。

 

舞網市そっくりの町の中の公園。

そこで黒い短髪で色白な7歳くらいの年齢の少年がブランコに乗っている。

時間帯は昼なのか、多くの子供がそこで遊んでいる。

「おーい、迎えに来たぞーー!」

ブランコに乗る少年を同じ髪型で色黒な少年と黄色い髪の少女が迎えに来たところで翔太の視界が元の光景に戻っていく。

「はあ…はあ…はあ…」

「どうしたんだ?急に頭を抱えて…」

「なんでもねえ…」

なんでもないとは言うものの、先ほどハンスが見たあの翔太の苦しむ姿からはとても大丈夫という言葉が当てにならない。

だが、本人がそう言っているならと彼はこれ以上追及するのをやめた。

「そうだ!これから一緒に俺たちに部屋に来ないか!?精霊たちの紹介がしたいからな!!」

「精霊…??もしかして、ハンス君って精霊が見えるの!!?」

「ああ!こいつが俺の精霊だ!」

ハンスの背後にすべての宝玉獣が若干透明な状態で姿を現した。



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第27話 謎の影

「ルッビィーー♪」

「キュキュキュイー!」

翔太たち本選出場者が宿泊するホテルで、翔太たちが止まっている部屋より1つ上の階、そして西側の端にあるのがハンスたちの部屋だ。

その部屋で、《宝玉獣ルビー・カーバンクル》の精霊、ルビーとビャッコが楽しそうに遊んでいて、それを他の宝玉獣の精霊たちが見守っている。

「ヒ…ヒィィ…こんなに精霊がいっぱい…」

「もー、恥ずかしがり屋さんだなー、セラフィムちゃんは。もっと打ち解けないと、仲良くなれないぞー?」

「そうは言われましても…は、恥ずかしい…」

《E・HEROセラフィム》の精霊、セラフィムが経験したことのない大量の精霊たちのいる空間に動揺し、顔を真っ赤にしながら伊織の後ろに隠れている。

ちなみに、翔太がハンスとデュエルをしているときは近くにある自然公園の木陰でぐっすり眠っていたようだ。

ビャッコは今までハンカチに化けて、身動きが取れなかった分、ここでストレスを発散している。

「それにしても、うれしいぜ。俺以外にも精霊が見えるデュエリストがいるっていうのは」

「ふん…お前と違って、俺は全く懐かれていないけどな」

「キュイー!」

「もー、ビャッコちゃん遊んでほしいの?」

ルビーと共にビャッコが伊織の元へ向かい、2匹仲良く高い高いしてもらっている。

「ま、俺とあいつらは長い間ずっと一緒にいるんだ。今は俺の家族同然さ。もちろん、こいつらも!」

先程のデュエルで召喚された2体の宝玉騎兵、そして2体の宝玉ペンデュラムモンスターがハンスの背後に現れ、翔太に向けてお辞儀をする。

「にしても、不思議だよなぁ。いつまでも実体化している精霊って」

「…?精霊はいつでも実体化できるんじゃないのか?」

「それは強い力を持っている精霊だけさ。大抵の精霊はそもそも実体化できないし、しかも実体化したとしても長い間その状態を保つことができないのさ」

「なるほどな…俺にはこいつがそんなに強力な力があるとは思えないけどな」

2匹の精霊が高い高いされた後、みたらしだんごを食べ始める。

またセレフィムもビャッコからみたらし団子をもらったのか、伊織の背後でこそこそ食べる。

「それで、なんで俺を呼んだんだ?同じ精霊が見えるからという理由だけか?」

怪しそうにハンスを見つめる。

ビークルデュエルで少しだけ見たことがあるものの、本格的に知り合ったのはあのダンジョンデュエルの時だ。

そんな、満席の喫茶店で仕方なく合席した程度の関係の人間をこれほどあっさりと自分たちの部屋に入れるとは翔太には到底思えない。

更に鍵であった《究極宝玉神レインボー・ドラゴン》。

何かあると疑わざるを得ない。

「ああ、それだけ」

間を置くことなく、ハンスがそう述べる。

「おいおい、ハンスはそこまでクレバーな奴じゃないぞ?正真正銘のデュエルバカなんだぞ?」

「何度も顔を合わせたことのない奴をそんなに信用できると思うか?」

「もーもー翔太君!そんなこといわないの。ほらほら、一緒にビャッコちゃんのみたらし団子を食べよーよ!」

「キュイー!」

ビャッコがハンスやジェイク、他の精霊たちに串つきみたらし団子を配っている。

伊織に限っては4本も…。

「伊織、お前なぁ…」

「はい、翔太君!」

強引にみたらし団子を渡される。

(はぁ…にしても、遊矢達は今どうしているんだ?)

丁度、設置されている窓の方角は舞網市のそれと同じだ。

翔太はそこから外を見つつ、ため息をつきながらみたらし団子を口にした。

(ビャッコが用意したものだからか…変な味じゃないな。…!?)

急に左掌の痣から痛みが発生する。

その痛みと共に、翔太の脳裏にビジョンが浮かび上がる。

駅付近の路地裏に突然発生した緑色の渦、そこから出てくる青い制服で赤いレンズと額部分の大きな宝石と3本の刃を左右に着けたかのような形状が特徴の仮面をつけた男…。

「(こいつは…)悪い、部屋に忘れ物をしてきた」

「えー?朝出る時に何度も確認したじゃんかー!」

「悪い。すぐに戻るから、お前らは何本でもみたらし団子を食ってろ」

部屋を飛び出した翔太は大急ぎで階段を下りていく。

「翔太君…そんなに急がなくてもいいのに。ってあれ?ビャッコちゃんは?」

出ていく翔太を見ていた伊織が目線を部屋の中に戻すが、いつの間にかビャッコがいなくなっていることに気付く。

「セラフィム!ビャッコちゃんを見なかった?」

「ビャッコさん…ですか??さあ…??それよりも伊織さん、私早くカードの中に…」

「俺が探すよ」

みたらし団子を食べ終え、串をゴミ箱に捨てたハンスが《宝玉獣コバルト・イーグル》を見る。

「コバルト、頼むよ」

「任せな、ハンス」

コバルトが窓から飛び出していく。

「こいつは一番目のいい精霊なんだ、すぐに見つかるさ」

「すっごーい!ありがとう、ハンス君!」

「にしても、あいつはなんで急いで部屋を出たんだ…?」

翔太のとった行動を疑問に思いながら、蚊帳の外となっていたジェイクは外を見る。

 

路地裏では、突然1人の男性がゴミ袋の山の中へ突き飛ばされる。

「な、なんだよお前…俺が何をしたって言うんだよぉ!?」

「黙れ!悪く思うなよ…?」

ニヤリと笑うと、制服姿の男は左腕に装備しているデュエルディスクを光らせる。

すると、男の体がデュエルディスクから放たれる紫色の光と同じ光を放ち始めた。

「な、なんだよこれ!?一体、何が…!?うわああああ!!!!」

光が消えると同時に、男は来ていた服を残して消滅してしまった。

「ふん…おとなしく俺に協力すれば、カードにならずに済んだものを。ったく、補給班はちゃんとこの世界の服を調達しろよな」

手際の悪い補給班に悪態をつきながら、カードを見る。

カードには先ほど消滅した男が恐怖に染まった表情でイラストとなっている。

「さあて、あとは…」

「おい」

「なんだ…!!?」

振り返ろうとした瞬間、制服の男の頬に拳がめり込む。

殴られた彼は先ほど自分が消滅させた男と同じようにゴミの山へと飛んでいく。

「き…貴様は…」

彼の目に映ったのは、左手の痣の部分が青白く光っている状態の翔太だ。

「お前…アカデミアの奴か?」

「貴様、なぜそれを?(プロフェッサーの話によれば、奴が我々の存在を知っている可能性があるようだが…その手は何だ?)」

彼が気にしているのは翔太の痣だ。

痣について、彼は何の情報も持っていない。

「悪いが、この町にお前らが欲しがるようなものはないと思うぞ。さっさと元来たところへ帰るんだな」

「いや…これは好都合だ。お前を餌にすれば容易く任務を終えることができる」

にやりと笑うと、制服の男がデュエルディスクを起動させる。

それを見た翔太もデュエルディスクを起動する。

「確か、お前がさっき使ったのは…エクシーズ次元の人間にやったのと同じか?」

「エクシーズ次元?大したことなかったぜ、俺1人で10人くらい仕留めることができた。雑魚ばっかりで…」

「黙ってろ、お前はここでぶちのめす」

「ふん…」

ぶちのめすという言葉を鼻で笑いながら、カードをドローする。

「「デュエル!!」」

 

制服の男

手札5

ライフ4000

 

翔太

手札5

ライフ4000

 

「俺の先攻、俺は手札から《古代の機械探究者》を召喚」

両目が望遠鏡で、背中や肢体の各関節部分にアンテナがついている人型の機械が現れる。

装甲の色が緑が基調としていて、ところどころに茶色い部分がある。

また、腰の左右には灰色で大きな歯車が存在する。

 

古代の機械探究者 レベル4 攻撃1400

 

「自分フィールド上にモンスターが存在しない場合にこのカードの召喚に成功した時、デッキからアンティーク・ギアモンスターを1体手札に加える。俺はデッキから《古代の機械巨人》を手札に加える」

彼が《古代の機械巨人》を手にしたのと同時に、《古代の機械探究者》の歯車が猛スピードで回転を始める。

「何!?」

「更にこの効果を発動した時に俺のフィールドに魔法・罠カードが存在しない場合、手札に加えたモンスターをそのまま召喚できる!その時、俺はモンスターをリリースする必要はない!現れろ、《古代の機械巨人》!!」

男のフィールドに《古代の機械探究者》の何倍もの大きさを持つ茶色い装甲で、体の各所に歯車をつけた人型機械が現れる。

その機械は翔太の姿を認識すると同時に頭部のカメラを赤く光らせた。

 

古代の機械巨人 レベル8 攻撃3000

 

古代の機械探究者(アンティーク・ギアクエスター)

レベル4 攻撃1400 守備200 効果 地属性 機械族

「古代の機械探究者」の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードの召喚に成功した時、自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、デッキから「古代「アンティーク・ギア」モンスター1体を選んで手札に加える。

(2):(1)の効果を発動した時、自分フィールド上に魔法・罠カードが存在しない場合にのみ発動できる。その効果で手札に加えたモンスターを召喚する。その時、モンスターをリリースする必要はない。

 

「1ターン目から《古代の機械巨人》か…!?」

「そして俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

制服の男

手札5→4

ライフ4000

場 古代の機械巨人 レベル8 攻撃3000

  古代の機械探究者 レベル4 攻撃1400

  伏せカード1

 

翔太

手札5

ライフ4000

場 なし

 

1ターン目から攻撃力3000で、貫通効果を持つモンスター。

しかし、この程度であればいくらでも巻き返すことが可能だ。

「俺のターン!」

 

翔太

手札5→6

 

「俺は手札から魔法カード《おろかな埋葬》を発動。デッキからモンスター1体を墓地へ送る」

 

デッキから墓地へ送られたカード

・魔装騎士ペイルライダー

 

「何…!?自らエースモンスターを墓地へ送っただと!?」

「相手フィールド上にのみモンスターが存在するとき、このカードはリリースなしで召喚できる。《魔装近衛エモンフ》を召喚」

 

魔装近衛エモンフ レベル5 攻撃1000

 

「このカードをエクシーズ召喚とするとき、他の素材は手札の魔装モンスターでなければならない。更に俺は手札から魔法カード《魔装の杯―ナルタモンガ》を発動」

5本指の竜の手を模した金が基調の杯が現れる。

爪の部分はルビーで、うろこは銀になっている。

「このカードは俺のフィールド上に存在する魔装モンスター1体のレベルまたはランク以下の数値のレベルを持つモンスター1体をデッキから表側守備表示で特殊召喚できる。俺はデッキから《魔装鍛冶クルダレゴン》を特殊召喚」

杯から飛び出した火の玉が巨大化し、その姿が炎を宿した鉄製の天使の翼を持つ男に変化する。

白いトーガを身にまとい、鋼でできた右腕には五芒星が柄に刻まれた鍛冶用のハンマーが直接取り付けられている。

 

魔装鍛冶クルダレゴン レベル2 守備500

 

「このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、手札・フィールド上に存在する魔装モンスター1体のレベルをターン終了時まで1または2上昇させることができる。俺は《エモンフ》のレベルを2つ上昇させる」

《魔装鍛冶クルダレゴン》が五芒星が光るハンマーで《魔装近衛エモンフ》の槍を鍛える。

鍛え終わると同時に、しかるべき身分の物を守護する兵士のレベルが変動する。

 

魔装近衛エモンフ レベル5→7 攻撃1000

 

魔装の杯―ナルタモンガ

通常魔法カード

「魔装の杯―ナルタモンガ」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に存在する「魔装」モンスター1体を対象に発動できる。デッキからそのモンスターのレベルまたはランクの数値以下のレベルを持つ「魔装」モンスター1体を表側守備表示で特殊召喚する。

(2):このカードを発動した時、自分の墓地に存在する「魔装」モンスターが3種類以上の場合、次の自分のターンに自分は通常のドローに加えてデッキからカードをもう1枚だけドローする。

 

「《エモンフ》のレベルを7に変えた…まさか!!」

「俺はレベル7の《エモンフ》と手札の《魔装鳥フェニックス》でオーバーレイ!現れろ、大地より生まれし神討ちの竜、《魔装竜テュポーン》!」

 

魔装竜テュポーン ランク7 攻撃2000

 

「まさかランク7のエクシーズモンスターを出すとは…だが、攻撃力はたかが2000!エクシーズが我らに勝てる道理はない!!」

バカにされていることが分かったのか、《魔装竜テュポーン》が怒りを込めて咆哮する。

「俺は《テュポーン》の効果を発動。1ターンに1度、オーバーレイユニット1つと俺のフィールド上に存在するほかのモンスター1体を代価にして、俺の墓地から魔装モンスター1体を特殊召喚する」

《魔装竜テュポーン》がオーバーレイユニットを飲み込むと同時に、《魔装鍛冶クルダレゴン》が消滅する。

そしてビルの屋上から《魔装騎士ペイルライダー》が飛び降り、制服の男の前に立つ。

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・魔装鳥フェニックス

 

「何…《おろかな埋葬》はそのために…!?」

「仮にも融合召喚のスペシャリストだろう?墓地融合も分からねえのか、低レベルなんだな」

少し笑いそうになりながら、そう述べると、仮面で隠れた顔が赤くなる。

「更に《魔装鍛冶クルダレゴン》はペンデュラムモンスター。フィールドから墓地へ行く場合、代わりにエクストラデッキへ行く。そして《テュポーン》は攻撃力2000アップの装備カードとして魔装騎士に装備できる」

《魔装竜テュポーン》の肉体が変化した魔力の嵐を五芒星で吸収した《魔装騎士ペイルライダー》の力が鎧の色が緑色に変化すると同時に爆発的に増大する。

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500→4500

 

「攻撃力4500!!?」

「更に俺は手札から魔法カード《ナイト・ショット》を発動。相手フィールド上にセットされている魔法・罠カード1枚を破壊する。このカードの発動に対して、お前は対象となったカードを発動できない」

周囲のビルのどこかから銃声が鳴る。

その後1秒も経ずに弾丸が制服の男の伏せカードを貫き、消滅させる。

 

破壊された伏せカード

・攻撃の無敵化

 

「あ…ああ…」

「そして俺は手札から魔法カード《次元突破》を発動。このターン、俺のフィールド上に存在する魔装騎士の攻撃力をターン終了時まで倍にする」

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃4500→9000

 

次元突破

速攻魔法カード

(1):このカードの発動時、自分フィールド上に存在する「魔装騎士」モンスターの攻撃力はターン終了時まで倍になる。

 

魔装鍛冶クルダレゴン

レベル2 攻撃0 守備500 炎属性 天使族

【Pスケール:青8/赤8】

(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。

(2):1ターンに1度、自分が「魔装」モンスターのP召喚に成功した時、自分の墓地に存在する「魔装」モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを手札に戻す。

【モンスター効果】

(1):このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、自分の手札・フィールド上に存在する「魔装」モンスター1体を対象に、以下の効果から1つを選択して発動できる。

●選択したモンスターのレベルをターン終了時まで1つ上げる。

●選択したモンスターのレベルをターン終了時まで2つ上げる。

 

一撃必殺の攻撃力を手にした《魔装騎士ペイルライダー》を見て、制服の男が真っ白になる。

「バ…バカな…!?融合が…エクシーズに敗れるだと…!?」

「訳の分からないことをごちゃごちゃいうな、華々しく負けてろ。《ペイルライダー》で《古代の機械巨人》を攻撃。クアトロ・デスブレイク」

《魔装騎士ペイルライダー》を排除しようと、《古代の機械巨人》が拳を振るう。

古代に作られた旧型機械とは思えないほどの馬力とスピードがあるが、《魔装騎士ペイルライダー》は高く跳躍して回避する。

そしてすぐに召喚された電気を宿すメリケンサックを装着し、それで《古代の機械巨人》の胸を大きくへこむほどの力で殴る。

殴られたことで内部の精密機器が粉砕され、更に膨大な電気を流し込まれてショートしたためか、《古代の機械巨人》が爆発することなく機能停止した。

 

制服の男

ライフ4000→0

 

「ワ…1ショットキル…」

後攻1ターン目で、たった1度の攻撃によって敗北したという現実に頭が真っ白になる。

そんな中、急に小動物が懐に飛び込み、男のカードを取った。

「キュイー!」

「な…!?」

「ビャッコ、ついてきていたのか?」

「キュイ!」

うなずきながら、翔太にカードを差し出す。

カードを手に取ると同時に、翔太の痣が光を放ち、その光とカードが反応する。

「何…!?」

痣と同じ光を放ちながら、カードが宙に浮く。

そして、しばらくするとカードが爆発した。

「うわあああ!!」

「キュイ!!」

「こいつは…」

目の前には封印されていた男が気絶した状態で倒れている。

念のために脈と呼吸を確認する。

「少し時間がたてば目を覚ますか。あとは…」

「ヒ…ヒィィィ!!」

ゆっくりと近づく翔太に制服の男が悲鳴を上げる。

「俺を使えば任務が容易く済むとか言っていたよな?何をしようとしていた?」

「い…言える…かぁ!!」

急に懐から青と白のカプセル剤を取り出し、自らの口に放り込む。

「お前…一体何を!!?」

「任務失敗…お許しを…」

それだけ言うと、急に目を大きく開き、そのまま倒れた。

口からは黒い煙が出ている。

「自ら口を封じたか…くそっ!!」

こうなった以上、この男から情報を聞き出すことができない。

仕方なく、翔太は男の制服とデュエルディスク、そして仮面をはぎ取る。

「別にいいだろ?もうお前には必要ないものばかりだ」

確認のために言っておく、これは主人公の行いだ。

手にした物をビャッコのカバンの中に入れる。

遠くからパトカーのサイレンが聞こえてくる。

「あとは警察に任せるか。いくぞ、ビャッコ」

「キュイ!」

警察がここに来る前に翔太はホテルへ走って行く。

数分経って、翔太たちはホテル付近の広い道につく。

ちなみにビャッコは猫の姿に変化している。

(今回のことで分かったとすれば…この痣はあいつの言うとおり、力があるってことだな。まさかカード化した人間を解放する力だとは思わなかったが…)

「翔太くーーん!」

「…ちっ、追いかけてきたのかよ」

「キュイーーー!」

目の前で伊織が走って近づいてくる。

ビャッコは伊織を見て、嬉しそうにそちらの方向へ走って行く。

「翔太君、どうしたの?ホテルの外に出ちゃって…」

「買い物をしてただけだ。いろいろ足りないものを思い出してな」

「ふーーん…あ、それから翔太君。これ!」

いろいろ疑問が尽きないが、まあいいかと自己完結した伊織が懐から手書きの手紙を翔太に見せる。

「こいつは…?」

「うん、明日舞網市へ今回の準々決勝に参加した組と零児君が赤馬さんが選んだデュエリスト全員を連れて行くって」

「舞網市だと…??ちょっと待てよ、大会はどうなるんだ?」

「準決勝と決勝はそのまま舞網市で行うって」

(なんだ…?急な連絡だな。こういう場合は大会前に伝えられるはずだ。赤馬…一体何を考えている?)

 

一方、舞網市では…。

「ハア…ハア…ハア…!!」

路地裏で息を切らせながら北斗が走っている。

体は傷でいっぱいになっていて、デュエルディスクもなぜか破損している。

「そこまでだ!エクシーズの残党!!」

「あ…あああ…」

曲がった先は行き止まりで、来た道は黒いマントで身を包んだ少女に封鎖されている。

「さあ…お前を封印して、プロフェッサーに私の価値を…」

「や、やめろ!!やめてくれーーーー!!」

足がすくみ、その場に座ってしまう。

震えが止まらず、逃げることも、無駄な抵抗をすることもできない。

カードが光を放とうする。

このまま北斗はカードに封印されるという結末を迎えようとしていたが…。

「キャ…!!!」

急に激しい風が吹き、少女の手からカードが離れていく。

それと同時に、少女を包んでいたマントも飛ばされていった。

「な…!!?」

少女の姿を見た北斗は絶句する。

赤い制服と下にスパッツをつけたミニスカートを着ていて、青い宝石が付いたブレスレットを腕につけた黒咲そっくりの青い髪の少女。

少女の顔は柚子にそっくりで、髪の後ろには黄色いリボンがついている。

「なんだ…!?今の風は…??」

「駄目だよ、こんなことをしたら」

「…!?」

少女の視線が北斗の背後にある建物の屋上へ向く。

そこには翔太がカードショップで出会った少年がいる。

違う点があるとすれば、サングラスと帽子をつけておらず、緑色の学ランを身に着けているところだ。

「降りてこい!!私の邪魔をしたということがどういう意味か分かっているだろう!!!?」

「分かってるよ、だから邪魔をするんだ。このばかげたことをね」

「何!?」

少年が屋上から飛び降りる。

そして、急に足元に発生させた緑色の旋風で落下スピードを落とし、無傷で北斗の前に着地した。

「そ、その眼は…!!?」

少女が少年を間近で見て驚愕する。

ガスタの印が刻まれた緑色の両目…。

そして羽を模したデュエルディスク。

「貴様は…剣崎侑斗!!我らの大義の邪魔をする!!」

「ふぅ…大義というのは便利な言葉だけど、行き過ぎるとただのエゴだよ」

デュエルディスクを展開し、少女をじっと見る。

(なんだ…?剣崎侑斗?なんで僕を助けたんだ…??」

(何?なんだこれは…?)

侑斗から放たれるプレッシャーを受け、少女は自らの体に異変が起こるのを感じる。

(う、嘘だ…!?彼を見ていると…手が…手の震えが止まらない!!恐れているのか…私は彼を!?)

「どうしたの?ちょっと強い相手が前だとおびえてしまうの?」

「ふ…ふざけるな!!私は…私はどんな相手でも恐れはしない!!」

必死に否定するが、声にも震えがあり、手足はいまだに震え続けている。

(ユウ…)

(大丈夫、彼女に非道なことをさせたくないだけだから…)

精霊の姿になっているウィンダとテレパシーで会話する。

「デュエルをしよう…セレナちゃん」



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オリカ紹介Ⅱ

第14話から第27話までのオリカと非公式オリカ(効果調整あり)を紹介。


ヴェノム・フォレスト

永続魔法カード

「ヴェノム・フォレスト」はフィールド上に1枚しか存在できない。

(1):このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、自分は「ヴェノム・スワンプ」を発動できず、このカードの発動に成功した時、フィールド上に存在する「ヴェノム・スワンプ」は破壊される。

(2):自分フィールド上に爬虫類族モンスターが召喚・反転召喚・特殊召喚された時、フィールド上に表側表示で存在する爬虫類族モンスター以外のモンスターにヴェノムカウンターを1つ置く。ヴェノムカウンター1つにつき、攻撃力は500ポイントダウンする。

(3):攻撃力が0のモンスターは破壊される。

 

ワーム・グール

レベル5 攻撃1500 守備1100 効果 光属性 爬虫類族

「ワーム・グール」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):墓地に存在するこのカードを除外し、自分の墓地に存在する「ワーム・グール」以外の「ワーム」モンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターを特殊召喚する。

 

インフェルニティ・ブラスト

通常魔法カード

このカードは自分の手札がこのカードの時にのみ発動できる。

(1):自分の墓地に存在するレベル4以下の「インフェルニティ」モンスター2体を選択し、自分フィールド上に特殊召喚する。その後、自分フィールド上に存在するSモンスター1体を破壊する。この効果で特殊召喚されたモンスターの攻撃力は500ポイントアップする。

 

インフェルニティ・リバース

通常魔法カード

「インフェルニティ・リバース」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に表側表示で存在する攻撃力1600以上の「インフェルニティ」モンスター1体をリリースすることで発動できる。自分の墓地からリリースしたモンスターと異なる名前を持つ「インフェルニティ」モンスターまたは「煉獄龍オーガ・ドラグーン」1体を特殊召喚する。

 

砂嵐

アクション魔法カード

(1):相手のバトルフェイズ時、相手がアクションカードを発動した時に発動できる。その発動を無効にし、破壊する。

 

失踪

アクション罠カード

(1):自分フィールド上に存在するモンスター1体を破壊する。

 

鷹の目

アクション魔法カード

(1):自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。選択したカードは、このターンに1度だけカードの効果では破壊されない。

 

影霊衣の水盾(ネクロスのアクアシールド)

通常罠カード

「影霊衣の水盾」は1ターンに1度しか発動できない。

(1)自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、相手の直接攻撃宣言時に発動できる。墓地から「影霊衣」モンスター1体を召喚条件を無視して特殊召喚し、デッキからカードを1枚ドローする。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果はターン終了時まで無効化される。

 

六武流剣術―真空斬

罠カード

(1):自分フィールド上に存在する「六武衆」モンスターが攻撃対象となった時に発動できる。その攻撃を無効にする。

(2):自分フィールド上に存在する「六武衆」モンスターが攻撃対象となった時、自分フィールド上に存在する武士道カウンターを4つ取り除くことで手札から発動できる。その攻撃を無効にし、攻撃モンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。

 

そよ風

アクション魔法カード

(1):自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。そのモンスターの攻撃力・守備力を300アップさせる。

 

追い風

アクション魔法カード

(1):自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。そのモンスターの攻撃力をターン終了時まで800アップさせる。

 

回避(アニメオリカ)

アクション魔法カード

(1):相手モンスター1体の攻撃を無効にする。

 

スカー・シャーク

レベル4 攻撃1200 守備900 効果 水属性 魚族

「スカー・シャーク」は1ターンに1度しか特殊召喚できない。

(1):自分フィールド上に水属性エクシーズモンスターが2体以上存在するとき、このカードは手札から特殊召喚することができる。

(2):このカードの特殊召喚に成功した時、自分の墓地から魚族・水属性・レベル4モンスター1体を選択し特殊召喚することができる。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。

 

ゴッド・ボイス

通常魔法カード

「ゴッド・ボイス」は1ターンに1度しか発動できない。

このカードは自分フィールド上に「バハムート・シャーク」が表側表示で存在する場合にのみ発動できる。

(1):自分の手札・フィールド上に存在する水属性モンスター2体を対象として以下の効果から1つを選択して発動できる。

●選択したモンスターのレベルを1つ上げる。

●選択したモンスターのレベルを1つ下げる。

 

鎖弾

アクション魔法カード

(1):相手フィールド上に存在するモンスター1体を選択して発動できる。次の相手のターン終了時まで選択したモンスターの攻撃力・守備力を1000ダウンさせる。

 

影霊衣の氷鏡

儀式魔法カード

「影霊衣」儀式モンスターの降臨に必要。

「影霊衣の氷鏡」の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):手札に存在する「影霊衣」儀式モンスター1体を相手に見せることで発動できる。自分のエクストラデッキからレベルの合計が公開したカードのレベル以上になるようにモンスターをリリースすることで、そのモンスターを手札から儀式召喚する。

(2):自分の手札に存在する儀式魔法カード1枚を墓地へ送ることで発動できる。墓地に存在するこのカード1枚を手札に加える。

 

大海の王者フィル

ランク5 攻撃1850 守備1600 エクシーズ 水属性 水族

水属性レベル5モンスター×2

このカードはX召喚でしか特殊召喚できない。

「大海の王者フィル」の(2)(3)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードは自分フィールド上に存在する水属性Xモンスター1体に付き500ポイントアップする。

(2):相手のターン終了時に自分の墓地からこのターンに破壊された水属性Xモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターを特殊召喚する。

(3):X素材を持つこのカードが破壊され墓地へ送られたターン終了時、その数だけ自分の墓地に存在する水属性・Xモンスターを特殊召喚する。

 

臼砲

アクション魔法カード

(1):相手フィールド上のモンスター1体の効果を次の自分のターンのエンドフェイズ時まで無効にする。

 

散弾

アクション魔法カード

(1):相手フィールド上のモンスター1体はこのターン戦闘を行う時、ダメージステップ時のみ攻撃力が600ポイントダウンする。

 

アトランティス・シャーク

ランク7 攻撃3800 守備2000 エクシーズ 水属性 魚族

このカードは下記の方法でのみ特殊召喚できる。

●自分フィールド上に表側表示で存在するX素材のない水属性Xモンスターを2体以上、ランクの合計がこのカードと同じになるように選択することで、それらをX素材とすることでX召喚できる。

(1):このカードは1度のバトルフェイズにこのカードに重ねられているX素材の数だけ攻撃できる。

(2):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊したターンの終了時に発動できる。自分の墓地に存在する水属性Xモンスター1体をこのカードのX素材にすることができる。

(3):このカードは自分フィールド上に存在するカードの効果を受けない。

(4):自分のターン終了ごとに自分は手札をすべて墓地へ送らなければならない。その効果で手札を墓地へ送ることができなかった場合、次の自分のターンこのカードは攻撃できない。

 

魔装間諜ゾルゲ

レベル3 攻撃900 守備900 チューナー 闇属性 魔法使い族

「魔装間諜ゾルゲ」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードが相手モンスターの攻撃によって破壊され墓地へ送られた時、相手の手札をランダムに1枚選択し、そのカードを互いに確認する。その後、確認したカードの種類によって以下の効果を発動する。

●モンスターカード:このターン、相手モンスターは攻撃できない。

●魔法カード:次の自分のターンのスタンバイフェイズ時にに自分の墓地、もしくはゲームから除外されている「魔装」ペンデュラムモンスター1体を表向きで自分のエクストラデッキに置く。

●罠カード:確認したカードを墓地へ送る。

 

エクストラ・フュージョン(漫画オリカ:調整)

通常魔法カード

「エクストラ・フュージョン」は1ターンに1度しか発動できず、発動したターン、自分は融合召喚以外の方法でモンスターを召喚・特殊召喚することができない。

(1):自分のエクストラデッキから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体を融合召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

 

ポイズン・ウェブ

永続罠カード

「ポイズン・ウェブ」の(1)の効果はメインフェイズ1にのみ発動できる。

(1):1ターンに1度、フィールド上に守備表示で存在する「スパイダー」モンスター以外の守備表示1体を破壊する。

 

煉獄の契約(漫画オリカ・調整)

通常魔法カード

「煉獄の契約」は自分の手札が3枚以上で、メインフェイズ1の時にのみ発動できる。

(1):自分の手札をすべて墓地へ送り、墓地からSモンスター以外の「インフェルニティ」モンスター1体を選択して自分フィールド上に特殊召喚する。

 

日光浴

アクション魔法カード

(1):自分が効果でダメージを受けたときに発動できる。その時受けたダメージの倍の数値の攻撃力を持つモンスター1体を手札から特殊召喚する。

 

インフェルニティ・デス

レベル5 攻撃2200 守備1000 シンクロ 闇属性 悪魔族

「インフェルニティ・デス」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分の手札が0枚の時、相手フィールド上に存在するこのカードよりも攻撃力が低いモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターを墓地へ送り、相手に1000ダメージを与える。この効果を発動したターン、このカードは攻撃できない。

 

クラッシュ・スパイダー

レベル5 攻撃2000 守備2000 効果 地属性 昆虫族

「クラッシュ・スパイダー」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):相手フィールド上に攻撃表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターの表示形式を表側守備表示に変更する。この効果は相手ターンでも発動できる。

(2):フィールド上に守備表示で存在するモンスターが破壊された時、相手に400ダメージを与える。

 

ラフレシアの補食

アクション魔法カード

(1):相手フィールド上に表側表示で存在する魔法・罠カードを1枚選択し、破壊する。

 

カービン・オーガ

レベル1 攻撃400 守備400 効果 炎属性 悪魔族

「カービン・オーガ」の(1)の効果を発動したターン、自分はカードをセットすることができない。

(1):手札に存在するこのカードを墓地へ送り、自分フィールド上に存在する「オーガ」モンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターの攻撃力の半分の数値分のダメージを相手に与える。

 

ディメンジョン・スナイプ

通常魔法カード

「ディメンジョン・スナイプ」は自分のターンのバトルフェイズ中に攻撃宣言した回数が1回以下の場合、そのターンのメインフェイズ2に1度だけ発動できる。

(1):相手フィールド上に攻撃表示で存在するモンスター1体をゲームから除外する。

 

平蜘蛛の宝札

通常魔法カード

「平蜘蛛の宝札」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):相手フィールド上の攻撃力3000以上のモンスターが存在し、私のフィールドに表側守備表示の昆虫族モンスターが3体以上存在するとき、デッキからカードを2枚ドローする。

 

マシンピストル・オーガ

レベル6 攻撃2200 守備1800 効果 炎属性 悪魔族

このカードは通常召喚できない。

このカードは自分フィールド上に表側表示で存在する「ガトリング・オーガ」1体をリリースすることでのみ手札から特殊召喚できる。

(1):手札を1枚墓地へ送ることで発動できる。このカードの攻撃力は次の相手のターン終了時まで攻撃力が800アップする。この効果は1ターンに2度まで使用できる。

(2):このカードが戦闘で破壊され墓地へ送られた時、墓地から「ガトリング・オーガ」1体を特殊召喚できる。

 

毒蜘蛛の晩餐

通常罠カード

(1):自分フィールド上に表側表示で存在する昆虫族モンスター1体と相手フィールド上に存在するカード2枚を破壊する。

 

インフェルニティ・アンカー

レベル5 攻撃1800 守備2300 効果 闇属性 悪魔族

(1):このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから「インフェルニティ」モンスター1枚を選択して手札に加える。

 

挑発

アクション魔法カード

(1):バトルフェイズ中にのみ発動できる。お互いのフィールドに表側守備表示で存在するモンスターをすべて攻撃表示に変更する。

 

煉獄騎士インフェルニティ・ボーンナイト

レベル7 攻撃2100 守備2000 シンクロ 闇属性 アンデッド族

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

「煉獄騎士インフェルニティ・ボーンナイト」は1ターンに1度しか特殊召喚できない。

(1):このカードの特殊召喚に成功した時、手札が0枚の場合、このカードの攻撃力を自分フィールド上に存在するモンスター1体につき500アップする。

(2):このカードが攻撃を行ったダメージステップ終了時、もしくは攻撃が無効にされた時、手札が0枚の場合に発動できる。続けてもう1度だけ攻撃できる。この効果を発動したターンのバトルフェイズ終了時にこのカードは破壊される。

 

ブレイク・スパイダー

レベル1 攻撃0 守備0 効果 闇属性 昆虫族

「ブレイク・スパイダー」の(1)の効果は相手ターンでも発動できる。

(1):このカードをリリースし、相手フィールド上に存在するモンスター2体を選択して発動できる。選択したモンスターの表示形式を変更する。

 

土蜘蛛王ルブロン

レベル10 攻撃2000 守備2000 効果 地属性 昆虫族

このカードは通常召喚できない。

このカードは自分フィールド上に表側守備表示で存在する昆虫族モンスターを3体リリースすることのみ手札から特殊召喚できる。

(1):1ターンに1度、相手フィールド上に表側守備表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。選択したカードを攻撃力1000アップの装備カード扱いにしてこのカードに装備する。

(2):このカードが攻撃対象となった時、(1)の効果で装備カードとなったカード1枚を墓地へ送ることで発動できる。戦闘を無効にし、バトルフェイズを終了させる。

(3):(1)の効果で装備カードとなっているカードが2枚以上存在する場合、このカードは効果では破壊されない。

 

E・HEROスノーピクシー

レベル3 攻撃200 守備200 効果 水属性 天使族

「E・HEROスノーピクシー」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):エクストラデッキに存在する融合モンスター1体を選択して発動できる。融合素材として手札に存在するこのカードと自分フィールド上に存在する「E・HERO」モンスター1体を墓地へ送ることで、その融合モンスター1体を融合召喚する。

 

E・HEROフレイムバッシャー

レベル4 攻撃1800 守備200 効果 炎属性 戦士族

(1):このカードは「HERO」融合モンスター以外のモンスターの融合素材にすることができない。

(2):このカードを融合素材として融合召喚に成功した時、そのモンスターを対象に発動する。そのモンスターの攻撃力は400ポイントアップする。更に、守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

 

E・HEROスカイランナー

レベル3 攻撃1200 守備1000 効果 風属性 戦士族

このカードは召喚できない。

自分フィールド上に「HERO」融合モンスターが表側表示で存在するとき、手札から特殊召喚できる。

「E・HEROスカイランナー」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードの特殊召喚に成功した時、デッキ・墓地から「フュージョン」、「融合」魔法カード1枚を手札に加える事ができる。

 

透明(アニメオリカ)

アクション魔法カード

(1):自分フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。このターンそのモンスターは相手の効果の対象にならず、効果も受けない。

 

リアクター・リペアラー

レベル3 攻撃1300 守備1700 チューナー 闇属性 機械族

「リアクター・リペアラー」の(1)の効果はメインフェイズ1にのみ発動できる。

(1):このカードをリリースすることで発動できる。手札・墓地から「リアクター・リペアラー」以外の「リアクター」モンスター1体を特殊召喚する。

 

闇工房との取引

通常魔法カード

(1):手札の闇属性・機械族・レベル5以上モンスター1体を墓地へ送ることで発動できる。デッキからカードを2枚ドローする。

 

祈祷

アクション魔法カード

(1):相手にダメージを与えたときに発動できる。それと同じ数値分自分はLP回復する。

 

再生

アクション魔法カード

(1):戦闘で自分のモンスターが破壊され墓地へ送られたときに発動できる。そのモンスター1体を墓地から特殊召喚する。

 

マジックコード:γ

速攻魔法カード

「マジック・コード:γ」は1ターンに1度、相手が魔法カードを発動したターンにのみ発動できる。

(1):このカード相手が発動した魔法カードの数だけフィールド上に存在するモンスターを破壊する。

 

ヴォルカニック・ドライブ

通常魔法カード

「ヴォルカニック・ドライブ」は1ターンに1度しか発動できず、このカードを発動したターン自分は他のモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚することができない。

(1):自分フィールド上に表側表示で存在する「ブレイズ・キャノン」魔法・罠カード1枚を墓地へ送る。その後、自分のデッキ・墓地から「ヴォルカニック・デビル」1枚を選択し、召喚条件を無視して特殊召喚する。

 

慈愛

アクション魔法カード

(1):このターン、自分が受けるダメージはすべて0となる。このカードを発動してから次の自分のターン終了時まで、自分はアクションカードを手札に加えることができない。

 

E・HEROグランドメイサー

レベル5 攻撃800 守備2000 効果 地属性 戦士族

「E・HEROグランドメイサー」の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードは「HERO」モンスター以外の融合素材とすることができない。

(2):このカードが自分のカードの効果で手札に加わった時、ターン終了時まで手札のこのカードを相手に見せることで発動できる。デッキ・墓地から「融合」を1枚手札に加える。

 

ヴォルカニック・バックファイア

カウンター罠カード

(1):自分フィールド上に「ヴォルカニック・デビル」が存在するときに発動できる。相手のモンスター効果の発動を無効にし、破壊する。その後、相手に800ダメージを与える。

 

E・HEROドラゴンガール

レベル3 攻撃500 守備500 効果 炎属性 戦士族

「E・HEROドラゴンガール」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードを融合素材として「HERO」融合モンスターの融合召喚に成功した時、デッキからカードを2枚ドローし、手札を1枚墓地へ送る。

 

E・HEROシャドーウィンド

レベル3 攻撃1600 守備500 効果 闇属性 戦士族

「E・HEROシャドーウィンド」の(1)の効果はデュエル中1回しか発動できない。

(1):相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にカードが存在しないとき、デッキから「融合」1枚を手札に加えることで手札から特殊召喚することができる。

(2):手札・デッキに存在するこのカードが効果によって墓地へ送られたとき、デッキから「チェンジ」速攻魔法カードを1枚手札に加える。

 

チューニング・リアクター・SS

レベル3 攻撃0 守備0 チューナー 闇属性 機械族

(1):このカードの召喚に成功した時、自分の墓地に存在する「リアクター」モンスター1体を対象に発動する。そのモンスターを攻撃表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。

 

エナジー・ボム

レベル1 攻撃0 守備0 効果 風属性 機械族

「エナジー・ボム」の(1)の効果はデュエル中1回しか発動できない。

(1):このカードが墓地に存在するときにのみ発動できる。自分の墓地に存在する機械族モンスターの蘇生制限を無視する。

 

フェネクス・ビッグ・エアレイド

通常罠カード

「フェネクス・ビッグ・エアレイド」は1ターンに1度、自分のターンにしか発動できない。

(1):自分フィールド上にレベル8の機械族・炎族モンスターが表側表示で2体以上存在する場合に発動できる。エクストラデッキから「重爆撃禽ボム・フェネクス」1体を融合召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターはこのターン、攻撃できない。

 

魔装獣剣スイモウ

レベル3 攻撃1200 守備0 効果 水属性 獣戦士族

(1):このカードは相手プレイヤーに直接攻撃することができる。

(2):このカードは直接攻撃を行ったターン終了時、持ち主の手札に戻る。

 

訓練

アクション魔法カード

(1):自分フィールド上のモンスターが戦闘を行う時に発動できる。そのモンスター1体の攻撃力・守備力をターン終了時まで800アップする。

 

狙撃

アクション魔法カード

(1):相手ターンのメインフェイズ1に相手のモンスター効果が発動した時に発動できる。発動を無効にし手札に戻す。

 

クアトロ・デスブレイク

通常罠カード

「クアトロ・デスブレイク」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に「魔装騎士ペイルライダー」が表側表示で存在する場合にのみ発動できる。相手フィールド上に表側表示で存在するカードを1枚破壊する。発動後、このカードはゲームから除外される。

(2):このカードはその効果で除外されてから2回目の自分のターンのスタンバイフェイズ時に手札に戻る。

 

煉獄との交信

通常罠カード

「煉獄との交信」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に存在するこのカードが破壊され墓地へ送られた時、手札が0枚の場合に発動できる。相手フィールド上に表側表示で存在するモンスターをすべて破壊する。その後、自分のエクストラデッキから「煉獄龍オーガ・ドラグーン」1体をS召喚扱いで特殊召喚する。

 

金満で貪欲な瓶

通常罠カード

「金満で貪欲な瓶」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):効果によって破壊され墓地へ送られたターンのメインフェイズ時に墓地からこのカード1枚を除外することで発動できる。自分のエクストラデッキの表側表示のPモンスター及び自分の墓地のモンスターを合計3枚選び、デッキに加えてシャッフルする。その後、デッキからカードを2枚ドローする。

 

魔装軍師コウメイ

レベル3 攻撃500 守備1600 効果 風属性 魔法使い族

「魔装軍師コウメイ」の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードは手札から魔法・罠ゾーンにセットすることができる。この効果でセットされている間のみ、このカードは魔法カードとして扱う。

(2):相手の直接攻撃宣言時、このカードが(1)の効果によってセットされている場合に発動できる。このカードを自分フィールド上に特殊召喚する。この効果で特殊召喚に成功したターン、自分フィールド上のモンスターは戦闘および効果では破壊されず、自分が受けるダメージは0となる。

 

インフェルニティ・ロシアンルーレット

通常魔法カード

(1):自分はカードの種類(モンスター・魔法・罠)を1つ宣言し、デッキからカードを1枚ドローし、互いに確認する。当たりの場合、そのカードを墓地へ送り、自分の墓地から「インフェルニティ」モンスター及び「煉獄龍オーガ・ドラグーン」を合計2体まで特殊召喚することができる。ハズレの場合、自分フィールド上に存在するモンスターをすべて破壊する。

 

アサシン・ブレイク

通常罠カード

「アサシン・ブレイク」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分のターンに自分フィールド上に表側表示で存在する「魔装」モンスターが効果によって破壊されたとき、自分のエクストラデッキ・墓地に存在する「魔装騎士ペイルライダー」1体をデッキに戻すことで発動できる。相手フィールド上で最も攻撃力の高いモンスター1体を破壊し、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える。

(2):このカードを発動するとき、自分フィールド上にセットされている「クアトロ・デスブレイク」1枚を墓地へ送ることができる。そうした場合、相手はこのカードの発動に対して魔法・罠・モンスター効果を発動できない。

 

黒蠍団潜伏

通常罠カード

(1):自分フィールド上に存在する「首領・ザルーグ」「黒蠍」モンスターをすべてゲームから除外する。その後、除外したモンスター1体に付き1000LP回復する。この効果で除外されたモンスターはターン終了時に自分フィールド上に特殊召喚される。

 

失楽園への切符

「失楽園への切符」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に存在する闇属性モンスターが2体以上墓地へ送られたターンにのみ発動できる。デッキからカードを2枚ドローし、手札を1枚墓地へ捨てる。

 

忌まれし天魔の右手(小説オリカ・調整)

「忌まれし天魔の右手」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に存在するモンスターが闇属性モンスター1体のみの場合に、LPを半分払って発動できる。デッキからカードを3枚ドローし、その後手札から闇属性モンスター1体を墓地に送る。手札に闇属性モンスターが存在しない時、手札を全て墓地に送る。

 

魔装天啓

通常魔法カード

「魔装天啓」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分のエクストラデッキ・墓地に存在する「魔装」Pモンスター2体を対象として発動する。そのモンスターを手札に加える。

 

魔装鬼ヨシヒロ

レベル3 攻撃800 守備800 ユニオン 地属性 悪魔族

「魔装鬼ヨシヒロ」は1ターンに1度しか特殊召喚できず、(1)の効果はこのカードが特殊召喚されたターンにのみ発動できる。

(1):1ターンに1度、自分のメインフェイズに攻撃力800アップの装備カード扱いとして自分の「魔装」モンスターに装備することができる。この効果で装備カードとなっているこのカードを装備したモンスターが戦闘を行う場合、このカードが相手に与える戦闘ダメージは倍になる。この効果で装備カードとなったこのカードはターン終了時に墓地へ送られる。

(2):自分フィールド上に存在する「魔装」カードが戦闘または効果によって相手モンスターを破壊した時に発動できる。このカードを墓地から表側攻撃表示で特殊召喚する。

 

トリプル・スパイダー

レベル3 攻撃600 守備600 効果 闇属性 昆虫族

このカードは通常召喚できない。

(1):相手フィールド上に「スパイダートークン」(昆虫族・闇・星1・攻/守0)2体を守備表示で特殊召喚して、手札のこのカードを特殊召喚することができる。

 

ライフ・スター・リロード

通常魔法カード

「ライフ・スター・リロード」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に存在するモンスターの種族が1つだけで、レベルの合計が10以上の時にのみ発動できる。自分はデッキからカードを2枚ドローする。

 

地獄蜘蛛の儀式

儀式魔法カード

「ヘルフレイム・スパイダー」の降臨に必要。

「地獄蜘蛛の儀式」の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):レベルの合計が合計8以上になるように自分の手札・フィールド上に存在する昆虫族モンスターをリリースすることで、手札から「ヘルフレイム・スパイダー」1体を儀式召喚する。

(2):このカードの効果で特殊召喚されたモンスターが相手モンスターを攻撃した時、そのモンスターの上にスパイダーカウンターを1つ置く。

 

マシンナーズ・コマンダーコヴィントン

レベル4 攻撃1000 守備600 効果 地属性 機械族

「マシンナーズ・コマンダーコヴィントン」はフィールド上に1体しか存在できない。

(1):このカードの召喚に成功した時、手札から「マシンナーズ・フォートレス」1体を攻撃表示で特殊召喚することができる。

(2):このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、自分フィールド上に存在する「マシンナーズ」モンスターの攻撃力はフィールド上に存在する機械族モンスターの数×300ポイントアップする。

 

ヘルフレイム・スパイダー

レベル8 攻撃2700 守備0 儀式 闇属性 昆虫族

「地獄蜘蛛の儀式」により降臨。

(1):1ターンに1度、フィールド上に存在する昆虫族モンスター1体を選択して発動できる。そのモンスターの表示形式を変更し、このカードにスパイダーカウンターを1つ置く。

(2):自分のターンのメインフェイズ1に、このカードをリリースすることで発動できる。このカードに乗っているスパイダーカウンターの数だけ手札・墓地から昆虫族モンスターを可能な限り自分フィールド上に特殊召喚する。この効果を発動したターン、自分はモンスターを召喚できない。

 

炎星師-シタイアン

レベル9 攻撃2800 守備2200 シンクロ 炎属性 獣戦士族

「炎星」チューナー+チューナー以外のモンスター2体以上

(1):このカードのS召喚に成功した時、自分の墓地に存在する「炎舞」魔法・罠カードを2枚を対象に発動できる。そのカードを自分フィールド上の魔法・罠ゾーンにセットする。

(2):1ターンに1度、自分フィールド上に存在する「炎舞」魔法・罠カード1枚を墓地へ送ることで発動できる。自分の手札・デッキ・墓地からレベル4以下の「炎星」モンスター1体を特殊召喚する。

 

黄金の錬金書(小説オリカ)

(1):サイコロを1回振る。自分のデッキの上からカードを6枚ゲームから除外する。この効果で除外されたモンスターカードの数が出た目と同じ場合、自分は出た目の数だけドローする。この効果で除外されたモンスターカードの数が出た目の違う場合、相手は出た目の数だけドローする。

 

E・HEROセラフィム

レベル6 攻撃2400 守備2000 光属性 戦士族

【Pスケール:青4/赤4】

「E・HEROセラフィム」のP効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):Pゾーンに存在するこのカードを破壊し、自分フィールド上に表側表示で存在する「HERO」融合モンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターの攻撃力をターン終了時まで1000ポイントアップさせる。

【モンスター効果】

「E・HEROセラフィム」はP召喚でしか特殊召喚できない。

「E・HEROセラフィム」のモンスター効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードの特殊召喚に成功した時、相手フィールド上に表側表示で存在する特殊召喚されたモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターをゲームから除外する。

 

E・HEROホワイトフェンサー

レベル3 攻撃800 守備1200 光属性 戦士族

【Pスケール:青2/赤2】

「E・HEROホワイトフェンサー」の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):もう片方の自分のPゾーンに「HERO」カードが存在しない場合、このカードのPスケールは3となる。

(2):自分がP召喚に成功した時に発動できる。自分フィールド上から「HERO」融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

【モンスター効果】

(1):自分フィールド上に表側表示で存在するこのカードをリリースすることで発動できる。自分フィールド上に表側表示で存在する「HERO」モンスター1体はこのターン、相手プレイヤーに直接攻撃することができる。この効果を発動したターン、自分の「HERO」モンスター以外のモンスターは攻撃できない。

 

E・HEROブラックセイバー

レベル5 攻撃2000 守備800 闇属性 戦士族

【Pスケール:青7/赤7】

「E・HEROブラックセイバー」の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):もう片方の自分のPゾーンに「HERO」カードが存在しない場合、このカードのPスケールは5となる。

(2):自分フィールド上に「HERO」融合モンスターが融合召喚された時、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を対象に発動できる。選択したモンスターの攻撃力をターン終了時まで半分にする。

【モンスター効果】

(1):相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上に融合モンスターが存在するとき、このカードは手札から特殊召喚することができる。

 

DDDトラスト

通常魔法カード

「DDDトラスト」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分の魔法・罠ゾーンの「契約書」カード1枚を墓地へ送ることで発動できる。このターン、自分フィールド上に存在する「DD」モンスターが攻撃するとき、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。

 

異次元の契約

通常魔法カード

(1):自分フィールド上に「DDD」モンスターが2体以上存在する場合にのみ発動できる。デッキからカードを2枚ドローし、その後手札を1枚捨てる。

 

魔装雷竜リンドヴルム

レベル8 攻撃3000 守備1000 シンクロ 光属性 ドラゴン族

「魔装」チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

「魔装雷竜リンドヴルム」の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードが相手モンスターを攻撃するときに、フィールド上に存在する攻撃対象となったモンスターの攻撃力以下の攻撃力を持つモンスター、もしくはフィールド上に存在する魔法・罠カードのいずれか1枚を対象に発動する。そのカードを破壊する。

 

DDD氷塊王ピョートル

レベル8 攻撃2800 守備2300 融合 水属性 水族

融合・S・Xモンスターを含む「DDD」モンスター×2

「DDD氷塊王ピョートル」の(1)(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードが融合召喚に成功した時、自分の墓地か除外されている自分の「DD」モンスター3体を対象に発動できる。そのカードをデッキに戻し、自分はデッキからカードを2枚ドローする。

(2):フィールド上に存在するこのカードが破壊され墓地へ送られた時に発動できる。デッキから「契約書」カード1枚を手札に加える。

 

魔装旋風

通常魔法カード

「魔装旋風」は1ターンに1度しか発動できない。

このカードの発動に対して魔法・罠・モンスターの効果は発動できない。

(1):自分フィールド上に「魔装」モンスターが3体以上存在する場合にのみ発動できる。相手フィールド上に存在する魔法・罠カードをすべて破壊する。

 

魔装聖女ジャンヌ

レベル8 攻撃? 守備? 融合 炎属性 天使族

レベル5以上の「魔装」モンスター×2

このカードは融合召喚でのみ特殊召喚できる。

(1):このカードの元々の攻撃力・守備力はこのカードの融合素材としたモンスターの元々の攻撃力を合計した数値になる。

(2):このカードが戦闘を行う場合、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠・モンスターの効果を発動できない。

 

ペンデュラム・ショック

通常罠カード

「ペンデュラム・ショック」は相手によって破壊されたターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に攻撃表示で存在するPモンスターが相手の攻撃・効果によって破壊された時に発動できる。このカードを墓地から除外し、そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。

 

PSホワイト・フラワー(アニメオリカ・調整)

レベル4 攻撃400 守備400 光属性 岩石族

【Pスケール:青9/赤9】

(1):1ターンに1度、自分フィールドの植物族モンスターの攻撃力を200アップできる。

【モンスター効果】

「PSホワイト・フラワー」のモンスター効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードがエクストラデッキからP召喚に成功した場合に発動できる。 デッキから「PSホワイト・フラワー」以外の「PS」モンスター1体を手札に加える。

 

PSパープル・ソード(アニメオリカ・調整)

レベル2 攻撃200 守備200 闇属性 岩石族

【Pスケール:青10/赤10】

(1):1ターンに1度、自分フィールドの戦士族モンスターの攻撃力を200アップできる。

(2):もう片方の自分のPゾーンに「PS」カードが存在するとき、このカードのPスケールは11になる。

【モンスター効果】

「PSパープル・ソード」のモンスター効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードがエクストラデッキからP召喚に成功した場合に発動できる。 デッキから「PSパープル・ソード」以外の「PS」モンスター1体を手札に加える。

 

PSパープル・シールド(アニメオリカ・調整)

レベル8 攻撃800 守備800 闇属性 岩石族

【Pスケール:青5/赤5】

(1):1ターンに1度、自分フィールドの戦士族モンスターの守備力を200アップできる。

「PSパープル・シールド」のモンスター効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードがエクストラデッキからP召喚に成功した場合に発動できる。 デッキから「PSパープル・シールド」以外の「PS」モンスター1体を手札に加える。

 

平手打ち

アクション罠カード

(1):自分の手札をランダムに1枚選択して墓地へ送る。その時、墓地へ送られたカードの効果は発動できない。

 

援助

アクション魔法カード

(1):自分はデッキからカードを1枚ドローする。

 

宝玉騎兵クリスタル・パラディン

レベル8 攻撃2800 守備2000 融合 光属性 岩石族

「宝玉騎兵クリスタル・パラディン」は1ターンに1度しか特殊召喚できない。

このカードは自分フィールド上に存在する「宝玉獣」魔法カードを3枚墓地へ送ることで、エクストラデッキから特殊召喚できる。

(1):このカードの特殊召喚に成功した時に発動できる。デッキから「宝玉獣」カード1枚を手札に加える。

(2):自分のターン終了時に発動する。このカードをエクストラデッキに戻し、自分の墓地に存在する「宝玉獣」カード1枚を手札に加える。

 

魔装剣士ローラン

レベル5 攻撃1700 守備2100 炎属性 戦士族

【Pスケール:赤6:青6】

(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。

(2):1ターンに1度、Pゾーンに置かれているカード1枚を対象に以下の効果から1つを選択して発動できる。

●そのカードのPスケールを2つ上げる

●そのカードのPスケールを2つ下げる

【モンスター効果】

「魔装剣士ローラン」は自分のモンスターゾーンに1体しか存在できない。

(1):相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上に「魔装」融合モンスター、Sモンスター、Xモンスターが存在するとき、このカードはリリースなしで召喚できる。

(2):自分フィールド上に存在する「魔装」モンスターが相手の効果によって破壊されるとき、代わりにこのカードを手札に戻すことができる。

 

封鎖

アクション魔法カード

(1:このターン、互いのプレイヤーはカウンター罠カードを発動できない。

 

宝玉神の慈悲

通常罠カード

(1):このカードは発動後、装備カードとなり、自分フィールド上に存在する「レインボー・ドラゴン」モンスター1体に装備する。

(2):このカードを装備したモンスターは相手の魔法・罠カードの効果を受けない。

 

召喚スイッチ

アクション魔法カード

「召喚スイッチ」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分のモンスターが戦闘で相手にダメージを与えたときに発動できる。自分の墓地から与えた戦闘ダメージ以下の攻撃力を持つレベル4以下のモンスター1体を表側攻撃表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。

 

宝玉騎兵クリスタル・エクィテス

レベル5 攻撃1900 守備1000 融合 光属性 岩石族

「宝玉騎兵クリスタル・エクィテス」は1ターンに1度しか特殊召喚できない。

このカードは自分フィールド上に存在する「宝玉獣」魔法カードを2枚墓地へ送ることで、エクストラデッキから特殊召喚できる。

(1):このカードの特殊召喚に成功した時、デッキから「究極宝玉神」カード1枚を手札に加える。

(2):自分のターン終了時に発動する。フィールド上に存在するこのカードをエクストラデッキに戻す。

 

魔装軍師オリヴィエ

レベル4 攻撃800 守備800 チューナー 水属性 魔法使い族

「魔装軍師オリヴィエ」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

このカードをS素材とする場合、「魔装」モンスターのS召喚にしか使用できず、他のS素材モンスターはすべて「魔装」モンスターでなければならない。

(1):このカードの召喚に成功した時、自分のエクストラデッキに表向きで存在する「魔装剣士」モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを攻撃表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。

(2):この効果で特殊召喚されたモンスターが「魔装剣士ローラン」の場合、このカードは以下の効果から1つを選択して発動できる。

●このカードのレベルを1つ上げる。

●このカードのレベルを1つ下げる。

 

黙示録の悪夢

通常魔法カード

(1):自分フィールド上に元々のカード名が「魔装騎士ホワイトライダー」「魔装騎士レッドライダー」「魔装騎士ブラックライダー」「魔装騎士ペイルライダー」となるモンスターのうち2種類以上のモンスターが存在する場合にのみ発動できる。相手フィールド上のカードをすべて破壊する。

 

蘇生融合

永続魔法カード

「蘇生融合」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分の墓地に存在するレベル4以下のモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。その後、自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められたからこの効果で特殊召喚されたモンスターを含む融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

(2):このカードがフィールドから離れたとき、この効果で融合召喚されたモンスターは墓地へ送られる。この効果は無効化することはできない。

(3):このカードは墓地に存在する場合、カード名を「融合」として扱う。

 

反射

アクション魔法カード

(1):自分フィールド上のモンスターが相手モンスターと戦闘を行う時に発動できる。その戦闘で発生する戦闘ダメージは代わりに相手が受ける。

 

古代の機械探究者(アンティーク・ギアクエスター)

レベル4 攻撃1400 守備200 効果 地属性 機械族

「古代の機械探究者」の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードの召喚に成功した時、自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、デッキから「古代「アンティーク・ギア」モンスター1体を選んで手札に加える。

(2):(1)の効果を発動した時、自分フィールド上に魔法・罠カードが存在しない場合にのみ発動できる。その効果で手札に加えたモンスターを召喚する。その時、モンスターをリリースする必要はない。

 

魔装の杯―ナルタモンガ

通常魔法カード

「魔装の杯―ナルタモンガ」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に存在する「魔装」モンスター1体を対象に発動できる。デッキからそのモンスターのレベルまたはランクの数値以下のレベルを持つ「魔装」モンスター1体を表側守備表示で特殊召喚する。

(2):このカードを発動した時、自分の墓地に存在する「魔装」モンスターが3種類以上の場合、次の自分のターンに自分は通常のドローに加えてデッキからカードをもう1枚だけドローする。

 

次元突破

速攻魔法カード

(1):このカードの発動時、自分フィールド上に存在する「魔装騎士」モンスターの攻撃力はターン終了時まで倍になる。

 

魔装鍛冶クルダレゴン

レベル2 攻撃0 守備500 炎属性 天使族

【Pスケール:青8/赤8】

(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。

(2):1ターンに1度、自分が「魔装」モンスターのP召喚に成功した時、自分の墓地に存在する「魔装」モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを手札に戻す。

【モンスター効果】

(1):このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、自分の手札・フィールド上に存在する「魔装」モンスター1体を対象に、以下の効果から1つを選択して発動できる。

●選択したモンスターのレベルをターン終了時まで1つ上げる。

●選択したモンスターのレベルをターン終了時まで2つ上げる。

 

魔装船ヴィマーナ

レベル7 攻撃2400 守備1500 光属性 機械族

【Pスケール青3:赤3】

「魔装船ヴィマーナ」の(2)のP効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。

(2):自分か相手がP召喚に成功した時、自分はデッキからカードを1枚ドローする。

【モンスター効果】

(1):自分フィールド上に表側表示で存在する「魔装」モンスターの攻撃力は相手フィールド上・エクストラデッキに存在するPモンスター1体につき300ポイントアップする。

 



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第28話 巻き込まれる者たち

「う…嘘だ、私が…こんな…」

「強い…」

デュエル開始から数十分が経過した。

 

(セレナのターンのメインフェイズ2)

侑斗

手札3

ライフ8000

場 精霊獣騎ガイアペライオ レベル10 攻撃3200

  マクロコスモス(永続罠)

  魂吸収(永続魔法)

 

セレナ

手札2

ライフ1500

場 なし

 

「く…!!私は手札から魔法カード《蘇生融合》を発動!」

「何度やっても結果は同じだよ。《ガイアペライオ》の効果発動。手札の霊獣カード1枚を除外することで、カード効果の発動を無効にし、破壊する」

背中に巨木を生やし、赤い花びらを模した毛を顔に着けた白き鎧の獅子に乗った金髪で若干露出度の高い緑と黒が基調の服を着た少女の杖から緑色の旋風が放たれ、《蘇生融合》が砕かれる。

 

手札から除外されたカード

・精霊獣ペトルフィン

 

「更に、《マクロコスモス》の効果で《蘇生融合》は除外され、《魂吸収》の効果で僕は除外されたカードの数×500ライフを回復する」

 

侑斗

ライフ8000→9000

 

「くぅ…!!」

あまりの力量差とプレッシャーでセレナの顔が汗でびしょ濡れになっている。

そして、間近で見ている北斗は自分のデッキを握りしめる。

(これが…剣崎侑斗という人のデュエル!?LDSのエクシーズでも勝てなかった相手をここまで…!!)

(うーん…だんだん慣れてはきたけど、まだまだ完全に使いこなせていないな)

D・パッドにセットされているデッキを見つめながら、心の中でつぶやく。

経緯は不明だが、侑斗はこのデッキを新たに手にしたばかりらしい。

「私は…モンスターを裏守備表示で召喚。ターンエンド…」

 

侑斗

手札2

ライフ9000

場 精霊獣騎ガイアペライオ レベル10 攻撃3200

  マクロコスモス(永続罠)

  魂吸収(永続魔法)

 

セレナ

手札2→0

ライフ1500

場 裏守備モンスター1

 

「僕のターン、ドロー」

 

侑斗

手札2→3

 

(このカードは…!)

ドローしたカードを見ると、侑斗は即座に手札を確認する。

「(零児君の言うとおりなら…)僕は…この2体のモンスターでペンデュラムスケールをセッティング!」

「何ぃ!?」

「まさか…ペンデュラム召喚を!?」

セレナと北斗の驚きをよそに、侑斗の左右を守るように白い翼をつけた2人の緑色の髪の少女が現れる。

彼女らが生み出す光の柱の間に緑色の旋風が発生し、その中から同じ白い翼をつけた緑色の髪の魔剣士が現れる。

そして、その剣士は《精霊獣騎ガイアペライオ》と共にセレナに襲い掛かる。

「そんな…私がこんなところで!!?」

「させるかぁ!!」

急にセレナの前に男が出てくる。

緑色のジャケットと黒いズボン、そして生々しい左目部分の傷を黒い眼帯で隠した青い髪で軍人風の大柄な男だ。

「バレット!!」

「ここは退きましょう…奴を倒すのは不可能!」

バレットと呼ばれた男は煙幕弾を侑斗に向けて投げつける。

侑斗達の視界が黒い煙に包まれていく。

急に発生した緑色の風がそれを吹き飛ばしたことにはセレナとバレットの姿はなかった。

「逃げられちゃったか…。零児君に謝っておかないと。ねえ、大丈夫かい?」

少し困った顔になった後、侑斗は座ったままの北斗に手を差し伸べる。

服の襟には緑色の羽根が左右についている白いライオンの頭部を模ったエンブレムが彫られたバッジがある。

「あ、あなたは…?」

「僕?僕は剣崎侑斗、デュエリストだよ」

驚きながら侑斗を見つめる北斗。

その眼には彼の背後にいるウィンダの姿がうっすらと映っていた。

 

「んー…むにゃむにゃ…」

「のんきに寝ているな、こいつ…」

隣の席で寝ている伊織に翔太が掛布団代わりの学ランをかける。

「仕方ありませんよ。昨日の夜はずっと騒いでいたんですよ」

伊織の傍で透明な状態で浮かんでいるセラフィムが翔太にこたえる。

今、翔太たちはLDSが用意した大型バスの中にいる。

大型トラックが追従していて、その中には翔太のDホイールやバスに乗っているメンバーの荷物がある。

乗っているのは今まで勝ち残った組のデュエリストや、オスロ、ボマー、漁介、里香などの敗退した一部の組がいる。

なんでも、零児が推薦した組のようだ。

「そのまま寝かせておいてやれ。今のところはな…」

「ちっ…なんでよりによって向かい側の席にいるのはお前ら何だ」

向かい側に座る鬼柳とロットンを見て、不愉快そうな顔になる翔太。

「そんな顔するなよ。何度も謝ったじゃないか」

「俺はな…こういうことに関してはかなり根に持つんだ」

嘘だとはいえ、伊織を誘拐したといった鬼柳に翔太はどうしてもマイナスのイメージしか持つことができない。

「…来るな」

急に翔太たちの前に座っているジョンソンが口を開く。

「何?」

どういう意味だと言おうとした瞬間、急にバスが大きく揺れる。

「く…!!」

「ヒャア!!何?何!?」

あまりの揺れで熟睡していた伊織も目を覚ます。

「翔太さん、伊織さん!外を見てください…!!」

セラフィムの言うとおり、2人は窓から外を見る。

そこには小型の青い戦闘機のような物に乗ってバスを包囲する、昨日翔太が戦ったデュエリストと同じ制服を着た男が数人いた。

違いとしたら、仮面に埋め込まれている宝石の色だろう。

「なんやねん、あんな悪趣味な仮面つけた兄ちゃんは!!」

「どうやら、俺たちの邪魔をしたいみたいだな」

舌打ちをしながら、今視認できる相手を数える。

少なくとも6人、多くて9人いるだろう。

しかも、今いるのは高速道路の中。

すぐに対応しなければ関係ない他の車両まで巻き込まれる可能性がある。

「はあ…もうこんなところまで。給料いいからこの仕事引き受けたんだけどなぁ」

首の少し上までの長さのある少し赤めの黒の七三分けに似た形の髪型で、淡褐色の目でいわゆる制服組の服装の運転手がため息交じりにつぶやく。

彼の服の襟にも侑斗と同じエンブレムが彫られたバッジをつけている。

そして、そのバッジに仕込まれているスイッチを押す。

(こちらハイヤー、ボスの予測通りオベリスクフォースが追跡してきました。対処、よろしくお願いします)

(了解!運転は頼んだぜ)

同じバッジをつけた制服姿の男が数人天井にある扉を開けて、上へ昇る。

「何…!?」

「おいおい、いくらなんでも関係ない人間を巻き込むのは無しだろう?オベリスクフォース」

丸坊主で高校生にしてはかなり大柄な黒人風の男がデュエルディスクを構える。

その背後には少し小柄な青い髪の少年も同様に構える。

どちらにも襟には例のバッジをつけている。

「何!?奴らは…」

「諜報部隊の話で聞いたことがある。赤馬零児が結成予定のランサーズとは異なる…」

「なら、分かるよな?これから何が始まるか…」

「く、くそう!!」

オベリスク・フォースもデュエルディスクを展開する。

「「デュエル!!」」

 

デュエリストA

手札5

ライフ4000

 

デュエリストB

手札5

ライフ4000

 

オベリスクフォースA

手札5

ライフ4000

 

オベリスクフォースB

手札5

ライフ4000

 

オベリスクフォースC

手札5

ライフ4000

 

オベリスクフォースD

手札5

ライフ4000

 

「バトルロイヤルルールは分かってるよな?次の最初のプレイヤーのターンまですべてのプレイヤーはドローもバトルフェイズも行えない。俺のターン。俺は手札から《デス・ウォンバット》を召喚」

ウォンバットという小柄な草食動物を模したモンスターが召喚されると同時にバスの上にちょこんと座る。

 

デス・ウォンバット レベル3 攻撃1600

 

「何!?《デス・ウォンバット》だと??」

召喚されたモンスターを見て、オベリスク・フォースの面々が顔を青くする。

「おっと、こいつはあんたらにとっては鬼門か?そりゃあそうだよな。こいつは俺への効果ダメージをすべて無効にしてくれる可愛いペットだ。更に俺は手札からフィールド魔法《ナチュラル・サファリ》を発動!」

発動と同時に、バスの上に様々な種類の木が現れ、更にはオベリスク・フォースの乗り物には草や花が生えてくる。

「う、うわああ!!一体どうなってるんだ!?」

「落ち着け、ただのソリッドビジョンだ!!とにかく、まずは《デス・ウォンバット》を潰すぞ!」

あわてるほかのメンバーを紺色の宝石がついた仮面のオベリスク・フォースが落ち着かせる。

「(ほう…ということは、こいつを先に倒せばいいんだな?)《ナチュラル・サファリ》の効果発動!1ターンに1度、フィールド上に獣族・獣戦士族・鳥獣族が存在するとき、手札からレベル4以下の獣族・獣戦士族・鳥獣族モンスター1体を特殊召喚できる。俺は手札から《おとぼけオポッサム》を特殊召喚」

今度はオポッサムを模したモンスターが木の中から飛び出してくる。

 

おとぼけオポッサム レベル3 攻撃800

 

「そして、特殊召喚されたモンスターのコントローラーから見て相手フィールド上に《野獣トークン》を特殊召喚する」

「何!?」

路上に通常の倍の大きさのハイエナが現れ、オベリスク・フォースDにとびかかる。

「う、うわあああ!!ハイエナが俺を襲ってくるーー!!」

 

野獣トークン レベル4 攻撃1800

 

ナチュラル・サファリ

フィールド魔法カード

「ナチュラル・サファリ」の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):1ターンに1度、フィールド上に獣族・獣戦士族・鳥獣族が存在するときに発動できる、手札からレベル4以下の獣族・獣戦士族・鳥獣族モンスター1体を特殊召喚する。その後、モンスターのコントローラーから見て相手のフィールド上に「野獣トークン」1体を表側攻撃表示で特殊召喚する。

 

野獣トークン

レベル4 攻撃1800 守備1800 トークン 地属性 獣族

「ナチュラル・サファリ」の効果で特殊召喚される。

 

「なーるほどな…けっこうえぐいことをやるなぁ」

のんきに翔太は窓からデュエルを見ている。

「えぐいことって?」

「《ナチュラル・サファリ》の効果で特殊召喚されたモンスターの攻撃力は1800。それに対して、《おとぼけオポッサム》の攻撃力は800。この状況を見て、なんとも思わないのか?」

「あ…!」

《おとぼけオポッサム》という言葉から伊織は修造の授業を思い出す。

獣族主体のデッキで《おとぼけオポッサム》が現れた際に警戒しなければならないモンスターがいるのだ。

「そして手札から永続魔法《補給部隊》を発動。更に、《おとぼけオポッサム》の効果発動!こいつは相手フィールド上に自分よりも高い攻撃力を持つモンスターがいる時、次の俺のターンのスタンバイフェイズまで死んだふりをするんだぜ?フェイク・ダイ!」

《おとぼけオポッサム》が木の裏に隠れ、死んだふりをする。

といっても、鼻提灯が出ていることからバレバレなのだが。

「何!?モンスターを自爆させただと!?」

「更に俺は手札から《森の番人グリーン・バブーン》の効果を発動!こいつは俺のフィールド上に存在する獣族モンスターがカード効果で破壊され墓地へ送られた時、ライフを1000支払うことで、手札・墓地から特殊召喚できる」

巨大な棍棒を左手に持つ緑色のゴリラのような巨人がバスの後ろに現れ、走り始める。

 

森の番人グリーン・バブーン レベル7 攻撃2600

 

デュエリストA

ライフ4000→3000

 

「更に《補給部隊》の効果を発動。こいつは1ターンに1度、俺のモンスターが戦闘・効果で破壊された場合、デッキからカードを1枚ドローする」

 

デュエリストA

手札6→2→3

 

「うわああ!!」

《森の番人グリーン・バブーン》が現れると同時にオベリスクフォースDが《野獣トークン》にかみつかれ、高速道路に落っこちる。

現在のバスは時速70キロ以上。

彼はそのまま取り残されてしまった。

「おっと、1人ターンが回らないまま離脱しちまったな」

「貴様…卑怯なぁ!」

「悪いが被害を可能な限り抑えろってボスからの命令でな、俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

デュエリストA

手札3→2

ライフ3000

場 森の番人グリーン・バブーン レベル7 攻撃2600

  デス・ウォンバット レベル3 攻撃1600

  補給部隊(永続魔法)

  伏せカード1

  ナチュラル・サファリ(フィールド魔法)

 

デュエリストB

手札5

ライフ4000

場 なし

 

オベリスクフォースA

手札5

ライフ4000

場 なし

 

オベリスクフォースB

手札5

ライフ4000

場 なし

 

オベリスクフォースC

手札5

ライフ4000

場 なし

 

オベリスクフォースD→アクシデントにより離脱

手札5

ライフ4000

 

「それにしても、まだいるな。こいつらの対処はどうすんだ?確か、オベリスク・フォースだったか?」

他のもあと2人オベリスクフォースが存在し、バスを狙っている。

デュエリストAの言葉から彼らがオベリスク・フォースであることは分かっている。

「ここは、もちろん翔太君に!」

「俺はただの乗客だから、これから出るランチを食べないとな」

「もー、そんなこと言わずにさっさと行く!」

伊織に引っ張られる形で天井の扉まで行く。

「はあ…ま、あいつらだけだと頼りないからな。軽く料理してやるよ」

乗り気でない翔太は扉を開き、バスの上に出る。

「おい、そこの兄ちゃん!すぐに客席に戻りな!」

「あんたらだけだと安心して飯が食えないからな、だから…!」

それだけ言うと、一番近くにいるオベリスクフォースを見る。

「へえ、デュエルディスクにケーブルをつけることで操縦できるのか。俺に貸せよ」

「何を言ってやがる!この状況がわから…ヘブゥ!!」

言い終わらないうちに飛び蹴りを喰らい、乗り物から叩き落される。

そして、翔太が乗り込むと自分のデュエルディスクにケーブルを接続する。

「ここ交通量が多いからな、たくさん車にもてなしてもらえよ?」

「貴様は…秋山翔太!!お前に殺された同朋の無念、ここで晴らしてくれる!」

「何を言ってんだ?あいつが勝手に死んだだけだろ?」

「き…さまぁ!!!」

激昂した3人のオベリスクフォースが構える。

「墓場まで案内してやる、ついてこいよ」

すぐに操縦方法を覚えた翔太が乗り物を付近にある山へと向かわせる。

「逃がすな、追え、追えーーーー!!」

翔太の後を追いかけるように、3人もバスから離れる。

「あいつ、バスを巻き添えにしないようにするために…」

「どうしますか、ガーダー!無茶すぎます!!それに、自分たちの任務は…」

小柄な方の男が遠くへ行く翔太を追いかけようとするが、大柄な男に肩を掴まれる。

「落ち着け、ラインマン。3人程度なら、任せて大丈夫さ」

「しかし…!!」

「いいから俺を信じてデュエルに集中しろ」

「は、はあ…」

はっきり言い切られたことで、ラインマンは落ち着くために手札を確認する。

「自分のターン!自分も手札から《デス・ウォンバット》を召喚!」

 

デス・ウォンバット レベル3 攻撃1600

 

 

(よし…この中なら!)

山の奥深くまで入った翔太は乗り物を気の裏側に停める。

それと同時に、オベリスクフォースが三方向から彼を包囲する。

「おいおい、1人ずつ挑む勇気もないのか?臆病者のオベリスクフォースさん?」

「うるさい!!もう貴様を餌にするのはやめだ!!ここで始末し、永瀬伊織を捕獲する!」

「何…?」

伊織の名前を聞き、一瞬でかなり真面目な表情になる。

「お前…なぜあいつを!?」

「ふん!これから我らに倒されるお前たちに言う義理はない!」

3人はデュエルディスクを展開する。

「ちっ…」

彼らの目的が伊織だろうと悟った翔太は舌打ちしながら、デュエルディスクを展開する。

(あいつら、伊織に何があるって言うんだ!?)

「「デュエル!!」」

 

翔太

手札5

ライフ4000

 

オベリスクフォースE

手札5

ライフ4000

 

オベリスクフォースF

手札5

ライフ4000

 

オベリスクフォースG

手札5

ライフ4000

 

「俺のターン、俺はモンスターを裏守備表示で召喚。カードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

翔太

手札5→2

ライフ4000

場 裏守備モンスター1

  伏せカード2

 

オベリスクフォースE

手札5

ライフ4000

場 なし

 

オベリスクフォースF

手札5

ライフ4000

場 なし

 

オベリスクフォースG

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「俺のターン!俺は《古代の機械猟犬》を召喚!」

腹部に茶色い歯車がついた緑と黒が基調の装甲で覆われた猟犬型の機械が現れる。

 

古代の機械猟犬 レベル3 攻撃1000

 

「こいつは相手フィールド上にモンスターが存在する場合、1ターンに1度、相手に600ダメージを与えることができる!」

《古代の機械猟犬》の口から火球が発射される。

「ちっ…!」

 

翔太

ライフ4000→3400

 

「俺はこれでターンエンド」

 

翔太

手札2

ライフ3400

場 裏守備モンスター1

  伏せカード2

 

オベリスクフォースE

手札5→4

ライフ4000

場 古代の機械猟犬 レベル3 攻撃1000

 

オベリスクフォースF

手札5

ライフ4000

場 なし

 

オベリスクフォースG

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「俺のターン!俺も《古代の機械猟犬》を召喚し、効果を発動!喰らえぃ!」

もう1体の《古代の機械猟犬》が召喚と同時に火球を発射する。

 

翔太

ライフ3400→2800

 

「これでターンエンド」

 

翔太

手札2

ライフ2800

場 裏守備モンスター1

  伏せカード2

 

オベリスクフォースE

手札4

ライフ4000

場 古代の機械猟犬 レベル3 攻撃1000

 

オベリスクフォースF

手札5→4

ライフ4000

場 古代の機械猟犬 レベル3 攻撃1000

 

オベリスクフォースG

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「俺のターン!出ろ、《古代の機械猟犬》!!」

 

古代の機械猟犬 レベル3 攻撃1000

 

「さあ、あいつを焼肉にしてやれぇ!」

《古代の機械猟犬》の火球が再び翔太を襲う。

 

翔太

ライフ2800→2200

 

「俺はこれでターンエンド」

 

翔太

手札2

ライフ2200

場 裏守備モンスター1

  伏せカード2

 

オベリスクフォースE

手札4

ライフ4000

場 古代の機械猟犬 レベル3 攻撃1000

 

オベリスクフォースF

手札4

ライフ4000

場 古代の機械猟犬 レベル3 攻撃1000

 

オベリスクフォースG

手札5→4

ライフ4000

場 古代の機械猟犬 レベル3 攻撃1000

 

「へへへ…まだまだ俺たちには手が残ってるぜ?」

オベリスクフォースEが手札にある《古代の機械巨人》と《古代の機械騎士》を見る。

(《古代の機械猟犬》は他のアンティーク・ギアが俺のフィールドに存在するとき、1度だけ俺の手札・フィールド上に存在するモンスターで融合召喚を行うことができる。それでこの3枚を融合して…)

「気は済んだか?」

「な…!?」

翔太の口からドスの利いた言葉が飛び出し、3人は彼を恐れる。

「遊びはおしまいだ。俺のターン!」

 

翔太

手札2→3

 

「俺は手札から魔法カード《手札抹殺》を発動。全員、手札交換だ」

 

手札から墓地へ送られたカード

翔太

・魔装獣ユニコーン

・魔装獣剣スイモウ

 

オベリスクフォースE

・古代の機械騎士

・古代の機械巨人

・シュレッダー

・トレード・イン

 

オベリスクフォースF

・古代の機械獣

・古代の機械猟犬×2

・古代の機械箱

 

オベリスクフォースG

・古代の機械猟犬

・グリーン・ガジェット

・レッド・ガジェット

・イエロー・ガジェット

 

「今更《手札抹殺》が何だっていうんだ!?たった2枚のカードを墓地に落とした程度で…」

「そうだ、その2枚のカードがお前らを地獄へ叩き落とす。俺はフィールドに存在する《魔装霊レブナント》を反転召喚」

 

魔装霊レブナント レベル2 攻撃600(チューナー)

 

「このカードがリバースした時、デッキから魔装モンスター1体を手札に加える。俺はデッキから《魔装陰陽師セイメイ》を手札に加える。そして、手札から魔法カード《魔装融合》を発動。俺の手札・フィールド・墓地のモンスターを素材に魔装モンスターを融合召喚する。俺が素材とするのは手札の《セイメイ》とフィールドの《レブナント》、そして墓地の《魔装獣剣スイモウ》!神秘にうずもれし陰陽師よ、満たされぬ魂よ、青き痣を持つ獣よ、魔導の力によりて、今1つとならん。融合召喚!真紅の騎士、《魔装騎士レッドライダー》!!」

 

魔装騎士レッドライダー レベル8 攻撃3000

 

「攻撃力3000の融合モンスター!?」

「まだだ!こいつは俺のターンにモンスターの特殊召喚に成功した場合、バトルフェイズ時のみ攻撃力が1000アップする」

 

魔装騎士レッドライダー レベル8 攻撃3000→4000

 

「更に俺は永続罠《リビングデッドの呼び声》を発動!その効果で墓地から《魔装獣ユニコーン》を特殊召喚する」

 

魔装獣ユニコーン レベル4 攻撃1600

 

「このカードは魔装騎士の装備カードとなり、攻撃力を800アップさせる」

真紅の毛並みに変化した《魔装獣ユニコーン》を自らの足とした《魔装騎士レッドライダー》は大剣を右手のみで持ち、天に掲げる。

 

魔装騎士レッドライダー レベル8 攻撃4000→4800

 

「あ…ああ…」

更に強大な力を手に入れた《魔装騎士レッドライダー》を見て、3人は腰を抜かす。

「更に俺は罠カード《騎士の逆鱗》を発動。俺のフィールド上に存在するモンスターが魔装騎士1体だけの場合、そのモンスターはこのターン、相手フィールド上に存在するすべてのモンスターに1回ずつ攻撃することができる。そして、《魔装獣ユニコーン》を装備したモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊した時、そのモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える」

「ば…バカな…そんな!!」

今の彼らには第2の騎士を止める術はない。

ただ、このわずかな時間の間に自らの敗北を受け入れるしかないのだ。

「やれ…《レッドライダー》」

《魔装騎士レッドライダー》を乗せた《魔装獣ユニコーン》が疾走する。

そして、3体の哀れな猟犬を一太刀で切り裂いていった。

「「うわああああああ!!!!」」

 

オベリスクフォースE

ライフ4000→200→0

 

オベリスクフォースF

ライフ4000→200→0

 

オベリスクフォースG

ライフ4000→200→0

 

古代の機械猟犬(アニメオリカ・調整)

レベル3 攻撃1000 守備1000 効果 地属性 機械族

「古代の機械猟犬」の(3)の効果はこのカードが表側表示で存在する限り1度しか発動できない。

(1):このカードが攻撃する場合のダメージステップ終了時まで、相手は魔法・罠カードを発動できない。

(2):1ターンに1度、相手フィールドにモンスターが存在する場合に発動できる。相手に600ダメージを与える。

(3):自分フィールドにこのカード以外の「アンティーク・ギア」モンスターが存在する場合に発動できる。自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

騎士の逆鱗

通常罠カード

(1):バトルフェイズ開始時、自分フィールド上に存在するモンスターが「魔装騎士」モンスター1体のみの場合に発動できる。このターン、そのモンスターは相手フィールド上に存在するすべてのモンスターに1回ずつ攻撃することができる。

 

「こいつら…伊織よりも弱え」

気を失っている3人を見つめ、そう吐き捨てる。

そうしていると、翔太の背後に急に青い渦が現れる。

その中から、新たなオベリスクフォースが現れる。

「まだまだいるぜー?」

「これだけの人数でやれば…」

「ちっ、これじゃあ分が悪…ん?」

更に数が増えるオベリスクフォースに舌打ちをしていると、翔太は違和感を感じる左手を見る。

カードから人を解放した時のように、痣が光っている。

(まさかな…だが!)

翔太は青い渦に向けて痣をかざす。

「なんだよその痣!?」

「こけおどしだ!そのままこいつをカードへ…!!?」

痣の光が糸のように青い渦と接続する。

するとその渦の動きに乱れが生じ、オベリスクフォースを吸い込み始める。

先程敗北した3人も同様だ。

「な、なんだ!?一体どうなっている!!?」

「こ、こいつは…このデュエリストは化け物かーーーーー!!!?」

オベリスクフォースを吸いつくした渦は爆発を起こしながら消滅する。

「はあ…はあ…はあ…」

渦が消えたのを確認すると、翔太は突然起きた疲れで片膝を地につける。

「こいつは…カードから人を解放するだけでなく、おそらくは別次元へつながる扉を閉鎖する力もあるのか…。1人1人は大したことないが、大量にこられたら厄介だな…」

「キュイー!」

草むらの中から突然ビャッコが飛び出してくる。

「お前、追ってきたのか!?ったく、よく分からない精霊だぜ」

「キュイキュイー!」

「悪いが、信号弾みたいなのを撃ってくれ。なぜか…疲れてな…」

「キュッ!」

ビャッコはランドセルから打ち上げ花火を発射させた。

赤や黒、緑や紫などのカラフルな色合いの花火だ。

(これで…気づいてくれるだろうな…。だが、あいつはなぜ俺に…)

左手の痣を見つめながら、翔太はそのまま意識を失った。

 

「私だ…。ああ、あなたか」

同時刻、レオコーポレーションの社長室では零児が誰かと電話をしていた。

扉には鍵がかけられていて、電話の内容を誰にも聞かれないようにしている。

「なるほど…分かった、セレナとバレットだな?了解した。セレナは私が何とかしよう。あなたは今回スカウトした彼の練度を高めるのに集中してほしい。それから、これは追加情報だが…」



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第29話 嵐の前

「はぁ…あいつら、いつ襲ってくるかわかりませんよ?」

「最初に襲った奴らは駆逐できたが、いつまた来るかわからねえな…」

ガーダーと会話しながら、ハイヤーはバスのタイヤ交換と応急修理を行う。

翔太たちはレオコーポレーションが貸し切った宿泊施設に入っている。

翔太がバスと合流した時、バスに残っていたオベリスクフォースはガーダー達によって撃退されていた。

しかし、デュエルの際に発生したダメージが実体化したことによりバスの一部が破損し、タイヤにもダメージが発生した。

そのため、静岡と舞網市の中間あたりの距離にあるサービスエリアに停車することになった。

 

「キュー…キュー…」

宿泊施設の304号室…。

翔太と伊織はこの部屋で泊まることになった。

ホテル程ゆとりのある環境ではないが、ベッドと机、テレビとネット付きパソコンといった最低限の設備はある。

ビャッコはベッドの上で丸くなって眠っている。

(あのオベリスクフォースの奴ら…伊織を狙っていると言っていたな)

結局彼らからなぜ伊織を狙うのかを聞くことができなかった。

もしも最初に倒したオベリスクフォースも同じ目的だったとしたら…。

「ちっ…訳が分からねえ」

「何が訳が分からないの?」

「な…!?」

急に耳元で伊織がそう言ったので、ビクッとする。

「もー、翔太君。そんなにびっくりしなくていいのにぃ」

「非常識かお前は。急に耳元で…」

「えー、いいじゃんいいじゃん。私達、長い付き合いでしょー?」

「何か月かくらいしかないだろ…?」

ため息をつきながら、伊織を見る。

青いパジャマ姿で、髪の毛は少し濡れている。

体に若干熱があることからシャワーを浴び終えてすぐだということがわかる。

(あいつらがなぜこいつを狙っているのかわからないが…何もしないわけにはいかないな)

うるさいが、自分に居場所を与えるだけでなく記憶を取り戻すのに協力してくれた伊織。

彼女を守らなければ男がすたる。

そう思っているのだろう。

「あ、そーだ!翔太君。ちょっと来て!」

急に伊織が翔太の手を握る。

「どこへ連れて行く気だ?」

「いーから、いーから!」

「良くねえだろ?ビャッコはどうする?」

「あ!そうだった。ビャッコちゃーん!」

伊織の声に反応し、ビャッコが目を覚ます。

「一緒に来てくれる?何かに変身して」

「キュキュー!」

嬉しそうに承知したビャッコがその姿を髪留めに変化させ、伊織はそれを髪につける。

「よし、これでオッケー!レッツゴー!」

「待て!!ちゃんと説明しろよな…」

テンションを上げる伊織についていけず、引っ張られる形で部屋を出る翔太。

(あいつ…まさか俺の知らないところでオベリスクフォースを怒らせたのか?)

 

「おまちどー!みんな!」

「サンクス、伊織」

「おお!翔太も来てくれたか!」

「こいつが勝手に連れてきただけだ…はあ」

3階の集会場に到着すると、ハンスやジェイク、里香などのバスに乗っていたデュエリストの一部が集まっていた。

翔太を放した伊織はステージに上がると、マイクを手に取る。

「あーーあーーー本日は晴天なり、本日は晴天なり…」

(何を始めるつもりだ…?)

「それでは…参加者の皆さんでミニデュエル大会を始めたいと思いまーーーす!」

「…はぁ?」

何をいきなりと言いたげな翔太に対して、他のメンバーは歓声を上げる。

「ルールは簡単!これから消灯時間まで何度もデュエルを行い、勝利回数の多いデュエリストが優勝!ただし、同じデュエリストとは連続してデュエルしてはいけません!!それでは、勝敗表を配りまーーす!」

「ほれ、性悪男!」

「よりによってお前から渡されるのかよ。やってらんねえ…」

里香から勝敗表を差し出された翔太は不愉快になり、会場を出ようとする。

しかし外からカギをかけられていて、そうやっても開かない。

ちなみに、この宿泊施設のキーはすべてカードキーになっている。

「ちなみに…大会が終わるまでここから出られません!カードキーは私が持ってまーす!ではさっそく…デュエル大会スタート!!」

「否応なしか!!!?」

翔太のむなしい叫びを無視するかのように、デュエルが開始させる。

多くのデュエリストが対戦者を見つける中、ジェイクが翔太に近づいてくる。

「なんだよ…?俺とデュエルがしたいのか?」

「ああ、大会ではお前とやりあえなかったからな。俺のデッキも、お前と熱いデュエルがしたくてうずうずしてるんだ!」

さっそくデュエルディスクを展開し、翔太と対峙する。

「…部屋で寝てりゃ良かった」

ため息をつきながら、デュエルディスクを展開する。

「デュエル!!」

 

ジェイク

手札5

ライフ4000

 

翔太

手札5

ライフ4000

 

「俺のターン!まず俺は手札から魔法カード《手札断殺》を発動。お互いに手札を2枚墓地へ送り、デッキからカードを2枚ドローする!」

 

手札から墓地へ送られたカード

 

ジェイク

・サンプル・フォッシル

・シェルナイト

 

翔太

・ペンデュラム・シフト

・貪欲な壺

 

サンプル・フォッシル(アニメオリカ・調整)

レベル2 攻撃0 守備0 効果 地属性 岩石族

「サンプル・フォッシル」は1ターンに1度しか召喚できない。

(1):このカードの召喚に成功した時、相手の墓地からレベル4以下のモンスター1体を対象に発動する。そのモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。このカードの攻撃力はそのモンスターの元々の攻撃力の数値分アップする。この効果で特殊召喚したモンスターは攻撃できず、リリースすることはできない。

 

シェルナイト(アニメオリカ・調整)

レベル4 攻撃0 守備2000 効果 地属性 岩石族

(1):このカードの召喚・反転召喚に成功した時に発動できる。相手ライフに500ダメージを与える。その後、このカードは攻撃表示の場合、表側守備表示に変更する。

 

「おっと、魔法・罠カードだけを墓地へ送ったな?」

「お前のデッキは俺の墓地のモンスターも素材にできるからな。そう簡単に墓地肥やしはできないな。俺は墓地へ送った《ペンデュラム・シフト》の効果を発動!このカードが墓地へ送られた時、デッキからレベル4以下のペンデュラムモンスター1体を手札に加える。俺はデッキから《魔装剣士ムネシゲ》を手札に加える」

 

ペンデュラム・シフト

通常罠カード

「ペンデュラム・シフト」の(2)の効果は(1)の効果を発動したターン、発動できない。

(1):自分フィールド上のPモンスターが攻撃対象となった時に発動できる。その攻撃を無効にする。

(2):このカードが効果によって墓地へ送られた時に発動する。デッキからレベル4以下のPモンスター1体を手札に加える。

 

「クレバーな手だぜ。なら俺はカードを2枚伏せ、モンスターを裏守備表示で召喚!ターンエンドだ!」

 

ジェイク

手札5→1

ライフ4000

場 裏守備モンスター1

  伏せカード2

 

翔太

手札5→6(うち1枚《魔装剣士ムネシゲ》)

ライフ4000

場 なし

 

「俺のターン」

 

翔太

手札6→7

 

「俺はスケール2の《魔装槍士タダカツ》とスケール9の《魔装剣士ムネシゲ》でペンデュラムスケールをセッティング!ペンデュラム召喚!現れろ、俺のモンスター達!《魔装騎士ペイルライダー》、《魔装竜ファーブニル》!」

2体のペンデュラムモンスターによる光の柱が生まれると同時に、翔太のモンスターが2体召喚される。

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

魔装竜ファーブニル レベル4 攻撃1900

 

「お!さっそくペンデュラム召喚か!それで、この前俺たちとのデュエルでゲットしたペンデュラムモンスターはどうしたんだ?」

「伊織に渡した。その方が都合がいいからな。バトル。俺は《魔装騎士ペイルライダー》で裏守備モンスターを攻撃!」

レベル4以下のモンスターでの守備力1900以上のモンスターは数多く存在する。

それならば、わざわざ攻撃力1900で効果によって後続を呼び出すことができる《魔装竜ファーブニル》に賭けるよりも確実にモンスターを処分できる《魔装騎士ペイルライダー》で攻撃したほうが良い。

翔太はそう思い、《魔装騎士ペイルライダー》に攻撃命令を出した。

裏守備モンスターは姿を現し、右腕がアンカーになっている粗面岩の人型人形になる。

 

粗面岩錨 レベル4 守備0

 

「《粗面岩錨》のリバース効果発動!フィールド上に攻撃表示で存在する最もレベルの低いモンスター1体を墓地へ送る!」

「何!?」

《魔装騎士ペイルライダー》の光剣が《粗面岩錨》を両断する前に、そのモンスターのアンカーが発射され、《魔装竜ファーブニル》を貫いていた。

急所を撃ちぬかれた竜は静かに消滅し、《粗面岩錨》が風化していく。

 

粗面岩錨(トラカイト・アンカー)

レベル4 攻撃1000 守備0 効果 地属性 岩石族

(1):このカードがリバースした場合、フィールド上に攻撃表示で存在する最もレベルの低いモンスター1体を墓地へ送る。その時、Xモンスターはレベル1モンスターとして扱う。

 

「ちっ…これで俺のモンスターが墓地に!」

「まだ終わりじゃないぜ!俺は更に罠カード《風化融合―ウェザリング・フュージョン》を発動!俺のフィールド上に存在する融合モンスター以外の岩石族モンスターが戦闘で破壊され墓地へ送られた時、互いの墓地に存在するモンスターを素材に融合召喚を行うことができる!」

翔太のフィールドに破壊されたはずの《魔装竜ファーブニル》が、ジェイクのフィールドには《粗面岩錨》であった砂が出現し、砂が竜を取り込んでいく。

「新生代にて活躍せし竜よ、今こそ大地より掘り起こさん!《新生代化石飛竜スカルドレイク》融合召喚!」

頭部に龍の骨でできた兜をつけた茶色い鱗の竜が砂の中から現れ、ジェイクのフィールドへ向かう。

 

新生代化石飛竜スカルドレイク レベル4 攻撃2000

 

風化融合―ウェザリング・フュージョン

通常罠カード

「風化融合―ウェザリング・フュージョン」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に存在する融合モンスター以外の岩石族モンスターが戦闘で破壊され墓地へ送られた時に発動できる。自分及び相手の墓地から、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターをゲームから除外し、「化石」と名のついた融合モンスター1体を「化石融合―フォッシル・フュージョン」の効果による融合召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

 

「ちっ…!うかつだったか」

ジェイクのフィールドに召喚され、咆哮する《新生代化石飛竜スカルドレイク》に舌打ちする。

まさか、岩石族戦闘破壊がトリガーとなる融合召喚されるとは思いもよらなかったのだ。

「だが、まだ俺のバトルフェイズは終わっていない。《魔装槍士タダカツ》のペンデュラム効果を発動。俺のペンデュラムモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊した時、続けてもう1度だけ攻撃することができる。せっかく召喚した《スカルドレイク》はここで破壊させてもらう!」

《魔装槍士タダカツ》の槍から放たれた五芒星の光を受けた《魔装騎士ペイルライダー》がガトリング砲を召喚し、《新生代化石竜スカルドレイク》に向けて発射する。

「俺はフィールドから速攻魔法《タイム・ストリーム》を発動!俺のライフを半分支払い、俺のフィールド上に存在する化石モンスターをさらに前の時代の姿に逆進化させる!」

《新生代化石竜スカルドレイク》の周囲に様々な形の時計が出現し、砂時計は砂が上に、デジタル時計とアナログ時計は針と数字が逆戻りしていく。

それと同時に、その古代の竜の鱗が青に染まっていき、右手には水晶が付いた杖が新たに装備される。

「逆進化!《中生代化石飛竜スカルウィルム》!」

 

中生代化石飛竜スカルウィルム レベル6 攻撃2500

 

ジェイク

ライフ4000→2000

 

タイム・ストリーム(アニメオリカ・調整)

速攻魔法カード

(1):自分LPを半分支払うことで発動できる。自分フィールド上に存在する「化石」融合モンスター1体をリリースし、そのカードのテキストに記されている「化石」融合モンスター1体を召喚条件を無視して手札・デッキから自分フィールド上に融合召喚扱いで特殊召喚する。

 

新生代化石竜スカルドレイク

レベル4 攻撃2000 守備2000 融合 地属性 岩石族

自分の墓地の岩石族モンスター+相手の墓地のドラゴン族モンスター

このカードは「化石融合―フォッシル・フュージョン」の効果でのみ特殊召喚できる。

(1):自分のターンのスタンバイフェイズ時に発動できる。自分フィールド上に表側表示で存在するこのカードをリリースすることで、デッキから「中生代化石竜スカルウィルム」1体を融合召喚扱いで特殊召喚する。

 

「ライフを大幅に減らしてまで召喚だと…!?」

「攻撃力の割にはかなり不効率っていいたいんだろ?ドントウォーリー。《スカルウィルム》は特殊召喚に成功したターン終了時、相手ライフを半分にする!」

「何!?」

今の翔太のライフは当然4000。

この効果によって、翔太は確実に2000ポイント以上ライフを失うことになる。

「やってくれるな、お前」

「お前のデッキは赤馬零児と同じく、すべての召喚法を使いこなすんだ。これくらいしてみせないとな」

「そうらしいな、俺は攻撃を中断する」

「クレバーな選択だな、《スカルウィルム》は特殊召喚されたターン、戦闘では破壊されない」

ガトリング砲を背中のバックパックに装着し、翔太のフィールドに戻っていく。

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

ターン終了と同時に、《中生代化石飛竜スカルウィルム》の杖から光が放たれ、翔太の生気を吸い取って行った。

 

ジェイク

手札1

ライフ2000

場 中生代化石飛竜スカルウィルム レベル6 攻撃2500

 

翔太

手札7→2

ライフ4000→2000

場 魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

  伏せカード1

  魔装槍士タダカツ(青) ペンデュラムスケール2

  魔装剣士ムネシゲ(赤) ペンデュラムスケール9

 

「俺のターン、ドロー!」

 

ジェイク

手札1→2

 

ドローしたカードを見て、ジェイクの心が高揚する。

「(掘り当てたぜ、デスを貫く化石を!)俺は手札から魔法カード《標本交換》を発動!俺のフィールド上に存在する化石モンスターを同じレベルの化石融合モンスターにチェンジさせる!俺は《中生代化石飛竜スカルウィルム》をリリースし、デッキから《中生代化石術士スカルウィザード》を特殊召喚!」

「何!?デッキから融合モンスターを??」

「俺のデッキに眠る化石モンスターの多くは融合モンスターとして扱われるのさ!」

《中生代化石飛竜スカルウィルム》が化石となって背後に現れた巨大なショーケースに収納される。

そして、もう1つのショーケースからティラノサウルスの頭部の骨をかぶり、真っ白な衣で体と顔を隠した魔導士の骨が出てきて、上空を浮遊する。

 

中生代化石術士スカルウィザード レベル6 攻撃2200

 

標本交換

通常魔法カード

(1):自分フィールド上に存在する「化石」融合モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターをリリースし、デッキ・エクストラデッキから同じレベルの「化石」融合モンスター1体を「化石」融合モンスターの効果による融合召喚扱いで特殊召喚する。

 

中生代化石飛竜スカルウィルム

レベル6 攻撃2500 守備200 効果 地属性 岩石族

このカードは「化石」融合モンスターの効果でのみ特殊召喚できる。

このカードがデッキ・フィールド・墓地に存在するとき、融合モンスターとして扱う。

(1):このカードが融合召喚以外の方法で召喚された場合、次の自分のターン終了時まで攻撃できず、効果は無効化される。この効果は無効化されない。

(2):このカードは融合召喚に成功したターン、戦闘では破壊されず、攻撃することができない。

(3):このカードの融合召喚に成功した時に発動する。そのターン終了時に相手LPを半分にする。

(4):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊したターン終了時に発動できる。自分フィールド上に存在するこのカードをリリースすることで、デッキから「古生代化石飛竜スカルワイバーン」1体を融合召喚扱いで特殊召喚する。

 

「《スカルウィザード》は1ターンに1度、相手フィールド上に存在するモンスター1体の攻撃力・守備力をターン終了時まで入れ替えることができる!スカルチェンジ!」

《中生代化石術士スカルウィザード》の杖から放たれる磁場が《魔装騎士ペイルライダー》の肉体に影響を与える。

手にしている盾と銃が落ち、片ひざを折る。

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500→2000 守備2000→2500

 

「ちっ…!」

「更に俺は手札から魔法カード《サイクロン》を発動!この効果で《魔装剣士ムネシゲ》を破壊だ!」

竜巻に飲み込まれた《魔装剣士ムネシゲ》が消滅し、ペンデュラムスケールが消滅する。

「やってくれたな。ペンデュラムモンスターはフィールドから墓地へ送られた時、エクストラデッキへ行く」

「バトルだ!《スカルウィザード》で《ペイルライダー》を攻撃!スカル・マジック!!」

《中生代化石術士スカルウィザード》の杖から青い魔力の弾丸を発射する。

動きのとれない《魔装騎士ペイルライダー》には盾でそれを防ぐことができず、粉砕されてしまう。

「ぐううう!!」

 

翔太

ライフ2000→1800

 

「俺はこれでターンエンド。それと同時に《スカルウィザード》の効果発動!このカードが戦闘で相手モンスターを破壊したターン終了時、古生代へと逆進化する!現れろ、《古生代化石術士スカルウォーロック》!」

《中生代化石術士スカルウィザード》が光に包まれ、背中に鳥の羽根で作られたマントを装備し、かぶっている帽子がテンガロンハットに変化した魔道士の骸骨へと逆進化を遂げていく。

 

ジェイク

手札2→0

ライフ2000

場 古生代化石術士スカルウォーロック レベル8 攻撃2700

 

翔太

手札2

ライフ1800

場 伏せカード1

  魔装槍士タダカツ(青) ペンデュラムスケール2

 

中生代化石術士スカルウィザード

レベル6 攻撃2200 守備1200 効果 地属性 岩石族

このカードは「化石」融合モンスターの効果でのみ特殊召喚できる。

このカードがデッキ・フィールド・墓地に存在するとき、融合モンスターとして扱う。

(1):このカードが融合召喚以外の方法で召喚された場合、次の自分のターン終了時まで攻撃できず、効果は無効化される。この効果は無効化されない。

(2):1ターンに1度、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターの攻撃力・守備力をターン終了時まで入れ替える。

(3):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊したターン終了時に発動できる。自分フィールド上に存在するこのカードをリリースすることで、デッキから「古生代化石術士スカルウォーロック」1体を融合召喚扱いで特殊召喚する。

 

(古生代…おそらく、それが最強形態ということか…)

時代が戻るにつれて、本来の姿を取り戻していく化石モンスター達。

ジェイクの思い切りのいい《タイム・ストリーム》の発動もあり、現在では最強形態の化石の魔術師である《古生代化石術士スカルウォーロック》の召喚を許してしまった。

更に、《魔装剣士ムネシゲ》が破壊されてしまったことで今の状況ではペンデュラム召喚を行うことができない。

「俺のターン!」

 

翔太

手札2→3

 

「モンスターを裏守備表示で召喚。更に俺は手札から魔法カード《禁じられた施し》を発動。俺のライフが相手よりも下の時、デッキからカードを2枚ドローし、その後手札を1枚墓地へ送る」

 

翔太

手札3→1→2

 

手札から墓地へ送られたカード

・黙示録の悪夢

 

「ただし…このカードを発動したターン、俺はモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚することができず、魔法・罠カードをセットすることができない」

「まさに捨て身のカードだな。さあ、どんなスペシャルな展開を見せてくれるんだ?」

「その展開が来るのはお前次第だな、俺はこれでターンエンド」

 

ジェイク

手札0

ライフ2000

場 古生代化石術士スカルウォーロック レベル8 攻撃2700

 

翔太

手札2

ライフ1800

場 裏守備モンスター1

  伏せカード1

  魔装槍士タダカツ(青) ペンデュラムスケール2

 

禁じられた施し

通常魔法カード

「禁じられた施し」は1ターンに1度しか発動できない。

このカードを発動したターン、自分はモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚できず、魔法・罠カードをセットすることができない。

(1):自分LPが相手よりも下回っているときに発動できる。デッキからカードを2枚ドローし、その後手札を1枚墓地へ送る。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

ジェイク

手札0→1

 

「(おっと、こいつはモンスターカードじゃないな。このターンでとどめを刺すのは無理だな)バトルだ!俺は《スカルウォーロック》で裏守備モンスターを攻撃!」

《古生代化石術士スカルウォーロック》から放たれた雷が竜となり、裏守備モンスターを貫く。

「《スカルウォーロック》が攻撃するとき、相手は魔法・罠カードを発動できない。そして、攻撃対象としたモンスターの効果を無効にし、ダメージステップ終了時まで攻撃力を半分にする!」

 

裏守備モンスター

魔装霊レブナント レベル2 守備500(チューナー)

 

「(ちっ…効果が無効になった以上、《レブナント》の効果は発動しない!)俺は罠カード《奇跡の残照》を発動。このターン、戦闘で破壊された俺のモンスター1体を復活させる」

《奇跡の残照》のソリッドビジョンから再び《魔装霊レブナント》が飛び出してくる。

 

魔装霊レブナント レベル2 守備500(チューナー)

 

「《奇跡の残照》か。どうりで、《ペイルライダー》が戦闘で破壊された時に発動できなかったわけか」

「ああ…ペンデュラムモンスターはフィールドから墓地へ送られるとき、エクストラデッキへ行くからな」

「俺はこれでターンエンド。さあ、エキサイティングなデュエルを見せてくれ!」

 

ジェイク

手札1

ライフ2000

場 古生代化石術士スカルウォーロック レベル8 攻撃2700

 

翔太

手札2

ライフ1800

場 魔装霊レブナント レベル2 守備500(チューナー)

  魔装槍士タダカツ(青) ペンデュラムスケール2

 

古生代化石術士スカルウォーロック

レベル8 攻撃2700 守備2500 効果 地属性 岩石族

このカードは「化石」融合モンスターの効果でのみ特殊召喚できる。

このカードがデッキ・フィールド・墓地に存在するとき、融合モンスターとして扱う。

(1):このカードが融合召喚以外の方法で召喚された場合、次の自分のターン終了時まで攻撃できず、効果は無効化される。この効果は無効化されない。

(2):このカードが攻撃する場合、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。

(3):このカードが相手モンスターを攻撃するとき、攻撃対象となったモンスターはダメージステップ終了時まで攻撃力が半分になり、効果が無効化される。

 

「俺のターン!」

 

翔太

手札2→3

 

「俺は手札から《魔装妖ビャッコ》を召喚!」

「キュイーー!」

可愛らしく鳴きながらフィールドに飛び出すビャッコ。

「ビャッコちゃーん!」

「キャー可愛いーー!」

「こっち向いてーーー!」

女性陣の声援にこたえるように、ビャッコが手を振る。

(うるせぇ…)

 

魔装妖ビャッコ レベル3 攻撃400

 

「更に俺は手札から魔法カード《五芒星の残光》を発動。俺のフィールド上に存在する魔装モンスター1体のレベルを俺のペンデュラムゾーンに存在するペンデュラムカードのレベルと同じにすることができる。俺は《ビャッコ》のレベルを《タダカツ》と同じ5にする」

《魔装槍士タダカツ》の五芒星が光ると、ビャッコが《魔装霊レブナント》の周囲を走り回る。

 

魔装妖ビャッコ レベル3→5 攻撃400

 

五芒星の残光

通常魔法カード

(1):自分フィールド上に存在する「魔装」モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターのレベルを自分のPゾーンに存在するPカード1枚のレベルと同じにする。Xモンスターの場合、そのPカードと同じ数値のレベルのモンスターとしてX召喚の素材にできる。

 

「俺はレベル5の《ビャッコ》にレベル2の《レブナント》をチューニング。可憐なる妖魔よ、その秘められし妖の力を解放せよ。シンクロ召喚!《魔装妖キュウビ》!!」

「キューーーー!」

2つのチューニングリングをくぐったビャッコの尾が9つになり、5メートル近い大きさに変化していく。

翔太の前に降りると同時に、尾には紫色の火球が宿る。

 

魔装妖キュウビ レベル7 攻撃2000

 

「オゥ!《ビャッコ》の成長した姿というわけか!だが、攻撃力は《スカルウォーロック》よりも下だな?」

「バトルだ。俺は《キュウビ》で《スカルウォーロック》を攻撃!」

ビャッコの尾に宿った火球が徐々に大きくなっていく。

「迎撃だ!《スカルウォーロック》!!」

《古生代化石術士スカルウォーロック》が火球を撃ち落すため、自身の周囲に9つの魔力の球体を生み出す。

「このままじゃあ、《キュウビ》は犬死だぜ?」

「《キュウビ》の効果発動。このカードが相手モンスターと戦闘を行う時、ダメージステップ終了時までそのモンスターの効果を無効にし、攻撃力・守備力を0にする!」

「ホワッツ!!?」

「キュイーーーーー!!!!」

ビャッコの9つの火球が天井を突き破り、上空へ向かう。

そして、そのわずか3秒後にジェイクのフィールドに隕石が降り注いだ。

《古生代化石術士スカルウォーロック》が隕石で押しつぶされ、残りの隕石もジェイクを押しつぶさんと降ってくる。

「うわあああああ!!」

 

ジェイク

ライフ2000→0

 

魔装妖キュウビ

レベル7 攻撃2000 守備1000 シンクロ 闇属性 アンデッド族

「魔装」チューナー+「魔装妖ビャッコ」

このカードは上記のモンスターによるS召喚でのみ特殊召喚できる。

(1):このカードが相手モンスターと戦闘を行うダメージステップ開始時に発動する。ダメージステップ終了時までそのモンスターの攻撃力・守備力を0にし、効果を無効化する。

(2):このカードが相手によって破壊され墓地へ送られた時に発動できる。自分の墓地から「魔装妖ビャッコ」1体を表側守備表示で特殊召喚する。

 

「ふう…」

デュエル終了と共に、翔太が少し深呼吸をしながらデュエルディスクを閉じる。

「大した奴だぜ、まさか古生代まで逆進化した俺のモンスターを倒してしまうなんてな」

「ま、あの宝玉獣デッキの奴よりは骨があるんじゃないかー?」

「そんな棒読みなセリフじゃあ、本気で言ってるとは思えないな」

「そりゃそうだ。俺はお前らとはレベルもランクも違うからな」

「言ってくれる…!ま、勝ったのがお前だから、言い返せないな」

ペットボトルの水を口にし、ジェイクは再びデュエルディスクを展開させる。

「じゃあ俺は次の相手を探しに行くかな!」

 

「…もしもし、こちらガーダー。明日の昼までには舞網市に到着する予定だ。ボス」

デュエル大会が行われる中、ガーダーが自室で連絡を取る。

「ああ、急がねえとな…。そっちも用心してくれ。きっと…そっちにも奴らが来るはずだ」




今回はかなり消化不良ですが…お許しを。
それにしてもアニメはついに1年たちましたね。
まあ、謎が謎を呼び続けただけでしたが…。
2年目が楽しみです。


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第30話 遊矢暴走

3つのトンネルを連続で抜け、翔太たちを乗せたバスは舞網町につく。

「こんな形で帰ってくるなんてな…」

「はぁーあ、どうせなら優勝トロフィーを持って帰りたかったなー」

ため息をつきながら、外の景色を見る。

「…ふぇええ!!?」

「い、いかがなさいました!?伊織様…」

「な…んで、何がどうなってるの!?」

窓から広がるのは溶岩と岩石。

まるで火山地帯のような空間だ。

「驚くな、どうせソリッドビジョンだ」

「分かってはいるけど、どうしてこんなに大がかりなことを!?」

「俺が知るか」

「…近くでデュエルが行われているな」

翔太たちが話している中、ジョンソンは聴覚を研ぎ澄ます。

「デュエル…?」

「なんや、あのけったいな仮面つけた青服!?ここにも来とったんか??」

里香の言うとおり、1つ向こうの岩の上では何人かのデュエリストがオベリスクフォースと戦っている。

その中の1人がライフ0となり、同時にカード化してしまう。

「デュエリストが…カードになった!?」

「おいおい…クレイジーだぜ、これは…」

(オベリスクフォース…ここまで来ていたのか…。…!!?)

急に翔太の左手の痣が光り始める。

それと共に激しい頭痛が翔太を襲う。

「しょ…翔太君どうしたの!!?」

「伊織様!翔太様の左手が…!」

「光る痣!?もしかして!」

伊織はここでようやく翔太が手袋をつけるようになった理由を理解した。

そんな中、翔太の脳裏にはある光景が浮かび上がる。

古代ギリシャの建築物が並ぶフィールドで黒いオーラに包まれた遊矢が権現坂達を手にかける。

彼の背後には《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》と《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》が存在し、その2体が融合していく。

このフィールドはこの地帯からそれほど遠くない。

「…やめろ、遊矢…」

「え…?」

急に翔太が窓を開き、バスを飛び出す。

「翔太君!!?一体どうしたの!?」

「大変だ!!ガーダー、1人飛び出しちまいましたよ!!」

「何!?あいつまた…!」

翔太の突拍子の無い行動に頭を抱えながら、バッジの通信機を起動する。

「ボス、秋山翔太がバスを飛び出しちまった。そいつのフォローをしてやってくれ。俺たちは引き続き、こいつらを本社ビルへ連れて行く」

連絡を入れている間に、複数のオベリスクフォースが先日と同じやり方でバスを包囲し始める。

「はぁー、学習能力がないねえ、こいつらは」

「ガーダー!ラインマン!あと30分で本社ビルです!それまでバスを死守してください!」

「了解、ハイヤー。さあ、ヴァプラ隊…といっても俺たち3人だけか。暴れるとしようか!」

 

遺跡エリア…。

「ダーリン!!」

「遊矢、お前…一体どうしてしまったのだ!!」

赤い足まで伸びた髪で水晶でできたリンゴを持つ青いドレス姿の少女と権現坂が遊矢に困惑する。

血だらけで倒れた3人のオベリスクフォースに向けた怪しい笑み。

まるで、獲物をしとめて狂喜している肉食獣のようだ。

「次だ…次の敵はどこだ?」

3人を足蹴にすると、遊矢の目線が権現坂と少女に向けられる。

「まさか、お前たちか?お前たちが俺の次の敵か?」

「待て、遊矢!!俺は権現坂だ!忘れたのか!!?」

「私はミエルよ、ダーリン!!正気に戻って!!」

「ちっ…痣め。俺をここまで連れて行きやがって…」

権現坂とミエルのすぐ後ろまで来た翔太が恨めし気にそう口にする。

「翔太殿!?静岡にいるのではなかったのか!?」

「野暮用で戻ってきただけだ。それにしても、変わったな、こいつ…」

翔太の目線が遊矢に向けられる。

今の彼の表情は笑みから怒りへ代わっている。

「よお、3つの次元の争いを聞いて、混乱してるんじゃなかったのか?」

「お前も…融合次元の人間か?」

「はあ…質問を質問で返す馬鹿に成り果てたか?」

「融合次元のデュエリストなら…俺が叩き潰す!!」

遊矢がデュエルディスクを展開し、翔太を睨む。

「とことんつまらない奴に成り果てたな、権現坂。下がってろ」

「翔太殿…」

「あの馬鹿は俺が叩き直す。お前はほかの奴らにこのことを知らせに行け」

「…分かった。ここは翔太殿にお任せする!」

権現坂が翔太と遊矢に背を向ける。

「ちょっと…何なのよあなた!私のダーリンを馬鹿呼ばわりして、それに私たちをのけ者に…」

「ミエル殿!そなたも皆に知らせに行くのだ。ここは…俺たちの出る幕ではない…」

「くっ…」

悔しげな表情を浮かべながら、ミエルはその場を後にする。

「翔太殿、後で説明してくれ!」

「ああ…そのつもりだ」

2人が去ったことで、翔太と遊矢の周囲には誰もいなくなる。

「お前とはまだ決着をつけていなかったな、といっても、今のお前には何を言っても無駄だがな」

「邪魔をするな…!!」

「邪魔するに決まってるだろ。鏡見ろ、悪魔の仮面つけたような顔になってるぞ?」

「邪魔をするならお前も潰す!!」

もはや会話が成立していない。

遊矢は完全に何かに取りつかれているようだ。

(まさか…《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》のせいか?)

これ以上話しても無駄だろうと悟った翔太はカードを5枚ドローする。

「できれば、途中で正気に戻ってくれよ。じゃなきゃ、本気でお前を殺さなきゃならなくなるからな」

「「デュエル!!!」」

 

遊矢

手札5

ライフ4000

 

翔太

手札5

ライフ4000

 

「俺のターン…俺はスケール4の《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》とスケール8の《時読みの魔術師》でペンデュラムスケールをセッティング。これで俺はレベル5から7のモンスターを同時に召喚可能。揺れろ魂のペンデュラム!天空に描け光のアーク!ペンデュラム召喚!出でよ我が僕のモンスターよ!《EMハンマーマンモ》!!」

黄色いスーツと黒いシルクハット、鼻にはドラムのようなハンマーをつけた青いマンモスが現れる。

 

EMハンマーマンモ レベル6 攻撃2600

 

「いきなり攻撃力2600のモンスターか」

「このカードは俺のフィールド上にほかのEMが存在しないとき、攻撃できない。俺はこれでターンエンド。そして、《オッドアイズ》の効果発動。サンクチュアリ・フォース!」

光の柱を生み出していた《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が突然自爆する。

「このカードは俺のターンのエンドフェイズ時、自爆することができる。そして、デッキから攻撃力1500以下のペンデュラムモンスター1体を手札に加える。俺はデッキから《相生の魔術師》を手札に加える」

 

遊矢

手札5→3(うち1枚《相生の魔術師》)

ライフ4000

場 EMハンマーマンモ レベル6 攻撃2600

  時読みの魔術師(赤) ペンデュラムスケール8

  

 

翔太

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「《相生の魔術師》?あいつ…新しい魔術師を」

《時読みの魔術師》と《星読みの魔術師》の組み合わせは分かりきっているものの、《相生の魔術師》の効果は居間の翔太にとっては未知数だ。

「(未知数のカードは使わせないようにしないとな)俺のターン!」

 

翔太

手札5→6

 

「このカードは相手フィールド上にのみモンスターが存在するとき、リリースなしで召喚できる。《魔装近衛エモンフ》を召喚」

 

魔装近衛エモンフ レベル5 攻撃1000

 

「このカードをエクシーズ素材とするとき、他の素材は手札の魔装モンスターでなければならない。俺はレベル5の《エモンフ》と手札の《タダカツ》でオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろ、第3の騎士《魔装騎士ブラックライダー》」

 

魔装騎士ブラックライダー ランク5 攻撃2800

 

「ふん…」

《EMハンマーマンモ》以上の攻撃力を持つモンスターが登場しても、動揺していない。

まるで、別の対抗策を持っているようだ。

「バトルだ。俺は《ブラックライダー》で《ハンマーマンモ》を攻撃」

《魔装騎士ブラックライダー》の天秤からミサイル状の隕石が発射される。

隕石によって額を撃ちぬかれたマンモスが静かにその巨体を横にする。

 

遊矢

ライフ4000→3800

 

「俺は手札から《EMシュートビー》の効果発動。俺のEMが戦闘で破壊された時、手札から特殊召喚し、デッキからカードを1枚ドローする」

《EMハンマーマンモ》の肉体が粒子となって消滅すると、その粒子がピンクの蝶ネクタイをつけた遊矢のと同じゴーグルをつけた蜂になる。

その大きさは遊矢の顔と同じくらいだ。

 

EMシュートビー レベル3 守備500

 

「更に《ショートビー》の効果でドローしたカードが魔術師と名のつくペンデュラムモンスターの場合、それを相手に見せることでデッキからカードを1枚ドローする」

遊矢が公開した魔術師は《相克の魔術師》、また翔太が見たことのないモンスターだ。

 

遊矢

手札3→4(うち2枚《相克の魔術師》《相生の魔術師》)

 

EMシュートビー

レベル3 攻撃500 守備500 効果 地属性 昆虫族

「EMシュートビー」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に存在する「EM」モンスターが相手モンスターの攻撃によって破壊され墓地へ送られた時に発動できる。このカードを手札から特殊召喚し、デッキからカードを1枚ドローする。その時ドローしたカードが「魔術師」Pモンスターの場合、それを互いに確認し、更にデッキからカードを1枚ドローする。

 

「くそ…あいつの手札にペンデュラムモンスターが2体も」

フィールドにはすでにセッティングされている《時読みの魔術師》が存在する。

このままではペンデュラム召喚を許してしまう。

「俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

 

遊矢

手札4(うち2枚《相克の魔術師》《相生の魔術師》)

ライフ3800

場 EMシュートビー レベル3 守備500

  時読みの魔術師(赤) ペンデュラムスケール8

  

 

翔太

手札6→2

ライフ4000

場 魔装騎士ブラックライダー(オーバーレイユニット2) ランク5 攻撃2800

  伏せカード2

 

「融合次元…お前たちは絶対に許さない…」

ブツブツと怒りの言葉を口にする。

彼の眼には目の前でデュエルをしている翔太が映っていない。

「俺のターン、ドロー」

 

遊矢

手札4→5

 

「俺は手札から魔法カード《パラレル・ツイスター》を発動。俺のフィールド上に存在する魔法・罠カード1枚を墓地へ送り、フィールドのカード1枚を破壊する。俺は《時読みの魔術師》を墓地へ送り、《魔装騎士ブラックライダー》を破壊する」

《時読みの魔術師》が自身の姿を竜巻に変え、《魔装騎士ブラックライダー》を襲う。

「俺は手札から《魔装守衛ランマル》の効果を発動。俺の魔装騎士が破壊されるとき、代わりに手札のこのカードを墓地へ送ることができる」

紫色の袴を着た、黒いポニーテールの小姓が《魔装騎士ブラックライダー》の前に立ち、刀を竜巻を切り裂く。

「更にこの効果を発動した時、俺のフィールド上に存在するモンスターが1体のみの場合、デッキからカードを1枚ドローできる」

 

魔装守衛ランマル

レベル1 攻撃400 守備400 チューナー 闇属性 戦士族

(1):自分フィールドの「魔装騎士」モンスターが破壊されるときに発動できる。代わりに手札に存在するこのカード1枚を墓地へ送る。

(2):(1)の効果を発動した時、自分フィールド上に存在するモンスターが1体のみの場合に発動できる。自分はデッキからカードを1枚ドローする。

 

「俺はスケール3の《相克の魔術師》とスケール8の《相生の魔術師》でペンデュラムスケールをセッティング」

炎の形のような青い後ろ髪と太陽が描かれた楯が装着された双刃剣を持つ緑と白のローブの魔術師である《相克の魔術師》とピンク色のローブ姿で右目を銀の眼帯で隠し、緑色の宝石が付いた白と赤が基調とした弓を持つ女性の魔術師である《相生の魔術師》が光の柱を生み出す。

「これで…レベル4から7までのモンスターを同時に召喚可能。現れろ、我が僕のモンスター達よ!《EMプラスタートル》、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!」

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500

EMプラスタートル レベル4 攻撃100

 

「《プラスタートル》は1ターンに1度、フィールド上のモンスターを2体まで選択し、レベルを1つ上昇させることができる。俺は《EMシュートビー》のレベルを1つ上げる」

《EMプラスタートル》がレベルを示すマークを《EMシュートビー》の針にハンコでつける。

 

EMシュートビー レベル3→4 守備500

 

「俺はレベル4の《シュートビー》と《プラスタートル》でオーバーレイ!」

2体のモンスターがオーバーレイネットワークを構築するとともに遊矢が発するプレッシャーが更に強大化する。

(ちっ…余計厄介になったな!)

「漆黒の闇より愚鈍なる力に抗う反逆の牙!今、降臨せよ!エクシーズ召喚!現れろ!ランク4!《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》!」

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ランク4 攻撃2500

 

「《ダーク・リベリオン》か…」

かつて、ユートとデュエルをしたときのことを思い出す。

《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》の利点は敵が強大であればあるほど攻撃力を高めることができることだけでなく、《闇のデッキ破壊ウイルス》と《魔のデッキ破壊ウイルス》の媒体とすることができるところにもある。

後者に関しては《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》にも言えることだが。

「《ダーク・リベリオン》の効果発動。オーバーレイユニットを2つ取り除くことで、相手モンスター1体の攻撃力を半分奪う!!トリーズン・ディスチャージ!!」

《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》の翼部が展開し、無数の電気が無数の棘のような形となって《魔装騎士ブラックライダー》を縛り上げようとする。

「2度も同じ手を受ける馬鹿だと思うか?永続罠《デモンズ・チェーン》を発動!」

《デモンズ・チェーン》が左右にある遺跡から発射され、《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》を縛り上げる。

縛り上げると同時に鎖は電気を吸収し、さらに強固なものへと変化していく。

「こいつはフィールドのモンスター1体の攻撃と効果を封じ込める。これで、トリーズン・ディスチャージは不発に終わったな」

鎖によって拘束されたユートの竜を見て、遊矢の怒りが増していく。

「黙れ…融合次元のデュエル戦士め!!お前たちは…俺の手ですべて破壊してやる!!俺は《相生の魔術師》のペンデュラム効果を発動!!1ターンに1度、俺のエクシーズモンスター1体のランクをターン終了時まで俺のレベル5以上のモンスター1体のレベルと同じ数値にすることができる!」

《相生の魔術師》が放った矢が《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》と《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》の胸を貫く。

2体の竜の胸に開いた穴はすぐに修復されるとともに、《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》の眼の色が遊矢の竜と同じになる。

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ランク4→7 攻撃2500

 

「更に《相克の魔術師》のペンデュラム効果を発動!1ターンに1度、俺のエクシーズモンスター1体を同じランクのエクシーズモンスターのエクシーズ素材にすることができる。これで、《ダーク・リベリオン》はランク7のエクシーズモンスターのエクシーズ素材となれる!」

上空に再び現れたオーバーレイネットワークに《相克の魔術師》が自身の武器を投げ入れると、それに引かれるように《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》がその中へ入っていく。

「まさか…遊矢!!」

「俺は《オッドアイズ》と《ダーク・リベリオン》でオーバーレイ!!二色の眼の龍よ!その黒き逆鱗を震わせ、刃向かう敵を殲滅せよ!エクシーズ召喚!いでよ、ランク7!怒りの眼輝けし龍!《覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン》!」

オーバーレイネットワークの中で、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》の肉体が黒に染まっていく。

そして、《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》の肉体は翼部を残しつつ、巨大な2つの鉄球型のパワーユニットがついたアーマーに変化する。

アーマーを装着し、破壊竜と化した《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》は自らオーバーレイネットワークを破壊し、遊矢の元へ舞い降りる。

 

覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン ランク7 攻撃3000

 

「こいつが…痣が俺に見せた竜か!?」

2体の竜の力が宿ったその竜に翔太と《魔装騎士ブラックライダー》が戦慄する。

「このカードはエクシーズモンスターを素材にエクシーズ召喚に成功したターン、1度の場と絵うフェイズ中に3回攻撃することができる!!!」

「何!?」

《覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン》が咆哮するとともに、パワーユニットから大量の電気が漏れ出す。

電気を受けた建造物が次々と爆発を起こし、周囲が火の海と化していく。

「こいつ…あのモンスターに取りつかれたか!?」

「バトルだ!!《オッドアイズ・リベリオン》で攻撃!!反旗の逆鱗ストライク・ディスオベイ!!!」

パワーユニットから供給される膨大なエネルギーが電気となって龍の牙に宿る。

そして、《覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン》の口から螺旋状のブレスが放たれると同時に《魔装騎士ブラックライダー》の肉体をトリーズン・ディスチャージと同じやり方で拘束する。

ブレスは黒き騎士を貫くと、そのまま翔太を巻き込んでいく。

「ぐおおおお!!」

 

翔太

ライフ4000→3800

 

破壊すべきモンスターが消滅しても、ブレスがとまる気配はなく、そのまま翔太を焼き尽くしていく。

「ぐうう…う!!」

 

翔太

ライフ3800→800

 

来ている学ランの焦げるにおいが翔太の鼻に伝わってくる。

このまま炎を受ければ、確実に翔太を焼殺することができる。

にもかかわらず、破壊竜はブレスを止める。

(何…ブレスを??)

「グオオオオオオオオオン!!」

天に向けて激しく咆哮するとともに龍が跳躍する。

そして、その巨体を利用して翔太を踏みつぶそうとする。

「く…俺を舐めているのか!?罠カード《ガード・ブロック》を発動!!」

透明なバリアが翔太の身を包み込む。

攻撃は無理だと判断した《覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン》は電磁浮遊をしながら遊矢の元へ戻っていく。

「これで…3回目の攻撃で俺が受ける戦闘ダメージは0。そして、デッキからカードを1枚ドローする」

 

翔太

手札2→3

 

「…。《相生の魔術師》のペンデュラム効果発動。自分フィールドのカードが相手フィールドのカードの数より多い場合、ペンデュラムスケールが4となる、俺はこれでターンエンド」

 

遊矢

手札5→0

ライフ3800

場 覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン(オーバーレイユニット2) ランク7 攻撃3000

  相克の魔術師(青) ペンデュラムスケール3

  相生の魔術師(赤) ペンデュラムスケール8→4

  

 

翔太

手札3

ライフ800

場 デモンズ・チェーン(永続罠)

 

「ちっ…もらい物の制服をよくも焼いてくれたよな」

やけこげた制服とシャツを脱ぎ捨てる。

手袋は燃え尽きたためか、左手の痣が露出する。

(こいつは危険だ。このままだと町中を破壊して回るぞ。止めねえと…たとえ殺してでも)

もはや目の前にいる人間は自分が知っている榊遊矢ではない。

もはや魂を竜に奪われた敵。

敵であるならば容赦できない。

こころの中で納得させていく。

「殺す…俺はお前を。榊遊矢、貴様を殺す!!!」

必殺の意志を固めると同時に、翔太のエクストラデッキが青白い光を放ち始める。

それと同時に、翔太の脳裏に浮かんだのはとんがり帽子を深々と被り、ボロボロな茶色い服とブーツを着た金髪の少年。

「俺のターン!!!」

 

翔太

手札3→4

 

「俺は手札から魔法カード《戦士の生還》を発動。墓地から《魔装槍士タダカツ》を手札に戻す」

翔太の脳裏には勝利の方程式が構築されつつある。

明確な殺意と共に。

第4の騎士が何よりも欲する意志だ。

「俺はスケール2の《タダカツ》とスケール9の《ムネシゲ》でペンデュラムスケールをセッティング!来たれ、時の果てに眠りし英雄の魂。漆黒の魂と契約し、封印から解き放たん!ペンデュラム召喚!現れろ、闇の名馬《魔装獣ユニコーン》!」

 

魔装獣ユニコーン レベル4 攻撃1600

 

「更にこのカードは通常召喚できないが、手札・墓地に存在する魔装騎士を除外することで、手札から特殊召喚できる。俺は墓地の《ブラックライダー》を除外し、現れろ、死の騎士を喚起させる無名なる騎士。ペンデュラムチューナー《魔装騎士ケントゥリア》」

ローマ帝国の騎士が装備する組み立て式のプレートアーマーを装備した騎士が現れる。

フルフェイスの仮面がついた兜を装備しているためか、顔は全く見えない。

 

魔装騎士ケントゥリア レベル2 攻撃300(チューナー)

 

魔装騎士ケントゥリア

レベル2 攻撃300 守備500  無属性 戦士族

【Pスケール:青4/赤4】

「魔装騎士ケントゥリア」の(1)のP効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードをPゾーンに置いた時に発動できる。このカードを破壊し、自分のエクストラデッキに表向きで存在するPモンスター1体を自分のPゾーンに置く。

【チューナー:モンスター効果】

このカードは通常召喚できない。

このカードは自分の手札・墓地に存在する「魔装騎士」モンスター1体をゲームから除外することで手札・エクストラデッキから特殊召喚できる。この効果で除外されたカードは次の自分のターン終了時にデッキに戻る。

(1):「魔装騎士ケントゥリア」は自分フィールド上に1枚しか存在できない。

(2):このカードは召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した次の相手のターン終了時までしかS素材とすることができない。この効果は無効化できない。

(3):1ターンに1度、自分のエクストラデッキに表向きで存在するPモンスター1体を対象に、以下の効果から1つを選択して発動できる

●選択したカードを自分の手札に加える。

●選択したカードを裏向きにしてエクストラデッキに戻す。

 

「ペンデュラムチューナー…だと!?それに、属性がない!?」

自分の知らない未知のモンスターに怒りに囚われた遊矢が驚愕する。

「俺はペンデュラムゾーンに存在するレベル5の《タダカツ》とレベル3の《ムネシゲ》にレベル2の《ケントゥリア》をペンデュラムチューニング!!」

《魔装騎士ケントゥリア》が透明な2つのチューニングリングに変化し、《魔装槍士タダカツ》と《魔装剣士ムネシゲ》がその中へ入っていく。

「死者と生者を整理せし漆黒の力、今こそ惰生をむさぼりし魂を無へ落とせ!ペンデュラムシンクロ!!現れろ、魂を無へ導く者、《魔装騎士HADES》!」

チューニングリングをくぐって現れた《魔装騎士ペイルライダー》を包む鎧が砕け散る。

そして、翔太の脳裏に現れたあの金髪の少年の姿へと変化していく。

 

魔装騎士HADES レベル10 攻撃3000

 

「ペンデュラム…シンクロ…」

「ああ、こいつが出た時点はお前の敗北は確定した」

《魔装騎士HADES》が右手を天に掲げる。

すると、遊矢のフィールドに存在する2体の魔術師が生み出した光が突然巨大な火柱となる。

魔術師たちはその炎に焼かれ、消滅した。

更には《覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン》の影からもう1体の《覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン》が召喚される。

2体の竜は互いに首を牙で貫かれる形で消滅した。

「な…何…!?」

「こいつはシンクロ召喚に成功した時、フィールド上のカードを3枚まで破壊することができる。終わりだ…」

《覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン》が破壊されたことで、あれほど怒りに飲まれていた遊矢が魂を抜かれたかのように静かに立ち尽くす。

《魔装獣ユニコーン》が最初に攻撃し、遊矢を蹴り飛ばす。

あまりにも一角獣の足の力が強かったのか、蹴り飛ばされた遊矢は路上を転げまわる。

 

遊矢

ライフ3800→2200

 

「とどめを刺せ…《HADES》!」

《魔装騎士HADES》が手を倒れている遊矢にかざすと、彼の周囲に大量のナイフが現れる。

手を握ると同時に、そのナイフたちは一斉に遊矢をハチの巣にしようと襲い掛かる。

「駄目だよ、君まで怒りに飲み込まれたら」

「何!?」

急に激しい風が起こり、すべてのナイフが飛ばされていく。

それらはすべて地面に刺さり、巻き添えを受ける形で怪我をする人が出ないようにされていた。

 

遊矢

ライフ2200→0

 

魔装騎士HADES(ハデス)

レベル10 攻撃3000 守備2000 シンクロ 無属性 戦士族

【Pスケール:青4/赤4】

(1):1ターンに1度、自分のPゾーンに存在するこのカードを破壊することで発動できる。自分の手札・エクストラデッキに存在するPモンスターのチューナー1体を表側守備表示で特殊召喚する。

(2):このカードはエクストラデッキへ送られるとき、裏向きとなる。

【モンスター効果】

Pモンスターのチューナー+Pゾーンに存在するモンスター2体

「魔装騎士HADES」の(1)のモンスター効果は1ターンに1度しか発動できない。

このカードはP召喚することができない。

(1):このカードのS召喚に成功した時、フィールド上に存在するカードを3枚まで破壊することができる。

(2):このカードよりも高い攻撃力を持つモンスターと戦闘を行う時、このカードはその戦闘では破壊されず、戦闘を行った相手モンスターをダメージ計算後に破壊する。その後、相手に1000ダメージを与える。

(3):モンスターゾーンのこのカードが戦闘・効果によって破壊された場合に発動できる。自分のPゾーンに存在するカードをすべて破壊し、このカードを自分のPゾーンに置く。

 

「お前は…」

声がした方向に目を向ける。

そこには侑斗が立っていた。

「やぁ、久しぶりだね。翔太君」




新たに無属性というのを追加してみました!
アニメGXで登場したクリアーモンスターのように、属性を持たないのが特徴です。
そして、翔太が明確な殺意を持ったことで生まれた新たなモンスター、《魔装騎士HADES》。
このモンスターが翔太に何をもたらすのか?


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第31話 天使の羽根を得た魔剣士

「お前は…」

忘れもしない、TDCの前に戦ったガスタ使いだ。

服装は全く違うが、それでも彼から発するオーラのようなものは一緒だ。

「ペンデュラムシンクロとペンデュラムエクシーズか…。ペンデュラム召喚はほかの召喚法と組み合わせることで真価を発揮できるのか」

倒れている遊矢の元へ向かう。

そして、先ほど遊矢が召喚した《覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン》を手に取る。

(なるほど、これが《ダーク・リベリオン》がペンデュラムの力を得た姿…)

少しだけ見ると、侑斗はそのカードを遊矢のデュエルディスクに戻す。

こっそりと隠していたカードを2枚紛れ込ませる形でだが。

「翔太君、遊矢君を運ぶの、任せてもいいかな?」

「はぁ…俺は誰にも指図される覚えはねえぞ?それにお前は何者だ?」

遊矢を抱えさせられ、不満たっぷりの声で質問する。

「僕?僕は剣崎侑斗。通りすがりのデュエリスト…ってところかな?」

「何…侑斗だと??」

名前を聞いた翔太の脳裏にユートの姿が浮かぶ。

偶然なのか何か理由があるのか、名前が彼と同じだ。

「え?僕の名前、聞いたことがあるの?」

「そういう訳じゃねえけどな…(通りすがりのデュエリストだって…?キザなことをいいやがる)」

心の中で悪態をつきながら、気を失ったままの遊矢を見る。

もし侑斗に制止されなければ、本気で殺してしまうところだった彼を。

(《HADES》…こいつが俺のあいつへの殺意を増幅させたのか?)

「君のデュエルディスクに権現坂君の位置データを送ってあるから、そこへ彼を連れて行っておいて」

そう言うと、侑斗は近くに止めていたバイクに乗る。

薄い緑を基調としたミニモトクロスレーサーで、なぜかディスプレイとデュエルディスク、そしてサイドカーがついている。

細部の色彩は青になっていて、車体の左右には緑色の羽根が左右についている白いライオンの頭部を模ったエンブレムがついている。

(ん…このエンブレム、確か俺たちが載っていたバスの運転手やオベリスクフォースと戦っていた奴らのバッジにもあったな)

「じゃあ、僕はそろそろ行かないと」

「待て!お前…本当に何者なんだ?」

「…この大会が終わったら話すよ。ああ、それからバスはちゃんと本社に到着してるから、安心してね」

そう言うと、ヘルメットをつけてDホイールを発進させる。

方角から考えると、どうやら氷山エリアへ向かうようだ。

(ちっ…あの仮面野郎どもといい《HADES》といい《オッドアイズ・リベリオン》といい、一体何が起こってやがんだ…?)

 

一方、氷山エリアでは…。

「あ、あ、ああ…」

柚子が足を震わせながら、氷の塊まで1人の少年に追い詰められている。

服装はいつものノースリーブの制服ではなく、セレナが着ていた制服だが。

追い詰めている少年は顔立ちは遊矢そっくりだが、紫色の髪と貴族風の服装で、赤いマントをつけている。

「助けて…遊矢…」

「おとなしく僕についてきてよ、じゃないと…彼らみたいになるよ?」

柚子の手に握られる2枚のカードに指を差す。

1枚は青い羽毛のジャンバーで、そばかすのある茶髪の少女が描かれていて、もう1枚には黒い肌でインド風の服装をした小柄な少年が描かれている。

彼らのようになるということは、おそらく翔太が以前見たように、カードに封印されるということだろう。

柚子は少年に圧倒されている。

今できるのはどこにいるのか分からない幼馴染に助けを求めることだけだ。

「うるさいなぁ、黙らないと…」

「悪いけど、君に彼女を渡すわけにはいかない」

「何?」

バイクのエンジン音が大きくなる。

「ウィンダ!!」

「うん!」

ウィンダの名前を呼ぶと、すぐにそばで精霊状態になっていた彼女が実体化する。

服装は変化していないが、成長したためか、背が伸び、かわいらしさよりも美しさが目立つようになっている。

実体化するとすぐにウィンダは少年に向けて風を飛ばす。

「うわっ、お前は…剣崎侑斗!!」

風によって上空へ浮き上がったのを確認すると、侑斗を乗せたバイクが柚子の傍まで行く。

「良かった、無事で…」

「…」

侑斗から手を差し伸べられるが、柚子はガタガタ震えたまま動けずにいる。

無理もない、先ほどまで恐ろしい目に合っていたのだから。

何も言わず、彼女をサイドカーに乗せていると、少年がウィンダの風を力づくで振り払い、侑斗の前まで向かう。

「剣崎侑斗…」

「君は…ユーリ君でだね。融合次元の。顔立ちだけ見たら、遊矢君に似ているね」

バイクに乗ったまま、じっとユーリを見る。

ウィンダも実体化したまま、侑斗の隣へ行く。

「全く、プロフェッサーの命令で柊柚子を連れて行かなきゃいけないんだ。どうして邪魔をするのかなぁ?」

「間違っているからさ、プロフェッサーが」

「間違っている…どうしてなのさ?すべての次元を統一するという高潔な目標のどこに間違いがあるのかな?」

「君を倒したら、ゆっくり教えてあげるよ。君のようなタイプはこうしなきゃ聞かないということは経験済みだから」

バイクに装着されているデュエルディスクを外し、左腕に装着する。

ユーリも自身のデュエルディスクを展開しようとすると、急に彼の背後から10人近くのオベリスクフォースが現れる。

それと同時に、ユーリのデュエルディスクに通信が入る。

(ユーリ、任務は中止だ)

「プロフェッサー?」

(あの男、剣崎侑斗は底知れぬ男だ。そして…お前にはもっと重要な役目がある)

「…プロフェッサーの仰せのままに。運が良かったね、剣崎侑斗」

通信を切ると同時に、ユーリがデュエルディスクにコマンドを入力する。

すると、彼の体が青い光に包まれる。

「ユーリ…」

「力が手に入ったら、改めて挑戦させてもらうよ。彼らに殺されないようにね?」

遊び相手に別れの挨拶をし、ユーリは光とともに消えて行った。

「ウィンダ…柚子ちゃんとトルネイダーをお願い」

「大丈夫なの、ユウ?1人だけで…」

「うん、それに…ヴァプラ隊ももうすぐ来るから」

そう言うと、侑斗はオベリスクフォース達の元へ歩いていく。

「プロフェッサーのために、お前には消えてもらう!!」

オベリスクフォースの2人が所持していたロケットランチャーを発射する。

侑斗を貫こうと突撃する2つのミサイル。

しかし、風の目によって動体視力が格段に上達した侑斗はわずかに身をそらすだけでそれを回避した。

獲物を貫けなかった2つのミサイルはそのまま上空を舞い、後方のビルに命中した。

「全く…ソリッドビジョンで見えないと思うけど、ここは街中なんだよ?危ないじゃないか」

「くそ…!!やっちまえ!!」

5人のオベリスクフォースが侑斗を包囲する。

デュエルディスクの機能限界により、最大でも5VS5までしか対応できていない。

残りの5人がバイクを襲おうとするが、ウィンダが起こした風によって何度も吹き飛ばされる。

「バトルロイヤルルールか…じゃあ、僕は最初は手札10枚、ライフ8000でやるよ。そうでないと、ハンデがありすぎるからね」

「構わないぜ…いくらお前がプロフェッサーすら恐れるデュエリストとはいえ、5人相手なら敵わないからな!!」

「「デュエル!!」」

 

侑斗

手札10

ライフ8000

 

オベリスクフォースA

手札5

ライフ4000

 

オベリスクフォースB

手札5

ライフ4000

 

オベリスクフォースC

手札5

ライフ4000

 

オベリスクフォースD

手札5

ライフ4000

 

オベリスクフォースE

手札5

ライフ4000

 

「僕の先攻、僕はカードを2枚伏せ、《霊獣使いの長老》を召喚」

緑のマントとズボン、茶色い袴のような服を着た白髪の老人が書物を読みながらフィールドに現れる。

 

霊獣使いの長老 レベル2 攻撃200

 

「このカードの召喚に成功したターン、僕は追加で霊獣モンスターを召喚できる。僕は更に《精霊獣カンナホーク》を召喚」

《霊獣使いの長老》が草笛を吹くと、上空から雷を宿した緑色の鷹が降りてくる。

 

精霊獣カンナホーク レベル4 攻撃1400

 

「僕は手札から永続魔法《魂吸収》を発動。これにより、僕はこれからカードが除外されるたびに、1枚につき500ライフを回復する。そして《カンナホーク》の効果発動。1ターンに1度、デッキから霊獣カード1枚を除外し、2回目の僕のターンのスタンバイフェイズ時にそのカードを手札に加える。僕はデッキから《精霊獣アペライオ》を除外する」

デッキから《精霊獣アペライオ》が排出されると、デュエルディスクに増設された除外スペースに収納される。

これは聖霊獣騎デッキを手にして、除外を多用することになったため、自分の協力者に依頼して改造してもらったためだ。

「聖霊獣騎は僕のフィールド上に存在する素材となるモンスターを除外することで融合する!僕は《長老》と《カンナホーク》で融合!」

《霊獣使いの長老》が口笛を吹くと、《精霊獣カンナホーク》が彼を乗せて上空へ飛んでいく。

「希望を受けつぎし長よ、雷鳴の鷹よ、霊獣の契約の元、今こそ1つに!融合召喚!炎の精霊獣騎、《聖霊獣騎アペライオ》!!」

すると、どこからか金髪の縦ロールで緑が基調で腹部を露出させた服の少女、《霊獣使いレラ》を乗せた真紅の獅子が降りてくる。

獅子の体のいたるところには緑色の蔓や草でできた装飾が施されていて、自らが宿している炎の影響を一切受け付けていない。

 

聖霊獣騎アペライオ レベル6 攻撃2600

 

「融合なしで融合召喚だと…!?」

「更に《魂吸収》の効果で、僕はライフを1500回復するよ」

 

侑斗

ライフ8000→9500

 

「更にこのカードは僕のフィールド上に精霊獣騎モンスターが特殊召喚されたターンに1度、手札から特殊召喚できる。《霊獣使いアトゥイ》を特殊召喚」

オレンジのショートヘアで緑色の丈の短いタンクトップ風の服と青いショートパンツを身に着けた少女が現れる。

 

霊獣使いアトゥイ レベル5 攻撃1400

 

「このカードの特殊召喚に成功した時、墓地または除外されている霊獣モンスター1体を守備表示で特殊召喚できる!僕は《精霊獣カンナホーク》を特殊召喚!」

《霊獣使いアトゥイ》がその場で舞を披露すると、上空に次元の裂け目が出現し、そこから《精霊獣カンナホーク》が飛び出してくる。

 

精霊獣カンナホーク レベル4 守備600

 

霊獣使いアトゥイ

レベル5 攻撃1400 守備1800 チューナー 風属性 サイキック族

自分は「霊獣使いアトゥイ」を1ターンに1度しか特殊召喚できない。

「霊獣使いアトゥイ」の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードは自分フィールド上に「精霊獣騎」モンスターの特殊召喚に成功したターン、手札から特殊召喚できる。

(2):このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、自分の墓地または除外されている融合モンスター以外の自分の「霊獣」モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールド上に表側守備表示で特殊召喚する。

 

「くっそぉ、また精霊獣と霊獣使いが…!」

「そして、《カンナホーク》の効果を発動。今度は《精霊獣ペトルフィン》を除外する」

大きな青い宝石でできた飾りを額につけ、銀のアクセサリーを体の至る部分につけたピンク色のイルカが次元のはざまに現れた青い海の中へ飛び込んでいく。

それと同時に、《魂吸収》のカードが光り、侑斗の体を癒していく。

 

侑斗

ライフ9500→10000

 

「僕は《聖霊獣騎アペライオ》と《アトゥイ》、《カンナホーク》で融合!少女を乗せし灼熱の獅子よ、北の海の舞姫よ、雷鳴の鷹よ、霊獣の契約の元、今こそ1つに!融合召喚!光纏いし獣の王者、《聖霊獣騎ガイアペライオ》!!」

(お願いします、皆さんの力を貸してください!!!)

なぜか侑斗の耳にウィンダ以外の少女の声が聞こえる。

聞こえたのはフィールドからで、そこにいる少女としたら《霊獣使いレラ》しかいない。

それにこたえるように、《霊獣使いアトゥイ》と《精霊獣カンナホーク》の姿が光に代わり、《精霊獣騎アペライオ》を包み込んでいく。

一瞬まぶしい光が発生した後、《精霊獣騎ガイアペライオ》が現れる。

 

聖霊獣騎ガイアペライオ レベル10 攻撃3200

 

侑斗

ライフ10000→11500

 

「僕はカードを3枚伏せ、ターンエンド」

 

侑斗

手札10→3

ライフ11500

場 聖霊獣騎ガイアペライオ レベル10 攻撃3200

  魂吸収(永続魔法)

  伏せカード3

 

オベリスクフォースA

手札5

ライフ4000

場 なし

 

オベリスクフォースB

手札5

ライフ4000

場 なし

 

オベリスクフォースC

手札5

ライフ4000

場 なし

 

オベリスクフォースD

手札5

ライフ4000

場 なし

 

オベリスクフォースE

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「くっそぉ、1ターン目からレベル10の融合モンスターを…!俺のターン!俺は手札から魔法カード《融合》を発ど…!?」

フィールドに現れた《融合》のソリッドビジョンが炎に包まれ、灰となる。

「僕は《ガイアペライオ》の効果と永続罠《マクロコスモス》を発動したよ。《マクロコスモス》は墓地へ送られるカードを除外し、《ガイアペライオ》は手札の霊獣カード1枚を除外することで、相手のカード効果を無効にし破壊する」

「うぐぐぐ…」

苦しげな声を上げながら、《融合》のカードをカードケースにしまう。

「《融合》と僕の手札の《精霊獣ラムペンダ》を除外したことで、僕は1000ライフを回復するよ」

 

侑斗

ライフ11500→12500

 

「くっ…俺は手札から《古代の機械猟犬》を召喚!」

 

古代の機械猟犬 レベル3 攻撃1000

 

「このカードは1ターンに1度、相手フィールド上にモンスターが存在するとき、相手に600のダメージを与える!」

《古代の機械猟犬》が口に内蔵されているビーム砲を発射する。

侑斗は真正面からビームを受けるが、彼の身を包んでいる薄い風の膜がダメージを無力化した。

 

侑斗

ライフ12500→11900

 

「僕は永続罠《霊獣の以心伝心》を発動。相手ターンに1度、除外されている僕の霊獣カード1枚につき、300のダメージを与えることができる!」

「何ぃ!?」

次元のはざまから《精霊獣アペライオ》が現れ、オベリスクフォースEを炎の爪で切り裂く。

「除外されている僕の霊獣カードは7枚。よって、2100ポイントのダメージだ!」

「ぐあああああ!!」

 

オベリスクフォースE

ライフ4000→1900

 

霊獣の以心伝心

永続罠カード

「霊獣の以心伝心」はフィールド上に1枚しか表側表示で存在できない。

(1):1ターンに1度、相手ターンのメインフェイズに発動できる。ゲームから除外されている自分の「霊獣」カード1枚につき300のダメージを相手に与える。

 

「ぐぅぅ…俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド!」

 

侑斗

手札3→2

ライフ11500

場 聖霊獣騎ガイアペライオ レベル10 攻撃3200

  魂吸収(永続魔法)

  マクロコスモス(永続罠)

  霊獣の以心伝心(永続罠)

  伏せカード1

 

オベリスクフォースA

手札5→2

ライフ4000

場 古代の機械猟犬 レベル3 攻撃1000

  伏せカード1

 

オベリスクフォースB

手札5

ライフ4000

場 なし

 

オベリスクフォースC

手札5

ライフ4000

場 なし

 

オベリスクフォースD

手札5

ライフ4000

場 なし

 

オベリスクフォースE

手札5

ライフ1900

場 なし

 

「くっそう、何なんだコイツは!!」

オベリスクフォースBは汗をかきながら、侑斗を見る。

《精霊獣騎ガイアペライオ》の効果は手札に霊獣カードがあれば、それを除外することで何度でも相手のカード効果の発動を妨害できる驚異的なものだ。

しかし、今の侑斗の手札は2枚。

仮にすべて霊獣カードだったとしても、使えるのはあと2回だ。

ただし《霊獣の以心伝心》により、今デュエルをしている5人の中から2人は確実に倒されてしまう。

「俺は手札から魔法カード《サイクロン》を発動!!《霊獣の以心伝心》を破壊する!!」

「じゃあ僕は手札の《霊獣の誕生》を除外して、その発動を無効にするよ」

発動と共に発生した竜巻が《聖霊獣騎ガイアペライオ》の獅子の口から放たれた火球により、一撃で霧散してしまう。

「そして、カードが除外されたことで僕のライフが回復する」

 

侑斗

ライフ11500→12500

 

「更に僕はゲームから除外した魔法カード《霊獣の誕生》の効果を発動。このカードがゲームから除外された時、自分の墓地にカードがなく、除外されている僕の霊獣モンスターが4体以上存在する場合、デッキからカードを2枚ドローする」

「何!?このタイミングで手札補充だと??」

 

侑斗

手札2→3

 

霊獣の誕生

通常魔法カード

「霊獣の誕生」の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に「霊獣」モンスターが存在する場合にのみ発動できる。自分の墓地に存在するカードを3枚までゲームから除外する。

(2):このカードがゲームから除外された時、自分の墓地にカードがなく、自分の「霊獣」モンスターが4体以上ゲームから除外されている場合に発動する。自分はデッキからカードを2枚ドローする。

 

(何やってんだよこの野郎!!手札補充の手助けをしやがって…!!)

オベリスクフォースAが心の中でBを責めつつ、伏せているカードを見る。

そのカードは永続罠《デモンズ・チェーン》で、《聖霊獣騎ガイアペライオ》の効果と攻撃を封じ込めることができるカードだ。

ただし、手札が3枚になったことで更にそのカードを発動しづらくなってしまった。

「《霊獣の以心伝心》の効果で、5人目のあなたには退場してもらう!」

再び次元のはざまが発生し、そこから8つの風の弾丸がオベリスクフォースEに向けて発射される。

「うわあああああ!!!」

 

オベリスクフォースE

ライフ1900→0

 

「くっそーもう1人やられたのか!!?」

バイクを襲おうとしていたオベリスクフォースの1人が仇を討つために乱入しようとする。

「やめろ!!お前、乱入ペナルティを忘れたのか!!?」

その言葉に彼がハッとする。

舞網チャンピオンシップでは、デュエルをしていない状態で他の日とのデュエルに乱入した場合、ペナルティとして2000ものダメージを受ける。

そして、《霊獣の以心伝心》の効果を受ければ、受けるダメージは2400。

ペナルティによって残りライフ2000になった状態では何もできないままお陀仏となってしまう。

(乱入ペナルティのことを知っている…。ということは)

乱入ペナルティについては3回戦中に乱入してきたオベリスクフォースが知るはずのないルールだ。

それを知っているということはある可能性を意味する。

(LDSに…内通者が?)

「俺は…モンスターを裏守備表示で召喚。カードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

侑斗

手札3

ライフ12500

場 聖霊獣騎ガイアペライオ レベル10 攻撃3200

  魂吸収(永続魔法)

  マクロコスモス(永続罠)

  霊獣の以心伝心(永続罠)

  伏せカード1

 

オベリスクフォースA

手札2

ライフ4000

場 古代の機械猟犬 レベル3 攻撃1000

  伏せカード1(《デモンズ・チェーン》)

 

オベリスクフォースB

手札5→2

ライフ4000

場 裏守備モンスター1

  伏せカード1

 

オベリスクフォースC

手札5

ライフ4000

場 なし

 

オベリスクフォースD

手札5

ライフ4000

場 なし

 

(まずい…まずいぜ、こいつは!!)

あまりの焦りと緊張でDの手が汗でぬれ、手札を握る手に力がこもる。

このまま侑斗が《霊獣の以心伝心》の効果を1人に向けて2回使用したら、確実に1人倒される。

更に他のメンバーは助けに行こうとすれば、何もできないままEと同じ運命をたどるのは明白だ。

そのカードを破壊しようにも《精霊獣騎ガイアペライオ》に妨害されてしまう。

「俺のターン!!」

しかし、完璧な戦略であるわけではない。

何らかの手で《霊獣の以心伝心》が破壊されたら、逆に侑斗が苦戦することになる。

「俺は手札から魔法カード《手札抹殺》を発動!」

「墓地肥やしはさせない!手札の《霊獣使いレラ》を除外し、発動を無効にする!」

発動宣言を聞き、Bが笑みを浮かべる。

「それを待っていた!カウンター罠《天罰》を発動!手札1枚を捨てることで、モンスター効果の発動を無効にする!」

上空に雷熊が発生し、落雷が《精霊獣騎ガイアペライオ》を襲う。

(きゃ!!?ユウ様、助けてください!!)

また聞こえた少女の声。

レラとしたら、侑斗にはいつも自分で作った庵に籠り、風を調べながら気ままに過ごしている優男である《ガスタの風詠みレラ》しか頭に浮かばない。

「(おっと、考える前に…!)カウンター罠《魔宮の賄賂》!相手にカードを1枚ドローさせる代わりに、相手の魔法・罠カードの発動を無効にし、破壊する!」

《魔宮の賄賂》から飛び出した巨大な金貨が雷を受け止める。

「止められただと!!?くっそーーー!」

(ふう…ユウ様、助かりました!)

「ええっと…レラちゃんで良かったんだっけ?」

(はい!ひいおじいさまの友達で、ガスタの英雄と聞いています!でもびっくりしましたよ!風占いをしていたら、私のカードを手にするユウ様が見えたので)

「レラ…話はあとにしよう。早くこの状況を脱しないと」

(わかりました、ユウ様!)

敬礼をした後、再びレラはオベリスクフォース達を見る。

新しいデッキを手にするとともに、また新たな精霊、更にいうとガスタの末裔と会うことになる。

人と精霊の魂を持つ侑斗とガスタの縁は想像以上にあるようだ。

「《魂吸収》の効果で、僕は合計2500ライフを回復する」

 

侑斗

ライフ12500→15000

 

手札から墓地へ送られたカード

・古代の機械獣

 

「ぐぅぅ…また防がれた!!」

5人がかりで挑んでいるにもかかわらず、侑斗の動きを封じることができない。

「こ、こうなったらここで逃げたほうが…」

「馬鹿!俺たちには逃げるという選択肢がないんだぞ!!」

Aが焦りながらそう口にする。

オベリスクフォースはアカデミアの中でもエリートに位置する。

仮にその自分たちがこのまま怖気づいて逃げてしまうと、もはや自分たちに未来はない。

嘲笑を受けるだけでなく、下手をすればユーリかプロフェッサーに粛清されてしまうかもしれない。

「5人がかりでも僕を倒せないのか…」

「く…バカにしやがって!!」

精神的に追い詰められていた彼らは軽い挑発にも過敏に反応してしまう。

「相手フィールド上にのみモンスターが存在するとき、このカードは手札から特殊召喚できる!《古代の機械偵察兵》を特殊召喚!」

胴体は《古代の機械猟犬》と同じだが、頭部に巨大なデジカメ、胴体の両サイドにはピストルがついている異様な機械が現れる。

 

古代の機械偵察兵 レベル3 攻撃1000

 

「このカードはアンティーク・ギアモンスターの2体分のリリースとすることができる。俺は《古代の機械偵察兵》をリリース!現れろ、古の技術の結晶!《古代の機械守護者》!!」

《古代の機械偵察兵》が白い光となると、その中から両腕にバリア展開装置付きのタワーシールドを装備した《古代の機械巨人》が現れる。

 

古代の機械守護者 レベル8 攻撃0

 

古代の機械偵察兵(アンティーク・ギアサーチャー)

レベル3 攻撃1000 守備1500 効果 地属性 機械族

「古代の機械偵察兵」は1ターンに1度しか(1)の方法で特殊召喚することができない。

(1):自分フィールド上にモンスターが存在せず、相手フィールド上にモンスターが存在するとき、このカードは手札から特殊召喚することができる。

(2):「アンティーク・ギア」モンスターをアドバンス召喚する場合、このカードは2体分のリリースとする事ができる。

 

「このカードは召喚・反転召喚に成功した時、守備表示となる」

《古代の機械守護者》が緑色のバリアを展開させながら、その場で片膝をつける。

 

古代の機械守護者 レベル8 攻撃0→守備3000

 

侑斗

ライフ15000→15500

 

「そしてこのカードが存在する限り、俺たちのアンティーク・ギアモンスターは戦闘では破壊されない!!これで時間を稼いでやる!!」

《古代の機械守護者》の背中に追加で装着されたウェポンラックが開き、そこから茶色い放熱板のようなものが複数射出される。

そして、そのうちの3基が《古代の機械猟犬》を包むように緑色のバリアを展開させた。

 

古代の機械守護者(アンティーク・ギアガーディアン)

レベル8 攻撃0 守備3000 効果 地属性 機械族

このカードはフィールド上に存在するとき、カード名を「古代の機械巨人」としても扱う。

(1):このカードは召喚・反転召喚に成功した時、守備表示となる。

(2):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分フィールド上に存在する「アンティーク・ギア」モンスターは戦闘では破壊されない。

 

「更に俺は手札から魔法カード《機械複製術》を発動!このカードは俺のフィールド上に存在する攻撃力500以下の機械族モンスター1体と同名のモンスターを2体までデッキから特殊召喚できる!!」

「僕は《霊獣の以心伝心》の効果を発動。4人目の人に2700のダメージを!」

再び次元の裂け目が出現し、9つの風の弾丸がDを貫いていく。

「うわああああ!!」

 

オベリスクフォースD ライフ4000→1300

 

「だ、だが…もう《機械複製術》は止められん!!」

上空に茶色い装甲でできた飛空艇が出現し、そこから2つのコンテナが投下される。

コンテナが開くと、そこから2体の《古代の機械守護者》が現れる。

 

古代の機械守護者×2 レベル8 守備3000

 

侑斗

ライフ15500→16000

 

「お…《ガイアペライオ》の効果を発動しなかったぞ!!」

初めてカード効果を妨害されなかったことで、AからCの表情が明るくなる。

もう手札には霊獣カードがない。

これからこれまでの苦痛を倍にして返してやろう。

そのようなことを考えながら、Cは次の手を打つ。

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド!」

「ここで俺は永続罠《デモンズ・チェーン》を発動!」

待ってましたと言わんばかりにAが《デモンズ・チェーン》を発動すると、《精霊獣騎ガイアペライオ》が鎖で拘束される。

「これで、お前の切り札である《ガイアペライオ》の攻撃と効果はおしまいだ!!」

 

侑斗

手札3

ライフ16000

場 聖霊獣騎ガイアペライオ(《デモンズ・チェーン》の影響下) レベル10 攻撃3200

  魂吸収(永続魔法)

  マクロコスモス(永続罠)

  霊獣の以心伝心(永続罠)

 

オベリスクフォースA

手札2

ライフ4000

場 古代の機械猟犬 レベル3 攻撃1000

  デモンズチェーン(永続罠)

 

オベリスクフォースB

手札2→1

ライフ4000

場 裏守備モンスター1

 

オベリスクフォースC

手札5→1

ライフ4000

場 古代の機械守護者×3 レベル8 守備3000

  伏せカード1

 

オベリスクフォースD

手札5

ライフ1300

場 なし

 

「ば、バカ野郎!!《霊獣の以心伝心》が残っていたら、俺がくたばってしまうだろ!?」

「黙れ!!何もしていないくせにギャーギャーわめくな!」

「《霊獣の以心伝心》の効果発動!」

言い争いを始めるオベリスクフォース達の注意をデュエルに向けるため、侑斗はすぐに効果発動を宣言する。

スタンバイフェイズでなっても、Dにできることは何もない。

9つの風の弾丸に撃ちぬかれた哀れな男は静かに倒れた。

 

オベリスクフォースD

ライフ1300→0

 

「これで…4人目の人のターンは終了。僕のターンだね…」

「…ああ!!さっさとドローしろーーー!!」

5人中2人が何もできずに倒され、残り3人のオベリスクフォースがやけくそ気味に吐き捨てる。

「僕のターン、ドロー」

 

侑斗

手札3→4

 

「僕は手札から魔法カード《カオス・グリード》を発動。僕の墓地にカードがなく、僕のカードが4枚以上ゲームから除外されているとき、デッキからカードを2枚ドローする。そして、手札から魔法カード《ハーピィの羽根箒》を発動!これで、あなた方のフィールド上に存在する魔法・罠カードをすべて破壊する!」

《ハーピィの羽根箒》から発生する一陣の風がオベリスクフォース達のフィールドを通過する。

すると、急に彼らのフィールド上に存在する魔法・罠カードのソリッドビジョンが真っ二つに切り裂かれ、破壊されてしまう。

「これで《ガイアペライオ》は拘束から解き放たれる!」

「はふう、助かりました、ユウ様」

 

破壊された伏せカード

・古代の機械廃棄融合

 

侑斗

ライフ16000→19000

 

破壊された伏せカードを見て、Cがにやりと笑う。

「馬鹿め!!罠にかかりやがって!!」

「罠…?」

「俺は破壊された罠カード《古代の機械廃棄融合》を発動!こいつが相手のカード効果によってフィールドから離れたとき、フィールドに存在するモンスターを素材にアンティーク・ギア融合モンスターを融合召喚する!俺が素材とするのは2体の《古代の機械守護者》と《古代の機械猟犬》!!」

3体のアンティーク・ギアモンスターが特殊な信号を受け、ネジ一本になるまで自動的に分解されていく。

「古代の技術が産み落とした最強の巨人よ、そのオイル一滴までプロフェッサーにささげよ!!融合召喚!現れろ、《古代の機械究極巨人》!!!」

3体のモンスターのパーツが集まっていき、自動的に組み立てられていく。

そして、完成したのは下半身が馬型の機械で上半身が《古代の機械巨人》という少々いびつな巨人だった。

左腕には追加兵装として大型クローが装着されている。

「更に、相手フィールド上の魔法・罠カードをすべて破壊する!」

《古代の機械究極巨人》が左腕のクローで侑斗の魔法・罠カードをすべて切り裂く。

 

古代の機械究極巨人 レベル10 攻撃4400

 

古代の機械廃棄融合

通常罠カード

(1):自分の魔法・罠ゾーンにセットされているこのカードが相手のカードの効果によってフィールドから離れたときに発動できる。「アンティーク・ギア」融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。その後、愛艇フィールド上に存在する魔法・罠カードをすべて破壊する。

 

「おおおおおーーいい!!《究極巨人》を融合召喚したのはいいが、俺のフィールドががら空きになったぞ!!?」

「うるさい!!これで《ガイアペライオ》を倒せるモンスターを呼び出し、《霊獣の以心伝心》を破壊したんだ!!お前のフィールドががら空きになってもお釣りがでらぁ!!」

「なんだと!!」

CとAが喧嘩を始める。

デュエル中であるにもかかわらず…。

その間、Bが侑斗のバイクを攻撃している他のオベリスクフォースに声をかける。

「おい!!《霊獣の以心伝心》は破壊できたぞ!合流してくれーーー!」

「よし、お前らはあの野郎とデュエルをしろ!俺たちはこのままあのバイクを…ギャアア!!」

バイクを攻撃していた5人のうち2人がウィンダに吹き飛ばされる。

そして1人は攻撃不可能と判断し、敵前逃亡して融合次元へ逃げ帰ってしまう。

「こうなったら…剣崎侑斗だけでも!!」

生き残った2人が乱入し、3人と共に侑斗を包囲する。

 

オベリスクフォースF

手札5

ライフ4000→2000(乱入ペナルティにより)

 

オベリスクフォースG

手札5

ライフ4000→2000(乱入ペナルティにより)

 

「やった!けど、ユウの方へ行っちゃった!」

「ユウ…?」

時間がたったためか、ようやく正気に戻った柚子がウィンダを見る。

「大丈夫!?もう安全だよ」

「あ、あなたは…?」

見たことのない少女に尋ねる。

「私はウィンダ。柚子ちゃんをユウと一緒に助けにきたの!」

「ユウ…その人って、今戦っている…」

「うん!剣崎侑斗、私の人生のパートナー!」

「侑斗…?」

柚子もまた、翔太と同じようにユートを思い出す。

 

「僕はスケール1の《英霊獣使い―セフィラムピリカ》とスケール7の《影霊獣使い―セフィラウェンディ》でペンデュラムスケールをセッティング!」

「何!?ペンデュラム召喚を…??」

《精霊獣ラムペンタ》の背中に乗る、白い天使の羽根をつけた《ガスタの神裔ピリカ》と同じ羽根をつけた《精霊獣ペトルフィン》の背中に乗る《霊獣使いウェン》がペンデュラムの光を生み出す。

「風の魂を受け継ぐ命よ、神星樹の力と共に邪悪なる力に立ち向かえ!ペンデュラム召喚!来い、僕のモンスター達!天使の羽を得た風、《精霊獣セフィラムフォーチュン》!」

「ピーーー!」

侑斗のそばで精霊の状態で飛んでいたフォーチュンが天使の羽根を得て、六芒星が刻まれた青い魔石がついた、木の枝と同じサイズの杖を咥えた状態でフィールドへ飛んでいく。

 

精霊獣セフィラムフォーチュン レベル3 守備900(チューナー)

 

「そして、天使の羽根を得た魔剣士、《霊獣の聖剣士-ユウ》!」

更に、上空から《No.00ガスタの魔剣士ユウ》が降りてくる。

しかし、茶色いマントは無く、代わりに天使の羽根をつけていて、腰に差している武器も魔剣ではなく刀1本になっている。

そして額には緑色のサークレットが装備されている。

 

霊獣の聖剣士-ユウ レベル7 攻撃2500

 

「ペンデュラム召喚?でも、あのモンスターは…」

柚子が侑斗の行為を疑問に思うのは当然だ。

明言していなかったが、今のスケールの幅で召喚できるのはレベル2から6のセフィラまたは霊獣モンスターのみ。

レベル7の《霊獣の聖剣士-ユウ》を召喚できないはずだ。

その疑問に答えるかのように、侑斗は発言する。

「この《霊獣の聖剣士-ユウ》は僕のペンデュラムゾーンに存在する2枚のカードがセフィラモンスターの場合、ペンデュラムスケールを無視してペンデュラム召喚することができる!」

「だ、だが…攻撃力2500では攻撃力4400の《究極巨人》には…」

「バトルだ!僕は《ユウ》で《古代の機械究極巨人》を攻撃!!セフィラ・ストームスラッシュ!!」

「な…何!!?」

《霊獣の聖剣士-ユウ》が天空を舞いながら、《古代の機械究極巨人》を斬る。

しかし、実際に斬ったにもかかわらず、そのモンスターには傷1つ無かった。

「おいおい、全く攻撃が通用してねえぞ!それに、これで1900の反射ダメージが…」

「《ユウ》が相手モンスターを攻撃するとき、互いのモンスターは破壊されず、受ける戦闘ダメージも0になる」

「はぁ?それじゃあ何で攻撃を…」

「そして、ダメージステップ終了時にそのモンスターとこのカードを手札に戻す」

「な…何ぃ!!?」

《霊獣の聖剣士-ユウ》と《古代の機械究極巨人》が青い風に包まれていく。

そして一瞬で互いにその姿を消した。

「セフィラの力を受けた《ユウ》は勝者にも敗者にもならない。ただ、戦う意思だけを取り除く。更に《セフィラムフォーチュン》の効果発動!《ユウ》の効果によって相手モンスターがフィールドから離れたとき、そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える!」

「何ぃぃぃぃ!!!?」

「ピーーーーー!!」

フォーチュンが全身を白い光で覆い、Cに向けて突撃する。

「う、うわあああああ!!」

必死に逃げるがフォーチュンのスピードがあまりにも速く、逃げ切れるわけがない。

彼はそのままフォーチュンに何度も杖で何度もたたかれて気絶した。

 

オベリスクフォースC

ライフ4000→0

 

霊獣の聖剣士(セフィラナイト)-ユウ

レベル7 攻撃2500 守備2100 風属性 サイキック族

【Pスケール:青4/赤4】

「霊獣の聖剣士-ユウ」のP効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):Pゾーン、エクストラデッキに存在するこのカードを対象に発動できる。選択したカードを持ち主の手札に戻す。

【モンスター効果】

(1):自分のPゾーンに存在する2枚のカードが「セフィラ」カードの場合、Pスケールを無視してP召喚することができる。

(2):このカードが相手モンスターを攻撃するときに発動する。その戦闘で互いのモンスターは破壊されず、互いが受ける戦闘ダメージは0になる。ダメージステップ終了時に、その相手モンスターとこのカードを持ち主の手札に戻す。

 

精霊獣セフィラムフォーチュン

レベル3 攻撃400 守備900 風属性 鳥獣族

【Pスケール:青6/赤6】

(1):自分は「霊獣」モンスター及び「セフィラ」モンスターしかP召喚できない。この効果は無効化されない。

(2):このカードが破壊される場合、代わりに自分フィールド上に存在する「セフィラ」Pモンスター1体をエクストラデッキへ送ることができる。

【チューナー:モンスター効果】

(1):1ターンに1度、自分がコントロールする「霊獣の聖剣士-ユウ」の効果によって相手モンスターがフィールドから離れたとき、その相手モンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。

(2):このカードは自分フィールド上に他の「霊獣」モンスターが存在するとき、戦闘では破壊されない。

 

「更に僕は《ガイアペライオ》で1人目の人にダイレクトアタック!」

(いきます!!火炎弾!)

《精霊獣騎ガイアペライオ》の杖から放たれた炎がAを包み込む。

「ぎゃあああ!!」

 

オベリスクフォースA

ライフ4000→800

 

「僕はこれでターンエンド」

 

侑斗

手札4→1(《霊獣の聖剣士-ユウ》)

ライフ19000

場 聖霊獣騎ガイアペライオ レベル10 攻撃3200

  精霊獣セフィラムフォーチュン レベル3 守備900

  英霊獣使い―セフィラムピリカ(青) ペンデュラムスケール1

  影霊獣使い―セフィラウェンディ(赤) ペンデュラムスケール7

  

オベリスクフォースA

手札2

ライフ800

場 なし

 

オベリスクフォースB

手札2→1

ライフ4000

場 裏守備モンスター1

 

オベリスクフォースC

手札5→1

ライフ4000

場 古代の機械守護者 レベル8 守備3000

 

オベリスクフォースF

手札5

ライフ2000

 

オベリスクフォースG

手札5

ライフ2000

 

「くっそーーよくも俺の切り札を!!俺のター…」

「ちょっと待った!!」

「な…!?」

息を切らせ、デュエルディスクを展開した状態で少年が侑斗の元へ駆け寄ってくる。

体中が傷だらけで、服も破れた個所がある。

「ここまで来たということは…ノルマはクリアしたってことだね」

「はい…何とか間に合いましたよ…師匠!」

「師匠はやめてよ、そういうキャラじゃないからさ。じゃあ、助太刀お願いしていいかな?北斗君」

「はい!」

北斗がデッキからカードを5枚ドローする。

そして、自動的にペナルティとしてライフが減らされる。

 

北斗

ライフ4000→2000

 

「ええ…志島北斗!!?なんでこんなところに??」

柚子が驚くのは無理もない。

北斗はセレナからの襲撃を受けたこととある事情で2回戦開始5分後までに会場に到着することができず、不戦敗となった。

その後、LDSにも家にも顔を出していないことを真澄から聞いている。

「僕のターン、ドロー!」

 

北斗

手札5→6

 

「僕は手札から《セイクリッド・ポルクス》を召喚!」

 

セイクリッド・ポルクス レベル4 攻撃1700

 

「このカードの召喚に成功したターン、追加で手札からセイクリッドモンスターを召喚できる。僕は更に《セイクリッド・カウスト》を召喚!」

 

セイクリッド・カウスト レベル4 攻撃1800

 

「バトル!僕は《セイクリッド・ポルクス》でまずはあんたにダイレクトアタックだ!」

《セイクリッド・ポルクス》が手持ちの剣でAを切り裂く。

「うぐわああああ!!」

 

オベリスクフォースA

ライフ800→0

 

「更に、《セイクリッド・カウスト》でダイレクトアタック!」

《セイクリッド・カウスト》が白い光の矢でGの胸を貫いていく。

「ぎゃああ!!」

 

オベリスクフォースG

ライフ2000→200

 

「そして、僕は《セイクリッド・カウスト》の効果を発動!1ターンに2度まで、僕のフィールド上に存在するセイクリッドモンスター1体のレベルを1つ変動させることができる!僕は《カウスト》と《ポルクス》のレベルを1つずつ上昇させる!」

《セイクリッド・カウスト》は上空に向けて2本の矢を放つ。

矢は上空で光の雨となって北斗のフィールドに降り注ぐ。

 

セイクリッド・カウスト レベル4→5 攻撃1800

セイクリッド・ポルクス レベル4→5 攻撃1700

 

「僕はレベル5の《カウスト》と《ポルクス》でオーバーレイ!星々の光よ!今大地を震わせ降臨せよ!エクシーズ召喚!ランク5!《セイクリッド・プレアデス》!」

 

セイクリッド・プレアデス ランク5 攻撃2500

 

「《セイクリッド・プレアデス》の効果発動!1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、フィールド上に存在するカード1枚を手札に戻す!僕はこの効果で《古代の機械守護者》を手札に戻す!」

《セイクリッド・プレアデス》にオーバーレイユニットが宿ると同時に、《古代の機械守護者》が光に包まれ、消滅してしまう。

「くっそーーー!!エクシーズモンスターごときにぃ!!」

「LDSのエクシーズを舐めるな!!僕はカードを4枚伏せ、ターンエンド!」

 

侑斗

手札1(《霊獣の聖剣士-ユウ》)

ライフ19000

場 聖霊獣騎ガイアペライオ レベル10 攻撃3200

  精霊獣セフィラムフォーチュン レベル3 守備900

  英霊獣使い―セフィラムピリカ(青) ペンデュラムスケール1

  影霊獣使い―セフィラウェンディ(赤) ペンデュラムスケール7

 

北斗

手札6→0

ライフ2000

場 セイクリッド・プレアデス(オーバーレイユニット1) ランク5 攻撃2500

  伏せカード4 

 

オベリスクフォースB

手札1

ライフ4000

場 裏守備モンスター1

 

オベリスクフォースC

手札1→2(うち1枚《古代の機械守護者》)

ライフ4000

場 なし

 

オベリスクフォースF

手札5

ライフ2000

 

オベリスクフォースG

手札5

ライフ200

 

「情けない。手傷を負っていたとはいえ、エクシーズの輩に倒されるなどとは!」

北斗によって倒された仲間をBが罵倒する。

「俺のターン、ドロー!」

 

オベリスクフォースB

手札1→2

 

「俺は手札から魔法カード《ブラック・ホール》を発動!俺たちのフィールド上に存在するすべてのモンスターを破壊する!!」

「《ガイアペライオ》の効果発動!手札の《ユウ》を除外して、《ブラック・ホール》を無効にする!」

「ちぃっ!!だが、もうこれでそのモンスターをペンデュラム召喚できないな!!」

「僕は《セイクリッド・プレアデス》の効果発動!オーバーレイユニットを1つ取り除いて、裏守備モンスターを手札に戻す!」

「何!?」

《ブラック・ホール》によって《霊獣の聖剣士-ユウ》を排除できたと喜んでいたBが固まる。

手札に戻されたカードは《メタモルポッド》。

墓地肥やしと手札補充ができる、融合デッキには扱いやすいカードだ。

「ぐぅぅぅ!!俺はモンスターを裏守備表示で召喚!カードを1枚伏せてターンエンドだ!」

 

侑斗

手札1→0

ライフ19000

場 聖霊獣騎ガイアペライオ レベル10 攻撃3200

  精霊獣セフィラムフォーチュン レベル3 守備900

  英霊獣使い―セフィラムピリカ(青) ペンデュラムスケール1

  影霊獣使い―セフィラウェンディ(赤) ペンデュラムスケール7

 

北斗

手札0

ライフ2000

場 セイクリッド・プレアデス(オーバーレイユニット1) ランク5 攻撃2500

  伏せカード4 

 

オベリスクフォースB

手札2→0

ライフ4000

場 裏守備モンスター1

  伏せカード1

 

オベリスクフォースC

手札1→2(うち1枚《古代の機械守護者》)

ライフ4000

場 なし

 

オベリスクフォースF

手札5

ライフ2000

 

オベリスクフォースG

手札5

ライフ200

 

「俺のターン、ドロー!」

 

オベリスクフォースC

手札2→3

 

「俺は手札から魔法カード《死者への供物》を発動!その効果で《セイクリッド・プレアデス》を破壊する!」

突然地中から出てきたゾンビによって地中へ引きずり込まれ、《セイクリッド・プレアデス》が破壊される。

それと同時に、Bの裏守備モンスターが消滅する。

「破壊される直前に《セイクリッド・プレアデス》の効果を発動。もう1度そのモンスターを手札に戻す!(ふん…そういう行動は計算の範囲内!)」

「そして、モンスターを裏守備表示で召喚。ターンエンド」

 

侑斗

手札1→0

ライフ19000

場 聖霊獣騎ガイアペライオ レベル10 攻撃3200

  精霊獣セフィラムフォーチュン レベル3 守備900

  英霊獣使い―セフィラムピリカ(青) ペンデュラムスケール1

  影霊獣使い―セフィラウェンディ(赤) ペンデュラムスケール7

 

北斗

手札0

ライフ2000

場 伏せカード4 

 

オベリスクフォースB

手札0→1

ライフ4000

場 伏せカード1

 

オベリスクフォースC

手札3→1(《古代の機械守護者》)

ライフ4000

場 裏守備モンスター1

  伏せカード1

 

オベリスクフォースF

手札5

ライフ2000

 

オベリスクフォースG

手札5

ライフ200

 

「俺のターン、ドロー!」

 

オベリスクフォースF

手札5→6

 

「俺は手札から魔法カード《パワー・ボンド》を発動!このカードは機械族モンスター専用の融合魔法だ!手札の《古代の機械猟犬》3体を融合し、《古代の機械三頭猟犬》を攻撃力を倍にして融合召喚!!」

3体の《古代の機械猟犬》が合体し、3つの頭を持つ少し大型化した《古代の機械猟犬》が登場する。

 

古代の機械三頭猟犬 レベル7 攻撃1800→3600

 

「こいつが攻撃するとき、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない!さらに1度のバトルフェイズ中に3回攻撃できる!!これであのエクシーズを使うクソガキをたたきつぶし、忌々しい《ガイアペライオ》を…」

「僕は速攻魔法《アーティファクト・ムーブメント》を発動!!」

「何!?」

北斗が発動したカードにオベリスクフォースだけでなく、柚子も驚きを隠せない。

「アーティファクト…!?セイクリッドだけじゃなかったの?」

「これが修行の中で見つけた新しい僕の可能性!!このカードはフィールド上の魔法・罠カードを1枚破壊して、デッキからアーティファクトモンスターを魔法カード扱いにして僕のフィールドにセットする。僕が破壊するカードはこれだ!」

対象となった伏せカードが黄土色の柄に機械式の時計が埋め込まれ、赤い回路が一部露出している刀身を持つ大剣となり、そのそばにはピンク色の女性の霊体が現れる。

「《アーティファクト―ベガルタ》の効果発動!魔法・罠ゾーンにセットされたこのカードが相手ターンに破壊され墓地へ送られた時、このカードを特殊召喚できる!」

 

アーティファクト―ベガルタ レベル5 攻撃1400

 

「そして、《アーティファクト・ムーブメント》の効果で僕はデッキから《アーティファクト―モラルタ》をセットする」

今度は先ほどと異なり、露出している回路の色が青の大剣が現れ、伏せカードに変化する。

「び…びっくりさせやがって!新しい可能性がたった攻撃力1400?そんなカードで攻撃力3600の《古代の機械三頭猟犬》を…」

「《アーティファクト―ベガルタ》の効果発動!相手ターン中にこのカードの特殊召喚に成功した時、僕のフィールド上にセットされているカードを2枚まで破壊できる。僕が破壊するのは伏せてある《アーティファクト―モラルタ》と《アーティファクト―カドケウス》!!」

《アーティファクト―ベガルダ》が霊体によって点に掲げられると、《アーティファクト―モラルタ》のそばには青い男性の霊体が現れる。

それと同時に機械式の時計がついた鳥を模した形の黄土色の杖のそばにはオレンジ色の男の霊体が現れる。

「この2体のアーティファクトモンスターも同じ方法で召喚できる!」

 

アーティファクト―カドケウス レベル5 攻撃1600

アーティファクト―モラルタ レベル5 攻撃2100

 

「《アーティファクト―モラルタ》の効果発動!相手ターン中にこのカードの特殊召喚に成功した時、相手フィールド上に表側表示で存在するカード1枚を破壊できる!」

「何!?」

青い霊体が《古代の機械三頭猟犬》に目を向けると、《アーティファクト―モラルタ》を突きつける。

怖気づいた猟犬は大急ぎで逃走を図るが、そうする前に地震の体をその大剣で真っ二つにされていた。

「そ、そんな…こんなに簡単に《古代の機械三頭猟犬》を…。俺はモンスターを裏守備表示で召喚。ターンエンド…」

 

侑斗

手札0

ライフ19000

場 聖霊獣騎ガイアペライオ レベル10 攻撃3200

  精霊獣セフィラムフォーチュン レベル3 守備900

  英霊獣使い―セフィラムピリカ(青) ペンデュラムスケール1

  影霊獣使い―セフィラウェンディ(赤) ペンデュラムスケール7

 

北斗

手札0

ライフ2000

場 アーティファクト―カドケウス レベル5 攻撃1600

  アーティファクト―モラルタ レベル5 攻撃2100

  アーティファクト―ベガルタ レベル5 攻撃1400

  伏せカード1 

 

オベリスクフォースB

手札1

ライフ4000

場 伏せカード1

 

オベリスクフォースC

手札1(《古代の機械守護者》)

ライフ4000

場 裏守備モンスター1

  伏せカード1

 

オベリスクフォースF

手札6→1

ライフ2000

場 裏守備モンスター1

 

オベリスクフォースG

手札5

ライフ200

場 なし

 

古代の機械三頭猟犬(アンティーク・ギア・トリプルバイト・ハウンドドッグ)(アニメオリカ・調整)

レベル7 攻撃1800 守備1000 融合 地属性 機械族

「アンティーク・ギア」モンスター×3または融合モンスターを含む「アンティーク・ギア」モンスター×2

(1):このカードが攻撃する場合のダメージステップ終了時まで、相手は魔法・罠カードを発動できない。

(2):このカードは1度のバトルフェイズ中に3回まで攻撃することができる。その場合、2回目以降の攻撃で発生する相手への戦闘ダメージは半分となる。

 

「お、おれのターン…ドロー…」

 

オベリスクフォースG

手札5→6

 

「…は、あはは…そうだよな…あはは…」

ドローした後、急にGが変な笑い声を出し始める。

「も、もうあいつのフィールドには1枚しか伏せカードがない。な、なら…《モラルタ》のようなことはないよな…あはははは。俺は手札から《パワー・ボンド》を発動。3体の《機械猟犬》を融合し、《古代の機械三頭猟犬》を召喚!!!!」

 

古代の機械三頭猟犬 レベル7 攻撃1800→3600

 

「あははははは!!俺は…俺はこいつらのようには…」

「罠発動!《アーティファクトの解放》。僕のフィールドに存在するアーティファクトモンスター2体でエクシーズ召喚を行う!僕は《モラルタ》と《ベガルダ》でオーバーレイ!」

「こ、こいつらのレベルは同じ5…まさか!!!!」

「そのまさかさ!エクシーズ召喚!《セイクリッド・プレアデス》!!」

 

セイクリッド・プレアデス ランク5 攻撃2500

 

「《プレアデス》の効果発動!オーバーレイユニットを1つ取り除き、《古代の機械三頭猟犬》をエクストラデッキへ!」

「…」

真っ白になったGは何も言わずに《古代の機械三頭猟犬》をエクストラデッキに戻す。

「…ターン…エンド…」

 

侑斗

手札0

ライフ19000

場 聖霊獣騎ガイアペライオ レベル10 攻撃3200

  精霊獣セフィラムフォーチュン レベル3 守備900

  英霊獣使い―セフィラムピリカ(青) ペンデュラムスケール1

  影霊獣使い―セフィラウェンディ(赤) ペンデュラムスケール7

 

北斗

手札0

ライフ2000

場 アーティファクト―カドケウス レベル5 攻撃1600

  セイクリッド・プレアデス(オーバーレイユニット1) ランク5 攻撃2500 

 

オベリスクフォースB

手札1

ライフ4000

場 伏せカード1

 

オベリスクフォースC

手札1(《古代の機械守護者》)

ライフ4000

場 裏守備モンスター1

  伏せカード1

 

オベリスクフォースF

手札6→1

ライフ2000

場 裏守備モンスター1

 

オベリスクフォースG

手札6→2

ライフ200

場 なし

 

「僕のターン、ドロー」

 

侑斗

手札0→1

 

「僕は手札から魔法カード《エンシェント・リーフ》を発動。僕のライフが9000以上の時、ライフを2000支払うことで、デッキからカードを2枚ドローする」

 

侑斗

手札1→2

 

ライフ19000→17000

 

「更に僕は手札の《精霊獣ウタリキャット》の効果を発動。このカードを手札から除外することで、このターン1度だけ僕は聖霊獣騎モンスターの召喚条件を無視することができる」

花や蔓でできた装飾をつけた赤い猫と青い猫、黄色い猫が現れ、次元のはざまへ飛び込んでいく。

そして、その中で暇を持て余す《聖霊獣騎アペライオ》の周囲を楽しそうに走り回る。

 

精霊獣ウタリキャット

レベル4 攻撃1700 守備300 効果 風属性 獣戦士族

「精霊獣ウタリキャット」は1ターンに1度しか特殊召喚できない。

「精霊獣ウタリキャット」の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードを手札から除外することで発動できる。このターン、1度だけ「聖霊獣騎」を特殊召喚するとき、その召喚条件を無視することができる。

 

「僕は手札から《霊獣使いウェン》を召喚」

 

霊獣使いウェン レベル3 攻撃1500

 

「このカードの召喚に成功した時、ゲームから除外されている霊獣モンスター1体を特殊召喚できる。僕は《聖霊獣騎アペライオ》を特殊召喚」

 

聖霊獣騎アペライオ レベル6 攻撃2600

 

「《アペライオ》の効果発動。このカードをエクストラデッキに戻すことで、除外されている僕の精霊獣と霊獣使いを1体ずつ守備表示で特殊召喚できる。僕は《精霊獣アペライオ》と《霊獣使いアトゥイ》を特殊召喚!」

《精霊獣騎アペライオ》が目の前に火の輪を作りだし、それに飛び込む。

すると、そのモンスターは《精霊獣アペライオ》と《霊獣使いアトゥイ》の2体に変化する。

 

精霊獣アペライオ レベル4 守備200

霊獣使いアトゥイ レベル5 守備1800(チューナー)

 

「、《アペライオ》の効果発動!1ターンに1度、墓地の霊獣カード1枚を除外することで、ターン終了時まで僕の霊獣モンスターの攻撃力・守備力を500アップさせる炎をフィールドに生み出す!」

《精霊獣アペライオ》が口から巨大な火球を発射する。

火球はフィールドの中央で浮遊し、侑斗のモンスター達はその周りで踊り始める。

 

精霊獣アペライオ レベル4 守備200→700

霊獣使いアトゥイ レベル5 守備1800→2300(チューナー)

聖霊獣騎ガイアペライオ レベル10 攻撃3200→3700

精霊獣セフィラムフォーチュン レベル3 守備900→1300

霊獣使いウェン レベル3 攻撃1500→2000

 

「まだだ!僕はフィールド上の《アペライオ》と《アトゥイ》を除外し、融合する!北の海の舞姫よ、炎の獅子よ、霊獣の契約の元、今こそ1つに!融合召喚!雷鳴の聖霊獣騎、《聖霊獣騎カンナホーク》!!」

上空に雷雲が発生し、2体のモンスターがその中に入っていく。

そして、落雷と共に成長し大型化した《精霊獣カンナホーク》に乗った《霊獣使いの長老》が舞い降りる。

 

聖霊獣騎カンナホーク レベル6 攻撃1400→1900

 

「《カンナホーク》の効果発動。1ターンに1度、除外されている霊獣カード2枚を墓地へ戻すことで、デッキから霊獣カード1枚を手札に加える。僕は《霊獣使いアトゥイ》と《精霊獣アペライオ》を墓地へ戻し、デッキから《霊獣の蘇生術》を手札に加える。そして、手札から魔法カード《霊獣の蘇生術》を発動!墓地か除外されている霊獣モンスター1体を特殊召喚する。僕は除外されている《霊獣の聖剣士-ユウ》を特殊召喚する!」

 

霊獣の聖剣士-ユウ レベル7 攻撃2500→3000

 

霊獣の蘇生術

通常魔法カード

(1):自分の墓地または除外されている「霊獣」モンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する。

 

「《セイクリッド・プレアデス》の効果発動!オーバーレイユニットを取り除き、あんたの伏せカードを手札に戻す!」

「何ぃ!?」

Bのフィールドに存在する伏せカード、《攻撃の無力化》が消滅する。

これで彼のフィールドはがら空きとなった。

「僕は《セフィラムフォーチュン》を攻撃表示に変更」

「ピー!」

 

精霊獣セフィラムフォーチュン レベル3 攻撃400→900

 

「バトル!僕は《ユウ》と《カンナホーク》でダイレクトアタック!!」

《霊獣の聖剣士-ユウ》の刀に《聖霊獣騎カンナホーク》が生み出した雷鳴が宿る。

そして、その雷鳴の刃がBを貫いた瞬間、彼に雷が落ちる。

「ぐぎゃああああああ!!」

 

オベリスクフォースB

ライフ4000→1000→0

 

「更に僕は《フォーチュン》でダイレクトアタック!」

「ピーーー!!」

フォーチュンは回転しながら、Gの腹部に体当たりする。

「ぎゃあああ!!」

 

オベリスクフォースG

ライフ200→0

 

「そして、《ウェン》で裏守備モンスターを攻撃!」

《霊獣使いウェン》の杖からは放たれた風がFの裏守備モンスターを貫く。

 

裏守備モンスター

・古代の歯車

 

「僕はこれでターンエンド」

 

侑斗

手札0

ライフ17000

場 聖霊獣騎ガイアペライオ レベル10 攻撃3700→3200

  精霊獣セフィラムフォーチュン レベル3 攻撃900→400

  霊獣の聖剣士-ユウ レベル7 攻撃3000→2500

  霊獣使いウェン レベル3 攻撃2000→1500

  聖霊獣騎カンナホーク レベル6 攻撃1900→1400

  英霊獣使い―セフィラムピリカ(青) ペンデュラムスケール1

  影霊獣使い―セフィラウェンディ(赤) ペンデュラムスケール7

 

北斗

手札0

ライフ2000

場 アーティファクト―カドケウス レベル5 攻撃1600

  セイクリッド・プレアデス ランク5 攻撃2500 

 

 

オベリスクフォースC

手札1→2(《古代の機械守護者》《攻撃の無力化》)

ライフ4000

場 裏守備モンスター1

 

オベリスクフォースF

手札1

ライフ2000

場 伏せカード1

 

「僕のターン、ドロー!」

 

北斗

手札0→1

 

「僕はフィールドに存在する《プレアデス》でオーバーレイネットワークを再構築。眩き光もて降り注げ!ランクアップ・エクシーズ・チェンジ!現れろ!ランク6!《セイクリッド・トレミスM7》!」

 

セイクリッド・トレミスM7 ランク6 攻撃2600

 

「更に手札から《RUM-ムーン・フォース》を発動!僕のフィールド上に存在する光属性エクシーズモンスターをランクの1つ高い同じ属性のエクシーズモンスターにランクアップさせる!」

「何!?さらにランクアップだと!!!?」

《セイクリッド・トレミスM7》が上空で2体に分裂し、自らオーバーレイネットワークを構築する。

「星々の怒りよ、今こそ大地に降り注ぎ、正義の裁きを下せ!ランクアップ・エクシーズ・チェンジ!!現れろ、ランク7!《セイクリッド・プトレマイオス》!!!」

オーバーレイネットワークが白い爆発を起こし、そこから龍を模した白銀の鎧を身にまとい、白いフレンチカットラスとピストルを持った騎士が降りてくる。

 

セイクリッド・プトレマイオス ランク7 攻撃3000

 

「《プトレマイオス》はRUMの効果でエクシーズ召喚に成功した時、オーバーレイユニットの数だけ相手フィールド上に存在するカードを持ち主の手札に戻し、1枚につき1000のダメージを与える!」

「何!!?」

《セクリッド・プトレマイオス》が左手にピストルから銃弾を2発発射する。

銃弾を受けた伏せカードと裏守備モンスターは爆発を起こしながらCとFの手札に戻った。

「うわあああ!!」

 

オベリスクフォースC

ライフ4000→3000

 

オベリスクフォースF

ライフ2000→1000

 

「更にこのカードは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃できる!いけ、《セイクリッド・プトレマイオス》!!!」

《セイクリッド・プトレマイオス》が上空に剣を掲げ、祈りをささげた後、一瞬で2人を切り裂いた。

 

オベリスクフォースC

ライフ3000→0

 

オベリスクフォースF

ライフ1000→0

 

セイクリッド・プトレマイオス

ランク7 攻撃3000 守備2000 エクシーズ 光属性 戦士族

光属性レベル7モンスター×3

「セイクリッド・プトレマイオス」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードが「RUM」の効果によってX召喚に成功した時に発動できる。このカードのX素材の数だけフィールド上のカードを持ち主の手札に戻し、その数×1000のダメージを相手に与える。

(2):このカードは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃できる。

(3):このカードが戦闘で破壊され墓地へ送られた時に発動できる。自分の墓地に存在する光属性モンスター1体を手札に加える。



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第32話 月の鎧

「ふう…さすがに7人はきつかったかな。北斗君が来てくれてよかったよ」

デュエルディスクを閉じ、北斗に礼を言う。

「あ、あの…侑斗、さん…?」

サイドカーから出た柚子が確認するように侑斗の名前を呼ぶ。

「うん、僕は剣崎侑斗。君を助けるように依頼を受けていたんだ」

「ウィンダさんから聞いています。けど、なんでLDSの志島北斗が?」

「弟子入りしたんだ。この人に」

「ええ…!!?」

あの自分の強さにうぬぼれていた、沢渡程ではないが傲慢だった北斗が誰かの弟子になる。

柚子の想像範囲を超えることだ。

「本当にびっくりしたよ。突然僕に土下座して、一から鍛えなおしてくれって…」

「師匠!それは言わない約束です!!」

その時のことを離そうとする侑斗の口を北斗が必死になってふさぐ。

「あはは…結局、ユウが折れちゃって、零児君にお願いすることに…」

「ユウ…?」

「プハァ!!ちょっと訳ありでね。侑斗が呼びづらいなら、剣崎って呼んでよ。あ、ちょっとごめんね?」

デュエルディスクの電話機能が起動したのに気付いた侑斗は相手を確認した後、電話に出る。

「もしもし」

(私だ。剣崎)

「零児君だね?もう分かっているとは思うけど、柚子ちゃんは助けたよ」

周囲を見渡しながら、侑斗は言う。

風の目で確認しなければ見えないくらいの隠れた場所に小型のカメラが複数設置されている。

(感謝する。あなたに頼んでおいて正解だった。…ユース組で編成したランサーズが1人を残して全滅した)

「…そっか。…大丈夫?」

(…誰に対して言っているのか分からないが、一応大丈夫だと返しておこう。あとは…)

「分かってる。彼女を本社へ連れて行くんでしょ?すぐ行くよ」

電話を切ると、予備のヘルメットを柚子に渡す。

「え…?」

「僕とウィンダは一足先に戻る。北斗君はほかに生き残っている人がいないか探してほしい。危険だと分かったら、すぐに本社まで引き上げるんだ」

「は、はい!」

「あの…あたしは遊矢の…」

「ごめん…今は遊矢君達に会わせるわけにはいかない。」

「でも…」

「大丈夫。このバトルロワイヤルが終わったら、すぐに会わせてあげるから」

「じゃあ、私は精霊に戻るね!」

「へ?」

何を言っているんだと質問しようとする前に、柚子の視界からウィンダの姿が消える。

「き、消えた…!?これは一体…???」

「じゃあ、行くよ」

エンジンがかかり、侑斗と柚子を乗せたバイクが氷山エリアを離脱する。

突然消えたウィンダ、襲い掛かってきたユーリという遊矢そっくりの少年、そして融合次元の戦士であるオベリスクフォース。

すぐにでも遊矢に会って安心したい。

だが、今の柚子にできるのは彼の無事を祈ることだけだった。

(遊矢…)

 

「ん…んん…」

それと数時間後の密林エリア…。

気を失っていた遊矢が目を覚ます。

遊矢を運ぶ翔太は密林エリアで権現坂とミエルに合流していた。

「遊矢!」

「遊矢君!!」

「ダーリン!!」

権現坂とミエル、そしてオレンジ色の髪でそばかすがあり、穏やかな雰囲気を見せる少年が心配そうに遊矢の名を呼ぶ。

この少年の名前は茂古田未知夫。

遊矢がジュニアユース選手権出場のために、出場条件を満たしていたにもかかわらず、相手をしてくれたデュエリストだ。

ちなみに、そのそばで調理をしているクジラを模した帽子とピンク色のフィッシングウェアを着た男は大量旗鉄平。

2人とも、ミエルに頼まれて同行した。

「権現坂…未知夫…ミエル…?」

「ちっ、ようやく目を覚ましやがったな」

「翔太…」

木の上で周囲を見渡していた翔太が飛び降りる。

「翔太殿、そのオベリスクフォースという奴らは?」

「今はいない。ったく、あの世界のデュエリストは楽しいデュエルができないのか?」

ため息をつきながら、権現坂の質問に答える。

翔太はあらかじめ、権現坂達にオベリスクフォースについて知ってる範囲のことを教えていた。

(楽しいデュエル…デュエルで…笑顔を…)

懐から2枚のカードを取り出す。

《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》と《覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン》…。

デュエルで笑顔を…それは《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》を託した男、ユートの遊矢へ託した願いだ。

その証となったカードが遊矢暴走の原因である可能性があるとはなんという皮肉だろうか。

「…ありがとう、翔太。もしお前が俺と止めてくれなかったら…」

「そうとは言えねえ。俺はあの時、本気でお前を殺そうとしていた」

「な…!?」

「あんた!!ダーリンを本気で殺そうとしたですって!!?」

殺そうとしたという言葉にミエルが怒り、翔太を詰問する。

「その言葉通りだ。俺もこいつで暴走した」

そう言いながら、遊矢達に《魔装騎士HADES》を見せる。

「ペンデュラムシンクロモンスター…?」

「ダーリンのはペンデュラムエクシーズで…」

「まあようわからんけど、それより飯や飯!!」

自分で釣った魚で作った海鮮鍋を持った鉄平が割り込んでくる。

密林エリアは幸い海岸付近に設置されたフィールドで、歩いて海岸まで行くことができるのだ。

鉄平は遊矢が目覚めるまでに魚を釣り、鍋を作っていた。

「…欲しくない」

しかし、なぜ暴走してしまったのかを考えるのに必死な今の遊矢には何も影響を与えない。

「なんや!せっかくミッチーの頼み聞いて、見返りなしにつくったったのに!」

「じゃあ、俺が食べる」

へそを曲げる鉄平を尻目に、翔太が海鮮鍋を食べ始める。

「な…お前のために作ったんやないで!!」

「どうでもいいだろ?それに、俺は晩飯食べ損ねたんだぞ」

「そんなんどうでもええねん!!」

「それよりも、柚子はどうした?」

鉄平を無視し、鍋を食べ続ける翔太の言葉を聞き、遊矢と権現坂がはっとする。

「そ、そういえば…権現坂!!柚子はどこへ!?」

暴走のことが頭から完全に飛び、遊矢は焦りながら権現坂に尋ねる。

「氷山エリアで一緒にデュエルをし、別れたきりだ。だが、そこにいる保証は…」

「柚子を探さないと!!このままだと柚子が!!」

「遊矢ーーー!!」

氷山エリアの方角から、オレンジ色の長髪でオレンジと青が基調の学生服を着た、右目部分に泣きホクロのある少年が走ってくる。

外傷がないところから、おそらくはオベリスクフォースと交戦することなく逃げ延びたのだろう。

「デニス!」

「知っているのか?」

「ああ!昨日の昼に一緒に戦ったんだ」

手短に翔太に説明した後、遊矢はデニスに目を向ける。

「デニス!一体どうしたんだ!?」

「はあはあ…氷山エリアで、ピンク色の髪の女の子がオベリスクフォースに襲われていて…」

「ピンク色の…柚子!!」

少なくとも、このバトルロワイヤルに参加しているメンバーの中でピンク色の髪の少女は柚子だけ。

大急ぎで遊矢は走って行ってしまう。

「あ、遊矢!ちょっと待ってよー!」

そんな遊矢を追いかけるように、デニスが行ってしまう。

「遊矢!!俺たちも追うぞ!!」

「うん!」

「待ちなさい、ダーリン!!」

「ちょ、まだ鍋がのこっとるでーーー!!」

権現坂と未知夫、ミエル、ついでに鍋を持った鉄平も追いかけていく。

密林エリアには翔太だけが残された。

「…ちっ、結局俺は青臭いガキの尻ぬぐいか。さっさと出てきたらどうだ?」

「さすがだな。…いつ分かった?」

「遊矢が女のことで動揺した時からだ」

翔太から見て右斜め後ろにある木がわずかにゆがむ。

ゆがみが消えると同時に、セレナと一緒にいた大柄の男、バレットが現れる。

「なるほど…わざと残り、私に追跡させないため…」

「それもあるな。まあ隠れてこうしてここにいるんだ。俺たちの居場所を教えている奴…いるだろ?」

デュエルディスクを展開させながら、バレットに目を向ける。

彼もまたデュエルディスクを展開させていた。

「前線へ戻るためにも、お前には私の手柄の1つになってもらう」

「歓迎するぜ。敵になら殺意の制御しなくていいからな」

「「デュエル!!」」

 

翔太

手札5

ライフ4000

 

バレット

手札5

ライフ4000

 

「俺の先攻。俺はモンスターを裏守備表示で召喚。ターンエンド」

 

翔太

手札5→4

ライフ4000

場 裏守備モンスター1

 

バレット

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「私のターン、ドロー…」

ドローしたカードを見つめる。

(セレナ様…いずこに)

セレナと別れた後のことを思い出す。

彼は侑斗とセレナがデュエルをした翌日、舞網スタジアム地下駐車場で零児とデュエルし、敗れた。

そして彼はアカデミアに救援要請をだし、強制送還された。

セレナがスタンダード次元へ向かった理由は現地にいるエクシーズ次元の残党を討つためで、バレットも目付け役として同行していた。

これは零王には無断で行ったことで、バレットは強制送還後、懲罰部隊に強制的に編入されることになった。

しかし、それこそが彼の望むことだった。

彼の目的は戦場へ戻ることにあったからだ。

彼はエクシーズ次元の組織、レジスタンスのゲリラ攻撃によって仲間と片目を失い、予備役にされていた。

予備役は緊急時にならない限りは戦場に出ることは許されない。

しかし、懲罰部隊であれば不快な任務や危険な任務が多いが、前線に出ることができる。

また、零王からはセレナの保護を命令されている。

達成できれば、懲罰兵としてではなく、正規兵として前線に出ることが許される。

「私は手札から魔法カード《融合》を発動!」

「やはり融合か」

「私は手札の《漆黒の豹戦士パンサーウォリアー》と《スフィア・ボム球体時限爆弾》を融合。獰猛なる黒豹よ、敵に取りつく球体と混じりあいて、新たな雄たけびを上げよ。融合召喚!現れ出でよ、《獣闘機パンサー・プレデター》!!」

緑色のマントと剣を装備した人型の黒豹と4つのクローアームを装備した黒と赤が基調の球体型爆弾が現れる。

《スフィア・ボム球体時限爆弾》がどのような原理なのか分からないが、《漆黒の豹戦士パンサーウォリアー》の左半身と頭部の左半分を覆うような水色の装甲に変化し、そのモンスターに装着された。

 

獣闘機パンサー・プレデター レベル6 攻撃1600

 

「左半分が機械で右半分が獣戦士?とんだ悪趣味モンスターだな」

手札を3枚も消費して登場したモンスターを翔太が酷評する。

(伊織ならば同じレベル4同士のモンスターを融合素材にしても、さらに強力な融合モンスターが出せる)

そう心の中でつぶやくが、もちろん自分も同じことができるがというのも付け足している。

そんな彼の心中を分かっているのか定かではないが、バレットは効果発動を宣言する。

「《パンサー・プレデター》の効果発動!1ターンに1度、このモンスターの攻撃力の半分のダメージを相手に与える」

《獣闘機パンサー・プレデター》の左胸部にあるビーム砲から赤い光線が発射される。

翔太は動揺することなく、デュエルディスクのソリッドビジョン部分を盾にする。

(たった800のダメージと攻撃力1600モンスターのためにここまで手札を使うのか?こいつらのレベルを疑うな)

実体化したダメージを受けてなおも酷評される《獣闘機パンサー・プレデター》があまりにもかわいそうだ。

 

翔太

ライフ4000→3200

 

「バトルだ!《パンサー・プレデター》で裏守備モンスターを攻撃!インペリアル・ソニック!!」

《獣闘機パンサー・プレデター》が剣の持ち手を咥え、高く跳躍する。

左目部分に装着されたカメラで裏守備モンスターの位置と動きを把握すると、そのまま急速に落下し、そのまま剣で切り裂こうとする。

「ふん…」

翔太が鼻で笑うと同時に、裏守備モンスターが消える。

「何!?消えた…」

バレットと《獣闘機パンサー・プレデター》が周囲を見渡す。

先に見つけたのは《獣闘機パンサー・プレデター》で、カメラが翔太の真後ろ20メートル先にある大木の前にあるわずかな空間のゆがみを把握する。

「そこか!!」

《獣闘機パンサー・プレデター》が今度は光線で歪みを狙撃する。

そこには《魔装霊レブナント》がいて、ビームを受けたにもかかわらず、無傷でその場にとどまる。

一方大木は光線を受けて発火し、そのまま根元から倒れた。

「こいつはリバースした時、デッキから魔装モンスターを1枚手札に加える。更にリバースしたターン、戦闘では破壊されない」

《魔装霊レブナント》は《獣闘機パンサー・プレデター》に向けて高笑いをしながら翔太の前へ戻っていく。

 

魔装霊レブナント レベル2 守備500(チューナー)

 

翔太が手札に加えたカード

・魔装剣士ムネシゲ

 

「ええい…私はカードを3枚伏せて、ターンエンド」

 

翔太

手札4→5(うち1枚《魔装剣士ムネシゲ》)

ライフ3200

場 魔装霊レブナント レベル2 守備500(チューナー)

 

バレット

手札6→0

ライフ4000

場 獣闘機パンサー・プレデター レベル6 攻撃1600

  伏せカード3

 

「俺のターン!」

 

翔太

手札5→6

 

「悪いが、そのポンコツには退場してもらうぜ?俺は手札から《魔装郷士リョウマ》を召喚」

 

魔装郷士リョウマ レベル4 攻撃1900

 

「そして、レベル4の《リョウマ》にレベル2の《レブナント》をチューニング。神の血を身に宿す槍士、雷鳴のごとき苛烈さを得て戦場で踊れ!シンクロ召喚!現れろ、《魔装槍士クーフーリン》!!」

 

魔装槍士クーフーリン レベル6 攻撃2100

 

「シンクロ召喚だと!?」

「俺は《クーフーリン》の効果を発動。1ターンに1度、俺のフィールドの魔装モンスターと相手フィールドのモンスターを1体ずつ選択し、選択した相手モンスターの攻撃力・守備力をターン終了まで俺の魔装モンスターのレベルかランク1つにつき400ポイントダウンさせる!ゲイ・ボルグ」

《魔装槍士クーフーリン》の槍が30本近くの銛に変化し、電流を纏った状態で《獣闘機パンサー・プレデター》に襲い掛かる。

両腕や両足、左目のカメラを中心にそれらが深々と突き刺さり、《獣闘機パンサー・プレデター》は残された機能によって痛覚を遮断しなければ立てない状態にまでなってしまう。

 

獣闘機パンサー・プレデター レベル6 攻撃1600→0

 

「くっ…!」

「バトルだ。俺は《クーフーリン》で《パンサー・プレデター》を攻撃。ニードル・スピア!」

手元に新しい槍を召喚した《魔装槍士クーフーリン》が天高く跳躍する。

そして、上空から急速に落下してその槍で《獣闘機パンサー・プレデター》を串刺しにする。

「ぐおおおお!!」

 

バレット

ライフ4000→1900

 

「ごっそりライフを失ったな」

「だが、私はここで罠カード《鉄盾の獣闘機勲章》を発動。このカードは1ターンに1度、戦闘ダメージを受けたとき、ダメージ100ポイントにつき1つ勲章カウンターを乗せる」

獅子とその前足を模した飾りがついた盾型の勲章がバレットのフィールドに現れ、メダルが21個それに貼りつけられる。

 

鉄盾の獣闘機勲章 勲章カウンター0→21

 

「勲章カウンター?」

「更に《パンサー・プレデター》の効果発動。このカードが破壊された時、墓地から融合素材となったモンスター2体を特殊召喚し、このカードをエクストラデッキに戻す。現れよ、《パンサーウォリアー》、《スフィア・ボム》!」

バレットの目の前に紫色の魔法陣が展開され、そこから《漆黒の豹戦士パンサーウォリアー》と《スフィア・ボム球体時限爆弾》が飛び出す。

 

スフィア・ボム球体時限爆弾 レベル4 攻撃1400

漆黒の豹戦士パンサーウォリアー レベル4 攻撃2000

 

獣闘機パンサー・プレデター(アニメオリカ・調整)

レベル6 攻撃1600 守備2000 融合 闇属性 機械族

レベル4以下の獣戦士族モンスター+レベル4以下の機械族モンスター

(1):1ターンに1度、このカードの攻撃力の半分のダメージを相手に与えることができる。

(2):このカードが破壊され墓地へ送られた時に発動できる。このカードの融合召喚に使用した融合素材モンスター一組が自分の墓地に揃っていれば、その一組を特殊召喚する。その後、このカードをエクストラデッキに戻す。

 

「おいおい、まるでゾンビみたいなモンスターだな…」

融合素材が復帰し、エクストラデッキに本体が戻ったことで、再びそのモンスターを融合召喚可能になった。

しかし、今のバレットには手札は無く、デッキに入っていると思われる《融合》は残り2枚。

(《鉄盾の獣闘機勲章》の効果は分からないが、今のあいつのデッキの枚数を考えたら、《融合》をドローする可能性は5.8%)

だが、そのような考えが当てにならないことを既に分かっている。

《ミラクル・フュージョン》や《EMトランプ・ウィッチ》のような《融合》を内蔵したカードも存在する可能性だってあるからだ。

そしてバレットは融合次元のデュエリスト。

必ずそのようなカードを入れていると思って間違いないだろう。

「俺はカードを1枚伏せて、ターンエンド。さあ、あんたのターンだぜ?おっさん」

 

翔太

手札6→4(うち1枚《魔装剣士ムネシゲ》)

ライフ3200

場 魔装槍士クーフーリン レベル6 攻撃2100

  伏せカード1

 

バレット

手札0

ライフ1900

場 スフィア・ボム球体時限爆弾 レベル4 攻撃1400

  漆黒の豹戦士パンサーウォリアー レベル4 攻撃2000

  鉄盾の獣闘機勲章(永続罠) 勲章カウンター21

  伏せカード2

 

一方、レオコーポレーションのオペレータールームでは零児と中島、多くのオペレーターが待機している。

零児の隣には薄い紫の髪で濃い青の瞳、水色のブカブカな服を着ていて、黒いつば付きの帽子をつけているにも関わらず、水色のブカブカなフードをつけた小学生くらいの少年がいる。

彼の腕には顔の左側の左耳だけが紫色の布になっている白いデフォルメした熊のぬいぐるみが抱かれている。

「ユースのデュエリストたちは?」

零児の質問に、白い薄毛をした初老の男が心痛の色を浮かべながら答える。

「はい、桜木ユウを除き、全滅しました…」

「そうか…。剣崎が編成したヴァプラ隊は?」

「バス到着後、スタジアムを中心に防衛網を展開しております」

「そうか…」

自席に設けられているコンピュータを起動すると、数人のデュエリストの顔写真が表示される。

彼らはすべて先ほど全滅したと伝えられた人物たちだ。

「社長。彼らが到着しました」

「そうか…通せ」

オペレータールームの扉が開き、侑斗とウィンダ、柚子が入ってくる。

「零児君、言われた通り、彼女は連れてきたけど…遊矢君に会わせたほうが良かったんじゃないのかな?」

「いや…これからのことを考えると、今会わせることは得策ではない。それよりも…」

零児はコンピュータのパスワードを入力し、ディスプレイ部分を外す。

そして、立ち上がって柚子の前へ行く。

「遊矢は…遊矢は無事なの!!?」

遊矢のことが心配でたまらなくなった柚子が質問する。

メガネをわずかに動かした後、零児は大型モニターに目を向ける。

「彼は無事だ。今のところはな…」

「ああ…」

この時、初めて柚子はモニターを注視した。

多くのオベリスクフォースが出現し、無差別にデュエリストを襲撃する。

倒され、力尽きたデュエリストが彼らのデュエルディスクが放つ光によってカード化されていく。

彼らのまるで遊びのようにおびえるデュエリストをカード化していく姿に柚子は戦慄し、目に涙を浮かべる。

火山エリアに映像が切り替わると、そこには赤い髪とオレンジ色のマスクをつけた太陽を模した額当ての忍者と素良がデュエルをしている。

「素良!?なんで…」

「彼は融合次元のデュエリストだよ。おそらく、彼がオベリスクフォースを…」

そして、本社ビル出入り口では黒咲とセレナ、そして髪とマスクの色が青でそれ以外が先ほどの忍者そっくりの容姿の男が3人のオベリスクフォースと交戦している。

「セレナ…黒咲とちゃんと…」

「ということは、君はセレナちゃんと会ったということだね?」

「はい。彼女はエクシーズ次元で融合次元のデュエリストが何をしたのかを知らなかったから…」

「彼に会わせて、真実を知ってもらおうとして自分がおとりになったんだね」

侑斗がため息をつきながら、彼女の考えを口にする。

気持ちは分かるが、もう少し考えて行動すべきじゃなかったのかと言いたげなのを分かっているために、柚子は何も言えなくなる。

「おい、一体どうなっているんだ!!?」

オペレータールームに今まで出番のなかった沢渡が強引に入ってくる。

彼も舞網チャンピオンシップに参加したが、遊矢に敗れ、1回戦敗退になっている。

「沢渡?なんでここに!?」

「お前は柊柚子!お前こそなんでここにいるんだ!?ってそんなことより…赤馬零児!!なんでバトルロワイヤルの状況が放送されていないんだ!?」

「え…??」

沢渡の言葉に柚子がびっくりする。

そんな彼女を無視するかのように沢渡は言葉を並べる。

「何がどうなっているんだ!?答えろ!!参加者は…遊矢はどうなっているんだ!!?」

「…。そんなに今の状況が知りたいか?」

零児はじっと沢渡の目を見る。

「ああ、知りたいな。俺の知らないところであいつが負けるなんてことがあってはならないからな。あいつを倒すのは俺だ!!」

「そうか…」

 

「私のターン、ドロー!」

 

バレット

手札0→1

 

「私は罠カード《融合準備》を発動。エクストラデッキに存在する融合モンスター1体を公開し、テキストに記されているモンスター1体をデッキから手札に加え、その後墓地から《融合》を1枚手札に加える。私は《ミノケンタウロス》を見せ、デッキから《ミノタウロス》を手札に加える」

デッキと墓地から2枚のカードが自動排出される。

《融合準備》は罠カード故に即効性がないものの、次のターンになればフリーチェーンで扱うことができる。

《D.D.クロウ》のようなカードには注意が必要だが。

「そして私は手札から魔法カード《融合》を発動。その効果で再びフィールド上の2体のモンスターを融合し、《パンサー・プレデター》を融合召喚!」

 

獣闘機パンサー・プレデター レベル6 攻撃1600

 

「更に私は《鉄盾の獣闘機勲章》の効果を発動。このカードを墓地へ送ることで、私のフィールド上に存在する獣闘機1体の攻撃力を勲章カウンターの数×100ポイントアップさせる」

《鉄盾の獣闘機勲章》が消滅し、21個の勲章が光となって《獣闘機パンサー・プレデター》の肉体に宿る。

 

獣闘機パンサー・プレデター レベル6 攻撃1600→3700

 

鉄盾の獣闘機勲章(アニメオリカ)

永続罠カード

(1):1ターンに1度、自分が100以上の戦闘ダメージを受けた場合に発動出来る。その戦闘ダメージ100につき、勲章カウンターを1つこのカードの上に置く。

(2):勲章カウンターが置かれているこのカードを墓地へ送り、自分フィールドの「獣闘機」モンスター1体を対象として発動出来る。勲章カウンター×100攻撃力をアップする。

 

「おいおい、攻撃力が一気に3700かよ…?」

「まだだ!私は《パンサー・プレデター》の効果を発動!1ターンに1度、このカードの攻撃力の半分の数値のダメージを与える!」

《獣闘機パンサー・プレデター》の胸から放たれた光線が翔太のデュエルディスクに命中する。

攻撃力増加によって出力も上昇したためか、左腕に熱が伝わってくる。

「くっ!」

 

翔太

ライフ3200→1350

 

「更に私はここで罠カード《聖銀の獣闘機勲章》を発動!このカードは私の獣闘機モンスターが存在するとき、その融合素材モンスターを墓地から特殊召喚する。私は《パンサーウォリアー》と《スフィア・ボム》を特殊召喚!」

鏡のような輝きを見せる飾りのない勲章がバレットのフィールドに現れ、その前に2体のモンスターが立つ。

 

スフィア・ボム球体時限爆弾 レベル4 守備1400

漆黒の豹戦士パンサーウォリアー レベル4 攻撃2000

 

「更に、この効果で特殊召喚したモンスターの数だけ相手フィールド上の魔法・罠カードを破壊できる」

《獣闘機パンサー・プレデター》のビーム砲から赤い光線が翔太の伏せカードに向けて発射される。

このまま攻撃する前に、安全確保のために伏せカードを破壊しようと思ったのだろう。

「俺は罠カード《威嚇する咆哮》を発動。これでこのターン、お前は攻撃宣言できない」

「ふん、フリーチェーンの罠カードを仕込んでいたか。ならば私は手札から《ミノタウロス》を召喚」

 

ミノタウロス レベル4 攻撃1700

 

「そして罠カード《フュージョン・スナイパー》を発動。1ターンに1度、私のフィールド上に融合モンスターが存在するとき、相手の特殊召喚されたモンスター1体を破壊し、1000ダメージを与える」

Fが大きく描かれた鋼鉄製のスナイパーライフルが出現し、《魔装槍士クーフーリン》に向けて銃弾を発射する。

「ぐっ…!!」

槍士を貫いた銃弾はそのまま翔太の胸にも直撃する。

実体ダメージのために、翔太は痛みに耐える。

 

翔太

ライフ1350→350

 

聖銀の獣闘機勲章

通常罠カード

「聖銀の獣闘機勲章」は1ターンに1度しか発動できない。

(1);自分フィールド上に表側攻撃表示で存在する「獣闘機」融合モンスター1体を対象に発動できる。このカードの融合召喚に使用した融合素材モンスター一組が自分の墓地に揃っていれば、その一組を特殊召喚する。その後、この効果で特殊召喚したモンスターの数まで相手フィールド上に存在する魔法・罠カードを破壊することができる。

 

フュージョン・スナイパー

永続罠カード

「フュージョン・スナイパー」はフィールド上に1枚しか表側表示で存在できない。

(1)1ターンに1度、自分フィールド上に融合モンスターが存在する場合、自分のターンのメインフェイズ時にのみ発動できる。相手フィールド上に存在する特殊召喚されたモンスター1体を破壊し、1000ダメージを相手に与える。

 

「私はこれでターンエンドだ」

 

翔太

手札4(うち1枚《魔装剣士ムネシゲ》)

ライフ350

場 なし

 

バレット

手札1

ライフ1900

場 スフィア・ボム球体時限爆弾 レベル4 攻撃1400

  漆黒の豹戦士パンサーウォリアー レベル4 攻撃2000

  獣闘機パンサー・プレデター レベル6 攻撃3700

  ミノタウロス レベル4 攻撃1700

  フュージョン・スナイパー(永続罠)

 

「…ってことはつまり、その融合次元の奴らがバトルロワイヤルで悪さをしているってことか?」

零児と侑斗からの説明を聞いた沢渡は何とか脳内で内容を整理していく。

内心嘘だろうと思っていたが、モニターでその映像を見せられたこととカード化されたデュエリストを実際に見たことで真実だと認めざるを得なかった。

「沢渡シンゴ、君には融合次元のデュエリストたちの討伐をしてもらいたい」

「…はぁ??」

「敗者復活戦…という名目でだ」

急な話にポカンとする。

1回戦敗退のデュエリストにそのようなことを許すのはたとえ主催者であったとしても横暴だ。

それ以上に、敗北した以上は無条件の敗者復活は自身のデュエリストとしてのプライドが許さない。

「心配するな、あくまで名目。おおっぴらに動いたとしてもそのことは我々以外には分からない。それとも…私の命令が聞けないとでも?」

威圧するような目線を沢渡に送りながら、カードケースを渡す。

「これは完成したペンデュラムモンスターだ。オリジナルには及ばないが、それでも融合次元のデュエリストには十分に対抗できる。前金代わりだと思ってほしい」

ケースを見ながら、沢渡はゴクリと唾を飲む。

もう逃げられないということを暗に示されているということだろう。

彼は何も言わずにケースを取り、そのまま部屋から出て行った。

「沢渡…」

「柊柚子、君にはもう1つ見せたいものがある」

「え…?」

「これは昨日の映像だよ」

侑斗から簡単に説明された後、零児がディスプレイを見せる。

「ああ…」

流れる映像を見て、柚子は両手で自分の口を覆う。

暴走する遊矢が《覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン》を召喚し、3人のオベリスクフォースを蹂躙する映像だった。

 

「俺のターン!」

 

翔太

手札4→5

 

「俺はスケール3の《魔装船ヴィマーナ》とスケール9の《魔装剣士ムネシゲ》でペンデュラムスケールをセッティング。これで俺はレベル4から8までのモンスターを同時に召喚可能。来たれ、時の果てに眠りし英雄の魂。漆黒の魂と契約し、封印から解き放たん!(こいつの方が俺にはしっくりくるな)ペンデュラム召喚!現れろ、大海を巡る郷士、《魔装郷士リョウマ》!」

 

魔装郷士リョウマ レベル4 攻撃1900

 

「そして、第4の騎士、《魔装騎士ペイルライダー》!」

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

 

「くっ…ペンデュラム召喚か!」

同時召喚された2体のモンスターを苦虫をかみつぶしたように眺める。

零児とのデュエルではペンデュラム召喚が原因で敗れたからだ。

「とっておきだ、あんたに俺の新しい力を見せてやるよ」

翔太は手札の中からカードを1枚手に取る。

(侑斗って奴め、遊矢のデッキにカードを仕込みやがって)

翔太は侑斗が2枚のカードを仕込んだことを見抜いていた。

権現坂と合流する前にあらかじめその2枚を確認した。

それは同じカードで、翔太は内緒でそのうちの1枚を横取りしていた。

「俺は手札から《PCM-シルバームーン・アーマー》を発動!」

「PCM!?RUMとは違うのか!?」

「こいつは特別なカードでな、俺のフィールド上に存在するレベル7のペンデュラムモンスター1体を同じ種族でランク7のエクシーズモンスターに変化させる。俺は《魔装騎士ペイルライダー》でオーバーレイ!」

発動と同時に、上空が熱い雲に包まれる。

雲が晴れると、青々として空が漆黒の闇に代わり、満月が浮かぶ。

《魔装騎士ペイルライダー》は空を飛び、月に着地する。

その地面に魔法陣が現れ、黄色い粒子がそのモンスターを包み込んでいく。

「月の鎧に拘束されし第4の騎士よ、その重力を戒めとし覚醒せよ。ムーンライトエクシーズチェンジ!」

粒子が徐々に鎧へと変化していき、第4の騎士に装着されていく。

2連装マシンガンが裏に装着された小型の青白い盾を右手、ビーム砲が内臓された大型の青白い盾を左手に。

全身を白銀の炸裂装甲が覆い、両足にミサイルポッド、背中にはガトリング砲とミサイルポッドがついたコンテナが装着される。

装備し終えると、胸部に三日月の紋章が刻まれ、そのモンスターは瞬時に翔太の前へワープする。

「現れろ、月の鎧纏いし死の騎士、《MLX-魔装騎士ペイルライダー・ムーンレイス》!」

 

MLX-魔装騎士ペイルライダー・ムーンレイス ランク7 攻撃2500

 

「この効果で特殊召喚されたモンスターは次の俺のターンのスタンバイフェイズ時まで破壊されない」

 

PCM(ペンデュラムチェンジマジック)-シルバームーン・アーマー

通常魔法カード

(1):自分フィールド上に表側表示で存在するレベル7のPモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターと同じ種族でそのレベルと同じ数値のランクを持つ「MLX(ムーンライトエクシーズ)」モンスター1体を、

対象のモンスターの上に重ねてエクストラデッキからX召喚する。

(2):この効果でX召喚されたモンスターは次の自分のターンのスタンバイフェイズまで戦闘および効果では破壊されない。

 

「ペンデュラムモンスターをエクシーズモンスターに変えるだと!?」

報告にもない、新たなペンデュラムモンスターの姿に驚きを隠せない。

「こいつは俺のライフが1000以下の時、相手フィールド上に存在するすべてのモンスターに1回ずつ攻撃することができる。また、1ターンに1度墓地の「魔装」モンスター1体を除外することで、相手モンスター1体の攻撃力・守備力をターン終了時まで0にする!」

「何!?」

「ムーンライト・シューティング!」

《MLX-魔装騎士ペイルライダー・ムーンレイス》のコンテナから3つのパーツに分解された青白い大型レールガンが自動的に取り出し、組み立てが行われ、2つの盾をその場に置いたそのモンスターに装備される。

そして、墓地から出てきた《魔装霊レブナント》の力を吸収し、超高速で質量弾が発射される。

質量弾は《獣闘機パンサー・プレデター》を撃ちぬき、更にその威力によってそのモンスターを後ろ10メートル先にある巨大な岩石にめり込む。

 

獣闘機パンサー・プレデター レベル6 攻撃3700→0

 

「《パンサー・プレデター》の攻撃力が0に!?」

「これで終わりだな。俺は《ペイルライダー》で攻撃!フルバースト・デスブレイク!!」

レールガンを投げ捨て、2つの盾を手にした《MLX-魔装騎士ペイルライダー・ムーンレイス》が4体のモンスターに狙いをつける。

その瞬間、光線とミサイル、マシンガンとガトリング砲の弾丸がこれでもかバレットのモンスター達に襲い掛かる。

《スフィア・ボム球体時限爆弾》は光線で撃ちぬかれて沈黙し、《漆黒の豹戦士パンサーウォリアー》は剣を持つ右手を中心にマシンガンでハチの巣にされる。

《ミノタウロス》は斧を盾にガトリングの銃弾をしのぐが、別方向から飛んできたミサイルを受ける。

そして、《獣闘機パンサー・プレデター》は無抵抗のままミサイルとガトリングによって完膚なきまでに岩もろとも破壊しつくされた。

「うわああああああ!!」

 

バレット

ライフ1900→0

 

MLX(ムーンライトエクシーズ)-魔装騎士ペイルライダー・ムーンレイス

ランク7 攻撃2500 守備2000 エクシーズ 闇属性 戦士族

「魔装」レベル7モンスター×2

(1):このカードと戦闘を行った相手モンスターをダメージステップ終了時に破壊する。

(2):自分LPが1000以下の場合、このカードは相手フィールド上に存在するすべてのモンスターに1回ずつ攻撃することができる。

(3):「魔装騎士ペイルライダー」をX素材としている場合、以下の効果を得る。

●1ターンに1度、自分LPが1000以下の場合、自分の墓地に存在する「魔装」モンスター1体を除外し、相手フィールド上に存在するモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターの攻撃力・守備力をターン終了時まで0にする。

 

攻撃により発生した爆風で吹き飛ばされ、うつぶせの状態で気絶するバレットをじっと見る。

「今回は遊矢の時のようにはならなかったな…」

新たな力である《MLX-魔装騎士ペイルライダー・ムーンレイス》をじっと見つめる。

(気に入らないが、あいつのおかげってことになるな)

カードをしまうと同時に、周囲を見渡す。

翔太を包囲するように、ボロボロなジャケットを着たデュエリストが複数人いることが確認できる。

服装こそバラバラだが、デュエルディスクの構造はオベリスクフォースの物と同じだ。

彼らもバレットと同じ懲罰部隊のメンバーだろう。

「懲りない奴らだ…」

再びデュエルディスクを展開する。

「秋山翔太!!お前を倒せば、俺たちの罪状を消してくれるとプロフェッサーは約束してくれた!!俺たちの未来のため、倒されてもらうぞ!!」

「能書きはいい。向かってくるなら叩き潰す」

カードを引き、すぐに自分のターンで行動をとれるようにする。

それと同時に彼らのフィールドには融合モンスター達が現れる。

「後悔させてやる!」

彼らに対抗するため、翔太のフィールドには《魔装騎士ペイルライダー》が現れた。



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第33話 その悪魔を斬れ!

「非正規の部隊まで出したということか…」

オペレータールームで、零児は冷静に呟く。

モニターには懲罰部隊にたった1人で応戦する翔太の姿が映っていた。

それだけではない。

先程まで行われていたバレットとのデュエルもラストターンのみだがモニターに映っていた。

「剣崎、あなたが榊遊矢に渡したカードの1枚が彼に横取りされたぞ?」

「それでいいんだ。2枚のうちの1枚はどのみち彼に渡すつもりだったから」

「あの、剣崎さん…さっき翔太さんが使ったカードって…?」

「PCMのこと?」

侑斗の言葉に柚子は何も言わずにうなずく。

先程の零児との会話が正しければ、遊矢もそのPCMを持っていることになる。

しかし、なぜ2人にそのカードを渡したのか理解できなかった。

「すぐにわかるよ。そのカードは遊矢君にとって、必要なカードなんだ…」

「必要なカード…?」

「社長!本社ビル入り口付近で2つのデュエルが!!」

「モニターに映せ」

「はっ!!」

命令を受けたオペレーターが慣れた手つきでモニターの画面を切り替える。

1つのデュエルは本社ビル入り口前ですでに行われていて、沢渡、青いマスクの忍者、権現坂、セレナ、黒咲が3人のオベリスクフォースとデュエルをしている。

セレナのそばには2枚のカードが落ちていて、そこには未知夫と鉄平の姿がイラストに描かれている。

「そんな…また!!」

「ウィンダ、ヴァプラ隊の動きはどうなってるの?」

「うん!遺跡エリアに残っていたオベリスクフォースは全部やっつけたって!氷山エリアで生き残ったデュエリストを探したら、すぐに火山エリアへ行くみたい」

「できるかぎり急ぐように言って…これ以上犠牲者を出すわけにはいかないから…」

そう言っている間にもう1つのデュエルの映像が流れる。

黒咲たちとは数十メートル離れた場所で、溶岩を隔てて遊矢と素良が対峙している。

デュエルディスクを展開していて、手札がどちらも5枚であることから、まだ始まったばかりであることがわかる。

どうやら柚子を探しているうちにここで素良と遭遇したようだ。

彼の足元には赤いマスクの忍者のイラストが描かれたカードが落ちている。

そのことから、彼は素良に敗れてカード化してしまったことがわかる。

「遊矢!素良!!」

それを見た柚子が部屋を飛び出そうとする。

しかし、ウィンダが扉の前へ行ってそれを阻む。

「どいて!!私は遊矢を…」

「駄目!融合次元のデュエリストに捕まっちゃう!!」

「でも…!」

「彼らの目的は君とセレナちゃんの確保にあるんだ。なんでそんなことをするのかまでは分からないけど…」

自分とセレナの確保。

柚子はユーリの言葉を思い出す。

彼は自分をカード化してまで捕まえようとしていた。

しかし、他のデュエリストに関しては有無を言わさずカード化している。

「なら、私を身代わりに…」

「彼らは本気で、無邪気だ。たとえ君が自らつかまろうとしても、攻撃を続行するよ。何の疑問も持たずに…」

「そんな…」

この戦いを止めることができない現実に柚子が崩れ落ちる。

「赤馬…零王…!!」

零児の隣にいる少年が彼を見て、おびえる。

冷静な彼が怒りを帯びていたからだ。

 

一方、遊矢と素良は…。

 

素良

手札5

ライフ4000

 

遊矢

手札5

ライフ4000

 

「僕のターン!僕は手札から魔法カード《融合》を発動!その効果で僕は手札の《ファーニマル・キャット》と《エッジインプ・チェーン》を融合!」

天使の羽根をつけた紫色のネコのぬいぐるみと自動車用のチェーンなどの様々な規格の鎖で構成された悪魔が現れ、融合する。

「悪魔の鎖よ、研ぎ澄まされし爪よ、神秘の渦で1つとなりて、新たな力と姿を見せよ!融合召喚!現れ出ちゃえ、すべてを封じる鎖のケダモノ!《デストーイ・チェーン・シープ》!」

肢体が鎌と鎖、鎖によって回転させることができるオレンジの円盤となり、目玉が飛び出た状態のグロテスクな羊のぬいぐるみが現れる。

オレンジの円盤は左前脚と後ろ足だけでなく、背中にも2つついている。

 

デストーイ・チェーン・シープ レベル5 攻撃2000

 

「そして《エッジインプ・チェーン》の効果発動。このカードが手札・フィールドから墓地へ送られた時、デッキからデストーイカード1枚を手札に加えることができる。僕はデッキから《魔玩具融合》を手札に加える。更に《ファーニマル・キャット》の効果発動。このカードを融合素材として墓地へ送った時、墓地から《融合》を1枚手札に加える」

素良の手に使用済みの《融合》ともう1枚の融合魔法が手札に加わる。

これで彼は手札に素材モンスターがいれば、更なる融合召喚が可能になった。

「そして僕はカードを1枚伏せて、ターンエンド。さあ来なよ、遊矢。僕の本気を見せてあげるから」

 

素良

手札5→3(うち2枚《融合》《魔玩具融合》

ライフ4000

場 デストーイ・チェーン・シープ レベル5 攻撃2000

  伏せカード1

 

遊矢

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「素良…俺はお前の本当の笑顔を取り戻してやる!!」

遊矢はデッキトップに指をかける。

彼は初めて会ったときの素良の無邪気な笑顔が本物だということを信じている。

デュエリストをカード化する、エクシーズ次元を滅ぼすような連中の仲間であることは事実だ。

だが、きっとそれは強要されただけなのかもしれない。

確証はないが、何よりも素良を敵とみなしたくないという思いが遊矢をそう思わせている。

「俺のターン、ドロー!!」

 

遊矢

手札5→6

 

「俺はスケール1の《星読みの魔術師》とスケール8の《時読みの魔術師》でペンデュラムスケールをセッティング!!これで俺はレベル2から7のモンスターを同時に召喚可能!揺れろ!魂のペンデュラム!天空に描け光のアーク!ペンデュラム召喚!! 現れろ、雄々しくも美しい二色の眼、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!!」

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

「思い出せ素良!!初めてデュエルしたあの時のことを!!」

遊矢と素良が初めてデュエルをしたとき、素良は遊矢のペンデュラム召喚を食い入るように見ていた。

そして、遊矢のエンタメデュエルをいつも楽しみにしていた。

だが、今の彼は違う。

「あれは半分遊びだったからだよ。でももう…あの時のような生ぬるいデュエルはしない」

「あの時の笑顔は本物だった!バトルだ!俺は《オッドアイズ》で《デストーイ・チェーン・シープ》を攻撃!!」

《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》の口から赤い回転するブレスが放たれる。

素良は浮遊している複数の岩に向けて跳躍し、アクションカードを手にする。

しかし、2体の魔術師の力によって彼はペンデュラムモンスターの攻撃中、魔法も罠も発動できない。

「螺旋のストライク・バースト!!」

《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》のブレスが《デストーイ・チェーン・シープ》を貫き、素良に襲い掛かる。

「《オッドアイズ》は相手モンスターとの戦闘で発生する相手へのダメージを倍にする!!」

 

素良

ライフ4000→3000

 

「けど、ここで僕はアクション魔法《フレイム・チャンス》を発動!僕のモンスターが戦闘で破壊された時、デッキからカードを1枚ドローする。そして、《デストーイ・チェーン・シープ》は1ターンに1度、破壊された時に攻撃力を800アップさせた状態で復活できる!」

ブレスで貫かれ、バラバラになったいびつなぬいぐるみが鎖で繋げられ、再起動する。

そして、破壊された恨みなのか円盤が火花が起こるくらい速く回転し始める。

 

デストーイ・チェーン・シープ レベル5 攻撃2000→2800

 

復活までのタイムラグの間に、遊矢は岩でできた天井にあるアクションカードを《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を踏み台にして手にする。

「げっ…アクション罠!?こんな時に!!」

「そうやってぬるいことをしてるからだよ、遊矢」

遊矢が手にしたアクション罠《誤配送》を見て、彼を馬鹿にしながらカードを1枚ドローする。

 

素良

手札3→5

 

フレイム・チャンス

アクション魔法カード

(1):自分フィールド上に存在するモンスターが戦闘で破壊され墓地へ送られた時に発動できる。デッキからカードを1枚ドローする。

 

誤配送

アクション罠カード

(1):相手はデッキからカードを1枚ドローする。

 

「俺はカードを1枚伏せて、ターンエンド!」

 

素良

手札5(うち2枚《融合》《魔玩具融合》)

ライフ3000

場 デストーイ・チェーン・シープ レベル5 攻撃2800

  伏せカード1

 

遊矢

手札6→2

ライフ4000

場 オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500

  星読みの魔術師(青) ペンデュラムスケール1

  時読みの魔術師(赤) ペンデュラムスケール8

  伏せカード1

 

「素良、俺たちはこうしてデュエルをすることで友達になったじゃないか!!」

「デュエルは戦いだ。友情だとか生ぬるいことなんかよりも…僕には大事なことがある!!」

遊勝塾での関係を無にするような言動が遊矢に襲い掛かる。

かつて彼を感動させたペンデュラム召喚ですら、彼を笑顔にすることができない。

「勝利こそがすべて…負けたら…全部終わりなんだ!!僕のターン、ドロー!!」

 

素良

手札5→6

 

「僕は手札から魔法カード《融合の宝札》を発動。手札の《融合》を墓地へ送ることで、デッキからカードを2枚ドローする!」

 

融合の宝札

通常魔法カード

「融合の宝札」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):手札の「融合」カード1枚を墓地へ送ることで発動できる。デッキからカードを2枚ドローする。このカードを発動したターン、自分は融合召喚以外の方法でエクストラデッキからモンスターを特殊召喚することができない。

 

「更に罠カード《融合準備》を発動!その効果で僕は融合素材モンスター、《エッジインプ・シザー》をデッキから手札に加え、《融合》を墓地から手札に加える!」

「一気に4枚も手札増強を!!?」

ドローする度に放たれる素良のプレッシャーが強くなっていく。

それを感じるほど、今の彼は初めてデュエルした時と比べ物にならないくらい本気であることが分かってしまう。

「そして、手札から《ファーニマル・オウル》を召喚!」

眉毛が天使の羽根となっている黄色いフクロウが《融合》を口の咥えた状態で現れる。

「このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから《融合》を手札に加えることができる!」

 

ファーニマル・オウル レベル2 攻撃1000

 

「僕は手札から魔法カード《融合》を発動!!その効果で僕は手札の《エッジインプ・シザー》、《ファーニマル・ベアー》、更にフィールドの《ファーニマル・オウル》を融合!!悪魔の爪よ!野獣の牙よ!煉獄の眼よ!神秘の渦で1つとなりて、新たな力と姿を見せよ!融合召喚!現れ出ちゃえ!すべてを引き裂く密林の魔獣!《デストーイ・シザー・タイガー》!」

《ファーニマル・オウル》と天使の羽根がついたピンク色の熊のぬいぐるみ、そして複数のハサミが合体した悪魔が融合する。

そして、腹部が巨大なハサミで大きく切られている巨大で青い虎のぬいぐるみが遊矢の前に立ちはだかる。

 

デストーイ・シザー・タイガー レベル6 攻撃1900

 

「《デストーイ・シザー・タイガー》…!?」

「こいつは融合次元で新しく手に入れたカード、そして遊矢!!君との決別の証さ!!このカードの融合召喚に成功した時、素材となったカードの数だけフィールド上のカードを破壊できる!」

「何!!?」

《デストーイ・シザー・タイガー》が大きく跳躍し、ペンデュラムスケールをセッティングしている2体の魔術師を掴み、口の中に放り込む。

仲間を救おうと《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が突撃するが、腹部の巨大なハサミがその竜の頭部を切断した。

そして、口の中が空になったのを見計らうとそのまま動かなくなった竜をも丸呑みにした。

「うう…!!」

その光景を見てしまった遊矢が嘔吐しそうになる。

あまりのもその光景がグロテスクだからだ。

「更にこのカードは僕のデストーイモンスターの攻撃力を僕のフィールド上のファーニマルモンスターとデストーイモンスターの数×300アップさせる!」

 

デストーイ・シザー・タイガー レベル6 攻撃1900→2500

デストーイ・チェーン・シープ レベル5 攻撃2800→3400

 

「更に僕は手札から魔法カード《魔玩具融合》を発動!フィールド・墓地のモンスターを素材にデストーイモンスターを融合召喚する!!」

「まさか…また《シザー・タイガー》を!?」

「安心しなよ、《シザー・タイガー》は自分フィールド上に1枚しか存在できないモンスター。狂暴すぎるのが玉にキズなモンスターだからね。僕は《エッジインプ・シザー》と《ファーニマル・ベアー》、《ファーニマル・オウル》、《ファーニマル・キャット》を融合!!悪魔の爪よ!野獣の牙よ!煉獄の眼よ!研ぎ澄まされし爪よ!融合召喚!現れ出ちゃえ!すべてを引き裂く平原の魔獣、《デストーイ・シザー・ウルフ》!!!」

墓地に眠る4体が1つとなり、《デストーイ・シザー・タイガー》と同じように腹部が大きくハサミで切られている青い狼のぬいぐるみが現れる。

その両前足は青い持ち手のハサミによって体とつなぎ荒らされている。

 

デストーイ・シザー・ウルフ レベル6 攻撃2000

 

「《シザー・ウルフ》は素材にしたモンスターの数だけ攻撃できる!そして、《シザー・タイガー》の効果で攻撃力がアップする!!」

 

デストーイ・シザー・タイガー レベル6 攻撃2500→2800

デストーイ・チェーン・シープ レベル5 攻撃3400→3700

デストーイ・シザー・ウルフ レベル6 攻撃2000→2900

 

「融合召喚…素良!!融合召喚を柚子に教えたのは、友情のためじゃなかったのか!?」

柚子に融合召喚を教えたのは素良だ。

それに対して、彼が見返りを要求したことはない。

だとしたら、柚子を仲間だと思っているからそうしたに違いない。

遊矢は素良の本性が遊勝塾で見せたものだと信じた。

いや、信じたかったというべきか。

あのようなグロテスクな光景を見せ、そしてデュエリストをカードに封印するような外道を平然と行う彼への遊矢の信頼が無意識のうちにわずかながら薄らいでいた。

「あれは余計だったよ。融合召喚はもっと尊い目的のために使うべきだ。世界を1つにするためにね」

「力で世界を1つにしようだなんて間違っている!!」

「だったら僕に勝って、それを証明すればいいだろう!!?バトルだ!!3体のデストーイモンスターよ。遊矢にとどめを刺せ!!」

遊矢の言葉がそうさせているのか、素良の言葉に苛立ちの色が混ざる。

だが攻撃命令を出していることは変わらず、3体のモンスターが一斉に遊矢を襲う。

「遊矢!!」

近くまで来て、遊矢の状況を見た翔太が叫ぶ。

「ハアハアハア!!」

だが、アクションカードを探す遊矢に彼の言葉にこたえる余裕はない。

浮遊する岩を飛びつつ、アクションカードを探す。

「…!!」

わずかながら横に目を向けている間に、目の前に《デストーイ・チェーン・シープ》が現れ、そのかか遊矢に頭突きする。

「うわああああ!!」

攻撃を受けた遊矢が吹き飛ばされていく。

 

遊矢

ライフ4000→300

 

「どうしたの遊矢?あと1回攻撃を受けたら、終わっちゃうよ??」

吹き飛ばされる遊矢をあざわらう。

そんな中、《デストーイ・シザー・ウルフ》が遊矢を丸呑みにしようと襲い掛かる。

あまりの激痛で遊矢の意識が薄らぐ。

(そんな…ここで、終わり…?素良1人の笑顔も取り戻せないまま…)

己の非力を悔やみ、涙を浮かべる遊矢の目には遊勝塾で見た素良と権現坂、そして柚子の笑顔が浮かんでは消えていく。

(柚子…みんな…ごめん…)

そのまま意識を手放そうとした瞬間、遊矢の額に石が当たる。

何だと思い、目を開くと崖の上に翔太の姿が見えた。

「おい、何やってんだ?ガキでも欲しいものがあれば、もう少し粘るぞ!!俺はアクション魔法《フレイム・キャノン》を発動!その効果で俺は遊矢の伏せカードを破壊する!!」

溶岩の中から火球が出現し、遊矢の伏せカードを破壊する。

「はぁ!?何やってるの?助ける相手の伏せカードを破壊しちゃうなんて!?」

「お前みたいなクソガキは黙って見てろ」

そう言っている間に、翔太にペナルティダメージが発生する。

 

翔太

ライフ4000→2000

 

「だったら遊矢を倒した後はお前も倒してやる!!《シザー・ウルフ》!!さっさと遊矢を…」

「俺は…墓地から罠カード《エクストラ・ミラージュ》を発動!」

「何!?まさかそれは…」

《エクストラ・ミラージュ》を見て素良がハッとする。

先程《フレイム・キャノン》の効果で破壊したカード、それが《エクストラ・ミラージュ》だったのだ。

「このカードを除外することで、このターン相手がエクストラデッキからモンスターを特殊召喚したモンスターの数だけ攻撃を無効にする!!」

遊矢の前に突然現れた障壁によって、《デストーイ・シザー・ウルフ》が吹き飛ばされる。

その間に、遊矢が別の足場で落ちる。

「くっそぉ!!でも、それで無効にできるのはあと1回!!もう1度攻撃だ!!《シザー・ウルフ》!」

再び狼のぬいぐるみが攻撃を開始する。

先ほどと同じように障壁で吹き飛ばされたものの、それと同時に障壁が消える。

障壁の消えた遊矢をまた攻撃しようと壁を蹴ろうとするが、急にその足を炎の縄に拘束され、そのまま足場に転落する。

その炎の縄を持っていたのは翔太だった。

「アクション魔法《ファイア・ロープ》。こいつは1ターンの間だけ相手モンスター1体のみ動きを封じる」

《デストーイ・シザー・ウルフ》が起き上がるのと同時に、とどめを刺すべきついに《デストーイ・シザー・タイガー》が動き出す。

そんな中、遊矢は痛みに耐えながら立ち上がり、吹き飛ばされている間にいつの間にか左腕に張り付いていたアクションカードを手にする。

「よし!!俺はアクション魔法《ソウル・バーニング》を発動!!1度だけ俺が受けるダメージを0にする!うおおおおおお!!」

発動と同時に遊矢の体が炎に包まれる。

《デストーイ・シザー・タイガー》がハサミで彼を切断しようとしたが、その前に炎でハサミが溶けてしまう。

 

ファイア・ロープ

アクション魔法カード

(1):相手フィールド上に存在するモンスター1体を対象に発動できる。その門スタはターン終了時まで攻撃できず、表示形式を変更できない。

 

フレイム・キャノン

アクション魔法カード

(1)フィールド上にセットされている魔法・罠カードを1枚破壊する。

 

ソウル・バーニング

アクション魔法カード

(1):このターン、1度だけ自分が受けるダメージを0にする。

 

「は…ははは…まさか、助けが入ったとはいえここまで攻撃を防いじゃうなんて…」

なぜか素良が笑い始める。

それが見下したものではなく、予想外の事態の発生を楽しむ純粋なものだ。

「まあいいや、次のターンで倒せるし。僕はカードを1枚伏せて、ターンエンド」

 

素良

手札6→3

ライフ3000

場 デストーイ・シザー・タイガー レベル6 攻撃2800

  デストーイ・チェーン・シープ レベル5 攻撃3700

  デストーイ・シザー・ウルフ レベル6 攻撃2900

  伏せカード1

 

 

遊矢

手札2

ライフ300

場 なし

 

翔太

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「はあ、はあ、はあ…」

なんとかこのターンの猛攻をしのぐことができた。

しかし、フィールド上にカードはなく、今の手札では次のターンをしのぐ手がない。

「遊矢、もう分かっただろ?僕と遊矢はもう…あの時のようにはなれない」

「はあ、はあ…素良…」

「目的を達成したら、ここもエクシーズ次元のようにする。みんな、僕たちのハンティングゲームの獲物になるんだ」

「な…に…!?」

「さあてっと、遊矢を狩ったら、次はだれを狩ろうかなー?じゃあ、柚子にしようかな?だって、1人ぼっちになったら可哀そうだし」

「柚子を…だと…!?」

ハンティングゲーム、柚子という言葉に遊矢の脳裏にある光景が浮かび上がる。

突然現れる制服姿のデュエリストの集団と大量のアンティーク・ギアモンスター達。

火の海と化していく町の中で彼らの攻撃を受け、カード化されていく人々。

その中にはデュエリストでない人も含まれている。

そして、自分の目の前で自分に助けを求めながらカード化していく柚子の姿が…。

「素良ぁぁぁぁぁ!!!」

「ちっ…あの馬鹿。また暴走するつもりか!?」

遊矢が黒いオーラに包まれていく。

暴走を防ぐため、翔太が彼の元へ向かう。

「俺のタァーーーーン!!!!」

 

遊矢

手札2→3

 

(駄目だよ…憎しみが残すのは空しさだけだ)

「な…!?」

急に耳ではなく脳に直接聞こえた聞き覚えのない少年の優しい声が遊矢を正気に戻す。

そして、彼を包むオーラも消えた。

「今の声は…一体…??」

ドローしたカードを見る。

それは翔太が使用した《PCM-シルバームーン・アーマー》だった。

「なんでこれが俺のデッキの中に!?」

カードを見ると同時に、遊矢のペンデュラムが淡い光を放つ。

そして、脳裏に白銀の鎧をまとった《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》の姿が浮かぶ。

「俺は手札から魔法カード《逆境の宝札》を発動。俺のフィールド上にモンスターが存在せず、相手フィールド上に特殊召喚されたモンスターが存在するとき、デッキからカードを2枚ドローできる。そして俺はスケール4の《流星の魔術師》をペンデュラムゾーンへ!!(赤馬零児、あんたがくれたカード、使わせてもらうぞ!!)」

背中に流星が描かれた茶色い袈裟を着たスキンヘッドの僧侶が遊矢の右側で上空へ浮遊し、光の柱を生み出す。

左目瞼には縦の切り傷があり、閉じていて、右手には数珠がある。

このカードは大会出場のための4連戦の前に沢渡襲撃の犯人と間違われたことへの侘びとして零児から受け取ったカードだ。

「星の塵を見定める《流星の魔術師》よ、その明快なる力で届かぬ声に耳を傾けよ!このカードをペンデュラムゾーンに置いた時、エクストラデッキに存在するスケール7以上の魔術師をペンデュラムゾーンに置くことができる!俺は《時読みの魔術師》をペンデュラムゾーンに置く!スターダスト・セッティング!!」

遊矢の左側に向けて数珠を投げる。

すると、数珠を中心に光の柱が生まれ、上空から降りてきた《時読みの魔術師》がそれを掴む。

 

流星の魔術師

レベル8 攻撃0 守備3000 光属性 魔法使い族

【Pスケール:青4/赤4】

(1):このカードをPゾーンに置いた時、自分のPゾーンに他のカードが無い場合に発動する。エクストラデッキからPスケールが7以上の「魔術師」Pモンスター1体を選び、自分のPゾーンに置く。

【モンスター情報】

俗世を捨て、山の中で60年もの時を孤独に生きる僧侶。

彼について知る者は誰もおらず、その左目瞼の傷だけがそれを物語る。

ただ1つ分かることは彼が流れ星からこの世の流れを見抜くことができるということだけだ。

 

「これで俺はレベル5から7までのモンスターを同時に召喚可能!ペンデュラム召喚!!現れろ、《時読みの魔術師》、《EMスプリングース》、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!!」

エクストラデッキから2体のモンスターが飛び出すとともに、腹部になぜかバネをつけている、シルクハットと紫の蝶ネクタイ、そして白シャツと青いスーツを着た白いガチョウが現れる。

 

星読みの魔術師 レベル5 攻撃1200

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500

EMスプリングース レベル5 攻撃1100

 

「今更《オッドアイズ》を呼び出したとしても、攻撃力2500じゃ、僕のデストーイモンスター達には勝てないよ!!」

素良の言うとおり、今だしたモンスターの中で最大の攻撃力を持つ《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》ですら一番攻撃力の低い《デストーイ・シザー・タイガー》には及ばない。

《星読みの魔術師》と融合させることができれば、《ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を融合召喚し、3回攻撃で殲滅することができるが、今の彼のデッキには《融合》がなく、《融合》とほぼ同じ効果を持つ《EMトランプ・ウィッチ》も手札にはない。

遊矢は《PCM-シルバームーン・アーマー》をじっと見る。

(このカードが《オッドアイズ》と俺に与えてくれる力が何なのかわからないけど…俺は!!)

そのカードを発動しようとするが、急に《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が遊矢に目を向ける。

「…!?どうした?《オッドアイズ》??」

ソリッドビジョンの存在であるそのモンスターがなぜこのような行動をしたのかわからず、答えないとは分かったうえで質問する。

すると、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が急に遊矢の体を握り、自分の目の前まで持っていく。

「何!?一体どうしたんだ《オッドアイズ》!!…うわぁ!!」

竜の手に体が圧迫され、遊矢が吐血する。

「《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が…!?」

「ちっ…一体どうなっているんだ!?」

翔太が遊矢を助けようと駆け寄るが、そんな彼を赤い竜の尻尾が襲い掛かる。

「こいつ、俺を近づけさせないつもりか!?」

回避した翔太は遊矢を握ったままの《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》をじっと見る。

「オッド…アイズ…え??」

遊矢が相棒の竜の目を見たとき、なぜかそのモンスターの心が伝わってくる感じがした。

「俺が…デュエリストが…憎い…!?」

遊矢に伝わってくる憎しみの心。

それは自分たちデュエルモンスター達を争いの道具にし、弄ぶデュエリストすべてへの怒りだった。

「(《オッドアイズ》…お前…)うわあああ!!」

「あーあ、甘い考えがついに自分のモンスターまで怒らせちゃったんだ。じゃあ、今のうちにアクションカードを探そうっと」

吐血し、苦しむ遊矢をよそに素良はアクションカードを探し始める。

そして、岩陰に隠れているアクションカードを手に取る。

「あ…アクション罠。まあ、今の遊矢には問題ないか」

《失敗率100%》を見ながら、素良は遊矢を見る。

そして、遊矢のフィールドには《EMディスカバー・ヒッポ》が現れる。

 

EMディスカバー・ヒッポ レベル3 攻撃800

 

失敗率100%

アクション罠カード

(1):相手はデッキからレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚する。

 

(《オッドアイズ》…)

なぜか遊矢には《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》の思いがわかる気がした。

エクシーズ次元を攻撃し、更には今こうしてスタンダード次元に進行しているのはオベリスクフォースだ。

しかし、厳密に言うと実際に攻撃し、蹂躙しているのはデュエルモンスターズ達で、応戦するのも同じデュエルモンスターだ。

争いの道具にされるのは気分のいいものであるわけがない。

「ごめんな…《オッドアイズ》…」

力を一向に緩めない《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》に遊矢が侘びの言葉を送る。

アクションデュエルで何度も自分のモンスターと一緒に戦ったからこそ、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》の思いがただのデータではないと思えたのだろう。

「悪いのは融合次元で、今こうしてみんなを傷つけているあいつら…デュエルモンスターには罪がないのに…。だから、こんなことは絶対に終わらせる!こんなバカげたデュエルでこれ以上みんなを苦しませたくない!!うわああああ!!」

再び握る力が強まり、吐血してしまう。

このままでは内臓が破裂するかもしれない。

更には竜の爪がわき腹に刺さっていく。

「くそ!!遊矢、このままだと死ぬぞ!!」

「翔太、手を出さないでくれ!!俺は《オッドアイズ》と話をしているんだ!!」

「遊矢…」

「デュエリストのけじめはデュエリストがつける!!そして、お前にも笑顔を与えて見せる!だから…俺に力を貸してくれ!!《オッドアイズ》---!!」

涙を流し、口からは血を流しながら、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》に自分の想いを伝える。

それに答えたのか、竜は彼を放した。

服の裾で口についた血をふき取ると、遊矢は素良に目を向ける。

「モンスターとの喧嘩はどうだった?遊矢」

「喧嘩じゃない…俺は《オッドアイズ》の思いを感じたんだ?」

「はぁ?」

遊矢の言葉が理解できない素良。

モンスターを道具とみなしている彼には永遠にわからないだろう。

「《オッドアイズ》が教えてくれた。モンスターにも心がある。だから俺はお前も、みんなも、デュエルモンスター達も笑顔にして見せる!それが俺のエンタメデュエル!!俺は手札から《PCM-シルバームーン・アーマー》を発動!!このカードは俺のフィールド上に存在するレベル7のペンデュラムモンスター1体を同じ種族でランク7のエクシーズモンスターに変化させる。俺は《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》でオーバーレイ!!」

《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が上空に向けて咆哮すると、天井となっている岩が次々と砕けて溶岩の中に落ちる。

そして、上空が一瞬だけ熱い雲に覆われ、昼から夜の空へと変わってしまう。

満月を見た《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》は月の重力に引かれ、そこへ向けて飛んでいく。

「《オッドアイズ》が月へ!?本当に…想定外なことをするよ、遊矢…」

再び遊勝塾で見せた笑顔を見せる素良。

それに気づくと、首を大きく横に振って表情を元に戻す。

「月の光よ、今こそ憎悪の心を鎮め、魂を救済する刃を生み出せ。ペンデュラムエクシーズチェンジ!!月の鎧纏いし二色の眼、《MLX-オッドアイズ・月下・ドラゴン》!!」

月に降り立った竜を魔法陣が包み込む。

すると、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が全身に重量感のある白銀の分厚い鎧と三日月を模した額当てが装着され、右手には《アームズ・エイド》のような補助腕が装着され、装着と同時に背中に刺している日本刀を引き抜く。

鎧と刀を得た竜は魔法陣と共に瞬時に遊矢の前までワープする。

ワープし終えると、右の角には「明鏡止水」、左の角には「鎮怒祓邪」という文字の形をしたひび割れができた。

 

MLX-オッドアイズ・月下・ドラゴン ランク7 攻撃2500

 

「MLXモンスターだって!?それにこの姿…」

目の前に現れた新たな遊矢の力に素良が興奮を隠せない。

否定していた笑顔が前面に出てしまう。

「それだけでもびっくりなのに…完全武装だなんて!!」

「そうだ、こうして素直な笑顔を見せている!!それが本当のお前なんだ、素良!!」

「…!?」

遊矢の指摘を受け、再び首を激しく横に振る。

しかし、何度首を振っても、そして頬を叩いても笑顔になってしまう。

(なんで…なんでなんだよ!?僕は融合次元の戦士!遊矢の…)

「俺は手札から魔法カード《イリュージョン・ファイヤー》を発動!俺のフィールド上のモンスター1体はこのターン、俺のフィールド上に存在するほかのモンスターの数だけ攻撃できる!!」

透き通るような鋼でできた刀を手に、素良の3体の融合モンスターを見つめる《MLX-オッドアイズ・月下・ドラゴン》。

遊矢に見せたように憤怒はなく、水のように穏やかだ。

「でも、いくらエクシーズモンスターになったところで攻撃力は2500のまま!!それじゃあ…」

「バトルだ!!俺は《オッドアイズ・月下・ドラゴン》で《シザー・タイガー》を攻撃!!」

「何!!?」

《MLX-オッドアイズ・月下・ドラゴン》が《デストーイ・シザー・タイガー》に向けて突撃する。

攻撃力が上回っている《デストーイ・シザー・タイガー》はそのまま丸呑みするために両腕を伸ばす。

「このカードは俺のライフが1000以下の時、戦闘では破壊されず、発生する俺へのダメージが0になる!」

遊矢が効果説明すると同時に、《MLX-オッドアイズ・月下・ドラゴン》が日本刀でその両腕を切り裂く。

両腕を失い、《デストーイ・シザー・タイガー》が大きく動揺している間に今度はその頭部に刃が突き刺さる。

「更に、ライフが1000以下で《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》をペンデュラムオーバーレイユニットとしている時、攻撃対象としたモンスターをダメージステップ終了時に破壊し、その攻撃力分のダメージを与える!!」

「何!!?」

「《デストーイ・シザー・タイガー》が俺たちとの決別の証なら、それを倒してもう1度友達になってやる!!月光のムラマサ・スラッシュ!!」

《MLX-オッドアイズ・月下・ドラゴン》が咆哮すると、刀を口に咥え、そのまま《デストーイ・シザー・タイガー》を真っ二つに切り裂いていく。

「遊…矢…」

 

素良

ライフ3000→200

 

イリュージョン・ファイヤー(アニメオリカ・調整)

通常魔法カード

「イリュージョン・ファイヤー」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。このターン、そのモンスター以外の自分フィールドのモンスターは攻撃できず、その対象のモンスターはそれ以外の自分フィールドのモンスターの数だけ攻撃できる。

 

MLX(ムーンライトエクシーズ)-オッドアイズ・月下・ドラゴン

レベル7 攻撃2500 守備2000 エクシーズ 闇属性 ドラゴン族

「オッドアイズ」レベル7モンスター×2

(1):このカードが相手モンスターと戦闘を行う場合、このカードが相手に与える戦闘ダメージは倍になる。

(2):自分LPが1000以下の場合、このカードは戦闘では破壊されず、自分が受ける戦闘ダメージは0となる。

(3):「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン」をX素材としている場合、以下の効果を得る。

●自分LPが1000以下の場合、このカードが相手モンスターを攻撃したダメージステップ終了時に発動できる。攻撃対象のモンスターを破壊し、そのモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える。

 

 

「《オッドアイズ》!!そのまま残り2体を…」

攻撃しろという直前に、急にフィールド中にサイレンが鳴る。

時計は午後0時、バトルロワイヤル終了時刻だった。

(えーー、24時間という長きにわたるバトルロワイヤルはここで終了でございます!!)

終了放送と同時にアクションフィールドが消えていく。

「終わった…?素良!!」

「くっ…!!」

遊矢が歩み寄る前に素良がデュエルディスクにパスワードを入力する。

すると彼が青い光に包まれ、消えてしまった。

「待て!!待ってくれ…素良…!」

動こうとした瞬間、今まで我慢していた痛みが一気に襲い掛かる。

更に《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》に握りつぶされそうになった際に血を流しすぎたこともあり、意識がぼやけてくる。

「おいおい、こんなところで…」

「遊矢!!」

翔太が駆け寄ろうとした瞬間、柚子が遊矢の元へ走ってくる。

彼女に抱かれ、遊矢は朦朧としながらも口を動かす。

「柚子…本当に…柚子…なのか…?」

「うん…うん!!遊矢!!」

眼に涙を浮かべ、今にも泣きそうな表情で柚子が応える。

「そうか…良かった…」

柚子の声を聞き、安心するように安らかな表情を見せると、そのまま意識を失った。

目を閉じるのと同時に、彼の目から一筋の涙がこぼれる。

「遊矢!!!」

「無理もないだろう。ボロボロになるまでデュエルをしたんだ」

翔太が遊矢を柚子からとり、彼をおんぶする。

「いくぞ、さっさと治療させないと、死ぬぞ?」

翔太におんぶされて本社ビルへ向かう遊矢とついていく柚子。

意識を失った彼の口から何度も彼女の名前を呼ぶ声が聞こえ、翔太がイライラしたのはまた別の話だ。




月の刀を手にした《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!!
心を鎮めし刃の切れ味はまさに日本刀の如し!

…かなり強引な展開でごめんなさい。


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第34話 ソリッドビジョンとのデュエル

「やれやれ、やっとあの甘々ムードから解放されたぜ」

LDSの医療室に遊矢と柚子を連れていたった翔太がため息をつきながら建物から出てくる。

外では権現坂、黒咲、セレナ、青い忍者、沢渡が待機している。

「権現坂その他大勢か」

「っておい!!俺に関しては1度会っただろう!!?」

「翔太殿、遊矢の容態は」

「無視かよ!?」

沢渡が思わず突っ込むが、権現坂が無視して話を進めたことでショックを受ける。

そして、少し後ろの壁に顔を向けた状態で体育座りをする。

そんな彼を忍者は何も言わずに肩に手を置く。

「出血はひどいが一命は取り留めている。1週間くらいしたら、回復する」

「良かったぁ、一時はどうなることかと…」

デニスが安心しつつ、胸をなでおろす。

そんな中、翔太が周囲を見渡し、ある疑問が浮かぶ。

「約3名の姿が見えないが、どうした?権現坂…」

「ミエル殿は家に帰した。しかし…」

「残り2人はこうなってしまった」

黙る権現坂を見かね、黒咲が懐からカード化した未知夫と鉄平を見せる。

「黒咲と…その顔立ちだけは柚子に似ている奴がセレナだな。話は大体柚子から聞いた。とんだ疫病神のようだな。特にお前は」

翔太に指をさされるセレナ。

しかし、思い当たる節があるために反論することができない。

「それで、間抜けの世話をしている青忍者は?」

「…風魔月影」

青い忍者、月影は名前だけ淡々と口にする。

「翔太くーーん!!」

「…ちっ」

東側の道から伊織が走ってくる。

そして、翔太の前に立つと息を整えながら彼の肩に手を置く。

「大丈夫!?けがはない??」

「かすり傷だ。服は燃えちまったけどな。だが、なんで俺の居場所を?」

「僕が教えたんだ」

そう言いながら、侑斗とウィンダが現れる。

そして、彼は翔太の左手を見る。

「(なるほど…だからそんなことが)翔太君、君の力を貸してもらえるかい?」

「…なんだよ?」

「黒咲君、カードをその場において。そして全員カードから10メートルくらい離れるんだ」

「おいおい、一体何をするつもりなんだよ?」

いつの間にか立ち直り、抗議しようとする沢渡だが、黒咲に引っ張られる。

「何すんだよ!!?」

「黙ってあの人の言うとおりにしろ」

「…なんだかよくわからんが、ここは…」

権現坂も黒咲に追随するようにカードから離れた。

他のメンバーも同じようにし、カードの近くには誰もいなくなる。

「じゃあ、頼むよ!」

侑斗は翔太の左手首を掴んだまま、彼の掌をカードにかざす。

痣から緑色の光の糸が出てきて、2枚のカードにつながる。

そしてそれらも同じ色の光を放ち、少し時間がたつと緑色の爆発が発生する。

「何!!?爆発しただと!?」

「翔太殿、未知夫殿と鉄平殿に何を!?」

「ええ!?何々!?一体どうなってるの!?」

突然の出来事に、侑斗と翔太以外の全員が動揺する。

爆発の煙が晴れると、カードがあった場所には未知夫と鉄平が気絶した状態でその場に倒れていた。

「カード化したデュエリストが解放されただと!?」

セレナは2人の姿を見て、目を大きく開く。

権現坂は急いで駆けより、2人の脈と呼吸を確認する。

「異常はない、ただ気絶しているだけ」

「これが翔太君の能力だよ」

「俺というよりも、この痣の力だな」

左手の痣を見ながら、そうつぶやいていると、ウィンダが柚子から預かった2枚のカードをその場に置き、権現坂が気絶する2人を医療室へ連れて行く。

「君の痣はわずかだけど次元に干渉する力がある。その力でカード化した人を安全かつ適切に解放することができるんだ」

「なるほどな」

左手を見つめ、ようやく自分の力について一部を理解することができたものの、なぜ侑斗がそのことを知っているのかという疑問がわいてくる。

「どうやら、君たちは無事に融合次元からの攻撃を生き延びることができたようだ」

そう言いながら、彼らの元へ零児が歩いてくる。

「よお、あんたの言うとおり融合次元の奴らは始末したぜ。これでランサーズの仲間入りは確定だろ?」

「ランサーズ…?」

聞いたことのない団体の名前に翔太たちが首をかしげる。

唯一、侑斗は零児をじっと見ていた。

「ランス・ディフェンス・ソルジャーズ。融合次元に対抗し、スタンダード次元を守るための槍だ。そして、今ここにいない榊遊矢、柊柚子を含めた君たちはペンデュラム召喚を手にしたことでいまや融合次元のデュエリストと対等以上にわたりあう力を得た。君たちこそランサーズにふさわしい」

「なるほどな。だから大会のペンデュラムモンスターを持ち込んだのか」

翔太は遊矢が手術室へ運ばれた後、柚子からバトルロワイヤルのことを聞いた。

舞網チャンピオンシップ3回戦はバトルロワイヤルで、街をすべてアクションフィールドに変え、ペンデュラムモンスターも町中に放出された。

ルールは24時間の間にペンデュラムモンスターを他の出場者よりも多く集めることで、相手とは2枚以上のペンデュラムモンスターをアンティにしてデュエルをすることになる。

権現坂や柚子などの今集まり生き残っている出場者は少なくとも2枚以上のペンデュラムモンスターを手にしている。

零児が舞網と静岡で大会を行った目的、それは融合次元と戦うことができるデュエリストを集めること、そしてペンデュラムモンスターを渡すことで融合次元に対抗する力を与えることだった。

「だが、俺たちでなくともユースメンバーで…」

「残念だけど、ユースメンバーは全滅、カードを回収することはできなかった」

引き続き、今度は北斗が登場する。

「志島北斗!?」

「行方不明のはずじゃなかったのか??」

「ずっと修行していたのさ。師匠の元で」

侑斗に目を向けてながら、北斗はそう言う。

恥ずかしいのか、侑斗は苦笑いしながら頬を人差し指でかいていた。

「ねえ、翔太君。この人は??」

「彼は剣崎侑斗。俺たちレジスタンスを救ってくれた男だ」

「そして、レオコーポレーションの協力者だ」

 

侑斗と零児の案内で、翔太たちは地下にある大型デュエルフィールドへ案内される。

「ここは…」

「ここは試作型次世代デュエルフィールド。一番の違いとすれば…」

零児が所持しているスマートフォンにパスワードを入力すると、翔太たちの目の前に遊矢のソリッドビジョンが現れる。

「遊矢!!?」

「いや、こいつは精巧なソリッドビジョン。あいつは今は寝ぼけてることを忘れるな」

「このデュエルフィールドではさらに多くのアクションフィールドやカードに対応できるだけでなく、データ保存されているデュエリストをソリッドビジョンで再現し、デュエルをすることができる。無論、彼とでも…」

更にスマートフォンにパスワードを入力すると、遊矢のソリッドビジョンが石倉純也のものに変化する。

「こいつは…」

「あーーーー!!」

「ん…?誰だコイツは??」

翔太と伊織が驚く中、沢渡は誰かわからず、隣にいる権現坂に質問する。

黒咲とセレナについては問うまでもないだろう。

「彼は石倉純也。5年前に行方不明となったプロデュエリストだ。まさか…知らないとでもいうのか?」

「バ、バカを言うなよ!?俺様が知らないわけがないだろう!?」

実際、この石倉純也行方不明のニュースは当時新聞の第1面に載るほど大きな話題となった。

彼は日本人で初めてアメリカのプロリーグへ行ったデュエリストで、メディアにとっては格好の記事ネタとなりうる人物だからだ。

大抵のデュエリストはそのため、彼について知っているが、同じ次元の日本人であるにもかかわらず知らないデュエリストもいるようだ。

その証拠が沢渡だ。

「秋山翔太、彼とデュエルをしろ」

「はぁ?」

「君のDNAを少し調査させてもらったが、わずかに違いがあるものの構造は石倉純也と同じだ」

「何!?」

「っていうことは…もしかして翔太君って…石倉純也なの!?」

「だが、当時の石倉純也の年齢はすでに30代後半。今の翔太殿の年齢はおそらく16歳くらい。どう見ても同一人物とは思えん」

伊織と権現坂が予想するものの、翔太はまるでうんざりしているように頭をかく。

そして、純也のソリッドビジョンの前に立つ。

「もういい。こいつをぶったおせばいいんだろう?」

「物わかりが良くて助かる」

「黙れ、陰湿メガネ」

勝手にDNAを調べられたのが不快だったのか、悪口に近いあだ名で零児を呼ぶが、彼には痛くもかゆくもないようだ。

「アクションフィールド、《妨げの迷宮》発動」

何もない不作法なフィールドが次第に近代的で見たことのないような薄い黒の金属でできた施設に変化していく。

その金属プレート1つ1つには見たことのない文字が刻まれていて、壁は不規則な移動を繰り返している。

更にはプレートの隙間から定期的に青い光の壁が展開され、デュエリストやモンスターの行動を妨害する。

「ゴチャゴチャしたギミックのフィールドだな」

「このフィールドは石倉純也が最も得意としたフィールドだ。さあ、君の力をソリッドビジョンの彼に見せてもらおう」

「こんな贋物のぼろ人形に俺が負けるとでも思ってるのか?」

「たしかに今ある彼のデータは5年前のもの。だが、彼がプロデュエリストとして高い実力を持った人であることを忘れるな」

ソリッドビジョンの純也がデュエルディスクを展開し、デュエルの開始を待っている。

翔太もデュエルディスクを展開すると、すぐにアクションカードがフィールド上にばらまかれた。

 

純也

手札5

ライフ4000

 

翔太

手札5

ライフ4000

 

「私の先攻。私は手札から魔法カード《予想GUY》を発動。私のフィールド上にモンスターが存在しないとき、デッキからレベル4以下の通常モンスター1体を特殊召喚できる。私はデッキから《幻のグリフォン》を特殊召喚」

上空から青い光の壁をかわしながら赤い鎧と五芒星がない点以外は《魔装鳥獣グリフォン》とほぼ同じ姿のモンスターが降りてきて、純也を乗せて飛行する。

 

幻のグリフォン レベル4 攻撃2000

 

「あいつ、デッキから通常モンスターを!」

《幻のグリフォン》が目指す方向にはアクションカードがある。

追いかけようと壁を登るが、不規則にそれが動くせいで中々上へ昇ることができない。

そんな中、純也はアクションカードを手にする。

「私はアクション魔法《防衛システム》を発動。このカードを発動した後、1度だけ相手モンスターの攻撃を無効にできる。更に私は《幻のグリフォン》をリリース。《魔装戦士ヴァンドラ》をアドバンス召喚」

杯のような形をした足場に到着した純也は指を鳴らす。

すると、《幻のグリフォン》が猛スピードで落下する。

そして、光の壁にぶつかると同時にその姿を左腕に羽根のような装甲がついた金色の竜を模したガントレットを装着した青いアーマーの戦士に変化させ、壁を蹴って再び主の元へ戻っていく。

 

魔装戦士ヴァンドラ レベル5 攻撃2000

 

「同じ攻撃力のモンスターをアドバンス召喚だと?何かあるのか!?」

上を見上げながら、翔太が質問するが、データである純也が応えるわけもなく、彼はデュエルを続ける。

「私は手札から魔法カード《テイク・オーバー5》を発動。デッキトップから5枚のカードを墓地へ送る。そして、2枚カードを伏せてターンエンド」

 

デッキから墓地へ送られたカード

・ブラック・マジシャン

・魔装戦士テライガー

・オレイカルコス・シュノロス

・神風のバリア―エアー・フォース

・エメラルド・ドラゴン

 

純也

手札5→0

ライフ4000

場 魔装戦士ヴァンドラ レベル5 攻撃2000

  伏せカード2

 

翔太

手札5

ライフ4000

 

「なんだぁ?攻撃力ならさっきの《幻のグリフォン》と同じじゃねえか。プレイングミスか??」

沢渡も翔太と同じ疑問を持ち、デュエルの状況を見る。

そんな中、黒咲とセレナはある話をしていた。

「…黒咲、本当なのか?融合次元のデュエリストが…笑いながらエクシーズ次元を蹂躙したというのは…?」

「ああ、そうだ。融合次元の奴らは俺たちを獲物としか考えていない。戦うことができず命乞いする奴らまでも笑いながらカードに変えていった。その中にはデュエリストでない者もいた。その中には…俺の妹も…」

黒咲は懐から手帳を取り出し、それをセレナに渡す。

恐る恐るそれを開くと、そこには日付と人の名前が丁寧に記入されている。

「俺たちは犠牲になった人たちと仲間の名前をこうして書いている。中には名前がわからず、容姿しか書くことのできなかった奴らもいる…」

「そ…んな…!!」

怒りを抑え、拳を握りしめながら語る黒咲を見て、セレナは彼が嘘をついていないことを確信する。

そして、自分が信じていた融合次元の悪行に絶望していた。

(そうか…だから、剣崎侑斗がエクシーズ次元に力を…)

 

「俺のターン」

 

翔太

手札5→6

 

「俺はスケール1の《魔装鳥キンシ》とスケール5の《魔装郷士リョウマ》でペンデュラムスケールをセッティング。これで俺はレベル2から4のモンスターを同時に召喚可能。来たれ、時の果てに眠りし英雄の魂。漆黒の魂と契約し、封印から解き放たん!ペンデュラム召喚!来い、《魔装獣ユニコーン》!《魔装鳥ガルーダ》!」

 

魔装獣ユニコーン レベル4 攻撃1600

魔装鳥ガルーダ レベル3 攻撃1200

 

「翔太君、いきなりペンデュラム召喚を決めた…」

「《ガルーダ》の効果発動。このモンスターの特殊召喚に成功した時、相手フィールド上に存在するモンスター1体の攻撃力を500ダウンさせる」

《魔装鳥ガルーダ》が展開される光の壁の数々を回避しながら、《魔装戦士ヴァンドラ》と同じ高さまで向かう。

そのわずかな時間の間に純也は近くにあるスイッチを押し、それによって出現した4つの棒のような足場を次々と飛び越えてその先にあるアクションカードを手にする。

「私はアクション魔法《対空システム》を発動。相手モンスターの効果の発動を無効にする」

発動と同時に、天井から壁と同じ色の対空機銃が現れ、《魔装鳥ガルーダ》に向けて発射する。

弾幕を張られたことで、火球を発射しても命中する保証がなくなり、《魔装鳥ガルーダ》は諦めて翔太の元へ戻っていく。

 

対空システム

アクション魔法カード

(1):相フィールド上に存在するのレベル4以下のモンスターが効果を発動した時に発動できる。その発動を無効にする。

 

「ちっ…だが、こいつでどうだ?俺はフィールド上に存在する《ユニコーン》と《ガルーダ》を融合する!精錬されし一角獣よ!炎の怪鳥よ!魔導の力によりて、今1つとならん。融合召喚!王家の獣、《魔装鳥獣グリフォン》!!」

 

魔装鳥獣グリフォン レベル6 攻撃2400

 

召喚された《魔装鳥獣グリフォン》の背中に乗り、上空へ向かう。

ただし、小回りが利く《魔装鳥ガルーダ》と比べると《魔装鳥獣グリフォン》の大きさは倍で、光の壁に何度も阻まれてしまう。

「このフィールドでは小回りが利かないモンスターの動きが封じられやすい。このフィールドでどう戦う?秋山翔太…」

「まさか本当にこんなデュエルフィールドがあるなんてな」

伊織たちがデュエルに夢中になっているさなか、鬼柳が入ってくる。

「鬼柳一真…」

「久しぶりだな、赤馬零児。たしか…10年前のデュエルキャンプ以来か」

「そうだな。あれからはめったに連絡を取ることができなかったが…まさかこうして再会するとはな。ロットンはどうしている?」

「あいつなら、他の参加者と一緒にヴァプラ隊の奴らとデュエルをしている。俺はクリアしたからこうして抜け出している」

何事もなかったかのような鼻で笑いながらそう口にする。

零児はまるで予想していたかのように驚きもせず、ただ彼の話を聞いていた。

「それで、どう思う?」

「秋山翔太のことか?」

「ああ。性格はまるで違うが、やはりあいつは…」

自分なりの予想を言おうとする鬼柳だが、すぐにさえぎられる。

「それ以上言うな、一真。まだ可能性の範囲内に過ぎない。それ以上のことは確証を得てからだ」

彼の言葉に鬼柳はフッと笑みを浮かべる。

彼の調べ上げてから行動する態度をキャンプの時から知っていて、変わっていないことがうれしいからだろう。

 

「バトルだ。俺は《グリフォン》で《ヴァンドラ》を攻撃!」

《魔装鳥獣グリフォン》の口から放たれた雷鳴が《魔装戦士ヴァンドラ》を襲う。

「《防衛システム》の効果で、その攻撃は無効となる」

天井にある小型ハッチから4つの放熱板のようなものが現れ、《魔装戦士ヴァンドラ》の周囲に展開する。

そして、三角柱型の青いバリアが出現して雷鳴を受け止める。

 

防衛システム

アクション魔法カード

(1):発動後、1度だけ相手モンスター1体の攻撃を無効にする。この効果を発動するまで、自分は「防衛システム」を発動できない。

 

「だが、次の攻撃は防げないだろ?《グリフォン》は1ターンに2度攻撃できる。そして、2回目の攻撃で発生する相手への戦闘ダメージは半分になる。もう1度《ヴァンドラ》を攻撃!」

再び《魔装鳥獣グリフォン》の口から雷鳴が放たれる。

2度目の雷鳴によって、放熱板はショートを起こし、機能停止した状態で落ちていく。

そして、残された《魔装戦士ヴァンドラ》は雷鳴を受け、黒こげになって消滅した。

 

純也

ライフ4000→3800

 

「私はこの瞬間罠カード《召魔の結界》を発動。私の魔装戦士モンスターが相手モンスターの攻撃によって破壊された時、相手フィールド上の攻撃表示モンスター1体を破壊する」

「何!?」

《魔装鳥獣グリフォン》を包むように、五芒星の魔法陣が現れる。

「くそっ!!」

翔太が飛び降りた後、魔法陣がモンスターと共に消滅し、翔太は何とか壁と壁の間の隙間にあるでっぱりにしがみつく。

しがみつくのと同時にその真下にある隙間から光の壁が数秒だけ出現した。

このまま落ちたままだったら、それに激突していただろう。

「そして、墓地からレベル5以上の通常モンスター1体を特殊召喚できる。私は《ブラック・マジシャン》を特殊召喚!」

 

ブラック・マジシャン レベル7 攻撃2500

 

召魔の結界

通常罠カード

(1):自分フィールド上に存在する「魔装戦士」モンスターが相手モンスターの攻撃によって破壊され墓地へ送られた時に発動できる。相手フィールド上に表側攻撃表示で存在するモンスター1体を破壊する。その後、自分の墓地に存在するレベル5以上の通常モンスター1体を特殊召喚する。

 

「更に《ヴァンドラ》の効果発動。このカードがフィールド上から墓地へ送られた時、私の墓地に存在するドラゴン族・戦士族・魔法使い族通常モンスター1体を手札に加えることができる。私は墓地から《エメラルド・ドラゴン》を手札に加える」

純也のデュエルディスクから《エメラルド・ドラゴン》が自動排出される。

そして、《ブラック・マジシャン》は表情一つ変えることなく翔太に向けて杖を向ける。

(《ブラック・マジシャン》…石倉純也のエースモンスター…)

零児と鬼柳はキャンプの頃に見た純也のデュエルを思い出す。

《ブラック・マジシャン》が召喚されるたびになぜか心が躍った。

「俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド。同時に《魔装鳥キンシ》の効果発動。俺のターン終了時のペンデュラムスケールが2つ上昇する」

 

純也

手札0→1(《エメラルド・ドラゴン》)

ライフ3800

場 ブラック・マジシャン レベル7 攻撃2500

  伏せカード1

 

翔太

手札6→0

ライフ4000

場 伏せカード2

  魔装鳥キンシ(青) ペンデュラムスケール1→3

  魔装郷士リョウマ(赤) ペンデュラムスケール5

 

「私のターン、ドロー」

 

純也

手札1→2

 

「私はスタンバイフェイズ時に墓地の《テイク・オーバー5》を除外し、デッキからカードを1枚ドローする。手札から魔法カード《黒魔術の宝札》を発動。私のフィールド上に存在するモンスターが黒魔術師1体のみの場合、デッキからカードを2枚ドローできる」

 

純也

手札2→4

 

黒魔術の宝札

通常魔法カード

「黒魔術の宝札」は1ターンに1度しか発動できず、このカードを発動したターン、自分は魔法使い族モンスター以外のモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚できない。

(1):自分フィールド上に存在するモンスターが「ブラック・マジシャン」モンスター1体のみの場合に発動できる。自分はデッキからカードを2枚ドローする。

 

「更に私は罠カード《凡人の施し》を発動。デッキからカードを2枚ドローし、手札の通常モンスター1体をゲームから除外する」

 

純也

手札3→5

 

ゲームから除外されたモンスター

・エメラルド・ドラゴン

 

「一気に手札補充か…!」

1ターンの間で手札を5枚まで回復される純也。

《魔装戦士ヴァンドラ》を召喚した目的は《ブラック・マジシャン》召喚のためだけでなく、《凡人の施し》の代価とするための通常モンスターを手札に加えることだったのだ。

「私は手札から速攻魔法《サイクロン》を発動。その効果で《魔装郷士リョウマ》を破壊する」

純也が起こした竜巻によって、《魔装郷士リョウマ》が吹き飛ばされ、エクストラデッキへ向かう。

これで翔太は次のターンのペンデュラム召喚を封じ込められてしまった。

「そして私はモンスターを裏守備表示で召喚。バトル。私は《ブラック・マジシャン》でダイレクトアタック。黒・魔・導(ブラック・マジック)!」

《ブラック・マジシャン》の杖に漆黒の魔力の球体が生まれ、翔太に向けて発射される。

しかし、翔太はアクションカードを探そうとしない。

「翔太殿!!このままでは2500もの大ダメージが…」

「ううん、権現坂君!これは…」

伊織が自分の予想を言おうとする前に、翔太の左側の伏せカードに異変が起こる。

伏せカードが《魔装軍師コウメイ》へと姿を変え、突風で球体を吹き飛ばしたのだ。

吹き飛ばされたそれは《ブラック・マジシャン》の頬をかすめ、壁に貼りつけられている装置に命中する。

装置は故障し、純也の近くで発生していた光の壁はグニャグニャと曲がったのち、消滅した。

頬にできた傷をわずかに見た《ブラック・マジシャン》は静かにその目線を《魔装軍師コウメイ》に向ける。

「こいつは魔法カードとしてセットすることができ、相手の直接攻撃宣言時に特殊召喚することで俺と俺のモンスターをこのターンの間、破壊とダメージから守り続ける」

 

魔装軍師コウメイ レベル3 守備1600

 

「なるほど…ということは、彼が《魔装戦士ヴァンドラ》を切り札召喚の布石としていることを予測していたということか」

前のターン、やろうと思えば《魔装軍師コウメイ》を先ほどのペンデュラム召喚の際に同時に呼び出すこともできた。

そして、同じレベル3のモンスターである《魔装鳥ガルーダ》と共にランク3のエクシーズモンスターを召喚する、もしくは《魔装獣ユニコーン》の代わりに《魔装鳥獣グリフォン》の融合素材とすることもできた。

それをせず、この事態を想定できたことから翔太の力量がうかがえる。

尊大な態度を取るだけの実力があることがわかる。

「私はカードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

純也

手札5→1

ライフ3800

場 ブラック・マジシャン レベル7 攻撃2500

  裏守備モンスター1

  伏せカード2

 

翔太

手札0

ライフ4000

場 魔装軍師コウメイ レベル3 守備1600

  伏せカード1

  魔装鳥キンシ(青) ペンデュラムスケール3

 

ダメージを逃れることができたが、純也のフィールドには攻撃力2500の《ブラック・マジシャン》と伏せカード2枚。

それに対して、翔太の手札はなく、ペンデュラム召喚もこの状況では行えない。

次のドローがどうなるかでこれからの行動が決まる。

「俺のターン!」

 

翔太

手札0→1

 

ドローと同時に、翔太は壁を登り始める。

(このカードだけじゃ無理だな。アクションカードを…!)

登っている間に向かい側にある壁を見ると、貼りつけられているアクションカードを発見する。

壁を強く蹴ってそこまで飛ぶと、それを手に取り、再び壁を強く蹴って上下に移動している足場を掴む。

足場に上り終えると、もう失格ギリギリの54秒が経過していた。

「俺はアクション魔法《再利用システム》を発動。デッキからカードを1枚ドローし、手札を1枚捨てる」

 

手札から墓地へ捨てられたカード

・魔装獣バステト

 

再利用システム

アクション魔法カード

(1):自分はデッキからカードを1枚ドローし、手札を1枚墓地へ捨てる。

 

「そして俺はスケール8の《魔装鍛冶クルダレゴン》をペンデュラムゾーンにセッティング」

「これで翔太君はレベル4から7までのモンスターを召喚できる!」

「ペンデュラム召喚できるとしても、だせるのはエクストラデッキにいる《魔装郷士リョウマ》だけだよ?これだと守りを固めることしか…」

「そうとも限らないよ、ウィンダ。多分…」

侑斗は翔太が先ほどセッティングした《魔装鍛冶クルダレゴン》をじっと見る。

「ペンデュラム召喚!エクストラデッキから《魔装郷士リョウマ》を召喚する」

 

魔装郷士リョウマ レベル4 攻撃1900

 

「やった!そして《リョウマ》の効果を使えば…」

「いいや、伊織殿。《魔装郷士リョウマ》のモンスター効果は手札からペンデュラム召喚することで発動できる効果。エクストラデッキからのペンデュラム召喚では発動できん」

「そんなぁ、《リョウマ》のケチー!」

「いや、モンスターに文句を言われても…」

頬を膨らませ、不満を漏らす伊織の言葉が聞こえたのか、なぜか《魔装郷士リョウマ》の頬に一筋の汗が流れた。

「《クルダレゴン》のペンデュラム効果発動。1ターンに1度、俺が魔装モンスターのペンデュラム召喚に成功した時、墓地から魔装モンスター1体を手札に加えることができる。俺は墓地から《魔装獣バステト》を手札に加え、そのまま召喚する」

《魔装鍛冶クルダレゴン》のハンマーに炎が宿り、それが壁にたたきつけられる。

炎によって溶けた壁は衝撃によって砕け、そこから《魔装獣バステト》が飛び出してくる。

 

魔装獣バステト レベル1 攻撃0(チューナー)

 

「レベル4の《リョウマ》とレベル3の《コウメイ》にレベル1の《バステト》をチューニング。茨の園より生まれし稲妻の竜よ、空を振るわし、大地に鉄槌を。シンクロ召喚!現れろ、《魔装雷竜リンドヴルム》!」

 

魔装雷竜リンドヴルム レベル8 攻撃3000

 

「攻撃力3000!《ブラック・マジシャン》の攻撃力2500を上回った!」

香華く力2500程度ならば、別に上回れても不思議ではない。

問題は純也が伏せている2枚のカードだ。

「(《リンドヴルム》は攻撃するとき、攻撃対象となったモンスターの攻撃力以下の相手モンスター1体か魔法・罠カード1枚を破壊する効果がある。だが、発動を阻止できるというわけじゃない。ま、発動したら下で考えればいいだけだな)バトル。俺は《リンドヴルム》で《ブラック・マジシャン》を攻撃!ライトニング・ストライク」

《魔装雷竜リンドヴルム》の咆哮と同時に、《ブラック・マジシャン》の周囲にある壁を突き破る形で棘が出現し、そのモンスターを拘束する。

そして、拘束された《ブラック・マジシャン》に《魔装雷竜リンドヴルム》が雷を纏って突撃しようとする。

「《リンドヴルム》の効果発動!俺は右側の伏せカードを破壊する!」

竜の体に宿っていた雷が純也の伏せカードを襲おうとする。

しかし、雷に接触する直前にそのカードが発動する。

「罠発動!《シフトチェンジ》。私のモンスター1体が攻撃対象、相手の魔法・罠カードの対象となった時、その対象を私の別のモンスター1体に変更させる」

「何!?」

裏守備表示になっていたモンスターが正体を見せ、《ブラック・マジシャン》の盾となる。

右腕部分が《魔装戦士ヴァンドラ》と同じで、赤を基調とした、6枚の羽根がついている鎧を着た女戦士、《魔装戦士アルニス》はすさまじい突撃によって一撃で消滅した。

 

魔装戦士アルニス レベル4 守備1200

 

「ちっ…これだと、《リンドヴルム》の効果を発動した意味がない」

「更に《アルニス》の効果発動。このカードが相手モンスターの攻撃によって破壊され墓地へ送られた時、デッキから攻撃力1500以下の魔法使い族モンスター1体を特殊召喚できる。私はデッキから《魔装使いイグシュ》を特殊召喚」

《魔装戦士ヴァンドラ》とは異なり、右足部分に金色の装甲がついていて、背中部分に鳥の模様が描かれた赤いローブを身に着けた女性の魔法使いが現れる。

 

魔装使いイグシュ レベル2 攻撃1200

 

魔装使いイグシュ

レベル2 攻撃1200 守備700 炎属性 魔法使い族

魔装戦士アルニスを陰で支える魔道士。炎を食べることで自らの魔力を回復させることができる。

 

「また通常モンスターかよ、どういうつもりだ…?俺はこれでターンエンド。それと同時に、《魔装鳥キンシ》は自らの効果でペンデュラムスケールを2つ上昇させる」

 

純也

手札1

ライフ3800

場 ブラック・マジシャン レベル7 攻撃2500

  魔装使いイグシュ レベル2 攻撃1200

  伏せカード1

 

翔太

手札0

ライフ4000

場 魔装雷竜リンドヴルム レベル8 攻撃3000

  伏せカード1

  魔装鳥キンシ(青) ペンデュラムスケール3→5

  魔装鍛冶クルダレゴン(赤) ペンデュラムスケール8

 

「私のターン、ドロー」

 

純也

手札1→2

 

「私はカードを1枚伏せ、手札から装備魔法《下克上の首飾り》を《魔装使いイグシュ》に装備」

金色で片目が描かれた五芒星が特徴的な首飾りが《魔装使いイグシュ》に装着される。

その首飾りの目は心なしか《魔装雷竜リンドヴルム》に向けられているように感じられる。

「このカードを装備した通常モンスターが自身よりもレベルの高いモンスターと戦闘を行う時、ダメージ計算時のみその攻撃力をレベルの差×500ポイントアップさせる」

「何!?」

これが通常モンスターの恐ろしさにして純也がかつてプロデュエリストとして戦えた所以だ。

通常モンスターの性質を知りつくし、その利点を最大限まで活用することができる。

今、上級モンスターキラーへと変化した《魔装使いイグシュ》は先ほど破壊された《魔装戦士アルニス》の仇たる《魔装雷竜リンドヴルム》を破壊する力を得ている。

「バトル。私は《イグシュ》で《魔装雷竜リンドヴルム》を攻撃!」

首飾りから怪しい紫色の光が放たれ、《魔装雷竜リンドヴルム》を包み込む。

そして、光の中にいる竜目掛けて《魔装使いイグシュ》が右手から鳥のような形をした火球を放つ。

火の鳥に貫かれた《魔装雷竜リンドヴルム》は消滅し、爆風が翔太を襲う。

「うわあああ!!」

 

翔太

ライフ4000→2800

 

魔装使いイグシュ(ダメージ計算時) レベル2 攻撃1200→4200

 

「更に《ブラック・マジシャン》でダイレクトアタック。黒・魔・導」

吹き飛ばされ、背中を壁に激突させている翔太に追い打ちをかけるように《ブラック・マジシャン》が魔力の球体を発射する。

「ぐおおおお!!」

 

翔太

ライフ2800→300

 

「翔太君のライフが一気に300に!?」

「翔太殿のエクストラデッキにはペンデュラムモンスターである《魔装郷士リョウマ》が存在する。だが、今のペンデュラムスケールでは召喚できん!」

《魔装鳥キンシ》のペンデュラムスケール上昇効果は扱いによれば自分を有利にすることができる。

しかし、現状は召喚できるモンスターを減らしてしまうだけだ。

事実として、今の翔太にはペンデュラム召喚できるモンスターが手札にもエクストラデッキにもない。

だとすれば、やることは…。

「罠発動《ショック・ドロー》!!俺がこのターン受けたダメージ1000につき1枚カードをドローする!」

翔太が受けたダメージは3700。

これならば3枚ドローできるが…。

「カウンター罠《王者の看破》を発動。私のフィールド上にレベル7以上の通常モンスターが存在するとき、モンスターの召喚・反転召喚・特殊召喚または魔法・罠カードの発動と効果を無効にし、破壊する」

《ブラック・マジシャン》が杖を《ショック・ドロー》のソリッドビジョンに向けると、それは一瞬で消滅してしまった。

(なるほどな…ということは既にそのカードを伏せていた時に《下克上の首飾り》が手札にあり、その効果を最大限に活用するためにわざとシンクロ召喚を許したのか。ただのデータのくせにふざけた真似を!!)

結果的に翔太は《魔装雷竜リンドヴルム》を倒されてしまい、挙句の果てに《ショック・ドロー》を阻止されてしまった。

ライフもわずか300。

上級モンスターを召喚しても《魔装使いイグシュ》の餌食になる。

翔太は窮地に立たされている。

(だが、《下克上の首飾り》はあくまでレベルに対応する効果だ。なら…こいつを使えばいい)

翔太は壁を登りながら、これからの戦略を立てようとする。

(問題は手札だ。アクションカードによって手札補充ができれば、少なくともあいつを呼び出しやすくなるはずだ…!)

「私はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

純也

手札2→0

ライフ3800

場 ブラック・マジシャン レベル7 攻撃2500

  魔装使いイグシュ(《下克上の首飾り)装備) レベル2 攻撃1200

  伏せカード1

 

翔太

手札0

ライフ300

場 魔装鳥キンシ(青) ペンデュラムスケール5

  魔装鍛冶クルダレゴン(赤) ペンデュラムスケール8

 

壁を登りながら、アクションカードを探し続ける。

しかし周囲を見渡してもアクションカードはなく、見つけたとしてもまだ生き残っている光の壁が邪魔をする。

(なるほど…俺自身のデッキを信じろってことか)

あと20秒カードを操作しなければ負けとなるところで翔太はカード探しをやめる。

そして一番近い足場につき、デッキを見る。

「(ま、アクションカードはギャンブルだからな。極力使いたくねえな)俺のターン」

 

翔太

手札0→1

 

「俺は手札から魔法カード《逆境の宝札》を発動。相手フィールド上に特殊召喚されたモンスターが存在し、俺のフィールド上にモンスターが存在しないとき、デッキからカードを2枚ドローする」

ドローしたカードと純也の2体のモンスターを見て、にやりと笑う。

「引いたぜ。ペンデュラム召喚!現れろ、第4の騎士《魔装騎士ペイルライダー》!」

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

 

「おいおい、攻撃力2500でレベル7じゃあ《イグシュ》の餌食になるだけだぜ!?」

「《クルダレゴン》のペンデュラム効果で、俺は墓地から《魔装獣ユニコーン》を手札に加える。俺は手札から《PCM-シルバームーン・アーマー》を発動。俺のフィールド上に存在するレベル7のペンデュラムモンスター1体を同じ種族でランク7のエクシーズモンスターに変化させる。俺は《魔装騎士ペイルライダー》でオーバーレイ!月の鎧に拘束されし第4の騎士よ、その重力を戒めとし覚醒せよ。ムーンライトエクシーズチェンジ!現れろ、月の鎧纏いし死の騎士、《MLX-魔装騎士ペイルライダー・ムーンレイス》!」

《魔装騎士ペイルライダー》が天井に向けて銃弾を発射すると、その銃弾が銀色の魔法陣に変化し、そのモンスターを包み込んでいく。

そして、魔法陣が消えると同時に第4の騎士が月の鎧を装備する。

 

MLX-魔装騎士ペイルライダー・ムーンレイス ランク7 攻撃2500

 

「こいつは俺のライフが1000以下の時、相手フィールド上に存在するすべてのモンスターに1回ずつ攻撃することができる。更にペンデュラムオーバーレイユニットに《魔装騎士ペイルライダー》が存在するとき、1ターンに1度墓地の魔装モンスター1体を除外することで、相手モンスター1体の攻撃力・守備力をターン終了時まで0にすることができる。ムーンライト・シューティング!」

レールガンに《魔装鳥ガルーダ》の力が吸収され、超高速で質量弾が《ブラック・マジシャン》に向けて発射される。

しかし着弾する前に《ブラック・マジシャン》が姿をけし、質量弾は壁に当たる。

壁に当たったことで質量弾が勢いを失うと、同時に《ブラック・マジシャン》が再び姿を見せる。

「罠カード《ブラック・イリュージョン》を発動。このターン、私の攻撃力2000以上の闇属性・魔法使い族モンスターは効果を失う代わりに戦闘では破壊されず、カード効果を受けない」

カード効果の説明が終わると同時に再び《ブラック・マジシャン》が自らの魔力で生み出した紫色の霧の中に姿を消す。

その霧は純也と《魔装使いイグシュ》の姿をも隠していく。

だが、これで純也のフィールドにはもう伏せカードがない。

「俺は手札から《魔装獣ユニコーン》を召喚。こいつは魔装騎士の装備カードとなり、攻撃力800アップさせる」

《魔装獣ユニコーン》が足場を飛び移りながら現れ、《MLX-魔装騎士ペイルライダー・ムーンレイス》を背に乗せる。

すると、老馬が月の力の宿った銀色の無骨な鎧に包まれる。

 

MLX-魔装騎士ペイルライダー・ムーンレイス ランク7 攻撃2500→3300

 

「げげっ…そのモンスターは…」

《魔装獣ユニコーン》を見て顔を青くする沢渡をそのモンスターはギロリと睨みつける。

どうやら、彼に死にぞこないの馬と言われたことをまだ根に持っているようだ。

「こいつを装備したモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊した時、そのモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える」

《ブラック・マジシャン》は戦闘破壊できなくなったものの、ダメージを通すことはできる。

このまま《MLX-魔装騎士ペイルライダー・ムーンレイス》が《ブラック・マジシャン》と《魔装使いイグシュ》を攻撃すれば、合計ダメージは4100。

ライフ3800の純也を倒すことができる。

「バトルだ。俺は《ペイルライダー》で攻撃する!フルバースト・デスブレイク!!」

霧に向けて《MLX-魔装騎士ペイルライダー・ムーンレイス》がすべての武装を解放し、弾丸を叩き込んでいく。

その中に隠れていた《魔装使いイグシュ》がガトリングの餌食となり、ミサイルが純也に向けて飛んでいく。

しかし…。

「な、何…!?」

急に翔太の目の前に位置する壁に砲台が出現し、翔太の左胸を青い光線で撃ちぬいていた。

霧が晴れると、先ほどまでなかったアクション魔法のソリッドビジョンが見えてくる。

「アクション魔法《奇襲システム》。これは相手に500のダメージを与える。《ブラック・マジシャン》が攻撃される前に発動した」

「くそ…」

ライフが0になった翔太は床を拳で叩く。

 

純也

ライフ3800→1700→500

 

翔太

ライフ300→0

 

奇襲システム

アクション魔法カード

(1):相手に500ダメージを与える。

 

ソリッドビジョンがデュエル終了と同時に消滅する。

「楽しめていただけたかな?」

零児が翔太の元へ歩いていく。

ゆっくりと立ち上がった翔太は気に入らないと言いたげな目を彼に向ける。

「見事なデュエルだった。あと一歩のところまで追いつめるとは…」

「ふん…どうせ俺を試すつもりだったんだろう?敗れたとなったら俺は…」

「合格だ。君をランサーズに迎えたい」

「何?」

敗北したにもかかわらず合格という零児に翔太は怪訝な顔をする。

それを気にすることなく、零児は話を進める。

「ここまでに見たように、現在我々は融合次元という強大な敵に狙われている。彼らの野望からこの次元を守り、その野望を貫く槍が今求められている。そして、これからヴァプラ隊の元で訓練を行い、可能な限り他次元のデュエリストと対等以上にわたりあうための力を得てもらう」

そう言い残すと、零児は侑斗、ウィンダ、北斗と共にその場を後にし、エレベーターに入る。

そして、入れ替わるように中島がエレベーターから出てくる。

「秋山翔太、そしてランサーズの一員となったお前たちには翌日からレオコーポレーションで訓練を受けてもらう。それから秋山翔太、永瀬伊織。すぐに私と共に来い」

「えーーー!?なんで!?」

「君は勝手に抜け出して、まだヴァプラ隊とデュエルを行っていないからだ!」

「そんなー、でもそれは翔太君も…」

「彼も同じだ。これから2人とも私と一緒に来てもらう」

伊織の度重なる抗議を受ける中島。

そんな中、翔太は純也との関係を疑問に思っていた。

(DNAがあの男と同じ…?だが、年齢はかなり違う。あいつが俺の記憶の鍵なのか…?)

「おい、君も早く来るんだ」

考える翔太の邪魔をするように中島が肩をたたく。

(ランサーズ、興味はねえが、記憶を取り戻すきっかけになるなら…)




更新遅れて本当にすみません!!
考えてはいるのですが、書く時間がなかなかなくて…。
ランサーズに加わることになった翔太がこれからの物語にどのようにかかわっていくのか…?


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第35話 眠りの遊矢

「遊矢…遊矢…」

「う、う、うう…」

眠る遊矢の耳元に聞こえる聞き覚えのある少年の声。

もう2度と会えないと思っていた少年の声に遊矢は目を開く。

「ユート…ユートなのか!?うう…!!」

起き上がろうとするが、体のいたるところから発生する痛みに顔をゆがめる。

何とかベッドから出ようとするが、立とうとすると痛みでバランスを崩して転倒してしまう。

「ここは…?」

何とかベッドの端を支えに起き上がる。

真っ暗な部屋で、埃1つ無い清潔な空間、ベッドと白いカーテン、そしてタッチパネル型のナースコール。

扉の前では先ほどの声の主が立っている。

「ユート…?ここはどこなんだ!?柚子は…みんなは!?うう…」

ユートの前まで歩くも、激痛で顔をゆがめ、彼の前で膝をつく。

今の遊矢は着ているのはズボンだけで上半身は裸、腹部を包帯が覆っている。

そんな彼を見つめながら、ユートはデュエルディスクを起動し、カードをセットする。

「魔法カード《リベリオン・ゲート》発動!」

発動と同時に遊矢とユートを紫色の稲妻を宿した黒い雷雲が包み込んでいく。

「ユート…なんで、俺の質問に答えてくれない!?」

「遊矢、君の覚悟を試す」

「何!?」

どういう意味だと言おうとする遊矢に左腕にユートが指を指す。

視線をそれに向けると、なぜかデュエルディスクが装着されている。

「遊矢、俺とデュエルをしろ」

「なんだよ!?なんで今お前とデュエルをしなきゃならないんだ!?それに、今の俺の体は…!!」

「安心しろ。アクションデュエルじゃない。体にそれほど負担にはならないはずだ」

「ユート!!」

遊矢の意に反するように、彼のデュエルディスクが勝手に起動する。

そして、雷雲が晴れるとそこは病室ではなく、遊勝塾のデュエルフィールドになっていた。

そこも明かりがついておらず、彼らを照らすものは何もない。

「遊矢、今の君の魂は君自身の心の傷が原因で力を弱めている。このままだと君の魂が消滅し、君の体が俺の物になってしまう」

「俺の魂が消滅…!?それに、心の傷って…」

それについては遊矢も察しがついている。

素良の裏切り、自分の中に宿ったユートの魂、オベリスクフォースによって犠牲になってしまった仲間たち。

自分が得てしまった、笑顔ではなく破壊を与える力、《覇王黒龍オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン》。

そして、デュエルでみんなを笑顔にするという自らの信念を否定する数多くの現実。

「良く見てみるんだ、君の左手を。それが魂が弱まっている証拠だ」

ユートの言われた通りに、遊矢は自身の左手を見る。

彼の言うとおり、左手が徐々に透明になりつつあり、中指の爪はすでに消えてしまっている。

「…ということは、やっぱりユートは死んでいなかったんだな?」

「死ぬ…か。それは少し違うかもしれないな」

「え…?」

「それよりも遊矢。俺とデュエルをしろ!君の魂の力をデュエルによって高め、消滅を防ぐ!」

ユートは既にカードを5枚ドローし、いつでも開始できる状態にある。

魂の消滅という言葉には半信半疑ではあるが、もう既に左手中指の先がわずかに消えかかっている。

徐々に迫ってくるわけもわからない恐怖が遊矢を駆り立てる。

何とか痛みに耐えながら起き上がり、カードをドローする。

「いくぞ、遊矢!!」

「…来い、ユート!!」

手の震えを抑えながら、ユートに返事をする。

「「デュエル!!」」

 

ユート

手札5

ライフ4000

 

遊矢

手札5

ライフ4000

 

「俺の先攻、俺は手札から《幻影騎士団スプリットロッド》を召喚」

茶色いボロボロなフードのないローブを着た青い人型の炎が現れる。

両手には骨と髑髏でできた杖を2つ持っていて、頭部には後ろにも顔がある。

 

幻影騎士団スプリットロッド レベル4 攻撃1600

 

「このカードを幻影騎士団モンスターのエクシーズ素材とするとき、このカードで2体分のエクシーズ素材とすることができる。俺は《幻影騎士団スプリッドロッド》でオーバーレイ!死してなお仲間を守らんとする騎士たちよ、その意思を死神の大鎌に委ねよ!エクシーズ召喚!現れろ、ランク4!《幻影騎士団デッドサイス》!!」

ユートの周囲に数十の青い炎の球体が現れ、それが彼の前に浮かんでいる巨大な黒い刃の大鎌に吸収されていく。

そして、その鎌を彼の背後に現れた5メートル近い大きさの青いローブが手にする。

それと同時にローブの各所から青い炎が発生する。

 

幻影騎士団デッドサイス ランク4 攻撃2000

 

幻影騎士団(ファントム・ナイツ)スプリットロッド

レベル4 攻撃1600 守備1000 効果 闇属性 戦士族

(1):このカードを「幻影騎士団」モンスターのX素材とする場合、2体分のX素材とすることができる。

(2):このカードをX素材とする場合、「幻影騎士団」モンスターのX召喚にしか使用できない。

 

「そして俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

ユート

手札5→3

ライフ4000

場 幻影騎士団デッドサイス(オーバーレイユニット1) ランク4 攻撃2000

  伏せカード1

 

遊矢

手札5

ライフ4000

場 なし

 

 

一方、LDSのデュエルフィールドでは…。

「さあさあ嬢ちゃん!まだまだ行くぜ!俺はレベル3の《モノケロース》にレベル2の《エレファン》をチューニング!雷鳴纏いし青き一角獣よ、今こそその角で邪気を貫け、シンクロ召喚!レベル5!《サンダー・ユニコーン》!!」

上半分が茶色く、下半分が青い肉体で、自身の肉体と同じくらいの長さの角を持つ一角獣《モノケロース》が羽のついた青い像の頭部だけのモンスターである《エレファン》が生み出したチューニングリングを通過する。

そして、シンクロ召喚の演出がなされると雷のマークを模した角を持つ、青い肉体で金色の鬣と尾を持つ一角獣が現れる。

体の各所にも金色の模様が描かれている。

 

サンダー・ユニコーン レベル5 攻撃2200

 

「更に《モノケロース》の効果発動。《モノケロース》は獣族チューナーを使用してシンクロ召喚に成功した時、そのシンクロ素材としたチューナーモンスターを特殊召喚できる。俺は《エレファン》を特殊召喚!」

 

エレファン レベル2 守備300(チューナー)

 

「《サンダー・ユニコーン》の効果発動!1ターンに1度、相手フィールド上に存在するモンスター1体の攻撃力をターン終了時まで俺のフィールド上に存在するモンスターの数×500ポイントダウンさせる!!」

《サンダー・ユニコーン》が嘶くと、上空に雷雲が発生し、《M・HERO闇鬼》に雷が落ちる。

そう、伊織はそこでヴァプラ隊のメンバーであるガーダーとデュエルを行っているのだ。

 

M・HERO闇鬼 レベル8 攻撃2800→1800

 

「バトル!《サンダー・ユニコーン》で《闇鬼》を攻撃!サンダー・スピアー!!」

《サンダー・ユニコーン》が角を前にだし、《M・HERO闇鬼》に突撃する。

黒い一角の鬼は本来持っているはずの怪力で《サンダー・ユニコーン》を掴もうとするが、雷による感電が原因で体が思うように動かない。

そのままその角で貫かれ、何もできないまま消滅してしまう。

「きゃああ!!」

 

伊織

ライフ2800→2400

 

「伊織の奴、いいようにやられてるな」

みたらし団子を口にしながら、翔太は客席で伊織のデュエルを見ている。

今の彼の服装はズボンは変わっていないものの、上半身が黒いジャケットと黒いシャツ、左手は黒い手袋をつけている状態だ。

その手袋はこの服を渡した零児曰く特別製で、翔太の痣の暴走を抑える役割もあるようだ。

ヴァプラ隊はずっと訓練と実戦の双方をやってきているためか、そのレベルは少なくともユースを上回っている。

伊織だけでなく、里香や漁介、ハンスやジェイクもここでヴァプラ隊のメンバーとデュエルをしている。

ジョンソンはすでにデュエルを終え、客席にいる。

「秋山翔太…だな?」

「…ジョンソンって奴だな?」

隣にいるジョンソンの顔を見ることなく、そう呼ぶ。

「ああ、君も私も無事にランサーズに入れてもらえそうだ」

「あんたはいいのかよ?俺たちと同じように、部外者だろ?」

ランサーズはスタンダード次元を守る槍。

ということは、軍隊のようなもので死ぬ可能性もあるということだ。

他の次元との戦争に巻き込まれ、急に戦えと言われて納得する人間は少ない。

現にバスに乗って一緒に舞網市まで来たデュエリストの中にはヴァプラ隊とのデュエルにわざと負ける、もしくはデュエルすること自体を拒否してここを立ち去る者もいる。

「君こそ逃げないのか?」

「俺は目的があるからな。利用価値があるから入るだけだ」

「ふふっ…私も同じだ。ランサーズとして一定の戦果を上げれば、私の目を見えるようにしてくれるという」

「目を…?」

「そうだ。目が見えなくともあまり不自由がないが、君のようなデュエリストと戦う時はそうはいかないだろう」

そう言うと、ジョンソンは立ち上がり、持っていた杖で小石を飛ばす。

その小石は翔太のそばを飛んでいたスズメバチ3匹にボーリングのクリスマスツリーのように次々と命中し、3匹とも落ちていく。

若干の驚きの表情を見せる翔太に顔を向け、にやりと笑う。

「ここらへんはなぜか蜂がいる。場所を変えたほうがいい。私は少しご飯を食べに行くとしよう」

そう言いながら、ジョンソンは杖で足元を確認しながらその場を後にした。

 

 

そして、場所が変わって遊矢の精神空間内…。

「俺のターン、ドロー!」

 

遊矢

手札5→6

 

「罠発動、《死なばもろとも》」

「ええ!?このタイミングで罠を??」

ドロー以外に何もアクションを起こしていない状況で発動された罠カードに遊矢は疑問を持つ。

「俺たちの手札が3枚以上存在するとき、互いのすべての手札を好きな順番でデッキの一番下へ置く」

「何!?」

「もう手札に来ているだろう?《星読みの魔術師》と《時読みの魔術師が」

ユートの言葉に遊矢がギクリとする。

彼の言うとおり、手札にはすでにその2体の魔術師、そして《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が存在する。

このままターンを進めれば、すぐにペンデュラム召喚ができた。

悔しそうに遊矢は手札をデッキに戻す。

 

一番下に戻されたカード(上から順番)

遊矢

・時読みの魔術師

・オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン

・星読みの魔術師

・ペンデュラム・フラッシュ

・EMマンモスプラッシュ

・死者蘇生

 

ユート

・非常食

・エクシーズ・ユニット

・幻影騎士団サイレントブーツ

 

幻影騎士団サイレントブーツ(アニメオリカ・調整)

レベル3 攻撃200 守備1200 効果 闇属性 戦士族

(1):自分フィールド上に「幻影騎士団」モンスターが存在する場合、手札から特殊召喚できる。

(2):このカードをS素材とすることができない。

 

「そして、デッキに戻ったカードの数×300ポイント俺はライフを失い、互いにデッキからカードを5枚ドローする」

 

遊矢

手札6→5

 

ユート

手札3→5

ライフ4000→1300

 

「自分のライフを2700も!?」

手札を2枚増やし、自分のペンデュラム召喚を防ぐだけのために2700も自分のライフを削るユートの行為を理解できずにいる。

しかし、その答えとなる行動を即座に彼は起こす。

「俺は《幻影騎士団デッドサイス》の効果発動。俺が自分のカード効果でライフを失ったターン、1度だけその数値分自分のライフを回復させ、それと同じ数値分このカードの攻撃力をアップさせる」

「何!?」

《幻影騎士団デッドサイス》の大鎌が青い炎を起こし、ユートの体にも青い炎が宿る。

 

幻影騎士団デッドサイス ランク4 攻撃2000→4700

 

ユート

ライフ1300→4000

 

いきなり攻撃力が一気に4700にまで増大した。

今の遊矢のデッキにはその攻撃力を上回るモンスターはいない。

青い炎を発生させながら威嚇する《幻影騎士団デッドサイス》を見て、遊矢の頬に一筋の汗が流れる。

「どうした?この程度であきらめるのか?」

「何!?俺はそんなこと…」

「そんなことないといいたいんだろう?だが、君の魂を見てきた俺にはわかる。それに…俺も圧倒的な力の前に一度は諦めてしまった…」

目を閉じ、融合次元にエクシーズ次元が侵略された時のことを思い出しながら、ユートは言う。

圧倒的な力を持ち、無抵抗な人々をも襲う彼らに逃げることしかできなかった自分を思い出しているのだ。

「俺は…俺は諦めてなんかない!!俺は《EMアメンボート》を召喚!」

青い城の水玉模様の蝶ネクタイと黒いシルクハットをつけた背中が緑色のボートになっているオレンジ色のアメンボが現れる。

 

EMアメンボート レベル4 攻撃500

 

「《アメンボート》…攻撃表示の時、表示形式を変更することで相手の攻撃を回避するモンスターか…。言っていることとやっていることがまるで違うな」

「そんなことない!今はターンを稼いで、《デッドサイス》を倒す手を考える!俺はカードを2枚伏せて、ターンエンド!」

 

ユート

手札5

ライフ4000

場 幻影騎士団デッドサイス(オーバーレイユニット1) ランク4 攻撃4700

 

遊矢

手札5→2

ライフ4000

場 EMアメンボート レベル4 攻撃500

  伏せカード2

 

「俺のターン、ドロー」

 

ユート

手札5→6

 

「俺は手札から永続魔法《幻影騎士団の晩餐》を発動。これで俺は1ターンに1度、通常の召喚に加えて手札から幻影騎士団モンスター1体を通常召喚できる。俺は《幻影騎士団ラギッドグローブ》と《幻影騎士団ダスティローブ》を召喚」

大きな五本指の手甲を持つ鉄の鎧を装備した青い炎と黒いローブを装備し、周囲に紫色の魔石のついた銀の杖を2つ浮遊させている青い炎が同時に現れる。

 

幻影騎士団ラギッドグローブ レベル3 攻撃1000

幻影騎士団ダスティローブ レベル3 攻撃800

 

幻影騎士団の晩餐(ファントム・ナイツ・ディナータイム)

永続魔法カード

「幻影騎士団の晩餐」の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分のターンのメインフェイズ時に発動できる。自分は通常の召喚に加えて一度だけ「幻影騎士団」モンスター1体を召喚できる。

 

「《ダスティローブ》の効果発動。このカードは召喚に成功した時、守備表示になる。そして、このカードが表示形式を変更した時、俺のフィールド上に存在する幻影騎士団モンスター1体の攻撃力をターン終了時まで800アップさせる」

《幻影騎士団ダスティローブ》の2つの杖が《幻影騎士団デッドサイス》の周囲を旋回し始める。

 

幻影騎士団デッドサイス ランク4 攻撃4700→5500

 

幻影騎士団ダスティローブ(アニメオリカ・調整)

レベル3 攻撃800 守備1000 効果 闇属性 戦士族

「幻影騎士団ダスティローブ」の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードは召喚に成功した時、守備表示となる。

(2):このカードが表示形式を変更した時、自分フィールド上に存在する「幻影騎士団」モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで800アップする。

 

「これでレベル3のモンスターが2体!?」

「俺はレベル3の《ダスティローブ》と《ラギッドグローブ》でオーバーレイ!戦場に倒れし騎士たちの魂よ、今こそ黄泉がえり、闇を切り裂く光となれ!エクシーズ召喚!現れろ、ランク3!《幻影騎士団ブレイクソード》!」

下半身が装甲のある馬で、右手で身の丈ほどの大きさを持つ片刃の大剣を持つ首のない黒い鎧の騎士が現れる。

鎧の隙間からは青い炎が漏れ出ている。

 

幻影騎士団ブレイクソード ランク3 攻撃2000

 

「今度は《ブレイクソード》を!?」

「更に俺はオーバーレイユニットとなっている《ラギッドグローブ》の効果を発動。このカードを素材にエクシーズ召喚に成功した闇属性エクシーズモンスターの攻撃力を800アップさせる」

 

幻影騎士団ブレイクソード ランク3 攻撃2000→3000

 

幻影騎士団ラギッドグローブ(アニメオリカ・調整)

レベル3 攻撃1000 守備500 効果 闇属性 戦士族

(1):このカードを素材にX召喚に成功した闇属性モンスターは以下の効果を得る。

●このX召喚に成功した時に発動できる。このカードの攻撃力は1000アップする。この効果は無効化することができない。

 

「更に俺は手札から装備魔法《メテオストライク》を《デッドサイス》に装備。これでこのモンスターは守備モンスターを攻撃するとき、貫通ダメージを与える。更に俺は手札から装備魔法《デーモンの斧》を《デッドサイス》に装備。これでこのモンスターの攻撃力はさらに1000アップする」

 

幻影騎士団デッドサイス ランク4 攻撃5500→6500

 

《EMアメンボート》の守備力は1600。

仮に最初に《幻影騎士団ブレイクソード》が攻撃し、その後で《幻影騎士団デッドサイス》が攻撃したら、4900の貫通ダメージを受けることになる。

「バトルだ。俺は《ブレイクソード》で《アメンボート》を攻撃!」

《幻影騎士団ブレイクソード》の大剣が《EMアメンボート》に向けて振り下ろされる。

「《アメンボート》の効果発動!攻撃表示のこのカードが攻撃対象となった時、守備表示にすることでその攻撃を無効にする!」

《EMアメンボート》が大剣が来る直前に大きくジャンプをする。

大剣の刃はそのアメンボに触れることなく、フィールドに深々と刺さる。

「俺は手札から速攻魔法《幻影死鎌》を発動。俺の幻影騎士団の攻撃が無効となった時、相手フィールド上に存在する魔法・罠カードを2枚まで破壊し、そのモンスターはもう1度攻撃することができる」

「何!!?」

《幻影騎士団ブレイクソード》が深々と刺さっている大剣を振り上げる。

すると、青い剣閃が発生し、遊矢の伏せカードを真っ二つに切り裂いていく。

 

破壊された伏せカード

・EMクレイジー・ボックス

・EMピンチヘルパー

 

幻影死鎌(ファントム・デスサイス)

速攻魔法カード

(1):自分フィールド上に存在する「幻影騎士団」モンスターの攻撃が無効になった時、そのモンスター1体を対象に発動できる。相手フィールド上に存在する魔法・罠カードを2枚まで破壊し、このバトルフェイズ中そのモンスターはもう1度だけ続けて攻撃できる。

 

「あ、ああ…」

「どうした?君の力はその程度なのか?」

おびえる遊矢を見下すように見るユート。

そして《幻影騎士団ブレイクソード》は再び大剣を持ち上げると、そのまま《EMアメンボート》をその厚い刃で叩き潰した。

「これが最後の攻撃だ。残念だ、君の思いがその程度だということが…」

「ユート…」

目を閉じ、無念さを口にするユート。

しかし、目を開くと決意を固め、攻撃命令を出す。

「いけ、《デッドサイス》!!遊矢の魂を狩れ!!」

《幻影騎士団デッドサイス》が遊矢の首を狩るために彼の背後へ回り、大鎌を大きく横に振るう。

(そんな…俺、ここで終わり…??)

背後から襲いかかる冷たい死の感触に遊矢の表情が凍り付く。

そんな彼の心に次第に妥協しようという気持ちが現れる。

(でも、ユートが俺になるなら、それもいいかも…)

心の弱い自分よりもユートならば、柚子を守れるかもしれないし、みんなをデュエルで笑顔にすることができるかもしれない。

自分では素良1人すら笑顔にすることができなかった。

(ユート…俺が消えるから、だからお前が…)

(あきらめるのか?遊矢)

「え…!?」

なぜか男性特有の低い声が聞こえてくる。

その声は3年前からずっと効くことができなかった声。

もう2度と聞くことができないだろうと思っていた声だ。

「父さん!!?」

近くにいるのか、1度だけでもいいから彼の姿を見たいという思いが遊矢の生きる願望となる。

「俺は墓地から罠カード《EMクレイジーボックス》の効果を発動!!相手がダイレクトアタックをするとき、このカードを墓地から除外することで、俺はデッキからカードを1枚ドローする。そして、ドローしたカードがEMと名のつくPモンスターの場合、そのカードを表向きでエクストラデッキに置くことでその攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了させる!!」

大鎌の刃がデフォルメされた五芒星とピエロの仮面、虹などが派手に描かれた四角い箱とぶつかる。

そして、遊矢は深く深呼吸をしながら自分のデッキを見る。

「(頼む、俺のデッキ…。もし俺に生きろと言ってくれるなら、俺は前へ進める!!)ドロー!!!」

ドローするのと同時に箱が開き、まぶしい光が発生する。

光によって視界の自由が利かなくなった《幻影騎士団デッドサイス》はやむなくユートのフィールドへ戻っていく。

光を放ったのは赤い道化師の服で白いスカーフをつけた、赤と緑のオッドアイとなっている赤い髪の少年だ。

「俺がドローしたカードは《EMオッドアイズ・クラウン》だ!!」

遊矢はそのモンスターに感謝しながら、エクストラデッキへ送る。

 

EMクレイジーボックス

通常罠カード

(1):自分フィールド上に表側守備表示で存在する「EM」モンスターが攻撃対象となった時に発動できる。このターン、自分が受ける戦闘ダメージは0となる。

(2):相手の直接攻撃宣言時、墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。自分はデッキからカードを1枚ドローする。この効果でドローしたカードが「EM」Pモンスターの場合、そのカードを表側表示でエクストラデッキに戻すことでその攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了させる。この効果は(1)の効果が発動したターン、発動できない。

 

「防いだか…。だが、俺のフィールド上に2体のエクシーズモンスターがいる状況に変化はない。俺はこれでターンエンド」

 

ユート

手札6→0

ライフ4000

場 幻影騎士団デッドサイス(《デーモンの斧》《メテオストライク》装備 オーバーレイユニット1) ランク4 攻撃6500→5700

  幻影騎士団ブレイクソード(オーバーレイユニット2) ランク3 攻撃3000

  幻影騎士団の晩餐(永続魔法)

 

遊矢

手札2

ライフ4000

場 なし

 

「父さん…どこに!?」

近くに遊勝がいるのかと思い、周囲を見渡すが彼の姿は見えない。

ここにいるのは自分とユートだけだ。

(幻聴だったのか、今のは…?)

だが、幻聴とはこれほどはっきりと聞こえるものなのか?

それともただ無意識に自分に暗示をかけただけなのか?

そんな疑問が浮かぶが、今の遊矢にはそれを考えている時間はない。

「(とにかく、命がけで得たターンだ。必ずこの状況を突破して見せる!)俺のターン、ドロー!!」

 

遊矢

手札2→3

 

「え…?」

ドローしたカードを見て、遊矢が目を丸くする。

(こんなカード、見たことがないぞ!?入れた覚えもない!なんでそんなカードが…??)

先程の遊勝の声といい今ドローしたカードといい、不思議な出来事が次々と発生する。

そして、そのカードを見ていると首にぶら下げているペンデュラムが淡く光り、遊矢の脳裏に《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》の声が聞こえる。

厳密に言えば、直感でそう思っただけで確証はないが。

(そのカードを手にしたか、榊遊矢)

「オッドアイズ…?」

(このカードがあれば、俺の力をさらに引き出すことができる。だが忘れるな。力に飲まれたならば、今度はためらいなくお前の命をもらう)

低く、威厳のある声で遊矢を威圧する。

ドローしたカードを見ている遊矢は静かに目を閉じる。

「そうだな…デュエルでみんなを笑顔にするって誓ったからな。俺は手札から魔法カード《オッドアイズ・フュージョン》を発動!!このカードはドラゴン族専用の融合カードだ!」

「その2枚の手札で融合召喚するのか…?」

「いいや、俺が融合素材にするのは…エクストラデッキの《覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン》と《EMオッドアイズ・クラウン》だ!」

「エクストラデッキのモンスターで融合だと!?」

まさかの効果に驚くユートに遊矢は説明する。

「このカードは相手フィールド上にモンスターが2体以上存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しないとき、エクストラデッキに存在するオッドアイズモンスターを2体まで素材にすることができるんだ!お楽しみはこれからだ!!」

エクストラデッキから虹色の光が発生し、《覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン》と《EMオッドアイズ・クラウン》がフィールドに飛び出してくる。

そして、2体のモンスターはその光が生み出した渦の中へ消えていく。

「二色の眼を持つ道化師よ、怒りの眼輝けし竜と一つとなりて、新たな力を生み出さん!融合召喚!雷鳴纏いし疾風の竜、《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》!!」

4枚の白い翼を得て、緑色の肉体に変化した《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が遊矢の周囲を旋回する。

 

オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

「この瞬間、《オッドアイズ・クラウン》の効果発動!このカードを融合素材とした融合モンスターの攻撃力はターン終了時まで700ポイントアップする!」

 

オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン レベル7 攻撃2500→3200

 

EMオッドアイズ・クラウン

レベル3 攻撃1500 守備1000 闇属性 魔法使い族

【Pスケール:青3/赤3】

(1):自分フィールド上に存在する「オッドアイズ」モンスターの攻撃力・守備力が400ポイントアップする。

【モンスター効果】

(1):このカードがフィールド・エクストラデッキに表側表示で存在する場合、カード名を「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン」として扱い、種族をドラゴン族として扱うことができる。

(2):このカードを融合素材として「アイズ」ドラゴン族融合モンスターの融合召喚に成功した時に発動する。そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで700アップする。

 

「これが《オッドアイズ》の新たな姿…」

「《ボルテックス・ドラゴン》の効果発動!このカードの特殊召喚に成功した時、相手フィールド上に表側攻撃表示で存在するモンスター1体を手札に戻すことができる!ライトニング・トルネード!!」

4枚の翼に稲妻が宿り、大きくはためく。

それと同時にユートのフィールドに嵐が発生し、稲妻が《幻影騎士団デッドサイス》の体にまとわりつく。

動きを封じ込めれた死神は嵐によって吹き飛ばされていく。

(《デッドサイス》は戦闘で破壊された時、オーバーレイユニットとなっている闇属性モンスター1体を特殊召喚できる。だが、これでは効果を発動できない)

 

幻影騎士団デッドサイス

ランク4 攻撃2000 守備1800 エクシーズ 闇属性 戦士族

闇属性レベル4モンスター×2

「幻影騎士団デッドサイス」の(1)の効果はフィールド上に表側表示で存在する限り1度しか使用できない。

(1):自分の魔法・罠・モンスター効果によって自分LPを失ったターンに発動できる。その数値分、自分LPを回復させる。その後、回復したLPの数値分このカードの攻撃力をアップさせる。

(2):このカードが戦闘で破壊され墓地へ送られた時に発動できる。このカードのX素材となっている闇属性モンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。

 

「バトルだ!《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》で《幻影騎士団ブレイクソード》を攻撃!!轟け、雷光のスパイラルバースト!!」

《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》の口から雷鳴の宿った竜巻が放たれ、《幻影騎士団ブレイクソード》の鎧と大剣を半径2センチのかけらになるほどバラバラに粉砕していく。

「くうう…!!」

 

ユート

ライフ4000→3800

 

「この瞬間、《ブレイクソード》の効果発動。このカードがフィールドから離れたとき、オーバーレイユニットとなっているモンスターを可能な限り俺のフィールド上に特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターのレベルは4となる」

《幻影騎士団ブレイクソード》だったものの上に2つの青い炎が生まれ、それらがかけらを分け合う。

そして、その姿をオーバーレイユニットとなっていた2体のモンスターに変化していく。

 

幻影騎士団ダスティローブ レベル3→4 守備1000

幻影騎士団ラギッドグローブ レベル3→4 守備500

 

「よし、これでユートのモンスターはすべて倒した!!俺はこれで、ターンエンド!」

 

ユート

手札0

ライフ3800

場 幻影騎士団ダスティローブ レベル4 守備1000

  幻影騎士団ラギッドグローブ レベル4 守備500

  幻影騎士団の晩餐(永続魔法)

 

遊矢

手札3→2

ライフ4000

場 オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン レベル7 攻撃3200→2500

 

確かに遊矢は2体のエクシーズモンスターを倒すことができた。

しかし、フィールドにはレベル4となった幻影騎士団が2体いる。

更に遊矢は《オッドアイズ・フュージョン》を発動した際、自分のエクストラデッキを確認している。

その際、入れているはずの《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》がないことが分かった。

おそらく、ユートのエクストラデッキにあると思われる。

(《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》は1ターンに1度、このカード以外のカード効果が発動した時、俺のエクストラデッキに表側表示で存在するペンデュラムモンスターをデッキに戻すことでその効果を無効にし、破壊することができる。けど、今の俺のエクストラデッキにはペンデュラムモンスターはない…)

このままいけば、《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》の召喚と効果発動を許してしまうことになる。

だが、今の遊矢にはそれを阻止する手がない。

「俺のターン、ドロー」

 

ユート

手札0→1

 

「俺はレベル4となっている《ダスティローブ》と《ラギッドグローブ》でオーバーレイ!漆黒の闇より愚鈍なる力に抗う反逆の牙!今、降臨せよ!エクシーズ召喚!現れろ!ランク4!《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》!」

ユートのフィールドに彼のエースである《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》が現れる。

本来の主の元に一時的であるとはいえ戻ることができたためか、その漆黒の竜は上空に向けて激しく咆哮する。

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ランク4 攻撃2500

 

「やっぱり、《ダーク・リベリオン》はユートのデッキに!!」

「《ラギッドグローブ》の効果で、攻撃力が1000アップする」

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ランク4 攻撃2500→3500

 

「俺は《エクシーズ・ドラゴン》の効果を発動!オーバーレイユニットを2つ取り除くことで、相手フィールド上に存在するモンスター1体の攻撃力を半分奪う。トリーズン・ディスチャージ!!」

展開された翼部から放たれる雷鳴の糸。

それに拘束され、上空を舞う《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》が地に落ちる。

 

オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン レベル7 攻撃2500→1250

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ランク4 攻撃3500→4750

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・幻影騎士団ダスティローブ

・幻影騎士団ラギッドグローブ

 

「バトルだ。俺は《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》で《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》を攻撃!」

槍のように鋭い牙を前面に押し立て、地でもがく《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》を襲う。

「反逆のライトニング・ディスオベイ!!」

徐々にスピードを高めていく反逆の竜の牙に紫色の稲妻が宿る。

そして、牙が二色眼の天空竜の胴体を貫くと、その稲妻が体内で炸裂する。

「うわあああああ!!」

稲妻の余波が容赦なく遊矢を襲い、包帯に包まれた傷を焼く。

 

遊矢

ライフ4000→500

 

「うう、ううう…」

焦げ臭い匂いが遊矢の鼻に危険を伝える。

包帯を見ると、傷が開いたためか、包帯に血の色がついている。

しかし、それがユートに負けを認める理由とはならない。

口に付着した血をオレンジ色のリストバンドでふき取る。

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

 

ユート

手札1→

ライフ3800

場 ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ランク4 攻撃4750

  伏せカード1

  幻影騎士団の晩餐(永続魔法)

 

遊矢

手札2

ライフ500

場 なし

 

「そうだ、遊矢。立ち上がれ。そして自分の心に従って戦え。何があっても」

「ユート…」

「君の手札にあるカードは分かっている。そのカードを使い、《ダーク・リベリオン》を斬れ」

遊矢の手札のうちの1枚がわかっているかのような口ぶりだ。

何のカードのことを言っているのか、遊矢は分かっている。

「これで少なくとも、《ダーク・リベリオン》は暴走しない。君に従うはずだ。《オッドアイズ》のように。そして、最初に宣言しておく。俺のフィールドにセットされているカードは罠カード《エクシーズ・ブラスト》。このカードは俺のフィールド上に存在するエクシーズモンスターが相手モンスターの攻撃によって破壊された時、相手フィールド上に存在する攻撃表示モンスター1体を破壊し、相手に1000ダメージを与える」

わざと自分の伏せカードの内容を宣言する。

まるで、遊矢にあのモンスターの召喚を求めているかのようだ。

 

エクシーズ・ブラスト

通常罠カード

(1):自分フィールド上に存在するXモンスターが相手モンスターの攻撃によって破壊され墓地へ送られた時、相手フィールド上に表側攻撃表示で存在するモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを破壊する。その後、相手に1000ダメージを与える。

 

「俺のターン、ドロー…」

 

遊矢

手札2→3

 

「俺は手札から魔法カード《おろかな埋葬》を発動。その効果で、俺はデッキから《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を墓地へ送る。そして、手札から魔法カード《オッドアイズ・リバース》を発動!蘇れ、《オッドアイズ》!!」

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

オッドアイズ・リバース

通常魔法カード

「オッドアイズ・リバース」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分の墓地に存在する「オッドアイズ」「EM」Pモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。

(2):このカードを発動した時、自分Pゾーンに「魔術師」Pカードが2枚存在する場合、このターン、「オッドアイズ」モンスターは相手の魔法・罠カードの効果を受けない。

 

「そして、手札から《PCM-シルバームーン・アーマー》を発動!」

発動と同時に、ユートが優しい笑みを浮かべる。

そして、目を閉じて攻撃を受ける覚悟を決める。

「月の光よ、今こそ憎悪の心を鎮め、魂を救済する刃を生み出せ。ペンデュラムエクシーズチェンジ!!月の鎧纏いし二色の眼、《MLX-オッドアイズ・月下・ドラゴン》!!」

 

MLX-オッドアイズ・月下・ドラゴン ランク7 攻撃2500

 

「《オッドアイズ・月下・ドラゴン》はライフが1000以下で相手モンスターを攻撃したダメージステップ終了時、戦った相手モンスターを破壊し、そのモンスターの攻撃力分のダメージを与える。更に、このカードはライフ1000以下の時、戦闘では破壊されず、俺が受ける戦闘ダメージは0となる…」

「来い、遊矢!!」

《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》が翼部を展開し、稲妻を纏った牙を遊矢に向ける。

そして、《MLX-オッドアイズ・月下・ドラゴン》は刀を抜く。

「バトルだ!!《オッドアイズ》で《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》を攻撃!!月光のムラマサ・スラッシュ!!」

「迎え撃て、《エクシーズ・ドラゴン》!!反逆のライトニング・ディスオベイ!!」

2体の竜が咆哮し、牙と刀をぶつけ合う。

2つの拮抗した力が衝突し、すさまじい風圧が2人を襲う。

2体が上空で距離を取ると、時速70キロ近くのスピードで2体がすれ違う。

《MLX-オッドアイズ・月下・ドラゴン》が刀を鞘に納めると、《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》の牙から稲妻が消え、その黒き肉体を地に落とした。

 

ユート

ライフ3800→0

 

「ユート!!うわああああ!!」

吹き飛ばされたユートの傍へ行こうとする遊矢だが、彼の視界を白い光が包み込む。

「遊矢、君の魂が力を取り戻した。すぐに君は元の場所で目を覚ます」

「ユート!?お前、今どこへ…!?」

周囲を見渡すも、ユートの姿が見えない。

彼の声だけが聞こえてくる。

「遊矢、俺はずっと君と一緒にいる。デュエルでみんなに笑顔を…」

 

「う、うう…!!」

光が消えると、真っ白な天井が視界に飛び込んでくる。

白い照明が光っているところ以外は最初に目覚めた場所と同じだ。

服装と体は元のままで、右手には何かやわらかくて暖かな感触がする。

横に顔を向けると、柚子が椅子に座り、遊矢の手を握ったままうつぶせで眠っている。

「遊矢…」

寝言で彼の名前を呼ぶ柚子。

「目を覚ましたわね、遊矢」

「母さん…?」

金髪で緑色のシャツと白い長ズボンをはいた女性が入ってきて、遊矢は彼女に声をかける。

彼女は榊洋子、かつて舞網クイーンズというレディースを率いていた不良デュエリストだったという噂のある、遊矢の母親だ。

「あんた、心配したわよ。バトルロワイヤルが終わった後、3日も寝ていたのよ」

「3日も…」

「柚子ちゃんに感謝しなさい。この子、ずっとここであんたが目覚めるのを待っていたのよ」

「柚子…」

眠っている柚子の手をこちらからも優しく握る。

そうしていると、再び睡魔が彼を襲う。

「今はゆっくり休みなさい。そして、ちゃんと傷を治して…」

洋子が言い終わらぬ間に遊矢は眠ってしまった。

その顔にはわずかに笑みがこぼれていた。

 

そして、再びLDSデュエルフィールド。

「うう、悔しい!!モグモグ…」

悔しげな表情を浮かべる伊織がサンドイッチを食べている。

あの後、あのガーダーという男に結局負けてしまった。

そして、彼曰く自分を倒せないようではランサーズとして戦えないらしい。

「こうなったら絶対にリベンジしてやるーー!翔太君、サンドイッチのお変わりは?」

伊織が手を伸ばすが、翔太のそばにあるランチボックスにはもうサンドイッチは1つもない。

「キュイ!」

急にビャッコが鞄からみたらし団子を出す。

「わあ、ありがとうビャッコちゃん!!」

「問題は…あいつか」

伊織が嬉しそうにみたらし団子を口にしている間、翔太は再びフィールドに目を向ける。

フィールドでは現在、里香とラインマンがデュエルを行っている。

 

(現在は里香のターンのドローフェイズ)

ラインマン

手札1

ライフ3300

場 ボルテック・バイコーン(《リビングデッドの呼び声》の影響下) レベル7 攻撃2500

  森の番人グリーン・バブーン レベル7 攻撃2600

  リビングデッドの呼び声(永続罠)

 

里香

手札4

ライフ100

場 伏せカード1

 

「ウチのターン、ドロー!!」

 

里香

手札4→5

 

「ウチの新しい力、見せたる!!ウチはスケール1の《剣聖の影霊衣-セフィラセイバー》とスケール7の《炎獣の影霊衣―セフィラエグザ》でペンデュラムスケールをセッティング!!」

白銀の翼を宿し、黒い袈裟姿で氷の剣と盾を装備した銀髪の若い術士と同じ翼を宿し、赤い岩石でできた鎧と炎の爪を装備している青い竜人が里香の左右で光の柱を生み出す。

「これでウチはレベル2から6までのモンスターを同時に召喚可能や!ペンデュラム召喚!現れるんや、ウチのモンスター!!《影霊衣の舞姫》、《灼熱の影霊衣―セフィラフレア》、《影霊衣の術士シュリット》!!」

氷の鎖と透き通った透明な鏡がついた杖を装備している、青い袈裟で赤い髪の少女とペンデュラムゾーンにいる2体と同じ翼を持った、体の左半分が炎、右半分が氷の魔石で構築されている石人形と《影霊衣の術士シュリット》が同時に出現する。

 

影霊衣の舞姫 レベル4 攻撃1600

灼熱の影霊衣―セフィラフレア レベル7 攻撃2000

影霊衣の術士シュリット レベル3 攻撃300

 

「《セフィラフレア》はウチのペンデュラムゾーンに存在する2枚のカードがセフィラモンスターの場合、ペンデュラムスケールを無視してペンデュラム召喚することができるモンスターや。《セフィラフレア》の効果発動!このモンスターがペンデュラム召喚に成功した時、ウチのフィールド上に存在する影霊衣モンスターをリリースすることで、リリースしたモンスターのレベルの合計以下のレベルの影霊衣儀式モンスター1体をデッキから儀式できるんや!!」

「何!!?」

「ウチがリリースするんは《舞姫》と《セフィラフレア》、《シュリット》!!」

《灼熱の影霊衣―セフィラフレア》が咆哮し、両拳を地面にたたきつける。

すると、3体の影霊衣モンスターが11個の氷の五芒星となり、それによって発生した地割れの中に入っていく。

「儀式召喚!!レベル11!!これがウチの決戦兵器、《sophiaの影霊衣》!!」

地割れの中から白い光が発生し、その光と共に紫色の薄い踊り子の着物を着ていて、左手に白い光の球体、右手に紫の闇の球体を手にした《影霊衣の舞姫》が舞い踊りながらゆっくりと現れる。

 

sophiaの影霊衣 レベル11 攻撃3600

 

灼熱の影霊衣―セフィラフレア

レベル7 攻撃2000 守備2000 水属性 魔法使い族

【Pスケール:青4/赤4】

(1):1ターンに1度、自分が「影霊衣」儀式モンスターの儀式召喚に成功した時に発動できる。Pゾーンに存在するこのカードを破壊し、デッキからカードを1枚ドローする。

【モンスター効果】

(1):自分のPゾーンに存在する2枚のカードが「セフィラ」カードの場合、Pスケールを無視してP召喚することができる。

(2):このカードの召喚・P召喚に成功した時に発動できる。レベルの合計が儀式召喚するモンスターのレベル以上となるように自分のフィールド上に存在する「影霊衣」モンスターを最大3体までリリースし、デッキから「影霊衣」儀式モンスター1体を儀式召喚する。

 

「デッキから儀式召喚だって!!?」

「このカードの効果は強烈やで!儀式召喚に成功した時、このカード以外のフィールド・墓地に存在するカードをすべてけし飛ばすんやからな!!」

「何!!?だが、その効果は他のモンスターの召喚・特殊召喚した時には…」

「おっと、せやったな。けどこのカードなら問題あらへん!罠カード《創星のカオス》を発動。ウチのフィールドにsophiaモンスターが存在するとき、ライフを半分支払うことでフィールド上に存在するそのモンスター以外のすべてのカードを吹き飛ばすんや!」

《sophiaの影霊衣》が空に向けて2つの球体を投げると、その場で静かに舞い始める。

2つの球体がその舞に反応するかのように1つとなり、巨大で灰色の渦が生まれる。

すると、そのモンスター以外のフィールド・墓地に存在するカードがその渦の中にすべて飲み込まれていった。

 

里香

ライフ100→50

 

創星のカオス

通常罠カード

(1):自分フィールド上に「sophia」モンスターが存在するとき、自分LPを半分支払うことで発動できる。フィールド上に存在する「sophia」モンスター以外のすべてのカードをゲームから除外する。

 

「これでガラ空きや!!《sophiaの影霊衣》でダイレクトアタック!!」

《sophiaの影霊衣》が右手に灰色の球体を生み出し、それをラインマンに向けて投擲する。

球体はゆっくりと彼の前までゆき、彼に伏せた瞬間大爆発を起こした。

「うわああああ!!!」

 

ラインマン

ライフ3300→0

 

「ウチの勝ちやーーー!!」

勝利した瞬間、里香は万歳しながら喜びを見せる。

これで彼女のランサーズ入りが確定した。

「ああ、いいなぁ里香ちゃん。よーし、翔太君!!私を鍛えて!」

「断る」

「えーーー!?こういう時は空気を読んで、よし、俺が鍛えてやるよってかっこよく決めないとー…」

「はいはい、俺がコテンパンにしてやるよ」

「コテンパンじゃなくってーーー!!」



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第36話 ランサーズへの条件

「よーし、今度こそ頑張るぞー、セラフィム!」

「は、はい!!」

翔太のバイクのサイドカーに乗る伊織がセラフィムと共に気合を入れる。

「頑張るといっても、何か対策はあるのかよ?」

「ううん、何も!」

「即答かよ…話にならねえな」

翔太の想像する通りの伊織ならば、少なくとも対策などと言うたいそうなことはまず無理だ。

できることとしたら、デュエルの中で適応していくだけだろう。

少なくとも、伊織にはその適応力が翔太並みにある。

「この試合で7連敗目だな。帰りに記念で赤飯を買って帰るぞ」

「ふーんだ!だったら、私が勝ったら翔太君に罰ゲームだね」

「罰ゲーム…?」

「デート1回!」

キキーーーッ!!

「へぶっ!!」

急ブレーキにより、伊織が額をぶつけてしまう。

赤くなった額を両手でさすりながら翔太に文句を言う。

「もー翔太君、何もないのに急ブレーキなんてないよー」

「お前の爆弾発言に驚いたんだよ。デート1回、まあ…確かに罰ゲームだな」

「うれしい罰ゲームでしょ?」

「何言ってんだ、最悪な罰ゲームだろ。さっさと負けてこいよ」

再びバイクを走らせる翔太。

口では嫌だと言っている翔太だが、その頬は若干赤くなっていた。

 

「さあてっと、もうそろそろあのお嬢ちゃんの登場だな」

LDSのデュエルリングでガーダーが伊織が来るのを待っている。

中継室では侑斗とウィンダが待機している。

「ユウ、ガーダーさんすごく楽しみにしているね」

「うん。多分相手が伊織ちゃんだからかな?」

「伊織ちゃんだから…?」

「うん、毎回デュエルではガーダーさんが勝ってるけど、彼女のデュエルの実力が…」

「あ、来たよユウ!!」

ウィンダがデュエルリング入口を指さすと、そこには翔太と伊織がいる。

その2人の後ろに隠れてセラフィムとビャッコも。

「あ、この2人って…」

「翔太君と伊織ちゃん…。2人もカードの精霊に好かれているんだ」

侑斗とウィンダがそういう話をしていることも知らずに、翔太はビャッコを伊織が持ってきているリュックサックに入れて観客席へ行き、伊織がガーダーの前へ行く。

「リベンジに来ました、ガーダーさん!!」

「よく来たな、嬢ちゃん。さっそく始めようぜ?分かっているとは思うが、勝ったらランサーズ入りだ。もう後戻りできないと思えよ?」

伊織は何も言わずにうなずくとデュエルディスクを展開し、ガーダーもそのあとすぐにデュエルディスクを展開する。

(あいつ…なんでそこまでランサーズに入りたいんだ?)

客席から見ている翔太が今持つ疑問だ。

普通ならば、1度負ければ諦めるはずだ。

6度も負けている人ならばなおさら。

だが、伊織は諦めずにまたランサーズに入ろうとしている。

そこまで執着する理由もないはずなのに。

「「デュエル!!」」

 

ガーダー

手札5

ライフ4000

 

伊織

手札5

ライフ4000

 

「俺のターン、俺はモンスターを裏守備表示で召喚。そして、カードを1枚伏せてターンエンド」

 

ガーダー

手札5→3

ライフ4000

場 裏守備モンスター1

  伏せカード1

 

伊織

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「かなり無難な立ち上がりだね」

「ガーダーさんのチームのデッキは獣族中心。もしそのモンスターが何者かわからなかったら、伊織ちゃんはまずいことになるかもしれないよ」

ガーダーがフィールドにある正体不明の2枚のカードを侑斗はじっと見る。

「私のターン、ドロー!」

 

伊織

手札5→6

 

「私は手札から魔法カード《融合》を発動!その効果で手札の《シャドー・ミスト》と《セラフィム》を融合!」

「よろしくお願いします、《シャドー・ミスト》」

セラフィムと《E・HEROシャドー・ミスト》が手を合わせると上空で《融合》の渦に溶け込んでいく。

「影の戦士よ!天上の射手よ!今こそ1つになりて、新たなヒーローに進化せよ!融合召喚!現れて、闇夜を切り裂く爪、《E・HEROエクスリダオ》!!」

《融合》の渦を黒い爪が切り裂く。

すると、渦が消滅しその爪の持ち主が姿を現す。

黒い鋭利な翼を6枚持ち、黒く鋭い爪を持つ合計10本の手の指、悪魔をモチーフとしていると思われる黒い仮面。

闇属性のHEROに似合う、ダークヒーロー風のモンスターだ。

 

E・HEROエクスリダオ レベル8 攻撃2500

 

「《シャドー・ミスト》の効果発動!このカードが墓地へ送られた時、デッキから《シャドー・ミスト》以外のHEROを1枚手札に加えることができる!私はデッキから《E・HEROスカイランナー》を手札に加える!そして、このカードは私のフィールド上にHERO融合モンスターが存在するとき、手札から特殊召喚できるよ!」

 

E・HEROスカイランナー レベル3 攻撃1200

 

「《スカイランナー》は特殊召喚に成功した時、デッキ・墓地から融合かフュージョンと名のつく魔法カードを手札に加えることができる。私はデッキからもう1枚の融合を手札に加えるよ」

「なるほどな、もしかして手札にはもう1枚HEROがいるってことかい?」

ガーダーが伊織の手札に加わった《融合》以外の3枚をじっとみながら質問する。

無論、それにはいそうですかと答えるほど伊織だってばかではない。

先程の言葉は翔太が言うべきかもしれないが、当の本人は今誰かと電話をしているため、筆者が代わりに言っておく。

「《エクスリダオ》の効果発動!このカードは墓地に存在するE・HERO1体につき、攻撃力が100アップするよ!ダークコンセントレイション!!」

「あなたに力をお貸しします!」

墓地にいるセラフィムが《E・HEROシャドー・ミスト》から受け取った黒い弾丸と自身が持つ白い銃弾を連続で手持ちの拳銃から発射する。

《E・HEROエクスリダオ》は右手に白い弾丸を、左手に黒い弾丸を受け止める。

すると右手の黒い爪が白く染まり、左手の爪には黒い炎が発生する。

 

E・HEROエクスリダオ レベル8 攻撃2500→2700

 

「バトル!《エクスリダオ》で裏守備モンスターを攻撃!Dark diffusion(ダークディフュージョン)!!」

《E・HEROエクスリダオ》の両手の爪が万力のように裏守備モンスターを左右から襲う。

しかし、爪でスライスされる前にそのモンスターは銀色の鎧をつけた純白の狩猟犬となってダークヒーローの首に食らいつこうとする。

「甘いな嬢ちゃん!《ライトロード・ハンター ライコウ》のリバース効果で《エクスリダオ》は破壊されるぜ!」

「読んでた!」

「何?」

「私は手札から《E・HEROブルーライト・ランサー》の効果発動!私のHEROモンスターがフィールド上のカードを破壊する効果の対象になった時、このカードを手札から特殊召喚するよ!そしてこのターン、私のHEROはカード効果では破壊されないよ!」

青いショートヘアで水色の服で青い胸当てを装備した儚げな印象を見せる少女が青い刀身を持つ長槍で《ライトロード・ハンター ライコウ》の牙を受け止める。

「やるな嬢ちゃん。破壊できなかったとはいえ、効果は発動しているから俺は《ライコウ》の効果でデッキの上から3枚カードを墓地へ送るぞ」

 

デッキから墓地へ送られたカード

・パラレル・セレクト

・ユニコーンの導き

・ボルト・ヘッジホッグ

 

E・HEROブルーライト・ランサー レベル3 守備800

 

E・HEROブルーライト・ランサー

レベル3 攻撃500 守備800 光属性 戦士族

【Pスケール:青8/赤8】

(1):自分は「HERO」モンスターしかP召喚できない。この効果は無効化できない。

【モンスター効果】

(1):自分フィールド上に存在する「HERO」モンスターが、「フィールド上のカード1枚を破壊する効果」を持つ相手の効果の対象となった時に発動できる。このカードを手札から特殊召喚できる。

(2):この効果によって特殊召喚に成功したターン、自分フィールド上に存在する「HERO」モンスターはターン終了時まで相手の効果では破壊されない。

 

「そして、俺は罠カード《次元均衡》を発動!」

「ええ!!?」

伏せカードの正体に伊織がびっくりする。

《ライトロード・ハンター ライコウ》の効果を防いでくるのを予測していたかのような行動だったからだ。

 

「なるほど、一手二手先を見た罠カードだな」

侑斗とウィンダの元へ黒咲が来る。

今の彼は襟の右側にランサーズのバッジがついている青いライディングスーツを着ていて、右手には耳の部分に鏡写しのRが描かれているヘルメットを持っている。

「黒咲君、例のプロトタイプの性能はどうかな?」

「問題ない。例の換装システムは少し扱いづらいが、バイクとしてはかなりいい性能だ。これならばシンクロ次元とも…」

「ストップ。シンクロ次元はまだ敵だとは限らないよ」

 

「《次元均衡》は戦闘で俺の獣族モンスターが相手モンスターの攻撃によって破壊され墓地へ送られた時、そのモンスター1体を除外し、破壊された獣族モンスター1体を特殊召喚するぞ!」

上空に現れた灰色の渦に《エクスリダオ》が飲み込まれていく。

そして、入れ替わるように《ライトロード・ハンター ライコウ》が飛び降りる。

 

ライトロード・ハンター ライコウ レベル2 守備100

 

次元均衡(アニメオリカ・TF(タッグフォース)仕様)

通常罠カード

(1):自分フィールド上に存在する獣族モンスターが相手モンスターの攻撃によって破壊され墓地へ送られたときに発動することが出来る。そのモンスター1体を墓地から特殊召喚し、攻撃モンスターをゲームから除外する。

 

「くうう…けど、《スカイランナー》の攻撃は残ってる!」

《E・HEROスカイランナー》が長剣で仲間の仇たる光の狩猟犬を真っ二つに切り裂く。

「私はカードを1枚伏せて、ターンエンド!」

 

ガーダー

手札3

ライフ4000

場 なし

 

伊織

手札6→2(うち1枚《融合》)

ライフ4000

場 E・HEROスカイランナー レベル3 攻撃1200

  E・HEROブルーライト・ランサー レベル3 守備800

  伏せカード1

 

互いにライフは減ることはなかったものの、ガーダーのフィールドにカードはなく、伊織のフィールドには2体のモンスター。

しかし、《ライトロード・ハンター ライコウ》と《次元均衡》によって伊織は貴重なHERO融合モンスターを1体失ってしまった。

《平行世界融合》が手札にあったとしても、除外されているモンスター1体だけではどうにもならない。

「ガーダーさんの墓地にいったカード、《ボルト・ヘッジホッグ》…あれがどう動くか…」

「俺のターン、ドロー!」

 

ガーダー

手札3→4

 

「相手フィールド上にのみモンスターが存在し、自分フィールド上にカードが存在しないとき、このカードはレベル4モンスターとして手札から特殊召喚できる。《こけコッコ》を特殊召喚!」

円くなったトサカと尾を持つ、真っ白で大きな鶏が出てくる。

つぶらな瞳と丸いぬいぐるみのようなモンスターだ。

 

こけコッコ レベル5→4 攻撃1600(チューナー)

 

「更に《ボルト・ヘッジホッグ》は俺のフィールド上にチューナーが存在するとき、墓地から特殊召喚できる」

 

ボルト・ヘッジホッグ レベル2 攻撃800

 

「レベル2の《ボルト・ヘッジホッグ》にレベル4の《こけコッコ》をチューニング。闇を切り裂く刃よ、舞い踊る刃と共に戦場を踊れ!シンクロ召喚!レベル6!《BF-星影のノートゥング》!!」

ガーダーの周囲を駆けまわるように、4つの鎌のような刃でできた鍔のある剣が飛ぶ。

そして、上空から降りてきた黒いセパレートタイプのローブを着ているカラスをモチーフとした人型モンスターがそれを掴む。

 

BF-星影のノートゥング レベル6 攻撃2400

 

「BF!?それってピアスンって人が使っていたカードじゃ…」

「嬢ちゃん、だからといって俺が使ってはいけないって理由にはならないぜ?《ノートゥング》の効果発動!このカードの特殊召喚に成功した時、相手に800ダメージを与え、相手モンスター1体の攻撃力を800ダウンさせることができる!舞い戻る剣(ホーミング・ソード)!!」

《BF-星影のノートゥング》が投げた剣が《E・HEROスカイランナー》にブーメランのように襲い掛かる。

彼女は長剣でガードしたため、肉体的なダメージはなかったものの、持っていた剣が砕けてしまう。

そして、技名にあるように剣は《BF-星影のノートゥング》の元へ戻っていく。

 

E・HEROスカイランナー レベル3 攻撃1200→400

 

伊織

ライフ4000→3200

 

「くうう…」

「《こけコッコ》と《ボルト・ヘッジホッグ》は自身の効果でゲームから除外される。そこで俺は手札から魔法カード《ユニコーンの導き》を発動!手札を1枚ゲームから除外することで、除外されているレベル5以下の獣族か鳥獣族モンスター1体を攻撃表示で特殊召喚できる。《こけコッコ》を異次元から呼び戻すぜ」

灰色の渦が上空に現れ、その中から《こけコッコ》が一生懸命羽をばたつかせながら下りてくる。

 

こけコッコ レベル5 攻撃1600(チューナー)

 

「またチューナーが!?」

「まだまだ続くぜ…。相手フィールド上にモンスターが存在し、俺のフィールド上にチューナーモンスターが存在するとき、このカードは手札から特殊召喚できる。《異次元の一角戦士》を特殊召喚!」

 

異次元の一角戦士 レベル4 攻撃1800

 

「こいつはこの方法で特殊召喚に成功した時、ゲームから除外されている俺のレベル3以下のモンスター1体を特殊召喚できる。《ボルト・ヘッジホッグ》を特殊召喚!」

《こけコッコ》の背中の上に急に《ボルト・ヘッジホッグ》が現れる。

そのモンスターは自分の出番が来るのを分かっていたようで、いつの間にフィールドに出て鶏の羽根の手入れをしていた。

 

ボルト・ヘッジホッグ レベル2 攻撃800

 

「ほー、こいつのこの方法での特殊召喚は通常召喚を行ったターンに発動できない。そして、こいつはこのターン、通常召喚を行うことなくシンクロ素材をそろえていたな」

《こけコッコ》も《ボルト・ヘッジホッグ》も自身の効果で特殊召喚を行うことができるモンスター。

そして、デメリットとして除外されていることも想定の範囲内でそれすらもメリットに変えるカードを入れている。

さすがはヴァプラ隊で小隊長を務めるだけある。

「レベル2の《ボルト・ヘッジホッグ》にレベル5の《こけコッコ》をチューニング!悪魔を模したガラクタの巨人の怒りで戦場を打ち砕け!シンクロ召喚!レベル7!《スクラップ・デスデーモン》!!」

鋼の装甲で作られた、翼と2本の角を持ついかにもステレオタイプといえる悪魔をもした機械が現れる。

 

スクラップ・デスデーモン レベル7 攻撃2700

 

「うう…1ターンで攻撃力2600と2700、そして1700かぁ…」

伊織を3方向から包囲するように展開する3体のモンスターを見て、伊織は苦笑いする。

更に先ほどのシンクロ召喚で《こけコッコ》は除外され、《ボルト・ヘッジホッグ》は墓地へ行った。

またチューナーモンスターが召喚された場合、《ボルト・ヘッジホッグ》が召喚されてまたシンクロ召喚されてしまう。

「さあ、いくぜ嬢ちゃん!俺は《異次元の一角戦士》で《ブルーライト・ランサー》を攻撃!」

二又の刃が特徴的な剣を持つ《異次元の一角戦士》が《E・HEROブルーライト・ランサー》に襲い掛かる。

しかし、相手がまだ少女だからか刃を当てるのをためらい、剣を寸止めすると左手人差し指で伊織のエクストラデッキを指さす。

すると、彼女は槍をしまって頭を下げるとエクストラデッキへ避難していった。

「あーー、たとえモンスターであっても女の子を傷つけるのは嫌でな…」

「うーん、そういうところを翔太君は見習わないとねー」

「ふん…」

「まあ、気を取り直して…今度は《ノートゥング》で攻撃だ!」

《BF-星影のノートゥング》の場合はまずは武器をしまい、《E・HEROスカイランナー》の前で一度お辞儀をする。

そして、彼女はそのままフィールドの外へエスコートされる形で消滅し、それと同時にカラスの剣士はガーダーのフィールドへ戻っていく。

 

伊織

ライフ3200→1000

 

「おいおい、これで一気にライフが1600。このまま《デスデーモン》に攻撃されたら負けだな」

「これでしまいだ!《スクラップ・デスデーモン》!」

《スクラップ・デスデーモン》ががら空きとなっている伊織の目の前のフィールドに拳を叩き込もうとする。

「私は罠カード《リバース&マスク》を発動!私のフィールド上に存在するレベル4以下のHEROモンスターが戦闘で破壊され墓地へ送られた時、そのモンスター1体を墓地から特殊召喚するよ!」

先程《BF-星影のノートゥング》にエスコートされ、退場したはずの《E・HEROスカイランナー》が空を飛んで戻ってくる。

 

E・HEROスカイランナー レベル3 攻撃1200

 

「そして、そのモンスターを墓地へ送り、エクストラデッキから同じ属性のM・HERO1体を融合召喚できる!」

《E・HEROスカイランナー》が仮面をつけると、一度装備しているものが緑色の光に包まれる。

「風の疾走者よ、今こそ風の力を宿し、新たなヒーローに進化せよ!変身召喚!《M・HEROカミカゼ》!!」

光がはじけ飛ぶ形で消えると、彼女の装備が女性用に調整された《M・HEROカミカゼ》のものに変化していた。

 

M・HEROカミカゼ レベル8 攻撃2700

 

リバース&マスク

通常罠カード

(1):自分フィールド上に存在するレベル4以下の「HERO」モンスターが戦闘で破壊され墓地へ送られた時に発動できる。そのモンスター1体を自分フィールド上に攻撃表示で特殊召喚する。その後、そのモンスターをリリースし、そのモンスターと同じ属性の「M・HERO」モンスター1体を「マスク・チェンジ」による特殊召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

 

「《カミカゼ》が存在する限り、相手は1度のバトルフェイズ中に1体しか攻撃することができない!」

「へへっ、そうこなくっちゃあな。俺はこれでターンエンドだ」

 

 

ガーダー

手札4→0

ライフ4000

場 スクラップ・デスデーモン レベル7 攻撃2700

  BF-星影のノートゥング レベル6 攻撃2400

  異次元の一角戦士 レベル4 攻撃1800

 

伊織

手札2→1(うち1枚《融合》)

ライフ1000

場 M・HEROカミカゼ レベル8 攻撃2700

 

連続召喚の影響で、今のガーダーには手札がなく、フィールドにいるのはモンスターだけ。

攻撃するのは今がチャンスだ。

(この嬢ちゃん…やっぱり強くなってるな)

最初にガーダーとデュエルをした時は《森の番人グリーン・バブーン》に敗れた。

2度目はそのモンスターを破ったが、《ライトニング・トライコーン》に敗れ、その次はそのモンスターを打ち破った後、《氷結のフィッツジェラルド》に敗れた。

伊織は敗れはするものの、一度自分を倒した相手モンスターに2度は倒されないくらい成長する。

翔太も何度も伊織とデュエルをしているが、最初のデュエルで伊織にとどめを刺した《魔装騎士ブラックライダー》でそれ以降のデュエルではとどめを刺すことができなくなった。

(あいつ…負けを確実に自分の糧にできるのか…)

「私のターン、ドロー!!」

 

伊織

手札1→2

 

「私は手札から《E・HEROエアーマン》を召喚!」

 

E・HEROエアーマン レベル4 攻撃1800

 

「《エアーマン》の効果発動!このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、デッキからHEROモンスター1体を手札に加えるよ。私は《E・HEROドラゴンガール》を手札に加える!そして、手札から魔法カード《融合》を発動!手札の《ドラゴンガール》とフィールドの《エアーマン》を融合!疾風の戦士よ!竜を愛でる少女よ!今こそ1つになりて、新たなヒーローに進化せよ!融合召喚!現れて、竜巻の王者、《E・HERO Great TORNADO》!!」

 

E・HERO Great TORNADO レベル8 攻撃2800

 

「《Great TORNADO》!?へっ…やってくれるぜ」

「《Great TORNADO》は融合召喚に成功した時、相手フィールドの全てのモンスターの攻撃力・守備力を半分にする!タウン・バースト!!」

《E・HERO Great TORNADO》が起こした嵐によって、2体のシンクロモンスターと1体の戦士の体に大量の切り傷ができる。

 

スクラップ・デスデーモン レベル7 攻撃2700→1350

BF-星影のノートゥング レベル6 攻撃2400→1200

異次元の一角戦士 レベル4 攻撃1800→900

 

「《ドラゴンガール》の効果発動!このカードを融合素材としてHEROと名のつく融合モンスターの融合召喚に成功した時、デッキからカードを2枚ドローして、その後で手札を1枚墓地へ送るよ!!」

 

手札から墓地へ送られたカード

・E・HEROボルテック

 

「そして手札から魔法カード《死者蘇生》を発動!蘇って、《E・HEROスカイランナー》!!」

 

E・HEROスカイランナー レベル3 攻撃1200

 

「《スカイランナー》の特殊召喚が成功したことで、私はデッキから《ミラクル・フュージョン》を手札に加えるよ。そして、魔法カード《ミラクル・フュージョン》を発動!フィールド・墓地のモンスターでE・HERO融合モンスターを融合召喚する。私が融合素材にするのは《ドラゴンガール》と《セラフィム》!!」

「《ドラゴンガール》さん、力をお借りします!」

《E・HEROドラゴンガール》とセラフィムが上空に現れた虹色の渦に飲み込まれていく。

「竜を愛でる少女よ!天上の射手よ!今こそ1つになりて、新たなヒーローに進化せよ!融合召喚!現れて、2つの次元を守る光の番人、《E・HERO The シャイニング》!!」

8つの羽根のような飾りがついた金色の輪を背中につけ、金色の線と赤い宝石で装飾された純白のスーツとマスクをつけたHEROが上空から光を降り注ぎながら下りてくる。

 

E・HERO The シャイニング レベル8 攻撃2600

 

「このカードは除外されている私のHERO1体につき攻撃力が300アップするよ!」

 

E・HERO The シャイニング レベル8 攻撃2600→3200

 

今度は伊織のHERO達がガーダーと彼のモンスター達を包囲する。

《E・HERO Great TORNADO》の効果で弱体化したモンスターたちでは防ぎようがない。

「へっ…お返しの連続融合召喚か…。来い嬢ちゃん!!」

負けを認めたガーダーがニヤリと笑う。

「いっけーーーー!!私のHERO達!!」

伊織の4体のHERO達が一斉にガーダーのモンスター達に襲い掛かる。

《E・HEROスカイランナー》の剣が《異次元の一角戦士》を両断し、《E・HERO The シャイニング》が指から放った糸状の光が《BF-星影のノートゥング》の剣と翼を焼き尽くす。

そして、《M・HEROカミカゼ》が竜巻状の風を宿した右拳による正拳突きが強固であるはずの《スクラップ・デスデーモン》の装甲を貫き、《E・HERO Great TORNADO》が起こした竜巻がガーダーを飲み込んでいった。

 

ガーダー

ライフ4000→3700→1700→350→0

 

「ふう…やるようになったな、嬢ちゃん。ランサーズのリーダーには俺が話しつけておくぜ」

「…やったー!」

嬉しそうにガーダーには見えない少女と強引にハイタッチをする。

「こいつまでランサーズに入るのかよ…うるさくなるぜ」

ため息をつきながら喜ぶ伊織を見つめる翔太だが、なぜかほんの少し安堵感も存在していた。

 

「これでランサーズにまたメンバーが加わったか」

「黒咲君、分かっているとは思うけど…」

「ふう…分かっている。しっかりこれからコミュニケーションを図るつもりだ。それで…結果はどうだ?」

侑斗の言いたいことが分かっているのか、少しため息をつきながら了承すると、本題に入る。

「ウィンダ、発生したエネルギーは?」

「うん、発生したエネルギーはかなりあって、しかもその量は素良君やオベリスクフォースに匹敵してる。もしかして…」

「もしかするかもしれないね…」

侑斗とウィンダの目線は翔太の元へ駆け寄っている伊織とそれについていくセラフィムにうつっていた。




今回は少し短めでしたが、これで伊織のランサーズ加入が決定!
さて、これからどうするか…。


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第37話 交換条件の提示

「レディースアンドジェントルメーン!榊遊矢、ただ今退院しましたー!」

遊勝塾へ柚子と洋子、修造につれられる形で遊矢が戻ってくる。

「「遊矢兄ちゃーーん!!」」

フトシ、アユ、タツヤが嬉しそうに彼の元へ駆けつけ、遊矢は3人の頭をなでる。

「心配かけてゴメンな、みんな」

「本当だよ!まさかバトルロワイヤルであんなことがあったなんてよぉー」

「それに、素良とも戦ったんでしょ…?」

アユの言葉に一同が沈黙する。

バトルロワイヤル終了時、レオコーポレーションはそのさなかに発生した融合次元による攻撃、そして今まで機密としていた3つの次元の存在を一般に公表した。

その際の映像にはカードに封印される人々やオベリスクフォースと戦うデュエリストの姿が映され、その中には遊矢と素良のデュエルもあった。

《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》に握りつぶされそうになった時の映像はなかったため、修造たちはそのデュエルの際の負傷だと思っている。

この中で本当の怪我の原因を知っているのは遊矢と翔太を除くと柚子と精霊の見える伊織だけだ。

「ま、まあとりあえず今夜は遊矢が退院した記念のパーティーをやろうと思ってる。みんなでパーティーの準備をするぞーーー!」

「「オーーー!!」」

修造と共に年少組がパーティーの食材の買い出しに向かう。

彼らを見送ると、洋子は遊矢に封筒を渡す。

「母さん、これは…?」

「赤馬零児からよ、3日前に届いたの。退院したら渡してほしいって」

「え…?」

「読んでみたらわかるよ」

それだけ言うと、洋子も買い出しのために出て行った。

残されたのは遊矢と柚子、翔太、伊織だけだ。

「赤馬零児からの手紙…?」

退院までの間に翔太と権現坂、柚子から既にセレナのこととこの大会の真意を伝えられていた。

これは強力なデュエリストを選抜し、彼らにペンデュラム召喚を習得させ、襲ってくる融合次元のデュエリストと実際に戦わせるための布石。

そして、その戦いを生き延びたデュエリストをランサーズとすることだ。

無論、その後で本当に別次元のデュエリストと戦うだけの実力があるかをヴァプラ隊が確かめるためのデュエルを行う。

月影、セレナ、権現坂、デニス、黒咲、沢渡は既にクリアしている。

セレナは黒咲から真実を教えられた後、融合次元の愚行を止めるためにランサーズに加わることを決意したのだ。

敗北した場合はヴァプラ隊に加わるか、LDSで力量をつけることになる。

なお、LDSはバトルロワイヤル後はランス・ディフェンス・ソルジャーズに名を改め、別次元からスタンダード次元を守るための組織に変貌した。

その結果、別次元のデュエリストと戦うことに恐怖を覚えた生徒は多数退学している。

遊矢には零児の行為が自分たちを道具のように扱っているようにしか思えず、必要なことだということは分かってはいるがどうしても許せずにいる。

「速く読めよ」

「ああ、分かってる!」

封筒を破り、手紙をひろげる。

『榊遊矢、まずは無事に退院したことを心からお祝いしよう。そして、君の言いたいことは分かっている。私の今回の行為が許されないことだということは私自身も十分承知している。その罰は必ず受ける覚悟でいる。だが、君にこれだけは言える。融合次元のデュエリストはあのバトルロワイヤルでセレナだけでなく、柊柚子をも連れ去ろうとしていた』

「柚子を…」

柚子から融合次元から来た遊矢そっくりのデュエリスト、ユーリに襲われたことについては聞いている。

仮に侑斗とウィンダが駆けつけなければ、彼女は確実に連れて行かれていたことだろう。

『彼らがなぜ2人を狙うのかはわからない。だが、彼らはこれからも必ず2人を連れ去ろうと画策するだろう。ランサーズに加わることは彼女たちを守ることにもつながる。そして、ランサーズはペンデュラム召喚の始祖たる君がいなければ完成しない。そのため、ランサーズに加わってくれた暁には君の父、榊遊勝の消息を探るために全面的に協力することを誓う』

「父さんを!!?」

『退院後、決心がついたら剣崎侑斗の元へ行ってほしい。そして、この言葉に嘘偽りがないことを右が証明する。 赤馬零児』

名前と手紙の最後の部分の間の隙間には零児の血判が押されていた。

「父さんを…探してくれる…?」

「遊矢…」

遊矢は長い間、ずっと遊勝に会いたいと願っていた。

ほんのわずかでもいい。

彼に会って、自分のエンタメデュエルを見せたい。

行方が分からず、何の情報もない今では探しようがない。

しかし強大な力を誇り、別次元に関する情報を持つレオコーポレーションならば見つけることができるかもしれない。

彼は隣にいる柚子に目を向ける。

(それに、ランサーズになることで柚子を守ることができる。もう2度と、柚子にあんな思いをさせない!必ず守って見せる!!)

(腹が決まったみたいだな。ま、豆腐メンタルが少しはましになったってことか)

遊矢の目には確かな決意があり、翔太はそれを感じていた。

 

その日の夜…。

「あーー、それでは榊遊矢の無事な退院を祝って…」

「「カンパーーーイ!!」」

遊勝塾のデュエルリングの中で遊矢たちが乾杯する。

権現坂も参加したかったようだが、父親にランサーズとして戦場に出る前の特訓をさせられているために来ていない。

「うおーーー!本当に心配したぞ遊矢ーー。もし死んだら、洋子さんや遊勝さんになんて言えば…」

「もう、縁起でもないことを言わない!!」

酒のせいで涙でびしょびしょになっている父親を見かねた柚子がハリセンを叩き込む。

そんな2人を遊矢は苦笑いしながら見つめている。

フトシは両手にフライドチキンを持ってはしゃぎ、アユはケーキ、タツヤはおにぎりをおいしそうに口にする。

「うーーーん、おいしーーー!!」

「いいですね、伊織様。こんなにおいしい料理を食べられるなんて…」

オムライスを食べる伊織を見たセラフィムはテーブルに置かれている料理に目を向ける。

食べたい様子だが、精霊である彼女には食べることができず、そのために実体化したら大騒ぎになってしまう。

「キュイキュイー」

「ビャッコさん?」

物陰に隠れていたビャッコがセラフィムを誘い、鞄からみたらし団子を出す。

「キュイ!」

笑顔でビャッコはそれをセラフィムに差し出す。

「ビャッコさん…」

感動したセラフィムは嬉しそうにみたらし団子を受け取り、1つずつ丁寧に食べていく。

「おいしいですビャッコさん!!このご恩、一生忘れません!」

「キュイ!」

セラフィムの嬉しそうな顔を見たビャッコもうれしくなったのか、みたらし団子をまた出す。

(本当に…あいつのカバンはドラ○もんの四次元ポケットか?)

「翔太君、それ口にしちゃダメだよ?」

「なんで俺の心の中が読めるんだ?」

思わず著作権で訴えられそうな名前を頭に浮かべながらコーラを飲む翔太のそばに伊織が来る。

「んー?多分、長い間ずっと一緒だから…以心伝心?」

「長い間?まだ1か月か2か月しかたっていないだろ?」

「まーまー、細かいことは気にしないで、もっと食べようよ!」

ニコニコ笑いながら翔太にフライドチキンを差し出す。

楽しいことと美味しいものが大好きな伊織にとってはたまらない空間だろう。

「それにしても、大変なことになっちゃったね。翔太君の記憶を取り戻すために大会に出たはずなのに…」

「いつの間にかランサーズとして侵略者と戦えだろ?まあ、俺はこれまで通り記憶を取り戻すために戦うだけだ」

「んー、翔太君はそれでもいいかもしれないけど…ってあれ??」

フライドチキンを渡した後、伊織が周囲を見渡す。

「どうした?」

「遊矢君と柚子ちゃんがいない気が…」

「放っておけ。そんなに遠くへは行ってないだろ?」

そう言って、骨を皿の上に置き、今度は寿司を手にした。

 

一方その頃、夜のLDSデュエルリングでは…。

「剣崎、サーキットは完成した。これでいつでもあなたの言っていたデュエルの特訓は可能だ」

侑斗と零児がデュエルリングの実況室で話をしている。

彼の言うとおり、外周部分を利用して簡易的なサーキットが用意されていた。

中央部分はこれまで通りアクションデュエルで使用可能だ。

「ありがとう、街中でやるには危険があるからね」

「そのデュエルがシンクロ次元で実際に行われているという情報は一体どこで…?」

「君が回収したユート君のデュエルディスクを調べた結果だよ。そして、零児君が見せてくれたデータを調べた結果、その次元ではこのカードを使ってデュエルをしているみたい」

そう言いながら、侑斗は彼に2枚のカードを渡す。

「《スピード・ワールド3》と《Sp-エンジェル・バトン》…?」

「うん。ライディングデュエルではバイク型デュエルディスクと言えるDホイールと従来の魔法カードの代わりに、Sp(スピードスペル)というスピードカウンターを利用した魔法カードを使用するんだ。だから…」

「分かった。3日待ってほしい。実践に耐えうるSpを用意する」

「RUMとPCMのSpも忘れないでね。それがないと黒咲君達が満足にデュエルができないから」

「言われなくとも、そうするつもりだ」

カードを懐に入れた零児が実況室から出ていく。

サーキットではヴァプラ隊が2台のDホイールを走らせている。

1台はホンダ・CBR1000RRが基礎となっていて、青を基調とした装甲で、車体前面にはRRのマークがついている。

もう1台はホンダ・XR230が基礎となってて、赤を基調とした装甲で、車体前面には左半分が笑顔で右半分が泣き顔のピエロの仮面のマークがついている。

また、2台ともウィンドスクリーンが装備されている。

デュエルディスクの通信機能を起動させた侑斗はテストパイロットに連絡を入れる。

「試作Dホイールの調子はどうです?」

「おう、マシンレッドクラウンは好調そのもの!オートパイロットシステムにも異常はねえぜ、ボス!」

「マシンブルーファルコンも良好です。あとは実際にライディングデュエルを行ったうえでの判断が必要ですね」

「分かりました。もう1周走り終えたらデータを送り、上がってください」

通信を終えた侑斗はそのまま実況室を後にする。

そして、その足はスタジアム付近にあるレオコーポレーション社員寮に向かっていた。

自分の顔写真と名前がある身分証明カードを扉の前でかざすと、自動的にそれが開き、彼はLEDが放つ白い光に包まれた廊下を歩く。

エレベーターに乗り、わずかに揺られながら3階へ向かう。

そして、エレベーターを降りて西に20m歩き、北向きの扉を開けると…。

「おかえり、ユウ!!」

「ただいま、ウィンダ」

エプロン姿のウィンダが笑顔で抱きついてきた。

成長しながらも相変わらず甘えん坊なウィンダを見つめる。

 

ウィンダのぬくもりを堪能した後、青い作務衣に着替えた侑斗が机へ向かう。

机の上には彼女が作ったカレーライスとサラダ、フルーツヨーグルトと手作りオレンジジュースがある。

2人のいる部屋は居間が和室、寝室は洋風になっている。

ウィンダはエプロンを脱ぎ、薄緑のTシャツと青いホットパンツ姿になって彼に向き合う形で座る。

「「いただきます!」」

一斉に挨拶をした後、カレーを最初に食べ始める。

「おいしい…」

「でしょー?今日はおいしい国産の野菜とお肉を安く買えたんだよ!」

「はは、いつもありがとうね、ウィンダ」

お互いに笑顔になる2人。

食べていると、ウィンダは少し窓の景色を見る。

「蓮君達…元気かなぁ」

「きっと、元気にやってるよ。…この次元に来てどれくらいかな?」

「半年かな…?その前まではエクシーズ次元へは何度も行き来していたし」

「びっくりしたよね。まさかハートランドシティがあの次元にもあるなんて…」

2人はこの次元に来てからのことを思い出す。

ある目的のため、2人はエクシーズ次元で得た情報から零児に接触、彼と数時間にわたる会話ののち、こうして落ち着いている。

現在の2人はレオコーポレーションの協力者として、課長クラスの待遇を受けている。

他の次元で得た情報とナンバーズを巡る戦えで得た実戦経験が買われているからだ。

とはいうものの、シンクロ次元と融合次元へは行くことができず、シンクロ次元のライディングデュエルに関しては間接的に情報入手したに過ぎないが。

「あ、そうそう。この前黒咲君が来て、家事の手伝いをしてくれたんだよ!本当に助かったー」

「黒咲君が!?意外だな…」

無表情で常に融合次元との戦いを真っ先に考える黒咲しか思い浮かばない侑斗は驚きを隠せない。

スタンダード次元に来たことで、心に少しだけゆとりができたということだろうか。

「彼はずっと戦い続けてきたんだ。だから、誰かが支えてあげないと。だって、彼には少しもろいところがあるからね」

「ふふ…ご飯粒をほっぺたにつけてちゃかっこいいセリフも台無しだよ?」

口を手で隠して笑うウィンダに顔を赤くすると、侑斗は右頬を指で撫でながらご飯粒を探す。

「逆だよ逆、もうユウったら」

腹を抱えて笑いながら、ウィンダは左ほおにあるご飯粒を取り、それを侑斗の口に中に入れた。

 

「遊矢…?」

「あ…柚子…」

丁度その頃、遊勝塾の前の河原ではパーティーを抜け出した遊矢の元へ柚子が近づいてきた。

彼の手には《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》と《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》が握られている。

「…柚子、ごめんな?」

「え?なんで謝るの?」

「だって…融合次元のデュエリストに襲われた時、助けに行けなかっただろ?」

丁度その時、遊矢は《覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン》のせいで暴走した際の影響で眠っていた。

それでは助けに行けるはずがない。

しかし、遊矢にとってはそれは言い訳だとしか思えなかった。

柚子が助けを求めているのに答えられなかったという現実が遊矢をおしつぶしていく。

「柚子、俺…ランサーズに入るよ」

カードをしまった遊矢は柚子に目を向ける。

少し泣いていたのか、目の周りが赤くなっている。

「素良とデュエルをして、そしてオッドアイズの声を聞いて、分かったんだ。強いだけでも、ただ笑顔を与えたいという思いだけで戦うのも駄目なんだ」

「遊矢…」

「ランサーズに入って、スタンダード次元を…柚子を守るために、そして素良を連れ戻すために戦う。本当のエンタメデュエルで」

ペンデュラムを握りしめながら、自らの決意を口にする。

そんな遊矢を見ながら、柚子も決意を固める。

「ありがとう…あたしを守ると言ってくれて」

「柚子…」

「けど、あたしも遊矢やお父さんたちを守れるくらい強くなりたい。遊矢がランサーズに入るって言うのなら、あたしも一緒に戦う。女の子は守られるだけの存在じゃないのよ?遊矢」

驚く遊矢の両肩に手を置きつつ、柚子は優しく諭す。

そんな彼女を見て、遊矢の柚子との記憶が頭をよぎる。

遊勝が行方不明となり、周囲からさげすまれる中、柚子は何度も自分を守ってくれた。

心が傷つき、放っておいてほしくて家に閉じこもっていた時、彼女はハリセンを持って部屋に強引に入り込んでまで立ち直らせようとしてくれた。

守られるだけの存在じゃないということは分かりきっていたはずなのに、遊矢はバトルロワイヤルの時、いや、もしかしたらペンデュラム召喚を手にした時、そのことを忘れてしまっていたのかもしれない。

そんな彼女に言える言葉は1つだけだ。

「分かった。…俺と一緒に戦ってくれ、柚子」

 

次の日の朝…。

レオコーポレーションの社長室に遊矢と柚子が入ってくる。

「来てくれると思っていたよ、榊遊矢」

椅子に座っていた零児は立ち上がると、彼の目の前まで歩いてくる。

「ランサーズに入ると…そういう認識で構わないな?」

「ああ…そのかわり、あの約束は果たしてくれるんだよな?」

「無論だ。そのための証はつけておいたはずだが」

「ああ…それから、柚子もランサーズに入れてほしい」

「追加条件…ということか?」

メガネをつけなおし、遊矢と柚子をじっと見る。

「ああ…。守るのなら、そばにいたほうが対応できるだろ?」

怖気づくことなく、零児をにらむように見る。

そんな彼を面白く思ったのか、零児はフッと笑う。

「いいだろう。ただし、テストを受けてからだ。すぐにヴァプラ隊の1人とデュエルをしてもらう」

そう言ってから、零児は机に備え付けられた通信機を起動する。

表示された小さなソリッドビジョンには少し緑がかった黒い挑発で丸い鼻メガネをつけているスーツ姿の男性が映っていた。




シンクロ次元で《スピード・ワールド・ネオ》が登場していますが、この小説ではとある事情で《スピード・ワールド3》を採用しました。
なので、Spが登場します。
念のため、効果のおさらいを…。(といっても、少し改造されています)

スピード・ワールド3
フィールド魔法カード
(1):お互いに「Sp」魔法カードまたはPカード以外の魔法カードを発動できない。
(2):最初のターンを除いたお互いのスタンバイフェイズ時、お互いのプレイヤーはこのカードに自分用のスピードカウンターを1つずつ置く(最大12個まで)。
(3):1度に受けたダメージ800ポイントの倍数ごとに自分のスピードカウンターを1つ減らす。
(4):自分のスピードカウンターを任意の個数取り除くことで、以下の効果を適用する。
●3個:自分の手札をすべて相手に見せる。手札の「Sp」魔法カードの数×400ポイントのダメージを相手ライフに与える。
●6個:自分のデッキからカードを1枚ドローする。
●8個:手札の「Sp」魔法カードを相手に見せ、フィールド上に存在するカード1枚を破壊する。
(5):このカードの効果は無効にされず、フィールドから離れない


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第38話 連鎖する裏切り

「…」

デュエルフィールドの選手控室にガーダーが入ってくる。

そこには零児の通信装置に表示された男性が静かに小説、『モンテ・クリスト伯』を読んでいる。

「ガーダーか、ノックしてから入ってきてほしいな」

「なーに一人さびしく読んでんだ?」

「集中するためさ。こうしている方が落ち着くんだ。私も…私のデッキも」

本を閉じ、ベンチの上に置くとメガネを拭く。

「まあ、それならいいけどな。そろそろ出番だぜ?スティーラー」

「分かっている。さて、彼女がどれだけの実力があるか確かめなければ」

デュエルディスクとデッキを手に、スティーラーが控室を出ていく。

ガーダーは少し気になったのか、置かれている本をめくる。

「げぇ…こんなんが読めるのかよ??」

小説はすべてフランス語で書かれていて、日本語と英語のバイリンガルであるガーダーには読めない代物だ。

「そういやあ、ヴァプラ隊、というよりもLDS講師になる前はプロだったっけな…?」

スティーラーは貧しい家に生まれ、6年前まで世界中のプロリーグや大会で活躍するプロデュエリストになった男だ。

そのため海外のホテルで生活することが多いためか、日本語や英語だけでなく、フランス語、ロシア語、エジプト語、アラビア語などを読み書きできるマルチリンガルに自然になっていた。

しかし、急病によって引退を余儀なくされ生きる気力を失った。

病気は完治したものの、目標を失い、自堕落な生活を送っているところを零児にスカウトされる形でLDS講師となり、更に実力と経験を買われてヴァプラ隊の創設メンバーの1人に選ばれた。

(柚子の嬢ちゃん…こいつはあなどれねえぜ?)

 

「ふぅー…」

デュエルフィールドでは柚子が緊張した面持ちで待機していて、客席には遊矢と権現坂が座っている。

「柚子、緊張しているな」

「柚子ーー!大丈夫だ!お前なら必ずランサーズになれる!!」

遊矢が大声で声援を送っていると、デュエルフィールドにスティーラーが入ってくる。

「こんにちは、柊柚子さん。私はスティーラー、今回君のテストをするヴァプラ隊のメンバーだよ」

「は、はい…!よろしくお願いします!」

「ははは…緊張する必要はないよ。その状態だと、君は全力を出せないからね」

カチカチになったお辞儀をする柚子に笑みを浮かべながら優しく言うと、デュエルディスクを展開する。

それを見て、柚子もデュエルディスクを展開する。

「今回はスタンディング形式だ。デュエリストである以上私は手加減をすることができないから、そのつもりで」

「…はい!」

「さあいくよ…スカーナイト…」

誰にも聞こえないくらい小さな声でスティーラーは自分のデッキにつぶやく。

「「デュエル!!」」

 

スティーラー

手札5

ライフ4000

 

柚子

手札5

ライフ4000

 

「私の先攻。私はモンスターを裏守備表示で召喚。そして、カードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

スティーラー

手札5→2

ライフ4000

場 裏守備モンスター1

  伏せカード2

 

柚子

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「(裏守備モンスターに2枚の伏せカード、無難な立ち上がり…)あたしのターン、ドロー!」

 

柚子

手札5→6

 

「あたしは手札から魔法カード《独奏の第1楽章》を発動!あたしのフィールド上にモンスターが存在しないとき、手札・デッキからレベル4以下の幻奏モンスター1体を特殊召喚できる。あたしはデッキから《幻奏の音女セレナ》を特殊召喚!」

 

幻奏の音女セレナ レベル4 攻撃400

 

「このカードの特殊召喚に成功したターン、あたしは通常の召喚に加えて手札から幻奏モンスター1体を召喚できるわ。あたしは手札から《幻奏の音女エクローグ》を召喚」

下半身部分が緑で、上半身部分が黄色の肩と腕が露出しているタイプのドレスをつけた金髪で緑色の肌の天使が現れる。

彼女の右片翼も体やドレスと同じ色合いをしていて、胸には稲をモチーフとした絵が描かれたバッジをつけている。

 

幻奏の音女エクローグ レベル4 攻撃1600

 

「更に《セレナ》は天使族モンスターをアドバンス召喚するとき、1体で2体分のリリースにできる。あたしは《セレナ》をリリース!天上に響く妙なる調べよ。眠れる天才を呼び覚ませ。いでよ!レベル8の《幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト》!」

《幻奏の音女セレナ》が美しい声で歌を歌いながら天へ昇って行く。

そして、ブルボン朝時代のフランスの赤いドレスを身に着け、青い肌で背中に青いピアノをモチーフとした天使の羽根をつけた天使が降りてくる。

その手にはタクトが握られていて、真っ白な髪の上には赤と金を基調とした冠が輝いている。

 

幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト レベル8 攻撃2600

 

「1ターン目からレベル8のモンスターをアドバンス召喚するとは…」

「まだよ!このカードはあたしのフィールド上に幻奏モンスターが存在するとき、手札から特殊召喚できる。《幻奏の音女ソナタ》を特殊召喚!」

 

幻奏の音女ソナタ レベル3 攻撃1200

 

「このカードは特殊召喚に成功した状態であたしのフィールドに存在するとき、あたしのフィールド上に存在する天使族モンスターの攻撃力・守備力を500アップさせるわ」

《幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト》が動かすタクトに従い、2体の音女がコンサートを始める。

 

幻奏の音女エクローグ レベル4 攻撃1600→2100

幻奏の音女ソナタ レベル3 攻撃1200→1700

幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト レベル8 攻撃2600→3100

 

「よし!!これで《エクローグ》で裏守備モンスターを攻撃して、残り2体のモンスターでダイレクトアタックすれば、1ターンキルで柚子の勝ちだ!!」

「ううむ…」

幼馴染の勝利を確信する遊矢だが、権現坂はスティーラーの表情が気になって仕方がない様子だ。

彼は1ターンキルされるのではないかという状況であるにもかかわらず、一筋の汗も流さず、呼吸も乱れず、笑みを浮かべたままだ。

「バトルよ!あたしは《エクローグ》で裏守備モンスターを攻撃!パストラル・ヴォイス!!」

《幻奏の音女アリア》の口から放たれる炊き立ての新米のにおいが含まれた音波が裏守備モンスターをバラバラにする。

それがスティーラーの狙いであることも知らずに。

 

裏守備モンスター

キラー・トマト レベル4 守備1100

 

「《キラー・トマト》の効果発動。このカードが戦闘で破壊され墓地へ送られた時、デッキから攻撃力1500以下の闇属性モンスター1体を攻撃表示で特殊召喚できる。私が特殊召喚するのは…私のエースカード、《スカブ・スカーナイト》!!」

《スカブ・スカーナイト》のカードがデッキから自動排出され、スティーラーのデュエルディスクに置かれる。

すると彼のフィールドが揺れ始め、地中から青と紫を基調としたボロボロな装甲で覆われた人形が出てくる。

 

スカブ・スカーナイト レベル4 攻撃0

 

「攻撃力0のモンスターが…」

「エース??」

《スカブ・スカーナイト》を見て、首をかしげる遊矢と権現坂。

そんな彼らを見たスティーラーはフッと笑う。

「このカードが存在するとき、君のモンスターたちは可能な限りこのカードに攻撃しなければならない。スカー・グラビティ!!」

《スカブ・スカーナイト》が激しく咆哮すると、《幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト》と《幻奏の音女ソナタ》が何かに引っ張られるかのようにそのモンスターの近くまでいってしまう。

「けど、攻撃力0なら戦闘ダメージで私の…」

「甘いよ。私は永続罠《スピリットバリア》を発動。私のフィールド上にモンスターが存在する限り、私が受ける戦闘ダメージは0となる」

2体の幻奏モンスターがやむなく拳で攻撃しようとするが、目の前に突然現れた《スカブ・スカーナイト》と同じ特徴の壁に阻まれる。

「そして、バトルフェイズ終了時に《スカブ・スカーナイト》と戦闘を行ったモンスターの中から1体のコントロールを奪う」

「ええ!!?」

2体の攻撃を阻んだ壁が《幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト》のドレスに付着する。

すると、彼女の眼の色が赤く染まり、スティーラーのフィールドへ移っていく。

 

幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト レベル8 攻撃3100→2600

 

スカブ・スカーナイト(アニメオリカ・TF仕様)

レベル4 攻撃0 守備0 効果 闇属性 戦士族

「スカブ・スカーナイト」は自分フィールド上に1枚しか表側表示で存在できない。

(1):このカードは戦闘では破壊されない。

(2):このカードが表側守備表示で存在する場合、このカードを破壊する。

(3):攻撃可能な相手モンスターはこのカードに攻撃しなければならない。

(4):バトルフェイズ終了時にこのカードと戦闘を行った相手モンスター1体のコントロールを得る事ができる。

 

「君の《プロディジー・モーツァルト》の特殊召喚効果はとても厄介だからね。封じさせてもらうよ」

「そんな…」

コントロールを奪われた《幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト》をじっと見つめる。

仮に《幻奏の音女アリア》を《独奏の第1楽章》か《幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト》の効果で特殊召喚できれば、《スカブ・スカーナイト》の効果を受けることはなかっただろう。

しかし、手札にない以上はどうしようもない。

《独奏の第1楽章》の効果で特殊召喚するという選択肢もあるが、それでは1ターンキルできるくらいモンスターを展開できない。

エースカードを奪われるという最悪な事態を招いてしまった。

「柊柚子さん、《スカブ・スカーナイト》は君の戦う覚悟を試す大きな壁だ。そして、このカードを…私の魂のカードを倒さない限り、君に勝利もランサーズに加わる道もない」

「うう…」

《スカブ・スカーナイト》に睨みつけられ、2体の幻奏モンスターが身震いする。

「あたしはカードを2枚伏せて、ターンエンド!」

 

スティーラー

手札2

ライフ4000

場 スカブ・スカーナイト レベル4 攻撃0

  幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト レベル8 攻撃2600

  スピリットバリア(永続罠)

  伏せカード1

 

柚子

手札0

ライフ4000

場 幻奏の音女エクローグ レベル4 攻撃2100

  幻奏の音女ソナタ レベル3 攻撃1700

  伏せカード2

 

「全く、相変わらずえげつないプレイだぜ、スティーラーの奴!」

実況室で観戦しているガーダーは初めて彼とデュエルをしたときのことを思い出す。

その時も《スカブ・スカーナイト》によって次々とモンスターを奪われ、窮地に陥ってしまった。

最終的には勝利したものの、今までにない恐ろしいデッキであることを今でも覚えている。

 

「私のターン、ドロー」

 

スティーラー

手札2→3

 

「私はモンスターを裏守備表示でセット、バトルだ。《スカブ・スカーナイト》で《幻奏の音女ソナタ》を攻撃」

《スカブ・スカーナイト》の装甲から剥離した破片が《幻奏の音女ソナタ》に襲い掛かる。

「(せめて戦闘ダメージだけでも!!)あたしは罠カード《砂塵の大竜巻》を発動!相手フィールド上の魔法・罠カード1枚を破壊するわ!」

「よし!!それで《スピリットバリア》を破壊すれば、柚子の勝機が見えてくる!!」

砂漠の砂を巻き込んだ竜巻がスティーラーを包む透明な障壁を破壊しようと襲い掛かる。

「おみとおしだよ。私は永続罠《宮廷のしきたり》を発動。これでお互いのフィールド上に存在する《宮廷のしきたり》以外の永続罠は破壊されなくなる」

「ええ!?」

《宮廷のしきたり》がスティーラーの前に出現し、《砂塵の大竜巻》が消滅する。

そして、剥離した装甲が体中についてしまった《幻奏の音女ソナタ》が苦しみ始める。

「さあ、まだ攻撃があるよ。《幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト》よ、《エクローグ》を攻撃しろ!」

《幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト》の赤い瞳の輝きが強まると、《幻奏の音女エクローグ》に向けて真っ黒な音符が何個も含まれた波動を発射する。

「まずい!!この攻撃が通ったら、柚子のフィールドからモンスターがいなくなる!!」

「あたしは罠カード《ガード・ブロック》を発動!あたしが受ける戦闘ダメージを0にし、デッキからカードを1枚ドローするわ」

波動を受けた《幻奏の音女エクローグ》が消滅するが、柚子の前でその波動が消滅する。

「《エクローグ》が相手モンスターの攻撃によって破壊され墓地へ送られた時、墓地から幻奏モンスター1体を手札に加え、更にデッキから《融合》を1枚手札に加えるわ」

デッキから《融合》が、墓地から《幻奏の音女セレナ》が自動排出されて柚子の手札に加わる。

 

柚子

手札0→3(うち2枚《幻奏の音女セレナ》《融合》)

 

「手札は増えたが、これでまた1体君のモンスターは奪われる。私はバトルフェイズを終了する」

終了宣言と同時に、苦しんでいた《幻奏の音女ソナタ》の目の色が赤く染まり、スティーラーのフィールドへ向かう。

 

幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト レベル8 攻撃2600→3100

 

「くそ…!《ソナタ》が奪われたことで、スティーラー殿のフィールドにいる《プロディジー・モーツァルト》が強化されてしまった!」

「柚子の手札には《融合》があるけど、残り1枚の手札かドローしたカードが融合素材になれるモンスターでなきゃ意味がない!!」

2体のモンスターを従えたことを喜んでいるのか、《スカブ・スカーナイト》が空に向けて咆哮する。

それと共に、奪った2体のモンスターが赤いオーラを放つ。

「私はカードを2枚伏せ、手札から魔法カード《スカブ・ブラスト》を発動。私のフィールド上に《スカブ・スカーナイト》が存在するとき、私のフィールド上に存在するモンスター1体につき200のダメージを与える」

《スカブ・スカーナイト》の口が開き、赤い光弾が柚子を襲う。

「きゃあああ!!」

 

柚子

ライフ4000→3400

 

「私はこれでターンエンド」

 

スティーラー

手札3→0

ライフ4000

場 スカブ・スカーナイト レベル4 攻撃0

  幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト レベル8 攻撃3100

  幻奏の音女ソナタ レベル3 攻撃1700

  スピリットバリア(永続罠)

  宮廷のしきたり(永続罠)

  伏せカード2

 

柚子

手札3(うち2枚《幻奏の音女セレナ》《融合》)

ライフ3400

場 なし

 

再び柚子のフィールドからカードが消えた。

そして、スティーラーのフィールドにある2枚の伏せカードが柚子の平常心を乱す。

(もしこの2枚のカードが《宮廷のしきたり》みたいなカードか、永続罠カードだったら…)

そんな彼女の心境を見透かしたのか、スティーラーが発言する。

「どうしたのかな?次々と自分のモンスターが奪われて、どうようしているのかな?それともこの伏せカードが気になるのかい?」

「あたしのターン、ドロー!!」

スティーラーの言葉を遮るように、柚子はカードを引く。

 

柚子

手札3→4

 

「あたしは《クリスタル・ローズ》を召喚!」

クリスタルでできていて、茎部分が透明になっている薔薇の造花が現れる。

 

クリスタル・ローズ レベル2 攻撃500

 

「このカードは1ターンに1度、手札・デッキからジェムナイトモンスターが幻奏モンスター1体を墓地へ送ることで、そのモンスターに変身できる!」

柚子のデッキから《幻奏の歌姫ソプラノ》が自動排出され、彼女の墓地へ送られる。

すると、《クリスタル・ローズ》の姿が墓地へ送られたモンスターの姿に、クリスタルの状態を維持しながら変化していく。

オレンジ色で描かれた左右対称のクエスチョンマークの上部分2つが前足のひざ部分にある白いロングスカートと同じ色のラインがいくつもある黒い胸元と両腕、首を露出させた鎧、同じ色のアイマスクに肩パット、アームガード。

緑色の肌に赤い癖の多い長髪とその再現度はかなりのものだ。

「そしてあたしは手札から魔法カード《融合》を発動!あたしが融合素材にするのは《クリスタル・ローズ》と《幻奏の音女セレナ》!!騎士より託されし水晶の薔薇よ!天使の囀りよ!タクトの導きにより力重ねよ!」

上空に発生した《融合》の渦に2体のモンスターが溶けこんでいく。

そして、柚子は目を閉じて左掌を自身の右胸へ置き、右手をタクトを握っているような状態にして少しひじを曲げた状態で前に出す。

「融合召喚!!」

召喚宣言と同時に目を開き、左手の状態を維持しながら右腕を頂角から三角形を一筆書きをするように動かす。

そして、一筆書きを終えると同時に少しだけ右腕を上に動かしてから手をひろげ、体と腕が垂直になるように前へ出す。

それと同時に渦が激しい光を放つ。

「今こそ舞台に安らぎの序曲を!《幻奏の音姫プレピュード・デビュッシー》!」

渦の中から夕陽をイメージさせるオレンジ色の髪で顔全体を麦の色の仮面で隠した女性が現れる。

黒い渦のような模様が印象的な純白でハイネックになっている長いドレスと白い手袋で、《幻奏の歌姫ソプラノ》とは異なる少し清楚な雰囲気を見せている。

靴は茶色く丈夫な革の長靴になっていて、全身をどこから見ても肌の色がわからない。

 

幻奏の音姫プレピュード・デビュッシー レベル7 攻撃2400

 

「《プレピュード・デビュッシー》の効果発動!このカードの特殊召喚に成功した時、相手に1000ダメージを与えることができる!微睡のフルート!」

《幻奏の音姫プレピュード・デビュッシー》の仮面の口元部分が開き、その口にフルートを咥える。

それを吹くと、子守唄のような安らかな音がフィールドを包み込んでいく。

 

スティーラー

ライフ4000→3000

 

「更にこのカードが《ソプラノ》を素材に融合召喚されている場合、1ターンに1度、相手フィールド上の魔法・罠カードを2枚破壊できる!あたしが選択するのは左側の伏せカードと《宮廷のしきたり》!!」

上空から降りてきたヴァイオリンを手に取った《幻奏の音姫プレピュード・デビュッシー》は静かに音を奏でる。

その音は最初は静かだったが、突然鎌鼬を引き起こす。

風の刃は2枚の魔法・罠カードを真っ二つにする。

しかし、伏せカードの方から鎌鼬が発生して《幻奏の音姫プレピュード・デビュッシー》をヴァイオリン毎真っ二つに切り裂く。

その鎌鼬が通ったところの地面には砂漠の砂が落ちている。

「なんで《プレビュート・デビュッシー》が破壊されたの!?」

「君が破壊した伏せカードは《荒野の大竜巻》。セットされているこのカードが破壊され墓地へ送られた時、フィールド上に表側表示で存在するカード1枚を破壊するのさ。私の伏せカードに警戒しすぎたみたいだ」

「うう…」

虎の子の融合モンスターを容易く破壊されてしまったことのショックは大きく、柚子が動きを止める。

 

幻奏の音姫プレピュード・デビュッシー

レベル7 攻撃2400 守備2000 融合 光属性 天使族

「幻奏」モンスター×2

「幻奏の音姫プレピュード・デビュッシー」の(1)(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードの特殊召喚に成功した時に発動できる。相手に1000ダメージを与える。

(2):このカードが「幻奏の歌姫ソプラノ」を融合素材として融合召喚に成功した場合、以下の効果を得る。

●自分のターンのメインフェイズ時に発動できる。相手フィールド上に存在する魔法・罠カードを2枚破壊する。

 

「まずい…これで次のターンに総攻撃を受ける!!」

「柚子…」

ここから状況を立て直さなければならない柚子だが、手札は1枚のみ。

その1枚が攻撃を防ぐカードでなければ、彼女は敗北する。

「あたしは…カードを1枚伏せて、ターンエンド」

 

スティーラー

手札0

ライフ3000

場 スカブ・スカーナイト レベル4 攻撃0

  幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト レベル8 攻撃3100

  幻奏の音女ソナタ レベル3 攻撃1700

  スピリットバリア(永続罠)

  伏せカード1

 

柚子

手札4→0

ライフ3400

場 伏せカード1

 

「私のターン、私は墓地の《スカブ・ブラスト》の効果を発動。私のターンのドローフェイズ時、通常のドローを行う代わりにこのカードを墓地から手札に戻すことができる」

スティーラーの墓地から《スカブ・ブラスト》が排出される。

これは毎ターンじわじわと柚子のライフを削ることができるというメッセージでもある。

 

スカブ・ブラスト(アニメオリカ・調整)

通常魔法カード

(1):自分フィールド上に「スカブ・スカーナイト」が存在する場合にのみ発動できる。自分フィールド上に表側表示で存在うするモンスターの数×200ダメージを相手ライフに与える。

(2):このカードが墓地に存在する場合、自分のターンのドローフェイズ時に発動できる。通常のドローを行う代わりにこのカードを手札に加える。

 

「バトルだ。私は《プロディジー・モーツァルト》でダイレクトアタック!」

《幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト》のタクトから放たれる音符つきの波動が柚子を襲う。

「きゃあああ!!」

 

柚子

ライフ3400→300

 

「柚子!!」

直接攻撃を受け、悲鳴を上げる柚子を見て遊矢が叫ぶ。

その間にも《幻奏の音女ソナタ》は既に攻撃準備を終えている。

「さあ、この攻撃を防がないと君はランサーズに入ることができなくなる。《ソナタ》でダイレクトアタック!」

《幻奏の音女ソナタ》の口からとどめの音波が放たれる。

「あたしは罠カード《輪舞の第2楽章》を発動!あたしが直接攻撃でダメージを受けたとき、デッキから受けたダメージ以下の攻撃力を持つ幻奏モンスター1体を特殊召喚できる!あたしが特殊召喚するのは《幻奏の音女アリア》!!」

《幻奏の音女アリア》が現れると同時に歌い始める。

楽譜を模した障壁が歌と共に柚子を包み込んでいく。

 

幻奏の音女アリア レベル4 攻撃1600

 

「そして、ターン終了時まであたしはこの効果で特殊召喚したモンスターの攻撃力以下の戦闘ダメージと効果ダメージを受けないわ。そして、特殊召喚された《アリア》が存在する限り、あたしのモンスターはカード効果の対象にならず、戦闘では破壊されないわ」

 

輪舞の第2楽章

通常罠カード

(1):相手モンスターの直接攻撃によって自分が戦闘ダメージを受けたときに発動できる。受けたダメージ以下の攻撃力を持つ「幻奏」モンスター1体をデッキから表側攻撃表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚に成功したターン、自分はそのモンスターの攻撃力以下の戦闘・効果ダメージを受けない。

 

「よし!!これで柚子のモンスターが《スカブ・スカーナイト》の効果で奪われることは…」

このターンの敗北が回避されたことで遊矢は安堵する。

しかし、現実はそれほど甘くはない。

「私は罠カード《奈落の落とし穴》を発動。攻撃力1500以上のモンスターを相手が召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、そのモンスターを破壊し、ゲームから除外する」

「ええ!!?」

急に柚子のフィールドに現れた紫色の空間で構築された落とし穴。

《幻奏の音女アリア》はその中へ落ちていくと、バシュンという音と共に穴が消滅した。

「これでまた君のフィールドからモンスターがいなくなった。そして…《ソナタ》の音波はまだ消えていないよ?」

スティーラーの言うとおり、柚子が動揺している間に《幻奏の音女ソナタ》の音波が彼女を包む障壁にひびを入れていく。

《輪舞の第2楽章》の効果で防げるダメージは1600以下のみ。

攻撃力1700のこの攻撃によるダメージを防ぐことはできない。

「柚子----!!」

「あたしは墓地に存在する《幻奏の音女エクローグ》の効果を発動!あたしの墓地に幻奏融合モンスターが存在し、あたしの手札が0枚で相手がダイレクトアタックするとき、このカードを墓地から特殊召喚することでその攻撃を無効にするわ!」

《幻奏の音女エクローグ》が上空に現れた紫色の魔法陣から出てきて、柚子を襲う音波を自身の音波で相殺する。

 

幻奏の音女エクローグ

レベル4 攻撃1600 守備1200 効果 光属性 天使族

「幻奏の音女エクローグ」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できず、(2)の効果はデュエル中1度しか発動できない。

(1):このカードが相手モンスターの攻撃によって破壊され墓地へ送られた時に発動する。自分の墓地に存在する「幻奏」モンスター1体とデッキに存在する「融合」魔法カード1枚を手札に加える。

(2):このカードと「幻奏」融合モンスターが墓地に存在し、自分の手札が0枚の場合、相手の攻撃宣言時に発動できる。このカードを墓地から特殊召喚し、その攻撃を無効にする。

 

「では…《スカブ・スカーナイト》で《エクローグ》を攻撃」

最後まで待機していた《スカブ・スカーナイト》が咆哮と共に装甲を剥離させ、《幻奏の音女エクローグ》に向けて飛ばす。

装甲が体中に付着した彼女が苦しみながらスティーラーのフィールドへ向かっていく。

「くそ!!また柚子のモンスターが奪われた!!」

「私はこれで…ターンエンド」

 

スティーラー

手札1(《スカブ・ブラスト)

ライフ3000

場 スカブ・スカーナイト レベル4 攻撃0

  幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト レベル8 攻撃3100

  幻奏の音女ソナタ レベル3 攻撃1700

  幻奏の音女エクローグ レベル4 攻撃1600→2100

  スピリットバリア(永続罠)

 

柚子

手札0

ライフ300

場 なし

 

これで柚子は3体モンスターを奪われてしまった。

おまけにライフ300でフィールドにカードはなく、手札も0。

まさに絶体絶命だ。

「分かっていると思うけれど、私の手札は《スカブ・ブラスト》で魔法・罠ゾーンには《スピリットバリア》以外のカードは存在しない。《ブレイクスルー・スキル》や《ネクロ・ガードナー》のような墓地で真価を発揮するカードもない。反撃するなら今しかないよ」

とはいうものの、《スカブ・スカーナイト》に攻撃してもダメージは0で、更にはコントロールまで奪われてしまう。

(どうするんだ…柚子?)

遊矢はじっと柚子を見る。

(確かにこのターンで勝たないと、《モーツァルト》か《スカブ・ブラスト》で負けてしまう。すべてはこのドローにかかってる!)

柚子がデッキトップに指をかけ、目を閉じる。

「(あたし、遊矢と一緒に戦いたい。だから…応えて、あたしのデッキ!!)ドローーー!」

目を開くと同時に思いっきりカードをドローする。

 

柚子

手札0→1

 

「このカード…!」

ドローしたカードを見て、柚子は目を大きく開く。

 

これは昨晩、柚子がランサーズに入ると遊矢に言った後のことだ。

「柚子。このカードを」

「え…?」

遊矢から差し出されたカードを手にし、びっくりした表情を見せる。

「遊矢これって!?」

「このカードなら、きっと柚子を助けてくれる。一緒に戦う証だ!」

 

(遊矢…)

不意に彼女の目線が遊矢に向く。

そして、互いにうなずくと柚子の目線が再びスティーラーに向く。

「あたしは手札から魔法カード《マジシャンズ・カード》を発動!あたしのフィールドにカードがなく、手札がこのカードだけの時、相手フィールド上に存在するカードの数だけデッキからカードをドローして、手札のカードを相手に見せるわ!」

スティーラーのフィールドに存在するカードは合計5枚。

このカード1枚によって、情報アドバンテージを与えてしまうものの柚子の手札が一気に補充される。

 

柚子

手札0→5

 

ドローしたカード

・光神化

・幻奏の音姫ローリイット・フランソワ

・融合

・アテナ

・純愛のタランテラ

 

「あたしは手札から速攻魔法《光神化》を発動!手札から天使族モンスター1体を攻撃力を半分にして特殊召喚する!あたしは《ローリイット・フランソワ》を特殊召喚!」

ピアノの音とともに胸元に薔薇を模した模様のある紫色の長いドレスで薄い紫の肌、そして左右に2つのロールがある青い髪の女性が現れる。

背中には《幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト》と同じ羽根があり、自分の目の前に透明なピアノを召喚してそれを奏でる。

 

幻奏の音姫ローリイット・フランソワ レベル7 攻撃2300→1150

 

「《フランソワ》の効果発動!1ターンに1度、墓地から天使族・光属性モンスター1体を手札に加えることができる。あたしは墓地から《幻奏の歌姫ソプラノ》を手札に加える。そして、手札から魔法カード《融合》を発動!

あたしが融合素材にするのは《ソプラノ》と《フランソワ》!!」

上空に再び現れた《融合》の渦。

その中に2体のモンスターが取り込まれていく。

「天使の囀りよ!情熱を歌いしピアノの詩人よ!タクトの導きにより力重ねよ!融合召喚!今こそ舞台に勝利の歌を!《幻奏の華歌聖ブルーム・ディーヴァ》!」

《融合》の渦から出てくるハスの花。

その花に乗って水色でノースリーブの長いドレスを身に着けた、水色は混じった紫の髪で星形の飾りがついたピアスを両耳に着けた青い眼の妖精が現れる。

その大きさは少なくとも《幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト》の三分の一から半分程度ほどだ。

 

幻奏の華歌聖ブルーム・ディーヴァ レベル6 攻撃1000

 

「更にあたしは手札から魔法カード《純愛のタランテラ》を発動!あたしのフィールド上に幻奏モンスターが存在するとき、相手フィールド上に存在するモンスター1体の効果をターン終了時まで無効にするわ!」

「何!?」

《幻奏の華歌聖ブルーム・ディーヴァ》が花の上で踊り始める。

すると、《スカブ・スカーナイト》もそのモンスターにつられて踊り始め、能力を踊りによって奪われていく。

「更に《純愛のタランテラ》の効果を発動!発動時にあたしのフィールドに《ブルーム・ディーヴァ》が存在するとき、そのモンスターは攻撃力がターン終了時まで0になり、このターンのバトルフェイズ中2回攻撃ができるわ!」

「だが、《ブルーム・ディーヴァ》の攻撃力は1000…とはいうものの、効果があるのだろう?私を倒すための効果を…」

「《ブルーム・ディーヴァ》は破壊されず、このカードの戦闘で発生するあたしへのダメージを0にするわ。そして、相手モンスターと戦闘を行ったダメージ計算終了時にそのモンスターとの元々の攻撃力の差分のダメージを相手に与え、攻撃対象にしたモンスターを破壊するわ!」

「見事だよ、柊柚子さん」

「さあ、幻奏モンスターによるコンサートの始まりよ!!」

《幻奏の華歌聖ブルーム・ディーヴァ》がハスの花びらを周囲に舞わせながら、静かに歌い始める。

その歌が2体のコントロールを奪われたモンスターの心に安らぎを与え、彼らを束縛する装甲がフィールドに落ちる。

《幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト》と《幻奏の音女エクローグ》が柚子のフィールドに戻ると、《幻奏の華歌聖ブルーム・ディーヴァ》を中央にし、《幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト》を柚子から見て右、《幻奏の音女エクローグ》を左にして手を取り合って歌う。

3体の歌によって装甲から解放された《幻奏の音女ソナタ》も《幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト》の隣へ行って歌い始める。

4体のモンスターの歌によって《スカブ・スカーナイト》は戦意を失い、その場に座り込んだ。

「私の…負けだ」

 

 

幻奏の華歌聖ブルーム・ディーヴァ レベル6 攻撃1000→0

 

スティーラー

ライフ3000→400→0

 

マジシャンズ・カード(アニメオリカ・調整)

「マジシャンズ・カード」は1ターンに1度しか発動できず、(1)の効果を他のカード効果によって発動することができない。

(1):手札がこのカード1枚で、自分フィールドにカードが存在しない場合に発動できる。相手フィールドのカードの数だけ、自分はデッキからドローする。その後、手札を相手に見せる。このターン終了時、自分フィールドの全てのカードを除外する。

 

純愛のタランテラ

通常魔法カード

(1):自分フィールド上に「幻奏」モンスターが存在する場合にのみ発動できる。相手フィールド上に存在するモンスター1体の効果をターン終了時まで無効にする。

(2):このカードを発動した時、自分フィールド上に「幻奏の華歌聖ブルーム・ディーヴァ」1体が存在する場合、そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで0となり、このターンのバトルフェイズ中、そのモンスターは2回攻撃することができる。

 

「見事だ。ギリギリといったところだけど、これならあと少し訓練すれば融合次元とも戦うことができるだろう。テストは合格だ。おめでとう」

優しげな笑みを浮かべるスティーラーが静かに柚子の合格を祝う。

「やりおった!!」

「やったな、柚子!!」

身を乗り出した遊矢が柚子の勝利を祝う。

彼女は遊矢に顔を向けると、とびきりの笑顔でVサインをした。

 




今回は久しぶりに柚子のデュエルです。
《スカブ・スカーナイト》…本当はもう1枚のスカーナイトも出したかったですが、まあそれは次の機会ということで。


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第39話 スピードの世界 スピード・ワールド3

「おめでとう、これで君もランサーズだよ」

喜ぶ遊矢と柚子の元に侑斗とウィンダが近づいてくる。

「剣崎さん!ウィンダさん!」

「スティーラー、今回はありがとうございます」

「いいさ、これもヴァプラ隊の任務の一環」

柔和な笑みを浮かべて謙遜し、スティーラーは静かにデュエルフィールドから出て行った。

(この声は…やっぱり)

侑斗の声を聞いた遊矢は少し違和感を覚える。

その声が素良とのデュエルの際に自分を正気に戻してくれたあの声とあまりにもそっくりだからだ。

そんな彼の元へ侑斗が近づく。

「遊矢君、《シルバームーン・アーマー》はうまく使いこなせているみたいだね」

「え!?なんでそのカードのことを??」

「なんでって…それは僕が君にそのカードを提供したからだよ」

その言葉に遊矢と柚子は驚く。

実を言うと、翔太は侑斗が《PCM-シルバームーン・アーマー》を渡したということを言っていなかったのだ。

「遊矢君、君はペンデュラム召喚の先を見つけた。だけど、その力を完全にものにするには君の心がまだまだ幼い」

「俺の心が…?」

「そう、その心のままで力を解放させ続けたら自分や自分が守るべきものをも破壊してしまう災いとなってしまう」

災いの意味は今の遊矢には理解できている。

それは《覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン》を得たときの暴走だ。

その時の罪悪感は居間も自分の心にのしかかっている。

「だから、安全装置を取り付けたんだ。その月の鎧を。このカードが君の精神の成長を越えるほどの過剰な力の解放を抑制する」

「力の抑制…」

遊矢はデッキから《MLX-オッドアイズ・月下・ドラゴン》を出す。

その重装な鎧に包まれた自身の相棒の姿。

ペンデュラムモンスターではなく、純粋なエクシーズモンスターであるのも何か理由があるのだろうか。

そして、そもそもなぜ彼がこのようなカードを持っているのか。

そんな疑問が次々と浮かぶ中、ウィンダが遊矢に3枚のカードとデュエルディスクに外付け可能なカードリーダーを渡す。

「これは…??」

突然渡されたもので遊矢の浮かんでいた疑問が吹き飛んでしまった。

マシンレッドクラウンが描かれた通常モンスターカードと緑色のバッタを模したロボットが描かれた効果モンスターカード、そして水色のトンボを模したロボットが描かれた効果モンスターカードの3枚が今遊矢の手にある。

「君はユーゴっていうシンクロ次元のデュエリストのデュエルを見たことがあるよね?確か、素良君が消えたとき、公園で…」

「あ、ああ…」

あの白いDホイールに乗っていた(この小説を読んでいる人は翔太がTDCのビークルデュエルに関する説明があった日の前夜に見た夢の中にいたあのバナナのような形の黄色い前髪の少年と言ったらわかるだろうが)がシンクロ次元のデュエリスト、ユーゴだ。

その時、その場所では翔太の夢と同じような事態が発生していた。

そして、そのデュエルに敗北したユートは消滅し、魂は遊矢の中に宿った。

「シンクロ次元に関しては情報が少なすぎて、敵か味方かはっきりしない。唯一分かっているのは…」

「ライディングデュエルをしてるってこと!さあ、ついてきて!!」

ウィンダが先頭に立ち、遊矢、柚子、侑斗の順番で一列になって選手入場口まで移動する。

「ライディングデュエル…?」

聞いたことのないデュエルの名前に2人が疑問を持つ。

それに侑斗が答える。

「ライディングデュエルはDホイールというバイクに乗ってやるデュエルだよ。Dホイールに乗っているデュエリスト同士がサーキットやコースを走りながらデュエルをする。そのデュエルでは従来の魔法カードの代わりにSpという魔法カードとフィールド魔法《スピード・ワールド3》が生み出すスピードカウンターを利用してデュエルをするんだ」

「《スピード・ワールド3》…?ということは、3番目のええっと…《スピード・ワールド》ということですか?」

「そう、何度かカードを変えることでルールバランスの変更が行われた結果なんだ。もちろん、ペンデュラムモンスターはいつも通り発動できるよ」

柚子の質問に答えていると、彼らの後ろから黒咲が歩いてくる。

彼の手には遊矢が受け取った物とは異なるものの、3枚のカードが握られていて、デュエルディスクにもカードリーダーが装着されている。

更にいうと、耳部分に鏡写しのRを象った形のシンボルが双方についている、水色のシールドのある青いフリップアップ式ヘルメットをつけている。

「黒咲…」

「剣崎さん。本当に榊遊矢とこれからライディングデュエルをしろというのか??」

どうも納得がいかないと言いたげな目で侑斗を見る。

しかし、黒咲は侑斗に救われ、力を貸してもらえた恩義と信頼からそのことが言うことができない。

侑斗はそんな彼を見て、少し困った顔でまあ、ちょっと聞いてとだけ言うと遊矢にヘルメットを渡す。

緑色のシールドで赤い模様の無いフリップアップ式ヘルメットだ。

「ちょっと待ってください!?遊矢はバイクに乗ったことがないですし、私たちはまだ…」

「大丈夫、Dホイールはここでだけ走らせればいいし、遊矢君のDホイールにはオートパイロットシステムがある。それから…」

遊矢のデッキケースと同じ大きさのカードケースを遊矢に渡す。

「さっき言っていたSpのカードだよ。これでライディングデュエル用のデッキを組んで。時間は…まあ、1時間かな?」

「けど…なんで俺が!?バイクに乗るなら…」

遊矢の言うことはもっともだ。

確かに免許のことを考えなければ、遊矢以外にバイクに乗るのに適した人物はランサーズの中にいる。

遊矢はなぜ自分が選ばれたのかの理由がわからずにいる。

「君に渡すDホイールにはペンデュラムエクシーズやペンデュラム融合が生み出す、君自身を暴走させてしまう可能性のあるエネルギーを吸収する機能を特別につけているんだ。それを利用すれば、少なくともライディングデュエル中は暴走することはないよ。じゃあ、準備お願いね」

「…さっさとやれ」

侑斗とウィンダ、黒咲が遊矢達を置いてフィールドへ向かう。

その際、ウィンダは2人に向けて小さく手を振っていた。

「ライディングデュエル…かぁ。けど、俺のDホイールって言ってもどこにあるんだ??」

「遊矢…」

柚子が心配そうに遊矢を見つめる。

バイクに乗ってデュエルをし、その際にどれだけのスピードを出すのかわからない。

いきなり予行練習も無しにライディングデュエルを行う遊矢が心配で仕方がない。

「はぁー…柚子、デッキ組むの手伝ってくれるか?」

「ええ。ええっと…」

手伝うことに同意したものの、Spは従来の魔法カードを変化させたものに加えて改めてつくられた、今まで見たことのないカードがある。

幸い、カードケースの中には《スピード・ワールド3》のカードも入っていたため、そのルールを見ることでSpの特性を理解することはできた。

問題はどのSpを入れるかだ。

いつでも発動できるようにスピードカウンターの要求量の少ないSpを中心とすべきか、スピードカウンターの要求量が多いものの破格の効果を持つ《Sp-ジ・エンド・ストーム》のようなカードを入れるべきか。

2人で相談し、四苦八苦しながら一応の完成を見ると、もう約束の時間の3分前になっていた。

 

約束の時間になると、サーキットのスタート地点には遊矢達が集まっていた。

遊矢は赤を基調とし、緑のラインが縦に2本あるライディングスーツを着ている。

「いきなりの頼んじゃってごめんね。けど、ライディングデュエルを覚えることはシンクロ次元のデュエルに適応するには必ず必要なんだ」

「それは分かってるけど…肝心のDホイールは…?」

遊矢と柚子は周囲を見渡すものの、バイクの姿がどこにもない。

黒咲のDホイールの姿も見えない。

「ふん…」

「黒咲君、ちょっとDホイールを出してみて」

「へ…?」

なんのことか分からない遊矢たちをよそに黒咲が青いDホイールが描かれたカードをカードリーダーに通し、そのカードを手から離す。

すると、カードが一瞬虹色に光った後で形を変化させながら大きくなっていき、最終的にはマシンブルーファルコンに変形してしまった。

まさかのことに遊矢は声を出すことができず、不意にそのDホイールに触れる。

カードが変形してできたにもかかわらず、手からは冷たいバイク特有の硬い感触が伝わる。

「これが…Dホイール??」

「そう、シンクロ次元にはないけれど、レオコーポレーションの人たちが頑張ってくれたおかげでこういう機能ができたんだ。じゃあ、遊矢君もやってみて」

遊矢のデュエルディスクにつけられたカードリーダーを指さしながら、お願いするように言う。

恐る恐る赤いDホイールのカードを通すと、先ほどと同じプロセスでそれがマシンレッドクラウンに変形した。

「遊矢君のDホイールがマシンレッドクラウン、黒咲君のがマシンブルーファルコン。まだまだ試作段階だけど、性能面ではなかなかいい感じになってるよ」

「あ、柚子ちゃん。こっちに来て、ここだと危ないから」

侑斗とウィンダがサーキットの内側にあるピットクルー席に座り、彼女が柚子を手招きする。

何が何だかわからない柚子はウィンダの言うとおりにすることしかできなかった。

「榊遊矢…なぜお前がユートのカードを持っているのかはわからん。このデュエルでお前の真意を聞く!」

「黒咲…」

遊矢と黒咲はバトルロワイヤルの時に1度顔を合わせている。

黒咲はユートと連絡が取れず、なぜ遊矢が彼のカードを持っているのかを問いただそうとしたが、その前にデュエルが発生したこととオベリスクフォースの登場によって聞けずじまいになっていた。

遊矢もしっかりと黒咲に説明したいと思っている。

もちろん、自分がわかっている範囲限定だが。

遊矢はディスプレイに表示されているナビゲーションの文字を黙読する。

「ええっと…このボタンを…?」

ディスプレイの前に備え付けられている円盤状のデュエルディスクの右上部分にあるボタンを押す。

すると、ディスプレイには《スピード・ワールド3》という虹色の路上を走る2台のバイクがイラストのカードが表示される。

そして、無機質な男性の低い音声が流れる。

(《スピード・ワールド3》セット、オートパイロットスタンバイ)

音声終了と同時にデュエルディスクが展開される。

黒咲から渡されたデッキ・手札ホルダーを左腕に装着し、デッキをセットする。

彼もすでに《スピード・ワールド3》を発動している。

「大体の操縦に関してはこいつがやってくれるのか…」

「本当なら第1コーナーを最初に通過したほうが先攻になるけど、黒咲君はバイクの操縦に慣れていて、遊矢君は初めてだから、今回は申し訳ないけど…」

「ああ、榊遊矢が先攻でいい」

黒咲の言葉に侑斗は安堵する。

文句を言われるかもとかすかに思っていて、杞憂だったためだ。

遊矢と黒咲の頭上から少し前の距離にある信号が赤から青に変わろうとする。

「じゃあ、ライディングデュエルを楽しんで。ライディングデュエル!!」

「アクセラレーション!!」

「え…?」

初めて聞くデュエル開始の声に驚いていると、先に黒咲が発進する。

「ああ、ちょっと待ってくれよー!」

遊矢はアクセルを踏むと、マシンレッドクラウンも走り始めた。

 

遊矢

手札5

ライフ4000

 

黒咲

手札5

ライフ4000

 

「これが…ライディングデュエルのスピード…」

今は時速40キロあたりであるものの、初めて生身の状態で体験していることと、感じる風にわずかに恐怖感を感じる。

恐る恐る右手を離し、手札ホルダーのカードを手に取る。

「俺は手札から《EMドラミング・コング》を召喚。このカードは互いのフィールド上にモンスターが存在しないとき、リリースなしで召喚でき、その場合レベルを1つ低下させる」

黒いシルクハットと赤い蝶ネクタイ、そしてバーテン服姿のゴリラが現れ、遊矢の隣で走り始める。

両腕はオレンジ色のバチになっていて、胸には太鼓が左右に2つ、両肩にシャンバルがついていて、おそらく酒場の音楽家をイメージとしているのだろう。

 

EMドラミング・コング レベル5→4 攻撃1600

 

「そして俺はスケール4の《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》でペンデュラムスケールをセッティング。そして、カードを1枚伏せてターンエンド!それと同時に《オッドアイズ》のペンデュラム効果発動!1ターンに1度、俺のターン終了時にこのカードを破壊することで、デッキから攻撃力1500以下のペンデュラムモンスター1体を手札に加えることができる。俺はデッキから《EMペンデュラム・マジシャン》を手札に加える!」

遊矢がデッキホルダーからカードを回収し、震える手でフィールドにある《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》をエクストラデッキへ入れようとする。

「うわっと!!」

カードが風で飛ばされそうになり、何とか抑えようとしたためにバランスを崩しそうになる。

しかし、マシンレッドクラウンは自動的に調整を行う。

「ふうーー…」

 

遊矢

手札6→4(うち1枚《EMペンデュラム・マジシャン》)

SPC0

ライフ4000

場 EMドラミング・コング レベル4 攻撃1600

  伏せカード1

 

黒咲

手札5

SPC0

ライフ4000

場 なし

 

「俺のターン!」

遊矢と違い、黒咲はバイクに乗り慣れているためか、操縦に集中しながらカードをドローすることができた。

 

黒咲

手札5→6

SPC0→1

 

遊矢

SPC0→1

 

「俺は手札から《RR-バニシング・レイミアス》を召喚!」

緑と青、灰のトリコロールが特徴のモズを模した機械鳥が現れる。

頭部には青いモノアイカメラがあり、羽は白い合計14本のパイプによって再現されている。

心臓部分には黒咲のヘルメットやマシンブルーファルコンに描かれているマークがついている。

RR(レイドラプターズ)…これが黒咲の魂の象徴たるモンスター達だ。

 

RR-バニシング・レイニアス レベル4 攻撃1300

 

「このカードの召喚・特殊召喚に成功したターン、俺は1度だけ手札からレベル4以下のRR1体を特殊召喚できる。俺は手札から《RR-ミミクリー・レイニアス》を特殊召喚する!」

今度は先ほどのモンスターとは異なり、金、青、白のトリコロールのモズ型モンスターが現れる。

 

RR-ミミクリー・レイニアス レベル4 攻撃1100

 

「そして俺は手札から《Sp-オーバーブースト》を発動。俺のスピードカウンターを4つ増やし、ターン終了時に俺のスピードカウンターを1つにする」

一気にマシンブルーファルコンのスピードカウンターを象徴する青い羽根が5つとなり、スピードが90キロ近くまで上昇する。

「スピードカウンターが増えると…スピードまで上がってしまうのか」

サーキットを走る黒咲を見て、遊矢は驚きを隠せない。

 

黒咲

SPC1→5

 

「更にこのカードは俺のフィールド上に《RR-ファジー・レイニアス》以外のRRが存在するとき、手札から特殊召喚できる。《RR-ファジー・レイニアス》を特殊召喚」

今度は濃い青が基調のモズ型モンスターが飛ぶ。

翼の部分には金色の球体が埋め込まれていて、羽はパイプではなく、板のような形になっている。

 

RR-ファジー・レイニアス レベル4 攻撃500

 

「《ミミクリー・レイニアス》の効果発動。このカードの召喚・特殊召喚に成功したターンのメインフェイズに1度、俺のフィールド上に存在するRRモンスターすべてのレベルを1つ上げることができる」

《RR-ミミクリー・レイニアス》の両翼部分にある丸い空洞から青色の波動が発生する。

すると、《RR-バニシング・レイニアス》のカメラの色が青から赤に変化し、《RR-ファジー・レイニアス》の胸にある水色の球体に黒いエネルギーが液体のように蓄積されていく。

 

RR-バニシング・レイニアス レベル4→5 攻撃1300

RR-ミミクリー・レイニアス レベル4→5 攻撃1100

RR-ファジー・レイニアス レベル4→5 攻撃500

 

「これでレベル5のモンスターが3体!」

「俺はレベル5の《RR-バニシング・レイニアス》、《ミミクリー・レイニアス》、《ファジー・レイニアス》でオーバーレイ!」

3体のモズが優雅に上空を舞い、現れた黒い雷雲の中へ消えていく。

「獰猛なるハヤブサよ。激戦を切り抜けしその翼翻し寄せ来る敵を打ち破れ!エクシーズ召喚!現れろ!ランク5!《RR-ブレイズ・ファルコン》!」

雷雲が赤い炎に包まれ、1体の大型の隼を模したモンスターが急降下する。

赤が基調の走行と左右に3つずつ、三角形のような配置に金色の球体と増設されたパイプのある翼が体の少し下側にあり、首の喉仏あたりにRRのマークがある。

ツインアイのカメラはじっとオートパイロット任せの操縦となっている遊矢を睨んでいる。

 

RR-ブレイズ・ファルコン ランク5 攻撃1000

 

「ランク5のエクシーズモンスター!?」

「この程度で終わると思っていたか?俺は更に手札から《Sp-スピード・ランクアップ》を発動!俺のスピードカウンターが4つ以上あるとき、俺のフィールド上に存在するエクシーズモンスター1体をランクの1つ高い同じ種族のエクシーズモンスターにランクアップさせる!」

「何!?もしかして…スピードカウンターを増やしたのはそのため…??」

遊矢の言葉に答えないまま、再び上空に現れた雷雲の中に《RR-ブレイズ・ファルコン》が消えていく。

「誇り高きハヤブサよ。英雄の血潮に染まる翼翻し革命の道を突き進め!ランクアップエクシーズチェンジ!現れろ!ランク6!《RR-レヴォリューション・ファルコン》!!」

雷雲が一瞬青く光ると、わずかに秒がすぎた後に霧散する。

そして、青と黒が基調の先ほどのエクシーズモンスターよりも大きな隼型モンスターが姿を現す。

パイプの数はほぼ半減されているものの大型化していて、首の付け根部分にRRのマークがついている。

 

RR-レヴォリューション・ファルコン ランク6 攻撃2000

 

Sp(スピードスペル)-スピード・ランクアップ

通常魔法カード

このカードのカード名はルール上、「RUM-スピード・フォース」としても扱う。

(1):自分SPCが4つ以上存在するとき、自分フィールド上に存在するXモンスター1体を対象として発動できる。その自分のモンスターよりランクが1つ高く、同じ種族のXモンスター1体を、対象のモンスターの上に重ねてエクストラデッキからX召喚する。

 

「1ターン目から《レヴォリューション・ファルコン》にランクアップ。本気だね…黒咲君」

強引にスピードカウンターを増幅させ、《Sp-スピード・ランクアップ》の発動を可能にした彼の動きに侑斗は舌を巻く。

手札は大幅に減らしているが、彼はエクシーズ次元で融合次元のデュエリストと戦ったデュエリスト。

アフターフォローをしないはずがない。

「俺は手札から更に《Sp-エクシーズ・チャージ》を発動!俺の手札がこのカードのみで、フィールド上に存在するカードがエクシーズモンスター1体のみの場合に、俺のスピードカウンターを5つ取り除くことで、俺のフィールド上に存在するオーバーレイユニットの数だけデッキからカードをドローする。《レヴォリューション・ファルコン》のオーバーレイユニットは4つ。よって、デッキから4枚カードをドローする!」

大幅にスピードを落としながら、黒咲は一気に4枚のカードをドローする。

これで黒咲の手札消費リスクが削減された。

 

黒咲

手札6→1→4

SPC5→0

 

Sp-エクシーズ・チャージ

通常魔法カード

「Sp-エクシーズ・チャージ」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分の手札に存在するカードがこれ1枚のみで、自分フィールド上に存在するカードがX素材を持つXモンスター1体のみの場合、スピードカウンターを5つ取り除くことで発動できる。自分フィールド上に存在するX素材の数だけ自分はデッキからカードをドローする。

 

「《レヴォリューション・ファルコン》の効果発動!このカードがRRエクシーズモンスターをオーバーレイユニットとしている場合、1ターンに1度、相手モンスター1体を破壊し、そのモンスターの攻撃力の半分のダメージを相手に与えることができる!」

「何!?」

「いけ、《レヴォリューション・ファルコン》!!」

《RR-レヴォリューション・ファルコン》がモズの鳴き声を出しながら遊矢の真上を飛行する。

そして、翼部の走行を展開するとそこから白い爆弾の雨が遊矢の周囲に降り注ぐ。

「うわ、うわわわ!!」

爆弾の軌道を事前に計算したマシンレッドクラウンはそのまま自動的に回避行動をとるものの、《EMドラミング・コング》は炎の中へ消えてしまった。

「《ドラミング・コング》!!」

 

遊矢

ライフ4000→3200

SPC1→0

 

「《スピード・ワールド3》の効果で、ダメージ800の倍数ごとのスピードカウンターが1つ減る。これで遊矢君はモンスターを失い、スピードカウンターも0になった」

「遊矢…」

柚子が遊矢を心配する中、侑斗は黒咲の行動を見る。

初めてのライディングデュエルであるにもかかわらず、ここまで大胆でハイスピードな動き。

やはり、実際の戦場にいた分、適応力が高いのかもしれない。

「バトルだ!俺は《レヴォリューション・ファルコン》で榊遊矢にダイレクトアタック!レヴォリューショナル・エアレイド!!」

《RR-レヴォリューション・ファルコン》の頭部のカメラが遊矢に狙いを定め、移動ポイントを予測する。

そして、そのポイントを中心に爆弾の投下を開始する。

「俺は罠カード《EMコール》を発動!相手のダイレクトアタックを無効にする!!うわあああああ!!!?」

《EMコール》発動と同時にマシンレッドクラウンが不規則で荒々しい動きをし始め、遊矢がまるでロデオをするカウボーイのようにその動きに振り回されている。

爆弾と投下が終わり、動きが元に戻った時の遊矢は目を回していて、デュエル続行には十数秒の時間が必要となった。

「うええ…気持ち悪い…。更に俺は《EMコール》の効果で…守備力の合計が攻撃モンスターの攻撃力以下になるように、デッキからEMモンスターを手札に加える…。ウプ…」

何とか吐くのを抑えつつ、遊矢はディスプレイに表示されたデッキ内のカードから必要な2枚に触れる。

「俺は《EMソード・フィッシュ》と《EMドクロバット・ジョーカー》を手札に加える。ただし、このカードの発動後、次の俺のターン終了時までエクストラデッキからモンスターを特殊召喚できない」

デッキから自動排出された2枚を手札ホルダーに差し込む。

2枚ものEMをサーチしたのはいいものの、その代償は肉体的にもデュエル面でも大きい。

「(奴のエースモンスターである《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》は《ドラミング・コング》と共にエクストラデッキの中にある。《EMコール》の代償として、そのモンスターたちは次のターン召喚することができない。特殊召喚したとしても、《レヴォリューション・ファルコン》の敵ではないが…)俺はカードを3枚伏せ、ターンエンド。それと同時に《Sp-オーバーブースト》の効果により、俺のスピードカウンターは1となる」

スピードカウンターが既に0である黒咲にとって、このデメリットととれる効果はある意味うれしい特典だ。

スピードが上がり、マシンブルーファルコンが更に遊矢を引き離す。

 

遊矢

手札4→6(うち3枚《EMペンデュラム・マジシャン》《EMソード・フィッシュ》《EMドクロバット・ジョーカー》)

SPC0

ライフ3200

場 なし

 

黒咲

手札4→1

SPC0→1

ライフ4000

場 RR-レヴォリューション・ファルコン(オーバーレイユニット4) ランク6 攻撃2000

  伏せカード3

 

「遊矢君、どうするのかな?《レヴォリューション・ファルコン》は特殊召喚されたモンスターと戦闘を行うダメージステップ開始時に、そのモンスターの攻撃力・守備力を0にしちゃうよ?」

「そして、オーバーレイユニットを1つ取り除けば、《レヴォリューション・ファルコン》は相手のすべてのモンスターに1回ずつ攻撃できる。それに、通常召喚したモンスターで戦おうにも、召喚したターンに倒せなかったら、3つ目の効果の餌食になる」

《RR-ブレイズ・ファルコン》の力を受けた《RR-レヴォリューション・ファルコン》は攻撃力の低さを問題としないほどの強さを手に入れてしまった。

ここから考えられることとしたら、先ほど手札に加えた《EMソード・フィッシュ》の効果を3回使って強引に攻撃力を引き下げること。

黒咲がそれを簡単に許すとは思えないが…。

「俺のターン、ドロー!!」

 

遊矢

手札6→7

SPC0→1

 

黒咲

SPC1→2

 

「俺は手札から《EMソード・フィッシュ》を召喚!」

 

EMソード・フィッシュ レベル2 攻撃600

 

「《ソード・フィッシュ》の効果発動!このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、相手フィールド上のモンスターの攻撃力・守備力を600ダウンさせる!」

《EMソード・フィッシュ》が瞬時に6つの分身を生み出し、それらが《RR-レヴォリューション・ファルコン》に襲い掛かる。

魚であるにもかかわらず、剣と同じ鋭さと硬さを持つそのモンスターによってパイプがすべて切断されてしまう。

 

RR-レヴォリューション・ファルコン ランク6 攻撃2000→1400

 

「更に俺はスケール2の《EMペンデュラム・マジシャン》とスケール8の《EMドクロバット・ジョーカー》でペンデュラムスケールをセッティング!」

赤いシルクハットと灰色の袖と鉄の輪や3×3の列のような配置で中心の縦列だけ大き目になっている青い球体でできたボタンで装飾された赤いスーツとボタンと同じ球体がバックルとなっているベルトがついた黒いズボンをつけた紫色の髪の若い魔導士が右手に青い球体型の魔石を中心としてダイヤモンド状に精製された青い魔石がその真下についた、円の中に雪の結晶が入っているような形の鉄でできた振り子を持って現れる。

彼のボタンと振り子、ベルトにはところどころに金色の紐や宝石、ベルトループがついている。

黒とピンクの道化師風の服を着た金髪のグラサン男が水色の大きな蝶ネクタイを整え、緑色の布で修理された痕跡があるピンク色のカバを模した帽子をつけて《EMペンデュラム・マジシャン》と同時に姿を現す。

そして、《EMペンデュラム・マジシャン》は遊矢から見て右側へ、《EMドクロバット・ジョーカー》が左側へ浮上し、それぞれが青い光の柱を生み出す。

「これで俺はレベル3から7のモンスターを同時に召喚可能!揺れろ魂のペンデュラム!天空に描け光のアーク!ペンデュラム召喚!現れろ俺のモンスターたち!」

光の柱の間の青い光の渦が水平状に現れ、そこから遊矢のモンスターが飛び出す。

「《EMハンマーマンモ》、《EMプラスタートル》!!」

赤でオレンジ色の蝶ネクタイつきの星柄の赤い袖つきの黄色いスーツを着た、紫のリボン付きシルクハットの青いマンモスが《EMプラスタートル》と共に現れる。

鼻についている巨大なハンマーには星柄で様々な色の帯がついていて、表面にも巨大な星のマークがついていた。

 

EMプラスタートル レベル4 攻撃100

EMハンマーマンモ レベル6 攻撃2600

 

「出た!《ハンマーマンモ》!」

《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》に並ぶ遊矢のモンスターの重鎮の入場に柚子が喜ぶ。

《EMハンマーマンモ》はそのハンマーと怪力から相手フィールド上の魔法・罠カードを攻撃と共に吹き飛ばすことができる巨大なマンモス。

しかし、レベルに伴わない高いパワーの代償として攻撃には他のEMのサポートが求められる。

その役目を担うのが今フィールドにいる《EMソード・フィッシュ》と《EMプラスタートル》だ。

「《EMソード・フィッシュ》の効果発動!自分がモンスターの特殊召喚に成功した時、相手フィールド上に存在するモンスターの攻撃力・守備力を600ダウンさせる!」

「ちっ…!」

再び襲い掛かる6本の魚の刃に黒咲が舌打ちする。

《RR-レヴォリューション・ファルコン》は特殊召喚モンスターには無類の力を発揮するものの、《EMソード・フィッシュ》のような通常召喚されたモンスターへの対処が少し難しい。

剣によって爆弾を格納していたコンテナが損傷し、やむなく強制分離されることとなった。

 

RR-レヴォリューション・ファルコン ランク6 攻撃1400→800

 

「《レヴォリューション・ファルコン》の攻撃力が800に!」

「そして、《EMペンデュラム・マジシャン》の効果は…」

ウィンダが攻撃力の下がった《RR-レヴォリューション・ファルコン》を、侑斗は《EMペンデュラム・マジシャン》を見る。

「《ペンデュラム・マジシャン》のペンデュラム効果発動!EMモンスターのペンデュラム召喚に成功した時、ターン終了時まで俺のEMの攻撃力を1000アップさせる!」

《EMペンデュラム・マジシャン》の振り子が揺れ、それによって発生する青い波紋によって3体のEMが同じ色のオーラに包まれる。

 

EMプラスタートル レベル4 攻撃100→1100

EMハンマーマンモ レベル6 攻撃2600→3600

EMソード・フィッシュ レベル2 攻撃600→1600

 

「これで遊矢が《ソード・フィッシュ》で《レヴォリューション・ファルコン》を攻撃して、《ハンマーマンモ》と《プラスタートル》で一斉攻撃すれば…!」

柚子の言うとおり、《EMペンデュラム・マジシャン》と《EMソード・フィッシュ》が開いた突破口によって1ターンキルが成立するところまで来ている。

ただし、黒咲は罠カードの扱いのうまいデュエリスト。

このまま簡単に突破させてくれるとは思えないが。

「バトルだ!俺は《ソード・フィッシュ》で《レヴォリューション・ファルコン》を攻撃!」

《EMソード・フィッシュ》が《RR-レヴォリューション・ファルコン》めがけて突撃する。

《RR-レヴォリューション・ファルコン》が迎撃のためか、急速に加速して突撃する。

「無駄だ!《RR-レヴォリューション・ファルコン》の効果は今の《ソード・フィッシュ》には通用しないぜ!」

「ふん…どこを見ている。こいつの狙いはその魚ではない」

「え…?」

遊矢が疑問を浮かべる中、《RR-レヴォリューション・ファルコン》は《EMソード・フィッシュ》をスルーしていく。

スルーされた青い魚は体中に青筋を作って激怒した。

「俺は罠カード《RR-マイン》を発動した。俺のRRが攻撃対象となった時、そのモンスターと相手フィールド上に存在する特殊召喚されたモンスター1体を破壊する」

「何!?」

《RR-レヴォリューション・ファルコン》が《EMハンマーマンモ》に突撃し、そのまま直進する。

マンモスは抵抗するために、鼻のハンマーで何度も装甲をたたいている。

「まさか…逃げろ、《マンモ》!!」

《RR-レヴォリューション・ファルコン》が目指しているのは強制排除したコンテナのある場所。

それに接触した瞬間、格納されていた爆弾が起動し、その場所が巨大な炎の花に包まれる。

花が散ると、そこには巨大なクレーターだけが残っていた。

「そして、俺はデッキ・墓地からRUMを1枚手札に戻す。《Sp-スピード・ランクアップ》はルール上、《RUM-スピード・フォース》としても扱う」

黒咲の墓地から《Sp-スピード・ランクアップ》が排出される。

遊矢にとっては予想外の展開だが、これで天敵である《RR-レヴォリューション・ファルコン》は葬られた。

 

RR-マイン

通常罠カード

(1):自分フィールド上に存在する「RR」モンスターが攻撃対象となったときに発動できる。そのモンスターと相手フィールド上の特殊召喚されたモンスター1体を破壊する。その後、自分のデッキ・墓地から「RUM」魔法カード1枚を手札に加える。

 

「まだだ!!俺は《ソード・フィッシュ》と《プラスタートル》でダイレクトアタック!!」

先程攻撃しようとしたモンスターに対してご立腹の《EMソード・フィッシュ》が憂さ晴らしに黒咲のマシンブルーファルコンに体当たりをし、《EMプラスタートル》がため息をつきながら手に持っている判子で攻撃する。

「ぐう…!!」

 

黒咲

ライフ4000→2400→1300

 

「よし、これで黒咲のスピードカウンターは…」

「罠発動!《デス・アクセル》!俺が戦闘ダメージを受けたとき、そのダメージ500毎にスピードカウンターを1つ増やす!」

攻撃を受け、バランスを崩すもすぐに立ち直り、アクセルを全快にする。

 

黒咲

SPC2→5

 

「《ソード・フィッシュ》の攻撃の時に…?けど、《プラスタートル》の攻撃力は1100!それでも…」

「悪いが《デス・アクセル》を発動したターン、俺は《スピード・ワールド3》の効果でスピードカウンターが減ることはない」

時速100キロ近いスピードで走るマシンブルーファルコンが遊矢を1周遅れに刺せる。

 

デス・アクセル(アニメオリカ・調整)

通常罠カード

(1):自分が戦闘ダメージを受けたときに発動できる。このターン、自分は「スピード・ワールド」魔法カードの効果で自分のスピードカウンターは減らない。

(2):このカードを発動した時、自分が受けた戦闘ダメージが1000以上の場合、そのダメージ500毎に自分用スピードカウンターを1つ置く。

 

「くっそーー!またスピードカウンターを!?こうなったら俺もだ!俺は手札から《Sp-ペンデュラム・アクセラレーション》を発動!俺がペンデュラム召喚に成功したターン、ペンデュラム召喚したモンスターの数だけ俺のスピードカウンターを増やす!俺がペンデュラム召喚したモンスターは2体だ!」

遊矢の心に答えたのか、マシンレッドクラウンもスピードを上げる。

純粋なバイクであるマシンブルーファルコンとは違い、マシンレッドクラウンは追加機能が多く、その分性能が控えめになっているものの、それでも伊達にDホイールを名乗っていない。

時速60キロ近いスピードで走り続ける。

 

遊矢

SPC1→3

 

Sp-ペンデュラム・アクセラレーション

通常魔法カード

(1):自分がP召喚に成功したターンの自分メインフェイズ時に発動できる。P召喚に成功したモンスターの数だけ自分用スピードカウンターを増やす。

 

「更に俺は《スピード・ワールド3》の効果発動!俺のスピードカウンターを3つ取り除くことで、俺の手札をすべて見せ、存在するSp1枚に付き400ダメージを相手に与える!俺の手札に存在するSpは1枚!」

遊矢が最後の1枚である《Sp-ホイール・チェンジ》を見せる。

すると、黒咲の背後から時速200キロ近いスピードで転がるタイヤが現れる。

そのタイヤはマシンブルーファルコンに直撃した。

「く…!!」

 

黒咲

ライフ1300→900

 

遊矢

SPC3→0

 

「更に《ホイール・チェンジ》の効果発動!《スピード・ワールド3》の効果でこのカードを相手に見せたとき、手札から墓地へ送ることでデッキからカードを1枚ドローする!」

遊矢はドローしたカードを確認する。

「(よし…!このカードで!)俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド!」

 

遊矢

手札7→0

SPC0

ライフ3200

場 EMソード・フィッシュ レベル2 攻撃1600→600

  EMプラスタートル レベル4 攻撃1100→100

  伏せカード1

  EMペンデュラム・マジシャン(青) ペンデュラムスケール2

  EMドクロバット・ジョーカー(赤) ペンデュラムスケール8

 

黒咲

手札1→2(うち1枚《Sp-スピード・ランクアップ》)

SPC5

ライフ900

場 伏せカード2

 

Sp-ホイール・チェンジ

通常魔法カード

(1):自分のスピードカウンターが3つ以上存在する場合に発動できる。自分のスピードカウンターを1つ増やす。

(2):「スピード・ワールド」魔法カードの効果でこのカードを相手に見せたときに発動できる。このカードを手札から墓地へ送ることで、デッキからカードを1枚ドローする。

 

「スピードカウンターは黒咲の方が上だけど、ライフは遊矢が逆転したわ!」

手札は使いきっているが、エクストラデッキには2体のペンデュラムモンスターが出番を待っている。

2体とも今のスケールで召喚可能な状況。

更に《EMソード・フィッシュ》と《EMペンデュラム・マジシャン》の効果を応用すれば戦闘面で有利になれる。

柚子の表情は安心に満ちていた。

しかし、黒咲が黙って遊矢に勝利を許すはずがない。

「俺のターン!」

 

黒咲

手札2→3

SPC5→6

 

遊矢

SPC0→1

 

「俺は手札から《RR-バニシング・レイニアス》を召喚!」

前のターンに召喚されたモズ型モンスターが再び登場する。

 

RR-バニシング・レイニアス レベル4 攻撃1300

 

「更に俺は罠カード《ナイトメア・デーモンズ》を発動!俺のフィールド上に存在するモンスター1体をリリースし、相手フィールド上に《ナイトメア・デーモン・トークン》3体を攻撃表示で特殊召喚する」

「俺のフィールドにモンスターを!?」

《RR-バニシング・レイニアス》が黒い細身の四肢を持つ赤いコミカルな目と口と青い長髪の悪魔3体がヘラヘラ笑いながら遊矢のフィールドへ向かう。

 

ナイトメア・デーモン・トークン×3 レベル6 攻撃2000

 

「そして罠カード《エクシーズ・リボーン》を発動!このカードをオーバーレイユニットとして、墓地のエクシーズモンスター1体を特殊召喚する。再び現れろ、《RR-レヴォリューション・ファルコン》!!」

コンテナやパイプなどが完全に治った状態で《RR-レヴォリューション・ファルコン》が空を飛ぶ。

 

RR-レヴォリューション・ファルコン ランク6 攻撃2000

 

「罠発動!《EMペンデュラム・ボックス》!!」

反射的に発動した罠カードから出てきた赤い巨大なデフォルメされた五芒星が貼りつけられた赤い箱と同じ形で青い箱が現れる。

赤い箱が《RR-レヴォリューション・ファルコン》を閉じ込め、青い箱が《EMプラスタートル》を閉じ込め、2つの箱が猛スピードでぶつかり合う。

「相手がモンスターの特殊召喚に成功した時、そのモンスターと俺のEM1体を破壊し、エクストラデッキからEM、魔術師、オッドアイズペンデュラムモンスター1体をペンデュラム召喚する!俺は《EMドラミング・コング》を特殊召喚!」

ぶつかり合った箱が砕け散り、そこから《EMドラミング・コング》が飛び出す。

 

EMドラミング・コング レベル5 攻撃1600

 

EMペンデュラム・ボックス

通常罠カード

「EMペンデュラム・ボックス」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):相手がモンスターの特殊召喚に成功した時、そのモンスター1体と自分フィールド上に存在する「EM」モンスター1体を対象に発動できる。それらのモンスターを破壊する。その後、エクストラデッキから「EM」「魔術師」「オッドアイズ」Pモンスター1体をP召喚扱いで特殊召喚する。

 

「そして、《ペンデュラム・マジシャン》の効果発動!俺のEM達がパワーアップする!」

《EMペンデュラム・マジシャン》の振り子の力で再びEM達が青いオーラを纏う。

 

EMソード・フィッシュ レベル2 攻撃600→1600

EMドラミング・コング レベル5 攻撃1600→2600

 

「俺の《エクシーズ・リボーン》を読んでいたのか…?」

青いオーラを纏う2体のモンスターを見ながら、黒咲が言う。

「ああ!そんな感じがしたのさ。お前なら、オーバーレイユニットを持った状態の《レヴォリューション・ファルコン》を特殊召喚するってな!」

(お前は罠カードをうまく扱うことができる。それを逆手に取られるな)

「ユート…?」

なぜか遊矢の姿がユートの姿に見えてしまう。

その言葉は初めて融合次元のデュエリストを倒したときにされた忠告だ。

(黒咲。まだ遊矢を…新しくできた仲間を信じることができないのか…?)

まるで、いまその場にいるかのようにユートが言葉をかけてくる。

なぜか、周囲が暗くなっていて、見えるのは自分と遊矢、そしてユートの幻影だけになっている。

「…俺にとっての仲間は、レジスタンスの戦友たち、そして…」

(俺だけ…か。まったく、不器用だということはわかっているが、ここまでくると笑えてしまう…)

仕方ないなと目を閉じて笑うユートが優しげに黒咲を見る。

そんな不器用だが、だれよりも正直で、誰よりも優しい親友にメッセージを送る。

(だったら、遊矢を信じる俺を信じてくれ。彼は俺に笑顔の大切さを教えてくれた。…俺の中に宿る『恐怖』に光を与えてくれた)

「『恐怖』…?」

(そうだ。俺の魂が彼の中にいるせいか、俺はお前以上に遊矢を知っている。彼の強さも…そして弱さも…)

「弱さ…?」

(本当なら、そんな彼を戦いに巻き込みたくなかった。そして、アカデミアとの戦いで、彼の中に目覚めてしまった…『憎しみ』)

言い終わらぬうちにユートが消え、視界が元に戻っていく。

「ユート!?」

「おい、どうしたんだよ??急に黙り込んで…」

(幻…だったのか…?)

遊矢の言葉が耳に入らぬ黒咲は幻の中でユートが言っていたことを思い出す。

(榊遊矢を信じる自分を信じろだと…?甘すぎる言葉だ。それに面倒ごとまで押し付けるつもりか??)

親友の無理難題にあきれつつ、若干笑みを浮かべると、気持ちを切り替えて手札とフィールドを見る。

そして、ここから仕掛けるべき次の一手に出る。

「俺は手札から《Sp-クラッシュ・ダウン》を発動!俺のスピードカウンターが5つ以上の時、墓地のエクシーズモンスター1体を特殊召喚する!」

黒咲の右隣に現れた黒い魔法陣の中から《RR-ブレイズ・ファルコン》が飛び出す。

 

RR-ブレイズ・ファルコン ランク5 攻撃1000

 

「そして、そのモンスターよりもランクの1つ低い同じ種族のエクシーズモンスターにランクダウンさせる」

「ランクアップだけじゃなくて、ランクダウンまで!?」

《RR-ブレイズ・ファルコン》が上空に現れた雷雲に中へ消えていく。

そして、その姿を青を基調とした4枚羽の隼へと変化させていく。

首の部分に装着された3段式の2連速射砲と羽についている何十本ものパイプ、そして首の左付け根についているRRのマーク。

ランクは低くとも、RR主力であることを示しているのだ。

「雌伏のハヤブサよ。逆境の中で研ぎ澄まされし爪を挙げ、反逆の翼翻せ!ランクダウンエクシーズチェンジ!現れろ!ランク4!《RR-ライズ・ファルコン》!」

 

RR-ライズ・ファルコン ランク4 攻撃100

 

Sp-クラッシュ・ダウン

通常魔法カード

このカードはルール上、「RDM-クラッシュ・フォース」としても扱う。

(1):自分のスピードカウンターが5つ以上存在するとき、自分の墓地に存在するXモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを特殊召喚し、そのモンスターよりランクが1つ低い同じ種族のXモンスター1体を対象のモンスターの上に重ねてX召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

 

「《ライズ・ファルコン》…!?」

黒咲3体目のRRエクシーズモンスターに戦慄する。

このモンスターの効果もおそらくは特殊召喚モンスターを破壊するための効果だ。

「《ライズ・ファルコン》の効果!1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、相手フィールド上に特殊召喚されているモンスター1体の攻撃力を得る!」

「何!?」

《RR-ライズ・ファルコン》のオーバーレイユニットが《EMドラミング・コング》の前で消滅する。

そして、雌伏の隼が灼熱の炎を纏う。

 

RR-ライズ・ファルコン ランク4 攻撃100→2700

 

「攻撃力2700!?」

「そして、《ライズ・ファルコン》は相手フィールド上の特殊召喚されたモンスターに1回ずつ攻撃できる。いけ、《ライズ・ファルコン》!!」

《RR-ライズ・ファルコン》が天高く舞い上がり、スタジアムを一周する。

そして、そのまま遊矢のフィールドで踊っている《ナイトメア・デーモン・トークン》に向けて突撃する。

「ブレイブクロー・レボリューション!!」

一瞬で3体の悪魔が切り裂かれ、その炎で灰となっていく。

《RR-ドラミング・コング》は消えてしまった悪魔3体にびっくりしながらも、太鼓をたたいて炎の隼を睨む。

 

遊矢

ライフ3200→2500→1800

 

「けど…《ドラミング・コング》は俺のモンスターが相手モンスターと戦う時、そのモンスターの攻撃力をターン終了時まで600アップさせる効果がある!それで…」

「いいや、お前はもう終わっている」

「え…!?こ、これは!!?」

遊矢の周囲に破壊されたはずの3体の《ナイトメア・デーモン・トークン》が炎を纏った状態で現れる。

「《ナイトメア・デーモン・トークン》は破壊された時、コントローラーに800ダメージを与える」

「そんな…!!うわあああ!!」

燃え上がる悪魔が笑いながら遊矢をモグラたたきのように叩きまくる。

デュエル終了と共に双方のDホイールが停止したころには、頭に何個もたんこぶができた遊矢が目を回していた。

 

遊矢

ライフ1800→1000→200→0

SPC1→0

 

「はは…お疲れ様、二人とも」

侑斗とウィンダがDホイールを止めた2人の元へ向かう。

黒咲は降りてヘルメットを取ると、目を回す遊矢のところへ向かう。

「榊遊矢」

「んん…黒咲…」

柚子に介抱され、なんとか治った遊矢が黒咲を見る。

彼はじっと遊矢の目を見ていた。

「お前がなぜユートのカードを持っているのかはもう聞かん。託されたという言葉…信じてやる」

「黒咲…」

「だが、それならば今度はそのカードで俺を倒せるぐらいに強くなれ。そうならなければ、《ダーク・リベリオン》は俺がもらう。忘れるな、”遊矢”」

そう言った後、黒咲はカードリーダーにあるスイッチを押す。

すると、マシンブルーファルコンが小さくなっていき、再び変形してカードに戻った。

黒咲は侑斗の左肩に手を置き、静かに「ありがとう」と言ってから出て行った。

その姿を見送りながら、遊矢は《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》を手に取る。

「分かっているよ、黒咲。お前に勝てるくらいじゃないと…ユートからこのカードをもらった意味がないもんな…」

 

「ユートの『恐怖』…遊矢の『憎しみ』…」

黒咲1人しかいない控室の中で、自販機で買った缶コーラを口にしながら、彼はユートの言っていた言葉の意味を考える。

(《オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン》…。そして、《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》を召還した時の遊矢の暴走…。ユートのカードが原因だと赤馬零児と遊矢が予想していたが…)

遊矢が暴走した時の映像は零児から見せてもらっている。

その姿は恐怖というよりはむしろ憎しみ、破壊への愉悦と表現すべきものだ。

(まったく、厄介な話だ…)

スーツの中が汗でびっしょりになり、不快に感じた黒咲は空っぽになった缶をゴミ箱に投げ捨て、直接つながっていて、人のいない更衣室に入っていった。




Sp採用のライディングデュエルいかがでしたか?
久しぶりのライディングデュエルで、こんな描写やカード効果でいいのかと疑問を持ちながらでの執筆でした。
けれども、やっぱりライディングデュエルにはSpがないと!!


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第40話 翔太VSユーゴ 闇夜を走る白き龍

「いけ、《ペイルライダー》。クアトロ・デスブレイク」

《魔装騎士ペイルライダー》のマシンガンから放たれる青い実体のある銃弾が数十発《ゴブリン突撃部隊》を貫いていく。

「うわあああ!!」

 

典亮

ライフ100→0

 

「ふう…これで4回目だな」

「くっそー、これだけ改造しても勝てないのかよー」

施設の遊戯室で翔太とのデュエルに負けた典亮が悔しげに《魔装騎士ペイルライダー》を見る。

「当たり前だろう?ゴブリンシリーズにはデメリット効果を持つモンスターが多いからな」

デッキをケースにしまいながら、翔太は言う。

彼の言うとおり、ゴブリンシリーズのモンスターは攻撃後や効果発動後に疲れでサボタージュを起こして守備表示になるモンスターがいる。

いい例が《ゴブリン突撃部隊》で、攻撃力が2300もあるレベル4モンスターであるものの、攻撃後の守備表示となってしまう。

その隙をついて、《魔装槍士ロンギヌス》の効果で貫通能力を得た《魔装騎士ペイルライダー》に攻撃されて大ダメージを与えるということが何度もあった。

(それにしても、ペンデュラムモンスターでメインデッキに入るからか、《ペイルライダー》を召喚することが多いな)

「くっそーー!もう1回頼むぜ、翔太兄ちゃん!」

「ああ、何度でも返り討ちにしてやる」

再びデュエルを開始しようとする2人。

そんな彼らを遮るように、太一が大きな音を立てながら扉を開けて入ってくる。

「お、おいおいどうしたんだよー太一ー」

「翔太兄ちゃんに代わってって、おじいちゃんが!」

「じいさんが?ったく、デュエルディスクに電話機能があるだろうが…」

なぜ自分のデュエルディスクにかけてこないのかと不満をぶつぶつ言いながら、施設長室へ向かう。

栄次郎は今日、同じ養護施設の施設長たちの会合のためにここを離れている。

その間に世話をする人の手筈は既に整っていて、その人は今は2階の掃除をしている。

部屋に着いた翔太は今の時代では珍しくなったFAX付きの古い小さな液晶がある白い固定電話の受話器を取る。

「もしもし」

(おお、翔太君。やっと出てくれたか)

受話器から栄次郎の声と共に箸がぶつかり合う音やいらっしゃいませ、かしこまりましたという声が聞こえてくる。

今の時計の時刻は午後5時半。

どういう状況か理解した翔太はため息をつく。

「ああ…で、要件は何だ?」

(買い物をお願いしたいんだ。今日特売日になっているコーヒー豆!!帰ったらすぐに買いに行こうと思ったけど、忙しくなってねー)

「そいつを俺に買いにいけっていうのか?」

(頼むよー、お小遣いをあげるから。それじゃあ、頼んだよ)

ツーツー…。

ほぼ一方的な電話が終わり、翔太はため息をつきながら受話器を降ろす。

 

「こういうことは伊織に頼めよ、まったく…」

電話を受けてから1時間後。

夕暮れの舞網市を翔太を乗せたバイクが走っている。

背中にはエコバック替わりのリュックサックがあり、中には頼まれたコーヒー豆の入った袋がある。

ちなみに伊織はなぜか女子ソフトボール部の助っ人をすることになったためにまだ帰ってきていない。

(にしても…人通りが少ないな)

周囲を見渡すが、もう社会人や学生が帰路につく時間帯であるにもかかわらず、その姿は少なく、車の量も少なく一部の店のシャッターが閉まっている。

レオコーポレーションが公表した融合次元による侵略行為の実態を見たことによる影響は大きいということだろうか。

翔太のバイクは海岸沿いの道につく。

「ん…?」

ふと、左掌から感じる妙な感覚がする。

何かに触られているような感覚だ。

バイクを停め、左手の手袋を外す。

(ちっ…今度は何に反応しているんだ?)

案の定、左手の痣が光っていた。

翔太は周囲を見渡し、痣を光らせる存在を探し始める。

海岸に目を向けると、砂浜から2メートル上の高さに青い光の線のようなものが見えた。

(こいつか…?こいつが俺の痣を光らせてるのか?)

今まで痣が反応したのは次元と次元をつなぐ青い渦とカード化された人々だ。

このような線を見たことは初めてだ。

翔太はバイクから降り、その線の前まで歩いていく。

(おおっと、こいつは珍しいなぁ)

脳裏に聞こえるゲスな声に翔太は舌打ちする。

「黙ってろ」

(おいおいさびしいこというなよー?俺様、寂しくなっちゃうー!だって、俺の声を聞いてくれるのはお前だけなんだぜー?)

「ふん…そんなことなんて知らねえよ。あれについて、知っているんだろ?」

嘘泣きをするその声にイライラする翔太。

遊矢の時ほどではないが、殺意がわくぐらいだ。

そのことを察したのか、声はまじめに答える。

(ああ、こいつは不完全な次元の渦だな。誰かが次元を飛び越えようとしたが、エネルギー不足か手順を間違えたせいで出られなくなっちまったって形だな)

「で、その飛び越えられなかった馬鹿はどうなるんだ?」

(しばらくは次元のはざまに閉じ込められたままだが、なんかの拍子で開いたら…ドカーーン!!だろうな。次元のはざまにはすべてに次元から放出されるエネルギーがたまりにたまってるからな。こいつの場合は…この町がきれいさっぱりになるくらいの威力だろうな)

声の言うことに翔太が一瞬ぞっとする。

彼の言うことが正しければ、いつでも爆発しても不思議ではないということになる。

そんな彼の心中を悟ったかのように、声が解決法を言う。

(けどな、俺がくれてやった痣の力を使うことで、爆発させることなく開放することができるぜ。その後でもう1度痣の力を使って塞げばいい。さあ、やってみな?)

翔太は青い線をじっと見る。

声の言うことが正しければ、すぐにでも痣の力で解放する必要がある。

とはいうものの、爆発するだの解放するだのという言葉は声が言っているだけで、証拠がない。

力を与えたやつを信じないのかと感情論で訴えられればそれまでだが。

「…ちっ、なんでだ?なんでこいつの言葉が真実だと思ってしまう」

あまりにもゲスな声であるものの、それを聞く翔太にはどうしてもその言葉に嘘がないと思えてしまう。

というのも、その声が今まで翔太に対して嘘を言っていないこともあるのだろう。

翔太は痣を青い線にかざすと、痣から放たれる緑色の光が光線となって青い線にぶつけられる。

青い線の色が次第に痣と同じ緑色の変化し、数秒ののちに青い渦へと変化する。

そして、その渦から飛び出してきたのは…。

「うわああああ!!なんだってんだよ??出られなくなったと思ったら、いきなり追い出されるって…!?」

幻覚の中で見た、ホワイトタイガーを模したようなDホイール。

そして、バナナの形状の前髪が特徴的な遊矢そっくりな顔立ちの少年だった。

Dホイールは壁に激突するギリギリのところでとまる。

そして、ヘルメットを外して翔太に目を向ける。

「な、なあ…お前か!?お前が俺を助けてくれたのか!?」

(遊矢そっくりだが…やっぱり違うな)

似ているのは顔立ちだけで、髪型や目の色が違う。

それらはカラコンや髪を染め直して整えればどうにでもなるのだが、声色の違いをごまかすことはできない。

遊矢の少し高めの声ではないものの、ユートの低い理知的な声に似ている感じがした。

もっとも、その容姿から見ると理知的には見えず、感情のこもった抑揚のある声で、良く言えば正直、悪く言えば暴走族の類の荒々しい声に思えてくるが。

「いやぁーーー助かったぜ。次元を飛び越えていたら、急にそのはざまから出られなくなって、途方に暮れていたところなんだ!俺はユーゴ!あんたは??」

「勝手にギャーギャー言うな。ユーゴ?融合と韻が似ているな…」

融合という言葉に反応したのか、ユーゴの表情が笑顔から怒りに変化する。

「融合じゃねえ、ユーゴだ!!」

「韻が似ていると言っただけだろう?(ああ、なるほどな…こいつは遊矢以上の馬鹿だな)そんなに間違われたくないなら、バナナに改名しろ」

「バナナって…俺の髪型のこと言ってるのか!!?」

髪型をいじられたこともあり、更にユーゴの怒りが爆発する。

あまりにも正直なリアクションを見て、新しいおもちゃを見つけ、親に買ってもらって喜ぶ子供のような感情が心の中で芽生えた翔太はニヤリとしながら発言する。

「にしても、融合に間違われやすい韻にバナナと弄られそうな髪型…生きていくにはしんどい部分がたくさんあるな」

「だから融合もバナナも言うな!!もう我慢できねえ、デュエルで片づけてやるぜ!!」

Dホイールのデュエルディスク部分を展開させると、ユーゴは《スピード・ワールド3》を発動させようとする。

「待てってバナナ。こいつをふさいだら、ライディングデュエルに応じてやる」

「だーかーらー、バナナじゃねえって言ってんだろ!!」

激昂するユーゴを無視して、翔太は左手の痣の力で渦をふさぐ。

ユーゴは怒って視野が狭くなったためか、それを見ても何も反応がない。

そして、翔太は止めているバイクに乗る。

先日に翔太のバイクはレオコーポレーションの手でDホイールに改造された。

それと同時に、零児からランサーズ加入の記念としてマシンキャバルリーがそれの名前に付けられた。

キャバルリーには騎兵団という意味があるらしい。

遊矢と黒咲が持っているDホイールのようにカードに変形することはできず、追加機能もないものの、ライディングデュエルをするだけならば問題はない。

《スピード・ワールド3》を起動すると同時に、ユーゴが砂浜から路上まで移動してくる。

ヘルメット越しで顔は良く見えないが、少しは冷静さを取り戻しているようだ。

「へえー、こいつがあんたのDホイールか。サイドカーがついてんのに、車体は華奢でオフロード向きなんだな。ってことは、かなりの馬力が…」

「うるさいな、バナナ。こいつはもらい物だからな。俺でも詳しいことは分からない」

「だからバナナって言うな!!こうなったら、俺が勝ったらバナナって2度と呼ぶなよ!?」

(こいつ…本当に馬鹿だな)

Dホイールを見ると、おそらくシンクロ次元のデュエリストだと思われる。

そしてヴァプラ隊と零児から話を聞いたあたりでは、ライディングデュエルはシンクロ次元にしかない。

ということは、Dホイールはシンクロ次元にしかないということになる。

しかし、ユーゴは怒りでそのことすら見えなくなっているようだ。

翔太はため息をつきつつ、左腕にホルダーを装着し、ライディングデュエル用のデッキを装着する。

(ま、こいつならライディングデュエルの練習になるな)

「いくぜ、ライディングデュエルアクセラレーション!!!」

ユーゴのデュエル開始宣言と同時に、2台のDホイールが発進する。

「先攻は譲ってやる。少し、手札を確認したいからな」

「後悔するなよ、この暴言野郎!!」

 

ユーゴ

手札5

ライフ4000

 

翔太

手札5

ライフ4000

 

「俺のターン!俺のフィールドにモンスターに存在しないとき、手札から特殊召喚できる!《SRベイゴマックス》を特殊召喚!」

赤い装甲で金色の芯のある3つの独楽がユーゴの周りで回転しながら移動する。

3回点ほどした後、装甲の横側が展開して2本の鎌のような刃が飛び出す。

 

SR(スピードロイド)ベイゴマックス レベル3 攻撃1200

 

「《ベイゴマックス》の効果発動!このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから《ベイゴマックス》以外のSRを手札に加えることができる!俺はデッキから《SR赤目のダイス》を手札に加える!そして、そのまま召喚だ!」

赤い瞳孔と青い強膜でできた瞳がすべての面に描かれた金色の六面サイコロが現れる。

それと同時に6つの目から1つずつ赤い球体が射出されて、そのモンスターの周囲を旋回する。

 

SR赤目のダイス レベル1 攻撃100(チューナー)

 

「やはりチューナーモンスターか…」

実質手札消費1枚で素材となりうるモンスター2体を呼び出したものの、今の状況ではレベル4のシンクロモンスターしかシンクロ召喚できない。

出すと思われるシンクロモンスターは《魔界闘士バルムンク》か《アームズ・エイド》。

(問題は《赤目のダイス》か…)

翔太の目が《SR赤目のダイス》に向けられる。

そして、すぐにその予測が正しかったことが判明する。

「《赤目のダイス》の効果発動!こいつは召喚・特殊召喚に成功した時、《赤目のダイス》以外の俺のスピードロイドのレベルをターン終了時まで1から6のいずれかに変更できる!俺は《ベイゴマックス》のレベルを5に上げる!」

《SR赤目のダイス》が角を利用してその場で回転を始め、5つの赤い球体を《SRベイゴマックス》に向けて発射する。

球体をすべて受け止めた《SRベイゴマックス》がさらにスピードを上げ、金属剥離効果を引き起こして2つの質量を持った残像を生み出す。

 

SRベイゴマックス レベル3→5 攻撃1200

 

「これでレベル6のシンクロモンスターをシンクロ召喚できるか…ふん、バナナのくせにやるな」

「バナナじゃねえ、ユーゴだ!!くっそーどうせ間違われるなら、融合の方がましだ!!俺はレベル5の《ベイゴマックス》にレベル1の《赤目のダイス》をチューニング!十文字の姿もつ魔剣よ、その力ですべての敵を切り裂け!シンクロ召喚!現れろ、レベル6!《HSR魔剣ダーマ》!」

黒い球体を持つ青い大きなけん玉が球体を後ろにした状態で横向きに浮遊すると、球体の方が縦半分にゆっくりと開き、その中から青いフラットな頭部を持つ足の無いロボットが出現する。

おそらく、左腕部分になっている半分この球体が盾で、右腕部分になっている残りのけん玉のパーツが剣という意味なのだろう。

 

HSR(ハイスピードロイド)魔剣ダーマ レベル6 攻撃2200

 

「今度はけん玉だよ…」

そのあまりにもアンバランスな構造のシンクロモンスターを見た翔太は彼が本当にシンクロ次元のデュエリストであることを実感する。

「更に俺は《魔剣ダーマ》の効果発動!1ターンに1度、墓地の機械族モンスター1体を除外し、相手に500ダメージを与える!」

墓地から現れた青い霊体となっている《Sベイゴマックス》が《HSR魔剣ダーマ》の盾に吸収される。

そして、盾が青い光をおびながら回転し、翔太に向けて発射される。

「ぐうう…!!」

回転する盾がマシンキャバルリーに激突した後、左腕とつながっているワイヤーを利用して元の場所へ戻っていく。

ドッキングがすむと、回転が停止し、青い光も消えた。

 

翔太

ライフ4000→3500

 

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド!」

 

ユーゴ

手札5→3

ライフ4000

SPC0

場 HSR魔剣ダーマ レベル6 攻撃2200

  伏せカード1

 

翔太

手札5

ライフ3500

SPC0

場 なし

 

(ちっ…俺のターンが来る前にダメージか。まあ、問題はその除外効果だな…)

自分にダメージを与えた青いけん玉に悪態をつきつつ、除外された《SR赤目のダイス》を警戒する。

「(除外されたサイコロ…何か嫌な予感を感じさせる)俺のターン!」

 

翔太

手札5→6

SPC0→1

 

ユーゴ

SPC0→1

 

「俺は手札から《魔装陰陽師セイメイ》を召喚」

 

魔装陰陽師セイメイ レベル3 攻撃1000(チューナー)

 

「チューナーモンスター!?お前もシンクロ召喚狙いか!?」

「こいつの召喚に成功した時、手札からレベル4以下の魔装モンスター1体を特殊召喚できる。俺は手札から《魔装郷士リョウマ》を特殊召喚」

 

魔装郷士リョウマ レベル4 攻撃1900

 

手札消費に関してはユーゴに軍配が上がるものの、翔太のフィールドにシンクロ素材となるモンスター2体が現れる。

これでレベル7のシンクロモンスターを召喚できる状況になった。

「俺はレベル4の《リョウマ》にレベル3の《セイメイ》をチューニング。黄金の剛腕を持つ漆黒の戦士、その気高き力で道を拓け。シンクロ召喚!現れろ、《魔装剛毅クレイトス》!」

 

魔装剛毅クレイトス レベル7 攻撃2600

 

「くっそーー!攻撃力2600かよ!?けどよ…」

マシンキャバルリーに並行するように《魔装剛毅クレイトス》が黙々とそれと同じ速さでマラソンのランナーのように走る。

一時はそのレベル7のシンクロモンスターとは思えない攻撃力の高さに驚いたものの、段々その姿がシュールに思えてくる。

「バトルだ!俺は《クレイトス》で《魔剣ダーマ》を攻撃!ゴールデン・アッパー!!」

《魔装剛毅クレイトス》は雄たけびを上げると、手甲の五芒星を輝かせながら《HSR魔剣ダーマ》に向けて突撃する。

 

魔装剛毅クレイトス レベル7 攻撃2600→3600(ダメージステップ終了時まで)

 

「何!?《クレイトス》の攻撃力が一気に3600に??」

「このカードはエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターを攻撃するとき、ダメージステップ終了時まで攻撃力を1000アップする」

盾で《魔装剛毅クレイトス》の攻撃を防ごうと、それを向ける《HSR魔剣ダーマ》だが、その禿げ頭の男は左手でロボットの首部分を閉めながら、右手であろうことか盾をそのモンスターの左腕ごと引きちぎった。

電気信号がそのモンスターの危険性を伝え、逃走を図ろうとするも首を掴まれた状態では逃げることができず、今度は剣の部分を引きちぎられ、それで胸部にあるコアユニットを切り裂かれた。

「うわあああ!!なんてむちゃくちゃな攻撃なんだよ!?」

 

ユーゴ

ライフ4000→2600

SPC1→0

 

攻撃を終え、相手モンスターの消滅を見届けた大男が剣を投げ捨てて翔太の隣まで戻っていく。

「よくも俺のフェイバリットカードにあんな攻撃を…許せねえ!!」

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

ユーゴ

手札3

ライフ2600

SPC0

場 伏せカード1

 

翔太

手札6→3

ライフ3500

SPC1

場 魔装剛毅クレイトス レベル7 攻撃2600

  伏せカード1

 

「俺のターン、ドロー!!」

 

ユーゴ

手札3→4

SPC0→1

 

翔太

SPC1→2

 

2台のDホイールが左前に茶色い6階建てマンションがある丁字路を左折し、中心街への道を走行し始める。

「来たぜ、こいつならあのくそ野郎を倒せる!俺は《SRダブルヨーヨー》を召喚!」

緑色で黒い渦巻模様が描かれている2つのヨーヨーが縦回転しながら現れる。

数秒装甲した後は空に浮遊し、回転カッターを展開する。

 

SRダブルヨーヨー レベル4 攻撃1400

 

「こいつの召喚に成功した時、墓地からレベル3以下のSR1体を特殊召喚できる。蘇れ、《赤目のダイス》!!」

2つのヨーヨーが向き合いながらその場で旋回を始め、刃によって路上に半径2メートルの円を描く。

すると、その円が紫色の魔法陣に変化し、そこから《SR赤目のダイス》が飛び出す。

 

SR赤目のダイス レベル1 攻撃100(チューナー)

 

「またサイコロか…!!」

レベルを操作できる《SR赤目のダイス》の再来に警戒する。

《魔装剛毅クレイトス》はエクストラデッキから現れたモンスターに圧倒的破壊力を見せつけるが、カード効果に対する耐性が無に等しい。

《スクラップ・ドラゴン》や《カラクリ将軍無零》のような破壊効果や表示形式変更を行うシンクロモンスターの召喚を警戒しなければならなくなる。

「《赤目のダイス》の効果発動!《ダブルヨーヨー》のレベルを6に変化させる!」

《SR赤目のダイス》の6つの赤い球体を受けた《SRダブルヨーヨー》が4つの質量を持った残像を作り出す。

 

SRダブルヨーヨー レベル4→6 攻撃1400

 

「レベル6の《ダブルヨーヨー》にレベル1の《赤目のダイス》をチューニング!その美しくも雄々しき翼翻し、光の速さで敵を討て!シンクロ召喚!現れろ、レベル7!《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》!」

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

「《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》…なるほどな、それがお前の竜の名前」

幻覚の中で見たユーゴの竜を目にした翔太。

緑色のプリズムでできた美しい翼は仲間の仇である《魔装剛毅クレイトス》の姿を映し出している。

「バトルだ!俺は《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》で《魔装剛毅クレイトス》を攻撃!」

「攻撃力が劣っているのに攻撃だと!?」

頭部を軸に回転しながら突撃する《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》を迎撃するため、《魔装剛毅クレイトス》が五芒星を輝かせながら拳に力を入れる。

「そうだ!!そうやって効果を発動させろ!これでお前は自滅させてやるぜ!!」

「はぁ?」

「《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の効果発動!1ターンに1度、このカード以外のレベル5以上のモンスターが効果を発動した時、その発動を無効にし、破壊することができる!ダイクロイック・ミラー!!」

回転する《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の緑色の翼に電子基板のようなものが浮かび上がり、十数の緑色の光線が照射される。

その光線は停車している車両やビルの窓を反射して、すべて《魔装剛毅クレイトス》を貫いた。

全身を光線で貫かれた大男は何が起こったのかわからないまま緑色の粒子となり、その美しくも雄々しき翼に吸収されていく。

「《クレイトス》を吸収しただと!?」

「《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》は自分の効果によってモンスターを破壊した場合、ターン終了時までそのモンスターの元々の攻撃力を吸収する!」

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン レベル7 攻撃2500→5100

 

《魔装剛毅クレイトス》が破壊されたことで、翔太のフィールドから壁となるモンスターがいなくなる。

このまま攻撃対象を翔太に向けたならば、王手に賭けることができる。

「こ何時で終わりだぜ!《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》!!旋風のヘルダイブスラッシャー!!!」

回転速度をさらに増し、貫通力が増した《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》が翔太もろともマシンキャバルリーをスクラップに変えようとする。

「ちっ…罠発動!《ショック・リボーン》!!俺が受ける戦闘ダメージを半分にする!」

透明な薄いバリアに包まれた翔太に《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》が激突する。

「ぐおお、おお…!!」

衝撃によって翔太の体に痛みが発生し、小規模なソニックブームの発生によって翔太の頬や左腕に薄い切り傷ができる。

 

翔太

ライフ3500→950

SPC2→0

 

「(せっかくのスピードカウンターを…)そして、俺が受けた戦闘ダメージ以下の攻撃力を持つモンスター1体を墓地から特殊召喚する!復活しろ、《魔装陰陽師セイメイ》!」

 

魔装陰陽師セイメイ レベル3 守備1000(チューナー)

 

「よっしゃー!これで《魔剣ダーマ》の仇の筋肉爺をぶった倒せたぜ!」

ユーゴの喜びと連動するかのように、《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》が咆哮する。

(ちっ…厄介なモンスターだぜ。これだと俺の融合モンスターやシンクロモンスターを召喚しづらくなる…)

「俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド!それと同時に《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の攻撃力が元に戻る」

 

ユーゴ

手札4→3

ライフ2600

SPC1

場 クリアウィング・シンクロ・ドラゴン レベル7 攻撃5100→2500

  伏せカード3

 

翔太

手札3

ライフ950

SPC0

場 魔装陰陽師セイメイ レベル3 守備1000(チューナー)

 

《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》を見ながら、翔太は今の手札を見る。

(ライディングデュエルでは、《ムーンレィス》を召喚することはできない。一番いい方法とすれば、単純なパワー比べで勝利することだ。幸い、あの竜の攻撃力は2500。倒せない相手じゃないな)

ここで問題となるのはどのようにして攻撃力2500を上回るモンスターを召喚するかだ。

フィールドにはチューナーモンスターである《魔装陰陽師セイメイ》がいるが、それだけでは話にならない。

「俺のターン!」

 

翔太

手札3→4

SPC0→1

 

ユーゴ

SPC1→2

 

手札にきたカードを見た翔太は、再びユーゴを見てから、そのカードを発動する。

「俺は手札から《Sp-ペンデュラム・スリープ》を発動!俺の手札に存在するペンデュラムモンスター1体を表側表示でエクストラデッキに置き、俺のスピードカウンターを2つ上昇させる!」

「何!?ペンデュラムモンスターだと…!?なんなんだよそのカードは!!」

ユーゴの驚きに満ちた声を聞き、翔太の中に1つの確証が生まれる。

「(ペンデュラムモンスターを知らないってことは…まだこいつはペンデュラム召喚について知らないということだな。遊矢とはデュエルをしていないか…)俺は手札の《魔装剣士ローラン》をエクストラデッキへ送り、スピードカウンターを増やす」

ユーゴのDホイール以上のスピードとなったマシンキャバルリーが暗い夜道を走る。

一部の歩行者がこの今まで見たことのないデュエルに驚きつつ、じっと2人を見つめ、カメラを手にする人もいる。

(これは…さっさと片付けたほうがいいな)

 

翔太

SPC1→3

 

Sp-ペンデュラム・スリープ

通常魔法カード

(1):自分のスピードカウンターが1つ以上存在するとき、自分の手札に存在するPモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを表側表示で自分のエクストラデッキの一番上に置き、自分のスピードカウンターを2つ増やす。

 

「更に俺は手札から《魔装軍師オリヴィエ》を召喚!」

 

魔装軍師オリヴィエ レベル4 攻撃800(チューナー)

 

「こいつの召喚に成功した時、エクストラデッキに表側表示で存在する魔装剣士1体を特殊召喚できる。それと念のために言っておくけどな、ペンデュラムモンスターはシンクロモンスターやエクシーズモンスター、融合モンスターと違って特殊召喚モンスターじゃない。だから、蘇生制限はかからないぜ?」

くぎを刺すように説明をしながら、エクストラデッキから《魔装剣士ローラン》を手にしてモンスターゾーンに置く。

「更にこの効果で俺が《ローラン》を特殊召喚した場合、このカードのレベルを1つ変動させることができる。俺は《オリヴィエ》のレベルを1つ下げる!」

 

魔装軍師オリヴィエ レベル4→3 攻撃800(チューナー)

魔装剣士ローラン レベル5 攻撃1700

 

(レベル3のチューナーモンスター2体とレベル5のモンスター…これならレベル8のシンクロモンスターを召喚できる…ってちょっと待てよ、レベル3のチューナーモンスター2体ってことは!)

ユーゴの以前の戦いの経験が彼を激しく警告する。

警告する際に脳裏に見せたイメージは《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》。

そのわずかに後で翔太が行動に出る。

「俺はレベル3の《オリヴィエ》と《セイメイ》でオーバーレイ!獲物の首狩る鎌を研ぎ澄ませ、洞窟の中より鎖を放て!エクシーズ召喚!現れろ、《魔装賊徒バイケン》!」

上半身の右半分を露出させた茶色い着物姿で両目を隠し、型までの長さがある癖の強い黒い髪の男が現れる。

その男は裸足で、その手には刃の部分に五芒星が刻まれている鎖鎌が握られていて、着物の背中部分には梅の花の模様が派手に描かれていた。

獲物である《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》を見て、ニヤリと笑うと青い布でできた無地の手ぬぐいを頭にバンダナ上に着け、腰に巻いている敵の赤い返り血で色彩された帯をしめなおす。

 

魔装賊徒バイケン ランク3 攻撃1500

 

「シンクロ召喚の次はエクシーズ召喚を!?一体どうなってんだ!?召喚法は1人1つのはずだろ!?」

ユーゴの言葉に翔太はハァ、何言ってんだコイツと言いたげな表情を浮かべる。

侑斗と零児、遊矢という前例を見ていることもあり、複数の召喚法をデッキに入れるデュエリストがいるのも当たり前だろうというのが今の翔太の感覚だ。

そんな彼にはユーゴが5年近く前の世界から来た浦島太郎に見えてしまう。

もっとも、最近レオコーポレーションが制作しているマジェスペクターシリーズは現状、ペンデュラム召喚単体でカードカテゴリであるが。

「《バイケン》の効果発動。1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、俺のデッキから魔装モンスター1体を手札に加えることができる。俺はデッキから《魔装剣士ムネシゲ》を手札に加える」

《魔装賊徒バイケン》が鎖鎌を振り回し、それについている分銅を翔太のデッキにぶつける。

すると、デッキから指定されたカードが飛び、手札ホルダーにすっぽりと入る。

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・魔装陰陽師セイメイ

 

「更にこいつは1ターンに1度、装備カードとなって相手モンスター1体に装備させることができる!」

「俺のモンスターに装備するだと!?」

《魔装賊徒バイケン》がニヤリと笑みを浮かべ、鎖鎌を投擲する。

横に回転しながら鎖鎌が《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の肉体に合わせて大型化する。

「こいつを装備したモンスターの攻撃力・守備力は0になる!」

鎖鎌が翼や首、頭部、腕を縛り付けていき、身動きを封じられた《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》が落下する。

しかし、ユーゴは笑みを浮かべる。

「悪いな、《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》のもう1つの効果を発動!1ターンに1度、フィールド上のレベル5以上のモンスター1体のみを対象とするモンスター効果の発動を無効にし、破壊する!」

「何!?」

《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の翼部に再び電子基板のようなものが浮かび上がる。

すると、鎖鎌が緑色の光を帯びてその竜を解放する。

更に鎌の部分が外れて縦回転を始め、主である《魔装賊徒バイケン》を切り裂いた。

「当然、この効果で破壊しても《クリアウィング》の攻撃力はターン終了時までアップするぜ!」

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン レベル7 攻撃2500→4000

 

 

(ちっ…モンスター効果をぶつけるのも無理か)

《魔装賊徒バイケン》を墓地へ送りつつ、じっと《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》を見る。

ライディングデュエルの特性上、魔法カードの使用は限定される。

また、《スピード・ワールド3》の効果で破壊するという手もあるものの今のスピードカウンターではそれまで耐えるのは難しい。

「(くそ…《ミラーフォース》でもあれば!!)俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド!」

「ここで俺は罠カード《マグナム・ブースト》を発動!相手がスピードカウンターを3つ以上増やしたターン終了時に発動でき、俺のスピードカウンターを6つ増やす!」

「何!?」

「いっくぜぇーーーー!!!」

アクセルを踏み込み、公道であるにもかかわらず100キロ近いスピードを出しながら走り始める。

あっという間に翔太を抜かし、引き離していく。

(こいつ…事故するな)

 

ユーゴ

手札3

ライフ2600

SPC2→8

場 クリアウィング・シンクロ・ドラゴン レベル7 攻撃5100→2500

  伏せカード3

 

翔太

手札4→0

ライフ950

SPC3

場 魔装剣士ローラン レベル5 攻撃1700

  伏せカード1

 

マグナム・ブースト

通常罠カード

「マグナム・ブースト」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):相手がスピードカウンターを3つ以上増やしたターン終了時に発動できる。自分のスピードカウンターを6つ増やす。

 

「よっしゃあ!!これで…って!!!?」

スピードに魅了されるユーゴに水を差すような事態が目の前で起こる。

車がいないことを確認し、大急ぎで道路を横断する茶色いぶちのある白猫。

100キロ近いスピードを出している今の状況でブレーキをかけても間に合わない。

「く…うおおおお!!!」

ブレーキをあきらめたユーゴは逆に更にアクセルを踏み込み、スピードを上げる。

「あのバナナ…ひき殺す気か!?」

「だあああああ!!」

翔太の言葉を無視するように、ユーゴはウィリー走行を始める。

そして、猫に接触する数十センチ前にバイクごとジャンプをした。

猫を引かずに済み、ユーゴはフウと息をしながらカードをドローする。

 

ユーゴ

手札3→4

SPC8→9

 

翔太

SPC3→4

 

既にユーゴのスピードカウンターは9個で、翔太のライフはわずか950。

《スピード・ワールド3》でのライディングデュエルではライフ400以下がデッドラインとなっている。

なぜなのかはこれからのユーゴの行動で分かる。

「俺は《スピード・ワールド3》の効果を発動!スピードカウンターを3つ取り除くことで、手札をすべて見せて、その中のSp1枚につき、400のダメージを与える!俺の手札はこれだ!!」

ホルダーの最後部にある青いボタンを押すと、マシンキャバルリーのディスプレイにユーゴの手札の内容が送信、表示される。

 

ユーゴの手札

・ダイスロール・バトル

・Sp-スピード・ストーム

・スピード・ブースター

・Sp-ソニック・バスター

 

「俺の手札のSpは2枚!800のダメージだ!!」

着地をしたユーゴのDホイールの後部にソリッドビジョンでできたミサイルポッドが出現し、マシンキャバルリーに狙いが定まる。

そして、すべてのミサイルをそれに向けて発射した。

「今の俺のスピードカウンターなら、2回この効果を発動してお前を倒せる!!」

「ちっ…俺は罠カード《魔装の狂宴》を発動!俺のフィールド上に魔装モンスターが存在し、俺がダメージを受ける時、墓地から攻撃力2000以下の魔装モンスター1体を特殊召喚する。俺は《魔装賊徒バイケン》を特殊召喚する!」

《魔装賊徒バイケン》が特殊召喚されると同時に鎖鎌を振り回す。

鎖につながれた分銅が時速140キロ近いスピードで飛び、ミサイルを次々と破壊していく。

「そしてこのターン、俺はこの効果で特殊召喚したモンスターの攻撃力以下のすべてのダメージを0にする」

「くそ…!ここはもう1つの効果で破壊しておくべきだったぜ…!」

悔しそうに《スピード・ワールド3》3つ目の効果のテキストを見る。

仮にスピードカウンターを8つ取り除くことで発動できる破壊効果を発動した場合、翔太に《魔装の狂宴》を発動させることはなく、更に翔太にダメージを与えることができた。

この判断ミス1つだけでも、ライディングデュエルでは大きな影響を与えてしまう。

 

魔装賊徒バイケン ランク3 守備1200

 

ユーゴ

SPC9→6

 

Sp-ソニック・バスター(アニメオリカ)

通常魔法カード

(1):自分のスピードカウンターが4つ以上ある場合に自分フィールド上のモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターの攻撃力の半分のダメージを与える。

 

魔装狂宴

通常罠カード

(1):自分フィールド上に「魔装」モンスターが存在し、自分が相手によって戦闘ダメージまたは効果ダメージを受ける時、自分の墓地に存在する攻撃力2000以下の「魔装」モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。その後、ターン終了時まで自分はこの効果で特殊召喚したモンスターの元々の攻撃力以下の戦闘ダメージおよび効果ダメージを受けない。

 

「だったら、少なくともその《ローラン》だけは倒すぜ!《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》で《ローラン》を攻撃!!旋風のヘルダイブスラッシャー!!!」

《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の回転突撃が《魔装剣士ローラン》に襲い掛かる。

激突と同時に剣士は消滅するが、翔太には何も影響がなかった。

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド!」

 

ユーゴ

手札3

ライフ2600

SPC6

場 クリアウィング・シンクロ・ドラゴン レベル7 攻撃2500

  伏せカード4

 

翔太

手札0

ライフ950

SPC4

場 魔装賊徒バイケン ランク3 守備1200

 

なんとかこのターンの攻撃をしのぐことはできた。

しかし。先ほどユーゴの手札に《Sp-ソニック・バスター》と《Sp-スピード・ストーム》の存在を確認した。

これらのカードの発動を許した時点で、翔太の敗北が決定してしまう。

(ライフ残り950、手札0、スピードカウンター4。ま…普通ならあきらめるだろうけどな)

翔太はデッキトップに指を駆ける。

「曲りなりにも俺はランサーズの一員。バナナに負ける筋合いはねえな」

「だーかーらー、バナナじゃねえ、ユーゴだ!!」

「うるせえな、バナナ。俺のターン!」

怒るユーゴを尻目に翔太はカードをドローする。

 

翔太

手札0→1

SPC4→5

 

ユーゴ

SPC6→7

 

ドローしたカードを見て、唇の右側を少し上へあげる。

「俺は手札から《Sp-ローグ・ペンデュラム》を発動!俺のスピードカウンターが5つ以上あるとき、フィールド上に存在するモンスター1体のレベルを5つ下げることで発動できる」

「何!?」

《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の頭上に7つのレベルマークが現れ、そのうちの5つが爆発する。

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン レベル7→2 攻撃2500

 

「そして、エクストラデッキに表側表示で存在するペンデュラムモンスター2体をペンデュラムゾーンに置き、その後…デッキからカードを1枚ドローする」

翔太のエクストラデッキからスケール6の《魔装剣士ローラン》とスケール5《魔装郷士リョウマ》が自動排出され、ペンデュラムゾーンに置かれる。

2体のモンスターはそれぞれ翔太の左右に浮遊し、青い光の柱を生み出す。

その後でデッキからカードをドローし、そのカードを見る。

「あのバカじゃねえが、俺はカードに選ばれてるみたいだな」

「はぁ?」

「俺は手札から《Sp-オーバーレイ・コースチェンジ》を発動!俺のスピードカウンターを4つ取り除き、デッキからカードを1枚ドローする。そして、発動後このカードを墓地へは送らず、フィールド上に存在するエクシーズモンスター1体のオーバーレイユニットにする」

ソリッドビジョンに発動されたカードが現れると、それは緑色のオーバーレイユニットとなって《魔装賊徒バイケン》の鎖鎌の五芒星に吸収されていく。

 

翔太

SPC5→1

 

Sp-ローグ・ペンデュラム

通常魔法カード

(1):自分のスピードカウンターが5つ以上存在し、自分のPゾーンにカードがないとき、フィールドに存在するモンスター1体のレベルを5つ下げることで発動できる。自分のエクストラデッキに表側表示で存在するPモンスター2体を自分のPゾーンに置き、デッキからカードを1枚ドローする。

 

Sp-オーバーレイ・コースチェンジ

通常魔法カード

(1):フィールド上にXモンスターが存在し、自分のスピードカウンターを4つ取り除くことで発動できる。デッキからカードを1枚ドローする。発動後、このカードは墓地へ送らずにフィールド上に存在するXモンスター1体の下に重ねてX素材にする。

 

「てんめえ、スピードスペル2連発だと!?ふざけんな!!罠発動!《バックストレート》!!ターン終了時、発動したスピードスペルの数だけ俺のスピードカウンターが増えるぜ!!」

ユーゴは更にスピードカウンターを稼ぐという手に出る。

スピードカウンターを11個にすれば、1ターンの間に破壊効果とダメージ効果を両方使えるようになる。

仮にそこまで届かなかったとしても、もう1つユーゴには手がある。

「更に俺は永続罠《スピード・ブースター》を発動!俺のスピードカウンターが相手より上回っている場合、相手ターンに1度だけ相手モンスターの攻撃を無効にする!更に俺のターンに1度、俺のスピードカウンターとお前のスピードカウンターの数の差×100のダメージを与える!!」

先程のターンから備え付けられていたミサイルポッドが強制排除され、代わりに上部にミサイルポッドがついた黒い大型のブースターが装着される。

スピードカウンターの数で有利になっているユーゴをさらに優勢に導くカードだ。

 

バックストレート

通常罠カード

「バックストレート」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):ターン終了時、自分のスピードカウンターがこのターン発動された「Sp」魔法カードの数だけ増える。

 

スピード・ブースター(アニメオリカ・調整)

永続罠カード

(1):スピードカウンターが相手より多い場合に以下の効果を発動する事ができる。

●相手ターン:1ターンに1度、相手モンスター1体の攻撃を無効にすることができる。

●自分ターン:1ターンに1度、自分のスピードカウンターと相手のスピードカウンターの差×100ダメージを与える。

 

「それで勝利を確信したつもりかよ?俺は《魔装剣士ローラン》のペンデュラム効果を発動。1ターンに1度、ペンデュラムゾーンに存在するペンデュラムモンスター1体のペンデュラムスケールを2つ変動させる。俺は《リョウマ》のスケールを2つ下げる。」

《魔装剣士ローラン》が両手で剣を手にとり、天に掲げると、《魔装郷士リョウマ》が生み出す光の柱の輝きが強まっていく。

そして、輝きが元に戻ると同時にペンデュラムスケールが変化する。

 

魔装郷士リョウマ(青) ペンデュラムスケール5→3

 

「これで俺はレベル4と5のモンスターを同時に召喚可能。更に俺は《バイケン》の効果を発動。1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、デッキから魔装モンスター1体を手札に加えることができる。俺はデッキから《魔装銃士マゴイチ》を手札に加える」

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・Sp-オーバーレイ・コースチェンジ

 

「くっそー!サーチしやがった!!」

「来たれ、時の果てに眠りし英雄の魂。漆黒の魂と契約し、封印から解き放たん!ペンデュラム召喚!来い、《魔装斬鬼ロクベエ》《魔装銃士マゴイチ》!」

2メートル近い身長で鬼の2本角をモチーフとした刺青を右頬につけた野武士髭で整いのない、伸ばし放題の長髪の中年男性が現れる。

茶色い飾り気のない無地の甲冑を着用していて、《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》に目を向けると、背中に刺している大太刀を抜く。

その大太刀の柄頭の部分には五芒星が刻まれている。

そして、翔太たちが走る道路付近のビルの屋上から《魔装銃士マゴイチ》が滑空を始める。

 

魔装斬鬼ロクベエ レベル4 攻撃1800

魔装銃士マゴイチ レベル4 攻撃1600

 

「《ロクベエ》の効果発動!こいつは手札からペンデュラム召喚に成功した時、俺のペンデュラムゾーンに魔装と名のつくカードが存在する場合、フィールド上に存在する魔法・罠カード1枚を墓地へ送る。俺はお前の《スピード・ブースター》を墓地送りにする!」

「何!?」

《魔装斬鬼ロクベエ》がユーゴの前方20メートル先に立ち、大太刀を構えながらにやりと笑う。

ユーゴは先ほどのように跳躍して回避するわけにはいかず、やむなく車線変更する。

その際にユーゴが今いる車線への注意をわずかに祖刺すわずかな時間の間にそのモンスターは大太刀で《スピード・ブースター》を切り裂いた。

「くっそーーー!!《スピード・ブースター》が!!」

爆発の危険性から、《スピード・ブースター》が自動的に強制排除され、路上に転がる。

爆発寸前のそのスクラップを踏みつぶした後で、《魔装斬鬼ロクベエ》が翔太の傍へ戻っていく。

 

魔装斬鬼ロクベエ

レベル4 攻撃1800 守備200 闇属性 悪魔族

【Pスケール:青4/赤4】

「魔装斬鬼ロクベエ」の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。

(2):自分フィールド上に存在するモンスターが「魔装騎士」モンスター1体のみの場合に発動できる。Pゾーンに存在するこのカードを自分フィールド上に攻撃表示で特殊召喚する。

【モンスター効果】

「魔装斬鬼ロクベエ」のモンスター効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードが手札からP召喚に成功したとき、自分Pゾーンに「魔装」カードが存在する場合、フィールド上に存在する魔法・罠カード1枚を対象に発動できる。そのカードを墓地へ送る。

 

「そして、《バイケン》の効果を発動!《クリアウィング》を拘束しろ!!」

「バカか!?《クリアウィング》の効果は…あ!!?」

《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の効果を発動しようと思った瞬間、ユーゴがはっとする。

「そうだ、バナナ。今のコイツのレベルは2。その効果は使えないな」

再び《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の肉体を拘束する鎖鎌。

先程はダイクロイックミラーによって消滅させることができたが、今の状態では太刀打ちできない。

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン レベル2 攻撃2500→0

 

「情けないぜ…モンスター効果を防ぐ《クリアウィング》がモンスター効果で封じ込められるなんてよ…」

悔しそうに伏せている2枚のカードを見る。

カード効果による破壊を防ぐための《悲劇の引き金》、そして戦闘破壊から守る《スピン・バリア》だ。

しかし、今のこの状況ではその2枚は何も意味を持たない。

 

スピン・バリア

通常罠カード

(1):自分フィールド上に存在するレベル5以上の風属性・ドラゴン族のSモンスターが攻撃対象となったときに発動できる。その攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了させる。このカードを発動したターン終了時、自分の墓地に存在するレベル7以下の風属性Sモンスター1体を自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターは次の自分のターン終了時までチューナーとして扱う。

 

「こいつで終わりだ…バナナ!!俺は《マゴイチ》と《ロクベエ》で攻撃する!」

「くっそおおおお!!!」

動きを封じられた《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》が路上に落下し、屋上から《魔装銃士マゴイチ》がその頭部を狙撃する。

そして《魔装斬鬼ロクベエ》が動かなくなったモンスターの肉体を飛び越え、大太刀でユーゴを攻撃する。

「お…俺は…バナナじゃ、ねえ…」

 

ユーゴ

ライフ2600→1000→0

 

魔装賊徒バイケン

ランク3 攻撃1500 守備1200 エクシーズ 闇属性 サイキック族

「魔装」レベル3モンスター×2

「魔装賊徒バイケン」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できず、(2)の効果はデュエル中1度しか発動できない。

(1):相手フィールド上に存在するモンスター1体を対象に発動できる。自分フィールド上に存在するこのカードを装備カード扱いとしてそのモンスターに装備する。装備モンスターの攻撃力・守備力は0となる。

(2):このカードを装備したモンスターが破壊されることによってこのカードが墓地へ送られた時、このカードを自分フィールド上に表側守備表示で特殊召喚することができる。その後、自分の墓地に存在するレベル3の「魔装」モンスター1体をそのモンスターの下に重ねてX素材にする。この効果で特殊召喚されたこのカードの効果はターン終了時まで無効化される。

(3):1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除くことで発動できる。デッキから「魔装」モンスター1体を手札に加える。

 

「ちっ…てこずらせやがって。魔装騎士で攻撃できなかった」

《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》と同様、記憶の鍵である可能性のある《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》を魔装騎士で倒すことができなかったことを少し悔みながら、マシンキャバルリーを降りた翔太が強制停止したDホイールに乗ったままのユーゴに近づく。

「くっそー…リンを取り戻すまで、負けるわけにはいかねえのに…」

「リン…そいつはお前の女か?」

「な…!?」

翔太を見たユーゴが顔を真っ赤にする。

「そ、そういう関係じゃねえし!それに、勝手に聞くんじゃねえ!!」

「あーあー、それは悪かったなバナナ」

「だーかーらー、バナナじゃねえ、ユーゴだ!!それなら融合と間違われた方が何百倍もマシだぜ…って!!?」

更に翔太に文句を言おうとしたが、その前に彼によって胸ぐらをつかまれる。

「ななな、なんだよ!!?なんで俺を…」

「悪いけどな、お前にちょっと尋ねたいことがある。アンティルールだ」

「はあ!!?そんなん聞いてねえぞ!!??」

「今決めた」

それからユーゴは堰を切ったように、勝手に決めんじゃねえやいい加減本名で呼びやがれとか言っていたが、翔太は全く聞かずに彼を路地裏へ連行した。




翔太にもライディングデュエルをさせましたが、いかがでしたか?
ライディングデュエルの要素、そしてまだまだ未知の領域のあるSRの都合上、ユーゴには少しアニメとは異なる戦術をさせてみました。
さあ…これから翔太による尋問が始まります。


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第41話 尋問と白い事実

「ほら、特等席だ」

「うわあ!!何が特等席だ!?めちゃくちゃくっせえぞ!!」

翔太に片手で持ち上げられ、投げ飛ばされたのは路地裏にある黒いごみ袋の山。

中身の腐った魚の骨や野菜、果物の皮が出てきて、悪臭がユーゴの鼻につく。

「おいおい、お仲間を臭いというなよ。バナナ」

「バナナじゃねえ、ユーゴだ!!」

「お前の本名なんて知らないな。じゃあ、話してもらうぜ。シンクロ次元と融合次元の関係をな」

「融合じゃねえ、ユーゴだ!!」

「誰もお前を融合なんて言ってねえよ、バーカ」

反射的に融合に反応したユーゴを馬鹿にしつつ、懐から前にオベリスクフォースから鹵獲したデッキを見せる。

「こいつは…?」

「融合次元のデッキだ。こいつは見たことあるか?」

デッキの中から《古代の機械猟犬》とそのモンスターに関連する融合モンスターをユーゴに見せる。

「…いいや、見たことねーな。にしても、融合モンスター…初めて見たぜ」

「初めて見た…ってことは、シンクロ次元は融合次元と関係がないってことか?」

「ああ。って、そもそも融合次元って何だよ?それに、ここはどこの次元なんだよ??」

キョロキョロ周囲を見ながら、首をかしげる。

目や体の動きを見て、そして彼自身の性格を見ると嘘を言っていないようだ。

「ここはスタンダード次元だ。融合次元と戦争中だ」

「せ、戦争!?にしては…静かだな」

「撤退したからな。で…なんでお前は次元を飛び越えてんだ?その目的は?」

シンクロ次元と融合次元が無関係であることが分かった以上、翔太が次に聞きたい質問はそれだ。

融合次元のデュエリストやユーゴがどのようにして次元を超えたのか、その術を知りたいのだ。

分かっていることとしたら、素良がやったようにデュエルディスクに備え付けられている装置を起動して次元を移動したということ程度だ。

また、シンクロ次元と融合次元が無関係であるならば、ユーゴには次元を越える理由はないはずだ。

「それは…探してんだよ、幼馴染を…」

「幼馴染?」

「ああ!さらわれたんだ、異次元のデュエリストに!!だから次元を越えて探してんだ!」

「…で、その幼馴染は!」

「こいつだ。名前はリン!」

懐から写真をだし、翔太に見せる。

緑のボブヘアーで茶色い瞳であること以外、背丈と顔立ちは柚子とセレナに似ている。

服装は青と白とピンクのトリコロールのライダースーツで、右腕には構造は良くわからないが2人と同じようにブレスレッドをつけている。

写真を見せられた翔太はにやりと笑う。

「な、なんだよ!?」

「女の写真を懐に…痛い奴だな、バナナ」

「てんめえ…俺をどこまでおちょくったら…」

青筋を立てて、怒りはもはや頂点に立つ寸前になっている。

そんな彼の心境をわざと無視し、翔太の尋問は続く。

「で、どうやって次元を越えてんだ?」

「こいつのおかげだよ」

デッキケースから《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》を取り出し、翔太に見せる。

「リンは俺そっくりの顔の奴にさらわれた。こいつはリンがさらわれた時に出てきたんだ。そして、こいつの力で次元を越えてる。で、最初に着いたのがエクシーズ次元だ。そこでまた俺そっくりの顔で、黒い服の奴と会った…」

「で、エクシーズ次元がリンをさらったと早とちりして交戦。融合の手先とみなされた…か?」

黒咲から聞いた話によると、エクシーズ次元にいたころにユートとユーゴが交戦した。

その時黒咲は妹である瑠璃という少女を遊矢そっくりの少年にさらわれていて、現れたユーゴを犯人と誤解してしまった。

ユーゴもまた、同じような誤解をした結果、融合次元から見れば都合のいいつぶし合いをすることになってしまった。

それが融合の手先疑惑の真相のようだ。

「バナナ、お前が戦ったエクシーズ次元のデュエリストは犯人じゃない。犯人は今お前に渡しているデッキの持ち主、融合次元のデュエリストだ」

「何!?じゃあ…エクシーズ次元は敵じゃなかったのかよ!?」

「そうだ。で、あの黒い服を着た奴はユートで、そいつも仲間を融合次元のデュエリストにさらわれている」

「嘘だろ…?」

翔太から言われた事実にユーゴが頭を抱える。

今まで次元を何度も越えたものの、行ったことのある次元はこことエクシーズ次元、シンクロ次元のみでなぜか融合次元へ飛んだことがない。

まるで《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》が融合次元自体を避けているかのように…。

「今、スタンダード次元では融合次元と戦うための組織、ランサーズを結成している。仮にその写真の女を助けたいんなら、俺からボスに掛け合ってもいい」

「そのランサーズってところに入れば、リンを助け…!!?」

急にユーゴの《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》のカードが白く光り始め、それと同時にユーゴと彼のDホイールも同じ色の光に包まれていく。

「お、おい!?ちょっと待てよ、《クリアウィング》!!俺はまだ飛ぶ訳にはいかないんだ!!」

「バナナ、何してんだ?」

「バナナじゃねえユーゴだ!!待ってくれ!俺はランサーズに…!!」

必死な願いもむなしく、白い光と共にユーゴが消えてしまう。

彼のDホイールも共に…。

「ちっ…あいつ。鹵獲したデッキを持っていきやがって…」

消えたとき、ユーゴは融合次元のデュエリストのデッキを持ったままだった。

ユーゴに見せた融合モンスターカードは翔太の手元に残っているものの。

(遊矢に顔立ちの似ている奴がこれで3人。柚子は4人、ってことは、もう1人いるってことだな…遊矢そっくりの奴が)

遊矢、ユート、ユーゴのデッキには召喚法の名前の入った竜を持っている。

なぜ遊矢と柚子に似た人物がどの次元にも存在するのか?

そして、彼らにどのような関係があるのか?

(少なくとも、シンクロ次元は敵じゃないということは分かった。零児には良い手土産になりそうだ)

「翔太くーーん!!」

「ん…?」

伊織の声が聞こえ、少しうんざりした表情を見せながら路地裏から出てくる。

「翔太君、なんでここにいるの??ずーっと施設に戻ってきてないから、心配したぞー?」

伊織はデュエルディスクのマップ画面を翔太に見せる。

マップには翔太のマシンキャバルリーのある場所にマークがついていた。

ランサーズのメンバーのデュエルディスクやDホイールにはGPS機能が搭載されていて、そのメンバーにのみ居場所が全員認知できるようになっている。

「野暮用だ。…で」

翔太は伊織の後ろにいる2人の少女に目を向ける。

セレナと柚子で、2人ともなぜか顔を真っ赤にしている。

「なんでその2人が一緒にいるんだ?ソフトボールの助っ人に行っていたんじゃなかったのかよ?」

「ええっと、それは…」

目をうろうろさせながら、顔に汗を出す。

そのことから、助っ人の話が嘘だったことがわかる。

「…で、本当は何をしていたんだ?」

 

一方、ここは舞網市とは全く異なる場所。

ボロボロなコンクリートでできた廃ビルや工場、ツギハギのあるブルーシートが屋根代わりとなっているバラック、十数年前から整備されていない、ひび割れや凸凹のある道路。

上を見上げると青い反りのある気取ったデザインの柱に支えられたハイウェイがあり、その先にはいくつもの同じ柱に支えられた空中都市のような構造物が存在する。

その都市は地上とは異なり、豪華な屋敷やスタジアム、そして高さ200メートル以上が当たり前の超高層建築物がいくつもあり、地上との格差を如実に表している。

この、公共サービルのかけらもない地上の片隅で小さな事件が起こっていた。

「あーあー、なんでわざわざこんなところをでテスト走行しなきゃならないんだー?」

「言うなよ、どうせ上の道はお偉いさんの皆様専用だ」

「けっ!エリートとは違い、俺たちは丘でウロウロかよ」

真夜中のボロボロな道路の上を走る青い1000キロ近い重さと20メートル後半くらいの全長があるであろうトレーラーをけん引する同じ色のトラックが走っている。

トレーラーの側面とトラックの前面には白くSEQURITYという文字が書かれている。

先程話している2人は緑色のジャケットでオレンジ色のスカーフを首に巻き、左胸部分に五芒星が中央に描かれている金色の横長長方形のバッジをつけている。

頭部は白と青が基調のヘルメットをつけ、目は黒いサングラスで隠されているために肌が白いという共通点以外、顔や体格の特徴の判別をつけることができない。

「にしても、こんなにでかいトレーラーが何で必要なんだ?」

「なんでもコモンズにいる俺たち治安維持局に反抗的な奴らを摘発するための前線基地にするんだとさ」

「はっ!といってもよぉ、反抗的なのはトップスの貴族様に対してだろ?全く、俺たちは汚れ役かよ?」

助手席に座る男がうんざりしながら外の景色を見る。

そんな彼を同情しながら、運転席の男が運転席の付けられている無線通信機を起動する。

「こちらトレーラー。テスト走行はあと1キロ走行で終了。これより、ピットへの帰路につく、以上」

通信を切ると同時に天井部分から大きな音がする。

「なんだ!!?」

「おいおい、コモンズのいたずらか??」

今走行している場所には何軒か廃棄されたビルが存在し、そこから物を投げればトレーラーの天井にぶつけることは可能だ。

「はあ…仕方ねえな!!」

2人の男がトレーラーから降り、右側にあるビルを手持ちのライトで照らす。

壁が崩れていて、外から見ても誰かがいると丸わかりになるのだが、誰の姿も見えない。

「おっかしいなぁ…一体何が??なあ、何か見え…!?」

運転していた男が右隣にいる助手席の男に目を向けると、そこには彼がうつぶせで倒れていた。

「お、おい…何寝てるんだ??おい!!」

何が起こったのかわからず、周囲を見渡そうとすると、背後から冷たい気配を感じる。

身動きを止め、静かに唾を飲む。

「お、お前…コモンズか!?セキュリティに反抗すると、収容所送りになるぞ??」

「…」

背後にいると思われる人物は応答することなく、右手に持っている銃の撃鉄をおろし、彼の背中に向ける。

「や、やめろ…!!俺は治安維持局の…!!!」

言い終わらないうちに銃弾が背中にぶつかり、男は静かに倒れた。

隣に倒れている仲間と同じように。

「安心しろ、ゴム弾だ」

銃を持った男は運転手の懐から車の鍵とデッキを抜き取る。

そして、もう1人の男のデッキを奪うと、気絶している2人を建物にあるゴミ箱に隠す。

更に実弾を使って、2人が装備していたヘルメットの通信装置を破壊した。

「そのトレーラー、使わせてもらう」

トレーラーに乗り、静かに発進させる。

2代目の運転手は黒いベースボールキャップをかぶり、紺色のスカーフで口と鼻を隠している。

また、上半身を茶色いジャケットコートで包み、下半身は青いデニムパンツを穿いている。

そして、わずかに存在する街灯に照らされた彼の瞳の色はモスグリーンだ。

トレーラーはピットへの道を反転し、暗い街の中へ消えていく。

治安維持局に新型トレーラーが消息を絶ったという連絡が届いたのは、その事件から1時間後のことだった。



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第42話 伊織の放課後

夕方、レオコーポレーション社員寮の入り口前で、トルネイダーに乗って戻ってくる侑斗にウィンダが手を振る。

今の彼女の服装は自身がいつも着ているマントと同じ色の半そでTシャツとセミショート丈で水色のスカート、そしてアクセサリーとしてガスタの印がついたペンダントを首にぶら下げている。

それに対して侑斗は薄緑のライダーズジャケットに白いポロシャツ、茶色いメッシュタイプズボン姿で、同じペンダントを首にぶら下げている。

「待たせてごめんね?急に零児君から呼び出されちゃって…」

「んーん、お疲れ様!」

やさしく微笑みながら、侑斗の右頬に軽くキスをする。

キスされた場所に右手のひらを置き、顔を赤くした侑斗はすぐにトルネイダーを車庫へ入れる。

 

「ふーーん、恋人同士になるとキスは当たり前なのかー…。それにしても、剣崎さんってウブなんだー」

「い、伊織…このためにあたしをここへ??」

「なんで私まで…」

伊織が物陰から双眼鏡で侑斗とウィンダの姿を見る伊織のそばには柚子とセレナがいる。

セレナの今の服装はアカデミアのものではなく、赤いジャケットに黒いシャツと白いハイネックの重ね着、白いミニスカートになっている。

「えー?だってセレナちゃんが剣崎さんとウィンダさんがデートに行くって教えてくれたじゃん。それなら、柚子ちゃんとセレナちゃん、そして私で将来のための勉強を…」

「しょ、将来のためって…」

柚子の脳裏になぜか遊矢の笑顔が浮かぶ。

そして、そんな彼の隣で手をつなぐ自分自身の姿も…。

その瞬間、柚子の顔が一気に赤くなってしまう。

「もしかしたら…あたしも、遊矢と…」

真っ赤になりながら誰にも聞こえないくらいの小声でそう口にする。

「くだらない。男と女がイチャイチャする姿を見るなんて。私は帰る」

「まーまー、セレナちゃんも将来は誰かのお嫁さんになるかもしれないんだよ?」

帰ろうとするセレナの腕を掴みながら、双眼鏡で2人をじっとみる。

セレナは逃げようと何度もぐいぐい腕を引くが、なかなか解放されず柚子に助けを求めるために目を向けるが、トリップしてしまった彼女には全く歯牙にもかけられなかった。

(こ、これが…人間と精霊のカップル…)

柚子と同じく顔を真っ赤にするセラフィムがじっと2人の様子を見る。

同じ精霊であるためか、セラフィムは一目でウィンダが実体化している精霊であることを見破っていた。

彼女曰く、人間には感じられないオーラというものが精霊には共通して存在しているらしい。

 

「うわぁー、何度もここにはいくけど、にぎやかだねー!」

「ハートランドシティとは違う趣があるね」

寮を離れた2人が向かったのは舞網市の商店街。

耐久ガラスによって作られたアーチで歩道が覆われていて、食材を買いに来た主婦や晩酌の酒とつまみを探すサラリーマン、そして放課後デートを楽しむ高校生や大学生のカップルが多く存在し、シャッターで閉じた店は存在しない。

「あ、ユウ!!これ食べたい!」

ウィンダは遊戯王のカードを集めて作った《クリボー》の絵を展示している白い屋台を指さす。

屋台ではサービスエリア限定のアクションカードクレープが特別に限定販売されていて、店主の大男が作っている。

「ねえねえ、いいでしょユウー?」

「分かったから、そんなに引っ張らないで」

苦笑し、ウィンダの頭をやさしくなでた後で、侑斗は彼女と一緒に屋台の前まで歩いていく。

一方、商店街にある高さ160センチ近い熊のプラモデルの後ろ側に隠れている伊織たちは…。

「んー?翔太君にはこーゆー優しいところがほとんどないなー。多分、このシチュエーションだと知らね、とか買っていいけどお前のおごりでな、とか言いそう」

「ウィンダさん…うらやましい…」

(…こうなるくらいなら、アカデミアに戻ればよかった)

ちなみに、そこでクレープを焼いている男がボマーだったということには伊織は気づかなかった。

 

「うん、ここでならゆっくり食べることができるよ」

クレープを持ち、手をつないでしばらく歩くと、商店街の中心部にある、ベンチと芝生だけのシンプルな小さい公園に到着した。

2人は2人用ベンチに腰を下ろすと、クレープを食べ始める。

「んーー、アクションカードクレープすごくおいしいね!」

「うん。僕たちの世界にもこういうスイーツがあるといいな…」

「あ…そうだ!ねえねえユウ!」

「どうしたの?」

急にポンポン肩をたたかれ、何だろうと思いながらウィンダを見ると、彼女は笑顔で糸口だけ食べたクレープを侑斗に口の傍まで持っていく。

「あーーん…」

クレープの断面からは甘いチョコレートソースとスライスされた苺、そしてアクセントとしてのドラゴンフルーツが見える。

それを見た瞬間、ウィンダが何をしたいのかわかり、顔を赤くする。

「そ、それって間接キス…」

「もー、私たちはもう恋人同士なんだよ?もしかして…食べたくないの?」

少し悲しげな表情をしながら少し首を横に傾ける。

それを見た侑斗は…。

「…そんな、食べたいに…決まってる…」

顔を真っ赤にさせつつ、ゆっくりと目を閉じて口を開く。

するとウィンダはすぐに笑顔になって侑斗の口にクレープを咥えさせる。

ゆっくりと噛み切った侑斗はしばらく租借した後でそれを飲み込む。

「おいしい…?」

今度は笑顔で首を傾けたウィンダに侑斗は顔を赤くしたまま頷くしかなかった。

「じゃあ、今度はユウが食べさせて?」

どんどんウィンダにペースが持っていかれている。

それで少し負けてるなと思った侑斗が起こした行動は…。

「…いいよ」

そう言いつつ、自分のオレンジとイチゴ、パイナップルが入ったクレープを全部食べてしまう。

「あーーー!!ユウ、ひど…」

頬を膨らませながら文句を言おうとしたウィンダに侑斗が突然キスをする。

そして、ゆっくりとそのまま口を開いて自分の口の中のクレープをウィンダの口の中に運んでいく。

びっくりし、侑斗以上に顔を赤くしたウィンダもお返しにと口の中に残る自分のクレープを侑斗の口の中へと運んでいく。

2人の口の中は2種類のバリエーションのクレープと甘いキスの味で包まれていた。

 

「うーん、こういうのがいいよね!!まるでこの前立ち読みした少女マンガみたい!!」

興奮する伊織が物陰から2人の行動をじっと見る。

その一方で、公園の近くに来た独り身の男性が大急ぎでその場を離れ、カップルは顔を真っ赤にする。

「な…なんなんだこの空気は!!?こんなのアカデミアでは教わらなかったぞ!?」

「…」

セレナと柚子の顔はもうタコよりも赤く染まっていた。

柚子の脳裏にはどのような光景が浮かんでいたのかは読者の想像に任せる。

 

クレープとキスを楽しんだ2人。

このまま商店街を手をつなぎながら歩いている。

「うーん、そろそろ晩御飯かな?」

天井につるされている時計を見ると、時刻は午後6時49分12秒。

晩御飯を食べる頃合いだ。

「あはは、ユウは頑張り屋さんだからね。いっぱい作らなきゃ!」

「じゃあ…一緒に食材を探そうか」

「うん!それと…今日はトマト入れてみようかなー?」

「え…トマト!?」

トマトという単語を聞いた侑斗の顔が青くなる。

「僕…トマト苦手だって知ってるよね?」

「うん。精霊の頃からずっと知ってるよ」

「それならどうして…??給食でもいっつもそれだけは残して…」

「だーめ!今日こそはトマトを克服しないと!」

ニコニコ笑いながら会話していると八百屋に到着し、ウィンダがさっそくトマトを手に取る。

すると侑斗はゆっくりとなすびを手に取った。

「な…なすび??ユウ、私…」

「僕が克服するなら、ウィンダもちゃんと苦手なものを克服しないとね」

「うーーーずるいよーー」

「ずるくないよ」

「ずるい!」

「ずるくない」

「ずるい!」

「ずるくない」

ウィンダの抗議を微笑みながらかわす侑斗。

八百屋の店主はテレビでやっているプロ野球の試合を見ながら彼らが商品を選び終えるのを待っている。

そして、ずるいずるくない合戦が始まってから4分…。

「じゃあ、今夜はいっぱいユウと…」

「え…?」

ウィンダが言い終わらぬうちに侑斗の顔が真っ赤になる。

言っているウィンダも顔を赤く染めている。

「それなら…なすびとトマト…一緒に買っていこ…?」

「…」

彼女の提案に侑斗が顔を真っ赤にしたまま首を縦に振る。

野菜を買った侑斗とウィンダは2人で買い物袋を持ち、次の店へと向かう。

時間がたち、少し人の数が多くなっているようで、その人ごみの中に2人は入っていく。

「ねえ、ユウ…」

人ごみの中、ウィンダが小声で侑斗を呼ぶ。

「何?ウィンダ…」

「…栄養ドリンクも、買おうね…?」

「…うん」

 

「あーーー!!見えなくなっちゃった…」

人ごみの中に消えてしまった2人に伊織が本気でしょんぼりする。

手には双眼鏡ではなくメモ帳とペンが握られていて、デートの時にやることが箇条書きで書かれている。

柚子は顔を真っ赤にしたまま、十数分前から何も言わなくなっていた。

「…助かった…」

あの甘ったるい空気に耐えられなくなっていたセレナはようやく解放されたことに喜ぶものの、赤く染まった顔が元に戻らず、戸惑いを感じている。

「まあ、でもいっぱいメモがとれた。剣崎先生、ウィンダ先生、ありがとうであります!」

ピシリと背筋を立て、敬礼をする伊織のデュエルディスクが鳴る。

「ん…?もしもーし?」

(もしもし、伊織姉ちゃん??)

「あ、太一君。どーしたの??」

電話に出た伊織は柚子とセレナを連れて、商店街に設置されている携帯電話コーナーへ走って行く。

そこは少し広めの電話ボックスのような構造になっていて、電話するための静かな環境が確保されている。

(実は…翔太兄ちゃんがコーヒー豆を買いに行ったっきり、戻ってこないんだ)

「え…翔太君が!?それで…出て行ってどれくらい時間がたったの??」

(ええっと…もう2時間くらい。場所は施設からバイクで10分のところで、迷うような場所じゃないんだけど…)

「うん、私が探して一緒に戻るから安心して…ね?」

(伊織姉ちゃん、ありがとう!)

電話を切り、携帯電話コーナーから出ると伊織はデュエルディスクのGPS機能を起動する。

ちなみに、柚子とセレナはまだ元に戻っていない。

「ええっと…翔太君は…ここから東にある広い道の路地裏??とにかく、行ってみないと!!」

 

「…それで、翔太君を探しにここまで来たんだよ?」

伊織の説明を聞き終えた翔太は無表情で伊織をじっと見つめる。

「あ…あはははは、でも良かったー。翔太君が見つかって。じゃ…早く施設へ…」

「伊織」

後ろを向き、施設まで走って逃げようとした伊織の左肩に翔太の手が伸びる。

その間にようやく顔の赤みが収まったセレナが柚子と共にその場を離れる。

「翔太…君??」

翔太に振り向くが、顔には汗がたっぷりと流れている。

「安心しろ、すぐに済むぜ…制裁はな」

 

同じ時刻のレオコーポレーション本社ビルの社長室…。

「中島、あれから彼からの連絡は?」

「いえ…1か月前の”欠片”を発見したという連絡以降、何も…」

「…そうか。我々もこれ以上待つわけにはいかないな」

タブレット端末を手に取った零児はランサーズのファイルに保存しているメンバーの写真を移動させ始める。

そして、その中から翔太と伊織、里香、鬼柳、ジョンソン、漁介の写真を新しく作ったもう1つのファイルに移動させる。

「ランサーズはこの次元を守るための槍。この槍は決して砕かれてはならない。砕かれた時こそ…我々の次元が終わるときだ」

零児は新しいファイルの名前になっている『ランサーズ2』を削除し、新しい名前を書き込んだ。

 




今回は急造という形になりましたが、どうにか書きました。
こんな2回連続デュエルなし回ですが、しっかりと物語は進んでいます。


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第43話 出発の時

侑斗とウィンダのデート、そして翔太とユーゴのデュエルから1週間後…。

ユーゴについては翔太が既に侑斗を経由して零児に報告された。

零児からの返事はただ一言、返事を待てという言葉だけだった。

それから翔太と伊織はその1週間の間、遊勝塾で手伝いをしながら遊矢と柚子と共に鍛錬に励んだ。

少なくとも、全員がペンデュラム召喚を使いこなせる程度に上達した。

そして…朝のレオコーポレーション社長室。

「まったく…大手となると社長室はかなりのものだな」

社長室で待つ翔太が周囲を見渡す。

机とパソコン、椅子が1人分あるだけの空間であるにもかかわらず遊矢がいる舞網中学校の教室と同じくらいの大きさだ。

その部屋の中に遊矢、柚子、権現坂、沢渡、セレナ、デニス、黒咲、翔太、伊織、里香、鬼柳、漁介、ジョンソンが待機している。

彼らは全員零児に呼び出され、こうしてこの場にいる。

「遅っせーな!呼び出し人自ら遅刻するなんてよ!」

約束の午前9時30分から10分過ぎていて、沢渡はイライラする。

「赤馬零児…何のために俺たちを…?」

「待たせてすまないな、ランサーズの諸君」

扉が開き、零児と零羅、月影が入ってくる。

「ランサーズのリーダー自らが遅刻、余裕な態度だな」

「いろいろと…権限の委譲に手間取ってしまったのでな」

翔太の嫌味をかわし、メガネを直す。

そして、本題に入る。

「君たちを呼び出したのにはほかでもない。連絡の通り、これから16人のランサーズで次元を越える」

次元を越える、その言葉に一同が沈黙する。

それは戦いの時が来たことを示唆しているためだ。

そんな中、柚子が質問する。

「16人…?もう1人はもしかして…」

「そうだ。最後の1人は彼…零羅だ」

「…」

その答えを聞いた翔太たちの目が零羅に向き、まだ幼い彼はオドオドしながらぬいぐるみを抱いたまま零児の後ろに隠れる。

「なんだよ!?こんなガキをランサーズに加えるだ!俺たち沢渡シンゴ世代で構成された部隊じゃなかったのか、ランサーズは!!」

「俺から見たら、お前も十分餓鬼だぜ、馬鹿」

「馬鹿はねえだろ、馬鹿は!!」

補足しておくが、零児はペンデュラム召喚を得た遊矢達を榊遊矢世代と称している。

沢渡が勝手に世代名を変えたことに突っ込む人間はいないものの、心の中では全員がつっこんでいる。

その言葉が集まったのが、翔太の言う馬鹿だろう。

といっても、彼は今まで沢渡を名前で呼んだことは一度もないが。

「赤馬零児、これは遠足じゃないということが分かっている上での選択か?」

黒咲が零児と零羅を睨みつける。

「そうだ、零羅の実力はお前たちに相当する。そして…彼の能力はこれからの戦いの中で重要だ」

「こいつの能力を?」

翔太が隠れる零羅を見る。

先程までおどおどしていたものとは一変して、今度は無表情になっている。

眼からは覇気が感じられず、まるでここではないどこかを見ているような、すべてを他人ごとに見ているような感じがする。

「けっ…気に入らない眼をした奴だな」

「ちょっと翔太君…」

「まずは我々が行く次元を言う。我々が向かうのは…シンクロ次元だ」

翔太の言葉を無視し、零児がそう宣言すると遊矢達が激しく動揺する。

特に融合次元への攻撃を考えていた黒咲が。

「バカな!!?シンクロ次元は融合の手先なんだぞ!?なぜそこへ…」

「信頼できるところからの連絡で、シンクロ次元は融合次元とは無関係だということが判明している。ならば、彼らに融合次元の脅威を伝えたうえで、味方にする必要がある」

「ふざけるな!!そうしている間にもエクシーズ次元に残る仲間たちが犠牲になる!!それに瑠璃も…。ならば俺一人でも…」

「やめろ!!」

怒る黒咲を止めたのはセレナだった。

彼女は今にも零児を殴らんとする黒咲の前に出る。

「今の戦力では融合次元と戦うことはできない。今のまま闘えば全滅する!それに…お前の妹の瑠璃は多分、大丈夫だ…」

「何?」

セレナの発言に違和感を覚える。

彼女の発言はまるでさらった人間を丁重に扱っているという意味に捉えることができるからだ。

無差別に人々をカード化したという面しか知らない黒咲にはそれが嘘に聞こえても仕方がない。

それを知っている上で、零児は代わりにその根拠を言う。

「ヴァプラ隊が潜入させたスパイが得た情報によると、セレナと柊柚子、黒咲瑠璃は彼らにとって重要な存在らしい」

「柚子が…!?」

「私が…(そっか、だからあの時融合次元のデュエリストが私を…)」

遊矢が驚く一方、柚子がバトルロワイヤルの時に融合次元のデュエリストに対して感じた違和感と零児の言葉につじつまが合うように感じられた。

彼らは柚子はカード化せずに捕えようとしていた。

もちろん、ユーリを除いてだが。

一方、スパイという言葉を聞いたデニスが少し苦い表情を浮かべる。

(アカデミアにスパイだって…!?ヴァプラ隊…あらゆる専門知識を与える悪霊の名前を付けるだけある)

「そして、その共通点は生まれてから宝石がついたブレスレッドをつけていること、そして顔立ちが同じであることだ。その人物が既に2人幽閉されている」

「何!?私に似た女が…」

「柚子に似ている女の子がもう1人??」

黒咲の妹、瑠璃も柚子と顔立ちが似ている少女であるということは黒咲から既に全員に伝えられている。

だが、もう1人同じような少女がいるということに全員が驚いた。

「おいおい、なんだよ!!?まるで柚子には3人のドッペルゲンガーがいるみたいじゃあねえか!」

沢渡は今までの会話についてくることができずにいるが、零児は話を進める。

そのことはすでに織り込み済みの様子でだ。

「彼女はシンクロ次元にいるリンという少女だ。黒咲瑠璃がさらわれた少し後で融合次元の刺客にさらわれ、現在は融合次元に幽閉されている」

「そんな…」

なぜ融合次元がそこまで自分そっくりの少女を捕え、執着しているのか理解できず、柚子はそこにいるいまだに顔を見たことがなく、声も聞いたことのない少女を他人と思えなくなった。

「融合次元は幽閉している彼女らにかなりのもてなしをしている。ヴァプラ隊によると、なぜかは不明だが彼女たちを失うことは融合次元の計画の破たんにつながるという。故に黒咲。君の妹を救出するための戦力を整える時間が我々にはあるということだ。だから、今融合次元へ行くわけにはいかない。全滅すれば、君をここまで送り出した仲間たちの思いを無駄にすることになる」

「くっ…」

黒咲の脳裏に自分を送り出した仲間たちの言葉が浮かぶ。

必ず、妹を連れて戻ってこいと。

そのためだけに次元を越えるというわがままを彼らは許してくれた。

それだけでなく、ユートは同行してくれた。

そんな彼らのためにも、黒咲は倒れるわけにはいかない。

「…好きにしろ!」

「感謝する。そして、次元を越える前に伝えておくべきことがもう1つ。秋山翔太、永瀬伊織、ジョンソン・オーベル、真田里香、梶木漁介、鬼柳一真、そして柊柚子には我々とは別行動をとってもらう」

「何!?」

「ええっ!!?」

遊矢と柚子のみならず、権現坂や伊織、セレナも零児の発言に耳を疑う。

「なんでだよ赤馬零児!?」

「大人数で行動するのは得策ではないからだ。そして、融合次元は必ず柊柚子とセレナをさらいに来る。その時に2人一緒に行動することで、両方とも捕まるという最悪の事態が起こりかねない」

「けど、俺が守れば…」

「そのもっとも肝心な時にそばにいられず、守ることのできなかった君にそれを言う資格はない」

零児からの言葉に遊矢が沈黙する。

もっとも肝心な時、それはバトルロワイヤルの時のことだ。

彼の言うとおり、その時は侑斗というイレギュラーの発生によってなんとかなったが、それが無ければ確実に柚子はさらわれていた。

自分と彼女の周りに発生していることにもっと警戒すべきだった。

「そのようなことは少なくとも、私を倒せるだけの実力を得るまで認めることはできない」

「くっ…」

悔しそうに唇をかみしめる。

そんな遊矢に柚子が手を差し伸べる。

「遊矢、大丈夫よ。あたしも強くならないといけない…遊矢に頼ってばっかりだったから…」

「柚子…」

「だから、あたしは今度こそ強くなる。次に遊矢と胸を張って会えるように。セレナ…遊矢のことをお願い」

「な!!?なんで私が!?」

柚子に名指しで頼まれたセレナはうろたえる。

「だって、あたしがいない間、あなたが遊矢と一緒にいるんだから」

「それはそうだが…なんでこんなナヨナヨな根性なしを!!」

「セレナ殿!それは言いすぎだ!確かに遊矢には精神的にもろい面があり、お調子者だが良いところはある!」

「そうよセレナ。女心が分からないしクイズが全くできないくらい馬鹿だけど、きっと頼りになるわ」

「…」

「お前ら、本当のことだがそんなこと言うなよ。主人公がこうなっちまったぞ」

少し吹き出しそうになっている翔太が部屋の隅で体操座りをしていじけている遊矢を指さす。

3人からの集中攻撃を受けた彼の精神的ダメージは計り知れない。

彼らに謝罪され、励まされる遊矢を黒咲はじっと見る。

(こいつら…本当にこんな調子で融合次元に勝つつもりなのか?)

 

「さて…榊遊矢の調子が戻ったところで話を進めよう」

十数分後、ようやく機嫌が直った遊矢。

そんな彼に安心しながら、零児が翔太に1枚のカードを渡す。

「《マリンフォース・ドラゴン》。このカードは?」

「翔太君のチームはシンクロ次元に到着後、ある男に接触し、このカードを渡せ」

「ある男…?誰だそいつは」

質問する翔太に今度は1枚の写真を渡す。

その写真には、シンクロ次元で治安維持局のトレーラーを奪取した男が映っている。

違いとしたら、口元を隠しているスカーフが無いところだ。

「なんだよ、このおっさんは」

「誰なんや?翔太、見せてくれや!」

里香が翔太の答えを聞かずに写真をとり、漁介達に見せる。

答えぐらい聞けと思った彼は軽く舌打ちする。

「うーん、見るからに40近いおっさんやなー」

「一体誰なんじゃ、こいつは」

「彼の名前はヒイロ・リオニス。剣崎同様、私の協力者だ。しかし、訳あってシンクロ次元から出ることができずにいる」

「ヒイロ・リオニス…」

《マリンフォース・ドラゴン》を見ながら、零児が言う名前を口にする。

(もしかしたら、このカードが俺の記憶の…)

「話しはそこまでだ。榊遊矢達はシンクロ次元到着後、私の指示に従ってもらう。また、君たちのデュエルディスクにはアクションフィールド《クロス・オーバー》をインストール済みだ」

「ということは、アクションデュエルができるってことか!?くぅーー!!これで俺の華麗なデュエルを見せることができるぜ!!」

沢渡はデュエルディスクを操作すると、その中には零児の言うとおり《クロス・オーバー》が入っていた。

《ルネッサンス・シティ》や《パイレーツ・シー》のような街や海をモチーフとしたものではなく。プリズム状の浮石が複数存在するだけのシンプルなフィールドがイラストに描かれている。

「ペンデュラム召喚、そしてアクションフィールドは我々が異次元のデュエリストと戦うための切り札。その意味をよく考えて使うように。そして、もう1枚デュエルディスクにはカードをインストールしている」

「もう1枚じゃと…?」

今度は漁介が調べると、確かに《クロス・オーバー》以外にもう1枚カードのデータが入っている。

魔法カード《ディメンション・ムーバー》で、テキストには何も書かれていない。

「このカードを使って我々は次元を越える。すでにシンクロ次元に行き先は決まっている」

「これを使うと…シンクロ次元へ…」

《ディメンション・ムーバー》のカードを遊矢はじっと見つめる。

これを発動したら、もう後本当に後戻りすることができない。

ここから始まるのはエンタメデュエルではなく、戦争。

「さっさと行こうぜ、零児。融合次元のくだらない遊びを終わらせるためにな」

翔太の言葉に、何も言わずにフッと笑った零児が最初にそのカードを発動する。

すると、零児とそばにいた零羅と月影が青い光の中に消える。

「くっそーーー!!一番乗りは俺のはずだろうがーー!!」

「ふん…」

「じゃあ、みんなお先に」

「遊矢、柚子…先に行く」

沢渡、黒咲、デニス、セレナも発動して姿を消す。

「遊矢、早く来るんだぞ」

「出発するでーー!伊織、翔太、ジョンソンに鬼柳はん!」

「シンクロ次元にはどんな魚がおるか…楽しみじゃ!」

(富雄、必ず私は戻ってくる。今度はちゃんとお前の顔を見たいものだ…)

権現坂、里香、漁介、ジョンソンも《ディメンション・ムーバー》によって消えていく。

「伊織、今ならビビって帰ってもいいんだぞ?」

「ビビるは余計だよ!それに、私以外に誰が翔太君を守るの??」

「別に、問題ない。俺はあの馬鹿やピエロと違って強いからな」

「まーまー、じゃあ翔太君が私を守ってくれるということで!」

「キュイキュイーー!」

胸を張って言う伊織を真似して、いきなりカードの中から出てきたビャッコが伊織の隣で遊矢と柚子に見えないように隣に立って、胸を張る真似をする。

ついでにセラフィムもなぜか無言で伊織の真似をする。

「(こいつら…本当に仲がいいな)ちっ、足引っ張るなよ?」

「大丈夫大丈夫!じゃあ、出発!」

伊織は《ディメンション・ムーバー》を発動すると同時に、2体の精霊がカードの中に戻る。

そして、彼女は笑顔のまま光の中へ消えていく。

「じゃあ、俺も行くか…。遊矢、柚子。2人っきりで楽しんどけ」

「た、楽しめってどういう意味よ!!?」

柚子がハリセンで翔太をたたこうとするが、命中する直前に《ディメンション・ムーバー》で消えてしまった。

「くーーー!!避けられた!!」

「そ、その…柚子…」

こうして、社長室には遊矢と柚子の2人だけになった。

「柚子…シンクロ次元へ行ったら、しばらくの間…」

「遊矢。お互い、頑張ろう。もう1度、遊勝塾に戻るために」

ハリセンをしまった柚子が遊矢の手を握る。

すると、遊矢は急に柚子を抱きしめた。

「ゆ…遊矢!?」

「柚子、笑ってくれ。それだけで…俺はこれから戦える」

「ん…」

ゆっくり体を離し、少し恥ずかしそうにうなずいた柚子は今の自分にできる最高の笑顔を遊矢に見せる。

「遊矢もちゃんと笑って。みんなに笑顔を上げるエンターテイナーなら、自分も笑顔にならないと」

「…ああ!」

遊矢も最高の笑顔を柚子に見せる。

彼女はそれを自分の目にしっかりと焼き付けた後、遊矢の頬にそっと一瞬だけ自分の唇を当てた。

「な…!?」

キスされた遊矢は顔を赤くしながらその部分に手を当てる。

「…この意味、ちゃんと分かってよね」

恥ずかしそうにそう言った後で、柚子は《ディメンション・ムーバー》で消えた。

(この意味…??)

顔を赤くしたまま頬を少しなでた後、再び遊矢は少しだけまた笑顔になる。

「やっぱり分からないよ、柚子。この意味、しっかり柚子に聞いてやる!必ず会おう!」

最後に残った遊矢もまた《ディメンション・ムーバー》で戦場へ赴いていった。

 

「…そろそろ行ったかな?」

寮の部屋で緑色のパジャマ姿の侑斗が布団で体を隠したまま目覚まし時計を見ながらそう告げる。

その時間は零児の言っていた集合時刻の約30分後だ。

「ユウ、本当は行きたかったんじゃないの…?」

「え?」

「心配なんでしょ、みんなのこと…」

隣で一緒に横になるウィンダが侑斗に目を向ける。

両肩と胸の谷間が少し布団からはみ出て、侑斗の目に映る。

なんとか平常心を保ちながら侑斗は答える。

「たしかに行きたいよ…けど、僕にはまだやるべきことがある。だから、今回は裏方かな?」

「ユウ…」

「大丈夫、翔太君達は強いよ。そして、ヒイロさんがきっとシンクロ次元で助けてくれる」

「ん…そうだね。じゃあ、続きしよ?ユウ!」

「ええ!!?」

急に抱きつけれた侑斗は顔を赤くしながら彼女を見つめる。

「えへへ…今日は休みなんだから、いいでしょ?」

「ふう…これはお昼いっぱい食べないと…」

 

「はい、はい…分かりました。では…」

施設では栄次郎がレオコーポレーションから翔太と伊織が出発したことを伝える電話を受け取り、彼は静かに受話器を降ろす。

「他の次元か…融合、シンクロ、エクシーズがもし別次元の産物だというのならば、もしかしたら…」

目を閉じ、静かに15年前のことを思い出す。

 

その日は少し風の強い時期で、会議を終えた栄次郎は夕方になって施設へ戻ってきた。

「ふう…こういう風の強い時期は少し薄めのブラックコーヒーを…ん?」

正門前に来たとき、彼の耳に女の赤ん坊の泣き声が聞こえた。

気になって鳴き声がする方向へ歩いていく。

そこは向かい側にあるビル街の裏路地で、そこには黒髪の赤ん坊がゆりかごの中で泣いていた。

青を基調としたパジャマ姿で、布団とデュエルディスク、デッキ以外には何も持っていない。

「どうしてこんなところに…可哀そうに…。ん?」

哀れむ栄次郎の目に留まったのは風でめくれた2枚のカード。

それは《融合》と《E・HEROノヴァマスター》。

これが栄次郎と伊織の出会いだった。

 

「もしかしたら、伊織は私の知らない、別の次元から来たのかもしれないな…」

空を見ながら、その日を懐かしむ栄次郎はゆっくりとその日に作ったのと同じコーヒーを口にする。

(次元を越えるとなると、もしかしたら伊織は自分の故郷に行くことになるかもしれない。翔太君、伊織を頼んだよ…)




強引な展開ですが、これで翔太たちはシンクロ次元へ。
翔太チームがその次元で何を起こすのか…??


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第3章 影(シェイド)に潜みし槍
第44話 面会


ゴオオオ…ゴオオオ…。

廃材を組み立てただけの粗末な建物と放置され、窓や壁紙のないコンクリートのビル、そして大量のごみが特徴的な町は昼となっても人通りは少なく、風と共に生ごみの悪臭が広がる。

このような廃墟のような街にも人は暮らしている。

ボロボロになった服で大量のごみが入った袋を積んだリアカーを運ぶ厚着の老人がその一例。

彼はゴミを施設に運び、それを買い取ってもらうことで金を得ている。

その金は酒とギャンブル、そして申し訳程度の食事で消えてしまうが…。

そんな彼が通りすぎた、ひどい錆で満ちたブランコだけしかない、公衆トイレの出入り口にはスプレーで描かれた落書きが大きく書かれている公園に異変が起こる。

青い光が発生し、そこから7人の男女が出てきたのだ。

翔太、伊織、里香、漁介、鬼柳、ジョンソン、柚子…。

彼らはシンクロ次元にたどり着いたのだ。

「うう、何だろうここ…くさーい!!」

「ん…?そんな臭いか?ここ??」

伊織と里香が鼻をつまんで匂いに耐えているが、漁介はノーリアクション。

それもそのはず、彼は修行中の漁師であり、魚のにおいに何度も苦しんだおかげで悪臭には免疫がついているのだ。

「リンゴや魚の骨…それに、みかんか?かなりの生ごみがあるようだな」

「おいおい、そんな匂いの正体を聞いて得する奴がいるのか?」

ジョンソンの研ぎ澄まされた感覚が無くてよかったと思う鬼柳。

そして、里香は速く移動したいという衝動に駆られる。

「くうーー!!さっさと移動や、こんなとこ!!」

「ああ…だが、まずはあいさつするべき相手がいるよな?」

翔太は後ろを向き、そびえたつ違法改造された3階建ての鉄筋コンクリート住宅を見上げる。

そこには写真の男が銃を翔太の頭部に向けていた。

「ええ!!?全然気づかなかった…」

「…」

びっくりする伊織をよそに、ジョンソンと鬼柳が警戒する。

(足音が聞こえなかった…。最初からそこにいたというのか?いた、ならば呼吸音が聞こえるはず…)

「おい、悪趣味なおっさん。あんたに預かりもんだ」

手裏剣のように、《マリンフォース・ドラゴン》のカードを投げると、男はカードを取り、そのまま彼らの目の前まで飛び降りる。

「《マリンフォース・ドラゴン》…なるほどな。やはり融合次元が動き出したか」

カードをケースにしまい、口元のスカーフを外す。

「中々渋いファッションなんだな、ヒイロ・リオニス」

「赤馬零児の使いだな、そうだ。俺はヒイロ・リオニス。お前たちの協力者だ」

銃をしまったヒイロが自分の名前を名乗る。

「ああ、俺は秋山翔太」

「永瀬伊織です、よっろしくお願いしまーす!」

「鬼柳一真だ…」

「…ジョンソン・オーベル」

「真田里香や!よろしくな、おっさん!」

「俺は梶木漁介、同じ水属性が切り札なら、気が合いそうじゃ」

「あ、私は柊柚子です。ヒイロさん、よろしくお願いします」

紹介を終えた7人の顔を見た後、ヒイロが公園の出入り口まで歩く。

「ついて来い、アジトへ案内する」

「アジト…せめて、生ごみのにおいのしない場所がいいな」

両手をズボンのポケットに入れた翔太がついていき、伊織たちが後に続く。

「あ、あの…ジョンソンさん…」

心配そうにジョンソンを見る柚子。

彼女は目の見えないジョンソンには誰の手を借りずに動くのは無理じゃないのかと思った。

バリアフリーの概念の欠片の無いこの町の中ではなおさらだ。

「いや、問題ない。足音と歩幅で分かる」

「え…?」

杖を持ったジョンソンがそれで足元を確認しながら進んでいく。

まるで目が見えないというのが嘘かと思えるくらい、翔太たちの後ろを歩いている。

(すごい…けど、どうしてこんなことが…??)

 

「ここだな…」

公園から歩いて5分の場所にある車屋の廃墟に入る。

天井の骨組みが一部露出していて、さびた修理用の備品がいたるところに放置されている。

ひどい環境であるものの、生ごみの悪臭がないだけましかもしれない。

ちなみに、翔太からヒイロに歩いている間にランサーズのことなど近状を報告されている。

「うわあ…本当にここがシンクロ次元なの??もう…」

「静かに…」

右手を低く上げたヒイロを見て、伊織が両手で自分の口を隠す。

(あいつ、何を考えているんだ?)

ゆっくりと壊れた丸いテーブルの裏を見るヒイロ。

そこには全長3センチの盗聴機が仕込まれていた。

ヒイロはそれを外して床に落とすと、そのまま踏みつぶした。

「悪趣味な警察だ、この次元は…。まずはこの次元について話をしておこう」

「ヒイロ・リオニス。この次元では何が起こっている…?」

ジョンソンが最初に質問する。

それを聞いたヒイロはうなずくと、すぐに質問に答える。

「この次元での問題は…理不尽は程の格差社会だな」

「格差…?」

「ああ、特にこのシンクロ次元の都市、シティが典型的だ。この次元では自由競争が過激に行われている。とどのつまり、勝てば何でも許される。今俺たちがいるコモンズという地域はその競争に取り残された奴らが集住している。そして、上を見ろ」

「上…?」

言われた通り翔太たちは上を見ると、そこには柱に支えられた巨大な都市が見える。

その都市のあまりのきれいな環境に漁介が驚く。

「空中都市かよ、あれは…」

「すっごーい!!そこで住むと、とっても気持ちいいかもね!!」

「あの都市には競争に勝ち残った奴らが住んでいる。トップスと称されたそいつらはこのシティの1パーセントの人口であるにもかかわらず、99パーセントの富を独占している。そして、わずか1パーセントのおこぼれで99パーセントのコモンズがしのいでいるという状況だ。つまり、勝てばすべてを手に入れることができ、負ければすべてを失う…セーフティネットもないって場所だ」

「…最低な次元だな、そこは」

苦笑する翔太が空中都市をじっと見る。

「ああ…。そして、競争社会の中ではスタートラインはフェアじゃない。トップスが決めたルールでコモンズは戦うことになる。その結果、トップスはいつまでもトップス、コモンズはいつまでもコモンズ。ま、トップス同士でも競争があり、そいつらでも負ければコモンズの仲間入りになるがな」

「冗談じゃねえな。パーティー開いたとしても、互いの痛いところを探り合いながら、笑顔で乾杯してるんだろうな」

「ふん、違いない。そして、ウェイターに賄賂を払って毒殺に機会をうかがうのかもしれないぞ?」

「鬼柳さん、ジョンソンさん…ちょっと怖い…」

冗談を言っていることにはわかっているが、そんなことを想像したくない柚子の顔が青くなる。

「この世界でお前たちにやってもらうことは…コモンズで力を持っているギャング達を組み込むことだ」

「ギャング?なんでそいつらを??」

「ギャングはコモンズにとって生き延びるために団結するためのコミュニティだ。彼らは時に危ない橋を渡る、敵対するギャングを倒して勢力下に置くことで力を強めている。そして…その中にはこの次元の警察である治安維持局をもしのぐ力のあるギャングもいる」

「治安維持局?…どうもトップスの味方をしそうな勢力だな」

「そうだ。治安維持局は基本的にはコモンズを取り締まる立場だ。トップスにとってはうれしい番犬だ」

そう言いながら、ヒイロは背後にある灰色のシーツで隠された巨大な物体に目を向ける。

そして、そのシーツを取ると、そこには彼が奪ったトレーラーが隠されていた。

装甲は青から灰色に塗装しなおしていて、治安維持局のマークも消されている。

そのかわりに、4本の牙のある髑髏がちぎれた鎖を噛んでいるような形のエンブレムをつけている。

「おお…トレーラーや!」

「見ればわかる。こいつは…?」

「このトレーラーは治安維持局から拝借したものだ。お前たちでも使えるように手を加えておいた。好きに使え。それから…」

続いてヒイロがトレーラーのハッチを開く。

そして、その中にあるDホイールを翔太に見せる。

「マシンキャバルリー…いつの間に」

「お前たちが来る少し前に送られた。赤馬零児の手引きだろうな」

ハッチを閉じ、扉を開けたヒイロが翔太たちに入れと手引きする。

中は10人が寝泊まりできるベッドと最低限の料理ができる調理場と洗濯機、そして4台のDホイールが収容できるピットがあった。

「狭いが、野宿するよりはマシだ。運転はある程度オートに任せることができる」

「なら、俺が運転する。四輪の免許はある」

「それから、お前たちにはこれを渡しておくぞ」

ヒイロが懐からいくつかデッキケースを取り出し、それらを伊織、里香、漁介、柚子に渡される。

中にはシンクロ召喚をコンセプトとしたカードの数々が入っていた。

「ペンデュラム召喚やアクションデュエルは異次元のデュエリストに対抗するための手段。だが、いつまでも使っていたら対策される。だから、いざという時まではそのカードを使え」

「うわあ、こんなカードもあるんだぁ」

興味津々に見ていると、ケースの中から数枚の紙幣が出てくる。

紙幣には蟹のような髪型のピエロが描かれている。

紙幣は他のデッキケースにも数枚入っていた。

「シティでの通貨だ。当面の資金として使え。20万イェーガーだ。円と同じ価値だと思ってくれていい」

「やけに用意がいいんだな」

漁介が持つ紙幣をのぞきつつ、鬼柳が怪しそうに言う。

その発言はヒイロには痛くもかゆくもないのか、フッと笑みを浮かべる。

「番犬から借りた金だ。親切に返さなくていいというな…。じゃあ、俺は行くぞ」

再びトレーラーの扉を開けると、ヒイロがスカーフで口元を隠して外に出ようとする。

「ヒイロさん、どこへ行くんですか?」

「俺は単独での行動に慣れている。お前たちの仲間とも接触する。それから…お前たちのチームの名前を記念にプレゼントする。…シェイドだ」

「シェイド…なるほど、ランサーズの”影”か」

にやりと笑いながら、言葉と自分たちの存在の意味を理解する翔太。

「物わかりのいい奴で助かる…死ぬなよ?」

そう言い残すと、ヒイロは外へ出ていき、そのまま町の中へ消えて行った。

「わあ、翔太君!!コーラ、コーラが入ってるよ!!」

ニコニコ笑いながら、コーラの瓶を手に取る伊織にジョンソンが調子に乗って全部飲むなと窘め、里香と漁介、ッ柚子がテーブルの上にあるシティの地図を見る。

そして、鬼柳は運転席に座り、マニュアルで運転のやり方をある程度頭に入れる。

「操縦の補助が徹底されている…。緊急の時に便利だな。とにかく、まずはここを離れるぞ」

ヒイロが盗聴機を見つけたことから、おそらくここがヒイロのアジトだったことを治安維持局が把握している。

だからヒイロはここを離れ、既にトレーラー以外の物はない。

まずはこのトレーラーを隠せる、自分たちのアジトとなる場所を探す必要がある。

幸い、ここにいたギャングは以前に治安維持局に摘発されたため、勢力なしという状態になっている。

少なくとも、アジトなしの状態でドンパチすることはなさそうだ。

「よし、発進させるぞ」

トレーラーがライトを点灯させ、そのまま車屋を飛び出していった。

運転している間、伊織たちはシンクロ次元での自分たちのデッキの構築に動き始めた。




明日からいろいろあるので、今のうちに最新話を書きました。
シェイドの名で活動を始めた翔太たちが何をするのか…?


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第45話 コモンズの食糧事情

カンカンカーン!!!

「おーい、みんな朝だよー!」

「キュイー!」

「美少女3人が待ってるんやでー?」

「り、里香…美少女って…」

女性陣がフランパンをステンレス性のおたまで叩く。

その鋭い音響がトレーラー内に響き渡る。

「うーん、うるせえなぁ」

「もう朝か…ホテルより寝心地が良くなくて、満足に眠れなかったぜ」

「今起きる…」

翔太、鬼柳、ジョンソンがゆっくりとベッドから出てくる。

前日にパジャマを調達することができなかった7人は普段着のまま寝ざるを得なかった。

右腕が寝違えた翔太はその痛みを感じながら周囲を見渡す。

「おい、漁介はどこだ?」

「あいつは外で体操中やで。ウチらが起きる2時間前にはもう起きとった」

「漁師だけあって、朝が早いのか?」

ベッドから出た翔太は机の上の地図を見る。

現在翔太たちのいるトレーラーは中央から東へ30キロ近く離れた旧レクス区(地図によると現在のレクス区はそこの近くにあるトップスのようだ)の廃棄された工場の中にある。

十数年前に放棄されたらしく、ベルトコンベアやプレス、マシニングセンタなどの工作機械は壊れていたり、さびていたりするが、修理さえすれば再び使用することができるようだ。

ただし、一番機械に関して知識のある鬼柳でもDホイールの修理や作成の技術だけでは修理は難しい。

また、工場の傍にある寮は整備さえできればトレーラー内よりも快適に眠ることができるかもしれないが、修理のための資金も資材もない今では難しい。

「みんな、外に出て。ご飯ができてるわ」

柚子が先にトレーラーから出る。

出入り口からはスクランブルエッグと焼き立てのウインナーのにおいが中に入ってきて、翔太たちの食欲を刺激する。

「ああ、不味い飯じゃなきゃいいけどな」

寝癖で手で治しながら翔太達がトレーラーから出る。

外ではアウトドア用のテーブルと椅子があり、机の上にはスクランブルエッグとウインナー、パンと牛乳、キャベツときゅうりのサラダが置かれている。

テーブルと椅子のセットは漁介がやったようだ。

「朝から豪勢だな」

「ふっふーん、それならもっと有難そうに…」

「ほとんど私と里香で作ったの、伊織はウインナーを焼いただけよ」

「うう、柚子ちゃーん、ここでばらさないでよー」

少し涙目になる伊織を無視した翔太がテーブルに座り、スクランブルエッグを食パンの上に乗せる。

ジョンソンは里香の手を借りて食事をする。

「なあ、これからどうすんだ?拠点を見つけた以上、あとは水と食料を調達できるようにしてえけど…」

牛乳を一気飲みした後で、漁介が全員に質問する。

現在トレーラーの中にある水と食料は1週間分。

ギャング達と戦う前には必ずカードだけでなく、食料が必要となる。

しかし、今の自分たちには調達する手段がない。

食べながら鬼柳が意見をする。

「まずは俺たちシェイドの縄張りになったこの旧レクス区の中を探すぞ。闇市程度ならあるはずだ」

食糧不足にさいなまれるコモンズ。

合法的に調達するだけで事足りるはずもなく、一部の市には非合法活動で入手している可能性もある。

「よし、なら飯を食い終わったら俺と漁介、鬼柳で闇市を探しに行くぞ。ジョンソンはアジトの見張り、柚子と里香は昼飯と晩飯の用意をしておけ」

「ああ…」

「おっしゃあ!活きのいい魚が見つかるかもしれんからな!」

食べ終えた鬼柳と漁介がうなずき、柚子と里香は食べ終えた人の食器を集める。

そんな中、伊織がゆっくり手を上げる。

「あのー、翔太君、私はー?」

伊織だけ翔太から何も指示がない。

なお、翔太が役割を決めるのに反対する人。

「ん?」

「私は何をしたらいいの?」

「んーそうだな…」

集めた食器をトレーラーの洗い場へ行き、戻ってきた後で伊織の役割を提示する。

「ジャガイモの皮むき」

「…へ?」

「じゃあ、よろしくな。鬼柳、漁介、準備はいいか?」

「年上を呼び捨てか?」

「おう!!」

鬼柳と漁介が立ち上がり、準備を始める。

「えええ!!?ちょっと翔太くーーーん!!」

「行くぞー」

理不尽だと抗議する伊織を無視し、翔太が2人を連れてアジトを離れていく。

柚子達が思ったことは1つ、どうやって伊織を慰めるかだった。

 

翔太達がアジトを離れて2時間。

そこから西へ歩いて1キロ。

ホームレスや子供たちに賄賂を使うなどをして情報を集めたおかげで、3人は闇市に到着した。

旧レクス区では最大規模の闇市で、取り締まりが行われているにもかかわらず、かなりの屋台と物資がそこに集まっている。

「すごいな…」

「うーん、魚の匂いがせん!!魚はないんか!?」

朝早くから多くの人々が集まっていて、人々は金もしくは衣服やカード、機械などと交換で食料を入手している。

「いらっしゃいいらっしゃい!!梅干し入りのおにぎり2つで600イェーガーだ!!」

「さすが闇市…すごい値段だな」

舞網市にあるコンビニではチャーハンおにぎりが1つ120円で売られていた。

1イェーガー=1円と考えると、質素な具であるにもかかわらず倍以上の値段と言うことになる。

闇市を利用できるのはコモンズの中でも多少なりとも金か交換できる物を所持している一部の人間だけだろう。

「ま、食料をここで入手するとなると、すぐに所持金が尽きるぞ」

「20万で7人だからな…ん??」

漁介がスキンヘッドで色黒でボロボロな服の男を見る。

彼は1万イェーガーかかる10食のカレーを購入していた。

更に別の屋台では保存用の燻製肉を10万イェーガー分、そして1リットル400イェーガーの水道水を20リットルも購入している。

「どうした?漁介」

「あのおっさん、すげえ金を持っているなって思ってな」

漁介が指差す男を翔太が見る。

コモンズで10万イェーガーもの金を1度に支払うようなことは本来ありえないことだ。

裏があると思えて仕方がない。

水と食料を得た男が闇市を出て、南へ進み始める。

「尾行するか…?」

鬼柳を2人を見て、提案する。

彼の秘密を知ることができれば、何か金を得る術が見つかるはずだ。

3人は物陰に隠れつつ、男の動きを見る。

 

一方、アジトでは…。

「ぶー…なんで私の役目が芋の皮むきなのー?」

トレーラーの中で伊織がバケツ一杯に入っているジャガイモの皮むきをしている。

ピーラーで芋の芽を取り、皮をむく。

何度繰り返しても減らないジャガイモに彼女はつらそうになっている。

「セラフィムー、手伝ってよー」

「無理ですよ、わ…私、実体化できませんから…」

彼女の手伝いをしたいという気持ちはやまやまであるセラフィムだが、申し訳なさそうに断る、いや、断らざるを得ない。

「あーーーもう!!じゃあ私、10分だけ休む!!」

そう言うとピーラーを置いて、トレーラーの外へ出ていく。

外では柚子と里香がデュエルの準備を整え、ジョンソンは工場で入り口付近で座って2人を見ている。

「永瀬、皮むきは終わったのか?」

「ちょっと休憩するだけ!」

(10分だけと言っても、多分1時間くらい休むかもしれませんね、伊織様…)

楽しいことが大好きな伊織になぜこのようなことを命じたのか?

そして伊織は文句は言うもののどうして完全にサボらないのか?

セラフィムは疑問に思いながら彼女を見つめる。

「柊と真田がデュエルをする。ヒイロ・リオニスから受け取ったカードで作ったデッキの試運転をするつもりらしい」

「えーーー!!?ずるーい!」

私もデュエルしたいのにーと言う伊織に対して、ジョンソンが少しため息をつく。

(近くでギャーギャー騒がないでほしいものだ…侵入者が出たときに居場所を特定できない)

 

「さあ…柚子。準備はええな!?」

「え、ええ!」

やる気も勝つ気もあふれる里香に対して、柚子は少しタジタジしている。

それもそのはず、彼女は里香に半ば強引に誘われる形でこうしてデュエルをすることになっているのだ。

(シンクロ召喚自体が初めてなのに…ちゃんと使えるかしら…?)

(全力で答えたるで…ウチの新しいデッキ!)

心の中にある互いの自信の有無。

現状では里香が柚子に有利になっている。

それがデュエルにどれだけの影響を与えるのか…?

「いくで…デュエルやぁ!」

「デュ、デュエル…!!」

 

里香

手札5

ライフ4000

 

柚子

手札5

ライフ4000

 

「ウチのターン、ウチは手札から《深海のディーヴァ》を召喚!」

ピンクの混じった白い鱗とヒレ、そしてドレス。

そして日焼けの無い真っ白な肌で腕や胸元を紫の装飾品で守っている女性の人魚が現れる。

 

深海のディーヴァ レベル2 攻撃200(チューナー)

 

「このカードの召喚に成功した時、デッキからレベル3以下の海竜族モンスター1体を特殊召喚できるで!出るんや、《氷結界の輸送部隊》!!」

《深海のディーヴァ》が目を閉じ、両手を胸元に当てた状態で空に向けて歌い始める。

すると、里香の背後から緑色のウミヘビを模したモンスターが移動してきて、彼女の戦列に加わる。

その背中には輸送部隊の名前通り、食料や弾薬、テントや衣料品などを積んでいる。

 

氷結界の輸送部隊 レベル1 攻撃500

 

「レベル1の《輸送部隊》にレベル2の《ディーヴァ》をチューニング!進化を待つ深海の赤子の産声に惚れたらあかんで?シンクロ召喚!レベル3!《たつのこ》!!」

オレンジ色の体をした、その名前通りタツノオトシゴをモチーフとした赤ちゃんのモンスターが現れ、かわいらしく「ピィ?」と鳴く。

((か…可愛い!!))

柚子と里香はそのモンスターに見とれていた。

 

たつのこ レベル3 攻撃1700(シンクロチューナー)

 

「可愛いだけが能やない!こいつはシンクロ召喚の素材にする場合、手札のモンスター1体も素材にできるんや!ウチは手札の《氷結界の舞姫》にレベル3の《たつのこ》をチューニング!」

《たつのこ》が里香の周囲を旋回していると、手札にいた《氷結界の舞姫》が飛び出し、そのモンスターの動きに合わせて舞い始める。

すると、2体のモンスターが7つの光の球体となって里香の目の前まで移動する。

「槍の名前を担う第2の竜、復活の喜びを氷の息吹に託しなはれ!シンクロ召喚!レベル7!《氷結界の龍グングニール》!!」

少し赤がかった青い氷の彫像のような翼竜が7つの光の球体が集結することで復活する。

両目部分が赤く光るとともに、上空に向けて咆哮した。

 

氷結界の龍グングニール レベル7 攻撃2500

 

「いきなり1ターン目からレベル7のシンクロモンスターが…」

柚子と伊織は前に刃のデュエルを見ている。

彼のXセイバーデッキも様々な手段を用いてシンクロ素材をフィールドに並べ、シンクロ召喚を行った。

里香の場合は手札からシンクロ素材を選ぶというこれまた特殊なもので、それが2人を注目させる。

「更にウチはカードを2枚伏せて、ターン終了!さあ、柚子のターンやで!!」

 

里香

手札5→1

ライフ4000

場 氷結界の龍グングニール レベル7 攻撃2500

  伏せカード2

 

柚子

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「1ターン目から《グングニール》…早めに処理できなければまずいな…」

「ええ?どうして??」

「あのカードは1ターンに1度、手札を2枚まで捨てることで、捨てたカードの数だけ相手フィールド上のカードを破壊できる。墓地肥やしと破壊を両方行う厄介な効果だ」

ジョンソンは見えない眼でじっと《氷結界の龍グングニール》を見る。

もちろん、杖は耳元に当てたままで。

「破壊と墓地肥やしかぁー…そんなモンスターをシンクロ召喚するなんて、里香ちゃん、やりますなぁ!」

(…伊織様、あと少しで10分経つのですが…)

 

「あたしのターン、ドロー!」

 

柚子

手札5→6

 

素良からの特訓により、融合召喚についてはある程度体得している柚子。

しかし、シンクロ召喚はそれとは異なるコンセプトが要求される。

それを使いこなせるのか不安に思いながら、とるべき手を考え始める。

「あたしは手札から《闇竜星―ジョクト》を召喚!」

外側が金色の円で覆われた青黒い縦長の円い装甲をパズルのように組み立てた形の鎧を装備し、赤い眼で青い肌のライオンのようなモンスターの幻影が現れる。

そのモンスターの目の前に灰色の玉石が埋め込まれた青い輪が現れると、それを口に咥える。

 

闇竜星―ジョクト レベル2 攻撃0(チューナー)

 

「おお!柚子ちゃんも最初にチューナーモンスターを召喚したね!」

「《ジョクト》の効果発動!あたしのフィールド上にこのカード以外のモンスターが存在しない場合、手札の竜星カード2枚を墓地へ送ることで、デッキから攻撃力0と守備力0の竜星モンスターを1体ずつ特殊召喚できる!あたしはデッキから《炎竜星―シュンゲイ》と《水竜星―ビシキ》を特殊召喚!」

柚子の手札2枚のソリッドビジョンが《闇竜星―ジョクト》の目の前まで行くと、そのモンスターをそれらを一口で捕食する。

そして、その口の中から炎の塊と水の塊が発射される。

それら2つが次第に《炎竜星―シュンゲイ》と《水竜星―ビシキ》へと変化する。

頭だけがライオンの赤い翼竜と青い円錐状に凸凹した甲羅と何メートルもの長さのある髭が特徴的の亀がその2体のモンスターだ。

 

炎竜星―シュンゲイ レベル4 攻撃1900

水竜星―ビシキ レベル2 攻撃0

 

手札から墓地へ送られたカード

・光竜星―リフン

・風竜星―ホロウ

 

「レベル4の《シュンゲイ》とレベル2の《ビシキ》にレベル2の《ジョクト》をチューニング!!煌めく星に宿りし幻が深緑の輝きを放つ!シンクロ召喚!今こそ空へ!レベル8!《輝竜星―ショウフク》!!」

3体の幻竜が黒・赤・青のオーラとなって融合する。

すると、それが緑色のオーラに変化し、それが緑色の肉体と翼、黄色い腹、茶色い鬣の蛇竜の幻を作り上げる。

 

輝竜星―ショウフク レベル8 攻撃2300

 

「ふう…」

いきなりシンクロ召喚できないかもしれないと思い、不安だったもののどうにか召喚することができてほっと息をする。

融合召喚に関してもシンクロ召喚に関しても、師匠と言える存在が彼女にはいる。

前者は素良、後者は翔太と鬼柳。

ただし、違いとしたらシンクロ召喚に関しては時間がかなり限られていること、そして学ぶ場所が戦場であることだ。

「《ショウフク》の効果発動!このカードのシンクロ召喚に成功した時、そのモンスターのシンクロ素材となった幻竜族モンスターの元々の種族の種類の数までフィールド上のカードを持ち主のデッキに戻す!」

「何やって!!?」

《闇竜星―ジョクト》は闇属性、《炎竜星―シュンゲイ》は炎属性、《水竜星―ビシキ》は水属性。

よって、3枚のカードをデッキへバウンスさせることが可能だ。

そして里香のフィールドに存在するカードは3枚。

「あたしは里香のフィールドに存在するすべてのカードをデッキに戻すわ!アクア・イリュージョン!!」

《輝竜星―ショウフク》の口から黒・青・赤の三色の水が大量に発射される。

「させへん!!ウチは罠カード…」

「《水竜星―ビシキ》の効果発動!このカードを素材としたシンクロモンスターは罠カードの効果を受けないわ!」

《輝竜星―ショウフク》を白い霧が包み込んでいく。

「そんなん百も承知や!ウチは永続罠《海底冬眠》を発動!ウチの手札・フィールドに存在する水属性モンスター1体をゲームから除外するで!!」

水が襲い掛かる前に《氷結界の龍グングニール》が上空に現れた次元の裂け目の中へ飛んでいく。

その裂け目の向こうには氷河期の海が存在する。

「けれど…それ以外のカードはデッキに戻るわ!!」

しかし、この効果で《輝竜星―ショウフク》の水を止めることはできない。

水はその2枚のカードのソリッドビジョンをきれいに洗い流してしまう。

 

デッキに戻った伏せカード

・リビングデッドの呼び声

 

「せやけど、《海底冬眠》はフィールドから離れたとき、この効果で除外されたモンスターを守備表示で特殊召喚するで!」

上空の裂け目から降りてくる《氷結界の龍グングニール》。

大地に立つと同時に裂け目は閉じて行った。

 

氷結界の龍グングニール レベル7 守備1700

 

海底冬眠

永続罠カード

「海底冬眠」の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分の手札・フィールド上に存在する水属性モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターをゲームから除外する。

(2):このカードがフィールドから離れたとき、この効果で除外されたモンスター1体を自分フィールド上に表側守備表示で特殊召喚する。

 

《異次元海溝》の永続罠カードバージョンとも取れるカードだが、墓地のモンスターを対象にできないこととフィールドから離れるだけでも効果を発動できること、そして特殊召喚する際は表側守備表示にしなければならないという点で差別化されている。

罠カードであることから、サクリファイス・エスケープが可能になっている点は大きいだろう。

「《炎竜星―シュンゲイ》の効果発動!このカードを素材としたシンクロモンスターの攻撃力・守備力は500アップするわ」

霧の中に身を隠す《輝竜星―ショウフク》の肉体が赤く発火していく。

 

輝竜星―ショウフク レベル8 攻撃2300→2800 守備2600→3100

 

「バトルよ!《ショウフク》で《グングニール》を攻撃!!アクア・フレイム!!」

《輝竜星―ショウフク》の口から灼熱の炎を放出する水が放たれる。

その水を受けた《氷結界の龍グングニール》の肉体が溶けて消滅していく。

「くうう…守備表示で正解やったで…!」

ダメージを受けることはなかったものの、里香のフィールドにカードはなく、手札はたったの1枚。

柚子に主導権を握られたことに変化はない。

「私はカードを1枚伏せて、ターンエンド!」

 

里香

手札1

ライフ4000

場 なし

 

柚子

手札6→2

ライフ4000

場 輝竜星―ショウフク レベル8 攻撃2800

  伏せカード1

 

「ウチのターン、ドロー!!」

 

里香

手札1→2

 

「ウチは手札から魔法カード《サルベージ》を発動や!墓地に存在する攻撃力1500以下の水属性モンスター2体を手札に加えるで!その効果でウチは墓地から《深海のディーヴァ》と《氷結界の輸送部隊》を手札に加えるで!更に手札から魔法カード《強欲なウツボ》を発動!手札の水属性モンスター2体をデッキに戻し、デッキから3枚カードをドローするで!」

影霊衣で水属性モンスターを儀式召喚という違うコンセプトで操っていた里香だが、そのノウハウがこの氷結界デッキでも生きているようだ。

彼女は先ほど戻した2枚のカードをデッキへ送り、3枚カードをドローする。

「そして、ウチは手札から《氷結界の伝道師》を召喚や!」

青い頭巾付きマントと金色の模様付きの白いローブ、茶色いベルトを装備した黒ひげの老人が大きな氷の結晶が付いた杖を持って姿を見せる。

 

氷結界の伝道師 レベル2 攻撃1000

 

「このカードをリリースすることで、ウチは墓地から《伝道師》以外の氷結界モンスター1体を特殊召喚できるんや!出てくるんや、《氷結界の龍グングニール》!!」

《氷結界の伝道師》は自ら発生させた吹雪の中に身を隠す。

吹雪によって、《輝竜星―ショウフク》を包んでいた霧が水となって地面に落ち、晴れていく。

そして、吹雪と霧が消えると里香のフィールドには《氷結界の龍グングニール》が現れていた。

 

氷結界の龍グングニール レベル7 攻撃2500

 

「《グングニール》の効果発動や!1ターンに1度、手札を2枚まで捨て、捨てた枚数だけ相手フィールド上のカードを破壊するで!」

里香の手札2枚がソリッドビジョンとなって《氷結界の龍グングニール》に取り込まれる。

そして、その第2の龍の口から氷でできた巨大な手裏剣が2つ発射され、横に回転しながら柚子の伏せカードと《輝竜星―ショウフク》を真っ二つに切り裂く。

 

破壊された伏せカード

・竜星の具象化

 

手札から捨てられたカード

・氷結界の交霊師

・氷結界の密偵マーラ

 

「あ…《竜星の具象化》が破壊されちゃった!!」

「《竜星の具象化》は1ターンに1度、自分のモンスターが破壊された時、デッキから竜星モンスター1体を特殊召喚できるカード。だが、これでは意味がないな…」

再び現れた《氷結界の龍グングニール》によって、今度は柚子のフィールドからカードがなくなってしまった。

これでは直接攻撃を許してしまう。

「あたしは墓地に存在する《光竜星―リフン》の効果を発動!あたしのフィールド上に存在する竜星モンスターが戦闘・効果によって破壊され墓地へ送られた時、墓地から特殊召喚できる!」

切り裂かれた《輝竜星―ショウフク》の幻影が次第に形を変えていく。

そして、その幻影が小さくなっていき、最終的には金色の線が何本も横に刻まれている白い肉体、金色の2本角と赤い瞳、白と金を基調とした刃のような鋭さを持つ対の羽根飾りをつけた蛇竜の幻影となる。

 

光竜星―リフン レベル1 守備0(チューナー)

 

「まだまだあるで!!ウチは墓地の《氷結界の密偵マーラ》の効果発動!このカードが墓地に存在し、ウチの墓地に存在する氷結界モンスターのレベルの合計が6以上の時、1度だけこのカードを墓地から特殊召喚できるで!」

先程の《氷結界の伝道師》とは同じマントをつけているが、ローブの色が黒く染まっていて、青い瞳以外、顔をすべて黒いスカーフで隠している女性が現れる。

その女性の後ろ腰には2本のククリナイフが差してあり、それぞれにはजीना(ヒンディー語で生きるという意味)とमरना (ヒンディー語で死ぬという意味)が刀身に刻まれている。

 

氷結界の密偵マーラ レベル4 攻撃1600

 

氷結界の密偵マーラ

レベル4 攻撃1600 守備1200 効果 水属性 魔法使い族

「氷結界の密偵マーラ」の(2)の効果はデュエル中1度しか発動できない。

(1):このカードの召喚に成功した時、自分フィールド上に他のモンスターが存在しない場合にのみ発動できる。自分の手札から「氷結界」チューナー1体を選んで特殊召喚できる。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。

(2):このカードが墓地に存在し、自分の墓地に存在する「氷結界」モンスターのレベルの合計が6以上の場合に発動できる。このカードを自分フィールド上に特殊召喚する。

 

「バトルや!まずは《マーラ》で《リフン》を攻撃!」

《氷結界の密偵マーラ》がククリナイフを左右逆手に持ち、光の竜の幻影の懐へ飛び込む。

そして、その竜を巻き寿司のように輪切りにして始末した。

「きゃああ!!この効果で特殊召喚された《リフン》はフィールドから離れたとき、除外されるわ…!」

「《グングニール》でダイレクトアタック!!」

《氷結界の龍グングニール》の口から氷でできた無骨な構造の槍が柚子に向けて発射される。

槍は彼女の左胸を貫通する。

「きゃああ!!」

ソリッドビジョンであるため、実際に体にダメージは発生しないが、かなりリアリティが高いためになぜか痛く感じられた。

 

柚子

ライフ4000→1500

 

「すごーい!里香ちゃん、一気に逆転しちゃった!」

「美少女デュエリストをなめとったらあかんで?ウチはこれでターンエンドや!」

 

里香

手札2→0

ライフ4000

場 氷結界の龍グングニール レベル7 攻撃2500

  氷結界の密偵マーラ レベル4 攻撃1600

 

柚子

手札2

ライフ1500

場 なし

 

「主導権とフィールドの状況がオセロゲームのように切り替わったな…」

伏せカードはないものの、里香には手札を消費することで破壊効果を発揮する《氷結界の龍グングニール》が存在する。

更に墓地には《氷結界の伝道師》があり、そのモンスターの効果を使用することで、たとえ《氷結界の龍グングニール》が破壊されたとしても再び戦線に復帰させることが可能だ。

「頑張れー、柚子ちゃーん!!」

絶体絶命の状況の柚子に伊織が応援する。

(すごい…里香…!)

里香と漁介はLDS出身ではないが、2人とも儀式召喚とエクシーズ召喚という召喚法を分析して習得した過去がある。

特に里香はエクストラデッキの使用がいずれデュエルの主流になると考え、その対抗策として影霊衣デッキを作り上げた。

そんな実力の高さはヴァプラ隊のテストを通過したことからも証明されている。

(けど、負けない!!あたしも強くなる。遊矢を守れるくらい強くなる!)

今の自分のデッキは今まで愛用した幻奏デッキではなく、竜星デッキ。

それでも、自分が良いと思い、一生懸命つくりあげたデッキであることに変わりない。

「あたしのターン、ドロー!!」

 

柚子

手札2→3

 

「(来た…!!)あたしは手札から魔法カード《竜星の輝跡》を発動!墓地から竜星モンスター3体をデッキに戻し、デッキからカードを2枚ドローするわ!」

柚子の墓地から緑・赤・緑の順番に横並びとなっている一筋の光が放出され、彼女のデッキに吸収される。

そして、デッキトップから2枚が同じ色の光を帯びた状態で彼女の手札に加わる。

 

墓地からデッキに加わったカード

・風竜星―ホロウ

・炎竜星―シュンゲイ

・輝竜星―ショウフク

 

 

「そしてあたしは手札から《カードガンナー》を召喚!」

 

カードガンナー レベル3 攻撃400

 

「《カードガンナー》…厄介なカードだ」

「このカードは1ターンに1度、デッキトップから3枚までカードを墓地へ送り、ターン終了時まで攻撃力を1枚に付き500アップさせるわ!」

柚子はデッキトップから3枚のカードを墓地へ送る。

すると、《カードガンナー》の頭部にある2つの照明が点灯し、エネルギーチャージが完了したことを告げるように胸部の2つのメーターの針が最大値を示す。

 

カードガンナー レベル3 攻撃400→1900

 

デッキから墓地へ送られたカード

・レベル・スティーラー

・竜宮のツガイ

・激流葬

 

「更に手札から魔法カード《死者蘇生》を発動!その効果であたしは墓地から《竜宮のツガイ》を特殊召喚!」

「な…!?《カード・ガンナー》の効果で墓地に送ったカードを…!」

青い体で金色の星の飾りが複数ついた、緑色のエキズチックな帽子をつけたリュウグウノツカイとピンク色の体で黄色のハートの模様が複数ついた、緑と白が基調の蝶のイラストがある赤いサンバイザーをかぶっているリュウグウノツカイが仲良くフィールドに現れる。

 

竜宮のツガイ レベル6 攻撃2000

 

「このカードは1ターンに1度、手札のモンスターカード1枚を捨てることで、デッキからレベル4以下の幻竜族モンスター1体を特殊召喚できる。あたしはデッキからもう1体の《ビシキ》を特殊召喚するわ!」

 

水竜星―ビシキ レベル2 攻撃0

 

手札から墓地へ送られたカード

・マグマ・ドラゴン

 

「そして…あたしは手札から魔法カード《速攻同調》を発動!墓地からレベル3以下のチューナーモンスター1体を効果を無効にして特殊召喚する。あたしは《ジョクト》を墓地から特殊召喚!」

 

闇竜星―ジョクト レベル2 攻撃0(チューナー)

 

速攻同調

速攻魔法カード

(1):自分の墓地からレベル3以下のチューナー1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。この効果で特殊召喚されたモンスターはこのターン終了時に除外される。

 

「更に墓地の《レベル・スティーラー》の効果発動!このカードはあたしのフィールド上に存在するレベル5以上のモンスター1体のレベルを1つ下げることで、特殊召喚できる!」

《竜宮のツガイ》がその場で自分たちの体を使ってハートマークを作ると、彼らの周囲に5つの白い光の球体が現れ、ハートマークの中央にそれと同じものが1つだけ現れる。

そして、《レベル・スティーラー》がその光の球体を突き破り、ハートマークをくぐってフィールドに現れる。

 

レベル・スティーラー レベル1 攻撃600

竜宮のツガイ レベル6→5 攻撃2000

 

「1ターンで5体のモンスターを召喚やて!!?やるやないか、柚子!!」

フィールドを埋め尽くす5体のモンスターを見た里香は興奮する。

そのうち《闇竜星―ジョクト》はチューナー。

この状況下ならシンクロ召喚を行うことができる。

「レベル5になった《竜宮のツガイ》とレベル2の《水竜星―ビシキ》にレベル2の《闇竜星―ジョクト》をチューニング!!この竜は空想の世界でのみ生きる幻。だけど、あたしの想いは絶対に幻じゃない!シンクロ召喚!現実の空へ今こそ!レベル9!《幻竜星―チョウホウ》!!」

緑色の鱗と赤い腹を持った蛇の体、黄色い鳥のような嘴をもつ緑色の龍の頭部、紫色の羽を数多く持つ翼と4本の黄色い鳥の足。

まるで合成生物かと思われる不思議なモンスターがアジトの真上にある雲を突き破って現れる。

 

幻竜星―チョウホウ レベル9 攻撃2800

 

「あれが…幻竜族シンクロモンスターの筆頭…」

もはや伊織を注意することを忘れ、デュエルをじっと見ていたセラフィムがその竜に見とれてしまう。

「《チョウホウ》の効果発動!シンクロ召喚されたこのカードが存在する限り、シンクロ素材にした竜星モンスターの元々の属性と同じ属性を持つ相手モンスターの効果を発動できなくするわ!」

「な…何やってーーーー!!???」

《幻竜星―チョウホウ》が空に咆哮すると、周囲の風が強くなり、その風の温度が次第に上がっていく。

気温の高い場所では氷結界は満足に戦うことができず、疲れでその場に倒れ込んでしまう。

「氷結界は水属性モンスターだけのカテゴリー。これで真田は永続効果以外のすべてのモンスター効果を封じ込められたな…」

「バトル!《チョウホウ》で《グングニール》を攻撃!ライトニング・シュート!」

《幻竜星―チョウホウ》の口から稲妻のブレスが放たれ、肉体の一部が液化している《氷結界の龍グングニール》の肉体を包み込んでいく。

膨大な電気エネルギーが肉体を駆け巡り、第2の龍は再び眠りにつくこととなった。

 

里香

ライフ4000→3700

 

「《チョウホウ》の効果発動!1ターンに1度、相手フィールド上に存在するモンスターを先頭・効果によって破壊した時、そのモンスターと元々の属性が同じ竜星モンスター1体を守備表示で特殊召喚できる!あたしはデッキからもう1体の《竜宮のツガイ》を特殊召喚!」

 

竜宮のツガイ レベル6 守備1200

 

「更に《カードガンナー》で《マーラ》を攻撃!」

《カードガンナー》の両腕部分に装着されているキャノン砲から白い光線が発射される。

ククリナイフで防御する《氷結界の密偵マーラ》だが、その光線の中で爆発して消滅してしまった。

 

里香

ライフ3700→3400

 

「あたしはこれでターンエンド!《カードガンナー》の《カードガンナー》の効果は終了よ!」

 

里香

手札0

ライフ3400

場 なし

 

柚子

手札3→0

ライフ1500

場 カードガンナー レベル3 攻撃1900→400

  竜宮のツガイ レベル6 守備1200

  幻竜星―チョウホウ レベル9 攻撃2800

  レベル・スティーラー レベル1 守備0

 

再び里香のフィールドからカードがなくなり、戦局が覆る。

《幻竜星―チョウホウ》の力によって里香は身動きを封じ込められ、戦局の厳しさは日の目を見るよりも明らかだ。

「くぅーーー!!なんや柚子、めっちゃ強いやん!!」

「ええ…!?」

ピンチな状況を無邪気に楽しみ、自分をほめる里香に驚く。

そして、それから彼女が純粋にデュエルが好きなのだということがわかる。

「こんなに追い込まれるなんて思わんかったんやで?自分、最高やで!せやけど…」

里香がデッキトップに指をかけ、笑いながら柚子を見る。

「最後に勝つのはウチや!ウチのターン、ドロー!!」

 

里香

手札0→1

 

「このカードがウチの逆転の一手や…ウチはモンスターを裏守備表示で召喚し、ターンエンド…」

いかにも何かがあるぞというオーラを醸し出しながら、彼女はターン終了を宣言する。

 

里香

手札1→0

ライフ3400

場 裏守備モンスター1

 

柚子

手札0

ライフ1500

場 カードガンナー レベル3 攻撃400

  竜宮のツガイ レベル6 守備1200

  幻竜星―チョウホウ レベル9 攻撃2800

  レベル・スティーラー レベル1 守備0

 

(里香…一体どんなモンスターを伏せたの…??)

フッフッフッと笑う里香に警戒しながら、柚子はカードをドローする。

 

柚子

手札0→1

 

「あたしは《カードガンナー》の効果を発動!もう1度3枚のカードを墓地へ送るわ」

 

カードガンナー レベル3 攻撃400→1900

 

デッキから墓地へ送られたカード

・緊急同調

・貪欲な壺

・魔竜星―トウテツ

 

「そして、《竜宮のツガイ》を攻撃表示に変更」

 

竜宮のツガイ レベル6 守備1200→攻撃2000

 

これで《幻竜星―チョウホウ》が裏守備モンスターを破壊し、残り2体の攻撃で里香のライフを0にする準備は整った。

しかし、それでも里香は笑いを止めることはない。

「(な…なんだか不気味だけど…この攻撃を通せば勝てる!!)バトルよ!《チョウホウ》で裏守備モンスターを攻撃!!」

《幻竜星―チョウホウ》の口から放たれた稲妻が裏守備モンスターに襲い掛かる。

そして、柚子の残り2体のモンスターがダイレクトアタックを仕掛けようとする。

「フxフッフッ…なんちゃって」

「え…?」

3体の攻撃は気持ちいいくらいに裏守備モンスターと里香を巻き込んでいき、彼女は派手に後方へ吹き飛んでいった。

 

里香

ライフ3400→1400→0

 

裏守備モンスター

氷結界の番人ブリズド レベル1 守備500

 

「あっはははは!!楽しかったで、柚子ちゃん!」

「…」

負けたにもかかわらず大笑いする里香に対して、柚子は勝利したにもかかわらずポカンとしている。

「あ、あの…なんでもう負けが確定してる状態だったのにあんな…」

「柚子、覚えとき?デュエリストはダイレクトアタックでは傷ついたりするかもしれんけど、自分からは攻撃せんし、戦うのはモンスター。そして、戦ってくれる自分のモンスターのためにも最後まで勝利への道を探さんと駄目なんやで?ま、これは師匠の受け売りやけどな」

「師匠…?」

「ウチと漁介を強うしてくれた人や。今度教えたる!それよりも…おなかすいたわー…」

急に表情を変え、おなかを抱えて脱力状態になった里香を見て、柚子が苦笑する。

「ふふ…じゃあ、あたしがお昼ご飯を作るわ」

「ん…?ご飯??」

デュエルを見物し、2人の会話を聞いていた伊織の脳裏にある光景が浮かぶ。

トレーラーの中にあるキッチン、バケツの中にある大量のジャガイモ…。

「きゃーーーー!!」

伊織は大急ぎでトレーラーへ走って行ってしまう。

「あ、伊織様ーーー!!」

セラフィムもびっくりしながら戻っていき、伊織のあわてようを声色で感じ取ったジョンソンはフウとため息をついた。

 

「この中か…」

一方、翔太たち3人は尾行していた男が廃棄された倉庫の中に入るのを見た。

その倉庫はもう使われていないにもかかわらず、壁にひび割れやサビはなく、扉も真新しい。

「あの中に秘密があるようだな…」

「行くぞー!」

漁介を先頭に翔太、鬼柳が扉の前まで行く。

そして、彼はゆっくりと扉を開いた。




タイトルと内容が違うじゃないか!と突っ込んだら負けです。
さあ、倉庫の中で3人は何を見るのか?
そして伊織は皮むきを終えることができるのか…??


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オリカ紹介Ⅲ

第28話から第45話までのオリカと非公式オリカ(効果調整あり)を紹介。


ナチュラル・サファリ

フィールド魔法カード

「ナチュラル・サファリ」の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):1ターンに1度、フィールド上に獣族・獣戦士族・鳥獣族が存在するときに発動できる、手札からレベル4以下の獣族・獣戦士族・鳥獣族モンスター1体を特殊召喚する。その後、モンスターのコントローラーから見て相手のフィールド上に「野獣トークン」1体を表側攻撃表示で特殊召喚する。

 

野獣トークン

レベル4 攻撃1800 守備1800 トークン 地属性 獣族

「ナチュラル・サファリ」の効果で特殊召喚される。

 

古代の機械猟犬(アニメオリカ・調整)

レベル3 攻撃1000 守備1000 効果 地属性 機械族

「古代の機械猟犬」の(3)の効果はこのカードが表側表示で存在する限り1度しか発動できない。

(1):このカードが攻撃する場合のダメージステップ終了時まで、相手は魔法・罠カードを発動できない。

(2):1ターンに1度、相手フィールドにモンスターが存在する場合に発動できる。相手に600ダメージを与える。

(3):自分フィールドにこのカード以外の「アンティーク・ギア」モンスターが存在する場合に発動できる。自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

騎士の逆鱗

通常罠カード

(1):バトルフェイズ開始時、自分フィールド上に存在するモンスターが「魔装騎士」モンスター1体のみの場合に発動できる。このターン、そのモンスターは相手フィールド上に存在するすべてのモンスターに1回ずつ攻撃することができる。

 

サンプル・フォッシル(アニメオリカ・調整)

レベル2 攻撃0 守備0 効果 地属性 岩石族

「サンプル・フォッシル」は1ターンに1度しか召喚できない。

(1):このカードの召喚に成功した時、相手の墓地からレベル4以下のモンスター1体を対象に発動する。そのモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。このカードの攻撃力はそのモンスターの元々の攻撃力の数値分アップする。この効果で特殊召喚したモンスターは攻撃できず、リリースすることはできない。

 

シェルナイト(アニメオリカ・調整)

レベル4 攻撃0 守備2000 効果 地属性 岩石族

(1):このカードの召喚・反転召喚に成功した時に発動できる。相手ライフに500ダメージを与える。その後、このカードは攻撃表示の場合、表側守備表示に変更する。

 

風化融合―ウェザリング・フュージョン

通常罠カード

「風化融合―ウェザリング・フュージョン」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に存在する融合モンスター以外の岩石族モンスターが戦闘で破壊され墓地へ送られた時に発動できる。自分及び相手の墓地から、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターをゲームから除外し、「化石」と名のついた融合モンスター1体を「化石融合―フォッシル・フュージョン」の効果による融合召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

 

タイム・ストリーム(アニメオリカ・調整)

速攻魔法カード

(1):自分LPを半分支払うことで発動できる。自分フィールド上に存在する「化石」融合モンスター1体をリリースし、そのカードのテキストに記されている「化石」融合モンスター1体を召喚条件を無視して手札・デッキから自分フィールド上に融合召喚扱いで特殊召喚する。

 

新生代化石竜スカルドレイク

レベル4 攻撃2000 守備2000 融合 地属性 岩石族

自分の墓地の岩石族モンスター+相手の墓地のドラゴン族モンスター

このカードは「化石融合―フォッシル・フュージョン」の効果でのみ特殊召喚できる。

(1):自分のターンのスタンバイフェイズ時に発動できる。自分フィールド上に表側表示で存在するこのカードをリリースすることで、デッキから「中生代化石竜スカルウィルム」1体を融合召喚扱いで特殊召喚する。

 

標本交換

通常魔法カード

(1):自分フィールド上に存在する「化石」融合モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターをリリースし、デッキ・エクストラデッキから同じレベルの「化石」融合モンスター1体を「化石」融合モンスターの効果による融合召喚扱いで特殊召喚する。

 

中生代化石飛竜スカルウィルム

レベル6 攻撃2500 守備200 効果 地属性 岩石族

このカードは「化石」融合モンスターの効果でのみ特殊召喚できる。

このカードがデッキ・フィールド・墓地に存在するとき、融合モンスターとして扱う。

(1):このカードが融合召喚以外の方法で召喚された場合、次の自分のターン終了時まで攻撃できず、効果は無効化される。この効果は無効化されない。

(2):このカードは融合召喚に成功したターン、戦闘では破壊されず、攻撃することができない。

(3):このカードの融合召喚に成功した時に発動する。そのターン終了時に相手LPを半分にする。

(4):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊したターン終了時に発動できる。自分フィールド上に存在するこのカードをリリースすることで、デッキから「古生代化石飛竜スカルワイバーン」1体を融合召喚扱いで特殊召喚する。

 

中生代化石術士スカルウィザード

レベル6 攻撃2200 守備1200 効果 地属性 岩石族

このカードは「化石」融合モンスターの効果でのみ特殊召喚できる。

このカードがデッキ・フィールド・墓地に存在するとき、融合モンスターとして扱う。

(1):このカードが融合召喚以外の方法で召喚された場合、次の自分のターン終了時まで攻撃できず、効果は無効化される。この効果は無効化されない。

(2):1ターンに1度、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターの攻撃力・守備力をターン終了時まで入れ替える。

(3):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊したターン終了時に発動できる。自分フィールド上に存在するこのカードをリリースすることで、デッキから「古生代化石術士スカルウォーロック」1体を融合召喚扱いで特殊召喚する。

 

禁じられた施し

通常魔法カード

「禁じられた施し」は1ターンに1度しか発動できない。

このカードを発動したターン、自分はモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚できず、魔法・罠カードをセットすることができない。

(1):自分LPが相手よりも下回っているときに発動できる。デッキからカードを2枚ドローし、その後手札を1枚墓地へ送る。

 

古生代化石術士スカルウォーロック

レベル8 攻撃2700 守備2500 効果 地属性 岩石族

このカードは「化石」融合モンスターの効果でのみ特殊召喚できる。

このカードがデッキ・フィールド・墓地に存在するとき、融合モンスターとして扱う。

(1):このカードが融合召喚以外の方法で召喚された場合、次の自分のターン終了時まで攻撃できず、効果は無効化される。この効果は無効化されない。

(2):このカードが攻撃する場合、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。

(3):このカードが相手モンスターを攻撃するとき、攻撃対象となったモンスターはダメージステップ終了時まで攻撃力が半分になり、効果が無効化される。

 

五芒星の残光

通常魔法カード

(1):自分フィールド上に存在する「魔装」モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターのレベルを自分のPゾーンに存在するPカード1枚のレベルと同じにする。Xモンスターの場合、そのPカードと同じ数値のレベルのモンスターとしてX召喚の素材にできる。

 

魔装妖キュウビ

レベル7 攻撃2000 守備1000 シンクロ 闇属性 アンデッド族

「魔装」チューナー+「魔装妖ビャッコ」

このカードは上記のモンスターによるS召喚でのみ特殊召喚できる。

(1):このカードが相手モンスターと戦闘を行うダメージステップ開始時に発動する。ダメージステップ終了時までそのモンスターの攻撃力・守備力を0にし、効果を無効化する。

(2):このカードが相手によって破壊され墓地へ送られた時に発動できる。自分の墓地から「魔装妖ビャッコ」1体を表側守備表示で特殊召喚する。

 

EMシュートビー

レベル3 攻撃500 守備500 効果 地属性 昆虫族

「EMシュートビー」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に存在する「EM」モンスターが相手モンスターの攻撃によって破壊され墓地へ送られた時に発動できる。このカードを手札から特殊召喚し、デッキからカードを1枚ドローする。その時ドローしたカードが「魔術師」Pモンスターの場合、それを互いに確認し、更にデッキからカードを1枚ドローする。

 

魔装守衛ランマル

レベル1 攻撃400 守備400 チューナー 闇属性 戦士族

(1):自分フィールドの「魔装騎士」モンスターが破壊されるときに発動できる。代わりに手札に存在するこのカード1枚を墓地へ送る。

(2):(1)の効果を発動した時、自分フィールド上に存在するモンスターが1体のみの場合に発動できる。自分はデッキからカードを1枚ドローする。

 

魔装騎士ケントゥリア

レベル2 攻撃300 守備500  無属性 戦士族

【Pスケール:青4/赤4】

「魔装騎士ケントゥリア」の(1)のP効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードをPゾーンに置いた時に発動できる。このカードを破壊し、自分のエクストラデッキに表向きで存在するPモンスター1体を自分のPゾーンに置く。

【チューナー:モンスター効果】

このカードは通常召喚できない。

このカードは自分の手札・墓地に存在する「魔装騎士」モンスター1体をゲームから除外することで手札・エクストラデッキから特殊召喚できる。この効果で除外されたカードは次の自分のターン終了時にデッキに戻る。

(1):「魔装騎士ケントゥリア」は自分フィールド上に1枚しか存在できない。

(2):このカードは召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した次の相手のターン終了時までしかS素材とすることができない。この効果は無効化できない。

(3):1ターンに1度、自分のエクストラデッキに表向きで存在するPモンスター1体を対象に、以下の効果から1つを選択して発動できる

●選択したカードを自分の手札に加える。

●選択したカードを裏向きにしてエクストラデッキに戻す。

 

魔装騎士HADES(ハデス)

レベル10 攻撃3000 守備2000 シンクロ 無属性 戦士族

【Pスケール:青4/赤4】

(1):1ターンに1度、自分のPゾーンに存在するこのカードを破壊することで発動できる。自分の手札・エクストラデッキに存在するPモンスターのチューナー1体を表側守備表示で特殊召喚する。

(2):このカードはエクストラデッキへ送られるとき、裏向きとなる。

【モンスター効果】

Pモンスターのチューナー+Pゾーンに存在するモンスター2体

「魔装騎士HADES」の(1)のモンスター効果は1ターンに1度しか発動できない。

このカードはP召喚することができない。

(1):このカードのS召喚に成功した時、フィールド上に存在するカードを3枚まで破壊することができる。

(2):このカードよりも高い攻撃力を持つモンスターと戦闘を行う時、このカードはその戦闘では破壊されず、戦闘を行った相手モンスターをダメージ計算後に破壊する。その後、相手に1000ダメージを与える。

(3):モンスターゾーンのこのカードが戦闘・効果によって破壊された場合に発動できる。自分のPゾーンに存在するカードをすべて破壊し、このカードを自分のPゾーンに置く。

 

霊獣使いアトゥイ

レベル5 攻撃1400 守備1800 チューナー 風属性 サイキック族

自分は「霊獣使いアトゥイ」を1ターンに1度しか特殊召喚できない。

「霊獣使いアトゥイ」の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードは自分フィールド上に「精霊獣騎」モンスターの特殊召喚に成功したターン、手札から特殊召喚できる。

(2):このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、自分の墓地または除外されている融合モンスター以外の自分の「霊獣」モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールド上に表側守備表示で特殊召喚する。

 

霊獣の以心伝心

永続罠カード

「霊獣の以心伝心」はフィールド上に1枚しか表側表示で存在できない。

(1):1ターンに1度、相手ターンのメインフェイズに発動できる。ゲームから除外されている自分の「霊獣」カード1枚につき300のダメージを相手に与える。

 

霊獣の誕生

通常魔法カード

「霊獣の誕生」の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に「霊獣」モンスターが存在する場合にのみ発動できる。自分の墓地に存在するカードを3枚までゲームから除外する。

(2):このカードがゲームから除外された時、自分の墓地にカードがなく、自分の「霊獣」モンスターが4体以上ゲームから除外されている場合に発動する。自分はデッキからカードを2枚ドローする。

 

古代の機械偵察兵(アンティーク・ギアサーチャー)

レベル3 攻撃1000 守備1500 効果 地属性 機械族

「古代の機械偵察兵」は1ターンに1度しか(1)の方法で特殊召喚することができない。

(1):自分フィールド上にモンスターが存在せず、相手フィールド上にモンスターが存在するとき、このカードは手札から特殊召喚することができる。

(2):「アンティーク・ギア」モンスターをアドバンス召喚する場合、このカードは2体分のリリースとする事ができる。

 

古代の機械守護者(アンティーク・ギアガーディアン)

レベル8 攻撃0 守備3000 効果 地属性 機械族

このカードはフィールド上に存在するとき、カード名を「古代の機械巨人」としても扱う。

(1):このカードは召喚・反転召喚に成功した時、守備表示となる。

(2):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分フィールド上に存在する「アンティーク・ギア」モンスターは戦闘では破壊されない。

 

古代の機械廃棄融合

通常罠カード

(1):自分の魔法・罠ゾーンにセットされているこのカードが相手のカードの効果によってフィールドから離れたときに発動できる。「アンティーク・ギア」融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。その後、愛艇フィールド上に存在する魔法・罠カードをすべて破壊する。

 

霊獣の聖剣士(セフィラナイト)-ユウ

レベル7 攻撃2500 守備2100 風属性 サイキック族

【Pスケール:青4/赤4】

「霊獣の聖剣士-ユウ」のP効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):Pゾーン、エクストラデッキに存在するこのカードを対象に発動できる。選択したカードを持ち主の手札に戻す。

【モンスター効果】

(1):自分のPゾーンに存在する2枚のカードが「セフィラ」カードの場合、Pスケールを無視してP召喚することができる。

(2):このカードが相手モンスターを攻撃するときに発動する。その戦闘で互いのモンスターは破壊されず、互いが受ける戦闘ダメージは0になる。ダメージステップ終了時に、その相手モンスターとこのカードを持ち主の手札に戻す。

 

精霊獣セフィラムフォーチュン

レベル3 攻撃400 守備900 風属性 鳥獣族

【Pスケール:青6/赤6】

(1):自分は「霊獣」モンスター及び「セフィラ」モンスターしかP召喚できない。この効果は無効化されない。

(2):このカードが破壊される場合、代わりに自分フィールド上に存在する「セフィラ」Pモンスター1体をエクストラデッキへ送ることができる。

【チューナー:モンスター効果】

(1):1ターンに1度、自分がコントロールする「霊獣の聖剣士-ユウ」の効果によって相手モンスターがフィールドから離れたとき、その相手モンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。

(2):このカードは自分フィールド上に他の「霊獣」モンスターが存在するとき、戦闘では破壊されない。

 

古代の機械三頭猟犬(アンティーク・ギア・トリプルバイト・ハウンドドッグ)(アニメオリカ・調整)

レベル7 攻撃1800 守備1000 融合 地属性 機械族

「アンティーク・ギア」モンスター×3または融合モンスターを含む「アンティーク・ギア」モンスター×2

(1):このカードが攻撃する場合のダメージステップ終了時まで、相手は魔法・罠カードを発動できない。

(2):このカードは1度のバトルフェイズ中に3回まで攻撃することができる。その場合、2回目以降の攻撃で発生する相手への戦闘ダメージは半分となる。

 

精霊獣ウタリキャット

レベル4 攻撃1700 守備300 効果 風属性 獣戦士族

「精霊獣ウタリキャット」は1ターンに1度しか特殊召喚できない。

「精霊獣ウタリキャット」の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードを手札から除外することで発動できる。このターン、1度だけ「聖霊獣騎」を特殊召喚するとき、その召喚条件を無視することができる。

 

セイクリッド・プトレマイオス

ランク7 攻撃3000 守備2000 エクシーズ 光属性 戦士族

光属性レベル7モンスター×3

「セイクリッド・プトレマイオス」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードが「RUM」の効果によってX召喚に成功した時に発動できる。このカードのX素材の数だけフィールド上のカードを持ち主の手札に戻し、その数×1000のダメージを相手に与える。

(2):このカードは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃できる。

(3):このカードが戦闘で破壊され墓地へ送られた時に発動できる。自分の墓地に存在する光属性モンスター1体を手札に加える。

 

獣闘機パンサー・プレデター(アニメオリカ・調整)

レベル6 攻撃1600 守備2000 融合 闇属性 機械族

レベル4以下の獣戦士族モンスター+レベル4以下の機械族モンスター

(1):1ターンに1度、このカードの攻撃力の半分のダメージを相手に与えることができる。

(2):このカードが破壊され墓地へ送られた時に発動できる。このカードの融合召喚に使用した融合素材モンスター一組が自分の墓地に揃っていれば、その一組を特殊召喚する。その後、このカードをエクストラデッキに戻す。

 

鉄盾の獣闘機勲章(アニメオリカ)

永続罠カード

(1):1ターンに1度、自分が100以上の戦闘ダメージを受けた場合に発動出来る。その戦闘ダメージ100につき、勲章カウンターを1つこのカードの上に置く。

(2):勲章カウンターが置かれているこのカードを墓地へ送り、自分フィールドの「獣闘機」モンスター1体を対象として発動出来る。勲章カウンター×100攻撃力をアップする。

 

聖銀の獣闘機勲章

通常罠カード

「聖銀の獣闘機勲章」は1ターンに1度しか発動できない。

(1);自分フィールド上に表側攻撃表示で存在する「獣闘機」融合モンスター1体を対象に発動できる。このカードの融合召喚に使用した融合素材モンスター一組が自分の墓地に揃っていれば、その一組を特殊召喚する。その後、この効果で特殊召喚したモンスターの数まで相手フィールド上に存在する魔法・罠カードを破壊することができる。

 

フュージョン・スナイパー

永続罠カード

「フュージョン・スナイパー」はフィールド上に1枚しか表側表示で存在できない。

(1)1ターンに1度、自分フィールド上に融合モンスターが存在する場合、自分のターンのメインフェイズ時にのみ発動できる。相手フィールド上に存在する特殊召喚されたモンスター1体を破壊し、1000ダメージを相手に与える。

 

PCM(ペンデュラムチェンジマジック)-シルバームーン・アーマー

通常魔法カード

(1):自分フィールド上に表側表示で存在するレベル7のPモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターと同じ種族でそのレベルと同じ数値のランクを持つ「MLX(ムーンライトエクシーズ)」モンスター1体を、

対象のモンスターの上に重ねてエクストラデッキからX召喚する。

(2):この効果でX召喚されたモンスターは次の自分のターンのスタンバイフェイズまで戦闘および効果では破壊されない。

 

MLX(ムーンライトエクシーズ)-魔装騎士ペイルライダー・ムーンレイス

ランク7 攻撃2500 守備2000 エクシーズ 闇属性 戦士族

「魔装」レベル7モンスター×2

(1):このカードと戦闘を行った相手モンスターをダメージステップ終了時に破壊する。

(2):自分LPが1000以下の場合、このカードは相手フィールド上に存在するすべてのモンスターに1回ずつ攻撃することができる。

(3):「魔装騎士ペイルライダー」をX素材としている場合、以下の効果を得る。

●1ターンに1度、自分LPが1000以下の場合、自分の墓地に存在する「魔装」モンスター1体を除外し、相手フィールド上に存在するモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターの攻撃力・守備力をターン終了時まで0にする。

 

フレイム・チャンス

アクション魔法カード

(1):自分フィールド上に存在するモンスターが戦闘で破壊され墓地へ送られた時に発動できる。デッキからカードを1枚ドローする。

 

誤配送

アクション罠カード

(1):相手はデッキからカードを1枚ドローする。

 

融合の宝札

通常魔法カード

「融合の宝札」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):手札の「融合」カード1枚を墓地へ送ることで発動できる。デッキからカードを2枚ドローする。このカードを発動したターン、自分は融合召喚以外の方法でエクストラデッキからモンスターを特殊召喚することができない。

 

ファイア・ロープ

アクション魔法カード

(1):相手フィールド上に存在するモンスター1体を対象に発動できる。その門スタはターン終了時まで攻撃できず、表示形式を変更できない。

 

フレイム・キャノン

アクション魔法カード

(1)フィールド上にセットされている魔法・罠カードを1枚破壊する。

 

ソウル・バーニング

アクション魔法カード

(1):このターン、1度だけ自分が受けるダメージを0にする。

 

流星の魔術師

レベル8 攻撃0 守備3000 光属性 魔法使い族

【Pスケール:青4/赤4】

(1):このカードをPゾーンに置いた時、自分のPゾーンに他のカードが無い場合に発動する。エクストラデッキからPスケールが7以上の「魔術師」Pモンスター1体を選び、自分のPゾーンに置く。

【モンスター情報】

俗世を捨て、山の中で60年もの時を孤独に生きる僧侶。

彼について知る者は誰もおらず、その左目瞼の傷だけがそれを物語る。

ただ1つ分かることは彼が流れ星からこの世の流れを見抜くことができるということだけだ。

 

イリュージョン・ファイヤー(アニメオリカ・調整)

通常魔法カード

「イリュージョン・ファイヤー」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。このターン、そのモンスター以外の自分フィールドのモンスターは攻撃できず、その対象のモンスターはそれ以外の自分フィールドのモンスターの数だけ攻撃できる。

 

MLX(ムーンライトエクシーズ)-オッドアイズ・月下・ドラゴン

レベル7 攻撃2500 守備2000 エクシーズ 闇属性 ドラゴン族

「オッドアイズ」レベル7モンスター×2

(1):このカードが相手モンスターと戦闘を行う場合、このカードが相手に与える戦闘ダメージは倍になる。

(2):自分LPが1000以下の場合、このカードは戦闘では破壊されず、自分が受ける戦闘ダメージは0となる。

(3):「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン」をX素材としている場合、以下の効果を得る。

●自分LPが1000以下の場合、このカードが相手モンスターを攻撃したダメージステップ終了時に発動できる。攻撃対象のモンスターを破壊し、そのモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える。

 

対空システム

アクション魔法カード

(1):相フィールド上に存在するのレベル4以下のモンスターが効果を発動した時に発動できる。その発動を無効にする。

 

防衛システム

アクション魔法カード

(1):発動後、1度だけ相手モンスター1体の攻撃を無効にする。この効果を発動するまで、自分は「防衛システム」を発動できない。

 

召魔の結界

通常罠カード

(1):自分フィールド上に存在する「魔装戦士」モンスターが相手モンスターの攻撃によって破壊され墓地へ送られた時に発動できる。相手フィールド上に表側攻撃表示で存在するモンスター1体を破壊する。その後、自分の墓地に存在するレベル5以上の通常モンスター1体を特殊召喚する。

 

黒魔術の宝札

通常魔法カード

「黒魔術の宝札」は1ターンに1度しか発動できず、このカードを発動したターン、自分は魔法使い族モンスター以外のモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚できない。

(1):自分フィールド上に存在するモンスターが「ブラック・マジシャン」モンスター1体のみの場合に発動できる。自分はデッキからカードを2枚ドローする。

 

再利用システム

アクション魔法カード

(1):自分はデッキからカードを1枚ドローし、手札を1枚墓地へ捨てる。

 

魔装使いイグシュ

レベル2 攻撃1200 守備700 炎属性 魔法使い族

魔装戦士アルニスを陰で支える魔道士。炎を食べることで自らの魔力を回復させることができる。

 

奇襲システム

アクション魔法カード

(1):相手に500ダメージを与える。

 

幻影騎士団(ファントム・ナイツ)スプリットロッド

レベル4 攻撃1600 守備1000 効果 闇属性 戦士族

(1):このカードを「幻影騎士団」モンスターのX素材とする場合、2体分のX素材とすることができる。

(2):このカードをX素材とする場合、「幻影騎士団」モンスターのX召喚にしか使用できない。

 

幻影騎士団サイレントブーツ(アニメオリカ・調整)

レベル3 攻撃200 守備1200 効果 闇属性 戦士族

(1):自分フィールド上に「幻影騎士団」モンスターが存在する場合、手札から特殊召喚できる。

(2):このカードをS素材とすることができない。

 

幻影騎士団の晩餐(ファントム・ナイツ・ディナータイム)

永続魔法カード

「幻影騎士団の晩餐」の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分のターンのメインフェイズ時に発動できる。自分は通常の召喚に加えて一度だけ「幻影騎士団」モンスター1体を召喚できる。

 

幻影騎士団ダスティローブ(アニメオリカ・調整)

レベル3 攻撃800 守備1000 効果 闇属性 戦士族

「幻影騎士団ダスティローブ」の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードは召喚に成功した時、守備表示となる。

(2):このカードが表示形式を変更した時、自分フィールド上に存在する「幻影騎士団」モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで800アップする。

 

幻影騎士団ラギッドグローブ(アニメオリカ・調整)

レベル3 攻撃1000 守備500 効果 闇属性 戦士族

(1):このカードを素材にX召喚に成功した闇属性モンスターは以下の効果を得る。

●このX召喚に成功した時に発動できる。このカードの攻撃力は1000アップする。この効果は無効化することができない。

 

幻影死鎌(ファントム・デスサイス)

速攻魔法カード

(1):自分フィールド上に存在する「幻影騎士団」モンスターの攻撃が無効になった時、そのモンスター1体を対象に発動できる。相手フィールド上に存在する魔法・罠カードを2枚まで破壊し、このバトルフェイズ中そのモンスターはもう1度だけ続けて攻撃できる。

 

EMクレイジーボックス

通常罠カード

(1):自分フィールド上に表側守備表示で存在する「EM」モンスターが攻撃対象となった時に発動できる。このターン、自分が受ける戦闘ダメージは0となる。

(2):相手の直接攻撃宣言時、墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。自分はデッキからカードを1枚ドローする。この効果でドローしたカードが「EM」Pモンスターの場合、そのカードを表側表示でエクストラデッキに戻すことでその攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了させる。この効果は(1)の効果が発動したターン、発動できない。

 

EMオッドアイズ・クラウン

レベル3 攻撃1500 守備1000 闇属性 魔法使い族

【Pスケール:青3/赤3】

(1):自分フィールド上に存在する「オッドアイズ」モンスターの攻撃力・守備力が400ポイントアップする。

【モンスター効果】

(1):このカードがフィールド・エクストラデッキに表側表示で存在する場合、カード名を「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン」として扱い、種族をドラゴン族として扱うことができる。

(2):このカードを融合素材として「アイズ」ドラゴン族融合モンスターの融合召喚に成功した時に発動する。そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで700アップする。

 

幻影騎士団デッドサイス

ランク4 攻撃2000 守備1800 エクシーズ 闇属性 戦士族

闇属性レベル4モンスター×2

「幻影騎士団デッドサイス」の(1)の効果はフィールド上に表側表示で存在する限り1度しか使用できない。

(1):自分の魔法・罠・モンスター効果によって自分LPを失ったターンに発動できる。その数値分、自分LPを回復させる。その後、回復したLPの数値分このカードの攻撃力をアップさせる。

(2):このカードが戦闘で破壊され墓地へ送られた時に発動できる。このカードのX素材となっている闇属性モンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。

 

オッドアイズ・リバース

通常魔法カード

「オッドアイズ・リバース」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分の墓地に存在する「オッドアイズ」「EM」Pモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。

(2):このカードを発動した時、自分Pゾーンに「魔術師」Pカードが2枚存在する場合、このターン、「オッドアイズ」モンスターは相手の魔法・罠カードの効果を受けない。

 

灼熱の影霊衣―セフィラフレア

レベル7 攻撃2000 守備2000 水属性 魔法使い族

【Pスケール:青4/赤4】

(1):1ターンに1度、自分が「影霊衣」儀式モンスターの儀式召喚に成功した時に発動できる。Pゾーンに存在するこのカードを破壊し、デッキからカードを1枚ドローする。

【モンスター効果】

(1):自分のPゾーンに存在する2枚のカードが「セフィラ」カードの場合、Pスケールを無視してP召喚することができる。

(2):このカードの召喚・P召喚に成功した時に発動できる。レベルの合計が儀式召喚するモンスターのレベル以上となるように自分のフィールド上に存在する「影霊衣」モンスターを最大3体までリリースし、デッキから「影霊衣」儀式モンスター1体を儀式召喚する。

 

創星のカオス

通常罠カード

(1):自分フィールド上に「sophia」モンスターが存在するとき、自分LPを半分支払うことで発動できる。フィールド上に存在する「sophia」モンスター以外のすべてのカードをゲームから除外する。

 

E・HEROブルーライト・ランサー

レベル3 攻撃500 守備800 光属性 戦士族

【Pスケール:青8/赤8】

(1):自分は「HERO」モンスターしかP召喚できない。この効果は無効化できない。

【モンスター効果】

(1):自分フィールド上に存在する「HERO」モンスターが、「フィールド上のカード1枚を破壊する効果」を持つ相手の効果の対象となった時に発動できる。このカードを手札から特殊召喚できる。

(2):この効果によって特殊召喚に成功したターン、自分フィールド上に存在する「HERO」モンスターはターン終了時まで相手の効果では破壊されない。

 

 

次元均衡(アニメオリカ・TF(タッグフォース)仕様)

通常罠カード

(1):自分フィールド上に存在する獣族モンスターが相手モンスターの攻撃によって破壊され墓地へ送られたときに発動することが出来る。そのモンスター1体を墓地から特殊召喚し、攻撃モンスターをゲームから除外する。

 

リバース&マスク

通常罠カード

(1):自分フィールド上に存在するレベル4以下の「HERO」モンスターが戦闘で破壊され墓地へ送られた時に発動できる。そのモンスター1体を自分フィールド上に攻撃表示で特殊召喚する。その後、そのモンスターをリリースし、そのモンスターと同じ属性の「M・HERO」モンスター1体を「マスク・チェンジ」による特殊召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

 

スカブ・スカーナイト(アニメオリカ・TF仕様)

レベル4 攻撃0 守備0 効果 闇属性 戦士族

「スカブ・スカーナイト」は自分フィールド上に1枚しか表側表示で存在できない。

(1):このカードは戦闘では破壊されない。

(2):このカードが表側守備表示で存在する場合、このカードを破壊する。

(3):攻撃可能な相手モンスターはこのカードに攻撃しなければならない。

(4):バトルフェイズ終了時にこのカードと戦闘を行った相手モンスター1体のコントロールを得る事ができる。

 

幻奏の音姫プレピュード・デビュッシー

レベル7 攻撃2400 守備2000 融合 光属性 天使族

「幻奏」モンスター×2

「幻奏の音姫プレピュード・デビュッシー」の(1)(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードの特殊召喚に成功した時に発動できる。相手に1000ダメージを与える。

(2):このカードが「幻奏の歌姫ソプラノ」を融合素材として融合召喚に成功した場合、以下の効果を得る。

●自分のターンのメインフェイズ時に発動できる。相手フィールド上に存在する魔法・罠カードを2枚破壊する。

 

スカブ・ブラスト(アニメオリカ・調整)

通常魔法カード

(1):自分フィールド上に「スカブ・スカーナイト」が存在する場合にのみ発動できる。自分フィールド上に表側表示で存在するモンスターの数×200ダメージを相手ライフに与える。

(2):このカードが墓地に存在する場合、自分のターンのドローフェイズ時に発動できる。通常のドローを行う代わりにこのカードを手札に加える。

 

輪舞の第2楽章

通常罠カード

(1):相手モンスターの直接攻撃によって自分が戦闘ダメージを受けたときに発動できる。受けたダメージ以下の攻撃力を持つ「幻奏」モンスター1体をデッキから表側攻撃表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚に成功したターン、自分はそのモンスターの攻撃力以下の戦闘・効果ダメージを受けない。

 

幻奏の音女エクローグ

レベル4 攻撃1600 守備1200 効果 光属性 天使族

「幻奏の音女エクローグ」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できず、(2)の効果はデュエル中1度しか発動できない。

(1):このカードが相手モンスターの攻撃によって破壊され墓地へ送られた時に発動する。自分の墓地に存在する「幻奏」モンスター1体とデッキに存在する「融合」魔法カード1枚を手札に加える。

(2):このカードと「幻奏」融合モンスターが墓地に存在し、自分の手札が0枚の場合、相手の攻撃宣言時に発動できる。このカードを墓地から特殊召喚し、その攻撃を無効にする。

 

マジシャンズ・カード(アニメオリカ・調整)

「マジシャンズ・カード」は1ターンに1度しか発動できず、(1)の効果を他のカード効果によって発動することができない。

(1):手札がこのカード1枚で、自分フィールドにカードが存在しない場合に発動できる。相手フィールドのカードの数だけ、自分はデッキからドローする。その後、手札を相手に見せる。このターン終了時、自分フィールドの全てのカードを除外する。

 

純愛のタランテラ

通常魔法カード

(1):自分フィールド上に「幻奏」モンスターが存在する場合にのみ発動できる。相手フィールド上に存在するモンスター1体の効果をターン終了時まで無効にする。

(2):このカードを発動した時、自分フィールド上に「幻奏の華歌聖ブルーム・ディーヴァ」1体が存在する場合、そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで0となり、このターンのバトルフェイズ中、そのモンスターは2回攻撃することができる。

 

Sp(スピードスペル)-スピード・ランクアップ

通常魔法カード

このカードのカード名はルール上、「RUM-スピード・フォース」としても扱う。

(1):自分SPCが4つ以上存在するとき、自分フィールド上に存在するXモンスター1体を対象として発動できる。その自分のモンスターよりランクが1つ高く、同じ種族のXモンスター1体を、対象のモンスターの上に重ねてエクストラデッキからX召喚する。

 

Sp-エクシーズ・チャージ

通常魔法カード

「Sp-エクシーズ・チャージ」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分の手札に存在するカードがこれ1枚のみで、自分フィールド上に存在するカードがX素材を持つXモンスター1体のみの場合、スピードカウンターを5つ取り除くことで発動できる。自分フィールド上に存在するX素材の数だけ自分はデッキからカードをドローする。

 

RR-マイン

通常罠カード

(1):自分フィールド上に存在する「RR」モンスターが攻撃対象となったときに発動できる。そのモンスターと相手フィールド上の特殊召喚されたモンスター1体を破壊する。その後、自分のデッキ・墓地から「RUM」魔法カード1枚を手札に加える。

 

デス・アクセル(アニメオリカ・調整)

通常罠カード

(1):自分が戦闘ダメージを受けたときに発動できる。このターン、自分は「スピード・ワールド」魔法カードの効果で自分のスピードカウンターは減らない。

(2):このカードを発動した時、自分が受けた戦闘ダメージが1000以上の場合、そのダメージ500毎に自分用スピードカウンターを1つ置く。

 

Sp-ペンデュラム・アクセラレーション

通常魔法カード

(1):自分がP召喚に成功したターンの自分メインフェイズ時に発動できる。P召喚に成功したモンスターの数だけ自分用スピードカウンターを増やす。

 

Sp-ホイール・チェンジ

通常魔法カード

(1):自分のスピードカウンターが3つ以上存在する場合に発動できる。自分のスピードカウンターを1つ増やす。

(2):「スピード・ワールド」魔法カードの効果でこのカードを相手に見せたときに発動できる。このカードを手札から墓地へ送ることで、デッキからカードを1枚ドローする。

 

EMペンデュラム・ボックス

通常罠カード

「EMペンデュラム・ボックス」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):相手がモンスターの特殊召喚に成功した時、そのモンスター1体と自分フィールド上に存在する「EM」モンスター1体を対象に発動できる。それらのモンスターを破壊する。その後、エクストラデッキから「EM」「魔術師」「オッドアイズ」Pモンスター1体をP召喚扱いで特殊召喚する。

 

Sp-クラッシュ・ダウン

通常魔法カード

このカードはルール上、「RDM-クラッシュ・フォース」としても扱う。

(1):自分のスピードカウンターが5つ以上存在するとき、自分の墓地に存在するXモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを特殊召喚し、そのモンスターよりランクが1つ低い同じ種族のXモンスター1体を対象のモンスターの上に重ねてX召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

 

Sp-ペンデュラム・スリープ

通常魔法カード

(1):自分のスピードカウンターが1つ以上存在するとき、自分の手札に存在するPモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを表側表示で自分のエクストラデッキの一番上に置き、自分のスピードカウンターを2つ増やす。

 

Sp-ソニック・バスター(アニメオリカ)

通常魔法カード

(1):自分のスピードカウンターが4つ以上ある場合に自分フィールド上のモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターの攻撃力の半分のダメージを与える。

 

魔装狂宴

通常罠カード

(1):自分フィールド上に「魔装」モンスターが存在し、自分が相手によって戦闘ダメージまたは効果ダメージを受ける時、自分の墓地に存在する攻撃力2000以下の「魔装」モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。その後、ターン終了時まで自分はこの効果で特殊召喚したモンスターの元々の攻撃力以下の戦闘ダメージおよび効果ダメージを受けない。

 

Sp-ローグ・ペンデュラム

通常魔法カード

(1):自分のスピードカウンターが5つ以上存在し、自分のPゾーンにカードがないとき、フィールドに存在するモンスター1体のレベルを5つ下げることで発動できる。自分のエクストラデッキに表側表示で存在するPモンスター2体を自分のPゾーンに置き、デッキからカードを1枚ドローする。

 

Sp-オーバーレイ・コースチェンジ

通常魔法カード

(1):フィールド上にXモンスターが存在し、自分のスピードカウンターを4つ取り除くことで発動できる。デッキからカードを1枚ドローする。発動後、このカードは墓地へ送らずにフィールド上に存在するXモンスター1体の下に重ねてX素材にする。

 

バックストレート

通常罠カード

「バックストレート」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):ターン終了時、自分のスピードカウンターがこのターン発動された「Sp」魔法カードの数だけ増える。

 

スピード・ブースター(アニメオリカ・調整)

永続罠カード

(1):スピードカウンターが相手より多い場合に以下の効果を発動する事ができる。

●相手ターン:1ターンに1度、相手モンスター1体の攻撃を無効にすることができる。

●自分ターン:1ターンに1度、自分のスピードカウンターと相手のスピードカウンターの差×100ダメージを与える。

 

魔装斬鬼ロクベエ

レベル4 攻撃1800 守備200 闇属性 悪魔族

【Pスケール:青4/赤4】

「魔装斬鬼ロクベエ」の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。

(2):自分フィールド上に存在するモンスターが「魔装騎士」モンスター1体のみの場合に発動できる。Pゾーンに存在するこのカードを自分フィールド上に攻撃表示で特殊召喚する。

【モンスター効果】

「魔装斬鬼ロクベエ」のモンスター効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードが手札からP召喚に成功したとき、自分Pゾーンに「魔装」カードが存在する場合、フィールド上に存在する魔法・罠カード1枚を対象に発動できる。そのカードを墓地へ送る。

 

スピン・バリア

通常罠カード

(1):自分フィールド上に存在するレベル5以上の風属性・ドラゴン族のSモンスターが攻撃対象となったときに発動できる。その攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了させる。このカードを発動したターン終了時、自分の墓地に存在するレベル7以下の風属性Sモンスター1体を自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターは次の自分のターン終了時までチューナーとして扱う。

 

魔装賊徒バイケン

ランク3 攻撃1500 守備1200 エクシーズ 闇属性 サイキック族

「魔装」レベル3モンスター×2

「魔装賊徒バイケン」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できず、(2)の効果はデュエル中1度しか発動できない。

(1):相手フィールド上に存在するモンスター1体を対象に発動できる。自分フィールド上に存在するこのカードを装備カード扱いとしてそのモンスターに装備する。装備モンスターの攻撃力・守備力は0となる。

(2):このカードを装備したモンスターが破壊されることによってこのカードが墓地へ送られた時、このカードを自分フィールド上に表側守備表示で特殊召喚することができる。その後、自分の墓地に存在するレベル3の「魔装」モンスター1体をそのモンスターの下に重ねてX素材にする。この効果で特殊召喚されたこのカードの効果はターン終了時まで無効化される。

(3):1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除くことで発動できる。デッキから「魔装」モンスター1体を手札に加える。

 

海底冬眠

永続罠カード

「海底冬眠」の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分の手札・フィールド上に存在する水属性モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターをゲームから除外する。

(2):このカードがフィールドから離れたとき、この効果で除外されたモンスター1体を自分フィールド上に表側守備表示で特殊召喚する。

 

氷結界の密偵マーラ

レベル4 攻撃1600 守備1200 効果 水属性 魔法使い族

「氷結界の密偵マーラ」の(2)の効果はデュエル中1度しか発動できない。

(1):このカードの召喚に成功した時、自分フィールド上に他のモンスターが存在しない場合にのみ発動できる。自分の手札から「氷結界」チューナー1体を選んで特殊召喚できる。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。

(2):このカードが墓地に存在し、自分の墓地に存在する「氷結界」モンスターのレベルの合計が6以上の場合に発動できる。このカードを自分フィールド上に特殊召喚する。

 



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第46話 正義も金次第

カラカラカラ…。

「21です。払い戻しは…」

「JとKのツーペアー」

「ははは、悪いな。8が2枚とAが3枚。フルハウスだ!」

「くっそーー!!こいつを賭けてもう1度勝負だ!!」

赤い絨毯と黒い蝶ネクタイとスーツ姿のディーラー達。

胸の谷間を大きく露出させた色とりどりのスーツを着たバニーガールが勝利の酒の敗北の不味い酒をお盆に乗せて運ぶ。

「ここは…あれだな?」

「なんじゃあここは??」

鬼柳はここの場所の意味をすぐに理解したが、漁介は何もわからずきょろきょろしている。

「カジノか。ま、それが法に触れているかは知らねえけどな」

翔太の眼は部屋の隅に向き、そこでは無一文となった男がトランクス1枚だけの無残な姿をさらしている。

シンクロ次元の法律を知らない翔太達にはカジノが合法なのかわからないものの、こうして一見少し前に放棄されたばかりの倉庫かと思われる建物をカモフラージュに経営していることから、違法の物なのかもしれない。

客として訪れているのはボロボロな服や安物でカジュアルなそれを着ている人間がほとんどだが、ごく一部に燕尾服とシルクハット、そして黒いステッキを持った紳士風の男性や金ぴかのスーツを着て、サングラスで目を隠すこわもての男もいる。

なお、翔太たちが尾行した男は一番奥のテーブルでバカラを楽しんでいる。

そして、着崩した治安維持局の公安組織であるセキュリティの制服を着た男が彼とポーカーで勝負を始める。

互いに2枚の白いコインをテーブルに置いてから。

「まあカジノじゃあ、安定して金を得ることはできねえな」

「ん…?あいつ変なことしとるなぁ」

「はあ?」

変なことと言う言葉に違和感を感じた翔太は漁介の指さす方向に目を向ける。

審判であり、セキュリティシールを破って開けた箱の中にあるトランプをシャッフルして配布するディーラーにその男はカードを渡されると同時に足で何かを蹴って、それをディーラーの足に接触させる。

配り終えたディーラーがトランプをケースに入れなおすと、少し背をかがめて2人に見えないようにそれを手にとる。

それはツギハギのある、ボロボロな財布だ。

「落し物ですが、どなたのものでしょうか?」

「さあな。それはあんたのものか?」

「いや、こんな小汚い財布を俺が持つものか」

「みたいだな、じゃ、さっさと始めようぜ」

2人は5枚のカードを手にし、相手に見えないように確認した後でセキュリティは3枚、男は2枚カードを裏向きにしつつ、コイン1枚と共にディーラーに渡すと、彼はそれと同じ枚数だけふたたび配る。

「さあてっと…まずはさっきかけた白2枚に加えて更にコインを白3枚レイズするぞ」

「ふん、コールだ」

「フォールドしなくていいのか?」

「ふん…どうだろうな?ならば俺は更に白3枚レイズしておこうか」

「コール」

これで、お互いに賭けるコインの数が9枚になる。

ちなみにそれらはすべて白いコインで、1枚に付き2000イェーガーかかる。

「なあ、コールやらレイズやら言うとるが、どういう意味なんじゃ?」

賭け事の知識のない漁介は2人の男の言う言葉が理解できずにいて、仕方なく鬼柳が解説する。

「あの大男が言っていたレイズというのは他の奴がかけた金額をさらに吊り上げる行為で、コールは他のプレイヤーの賭けに乗り、同額のコインを賭ける行為だ。ちなみに、フォールドは今回の賭けを降りて、今賭けているコインを勝者に明け渡すことを言う」

「なんじゃい、勝負の前に降参するのはシャクじゃのお…」

「そうとも言い切れないな。手持ちのカードの役に不釣り合いな枚数のコインを賭けて損するよりはマシだということだ」

ポーカーは本来は1度だけカードを交換し、その役の強さを競うというシンプルなルールのカードゲームだ。

しかし、このような賭けの魅力、レイズやコール、フォールドという行為が加わることで心理戦という側面が生まれることになる。

その間、コールとレイズが繰り返され、最終的には白コイン30枚で固定する。

「よし、ショーダウンだ!まずは俺のカードだ」

セキュリティが手持ちのカードを見せる。

スペードの3、ハートの3、ダイヤの9、ダイヤの3、クラブの3という組み合わせだ。

「3のフォーカードだと!!?」

見物している客がセキュリティが出した役に驚きを隠せずにいる。

「な、なんじゃ…そのフォーカードって役はそんなにすごいことか?」

「当たり前だろ?フォーカードは同じ数のカードが4枚手札になきゃならない。で、その組み合わせになる確率は4000分の1だ」

「はあ…!!?」

たった0.4%の確率の役だと知り、そのとんでもなさにびっくりする。

「け、けど翔太…なんでお前そんなこと知っとる?」

「以前、賭けを題材にした漫画を古本屋で立ち読みした」

カ○ジという5年前からとある雑誌で連載している漫画で、怠け者で賭博中毒、やつあたり症というダメ人間の権化ともいえる主人公が賭博で成り上がるという物語だ。

翔太は1巻だけ漫画で読んだのだが、なぜか1巻発売から5年たっても2巻が発売されていない。

「ってことは…もうあの大男の敗北決定ってことか??」

「どうだろうな。あいつ、余裕みたいだぜ?」

翔太は大男を見るが、彼はフォーカードに少し驚いただけですぐに自分の役を見せる。

ジョーカー、スペードの10、スペードのキング、スペードのクイーン、スペードのジャック。

「ロイヤルストレートフラッシュ、俺の勝ちだ」

ロイヤルストレートフラッシュ!!

この役ができる確率はわずか650000分の1!!

「なんだとぉ!?」

驚くセキュリティをよそに、ディーラーが賭けられていたコインをすべて大男に渡す。

「悪いな、こんなにもらっちまって」

「だまれぇ!ならもう1度だぁ!」

きれたセキュリティの挑戦を受ける大男、やはりポーカーでの勝負だ。

「8と9のツーペア!!」

「9と10のツーペアだ」

「1から5のストレート!」

「6が2枚、キングが3枚のフルハウス」

しかし、何度やっても大男の下へセキュリティのコインが流れていく。

「こいつ…イカサマしてんじゃあねえだろうな!?」

拳を震わせながら、男をじっと見る。

「おいおい、イカサマなんてひでえな。何か証拠でもあるのか??」

その言葉にセキュリティが口ごもる。

彼にはイカサマを証明する術がないのだ。

「ったく、イカサマ呼ばわりされて傷つくぜ。傷口が広がる前に換金を…」

「この野郎がぁぁ!!」

腹立ち紛れにそばにあった灰皿を手にとり、大男を殴ろうとする。

しかし、彼の目の前まで走ってきた翔太がその腕をつかむ。

「な…!?」

「おいおい、負けた腹いせに暴力沙汰はねえよな」

「きっさまぁ!!俺たちセキュリティに逆らうのか!?」

「知らねえな、どうせそういうセリフはくんだから下っ端だろ?」

翔太が挑発する中、鬼柳が彼から灰皿を取り上げる。

セキュリティの大声が聞こえたのか、近くにいる客や従業員が翔太たちに注目する。

「くそぅ!!こうなりゃあこのカジノを…」

放置されている左手で無線機を取り出し、電源を入れようとするが、鬼柳はそれをすでに見破っていた。

ここまで警察は堕ちることができるのかと思いつつ、無線機を奪い、足で踏みつぶす。

「ああ…」

「なあ、1つ提案があるぜ。ここは穏便にデュエルで決着をつけようぜ」

「な、何…?」

腕を離されたセキュリティは驚きながら翔太の提案を聞く。

「勝ったら別にここは好きにしていいぜ。ついでに俺の持ち金とデッキを持って行ってもいい。だが、負けたら迷惑料として今財布の中にある金をもらうぞ。安心しろ、お前がカジノに通っていたことは少なくともこの段階ではお前のお仲間にはばれない」

その言葉を聞き、セキュリティが黙り込み、考え始める。

確かに表向きでは法の番人であるセキュリティがこんなことをしていたとなれば、事実をもみ消すことは可能だろうが少なくとも自分の未来がなくなってしまう。

セキュリティを総括する治安維持局長官に気付かれればなおさらそうだ。

「いいだろう!!その要求飲んでやる!!」

「ああ、それからデュエルをするのは俺じゃあないぞ。デュエルをするのはこいつな」

「な…なんじゃと!?俺がデュエルするだとぉ??」

指を指された漁介はびっくりしながら翔太を見る。

そして鬼柳はここまでの賭けを漁介に任せるという翔太のある意味では度胸に感心する。

「試運転が必要だろ?それに、この程度のザコなら実験台になる。それに、俺がこう言ってしまった以上はもう引き返せないしな」

「…ああ!!どうなっても俺は知らん!」

断っても無駄だと分かっているためか、漁介は腹をくくってデュエルディスクを展開する。

負けても自分自身にリスクが発生することはないが翔太のデッキや有り金を奪われるという事態になると伊織が黙っていない。

何よりも戦力の乏しい現段階で1人でもデュエルができない状態になったらこの先のギャングとの戦いが厳しくなる。

セキュリティもデュエルディスクを展開していた。

「よーし、これでセキュリティのデュエルをしっかり見ることができるぜ」

「お前…漁介をだしに使ったな?」

「どうだろうな。ま、新しいデッキを使うってことだがこんなザコに負けるあいつじゃあねえだろ」

 

カジノ中央の設置されたダンス用のステージにて、漁介とセキュリティが対峙する。

そして、その周囲には従業員や客、翔太達が見守る。

「セキュリティを馬鹿にした罪、償ってもらうぞ!!」

「翔太の奴…里香の言うとおり性悪じゃ。まあ、その方がこれから先いいかもしれんけど…」

半分恨み、半分頼もしく思う漁介。

ただ、もう2度と翔太に頼まれてデュエルはしたくないと思うようになった。

「「デュエル!!」」

 

セキュリティ

手札5

ライフ4000

 

漁介

手札5

ライフ4000

 

「先攻は私だ!モンスターを裏守備表示で召喚。そして、カードを2枚伏せてターンエンド!」

 

セキュリティ

手札5→2

ライフ4000

場 裏守備モンスター1

  伏せカード2

 

漁介

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「俺のターン、ドロー!」

 

漁介

手札5→6

 

「俺は手札から魔法カード《おろかな埋葬》を発動!デッキからモンスター1体を墓地へ送る!」

 

デッキから墓地へ送られたカード

・ドラグニティ―ブランディストック

 

「そして手札から《ドラグニティ―ドゥクス》を召喚!」

真っ白な采配を持ち、戦国時代の僧兵の袈裟を連想させる白い服を身に着けた鳥人が現れる。

白い翼の小雨部分は鋼鉄製の刃となっており、緑色の目以外頭部は平な鍋のようなヘルメットがついた白い頭巾に隠れている。

 

ドラグニティ―ドゥクス レベル4 攻撃1500

 

「このカードの召喚に成功した時、墓地に存在するレベル3以下のドラグニティと名のつくドラゴン族モンスター1体を装着できるんじゃ!俺は墓地の《ブランディストック》を装着させる!さあ、漁の始まりじゃあ!!」

銀色の鎧と槍の穂先のような太い棘を1本つけた兜を装備した紫色で小型の翼竜が装備している鎧と兜を外す。

すると、それらは合体して左手を肘まで覆うスパイクシールドに代わり、竜の軍師の左手へと飛んでいった。

「更に《ドゥクス》は俺のフィールド上に存在するドラグニティモンスター1体につき、200ポイント攻撃力がアップする!」

 

ドラグニティ―ドゥクス レベル4 攻撃1500→1900

 

「ふん!たかが攻撃力1900か。その程度ならば、簡単に倒すことができる」

「分かってないのぉ。《ブランディストック》のスパイクシールドを得た《ドゥクス》は1度のバトルフェイズ中に2度攻撃できる!魚群を見つけたら、できる限り獲らんとなぁ!!」

《ドラグニティ―ドゥクス》が飛翔すると、采配の持ち手部分の後ろ側から刃が飛び出す。

獲物である裏守備モンスターを見定めると、一気に急降下してその刃を獲物に深々と突き刺した。

 

裏守備モンスター

アサルト・ガンドッグ  レベル4 守備600

 

「く…だが、《アサルト・ガンドッグ》は戦闘で破壊され墓地へ送られた時、デッキから《アサルト・ガンドック》を任意の枚数特殊召喚できる!出番だぁ!」

1匹目を倒した《ドラグニティ―ドゥクス》に緑色の防弾チョッキと銀色のアタッシュケース状の弾薬庫を背負ったドーベルマン、2匹目の《アサルト・ガンドッグ》が上から飛びつく。

身動きが封じられた軍師に同胞の無念を晴らすべき、両サイドに装着されている2丁のアサルトライフルで彼をハチの巣にしようとした。

 

アサルト・ガンドッグ×2 レベル4 守備800

 

「おっと、命あっての物種。漁師は腹空かせて待っている家族のためにも、必ず生きて帰らなきゃならんのじゃ!」

銃を撃とうとするドーベルマンの腹部を銀色のスパイクシールドの棘が貫く。

遅れて登場した3体目の《アサルト・ガンドッグ》が銃で攻撃するが、無力化した2匹目をどかしてからバックステップし、無事に漁介のフィールドへと戻っていく。

(とはいったものの…あいつのフィールドにシンクロ素材となりうるモンスターを残してしもうたのお…)

仮の次のターンにセキュリティがチューナーモンスターを召喚した場合、すぐにシンクロ召喚が可能な状態だ。

攻撃力1900の《ドラグニティ―ドゥクス》が次のターン、生き延びることができるかわからない。

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド!」

 

セキュリティ

手札2

ライフ4000

場 アサルト・ガンドッグ レベル4 守備600

  伏せカード2

 

漁介

手札6→3

ライフ4000

場 ドラグニティ―ドゥクス(《ドラグニティ―ブランディストック》装備) レベル4 攻撃1900

  伏せカード1

 

「私のターン、ドロー!」

 

セキュリティ

手札2→3

 

「私は手札から《ジュッテ・ナイト》を召喚!」

背中に提灯を背負った、江戸時代の岡っ引きをモチーフとした黄色い着物を身に着け、ちょんまげと丸メガネ姿の小人が十手を持って現れる。

 

ジュッテ・ナイト レベル2 攻撃700(チューナー)

 

「レベル4の《アサルト・ガンドッグ》にレベル2の《ジュッテ・ナイト》をチューニング!」

《ジュッテ・ナイト》の提灯に火がともり、『御用』という墨塗りの大きな文字が目立ち始める。

そして、そのモンスターが2つのチューニングリングとなり、《アサルト・ガンドッグ》をそれをくぐる。

「荒ぶる獣の牙もて捕獲せよ!シンクロ召喚!レベル6!《ゴヨウ・プレデター》!」

服装は紫色の帯がいくつも付いた、歌舞伎役者を連想させる緑色の衣装型のアーマー姿で顔を紫色の鬼の仮面で隠した、巨大な山猿のようなモンスター。

なまはげをモチーフをしていると思われるモンスターが殉職者を2匹出した鳥人を捕えるため、手に持っている小刀つきのロープが後ろについた十手を握る。

 

ゴヨウ・プレデター レベル6 攻撃2400

 

「バトルだ!《ゴヨウ・プレデター》で《ドゥクス》を攻撃!」

十手の紐を振り回し、《ドラグニティ―ドゥクス》を捕縛する。

紐を切断するためにスパイクシールドで攻撃しようとするが、先に《ゴヨウ・プレデター》が一気に接近し、十手を左腕の骨をへし折ってそれを封じる。

「《ゴヨウ・プレデター》は1ターンに1度、戦闘で破壊した相手モンスターを渡しのフィールドに特殊召喚することができる」

「何じゃと!!?」

縄で縛られた《ドラグニティ―ドゥクス》がセキュリティへ連行される。

その際に、反撃される可能性を少しでも減らすために左腕のスパイクシールドが破壊される。

 

ドラグニティ―ドゥクス レベル4 攻撃1500→1700

 

漁介

ライフ4000→3500

 

「ただし、この効果で連行したモンスターがプレイヤーに与える戦闘ダメージは半分となる。追撃しろ!!」

《ゴヨウ・プレデター》が縛り付けた《ドラグニティ―ドゥクス》をまるでハンマー投げのように振り回して漁介に振り下ろす。

「ぐうう!!痛たた…」

頭部に攻撃が命中し、痛そうに頭をさする。

 

漁介

ライフ3500→2650

 

「私はこれでターンエンド。《ゴヨウ・プレデター》によって貴様のモンスターは次々と私のものになる」

 

セキュリティ

手札2

ライフ4000

場 ゴヨウ・プレデター レベル6 攻撃2400

  ドラグニティ―ドゥクス(《ゴヨウ・プレデター》の影響下) レベル4 攻撃1700

  伏せカード2

 

漁介

手札3

ライフ2650

場 伏せカード1

 

「俺のターン、ドロー!」

 

漁介

 

手札3→4

 

「俺は手札から《ドラグニティ―ファランクス》を召喚!」

 

ドラグニティ―ファランクス レベル2 攻撃500(チューナー)

 

「更にこのカードは俺のフィールドに存在するドラグニティモンスター1体を墓地へ送ることで、手札から特殊召喚できる!《ドラグニティアームズ―ミスティル》を特殊召喚!」

《ドラグニティ―ファランクス》が鎧と兜を外し、それを二又の槍に変えてから戦場を離脱する。

そして、黄色い鎧を装着した黒い翼と手足のついたヘビのような体の竜人がオレンジ色の宝石が先端に埋め込まれたサーベルを右手に出現し、左手にその槍を持つ。

「このカードは召喚・特殊召喚に成功した時、墓地のドラグニティモンスター1体を装着できる!」

 

ドラグニティアームズ―ミスティル レベル6 攻撃2100

 

「それがどうした?攻撃力はわずか2100!この程度ならば、《ゴヨウ・プレデター》で捕縛できる!」

確かに《ドラグニティアームズ―ミスティル》の攻撃力は《ゴヨウ・プレデター》には及ばない。

しかし、見落としてはいけないものを彼は見落としている。

「《ファランクス》の効果発動!1ターンに1度、装備カードとなっているこのカードを俺のフィールドに特殊召喚できる!」

「何!?」

《ドラグニティアームズ―ミスティル》が上空に向けて槍を投擲する。

すると、槍は再び元の鎧と兜に分離し、持ち主である竜が上空でそれらを装着する。

 

ドラグニティ―ファランクス レベル2 守備1000(チューナー)

 

「更に手札から速攻魔法《地獄の暴走召喚》を発動!相手フィールド上にモンスターが表側表示で存在し、俺のフィールド上に攻撃力1500以下のモンスターが特殊召喚された時、そいつと同じ名前のモンスターを手札・デッキ・墓地から攻撃表示で特殊召喚する!」

《ドラグニティ―ファランクス》が口笛を吹くと、同じ姿の仲間が2体、それに応えるようにカジノの天井を突き破って中に入ってくる。

ちなみにあくまで演出のためか、屋根を突き破ったエフェクトはソリッドビジョンで見せているだけでもちろん現実ではない。

 

ドラグニティ―ファランクス×2 レベル2 攻撃500(チューナー)

 

「《地獄の暴走召喚》はその代償として相手も自分のフィールドに存在するモンスターと同じ名前のモンスターを手札・デッキ・墓地から特殊召喚させてしまうが…」

「《ゴヨウ・プレデター》はエクストラデッキから召喚されたモンスター、そして《ドゥクス》はパクっただけ。当然同じ名前のモンスターはデッキにいないな」

鬼柳と翔太の言うとおり、セキュリティは悔しそうに新たに登場した2体の《ドラグニティ―ファランクス》を見るしかなかった。

「そして俺は罠カード《シンクロ・マテリアル》を発動!このターンのバトルフェイズを放棄する代わりに相手フィールド上に存在するモンスター1体をシンクロ素材にすることができる!俺はレベル6の《ゴヨウ・プレデター》にレベル2の《ファランクス》をチューニング!」

「何!?」

《ドラグニティ―ファランクス》の姿が2つのチューニングリングへと変化していき、仲間を捕えている《ゴヨウ・プレデター》の肉体を拘束、強引にチューニングし始める。

「バカな!?捕縛する《ゴヨウ・プレデター》がこのようなザコモンスターに捕縛されるとは…!?」

「皮肉だな、この展開は」

「くず鉄を束ねし破壊の竜よ、大地の埋もれし機械の夢をその体に宿せ!シンクロ召喚!レベル8!《スクラップ・ドラゴン》!」

 

スクラップ・ドラゴン レベル8 攻撃2800

 

「更に手札から魔法カード《精神操作》を発動!ターン終了時まで相手フィールド上のモンスター1体のコントロールを奪う!俺は奪われた《ドゥクス》を取り戻す!」

シンクロ召喚された《スクラップ・ドラゴン》が爪でロープを切断する。

これにより自由になった《ドラグニティ―ドゥクス》が漁介のフィールドへ戻っていく。

「そして俺はレベル4の《ドゥクス》にレベル2の《ファランクス》をチューニング!魔力を打ち消す槍で大物をしとめろ!シンクロ召喚!レベル6!《ドラグニティナイト―ガジャルグ》!」

 

ドラグニティナイト―ガジャルグ レベル6 攻撃2400

 

「《ガジャルグ》の効果発動!1ターンに1度、デッキからレベル4以下のドラゴン族か鳥獣族モンスター1体を手札に加え、その後で手札からドラゴン族か鳥獣族モンスター1体を墓地へ送ることができる。俺はデッキから《BF-精鋭のゼピュロス》を手札に加え、そいつをそのまま墓地へ送る!」

《ドラグニティナイト―ガジャルグ》の効果はサーチから墓地肥やしと応用性にとんだ効果を持ったモンスターで、ドラグニティデッキには貴重なカードだ。

シンクロ次元にいるとはいえ、表立った行動ができないヒイロはどのようにしてこれらのカードを調達したのだろうか?

それが翔太にとっては疑問だ。

「俺は《スクラップ・ドラゴン》の効果を発動!1ターンに1度、俺とお前のフィールドに存在するカードを1枚ずつ破壊するんじゃ!いけぇ!!」

《スクラップ・ドラゴン》の口に緑色のエネルギー体に変化した《ドラグニティ―ファランクス》が吸収される。

そして、のどのあたりに設置されたファンの回転数を通常の2倍以上に増やし、口から緑色の竜巻を放つ。

それによってセキュリティのフィールドに伏せられていた伏せカードが細切れにされていく。

 

破壊された伏せカード

・シンクロン・リフレクト

 

「このままとどめをさしたいところだが、《シンクロ・マテリアル》の代償としてバトルフェイズは行えない。獲物に目がくらみ、嵐の海に身を投じるわけにはいかんからな!俺はこれでターンエンド!」

 

セキュリティ

手札2

ライフ4000

場 伏せカード1

 

漁介

手札4→0

ライフ2650

場 ドラグニティナイト―ガジャルグ レベル6 攻撃2400

  スクラップ・ドラゴン レベル8 攻撃2800

 

ライフに変動はなかったが、漁介のフィールドに2体のシンクロモンスターが現れ、セキュリティのモンスターが全滅した。

これは形勢逆転と言ってもいいかもしれないものの、彼の手札はまだ2枚。

油断はできない。

「私のターン、ドロー!」

 

セキュリティ

手札2→3

 

「罠カード《ロスト・スター・ディセント》を発動!墓地のシンクロモンスター1体を守備表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効となり、レベルが1つ下がり、守備力が0となる」

《ロスト・スター・ディセント》のソリッドビジョンの中から《ゴヨウ・プレデター》が飛び出してくる。

 

ゴヨウ・プレデター レベル6→5 守備1200→0

 

「更に手札から《トップ・ランナー》を召喚!」

 

トップ・ランナー レベル4 攻撃1100(チューナー)

 

「レベル5の《ゴヨウ・プレデター》にレベル4の《トップ・ランナー》をチューニング!戒めの鎧と共に再び群がる悪鬼を捕縛せよ!シンクロ召喚!レベル9!《ゴヨウ・ガーディアンMK‐Ⅱ》!」

姿は《ゴヨウ・ガーディアン》そのものだが、右腕や左目が機械化していて、上半身が厚手で重量感のある鋼鉄製の大鎧へと交換されているモンスターが現れる。

これはおそらく、禁止カードとなってしまったことへの戒めのためなのだろう。

 

ゴヨウ・ガーディアンMK‐Ⅱ レベル9 攻撃2800

 

「《ゴヨウ・ガーディアンMk-Ⅱ》は戦闘で破壊し墓地へ送った相手モンスターを私のフィールドに守備表示で特殊召喚することができる!《ガジャルグ》を捕縛しろ!」

《ゴヨウ・ガーディアンMK‐Ⅱ》の左目が《ドラグニティナイト―ガジャルグ》の距離と質量などを計算したうえで武器である縄付き十手の最適な動きを脳に電気信号で伝える。

そして、その通りに《ゴヨウ・ガーディアンMK‐Ⅱ》は十手を投げ、後ろについている縄でそのモンスターを拘束する。

「くそぉ!!」

 

漁介

ライフ2650→2250

 

ドラグニティナイト―ガジャルグ レベル6 守備800

 

ゴヨウ・ガーディアンMK‐Ⅱ

レベル9 攻撃2800 守備2000 シンクロ 地属性 戦士族

戦士族チューナー+Sモンスターを含む戦士族モンスター1体以上

(1):このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時に発動できる。そのモンスターを自分フィールド上に表側守備表示で特殊召喚する。

 

「更に私は罠カード《奈落からの捕縛》を発動。相手の墓地に存在するモンスターの特殊召喚に成功した時、フィールド上のカードを1枚破壊する。私は《スクラップ・ドラゴン》を破壊する!」

地中から現れた複数の錆びた剣が現れ、それらが的確に《スクラップ・ドラゴン》の関節部分を切断する。

そして、それによって転倒したくず鉄の竜をリンチするかのように剣が何度も攻撃して破壊した。

 

奈落からの捕縛

通常罠カード

(1):相手の墓地に存在するモンスターを自分フィールド上に特殊召喚した時に発動できる。フィールド上に存在するカード1枚を破壊する。

 

「また俺のモンスターが全滅じゃと!?」

《ゴヨウ・ガーディアン》をデチューンしたモンスターとはいえ、フィールドに現れた以上はほぼ同じ力鵜を持ったモンスター。

そのモンスターを排除しなければ、更に漁介の戦況が悪化していく。

「私はこれでターンエンド!」

 

セキュリティ

手札3→2

ライフ4000

場 ゴヨウ・ガーディアンMK‐Ⅱ レベル9 攻撃2800

  ドラグニティナイト―ガジャルグ レベル6 守備800

 

漁介

手札0

ライフ2250

場 なし

 

「おいおい漁介、こんな奴に負けるのかよ?」

手札とフィールドにカードがなく、セキュリティのライフはまだ4000。

この状況からの逆転は非常に難しい。

セキュりティは勝利を確信したように笑みを浮かべる。

「さあ、サレンダーしろ!もう貴様に勝ち目はない!」

「何言っとるんじゃ?まだまだデュエルはこれからだ!俺のターン、ドロー!」

 

漁介

手札0→1

 

「俺は手札から《ドラグニティ―アンカー》を召喚!」

背中に銀色の鎖と黒いフックのアンカーを装着した緑色の瞳と紫色の体で4本脚の小さな西洋風の竜が現れる。

翼はなく、鎧は青一色で顔以外全身を覆うような構造になっている。

 

ドラグニティ―アンカー レベル2 攻撃100(チューナー)

 

「このカードの召喚に成功した時、俺のフィールド上にこのカード以外のモンスターが存在しないとき、相手フィールド上に存在するモンスター1体とこのカードを素材にドラグニティシンクロモンスターをシンクロ召喚できる!戻ってくるんじゃ、《ガジャルグ》!!」

「何!?私のフィールド上のモンスターをまたシンクロ素材にするだと!?」

《ドラグニティ―アンカー》の背中から発射されたアンカーを掴んだ《ドラグニティナイト―ガジャルグ》が漁介のフィールドへ戻っていき、2体がシンクロ召喚の態勢に入る。

「幾千もの刃を束ねし騎兵の槍、今こそ大海の主を貫く銛になるんじゃ!シンクロ召喚!レベル8!《ドラグニティナイト―バルーチャ!!》!」

フィールドになぜか《ドラグニティ―ピルム》と《ドラグニティ―アングス》が姿を見せる。

そして、《ドラグニティ―ピルム》が急激に肉体を巨大化させ、その背中に《ドラグニティ―アングス》を乗せる。

 

ドラグニティナイト―バルーチャ レベル8 攻撃2000

 

ドラグニティ―アンカー

レベル2 攻撃100 守備100 チューナー 風属性 ドラゴン族

「ドラグニティ―アンカー」の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、自分フィールド上にこのカード以外のモンスターが存在しない場合、相手フィールド上の表側表示モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターとこのカードをフィールドから墓地へ送る。その後、墓地へ送ったそのモンスター2体の元々のレベルの合計と同じレベルを持つ「ドラグニティ」Sモンスター1体をエクストラデッキからS召喚扱いで特殊召喚する。

 

「《バルーチャ》の効果発動!このカードのシンクロ召喚に成功した時、墓地に存在するドラグニティドラゴン族モンスターを可能な限りこのカードに装備させる!そして、このカードは装備しているドラグニティカード1枚につき、攻撃力が300アップするんじゃ!」

「何!?」

《ドラグニティ―アングス》が懐からほら貝をだし、それを吹くと、墓地から3体の《ドラグニティ―ファランクス》と《ドラグニティ―ブランディストック》、そして《ドラグニティ―アンカー》が現れ、それぞれが所持している防具を武器に変形させて投擲する。

5体の仲間に武器をそれぞれ分け合い、《ドラグニティ―アングス》の左腕にはスパイクシールド、右腕にはアンカーが装備させる。

そして、《ドラグニティ―ピルム》の右腕には3本の槍が爪のように装着された。

 

ドラグニティナイト―バルーチャ レベル8 攻撃2000→3500

 

「攻撃力3500!!?」

「そして分かってるよな!?《ブランディストック》の効果を!!こいつを装備したモンスターは1度のバトルフェイズ中に2度攻撃できるんじゃ!いけーー、《バルーチャ》!!」

《ドラグニティ―ピルム》が咆哮しながら《ゴヨウ・ガーディアンMK‐Ⅱ》に突撃する。

突撃と同時に何本もの刃がその捕縛者の肉体を次々と貫き、ハチの巣へと変えていく。

「ぐおおおお!!」

 

セキュリティ

ライフ4000→3300

 

「さあ、こいつで仕留める!《バルーチャ》の2回目の攻撃!!」

《ドラグニティ―アングス》が《ドラグニティ―ピルム》から飛び降り、アンカーを発射する。

アンカーによってセキュリティの体を縛ると、そのままとびかかって左腕のスパイクシールドで腹部に想い一撃を加えた。

「ぬぐぅ…!!」

 

セキュリティ

ライフ3300→0

 

「よし、さっさとこいつをつまみ出すぞ!」

デュエルに敗北した影響か、気絶したセキュリティをディーラー達が運んでいく。

「あんまり大した奴じゃなかったな、こんな奴に押されるなんてな」

「じゃあ翔太がデュエルしたらよかったじゃろう!?」

勝利したとはいえ、いいように利用されたという気分がぬぐいきれない漁介が翔太に怒りをぶつける。

「俺なら楽勝だ、この程度。お前にとっていい練習台になっただろ?心地の良いプレッシャーもあってな」

「よお、いいデュエルだったじゃねえか」

漁介が反撃する前に、例の大男が翔太たちの前に姿を見せる。

「当然だ。で、贈り物の効果はどうなんだ?」

「贈り物?ああ、効果てきめんだ。あと、ありがとうな。ここはコモンズがトップスの腐った奴らに痛い目合わせるためのカジノだ。俺のせいでつぶれるようなことにされたら困るからな」

「どうもありがとうございます」

大男と話している間にディーラーの男が翔太たちの下へ封筒を持って歩いてくる。

「その封筒は何だ?」

「報酬でございます。どうか、お納めください」

鬼柳が翔太の代わりに封筒を取り、中身を見る。

「30万イェーガー…そんなにくれるのかよ?」

「ええ。もっとも大きな声では言えませんが、カモになるトップス連中が来るので、収益はかなりありますからね」

それだけ言うと、男はすぐに通常の営業へ戻る準備をするために戻っていった。

「…ま、まあ金が手に入ったんじゃからこれで闇市に行って…」

「ちょっと待ちな、この金のいい使い道を俺は知っているぜ?」

鬼柳から封筒を取ろうとした漁介よりも先に大男が封筒を取る。

「はぁ?いい使い道だ?」

「ああ、うまくいけば三方良しの関係をこの金で作ることができる。お前らのこれからの活動にも役に立つはずだ。シェイドさんよ」

大男の言葉に漁介と鬼柳が驚き、翔太は彼を怪しむように見る。

それもそのはず、現段階でシェイドという名前を知っているのはヒイロを除くと翔太達だけだ。

「お前らがどうしてここに来たのかは知っている。訳ありで、お前らと組みたいと思ってな」

「何者なんだよ…デクの棒」

翔太の暴言をにやっと笑って受け流した大男が自分の名前を口にする。

「俺の名前はモハメド。デッキとデュエルディスクを失った流れ者だ」



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マシン紹介

この小説で登場する翔太達のDホイールの情報を書きます。
かなり大雑把ですが…。


マシンキャバルリー

形式番号:LDSDW-00CA

全長:2320mm

全幅:835mm

全高:1155mm

最高時速:260km/h

ベース車種:ホンダ・DN-01

主な搭乗者:秋山翔太

 

秋山翔太が以前とある事情で強奪したバイクをレオコーポレーションの手でDホイールとしての調整が施されたもの。形式番号は改造された際に与えられたもの。白を基調とし、赤と黒のラインがついている。元々が競技用ではなく市販のオートバイであることから、性能はシンクロ次元の量産型Dホイールと同程度となっている。しかし動力源としてヴァプラ隊が調達した、とある世界の2つの鉱石の融合鯛でありヌメロンライトを搭載されており、更に消耗した鉱石内のエネルギーを召喚エネルギーを吸収することで充填するため、エネルギー面では圧倒的に高いアドバンテージを秘めている。なお、サイドカーを装着することで2人乗りで行動することが可能で、普段は永瀬伊織を乗せることが多い。

 

マシンブルーファルコン

形式番号:LDSDW-01PT

全長:2025mm

全幅:720mm

全高:1120mm

最高速度:350km/h

ベース車種:ホンダ・CBR1000RR

主な搭乗者:黒咲隼

 

LDSがシンクロ次元での戦いに備えて開発された試作Dホイール。青を基調とした装甲で、車体前面にはRRのマークがついている。レオコーポレーションが収集したDホイールのデータを元に開発されており、マシンキャバルリーと同じくヌメロンライトと召喚エネルギー吸収システム、カード状に小型化して持ち運び、ソリッドビジョンシステムを応用して元の大きさに戻すことができるカードホイールシステムの採用されるなど、シンクロ次元のDホイールとは異なる思想で開発されている。また、黒咲隼が搭乗することを前提としていることから彼の適正に合うように調整が行われている。そして本来ならば搭載されているはずのオートパイロットシステムを彼本人の要望で排除されており、速度などの総合的な性能は翔太や遊矢のものと比較すると高い。なお、多様な環境での走行に対応するために、ホバー走行で水上を走ることができるイルカ型シルエットシステム『ドルフィン』と飛行可能となる鷹型シルエットシステム『イーグル』が用意された。

 

マシンレッドクラウン

形式番号:LDSDW-02PT

全長:2015mm

全幅:825mm

全高:1090mm

最高時速:220km/h

ベース車種:ホンダXR230

主な搭乗者:榊遊矢

 

LDSがシンクロ次元での戦いに備えて開発された試作Dホイール。赤を基調とした装甲で、車体前面には左半分が笑顔で右半分が泣き顔のピエロの仮面のマークがついている。レオコーポレーションが収集したDホイールのデータを元に開発されており、マシンキャバルリーと同じくヌメロンライトと召喚エネルギー吸収システム、カード状に小型化して持ち運び、ソリッドビジョンシステムを応用して元の大きさに戻すことができるカードホイールシステムの採用されるなど、シンクロ次元のDホイールとは異なる思想で開発されている。それだけでなく、搭乗者となる榊遊矢のために精度の高いオートパイロットシステムとが搭載され、性能が同時開発されたマシンブルーファルコンと比較すると大幅にデチューンされている。更に榊遊矢が《覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン》と《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》の召喚の際の暴走の要因となっていると思われる膨大な召喚エネルギーを吸収できるようにシステムが限界まで改良されている。ただし、エネルギー吸収量が限界を超えると機体に大きな負荷を与えてしまうという欠点が存在する。なお、多様な環境での走行に対応するために、水上でもジャンプして移動できるバッタ型シルエットシステム『ホッパー』と飛行可能となるトンボ型シルエットシステム『ドラゴンフライ』が用意された。他の2機に比べると、操作が容易となっていることから、今後LDSではマシンレッドクラウンを中心に量産を進め、融合次元との決戦に備える予定となっている。

 

 

トルネイダー

形式番号:LDSDW-V01

全長:2240mm

全幅:1172mm

全高:1150mm

最高時速:300km/h

主な搭乗者:剣崎侑斗 ウィンダ

 

剣崎侑斗が所持しているサイドカー型Dホイール。元々どこで調達されたバイクなのかは不明で、Dホイールとしてのシステムはマシンレッドクラウンとマシンブルーファルコンが開発された時期に後付けで搭載された。また、データ収集を名目にレオコーポレーションによって召喚エネルギー吸収システムの試作品が搭載されているものの、ヌメロンライトはなぜか搭載されておらず、彼自身が精霊世界で調達した風の魔力が凝縮された鉱石が代わりとなっている。サイドカーは一体化していることから取り外しが不可能になっている。なお、2人の思念に反応して自動走行することができるのだがその理由は不明。本機についてはバイオメトリクス認証がされていることから2人以外による操縦が不可能になっている。

 

 

 



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第47話 結束のための契約

「さあ、ここだ!」

カジノを出た翔太達がたどり着いたのはボロボロになっているパン屋だ。

十数年前に放棄されたようで、蜘蛛の巣や虫が多く、ボロボロな棚とカウンターを除くと、屋内の残っているのはパンの窯だけだ。

「なんだよ?ただの廃家じゃねえか」

「今のところはそうだな。だが…おい、じいさん!」

カウンターの向こう側にある階段に向けてモハメドが呼ぶ。

すると、白い短めの髭のある緑色の分厚い布製の服で全身を包んだ老人が降りてきた。

右足をかばうような歩き方をし、カチャリという機械の音がすることから、その右足が義足であるということがわかる。

「なんじゃ、またあんたか…。悪いがワシはもう何もするつもりはないぞ。ここと一緒に朽ち果てるだけじゃ」

「少し手を付けさえすればもう1度やれるのにか?」

「そんな金はない。もう帰ってくれ…」

老人が背を向け、再び階段を上がろうとする。

「金ならあるぜ!」

そう言うと、モハメドは翔太達からとった30万イェーガーのうちの20万イェーガーを出す。

「な…その金はどこで??」

「良心的な友人からのもらい物だ。これだけあれば、もう1度できるんじゃないか?」

金を手にとり、じっと見つめる老人にモハメドが諭す。

自分はもう1度始めることができる。

来るはずがないと思っていたその瞬間が着たことに老人が涙を流す。

「ああ…必ずこの金でやってみせる!!約束するぞい、モハメド…」

 

パン屋を出た翔太達は歩きながらモハメドと話す。

「良かったぜ。あと20万でできるってところで何年も行き詰ってたからな」

あの老人の嬉しそうな顔を見たことがうれしかったようで、微笑みを見せるモハメドに翔太が質問をぶつける。

「あれがいい使い道っていうのか?」

「ああ。コモンズのほとんどの店がギャングや一部の汚職セキュリティがやっている闇市だ。そして、まともな店をやろうにもバックアップのない奴らには無理な相談だ。だから、店や工場をやろうって思っている奴らに投資して店を始める手助けをするのさ。じいさんの場合はあとはほんの少し金がないだけだったから良かった。だがな、この町には金以外にも建築材や原材料の供給ルートのない理由で事業ができない奴が多い。そいつらに手助けすれば、売り上げの一部をもらうことができるってことだ」

「そう簡単なものか?」

「立て直しには人手がいるが、コモンズは失業者であふれてる。すぐに集まるし、適正価格で売ることができれば、そいつらも喜ぶ」

彼の言葉に翔太と鬼柳はうなずくが、漁介に関しては魚や漁、デュエルに関する知識しかないためか混乱するだけだった。

しかし、翔太の疑問が消えない。

「どうも解せねえな」

「なんだ?」

「なぜここまでコモンズに肩入れする?それに、そのことをなぜ俺たちに話す?シェイドのこともだ。お前には疑問があふれる」

じっとモハメドを睨む。

その眼を少し見た後で、男は仕方ないなと思いつつため息をつく。

(この男が口が悪く、態度は悪い、疑り深い男だということはあらかじめ聞いていたが…)

しかし、百聞は一見にしかず。

その度合いがどれほどのものなのかは実際にあって目にしなければわからないものだ。

「ま…隠すつもりはない。詳しい話はお前たちのアジトでしようじゃないか」

足を止め、彼から見て右斜め前の広場を指さす。

その広場の先には伊織たちの待つトレーラーと工場が待っている。

 

数分が経過し、場所はトレーラーの中に移る。

左側のベッドに翔太、伊織、鬼柳、ジョンソンが座り、右側には伊織、里香、柚子、ついでに柚子の背中の後ろで白い枕に化けているビャッコ。

両サイドにサンドイッチのように挟まれる形で椅子に座っているのがモハメドだ。

「まあまずは…なんで俺がお前らについて知っているかを教えるぞ。俺はヒイロ・リオニスに依頼されて、お前らに協力するように言われた」

「あのおっちゃんにか!?」

「どうりで知っている訳だ」

シェイドを知っている理由、それはこの質問で解決された。

ただし、彼自身の素性とコモンズを発展させ、利益を得る方法を教える理由がわからない。

「あいつはこのシンクロ次元についての内部情報を持っている奴を探していた。そして、俺が抜擢されたのさ。お前らシェイドと同行し、ランサーズとLDSに情報を流せってな。まずは信頼を勝ち取るためにその証拠を見せてやるよ」

懐から1枚の写真を取り出し、それを翔太たちに見せる。

写真には2人の男が映っている。

紫色でオレンジのラインと白いトグルボタンのスーツを着た、両サイドが翼を広げた鳥のような形の髪型をしている緑の狐目をした男が左にいる。

そして、右には翔太達にはご存じのオベリスクフォースの制服の男がいて、アタッシュケースの中からカードを取り出し、それを左の男に渡していることがわかる。

「オベリスクフォース…」

「んー?何か変だなー」

「変だと…?」

伊織の指摘を受け、翔太は彼女が指差す箇所を見る。

その箇所はオベリスクフォースと思われる男の制服の襟についているマークだ。

マークは文字が刻まれた黄色い帯で包まれた《炎の剣士》になっていて、文字は翔太には読めないが英語だということだけは理解できる。

「俺に見せろ!」

漁介が英語をじっと見る。

彼は動体視力が高く、視力も2.0らしい。

英語は読めないためか、書いてあるものを手元にある紙に記入していく。

「Germain…ジェルマン?」

「ジェルマン…融合次元の部隊名か?」

「ふん。錬金術師の名前を使うとはベタだな」

ジェルマンという言葉から鬼柳の頭に浮かんだのはサンジェルマン伯爵だ。

18世紀のヨーロッパに実在したとされる偉人で、不老不死やマルチリンガル、錬金術や幽霊などの数多くの伝説を残したなぞの多い人物だ。

彼についての史料は後年、ナポレオン3世によってチュイルリー宮殿に集められたものの、火災によって失われていることも伝説に拍車をかけている。

(ジェルマンか…)

「この紫色の服の男はセキュリティを仕切っている治安維持局の長官、ジャン・ミシェル・ロジェだ。頭は切れるが、人間味の欠片もない…血肉があるだけのマシーンだ」

嫌悪するようにその男を紹介しつつ、写真の男を見る。

怪し毛の雰囲気を醸し出すその男で、長官という立場を考えると彼の年齢は40代後半と予想できる。

もっとも、それは立場だけを考えて頭に浮かぶ予想であり、実際に彼の容姿を見るとその年齢よりも一回り程度若く見える。

「で、なんでお前がそのお偉いさんの姿が写った写真を持っている?」

「あの漁師少年が倒した不良警官のことだが…あいつは俺の元同僚だ」

遠回しに自分が元セキュリティであることを告白するモハメド。

それを聞いた翔太と鬼柳、ジョンソン以外の面々が驚く。

「安心しろ、別にお前らを取って食おうとなんて思っちゃいない」

「なるほど。この写真のせいでお前はお払い箱か?」

「まあ…そうなるな」

居心地が悪そうに苦笑するモハメドが懐から安い紙タバコをだし、ライターで火をつける。

タバコを口にしつつ、トレーラーの窓際まで移動し、窓を開ける。

彼の口から出る黒い煙が窓からトレーラーの外へ出ていき、工場の屋根に開いている穴へ向かって音もなく飛んでいく。

「セキュリティを追われた俺はデッキとデュエルディスクを没収された。だが、この写真を手にしたことで分かったことがある。あの長官がここでとんでもないことを起こそうとしている。それを阻止する術をヒイロが俺に教えてくれた」

「それが俺たちシェイドとランサーズか?」

「そうだ。お前たちはギャングの力を使い、これからシンクロ次元で起こる陰謀を阻止してもらう。そのかわりに俺はお前らにシンクロ次元についての情報を提供する。AAA機密の情報でもなんでもな」

懐から灰皿を取り出し、タバコの灰を落とす。

そして、もう一服した後で再び先ほどの席へと戻っていく。

「デュエルギャング達は自分よりも強い奴の言うことしか聞かない。なら、勝つためには情報が必要じゃないのか?」

「その陰謀を止めることがお前への見返りか?」

「そうだ。報酬についてはもう赤馬零児と接触して話は決まっているからな」

そう言いながら、懐から小切手を出す。

小切手には零児の名前が書かれていて、報酬は100万イェーガー。

判子がないためか、代わりに彼の血判が押されている。

DNA鑑定すれば、本物であるか否かは十分証明できる。

「あいつと合流したということは…他の奴らの動きを知っているということだな?」

立ち上がった鬼柳がモハメドの前に立つ。

表情は普通だが、友人たる彼を心配しているのだろうし、何よりも今入ってこないランサーズの情報が少しでも欲しいと思っている。

「ああ、榊遊矢、セレナ、沢渡シンゴ、赤馬零羅はコモンズのある男の下に身を寄せている」

「遊矢が!?そ、その男の人は…!?」

愛しの彼の名前に反応したのか、柚子が更に彼に詰問する。

(おお、まさに恋する乙女って感じやな)

(うーん、柚子ちゃん大胆!)

「クロウ・ホーガンっていうBF使いだ。それにデュエルチェイサーズは何人もあいつに敗れた。よほどのことがない限りは捕まることはない。あと、権現坂昇とデニス・マックフィールドはトップスのルチアーノ区で楽しい野宿生活中。黒咲隼はここから西へ60キロの地点にある旧ルドガー区の地下デュエル場で強いデュエリスト探し、赤馬零児と風魔月影はトップスの中心であるイリアステル区にある中央会議場で評議会の連中と掛け合っている」

「評議会…?」

聞き覚えのない新しい単語に漁介が疑問を浮かべる。

「トップスで一番偉い5人組。治安維持局でも逆らえないくらいの権限を持った奴らだ。そして、セキュリティでも長官クラスにならなきゃ会うことすら許されない、雲の上の奴らさ」

「お偉いさんはお偉いさんに任せるとして…俺たちはこれから何をするかを決めるぞ。モハメド、副官ってことでならここにいてもいいぞ」

「ふん…それでかまわない。短い間かもしれないが、よろしく頼むぞ」

モハメドがにやっと笑った後、翔太は壁に貼られている地図をはがして中央に置く。

そして、今日見つけたパン屋と闇市、カジノの場所を記入する。

「さて、これからやることとしたら…」

「はーい!」

翔太が言い終わらないうちに伊織が手を上げる。

ため息をつきながら、伊織に目を向ける。

「なんだ、伊織」

「パン屋さんのお手伝い!」

「…」

翔太がジロリと彼女を睨む一方で、里香が書記として意見を書く。

書き終わると同時に漁介が次の意見を出す。

「移動中にモハメドからもらった情報じゃが、先日ここの東隣にある鷹栖区を仕切っているギャングのリーダーがパクられて、動揺しているみたいなんじゃ。物資もデュエリストの数も乏しい今は勢力拡大と人手を集める必要がある。俺たちの存在があまり知られていない間に奇襲をかけるのはどうかいの?」

「少し無謀じゃないだろうか?俺たちは来てばかりで、こういう攻撃となると地の利は相手にある。偵察してそのうえで攻撃するという手があるぞ」

三者三様の意見が里香の手帳に記入される。

 

伊織:パン屋の手伝い(まだまだオープンまで時間がかかるかもしれないし、私達も手伝おーよ!もしかしたら、おすそ分けしてくれるかも…by伊織)

漁介:鷹栖区のギャングへ奇襲攻撃(このままではジリ貧じゃし、大物をしとめるチャンスが目の前にある。ゆーに拡大するなら今じゃby漁介)

鬼柳:鷹栖区のギャングの偵察(信用していないわけじゃないが、モハメドから得た情報だけでは奇襲は難しいかもしれないな。偵察を行って計画を練るべきだby鬼柳)

 

「ギャングとのデュエル…」

柚子の脳裏にギャングのイメージが浮かぶ。

弱い者いじめをするこわもてのデュエリストと言うなんともステレオタイプなイメージで、それとオベリスクフォース達と姿がだぶついて、あの時の恐怖が蘇りそうになる。

(駄目…!!あたしも遊矢を守るために強くなるって決めたから…!!)

「じゃあ翔太、お前が決めるんや」

里香が手帳を翔太に渡し、判断を願う。

「おい、なんで俺が決めなきゃならないんだ?」

「だってー、翔太君が私たちのリーダーでしょ?」

「キュイー」

伊織といつの間にか彼女の隣にいるビャッコがうなずきながら答える。

それに反論するメンバーがいないということから、自分が判断するしかないという空気が構築されていく。

(ちっ…伊織のは話にならないが、オープンが早まればそれだけ早く売り上げの一部をもらうことができる。鬼柳の言うとおりに偵察をすることで攻撃が容易くなるうえ、工作もできるかもしれねえ。電光石火の奇襲なら漁介の言うとおり、相手に動揺を起こすことができるかもしれない…)

それぞれの主張にはそれぞれメリットがある。

その中で今のシェイドにとっての最良のメリットは…。




さあ、モハメドを迎えたシェイドが1つの選択の交差点に立ちました。
小さな選択ですが、それがどんな影響を与えるのか…?
これについて詳しくは活動報告へ!


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第48話 シェイド初陣

「…」

3人の意見を聞いた翔太が冷蔵庫を開け、ビンに入ったコーラを1本がぶ飲みする。

そして、ビンをゴミ箱に投げ込んだ後で全員の前で自分の決断を口にする。

「奇襲だ」

「よっしゃ!」

「ブー、パン食べたかったのにー」

「キュイー」

意見を聞いてもらえて喜ぶ漁介に対して、伊織は不満げな表情を見せる。

そんな彼女を励ますように、ビャッコがみたらし団子を差し出す。

「鷹栖区にいるギャングはコモンズにある唯一の港を抑えている。セキュリティよりも先に手にすることでそいつらへのいいアピールにもなるだろう」

紙を出したモハメドが鉛筆で地図を書き始める。

覚えている範囲の物であるため、かなり大雑把なものだ。

だが、分かることはそこが2階建ての建物であり、周囲を囲むように塀があること、そして南の正門と北の裏門が存在することだ。

「ギャングチーム、ホイールズはリーダーは塀の向こう側だが、人数は20人近い。少なく見積もっても3倍の人数と戦うことになる。そして、門は2つ。さあ…どうやって奇襲する?」

楽しそうに語るモハメドはもう1度タバコを吸うために一度トレーラーから出ていく。

一方、柚子と里香、伊織の3人は晩御飯の支度をしにキッチンへ行く。

そして、翔太たちによる話し合いが始まる。

「奇襲するとなったら、時間ははー夜一択じゃな」

「どうだろうな、夜は見回りの奴らがいる。それに、この手を使えば少なくとも6人で10人のギャングと戦える状況に持ち込むことができる」

「6人…??ええ??」

なぜ6人なのかと疑問に思う伊織。

デュエルができるシェイドのメンバーはモハメドを除くと7人だ。

「で…奇襲にちょうどいい代物もあるからな」

にやりと笑う翔太の脳裏には既に奇襲のプランが出来上がっていた。

 

そして、その2日後の鷹栖区…。

「ふあああ…おい北野。そっちはどうなんだ?」

黒いヘルメットとゴーグルで両目と頭を隠した茶色いツナギの男性が面倒臭そうにトランシーバーを使って通信をする。

(ああ、南出。北も異常なしだぜ。くそ…!リーダーがドジ踏まなけりゃあ今頃は…)

「落ち着けよ。終わったら一杯やろうぜ」

通信を切った南出が目の前の大通りに目を向ける。

背後には放棄された病院施設があり、それをアジトとして利用している。

今のシンクロ次元の季節は夏、気温は30度を超えていて、下着は汗でビッショリ濡れている。

もうすぐだ、あと20分経てば交代の時間になり、先日やっと治ったクーラーの効いた部屋で交易によって手に入れた冷たいビールを飲むことができる。

これまでは港で手に入れた物資のほとんどがリーダーの所有物になるか、闇市で売り飛ばされてきた。

この後の休みで飲むことができれば、それは1年ぶりのビールとなる。

つまみとして柿ピーや枝豆を食べようかと考える南出の思考を停止させる事態がすぐに起こる。

「ん…なんだ、あのデカブツは??」

目の前にある大きな一本道を走る灰色のトレーラー。

ここからは自分のいる正門を除くと左右にしか道がないにもかかわらず、アクセル全開で直進している。

「あのトレーラー…まさか!!?」

嫌な予感を感じた南出が大急ぎで正門から離れる。

すると、トレーラーはそのまま正門に入り、アジトの入り口ギリギリのところで停車した。

「な、なんだってんだ??あのトレーラー、運転手がイカれたのか??」

南出とトレーラーに気付いた5人のメンバーがトレーラーを囲む。

「別にイカれてねーよ」

その声と同時に運転席側のドアが開き、それがそのドアの近くにいた男を突き飛ばす。

そこから出てきた翔太は突き飛ばされて気を失った男を見る。

「まずは1人だな」

「お前ぇ!!」

南出と4人の男がワイヤー状の拘束装置を翔太のすでに左腕に装着されているデュエルディスクに取り付け、強制的にデュエルモードに突入させる。

「俺1人に対して5人で挑むなんてな。よほど俺のことが怖いんだな」

「悪いが、敵を倒すためには手段を選ばない性質でな。俺たちと戦ってもらうぜ」

南出の言葉を聞き、ニヤリと笑った翔太がデッキから10枚カードをドローする。

「ライフ8000、手札10枚スタートでなら、その汚いデュエルに付き合ってもいいぜ」

「ああ、これから身ぐるみはがされるんだ。このくらいのハンデ、いいぜ」

相手が何者かはわからないが、このようなことをするのはライバルのギャングかもしれない。

そうであれば、倒さない理由はない。

5人は翔太にならうように、カードを引く。

「「「デュエル!!」」」

 

南出

手札5

ライフ4000

 

ギャングA

手札5

ライフ4000

 

ギャングB

手札5

ライフ4000

 

ギャングC

手札5

ライフ4000

 

ギャングD

手札5

ライフ4000

 

翔太

手札10

ライフ8000

 

「俺のターン!俺は手札から《アサルト・ホイール》を召喚!」

太い一輪の車輪を下半身としている茶色い装甲の機械が現れる。

頭部は《スピード・ウォリアー》のものと似ていて、両腕のマニピュレーターの代わりに青いアサルトライフル、両肩に8連装のミサイルランチャーがついていて、次世代の戦車かと思える構造のモンスターだ。

 

アサルト・ホイール レベル4 攻撃2300

 

「そして、カードを1枚伏せてターンエンド!」

 

 

南出

手札5

ライフ4000

場 アサルト・ホイール レベル4 攻撃2300

  伏せカード1

 

ギャングA

手札5

ライフ4000

場 なし

 

ギャングB

手札5

ライフ4000

場 なし

 

ギャングC

手札5

ライフ4000

場 なし

 

ギャングD

手札5

ライフ4000

場 なし

 

翔太

手札10

ライフ8000

場 なし

 

「俺のターン!」

ギャングAが手札を見つつ、ターン開始を宣言すると同時に南出が行動に出る。

「永続罠《ホイール・ファクトリー》を発動!1ターンに1度、機械族モンスターの召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、《ホイールトークン》1体を特殊召喚できる」

「俺は手札から《キャノン・ホイール》を召喚!」

《キャノン・ホイール》召喚と同時に《ホイール・ファクトリー》のソリッドビジョンからオフロード用のタイヤが発射され、ギャングAのフィールドに落ちる。

 

キャノン・ホイール レベル2 攻撃500(チューナー)

ホイールトークン レベル3 攻撃800

 

ホイール・ファクトリー

永続罠カード

互いのプレイヤーは『ホイール・ファクトリー』の効果を1ターンに1度しか発動できない。

(1):フィールド上に機械族モンスターが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時に発動できる。そのモンスターのいるフィールドに『ホイールトークン』1体を特殊召喚する。

 

ホイールトークン

レベル3 攻撃800 守備800 トークン 地属性 機械族

『ホイール・ファクトリー』の効果で特殊召喚される。

(1):このカードは融合素材とすることができず、アドバンス召喚のためにリリースできない。

 

「レベル3の《ホイールトークン》にレベル2の《キャノン・ホイール》をチューニング!シンクロ召喚!レベル5!《A・O・Jカタストル》!!」

 

A・O・Jカタストル レベル5 攻撃2200

 

「《A・O・Jカタストル》かよ…!」

今のデッキのエースカードであれば問題はないものの、やはり闇属性以外のモンスターを問答無用に破壊するこのモンスターは厄介だ。

「《キャノン・ホイール》の効果発動!このカードがシンクロ素材として使用され墓地へ送られた時、相手に500のダメージを与える!」

幻影として現れた《キャノン・ホイール》が2門のキャノン砲の狙いを翔太に定め、オレンジ色の光線を発射する。

「ちっ…!」

 

翔太

ライフ8000→7500

 

「俺はこれでターンエンド!」

 

南出

手札3

ライフ4000

場 アサルト・ホイール レベル4 攻撃2300

  ホイール・ファクトリー(永続罠)

 

ギャングA

手札5→4

ライフ4000

場 A・O・Jカタストル レベル5 攻撃2200

 

ギャングB

手札5

ライフ4000

場 なし

 

ギャングC

手札5

ライフ4000

場 なし

 

ギャングD

手札5

ライフ4000

場 なし

 

翔太

手札10

ライフ7500

場 なし

 

ここから翔太のターンまで省略する。

なぜなら…以下の状況を見ると分かるだろう。

 

南出

手札3

ライフ4000

場 アサルト・ホイール レベル4 攻撃2300

  ホイール・ファクトリー(永続罠)

 

ギャングA

手札4

ライフ4000

場 A・O・Jカタストル レベル5 攻撃2200

 

ギャングB

手札5→4

ライフ4000

場 A・O・Jカタストル レベル5 攻撃2200

 

ギャングC

手札5→4

ライフ4000

場 A・O・Jカタストル レベル5 攻撃2200

 

ギャングD

手札5→4

ライフ4000

場 A・O・Jカタストル レベル5 攻撃2200

 

翔太

手札10

ライフ7500→6000

場 なし

 

全員がギャングAと同じ行動をとり、4体の《A・O・Jカタストル》が翔太を威圧する。

「あいつら…積み込みしてるんじゃないか?」

「へへへ…」

「欲しいなら」

「もっとくれてやるぜ?」

ニヤニヤ笑いながら翔太を見る5人。

彼らの手札にはまだ《キャノン・ホイール》が存在するようだ。

「俺のターン!俺は手札からフィールド魔法《六武院》と永続魔法《六武の門》、そして《六武衆の結束》を発動」

翔太の背後にソリッドビジョンで白い漆が塗られた壁が特徴的な和風の城が出現する。

木製4階建てのその城を更に黒い漆塗の城門と壁が包み込む。

壁と門は機械仕掛けとなっており、門には六武衆の家紋が大きく刻まれていた。

「俺は手札から《真六武衆―カゲキ》を召喚」

 

真六武衆―カゲキ レベル3 攻撃200

 

「こいつの召喚に成功した時、手札からレベル4以下の六武衆1体を特殊召喚できる。俺は更に手札から《六武衆の影武者》を特殊召喚」

 

六武衆の影武者 レベル2 攻撃400(チューナー)

 

「そして、《カゲキ》は俺のフィールド上に《カゲキ》以外の六武衆が存在するとき、攻撃力が1500アップする」

《六武衆の影武者》により、背中に装着されている2本の義手が修理され、より精密な動作が可能となる。

そして、5人のギャングに4つの手に握られた日本刀を向ける。

 

真六武衆―カゲキ レベル3 攻撃200→1700

 

「更に六武衆が召喚・特殊召喚されるたびに《門》には2つ、それ以外の2枚の魔法カードには1つ武士道カウンターが乗る」

上空から8本の日本刀が降ってきて、《六武院》の門の前のアスファルトに刺さる。

 

六武院 武士道カウンター0→2

六武の門 武士道カウンター0→4

六武衆の結束 武士道カウンター0→2

 

「俺は《六武の門》の効果発動。俺のフィールド上に存在する武士道カウンターを1つ取り除くことで、デッキ・墓地から六武衆1体を手札に加えることができる」

門の前に刺さっている4本の刀が消滅し、それと同時に門が開く。

そしてそこから《真六武衆―キザン》が出てくる。

 

六武の門 武士道カウンター4→2

六武衆の結束 武士道カウンター2→0

 

「更にこいつは俺のフィールドに《キザン》以外の六武衆が存在する場合、手札から特殊召喚できる」

 

真六武衆―キザン レベル4 攻撃1800

 

当然、《真六武衆―キザン》もまた六武衆。

よって、3枚のカードに武士道カウンターが乗る。

 

六武院 武士道カウンター2→3

六武の門 武士道カウンター2→4

六武衆の結束 武士道カウンター0→1

 

「更にもう1度《六武の門》の効果を発動する。武士道カウンターを4つ取り除き、デッキからもう1体の《キザン》を手札に加え、特殊召喚する」

再び4本の刀が消え、門から《真六武衆―キザン》が現れる。

そんな彼が門から数歩前に出たとき、上空から4本の刀が彼の左右に2本ずつ落ちてくる。

 

真六武衆―キザン レベル4 攻撃1800

 

六武院 武士道カウンター3→4

六武の門 武士道カウンター4→0→2

六武衆の結束 武士道カウンター1→2

 

「また《キザン》かよ!?だが…そいつは地属性!《カタストル》の敵じゃねえな」

「武士道カウンターはまだあるぜ。《六武の門》の効果で再び武士道カウンターを4つ取り除き、3体目の《キザン》を手札に加え、特殊召喚する」

2体目と同じ動きで再び翔太のフィールドに現れる3体目。

フィールドにいる1体目が自分そっくりのモンスターが2体も現れたことに若干苦笑いしているが、多分気のせいだろう。

 

真六武衆―キザン レベル4 攻撃1800

 

六武院 武士道カウンター4→5

六武の門 武士道カウンター 2→0→2

六武衆の結束 武士道カウンター2→0→1

 

たった1ターンで翔太のフィールドに5体のモンスターが並ぶ。

といっても、このデュエルでは全員が最初のターンにドローもバトルも行うことができない。

いくら高い攻撃力を持つモンスターを並べても、バトルができなければ意味がない。

「俺はレベル3の《カゲキ》にレベル2の《影武者》をチューニング。シンクロ召喚。現れろ、《真六武衆―シエン》」

 

真六武衆―シエン レベル5 攻撃2500

 

六武院 武士道カウンター5→6

六武の門 武士道カウンター2→4

六武衆の結束 武士道カウンター1→2

 

「そして俺は再び《六武の門》の効果を使う。武士道カウンターを4つ取り除き、デッキから《六武衆の傾奇者―ケイロウ》を手札に加える。そしてこいつは俺のフィールド上に六武衆シンクロモンスターが存在するとき、手札から特殊召喚できる」

両腕の部分が黒い布となっている赤い甲冑を身に着け、右手には柄の部分が赤くなっている槍を持った金色の長髪の大男が現れ、朱色の杯で日本酒を飲み始める。

背中には茶色のビロードマントをつけていて、肌色の糸で桃太郎、白い糸で犬、オレンジ色の糸で猿、赤い糸でキジが縫箔されている。

そして中央には大きく『大ふへん者』とも書かれている。

このモンスターのモデルが何かは誰が見てもわかるだろう。

 

六武衆の傾奇者―ケイロウ レベル2 攻撃1000(チューナー)

 

六武院 武士道カウンター6→5→6

六武の門 武士道カウンター4→2→4

六武衆の結束 武士道カウンター2→1→2

 

「またチューナーだと!?」

「レベル4の《キザン》にレベル2の《ケイロウ》をチューニング。シンクロ召喚。現れろ、《ゴヨウ・プレデター》」

「何!?こいつはセキュリティの…」

翔太のフィールドに現れる《ゴヨウ・プレデター》に南出達が驚く。

ゴヨウシリーズはどうやらセキュリティだけが手にできるカードらしい。

もっとも、翔太のこれは漁介が倒したセキュリティからデッキごと頂いたものだが。

 

ゴヨウ・プレデター レベル6 攻撃2400

 

「更に《ケイロウ》の効果発動。こいつをシンクロ素材として墓地へ送った場合、デッキからカードを1枚ドローできる」

デッキからカードをドローする翔太。

そのカードを見て、ニヤリと笑う。

 

六武衆の傾奇者―ケイロウ

レベル2 攻撃1000 守備1200 チューナー 光属性 戦士族

「六武衆の傾奇者―ケイロウ」は1ターンに1度しか(1)の効果で特殊召喚することができない。

このカードをS素材とするとき、戦士族モンスターのS召喚にしか使用できない。

(1):自分フィールド上に「六武衆」Sモンスターが存在するとき、このカードは手札から特殊召喚できる。

(2):このカードがS素材として墓地へ送られた場合に発動できる。自分はデッキからカードを1枚ドローする。

 

「俺は《六武衆の結束》の効果を発動。このカードを墓地へ送ることで、乗っている武士道カウンターの数だけデッキからカードをドローできる。俺はデッキからさらに2枚カードをドローする」

1度はすべて使い切った手札を《六武衆の傾奇者―ケイロウ》と《六武衆の結束》でフォローしていく。

手札はあるものの1枚か2枚しか使えなかったギャング達とは大違いだ。

「《六武院》の効果。相手フィールド上に存在するモンスターの攻撃力はこのカードに乗っている武士道カウンターの数×100ダウンする」

「何!?」

門の前にある10本の刀のうちの6本が青白く光り、それと連動するように南出達のモンスターも同じ光を放ち始める。

すると、そのモンスター達の装甲や関節部分の1部に劣化が生じ、性能が低下していく。

 

A・O・Jカタストル×4 レベル5 攻撃2200→1600

アサルト・ホイール レベル4 攻撃2300→1700

 

「更に《キザン》はこのカード以外に俺のフィールドに六武衆が2体以上存在するとき、攻撃力・守備力が300アップする」

 

真六武衆―キザン×2 レベル4 攻撃1800→2100

 

「そして、カードを2枚伏せてターンエンド」

 

南出

手札3

ライフ4000

場 アサルト・ホイール レベル4 攻撃1700

  ホイール・ファクトリー(永続罠)

 

ギャングA

手札4

ライフ4000

場 A・O・Jカタストル レベル5 攻撃1600

 

ギャングB

手札4

ライフ4000

場 A・O・Jカタストル レベル5 攻撃1600

 

ギャングC

手札4

ライフ4000

場 A・O・Jカタストル レベル5 攻撃1600

 

ギャングD

手札4

ライフ4000

場 A・O・Jカタストル レベル5 攻撃1600

 

翔太

手札10→6

ライフ6000

場 真六武衆―キザン×2 レベル4 攻撃2100

  真六武衆―シエン レベル5 攻撃2500

  ゴヨウ・プレデター レベル6 攻撃2400

  六武院(フィールド魔法 武士道カウンター6)

  六武の門(永続魔法 武士道カウンター4)

  伏せカード2

 

「へっ…!《シエン》さえ対処することができれば、あとは怖くないな!」

南出の言うことには一理ある。

《A・O・Jカタストル》よりも高い攻撃力を持ち、なおかつ闇属性であるモンスターは今のフィールドには《真六武衆―シエン》しかいない。

そして、4体の《A・O・Jカタストル》であれば2体の《真六武衆―キザン》と《ゴヨウ・プレデター》を対処できる。

「俺のターン、ドロー!!」

 

南出

手札3→4

 

「俺は手札から《キャノン・ホイール》を召喚!」

 

キャノン・ホイール レベル2 攻撃500→0(チューナー)

 

「更に《ホイール・ファクトリー》の効果で《ホイールトークン》を特殊召喚」

 

ホイールトークン レベル3 守備800

 

「レベル4の《アサルト・ホイール》にレベル2の《キャノン・ホイール》をチューニング!シンクロ召喚!レベル6!《コンバット・ホイール》!!」

 

コンバット・ホイール レベル6 攻撃2500

 

「さあ、《キャノン・ホイール》の効果をうけろぉ!!」

此度5度目の登場となる《キャノン・ホイール》の幻影。

個体が別だとはいえ、これもある意味過労死の1つなのかもしれない。

 

翔太

ライフ6000→5500

 

弾丸が翔太を貫くと同時に、《真六武衆―シエン》が刀を鞘におさめ、居合の構えを見せる。

「罠発動。《六武流剣術―漣斬り》を発動。相手がエクストラデッキからモンスターを特殊召喚した時、俺のフィールド上に六武衆シンクロモンスター1体を対象に発動。そのモンスターの攻撃力以下の攻撃力を持つ相手モンスターをすべて破壊する」

「何!?」

深呼吸をしながら目を閉じ、精神を集中させる《真六武衆―シエン》。

数秒経って集中力が極限まで高まると、猛スピードで刀を抜き、横一線に斬る。

すると、空気中に存在する酸素と水素が融合して水となり、その水がウォータージェットとなって6体の機械を切り裂いた。

「更に、この効果で破壊したモンスターの数×800のダメージをお前に与える」

モンスターを全滅させた水の刃がそのままの勢いでギャングAを切り裂いた。

「ギャアアア!!」

 

ギャングA

ライフ4000→0

 

六武流剣術―漣斬り(ろくぶりゅうけんじゅつ―さざなみぎり)

通常罠カード

「六武流剣術―漣斬り」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):相手がエクストラデッキからモンスターを特殊召喚した時、自分フィールド上に存在する「六武衆」Sモンスターを対象に発動できる。そのモンスターの攻撃力以下の攻撃力を持つ相手フィールド上に存在するモンスターをすべて破壊する。その後、相手にこの効果で破壊したモンスターの数×800のダメージを与える。

 

「やろう…!!(くそ!このターンはもう通常召喚できない!)俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド!」

 

南出

手札4→2

ライフ4000

場 ホイール・ファクトリー(永続罠)

  伏せカード1

 

ギャングB

手札4

ライフ4000

場 なし

 

ギャングC

手札4

ライフ4000

場 なし

 

ギャングD

手札4

ライフ4000

場 なし

 

翔太

手札6

ライフ6000

場 真六武衆―キザン×2 レベル4 攻撃2100

  真六武衆―シエン レベル5 攻撃2500

  ゴヨウ・プレデター レベル6 攻撃2400

  六武院(フィールド魔法 武士道カウンター6)

  六武の門(永続魔法 武士道カウンター4)

  伏せカード1

 

 

「くそう!!もう1人やられたのか!?」

2階からデュエルを見ていたギャングEがやむなく降りてきて、デュエルに乱入する。

すると、彼のライフがペナルティとして2000減らされる。

 

ギャングE

ライフ4000→2000

 

(なるほど…どうやら乱入するとペナルティが発生するというのはスタンダードになっているようだな)

乱入した以上、ここからはギャングBではなくギャングEのターンとなる。

2000もの痛手を負ってまで加勢するということは、勝算があるということだろうか。

少なくとも、2ターン目以降(バトルロイヤルルールでは全員が1ターンずつ行動した後)の乱入ではドローもバトルも行うことができるが。

「俺のターン、ドロー!」

 

ギャングE

手札5→6

 

「俺は手札から魔法カード《違法な宝札》を発動。こいつは俺のフィールド上にカードがなく、通常のドローをした後、公開し続けることでメインフェイズ1開始時に発動できる。その効果で俺はデッキからカードを2枚ドローする!」

 

違法な宝札

通常魔法カード

(1):自分フィールド上のカードがなく、自分のドローフェイズ時に通常のドローをしたこのカードを公開し続ける事で、そのターンのメインフェイズ1の開始時に発動できる。自分はデッキからカードを2枚ドローする。

 

「そして、手札から魔法カード《フィールド・セレクト》を発動。このターン、互いのプレイヤーのフィールド魔法の効果は無効となる!」

1ターンのみだが、ギャング達は武士のプレッシャーから解放される。

しかし、それもこの乱入したギャングEのターン、1ターンのみ。

この効果をどこまで最大限に生かすことができるのか。

 

フィールド・セレクト

通常魔法カード

(1):このカードを発動したターン終了時まで、互いのフィールド上に存在するフィールド魔法の効果は無効となる。

(2):「フィールド・セレクト」を発動後2回目以降の自分のスタンバイフェイズ時、墓地にこのカードが存在する場合、手札の魔法・罠カード1枚を墓地へ送ることで発動できる。このカード1枚を手札に加える。

 

「俺は手札から速攻魔法《トラップ・ブースター》を発動!手札を1枚捨て、手札から永続罠《DNA移植手術》を発動!このカードはフィールド上に存在するモンスターの属性を俺が宣言する者と同じにする!俺は光属性を宣言!」

《DNA移植手術》から放たれる白い光を浴びた3体の武士と1体の捕食者が白い膜のような障壁に包まれていく。

 

手札から墓地へ捨てられたカード

・アサルト・ホイール

 

「更に手札から《A・ボム》を召喚!」

 

A・ボム レベル2 攻撃400→0

 

「こいつは光属性モンスターとの戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、フィールド上のカードを2枚破壊する!更に手札から魔法カード《機械複製術》を発動!その効果でデッキからさらに2体の《A・ボム》を特殊召喚!」

《機械複製術》のソリッドビジョンから2体の対ワーム戦闘用特攻兵器が射出される。

 

A・ボム×2 レベル2 攻撃400→0

 

「まだまだ続くぜ!更に俺は手札から魔法カード《ご隠居の猛毒薬》を発動!その効果でライフを1200回復!」

 

ギャングE

ライフ2000→3200

 

これで彼は翔太のフィールドをボロボロにさせる算段ができた。

光属性になった4体のモンスター目掛けて《A・ボム》を特攻させ、その効果で少なくとも4枚のカードを破壊する。

現在翔太のフィールドに存在するカードはモンスター4体と魔法・罠カード3枚。

モンスターをすべて倒すことで、たとえ自身が敗北することになったとしても勝利への道を切り開くことにつながる。

だが、彼は気づいていない。

なぜ翔太が《真六武衆―シエン》の効果を使っていないのかを。

「バトルだ!!《A・ボム》!!あの無謀なガキのエースをズタボロにしろーーー!!」

3体の爆弾が翔太のフィールドに特攻してくる。

しかし、現実は非常だ。

「俺は速攻魔法《サイクロン》を発動。その効果で《DNA移植手術》を破壊する」

「な…?」

「無駄死にしろよ」

特攻してくる爆弾を見て、攻撃対象となっている《真六武衆―キザン》がフゥとため息をつく。

そして、刀の柄で《A・ボム》の弱点となっている真下のボルト部分を突く。

すると、その爆弾は爆発することなく機能を停止させて、そのモンスターの足元に落ちた。

「…」

決死の作戦が失敗し、手札が尽きたギャングEが真っ白になる。

 

ギャングE

ライフ3200→1100

 

「さあ…ここから言うことは1つだけだろ?」

「…ターン、エンド…」

 

南出

手札4→2

ライフ4000

場 ホイール・ファクトリー(永続罠)

  伏せカード1

 

ギャングE

手札6→0

ライフ1100

場 A・ボム×2 レベル2 攻撃400→0

 

ギャングB

手札4

ライフ4000

場 なし

 

ギャングC

手札4

ライフ4000

場 なし

 

ギャングD

手札4

ライフ4000

場 なし

 

翔太

手札6

ライフ6000

場 真六武衆―キザン×2 レベル4 攻撃2100

  真六武衆―シエン レベル5 攻撃2500

  ゴヨウ・プレデター レベル6 攻撃2400

  六武院(フィールド魔法 武士道カウンター6)

  六武の門(永続魔法 武士道カウンター4)

 

ギャングEによる破壊工作は失敗し、2体の《A・ボム》がその無防備な姿をさらす。

この状況を立て直すには、残り3人の動向に身をゆだねるしかない。

「俺のターン、ドロー!」

 

ギャングB

手札4→5

 

「相手フィールド上にのみモンスターが存在するとき、このカードは手札から特殊召喚できる!《サイバー・ドラゴン》を特殊召喚!」

《サイバー・ドラゴン》が登場すると同時に急ピッチで《ホイール・ファクトリー》内部で《ホイールトークン》が製造、射出させる。

 

サイバー・ドラゴン レベル5 守備1600

ホイールトークン レベル3 守備800

 

「そして、モンスターを裏守備表示で召喚してターンエンド…」

 

南出

手札2

ライフ4000

場 ホイール・ファクトリー(永続罠)

  伏せカード1

 

ギャングE

手札0

ライフ1100

場 A・ボム×2 レベル2 攻撃0

 

ギャングB

手札5→3

ライフ4000

場 サイバー・ドラゴン レベル5 守備1600

  ホイール・トークン レベル3 守備800

  裏守備モンスター1

 

ギャングC

手札4

ライフ4000

場 なし

 

ギャングD

手札4

ライフ4000

場 なし

 

翔太

手札6

ライフ6000

場 真六武衆―キザン×2 レベル4 攻撃2100

  真六武衆―シエン レベル5 攻撃2500

  ゴヨウ・プレデター レベル6 攻撃2400

  六武院(フィールド魔法 武士道カウンター6)

  六武の門(永続魔法 武士道カウンター4)

 

「俺のターン、ドロー!」

 

ギャングC

手札4→5

 

「俺は…カードを2枚伏せてターンエンド!」

 

南出

手札2

ライフ4000

場 ホイール・ファクトリー(永続罠)

  伏せカード1

 

ギャングE

手札0

ライフ1100

場 A・ボム×2 レベル2 攻撃0

 

ギャングB

手札3

ライフ4000

場 サイバー・ドラゴン レベル5 守備1600

  ホイールトークン レベル3 守備800

  裏守備モンスター1

 

ギャングC

手札5→3

ライフ4000

場 伏せカード2

 

ギャングD

手札4

ライフ4000

場 なし

 

翔太

手札6

ライフ6000

場 真六武衆―キザン×2 レベル4 攻撃2100

  真六武衆―シエン レベル5 攻撃2500

  ゴヨウ・プレデター レベル6 攻撃2400

  六武院(フィールド魔法 武士道カウンター6)

  六武の門(永続魔法 武士道カウンター4)

 

「俺のターン、ドロー!」

 

ギャングD

手札4→5

 

「俺は手札から《トップ・ランナー》を召喚!」

 

トップ・ランナー レベル4 攻撃1100→500(チューナー)

 

「更に《ホイール・ファクトリー》の効果で《ホイール・トークン》を特殊召喚!」

 

ホイールトークン レベル3 守備800

 

これでレベル7のシンクロモンスターのシンクロ召喚が可能となる。

しかし、《六武院》によって攻撃力が600下がるこの状況では攻撃力3100以上のモンスターの召喚はたとえシンクロ召喚であっても至難の業。

カード効果で強化しようにも《真六武衆―シエン》によって1ターンに1度、魔法・罠カードの発動を無効にし破壊されることになるため、安全に行くのであればモンスター効果で強化する必要がある。

問題はそのような隙を翔太が与えるかどうかだ。

「俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド!」

このような状況になるのであれば、手札を10枚も与えるべきではなかったと後悔する。

だが、一度承諾した以上は最後まで続けるのが筋だということをギャング達は理解しているため、やめるという選択肢はない。

 

南出

手札2

ライフ4000

場 ホイール・ファクトリー(永続罠)

  伏せカード1

 

ギャングE

手札0

ライフ1100

場 A・ボム×2 レベル2 攻撃0

 

ギャングB

手札3

ライフ4000

場 サイバー・ドラゴン レベル5 守備1600

  ホイールトークン レベル3 守備800

  裏守備モンスター1

 

ギャングC

手札3

ライフ4000

場 伏せカード2

 

ギャングD

手札5→2

ライフ4000

場 トップ・ランナー レベル4 攻撃500(チューナー)

  ホイールトークン レベル3 守備800

  伏せカード2

 

翔太

手札6

ライフ6000

場 真六武衆―キザン×2 レベル4 攻撃2100

  真六武衆―シエン レベル5 攻撃2500

  ゴヨウ・プレデター レベル6 攻撃2400

  六武院(フィールド魔法 武士道カウンター6)

  六武の門(永続魔法 武士道カウンター4)

 

こうして、5人による長いターンが終了し、ようやく翔太のターンが来る。

「(こんなに長く待たされるなんてな。カップめん作りながらやりたい気分だ。ま、こいつら程度なら喰いながらでも勝てるか)俺のターン!」

 

翔太

手札6→7

 

「俺は《紫炎の寄子》を召喚」

黒い傘のような兜と同じ色の装甲に緑色の布が組み合わさった銅丸、そして背中に刺した六武衆の家紋が特徴的な猿顔の足軽が現れる。

寄子とは中世から続く、領主と領民が疑似的な親子関係を作る制度のうちの子役であり、寄親たる領主にの公事に対して負担する代わりに自らの地位と領地の保障を受けていた。

ここでは六武衆もしくは紫炎が寄親ということだろう。

 

紫炎の寄子 レベル1 攻撃300(チューナー)

 

「レベル4の《キザン》にレベル1の《寄子》をチューニング。シンクロ召喚!現れろ、《真六武衆―シエン》」

 

真六武衆―シエン レベル5 攻撃2500

 

六武院 武士道カウンター6→7

六武の門 武士道カウンター4→6

 

「ぐぅぅぅ…」

2体目の《真六武衆―シエン》の登場に苦い表情を浮かべる5人だが、そんな彼らに追い打ちをかけるように翔太は次の手に出る。

「更に俺は《六武の門》の効果を発動。俺のフィールド上に武士道カウンターを4つ取り除き、墓地から《キザン》を手札に加え、そのままこいつ自身の効果で特殊召喚させる」

再び門の中から《真六武衆―キザン》が出てくる。

何度も何度も休む暇もなく呼び出されているにも関わらず、表情1つ変えていない。

 

真六武衆―キザン レベル4 攻撃1800→2100

 

六武院 武士道カウンター7→8

六武の門 武士道カウンター6→2→4

 

「更にもう1度《六武の門》の効果で武士道カウンターを4つ取り除き、墓地から《ケイロウ》を手札に加える。そして、こいつも自らの効果で特殊召喚できる」

 

六武衆の傾奇者―ケイロウ レベル2 攻撃1000(チューナー)

 

六武院 武士道カウンター8→9

六武の門 武士道カウンター4→0→2

 

「レベル4の《キザン》にレベル2の《ケイロウ》をチューニング。シンクロ召喚。現れろ、《グラヴィティ・ウォリアー》」

翔太のフィールドに現れる重力の狂戦士、《グラヴィティ・ウォリアー》。

このカードはスタンダード次元で市販されており、シンクロ次元へ向かう前に六武衆デッキに組み込むために購入したものだ。

 

グラヴィティ・ウォリアー レベル6 攻撃2100

 

「《グラヴィティ・ウォリアー》の効果発動。こいつはシンクロ召喚に成功した時、攻撃力を相手フィールド上に表側表示で存在するモンスターの数×300アップさせる。蛮勇引力!」

1対1で行われる通常のデュエルではそれほど大した効果ではない蛮勇引力だが、変則的であるこのバトルロイヤル

 

グラヴィティ・ウォリアー レベル6 攻撃2100→3900

 

「攻撃力3900!!?」

レベル6には似合わない破格の攻撃力を持った《グラヴィティ・ウォリアー》に戦慄するギャング達だが、彼らにとってのサプライズはまだ終わらない。

お楽しみはこれからだ。

「そして、再び《六武の門》の効果を使う。武士道カウンターを4つ取り除き、墓地から《キザン》を手札に加え、そのまま特殊召喚」

 

真六武衆―キザン レベル4 攻撃1800→2100

 

六武院 武士道カウンター9→7→8

六武の門 武士道カウンター2→0→2

 

「そして、手札から魔法カード《六武流剣術―天羽之斬》を発動。俺のフィールド上にシンクロモンスターを含む六武衆モンスターが2体以上存在するとき、相手フィールド上の魔法・罠カードをすべて破壊する」

「何!?」

《真六武衆―キザン》と《真六武衆―シエン》が互いに背中を合わせつつ、刀を構える。

そして、目を閉じ深く瞑想すると上空に雷雲が発生し、周囲を暗くする。

その雲から落ちた雷が両者の刀に宿り、刀身が黄色く染まる。

2人は目を開くと、《真六武衆-キザン》から刀を受け取り、2刀流となった《真六武衆―シエン》が交差するように袈裟斬りする。

すると、双方の刀に宿る雷が集結し、大蛇のような姿となってギャング達の魔法・罠ゾーンに襲い掛かる。

5枚に伏せカードがその蛇の雷の余波で黒く焦げ、《ホイール・ファクトリー》が巨大な口に飲み込まれる。

魔法・罠カードを破壊しつくしたその蛇が姿を消す時、心無しがその表情が満足げに見えた。

 

破壊された伏せカード

・緊急同調

・聖なるバリア―ミラーフォース

・攻撃の無力化

・威風堂々

・スキル・サクセサー

 

六武流剣術―天羽之斬(あまのはばきり)

通常魔法カード

「六武流剣術―天羽之斬」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上にSモンスターを含む「六武衆」モンスターが2体以上存在する場合にのみ発動できる。相手フィールド上に存在する魔法・罠カードをすべて破壊する。

 

「バカな…!?」

「《緊急同調》に《威風堂々》、おまけに攻撃妨害のカードか…。ネタ晴らしされたらもう怖くないな」

虎の子のカウンター罠もろともギャングのフィールドから魔法・罠カードが消し飛んでいった。

そして、《六武院》に乗った武士道カウンターの影響で《トップ・ランナー》の攻撃力が低下する。

 

トップ・ランナー レベル4 攻撃500→300

 

「バトルだ。まずは2体の《キザン》で《A・ボム》を攻撃」

《真六武衆―キザン》が《真六武衆―シエン》から返された刀で、浮遊する《A・ボム》を一刀両断する。

両断された爆弾はギャングのフィールドで爆発し、隣にいたもう1体の《A・ボム》を誘爆させる。

「うわああああ!!」

 

ギャングE

ライフ1100→0

 

「更に《ゴヨウ・プレデター》ともう1体の《キザン》でこいつにダイレクトアタック」

翔太が指を指したのは南出だ。

うなずいた《ゴヨウ・プレデター》が十手についているロープで彼を拘束し、《真六武衆―キザン》が盾一線に切り裂く。

(バ…バカな…??これは悪い夢か?)

ライフを失った南出が卒倒する。

 

南出

ライフ4000→1600→0

 

「そして2体の《シエン》でフィールドがら空きのそいつ(ギャングC)にダイレクトアタック」

「来るなぁぁぁ!!」

大急ぎでその場を逃げ出すギャングCだが、戦場で鍛え抜かれた武将の脚力に敵うはずもなく、すぐに追いつかれる。

そして、その臆病者の背中を無慈悲に切り裂いた。

 

ギャングC

ライフ4000→1500→0

 

「バカな…1ターンで3人も!?」

「さあ、もっと来いよ?大暴れする俺を止めればご褒美確実だぜ?それとも、束になっても俺1人倒せないのか?」

ニヤっと笑いながら挑発し、ジリジリとギャング達に近づいてくる。

すると、南門や正面入り口から更に4人近くのギャングが入ってくる。

(これでデュエル前とデュエル中にぶった押した奴を含めて11人か…さあてっと、あいつらがどう動いてくれるか)

 

一方、アジトの裏口付近では…。

「よーし、侵入成功」

「翔太がここまで引っ張った。あとは俺たちのやることをやるだけだな」

正門での騒ぎに多くのギャングが駆けつけ、無人となっていたことから伊織と鬼柳、ジョンソン、里香、漁介、柚子、モハメドは7人であるにもかかわらず、容易に侵入に成功した。

目指すは最上階にあると思われるリーダー代行の部屋。

「よっしゃ。ならさっさと行って…」

ピッ!

「ピッ…?」

始めの第一歩でいきなり奇妙な音が里香の足元で聞こえた。

彼女の額に冷たい汗が流れ、ゆっくりと足をどかす。

「ボタンって…ヤバイ!!」

ビーッ!ビーッ!ビーッ!!!

天井や壁にあるスピーカーからサイレンが発生し、そしてランプが赤く点灯する。

廃墟をアジトとしているため、このようなセキュリティシステムがあると思っていなかった伊織と漁介、里香、柚子がびっくりする。

「えーーー!!?これだと翔太君と戦っている人たちに気付かれちゃう!絶体絶命ー!」

「里香!?この…とーすけぇ!!」

「誰が間抜けや!?こんなん誰も知らんわ!」

付き合いが長いのか、広島弁でとーすけが間抜けだということが分かった里香が漁介と口論する。

そうしている間にも扉を背後にして左右の通路から2人のギャングが走ってくる。

「くそっ!?まさか正面の奴がおとりだなんてな!」

「奇襲もどきっていうのか、これは??」

2人に対して、ジョンソンがデュエルディスクを展開する。

「ここは私が抑えよう。お前たちは行け」

「ジョンソンはん…。ここはウチが残ってやるんが」

「急いで移動しなければならない以上、目の見えない私は足手まといだ。それに…正面で戦っている彼が大立ち回りをしている以上、それと同じくらいのことができなければな」

フッと笑みを浮かべ、その場に座り、デッキからカードを引く。

「早く行け、次からはこのようなセキュリティシステムには気をつけろ」

「行くぞ!もうすぐ増援がここに来る!」

モハメドが先頭に立ち、先行して通路を進む。

それを漁介、伊織、里香、柚子、鬼柳が続く。

最後尾を鬼柳にしたのは彼がこのメンバーで一番シンクロ召喚に精通しているデュエリストであり、挟み撃ちになった時の対策を考えたうえで最適と判断したためだ。

6人の足音が小さくなるのを耳にしたジョンソンが2人に見えない眼を向ける。

「さあ…しばらく私と遊んでもらおう。私の蜘蛛の糸に絡め取られることを後悔するのだな」

「目の見えねえ奴が何を言いやがる!!姑息な手を使いやがって!!」

奇襲もどきが挑発となったのか、2人は怒り心頭だ。

(さあ…この次元のみとなるだろうが、私のデッキよ…力を貸してもらうぞ)

「「デュエル!!」」

 

ギャングF

手札5

ライフ4000

 

ギャングG

手札5

ライフ4000

 

ジョンソン

手札5

ライフ8000

 

「まずは俺からだ!手札から魔法カード《ワン・フォー・ワン》を発動!手札を1枚墓地へ送り、手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚できる。特殊召喚!《音響戦士ベーシス》!!」

緑色の装甲でできた腕と脚がついた青と白が基調のベースギターが自分と同じ形のギターで曲を流しながらデッキから出撃する。

手足は黒で、指先にあるスピーカーからはベースギターでは表現しきれないドラムの音などが発せられている。

 

音響戦士ベーシス レベル1 守備400(チューナー)

 

手札から墓地へ送られたカード

・D・HEROディアボリックガイ

 

「更に墓地に存在する《ディアボリックガイ》の効果発動。このカードを墓地から除外することで、デッキから《ディアボリックガイ》を特殊召喚できる!」

胸に大きくDと黒いタトゥーが刻まれ、黒い羽根と体毛、そして2本の尻尾が特徴的な悪魔が現れる。

体毛の無い部分、間接や胸には褐色の肌が露出しており、両手には4本の突起があるメリケンサックを装備している。

 

D・HEROディアボリックガイ レベル6 攻撃800

 

「そして、《ベーシス》の効果発動!こいつは1ターンに1度、俺のフィールド上に存在する音響戦士1体のレベルをターン終了時まで俺の手札と同じ数だけ上昇させる!」

ギャングFの手札3枚が青い光を放ち、《音響戦士ベーシス》の楽器を自動的にチューニングしていく。

 

音響戦士ベーシス レベル1→4 守備400(チューナー)

 

「レベル6の《ディアボリックガイ》にレベル4の《ベーシス》をチューニング。シンクロ召喚!レベル10!《A・ジェネクス・カオスウィザード》!」

体の右半分が白、左半分が黒であり、足や手の甲部分に青や赤の透明な装甲がついている人型の機械が現れる。

額には球体型の赤い魔石が埋め込まれており、手には《カオス・ウィザード》に装備されている赤い刀身と黒い柄のある両刃鎌を持っている。

 

A・ジェネクス・カオスウィザード レベル10 攻撃3000

 

「シンクロ素材に闇属性モンスターを使用した場合、このカードの攻撃中に相手は魔法・罠カードを発動できなくなる!更に俺はモンスターを裏守備表示で召喚し、ターンエンド」

 

ギャングF

手札5→2

ライフ4000

場 A・ジェネクス・カオスウィザード レベル10 攻撃3000

  裏守備モンスター1

 

ギャングG

手札5

ライフ4000

場 なし

 

ジョンソン

手札5

ライフ8000

場 なし

 

「俺のターン!俺は手札から《ジェネクス・ウンディーネ》を召喚!」

水色の装甲で手足のあるイカと表現できる奇妙な機械が現れる。

腰回りには複数のチューブが存在し、それぞれが肩甲骨や腕、背中などに接続されている。

 

ジェネクス・ウンディーネ レベル3 攻撃1200

 

「このカードの召喚に成功した時、デッキに存在する水属性モンスター1体を墓地へ送ることで、デッキから《ジェネクス・コントローラー》1体を手札に加える」

デッキから《ドラゴン・アイス》と《ジェネクス・コントローラー》が排出され、前者を墓地へ送り、後者を手札に加える。

《ジェネクス・コントローラー》は通常モンスターではあるが、ジェネクスデッキの中核ともいえるカードであり、《魔の試着部屋》や《予想GUY》と言ったカードのサポートを受けることができるなど他のチューナーにはないアドバンテージが存在する。

「更に俺は手札から手札から魔法カード《苦渋の決断》を発動。デッキからレベル4以下の通常モンスター1体を墓地へ送り、デッキからそれと同名のカード1枚を手札に加える。俺はデッキから《ジェネクス・コントローラー》を墓地へ送り、《ジェネクス・コントローラー》を手札に加える。そして手札から魔法カード《闇の誘惑》を発動!デッキからカードを2枚ドローし、手札の闇属性モンスター1体を除外する!」

次元の裂け目が出現し、その中に《ジェネクス・コントローラー》が飲み込まれていく。

これで除外、墓地、手札にそれぞれ1枚ずつ《ジェネクス・コントローラー》が存在することになる。

「更に手札から魔法カード《チューナーズ・エナジー》を発動。墓地と除外されているカードの中にチューナーが1体ずつ存在するとき、手札・デッキのレベル3以下のチューナーモンスター1体を特殊召喚できる。俺はデッキから《スペア・ジェネクス》を特殊召喚!」

両目が紫のアンテナとなっている灰色の装甲の小さな機械人形が現れる。

両腕にはマニピュレーターがなく、左手部分には白い花が咲いている。

 

スペア・ジェネクス レベル3 攻撃800(チューナー)

 

チューナーズ・エナジー

通常魔法カード

「チューナーズ・エナジー」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分の墓地、除外されているカードの中に自分のチューナーが1体ずつ存在する場合にのみ発動できる。自分の手札・デッキに存在するレベル3以下のチューナー1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターはターン終了時に手札に戻る。

 

「《スペア・ジェネクス》の効果発動。このカードは俺のフィールドに他のジェネクスモンスターが存在するとき、このカードのカード名をターン終了時まで《ジェネクス・コントローラー》として扱う。レベル3の《ジェネクス・ウンディーネ》にレベル3の《スペア・ジェネクス》をチューニング。シンクロ召喚!レベル6!《A・ジェネクス・トライアーム》!」

《ジェネクス・ウンディーネ》がいきなり分解され、そのパーツがすべて《スペア・ジェネクス》を中心に集まっていく。

そして、《スペア・ジェネクス》にある自己進化のための教育思考コンピュータが導き出した答えを元にパーツが組み立てられていく。

黒をベースに緑と青のパーツが混じった人型兵器だ。

関節部分の色は白く、顔の部分は青いゴーグル型センサーとなっている。

武器は左腕に装着された固定武装は下の部分にオレンジ色の銃口が2つ、上に黒い銃口が1つある黒いコンテナ型の銃で、背中にあるバックパックとはエネルギー供給ケーブルが繋げられている。

 

A・ジェネクス・トライアーム レベル6 攻撃2400

 

「こいつはシンクロ素材としてモンスターの属性によって使える効果が変わる!水属性の場合は1ターンに1度、手札を1枚捨てることでフィールド上の魔法・罠カード1枚を破壊できる!」

《ジェネクス・ウンディーネ》のコアからデータを読み取った《スペア・ジェネクス》の命令で左腕の銃の色が青に変化し、形状がガトリングガンに変化する。

「そして俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド!」

 

ギャングF

手札2

ライフ4000

場 A・ジェネクス・カオスウィザード レベル10 攻撃3000

  裏守備モンスター1

 

ギャングG

手札5→2(うち1枚《ジェネクス・コントローラー》)

ライフ4000

場 A・ジェネクス・トライアーム(水属性を素材) レベル6 攻撃2400

  伏せカード2

 

ジョンソン

手札5

ライフ8000

場 なし

 

(なるほど…奴らのデッキはジェネクスデッキ。ある意味では、ミラーマッチということになるな)

自分の手札を右手人差し指でそっと撫でる。

(今の手札はそう言う内容か。永瀬と柊に後で礼を言っておくべきだな)

ジョンソンはこのデッキを作るにあたって、カードを覚える際に伊織と柚子に協力してもらっていた。

といっても、そのうちの3割をやったのが伊織で残りは全部柚子がやったのだが。

「私のターン。私は手札から魔法カード《機甲部隊の最前線》を発動」

「何!?まさかお前のデッキも機械族デッキなのか!?」

《機甲部隊の最前線》を見て、2人のギャングがすぐに反応する。

「そして、このカードは手札の機械族モンスターをレベルの合計が8以上になるように墓地へ捨てることで手札・墓地から特殊召喚できる。《マシンナーズ・フォートレス》と《カラクリ忍者七七四九》を墓地へ送り、墓地から《マシンナーズ・フォートレス》を特殊召喚」

2機のマシーンが《機甲部隊の最前線》で解体され、4体の緑色のつなぎを着たゴブリンの手で現地改修されていく。

そして、わずかに茶色い装甲が砲台に着いた状態の《マシンナーズ・フォートレス》が出撃する。

 

マシンナーズ・フォートレス レベル7 攻撃2500

 

「更に手札から《カラクリ小町弐弐四》を召喚」

桜模様と濃い緑色で来料に書かれた弐弐四という文字が特徴的な薄緑の着物で赤い帯をつけた、いかにも江戸時代の町娘という姿のカラクリが現れる。

登場と同時に体内の発条が動きだし、頭部にある3つの緑色の眼が光る。

 

カラクリ小町弐弐四 レベル3 攻撃0(チューナー)

 

「このカードが存在する限り、私はメインフェイズ時に1度だけ追加で手札のカラクリ1体を召喚できる。私は更に《カラクリ兵弐参六》を召喚」

背中にタルを背負い、竹槍を装備したカラクリが現れる。

3つの眼のうち一番上に位置する部分は《カラクリ小町弐弐四》とは違い赤くなっている。

 

カラクリ兵弐参六 レベル4 攻撃1400

 

「レベル4の《弐参六》にレベル3の《弐弐四》をチューニング。発条の連鎖よ、今ここに戦局を掌握するカラクリを起動させよ。シンクロ召喚!レベル7!《カラクリ将軍無零》!!」

赤いマントと黒い甲冑、そして2本の角が両サイドに着いた兜、そして赤い軍配を装備したカラクリが畳床机に座ったまま現れる。

頭部の眼は4つに増えており、いずれも青い。

 

カラクリ将軍無零 レベル7 攻撃2600

 

「《無零》の効果発動。このカードのシンクロ召喚に成功した時、デッキからカラクリ1体を特殊召喚できる。私はデッキから《カラクリ蜘蛛壱四四》を特殊召喚」

軍配を上げる《カラクリ将軍無零》の背後から小さな赤い一つ目の蜘蛛型カラクリが出てくる。

 

カラクリ蜘蛛壱四四 レベル2 攻撃400(チューナー)

 

「このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、相手フィールド上に存在するモンスター1体の表示形式を変更させ、次の私のターン終了時まで攻撃も表示形式の変更もできなくする」

「何!?」

「蜘蛛の糸に絡め取られるがいい…!」

《カラクリ蜘蛛壱四四》の口から体内で作られた蜘蛛の糸が発射され、《A・ジェネクス・カオスウィザード》を捕縛する。

粘りのあるその糸をほどくのは至難の業で、体の自由が奪われた《A・ジェネクス・カオスウィザード》が鎌を落としてしまう。

(くそ…!こいつは光属性モンスターをシンクロ素材にした場合は相手モンスターの効果をうけなくなる。だが、今のこいつじゃあ防げない!!)

怒りに満ちた表情でギャングは機械の子蜘蛛を見る。

 

A・ジェネクス・カオスウィザード レベル10 攻撃3000→守備2500

 

A・ジェネクス・カオスウィザード

レベル10 攻撃3000 守備2500 シンクロ 闇属性 機械族

機械族チューナー+チューナー以外の光属性または闇属性モンスター1体以上

(1):このカードはフィールド・墓地に存在する限り、属性を光としても扱う。

(2):このカードのS素材としたチューナー以外のモンスターの属性によって、以下の効果を得る。

●光属性:このカードは相手のモンスター効果を受けない。

●闇属性:このカードが攻撃する場合、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。

 

カラクリ蜘蛛壱四四

レベル2 攻撃400 守備500 チューナー 地属性 機械族

(1):このカードは攻撃可能な場合には攻撃しなければならない。

(2):フィールド上に表側攻撃表示で存在するこのカードが攻撃対象に選択された時、このカードの表示形式を守備表示にする。

(3):このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、相手フィールド上に存在するモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターの表示形式を変更する。この効果を受けたモンスターは次の自分のターン終了時まで攻撃と表示形式の変更ができない。

 

「私はこれでターンエンドだ…。私を倒さない限り、お前たちはここを通ることはできない」

「ぐう…!!」

この中央の廊下だけがこの建物の中でアジトの心臓部である院長室につながる。

他にも通じる道はあったようだが、老朽化による建物の崩壊などで使えなくなっている。

そして、ほとんどのギャングが正門にいる翔太の相手をしている中、あとどれくらい時間が経てばここに援軍が来るかわからない。

彼らに残された道は2人でジョンソンを倒すことだけだ。

 

ギャングF

手札2

ライフ4000

場 A・ジェネクス・カオスウィザード レベル10 攻撃3000

  裏守備モンスター1

 

ギャングG

手札2(うち1枚《ジェネクス・コントローラー》)

ライフ4000

場 A・ジェネクス・トライアーム(水属性を素材) レベル6 攻撃2400

  伏せカード2

 

ジョンソン

手札5→0

ライフ8000

場 カラクリ将軍無零 レベル7 攻撃2600

  マシンナーズ・フォートレス レベル7 攻撃2500

  カラクリ蜘蛛壱四四 レベル2 攻撃400(チューナー)

  機甲部隊の最前線(永続魔法)

 

 




翔太とジョンソンが足止めをする中、他のメンバーはアジトの奥へ向かっていく。
そこで待つデュエルとは…。


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第49話 サイコロに委ねる戦い

「たーのーもーーー!!」

2階の院長室の扉を伊織が思いっきり押して開く。

あまりの緊張感のない行動をする伊織に漁介と里香、モハメドがあきれ果てる。

(伊織、こんな状況でもいつものペース…。あたしは、どうなのかしら…?)

一方、柚子はそんな彼女をうらやましく思えていた。

彼女に対して自分はどうだ?

出発前は強がって遊矢を励ましていたくせに、今は心の中に芽生えている恐れを抑えるのに精いっぱいだ。

相手が融合次元からシンクロ次元のデュエルギャングに変わっただけで、舞網チャンピオンシップでのバトルロワイヤルと変化がないのが今の現実だ。

相手がギャングである以上、カード化はされないかもしれないが何をされるかわからない。

「さぁ、年貢の納め時でい!」

江戸時代の岡っ引きの真似をしつつ、椅子に座る男を挑発する。

赤いレンズのゴーグルで両目を隠した、褐色の大男が彼だ。

既にデュエルディスクを装着していて、立ち上がるとそれを展開する。

「ふん、トレーラーはただの囮。思い切った作戦を実行したものだな」

立ち上がり、ゆっくりと椅子の前に置かれている机を思いっきり横へどかす。

「せっかくチャンスが巡って、こうしてボスになった。この絶好の時間をお前たちにつぶされてたまるかぁ!!」

先程の余裕の態度をあっさり崩し、地の態度を見せつつ、2つの茶碗を6つのサイコロを出す。

「お茶碗とサイコロ…?」

なぜこのようなものを出すのかと伊織達は首をかしげる。

「こうして俺たちのナワバリに土足で入ってきたのだからな、俺たちのルールでデュエルをしてもらうぜ?」

「そのルールとして、それを使うんか?」

「ああ…チンチロリンデュエルとでも言っておこう」

床に置いた茶碗に向けて、3つのサイコロを立ったまま入れる。

数回回転し、出た目は4,4,1。

「チンチロ…リン??」

初耳なのか、首をかしげる少年少女たちにモハメドが解説する。

「チンチロリンは親となるプレイヤー1人と子となるプレイヤー1人以上で行うゲームだ。3つのサイコロを振って出た目によって組み合わせ、出目が決まり、一番強い出目を出したプレイヤーが勝つゲームだ。ちなみに、今あの男が出した目は4,4,1。この場合は2つの目が一致しているから残り1つの目の数字を使う。つまり、出目は1。当然、1から順番に強い目として扱われる。それ以外にも役はあるが、まあそれはゲームをやりながら解説させてもらうぞ」

「さあ、さっき舐めた態度を取った嬢ちゃんにやってもらうぜ!」

そう言うと、男が伊織の前まで行き、茶碗をおいてサイコロ3つを手渡す。

「え…ええええーーーー!!?」

サイコロを握った伊織がびっくりし、大声を出す。

まさか自分がギャングのボス代行とデュエルをするとは思いもよらなかったのだろう。

こういうことは翔太がやるものだという考えが定着しているためだ。

(翔太くーーん、こういう時にかっこよく登場してこその主人公だよー?)

(伊織様、大丈夫ですか…?)

サイコロを見る伊織のそばにセラフィムが現れる。

(デュエルするとしても、まだテストもしていないデッキですよ?なら、いつもの…)

「だ…だいじょぶだいじょぶ。なんとかなーるなんとかなーる…」

自分に暗示をかけるように大丈夫や何とかなると口にするが、変則ルールと初めて使用するデッキという点からどうしても大丈夫に見えない。

そんな彼女を心配する漁介達だが、そんなことを気にしていられない事態が起こる。

「ボス代行ーーー!!」

「遅くなりやした!!」

天井にある通風口が開き、ギャングが3人入ってくる。

彼らはジョンソンがいる通路を通るのをあきらめ、通風口を通ってここまで来たのだ。

3人ともデュエルディスクを展開し、伊織たちを見ている。

「はぁ、どーなろーに!!」

「しゃあない!!伊織、ここは頼むで!」

「大物は譲ってやる」

漁介、里香、鬼柳がデュエルディスクを展開し、3人を相手にする。

柚子とモハメドが伊織を見守る。

「まずは最初の手札を決めるところからだ!サイコロを振るのはここと自分のドローフェイズ時!そして、役が決まらなかった場合は2回まで降り直しができ、それでも役が決まらない場合はドローできず、最初の手札は0になる」

男がサイコロを立ってまま茶碗に転がす。

出た目は6,6,5だ。

「出目5だ!よって、俺の最初の手札は5枚!!座ってサイコロを振っても構わん」

「ふうう…」

5枚ドローした男を見て、伊織はゆっくり深呼吸し、その場に座る。

(お願い…いい役出て!!)

目を閉じ、手の中にある3つのサイコロを茶碗の中に落とす。

出た目は1,2,3だ。

「1…2…3?」

「ああ…こいつはひどい!」

伊織の出目を見たモハメドが頭を抱える。

「モハメドさん、1,2,3って悪い役なんですか?」

「ああ…この目はヒフミといってな、通常のチンチロリンでは敗北確定で賭け金の倍の額を支払うことになる。おそらく、このデュエルでは…」

「貴様は運がないな。ヒフミはドローできない上に相手に1枚ドローさせる。この場合は俺は手札6枚、お前は手札0枚からのスタートになる!」

「えーーーー!!!???」

「そのかわり、その場合は貴様が後攻になるだな」

先攻1ターン目はドローできないというルールがある以上、手札0枚で最初のターンが来た場合は何もせずにターン終了となってしまう。

それはあまりにもひどいため、ある意味では救済措置としてこのルールが適応される。

どちらも出目なしの場合は両者ともに手札1枚からのスタートとなる。

「俺の名前はバルサム。土足で俺の土地に入った報いを受けてもらう!!(この俺の独壇場でな…)」

(うう…手札0枚からのスタートはきついよー…)

「「デュエル!!」

 

バルサム

手札6

ライフ4000

 

伊織

手札0

ライフ4000

 

「俺のターン!俺はモンスターを裏守備表示で召喚。そして、カードを1枚伏せてターンエンド!」

 

バルサム

手札6→4

ライフ4000

場 裏守備モンスター1

  伏せカード1

 

伊織

手札0

ライフ4000

場 なし

 

「さあ、貴様のターンだ!サイコロを振れぇ!」

バルサムの声を聞き、伊織は自らの手に握られているサイコロを見る。

(またヒフミになったら、あのおじさんに1枚ドローさせることになっちゃうけど…もし出目で6が出たら…!)

詳しい説明がなかったものの、良い出目を出したら今の状況を打開できるかもしれない。

幸い、バルサムのフィールドに存在するモンスターは裏守備モンスター1体のみ。

(伊織の嬢ちゃん…ヒフミ以上にションベンは気を付けてくれ…!茶碗からサイコロが出たら元も子もない…!)

「お願い!!」

その場に座った伊織がサイコロを茶碗の中に落とす。

茶碗の中で、伊織の体感ではかなりゆっくりと3つのサイコロが回る。

出た目は2,5,6、出目なしでもう1度降る。

2度目の出た目は5,4,5。

「出目は4。この場合、貴様は手札が4枚になるようにカードをドローする。もし5枚以上手札がある状態でそれを出した場合、お前は手札が4枚になるようにカードを墓地へ捨てる必要がある」

「やった!サイコロちゃん、このままずっと私の味方でいてね?」

にっこりと笑いながらサイコロを回収し、4枚カードをドローする。

 

伊織

手札0→4

 

「私は手札から魔法カード《調律》を発動!デッキからシンクロンチューナー1体を手札に加え、その後でデッキトップのカード1枚を墓地へ送る!私はデッキから《ジャンク・シンクロン》を手札に!」

伊織の手に《ジャンク・シンクロン》が手札に加わり、デッキトップのカードがデュエルディスクによって自動的に排出され、同じく彼女の手で墓地へ送られる。

 

デッキから墓地へ送られたカード

・ワンショット・ブースター

 

「そして、手札から《ジャンク・シンクロン》を召喚!」

 

ジャンク・シンクロン レベル3 攻撃1300(チューナー)

 

「このカードの召喚に成功した時、墓地からレベル2以下のモンスター1体の効果を無効にし、守備表示で特殊召喚する。私は墓地から《ワンショット・ブースター》を特殊召喚!」

 

ワンショット・ブースター レベル1 守備0

 

「そして、このカードは自分の墓地のモンスターの特殊召喚に成功した時、手札から特殊召喚できるよ。《ドッペル・ウォリアー》を特殊召喚!」

 

ドッペル・ウォリアー レベル2 攻撃800

 

「これでレベル4か5、6のモンスターをシンクロ召喚できる…」

フィールドに現れた3体のモンスターを見て、柚子がそう口にする。

チンチロリンのルールに救われて手札補充できたとはいえ、手札0枚からここまで状況を整えた彼女をすごいと思った。

「レベル2の《ドッペル・ウォリアー》とレベル1の《ワンショット・ブースター》にレベル3の《ジャンク・シンクロン》をチューニング!星の力を宿した2本槍で正面突破!シンクロ召喚!現れて、《スターダスト・アサルト・ウォリアー》!!」

伊織にとって人生初となるシンクロ召喚。

それによって現れたモンスターは《スターダスト・ドラゴン》を模した兜と鎧を着け、そしてドライバー状の槍を両腕に装備した戦士だ。

 

スターダスト・アサルト・ウォリアー レベル6 攻撃2100

 

「このカードのシンクロ召喚に成功した時、私のフィールド上にほかのモンスターがいない場合、墓地のジャンクモンスター1体を特殊召喚できる!復活!《ジャンク・シンクロン》!!」

《スターダスト・アサルト・ウォリアー》が2本の槍をぶつける。

すると、その2本の槍から白い電撃が発生し、それと同時に上空に青い渦が生まれ、中から《ジャンク・シンクロン》が飛び出す。

 

ジャンク・シンクロン レベル3 攻撃1300(チューナー)

 

「そして、《ドッペル・ウォリアー》の効果発動!このカードがシンクロ素材として墓地へ送られた時、《ドッペル・トークン》2体を攻撃表示で特殊召喚できる!」

 

ドッペル・トークン×2 レベル1 攻撃400

 

「更にレベル1の《ドッペル・トークン》2体にレベル3の《ジャンク・シンクロン》をチューニング!機械仕掛けの図書館をたった1人で管理する天才司書さん、ここに登場!シンクロ召喚!現れて、《TGハイパー・ライブラリアン》!!」

 

TGハイパー・ライブラリアン レベル5 攻撃2400

 

このターンで2体のシンクロモンスターが現れた。

(《ハイパー・ライブラリアン》か…やるな)

モハメドの目が《TGハイパー・ライブラリアン》に向けられる。

シンクロ召喚が行われるたびに、デッキからカードを1枚ドローできる。

手札が不安定なチンチロリンデュエルである程度確実に手札を得ることができる貴重なモンスターだ。

「バトル!《スターダスト・アサルト・ウォリアー》で裏守備モンスターを攻撃!」

《スターダスト・アサルト・ウォリアー》が2本槍を前面に押し立て、目の前の裏守備モンスターに向けて突撃する。

「《スターダスト・アサルト・ウォリアー》は貫通効果がある!これでちょっとでもダメージを…!」

2本の槍が裏守備となって身をひそめていた、《メタモルポッド》の黒い体を容易に貫く。

「ふん…!」

 

バルサム

ライフ4000→2500

 

裏守備モンスター

メタモルポッド レベル2 守備600

 

「やった、先制ダメージを与えたわ!」

「いや、こいつは…」

喜ぶ柚子のそばで、モハメドが破壊された《メタモルポッド》を見る。

《メタモルポッド》を扱うデッキがどのようなカードを入れているかは明確だ。

「《メタモルポッド》のリバース効果。お互いに手札をすべて墓地へ捨て、デッキからカードを5枚ドローする」

「あうう…」

悔しそうに手札に残った2枚を墓地へ捨てる。

 

手札から墓地へ送られたカード

バルサム

・暗黒界の尖兵ベージ

・暗黒界の導師セルリ

・暗黒界の術使スノウ

・ネクロ・ガードナー

 

伊織

・くず鉄のかかし

・くず鉄のバリケード

 

くず鉄のバリケード

カウンター罠

(1):フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を対象に発動できる。ターン終了時までそのモンスターは相手のカードの効果によって破壊されない。発動後このカードは墓地へ送らず、そのままセットする。

 

「《ベージ》の効果発動。こいつはカード効果で手札から墓地へ送られた場合、手札から特殊召喚できる。そして、《セルリ》は手札から墓地へ送られた場合、相手フィールド上に表側守備表示で特殊召喚できる!」

伊織とバルサムのフィールドに穴が開き、そこからそれぞれモンスターが1体ずつ出てくる。

バルサムのフィールドに現れたのは青い肉体と骨でできた軽装な鎧、ヘッドギア、槍を装備した兵士が出てくる。

伊織のフィールドには同じ肉体だが、全身を鋼鉄の鎧と青いマント、そして杖を装備した、小学生程度の身長を持つ魔導士が現れる。

杖は黒い木でできていて、先端の鳥のくちばしのような銀の飾りの中には青い魔石がある。

 

暗黒界の尖兵ベージ レベル4 攻撃1600

暗黒界の導師セルリ レベル1 守備300

 

「更に《スノウ》の効果発動。こいつがカード効果で手札から墓地へ送られた時、デッキから暗黒界カード1枚を手札に加える」

デッキから《暗黒界の軍神ゴルド》が排出される。

そして、まだバルサムの仕掛けの効果が続く。

「《セルリ》の効果発動。このカードが暗黒界カードの効果で特殊召喚に成功した時、相手は手札のカード1枚を選択して墓地へ送る」

宣言と同時に先ほど手札に加わったカードを墓地へ送る。

すると、《スターダスト・アサルト・ウォリアー》と《TGハイパー・ライブラリアン》の足元から金色の手甲をつけた腕が出てきて、2体を掴む。

そして、彼らを道連れにそのまま地中へと戻っていく。

「なんで私のモンスターが!?」

「《ゴルド》は相手のカード効果で手札から墓地へ送られた時、相手フィールド上に存在するカードを2枚まで破壊できる。そして、カード効果で手札から墓地へ送られた場合、そのまま墓地から特殊召喚できる」

バルサムのフィールドの中央が砕け、そこから灰色の肉体で黄金の手甲と肩当、翼を持つ、《暗黒界の尖兵ベージ》の2倍の大きさの悪魔が現れる。

その手には黄金でできた刀身の鎌が握られている。

 

暗黒界の武神ゴルド レベル5 攻撃2300

 

《メタモルポッド》が原因で、伊織がせっかく召喚した2体のシンクロモンスターが失われ、2体の暗黒界モンスターが出現した。

更に《ネクロ・ガードナー》も墓地に存在するため、確実に1度は攻撃を無効にされてしまう。

一気に窮地に陥る。

「私はカードを3枚伏せて、ターンエンド!」

 

バルサム

手札4

ライフ2500

場 暗黒界の武神ゴルド レベル5 攻撃2300

  暗黒界の尖兵ベージ レベル4 攻撃1600

  伏せカード1

 

伊織

手札4→3

ライフ4000

場 暗黒界の導師セルリ レベル1 守備300

  伏せカード3

 

「よし…俺のターン!」

ターン開始宣言と同時にサイコロが茶碗へ投げられる。

1回目は1,3,6で出目なしのため、2回目が降られる。

「5,5,6!!なら俺は手札が6枚になるようにカードをドローする!!」

「えーーー!!?」

 

バルサム

手札4→6

 

「俺は手札から魔法カード《暗黒界の雷》を発動。相手フィールド上にセットされているカード1枚を破壊する!」

《暗黒界の雷》から放たれる青い電撃によって、伊織の目の前にある伏せカードが破壊される。

 

破壊された伏せカード

・攻撃の無力化

 

「ふん…《攻撃の無力化》で阻止しようとしていたのか?甘い甘い。更に《暗黒界の雷》の効果で俺は手札を1枚選択して捨てる。俺は《暗黒界の龍神グラファ》を捨てる!そして、《グラファ》がカード効果で手札から墓地へ送られた時、相手フィールド上に存在するカード1枚を破壊する。《セルリ》、下がれ!!」

主の命令を受けた《暗黒界の導師セルリ》が静かに頭を下げ、足元に現れた黒い渦の中へと消えていく。

「更に《グラファ》は俺のフィールド上に存在する暗黒界モンスター1体を手札に戻すことで墓地から特殊召喚できる。俺は《ベージ》を手札に戻す!蘇れ、闇を侵略する光を喰らう守護神!《暗黒界の龍神グラファ》!!」

上空から落ちる青い稲妻によって伊織のもう1枚の伏せカードが破壊される。

バルサムの背後に青い渦が生まれ、そこから黒い翼竜が飛び出してくる。

肉体のところどころに髑髏の模様があり、口からは冷気が漏れ出ている。

 

暗黒界の龍神グラファ レベル8 攻撃2700

 

破壊された伏せカード

・緊急同調

 

「まずい…伏せカードを破壊されただけでなく、上級モンスターを呼び出した。これで、この2体の攻撃を防ぐことができなければ…永瀬の負けだ」

「伊織…」

心配そうに伊織を見つめる柚子。

仮にその場に立っているのが自分だったら、泣いて遊矢に助けを求めてしまうのではないかと思ってしまう。

「バトルだ。俺は《グラファ》でダイレクトアタック!」

《暗黒界の龍神グラファ》の口から放たれる冷気によって、フィールドが凍り付いていく。

そして、伊織の頭上に巨大なつららができて彼女に向けて落下する。

「きゃああ!!」

あわててかわした伊織だが、ライフは減る。

 

伊織

ライフ4000→1300

 

「あ痛たたた…一気に逆転されちゃった。けど、私は手札の《シンクロン・キーパー》の効果発動!このカードは私のフィールド上にモンスターが存在しない状態でダイレクトアタックによるダメージを受けたとき、手札から特殊召喚できる!」

鋼の両腕に黄色いバイク型ミニカーをつけていて、頭部が《ラピッド・ウォリアー》で胴体にシャッターがついている戦車が現れる。

マニピュレーターの指1本1本には銃口があり、そこから銃弾が放たれる仕組みだ。

 

シンクロン・キーパー レベル5 守備1200

 

「このカードが特殊召喚に成功した時、墓地からシンクロンモンスター1体を特殊召喚できる!その効果で特殊召喚したモンスターは戦闘では破壊されない!」

胴体のシャッターが開き、そこから《ジャンク・シンクロン》が飛び出す。

そのモンスターの周囲には電磁波によって制御された小型の円盤端シールドが複数展開されていて、それが攻撃を防ぐ。

 

ジャンク・シンクロン レベル3 守備500(チューナー)

 

シンクロン・キーパー

レベル5 攻撃2200 守備1200 効果 地属性 機械族

「シンクロン・キーパー」の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上にモンスターが存在せず、直接攻撃によって自分がダメージを受けた時に発動できる。このカードを手札から特殊召喚できる。

(2):このカードの特殊召喚に成功した時、自分の墓地に存在する「シンクロン」モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。この効果で特殊召喚に成功したこのカードは戦闘では破壊されない。

(3):(1)の効果で特殊召喚された場合、このカードは以下の効果を得る。

●このカードは1ターンに1度、戦闘および効果によって破壊されない。

 

「ふん…大きなダメージと引き換えにシンクロ素材となるモンスターをそろえたか。ならば俺はカードを1枚伏せてターンエンド!」

 

バルサム

手札6→4(うち1枚《暗黒界の尖兵ベージ》)

ライフ2500

場 暗黒界の武神ゴルド レベル5 攻撃2300

  暗黒界の龍神グラファ レベル8 攻撃2700

  伏せカード2

 

伊織

手札3→2

ライフ1300

場 シンクロン・キーパー(特殊召喚されている) レベル5 守備1200

  ジャンク・シンクロン(《シンクロン・キーパー》の影響下) レベル3 守備500(チューナー)

  伏せカード1

 

《シンクロン・キーパー》に救われ、このターンの敗北をしのいだ伊織。

だが、フィールドに暗黒界モンスターが存在すれば容易に復活できる《暗黒界の龍神グラファ》が登場した。

更に特殊召喚の際に手札に戻った《暗黒界の尖兵ベージ》をこのまま有効活用しない手はない。

「さあ、貴様のターンだ!」

「私のターン、ドロー!」

バルサムの威圧的な声に押される形で、伊織はサイコロを振る。

3,3,1。

「出目…1??」

「出目1か。今の貴様の手札は2枚。ならば手札が1枚になるようにカードを墓地へ捨てろ!ちなみに、このルールで手札から墓地へ捨てたカードの効果は発動しないということを覚えておくのだな!」

なぜこのような状況で悪い出目が出るのか?

悔しそうに手札を見る。

すると、急に伊織の表情が明るくなる。

「じゃあ、私はルールにより、手札から《レベル・スティーラー》を墓地へ捨てる!そして、墓地の《レベル・スティーラー》の効果発動!」

《シンクロン・キーパー》のシャッターが開き、そこから5つの星が射出される。

そして、そのうちの1つが《レベル・スティーラー》に変化し、残りの星が再び《シンクロン・キーパー》の中へ戻っていく。

「《レベル・スティーラー》は私のフィールド上に存在するレベル5以上のモンスター1体のレベルを1つ減らすことで墓地から特殊召喚できる!」

 

レベル・スティーラー レベル1 攻撃600

シンクロン・キーパー レベル5→4 守備1200

 

「レベル4の《シンクロン・キーパー》とレベル1の《レベル・スティーラー》にレベル3の《ジャンク・シンクロン》をチューニング!この世の悪を壊す優しい巨人、地響きと共にただ今登場!シンクロ召喚!現れて、《ジャンク・デストロイヤー》!!」

 

ジャンク・デストロイヤー レベル8 攻撃2600

 

「何!?《ジャンク・デストロイヤー》だと…!?貴様ぁぁ!!」

《ジャンク・デストロイヤー》の効果を知っているバルサムが激昂する。

「《ジャンク・デストロイヤー》の効果発動!このカードのシンクロ召喚に成功した時、シンクロ素材にしたチューナー以外のモンスターの数までフィールド上のカードを破壊できる!ダイダル・エナジー!!」

《ジャンク・デストロイヤー》の胸部から放たれる白い破壊エネルギーの波がバルサムのフィールドに襲い掛かる。

それによって、彼のフィールドにいた2体の暗黒界の神が消滅していく。

ルールによって《レベル・スティーラー》を墓地へ送ったことで、バルサムが受ける損害が大きくなってしまった。

「まだまだぁ!私は手札から《ジェット・シンクロン》を召喚!」

 

ジェット・シンクロン レベル1 攻撃500(チューナー)

 

「そして、《レベル・スティーラー》の効果発動!《ジャンク・デストロイヤー》のレベルを1つ下げて、墓地から特殊召喚!」

 

レベル・スティーラー レベル1 攻撃600

ジャンク・デストロイヤー レベル8→7 攻撃2600

 

「レベル1の《レベル・スティーラー》にレベル1の《ジェット・シンクロン》をチューニング!どんな道であっても目指せ、トップチェッカー!!シンクロ召喚!《フォーミュラ・シンクロン》!!」

 

フォーミュラ・シンクロン レベル2 守備1500(チューナー)

 

「今度はシンクロチューナーか…おのれ!!」

再び《レベル・スティーラー》を利用した伊織に腹を立てるが、そんなことを気にしない伊織はまだまだ行動する。

「《フォーミュラ・シンクロン》の効果発動!このカードのシンクロ召喚に成功したとき、デッキからカードを1枚ドローできる!更に《ジェット・シンクロン》はシンクロ素材として墓地へ送られた時、デッキからジャンクモンスター1体を手札に加えることができる!私はデッキから《ジャンク・サーバント》を手札に!」

《フォーミュラ・シンクロン》、そして《ジェット・シンクロン》の力で更に手札を増やす伊織。

この2枚が更に彼女の動きを加速させていく。

「更に私は墓地の《レベル・スティーラー》の効果をもう1度使う!」

《ジャンク・デストロイヤー》のレベルを下げて再び登場する《レベル・スティーラー》。

たった1ターンの間に休みなしで3回も登場したためか、息切れを見せている。

 

レベル・スティーラー レベル1 攻撃600

ジャンク・デストロイヤー レベル7→6 攻撃2600

 

「そしてこのカードは私のフィールド上にジャンクモンスターが存在するとき、手札から特殊召喚できる!出てきて、《ジャンク・サーバント》!!」

左だけ長めの左右非対称な肩当をつけた、青とオレンジ、黄のトリコロールが基調となっている人型ロボットが現れる。

左右非対称なのは肩当だけでなく、カメラもそうで、右の青いレンズが大きく、左の赤いレンズが小さい。

また、頭部に左側には棘付きの帽子のようなアクセサリーが付けられている。

サーバントという名前のように、登場したそのモンスターはすぐにスポーツドリンクをだし、ストローをつけて《レベル・スティーラー》に飲ませた。

 

ジャンク・サーバント レベル4 攻撃1500

 

「レベル1の《レベル・スティーラー》とレベル4の《ジャンク・サーバント》にレベル2の《フォーミュラ・シンクロン》をチューニング!私も器用になりたい!シンクロ召喚!現れて、《セブン・ソード・ウォリアー》!!」

はっきり言って、口上はもはや自分の願望だ。

まさかこのようなことを言われるとはと思った《セブン・ソード・ウォリアー》も少しきょとんとしている。

 

セブン・ソード・ウォリアー レベル7 攻撃2300

 

「くっそ!何度シンクロ召喚すれば気が済む!?」

「そして、私は手札から装備魔法《錆びた剣―ラスト・エッジ》を《セブン・ソード・ウォリアー》に装備!このカードは戦士族専用の装備魔法で、攻撃力を800アップさせる!」

錆びていて、とても切れ味が良いとは言えない剣が《セブン・ソード・ウォリアー》に装備される。

質量はあるため、もしかしたら鈍器としては使えるのかもしれない。

「《セブン・ソード・ウォリアー》の効果発動!1ターンに1度、このカードが装備カードを装備した時、相手に800ダメージを与える!イクイップ・ショット!」

《錆びた剣―ラスト・エッジ》から放たれる光線がバルサムの胸部を貫く。

「ぐはぁ!!」

 

バルサム

ライフ2500→1700

 

セブン・ソード・ウォリアー レベル7 攻撃2300→3100

 

「(よし…これで、私のフィールドにはあのおじさんにとどめを刺すことができるモンスターが2体。1体目の攻撃は《ネクロ・ガードナー》に防がれちゃうけど、もう1体の攻撃は届く!)バトル!まずは《セブン・ソード・ウォリアー》でダイレクトアタック!!」

先行する《セブン・ソード・ウォリアー》が錆びた剣の刀身をバルサムにたたきつけようとするが、そんな彼の前に《ネクロ・ガードナー》が立ちはだかる。

「《ネクロ・ガードナー》の効果発動!このカードを墓地から除外することで、1度だけ貴様からの攻撃を阻止できる!」

《ネクロ・ガードナー》が《セブン・ソード・ウォリアー》の剣を白刃取りするものの、最後は腹部に蹴りを加えられて破壊される。

そして、《ジャンク・デストロイヤー》がその間に4つの拳にエネルギーを集中させている。

「《ジャンク・デストロイヤー》!!とどめを刺して!!」

《ジャンク・デストロイヤー》の4つの拳から放たれるエネルギー弾が襲い掛かるものの、バルサムの目の前に現れて分厚い氷の壁に阻まれる。

「ええ…!?」

「速攻魔法《暗黒界に続く結界通路》を発動。この効果で墓地から《暗黒界の龍神グラファ》を特殊召喚した」

彼の背後に再び現れる《暗黒界の龍神グラファ》が静かにその冷徹な目線を《ジャンク・デストロイヤー》に向ける。

 

暗黒界の龍神グラファ レベル8 攻撃2700

 

「うう、とどめを刺せなかった…。じゃあ、《ジャンク・デストロイヤー》の攻撃はおしまい!このままターンエンド!」

悔しそうに《暗黒界の龍神グラファ》を見る伊織。

《セブン・ソード・ウォリアー》の効果を使えば容易に破壊できるが、容易に復活することからこのターンでの破壊はあまり意味をなさない。

 

バルサム

手札4(うち1枚《暗黒界の尖兵ベージ》)

ライフ1700

場 暗黒界の龍神グラファ レベル8 攻撃2700

  伏せカード1

 

伊織

手札2→1→0

ライフ1300

場 ジャンク・デストロイヤー レベル6 攻撃2600

  セブン・ソード・ウォリアー(《錆びた剣―ラスト・エッジ》装備) レベル7 攻撃3100

  伏せカード1

 

「くそぅ、あと一歩攻めきることができなかったな…。これが吉と出るか凶と出るか…」

 

一方、翔太とジョンソンは…。

「あとはお前を倒したら終わりだな…」

翔太の周囲にはすでに10人を超えるギャングが敗北し、気を失っている。

「や、やれるもんならやってみろ!!《A・O・Jディサイシブ・アームズ》の攻撃力は3300!攻撃力2500の《真六武衆―シエン》では倒せない!!」

ガクガク震えながら論理的に自分が敗北しない理由を口にする。

フウとため息をついた翔太はとどめのために行動する。

「俺はレベル5の《真六武衆―シエン》にレベル2の《六武衆の影武者》をチューニング。シンクロ召喚。現れろ、《六武衆の大将軍―紫炎》!!」

青いマントがついた深紅の大鎧と兜を身に着けた《真六武衆―シエン》が現れる。

その姿はある程度天下に名をとどろかせたことの姿であり、まだ天下自体を獲ってはいない。

 

六武衆の大将軍―紫炎 レベル7 攻撃2500

 

「そして俺は手札から魔法カード《貪欲な壺》を発動。それと同時に《紫炎》の効果発動。1ターンに1度、魔法・罠カードの発動を無効にし、破壊する」

「何!?自分が発動した魔法カードを無効にするだと…!?」

一見すると無駄だともいえる翔太の行動だが、それによってギャングの敗北が決定的なものとなる。

「そして、《紫炎》が《真六武衆―シエン》もしくは紫炎モンスターを素材にシンクロ召喚した状態で魔法・罠カードの発動が無効になった時、攻撃力がターン終了時まで倍になる」

 

六武衆の大将軍―紫炎 レベル7 攻撃2500→5000

 

六武衆の大将軍―紫炎

レベル7 攻撃2500 守備2000 シンクロ 闇属性 戦士族

戦士族チューナー+チューナー以外の「六武衆」「紫炎」Sモンスター1体

(1):1ターンに1度、魔法・罠カードを発動した時に発動できる。その発動を無効にし破壊する。

(2):フィールド上に表側表示で存在するこのカードが破壊される場合、代わりにこのカード以外の自分フィールド上に存在する「六武衆」モンスター1体を破壊する事ができる。

(3):このカードが「真六武衆―シエン」もしくは「紫炎」モンスターをS素材としてS召喚した場合、以下の効果を得る。

●1ターンに1度、魔法・罠カードの発動が無効となったときに発動できる。ターン終了時までこのカードの攻撃力が倍となる。

 

「攻撃力5000!?」

「《大将軍―紫炎》で《ディサイシブ・アームズ》を攻撃!」

《六武衆の大将軍―紫炎》が手を空に掲げると、上空に赤黒い雲が現れ、そこから1本の刀が降りてくる。

刀身には『宗三左文字』と刻まれている黒い持ち手の刀であり、これは彼が初めて自らの運命を賭けた戦をし、倒した敵大将の刀だ。

《六武衆の大将軍―紫炎》はそれを手に取ると、一撃で巨大な《A・O・Jディサイシブアームズ》を切り裂いた。

「ぐにゃあああ!!?」

 

ギャング

ライフ400→0

 

「これで…俺の任務は完了ってところだな」

もうデュエルのできる相手がいないことを確認した翔太は堂々と正面の扉から中へ入っていく。

(ま、あいつらの手伝いくらいはしとかねえとな)

 

また、ジョンソンも決着の時を迎えようとしている。

既に最初に戦った1人と、痕から駆けつけていた2人を倒し、最後の1人と対峙する。

「く、くそぉ!!」

「バトルだ。私は《カラクル大将軍無零怒》でダイレクトアタック」

《カラクル大将軍無零怒》が両手に2本の刀を無慈悲に無力な男の頭上に振り下ろしていく。

「こんなんで終われるかよ!?永続罠《リビングデッドの呼び声》発動!その効果で《A・ジェネクス・アクセル》を特殊召喚!」

金色の手や黒い車輪型の両足、そして背中についている表が銀で裏が金の輪以外の装甲と構造が《A・ジェネクス・トライアーム》とそっくりになっている機械が現れる。

その輪は自立浮遊のために、両サイドに青い球体型の重力軽減装置が埋め込まれている。

 

A・ジェネクス・アクセル レベル8 攻撃2600

 

(こいつでしのいで…次のターンのドローに…!)

多少のダメージを承知のうえで勝負に出るギャングだが、ジョンソンにそのような手は通用しない。

既に対策済みだ。

「私は手札から速攻魔法《インスタント・チューン》を発動。私のフィールド上にシンクロモンスターが存在し、相手がモンスターの特殊召喚に成功した場合、デッキのレベル1モンスターとフィールド上の私のシンクロモンスターでシンクロ召喚を行う。私はデッキから《カラクリ漁師七無三》を選択する!」

デッキから両腕にはさみのようなアンカーがついていて、《カラクリ忍者九壱九》のような細い足の肘部分に麻酔銃が装着された、青い毛皮で上半身を包んだカラクリが現れる。

背中には更にアンカーでも使用できる茶色い単発式の猟銃があり、更には獲物を入れるための藁籠もついている。

「レベル8の《無零怒》にレベル1の《七無三》をチューニング。シンクロ召喚!レベル9!現れろ、戦場を操る軍配、《カラクリ大将軍無零苦》!」

頭部を赤い鬼の仮面で隠し、全身を赤いボロボロなマントで身を隠した巨大なからくりが現れる。

太くて茶色い木造の右腕だけがマントから出ており、その手には赤い日の丸がついた漆黒の軍配が握られている。

それ以外は顔を含めて仮面とマントに隠されていて、このモンスターが本当にカラクリなのかすらわからない。

 

カラクリ大将軍無零苦 レベル9 攻撃3000

 

「《無零苦》の効果。このカードのシンクロ召喚に成功した時、デッキからカラクリモンスター1体を特殊召喚できる。私はデッキから《カラクリ無双八壱八》を特殊召喚」

白い頭巾と青い袈裟、数珠に鉤槍という僧兵のような装備をしている大型のカラクリが現れる。

無駄な消耗を軽減するためか、現在は東部に大きく1つだけついている赤いカメラの光が消えている。

 

カラクリ無双八壱八 レベル4 攻撃2100

 

「そして、《カラクリ大将軍無零苦》は1ターンに1度、フィールド上のモンスター1体の表示形式を変更できる。私は《アクセル》の表示形式を守備表示に変更させる」

《カラクリ大将軍無零苦》が軍配を振ると、激しい風がギャングのフィールドに襲い掛かる。

そして、《A・ジェネクス・アクセル》は吹き飛ばされないように身をかがめ、守備表示に変更してしまう。

 

A・ジェネクス・アクセル レベル8 攻撃2600→守備2000

 

「はぁ!?何無駄な行為を…?」

「《カラクリ大将軍無零苦》の効果。カラクリモンスターが守備表示モンスターを攻撃した時、そのモンスターの攻撃力か守備力のどちらか高い方の数値分のダメージを相手に与える」

軍配が起こした風が次第に強くなっていき、鎌鼬となってギャングに襲い掛かる。

「う、うううう、そだろーーー!??」

 

ギャング

ライフ2600→0

 

カラクリ漁師七無三

レベル1 攻撃700 守備300 チューナー 地属性 機械族

「カラクリ漁師七無三」の(3)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードは攻撃可能な場合には攻撃しなければならない。

(2):フィールド上に表側攻撃表示で存在するこのカードが攻撃対象に選択された時に発動する。このカードの表示形式を守備表示にする。

(3):このカードの召喚に成功した時に発動できる。自分の墓地に存在するレベル4以下の「カラクリ」モンスター1体を攻撃表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。

 

カラクリ大将軍無零苦(ブレイク)

レベル9 攻撃3000 守備2800 シンクロ 地属性 機械族

チューナー+チューナー以外の「カラクリ」Sモンスター1体以上

(1):このカードがS召喚に成功した時に発動できる。自分のデッキから「カラクリ」モンスター1体を特殊召喚する。

(2):1ターンに1度、フィールド上に存在するモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターの表示形式を変更する。その時、リバース効果は発動できない。この効果は相手ターンでも発動できる。

(3):1ターンに1度、自分フィールド上に存在する「カラクリ」モンスターが相手フィールド上に存在する守備表示モンスターを攻撃するとき、ダメージ計算時に発動できる。そのモンスターの攻撃力か守備力の高い方の数値分のダメージを相手に与える。

 

「足音が上からしか聞こえない。デュエルの音も…。ん?1階にこちらへ走ってくる奴が…?」

デュエル後、耳に集中したジョンソンが慎重にその足音を分析する。

「隠密性の欠片の無い大きな足音。敵がいないことを確信している。歩幅からして彼は…」

「よお、蜘蛛野郎」

「…お前か、秋山」

フッと笑ったジョンソンは立ち上がり、ついさっき到着した翔太を迎える。

「伊織たちはどうした?」

「ボスの部屋だ。…まさか、永瀬の名前を真っ先に出すとはな」

「ふん、あいつがヘマをしないか心配なだけだ」

さっさといくぞと言ってから、ジョンソンが塞いでいた廊下を進もうとする翔太。

そこでジョンソンが念のために説明をする。

「待て。デュエルをしている際にかすかだが、陶器に何か堅いものが何度も当たる音が聞こえた。おそらく、2階からだろう」

(こいつの耳…違う意味で壊れているんじゃねえか?)

「おそらく、デュエルは既に始まっている。用心しろ」

「そのセリフ、そのまま返すぜ」

そう言うと、翔太は再び走り出す。

そして、ジョンソンは里香がやってしまったことを思い出し、杖で足元を確認しつつ、ゆっくりと歩を進める。

 

ここで、場所が2階へ移り、デュエルはバルサムのターン。

「俺のターン、ドロー!!」

サイコロを茶碗の中に向けて投げる。

3つのサイコロが導き出すは4,6,6。

「出目は4!よって俺は手札が4枚になるようにカードをドローする必要があるが、もう手札は4枚。ドローはできない!」

「はふう…」

ドローされずに済んだことでほっとする。

4枚のうち1枚は《暗黒界の尖兵ベージ》。

問題は残り3枚の手札の正体だ。

「俺は罠カード《暗黒よりの軍勢》を発動!墓地に存在する暗黒界モンスター2体を手札に戻す」

 

墓地から手札に戻ったカード

・暗黒界の導師セルリ

・暗黒界の術師スノウ

 

(さてと…あとはこいつを使わせてもらおうか…)

ニヤリとバルサムは手札からあるカードをフィールドに出す。

「俺は手札から魔法カード《融合》を発動!」

「え、ええ!?!?」

「《融合》!?どうして…??」

なぜシンクロ次元のデュエリストが《融合》を!?

柚子と伊織、そしてデュエルをしている鬼柳と漁介、そして里香が驚く。

 

これは数日前のこと。

「何??ボスをセキュリティに引き渡せだと!?」

雨の降る夜、何者かに手紙で呼び出されたバルサムが茶色いフード付きのコートで全身を包み込んだ男からある依頼をされる。

それが今、バルサムが驚きながら確認するように連呼したセリフだ。

真っ暗で顔は見えないが、このようなことを口にするとしたら相手はセキュリティに間違いない。

暗黙の掟として、ギャングはデュエルに強い相手に従うことになっている。

決して、敵対するギャングのメンバーであったとしてもセキュリティに引き渡すのはご法度。

「報酬として、このカードを差し上げましょう」

雨に濡れないように、丁寧に透明なビニールで包まれた2枚のカードが渡される。

1枚は融合モンスター、もう1枚は《融合》。

「《融合》…??」

「これは未知の召喚法です。これを使うことで、あなたはこのギャング、ホイールズをコモンズ最強のチーム。セキュリティをも従えるほどの力を得ることができるでしょう」

「コモンズ…最強…」

彼の目に数日前に新しく張り出されたばかりのポスターが映る。

Dホイール、ホイール・オブ・フォーチュンに乗るジャックとキャッチフレーズ。

『デュエルキング、ジャック・アトラス 最高のsatisfactionをあなたに』

コモンズから身を起こし、最強のデュエリストとなったジャック・アトラス。

そんな彼が過ごしているであろう生活を想像する。

数多くの美女、何もせずに降ってくる札束のシャワー、見たこともない優雅な料理、名声。

「ふふ…あなたの思っていることは分かりますよ。そう、このカードがあればあなたは…」

ゆっくりと彼の傍まで近づき、耳元で静かにこうつぶやく。

「新たなキングにもなれる」

 

「(そうだ…コモンズ最強のギャングチームを持ち、ジャック・アトラスを倒す!!そして、手に入れる!!甘美な日々を!!)このカードは手札・フィールドのモンスターを素材に融合召喚を行う!俺が融合素材とするのは《暗黒界の龍神グラファ》、《暗黒界の軍神シルバ》、《暗黒界の尖兵ベージ》、《暗黒界の導師セルリ》、《暗黒界の騎士ズール》!!」

フィールド、手札にいる暗黒界5体が上空に現れた《融合》の渦に取り込まれていく。

「いきなり、この次元で《融合》だなんて…」

「暗黒の果て、混沌を統べし王よ!闇を救済せんがため、今こそ暗黒界の門より出でよ!融合召喚!レベル12!《暗黒界の混沌王カラレス》!!」

《融合》が次第に骸骨の装飾が複数ついた漆黒の門へと変化する。

そして、そこから黒い肉体を銀の細工が優雅についた黒い鎧とマントで包み込んだ、銀色の2本角の悪魔が現れる。

右手には七支刀を模した銀の剣が握られている。

 

暗黒界の混沌王カラレス レベル12 攻撃3500

 

「《暗黒界の混沌王カラレス》…」

銀のような白と鉛のような黒だけで色彩されたシンプルな悪魔に戦慄する。

「こいつは暗黒界最強のモンスター!このカードで頂点を目指す!!バトルだ!《カラレス》で《セブン・ソード・ウォリアー》を攻撃!!」

《暗黒界の混沌王カラレス》の剣に灰色のオーラが宿り、その剣で《セブン・ソード・ウォリアー》の《錆びた剣―ラスト・エッジ》とつばぜり合いする。

すると、剣から徐々に《セブン・ソード・ウォリアー》の肉体が石化していく。

なぜ自分が石になっていくのか?

その理由が混沌王の力ゆえであることを理解した時には既に全身が石となり、風化した後だった。

「《セブン・ソード・ウォリアー》が…!!」

 

伊織

ライフ1300→900

 

「けど、《ラスト・エッジ》の効果発動!装備されているこのカードが墓地へ送られた時、相手に800ダメージを与える!」

 

バルサム

ライフ1700→900

 

「ふん…だがここで《カラレス》の効果が発動する。このカードが相手モンスターと戦闘を行ったダメージ計算終了時に、俺は手札1枚墓地へ捨てることができる。この効果で墓地へ捨てたカードは相手の効果によって捨てたものとして扱われる。俺は手札の《暗黒界の術師スノウ》を捨てる!」

手札から墓地へ捨てられた《暗黒界の術師スノウ》の霊気がバルサムのデッキと伊織の墓地に憑依する。

「このカードがカード効果によって手札から墓地へ捨てられた場合、デッキから暗黒界カード1枚を手札に加える。俺はもう1枚の《暗黒界の龍神グラファ》を手札に加える。そして、もう1つの効果も発動。このカードが相手のカード効果によって手札から墓地へ捨てられた場合、相手の墓地に存在するモンスター1体を表側守備表示で特殊召喚できる。俺は貴様の墓地に存在する《TGハイパー・ライブラリアン》を特殊召喚する!」

墓地に眠る《TGハイパー・ライブラリアン》が冷気に触れらことで肌の色が青くなっていく。

そして、全身から青白いオーラを放ちながらバルサムのフィールドへ向かっていく。

 

TGハイパー・ライブラリアン レベル5 守備1800

 

「あうう…」

ドローソースとしての効果のある《TGハイパー・ライブラリアン》が奪われたことで、伊織はむやみにシンクロ召喚を行うこともできなくなった。

《暗黒界の混沌王カラレス》の効果は攻撃された場合でも発動できる。

被害を抑え、確実に勝利を収めるには一撃。

たった一撃で《カラレス》を倒し、バルサムのライフを0にすること。

(どうしてあの人が融合召喚を使うのかはわからないけど…このデュエルに勝って聞き出せば…!)

「俺はこれでターンエンド!次が貴様のラストターンだ!!」

 

バルサム

手札4→1(《暗黒界の龍神グラファ》

ライフ900

場 暗黒界の混沌王カラレス レベル12 攻撃3500

  TGハイパー・ライブラリアン レベル5 守備1800

 

伊織

手札0

ライフ900

場 ジャンク・デストロイヤー レベル6 攻撃2600

  伏せカード1

 

バン!!

ターン終了と同時に扉が開き、翔太とジョンソンが入ってくる。

「ジョンソンはん!」

「翔太!!」

「翔太か」

《ドラグニティアームズ―レヴァテイン》と《氷結界の龍グングニール》、《煉獄龍オーガ・ドラグーン》でそれぞれがギャングにとどめを刺した後、3人が2人に駆け寄る。

「済まない、まさかまだ追手がいたとは…」

「気にすんなって、おかげでゆーに倒せたんじゃ」

笑いながら自分の倒したギャングを見る漁介。

そして、里香と鬼柳が翔太たちに事情を説明する。

「それよりも大変なんや!このギャングのボスのおっちゃん、融合を使うたんやで!」

「シンクロ次元の人間が融合…におうな」

「…」

翔太は2人の言葉を聞いた後で、《暗黒界の混沌王カラレス》と伊織を見る。

そして、ニヤッと笑う。

「はぁ!?何を笑うとるんや!?このままやと伊織が…」

「何言ってんだ?この程度で負けるタマじゃねえだろ」

「お前、今あいつがやっているデュエルのことを分かったうえで言ってるのか?」

「知らねえな」

倒れているギャングを椅子代わりにする翔太がデュエルを見る。

そして、《暗黒界の混沌王カラレス》から目線を完全に伊織に向ける。

「伊織。さっさとこの程度の相手、倒してしまえよ」

「翔太君…」

先程のこの程度で負けるタマじゃねえという言葉は聞こえていた。

好意的に解釈すれば、翔太は自分の勝利を信じてくれている。

素直に入ってくれないのが不満だが。

「私のターン…」

3つのサイコロを右手に納めると、それを額に当てる。

(お願い…いい目になって!!)

一縷の願いを込めて、サイコロを振る。

出たのは4,5,6。

「何!?シゴロだと!?!?シゴロは今の手札の枚数に関係なく、デッキからカードを2枚ドローする…」

「うーん、うれしいような嬉しくないような…」

出目3以上の方がもっと手札を増やすことができた伊織は苦笑いしながらカードを引く。

ちなみに3つすべて同じ目の場合、アラシは手札の枚数に関係なくデッキからカードを1枚ドローすることになる。

 

伊織

手札0→2

 

「私は墓地に存在する《ジェット・シンクロン》の効果を発動!このカードは手札を1枚墓地へ送ることで墓地から特殊召喚できる!」

 

ジェット・シンクロン レベル1 攻撃500(チューナー)

 

手札から墓地へ送られたカード

・クイック・シンクロン

 

「更に私は手札から《シンクロン・エクスプローラー》を召喚!」

 

シンクロン・エクスプローラー レベル2 攻撃0

 

「このカードの召喚に成功した時、墓地のシンクロンモンスター1体を特殊召喚できる!現れて、《クイック・シンクロン》!!」

《シンクロン・エクスプローラー》の腹部にあるハッチが開き、そこから《クイック・シンクロン》が飛び出してくる。

 

クイック・シンクロン レベル5 攻撃700(チューナー)

 

「レベル2の《エクスプローラー》にレベル5の《クイック・シンクロン》をチューニング!次元を越えて自由を目指せ!シンクロ召喚!現れて、《ジャンク・アーチャー》!!」

 

ジャンク・アーチャー レベル7 攻撃2300

 

「《ハイパー・ライブラリアン》の効果で、俺はカードを1枚ドロー!」

「《ジャンク・アーチャー》のレベルを1つ下げて、墓地から《レベル・スティーラー》を特殊召喚!」

 

レベル・スティーラー レベル1 攻撃600

ジャンク・アーチャー レベル7→6 攻撃2300

 

「そして、《ジャンク・アーチャー》の効果発動!1ターンに1度、相手フィールド上に存在するモンスター1体をターン終了時まで除外できる!ディメンション・シュート!!」

《ジャンク・アーチャー》が右目部分のセンサーのレベルを上げつつ、左手に持つ弓に矢をかける。

そして、センサーが距離や最適な力の入れ具合を計測し、それに従って矢を放つ。

矢を受けた《暗黒界の混沌王カラレス》が一瞬で姿を消してしまった。

「何!?《カラレス》が…!」

「バトル!《ジャンク・アーチャー》で《ハイパー・ライブラリアン》を攻撃!スクラップ・アロー!!」

《ジャンク・アーチャー》が2本目の矢を放ち、その矢を受けた《TGハイパー・ライブラリアン》が爆発した。

「ぐううう!!」

「《ジェット・シンクロン》と《レベル・スティーラー》でダイレクトアタック!!」

《ジェット・シンクロン》が《レベル・スティーラー》の背中に乗り、後方についているスラスターを起動させる。

スラスターによってスピードが増した《レベル・スティーラー》がそのままバルサムの腹部を貫いていく。

「ぐわああああ!!」

 

バルサム

ライフ900→400→0

 

暗黒界の混沌王カラレス

レベル12 攻撃3500 守備3000 融合 闇属性 悪魔族

「暗黒界」モンスター×5

このカードは融合召喚でのみ特殊召喚できる。

(1):このカードが相手モンスターと戦闘を行ったダメージ計算終了時に発動できる。自分の手札1枚を墓地へ捨てる。この効果で捨てる場合、相手の効果によって捨てられた事になる。

(2):このカードが破壊された場合、自分の墓地に存在する「暗黒界」カード2枚を対象に発動する。そのカードを手札に加える。

(3):このカードは効果では破壊されない。

 

「やったーーー!!」

勝利した伊織が無邪気にバンザイする。

「これでここはウチらの縄張りやな!!」

「ふん…」

ボスを倒したことで、ホイールズが領有していた鷹栖区がシェイドの縄張りとなり、港を抑えることに成功した。

これでコモンズで作った製品を海外や他の都市へ売ること、もしくはその地の商品の購入が可能となった。

そして、翔太はゆっくりと倒れているバルサムのところへ歩いていく。

墓地にあると思われる《融合》とカードケースに入っている《暗黒界の混沌王カラレス》を回収するために。

しかし…いくら探してもその2枚にカードが見つからない。

(カードが消えた…だと??)

証拠抹消のためなのか、それとも彼はただ利用されただけなのか、自分たちが夢を見ていただけなのか…?

「ほらほら翔太君、今回MVPの伊織様を称えなさーい」

少し調子に乗った伊織が真面目に考えている翔太に能天気に声をかける。

「…この程度の相手に苦戦してるんじゃねーよ。お先真っ暗だな」

「もーー!!翔太君は今日の晩御飯抜き!」

「今日の晩飯当番、お前じゃねーだろ」

ギャーギャー口げんかをし、伊織の言葉をのらりくらりと交わす翔太。

それを見た柚子は今どこで何をしているのかわからない遊矢に想いを馳せる。

(遊矢…私、ちゃんと頑張ってるから…)

 

「バルサム…あなたはポーンにすらなることができませんでしたか…」

前方と左右がガラス張りで、自動扉がある背後の壁と床は青を基調とした装甲となっている部屋の中、1人でチェスを行う男が黒いポーンをフィールドから追放する。

彼がジャン・ミシェル・ロジェ。

治安維持局長官となった彼だが、それ以前の経歴は謎に包まれている。

前方のガラスにはトップスとコモンズの地図が表示されていて、鷹栖区の色が青から黒に変化した。

「失礼します」

扉があき、そこから白い鉢巻きで整えた紫色の髪で色が青ではなく灰色のオベリスクフォースの制服を着た男が入ってくる。

50代後半であるためか、顔には少なくない皺が存在し、とび色の瞳を細くロジェに向けている。

「バルサムが敗れたとのことです」

「そうですね…彼ではコモンズの人間すら倒せませんでしたか」

フッと笑いながら地図を見つめる。

背後にいる男に目を向けることはない。

「ロジェ様。バルサムを倒したギャングチームの名前がわかりました。チーム名はシェイド。最近結成されたばかりのチームです」

「その程度のチームに足を救われるとは…恥ずかしい事ですね。だが…」

白い騎士の駒を手にとり、それを2マス先の右側のマスに移動させる。

「シェイドについて調査をしてください。あなた方は表向きでは私個人に雇われた凄腕のデュエリスト。この程度なら可能なはずです」

「…承知しました」

頭を下げた後で男が部屋から出ていく。

その後で、ロジェがコンピュータを操作して地図からその男の履歴書に表示を変更する。

「ブーン。戦果を期待していますよ。シェイド…一体どちらの影なのでしょうか」

 

その日の夜のとある廃墟となっているマンション…。

そこの306号室に月影が窓から侵入する。

多くの部屋はドアもガラスも壊れていて、満足に生活できない環境である中でこの部屋は数少ないガラスもドアも健在だ。

訓練によって、暗い空間の中で物を見るのに慣れている月影がゆっくりと奥へと入っていき、居間に到達する。

すると何かの気配を感じたのか背中の忍刀を抜いてすぐに背後の振り返る。

それと同時に冷たい銃口が彼の額に密着する。

「…なるほど、刃が近いにもかかわらず、呼吸や体の動きに乱れはない」

「それはお前も同じことだ」

冷たい刃は首から横にわずか4センチ離れていて、少し動かすだけで頸動脈を切り裂くことが可能だ。

にもかかわらず、動揺しない点に月影は表情と動きには見せないもののかなり驚いている。

銃を持つ男もまた、月影の動揺の無さを評価する。

「俺に伝えたいことは何だ?風魔月影」

「伝言でござる。ヒイロ・リオニス殿」



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第50話 戦場での出会い

「…飲むか?」

手元にある懐中電灯のわずかな明かりを頼りにマッチで火を起こし、沸かした湯を注いだ欠けのある白いマグカップにわずかばかりのインスタントコーヒーの粉を入れる。

それと洗ったばかりのスプーンでかき混ぜ、十分に粉を溶かしたうえで月影に差し出す。

忍者ということもあり、欧米の飲み物であるコーヒーはなじまないのではないかと一瞬心配するヒイロだが、それは杞憂に終わる。

ヒイロに背中を向け、マスクを外した月影の喉から飲む音が聞こえたためだ。

「ランサーズはどうしている?」

「零児殿は拙者はまずは評議会に接触しもうした」

「成果はどうだ?」

「零児殿はあえて自らが持つすべての召喚法を公開し、そしてアクションデュエルを拙者と実演することで多次元の存在を認知させることには成功。されど、融合次元との戦争に対する我々への協力については難色を…」

「そうだろうな、よその厄介事にかかわりたくないのは普通だ」

もう1つのマグカップに入ったインスタントコーヒーを飲む。

元々ヒイロは幼少のころからコーヒーと甘いものが苦手だ。

甘いものは克服できたが、コーヒーはいまだにできていない。

しかし、このような事態であり、戦場で飲料食料の選り好みができないことはヒイロ自身が一番よく知っている。

月影の報告を聞く中で、ふと1つの疑問が頭に浮かぶ。

「そういえば、あの少年はどうした?零児と一緒ではないのか?」

「少年…零羅殿でござるか?」

空になったマグカップを机に置き、軽く会釈をした月影が確認するように聞く。

「これから拙者が探しに行くことになっております。その過程で遊矢殿や権現坂殿、セレナ殿達とも合流できればと…」

「そうか…」

耐水性の高い紙を懐からだし、それをひろげる。

それにはランサーズとシェイドのメンバーの顔写真と名前、デッキについて記載されており、これはシンクロ次元に到着したばかりの時に月影から渡された。

つまり、これが初対面と言うわけではないのだ。

「赤馬零羅…それが今の名前か」

夜空を見上げながら、ヒイロはあの日のことを思い出す。

 

シンクロ次元へ向かう前、スタンダード次元にいたころ、ヒイロは零児の要請で侑斗と手分けをしてヴァプラ隊のメンバーとなりうる人材の発掘のために旅をしていた。

侑斗が台湾へ行っている際、ヒイロはバルカン半島にいた。

紛争地域や治安の極めて悪い地域については実戦経験の豊富なヒイロが適任なためだ。

その頃のバルカン半島は内戦が行われていて、毎日のように死者が出ていた。

ヒイロを敵軍と誤認した兵士が襲撃してくることが何度もあったが、口を利けるような状態ではなく、大抵の兵士は戦闘不能となり、一部の兵士は彼の銃に倒れた。

そんな極限状態の土地で旅をして3日目…。

「町か…。だが、もう崩壊している」

日の出とともに目をさまし、1時間近く歩いたヒイロの目にとまった廃墟の町。

戦闘が行われている様子もなく、建物は原形をとどめているものが多い。

人がいるかもしれないと思ったヒイロは迷うことなく町に入った。

確かにこの町の人々はいるが、誰もヒイロを邪魔者扱いすることも、歓迎することもなかった。

「死体…。何日もたっている…」

スカーフで口元を隠した状態で少し歩くと、ドアが開いたままで1階建ての家屋を見つけた。

そこに入ったヒイロの目に飛び込んだのは現在、零羅と呼ばれている戦災孤児だった。

見た目は今まで見た戦災孤児と変わらず、オドオドしていて、誰に対しても決して心を開かない。

そのため、ヒイロが飴を渡しても決して食べようとしない。

だが、彼の異常性に気付いたのはその後だった。

「おい!!そこを動くな!!」

突然、家に兵士が入ってきて、ヒイロと零羅(本来の名前がわからないため、この名前で呼ぶことにする)に銃を向ける。

若干痩せこけた頬とボロボロな靴の服、そして無精髭の多さから脱走兵だと思われる。

「ちっ…」

「動くなと言っているだろう!!」

腰のホルスターに手を伸ばしたヒイロに兵士が引き金を引こうとする。

だが、引き金を引く前に彼の銃弾が兵士の右肩を貫通させ、所持していた銃を落とす。

「おとなしくしてもらうぞ」

その場に銃を置いたヒイロは駆け寄り、兵士が持つ銃と弾薬を没収する。

「き、貴様ぁ…」

方から感じる激痛に苦しみ、脂汗をかきながら兵士がヒイロに目を向ける。

「痛みは激しいが、死にはしない」

情けとして、消毒のためにライターの火を直接兵士の患部に押し付ける。

「ぐうああああ!!」

「軽い火傷だ。その程度は我慢しろ」

消毒を終え、ライターをしまった後で零羅の下へ駆け寄る。

「あ、ああ…」

ヒイロが発砲するところを見ていたためか、零羅の怯えが増している。

「怖い思いをさせてすまなかった。お前の親は…?」

先程筆者は零羅のことを戦災孤児と言っていたが、その時のヒイロは彼の両親の安否について何も知らなかった。

家にいないということはもしかしたら別の場所にいる可能性もあったからだ。

だが、それは儚い願いだということがすぐにわかる。

「…」

返答代わりに首を横に振るだけだったためだ。

「そうか…」

これ以上聞くのをやめたヒイロは彼をこれからどうするか考え始める。

そんな時、急に兵士が左手で銃を拾い、ヒイロに銃口を向ける。

「ちっ…」

仕方がない、と考えたヒイロの右手が自然に置いてある銃に向かう。

しかし、銃に触れると同時に銃声が聞こえた。

「何…!?」

銃声が聞こえたのは背後ではなく、目の前。

兵士が驚愕に満ちた表情を浮かべながら倒れる。

零羅の手にはヒイロのもう1つのホルスターに入っていたはずの銃が握られていた。

(こいつ…兵士を殺したのか?)

先程と違って無表情で震えがない。

安全装置も外されており、銃口にブレがない。

そして、倒れている兵士に向けて再び零羅が発砲する。

ドン!ドン!!ドン!!!

弾切れになっても引き金を引き続ける。

まるで、壊れたレコーダーが何度も同じ曲を繰り返すように。

(どういう、ことだ…?)

なぜ彼がこのように機械的になったのか分からなかったが、ヒイロはゆっくりと彼が手にしている銃の上に手を置く。

「もういい。奴は死んだ。お前のおかげで俺は助かった」

「あ…」

声をかけられるのと同時に零羅は銃を離し、兵士の死体を見て怯えはじめた。

 

このような奇妙で不可解な出会いをしたヒイロは彼を紛争地域から連れ出し、日本へ連れて帰った。

その時にパスポートとビザの艤装を行い、着けた偽名がレイラ・ズィルカ。

そして、レオコーポレーションでの研究で彼のその異様な特質が判明した。

他者の行動の模倣、要請の無条件な承諾と実現。

そして、その特質の副産物として得た鋭い観察眼。

発砲した時の零羅はヒイロの動きを模倣していたにすぎなかったのだ。

この特異で機械的な能力に魅力を感じた日美香が彼を養子として引き取り、その時に彼は赤馬零羅となった。

 

「…ヒイロ殿、ヒイロ殿」

「すまない、少し考え事をしていた」

フゥと息をしたヒイロが今度は白湯を飲む。

コーヒーの味がやはりダメなためか、白湯はゴクゴク飲むことができた。

「月影、報告助かった。後は頼むぞ」

「はっ」

一瞬でその場から月影が姿を消す。

そして、ヒイロは再びじっと空を眺める。

(零羅を連れて帰ったこと、はたして正解だったのか?)

 

それと同じ時刻、シェイドの隠れ家では…。

「《融合》…か」

戦いを終えた翔太達とトレーラーが戻っていて、食事を終えた後から伊織のバルサムとのデュエルで得た情報を共有した。

デュエル終了と同時に消えてしまった《融合》と《暗黒界の混沌王カラレス》。

目を覚ました彼に問い詰めた結果、その2枚の出所がセキュリティである可能性が浮上した。

バルサムはその2枚の代償として、リーダーを売ったことへのケジメとしてホイールズのギャング達の前で左手小指を詰めたうえで失脚、追放されることとなった。

他のメンバーはリーダーがセキュリティに掴まった理由は不幸なアクシデントと聞かされていたようだ。

他のホイールズのメンバーはギャングとしての掟に従い、シェイドの軍門に下った。

現在はモハメドの助言もあり、鷹栖区の警備と港の管理を引き続き行わせ、そして今後は要請があれば増援として駆けつけてシェイドと共闘することをメンバー全員の血判で約束させた。

「おそらく、あのジェルマンって部隊が持ってきたんだろう。シンクロ次元を内部から侵略するために…な」

「内部から…」

「もしかして、瑠璃や私そっくりな女の子を捕まえるために…?」

「それはないな、そういう女はもうすでに捕まっている」

柚子の言葉を遮り、翔太が言う。

リンが捕まっている以上、もうシンクロ次元には用が無いはずだ。

瑠璃が捕まってからエクシーズ次元への攻撃が散発化したのと同じように。

「なぜそれを知ってるんだ?」

鬼柳が翔太を見て、質問する。

「出発前にシンクロ次元のユーゴっていう遊矢そっくりのバナナ男とデュエルをしてな。そいつから聞いた」

「待つんじゃ!!それをなんで出発前に言わんかったんじゃ!?」

「誰も質問しなかったからな」

あっさりと答える翔太に伊織たちが全員ため息をつく。

確かに誰も聞いていないのは事実だが、気を利かせてその場で話すべきだったのではないのか?

「今はその話よりも次に打つべき手だ。今回で20人近いギャングを手中に収めた。ある程度は他の中規模、小規模のギャングとやりあえるくらいにはなった。訓練は必要だがな」

「そうだな…。それに、融合次元は今回のことからギャングにも何らかの手を加えている可能性がある。もしかしたら、私たち本来のデッキを使う時が思った以上に早く来るかもしれないな」

「だな。だがまずは…」

話しを進めようとする翔太だが、急にトレーラーの窓にコツンと石が当たる音がする。

「誰かいるのかよ…?」

遊び半分で入ってきた餓鬼の悪戯かと考えた翔太が1人でトレーラーから出る。

懐中電灯を使って周囲を見渡すが、誰もいない。

「逃げたか…ん??」

石があたった窓のそばにクシャクシャの紙があり、その上に石が乗っている。

「なんだよ…こいつは」

紙を手にとり、それに書かれている文章を読む。

『ホイールズとの戦闘は見事だった。私は風間区を仕切っているギャング、チームブレイドのリーダー、エリクだ』

「風間区…」

翔太の覚えている地図が間違いないならば、風間区は今いる旧レクス区の南隣にある。

最近は目立った攻撃を行わず、他のギャングの抗争も静観してばかりだとモハメドが言っていた。

そんな彼らがなぜ急にこのように奇妙なやり方で手紙を渡すのか?

それを気にしながら手紙を読み進める。

『ぜひともシェイドと同盟を結びたい。風間区西の深影区にいるギャング、チームオーファンが急激に勢力を伸ばしていて、風間区へ攻撃してくる時もそれほど遠くない未来だと思われる。そして、新興勢力である君たちにとっても脅威になりかねない。明日の午前10時、風間区の大型バッティングセンターで待つ。』

「同盟…か」

突然の見ず知らずの相手からの同盟要請、あまりにも奇妙だ。

そしてチームブレイドの実力がどの程度なのかの理解もできていない。

(チームブレイド…一体何者だ?)

手紙を懐にしまった翔太は伊織達にこのことを言うため、トレーラーへ戻って行った。



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第51話 騎士の玄関

「まずはそうだな…このファイリングしている書類にあるそれぞれの経費の計算から始めるか」

「ええっと、ホイールズとの抗争で手に入った港から運ばれてくる荷物とパン屋さんの売り上げ、それからトレーラーの維持費と今いる工場や他の施設への投資の金額は…」

トレーラーの中では、青いファイルをひろげて膨大な書類を見せるモハメドと頭を痛めながら電卓をいじる柚子がいる。

彼女はとにかく自分にできることをやろうと考えていた。

その中で思いついたのがこの経理だ。

モハメドはある程度経理の知識を持っているものの、将来シェイドの規模が大きくなることを考えると彼1人だけでやるのは厳しくなる。

鬼柳や漁介、翔太は実働部隊になり、ジョンソンがトレーラーや拠点の防衛に徹することを考えると経理補佐候補となりえるのはジョンソン、伊織、里香、柚子。

しかし伊織と里香は文系で更にいうとデュエルで行う簡単な計算以外の数学が苦手だ。

となると消去法で柚子1人となる。

「仕方ないだろう。一から勉強するんだ。もしかしたら、将来この経験が役に立つかもしれないぞ?」

「だといいですけど…うーん…」

なお、伊織は外でビャッコと一緒に遊んでいて、里香はご飯の準備、ジョンソンはいつもの警備中。

そしてホイールズのメンバーでシェイドの味方となったメンバーと雇ったコモンズの労働者が工場の修復を行っている。

「そういえば、翔太さん達はそろそろ風間区ですよね?」

「ん?そうだなぁ。Dホイールで走って20分といったところだな」

また、ホイールズからバルサムが追放されたのち、彼らから2台のDホイールが提供された。

緑色で右側面に改めてシェイドのエンブレムが刻まれた、ジャンク品によって一部修復された痕跡のあるバンディット1250ABSをモチーフとしている。

廃品としてシティから流れたDホイールだが、ホイールズの努力によって現在シティで量産されているDホイール以上の性能があるものの、現在セキュリティが使用しているDホイール、アサルトチェイサーには劣るという。

そのため、セキュリティと戦うことになる可能性を考慮すると今度はDホイールのパーツの入手が必要となった。

闇市でもそれは扱われているが、あまりにも高額で買ってしまうとこれからの食費や施設修復のための投資に支障をきたしてしまう。

港を利用して海外のDホイールパーツを輸入するにも時間がかかる。

「Dホイールを2台手に入れることができたのはうれしいが…まだまだ課題が多いな」

ホイールズを撃破したことでシェイドの名がコモンズに知られ始めたため、セキュリティに目をつけられるのは時間の問題だ。

 

一方、風間区では…。

「ここでいいんだよな?」

「モハメドの情報と手紙が指定した場所が正しければ、ここだ」

翔太、鬼柳、漁介は風間区中央に位置する大型のバッティングセンターの前に来ていた。

工業地帯としての役割を担っていた旧レクス区とは異なり、商店街であった風間区にはデパートだけでなく、このような娯楽の施設も構えていたようだ。

「うお!?このドア、自動で開く!!」

ドアの前に立ち、それが自動で開いたことで漁介が驚く。

ホイールズのアジトとは異なり、このアジトには自家発電できる設備があるようだ。

すると、そこには2人の黒いスーツとサングラスをつけたデュエリストがデュエルディスクを構えて待っていた。

「なんだ、お前らは?」

「ようこそ、チームブレイドのアジトへ。ボスがお送りした手紙はお読みになられましたね?」

「同盟の話だろ?それで、そのあいさつがそれか?」

翔太の言葉を肯定するかのように、2人が首を縦に振る。

すると、漁介と鬼柳がデュエルディスクを構える。

「翔太、ここは俺らに任せてくれえ」

「タッグデュエルということでいいんだな?」

「そうだ。互いにフィールドとライフ、墓地は共有することになる。我々に敗れるようではシェイドの実力はその程度ということになる」

「なら、思いっきりやってやるんじゃ!」

(ちっ…俺はのけ者か)

漁介と鬼柳に先を越される形となった翔太は少し不機嫌になりながら近くにあるボロボロなベンチに腰かけて観戦する。

「「デュエル!!」」

 

黒スーツA&B

手札

A5

B5

ライフ4000

 

漁介&鬼柳

手札

漁介5

鬼柳5

ライフ4000

 

「私の先攻!私は手札から魔法カード《ワン・フォー・ワン》を発動。手札のモンスター1体を墓地へ送り、手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚できる。私はデッキから《XX-セイバーレイジグラ》を特殊召喚」

 

XX-セイバーレイジグラ レベル1 攻撃100

 

手札から墓地へ送られたカード

・XX-セイバーボガーナイト

 

「《レイジグラ》の効果発動。このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、墓地からX-セイバー1体を手札に戻すことができる。私は墓地から《ボガーナイト》を手札に加える」

《ワン・フォー・ワン》の効果により、デッキから呼び出した《XX-セイバーレイジグラ》の力でコストとなった《XX-セイバーボガーナイト》を手札に加える。

翔太はLDSの刀堂刃を思い出す。

現在、刃と真澄、北斗はヴァプラ隊の下で訓練をしている。

「更に私は手札から魔法カード《二重召喚》を発動。これで私はこのターン、もう1度だけ通常召喚を行うことができる。私は手札から《カードガンナー》を召喚!」

 

カードガンナー レベル3 攻撃400

 

「げげっ!?」

《カードガンナー》が現れたことで漁介の顔が青くなる。

墓地を利用するX-セイバーデッキにとってこのカードは強力なサポートを行うことができるのだ。

「《カードガンナー》は1ターンに1度、デッキトップから3枚までカードを墓地へ送ることができる。そして、ターン終了時までこの効果で墓地へ送ったカード1枚につき、攻撃力が500アップする」

 

カードガンナー レベル3 攻撃400→1900

 

デッキから墓地へ送られたカード

・セイバー・リフレクト

・X-サイン

・XX-セイバーダークソウル

 

「そして私はそして、《XX-セイバーボガーナイト》を召喚!」

 

XX-セイバーボガーナイト レベル4 攻撃1900

 

「このカードの召喚に成功した時、手札のレベル4以下のXセイバー1体を特殊召喚できる。私は手札から《X-セイバーパロムロ》を特殊召喚」

褐色の鎧をまとい、手には短剣が握られている緑色のトカゲが現れる。

鍔の中央にはXと刻まれた黄色い玉石が埋め込まれている。

 

X-セイバーパロムロ レベル1 攻撃200(チューナー)

 

「レベル4の《ボガーナイト》とレベル1の《レイジグラ》、レベル3の《カードガンナー》にレベル1の《パロムロ》をチューニング。シンクロ召喚!レベル9!《XX-セイバーガドムズ》!!」

 

XX-セイバーガドムズ レベル9 攻撃3100

 

手札をすべて使い切って《XX-セイバーガドムズ》を召喚した黒スーツA。

彼はBにむけて目で合図をすると、Bはうなずいた。

「私はこれでターンエンド」

 

黒スーツA&B

手札

A5→0

B5

ライフ4000

場 XX-セイバーガドムズ レベル9 攻撃3100

 

漁介&鬼柳

手札

漁介5

鬼柳5

ライフ4000

場 なし

 

「よし、俺のターン、ドロー!!」

 

漁介

手札5→6

 

「俺は手札からフィールド魔法《竜の渓谷》を発動!!」

発動と同時にソリッドビジョンによって部屋の中が赤く輝く夕日が印象的な渓谷へと姿を変える。

上空にはドラグニティ達が思うがまま飛翔していて、水辺には生まれたばかりの竜が休んでいる。

「このカードは1ターンに1度、手札を1枚捨てることでデッキからレベル4以下のドラグニティを手札に加えるか、デッキのドラゴン族モンスター1体を墓地へ送ることができる!」

 

手札から墓地へ送られたカード

・ドラグニティ―ブランディストック

 

デッキから墓地へ送られたカード

・ドラグニティアームズ―レヴァテイン

 

「そして俺は手札から《ドラグニティ―レギオン》を召喚!」

《剣闘獣ベストロウリィ》に似た趣の翼と頭部を持つ、金色のラインと青い布がついた白いトーガと金色のガントレットを装着した鳥人が現れる。

 

ドラグニティ―レギオン レベル3 攻撃1200

 

「このカードの召喚に成功した時、俺の墓地のレベル3以下のドラグニティドラゴン族モンスター1体を装着できる!」

墓地から飛び出した《ドラグニティ―ブランディストック》の鎧がスパイクシールドとなって《ドラグニティ―レギオン》の左腕に装着される。

「そして、《レギオン》は自分の魔法・罠ゾーンに存在するドラグニティカード1枚を射出することで、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を破壊できる!獲物は《ガドムズ》じゃ!!」

《ドラグニティ―レギオン》がスパイクシールドを《XXセイバーガドムズ》に向けて発射する。

それに胴体を貫かれたXX-セイバーの将は左手で腹部の穴を隠しながら崩れ落ちる。

「だが、俺はここで墓地から罠カード《X-サイン》を発動!」

「何!?墓地から罠カードを発動しようると!?」

墓地から排出されたカードを見ると同時に《カードガンナー》が頭に浮かぶ。

そのモンスターが墓地に落としたカードの中にそれが含まれていた。

「このカードは俺のフィールド上にモンスターが存在しない場合に墓地から除外することで、墓地からレベル4以下のX-セイバー1体を特殊召喚できる。俺は墓地から《XX-セイバーダークソウル》を特殊召喚!」

銀色の胸当てと赤いボロボロのフード付きマント、そして黒いスカートを身に着けた戦士が現れる。

褐色の腕が持つ武器は何度も手入れされた大ぶりの鎌で、これまでのX-セイバーとは異なる印象を抱かせるモンスターだ。

 

XX-セイバーダークソウル レベル3 守備100

 

X-サイン

通常罠カード

「X-サイン」の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか発動できない。

(1):自分フィールド上に存在する「X-セイバー」モンスター1体が攻撃対象となった場合に発動できる。手札・墓地に存在する「X-セイバー」モンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する。その後、攻撃対象をそのモンスターに変更させる。その時、攻撃モンスターは戦闘では破壊されず、発生する戦闘ダメージは0となる。発動後このカードは墓地へは行かず、ゲームから除外される。このカードを発動したターン終了時、この効果で特殊召喚されたモンスターは墓地へ送られる。

(2):自分フィールド上にモンスターが存在しないとき、このカードを墓地から除外することで発動できる。自分の墓地に存在するレベル4以下の「X-セイバー」モンスター1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。

 

「また獲物!ならそいつの狩る!俺はフィールド上に存在する《レギオン》を除外し、墓地から《ドラグニティアームズ―レヴァテイン》を特殊召喚!このカードは俺のフィールドに存在しようるドラグニティモンスターを除外することで、手札・墓地から特殊召喚できる!」

《ドラグニティ―レギオン》が上空で緑色の羽根をまき散らしながら姿を消す。

そして、夕日を背に竜騎士が戦場へ向けて飛翔する。

オレンジ色の鱗と翼、そして人型というドラグニティが持つ2つの種族が融合したかのような姿で、右手には持ち手部分まで刃のある片手剣を逆手に装備されている。

 

ドラグニティアームズ―レヴァテイン レベル8 攻撃2600

 

「《竜の渓谷》で墓地へ…!」

「ああ!更に《レヴァテイン》は召喚・特殊召喚に成功した時、《レヴァテイン》以外の墓地に存在するドラゴン族モンスター1体を装着できる!もう1度頼むぜ、《ブランディストック》!!」

再び墓地から発射されたスパイクシールドを今度は《ドラグニティアームズ―レヴァテイン》の左腕に装着される。

「《ブランディストック》を装備したモンスターは1ターンに2度攻撃できる!行け、《レヴァテイン》!!」

《ドラグニティアームズ―レヴァテイン》が飛翔し、《XX-セイバーダークソウル》の真上に向かう。

そして、そのまま一直線の降下して頭上から剣を突き立てた。

急なことにさすがの鎌使いも迎撃することができず、真っ二つとなって消滅。

その時発生した爆風が黒スーツを襲う。

 

黒スーツ

ライフ4000→1600

 

「よし!これでようけライフを減らせた!俺はカードを1枚伏せ、ターンエンドじゃ!」

「《XX-セイバーダークソウル》の効果発動。このカードがフィールドから墓地へ送られたターン終了時、デッキからX-セイバーモンスター1体を手札に加える。私はデッキから《XXセイバーフォルトロール》を手札に加える」

「うげぇ…むやみに攻撃しなきゃよかった」

《XX-セイバーダークソウル》は破壊されようとも、リリースされようとも、シンクロ素材となろうとも墓地へ行けばターン終了と同時にX-セイバーのサーチを約束するモンスター。

更にいうと、召喚・特殊召喚と同時に墓地のX-セイバーをサルベージする《XX-セイバーレイジグラ》のツートップによって、黒スーツの2人はデッキ・墓地からXセイバーを招集できるようになった。

おまけにBの手札は5枚、一気に1ターンキルに持ち込むことのできなかったツケを次のターンに支払うことになるのかもしれない。

 

黒スーツA&B

手札

A0→1(《XX-セイバーフォルトロール》)

B5

ライフ1600

場 なし

 

漁介&鬼柳

手札

漁介6→2

鬼柳5

ライフ4000

場 ドラグニティアームズ―レヴァテイン(《ドラグニティ―ブランディストック》装備) レベル8 攻撃2600

  伏せカード1

  竜の渓谷(フィールド魔法)

 

「私のターン、ドロー」

 

黒スーツB

手札5→6

 

「私は手札から魔法カード《死者蘇生》を発動。この効果で私は墓地から《XX-セイバーガドムズ》を特殊召喚」

黒スーツのフィールドに現れた紫色の魔法陣から穴のふさがった《XX-セイバーガドムズ》が現れる。

 

XX-セイバーガドムズ レベル9 攻撃3100

 

「更に私は手札から速攻魔法《トラップ・ブースター》を発動。手札を1枚捨てることで、手札から罠カードを1枚発動できる。私はその効果で手札から罠カード《ガドムズの緊急指令》を発動。私のフィールドにX-セイバーが存在するとき、自分か相手の墓地からXセイバー2体を特殊召喚する。私は《レイジグラ》と《ダークソウル》を特殊召喚」

X-セイバーを呼ぶ2体がさっそく《XX-セイバーガドムズ》が天に掲げた剣に応じて墓地から出てくる。

 

XX-セイバーレイジグラ レベル1 攻撃200

XX-セイバーダークソウル レベル3 攻撃100

 

手札から墓地へ送られたカード

・X-セイバーアクセル

 

「《レイジグラ》の効果発動。墓地から《XX-セイバーボガーナイト》を手札に加える。そして、手札から《XX-セイバーボガーナイト》を召喚」

 

XX-セイバーボガーナイト レベル4 攻撃1900

 

「このカードの召喚に成功した時、手札からレベル4以下のX-セイバーモンスター1体を特殊召喚できる。私は手札から《X-セイバーパシウス》を特殊召喚」

刃の先にXと黒く大きく書かれた大剣を持つ、体の一部が機械化している青い鎧と黒い瞳とロングヘアーの戦士が現れる。

 

X-セイバーパシウス レベル2 攻撃100(チューナー)

 

「レベル1の《レイジグラ》とレベル3の《ダークソウル》にレベル2の《パシウス》をチューニング。シンクロ召喚!レベル6!《XX-セイバーヒュンレイ》!」

青い電球を2つつけた金色のヘルメットと赤いマントつきの青スーツをつけた女性の戦士がカットラスを手に現れる。

 

XX-セイバーヒュンレイ レベル6 攻撃2300

 

「《ヒュンレイ》の効果発動。このカードがシンクロ召喚に成功した時、相手フィールド上に存在する魔法・罠カードを3枚まで破壊することができる」

《XX-セイバーヒュンレイ》が懐から2本の投げナイフをだし、そのまま投擲する。

ナイフのうちの1本は伏せカードを、もう一本はデュエルディスクに入っているフィールド魔法に突き刺さる。

当然、ソリッドビジョンなので実際にカードに穴が開くようなことはない。

念のため。

「俺はここで罠カード《ダメージ・ダイエット》を発動!これでこのターンに俺が受けるダメージは半分になる!」

フリーチェーンの罠カードに救われ、首の皮1枚つながった2人。

だが、あっという間の漁介に倍返しできるくらいの布陣が出来上がってしまった。

《XX-セイバーガドムズ》の攻撃力は当然《ドラグニティアームズ―レヴァテイン》を上回っている。

「バトル!《ガドムズ》で《レヴァテイン》を攻撃!」

《XX-セイバーガドムズ》の大剣と《ドラグニティアームズ―レヴァテイン》の剣がぶつかり合う。

しかし、肉厚で機械化された剣が激しく振動したことで破壊力が高まっていき、《ドラグニティアームズ―レヴァテイン》の剣が砕けていく。

そして、機械の剣は鉄よりも硬い竜の鱗を肉体と共に切り捨てていった。

「ぐうううおおおお!!」

 

漁介&鬼柳

ライフ4000→3750

 

「そして、《ヒュンレイ》でダイレクトアタック!」

《XX-セイバーガドムズ》の大剣の刃が床に接触するのと同時に《XX-セイバーヒュンレイ》が漁介に懐に入り込む。

そして、右手に持っているカットラスを腹部に刺す。

「く…ううう!!」

 

漁介&鬼柳

ライフ3750→2400

 

「おいおいおい、あっという間かよ」

オセロゲームのように逆転された漁介と鬼柳を見て、翔太が少しうんざりする。

まあ、Xセイバーデッキのタッグ相手なのでしょうがない部分があるのかもしれないが…。

「これでとどめだ。《XX-セイバーボガーナイト》でダイレクトアタック」

《XX-セイバーボガーナイト》が剣で漁介を縦に切り裂く。

「うわああ!!」

 

漁介&鬼柳

ライフ2400→1450

 

「く…《ダメージ・ダイエット》が無かったら負けていた…!」

「この程度ではな…私はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

黒スーツA&B

手札

A1(《XX-セイバーフォルトロール》)

B6→0

ライフ1600

場 XX-セイバーガドムズ レベル9 攻撃3100

  XX-セイバーヒュンレイ レベル6 攻撃2300

  XX-セイバーボガーナイト レベル4 攻撃1900

  伏せカード1

 

漁介&鬼柳

手札

漁介2

鬼柳5

ライフ1450

場 なし

 

「鬼柳さん悪い!!かなりひどい状況じゃ…」

フィールド上のカードが全滅し、ライフが大幅に削られたことを鬼柳に詫びる。

「気にするな、まだ俺たちの負けが確定したわけじゃない。俺のターン、ドロー」

 

鬼柳

手札5→6

 

「俺はカードを2枚伏せ、手札から魔法カード《煉獄の契約》を発動。俺の手札が3枚以上のメインフェイズ1に手札をすべて墓地へ送り、墓地からシンクロモンスター以外のインフェルニティモンスター1体を特殊召喚する」

鬼柳は残った3枚の手札を墓地へ捨てる。

これで、鬼柳のハンドレスコンボの準備が程整う。

「俺が墓地から特殊召喚するのは…《インフェルニティ・ネクロマンサー》!」

 

インフェルニティ・ネクロマンサー レベル3 守備2000

 

手札から墓地へ送られたカード(《インフェルニティ・ネクロマンサー》以外)

・インフェルニティ・デーモン

・インフェルニティ・リベンジャー

 

「《インフェルニティ・ネクロマンサー》の効果発動。1ターンに1度、手札が0枚の時、墓地からインフェルニティモンスター1体を特殊召喚できる。俺は墓地から《インフェルニティ・デーモン》を特殊召喚」

《インフェルニティ・ネクロマンサー》が両手を合わせ、怪しげな呪文を唱えるとその背後から《インフェルニティ・デーモン》が現れる。

 

インフェルニティ・デーモン レベル4 攻撃1800

 

「《インフェルニティ・デーモン》の効果発動。このカードが特殊召喚された時、手札が0枚の場合、デッキからインフェルニティカード1枚を手札に加えることができる。俺はデッキから《インフェルニティ・ビートル》を手札に加える。そして、《インフェルニティ・ビートル》を召喚」

 

インフェルニティ・ビートル レベル2 攻撃1200(チューナー)

 

「《インフェルニティ・ビートル》の効果。手札が0枚の時、このカードをリリースすることでデッキから《インフェルニティ・ビートル》を2体まで特殊召喚できる」

《インフェルニティ・ビートル》が口から黒い炎をはきつつ、身震いを始める。

すると全身にひびが入り、砕けると同時に2体の《インフェルニティ・ビートル》が飛び出してくる。

 

インフェルニティ・ビートル×2 レベル2 攻撃1200(チューナー)

 

「レベル4の《インフェルニティ・デーモン》にレベル2の《インフェルニティ・ビートル》をチューニング。重力を操りし蛮勇よ、敵に弔いの十字架を与えよ。シンクロ召喚!現れろ、《グラヴィティ・ウォリアー》」

 

グラヴィティ・ウォリアー レベル6 攻撃2100

 

「《グラヴィティ・ウォリアー》の効果発動。このカードのシンクロ召喚に成功した時、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体につき300ポイント、このカードの攻撃力をアップさせる。蛮勇引力」

《グラヴィティ・ウォリアー》が放つ咆哮により、3体のXX-セイバーが硬直する。

そして、両手の爪を研ぎ澄まして獲物を狩るときを待つ。

 

グラヴィティ・ウォリアー レベル6 攻撃2100→3000

 

「更にレベル3の《インフェルニティ・ネクロマンサー》にレベル2の《インフェルニティ・ビートル》をチューニング。死神の刃、今こそ現世に降臨し、咎人を狩れ。シンクロ召喚!《インフェルニティ・デス》!!」

 

インフェルニティ・デス レベル5 攻撃2200

 

2回連続のシンクロ召喚により、鬼柳の準エースと言えるモンスターが登場する。

特に攻撃力に関係なく、モンスターを倒すことができる《インフェルニティ・デス》が登場したのは大きい。

ただし、黒スーツのフィールドには伏せカードが1枚ある。

「《インフェルニティ・デス》の効果発動。手札が0枚の時、1ターンに1度相手フィールド上のこのカードの攻撃力以下のモンスター1体を墓地へ送り、相手に1000ポイントのダメージを与える」

「何!?」

「俺が破壊するのは《XX-セイバーボガーナイト》。死神の鎌!」

《インフェルニティ・デス》の巨大な鎌の刃によって、強固な機械の鎧を装備していたはずの《XX-セイバーボガーナイト》が真っ二つに切り裂かれる。

そして、《XX-セイバーボガーナイト》が爆発とともに消滅する。

 

黒スーツ

ライフ1600→600

 

「バトル。俺は《グラヴィティ・ウォリアー》で《XX-セイバーヒュンレイ》を攻撃」

《グラヴィティ・ウォリアー》が今までの我慢を一気に解放したいのか、大きく跳躍して両手の爪で相手を切り裂く。

しかし、相手もこのままやられるはずがない。

「罠発動、《ガード・ブロック》。私達が受ける戦闘ダメージを0にし、デッキからカードを1枚ドローする」

《XX-セイバーボガーナイト》が攻撃を受けて爆発するも、その爆風が黒スーツに届くことはなかった。

「更に墓地に存在する《X-セイバーパロムロ》の効果発動。私のフィールドに存在するセイバーと名のつくモンスターが戦闘で破壊され墓地へ送られた時、ライフを500支払うことで墓地から特殊召喚できる」

 

X-セイバーパロムロ レベル1 守備300(チューナー)

 

黒スーツA&B

ライフ600→100

 

「《インフェルニティ・デス》は効果を発動したターン、攻撃できない。俺はこれでターンエンド」

 

黒スーツA&B

手札

A1(《XX-セイバーフォルトロール》)

B0→1

ライフ100

場 XX-セイバーガドムズ レベル9 攻撃3100

  X-セイバーパロムロ レベル1 守備300(チューナー)

 

漁介&鬼柳

手札

漁介2

鬼柳6→0

ライフ1450

場 インフェルニティ・デス レベル5 攻撃2200

  グラヴィティ・ウォリアー レベル6 攻撃3000

  伏せカード1

 

ライフやモンスターの数では漁介達が上回った。

しかし、攻撃力3100の《XX-セイバーガドムズ》をフィールドに残してしまった。

少なくとも2人のデッキの中に、純粋な攻撃力でそのモンスターを倒すことができるカードはない。

更にはチューナーである《X-セイバーパロムロ》がいて、これにより《XX-セイバーフォルトロール》の召喚条件を満たしている。

次のターン、X-セイバーの猛攻が来るのは確実と思ったほうが良い。

「私のターン、ドロー」

 

黒スーツA

手札1→2

 

「私は手札から魔法カード《シンクロ・クリード》を発動。フィールド上にシンクロモンスターが3体以上存在するとき、デッキからカードを2枚ドローする」

 

黒スーツA

手札2→3

 

「私は《XX-セイバーフォルトロール》を特殊召喚!このカードは我々のフィールドにX-セイバーが2体以上存在するとき、手札から特殊召喚できる」

 

XX-セイバーフォルトロール レベル6 攻撃2400

 

「このカードは1ターンに1度、墓地に存在するレベル4以下のX-セイバー1体を特殊召喚できる。私が特殊召喚するのは《XX-セイバーレイジグラ》!」

 

XX-セイバーレイジグラ レベル1 攻撃200

 

「《レイジグラ》の効果により、更に墓地から《XX-セイバーダークソウル》を手札に加える。そして、《ダークソウル》を特殊召喚」

 

XX-セイバーダークソウル レベル3 攻撃100

 

「更に私は手札から魔法カード《下降潮流》を発動。私のフィールドに存在するモンスター1体のレベルを1から3のいずれかに変更させる。私は《レイジグラ》のレベルを2にする。レベル2の《レイジグラ》とレベル3の《ダークソウル》にレベル2の《パロムロ》をチューニング。シンクロ召喚。レベル7!《X-セイバーソウザ》!」

 

X-セイバーソウザ レベル7 攻撃2500

 

これで、相手フィールド上に3体の上級モンスターが現れた。

いずれも攻撃力は2200以上で、《インフェルニティ・デス》の効果範囲外。

このまま総攻撃を受けると、漁介達の敗北が決まる。

「バトル!私は《ガドムズ》で《グラヴィティ・ウォリアー》を…」

「罠発動、《威嚇する咆哮》」

攻撃対象として選ばれていた《グラヴィティ・ウォリアー》が激しく咆哮し、X-セイバー達を威嚇する。

咆哮のあまりのすさまじさ故か、激しい振動で近くの窓ガラスが砕け散り、3体のX-セイバー達が若干後ずさりしてしまう。

「《威嚇する咆哮》の効果でこのターン、攻撃宣言を行うことはできない」

「攻撃を行えない以上は長引かせても仕方がない…。私はカードを1枚伏せ、ターンエンド。そして、《ダークソウル》の効果によりデッキからもう1体の《XX-セイバーフォルトロール》を手札に加える」

 

黒スーツA&B

手札

A3→1(《XX-セイバーフォルトロール》)

B1

ライフ100

場 XX-セイバーガドムズ レベル9 攻撃3100

  X-セイバーソウザ レベル7 攻撃2500

  XX-セイバーフォルトロール レベル6 攻撃2400

  伏せカード1

 

漁介&鬼柳

手札

漁介2

鬼柳0

ライフ1450

場 インフェルニティ・デス レベル5 攻撃2200

  グラヴィティ・ウォリアー レベル6 攻撃3000

 

《威嚇する咆哮》により、漁介達は生き延びた。

今の状況であれば、《グラヴィティ・ウォリアー》で《XX-セイバーガドムズ》以外のモンスターを攻撃することで勝負を決めることができる。

伏せカードが無ければ、の話ではあるが。

「俺のターン、ドロー!!」

 

漁介

手札2→3

 

「よし…俺は手札から《ドラグニティ―アキュリス》を召喚!」

頭部に羽根をつけている赤い小竜が飛び出す。

銀色の鎧を装着しており、頭部には小型の投げ槍が装着されている。

 

ドラグニティ―アキュリス レベル2 攻撃1000(チューナー)

 

「このカードの召喚に成功した時、手札からドラグニティモンスター1体を特殊召喚し、このカードを装備カード扱いにして装着できる!俺は手札から《ドラグニティ―ミリトゥム》を特殊召喚!」

白と緑の翼をつけた、白い布で隠した鎖帷子の兵士が現れる。

片手剣とダガーの二刀流で、オレンジ色のポニーテールが見えるが、一体男性なのか女性なのか外見だけでは判断が難しいが女性、女性だ。

ここは重要なので2回言っておこう。

…ちょっと《ドラグニティ―ミリトゥム》の作者へ向ける目線が怖い。

 

ドラグニティ―ミリトゥム レベル4 攻撃1700

 

現れた女戦士に鎧と兜を託した《ドラグニティ―アキュリス》が戦線から離脱し、鎧は左腕にガントレットとして装着される。

そのガントレットの上に投げ槍が取り付けられている。

「更に俺は手札から速攻魔法《ダブル・サイクロン》を発動!互いのフィールド上に存在する魔法・罠カードを1枚ずつ破壊する!!」

「何!?」

「俺が破壊するのは伏せカードと《ドラグニティ―アキュリス》!!」

互いのフィールドに色の異なる竜巻が発生する。

漁介達のフィールドのは黄色で、黒スーツのフィールドのは赤だ。

赤い竜巻は伏せカードを飲み込んでいき、黄色い竜巻は逆にガントレットの投げ槍の穂先に吸収されていく。

「装備されている《ドラグニティ―アキュリス》が墓地へ送られた時、フィールド上に存在するカード1枚を破壊できる!俺が破壊するのは…《XX-セイバーガドムズ》!!!」

「くぅ…!!」

竜巻を吸収して黄色い光を発した投げ槍が急速に回転しながら発射される。

ドリルのように回転している投げ槍は《XX-セイバーガドムズ》の胴体を貫いた。

 

破壊された伏せカード

・魔法の筒

 

(《魔法の筒》は相手の攻撃を無効にし、攻撃モンスターの攻撃力分のダメージを与えるカード。このまま能天気に攻撃していたら、負けていたな)

「これでしまいじゃ!!《グラヴィティ・ウォリアー》で《XX-セイバーフォルトロール》を攻撃!!」

《グラヴィティ・ウォリアー》が咆哮し、背をかがめて相手フィールドに向けて走って行く。

そして、すれ違いざまに《XX-セイバーフォルトロール》と2人の黒スーツの胴体を爪で切り裂いていた。

まるでほとんどのデッキではつなぎとしてしか役割を与えられないことへのうっ憤を晴らしているかのように。

「うわあああ!!」

 

黒スーツ

ライフ100→0

 

「ほぉー、やるもんだなぁ、あんたら」

デュエル終了と同時に黒スーツの2人の背後にあるエレベーターの扉が開き、軽口をたたく男の声が聞こえてくる。

茶色い少し乱れたビジネスショートの髪型と無精髭、そして黄色い柄の入った茶色のシャツと灰色の長ズボンを穿いた、見るからにだらしなさを印象付けさせる男だ。

「俺らのボスからの伝言だ。お前らの実力をもっと見せてくれだと」

左手で髪をかきながら面倒臭そうに言う。

腕にはデュエルディスクがつけられていた。

「なら、お前を倒せばボスに合わせてくれるんだな?」

椅子に座っていた翔太が立ち上がり、彼の前に立つ。

その間に鬼柳と漁介、そして黒スーツたちが横に下がる。

「そーゆーことだ。悪く思わないでくれよ?同盟相手はしっかり見極めるのが生き残るコツさ。新米君」

「そうだな。なら、お前がザコじゃねえってことをこのデュエルで示してくれよ」

両者はデュエルディスクを展開する。

すると、男ははっとしたように言い始める。

「おっと、忘れるところだった。俺の名前は小川純。一応、チームブレイドのサブリーダーってことになってる」

「俺は秋山翔太、シェイドのリーダーだ」

「はーん、リーダーね。まぁ、気楽に行こうぜ。その方が本気、だせるだろ?」

右手で首筋をなでてから、カードを5枚ドローする純。

そんな彼にうんざりしつつ、翔太もカードを引く。

(こいつ…あいつと同じタイプか?どうか、違いますようにって祈りたい気分だぜ)

「さあ、楽しもうぜ!!」

「「デュエル!!」」

 

翔太

手札5

ライフ4000

 

小川

手札5

ライフ4000




長らく更新できずにすみません…!!
これから少しペースを上げますのでお許しを…。


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第52話 試練を受けるもの

翔太

手札5

ライフ4000

 

小川

手札5

ライフ4000

 

「先攻は俺がもらうぞ?俺は手札から《真六武衆―カゲキ》を召喚」

 

真六武衆―カゲキ レベル3 攻撃200

 

「このカードの召喚に成功した時、手札からレベル4以下の六武衆1体を特殊召喚できる。俺は更に手札から《六武衆の九ノ一》を特殊召喚」

白いベールがついた三度笠をつけ、白い巫女の装束を身に着けた若い女性が現れる。

右手には巻物が握られていて、三度笠の裏側には六武衆の家紋が刻まれている。

 

六武衆の九ノ一 レベル3 攻撃1200(チューナー)

 

「レベル3の《カゲキ》にレベル3の《九ノ一》をチューニング。。シンクロ召喚。現れろ、《ゴヨウ・プレデター》」

 

ゴヨウ・プレデター レベル6 攻撃2400

 

「更に俺は《六武衆の九ノ一》の効果を発動。このカードを素材に戦士族シンクロモンスターのシンクロ召喚に成功した時、デッキから六武と名のつく魔法・罠カード1枚を手札に加えることができる。俺はデッキから《六武の門》を手札に加える」

シンクロ素材となって場からいなくなった《六武衆の九ノ一》はフィールド上に巻物を残していた。

その巻物から白い煙が発すると、翔太の手元に《六武の門》のカードが加わる。

 

六武衆の九ノ一

レベル3 攻撃1200 守備200 チューナー 炎属性 戦士族

「六武衆の九ノ一」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上にモンスターが存在せず、相手フィールド上にレベル5以上もしくはランク4以上のモンスターが存在する場合、このカードを手札から特殊召喚することができる。

(2):このカードをS素材として戦士族SモンスターのS召喚に成功した時に発動できる。デッキから「六武」魔法・罠カード1枚を手札に加える。

 

「よし…《六武の門》が手札に来たら、翔太の独壇場じゃ!!」

「へぇ…確か、《六武の門》は武士道カウンターを取り除くことでいろんな効果を使うことができるんだったな。一番危険なのはサーチか…こりゃ大変だ」

見るからにわざとらしい口調で《六武の門》を警戒する小川。

しかし、目は笑ったままだ。

「俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

翔太

手札5→2(うち1枚《六武の門》)

ライフ4000

場 ゴヨウ・プレデター レベル6 攻撃2400

  伏せカード2

 

小川

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「さあてっと、じゃあ俺のターンだな」

 

小川

手札5→6

 

「お、こりゃあついてるぜ。相手フィールド上にのみモンスターが存在するとき、このカードは手札から特殊召喚できる。《TGストライカー》を特殊召喚!」

 

TGストライカー レベル2 攻撃800(チューナー)

 

「更にこいつはレベル4以下のモンスターが特殊召喚に成功した時、手札から特殊召喚できる。《TGワーウルフ》を特殊召喚だ!」

 

TGワーウルフ レベル3 攻撃1200

 

「そしてそして、おまけに俺は《創造の代行者ヴィーナス》を召喚」

緑を基調としたドレスで全身を包み込んだ金髪の天使が現れる。

登場し、フィールドに立っても目は閉じたままで、背中についている白い翼は閉じている。

 

創造の代行者ヴィーナス レベル3 攻撃1600

 

「この女神様はとっても慈悲深いんだ。なんたってたった500ライフをささげるだけで手札・デッキから《神聖なる球体》を特殊召喚させてくれるからな。俺はライフを500支払い、デッキから《神聖なる球体》を特殊召喚だ!」

《創造の代行者ヴィーナス》が目を開き、薄緑色の瞳を見せる。

それと同時に周囲に飛び散った数枚の白い羽根が白い光となり、《神聖なる球体》に変化していく。

 

神聖なる球体 レベル2 攻撃500

 

小川

ライフ4000→3500

 

「俺はレベル3の《ヴィーナス》にレベル2の《ストライカー》をチューニング。古今東西のデータを管理する頭脳が俺の手札を潤す!シンクロ召喚!レベル5!《TGハイパー・ライブラリアン》!」

 

TGハイパー・ライブラリアン レベル5 攻撃2400

 

翔太とは異なり、シンクロ召喚に成功してもなおフィールドに2体のモンスターを残した小川。

ここから次のターンにチューナーを通常召喚すると更にシンクロ召喚を狙うことができる。

「お前も1ターン目からシンクロ召喚か。だがな、攻撃力は俺の《ゴヨウ・プレデター》と同じだろ?」

「そうだな。だが、俺を舐めてもらっちゃ困るな、俺は手札から永続魔法《TGX300》を発動!俺のフィールド上に存在するTGモンスターの数×300、俺のモンスターの攻撃力をアップさせるぜ!」

 

TGハイパー・ライブラリアン レベル5 攻撃2400→3000

TGワーウルフ レベル3 攻撃1200→1800

神聖なる球体 レベル2 攻撃500→1100

 

「ちっ…《ワーウルフ》じゃなく、わざわざお前の女神様を素材にしたのはこのためか!」

「そうだな。《TGX-300》の効果を有効に使うためだ。それに、休む時間位必要だろ?」

そっと《創造の代行者ヴィーナス》のカードをなでた後で丁寧に墓地へ送る。

そして、翔太の《ゴヨウ・プレデター》に目を向ける。

「そんじゃまあ、バトルといきますか。《TGハイパー・ライブラリアン》で《ゴヨウ・プレデター》を攻撃!」

《TGハイパー・ライブラリアン》が手に持っている本をひろげると、そこから数枚ページが離れて《ゴヨウ・プレデター》の周囲を飛ぶ。

そして、それらが縦横無尽に飛びながら青い光線を放つ。

視界の内外から発射される光線を対応しきることができるはずもなく、《ゴヨウ・プレデター》は腹部や足などに交戦を何度も受け、倒れた。

 

翔太

ライフ4000→3400

 

「ちっ…俺は罠カード《シャドー・インパルス》を発動。俺のシンクロモンスターが戦闘かカード効果で破壊された時、そのモンスターと同じ種族とレベルを持つシンクロモンスターをエクストラデッキから特殊召喚できる。俺は《マイティ・ウォリアー》を特殊召喚!」

薄い水色で筋肉質な肉体を持った人型モンスターが《シャドー・インパルス》のソリッドビジョンから飛び出してくる。

右腕には彼の体重の倍近い重さの青い金属の装甲が取り付けられていて、服装は青いタイツ状のものとなっている。

 

マイティ・ウォリアー レベル6 攻撃2200

 

「ふぅーん…《TGハイパー・ライブラリアン》がシンクロモンスターが特殊召喚されるたびにカードを1枚ドローさせてくれる効果がある。だが、《シャドー・インパルス》はあくまでも特殊召喚。だから、俺はドローできないっと…。そして、残り2体の俺のモンスターでは《マイティ・ウォリアー》を倒すことはできないな。俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

翔太

手札2(うち1枚《六武の門》)

ライフ3400

場 マイティ・ウォリアー レベル6 攻撃2200

  伏せカード1

 

小川

手札6→1

ライフ3500

場 TGハイパー・ライブラリアン レベル5 攻撃3000

  TGワーウルフ レベル3 攻撃1800

  神聖なる球体 レベル2 攻撃1100

  TGX300(永続魔法)

  伏せカード1

 

《シャドー・インパルス》のおかげでこれ以上のダメージを避けることができたものの、戦局は小川が有利となった。

《創造の代行者ヴィーナス》とTGモンスター主体ということは彼のデッキはいわゆるTG代行者。

エクシーズモンスターの要素が入っていたならば、《ガチガチガンテツ》をエクシーズ召喚することでさらに翔太を追いこむことができただろう。

「おいおい翔太、俺のデュエルで大口叩いておいてなんじゃその体たらく!!」

先日のことを根に持っているのか、漁介がヤジを飛ばす。

「黙ってろ、俺のターン!」

 

翔太

手札2→3

 

「俺は手札から永続魔法《六武の門》を発動。そして、罠カード《諸刃の活人剣術》を発動!墓地から六武衆2体を攻撃表示で特殊召喚する。《真六武衆―カゲキ》と《六武衆の九ノ一》を特殊召喚」

 

真六武衆―カゲキ レベル3 攻撃200→1700(《真六武衆-カゲキ》の効果)

六武衆の九ノ一 レベル3 攻撃1200(チューナー)

 

「そして、《六武の門》の効果で武士道カウンターを2つ置く」

 

六武の門 武士道カウンター0→2

 

「そして、手札から《六武衆の影武者》を召喚」

 

六武衆の影武者 レベル2 攻撃400(チューナー)

六武の門 武士道カウンター2→4

 

「レベル3の《カゲキ》にレベル2の《影武者》をチューニング。シンクロ召喚。現れろ、《真六武衆―シエン》」

 

真六武衆―シエン レベル5 攻撃2500

六武の門 武士道カウンター4→6

 

「よっし!!出たぞ、《シエン》!!」

《真六武衆―シエン》が登場したことで、小川の魔法・罠カードの発動を1ターンに1度だけではあるが無効にし、破壊することができる。

そして、3回の六武衆召喚によって武士道カウンターもたまった。

「《ハイパー・ライブラリアン》の効果により、俺はカードを1枚ドロー」

「俺は《六武の門》の効果発動。武士道カウンターを4つ取り除くことで、デッキ・墓地から六武衆1体を手札に加えることができる。俺は《六武衆の師範代》を手札に加える。こいつは俺のフィールド上に六武衆が存在する場合、手札から特殊召喚できる」

 

六武衆の師範代 レベル5 攻撃2100

六武の門 武士道カウンター6→2→4

 

「レベル5の《六武衆の師範代》にレベル3の《九ノ一》をチューニング。シンクロ召喚。現れろ、《クリムゾン・ブレーダー》!」

赤い鎧と緑色のマントを着た褐色の男が分厚い刀身を持つ片刃の剣を2本装備して現れる。

2本の剣からは炎の渦が常に発生し、そのモンスターの周囲の温度を急激にあげていく。

 

クリムゾン・ブレーダー レベル8 攻撃2800

 

「《ハイパー・ライブラリアン》の効果だ。ドローさせてもらうぜ?」

「好きにしろ。《九ノ一》の効果で、俺はデッキからもう1枚の《六武の門》を手札に加える。そして、《六武の門》を発動する」

翔太の背後に現れる六武衆の家紋が大きく描かれた2つの門。

たった1度の召喚で4つの武士道カウンターを手に入れることができるため、これでループコンボの準備が整う。

「俺は《六武の門》の効果を発動。武士道カウンターを4つ取り除き、デッキから《真六武衆―キザン》を手札に加える。このカードは俺のフィールド上に《キザン》以外の六武衆が存在するとき、手札から特殊召喚できる」

 

真六武衆―キザン レベル4 攻撃1800

六武の門 武士道カウンター4→0→2

六武の門 武士道カウンター0→2

 

「更にもう1度武士道カウンターを4つ取り除き、デッキから《真六武衆―キザン》を咥え、手札から特殊召喚。このカードは俺のフィールド上にほかに六武衆が2体以上存在するとき、攻撃力・守備力が300アップする」

 

真六武衆―キザン×2 レベル4 攻撃1800→2100

六武の門×2 武士道カウンター2→0→2

 

「そして、もう1度《六武の門》で武士道カウンターを4つ取り除き、デッキからもう1枚の《キザン》を手札に加える」

「ははは…せっかく準制限に復帰したカードだ。今のうちにどんどん使えよ?また制限になるかもしれないからな」

小川は危険な状況であるにもかかわらず、笑って拍手をしながら翔太のその後の動きを見る。

「ちっ…伊織みたいにニヤニヤするな。俺は手札から魔法カード《シンクロ・クリード》を発動。フィールド上にシンクロモンスターが3体以上存在する場合、デッキからカードを2枚ドローする。そして、手札から永続魔法《一族の結束》を発動。俺の墓地に存在するすべてのモンスターの元々の種族が同じ場合、俺のフィールドに存在するその種族のモンスターの攻撃力を800アップさせる!」

 

真六武衆―キザン×2 レベル4 攻撃2100→2900

真六武衆―シエン レベル5 攻撃2500→3300

マイティ・ウォリアー レベル6 攻撃2200→3000

クリムゾン・ブレーダー レベル8 攻撃2800→3600

 

「すげぇ…やりすぎじゃねえか?」

あまりの無慈悲なまでの展開に漁介がびっくりする。

攻撃力だけを見ると、すべてレベル8以上のクラスだ。

「《クリムゾン・ブレーダー》は戦闘で相手モンスターを破壊し墓地へ送った次の相手のターン、相手はレベル5以上のモンスターの召喚・反転召喚・特殊召喚できなくする効果を持っている。更に、《マイティ・ウォリアー》は戦闘で相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、そのモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える。一斉攻撃したら、奴は終わりだな」

しかし、問題は小川の伏せカードと手札3枚。

代行者をデッキに加えているとしたら、もしかしたら…。

「バトル、俺は《クリムゾン・ブレーダー》で《TGハイパー・ライブラリアン》を攻撃」

炎をまとう2本の剣を回転させながら、《クリムゾン・ブレーダー》は突撃する。

「カウンター罠《攻撃の無力化》を発動!危ない危ない、いやぁーカウンター罠で助かったぜ」

しかし、目の前に現れた次元の渦がその炎を吸収していき、《クリムゾン・ブレーダー》は翔太のフィールドへ戻っていく。

「ちっ…。俺はカードを1枚伏せ、ターンエンドだ。ターン終了と同時に《諸刃の活人剣術》の代償として、俺はその効果で特殊召喚されたモンスターを破壊し、その攻撃力の合計分のダメージを受けなければならない。ま、もうそいつらはフィールドにいないから関係ないけどな」

 

翔太

手札0

ライフ3400

場 真六武衆―キザン×2 レベル4 攻撃2900

  真六武衆―シエン レベル5 攻撃3300

  マイティ・ウォリアー レベル6 攻撃3000

  クリムゾン・ブレーダー レベル8 攻撃3600

  一族の結束(永続魔法)

  六武の門×2(永続魔法)武士道カウンター2

  伏せカード1

  

 

 

小川

手札1→3

ライフ3500

場 TGハイパー・ライブラリアン レベル5 攻撃3000

  TGワーウルフ レベル3 攻撃1800

  神聖なる球体 レベル2 攻撃1100

  TGX300(永続魔法)

 

「秋山の奴…勝負を急ぎすぎたな」

翔太の連続シンクロ召喚はすごかったものの、それに対して今回は高い代償を支払うことになってしまったかもしれない。

《TGハイパー・ライブラリアン》の効果により、小川は手札を3枚まで増やしている。

そして、フィールド上にいる攻撃力が一番低いモンスターは《神聖なる球体》。

《クリムゾン・ブレーダー》の攻撃対象をそのモンスターではなく、《TGハイパー・ライブラリアン》にした理由はおそらく…。

「《オネスト》、じゃろ?翔太の頭にある危険なモンスターは」

「そうだな。光属性のモンスターを使用している以上、使ってくる可能性はないとは言い切れない」

そして、《オネスト》は制限解除となって久しい。

3枚積みしている場合は手札に来る可能性は高く、そのせいで《神聖なる球体》がただの通常モンスターから得体のしれない曲者へと変わってしまう。

「俺のターン、ドロー」

 

小川

手札3→4

 

「もっと手札が欲しいところだな…俺は手札から魔法カード《シンクロ・クリード》を発動!これでデッキからカードを2枚ドローする!」

「《シエン》の効果発動!《シンクロ・クリード》は無効だ」

フィールドに出現した《シンクロ・クリード》のソリッドビジョンが《真六武衆―シエン》の刀が切り裂く。

「ま、いいか。俺は《TGミラージュ・ワイバーン》を召喚!」

 

TGミラージュ・ワイバーン レベル3 攻撃1400(チューナー)

 

「TGが増えたことで、攻撃力アップ!」

 

TGハイパー・ライブラリアン レベル5 攻撃3000→3300

TGワーウルフ レベル3 攻撃1800→2100

TGミラージュ・ワイバーン レベル3 攻撃1400→2300(チューナー)

神聖なる球体 レベル2 攻撃1100→1400

 

「レベル2の《神聖なる球体》とレベル3の《TGワーウルフ》にレベル3の《ミラージュ・ワイバーン》をチューニング」

自らの体を構築するオレンジ色の炎が3つのチューニングリングに代わり、2体を包んでいく。

(《TGX300》の効果による攻撃力アップを捨ててまでのシンクロ召喚か…?)

「未来に住まう機械仕掛けの騎士よ、時間を越えて戦場へ走れ!シンクロ召喚!レベル8!《NTG(ネクストテックジーナス)ライジング・ベルセルク》!」

チューニングリングが緑色の光を放ち、その中から両肩にアンテナがついた重装で銀色の機械鎧を身に着けた騎士が現れる。

右腕と左目は鋼の義手と義眼になっており、背中にはスパークする二又の大剣をさしていた。

 

NTGライジング・ベルセルク レベル8 攻撃2600

 

「《ミラージュ・ワイバーン》の効果発動。このカードをシンクロ素材として墓地へ送った時、デッキからカードを1枚ドローする。更に《ハイパー・ライブラリアン》の効果でもう1枚カードをドローする」

《NTGライジング・ベルセルク》の登場により、小川のモンスター達の攻撃力が変化する。

 

TGハイパー・ライブラリアン レベル5 攻撃3300→2700

NTGライジング・ベルセルク レベル8 攻撃2200→2800

 

 

「《NTGライジング・ベルセルク》の効果発動!こいつは俺のフィールド上に存在するTGシンクロモンスターの攻撃力を600アップさせる。更に、こいつは俺のフィールド上に存在するTGシンクロモンスターの数だけ1度のバトルフェイズ中に相手モンスターを攻撃できるのさ」

「何!?」

背中に刺している大剣を抜き、床に刺すと翔太と小川の周囲を高圧電流が包み込む。

電流を受け、一部の機能が活性化した《TGハイパー・ライブラリアン》の髪が若干逆立つ。

 

TGハイパー・ライブラリアン レベル5 攻撃2700→3300

NTGライジング・ベルセルク レベル8 攻撃2800→3400

 

NTG(ネクストテックジーナス)ライジング・ベルセルク

レベル8 攻撃2200 守備2000 シンクロ 光属性 戦士族

「TG」チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

(1):このカードがフィールド上に存在する限り、自分フィールド上に存在する「TG」Sモンスターの攻撃力は600アップする。

(2):このカードは一度のバトルフェイズ中に自分フィールド上に存在する「TG」Sモンスターの数だけ相手モンスターを攻撃することができる。

 

「バトル!《ライジング・ベルセルク》で《クリムゾン・ブレーダー》を攻撃!」

「ちっ…やっぱり手札に…」

「そうだ、《オネスト》があったのさ。大正解っと」

手札に存在する《オネスト》を見せびらかすように見せた後で墓地へ送る。

すると、《NTGライジング・ベルセルク》の柄に広い羽根を重ねたような模様がつく。

《クリムゾン・ブレーダー》が剣で受け止めるが、それこそが機械騎士の思うつぼ。

高圧電流が剣を通して肉体に流れ込んでいく。

「まずい!!今の《ライジング・ベルセルク》の攻撃を通したら、翔太が負ける!!」

 

NTGライジング・ベルセルク レベル8 攻撃3400→8000

 

「俺は罠カード《ドレインシールド》を発動!これで攻撃は無効となり、攻撃モンスターの攻撃力分ライフを回復させる!」

「ならば、2度目の攻撃だ!」

体内に流れ込んだ電撃が《ドレインシールド》のソリッドビジョンに吸収されていく。

しかし、《NTGライジング・ベルセルク》が更に電気を流し込んでいき、《ドレインシールド》の許容量を上回っていく。

そのために《ドレインシールド》が消滅し、ついに《クリムゾン・ブレーダー》が力尽きて倒れてしまう。

 

翔太

ライフ3400→11400→8000

 

「ここで俺は手札に存在する《TGメタル・スケルトン》の効果を発動!こいつは相手フィールド上に存在するモンスターが破壊され墓地へ送られた時、手札から特殊召喚できる!」

透けた灰色の鋼鉄でできた装甲を全身につけた骸骨が現れる。

肩甲骨の部分には左右対称で計6枚の羽根のような装甲が余分についている。

 

TGメタル・スケルトン レベル2 守備0

NTGライジング・ベルセルク レベル8 攻撃8000→8300

TGハイパー・ライブラリアン レベル5 攻撃3300→3600

 

TGメタル・スケルトン(TGオリカ)

レベル2 攻撃1100 守備0 効果 闇属性 アンデット族

(1):相手フィールド上に存在するモンスターが戦闘またはカードの効果によって破壊され墓地に送られた時、手札から発動できる。このカードを自分フィールド上に特殊召喚する。

 

「さあ、更に《ハイパー・ライブラリアン》で《マイティ・ウォリアー》を攻撃!」

(ちっ…なぜ《マイティ・ウォリアー》を?)

考えが答えに至る前に、《TGハイパー・ライブラリアン》の本のページを利用したオールレンジ攻撃によって《マイティ・ウォリアー》が倒される。

 

翔太

ライフ8000→7400

 

「ここで俺は速攻魔法《グリード・グラード》を発動。俺かお前のフィールド上に存在するシンクロモンスターが破壊され墓地へ送られた時、デッキからカードを2枚ドローできる。いやぁー、先に《シンクロ・クリード》を発動しておいて正解だったぜ」

「お前…」

笑いながらカードをドローする小川に翔太はイライラする。

このターンだけで小川は通常のドローを含めると5枚カードをドローしたことになる。

「本当にドローをさせてくれるカードはありがたいよなー。俺は手札から魔法カード《死者蘇生》を発動。戻ってこい、《TGミラージュ・ワイバーン》!」

 

TGミラージュ・ワイバーン レベル3 攻撃1400(チューナー)

 

「レベル2の《メタル・スケルトン》にレベル3の《ミラージュ・ワイバーン》をチューニング。機械仕掛けの脳が生み出すは冷静な戦局分析!シンクロ召喚!レベル5!《TGワンダー・マジシャン》!」

茶色を基調とした神官の服と帽子をつけた、ピンク色の長いおさげが2本ぶらさがっている少女が現れる。

背中には青い4枚羽型の機械をつけていて、茶色い目をしている。

右目を斜めに切るように描かれた緑色のペイントには電子回路のようなものが見える。

 

TGワンダー・マジシャン レベル5 攻撃1900→2500→3400

 

「ここで《ミラージュ・ワイバーン》と《ハイパー・ライブラリアン》の効果でカードを2枚ドロー。そして、《ワンダー・マジシャン》はシンクロ召喚に成功した時、フィールド上に存在する魔法・罠カード1枚を破壊する!俺は《一族の結束》を破壊する!」

《TGワンダー・マジシャン》の背中の羽根から青い光線が発射され、それに貫かれた《一族の結束》のソリッドビジョンがはじけ飛ぶ。

「《一族の結束》が破壊されたことで、翔太のモンスター達の攻撃力が下がる…」

 

真六武衆―キザン×2 レベル4 攻撃2900→2100

真六武衆―シエン レベル5 攻撃3300→2500

 

「そして、俺はカードを2枚伏せてターンエンド」

 

翔太

手札0

ライフ7400

場 真六武衆―キザン×2 レベル4 攻撃2100

  真六武衆―シエン レベル5 攻撃2500

  六武の門×2(永続魔法)武士道カウンター2

  

小川

手札3

ライフ3500

場 TGハイパー・ライブラリアン レベル5 攻撃3600→3900

  TGワンダー・マジシャン レベル5 攻撃3400(チューナー)

  NTGライジング・ベルセルク レベル8 攻撃8300→8600→3700

  TGX300(永続魔法)

  伏せカード2

 

「やばい、やばすぎじゃよ…この状況は」

《ドレインシールド》によってライフを一気に回復させることに成功したものの、今の小川のシンクロモンスター3体に対しては2ターン程度生き延びるのがやっとだろう。

更には《一族の結束》を失ったことで《真六武衆―シエン》と《真六武衆―キザン》の攻撃力が下がってしまった。

(こいつらの攻撃力を下げる手段は…《TGX300》か《ライジング・ベルセルク》の破壊…。だが、今の俺の手札はない。次のターンのドローによるな…)

翔太はデッキトップに指をかける。

「俺のターン!」

 

翔太

手札0→1

 

「俺は罠カード《砂塵の大竜巻》と速攻魔法《サイクロン》を発動。これで2枚の《六武の門》を破壊するぜ?」

「ちっ…《シエン》の効果で《砂塵の大竜巻》を無効にする!」

砂を周囲にまき散らしながら進む竜巻を《真六武衆―シエン》が切り裂き、消滅させる。

しかし、その間にもう1つの竜巻が《六武の門》を1つ壊してしまう。

「なあ、鬼柳さん。なんで翔太は《砂塵の大竜巻》の方を無効にしたんだ?」

「《砂塵の大竜巻》は魔法・罠カードを破壊したうえで手札の魔法・罠カードを1枚セットすることができるカードだ。《リビングデッドの呼び声》のような攻め札となりえる罠カードにとっては奇策をねるきっかけになりえる」

「なるほどな…」

《六武の門》を1つ守ることができたが、これで翔太は前のターンのようなループコンボを使うことができなくなった。

「さぁー、秋山翔太君。さすがのお前でもこの状況だとつらいんじゃあないか?」

「…」

まるで図星であるかのような沈黙を見せる翔太。

そんな彼をまるで安心させるかのように小川は口を開く。

「ま、このデュエルはあくまで試練だ…。ここまでの動きを見たら、同盟を組むのを検討してもいいかなって俺も思うよ。まぁ、他の奴らへの説得は大変だけどな。いやぁ…中間管理職がつらい点はギャングも一般企業も同じだな」

とても大変そうに見えない軽快な口調で小川が言う。

同盟を組むという点では目的を達していると言いたいのだろう。

だが、翔太は…。

「…ざけんな」

「へっ…?」

「ここから一気に状況がつらくなるお前が言うな。俺のフィールド上に六武衆シンクロモンスターが存在するとき、このカードは手札から特殊召喚できる。《六武衆の傾奇者-ケイロウ》を特殊召喚」

 

六武衆の傾奇者-ケイロウ レベル2 攻撃1000(チューナー)

六武の門 武士道カウンター2→4

 

「俺はレベル5の《真六武衆―シエン》にレベル2の《六武衆の影武者》をチューニング。シンクロ召喚。現れろ、《六武衆の大将軍―紫炎》!!」

 

六武衆の大将軍―紫炎 レベル7 攻撃2500

六武の門 武士道カウンター4→6

 

「《ケイロウ》の効果。こいつをシンクロ素材として墓地へ送った時、デッキからカードを1枚ドローできる。更に俺は《六武の門》の効果を発動。武士道カウンターを4つ取り除き、墓地から《六武衆の師範代》を手札に加える。そして、このカードは俺のフィールド上に六武衆が存在するため、手札から特殊召喚できる」

 

六武衆の師範代 レベル5 攻撃2100

六武の門 武士道カウンター6→2→4

 

「更に武士道カウンターを4つ取り除き、デッキから《六武衆の影武者》を手札に加える。そして、《六武衆の影武者》を召喚」

 

六武衆の影武者 レベル2 攻撃400(チューナー)

六武の門 武士道カウンター4→0→2

 

「レベル5の《師範代》にレベル2の《影武者》をチューニング。シンクロ召喚。現れろ、《不退の荒武者》」

 

不退の荒武者 レベル7 攻撃2400

 

「これで2回のシンクロ召喚だな。まーた手札が増えてしまったな。だが…」

カードを2枚ドローした小川だが、《不退の荒武者》を見て少し苦い表情になる。

翔太のライフが大量にあるこの状況でのこのカードは小川にとってあまりうれしくない存在だ。

「そして、俺は手札から魔法カード《禁じられた聖杯》を発動。ターン終了時までフィールド上のモンスター1体の攻撃力を400アップさせる代わりに、効果を無効にする。だが、このカードの発動を《紫炎》の効果で無効にする!」

「はぁ?自分が発動した魔法カードを無効に?」

《禁じられた聖杯》の中にある水を《六武衆の大将軍―紫炎》は赤く塗られたかわらけですくう。

そして、それを飲んだ後でそのかわらけを床に叩き割る。

「《真六武衆―シエン》か紫炎と名のつくモンスターを素材とする《六武衆の大将軍―紫炎》は1ターンに1度、魔法・罠カードの発動が無効となった時、ターン終了時まで攻撃力を倍にできる。

「何!?」

 

六武衆の大将軍―紫炎 レベル7 攻撃2500→5000

 

「攻撃力5000か…こりゃあまずいな。俺は《TGワンダー・マジシャン》の効果発動!相手ターンのメインフェイズ中、こいつを素材にシンクロ召喚を行うことができる!俺はレベル5の《ハイパー・ライブラリアン》にレベル5の《ワンダー・マジシャン》をチューニング!」

「俺のターンにシンクロ召喚だと!?」

「無限の力、今ここに解き放ち、次元の彼方へ突き進め!シンクロ召喚!レベル10!《TGブレード・ガンナー》!!」

 

TGブレード・ガンナー レベル10 攻撃3300

 

「《TGX300》と《ライジング・ベルセルク》の効果で俺のモンスターの攻撃力は変化する」

 

TGブレード・ガンナー レベル10 攻撃3300→4500

NTGライジング・ベルセルク レベル8 攻撃3700→3400

 

「バトルだ。俺は《紫炎》で《ライジング・ベルセルク》を攻撃」

《六武衆の大将軍―紫炎》は上空から召喚した刀を手にとり、《NTGライジング・ベルセルク》に切りかかる。

機械剣で受け止められたことで体中に高圧電流が襲うものの、それをもろともせず、その剣もろとも機械騎士を切り捨てた。

翔太のフィールドに戻ってきた《NTGライジング・ベルセルク》の体は火傷だらけになっていた。

 

小川

ライフ3500→1900

 

「ちっ…《ライジング・ベルセルク》がいなくなったことで、俺のモンスターの攻撃力が低下する…」

 

TGブレード・ガンナー レベル10 攻撃4500→3600

 

「やれやれ…まさか俺のエース、《ライジング・ベルセルク》が倒されちまうなんてな…」

「納得いきましたか?小川さん…」

エレベーターが開くのと同時に低く、穏やかな声がする。

そこから出てきたのは黒いオールバックで黒スーツを着た、黒い瞳の青年だ。

両足と左腕が義肢となっており、右手で義手についているリモコンを操作して車いすを進めている。

「ええ…これは文句が言えませんよ。エリクさん」

「待てよ、まだ勝負がついてねえだろ」

突然現れた男と話しながらデュエルを中断させようとする小川にイラッとした翔太が声を荒げる。

「続けていただきたいのはやまやまですが…あまり時間を取らせるわけにはいきませんので。ご勘弁ください」

「あんたがこのギャングのリーダーか?」

席を立った鬼柳が質論し、奥居は肯定するかのようにうなずくと、静かに自己紹介を始める。

「申し遅れました。私はチームブレイドのリーダー、エリク・ファビアンと申します」

手紙とは全く異なる口調に少し違和感を感じる翔太に目を向け、そっと右手を差し出す。

左腕が義肢となっているためか、両手を黒い手袋で隠している。

「申し訳ありません。どちらの手も決して人に見せられるものではありませんので。その点はどうかご容赦ください」

「別にいいぜ。俺も、同じようなもんだからな」

左手を隠している手袋を見せた後で、彼に握手をする。

「で、なんで最近できたばかりの俺たちと同盟を組みたいと言い出したんだ?」

「実を言うと、エリクさんの指示で俺らの仲間がこっそりあんたとホイールズの抗争を見ていたのさ。お前らが仮に急速に勢力を拡大させようとするのなら、ホイールズはねらい目だということを予測していた。で、見事にビンゴだったぜ」

そう言うと、修理の痕が多く目につく旧型の薄いノートパソコンを開く。

そのディスプレイには翔太たちのデュエルと動きのすべてが映っていた。

(覗き魔かよ、こいつらは…)

「ただ…鬼柳さんを除くとほとんどの方の動きに少し違和感を感じましたね。確かに他のギャングやセキュリティと比べるとお強いのですが…。まるで、本来のデッキではないかのように」

「…」

柔らかい笑みを浮かべ、じっと翔太たちを見つめる。

その黒い瞳はまるで自分たちの秘密すべてを見通そうとしているかに見えて仕方がない。

(こいつ…!)

「ふふ、ただの予想です。別に深く問い詰めるつもりはありません。それよりも、チームオーファンに対する問題を解決しなければなりません。私達が生き残り、発展するためにも…。小川さん」

「はい」

すぐに小川はディスプレイにシティの地図を映す。

色によってそれぞれのギャングの縄張りが分けられていて、シェイドとチームブレイドはどちらも2つの区を手中にしている。

それに対して、チームオーファンは8つの区を得ていた。

「チームオーファンは半年前まではコモンズの中央に位置する旧イシュ区の一部を縄張りとする小規模なギャングでした。麻薬やコピーカード、産業廃棄物処理によって並みのギャング以上に稼いでいること以外を除いてはですが…」

「そんな奴らがどうして発展したのか、心当たりはあるのか?」

「おそらくは…こちらでしょう」

スーツの裏ポケットから1枚のカードを取り出す。

そのカードを見て翔太の目の色が変わる。

「また《融合》かよ…」

「ええ。4か月前にチームオーファンがこのカードを使用したことを確認しました。想定外、もしくは我々にない召喚法を使う相手ほど恐ろしい相手はいません。ですが、まさかホイールズまで《融合》を所持していたとは思いませんでしたが」

「それもわかっていたか…はあ」

ため息をつきながら、エリクを見る翔太。

確かに膨張を続けるチームオーファンと戦うには協力者が必要だ。

そして、彼らが《融合》を使っているということは融合次元とかかわりがあることには違いないだろう。

「仮に同盟を結んだところで、お前たちには何ができる?」

鬼柳が翔太の隣に立って質問する。

「私はある事情でスペインのギャングとつながりがあります。彼らの稼ぎ口の一つがライディングデュエルの大会、リーグです。そのため、数多くのDホイールのパーツを生産、所有しています。そして、その一部を私達が購入してDホイールの強化に当てています。ですので、Dホイールのパーツの蝶たちではお役にたつことができると思いますよ」

「Dホイールのパーツか…」

「そのかわり、皆さんが入手した港を使用させていただきたいと思っています。パーツに関しては空路で投下するという形で受け取ることができるのですが、重量のあるもパーツDホイール自体は船で運ぶという形をとる必要がありますので…。お恥ずかしい話ですが、エンジンやフレーム、モーメントなどがそのせいで更新が遅れています」

「ま、お互いに利害は一致しているってことだな」

エリクの話を聞いた翔太が少し頷き、もう1度エリクを見る。

話している間、彼はじっと話す相手の目を見続けている。

自分の言葉が嘘偽りがないことを示唆しているかのように。

「俺らを試すようなことをした点は気に入らんけど、助けがおるからええんじゃないか?」

「いきなり会った相手と同盟を結ぶという点がどうにも違和感を感じるが…まぁ、リーダーはお前だ。任せる」

漁介と鬼柳の言葉を受け、翔太はエリクの目をじっと見る。

「まだお前らを信頼していねえ。だが、チームオーファンと戦うという点については協力してやってもいい」

「おいおい、上から目線に喧嘩腰…。翔太、本当にあるんか??」

冷や汗をかく漁介と少し白い目を向ける黒スーツたち、そして小川。

しかし、エリクはニコリと笑ったままお辞儀をする。

「それでは、どれほどの付き合いになるのかわかりませんが、よろしくお願いいたします。秋山さん」



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第53話 金の力

「んん…ふああ…」

まだ太陽の光が差し込んでいない午前4時。

柚子はまだ眠っているほかのメンバーに迷惑がかからないよう、外で折り畳み机と椅子を置いて経理の勉強を始める。

こうしていると、お金の計算をしていつも頭を抱えていた修造のことを思い出す。

(お父さん…タツヤ君、アユちゃん、フトシ君…おばさん)

彼らは今スタンダード次元で何をしているのだろうか。

融合次元からの攻撃はヴァプラ隊が防いでくれているとのことだが、それがいつまで持つのだろうか。

情報が入ってこない分、不安が増していく。

スタンダード次元のことも、遊矢のことも。

「なーに難しい顔をしてんだ?」

「あ…」

トレーラーのドアが開くと同時に翔太の声が聞こえる。

ほとんどの場合一番最後に伊織にたたき起こされる彼がなぜこの時間にと思ってしまう。

「経理の仕事か?めんどくせぇな」

柚子のノートを見ながら、げんなりとした表情を見せる。

「だったら代わってくれる?」

「誰がそんな仕事をするかよ。俺たちの手中にある工場や店、更に俺たちが何か手に入れると全部記録しなきゃいけないんだろ?やってられるか」

「そのやってられない仕事をあたしがしているのよ?全く、遊矢ならありがとうくらい言うはずよ…」

「俺とお前の未来の夫を比べるな。ったく…もう1度寝る」

頭を書きながら、懐から缶コーヒーを取り出して柚子の机の上に置く。

そして、そのままトレーラーの中へ戻る。

「翔太さん…私、コーヒー苦手なんだけど…」

きっと、早起きした自分のために置いてくれたのだろう。

気持ちはうれしいが、コーヒーが苦手な人にとっては有難迷惑だ。

更にいうと、無糖というおまけつき。

「はぁ…」

苦味で眠気が飛ぶならいいかと思い、柚子は缶コーヒーを一気飲みした。

 

そして、時間は経過して昼…。

モハメドに誘われた翔太はトレーラーのことを漁介達に任せ、港へ足を運んだ。

「へぇ…さすがに仕事が早いな。それに…」

港近くにある大きな広場では元ホイールズのメンバーが訓練をしていて、雇ったコモンズの労働者たちが係留している船から荷物を降ろしている。

荷物チェックをしている人間の中にはチームブレイドのメンバーもいる。

「で、港の見学のために俺をここまで連れてきたのか?」

「それだけじゃない。お前に少し、人事について勉強してもらおうと思ってな」

「人事?めんどくせぇ…」

「そう言うな。シティは広い。仮にシェイドの勢力をひろげたとしても、1人ですべての地区を管理できるというわけではない。だから、地区ごとに各分野の担当者を配置するんだ。とりあえず、今は元ホエールズの奴らを配置しておいたぞ」

「各分野…1人だけじゃないのかよ?」

「そうだ。まずは今ここで訓練させている奴らがいるだろ?」

モハメドは訓練を受けているギャング達の前で指導している男を見る。

シェイドには制服がないため、区別のために服の左胸部分にシェイドのエンブレムがついたシールが貼られている。

「こいつが教官だ。地区にいる他のメンバーを鍛えている。そして、抗争になった時や他の地区に工作を行う際は指揮官になる」

「工作…?たとえばなんだ?」

「Dホイールの破壊や資源の奪取、デマのばら撒きや内通者及び裏切り者の仕立て…そんな感じだ」

「なるほどな。遊矢達には絶対できないことだな」

ある意味では汚れ仕事である工作活動。

これについては離さなければならなくなる時が来るまで伊織達には言わないようにしようと心に決めた。

「次は交渉人だ。こいつはギャングメンバーの募集や他のギャングとの交渉が仕事だ。チームブレイドと行ったような同盟や小規模なチームに対する降伏勧告、戦った敵チームとの和平交渉と交渉といってもいろいろある」

「和平…?」

ギャング同士の戦いはどちらか一方のリーダーがやられるまで終わらないものと思っていた翔太は首をかしげる。

そんな翔太の疑問が分かっているかのように、モハメドが発言する。

「俺たちには何年も時間があるわけじゃない。戦って力の差を見せつけたうえで和平交渉で相手の縄張りを一部手にするという選択肢もあるということだ。まぁ、難しいことはその交渉人に任せるといい。あと交渉人はメンバー募集する必要があるから、遠い地区での交渉に呼び出すのは無しだぞ」

「はぁ。リーダーってのは大変だな」

なし崩しでリーダーとなった翔太にとっては酷な話だろう。

委員会や部活とは規模がまるで違い、そもそも記憶喪失の彼にはリーダーの経験がまるでない。

だが、なったからにはやるしかない。

「もう1つは情報屋だな。シェイドがコモンズから支持されるにはとにかく経済的な発展と縄張りにいる人々の生活の向上が肝心だ。投資可能な商店や工場を見つけ出したり、ニーズがある、もしくは高値で取引できる商品を探し出してくれる。まあ、今すぐ全部覚えろとは言わん。必要な場合は俺がサポートする」

「おーーい!!他の地区の奴らが今再建中のチーズ工場で労働者に暴行を働いている!!」

「ちっ…嫌がらせかよ」

モハメドの言うとおり、縄張りを発展させることはコモンズからの支持を得るのに有効な手段だ。

特に将来ランサーズとして一緒に戦ってくれるデュエリストを得るには。

ただし、他のギャングにとってはあまり面白くない話。

今回のように、邪魔をしようと動くのは目に見えている。

「翔太、大抵の嫌がらせはここにいるメンバーがなんとかするだろう。だが、それだけでは解決できない事案も存在する。その時はお前が直接解決することになる」

「ふぅ…大体分かった」

めんどくさいと思いつつ、翔太はマシンキャバルリーに乗る。

ディスプレイにマップを表示すると、自動的に騒ぎが起こっている場所が赤い点で強調される。

「小川とのデュエルが中断したんだ、お前らでその埋め合わせをしてもらうぜ?」

 

「オラァ、金だせって言ってんだよぉ!!」

「ひぃぃ…許して、許して…」

工場前の広場で、黒いシャツとジャケットを着た、青い髪で右の頬にマーカーがついている日焼けした肌の男が倒れている壮年の男性の腹を蹴っている。

そのそばには緑色のスーツと黒いサングラスの男と紫のYシャツとネクタイの男が取り巻き、一緒に他の労働者が見張っている。

彼らの腰には銃があり、そのためか他の労働者は助けに行きたくても行けない。

「シーシシシ!!早くお前らも金を出さないとあのおっさんみたいななるぜー?」

「ちょっとでも抵抗したら…ズドン!!だぜ?瓜生さん、怖いかななぁー」

「ったく、これだけしかねえのかよ」

瓜生と呼ばれた青い髪の男は壮年の男が持っている茶色いツギハギの多い財布を奪い、その中身を見ながら文句を言う。

小銭を含めると、持ち金は4351イェーガーだ。

「た、頼む…返してくれ…。これがないと、女房と娘が…」

「うるせぇな!!」

銃を引き抜き、持ち手の部分で壮年の男の顔面を殴る。

殴られた男はそのまま意識を失う。

「お前らはやく金よこせよ。でないと次の賭けデュエルに遅れちまう」

「こそ泥にやる金はねーよ」

「あん?」

声が聞こえた方向に振り向くと、そこにはマシンキャバルリーに乗った翔太がいた。

賭けデュエルと言う言葉を聞いた翔太はにやりとする。

「こいつらからよりも、俺から金をたかった方が数倍も得だぜ。これくらいで足りるか?」

懐から15万イェーガーを取り出し、瓜生に見せる。

コモンズでは見たことのない大金に瓜生達は驚きと共に、欲望を膨らませていく。

「ま、タダでやるつもりはないけどな。俺とライディングデュエルをするのはどうだ?」

「ライディングデュエルだと…?」

「表に置いてあるDホイール、お前らのだろ?お前が勝ったら15万渡してやる。悪くない条件だろ?」

そう言いつつ、左腕のホルダーにデッキと手札をセットする。

勝てば大金、膨らんだ欲望が瓜生の思考を鈍らせる。

「乗ったぜ、そのデュエル…。トップス育ちの俺がお前らコモンズに負けるはずがねえからな!」

「そうだそうだ!!瓜生さんはトップスのプロデュエリスト候補生だった人だ!お前らクズとは核が違う!!」

瓜生達の自慢話を聞き、翔太が心の中で失笑する。

この馬鹿め、と。

(マーカー付きってことは、ヘマして落ちてきたんだろ?お前らには更に下の地獄が似合いだよ)

マーカーについてはモハメドからある程度聞いている。

犯罪者、もしくはトップスの住民に危害を加えるなどをしたコモンズの住民の顔に脱獄もしくは再犯阻止のためという名目でつけられる刻印。

マーカーをつけられた人物は常に居場所をセキュリティに把握される。

強制収容所で一定期間働き、罪を償うことで消すことができるのだが、それは建前で原則としてマーカーを消すことは許されない。

消すだけでも重い罪に問われるのだ。

そういう理由のためか、マーカー付きのコモンズ出身者をトップスの住民はもはや人として認識することがないという。

そんな話を思い出している間に、取り巻きの2人が瓜生のDホイールを持ってくる。

パトライトが外され、塗装が緑色となっているが、デュエルチェイサーズのDホイールを鹵獲したものなのは確かだ。

(盗品を使うのか…まぁ、俺らも同じような物だけどな)

(確かあいつは秋山翔太…シェイドのリーダーだったな)

翔太の顔を見た瓜生がにやりと笑う。

そして、先日会った白い仮面をつけた男からの依頼を思い出す。

(最近現れたギャング、シェイドのリーダーを連行すれば200万イェーガーをくれると言ってたな。とんだボーナスが入ったもんだ!こいつを賄賂にして、うまくいけばマーカーを消してトップスへ戻ることができる!!それに…)

Dホイールに乗り、手札とデッキをホルダーに装着した後でエクストラデッキを見る。

(前金としてもらったあのカード、こいつさえあれば…勝てる!)

 

2台のDホイールは工場前の道路に並列する。

「さあ…始めようぜ。俺らの賭けデュエルをな…!」

「負けても恨むんじゃないぜ?」

「お前がなぁ、いくぜ…ライデュングデュエルアクセラレーション!!」

2台のDホイールが同時に発進する。

 

瓜生

手札5

SPC0

ライフ4000

 

翔太

手札5

SPC0

ライフ4000

 

「瓜生さん、やっちゃってくださーい!」

「シーシシシ!!」

「俺のターン、俺は手札から《電動刃虫》を召喚!」

ハサミ部分がチェーンソーとなっている青と銀のクワガタムシが現れる。

現れると同時に背中に羽を広げ、瓜生に追随する形で飛行する。

「いきなり攻撃力2400のモンスター!?」

「最初のターンからプレッシャーをかけてきてるぞ…!」

レベル4であるにもかかわらず破格の攻撃力を持つ《電動刃虫》の登場に、修理されたブラウン管テレビで観戦する労働者たちが動揺する。

丁度、休憩時間に入っているため彼らをしかる人物はいない。

「そして俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド!」

 

瓜生

手札5→2

SPC0

ライフ4000

場 電動刃虫 レベル4 攻撃2400

  伏せカード2

 

翔太

手札5

SPC0

ライフ4000

場 なし

 

「俺のターン!」

 

翔太

手札5→6

SPC0→1

 

瓜生

SPC0→1

 

「相手フィールド上にのみモンスターが存在するとき、このカードは手札から特殊召喚できる。《六武衆のご隠居》を特殊召喚」

 

六武衆のご隠居 レベル3 攻撃400

 

「更に俺は《六武衆の九ノ一》を召喚」

 

六武衆の九ノ一 レベル3 攻撃1200(チューナー)

 

「レベル3の《ご隠居》にレベル3の《九ノ一》をチューニング。シンクロ召喚!現れろ、《ゴヨウ・プレデター》!」

 

ゴヨウ・プレデター レベル6 攻撃2400

 

「へっ!レベル6のシンクロモンスターを召喚したのはいいけどな、攻撃力は《電動刃虫》と同じじゃ話にならねえよ!」

瓜生の笑い声を無視し、翔太はデュエルを進める、

「《九ノ一》の効果発動。このカードを素材に戦士族シンクロモンスターのシンクロ召喚に成功した時、デッキから六武と名のつく魔法・罠カード1枚を手札に加えることができる。俺はデッキから《六武流剣術―真空斬》を手札に加える。そして、俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

瓜生

手札2

SPC1

ライフ4000

場 電動刃虫 レベル4 攻撃2400

  伏せカード2

 

翔太

手札6→3

SPC1

ライフ4000

場 ゴヨウ・プレデター レベル6 攻撃2400

  伏せカード2

 

伏せカードもしくは手札のいずれかは《六武流剣術―真空斬》

 

「このままどんどんやらせてもらうぜ?俺のターン、ドロー!!」

 

瓜生

手札2→3

SPC1→2

 

翔太

SPC1→2

 

「俺は手札から《代打バッター》を召喚!」

 

代打バッター レベル4 攻撃1000

 

「厄介なモンスターが出やがったな…」

瓜生の隣で飛ぶ《代打バッター》に苦い表情を浮かべる。

昆虫族デッキに欠かせない強力な召喚補助モンスターの登場だ。

「そして、このカードは俺のフィールドにバッターモンスターが存在するとき、手札から特殊召喚できる。《スイッチバッター》を特殊召喚!」

《代打バッター》と同じ容姿ではあるが、茶色い皮となっているバッタ型モンスターが飛び出す。

 

スイッチバッター レベル3 攻撃600(チューナー)

 

「《スイッチバッター》は特殊召喚に成功した時、俺のフィールド上に存在する昆虫族モンスター1体を破壊する。俺は《代打バッター》を破壊する!」

破戒対象となった《代打バッター》の背中にひびが入る。

「《代打バッター》はフィールドから墓地へ送られた時、手札から昆虫族モンスター1体を特殊召喚できる。俺は手札から《鉄鋼装甲虫》を特殊召喚!」

背中にできたひびがどんどん大きくなっていき、その中から赤い本体を鋼でできた殻を覆い隠している、亀に近い容姿の昆虫が現れる。

 

鉄鋼装甲虫 レベル8 攻撃2800

 

スイッチバッター

レベル3 攻撃600 守備500 チューナー 地属性 昆虫族

(1):自分フィールド上に「バッター」モンスターが存在するとき、このカードは手札から特殊召喚できる。

(2):このカードの特殊召喚に成功した時、自分フィールド上に存在する昆虫族モンスター1体を対象に発動する。そのモンスターを破壊する。

 

「更に俺は永続罠《リビングデッドの呼び声》を発動!その効果で墓地から《代打バッター》を特殊召喚!」

地面に落ちた《代打バッター》の抜け殻が土に還る。

そして、《リビングデッドの呼び声》のソリッドビジョンから新たな《代打バッター》が飛び出す。

 

代打バッター レベル4 攻撃1000

 

「レベル4の《代打バッター》にレベル3の《スイッチバッター》をチューニング!シンクロ召喚!現れろ、レベル7!《ネプチューン・ビートル》!」

瓜生の背後のアスファルトが急に隆起し、そこから水柱が発生する。

そして、その中から青くて2メートル近い大きさのネプチューンオオカブトをもした昆虫族モンスターが飛び出してくる。

 

ネプチューン・ビートル レベル7 攻撃2300

 

「《ネプチューン・ビートル》の効果発動!このカードのシンクロ召喚に成功した時、俺はデッキから昆虫族モンスター1体を手札に加えることができる。俺はデッキから《デビルドーザー》を手札に加える!更に、《デビルドーザー》は墓地の昆虫族モンスター2体を除外することで、手札から特殊召喚できる!」

「何…!?」

急に翔太の背後のアスファルトに大きな穴が開き、そこから赤い4メートル以上の長さを誇るムカデを模したモンスターが出てきて、頭上から翔太を捕食しようとにらんでくる。

 

デビルドーザー レベル8 攻撃2800

 

ゲームから除外されたカード

・代打バッター

・スイッチバッター

 

「さっすが瓜生さん!たった1ターンで3体も上級モンスターを召喚したーー!!」

「シーシシシ!!」

「みたか!?これがトップス出身、プロデュエリスト候補生の瓜生一角のパワーインセクトデッキの本領だーー!」

得意げに自分のデッキの強さを自慢する瓜生に翔太は冷ややかな目を見せる。

「御託はいい。さっさとデュエルを進めろよ」

「へっ!攻撃力2400程度の《ゴヨウ・プレデター》しかいないお前に何ができる?バトル…」

「罠発動、《威嚇する咆哮》。これでお前はこのターン、攻撃宣言できない」

捕食する機会を失った《デビルドーザー》が時を待つため、再びその身を地中へと隠していく。

1ターンキルが防がれたことで、観戦している労働者たちは安堵する。

「へっ…1ターン生き延びただけだ!それに、このままなら次のターンに負けるのは目に見えてる。俺はこれでターンエンド!」

 

瓜生

手札3→0

SPC2

ライフ4000

場 電動刃虫 レベル4 攻撃2400

  デビルドーザー レベル8 攻撃2800

  ネプチューン・ビートル レベル7 攻撃2300

  鉄鋼装甲虫 レベル8 攻撃2800

  リビングレッドの呼び声(永続罠)

  伏せカード1

 

翔太

手札3

SPC2

ライフ4000

場 ゴヨウ・プレデター レベル6 攻撃2400

  伏せカード1

 

伏せカードもしくは手札のいずれかは《六武流剣術―真空斬》

 

「俺のターン!」

 

翔太

手札3→4

SPC2→3

 

瓜生

SPC2→3

 

ドローしたカードを見た翔太は即座に行動に出る。

「相手フィールド上にモンスターが存在し、俺のフィールド上に存在するモンスターが戦士族のみの場合、このカードは手札から特殊召喚できる。《紫炎の記録者》を特殊召喚!」

右腕を露出させた大鎧を身に着けた銀杏髷の若者が現れる。

左手には弓が握られていて、腰には筆と墨汁が入ったひょうたん、そしてメモ用の和紙の巻物がかけられている。

 

紫炎の記録者 レベル1 攻撃300

 

紫炎の記録者

レベル1 攻撃400 守備400 効果 闇属性 戦士族

「紫炎の記録者」は1ターンに1度しか(1)の方法で特殊召喚できない。

(1):相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上に存在するモンスターが戦士族モンスターのみの場合、このカードは手札から特殊召喚できる。

 

「そして、《六武衆の影武者》を召喚」

 

六武衆の影武者 レベル2 攻撃400(チューナー)

 

「レベル1の《記録者》とレベル6の《ゴヨウ・プレデター》にレベル2の《影武者》をチューニング。シンクロ召喚!現れろ、《ゴヨウ・ガーディアンMK-Ⅱ》!」

 

ゴヨウ・ガーディアンMK-Ⅱ レベル9 攻撃2800

 

「《ゴヨウ・ガーディアンMk-Ⅱ》だと!?あの野郎、そんなカードまで…」

ゴヨウモンスターはセキュリティにに支給される専用のカードで、《ゴヨウ・ガーディアンMk-Ⅱ》や《ゴヨウ・キング》に関しては更に選抜された人材で構成された特殊追跡部隊デュエルチェイサーズのエース、もしくは捕縛隊という収容所脱走者追跡部隊に回される特別なカードだ。

ギャングのような非合法(トップスにとっては)の組織がそのカードを持つということはそれほどのレベルの相手を倒して奪ったということを意味する。

もしくは拾ったか…。

「そして、俺は手札から《Sp-ハーフ・シーズ》を発動。スピードカウンターが3つ以上あるとき、相手フィールド上に存在するモンスター1体の攻撃力を半分にし、その数値分俺のライフを回復させる」

《Sp-ハーフ・シーズ》のソリッドビジョンから放たれた緑色の光が《鉄鋼装甲虫》を包んでいく。

そして、その光は翔太の体に吸収されて生命力へと変わっていく。

 

鉄鋼装甲虫 レベル8 攻撃2800→1400

 

翔太

ライフ4000→5400

 

「バトルだ。俺は《ゴヨウ・ガーディアンMK-Ⅱ》で《鉄鋼装甲虫》を攻撃!」

《ゴヨウ・ガーディアンMK-Ⅱ》が投げた縄付き十手で、生命力を奪われてその場に倒れている《鉄鋼装甲虫》を拘束する。

「こいつは戦闘で破壊し墓地へ送った相手モンスターを俺のフィールド上に表側守備表示で特殊召喚できる」

 

瓜生

ライフ4000→2600

SPC3→2

 

鉄鋼装甲虫 レベル8 守備1500

 

「あの瓜生さんが先制された!?」

「シシシー…」

先制と同時に瓜生のスピードカウンターが低下したことで、取り巻き達がトーンダウンする。

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

瓜生

手札0

SPC2

ライフ2600

場 電動刃虫 レベル4 攻撃2400

  デビルドーザー レベル8 攻撃2800

  ネプチューン・ビートル レベル7 攻撃2300

  リビングレッドの呼び声(永続罠)

  伏せカード1

 

翔太

手札4→0

SPC3

ライフ5400

場 ゴヨウ・ガーディアンMK-Ⅱ レベル9 攻撃2800

  鉄鋼装甲虫 レベル8 守備1500

  伏せカード2(うち1枚《六武流剣術―真空斬》)

 

「あんの野郎…コモンズのクズのくせに…」

先制され、低下したスピードカウンターを見て瓜生がイライラし始める。

そんな自分を落ち着かせたいのか、フウウと息をする。

「俺のターン、ドロー!」

 

瓜生

手札0→1

APC2→3

 

翔太

SPC3→4

 

「俺は《電動刃虫》と《ネプチューン・ビートル》を守備表示に変更」

 

電動刃虫 レベル4 攻撃2400→守備0

ネプチューン・ビートル レベル8 攻撃2300→守備2200

 

「バトルだ!《デビルドーザー》で《鉄鋼装甲虫》を攻撃!!」

再び地中から姿を現した《デビルドーザー》が口で《鉄鋼装甲虫》を捕縛し、そのまま地中へもぐろうとする。

縄で拘束したままだった《ゴヨウ・ガーディアンMK-Ⅱ》はやむなく縄を斬って、巻き込まれるのを阻止する。

「俺はこれでターンエンド!」

 

瓜生

手札1

SPC3

ライフ2600

場 電動刃虫 レベル4 守備0

  デビルドーザー レベル8 攻撃2800

  ネプチューン・ビートル レベル7 守備2200

  リビングレッドの呼び声(永続罠)

  伏せカード1

 

翔太

手札0

SPC4

ライフ5400

場 ゴヨウ・ガーディアンMK-Ⅱ レベル9 攻撃2800

  伏せカード2(うち1枚《六武流剣術―真空斬》)

 

「俺のターン!」

 

翔太

手札0→1

SPC4→5

 

瓜生

SPC3→4

 

「バトル。俺は《ゴヨウ・ガーディアンMK-Ⅱ》で《電動刃虫》を攻撃」

《ゴヨウ・ガーディアンMK-Ⅱ》が十手を取り出すと、近くで落ちている鎖を拾ってそれに取り付ける。

そして、十手を投げて《電動刃虫》を捕縛する。

「《電動刃虫》の効果発動!このカードが戦闘を行ったダメージステップ終了時にお前はデッキからカードを1枚ドローする。さっさとドローしろ!」

「そんなことは分かってる。黙ってろ」

 

翔太

手札1→2

 

電動刃虫 レベル4 守備0

 

「ここで俺は永続罠《便乗》を発動!これで俺はこの後から相手がドローフェイズ以外にカードをドローする度にデッキからカードを2枚ドローする。《スピード・ワールド3》や《Sp-ダウン・シフト》の効果でドローしたら、俺もドローさせてもらうぜ?」

「だろうな…俺はモンスターを裏守備表示で召喚。これでターンエンドだ」

 

瓜生

手札1

SPC4

ライフ2600

場 デビルドーザー レベル8 攻撃2800

  ネプチューン・ビートル レベル7 守備2200

  リビングレッドの呼び声(永続罠)

  便乗(永続罠)

 

翔太

手札2→1

SPC5

ライフ5400

場 ゴヨウ・ガーディアンMK-Ⅱ レベル9 攻撃2800

  電動刃虫 レベル4 守備0

  裏守備モンスター1

  伏せカード2(うち1枚《六武流剣術―真空斬》)

 

「俺のターン、ドロー!」

 

瓜生

手札1→2

SPC4→5

 

翔太

SPC5→6

 

「ははは…これはいいカードを引いたぜ!俺は手札から《Sp-シルバー・コントレイル》を発動!スピードカウンターが5つ以上あるとき、俺のフィールド上のモンスター1体の攻撃力をバトルフェイズの間だけ1000アップする!」

《Sp-シルバー・コントレイル》のソリッドビジョンから放たれる銀色の光が地中に向けて放たれる。

すると、ずっとその中に隠れていた《デビルドーザー》が銀色の皮に変化しながら出てくる。

「そして、《ネプチューン・ビートル》を攻撃表示に変更!」

 

デビルドーザー レベル8 攻撃2800→3800(バトルフェイズ中のみ)

ネプチューン・ビートル レベル7 守備2200→攻撃2300

 

Sp-シルバー・コントレイル(アニメオリカ)

通常魔法カード

(1):自分用スピードカウンターが5つ以上ある場合に発動する事ができる。自分フィールド上に存在するモンスター1体の攻撃力をこのターンのバトルフェイズの間1000アップする。

 

「バトルだ!俺は《デビルドーザー》で《ゴヨウ・ガーディアンMk-Ⅱ》を攻撃!!」

銀色の光を放ちながら、《デビルドーザー》が機械化しているはずの《ゴヨウ・ガーディアンMk-Ⅱ》を丸呑みする。

「ちっ…!」

 

翔太

ライフ5400→4400

SPC6→5

 

「更に、《ネプチューン・ビートル》で《電動刃虫》を攻撃!」

巨大な《デビルドーザー》の後ろに隠れていた《ネプチューン・ビートル》が角を中心にして回転をしながら突撃する。

そして、《電動刃虫》を鎖から解き放ち、そのモンスターは《デビルドーザー》が作ったトンネルの中へ消えて行った。

「そして、《電動刃虫》の効果で俺はデッキからカードを1枚ドローするぞ。そして、カードを1枚伏せてターンエンド」

 

瓜生

手札2→1

SPC5

ライフ2600

場 デビルドーザー レベル8 攻撃2800

  ネプチューン・ビートル レベル7 守備2200

  リビングレッドの呼び声(永続罠)

  便乗(永続罠)

  伏せカード1

 

翔太

手札1

SPC5

ライフ4400

場 裏守備モンスター1

  伏せカード2(うち1枚《六武流剣術―真空斬》)

 

「俺のターン!」

 

翔太

手札1→2

SPC5→6

 

瓜生

SPC5→6

 

「俺は《六武衆の影武者》を反転召喚」

 

六武衆の影武者 レベル2 攻撃400(チューナー)

 

「そして、このカードは俺のフィールド上にほかの六武衆が存在するとき、手札から特殊召喚できる。《真六武衆―キザン》を特殊召喚!」

 

真六武衆―キザン レベル4 攻撃1700

 

「レベル4の《キザン》にレベル2の《影武者》をチューニング。シンクロ召喚!《六武将‐ザンジ》!」

オレンジ色の甲冑と2本角の兜を装備した、額に右斜めまっすぐな切傷の痕が残る武士が現れる。

甲冑は右腕が完全に露出した独特なものとなっており、右手に握られている薙刀の持ち手は白い包帯で包まれている。

 

六武将‐ザンジ レベル6 攻撃2100

 

「へっ…何かと思えば、攻撃力はたったの2100じゃねえか!」

新たなシンクロモンスターに驚いた瓜生だが、ステータスだけを見ると大したことがなかったことからにやりと笑う。

「このカードはルール上、六武衆モンスターとして扱われる。そして、俺は手札から《Sp-エナジー・チャージ》を発動。俺のスピードカウンターが4つ以上存在するとき、俺か相手の墓地からレベル4以下のモンスター1体を守備表示で特殊召喚する。俺は墓地から《六武衆の影武者》を特殊召喚!」

 

六武衆の影武者 レベル2 守備1800(チューナー)

 

Sp-エナジー・チャージ

通常魔法カード

(1):自分のスピードカウンターが4つ以上存在するとき、墓地に存在するレベル4以下のモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールド上に表側守備表示で特殊召喚する。

 

「バトル。俺は《ザンジ》で《デビルドーザー》を攻撃!」

「何!?」

「《ザンジ》は攻撃力2500以上のモンスターと戦闘を行う時、ダメージステップ終了時まで攻撃力を俺のフィールド上に存在する六武衆モンスター1体につき、400アップさせる!」

腰に折りたたんでつけられているもう1本の薙刀を左手に装備し、2刀流にスタイルを変化させる。

そして、2本の薙刀でアスファルトもろとも地中に潜む《デビルドーザー》を乱れ切りした。

 

六武将‐ザンジ レベル6 攻撃2100→2900(ダメージステップ終了時まで)

 

瓜生

ライフ2600→2500

 

六武将‐ザンジ

レベル6 攻撃2100 守備1800 シンクロ 光属性 戦士族

戦士族チューナー+チューナー以外の「六武衆」モンスター1体以上

このカードはルール上「六武衆」カードとしても扱う。

「六武将‐ザンジ」は自分フィールド上に1体しか存在できない。

(1):このカードが攻撃力2500以上のモンスターと戦闘を行う時、ダメージ計算開始前に発動する。ダメージステップ終了時までこのカードの攻撃力は自分フィールド上に存在する「六武衆」モンスターの数×400アップする。

(2):自分フィールド上に「六武将-ザンジ」「六武衆―ザンジ」以外の「六武衆」モンスター存在する場合、

このカードが相手モンスターを攻撃したダメージステップ終了時に発動する。そのモンスターを破壊する。

(3):フィールド上に表側表示で存在するこのカードが破壊される場合に発動できる。代わりにこのカード以外の自分フィールド上に表側表示で存在する「六武衆」モンスター1体を破壊できる。

 

「くそぅ…!!」

《デビルドーザー》は破壊されたものの、まだ瓜生のフィールドには《ネプチューン・ビートル》が存在する。

《六武将-ザンジ》の攻撃力アップの効果は攻撃力2500以上のモンスターと戦う時にしか発動できない。

ただし、攻撃はできるものの更にフィールド上には《六武衆の影武者》が存在し、身代わりにされる可能性がある。

更にいうとこのカードはチューナー、ということは…。

「俺は更にレベル6の《ザンジ》にレベル2の《影武者》をチューニング。シンクロ召喚!現れろ、《六武将-ニサシ》!!」

《六武将-ザンジ》と入れ替わるように現れた新しい六武将。

容姿こそは《六武衆―ニサシ》とそっくりであるものの、露出していた腕は灰色に服で隠され、背中には船の櫂のような形の斧が新たに装備されている。

そして、顔についた複数の傷痕が多くの戦いを経験したことを連想させる。

 

六武将-ニサシ レベル8 攻撃1700

 

「このカードはシンクロ素材とした六武衆モンスター1体の攻撃力の半分を得る。《ザンジ》の攻撃力は2100。よって、1050アップだ!」

 

六武将-ニサシ レベル8 攻撃1700→2750

 

六武将-ニサシ

レベル8 攻撃1700 守備1000 シンクロ 風属性 戦士族

戦士族チューナー+チューナー以外の「六武衆」モンスター1体以上

このカードはルール上「六武衆」カードとしても扱う。

「六武将‐ニサシ」は自分フィールド上に1体しか存在できない。

(1):このカードがS召喚に成功した時、S素材となった「六武衆」モンスター1体を対象に発動できる。このカードの攻撃力はそのモンスターの元々の攻撃力の半分の数値分アップする。

(2):自分フィールド上に「六武将-ニサシ」「六武衆―ニサシ」以外の「六武衆」モンスターが存在する場合、

このカードは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃する事ができる。

(3):フィールド上に表側表示で存在するこのカードが破壊される場合に発動できる。代わりにこのカード以外の自分フィールド上に表側表示で存在する「六武衆」モンスター1体を破壊できる。

 

「攻撃力2750の2回攻撃モンスターだと!?」

「俺はこれでターンエンド。どうした?この程度で元プロデュエリスト候補生のトップスかよ?笑わせてくれるぜ」

 

瓜生

手札1

SPC6

ライフ2500

場 ネプチューン・ビートル レベル7 守備2200

  リビングレッドの呼び声(永続罠)

  便乗(永続罠)

  伏せカード1

 

翔太

手札2→0

SPC6

ライフ4400

場 六武将-ニサシ レベル8 攻撃2750

  伏せカード2(うち1枚《六武流剣術―真空斬》)

 

(ふざけるなよ…この俺が…トップスがコモンズに負けるなんてありえねー…)

自分にとって、トップスとコモンズは絶対に覆すことのできないコインの表裏。

ただしそれは逆に言うと、コモンズ相手とのデュエルでは絶対に負けてはならないという重荷。

それが瓜生の心を迷走させていく。

「ふざけるなふざけるなふざけるなぁーーー!!俺のターン、ドロー!!」

 

瓜生

手札1→2

SPC6→7

 

翔太

SPC6→7

 

「俺は《ネプチューン・ビートル》をリリース!《ミレニアム・スコーピオン》をアドバンス召喚!」

背中部分に複数の目が縦線を描くようについていて、額部分には千年眼の模造品がついている黒い蠍が現れる。

 

ミレニアム・スコーピオン レベル5 攻撃2000

 

ネプチューン・ビートル

レベル7 攻撃2300 守備2200 シンクロ 水属性 昆虫族

(1):このカードのS召喚に成功した時に発動できる。デッキから昆虫族モンスター1体を手札に加える。

(2):このカードが相手モンスターの攻撃によって破壊され墓地へ送られた時に発動する。自分はデッキから昆虫族モンスター1体を墓地へ送る。

 

「そして、俺は手札から《Sp-デッド・フュージョン》を発動!」

「融合召喚…だと!?」

再び現れた融合召喚に翔太が動揺する。

そんな彼を見て瓜生は笑い始める。

「ハハハハ!!驚いただろ?これがトップスの力、お前らには絶対に与えられねー力だ!!俺のスピードカウンターが7つ以上あるとき、俺のフィールド上にセットされているカード1枚を墓地へ送ることで発動!俺のフィールド・墓地に存在するモンスターを素材に融合召喚できる。そして、融合素材となったモンスターは除外される!俺が融合素材とするのは《電動刃虫》、《代打バッター》、《ネプチューン・ビートル》、《スイッチバッター》、《ネプチューン・ビートル》!!」

地中から出てきた5匹の昆虫族が上空に現れる融合の渦に溶け込まれていく。

「悪魔の名を与えられし蠅の王よ!その英知で愚民どもを導け!融合召喚!レベル10!《失楽魔虫ベルゼビュート》!!」

融合の渦から出てきたのは目や口から黒い炎を放ち、魔法陣が刻まれた羽を持つ巨大な蠅。

足の一本一本が鋭い刃となっており、血がこびりついている。

 

失楽魔虫ベルゼビュート レベル10 攻撃3200

 

墓地へ送られた伏せカード

・トラップ・スタン

 

Sp-デッド・フュージョン

通常魔法カード

(1):自分のスピードカウンターが7つ以上存在するとき、自分フィールド上にセットされているカード1枚を墓地へ送ることで発動できる。自分フィールド上・墓地から融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを除外し、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

「気持ち悪い蠅だ…」

フィールド上に出現した蠅の王に白い目を向ける翔太。

そんな彼に対し、瓜生はこの融合モンスターの効果を説明する。

「《ベルゼビュート》の効果!こいつは1ターンに2度攻撃することができる!」

「ちっ…こいつも《ニサシ》と同じ効果か…!」

「さあ、せっかく出てきた将軍には退場してもらうぜーーー!!」

《失楽魔虫ベルゼビュート》の口から黒い炎が放たれる。

「罠発動!《六武流剣術―真空斬》!六武衆への攻撃を無効にする!」

しかし、《六武将-ニサシ》は背中に刺していた斧を手にとり、大きく振るうことで風を起こしてその炎をかき消す。

「発動したな…今、魔法・罠カードを発動したなーーー!!《ベルゼビュート》の効果発動!相手が俺のターンの間に魔法・罠カードを発動した時、相手フィールド上に存在するカード1枚を破壊できる!この効果の発動に対して、相手はカード効果を発動できない!!」

「何!?」

《失楽魔虫ベルゼビュート》の羽の魔法陣が白い光を放ち、地面に揺れが発生する。

そして、わずか2,3秒もたたないうちに《六武将-ニサシ》の足元から火柱が発生する。

「ぐ、くう…(この暑さ…実体化しているのか!?)」

よく見ると、炎の影響で火柱の近くに放置されているガラスの破片が溶けている。

ガラスの溶ける温度は600度から700度程度。

仮にこの火柱の近くにいたら、焼け死ぬのは確実だ。

(あの炎をまともに受けるわけにはいかないな…!)

「忘れるなよ?《ベルゼビュート》は2回攻撃できるんだ!さあ、あの生意気なコモンズを焼いちまえーーー!!」

《失楽魔虫ベルゼビュート》の口から再び放たれる黒い炎。

その炎が翔太を飲み込んでいく。

「ぐおおおおお!!!」

 

翔太

ライフ4400→1200

SPC7→3

 

「ハハハハ…気持ちいいぜ。生意気な奴を焼くっていうのはなー!さあ、とどめを刺すぜ…《ミレニアム・スコーピオン》でダイレクトアタック!!」

黒い炎が消え、マシンキャバルリーが走っているのを瓜生が確認する。

車体にはダメージがないものの、翔太の体にはいくつか火傷がある。

「攻撃宣言の直前に、俺は罠カード《ショック・ドロー》を発動する!こいつの効果で俺はこのターン受けたダメージ1000毎に1枚カードをドローする。よって、俺はカードを3枚ドローする!!」

生存の望みをかけ、3枚のカードをドローする。

そして、彼に対して天から蜘蛛の糸が降りる。

「そして、俺は《ミレニアム・スコーピオン》の攻撃に対し、手札から《紫炎の防人》の効果を発動する!こいつは俺のフィールド上にモンスターが存在せず、相手の直接攻撃宣言時に手札から墓地へ送ることで、俺の墓地に存在するレベル4以下の六武衆モンスター1体を特殊召喚し、バトルフェイズを終了させる!」

奈良時代の防人を彷彿させる白いダボダボな服の上に黒い銅丸をつけた、ポニーテールの若者が地面に向けて矢を放つ。

矢が刺さった場所に黒い魔法陣が生まれ、その中から《六武衆の九ノ一》が現れ、煙球を投げる。

煙によって視界を封じられた《ミレニアム・スコーピオン》は急いで瓜生のそばまで戻っていく。

 

六武衆の九ノ一 レベル3 攻撃1200(チューナー)

 

紫炎の防人

レベル1 攻撃300 守備400 効果 地属性 戦士族

「紫炎の防人」の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、相手の直接攻撃宣言時にこのカードを手札から墓地へ送ることで発動できる。自分の墓地に存在するレベル4以下の「六武衆」モンスター1体を特殊召喚し、バトルフェイズを終了させる。

 

「ふん!モンスター効果なら《ベルゼビュート》の効果は発動できない。俺はここで《スピード・ワールド3》の効果を発動!スピードカウンターを6つ取り除き、デッキからカードを1枚ドローする。俺はこれでターンエンドだ」

 

瓜生

手札1

SPC7→1

ライフ2500

場 ミレニアム・スコーピオン レベル5 攻撃2000

  失楽魔虫ベルゼビュート レベル10 攻撃3200

  リビングレッドの呼び声(永続罠)

  便乗(永続罠)

 

翔太

手札0→3→2

SPC3

ライフ1200

場 六武衆の九ノ一 レベル3 攻撃1200(チューナー)

 

失楽魔虫ベルゼビュート

レベル10 攻撃3200 守備3000 融合 炎属性 昆虫族

昆虫族モンスター×5

このカードは融合召喚でのみ特殊召喚できる。

(1):このカードは1度のバトルフェイズ中に2度攻撃することができる。

(2):このカードは魔法・罠カードの効果では破壊されない。

(3):自分のターン、相手が魔法・罠カードを発動した時に相手フィールド上に存在するカード1枚を対象に発動できる。そのカードを破壊する。この効果の発動に対して、相手は魔法・罠・モンスター効果を発動できない。

 

「ちっ…《ベルゼビュート》の攻撃で一気にスピードカウンターが…」

大ダメージが原因でスピードカウンターを4つも失ってしまった。

次のターンに増加するものを含めると、翔太のスピードカウンターは4つ。

これではドロー効果を発動することもできない。

「気持ち悪いことをしやがる…ま、できればあの融合モンスターと《融合》を奪っておきてえ…。俺のターン!」

 

翔太

手札2→3

SPC3→4

 

瓜生

SPC1→2

 

ドローしたカードをゆっくりと自分の目の前まで持っていく。

「(よし…!)俺は手札から《六武衆の師範代》を特殊召喚!こいつは俺のフィールド上に六武衆が存在するとき、手札から特殊召喚できる」

 

六武衆の師範代 レベル5 攻撃2100

 

「レベル5の《師範代》にレベル3の《九ノ一》をチューニング。シンクロ召喚!現れろ、《ギガンテック・ファイター》!」

 

ギガンテック・ファイター レベル8 攻撃2800

 

「このカードの攻撃力は俺とお前の墓地に存在する戦士族モンスター1体につき、100アップする。墓地に存在する戦士族モンスターは11体」

 

ギガンテック・ファイター レベル8 攻撃2800→3900

 

「攻撃力3900!?」

「更に俺は手札から《Sp-バーニング・エンジン》を発動!俺のフィールド上に存在するモンスター1体にターン終了時まで効果を与える。その効果は…戦闘で破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与える!!」

「何!?」

《ギガンテック・ファイター》の背中に明々と燃え上がる大型のエンジンが取り付けられる。

それと同時にそのモンスターの体全体が炎に包まれていく。

「バトルだ!俺は《ギガンテック・ファイター》で《ベルゼビュート》を攻撃!!」

《ギガンテック・ファイター》が高く飛びあがり、右拳に力を込める。

そして、そのまま《失楽魔虫ベルゼビュート》の背中に拳を叩き込んだ。

拳から炎が蠅の王の肉体に移っていき、火だるまへと変えていく。

そして、王であったその火だるまは瓜生に向けて落下していく。

「バ…バカな!?俺が…こんな…うわあああああ!!!!」

 

瓜生

ライフ2500→1800→0

 

Sp-バーニング・エンジン

通常魔法カード

(1):自分のスピードカウンターが4つ以上存在するとき、自分フィールド上に存在するモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターはターン終了時まで以下の効果を得る。

●このカードが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える。

 

デュエル終了と同時に翔太はマシンキャバルリーを反転させ、Dホイールが強制停止した瓜生のそばまで行く。

そして、フィールドにとどまっている《失楽魔虫ベルゼビュート》を手にとり、彼のデッキを取る。

「ちっ…1枚…いや、3枚は手遅れだったか」

墓地にあった《Sp-デッド・フュージョン》とデッキにあると思われる《Sp-スピード・フュージョン》は白紙と化していた。

翔太の左手に握られている《失楽魔虫ベルゼビュート》は消滅せずに残っていた。

証拠となりうるカードを手に入れることができなかった翔太は悔しさをぶつけるかのように気絶している瓜生の顔面を殴る。

「グハァ!!何しやがる!!?」

殴られ、鼻血を出しながら瓜生が意識を取り戻す。

「このカード、どこで手に入れた?」

《失楽魔虫ベルゼビュート》だったカードを見せながら、瓜生に質問する。

「こ、答えられるかよ!?そんなの!!」

「答えないなら、お前のDホイールとデッキ、そして有り金をもらう!!」

「わ、分かった…。話す!話…!?」

空気を切るような音が聞こえ、それと同時に瓜生の頭に何かが刺さる音がする。

それと同時に彼の瞳孔が開き、そのまま唾をたらしながら首を倒した。

彼のこめかみにはクロスボウの矢が刺さっていた。

「ちっ…口封じかよ」

クロスボウが放たれたと思われる建物に目を向け、その中を探すが、既にもぬけの殻だった。

「チームブレイドの言い分が正しいとすると、おそらくは出所はチームオーファン…もしくはセキュリティ。ということは、そいつらの口車に乗せられて俺を倒しに…。だが、なぜ奴もろとも俺を殺さなかった…?」

瓜生ならば、この疑問に答えることができるかもしれないが、もう彼は死んでいる。

あとは工場にいる取り巻きの2人に当たる必要がある。

「…。とにかく、当分はギャングとして活動するしかないってことだな」

 

「そうか…瓜生の野郎はしくじったか…」

(はい、証拠となるものはすべて処分しました。また、瓜生及びその取り巻き2人の始末も完了しました)

「分かった、死体は俺が裏取引してセキュリティに献上する。改造でも何でも好きに使ってもらうってことで…な。じゃ」

真っ暗な部屋の中で電話を切り、机の上にあるろうそくに火をつける。

オレンジ色のメガネをかけた、茶色いソフトモヒカンで色黒な肌の男の姿が炎によって照らしだされる。

「秋山翔太…か。なるほど、あの野郎が興味を持つだけのことはある」

そう言いつつ、懐から1枚のカードを取り出す。

「だが…悪いがこの次元は渡さねえよ。お前にも…あの野郎にもな…」



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第54話 ビャッコの恩返し?

フアア…。

んー、よく眠ったなー。

「スースー…」

あ、伊織はまだ寝てる。

オイラはそっと肉球を伊織のほっぺにあてる。

「おはよ、伊織」

あ…今これは別の小説だと思って戻ろうとした人、ちょっと待って。

オイラだよ、オイラ。

隣のベッドで寝てるご主人様、秋山翔太の精霊のビャッコだよ。

作者さんが強権を発動して、みんなにだけオイラの言葉がわかるようにしてるんだ。

そういえば、セラフィムはどこにいるのかな?

窓が開いてるから、そこからトレーラーを飛び出そっと。

午前6時だから、ちょっと暗いなー。

「キュイキュイーー!(おーい、セラフィムー!)」

外に出たオイラは空を飛んでるセラフィムに声をかける。

「あ…ビャッコさん、おはようございます」

わざわざ空から降りてきて、オイラを持ち上げて同じ目の高さにしてから挨拶…。

こういう礼儀をご主人様もわかればいいのに。

あ、そうだ!!

「キュイー!(セラフィム、お団子食べよ!)」

「わぁ…みたらし団子!いつもありがとうございます」

ランドセルから出したみたらし団子をセラフィムがおいしそうに食べてくれる。

ん…?オイラのランドセルの中がどうなってるかって?

それは…まだまだ秘密!

「ああ、そうだ。ビャッコさん。ちょっとお手伝いしていただけますか?」

お手伝い?

何をするんだろう?

 

「ええっと、昨日翔太さんが入手した2台のDホイールのうち1台は解体して、モーメントだけ売却して、もう1台の方には修理をするからそのパーツの不足部分の購入費用は…」

あ、柚子がまた外で経理の勉強をしてる。

いつも頑張ってるなー、応援してるから、頑張ってね。

「ビャッコさん、これを」

セラフィムと一緒にキッチンに入り、指を指したのは小さなお皿。

なーるほど、セラフィムがやりたいことは…。

それが分かったオイラは戸棚を開けて、小さなお皿を出した。

そしてランドセルからみたらし団子を出して…。

うーん、早くコモンズにみたらし団子屋さんできないかなー?

「ビャッコさん、今の内に持っていきましょう。ほら…」

柚子が居眠りしてる…。

そういえば、いっつも経理の勉強と実践をしてるからほとんど寝てないんだっけ?

ちょっと心配だなぁ。

「キュイー…(柚子、これを食べて疲れをとって)」

「んん…遊矢…」

寝言で遊矢の名前…。

すっごく心配してるんだ。

こうなったら早く遊矢と合流できるようにオイラも頑張らないと。

「お金…」

あ、あれ??二言目の寝言はお金!?

き…聞き間違い、聞き間違いだよね?

きっと…もしかしたら、多分…。

 

それから少し時間がたって、朝ご飯を食べた後、ご主人様たちがトレーラーから荷物を出し始めた。

ええっと、確か昨日ある程度完成した宿舎に移るんだっけ?

トレーラーの前線基地としての機能は残したままで。

これで伊織達、ゆっくり休めるかなぁ?

トレーラーの中だとカーテンで仕切らないといけないから、漁介のいびきがうるさくてうるさくて。

ちなみにオイラは天井でセラフィムと話してるよ。

「それにしても、伊織様はもうちょっとなんというか、デリカシーがないと…。今朝は寝ぼけてパジャマのボタンが4つくらい外れた状態でベッドから出て、翔太さん達を起こそうとしてましたし…」

こうして、セラフィムの愚痴を聞くのがオイラの日常。

それにしても、セラフィムってオイラの言葉分かってるのかな?

ええっと…。

「キュイー…(ちょっと暑いなー…)」

「確かに暑いですよね。そういえば、舞網チャンピオンシップが始まったころは夏休みに入ってましたし…ってビャッコさん!!」

ありがとう、セラフィム!!

オイラの言葉を分かってくれたー!

オイラは嬉しくなってセラフィムに抱きつく。

「あ…ビャッコさんを抱いてると暖かい…。うーー、モフモフしたくなるーー!」

うーん、伊織にも何度か抱かれてるけど、ちょっと硬い感じがする。

やっぱり伊織と比べてセラフィムは胸が小さ…。

「…?ビャッコさん、どうかしましたか?」

あ…これ以上言うのはやめて方がいいかも。

だって、友達を傷つけたくないし。

「まぁ、いいや。…そーれモフモフーー!」

セラフィムがオイラのお腹に顔をうずめたり、なでたりして楽しみだした。

楽しんでくれるのは嬉しいけど、オイラに向けてくしゃみするのだけは勘弁してね。

 

引っ越し作業が終わると、みんなギャングとしての仕事を始めた。

ご主人様たち男性陣は昨日手に入れたDホイールの修理状況を見に行った。

伊織達女性陣はお買いもの。

今アジトにいるのは柚子とジョンソンだけ。

セラフィムは伊織についていっちゃったから、オイラは町でお散歩中。

今どの地区にいるかはわからないけど、帰り道は分かるから大丈夫!

「キュイキュイー…(何か面白いものがないかなー?)」

ランドセルから出した三度笠をかぶって歩いていると、道路の端を歩いている野良猫を見つけた。

その猫の体毛は灰色で、ちょっと太ってるかな?

あ…このままの姿だと不味いかも。

「キュイ!!(変身!!)」

葉っぱを頭に乗せて一回転!

オイラの姿は一瞬で白猫に。

「ニャーニャー(ねえねえ!)」

「ニャー?(ん?なんだよお前。見ない顔だなー?)」

野良猫がオイラの下へ近づいてくる。

「ニャニャーン(最近この町に来たばかりなんだ)」

「ニャオン?(なるほどな、で、名前は?)」

「ニャオニャオー(オイラの名前はビャッコだよ)」

「ニャー(ビャッコ?白い狐か。変わった名前だなぁー。俺の名前はズブ。この町で野良猫暮らしを始めて早3年ってところだな)」

3年も生活しているということは、もしかしたらここについていろいろ知ってるかも!

ちょっと情報集めしてみようかなー?

あ…子供たちが来る!

「うわぁー猫が2匹いるぞー!」

紫色のシャツと茶色いベスト、青いズボンを穿いた緑色の髪の男の子がオイラ達のことを仲間の2人の子供に伝えてる。

すると、今度は赤いお団子が両サイドに2つついているような髪型で赤いドレスを着た女の子と白いボンボンがついた黄色い、小学生が付ける学生帽のような帽子をつけた、青い服の男の子が走ってくる。

背丈だけを見ると、最初に着たあの男の子が一番高くて、もしかしたらこの子が3人の中ではリーダーなのかな?

3人とも腰から磁石を引きずっていて、磁石にはクギやDホイールの破片といった鉄くずがついてる。

「可愛いー」

「ねえねえ、この子達にエサをあげない?」

「今ある鉄くずなら…そうだな!ミルクなら買える!」

磁石についた鉄くずを袋に入れ、女の子がオイラの頭をなでる。

気持ちいいなぁー、まるで伊織に撫でられてるみたいだなぁー。

「私はアマンダ。あの緑色の髪の男の子がフランクで、黄色い帽子の男の子がタナーよ。よろしくね」

「ニャーン(ミルクかぁー。いいのかなー?)」

よく見ると、アマンダの服、いくつがツギハギがある。

ご主人様たちの話によると、コモンズって貧しい人たちがいっぱいいるんだったっけ?

モハメドおじさんや仲間になってくれたギャングの人たちが集めた情報をもとに、抗争や商売で手に入ったお金を工場やお店とかに投資してるけど、この子達がスタンダード次元の施設にいるあの子達みたいな暮らしができるようになるのはいつになるんだろう…?

「ニャーオ(難しい顔をしているな、ビャッコ)」

あ…ズブがタナーに高い高いされてる。

「ニャオニャー(いいんだよ。俺たちとこうして触れ合う、それだけでもこいつらにとって救いになる。辛い日々の暮らしを忘れられるんだ)」

「ニャー…(ズブ…)」

「2匹とも可愛いなー。早くミルク買いに行こうよー。フランク、アマンダ」

「ああ!だったら、旧レクス区の市場で買おうぜ!この辺の闇市よりも安くミルクが買えるし、鉄くずももしかしたら高く買い取ってくれるかもしれない」

「行きましょう、旧レクス区へ!」

アマンダがズブ、タナーがビャッコを抱え、フランクは3人分の鉄くず入りの袋を手にする。

「重…!!はぁ…ここから旧レクス区の市場まで20分くらい…。はぁ…」

 

「おお…玉石混交の鉄くずを合計20キロか…待ってろ」

スキンヘッドで180センチくらいの大きさのおじさんがフランク達のくず鉄を持って行って、見積もりを始めてる。

それにしても、旧レクス区の修理中の工場には初めて来たなぁー。

ご主人様とモハメドおじさんが話してたけど、ここは将来車を作る工場になるんだって。

できたら、見てみたいなー!

あ…見積もりが終わって戻ってきた。

「御苦労さん。また集まったら持ってきてくれよ」

渡されたお金は約200イェーガー。

そういえば、スクラップ込の鉄くずの相場は1キロ5円だったっけ?

円とイェーガーは同じ価値だから…。

「うーん、これだけだとこいつらのミルク、あんまり買えないな…」

「どうしよう…」

今、旧レクス区の200mlの瓶牛乳の値段が1本140イェーガー。

この程度のお金だとそれが限度。

「こうなったら、もう1度トップスへ行って、いろいろ盗んで…」

「ん…?フランク、アマンダ、タナーか!?」

今度は紫に近い青色での髪でピアスをつけたお兄さんがびっくりしながらオイラ達のところに来た。

青いライディングスーツ姿だけど、手には少しほころびがある軍手をつけてる。

「シンジ兄ちゃん!!」

3人とも、あのお兄さんに駆け寄った。

あの人と知り合いなのかなぁ?

「ニャーゴ(あいつか?あいつはシンジ・ウェーバー。こいつらの知人だ)」

「ニャ??(え?ズブ、知ってるの?)」

「ニャーオ(ああ)ニャニャオニャーゴ(仲間の野良猫から聞いた話によるとな、こいつはたまに菓子を持ってこいつらのところまで行くみたいだ)ニャーニャ(前まではほかの地区の闇市でくすねてたみてえだが、最近はここで働き始めて、その給料で買うようになったみたいだ)」

「ニャニャー…(へぇ…ねえねえ、ズブってどうやって仲間と情報交換してるの?)」

「ニャー…ンニャーオ(いつもは鷹栖区に集まるが、最近はこの旧レクス区の公園に集まるようになってる。お前もよかったら来ねえか?新参者なら、ちゃんとここの野良たちにあいさつするってのが筋だぜ)」

野良猫たちからの情報集めかぁ…。

もしかしたら、オイラ達の知らない情報が手に入るかも。

ここにきて、まだ長いわけじゃないから、シンクロ次元の情報を一杯手に入れなきゃ。

そしてら、伊織達のためになって…。

「ニャゴー(どうすんだ?集まりに来るか?)」

「ニャー!(うん!紹介はお願いね!)」

「おーい、ミルク買いに行くよー!」

タナー達が出口でオイラ達を待ってる。

シンジってお兄ちゃんが一緒だから、もしかしたらこの人がミルク代を出してくれるのかな?

 

「はいよ、瓶牛乳2つ。280イェーガーだ」

「ありがとな。ほら」

代金を支払い、真っ白な髭でいっぱいな顔のおじいちゃんから牛乳を買ったシンジがフランク達の牛乳を渡した。

工場の中に購買があって良かったー。

すると、アマンダが行きがけで拾って、水で洗ったお皿に牛乳を入れてオイラ達の前に置いてくれた。

「ニャーン…(ありがとう、フランク、アマンダー、タナー)」

オイラ、人間の言葉は話せないから、こうして鳴き声でしかお礼を言うことができない。

けど、3人とも嬉しそうにしていて、タナーがオイラの頭をなでてくれた。

「ニャフー…(頭をなでてもらえると気持ちいいなぁー…)」

「ニャーオ(ふう、ミルクを飲んだことだし、俺はここで失礼させてもらうぜ)」

自分の文のミルクを飲み終えたズブがここを出ようとする。

すると、急にオイラに目を向けてこういったんだ。

「フニャー(今度は本当の姿で俺に会ってくれよ、狐さんよ)」

あ…オイラの正体が狐(正確に言うと狐の姿をした精霊なんだけど)だってこと、ばれてた?

「オラァ!!」

ガシャーンっていう大きな音と一緒に男の人の大声が聞こえた。

もしかして、また嫌がらせかな?

「くっそ…!また嫌がらせの奴らかよ!」

シンジが舌打ちをして、フランク達を工場の奥へ避難させてる。

それにしても、またって言ってたけど、これって珍しい事じゃないということなのかな?

ちょっと確かめないと!!

 

「おいてめぇら…さっさとここをやめちまえ!!」

「そうだ!!そうしねえと…これみたいになっちまうぜ?」

左腕に蝙蝠の入れ墨をつけたスキンヘッドのおじさん2人が鉄パイプで叩き壊した機械の一部を投げる。

この2人だけじゃなくて、警備をしていた人たちの話によると今8人近くのギャングが工場の外にいる。

そして、10人近い人数での嫌がらせは今回が初めてとか…。

工場で働いている人たちはおびえてるけど、1人だけあのギャングのおじさんの前に出てるお兄さんがいる。

オレンジ色のトゲトゲ頭で、おでこにMって文字のような形をしたマーカーを中心に顔中にマーカーがいくつもついている人で、茶色い袖なしジャケットと黄色いシャツ、それに緑色のズボンを着てるんだ。

「おいおい、あんたらチームオーファンにつぶされたチームの生き残りじゃねえか?」

「あん??そういうお前はギャングから夜逃げした腰抜けの一匹狼、クロウ・ホーガンじゃねえか!」

腰抜け?一匹狼??

うーん、この人そんなふうには見えないけど…一匹狼を除いて。

ただ、あのクロウってお兄ちゃんは特に反論せずに睨んでるだけ。

「反論できねえってことは…噂通りなんだな!さっさとここの労働者もろとも失せ…」

コツンとおじさんの頭に小石が当たる。

もしかして…ああ、やっぱり!!

「や、やめろぉ!!」

「クロウ兄ちゃんは腰抜けじゃない!」

フランクとタナーだ。

まずい…まずい!!

「フランク、タナー!!」

「お前ら、勝手に出ていきやがって…!」

アマンダとシンジも…。

うわわわ、おじさん達が怒ってる!

「おい小僧…この石の落とし前、どうすんだ?」

2人が投げた小石を手にとって、近づいてきてる。

「フランク、タナー逃げて!」

「嫌だ!」

「あいつはクロウ兄ちゃんをバカにしたんだ!えい!!」

タナーがまた石を!!

そういえば、クロウもフランク達の知り合いだったんだ。

「おい…なめんじゃねえぞコラァ!!」

あ!!おじさんが石を投げた!

急いで助けないと!!

おいしいミルクの恩返しを…あ!!

「クロウ…!?」

「クロウ兄ちゃん…!?」

3人をかばったクロウの額から血が出てる…。

そのせいが左目が赤くなってるけど、目つきが変わってる。

「てめえ、俺のことはいくらでも馬鹿にしてもいいけどよぉ…ガキどもに手え出すんじゃねえよ!!」

わあ、クロウの右ストレートがおじさんの頬に直撃!!

倒れたおじさん、鼻血出てるけど大丈夫かな?

あ…それよりも…。

「ニャー!(クロウ、これ!)」

「ん?なんだぁ、この猫?絆創膏持ってんのかよ???」

鞄から出した絆創膏を不思議そうに見てる。

けど、この絆創膏はただの絆創膏じゃなくって…オイラ特製のもの!

「これを俺にくれるってのか?」

「ニャン!(うん!)」

「ああ、ありがとな。猫助」

勝手に名前つけられちゃったけど、猫助ってストレートな…。

それにしても、1つだけでちゃんと止血できた。

ちょっと大きめな絆創膏で良かった。

「お前ら、ギャングでもデュエリストだろ?だったら、俺とデュエルしろ!!2人まとめて相手になってやる!」

「はぁ?デュエルだと?」

「そうだ!お前らが勝ったら、何でもいうことを聞いてやる!だが、俺が勝ったらここを出て行ってもらう!」

え、えええええ!!?

警備の人たちは外での対応で手に負えないし…うう、ご主人様急いできてーーー!!

「へっ…いいぜ。この工場はできればこのままそっくり金にしてえからな…。お前が負けたら、工場をもらう。これでいいならデュエルをしてやってもいいぜ?」

ちょっとちょっと!!

そんな勝手に決めたらだめだよーー!

クロウ、断…。

「いいぜ、その条件で受けて立ってやる!」

応じちゃったよー!

こうなったら、早くご主人様を迎えに行かなきゃ!

オイラは工場を出て、急いでアジトへ戻った。

(ここからは元の文章に戻ります)

 

デュエルの準備を終えたクロウと2人のスキンヘッドが対峙する。

「クロウ。俺は参加しなくていいのか?」

「これは俺が買った喧嘩だ。それに…」

じっと工場にいる人たちと中にある、修理を終えたばかりの設備の数々を見る。

「(仮に負けたとしても、その責任は俺1人で背負うことができる。かなりのケジメをつけさせられるかもしれねえがな…)2人まとめて相手すんだ。俺はライフ8000からいかせてもらうぜ」

「別にかまわねえよ。さあ、始めようぜ?お前にとっての…人生最後のデュエルをな」

(人生最後のデュエルだと?どういうことか知らねえが、ガキどもに手を出そうとして、工場で騒ぎを起こした落とし前をつけさせてやるぜ!)

「「デュエル!!」」

 

クロウ

手札5

ライフ8000

 

スキンヘッドA&B

手札

A5

B5

ライフ4000

 

「俺が先攻だ!俺は手札から永続魔法《黒い旋風》を発動。俺のフィールド上にBFが召喚された時、デッキからそのモンスターよりも攻撃力の低いBF1体を手札に加えることができる!そして、俺は手札から《BF-精鋭のゼピュロス》を召喚!」

 

BF-精鋭のゼピュロス レベル4 攻撃1600

 

「そして、《黒い旋風》の効果により俺はデッキから《BF-疾風のゲイル》を手札に加える。そしてこいつは俺のフィールド上に《ゲイル》以外のBFが存在するとき、手札から特殊召喚できる!」

《BF-精鋭のゼピュロス》が背中の黒い翼を大きく羽ばたかせる。

すると、彼の目の前に黒く染まった旋風が発生し、その中から《BF-疾風のゲイル》が飛び出す。

 

BF-疾風のゲイル レベル3 攻撃1300(チューナー)

 

「レベル4の《精鋭のゼピュロス》にレベル3の《疾風のゲイル》をチューニング!漆黒の翼翻し、雷鳴と共に走れ!電光の斬撃!シンクロ召喚!降り注げ、《ABF-驟雨のライキリ》!!」

《ABF-驟雨のライキリ》のカードがエクストラデッキから排出され、デュエルディスクに置かれると同時に工場の上空に雷雲が発生する。

そして、《BF-精鋭のゼピュロス》と緑色の光を放つ《BF-疾風のゲイル》が天井を突き破ってその雲の中に突入した。

 

「雷雲?今日の天気は晴れじゃなかったのかよ?」

ビャッコに呼ばれ、マシンキャバルリーに乗って現場へ急ぐ翔太の目にも雷雲が映っていた。

背中にはリュックサックがあり、その中にビャッコがいる。

「キュイキュイーーー!!」

「うるせえな、急いでいるから団子喰って待ってろ」

「キュイ!」

リュックサックの中で頷いたビャッコはランドセルから出したみたらし団子を食べ始めた。

 

雷雲の中、《BF-疾風のゲイル》が3つの緑色のリングとなり、その中をくぐった《BF-精鋭のゼピュロス》が4つの白い星となる。

一瞬、それが強い光を放った後で雷雲が真っ二つに切り裂かれる。

切り裂かれた雷雲の中から飛び出したのは左の翼は先ほどのBF同様に烏を模した黒い翼だが、右の翼が機械化していて、紫色の烏を模した鎧とヘルメットを装備した人型モンスターだ。

右手に握られている太刀と上半身の左半分、そして両腕と右足を包む紫色の鎧はこれまでのBFと異なる新たな姿であることを示している。

 

ABF-驟雨のライキリ レベル7 攻撃2600(チューナー)

 

「いきなり《驟雨のライキリ》だと!?」

《ABF-驟雨のライキリ》の登場にシンジと3人の子供以外の周囲が騒然とする。

珍しいカードであるということがあるのかもしれないが、それ以上にある程度名の知れているカードであることもその理由かもしれない。

「こいつはBFを素材にシンクロ召喚した場合、チューナーとして扱われる。そして俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド!」

 

クロウ

手札5→2

ライフ8000

場 ABF-驟雨のライキリ レベル7 攻撃2600(チューナー)

  黒い旋風(永続魔法)

  伏せカード1

 

スキンヘッドA&B

手札

A5

B5

ライフ4000

場 なし

 

「ハッ!チューナーになったってだけで何だ!俺のターン、ドロー!」

 

スキンヘッドA

手札5→6

 

「俺は手札からフィールド魔法《脳開発研究所》を発動。こいつは通常召喚に加えてもう1度だけ手札のサイキック族モンスターを召喚できる。その時、このカードにはサイコカウンターが1つ乗る。更に俺がサイキック族モンスターの効果を発動するためにライフを支払う場合、代わりにこのカードにサイコカウンターを1つ乗せることができる!これで俺はライフコストを気にせずサイキック族モンスターの効果を使えるってわけだ!俺は手札から《強化人間サイコ》を召喚!」

 

強化人間サイコ レベル4 攻撃1500

 

「更に早速俺は《脳開発研究所》の効果を使わせてもらうぜ!」

彼の背後に現れた巨大な円柱型水槽の中に緑色の水が溜まり、更に中には人間の脳を模したカウンターが1つ入る。

「《サイコジャンパー》を召喚!」

肩の部分に銀色の棘が1つずつついた茶色いボタンが外れたコートを着た紫色でほっそりとした体の男が出てくる。

鼻よりも上は針が何本も付いたヤドカリのような形のヘルメットで隠されていて、常時電気を通している。

 

サイコジャンパー レベル2 攻撃100(チューナー)

脳開発研究所 サイコカウンター0→1

 

「何!?《サイコジャンパー》だと??」

《サイコジャンパー》の登場にクロウが動揺し、Aが笑う。

「こいつの効果はいいよなぁ?ライフを1000支払うことで相手モンスター1体と《サイコジャンパー》以外のサイキック族モンスター1体のコントロールを入れ替えることができる。それが《脳開発研究所》のおかげでサイコカウンターを1つ乗せるだけでライフコストは帳消し!さあ…お前のエースカードである《驟雨のライキリ》はいただくぜ?」

「野郎…!!」

水槽の中に新たなサイコカウンターが入れられる。

そして、《サイコジャンパー》のヘルメットに流れる電気が強くなり、それと同時に《ABF-驟雨のライキリ》が頭を抱えて苦しみ始める。

「《ライキリ》!!」

「バトルだ!《驟雨のライキリ》でお前のフィールドに移った《強化人間サイコ》を攻撃!」

左手で頭を抱えたまま、《ABF-驟雨のライキリ》が右手の刀を振り回す。

その刃はクロウのフィールドに移った《強化人間サイコ》に命中しようとしたが、その前にそのモンスターは姿をけし、クロウの肩をかすめる。

「くぅ…!」

 

クロウ

ライフ8000→6800

 

脳開発研究所 サイコカウンター1→2

 

「更に、《サイコジャンパー》でダイレクトアタック!」

身をかがめた《サイコジャンパー》がクロウの懐に飛び込み、腹部に頭突きをする。

流れている電気と更にそれについている棘がクロウを傷つける。

 

クロウ

ライフ6800→6700

 

「ハハハ!どうだよ、エースに逃げられた感想は?」

苦しみながら自身のフィールドに来た《ABF-驟雨のライキリ》を見つつ、クロウを馬鹿にする。

だが、クロウはじっと自身のエースを見る。

(《ライキリ》…お前は俺のエースだ。戻るまで耐えてくれ!)

「はっ!ショックで何も言うことができないってか?いいぜ。俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

クロウ

手札2

ライフ6700

場 黒い旋風(永続魔法)

  伏せカード1

 

スキンヘッドA&B

手札

A6→1

B5

ライフ4000

場 ABF-驟雨のライキリ レベル7 攻撃2700(チューナー)

  サイコジャンパー レベル1 攻撃100(チューナー)

  伏せカード2

  脳開発研究所(サイコカウンター2)(フィールド魔法)

 

「俺のターン、ドロー!」

 

クロウ

手札2→3

 

「俺は手札から魔法カード《BF-蒼炎のシュラ》を召喚!」

 

BF-蒼炎のシュラ レベル4 攻撃1800

 

「そして、《黒い旋風》の効果発動!その効果で俺は墓地から《BF-月影のカルート》を手札に加える。バトルだ!俺は《蒼炎のシュラ》で《サイコジャンパー》を攻撃!」

《BF-蒼炎のシュラ》は仲間を利用する《サイコジャンパー》に怒りをもやし、右の拳で腹部を貫こうとする。

「おいおい、弱いものいじめはいただけねえなあ!罠発動、《チューナーズ・バリア》!!」

発動と同時に透明なバリアが《サイコジャンパー》を包み込む。

そして、《BF-蒼炎のシュラ》の拳を見事に受け止める。

「何!?」

「こいつは俺のフィールド上に存在するチューナーモンスター1体を次のターン終了時まで戦闘やカード効果で破壊されなくするカードだ。残念だったな!」

「くそっ!」

バリアに包まれた《サイコジャンパー》に悪態をつく。

次のターンまで破壊されず、《脳開発研究所》が存在するということは次のターンに新たなサイキック族モンスターが現れた場合、今度は《BF-蒼炎のシュラ》のコントロールが奪われることになる。

「俺はこれで…ターンエンド…」

わずかにスキンヘッド達から目をそらしつつ、ターン終了を宣言する。

 

クロウ

手札3(うち1枚《BF-月影のカルート》)

ライフ6700

場 BF-蒼炎のシュラ レベル4 攻撃1800

  黒い旋風(永続魔法)

  伏せカード1

 

スキンヘッドA&B

手札

A1

B5

ライフ4000

場 ABF-驟雨のライキリ レベル7 攻撃2700(チューナー)

  サイコジャンパー レベル1 攻撃100(チューナー)

  伏せカード1

  脳開発研究所(サイコカウンター2)(フィールド魔法)

 

「俺のターン、ドロー!」

 

スキンヘッドB

手札5→6

 

「俺は手札から《サイコ・コマンダー》を召喚!」

 

サイコ・コマンダー レベル3 攻撃1400

 

「更に《脳開発研究所》の効果を使い、手札から《強化人間サイコ》を召喚!」

 

強化人間サイコ レベル4 攻撃1500

脳開発研究所 サイコカウンター2→3

 

「そして、《サイコジャンパー》の効果を使い、今度は《サイコ・コマンダー》と《BF-蒼炎のシュラ》のコントロールを入れ替える!」

再び《サイコジャンパー》のヘルメットの電気が強くなる。

そして、それによって増幅した脳波を受けた《BF-蒼炎のシュラ》が激しい頭痛で苦しみながらスキンヘッドのフィールドへ向かい、そんなモンスターの姿をうれしそうに眺める《強化人間サイコ》がクロウのフィールドへ移動する。

 

脳開発研究所 サイコカウンター3→4

 

「なるほどな…《驟雨のライキリ》は1ターンに1度、こいつ以外の自分フィールド上に存在するBFの数だけ相手フィールド上に存在するカードを破壊できるか…。こいつは使わない手がないなぁ!!」

《サイコジャンパー》の脳波を再び受けた《ABF-驟雨のライキリ》が激しい頭痛のせいか悲鳴を上げる。

その悲鳴を合図に《強化人間サイコ》がフィールドから姿を消した。

「これでまたお前のフィールドからモンスターがいなくなった…。あとはとどめを刺すだけだなぁ。俺は手札から装備魔法《サイコ・ソード》を《サイコジャンパー》に装備!こいつは俺たちのライフが相手より下の場合、その数値だけ装備しているサイキック族モンスターの攻撃力をアップさせる!ま、マックスは2000までだけどな!」

 

サイコジャンパー レベル1 攻撃100→2100(チューナー)

 

「あああ!《サイコジャンパー》の攻撃力が2100に…!」

「《シュラ》の攻撃力が1800、《ライキリ》の攻撃力が2700、《サイコ・コマンダー》が1400で《サイコジャンパー》が2100。攻撃力の合計は8000。総攻撃を受けたらクロウは…負ける」

「クロウ兄ちゃん…」

2度もモンスターのコントロールを奪われたクロウ。

壁となるモンスターはなく、伏せカードも《ABF-驟雨のライキリ》と《サイコジャンパー》が攻撃した際に発動しなかったことを考えると、《攻撃の無力化》のような攻撃反応型の罠カードでも《威嚇する咆哮》のようなフリーチェーンの攻撃妨害のカードでもないと思われる。

「さあ、最後に言い残すことはないだろうな?」

「ここが逃げるチャンスじゃあねえか?腰抜けのクロウさんよ。逃げたらここは見逃してやるよ。まぁ、この工場とガキどもがどうなるかは知らねえけどな」

スキンヘッド達のせせら笑いをフランク達は怒りを込めて耐える。

これが力のない自分たちにできるせめてもの抵抗。

それがどんなに微力な抵抗であるかわかっている上での…。

「俺は逃げも隠れもしねえよ…来い!!」

「だったら望み通りやってやるよ!バトルだ!!まずは《サイコジャンパー》と《サイコジャンパー》でダイレクトアタック!」

《サイコジャンパー》の脳波を受け、意識がもうろうとしている《ABF-驟雨のライキリ》がクロウの前に立つ。

そして、その後に続くように苦労の目の前まで跳躍した《サイコジャンパー》が持つ《サイコ・ソード》と《ABF-驟雨のライキリ》が持つ刀がクロウを十字に切る。

「うわああ!!」

 

クロウ

ライフ6700→4600→1900

 

サイコジャンパー レベル1 攻撃2100→100

 

「更に《蒼炎のシュラ》でダイレクトアタック!」

同じく脳波で操られる《BF-蒼炎のシュラ》がクロウの頬に右拳を叩き込む。

「うわああああ!!」

拳を受けたクロウが吹き飛び、あおむけに倒れる。

 

クロウ

ライフ1900→100

 

「クロウ兄ちゃん!」

「とどめだ、《サイコ・コマンダー》!!」

他のモンスターが攻撃する中、エネルギー供給を完了した《サイコ・コマンダー》が砲口をクロウに向ける。

「グッバイ、腰抜けぇ!!」

《サイコ・コマンダー》の大砲から発射される青い光線がクロウを焼き尽くそうとする。

しかし、クロウの目の前に現れた黒い翼を持つ鳥がその身に熱をまといながら彼をかばう。

「何!?」

「《BF-熱風のギブリ》は相手の直接攻撃宣言時に手札から特殊召喚できる!!」

 

BF-熱風のギブリ レベル3 守備1600

 

「ちっ…!!《サイコ・コマンダー》の効果発動!相手モンスターと戦闘を行うダメージステップ時に1度だけ、ライフを100の倍数支払うことで、支払ったライフの数値分、攻撃対象のモンスターの攻撃力・守備力をターン終了時までダウンさせる!!俺はライフを300支払う!!」

スキンヘッドの体から発生する青い光が《サイコ・コマンダー》に吸収される。

これによって、より高い出力となった光線は《BF-熱風のギブリ》を焼き尽くしていくはずだった。

「罠発動!《ハーフ・アンブレイク》!!こいつの効果を受けたモンスターはこのターン、戦闘では破壊されず、戦闘で発生する俺へのダメージが半分になる!」

「何!?《ハーフ・アンブレイク》…このタイミングで!?」

「お前のモンスターを守るようなことはしたくねえからな」

これ以上の照射は危険と判断した《サイコ・コマンダー》が攻撃を止める。

フィールドには泡を模したバリアに包まれた《BF-熱風のギブリ》が残っていた。

 

BF-熱風のギブリ レベル3 守備1600→1300

 

スキンヘッド

ライフ4000→3700

 

「(ちっ…!今俺が伏せているカードは罠カード《緊急同調》。バトルフェイズ中にシンクロ召喚を行うことができるが、今の俺のエクストラデッキには今の《ギブリ》を倒せるモンスターはいねえ…)だったら、お前のモンスターは最後まで利用させてもらうぜ?俺はレベル4の《シュラ》にレベル1の《サイコジャンパー》をチューニング!!」

「ああ…《蒼炎のシュラ》がシンクロ素材に!?」

《サイコジャンパー》の脳波を受け、強制的に《BF-蒼炎のシュラ》が4つの白い星に変わっていく。

そして、《サイコジャンパー》が変化した緑色のリングがそれを取り込んでいく。

「シンクロ召喚!レベル5!《マジカル・アンドロイド》!!」

 

マジカル・アンドロイド レベル5 攻撃2400

 

「俺はこれでターンエンドだ。それと同時に《マジカル・アンドロイド》の効果発動。俺のターン終了と同時に俺のフィールド上に存在するサイキック族モンスター1体に付き、600ライフを回復する」

 

クロウ

手札3(うち1枚《BF-月影のカルート》)

ライフ100

場 BF-熱風のギブリ レベル3 守備1300→1600

  黒い旋風(永続魔法)

 

スキンヘッドA&B

手札

A1

B6→4

ライフ3700→4900

場 ABF-驟雨のライキリ レベル7 攻撃2700(チューナー)

  マジカル・アンドロイド レベル5 攻撃2400

  サイコ・コマンダー レベル3 攻撃1400(チューナー)

  伏せカード1

  脳開発研究所(サイコカウンター4)(フィールド魔法)

 

「何とか生き延びたが、クロウのライフは100。そして、《驟雨のライキリ》は奴のフィールドに…」

「クロウ兄ちゃん…」

心配そうにクロウを見つめる3人の子供。

そして、スキンヘッド達はニヤニヤ笑いながらクロウを侮辱する。

「ほらほらー早く逃げねーと大変なことになるぞー?」

「そうだよそうだよー。夜逃げした時みたいに逃げないと命とられるぞー?」

「はーん、で、誰の了解を得て俺たちシェイドの労働者と賭けデュエルをしてんだ?」

急に聞こえた第三者の声にスキンヘッドの動きが止まる。

聞こえたのは出入り口の方向で、そこには翔太の姿があった。

「よくもまぁ、俺たちの工場の中で好き勝手してくれてるよな?」

「ま、待てよ!?外にいる奴らは…??」

「あいつらならもう片付いてるぜ?」

工場に設置されているテレビをどこから持ってきたのかわからないリモコンで起動させる。

テレビにはデュエルで倒され、気を失ったスキンヘッドの仲間たちが山のように積まれていて、漁介がVサインをしている。

「そんな、馬鹿な…!?」

「さあてっと、Mデコ。このデュエルは俺が引き継ぐ。どいてろ」

マシンキャバルリーから取り外したデュエルディスクを装着し、翔太が出ようとするが、クロウが右手で静止する。

「Mデコ…」

「このデュエルは俺が勝手に始めたんだ…。最後までやらせてもらうぜ?お前らもいいよな!!?」

スキンヘッドを睨みつつ、クロウがゆっくりと一歩前に出る。

先程と違い、スキンヘッドはおびえている。

「俺が勝手に了解してやるんだから、文句ねえよな?オーナーさんよ」

「ふぅん、まあいいぜ。勝手にしろ」

そばにある椅子を逆向きに置いて座り、デュエルを観戦する。

「あとよぉ、俺の名前はクロウだ。断じて、Mデコって名前じゃねえからな?」

「ああ、分かった。じゃあさっさとあのザココンビを倒せよ?トゲトゲあた…」

言い終わらぬうちにクロウが翔太の胸ぐらをつかむ。

「クロウだ!俺の名前はクロウ・ホーガンだ!!Mデコでもトゲトゲ頭でもねー!!」

「ふーん、大体分かった。お前のターンだぞ?クロウ・ホーガン」

よっぽど変なあだ名をつけられるのが嫌なのか、青筋を立てている。

翔太を放した後、少し深呼吸をした後で再びスキンヘッドと対峙する。

「いくぜ、俺のターン!」

 

クロウ

手札3→4

 

「俺は手札から魔法カード《ナイト・ショット》を発動!相手フィールド上にセットされている魔法・罠カードを1枚破壊する!このカードの発動に対して、相手は対象のカードを発動できない!」

《ナイト・ショット》のソリッドビジョンから放たれる光線が伏せカードを貫き、破壊する。

 

破壊された伏せカード

レインボー・ライフ

 

「ちっ!《レインボー・ライフ》が!」

「そして俺は手札から魔法カード《所有者の刻印》を発動!こいつはフィールド上に存在するモンスターのコントロールを元に戻す!」

「何!?まさか…」

「ようやく助けることができるぜ…《ライキリ》!!」

長い間己を苦しめつづけた脳波が突然消え、解放された《ABF-驟雨のライキリ》がクロウのフィールドへ戻っていく。

「俺たちコモンズはエースモンスター級のカードはそんなに持ってねえ。だから、仮に奪われたとしても必ず取り戻す!!更に俺は手札から魔法カード《死者蘇生》を発動!《BF-蒼炎のシュラ》を特殊召喚!」

《死者蘇生》が生み出す緑色の魔法陣の中から飛び出す《BF-蒼炎のシュラ》。

その眼は怒りに満ちていて、早くスキンヘッドを殴りたくて仕方がないようだ。

 

BF-蒼炎のシュラ レベル4 攻撃1800

 

「更に俺は手札から《BF-漆黒のエルフェン》を召喚!こいつは俺のフィールド上にBFが存在するとき、リリースなしで召喚できる!」

 

BF-漆黒のエルフェン レベル6 攻撃2200

 

「更に《黒い旋風》の効果発動!デッキから《BF-残夜のクリス》を手札に加える。そしてこいつは俺のフィールド上にこいつ以外のBFが存在するとき、1ターンに1度だけ手札から特殊召喚できる!」

烏を模した金色の仮面と赤いシャーマン風のローブを身に着けた人型の烏が現れる。

 

BF-残夜のクリス レベル4 攻撃1900

 

「さぁ…俺の仲間を利用したこと、おびえさせたこと、そしてガキどもに手を上げようとしたケジメをつけてもらうぜ?逃げんじゃねえぞ!!」

「う、ううう、うわあああああ!!!!」

スキンヘッドのうちの1人が悲鳴を上げ、もう1人は何も言わずガタガタ震える。

「《驟雨のライキリ》の効果発動!こいつは1ターンに1度、こいつ以外の俺のBFの数だけ相手フィールド上のカードを破壊する!BF-ライトニング・ソニック!!」

《ABF-驟雨のライキリ》の刀に稲妻と黒い羽根が集まっていく。

その刀は一振りで《脳開発研究所》の水槽と《マジカル・アンドロイド》、《サイコ・コマンダー》を切り裂いた。

切り裂かれた痕には稲妻が宿っていて、それが静電気となってスキンヘッドを刺激する。

「そ、そんな…一瞬で俺たちのフィールドががら空きに…!?」

「《脳開発研究所》のリスクを忘れんじゃねえぞ。こいつはフィールドから離れた時、乗っているサイコカウンター1つに付き、1000ダメージをお前らが受けるんだったよなぁ!?」

「うわああああ!!」

水槽が壊れ、外に飛び出したサイコカウンターが爆発を起こし、スキンヘッドがそれに飲まれる。

 

スキンヘッド

ライフ4900→900

 

「いけぇ!!俺のBF達!!」

4体のBFと手札にいた《BF-月影のカルート》が2人を包囲し、逃げ道をふさぐ。

そして、思い思いに彼らに集中攻撃した。

「うぎゃあああああああ!!!???」

 

ABF-驟雨のライキリ レベル7 攻撃2700→4100(《BF-月影のカルート》の効果)

 

スキンヘッド

ライフ900→0

 

20分後、デュエルの影響が実体化したのか、包帯まみれとなった2人のスキンヘッドと残りの仲間たちが手錠をかけられたうえでこの地区にいるシェイドのメンバーに連行されていく。

彼らの所持していたデッキとデュエルディスクは没収したうえで。

「悪かったな、結果的にお前1人にあの2人の相手をさせることになってしまったよな」

「別にいいぜ、デュエル中にも言ったろ?俺が勝手にやったんだってよ」

連行される彼らを見ながら、翔太とクロウはみたらし団子を食べる。

「にしても、みたらし団子だっけか?これ?うまいな。どこで手に入れたんだ?トップスか??」

「機会があったら教えてやる。ほらよ」

懐からみたらし団子がたくさん入ったタッパーを出して、クロウに渡す。

それを見た彼は少しびっくりしていた。

「やる。お前が世話しているガキにでも食わせろ」

「あ、ありがとな…その…」

「翔太でいい。今度はエースカードを奪われないようにしろよ、Mデコ」

タッパーを自身のDホイールであるブラックバードの後ろ側に外付けされたトランクに入れた後、翔太の胸ぐらをつかむ。

「おい…二度と俺のことをMデコなんて呼ぶんじゃねえぞ…!?」

 

そして、数時間が立ち…。

家に着いたクロウとシンジ、そして3人の子供は机の上でタッパーを開ける。

「わあああ…」

「おいしそー!」

「コラ、タナー。先に手を洗わなきゃダメよ」

たくさんのみたらし団子を見て、3人とも反応は異なるが、うれしいと思っていることには変わりない。

「ん…?こいつは何だ??」

シンジが見つけたのは2つあるタッパーの蓋の1つ目の裏側についている茶色い封筒。

開けると、そこにはつたないひらがなで「みるくありがとう」と書かれていて、その右下に赤い肉球の痕がついている。

「ミルクありがとう…だってよ」

「もしかして…」

フランク達3人とシンジはその手紙を書いた人物に思い当たる節があるのか、びっくりすると同時に少し心温まる感じがした。

「あ、絆創膏外れちまった」

同時にクロウの額の絆創膏が床に落ちる。

貼りなおさないとと思い、絆創膏を拾い、患部に触れるとなぜかその傷はすでに消えていた。



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第55話 防衛戦

「そこやそこ!!ああ、アホ!そんなとこにボール蹴ったらあかん!!」

「やったーー!このラッキーを繋げてってええーーー!?ハンドー??」

「よっしゃぁ!これこそほんまのラッキーやぁ!!」

「…あいつら、何やってんだ?」

早朝の隣の部屋がうるさいと思い、廊下側の窓のわずかな隙間から中を見る翔太。

部屋の中では伊織と里香が先日手に入れた大型テレビをかじりつくように見て、やれハンドだやれPKだ、ゴールだパスだのと口にしている。

その部屋で一緒に寝ているはずの柚子はどうしているのかはここからでは分からないが…。

ちなみに、宿舎に引っ越した後で部屋割りが決まり、まずは大きい101号室には女性陣3人が入ることが決まった。

102のは翔太と漁介、103には鬼柳とジョンソン、104はモハメドだ。

また、2階以降は他のギャングメンバーが寝泊まりしており、屋上では交代で見張りが待機する。

今の時刻はまだ6時半で翔太にとってはまだ起きるには早い時刻。

しかし、2人の少女の声がうるさくて目を覚ましてしまった。

そんな中でもグースカ寝ることができる漁介がうらやましくて仕方がない。

(こんな時間にサッカー中継を見てるのか…。うるせえな)

中にいる柚子が耳栓をつけて寝ていることを願いながら、屋上へあがる。

「お、リーダー。お疲れ様っす!」

「後の見張りは俺がやる。お前は仮眠でもとってろ」

「了解っす!」

(大騒ぎの中でも寝れるんならな…)

きっと部屋に戻って寝ようとすると2人のうるささで泣きたくなることだろう。

そうなるといい気味だと悪い感情を抱きながら見張りを始める。

(ヒヒヒ!やーっと2人っきりになれたよなぁ?)

「…シンクロ次元にいる時くらい黙ってろ」

脳裏に聞こえたあの忌々しい声に翔太は毒づく。

だが、その声はその程度の言葉では痛くもかゆくもないようだ。

(で、どうだよ?俺がプレゼントした力の感想は)

「左手の痣のことか?シンクロ次元では使っていないが、まあまあだな」

(そいつは良かったぜー。大盤振る舞いした甲斐ありってなー)

「…それだけが用じゃねえだろ?」

以前投資したパン屋でできたメロンパンを口にしつつ、さっさとその声を聞かないようにしたいと思う翔太。

咀嚼する口はいつもよりも少し力が入っている。

(つれねーなー。そういやぁ、いつになったら残り7枚の記憶の鍵を解放してくれるんだよー?)

「そのうちな。お前はじっと待ってりゃあいい」

(はーいはい。あ…そーだ!今日はビックなお知らせがあったんだったー!まーずーはー、伏せろーー!)

「はぁ?」

何を言っているのかと思いつつ、伏せると同時に頭があったところにクロスボウの矢が通り、背後にある壁に命中する。

もし声が伏せろと言わなかったら、そして自分が伏せる行動をとらなければ即死だったかもしれない。

「なんだ!?」

懐から双眼鏡を取り出し、クロスボウが放たれたと思われる場所を調べる。

そこには黒いスーツを着た男が逃げようとしていた。

「見張りを撃とうとしただと…ということは!!」

その男がいた建物のそばにある道路を見ると、顔の両サイドに鋼の装甲がついた、金色の目で不健康そうな灰色の肌の男たちがゆっくりと前進している。

よく見ると、全員が黒いライディングスーツを着ていて、左腕がデュエルディスクと一体となっている。

更には同じ顔であることから…。

「ロボット軍団か!?この次元の奴らは頭がおかしいのか!?」

信号弾とサイレンを鳴らし、シェイドのメンバーたちに緊急事態発生を知らせる。

 

「な、何!?」

伊織と里香の声に慣れ、ようやく眠れるかと思った柚子がびっくりしながら飛び起きる。

伊織と里香は普段着に急いで着替えている最中だ。

「このサイレン…敵襲やで!?」

「敵襲って、もしかして…」

「多分、チームオーファンみたいなデュエルギャングだよ!」

「全員早く起きろ!!防衛線を張れー!!」

廊下では鬼柳とモハメドがまだ眠っているかもしれないメンバーたちを叩き起こしに動いている。

「柚子ちゃんは急いでチームブレイドに連絡を入れて!」

デュエルディスクとデッキを手にした伊織と里香は先に部屋から出て行った。

1人残されることになった柚子はなぜそのようなことを命じられたのか理解できずにいた。

(なんで、私だけ…?)

 

「くっそぅ!!何なんだよこのロボット共は!?」

第一線でデュエルをしているギャングがあまりのロボットの多さに顔を青くしている。

3ターン目になると急にデュエルディスクから音声が流れる。

(バトルロイヤルモードに変更!このターンより、バトルロイヤルルールが適用されます!)

「な、何だってーー!?」

それと同時にもう1体のロボットがデュエルに介入する。

しかし、なぜか乱入ペナルティによるライフ減少が発生していない。

「どうなってるんだ!?乱入ペナルティでライフが半減になるんじゃ…うわああああ!!!」

敗北したギャングはすぐにカード化し、ロボットに回収されてしまった。

 

「今の状況は?」

外に出て、アジトの西に位置する第三防衛ラインであるボウリング場廃墟に到着した翔太が聞く。

「ああ、第一線は20人いるが、もう4人やられてる!負傷して後退した奴が言うには、そいつらの近くまで行くとバトルロイヤルモードに切り替わって、更に負けるとカード化するとか…」

「カード化…」

その言葉で舞網チャンピオンシップのことを思い出す。

カード化するだけであれば、翔太の痣の力で助け出すことは可能だ。

しかし、それはそのカードを回収することができればの話だ。

「ちっ…ならその4人を助けるためにも前に出るとするか…」

翔太は第一線へ向かうために歩き出そうとする。

指揮はモハメドが行ってくれる。

なお、チームブレイドに援軍を求めた結果、そちらにもロボットが攻撃しているとのことで、援軍は少数しか送れないようだ。

「秋山、これを持って行け」

鬼柳と共に第三防衛ラインで戦うことになるジョンソンが翔太に水色の四角いブロック状の端末を渡す。

「こいつは何だ?」

「ヒイロ・リオニスが昨日提供したものだ。プロトタイプだが、これを使うことで1時間だけ召喚エネルギーを欺瞞させることができる」

「つまりはその間だけ全力でやれるってわけだな」

「そうだ。鬼柳は問題ないとして、永瀬たちにも渡している。使えるのは一度だけだ、気をつけろ」

「ああ…。俺の食べ残しの処分は頼むぜ」

端末をポケットにしまうと、翔太は先へ進んでいく。

それと入れ替わるように、2体のロボットが第三防衛ラインにまで到達してきた。

「さあ、始めるか…」

「ロボット程度で俺を満足させることはできねえよ…覚悟しろ」

ジョンソンと鬼柳のフィールドには《カラクリ将軍無零》と《煉獄龍オーガ・ドラグーン》が現れた。

 

第二防衛ラインである旧レクス区ハイウェイ出入り口には漁介と里香がいる。

「のわぁ!しまった!!」

漁介の《ドラグニティアームズ―レヴァテイン》が破壊され、彼のフィールドががら空きになる。

「これでとどめだ。《A・O・Jカタストル》でダイレクトアタック」

《A・O・Jカタストル》の漁介に向けて光線を発射しようとする。

「罠発動!《攻撃の無力化》!!これでバトルフェイズ終了や!!」

しかし、里香が割り込んで《攻撃の無力化》を発動したことで攻撃が漁介に及ぶことがなかった。

(なんやねん、これ!リスク無しで乱入有って…。ちゅうことは数の多いあいつらが有利ってことやないか!!)

「助かったのう、里香」

「ったく、漁師は気を抜いたら大けがするんやなかったんか!?ウチのターン、ドロー!ウチは《デブリ・ドラゴン》を召喚!」

 

デブリ・ドラゴン レベル4 攻撃1000(チューナー)

 

「こいつの召喚に成功した時、墓地に存在する攻撃力500以下のモンスター1体を攻撃表示で特殊召喚できるんや!ウチは墓地の《氷結界の破術師》を特殊召喚!」

 

氷結界の破術師 レベル3 攻撃400

 

「レベル3の《氷結界の破術師》にレベル4の《デブリ・ドラゴン》をチューニング!!シンクロ召喚!レベル7!《氷結界の龍グングニール》!!」

 

氷結界の龍グングニール レベル7 攻撃2500

 

「さあ、食い倒れするまで食ったれぇ!!」

手札を2枚捨てると同時に《氷結界の龍グングニール》の目が光る。

すると、ロボットたちのフィールドにいる2体の《A・O・Jカタストル》の真下から氷の柱が現れ、装甲をいともたやすく貫いていく。

そして、次第に2体を氷漬けにしていき、その氷を《氷結界の龍グングニール》がバリバリと音を立てて食べていった。

「里香…機械は食べても体に毒じゃぞ?」

「んなもん知るか!《氷結界の龍グングニール》でダイレクトアタック!!」

食べ終えた《氷結界の龍グングニール》の口から吹雪が放たれ、ロボットを凍らせていく。

「うわああああ!!」

 

ロボット

ライフ2100→0

 

ライフが0になったロボットは機能を停止させ、その間に里香がそれのデュエルディスクの中に収納されているカード化された仲間を回収する。

「ふぅ…これで1人助けることができ…」

「私のターン!私は永続罠《DNA移植手術》を発動。これで我々のフィールドに存在するモンスターの属性を光属性に統一させる」

「あ…!!」

気を抜くなと言ったのが自分であるにもかかわらず、1体倒したことで気を抜いてしまった。

その間にロボットは次の《機械複製術》を組み合わせることで《A・ボム》を3体出現させる。

 

A・ボム×3 レベル2 攻撃400

 

「バトル。《A・ボム》で《氷結界の龍グングニール》を攻撃」

《A・ボム》3体が《氷結界の龍グングニール》に向けて特攻し始める。

里香のフィールドには攻撃を対処するためのカードがない。

(アカン…!!)

「罠発動!《邪神の大災害》更に罠カード《立ちはだかる強敵》!!相手の攻撃宣言時、フィールド上の魔法・罠カードをすべて破壊する!!」

「え…!?」

黒い嵐がフィールドを包み込み、《DNA移植手術》が吹き飛ばされていく。

発動させたのは元ホイールズのギャングの1人だった。

「ったくよぉ!A・O・Jやジェネクスのような機械族シンクロ使いは俺らだけで充分だ!このパクリロボットが!!さぁ、嬢ちゃん!!《立ちはだかる強敵》の効果で他の《A・ボム》も強制的に《グングニール》を攻撃するぞ!」

「お、おおきに…!迎撃や、《グングニール》!!」

《DNA移植手術》が失われたにもかかわらず、なおも突撃しようとする3体の《A・ボム》を《氷結界の龍グングニール》の吹雪が数秒で氷漬けにしていく。

そして、《A・ボム》を召喚したロボットも氷漬けとなった。

 

ロボット

ライフ4000→1900→0

 

「にしてもこいつら…他の仲間を助ける気ゼロじゃな…」

漁介の言うとおり、ロボットたちは他のロボットがピンチになっても見向きすることなく目の前のデュエリストを倒すために動き続けている。

そうであれば、1体ずつ確実に撃破していくことは容易いのであるが、数が多いことには変わりない。

「せやったら、ウチらは団結や!ええか、助け合ってこのポンコツロボット軍団を壊滅させるでーーー!!」

「「オーーー!」」

 

「《ジャンク・ウォリアー》で《A・O・Jカタストル》を攻撃!スクラップ・フィスト!!」

《ジャンク・ウォリアー》の拳が叩き込まれた《A・O・Jカタストル》は中枢機能を失い、上空に光線を放ちながら消滅する。

「うわあああ!!」

 

ロボット

ライフ250→0

 

「うーん、いい感じ!」

「気を抜くなよ、次々と邪魔者がきてるぞ」

他のロボットが召喚したモンスターを《真六武衆―シエン》などの六武衆シンクロモンスターで破壊しつつ、自分と伊織のいる第一線の状況を見る。

自分と伊織を除き、前線で戦っていて確認できる人数は13人。

報告と照らし合わせると新たに3人がカード化されてしまったことになる。

少し気を抜いている間にも数体のロボットが第一線を越えてしまう。

(このままだとまずいな…だとすれば)

先程ジョンソンから受け取った端末が入ったポケットを見る。

仮にエクシーズ召喚や融合召喚、儀式召喚、ペンデュラム召喚をシンクロ召喚エネルギーに欺瞞させることができるとしたら、本気のデッキでデュエルができる。

そして、そのデッキに入っているあのカードであれば、一気にロボットのモンスター達を全滅に追い込むことも可能。

「(よし…)おい、生き残ってる奴ら!!今突破した奴らは放っておけ!それよりも、入ってきている奴らを誘導しろ!誘導ポイントはあそこだ!!」

デュエルディスクを操作し、伊織達に合流ポイントの場所を提示する。

それは廃校舎のグラウンドだ。

「誘導はいいけどよぉ、それでどうしようってんだ!?」

メンバーの1人は疑問に思いながらもゆっくりとその場所へ移動しながらデュエルを進める。

「まあ、任せておけ。それよりもまだ他のギャングの奴らには俺たちの秘密はしゃべっていないよな?」

「当たり前だ!言ったら、首が飛んじまう!」

(秘密をしゃべったら首が飛ぶって誰が決めたんだよ?)

きっと誰かが冗談半分で言ったのがうわさになって流れたのだろうと勝手に解釈し、合流ポイントへ向かう。

「さあ、食いつけ。死神が迎えに来てくれるぜ」

 

時を同じくして、ここは治安維持局オペレータールーム。

「いかがでしょうか?プロトタイプの性能は?」

「はい。今回投入した89機のうち、30機はチームブレイドへ、残りはシェイドの領域へ投入しました。なお、ロストしているのは10機。コマンダータイプはすべて健在。いずれも正常です」

「そうですか。では引き続きプロトタイプが収集したデータの回収を進めてください」

左手で兵士の駒をいじりながら、ロジェは言う。

彼のチェス台の隣にあるノートパソコンには例のロボットの姿が映っている。

「新世代型デュエリスト育成装置を元にしたデュエルロイド、ディアボロ。今集まっているデータを参考にすればおそらく、デュエルチェイサーズ以上の軍団となってくれる。まあ、プロトタイプ達はゴミ掃除程度の役目は果たしてくれるでしょう」

 

(くっそぉ!!また1人やられた!?)

(最初に戻すことすらできねえのかよ!?もうライフは残り少ねえのに!!)

(機械は疲れねえし、数も多いぜ!この野郎がぁ!!)

「B班はE班のバックアップに周れ!その間にC班は戻って、待機中のO班と交代しろ!!G班とX班、民間人の避難が完了しつつ、第2防衛ラインへ急げ!!あと少しの辛抱だ!!」

宿舎4階にある通信室でモハメドがモニターを見つつ、前線で戦うメンバー達の指揮をする。

最初は彼1人で行っていたが、処理しなければならない情報量の多さから対応しきるのが難しくなり、新たに2人が手伝っている。

柚子は戻ってきたメンバーに水や食料を持っていく。

「お疲れ様です、どうぞ!」

「ありがとうよ…5分後には再出動か…」

「あいつら何体いんだよ??」

全員が何とか戻ることができた班のメンバーはあまりのディアボロの多さに疲れ果てながら食べ物を口にする。

しかし、カード化された上行方不明となってしまったメンバーのいる班は無事に戻れた安心感と助けられなかったという無力感という2つの混じりあった感情を抱き、飲食する気力を失っている。

(あたしだけこんなことを…)

手に持っている銀色のレーションケースを見つめる。

ケースに移る自分自身の顔が少し曇っているのが見えた。

(あたしだって戦いたい…みんなを守れる力が欲しい!だけど…だけど…!!)

(おとなしく僕についてきてよ、じゃないと…彼らみたいになるよ)

(うるさいなぁ、黙らないと…)

柚子の脳裏に舞網チャンピオンシップの時の光景がフラッシュバックする。

カード化されたデュエリストとそれを見ながら笑うユーリ。

そして彼の圧倒的な力によって追いつめられる自分自身。

はっきりと自分も戦うと言って譲らなければ、今こうしていることはないはずだ。

しかし、それができないということは…。

「あたし、怖がってる…」

思い出しただけで手が震えている。

そんな自分の手を見て、なぜか思い出したのがストロング石島とのデュエルでピンチになった遊矢だった。

彼もまた、その時は敗北への恐怖で絶望し、震えていた。

「遊矢も…怖かったのかな?」

自分は幼馴染であり、昔から知っている遊矢のことを知っているつもりでいた。

しかし、結局は表向きの、表面だけが見せる感情だけを知っているだけ。

ネットで出てくるニュースの見出しを只見ただけで世の中について知っていると言っているようなものでしかない。

その深淵にある意味を知ろうとせず、分かったという言葉で思考停止していただけなのだ。

「お待たせしました!これを…!!」

「ああ、悪い…!!」

近くで最近シェイドに加わったばかりのメンバーが負傷しているメンバーの傷の手当てをする。

彼はここに入るまでデュエルの経験がないというある意味レアな人物で、そのためデュエルの勉強をしつつ、こうして自分にできることを精いっぱいやっている。

そんな彼を見て、柚子は決心する。

「あとはお願い!!」

「へぇ!?」

いきなりそんなことを言ってどうかしてのかと聞こうとする前に柚子が飛び出していく。

「待ってください!!今、戦場は…!!」

一方、モハメドも指示を出しつつ窓から柚子の姿を見ていた。

「…カナリアが鳥かごから飛び出していったか…」

 

「《A・O・Jフィールド・マーシャル》で《アサルト・ホイール》を攻撃」

「ちっくしょう!!お前ら、後は頼んだぜぇ!!」

敗北が確実となったメンバーが仲間たちに後を託しつつ、カード化していく。

ディアボロ達は確かに誘導されていっているが、その間に敗れていくメンバーがいるという現実が存在する。

しかし、相対的に数が少なく、ロボットと違い疲労のある人間の集団であるシェイドが勝利するにはこの手しか残っていない。

翔太と共に合流ポイントにいる伊織が更に準備をする。

「やれ、伊織!!」

「…。《ニトロ・ウォリアー》で翔太君にダイレクトアタック!!」

《ニトロ・ウォリアー》の一撃が翔太の顔面に叩き込まれる。

「くぅぅ…そうだ、これでいい!!」

 

翔太

ライフ4000→1200

 

「更に永続罠《シンクロ・ブラスト》の効果発動!1ターンに1度、私のシンクロモンスターの攻撃宣言時、相手に500ダメージを与える!」

 

翔太

ライフ1200→700

 

「翔太君、これで条件が整ったけど、本当に大丈夫なの??」

「俺を誰だと思ってんだ?」

「知-らなーい!だって、記憶喪失のデュエリストでしょ?」

「最強のデュエリストだ、空気を読んでそう言うことにしとけよ」

そんなくだらない話をしている間にもディアボロ達がA・O・Jを召喚し、翔太たちを攻撃する。

その攻撃は対処しているものの、唯一翔太だけが魔法・罠カードで攻撃をさばいているだけでモンスターを召喚する気配が一向にない。

だが、その行動にも限界がきてしまう。

「俺のターン!ちっ…このターンは盾なしか!」

「私のターン!バトルだ!《A・O・Jサイクロン・クリエイター》でダイレクトアタック!!」

守る手段を失った翔太に向け、《A・O・Jサイクロン・クリエイター》が攻撃する。

「翔太君!!」

「くそっ…!!!」

モンスターの攻撃が翔太に届こうとしたが、急に彼の目の前に《幻奏の華歌聖ブルーム・ディーヴァ》が現れて攻撃を受け止める。

「《ブルーム・ディーヴァ》!?もしかして…」

「あたしは罠カード《シフトチェンジ》を発動したわ!この効果で攻撃対象は《ブルーム・ディーヴァ》に変化する!そして、《ブルーム・ディーヴァ》は破壊されず、あたしが受ける戦闘ダメージを0にする!」

《幻奏の華歌聖ブルーム・ディーヴァ》が歌を歌い、自分が受け止めている攻撃を桜の花びらへと変えていく。

「お前、なんでここにいるんだよ!!?」

「決めたの!あたしは…あたしは守られるためだけにランサーズに入ったんじゃない!みんなと一緒に戦って、守って、傷ついて…次元戦争という哀しみと向き合いたいの!!」

「向き合う…か…」

今まで見たことがないほどのまっすぐな目を見せる柚子に翔太は少し驚きを感じた。

そして、それと同時に待ちわびていた通信が入る。

「ボス!!第一線にいるロボット共は全部合流ポイントに入った!そして、もう入ってくる敵はいねえ!!」

「ああ…。おい、くず鉄!お前らロボットでもわかるくらい、死って奴を味あわせてやるよ!」

翔太が端末を取り付けたデュエルディスクにパスワードを入れる。

すると、その端末から緑色の粒子が放出される。

そして、空気に触れることでその粒子は虹色の光を見せ始めた。

「俺のターン!俺はスケール2の《魔装槍士タダカツ》とスケール9の《魔装剣士ムネシゲ》でペンデュラムスケールをセッティング!!。来たれ、時の果てに眠りし英雄の魂。漆黒の魂と契約し、封印から解き放たん!(こいつの方が俺にはしっくりくるな)ペンデュラム召喚!現れろ、第4の騎士、《魔装騎士ペイルライダー》!!」

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

 

召喚された《魔装騎士ペイルライダー》は数多の数のA・O・J達を見ても動揺を見せない。

翔太にはむしろこのモンスターが死を与えるべき獲物がこれほど多く存在することに喜びを感じている、そんなふうになぜか思えてしまう。

「(《ペイルライダー》…久しぶりにその力を解放させてやる)俺は更に手札から《PCM-シルバームーン・アーマー》を発動!俺のフィールド上に存在するレベル7のペンデュラムモンスター1体を同じ種族でランク7のエクシーズモンスターに変化させる。俺は《魔装騎士ペイルライダー》でオーバーレイ!月の鎧に拘束されし第4の騎士よ、その重力を戒めとし覚醒せよ。ムーンライトエクシーズチェンジ!現れろ、月の鎧纏いし死の騎士、《MLX-魔装騎士ペイルライダー・ムーンレイス》!」

夜が明け、太陽によって明るく照らされた街に場違いな、月の力を得た騎士が翔太の前に現れる。

すぐに攻撃できることを主張したいがためか、既にすべての火器の安全装置が解除されていた。

 

MLX-魔装騎士ペイルライダー・ムーンレイス ランク7 攻撃2500

 

「こいつは俺のライフが1000以下の時、相手フィールド上に存在するすべてのモンスターに1回ずつ攻撃することができる。そして、手札から速攻魔法《次元突破》を発動。こいつは俺のフィールド上に存在する魔装騎士の攻撃力をターン終了時まで倍にする」

 

 

MLX-魔装騎士ペイルライダー・ムーンレイス ランク7 攻撃2500→5000

 

「スクラップにしてやれ、《ペイルライダー》!」

《MLX-魔装騎士ペイルライダー・ムーンレイス》の全兵装からミサイルや光線、銃弾などが広範囲に向けて発射される。

鎧に刻まれている五芒星は青く光り、装備者の弾薬を自動的に供給していく。

こうして無限の弾薬を得た死の騎士の無慈悲なまでの攻撃がA・O・Jもろともディアボロ達を破壊し、スクラップへと変えていく。

数分が立ち、銃身が焼けたことで攻撃が止まる。

《MLX-魔装騎士ペイルライダー・ムーンレイス》の周辺には銃弾や爆発で機能を停止したディアボロであふれていた。

「さすが死の騎士…無慈悲すぎるだろ??」

「第一線を突破したロボットはどうした?」

「ああ、どうやら全滅したようだ」

「ふう…」

バトルロイヤルモードが解除されたのを確認すると、翔太はゆっくりとその場に座り込む。

あとはディアボロ達からカード化された仲間を回収し、痣の力で元に戻す必要がある。

(それにしても、カード化したデュエリストだと?たしか、それは融合次元だけの技術だったよな?)

黒咲たちエクシーズ次元のデュエルディスクにもカード化の機能がある。

しかし、それはレジスタンス活動の際に倒したアカデミアのデュエリストから奪ったデュエルディスクの技術を盗用したに過ぎない。

更にその技術はエクシーズ次元の技術者にも、そしてスタンダード次元の少なくともレオコーポレーションの技術者でも解析することができず、融合次元が独占している。

だが、それはそれでいいのかもしれない。

人間をカード化する技術によってどんな混乱がもたらされるのかは目に見えているのだから。

「スクラップから仲間を回収しろ。そして、奴らのカードとパーツ、デュエルディスク。使えるもの、売れるものは何でも回収するぞ」

そう言いながら、足元にあるディアボロの残骸の中にあるカード化されたメンバーを回収した。

それと同時にデュエルディスクにモハメドからの通信が入る。

「どうした?モハメド」

(気をつけろ、第一線の上空に航空機が一機、コンテナを積んでいる!!)

「コンテナ…?」

空を見上げると、確かに西の方角から航空機が飛んできている。

そして、下方に取り付けられているコンテナを投下した。

 

「ディアボロ…沈黙しました」

「そうですか。ですが、今回の戦果は素晴らしいものとなってくれました」

手元のノートパソコンにセキュリティのハードディスクに収められたディアボロの今回の戦闘データがダウンロードされる。

そして、ロジェはそのデータを自分のUSBメモリにコピーする。

「ところで、旧レクス区のデュエルにおいて以上は発生しませんでしたか?」

「いえ…召喚エネルギーも確認しましたが、シンクロ召喚しかありません。異常なしです」

「異常なし…ですか。それでは、試作Ⅱ型を旧レクス区に降下してください」

「Ⅱ型をですか!?しかし…」

オペレーターがロジェの言うⅡ型のデータを見つつ、否定的な声を出す。

これは以前、治安維持局内でテストを行った際に暴走事故を起こしたもの。

3機制作したうちの1機がトップスのディヴァイン区に流出し、確保するまでに10人の死傷者を出した。

この事件情報操作でコモンズの不穏分子によるテロとして処理されている。

「かまいません。あれは不穏分子によるテロだったのですから。それに、あれからデータを更新したのでしょう?まさか…私の意見に従えないとでも」

笑みを浮かべつつ、そのオペレーターを見る。

確かに表面上は笑みを浮かべたままだが、目から伝わるのは冷たい威圧だ。

「わ、分かりました…」

 

「なんだよ、このコンテナは!?」

「飛行機からの落下物か??」

通信がまだ届いていない第一線のメンバーの6人がコンテナが投下された場所に近づく。

すると、コンテナが自動で開き、その中から3機のロボットが現れる。

「またロボットだと!!?」

「急いで連絡するぞ!!」

デュエルディスクの通信機能を起動しようとする。

しかし、急にそれから雑音が聞こえるようになる。

「な、何だ!?おい、オペレーター応答しろ!!」

何度も繋げて連絡しようとするが、激しい雑音にさえぎられる。

「おい!レーダーが反応しないぞ!?」

「ど、どうなってやがる…!?」

(バトルロイヤルモード、起動します)

デュエルディスクから再び流れたその音声とともに彼らのデュエルディスクが勝手に起動した。

「またこれかよ!!?」

「くっそーーー!!なんで連絡できないんだ!?!?」

 

「ふふふ…ジャミング機能を追加し、更にデュエルギャング共が最も恐れる戦略を持つⅡ型。ホセ、ルチアーノ、プラシド。さあ…存分に狩りをして、データを集めてもらいましょう…」

もう1つのUSBメモリをつけ、その中にあるファイルを開く。

そのファイルの中にはかつて、遊星たちと戦ったイリアステルの三皇帝の姿があった。




最近はまた忙しくなり、執筆も若干停滞気味です…。
アニメ版ではもうフレンドシップカップが準決勝ですし、ここからペースを上げて行かないと…。
それにしても、来年の劇場版遊戯王が楽しみです!
《ブラック・マジシャン》が進化したモンスターも出るかなと期待しています。


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第56話 鉄の嵐

現れた3機のうち、ルチアーノとホセが翔太たちを見向きもせずに走っていく。

そして、プラシドが翔太の前に残る。

「んだよ、お前は仲間を追わなくていいのかよ?」

まだ欺瞞できる時間は54分残っている。

うまくいけば、あと2回は1対1のデュエルが本来のデッキなら可能。

ただし、問題がある。

(あのロボットはすぐにぶっこわしたからいいが…こいつの場合は長引かせるわけにはいかない。まだ俺たちが別次元の人間だということを知られるわけには…)

召喚エネルギーは欺瞞しているものの、問題は彼らのカメラで映し出されたデュエルが治安維持局に伝わってしまうかもしれないということだ。

仮にシンクロ召喚以外の召喚法を使った場合は記録に残る前にすぐに倒さなければならない。

おそらく、そのターンの間だけで。

そんなことを考えている十数秒の間、プラシドはまったくしゃべらず、デュエルの準備だけ終えている。

「はっ…機械といくらおしゃべりしても無駄か。お前らの飼い主に俺たちの相手をしたことを後悔させてやるよ」

「翔太君!!」

「伊織もほかのやつらも手を出すなよ?それよりも残り2機の後でも追いかけてろ」

「う…うん!!」

今のデッキであれば、大丈夫だろうと思い、伊織はほかのメンバーと一緒にルチアーノとホセを追いかける。

これで、翔太とプラシドの周囲には誰もいない。

「これであと53分か…。お前をスクラップにすれば、どれだけ儲けが出るか計算しておねえとな…。デュエル!!」

 

プラシド

手札5

ライフ4000

 

翔太

手札5

ライフ4000

 

「ねえ、伊織…」

「んー?どうかしたの、柚子ちゃん」

「ええっと、その…」

うまく口にできないが、言いたいことはわかっている。

1人残って戦っている翔太のことが心配で仕方がないのだろう。

「大丈夫!翔太君ならきっと」

「伊織…」

ニッコリと笑って返した伊織を見たものの、その笑顔がなぜか作り笑いに見えてしまう。

本当は彼女も心配でたまらないのだろう。

(翔太…無事でいて)

 

「俺のターン…」

「お、ようやくしゃべってくれたか?機械のくせに」

「俺は《ワイズ・コア》を召喚」

翔太の言葉を無視して、プラシドはモンスターゾーンにカードを置く。

 

ワイズ・コア レベル1 攻撃0

 

「攻撃力0のモンスターを召喚か?何を考えてやがる?」

「さらに俺は手札から魔法カード《カオス・ブルーム》を発動。俺の墓地にこのカードと同じ名前のカードがない場合、フィールド上に存在する攻撃力1000以下のモンスター1体を破壊する。俺は《ワイズ・コア》を破壊!」

《カオス・ブルーム》から放たれる紫の光を受けた《ワイズ・コア》が砕ける。

そして、その中から5体の部位パーツのようなものが飛び出す。

「なんだよ?別のアニメを始めるつもりか?」

「《ワイズ・コア》がカード効果で破壊されたとき、俺のフィールドに存在するモンスターをすべて破壊し、デッキ・手札・墓地から《機皇帝ワイゼル∞》、《ワイゼルT》、《ワイゼルA》、《ワイゼルG》、《ワイゼルC》を特殊召喚する」

 

機皇帝ワイゼル∞ レベル1 攻撃0

ワイゼルT レベル1 攻撃500

ワイゼルA レベル1 攻撃1200

ワイゼルG レベル1 守備1200

ワイゼルC レベル1 攻撃800

 

カオス・ブルーム(アニメオリカ)

通常魔法カード

(1):このカードは自分の墓地に存在する「カオス・ブルーム」の数によって以下の効果を発動する。

●0枚:フィールド上に存在する攻撃力1000以下のモンスター1体を破壊する。

●1枚:魔法・罠カードゾーンに存在するカード1枚を破壊する。

●2枚以上:フィールド上に存在するカード1枚を破壊する。

 

「合体せよ、《機皇帝ワイゼル》!!」

《機皇帝ワイゼル∞》の前の装甲が開き、エネルギー源と思われる緑色の球体を見せると同時に4体のパーツが終結、合体していく。

そして、特撮番組に登場する巨大ロボのような人型兵器へと変貌した。

読者が知っている機皇帝と違う点があるとすると、利き腕が右になっているところだろう。

「なんだよこりゃあ、遊戯戦隊アークファイブでもやる気か?」

「《機皇帝ワイゼル》の攻撃力・守備力はほかのパーツの攻撃力の合計となる」

 

機皇帝ワイゼル∞ レベル1 攻撃0→2500

 

「レベル1のくせに攻撃力2500か…。にしては、モンスターゾーンを使いすぎなんじゃねえか?」

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

プラシド

手札5→2

ライフ4000

場 機皇帝ワイゼル∞ レベル1 攻撃2500

  ワイゼルT レベル1 攻撃500

  ワイゼルA レベル1 攻撃1200

  ワイゼルG レベル1 守備1200

  ワイゼルC レベル1 攻撃800

  伏せカード1

 

翔太

手札5

ライフ4000

 

「(あのロボットの攻撃力2500がパーツから与えられたものだとしたら、まずはパーツをつぶせばいい)俺のターン!」

 

翔太

手札5→6

 

「俺は手札から《魔装陰陽師セイメイ》を召喚!」

 

魔装陰陽師セイメイ レベル3 攻撃1000(チューナー)

 

「このカードの召喚に成功したとき、手札からレベル4以下の魔装モンスター1体を特殊召喚できる。俺はさらに手札から《魔装黒鮫サッチ》を特殊召喚!」

 

魔装黒鮫サッチ レベル4 攻撃1400

 

「《サッチ》はフィールド上に存在する限り、俺の魔装モンスターの攻撃力を400アップさせる」

 

魔装陰陽師セイメイ レベル3 攻撃1000→1400(チューナー)

魔装黒鮫サッチ レベル4 攻撃1400→1800

 

これで2体の魔装モンスターの攻撃力はほかのパーツを超えた。

「バトルだ。俺は《セイメイ》で《ワイゼルA》を攻撃!」

《魔装陰陽師セイメイ》が紙の人形を《機皇帝ワイゼル》の前にかざす。

すると、それに刻まれている五芒星から緑色の光線が右腕パーツに向けて放たれる。

「《ワイゼルG》の効果発動。攻撃対象をこのカードに変更させる」

しかし、左腕パーツが強制排除され、それについているスラスターが点火して右腕パーツの前まで移動する。

そのあとで内蔵されているビームシールドで光線を受け止めた。

受け止めた後でエネルギーを失ったためか、そのまま地面に落ちて機能停止した。

「ちっ…だが攻撃は残ってるぜ。《サッチ》で《ワイゼルA》を攻撃!」

入れ替わるように《魔装黒鮫サッチ》が大きく口を開けて右腕パーツにかみつく。

ギザギザとした刃のような歯は機械の装甲をバリバリとかみ砕いていく。

そして、その破片がプラシドの頭上に降ってくる。

 

プラシド

ライフ4000→3400

 

機皇帝ワイゼル∞ レベル1 攻撃2500→1300

 

「よし、思った通り攻撃力が下がったな」

5体のモンスターが合体した《機皇帝ワイゼル》だが、結局は5体のレベルの低いモンスターの集合体でしかない。

各個撃破に弱いだろうという翔太の読みは半分正解した。

「俺はカードを2枚伏せ、ターンエンドだ(今の俺のデッキにレベル7のシンクロモンスターは《キュウビ》しかいない。ここは様子を見るぜ)」

 

プラシド

手札2

ライフ3400

場 機皇帝ワイゼル∞ レベル1 攻撃1300

  ワイゼルT レベル1 攻撃500

  ワイゼルC レベル1 攻撃800

  伏せカード1

 

翔太

手札6→2

ライフ4000

場 魔装陰陽師セイメイ レベル3 攻撃1400(チューナー)

  魔装黒鮫サッチ レベル4 攻撃1800

  伏せカード2

 

「俺のターン、ドロー!」

 

プラシド

手札2→3

 

「俺は手札から《ワイゼルA3》を召喚」

召喚されるのと同時に《ワイゼルA3》は右腕のパーツに変形して、《機皇帝ワイゼル》とドッキングする。

 

ワイゼルA3 レベル3 攻撃1600

機皇帝ワイゼル∞ レベル1 攻撃1300→2900

 

「さらに俺はカードを1枚伏せ、手札から魔法カード《オーロラ・ドロー》を発動。俺のフィールド上に機皇帝が存在し、手札がこのカード1枚だけの時、デッキからカードを2枚ドローする」

 

オーロラ・ドロー(アニメオリカ)

通常魔法カード

(1):自分フィールド上に「機皇帝」モンスターが存在し、手札がこのカードのみの場合に発動できる。デッキからカードを2枚ドローする。

 

「バトルだ。俺は《ワイゼル》で《魔装陰陽師セイメイ》を攻撃」

《ワイゼルA3》を新たな右腕とした《機皇帝ワイゼル》が《魔装陰陽師セイメイ》の前に出る。

それについている2本の刃が激しく振動しており、それによって本来では切断が難しい鋼鉄などの破壊も可能としている。

「俺は手札の《魔装亀テンセキ》の効果を発動。こいつを手札から墓地へ送ることでこのターン、俺の魔装モンスターは戦闘では破壊されず、発生するダメージも0となる」

激しく振動する刃を突然現れた亀型モンスターが受け止める。

甲羅に傷をつけることができたものの、破壊できないとCPUが判断したことで《機皇帝ワイゼル》は何事もなかったかのようにプラシドのフィールドへ戻っていく。

「俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

プラシド

手札2→0

ライフ3400

場 機皇帝ワイゼル∞ レベル1 攻撃2900

  ワイゼルA3 レベル3 攻撃1600

  ワイゼルT レベル1 攻撃500

  ワイゼルC レベル1 攻撃800

  伏せカード3

 

翔太

手札2→1

ライフ4000

場 魔装陰陽師セイメイ レベル3 攻撃1400(チューナー)

  魔装黒鮫サッチ レベル4 攻撃1800

  伏せカード2

 

新たなパーツが合体して、さらに攻撃力を増した《機皇帝ワイゼル》だが、新しい左腕パーツがないために個々のパーツに対する防御が薄い。

「このままとどめを刺されて、楽になるか?俺のターン!」

 

翔太

手札1→2

 

「俺は手札から《魔装壁ゴルゴー》を召喚!」

 

魔装壁ゴルゴー レベル2 攻撃0(チューナー)

 

「こいつを素材にシンクロ召喚されたモンスターは相手のカード効果では破壊されない!俺はレベル4の《サッチ》にレベル2の《ゴルゴー》をチューニング。神の血を身に宿す槍士、雷鳴のごとき苛烈さを得て戦場で踊れ!シンクロ召喚!現れろ、《魔装槍士クーフーリン》!!」

 

魔装槍士クーフーリン レベル6 攻撃2100

 

シンクロモンスターが登場した際、プラシドはそれに注目する。

それと連動するかのように、《機皇帝ワイゼル》の頭部カメラもそのモンスターに向けられた。

「《サッチ》がフィールドから離れたことで、《セイメイ》の攻撃力は元に戻る」

 

魔装陰陽師セイメイ レベル3 攻撃1400→1000(チューナー)

 

「こいつで一気に本丸を破壊させてもらう!《クーフーリン》は1ターンに1度、相手モンスター1体の攻撃力・守備力をターン終了時まで俺の魔装モンスター1体のレベルかランクの数×400ダウンさせる。俺は《クーフーリン》と《機皇帝ワイゼル∞》を選択する!ゲイ・ボルグ!」

《魔装槍士クーフーリン》が投げた槍が30本近くの銛に変わり、胸部パーツを襲う。

もともとかなりの強度の合金でできているためか、すべて弾かれた。

しかし、エネルギー源を守っている透明の装甲にひびが入っていた。

 

機皇帝ワイゼル∞ レベル1 攻撃2900→500

 

「これでお前自慢のロボットはスクラップ行だ。《クーフーリン》で攻撃!」

新たな槍を召喚した《魔装槍士クーフーリン》が建物を壁けりで登り、屋上まで行く。

そして、そこから跳躍して《機皇帝ワイゼル》にとりつき、エネルギー源を貫こうとした。

「永続罠《リミット・リバース》発動。俺の墓地に存在する攻撃力1000以下のモンスター1体を攻撃表示で特殊召喚できる。俺は《ワイズ・コア》を特殊召喚」

「何!?《ワイズ・コア》??《ワイゼルG》じゃないのか?」

質問するものの、しょせん相手はただの機械。

答えるはずもなく、プラシドのフィールドに再び《ワイズ・コア》が表れる。

 

ワイズ・コア レベル1 攻撃0

 

「さらに俺は罠カード《ハイレート・ドロー》を発動。俺のフィールドに存在するモンスターをすべて破壊し、破壊した機械族モンスター2体につき、カードを1枚ドローする」

《ハイレート・ドロー》のソリッドビジョンが紫色の光を見せると、プラシドのフィールドに紫色の穴が生まれ、彼のモンスターがすべて飲み込まれていった。

 

プラシド

手札0→2

 

ハイレート・ドロー(アニメオリカ)

通常罠カード

(1):自分フィールド上に存在するモンスターを全て破壊する。その後、破壊され墓地へ送られた機械族モンスター2体につき、デッキからカードを1枚ドローする。

 

「そして、《ワイズ・コア》の効果発動。再び現れろ、《機皇帝ワイゼル》!!」

モンスターを飲み込んだ紫色の穴から最初のターンの時の状態の《機皇帝ワイゼル》が合体し終わった姿で出てくる。

 

機皇帝ワイゼル∞ レベル1 攻撃0→2500

ワイゼルT レベル1 攻撃500

ワイゼルA レベル1 攻撃1200

ワイゼルG レベル1 守備1200

ワイゼルC レベル1 攻撃800

 

ワイゼルA3(アニメオリカ)

レベル3 攻撃1600 守備0 効果 闇属性 機械族

(1):このカードは自分フィールド上に存在する「ワイゼルA」1体をリリースし、

手札から特殊召喚することができる。

(2):このカードはフィールド上に存在する限り、攻撃表示となる。

(3):フィールド上に「∞」モンスターが存在しない場合、このカードを破壊する。

(4):自分フィールド上に存在する「∞」と名のついたモンスターが守備表示モンスターを攻撃したとき、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

 

《魔装槍士クーフーリン》が《機皇帝ワイゼル》にとりつくも、入っているはずのヒビがない。

残念ながら、装甲のほうが槍よりも強度が高いため、このまま攻撃しても決定打にならない。

「ちっ…なら、《ワイゼルG》を攻撃だ!」

攻撃対象変更の宣言を聞いた槍士は少しため息をついた後で左腕パーツのドッキング部分を攻撃する。

強度がもろかったためか、簡単に砕け、左腕パーツが落ちる。

本丸を破壊できなかったことに翔太は舌打ちする。

「ちっ、《クーフーリン》が効果を発動したターン、こいつ以外の俺のモンスターは攻撃できない。俺はこれでターンエンドだ!」

 

プラシド

手札0

ライフ3400

場 機皇帝ワイゼル∞ レベル1 攻撃2500

  ワイゼルT レベル1 攻撃500

  ワイゼルA レベル1 攻撃1200

  ワイゼルC レベル1 攻撃800

  伏せカード1

 

翔太

手札2→1

ライフ4000

場 魔装陰陽師セイメイ レベル3 攻撃1000(チューナー)

  魔装槍士クーフーリン レベル6 攻撃2100

  伏せカード2

 

「シンクロモンスター発見…」

「はぁ?」

ようやくデュエルの進行以外の言葉を話したプラシド。

だが、その言葉の意味を翔太は理解できなかった。

「俺のターン、ドロー」

 

プラシド

手札0→1

 

「《ワイゼル∞》の効果発動。1ターンに1度、相手フィールド上に存在するシンクロモンスター1体を捕獲する」

「何!?シンクロモンスター捕獲だと??」

効果発動宣言と同時に、《機皇帝ワイゼル》の胸部装甲が開き、エネルギー体が出て行って《魔装槍士クーフーリン》を包んでいく。

取り込まれた槍士は手の持っている槍を振り回してほどこうとするが、効果はなく、そのままそのエネルギー体の一部となってしまった。

新たな力を得たエネルギー体はそのまま元の場所へ戻っていく。

「《クーフーリン》が飲み込まれた…!?」

「《ワイゼル》は1体のみシンクロモンスターを捕獲することができる機械。そして、そのモンスターのもともとの攻撃力を得る」

右腕に装着されている振動剣が外れ、地中から飛び出してきた白くて長い柄に取り付けられる。

それを手にした《機皇帝ワイゼル》はまるで先ほど吸収したモンスターと同じ槍さばきを翔太に見せた。

 

機皇帝ワイゼル∞ レベル1 攻撃2500→4600

 

「攻撃力4600!?」

「バトルだ。《ワイゼル》で《セイメイ》を攻撃!」

《機皇帝ワイゼル》が槍を投擲する。

その槍を《魔装陰陽師セイメイ》が紙の人形で受け止めるが、急速に接近した《機皇帝ワイゼル》が強く槍を差し込んでいく。

人形を貫き、穂先が陰陽師の胸を貫く。

それと同時に翔太の腹部に刺さっていく。

「ぐぅ…!!(こいつは…ダメージが実体化してやがる!!)」

刺された影響か、彼の口からわずかに血が流れる。

 

翔太

ライフ4000→400

 

「罠発動!《ショック・ドロー》!!俺がこのターン受けたダメージ1000毎に1枚、デッキからカードをドローする!」

大幅にライフ差ができてしまった翔太はこの3枚に起死回生の望みを託す。

ライフ400では、ほんのわずかな貫通ダメージや効果ダメージも許されない。

「さらに俺は《ワイゼルG3》を召喚」

腕から垂直にとりつけられた楕円形のビームシールド発生装置が特徴的な左腕パーツが出現する。

ドッキング部分が前の攻撃で破損している《機皇帝ワイゼル》は再びエネルギー源を装甲の外に出す。

そのエネルギー源からネバネバとしたゼリーが出てきて、それがドッキング部分に付着する。

エネルギー源が元の場所に戻ると、ゼリーが消滅してドッキング部分が完全に修復された状態となった。

これにより、問題なく左腕パーツの装着に成功する。

「《ワイゼルG3》はフィールド上に存在する限り、守備表示となる」

 

ワイゼルG3 レベル3 守備2000

 

「《ワイゼルG3》は《ワイゼルG》の効果に加え、1ターンに1度、戦闘では破壊されない」

「く…!!」

ライフ400の翔太にとっての望みの一発が崩れる。

《ワイゼルG3》がいなければ、彼にとっての理想的な状況が生まれていたのだが…。

「俺はこれでターンエンド」

 

プラシド

手札1→0

ライフ3400

場 機皇帝ワイゼル∞(《魔装槍士クーフーリン》装備) レベル1 攻撃4600

  ワイゼルT レベル1 攻撃500

  ワイゼルA レベル1 攻撃1200

  ワイゼルC レベル1 攻撃800

  ワイゼルG3 レベル3 守備2000

  伏せカード1

 

翔太

手札1→4

ライフ400

場 伏せカード1

 

ワイゼルG3(アニメオリカ)

レベル3 攻撃0 守備2000 効果 闇属性 機械族

(1):このカードは自分フィールド上に存在する「ワイゼルG」1体をリリースすることで、手札から特殊召喚できる。

(2):フィールド上に「∞」と名のついたモンスターが存在しない場合、このカードを破壊する。

(3):自分フィールド上に存在するモンスターが攻撃対象に選択された時に発動できる。このカードに攻撃対象を変更する。

(4):このカードは1ターンに1度、戦闘では破壊されない。

 

「俺のターン!」

 

翔太

手札4→5

 

「俺は手札から魔法カード《逆境の宝札》を発動。こいつは俺のフィールド上にモンスターが存在せず、相手フィールド上に特殊召喚されたモンスターが存在するとき、デッキからカードを2枚ドローする。そして、俺はモンスターを裏守備表示で召喚。カードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

プラシド

手札0

ライフ3400

場 機皇帝ワイゼル∞(《魔装槍士クーフーリン》装備) レベル1 攻撃4600

  ワイゼルT レベル1 攻撃500

  ワイゼルA レベル1 攻撃1200

  ワイゼルC レベル1 攻撃800

  ワイゼルG3 レベル3 守備2000

  伏せカード1

 

翔太

手札5→4

ライフ400

場 裏守備モンスター1

  伏せカード2

 

「俺のターン、ドロー」

 

プラシド

手札0→1

 

「俺は手札から魔法カード《機皇換装》を発動。俺のフィールド上に存在するパーツと墓地のパーツを交換する。俺は《ワイゼルA》を《ワイゼルA3》と換装する」

槍を地面に突き刺した後で、右腕パーツが分離し、目の前から消えてなくなる。

それと入れ替わるように《ワイゼルA3》が新たな右腕パーツとして装着される。

 

ワイゼルA3 レベル3 攻撃1600

機皇帝ワイゼル∞(《魔装槍士クーフーリン》装備) レベル1 攻撃4600→5000

 

「さらにこのカードは自分フィールド上に∞モンスターを含む機械族モンスターが5体存在するとき、墓地から除外することでデッキからカードを1枚ドローできる」

 

機皇換装

速攻魔法カード

「機皇換装」の(2)の効果はこのカードが墓地へ送られたターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に「∞」モンスターが存在するとき、自分フィールド上に存在する「ワイゼル」「スキエル」「グランエル」モンスター1体をリリースして発動する。自分の手札・墓地に存在する「ワイゼル」「スキエル」「グランエル」モンスター1体を自分フィールド上の特殊召喚する。

(2):自分フィールド上に「∞」モンスターを含む機械族モンスターが5体存在するとき、墓地に存在するこのカード1枚を除外することで発動できる。デッキからカードを1枚ドローする。

 

「《A3》を装着した《ワイゼル》は守備モンスターを攻撃したとき、貫通ダメージを与える」

「何!?」

「《機皇帝ワイゼル》で裏守備モンスターを攻撃!」

再び槍を手にした《機皇帝ワイゼル∞》がそれで裏守備モンスターを貫こうとする。

裏守備モンスターである《魔装銃士マゴイチ》が姿を見せる。

 

魔装銃士マゴイチ レベル4 守備1600

 

「罠発動!《ガード・ブロック》!!俺が受ける戦闘ダメージを0にし、デッキからカードを1枚ドローする!」

せめて、翔太のダメージだけは避けようと決心した銃士は上空へ飛び、注目を自身に向けるために《機皇帝ワイゼル》に銃撃する。

3発撃ち、いずれも槍に頭部カメラに命中はしたもののダメージにはならず、《機皇帝ワイゼル》は左手で《魔装銃士マゴイチ》をつかむ。

そして、握りつぶす形で彼を撃破した。

「そして、《マゴイチ》は戦闘によって破壊され墓地へ送られたとき、デッキから魔装モンスター1体を手札に加える。俺はデッキから《魔装鍛冶クルダレゴン》を手札に加える」

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

 

プラシド

手札1→0

ライフ3400

場 機皇帝ワイゼル∞(《魔装槍士クーフーリン》装備) レベル1 攻撃5000

  ワイゼルT レベル1 攻撃500

  ワイゼルA3 レベル1 攻撃1600

  ワイゼルC レベル1 攻撃800

  ワイゼルG3 レベル3 守備2000

  伏せカード2

 

翔太

手札4→6(うち1枚《魔装鍛冶クルダレゴン》)

ライフ400

場 伏せカード1

 

《ワイゼルA3》の登場により、攻撃力5000で貫通効果を持った化け物へと変貌を遂げた機皇帝への戦慄からか、翔太の頬に一筋の汗が流れる。

「(《ガード・ブロック》の効果で得たカード…こいつなら!!)俺のターン!」

 

翔太

手札6→7

 

「俺はスケール2の《魔装槍士タダカツ》とスケール9の《魔装剣士ムネシゲ》でペンデュラムスケールをセッティング!」

「罠発動。《ゴースト・コンバート》。俺のフィールド上に機皇帝が存在するとき、墓地の機械族モンスター1体を除外することで、相手の魔法・罠・モンスター効果の発動を無効にし、破壊する」

《機皇帝ワイゼル》のエネルギー源から放たれる緑色の光線に《魔装剣士ムネシゲ》が貫かれる。

光線を受けた剣士は光の柱を生み出すことなく消滅した。

「ちっ…!」

「更にこのカードは発動後、フィールドにセットされる」

 

ゴースト・コンバート(アニメオリカ・TF仕様)

通常罠カード

(1):自分フィールド上に「∞」と名のついたモンスターが存在する場合、自分の墓地に存在する機械族モンスター1体をゲームから除外して発動する。相手の魔法・罠・モンスター効果の発動を無効にし破壊する。発動後このカードは墓地へ送らず、そのままセットする。

 

発動自体を無効にされたことにより、《魔装剣士ムネシゲ》はエクストラデッキではなく、墓地へ送られる。

カード効果だけを見ると、このカードはペンデュラムモンスター1体の破壊を1度だけ守ることができる。

そこをプラシドがとどめを刺す際に警戒したのだろう。

そして、スケールの高さも。

だが、ペンデュラム召喚自体の意味をこの機会は理解していなかった。

「俺は《魔装鍛冶クルダレゴン》をセッティングする。こいつのペンデュラムスケールは8だ!来たれ、時の果てに眠りし英雄の魂。漆黒の魂と契約し、封印から解き放たん!ペンデュラム召喚!来い、《魔装騎士ペイルライダー》!!」

長い間の沈黙を破り、初めてシンクロ次元で現れることができた第4の騎士は動揺することなく《機皇帝ワイゼル》を見る。

動揺するよりも先に、彼の中にはシンクロ次元初となる敵への殺意が宿ったのだろう。

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

 

「《クルダレゴン》のペンデュラム効果発動。1ターンに1度、俺が魔装モンスターのペンデュラム召喚に成功したとき、墓地の魔装モンスター1体を手札に戻すことができる。俺は墓地から《魔装壁ゴルゴー》を手札に戻す。さらに俺は手札から《PCM-シルバームーン・アーマー》を発動!俺のフィールド上に存在するレベル7のペンデュラムモンスター1体を同じ種族でランク7のエクシーズモンスターに変化させる。俺は《魔装騎士ペイルライダー》でオーバーレイ!月の鎧に拘束されし第4の騎士よ、その重力を戒めとし覚醒せよ。ムーンライトエクシーズチェンジ!現れろ、月の鎧纏いし死の騎士、《MLX-魔装騎士ペイルライダー・ムーンレイス》!」

《魔装騎士ペイルライダー》が上空に向けてマシンガンの弾丸を1発だけ発射する。

すると、上空が晴れ渡る青空から雲1つない、満月が浮かぶ夜空へと変わっていく。

そして、月の光に照らされた騎士の鎧が変わっていった。

 

MLX-魔装騎士ペイルライダー・ムーンレイス ランク7 攻撃2500

 

「月の力を得た《ペイルライダー》は俺のライフが1000以下の場合、1度のバトルフェイズ中に相手フィールド上に存在するすべてのモンスターに1度ずつ攻撃できる。さらにその状態でオーバーレイユニットに《魔装騎士ペイルライダー》が存在する場合、俺の墓地に存在する魔装モンスター1体を除外することで、相手モンスター1体の攻撃力・守備力をターン終了時まで0にすることができる!」

《MLX-魔装騎士ペイルライダー・ムーンレイス》のレールガンから放たれた《魔装鮫サッチ》が《機皇帝ワイゼル》の胸部を貫く。

その口にはエネルギー源があり、勝利を確信した鮫はそれとともに消滅した。

 

機皇帝ワイゼル∞ レベル1 攻撃5000→0

 

除外されたカード

・魔装鮫サッチ

 

「そして、手札から魔法カード《マジック・コード:α》を発動!俺のフィールド上に魔装モンスターが存在するとき、相手フィールド上に存在するモンスター1体の効果をターン終了時まで無効にする!」

五芒星の魔法陣に拘束された《ワイゼルG3》が機能不全を起こし、ビームシールドが発生できなくなる。

「バトルだ!俺は《ペイルライダー》でお前のすべてのパーツを攻撃する!フルバースト・デスブレイク!!」

装着しているすべての火器の安全装置をはずし、一斉射撃を行う。

数多くのミサイルを受けた左腕と頭部のパーツは大きく損傷し、地面に落ちる。

そして、ガトリングの弾丸がプラシドの頬をかすめる。

 

プラシド

ライフ3400→1400

 

「罠発動。《インフィニティ・ショック》。俺のフィールド上に機皇帝が存在し、俺がダメージを受けた時、相手フィールド上に存在するカード1枚を破壊する」

「《シルバームーン・アーマー》によってエクシーズ召喚された《ペイルライダー》は次の俺のターンのスタンバイフェイズまで破壊されない!」

「《インフィニティ・ショック》の効果はいかなる効果でも無効化できない!」

「ちっ…!!」

破壊された2つのパーツが時速200キロ近いスピードで《MLX-魔装騎士ペイルライダー・ムーンレイス》の腹部が貫かれる。

「これにより、俺の勝利は確定…」

「負けたのはお前だ!俺は罠カード《アサシン・ブレイク》を発動!俺のターンに俺の魔装モンスターがカード効果で破壊されたとき、墓地・エクストラデッキの《ペイルライダー》をデッキに戻すことで、相手フィールド上で最も攻撃力の高いモンスター1体を破壊する!」

腹部を貫かれた《MLX-魔装騎士ペイルライダー・ムーンレイス》の青白い目が赤く染まっていき、痛みに耐えながらレールガンの発射体制を整える。

危険と判断した《機皇帝ワイゼル》は廃墟ビルを盾にしのごうとする。

「そして、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与える!今一番攻撃力が高いのは《ワイゼルA3》だ!!」

狙いを定めた第4の騎士はレールガンを発射する。

弾丸のスピードは音速を超え、ビルのコンクリートでできた壁もろとも《機皇帝ワイゼル》の右腕パーツを貫いていった。

あまりのスピードでソニックブームは機皇帝の内部パーツにダメージを与えており、その結果《機皇帝ワイゼル》が機能を停止する。

それと同時に、プラシドも動きを止め、機密保持のためか自爆した。

 

プラシド

ライフ1400→0

 

インフィニティ・ショック

通常罠カード

(1):自分フィールド上に「∞」モンスターが存在し、自分がダメージを受けた時に発動できる。相手フィールド上に存在するカード1枚を破壊する。この効果は相手の魔法・罠・モンスター効果で無効にされない。

 

「はあはあ…時間は…?」

腹の痛みに耐えながら、翔太は時計を確認する。

まだタイムアップまで10分といったところだった。

「ペンデュラム召喚とエクシーズ召喚を使っちまうなんてな。あの機皇帝、シンクロキラーといえるだけの力があるが、倒せてよかったぜ…だが…」

翔太の足元がふらつきはじめ、それと同時に《MLX-魔装騎士ペイルライダー・ムーンレイス》もレールガンから手を放してしまう。

「ちくしょう…今の俺は、ここが限界か…伊織…」

なぜか伊織のことが頭に浮かぶ。

(はっ、何おかしくなってんだよ、俺は…)

そんな自分を皮肉に思いながら、意識を失い、うつぶせに倒れた。

第4の騎士も同じように倒れ、それと同時に消えていった。



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第57話 粉砕する弾丸

「ぐあああ!!」

「なんだってんだ、こいつ…は…??」

里香と漁介の目の前でまた2人犠牲になる。

その2人を倒したのは11歳くらいの小さな体で赤い髪の子供型ロボット。

頭上には青い、《機皇帝ワイゼル》と同じくらいの大きさの鳥型ロボットで、胸部に同じエネルギー源が内蔵されている。

「あいつ…シンクロモンスターを吸収して強くなる!この次元のデュエリストにとってはぶち危ない!!」

「どないしたらええんや??」

「おーーい!!」

「伊織!?」

ハアハアと荒く息をしながら走ってきた伊織が里香と漁介を見る。

全力でここまで来たためか、服も体も汗でびっしょりだ。

「はあはあ…ロボットが2機来たんだけど…見てない?」

「それらしい奴が1機おるで…あと1体はそのまま行ってしもうた…」

「もう1体…」

もう1体は長いあごひげと禿げ頭が特徴的な老人型ロボットで、プラシドの倍近い大きさを持っている。

ここにいないということは、もしかしたら…。

「急いで、追いかけないと…あ…!!」

再び走ろうとした伊織がフラっと前のめりに倒れそうになり、里香が支える。

「あ、あれれ…普段はもっと走れるのに、なんでここで…?」

「しゃあない…伊織、そのもう1体のロボットはでかいじじいか?」

「う、うん…」

「なら、俺が追いかける!!シンクロキラーだってことだけでも伝えんと、とんでもないことになる!」

「しゃあないわ…漁介、頼むで!!」

何も言わずにうなずいた漁介が走って最終防衛ラインへ向かっていく。

「ターゲット…確認。デュエルロイドASNo.2ルチアーノ、排除開始」

ルチアーノと名乗ったロボットが手札・デッキ・フィールドをはじめの状態に戻していく。

警戒しているのか、それとも強化したあの機械でなくても勝てるという余裕か。

デュエルディスクを展開させた里香はじっとルチアーノを見る。

「さあ、始めるで、チビ!!いくら見た目がガキでも手加減せえへん!」

「はあ、はあ…」

気合を入れる里香のそばで、伊織もデュエルディスクを展開させていた。

「アホ!?伊織は休んどれ!!」

「ううん、たぶん…翔太君も漁介君も私以上に頑張ってる…!里香ちゃんだって。ここで1人だけ休んでたら女が廃る!」

「それ、男が言うセリフやで??」

プッと思わず苦笑しそうになった里香だが、展開すると同時に伊織が倒れそうになった。

そのため、自分の肩を貸して伊織を立たせる。

「なら…ウチらシェイドの美少女タッグでぶっ飛ばすでーー!」

「そーそー!女は男よりも強ーい…」

やっと立つことができた伊織はカードをドローする。

ほかのメンバーが加勢しようとするが、里香が右手で制止する。

「美少女2人がいいところ見せようってとこで…」

「水を差すなんて…野暮!!」

「「デュエル!!」」

もう邪魔が入らないようにするためか、強引に伊織たちはデュエルを開始する。

加勢しようとしたメンバーだが、その結果どうなったのかを先ほど倒された2人で見ていること、そしてその対策がないことから見守るしかなかった。

 

ルチアーノ

手札5

ライフ4000

 

里香&伊織

手札

里香5

伊織5

ライフ4000

 

そのころ、翔太がいる第一防衛ラインでは…。

「急げ急げ!!」

「早くボスを後ろへ下げて、手当てをしなければ!!」

翔太を乗せたタンカが2人のメンバーによって運ばれている。

自爆したにもかかわらず、プラシドの中に入っていたカード化された仲間たちは無事で、現在は2人のカードケースの中に入っている。

しかし、現実は非情だ。

キキィーーーー!!

「くっそう、なんだ!」

「セキュリティかよ!?」

デュエルドールとのデュエルに気を取られているうちに潜入していたセキュリティメンバーに包囲されていた。

「ざっと数えて14人…」

「くっそう、せめてボスだけでもなんとかしねえと…!」

2人はデュエルディスクを展開させつつ、どうすれば突破できるかの策を練り始めた。

 

「僕のターン、僕は手札から《スカイ・コア》を召喚」

 

スカイ・コア レベル1 攻撃0

 

「そして、カードを4枚伏せてターンエンド」

 

ルチアーノ

手札5→0

ライフ4000

場 スカイ・コア レベル1 攻撃0

  伏せカード4

 

里香&伊織

手札

里香5

伊織5

ライフ4000

場 なし

 

「うげぇ…《スカイ・コア》やで…」

攻撃力0の《スカイ・コア》にげんなりとした表情を見せる。

直接戦ったわけではないものの、ほかのメンバーがルチアーノとデュエルをしているのを見て、このモンスターの恐ろしさを学んでいる。

「早うあの卵を壊さな…ウチのターン、ドロー!」

 

里香

手札5→6

 

「ウチは手札から魔法カード《氷結界の三方陣》を発動!このカードは手札に存在する氷結界3種類を見せることで発動できるカードや!相手フィールド上のカードを1枚破壊し、手札の氷結界1体を特殊召喚するで!ウチが破壊するカードは…左から2番目の伏せカードや!」

《氷結界の虎将ガンターラ》と《氷結界の密偵マーラ》、《氷結界の交霊師》が里香の前と後ろ斜め左、後ろ斜め右に立ち、正三角形の陣を組む。

そして、彼らの手から離される青い魔力が集結し、2メートル近い大きさの氷の槍となってルチアーノの伏せカードに向けて発射される。

だが、伏せカードの目の前に羽根付きの青い悪魔が現れ、持ち手部分に髑髏の飾りがある鏡を出して氷の槍を吸収する。

「なんやって!?」

「罠カード、《悪魔の手鏡》。このカードはフィールド上の魔法・罠カード1枚を対象に発動した相手の魔法を、

別の正しい対象に移し替える。よって、対象を《スカイ・コア》に変更する」

鏡が砕けると、そこから飛び出した氷の槍が《スカイ・コア》を貫く。

そして、その中に閉じ込められていた5つのパーツが飛び出す。

「《スカイ・コア》がカード効果で破壊されたとき、僕のフィールド上に存在するモンスターを全て破壊し、手札・デッキ・墓地から《機皇帝スキエル∞》、《スキエルT》、《スキエルA》、《スキエルG》、《スキエルC》を特殊召喚する」

 

機皇帝スキエル∞ レベル1 攻撃0

スキエルT レベル1 攻撃600

スキエルA レベル1 攻撃1000

スキエルG レベル1 守備300

スキエルC レベル1 攻撃400

 

「《スキエル∞》はほかのパーツと合体することで、攻撃力・守備力を各パーツの合計にすることができる」

《機皇帝スキエル∞》の胸部パーツの装甲が展開し、エネルギー源が映る透明な装甲があらわとなる。

そして、4つのパーツが胸部パーツから放たれる信号にしたがって合体する。

 

機皇帝スキエル∞ レベル1 攻撃0→2200

 

「ウチの魔法カードが利用されてまったーー!!」

《サイクロン》や《ナイト・ショット》などの魔法・罠カードに範囲が限定されたカードであればこのような事態にはならなかったかもしれない。

だが、ルチアーノの伏せカードは先ほど発動した《悪魔の手鏡》を除くと3枚。

ほかにも対処法があったのかもしれない。

「せやけど、まだ終わっとらんで!ウチは《氷結界の三方陣》の効果で《ガンターラ》を特殊召喚や!」

 

氷結界の虎将ガンターラ レベル7 攻撃2700

 

「更にこのカードは相手フィールド上に存在するカードの枚数がウチのフィールド上に存在するカードよりも4枚以上多い場合、手札から特殊召喚できるで!《氷結界の交霊師》を特殊召喚や!」

白と水色を基調とした、長いスカートと袖の巫女服に身を包んだ、水色の足まで届くほどの長い髪と瞳の女性が現れる。

 

氷結界の交霊師 レベル7 攻撃2200

 

「おおー、いきなり攻撃力2700と2200のモンスターが出たー!里香ちゃん、そのままやれやれー!」

「《スカイ・コア》の効果による大量展開と大量の伏せカードが仇んなったな。ってか伊織!!応援する暇あるんやったら、次のターンに何するか考えや!!ウチは《ガンターラ》でコアをぶっ飛ばすで!」

《氷結界の虎将ガンターラ》が右拳に術を唱える。

すると、右腕が巨大な腕を模した氷に包まれていく。

そして、その拳で《機皇帝スキエル》の胸部パーツを叩き潰そうとした。

「《スキエルG》の効果発動。1ターンに1度、自分フィールド上に存在するモンスターを対象とした攻撃を無効にする」

尾部パーツとなっている《スキエルG》が真下に焼夷弾を落とす。

地表の温度が焼夷弾によって2000℃にまで上昇し、それを利用した《機皇帝スキエル》が高度を急速に上げていく。

更に高温となったことで氷が解けたこともあり、《氷結界の虎将ガンターラ》は攻撃を断念する。

「なら、《交霊師》で《スキエル》を攻撃!ちなみに、《交霊師》の効果でアンタは1ターンに1度しか魔法・罠カードを発動できへんでー?」

《氷結界の交霊師》が手を合わせた後、両手をゆっくり離していく。

すると、その手には青い魔力の光が宿っており、そこから氷のつぶてが《機皇帝スキエル》に向けて放たれていく。

氷は装甲の隙間から内部に侵入していき、エネルギー源を氷漬けにしていく。

反撃のため、腹部パーツとなった《スキエルA》が鉄の弾丸を一発発射する。

銃弾を受けた《氷結界の交霊師》はその場にうずくまるも、エネルギー源が凍ってしまった《機皇帝スキエル》は地表に落下してしまった。

「やったで!これで機皇帝はおしまいや!!」

「すごーい。ここからは好きなだけシンクロモンスターが出せるー!」

「罠発動、《奇跡の残照》」

「な…!?」

ルチアーノが発動した罠カードに2人は驚く。

相打ちによって、フィールドから《氷結界の交霊師》が離れている。

そのことから彼は無制限に魔法・罠カードを使えるようになっているのだ。

「このターン、戦闘で破壊されたモンスター1体を特殊召喚する。《スキエル∞》を特殊召喚」

焼夷弾の熱が胸部パーツに伝わり、エネルギー源の氷が解けていく。

回復が不十分なためか、ほかの4つのパーツを強制排除した後で《機皇帝スキエル∞》が上空に浮遊する。

 

機皇帝スキエル∞ レベル1 攻撃0

 

「ウチはこれでターン終了や!さらに《ガンターラ》の効果発動!こいつはウチのターン終了ごとに1度、墓地から《ガンターラ》以外の氷結界を蘇生できるんや!」

うずくまる《氷結界の交霊師》に向かって《氷結界の虎将ガンターラ》が念仏を唱える。

すると、腹部に刺さっていた弾丸が消滅し、傷がふさがっていく。

先ほどまでうずくまっていたはずの彼女は嘘のようにすっと立ち上がり、再び戦線に立つ。

 

ルチアーノ

手札0

ライフ4000

場 機皇帝スキエル∞ レベル1 攻撃0

  伏せカード2

 

里香&伊織

手札

里香6→3(うち1枚《氷結界の密偵マーラ》)

伊織5

ライフ4000

場 氷結界の虎将ガンターラ レベル7 攻撃2700

  氷結界の交霊師 レベル7 攻撃2200

 

「あっちゃー、本体だけ残って待ったでー…」

少しだけ嫌な予感がする里香だが、伊織は楽観的だ。

「大丈夫、大丈夫ー。私たちのフィールドにはシンクロモンスターいないし、あのモンスターの攻撃力は0。次のターンには破壊できるよー」

疲れが取れたのか、ゆっくり立ち上がって里香に言葉をかける。

また、《氷結界の交霊師》が復活したことでルチアーノはまた1ターンに1度しか魔法・罠カードを発動できなくなった。

そこから逆転するのは難しい。

「僕のターン、ドロー」

 

ルチアーノ

手札0→1

 

「僕は手札から装備魔法《インフィニティ・ミスリーダー》を《スキエル∞》に装備」

《機皇帝スキエル∞》のエネルギー源の色が緑から赤へと変わっていく。

「《ミスリーダー》は1ターンに1度、相手フィールド上に攻撃表示で存在する特殊召喚されたモンスター1体をターン終了時までシンクロモンスターに変身させることができる。その効果で《ガンターラ》をシンクロモンスターにする」

「な…」

「嘘ーー!?」

「そして、《スキエル∞》の効果発動。1ターンに1度、相手フィールド上に存在するシンクロモンスター1体を捕獲する」

《スキエル∞》から離れた赤いエネルギー源が《氷結界の虎将ガンターラ》を包んでいく。

赤く発行しているせいか、先ほどの焼夷弾を超える2400℃もの熱を発生させており、わけもなく無力化と九州を完了させていく。

そして、エネルギー源が元の場所へ戻ると、《機皇帝スキエル∞》の装甲に色も赤くなった。

「《スキエル∞》はこの効果で捕獲したモンスター1体の攻撃力分、攻撃力がアップする」

 

機皇帝スキエル∞ レベル1 攻撃0→2700

 

「バトル。《スキエル∞》で《交霊師》を攻撃」

赤く染まった《機皇帝スキエル∞》が突撃する。

突撃と同時にさらに熱がたまったためか、発火しており、接触した《氷結界の交霊師》にも燃え移る。

交霊師は炎の中へ消えていき、里香たちの周りに火の粉が降る。

「熱ち、熱ちちちち!!」

「ひゃあ!!これ、本物の火の粉!?」

 

里香&伊織

ライフ4000→3500

 

「僕はこれで、ターンエンド」

 

ルチアーノ

手札1→0

ライフ4000

場 機皇帝スキエル∞(《インフィニティ・ミスリーダー》、《氷結界の虎将ガンターラ》装備) レベル1 攻撃2700

  伏せカード2

 

里香&伊織

手札

里香3(うち1枚《氷結界の密偵マーラ》)

伊織5

ライフ3500

場 なし

 

「はあ、はあ…!!」

伊織に遅れて到着した柚子とほかのメンバーは第2防衛ラインにいるほかの仲間を探すためにビルの屋上に来ていた。

「おい、あれを見ろよ!!」

「ロボットのコアみたいなのが浮いてるぞ!!」

彼らは動揺しつつも、本来の仕事をするために双眼鏡を手に取り、捜索を始める。

そして、ルチアーノと伊織、里香の姿を確認した。

「伊織、里香さん!!」

「くっそー!何人やられたんだ!もう一機はどこだ!?」

「伊織さん、里香さん…」

「おーーい!近くでまだ動く車が見つかったぞーー!」

下にいる男が大声で呼びかける。

コモンズでは動く車があるのは工場や貨物輸送車以外ではかなり珍しい。

Dホイールが登場してからは移動手段ではそれにとってかわられてしまった。

従来のバイクを含む車両と違い、オートパイロットがあることとデュエルができるという点が大きい。

彼は放置されている車をあろうことかエンジンキーと切れたコードをつなげるという映画で見るような方法でエンジンをかけることに成功した。

中古であり、一万キロ程度走ったものではあるが、モーメントがついていることからエネルギーについては心配いらない。

「柚子の嬢ちゃん!車に乗れ!車はこのまま最終防衛ラインまで!!」

「みなさんはどうするんです?」

「第2防衛ラインの生き残りを連れていく!それに、あの車は2人乗りだ。頼むぞ!!」

 

「うわぁーーー!!インチキや!シンクロモンスターを使ったわけやないのにぃ!!」

地団太を踏み、《氷結界の虎将ガンターラ》を奪った《機皇帝スキエル》を見る。

唯一の救いはほかのパーツがないということ程度だ。

「だったら、私が《ガンターラ》を奪い返してあげる!乙女2人組の連携をとくと見よー!私のターン、ドロー!」

 

伊織

手札5→6

 

「私のフィールド上にモンスターが存在しないとき、このカードは手札から特殊召喚できる!《ジャンク・フォアード》を特殊召喚!」

 

ジャンク・フォアード レベル3 攻撃900

 

「さらに手札から《ジャンク・チェンジャー》を召喚!」

 

ジャンク・チェンジャー レベル3 攻撃1500

 

「レベル3の《ジャンク・フォワード》にレベル3の《ジャンク・チェンジャー》をチューニング!星の力を宿した2本槍で正面突破!シンクロ召喚!現れて、《スターダスト・アサルト・ウォリアー》!!」

 

スターダスト・アサルト・ウォリアー レベル6 攻撃2100

 

「このカードのシンクロ召喚に成功した時、私のフィールド上にほかのモンスターがいない場合、墓地のジャンクモンスター1体を特殊召喚できる!さあ、もう1度出番!《ジャンク・チェンジャー》!!」

《スターダスト・アサルト・ウォリアー》が上空に生み出した渦から《ジャンク・チェンジャー》が飛び出す。

 

ジャンク・チェンジャー レベル3 攻撃1500

 

「更に、このカードは私のフィールド上にジャンクモンスターが存在するとき、手札から特殊召喚できる!《ジャンク・サーバント》を特殊召喚!」

 

ジャンク・サーバント レベル4 攻撃1500

 

「レベル4の《ジャンク・サーバント》にレベル3の《ジャンク・チェンジャー》をチューニング!!私も器用になりたい!シンクロ召喚!現れて、《セブン・ソード・ウォリアー》!!」

 

セブン・ソード・ウォリアー レベル7 攻撃2300

 

伊織の前に2体のシンクロモンスターが並び立つ。

すでにシンクロモンスター扱いで捕獲している《機皇帝スキエル∞》にはこの2体を吸収するだけの余裕はない。

「よーし、じゃあおとなしく《ガンターラ》を返してもらおう!手札から装備魔法《錆びた剣―ラスト・エッジ》を《セブン・ソード・ウォリアー》に装備!」

《錆びた剣―ラスト・エッジ》を手にすると同時に、その刃に光が宿る。

「《セブン・ソード・ウォリアー》は1ターンに1度、このカードが装備カードを装備した時、相手に800ダメージを与える!イクイップ・ショット!」

光が剣先に集中し、まるで銃弾のようにルチアーノに向けて発射される。

弾丸を受けたものの、ルチアーノは自身がデュエルロイドであることを示すかのように、平然としている。

 

ルチアーノ

ライフ4000→3200

 

セブン・ソード・ウォリアー レベル7 攻撃2300→3100

 

「よーし、このままバト…」

「永続罠《リミット・リバース》を発動。墓地に存在する攻撃力1000以下のモンスター1体を特殊召喚する。《スカイ・コア》を特殊召喚」

 

スカイ・コア レベル1 攻撃0

 

「更に罠カード《激流葬》を発動。モンスターが召喚・特殊召喚されたとき、フィールド上に存在するモンスターを全て破壊する」

「えーーー!!?」

《激流葬》のソリッドビジョンから放出される大量の水が焼夷弾によって生まれた熱を冷ましつつ、フィールドを洗い流していく。

水が引いた後に残ったのは《機皇帝スキエル》だった。

「《スカイ・コア》の効果発動。カード効果で破壊されたことにより、《機皇帝スキエル》を特殊召喚する」

 

機皇帝スキエル∞ レベル1 攻撃0→2200

スキエルT レベル1 攻撃600

スキエルA レベル1 攻撃1000

スキエルG レベル1 守備300

スキエルC レベル1 攻撃400

 

「そんなーー!!」

再びフィールドに登場した《機皇帝スキエル》にがっかりする。

《リミット・リバース》と《激流葬》により、伊織は《機皇帝スキエル∞》を戦闘破壊するチャンスを失ってしまった。

そればかりか攻撃力が下がっているとはいえ、攻撃を無効化する《スキエルG》がいて、余計にたちが悪い。

幸いなのが、伊織たちのフィールドにはシンクロモンスターが存在しないこと程度だ。

「けど、《ラスト・エッジ》の効果発動!装備モンスターが破壊されたとき、相手に800ダメージを与える!」

しかし、ただでは起き上がらない。

《激流葬》の影響で砕けた《錆びた剣―ラスト・エッジ》の刀身が浮遊し、ルチアーノに向けて飛んで行った。

錆びているため、当たると同時に砕けてしまうものの、ダメージにはなる。

 

ルチアーノ

ライフ3200→2400

 

「そして、私はカードを2枚伏せてターンエンド!」

 

ルチアーノ

手札0

ライフ2400

場 機皇帝スキエル∞ レベル1 攻撃2200

  スキエルT レベル1 攻撃600

  スキエルA レベル1 攻撃1000

  スキエルG レベル1 守備300

  スキエルC レベル1 攻撃400

 

里香&伊織

手札

里香3(うち1枚《氷結界の密偵マーラ》)

伊織6→1

ライフ3500

場 伏せカード2

 

「僕のターン」

 

ルチアーノ

手札0→1

 

「僕は手札から魔法カード《一族の結束》を発動。自分の墓地の全てのモンスターの元々の種族が同じ場合、

自分フィールドのその種族のモンスターの攻撃力は800アップする。《スキエル》は5体のモンスターが合体したもの。よって、各パーツすべての攻撃力が800アップする」

《一族の結束》のソリッドビジョンが現れるのと同時に5つのパーツが緑色の薄い膜のような光に包まれていく。

そして、その光が銃器パーツの集中していく。

 

機皇帝スキエル∞ レベル1 攻撃2200→6200

スキエルT レベル1 攻撃600→1400

スキエルA レベル1 攻撃1000→1800

スキエルG レベル1 攻撃200→1000

スキエルC レベル1 攻撃400→1200

 

「こ…攻撃力6200!?」

「こんなん、どうやって倒せばええんや!?」

(クリクリー!)

「え…??」

《機皇帝スキエル》の驚異的な力が2人を戦慄させる中、伊織の脳裏に不思議な声が聞こえた。

声が聞こえる方向に目を向けると、そこには自分の手札がある。

手札にあるカードはたった1枚。

「君なの…!?君を使えばいいの??」

(クリー!)

「伊織ーーー!!まさか、こんなんなったから気が狂ったんか!?」

声が聞こえない里香は半泣き状態で伊織の体を揺らす。

「バトル、《スキエル》でダイレクトアタック」

《機皇帝スキエル》から放たれる緑色の発光した弾丸。

地表から数メートル上を飛んでいるにもかかわらず、膨大な力のせいで道路や壊れたデュエルロイドのパーツを砕きながら進んでいる。

「伊織ーーーー!!」

「私は手札の《クリボーマン》の効果を発動!!このカードは私のフィールド上にモンスターが存在しないとき、ライフを半分支払うことで手札から特殊召喚できる!」

(クリーーー!!)

伊織と里香の目の前に《クリボー》が現れる。

少し違う点としたら、背中に黄色いKが大きく描かれた赤色のマントで伊織と同じ目の色をしていることくらいだ。

そのモンスターが弾丸を受け止めた。

 

クリボーマン レベル1 攻撃300

 

里香&伊織

ライフ3500→1750

 

「アカン!それでも、攻撃力はたったの300!《スキエル》にはかなわん!!」

「心配ご無用!《クリボーマン》はこの効果で特殊召喚されたとき、戦闘ダメージを0にするよ。さらにおまけとして、攻撃モンスターの攻撃力と《クリボーマン》の攻撃力を入れ替える!」

(クリクリクリーーー!!)

弾丸の力を両手に吸収した《クリボーマン》が弾丸を《機皇帝スキエル》に向けて投げ返す。

それは胸部パーツに見事に直撃し、破壊できなかったものの、大きくへこませた。

 

クリボーマン レベル1 攻撃300→6200

機皇帝スキエル∞ レベル1 攻撃6200→300

 

クリボーマン

レベル1 攻撃300 守備200 効果 光属性 戦士族

(1):相手の直接攻撃宣言時、自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、LPを半分払って発動できる。手札に存在するこのカードを自分フィールド上に特殊召喚し、その先頭で発生する自分への戦闘ダメージを0にする。

(2):この効果で特殊召喚に成功したときに発動する。相手の攻撃モンスター1体の攻撃力とこのカードの攻撃力を入れ替える。

 

「おっしゃーーー!!これで逆転や!!すごいなぁ、《クリボーマン》!!」

まるで勝ったかのように喜ぶ里香を見た《クリボーマン》は嬉しそうに笑みを浮かべる。

(あ…もしかして、この子って…)

「僕は墓地の《インフィニティ・ミスリーダー》の効果発動。このカードを墓地から除外することで、相手の墓地に存在するシンクロモンスター1体を相手フィールド上に特殊召喚する。《セブン・ソード・ウォリアー》を特殊召喚」

ルチアーノのフィールドに現れた紫色の穴から出てきた《インフィニティ・ミスリーダー》の姿が《セブン・ソード・ウォリアー》に変わっていき、伊織たちのフィールドへ向かう。

 

セブン・ソード・ウォリアー レベル7 攻撃2300

 

「更に、《スキエル》の効果発動。《セブン・ソード・ウォリアー》を捕獲する」

へこんで開閉できなくなった胸部の装甲を強制排除し、むき出しとなったエネルギー源が《セブン・ソード・ウォリアー》を取り込んでいく。

しかし、《氷結界の虎将ガンターラ》の時と比べると取り込むスピードが2倍近く遅い。

これは前とは違い、自分が動くためのエネルギーを確保する目的だけの捕獲のためだと思われる。

 

機皇帝スキエル∞ レベル1 攻撃300→2600

 

「うーん、攻撃力はまだまだ《クリボーマン》には届いていないけど…自分のモンスターを捕獲されるのってすっごく腹立つ!!」

「僕はこれでターンエンド」

 

ルチアーノ

手札1→0

ライフ2400

場 機皇帝スキエル∞(《セブン・ソード・ウォリアー》装備) レベル1 攻撃2600

  スキエルT レベル1 攻撃1400

  スキエルA レベル1 攻撃1800

  スキエルG レベル1 守備300

  スキエルC レベル1 攻撃1200

 

里香&伊織

手札

里香3(うち1枚《氷結界の密偵マーラ》)

伊織1→0

ライフ1750

場 クリボーマン レベル1 攻撃6200

  伏せカード2

 

インフィニティ・ミスリーダー

装備魔法カード

「∞」モンスターに飲み装備可能。

「インフィニティ・ミスリーダー」の(2)の効果はこのカードが墓地へ送られたターン、発動できない。

(1):1ターンに1度、相手フィールド上に表側攻撃表示で存在する特殊召喚されたモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターはターン終了時までSモンスターとして扱う。

(2):自分の墓地に存在するこのカードを除外し、相手の墓地に存在するSモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを相手フィールド上に特殊召喚する。

 

「さあ、里香ちゃん!思いっきりやっちゃって!」

(クリクリー!)

伊織が右拳を里香に向けると、《クリボーマン》も彼女の動きをまねする。

「なんやなんや、あのソリッドビジョン。伊織の真似しとるで。面白いなぁ。ウチのターン、ドロー!」

 

里香

手札3→4

 

「ウチは手札から魔法カード《強欲なウツボ》を発動!手札の水属性モンスター2体をデッキに戻し、デッキからカードを3枚ドローするで!」

 

手札からデッキに送られたカード

・ジゴバイト

・氷結界の密偵マーラ

 

「そして、手札から魔法カード《おろかな埋葬》を発動!デッキから《氷結界の破術師》を墓地へ送るで。そして、手札から《デブリ・ドラゴン》を召喚!」

 

デブリ・ドラゴン レベル4 攻撃1000(チューナー)

 

「このカードの召喚に成功したとき、墓地から攻撃力500以下のモンスター1体を攻撃表示で特殊召喚できる!《氷結界の破術師》を特殊召喚や!」

 

氷結界の破術師 レベル3 攻撃400

 

「いくでー…レベル3の《破術師》にレベル4の《デブリ・ドラゴン》をチューニング!槍の名前を担う第2の竜、復活の喜びを氷の息吹に託しなはれ!シンクロ召喚!レベル7!《氷結界の龍グングニール》!!」

登場すると同時に《氷結界の龍グングニール》が咆哮する。

周囲の気温が低下をはじめ、むき出しとなっているエネルギー源の周りを霜ができる。

「うーー、ソリッドビジョンだってことはわかってるけど、寒くなるー…」

(クリー…)

《クリボーマン》も寒いと思っているのか、体を震わせている。

 

氷結界の龍グングニール レベル7 攻撃2500

 

「シンクロキラーをシンクロモンスターで叩き潰すっちゅーのはスカっとするで!《グングニール》の効果発動!1ターンに1度、手札を2枚まで墓地に捨てることで、相手フィールド上に存在するカードを捨てた枚数分破壊できる!さあ、消し飛んでまえ!!」

《氷結界の龍グングニール》の口から放たれる水色の冷凍光線でエネルギー源が冷却されていく。

そして、追い打ちをかけるように機体全体を冷却させていき、氷のオブジェへと変えていく。

「トドメの宣言は頼むで、伊織!」

「うん。《クリボーマン》でダイレクトアタック!!」

(クリクリクリーーー!!)

《クリボーマン》が上空でくるくる回転した後、氷漬けの機械にむけてラ○ダーキックを放つ。

それにより、《機皇帝スキエル∞》に大きな穴が開き、大爆発を起こす。

ルチアーノはその爆発の中に消えていった。

 

ルチアーノ

ライフ2400→0

 

「はふぅーー…勝ったぁ…」

一安心し、気が抜けたのか、伊織はゆっくりとその場で倒れてしまう。

「伊織!?大丈夫なんかーー!?」

(クリクリー!)

ソリッドビジョンではなく、精霊となったクリボーマンが里香と共に伊織に駆け寄る。

「…ムニャムニャ」

「…寝とんのかい」

ハリセンでたたこうかと思ったが、疲れたのなら仕方がない。

敵影が確認されていない以上、眠っていても大丈夫だろう。

里香は伊織を寝袋に入れ、建物の中に置くと、ほかのメンバーと共にカード化された仲間の回収を行うことになった。

(それにしても、最終防衛ラインの方は大丈夫なんか…?漁介、急ぐんやで)



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第58話 命と力と

「うわあああ!!」

「くっそぉ!?」

殴り飛ばされたメンバーが壁にめり込む、または地面に倒れて意識を失う。

気絶していないメンバーのデュエルディスクは破損していて、デュエルをすることができなくなっている。

「どうなってんだ…こいつ、デュエルせずに俺たちを…??」

立ち上がろうとするが、殴られた際に左腕が骨折したため、激痛が襲う。

「鬼柳、あの機械はデュエルをしていないようだな…」

立ち上がり、現場まで歩いているジョンソンが鬼柳と会話する。

「ああ…モハメドからの情報を整理すると、デカブツの方はここに来るまで一度もデュエルをしていない。気絶させるか、デュエルディスクを破壊するかで済ましている」

「奇妙だな…」

「鬼柳さん、ジョンソンさん!!」

2人のそばに車が止まり、そこから柚子が出てきた。

車は負傷者を収容するために、すぐに発進した。

「柊か、どうした?」

「新しく出てきた、3体のロボットのことを…」

「ああ、わかっている。だが…今ここにきている1機はかなり妙だ」

「妙?」

「来たぞーーー!!」

ほかのメンバーを逃がそうと大声を知らせた男だが、ロボットが投げた石を頭に受けて気を失ってしまう。

ヘルメットを着けていたおかげか、命に別状はなかった。

ロボットは3人に目を向け、唯一視認できる左目で解析を始める。

「デュエルロイドASNo.3ホセ…目標と考えられるデュエリストを捕捉。デュエル…開始」

腹部の装甲が開き、そこからデュエルディスクとデッキが出てくる。

そして、柚子と鬼柳、ジョンソンのデュエルディスクが勝手に起動する。

「デュエルディスクが…!?」

「まさかだが…俺たちだけを狙っている、というわけではないだろうな?」

「くそ…デュエルモードになってしまっては、柊だけを逃がすことができない!」

彼女がやられるような事態になっては…と不安になる2人を後目に、柚子はカードを引く。

「大丈夫です、そのことをこのデュエルで証明します!」

巨大なロボットがじっと柚子を威圧するように見る。

普通の人間なら怖がって逃げ出してしまうのだろうが、なぜか柚子の心にはひとかけらも恐怖がなかった。

(なんだか不思議…あのユーリって人の時はあんなに怖かったのに…)

「ふん…だったら、俺を満足させるほどの力を見せてくれよ。ジョンソン、腹をくくれ!」

「仕方がないな…。私のデッキはそれほどタッグデュエルに適した出来ではないが」

鬼柳とジョンソンもデュエルの準備を整える。

 

「「デュエル!!」」

 

鬼柳

手札5

ライフ4000

 

ホセ

手札5

ライフ12000

 

柚子

手札5

ライフ4000

 

ジョンソン

手札5

ライフ4000

 

 

3人一斉に相手をすることからか、ホセのライフが12000となっている。

「俺のターン、俺は手札から永続魔法《虚無の煉獄》を発動。そして、手札から《インフェルニティ・ネクロマンサー》を召喚」

 

インフェルニティ・ネクロマンサー レベル3 守備2000

 

「このカードは召喚に成功したとき、守備表示になる。さらにカードを1枚伏せ、《虚無の煉獄》の効果発動。このカードをフィールドから墓地へ送ることで、俺は手札を全て墓地へ送ることができる」

《虚無の煉獄》のソリッドビジョンがブラックホールに変わり、鬼柳の手札すべてを吸い込んでいく。

そして、そのブラックホールに向けて《インフェルニティ・ネクロマンサー》が祈祷を始める。

 

手札から墓地へ送られたカード

・インフェルニティ・デーモン

・ブレイクスルー・スキル

 

「《インフェルニティ・ネクロマンサー》は1ターンに1度、手札が0枚の時、墓地からインフェルニティモンスター1体を特殊召喚できる。《インフェルニティ・デーモン》を特殊召喚」

祈祷にこたえるかのように、《インフェルニティ・デーモン》がブラックホールから飛び出してくる。

 

インフェルニティ・デーモン レベル4 攻撃1800

 

「《インフェルニティ・デーモン》の効果発動。このカードの特殊召喚に成功したとき、手札が0枚の場合、デッキからインフェルニティカード1枚を手札に加えることができる。俺はデッキから《インフェルニティ・バリア》を手札に加える。そして、カードを1枚伏せてターンエンド」

 

鬼柳

手札5→0

ライフ4000

場 インフェルニティ・デーモン レベル4 攻撃1800

  インフェルニティ・ネクロマンサー レベル3 守備2000

  伏せカード2

 

ホセ

手札5

ライフ12000

場 なし

 

柚子

手札5

ライフ4000

場 なし

 

ジョンソン

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「私のターン、私は手札から《グランド・コア》を召喚」

 

グランド・コア レベル1 攻撃0

 

「そして、手札から魔法カード《ナイト・ショット》を発動。相手フィールド上の伏せカード1枚を破壊する。私は鬼柳一真のフィールドの右側の伏せカードを破壊する」

「ちっ…」

破壊されたカードを見て、鬼柳は舌打ちする。

そのカードは《インフェルニティ・デーモン》の効果で手札に加えた《インフェルニティ・バリア》で、インフェルニティデッキにとってはかなり強力なカウンター罠だからだ。

「さらに手札から魔法カード《カオス・ブラスト》を発動。デッキからレベル1の機械族モンスター3体を墓地へ送り、フィールド上に存在するレベル4以下のモンスター1体を破壊する。私は《グランド・コア》を破壊する」

《カオス・ブラスト》のソリッドビジョンが《グランド・コア》と重なる。

そして、そのオレンジ色の卵が孵り、5体の機械パーツが出現する。

 

デッキから墓地へ送られたカード

・グランエルA

・グランエルT

・グランエルC

 

カオス・ブラスト

通常魔法カード

(1):自分のデッキに存在するレベル1・機械族モンスター3体を墓地へ送ることで発動できる。フィールド上に存在するレベル4以下のモンスター1体を破壊する。

 

「《グランド・コア》がカード効果で破壊されたとき、私のフィールド上に存在するモンスターを全て破壊し、デッキ・手札・墓地から《機皇帝グランエル∞》、《グランエルT》、《グランエルA》、《グランエルG》、《グランエルC》を特殊召喚する」

5体のパーツが合体していき、オレンジ色だが、大きさが翔太と戦った同じ人型である《機皇帝ワイゼル∞》より倍近くで、細見だったそれとは正反対にずんぐりとしたデザインとなっている。

また、足はついておらず、その部分は大型のブースターが搭載されており、それが火を噴かせていることでこの機体は空に浮かんでいられる。

 

機皇帝グランエル∞ レベル1 攻撃0

グランエルT レベル1 攻撃500

グランエルA レベル1 攻撃1300

グランエルG レベル1 守備1000

グランエルC レベル1 攻撃700

 

「《グランエル》の効果発動。このカードが《グランド・コア》の効果で特殊召喚された場合、攻撃力は私のライフと同じになる」

「今のあのロボットのライフは12000。ということは攻撃力は…!!」

 

機皇帝グランエル∞ レベル1 攻撃0→12000

 

3vs1という変則な条件でのデュエルであるため、必然的にホセのライフは3人のライフの合計である12000からスタートとなる。

最も、通常ルールであったとしても、最初のターンであれば、攻撃力4000となるため、厄介なことには変わりない。

「私はカードを1枚伏せ、手札から魔法カード《オーロラ・ドロー》を発動。私のフィールド上に機皇帝が存在し、手札がこのカードのみの場合、デッキからカードを2枚ドローする。私はこれでターンエンド」

 

 

鬼柳

手札0

ライフ4000

場 インフェルニティ・デーモン レベル4 攻撃1800

  インフェルニティ・ネクロマンサー レベル3 守備2000

  伏せカード1

 

ホセ

手札5→2

ライフ12000

場 機皇帝グランエル∞ レベル1 攻撃12000

  グランエルT レベル1 攻撃500

  グランエルA レベル1 攻撃1300

  グランエルG レベル1 守備1000

  グランエルC レベル1 攻撃700

  伏せカード1

 

柚子

手札5

ライフ4000

場 なし

 

ジョンソン

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「機皇帝…」

柚子はデュエルディスクを操作し、相手フィールド上のモンスターを確認する。

「相手のシンクロモンスターを装備して、攻撃力をアップさせる!?」

「まずいな…本来の私や柊のデッキであればとにかく、今のデッキは…」

偽装のために用意したシンクロモンスター限定コンセプトのデッキが今回は結果的に仇となる格好となってしまう。

「(とにかく、シンクロモンスターを極力使わないで勝負を決めないと)あたしのターン!あたしは手札から《闇竜星―ジョクト》を召喚!」

 

闇竜星―ジョクト レベル2 攻撃0(チューナー)

 

「《ジョクト》の効果発動!あたしのフィールド上にこのカード以外のモンスターが存在しない場合、手札の竜星カード2枚を墓地へ送ることで、デッキから攻撃力0と守備力0の竜星モンスターを1体ずつ特殊召喚できる!あたしはデッキから《地竜星―ヘイカン》と《水竜星―ビシキ》を特殊召喚!」

《闇竜星―ジョクト》が口から吐き出した土と水の塊からそれぞれ幻竜が1体ずつ生まれる。

 

地竜星―ヘイカン レベル3 攻撃1600

水竜星―ビシキ レベル2 守備2000

 

手札から墓地へ送られたカード

・竜星の具象化

・光竜星―リフン

 

「レベル3の《ヘイカン》とレベル2の《ビシキ》にレベル2の《ジョクト》をチューニング!闘争の音色奏でし時、光射す道が巨竜を導く!シンクロ召喚!戦場を彷徨う幻、レベル7!《邪竜星―ガイザー》!!」

シンクロ召喚の光が急に黒く変化し、そこから紫と金の飾りを肩やひじにつけた黒い飛竜が出現する。

戦場の血を浴びたかのようなその赤い瞳はシンクロキラーである《機皇帝グランエル》を臆さずに見ていた。

 

邪竜星―ガイザー レベル7 攻撃2600

 

「このカードは相手の効果の対象にならない!だから、《グランエル》の効果は受けないわ!」

「よし…だが、攻撃力では《グランエル》の12000には遠く及ばないぞ?」

「あたしは手札から魔法カード《竜星の輝跡》を発動!墓地の竜星モンスター3体をデッキに戻し、デッキからカードを2枚ドローする!」

 

墓地からデッキに戻ったカード

・地竜星―ヘイカン

・水竜星―ビシキ

・闇竜星―ジョクト

 

「そして、手札から魔法カード《死者蘇生》を発動!この効果であたしは墓地から《光竜星―リフン》を特殊召喚する」

 

光竜星―リフン レベル1 攻撃0

 

「更に《ガイザー》の効果発動!1ターンに1度、あたしの竜星モンスター1体と相手フィールド上のカード1枚を破壊できる!」

《邪竜星―ガイザー》の口の中に《光竜星―リフン》が白い光の球体となって入っていく。

口から放たれるブレスを想定しているのか《機皇帝グランエル》は左腕のビームシールドを構え、警戒を始める。

「(攻撃力がいくら高くても、効果破壊なら…!)ダーク・プレッシャー!」

狙いを定めた闇の幻竜が口から白い炎を放つ。

すると、左腕パーツから4つのカサガイに似た茶色いビットが射出され、それが《機皇帝グランエル》を緑色のバリアフィールドで包み込む。

炎はそのバリアを貫通することができず、その周囲を焼く程度にとどまった。

「なんで、《グランエル》を破壊できないの!?」

「《グランエルG》の効果発動。1ターンに1度、機皇帝のカード効果による破壊を無効にする」

「ええ…!?」

これが柚子自身のミスがあった。

《機皇帝グランエル∞》のみの効果に目が行ってしまったせいで、ほかのパーツの効果を見ていなかったのだ。

制限カードである《死者蘇生》を使ってまでの一撃を回避された影響は大きい。

自分の失態を悔やむ柚子だが、ここから巻き返さなければならない。

「《リフン》の効果発動!このカードが戦闘か効果によって破壊され墓地へ送られたとき、デッキから《リフン》以外の竜星モンスター1体を特殊召喚する。あたしはデッキから《魔竜星―トウテツ》を特殊召喚!」

《邪竜星―ガイザー》が口から黒い霧を放ち、それが自身と同じような姿であるが、若干大きさが小さめとなっている飛竜を形成していく。

同じような姿ではあるが、6本足のうちの4本が地についている。

2本足で立つ邪悪な幻竜とは違い、ケンタウロスを連想させる。

 

魔竜星―トウテツ レベル5 守備0

 

新たな竜星モンスターを呼び出すまではいいが、《機皇帝グランエル》の驚異を退けることができたわけではない。

バトルロイヤルルールにより、全員最初のターンに攻撃もドローも行えないことから、あとできることはほんのわずかしかない。

「あたしはカードを1枚伏せ、ターンエンド!」

 

鬼柳

手札0

ライフ4000

場 インフェルニティ・デーモン レベル4 攻撃1800

  インフェルニティ・ネクロマンサー レベル3 守備2000

  伏せカード1

 

ホセ

手札2

ライフ12000

場 機皇帝グランエル∞ レベル1 攻撃12000

  グランエルT レベル1 攻撃500

  グランエルA レベル1 攻撃1300

  グランエルG レベル1 守備1000

  グランエルC レベル1 攻撃700

  伏せカード1

 

柚子

手札5→2

ライフ4000

場 邪竜星―ガイザー レベル7 攻撃2600

  魔竜星―トウテツ レベル5 守備0

  伏せカード1

 

ジョンソン

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「私のターン。私は《カラクリ小町弐弐四》を召喚」

 

カラクリ小町弐弐四 レベル3 攻撃0

 

「このカードがフィールド上に存在する限り、私は通常召喚に加えてもう1度だけカラクリモンスターを召喚できる。私は《カラクリ兵弐参六》を召喚」

 

カラクリ兵弐参六 レベル4 攻撃1400

 

「レベル4の《弐参六》にレベル3の《弐弐四》をチューニング。大地の加護の元に暮らす新緑の亀、静寂を取り戻すため、その力を奮わん。シンクロ召喚。レベル7。《ナチュル・ランドオルス》」

 

ナチュル・ランドオルス レベル7 守備1600

 

「そして私はカードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

鬼柳

手札0

ライフ4000

場 インフェルニティ・デーモン レベル4 攻撃1800

  インフェルニティ・ネクロマンサー レベル3 守備2000

  伏せカード1

 

ホセ

手札2

ライフ12000

場 機皇帝グランエル∞ レベル1 攻撃12000

  グランエルT レベル1 攻撃500

  グランエルA レベル1 攻撃1300

  グランエルG レベル1 守備1000

  グランエルC レベル1 攻撃700

  伏せカード1

 

柚子

手札2

ライフ4000

場 邪竜星―ガイザー レベル7 攻撃2600

  魔竜星―トウテツ レベル5 守備0

  伏せカード1

 

ジョンソン

手札5→1

ライフ4000

場 ナチュル・ランドオルス レベル7 守備1600

  伏せカード2

 

やはり攻撃力12000の《機皇帝グランエル》の前では、攻撃力2350の《ナチュル・ランドオルス》は守備表示で出すしかない。

しかし、このカードを出したことである程度ホセを警戒させることができるようになった。

(《ナチュル・ランドオルス》は手札の魔法カードを墓地へ送ることで、モンスター効果の発動を無効にし、破壊することができる。柊のフィールドには竜星がいる。彼女が《ガイザー》の効果を発動したら、《グランエルG》の効果が発動する。それを《ナチュル・ランドオルス》の効果で妨害すればいい。最も、手札に魔法カードを温存し続けることができれば…の話だが)

「俺のターン、ドロー」

 

鬼柳

手札0→1

 

「俺は手札から《インフェルニティ・ビートル》を召喚」

 

インフェルニティ・ビートル レベル2 攻撃1200(チューナー)

 

「このカードは手札が0枚の時、リリースすることでデッキから《インフェルニティ・ビートル》を特殊召喚できる」

《インフェルニティ・ビートル》がさなぎに戻り、それが砕けると2匹の《インフェルニティ・ビートル》が飛び出す。

 

インフェルニティ・ビートル×2 レベル2 攻撃1200(チューナー)

 

「レベル4の《インフェルニティ・デーモン》にレベル2の《インフェルニティ・ビートル》をチューニング。シンクロ召喚。《グラヴィティ・ウォリアー》!」

 

グラヴィティ・ウォリアー レベル6 攻撃2100

 

「《グラヴィティ・ウォリアー》はシンクロ召喚に成功したとき、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体につき300アップする。蛮勇引力!」

《機皇帝グランエル》という5体のモンスターの存在が《グラヴィティ・ウォリアー》の血をたぎらせ、激しく咆哮させる。

 

グラヴィティ・ウォリアー レベル6 攻撃2100→3600

 

しかし、今の鬼柳にとって《グラヴィティ・ウォリアー》は通過点でしかない。

「さらに俺はレベル6の《グラヴィティ・ウォリアー》にレベル2の《インフェルニティ・ビートル》をチューニング。死者と生者、ゼロにて交わりしとき、永劫の檻より魔の竜は放たれる!シンクロ召喚!いでよ、《インフェルニティ・デス・ドラゴン》!!」

 

インフェルニティ・デス・ドラゴン レベル8 攻撃3000

 

「更に、《インフェルニティ・ネクロマンサー》の効果発動。《インフェルニティ・デーモン》を特殊召喚する」

再び祈祷する《インフェルニティ・ネクロマンサー》とそれを応援するかのように咆哮する《インフェルニティ・デス・ドラゴン》。

その2体にこたえるかのように、《インフェルニティ・デーモン》が黄泉の世界から再び姿を現した。

 

インフェルニティ・デーモン レベル4 攻撃1800

 

「《インフェルニティ・デーモン》の効果発動。デッキから《インフェルニティ・ガン》を手札に加える。そして、手札から永続魔法《インフェルニティ・ガン》を発動。手札が0枚の時、このカードをフィールドから墓地へ送ることで、墓地からインフェルニティモンスター2体を特殊召喚する。俺は《インフェルニティ・ビートル》2体を特殊召喚する」

《インフェルニティ・ガン》のソリッドビジョンが紫色の霧に変わっていき、その中から2体の《インフェルニティ・ビートル》が出てくる。

 

インフェルニティ・ビートル×2 レベル2 攻撃1200(チューナー)

 

「レベル3の《ネクロマンサー》にレベル2の《ビートル》をチューニング。死神の刃、今こそ現世に降臨し、咎人を狩れ。シンクロ召喚!《インフェルニティ・デス》!!」

 

インフェルニティ・デス レベル5 攻撃2200

 

「《インフェルニティ・デス》の効果発動。は手札が0枚の時、1ターンに1度相手フィールド上のこのカードの攻撃力以下のモンスター1体を墓地へ送り、相手に1000ポイントのダメージを与える。死神の鎌よ、《グランエルG》を切り裂け」

《インフェルニティ・デス》の大鎌の刃が左腕パーツを両断しようとする。

バリアフィールドを形成しているビットは《インフェルニティ・デス・ドラゴン》がブレスで焼き払う。

そして、最後の守りの要としてビームシールドを展開したが、それ毎真っ二つに切り裂かれた。

切り裂かれたパーツの破片はホセの体に刺さる。

 

ホセ

ライフ12000→11000

 

機皇帝グランエル∞ レベル1 攻撃12000→11000

 

「ライフが下がったことで、《グランエル》の攻撃力が下がったか…」

「攻撃表示になっているパーツを攻撃して、ライフを減らしていけば…!!」

まだ逆転の余地があることを柚子は喜ぶ。

ただ、問題はホセが伏せている伏せカードだが。

「俺はレベル5の《インフェルニティ・デス》にレベル2の《インフェルニティ・ビートル》をチューニング。奈落の底より這い上がりし死霊の騎士よ、煉獄の炎を纏って今こそ降臨せよ。シンクロ召喚!現れろ、《煉獄騎士インフェルニティ・ボーンナイト》」

《煉獄騎士インフェルニティ・ボーンナイト》の体から燃え上がる煉獄の炎が周囲を包み込んでいく。

晴れた廃墟の街が一瞬で戦場のような光景に変わってしまう。

 

煉獄騎士インフェルニティ・ボーンナイト レベル7 攻撃2100

 

「《インフェルニティ・ボーンナイト》の効果発動。このカードの特殊召喚に成功したとき、手札が0枚の場合、このカードの攻撃力は相手フィールド上に存在するモンスター1体につき500アップする」

全身から炎を吹き出す煉獄の騎士に対して、《機皇帝グランエル》はじっとカメラを向けるだけで何も行動を起こさない。

生物の本能に突きつける恐怖は機械にとってはただの対処可能なノイズでしかない。

 

煉獄騎士インフェルニティ・ボーンナイト レベル7 攻撃2100→4600

 

「バトルだ。《インフェルニティ・ボーンナイト》で《グランエルA》を攻撃」

燃え上がる両手剣を手に、騎士は飛び上がる。

ビームシールドが使えない《機皇帝グランエル》はエネルギー源のある胸部パーツを守るべく、右腕のキャノンを盾代わりに受け止める。

「《グランエルC》の効果発動。1ターンに1度、私のフィールド上に存在するモンスターの戦闘による破壊を無効にする」

《煉獄騎士インフェルニティ・ボーンナイト》の大剣を破壊すべく、《機皇帝グランエル》の頭部のカメラが開く。

そこには隠し武器として小型のビーム砲が内蔵されており、騎士の右腕に向けて光線を発射する。

それを回避するため、《煉獄騎士インフェルニティ・ボーンナイト》は剣を引き抜いてその場を後にする。

 

ホセ

ライフ11000→7700

 

機皇帝グランエル∞ レベル1 攻撃11000→7700

 

「まだだ…《インフェルニティ・デス・ドラゴン》の効果発動。1ターンに1度、手札が0枚の時、相手フィールド上のモンスター1体を破壊し、そのモンスターの攻撃力の半分のダメージを与える。インフェルニティ・デス・ブレス!!」

《煉獄騎士インフェルニティ・ボーンナイト》が近くの4回建てのビルの屋上に立つと、《インフェルニティ・デス・ドラゴン》は《機皇帝グランエル∞》に向けて紫色の火球を放つ。

それを脚部パーツに受け、推進剤に燃え移って他のパーツに誘爆することを避けるべく、それが強制排除され、穴の開いた右腕パーツでゲートボールのように《インフェルニティ・デス・ドラゴン》に向けてそれを打つ。

爆発に巻き込まれるのを避けるため、死の竜は口から先ほどよりもさらに高温なブレスを放ち、自分のもとに爆風が届かないギリギリの距離でそれを爆発させた。

 

ホセ

ライフ7700→7350

 

機皇帝グランエル∞ レベル1 攻撃7700→7350

 

「よし…一気に攻撃力を下げることができた…」

「罠発動。《インフィニティ・シルエット》。私のフィールド上に存在するワイゼル、スキエル、グランエルのいずれかの名の付くモンスターが戦闘で破壊され墓地へ送られたターンのバトルフェイズ終了時に、デッキからレベル4以下のワイゼル、スキエル、グランエルのいずれかの名の付くモンスター2体を攻撃力・守備力を0にして特殊召喚する。私はデッキから《スキエルC3》と《ワイゼルG3》を特殊召喚する」

上空からカニのハサミのような青い脚部パーツと《ワイゼルG3》が落ちてきて、それが《機皇帝グランエル》に装着される。

 

ワイゼルG3 レベル3 守備2000→0

スキエルC3 レベル3 攻撃600→0

 

インフィニティ・シルエット

通常罠カード

「インフィニティ・シルエット」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に存在する「ワイゼル」「スキエル」「グランエル」モンスターが戦闘で破壊され墓地へ送られたターンのバトルフェイズ終了時に発動できる。デッキからレベル4以下の「ワイゼル」「スキエル」「グランエル」モンスター2体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの攻撃力・守備力は0となる。

 

「《ワイゼルG3》は攻撃対象を自身へ変更させるだけでなく、1ターンに1度戦闘では破壊されなくなる。さらに《スキエルC3》は1ターンに1度、自分のモンスターの戦闘による破壊を無効にする」

「攻撃力が減ったと思ったら、守りを固めてきたか…!」

《ワイゼルG3》と《スキエルC3》により、少なくとも4回攻撃しなければ《機皇帝グランエル∞》を破壊できなくなってしまった。

幸い、カード効果による破壊の体制は失われているのが救いかもしれない。

「俺はこれでターンエンド」

 

鬼柳

手札1→0

ライフ4000

場 インフェルニティ・デス・ドラゴン レベル8 攻撃3000

  煉獄騎士インフェルニティ・ボーンナイト レベル7 攻撃4600

  伏せカード1

 

ホセ

手札2

ライフ7350

場 機皇帝グランエル∞ レベル1 攻撃7350

  グランエルT レベル1 攻撃500

  グランエルA レベル1 攻撃1300

  ワイゼルG3 レベル3 守備0

  スキエルC3 レベル3 攻撃0

 

柚子

手札2

ライフ4000

場 邪竜星―ガイザー レベル7 攻撃2600

  魔竜星―トウテツ レベル5 守備0

  伏せカード1

 

ジョンソン

手札1

ライフ4000

場 ナチュル・ランドオルス レベル7 守備1600

  伏せカード2

 

「私のターン、ドロー」

 

ホセ

手札2→3

 

「私は手札から魔法カード《インフィニティ・パラドックス》を発動。私のフィールド上に存在するパーツ1体をリリースすることで、このターン私のワイゼル、スキエル、グランエルモンスターの効果の発動に対し、相手は罠・モンスター効果を発動できない」

「何!?」

発動と同時に、フィールドに変化が生じ、道路やがれき、廃墟が七色のガラス状の物体へと変質していく。

そして、そのガラスには数多くのシンクロモンスターの姿が映っている。

 

リリースしたモンスター

・グランエルT

 

インフィニティ・パラドックス

通常魔法カード

「インフィニティ・パラドックス」は自分のターンのメインフェイズ開始時にしか発動できない。

(1):自分フィールド上に存在する「機皇帝」モンスター以外の「ワイゼル」「スキエル」「グランエル」モンスター1体をリリースして発動する。このターン、自分フィールド上に存在する「ワイゼル」「スキエル」「グランエル」モンスターの効果の発動に対して、相手は罠・モンスター効果を発動できない。

 

「く…《ナチュル・ランドオルス》の効果対策か…!」

「更に私は手札から魔法カード《オーロラ・ドロー》を発動。私のフィールド上に機皇帝が存在し、手札がこのカードのみの場合、デッキからカードを2枚ドローする。そして、私は《グランエルT3》を召喚。このカードは私のフィールド・墓地に《グランエルT》が存在しなければ召喚できない」

オレンジ色のウツボのような姿の機械が現れると、それが頭を中心にバームクーヘンのように丸まり、球体状の頭部パーツとなる。

そして、《機皇帝グランエル》の新しい頭部パーツとなった。

 

グランエルT3 レベル3 攻撃800

 

「《グランエルT3》の効果発動。1ターンに1度、相手フィールド上に存在するシンクロモンスター1体の効果をターン終了時までこのカードにコピーすることができる」

「ええ!!?」

《グランエルT3》が分離し、再びウツボのような姿に戻ると、《インフェルニティ・デス・ドラゴン》にとりつく。

そして、口元らしき部分についている牙でかみついた。

《インフェルニティ・デス・ドラゴン》にとっては傷にも入らない程度の小さなものだが、牙に付着した体液からDNAを調べ上げ、そのモンスターの特性と効果について知った《グランエルT3》は戻っていき、再び頭部パーツとしての役割を始めた。

 

グランエルT3

レベル3 攻撃800 守備0 効果 地属性 機械族

このカードは自分フィールド・墓地に「グランエルT」が存在しない場合、通常召喚できない。

(1):このカードは自分フィールド上に存在する「グランエルT」1体をリリースし、

手札から特殊召喚する事ができる。

(2):このカードは攻撃できない。

(3):このカードはフィールド上に存在する限り、攻撃表示となる。

(4):自分フィールド上に「機皇帝」と名のつくモンスターが存在しない場合、このカードは破壊される。

(5):自分フィールド上に存在する「機皇帝」モンスターが攻撃する時、ダメージステップ終了時まで相手フィールド上に存在するSモンスターの効果は無効化される。

(6):1ターンに1度、相手フィールド上に存在するSモンスター1体を対象に発動できる。ターン終了時までそのモンスターの効果を得る。

 

「《インフェルニティ・デス・ドラゴン》のDNAより解析した効果を発動。手札が0枚の時、1ターンに1度、相手フィールド上に存在するモンスター1体を破壊し、そのモンスターの攻撃力の半分のダメージを与える。私は《ナチュル・ランドオルス》を破壊する」

《グランエルT3》の頭部カメラが展開し、そこから《インフェルニティ・デス・ドラゴン》が映像となって現れる。

そして、《ナチュル・ランドオルス》を口から吐き出した黒いブレスで焼き尽くしていった。

 

ジョンソン

ライフ4000→2775

 

「鬼柳一真、柊柚子、そしてジョンソンの戦術、破たん完了」

「そんな…読まれていたの!?」

3人は二段構えの攻撃で《機皇帝グランエル》を倒す算段を立てていた。

まずは鬼柳がインフェルニティモンスターを利用して機皇帝の防御パーツを破壊する。

その際に相手に行動が可能な限り悟られないように、ジョンソンには手札の魔法カードを温存させる。

それはホセが伏せてあるカードが分からない分、そしてたった1度しか現状では発動できない《ナチュル・ランドオルス》の効果を無効にされないようにするためだ。

そして、1ターン待つことである程度相手が伏せたカードが何かを知ることができる。

鬼柳が《インフェルニティ・デス》と《インフェルニティ・デス・ドラゴン》の効果発動に対して、ホセがその伏せカードを発動しなかったことで、そのカードがモンスター効果対策のものではないことが分かった。

ついでに、これで自分たちの目的を《機皇帝グランエル》の破壊ではなく、直接ライフを削ることにあると誤認させる。

実際、それは当たっていて、正体は先述の《インフェルニティ・シルエット》だった。

そして、柚子のターンになったら《邪竜星―ガイザー》の効果を使い、《機皇帝グランエル∞》の破壊を行う。

効果破壊無効に対しては《ナチュル・ランドオルス》で対処する。

しかし、《インフィニティ・パラドックス》と《グランエルT3》のせいでそれが破たんしてしまった。

「更に、《グランエル∞》の効果発動。1ターンに1度、相手シンクロモンスター1体を捕獲する」

追い打ちをかけるように、胸部から出てきた《機皇帝グランエル》のエネルギー源が《インフェルニティ・デス・ドラゴン》を取り込んでいく。

「《グランエル》は捕獲したシンクロモンスターの攻撃力分アップする」

 

機皇帝グランエル∞ レベル1 攻撃7350→10350

 

「バトル。私は《グランエル》で《ガイザー》を攻撃。グランエル・スローター・キャノン」

《機皇帝グランエル》の頭部カメラが《邪竜星―ガイザー》との距離や破壊のために必要な出力、命中率を計算していく。

そして、計算が終了すると同時に右腕パーツの銃口から高濃度の粒子を圧縮したオレンジ色の光線を発射した。

伏せカードがそれ対策のものではないためか、柚子は焦りを見せる。

だが、《邪竜星―ガイザー》をかばうように、彼女の目の前に煉獄騎士が走る。

「何?」

「私は罠カード《シフトチェンジ》を発動した。この効果で、攻撃対象を《インフェルニティ・ボーンナイト》を攻撃」

ジョンソンが発動したカードにより、《煉獄騎士インフェルニティ・ボーンナイト》が代わりに光線を受け止めるが、その光線によるダメージを煉獄の炎で全身を包むことで緩和している。

だが、それも長くは続かない。

光線の影響で、煉獄の炎を受けても溶けないはずの漆黒の鎧が溶け始めている。

「俺は罠カード《インフェルニティ・フォース》を発動。俺の手札が0枚で、俺のインフェルニティモンスターが攻撃対象となったとき、攻撃モンスターを破壊する!」

しのぎ切れないと判断した煉獄騎士は剣先を敵に向け、特攻を始める。

鎧と骨を焼きながら、彼の剣と肉体は《機皇帝グランエル》の胸部を貫く。

胸部を貫かれ、更に煉獄の炎によってエネルギー源が焼き尽くされたことで《機皇帝グランエル》が大爆発を起こし、消滅した。

「更に墓地からインフェルニティモンスター1体を特殊召喚する。《インフェルニティ・ネクロマンサー》を特殊召喚」

敵を倒し、鬼柳のフィールドに戻ってきた《煉獄騎士インフェルニティ・ボーンナイト》の前に《インフェルニティ・ネクロマンサー》が現れる。

そして、傷ついた骨を術によっていやした。

 

インフェルニティ・ネクロマンサー レベル3 守備2000

 

「鬼柳さん、ジョンソンさん…」

「ジョンソン、《インフェルニティ・フォース》がなかったら、俺はあの世行だったぜ?そうなったら、どうしてくれたんだ?」

「一種の賭けだ。それに、《インフェルニティ・フォース》をこの状況で伏せていないほど黄泉の浅いデュエリストではないと思っただけだ」

フッと笑みを浮かべるジョンソンに鬼柳は苦笑する。

(すごい…一回崩れたこの戦況をここまで立て直すなんて…もしかしたら、勝てるかもしれない)

ホセのターンは続いていて、最後の1枚が何かはわからないが、次に柚子のターンが来る。

そして、そのあとに続くジョンソンと鬼柳のターンを含めて猛攻を仕掛けることができれば勝てる。

「私は手札から速攻魔法《インフィニティ・コアリバース》を発動。私のフィールド上に存在する機皇帝が破壊されたターン、私のフィールド上にモンスターが存在しないときに発動でき、墓地からレベル1の機械族モンスター1体を特殊召喚できる。私は《グランド・コア》を特殊召喚する」

爆発によって発生した煙がはれ、ホセの背後には《機皇帝グランエル》の残骸がある。

それが結集し、ホセの前に移動して、新しい《グランド・コア》となる。

 

グランド・コア レベル1 守備0

 

「そして、このカードを発動したターンのバトルフェイズ終了時に、この効果で特殊召喚したモンスターは破壊される」

「破壊されるって…まさか!?」

「バトルフェイズ終了だ…」

ホセの宣言と同時に《グランド・コア》が粉々に砕け、そこから《機皇帝グランエル》が現れる。

 

機皇帝グランエル∞ レベル1 攻撃7350

グランエルT レベル1 攻撃500

グランエルA レベル1 攻撃1300

グランエルG レベル1 守備1000

グランエルC レベル1 攻撃700

 

インフィニティ・コアリバース

速攻魔法カード

(1):自分フィールド上に存在する「∞」モンスターが破壊され墓地へ送られたターン、自分フィールド上にモンスターが存在しない場合に発動できる。墓地に存在するレベル1・機械族モンスター1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化され、このカードを発動したターンのバトルフェイズ終了時に破壊される。

 

「《グランエル∞》の効果発動。1ターンに1度、相手フィールド上に存在するシンクロモンスター1体を捕獲する。《インフェルニティ・ボーンナイト》を捕獲」

「何!?」

《煉獄騎士インフェルニティ・ボーンナイト》が取り込まれ、《機皇帝グランエル》のエネルギーに変えられていく。

そして、その力を得た機械は攻撃力を高める。

 

機皇帝グランエル∞ レベル1 攻撃7350→9450

 

「まずいな…これは…!」

「くそ!!最後の最後で!!」

再び強大な力をもって復活した《機皇帝グランエル》に3人は戦慄する。

(落ち着いて…一度は力を合わせて倒すことができたモンスターよ。無敵ってわけじゃない!落ち着いて…)

何度も何度も自分の心に言い聞かせる柚子。

そんな中、急に《機皇帝グランエル∞》が消えていく。

そして、ホセはデュエルを中止して背を向ける。

「何…?」

「おい、何のつもりだ??おい!!」

何を言うことなく、去っていくホセに答えを求める。

しかし、機械であるホセに何を言っても無駄だ。

更に彼は懐からカード化したデュエリストをその場に置いて行ってしまった。

足音が遠くなるのを耳で知ったジョンソンは静かにこうつぶやく。

「撤退した…いや、撤退してくれたというべきか…?」

 

「よかった…!最終防衛ラインは傷ついてるが、無事みたいじゃ」

ホセが去った少しあとで最終防衛ラインまで戻ってきた漁介が周囲を見渡す。

ホセに物理的な攻撃をされたことで大けがをしたメンバーの治療を医療班が行っており、破損したデュエルディスクの回収を手伝っていた。

彼が実際にデュエルをしたのがジョンソンと柚子、鬼柳だけだということには驚いたものの。

「ん…?秘密連絡??」

デュエルディスクからブザー音が鳴り、通信機能を起動し、画面を見ると、そこには黒い二重線が表示されていた。

これはモハメドが翔太ら7人のデュエルディスクにだけ送る連絡番号で、これで知る情報はその7人以外には決して伝えてはいけないということになっている。

「おう、どうしたんじゃ、モハメドのおっちゃん」

「まずいことになった…ボスがセキュリティにさらわれた」




かなり強引ですが、翔太にはちょっととんでもない状況に陥っていただきました。
彼の身にこれから何が起こるのか?彼不在のシェイドはどうなってしまうのか…??


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第59話 再びの眠り

「う、うう…」

腹部に手を当てながら、目を覚ました翔太は周囲を見渡す。

「また、あの空間か…」

周囲に浮かぶ、様々な形の赤い水晶。

そして、同じ色の推奨でできた、行き先の見えない階段。

TDCの間の夜に翔太が眠っている中で見た空間そのものだ。

今度は階段を登ろうとせず、それをじっと見ながら声をかける。

「今度は何の用だ!?」

そういったすぐ後で、彼の目の前に水晶でできたカードが3枚現れる。

《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》、《究極宝玉神レインボー・ドラゴン》、《ジャイアント・ボマー・エアレイド》…。

「こいつは…俺の記憶のかけらがあったカード」

「そうだぜー?まだこれだけしかねーから、すっごく気分が悪りーんだよ」

わざとらしく機嫌の悪そうな声が空間中に響く。

「俺はマイペースだからな、お前みたいな引きこもりとは違うんだよ」

「てんめぇ…俺を馬鹿にしてるのかよぉ!?」

「こんなクソみたいな場所に連れ込む奴を馬鹿にしない理由はあるのか?」

怒りの色を見せる声に対して翔太はさらに挑発する。

水晶の空間である以上、相手の土俵であるにもかかわらずだ。

「引きこもってないでさっさと俺の前に出てきたらどうだ?話し相手くらいにはなってやるぜ」

「生憎、今の俺はここから出ることはできねえんだよ!!お前とお前の中にいる奴のせいでよぉ!!!」

(俺の中にいる奴…?)

奇妙な発言を聞き、翔太は疑問を浮かべる。

遊矢にもユート以外にもう1つの真黒な魂があるとミエルが言っていた。

それと同じようなものなのか、それとももっと別のものなのかはわからない。

だが、少なくともその声は自分について他に知っていることがあるのかもしれない。

「ああ、そいつは悪かったな。で、どうしたらお前を俺の前に引きずり出せるんだ?その10枚のカードってやつが必要なのか?」

「そういうことだよ!!少なくとも、近くから記憶のかけらが宿るカードの波動を感じるぜ」

「そんなことが分かるのかよ。だったら、その波動を感じる力をよこせ。そうしたら、少しペースを上げる気にはなれるぜ」

「あいつみたいになめた口をたたきやがって…!ああわかったよ!その力をやるよ!!こいつを倒すことができたならなぁ!!」

声が消えると同時に空間の中が激しく揺れる。

甘利の揺れで翔太は片膝をつき、舌打ちする。

(引きこもりの癖に一丁前に怒りやがった。バナナみたいに怒るだけで大したことのない奴かと思って、油断した…!)

そして、揺れているにもかかわらず普通に階段を下りてくる1人の男が見えた。

赤い逆立った紅葉のような髪型をしていて、耳には緑色のピアスがあり、眼鏡をかけている。

そして、黒い長そでで柄のない地味な服の上に緑色のマントを身に着け、左腕には丸みを帯びた形で、カードゾーンがソリッドビジョンとなっていない、白が基調の古いタイプのデュエルディスクをつけている。

「こいつは俺を怒らせた罰ゲームだ!!サレンダーはなしだぜー?」

「何が罰ゲームだ。ガキではあるまいし…付き合いきれねえな」

デュエルディスクを展開させながら、彼の目をじっと見る。

その眼には覇気がなく、無表情そのものだ。

「紹介するぜ、こいつはアモン・ガラム。みんなが平等で苦しみや憎しみなく、幸せに暮らせる世界を作るために、恋人を犠牲にしてまで力を手に入れたってのに、かわいそうなことに負けちまって、今じゃあこんなザマになっちまったのさ。くぅーー!泣ける話だぜー!」

「苦しみも憎しみもない、結構な響きだが、まるで人間みんな心のない機械にするみたいにも見えてくるぜ」

彼にはある意味、アモンがその理想的な姿に思えた。

心を失い、あの声の下僕として今、こうして自分とデュエルをすることになっているのだから。

心がなければ、もはや苦しみも憎しみもないだろう。

「ま、俺には関係ないことだけどな」

「「デュエル!!」」

 

アモン

手札5

ライフ4000

 

翔太

手札5

ライフ4000

 

「僕の先攻…。僕はモンスターを裏守備表示で召喚。カードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

アモン

手札5→3

ライフ4000

場 裏守備モンスター1

  伏せカード1

 

翔太

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「俺のターン!」

 

翔太

手札5→6

 

ドローしたカードを見た後で、翔太はアモンに目を向ける。

「さっさと負けてもらうぜ。俺はスケール4の《魔装弓士ロビン・フッド》とスケール5の《魔装銃士ビリー・ザ・キッド》でペンデュラムスケールをセッティング!」

緑色のポロシャツと薄緑で長そでの服を重ね着した、オレンジ色の髪の狼人間が翔太の左側に飛び、光の柱を生み出す。

頭にかぶっている緑色の帽子には2枚の白い羽をつけていて、弓を持つ茶色い右手の手袋には、甲部分に五芒星が刻まれている。

右側で光の柱を作っているのは茶色い袖なしジャケットと白いシャツ、薄緑のズボンをはいた小柄なガンマンだ。

金色の乱れた髪を茶色いテンガロンハットで隠すと同時に、両手に持っている拳銃2丁を腰のホルスターにしまい、背中にさしているマスケット銃を手に取る。

すると、胸のあたりで交差するように2つのガンベルトが装着された。

「おいおーい、さっそくプレイングミスかよー?スケール4と5じゃあ何もペンデュラム召喚できねーぜー?」

「黙ってろ。《魔装銃士ビリー・ザ・キッド》にペンデュラム効果発動」

効果発動宣言と同時に、マスケット銃を真上にある水晶に向けて撃つ。

水晶は砕けて数十個の破片に変わって彼の上にシャワーのように降り注ぐ。

「《ビリー・ザ・キッド》は俺のもう片方のペンデュラムゾーンに魔装ペンデュラムモンスターがセッティングされているとき、ペンデュラムスケールが11になる」

 

魔装銃士ビリー・ザ・キッド(赤) ペンデュラムスケール5→11

 

魔装銃士ビリー・ザ・キッド

レベル6 攻撃2400 守備2200 地属性 戦士族

【Pスケール青5:赤5】

(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。

(2):もう片方のPゾーンに「魔装」カードが存在する場合、このカードのPスケールは11となる。

【モンスター効果】

(1):このカードが戦闘で相手のPモンスターを破壊したときに発動できる。自分フィールド上に存在するこのカードをエクストラデッキに戻し、そのモンスターをデッキに戻す。

 

「来たれ、時の果てに眠りし英雄の魂。漆黒の魂と契約し、封印から解き放たん!ペンデュラム召喚!第4の騎士、《魔装騎士ペイルライダー》!」

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2400

 

「《ロビン・フッド》が存在し、俺の魔装モンスターが裏守備モンスターを攻撃するとき、お前はリバース効果を発動できない。バトル!俺は《ペイルライダー》で裏守備モンスターを攻撃、クアトロ・デスブレイク!」

《魔装弓士ロビン・フッド》が2本の矢を放つ。

すると、裏守備モンスターは全身に青いポンプのような血管を露出させている、紫色の体でで長い蛇のような舌を持つ悪魔に変わり、片手に4本ずつついている鉄の爪が矢を切り裂く。

矢に気を取られている悪魔に対して、《魔装騎士ペイルライダー》は両足に召喚したミサイルポッドからミサイルを撃って攻撃した。

ミサイルを受けた悪魔はそれが破裂することで発生する炎に焼かれていった。

 

裏守備モンスター

マッド・リローダー レベル1 守備0

 

「《マッド・リローダー》の効果発動。このカードが戦闘で破壊され墓地へ送られたとき、手札2枚を墓地へ送り、デッキからカードを2枚ドローする」

 

墓地へ送られたカード

・ディープ・ダイバー

・シエンの間者

 

「《ディープ・ダイバー》と《シエンの間者》だぁ…?」

スピードが遅いものの、高確率で幅広いモンスターのサーチができる《ディープ・ダイバー》と自分のモンスターを1ターンだけ相手に明け渡す《シエンの間者》、そして手札交換の《マッド・リローダー》。

これらのカードを使うということから、翔太の脳裏にあるモンスターが浮かび上がる。

(《エクゾディア》…??)

ヴァプラ隊との訓練の際に、1度だけエクゾディアデッキを使うメンバーのデュエルを見たことがあった。

そのときはセレナがデュエルをしており、手札交換のカードを使い、攻撃を食い止めて、最終的に《封印されしエクゾディア》を完成させた。

5枚のパーツを手札にそろえるのは至難の業だが、完成させたときに相手に与えるインパクトは大きい。

だが、問題なのは…。

(なんで《ディープ・ダイバー》を伏せなかった…?)

《ディープ・ダイバー》であれば、先ほどのようにデッキの正体をばらすことになったとしても、少なくともパーツを1枚手札に加えることが可能になったはずだ。

そうであるにもかかわらず、確率の低い《マッド・リローダー》を伏せた。

2枚同時入手を狙ったのかもしれないが、5枚のパーツはすべて制限カードとなっている今、それを狙うのはとても難しい。

「(今手札に何枚《エクゾディア》のカードがあるのかはわからないが、完成前に勝負を決めてやる!)3枚カードを伏せ、ターンエンド!」

 

アモン

手札3

ライフ4000

場 伏せカード1

 

翔太

手札6→0

ライフ4000

場 魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

  魔装弓士ロビン・フッド(青) ペンデュラムスケール4

  魔装銃士ビリー・ザ・キッド(赤) ペンデュラムスケール11

  伏せカード3

 

魔装弓士ロビン・フッド

レベル3 攻撃1000 守備1000 風属性 獣族

【Pスケール青4:赤4】

「魔装弓士ロビン・フッド」のモンスター効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。

(2):自分の「魔装」モンスターが戦闘を行う場合、相手はダメージステップ終了時までリバース効果を発動できない。

【モンスター効果】

(1):相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しないとき、手札に存在することカードを表向きでエクストラデッキに置くことで発動できる。自分の墓地・エクストラデッキに表向きで存在する「魔装」Pモンスター1体を手札に加える。

 

「僕のターン、ドロー」

 

アモン

手札3→4

 

「このカードは僕の墓地に存在するモンスターを全てデッキに戻すことで、手札から特殊召喚できる。《究極封印神エクゾディオス》を特殊召喚」

「何!?」

アモンの墓地から《マッド・リローダー》と《ディープ・ダイバー》が現れ、黒い冷気が宿った魂に変わる。

その魂をアモンの背後に現れた真黒で柄のない扉に宿る。

すると扉が開き、そこから頭から肩がこげ茶色で、全身の肌がオレンジから褐色へと変わった《エクゾディア》が現れる。

 

究極封印神エクゾディオス レベル10 攻撃0

 

「攻撃力0でレベル10…何かあるぞってにおいがプンプンするな」

攻撃力0であるにもかかわらず、臆することなく翔太にプレッシャーをかけてくる。

《エクゾディア》の名前を持つモンスターである以上、何かあるに決まっている。

「更に僕は罠カード《おジャマトリオ》を発動。相手フィールド上に《おジャマトークン》3体を特殊召喚する」

翔太の目の前に《おジャマ・イエロー》、《おジャマ・グリーン》、《おジャマ・ブラック》が現れる。

《グリーン》は鼻をほじり、《ブラック》は腹筋をし、《イエロー》はお茶を飲む。

「すみませんねー」

「お宅のフィールドなのに」

「すっかりお邪魔してー」

彼らの言う通り、もはやここは翔太のフィールドではなく3体のおジャマモンスターの家だ。

 

おジャマトークン×3 レベル2 守備1000

 

「更に僕は手札から魔法カード《拡散する波動》を発動。ライフを1000支払うことで、僕のフィールド上に存在するレベル7以上の魔法使い族モンスター1体をこのターンだけ、相手フィールド上のすべてのモンスターに1回ずつ攻撃可能にする。そして、《エクゾディオス》は攻撃を行う際、手札・デッキに存在するモンスター1体を墓地へ送り、墓地に存在する通常モンスター1体につき、攻撃力を1000アップさせる」

「そのためにこの邪魔者を俺のフィールドに召喚したってのか!?」

今の状況では、4回もの攻撃が可能で、4枚のカードが墓地へ送られることになる。

その結果、一気にこのカードの攻撃力は4000となる。

だが、アモンの目的はそれではない。

「このカードは僕のフィールド上に《トーチトークン》2体を攻撃表示で特殊召喚することで、手札から相手フィールド上に特殊召喚できる」

「また俺のフィールドにモンスターを!?」

「《トーチ・ゴーレム》を特殊召喚」

翔太のフィールドに体の各所に鎖がついていて、腹部に回転のこぎりがあって頭のない鋼の人形が現れる。

左手はペンチとなっていて、右手は4本の爪型マニピュレーターとなっている。

そして、アモンのフィールドには10分の1の大きさになった《トーチ・ゴーレム》2体が現れる。

 

トーチ・ゴーレム レベル8 攻撃3000

トーチトークン×2 レベル1 攻撃0

 

「《エクゾディオス》の効果により、墓地に5枚の《エクゾディア》パーツがそろったとき、僕はデュエルに勝利する」

「《エクゾディア》で1ターンキルか…」

「バトル。《エクゾディオス》で《おジャマ・トークン》を攻撃。天上の雷火エクゾード・ブラスト」

覇気のない声で攻撃宣言すると、《究極封印神エクゾディオス》が走り出し、まずは《おジャマ・イエロー》を殴ろうとする。

それと同時に、アモンのデッキから《封印されし者の右手》が墓地へ送られる。

「《封印されし者の右手》は通常モンスター、よって攻撃力が1000アップする」

 

アモン

ライフ4000→3000

 

究極封印神エクゾディオス レベル10 攻撃0→1000

 

「うっふーん♡」

しかし、現状では攻撃力1000のためか《おジャマ・イエロー》に尻で受け止められる。

そんなことを無視して、《究極封印神エクゾディオス》は《おジャマ・ブラック》をつかむ。

すると、今度は《封印されし者の左手》が墓地へ送られ、力が強まる。

 

究極封印神エクゾディオス レベル10 攻撃1000→2000

 

「《おジャマトークン》は破壊されるとき、相手に300ダメージを与える」

「お邪魔しましたー!」

《究極封印神エクゾディオス》によって投げられた《おジャマ・ブラック》は翔太に直撃して消滅する。

「くっそ…邪魔すぎて寒気がする!」

 

翔太

ライフ4000→3700

 

しかし、翔太にとって問題なのはライフではなくアモンの墓地だ。

2枚のパーツが墓地にあり、この後3回の攻撃が行われる。

そうなると、残り3枚のパーツも墓地へ送られ、自動的にアモンの勝利が決定する。

「《エクゾディオス》で《おジャマトークン》を攻撃」

拳を構えるのと同時に、アモンのデッキから《封印されし者の右足》が墓地へ送られる。

 

究極封印神エクゾディオス レベル10 攻撃2000→3000

 

「いよっと!」

《究極封印神エクゾディオス》の拳が直撃する前に《おジャマ・グリーン》は翔太の前まで走っていき、先ほどほじって指についた鼻くそを彼の額にくっつける。

「この野郎!!」

さすがにキレた翔太が《おジャマ・グリーン》を殴ると、彼は遥か彼方まで飛んで行った。

 

翔太

ライフ3700→3400

 

「《エクゾディオス》で《ペイルライダー》を攻撃」

《究極封印神エクゾディオス》の口が開き、そこから稲妻が放たれる。

 

「もう攻撃はさせない!罠発動!《騎士のケジメ》。俺の魔装騎士を対象とした攻撃宣言時、その攻撃を無効にし、攻撃モンスターを破壊する」

《魔装騎士ペイルライダー》は稲妻を交わすと、右手に光剣を握り、そのまま《究極封印神エクゾディオス》を真っ二つに切り裂いた。

切り裂かれた《究極封印神エクゾディオス》は上空に向けて稲妻を放ちながら倒れ、消滅した。

「更に、デッキから魔装モンスター1体を手札に加える。俺はデッキから《魔装詩人ダンテ》を手札に加える」

 

騎士のケジメ

通常罠カード

「騎士のけじめ」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に存在する「魔装騎士」モンスターを対象とした攻撃宣言時に発動できる。攻撃モンスターを破壊する。その後、デッキから「魔装」モンスター1体を手札に加える。

 

《究極封印神エクゾディオス》が破壊されたにもかかわらず、アモンは驚きも悲しみもしない。

ただ、破壊されてしまったのかとどこか他人事のようにその現象を見ているだけだ。

「けっ、気に入らねえ目だな」

「僕は手札から魔法カード《トークン復活祭》を発動。僕のフィールド上に存在するトークンを全て破壊し、破戒したトークンの数だけフィールド上のカードを破壊する」

「カウンター罠《魔宮の賄賂》を発動。相手の魔法・罠カードの発動を無効にし、破壊する」

《トークン復活祭》のソリッドビジョンが表示されるのと同時に破壊される。

そして、《魔宮の賄賂》の効果によって、アモンはカードを1枚ドローする。

「僕は手札から魔法カード《光の護封剣》を発動。このカードは3ターンの間フィールド上に存在し続け、相手の攻撃を封じ込める」

翔太の頭上に3本の緑色の光を放つ剣が現れ、モンスターゾーンに向けて落下する。

「そいつで俺の攻撃を封じて、逆転を狙うってのか?」

「僕はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

アモン

手札4→0

ライフ3000

場 トーチトークン×2 レベル1 攻撃0

  光の護封剣(残り3ターン)

  伏せカード1

 

翔太

手札0→1(《魔装詩人ダンテ》)

ライフ3400

場 魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

  おジャマトークン レベル2 守備1000

  トーチ・ゴーレム レベル8 攻撃3000

  魔装弓士ロビン・フッド(青) ペンデュラムスケール4

  魔装銃士ビリー・ザ・キッド(赤) ペンデュラムスケール11

  伏せカード1

 

「俺のターン!」

 

翔太

手札1→2

 

「俺は手札から《魔装陰陽師セイメイ》を召喚」

 

魔装陰陽師セイメイ レベル3 攻撃1000(チューナー)

 

「こいつの召喚に成功したとき、手札からレベル4以下の魔装モンスター1体を特殊召喚できる。俺は《魔装詩人ダンテ》を特殊召喚」

 

魔装詩人ダンテ レベル3 攻撃500

 

「レベル2の《おジャマトークン》とレベル3の《ダンテ》にレベル3の《セイメイ》をチューニング。茨の園より生まれし稲妻の竜よ、空を振るわし、大地に鉄槌を。シンクロ召喚!現れろ、《魔装雷竜リンドヴルム》!」

「あーれーーー」

間の抜けた声を出しながら2つの光の球体に変わった《おジャマ・イエロー》に対して、翔太は何もリアクションを起こさなかった。

 

魔装雷竜リンドヴルム レベル8 攻撃3000

 

攻撃力3000のシンクロモンスターを出したところで、《光の護封剣》によって攻撃が封じられている今では何もできることはない。

だが、だからといってアモンにはそれらのモンスターの存在を許す理由はなかった。

「永続罠《魔神火炎砲》を発動。1ターンに1度、手札・デッキから《エクゾディア》パーツを墓地へ送ることで、フィールド上のモンスター1体を手札に戻す」

翔太のモンスターゾーン上空に赤い雲が出現し、そこから《封印されしエクゾディア》の頭と胴体が現れる。

《魔装雷竜リンドヴルム》は口から稲妻を放って追い払おうとするが、先に《封印されしエクゾディア》の口から放たれた赤い炎に飲み込まれて消えた。

「ちっ…これで墓地にある《エクゾディア》パーツは4枚か」

《魔装雷竜リンドヴルム》のカードをエクストラデッキに置いた翔太はじっとアモンを見る。

おそらく、最後のパーツである《封印されし者の左足》がデッキに残っている。

そのカードは次のターンに手札に加わるか、《魔神火炎砲》によって墓地へ送られる。

そうなると問題は回収手段で、今のアモンの手札はない。

「俺はこれでターンエンド」

 

アモン

手札0

ライフ3000

場 トーチトークン×2 レベル1 攻撃0

  光の護封剣(残り2ターン)

  魔神火炎砲(永続罠)

 

翔太

手札2→0

ライフ3400

場 魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

  トーチ・ゴーレム レベル8 攻撃3000

  魔装弓士ロビン・フッド(青) ペンデュラムスケール4

  魔装銃士ビリー・ザ・キッド(赤) ペンデュラムスケール11

  伏せカード1

 

「僕のターン、ドロー」

 

アモン

手札0→1

 

「僕はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

 

アモン

手札1→0

ライフ3000

場 トーチトークン×2 レベル1 攻撃0

  光の護封剣(残り2ターン)

  魔神火炎砲(永続罠)

  伏せカード1

 

翔太

手札0

ライフ3400

場 魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

  トーチ・ゴーレム レベル8 攻撃3000

  魔装弓士ロビン・フッド(青) ペンデュラムスケール4

  魔装銃士ビリー・ザ・キッド(赤) ペンデュラムスケール11

  伏せカード1

 

「また伏せカードを…。俺のターン!」

 

翔太

手札0→1

 

「俺は手札から魔法カード《ペンデュラム・リチャージ》を発動。俺のペンデュラムスケールの幅が5以上あるとき、デッキからカードを2枚ドローする」

 

ペンデュラム・リチャージ

通常魔法カード

「ペンデュラム・リチャージ」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分のPゾーンにカードが2枚存在し、そのPスケールの幅が5以上の場合にのみ発動できる。自分はデッキからカードを2枚ドローする。

 

「そして、俺は手札から魔法カード《サイクロン》を発動。その効果で、俺は《魔神火炎砲》を破壊する」

《サイクロン》が上空の赤い雲を吹き飛ばしていく。

そして、その雲の中にあった《封印されしエクゾディア》がカードとなって、アモンの手札に加わる。

「《魔神火炎砲》が魔法・罠ゾーンから墓地へ送られたとき、墓地に存在する《エクゾディア》のパーツ1枚を手札に加えることができる」

「これでもうバウンスはできないない。俺は手札から《魔装学者ゲンナイ》を召喚」

五芒星が至る所に描かれた紫色の上着と黒を基調とした袴を着用した学者が現れる。

右手にはキセルが握られていて、小判のような細長い頭にネズミのしっぽのような細いまげを結っている。

 

魔装学者ゲンナイ レベル1 攻撃200

 

「このカードの召喚に成功したとき、手札・フィールドに存在するモンスター1体をデッキに戻す」

《魔装学者ゲンナイ》は何を思ったのか、そばにある《トーチ・ゴーレム》の分解を始めてしまう。

分解した際に見たパーツの1つ1つを着物の中から出した紙にメモし、そのモンスターの設計図を完成させた。

「そして、レベルの合計がデッキに戻したモンスターのレベル以下になるように、デッキから魔装モンスター2体を特殊召喚する。《魔装猫バステト》と《魔装鳥キンシ》を特殊召喚」

 

魔装猫バステト レベル1 攻撃0(チューナー)

魔装鳥キンシ レベル7 攻撃2400

 

「レベル1の《ゲンナイ》とレベル7の《キンシ》にレベル1の《バステト》をチューニング!勝利と支配をもたらす第2の騎士よ、終戦を告げるその矢で敗者を鎮めよ!シンクロ召喚!《魔装騎士ホワイトライダー》!!」

 

魔装騎士ホワイトライダー レベル9 攻撃3100

 

「こいつは魔装装備カード以外のカード効果を受けない!」

《魔装騎士ホワイトライダー》が矢をつがい、《トーチトークン》に向けて狙いを定める。

《光の護封剣》などまるで意に介さない。

「罠発動、《捨て身の宝札》。自分フィールド上に2体以上存在する攻撃表示モンスターの攻撃力の合計が相手フィールド上に存在する最も攻撃力の低いモンスターの攻撃力以下の時、デッキからカードを2枚ドローする」

ドローしたカードを見るが、感情は何も見せない。

《魔装騎士ホワイトライダー》の《トーチトークン》への攻撃が成功したら、もう勝負がついてしまうというのに。

「バトルだ、俺は《ホワイトライダー》で《トーチトークン》を攻撃。アロー・オブ・ルール」

《魔装騎士ホワイトライダー》が白い光をまとった矢を放つ。

その矢は《光の護封剣》でも止めることができず、そのまま《トーチトークン》を貫くが、アモンまであと2センチといったところで消えてしまった。

「何!?」

「僕は《クリボー》の効果を発動した。このカードを手札から墓地へ送ることで、1度だけ僕が受ける戦闘ダメージを0にする」

「しぶとく生き延びやがって…。俺はこれでターンエンド」

 

アモン

手札0→2(うち1枚《封印されしエクゾディア》)

ライフ3000

場 トーチトークン レベル1 攻撃0

  光の護封剣(残り1ターン)

 

翔太

手札1→0

ライフ3400

場 魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

  魔装騎士ホワイトライダー レベル9 攻撃3100

  魔装弓士ロビン・フッド(青) ペンデュラムスケール4

  魔装銃士ビリー・ザ・キッド(赤) ペンデュラムスケール11

  伏せカード1

 

「僕のターン、ドロー」

 

アモン

手札2→3

 

「僕は手札から魔法カード《テイク・オーバー5》を発動。デッキの上から5枚のカードを墓地へ送る。そして、手札から《封印されしエクゾディア》を召喚」

 

封印されしエクゾディア レベル3 攻撃1000

 

デッキから墓地へ送られたカード

・封印されし者の左足

・ネクロ・ガードナー

・ネクロ・ディフェンダー

・補給部隊

・聖なるバリア―ミラーフォース

 

「《エクゾディア》を召喚だと??」

「そして、このカードは《エクゾディア》パーツ1体をリリースすることで、手札から特殊召喚できる。現れろ、《召喚神エクゾディア》」

「《召喚神エクゾディア》!?」

《封印されしエクゾディア》の胸部が開き、内部に隠された鍵穴が現れる。

そして、そのモンスターの目の前に黄金でできたアンク状の鍵が現れ、それが鍵穴に入る。

鍵が開かれると同時に鍵が砂となり、《封印されしエクゾディア》の肉体が突然発生した砂嵐に包まれていく。

砂嵐が消えると、そこには四肢と合体した《封印されしエクゾディア》がいた。

ただし、体と同じ色の鎧で全身が覆われている。

 

召喚神エクゾディア レベル10 攻撃5000

 

「攻撃力5000!?」

「このカードの攻撃力は墓地の《エクゾディア》パーツの数×1000となる。そして、召喚神の鎧をまとったことで、ほかのカード効果を受けなくなった」

「《ホワイトライダー》と同じ効果を持ったってことか!!」

《究極封印神エクゾディオス》と《魔神火炎砲》、《おろかな埋葬》によって墓地に落とした目的はこのためだったのだろう。

強大な力を秘めた《召喚神エクゾディア》を最大限に活用するため。

本当ならば、最初の《究極封印神エクゾディオス》と《拡散する波動》、《トーチ・ゴーレム》、《おジャマトリオ》のコンボによる1ターンキルで終わらせるつもりだっただろうが、結果的にこのようなことになった。

「バトル。《エクゾディア》で《ホワイトライダー》を攻撃」

《召喚神エクゾディア》の右ストレートが炸裂する。

一撃で《魔装騎士ホワイトライダー》は吹き飛ばされ、背後にある水晶と激突して消滅した。

「ぐうううう!!こいつ、俺のライフを直接!!」

 

翔太

ライフ3400→1500

 

「僕は《トーチトークン》を守備表示に変更。これでターンエンド。ターン終了時に《エクゾディア》の効果発動。僕の墓地に存在する《エクゾディア》パーツ1体を手札に加える。僕は墓地から《封印されしエクゾディア》を手札に加える」

 

アモン

手札3→1(《封印されしエクゾディア》)

ライフ3000

場 トーチトークン レベル1 守備0

  召喚神エクゾディア レベル10 攻撃5000→4000

  光の護封剣(残り1ターン)

 

翔太

手札0

ライフ1500

場 魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

  魔装弓士ロビン・フッド(青) ペンデュラムスケール4

  魔装銃士ビリー・ザ・キッド(赤) ペンデュラムスケール11

  伏せカード1

 

「《エクゾディア》パーツを手札にだと…?特殊勝利も普通の勝利も狙う、ダブルスタンダードな神だなぁ…」

《封印されしエクゾディア》が手札に戻ったことで、攻撃力は4000に下がったものの、《魔装騎士ペイルライダー》を大きく上回っていて、更に効果によって死を与えることもできない。

攻撃表示のままにしてターンを終えたら、次のターンで負ける。

「俺のターン!」

 

翔太

手札0→1

 

このターンが終わると、《光の護封剣》の呪縛から解放される。

だが、それでも攻撃力4000の《召喚神エクゾディア》という新しい呪縛が待っているだけ。

「俺は手札から速攻魔法《揺れる眼差し》を発動。フィールド上に存在するペンデュラムゾーンのカードを全て破壊し、破壊した数によって効果を発動する」

《揺れる眼差し》が放つ波紋を受けた2体のペンデュラムモンスターが姿を消す。

そして、その波紋がアモンと翔太のデッキにまで及ぶ。

「破壊されたカードは2枚、よってお前に500ダメージを与え、デッキからペンデュラムモンスター1体を手札に加える。俺はデッキから《魔装剣士ムネシゲ》を手札に加える」

 

アモン

ライフ3000→2500

 

「そして、エクストラデッキに存在する《魔装鳥キンシ》の効果発動。こいつは表向きでエクストラデッキに存在するとき、1度だけ手札に加えることができる。そして、俺はスケール1の《魔装鳥キンシ》とスケール9の《魔装剣士ムネシゲ》でペンデュラムスケールをセッティング」

新たな2本の光の柱が生まれ、翔太に力を与える。

これにより、翔太はレベル2から8までのモンスターを同時に召喚できるようになった。

「ペンデュラム召喚!21人殺しの銃士、《魔装銃士ビリー・ザ・キッド》!」

 

魔装銃士ビリー・ザ・キッド レベル6 攻撃2400

 

「新緑に潜みし影の弓士、《魔装弓士ロビン・フッド》!」

 

魔装弓士ロビン・フッド レベル3 攻撃1000

 

「そして俺は墓地の《ゲンナイ》の効果を発動。このカードが墓地に存在し、俺のフィールド上に魔装モンスターが2体以上存在するとき、1度だけ魔装モンスターのレベルをターン終了時まで1つに統一する。俺は《魔装騎士ペイルライダー》のレベル7に統一させる」

《魔装学者ゲンナイ》が墓地からエレキテルをフィールドに向けて投げる。

翔太のモンスターゾーンに落ちたそれから発生した電気は3体の魔装モンスターを襲う。

電気を受けたモンスターは最初こそ苦しんでいたが、数秒するとなんともないような表情を見せた。

 

魔装銃士ビリー・ザ・キッド レベル6→7 攻撃2400

魔装弓士ロビン・フッド レベル3→7 攻撃1000

 

魔装学者ゲンナイ

レベル1 攻撃0 守備2000 効果 闇属性 魔法使い族

「魔装学者ゲンナイ」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか発動できず、(2)の効果はデュエル中1回しか発動できない。それらの効果を発動したターン、自分は「魔装」モンスター以外のモンスターを特殊召喚できない。

(1):このカードの召喚に成功したとき、自分の手札・フィールド上に存在するモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターをデッキに戻し、レベルの合計がそのモンスターのレベル以下となるようにデッキから「魔装」モンスター2体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。

(2):自分の墓地にこのカードが存在し、自分フィールド上に「魔装」モンスターが2体以上存在するとき、そのうちの1体を対象に発動できる。自分フィールド上に存在する「魔装」モンスターのレベルはターン終了時までそのモンスターと同じになる。

 

「そして、俺はレベル7の《ビリー・ザ・キッド》と《ロビン・フッド》でオーバーレイ。エクシーズ召喚!現れろ、大地より生まれし神討ちの竜、《魔装竜テュポーン》!」

 

魔装竜テュポーン ランク7 守備2000

 

「《テュポーン》の効果発動。1ターンに1度、オーバーレイユニット1つとモンスター1体のリリースで、墓地から魔装モンスター1体を特殊召喚する。再び秩序の矢を戦乱を沈めろ、《魔装騎士ホワイトライダー》!」

《魔装騎士ペイルライダー》が上昇し、《魔装竜テュポーン》が放ったオーバーレイユニットを受ける。

すると、体が白い光に包まれていき、その姿を《魔装騎士ホワイトライダー》へと変えていった。

 

魔装騎士ホワイトライダー レベル9 攻撃3100

 

「そして、《テュポーン》は1ターンに1度、魔装騎士に装備することができ、装備モンスターの攻撃力を2000アップさせる!」

《魔装騎士ホワイトライダー》の五芒星に《魔装竜テュポーン》が吸収される。

そして、弓に緑色の炎が宿る。

 

魔装騎士ホワイトライダー レベル9 攻撃3100→5100

 

「バトルだ、《ホワイトライダー》で《召喚神エクゾディア》を攻撃!アロー・オブ・ルール!」

《魔装騎士ホワイトライダー》が放った矢が緑色の炎を宿し、《召喚神エクゾディア》を貫こうとする。

しかし、地中から姿を現した《ネクロ・ガードナー》が神の盾となってその矢を受ける。

矢を受けた守り人は緑色の炎に包まれ、灰となった。

「《ネクロ・ガードナー》の効果発動、このカードを墓地から除外することで、攻撃を無効にする」

「俺はこれでターンエンドだ。これで、《光の護封剣》が消滅する。そして、俺のターン終了ごとに、《魔装鳥キンシ》のペンデュラムスケールは2つ上昇する」

翔太の言葉通り、《魔装騎士ホワイトライダー》以外の力を封じ続けてきた光の剣はものの数秒で消えてしまった。

 

アモン

手札1(《封印されしエクゾディア》)

ライフ3000

場 トーチトークン レベル1 守備0

  召喚神エクゾディア レベル10 攻撃4000

 

翔太

手札1→0

ライフ1500

場 魔装騎士ホワイトライダー(《魔装竜テュポーン》装備) レベル9 攻撃5100

  魔装鳥キンシ(青) ペンデュラムスケール1→3

  魔装剣士ムネシゲ(赤) ペンデュラムスケール9

  伏せカード1

 

「僕のターン、ドロー」

 

アモン

手札1→2

 

「更に、《テイク・オーバー5》の効果を発動。このカードを除外することで、更にデッキからカードを1枚ドローする」

 

アモン

手札2→3

 

「そして、カードを1枚伏せてターンエンド。ターン終了と同時に、僕は《エクゾディア》の効果発動。墓地から《封印されし者の右足》を手札に加え…」

「攻撃…しなかったな」

カードを手札に加えようとするアモンが急に手を止める。

そして、うつろな目のまま翔太を見る。

「助かったぜ、こいつの発動条件は厳しくて、デッキから抜こうかとまで思ってしまった。だが…役に立ってくれた」

「…何が、いいたい?」

「やっと普通の言葉をしゃべってくれたが、もう遅い。罠発動!《魔装弓シェキナー》。こいつは俺のフィールド上に《ホワイトライダー》が存在し、相手が戦闘を行わなかったターン終了時に発動できる。墓地に存在するカードを5枚までゲームから除外する!」

《魔装騎士ホワイトライダー》がアモンの墓地に向けて、白い羽に包まれた矢を放つ。

「ああ…!!」

矢は墓地に残っていた《エクゾディア》パーツと《ネクロ・ディフェンダー》を貫く。

貫かれたカードは白い羽となって消滅し、アモンのデッキケースに入る。

「そして、発動後このカードは魔装騎士の装備カードとなり、この効果で除外したカード1枚につき、攻撃力を500アップさせ、貫通効果を与える。そして、《召喚神エクゾディア》の攻撃力は墓地の《エクゾディア》パーツの数×1000だったよな?墓地からそれがなくなったなら、攻撃力は0だ」

力の源である《エクゾディア》パーツを全て失った《召喚神エクゾディア》の体が黒くなっていき、動かなくなった。

 

アモン

手札3→2(うち1枚《封印されしエクゾディア》)

ライフ3000

場 トーチトークン レベル1 守備0

  召喚神エクゾディア レベル10 攻撃4000→0

  伏せカード1

 

翔太

手札0

ライフ1500

場 魔装騎士ホワイトライダー(《魔装弓シェキナー》、《魔装竜テュポーン》装備) レベル9 攻撃5100→7600

  魔装鳥キンシ(青) ペンデュラムスケール1→3

  魔装剣士ムネシゲ(赤) ペンデュラムスケール9

 

魔装弓シェキナー

通常罠カード

(1):相手ターン終了時、自分フィールド上に「魔装騎士ホワイトライダー」が存在し、相手が戦闘を行わなかった場合にのみ発動できる。墓地に存在するカードを5枚まで除外する。その後、このカードを攻撃力がこの効果で除外したカードの数×500アップする装備カードとして自分フィールド上に存在する「魔装騎士」モンスター1体に装備する。

(2):装備カード扱いとなったこのカードを装備したモンスターが守備表示モンスターを攻撃した場合、

その守備力を攻撃力が超えた分だけ相手に戦闘ダメージを与える。

 

「俺のターン!」

 

翔太

手札0→1

 

「バトル…俺は《ホワイトライダー》で《エクゾディア》を攻撃」

再び白い羽に包まれた矢が放たれる。

その矢は静かに《召喚神エクゾディア》の胸を貫き、消滅させた。

 

アモン

ライフ3000→0

 

ライフが0になると同時に、アモンは静かに倒れ、彼が伏せていたカードが翔太の足元まで飛んでくる。

「《補充要員》…自分の墓地にモンスターが5体以上存在するとき、墓地の攻撃力1500以下の通常モンスターを3体まで手札に加えるカードか…こいつと《召喚神エクゾディア》の効果が発動したら、《エクゾディア》が完成していた…」

「いやーいやー、おめでとさんー!!」

声が拍手をしながら、翔太の勝利をたたえる。

「エ…コー…」

「はぁ?」

「僕は…どこで、間違えて…」

言い終わらぬうちに、アモンは黄色い光の粒子となって消滅した。

アモンがいた場所にはデュエルディスクとデッキケース、カードだけが残っていた。

「エコー?」

「それはこいつが生贄にした女の名前だよ。女々しーよなー、自分が望んでそうしたってのにこうして未練がましく…」

「俺には関係ないな。勝った以上、約束は守れよ」

「いいぜ、今回はいい暇つぶしになったからよー。次回も期待してるぜ!!」

翔太の足元の推奨が怪しく光り、デッキに入っている4体の騎士のカードが光り始める。

「記憶の鍵の場所はカードに聞きなー!それから、《召喚神エクゾディア》は俺が見つけた唯一の記憶の鍵だ。特別サービスだってことを忘れんなよー??」

「ぐぅ…!!」

カードが光るのと同時に、翔太の頭から激しい痛みが発生する。

それと同時に、また別の声が聞こえる。

幼い少年の、声変わりしていない高い声だ。

(ねえ、純也兄ちゃん…聖子姉ちゃん…助けて…)

「今回は、声だけか…!?純也、聖子…??)

痛みに耐えながらその声を必死に覚える。

(僕はここだよ…苦しいよ…)

「まさか…石倉純也と…石倉聖子のことか!?」

(苦しい…寒い…暗い…駄目だ、これ以上記憶を取り戻してはいけない!!)

「何!?」

急にはっきりと聞こえたその声に驚くのと同時に翔太は意識を失った。

「ちっ、あの野郎…」

意識を失った翔太が空間から消えると、声は少し不機嫌そうに言い放つ。



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第60話 明日のために

「く、うう…!!」

ゆっくりと目を開く翔太の目の前に広がるのは真っ白で天井だ。

中央にある円盤状の白いLED電球は放つ同じ光を放っているせいか、よく見えない。

左腕を見ると、二の腕あたりに注射針があり、ビタミン剤の点滴をされていることがわかった。

また、患者用の青い服と白いベッド、そしてラジオもテレビもない退屈な空間がそこは病室だということを教えてくれる。

掛布団をめくり、腹部を見ると、傷はもうふさがっていた。

「どれだけ寝ていたんだ…?」

「3日間、といったところでしょうね。ですが、これほどの回復力を持っているとは思いませんでしたが」

翔太の質問に答えるように、病室の横に開くタイプのドアが開き、紫色の服の男が入ってくる。

モハメドが持っていた写真に写っていた、現在の治安維持局長官…。

「ジャン・ミシェル・ロジェ…」

「ええ、私がジャン・ミシェル・ロジェ。治安維持局長官で、あなた方コモンズのギャングに正義の鉄槌を下す存在です。だから…」

色素の薄い不健康そうな肌で薄い笑みを浮かべると、腰についているホルスターからリボルバーを取り出し、それを翔太に向ける。

「判決次第では、この引き金を引きことができるのです」

笑みを浮かべたままだが、彼の目は銃口に向いていた。

銃口には翔太の人差し指が入っており、引き金を引いたら暴発していた。

「この程度では銃は暴発しませんよ。確率にしても半々です。そして、残念ながら今の私にはあなたを裁く権限はありません」

翔太の手をどかし、銃をホルスターにしまったロジェは再び目を翔太の顔に向けた。

「あなたが眠っている間にチームブレイドと司法取引をしまして、あなたの身柄をシティに引き渡す代わりに、当分の間チームブレイドとシェイドを見逃すというものでした」

「ちっ、薄情な部下と同盟相手だ…」

「そして、今のあなたの身柄は評議会のもとにあります。退院後、彼らが用意した施設に収容されます」

「評議会…」

モハメドから聞いた話によると、評議会は治安維持局よりも上に位置する、シンクロ次元のトップとのことだ。

彼らに身柄が確保されたということは、今の自分を治安維持局は拘束することができないということになる。

(だが、こんな司法取引がなぜできたんだ…?)

リーダー1人の身柄と引き換えに、2つの組織を当分見逃すという取引はどう考えても公平なものとは思えない。

そして、シェイドにはモハメド以外に交渉できるような人物はいない。

チームブレイドの交渉人の力量は未知数だが。

(俺たちの見えない場所で、いろいろと事が起こっているみたいだな)

「ああ、それから別に評議会施設にいるのはあなただけではありませんよ。あなたと同じ異次元から来たデュエリストの集団、ランサーズの皆さんもいます」

「…デッキを見たな?」

「一応、リーダーたるあなたの素性だけは確かめておきたかったので」

薄ら笑みを浮かべたまま、翔太のデッキケースを返したロジェは静かに退室し、入れ替わるように白い燕尾服とシルフハットを来た男が入ってきた。

「秋山翔太。ランサーズの一員にして、赤馬零児と同じく4つの召喚法すべてを操る男。お前には1週間後に開催されるフレンドシップカップに参加してもらう」

「はぁ…?フレンドシップカップ?それに零児をなぜ知っている?」

「赤馬零児殿がお前たちのことを詳しく教えてくれた。ランサーズの目的も…。お前だけなぜギャングを結成していたかは知らんが、この大会で、ランサーズの力量を見せてもらう」

「そんなことやってやがったか、あいつ…」

なぜか脳裏に彼が不敵な笑みを浮かべる姿を浮かべてしまう。

そんな翔太に男はパンフレットを渡した。

表紙には白いコートとAを模した銀色のピアスとバックルをつけ、下には同じ色のライディングスーツを着た、金髪で長身の男が映っており、そのそばには赤と茶色を基調とした、ほっそりとしているが引き締まった肉体をしている人型の竜がいる。

3本ある黄土色の角の1本は折れており、翼や肉体のいたるところに様々な傷跡がある。

また、右腕には紫が混ざった赤いマグマが見え隠れする黄土色のガントレットがついている。

おそらく、このモンスターが金髪の男のエースモンスターなのだろう。

「こいつは?」

「ジャック・アトラス…。この次元最強のデュエリスト、キングだ。コモンズ出身でありながら、その実力によって上り詰めた、コモンズとシティの英雄だ」

まるで台本を読んだかのような、棒読みの説明をした後で、男は部屋から出て行った。

「ジャック・アトラス、な…」

 

「くっそぉ!!」

ガンと拳が壁に当たる。

壁にはわずかにひびが入ったものの、それ以上に漁介の拳に内出血のあとができる。

「やめろ、そんなことをしても何も解決しない」

「でもよぉ、やっぱり気に入らねえよ!!」

再び漁介は壁を殴る。

翔太が捕まったという情報が手に入った後、増援で駆け付けたチームブレイドと合流した。

そして、翔太が眠っている3日の間にチームブレイドが評議会と交渉を行い、治安維持局にシェイドとチームブレイドに関与させないよう圧力をかけさせることを条件に、翔太の身柄を評議会に任せるという形で話が決まった。

「よせ、今の俺たちにあいつを救うだけの力はない」

漁介に背中を向けたまま、鬼柳は冷静に諭す。

だが、今の漁介にとってには効き目があるはずがない。

「仲間1人守れんで、何がランサーズじゃ!!はぐゆぅて仕方がなぃんじゃ!!」

「黙れ!!」

いきなりの鬼柳の大声にさすがの漁介の動きも止まる。

よく見ると、鬼柳も拳を固く握りしめている。

「俺たちが…シェイドがもっと強ければ、あんな胸糞悪い手段をとる必要はなかったんだ!!」

「鬼柳…」

「…悪い、コーラ飲んでくる」

逃げ出すようにトレーラーから出ていく鬼柳をモハメドは静かに見送る。

そして、静かになったトレーラーをじっと見た。

里香は何も言わずに漁介の傷の手当てをし、ジョンソンは相変わらずベッドの端に座って何もしゃべらない。

また、柚子は今回のことのショックのせいか、休みなしで経理の勉強とデュエルの修行をやっており、そのせいか目の下にクマができてい。

(このままの状態が続いたら、シェイドは壊滅する…)

翔太がいなくなったせいで、回収できたカード化したデュエリストたちを開放することができなくなり、動員できる人数が減っている。

また、生き残ったメンバーは仲間を失ったショックで士気を低下させている。

この状況でチームオーファンが攻撃を仕掛けてきた場合、ひとたまりもないだろう。

仮に翔太が戻ってきたとしても、シェイドが壊滅していたら話にならない。

(無事でいろよ、翔太…)

 

「ええ、処遇についてはお任せしますよ。じゃ」

チームブレイドのアジトの中で、電話を切った小川がエリクに目を向ける。

「やはり、今回の件について納得していないようですね、小川さん」

「当然ですよ。とてもあんたの判断とは思えませんね。ま、何か考えがあってだということはわかりますけど」

そういいながら、小川はグラスを手に取り、ワインを入れてエリクの左隣にあるテーブルに置く。

それを一口で飲み、静かに目を閉じた。

「…無理、しすぎなのでは?」

「いいえ。ですが、少しだけ休ませてもらいます。今回のことの真意は…いずれわかります」

そういうと、エリクは静かに寝息を立て始めた。

困った表情を見せた小川はすぐに暖かい毛布を彼にかける。

「まったく、本当だったらベットで寝てなきゃならないのに…にしても、翔太の奴、無事なんだろうなぁ」

「小川さん。シェイドのモハメドさんから連絡が入っております!」

「おう。今行くぜ」

 

「《ジャンク・ウォリアー》で攻撃!!」

アジト近くの広場で、伊織の《ジャンク・ウォリアー》の右拳が《C・ドラゴン》を貫く。

「うぎゃああああ!!」

 

シェイドメンバー

ライフ300→0

 

「よーし、誰か、もう1戦お願い!!」

「うう、勘弁してくれよぉ…」

現在、彼ら4人はすでに1人6回ずつ伊織とデュエルをしている。

デュエル終了と同時にデッキの調整をし、再びデュエルを行うというやり方になっているため、休む時間はわずかしかない。

「キュイー…」

そんな彼女を心配してか、ビャッコは伊織にみたらし団子を差し出す。

「ありがと、ビャッコちゃん」

「伊織様、少し…休んだ方がいいのではないでしょうか?」

みたらし団子を食べる伊織を心配そうに見つめながら、セラフィムはビャッコを抱く。

そんな心配を払拭させるためか、ウィンクをした後でまたデュエルを始める。

(翔太君は絶対に帰ってくる!今の私に助けるだけの力はないけど…帰る場所を守るくらいのことはできるから!)

 

「…いいぜ、モハメド。その件については了解した。明日にでもウチの奴らが送る」

(助かる。この埋め合わせは必ず…)

「いいっていいって、同盟を結んでるから当然だ。お前はさっさとシェイドの戦力を立て直せよ。リーダー代行?」

(現時点ではな。それに、あいつの代わりにリーダー代行ができそうなやつはいる)




お久しぶりです。今回はリハビリという感じのため、かなり短めになりました。
これからはペースを落としたままの状態で更新を続ける形になります。
気長にお待ちいただければ幸いです。


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第61話 かりそめの友好

「これでおしまい!《ニトロ・ウォリアー》でダイレクトアタック!!ダイナマイト・ナックル!!」

伊織がシンクロ召喚した《ニトロ・ウォリアー》が白いどくろが大きく真正面に描かれた黒いTシャツを着ている紫色のモヒカンの男に両こぶしを叩き込む。

「うぎゃああああ!!」

 

ギャング

ライフ2600→0

 

「やったーー!これで、牛尾区はシェイドのものー!!」

「キュイー!」

ギャングのリーダーを倒し、喜びを見せる伊織とビャッコ。

今回の抗争では、伊織だけでそのギャングの幹部を2人、そしてリーダーを仕留めたのだ。

「調子ええの、まるで水を得た魚みたいじゃ」

伊織が戦っている間、横やりが入らないようにジョンソンと共にデュエルをしていた漁介が感心する。

翔太がいなくなってから、表向きはリーダー代行をモハメドが行っているものの、最近は伊織が先頭に立つようになっている。

なお、当面のシェイドの方針はチームオーファンとの戦いに備えるため、周辺を固めていくことだ。

今回の勝利でまた1つ地盤を固めることができる。

「それに、最近ではよく特訓をしている。今までと別人みたいだ」

「ふふーん、男子三日会わざれば括目して見よ、ってね!」

「それは翔太に言ったれ。ウチらは毎日会うてるやろ!」

「あーー、そうでしたー!」

下手な漫才をするかのようなやり取りをする里香と伊織。

翔太がいなくなって重くなった空気が最近になってようやく元に戻ろうとしていた。

そうなった原因は先日に月影が伊織たちに一通の手紙を持ってきたためだ。

零児直筆のもので、その内容は翔太の身柄は零児の目と手が届く範囲に抑えられており、心配する必要はないというものだった。

どのような状況かは明言されていなかったが、少なくとも翔太やシェイドにとっての危機的な状況は脱したといってもいいだろう。

 

喜び勇んでアジトまで戻ってくる伊織達。

アジトの前ではズブが待っている。

「うわぁ、猫だー!」

猫を見て伊織がはしゃぎはじめ、さっそくミルクを取りに入っていった。

「おお、野良猫やなー。大きくて重いなぁー」

ズブを抱っこする里香だが、重いせいか少し辛そうだ。

「遊矢の家にいる犬や猫は元気かした…」

ふと、洋子がいつの間にか拾ってくる数多くの犬と猫のことを思い出しながら、柚子はズブの頭をやさしくなでる。

なお、男性陣はさっさと屋内に入っていた。

「ニャー(よぉ、ビャッコ。邪魔してるぜ)」

「キュイ??(オイラに何か用なの??」

「ニャーゴ(そうだ、フレンドシップカップは知ってるか?)」

「キュキュ??(フレンドシップカップってなーに?)」

聞いたことのない名前にビャッコは首をかしげる。

すると、ズブは里香の腕から離れ、地面に降りる。

「ニャー…(ついてこい、教えてやるよ)」

「キュイ!(うん!)」

「あれ??2匹とも、どこへ行くの??」

「ちょい待ちーな!!」

ズブについて歩いていくビャッコを里香と柚子が追いかけていく。

そして、数分後…。

「お待たせーー!ミルクもってき…あれ??」

上機嫌で牛乳が入った皿を持ってきた伊織は目を点にしながら、ズブ達がいなくなった正門前に立った。

 

「ゴロゴロ…(これだぜ。フレンドシップカップってのは)」

「キュイー…(へー)」

ズブに案内され、横倒しとなった3つの長い水道管が放置されている空き地に到着する。

その壁にはジャックと彼のエースモンスターが大きく描かれた壁紙が張られている。

上には大きく『フレンドシップカップ近日開催!!シティは1つ、みんな友達!』とカラフルな絵柄で書かれている。

しかし、場所が場所なだけあって、その友達や1つという言葉がとても皮肉っぽく聞こえてしまうのは気のせいだろうか。

「フレンドシップカップなぁー。ま、ウチらには関係ないわな」

「こういう大会があるのね。あ、これが生放送するテレビ局ね」

壁紙の下に『阿久津テレビが生放送!スタジアムに来れないあなたもこれで安心!インターネット放送、ラジオにも対応しています』と小さく書かれていることに気付いた柚子は念のため、メモを取ることにした。

トレーラーの中にはテレビがあり、テレビ局とはつながっていないものの、インターネットにはつながっている。

「ニャー…(んで、この金髪の男がジャック・アトラスで、モンスターの方がこいつのエース、《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》)」

「キュキュ?(この人がフレンドシップカップのチャンピオンなの?)」

「ニャゴー(そうだ。3年前にチャンピオンになった。コモンズ出身では史上初のチャンピオンだ)」

「キュー…(なるほどー)」

納得したようにうなずくビャッコだが、里香と柚子はこの2匹が何を話しているのかわからず、首をかしげるだけだった。

 

「…」

シティの中心部であるイリアステル区の白い10階建ビルの屋上で、ポスターに描かれている男が昼間から椅子に座りながらコーヒーを飲んでいる。

屋上にはプールや日傘付きのテーブルがあり、彼はいつもここでコーヒーを飲むのを日課にしている。

ちなみに、飲んでいるのは1杯3000円もする高級コーヒー、ブルーアイズマウンテンだ。

白いコップが空っぽとなり、それをテーブルの上に置くと、彼は目を閉じて静かにつぶやく。

「貴様か?最近治安維持局が必死に殺したがっている男というのは」

つぶやきが終わると同時に、屋上の扉が開く。

そこから出てきたのはヒイロだった。

「やはりな。かなり…やり手のようだな」

「ここのセキュリティがもろいだけだ」

フッと鼻で笑ったジャックは立ち上がる。

左腕にはデュエルディスクがすでに装着されている。

ヒイロの左腕にもデュエルディスクが装着されていた。

ただし、ヒイロのそれはチーム・サティスファクションにいる時代から使っている年代物で、ある程度近代化改修は施されてはいるものの、実態のあるモンスターゾーンと差込型の魔法・罠ゾーン、そして収納形式のフィールド魔法ゾーンが旧型の雰囲気を醸し出している。

なお、このデュエルディスクには両サイドニペンデュラムゾーンが新設されている。

「貴様の狙いは…このキングの首か?」

「今のお前に興味はない。座っているだけの王に願いを言いに来ただけだ。これから起こる事件に関与するなと」

「…。キングは…」

「キングは誰の命令も聞かない…か?」

自分が言おうとした言葉がわかっているかのように遮ったヒイロにジャックの表情が硬くなる。

「何者だ、貴様は」

「お前がデュエルに勝ったら教えてやる」

それから、2人の間にわずかな静寂が生まれる。

そして、互いに5枚のカードを弾く小さな音が静寂を破る。

「「デュエル!!」」

 

ヒイロ

手札5

ライフ4000

 

ジャック

手札5

ライフ4000

 

「俺の先攻、俺は手札から《幻獣クライバンシー》を召喚」

ヒイロの目の前の床にひびが入り、その日々が穴へと変わると、そこから灰色のほっそりとした人間の腕が出てくる。

そして、腕が床にしがみつくと、穴に中から青色のボロボロなフード付きのマントで全身を包んだ人間が出てくる。

白くて長い髪と腕の細さ、肌の色からそれは女性型のゾンビだということがわかる。

 

幻獣クライバンシー レベル3 攻撃1000(チューナー)

 

「そして、このカードは俺のフィールド上に幻獣モンスターが存在するとき、手札から特殊召喚できる。《幻獣ライフシルフ》を特殊召喚」

 

幻獣ライフシルフ レベル1 守備300

 

「そして、俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

ヒイロ

手札5→2

ライフ4000

場 幻獣ライフシルフ レベル1 守備300

  幻獣ネクロバンシー レベル3 攻撃1000(チューナー)

  伏せカード1

 

ジャック

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「攻撃力1000と守備力300のモンスターを召喚しただけだと?貴様…何を考えている!?」

ヒイロのフィールドが奇妙に見えてしまうのもわからなくはない。

最近では最初のターンに高レベルなモンスターが召喚されるのが自然な状況となっている。

そんな中で、ヒイロのように下級モンスターを並べるだけでターンを終えるのは珍しいことだ。

攻撃力1000のモンスターを攻撃表示で置き、攻撃力を上げるなどの対処をまるでしていないのを含めると、なおさらだ。

「今のお前にはお似合いのフィールドだ」

「何…?」

「檻の中で用意された相手と戦うことしかできなくなった哀れなキングにはな」

ジャックを見下すような言動をするヒイロだが、ジャックは子供ではない。

ささいな罵倒や非難を自分の中でどう対処するかは心得ている。

その1つとして、ジャックはヒイロの言葉を鼻で笑った。

「ふん、いくらでも言え。敗北した瞬間、その言葉は無意味なものへと変わるのだからな。俺のターン!」

 

ジャック

手札5→6

 

「俺は手札から《レッド・スプリンター》を召喚!」

茶色い肌で紫色の2本角の馬がジャックの背後から飛び出す。

前足部分が5本指で人間の手のような形になっているその奇妙な馬は主人を見下すヒイロが許せないのか、体から炎を噴出した。

 

レッド・スプリンター レベル4 攻撃1700

 

「このカードの召喚・特殊召喚に成功したとき、俺のフィールド上にほかのモンスターが存在しないとき、手札・墓地からレベル3以下の悪魔族チューナー1体を特殊召喚できる。俺は手札から《レッド・リゾネーター》を特殊召喚!」

姿こそ《ダーク・リゾネーター》そっくりだが、体のほとんどが炎で構成されているリゾネーターが現れる。

 

レッド・リゾネーター レベル2 攻撃600(チューナー)

 

「このカードの特殊召喚に成功したとき、フィールド上に存在するモンスター1体の攻撃力分俺のライフを回復できる。俺は《レッド・スプリンター》の攻撃力1700の数値だけライフを回復する」

《レッド・リゾネーター》が音叉を鳴らすと、《レッド・スプリンターの炎が勢いを増す。

それに反応するかのように、ジャックの体も炎のオーラに包まれた。

 

ジャック

ライフ4000→5700

 

「レベル4の《レッド・スプリンター》にレベル2の《レッド・リゾネーター》をチューニング」

再び音叉を鳴らした《レッド・リゾネーター》が2つの赤い炎の輪となり、《レッド・リゾネーター》を包む。

そして、《レッド・スプリンター》は赤い炎の中に隠れてしまう。

「赤き魂、ここに1つとなる。王者の雄叫びに震撼せよ!シンクロ召喚!」

ジャックの声に反応するかのように、炎が爆発して周囲に霧散する。

「現れろ、《レッド・ワイバーン》!!」

そして、その炎の中から2枚の羽がある、腕のない2本足の赤い翼竜が現れる。

角と羽の一部に炎が宿り、ヒイロとジャックの周囲が霧散した炎によって燃え盛る。

 

レッド・ワイバーン レベル6 攻撃2400

 

「攻撃力2400のシンクロモンスターか…。いや、というより…」

ヒイロの目は《レッド・ワイバーン》ではなく、自分とジャックの周囲に向けられている。

ソリッドビジョンの演出として、周囲が燃え上がっているのはわかる。

まるで、ジャックの心を満たそうとしているかのように。

「バトルだ。《レッド・ワイバーン》で《クライバンシー》を攻撃!」

《レッド・ワイバーン》は高く飛翔し、《幻獣クライバンシー》はわしづかみしようと急降下を始める。

すると、マントについているフードがとれ、女のゾンビの素顔がさらされる。

灰色の肌で白い瞳、青い唇でどこか楯に細長い顔の女が耳をつんざくような叫び声をあげた。

だが、《レッド・ワイバーン》はその叫び声を気にすることなく女のゾンビをわしづかみする、

そして、そのまま投げ飛ばした。

《レッド・ワイバーン》の炎が燃え移ったのか、体中が炎に包まれ、《幻獣クライバンシー》は杯となりながら地上へ落ちていった。

 

ヒイロ

ライフ4000→2600

 

「ふん…罠カードを発動せず、まんまと攻撃を受けたか…ん?」

攻撃を終えても、ジャックのフィールドへ戻ってこない《レッド・ワイバーン》を見る。

赤い翼竜は攻撃を終えると同時に、苦しみはじめ、屋上に降りてその場でのたうち回っていた。

「これは…!?」

「《クライバンシー》が攻撃表示の状態で相手モンスターの攻撃によって破壊されたとき、受けた戦闘ダメージ分俺のライフが回復し、同じ数値分攻撃モンスターの攻撃力が次の俺のターン終了時までダウンする。奴の脳にあの叫びが長く続いているということだ」

 

ヒイロ

ライフ2600→4000

 

レッド・ワイバーン レベル6 攻撃2400→1000

 

「なんだ、これは?俺が全力で来るという前提でデュエルをしているのか?」

「全力で戦うつもりはない…と言いたいのか?」

「そうだ、今のお前とは全力で戦いたいとは思わない」

「ふん、ほざいていろ。俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

ヒイロ

手札2

ライフ4000

場 幻獣ライフシルフ レベル1 守備300

  伏せカード1

 

ジャック

手札6→3

ライフ5700

場 レッド・ワイバーン レベル6 攻撃1000

  伏せカード1

 

苦しみながらも、《レッド・ワイバーン》はジャックのフィールドまで戻ってくる。

脳裏に響く叫び声に耐えながらであるためか、体に宿る炎が若干小さくなっている。

「俺のターン」

 

ヒイロ

手札2→3

 

「俺は手札から魔法カード《幻獣の角笛》を発動。相手フィールド上に特殊召喚されたモンスターが存在し、俺のフィールド上に幻獣が存在するとき、デッキから名前の異なる幻獣モンスターを2体手札に加える」

ヒイロのフィールドに黄土色で飾りのない角笛が現れ、《幻獣ライフシルフ》が吹き始める。

すると、ヒイロのデッキから2枚の幻獣が自動排出され、彼の手に加わる。

 

幻獣の角笛

通常魔法カード

「幻獣の角笛」は1ターンに1度しか発動できず、このカードを発動したターン、自分は「幻獣」モンスターしか特殊召喚できない。

(1):相手フィールド上に特殊召喚されたモンスターが存在し、自分フィールド上に「幻獣」モンスターが存在するとき発動できる。自分のデッキからカード名の異なる「幻獣」モンスター2体を手札に加える。

 

「そして俺は、スケール1の《幻獣騎士ワイルドホーン》とスケール5の《幻獣賢者クロスウィング》でペンデュラムスケールをセッティング」

ヒイロの右手側に銀色の重装な騎士の鎧と同じ色の西洋槍を装備した《幻獣ワイルドホーン》と若干透明な青の宝石が埋め込まれた銀色の首飾りをかけた《幻獣クロスウィング》が左手側に現れ、青い光の柱を生み出す。

「運命の重力を測る力よ、戦いの宿命にささやかな波紋を呼べ。ペンデュラム召喚!」

ヒイロの頭上に波紋が生まれ、そこからモンスターが出てくる。

「現れろ、《幻獣クライバンシー》、《幻獣フォレストアルミラージ》」

波紋の中から《幻獣クライバンシー》とともに黄色い体毛で額から黒いらせん状の角をはやしているウサギが現れる。

 

幻獣クライバンシー レベル3 攻撃1000(チューナー)

幻獣フォレストアルミラージ レベル4 攻撃1800

 

「そして、《幻獣王ロックリザード》」

最初に現れた2体の幻獣が左右に間を開けると、そこには緑色のコケでできたマントと黒曜石でできたハルバードを手にした《幻獣ロックリザード》が降りて来る。

 

幻獣王ロックリザード レベル7 攻撃2200

 

「レベルが高いにもかかわらず、攻撃力の低いモンスターを…。また《クライバンシー》のように俺の心を逆なでしようというのか?」

いまだに苦しむ《レッド・ワイバーン》のこともあるのか、いつも通りの低い声ではあるが、若干怒りの色を見せている。

「熱くなるな、たかがデュエル。いつも通りの何の変哲もないデュエルだろ?《幻獣王ロックリザード》はペンデュラムゾーンに存在するカードが幻獣カードだけの場合、ペンデュラムスケールを無視してペンデュラム召喚できる」

「ペンデュラム召喚…。テレビで見たが、面白い召喚法だ」

「デュエルを利用したヒーロー劇のことだな」

「意外だな。逃走生活を送る中でもそういう情報を得ているとは」

「訓練していたからな」

ヒイロとジャックが言っているのは、2週間前にシティの街角ニュースのことだ。

場所はルチアーノ区で、そこでは権現坂とデニスが情報収集と旅費稼ぎ、およびデニス自身の気まぐれでヒーローショーまがいのデュエルを行った。

そこで権現坂はシンクロ召喚を、デニスはペンデュラム召喚を見せた。

なお、これは追加情報ではあるが、2人は黒咲と共にその翌日の夜に地下デュエル場摘発の際の逮捕者に含まれている。

「だが、こうした戦略は2度も通用しないな…」

「何?」

「俺はレベル4の《フォレストアルミラージ》にレベル3の《クライバンシー》をチューニング」

《幻獣クライバンシー》が再び叫び声をあげると、その体を3つの緑色の輪に変え、《フォレストアルミラージ》を包む。

「シンクロ召喚。《幻獣猿王ゼーマン》」

 

幻獣猿王ゼーマン レベル7 攻撃2500

 

ペンデュラムシンクロの成功により、ヒイロのフィールドにレベル7のモンスターが2体並ぶ。

また、《幻獣クライバンシー》の効果で下がっているとはいえ、《レッド・ワイバーン》の攻撃力を大きく上回っている。

「このまま好きにはさせん!《レッド・ワイバーン》の効果発動!シンクロ召喚に成功したこのカードが存在し、このカードよりも攻撃力の高いモンスターが存在するとき、1度だけフィールド上で最も攻撃力の高いモンスター1体を破壊できる。《幻獣猿王ゼーマン》にはここで消えてもらう」

《レッド・ワイバーン》が伏せていた顔を起こし、《幻獣猿王ゼーマン》に向けて炎のブレスを放つ。

「その程度か…?《幻獣騎士ワイルドホーン》のペンデュラム効果を発動。俺のフィールド上に存在する幻獣がカード効果で破壊されるとき、代わりにこのカードを破壊する」

《幻獣騎士ワイルドホーン》が光の柱から飛び出し、《幻獣猿王ゼーマン》の楯となって炎を受ける。

そして、ヒイロに向けてわずかに顔を横に向け、うなずいた後で炎とともに消滅した。

「そして、俺はデッキからカードを1枚ドローする」

 

ヒイロ

手札0→1

 

幻獣騎士ワイルドホーン

レベル4 攻撃1700 守備0 地属性 獣戦士族

【Pスケール:青1/赤1】

(1):自分フィールド上に存在する「幻獣」モンスターが効果で破壊されるときに発動できる。代わりにこのカードを破壊する。その後、デッキからカードを1枚ドローする。

【モンスター効果】

(1):このカードが自分フィールド上に表側表示で存在し、自分フィールド上に存在する「幻獣」モンスターが守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ相手に戦闘ダメージを与える。

 

「ペンデュラムゾーンに存在するモンスターはモンスター効果を使用できない代わりにペンデュラム効果を発動できるというわけか。それに、ペンデュラムゾーンに置くときは魔法カードとして扱われる…か」

「そうだ。俺もまだペンデュラム召喚に慣れているというわけではないが…」

ヒイロは身代わりとなった《幻獣騎士ワイルドホーン》を表向きでエクストラデッキに置く。

エクストラデッキにはほかにも、《幻獣クライバンシー》と《幻獣フォレストアルミラージ》がいる。

「バトル。俺は《ロックリザード》で《レッド・ワイバーン》を攻撃。ロックアックス」

《幻獣王ロックリザード》が黒曜石の斧を大きく振りかざし、《レッド・ワイバーン》に向けて振り下ろす。

思い斧の一撃により、赤き翼竜は力を使い果たしたせいか、静かに目を閉じ、そのまま真っ二つに切り裂かれた。

 

ジャック

ライフ5700→4500

 

「さらに、《幻獣王ロックリザード》の効果発動。このカードが戦闘で相手モンスターを破壊したとき、相手に500ダメージを与える」

《幻獣王ロックリザード》の斧が床に当たったとき、床が砕け、床の破片がジャックの体に当たる。

「ふん…」

ダメージを受けたジャックは演出の割には大したダメージを与えなかった《幻獣王ロックリザード》を鼻で笑った。

「まだ終わらない。《幻獣猿王ゼーマン》でダイレクトアタック。猿王の炎」

《幻獣猿王ゼーマン》が口から炎を放つが、ジャックの目の前に緑色の渦が発生し、炎を飲み込んでいく。

「何…?」

「俺は罠カード《王魂調和》を発動した。相手モンスターのダイレクトアタックを無効にする。そして、墓地のチューナー1体とチューナー以外のモンスターを素材に、シンクロ召喚を行う。俺は墓地の《レッド・ワイバーン》と《レッド・リゾネーター》をチューニング」

渦の中から赤い右こぶしが出てきて、それが炎を受け止めている。

「王者の咆哮、今天地を揺るがす。唯一無二なる覇者の力をその身に刻むがいい!シンクロ召喚!荒ぶる魂、《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》!!」

受け止めた炎を自分の中に取り込みつつ、《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》が渦の中から出てくる。

「ほぉ、これがこの世界の《レッド・デーモンズ》…」

目の前に現れた赤い破壊竜をゼーマンは興味深く見つめた。

 

レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト レベル8 攻撃3000

 

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

ヒイロ

手札1→0

ライフ4000

場 幻獣ライフシルフ レベル1 守備300

  幻獣猿王ゼーマン レベル7 攻撃2500

  幻獣王ロックリザード レベル7 攻撃2200

  幻獣賢者クロスウィング(赤) ペンデュラムスケール5

  伏せカード1

 

ジャック

手札3

ライフ4500

場 レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト レベル8 攻撃3000

 

「俺のターン!」

 

ジャック

手札3→4

 

「ふん…キングの力を思い知るがいい!《レッド・デーモンズ》の効果発動。1ターンに1度、このカード以外で、このカードの攻撃力以下の特殊召喚された硬貨モンスターをすべて破壊し、破壊したモンスター1体につき、500のダメージを与える!」

「何…?」

《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》の目が光り、口にオレンジ色の炎が集まってくる。

ヒイロのフィールドに、《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》の攻撃力を上回るモンスターはいない。

すべて破壊されてしまう。

「アブソリュート・パワー・フレイム!!」

「この瞬間、《幻獣賢者クロスウィング》のペンデュラム効果を発動!」

「このタイミングでペンデュラム効果だと!?」

《幻獣賢者クロスウィング》が光の柱から出て、両翼から金色の羽を放つ。

「1ターンに1度、俺のフィールド上に幻獣が存在するとき、相手モンスター1体の攻撃力をターン終了時まで1000ダウンさせる」

金色の羽が《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》の腹部に刺さり、その痛みで破壊竜の炎の勢いを弱める。

 

レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト レベル8 攻撃3000→2000

 

「ちっ…だが、《ライフシルフ》はこれで破壊される!」

「俺は罠カード《メタル・コート》を発動。発動後、このカードが装備カードとなり、俺のフィールド上に存在するモンスター1体に装備。装備モンスターはカード効果では破壊されない」

《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》がダメージを無視して炎を吐く。

しかし、《幻獣王ロックリザード》は持っている斧を盾にし、《幻獣猿王ゼーマン》は自らが吐く炎で相殺し、《幻獣ライフシルフ》は表向きとなって《メタル・コート》のカードのソリッドビジョンの後ろに隠れてやり過ごす。

 

幻獣賢者クロスウィング

レベル4 攻撃1300 守備1300 光属性 獣戦士族

【Pスケール:青5/赤5】

(1):1ターンに1度、自分フィールド上に「幻獣」モンスターが存在するとき、相手フィールド上に存在するモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターの攻撃力をターン終了時まで1000ダウンさせる。この効果は相手ターンでも発動できる。

【モンスター効果】

(1):このカードがエクストラデッキに表側表示で存在する限り、フィールド上の「幻獣」モンスターの攻撃力・守備力は300アップする。

 

「ちっ…!」

《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》の破壊効果をかわされたことに舌打ちする。

このまま破壊に成功していたなら、一気にヒイロのライフを0にすることができた。

《幻獣賢者クロスウィング》が存在する限り、《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》は攻撃力実質2000で、これでは破壊できるモンスターが少なくなる。

「ならば、そのか弱い精霊には退場してもらう!《レッド・デーモンズ》で《幻獣ライフシルフ》を攻撃!灼熱のクリムゾン・ヘル・バーニング!!」

《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》が再び炎を放ち、《幻獣ライフシルフ》を焼き尽くそうとする。

しかし、《幻獣猿王ゼーマン》のブレスが割り込む。

炎と炎がぶつかり合い、行き場をなくしたエネルギーがそこにたまっていく。

「《ゼーマン》の効果発動。このカードは1ターンに1度、モンスター1体の攻撃を無効にする。

しかし、炎を受けて炎上しているのは《メタル・コート》だけだ。

「《メタル・コート》の効果発動。装備モンスターが戦闘で破壊されるとき、代わりにこのカードを墓地へ送ることができる」

「ならば、このカードの効果を受けてもらう。俺は手札の《レッド・ハンター》の効果を発動!俺のフィールド上に《レッド・デーモンズ》が存在するとき、このカードを手札から墓地へ送ることで、《レッド・デーモンズ》はこのターン、もう1度だけ攻撃することが可能となる。そして、攻撃力が1000アップし、貫通効果を得る」

ジャックのフィールドに額に黒い黒曜石の破片のような角をつけていて、左目が黒い眼帯で隠れている迷彩服姿の赤い人型悪魔が光となって、《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》の肉体に宿る。

すると、炎が勢いを増していき、竜の目線が《幻獣ライフシルフ》から《幻獣猿王ゼーマン》に向けられる。

 

レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト レベル8 攻撃2000→3000

 

レッド・ハンター

レベル5 攻撃2000 守備2000 効果 炎属性 悪魔族

「レッド・ハンター」の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上にモンスターが存在せず、相手フィールド上にモンスターが存在するとき、このカードはリリース無しで召喚できる。

(2):自分のターンのバトルフェイズ時、自分の手札・フィールド上に存在するこのカードを墓地へ送り、自分フィールド上に存在する「レッド・デーモン」Sモンスター1体を対象に発動できる。選択したモンスターの攻撃力がターン終了時まで1000アップし、守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ相手に戦闘ダメージを与える。また、そのモンスターこのターンのバトルフェイズ中2回攻撃することができる。

 

「キングの道を妨げる偽りの王を焼き尽くせ、《レッド・デーモンズ》!!」

《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》の炎が《幻獣猿王ゼーマン》を彼の炎もろとも飲み込んでいく。

「くぅ…済まぬ、ヒイロ」

「大丈夫だ、まだ負けていない」

その言葉に安心したのか、ゼーマンはわずかに左唇を上にあげ、そのまま消滅した。

 

ヒイロ

ライフ4000→3500

 

「これで、キングの邪魔をするものはいなくなったな」

「俺は《ゼーマン》の効果を発動。このカードが戦闘で破壊されたとき、デッキから幻獣を1体手札に加える。俺はデッキから《幻獣の守護者サンダーペガス》を手札に加える」

「またペンデュラムモンスターか…」

「そう簡単にその道を通すわけにはいかないからな」

「ふん…!俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド!この瞬間、《クロスウィング》と《レッド・ハンター》の効果は消える」

 

ヒイロ

手札1(《幻獣の守護者サンダーペガス》)

ライフ3500

場 幻獣ライフシルフ(《メタル・コート》装備) レベル1 守備300

  幻獣王ロックリザード レベル7 攻撃2200

  幻獣賢者クロスウィング(赤) ペンデュラムスケール5

 

ジャック

手札4→1

ライフ4500

場 レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト レベル8 攻撃3000

  伏せカード2

 

「俺のターン」

 

ヒイロ

手札1→2

 

「ヒイロ・リオニス…なぜだ?」

カードをドローしたヒイロに突然、ジャックが質問する。

「なぜ、というのは…なんだ?」

「なぜここまで俺の戦略をかわすことができる?まるで…俺を知り尽くしているかのように」

先ほどの《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》の時といい、前のターンの《レッド・ワイバーン》の効果破壊をかわした時といい、それはまるで最初からそのような行動をとることを知っているかのような対策の仕方だった。

ペンデュラムスケールを生み出した2体のペンデュラムモンスターはまさにこの2体にとっては危険な効果を持っている。

そのことがジャックにとっては違和感のあることだった。

「今のお前にその答えを知る必要はない。俺はレフトペンデュラムゾーンに先ほど手札に加えた、スケール3の《幻獣の守護者サンダーペガス》をセッティング」

《幻獣騎士ワイルドホーン》が残した光の柱を受け継ぐかのように、自身の周囲にエメラルドでできたタワーシールド3つを浮遊させている《幻獣サンダーペガス》が出て来る。

「これで俺はレベル4のモンスターを同時に召喚可能。今再び、戦いの宿命にささやかな波紋を呼べ。ペンデュラム召喚」

再び頭上に生まれる波紋から、《幻獣フォレストアルミラージ》が出て来る。

 

幻獣フォレストアルミラージ レベル4 攻撃1700

 

「さらに、《幻獣の守護者サンダーペガス》のペンデュラム効果発動。ペンデュラムゾーンに存在するこのカードを破壊し、俺のフィールド上に存在する幻獣1体をターン終了時までチューナーとして扱うことができる」

「何!?」

《幻獣の守護者サンダーペガス》の3枚のタワーシールドから緑色の光が放たれ、それが《幻獣ライフシルフ》を貫く。

すると、風の妖精は緑色の輪に代わり、《幻獣王ロックリザード》を取り込んでいく。

「レベル7の《ロックリザード》にレベル1の《ライフシルフ》をチューニング。深海に眠りし破邪の水龍よ、敵の技を無にし、激流の如く邪悪を薙ぎ払え。シンクロ召喚。出でよ、《マリンフォース・ドラゴン》」

「はああああ!!」

ヒイロのエースカード、《マリンフォース・ドラゴン》ことアクアがフィールドに現れる。

それと同時にアクアに宿る水の力のせいか、周囲に燃え上がっていた炎が次第に消えていった。

 

マリンフォース・ドラゴン レベル8 攻撃2600

 

幻獣の守護者サンダーペガス

レベル4 攻撃700 守備2000 光属性 獣戦士族

【Pスケール:青3/赤3】

「幻獣の守護者サンダーペガス」の(1)(2)のP効果はそれぞれ1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に存在する「幻獣」モンスター1体の戦闘で発生する自分への戦闘ダメージが0となる。

(2):このカードを破壊し、自分フィールド上に存在する「幻獣」モンスター1体を対象に発動できる。選択したモンスターはターン終了時までチューナーとして扱う。

【モンスター効果】

(1):相手モンスターの攻撃宣言時、エクストラデッキに表側表示で存在するこのカードを墓地へ送り、自分フィールド上に存在する「幻獣」モンスター1体を対象に発動できる。このターン、選択したモンスターは戦闘では破壊される、その先頭で発生する自分へのダメージが0となる。

 

幻獣王ロックリザード

レベル7 攻撃2200 守備2000 闇属性 獣戦士族

【Pスケール:青4/赤4】

「幻獣王ロックリザード」の(1)のP効果はデュエル中1回しか発動できない。

(1):このカードが自分のPゾーンに存在し、もう片方に「幻獣」Pカードが存在するときに発動できる。ターン終了時までこのカードのPスケールを0にする。

【モンスター効果】

自分のPゾーンに存在するカードがどちらも「幻獣」Pカードのみの場合、このカードはPスケールに関係なくP召喚することができる。

(1):このカードは「幻獣」モンスター1体をリリースすることで、手札からアドバンス召喚できる。

(2):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊したときに発動できる。500ダメージを相手に与える。

(3):相手のカード効果によってこのカードが破壊されたときに発動できる。2000ダメージを相手に与える。

 

幻獣クライバンシー

レベル3 攻撃1000 守備1000 闇属性 アンデット族

【Pスケール:青2/赤2】

「幻獣クライバンシー」の(1)のP効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に存在する「幻獣」モンスターが戦闘によって破壊されたときに発動できる。Pゾーンに存在するこのカードを表側守備表示で特殊召喚する。

【チューナー:効果】

「幻獣クライバンシー」の(1)のモンスター効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に表側表示で存在するこのカードが相手モンスターの攻撃によって破壊されたときに発動できる。そのとき受けた戦闘ダメージの数値分自分LPを回復し、攻撃モンスターの攻撃力を次の自分のターン終了時まで同じ数値分ダウンさせる。

 

幻獣フォレストアルミラージ

レベル4 攻撃1700 守備1500 地属性 獣族

【Pスケール:青6/赤6】

(1):1ターンに1度、自分フィールド上に存在する「幻獣」チューナー1体を対象に以下の効果を発動できる。

●選択したモンスターのレベルをターン終了時まで1つ上げる。

●選択したモンスターのレベルをターン終了時まで1つ下げる。

【モンスター効果】

(1):このカードが戦闘で相手にダメージを与えたとき、相手フィールド上に表側表示で存在する魔法・罠カード1枚を対象に発動できる。選択したカードを破壊する。

 

メタル・コート

通常罠カード

(1):発動後、このカードは装備カード扱いとなり、自分フィールド上に存在するモンスター1体に装備する。この効果で装備カード扱いとなっているこのカードを装備したモンスターは効果では破壊されない。

(2):(1)の効果で装備カード扱いとなっているこのカードを装備したモンスターが戦闘で破壊されるとき、代わりにこのカードを墓地へ送ることができる。

 

 

ドドドドド!!!

屋内から激しい足音が聞こえてくる。

「時間切れか…」

ヒイロはデュエルディスクのスイッチを押し、ソリッドビジョンを消す。

「デュエルは中止だ。邪魔が入った」

「貴様…逃げる気か!?」

「そうとってかまわない。もう1度言っておく。これから起こる事件にかかわるな」

そういうと、ヒイロは走り出す。

そして、屋上から飛び降りていった。

「何!?ここを何階だと思っている!?」

驚いたジャックは彼が飛び降りた場所へ行き、そこから下をのぞく。

昼間のせいか、下には多くの通行人がいる。

だが、不思議なことに誰も騒ぐことはなく、いつも通りの光景を見せるだけだった。

「お怪我はありませんか?キング」

ジャックの元に白い燕尾服と黒いサングラスの男が来る。

「大事ない」

「申し訳ありませんでした。われらがキングにこのようなご面倒を…」

「ふん…」

再び椅子に座ると、燕尾服の男はブルーアイズ・マウンテンをコップに入れ、ジャックに手渡す。

「評議会からの伝言は?」

「はい…。今年開催するフレンドシップカップの前夜祭で、キングとデュエルをしてほしい相手が見つかったとのことです」

「誰だ?」

「こちらの少年です」

男はジャックに1枚の紙を渡す。

紙には榊遊矢という名前が書かれており、写真と個人情報の一部が載っている。

また、追加で受け取った写真には収容所での彼のデュエルする姿が映っていた。

「…ふん、気に入らん目をした男だ」

 




あれ?アニメのジャックと何か違うと思った人。
今回の小説ではジャックにも成長してもらおうと思い、少し彼の心境などに変化を加えてみました。


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第62話 前夜祭

「あーー、つーかーれーたー…」

寮に戻ってきた伊織がクタクタに疲れたのか、部屋に入るとすぐにソファーにダイブする。

今日は攻撃を仕掛けてきたギャングへの迎撃とそれに対する報復及び戦後処理で、こうして戻ることができたのは午後8時だ。

このまま寝ちゃおうと思った伊織だが、今日はそれが許されない。

「よーし、ここにテレビを置くぞー」

部屋に漁介が入って来て、その手には古い液晶型の大きなテレビが握られている。

「んー?なんでテレビをー?」

「忘れたんか?今日はフレンドシップカップ前夜祭じゃ!大会参加者がわかるし、ジャックのデュエルが見れるんじゃぞ!?」

「えーーー!?今日!?」

「もう、昨日も言ったのに忘れてたの?」

後から部屋に入ってきた柚子があきれたように言う。

「ネットの海戦はこれでいいか?」

「ああ。そういえば、ジョンソンはどうした?」

「興味がないって、見張りを続けてる」

そして、モハメドと鬼柳の手でテレビがネットにつなげられ、電源を入れると、液晶画面には白い楕円形のスタジアムとそれを包む漆黒の空を彩るカラフルな花火の数々が映し出されていた。

(シティは1つ、みんな友達ーー!さぁ、年に一度のコモンズとトップス合同の大会であるフレンドシップカップがここイリアステル区のセルジオスタジアムで開催されまーす!そして、この晴れ舞台の実況を私、メリッサ・クレールがお送りします。クゥーーー!長年の苦労がついに報われるー!)

ハイテンションな女性の声が聞こえる中で、スタジアムの中の光景が映し出される。

そこにはこぎれいな燕尾服、もしくはドレスを着た、いかにもリッチもしくは成金といえる人々やしわが多く、よれよれな服を着た貧乏な人々、そして顔にレーザーで焼きつけられた黄色い刻印であり、犯罪者もしくは前科者の証であるマーカーがついた人々もいる。

ただし、シティは1つと言いながらもコモンズとトップスの人々が分け隔てなく応援席に座っているわけではなく、規則的に区間分けされていて、一緒に応援することはない。

この光景を見るだけでも、スローガンがただの言葉でしかないということがよく分かってしまう。

「翔太君が見たら、絶対皮肉りそう…」

伊織の言葉に全員が首を縦に振る。

なお、このスタジアムはシティが最初に作られたころ、セルジオという男がシティで誰でも楽しくデュエルができる場所を作ろうと考え、たった1人で作り上げた小さなデュエルリングが起源となっている。

それが時が流れるにつれてスタジアムとなり、そしてライディングデュエル用のコースが追加され、その形状はすっかり変わってしまったが、そんな彼への敬意としてセルジオの名前がこのスタジアムにつけられた。

(今日は大会開催前の特別な夜!その夜を彩るのはキングによるエキシビションマッチ!!さぁ、登場してもらいましょう!われらのキング、コモンズからの下剋上を成し遂げた絶対王者、その名は…ジャーック、アトラーーース!!)

名前が呼ばれると同時に、入場口からジャックがDホイールに乗って飛び出してくる。

白い一輪のタイヤというべき特異な形状のDホイール、ホイール・オブ・フォーチュン。

キングたるジャックに勝利を、王道を阻む敵に敗北を与える運命の輪。

「待たせたな!俺がジャック・アトラスだ!!」

「わぁーーーー!!」

「ジャックーーー!!」

ジャックの登場とともにコモンズ、トップスを問わず、数多くの観客が歓声を送る。

だが、その一方で…。

「へっ、何がキングだ。トップスの犬になり下がっただけじゃねえか!!」

「何を言ってんだ!?ジャックはコモンズの可能性を示してくれた英雄だろ!?」

コモンズの観客席の一部では殴り合いや口論が発生しているが、それについては意図的にテレビカメラは映像にするのを避けている。

そして、そんな彼らを見ながら、トップスのある成金は優雅にワインを飲みながら見ている。

「全く、野蛮な生き物だな。コモンズというのは」

「ジャックは英雄だよ。勝ち続けている間は…ね」

(そして、そんなキングに挑戦する無謀なるチャレンジャーにも登場してもらいましょう!!)

ジャックが出てきた入場口の隣にあるもう1つの入場口が開く。

(経歴一切不明の小さきエンタメデュエリスト!そのチャレンジャーの名は…榊遊矢ーーー!!って誰??)

「遊矢!?」

まさかの名前に驚いた柚子がテレビの前にいる鬼柳をどかして、かじりつくように見る。

それと同時に、そこからマシンレッドクラウンに乗った遊矢が飛び出した。

「なんで遊矢がフレンドシップカップに…??」

「交換条件でござるよ」

「なに…!?」

突然の声にびっくりした柚子達は声のする方向に目を向ける。

廊下へ向かうドア付近に月影がいた。

「なんだ、脅かすなよ…」

「月影、どうしてここに?」

「翔太殿についての報告に参った。…と言いたいところだが、フレンドシップカップをテレビで見ることができるということはそれも不要のようだ」

「おっと、ちょっと待ってくれ」

懐に入れていた携帯が鳴ったモハメドは電話に出る。

「よぉ、ジョンソン。目が見えないのに携帯が使えるなんてな」

(レオコーポレーションが開発した、音声入力型を使っているからな。ボタン式やスマートフォンは使いにくい。それよりも…)

「客だろ?もうコンタクトを取ってる。連絡すまないな」

電話を切り、再び懐に入れたのを確認した月影は話を始める。

「今、遊矢殿が前夜祭に参加しているように、ランサーズはフレンドシップカップに参加することとなった」

「なんでそないなことを?」

「零児殿がこの次元の最高権力者である評議会と接触したのだ。そこで、彼らはランサーズに融合次元と対抗する力があるのかを見極めるために、このフレンドシップカップを利用することになった。基本的に、このフレンドシップカップではランサーズとシンクロ次元のデュエリストがぶつかり合うことになる」

「ってことは、ランサーズは全員この大会に参加するということ?」

「いや、零児殿と拙者は参加しない。拙者には別の役目がある。そして、零児殿は自ら人質となった。このフレンドシップカップ中にランサーズがシンクロ次元を裏切ることはないということを証明するために」

「そんな、人質って…!?」

「仕方ないだろ?シンクロ次元にとって、ランサーズはまだどこの馬の骨かわからないような得体のしれない集団。保険をかけて当然だろ」

鬼柳の言葉に、反発する柚子が口ごもる。

確かに、スタンダード次元ではランサーズは自衛隊のように自分たちを守ってくれる存在として一目置かれるかもしれない。

しかし、次元戦争とは距離を置いていると思われるシンクロ次元にとっては正体不明の集団でしかない。

シンクロ次元からの助力を得るためにも、今は何が何でも信頼関係を構築していかなければならない。

そんな話をしている間にも、前夜祭は進行していく。

 

2人がスタートラインに立つ。

「皆に問う!今夜俺は何ターンでこいつを倒す!」

客席に向けて、ジャックは質問する。

それにこたえるように、紫色の帽子をかぶったコモンズの若者が立ち上がる。

「決まってる!こんなガキ、1ターンで終いだ!!」

その言葉に周囲の観客が全員うなずく。

意見が分かれる男とはいえ、実力だけは共通して認められているようだ。

「キングのデュエルはエンターテインメントでなければならない!」

「エンタメ…」

エンタメという言葉に遊矢は反応する。

そして、ジャックは己のエンタメを宣言する。

「ターン1、先攻をとるのは俺だ!その幕開けに続きターン2、相手にも十分に見せ場を与え、ターン3、最後はそれを上回る圧倒的な力の差を見せつける!」

「遊矢君を3ターンで倒すってこと…??」

ペンデュラム召喚を手にし、そして融合召喚やエクシーズ召喚といった複数の召喚法を手にした今の遊矢を倒すのは至難の業となっている。

そんな彼を宣言通りに撃破するというのは、仮に成功したらそれこそびっくりするくらいのエンターテインメントになるかもしれない。

実力のわからない相手に対してなら、なおさらそうだ。

(それでは、フィールド魔法を発動します!今回からルールが一部改訂され、《スピード・ワールド・A》が新たなライディングデュエルのフィールドとなります!それでは、会場の皆さんは入り口で配布した封筒を開け、その中にあるカードをご覧ください!)

メリッサの言葉に従い、観客は白い小銭入れと同じくらいの大きさの封筒を開く。

そして、メリッサの口からその中身となっているカード、《スピード・ワールド・A》について説明される。

 

スピード・ワールド・A(アクション)

フィールド魔法

(1):お互いに「Sp」魔法カードまたはPカード以外の魔法カードを発動できない。

(2):最初のターンを除いたお互いのスタンバイフェイズ時、お互いのプレイヤーはこのカードに自分用のスピードカウンターを2つずつ置く(最大12個まで)。

(3):1度に受けたダメージ800ポイントの倍数ごとに自分のスピードカウンターを1つ減らす。

(4):お互いのプレイヤーは1ターンに1度、アクションカードを手札に加えることができる。そのとき、アクション魔法カードを手札に加えたプレイヤーはこのカードに自分用のスピードカウンターを1つ置く。アクション罠カードを手札に加えたプレイヤーはこのカードに乗っている自分用のスピードカウンターを1つ取り除く。そのとき自分用のスピードカウンターがない場合、相手プレイヤーのこのカードの上に相手用のスピードカウンターを1つ置く。

(5):自分のスピードカウンターを任意の個数取り除くことで、以下の効果を適用する。

●4個:自分の手札をすべて相手に見せる。手札の「Sp」魔法カードの数×400ポイントのダメージを相手ライフに与える。

●7個:自分のデッキからカードを1枚ドローする。

●10個:手札の「Sp」魔法カードを相手に見せ、フィールド上に存在するカード1枚を破壊する。

(6):このカードの効果は無効にされず、フィールドから離れない。

 

「アクションカード??それを手にすることでもスピードカウンターを得られるのか」

「どうやって手に入れるのかは知らないけど、これでまた一歩ライディングデュエルが進化したってことになるんだな」

観客席がザワザワしている間、ジャックはわずかに隣にいる遊矢に目を向ける。

(奴が榊遊矢…)

自分よりも5つか6つくらい年齢が下で、16歳以上でなければ乗ることのできないDホイールに乗っている彼の目はオレンジ色のゴーグルで隠れているため、見ることが難しい。

一方、遊矢はジャックの宣言に苛立ちを覚えていた。

(俺がたったの3ターンで負ける…??一度もデュエルをやったことがないのに、そんな決めつけを!!思い通りにさせるか!)

ただし、最初の先攻をとるのはジャックだというのは可能性が高い。

マシンレッドクラウンはDホイールに不慣れである遊矢のためにリミッターがかけられている。

また、自動操縦の制度が従来のものよりも高いことから、安心して遊矢も載ることができるが、スピードでは相手に大きく差をつけられることになる。

今回の場合、相手はシンクロ次元最強のデュエリストとされるジャック。

Dホイールの性能も彼自身のテクニックもかなりのもの。

先攻を取られることは目に見えている。

(それでは…フィールド魔法《スピード・ワールド・A》発動!!)

メリッサの宣言とともにスタジアムに緑色の波紋が発生する。

その波紋がアクションカードを生み出し、それがコース上にばらまかれていく。

そして、2人のDホイールのディスプレイにカウントダウンの画面が表示される。

「「ライディングデュエル、アクセラレーション!!」」

カウントが0になると同時に、2人のDホイールが同時に発進した。

しかし、スタートダッシュも加速力もどちらもホイール・オブ・フォーチュンの方が上で、すぐに大きく引き離されてしまう。

「うわぁ、なんだよこのチンタラした走りはよー!」

「勝つ気あんのかよー!?」

「くぅ…!」

マシンレッドクラウンには自動操縦機能を縮小し、リミッターを解除することで、マシンブルーファルコンに近いピーキーな性能を発揮することができるよう、設計はされている。

しかし、操縦技術が未熟な遊矢ではそうするとDホイールに振り回されて転倒、病院行となるのがオチだ。

あっという間にジャックが第1コーナーを取り、彼の先攻でデュエルが開始となる。

 

ジャック

手札5

SPC0

ライフ4000

 

遊矢

手札5

SPC0

ライフ4000

 

「俺の先攻、俺は手札から《レッド・スプリンター》を召喚!」

 

レッド・スプリンター レベル4 攻撃1700

 

このカードの召喚・特殊召喚に成功したとき、俺のフィールド上にほかのモンスターが存在しないとき、手札・墓地からレベル3以下の悪魔族チューナー1体を特殊召喚できる。俺は手札から《レッド・スネーク》を特殊召喚!」

左手の5本指がすべて赤い目の蛇となっていて、口が裂けている紫色のターバンの男が現れる。

現れた瞬間、全身の浅黒い肌が赤く染まっていき、着ている白いトーブも発火の影響か黒く染まっていく。

 

レッド・スネーク レベル3 攻撃1300(チューナー)

 

「(宣言通り、貴様に2ターン目は全力を出させてやろう)俺はレベル4の《レッド・スプリンター》にレベル3の《レッド・スネーク》をチューニング!」

《レッド・スネーク》の体が3匹の蛇を残して燃え尽きていく。

そして、3匹の蛇は《レッド・スプリンター》の体にかみついた。

かみつかれた獣は痛みを感じたのか、走るスピードを緩めるが、その体に宿る炎が規模を増し、肉体が隠れてしまうくらい燃え盛る。

「新たなる王者の脈動、混沌の内より出でよ!シンクロ召喚!誇り高き、《デーモン・カオス・キング》!」

《レッド・スプリンター》を包んでいた炎が真っ二つに切り裂かれ、その中から《デーモン・カオス・キング》が飛び出す。

 

デーモン・カオス・キング レベル7 攻撃2600

 

(出ましたーー!!キングが従える混沌の王、《デーモン・カオス・キング》!!これが、チャレンジャーへの最初の試練となるのかーーー!!)

「そして、カードを3枚伏せ、ターンエンド!」

 

ジャック

手札5→0

SPC0

ライフ4000

場 デーモン・カオス・キング レベル7 攻撃2600

  伏せカード3

 

遊矢

手札5

SPC0

ライフ4000

場 なし

 

「俺のターン、ドロー!」

 

遊矢

手札5→6

SPC0→2

 

ジャック

SPC0→2

 

「うわぁ!!」

急にスピードが上がり、危うくハンドルから手を放しそうになってしまう。

これまでのライディングデュエルでのスタンバイフェイズ時でのスピードカウンターの上昇は1で、ゆっくりとスピードに体を慣らせることができた。

しかし、《スピード・ワールド・A》では一気に2つの上昇があるだけでなく、アクションカードの効果や入手による変動が発生するため、スピードに慣れる時間が《スピード・ワールド3》以上に失われることになる。

「俺のエンタメを見せてやる!!俺はスケール1の《EMゴムゴムートン》とスケール8の《EMドクロバット・ジョーカー》でペンデュラムスケールをセッティング!」

ゴムボールでできた羊型モンスター2匹と《EMドクロバット・ジョーカー》が遊矢の両サイドの光の柱を生み出す。

ちなみに、羊型モンスターの大きさが異なっており、大きい緑色の羊の上で小さい紫色の羊がのんびりと眠っている。

「これで俺はレベル2から7までのモンスターを同時に召喚可能!」

すぐに遊矢の目がコース上にあるアクションカードに向けられる。

これを手にして、スピードカウンターを得ることでジャックにプレッシャーをかける。

遊矢はDホイールを横に倒して走行し、カードを手に取る。

手にしたのがアクション魔法カードであることを確認したDホイールが自動的にスピードカウンターをあげる。

 

遊矢

SPC2→3

 

「よし…俺は手札からアクション魔法《オイル交換》を発動!お互いにデッキからカードを1枚ドローし、スピードカウンターを1つ増やす!」

 

遊矢

手札6→4→5

SPC3→4

 

ジャック

手札0→1

SPC2→3

 

オイル交換

アクション魔法カード

(1):お互いにデッキからカードを1枚ドローする。ライディングデュエル中にこのカードを発動した場合、更にお互いのフィールド魔法ゾーンに存在する「スピード・ワールド」魔法カードの上に自分用スピードカウンターを1つ置く。

 

ドローしたカードを見て、遊矢はさらに畳みかける。

「そして俺は手札から《EMセカンドンキー》を召喚!」

黄色い星のペイントがある青い鞍をつけた、デフォルメされているドンキーが現れる。

 

EMセカンドンキー レベル4 攻撃1000

 

「このカードの召喚・特殊召喚に成功したとき、俺のペンデュラムゾーンにカードが2枚存在する場合、デッキから《セカンドンキー》以外のEM1体を手札に加えることができる!俺はデッキから《EMハンサムライガー》を手札に加える。そして、手札から《Sp-エンジェル・バトン》を発動!俺のスピードカウンターを4つ取り除くことで、デッキからカードを2枚ドローし、そのあと手札を1枚墓地に送る」

 

遊矢

SPC4→0

 

手札から墓地へ送られたカード

・EMディスカバー・ヒッポ

 

「(これで準備は整った…!)揺れろ魂のペンデュラム!天空に描け光のアーク!ペンデュラム召喚!現れろ俺のモンスターたち!《EMハンサムライガー》!」

遊矢の制服に似た白いマントをつけた赤い甲冑を装備している黒い長髪の侍が最初に現れる。

「「キャーーーー!!」」

整った顔立ちのせいなのか、登場と同時に観客席の女性たちの黄色い声が聞こえた。

(キャーーー!素敵なモンスター!!あ…失礼しましたー…)

《EMハンサムライガー》自身はデュエルに集中したいのか、歓声に対しては少しだけ手を振るだけで対応を済ませ、《EMセカンドンキー》に騎乗した。

 

EMハンサムライガー レベル4 攻撃1800

 

「…ま、まぁいいや。お次は《EMトランプ・ガール》!!」

まさかのことに少し手が止まった遊矢が気を取り直して次のモンスターを出す。

桃色の髪でトランプのマークを模した飾りがいくつもついている紫のパジャマ帽子とフランス貴族風の服を着た、絵本に出るような魔法使いの姿の少女が現れる。

 

EMトランプ・ガール レベル2 攻撃200

 

「そして、真打ち登場!《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!!」

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

(どうした、小僧。何を動揺している?)

オッドアイズが遊矢に目を向け、テレパシーで言葉をかける。

「うるさい!俺は《トランプ・ガール》の効果を発動!このカードを含めた俺のフィールド上のモンスターを素材に融合することができる!俺は《トランプ・ガール》と《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を融合!」

「ほぉ…」

《EMトランプ・ガール》が杖を振ると、彼女とオッドアイズの周囲を4種類のトランプのマークが包んでいく。

「あやかしの技を操りし者よ、二色の眼宿りし竜と一つとなりて、新たな力を生み出さん!融合召喚!雷鳴纏いし疾風の竜、《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》!!」

 

オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

(なんと融合召喚!?ペンデュラム召喚に引き続き、未知の召喚を見せてくれています!!これは楽しみですねー!!)

「《ボルテックス・ドラゴン》の効果発動!このカードの特殊召喚に成功したとき、相手フィールド上に表側攻撃表示で存在するモンスター1体を手札に戻す!俺は《デーモン・カオス・キング》をデッキに戻す!ライトニング・トルネード!!」

《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》の4枚の翼が生み出す稲妻の嵐が《デーモン・カオス・キング》を包み込もうとする。

「ならば俺は罠カード《悪魔王の大鎌》を発動!俺のフィールド上に存在する悪魔族シンクロモンスターが魔法・罠・モンスター効果の対象となったとき、そのモンスターをリリースし、エクストラデッキからリリースしたモンスターと同じ属性の悪魔族シンクロモンスター1体をエクストラデッキから特殊召喚する」

「させない!俺は《ボルテックス・ドラゴン》のもう1つの効果を発動!1ターンに1度、このカード以外のカード効果が発動したとき、俺のエクストラデッキに表側表示で存在するペンデュラムモンスター1体をデッキに戻すことで、その発動を無効にし、破壊することができる!」

《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》の目が光り、その眼から放たれる赤と緑の光線がジャックの発動した《悪魔王の大鎌》を破壊しようとする。

「ならば俺はもう1枚の《悪魔王の大鎌》を発動する!」

「何!?」

もう1枚の《悪魔王の大鎌》から力を受けた《デーモン・カオス・キング》が自爆し、稲妻の嵐を吹き飛ばす。

そして、爆発で起こった煙の中から白い模様がいたるところに刻まれている漆黒の鎧とマントを身に着けた、大鎌を持つ白い鉄仮面の死神が現れる。

(これぞ、王の絆というべきものでしょうか!?命を懸けてキングを守った《デーモン・カオス・キング》の意思を受け継ぎ、敵に死の制裁を加える死神の王、《天刑王ブラック・ハイランダー》が現れたーーー!!」

 

天刑王ブラック・ハイランダー レベル7 攻撃2700

 

エクストラデッキからデッキに戻ったカード

・EMトランプ・ガール

 

悪魔王の大鎌

通常罠カード

「悪魔王の大鎌」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に存在する悪魔族Sモンスターが相手の魔法・罠・モンスター効果の対象となったときに発動できる。そのモンスターをリリースし、エクストラデッキからそのモンスターと同じ属性の悪魔族Sモンスター1体を表側攻撃表示で特殊召喚する。

 

「《ブラック・ハイランダー》の前で、俺たちにシンクロ召喚は許されない!」

《天刑王ブラック・ハイランダー》がじっとオッドアイズを見つめる。

(我が力の片割れを封じる力を持つか…。いや、そんな効果がなくとも…)

オッドアイズは再び遊矢に目を向ける。

(ふん…殺す価値もないな。今の小僧は)

「まだだ!俺は《ハンサムライガー》と《セカンドンキー》でオーバーレイ!!」

思い通りにいかないことへのいらだちか、ハンドルを強く握る遊矢が次の行動に出る。

《EMセカンドンキー》に乗る《EMハンサムライガー》が目の前に現れた銀河のような黒い空間の中に飛び込んでいく。

「漆黒の闇より愚鈍なる力に抗う反逆の牙!今、降臨せよ!エクシーズ召喚!現れろ!ランク4!《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》!」

空間が消えると、そこには《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》が現れる。

オッドアイズとダーク・リベリオンの2体が遊矢を表向きは守るかのように《天刑王ブラック・ハイランダー》に立ちはだかる。

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ランク4 攻撃2500

 

(なんということでしょう!?ペンデュラム召喚、融合召喚の次はエクシーズ召喚!?これまた未知の召喚法を見せてくれる榊遊矢選手、目が離せません!!)

「《ダーク・リベリオン》の効果発動!このカードのオーバーレイユニットを2つ取り除くことで、相手モンスター1体の攻撃力を半分奪う!トリーズン・ディスチャージ!!」

《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》の翼部が展開し、紫色の稲妻が《天刑王ブラック・ハイランダー》を襲う。

稲妻によって体を縛られた王は転倒し、《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》に引きずり回される。

 

天刑王ブラック・ハイランダー レベル7 攻撃2800→1400

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ランク4 攻撃2500→3900

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・EMハンサムライガー

・EMセカンドンキー

 

「攻撃力3900!?」

「今の《ブラック・ハイランダー》の攻撃力は1400!あの2体のモンスターを攻撃を受けたら、キングは!!」

ジャックがこのままでは1ターンキルされるかもしれないという状況に陥ったことで、観客や彼を応援しているチアガール達が驚きつつ、じっとジャックを見つめる。

だが、ジャックは焦りの色を見せず、引きずられている《天刑王ブラック・ハイランダー》を見る。

 

「すごい…」

一方、テレビでそれを見ているシェイドの面々も遊矢の怒涛の召喚ラッシュに驚いていた。

「いけー、遊矢ーー!!このままジャック・アトラスをやっつけてまえー!」

「勝てる、勝てるぞーー!」

観客席とは異なり、部屋の中は遊矢を応援する声を歓声に包まれていた。

まるで、もう遊矢の勝利が決まったかのように。

「すごいねー、さすがは柚子ちゃんの彼氏ー!」

「か、彼氏!?」

テレビを一番前で見ていた柚子がビクッとし、言った張本人である伊織を見る。

「出発のとき、遊矢君と2人っきりになってたよねー?その時にもしかしたら…」

「な、なにを言って…」

「大丈夫、離れていても心はつながっている。君のことを愛しているから…とか遊矢君が言って、そして柚子ちゃんは遊矢君と…」

スパァァァァン!!!

顔を真っ赤にした柚子のハリセンが伊織の頭部に炸裂する。

モロにくらったせいか、伊織は目を回しながらその場に横になる。

「あーあー…」

「これはどう見ても伊織が悪いな」

頭に大きなたんこぶができている伊織をかばう仲間は一人もいなかった。

 

「ハックション!!」

それと同時に、遊矢は大きなくしゃみをしてしまう。

(んー?誰か俺のこと噂してるのか??)

右手人差し指で鼻をこすりつつ、そんなことを考える。

「何をやっている、榊遊矢。さっさとデュエルを続けろ」

スピードを落とし、遊矢の隣に移動したジャックが彼に顔を向けることなく言う。

そして、すぐにスピードを上げて遊矢の前を走り始めた。

「バトルだ!俺は《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》で《ブラック・ハイランダー》を攻撃!!」

《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》がその場から急激に高度を上げていく。

そして、稲妻で拘束されている《天刑王ブラック・ハイランダー》はそのまま引っ張られ、空中へ行く。

高度100メートルのところで、黒い稲妻の竜が死神の王の頭部を両足で挟み、回転しながら落下していく。

地面に王の頭部が直撃したとき、そこに大きなクレーターが生まれた。

それができた際の衝撃がジャックを襲う。

「むうう…!!」

 

ジャック

ライフ4000→1500

SPC3→0

 

「ジャックが一気に2500もダメージを!!」

「そのせいで、ジャックのスピードカウンターがなくなっちまった!まずい!!」

「負けないでーーー、ジャックーーー!!」

観客が動揺するが、今の遊矢にはそんなことはわからない。

今はただ、ジャックとデュエルをし、勝つことしか考えていない。

「これで終わりだ!《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》でダイレクトアタック!轟け、雷光のスパイラルバースト!!」

《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》の口から雷鳴の宿った竜巻が放たれ、ジャックを襲う。

竜巻が直撃した瞬間、ジャックとホイール・オブ・フォーチュンが爆発と煙が包み込んだ。

「嘘だろ…??」

「ジャックが、負けた…??」

まさかの出来事に全員が沈黙する。

そして、その数秒間の沈黙を破るかのように、煙の中からホイール・オブ・フォーチュンが現れ、エンジン音と走行音を響かせる。

「馬鹿な!?確かに攻撃は…!」

「よく見てみろ、榊遊矢。俺に攻撃は届いていない」

「何!?」

遊矢はジャックの頭上に目を向ける。

そこには《デーモン・カオス・キング》が《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》の雷鳴を両腕の黒い曲刀で受け止めていた。

ただ、そのエネルギーがあまりに高かったせいか、その剣は雷鳴が消えると同時に砕けてしまった。

「俺は罠カード《リジェクト・リボーン》を発動した。このカードは相手の直接攻撃宣言時に発動でき、バトルフェイズを終了させる。そして、墓地からシンクロモンスターとチューナーモンスターを1体ずつ、効果を無効にして特殊召喚できる」

「じゃあ…ジャックが特殊召喚したチューナーモンスターは…!?」

遊矢はディスプレイでジャックのフィールドを確認する。

それと同時に、《デーモン・カオス・キング》の背後に隠れていた《レッド・スネーク》がジャックのもとへ降りていった。

 

レッド・スネーク レベル3 攻撃1300(チューナー)

デーモン・カオス・キング レベル7 攻撃2600

 

(おおーーー!!何ということでしょー!?あの絶体絶命の状況を見事に切り抜け、更にシンクロモンスターとチューナーモンスターを復活させたー!さすがはジャック!私たちのヒーロー!!)

「すげぇぜジャック!!」

「このまま逆転してくれーー!!」

先ほどとは真逆に、メリッサも含めて観客席が歓声に包まれる。

それに対して遊矢はこのターンに決められなかったことを悔やみ、唇を噛む。

(さっき、《悪魔王の大鎌》に対して、《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》の効果を発動しなければ、ここで勝てていたのに…)

1ターンに1度しか発動できない《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》の無効効果をかわされ、今のエクストラデッキの状態を見ると、その効果を発動できるのはあと1回程度。

この状態であれば、次のターンにジャックにとどめを刺されることはないかもしれない。

といっても、今の遊矢に追撃する余力がないのは事実だ。

「ふん…この程度で動揺するとはな」

悔しさで周囲が見えていない遊矢に失望にも似た感情を見せたジャックはコース上の、地表よりも高い位置にあるアクションカードに目を向ける。

そして、ホイール・オブ・フォーチュンがジャンプさせ、そのカードを手にした。

(ここでジャック・アトラスもアクションカードをゲットーー!!)

「アクションカード…はっ!?」

メリッサの言葉を聞いて我に返った遊矢は《スピード・ワールド・A》のカードに目を向ける。

(確か、アクションカードは1ターンに1度だけ手札に加えられて、そしてそのカードが魔法カードなら、スピードカウンターが…!!)

ジャックと遊矢のフィールドの間に表示されているスピードカウンターを見る。

相手のスピードカウンターは1に変化している。

「俺はこれで…ターンエンド」

 

ジャック

手札1→2(うち1枚アクション魔法カード)

SPC0→1

ライフ1500

場 デーモン・カオス・キング レベル7 攻撃2600

  レッド・スネーク レベル3 攻撃1300(チューナー)

 

遊矢

手札5→2

SPC0

ライフ4000

場 オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン レベル7 攻撃2500

  ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ランク4 攻撃3900

  EMゴムゴムートン(青) ペンデュラムスケール1

  EMドクロバット・ジョーカー(赤) ペンデュラムスケール8

 

遊矢のターンが終わると同時に、ジャックが再び遊矢の横を走る。

「貴様、エンタメデュエリストとか言っていたな…?」

「…ああ、そうだ」

メリッサの選手紹介で、遊矢はエンタメデュエリストだと紹介された。

だが、今のジャックの目に映る遊矢にそのような印象はない。

あるのは、自分の周囲にいくらでも転がる敗北者の候補。

自分を満たす力を持たない、その他大勢のデュエリスト。

「貴様のエンタメなど独りよがりに過ぎん!」

「何!?」

独りよがり、という言葉に遊矢は反応する。

自分のデュエルは父親から受け継ぎ、近づくために努力して手にしたエンタメデュエル。

それを否定される、ましてはみんなを笑顔にするためにやっているデュエルを独りよがりと評価されるとは思いもよらなかった。

「俺が本当のエンタメを見せてやる!俺のターン!」

 

ジャック

手札2→3

SPC1→3

 

遊矢

SPC0→2

 

「俺は手札からアクション魔法《ティンクル・コメット》を発動!モンスター1体の攻撃力をターン終了時まで1000ダウンさせ、更に相手に500ダメージを与える!」

「させるか!今度こそ無効にしてやる!」

遊矢の声を聴いたオッドアイズは再び目から光線を放つ。

ジャックは《ティンクル・コメット》のカードを上へ投げると、光線はカードに命中、消滅させる。

 

エクストラデッキからデッキに戻ったカード

・オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン

 

「ならば俺は手札から《Sp-ハーフ・シーズ》を発動!俺のスピードカウンターが3つ以上あるとき、相手モンスター1体の攻撃力を半減し、その数値分、俺のライフを回復する」

《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》の体から青いオーラが放出され、ジャックの体に吸収されていく。

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ランク4 攻撃3900→1950

 

ジャック

ライフ1500→3550

 

(問題は…ジャックのあと1枚のカード…)

遊矢の目はジャックの最後の1枚の手札に向けられる。

「さらに俺は《デーモン・カオス・キング》をリリースし、《バイス・ドラゴン》をアドバンス召喚!」

 

バイス・ドラゴン レベル5 攻撃2000

 

「レベル5の《バイス・ドラゴン》にレベル3の《レッド・スネーク》をチューニング!」

再び《レッド・スネーク》が3匹の蛇を分離させた後で体を炎の中に消す。

そして、蛇は《バイス・ドラゴン》にかみつき、その竜の体を炎に包んでいく。

「王者の咆哮、今天地を揺るがす。唯一無二なる覇者の力をその身に刻むがいい!シンクロ召喚!荒ぶる魂、《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》!」

 

レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト レベル8 攻撃3000

 

「グオオオオオオン!!!」

召喚されると同時に激しく咆哮する傷だらけの竜。

両腕にはマグマに近い熱を放つ紅蓮が宿っている。

「このカードは俺のターンのメインフェイズ1に1度、こいつ以外の、フィールド上のこのカードの攻撃力以下の攻撃力を持つ、特殊召喚された効果モンスターすべてを破壊し、破壊したモンスター1体につき、500のダメージを与える!アブソリュート・パワー・フレイム!」

「何!?」

トリーズン・ディスチャージでせっかく増やした攻撃力を《Sp-ハーフ・シーズ》によって奪われた《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》には抵抗する力はない。

《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》の両拳がそれぞれ遊矢のドラゴンに1度ずつ命中する。

(小僧は未熟…だが、小僧にせめてもの褒美をやろう)

破壊されそうになったオッドアイズが最後の抵抗のためか、拳を腹部で受け止めた状態で《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》の頭部に向けて口から稲妻を放つ。

ギリギリのところで首を右にそらすことで回避するも、その赤い竜の左目に稲妻が命中する。

まさかのダメージで身をのけぞり、左手で左目を抱える相手を見つつ、オッドアイズは《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》とともに消滅した。

そして、消滅のときに発生する爆風が遊矢を襲う。

「うわあああ!!」

 

遊矢

ライフ4000→3000

SPC2→1

 

「グウウウ…!!」

左手をどかし、怒りに満ちた目で遊矢に目を向ける《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》。

左目は傷ついており、瞼あたりからは煙が出ている。

(まさか…破れてなお《レッド・デーモンズ》に手傷を負わせる者がまだいたとはな…)

キングになる前と比べると、《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》が傷を負うことはあまりにも少なかった。

このモンスターはいつからか、受けた傷は癒えずにそのまま痕になって残り続けている。

その傷の数こそがこれまで潜り抜けてきた修羅場の数。

自分のキングとしての強さの証。

その傷を負わせたモンスターの主は決まって強者で、自分には及ばなかったがすさまじい力を持っているデュエリストばかりだった。

(…気に入れんな…)

だが、今回は偽物のエンタメデュエルをやる、少しのことで動揺するような力のないデュエリスト。

そんなデュエリストの操るモンスターに自分の魂であるモンスターの傷が増やされることが気に入らなかった。

「榊遊矢、最後に《レッド・スネーク》の効果を見ておけ」

「何…!?」

《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》は怒りを抑え、遊矢に目を向ける。

これから敗北するときに相手の言うことを聞くことになるのは癪だが、《レッド・スネーク》の効果については子のデュエル中わからなかった。

遊矢はディスプレイを操作して、そのカードを表示する。

 

レッド・スネーク

レベル3 攻撃1300 守備200 チューナー 炎属性 悪魔族

(1):このカードをS素材とするとき、ほかのS素材が自分フィールド上に存在する「レッド」モンスターのみの場合、このカードのレベルを4として扱うことができる。

(2):このカードをS素材としてS召喚された「レッド・デーモン」モンスターは以下の効果を得る。

●自分フィールド上に表側表示で存在するこのカードが戦闘で相手モンスターに破壊され墓地へ送られたときに発動できる。墓地に存在するこのカードを自分フィールド上に特殊召喚する。

 

「まさか…!!」

「《レッド・デーモンズ》でプレイヤーにダイレクトアタック!灼熱のクリムゾン・ヘル・バーニング」

《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》の口からオレンジ色の炎が放たれ、遊矢を包み込む。

「うわああああ!!」

 

遊矢

ライフ3000→0

 

ダメージの影響か、遊矢はマシンレッドクラウンから投げ出され、コース上に転落する。

うつぶせで倒れる遊矢のそばにジャックと《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》が来て、目を向ける。

「ふん…つまらんデュエリストだった」

吐き捨てるようにそう言い、立ち去ろうとする。

「待…」

「うん?」

遊矢の声がかすかに聞こえたジャックは遊矢に振り向く。

そのとき、遊矢はフラフラとしながらも立ち上がっていて、つけていたヘルメットはコース上に投げ捨てられていた。

衝撃のためか、ゴーグルにはひびが入っており、左の眉毛の左側あたりからは切れているためか、血が流れている。

「俺のデュエルが…父さんのデュエルが独りよがりだと…!?馬鹿にするな、ジャック!!」

「…チッ」

遊矢の目を見て、小さく舌打ちをしたジャックはその場を後にする。

「待てよ、ジャック!待…て…」

先ほどの一言が限界だったのか、遊矢は再び倒れてしまった。

彼は緑色の服を着たスタッフのタンカに乗せられ、コース上を後にすることとなった。

 

テレビでは、遊矢が搬送された後、何事もなかったかのように進行していく。

「ちょっと、遊矢は、遊矢は無事なの!?答えなさいよ!!」

明るく楽しく話すメリッサを抗議するように、柚子はテレビを両手で抱えて揺らす。

「やめておけ、柊。そんなことをしても無駄だ」

「でも…でも遊矢は…!!」

「ヴァプラ隊が作ったライディングスーツは特別性らしいからな。多少けがはするにしても、重いものにはならない。それに…今そうしても何も事態が好転しないだろう?」

「…」

それは柚子もわかっていることだ。

今の自分がいるのは会場ではなく、シェイドの宿舎のテレビの前。

そんな柚子に遊矢に対してできることはない。

「大丈夫、柚子ちゃん。遊矢君は無事だよ」

「伊織…」

いつの間にたんこぶが引っ込んだ伊織が柚子を優しく諭す。

そして、ゆっくりと彼女の両手が柚子の胸へ向かい…。

「伊織、何しとんねん!!」

「あべっ!?」

里香に殴られた。

「ううー、柚子ちゃんって14歳にしてはちょーっと胸大きいでしょ?何があるかなーって確かめたくならない??」

「だからってももうするなや!セクハラや!!」

「ぶー…女の子同士だしいいじゃんかー」

「いいわけあるかぁ!ここに男が何人いると思うとんねん!?」

「…」

なぜか里香と伊織による喧嘩が始まってしまう。

口げんかで殴ったりはしていないこともあり、全員はなられ見守ることにした。

「…どうしてこうなった?」

モハメドの小さなつぶやきは2人の声にかき消された。

 

「おいおい…遊矢の奴、猿みたいに踊りやがって」

一方、翔太はバナナを食べながら遊矢のデュエルの感想を口にする。

今彼がいるのはイリアステル区にある、スタジアム付近のホテルの中で、けがが治ったことから評議会によってここで大会の間、監禁生活をすることになった。

ほかの参加者もここに監禁されているとのことで、電話や手紙、直接面会することは禁じられている。

食べ物や飲み物、着替えなどはルームサービスを頼めば手配してもらえ、風呂とシャワー、トイレもある。

ちなみに、風呂とトイレは別々のセパレートタイプだ。

「ん…?」

観客席を映している映像を見て、翔太は手に持っているバナナを見る。

「ああ…そういえば、シンクロ次元出身だったな。バナナマン」



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第63話 花札VS死の騎士

「んんん…」

強い日の光が差し込むホテルの一室で翔太は目を覚ます。

青いステテコパンツ1枚だけの姿で。

「にしても、ビャッコはどこへ行ったんだ…?」

セキュリティにつかまってから、ビャッコの姿を見ていない。

少しだけ心配していたが、それすら許さないかのように扉をノックする音が聞こえる。

「誰だよ!?」

「お待たせしました。これから試合が始まりますので、お迎えに…」

「試合?おいおい、いま何時だ…よ??」

壁にかかっている時計を見るとすでに午前11時。

すっかり寝坊していたのだ。

「今、開けますよ」

「待てよ。いま着替える」

さすがにパンツ一丁で出るわけにはいかず、翔太は普段来ている服を着る。

「そういえば、もう試合はしたのか?」

「はい。権現坂昇対クロウ・ホーガンと風魔月影対シンジ・ウェーバーのデュエルが行われました。勝者はクロウ・ホーガン、シンジ・ウェーバーです」

「おいおい、ランサーズ2連敗かよ。あいつら何やってんだ?」

着替え終えた翔太は扉を開き、前で待っているボーイの後をついていく。

「そういえば、Dホイールはどうなってる?俺のDホイールはここにはねーぞ?」

「それについてはこちらですでに用意してあります。その点はご安心ください」

おそらく2つ年齢が下かもしれない、その茶髪のボーイの淡々とした質問の受け答えに少しうんざりする。

もう少し、面白みのある回答をしてくれてもいいだろう。

そんなことを考えていると、2人は青コーナーの格納庫につく。

そこには色合いはマシンキャバルリーに似ているものの、それには2つあったライトが1つだけとなっており、側面にはキー付きのツールボックスがなぜか備え付けられている、ホンダ・CRF250Lをモチーフとしたものだ。

エンジンの周辺にはスキットプレートがきちんとついている。

「CDW-062、Dフランク。こちらが今大会であなたに貸し出されるDホイールです」

「貸し出す?レンタル料を取るつもりか?」

「いえ、レンタル料に関してはすでに受け取っているとのことです」

「受け取り済み…?払った覚えはねーが…」

「あの、私服のままで大丈夫ですか?ライディングスーツもお貸しできますが…」

「あんな窮屈な服なんて着ていられるか」

そういいながらヘルメットをかぶり、Dフランクに乗る。

マシンキャバルリーとは違い、最初からライディングデュエルのために開発されたものであるためか、性能はわずかながら高い。

(見世物になるのは面白くないが、うっぷん晴らしさせてもらうぜ)

 

(さぁ、いよいよ第3試合が始まります!!このデュエルはどんな展開を見せてくれるのでしょうかーー!?)

「ううー、翔太君ー…」

「キュイキュイー…」

伊織とビャッコがテレビの前でまるでシンクロしているかのように両手を固めてお祈りしている。

なお、ビャッコは今朝、伊織の布団の中から出てきたようだ。

(フレンドシップカップ1回戦、第2試合!赤コーナー!!収容所にて苦節10年!今、伝説がここによみがえる。エンジョイ長次郎こと、徳松長次郎ーーー!!)

「エンジョーーーイ!!」

奇妙な一声をあげながら、茶色いライディングスーツと茶色い量産型のDホイールに乗った男が飛び出し、それと同時に観客席から歓声が上がる。

やせているものの、身長は180近くあり、面長な顔立ちだが、ヘルメットのせいでその素顔はよくわからない。

「すげぇ、エンジョイ長次郎だ!!」

「もう1度、奇跡のドローを見せてくれーー!!」

「長次郎!!長次郎!!」

コモンズ出身者を中心に、徳松を応援する声が広がっていく。

それにこたえるように、徳松が声を上げる。

「待たせたな、諸君!エンジョイ長次郎、今戻ってきたぜ!」

それと対極的なのがトップスのセレブたちだ。

「ふっ、あの徳松か…」

「強くなって戻ってきたのならよいが…な」

「10年前のような、恥さらしなデュエルをしなければいいですわね」

 

「徳松長次郎…エンジョイ長次郎か…懐かしいな」

テレビを見ていたモハメドが興味深げに徳松を見つめる。

「知っているのか?その、エンジョイ長次郎ってのは」

缶コーヒーをもって戻ってきた鬼柳が質問する。

「ああ…。コモンズ出身のデュエリストで、勝ち負けよりも楽しむことをモットーにした奴だ。子供たちにデュエルを教え、デュエルでコモンズとトップスの壁を壊そうとした」

コーヒーを開け、一口飲んでから、ため息をこぼす。

「…うまく、いかんかったってこと…?」

「ああ。話によれば、トップスはそんなあいつを金にものを言わせて手に入れたレアカードを武器に、複数人でリンチにかけた」

「ひでぇ…」

「で、自分の信条を拒絶されたあいつには罵声とブーイングの嵐が待っていて、追い詰められた末にイカサマに走り、御用。コモンズじゃあ悲劇のデュエリストとして語り継がれている、生ける伝説だな。まさか、また表舞台でデュエルができるようになるなんてな」

「モハメドのおっさん、一つ質問なんじゃが…?」

「ん…?」

「その徳松っておっさん、冷麺好きか?」

漁介の言葉に一時全員が沈黙する。

「…なぜ、冷麺、なんだ?」

「なんと、なく…」

 

(青コーナー!!突如現れ、ただいまコモンズで勢力拡大中のギャング、シェイドのリーダー!経歴不明のダークホース…秋山翔太ーーー!!)

「翔太君!?」

「キュイイ!?」

翔太の名前が出て、緊張感が走る。

チームブレイドとの交渉により、彼がフレンドシップカップに出ることになったというのは知っていたとはいえ、まさか初戦で長次郎とデュエルをすることになるとは思わなかった。

「うわぁ、エンジョイ長次郎にも勝ってもらいたいが、ボスにも勝ってもらいたい…ジレンマだな」

「翔太ーーー!!負けんなやーー!!」

「ここで負けたら、スタンダード次元が3連敗だ!面目丸つぶれじゃー!」

「長次郎!長次郎!」

「ボス!ボス!!」

別の宿舎にいるメンバーでは、どうやら応援が翔太と徳松で二分されており、7対3で徳松側が有利となっている。

コモンズ出身者の多い現地メンバーであるため、無理もない。

「頑張れ、翔太君!」

「キュイキュイ!!」

 

青コーナーから出てきた翔太のDフランクと長次郎のDホイールがスタートラインに立つ。

「よぉ、あんたには悪いが、約束がある。すまねえが、負けてもらうぜ?」

「負けるのはあんただろ?冷麺好きのおっさん」

「なっ、なんで冷麺が出てくんだ!?」

「嫌いなのか?冷麺」

「好きっちゃあ好きだが…」

左の頬を人差し指で書きながら、収容所にいたときのことを思い出す。

彼は収容所に送られた後、やさぐれてしまい、デュエルの力で囚人たちを支配するようになった。

その実力は収容所にいるセキュリティをもコントロールできる程で、囚人から巻き上げたカードで買収し、リッチな生活を楽しんでいた。

ステーキやフカヒレ、フォアグラなどを食べることがあったが、冷麺は食べていなかった。

(今いるホテルにも冷麺はなかったし…ここを出たら、食いに行くか)

(さーぁ、まずはフィールド魔法、《スピード・ワールド・A》発動!!」

メリッサが目の前にあるコンピュータのボタンを押すと同時に、徳松と翔太のDホイールのディスプレイに《スピード・ワールド・A》が表示される。

(こいつのルールはわかったけどよ…俺はDホイール自体初めてだ。ま、その部分はデュエルの実力でどうにかするけどな)

徳松はじっと、左腕のホルダーに装着されている自分のデッキを見る。

「頼むぜ…俺と一緒に盛り上げてやろう」

(さあ、まもなくライディングデュエルが始まります!!)

2人の目の前に現れたソリッドビジョンの信号機が赤い光をともす。

(ライディングデュエル…アクセラレーション!!)

信号の色が緑になると同時に、2台のDホイールが発進する。

「うおお…こいつは…!!」

まさかの加速に徳松が不安な表情を浮かべる。

バイク自体乗ったことが初めての彼には体が露出した状態でのスピードアップが必要以上に怖く思えてしまう。

そんな彼の動揺を気にせず、翔太はさらに加速する。

(Dホイールは使っていれば、自然となじんでくる。なじんでしまう前にキャバルリーに乗れるようにしねーと…)

そう考えながら、翔太のD・フランクが第1コーナーを取る。

 

翔太

手札5

SPC0

ライフ4000

 

徳松

手札5

SPC0

ライフ4000

 

「俺のターン!俺はモンスターを裏守備表示で召喚。カードを3枚伏せ、ターンエンド」

(翔太選手、ここで3枚もの伏せカードを出した!!さあ、エンジョイ長次郎はここで何を見せてくれるのかーーー!?)

 

翔太

手札5→1

SPC0

ライフ4000

場 裏守備モンスター1

  伏せカード3

 

徳松

手札5

SPC0

ライフ4000

場 なし

 

「伏せカード3枚なぁ…」

なんとか安定させた長次郎は翔太の伏せカードを見る。

ライディングデュエルでは《サイクロン》や《大嵐》のような魔法・罠カードを破壊する魔法カードがなかなか使えないため、これらを除去する手段が限られている。

そして、彼自身もルールはわかっている程度でライディングデュエルに慣れているわけではない。

「俺のターン、ドロー!」

 

徳松

手札5→6

SPC0→2

 

翔太

SPC0→2

 

「うおおおぉ!?!?」

ドローした瞬間、また加速をしてしまい、徳松はあやうくドローしたカードを落としそうになる。

(んだよ、あのおっさん…素人か?)

そんな醜態を見せる中年男性を冷ややかな目で見る。

「ふう、ふう…お…」

なんとかカードを手札ホルダーにかけることに成功した徳松の眼にアクションカードが映る。

ちょうど、彼のコース上にあり、取りやすい位置にある。

「アクションカードについては遊矢たちに聞いてるんだよっと!!」

カードを手にした徳松はすぐにそれを発動する。

「俺はアクション魔法《ハードポイント》を発動!お互いにデッキの上から3枚カードを確認し、好きな順番に並べ替える!(こいつはいいアクションカードが手に入ったぜ!)」

デッキの上からカードを3枚引き、それを確認する。

そして、互いに迷うことなく順番を決めて、デッキの一番上に戻した。

 

徳松

SPC2→3

 

ハードポイント

アクション魔法カード

(1):お互いに、デッキの上からカードを3枚確認する。その後、好きな順番でデッキの一番上に戻す。

 

「そして、俺は手札から《花札衛-松》を召喚!」

徳松の真上に花札の松というカードが大きな長方形の機械で作られたようなものが現れる。

花札衛はその名前の通り、日本古来のカードゲームである花札をモチーフとしたモンスターだ。

そのため、そのシンクロモンスターは花札の役がネタとなっている。

 

花札衛-松 レベル1 攻撃100

 

「このカードの召喚に成功したとき、俺はデッキからカードを1枚ドローし、そのカードを互いに確認する。そして、そのカードが花札衛モンスターじゃない場合、墓地へ送られる。俺がドローしたカードはこいつだ」

徳松はドローしたカードをディスプレイにかざす。

すると、翔太のディスプレイに彼がかざしたカードが表示される。

これはライディングデュエルでカードを公開しなければならない場合に備えて搭載された機能の1つで、公開すべきカードをこうしてかざした場合、すぐに相手にそのカードの画像を送ることができるものだ。

 

ドローされたカード

・花札衛-松に鶴

 

「花札衛かよ…さっさと手札に加えろ」

「おいおい、少しは敬語を使えって…。それより…」

急に徳松が若干速度を落とし、翔太と並行して走る。

「なんだ?」

「シェイドについては噂になってるぜ?なんでも、コモンズの発展のために動いてくれてるんだってなぁ。収容所で噂になってるぜ」

「で、なんだ?」

「…ありがとな。やり方は違うが、コモンズとシティの境界を消すっていう点では変わらん。それが続いてくれりゃあ…」

「勘違いするな、俺は俺のやりたいようにやってるだけだ。さっさとデュエルを続けろ」

そういいながら、翔太は足元のアクションカードを手札に加える。

「ちっ…アクション罠か」

舌打ちすると同時に、そのカードが強制的に発動し、翔太のスピードカウンターを落とす。

 

翔太

SPC2→1

 

「アクション罠《平手打ち》。その効果で俺は手札を1枚ランダムで墓地へ送る。くそ!」

WDCのダンジョンデュエルで伊織がいきなり手にしたのと同じアクションカードだったこともあり、翔太は余計悔しくなる。

そして、手札に残ったたった1枚のカードを墓地へ送る。

 

手札から墓地へ送られたカード

・魔装騎士ペイルライダー

 

「ハハハッ!そんな悔しがるなって。人生いいこともあれば悪いこともある。それはデュエルだって同じだ。負けて恥じず、勝って驕らず、だぜ?」

「ふん…」

「俺は《花札衛-松》をリリースし、《花札衛-松に鶴》を特殊召喚!こいつは《松に鶴》以外の花札衛1体をリリースすることで、手札から特殊召喚できる」

《花札衛-松》のイラストに《クレーンクレーン》の姿が浮かび上がる。

この《クレーンクレーン》が鶴の代わりなのだろう。

 

花札衛-松に鶴 レベル1 攻撃2000

 

「こいつの特殊召喚に成功したとき、デッキからカードを1枚ドローし、お互いに確認する。そのカードが花札衛ならそのまま特殊召喚できるが、それ以外の場合は墓地へ送られる。こいつが俺のドローしたカードだ」

翔太のディスプレイにカードが表示され、翔太は余計嫌な顔を見せる。

「そのカードは…」

「残念だが、こいつは花札衛じゃなくて、《シャドール・ビースト》。こいつはカード効果で墓地へ送られる場合、デッキからカードを1枚ドローする」

花札衛はこの2枚から見るように、運が絡んでくる効果を持つものがある。

その欠点を軽減するために、彼は《シャドール・ビースト》などのカードで転んでもただでは起き上がらないようにしている。

楽しむことと勝利することを両立しているともいえる。

「バトルだ!俺は《松に鶴》で裏守備モンスターを攻撃!」

《花札衛-松に鶴》から《クレーンクレーン》が飛び出し、くちばしで翔太の裏守備モンスターを貫こうとする。

しかし、そのカードは攻撃を受ける直前に消え、翔太の背後でまるで背後霊のように正体を見せる。

 

魔装霊レブナント レベル2 守備500(チューナー)

 

「《魔装霊レブナント》がリバースしたとき、デッキから魔装モンスター1体を手札に加える。そして、こいつはリバースしたターン、戦闘では破壊されない」

翔太のデッキから《魔装祭事クリスト》が自動排出され、手札に加わる。

「なるほどな…最近はそういうカードも出てきたのか。収容所でもいろいろカードを見てきたが…世界は広いんだなぁ。《松に鶴》の効果発動!こいつが戦闘を行ったバトルフェイズ終了時、俺はデッキからカードを1枚ドローする。そして、俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

翔太

手札1(《魔装祭事クリスト》)

SPC1

ライフ4000

場 魔装霊レブナント レベル2 守備500(チューナー)

  伏せカード3

 

徳松

手札6→7→5

SPC3

ライフ4000

場 花札衛-松に鶴 レベル1 攻撃2000

  伏せカード2

 

「ああーーー!!翔太君ついてない!!」

「キュイー!」

伊織とビャッコが2人仲良く両手で頭を抱える。

「だが、《レブナント》の効果で《クリスト》を手札に加えることができた」

「《クリスト》は相手によって破壊されたとき、墓地から魔装騎士1体を特殊召喚できるんやったな?」

「ああ。そして、墓地には《平手打ち》で墓地へ送られた《ペイルライダー》がいる。うもぅいきゃぁ…」

 

「俺のターン!」

 

翔太

手札1→2

SPC1→3

 

徳松

SPC3→5

 

「モンスターを裏守備表示で召喚。そして、このカードは俺のフィールド上に存在する魔装モンスター1体の攻撃力を半分にすることで、手札から特殊召喚できる。《魔装鬼ストリゴイ》を特殊召喚」

《魔装霊レブナント》の背後に、背中のあたりに五芒星が刻まれていて、1メートル程度の体に見合わぬ2メートル近い長さで先に鉛色の針がある、血のような赤い体の蝙蝠型モンスターが現れる。

そのモンスターは針を仲間の背中に突き刺し、叫び声をあげつつその体から力を吸い取る。

「うげぇ…仲間の力を奪うモンスターか。奇妙なカードを使うんだなぁ」

 

魔装鬼ストリゴイ レベル5 攻撃2100

魔装霊レブナント レベル2 攻撃600→300

 

魔装鬼ストリゴイ

レベル5 攻撃2100 守備0 闇属性 悪魔族

【Pスケール:青8/赤8】

(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。

(2):自分フィールド上に存在する「魔装騎士」モンスターの攻撃宣言時に発動できる。相手フィールド上に存在するモンスターの攻撃力・守備力がターン終了時まで600ダウンする。

【モンスター効果】

「魔装鬼ストリゴイ」は1ターンに1度しか、(1)の方法で特殊召喚できない。

(1):このカードが手札に存在し、自分フィールド上に「魔装」モンスター1体を対象に発動できる。このカードを手札から特殊召喚し、そのモンスターの攻撃力が半分になる。

 

「レベル5の《ストリゴイ》にレベル2の《レブナント》をチューニング」

刺されたままの《魔装霊レブナント》の体が消え、針が2つのチューニングリングに変化して《魔装鬼ストリゴイ》を包み込んでいく。

「黄金の剛腕を持つ漆黒の戦士、その気高き力で道を拓け。シンクロ召喚!現れろ、《魔装剛毅クレイトス》!」

チューニングリングと吸血鬼が緑色の光に包まれ、その光の中から《魔装剛毅クレイトス》が飛び出す。

 

魔装剛毅クレイトス レベル7 攻撃2600

 

(おおーー!!《魔装霊レブナント》の効果から追い打ちをかけるようにシンクロ召喚!!しかも、攻撃力は2600--!!)

「バトルだ!俺は《クレイトス》で《松に鶴》を攻撃!ゴールデン・アッパー!」

《魔装剛毅クレイトス》が《花札衛-松に鶴》を貫こうと、攻撃名にアッパーが入っているにもかかわらず、正拳突きをする。

「甘いぜ、坊主。俺は罠カード《雨流れ》を発動」

《魔装剛毅クレイトス》の拳が内側が黒く、外側が赤い和傘で受け止められる。

その傘を持っているのは青い文官束帯と黒い烏帽子を装備した青い目の貴族だ。

ちなみに、雨流れは花札の用語で、柳に小野道風を獲得すると花見酒の組み合わせが無効になる特別ルールだ。

「こいつは俺のフィールド上に存在する花札衛が攻撃対象となったとき、そのモンスターの破壊を無効にする」

「だが、戦闘ダメージは受けろよ。さらに俺は永続罠《エヌルタの慈悲》を発動。1ターンに1度、俺にフィールド上に存在する魔装騎士、そして魔装と名の付くシンクロ、エクシーズ、融合モンスターが相手モンスターと戦闘を行う時、相手に与える戦闘ダメージを倍にすることができる」

鉄でできたビキニアーマーを身に着けた、若干黒い肌で黒いロングヘアーの女性の幻影がそのカードから現れ、《魔装剛毅クレイトス》に宿る。

すると、彼の肉体が紫色の光に包まれ、右腕に宿る五芒星の魔力が増幅する。

それにより、傘と拳がぶつかり合う地点から激しい衝撃波が発生し、それが徳松を襲う。

「ぐうううう!!強引に押してきたか!!」

 

徳松

ライフ4000→2800

SPC5→4

 

(翔太選手先制ーー!!あのエンジョイ長次郎に手傷を負わせたーーー!!)

「まだまだだぜ…?《雨流れ》のもう1つの効果だ!手札・デッキ・墓地から花札衛のチューナーを1体特殊召喚する!俺はデッキから《花札衛-柳に小野道風》を特殊召喚」

攻撃を防いだ貴族が背後に現れた新しい機械の花札の中に入っていく。

そして、彼が入ったのと同時にそれには花札の柳のイラストが描きこまれていく。

 

花札衛-柳に小野道風 レベル11 攻撃2000(チューナー)

 

雨流れ

通常罠カード

(1);自分フィールド上に存在する「花札衛」モンスターが攻撃対象となったときに発動できる。そのモンスターは戦闘では破壊されない。そして、ダメージステップ終了時に手札・デッキから「花札衛」チューナー1体を自分フィールド上に攻撃表示で特殊召喚する。

 

「そして、《柳に小野道風》の効果発動!デッキからカードを1枚ドローし、お互いに確認する。そして、そのカードが花札衛なら特殊召喚でき、それ以外であれば墓地へ送られる。さぁさぁ皆の衆!そして俺の相手をしてくれている坊主!エンジョイ長次郎の奇跡のドローに期待してくれーー!!」

徳松の言葉に客席が歓声に包まれていく。

「こいこい、こいこい!!」

「こいこいこいこーーいい!!」

コモンズの観客たちが全員こいこいと叫ぶ。

ここからのドローはデッキ操作されていない、完全に運の領域だ。

「んだよ?運任せの効果じゃねーか…」

観客と徳松に水を差すような発言をする翔太。

そんな彼の言葉におこることなく、徳松は再び彼と並走する。

「運任せ?結構なことじゃねえか。ここから先は俺もお前もどうなるかわからねえ。もし、これで大外れしたらがっかりだろうな」

「だったら、さっきみたいにデッキ操作すればいいだろ?」

「確かに、その方が確実だな。勝つことだけを考えるなら。けどよ、デュエルは勝つためだけにやるんじゃねえ。楽しむためにやるものさ。お客さんも俺たちも、みんなが楽しむためにな。お前さんはデュエルが楽しいと思ったことはねえのか?」

徳松の質問に翔太は沈黙する。

目覚めてから今まで、翔太は様々な場面でデュエルをしてきた。

仲間を守るため、奪われたカードを取り戻すため、塾を守るため、大会を勝ち進むため。

だが、デュエルを楽しんでいたかどうかについては自信をもって答えることができない。

機械的にやっているだけなのか、楽しんでやっているのか、自分自身よくわからないのだ。

「俺がデュエルをするのは目的を果たすためだ。楽しいともつまらないとも思った覚えはない」

「そうか…だったら、ここはエンジョイ長次郎の名に懸けて、デュエルの面白さを教えてやろう!!さぁ、待たせたな皆の衆!遅くなったが、奇跡のドローをお見せしよう!!」

「ああ!!遅せーぞ長次郎!!」

「みんな待ってるぞーーー!!!」

翔太から離れた徳松はデッキトップに指をかける。

「こいこい!!こいこい!!」

「こいこいこいこーーい!!」

「エンジョーーーイ!!」

叫びながら、徳松はカードを引く。

引いたカードは《花札衛-芒に月》だ。

「来たぞ!《花札衛-芒に月》!!」

月の代わりに《邪神アバター》が描かれた芒に月の花札が現れる。

 

花札衛-芒に月 レベル8 攻撃2000

 

「《芒に月》にも《柳に小野道風》と同じ効果がある。再び奇跡のドローをお見せするぞ!」

「こいこい!こいこい!」

「こいこいこいこーーい!!」

掛け声とともに、徳松がカードを引く。

「次は《花札衛-桜に幕》!!」

機械でできた、桜に幕の花札だ。

膜に隠れて、騒いでいる魔物がいるようだが、見えるのは茶色い腕だけで、何のモンスターかは不明だ。

 

花札衛-桜に幕 レベル3 攻撃2000

 

花札衛-桜に幕(アニメオリカ・調整)

レベル3 攻撃2000 守備2000 効果 闇属性 戦士族

このカードは通常召喚できない。

「花札衛-桜に幕-」以外の自分フィールドのレベル3の「花札衛」モンスター1体をリリースした場合に特殊召喚できる。

(1):このカードが特殊召喚に成功した場合に発動する。自分はデッキから1枚ドローし、お互いに確認する。それが「花札衛」モンスターだった場合、そのモンスターを特殊召喚できる。違った場合、そのカードを墓地へ送る。

(2):このカードがS素材として墓地へ送られた場合に発動する。自分はデッキから1枚ドローする。

 

「さぁ、《桜に幕》も同じ効果がある!さらにもう1度だぁ!」

「こいこい、こいこい!!」

「こいこいこいこーーい!!」

さらに一段と大きくなる掛け声。

掛け声が終わると同時にカードが引かれる。

「おっと、みんな済まねえ。次にドローしたカードは《絶対王バック・ジャック》だ。こいつは墓地に送られたとき、デッキの上から3枚を並べ替えることができる。皆の衆、このデュエルでもう1度奇跡のドローをお見せする!それまで待っててくれー!!」

「おお!待ってるぜ、エンジョイ長次郎!!」

「今度は5連続ドローを頼むぞーー!!」

(くそ…俺のターンだってのに)

徳松は一気に3体ものモンスターを召喚した。

しかも、自分のターンではなく、翔太のターンのバトルフェイズ中にだ。

攻撃力では攻撃力2600の《魔装剛毅クレイトス》よりも低いものの、ここからシンクロ召喚につなげられる可能性がある。

「まだ俺のターンを終えるわけには…ん??」

コース上ではあるが、かなり高い位置にあるアクションカードを発見する。

今のままでのジャンプではその高さまで行くのは無理だが…。

「こいつでどうなるか…?」

壁はトンネルのそれと同じ形になっている。

それを利用して横っ飛びの形になるが、その場で飛ぶよりも高い位置に跳躍した。

そして、そのアクションカードを取ることに成功するが…。

「またアクション罠か!?」

2連続のアクション罠の入手にイラ立ちながら、やむなくそのカードを発動する。

「アクション罠《お手付き》。こいつは俺のデッキの上から3枚のカードを墓地へ送る」

(うわー、またまたアクション罠!このチャレンジャーは不幸体質なのかー??)

「誰が不幸体質だ!?黙ってみてろ!!」

 

翔太

SPC3→2

 

デッキから墓地へ送られたカード

・魔装獣ユニコーン

・Sp-エンジェル・リフト

・魔装猫バステト

 

(幸い《バステト》が墓地に落ちてくれたか…)

「さっきの俺のドローは楽しんでもらえたか?」

再び並走する形になる2人。

その表情は雲泥の差で、思い通りに進まずあまり余裕のなさそうな翔太に対して、徳松は笑顔だ。

「あんなドロー、ただのラッキーだろ?次は外れるのが関の山だ」

「ラッキーでいいんだ。お前の言う通り、俺がやっているのはただの運任せ。だが、それを楽しみに見てくれるやつらがたくさんいるのさ。それに、当たったときはデッキが俺に応えてくれた気がして、とてもうれしくなる。だから、やめられねえのさ」

「ふん…」

「お前さんのデッキも、応えようとしてくれてるんじゃないか?」

そういった後、徳松は再び加速して翔太から離れた。

なお、翔太と話すために減速した際に彼はちゃっかりアクションカードも手に入れている。

しかも、それは魔法カードで、結果として更に彼はスピードカウンターを得ている。

 

徳松

SPC4→5

 

「バトルフェイズ終了と同時に、《花札衛-松に鶴》の効果発動。このカードが戦闘を行ったバトルフェイズ終了時に、俺はデッキからカードを1枚ドローする」

「俺は…これでターンエンドだ」

 

翔太

手札0

SPC2

ライフ4000

場 魔装剛毅クレイトス レベル7 攻撃2600

  裏守備モンスター1

  エヌルタの慈悲(永続罠)

  伏せカード2

 

徳松

手札5→7(うち1枚アクション魔法カード)

SPC5

ライフ2800

場 花札衛-松に鶴 レベル1 攻撃2000

  花札衛-柳に小野道風 レベル11 攻撃2000(チューナー)

  花札衛-芒に月 レベル8 攻撃2000

  花札衛-桜に幕 レベル3 攻撃2000

  伏せカード1

 

「俺のターン、ドロー!」

 

徳松

手札7→8

SPC5→7

 

翔太

SPC2→4

 

「さぁ…奇跡のドローで集まった札の力を見せてやる!俺は《柳に小野道風》の効果を発動。フィールド上に存在するこのカードをシンクロ素材とするとき、このカードを含むすべてのシンクロ素材のレベルを2にすることができる。俺はレベル2となった《松に鶴》、《芒に月》、《桜に幕》にレベル2となった《小野道風》をチューニング!」

4枚のカードが縦一列となり、一番前に配置されているのは《花札衛-柳に小野道風》だ。

「涙雨!光となりて降り注げ!シンクロ召喚!出でよ!レベル8、《花札衛-雨四光-》!」

口上を叫ぶと同時に、4枚の花札が砕け散り、再び花札の中にいる貴族に扮したモンスターがフィールドに飛び出す。

それと同時に、上空には曇り空が発生し、大雨が降り始めた。

 

花札衛-雨四光 レベル8 攻撃3000

 

「《桜に幕》の効果発動!このカードがシンクロ素材として墓地へ送られたとき、デッキからカードを1枚ドローする!」

「攻撃力3000のシンクロモンスター…。だが、俺の《クレイトス》はエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターと戦闘を行う場合、攻撃力が1000上がるぞ!」

《魔装剛毅クレイトス》の籠手に刻まれた五芒星が光りを放ち、籠手にあたった雨が蒸発する。

「ああ、ならその攻撃せずに退場させりゃあいい。俺は手札から《Sp-ハイスピード・クラッシュ》を発動。俺のスピードカウンターが2つ以上あるとき、俺のフィールド上に存在するカード1枚と、フィールド上のカード1枚を破壊する。《花札衛-雨四光》と、《クレイトス》を破壊する!」

《花札衛-雨四光》が傘の持ち手を引き抜く。

傘の中に隠されていた刀の刃が露出し、そのモンスターは回転しながら《魔装剛毅クレイトス》に突撃する。

黄金の拳と貴族の刀がぶつかり合い、何回かそれを繰り返すと、《魔装剛毅クレイトス》の籠手が砕け、それと同時に彼のソリッドビジョンが消滅する。

だが、《花札衛-雨四光》は無事だ。

「なぜ、《雨四光》は破壊されない?」

「こいつは花札衛をカード効果による破壊から守り、更に相手のカード効果の対象にならないようにしてくれている」

「ああ、そうかよ…。俺のフィールド上に魔装モンスターが存在しないとき、《エヌルタの慈悲》は墓地へ送られる。そして、このカードが俺のカード効果で墓地へ送られたとき、デッキから魔装ペンデュラムモンスターを1体手札に加えることができる。俺はデッキから《魔装剣士ムネシゲ》を手札に加える」

ビキニアーマーの女性の幻影が翔太のフィールドから消え、翔太の手に《魔装剣士ムネシゲ》が加わる。

だが、このカードだけではペンデュラム召喚が行えない。

(《ムネシゲ》が手札に加わったのはいいが、《雨四光》の攻撃力は3000。どうするか…)

 

エヌルタの慈悲

永続罠カード

「エヌルタの慈悲」の(3)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):1ターンに1度、自分フィールド上に存在する「魔装騎士」モンスター、「魔装」S・X・融合モンスターが相手モンスターと戦闘を行う時に発動できる。その戦闘で発生する相手へのダメージは倍になる。

(2):自分フィールド上に「魔装」モンスターが存在しない場合、このカードは墓地へ送られる。

(3):このカードが自分の効果によって墓地へ送られたとき、自分のデッキに存在する「魔装」Pモンスター1体を対象に発動できる。そのカードを自分の手札に加える。

 

「さぁ、バトルだ!!《雨四光》で裏守備モンスターを攻撃!」

《花札衛-雨四光》が刀を抜き、裏守備モンスターを真っ二つに切り裂く。

 

裏守備モンスター

魔装祭事クリスト レベル1 守備0

 

「《クリスト》は相手によって破壊されたとき、墓地から魔装騎士を特殊召喚できる。俺は《魔装騎士ペイルライダー》を特殊召喚!」

(《平手打ち》の効果で墓地へ送ったカードか…)

死の騎士が両手に光剣をもって、《花札衛-雨四光》をにらむ。

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 守備2000

 

「出たー!翔太君の《ペイルライダー》!!」

「せやけど、《ペイルライダー》の攻撃力は2500。攻撃力3000の《雨四光》にはかなわんで!?」

「《ペイルライダー》には戦闘を行った相手モンスターを破壊する効果がある。だが、《雨四光》は自分を含めて花札衛をカード効果で破壊できないようにしている。やるとしたら、除外かバウンス、単純な力押しのいずれかだ」

攻撃力3000というエースクラスの攻撃力に、カード効果への対策の能力を持つ《花札衛-雨四光》にシェイドのメンバーは警戒する。

 

「ほぉ、こいつが《ペイルライダー》か。花札がモチーフのカードを使う俺が言うのもなんだが、黙示録とは、ベタだなぁ」

「ほっとけ。お前のフィールドにはもう攻撃できるモンスターはいないぞ?」

「いいや?まだ攻撃は続けるぞ?俺は罠カード《鬼札御免》を発動。俺のフィールド上に花札衛シンクロモンスターが存在し、相手フィールド上に特殊召喚されたモンスターが存在するとき、俺の花札衛シンクロモンスター1体はこのターン、もう1度だけ攻撃できる。そして、その攻撃で守備モンスターを攻撃した場合、貫通ダメージを与える」

「何!?」

徳松のフィールドに金太郎の代わりに描かれているのか、《赤鬼》が描かれた花札が現れ、それが透明なエネルギーとなって《花札衛-雨四光》に取り込まれる。

力を得た貴族は再び刀を抜いて、死の騎士を殺そうとする。

「裏目に出たか!?ここは…」

前を見ると、右足側でかかとあたりと同じ高さに浮いてるアクションカードを発見する。

「三度目の正直だ!!」

藁をもすがる思いでカードを取ると、すぐに翔太のスピードカウンターが増える。

 

翔太

SPC2→3

 

「(よし…!)俺はアクション魔法《回避》を発動!それで攻撃を無効にする!」

「待て待て、俺もアクションカードを持っていることを忘れるな?アクション魔法《ノーアクション》を発動!アクションカードの発動を無効にし、破壊する」

「何!?」

発動した《回避》が粉々に砕け散る。

 

ノーアクション(アニメオリカ)

アクション魔法カード

(1):アクションカードの発動を無効にし、破壊する。

 

「さあ、これをどうしのぐんだ?坊主!?」

「俺は罠カード《ガード・ブロック》を発動!俺に発生する戦闘ダメージを0にし、デッキからカードを1枚ドローする。そして、ペンデュラムモンスターである《ペイルライダー》はフィールドから墓地へ送られるとき、エクストラデッキに置く」

左腕に装着された楯で刀を受け止めたものの、上空に発生している雲から雷が落ち、《魔装騎士ペイルライダー》が破壊される。

 

翔太

手札0→2(うち1枚《魔装剣士ムネシゲ》)

 

鬼札御免

通常罠カード

(1):自分フィールド上に存在する「花札衛」Sモンスターが戦闘を行ったとき、相手フィールド上に特殊召喚されたモンスターが存在する場合に発動できる。そのモンスターはこのターン、もう1度攻撃することができる。その戦闘で守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ相手に戦闘ダメージを与える。

 

「うわーーー!!《ペイルライダー》が破壊されちゃったー!」

「《ガード・ブロック》でスピードカウンターの低下は阻止したが、これで《ペイルライダー》と《クリスト》による《雨四光》の破壊ができなくなってしまった…」

ペンデュラムモンスターである《魔装騎士ペイルライダー》と《魔装鬼ストリゴイ》はペンデュラム召喚によってフィールドに呼び戻すことは可能だ。

しかし、手札にあるペンデュラムモンスターは《魔装剣士ムネシゲ》のみ。

《ガード・ブロック》の効果でドローしたカード、もしくは次のターンにドローするカードがスケール6以下のペンデュラムモンスターでなければ、ペンデュラム召喚自体が難しい。

「俺はカードを4枚伏せ、ターンエンド!」

 

翔太

手札2(うち1枚《魔装剣士ムネシゲ》)

SPC3

ライフ4000

場 伏せカード1

 

徳松

手札8→4

SPC7

ライフ2800

場 花札衛-雨四光 レベル8 攻撃3000

  伏せカード3

 

(ああーーーエンジョイ長次郎、あとちょっとで大ダメージを与えられたのに、惜しい!!しかーし、翔太選手のエースカードである《ペイルライダー》は破壊されましたーー!さあ、攻撃力3000のシンクロモンスターにどう対抗するのかーー!?)

「俺のターン!」

 

翔太

手札2→3

SPC3→5

 

徳松

SPC7→9

 

「この瞬間、《雨四光》の効果発動!相手がドローフェイズ時に通常のドローを行ったとき、相手に1500のダメージを与える!」

「何!?くぅ…!!」

翔太がドローしたカードから強い光が一瞬だけ発生する。

すぐに目を閉じたことで、被害は軽減されたものの、それでも翔太のDホイールが体勢をわずかに崩した。

 

翔太

ライフ4000→2500

SPC5→4

 

「やりやがったな…」

ドローしたカードをホルダーに納め、《花札衛-雨四光》をにらみつける。

「だったらこのターンで破壊してやる!俺はペンデュラムゾーンにスケール1の《魔装忠臣ユキモリ》とスケール9の《魔装剣士ムネシゲ》でペンデュラムスケールをセッティング!」

翔太の左側に黒塗りの当世具足と鹿の角を模した飾りのある兜、右手には槍を持った、顔に三日月上の大きな傷跡のある若い武将が現れ、青い光の柱を生み出す。

具足の背部には伝説上の生き物である麒麟が描かれていて、五芒星は兜の中央部分についている。

そして、右側には《魔装剣士ムネシゲ》が現れる。

「おお、ペンデュラムモンスターを出そうとしてるみてえだが、そう問屋は卸さねえよ!俺は罠カード《砂塵の大竜巻》を発動!相手フィールド上に存在する魔法・罠カードを1枚破壊する!俺は《魔装剣士ムネシゲ》を破壊させてもらうぜ!」

砂が混ざった竜巻が翔太を襲い、それに巻き込まれた《魔装剣士ムネシゲ》が吹き飛ばされていく。

(こいつ…!!)

「悪いが、ペンデュラムモンスターのとんでもなさは経験済みだ!召喚する前に封じさせてもらうぜ!」

「そういうことは全部が終わってから言うんだな、おっさん!!俺は手札の《魔装弓士ロビン・フッド》の効果を発動。相手フィールド上にのみモンスターが存在するとき、手札のこのカードを表向きでエクストラデッキに置くことで、俺の墓地・エクストラデッキから魔装ペンデュラムモンスター1体を手札に加える。俺はお前に破壊された《魔装剣士ムネシゲ》を再び手札に加え、セッティングする」

「おいおい、これじゃあ不発同然だな」

《魔装弓士ロビン・フッド》のレベルは3で、《魔装忠臣ユキモリ》と《魔装剣士ムネシゲ》のペンデュラムスケールであれば、ペンデュラム召喚で呼び出すことができる。

翔太は実質ノーコストで幅広いペンデュラム召喚を行える状態にまた戻したのだ。

「俺は再び《魔装剣士ムネシゲ》をセッティング。これで俺はレベル2から8のモンスターを同時に召喚可能。来たれ、時の果てに眠りし英雄の魂。漆黒の魂と契約し、封印から解き放たん!ペンデュラム召喚!叫びをあげる吸血鬼、《魔装鬼ストリゴイ》!悪を裁く森の弓士、《魔装弓士ロビン・フッド》、第4の騎士、《魔装騎士ペイルライダー》!

 

魔装鬼ストリゴイ レベル5 攻撃2100

魔装弓士ロビン・フッド レベル3 攻撃1000

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

 

「一度に3体も特殊召喚か。だが、甘いぜ!俺は罠カード《奈落の落とし穴》を発動!相手が攻撃力1500以上のモンスターを召喚・特殊召喚に成功したとき、そのモンスターは破壊され、ゲームから除外される。これで、《ロビン・フッド》以外のモンスターは破壊だ!」

「俺はカウンター罠《ギャクタン》を発動!相手の罠カードの発動を無効にし、デッキに戻す!」

「何!?」

《ギャクタン》発動と同時に、徳松のフィールドにある《奈落の落とし穴》のソリッドビジョンが消滅し、彼の手でそのカードがデッキに戻される。

「ふぅ…ペンデュラム召喚対策カードへの対策として入れてたおかげで助かったぜ。更に、俺は墓地の《魔装猫バステト》の効果を発動。俺のフィールド上に魔装モンスターが存在するとき、手札・墓地から特殊召喚できる」

翔太の前に現れた砂嵐の中から《魔装猫バステト》が飛び出し、《魔装騎士ペイルライダー》の肩に乗る。

そして、ニャーンとかわいらしく鳴くと、女性客から歓声が上がった。

 

魔装猫バステト レベル1 攻撃0(チューナー)

 

「へぇー、横柄な態度に似合わず、かわいらしいモンスターをデッキに入れてるんだなー」

「ほっとけ。俺はレベル5の《ストリゴイ》とレベル3の《ロビン・フッド》にレベル1の《バステト》をチューニング。勝利と支配をもたらす第2の騎士よ、終戦を告げるその矢で敗者を鎮めよ!シンクロ召喚!《魔装騎士ホワイトライダー》!!」

《魔装猫バステト》が飛び降りると、その姿が緑色のチューニングリングに代わる。

その中に2体のモンスターが入り、緑色の光を放つと、その中から《魔装騎士ホワイトライダー》が現れた。

 

魔装騎士ホワイトライダー レベル9 攻撃3100

 

(おおーー!!翔太選手も負けていません!攻撃力3000の《雨四光》を倒すべく、攻撃力3100の《ホワイトライダー》を召喚しましたーーー!!)

「バトルだ。俺は《ペイルライダー》で《雨四光》を攻撃!クアトロ・デスブレイク!」

「攻撃力の劣る《ペイルライダー》で攻撃だと?何か裏があるみてえだな」

「当然だ。俺は《クリスト》の効果を発動。俺の魔装騎士が相手モンスターを攻撃するとき、このカードを除外することで、ダメージ計算時のみその攻撃力を他の魔装モンスター1体の元々の攻撃力分アップさせることができる」

翔太のフィールドに現れた《魔装祭事クリスト》が黄色い粒子となって消滅し、《魔装騎士ペイルライダー》に宿ろうとしていた。

「済まねえな。俺はカウンター罠《透破抜き》を発動!こいつは手札か墓地で発動するモンスター効果を無効にし、そのモンスターを除外する」

「ちっ!?」

《透破抜き》から放たれる波紋が黄色い粒子を消滅させる。

そして、居合の構えを取っていた《花札衛-雨四光》に両断されそうになる。

「俺は《ムネシゲ》のペンデュラム効果を発動。1ターンに1度、俺のペンデュラムモンスター1体の破壊を無効にする」

《魔装剣士ムネシゲ》が丸楯を投げ、《花札衛-雨四光》と《魔装騎士ペイルライダー》の攻撃を妨害する。

そして、貴族の刀が楯とぶつかったことで発生する衝撃波が翔太を襲う。

「ぐううう…!!」

 

翔太

ライフ2500→2000

 

「ならおれは《ホワイトライダー》で《雨四光》を攻撃!アロー・オブ・ルール!」

《魔装騎士ホワイトライダー》が上空へ飛び、3本の矢を放つ。

1本目の矢は刀を切り裂き、2本目の矢は傘を楯にしてしのぐが、最後の矢は傘に命中した瞬間、爆発を起こす。

その爆発に巻き込まれる形で《花札衛-雨四光》が消滅する。

それと同時に、上空の雨雲が消え、天気が元に戻った。

 

徳松

ライフ2800→2700

 

「(さらに追撃してえところだが、もう俺には攻撃手段がない。近くにアクションカードもない…)俺はこれでターンエンドだ」

 

翔太

手札3→1

SPC4

ライフ2000

場 魔装騎士ホワイトライダー レベル9 攻撃3100

  魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

  魔装忠臣ユキモリ(青) ペンデュラムスケール1

  魔装剣士ムネシゲ(赤)ペンデュラムスケール9

  伏せカード1

 

徳松

手札4

SPC7

ライフ2700

場 伏せカード1

 

「どうだ、おっさん。あんた自慢の《雨四光》は破壊されたぞ?」

「ああ。これでまた一段と面白くなった」

「面白くなった…?」

確かに、徳松の手札とスピードカウンター、ライフは翔太を上回っている。

しかし、《花札衛-雨四光》が破壊され、ペンデュラム召喚対策のカードがことごとくかわされた結果、フィールドに残ったのは伏せカード1枚のみ。

そんな状態で面白くなったと言えるのは、よっぽどの馬鹿か、勝つ自信がまだあるかのどちらかだろう。

「俺のターン、ドロー!」

 

徳松

手札4→5

SPC7→9

 

翔太

SPC4→6

 

「俺は罠カード《貪欲な瓶》を発動!こいつは墓地に存在するカード5枚をデッキに戻し、デッキからカードを1枚ドローする」

 

墓地からデッキに戻ったカード

・花札衛-桜に幕

・花札衛-松に鶴

・花札衛-松

・花札衛-芒に月

・花札衛-雨四光

 

「そして、俺は手札から手札から《Sp-スケアリー・リボーン》を発動。俺のスピードカウンターが7つ以上あるとき、お互いに墓地から攻撃力2000以下のモンスター1体を守備表示で特殊召喚する。俺は墓地から《柳に小野道風》を特殊召喚!」

「だったら、俺は墓地から《魔装霊レブナント》を特殊召喚する」

《Sp-スケアリー・リボーン》から発生する波紋が2体のモンスターを墓地から呼び戻す。

 

魔装霊レブナント レベル2 守備500(チューナー)

花札衛-柳に小野道風 レベル11 攻撃2000(チューナー)

 

Sp-スケアリー・リボーン

通常魔法カード

「Sp-スケアリー・リボーン」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分のスピードカウンターが7つ以上あるとき、互いの墓地に存在する攻撃力2000以下のモンスター1体ずつを対象に発動できる。それらのモンスターを互いのフィールドに特殊召喚する。

 

「そして、《柳に小野道風》の効果は忘れていないだろうな?このカードは特殊召喚されたとき、デッキからカードを1枚ドローし、ドローしたカードが花札衛なら特殊召喚し、それ以外の場合は墓地へ送る」

徳松がデッキトップに指をかけると、そっと翔太に目を向ける。

「さっきのターンを見て、安心したぜ」

「はぁ…?」

「お前さん、ちゃんとデュエルを楽しんでいるみたいでな」

ニッと笑いながら話す徳松に翔太はむっとする。

「何言ってんだ?」

「だって、俺の妨害を潜り抜けてペンデュラム召喚をして、さらにシンクロ召喚までやった。そのときにうれしそうな表情を見せたんだが…気のせいだったか?それに、俺の《雨四光》を倒したとき…どう思ったんだ?」

「俺は…」

徳松の問いかけに、翔太は少し黙り込む。

前のターンに自分がどんな感情を抱いていたのか、もう忘れてしまっていた。

ただ、そのというかけを聞く中で、少なくとも《花札衛-雨四光》を倒したときは妙に達成感のようなものを感じていたのを思い出した。

「楽しみ方は人それぞれだ。それが人を傷つけることになる場合を除いてはな。さしずめ、お前さんが楽しいと思うときは、さっきのような強力なモンスターを攻略した時だな。だったら、《雨四光》を超える俺の最強カードを見せてやる。さぁ、皆の衆。待たせたな!!これから徳松長次郎の奇跡のドローを御覧に入れよう!」

「オオオオーーー!!」

「今度はどんなドローを見せてくれるんだ!?」

会場が盛り上がるなか、徳松は大声で宣言する。

「予告するぜ…これから俺は5体の花札衛を召喚する!!それも…手札を1枚も使わず、花札衛たちの特殊召喚で発動する効果だけでだ!!!」

まさかの宣言に会場が驚きに包まれる。

先ほどの軌跡をのさらに上をいく奇跡のドローを見せようというのだから、なおさらだ。

「まずは1枚目!!さあ、成功を祈っていてくれー!」

「こいこい、こいこい!!」

「こいこいこいこいーーー!!」

「エンジョーーーイ!!」

掛け声に包まれる中、徳松はカードをドローする。

「1枚目、《花札衛-桐に鳳凰》!!」

機械でできた、《鳳凰》のイラストがある桐に鳳凰の花札が徳松のフィールドに現れる。

 

花札衛-桐に鳳凰 レベル12 攻撃2000

 

「そして…《桐に鳳凰》にも、《柳に小野道風》と同じ効果がある!!」

再び会場が掛け声に包まれていく。

(訳が分からねえが…このおっさん、またやりやがる!!)

「エンジョーーーイ!!《花札衛-桜に幕》!」

今度はドローしたカードを見ないまま、そのままフィールドに置く。

そのカードは徳松の言う通り、《花札衛-桜に幕》だった」

 

花札衛-桜に幕 レベル3 攻撃2000

 

「さぁ、3枚目のドローだ!!もっと大きな声で頼むぜーー!!」

「こいこい!!こいこい!!」

「こいこいこいこーーい!!」

最初はコモンズの客だけだったのに、いつの間にかトップスの客の一部も掛け声に参加する。

徳松のデュエルがトップスにだんだん受け入れられつつあるように。

「エンジョーーーイ!!《花札衛-芒に月》!!」

 

花札衛-芒に月 レベル8 攻撃2000

 

「そして、4枚目だ!!」

「こいこい、こいこい!!」

「こいこいこい…」

(こーーーい!!あ、ついうっかり…。うー、MCは中立でなきゃいけないんだったーー!)

「エンジョーーイ!!《花札衛-松に鶴》!!」

 

花札衛-松に鶴 レベル1 攻撃2000

 

「さあ…5枚目いくぜーー!!といっても、この状態だと花札衛をドローしたとしても手札に加えるだけだがな」

そういいながら、徳松はこのターンで7回目のドローを行う。

「ドローしたカードは《花札衛-松》。こいつは手札に加わる」

宣言通り、徳松のフィールドに5体の花札衛が現れた。

《花札衛-柳に小野道風》がいるということは、ここからの展開は想像できる。

「《柳に小野道風》の効果により、こいつら5体のレベルは2として扱われる。いくぜ…!俺は4体の花札衛にレベル2の《花札衛-柳に小野道風》をチューニング!!その神々しきは聖なる光 、今、天と地と水と土と金となりて照らせ!」

5体の花札衛が重なり合い、そこに5色の光が発生する。

そして、その光に反応したのか花札が5枚すべて粉々に砕け散り、そこから紫色の甲冑をみにつけ、背中に薄茶色の帯でつながっている5つの青い太鼓を浮かべた侍が現れる。

「シンクロ召喚!出でよ、レベル10!《花札衛-五光》!!」

 

花札衛-五光 レベル10 攻撃5000

 

「おおおーーーーー!!!!」

徳松の最強カードの登場に会場が大いに盛り上がる。

そして、太刀を引き抜いて翔太のフィールドにいる2体の騎士と向き合う。

「バトルだ!俺は《花札衛-五光》で《ペイルライダー》を攻撃!!」

(く…!!)

今の翔太のライフは2000。

攻撃力2500の《魔装騎士ペイルライダー》への攻撃を許してしまうと、ライフが尽きてしまう。

翔太はDフランクをジャンプさせ、上空に浮かんでいるアクションカードを手にする。

「俺はアクション魔法《大脱出》を発動!バトルフェイズを終了させる!」

「《花札衛-五光》の効果発動!相手の魔法・罠カードの発動を無効にし、破壊する!」

「何!?」

発動した《大脱出》のカードが急に真っ二つに切れて消滅する。

 

大脱出(アニメオリカ)

アクション魔法カード

(1):バトルフェイズを終了させる。

 

翔太

SPC6→7

 

「更に、戦闘を行う相手モンスターの効果をバトルフェイズ終了時まで無効にする!!」

「ちぃ…!!」

《魔装騎士ペイルライダー》がマシンガンを発射して、《花札衛-五光》をけん制するが、背中についている太古から発生する波紋が弾道を狂わせ、いずれも《花札衛-五光》にかすりもしない。

やむを得ず、光剣で応戦しようとしたが、攻撃力5000のそのモンスターの力に太刀打ちできるはずもなく、力ずくで真っ二つにされそうになる。

「ならおれは罠カード《ハーフ・カウンター》を発動!俺のモンスターが相手モンスターに攻撃されるとき、相手モンスターの元々の攻撃力の半分を得る!」

《ハーフ・カウンター》発動と同時に《魔装騎士ペイルライダー》の五芒星が光り、光剣の出力が増幅する。

それを見て、これ以上攻撃をしても利がないと判断したのか、《花札衛-五光》が徳松のそばまで下がっていった。

「《花札衛-五光》の効果!こいつがいる限り、俺のフィールド上に存在する花札衛は戦闘では破壊されない」

「《魔装剣士ムネシゲ》のペンデュラム効果。1ターンに1度、俺のペンデュラムモンスター1体の破壊を無効にする」

 

花札衛-五光(アニメオリカ・調整)

レベル10 攻撃5000 守備5000 シンクロ 光属性 戦士族

チューナー+チューナー以外のモンスター4体

(1):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分フィールド上に存在する「花札衛」モンスターは戦闘では破壊されない。

(2):1ターンに1度、魔法・罠カードが発動したときに発動できる。その発動を無効にし、破壊する。この効果の発動に対して、相手は魔法・罠・モンスター効果を発動できない。

(3):このカードが相手モンスターと戦闘を行う場合、バトルフェイズ終了時までその相手モンスターの効果は無効化される。

 

「うう…!?」

戦いが終わると同時に、翔太の視界が真っ白になっていく。

(まさか…こいつも俺の記憶の鍵…!?)

 

白い光が消えると、翔太の視界に広がる景色がスタジアムから静寂に包まれた、石でできた部屋の中になっていた。

そこには剣で突き殺された女性と、病気のためか、倒れて死んでいる男がいる。

そして、2人のそばにはオレンジ色の髪で白い服を着た少年がいる。

「父上…母上…。どうして…!?」

母親だと思われる女性の遺体が彼の目の前にあることから、おそらく彼女が彼をかばったと思われる。

そして、彼を殺そうとしたのは病気で死んだ男のようだ。

ショックを受ける彼の背後に紫色の影が現れ、彼をそそのかす。

お前は母親が殺され、父親に呪いの王子とさげすまれた悲劇の王子ではない。

両親を自らの手で殺し、世界を戦乱と虐殺の嵐に落とす狂気の王子だと…。

そして、影は少年の体に1枚のカードを埋め込んだ。

「あの影はいったい…??」

再び翔太の視界を白い光が包み込む。

(このカードの記憶はここまでか…。残りあと5枚…)

 

光が消えると、景色が再びスタジアムの中に戻っていた。

「これでバトルフェイズ終了だが…まだ俺のターンは終わってねえ!俺は《スピード・ワールド・A》の効果を発動!スピードカウンターを4つ取り除き、相手に俺の手札をすべて見せ、手札のSpの数×400のダメージを与える!」

宣言と同時に、徳松の手札がホルダーでスキャンされる。

そして、翔太のディスプレイに徳松の手札の内容が表示される。

 

徳松の手札

・花札衛-松

・デストラクション・ジャマー

・Sp-ダッシュ・ビルファー

・Sp-ギャップ・ストーム

・Sp-ゼロ・リバース

 

「く…!!」

徳松の手札の中にあるSpは3枚。

そして、スピードカウンターは9つ。

この後、彼が2枚そのダメージ効果を発動した場合、合計2400ポイントのダメージが発生し、翔太が負けてしまう。

「さあ、ここをどう切り抜ける?坊主!!」

《花札衛-五光》の背中の太鼓が鳴り、それと同時に衝撃波が翔太を襲う。

「ぐううう!!」

 

翔太

ライフ2000→800

SPC7→6

 

徳松

SPC9→5

 

(よかった…俺が記憶を見ている間は時間が進んでいなかったみたいだな)

一度目の衝撃波が収まるが、数秒もたたないまま再び衝撃波が発生する。

「俺は手札の《魔装楯タカモリ》の効果を発動!こいつを手札から特殊召喚することで、俺が受ける効果ダメージを0にする!」

左腕に長さが約150センチ、幅が約50センチあり、赤と黒でできた大きなS字が描かれている白い木製の楯を持つ、左腕に五芒星が刻まれた黒い坊主頭で、太い体の男が現れ、衝撃波を受け止める。

 

魔装楯タカモリ レベル4 守備2000(チューナー)

 

徳松

SPC5→1

 

魔装楯タカモリ

レベル4 攻撃1000 守備2000 チューナー 地属性 戦士族

(1):1ターンに1度、自分が効果によるダメージを受けるときに発動できる。このカードを手札から特殊召喚し、そのダメージを0にする。

(2):このカードが「魔装」SモンスターのS素材となる場合、このカードをチューナー以外のモンスターとして扱うことができる。

 

「ほぉ、やるじゃねえか坊主!!俺はカードを1枚伏せ、ターンエンドだ!」

 

翔太

手札1→0

SPC6

ライフ800

場 魔装騎士ホワイトライダー レベル9 攻撃3100

  魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

  魔装霊レブナント レベル2 守備500(チューナー)

  魔装楯タカモリ レベル4 守備2000(チューナー)

  魔装忠臣ユキモリ(青) ペンデュラムスケール1

  魔装剣士ムネシゲ(赤)ペンデュラムスケール9

 

徳松

手札5→4(《花札衛-松》《Sp-ダッシュ・ビルファー》《Sp-ギャップ・ストーム》《Sp-ゼロ・リバース》)

SPC1

ライフ2700

場 花札衛-五光 レベル10 攻撃5000

  伏せカード1

 

「これが…俺のラストターンといったところか…」

翔太はフウッと深呼吸をしてから、デッキトップに指をかける。

(《花札衛-五光》。魔法・罠カードを無効にするだけでく、戦う相手モンスターの効果をかき消し、更に破壊耐性まである究極のモンスター…)

ゆっくりと、指に掛かったカードがデッキから離れていく。

「(だが…こいつを倒せば、勝てる!!)俺のターン!!」

 

翔太

手札0→1

SPC6→8

 

徳松

SPC1→3

 

「俺は手札から《Sp-ハーフ・シーズ》を発動!俺のスピードカウンターが3つ以上あるとき、相手モンスター1体の攻撃力を半分にし、減らした数値分俺のライフを回復させる!」

(このタイミングで《ハーフ・シーズ》??それでも、《五光》の攻撃力が2500で戦闘破壊できない点では変わりねえ。目的はこいつをサンドバックにすることか?)

徳松は翔太のフィールドをじっと見る。

(《ユキモリ》のペンデュラム効果はこいつがペンデュラムゾーンに存在するとき、1度だけ魔装モンスター1体は相手のモンスター効果を受けなくする。だが、《ペイルライダー》を除いてそんな効果で今、有利になれるモンスターはいねえ。それに、俺の伏せたカードが何か知らねえわけじゃないだろうしな)

徳松は自分が伏せたカードである《デストラクション・ジャマー》を見る。

(このカードはフィールド上のモンスターを破壊するカード効果を無効にし、破壊する。こいつで《ペイルライダー》の効果を防ぐことができる。なら、発動する目的は…まさか!?)

次に注目したのは《魔装霊レブナント》と《魔装楯タカモリ)、エクストラデッキにいるペンデュラムモンスターだった。

(《魔装楯タカモリ》はチューナー以外のモンスターとしても使えるチューナー。ペンデュラム召喚によって素材はどうにでもなる状況だ。更に強いシンクロモンスターをシンクロ召喚し、力づくで押し切る気か!?)

《魔装弓士ロビン・フッド》をペンデュラム召喚すれば、レベル5か7、9のシンクロモンスターを召喚できる。レベル9のシンクロモンスターが《魔装剛毅クレイトス》や《魔装騎士ホワイトライダー》のような高い攻撃力を誇るモンスターであれば、押し切られる可能性が高い。

《魔装鬼ストリゴイ》であっても高いレベルのシンクロモンスターが出る可能性が高い。

そして、翔太のエクストラデッキの攻勢がどうなっているのかは当然わからない。

ならば、やるべき手は…。

「俺は《五光》の効果を発動!1ターンに1度、魔法・罠カードの発動を無効にし、破壊する!!」

《花札衛-五光》の刀で、《Sp-ハーフ・シーズ》が破壊される。

これで、翔太の手札が再び0枚になった。

「俺は《スピード・ワールド・A》の効果を発動!スピードカウンターを7個取り除き、デッキからカードを1枚ドローする」

翔太は再びデッキトップに指をかける。

(これで、お膳立ては済んだ。あとはこいつが来るだけだ…)

 

「翔太君…ってあれ??」

テレビで応援する伊織が隣に目を向ける。

そこにはビャッコがおらず、あるのはみたらし団子の櫛が置いてある小皿だけだ。

「ビャッコちゃん…??」

口元がみたらし団子のたれで汚れている伊織は周りをきょろきょろし、彼を探した。

 

スピードカウンターが7つ減ったのを確認したのと同時に、翔太はカードをドローする。

そして、ドローしたカードを見る。

「おっさん…」

「ん…なんだ、坊主?」

「俺の勝ちだ」

静かに勝利宣言をした翔太に観客席に動揺が走る。

「俺は手札から《魔装妖ビャッコ》を召喚!」

「キュイーー!!」

召喚と同時に、翔太の頭の上にビャッコがみたらし団子を食べながら現れる。

それのたれが垂れて、ヘルメットにつく。

「お前…出る場所を間違えるな!!」

「キュキュー??」

なんでそんなことを言っているのかわからないと言いたげに首をかしげる。

そして、そのまま気にせずにみたらし団子を食べ、くしをランドセルにしまう。

 

魔装妖ビャッコ レベル3 攻撃400

 

翔太

SPC8→1

 

「俺はレベル3の《ビャッコ》にレベル4の《タカモリ》をチューニング!可憐なる妖魔よ、その秘められし妖の力を解放せよ。シンクロ召喚!《魔装妖キュウビ》!!」

「キューーーー!」

翔太の頭の上から飛び降りたビャッコが4つのチューニングリングをくぐり、その姿を《魔装妖キュウビ》へと変えていく。

 

魔装妖キュウビ レベル7 攻撃2000

 

「そして、俺は《ユキモリ》のペンデュラム効果を発動!こいつがペンデュラムゾーンに存在するとき、1度だけ俺の魔装モンスターをターン終了時まで相手モンスターの効果から守る!」

《魔装忠臣ユキモリ》の五芒星が光りだすと、それに反応してフィールド上の魔装モンスターたちの五芒星が光る始める。

 

魔装忠臣ユキモリ

レベル7 攻撃2200 守備1000 風属性 戦士族

【Pスケール:青9/赤9】

「魔装忠臣ユキモリ」の(2)の効果はこのカードがPゾーンに表側表示で存在する限り1度しか発動できない。

(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。

(2):自分のターンのメインフェイズ時に発動できる。ターン終了時まで自分フィールド上に存在する「魔装」モンスターは相手のモンスター効果を受けない。

【モンスター効果】

「魔装忠臣ユキモリ」の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊したとき、自分の墓地・エクストラデッキに表向きで存在する「魔装」モンスター1体を対象に発動できる。そのカードを手札に加える。

 

「バトルだ。俺は《キュウビ》で《五光》を攻撃!」

「攻撃力2000のモンスターで攻撃力5000の《五光》を攻撃だと!?」

「《キュウビ》が相手モンスターと戦闘を行う時、ダメージステップ終了時までそのモンスターの効果を無効にし、攻撃力・守備力を0にする!」

「キュイーーーー!!」

ビャッコのしっぽに宿った9つの火球が発射される。

その炎を受けた《花札衛-五光》の鎧が解け始め、背中にある太鼓が砕け散る。

そして、解けて弱った部分に狙いを定めたビャッコが思いっきりそこに向けて体当たりをした。

「まさか…《五光》が…」

体当たりを受けた《花札衛-五光》は空の彼方へ飛んで行ってしまった。

 

徳松

ライフ2700→700

SPC3→1

 

「これで最後だ!《ペイルライダー》でダイレクトアタック!」

《魔装騎士ペイルライダー》がマシンガンを発射する。

(ここまでか…済まねえな)

徳松は収容所にいる2人の子分を思い出す。

彼らはエンジョイ長次郎としての自分を取り戻したあと、とある脱獄計画が発動した際におとりとなり、自分に脱出の機会を与えてくれた。

そして、彼らは自分にもう1度表舞台に出てほしいと言ってくれた。

(けど…悔いはねえさ)

弾丸が次々と徳松のDホイールに着弾する。

そして、ライフが0になったのと同時にDホイールが止まった。

 

徳松

ライフ700→0



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第64話 影

「はあはあはあ…」

デュエルが終わり、Dホイールを止めた翔太がゆっくりと息を整える。

久しぶりにハードなデュエルをしたことで、かなり疲れはしたものの、達成感があった。

「よぉ、いいデュエルだったなぁ」

Dホイールから降り、いつの間にヘルメットとライディングスーツを外し、緑色の甚平姿と茶色い下駄をはいた姿になった徳松が敗れたにもかかわらず、うれしそうに笑いながら彼に声をかける。

「まぁな。おっさんにはきついデュエルだったか?」

「おいおい、おっさんはないだろ。…このまま勝ち進めよ?」

「はぁ?」

勝ち負けは関係なく、楽しめたかだけが重要だと説く徳松らしからぬ最後の言葉に疑問を持つ。

そんな彼を無視して、徳松は観客席を見る。

「デュエルとはすなわち、人生なり。負けを恥じず、勝って驕らず。すなわち、レッツエンジョイ!」

自らの信条を表現する言葉を観客たちに投げかける。

そんな彼に向けて、客席からは惜しみない拍手が送られる。

それに満足した徳松はじっと自分が入った門に目を向ける。

「さぁ…参ろうか」

そして、彼は静かにその門の中へと入っていった。

「ん…?」

ふと、周囲を見渡す。

召喚したとき、そばにいたはずのビャッコの姿が見えないのだ。

「あいつ、どこへ行ったんだ?」

 

 「ふぅぅぅ、翔太君が勝ったー」

あまりにもハラハラしたデュエルのためか、伊織はフウウと息を整える。

「キュイー…」

「あ、ビャッコちゃん!どこへ行ってたのー??」

いつの間に隣に現れたビャッコを伊織がモフモフし始める。

なお、モハメドは少し残念そうにしている。

「エンジョイ長次郎…叶うならば、まだあんたのデュエルを見たいぜ。叶うなら…」

「何を言っているんだ?まるで、もう二度と見ることができないみたいな言い草だな」

「二度と見れないか…。フッ、そうかもな」

「…?」

どういうことだと問いかけようとする鬼柳だが、テレビではすぐに次の試合の放送が始まる。

(さあみなさん、お待たせしました!!これより、フレンドシップカップ1回戦第4試合を開始します…」

 

 第4試合が始まる中、治安維持局長官室ではロジェが自分のノートパソコンにリアルタイムで送られるデータを見ながら笑みを浮かべていた。

もちろん、それの左隣にはチェス盤と駒が置かれている。

「権現坂昇、風魔月影…。ランサーズの2人は少々残念な結果でしたが、秋山翔太…彼からは今後も良質なデータを取ることができそうだ」

ディスプレイにはこのフレンドシップカップでデュエルをした権現坂、クロウ、月影、シンジ、翔太、徳松のデッキ内容や戦術などが数値化されたうえで表示されている。

そして、集まった膨大なデータを自らの手で整理していく。

権現坂のデータ整理を終え、次に月影のものに手を付けようとしたとき、女性職員の声がノートパソコンから発せられる。

(長官。お客様です)

「今は忙しい。時間を改めるようにお伝えしなさい」

(わかりました。お伝えします…って、ええ??らりるれろ??)

らりるれろ、という言葉を聞いたロジェの手がぴたりと止まる。

(あの、らりるれろとはどういう…!?…帰られました)

事情の分からない職員は混乱しながらも、最低限の報告を行う。

「ほぉ…」

指示を願う職員をよそに、静かに笑みを浮かべる。

そして、一方的に通信を切ると、別の人物と通信をつなげる。

「君の出番ですよ」

それだけ言い残すと、ロジェは先ほどと同じように通信を切った。

 

 イリアステル区の真下に位置するスラム街、旧イリアステル区。

ほかのコモンズの地区とは異なり、高層ビルや議事堂など中心都市だったころの面影が色濃く残る地域だ。

しかし、中心都市の機能がトップスのイリアステル区に移った今はスラム街と化し、貧民やギャングのたまり場と化している。

その地区の南東部に位置する、土も花もない花壇と機能を停止し、水のなくなった噴水が残る公園にブーンの姿があった。

「…。らりるれろ」

噴水のそばで、ブーンが右手に握るトランシーバーに向かってそう口にする。

そして、彼の背後に車いすに乗った男が現れる。

「遅かったですね、ブーンさん」

「ふん…貴様が回りくどいやり方を決めるからだ」

トランシーバーを置いたブーンはゆっくりと後ろの振り返る。

そして、車いすの男の名前を呼ぶ。

「エリク・ファビアン」

名前を呼ばれたエリクはロジェに似たうっすらとした笑みを浮かべ、左手に義手から右手を離す。

「どういうつもりだ?シェイドと同盟を結ぶとは…?」

「有益な情報を得る一番の方法をとっただけですよ」

「ふん…スパイか」

「あなたたちジェルマンこそ、私と似た行動をしているのではないのですか」

「何のことだろうな」

そういいながら、ブーンは葉巻たばことピンク色の100円ライターを出す。

「吸うか?サティスファクションタウン産だ」

「いえ…この体になってしまってから、健康に気を遣うようになりまして。お気持ちだけいただきます」

「そうか」

煙草に火をつけ、口に加える。

紙巻のものとは違い、ゆっくりと燃える葉巻たばこからはゆっくりと黒い煙が空へ登っていく。

「頼まれた品物は用意しているか?」

「ええ…。こちらです」

車いすをブーンのそばまで移動させたエリクが彼にUSBメモリを渡す。

「これがあなたとロジェが望んでいる品です。ですが、念のためにパスワードを入れておきました。仮に私の正体がばれ、殺された際に情報が渡らないように…」

そういうと、エリクは左腕のリモコンを操作する。

そして、車いすからデュエルディスクとデッキが出現し、彼のひざ元にセットされる。

「なるほど…。デュエルをしなければ解除されないと」

「ええ。必要な手順を踏んだうえで…ですが」

「いいだろう。この次元に来てから、ろくにデュエルをしていないからな」

エリクに無理をさせないように、ブーンが自ら歩いて距離を置き、それからデュエルディスクを展開する。

「「デュエル!!」」

 

エリク

手札5

ライフ4000

 

ブーン

手札5

ライフ4000

 

「私は手札から儀式魔法《黒竜降臨》を発動します。このカードは手札・フィールドから合計レベルが4以上になるようにモンスターをリリースし、手札から《黒竜の聖騎士》を儀式召喚します。私は手札の《デーモンの召喚》をリリース」

エリクのフィールドに《デーモンの召喚》が現れる。

そして、すぐにそのモンスターは自らの姿を6つの黒い火の玉に替え、円陣を組む。

「黒竜を呼ぶ闇の騎士よ、悪魔の叫びに応え、地獄より舞い戻れ。儀式召喚!レベル4!《黒竜の聖騎士》!」

エンジンから黒い火柱が上がると、その中から《青眼の白龍》と似た姿をした黒い竜が飛び出す。

そして、その背には右手に片手剣を握り、その竜を模した黒い鎧を着た褐色の騎士が乗っている。

 

黒竜の聖騎士 レベル4 攻撃1900

 

「このカードをリリースすることで、手札・デッキからレッドアイズモンスター1体を特殊召喚できます。私は《黒竜の聖騎士》をリリースし、デッキから《真紅眼の黒炎竜》を特殊召喚」

聖騎士が姿を消し、黒竜がその身を翼で隠す。

すると、体にひびが入り、砕けると同時にその中からあの黒竜と比べると倍近い大きさの竜が現れる。

《真紅眼の黒竜》に似た姿をしているが、翼には紅蓮の炎が宿り、体の色も光沢のある純粋な黒に変化している。

 

真紅眼の黒炎竜 レベル7 攻撃2400

 

「いきなりエースカードの登場か」

《真紅眼の黒炎竜》を見て、ブーンがつぶやく。

先ほど儀式素材となった《デーモンの召喚》と比較すると攻撃力は確かに控えめだが、問題はその効果だ。

といっても、今の状態でその効果が発動されることはないが。

「さらに私はモンスターを裏守備表示で召喚。ターン終了」

 

エリク

手札5→0

ライフ4000

場 真紅眼の黒炎竜(通常モンスター扱い) レベル7 攻撃2400

  裏守備モンスター1

 

ブーン

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「俺のターン、ドロー」

 

ブーン

手札5→6

 

「我々ジェルマンはオベリスク・フォースごとき歯車とは違う。私は手札から《鋼の歯車歩兵》を召喚」

頭頂部に金属製の大型歯車を付けた、茶色い二足歩行兵器が現れる。

引っ越し用の大型段ボールに似た形で茶色い装甲をした機械に2本の細い脚をつけただけという、傍から見たら飾りのない兵器だ。

 

鋼の歯車歩兵 レベル2 攻撃500

 

「このカードの召喚に成功したとき、私のフィールド上にエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターが存在しない場合、デッキからレベル4以下のメタルギアモンスター1体を召喚できる。私はデッキから《鋼の歯車騎兵》を特殊召喚」

《鋼の歯車歩兵》の装甲の両サイドに備え付けられているピストルから信号弾が上空に向けて発射される。

上空で赤い光が発せられると、公園付近のビルの窓ガラスを突き破り、3体の兵士が現れる。

黒いガスマスクのようなフルフェイスのメットをつけ、全身を黒いゴム製のスーツで身を包んだ兵士で、両肩に鋼の歯車を取り付けている。

「なるほど…3体いるのは特殊召喚された《騎兵》のせいですか」

「そうだ。こいつの召喚に成功したとき、手札・デッキから《鋼の歯車騎兵》2体を特殊召喚できる。ただし、この効果で特殊召喚されたこいつらの攻撃力・守備力は0となり、効果は無効となる」

効果が無効になった仲間の前に、通常召喚された《鋼の歯車騎兵》が立ち、腰にさしているククリナイフを抜いて《真紅眼の黒炎竜》を威圧する。

 

鋼の歯車騎兵 レベル3 攻撃1000

鋼の歯車騎兵×2 レベル3 攻撃1000→0

 

鋼の歯車歩兵(メタルギア・ウォーカー)

レベル2 攻撃500 守備500 効果 地属性 機械族

「鋼の歯車歩兵」の効果を発動したターン、自分は「メタルギア」以外のモンスターを特殊召喚できない。

(1):このカードの召喚に成功したとき、自分フィールド上にエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターが存在しない場合に発動できる。デッキから、レベル4以下の「メタルギア」モンスター1体を召喚する。

 

鋼の歯車騎兵(メタルギア・トルーパー)

レベル3 攻撃1000 守備1000 効果 地属性 機械族

「鋼の歯車騎兵」の効果は1ターンに1度しか発動できず、効果を発動したターン、自分は「メタルギア」以外のモンスターを特殊召喚できない。

(1):このカードの召喚に成功したとき、自分の手札・デッキに存在する同名の「メタルギア」モンスター2体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効となり、攻撃力・守備力は0となる。

 

エリクとは異なり、下級モンスターを一気に4体もそろえたブーン。

だが、これはあくまでおぜん立てに過ぎない。

「さらに俺は手札から《鋼の歯車融合》を発動。俺のフィールド上のメタルギアを融合する。2体の攻撃力・守備力を失った兵士と《鋼の歯車歩兵》が背後に現れた渦の中に消えていく。

「任務を遂行する感情無き兵士よ、大地を走る兵器よ、歯車を絡ませ、任務遂行の標となれ。融合召喚!現れろ、レベル8!《鋼の歯車T-REX》!」

左側にレドーム、右側にレールガンを装備し、更にガトリングやミサイル、レーザーを装備した、2本のキャタピラ付きの太い足を持つ兵器が現れる。

鉛色で先ほどの《鋼の歯車歩兵》の数倍の大きさを誇り、《MLX-魔装騎士ペイルライダー・ムーンレイス》以上に贅沢な武装を持つその兵器はエリクを威圧するようにレールガンを向けた。

 

鋼の歯車T-REX レベル8 攻撃2800

 

「《鋼の歯車T-REX》は1ターンに2度攻撃することができ、さらに守備表示モンスターを攻撃したとき、貫通ダメージを与える」

レドームがエリクの《真紅眼の黒炎竜》と裏守備モンスターの位置を把握する。

そして、対戦車ミサイルの発射準備を整える。

「ファイア!」

ブーンの掛け声とともに対戦車ミサイルが4発発射される。

《真紅眼の黒炎竜》の口から炎のブレスが放たれ、2発は溶解するが、1発がその竜の腹部に命中してしまう。

そして、もう1発のミサイルは裏守備モンスターに直撃する。

 

裏守備モンスター

メタモルポッド レベル2 守備600

 

エリク

ライフ4000→3600→1400

 

「《メタモルポッド》のリバース効果発動です。お互いに手札をすべて捨て、デッキからカードを5枚ドローします」

「わざわざ俺の墓地肥やしを手伝うとはな…」

 

ブーン

手札6→4→5

 

エリク

手札0→5

 

手札から墓地へ送られたカード

ブーン

・機械複製術

・聖なるバリア―ミラーフォース

・鋼の歯車蟷螂

・鋼の歯車狼

 

「俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド。(さて…奴は《黒竜降臨》をどう使うか…)」

 

エリク

手札5

ライフ1400

場 なし

 

ブーン

手札5→3

ライフ4000

場 鋼の歯車T-REX レベル8 攻撃2800

  伏せカード2

 

ブーンが注目したのは前のターンにエリクが発動した《黒竜降臨》だ。

このカードはただの儀式魔法ではなく、《リチュアの儀水鏡》や《影霊衣の降魔鏡》のような副次的な効果を持ち合わせている。

それも、戦局を一変させかねない効果を。

「私のターン、ドロー」

 

エリク

手札5→6

 

「私は墓地の《黒竜降臨》の効果を発動。このカードを墓地から除外することで、デッキからレッドアイズ魔法・罠カードを1枚手札に加えることができます。私はデッキから《真紅眼融合》を手札に加えます」

エリクのデュエルディスクから《真紅眼融合》が自動排出され、ディスクの真下に設置されているサブアームがそれを回収し、エリクの手札に加えようとする。

「罠発動!《マインドクラッシュ》!カード名を1つ宣言し、宣言したカードが相手の手札に存在する場合、そのカードをすべて墓地へ送る。俺が宣言するのは…《真紅眼融合》だ」

「なるほど。読んでいましたか。私のここからの行動を」

「不用意に《メタモルポッド》で俺を手伝った結果だ」

フッと笑みをこぼしたエリクはサブアームを操作し、せっかくサーチしたカードを墓地へ送る。

そして、ブーンに自分の手札を公開した。

 

エリクの手札

・真紅眼の遡刻竜

・伝説の黒石

・レッドアイズ・インサイト

・次元幽閉

・真紅眼の鎧旋

 

「ちっ、まだサーチカードがあったか」

「ええ、ただこのカードは手札にあってこそ価値のあるカード。それを失うことになるのは惜しいですが…。私は手札から魔法カード《レッドアイズ・インサイト》を発動。手札のレッドアイズモンスター1体を墓地へ送り、デッキから《レッドアイズ・インサイト》を除くレッドアイズ魔法・罠カードを1枚手札に加えます。私はデッキから《真紅眼融合》を手札に加えます」

再びサブアームが先ほどのように《真紅眼融合》を回収し、エリクの手札に加える。

そして、それと交換で《真紅眼の遡刻竜》が回収され、墓地へ送られた。

「私は手札から魔法カード《真紅眼融合》を発動。手札・デッキ・フィールドのモンスターを素材にレッドアイズ融合モンスターを融合召喚し、その名前を《真紅眼の黒竜》に変化させます。私が融合素材とするのは《真紅眼の黒竜》と《真紅眼の凶雷皇-エビル・デーモン》」

エリクのフィールドにむき出しとなっている骨格と翼が黒く染まっている《デーモンの召喚》と《真紅眼の黒竜》が現れ、背後に現れた赤黒い渦の中に消えていく。

「真紅の眼を持つ怒りの竜よ、雷鳴纏いし悪魔の皇帝の力を宿し、地獄の力を解き放て。融合召喚!」

渦が爆発し、その中から融合素材となった2体のモンスターの特徴を兼ね備えた竜が現れる。

その姿は翼をもつ黒い人型の竜といえるもので、《真紅眼の凶雷皇-エビル・デーモン》のように体の至る個所の骨格がむき出しとなっている。

「悪魔の名を持つ真紅の竜、《悪魔竜ブラック・デーモンズ・ドラゴン》」

凶暴なモンスターの登場であるにもかかわらず、冷静に声色をあまり変えずに召喚宣言するエリク。

ブーンから見ると、彼とそんな竜がとても似合わないように見えた。

 

悪魔竜ブラック・デーモンズ・ドラゴン(《真紅眼の黒竜》扱い) レベル9 攻撃3200

 

「攻撃力3200か…。だが、そう簡単にダメージを受けるわけにはいかん。俺は速攻魔法《リミッター解除》を発動!俺のフィールド上に存在する機械族モンスターの攻撃力を倍にする」

《リミッター解除》発動と同時に、《鋼の歯車T-REX》の出力が強制的に上昇していき、搭載されているレールガンから電気が発せられる。

照準はすでに目の前の悪魔竜に向けられていて、動いたらすぐに発射できることをアピールしている。

 

鋼の歯車T-REX レベル8 攻撃2800→5600

鋼の歯車騎兵 レベル3 攻撃1000→2000

 

「攻撃力5600ですか…」

エリクは再び自分の手札を確認する。

しかし、今の自分に攻撃力5600の《鋼の歯車T-REX》を破壊する手立てはない。

とはいうが、《リミッター解除》の代償のおかげでその必要もないが。

「では、私は《ブラック・デーモンズ・ドラゴン》で《騎兵》を攻撃。ライトニング・ブラックフレア」

《悪魔竜ブラック・デーモンズ・ドラゴン》の口から回転する黒い炎の弾丸が発射される。

回転スピードは進むごとに上がっていき、それとともに電気をまとっていく。

火球を受けた《鋼の歯車騎兵》は爆発し、消滅する。

「グウウ…ウ!!」

 

ブーン

ライフ4000→2800

 

「まだです。《ブラック・デーモンズ・ドラゴン》の効果発動。このカードが戦闘を行ったバトルフェイズ終了時、墓地からレッドアイズモンスター1体の元々の攻撃力分のダメージを与え、そのモンスターをデッキに戻す。メテオ・フレア」

攻撃を終えた悪魔竜がブーンに向けて黒い炎のブレスを放つ。

そのブレスは次第にその姿を《真紅眼の黒炎竜》に替え、彼を焼き尽くしていく。

「うおおおおお!?!?」

 

ブーン

ライフ2800→400

 

「私はカードを2枚伏せ、ターンエンド」

「それと同時に、《リミッター解除》の効果を受けた《鋼の歯車T-REX》は破壊される」

強引な出力上昇で無理をしたせいか、《鋼の歯車T-REX》が全身から煙を放ち、その場で倒れてしまう。

そして、頭部のコックピットが開き、そこから《鋼の歯車騎兵》が出てくる。

「《鋼の歯車T-REX》は破壊され墓地へ送られたとき、墓地からレベル4以下のメタルギアモンスターを効果を無効にして特殊召喚できる。鋼の歯車はただでは止まらん、ということだ」

 

エリク

手札5→1(《伝説の黒石》)

ライフ1400

場 悪魔竜ブラック・デーモンズ・ドラゴン(《真紅眼の黒竜》扱い) レベル9 攻撃3200

  伏せカード2

 

ブーン

手札3

ライフ400

場 鋼の歯車騎兵(《鋼の歯車T-REX》の影響下) レベル3 守備1000

 

鋼の歯車T-REX(メタルギア・レックス)

レベル8 攻撃2800 守備2500 融合 地属性 機械族

「鋼の歯車」モンスター×3

このカードは「鋼の歯車融合」の効果でのみ特殊召喚できる。

(1):このカードは1度のバトルフェイズに2回攻撃することができる。

(2):このカードが相手の守備表示モンスターを攻撃するとき、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

(3):このカードが破壊され墓地へ送られたとき、自分の墓地に存在するレベル4以下の「鋼の歯車」モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。

 

「俺のターン、ドロー」

 

ブーン

手札3→4

 

「《鋼の歯車融合》の効果発動。墓地のメタルギア融合モンスター1体をエクストラデッキに戻すことで、墓地のこのカードを手札に加えることができる」

《鋼の歯車融合》を手札に加え、笑みを浮かべるブーン。

フィールドに融合素材をそろえる体勢が整っている限り、何度でも融合モンスターをよみがえらせることができる。

そして、場合によっては別の融合モンスターで牽制する。

これがオベリスク・フォースのアンティーク・ギアデッキにはない、ジェルマンのメタルギアデッキの特徴だ。

 

鋼の歯車融合(メタルギア・フュージョン)

通常魔法カード

「鋼の歯車融合」の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上から「メタルギア」融合モンスターモンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

(2):このカードが墓地に存在するとき、自分の墓地に存在する「メタルギア」融合モンスター1体を対象に発動できる。そのカードをエクストラデッキに戻し、このカードを手札に加える。

 

「そして、このカードは俺のフィールド上にメタルギアモンスターが存在するとき、手札から特殊召喚できる。《鋼の歯車狼》を特殊召喚」

黒い装甲で全身がおおわれ、しっぽの先にチェーンソーを装備している狼型の兵器が現れる。

なお、鋼の歯車はその胴体にベルトのような固定されている。

 

鋼の歯車狼 レベル2 攻撃400

 

鋼の歯車狼(メタルギア・ウルフ)

レベル2 攻撃400 守備400 効果 地属性 機械族

(1):自分フィールド上に「メタルギア」モンスターが存在する場合、このカードを手札から特殊召喚できる。

 

「更に、俺は手札から永続魔法《鋼の歯車工場》を発動。このカードが発動したとき、墓地からレベル4以下のメタルギアモンスターを効果を無効にして特殊召喚できる。俺は墓地から《鋼の歯車歩兵》を特殊召喚」

《鋼の歯車工場》のソリッドビジョンの中に、先ほど破壊された《鋼の歯車T-REX》の残骸が回収されていき、それが《鋼の歯車歩兵》に修復されていく。

 

鋼の歯車歩兵 レベル2 攻撃500

 

「そして、俺は手札から魔法カード《鋼の歯車融合》を発動。俺が融合素材にするのはフィールド上の3体のメタルギアだ」

「再び《鋼の歯車T-REX》を召喚するつもりですか?」

「いいや。大地を走る兵器よ、敵を斬り刻む狼よ、任務を遂行する感情無き兵士よ、歯車を絡ませ、任務遂行の標となれ。融合召喚!現れろ、レベル8!《鋼の歯車RAY》!」

3体のメタルギアを飲み込んだ渦の中から、先ほどの《鋼の歯車T-REX》とは異なり、ほっそりとした銀色の装甲でV字に展開されてる上半身部分が特徴的な二足歩行兵器が現れる。

両ひざと背中にミサイルを装備し、腕部には機銃、コックピットのある頭部に水圧カッターが装備された、水陸両用の平気だ。

 

鋼の歯車RAY レベル8 攻撃2300

 

「《RAY》の融合召喚に成功したことにより、《鋼の歯車工場》の効果を発動。メタルギアカウンターを1つのせる」

公園に向けて、歯車が無数に描かれた1トントラックが入ってくる。

そして、緑色のつなぎを来た小人がトラックの中についている部品を《鋼の歯車工場》に入れていく。

 

鋼の歯車工場 メタルギアカウンター0→1

 

「このカードは相手フィールド上に存在するすべてのモンスターに1回ずつ攻撃することができる。そして、このカードが攻撃力の高いモンスターと戦闘を行う場合、ダメージ計算時のみ攻撃力を1000アップさせる」

「なるほど…先ほどの《REX》は守りを固める敵を突破するのに対し、《RAY》は攻める敵を薙ぎ払う役割を持っている…ということですね?」

攻撃命令を待つ《鋼の歯車RAY》は既にエリクのモンスターにロックオンしていて、いつでもミサイルを発射できる準備をしている。

発射できるミサイルの数は《鋼の歯車T-REX》と変わりないが、軽量化し、細い体となった《鋼の歯車RAY》はより動きながら発射できるため、攻撃範囲は広い。

「ファイア!」

《鋼の歯車RAY》がすべてのミサイルを《悪魔竜ブラック・デーモンズ・ドラゴン》に向けて発射しようとする。

それと同時に、ブーンが持っているUSBメモリが振動を始める。

「ん…??」

メモリを見ると、それについているLEDライトが赤く点滅し、振動が収まると同時に緑色に点灯した。

「なるほど。《悪魔竜ブラック・デーモンズ・ドラゴン》と《真紅眼の黒炎竜》にそれ以上の攻撃力を持つモンスターで攻撃することがパスワードだったか…?」

「正確にはレベル7以上のレッドアイズモンスター2体です。しかし、これでこのUSBメモリは大丈夫ですね」

そういうと、エリクはデュエルディスクについているデュエル中止のボタンを押す。

エリクの前にいた《悪魔竜ブラック・デーモンズ・ドラゴン》はゆっくりと姿を消し、それと同時に《鋼の歯車RAY》も消えてしまった。

 

鋼の歯車RAY(メタルギア・レイ)

レベル8 攻撃2300 守備2200 融合 地属性 機械族

「メタルギア」モンスター×3

このカードは「鋼の歯車融合」の効果でのみ特殊召喚できる。

(1):このカードは相手フィールド上に存在するモンスターに1回ずつ攻撃できる。

(2):このカードが戦闘を行う時、攻撃モンスターの攻撃力が攻撃対象モンスターの攻撃力よりも低い場合、ダメージ計算時のみ攻撃力を1000アップする。

(3):このカードが破壊され墓地へ送られたとき、自分の墓地に存在するレベル4以下の「鋼の歯車」モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。

 

鋼の歯車工場(メタルギア・ファクトリー)

永続魔法カード

「鋼の歯車工場」の(1)(3)の効果は1ターンにいずれか1度しか発動できない。

(1):このカードの発動時の効果処理として、自分の墓地に存在するレベル4以下の「メタルギア」モンスター1体を特殊召喚することができる。

(2):自分が「メタルギア」融合モンスターの融合召喚に成功したときに発動する。このカードの上にメタルギアカウンターを1つのせる。(最大5つまで)

(3):このカードの上に乗っているメタルギアカウンターを2つ取り除くことで、以下の効果のいずれか1つを発動できる。

●デッキから「メタルギア」モンスター1体を手札に加える。

●「メタルギア」魔法・罠カード1枚を手札に加える。

 

「つれない男だ。最後までやりきってもかまわんのだぞ?」

「そうしたいのはやまやまですが…残念ながら、私は体が弱いんです」

「体が弱い…か」

カバンからノートパソコンを出し、USBメモリを差し込んで、データを確認する。

そこには翔太達デュエルギャング達のデュエルデータが入っていた。

「よし。これだけのデータがあれば、長官も喜ぶ」

「そう言ってもらえると、うれしい限りです。またデータが手に入れば、こちらから連絡させていただきます。では…」

ゆっくりとお辞儀をした後で、車いすはゆっくりと右に向き、そのままエリクをつれて公園から出て行った。

ブーンは彼が去るのを見送った後で、携帯を出す。

「俺だ。データは手に入った。これからお前たちのところへもっていく」

そういった後でしばらく沈黙し、相手の返事を待つ。

返事をある程度聞くと、わずかに表情をゆがめる。

「急がせろ。貴様には人質に取られている家族がいるはずだ。仮にそれの開発が遅れでもしたら、長官に何をされると思っている?貴様はあの”悪魔”を作った男だろう?可能なはずだ。…そうだ、そうこなくてはな」

色よい返事を聞けたのか、少し安心した表情を見せたブーンは電話を切った。



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第65話 テストプレイ

「ふぅー。お弁当の準備OK!」

台所で、エプロン姿のウィンダは2段式の黒い弁当箱を緑色の布で包み、水筒と箸を黒いハンドバックに入れる。

それと同時に、着替えを終えた侑斗がウィンダを後ろから抱きしめる。

「いつもありがとう、ウィンダ」

「ユウ…ちょっと大胆…」

「いつもウィンダからこうしてくるから、その…今度は…」

抱きしめる手が震えていて、侑斗の頬は赤く染まっている。

そんな彼をかわいいと思ったウィンダはそっと彼の頬にキスをする。

キスをされたところに右手を当て、しばらく侑斗は固まった。

 

侑斗が今日訪れたのはLDSの校舎だ。

ランサーズ結成の日と同時に、そこはもはやただの学校ではなく、アカデミアの魔の手からスタンダード次元を守る戦士を養成する学校へと変わった。

もちろん、LDSが所有するほかのデュエルスクールも同じ状態になっている。

ニュースでもランサーズについては賛否両論があり、コメンテーターの中にはLDSを少年兵の集団で、『武力紛争における児童の関与に関する児童の権利に関する条約の選択議定書』で禁止されている、銃火器を所持していないため、少年兵ととらえることはできないなど、様々な議論が連日行われている。

しかし、そうした中でもアカデミアによるスタンダード次元への攻撃は散発的ではあるが続いている。

ランサーズがシンクロ次元へ飛んでから1週間以上経過し、その間に日本でアカデミアが2度攻撃を仕掛けてきた。

いずれもヴァプラ隊とランサーズ候補生の善戦によって、犠牲者ゼロで済んでいるが、いつまでもそれが続くとは侑斗には到底思えなかった。

(少年兵、か…。確か、ヒイロさんがそうだったかな?)

バリアンとの戦いでは、ヒイロについてはあまり知ることができなかった。

しかし、アカデミアとの戦いで再び共に戦うことになってから、いろいろと話を聞くことができた。

チーム・サティスファクションというデュエルギャングのメンバーだったこと、犯罪組織であるアルカディア・ムーブメントのメンバーとして、人殺しをしていたこと、イリアステルをチーム5D'sと共に退けたことなどだ。

「零児君たちからの報告はなし、か…」

校舎内に設置されている自室に入り、そこに置かれているノートパソコンで報告書を確認する。

零児不在の今、レオコーポレーション及びLDSは理事長である日美香が社長代行となっている。

補佐役として、中島がいるが、ヴァプラ隊とこれから生まれるであろうランサーズのメンバーを指揮するトップは現状では侑斗しかいない。

「僕がみんなの命を預かる、か…。最初はそんなことなんて、まったく思い浮かばなかったのにな」

(そうですよね。ですけど、ユウ様にしか頼めないって思って、零児さんが…)

椅子の後ろに隠れるように、うっすらと《霊獣使いレラ》の精霊が現れて侑斗に話す。

氷山エリアでのデュエル以降、彼女の姿が見えるようになったときは侑斗もウィンダも驚きを隠せなかった。

彼女曰く、創星神との戦いが終わった数十年後の精霊世界で生活しており、あのいたずら坊主というイメージの強いカムイが白髪の老人となって、霊獣使いの長老になっているという。

ということは、レラは侑斗たちにとってはひ孫ということになる。

なお、ほかのガスタの精霊と同様、実体化はできない模様。

(自信を持ってください、ユウ様。ユウ様はバリアンとの闘いでたくさんの命を救ったんです!)

「その時に僕がヌメロン・コードを壊した。その結果が良くも悪くも、いろんな影響を…」

眼を閉じ、ヌメロン・コードを壊したときのことを思い出す。

長きにわたる孤独を耐え続けたヌメロン・ドラゴンを解放するため、そしてドン・サウザンドのような存在に二度と悪用されないためにも、確かにそれは必要な行動だった。

あの戦いが終わり、高校に入ってからはカイトらと共に壊れたヌメロン・コードや異世界についての研究を行うようになった。

そこでわかってきたのが、ヌメロン・コードのかけらが起こす現象だった。

(ということは、この戦いの原因を作ったのは…)

「ボスー。入るぞー」

「ど、どうぞ!」

急にガーターの声が聞こえ、驚いた侑斗がノートパソコンを閉じ、扉に目を向ける。

そこにはあくびをしつつ、多くの書類が入った封筒を持ったガーターがいた。

寝癖がたくさんできていて、目のくまからかなりの苦労が伝わってくる。

「頼まれた資料、できたぜー…。うう…」

史料を机の上に置くと、額に手を置いてフラフラし始める。

「すみません…。あと少しでランサーズにも資料を回せるようになるはずですが…」

「ああ…。ったく、ハイヤーの野郎…資料作り手伝えって言ったら、荷物の配達に行きます!って逃げ出しやがって…後でぶっ飛ばす」

「あはは…」

確かに資料の量は多いが、何よりも問題なのはガーター自身だ。

元プロデュエリストで、ヴァプラ隊では現場指揮を執る事実上のナンバー2であるが、壊滅的に書類仕事が下手なのだ。

そのスピードは常人の三分の一だ。

「あの…明日から少し有給入れてください。現場指揮はスティーラーかウェザーに僕から頼んでおきますから」

「そーさせてもらうぜ…。もう、書類を見るのはごめんだー…」

フラフラと愚痴をこぼしながら侑斗の部屋から出ていく。

(あのー、大丈夫なんですか?ガーターさん)

「…大丈夫、だと信じてる」

(信じてるって、無責任な…)

「さあ、資料を読んで、明日のために添削をしよう」

封筒を開き、一番上にある資料を手に取って読み始める。

そして、仕事をしながら舞網チャンピオンシップ前のことを思い出していた。

 

これは、舞網チャンピオンシップ1週間前…。

「私はスケール1の《DD魔導賢者ケプラー》とスケール10の《DD魔導賢者ガリレイ》でペンデュラムスケールをセッティング!!」

LDS校舎にある試験用のデュエルリングで零児は再調整が行われたペンデュラムカードを発動する。

今回のデュエルディスクは遊勝塾での遊矢とのデュエルの際に使用した特別製のものではなく、市販されているもので、今回の試験はペンデュラムカードの力が制御しかつ安定したものとなっているかを確かめるものだ。

「ウィンダ。2枚のペンデュラムカードはどうなってる?」

「わぁ…OKだよ、ユウ!!まだ遊矢君が持ってるオリジナルカード並みってわけじゃないけど、安定してるし、デュエルディスクの破損もない!!大成功!」

そのころの侑斗とウィンダはLDSで開発されるペンデュラムカードの作成に協力していた。

これまで20回にも及ぶテストが行われたが、カードが粉々になったりデュエルディスクは破損したりするなど、ここまで失敗を繰り返し続けてきた。

そこまでしてペンデュラムカードを作るということは、ペンデュラム召喚に大きな可能性を見出しているということだろう。

デュエルリングの隣に設置されていた、侑斗とウィンダのいるモニタールームに零児が戻ってくる。

「零児君、体に異常は?」

「大丈夫だ。これで第2関門はまず突破したといっていい」

零児が考える、ペンデュラムカード完成までの関門は3つ。

一つは作成で、LDSでは既存のカードの改造もしくは新規のカード開発の二通りのやり方でペンデュラムカードを作ろうとした。

しかし、一部のカードを除いて改造については難航し、新規カードの方がどちらかというと作りやすかった。

既存のカードから作ろうとすると、どうしてもエラッタをする必要性が生じてしまい、それに耐えきれないカードは急に元通りに戻ってしまうか、急に新しいデメリット効果を生み出してしまう。

侑斗曰く、カードはデュエリストと精霊をつなぐ扉の役割を果たしており、メリット効果を入れると開きづらくなり、デメリット効果を入れると開きやすくなる傾向があるとのこと。

ペンデュラムモンスター化はどちらかというとメリット効果であり、更にペンデュラム効果を加えようとすると急激に扉が開きづらくなっていく。

それを阻止するために、精霊側がカードを元に戻すことで扉を元の状態に戻そうとする、もしくは強引にこじ開けてしまい、その結果新しいデメリット効果が生まれてしまうのだ。

こうして作り上げたペンデュラムカードに待つ第2の関門がエネルギーの制御だ。

過去にテストプレイヤーが2体の魔導賢者以前に作られたプロトタイプのペンデュラムカードでペンデュラム召喚を行おうとした結果、デュエルディスクとカードがエネルギーに耐えられずに破損するという事故が発生した。

エネルギーが不安定になる、もしくはありすぎるとカードとデュエルディスクに負担を与え、それらが壊れる事態を招く。

いや、それだけならまだいい。

エネルギーがあまりにも高すぎて、デュエルディスクが爆発した場合、今度はデュエリストの命にまでかかわる問題になる。

だから、なんとしてもデュエルディスクに負担を与えない程度のエネルギーで安定するカードにしなければならない。

その安定が、今回成功したのだ。

「じゃあ、第3の関門だね!」

「そうだ。あとはこれらのカードを実戦で使えるかどうかだ。テストプレイヤーを剣崎、あなたにお願いしたい」

「わかった、受けて立つよ。ウィンダ」

「はい、ユウ!」

ウィンダがカバンから出したデュエルディスクを左腕につけ、腰のデッキホルダーに収納しているカードをセットしようとすると、急に零児が右手を前に出して止めさせる。

「いや、ガスタデッキはあくまでシンクロ・エクシーズデッキ。私が望むのはペンデュラムカード同士での実戦だ」

そういって、零児は懐からデッキを出して、侑斗に渡す。

少しめくって確認すると、それは風属性中心のデッキだ。

「へぇ…霊獣使いと精霊獣による連続融合と分離か…」

「あ、見てみて!このおじいさん、カムイにそっくり!!」

ウィンダと2人でデッキを見る侑斗を見て、零児はメガネを直す。

「このデッキにはペンデュラムカードも入っている。これならば、ペンデュラム同士のデュエルが行える」

「確かに…」

侑斗はデッキの中に入っている何枚かのペンデュラムカードを見る。

その中にはフォーチュン、そして前世の自分のペンデュラムカードもあった。

「今でも半信半疑だが、あなたの前世が精霊だと聞く。ならばと思い、作らせていただいた」

「ありがとう、零児君。少しデッキの改造をしたいんだけど、時間は大丈夫かな?」

「ああ。そうしてくれ」

零児からの許可を得た侑斗はウィンダと一緒にデッキの改造をその場で行い始める。

その姿を見て、零児はわずかに笑みを浮かべ、メガネを直した。

 

1時間後、デッキ改造を終えた侑斗が先にデュエルリングに行っていた零児の前に現れる。

「完成した、ということでいいだろうか?」

「うん。いつでもいけるよ」

「了解だ。今回は実戦ということから、形式はアクションデュエルになる。フィールド魔法《スモッグ・シティ》発動」

零児の宣言と同時にリアルソリッドビジョンシステムが起動し、周囲に黒い煙をモクモクと出すレンガ造りの工場と同じ造りの住居、そして廃材で作られたような小屋が入り混じった都市が生まれる。

放置された赤い馬車と風で飛ぶ新聞紙の記事から見て、これは1870年代ごろのロンドンをイメージしたフィールドだろう。

「うう…空気悪そうで嫌だなー…」

自然の多い湿原で育ったウィンダにとって、このフィールドは好みではないらしく、嫌そうな表情を見せる。

「まずは空気を直すところから始めるべきかな…?そういうアクション魔法があればいいけど…」

「では、始めよう…」

「「デュエル!!」」

お互いにすぐにデュエルを始めたかったためか、口上を省略した。

 

侑斗

手札5

ライフ4000

 

零児

手札5

ライフ4000

 

「僕の先攻!まずは…」

開始と同時に、侑斗は走り始める。

狙いは空気の悪いこのフィールドを変えることのできるアクション魔法だ。

扉付きの馬車を開き、中を調べると、赤い椅子の上に置かれているアクションカードを見つける。

「よし…僕は手札からアクション魔法《植林》を発動!僕は手札を1枚デッキに戻し、デッキからカードを1枚ドローする!」

発動と同時に、道路脇に街路樹が出現し、一部の公園の枯れた木の緑がよみがえっていく。

 

植林

アクション魔法カード

(1):手札を1枚デッキに戻し、デッキからカードを1枚ドローする。

 

「そして、僕はモンスターを裏守備表示で召喚!そして、手札から魔法カード《封印の黄金櫃》を発動!デッキから《精霊獣アペライオ》を除外し、発動後2回目の僕のスタンバイフェイズ時にそのカードを手札に加える」

金色の眼を模したレリーフが特徴的な、横長の長方形の箱に侑斗のデッキから飛び出した《精霊獣アペライオ》が収納される。

その箱はそのまま侑斗の頭上に浮かび続ける。

「そして僕は…カードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

侑斗

手札5→1

ライフ4000

場 裏守備モンスター1

  伏せカード2

 

零児

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「最初のターンにペンデュラムカードが来なかったか…」

自分の手札を見ながら、少し残念そうな口調で零児は言う。

ペンデュラムモンスター同士の戦闘が成立せずにデュエルが終わる、という事態になるとこのデュエルの意味がない。

かといって、テストであったとしてもデュエルである以上は手加減できない。

そんな自分の性質を少し恨みながら、零児はカードを引く。

「私のターン、ドロー」

 

零児

手札5→6

 

「ええっと、ほかにもアクションカードは…」

ターンが終わった後でも、侑斗はアクションカードを探し続ける。

アクションカードは手札に1枚しか加えることができないが、手札に加えるのも発動もいつでもできる特殊なカード。

そのため、仮に回収しなくても場所を知っておくだけでも何かが違うはずだと侑斗は判断した。

「私は手札から永続魔法《魔神王の禁断契約書》を発動。このカードが発動している限り、私のターンのスタンバイフェイズごとに、私は2000のダメージを受ける」

《魔神王の禁断契約書》のソリッドビジョンから現れた、灰色の意思でできた首飾りが零児のかけられる。

この首飾りが契約の証で、それが下手をすると零児を敗北へと導く鎖となる。

「そして、もう1つ…。私は手札から永続魔法《地獄門の契約書》を発動。このカードは私のターンのスタンバイフェイズごとに、私に1000のダメージを与える」

今度は零児の右腕に浅黒く、Dの文字が一周するかのように配置されている枷がつけられる。

これで、零児は自分のターンのスタンバイフェイズごとに合計3000の命が契約書に奪われることになる。

「零児君…」

「異次元の王と契約するというのはこういうことだ…。世界を守る力を得るためには、それに見合った代価を支払わなければならない」

「…。そうだね。けど、君はレオコーポレーションの社長であり、これから生まれるランサーズのリーダーなんだ。測り間違えちゃいけないよ。君の命とその力の天秤を…」

「ご忠告、感謝する。私は《地獄門の契約書》の効果を発動。1ターンに1度、デッキからDDモンスター1体を手札に加える。私はデッキから《DD魔導賢者ニュートン》を手札に加える」

《地獄門の契約書》が光ると、デッキから《DD魔導賢者ニュートン》が自動排出され、零児の手札に加わる。

「そして、《魔神王の禁断契約書》の効果発動。1ターンに1度、手札からDDDモンスターを守備表示で特殊召喚できる。私は手札から《DDD壊薙王アビス・ラグナロク》を特殊召喚する」

零児のフィールドに現れた《DDD壊薙王アビス・ラグナロク》がギロリと侑斗の伏せカードと裏守備モンスターを見る。

そして、走る零児には追従することなく、その場で待機する。

 

DDD壊薙王アビス・ラグナロク レベル8 守備3000

 

「更に、《魔神王の禁断契約書》の効果を発動。1ターンに1度、このカードの効果で特殊召喚したモンスター含む、手札・フィールド上のモンスターを素材に悪魔族融合モンスターを融合召喚することができる。私が融合素材とするのは、《アビス・ラグナロク》と手札の《DDラミア》を融合する!神々の黄昏を打ち破り、未来の流される血をもって、竜をも倒す勇者となれ!融合召喚!生誕せよ!レベル8、《DDD剋竜王ベオウルフ》!」

頭と胸部、そして両腕が赤いバラで装飾された青い蛇型のモンスターが《DDD壊薙王アビス・ラグナロク》と共に《魔神王の禁断契約書》が生み出した黒い渦に飲み込まれていく。

そして、渦の中からオレンジ色のベルトが各所についている、黒いベストと茶色いズボンを身に着けた青い人狼が

飛び出す。

 

DDD剋竜王ベオウルフ レベル8 攻撃3000

 

「ペンデュラムモンスターを素材とした融合モンスター…。いわば、ペンデュラム融合といったところだね…」

「そうだ。そして、融合素材となった《アビス・ラグナロク》はエクストラデッキに送られる」

《DDD壊薙王アビス・ラグナロク》をエクストラデッキに加えつつ、零児は侑斗の伏せカードを見る。

(ペンデュラムモンスターはフィールドから墓地へ送られるとき、代わりにエクストラデッキへ行く。だが、《マクロコスモス》の効果を使うことで、それを防ぐだけでなく、除外させて戦力を減らすことができる)

仮にそのカードが《マクロコスモス》の場合、侑斗であれば融合召喚しようとした瞬間に発動し、素材となった2体のモンスターをまとめて除外しようとするはずだ。

「(となると…そのカードは攻撃に対応するためのカードか…)私は手札から速攻魔法《サイクロン》を発動。フィールド上に存在する魔法・罠カード1枚を破壊する。私が破壊するのは、その右側の伏せカードだ」

《サイクロン》から発生する竜巻が侑斗の伏せカードを飲み込もうとする。

しかし、急に破壊しようとしたカードからライオンに似た咆哮が発せられ、《DDD剋竜王ベオウルフ》が警戒のために路上から屋上へ飛んで移動してしまう。

「何…!?」

「罠カード《威嚇する咆哮》を発動。これで僕たちはこのターン、攻撃宣言できない」

「なるほど…。そのカードだったか」

「まぁ、悩みどころだよね。《サイクロン》はペンデュラム召喚対策ができるけど、さっきのカードみたいなフリーチェーンには対抗できない。《ナイト・ショット》だとこの事態を対処できるけど、ペンデュラム召喚対策として使用できないし、速攻魔法じゃないからね」

「ふっ…。私はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

侑斗

手札1

ライフ4000

場 裏守備モンスター1

  伏せカード1

 

零児

手札6→2(うち1枚《DD魔導賢者ニュートン》)

ライフ4000

場 DDD剋竜王ベオウルフ レベル8 攻撃3000

  魔神王の禁断契約書(永続魔法)

  地獄門の契約書(永続魔法)

  伏せカード1

 

「僕のターン、ドロー!」

 

侑斗

手札1→2

 

走りながらドローしたカードを見て、侑斗が笑みを浮かべる。

「僕は手札から《精霊獣ラムペンダ》を召喚!」

 

精霊獣ラムペンダ レベル4 攻撃1600

 

「このカードは1ターンに1度、エクストラデッキの霊獣モンスター1体を除外することで、デッキからそれと同じ種族の霊獣を墓地へ送る。僕は《聖霊獣騎カンナホーク》を除外し、デッキから《精霊獣カンナホーク》を墓地へ送る」

《精霊獣ラムペンダ》が必死に空へ飛ぼうと両手をばたつかせる。

すると、上空に裂け目が生まれ、その中に《聖霊獣騎カンナホーク》と《精霊獣カンナホーク》が消えてゆく。

「そして、セットモンスターを反転召喚。《精霊獣使いウィンダ》!!」

「よーし、このカードでは初陣だよー!」

嬉しそうにその場で精霊に戻ったウィンダが侑斗のそばまで瞬間移動する。

表が緑で裏が黒のマントと黒いスパッツにシャツ、ピンク色のビキニアーマーと緑色の玉石の付いた黒いベルトに装備が変わり、数年前の巫女としてのウィンダからだいぶイメージが変わっている。

なお、ウサギの人形はベルトにしっかりと固定されているため、飛ばされることはないというのはウィンダ曰くだ。

 

精霊獣使いウィンダ レベル4 攻撃1600

 

「僕は手札から魔法カード《魂の解放》を発動!互いの墓地からカードを5枚までゲームから除外する!」

「直接除外しに来たか…!!」

「DDDデッキは墓地にカードがたまると怖いからね」

《魂の解放》のソリッドビジョンから竜巻が発生し、零児と侑斗の墓地のカードが取り込まれていく。

しかし、あくまでそれは演出であり、本当は2人とも除外することになったカードをデッキケースにしまっているだけだ。

 

除外されたカード

侑斗

・精霊獣カンナホーク

・威嚇する咆哮

 

零児

・DDラミア

 

(だが、《DDラミア》を除外する程度では…)

確かに《DDラミア》にも、墓地の存在することで発動できる効果がある。

そうなると、目的は零児のDDモンスターの除外ではなく、先ほど墓地へ送った《精霊獣カンナホーク》を除外することにあると零児は考えた。

「ウィンダ…。すまないけど…」

「ううん。気にしないで、ユウ」

「うん…。バトル。僕は《ウィンダ》で《ベオウルフ》を攻撃!」

「いっくよー、巫女の風・霊獣バージョン!!」

ウィンダが飛び上がると、屋上で警戒している《DDD剋竜王ベオウルフ》に向けて風の弾丸を放つ。

今の零児のそばにはアクションカードはない。

「く…迎撃をしろ、《ベオウルフ》!!」

苦い表情を浮かべた零児から指示を受けた《DDD剋竜王ベオウルフ》は爪で風を切り裂くと、ウィンダに襲い掛かる。

しかし、いきなりウィンダの目の前に《聖霊獣騎カンナホーク》が現れ、《精霊獣カンナホーク》が起こす風が竜を倒したと伝えられる王を吹き飛ばす。

吹き飛ばされた王は今度は屋上ではなく、零児の背後へ向かった。

「《ウィンダ》が相手によって破壊されたとき、墓地かエクストラデッキから霊獣を召喚条件を無視して特殊召喚できる。っていっても、作った零児君にはわかってると思うけどね」

「そのカードがあれば、あなたの戦力が上がり、ひいてはスタンダード次元の戦力増強につながる。そう考えただけだ」

「そうだとしても、うれしかったから…ありがとう、って言っておくよ」

 

聖霊獣騎カンナホーク レベル6 攻撃1400

 

侑斗

ライフ4000→2600

 

「そして、僕は《聖霊獣騎カンナホーク》の効果を発動!除外されている霊獣カード2枚を墓地へ戻し、デッキから霊獣カードを1枚手札に加える。僕はデッキから《霊獣の連契》を手札に加える」

《聖霊獣騎カンナホーク》に乗る《霊獣使いの長老》が杖を天に掲げると、侑斗の手札に《霊獣の連契》が加わる。

それと同時に、次元の裂け目の中にいる《精霊獣アペライオ》ともう1枚の《聖霊獣騎カンナホーク》が飛び出し、そのまま消滅する。

「そして、手札から速攻魔法《霊獣の連契》を発動!僕のフィールド上に存在する霊獣モンスターの数だけ、フィールド上のカードを破壊する!僕は伏せカードと《ベオウルフ》を破壊する!」

「私は罠カード《契約洗浄》を発動!」

チェーンして発動された《契約洗浄》によって、フィールドにあった2枚の契約書が消える。

そして、零児を拘束していた首飾りと枷も同時に消える。

「フィールド上に存在する契約書をすべて破壊し、その数だけデッキからカードをドローする。そして、破壊した数×1000ライフを回復する」

「やっぱりね…」

ここで《契約洗浄》を発動しなければ、がら空きになった状態で《聖霊獣騎カンナホーク》のダイレクトアタックによるダメージと2枚の契約書の代償によって零児が敗北する。

今の零児にはそのカードを発動するしか、選択肢がなかった。

 

零児

手札2→4

ライフ4000→6000

 

「これで零児君のフィールドからカードはなくなった。そして、僕はさらに罠カード《霊獣の騎襲》を発動!このカードは墓地と除外されている霊獣使いと精霊獣を1体ずつ守備表示で特殊召喚できる。僕は《ウィンダ》と《アペライオ》を特殊召喚!」

「やったー、また私の出番だね!」

発動と同時に嬉しそうにウィンダが《精霊獣アペライオ》の頭を撫でて一緒にフィールドへ出て来る。

撫でられている《精霊獣アペライオ》はおとなしくその場に座る。

 

精霊獣アペライオ レベル4 守備200

精霊獣使いウィンダ レベル4 守備1800

 

「更に、《アペライオ》の効果を発動!1ターンに1度、墓地の霊獣カードを1枚除外することで、ターン終了時まで僕のフィールド上に存在する霊獣の攻撃力・守備力を500アップさせる!」

《霊獣の連契》をデッキケースにしまうと、座っている《精霊獣アペライオ》が口から火の玉をだす。

火の玉は侑斗の目の前で止まり、その場で燃え続ける。

 

聖霊獣騎カンナホーク レベル6 攻撃1400→1900

精霊獣ラムペンダ レベル4 攻撃1600→2100

精霊獣アペライオ レベル4 守備200→700

精霊獣使いウィンダ レベル4 守備1800→2300

 

「バトル!僕は《ラムペンダ》と《カンナホーク》でダイレクトアタック!」

《霊獣使いの長老》の手を借りて、《精霊獣ラムペンダ》は《精霊獣カンナホーク》の背中に乗る。

そして、飛翔した《精霊獣カンナホーク》は零児めがけて突撃する。

「く…!!」

だが、さすがに直接攻撃するのはためらわれるのか、当たるギリギリのところで再び高度を上げ、そのまま侑斗の元へ戻っていった。

 

零児

ライフ6000→2000

 

「よし…。これで先制した。そして、僕はフィールド上の《ウィンダ》と《アペライオ》を除外し、融合!」

「よーし、行こう!《アペライオ》!」

ウィンダの言葉に《精霊獣アペライオ》が起き上がり、ガオーッと元気に鳴く。

そして、1人と1匹は仲良く裂け目へ飛んで行った。

「愛しき人よ、炎の獅子よ、霊獣の契約の元、今こそ1つに!融合召喚!水の聖霊獣騎、《聖霊獣騎ペトルフィン》!!」

裂け目の中から額に青い宝石のついた額当てを身に着けたピンク色のイルカが飛び出し、そのうえに《霊獣使いウェン》が乗って現れる。

 

聖霊獣騎ペトルフィン レベル6 守備2800→3300

 

「僕はこれでターンエンド。それと同時に、《アペライオ》の効果は消える」

浮かんでいた火の玉が消え、侑斗のモンスターの能力値が元へ戻っていく。

 

侑斗

手札2→0

ライフ2600

場 聖霊獣騎カンナホーク レベル6 攻撃1900→1400

  聖霊獣騎ペトルフィン レベル6 守備3300→2800

  精霊獣ラムペンダ レベル4 攻撃2100→1600

 

零児

手札4(うち1枚《DD魔導賢者ニュートン》)

ライフ2000

場 なし

 

「私のターン…ドロー」

 

零児

手札4→5

 

ドローしたカードを見ずに、零児は橋の入口へ向かう。

そして、そこの道路に落ちているアクションカードを手に取る。

「私はアクション魔法《共振》を発動。私たちはお互いにデッキからスケールの異なるペンデュラムモンスターを3体手札に加える」

「《共振》だって!?それは…」

零児が発動したカードを見て、侑斗は驚きを隠せなかった。

《共振》はペンデュラム召喚に対応するために作られた新しいアクションカードだが、その効果が禁止カードに近いものであることから、不採用となったものだ。

それをこのフィールドにばらまくということは、是が非でもこのテストを成し遂げたいと思っているからであろう。

「私はデッキから《DD魔導賢者コペルニクス》と《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》、《DD魔導賢者ニコラ》を手札に加える」

「…。だったら、僕はデッキから《英霊獣使い―フィラムピリカ》と《影霊獣使い―セフィラウェンディ》、《霊獣の聖剣士―ユウ》を手札に加える」

「そして、お互いにペンデュラムゾーンにペンデュラムモンスターをセッティングし、ペンデュラム召喚を行う!」

侑斗と零児の両サイドに青い光の柱が生まれる。

「僕はスケール1の《英霊獣使い―セフィラムピリカ》とスケール7の《影霊獣使い―セフィラウェンディ》でペンデュラムスケールをセッティング!」

「私はスケール1の《DD魔導賢者コペルニクス》と、スケール10の《DD魔導賢者ニュートン》でペンデュラムスケールをセッティング!」

橙色の球体上の檻の中に小さな太陽ともいえるオレンジ色で燃える球体が収納された機械と赤茶色の上の丸みが大きいS字で、赤や黄色、オレンジといった色の異なる球を7つ、振り子のように装飾した機械が零児の両サイドで青い光の柱を生み出す。

「風の魂を受け継ぐ命よ、神星樹の力と共に邪悪なる力に立ち向かえ!」

「わが魂を揺らす大いなる力よ、この身に宿りて闇を引き裂く新たな光となれ!」

「「ペンデュラム召喚!!」」

同時に叫ぶと、光の柱の間に青い光の渦が生まれ、そこから互いのモンスターが飛び出してくる。

「来い、僕の分身!《霊獣の聖剣士-ユウ》!!」

 

霊獣の聖剣士-ユウ レベル7 攻撃2500

 

「出現せよ、私のモンスター達よ!!すべての王を統べるもの、《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》、電気を操りし賢者、《DD魔導賢者ニコラ》、神々の黄昏に審判を下す最高神!《DDD壊薙王アビス・ラグナロク》!!」

侑斗とは対照的に、零児のフィールドには一度に3体ものペンデュラムモンスターが現れる。

遊矢を追い詰めた《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》3体と《DDD剋竜王ベオウルフ》の融合素材となった《DDD壊薙王アビス・ラグナロク》、そしてもう1体は金色の輪で囲まれ、中にある赤い球体がむき出しとなった黒い胴体と茶色い台形の首だけでできた機械だ。

 

DDD死偉王ヘル・アーマゲドン×3 レベル8 攻撃3000

DDD壊薙王アビス・ラグナロク レベル8 攻撃2200

DD魔導賢者ニコラ レベル6 攻撃2000

 

共振(禁止カード・創作)

アクション魔法カード

お互いのPゾーンにカードがない場合にのみ発動できる。

(1):お互いにデッキからPスケールの異なるPモンスターを3体まで選択して手札に加える。その後、お互いにPゾーンにPモンスターを置き、ペンデュラム召喚を行う。

 

「さすが零児君…。一気に5体も」

《共振》の助けがあったとはいえ、5体ものペンデュラムモンスターを一気に呼び出した零児の実力に舌を巻く。

次元戦争からスタンダード次元を守る、という強い決心と長い間の訓練、そして彼自身の素質が最大限に絡み合っている。

これがスタンダード次元最強と言っても過言ではない、赤馬零児の実力だ。

「バトルだ。私は《ヘル・アーマゲドン》で《聖霊獣騎カンナホーク》を攻撃!地獄触手鞭(ヘル・テンタクルウィップ)!!」

1体目の《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》の水晶体から10条の青い光線が発射され、上空を舞う《聖霊獣騎カンナホーク》を貫こうとする。

しかし、受ける直前にそのモンスターは姿を消し、《精霊獣アペライオ》とウィンダが裂け目から飛び出してくる。

 

精霊獣使いウィンダ レベル4 守備1800

精霊獣アペライオ レベル4 守備200

 

「《カンナホーク》の効果。このカードをエクストラデッキの戻すことで、除外されている精霊獣と霊獣使いを1体ずつ守備表示で特殊召喚できる!」

「だが、もうこれで除外されている霊獣使いと精霊獣はいない。2体の《ヘル・アーマゲドン》で《ペトルフィン》、《ラムペンダ》を攻撃!」

攻撃を続ける1体目の《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》を援護するかのように、もう1体の王が光線を放つ。

1体目の王も体の方向をかえ、光線の軌道を変える。

2体の王の光線が絡み合いながら、侑斗のフィールドにいる《精霊獣ラムペンダ》と《聖霊獣騎ペトルフィン》を貫く。

攻撃を受けた2体のモンスターは目を回しながらその場に倒れ、消滅した。

 

侑斗

ライフ2600→1200

 

「そして、《ニコラ》で《アペライオ》を攻撃!」

《DD魔導賢者ニコラ》のむき出しになっている球体から赤い光線が発射され、光線を受けた《精霊獣アペライオ》が光りの中で消滅する。

「あうう、次は私に攻撃してくるのかなー…??」

そわそわしながら、ウィンダは攻撃を行っていない《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》と《DDD壊薙王アビス・ラグナロク》を見る。

(《アビス・ラグナロク》はDDモンスターをリリースすることで、僕のモンスター1体を除外できる効果がある。ウィンダの効果は除外だと発動できない。それに、今の僕のフィールドにはほかに霊獣使いはいないから、仮にウィンダがいなくなったら…)

《マクロコスモス》があれば、墓地へ行くカードは除外されるため、侑斗を有利にするだけでなく、墓地を利用することが多い零児を不利にすることができる。

しかし、仮に次のターンに手札に加わったとしてもタイムラグがあり、その間に破壊されてしまっては意味がない。

「さぁ…今こそ我々が作ったペンデュラムモンスターが成功か失敗かがわかる…」

零児はウィンダではなく、《霊獣の聖剣士-ユウ》を見ている。

《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》も《DDD壊薙王アビス・ラグナロク》もそのモンスターと同じ、ペンデュラムモンスター。

ペンデュラムモンスター同士の戦いを見てこそ、このデュエルの意味がある。

「私は《ヘル・アーマゲドン》で《ユウ》を攻撃する!」

零児の宣言と共に、《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》が光線を発射する。

だが、侑斗はアクションカードを取りにいかない。

この戦闘だけは、何かで水を差すわけにはいかないということがわかっているからだ。

「迎え撃つんだ、《ユウ》!!」

侑斗の言葉を聞き、わずかにうなずいた《霊獣の聖剣士-ユウ》が刀を抜き、光線を本来ではありえないことであるが、切り裂きながら《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》に向けて進んでいく。

「《ユウ》の効果は攻撃したときにしか発動できない。よって、この戦闘では破壊され、あなたはダメージを受ける!!」

「わかってる!それより…君のデュエルディスクは大丈夫なの!?」

腰につけている携帯型のエネルギー計測器を見ながら、侑斗は尋ねる。

戦闘の影響か、ペンデュラムモンスターのエネルギーは徐々に増えている。

しかし、現在は赤く塗られているライン、過去にデュエルディスクが異常が発生したときに生じたエネルギー量には到達していない。

「ああ…。こちらも異常はない。成功だ…」

《霊獣の聖剣士-ユウ》は幾度も光線を切り結んできたが、それを阻止するため、《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》は複数の光線を一点に収束して再び発射する。

一点集中で発射した、大出力の光線はさすがに切ることができず、そのまま焼き尽くされていく。

 

侑斗

ライフ1200→700

 

「よし。これで第3の関門はクリア…だね」

戦闘終了とともに、お互いに自分のデュエルディスクに異常がないかを確認する。

デッキと墓地にある自分たちのカードに影響が出ていないか、フィールドにも問題はないか。

お互いに調べた結果、異常がないことが確認された。

しかし、急にアクションフィールドが消え、フィールド上のモンスターも消えてしまう。

「あ、あれ…!?なんで??」

服が普段着に戻ったウィンダは首をかしげながら、侑斗を見る。

「ねえユウ、なんでデュエルが中断しちゃったの??」

「デッキまで調べたから、ルール違反ってことになったんだ」

「だから、お互いに失格となり、デュエルは中断となった」

零児が侑斗とウィンダのそばまで歩いて近づきながら、事情を説明する。

「…。あの後で、君は《アビス・ラグナロク》の効果で《ニコラ》をリリースして、ウィンダを除外する」

「そして、《ヘル・アーマゲドン》と《アビス・ラグナロク》をオーバーレイし、ランク8の《DDD双暁王カリ・ユガ》でエクシーズ召喚する」

《DDD双暁王カリ・ユガ》は攻撃力3500を誇るだけでなく、エクシーズ召喚されたターン、フィールド上のこのカード以外のモンスターの効果を発動できず、無効化することができる。

そして、オーバーレイユニットを1つ使うことで、墓地の契約書をセットするか、相手フィールド上の魔法・罠カードをすべて破壊できる。

その効果で侑斗のペンデュラムゾーンのカードを破壊し、侑斗がこれ以上ペンデュラム召喚するのを防ぐことができる。

「問題は剣崎、あなたが次のターンにドローするカード」

「これだったよ」

侑斗はすぐに次のターン、ドローするはずだったカードを見せる。

「《The blazing MARS》…。このカードは渡したデッキには入っていなかった…」

「うん。合うかなって思って、デッキに入れたんだ」

《The blazing MARS》は手札・墓地に存在するとき、自分の墓地のモンスターを3体除外することで特殊召喚できる、《マクロコスモス》の代わりがある程度務まるモンスターだ。

このカードとアクションカード、それによって勝敗が分かれることになる。

「まぁ、勝敗については気にすることはないだろう。問題はペンデュラムモンスターが使えるという事実だ」

「そうだね…。あとは、遊矢君と翔太君のオリジナルとだとどうなるか…。理論上では問題ないはずだよ」

「だが、直接確かめなければわかるまい。沢渡シンゴが榊遊矢と最初にデュエルをすることになっている。彼にカードを渡し、実戦で確かめてみよう」

「でもユウ。翔太君は今、舞網市には…」

こうして、侑斗と零児、ウィンダはペンデュラムカード完成のための今後のスケジュールを作っていった…。

 

「あの時…デュエルが続いてたらどうなってたかな…」

「…とさん」

「きっと、零児君のことだから手札に…」

「侑斗さん!!」

「あ…!!」

うっかりその時のデュエルのことを考えて、周囲が見えなくなっていた侑斗は我に返り、声のする方向に目を向ける。

そこには、少し不機嫌な日美香が立っていた。

「ああ、理事長。すみません…」

「まったく、しっかりしてください。剣崎さん」

「はい…。それで、何か御用ですか?」

「ええ。これから量産するペンデュラムモンスターについての資料を見せてほしいので…」

「わかりました。ええっと、確か…」

その資料作りについても、ガーターに頼んでいたため、侑斗は彼が運んできた資料の中からそれを探し始めた。

ランサーズとシェイドがいないスタンダード次元、果たして、どれだけ持ちこたえることができるのか…?




なんだか連続でデュエルが中断、という形になってしまってすみません…。
今回はただ単に《精霊獣使いウィンダ》が出た嬉しさに、勢いで書いてしまったので…。


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第66話 2つの覚悟

「これで終わりだ!《月光舞豹姫》で3体の《アンデット・スカル・デーモン》に攻撃!」

腕や背中に三日月を模した金色の飾りを付けた紫とピンクが基調のドレスを纏う、黒いショートヘアで褐色の踊り娘が踊りながら、両手の爪で3体の《アンデット・スカル・デーモン》を切り刻んでいく。

「《月光舞豹姫》はメインフェイズ1に効果を発動でき、発動したターン、このカードは相手フィールド上に存在するすべてのモンスターに2度攻撃でき、そして相手モンスターは1度だけで戦闘では破壊されない。更にこのカードが戦闘で相手モンスターを破壊したとき、このカードの攻撃力はバトルフェイズ終了時まで攻撃力が200アップする!」

「そんな…バカなぁぁぁ!!」

緑色のジャケットを着た、茶色い髪で恰幅の良い体をした男、トニーが攻撃の影響で吹き飛ばされる。

余談ではあるが、彼はクロウとはギャング時代からの友人とのことだ。

(決まったーーー!!勝者はフレンドシップカップの紅一点、セレナ選手ーーー!!)

勝者が決まったことで、会場が歓声で包まれる。

その影で、敗北したトニーは緑色の作業服を着た、筋肉質で巨体な男2人組に連行されていった。

それを翔太はその試合の録画を部屋のテレビで見ていた。

今は大会2日目の朝だ。

「これで、2回戦進出者はMデコ(クロウ)とシンジ、俺にセレナだな…」

既に大会2日目、

そういいながら、備え付けの冷蔵庫から500ミリリットルのペットボトルコーラを出す。

そして、それを飲みながら次の勝負を待つ。

(お待たせしましたーーー!!皆さまおはようございます、間もなくフレンドシップカップ1回戦第5試合が始まります対戦カードは…検挙率100パーセントを誇っていた元デュエルチェイサーズ!地獄から舞い戻ったやや持ってない人…ナンバー227!!)

(…本名で出場しろよ)

そんな翔太の心の中での突っ込みをよそに、コースにデュエルチェイサーズの制服を着た男が白バイ型のDホイールに乗って現れる。

なお、デュエルチェイサーズとは、セキュリティが所有するDホイーラーで、主にコモンズ出身のDホイーラー兼犯罪者(あくまでこれはトップスの眼から見て、でしかないが)を検挙することが仕事だ。

(ナンバー227と戦うのは…前夜祭エキシビションマッチでキングに敗北した、榊遊矢!!)

歓声を持って迎えられた227に対して、遊矢に対してはブーイングを持って迎えられる。

メリッサの言う通り、ジャックに敗れたため、当然と言えば当然かもしれないが。

 

「今よ…!伊織!」

「オッケー!!《M・HEROカミカゼ》でダイレクトアタック!!」

「うぎゃああああ!?!?」

 

ギャングA&B

ライフ1800→0

 

そのころ、シェイドはチームオーファンに従属しているギャング、チームイエローライトのアジト、大門区消防署を攻撃している。

「いやー、やっぱりいつものデッキの方が調子がいいねー。柚子ちゃん!」

「ん…そうね」

「もしかして、遊矢君のこと、心配?」

どこか浮かない表情を見せる柚子の顔を覗き込む伊織。

といっても、そんな表情になる理由はわかる。

昨日今日はフレンドシップカップ1回戦で、昨日出番がなかったことから、今日必ず遊矢の試合がある。

しかし、ちょうどその日の朝にチームイエローライトへの攻撃をすることになったため、少なくとも最初の試合を見ることはできなくなった。

「…うん」

「うわっ、すっごく素直!」

普段はこの場合、少しでも否定的な反応を見せるはずの柚子が思わる返事をしたため、驚きを見せる。

「おい、何しとるんか!?しゃべっとる場合があったら周りを見ろ!!」

《バハムート・シャーク》の効果によって召喚された《潜航母艦エアロ・シャーク》を《FA-ブラック・レイ・ランサー》にアーマードエクシーズチェンジさせながら、漁介が叫ぶ。

そして、別のギャングとデュエルをする鬼柳が《煉獄龍オーガ・ドラグーン》をシンクロ召喚する。

「心配するのならすればいい。それでいい結果が出るんだったらな。更に俺は《インフェルニティ・ビートル》を召喚!レベル8の《オーガ・ドラグーン》にレベル2の《インフェルニティ・ビートル》をチューニング」

召喚されたばかりの《インフェルニティ・ビートル》が羽を激しく振動させると、その体が黒い炎でできたチューニングリングに変わり、《煉獄龍オーガドラグーン》がそれをくぐる。

「煉獄より生まれし龍…現世に舞い降り、その欲望を満たせ。シンクロ召喚。《煉獄超龍インフェルニティ・ドラグーン》」

くぐると同時にチューニングリングが爆発し、その中から金と竜の骨でつくられた、右半分だけの仮面をつけ、翼が4枚となった《煉獄龍オーガ・ドラグーン》が姿を見せる。

 

煉獄超龍インフェルニティ・ドラグーン レベル10 攻撃3500

 

「馬鹿め!!罠カード《奈落の落とし穴》!!こいつでせっかくのシンクロモンスターを…」

「《インフェルニティ・ドラグーン》の効果発動。俺の手札が0のとき、1ターンに1度だけ相手の魔法・罠カードの発動を無効にし、破壊する。そして、ターン終了時まで攻撃力を500アップさせる」

「何…!?」

「お前では俺を満足させることはできない…。焼き尽くせ、《インフェルニティ・ドラグーン》!!」

足元に現れた、紫色の空間へと続く落とし穴を飛翔することで回避し、口から黒い一筋のレーザー光線が発射される。

レーザー光線は敵対するギャングの足元に命中すると、そこで黒い爆発が発生する。

このレーザーは体内で生み出される黒い炎を可能な限り圧縮したものなのだ。

「ぎゃああああ!?!?!?」

 

煉獄超龍インフェルニティ・ドラグーン レベル10 攻撃3500→4000

 

ギャング

ライフ4000→0

 

煉獄超龍インフェルニティ・ドラグーン

レベル10 攻撃3500 守備3000 シンクロ 闇属性 ドラゴン族

闇属性チューナー+闇属性・ドラゴン族Sモンスター1体

(1):自分の手札が0枚の場合、1ターンに1度、相手が魔法・罠カードを発動した時に発動できる。その発動を無効にし破壊する。その後、ターン終了時までこのカードの攻撃力は500アップする。

(2):自分フィールド上に存在するこのカードが相手の魔法・罠カードの効果でフィールドを離れたとき、自分の墓地に存在する「インフェルニティ」Sモンスターまたは「煉獄龍オーガ・ドラグーン」1体を選択して発動できる。そのモンスターを自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する。

 

「鬼柳さん…」

デュエルを終え、デュエルディスクを収納した鬼柳が柚子を見る。

「今のお前はシェイドのメンバーだ。俺たちにできることは、こうしてシンクロ次元の中での俺たちの力をつけることだ」

「力をつけること…」

力をつけるというのは、何もシェイドを大きくすることだけではない。

セキュリティとは異なり、様々なタイプのデッキを持つギャング達と戦い、自らの力量を磨くことでもある。

そして、翔太がフレンドシップカップに出場したこともあり、もう自分たちの正体を隠す必要がなく、思いっきり自分のデッキでデュエルをすることができる。

「さ、柚子ちゃん!ちゃちゃっと片づけて、アジトへ帰ろ!あ…」

柚子に目を向けながら走っていた柚子が何かにぶつかる。

「あれって…」

「ふぇ…??」

両手で口を隠し、動揺する柚子を見た伊織はそーっと自分がぶつかった何かに目を向ける。

それはあの時、シェイドを攻撃した3体のデュエルロイドのうちの1体、ホセだ。

「うわぁ…私たち、勝てるかな…?」

「勝てるかなって…勝つしかないわよ!!」

弱気になる自分の心に鞭をうち、奮起した柚子がデュエルディスクを展開する。

(遊矢…大丈夫、よね…?)

 

遊矢と227がスタートラインに立ち、ライディングデュエル開始まで残りわずかとなる。

(それでは、フィールド魔法《スピード・ワールド・A》を…)

「待ってくれ!!」

早速始めようと動き出すメリッサを遊矢が遮る。

(小僧…貴様、何を言うつもりだ?)

デッキの中で待つオッドアイズが幻影となって遊矢のそばに現れ、じっと彼を見る。

なお、この幻影は遊矢以外には見えない。

(伝えなきゃならないんだ。このフレンドシップカップの現実を…!)

翔太と徳松のデュエルが行われる前、遊矢は徳松からフレンドシップカップ敗者の末路について聞いた。

1人1人隔離されているのに、なぜそれができたかというと、おそらくはカードによって警備員を買収したからだろう。

深呼吸をした後で、遊矢はヘルメットをとって観客全員に目を向ける。

「みんな!!フレンドシップカップの敗者がどうなるか、知っているか!?敗者は全員、地下のごみ処理施設へ送られる!!地下送りされた人たちは、死ぬまでずっと強制労働させられるんだ!!」

「おいおい、ということは、あのおっさんも…権現坂たちも…」

翔太は直ぐに敗者となった3人のことを思い浮かべる。

確かに、あのデュエルの後で彼らの姿を見ていないし、このままホテルに戻って立ち退きの準備をしているだろうと考えてもいた。

だが、シンクロ次元の競争社会は敗者に再起のチャンスを与えるほど甘いものではなかった。

 

「おおおおおーーーーー!!!!」

遊矢の言葉を聞いた観客たちは動揺するどころか、逆に熱狂し始める。

それがトップスの人間だけならまだしも、コモンズの人々さえもそうなのだ。

「そ、そんな…!?どうして!?」

(ふん…当然のことだ、小僧。別次元の人間が貴様と同じ価値観を持っているとでも思っていたか?)

「オッドアイズ…?」

(奴らにとって、このデスマッチといえる競争だけが真実、それだけが正義、道徳だ。そこにお前の言葉など…ましてやよそ者の価値観など入る隙も無い)

「けど…!!」

(うーん、それの何がいけないのかな?)

オッドアイズの言葉が誠であることを示すかのように、メリッサが遊矢に言う。

(負けたものが落ちるのは…あたりまえじゃない?)

「うおーーーーー!!!」

メリッサの言葉、観客の熱狂。

これらがシンクロ次元のすべてを表していた。

この次元の最大の問題は苛烈ともいえるトップスとコモンズの格差ではない。

敗れたものはすべてを失う、それに対して何も疑問に思わない価値観なのだ。

しかし、そんな社会を当たり前だと考える彼らはそんなことを問題だとは思うはずがない。

(ようは勝てばいいのよ、それじゃあ改めて…《スピード・ワールド・A》発動!!」

メリッサが目の前のパネルを操作したことで、遊矢と227のDホイールに内蔵されている《スピード・ワールド・A》が発動し、デュエルの準備が整っていく。

こうなっては最後、勝者と敗者が決まるまでデュエルを終えることはできない。

(アカデミア…今すぐこいつらを全員カード化すりゃあいいのに…)

「くそぉ!!」

(何がデュエルで笑顔を、だ…?デュエルで与えているのは、悲しみじゃない…)

「え…?」

遊矢の脳裏に聞いたことのない声が響く。

低く威圧感のあるオッドアイズとは異なり、自分よりも少しだけ年上の女性のような声だ。

(いや、今は構っている暇はない!!)

目の前に表示されるストップウォッチのソリッドビジョンがデュエル開始3秒前であることを遊矢に伝える。

仕方なく、遊矢はヘルメットをかぶり、ゴーグルをつける。

「ライディングデュエル…アクセラレーション!!」

ストップウォッチのカウントが0になると同時に遊矢と227がスタートする。

しかし、やはりマシンレッドクラウンのリミッターの影響で、どんどん227が先を進んでいき、差が広がっていく。

(後攻になるのは仕方ない…!まだ俺はDホイールを使いこなせて…)

そのまま、第1コーナーを227が取り、彼の先攻でデュエルが始まった。

 

227

手札5

SPC0

ライフ4000

 

遊矢

手札5

SPC0

ライフ4000

 

「く…負けた人間を地下へ送るなんて間違って…」

「へっ!いきなり負けることを考えてるのかよ!?」

「さすがジャックにコテンパンにされたことだけあるぜ!!」

遊矢は必死で食い下がるが、彼の心に届くことはない。

ジャックに一度敗れている遊矢の声など、彼らに聞く価値はないのだ。

(彼らも…アカデミアと同じ。デュエルを誰かを不幸にする道具にしか思っていない、悲しい人たち…恐ろしい人たち…)

「女の人の声…」

「いい加減にしろ!貴様、ここに演説しに来たのか!?だったらお呼びじゃない!ここでサレンダーしろ!!」

227の言葉に反応するかのように、観客が遊矢にブーイングする。

遊矢の言葉を否定するかのように。

「俺のターン!俺は手札より《切り込み隊長》を召喚!」

 

切り込み隊長 レベル3 攻撃1200

 

「このカードの召喚に成功したとき、手札からレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚できる。俺は手札より《共闘するランドスターの戦士》を召喚!」

 

共闘するランドスターの戦士 レベル3 攻撃500(チューナー)

 

「俺はレベル3の《切り込み隊長》にレベル3の《共闘するランドスターの戦士》をチューニング!いでよ!切り捨て御免の狩人!シンクロ召喚!レベル6!《ゴヨウ・プレデター》!」

 

ゴヨウ・プレデター レベル6 攻撃2400

 

自分フィールドに現れた《ゴヨウ・プレデター》を見つつ、227は決意を固めていく。

(再びデュエルチェイサーズに戻るためにも…必ず勝って見せる!!)

彼は先日、とある失態を犯してコモンズ出身のDホイーラーに敗れ、検挙に失敗してしまった。

それも長官であるロジェの命令を無視した独断専行で。

その結果、デュエルチェイサーズを罷免され、待っていたのは転落人生だった。

デュエルチェイサーズだったという経歴から、コモンズでは仕事を得ることができず、時には自分が逮捕したDホイーラーの仲間にリンチされることすらあった。

困窮とそんな自分を助けてくれる人がいないことへの絶望から、盗みを働いてしまい、そのまま逮捕された。

待っているのは犯罪者としての生活だと思われた彼を救ったのが、あのロジェだった。

彼は遊矢とのデュエルに勝利すれば、復職を認めると約束したのだ。

つまり、彼にとってこれは人生をかけたデュエル。

正しかろうと間違っていようと、彼にとってはこれが真実だ。

彼は更に勝利に近づくため、自分のそばに浮かんでいるアクションカードを手に取る。

「さらに俺はアクション魔法《排気ガス》を発動!このカードは相手に400ダメージを与える!!」

発動と同時に、227のDホイールが遊矢の真後ろにつく。

そして、文字通り排気ガスが黒く染まってはなたれ、遊矢を包んでいく。

「うう…ゴホゴホ!!」

 

遊矢

ライフ4000→3600

 

227

SPC0→1

 

「そして俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

227

手札5→1

SPC1

ライフ4000

場 ゴヨウ・プレデター レベル6 攻撃2400

  伏せカード2

 

遊矢

手札5

SPC0

ライフ3600

場 なし

 

(これはすごい!ナンバー227、最初のターンであるにもかかわらず、相手にダメージを与えたうえにスピードカウンターを増やしました!!)

「さあ…貴様のターンだ!それとも…この間違った大会のデュエルはしないか??」

挑発するように、227が遊矢に言う。

遊矢は否定しようと口を開くが、すぐにその口を閉ざす。

(何も聞いてもらえない…!勝たなきゃ、誰も俺の言うことを聞いてくれない…!)

(当然のことだ。勝者の言葉には重みがあるが、敗者の言葉に価値などない。メディアと聞いている人間自身の価値観がただ価値があるかのように見せかけているにすぎん)

「く…!俺のターン、ドロー!」

 

遊矢

手札5→6

SPC0→2

 

227

SPC1→3

 

 

「レディースアンドジェントルメーン!!これより、榊遊矢がこの殺伐としたスタジアムに笑顔をお届けします!そのためには…優秀なアシスタントが必要です!まずは手札から《EMユニ》を召喚!」

桃色のバニースーツと黒いレオタードを重ね着し、バニースーツと同じ色の髪をポニーテールにした、白い一本角を額につけている少女が現れる。

召喚されたと同時に、彼女は前かがみになって胸元を強調し始める。

観客の男性陣の中にはそれに夢中になる人々もおり、そんな彼らを女性客は冷たい目で見ていた。

 

EMユニ レベル4 攻撃800

 

「このカードの召喚、特殊召喚に成功したターンのメインフェイズに1度だけ、手札からレベル3以下のEMを特殊召喚できます。俺は手札から《ユニ》の相棒、《EMコン》を特殊召喚!」

《EMユニ》の隣に紺色のバニースーツを着た、青いツインテールで額に一本角をつけている少女が現れ、彼女と同じポーズをし始める。

「「2人そろってかわいさ百倍!」Unicorn!!」」

《EMユニ》と《EMコン》が遊矢の両サイドに行き、一緒にセリフを言う。

これを見て、見とれていた男性陣の一部が鼻血出して倒れ、タンカで運ばれる人が出て来る。

 

EMコン レベル3 攻撃600

 

「こんなチャラチャラしたモンスターを出すとは…貴様ら!公然わいせつ罪で検挙してやる!!」

「そんなお堅いことを言ってると、もてませんよー?」

「だ、黙れ!!も…もてる、もてないの問題じゃない!!」

「(もてなかったんだ…)さぁ、彼女たちはただかわいいだけではありません。このショーにふさわしい名優を呼ぶことができるのです!《EMコン》の効果発動!このカードの召喚・特殊召喚に成功したターンのメインフェイズに1度だけ、このカードとこのカード以外の攻撃力1000以下の俺のEM1体を守備表示に変更し、デッキからオッドアイズモンスター1体を手札に加えることができます!」

《EMコン》が遊矢のデッキに投げキッスを送る。

すると、デッキのピンク色の光を放ち、その中から《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が自動排出される。

 

EMユニ レベル4 攻撃800→守備1500

EMコン レベル3 攻撃600→守備1000

 

「そして俺はスケール3の《EMラディッシュ・ホース》とスケール8の《EMオッドアイズ・ユニコーン》でペンデュラムスケールをセッティング!」

赤い皮と白い実でできた大根で構成された右目に黄色い星型のペイントがされている馬と《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》と同じ目をしている、ピンク色の尾と鬣を持つ一角獣が遊矢の両サイドに現れ、光りの柱を生み出す。

「これで俺はレベル4から7のモンスターを同時に召喚できます!揺れろ!魂のペンデュラム!天空に描け光のアーク!ペンデュラム召喚!! 現れろ、華やかなアシスタントが呼びしこのショーの主役、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!!」

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

「ちぃ…!」

《ゴヨウ・プレデター》を上回る攻撃力を持つ《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が現れたことに舌打ちする227はアクションカードを探す。

一方、遊矢も時間の許す限りそれを探している。

(あった…!)

コース上にあるものの、2メートル近く上に浮いているアクションカードを見つけた遊矢はマシンレッドクラウンにパスワードを入力する。

すると、遊矢の背後にバッタの2歩足を模した機械が現れた。

そのあとは自動的にコンピュータがシステムの変更を行い、マシンレッドクラウンとその機械が合体する。

「何!?Dホイールをサポートする機械だと??」

「さあ、みなさんご覧ください!わたくし、榊遊矢のDホイール火の輪くぐりを!!」

2体のアシスタントから耳打ちでやることを聞いた《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が上空に向けて炎のブレスを放ち、そのあとで《EMユニ》が魔法を唱える。

すると、炎は球体となって上空にとどまり、それが次第に火の輪へと変わる。

「行っけえええええ!!!」

全ての準備が整うと、遊矢のDホイールが2本足によって大ジャンプし、火の輪をくぐる。

そして、くぐった後でアクションカードを手にし、そのまま着地した。

なお、残った火の輪については《EMコン》が水鉄砲で消火した。

 

遊矢

SPC2→3

 

「わああああ!!」

「すげぇぜ、Dホイール火の輪くぐり!」

「かっこいー…」

「っていうか、もうあれDホイールじゃないよね…?」

冷静な突込みがあったものの、観客からの反応は上々。

遊矢は笑みを浮かべると、手にしたアクションカードを見て、それを手札に加える。

「さらに俺は《ラディッシュ・ホース》のペンデュラム効果を発動!1ターンに1度、相手フィールド上に存在するモンスター1体の攻撃力を俺のEM1体の攻撃力分ダウンさせる!」

《EMラディッシュ・ホース》が淡いピンク色の光を放つと、《EMユニ》も同じ光を放ちながら両手を後ろに組み、下から覗き込むように《ゴヨウ・プレデター》を見る。

見られた誇り高き捕食者の顔が赤く染まり、それと同時に攻撃力がダウンする。

「お、おい!!何をときめいている!?デュエルチェイサーズの精鋭モンスターの誇りを忘れたか?!」

 

ゴヨウ・プレデター レベル6 攻撃2400→1600

 

「バトルだ!俺は《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》で《ゴヨウ・プレデター》を攻撃!!」

「な…!?おい、正気に戻れ!!」

227が必死に声をかけるが、《ゴヨウ・プレデター》には届かない。

《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》はそのモンスターの正面に立ち、ブレスを放つために力を籠める。

「そして、俺は《EMオッドアイズ・ユニコーン》のペンデュラム効果発動!このカードがペンデュラムゾーンに存在する限り、1度だけ自分フィールド上のEM1体の元々の攻撃力を攻撃するオッドアイズにバトルフェイズ終了時まで加えることができます!さぁ、《ユニ》のかわいさをわかってもらえた後は、《コン》の大人の魅力をどうぞ!」

デュエルのことだけを考えると、もう1度大将を攻撃力の高い《EMユニ》にしても良いが、それではもう1人のアシスタントが活躍できない。

あらゆるモンスターに見せ場を与えてこそ、エンターテイナー。

指名された《EMコン》は青いオーラを纏うと、右手を後頭部へもっていき、左手で自分の首筋に触れてポーズを決める。

それと同時に、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が同じ色オーラを纏う。

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500→3100

 

「攻撃力3100!?おのれ…!!」

「螺旋のストライク・バースト!!」

満を持して、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》は口から回転する炎のブレスを放つ。

炎は《ゴヨウ・プレデター》を貫き、227をも焼き尽くそうとする。

(ナンバー227に《オッドアイズ》の炎が直撃!さあ、耐えられるでしょうかーー!?)

「ナンバー227じゃない…俺は、俺はデュエルチェイサー227だ!検挙率100%を誇った…俺は、最強のデュエルチェイサーになる男だ!!俺は永続罠《死力のタッグ・チェンジ》を発動!」

突然、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》のそばに《マックス・ウォリアー》が姿を現し、刺又で攻撃を仕掛ける。

やむなく、二色眼の竜は攻撃を中断し、尾で《マックス・ウォリアー》を薙ぎ払う。

「俺のフィールド上に表側攻撃表示で存在するモンスターが戦闘で破壊されるダメージ計算時、俺が受ける戦闘ダメージを0にする!はあはあ…」

ブレスが消えたことで、ダメージを受けることはなかったものの、一歩間違えば大ダメージを受けていたという事態だった。

そして、攻撃を妨害した《マックス・ウォリアー》は攻撃を受けた左わき腹を手で抑えながら、227のそばへ向かう。

「そして、ダメージ計算終了時に手札からレベル4以下の戦士族モンスター1体を特殊召喚する」

 

マックス・ウォリアー レベル4 攻撃1600

 

(さすがは元デュエルチェイサーズ!ピンチを回避し、後続のモンスターを呼びこんだーー!!)

 

「ダメージを与えることはできなかったか…。俺はこれでターンエンド!」

 

227

手札1→0

ライフ4000

SPC3

場 マックス・ウォリアー レベル4 攻撃1600

  死力のタッグ・チェンジ(永続罠)

  伏せカード1

 

遊矢

手札6→2(アクションカード1)

ライフ3600

SPC3

場 オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃3100→2500

  EMユニ レベル4 守備1500

  EMコン レベル3 守備1000

  EMラディッシュ・ホース(青) ペンデュラムスケール3

  EMオッドアイズ・ユニコーン(効果使用済)(赤) ペンデュラムスケール8

 

「俺のターン!俺はドロー前に永続罠《破滅へのクイック・ドロー》を発動!お互いにドローフェイズ時に手札がない場合、通常のドローに加えて追加でカードを1枚ドローできる。ただし…俺は自分のターンが終了するたびに700のダメージを受け、仮に俺のライフが700未満の場合、強制的に俺のライフは0になる!」

「そんな…ハイリスクなカードを…!?」

「これは俺にとって背水の陣…。どのような手を使ってでも…どんな恥辱を受けたとしても…俺は必ず最強のデュエルチェイサーになる!貴様にそのような覚悟はあるか!?榊遊矢!!」

「俺…は…」

227のすさまじい執念に圧倒されたかのように、遊矢は言葉を失う。

そして、彼の言葉を聞いた観客たちも沈黙した。

(うらやましい…)

実況するメリッサも、ただその言葉しか思い浮かばなかった。

「《破滅へのクイック・ドロー》の効果で、俺はデッキからカードを合計2枚ドローする!」

 

227

手札0→2

SPC3→5

 

遊矢

SPC3→5

 

「俺は手札から《アタック・ゲイナー》を召喚!」

 

アタック・ゲイナー レベル1 攻撃0

 

「またチューナーモンスターを!?」

「レベル4の《マックス・ウォリアー》にレベル1の《アタック・ゲイナー》をチューニング!地獄の果てまで追い詰めよ!見よ!清廉なる魂!シンクロ召喚!出でよ、レベル5!《ゴヨウ・チェイサー》!」

オレンジ色のラインのある袴を着て、縄が後ろについている十手を持つ、江戸時代の岡っ引きをモチーフにしたと思われる戦士が現れる。

そして、《アタック・ゲイナー》の幻影が《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》に体当たりする。

「更に、《アタック・ゲイナー》の効果発動!このカードがシンクロ素材として墓地へ送られたとき、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体の攻撃力をターン終了時まで1000ダウンさせる!」

体当たりを受けた《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が傷がないにもかかわらず、苦しみ始める。

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500→1500

ゴヨウ・チェイサー レベル5 攻撃1900

 

「バトルだ!俺は《ゴヨウ・チェイサー》で《EMユニ》を攻撃!」

《ゴヨウ・チェイサー》が十手の後ろにある縄を放ち、遊矢のフィールドの《EMユニ》を拘束する。

「《ゴヨウ・チェイサー》は戦闘で相手モンスターを破壊して墓地へ送ったとき、そのモンスターを攻撃力を半分にして特殊召喚できる!」

 

EMユニ レベル4 守備1500

 

「くっ…!」

「ペンデュラムモンスターは墓地へ行く代わりにエクストラデッキへ行く以上、《ゴヨウ・チェイサー》で捕縛できない。そして、《EMユニ》は自身と仲間を墓地から除外することで、貴様が受ける戦闘ダメージを1度だけ0にできる。その効果はこれでなら使えまい。俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド!それと同時に、《破滅へのクイック・ドロー》の代償として、俺は700ライフを支払う!」

 

227

手札2→0

ライフ4000→3300

SPC5

場 ゴヨウ・チェイサー レベル5 攻撃1900

  EMユニ レベル4 守備1500

  死力のタッグ・チェンジ(永続罠)

  破滅へのクイック・ドロー(永続罠)

  伏せカード1

 

遊矢

手札2(アクションカード1)

ライフ3600

SPC5

場 オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃1500→2500

  EMコン レベル3 守備1000

  EMラディッシュ・ホース(青) ペンデュラムスケール3

  EMオッドアイズ・ユニコーン(効果使用済)(赤) ペンデュラムスケール8

 

「さぁ、貴様のターンだ!貴様にも何が何でもやり遂げなければならないことがあるというなら…俺を超えて見せろ!!」

「やり遂げなきゃ…いけないこと…」

マシンレッドクラウンに装備された足を解除しつつ、遊矢はそのことを思い出す。

自分のやるべきことは次元戦争を終わらせること、そして柚子や仲間を守ること。

だが、そのためにはシンクロ次元の力が必要で、それを得るためにもこのフレンドシップカップを勝ち進めなければならない。

ということは、必然として彼を地獄へ落とさなければならない。

「俺…は…」

だが、彼を犠牲にしたくないという思いがジレンマとなって遊矢にのしかかり、ドローしようとする自分の手が止まってしまう。

「何やってんだてめー!!」

「デュエルを続けろー!!」

「この腰抜けピエロがー!」

火の輪くぐりの時の歓声はどこへ行ったのか、再び遊矢に罵声を浴びせる観客たち。

「俺の…ターン…ドロー…」

手が震えたまま、遊矢はカードを引く。

 

遊矢

手札2→3

SPC5→7

 

227

SPC5→7

 

「俺は…セッティング中のペンデュラムスケールでペンデュラム召喚を行う!今一度揺れろ!魂のペンデュラム!天空に描け光のアーク!ペンデュラム召喚!! 現れろ、《EMウィム・ウィッチ》!」

遊矢のフィールドにピンクを基調とした色合いで、青いマントとピンクと青の縞模様の帽子を付けた、2本足の猫型モンスターが現れる。

 

EMウィム・ウィッチ レベル4 守備800

 

「更に、俺は《EMラディッシュ・ホース》のペンデュラム効果を発動!EM1体の攻撃力分、相手モンスター1体の攻撃力をダウンさせる!」

《EMラディッシュ・ホース》の力を受け、ピンク色の光を纏った《EMウィム・ウィッチ》が《ゴヨウ・チェイサー》にウインクをする。

すると、《ゴヨウ・チェイサー》は目をハートマークにして動かなくなってしまった。

「《ゴヨウ・チェイサー》!き、貴様まで!?!?」

 

ゴヨウ・チェイサー レベル5 攻撃1900→1100

 

「バトル…。俺は、《オッドアイズ》で《ゴヨウ・チェイサー》を攻撃…」

「ふん!俺のフィールドに伏せカードがあることを忘れたか!?」

「伏せカード…??ああ!!」

227の言葉を聞いた遊矢が正気に戻り、彼のフィールドを見る。

そこには1枚だけ、伏せカードがある。

あまりの動揺で、そのことを失念してしまっていた。

「俺は《Sp-収縮》を発動!俺のスピードカウンターが3つ以上あるとき、フィールド上のモンスター1体の元々の攻撃力をターン終了時まで半分にする!」

「何!?」

《Sp-収縮》の影響により、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》の体が縮んでいく。

そして、その大きさが2分の1になったところを十手で殴られて撃破される。

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500→1250

 

「けど、攻撃力は1250!なんで戦闘破壊されて…」

「さらに俺はアクションカードも発動した。アクション魔法《そよ風》!この効果で《ゴヨウ・チェイサー》の攻撃力を300アップした!」

 

ゴヨウ・チェイサー レベル5 攻撃1100→1400

 

227

SPC7→5→6

 

遊矢

ライフ3600→3450

 

Sp(スピードスペル)-収縮(ゲームオリカ)

速攻魔法カード

(1):自分のスピードカウンターを2つ取り除き、フィールド上に存在するモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターの攻撃力がターン終了時まで半分になる。

 

「く…破壊されたペンデュラムモンスターはエクストラデッキに行く!」

ペンデュラムモンスターの特性のおかげで、最悪の事態だけは回避された。

しかし、フィールドにはまだ《ゴヨウ・チェイサー》が残っており、そしてスピードカウンターは8まで増えている。

「さぁ、ここからどうする!?」

「…俺は、カードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

227

手札0

ライフ3300

SPC6

場 ゴヨウ・チェイサー レベル5 攻撃1400→2200

  EMユニ レベル4 守備1500

  死力のタッグ・チェンジ(永続罠)

  破滅へのクイック・ドロー(永続罠)

 

遊矢

手札3→0(アクションカード1)

ライフ3450

SPC7

場 EMウィム・ウィッチ レベル4 守備800

  EMコン レベル3 守備1000

  EMラディッシュ・ホース(青) ペンデュラムスケール3

  EMオッドアイズ・ユニコーン(効果使用済)(赤) ペンデュラムスケール8

  伏せカード2

 

「俺のターン!」

 

227

手札0→2

SPC6→8

 

遊矢

SPC7→9

 

「俺は手札から《トップ・ランナー》を召喚!」

 

トップ・ランナー レベル4 攻撃1100(チューナー)

 

「レベル4の《コン》にレベル4の《トップ・ランナー》をチューニング!大地をうがち現れろ、気高き法の守護者!シンクロ召喚!レベル8!《ギガンテック・ファイター》!!」

 

ギガンテック・ファイター レベル8 攻撃2800

 

「俺の《コン》を使ってシンクロモンスターを…!?」

「このカードは俺の墓地に存在する戦士族モンスター1体につき、攻撃力が100アップする。俺の墓地の戦士族モンスターは5体!」

 

ギガンテック・ファイター レベル8 攻撃2800→3600

 

「攻撃力3600!?」

《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》はペンデュラム召喚することで再びフィールドに出すことができる。

しかし、《EMラディッシュ・ホース》の効果を使っても、現状下げることができる攻撃力は800で、《EMオッドアイズ・ユニコーン》の効果はもう使ってしまった。

攻撃力を頼みに《ギガンテック・ファイター》を倒すのが難しくなったのだ。

「さあ、今こそ見せてやる!這い上がるために手にした力を!《Sp-ミラクルシンクロフュージョン》を発動!」

「何!?《融合》…!?」

227が発動したカードを見て、遊矢は動揺する。

シンクロ次元のデュエリストが融合を使うなど、あり得ない話だ。

(おいおい、シンクロ次元にアカデミアでもいるのか…?)

観戦している翔太はこの次元に隠れる敵の影を感じ始めていた。

「このカードはスピードカウンターを2つ取り除き、フィールドと墓地のモンスターを素材に、シンクロモンスターを素材とする融合モンスターを融合召喚できる。俺が素材とするのは墓地の《ゴヨウ・プレデター》とフィールドの《ゴヨウ・チェイサー》!飽くなき追跡者の魂と誇り高き捕食者の魂が、今1つとなりて昇華する!融合召喚!出でよ、荘厳なる捕獲者の血統を受け継ぎし者!《ゴヨウ・エンペラー》!」

2体の捕縛者が白い光でできた渦の中に消えていき、その中から浮遊する赤い西洋風の一人がけソファーに腰かけた、歌舞伎役者の隈取化粧を模した仮面をつけた、貴族のようなモンスターが現れる、

融合素材となった2体と比べると、身長は大人と子供ほどの差があり、名前からしてまさに少年皇帝というべき姿だ。

 

ゴヨウ・エンペラー レベル10 攻撃3300

 

Sp-ミラクルシンクロフュージョン(ゲームオリカ)

通常魔法カード

(1):自分のスピードカウンターを2つ取り除いて発動する。自分のフィールド上・墓地から、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターをゲームから除外し、シンクロモンスターを融合素材とするその融合モンスター1体を融合召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

(2):セットされたこのカードが相手のカード効果によって破壊され墓地へ送られた時に発動する。自分はデッキからカードを1枚ドローする。

 

227

SPC8→6

 

「攻撃力3300!?」

「墓地の戦士族モンスターが減ったことで、《ギガンテック・ファイター》の攻撃力は下がる」

 

ギガンテック・ファイター レベル8 攻撃3600→3400

 

「そして…!」

227は更に遊矢に追い打ちをかけるため、アクションカードを探す。

ちょうど壁の上あたりにアクションカードがあり、彼は壁を走行してジャンプし、そのカードを手にする。

手にしたカードがアクション魔法だったためか、自動的に227のスピードカウンターが増える。

 

227

SPC6→7

 

「ここで俺は《スピード・ワールド・A》の効果発動!スピードカウンターを7つ取り除き、デッキからカードを1枚ドローする」

発動宣言と同時に、一気に227のDホイールのスピードが落ちる。

そして、すぐに彼はカードをドローする。

 

227

SPC7→0

 

「俺は手札から《Sp-オーバーブースト》を発動!俺のスピードカウンターを6つ増やし、ターン終了時に俺のスピードカウンターを1にする」

 

227

SPC0→6

 

「またスピードカウンターを…!?」

「そして、俺は《スピード・ワールド・A》の効果を発動!スピードカウンターを4つ取り除き、手札のSp1枚につき、400のダメージを与える!」

227がアクションカードを含む手札を遊矢に公開する。

そして、遊矢の真後ろに来ると、排気口から火炎放射を放つ。

「うわあああ!!」

 

遊矢

ライフ3450→3050

 

227

SPC6→2

 

後悔されたカード

・Sp-起爆化

・フレイム・ソード

 

「そして、俺は手札から《Sp-起爆化》を発動!俺のスピードカウンターが2つ以上あるとき、自分の魔法・罠ゾーンに存在するカード1枚を破壊することで、相手フィールド上に存在するすべてのモンスターの表示形式を変更する」

「何!?」

227のフィールドにある《破滅へのクイック・ドロー》が爆発し、それにびっくりした遊矢のモンスターたちが一斉に表示形式を変更する。

 

EMコン レベル3 守備1000→攻撃600

EMウィム・ウィッチ レベル4 守備800→攻撃800

 

Sp-起爆化(アニメオリカ)

通常魔法カード

(1):自分のスピードカウンターが2つ以上あるとき、自分フィールド上に存在する魔法・罠カード1枚を対象に発動できる。そのカードを破壊し、相手フィールド上に存在するすべてのモンスターの表示形式を変更する。

 

「まずいな。2体とも攻撃力が低いモンスター。攻撃力3300の《ゴヨウ・エンペラー》と3400の《ギガンテック・ファイター》の一斉攻撃を受けたら…」

「これで終わりだ!!《ゴヨウ・エンペラー》で《EMコン》を攻撃!そして、このカードは意味がないが発動しなければならない!アクション魔法《フレイム・ソード》!!こいつは攻撃モンスターに貫通効果を与える!」

《ゴヨウ・エンペラー》が口から炎を吐き、《EMコン》をその中に拘束する。

炎を受けた《EMコン》はなぜか熱くないことに動揺するが、すぐに彼女は炎と共に227のフィールドに移ってしまう。

「《ゴヨウ・エンペラー》はこのカードと俺のフィールド上に存在する、元々のコントローラーがお前のモンスターが戦闘で破壊したモンスターを俺のフィールド上に特殊召喚する効果がある。《EMコン》はペンデュラムモンスターでない以上、捕縛する!」

 

EMコン レベル3 守備1000

 

遊矢

ライフ3050→350

SPC7→4

 

(ナンバー227の一撃がさく裂!!一気に榊遊矢選手のライフを350にし、更にスピードカウンターまで下げてしまったーーー!!)

「やっちまえーー!」

「このままこいつをぶっつぶしてしまえーー!!」

観客が227をあおり始める。

そして、227も勝利を確信したのか、笑みを浮かべて攻撃宣言する。

「これで決まりだ!!《ギガンテック・ファイター》で《EMウィム・ウィッチ》を攻撃!!」

攻撃命令を受けた《ギガンテック・ファイター》が走りはじめ、《EMウィム・ウィッチ》に向けてショルダータックルをしようとする。

「く…!俺は罠カード《ガード・ブロック》を発動!俺が受ける戦闘ダメージを0にし、デッキからカードを1枚ドローする!」

ショルダータックルを受けた《EMウィム・ウィッチ》が破壊され、その衝撃が遊矢を襲う。

しかし、彼の周囲に展開された透明な障壁が防御する。

「ええい…しぶとい奴が!!俺はこれでターンエンド!それと同時に、《オーバーブースト》の効果で、俺のスピードカウンターは1に落ちる!」

 

227

手札0

ライフ3300

SPC6

場 ゴヨウ・エンペラー レベル10 攻撃3300

  ギガンテック・ファイター レベル8 攻撃3400

  EMコン レベル3 守備1000

  死力のタッグ・チェンジ(永続罠)

  破滅へのクイック・ドロー(永続罠)

 

遊矢

手札0→1(アクションカード1)

ライフ350

SPC4

場 EMラディッシュ・ホース(青) ペンデュラムスケール3

  EMオッドアイズ・ユニコーン(効果使用済)(赤) ペンデュラムスケール8

  伏せカード1

 

再び遊矢のフィールドのカードが全滅し、一気にライフも350まで減った。

アクションカードが手札にある遊矢は次のターン、そのカードを使ったうえで新しいアクションカードを手にしなければ、スピードカウンターを7つ取り除くことで行えるドローができない。

頼みの綱は次にドローするカードを含めた手札2枚と残っているアクションカードだけだ。

「さあ、どうした!?さっさとドローしろ!それともここでサレンダーするか??」

227がターンを進めるよう、遊矢を挑発するが、遊矢はデッキトップに指をかけるだけで何もしない。

(どうしたことでしょう!?動きが止まってしまったーーー!このままプレイしないまま1分経過すると失格!もー、何やってるのよーー!?)

「もう負けるとわかったから、腰が引けてしまったかー!?」

「てめーみたいな腰抜けがフレンドシップカップに出るんじゃねー!」

「かえって、ママのおっぱいでも吸ってろ!弱虫がー!!」

観客も一緒になって、遊矢を挑発する。

そして、遊矢が動きを止めてから30秒が経過する。

(悲しい人たちです…。勝利でしか自分を表現できない。そして、目的を達成するにはあなた自身が彼に悲しみを与えなければならない…。それゆえに恐ろしい…)

再び女性の声が遊矢の脳裏に響く。

(小僧、何をしている?やらなければやられる。勝負の世界とはそのようなもの。ならば…迷わず奴を地獄へ落とせば良いだろう)

「オッドアイズ…」

女性の声の主がわからない遊矢は仕方なく、オッドアイズだけを名前で呼ぶ。

呼ばれたオッドアイズはいい分だけはきこうと口を閉ざす。

「…。俺を、信じてくれ」

(信じる…?)

「俺のターン、ドロー!!」

失格ぎりぎりになって、遊矢はカードをドローする。

 

遊矢

手札1→2

SPC4→6

 

227

SPC1→3

 

「おじさん…」

「お、おじさん…!?俺はまだ30手前だぞ!?失礼な…!」

「デュエルの間で言ってたよな。自分には何が何でもやらなければいけないことがあるって。そのためには、どんな手でも使う。どんな恥辱にも耐えるって…。思い出したよ、俺にも、何が何でもやらなきゃいけないことがあるってことを…」

顔をあげ、じっと227を見る。

遊矢の眼からは涙が流れているが、真剣な表情を見せている。

「おじさんの言葉がなかったら、きっと迷いながらデュエルをしてた。だから…ありがとう。ただ、これだけは言っておきたくて…」

「ありがとう…だと!?貴様!!」

「俺は手札から《Sp-エンジェル・バトン》を発動!スピードカウンターを4つ取り除くことで、デッキからカードを2枚ドローし、手札1枚を墓地に送る!」

遊矢はカードを引き、3枚の中から選んだ1枚を墓地へ送る。

「この瞬間、俺は墓地へ送った《代償の宝札》の効果を発動!このカードが手札から墓地へ送られたとき、俺はデッキからカードを2枚ドローできる!」

《スピード・ワールド・A》の効果により、従来の魔法カードは発動できないものの、このようなタイプのカードは別だ。

発動できずとも、このような形で恩恵を受けることのできる魔法カードが多少なりとも存在する。

 

遊矢

手札2→4

SPC4→0

 

「俺はセッティング中のペンデュラムスケールでペンデュラム召喚を行う!現れろ、俺のモンスターたち!!エクストラデッキから、《EMウィム・ウィッチ》、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!そして、手札から《EMシルバー・クロウ》、《法眼の魔術師》!!」

一気に遊矢のフィールドに4体ものモンスターが集結する。

その中には金色の4つの車輪のついた槌を持つ、金色の飾りのある黒いローブで金色の羽を模した帽子をつけた灰色の髪の魔術師がいる。

口元がローブと同じ色のスカーフで隠れていて、髪で右目が隠れており、その表情をうかがうのは非常に水かしい。

 

EMウィム・ウィッチ レベル4 攻撃800

EMシルバー・クロウ レベル4 攻撃1800

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500

法眼の魔術師 レベル7 攻撃2000

 

(遊矢選手!一気に4体ものモンスターを同時召喚!しかし、攻撃力は《ゴヨウ・エンペラー》にも《ギガンテック・ファイター》にも届かず!さあ、どうするーーー!?)

「さらに俺は《ウィム・ウィッチ》と《シルバー・クロウ》でオーバーレイ!漆黒の闇より愚鈍なる力に抗う反逆の牙!今、降臨せよ!エクシーズ召喚!現れろ!ランク4!《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》!」

(さあ…参りましょう)

「え…!?」

エクシーズ召喚された《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》からあの女性の声が聞こえた。

(ふん!察しの悪い小僧が。まぁ…貴様のデッキにはまだ女がいるようだが…)

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ランク4 攻撃2500

 

「《ダーク・リベリオン》は1ターンに1度、オーバーレイユニットを2つ取り除き、相手モンスター1体の攻撃力の半分を奪うことができる!」

「それが《ゴヨウ・エンペラー》に対する切り札か!?だが甘い!俺は《ゴヨウ・エンペラー》の効果を発動!相手がモンスターを特殊召喚したとき、俺のフィールド上に存在する地属性・戦士族のシンクロモンスター1体をリリースし、そのコントロールを奪う!《ギガンテック・ファイター》をリリース!」

ほっそりと開いていた《ゴヨウ・エンペラー》の眼がいきなり大きく開き、紫色の怪しく光る。

その光を見てしまった《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》の眼が紫色の淡く光り、そのまま227のフィールドへ向かってしまった。

「これで手は封じた!貴様の負けだ、榊遊矢!」

「まだだ!俺は…まだ!!」

まだ負けるわけにはいかない、そういおうとした遊矢の脳裏にダーク・リベリオンの声が響く。

(そうです…。あなたはまだ負けていません)

「ダーク…リベリオン…?」

背後のあらわれた2体の竜の幻影に遊矢は驚く。

周囲の人々は動きを止めていて、上空の雲も動かなくなっている。

(『恐怖』め…。小僧は俺の獲物だ。邪魔をするな)

(『憎しみ』…いいえ、オッドアイズ。彼には悲しみを感じる心があります。悲しむ人の心にぬくもりを与えたいと願う心が…。それが、既に新しい力を生み出しています。その力を…解放していただけませんか?)

「新しい力…??」

よくわからない会話をする2体の竜に置いてけぼりにされつつある遊矢はダーク・リベリオンに質問する。

オッドアイズに質問したとしても、無視されるのが関の山だろうと思ったためだ。

(ええ。悲しみは心を冷たくする。でも、悲しみがあるからこそ、ぬくもりの意味を知ることができる。それを示すカード…)

「悲しみのカード…あ…!」

遊矢の目の前に青い光の粒子が集まり、それが1枚のエクシーズモンスターカードへと変わる。

氷漬けの鎧をまとった、新しいオッドアイズのカード…。

観念したオッドアイズが解放したのかもしれない。

(オッドアイズ…。感謝しますよ)

(勘違いするな、女狐め。小僧が力の進化に心が追い付いているかを確かめるだけだ)

(ええ…。信じましょう。遊矢を…ユートが守った優しき少年を…)

そういいながら、2体の竜が消え、とまっていたものが動き始める。

そして、遊矢はマシンレッドクラウンのディスプレイを操作し、エクストラデッキの中を見る。

その中には、あのカードが入っていた。

「どうした!?もう手がないだろう。ターンエンドしろ!!」

「いいや…おじさん!まだデュエルは終わっていない!俺はレベル7の《オッドアイズ》と《法眼の魔術師》でオーバーレイ!」

「何!?またエクシーズ召喚だと!?」

《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が上空に向けて咆哮すると、《法眼の魔術師》が魔法を唱え始める。

すると、魔術師の姿が吹雪に変化していき、二色眼の竜を包み込んでいく。

「二色の眼の竜よ、人々の涙を束ね、解放への道を示せ!エクシーズ召喚!ランク7!悲しき世界を穿つ氷河の竜、《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》!!」

氷の鎧をまとった《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が激しく咆哮する。

すると、会場が吹雪のソリッドビジョンに包まれていき、コースが氷漬けになっていく。

 

オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン ランク7 攻撃2800

 

「バトルだ!俺は《オッドアイズ》で《ゴヨウ・エンペラー》を攻撃!!」

「攻撃力3300の《ゴヨウ・エンペラー》を!?血迷ったか…!?」

《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》が地面をたたくと、《ゴヨウ・エンペラー》の足元から氷の柱が生まれ、それが彼を閉じ込めていく。

そして、身動きの取れないそのモンスターを氷によって質量の増した尾で薙ぎ払おうとする。

「この瞬間、《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》の効果を発動!モンスターが攻撃するとき、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、その攻撃を無効にする!リボーン・バリア!!」

しかし、《ゴヨウ・エンペラー》の目の前に《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》の幻影が現れ、尾を受け止める。

「更にそのあと、手札・墓地からオッドアイズモンスター1体を特殊召喚できる!俺は《オッドアイズ》を特殊召喚する!」

攻撃を受け止めた《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》はそのまま遊矢のフィールドへと戻っていった。

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

取り除いたオーバーレイユニット

・オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン

 

「それがどうした!?自ら攻撃を封じ、モンスターを増やしただけだ!!」

「そして、今こそアクション魔法を発動する!アクション魔法《退場》!自分フィールド上に存在するモンスター1体を破壊する!俺は《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》を破壊する!」

「自分のモンスターを今度は破壊するだと!?」

《退場》のソリッドビジョンから放たれる光を受けた《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》の氷の鎧にひびが入り、そこから今度は緑色の鎧が見え始める。

「何!?破壊されるときにも効果を発動するのか!?」

「エクシーズ召喚された《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》墓地へ送られたとき、エクストラデッキからこのカード以外のオッドアイズモンスター1体を特殊召喚できる!現れろ、雷鳴纏いし疾風の竜、《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》!!」

氷の鎧が砕け、雷鳴の鎧を得た《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》が4枚の翼をはためかせ、嵐を起こす。

氷にとらわれた《ゴヨウ・エンペラー》には逃れることができず、氷もろとも吹き飛ばされていく。

「何!?《ゴヨウ・エンペラー》が…!」

「《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》は特殊召喚に成功したとき、相手フィールド上に表側攻撃表示で存在するモンスター1体を手札に戻すことができる!ライトニング・トルネード!!」

「くぅ…。《ゴヨウ・エンペラー》は皇帝の名前にふさわしい絶大な権力をふるうモンスター。だが、権力には必ず代償がある。《ゴヨウ・エンペラー》がフィールドから離れるとき、俺のフィールド上に存在する元々の持ち主が相手のモンスターはすべて解放される…」

《EMコン》と《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》が《ゴヨウ・エンペラー》から解放され、遊矢のフィールドへと戻っていく。

彼の周囲にはアクションカードはなく、あとは遊矢が攻撃することですべてが終わる。

 

退場

アクション魔法カード

(1)自分フィールド上に存在するモンスター1体を破壊する。この破壊は相手による破壊として扱う。

 

「うう…」

遊矢はじっと227を見る。

先へ進むためには、彼を地獄へ落とすしかない。

その罪と悲しみを忘れないために。

「3体のドラゴンで、プレイヤーにダイレクトアタック!!トリプル・ストライク・バーストォ!!」

《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を中心に、3体のモンスターが回転するブレスを放つ。

炎と雷がまじりあったそのブレスは227に直撃した。

「うわあああああ!!!」

 

227

ライフ3300→800→0

 

「う、う、ううう…」

デュエルが終わり、Dホイールから降りた遊矢は涙を流しながら227を探す。

彼はDホイールから降りると同時に、2人のスタッフによって両腕をつかまれつつあった。

これから、彼は地下のごみ処理施設での強制労働という地獄が待っている。

「さぁ、いくぜ?元エリートさん」

「待ってくれ!!おじさん…いや、デュエルチェイサー227!!」

「何…??」

驚きながら227は遊矢に目を向ける。

空気を読んだスタッフ2人はつかむのをやめ、せめて最後のあいさつ程度はさせてやろうと思って待つ。

「俺は待ってる!再び地上に戻ってきて、俺にリベンジをする時を!最強のデュエルチェイサーズになるんだろう!?だったら、この敗北だけでその目的を終わらせるな!!泥水をすすってでも這い上がって、降りかかる困難を押しのけて、必ず戻ってくるんだ!!そして…俺ともう1度デュエルをするんだ!!」

「…。くっ、言われなくとも、そうして見せる!首を洗って待っていろ、榊遊矢!!」

サングラスで隠れて見えないが、彼も大量の涙を流している。

そして、スタッフたちは彼の腕をつかもうとする。

「触るな!!」

そう叫びながら227はヘルメットを右手で握って振り回し、スタッフたちを下がらせる。

「俺に触るな…!自分の足で行く…。道ぐらいはわかる!!」

そういった227は遊矢の右横に立って止まり、左手で彼の左肩を握る。

そして、わずかに笑みを浮かべた後で離し、そのままコースを後にした。

「これで…これでよかったのかな?父さん…柚子…」

勝者に向けた大きな歓声が会場を包み込む中、遊矢は静かに空を見上げていた。



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第67話 乙女の旋律

遊矢と227がデュエルをしているのと同じ時間の大門区消防署前…。

柚子の手を借りて起き上がった伊織はホセに指をさす。

「おおー、まさかこんなところに立っているとは思わなかったよー。さっすがロボット!策士だねー」

(ただ単に伊織の前方不注意なだけじゃ…)

「しかーし!私たちシェイド…もとい、遊勝塾の美少女タッグの相手ではなーーい!わかったら、回れ右をして、引き下がり給えーー!」

「…」

人間であれば、ツッコミを入れるか何を言っているなどと何かを言葉にするのだが、ロボットであるホセはプログラムされた言葉以外を口にすることはない。

プログラムにないようなものに対して、できるのは沈黙だけだ。

彼はデュエルディスクを展開し、じっと2人を見る。

「ああー、引き下がってくれない…。ごめんね、柚子ちゃん!」

「大丈夫、期待してなかったから」

「うう…ちょっとは期待していてほしかったなー」

半分涙目になった伊織も柚子と一緒にデュエルディスクを展開し、一緒にバック転で後ろに下がる。

「もう隠す必要もないし…やろっか、柚子ちゃん!!フィールド魔法《クロス・オーバー》発動!!」

伊織の宣言と共に、3人の周囲にプリズム状の浮いた足場とアクションカードが展開されていく。

デュエルディスクに内蔵されているソリッドビジョンシステムはスタンダード次元のデュエルリングに設置されているものと比較すると、出力も容量も低いため、使えるフィールドはこれしかない。

しかし、アクションカードという特殊ルールに慣れている伊織たちにとってはありがたいフィールドであることに変わりはない。

「じゃあ、久々にあのセリフを…。コホン!戦いの殿堂に集いしデュエリストたちが!」

「モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い」

「フィールド内を駆け巡る!」

「見よ、これぞ、デュエルの最強進化形、アクション…」

「「デュエル!!」」

 

柚子&伊織

手札

柚子5

伊織5

ライフ4000

 

ホセ

手札5

ライフ4000

 

「あたしの先攻!あたしはモンスターを裏守備表示で召喚。更に、手札から魔法カード《天空の宝札》を発動!手札の天使族・光属性モンスター1体を除外して、デッキからカードを2枚ドローするわ!」

 

手札から除外されたカード

・幻奏の音女アリア

 

「そして、カードを2枚伏せて、ターンエンド」

 

柚子&伊織

手札

柚子5→2

伊織5

ライフ4000

場 裏守備モンスター1

  伏せカード2

 

ホセ

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「私のターン、ドロー」

 

ホセ

手札5→6

 

「私は手札から《グランド・コア》を召喚」

 

グランド・コア レベル1 攻撃0

 

「そして、手札から魔法カード《ボム・ブラスト》を発動。このターン、戦闘を行っていない私のフィールド上の機械族モンスターを3体まで破壊し、破壊したモンスター1体につき400のダメージを与える」

「いきなりコアを破壊した…ってことは!?」

《グランド・コア》が柚子と伊織の目の前まで接近し、自爆する。

爆風によって、2人が吹き飛ばされている間にコアの中に収納されていた5つのパーツが飛び出してくる。

「《グランド・コア》がカード効果によって破壊されたとき、私のフィールド上に存在するすべてのモンスターを破壊することで、手札・デッキ・墓地から《機皇帝グランエル∞》、《グランエルT》、《グランエルA》、《グランエルG》、《グランエルC》を特殊召喚する」

 

柚子&伊織

ライフ4000→3600

 

機皇帝グランエル∞ レベル1 攻撃0

グランエルT レベル1 攻撃500

グランエルA レベル1 攻撃1300

グランエルG レベル1 守備1000

グランエルC レベル1 攻撃700

 

「そして、《グランエル》の効果発動。このカードが《グランド・コア》の効果で特殊召喚に成功した場合、その攻撃力は私のライフと同じになる」

 

機皇帝グランエル∞ レベル1 攻撃0→4000

 

「いきなり攻撃力4000の《グランエル》が…!」

まるで積み込みをしているかのように、最初のターンから《機皇帝グランエル∞》とパーツが現れた。

以前までの偽装用のシンクロデッキを使っていたなら、もちろん刺さっていたかもしれないが、今回の2人のデッキは普段使っている融合デッキであるため、ダメージは相対的に少なくなっている。

しかし、それでも様々なサポート効果を持つパーツとライフに連動して攻撃力を高めることができる《機皇帝グランエル》の脅威に変化はない。

「バトル。私は《グランエル》で裏守備モンスターを攻撃。グランエル・スローター・キャノン」

《機皇帝グランエル∞》の右腕に装着されているキャノン砲からオレンジ色の大出力の光線が発射される。

裏守備となっていた、黄色いターバンで焦げ茶色とオレンジの服を重ね着した小さな笛吹きが慌てた表情を浮かべながら光線に飲み込まれていく。

 

裏守備モンスター

見習い魔笛使い レベル2 守備1500

 

「《見習い魔笛使い》のリバース効果発動!手札からモンスター1体を特殊召喚できる。あたしは手札から《幻奏の歌姫ソプラノ》を特殊召喚!」

《見習い魔笛使い》が光りの中で、手に持っている笛を吹き始める。

すると、それに合わせて歌を歌いながら《幻奏の歌姫ソプラノ》が姿を現す。

 

幻奏の歌姫ソプラノ レベル4 守備1400

 

《幻奏の歌姫ソプラノ》が歌い終わると同時に、《見習い魔笛使い》が力尽きる。

しかし、一度吹かれた笛の魔力はそう簡単に消えるものではなく、その音色が伊織の手を借りて起き上がって柚子の目の前で魔法陣に代わる。

「更に、《見習い魔笛使い》が戦闘・効果によって破壊されたとき、手札からモンスターを特殊召喚できる。あたしは《幻奏の音女タムタム》を特殊召喚!」

ドラの音と一緒にオレンジ色の音符模様と胸当てがついている、緑色の中国風の着物を装備した黒髪の少女が現れる。

右手には先端部分に赤い大きなふくらみがついていて、持ち手が茶色い木製となっているバチがあり、左手の近くには赤いドラが浮かんでいる。

 

幻奏の音女タムタム レベル4 守備2000

 

「《タムタム》の効果発動!あたしのフィールド上に幻奏モンスターが存在する状態で特殊召喚に成功したとき、デッキ・墓地から《融合》を1枚手札に加えることができるわ」

ドラの音によって生じた波紋が柚子のデュエルディスクにまで及び、それと同時に《融合》のカードがデッキから自動排出される。

「《グランエルA》の効果発動。∞と名の付くモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊したとき、続けてもう1度だけ攻撃することができる。《幻奏の歌姫ソプラノ》に攻撃。グランエル・スローター・キャノン・セカンド」

《グランエルA》が発射前に温存していたエネルギーをキャノン砲に回し、更に外側に外付けされている煙突型の強制冷却材を注入して再発射可能にする。

そして、照準を《幻奏の歌姫ソプラノ》に向けると、再び大出力の光線を発射する。

しかし、急に歌姫の前に現れた《幻奏の音女アリア》が彼女に合わせてデュエットをはじめ、その歌声が光線を拡散させていく。

「コンサートはそう簡単に終わらないわ!あたしは永続罠《奇跡の降臨》を発動するわ。このカードはゲームから除外されているあたしの天使族モンスター1体を特殊召喚できる。そして、特殊召喚された《アリア》がフィールド上に存在する限り、あたしの幻奏モンスターは効果の対象にならず、戦闘では破壊されない!」

「おおーー!さっすが柚子ちゃん。やっるー!」

《幻奏の音女アリア》は先ほどの《天空の宝札》の効果で除外したモンスターだ。

《機皇帝グランエル》による追加攻撃をも回避し、その上3体ものモンスターに破壊耐性をつけた柚子の技量に舌を巻く。

(あたしも…遊矢とみんなのために強くなるって決めたから…!)

 

幻奏の音女アリア レベル4 守備1200

 

「私はカードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

柚子&伊織

手札

柚子2→1(《融合》)

伊織5

ライフ3600

場 幻奏の歌姫ソプラノ レベル4 守備1400

  幻奏の音女タムタム レベル4 守備2000

  幻奏の音女アリア(《奇跡の降臨》の影響下) レベル4 守備1200

  奇跡の降臨(永続罠)

  伏せカード1

 

ホセ

手札6→2

ライフ4000

場 機皇帝グランエル∞ レベル1 攻撃4000

  グランエルT レベル1 攻撃500

  グランエルA レベル1 攻撃1300

  グランエルG レベル1 守備1000

  グランエルC レベル1 攻撃700

  伏せカード2

 

「えー、それでは…コホン!歌姫によるコンサートのあとは、ヒーローによる華麗な変身ショーをご披露いたしまーす!私のターン、ドロー!」

わざとらしい咳払いの後で、まるでオペラのように《幻奏の音女タムタム》のドラの音と合わせて歌いながらドローする。

 

伊織

手札5→6

 

「柚子ちゃん、《タムタム》の力を借りるよー?」

「ええ。使って、伊織!」

「了かーい!私は手札から速攻魔法《マスク・チェンジ・セカンド》を発動!手札1枚を捨て、私のフィールド上に存在するモンスター1体を同じ属性のM・HEROに変身させる!さあ、《タムタム》!変身のお時間だよ!」

金色のマスクを手にした《幻奏の音女タムタム》がそれをかぶる。

すると、マスクから金色の光が発生し、その中で彼女の衣類が一瞬だけ消え、そのあとで金色のアーマーが装着される。

二の腕と二の足が露出しており、そこは下にきている白いゴム状のスーツが見えている。

「魂の響きよ!今こそ牙の力を宿し、新たなヒーローに進化せよ!変身召喚!《M・HERO光牙》!!」

変身を終えた《幻奏の音女タムタム》改め、《M・HERO光牙》は伊織を睨む。

「ああー、そんなに怒らないでねー?」

 

M・HERO光牙 レベル8 攻撃2500

 

手札から墓地へ送られたカード

・E・HEROネクロ・ダークマン

 

「《光牙》の効果!このカードの攻撃力は相手フィールド上に存在するモンスターの数×500アップ!」

もはや説明するまでのことではないが、機皇帝は5体のモンスターによって構成されているモンスターだ。

そのため、1対多数での戦いに闘志を燃やすこの光の牙にとって、まさに絶好の獲物となる。

 

M・HERO光牙 レベル8 攻撃2500→5000

 

「攻撃力5000!これなら、攻撃力4000の《グランエル》を攻撃できるけど…」

攻撃力では上回っているものの、柚子は《グランエルC》の効果を思い出す。

このカードは自分フィールド上のモンスター1体の戦闘破壊を1ターンに1度だけ防ぐ効果を持つ。

更に、《グランエルG》のせいで、1ターンに1度、カード効果による破壊を防がれてしまう。

ダメージを与えることができたとしても、破壊をすることができない。

攻防一体の、まさに権現坂が目指す不動の構えというものかもしれない。

しかし、今のホセのフィールドには攻撃力500の《グランエルT》がいる。

このカードを攻撃し、通れば1ショットキルで勝利できる。

「(じゃあ、せめて戦闘ダメージだけでも!!)私は《光牙》で《グランエルT》を攻撃!!」

勝負を決めるため、《M・HERO光牙》が突撃する。

両腕のアーマーに光が集まり、それが光の刃へと変化する。

「罠発動、《機皇換装》。フィールド上の機皇帝パーツを手札・墓地に存在するパーツに換装する。《グランエルT》を手札の《グランエルT5》に換装」

上空に出現した蟹を模した茶色い機械が口の部分から光線を放ち、《M・HERO光牙》の攻撃を妨害する。

そして、腕部を頭頂部に動かし、口部を開いて《機皇帝グランエル》の頭部に変形すると、姿を消した《グランエルT》の新しい頭になる。

 

グランエルT5 レベル5 攻撃1500

 

「《グランエルT》がいなくなった…!?じゃあ、《グランエルA》に攻撃対象を変更!!」

伊織の指示を聞き、うなずいた《M・HERO光牙》が今度は《グランエルA》に刃を向ける。

「罠発動、《ドレインシールド》。相手モンスター1体の攻撃を無効にし、その攻撃力分ライフを回復する」

「ええ!?」

光の刃をパーツを切り離そうとしたが、その攻撃を《ドレインシールド》のソリッドビジョンが阻む。

そして、吸収したエネルギーをホセと《機皇帝グランエル》のコアパーツに与えていく。

 

ホセ

ライフ4000→9000

 

機皇帝グランエル∞ レベル1 攻撃4000→9000

 

「攻撃力9000!?」

増幅したホセの力を得て、さらに力を増す《機皇帝グランエル》。

さらなる力を得たせいで、2人はさらにこの巨人を倒すことが困難になってしまった。

「けど、どうして《機皇換装》をわざわざ…」

柚子が気になったのは彼が最初に発動した《機皇換装》だ。

《ドレインシールド》で力を奪うだけなら、わざわざそのカードを発動することはない。

そして、その効果で特殊召喚された《グランエルT5》は初めて見るカードで、どのような効果があるのかわからない。

「伊織、あたしの伏せカードを使って!」

「うん!私は罠カード《針虫の巣窟》を発動!その効果で、デッキから5枚のカードを墓地へ送る!」

 

デッキから墓地へ送られたカード

・クリボーマン

・ネクロ・ガードナー

・聖なるバリア―ミラーフォース

・E・HEROセラフィム

・ホープ・オブ・フィフス

 

(うう…私は墓地行ですかぁ??)

伊織の後ろに現れたセラフィムがしょんぼりしながら彼女を見つめる。

「その、ごめんね?セラフィム」

(クリクリー)

そんな彼女を見かねたクリボーマンがセラフィムにほおずりする。

(ううー、クリボーマンさーん!!わかってくれるのはあなたとビャッコさんだけですー!!)

涙目になったセラフィムがクリボーマンをモフモフし始める。

そんな1人と1匹を見て、苦笑いした伊織はターンを進める。

「私はカードを3枚伏せて、ターンエンド!」

 

柚子&伊織

手札

柚子1(《融合》)

伊織6→1

ライフ3600

場 幻奏の歌姫ソプラノ レベル4 守備1400

  M・HERO光牙 レベル8 攻撃5000

  幻奏の音女アリア(《奇跡の降臨》の影響下) レベル4 守備1200

  奇跡の降臨(永続罠)

  伏せカード3

 

ホセ

手札2→1

ライフ9000

場 機皇帝グランエル∞ レベル1 攻撃9000

  グランエルT5 レベル5 攻撃1500

  グランエルA レベル1 攻撃1300

  グランエルG レベル1 守備1000

  グランエルC レベル1 攻撃700

 

「私のターン、ドロー」

 

ホセ

手札1→2

 

「《グランエル∞》の効果発動。1ターンに1度、相手フィールド上のシンクロモンスター1体を捕獲する」

「ええ…!?」

「でも、あたしたちのフィールドにはシンクロモンスターは…」

《機皇帝グランエル》のコアパーツが展開し、シンクロモンスター捕獲の準備を始める。

それと同時に、《グランエルT5》から鋏部分が分離し、伊織たちにフィールドをオレンジ色の薄いビームフィールドを展開する。

「何?!このフィールドは…!」

「《グランエルT5》の効果。このカードがフィールド上に存在する限り、相手フィールド上に存在するモンスターは私のターンの間のみ、シンクロモンスターとなる」

「そ…んな!!」

「私はシンクロモンスターと化した《光牙》を捕獲する」

展開されたフィールドが狭まっていき、《M・HERO光牙》だけが囚われる。

そして、コアパーツから緑色の光の縄が複数はなたれ、そのモンスターを捕獲し、コアパーツに収納する。

役目を終えた鋏は再び《グランエルT5》に戻る。

「《グランエル》は捕獲したシンクロモンスターの元々の攻撃力分、攻撃力がアップする」

 

機皇帝グランエル∞ レベル1 攻撃9000→11500

 

グランエルT5

レベル5 攻撃1500 守備2000 効果 地属性 機械族

このカードは自分フィールド・墓地に「グランエルT3」が存在しない場合、通常召喚できない。

(1):このカードは自分フィールド上に存在する「グランエルT3」1体をリリースし、手札から特殊召喚する事ができる。

(2):このカードは攻撃できない。

(3):このカードはフィールド上に存在する限り、攻撃表示となる。

(4):自分フィールド上に「機皇帝」と名のつくモンスターが存在しない場合、このカードは破壊される。

(5):自分フィールド上に存在する「機皇帝」モンスターが攻撃する時、ダメージステップ終了時まで相手フィールド上に存在するSモンスターの効果は無効化される。

(6):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分のターンの間のみ、相手フィールド上に存在するモンスターはSモンスターとして扱う。

 

「更に、私は墓地に存在する《機皇換装》の効果を発動。私のフィールド上に∞と名の付くモンスターを含む機械族モンスターが5体存在するとき、このカードを墓地から除外することで、デッキからカードを1枚ドローする。そして、手札から装備魔法《メテオストライク》を《グランエル》に装備。このカードを装備したモンスターが守備モンスターを攻撃したとき、貫通ダメージを与える」

「攻撃力11500で貫通ダメージ!?」

驚きの声を上げる伊織を無視するかのように、ホセはターンを進める。

「バトル。《グランエル》で《幻奏の音女アリア》を攻撃。この瞬間、《グランエルT5》の効果発動。シンクロモンスターと化した《アリア》の攻撃をダメージステップ終了時まで無効にする」

頭部パーツによって、《幻奏の音女アリア》がレーザーによって解析され、それと同時に持っている効果を無力化されてしまう。

そして、キャノン砲から白い大出力の光線が発射される。

「この攻撃は通さない!罠発動!!《攻撃の無敵化》!!この効果で、私たちはこのターン受ける戦闘ダメージを0にする!」

能力を奪われたことで歌うことのできなくなった《幻奏の音女アリア》が蒸発するが、2人の前に《攻撃の無敵化》のソリッドビジョンが配置され、それが障壁となって攻撃を防ぐ。

「《グランエルA》の効果発動。機皇帝が戦闘で相手モンスターを破壊した場合、続けてもう1度だけ攻撃することができる。次は《ソプラノ》を攻撃。グランエル・スローター・キャノン・セカンド」

「私は墓地の《ネクロ・ガードナー》の効果発動!このカードを墓地から除外することで、相手モンスターの攻撃を無効にする!」

強制冷却によって生じる、数秒のタイムラグの間に《ネクロ・ガードナー》の幻影が現れ、冷却官僚と同時に発射された大出力の光線を受け止める。

光線が消えると同時に、その幻影も消滅した。

「私はカードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

柚子&伊織

手札

柚子1(《融合》)

伊織1

ライフ3600

場 幻奏の歌姫ソプラノ レベル4 守備1400

  伏せカード2

 

ホセ

手札2→0

ライフ9000

場 機皇帝グランエル∞(《メテオストライク》《M・HERO光牙》装備) レベル1 攻撃11500

  グランエルT5 レベル5 攻撃1500

  グランエルA レベル1 攻撃1300

  グランエルG レベル1 守備1000

  グランエルC レベル1 攻撃700

  伏せカード2

 

「ごっめーん、柚子ちゃん。まさかシンクロモンスターに変えられちゃうなんて思わなくて…」

シンクロモンスターを使用しない、本来のデッキであれば、機皇帝に十分対抗できると考えていた自分の浅はかさを恥じる。

《グランエルT5》を急いで除去しなければ、いつまでも自分たちのモンスターがシンクロモンスターとして扱われ、《機皇帝グランエル》の独壇場になってしまう。

「ううん、でも…そうなったからといって、あたしたちの負けになったわけじゃないわ!」

あきらめず、じっとホセを見る柚子だが、今の彼女の手札にあるのは《融合》のみ。

フィールドには伏せカード1枚と《幻奏の歌姫ソプラノ》だけ。

これだけでは《機皇帝グランエル》を倒すことができない。

「あたしのターン、ドロー!」

 

柚子

手札1→2

 

ドローしたカードを見ると、柚子はすぐに行動に出る。

「あたしは手札から《クリスタル・ローズ》を召喚!」

 

クリスタル・ローズ レベル2 攻撃500

 

「このカードは1ターンに1度、手札・デッキのジェムナイトか幻奏モンスターを墓地へ送ることで、ターン終了時までそのモンスターに変身できる。あたしはデッキから《幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト》を墓地へ送る!」

《クリスタル・ローズ》が《幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト》の姿へ変化していく。

「そして、手札から魔法カード《融合》を発動!」

「罠発動、《ゴースト・コンバート》。墓地の機皇帝パーツを除外することで、相手の魔法・罠・モンスター効果の発動を無効にし、破壊する」

「そうはさせないわ!カウンター罠《魔宮の賄賂》を発動!相手の魔法・罠カードの発動を無効にし、破壊する!そして、相手はデッキからカードを1枚ドローする!」

以前、機皇帝使いが使用した《ゴースト・コンバート》の一番恐ろしい点は墓地にパーツがある限り、1ターンに1度という制約があるが、繰り返し使うことができるというところだ。

だから、こうして早い段階で排除することで、相手の妨害を排除することができる。

《ギャクタン》でもノーコストで無効にできるものの、無効にしたカードをデッキに戻してしまうため、再び使用される可能性があり、罠カードの墓地からの再利用が難しい分、《魔宮の賄賂》で妨害するのが良い手段だ。

「あたしが融合素材にするのは、《プロディジー・モーツァルト》となった《クリスタル・ローズ》と《ソプラノ》!騎士より託されし薔薇よ!天使のさえずりよ!タクトの導きにより力重ねよ!融合召喚!今こそ舞台に勝利の歌を!《幻奏の華歌聖ブルーム・ディーヴァ》!」

巨人の相手に似つかわしくない、小さく可憐な少女がフィールドに現れる。

《機皇帝グランエル》はゆっくりと銃口をそのモンスターに向け、彼女はわずかにおびえながら柚子を見つめる。

 

幻奏の華歌聖ブルーム・ディーヴァ レベル6 攻撃1000

 

「でたー!《ブルーム・ディーヴァ》!!」

柚子のエースカードの出現に伊織は歓喜する。

(《ブルーム・ディーヴァ》は特殊召喚されたモンスターと戦闘を行うダメージ計算時に、互いの元々の攻撃力の差分ダメージを与えて、相手モンスターを破壊する効果がある。これなら、《グランエル》を倒せるわ…」

圧倒的な攻撃力を誇る《機皇帝グランエル》の弱点は攻撃力がライフに依存すること、そしてこのモンスターは《魔法の筒》のような高い攻撃力を逆手に取るカードに弱いことだ。

《幻奏の華歌聖ブルーム・ディーヴァ》は後者のほうだ。

「バトルよ、《ブルーム・ディーヴァ》で《グランエル》を攻撃!リフレクト・シャウト!!」

《幻奏の華歌聖ブルーム・ディーヴァ》が歌を歌いはじめ、《機皇帝グランエル》が迎撃のために放つ大出力光線は歌によって彼女の前に生まれた障壁に弾き返される。

「《グランエルG》の効果発動。1ターンに1度、私のモンスターはカード効果では破壊されない」

「けど、効果ダメージ10900は受けてもらうわ!!」

跳ね返された光線が《グランエルG》のビームシールドを貫き、ホセに迫る。

「私はカウンター罠《ダメージ・ポラリライザー》を発動。ダメージを与えるカード効果の発動と効果を無効にし、デッキからカードを1枚ドローする」

「え…!?」

《ダメージ・ポラリライザー》のカードを見て、柚子の頭が真っ白になる。

そのカードの効果で、《幻奏の華歌聖ブルーム・ディーヴァ》が破壊されることはないが、効果が無効にされる。

よって、彼女は攻撃力1000の通常モンスターとして、攻撃力11900の《機皇帝グランエル》と戦うということになるのだ。

《機皇帝グランエル》の胸部が展開され、跳ね返された光線が軌道を変えて、その中に吸収されていく。

そして、そのエネルギーを供給された砲台から光線が再び発射される。

リフレクト・シャウトで一度強力な光線を受け止めた彼女は疲れ果てていたため、直ぐに発動できず、そのまま光の中で消えていく。

それでも光線は容赦なく柚子に襲い掛かる。

(やられる…!!)

「アクション魔法《ソウル・バーニング》!!このターン、私たちが受けるダメージは1度だけ0になる!」

伊織が柚子を守るため、このターンの間に見つけたアクションカードを発動する。

それと同時に、柚子と伊織の体が炎に包まれ、それが2人を守る障壁となる。

「はあああ…」

攻撃が終わると同時に、気が抜けた柚子がヘナヘナとその場で腰を抜かす。

「柚子ちゃん、アクションカードを忘れてた?アクションデュエルはこれがある限り、何が起こるかわからないよ?」

発動し終えた《ソウル・バーニング》を墓地へ送りながら、伊織がニコニコと言葉をかける。

先ほどまで、柚子は伊織と一緒に開始宣言までしたにもかかわらず、これがアクションデュエルだということをすっかり忘れていた。

彼女の言う通り、手札・フィールド・墓地に置いて万策が尽きたとしても、アクションデュエルでは最後にカードを取らない限り、負けではない。

「伊織…ありがとう」

「ああ、そうそう!《ダメージ・ポラリライザー》の効果も忘れないでね!」

「ええ。ドロー!!」

伊織と一緒に、柚子もカードを引く。

「あたしは…カードを1枚伏せて、ターンエンド!」

 

柚子&伊織

手札

柚子2→0

伊織1→2

ライフ3600

場 伏せカード2

 

ホセ

手札0→2

ライフ9000

場 機皇帝グランエル∞(《メテオストライク》《M・HERO光牙》装備) レベル1 攻撃11500

  グランエルT5 レベル5 攻撃1500

  グランエルA レベル1 攻撃1300

  グランエルG レベル1 守備1000

  グランエルC レベル1 攻撃700

 

「私のターン、ドロー」

 

ホセ

手札2→3

 

「バトルだ。私は《グランエル》でプレイヤーにダイレクトアタック。グランエル・スローター・キャノン」

《機皇帝グランエル》の砲身は変わらず2人に向いており、攻撃のために冷却を続けている。

「速攻魔法《異次元からの埋葬》を発動!除外されているモンスターを3体まで墓地に戻す!《ネクロ・ガードナー》、戻って来て!」

上空に現れた次元の裂け目から青い棺が降りてきて、地面に置かれると同時に扉が開く。

中には《ネクロ・ガードナー》がいて、そのカードは伊織の墓地へ戻っていく。

その間に冷却を終えた《機皇帝グランエル》が大出力光線を発射する。

しかし、その光線を恐れる理由は今の2人には無かった。

「私は墓地の《ネクロ・ガードナー》を除外して、その攻撃を無効にするよ!」

再び《ネクロ・ガードナー》の幻影が現れて、2人を敗北の危機から救い出す。

「私はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

柚子&伊織

手札

柚子0

伊織2

ライフ3600

場 伏せカード1

 

ホセ

手札3→2

ライフ9000

場 機皇帝グランエル∞(《メテオストライク》《M・HERO光牙》装備) レベル1 攻撃11500

  グランエルT5 レベル5 攻撃1500

  グランエルA レベル1 攻撃1300

  グランエルG レベル1 守備1000

  グランエルC レベル1 攻撃700

  伏せカード1

 

「私のターン、ドロー!」

 

伊織

手札2→3

 

「私はモンスターを裏守備表示で召喚!そして、カードを2枚伏せてターンエンド!」

 

柚子&伊織

手札

柚子0

伊織2

ライフ4000

場 裏守備モンスター1

  伏せカード3

 

ホセ

手札3→2

ライフ9000

場 機皇帝グランエル∞(《メテオストライク》《M・HERO光牙》装備) レベル1 攻撃11500

  グランエルT5 レベル5 攻撃1500

  グランエルA レベル1 攻撃1300

  グランエルG レベル1 守備1000

  グランエルC レベル1 攻撃700

  伏せカード1

 

「私のターン、ドロー」

 

ホセ

手札2→3

 

「バトル。《グランエル》で裏守備モンスターを攻撃。グランエル・スローター・キャノン」

《機皇帝グランエル》が何度も阻止された攻撃を今度こそ成功させんといわんばかりに、更に出力を上げて光線を発射する。

「罠発動!《和睦の使者》!!これでこのターン、私たちのモンスターは戦闘では破壊されず、私たちが受ける戦闘ダメージも0になる!」

「カウンター罠《ギャクタン》。相手の罠カードの発動を無効にし、そのカードをデッキに戻す」

「じゃあ、こっちもカウンター罠《ギャクタン》を発動!!」

《ギャクタン》のソリッドビジョンが互いにぶつかり合い、相殺される。

そして、裏守備となっていたモンスターは攻撃の成立により表側守備表示となるが、《和睦の使者》によって守られる。

 

裏守備モンスター

E・HEROフォレストマン レベル4 守備2000

 

「私はフィールド上の《グランエルG》をリリースし、手札より《グランエルG3》を特殊召喚する」

《グランエルG3》が分離し、その場で消滅すると、地中からオウム貝を模したパーツが出現し、出現と同時に装甲が展開し、三本指のマニピュレーターを持つ左腕パーツとなって装着される。

 

グランエルG3 レベル3 守備2000

 

「私はこれで、ターンエンド」

 

柚子&伊織

手札

柚子0

伊織2

ライフ3600

場 E・HEROフォレストマン レベル4 守備2000

  伏せカード1

 

ホセ

手札3→2

ライフ9000

場 機皇帝グランエル∞(《メテオストライク》《M・HERO光牙》装備) レベル1 攻撃11500

  グランエルT5 レベル5 攻撃1500

  グランエルA レベル1 攻撃1300

  グランエルG3 レベル3 守備2000

  グランエルC レベル1 攻撃700

 

「さあ、柚子ちゃん!とどめはお願いね!!」

「ええ…!?」

手札が0枚で、決め手などないにもかかわらず、とんでもない無茶ぶりを去れて困り果てる。

といっても、このまま自分がこのターンでとどめを刺すことができなければ、もうホセの攻撃から身を守るすべがないため、敗北が決まってしまう。

「ふぅーー…」

深呼吸をし、ゆっくりとデッキトップに指をかける。

「あたしのターン…ドローーー!!」

 

柚子

手札0→1

 

「レディースアンドジェントルメーン!!これより、榊遊勝直伝のエンターテインメントを皆さまにお届けいたします!!」

まるで、遠くにいる遊勝塾のメンバー、そして遊矢に届けと言わんばかりに大きな声を出す。

「まず、あたしはスタンバイフェイズ時に《フォレストマン》の効果を発動!このカードはあたしのターンのスタンバイフェイズごとに、デッキ・墓地から《融合》を1枚手札に加えることができます!」

そういうと、まずは《E・HEROフォレストマン》が近くにある大きながれきを片手で持ち上げ、回転させる。

回転している間にそのがれきが徐々にバラバラになっていき、それは1枚のカードと同じ大きさの薄い石と化していく。

最後にそれを柚子に投げわたし、柚子がつかむと、その石が《融合》のカードに変わった。

「更に、あたしはフィールド上に存在する《フォレストマン》を墓地へ送り、罠カード《パニック・ウェーブ》を発動します!このカードはあたしたちのフィールド上に存在する永続魔法・永続罠・モンスター効果をターン終了時まで無効にするわ!」

役目を終えた《E・HEROフォレストマン》が両拳をぶつけた後で、右の拳を地面に叩きつけてから姿を消す。

すると、地面からとがった岩石が次々と隆起し、それが次々と《機皇帝グランエル》に命中、関節部分を損傷させて合体を解除させる。

「カード効果を失ったことで、《グランエル》の効果も失われます!」

 

機皇帝グランエル∞ レベル1 攻撃11500→0

 

グランエルG3(アニメオリカ・調整)

レベル3 攻撃800 守備2000 効果 地属性 機械族

このカードは自分フィールド・墓地に「グランエルG」が存在しない場合、通常召喚できない。

(1):このカードは自分フィールド上に存在する「グランエルG」1体をリリースし、手札から特殊召喚する事ができる。

(2):このカードは攻撃できない。

(3):このカードはフィールド上に存在する限り、守備表示となる。

(4):自分フィールド上に「機皇帝」と名のつくモンスターが存在しない場合、このカードは破壊される。

(5):1ターンに1度、自分フィールド上の「ワイゼル」「スキエル」「グランエル」モンスターがカード効果によって破壊されるときに発動できる。その破壊を無効にする。

(6):1ターンに1度、自分フィールド上の「ワイゼル」「スキエル」「グランエル」モンスターが攻撃対象となったときに発動できる。攻撃モンスターを破壊する。

 

「そして、手札から魔法カード《逆境の宝札》を発動です!あたしたちのフィールド上にモンスターがなく、相手フィールド上に特殊召喚されたモンスターが存在するとき、デッキからカードを2枚ドローします!」

カードを手にし、柚子の中で勝利へのピースが埋まっていく。

次に注目したのは、自分の墓地のカードだ。

「更に、あたしは手札から魔法カード《終幕の光》を発動!ライフを1000支払い、墓地の光属性モンスター1体を召喚条件を無視して特殊召喚します!さぁ、満を持して主役の登場です!みなさん、拍手でお出迎えください。《E・HEROセラフィム》を!!」

「え…わ、わたしですか!?」

隅っこでうずくまっていたセラフィムが柚子の言葉を聞き、急に立ち上がる。

そして、急いで手持ちの銃の手入れをしてからフィールドに現れる。

 

E・HEROセラフィム レベル6 攻撃2400

 

終幕の光(アニメオリカ・調整)

通常魔法カード

「終幕の光」は1ターンに1度しか発動できず、このカードを発動したターン、自分は光属性以外のモンスターを召喚・特殊召喚できない。

(1):自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、ライフを1000支払うことで発動できる。自分の墓地に存在する光属性モンスター1体を召喚条件を無視して特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターはこのターン、カード効果では破壊されない。

 

「そして、墓地に存在する《クリスタル・ローズ》の効果を発動です!このカードが墓地に存在する場合、自分の墓地に存在する融合モンスター1体を除外することで、このカードを守備表示で特殊召喚できます!」

2人の周囲にクリスタルのかけらが浮かび、それらが集まることで《クリスタル・ローズ》が復活する。

 

クリスタル・ローズ レベル2 守備500

 

除外されたカード

・幻奏の華歌聖ブルーム・ディーヴァ

 

「そして、手札から魔法カード《融合》を発動!あたしが融合素材にするのは《セラフィム》、《クリスタル・ローズ》、そして手札の《幻奏の音女エレジー》!」

フィールドに現れた《幻奏の音女エレジー》の詩に合わせて、《クリスタル・ローズ》が次第にその姿を翼に変えていき、セラフィムの背中に宿る。

(わあ…)

クリスタルの翼に見とれるセラフィムの衣類にも水晶を模した飾りがいくつか出現する。

「2丁の銃を操る乙女よ!騎士より托されし薔薇よ!悲しみの詩をいやすため、優しき翼の戦士へと進化せよ!融合召喚!今こそ戦場を癒す歌を!《E・HEROクリス・セラフィム》!!」

 

E・HEROクリス・セラフィム レベル10 攻撃2800

 

(あ、あれ…!?私の銃が…!?)

手に取った自分の銃がマイクに代わっていることにセラフィムがびっくりする。

(ままま、待ってください!!こ、これって私に歌えってことですか!?無理です無理です!!)

顔を真っ赤にし、涙目となった伊織に懇願する。

「えー?歌を披露できるなんて、セラフィムいいなー」

(伊織様ーーーー!!!!)

「キュイー!」

更にいつの間にか姿を見せたビャッコがランドセルから大きなCDプレイヤーを出して、音楽の準備を始める。

完全に伊織側だ。

(ビャッコさんまでーーー!?!?)

「ビャッコちゃん、今までどこに…?」

急にいなくなったり、こうして現れたりする小さなキツネに首をかしげる。

なお、ホセはこんなわけのわからない状況であるにもかかわらず、何もアクションを起こさない。

この点はしょせん、ただの機械というわけか。

「じゃあ、気を取り直して…。さあ、クリスタルの翼を得たセラフィムには心強い仲間の思いが宿っています!なぜなら、このカードは融合素材となった幻奏モンスターの元々の攻撃力の半分、攻撃力がアップするからです!」

 

E・HEROクリス・セラフィム レベル10 攻撃2800→3800

 

「更に、このカードは相手フィールド上に存在するすべてのモンスターに1回ずつ攻撃することができます!!さあ、デュエルのクライマックスを飾る一曲は、近藤加奈子さん作詞の『Love so Blue〜蒼の鼓動〜』です!!」

(ううーーー)

なんでこんなことに、といいたげに2人を見つめるセラフィム。

そして、ビャッコは既に柚子が注文した曲のCDを入れ、再生している。

「さあさあ、セラフィム。観客のみんなが待ってるよ?」

(うう…観客といっても、2人と2匹だけじゃないですかーー!もうやけくそです!!)

もう自分が歌わなければ、デュエルが進行しないことを悟ったセラフィムは深呼吸をした後で歌い始める。

歌と共にクリスタルの翼が輝きはじめ、そこから放たれる虹色の光が《機皇帝グランエル》とホセを包み込んでいく。

最初は嫌々だったセラフィムも、楽しくなってきたのかノリノリになって、アドリブで振り付けも見せる。

歌が終わると、虹色の光が消え、《機皇帝グランエル》がホセもろとも砂となって消滅する。

 

ホセ

ライフ9000→5200→2900→400→0

 

E・HEROクリス・セラフィム

レベル10 攻撃2800 守備2800 融合 光属性 戦士族

「E・HEROセラフィム」+「クリスタル・ローズ」+「幻奏」モンスター

「E・HEROクリス・セラフィム」は自分フィールド上に1体しか存在できない。

このカードは融合召喚でのみ特殊召喚できる。

(1):このカードの融合召喚に成功したとき、このカードの攻撃力は融合素材となった「幻奏」モンスターの元々の攻撃力の半分アップする。

(2):自分のターンのメインフェイズ1に発動できる。このカードはこのターンのバトルフェイズ時、相手フィールド上に存在するすべてのモンスターに1回ずつ攻撃できる。

(3):フィールド上に存在するこのカードが破壊され墓地へ送られたとき、墓地・エクストラデッキに表向きで存在する「E・HEROセラフィム」を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールド上に召喚条件を無視して特殊召喚する。

 

(はあはあはあ…もう、なんてことするんですかーーー!!!)

元の姿にもどったセラフィムが顔を真っ赤にし、拳をぶんぶん降りまわりながら2人に抗議する(といっても、当然のことだが精霊は普通の人には見えないため、柚子には無意味)。

「まーまー、セラフィム。途中からノリノリだったじゃーん」

(うう…だってだって…)

「あのー、伊織??一体誰と話してるの??」

精霊の見えない柚子には伊織が何と話しているのか、全くわからずにいた。

なお、ホセとデュエルをしている間に、シェイドはこの地区の制圧に成功していた。

 

融合次元、アカデミア本部付近にある人工島、ファウスト島。

岩場で囲まれ、船が停泊できるのが南側のわずかなスペースのみ、そしてあるのは大型の研究施設1つだけの寂しげな島。

過去に、ここではアカデミアに関係する技術の開発が行われていたものの、現在はその役目をアカデミア本部が引き継いだこともあって放棄されている。

だが、放棄されているというのは表向きの話で、現在はある人物を幽閉するためだけに使われている。

「…」

研究施設の地下で、電子たばこを吸う一人の男がコンピュータと向き合っている。

白衣と茶色いシャツを重ね着し、青いカーゴパンツをはく、黒いボサボサの頭髪と丸いメガネが特徴的なこの男こそ、ファウスト島が今なお機能している理由だ。

両足には自立歩行ユニットが取り付けられており、関節をロックすることで椅子代わりとして利用できる。

「う、うう、う…」

彼の背後にあるベッドの上で眠っていた素良が苦し気に声をあげながら、ゆっくりと起き上がる。

「目が覚めたかな?紫雲院素良」

自立歩行ユニットを利用して起立した男がゆっくりと振り返り、じっと素良を見る。

「…はは、まさか目を覚まして初めて見る顔があなたとは思わなかったよ…」

不敵な笑みを浮かべつつ、懐にある愛用のキャンディーを口にしつつ、その男の名前を呼ぶ。

「ドクター…N…」

自分の名前を呼ばれたドクターNもまた、素良と同じように不敵な笑みを浮かべた。



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オリカ紹介Ⅳ

第46話から第67話までのオリカと非公式オリカ(効果調整あり)を紹介。


ゴヨウ・ガーディアンMK‐Ⅱ

レベル9 攻撃2800 守備2000 シンクロ 地属性 戦士族

戦士族チューナー+Sモンスターを含む戦士族モンスター1体以上

(1):このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時に発動できる。そのモンスターを自分フィールド上に表側守備表示で特殊召喚する。

 

奈落からの捕縛

通常罠カード

(1):相手の墓地に存在するモンスターを自分フィールド上に特殊召喚した時に発動できる。フィールド上に存在するカード1枚を破壊する。

 

ドラグニティ―アンカー

レベル2 攻撃100 守備100 チューナー 風属性 ドラゴン族

「ドラグニティ―アンカー」の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、自分フィールド上にこのカード以外のモンスターが存在しない場合、相手フィールド上の表側表示モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターとこのカードをフィールドから墓地へ送る。その後、墓地へ送ったそのモンスター2体の元々のレベルの合計と同じレベルを持つ「ドラグニティ」Sモンスター1体をエクストラデッキからS召喚扱いで特殊召喚する。

 

ホイール・ファクトリー

永続罠カード

互いのプレイヤーは『ホイール・ファクトリー』の効果を1ターンに1度しか発動できない。

(1):フィールド上に機械族モンスターが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時に発動できる。そのモンスターのいるフィールドに『ホイールトークン』1体を特殊召喚する。

 

ホイールトークン

レベル3 攻撃800 守備800 トークン 地属性 機械族

『ホイール・ファクトリー』の効果で特殊召喚される。

(1):このカードは融合素材とすることができず、アドバンス召喚のためにリリースできない。

 

六武衆の傾奇者―ケイロウ

レベル2 攻撃1000 守備1200 チューナー 光属性 戦士族

「六武衆の傾奇者―ケイロウ」は1ターンに1度しか(1)の効果で特殊召喚することができない。

このカードをS素材とするとき、戦士族モンスターのS召喚にしか使用できない。

(1):自分フィールド上に「六武衆」Sモンスターが存在するとき、このカードは手札から特殊召喚できる。

(2):このカードがS素材として墓地へ送られた場合に発動できる。自分はデッキからカードを1枚ドローする。

 

六武流剣術―漣斬り(ろくぶりゅうけんじゅつ―さざなみぎり)

通常罠カード

「六武流剣術―漣斬り」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):相手がエクストラデッキからモンスターを特殊召喚した時、自分フィールド上に存在する「六武衆」Sモンスターを対象に発動できる。そのモンスターの攻撃力以下の攻撃力を持つ相手フィールド上に存在するモンスターをすべて破壊する。その後、相手にこの効果で破壊したモンスターの数×800のダメージを与える。

 

違法な宝札

通常魔法カード

(1):自分フィールド上のカードがなく、自分のドローフェイズ時に通常のドローをしたこのカードを公開し続ける事で、そのターンのメインフェイズ1の開始時に発動できる。自分はデッキからカードを2枚ドローする。

 

フィールド・セレクト

通常魔法カード

(1):このカードを発動したターン終了時まで、互いのフィールド上に存在するフィールド魔法の効果は無効となる。

(2):「フィールド・セレクト」を発動後2回目以降の自分のスタンバイフェイズ時、墓地にこのカードが存在する場合、手札の魔法・罠カード1枚を墓地へ送ることで発動できる。このカード1枚を手札に加える。

 

 

六武流剣術―天羽之斬(あまのはばきり)

通常魔法カード

「六武流剣術―天羽之斬」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上にSモンスターを含む「六武衆」モンスターが2体以上存在する場合にのみ発動できる。相手フィールド上に存在する魔法・罠カードをすべて破壊する。

 

チューナーズ・エナジー

通常魔法カード

「チューナーズ・エナジー」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分の墓地、除外されているカードの中に自分のチューナーが1体ずつ存在する場合にのみ発動できる。自分の手札・デッキに存在するレベル3以下のチューナー1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターはターン終了時に手札に戻る。

 

A・ジェネクス・カオスウィザード

レベル10 攻撃3000 守備2500 シンクロ 闇属性 機械族

機械族チューナー+チューナー以外の光属性または闇属性モンスター1体以上

(1):このカードはフィールド・墓地に存在する限り、属性を光としても扱う。

(2):このカードのS素材としたチューナー以外のモンスターの属性によって、以下の効果を得る。

●光属性:このカードは相手のモンスター効果を受けない。

●闇属性:このカードが攻撃する場合、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。

 

カラクリ蜘蛛壱四四

レベル2 攻撃400 守備500 チューナー 地属性 機械族

(1):このカードは攻撃可能な場合には攻撃しなければならない。

(2):フィールド上に表側攻撃表示で存在するこのカードが攻撃対象に選択された時、このカードの表示形式を守備表示にする。

(3):このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、相手フィールド上に存在するモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターの表示形式を変更する。この効果を受けたモンスターは次の自分のターン終了時まで攻撃と表示形式の変更ができない。

 

くず鉄のバリケード

カウンター罠

(1):フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を対象に発動できる。ターン終了時までそのモンスターは相手のカードの効果によって破壊されない。発動後このカードは墓地へ送らず、そのままセットする。

 

シンクロン・キーパー

レベル5 攻撃2200 守備1200 効果 地属性 機械族

「シンクロン・キーパー」の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上にモンスターが存在せず、直接攻撃によって自分がダメージを受けた時に発動できる。このカードを手札から特殊召喚できる。

(2):このカードの特殊召喚に成功した時、自分の墓地に存在する「シンクロン」モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。この効果で特殊召喚に成功したこのカードは戦闘では破壊されない。

(3):(1)の効果で特殊召喚された場合、このカードは以下の効果を得る。

●このカードは1ターンに1度、戦闘および効果によって破壊されない。

 

六武衆の大将軍―紫炎

レベル7 攻撃2500 守備2000 シンクロ 闇属性 戦士族

戦士族チューナー+チューナー以外の「六武衆」「紫炎」Sモンスター1体

(1):1ターンに1度、魔法・罠カードを発動した時に発動できる。その発動を無効にし破壊する。

(2):フィールド上に表側表示で存在するこのカードが破壊される場合、代わりにこのカード以外の自分フィールド上に存在する「六武衆」モンスター1体を破壊する事ができる。

(3):このカードが「真六武衆―シエン」もしくは「紫炎」モンスターをS素材としてS召喚した場合、以下の効果を得る。

●1ターンに1度、魔法・罠カードの発動が無効となったときに発動できる。ターン終了時までこのカードの攻撃力が倍となる。

 

 

カラクリ漁師七無三

レベル1 攻撃700 守備300 チューナー 地属性 機械族

「カラクリ漁師七無三」の(3)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードは攻撃可能な場合には攻撃しなければならない。

(2):フィールド上に表側攻撃表示で存在するこのカードが攻撃対象に選択された時に発動する。このカードの表示形式を守備表示にする。

(3):このカードの召喚に成功した時に発動できる。自分の墓地に存在するレベル4以下の「カラクリ」モンスター1体を攻撃表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。

 

カラクリ大将軍無零苦(ブレイク)

レベル9 攻撃3000 守備2800 シンクロ 地属性 機械族

チューナー+チューナー以外の「カラクリ」Sモンスター1体以上

(1):このカードがS召喚に成功した時に発動できる。自分のデッキから「カラクリ」モンスター1体を特殊召喚する。

(2):1ターンに1度、フィールド上に存在するモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターの表示形式を変更する。その時、リバース効果は発動できない。この効果は相手ターンでも発動できる。

(3):1ターンに1度、自分フィールド上に存在する「カラクリ」モンスターが相手フィールド上に存在する守備表示モンスターを攻撃するとき、ダメージ計算時に発動できる。そのモンスターの攻撃力か守備力の高い方の数値分のダメージを相手に与える。

 

暗黒界の混沌王カラレス

レベル12 攻撃3500 守備3000 融合 闇属性 悪魔族

「暗黒界」モンスター×5

このカードは融合召喚でのみ特殊召喚できる。

(1):このカードが相手モンスターと戦闘を行ったダメージ計算終了時に発動できる。自分の手札1枚を墓地へ捨てる。この効果で捨てる場合、相手の効果によって捨てられた事になる。

(2):このカードが破壊された場合、自分の墓地に存在する「暗黒界」カード2枚を対象に発動する。そのカードを手札に加える。

(3):このカードは効果では破壊されない。

 

X-サイン

通常罠カード

「X-サイン」の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか発動できない。

(1):自分フィールド上に存在する「X-セイバー」モンスター1体が攻撃対象となった場合に発動できる。手札・墓地に存在する「X-セイバー」モンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する。その後、攻撃対象をそのモンスターに変更させる。その時、攻撃モンスターは戦闘では破壊されず、発生する戦闘ダメージは0となる。発動後このカードは墓地へは行かず、ゲームから除外される。このカードを発動したターン終了時、この効果で特殊召喚されたモンスターは墓地へ送られる。

(2):自分フィールド上にモンスターが存在しないとき、このカードを墓地から除外することで発動できる。自分の墓地に存在するレベル4以下の「X-セイバー」モンスター1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。

 

六武衆の九ノ一

レベル3 攻撃1200 守備200 チューナー 炎属性 戦士族

「六武衆の九ノ一」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上にモンスターが存在せず、相手フィールド上にレベル5以上もしくはランク4以上のモンスターが存在する場合、このカードを手札から特殊召喚することができる。

(2):このカードをS素材として戦士族SモンスターのS召喚に成功した時に発動できる。デッキから「六武」魔法・罠カード1枚を手札に加える。

 

NTG(ネクストテックジーナス)ライジング・ベルセルク

レベル8 攻撃2200 守備2000 シンクロ 光属性 戦士族

「TG」チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

(1):このカードがフィールド上に存在する限り、自分フィールド上に存在する「TG」Sモンスターの攻撃力は600アップする。

(2):このカードは一度のバトルフェイズ中に自分フィールド上に存在する「TG」Sモンスターの数だけ相手モンスターを攻撃することができる。

 

スイッチバッター

レベル3 攻撃600 守備500 チューナー 地属性 昆虫族

(1):自分フィールド上に「バッター」モンスターが存在するとき、このカードは手札から特殊召喚できる。

(2):このカードの特殊召喚に成功した時、自分フィールド上に存在する昆虫族モンスター1体を対象に発動する。そのモンスターを破壊する。

 

 

紫炎の記録者

レベル1 攻撃400 守備400 効果 闇属性 戦士族

「紫炎の記録者」は1ターンに1度しか(1)の方法で特殊召喚できない。

(1):相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上に存在するモンスターが戦士族モンスターのみの場合、このカードは手札から特殊召喚できる。

 

Sp-シルバー・コントレイル(アニメオリカ)

通常魔法カード

(1):自分用スピードカウンターが5つ以上ある場合に発動する事ができる。自分フィールド上に存在するモンスター1体の攻撃力をこのターンのバトルフェイズの間1000アップする。

 

Sp-エナジー・チャージ

通常魔法カード

(1):自分のスピードカウンターが4つ以上存在するとき、墓地に存在するレベル4以下のモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールド上に表側守備表示で特殊召喚する。

 

六武将‐ザンジ

レベル6 攻撃2100 守備1800 シンクロ 光属性 戦士族

戦士族チューナー+チューナー以外の「六武衆」モンスター1体以上

このカードはルール上「六武衆」カードとしても扱う。

「六武将‐ザンジ」は自分フィールド上に1体しか存在できない。

(1):このカードが攻撃力2500以上のモンスターと戦闘を行う時、ダメージ計算開始前に発動する。ダメージステップ終了時までこのカードの攻撃力は自分フィールド上に存在する「六武衆」モンスターの数×400アップする。

(2):自分フィールド上に「六武将-ザンジ」「六武衆―ザンジ」以外の「六武衆」モンスター存在する場合、

このカードが相手モンスターを攻撃したダメージステップ終了時に発動する。そのモンスターを破壊する。

(3):フィールド上に表側表示で存在するこのカードが破壊される場合に発動できる。代わりにこのカード以外の自分フィールド上に表側表示で存在する「六武衆」モンスター1体を破壊できる。

 

六武将-ニサシ

レベル8 攻撃1700 守備1000 シンクロ 風属性 戦士族

戦士族チューナー+チューナー以外の「六武衆」モンスター1体以上

このカードはルール上「六武衆」カードとしても扱う。

「六武将‐ニサシ」は自分フィールド上に1体しか存在できない。

(1):このカードがS召喚に成功した時、S素材となった「六武衆」モンスター1体を対象に発動できる。このカードの攻撃力はそのモンスターの元々の攻撃力の半分の数値分アップする。

(2):自分フィールド上に「六武将-ニサシ」「六武衆―ニサシ」以外の「六武衆」モンスターが存在する場合、

このカードは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃する事ができる。

(3):フィールド上に表側表示で存在するこのカードが破壊される場合に発動できる。代わりにこのカード以外の自分フィールド上に表側表示で存在する「六武衆」モンスター1体を破壊できる。

 

ネプチューン・ビートル

レベル7 攻撃2300 守備2200 シンクロ 水属性 昆虫族

(1):このカードのS召喚に成功した時に発動できる。デッキから昆虫族モンスター1体を手札に加える。

(2):このカードが相手モンスターの攻撃によって破壊され墓地へ送られた時に発動する。自分はデッキから昆虫族モンスター1体を墓地へ送る。

 

Sp-デッド・フュージョン

通常魔法カード

(1):自分のスピードカウンターが7つ以上存在するとき、自分フィールド上にセットされているカード1枚を墓地へ送ることで発動できる。自分フィールド上・墓地から融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを除外し、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

紫炎の防人

レベル1 攻撃300 守備400 効果 地属性 戦士族

「紫炎の防人」の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、相手の直接攻撃宣言時にこのカードを手札から墓地へ送ることで発動できる。自分の墓地に存在するレベル4以下の「六武衆」モンスター1体を特殊召喚し、バトルフェイズを終了させる。

 

失楽魔虫ベルゼビュート

レベル10 攻撃3200 守備3000 融合 炎属性 昆虫族

昆虫族モンスター×5

このカードは融合召喚でのみ特殊召喚できる。

(1):このカードは1度のバトルフェイズ中に2度攻撃することができる。

(2):このカードは魔法・罠カードの効果では破壊されない。

(3):自分のターン、相手が魔法・罠カードを発動した時に相手フィールド上に存在するカード1枚を対象に発動できる。そのカードを破壊する。この効果の発動に対して、相手は魔法・罠・モンスター効果を発動できない。

 

Sp-バーニング・エンジン

通常魔法カード

(1):自分のスピードカウンターが4つ以上存在するとき、自分フィールド上に存在するモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターはターン終了時まで以下の効果を得る。

●このカードが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える。

 

カオス・ブルーム(アニメオリカ)

通常魔法カード

(1):このカードは自分の墓地に存在する「カオス・ブルーム」の数によって以下の効果を発動する。

●0枚:フィールド上に存在する攻撃力1000以下のモンスター1体を破壊する。

●1枚:魔法・罠カードゾーンに存在するカード1枚を破壊する。

●2枚以上:フィールド上に存在するカード1枚を破壊する。

 

ワイゼルA3(アニメオリカ)

レベル3 攻撃1600 守備0 効果 闇属性 機械族

このカードは自分フィールド・墓地に「ワイゼルA」が存在しない場合、通常召喚できない。

(1):このカードは自分フィールド上に存在する「ワイゼルA」1体をリリースし、

手札から特殊召喚することができる。

(2):このカードはフィールド上に存在する限り、攻撃表示となる。

(3):フィールド上に「∞」モンスターが存在しない場合、このカードを破壊する。

(4):自分フィールド上に存在する「∞」と名のついたモンスターが守備表示モンスターを攻撃したとき、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

 

ワイゼルG3(アニメオリカ)

レベル3 攻撃0 守備2000 効果 闇属性 機械族

このカードは自分フィールド・墓地に「ワイゼルG」が存在しない場合、通常召喚できない。

(1):このカードは自分フィールド上に存在する「ワイゼルG」1体をリリースすることで、手札から特殊召喚できる。

(2):フィールド上に「∞」と名のついたモンスターが存在しない場合、このカードを破壊する。

(3):自分フィールド上に存在するモンスターが攻撃対象に選択された時に発動できる。このカードに攻撃対象を変更する。

(4):このカードは1ターンに1度、戦闘では破壊されない。

 

機皇換装

速攻魔法カード

「機皇換装」の(2)の効果はこのカードが墓地へ送られたターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に「∞」モンスターが存在するとき、自分フィールド上に存在する「ワイゼル」「スキエル」「グランエル」モンスター1体をリリースして発動する。自分の手札・墓地に存在する「ワイゼル」「スキエル」「グランエル」モンスター1体を自分フィールド上の特殊召喚する。

(2):自分フィールド上に「∞」モンスターを含む機械族モンスターが5体存在するとき、墓地に存在するこのカード1枚を除外することで発動できる。デッキからカードを1枚ドローする。

 

ゴースト・コンバート(アニメオリカ・TF仕様)

通常罠カード

(1):自分フィールド上に「∞」と名のついたモンスターが存在する場合、自分の墓地に存在する機械族モンスター1体をゲームから除外して発動する。相手の魔法・罠・モンスター効果の発動を無効にし破壊する。発動後このカードは墓地へ送らず、そのままセットする。

 

インフィニティ・ショック

通常罠カード

(1):自分フィールド上に「∞」モンスターが存在し、自分がダメージを受けた時に発動できる。相手フィールド上に存在するカード1枚を破壊する。この効果は相手の魔法・罠・モンスター効果で無効にされない。

 

インフィニティ・ミスリーダー

装備魔法カード

「∞」モンスターに飲み装備可能。

「インフィニティ・ミスリーダー」の(2)の効果はこのカードが墓地へ送られたターン、発動できない。

(1):1ターンに1度、相手フィールド上に表側攻撃表示で存在する特殊召喚されたモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターはターン終了時までSモンスターとして扱う。

(2):自分の墓地に存在するこのカードを除外し、相手の墓地に存在するSモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを相手フィールド上に特殊召喚する。

 

クリボーマン

レベル1 攻撃300 守備200 効果 光属性 戦士族

(1):相手の直接攻撃宣言時、自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、LPを半分払って発動できる。手札に存在するこのカードを自分フィールド上に特殊召喚し、その戦闘で発生する自分への戦闘ダメージを0にする。

(2):この効果で特殊召喚に成功したときに発動する。相手の攻撃モンスター1体の攻撃力とこのカードの攻撃力を入れ替える。

 

カオス・ブラスト

通常魔法カード

(1):自分のデッキに存在するレベル1・機械族モンスター3体を墓地へ送ることで発動できる。フィールド上に存在するレベル4以下のモンスター1体を破壊する。

 

インフィニティ・シルエット

通常罠カード

「インフィニティ・シルエット」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に存在する「ワイゼル」「スキエル」「グランエル」モンスターが戦闘で破壊され墓地へ送られたターンのバトルフェイズ終了時に発動できる。デッキからレベル4以下の「ワイゼル」「スキエル」「グランエル」モンスター2体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの攻撃力・守備力は0となる。

 

インフィニティ・パラドックス

通常魔法カード

「インフィニティ・パラドックス」は自分のターンのメインフェイズ開始時にしか発動できない。

(1):自分フィールド上に存在する「機皇帝」モンスター以外の「ワイゼル」「スキエル」「グランエル」モンスター1体をリリースして発動する。このターン、自分フィールド上に存在する「ワイゼル」「スキエル」「グランエル」モンスターの効果の発動に対して、相手は罠・モンスター効果を発動できない。

 

グランエルT3

レベル3 攻撃800 守備0 効果 地属性 機械族

このカードは自分フィールド・墓地に「グランエルT」が存在しない場合、通常召喚できない。

(1):このカードは自分フィールド上に存在する「グランエルT」1体をリリースし、

手札から特殊召喚する事ができる。

(2):このカードは攻撃できない。

(3):このカードはフィールド上に存在する限り、攻撃表示となる。

(4):自分フィールド上に「機皇帝」と名のつくモンスターが存在しない場合、このカードは破壊される。

(5):自分フィールド上に存在する「機皇帝」モンスターが攻撃する時、ダメージステップ終了時まで相手フィールド上に存在するSモンスターの効果は無効化される。

(6):1ターンに1度、相手フィールド上に存在するSモンスター1体を対象に発動できる。ターン終了時までそのモンスターの効果を得る。

 

インフィニティ・コアリバース

速攻魔法カード

(1):自分フィールド上に存在する「∞」モンスターが破壊され墓地へ送られたターン、自分フィールド上にモンスターが存在しない場合に発動できる。墓地に存在するレベル1・機械族モンスター1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化され、このカードを発動したターンのバトルフェイズ終了時に破壊される。

 

魔装銃士ビリー・ザ・キッド

レベル6 攻撃2400 守備2200 地属性 戦士族

【Pスケール青5:赤5】

(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。

(2):もう片方のPゾーンに「魔装」カードが存在する場合、このカードのPスケールは11となる。

【モンスター効果】

(1):このカードが戦闘で相手のPモンスターを破壊したときに発動できる。自分フィールド上に存在するこのカードをエクストラデッキに戻し、そのモンスターをデッキに戻す。

 

魔装弓士ロビン・フッド

レベル3 攻撃1000 守備1000 風属性 獣族

【Pスケール青4:赤4】

「魔装弓士ロビン・フッド」のモンスター効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。

(2):自分の「魔装」モンスターが戦闘を行う場合、相手はダメージステップ終了時までリバース効果を発動できない。

【モンスター効果】

(1):相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しないとき、手札に存在することカードを表向きでエクストラデッキに置くことで発動できる。自分の墓地・エクストラデッキに表向きで存在する「魔装」Pモンスター1体を手札に加える。

 

騎士のケジメ

通常罠カード

「騎士のケジメ」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に存在する「魔装騎士」モンスターを対象とした攻撃宣言時に発動できる。攻撃モンスターを破壊する。その後、デッキから「魔装」モンスター1体を手札に加える。

 

ペンデュラム・リチャージ

通常魔法カード

「ペンデュラム・リチャージ」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分のPゾーンにカードが2枚存在し、そのPスケールの幅が5以上の場合にのみ発動できる。自分はデッキからカードを2枚ドローする。

 

魔装学者ゲンナイ

レベル1 攻撃0 守備2000 効果 闇属性 魔法使い族

「魔装学者ゲンナイ」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか発動できず、(2)の効果はデュエル中1回しか発動できない。それらの効果を発動したターン、自分は「魔装」モンスター以外のモンスターを特殊召喚できない。

(1):このカードの召喚に成功したとき、自分の手札・フィールド上に存在するモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターをデッキに戻し、レベルの合計がそのモンスターのレベル以下となるようにデッキから「魔装」モンスター2体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。

(2):自分の墓地にこのカードが存在し、自分フィールド上に「魔装」モンスターが2体以上存在するとき、そのうちの1体を対象に発動できる。自分フィールド上に存在する「魔装」モンスターのレベルはターン終了時までそのモンスターと同じになる。

 

魔装弓シェキナー

通常罠カード

(1):相手ターン終了時、自分フィールド上に「魔装騎士ホワイトライダー」が存在し、相手が戦闘を行わなかった場合にのみ発動できる。墓地に存在するカードを5枚まで除外する。その後、このカードを攻撃力がこの効果で除外したカードの数×500アップする装備カードとして自分フィールド上に存在する「魔装騎士」モンスター1体に装備する。

(2):装備カード扱いとなったこのカードを装備したモンスターが守備表示モンスターを攻撃した場合、

その守備力を攻撃力が超えた分だけ相手に戦闘ダメージを与える。

 

幻獣の角笛

通常魔法カード

「幻獣の角笛」は1ターンに1度しか発動できず、このカードを発動したターン、自分は「幻獣」モンスターしか特殊召喚できない。

(1):相手フィールド上に特殊召喚されたモンスターが存在し、自分フィールド上に「幻獣」モンスターが存在するとき発動できる。自分のデッキからカード名の異なる「幻獣」モンスター2体を手札に加える。

 

幻獣騎士ワイルドホーン

レベル4 攻撃1700 守備0 地属性 獣戦士族

【Pスケール:青1/赤1】

(1):自分フィールド上に存在する「幻獣」モンスターが効果で破壊されるときに発動できる。代わりにこのカードを破壊する。その後、デッキからカードを1枚ドローする。

【モンスター効果】

(1):このカードが自分フィールド上に表側表示で存在し、自分フィールド上に存在する「幻獣」モンスターが守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ相手に戦闘ダメージを与える。

 

幻獣賢者クロスウィング

レベル4 攻撃1300 守備1300 光属性 獣戦士族

【Pスケール:青5/赤5】

(1):1ターンに1度、自分フィールド上に「幻獣」モンスターが存在するとき、相手フィールド上に存在するモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターの攻撃力をターン終了時まで1000ダウンさせる。この効果は相手ターンでも発動できる。

【モンスター効果】

(1):このカードがエクストラデッキに表側表示で存在する限り、フィールド上の「幻獣」モンスターの攻撃力・守備力は300アップする。

 

レッド・ハンター

レベル5 攻撃2000 守備2000 効果 炎属性 悪魔族

「レッド・ハンター」の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上にモンスターが存在せず、相手フィールド上にモンスターが存在するとき、このカードはリリース無しで召喚できる。

(2):自分のターンのバトルフェイズ時、自分の手札・フィールド上に存在するこのカードを墓地へ送り、自分フィールド上に存在する「レッド・デーモン」Sモンスター1体を対象に発動できる。選択したモンスターの攻撃力がターン終了時まで1000アップし、守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ相手に戦闘ダメージを与える。また、そのモンスターこのターンのバトルフェイズ中2回攻撃することができる。

 

幻獣の守護者サンダーペガス

レベル4 攻撃700 守備2000 光属性 獣戦士族

【Pスケール:青3/赤3】

「幻獣の守護者サンダーペガス」の(1)(2)のP効果はそれぞれ1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に存在する「幻獣」モンスター1体の戦闘で発生する自分への戦闘ダメージが0となる。

(2):このカードを破壊し、自分フィールド上に存在する「幻獣」モンスター1体を対象に発動できる。選択したモンスターはターン終了時までチューナーとして扱う。

【モンスター効果】

(1):相手モンスターの攻撃宣言時、エクストラデッキに表側表示で存在するこのカードを墓地へ送り、自分フィールド上に存在する「幻獣」モンスター1体を対象に発動できる。このターン、選択したモンスターは戦闘では破壊される、その先頭で発生する自分へのダメージが0となる。

 

幻獣王ロックリザード

レベル7 攻撃2200 守備2000 闇属性 獣戦士族

【Pスケール:青4/赤4】

「幻獣王ロックリザード」の(1)のP効果はデュエル中1回しか発動できない。

(1):このカードが自分のPゾーンに存在し、もう片方に「幻獣」Pカードが存在するときに発動できる。ターン終了時までこのカードのPスケールを0にする。

【モンスター効果】

自分のPゾーンに存在するカードがどちらも「幻獣」Pカードのみの場合、このカードはPスケールに関係なくP召喚することができる。

(1):このカードは「幻獣」モンスター1体をリリースすることで、手札からアドバンス召喚できる。

(2):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊したときに発動できる。500ダメージを相手に与える。

(3):相手のカード効果によってこのカードが破壊されたときに発動できる。2000ダメージを相手に与える。

 

幻獣クライバンシー

レベル3 攻撃1000 守備1000 闇属性 アンデット族

【Pスケール:青2/赤2】

「幻獣クライバンシー」の(1)のP効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に存在する「幻獣」モンスターが戦闘によって破壊されたときに発動できる。Pゾーンに存在するこのカードを表側守備表示で特殊召喚する。

【チューナー:効果】

「幻獣クライバンシー」の(1)のモンスター効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に表側表示で存在するこのカードが相手モンスターの攻撃によって破壊されたときに発動できる。そのとき受けた戦闘ダメージの数値分自分LPを回復し、攻撃モンスターの攻撃力を次の自分のターン終了時まで同じ数値分ダウンさせる。

 

幻獣フォレストアルミラージ

レベル4 攻撃1700 守備1500 地属性 獣族

【Pスケール:青6/赤6】

(1):1ターンに1度、自分フィールド上に存在する「幻獣」チューナー1体を対象に以下の効果を発動できる。

●選択したモンスターのレベルをターン終了時まで1つ上げる。

●選択したモンスターのレベルをターン終了時まで1つ下げる。

【モンスター効果】

(1):このカードが戦闘で相手にダメージを与えたとき、相手フィールド上に表側表示で存在する魔法・罠カード1枚を対象に発動できる。選択したカードを破壊する。

 

メタル・コート

通常罠カード

(1):発動後、このカードは装備カード扱いとなり、自分フィールド上に存在するモンスター1体に装備する。この効果で装備カード扱いとなっているこのカードを装備したモンスターは効果では破壊されない。

(2):(1)の効果で装備カード扱いとなっているこのカードを装備したモンスターが戦闘で破壊されるとき、代わりにこのカードを墓地へ送ることができる。

 

スピード・ワールド・A(アクション)

フィールド魔法

(1):お互いに「Sp」魔法カードまたはPカード以外の魔法カードを発動できない。

(2):最初のターンを除いたお互いのスタンバイフェイズ時、お互いのプレイヤーはこのカードに自分用のスピードカウンターを2つずつ置く(最大12個まで)。

(3):1度に受けたダメージ800ポイントの倍数ごとに自分のスピードカウンターを1つ減らす。

(4):お互いのプレイヤーは1ターンに1度、アクションカードを手札に加えることができる。そのとき、アクション魔法カードを手札に加えたプレイヤーはこのカードに自分用のスピードカウンターを1つ置く。アクション罠カードを手札に加えたプレイヤーはこのカードに乗っている自分用のスピードカウンターを1つ取り除く。そのとき自分用のスピードカウンターがない場合、相手プレイヤーのこのカードの上に相手用のスピードカウンターを1つ置く。

(5):自分のスピードカウンターを任意の個数取り除くことで、以下の効果を適用する。

●4個:自分の手札をすべて相手に見せる。手札の「Sp」魔法カードの数×400ポイントのダメージを相手ライフに与える。

●7個:自分のデッキからカードを1枚ドローする。

●10個:手札の「Sp」魔法カードを相手に見せ、フィールド上に存在するカード1枚を破壊する。

(6):このカードの効果は無効にされず、フィールドから離れない。

 

オイル交換

アクション魔法カード

(1):お互いにデッキからカードを1枚ドローする。ライディングデュエル中にこのカードを発動した場合、更にお互いのフィールド魔法ゾーンに存在する「スピード・ワールド」魔法カードの上に自分用スピードカウンターを1つ置く。

 

悪魔王の大鎌

通常罠カード

「悪魔王の大鎌」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に存在する悪魔族Sモンスターが相手の魔法・罠・モンスター効果の対象となったときに発動できる。そのモンスターをリリースし、エクストラデッキからそのモンスターと同じ属性の悪魔族Sモンスター1体を表側攻撃表示で特殊召喚する。

 

レッド・スネーク

レベル3 攻撃1300 守備200 チューナー 炎属性 悪魔族

(1):このカードをS素材とするとき、ほかのS素材が自分フィールド上に存在する「レッド」モンスターのみの場合、このカードのレベルを4として扱うことができる。

(2):このカードをS素材としてS召喚された「レッド・デーモン」モンスターは以下の効果を得る。

●自分フィールド上に表側表示で存在するこのカードが戦闘で相手モンスターに破壊され墓地へ送られたときに発動できる。墓地に存在するこのカードを自分フィールド上に特殊召喚する。

 

ハードポイント

アクション魔法カード

(1):お互いに、デッキの上からカードを3枚確認する。その後、好きな順番でデッキの一番上に戻す。

 

魔装鬼ストリゴイ

レベル5 攻撃2100 守備0 闇属性 悪魔族

【Pスケール:青8/赤8】

(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。

(2):自分フィールド上に存在する「魔装騎士」モンスターの攻撃宣言時に発動できる。相手フィールド上に存在するモンスターの攻撃力・守備力がターン終了時まで600ダウンする。

【モンスター効果】

「魔装鬼ストリゴイ」は1ターンに1度しか、(1)の方法で特殊召喚できない。

(1):このカードが手札に存在し、自分フィールド上に「魔装」モンスター1体を対象に発動できる。このカードを手札から特殊召喚し、そのモンスターの攻撃力が半分になる。

 

雨流れ

通常罠カード

(1);自分フィールド上に存在する「花札衛」モンスターが攻撃対象となったときに発動できる。そのモンスターは戦闘では破壊されない。そして、ダメージステップ終了時に手札・デッキから「花札衛」チューナー1体を自分フィールド上に攻撃表示で特殊召喚する。

 

花札衛-桜に幕(アニメオリカ・調整)

レベル3 攻撃2000 守備2000 効果 闇属性 戦士族

このカードは通常召喚できない。

「花札衛-桜に幕-」以外の自分フィールドのレベル3の「花札衛」モンスター1体をリリースした場合に特殊召喚できる。

(1):このカードが特殊召喚に成功した場合に発動する。自分はデッキから1枚ドローし、お互いに確認する。それが「花札衛」モンスターだった場合、そのモンスターを特殊召喚できる。違った場合、そのカードを墓地へ送る。

(2):このカードがS素材として墓地へ送られた場合に発動する。自分はデッキから1枚ドローする。

 

エヌルタの慈悲

永続罠カード

「エヌルタの慈悲」の(3)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):1ターンに1度、自分フィールド上に存在する「魔装騎士」モンスター、「魔装」S・X・融合モンスターが相手モンスターと戦闘を行う時に発動できる。その戦闘で発生する相手へのダメージは倍になる。

(2):自分フィールド上に「魔装」モンスターが存在しない場合、このカードは墓地へ送られる。

(3):このカードが自分の効果によって墓地へ送られたとき、自分のデッキに存在する「魔装」Pモンスター1体を対象に発動できる。そのカードを自分の手札に加える。

 

ノーアクション(アニメオリカ)

アクション魔法カード

(1):アクションカードの発動を無効にし、破壊する。

 

鬼札御免

通常罠カード

(1):自分フィールド上に存在する「花札衛」Sモンスターが戦闘を行ったとき、相手フィールド上に特殊召喚されたモンスターが存在する場合に発動できる。そのモンスターはこのターン、もう1度攻撃することができる。その戦闘で守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ相手に戦闘ダメージを与える。

 

Sp-スケアリー・リボーン

通常魔法カード

「Sp-スケアリー・リボーン」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分のスピードカウンターが7つ以上あるとき、互いの墓地に存在する攻撃力2000以下のモンスター1体ずつを対象に発動できる。それらのモンスターを互いのフィールドに特殊召喚する。

 

花札衛-五光(アニメオリカ・調整)

レベル10 攻撃5000 守備5000 シンクロ 光属性 戦士族

チューナー+チューナー以外のモンスター4体

(1):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分フィールド上に存在する「花札衛」モンスターは戦闘では破壊されない。

(2):1ターンに1度、魔法・罠カードが発動したときに発動できる。その発動を無効にし、破壊する。この効果の発動に対して、相手は魔法・罠・モンスター効果を発動できない。

(3):このカードが相手モンスターと戦闘を行う場合、バトルフェイズ終了時までその相手モンスターの効果は無効化される。

 

魔装楯タカモリ

レベル4 攻撃1000 守備2000 チューナー 地属性 戦士族

(1):1ターンに1度、自分が効果によるダメージを受けるときに発動できる。このカードを手札から特殊召喚し、そのダメージを0にする。

(2):このカードが「魔装」SモンスターのS素材となる場合、このカードをチューナー以外のモンスターとして扱うことができる。

 

魔装忠臣ユキモリ

レベル7 攻撃2200 守備1000 風属性 戦士族

【Pスケール:青9/赤9】

「魔装忠臣ユキモリ」の(2)の効果はこのカードがPゾーンに表側表示で存在する限り1度しか発動できない。

(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。

(2):自分のターンのメインフェイズ時に発動できる。ターン終了時まで自分フィールド上に存在する「魔装」モンスターは相手のモンスター効果を受けない。

【モンスター効果】

「魔装忠臣ユキモリ」の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊したとき、自分の墓地・エクストラデッキに表向きで存在する「魔装」モンスター1体を対象に発動できる。そのカードを手札に加える。

 

鋼の歯車歩兵(メタルギア・ウォーカー)

レベル2 攻撃500 守備500 効果 地属性 機械族

「鋼の歯車歩兵」の効果を発動したターン、自分は「メタルギア」以外のモンスターを特殊召喚できない。

(1):このカードの召喚に成功したとき、自分フィールド上にエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターが存在しない場合に発動できる。デッキから、レベル4以下の「メタルギア」モンスター1体を召喚する。

 

鋼の歯車騎兵(メタルギア・トルーパー)

レベル3 攻撃1000 守備1000 効果 地属性 機械族

「鋼の歯車騎兵」の効果は1ターンに1度しか発動できず、効果を発動したターン、自分は「メタルギア」以外のモンスターを特殊召喚できない。

(1):このカードの召喚に成功したとき、自分の手札・デッキに存在する同名の「メタルギア」モンスター2体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効となり、攻撃力・守備力は0となる。

 

鋼の歯車T-REX(メタルギア・レックス)

レベル8 攻撃2800 守備2500 融合 地属性 機械族

「鋼の歯車」モンスター×3

このカードは「鋼の歯車融合」の効果でのみ特殊召喚できる。

(1):このカードは1度のバトルフェイズに2回攻撃することができる。

(2):このカードが相手の守備表示モンスターを攻撃するとき、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

(3):このカードが破壊され墓地へ送られたとき、自分の墓地に存在するレベル4以下の「鋼の歯車」モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。

 

鋼の歯車融合(メタルギア・フュージョン)

通常魔法カード

「鋼の歯車融合」の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上から「メタルギア」融合モンスターモンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

(2):このカードが墓地に存在するとき、自分の墓地に存在する「メタルギア」融合モンスター1体を対象に発動できる。そのカードをエクストラデッキに戻し、このカードを手札に加える。

 

鋼の歯車狼(メタルギア・ウルフ)

レベル2 攻撃400 守備400 効果 地属性 機械族

(1):自分フィールド上に「メタルギア」モンスターが存在する場合、このカードを手札から特殊召喚できる。

 

鋼の歯車RAY(メタルギア・レイ)

レベル8 攻撃2300 守備2200 融合 地属性 機械族

「メタルギア」モンスター×3

このカードは「鋼の歯車融合」の効果でのみ特殊召喚できる。

(1):このカードは相手フィールド上に存在するモンスターに1回ずつ攻撃できる。

(2):このカードが戦闘を行う時、攻撃モンスターの攻撃力が攻撃対象モンスターの攻撃力よりも低い場合、ダメージ計算時のみ攻撃力を1000アップする。

(3):このカードが破壊され墓地へ送られたとき、自分の墓地に存在するレベル4以下の「鋼の歯車」モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。

 

鋼の歯車工場(メタルギア・ファクトリー)

永続魔法カード

「鋼の歯車工場」の(1)(3)の効果は1ターンにいずれか1度しか発動できない。

(1):このカードの発動時の効果処理として、自分の墓地に存在するレベル4以下の「メタルギア」モンスター1体を特殊召喚することができる。

(2):自分が「メタルギア」融合モンスターの融合召喚に成功したときに発動する。このカードの上にメタルギアカウンターを1つのせる。(最大5つまで)

(3):このカードの上に乗っているメタルギアカウンターを2つ取り除くことで、以下の効果のいずれか1つを発動できる。

●デッキから「メタルギア」モンスター1体を手札に加える。

●デッキから「メタルギア」魔法・罠カード1枚を手札に加える。

 

植林

アクション魔法カード

(1):手札を1枚デッキに戻し、デッキからカードを1枚ドローする。

 

共振(禁止カード・創作)

アクション魔法カード

お互いのPゾーンにカードがない場合にのみ発動できる。

(1):お互いにデッキからPスケールの異なるPモンスターを3体まで選択して手札に加える。その後、お互いにPゾーンにPモンスターを置き、ペンデュラム召喚を行う。

 

煉獄超龍インフェルニティ・ドラグーン

レベル10 攻撃3500 守備3000 シンクロ 闇属性 ドラゴン族

闇属性チューナー+闇属性・ドラゴン族Sモンスター1体

(1):自分の手札が0枚の場合、1ターンに1度、相手が魔法・罠カードを発動した時に発動できる。その発動を無効にし破壊する。その後、ターン終了時までこのカードの攻撃力は500アップする。

(2):自分フィールド上に存在するこのカードが相手の魔法・罠カードの効果でフィールドを離れたとき、自分の墓地に存在する「インフェルニティ」Sモンスターまたは「煉獄龍オーガ・ドラグーン」1体を選択して発動できる。そのモンスターを自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する。

 

Sp-収縮(ゲームオリカ)

速攻魔法カード

(1):自分のスピードカウンターを2つ取り除き、フィールド上に存在するモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターの攻撃力がターン終了時まで半分になる。

 

Sp-ミラクルシンクロフュージョン(ゲームオリカ)

通常魔法カード

(1):自分のスピードカウンターを2つ取り除いて発動する。自分のフィールド上・墓地から、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターをゲームから除外し、シンクロモンスターを融合素材とするその融合モンスター1体を融合召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

(2):セットされたこのカードが相手のカード効果によって破壊され墓地へ送られた時に発動する。自分はデッキからカードを1枚ドローする。

 

退場

アクション魔法カード

(1)自分フィールド上に存在するモンスター1体を破壊する。この破壊は相手による破壊として扱う。

 

グランエルT5

レベル5 攻撃1500 守備2000 効果 地属性 機械族

このカードは自分フィールド・墓地に「グランエルT3」が存在しない場合、通常召喚できない。

(1):このカードは自分フィールド上に存在する「グランエルT3」1体をリリースし、手札から特殊召喚する事ができる。

(2):このカードは攻撃できない。

(3):このカードはフィールド上に存在する限り、攻撃表示となる。

(4):自分フィールド上に「機皇帝」と名のつくモンスターが存在しない場合、このカードは破壊される。

(5):自分フィールド上に存在する「機皇帝」モンスターが攻撃する時、ダメージステップ終了時まで相手フィールド上に存在するSモンスターの効果は無効化される。

(6):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分のターンの間のみ、相手フィールド上に存在するモンスターはSモンスターとして扱う。

 

グランエルG3(アニメオリカ・調整)

レベル3 攻撃800 守備2000 効果 地属性 機械族

このカードは自分フィールド・墓地に「グランエルG」が存在しない場合、通常召喚できない。

(1):このカードは自分フィールド上に存在する「グランエルG」1体をリリースし、手札から特殊召喚する事ができる。

(2):このカードは攻撃できない。

(3):このカードはフィールド上に存在する限り、守備表示となる。

(4):自分フィールド上に「機皇帝」と名のつくモンスターが存在しない場合、このカードは破壊される。

(5):1ターンに1度、自分フィールド上の「ワイゼル」「スキエル」「グランエル」モンスターがカード効果によって破壊されるときに発動できる。その破壊を無効にする。

(6):1ターンに1度、自分フィールド上の「ワイゼル」「スキエル」「グランエル」モンスターが攻撃対象となったときに発動できる。攻撃モンスターを破壊する。

 

終幕の光(アニメオリカ・調整)

通常魔法カード

「終幕の光」は1ターンに1度しか発動できず、このカードを発動したターン、自分は光属性以外のモンスターを召喚・特殊召喚できない。

(1):自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、ライフを1000支払うことで発動できる。自分の墓地に存在する光属性モンスター1体を召喚条件を無視して特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターはこのターン、カード効果では破壊されない。

 

 

E・HEROクリス・セラフィム

レベル10 攻撃2800 守備2800 融合 光属性 戦士族

「E・HEROセラフィム」+「クリスタル・ローズ」+「幻奏」モンスター

「E・HEROクリス・セラフィム」は自分フィールド上に1体しか存在できない。

このカードは融合召喚でのみ特殊召喚できる。

(1):このカードの融合召喚に成功したとき、このカードの攻撃力は融合素材となった「幻奏」モンスターの元々の攻撃力の半分アップする。

(2):自分のターンのメインフェイズ1に発動できる。このカードはこのターンのバトルフェイズ時、相手フィールド上に存在するすべてのモンスターに1回ずつ攻撃できる。

(3):フィールド上に存在するこのカードが破壊され墓地へ送られたとき、墓地・エクストラデッキに表向きで存在する「E・HEROセラフィム」を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールド上に召喚条件を無視して特殊召喚する。

 



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第68話 共振する魂

「んぐんぐ…」

遊矢と227のデュエル終了後、翔太はボーイが持ってきた昼ご飯を食べ始めた。

この次元の富の99%を有するトップスだけあって、分厚い盛岡モモステーキやしおさわ米のご飯など、高級な食材がふんだんに使われている。

「にしても、ビャッコの奴はどこへ行った?」

食べている間、気になったのはビャッコの行方で、徳松とのデュエルが終わった後、また姿を消していた。

(ほんと、どうなってるんだ?あいつ…。常時実体化しているうえ、いつの間にかいなくなったり、俺よりも伊織に懐いて…)

(それでは、フレンドシップカップ1回戦第6試合を開始したいと思います!)

テレビからメリッサの陽気な声が響き、それと同時に客席からの歓声が流れる。

その中でカメラはスタジアムの北側に設置されているオーロラビジョンに向けられる。

(この試合でデュエルをするのはどちらも無名のデュエリスト!!まず1人目はええっと…んっと…ああ、特になし!沢渡シンゴーー!!)

「待たせたなー!フレンドシップカップの主役、沢渡シンゴ参上ーー!)

青を基調とした、徳松と同じ量産型の競技用Dホイールに乗り、青いヘルメットと黄色いライディングスーツ姿で登場する沢渡に観客が暖かな声援を送る。

「誰が主役だーーー!!」

「お前なんて知らねーよ!」

「ひっこめーーー!」

「だせぇー!!」

「参加者全員に謝れーー!!」

(あの馬鹿…米粒やるから黙ってろ)

そんな歓声を受けた自称、フレンドシップカップの主役の後に続いて、彼の対戦相手が出る準備を終える。

「この大会で…アカデミアの存在をみんなに伝えねーと…」

信号を見つめながら、ユーゴははやる気持ちを抑えて時を待つ。

そんな彼の脳裏に柔和な若者の声が響く。

(焦ってはいけませんよ?ユーゴ。今はやるべきことを…)

「ああ。わかってる。だからフレンドシップカップに出たんだ…」

翔太とのデュエル後、急に次元転移をしてしまったユーゴは自分の故郷であるシンクロ次元に来ていた。

しかも、運が悪いことにそこはトップスで、彼は不法侵入者として、デュエルチェイサーズに追われる身となってしまった。

というのも、彼はもともとコモンズの出身で、コモンズ出身者は許可がない限り、トップスに入ることは許されない。

なんとか逃げ延びた彼は世話になっている孤児院に匿われ、ほとぼりが冷めるまでそこで過ごすことになった。

そこでフレンドシップカップの存在を聞き、次元戦争とアカデミアの存在を伝えるために参加することを決意した。

自分が使用しているDホイールの修理・チューニングをする時間はうなるほどあった。

唯一気になったのは書類審査であり、文字については孤児院の院長に手伝ってもらって書くことができたが、問題は自分が不法侵入をしてしまったことだ。

そのことから、最悪の場合、即逮捕される可能性があったが、書類審査はなぜか通ってしまい、スタジアムに到着したときもセキュリティに拘束されることはなかった。

代わりに評議会の人間に誘拐され、参加者の集まるホテルに幽閉されることになってしまったが。

ユーゴは懐からリンと自分が映る写真を手に取る。

「リン…。もう少し辛抱していてくれ。必ず俺が助け出すから…」

(では、その…ああ、どこの馬の骨か知らない自称、主役を相手してくれるのはーー!!ええっと、以前デュエルチェイサーズと激しいデュエルを繰り広げてくれた、コモンズ期待の白いライオン!その名は…日村ーーー!!)

「誰が日村だ!!俺はユーゴだーーーーー!!!」

メリッサに対して大声で突っ込みながら、信号が青になったためユーゴは発進し、コースに飛び出す。

(え…?ああ、ごめんねーー。あなたの書類、ちょっと読みづらくて…。許してね、設楽君)

「俺はユーゴだ!!日村でも設楽でも、ついでに小山でもねー!!」

融合、融合の手先、バナナ、バナナマンとまともに名前を呼んでもらえないユーゴのストレスが増大し、怒りに満ちたまま、先にスタートラインについている沢渡に目を向ける。

「沸き立つ観客、盛り上がる客席…。これもまさに、俺のために作られた舞台!お前も下手なデュエルをしたら承知しな…」

「うるせーー!!今の俺はすっげー機嫌が悪いんだよ!すぐにケリをつけてやるよ!!」

「う、うるせーだと??お前、この俺を舞網市市長の息子と知って言ってんのか!?」

「知らねーよ!そんな市!!大体てめーは…」

(ユーゴ、つまらない喧嘩はやめてください。相手に失礼ですよ)

「うるせークリアウィング!!てめーは黙ってろ!!」

ユーゴを止めようとした、クリアウィングと呼ばれた声がわずかに沈黙する。

そして、先ほどまでとは態度が一変する。

(喧嘩するなって言ってんだよ!?いっぺんで聞けねえくらい脳みそ小せーのか、このクソチビがぁ!!)

「クソチビだとぉ…?誰がクソチビだ!?このキレまくりドラゴン!!」

(クソチビをクソチビといって何が悪いんだよ!?悔しかったら勉強しろ!クサレ脳みそがぁ!!)

「うっるせー!あんな文字ばっかの本がわかるわけねーだろ!もっと優しく教えることもできねーのか!?」

(SHUT UP-------!!!!)

メリッサの怒声により、クリアウィングとユーゴがびっくりして黙る。

ちなみに、すっかり置いてけぼりにされた沢渡は傍から見るとひとりで口げんかしているユーゴをまるで怖いものを見るような目で見て、沈黙していた。

(いい加減に準備をしなさい!!そうしないと失格よ!!!)

「し、失格は勘弁してくれ!!くっそー、クリアウィング…あとで覚えとけよ…」

柔和だが、キレやすい一面のあるクリアウィングを恨めしく思いつつ、ユーゴはヘルメットを直す。

なお、メリッサの怒声とユーゴのエア口喧嘩によって、会場はざわついている。

(えー、会場の皆さま。先ほどは見苦しいところをお見せして申し訳ありません!それでは改めて…フィールド魔法《スピード・ワールド・A》発動!!)

フィールド魔法発動と同時に、ソリッドビジョンで開始までのカウントダウンが始まる。

(ライディングデュエル…アクセラレーション!!)

カウントが0になると同時に、両者が発進する。

すると、直ぐにユーゴが前に出て、沢渡はその後ろをついていく形になる。

やはりライディングデュエル経験者であるユーゴの方がDホイールの性能を含めて、あらゆる面で沢渡にアドバンテージがある。

「くそっ!!」

しかし、沢渡もランサーズの1人として負けるわけにはいかない理由がある。

アクセルを入れ、スピードを上げようとする。

「な…!?うわああああ!?!?!?」

スピードを無理に上げたせいで、初心者である沢渡では制御できなくなり、彼のDホイールがウィリー走行を始めてしまう。

スピードが上がったうえ、グニャグニャと迷走する沢渡のDホイールがユーゴとぶつかりそうになる。

「うわ!?あ、あぶねえ!!」

慌ててユーゴは回避するが、その間にも迷走を続ける沢渡のDホイールは彼を追い抜き、第1コーナーを先に獲る。

「はあはあ、あぶなかった…」

顔面を真っ白に染め、スピードを落としたことで制御できるようになった沢渡はホッとする。

「すげえなお前。びっくりしたぜ」

すぐに追いついたユーゴは並走しながら、ビギナーズラックとはいえ、自分を追い抜いた彼を素直にほめる。

「へ、へへ…これが俺のライディングテクニックだ。そして、ここからが本番だ!俺のエンタメ劇場の開幕だぜー!」

 

沢渡

手札5

ライフ4000

 

ユーゴ

手札5

ライフ4000

 

「俺はスケール1の《魔界劇団-デビル・ヒール》とスケール8の《ファンキー・コメディアン》でペンデュラムスケールをセッティング!」

「おお…!!」

「あいつもペンデュラム召喚を使うのか!?」

緑色の口があり、左側の蛇を模した模様、右側に耳のないウサギの顔を模した仮面がある巨大な顔に両足と両腕がついている奇妙な紫色のモンスターと黄色い目のある白い仮面を顔の右側につけ、頭にはテンガロンハットを被り、先ほどのモンスターと同じ模様が脂肪たっぷりの腹についている緑色のモンスターが現れ、青い光の柱を生み出す。

シンクロ次元では珍しいペンデュラム召喚をまたみることができるためか、観客は興奮している。

「ペンデュラム召喚!現れろ、俺様のしもべたち!!」

光の柱の間に青い渦が現れ、そこから2体のモンスターが飛び出してくる。

「《魔界劇団-サッシー・ルーキー》!そして、俺の劇団の主役、《魔界劇団-ビッグ・スター》!!」

目が顔の右側と右手、そして右膝についている、茶色いオーバーホールと青いボサボサな髪が飛び出すくらいの小さな魔女帽子を装備したモンスターが偉そうに沢渡の前に立ち、胸を張って威張り始める。

「おいこら!?お前は主役じゃあねーだ…ろ!!」

それに怒った沢渡に左側から拳骨を受け、吹っ飛ばされた後で黒い燕尾服と茶色い型眼鏡を付けた、手足が異様に細い、ピンク色の薔薇を模した形の髪の人型モンスターが沢渡の前に立ち、まずはあいさつと言わんばかりに観客とユーゴに対して恭しく一礼した。

 

魔界劇団―サッシー・ルーキー レベル4 攻撃1700

魔界劇団―ビッグ・スター レベル7 攻撃2500

 

(沢渡選手!開始早々ペンデュラム召喚し、エンタメデュエルの幕を開くーー!!)

「どうやら、口先だけじゃあねーみてーだな」

ペンデュラム召喚により、いきなり上級モンスターを含めて2体のモンスターを召還した沢渡をユーゴは素直にほめる。

正直に言うと、彼が口先だけのデュエリストかもしれないと思っていたためだ。

だが、実力をわずかでも見て、彼がただのデュエリストではないとわかると、それを素直に喜んだ。

これで、真剣勝負ができると思ったからだ。

「まだまだ俺のエンタメは続くぜー!まずは《ビッグ・スター》による華麗なるマジック!!」

沢渡が指を鳴らすと、《魔界劇団-ビッグ・スター》が右手をわずかにひねる。

すると、右手に薔薇の花をが現れ、それを沢渡に向けて投げる。

それを彼が手に取ると、急に薔薇が花弁となって、風に乗って飛んでいく。

そして、沢渡の手に残ったのは1枚のカード。

「すげえ、カードだ!!カードが出てきた!!」

「それにあのモンスター…クールでかっこいい!!」

「いいぞ、《ビッグ・スター》!!」

マジックを見せた《魔界劇団―ビッグ・スター》への歓声が響く中でも、そのモンスターは冷静にお辞儀をし、次の出番が来るまで沢渡の後ろに下がる。

「なんで俺じゃねーんだ…?まぁ、いいか…。《ビッグ・スター》はマジックのように、1ターンに1度、デッキから魔界台本と名の付く魔法カードを俺のフィールド上にセットできる!」

納得がいかない表情を見せながらも、沢渡は手にしたカードをフィールドにセットする。

(確かに魔法カードのサーチは強力だが、ライディングデュエルではSp以外の魔法カードを発動できない)

「さて…そして俺は…」

(イ○ズマキーーーック!!)

「うわああ!?!?」

殴り飛ばされていた《魔界劇団―サッシー・ルーキー》がようやく彼のそばに戻ってきて、彼に向かって飛び蹴りをする。

リアルソリッドビジョンであるため、それを受けた沢渡のDホイールが体勢を崩し、グラグラと揺れる。

(うわー。なんということでしょう。あろうことか自分のモンスターが命令されてないのにコントローラーにダイレクトアタックをしています。これはソリッドビジョンシステムの誤作動でしょうかー?)

メリッサがうーんと悩みながら実況する中、なんとか立て直した沢渡は自分を蹴ってきたモンスターに目を向ける。

「何しやがるんだ、テメー!!このデュエルの主役だぞ!?」

(ふん!さっきはよくもオイラを殴り飛ばしてくれたな!主役を殴ったお返しだ、団長!!)

「それはテメーがでしゃばったからだろーが!!なんで俺が責められなきゃ…って…」

怒った沢渡だが、急にある疑問が浮かび、急激に頭の中が冷える。

ソリッドビジョンシステムで現れたモンスターは鳴き声を発したり、奇声を上げたりすることがあるが、基本的にしゃべることはない。

だが、今のサッシー・ルーキーは沢渡の声に反応してしゃべるし、しかも先ほどは命令がないにもかかわらず、蹴ってきた。

まるで、意思があるかのように…。

(おい!!謝れよ、団長!!)

「な、なあ…もしかしてお前…精霊か??」

観客に聞こえないように、小さな声で質問する。

(ああそうだよ!察しの悪い団長さん!!オイラは魔界劇団の主役、サッシー・ルーキーだ!!)

「ま、マジで…??」

精霊については、ランサーズはヴァプラ隊との訓練中に侑斗から教えられている。

といっても、沢渡はそんなものは存在しないといわんばかりに不真面目に聞き、意思があって、普段は透明だから現実世界に影響を与えることはないが、リアルソリッドビジョンによって召喚されるなどの特定の状況になると実体化して現実世界にも影響を与えることがある、というところだけしか覚えていない。

ましてや、自分のデッキにそんな精霊がいるわけがないと思っていた分、サッシー・ルーキーの登場は驚きだった。

「おーい、沢渡…。早くデュエル進めねーと、失格になるぞ…?」

精霊のことで夢中になった沢渡にユーゴが並走しながら忠告する。

そして、その間に足元にあるアクションカードを手にする。

 

ユーゴ

SPC0→1

 

「げっ…そうだった…って、あ…」

ユーゴの言葉で我に返った沢渡はヘルメットの左ほお部分に違和感を感じた。

それに触れると、そこにはアクションカードが挟まっていた。

先ほどの蹴りを受けたとき、拍子で挟まったのだろう。

「おっと、こいつはラッキーだぜ!!」

 

沢渡

SPC0→1

 

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド!ちなみに、《ビッグ・スター》で伏せたカードはターン終了時に墓地へ送られる」

《魔界劇団―ビッグ・スター》が指を鳴らすと、伏せられていたカードが上空へ飛んでいき、花火となって消えた。

「すげえ、花火だー!」

「きれい…」

上空に浮かぶ炎の花に観客が見とれる。

(なるほどな…。その効果は客に魅せるための物だったのか…)

 

沢渡

手札5→0(アクションカード1)

SPC1

ライフ4000

場 魔界劇団―ビッグ・スター レベル7 攻撃2500

  魔界劇団―サッシー・ルーキー レベル4 攻撃1700

  伏せカード1

  魔界劇団―デビル・ヒール(青) ペンデュラムスケール1

  魔界劇団―ファンキー・コメディアン(赤) ペンデュラムスケール8

 

ユーゴ

手札5(アクションカード1)

SPC1

ライフ4000

場 なし

 

墓地へ送られたカード

魔界台本「オープニング・セレモニー」

 

 

「遠慮なくいくぜ…。俺のターン!!」

 

ユーゴ

手札5→6

SPC1→3

 

沢渡

SPC1→3

 

「おっと、ここで俺は罠カード《魔のデッキ破壊ウイルス》とアクション魔法《そよ風》を発動!」

「何!?」

沢渡が発動したカードを見て、ユーゴが表情をゆがめる。

「まずは《そよ風》からだ。こいつは俺のフィールド上に存在するモンスター1体の攻撃力・守備力を300アップさせる」

(よーし、主役のオイラがパワーアップ!!)

沢渡の頭上に乗ったサッシー・ルーキーがポーズを決める。

 

魔界劇団―サッシー・ルーキー レベル4 攻撃1700→2000 守備1000→1300

 

「そして、《魔のデッキ破壊ウイルス》は俺のフィールド上に存在する攻撃力2000以上の闇属性モンスター1体をウイルスに変え、相手の手札・フィールドを侵食する!!」

(おお、すげーぜ団長!って、あれ?攻撃力2000以上の闇属性モンスターって…)

「サッシー・ルーキー!!俺を蹴った罰だ!!しっかり仕事して来い!!」

(えええええ!?!?ひどいーーー!!)

悲鳴を上げながら、サッシー・ルーキーが紫色の蛇の模様を模した大量のウイルスに代わり、ユーゴの周囲に展開していく。

「このウイルスはな…手札とフィールド、そして相手のターンを数えて3ターンの間に相手がドローしたカードを確認し、攻撃力1500以下のモンスターをすべて墓地へ送る!!」

「くっそぉ!!」

仕方なく、ユーゴはドローしたカードを含めて手札のカードをすべて公開する。

 

ユーゴの手札

・SRダブルヨーヨー

・Sp-ヴィジョン・ウィンド

・SRパッシングライダー

・Sp-ハーフ・シーズ

・SR赤目のダイス

・竜の束縛

・回避

 

「んじゃあ、《ダブルヨーヨー》と《赤目のダイス》を墓地へ送ってもらうぜ!!」

ウイルスに反応した2枚のカードが紫色の光り、ボロボロと砂に代わっていく。

ただし、これはあくまで演出で、カードがそのままそうなっているわけではない。

ユーゴはおとなしく、ウイルスに感染した2体のモンスターを墓地へ送る。

「だが、これで俺の手がふさがったわけじゃねー!!俺は手札から《Sp-ヴィジョンウィンド》を発動!俺のスピードカウンターが2つ以上あるとき、墓地からレベル2以下のモンスター1体を特殊召喚する。そして、この効果で特殊召喚されたモンスターはターン終了時に破壊される。俺は墓地から《SR赤目のダイス》を特殊召喚!」

《Sp-ヴィジョンウィンド》のソリッドビジョンから生み出される小さな竜巻の中から、《SR赤目のダイス》が現れる。

 

SR赤目のダイス レベル1 攻撃100(チューナー)

 

(ユーゴ選手、ウイルスカードへのカウンターとして、蘇生カードで破壊されたモンスターを呼び戻したーー!!)

「ちっ…!《ヴィジョンウィンド》ってこういう時に面倒だぜ…!」

 

Sp-ヴィジョンウィンド(アニメオリカ)

通常魔法カード

(1):自分のスピードカウンターが2つ以上ある場合に発動できる。自分の墓地からレベル2以下のモンスター1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターはターン終了時に破壊される。

 

「そして、《赤目のダイス》をリリースし、《SRパッシングライダー》をアドバンス召喚!」

《SR赤目のダイス》が青い渦に変化し、その中から白と青を基調とした小さな旅客機のおもちゃと白い人型ロボットの胴体よりも上の部分が合体したようなモンスターが出て来る。

 

SRパッシングライダー レベル5 攻撃2000

 

「このカードのアドバンス召喚に成功したとき、墓地からレベル4以下のSR1体を特殊召喚できる。俺は《SR赤目のダイス》を特殊召喚!」

《SRパッシングライダー》の荷物入れが開き、その中から《SR赤目のダイス》が飛び出す。

 

 

SR赤目のダイス レベル1 攻撃100(チューナー)

 

「《SR赤目のダイス》は召喚・特殊召喚に成功したとき、《赤目のダイス》以外のSR1体のレベルを1から6のいずれかに変動させる。俺は《パッシングライダー》のレベルを6に変更する!」

 

SRパッシングライダー レベル5→6 攻撃2000

 

「俺はレベル6の《パッシングライダー》にレベル1の《赤目のダイス》をチューニング!その美しくも雄々しき翼翻し、光の速さで敵を討て!シンクロ召喚!現れろ、レベル7!《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》!」

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

(ユーゴも負けじとシンクロ召喚!両者のエースカードがここに並び立つーー!!)

「ユーゴ…沢渡…」

デュエルを終え、自室に戻っていた遊矢も翔太と同じように2人のデュエルを見ていた。

どちらが勝ったとしても、少なくとも遊矢が知る人間がまた1人、地下へ送られることになる。

それに、まだ227にやったことが本当に正しかったのかわからずにいた。

(ふん…エンターテイナーを名乗るものがこのようなザマではな)

「オッドアイズ…」

オッドアイズの声が聞こえた遊矢はデッキを見る。

ユーゴが召喚したクリアウィングに反応しているのか、オッドアイズだけでなく、ダーク・リベリオンも光っている。

(オッドアイズ…。今、クリアウィングに…軽忽に会いに行きませんか?)

(最近目覚めたばかりの奴にか…いいだろう)

「おい、待てよオッドアイズ、ダーク・リベリオン!まさか…クリアウィングにも!?うわあ!!」

2枚のカードが放つ光が強くなり、遊矢の視界が緑色の光に包まれていった。

 

「へえ…ドラゴンかぁ。敵役にはちょうどいいぜ!ここから、沢渡エンタメ劇場の演目は『ドラゴン征伐』だ!一刀両断切り捨ててやるぜ!」

(団長ー。一刀両断するにも、楽屋には刃物もそれを使える役者もいないぞー!)

「細かいことを言うな!それぐらい、役者であるお前らが考えろ…」

(うわ…丸投げ。考えなしにいうなんて、バッカだなー)

「こいつ…!」

自分の劇団の役者のくせに全く敬意を払わず、馬鹿にした言動を見せるサッシー・ルーキーに怒りを覚える。

だが、それよりも問題なのはウイルスカードで確認したユーゴの手札にあるカードだ。

「さらに俺は手札から《Sp-ハーフ・シーズ》を発動!俺のスピードカウンターが3つ以上あるとき、相手モンスター1体の攻撃力を半分にし、その数値分俺のライフを回復する」

 

魔界劇団―ビッグ・スター レベル7 攻撃2500→1250

 

ユーゴ

ライフ4000→5250

 

「これで攻撃力は《クリアウィング》の方が上だ!バトル!!俺は《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》で《ビッグ・スター》を攻撃!旋風のヘルダイブスラッシャー!!」

(では…失礼させてもらいます!)

クリアウィングが回転しながら突撃し、《魔界劇団―ビッグ・スター》を粉々に打ち砕く。

そして、勢いを止めることなく沢渡に激突した。

「うわああああ!!」

 

沢渡

ライフ4000→2750

SPC3→2

 

「痛え…。だが、《ビッグ・スター》はペンデュラムモンスター!墓地へは行かず、エクストラデッキに置くぜ」

ダメージにより、スピードカウンターが減ったことでDホイールのスピードが若干落ちる。

そして、その間にユーゴが沢渡の前を走る。

「どうやら、征伐されるのはお前の方だったみてーだな。俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド!」

 

 

沢渡

手札0

SPC2

ライフ2750

場 伏せカード1

  魔界劇団―デビル・ヒール(青) ペンデュラムスケール1

  魔界劇団―ファンキー・コメディアン(赤) ペンデュラムスケール8

 

ユーゴ

手札6→0(アクションカード1《回避》)

SPC3

ライフ5250

場 クリアウィング・シンクロ・ドラゴン レベル7 攻撃2500

  伏せカード1(《竜の束縛》)

 

魔のデッキ破壊ウイルス 残り2ターン

 

「やってくれるぜ…。だが、ペンデュラム召喚がある限り、俺のエンタメ劇場はまだまだ盛り上がるぜ!俺のターン、ドロー!!」

 

沢渡

手札0→1

SPC2→4

 

ユーゴ

SPC3→5

 

「なら、そのペンデュラム召喚を封じさせてもらうぜ。俺は永続罠《竜の束縛》を発動!」

《竜の束縛》のソリッドビジョンから流れる青い粒子を受けたクリアウィングが緑色の翼からロープ上の光線を放ち、沢渡のエクストラデッキを縛り上げる。

「何?!」

「こいつは俺のフィールド上に攻撃力・守備力2500以下のドラゴン族モンスター1体を対象に発動でき、そのモンスターの元々の攻撃力以下のモンスターを特殊召喚できなくする」

「(ちっ…!これじゃあ、《サッシー・ルーキー》と《ビッグ・スター》をペンデュラム召喚できねーじゃねーか!!)やってくれるな。悪役はこれくらいしてもらわねーとな」」

「さあ、どうする!?お前の手札は1枚だけ。伏せカードはSpですらねーただの魔法カードだ!!」

「そうだ。だが…それで安心してたら大間違いだ。俺はセッティング中の2体の役者でペンデュラム召喚する!現れろ、《霞の谷の巨神鳥》!!」

「何!?」

ペンデュラム召喚によって生み出される青い渦の中から、雷鳥を模した緑色の巨大な鳥が飛び出してくる。

「で、でけえ…!!」

「エンターテイナーなるもの、予想外の動きってのを見せねーとな!!」

 

霞の谷の巨神鳥 レベル7 攻撃2700

 

「バトルだ!《巨神鳥》で《クリアウィング》を攻撃!!」

「アクション魔法《回避》!!こいつで攻撃を無効にする!!」

《霞の谷の巨神鳥》の口から放たれる稲妻をクリアウィングが白いブレスで相殺する。

(ユーゴ、アクションカードです)

「わかってる!にしても、このウイルスが邪魔だぜ…」

《魔のデッキ破壊ウイルス》は攻撃力が全体的に低いSRにとっては天敵と言えるカードだ。

そして、相手が《霞の谷の巨神鳥》を召喚したため、次のターンまでにそのモンスターを除去するか、《クリアウィング》の破壊を防ぐカードを手にしなければ、フィールドががら空きになってしまう。

コーナーの内側に隠れるように置かれているアクションカードをDホイールを大きく傾けながらとる。

「何!?」

「お、アクション罠《誤配送》か。サンキュー!」

 

沢渡

手札0→1

 

ユーゴ

SPC5→4

 

「俺はカードを1枚伏せて、ターンエンド。次のターンで、ドラゴン征伐のクライマックスだぜ!!」

 

沢渡

手札0

SPC4

ライフ2750

場 霞の谷の巨神鳥 レベル7 攻撃2700

  伏せカード2

  魔界劇団―デビル・ヒール(青) ペンデュラムスケール1

  魔界劇団―ファンキー・コメディアン(赤) ペンデュラムスケール8

 

ユーゴ

手札0

SPC4

ライフ5250

場 クリアウィング・シンクロ・ドラゴン レベル7 攻撃2500

  伏せカード1(《竜の束縛》)

 

魔のデッキ破壊ウイルス 残り2ターン

 

「くっ…!」

何とかクリアウィングを守り抜いたが、状況が悪化していることについては変わりない。

沢渡の隠し玉である《霞の谷の巨神鳥》はカード効果が発動したとき、ミスト・バレーカード1枚を手札に戻すことで、その発動を無効にし、破壊する効果がある。

デッキの主力がペンデュラム召喚に特化した魔界劇団であれば、おそらくミスト・バレーカードの数は少ない。

しかし、現在のペンデュラムスケールでは、自身の効果で手札に戻った《霞の谷の巨神鳥》をもう1度フィールドに出すことは簡単だ。

(それに、今の俺の手札は《魔のデッキ破壊ウイルス》に感染している…。だが…!)

ユーゴは深呼吸をし、デッキトップに指をかける。

「(だが、こんな障害を飛び越えねーと、リンに笑われる…!)俺の…ターン!!」

 

ユーゴ

手札0→1

SPC4→6

 

沢渡

SPC4→6

 

「《魔のデッキ破壊ウイルス》の効果だ。さあ、悪役。ドローしたカードを確認させてもらうぜ?」

「俺がドローしたカードはこれだ!」

迷わずユーゴはドローした《SR電々大公》を公開し、すぐに墓地に捨てる。

「そして、俺は《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》を守備表示に変更。ターンエンド…」

 

沢渡

手札0

SPC6

ライフ2750

場 霞の谷の巨神鳥 レベル7 攻撃2700

  伏せカード2

  魔界劇団―デビル・ヒール(青) ペンデュラムスケール1

  魔界劇団―ファンキー・コメディアン(赤) ペンデュラムスケール8

 

ユーゴ

手札0

SPC6

ライフ5250

場 クリアウィング・シンクロ・ドラゴン レベル7 攻撃2500→守備2000

  伏せカード1(《竜の束縛》)

 

魔のデッキ破壊ウイルス 残り1ターン

 

(なんとユーゴ選手、何も行動を起こさずにターン終了!万事休すなのかーーー!?)

「カードに見放されたな。なら、『ドラゴン征伐』クライマックスだ!!俺のターン、ドロー!!」

 

沢渡

手札0→1

SPC6→8

 

ユーゴ

SPC6→8

 

「俺は罠カード《魔界劇団の楽屋入り》を発動!俺のペンデュラムゾーンに魔界劇団が2体存在するとき、デッキから魔界劇団ペンデュラムモンスターをエクストラデッキに送ることができる。俺はデッキから《魔界劇団―ダンディ・バイプレイヤー》と《デビル・ヒール》をエクストラデッキに送る。更に、俺は手札から《魔界劇団―ワイルド・ホープ》を召喚!」

大きなV字の飾りがついたテンガロンハットと青いカウボーイスーツを装備したモンスターがフィールドに現れると、両腕を交差させて守りを固める《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》に、ラッパを模したハンドガンをホルスターから抜いて向ける。

 

魔界劇団―ワイルド・ホープ レベル4 攻撃1600

 

「バトルだ!俺は《巨神鳥》で《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》を攻撃!!」

《霞の谷の巨神鳥》の口から放たれる稲妻がクリアウィングの体を縛り付けていく。

拘束された白き竜はそのままコースを引きずり回され、消滅した。

「てめえ…」

「ドラゴンが倒れたことで、悪しき白の魔術師は無防備となった…。さあ、《ワイルド・ホープ》!!正義の弾丸をお見舞いしてやれ!!」

帽子のつばを左手の指でつまみ、わずかに首を縦に振った《魔界劇団―ワイルド・ホープ》はユーゴに向けて、1発だけ弾丸を放った。

弾丸を受けたユーゴのDホイールが大きくスピンするが、すぐに体勢を立て直した。

「く…!クリアウィングがいなくなったことで、《竜の束縛》は破壊される…」

 

ユーゴ

ライフ5250→3650

SPC8→6

 

(見事正義の劇団が悪のドラゴンを退治!!白き魔術師を追い抜いたーーー!!)

「あいつ、以外とやるじゃないか…」

「沢渡かぁ…思ったよりやるかもな」

「そのままやってやれー、沢渡ー!魔界劇団ーー!!」

デュエル開始前まで馬鹿にしていた観客たちが一斉に沢渡を応援し始める。

それを見た沢渡は得意げに笑みを浮かべる。

「さあ、《竜の束縛》はもうない。ここで魔界劇団の醍醐味、ペンデュラム召喚を見せてやるぜ!!さあ、出て来い。俺様のモンスターたち!!」

沢渡が指をならずと同時に3度目の青い渦の中から待ってましたと言わんばかりにモンスターが飛び出してくる。

「《魔界劇団―サッシー・ルーキー》!《魔界劇団-ダンディ・バイプレイヤー》!そして、我が劇団の主役、《魔界劇団―ビッグ・スター》!!」

まずは左手に小さなラッパを持つ、赤い服と帽子が特徴的な紫の道化師が現れ、ラッパを吹き始める。

すると、残り2体の魔界劇団がその曲に合わせて踊り始めた。

 

魔界劇団―ダンディー・バイプレイヤー レベル2 攻撃700

魔界劇団―サッシー・ルーキー レベル4 攻撃1700

魔界劇団―ビッグ・スター レベル7 攻撃2500

 

「そして、《ダンディー・バイプレイヤー》の効果発動!俺のペンデュラムゾーンに魔界劇団が2体いるとき、このカードをリリースすることで、手札もしくはエクストラデッキからレベルが1か8の魔界劇団を特殊召喚することができる。俺はエクストラデッキからもう1体の《デビル・ヒール》を特殊召喚するぜ!」

《魔界劇団―ダンディー・バイプレイヤー》が帽子を投げ、ラッパを吹き始める。

ラッパから生まれる音符が帽子の中に吸い込まれていくと、それがだんだん巨大化する。

そして、その中から《魔界劇団―デビル・ヒール》が飛び出してくる。

 

魔界劇団―デビル・ヒール レベル8 攻撃3000

 

「俺はこれでターンエンド。次のターンでお前は終わりだぁ!!」

 

沢渡

手札0

SPC8

ライフ2750

場 霞の谷の巨神鳥 レベル7 攻撃2700

  魔界劇団―ワイルド・ホープ レベル4 攻撃1600

  魔界劇団―サッシー・ルーキー レベル4 攻撃1700

  魔界劇団―ビッグ・スター レベル7 攻撃2500

  魔界劇団―デビル・ヒール レベル8 攻撃3000

  伏せカード1

  魔界劇団―デビル・ヒール(青) ペンデュラムスケール1

  魔界劇団―ファンキー・コメディアン(赤) ペンデュラムスケール8

 

ユーゴ

手札0

SPC6

ライフ5250

場 なし

 

魔のデッキ破壊ウイルス 残り1ターン

 

「く…!俺のターン!!」

 

ユーゴ

手札0→1

SPC6→8

 

沢渡

SPC8→10

 

「さあ、《魔のデッキ破壊ウイルス》の効果で、ドローしたカードを確認させてもらうぜ?」

ユーゴが公開したカードは《Sp-ファイティング・ドロー》。

自分フィールド上にカードがなく、手札がこのカードのみのとき、スピードカウンターをすべて取り除くことで、相手が前のターンに特殊召喚したモンスターの数だけデッキからカードをドローするカード。

だが、《魔のデッキ破壊ウイルス》がある限り、攻撃力1500以下のSR達は力を発揮できない。

そして、エースである《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》は墓地にいる。

(あとは…!!)

ユーゴはDホイールのアクセルをふかし、スピードを上げる。

彼が欲しいのはアクションカードだ。

「悪役らしく、最後の悪あがきを見せてくれるのか?」

「悪あがきじゃねえ!ここからが本番だぜ!!」

そういいながら、ユーゴはアクションカードを手にする。

そして、そのカードを見て、目を輝かせる。

「俺はアクション魔法《ワクチン》を発動!このターン、俺はウイルスカードの効果を受けねえ!そして、このカードの発動に対して、相手はカード効果を発動できない!」

「何!?」

ユーゴのデッキを縛るウイルスがナース服の天使が振りまく光によって浄化されていく。

 

ユーゴ

SPC8→9

 

ワクチン

アクション魔法カード

このカードの発動に対して、相手は魔法・罠・モンスター効果を発動できない。

(1):このカードを発動したターン終了時まで、自分は「ウイルス」カードの効果を受けない。

 

「そして、《スピード・ワールド・A》の効果を発動!俺のスピードカウンターを4つ取り除き、手札のSp1枚につき、400のダメージを与える!!」

ユーゴは先ほどドローしたSpを公開し、そのカードから沢渡に向けて緑色の光線が発射される。

「うわああ!!」

 

沢渡

ライフ2750→2350

 

ユーゴ

SPC9→5

 

「もう1発だぁ!!」

更にユーゴはスピードカウンター4つを代償に、光線を発射する。

「ちっくしょう!!だが、これでお前のスピードカウンターはたったの1だ!!」

 

沢渡

ライフ2350→1950

 

ユーゴ

SPC5→1

 

「そして、俺は手札から《Sp-ファイティング・ドロー》を発動!俺のィールド上にカードがなく、手札がこれだけのとき、スピードカウンターをすべて取り除くことで、相手が前のターンに特殊召喚したモンスターの数だけ、デッキからカードをドローする。よって、俺はデッキからカードを4枚ドローする!!」

 

Sp-ファイティング・ドロー

「Sp-ファイティング・ドロー」は1ターンに1度しか発動できず、このカードの発動に対して、相手は魔法・罠・モンスター効果を発動できない。

(1):自分フィールド上にカードがなく、手札がこのカードだけのとき、自分のスピードカウンターをすべて取り除くことで発動できる。相手が前のターンに特殊召喚したモンスターの数だけ、デッキからカードをドローする。

 

ユーゴのDホイールのスピードが一気に最低値まで下がっていく。

そして、デッキに指をかける。

(頼むぜ…俺のデッキ!俺にこの困難を切り抜けるカードを…!!)

ドローしようとした瞬間、急に周囲の光景が白く染まり、時間が止まる。

「ん…?おい、一体どうなってんだ??」

自分のDホイールも動かなくなり、どうしたのだろうと思って降りようとするが、なぜか下半身が動かない。

動くのは腕だけだ。

そして、自身の右側にはなぜか鏡がある。

「鏡…?」

ドローしたカードをホルダーに固定し、その鏡を見る。

そこには遊矢の姿が映っていた。

「遊矢…??」

見た瞬間、遊矢が右手をユーゴに向けて伸ばしていく。

そして、ユーゴもなぜか右手が勝手に鏡へと延びていく。

互いの右手が鏡越しに重なったとき、ユーゴが大きく目を開く。

「遊矢…おい、左腕は…左腕はどうしたんだ!?!?」

重なって数秒経つと、その鏡が砕け散る。

しかし、そこに映っていた遊矢の姿はユーゴの脳裏にしっかり焼き付いていた。

あそこに映っていた遊矢にはひじから下の腕がなかったのだ。

 

「ハアハアハア…!!」

滝のように体から汗が流れるような感覚を感じていると、周囲の景色が元に戻り、時間が動き出した。

(い、今のは…??)

(どうやら、僕の兄弟が会いに来てくれたみたいですね)

「兄弟…?それって、前に言っていたドラゴンのことか?」

(ええ…。ですが、ユーゴ…今は)

「ああ…。わかってる。まずはこのデュエルに勝利しねーとな!!って…!?」

デュエルに集中するため、自分の墓地を確認し、再び衝撃を受ける。

「おい…どうなってんだ!?カードが…」

(おそらく、兄弟と私が共鳴した影響でしょう。私たちの力…無駄にしないでくださいね)

「ちっ…あとでどうしてこうなったか、詳しく聞かせろよ!!このカードは俺のフィールド上にモンスターが存在しないとき、手札から特殊召喚できる!俺は手札から《SRベイゴマックス》を特殊召喚!」

 

SRベイゴマックス レベル3 攻撃1200

 

「こいつの召喚・特殊召喚に成功したとき、俺はデッキから《ベイゴマックス》以外のスピードロイド1体を手札に加えることができる。俺はデッキから《SR三つ目のダイス》を手札に加える!更に、俺は手札から《エクスプレスロイド》を召喚!」

 

エクスプレスロイド レベル4 攻撃400

 

「こいつの召喚・反転召喚・特殊召喚に成功したとき、俺は墓地のロイドモンスター2体を手札に加えることができる。俺は墓地から《SRパッシングライダー》と《ダブルヨーヨー》を手札に加える!更に、墓地の《SR電々大公》の効果発動!こいつを墓地から除外することで、手札・墓地からスピードロイドチューナー1体を特殊召喚できる。俺は墓地から《SR赤目のダイス》を特殊召喚!こいつの効果で、《ベイゴマックス》のレベルを3から6に変化させる!」

 

SR赤目のダイス レベル1 攻撃100(チューナー)

SRベイゴマックス レベル3→6 攻撃1200

 

「またレベル7のシンクロモンスターを!?」

「俺はレベル6の《ベイゴマックス》にレベル1の《赤目のダイス》をチューニング!!」

2体のモンスターがレベル7のシンクロモンスターを生み出す準備を整え、ユーゴは脳裏にこれから召喚するシンクロモンスターをイメージする。

「(こいつは…俺の相棒のもう1つの姿。もう1つの力!!)輝く翼、神速となり天地を照らせ!シンクロ召喚!現れろ、《クリアウィング・ファスト・ドラゴン》!!」

一瞬だけ、フィールドに《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》が現れるが、翼の色が登場と同時に緑から蒼へと変わっていく。

そして、胸部と頭部には緑色の水晶でできたプレートアーマーとヘッドギアが装着される。

 

クリアウィング・ファスト・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

(なんとユーゴ選手!!エースである《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》を新たな姿でよみがえらせたーーー!!)

「《ファスト・ドラゴン》の効果発動!1ターンに1度、エクストラデッキから特殊召喚された相手モンスター1体をターン終了時まで無力化する!!」

「せっかくのシンクロモンスターだが、無駄だぜ!!《霞の谷の巨神鳥》の効果発動!こいつを手札に戻し、その効果の発動を無効にして破壊するぜ!!」

《霞の谷の巨神鳥》がその姿を稲妻に変え、《クリアウィング・ファスト・ドラゴン》に突撃する。

2体のモンスターが接触した瞬間、大爆発が起こり、神速の竜は姿を消す。

本当なら、《SRベイゴマックス》か《エクスプレスロイド》の効果に対して、このカードを使うべきだが、相手が呼び出す新しいシンクロモンスターに対して発動することで、エンタメ性を高めようと彼は考えていた。

しかし、ユーゴが生み出した新しい力はそんなことを許すような生易しいものではない。

「そして、俺はスケール3の《SRパッシングライダー》とスケール8の《SRドミノバタフライ》でペンデュラムスケールをセッティング!!」

「何!?お前もペンデュラム召喚だと!?」

ユーゴの左側の《SRパッシングライダー》が、右側に白と黒のサイコロを模した羽をもつ蝶型ロボットが現れ、緑色の光のは下を生み出し、上空には遊矢と同じペンデュラムのエフェクトが発生する。

「神速の翼で過去と未来を貫け!ペンデュラム召喚!!《クリアウィング・ファスト・ドラゴン》!!」

ペンデュラムが砕け、そこから再び《クリアウィング・ファスト・ドラゴン》が姿を見せる。

登場と同時に、すさまじいスピードでコース上を飛ぶその竜に観客は圧倒される。

 

クリアウィング・ファスト・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

「まさか…《クリアウィング・ファスト・ドラゴン》は…!!」

「ああ、ペンデュラムシンクロモンスター…。俺も初めてで、驚いてる…。そして、俺は手札の《クリアウィング・ダミー》の効果を発動!このカードを手札から墓地へ送ることで、俺のフィールド上に存在するクリアウィングシンクロモンスターの効果を発動する。俺は《クリアウィング・ファスト・ドラゴン》の効果を発動!《ビッグ・スター》を無力化しろ!!」

《クリアウィング・ファスト・ドラゴン》の口から放たれる青い炎が《魔界劇団-ビッグ・スター》の体を焼き尽くしていく。

体を焼かれた劇団の主役はその場に座り込み、攻撃力と効果をすべて失う。

 

魔界劇団-ビッグ・スター レベル7 攻撃2500→0

 

クリアウィング・ダミー

レベル1 攻撃250 守備200 効果 風属性 機械族

「クリアウィング・ダミー」の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に存在するこのカードが戦闘で破壊され墓地へ送られたとき、自分の墓地に存在する「クリアウィング」Sモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターをエクストラデッキに戻し、自分はデッキからカードを1枚ドローする。

(2):自分メインフェイズ時に、手札に存在するこのカードを墓地へ送り、自分フィールド上に存在する「クリアウィング」Sモンスター1体を対象に発動できる。そのカードの効果を発動する。

 

「く…ちっくしょおおおおおお!!!」

「《クリアウィング・ファスト・ドラゴン》で《ビッグ・スター》を攻撃!!

《クリアウィング・ファスト・ドラゴン》が更に速度を上げていき、そのまま《魔界劇団―ビッグ・スター》を貫いた。

《魔界劇団-ビッグ・スター》は粉々に砕け散り、沢渡にも衝撃が襲う。

「ああああああああああ!!!!」

 

沢渡

ライフ1950→0

 

融合次元、ファウスト島の研究施設。

左腕に何かを注射されていた素良だが、ドクターNによって、それをはずされる。

「ふぅー、僕、注射苦手なんだけど…」

「今注射したナノマシンが君の体内にあるものをごまかしている。だが…」

「…わかってる。それで、これがナノマシンの補充だね」

前もって受け取っていた使い捨て注射器を服のポケットから出す。

衝撃から守るために、特殊なビニールによって包まれていて、空気圧で体内に入れるタイプのものなので針はない。

「そうだ。デュエルディスクが体内の機能しているナノマシンを計測してくれている。それがレッドゾーンに近づいたら、可能な限り直ぐに注射するんだ。このレベルのナノマシンなら、レオコーポレーションでも作ることができそうだが、仮にここに戻らず、ナノマシン注射の補給がなければ…」

「…。もって、あと1年ってところだね」

自嘲気味に笑った素良は懐から愛用のキャンディーを出し、なめ始める。

「君の体内にあるそれはもはや外科手術では取り出せないからね。さあ…転送装置に準備はできた」

「…。あんたは一緒に行かないの?」

「私には…まぁ、いろいろとアカデミア製のナノマシンが入っていてね。転送しようとしたら、お陀仏だ」

素良はデュエルディスクを取り付けると、部屋の中にある扉状の転送装置の前に立つ。

「あのさ、一つだけいいかな?」

「どうした…?」

「なんで僕にこれだけ力を貸してくれたの?アカデミアを裏切る可能性がある人間として、ここに幽閉されたあんたが…」

「…。それを知りたければ、生きてここに戻ってくるのだな」

そういうと、転送装置を起動させ、素良の姿がそれが生み出す渦の中に消えていった。



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第69話 灰色の覚悟

「《クリアウィング・ファスト・ドラゴン》…?」

沢渡とユーゴのデュエルを見ていた翔太がコーラが入ったコップを机の上に置き、ユーゴが召喚したあの白い竜のことを考える。

スタンダード次元でユーゴとデュエルをした際には、そのようなカードを持っているようには見えなかった。

しかも、ペンデュラムシンクロモンスターだということも想定外だ。

「遊矢と顔立ちが似ていることが関係しているのか…?」

敗北した沢渡が観客の声援を受ける中、緑色の作業服を着た大男2人に両腕を拘束され、そのまま連行されていく。

いかに良いデュエルをしたとしても、いかにその過程で努力してきたとしても、勝利と敗北しかないこの次元のデュエルでは意味がない。

敗北したら、地下送りとなり、何らかの機会を得ない限りは地下で死ぬことになる。

「沢渡…いや、サワガニ…生きてろよ」

なぜか間違った呼び方に訂正した翔太はベッドで横になりながら、次のデュエルを見ることにした。

だが、そのデュエルは翔太を含め、観戦者たちを困惑させた。

 

「おい…いったい何があったんだ??」

「さあ?煙が出てきて、そのあとはすぐに…」

そのデュエルを見ていた観客たちは自分たちが今見ているこの光景が現実のものとは思えずにいる。

勝者として、スタートラインに戻ってきた緑と黒を基調とし、両肩の部分に赤いラインのあるライディングスーツを着た、身長が2メートル以上もある白い肌の大男だ。

ヘルメットのバイザーのせいで鼻から上は見えないものの、あごのあたりに見えるマーカーから、何らかの理由で収容所に送られた男の1人だと思われる。

スタジアムに設置されているオーロラビジョンには彼のライフが50となっている。

一方、敗北したのはシンジとクロウの仲間であるデイモンで、路上でうつぶせになって倒れている。

また、彼が乗っていたDホイールは粉々に砕け散っていた。

MCであるメリッサ自身も、自分が見ている光景が現実のものとは思えず、沈黙していたが、本業のことを思い出すと、すぐにしゃべり始める。

「しょ、しょ、勝者はデュエリストクラッシャー、セルゲイ・ヴォロコフ…」

勝者の名前をメリッサが告げてから数秒後、熱狂的な歓声が上がる。

「うおおーーー!!すげえぞ、セルゲイ!!」

「かっこいい!!」

「次も徹底的にやってくれよーー!!」

大男たちが気絶しているデイモンをタンカに乗せて運んでいるのをよそに、観客はセルゲイの殺人的な破壊に熱狂した。

「デュエリストクラッシャー、セルゲイ・ヴォロコフ…」

観客席と出入り口をつなぐゲートの近くで、ヒイロはセルゲイをじっと見ている。

右手にはスマホが握られていて、そこにはセルゲイに関する記事が表示されている。

セルゲイはシンクロ次元の犯罪史に名を残すほどの犯罪者で、プロアマ問わず、相手を再起不能になるまで徹底的に叩き潰す非道さから、デュエリストクラッシャーという異名を得た。

そして、こうして叩き潰したデュエリストの中には死亡した人もいるという。

最終的に、20名のデュエルチェイサーが総出で彼を取り押さえたものの、セルゲイの激しい抵抗により10名が重傷を負い、3名が殉職。

それでも暴れたりないのか、収容所でも暴れまくり、30名の囚人を再起不能にしたために、更生の余地なしと判断され、地下の強制労働施設に送られた。

そこでも暴れまくったことから死刑となり、それが執行されたという記事を最後に、セルゲイ・ヴォロコフの名前がマスコミで出てくることはなかった。

そんな彼が今、こうして再び表舞台に姿を見せて、デュエルをした。

これは治安維持局もしくは評議会が関与していることが考えられる。

「奴がどちらの回し者か…見極める必要があるかもな…」

 

(さあ、続いてのデュエルがフレンドシップカップ第1回戦の最終戦となります!!その対戦カードは…)

タンカで搬送されたデイモンの安否を知らせることなく、次の試合の開始が宣言される。

観客たちも早く次のデュエルが見たいとうずうずしていて、だれも彼を気遣わない。

(あいつら、オベリスク・フォースにカード化されりゃあいいのに…)

ハンバーガーを食べながら、観客たちに対して悪態をつく翔太。

テーブルにはハンバーガーやフライドポテト、サラダとコーラが置かれており、これらは翔太がホテルのボーイに注文したものだ。

(黒咲隼VSデニス・マックフィールドーー!!)

「ランサーズ同士か…。ここまでの組み合わせから見ると、異質だな」

ここまでのデュエルはシンクロ次元出身者同士の組み合わせもあったものの、基本的にはランサーズVSシンクロ次元出身者という組み合わせがスタンダードだ。

人数を考えても、この1回戦はすべての試合をスタンダードな組み合わせで済ますこともできるはず。

そんなことを翔太が考えている間に、黒咲とデニスが入場し、スタートラインに立つ。

「黒咲ー!勝てよーー!!」

「もう1度、あのエクシーズ召喚を見せてくれーー!!」

「デニス様ー!!」

コモンズやトップスの底辺に位置する人々が黒咲とデニスに声援を送る。

実を言うと、彼ら(といっても、デニスはそれ以前に権現坂と共にヒーローショーで旅費を稼ぎつつ、情報収集をしていて、それを最初から徹底的にやっていたのは黒咲1人だけだが)はシンクロ次元に到着した後、地下デュエル場で強力なデュエリストを探していた。

また、地下デュエル場ではある程度連勝を重ねると、ジャックとデュエルができる可能性のあるフレンドシップカップへの参加権を得ることができる。

実を言うと、フレンドシップカップに参加するためにはかなり厳重な書類選考が行われており、本来はコモンズのデュエリストはほとんど参加できず、この書類選考で切られる。

今回、クロウやシンジといったコモンズのデュエリストが参加できたのは、一重に評議会の運営側への口添えによるものが大きい。

その地下デュエル場で、黒咲とデニスがデュエルをしている最中にセキュリティが突入し、彼らは収容所送りとなった。

なお、地下デュエルでコモンズに紛れて賭けに精を出していたトップスはどうなったかは言うまでもないだろう。

「まさか、こんな形でこの前の続きができるなんて。でも、デュエルはデュエル。本気でやらせてもらうよ。黒咲」

「ふん」

デニスの言葉を無視した黒咲はマシンブルーファルコンの直前チェックを行う。

(召喚エネルギー貯蔵量良し、CPU及びエンジン出力制御良し、《スピード・ワールド・A》インストール済み)

「それでは始めましょう!フィールド魔法《スピード・ワールド・A》!!」

2人のDホイールに内蔵されている《スピード・ワールド・A》が起動し、目前には信号が出現する。

「ライディングデュエル…アクセラレーション!!」

信号が赤から青に変わり、2人が一斉に発進する。

黒咲の注文により、リミッターが引き上げられたマシンブルーファルコンが一気にデニスのDホイールを突き放していく。

「おおー、さすがレオコーポレーション製の黒咲専用のDホイール…。これは追いつけないな」

困った顔をしながら笑っている間に、黒咲が第1コーナーを取る。

 

黒咲

手札5

ライフ4000

 

デニス

手札5

ライフ4000

 

「俺の先攻。俺は手札からスケール1の《RR-ライトニング・イーグル》とスケール5の《RR-ボミング・レイニアス》でペンデュラムスケールをセッティング!」

(なんと黒咲選手、いきなりペンデュラム召喚の準備を整えたー!)

黒咲の左に両翼部分に稲妻を模したイラストが描かれている魚雷を2つずつ取り付けた鷹型の機械と《RR-ライトニング・イーグル》とは異なり、両翼に爆弾を取り付けたモズ型の機械が現れ、青い光の柱を生み出す。

「戦場を舞い、戦火に身を焦がす鳥たちよ、揺れ動く戦況を空より見極めよ。ペンデュラム召喚!!現れろ、俺のモンスター!!《聖鳥クレイン》!《RR-ミミクリー・レイニアス》!!」

ペンデュラム召喚のエネルギーが生み出す青い渦の中から《RR-ミミクリー・レイニアス》と大きな鶴を模したモンスターが出現する。

 

聖鳥クレイン レベル4 攻撃1600

RR-ミミクリー・レイニアス レベル4 攻撃1100

 

「《聖鳥クレイン》の効果発動。このカードの特殊召喚に成功したとき、デッキからカードを1枚ドローする。そして俺はレベル4の《聖鳥クレイン》と《ミミクリー・レイニアス》でオーバーレイ!!」

コース上にあらわれた黒い渦の中に2匹の鳥が飛び込んでいく。

「冥府の猛禽よ、闇の眼力で真実をあばき、鋭き鉤爪で栄光をもぎ取れ!エクシーズ召喚!飛来せよ!ランク4!《RR-フォース・ストリクス》!」

額にRRのしるしがついている、青い耳のあるフクロウを模した機械が黒い渦の中から飛び出してくる。

 

RR-フォース・ストリクス ランク4 守備2000

 

「さらに、《ライトニング・イーグル》のペンデュラム効果発動。俺がRRのエクシーズ召喚に成功したとき、このカードがペンデュラムゾーンに表側表示で存在する限り、1度だけ墓地からRUM1枚を手札に加えることができる。俺がデッキから手札に加えるのは《Sp-スキップ・ランクアップ》。このカードはルール上、名前を《RUM-スキップ・フォース》としても扱う」

《RR-ライトニング・イーグル》が黒咲に向けて魚雷を発射する。

その魚雷を《RR-フォース・ストリクス》が口から音波を出して破壊すると、上空に《Sp-スキップ・ランクアップ》のカードが出現し、黒咲はそのカードを見ないまま手にして手札に加える。

 

RR-ライトニング・イーグル

レベル3 攻撃1400 守備1000 闇属性 鳥獣族

【Pスケール:青1/赤1】

「RR-ライトニング・イーグル」のP効果はこのカードがPゾーンに存在する限り、1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に「RR」XモンスターがX召喚されたターンのメインフェイズ時に発動できる。デッキから「RUM」魔法カード1枚を手札に加える。

【モンスター効果】

「RR-ライトニング・イーグル」の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):相手モンスターの攻撃によってこのカードが戦闘を行い、自分が戦闘ダメージを受けたときに発動できる。自分はその時受けたダメージの数値以下の攻撃力を持つ「RR」モンスター1体をデッキから手札に加える。

 

「更に、《フォース・ストリクス》の効果発動。1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、デッキから闇属性・鳥獣族・レベル4モンスター1体を手札に加える。俺がデッキから《バニシング・レイニアス》を手札に加える」

《RR-フォース・ストリクス》がオーバーレイユニットを吸収すると同時に上空でさえずる。

そして、デッキから《RR-フォース・ストリクス》が自動排出され、黒咲はそれをホルダーに取り付ける。

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・RR-ミミクリー・レイニアス

 

「そして、俺はさらに《RR-バニシング・レイニアス》を召喚!」

 

RR-バニシング・レイニアス レベル4 攻撃1300

 

「このカードの召喚・特殊召喚に成功したターンのメインフェイズ時に1度、手札からレベル4以下のRR1体を特殊召喚できる。俺はさらに手札から《RR-インペイル・レイニアス》を特殊召喚!」

胴体の下部に2つの蟹のはさみのような武器が取り付けられた、赤いモズ型の機械が《RR-バニシング・レイニアス》の鳴き声に応じて飛び出す。

 

RR-インペイル・レイニアス レベル4 守備1000

 

「このカードが召喚・特殊召喚に成功したターンの俺のメインフェイズに1度だけ、フィールド上の攻撃表示モンスター1体を守備表示に変更させることができる。俺は《バニシング・レイニアス》を守備表示に変更する!」

 

RR-バニシング・レイニアス レベル4 攻撃1300→守備1600

 

「そして俺はレベル4の《インペイル・レイニアス》と《バニシング・レイニアス》でオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろ、《RR-フォース・ストリクス》!」

 

RR-フォース・ストリクス レベル4 守備2000

 

「もう1体の《フォース・ストリクス》の効果発動。オーバーレイユニットを1つ取り除き、デッキから《RR-ブースター・レイニアス》を手札に加える。そして、墓地の《ミミクリー・レイニアス》の効果発動。このカードが墓地へ送られたターンのメインフェイズ時、墓地のこのカードを除外することで、デッキからRRカード1枚を手札に加える。俺は墓地から《RR-レディネス》を手札に加える。俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・RR-インペイル・レイニアス

 

黒咲

手札5→2(《RR-ブースター・レイニアス》《Sp-スキップ・ランクアップ》

ライフ4000

SPC0

場 RRフォース・ストリクス(オーバーレイユニット1)×2 守備2000

  伏せカード2

  RR-ライトニング・イーグル(青) ペンデュラムスケール1

  RR-ボミング・レイニアス(赤) ペンデュラムスケール5

 

デニス

手札5

ライフ4000

APC0

場 なし

 

(黒咲選手、1ターン目からペンデュラム召喚のあとはエクシーズ召喚を2連発!!さあ、対するデニス選手はどんな手で来るのかーーー!?)

「まさか、ペンデュラム召喚を君が使ってくるなんて…。予想外だったよ。剣崎さんの頼みなら…ってことかい?」

「ふん。貴様には手加減する必要がない。そう思ったから使ったまでだ。さあ、早くデュエルを進めろ!!そして、貴様の正体を暴く!」

「正体を暴くだって?なーに言ってんのかなー?僕のターン、ドロー」

ドローしたカードを見たデニスはそのカードを凝視する。

 

デニス

手札5→6

SPC0→2

 

黒咲

SPC0→2

 

(うーん、まだこのカード使えないんだよねー)

ドローしたカードをホルダーに取り付け、デニスはバイクに乗ったまま直立する。

「それでは、観客の皆様にお見せしましょう!デニス・マックフィールドの華麗なるデュエルを!!まず私はスケール3の《Emミラー・コンダクター》とスケール7の《魔装戦士ドラゴノックス》でペンデュラムスケールをセッティング!」

デニスの両サイドにも、黒咲と同じように2本の青い光の柱が生まれる。

その柱の中には笑い顔が移る青い手鏡にマントと両腕がついたようなモンスターと右側だけ翼がついている、黒い竜を模した鎧を着た戦士がいる。

「ペンデュラム召喚!さあ、現れろ、僕の奇術師たち!!《Emトリック・クラウン》!《Emハットトリッカー》!」

デニスの手元にデフォルメされた五芒星がいくつも描かれている紫色の帽子が現れる。

彼がそれを上空に向けて投げると、帽子の中から小さなボールが飛び出してきて、その次にクエスチョンマークを模した杖を持った、紫色のマントのピエロが飛び出してきて、ボールの上で片手のまま逆立ちを始める。

そして、帽子からは真っ白な手袋とオレンジ色のメガネ、そして緑色のマントが出てきて、帽子のそばで浮遊した。

 

Emハットトリッカー レベル4 攻撃1100

Emトリック・クラウン レベル4 攻撃1600

 

「これでおぜん立ては終了。次はショーの主役を召還だ!僕はレベル4の《ハットトリッカー》と《トリック・クラウン》でオーバーレイ!」

上空に黒い渦が生まれ、その中に2体の奇術師が飛び込んでいく。

そして、そこから紫色の空中ブランコの持ち手が下りてくる。

「ショーマストゴーオン!!天空の奇術師よ 華やかに舞台を駆け巡れ!エクシーズ召喚!現れろ!ランク4!《Emトラピーズ・マジシャン》!」

デニスの口上と同時に、白いスーツと紫のマント、デフォルメされた五芒星がいくつもついている白いとんがり帽子を身に着けた道化師が持ちてを持ち、それから発せられる2本の光の縄を利用して空中ブランコを披露する。

「おおお!!」

「まさかリアルソリッドビジョンでこんなのが見れるなんてなぁ」

「榊遊矢のもいいが、これもなかなか…」

 

Emトラピーズ・マジシャン ランク4 攻撃2500

 

「さあ、《トラピーズ・マジシャン》!これから一緒に盛り上げていこう!!」

「悪いが、そんなことに付き合う気はない!永続罠《RR-ターゲット・フラッグ》を発動!」

発動と同時に、《Emトラピーズ・マジシャン》が顔につけている紫色の仮面の左目部分にRRの紋章が刻まれる。

「…なんのつもりだい?」

「このカードは相手フィールド上のモンスター1体を対象に発動でき、俺はデッキからカードを1枚ドローして、それをお互いに確認する」

デニスの質問を無視するかのように、発動したカードについて説明した黒咲はカードをドローする。

「俺がドローしたカードは《RR-フラッシュ・ヴァルチャー》。そして、対象となったモンスターがフィールドから離れたとき、《RR-ターゲット・フラッグ》は破壊され、俺は貴様の手札を確認する。確認したカードの中に、俺がドローしたカードと同じ種類のものがある場合、それらをすべて破壊し、墓地へ送る!」

 

RR-ターゲット・フラッグ(アニメオリカ)

永続罠カード

(1):相手フィールドのモンスター1体を対象として発動する。自分はデッキから1枚ドローし、お互いに確認する。その対象のモンスターがフィールドを離れた時、このカードを破壊し、相手の手札を確認する。確認したカードの中にこのカードの効果でドローしたカードと同じ種類のカード(モンスター・魔法・罠)がある場合、 その全てを破壊し墓地へ送る。

 

「ふーん、そんなに僕のカードが見たいの?そんな回りくどいカードを使ってまでさー。見たかったら、僕に直接言えばいいのに…」

「そのようなことをすれば、俺が見たいカードを見せようとしないはずだ」

「君が見たいようなカード…僕のデッキにはないよ」

「どうだろうな?だったら、今すぐ俺に見せてそれを証明するか?」

(う、うわあ…なんでしょう?すっごくピリピリしています…)

黒咲の挑発を受け、デニスは表情に見せてはいないものの、若干声のトーンを落として黒咲に言っている。

見えない稲妻が互いにぶつかり合っているように。

「ん?どうしたのかな?」

《Emトラピーズ・マジシャン》に耳打ちされたデニスはじっとコースの左端に目を向ける。

そして、そこに浮かんでいるアクションカードを手にする。

「おおー。《トラピーズ・マジシャン》も楽しみたくて仕方がないみたいだ…」

 

デニス

SPC2→3

 

(スピードカウンターが増えた。アクション魔法か!)

「そして、僕は《Emダブル・ジャグラー》を召喚!」

黄色い五芒星が描かれた、緑色のゴムボールを持った、青いシルクハットとスーツを着た奇術師が、《Emトラピーズ・マジシャン》が上空に投げた持ち手を足場にして上空に現れる。

 

Emダブル・ジャグラー レベル4 攻撃1200

 

「《ダブル・ジャグラー》の効果発動。このカードをフィールドから除外することで、僕のフィールド上に存在する魔法使い族エクシーズモンスター1体に力を与える。力を得たエクシーズモンスターはフィールド上に存在する限り、1度のバトルフェイズ中に2回攻撃ができる!さらに、この効果の対象になったのがEmだった場合、僕はデッキからカードを1枚ドローすることができる」

《Emダブル・ジャグラー》がボールを投げてフィールドから姿を消す。

2つのボールは《Emトラピーズ・マジシャン》に吸収され、スーツの色が白から紫に代わっていく。

 

Emダブル・ジャグラー

レベル4 攻撃1200 守備1000 闇属性 魔法使い族

【Pスケール:青6:赤6】

(1):1ターンに1度、自分にダメージを与える魔法・罠・モンスターの効果が発動した時、自分フィールド上に存在する魔法使い族Xモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターはこのターン、一度のバトルフェイズ中に2回攻撃することができる。

【モンスター効果】

このカードは手札からP召喚できない。

(1):自分のメインフェイズ1にこのカードをゲームから除外し、自分フィールド上に存在する魔法使い族Xモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターはフィールド上に表側表示で存在する限り、1度のバトルフェイズ中に2回攻撃することができる。この効果を発動してから2回の目の自分のターンのスタンバイフェイズ時、この効果を発動するために除外したこのカードを自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する。

(2):(1)の効果を発動したとき、対象となったモンスターが「Em」モンスターだった場合、自分はデッキからカードを1枚ドローすることができる。

 

「さらに僕は手札から《Sp-スピンアタック》を発動。僕のスピードカウンターが2つ以上あるとき、僕のフィールド上に存在するモンスター1体に貫通効果を与える。当然、その効果を得るのは《トラピーズ・マジシャン》!」

再び空中ブランコを始めた《Emトラピーズ・マジシャン》の持ち手の両端に回転するボールが出現する。

「さあ、残念だけど梟さんにはご退場願おうかな?《トラピーズ・マジシャン》で《フォース・ストリクス》を攻撃!マジックボール・ショット!!」

《Emトラピーズ・マジシャン》が持ち手についているボールを一つはずし、持ち手をキューのように利用してボールを打つ。

縦に回転を始めたそのボールはスピードを上げながら《RR-フォース・ストリクス》に向けて突っ込んでいく。

「俺は手札の《RR-ブースター・ストリクス》の効果を発動!RRが攻撃対象となったとき、手札のこのカードを除外することで、攻撃モンスターを破壊することができる!」

《RR-フォース・ストリクス》のブースターが分離し、質量弾となって着地した《Emトラピーズ・マジシャン》を破壊しようとする。

「そうはさせない!僕はアクション魔法《ミラー・バリア》を発動!これで、《トラピーズ・マジシャン》を効果による破壊から守る!」

「ちっ!」

ブースターが直撃する前に、複数の鏡によって構築されたバリアが《Emトラピーズ・マジシャン》を包み込む。

ブースターとバリアが相殺し、生き残った奇術師は再び空中ブランコをはじめ、その間にボールはブースターを失った《RR-フォース・ストリクス》を貫く。

攻撃を受け、《RR-フォース・ストリクス》が爆発し、爆風が黒咲を襲う。

「ぐううう…!」

 

黒咲

ライフ4000→3500

 

「まだまだだよ、今度はもう1体の《フォース・ストリクス》を攻撃!マジックボール・ショット・セカンド!」

もう1つのボールが発射され、もう1体の《RR-フォース・ストリクス》も破壊されてしまう。

「く…。だが、ダメージは500。スピードカウンターが低下することはない!」

 

黒咲

ライフ3500→3000

 

Sp-スピンアタック

通常魔法カード

(1):自分のスピードカウンターが2つ以上あるとき、自分フィールド上に存在するモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターが守備表示モンスターを攻撃した時にその守備力を攻撃力が越えていれば、その数値だけ相手に戦闘ダメージを与える。

 

ミラー・バリア(アニメオリカ)

アクション魔法カード

(1):フィールド上のモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターはカード効果では破壊されない。

 

「そして、俺は《RR-ボミング・レイニアス》のペンデュラム効果を発動!俺のフィールド上に存在するRRエクシーズモンスターが破壊されたとき、ペンデュラムゾーンに存在するこのカードを俺のフィールド上に特殊召喚する!」

青い光の柱を消した《RR-ボミング・レイニアス》がフィールドに出て、黒咲をかばうように《Emトラピーズ・マジシャン》と対峙する。

 

RR-ボミング・レイニアス レベル4 攻撃1700

 

「ふーん、主の危機に現れるモズ…。健気なモンスターだね。僕はこれでターンエンド。ターン終了と同時に《トラピーズ・マジシャン》に宿っている《スピンアタック》の効果は失われるよ」

 

黒咲

手札2(《RR-フラッシュ・ヴァルチャー》《Sp-スキップ・ランクアップ》

ライフ3000

SPC2

場 RR-ボミング・レイニアス レベル4 攻撃1700

  RR-ターゲット・フラッグ(永続罠)

  RR-ライトニング・イーグル(青) ペンデュラムスケール1

  伏せカード1

 

デニス

手札6→1

ライフ4000

SPC3

場 Emトラピーズ・マジシャン(オーバーレイユニット2) ランク4 攻撃2500

  Emミラー・コンダクター(青) ペンデュラムスケール3

  魔装戦士ドラゴノックス(赤) ペンデュラムスケール7

 

(デニス選手の《トラピーズ・マジシャン》の華麗な攻撃によって、黒咲選手のモンスターは全滅!!しかし、黒咲選手も負けじとペンデュラム効果で《ボミング・レイニアス》を特殊召喚!!ここからどう反撃していくのかーーー!?)

(あいつ…なんで《RR-レディネス》を発動しなかった…?)

攻撃し、2体の《RR-フォース・ストリクス》を倒しはしたものの、黒咲の行動に違和感を感じる。

せっかくサーチして伏せた《RR-レディネス》をなぜ発動しないのか。

《RR-レディネス》はターン終了時までRRを先頭による破壊から守る効果がある。

それを使えば、その2体は破壊されることなく、次のターンもサーチ効果が使える。

そして、そこから次々とエクシーズ召喚を繰り返すことで、自分を倒すことができるかもしれないはず。

(さっきの《ターゲット・フラッグ》といい、回りくどいカードを…。やっぱり、あいつは…)

「俺の…ターン!!」

 

黒咲

手札2→3

SPC2→4

 

デニス

SPC3→5

 

「俺はフィールド上の《ボミング・レイニアス》の効果を発動!俺のフィールド上に存在するモンスターがこのカードのみで、相手フィールド上にモンスターが存在するとき、1ターンに1度、レベル4のRR1体を効果を無効にして特殊召喚する」

《RR-ボミング・レイニアス》が上空から装着されている爆弾を4つ落とす。

4つの爆弾が一斉に爆発し、爆風の中から《RR-バニシング・レイニアス》が飛び出してくる。

 

RR-バニシング・レイニアス レベル4 攻撃1300

 

RR-ボミング・レイニアス

レベル4 攻撃1700 守備1000 闇属性 鳥獣族

【Pスケール:青5/赤5】

「RR-ボミング・レイニアス」のP効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に存在する「RR」Xモンスターが戦闘で破壊され墓地へ送られたときに発動できる。Pゾーンに存在するこのカードを自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する。

【モンスター効果】

(1):1ターンに1度、相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にこのカード以外のモンスターが存在しない場合に発動できる。墓地からレベル4の「RR」モンスター1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。

 

「俺はレベル4の《ボミング・レイニアス》と《バニシング・レイニアス》でオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろ、3体目の《RR-フォース・ストリクス》!!」

 

RR-フォース・ストリクス ランク4 守備2000

 

「えー?またまたフクロウさん?いい加減見飽きたよ。ねー、《トラピーズ・マジシャン》」

まるで自分のモンスターに語り掛けるように、代わり映えのない黒咲のプレイを非難する。

だが、黒咲が意味もなくこういうプレイをするはずがないということも、地下デュエル場で彼とデュエルをしていたデニス自身が理解している。

「《フォース・ストリクス》の効果発動。オーバーレイユニットを1つ取り除き、デッキからもう1枚の《RR-ボミング・レイニアス》を手札に加える。そして、俺は手札から《Sp-スキップ・ランクアップ》を発動!俺のスピードカウンターが4つ以上あるとき、俺のフィールド上に存在するRRを素材に、そのモンスターよりもランクが2つ高いRRにランクアップさせる!俺は《フォース・ストリクス》でオーバーレイ!」

上空にあらわれた黒い渦の中に飛び込む《RR-フォース・ストリクス》。

その中で一度すべての装甲が強制排除され、新しく赤い隼を模した装甲に換装されていく。

また、足りないフレームについてもその場で取り付けられていく。

「誇り高きハヤブサよ。英雄の血潮に染まる翼翻し 革命の道を突き進め!ランクアップ・エクシーズ・チェンジ!現れろ!ランク6!《RR-レヴォリューション・ファルコン》

黒い渦が赤い爆発を起こし、炎の中から《RR-レヴォリューション・ファルコン》が飛翔する。

 

RR-レヴォリューション・ファルコン ランク6 攻撃2000

 

Sp-スキップ・ランクアップ

このカードのカード名はルール上、「RUM-スキップ・フォース」としても扱う。

(1):自分のスピードカウンターが4つ以上あるとき、自分フィールドの「RR」Xモンスター1体を対象とて発動できる。そのモンスターよりランクが2つ高い「RR」モンスター1体を、対象の自分のモンスターの上に重ねてX召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

(2):自分の墓地からこのカードと「RR」モンスター1体を除外し、自分の墓地の「RR」Xモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動できない。

 

「このカードは特殊召喚されたモンスターと戦闘を行うダメージステップ開始時、そのモンスターの攻撃力・守備力を0にする!」

「ホワッツ!?でも、この効果は受けるよね?《トラピーズ・マジシャン》の効果発動!自分か相手のターンのメインフェイズ1に1度、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、モンスター1体にこのターン、2回攻撃する権利を与える。でも…その権利を得たモンスターはバトルフェイズ終了と同時に破壊されてしまうんだ」

「革命の炎が、貴様の化けの皮をはがす!!バトルだ!《レヴォリューション・ファルコン》で《トラピーズ・マジシャン》を攻撃!レヴォリューショナル・エアレイド!!」

デニスの真上を旋回する《RR-レヴォリューション・ファルコン》が《Emトラピーズ・マジシャン》に向けて爆弾を投下していく。

しかし、青い光の柱から《魔装戦士ドラゴノックス》が飛び出し、黄色い粒子となって消滅する。

上空にとどまった粒子に触れた爆弾は次々と爆発し、《Emトラピーズ・マジシャン》はその粒子の傘の下に隠れてほっと一息ついている。

「何!?」

「ざんねーん、これは《ドラゴノックス》のペンデュラム効果さ。相手の攻撃宣言時、このカードを破壊することでバトルフェイズを終了させるのさ。そして、《トラピーズ・マジシャン》の効果で…うん??」

バトルフェイズ終了と同時に、爆発するはずの《RR-レヴォリューション・ファルコン》がいまだに自分の真上で飛び続けていることにデニスと《Emトラピーズ・マジシャン》が首をかしげる。

「まさか…アクションカードを!?」

黒咲のスピードカウンターを確認すると、案の定、1つ増えていた。

 

黒咲

SPC4→5

 

「悪いが俺も発動させてもらった。《ミラーバリア》を。これで《レヴォリューション・ファルコン》が貴様のピエロに破壊されることはない。そして、《レヴォリューション・ファルコン》の効果を発動!1ターンに1度、このカードがRRエクシーズモンスターをオーバーレイユニットとしているとき、相手モンスター1体を破壊し、そのモンスターの攻撃力の半分のダメージを貴様に与える!」

「ぐっ…!!」

「革命の炎に焼かれ、散れ!!」

黄色い粒子が消え、再び爆弾が投下される。

爆弾の雨の中をデニスは必死にDホイールの軌道を変化させ、回避していく。

しかし、そのような行動を何度も繰り返したことで集中力が切れてしまったのか、直撃コースを通ってしまう。

「しま…!?」

しかし、そんな彼を《Emトラピーズ・マジシャン》がかばい、爆弾を受ける。

「《トラピーズ・マジシャン》!!」

爆風の中へ消えていく《Emトラピーズ・マジシャン》に向けて手を伸ばすデニス。

そんな彼に笑みを浮かべた奇術師は最後の力を振り絞り、アクションカードを投げ渡す。

「く…アクション魔法《加速》!!僕が受ける効果ダメージを0にする!《トラピーズ・マジシャン》…ありがとう…」

発動と同時にDホイールのスピードが上がり、《RR-レヴォリューション・ファルコン》の攻撃範囲から無傷で抜け出すことに成功した。

 

デニス

SPC4→5

 

加速(アニメオリカ)

アクション魔法カード

(1):自分にダメージを与える効果が発動した場合に発動できる。 その効果で自分が受けるダメージを0にする。

 

「《トラピーズ・マジシャン》が破壊されたことで、《ターゲット・フラッグ》も破壊される!さあ、見せろ!!貴様の正体を!!」

「…そんなに見たかったのかい?このカードを…」

デニスはにらみつけるように黒咲を見ながら、手札のカードを公開する。

デニスが最初のターンにドローしたカード、《Sp-ディストピア・フュージョン》を。

「やはり…貴様はアカデミアの??」

「…。ああ、そうさ。プロフェッサーの命令で、君たちランサーズの行動を監視し、柊柚子とセレナの拘束を命令されたスパイさ。ばれた以上は仕方がない…。こうなったら、実力行使で君を叩き潰し、2人を連れていく!!《トラピーズ・マジシャン》の効果発動!このカードが破壊されたとき、デッキから新しいEm1体を特殊召喚できる。僕はデッキから《Emディメンション・イーター》を特殊召喚!」

特殊召喚された、両掌と腹部に大きな口がある、黄色いとんがり帽子とピンクの服のピエロが黒咲のフィールドの伏せカードを3枚に切り刻み、1つずつ口に放り込む。

グチャリ、グチャリと咀嚼する音がスタジアムを包んでいく。

 

Emディメンション・イーター レベル4 攻撃1600

 

(うわあ…なんて気持ち悪い音。もしかして…エースが倒されたことで、怒ってるの??)

「このカードがEmの効果で特殊召喚に成功したとき、相手フィールド上の伏せカード1枚を除外できる!これで、《RR-レディネス》は使えない!!」

「ふん。正体を知られたことでやけになったか?エンターテイナーが聞いてあきれる。俺はカードを1枚伏せ、ターンエンドだ」

 

黒咲

手札3(《RR-フラッシュ・ヴァルチャー》《RR-ボミング・レイニアス》)

ライフ3000

SPC5

場 RR-レヴォリューション・ファルコン(オーバーレイユニット2) ランク6 攻撃2000

  RR-ライトニング・イーグル(青) ペンデュラムスケール1

  伏せカード1

 

デニス

手札6→1

ライフ4000

SPC5

場 Emディメンション・イーター レベル4 攻撃1600

  Emミラー・コンダクター(青) ペンデュラムスケール3

 

Emディメンション・イーター

レベル4 攻撃1600 守備200 効果 闇属性 魔法使い族

「Emディメンション・イーター」の(1)(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードの特殊召喚に成功したとき、フィールド上に存在する魔法・罠カード1枚を対象に発動する。そのカードを破壊する。

(2):「Em」カードの効果により、このカードの特殊召喚に成功したとき、相手フィールド上に存在する魔法・罠カード1枚を対象に。(1)の代わりに発動できる。そのカードを除外する。

 

「君には僕の正体をばらしてくれたお礼をしないとね…黒咲。僕のターン、ドロー!!」

 

デニス

手札1→2

SPC5→6

 

黒咲

SPC5→7

 

「僕はフィールド上の《ディメンション・イーター》をリリースし、《Sp-ディストピア・フュージョン》を発動!!僕のスピードカウンターが6つ以上あるとき、エクストラデッキに存在する融合モンスター1体を選び、その融合素材となるモンスターと同じ数だけ、墓地からモンスターを除外する!!僕が墓地から除外するのは《ディメンション・イーター》、《トリック・クラウン》、《ハット・トリッカー》、《トラピーズ・マジシャン》!!」

デニスが選んだ4体のモンスターが上空にあらわれた紫色の渦の中に吸い込まれていく。

「そして、デッキから融合素材となるモンスターを墓地へ送り、融合する!!僕が融合素材にするのは《古代の機械猟犬》、《古代の機械兵士》、《古代の機械巨人》、《古代の機械守護者》!!」

渦がさらに大きくなり、それと共に強風が発生する。

「うわあああ!?」

「なんだ!?何が起こってるんだ!?」

(嘘…。リアルソリッドビジョンって、ここまで実体化しちゃうの…?)

客席から空き缶やカバンなどが飛んでいき、コースの壁にひびが入ったりして、メリッサはこれを現実とは認識できずに呆然とする。

そして、渦の中からゆっくりと6つの《古代の機械猟犬》の頭部を模した腕や膝当て、肩パットを装着した黒い巨人が下りてくる。

「奴は…!?」

そのモンスターの姿を見た黒咲の表情が険しくなる。

そして、そのモンスターを召喚したデニスをにらむ。

もはや彼は仲間ではない、アカデミアに所属する敵だと認識する。

「いにしえの魂受け継ぎし機械仕掛けの猟犬どもよ!その10の首混じり合わせ混沌にして絶大なる力とならん!融合召喚!現れろ!レベル10!《古代の機械混沌巨人》!」

 

古代の機械混沌巨人 レベル10 攻撃4500

 

「黒咲…。見覚えがあるだろう?このモンスターに…」

「ああ。忘れたことはない、俺たちの故郷、ハートランドを…。エクシーズ次元を踏みつぶした、忌むべき巨人だ」

怒りの表情を見せながら、黒咲は思い出す。

故郷を蹂躙する《古代の機械混沌巨人》とその前で何もできなかった無力な自分自身を。

「それにしても、君たち兄弟は本当に僕にとって邪魔な存在だったよ…」

「邪魔…?」

「そうさ。僕がこれからエンターテイナーとして生きていたいと思ったときにあらわれて、そしてその時に限って現れて、僕に諭す。僕はアカデミアの人間なんだってことを…」

まるで恨み言を言うように、低い声で黒咲に言う。

黒崎から見ると、色付きのバイザーがあるためにデニスの表情をうかがうことはできない。

しかし、自分に対して憎しみを秘めているということは分かる。

「デニス・マックフィールド。貴様は妹と…瑠璃と会ったといったな」

「ああ…。僕はアカデミアに命令されて、3年前にエクシーズ次元に潜入した。そして、僕は大道芸をしながら潜伏を続けたんだ」

3年前、生まれて初めて別次元の、アカデミアの外に出たデニスにとって、そこはあまりにも新鮮だった。

デュエルがアカデミアでは戦争の道具なのに対し、ここではデュエルを人々を笑顔にするため、みんなで楽しむためにやっている。

そんな彼らに感銘を受けたデニスは自分なりにエンタメを追及し、大道芸やデュエルでみんなを楽しませた。

兵士としての生しか約束されていなかった彼にとって、それはとても幸福な日々だった。

だが、ある日、いつものように大道芸をしている中、観客の中にいる瑠璃を見つけてしまった。

アカデミアからは瑠璃を見つけた場合は、可能な限り早くそのことをアカデミアに伝えることが命令されている。

「僕は…ハンティングゲームのスタートボタンを押さなければならなかった…」

そして、命令通りにそれを伝えてから1時間程度でアカデミアによる攻撃が始まった。

平和で戦争とは遠い世界に生きてきたエクシーズ次元の人々に抵抗する手立てはなく、数時間でその次元の大部分を占領した。

そして、デニスは廃墟と化したハートランドで瑠璃を改めて見つけ、ユーリに居場所を伝えた。

その結果、瑠璃はアカデミアに連れていかれてしまったのだ。

「そうか…貴様が瑠璃を…」

「驚いたぁ?僕が瑠璃をさらった実行犯の一人だったのさ」

「瑠璃はどこへやった…答えろ…」

ゆっくりと怒りを抑えた黒咲は小さな声でデニスに質問する。

通信機能が起動しているため、ヘルメットについているマイクとスピーカーで声は聞こえるようになっている。

「さあね。それからのことは何も知らないなぁ。っていうかさ、こんなところでお遊びをしてないで、急いで融合次元へ行かないと…」

「ああ…そういうことか。安心した。お前はアカデミアじゃない」

「…はぁ?」

いうことが理解できなかったデニスは困惑する。

しかし、黒咲はデニスのことをお構いなしに言葉をつなげていく。

「そして、お前はエンターテイナーでもない。貴様は…何も貫き通せない、状況に流されることしかできない、ただの半端者だ!!」

「半端者…だと…?」

「貴様の今持つデッキが何よりもその証拠だ!!アカデミアの兵士として、古代の機械を持つくせにエンターテイナーとしての自分を捨てきれずにそのようなチャラチャラしたカードも入れている!!どっちつかずで卑怯な蝙蝠、それが今の貴様だ!!」

黒咲の言葉を聞いたデニスのアクセルを握る手に力が入る。

「僕は…僕は半端者じゃない!!バカにするな、黒咲ぃ!!」

強く歯をかみしめた彼は激高する。

「ここで貴様を倒す!!少なくとも、アカデミアの一兵卒として再起不能となれるだけでもありがたいと思え!!」

「黙れぇぇぇ!!!!」

怒りを爆発させたデニスはこのターンで決着をつけるためのカードを手にする。

「僕は手札から《Sp-ペンデュラム・ネクロ》を発動!スピードカウンターが5つ以上あるとき、僕のペンデュラムゾーンに存在するカード1枚を破壊し、相手の墓地からモンスターを2体まで効果を無効にし、特殊召喚できる!僕が特殊召喚するのは《RR-フォース・ストリクス》2体!!」

《Emミラー・コンダクター》が砕け散り、その破片が集まって丸いゲートができる。

ゲートの中には黒い渦が存在し、その中から《RR-フォース・ストリクス》が2体飛び出してくる。

「表示形式を決めるのは貴様だ!黒咲!!」

「ならば、俺はどちらも守備表示にする」

 

RR-フォース・ストリクス×2 ランク4 守備2000

 

Sp-ペンデュラム・ネクロ

通常魔法カード

「Sp-ペンデュラム・ネクロ」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分のスピードカウンターが5つ以上あるとき、自分Pゾーンに存在するPカード1枚を破壊して発動できる。相手の墓地に存在するモンスターを2体まで相手フィールド上に特殊召喚する(表示形式は相手が決める)。その効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。

 

(デニス選手、相手モンスターを2体も復活させたー!あれ…?でもそれってどんな意味が??)

「古代の機械混沌巨人は相手モンスターすべてに1回ずつ攻撃ができ、守備モンスターを攻撃した際、貫通ダメージを与える。バトルだ!《古代の機械混沌巨人》で《レヴォリューション・ファルコン》を攻撃!クラッシュ・オブ・ダークネス!!」

両手の《古代の機械猟犬》を模したガントレットが両サイドから《RR-レヴォリューション・ファルコン》を挟み込む。

両翼をその歯で固定し、そのまま真っ二つに引き裂こうとしている。

「《レヴォリューション・ファルコン》が特殊召喚されたモンスターと戦闘を行うとき、そのモンスターの攻撃力・守備力を0にする!」

「ざんねーん!《混沌巨人》はモンスターゾーンに存在する限り、魔法・罠の効果を受けず、更にバトルフェイズ中に相手はモンスター効果を発動できない!!」

「ならば、罠カード《RR-ユニティ》を発動!ターン終了時まで、俺のフィールド上に存在するRRの攻撃力・守備力は俺のRRのオーバーレイユニットの数×700アップする!」

 

RR-レヴォリューション・ファルコン ランク6 攻撃2000→3400

RR-フォース・ストリクス×2 ランク4 守備2000→3400

 

RR-ユニティ

通常罠カード

(1):自分フィールド上にX素材がある「RR」Xモンスターが存在する場合にのみ発動できる。ターン終了時まで、自分フィールド上に存在する「RR」の攻撃力・守備力は自分フィールド上の「RR」XモンスターのX素材の数×700アップする。

 

「まだ足りないよ!?これじゃあ合計3300の戦闘ダメージでお前の負けだよ、黒咲ぃ!!」

《RR-レヴォリューション・ファルコン》を真っ二つに引き裂いた《古代の機械混沌巨人》が2つの残骸を黒咲に向けて投げつける。

2体の《RR-フォース・ストリクス》がミサイルを発射し、2つの残骸を破壊している間に黒咲はアクションカードを探す。

残骸を破壊するミサイルの余波により、コースや壁にひびが入り、通過する《古代の機械混沌巨人》が起こすソニックブームで崩壊を始める。

 

黒咲

ライフ3000→1900

SPC7→6

 

背部スラスターの冷却のため、一度巨人がコース上に着地する。

するとあまりの重みとミサイルによって脆弱となっているコースが砕け、破片が《RR-フォース・ストリクス》1体に直撃する。

修理を終えていない状況での出撃であったため、損傷を修復しきれなかったそのフクロウが爆発し、破片が黒咲のDホイールと接触する。

「ぐううう…!!」

 

黒咲

ライフ1900→800

SPC6→5

 

「さあさあ、3回目の攻撃だ!!カード化して、妹との再会を楽しみにしてるんだね!!」

再びスラスターをきかせて上昇した《古代の機械混沌巨人》が右こぶしを生き残っている《RR-フォース・ストリクス》に向けて振り下ろす。

(この攻撃が通れば、黒咲選手のライフは0!!さあ、これで勝負が決まってしまうのかーーー!?!?)

「くっ…!!」

上からの攻撃が成立するまでのライムラグを頭の中で計算しながらコースを走っていると、直線状の落ちているアクションカードを見つける。

「うおおおおおお!!」

マシンブルーファルコンを横に倒し、すべりながら黒咲はカードに向けて手を伸ばす。

カードを手にすると同時に《古代の機械混沌巨人》の拳が《RR-フォース・ストリクス》をつぶしていく。

そして、勢いを止めることなく拳は黒咲に襲い掛かる。

「終わりだぁぁぁぁ!!」

黒咲への攻撃が命中した瞬間、その場所で爆発が起こった。

爆発と共に、客席は静寂に包まれていく。

「はあ、はあ…僕の邪魔をするからだ…。僕の、邪魔を…」

「まだ終わっていないぞ」

「何!?」

爆炎の中からマシンブルーファルコンが飛び出す。

そして、黒咲は自らを救ったアクションカードを見せる。

「アクション魔法《エナジー・メイト》。俺のライフを500回復する!」

 

黒咲

ライフ800→1300→200

SPC5→6→5

 

(間一髪!アクションカードにより、首の皮がつながったーーー!!)

「くっそぉ!!」

とどめを刺せなかったことを悔やむデニスは拳をディスプレイにたたきつける。

「どうした?まだ貴様のターンは終わっていないぞ」

「黙れ!!どうせ次のターンで勝てるんだ。このターンは譲ってやる!僕は《スピード・ワールド・A》の効果を発動!スピードカウンターを7つ取り除き、デッキからカードを1枚ドローする!ターンエンド!!」

 

黒咲

手札3(《RR-フラッシュ・ヴァルチャー》《RR-ボミング・レイニアス》)

ライフ200

SPC5

場 RR-ライトニング・イーグル(青) ペンデュラムスケール1

 

デニス

手札2→1

ライフ4000

SPC7→0

場 古代の機械混沌巨人 レベル10 攻撃4000

 

「俺の…ターン!!!」

 

黒咲

手札3→4

SPC5→7

 

デニス

SPC0→2

 

「俺はスケール2の《RR-フラッシュ・ヴァルチャー》をセッティング!」

頭部や両翼にフラッシュライトがついた、真っ白なハゲワシを模した機械が青い光の柱を生み出す。

「更に、俺は手札から《Sp-ソウル・シェイブ・ランクアップ》を発動!俺のスピードカウンターを6つ取り除き、墓地のRRエクシーズモンスター1体を特殊召喚する!甦れ、《RR-レヴォリューション・ファルコン》!!」

《Sp-ソウル・シェイブ・ランクアップ》のソリッドビジョンから《RR-レヴォリューション・ファルコン》が飛び出してくる。

 

RR-レヴォリューション・ファルコン ランク6 攻撃2000

 

「そして、そのモンスターよりもランクが2つ高いXモンスターにランクアップする!俺は《レヴォリューション・ファルコン》でオーバーレイ!」

「何!?復活してすぐにランクアップだと!?」

発動と同時に、衛星軌道上にどういうわけか人工衛星が出現し、その中にあるコンピュータに「RR-2000 acsess」と表示されると同時に、下部に搭載されたマイクロウェーブ発射装置からマイクロウェーブが発射される。

マイクロウェーブを受けた《RR-レヴォリューション・ファルコン》の胴体以外の骨組みと装甲、兵器がすべて強制排除され、上空から降りてくる、両翼に3つずつ砲台が搭載された、赤と白を基調としているほっそりとした武装が装着される。

そして、胴体部分の装甲の色がマイクロウェーブによって白へと変わっていく。

「勇猛果敢なるハヤブサよ。怒りの炎を巻き上げ、大地をも焼き尽くす閃光となれ!ランクアップ・エクシーズチェンジ!飛翔しろ!ランク8、《RR-サテライト・キャノン・ファルコン》!」

 

RR-サテライト・キャノン・ファルコン ランク8 攻撃3000

 

黒咲

SPC7→1

 

Sp-ソウル・シェイブ・ランクアップ

通常魔法カード

このカードのカード名はルール上、「RUM-ソウル・シェイブ・フォース」としても扱う。

(1):自分のスピードカウンターを6つ取り除き、自分の墓地の「RR」Xモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚し、そのモンスターよりランクが2つ高いXモンスター1体を、対象のモンスターの上に重ねてX召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

 

「《サテライト・キャノン・ファルコン》はRRを素材にエクシーズ召喚に成功したとき、相手フィールド上の魔法・罠カードをすべて破壊する!」

「でも、僕のフィールドにはもう魔法・罠カードはない。《スピード・ワールド・A》はいかなる手段でも破壊できない!それに、攻撃力3000じゃあ、《古代の機械混沌巨人》は倒せないよ!!」

「俺は《RR-フラッシュ・ヴァルチャー》のペンデュラム効果を発動!このカードが表側表示で存在するときに1度、俺のフィールド上に存在するRRエクシーズモンスター1体の攻撃力をターン終了時まで1000アップさせる」

《RR-フラッシュ・ヴァルチャー》に装着されたライトが光りだし、その光を信号としてカメラで受け取った《RR-サテライト・キャノン・ファルコン》が白いオーラを纏う。

 

RR-サテライト・キャノン・ファルコン ランク8 攻撃3000→4000

 

RR-フラッシュ・ヴァルチャー

レベル4 攻撃1500 守備1200 闇属性 鳥獣族

【Pスケール:青2/赤2】

「RR-フラッシュ・ヴァルチャー」のP効果ははこのカードがPゾーンに存在する限り、1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に存在する「RR」Xモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで1000アップする。この効果は相手ターンでも発動できる。

【モンスター効果】

(1):このカードをX素材としてX召喚に成功した「RR」Xモンスターは以下の効果を得る。

●1ターンに1度、このカードが戦闘で特殊召喚された相手モンスターを破壊し墓地へ送ったときに発動できる。自分はデッキからカードを1枚ドローする。

 

「さらに、《サテライト・キャノン・ファルコン》の効果発動!オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、相手モンスター1体の攻撃力を墓地のRR1体につき、800ダウンさせる!!」

「なに!?」

「これは…瑠璃とユート、そして倒れていった数多くの仲間たちの怒りの業火だ!!その炎で灰になれ、デニス・マックフィールド!!」

「ぐううう!!」

現在、黒咲の墓地にあるRRは《RR-フォース・ストリクス》3体と《RR-ミミクリー・レイニアス》、《RR-レヴォリューション・ファルコン》、《RR-バニシング・レイニアス》、《RR-ボミング・レイニアス》、《RR-インペイル・レイニアス》で合計8体。

そのため、《古代の機械混沌巨人》の攻撃力は一気に0になる。

デニスは状況を打開するため、アクションカードに手を伸ばす。

しかし、崩壊したコース上で安定してまっすぐDホイールを走行させるのは至難の業であり、さらに《古代の機械混沌巨人》が起こすソニックブームでさらにコースを崩壊させていく。

そのためか、あと少しで手が届くところでアクションカードが離れていく。

その間にも、墓地の仲間の力を得た《RR-サテライト・キャノン・ファルコン》が8門に増えた砲台から発射体制を整えていく。

しかし、デニスもまた鍛えられたデュエリスト。

なんとか走行を安定させることに成功し、アクションカードを手にする。

そのアクションカードの正体を見たデニスは目を大きく開く。

「《ノーアクション》…。くそっ!エンターテイナーであることを捨てた僕にはアクションカードに見放されたか!?」

相手のアクションカードの発動を無効にし、破壊するカードだが、今のデニスにとっては使えないカードだ。

 

デニス

SPC2→3

 

発射準備を整えた《RR-サテライト・キャノン・ファルコン》が一斉射撃をする。

両腕の関節や胴体、頭部や右手などに次々と光線を受けた《古代の機械混沌巨人》は爆発を起こし、そのままコース上に転落する。

そして、《RR-サテライト・キャノン・ファルコン》は飛翔していき、高度50キロのところで止まり、ターゲットを動かなくなった《古代の機械混沌巨人》に固定する。

 

古代の機械混沌巨人 レベル10 攻撃4500→0

 

「あ、ああ…」

もはやアクションカードを手にすることは許されず、反撃の術を失ったデニスになすすべはない。

天から下される裁きの雷を受ける以外、彼には何もすることができない。

「《サテライト・キャノン・ファルコン》で《古代の機械混沌巨人》を攻撃!!」

再び衛星軌道上の人工衛星からマイクロウェーブが発射され、砲門が6つに戻った《RR-サテライト・キャノン・ファルコン》にエネルギーを供給していく。

エネルギーの重点を終えたハヤブサの目は赤く光り、その目の前で6つの砲台から放出されるエネルギーを凝縮していく。

「エターナル・アベンジ!!!」

凝縮された光線が地上に向けて発射される。

《古代の機械混沌巨人》が生き残っている左手を盾に防ごうとするが、その光線に対しては無意味な抵抗で、それが放つ強烈な熱によって消滅していく。

そして、光線が命中した場所を中心に爆発が起こり、それにデニスが巻き込まれた。

「うわああああああ!!!」

 

デニス

ライフ4000→0

 

攻撃の余波のせいか、デニスのDホイールが爆発し、彼はコース上にうつぶせになって転落する。

黒咲はマシンブルーファルコンをデニスのそばに止め、彼の前に近づく。

「黒…咲…」

「…」

黒咲は腕に装着したデュエルディスクのボタンを押そうとする。

そのボタンを押せば、相手をカード化することができる。

しかし、指は確かにボタンに触れはするものの、どうしても押すことができない。

「…くそぉ!!」

ボタンから指を離した黒咲はデニスを思いっきり蹴飛ばした。

「ぐぉ…!?」

けりの痛みとデュエルでのダメージで気を失ったデニスの元へあの作業服の男たちがタンカをもってやってくる。

黒咲はデニスに背を向け、そのままコースを後にした。




あけましておめでとうございます!!
新年一発目の投稿です。
満足いただければ、幸いです。


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第70話 嵐の前の祝い

「あーあ、本日は晴天なり、本日は晴天なり…。よし、マイクOK!」

チームシェイドの宿舎の前にある広場の発表台でマイクのテストを済ませた伊織はカンニングペーパーを見た後で、広場に集まるシェイドのメンバーに目を向ける。

「えー、それではー、チームシェイドのコモンズ3割統一とわれらのリーダーである翔太君の初戦突破を祝いまして…これから、パーティーをしようと思ってまーーす!!」

「おおおーーーー!!!」

パーティーという言葉を聞いたメンバーが一斉に盛り上がる。

「なぁ、いきなりパーティーって言われてもな…金は大丈夫だったのか?」

「ええもちろん!しっかりみんなの取り分からパーティーの予算を分けてもらったから!!」

「柚子…あんた、悪い顔になっとるで…?」

「あーーー、そこそこ!お静かにー!ですので、まずはこれから始めましょー!フィールド魔法《アスレチック・サーカス》ー!」

伊織が指を鳴らすと同時に広場の周辺に設置された球体型の機械が起動し、広場がまるでサーカスの舞台のような光景へと変わっていく。

これは伊織達がコモンズで手に入れた、ゴミとなっている大量の旧型デュエルディスクからまだ生きているリアルソリッドビジョンシステムをリサイクルして作りだしたものだ。

あくまで非正規の物であり、鬼柳手作りであることから若干荒い部分があるものの、それでも《クロス・オーバー》や《スピード・ワールド・A》以外のアクションフィールドを知らないシンクロ次元出身の面々を興奮させるには十分だ。

広場の外では屋台が設置されており、シェイドが手に入れた工場で働いているメンバーの多くがあるときは客として、またある時は店員としてそれを利用している。

コモンズではさほど縁のないこの規模のパーティーのことを聞きつけた近所の子供たちは前日まで仕事の手伝いや鉄くず集めをして金を作り、この日を楽しみに待っていた。

「この《アスレチック・サーカス》では気になる相手を見つけたらその場で即デュエルをしてもよし!でも、乱入はダメだぞー!?」

「よーし、なら俺とデュエルしよーぜー!」

「だれかー、僕とデュエルしないかー!?」

「アクションデュエル、楽しみだーー!」

さっそく、参加者たちは自分のデュエル相手を指名し始める。

ある人は知人と、ある人は偶然今となりにいる見知らぬ参加者と。

「漁介ぇ!ウチとデュエルやぁ!」

「あんたとか!?まぁ…久々じゃし、ええが…」

「じゃあ、ジョンソン。TDCでのリベンジいいか?」

「構わない。相方のロットンがいないのが残念だがな」

そして、漁介や鬼柳らも思い思いに相手を見つけ、デュエルをする。

今日だけは、ただ純粋にこの瞬間を楽しむために。

「「デュエル!!」」

 

漁介

手札5

ライフ4000

 

里香

手札5

ライフ4000

 

「俺のターン!俺は手札から《セイバー・シャーク》を召喚じゃ!」

 

セイバー・シャーク レベル4 攻撃1600

 

「そして、こいつは俺のフィールド上に水属性モンスターが存在するとき、手札から特殊召喚できる。《サイレント・アングラー》を特殊召喚じゃ!」

 

サイレント・アングラー レベル4 攻撃800

 

「俺はレベル4の《セイバー・シャーク》と《サイレント・アングラー》でオーバーレイ!未知なる轟と共に、水の戦士たちを統べよ!エクシーズ召喚!ランク4!《バハムート・シャーク》!!」

 

バハムート・シャーク ランク4 攻撃2600

 

「いきなりエースの登場…マジになっとるなぁ、漁介ぇ!」

棒付きキャンディーを口にした里香が嬉しそうに《バハムート・シャーク》を見る。

「更に、俺は《バハムート・シャーク》の効果を発動じゃ!1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、エクストラデッキからランク3以下の水属性エクシーズモンスター1体を特殊召喚する!海の王者の叫び、ゴッド・ソウルじゃぁ!!」

《バハムート・シャーク》が空に向けて激しく咆哮すると、餅のように真っ白で柔らかな体のカエルが自分と同じだが小さな体のカエルを背負い、更にその上にみかんを乗せた状態でゆっくりと歩いてくる。

到着すると同時に、疲れ果てたのか、その場で座り込んで一休みを始めた。

 

餅カエル ランク2 攻撃2200

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・セイバー・シャーク

 

「うげぇ…カエル…。ウチ、カエルが苦手なん知っとるやろ!?」

鏡餅のような姿をしている《餅カエル》を見て、顔を真っ青にする里香。

彼女は昔からカエルやミミズなどが苦手で、デュエル中にもそういうタイプのモンスターが召喚されると真っ青になってしまう。

「なんじゃぁ。まーだあのときのトラウマが治っとらんのかぁ」

「やかましいわ!!さっさとデュエルを進めろや、ドアホォ!!」

「ドアホって…傷つくじゃろ、そんなこと言われちゃあ…。俺は手札から魔法カード《ジェネレーション・フォース》を発動じゃ!俺のフィールド上にエクシーズモンスターが存在するとき、デッキからエクシーズと名の付くカードを1枚手札に加えることができるんじゃ。俺はデッキから《エクシーズ・トレジャー》を手札に加え、発動!フィールド上に存在するエクシーズモンスターの数だけ、俺はカードをドローする!さらに俺は手札から魔法カード《二重召喚》を発動!これで俺はもう1度だけ通常召喚が可能になる!俺は手札から《ダブルフィン・シャーク》を召喚!」

 

ダブルフィン・シャーク レベル4 攻撃1000

 

「こいつの召喚に成功したとき、墓地からレベル3か4の魚族・水属性モンスター1体を守備表示で特殊召喚できる!もう1度出番じゃ、《セイバー・シャーク》!!」

《ダブルフィン・シャーク》が上空に向けて飛び跳ねると、再び現れた《セイバー・シャーク》と正面から激突する。

 

セイバー・シャーク レベル4 守備1200

 

「俺はレベル4の《ダブルフィン・シャーク》と《セイバー・シャーク》でオーバーレイ!!」

ぶつかり合ったことで互いに争いあっているサメがオーバーレイネットワークに吸収されていく。

「エクシーズ召喚!もう1体の《バハムート・シャーク》!!」

 

バハムート・シャーク ランク4 攻撃2600

 

「《バハムート・シャーク》の効果発動!今度は《エアロ・シャーク》をゴッド・ソウルで呼び出すんじゃ!!」

2体目のサメの方向を聞きつけ、《アスレチック・サーカス》に置かれている水槽から《潜航母艦エアロ・シャーク》が飛び出す。

 

潜航母艦エアロ・シャーク ランク3 攻撃1900

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・ダブルフィン・シャーク

 

「更に、俺は《エアロ・シャーク》でオーバーレイネットワークを再構築!!アーマード・エクシーズチェンジ!!鎧纏いし漆黒の槍士、獲物を串刺しにしてやるんじゃ!ランク4!《FA-ブラック・レイ・ランサー》!!そして、《ブラック・レイ・ランサー》は自分のオーバーレイユニット1つにつき、200アップする」

 

FA-ブラック・レイ・ランサー ランク4 攻撃2100→2300

 

「くうう…!どんどんエクシーズ召喚しとるで…」

「まだまだじゃ!俺は手札から魔法カード《エクシーズ・ギフト》を発動!俺のフィールド上にエクシーズモンスターが2体以上存在するとき、俺のオーバーレイユニットを2つ取り除くことで、デッキからカードを2枚ドローできる!」

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・サイレント・アングラー

・セイバー・シャーク

 

「そして、俺は手札から永続魔法《アームズ・バリア》を発動じゃ!これで、俺のFAと名の付くエクシーズモンスターは1ターンに1度、戦闘及びカード効果では破壊されん!さらに俺はカードを1枚伏せ、ターンエンドじゃ!」

 

漁介

手札5→1

ライフ4000

場 バハムート・シャーク×2 ランク4 攻撃2600

  餅カエル ランク2 攻撃2200

  FA-ブラック・レイ・ランサー(オーバーレイユニット1) ランク4 攻撃2300

  アームズ・バリア(永続魔法)

  伏せカード1

 

里香

手札5

ライフ4000

場 なし

 

いきなり1ターン目からエクシーズモンスター4体と飛ばした漁介。

特に《餅カエル》の存在が里香を精神的にも戦略的にも圧迫している。

(《餅カエル》は1ターンに1度、手札・フィールド上の水族モンスター1体をリリースすることで、相手のカード効果を無効にし、破壊する効果がある…。問題は漁介の手札や…)

漁介のフィールドに存在する《バハムート・シャーク》は海竜族で、《FA-ブラック・レイ・ランサー》は獣戦士族で、水族ではない。

漁介のたった1枚の手札が水族モンスターの場合、むやみに儀式魔法を発動すると返り討ちにされるのが関の山だ。

「…ああーーー!!あかんあかん!!考えとってもしゃあない!」

自分の頬を叩いた里香は自分のデッキを見る。

考えるよりも動くという自分のスタイルを崩しては、勝てるものにも勝てなくなる。

それを大事にしてきたから、今シェイドのメンバーとしてここにいるんだという自負がある。

「ウチのターン!!」

 

里香

手札5→6

 

「罠発動!《貪欲な瓶》!!墓地のカードを5枚デッキに加え、デッキからカードを1枚ドローじゃ!」

 

墓地からデッキに戻ったカード

・エクシーズ・トレジャー

・ダブルフィン・シャーク

・サイレント・アングラー

・二重召喚

・ジェネレーション・フォース

 

漁介の動きを気にせず、里香はドローしたカードを見る。

「いきなりええカードや!ウチは手札から《月読命》を召喚!」

「な…《月読命》!?」

水色が買った白の着物をまとった、紫色でみずらという飛鳥時代の身分の高い男性がよくしていた髪形をしているやや黒い肌の男が現れる。

男の体は紫色の光に包まれており、それが自身がスピリットモンスターであることを示している。

 

月読命 レベル4 攻撃1100

 

「《月読命》の効果発動や!このカードを召喚・リバースしたとき、フィールド上のモンスター1体を売ら守備表示に変更する。ウチはもちろん、《餅カエル》を裏守備表示にするで?さあ…どないするんや、漁介ぇ!」

《ライオウ》や《大天使クリスティア》への対策のために入れていたカードがこのタイミングで役に立った。

《月読命》と同じオーラを宿してしまった《餅カエル》が裏守備表示となり、フィールドに出現した裏返ったカードの下に隠れてしまう。

「これで心置きなく発動できるで…。ウチは手札から《影霊衣の降魔鏡》を発動や!手札の《サイバー・エンジェル-弁天-》をリリースし、《ブリューナクの影霊衣》を儀式召喚や!」

赤いラインのある青いゴム製のフィギュアスケートスーツを着て、赤い扇を両手に1つずつ握っている女性型モンスターが上空にあらわれた鏡に映し出される。

そして、その鏡が砕けると、その中から《ブリューナクの影霊衣》が飛び出し、里香の目の前に降りてくる。

 

ブリューナクの影霊衣 レベル6 攻撃2300

 

「げげっ!ここで《ブリューナク》じゃと!?それに、《弁天》をリリースって…」

「せや、《弁天》はリリースされたときも効果を発揮するカードや。デッキから光属性・天使族モンスター1体を手札に加えるで。ウチはデッキから《マンジュ・ゴッド》を手札に加える。そして、《ブリューナク》の効果発動や!1ターンに1度、エクストラデッキから特殊召喚されたフィールド上のモンスターを2体までデッキに戻す!これでまずはエースに退場してもらうで!」

《ブリューナクの影霊衣》が鏡がついた片手剣を振ると、フィールドに吹雪が発生し、それによって2体の《バハムート・シャーク》が徐々に氷漬けになっていく。

そして、2体が氷漬けになると、鏡が一瞬だけ光を放ち、それと同時にそのモンスターたちは姿を消した。

「ぐうう…せっかく召喚したエースを…。やってくれる!!」

一気に戦局がひっくり返されたにもかかわらず、漁介は笑っている。

尾道の漁師の子として生まれた漁介は8歳の時にその父親を事故で失った。

父方の祖父母がすでに病死していたこともあり、彼は母方の実家である大阪へ移り住んだ。

里香とは転向した小学校でできた初めての友達で、デュエルは彼女から学んだ。

そして、このデッキはいつか父親を越える漁師になるという夢をこめて作ったデッキで、何度も改良を重ねてこれまで戦ってきた。

だから、今はこの状況であっても、必ず逆転できると信じている。

「バトルや!《ブリューナク》で裏守備になっとるカエルを攻撃や!!」

《ブリューナクの影霊衣》が一太刀でカードの裏に隠れている《餅カエル》を真っ二つに切り裂いた。

《餅カエル》は黄色い粒子となって消滅し、その場にはいくつかの鏡餅が残った。

「くぅ…。《餅カエル》は墓地へ送られたとき、墓地に存在する水属性モンスター1体を回収する効果があるんじゃが、《貪欲な瓶》で水属性モンスターを全部デッキに送ったせいで、発動できん…」

「先走って発動したんが失敗やったな、漁介!!ウチはカードを1枚伏せ、ターンエンドや!それと同時に、フィールド上の《月読命》は手札に戻るで」

 

漁介

手札1→2

ライフ4000

場 FA-ブラック・レイ・ランサー(オーバーレイユニット1) ランク4 攻撃2300

  アームズ・バリア(永続魔法)

 

里香

手札6→3(うち2枚《マンジュ・ゴッド》《月読命》)

ライフ4000

場 ブリューナクの影霊衣 レベル6 攻撃2300

  伏せカード1

 

「俺のターン、ドローじゃぁ!!」

 

漁介

手札2→3

 

「俺は手札から《レスキュー・ラビット》を召喚じゃ!」

 

レスキュー・ラビット レベル4 攻撃300

 

「フィールド上のこのカードを除外することで、デッキからレベル4以下で、同じ名前の通常モンスター2体を特殊召喚できるんじゃ!俺は《暗黒の海竜兵》2体を特殊召喚じゃ!」

《レスキュー・ラビット》が笛を鳴らしてから姿を消すと、漁介の目の前に水槽が現れ、そこから青い線がいくつも描かれている紫色の体のウミヘビが現れる。

 

シーザリオン×2 レベル4 攻撃1800

 

「俺はレベル4の《シーザリオン》2体でオーバーレイ!エクシーズ召喚!もう1度出番じゃ!!《バハムート・シャーク》!!」

 

バハムート・シャーク ランク4 攻撃2600

 

「また性懲りもなく《バハムート・シャーク》か。せやったら、ウチは永続罠《デモンズ・チェーン》を発動や!」

発動された《デモンズ・チェーン》のソリッドビジョンから放たれた鎖によって、現れたばかりの《バハムート・シャーク》が縛り付けられ、地上に転落する。

「これで、《バハムート・シャーク》の効果と攻撃は封じられたで?」

「そんなもんで止められるほど、サメは甘くないんじゃ!!俺は装備魔法《エクシーズ・アームズ-VN》を《バハムート・シャーク》に装備じゃ!」

《バハムート・シャーク》の左腕に青い装甲で、爪や関節部分に水色の金属が露出している3本指の腕を模したガントレッドが装着される。

「このカードを発動したとき、フィールド上に表側表示で存在する魔法・罠カードを1枚破壊じゃぁ!」

装着された爪を見た《バハムート・シャーク》はそれで拘束している鎖を砕く。

「なんやってぇ!?」

「そして、装備モンスターの攻撃力は俺のフィールド上に存在するFAエクシーズモンスターを1体につき、攻撃力が500アップする!」

 

バハムート・シャーク ランク4 攻撃2600→3600

 

「攻撃力3600!?せやけど、《バハムート・シャーク》は…ってことは、その装備カードの効果やな?!」

「そうじゃ。エクシーズ・アームズシリーズを装備したエクシーズモンスターはFAモンスターとして扱われるんじゃ!」

エクシーズ・アームズはレオコーポレーションから提供された、漁介の新たなカードだ。

装備モンスターを《FA-ブラック・レイ・ランサー》や《FA-クリスタル・ゼロ・ランサー》のようにFAモンスターへと変える。

そして、そのモンスターに対応するカードを発動することで、さらなるコンボへと昇華していく。

(黒咲がランクアップを使うのなら、俺は武器じゃ!獲物をしとめるための銛が俺の新しい可能性!!」

 

エクシーズ・アームズ-VN(ヴァリアブル・ネイル)

装備魔法カード

このカードはXモンスターのみ装備可能。

(1):装備モンスターはルール上、「FA(フルアーマード)」モンスターとしても扱う。

(2):このカードを発動したとき、フィールド上に表側表示で存在する魔法・罠カードを1枚破壊する。その後、装備モンスターの攻撃力は自分フィールド上に存在する「FA」Xモンスター1体につき、500アップする。

 

「《VN》を装備した《バハムート・シャーク》は当然、《アームズ・バリア》によって守られる。バトルじゃ!俺は《バハムート・シャーク》で《ブリューナクの影霊衣》を攻撃じゃあ!ゴッド・ボイス・クロウ!!」

《バハムート・シャーク》の方向と共に左腕のガントレッドが激しく振動する。

そして、その振動を維持したままその爪で《ブリューナクの影霊衣》を守りのために構えた片手剣もろとも切り裂いた。

「きゃあああ!!」

 

里香

ライフ4000→2700

 

「まだじゃぁ!!俺は《ブラック・レイ・ランサー》でダイレクトアタック!!ブラック・スピア!!」

《ブラック・レイ・ランサー》が壁モンスターのいない里香に向けて槍を投擲する。

「うかつやで、漁介!!ウチは罠カード《影霊衣の水盾》を発動!ウチのフィールド上にモンスターが存在しない状態でダイレクトアタックを受けるとき、墓地の影霊衣儀式モンスター1体を召喚条件を無視して特殊召喚し、デッキからカードを1枚ドローや!!」

里香の目の前に現れた《影霊衣の水盾》から《ブリューナクの影霊衣》が飛び出し、剣で投げ槍を弾く。

 

ブリューナクの影霊衣 レベル6 攻撃2300

 

「じゃったら、そのまま《ブリューナクの影霊衣》を攻撃じゃぁ!!」

槍を失った《FA-ブラック・レイ・ランサー》は装着されているブースターで加速し、《ブリューナクの影霊衣》に殴りかかる。

「本来なら相打ちや…せやけど…」

「そうじゃ!《アームズ・バリア》によって、破壊は免れる!!」

殴られた《ブリューナクの影霊衣》が剣で心臓を貫こうとするが、《FA-ブラック・レイ・ランサー》の周囲に展開された青いオーラによって剣が砕け散った。

「そして、俺はバトルフェイズ終了後に《バハムート・シャーク》の効果を発動!エクストラデッキから《トライエッジ・リヴァイア》を特殊召喚する。ゴッド・ソウル!!」

三又の槍を持ち、青い魚を模した鎧を身に着けた戦士が《バハムート・シャーク》の咆哮に応えて現れる。

 

トライエッジ・リヴァイア ランク3 攻撃1800

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・シーザリオン

 

「更に俺は装備魔法《エクシーズ・アームズ-SR》を《トライエッジ・リヴァイア》を装備じゃ!」

赤い塗装が施された水中銃を《トライエッジ・リヴァイア》が槍を地面に突き刺して手にする。

「このカードを装備したモンスターの攻撃力・守備力は600アップする!」

 

トライエッジ・リヴァイア ランク3 攻撃1800→2400 守備1500→2100

 

「更に、装備モンスターは1度だけ墓地のそのモンスターと同じ属性もモンスター1体を自分のオーバーレイユニットにする!そして当然、このカードを装備したモンスターもFAモンスターになる!」

水中銃を地面に向けて発射し、発射された銛が刺さった場所から水が噴き出る。

それと同時に墓地の《シーザリオン》が飛び出してきて、水色の球体となって《トライエッジ・リヴァイア》の周囲を飛び回る。

「FAモンスターが増えたことで、《バハムート・シャーク》の攻撃力もアップじゃ!」

 

バハムート・シャーク ランク4 攻撃3600→4100

 

エクシーズ・アームズ-SR(ショットランサー)

装備魔法カード

このカードはXモンスターのみ装備可能。

「エクシーズ・アームズ-BR」の(2)の効果はこのカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、1度だけ発動できる。

(1):装備モンスターはルール上、「FA(フルアーマード)」モンスターとしても扱う。

(2):自分の墓地に存在する装備モンスターと同じ属性のXモンスター以外のモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを装備モンスターの下に重ね、X素材とする。

(3):装備モンスターの攻撃力・守備力は600アップする。

 

「俺はターンエンドじゃ!」

 

漁介

手札3→1

ライフ4000

場 FA-ブラック・レイ・ランサー(オーバーレイユニット1) ランク4 攻撃2300

  バハムート・シャーク(《エクシーズ・アームズ-VN》装備 オーバーレイユニット1) ランク4 攻撃4100

  トライエッジ・リヴァイア(《エクシーズ・アームズ-SR》装備 オーバーレイユニット1) ランク3 攻撃2400

  アームズ・バリア(永続魔法)

 

里香

手札3→4(うち2枚《マンジュ・ゴッド》《月読命》)

ライフ2700

場 なし

 

「ウチのターン!!」

 

里香

手札4→5

 

「…よし!!」

ようやく見つけたアクションカードを手にした漁介は即座にそれを発動する。

「アクション魔法《的中》を発動!カード名を1つ宣言し、お互いに手札を確認する。そして、宣言したのと同じ名前のカード1枚を破壊する!宣言するカード名は《月読命》じゃあ!!」

「くぅ…!」

里香は悔し気に手札を漁介に公開する。

《的中》の一番怖いところは互いの手札を公開することで、手札の多いプレイヤーにとって不利になってしまうカードだ。

 

漁介の手札

・EMプラスタートル

 

里香

・マンジュ・ゴッド

・月読命

・カタストルの影霊衣

・影霊衣の術士シュリット

・儀式の準備

 

「ぐぇ…!?《カタストルの影霊衣》と《儀式の準備》!?」

「あーあー、漁介。見いひんかったらよかったの」

フッフッフッと黒い笑みを浮かべながら、里香は《月読命》を墓地へ送る。

 

的中

アクション魔法カード

(1):カード名を1つ宣言し、互いに手札を公開する。その中で宣言したカード名と同じ名前のカード1枚を破壊する。

 

「ウチは手札から魔法カード《儀式の準備》を発動。デッキからレベル7以下の儀式モンスター1体を手札に加える。ウチはでっきから《グングニールの影霊衣》を手札に加えるで。さらに、墓地から《影霊衣の降魔鏡》を手札に加える。そして、ウチは手札から儀式魔法《影霊衣の降魔鏡》を発動や。手札の《シュリット》をリリースし、《グングニールの影霊衣》を儀式召喚するで!」

鏡に《氷結界の龍グングニール》を模した鎧と鏡がついた杖を持つ赤い長髪の女性の姿が映り、鏡が砕けると同時にその女性がフィールドに飛び出す。

 

グングニールの影霊衣 レベル7 攻撃2500

 

「《シュリット》はたった1枚で影霊衣の儀式召喚に必要なレベルを満たすことができるんや。そして、このカードが効果によってリリースされたとき、デッキから戦士族の影霊衣1体を手札に加えることができる。ウチは《影霊衣の戦士エグザ》を手札に加えるで。そして、手札から《マンジュ・ゴッド》を召喚や!」

 

マンジュ・ゴッド レベル4 攻撃1400

 

「このカードの召喚・反転召喚に成功したとき、デッキから儀式モンスターもしくは儀式魔法を1枚手札に加えるで。ウチはデッキから《影霊衣の万華鏡》を手札に加え、発動や!手札・フィールド・エクストラデッキに存在するモンスター1体をリリースし、手札の影霊衣モンスターを、レベルの合計がリリースしたモンスターのレベルと同じになるように特殊召喚できる。ウチは手札の《影霊衣の戦士エグザ》をリリースし、《カタストルの影霊衣》を儀式召喚や!」

再び里香のフィールドにあらわれた鏡に今度は《A・O・Jカタストル》と同じ色合いのガントレッドを両腕に装着した筋肉質の魚人が映し出され、鏡を自らの拳で砕いて飛び出してくる。

 

カタストルの影霊衣 レベル5 攻撃2200

 

「更に、《エグザ》は効果によってリリースされたとき、デッキからドラゴン族の影霊衣儀式モンスター1体を手札に加えることができる。ウチはデッキから《カタストルの影霊衣》を手札に加えるで。そして、《カタストルの影霊衣》の効果発動!このカードを手札から捨てることで、墓地の影霊衣モンスター1体を特殊召喚するで。ウチは墓地の《影霊衣の戦士エグザ》を特殊召喚や!」

 

影霊衣の戦士エグザ レベル5 攻撃2000

 

「レベル5のモンスターが2体…まさか!?」

「エクシーズ召喚は漁介だけができる思うたら大間違いやで!ウチはレベル5の《エグザ》と《カタストルの影霊衣》でオーバーレイ!エクシーズ召喚!来いや、ランク5!《終焉の守護者アドレウス》!!」

真っ黒な翼をはやし、右手には赤い短剣を持っている黒衣の女性がゆっくりと里香のフィールドに降りてくる。

 

終焉の守護者アドレウス ランク5 攻撃2600

 

「《アドレウス》の効果発動や!1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、相手フィールド上に表側表示で存在するカード1枚を破壊する!ウチは《アームズ・バリア》を破壊するで!!」

オーバーレイユニットが《終焉の守護者アドレウス》が持っているものと同じものに変化し、それが漁介のフィールド上の《アームズ・バリア》に向けて発射される。

「くぅ…!」

里香が動いている間に新しく手に入れたアクションカードを悔しそうに見る。

(こいつは俺のモンスターをカード効果による破壊から守る《ミラー・バリア》。じゃけども、魔法・罠カードには対応できん…!)

短剣で貫かれた《アームズ・バリア》が消滅し、3体のFAエクシーズモンスターを包むオーラが消えていく。

「く…じゃが、破壊された《アームズ・バリア》の効果発動じゃ!このカードが相手のカード効果で破壊され墓地へ送られたとき、デッキから新たなエクシーズ・アームズを手札に加える!俺はデッキから《エクシーズ・アームズ-DA》を手札に加える!!」

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・影霊衣の戦士エグザ

 

アームズ・バリア

永続魔法カード

「アームズ・バリア」は自分フィールド上に1枚しか存在できない。

(1):このカードが魔法・罠ゾーンに存在する限り、自分フィールド上のすべての「FA」Xモンスターは1ターンに1度、戦闘・効果では破壊されない。

(2):自分フィールド上に存在するこのカードが相手の効果によって破壊されたとき、デッキに存在する「エクシーズ・アームズ」装備魔法カード1枚を対象に発動する。そのカードを手札に加える。

 

手札を使い切った里香は走り始める。

「(漁介が使うたんなら、ウチもアクションカードを…!)バトルや!ウチは《グングニールの影霊衣》で《トライエッジ・リヴァイア》を攻撃!!」

「うかつじゃぁ!!俺は《トライエッジ・リヴァイア》の効果を発動!1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、フィールド上のモンスター1体の攻撃力をターン終了時まで800ダウンさせる!」

オーバーレイユニットを吸収した槍を左手で握った《トライエッジ・リヴァイア》はそれを攻撃を仕掛けている《グングニールの影霊衣》に向けて投げつける。

そして、里香はトランポリンで飛び上がり、上空に浮かんでいるバランスボールに張り付いているアクションカードを手にする。

「アクション魔法《炎の舞》を発動や!相手フィールド上に存在するモンスター1体の攻撃力を1000ダウンさせる!ウチは《トライエッジ・リヴァイア》の攻撃力を1000ダウンさせる!」

《炎の舞》から放たれた炎に包まれた《トライエッジ・リヴァイア》の体が焦げていく。

そして、槍を受けた《グングニールの影霊衣》は腹部に刺さったそれを引き抜き、傷口を氷によってふさいでいく。

 

グングニールの影霊衣 レベル7 攻撃2500→1700

トライエッジ・リヴァイア ランク3 攻撃2400→1400

 

炎の舞

アクション魔法カード

(1):相手フィールド上に存在するモンスター1体の攻撃力を1000ダウンさせる。

 

「このままいったれやぁ、《グングニール》!!」

《グングニールの影霊衣》の杖から放たれる青い光線を受け、《トライエッジ・リヴァイア》が氷漬けになっていく。

氷漬けになった後は、彼女が杖をコツンと当てただけで砕けた。

 

漁介

ライフ4000→3700

 

攻撃完了と同時にもう1度トランポリンで飛び上がった里香は空中ブランコをつかみ、それを利用して浮いている足場に着地する。

そして、そこに貼り付いているアクションカードを手にする。

「まだまだいくで?ウチはもう1枚のアクション魔法《ポッポちゃん参上!》を発動や!デッキの上から3枚をめくり、その中にある通常魔法カードを1枚手札に加え、残り2枚を好きな順番でデッキの上に置く!!」

バンダナを首に巻き、ゴーグルを額につけている黄色い鳩が里香のデッキをつつくと、3枚のカードが飛び出す。

 

里香のデッキの上から3枚

・儀式の宝札

・深海のディーヴァ

・リチュア・チェイン

 

「ウチは《儀式の法札》を手札に加え、上から順番に《深海のディーヴァ》と《リチュア・チェイン》をデッキに戻すで。そして、《終焉の守護者アドレウス》で《ブラック・レイ・ランサー》を攻撃や!」

《終焉の守護者アドレウス》が投げたナイフが《FA-ブラック・レイ・ランサー》の鎧に当たる。

その場所から鎧にひびが入り、やがて砕け散る。

「無駄じゃ!!《FA-ブラック・レイ・ランサー》は破壊される場合、代わりに持っているすべてのオーバーレイユニットを取り除くことができる!ぐう…!!」

 

FA-ブラック・レイ・ランサー ランク4 攻撃2300→2100

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・潜航母艦エアロ・シャーク

 

漁介

ライフ3700→3400

 

「そして、メインフェイズ2に《儀式の宝札》を発動や!2回以上、ウチが儀式召喚に成功したターンにだけ発動できて、ウチはデッキからカードを2枚ドローするで。ウチはこれでターンエンドや」

 

漁介

手札1→2(《エクシーズ・アームズ-DA》《EMプラスタートル》)

ライフ3400

場 FA-ブラック・レイ・ランサー ランク4 攻撃2100

  バハムート・シャーク(《エクシーズ・アームズ-VN》装備 オーバーレイユニット1) ランク4 攻撃4100→3600

 

里香

手札5→2(《深海のディーヴァ》《リチュア・チェイン》)

ライフ2700

場 グングニールの影霊衣 レベル7 攻撃2500

  終焉の守護者カドケウス(オーバーレイユニット1) ランク5 攻撃2600

 

儀式の宝札

通常魔法カード

「儀式の宝札」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分が儀式召喚に2回以上成功したターンのメインフェイズ時にのみ発動できる。自分はデッキからカードを2枚ドローする。

 

ポッポちゃん参上!

アクション魔法カード

(1):自分のデッキの上から3枚カードを確認する。確認したカードの中に通常魔法カードがあった場合、その1枚を相手に見せて手札に加える。その後、確認したカードを好きな順番でデッキの一番上に戻す。

 

「アクションカードに助けられたとはいえ、《アームズ・バリア》と《トライエッジ・リヴァイア》を破壊するなんてなぁ!!こうなったら、もっと楽しまんゆけんなぁ!俺のターン、ドローじゃあ!」

 

漁介

手札2→3

 

「俺は手札から魔法カード《エクシーズ・トレジャー》を発動!」

「《エクシーズ・トレジャー》やってぇ!?」

漁介がドローしたカードに驚愕する。

《エクシーズ・トレジャー》は特にコストが要求されるわけでもないのに、大きな見返りをもたらすことから、《逆境の宝札》とともに制限カードとして認定されている。

なお、シンクロ次元ではそもそもエクシーズ召喚、という概念がこのフレンドシップカップで出てきたばかりであるため、《エクシーズ・トレジャー》というカード自体存在しないため、実質的には無制限だ。

しかし、漁介はそれだとアンフェアーだからといって、これまで通り《エクシーズ・トレジャー》の枚数は1枚にとどめている。

《貪欲な瓶》で戻して、また手札に加えたことから、彼の引きの強さを感じてしまう。

「効果は分かっとるんじゃのぉ。フィールド上に存在するエクシーズモンスターの数だけ、デッキからカードをドローする。俺は2枚ドローじゃ!さらに手札から魔法カード《強欲なウツボ》を発動!手札の水属性モンスター2体をデッキに戻し、デッキからカードを3枚ドローする。俺は手札の《エクシーズ・リモーラ》と《EMプラスタートル》をデッキに戻し、3枚ドローする!」

一気に手札に腐らせていたカードを交換し、これで彼がこれからどんな動きを見せてもおかしくなくなった。

唯一わかっているのは、《アームズ・バリア》で手札に加えた《エクシーズ・アームズ-DA》がまだ彼の手の中にあることだ。

「俺は手札から装備魔法《エクシーズ・アームズ-DA》を《バハムート・シャーク》に装備!こいつを装備したエクシーズモンスターは当然、FAモンスターになる。そして、装備モンスターはバトルフェイズ開始時にオーバーレイユニットを1つ取り除くことで、そのターンのみ2回攻撃できるんじゃ!」

目の前に現れた、鉛色の装甲でところどころに赤いフレームが見える2本の斧のうちの1本を《バハムート・シャーク》は手に取り、刃を里香に向ける。

 

エクシーズ・アームズ-DA(ダブルアックス)

装備魔法カード

このカードはXモンスターのみ装備可能。

(1):装備モンスターはルール上、「FA(フルアーマード)」モンスターとしても扱う。

(2):1ターンに1度、自分のターンのバトルフェイズ開始時に、装備モンスターのX素材を1つ取り除くことで発動できる。装備モンスターはこのターン、1度のバトルフェイズ中に2回攻撃できる。

 

「さらに、手札から魔法カード《アクア・ジェット》を発動!フィールド上の水族・魚族・海竜族モンスター1体の攻撃力を1000アップじゃ!」

《バハムート・シャーク》の背中に2基のスケイルエンジンが装着され、上空をまるで水の中にいるかのように自由自在に飛び回る。

その間に左腕のガントレッドが展開し、斧の赤いフレームが光りだす。

 

バハムート・シャーク ランク4 攻撃3600→4600

 

「ぐうう…これは…」

悔し気に上空の《バハムート・シャーク》を見る里香。

周囲にはアクションカードはなく、このまま攻撃を受けるのを待つしかない。

「これで仕留める!《バハムート・シャーク》、大物2匹まとめて獲ったれえ!!」

上空から急速に降下した《バハムート・シャーク》が斧で《グングニールの影霊衣》を両断し、《終焉の守護者アドケウス》を左腕で握りつぶす。

そして、無防備になった里香に向けて咆哮した。

 

里香

ライフ2700→600→0

 

「ぐあああああ!!悔しい!あと1ターンで、勝てたのに…悔しいわぁ!!」

敗北した里香は悔しそうに拳を握り締める。

そして、キッと漁介をにらむ。

「もう1回や!!こうなったら、さっそくリベンジしたる!!」

「大歓迎じゃ!もう1度獲ったらぁ!!」

「ああ…うるせえなぁ」

第2ラウンドを始めた漁介と里香に対し、デュエルを終えた鬼柳とジョンソンはベンチに腰掛けて、屋台で勝ったたこ焼きを食べていた。

なお、ジョンソンは1人では食べれないため、鬼柳の助けを借りてでのことだが。

「今回はお前に軍配が上がったな…。《励輝士ヴェルズビュート》を使ってくるとはな」

「インフェルニティはシンクロ召喚だけが能ってわけじゃあねえのさ。そういえば、チームブレイドについて何か話は聞いてないか?」

「いや…。そういう話なら、モハメドに聞けば…」

「モハメドに聞いてもダメだった。どうも、最近のあいつら…」

鬼柳が気にしているのはチームブレイドのことだ。

同盟を組んだのはいいものの、どうにも彼らの行動が見えてこず、新黒字減についてある程度精通しているモハメドでも分からないとのことだ。

「このまま同盟関係を続けることができるか…」

「だが、決裂すればチームオーファンの餌食になるのは目に見えている。この同盟があるから、今は均衡しているが…」

「ああ。危うい均衡だな」

大っぴらに本来のデッキを使える状態になったことで、皮肉にも翔太が捕まった後から急激にシェイドは勢いを伸ばすことに成功した。

多くのデュエルギャングを撃破し、撃破には至らないものの従うことを表明するギャングもいる。

その結果、チームブレイドとともに動くという前提ではあるが、チームオーファンと対抗できるだけの力をつけることができた。

そのチームブレイドが何かを起こせば、それは天下分け目の戦いになるかもしれない。

「その前に、どうにかして翔太やほかのランサーズを救出できれば…」

 



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第71話 滅びの黒炎

「ん、ん、んんん…!」

下着姿で目を覚ました翔太はベッドから降り、床に乱暴に投げおいた自分の服を着る。

風呂に入っている間に、このホテルの作業員によってアイロンをかけられていたのか、何日も着ていて(もちろん、女性陣が「汚いから」という理由で最低限洗濯してくれてはいたが)しわだらけになっていた服がきれいになっていた。

起きてすぐにドアが開き、ボーイが食事を持ってきた。

「おい、2回戦の第1試合はいつから始まるんだ?」

カートに置かれている自分の分の朝食が乗ったお盆を受け取りながら、ボーイに尋ねる。

ええっと、と言った後で、彼は懐からスマホを出して調べ始めた。

そして、調べ終えるとそれをポケットにしまって翔太に目を向ける。

「今から2時間後です。出番が来ましたら、こちらから迎えに来ます」

「ああ…。最後の朝食からもしねーからな」

お辞儀をし、部屋を後にするボーイを見送ると、翔太は皿の上に置かれているバゲットをパンナイフで切らずにそのまま食いちぎる。

高級なホテルに似つかわしくない、きわめて野蛮な食べ方だが、今それをとがめる人間は1人もいない。

「にしても、問題なのはあいつだな…」

食べながら、翔太の脳裏に浮かんだのはあのセルゲイというデュエリストだ。

彼はギリギリまで自分のライフを減らし、最終的にはそれまでためていたうっぷんを爆発させるかのように、相手を一撃で撃破した。

その時の彼の行動は全く分からず、中継をしていたメリッサ自身も困惑するほどだった。

「ま…あいつのライフを中途半端に減らすなってことだな。あとは奴の動きが分かれば…」

「キュイー!」

「な…ビャッコ!?お前、今までどこへ!?」

急にベッドの下から、かわいらしい鳴き声をしながら出てきたビャッコに驚きを隠せない。

徳松とのデュエルの時、なぜか頭の上に乗っかってヘルメットをみたらし団子の三つでべとべとにしたのは記憶に新しい。

スタッフも当初はソリッドビジョンによるただの演出かと思ったらしく、試合後にヘルメットを受け取ったときに本当にベトベトになっているのを知ってびっくりしたというのはまた別の話。

そんな驚く翔太にビャッコはランドセルから出した、外付けのハードディスクを差し出す。

黒いソ○ー製で、容量は3TBらしい。

ついでに、テレビにつけるためのケーブルも延長ケーブル込で持っている。

「キュイキュイ!」

「これをテレビにつけろ…か??」

「キュイ!」

肯定するように首を縦に振るビャッコ。

幸い、備え付けのテレビには接続口が左側面についている。

そこにハードディスクを接続して、テレビをリモコンで操作する。

そして、ハードディスクに録画されている動画のリストが表示される。

「ああ…なるほどな。そういうことか…!」

 

(シティは1つ!みんな友達ー!今日からフレンドシップカップ2回戦が始まりまーす!!)

午前9時になると同時に、スタジアムが歓声に包まれる。

平日であるにもかかわらず、老若男女問わず、満席になるほど人が集まっている。

なお、黒咲とデニスのデュエルの影響で破損した個所はブルーシートで隠されている。

(えー、昨日はとあるアクシデントでスタジアム内のコースは使用不可能になりましたー…。ですので、今回はシティのデュエルレーンを使用することになり、同時にアクションカードの入手についても、若干ルールが変更されます!!コースについてはUターンしない限りはどのコースを自由に通っても構いません。そして、コース上に設置されているカードが描かれたパネルを通過することで、ランダムにアクションカードが出現し、通過したプレイヤーの手札に加わります!)

メリッサの実況と同時に、スタジアムのソリッドビジョンに説明された光景が表示される。

赤いDホイールと青いDホイールのデュエリストがデュエルをしていて、赤いプレイヤーは最初の分岐点を左に、青いプレイヤーは右に向かう。

そして、赤いプレイヤーがカードが描かれたパネルを通過と同時に、左腕のホルダーに自動的に生み出されたアクションカードが収納される。

手にしたアクションカード、《エクストリーム・ソード》の効果を受けた《ツイン・ブレイカー》が青いプレイヤーのフィールドにいる《デッド・ガードナー》を攻撃しようとする。

しかし、別々のコースを通ったことで距離が離れたため、《ツイン・ブレイカー》は接近するために何度もコースを飛び越える。

その間に青いプレイヤーもカードのパネルを通過し、《回避》を獲得。

それを発動して、攻撃を回避した。

(どのようなコースを選択するか、そして攻撃の際にはどれだけ相手に近づいて、アクションカード入手のチャンスを奪うかが勝負のポイント!なお、アクションカードによるスピードカウンターの増減及び手にすることができる回数が1ターンに1度のみという制約はそのままでーす!)

「パネル通過でアクションカード…?マ○オカートかよ」

Dホイールからメリッサの放送と映像を視聴した翔太はそう言いつつ、スタッフからくすねた缶コーラを飲み干し、ごみ箱に向けて投げ捨てる。

(そして、この2回戦第1試合に出場する選手は…秋山翔太選手とセルゲイ・ヴォルコフ選手!!)

「始まるか…」

手袋をつけ、デッキを左手首のホルダーにセットする。

自動的にデッキをシャッフルする音が聞こえ、その間翔太はDホイールに乗ったまま目を閉じる。

 

「ああ…いきなり翔太君のデュエル!?」

部屋を掃除していた伊織が箒を投げ捨て、テレビにかじりつく。

テレビにはスタートラインへとDホイールを進める翔太とセルゲイの姿があった。

「セルゲイ・ヴォルコフが出るのか…」

ちょうどトイレから戻ってきたモハメドが部屋に入ってきて、そのあとで柚子や里香らシェイドのメンバーが集まってくる。

テレビを見るモハメドは若干苦い表情を浮かべる。

「まさか、あいつがな…」

「このセルゲイってやつと何かあるのか?」

「ああ…。俺はこいつの捕縛チームの隊長を務めていた。奴はプロ、アマチュア問わず、デュエリストを再起不能になるまで叩きのめすのが趣味のサディストだ。捕縛の際には3人死んで、5人は後遺症が残るほどの重傷。2人はPTSDを発症して再起不能になった。そして、収容所でも死人が出るくらい暴れまわったって聞いた」

「そんな人がどうして…?」

あまりの出来事に両手で口を覆った柚子が恐る恐る尋ねる。

「俺も詳しいことはわからない。更正の余地なしとして、死刑判決が下り、比較的すぐに執行した…。俺が知っているのはそれだけだ」

モハメドの話が正しければ、セルゲイは何らかの手段で表向きでは死亡扱いとなり、これまで闇の中で生きてきたということになる。

ギャングの間で話題になっていないということは、治安維持局か評議会が1枚かんでいる可能性も考えられる。

「翔太君…」

「キュイー」

「ビャッコちゃん…」

いつの間に自分の膝の上に現れたビャッコの頭をやさしくなでる。

そして、最悪最低なデュエリストと戦うことになる翔太の身を伊織は案じた。

 

「おい、お前…デュエリスト・クラッシャーって話だよな?」

「…」

「ま…俺が言えた義理じゃあないけどな…お前につぶされたデュエリストへの情けとして、お前を叩き潰してやるよ」

「…」

翔太に声をかけられているにもかかわらず、セルゲイは無視を続ける。

しかし、客席に目を向けるようなこともせず、ただじっと橋へと続く出入り口のある真正面のゲートをじっと見るだけだった。

「ったく、少しくらい返事をしてもいいだろ…」

(さーあ、いよいよライディングデュエルの始まりです!!フィールド魔法《スピード・ワールド・A》発動!!)

発動と同時に、目の前にソリッドビジョンの信号が出現する。

そして、2人のDホイールのエンジンが動き出す。

(ライディングデュエルー…アクセラレーション!!)

信号が赤から青に変わると同時に、両者のDホイールが同時に発進し、スタジアムを飛び出す。

2台はまっすぐ進んでいき、やがて第1コーナーの代わりとなる左右への分岐点に差し掛かる。

「この分岐点を最初に通過したほうが先攻か…!」

アクセルを思いっきり踏み込み、スピードを引き上げていく。

だが、セルゲイは一般のDホイールと変わらないスピードで走り続け、やがて翔太は左に曲がった。

(あえて後攻をとったか…。ま、俺はどっちでもいいけどな)

 

翔太

手札5

ライフ4000

 

セルゲイ

手札5

ライフ4000

 

「俺の先攻。へっ…!」

最初の行動をとろうとて手札に触れる直前に、アクションカードパネルを通過する。

そして、それによって手札のホルダーにソリッドビジョンで構築されたアクションカードが加わる。

 

翔太

SPC0→1

 

「俺はモンスターを裏守備表示で召喚。そして、カードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

翔太

手札5→3(アクションカード1)

ライフ4000

SPC1

場 裏守備モンスター1

  伏せカード1

 

セルゲイ

手札5

ライフ4000

SPC0

場 なし

 

「俺のターン…ドロー」

 

セルゲイ

手札5→6

SPC0→2

 

翔太

SPC1→3

 

「俺は《茨の囚人-ヴァン》を召還…」

片方だけ折れている2本角の人型悪魔が現れると同時に、コース上から飛び出してきた茨に拘束されていく。

それと同時に、セルゲイ自身の体も茨で縛られた。

「ぐう、うう…ふふ…」

ブスブスと肌に刺さる茨の感触に魅了されているのか、無表情だったセルゲイが笑みを浮かべ始める。

それをDホイールの映像で見ている翔太、そして観客やMCであるメリッサ自身も気味の悪さを感じた。

「なんだよこいつ…ドMかよ…」

 

茨の囚人-ヴァン レベル1 攻撃0

 

「さらに俺は手札から《Sp-カウントアップ》を発動。俺のスピードカウンターが2つ以上あるとき、手札を任意の枚数墓地へ送り、墓地へ送ったカード1枚につき2つ、スピードカウンターが増える…。俺は3枚手札を墓地へ送る」

手札と引き換えに、一気にセルゲイのDホイールのスピードが増す。

次の分岐点を左に曲がり、翔太が通っているコースに接近していく。

 

セルゲイ

SPC2→8

 

手札から墓地へ送られたカード

・茨の囚人-アブト

・ネクロ・ガードナー

・ヘルウェイ・パトロール

 

「そして、俺は…」

「おい、ドMデュエリスト。一つ…宣言してやる」

突然、セルゲイのDホイールの画面の勝田の姿が映る。

「…」

突然画面が変化したにもかかわらず、笑みを浮かべたまま反応を見せないセルゲイを見つつ、右手人差し指を伸ばす。

「1回だ。俺はこれからお前に攻撃するのは1回だけ。それだけで…おまえを倒す」

(おっとーー!!翔太選手、ここで突然とんでもない宣言をしたー!で、でも…本当にできるのぉ??)

「あいつ…本当にやる気かよ!?」

「まさかぁ、ハッタリに決まってる!」

「でも、ハッタリでこんなに堂々できるもんかよ!?」

客席は翔太の宣言に驚き、騒然する。

「うわ…翔太君、大口たたいちゃってる…」

「それにドMデュエリストって…ちゃんと名前でよべや!!」

「…面白そうなことを言っているな」

テレビの前での庵たちの反応は様々だ。

だが、セルゲイは何も反応を見せず、茨が与える快感に酔うだけだ。

「信じるも信じないもお前しだいだ。M野郎。付け焼刃だが、この1発が俺のエンタメだ」

「…俺は手札から《Sp-シフト・ダウン》を発動。俺のスピードカウンターを6つ取り除き、デッキからカードを2枚ドローする。そして、カードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

翔太

手札3(アクションカード1)

ライフ4000

SPC3

場 裏守備モンスター1

  伏せカード1

 

セルゲイ

手札6→1

ライフ4000

SPC8→2

場 茨の囚人-ヴァン レベル1 攻撃0

  伏せカード1

 

「俺のターン」

 

翔太

手札3→4

SPC3→5

 

セルゲイ

SPC2→4

 

「俺は裏守備の《魔装霊レブナント》を反転召喚」

 

魔装霊レブナント レベル2 攻撃600(チューナー)

 

「《レブナント》のリバース効果発動。俺はデッキから魔装モンスター、《魔装鳥ガルーダ》を手札に加え、そのまま召喚」

《魔装霊レブナント》のマントの中から《魔装鳥ガルーダ》が飛び出し、2体の五芒星が光りだす。

 

魔装鳥ガルーダ レベル3 攻撃1200

 

「そして、俺はフィールド上の《レブナント》と《ガルーダ》をリリースし、融合。無念ゆえによみがえりし亡霊よ!炎の怪鳥よ!魔導の力によりて、今1つとならん。融合召喚!王家の獣、《魔装鳥獣グリフォン》!」

 

魔装鳥獣グリフォン レベル6 攻撃2400

 

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

翔太

手札4→2(アクションカード1)

ライフ4000

SPC5

場 魔装鳥獣グリフォン レベル6 攻撃2400

  伏せカード2

 

セルゲイ

手札1

ライフ4000

SPC4

場 茨の囚人-ヴァン レベル1 攻撃0

  伏せカード1

 

(翔太選手、宣言通り攻撃力2400のモンスターを召喚したにもかかわらず、攻撃をしません!宣言通り、本当に一撃でとどめを刺そうとしているのかーーー!?)

「…」

ちょうど翔太とセルゲイが走るコースが合流し、2人が並走する。

そして、セルゲイがじっと翔太を睨むように見ながら、カードをドローする。

 

セルゲイ

手札1→2

SPC4→6

 

翔太

SPC5→7

 

「…。俺は手札から《茨の囚人-ダーリ》を召喚」

今度は黄土色の車輪に茨で縛り付けられた青い髪の女性型悪魔が現れ、同時にセルゲイの体を縛るいばらの量が増えていく。

 

茨の囚人-ダーリ レベル1 攻撃0(チューナー)

 

「チューナーモンスター…?」

「レベル1の《茨の囚人-ヴァン》にレベル1の《茨の囚人-ダーリ》をチューニング。歪曲した煩悩を曝け出し、茨に肉塊を委ねよ!シンクロ召喚!現れよ、レベル2!《茨の戒人-ズーマ》! 」

《茨の囚人-ダーリ》が変化したチューニングリングを《茨の囚人-ヴァン》が通った瞬間、その姿が全身を茨で拘束され、それだけでなく片足には鉄球、首と片腕には拘束具をつけられた悪魔が現れ、同時に上空を飛んでいる《魔装鳥獣グリフォン》の体も茨で覆われる。

痛みが発生するのか、若干ぐらつきはしたものの、飛行不能になるほどのダメージではないらしく、そのまま飛び続けた。

 

茨の戒人-ズーマ レベル2 攻撃0

 

茨の囚人(ソーン・プリズナー)-ヴァン(アニメオリカ)

レベル1 攻撃0 守備0 効果 闇属性 悪魔族

(1):このカードが攻撃対象に選択された場合、手札の「茨の囚人」モンスター1体を相手に見せ、400LP払って発動できる。 その攻撃で自分が受ける戦闘ダメージを0にする。 その後のダメージステップ終了時、墓地からこのカードと、手札からこのカードの発動時に相手に見せた「茨の囚人」モンスター1体を攻撃表示で特殊召喚する。

 

茨の囚人-ダーリ(アニメオリカ)

レベル1 攻撃0 守備0 チューナー 闇属性 悪魔族

(1):このカード以外の「茨の囚人」モンスターが自分フィールドに存在する場合、相手バトルフェイズに1度、相手モンスターの攻撃宣言時に400LPを払って発動できる。 その攻撃を無効にする。

 

「《グリフォン》に茨を…!?グゥ…!!」

《魔装鳥獣グリフォン》にばかり目を向けていた翔太の体もセルゲイと同じように茨が現れ、しばりつける。

肌に突き刺さる冷たい感触に耐えながら、翔太はセルゲイに目を向ける。

「てめえ…どういうつもりだ…!?」

「《ズーマ》はシンクロ召喚に成功したとき、フィールド上に存在するすべてのモンスターに茨カウンターを1つずつ乗せる。そして、それにチェーンして俺は手札の《茨の囚人-ユオン》の効果を発動。俺のフィールド上に茨と名の付く闇属性・悪魔族モンスターが特殊召喚されたとき、ライフを400支払うことで、手札から特殊召喚できる。グフフ…」

鉛でできた十字架に茨で拘束された悪魔が現れ、セルゲイの両手首を拘束する茨が強く締まっていく。

あまりの締まりのせいか、セルゲイの両手首から血が流れているが、それを見る彼の眼はとてもうれしそうだった。

 

セルゲイ

ライフ4000→3600

 

茨の囚人-ユオン レベル1 守備0(茨カウンター0→1)

茨の戒人-ズーマ レベル1 攻撃0(茨カウンター0→1)

魔装鳥獣グリフォン レベル6 攻撃2400(茨カウンター0→1)

 

「俺は俺はカードを1枚伏せ…ターンエンド…」

 

翔太

手札2(アクションカード1)

ライフ4000

SPC7

場 魔装鳥獣グリフォン(茨カウンター1) レベル6 攻撃2400

  伏せカード2

 

セルゲイ

手札0

ライフ4000

SPC4

場 茨の囚人-ユオン(茨カウンター1) レベル1 守備0

  茨の戒人-ズーマ(茨カウンター1) レベル1 攻撃0

  伏せカード2

 

「俺のターン…ぐぅ…!?」

急に茨が刺さっている個所から激痛が走る。

そのせいでDホイールがぐらつき、危うく壁に激突しそうになるが、何とか立て直す。

「《ズーマ》のモンスター効果…。お互いのターンのスタンバイフェイズ時、それぞれのフィールド上に存在する茨カウンターの乗っているモンスターの数×400のダメージをプレイヤーは受ける」

「ちぃ…!たった400でここまで肉体にダメージが…」

 

翔太

ライフ4000→3600

手札2→3

SPC7→9

 

セルゲイ

SPC4→6

 

「俺は《スピード・ワールド・A》の効果発動!スピードカウンターを7つ取り除き、デッキからカードを1枚ドローする」

 

翔太

手札3→4

SPC9→2

 

「そして、俺はモンスターを裏守備表示で召喚」

「俺は《ユオン》の効果を発動…」

翔太が裏守備で召喚したモンスターに向けて、《茨の囚人-ユオン》の十字架についている茨が襲い掛かる。

裏守備となっていた《魔装学者エヴェレット》がそのまま縛り上げられて、表側守備表示に代わる。

「また茨カウンターを…!」

「《ユオン》は相手ターンに1度、400ライフを支払うことでセットされたモンスターを表側守備表示に変更し、茨カウンターを1つのせる…ぐおお…お…おお!!」

《茨の囚人-ユオン》の力によってか、セルゲイの体を縛る茨の締め付けが強くなる。

「うおおおお…ウハ、ウヘハ…」

肉体にダメージが発生するほどの痛みを受けて、笑みを浮かべるセルゲイにさすがのメリッサも沈黙し、観客はドン引きする。

 

魔装学者エヴェレット レベル3 守備0(茨カウンター0→1)

 

「なら俺は《エヴェレット》の効果を発動!このカードをゲームから除外し、俺のフィールド上に存在する魔装モンスター1体の攻撃力を1000アップさせる。俺が選ぶのは《グリフォン》!」

《魔装学者エヴェレット》は自らが持ち出した大きな世界地図に包まれてその姿を消し、それと同時に平行世界の《魔装鳥獣グリフォン》が現れる。

 

魔装鳥獣グリフォン レベル6 攻撃2400→3600

 

(仲間のモンスターの力を受け、《グリフォン》が攻撃力アップー!そして、このカードは1ターンに2度攻撃できる!あとは貫通効果を与え…)

「さらに俺は手札からアクション魔法《リリース&ブースト》を発動!俺のフィールド上に存在するモンスター1体をリリースし、そのレベルの数値分スピードカウンターを上昇させる。俺は《グリフォン》をリリースする!」

並行世界の自分自身とともに黄色い粒子となって、《魔装鳥獣グリフォン》が姿を消す。

そして、その粒子を吸収した翔太のDホイールが加速する。

 

翔太

SPC2→8

 

リリース&ブースト

アクション魔法カード

(1):自分フィールド上に存在するモンスター1体をリリースし、そのモンスターのレベルの数値分、スピードカウンターを乗せる。

 

(なんと翔太選手、せっかくパワーアップさせたモンスターをリリース!これで、フィールド上からモンスターがいなくなってしまいましたー!!)

「俺はドMな奴を中途半端にいたぶるのは嫌いだからな。徹底的に痛めつけて、塩を塗り込んでやる」

(うわ…どっちも悪役…)

「そして、俺はもう1度《スピード・ワールド・A》の効果を発動。スピードカウンターを7つ取り除き、デッキからカードを1枚ドローする。これでターンエンドだ」

 

翔太

手札4

ライフ3600

SPC8→1

場 伏せカード2

 

セルゲイ

手札0

ライフ3600

SPC6

場 茨の囚人-ユオン(茨カウンター1) レベル1 守備0

  茨の戒人-ズーマ(茨カウンター1) レベル1 攻撃0

  伏せカード2

 

「翔太のフィールドがこれでがら空きに…!?」

「心配いらない。セルゲイのフィールドに存在するモンスターはすべて攻撃力0。それに、これであいつのフィールドから茨カウンターが消えた。ダメージを受けることはなくなる。だが…」

モハメドはテレビからじっとセルゲイを見つめる。

ここまでの彼のデュエルを見続けたモハメドは彼に大きな違和感を感じた。

(逮捕されるまでの奴のデッキは攻撃力・破壊力重視のパワーデッキ。それに、あんなにおとなしくしているはずがない。この大会までの間に一体何が起こった…?)

 

「俺のターン…」

 

セルゲイ

手札0→1

SPC6→8

 

翔太

SPC1→3

 

「スタンバイフェイズ時に、《ズーマ》の効果発動。俺は合計800のダメージを受ける…!ぐうう…!!!」

体中を縛る茨が容赦なくセルゲイの体を穴だらけにしようと深々ととげを差し込んでいく。

額から流れる血がセルゲイの目を赤く汚し、刻まれた黄色いマーカーを塗りつぶす。

 

セルゲイ

ライフ3600→2800

SPC8→7

 

そんな中、今度は3方向に分かれた分岐点に差し掛かる。

前に出ていた翔太がまっすぐ進むと、そんな彼についていくように、セルゲイもまたまっすぐ進んでいく。

全身に伝わる幻想ではない、現実の痛みを感じながら。

「…美しい」

ポツリと、誰にも聞こえないくらいの小さな声でセルゲイはささやく。

(思えば1回戦で戦ったあの男…侮ってばかりで、美しさがみじんも感じられなかった。だが…)

セルゲイの目が翔太へと向かい、両目が赤く発光する。

「(だが…秋山翔太、こいつは最初から俺に勝つ気でいる。しかも、たった1発だけの攻撃で俺に勝つと宣言している…。奴の魂の黒い輝き…ぶっこわしたい…)俺はフィールド上に存在する《ユオン》の効果を発動!このカードをリリースすることで、墓地から茨の囚人を2体まで表側守備表示で特殊召喚する!俺が特殊召喚するのは《ヴァン》、そして《ダーリ》!!」

十字架にかけられた囚人の胸部を鋭利な2本の茨が回転しながら貫く。

心臓を失ったことで、その囚人は力尽きるが、その穴の中から《茨の囚人-ヴァン》と《茨の囚人-ダーリ》が這うように出てくる。

 

茨の囚人-ヴァン レベル1 守備0

茨の囚人-ダーリ レベル1 守備0

 

「そして、この効果で特殊召喚したモンスター1体につき、400ライフを失う…!ぐおお!?」

囚人を死に至らしめた2本の茨が鞭となって、何度もセルゲイの体を打ち始める。

誰もがその光景を見て顔を青く染めるが、当の本人は狂気の笑みを浮かべながら受け止めている。

 

セルゲイ

ライフ2800→2000

 

茨の囚人-ユオン

レベル1 攻撃0 守備0 効果 闇属性 悪魔族

「茨の囚人-ユオン」の(1)(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):相手のターンのメインフェイズ1に1度、400LPを支払い、相手フィールド上に裏側守備表示で存在するモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを表側攻撃表示に変更する(そのとき、リバース効果は発動しない)。その後、そのカードに茨カウンターを1つ乗せる。

(2):自分のターンのメインフェイズ1に、自分フィールド上に存在するこのカードをリリースし、墓地に存在する「茨の囚人」モンスターを2体まで対象にして発動できる。そのモンスターを表側守備表示で特殊召喚する。その後、この効果で特殊召喚したモンスター1体につき、400LPを失う。

 

「長官!セルゲイ・ヴォルコフの制御システムが危険信号を発しています!!」

治安維持局の男性オペレーターが冷や汗をたっぷり流しながらロジェに訴える。

「なに!?セルゲイめ…!制御装置は完ぺきだったはずでは…!!」

ロジェの脳裏にセルゲイを「献上品」として引き渡した、小判状のグラサンで派手なスーツの男のにやけ面と研究員の色素の薄い笑みが浮かび、怒りを覚える。

実を言うと、セルゲイは確かに死刑判決を受けていた。

しかし、彼のデュエルの力量を見たロジェによって極秘裏に人体改造を施されたことでロジェの私兵となった。

デュエリスト・クラッシャーであった頃の激しく狂気に満ちた姿は失われ、ロジェに従順で寡黙な犬となったのだ。

また、その狂気を封じ込めるために彼の体のは厳重な制御装置が埋め込まれており、それによって彼を完璧にコントロールできるとロジェは確信していた。

だが、現実として今、現在進行形でロジェの狂気が制御できないくらいに目覚めており、今爆発しようとしている。

「制御レベルを最大にしろ!!なんとしてでもセルゲイを止めるのだ!!」

「もうやっています!!ですが…止まりません!!!」

「ぐぅぅ…今、セルゲイを暴走させるわけにはいかんのだ…!!」

頭を抱えるロジェは必死にセルゲイを止める方法を模索し始めた。

彼が暴走するという最悪のシナリオが彼の脳裏から抜け落ちていた。

 

「さらに俺は墓地に存在する《茨の囚人-アブト》の効果発動!!このカードが墓地に存在するとき、ライフを400支払うことで、デッキから融合またはフュージョンと名の付く魔法カード1枚を手札に加える。俺が手札に加えるのは《Sp-ミラクルシンクロフュージョン》だ!!」

柱に逆さづりにされている赤い衣の悪魔が悲鳴を上げると同時に、その悪魔を拘束する茨の棘がセルゲイに向けて発射される。

棘を受け、傷口が開いているのを気にせず、彼はデッキから《Sp-ミラクルシンクロフュージョン》を手札に加える。

 

セルゲイ

ライフ2000→1600

 

「そして、永続罠《リミット・リバース》を発動!その効果で墓地から《アブト》を攻撃表示で特殊召喚する!さあ…もっとだ!!罠カード《破壊指輪》を発動!俺のフィールド上に存在するモンスター1体を破壊し、お互いに1000のダメージを受ける!!そして、《アブト》はカード効果によって破壊されるとき、俺はライフを400支払うことでデッキからカードを1枚ドローできる!!」

《リミット・リバース》によってフィールドによみがえった逆さづりの悪魔の指にはめられた《破壊指輪》が爆発し、爆風が翔太とセルゲイを襲う。

「く…俺が攻撃しないから、しびれを切らせたか!?」

 

翔太

ライフ3600→2600

SPC3→2

 

セルゲイ

手札1→2

ライフ1600→200

SPC7→6

 

「ウワハハハハハ!!そうだ、この痛み…!この痛みが俺の心を響かせる…!!美しいお前を…壊せとぉ!!」

「壊れたな…いや、最初から壊れるか…」

 

茨の囚人アブト

レベル1 攻撃0 守備0 チューナー 闇属性 悪魔族

「茨の囚人-アブト」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に存在するこのカードがカード効果によって破壊されたとき、400LPを支払うことで発動できる。自分はデッキからカードを1枚ドローする。

(2):このカードが墓地に存在するとき、400LPを支払うことで発動できる。デッキから「融合」「フュージョン」魔法カード1枚を手札に加える。この効果を発動したターン、自分は「茨」モンスター以外のモンスターを特殊召喚できない。

 

「俺は手札から《Sp-ミラクルシンクロフュージョン》を発動!!スピードカウンターが4つ以上あるとき、俺のフィールド・墓地のシンクロモンスターを含むモンスターを融合する!!俺が融合素材とするのは《ズーマ》、《ヴァン》、《ダーリ》!!辛苦、痛み、凡庸なる価値を骸とし、全て脱ぎ去り今!茨の道を越えよ!融合召喚!現れよ!《茨の超越戒人-ヴァン・ダーリ・ズーマ》! 」

「シンクロ召喚!?ってことは…アカデミアの!!」

フィールドにいる3人の囚人の茨が絡み合い、うめき声をあげながら3人はそれに引っ張られていく。

やがて、3人が集められた場所の足元に3枚の刃のように鋭利なラフレシアの花びらが出現する。

 

茨の超越戒人-ヴァン・ダーリ・ズーマ レベル8 攻撃0

 

茨の戒人(ソーン・オブザーバー)-ズーマ(アニメオリカ・調整)

レベル2 攻撃0 守備0 シンクロ 闇属性 悪魔族

チューナー+「茨の囚人」モンスター1体

(1):このカードがS召喚に成功した場合、フィールドの全てのモンスターに茨カウンターを1つ置く。

(2):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、茨カウンターが置かれたモンスターは攻撃できず、お互いのプレイヤーは、それぞれ自分のスタンバイフェイズ毎に、それぞれのフィールドの茨カウンターの数×400ダメージを受ける。

(3):このカードが攻撃対象に選択された場合、 このカードのS召喚に使用したS素材モンスター一組が自分の墓地に揃っている場合、 400LPを払い、その素材モンスター一組を対象として発動できる。 その攻撃で自分が受ける戦闘ダメージを0にする。 その後のダメージステップ終了時、墓地からこのカードと対象のモンスターを攻撃表示で特殊召喚する。

 

「《ヴァン・ダーリ・ズーマ》の…ヒヒヒ、攻撃力は…ハハ、2500から俺のライフを引いた数値の倍…。俺のライフは200、よってこの《ヴァン・ダーリ・ズーマ》の攻撃力は4600ゥ!!」

 

茨の超越戒人-ヴァン・ダーリ・ズーマ レベル8 攻撃0→4600

 

(なんということでしょう!?今までセルゲイ選手が自らライフを削り続けたのはまさにこのため!!切り札である《ヴァン・ダーリ・ズーマ》の破壊力を最大限まで引き出すためだったのです!!)

「攻撃力4600!?どうすんじゃ、翔太!?フィールドががら空きじゃぞ!?!?」

「自分のライフを極限まで削って…なんちゅう危険なデュエルなんや!?」

「何も対策せずにデュエルをしていたら…負けていたかも」

漁介や里香、柚子が口々にセルゲイのデュエルに恐れを抱きながら言う。

「これが…融合次元のデュエル…」

「フハハハハ!!一撃で俺を倒すといったなぁ、その自信に満ちた美しいお前を逆に一撃でたたきつぶしてやる!!」

「さすがに…やべえか…!!」

セルゲイの狂気の象徴ともいえる《茨の超越戒人-ヴァン・ダーリ・ズーマ》の圧倒的な攻撃力に戦慄する。

そんな翔太の目の前にアクションカードパネルが見えてくる。

「こいつで…!!」

アクションカードを手にするため、スピードを上げていく。

(先に通過したアクションカードパネルは一定時間フィールドから消える!あいつにアクションカードを渡すわけには…!)

「バトルだ!!《ヴァン・ダーリ・ズーマ》でダイレクトアタックぅぅ!!」

攻撃命令を受けると同時に、今までうめき声しか挙げていなかった3人の囚人が強烈な悲鳴を上げ始める。

その悲鳴が超音波となり、真空波を引き起こしているのか、コースにひびが入り、両サイドの壁が砕け散る。

さらに、セルゲイ自身はDホイールのスピードを引き上げ、一気にカードを手にしようとする翔太の真横に来る。

そして、そのまま彼を…。

「…くれてやるよ」

「…!?」

弾き飛ばそうと一気に横に車体を動かすと同時に、翔太はDホイールに急ブレーキをかけ、減速させる。

そして、勢いに任せて車体を大きく横へ動かしてしまったセルゲイは翔太にぶつかることなく、そのまま壁へ向かっていく。

音波のせいで構造が弱まったこと、そしてあまりの勢いだったがために壁は簡単に砕け散り、セルゲイはそのままコース外に落下しそうになる。

だが、落下しそうになった彼の腕を何者かがつかみ、そのままコース上に戻す。

「何…!?」

巨体である自分をDホイールごと引き上げることは翔太でもできない。

なぜ助かったのかと思い、翔太のフィールドを見ると、そこには《魔装騎士ペイルライダー》の姿があった。

さらに、《茨の超越戒人-ヴァン・ダーリ・ズーマ》は叫び声をやめている。

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

 

「俺は罠カード《死を告げる風》を発動した。俺のフィールド上にモンスターが存在しない状態でダイレクトアタックを受けるとき、その攻撃を無効にする。そして、手札・デッキ・墓地から《魔装騎士ペイルライダー》を特殊召喚する」

 

死を告げる風

通常罠カード

(1)自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、相手の直接攻撃宣言時に発動できる。その攻撃を無効にする。その後、自分の手札・デッキ・墓地に存在する「魔装騎士ペイルライダー」1体を特殊召喚する。

 

(なんということでしょう!!攻撃力4600の《ヴァン・ダーリ・ズーマ》の一撃をかわし、自らのエースを呼び出した!!ここから逆襲が始まるのかーーー!?!?)

「はあああ…」

セルゲイの攻撃宣言時、思わずその場で立ち上がってしまった伊織が安心して、へなへなとその場に座り込む。

いきなりの絶体絶命を回避したことで、シェイドのメンバーも伊織ほどではないが、安どの表情を浮かべた。

(まさか、融合モンスターを…。ってことは、長官は…)

「さあ…お前のターンはまだ終わってねえ。どうするんだ…?」

「俺は…ターン、エンド…」

 

セルゲイ

手札2

ライフ200

SPC6

場 茨の超越戒人-ヴァン・ダーリ・ズーマ レベル8 攻撃4600

 

翔太

手札4

ライフ2600

SPC2

場 魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

  伏せカード1

 

「ふうう…危なかった」

翔太は部屋で見た映像を思い出す。

それはまさにセルゲイとデイモンのデュエルの一部始終であり、なぜデイモンがたった1ターンで敗北したのかがわかるものだった。

「(今回はビャッコに感謝しねーとな…)俺のターン!」

 

翔太

手札4→5

SPC2→4

 

セルゲイ

SPC6→8

 

「こいつは…!?」

ドローしたカードを見た瞬間、急に翔太の視界が真っ暗になる。

そして、真っ黒に染まった空間がまるで宇宙空間のような光景へと変わっていき、いくつもの星が出現していく。

(なんだよ…こいつは…)

無数の星々が光る中、翔太の脳裏にある言葉が浮かぶ。

「進化の青、調和の紫、開拓の白、秩序の黒、克己の緑…なんだ…なんだよ、この言葉は…」

言葉の意味が分からず、戸惑う翔太の目の前に《魔装騎士ペイルライダー》が現れる」

「《ペイルライダー》…」

自らの名前を呼ばれた死の騎士はうなずくと、次第に景色が元に戻っていった。

「…。俺はスケール2の《魔装槍士タダカツ》とスケール7の《魔装砲士ボナパルド》でペンデュラムスケールをセッティング」

翔太の左側の《魔装槍士タダカツ》が、右側に白い軍服で五芒星が刻まれた大砲をそばに待機させたやや肥満体な男が現れ、青い光の柱を生み出す。

「ドM…これがファイナルターンだ!!」

(おっとー!ここで翔太選手、まさかの勝利宣言!!本当に…本当に一撃で終わらせるのでしょうかーーー!?)

「まず、俺は手札から《Sp-オーバー・アクセル》を発動。俺のスピードカウンターが4つ以上あるとき、ターン終了時まで相手は俺のモンスターの攻撃を無効化できない。更に、《ボナパルド》のペンデュラム効果を発動!俺のフィールド上に魔装騎士が存在するとき、1ターンに1度、相手フィールド上に存在するモンスター1体の効果をターン終了時まで発動できなくする!ネット弾発射!」

《魔装砲士ボナパルド》の号令と共に、大砲が自動的に砲弾を発射する。

「ぐうう…俺は《ヴァン・ダーリ・ズーマ》の効果を発動!1ターンに1度、ライフを100支払うことで、相手フィールド上に存在するモンスター1体の攻撃力をターン終了時まで100にする!!」

《茨の超越戒人-ヴァン・ダーリ・ズーマ》を縛る茨が《魔装騎士ペイルライダー》を襲う。

光剣で何本かの茨を切り裂き、スラスターを利かせて上空へ向かって回避したものの、最後には足をつかまれ、そのままビルに向けて振り下ろされる。

リアルソリッドビジョンであるため、ぶつかると同時にガラスが砕け、仕事をしていたサラリーマンたちが驚きを見せる。

その間に弾丸が《茨の超越戒人-ヴァン・ダーリ・ズーマ》に接触し、それと同時にネットが展開されてそのモンスターの未動きを封じていく。

 

セルゲイ

ライフ200→100

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500→100

茨の超越戒人-ヴァン・ダーリ・ズーマ レベル8 攻撃4600→4800

 

Sp-オーバー・アクセル

通常魔法カード

(1)自分のスピードカウンターが4つ以上あるときにのみ発動できる。このターン、自分のモンスターの攻撃は無効化されない。

 

「どうだぁ!?これでお前は…」

「更に俺は罠カード《魔装伝心》を発動!セッティングされている魔装ペンデュラムモンスターのスケールを1から10のいずれかの変更する。俺は《魔装槍士タダカツ》のペンデュラムスケールを2から7に変更する!」

 

魔装槍士タダカツ(赤) Pスケール2→7

 

魔装伝心

通常罠カード

「魔装伝心」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分のPゾーンに存在する「魔装」Pカード1枚を対象に発動できる。そのカードのPスケールを1~10のいずれかの数値に変更する。

 

「なんで!?そんなことをしたら、ペンデュラム召喚ができなくなる…!」

「翔太君…何をするの…?」

「俺はレベル7の《ペイルライダー》とスケール7の《タダカツ》、《ボナパルド》でオーバーレイ!」

2本の青い光の柱が消え、上空に青いオーバーレイネットワークが生まれる。

それと同時に、翔太のエクストラデッキが光り、《PX魔装騎士フェラーレ・カヴァリエーレ》が変化していく。

その中に3体のモンスターが取り込まれ、その中心となっている《魔装騎士ペイルライダー》の鎧にひびが入る。

「秩序の黒を纏いし炎の死神よ、さまよえる魂を焼き、眠りへ導け。ペンデュラムエクシーズチェンジ!現れろ、《魔装騎炎ブリュンヒルデ》!!」

鎧が砕け散り、その中から全身に黒い炎を宿し、赤黒い鎧と大鎌を装備した銀髪の女性がその姿を見せる。

(《HADES》の時は少年、《ブリュンヒルデ》では女…《ペイルライダー》…お前は何者なんだ…)

 

魔装騎炎ブリュンヒルデ ランク7 攻撃2800

 

魔装砲士ボナパルド

レベル5 攻撃2100 守備1000  地属性 戦士族

【Pスケール:青7/赤7】

「魔装砲士ボナパルド」の(2)のP効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。

(2):自分フィールド上に「魔装騎士」が存在する場合、相手フィールド上に存在するモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターはターン終了時まで効果を発動できない。この効果は相手ターンでも発動できる。

【チューナー:効果】

「魔装砲士ボナパルド」の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードを手札からP召喚に成功したとき、相手フィールド上に存在するモンスターの数が自分フィールド上に存在するモンスターの数よりも多い場合に発動できる。自分はデッキからカードを2枚ドローする。

 

茨の超越戒人(ソーン・オーバーザーバー)-ヴァン・ダーリ・ズーマ(アニメオリカ・調整)

レベル8 攻撃0 守備0 融合 闇属性 悪魔族

「茨の囚人-ヴァン」+「茨の囚人-ダーリ」+「茨の戒人-ズーマ」

(1):このカードの攻撃力は、2500から自分のLPの数値分を引いた数値の倍になる。

(2):1ターンに1度、100LPを払い、相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。その相手モンスターの攻撃力はターン終了時まで100になる。この効果は相手ターンでも発動できる。

 

「あれ…??《ペイルライダー》って…女のひと??」

映像で翔太の新たな切り札を見た伊織が首をかしげる。

翔太にはすでに《魔装騎士HADES》を見せてはもらっていた分、この変化には驚きを隠せなかった。

「その姿には驚いたが、攻撃力2800だぞ。それで攻撃力4600の《ヴァン・ダーリ・ズーマ》をどうやって…」

「俺は《ブリュンヒルデ》の効果を発動。オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、俺たちの墓地に存在するカードを5枚まで除外できる。俺が除外するのはお前の墓地の《ヴァン》、《ダーリ》、《ズーマ》、《アブト》、《ネクロ・ガードナー》だ!!スピリット・パニッシュ!!」

オーバーレイユニットが鎌に宿った瞬間、翔太が宣言した5体のモンスターがセルゲイの墓地から飛び出してくる。

そして、その5体のモンスターが黒い球体となったのと同時に《魔装騎炎ブリュンヒルデ》の鎌で切り裂かれ、消滅した。

「そして、除外したカード1枚につき、攻撃力が400アップし、相手フィールド上に存在するモンスターの攻撃力を300ダウンさせる!」

「何!?」

切り裂いた魂から力を得た美女は左手の黒い炎を放つ。

炎は《茨の超越戒人-ヴァン・ダーリ・ズーマ》を茨ごと焼きつくしていき、その力を奪い取っていく。

 

魔装騎炎ブリュンヒルデ ランク7 攻撃2800→4800

茨の超越戒人-ヴァン・ダーリ・ズーマ レベル8 攻撃4600→3100

 

魔装騎炎ブリュンヒルデ

ランク7 攻撃2800 守備2500 エクシーズ 無属性 戦士族

【Pスケール:青3/赤3】

(1):1ターンに1度、自分のPゾーンに存在するこのカードを破壊することで発動できる。自分の手札・エクストラデッキに存在する「魔装騎士」モンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する。

(2):このカードはエクストラデッキへ送られるとき、裏向きとなる。

【モンスター効果】

「魔装騎士ペイルライダー」+Pゾーンに存在するPスケールが同じカード2枚

フィールド上に存在するこのカードはルール上、「魔装騎士」モンスターとして扱う。

レベル7がP召喚可能な場合にエクストラデッキの表側表示のこのカードはP召喚できる。

「魔装騎炎ブリュンヒルデ」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードのX素材を1つ取り除くことで発動できる。互いの墓地に存在するカードを5枚までゲームから除外する。その後、このカードの攻撃力は除外したカードの数×400アップし、相手フィールド上に存在するすべてのモンスターの攻撃力・守備力は除外したカードの数×300ダウンする。

(2):モンスターゾーンのこのカードが戦闘・効果によって破壊された場合に発動できる。自分のPゾーンに存在するカードをすべて破壊し、このカードを自分のPゾーンに置く。

 

「黒い炎の女…黒い…魂…」

「終わりだ…ドM。《ブリュンヒルデ》で《ヴァン・ダーリ・ズーマ》を攻撃!ヴァリキュリア・ブラックフレア!!」

《魔装騎炎ブリュンヒルデ》が地面に自分の鎌を突き刺し、目を閉じて呪文を唱える。

すると、鎌が次第に黒いマグマへと姿を変えていき、その場にエネルギーが集まっていく。

彼女が目を開き、両手を上空に掲げた瞬間、その場で黒い大爆発が起こり、翔太とセルゲイ、そしてそれぞれのモンスターがその爆発に巻き込まれていった。

「おおおおおおおおおおお!!!!!」

 

セルゲイ

ライフ100→0



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第72話 解封

(きまったーーー!!秋山翔太選手が召喚した美しき死神の前にデュエリスト・クラッシャーが屈しましたー!!)

デュエル終了と同時に、実況が流れ、観客席が歓声に包まれていく。

「うおおおお!!!」

「本当に一発で決めやがった!!」

「ざまぁみろ!デュエリスト・クラッシャー!!」

歓声に包まれる中、翔太とセルゲイがいたコースを包む黒い煙が風で飛ばされていく。

そして、そこに残っていたのは動きを止めたセルゲイと彼のDホイール、そしてコース中央にできた大きな穴だけだった。

「おい…なんだよあの穴。それより…」

「あれ?勝ったやつがどこにもいねーぞ!?」

「どうなってるのかしら…??」

歓声が一気に消え、その代わりにザワザワとした声が客席を包んでいく。

(あ、あれー??おーい、翔太選手??どこにいったのー??勝者は戻ってこないとダメでしょー??)

 

「ふうう…どうにか、破壊されずに済んだか…」

デュエルの一部始終を見ていたロジェは額の汗をハンカチでぬぐい、付近を警邏中のセキュリティと通信をつなげる。

「すぐにセルゲイを回収しなさい。そして、動ける部隊は大至急、秋山翔太の確保に当たってください」

「…デュエリスト・クラッシャーが敗れたようですね」

通信を終えると同時に、ブーンが入ってくる。

彼の手にはUSBメモリが握られていて、それをロジェの机の上に置く。

「開発者からのセルゲイに関する新たなプランだ」

「…用意がよろしいですね、ブーン」

「同じデッキのデュエルが何度も放送されれば、おのずとそれを攻略する術を見出す奴がいる。だとしたら、こちらも新しいプランを用意しなければなりませんからな。まぁ、今のデュエリスト・クラッシャーにはそのようなことはできませんが…」

「…。そうですね。ならば、そのプランを使わせていただきましょう」

USBメモリがロジェの胸ポケットに入ると、ブーンは頭を下げた後で部屋を出ていった。

(ガースキー・ブーン…。さすがはシンクロ次元の元テロリスト。使える男だ…。能力があり、そして私の願いをかなえてくれるのであれば、犯罪者であろうと喜んで部下に迎え入れましょう。すべてはシンクロ次元の王となるために…)

ノートパソコンに映っている映像を切り替えると、そこにはセキュリティの隊員たちによって包囲された評議会の施設が映っている。

ロジェは彼らの体内にナノマシンを注射させており、これらにある信号を送ることによって自らの手足となる奴隷へと変貌させていた。

これに対して、評議会は何も反応を示していない。

 

「よし…Dホイールはここに置いておく」

トップスの裏路地でDホイールを捨てた翔太はポケットから紙きれを取り出し、それを見ながらマンホールを探し始める。

「番号番号…こいつか」

1つ1つのマンホールの番号を確認し、紙切れに書いてある番号と一致するものを見つけると、周囲を確認してからそれを開け、中に入っていく。

入ったと同時に、下水道特有の悪臭が翔太を襲う。

「ちっ…なんでこんなところに…」

「翔太殿」

梯子を下りると、月影が現れて、翔太に防臭マスクをつける。

匂いの生でなかなか呼吸できなかった翔太は改めて、ここで深呼吸をする。

「ふうう…で、なんだ?俺に用があるのかよ?」

そういいながら、先ほどまで見ていた紙切れを月影に渡す。

これは部屋を出る前、服のポケットの中に違和感を感じ、調べたときに見つけたものだ。

「いかにも。われらのこれまでの状況について、説明しておこうと思った次第」

「ああ…。で、変わったことは?」

「まずは…治安維持局の長官であるジャン・ミシェル・ロジェが融合次元の裏切り者だということが判明した」

「ん…?裏切者?工作員じゃあないのか??」

デュエルチェイサー227とセルゲイが融合召喚を使用したことで、シンクロ次元には融合次元に関係する人物がいるだろうということは薄々感じていた。

だが、まさか関係者は関係者でも、裏切者だということには翔太は少しだけ驚いた。

「で…そいつはなんで裏切りを?」

「目的はシティの王になるためらしい。そのために治安維持局にはリアルソリッドビジョンを手土産に入り、そして今こうして長官となっている。また、これはヒイロ殿からの情報であるが…紫雲院素良がシンクロ次元にいる」

「素良…?なんでそいつが…」

「それは、警告のためだよ」

そういって、暗闇の中から素良がやってくる。

さすがに下水道ではキャンディーを舐めるわけにはいかないのか、何も加えることなく翔太を見ている。

「よぉ、融合次元のスパイ。どの面下げてここに来てんだか…」

そういいながら、翔太はデュエルディスクを展開し、じっと素良を見る。

「同門の情けだ。俺の手でお前を終わらせてやるよ」

「…悪いけど、今は翔太とデュエルをする気はない。それよりも…セレナと柚子の居場所を知りたい」

「何…?あいつら2人をさらうつもりか?」

「そうじゃない。いや…どうなんだろう。今の僕には、分からない。果たして、2人を融合次元へ連れていけばいいのか、それとも融合次元に引き渡すべきではないのか…わからなくなってしまった…。僕は…アカデミアに救われたんだ…」

「救われた…?」

「翔太殿、素良殿。ここで長居するわけにはいかん。場所を変えよう」

翔太と素良の会話を遮るように、月影が2人に提案する。

下水道とはいえ、ここはもはや治安維持局の、ロジェの庭だ。

一か所に長居していたら、お縄が待っている。

翔太は先に月影についていく。

(…そろそろか…)

素良も少し離れた距離から2人についていく。

自分の首筋に針なしの注射をし、注射器をその場に捨てながら。

 

(んえええーっと、皆さま!行方不明になった翔太選手なのですが、現在治安維持局が行方を追っているという情報が入りました。早くても今晩には見つかるということですので、このままフレンドシップカップを続行させていただきまーす!!2回戦第2試合のカードは…榊遊矢選手とシンジ・ウェーバー選手ー!!)

翔太が行方不明になった後からざわつき続けていた客席だが、大会続行という知らせを聞くと、これまでの空気が嘘だったかのように歓声を上げる。

そして、スタートラインには遊矢とシンジが立つ。

「翔太…一体どこにいるんだ…」

遊矢は部屋を出てからここに来るまで、ずっとそのことを考えていた。

デュエルで勝利したにもかかわらず、その場から姿を消した翔太の行動が理解できなかったからだ。

「遊矢!奴は逃げたんだ。お前らを見捨ててな!!」

「違う!!口は悪いけど、仲間を見捨てるようなことをする奴じゃない!きっと…何か理由が…!」

「ふん…そんなことを考えて、デュエルに集中できなかったとしても、容赦はしない!どんな犠牲を払ったとしても…俺は革命をやり遂げる!」

強靭な意思を込めて、シンジは遊矢に宣言する。

シンジはシンクロ次元で富をむさぼり続けるトップスに対して憎しみを背負いながら生きていた。

幼いころに、自分が世話になっていた孤児院がトップスの都合によって強制的に取り壊され、行き場を失った。

そして、生きていくために幼少期は同じ境遇の仲間を集めて盗みを繰り返した。

彼本人は運が良かったのか、要領がよかったのか、ほかの仲間が次々と捕まる中、遊矢とクロウの巻き添えとなる形で捕まるまで収容所に入ることがなかった。

トップスの犬と認識するセキュリティにつかまり、運よく出てくることのできた仲間のマーカーが刻まれた顔を見て、彼はよりトップスへの憎しみを強め、次第にコモンズの自由のため、トップスを打倒しようと思うようになった。

仲間であるクロウとともにギャングに加わったのは、その力を得るためだ。

そして、このフレンドシップカップに出場しているのはコモンズに決起を促すため。

シンジにも、1回戦で戦ったデュエルチェイサー227と同じく、勝たなければならない理由がある。

「…やらなくちゃ、いけないのか…俺たちを助けてくれたシンジも…」

だが、227とは違い、シンジはシンクロ次元に来たばかりで、仲間とはぐれてしまった遊矢をクロウとともにかくまい、食べ物をくれた恩のある人物。

真っ赤な他人である227と同じく、付き合いは浅いものの、遊矢にとっては仲間に等しい存在だ。

(ふん…1回戦で少しは気骨を見せたと思ったが、まだまだ甘いな、小僧)

「オッドアイズ…」

(そんな貴様のためだ…。俺が進化した時に同時にかけたシールドを解いてやる)

「シールド?何のことだオッドアイ…うう…!?」

オッドアイズの声が消えると同時に、脳に直接殴られたかのような衝撃が走る。

あまりの痛みで悲鳴を上げ、涙が出てくる。

「仮病か?だったら即刻サレンダーしたらどうだ!?」

「ヘボいデュエリストだな!戦う前に悲鳴を上げやがって!」

「もっと強いデュエリストはいないの!?こんなガキはいらないわよ!!」

「そうだそうだ!観客を馬鹿にしてんのかー!?」

コモンズを中心に遊矢を非難する声がスタジアムを包み込み、メリッサが必死にいさめようとするが、どんどん勢いを増していく。

「はあ、はあ…」

激痛のおかげか、その声を聴く余裕のなかった遊矢はゆっくりと顔をあげる。

そして、ゴーグルをとって涙をぬぐい、シンジを見る。

「悪い、シン…!?」

彼を見た遊矢は驚きのあまり言葉を失う。

(どうだ…小僧。シールドなしで見る奴、そして客席の有象無象どもたちの姿は…)

「はあ、はあ、はあ…」

まやかしだと思い、心を落ち着かせるために唾をのみ、深呼吸をして、もう1度見る。

だが、遊矢の瞳に映る、オッドアイズのいうシールドがなくなったことで見えるようになってしまったものがなくなることがない。

「オッドアイズ…俺、俺は一体どうしてしまったんだ…?」

ゴーグルで隠れた遊矢の瞳は暴走したときと同じく、真っ赤に染まっているものの、左目だけはなぜか真っ黒に染まっていた。

 

「僕はまぁ、ストリートチルドレンの1人で、アカデミアに拾われるまでは強盗を繰り返してた。アカデミアに入ったのは3年前。アカデミアに入ってからはデュエル戦士になるための訓練が大変だったけど、空腹に悩まされることもないし、人におびえて暮らすこともないし…それに、安心して眠ることができたから…昔に比べたら、天国みたいなところだった」

下水道を出て、コモンズの一画にある廃墟のマンションに一室についた月影と翔太にソファーに座った状態の素良がいきさつを説明する。

「紫雲院素良って名前…アカデミアに入った時につけられた名前なんだ。アカデミアは世界を一つにするという目的のために作られた組織で、4つの次元の存在はそこで教えられたんだ。最初は僕もとんだファンタジーだと思ったけど…僕を救ってくれたっていう音があったからかな、次第に疑うこともなくなったんだ」

懐から棒付きキャンディーを取り出し、ゆっくりと舐める。

少し舐めた後でため息をついている姿を見ると、まるで自分を落ち着かせたいと思っているかのように見える。

「僕はまだ…何が正しいのかわからない。だから…今の僕にできるのは情報の提供。これからシンクロ次元に来るオベリスクフォースのこと、そして…伊織のことだよ」

「伊織について…だと!?」

今まで興味なさげに素良の話を聞いていた翔太が立ち上がり、素良に詰め寄る。

なんだかんだ言って、伊織のことが気になっていたのだろう。

だが、今回は優先順位が違う。

「翔太殿。その話はあとだ。紫雲院素良。オベリスクフォースがシンクロ次元に来る、というのはどういうことだ?」

「うん…。ロジェがシンクロ次元を裏切ったこと、そして柚子とセレナがシンクロ次元にいるという情報をデニスを通じてアカデミアに伝わったんだ」

「デニスからだと?あいつは地下へ…」

「僕が救出して、融合次元に転送したんだ」

「お前…!!」

拳を握りしめ、素良を思い切り殴ろうとする翔太の腕を月影がつかむ。

何も言わずに、首を横に振って。

「止めるな。こいつは…」

「そうでもしないと、柚子がシェイドのアジトにいることがばれてしまう。仕方なかったんだ…」

「…ちっ、それで、いつ奴らはくるんだ?」

腕を降し、舌打ちした翔太は丸椅子に座って、にらみつけながら質問する。

「おそらく今夜だ…。早くこのことをみんなに知らせないと、多くのシンクロ次元の人たちが犠牲になる」

「はぁ…。わかった。俺はアジトへ行って伝えに行く。素良、お前にも来てもらうぞ。そこで遊勝塾をだましたケジメをしっかりつけてもらう」

「拙者はヒイロ殿と合流後、零児殿に伝えに行く。ランサーズやシェイドならともかく、問題は評議会だ。彼らはたとえランサーズに味方するといっても、少しでも旗色が悪くなると寝返る恐れが大きい」

「その対策はボスに任せる。で、そのヒイロは今どこに?」

 

「《幻獣王ロックリザード》、《マリンフォース・ドラゴン》、《天空の有翼幻獣キマイラ》でダイレクトアタック」

3体のモンスターが一斉に3人のセキュリティに直接攻撃を仕掛ける。

「「「ぐああああ!!!」」」

フィールドにカードがない状態で攻撃を受けることになった3人は壁にたたきつけられ、気を失った。

 

セキュリティ×3

ライフ500→0

 

天空の有翼幻獣キマイラ

レベル6 攻撃2100 守備1800 融合 風属性 獣族

「深緑の幻獣王ガゼル」×「幻獣先帝バフォメット」

「天空の有翼幻獣キマイラ」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードが融合召喚に成功したとき、エクストラデッキに存在する「幻獣」Pモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。

(2):このカードの攻撃力は自分フィールド上に存在する「幻獣」モンスターの数×300アップする。

(3):このカードが破壊された時、自分の墓地の、「バフォメット」モンスターまたは「幻獣王ガゼル」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。

 

「悪く思うな」

とある地下施設の中で、倒した3人のセキュリティのカードとデュエルディスクを奪う。

ここまで続く長い廊下には多くのセキュリティが倒れており、更に本来なるべき警報ベルやランプもハッキングされたせいで、機能していない。

「遊星やトオルから学んだことがここで役立つとはな」

ヒイロはそのまま先へ進む。

廊下の先にあるドアを開くと、そこにはリアルソリッドビジョン装置に似た構造の大きな機械がある。

調べてみると、完成してから1度も動いたことがない様だ。

「ロジェ…俺もお前と同じで勝てる勝負しかしない。貴様の切り札は止めさせてもらう」



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次回作予告…??

この小説を終えたら、やってみようかなと思う新しい遊戯王の小説です…ちゃんとやれるかどうかは分かりませんが…。(背後事情より)


K県、霧山城市。

K県の県庁所在地であり、中心部であるK市とは峠一つ隔てた北に位置しており、四方が山に囲まれたこの盆地で9万人近い人々が生活している。

そんな町でも、デュエルは流行しているものの、最近都会ではやっているVRデュエルについては一部の場所でしか行うことができず、大きな大会はすべてK市や隣の県で行われている。

これは、その町での事件の記録だ。

「うーん、このカードを入れれば、重くなるし…。だからといってこのカードにしたら、せっかくのリンク召喚を生かせなくなるし…あー、どうしたらいいのかなー?」

霧山城市でも1,2の規模を持つ大型スーパーマーケット、アルト・テノールから北東へ歩いて5分の位置にあるとある民家の2階で、1人の少年が自室の畳の上で自分のデッキ、そしてカードケースにしまってあるカードの束とにらめっこをしている。

茶色がかった黒のショートレイヤーで白いシャツと青いデニムジャケット、黒のスキニーパンツ姿の少年で、黒ぶちのウエリントン型メガネをかけている。

手には2枚のカードが握られており、現在はどちらをデッキに入れるのかを考え中だ。

「ああー、決められない!!」

「誠君!!」

バンと横開きの襖が開き、竹刀を持った少女が怒りながら誠、と呼んだ少年を見ている。

眉の上と肩のラインでカットした黒い髪で、赤いジャージと黒いシャツ、青いホットパンツ姿をしている。

ただ、小柄の体であるものの胸が大きく、そのことを気にしている。

「え?直葉ちゃん??いつの間に…」

「いつの間にじゃないでしょ!もう5回は呼んだよ!ほら、一緒に剣道しに行くよ!!」

「ままま、待って!そんな引っ張ったら、グエエエ!!僕はインドア派なのにぃ!」

強引にシャツの後ろ首あたりを握られ、そのままひきずられる誠が必死に直葉に訴える。

左手にはちゃんと例の2枚を含めたデッキが握られたままだが…。

 

「ごめんね、直葉ちゃん。わざわざ2階にまで行かせちゃって」

引きずられる形で自室から連れ出された誠を見て、淡い茶色のロングヘアーで若干黄色が買っている誠と異なり、真っ白な肌をした、白いエプロン姿の女性が苦笑しながらカウンター裏で皿を拭く。

カウンターの裏手にあるキッチンから仕込みをした料理の匂いがしており、開店準備がそろそろ終わりそうになっていることがわかる。

「いえ、明日奈さん!あたしが好きでやっているだけですから!ほーら、行くわよ!」

「た、助けて…姉さん…」

「いってらっしゃい。誠君をよろしくね、直葉ちゃん」

そろそろ酸欠になりそうになっている弟が見えていないのか、ニコニコしながら手を振る明日奈。

『カフェランベント』という看板が掛けられた扉が閉まり、2人はすぐ近くにある公園へ行く。

歩いてたったの2分、そして近くには市民会館と小学生の勉強場所件遊び場となっている児童館、更に夏には自由に利用できるプールまである。

「ゲホゲホ…!直葉ちゃん、僕は剣道をしないって言ってるでしょ?」

「誰も無理に剣道をしろなんて言ってない!問題はあんたがカードばっかりいじって外に出ないのが悪いの!だから、あたしがわざわざこうやって…」

「わかった、分かったって…幼馴染の直葉ちゃんの親切心には感謝してるから…。剣道しに行こうって言ってたのに…」

「何か言った!?」

「イエ、ナンデモアリマセン」

(おい、いい加減痴話げんかを辞めろ!!ブラックコーヒーがほしくなるじゃねーか!!)

誠の脳裏に荒々しい言動をする力強い青年の声が響く。

ある理由で自分の中に宿った『彼』に若干うんざりしながら、誠は立ち上がる。

「はあ、お前が出てきたってことは…近いんだね?」

(ああ!今度こそ、手がかりかもしれねえ。場所は分かってるな、誠!!)

「わかったよ、僕もこのままでいいとは思ってないから、ゴースト!」

「誠君…もしかして…」

「そのもしかしてだよ!」

事情を理解している直葉にそれだけ言うと、誠はアルト・テノールへ向けて走っていく。

「誠君!もう、こういうときだけ足が速いんだから!!」

普段は体力がなく、足も遅いはずの誠が50メートルを6秒台前半で走れるくらいのスピードで走りだしたことに毎度ながら驚くも、おいていかれまいと彼を追いかけた。

 

アルト・テノール地下1階駐車場では、悲鳴と車が破壊される音に満ちていた。

黒い学ラン姿で、茶色く染めた髪と大きめの下あご、筋肉質な体をしたいかにも不良という身なりの男が車を壊しまわり、止めに入った警備員を次々と殴り飛ばしている。

「うおおおおーーーー!!すげえ、すげえぜこの力ぁぁ!!」

(ああ、来てみたらとんだ筋肉バカが憑依されてやがる…!)

「シャドー。その…彼が手がかりかな?」

(こいつは大外れだな。だったらさっさと帰って…)

「ほうっておけないよ。ここで止めないと、たくさんの人が巻き込まれる…。ゴースト、手を貸して!」

(変なところで正義感あるよなこいつ…ああ、分かったよ!くそっ、なんで俺がこんな甘ちゃんに手を貸さなきゃいけねーんだ!)

シャドーが悪態をついていると、誠の体がダークブルーの光に包まれていく。

ちょうどその時に直葉は誠に追いついた。

(やるからにはしゃんとやれよ、誠ぉ!)

「うん!…変身!」

メガネを外し、『変身』という言葉を発すると同時に髪形がロングヘアーに変わっていき、服装も青の某特撮番組のライダーのようなものへと変わり、顔は黄色サングラスと青色のヘルメットに隠されていく。

「誠君の姿が…!」

「これ以上、この人を暴走させるのはやめろ!!」

(お前のせいで俺がやりたくもねーことをやることになったんだ!責任取りやがれ!!)

変身の影響か、脳裏で響くだけだったゴーストの声が直葉や男にも伝わる。

誠の姿を見た不良は咆哮し、その姿を緑色のトカゲを模した怪人のような姿へと変わっていく。

(憑依ステージ2といったところか…。さっさとやらねーと、あの不良の体が持たねーぞ)

「さっさと終わらせよう、ゴースト」

(お前…変身するとやけに強気になるんだな)

誠の左腕に白と青を基調とした実体剣を模したデュエルディスクが出現し、怪人となった不良も腕にデュエルディスクが現れる。

何者かに憑依されたデュエリストを解放する手段はデュエル以外にはない。

「「デュエル!!」」

2人のデュエルが始まり、しばらくして誠のフィールドに3体のモンスターが現れる。

「いくぞ!僕のモンスターたち、力を貸して!!」

誠の言葉にうなずいた3体のモンスターがその姿を自分自身と似た頭部で、背中に2枚の羽根型のバックパックをつけた人型の機械へと変わっていく。

「リンク召喚!《C.C(コンステレイト・コマンダー)ジェニオン》!!」

 

『遊戯王VRAINS 幽霊に導かれし少年』

第1話投稿予定…不明!




新しい遊戯王のアニメ情報をVJで見て、衝動でこんなことを書いてしまいました…大丈夫か?作者という人がいるかもしれませんが…ごらんのとおり、大丈夫ではありません!
まぁ、ス○ロボやS○Oなど、作者の趣味も混ざっています。
もしこの作品を投稿する日が来たら、ぜひともよろしくお願いします。
…というよりも、早くこの小説を完結させなければ…。


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第73話 目覚める光

(え、ええっと…遊矢選手はもう大丈夫そうなので、改めて、榊遊矢選手VSシンジ・ウェーバー選手による2回戦第2試合を行いまーす!)

メリッサの宣言と共に、スタジアムのゲートが開く。

2人のDホイールのエンジンも動き始めたが、遊矢はいまだに自分が見ている景色を現実のものと思えずにいた。

「さっき…シンジから黒い炎が見えた…。まるで、あいつを含めたすべてを焼き尽くそうとしているみたいで…」

遊矢にはあの炎がシンジの強い憎しみのように見えた。

黒咲にもアカデミアに対する強い憎しみが存在するが、シンジはその比ではない。

それを炎が証明し、遊矢に恐怖を与えている。

(怖いか?奴が…)

「…」

(沈黙は肯定、ということだな。これはペンデュラムと共に目覚めた魂が見えていた景色だ)

「ペンデュラムと共にって、どういうことだよ!?」

遊矢は舞網チャンピオンシップで暴走し、意識を失ったときにミエルも同じものを占いで見ていた。

しかし、その時は緊急事態が発生したこともあり、そのことを遊矢は知ることがなかった。

(その魂は…いずれ小僧、貴様が向き合わなければならないもの。お前自身を含め、越えなければならないもの。それこそが…)

(さあ、いよいよスタートです!ライディングデュエル…)

「まずい…!オッドアイズ、話はあとだ!!」

慌てて前を向いた遊矢はうっかり大声で話してしまったものの、会場は多くの人々の完成で包まれていたため、彼自身の声がほかに人に聞かれることはなかった。

仮に聞かれたとしたら、イカれていると思われただろう。

(アクセラレーション!!)

信号が青に変わると同時に2人のDホイールが発進する。

当然、加速力や最大速度が制限されている遊矢のマシンレッドクラウンでは競技用に作られているシンジのDホイールに勝てるはずがなく、10秒の差で最初の分岐点につく。

(シンジを…止めないと!!)

まっすぐ進むシンジの姿を見た遊矢は迷うことなくまっすぐ進む。

 

シンジ

手札5

ライフ4000

 

遊矢

手札5

ライフ4000

 

「いいか!?トップス共に虐げられている同胞たち!!このデュエルでお前たちにトップスを倒せるという可能性を示してみせる!絶対に見逃すなー!!」

「うおおおお!!」

「やっちまえ、シンジ・ウェーバー!!」

(ちょっとー!お客さんたちに挑発するような言動はやめなさーい!!)

シンジの声を聴いたコモンズの観客たちが狂ったように歓声を上げる中、トップスの観客たちはある人は怯え、またある人はまるでゴキブリを見るような眼で彼らを見ている。

「まったく、野蛮な者たちだ」

「ええ…。同じ空間にいるだけでヘドが出る」

「こいつらもさっさと収容所に入れられちまえばいいんだ…」

「俺のターン!!俺は手札から《B・F-必中のピン》を召喚!」

シンジのフィールドに緑と黒を基調とした、小さなデフォルメされた蜂のようなモンスターが現れる。

蜂をモチーフとしたモンスターを見て、主にトップスの女性客らが不快感を覚えた。

 

B・F-必中のピン レベル1 攻撃200

 

「なんだ、たかだ攻撃力200のモンスターか」

「コモンズのゴミ共と同じ、ただの雑魚モンスターじゃぁないか」

燕尾服姿の男が笑いながらワインを優雅に飲み干す。

そんな言葉が聞こえたかのように、シンジは言葉を並べる。

「そうだ!こいつは俺たちと同じだ!たったの1体だけでは何も役が立たない。トップスというでかい壁に大穴を開けることができない。しかし、多くの仲間が集まれば、不可能を可能にできる!《必中のピン》の効果発動!1ターンに1度、相手に200のダメージを与える!いけぇ!!」

《B・F-必中のピン》が遊矢に向けて針を発射する。

針は遊矢の右肩をかすり、路上に着弾する。

「くぅ…!!」

 

遊矢

ライフ4000→3800

 

「更に、《必中のピン》のもう1つの効果を発動!B・Fと名の付くカード効果で相手にダメージを与えたとき、俺のフィールド上に《必中のピン》以外のモンスターが存在しない場合、デッキからレベル4以下のB・F1体を特殊召喚できる!俺はデッキから《B・F-隠撃のクロスボウ》を特殊召喚!」

真っ黒な体で、下半身部分がクロスボウを模した構造となっている蜂が《B・F-必中のピン》の前に立つように現れる。

 

B・F-隠撃のクロスボウ レベル2 守備600(チューナー)

 

B・F(ビー・フォース)-必中のピン(アニメオリカ・調整)

レベル1 攻撃200 守備300 効果 風属性 昆虫族

「B・F-必中のピン」の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):1ターンに1度、自分のターンのメインフェイズ時に発動できる。相手に200ダメージを与える。

(2):自分の「B・F」カードの効果によって相手にダメージを与えたとき、自分フィールド上に「B・F-必中のピン」以外のモンスターが存在しない場合に発動できる。デッキからレベル4以下の「B・F」モンスター1体を特殊召喚する。

 

(シンジ選手、先攻1ターン目から遊矢選手にダメージを与えただけでなく、更にモンスターを呼び出したーー!)

「これがB・Fの力だ!次々と仲間の力を結集させ、強大な壁を打ち崩す!!コモンズの結束の力の象徴なんだ!!」

拳を高く上げながら宣言するシンジの体に宿る黒い炎が勢いを増していく。

それを間近で見る遊矢の手が震えている。

「シンジ…」

「更に、俺は《隠撃のクロスボウ》の効果発動!1ターンに1度、デッキの上から3枚までカードを墓地へ送ることで、1枚につきこのカードのレベルを1つ上昇させる」

シンジのデッキから2枚のカードが墓地へ送られ、墓地から放たれた光を受けた《B・F-隠撃のクロスボウ》の瞳が光る。

 

B・F-隠撃のクロスボウ レベル2→4 守備600(チューナー)

 

デッキから墓地へ送られたカード

・B・F-必中のピン

・B・F-早撃ちのアルバレスト

 

B・F-早撃ちのアルバレスト(アニメオリカ・調整)

レベル4 攻撃1800 守備800 効果 風属性 昆虫族

(1):このカードが戦闘で破壊されたときに発動できる。手札から「B・F」モンスター1体を特殊召喚する。

 

「俺はレベル1の《必中のピン》にレベル4の《隠撃のクロスボウ》をチューニング!蜂出する憤激の針よ、閃光とともに天をも射ぬく弓となれ!シンクロ召喚!現れろ!《B・F-霊弓のアズサ》!」

2体の蜂がチューニングリングによって力を結集させ、その姿を蜂を模したロングスカート付きの鎧とフェイスガードを装備し、弓矢を手にした人型モンスターへと変えていく。

弱小のモンスターが力を合わせ、強力なシンクロモンスターに変わったことはまさにコモンズの結束を連想することができ、コモンズの人々が更に声を上げる。

 

B・F-霊弓のアズサ レベル5 攻撃2200(チューナー)

 

「更に、シンクロ素材となった《クロスボウ》の効果発動!このカードを素材にB・Fシンクロモンスターのシンクロ召喚に成功したとき、墓地からレベル2以下のB・Fモンスター1体を特殊召喚できる!俺は墓地から再び《必中のピン》を特殊召喚する!」

 

B・F-必中のピン レベル1 守備300

 

B・F-隠撃のクロスボウ

レベル2 攻撃1000 守備600 チューナー 風属性 昆虫族

このカードはX素材とすることができず、このカードをS素材とする場合、昆虫族モンスターのS素材にしか使用できない。

「B・F-隠撃のクロスボウ」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分のデッキの上から3枚までカードを墓地へ送ることで発動できる。このカードのレベルを墓地へ送ったカードの数だけ上げる。

(2):このカードをS素材として「B・F」モンスターのS召喚に成功したときに発動する。自分の墓地からレベル2以下の「B・F-隠撃のクロスボウ」以外の「B・F」モンスター1体を特殊召喚する。

 

「《必中のピン》の効果発動!再び相手に200ダメージを与える!更に、《霊弓のアズサ》の効果発動!このカード以外のB・Fモンスターが相手に与える効果ダメージを倍にする!」

「何!?」

《B・F-必中のピン》が針を発射すると、《B・F-霊弓のアズサ》の力でその針が黄色く光りだす。

遊矢の肩に刺さると同時に、毒がきいたかのようなしびれを一瞬感じてしまう。

「うあああ…くぅ…!」

しびれにより、あやうく転倒してしまうほど車体が大きく揺れる。

 

遊矢

ライフ3800→3400

 

B・F-霊弓のアズサ(アニメオリカ)

レベル5 攻撃2200 守備1600 シンクロ・チューナー 風属性 昆虫族

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

(1):このカード以外の「B・F」モンスターが自分フィールドに存在し、

「B・F」モンスターの効果でダメージが発生した場合に発動できる。

そのダメージは倍になる。

 

「俺はカードを1枚伏せてターンエンド!見たか遊矢!B・Fの…俺たちコモンズの可能性を!!俺たちの力で…トップスをねじ伏せる!!」

 

シンジ

手札5→3

ライフ4000

SPC0

場 B・F-霊弓のアズサ レベル5 攻撃2200(チューナー)

  B・F-必中のピン レベル1 守備300

  伏せカード1

 

遊矢

手札5

ライフ3400

SPC0

場 なし

 

「遊矢…」

シェイドのアジトでは、伊織の代わりに今度は柚子がテレビの一番近くに座って、遊矢のデュエルを見守っている。

なお、伊織たちは翔太を探しに行っており、彼女も同行しようとしていたが伊織に止められた。

「遊矢の一番のファンはちゃんと彼のデュエルを見ないと」、と言われて。

実質手札1枚でシンクロ召喚を行い、更にモンスターを蘇生させたうえにダメージを与えるシンジの動きには驚いたものの、気になったのは遊矢の動きだ。

マシンレッドクラウンのおかげで初心者である遊矢でもある程度動けるようになってはいるが、よく見ると若干震えているように見えるし、怯えを感じられる。

「おかしい…いつもの遊矢じゃない…」

 

「もうやめろ、シンジ!これ以上憎しみを育てるな!これ以上…これ以上憎しみを強めたら、お前自身が壊れてしまうぞ!!」

炎の正体がシンジの憎しみだと悟った遊矢は大声でシンジに訴える。

まるでシンジが《覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン》によって暴走した自分、強いて言えば翔太たちにその時に止めてもらえなかった場合にそうなっていたかもしれない自分に見えた。

「俺自身が壊れる…?かまわない!コモンズがトップスを打ち崩すためなら、俺が捨て石となっても構わない!!どんな犠牲を払おうとも、俺はこの革命をやり遂げる!」

「違う!そんなの革命でも何でもない!ただの怨念返しじゃないか!」

「怨念返しの何が悪い!?トップスがさんざんやってきたことを俺たちはやり返そうとしているだけだ!別の次元から来たお前に…コモンズの怒りがわかるわけがないだろう!?さあ、さっさとドローしろ!!!」

「シンジ…俺のターン、ドロー!!」

 

遊矢

手札5→6

SPC0→2

 

シンジ

SPC0→2

 

「俺はスケール1の《竜脈の魔術師》とスケール5の《慧眼の魔術師》でペンデュラムスケールをセッティング!」

前後に刃がついたなぎなたを握る、白いローブと茶色いポニーテールの若き魔術師と紫色のマントと紫色の飾りがいくつもついた黄土色の鎧を着た灰色のマスクの魔術師が青い光の柱を生み出す。

「竜の血脈を受け継ぎし《竜脈の魔術師》よ、その猛々しき力でさらなる高みを目指せ!俺は《竜脈の魔術師》のペンデュラム効果を発動!1ターンに1度、片方の俺のペンデュラムゾーンのカードが魔術師の場合、手札のペンデュラムカード1枚を捨てることで、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を破壊できる!ドラゴニック・ストリーム!」

《竜脈の魔術師》のなぎなたに《EMラ・パンダ》が宿り、青い光を発する。

その刃をふるうと同時に青いかまいたちが発生し、《B・F-霊弓のアズサ》を切り裂こうとしていた。

「させるか!!!」

遊矢の前を走るシンジがアクションカードパネルを通過し、カードを手にする。

「アクション魔法《ミラー・バリア》を発動!フィールド上のモンスター1体はカード効果では破壊されない!」

鏡を模したバリアが展開し、かまいたちがそれによって阻まれた。

 

シンジ

SPC2→3

 

「くぅぅ…!」

「残念だったな!そう簡単に崩させないぜ。俺たちコモンズの結束を!」

得意げに笑いながら、《B・F-霊弓のアズサ》を見るシンジ。

場に残し続けるとますます傷が深くなっていくこのカードを破壊し損ねたのは痛い。

「まだだ!本質を見極めし《慧眼の魔術師》よ、その誤解なき瞳で勝利への道を示せ!《慧眼の魔術師》のペンデュラム効果発動!もう片方のペンデュラムゾーンにEMもしくは魔術師が存在する場合、このカードを破壊し、デッキからこのカード以外の魔術師1体をペンデュラムゾーンに置くことができる!セレクト・フォース!!」

《慧眼の魔術師》がマントの中に身を隠すと、そのマントの色が徐々に黒へと変わっていく。

「俺が選択するのはスケール8の《時読みの魔術師》!」

マントが消えると、その姿が《慧眼の魔術師》から《時読みの魔術師》へと変わっていた。

「これで俺はレベル2から7までのモンスターを同時に召喚可能!揺れろ、魂のペンデュラム!天空に描け、光のアーク!ペンデュラム召喚!現れろ、俺のモンスターたち!!エクストラデッキから《慧眼の魔術師》!手札から《貴竜の魔術師》!そして、雄々しくも美しい二色の眼、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!!」

《竜脈の魔術師》に似た色彩のローブを着た、白いU字型の先端の杖を持つ紫色の髪の少女が《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》の背中に乗って、はしゃぎながら出てきた。

そんな彼女を《慧眼の魔術師》が抱っこして降し、それを不満に感じた《貴竜の魔術師》は彼女を見ながら頬を膨らませる。

 

貴竜の魔術師 レベル3 攻撃700(チューナー)

慧眼の魔術師 レベル4 攻撃1500

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

「チューナーを含めて、一気にモンスターを3体だと!?まさか…!」

遊矢のフィールドに現れたモンスターたちを見て、彼がこれから何をするのかを理解したシンジは驚きを見せる。

「(そうだ…オッドアイズが呼び覚ました力は《アブソリュート・ドラゴン》だけじゃない。俺自身の怒りに反応した力も生まれている…!)俺はレベル4の《慧眼の魔術師》にレベル3の《貴竜の魔術師》をチューニング!!」

「遊矢がシンクロ召喚を!?」

テレビの前の柚子が目を丸くして立ち上がる中、《貴竜の魔術師》がチューニングリングとなり、その中を《慧眼の魔術師》がくぐっていく。

「二色の眼の竜よ、怒りの業火で闇を焦がせ!シンクロ召喚!レベル7!大地を焼き尽くす業火の竜!《オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン》!!」

チューニングリングが炎に包まれ、その炎の中から背中の三日月状の飾りが4本の赤い鞭へと変わり、全身の色彩がほぼ赤一色となった《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が飛び出してくる。

路上に立つと同時に上空に向けて咆哮し、遊矢の周囲が炎に包まれる。

 

オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

「これが…《オッドアイズ》の新しい姿…!」

遊矢の《オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン》を見た柚子はじっとそのモンスターを見る。

舞網チャンピオンシップで、レオコーポレーションのビルの中で見た《覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン》にはない、確かに荒々しいものの、言葉にできないような安心感が感じられた。

口上にある『怒り』というものが感じられないくらいに。

「攻撃力2500が2体だと!?」

「まだだ!俺は《メテオバースト・ドラゴン》の効果を発動!このカードの特殊召喚に成功したとき、俺のペンデュラムゾーンに存在するカード1枚を特殊召喚する!俺が特殊召喚するのは《竜脈の魔術師》!バーニング・コール!!」

《オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン》の咆哮により、《竜脈の魔術師》のなぎなたに炎が宿り、その刃で自らを包む青い光の柱を切り裂いて、遊矢の前に立つ。

 

竜脈の魔術師 レベル4 攻撃1800

 

「そして、開いたペンデュラムゾーンにスケール1の《星読みの魔術師》をセッティング。バトルだ!《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》で《霊弓のアズサ》を攻撃!!」

「させるか!俺は手札の《B・F-奉納のアトラトル》の効果を発動!俺のフィールド上に存在するB・Fが攻撃対象となったとき、このカードを手札から特殊召喚することで、攻撃モンスターを破壊す…(ビーッビーッ!!)何!?」

急に発生した禁止音に狼狽するシンジははっとして、《オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン》を見る。

「まさか、こいつの効果か!?」

「そうだ!《メテオバースト・ドラゴン》が存在するとき、相手はバトルフェイズ中にモンスター効果を発動できなくなる!そして、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》は相手モンスターと戦闘を行うとき、相手に与える先頭ダメージが倍になる!更に《時読みの魔術師》と《星読みの魔術師》が存在することで、お前は俺のペンデュラムモンスターが攻撃するとき、魔法・罠カードを発動できない!螺旋のストライク・バースト!!」

《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》の口から放たれた回転するブレスが《B・F-霊弓のアズサ》を貫く。

3重の障害により、カードによる援護が不可能なシンジは黙ってそのモンスターが破壊されるのを見ていることしかできなかった。

「くっそぉ!!」

 

シンジ

ライフ4000→3400

 

「まだだ!《竜脈の魔術師》で《必中のピン》を攻撃!」

《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》に続いて、《竜脈の魔術師》がなぎなたで《B・F-必中のピン》を切り裂いた。

これにより、シンジのフィールド上からモンスターがいなくなった。

「よくもやってくれたな!俺は罠カード《シンクロ・スピリッツ》を発動!墓地に存在する俺のシンクロモンスター1体を除外し、シンクロ素材となったモンスター一組を墓地から特殊召喚する!俺は《霊弓のアズサ》を除外!現れろ、《B・F-必中のピン》!《隠撃のクロスボウ》!!」

フィールドに残留していた《B・F-霊弓のアズサ》だった黄色い粒子が集結し、その姿を自らのもととなった2体のモンスターへと変え、彼らはシンジのフォローに回る。

 

B・F-必中のピン レベル1 守備300

B・F-隠撃のクロスボウ レベル2 守備600(チューナー)

 

「どうだ!?トップスが俺たちを上から押さえつけたとしても、俺たちは立ち上がる!!お前たちを滅ぼすまで、何度でも、そうだ!!何度でもだ!!!」

拳を高々と掲げ、宣言するシンジを見たコモンズの人々は熱狂する。

自分たちに貧しい生活を強い、99%もの富を搾取するトップスという豚への憎しみと共に。

特に客席では、近くにトップスの客がいたら、もう暴力沙汰が起きてもおかしくないくらいの空気となっている。

「さあ、どうした遊矢!この程度では俺を止められないぞ!?」

「く…!!」

遊矢のバトルフェイズ終了と同時にシンジは新しいアクションカードパネルを通過するものの、このターンのアクションカードをすでにとってたことから、何も反応を起こさない。

そして、そのあとに続いていた遊矢がそのパネルのアクションカードを手にする。

しかし、今使えるカードではなかったためか、黙って手札ホルダーに収める。

「俺はレベル7の《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》と《オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン》でオーバーレイ!二色の眼の竜よ、人々の涙を束ね、解放への道を示せ!エクシーズ召喚!ランク7!悲しき世界を穿つ氷河の竜、《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》!!これで、ターンエンドだ!」

 

シンジ

手札3(うち1枚《B・F-奉納のアトラトル》)

ライフ3400

SPC3

場 B・F-隠撃のクロスボウ レベル2 守備600(チューナー)

  B・F-必中のピン レベル1 守備300

  伏せカード1

 

遊矢

手札6→0(アクションカードあり)

ライフ3400

SPC2→3

場 オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン(オーバーレイユニット2) ランク7 攻撃2800

  竜脈の魔術師 レベル4 攻撃1800

  星読みの魔術師(青) ペンデュラムスケール1

  時読みの魔術師(赤) ペンデュラムスケール8

 

「へえ、怒りの次は悲しみか?ただメソメソ泣くだけで、何の力もねーじゃねえか!?俺たちの革命の炎で蒸発させてやるぜ!いくぞ、コモンズの仲間たち!俺たちのターンだ!!」

「「「ドローーー!!!!」」」

スタジアムのコモンズの観客たちと共に声をあげながら、シンジはカードを引く。

 

シンジ

手札3→4

SPC3→5

 

遊矢

SPC3→5

 

「俺は手札から《Sp-シンクロ・リターン》を発動!俺のスピードカウンターが5つ以上あるとき、除外されている俺のシンクロモンスター1体を特殊召喚する!甦れ、 《霊弓のアズサ》!!」

 

B・F-霊弓のアズサ レベル5 攻撃2200(チューナー)

 

「また《アズサ》が…!?」

「俺は《必中のピン》の効果を発動!《霊弓のアズサ》の力を受け、お前に400ダメージを与える!」

《B・F-必中のピン》の針が再び遊矢を襲う。

ダメージを受けたときに感じたしびれをまた感じるわけにはいかなかった遊矢はやむなく車体の前面を盾にして受け止める。

 

遊矢

ライフ3400→3000

 

「まだ終わらねえ!俺は《隠撃のクロスボウ》の効果を発動!デッキからカードを1枚墓地へ送り、このカードのレベルを1つ上げる!」

 

B・F-隠撃のクロスボウ レベル2→3 守備600(チューナー)

 

デッキから墓地へ送られたカード

・トラップ・スタン

 

「更に俺は手札から《Sp-シャドー・シンクロ・サポート》を発動!俺のスピードカウンターが4つ以上あるとき、俺のフィールド上のチューナー1体にターン終了時までチューナー同士でシンクロ召喚できる効果を与える!俺はレベル3の《隠撃のクロスボウ》にレベル5の《霊弓のアズサ》をチューニング!!呼応する力、怨毒の炎を携え反抗の矢を放て!シンクロ召喚!レベル8、《B・F-降魔弓のハマ》!」

《B・F-霊弓のアズサ》が炎の輪となり、その中を《B・F-隠撃のクロスボウ》がくぐっていく。

「まさか…現れるのか…?シンジの憎しみの象徴のモンスターが…!?」

炎の輪が爆発し、その色が黒く変わっていくのが見えた。

そして、その炎が集結すると、オレンジのラインが入った黒い鎧をまとい、弓矢を持つ左利きの戦士が現れた。

「燃えている…??」

遊矢の目に映るその戦士は黒い炎を体のいたるところから噴き出していた。

 

B・F-降魔弓のハマ レベル8 攻撃2800

 

Sp-シャドー・シンクロ・サポート

通常魔法カード

(1):自分のスピードカウンターが4つ以上存在するとき、自分フィールド上に存在するチューナー1体を対象に発動できる。そのモンスターはターン終了時まで以下の効果を得る。

●自分フィールド上に存在するこのカードをS召喚に使用する場合、このカードをチューナー以外のモンスターとして扱う事ができる。

 

「こいつは俺たちコモンズの力の象徴!俺たちの革命を体現したモンスターだ!!こいつで榊遊矢を、トップスを倒す!」

シンジの宣言とともに、再びスタジアムがコモンズの熱狂的な歓声に包まれる。

だが、《B・F-降魔弓のハマ》の攻撃力は《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》と同じ2800。

何か工夫をしなければ、遊矢にさらにモンスターを展開させるチャンスを与えるだけなのがオチだ。

「《隠撃のクロスボウ》の効果発動!墓地から《必中のピン》を守備表示で特殊召喚する」

 

B・F-必中のピン レベル1 守備300

 

「バトルフェイズ、俺は攻撃を行わず、そのままメインフェイズ2へ移行する!」

「攻撃しないのに、どうして!?」

「《降魔弓のハマ》の効果発動!戦闘ダメージが発生しなかった俺のターンのバトルフェイズ終了時、俺の墓地のB・F1体につき、300のダメージを相手に与える!」

《B・F-降魔弓のハマ》の体がさらに燃え上がり、それとともに上空から同じ炎を宿した4体のB・Fが現れる。

全員が黒い炎を針や矢に凝縮させ、遊矢に向けて発射される。

「うわああああ!?!?こ、これは…!?!?」

次々と遊矢の体、そしてマシンレッドクラウンに命中していき、焼けるような熱が肌に伝わる。

それと同時に、遊矢の目に次々と光景が浮かび、その時のシンジの感情が伝わってくる。

幼いころの居場所であった孤児院をトップスに奪われた時の幼いシンジの姿、トップスに賭けデュエルを挑み、敗北したときに渡した一番レアなカードを馬鹿にされた時の屈辱。

コモンズに生まれたというだけでトップスからの理不尽を受け、それによって芽生えた屈辱と怒りがシンジの復讐心を育てた。

「これが…シンジの…」

 

遊矢

ライフ3000→1800

SPC5→4

 

「まだだぜ!《必中のピン》の効果も忘れるな!」

さらに追い打ちをかけるように、《B・F-必中のピン》の針が遊矢を襲う。

 

遊矢

ライフ1800→1600

 

その針を受けたとき、先ほどまでの屈辱や怒りとは別の何かを遊矢は感じた。

(なんだ、これ…)

目に浮かぶ光景は遊矢がセレナ、零羅、沢渡とともにシンクロ次元のコモンズに迷い込み、クロウの元で1週間近く生活していたときだ。

シンジは時折、所属しているギャングで戦利品として手に入れた食料をクロウのところまで持ってきていた。

もともと、シンジとクロウは同じギャングに入っており、なぜクロウがギャングから逃げ出したのかを知っていたシンジはこれまでと同じようにクロウを仲間として接し、こうして融通を利かせていた。

食料をもらい、うれしそうに笑う、クロウが世話している子供たちを見たいというのも理由のひとつかもしれない。

(そうだ…。憎しみだけじゃない。シンジの心にはまだ!!)

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド!」

 

シンジ

手札4→1(《B・F-奉納のアトラトル》)

ライフ3400

SPC5

場 B・F-降魔弓のハマ レベル8 攻撃2800

  B・F-必中のピン レベル1 守備300

  伏せカード2

 

遊矢

手札0(アクションカードあり)

ライフ1600

SPC4

場 オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン(オーバーレイユニット2) ランク7 攻撃2800

  竜脈の魔術師 レベル4 攻撃1800

  星読みの魔術師(青) ペンデュラムスケール1

  時読みの魔術師(赤) ペンデュラムスケール8

 

B・F-降魔弓のハマ(アニメオリカ)

レベル8 攻撃2800 守備2000 シンクロ 風属性 昆虫族

Sモンスターのチューナー+チューナー以外の「B・F」モンスター1体以上

(1):このカードは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃できる。

(2):1ターンに1度、このカードが相手に戦闘ダメージを与えた場合、相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。その相手モンスターの攻撃力はバトルフェイズ終了時まで、その戦闘ダメージの数値分ダウンする。

(3):戦闘ダメージが発生しなかった自分バトルフェイズ終了時に発動できる。自分の墓地の「B・F」モンスターの数×300ダメージを相手に与える。

 

 

(シンジ選手、《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》を破壊できないものの、大きなダメージを遊矢選手に与えたーー!ここからどう反撃していくのでしょうか!?!?)

「シンジ…」

マシンレッドクラウンの通信機能を使い、前を走るシンジと繋げる。

(何のつもりだ!?サレンダーでもしたいのか?)

ディスプレイに映るシンジにもやはり黒い炎が宿っている。

しかし、憎しみの中に残っているシンジの優しさを遊矢は信じた。

「シンジ…確かに、俺はコモンズの人間じゃない。ましてや、シンクロ次元の出身じゃない。そんな俺には…シンジの、いやコモンズというべきかな…?みんなの苦悩や痛みはわからないかもしれない…」

シンクロ次元は遊矢にとって、まったく価値観の異なる人々が集まっていた。

勝者が決めたルールによる競争により、敗者から徹底的に搾り取るのを当然の権利として是とする人々。

搾取され、世界に自分の居場所がないことに絶望し、憎む気持ちは同じ経験をした人間にしかわからない。

そんな経験をしたシンジのトップスを許せないという気持ちを否定するつもりは遊矢にはなかった。

「だけど…だけどシンジ!お前にはわかるはずだ!そんなことをしても何も変わらないって、なにも報われないって!!」

(…黙れ…!)

「本当はわかっているはずだ!本当に…本当に変えなきゃいけないのは…みんなが幸せになるために変えなきゃいけないのは…」

(黙れと言っているのが聞こえないのか!?!?)

遊矢の言葉に反応したのか、感情を爆発させるとともに炎が燃え上がる。

通信を切り、遊矢と距離を詰めたシンジはじっと睨みつける。

「シンジ…」

「わからねえのか、遊矢!!この世界をひっくり返すためには、トップスを超える力を証明しなければならない!!それに…」

表情をゆがませ、声を詰まらせるシンジ。

それを見た遊矢は彼の葛藤を感じた。

「コモンズでは食っていくため、生きていくためにとれる道は限られてる。俺は…ギャングになって、犯罪に手を染めることでどうにか生きてきた…。殺しだってしたこともある!そして、一緒に必死になって生きて仲間の中にはセキュリティにつかまって、その場で殺されちまったやつもいるし、収容所で獄死した奴だっている!運よく出られたとしても…体をぼろぼろにされちまって、何もできなくなってしまったやつだっている!!せめて…せめてガキどもには俺と同じ思いをしてほしくない…。こんな思いをするのは俺だけで充分だ!そのためにとれる道はもう…あいつらに報いてやれる道はもう…これしか残ってねえんだよ!!」

「シンジ…(ビーッ、ビーッ!!)なに!?」

急にマシンレッドクラウンから警報音が鳴り、ディスプレイには召喚エネルギーの過剰吸収による機能停止の発生を伝えるテロップが表示される。

「召喚エネルギーの過剰吸収!?けど、ペンデュラム召喚は1回しか…」

ペンデュラム召喚以外にも、エクシーズ召喚とシンクロ召喚も行っているが、それでも追加装備によってより多くのエネルギーを吸収・貯蔵できるようになっているため、それだけで過剰となるのはおかしい。

そんなことを考えている間にも、だんだん速度が落ちていき、やがて止まってしまう。

「マシントラブルか…?だが、1分以上停止した場合は敗北なのには変わりない!!」

遊矢を無視し、シンジは進んでいき、アクションカードを手にする。

 

シンジ

SPC5→6

 

「遊矢!?どうして、どうして止まっちゃったの??」

テレビの両端をつかみ、必死にテレビ越しに遊矢に声をかける柚子。

しかし、そんなことをしても事態は変わらない。

遊矢にはDホイールのマシントラブルに関する知識が最低限あるものの、このようなことに関する知識は持ち合わせていない。

だから、何度もアクセルを起動させようとしている。

うんともすんともせず、無常に時間だけが過ぎていく。

(榊遊矢選手、あと20秒止まっていたら失格です!)

「動け、動いてくれ!!マシンレッドクラウン!!俺はシンジを止めたい!自分の仲間の思いを全部背負ってしまって、間違った道を進もうとしている彼を止めなくちゃいけないんだ!そのためには…ここで立ち止まるわけにはいかないんだ!!」

「榊…遊矢…」

スタジアムに設けられている特設の王座でデュエルを観戦しているジャックが彼の名前を口にする。

独りよがりなエンタメしかできない男、自分にとってはまぶしすぎる目をした男の名前を。

必死にDホイールを起動させようとする彼と、昔失ってしまった自分自身が重なって見えた。

(マスター…)

ジャックの脳裏に幼い少女の声が響く。

「お前は…」

(信じて…ボクを。あなたとサム君が会わせてくれた、ボクのもう1人のマスターを)

そうしている間に、あと10秒となる。

もう遊矢はデュエルができないと考えた観客の中には席を立つ人もいる。

しかし、遊矢はあきらめない。

(小僧…)

「あきらめちゃいけないんだ!ここであきらめてしまったら、もう2度とエンタメデュエリストを名乗れなくなる」

(あなたは…彼の悲しみと憎しみを払おうとしているのですね…)

「動け…!俺と同じ、道化の名前を持つDホイール!ほんの少しでも、優しさと悲しみを感じることができるなら、今だけでもいい!!動けーーーーー!!!!」

遊矢の叫びが影響したのか、彼の首にかかっているペンデュラムが赤く光り始める。

それと同時に、ディスプレイ赤く光り、『PLS』という文字が浮かぶ。

「PLS(ファントムライトシステム)…ああ!?!?」

遊矢とマシンレッドクラウンを赤い光が包んでいき、Dホイールの各部装甲が展開していく。

装甲の中に隠れた赤い水晶のようなフレームがそれによって露出し、発光する。

(な、な、な…何が起きているのでしょう!?榊遊矢選手のDホイールが…赤い光の中で変形しました!?!?)

「うおおおおお!!!!」

アクセルが再び動き出し、いきなり100キロ以上のスピードで走り始めた。



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第74話 覚醒への道

(い、いったい何が起こっているのでしょう!?先ほどまで停止していた遊矢選手のDホイールが突如赤い光を放ちながら変形!しかも、とんでもないスピードで走り出したー!)

スタジアムのモニター、並びにテレビでその光景を見ている人々は自分の目を疑っていた。

初心者用に大幅なデチューンが施された遊矢のマシンレッドクラウンがあまりのスピードで走っていて、まるで分身でもしているかのようにも見えてしまう。

「膨大な召喚エネルギーを限界ギリギリまでため込み、それを螺旋を描くように放出することでDホイールとDホイーラーを守るバリアに変え、肉体への負担を軽減するファントムライトシステム…。未完成だと聞いていたが…」

地下に集まる浮浪者達が見ている白黒のテレビを眺めながら、ヒイロはマシンレッドクラウンのあの光のことを口にする。

だが、そのじゃじゃ馬と化した赤い道化はたとえ召喚エネルギーの嵐で守られているとしても、ベテランのDホイーラーでも扱うのが困難となっている。

そのため、少なくともヒイロがシンクロ次元に潜入するころまではそのシステムの完成には年単位で時間がかかると言われていた。

だが、現に遊矢はそのシステムを起動し、挙句の果てには使いこなしている。

まるで生まれたばかりの赤ん坊がいきなり立ち上がって50メートル走をするかのように。

(榊遊矢か…。もしかしたら、あいつはデュエリストの進化の可能性を見せてくれるかもしれないな…)

 

シンジ

手札1(《B・F-奉納のアトラトル》アクションカード1)

ライフ3400

SPC6

場 B・F-降魔弓のハマ レベル8 攻撃2800

  B・F-必中のピン レベル1 守備300

  伏せカード2

 

遊矢

手札0(アクションカードあり)

ライフ1600

SPC4

場 オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン(オーバーレイユニット2) ランク7 攻撃2800

  竜脈の魔術師 レベル4 攻撃1800

  星読みの魔術師(青) ペンデュラムスケール1

  時読みの魔術師(赤) ペンデュラムスケール8

 

「ちっ…わけのわからない手段を使って、また動き出したか!だが、ただ動き出しただけ!お前が地下送りされるまでの時間が少し伸びた程度のことだ!!」

あっという間にシンジに追いついた遊矢に若干驚きを見せながらも、すぐに気持ちを切り替えて遊矢を挑発する。

だが、今の遊矢はシンジの声を聞いていない。

召喚エネルギーの嵐に包まれているから誰も分からないものの、今の遊矢は目を閉じたまま走っている。

(なんだ…?さっきまで怖かったり、むしゃくしゃしたりしてたのに…不思議と感覚が研ぎすまされていく…まるで、こいつと1つになっているみたいだ…)

ゆっくりと目を開いた遊矢はデッキトップに指をかける。

「俺のターン、ドロー!」

「俺はアクション魔法《スピード違反レベル1》を発動!これでお前はこのターンのスタンバイフェイズ時にスピードカウンターを置くことはできない!」

 

遊矢

手札0→1

 

シンジ

SPC6→8

 

スピード違反レベル1

アクション魔法カード

(1)相手ターンのドローフェイズ時に発動できる。このターンのスタンバイフェイズ時、相手は「スピード・ワールド」魔法カードの効果でスピードカウンターを置くことができない。

 

「なら…俺は手札からアクション魔法《手札封鎖》を発動!このターン、相手は手札から発動するモンスターの効果を発動できない!バトルだ!俺は《竜脈の魔術師》で《必中のピン》を攻撃!」

《竜脈の魔術師》が前のターンと同じように《B・F-必中のピン》をなぎなたで切り裂こうとする。

「させるか!俺は永続罠《B・F・N》を発動!俺のフィールド上に存在するB・Fモンスターが攻撃対象となったとき、手札のレベル4以下のB・Fモンスター1体を特殊召喚することで、その攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了させる!俺は《B・F-奉納のアトラトル》を特殊召喚!」

赤と白の縞模様で、下半身が手持ちの投槍器を模した形になっている蜂が出現し、槍を発射してなぎなたを弾き飛ばす。

武器を失った《竜脈の魔術師》は分が悪いと判断し、すぐに遊矢の元へ戻っていく。

 

B・F-奉納のアトラトル レベル3 守備1500

 

B・F-奉納のアトラトル

レベル3 攻撃1500 守備1500 効果 風属性 昆虫族

(1):自分フィールド上に存在する「B・F」モンスターが攻撃対象となったときに手札から発動できる。このカードを自分フィールド上に特殊召喚し、攻撃モンスターを破壊する。

 

手札封鎖

アクション魔法カード

(1):このターン、相手は手札に存在するモンスターの効果を発動できない。

 

「なら俺は…アクション魔法《刻苦》を発動!デッキからカードを1枚ドローし、俺自身が800のダメージを受ける!ぐうう…!」

発動と同時に電撃が遊矢を襲い、その痛みに耐えながらカードをドローする。

 

遊矢

手札1→2

ライフ1600→800

SPC4→3

 

刻苦

アクション魔法カード

(1):自分はデッキからカードを1枚ドローする。その後、800ダメージを受ける。

 

(…!このカードは…!?)

ドローしたカードを見て、遊矢は絶句する。

800のダメージと引き換えにドローしたそのカードはある少年から託されたものだった。

その少年は遊矢達のいるホテルのボーイとして働いているコモンズ出身者で、名前はサムだ。

彼はキングとなり、ある程度時間がたった後のジャックを尋ね、カードを譲ってほしいと頼んだ。

そして、ジャックから「お前にピッタリのカード」として渡されたのが今、遊矢のドローしたカードだ。

「俺は…モンスターを裏守備表示で召喚。ターンエンド」

 

シンジ

手札1→0

ライフ3400

SPC6

場 B・F-降魔弓のハマ レベル8 攻撃2800

  B・F-必中のピン レベル1 守備300

  B・F-奉納のアトラトル レベル3 守備1500

  B・F・N(永続罠カード)

  伏せカード1

 

遊矢

手札1

ライフ800

SPC3

場 オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン(オーバーレイユニット2) ランク7 攻撃2800

  竜脈の魔術師 レベル4 攻撃1800

  裏守備モンスター1

  星読みの魔術師(青) ペンデュラムスケール1

  時読みの魔術師(赤) ペンデュラムスケール8

 

「威勢よく追いついてこれか!?自爆ダメージを受けてまでドローしたカードが逆転の一手じゃなくて残念だったな!俺のターン!」

 

シンジ

手札0→1

SPC8→10

 

遊矢

SPC3→5

 

「俺はバトルフェイズに入り、攻撃を行わずにメインフェイズ2へ移行する!さあ、遊矢!もう1度俺たちコモンズの怒りを受けろ!!」

再びB・F達の針が遊矢に襲い掛かる。

このまますべての針を受けてしまうと、遊矢のライフが底についてしまう。

だが、針が命中したのは分身だけで、遊矢本体に当たることがなかった。

「何!?」

「アクション魔法《加速》!これで俺が受ける効果ダメージを0にした!」

「ちっ…またパネルを通過したか!だったら《必中のピン》の効果を発動!こいつで200のダメージを与える!」

《B・F-必中のピン》が遊矢に向けて針を放つ。

だが、召喚エネルギーの嵐が針を遊矢に当たる前に粉々に砕いた。

(そうだ…ダメージを恐れる必要はない。召喚エネルギーが俺を守ってくれる!)

 

遊矢

ライフ800→600

SPC5→6

 

「更に俺は《スピード・ワールド・A》の効果を発動!スピードカウンターを10個取り除き、お前の裏守備モンスターを破壊する!」

シンジのDホイールから放たれる赤い針のような銃弾が裏守備モンスターを貫いた。

裏守備モンスターは一瞬、《調律の魔術師》へと姿を変え、すぐに消滅した。

「はっ!《調律の魔術師》だと??相手に回復させ、自分にダメージを与えるだけの雑魚カードか!俺はこれでターンエンド!」

 

シンジ

手札1

ライフ3400

SPC10→0

場 B・F-降魔弓のハマ レベル8 攻撃2800

  B・F-必中のピン レベル1 守備300

  B・F-奉納のアトラトル レベル3 守備1500

  B・F・N(永続罠カード)

  伏せカード1

 

遊矢

手札1

ライフ600

SPC6

場 オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン(オーバーレイユニット2) ランク7 攻撃2800

  竜脈の魔術師 レベル4 攻撃1800

  星読みの魔術師(青) ペンデュラムスケール1

  時読みの魔術師(赤) ペンデュラムスケール8

 

「俺のターン、ドロー!」

 

遊矢

手札1→2

SPC6→8

 

シンジ

SPC0→2

 

「バトルだ!俺は《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》で《降魔弓のハマ》を攻撃!」

《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》が氷の息吹を放ち、《B・F-降魔弓のハマ》を氷漬けにしようとするが、そのモンスターの目の前に黒い渦が出現し、その息を飲み込んでいく。

「罠カード《エクストラ・ペナルティ》を発動!エクストラデッキから特殊召喚されたモンスターが攻撃してきたとき、エクストラデッキから特殊召喚された相手モンスター1体を除外する!」

「なら、俺は《アブソリュート・ドラゴン》の効果を発動!オーバーレイユニットを1つ取り除き、自分自身の攻撃を無効にする!これで、《アブソリュート・ドラゴン》は攻撃モンスターとして扱われない!」

「いいや、《エクストラ・ペナルティ》で除外されるモンスターは攻撃モンスターに限定されない!」

「く…それでも、そのあとで手札・墓地からオッドアイズモンスター1体を特殊召喚できる…!もう1度現れろ、《オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン》!!」

《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》を包む氷が砕け、その中から再び《オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン》が姿を見せる。

 

オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン レベル7 守備2000

 

エクストラ・ペナルティ

通常罠カード

(1):相手フィールド上に存在するエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターの攻撃宣言時に発動できる。相手フィールド上に存在するエクストラデッキから特殊召喚されたモンスター1体を除外する。

 

「遊矢!《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》は墓地へ送られたとき、エクストラデッキから新たなオッドアイズを呼び出す力があったよな?その効果で《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》を召喚されたらまずかったが、こうして除外したなら意味がない!これでお前の…トップスの敗北への道が見えたぞ!」

(違う…違うよ、まだあきらめちゃいけない!)

「え…?」

シンジの言葉を否定するかのような声が遊矢の脳裏に響く。

聞いたことのない少女の声だが、その声の主が誰か、なぜかはっきりとわかる。

「まさか…調律の魔術師!?」

(そうだよ。やっとボクの声を聞いてくれたね、マスター)

遊矢の前に調律の魔術師の幻影が現れ、嬉しそうに彼を見る。

(マスター。ボクを…信じて)

「お前を…信じる…?」

遊矢は改めて、《調律の魔術師》の能力を見る。

レベル1の闇属性・魔法使い族チューナーで、召喚・特殊召喚されたとき、自分に400のダメージを与え、相手のライフを400回復させる、一見すると何も役に立たないカード。

このカードをジャックから受け取ったサムはそれを自分に、コモンズに対する侮辱と受け取った。

だから、このカードをジャックに返すように遊矢に願い、託した。

(あなたは…人だけじゃなく、モンスターとも一緒に歩むことができる人。一緒に成長できる人。かつて、ボクを持っていてくれたもう1人のマスターのように…)

「もう1人のマスター…ジャック…」

(あなたのデッキに入り、そこでボクはあなたという人を知った…。だから、ボクはあなたを信じる!あなたが信じてくれたら、ボクは必ずあなたに応えるから!)

真剣なまなざしでそういうと、調律の魔術師が姿を消す。

自分を信じてほしい、という少女の願いを聞き、遊矢はもう1度自分の墓地を見る。

「調律の魔術師…。モンスターが俺を信じてくれる…。オッドアイズ、ダーク・リベリオン…もしかしてお前も…?」

(勘違いをするな、小僧。お前は俺にとってただの道楽。力に飲まれれば殺すだけのこと。死にたくなければ、力を支配して見せよ)

(私は…あなたを信じます。私のマスター、ユートがあなたを信じて託したのですから…)

オッドアイズは相変わらずの答え方だが、ダーク・リベリオンは素直に自分を信じると言ってくれた。

それだけでも素直にうれしかった。

ピンチであるにもかかわらず、笑みを浮かべてしまう。

「ああ…。そうか。俺は信じられてるんだな。柚子や権現坂だけじゃない。モンスターたちにも…」

「何をごちゃごちゃわけのわからないことを言っている!?早くターンを進めろ!!」

「わかったよ…。信じるよ、君を…」

(ありがとう、ボクのマスター…)

遊矢の思いにこたえるかのように、墓地の《調律の魔術師》のテキストが書き換わっていく。

回復とダメージの効果が(2)に移動し、そして(1)に新たな効果が刻まれる。

「…俺は手札から《Sp-エンジェル・バトン》を発動!スピードカウンターを4つ取り除き、デッキからカードを2枚ドローして、手札1枚を墓地に捨てる!」

 

遊矢

SPC8→4

 

手札から墓地へ送られたカード

・ブロック・スパイダー

 

「そして…!」

遊矢が乗るマシンレッドクラウンが新たなアクションカードパネルを通過し、アクションカードを手にする。

「…よし!俺はカードを1枚伏せ、《竜脈の魔術師》を守備表示に変更し、ターンエンド!」

 

シンジ

手札1

ライフ3400

SPC2

場 B・F-降魔弓のハマ レベル8 攻撃2800

  B・F-必中のピン レベル1 守備300

  B・F-奉納のアトラトル レベル3 守備1500

  B・F・N(永続罠カード)

 

遊矢

手札2→1(アクションカード1)

ライフ400

SPC4→5

場 オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン レベル7 守備2000

  竜脈の魔術師 レベル4 守備900

  伏せカード1

  星読みの魔術師(青) ペンデュラムスケール1

  時読みの魔術師(赤) ペンデュラムスケール8

 

「何が信じるだ!?その相手に利益を与えることしかできないモンスターを…!そんなもので、俺に…俺たちコモンズに勝てるものか!俺のターン!!」

 

シンジ

手札1→2

SPC2→4

 

遊矢

SPC5→7

 

「《B・F・N》は発動後、2回目の俺のターンのスタンバイフェイズ時に墓地へ送られる!そして、バトルだ!俺は《降魔弓のハマ》で《オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン》を攻撃!」

《B・F-降魔弓のハマ》が放つ矢が《オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン》を貫き、遊矢に襲い掛かる。

しかし、やはりファントムライトによって矢が粉々に砕けた。

「そして、バトルフェイズ終了と同時に《ハマ》の効果を発動!これで倒れろぉーーー!!」

再び4本の針が遊矢に向けて飛んでいく。

1度は逃してしまった必殺のチャンスを今度こそ逃さないために。

「俺はアクション魔法《ど根性》を発動!俺が受けるダメージを無効にし、ライフを800回復させる!」

 

遊矢

ライフ400→1200

 

ど根性

アクション魔法カード

(1):自分が受ける効果ダメージを0にし、800LP回復する。

 

「またアクション魔法で…!!だが、《必中のピン》の効果は受けてもらうぞ!!」

《B・F-必中のピン》が再び針を放つ。

何度も効果を発動したせいか、疲れを見せており、発射する針の勢いも緩んでいる。

 

遊矢

ライフ1200→1000

 

「俺はこれでターンエンド!」

 

シンジ

手札2

ライフ3400

SPC4

場 B・F-降魔弓のハマ レベル8 攻撃2800

  B・F-必中のピン レベル1 守備300

  B・F-奉納のアトラトル レベル3 守備1500

 

遊矢

手札1

ライフ1000

SPC7

場 竜脈の魔術師 レベル4 守備900

  伏せカード1

  星読みの魔術師(青) ペンデュラムスケール1

  時読みの魔術師(赤) ペンデュラムスケール8

 

B・F・N(ビー・フォース・ネスト)(アニメオリカ・調整)

永続罠カード

「B・F・N」はフィールド上に1枚しか存在できない。

(1):自分フィールド上に存在する「B・F」モンスターが攻撃対象となったとき、自分の手札に存在するレベル4以下の「B・F」モンスター1体を対象に発動できる。そのカードを特殊召喚し、バトルフェイズを終了させる。

(2):このカードは発動後、2回目の自分スタンバイフェイズ時に墓地へ送られる。

 

(マスター…使って。ボクの力を!!)

「ああ、信じてるぞ!俺のターン!!」

 

遊矢

手札1→2

SPC7→9

 

シンジ

SPC4→6

 

「俺は墓地の《調律の魔術師》の効果を発動!俺のペンデュラムゾーンに魔術師が2体存在するとき、このカードは手札・墓地から特殊召喚できる!」

「何!?だが…奴の効果は…!」

2体の魔術師が祈りをささげると、上空にピンク色の光の渦が生まれ、《調律の魔術師》が下りてくる。

それと同時に彼女を中心に波紋が発生し、それが遊矢とシンジを襲う。

「《調律の魔術師》の効果!このカードの召喚・特殊召喚に成功したとき、相手のライフを400回復させ、俺は400ダメージを受ける!」

 

調律の魔術師 レベル1 攻撃0

 

遊矢

ライフ1000→600

 

シンジ

3400→3800

 

「バカな奴め!自分で自分を追い込みやがった!」

(いまだ、マスター!!)

「ああ!俺は罠カード《ダーク・ホライズン》を発動!」

「何!?そのカードは…!」

遊矢が発動したカードを見たシンジは目を大きく開く。

《調律の魔術師》の存在がシンジの勝利の方程式を崩壊させていく。

「俺がダメージを受けたとき、その数値以下の攻撃力の闇属性・魔法使い族モンスター1体をデッキから特殊召喚する!俺は《EMオッドアイズ・シンガー》を特殊召喚!」

《調律の魔術師》のそばに、白いローブを纏った、赤と緑のオッドアイを持っている点以外は柚子とよく似た姿の少女が現れる。

 

EMオッドアイズ・シンガー レベル6 攻撃400

 

「《オッドアイズ・シンガー》の効果!1ターンに1度、墓地からレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚できる!俺は墓地から《ブロック・スパイダー》を特殊召喚する!」

 

ブロック・スパイダー レベル1 攻撃0

 

EMオッドアイズ・シンガー

レベル6 攻撃400 守備2500 闇属性 魔法使い族

【Pスケール:青3/赤3】

(1):もう片方のPゾーンに「EM」「オッドアイズ」「魔術師」カードが存在するときに発動できる。このカードのPスケールをターン終了時まで6にする。

【モンスター効果】

「EMオッドアイズ・シンガー」はフィールド上に1枚しか存在できず、(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分の墓地に存在するレベル4以下のモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化され、このターン攻撃できない。

(2):自分フィールド上にこのカード以外の「EM」「オッドアイズ」「魔術師」モンスターが存在するとき、相手はこのカードを攻撃対象とすることができない。

 

2体のモンスターが現れ、再び《調律の魔術師》が波紋を起こす。

その波紋は遊矢と彼のエクストラデッキを襲い、エクストラデッキの一番上に新たなカードが生まれる。

「俺はレベル6の《オッドアイズ・シンガー》とレベル1の《ブロック・スパイダー》に、レベル1の《調律の魔術師》をチューニング!」

「何!?《調律の魔術師》のダメージを引き金にここまで…!」

「シンジ…いらないカードなんてこの世に存在しない。《調律の魔術師》の力があったから、《ダーク・ホライズン》を発動できて、《EMオッドアイズ・シンガー》を呼び出すことができた。そして、彼女の歌が《ブロック・スパイダー》を復活させ、今こうしてシンクロ召喚をしようとしている!本当にお前がシティを変革させる意思があるんだったら…コモンズのみんなだけじゃない!こうした本当はすごい力を持っているのに、それを発揮する術が与えられていない、《調律の魔術師》のような存在にも目を向けるべきだったんだ!剛毅の光を放つ勇者の剣!今ここに閃光と共に目覚めよ!シンクロ召喚!覚醒への入口へ導く勇者!レベル8!《覚醒の魔導剣士》!」

先ほど生まれたカードをテキストを読むことなくフィールドにおく。

それと同時に遊矢のフィールドに《時読みの魔術師》が白いローブと彼が持つガントレッドに似た特徴を持つ2本の剣を装備したような姿のモンスターが姿を見せる。

 

覚醒の魔導剣士 レベル8 攻撃2500

 

(榊遊矢選手、新たなシンクロモンスターを召喚しましたが、攻撃力は2500!《降魔弓のハマ》には届いていません!!)

「黙っていたら、知ったような口を…!御託を並べた挙句、召喚したのが《降魔弓のハマ》の及ばない攻撃力2500じゃないか!!所詮、お前が信じた《調律の魔術師》が呼び覚ました力は…」

「俺は《Sp-ファイナル・アタック》を発動!俺のスピードカウンターが8つ以上あるとき、俺のフィールド上のモンスター1体の攻撃力を2倍にする!」

「何ぃぃ!?」

「シンジ!お前がコモンズの人のために変革をするというなら、俺は…みんなのために、みんなの笑顔のためにデュエルをする!コモンズもトップスも、勝者も敗者も関係ない!みんなのために俺はデュエルをする!」

遊矢の体を覆う召喚エネルギーが《覚醒の魔導剣士》の2本の剣に吸収されていく。

マシンレッドクラウンのファントムライトがその影響で消え、通常の状態に戻っていくが、勇者の剣の刀身は赤い輝きを見せる。

 

覚醒の魔導剣士 レベル8 攻撃2500→5000

 

「あ、あ、ああ…」

「バトルだ!《覚醒の魔導剣士》で《降魔弓のハマ》を攻撃!!」

赤く光る2本の剣を交差させて構えた《覚醒の魔導剣士》は《B・F-降魔弓のハマ》に向けて突撃する。

弓士は反撃のために何度も矢を放つも、剣が放つ光のせいか、刃やローブをかすめるだけで命中しない。

そして、敵に肉薄した勇者はそのまま十字状に剣をふるい、切り裂かれた《B・F-降魔弓のハマ》は粉々に砕け散った。

「《覚醒の魔導剣士》は戦闘で相手モンスターを破壊したとき、破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを…相手に与える…」

「ぐ、うう…!」

目の前にアクションカードパネルがなく、逆転への糸口がないシンジは悔し気に遊矢が覚醒させたモンスターを見る。

ダメージ計算終了と同時にどんどんDホイールのスピードが通常の物へと落ちていった。

 

シンジ

ライフ3800→600→0

 

(決まったーーー!!フレンドシップカップ2回戦第2試合!勝者は榊遊矢選手ー!!)

決着がついた瞬間、スタジアムの人々は言葉を失い、メリッサの実況が流れるまで誰1人しゃべることがなかった。

彼女の声を聞き、状況を飲み込むことができた観客たち、とくにシンジ達が敵視したトップスの人々は拍手で遊矢を迎える。

コモンズの人々の反応は半々で、シンジの敗北にショックを受ける人がいれば、素直に遊矢に激励する人もいた。

そして、遊矢とシンジはスタジアムに到着する。

「シンジ…」

ヘルメットを脱いだ遊矢はシンジを見る。

彼の願った変革を否定してしまった以上、馬鹿野郎だのお前は俺の夢を壊しただの罵倒されるかもしれない。

だが、正面からそれを受け止めなければ、前へは進めない。

シンジのコモンズを自由にしたいという思いに間違いはないのだから。

「遊矢…見せてくれ。俺を倒した《調律の魔術師》を…」

まるですべてを受け入れたかのように、静かな声で彼は遊矢に願う。

首を縦に振った遊矢はすぐに《調律の魔術師》をシンジに見せた。

「なんだよ…特殊召喚効果がついても、自分にダメージを与えて、相手を回復させるのはそのままか…」

遊矢にカードを返したシンジは右手で目を抑え、笑いをこらえる。

その眼からは涙が流れ、熱いアスファルトの上に落ちた。

「こいつを役に立たないカードと見下した…俺の油断が敗北の原因か…」

思い返せば、《調律の魔術師》もまた、コモンズの象徴ともいえるカードかもしれない。

少なくともパワーカード命のトップスはそんなカードに目を向けることもないだろう。

《調律の魔術師》を感謝しながらデッキに入れた遊矢の目に例の男2人の姿が映る。

これからシンジは彼らに連れられて、地下へ送られる。

けど、これが遊矢の選択の結果、この大会のルール。

「シンジ、俺は…」

「遊矢、みんなのためにデュエルをすると言ったな…。その言葉、忘れるなよ」

涙を拭いたシンジはDホイールを降り、自ら男たちのもとへ向かう。

(マスター、大丈夫。ボク達が優勝して、もう1人のマスターに勝てば、きっとみんなを助け出せるよ)

「ああ…わかってる。だから…これからもよろしくな。…ナディ」

(え…?ナディ?)

「お前の名前だよ。いつまでも《調律の魔術師》ってばかり呼ぶわけにはいかないだろ?」



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第75話 迷いと覚悟と

「長官、榊遊矢を連れてまいりました」

「ご苦労様です。君は下がりなさい」

「ハッ!」

遊矢を長官室へ連れてきたセキュリティが敬礼をした後で戻っていく。

シンジとのデュエルのあと、遊矢はスタッフに連れていかれる形でホテルに戻るはずだった。

だが、途中で現れたセキュリティに身柄を引き渡され、そのままここへ連れていかれた。

わざわざトップスの金持ちが使うリムジンを使っての出迎えで、よけい気味の悪さを感じられた。

「突然のお出迎えをしてしまい、申し訳ありません。君には折り入って話したいことがありましたから…。そうですね、お詫びのしるしに紅茶でもいかがですか?先ほどいいお茶をいただきましたので…」

「いったい、俺に何の用だ?」

ロジェの顔をあまり見たくないと思った遊矢は早く出ていきたいと、単刀直入に用件を尋ねる。

お湯を入れたばかりのティーポッドを机に置いたロジェは代わりにタブレット端末を手にし、それで周囲のガラスに映っている映像を切り替えていく。

「あなたはどのように感じましたか?この次元を…自分の直感として」

トップスやコモンズの光景を入れ替えて映し出しながらロジェは尋ねる。

「…最初はあまりにも理不尽な格差社会だって思った。けど、この大会に参加してからは、コモンズの大きな憎しみと、トップスのコモンズを人間とは思わない…どういえばいいか、軽薄な冷たさを感じて、どちらも…怖かった」

「怖い?」

「そう…感じるんだ」

不思議な形容をした遊矢の目をロジェはじっと見る。

今の遊矢の目は元に戻っている。

ロジェは遊矢の2回のデュエルを見ているが、双方のデュエルはあまりにも動きが違って見えた。

「まるでエスパーのような言い方ですね。いいでしょう。その怖さがシンクロ次元の本質と言えるでしょう。過酷な競争と理不尽な格差が社会の分断を招いており、将来はこの次元は内乱で自滅の道をたどるでしょう」

「内乱…」

遊矢の言った怖さの先にある未来を口にしたロジェを見た遊矢の表情が曇る。

治安維持局長官でありながら、平然と、まるで第3者か傍観者のように言う彼からトップスの人々とは異なる冷たさを感じられた。

「ご存知かもしれませんが、私はもともと、融合次元でアカデミアに所属していました。しかし、プロフェッサーのやり方についていけず、こうしてシンクロ次元に流れてきました。だからこそ、共感できるのです。君に…君の感じるこの次元の歪みに」

「融合次元の…!」

あまりにもあっさりと素性を暴露したロジェの言葉で、1回戦で戦ったデュエルチェイサー227がなぜ融合モンスターを手にしていたのか、つじつまが合った。

融合次元出身者であるロジェであれば、融合モンスターや融合関係のカードを作るのは造作もないことだ。

そして、融合モンスターを使ったあのセルゲイもロジェの差し金だということがわかる。

「君はシンジ・ウェーバーを倒したことで、ある程度内乱の機運を抑えることができたでしょうが、あくまで一時的。シンジ・ウェーバー以外にもこうして革命を起こそうと思う人物がいるでしょう。時計の針をほんのわずかに止めたにすぎません」

「じゃあ、どうすれば…」

ロジェのいう通り、シンジを倒した程度で革命を完全に止めることができるはずがない。

たとえ一度失敗したとしても、ある程度時が流れると再び起こる可能性もある。

「ですが、私が見ているのはその先です。革命という嵐の先には新たな社会システムが構築されます。私はそこで、人々に笑顔を与える理想郷を作りたいと思っています。そのシステム作りに、あなたの力が必要なのです」

笑みを浮かべたロジェは遊矢の両肩をつかむ。

その間の映像が変わり続け、その中にはトップスによる虐待を受けるコモンズの労働者の映像もある。

「あなたの人々を笑顔にするデュエルをしたいという思いは、革命の先の未来に必ず必要となります。そして、将来侵略してくるであろう融合次元に対する自衛として、ランサーズと柊柚子、セレナの力も必要です」

「柚子とセレナの力…!?」

「アカデミアは次元を統一し、理想郷を作るアークエリアプロジェクトを進めています。そして、柊柚子とセレナはこの計画で一番重要なピースです。彼女たちの存在を材料に交渉し、融合次元による侵攻を止めることができるでしょう。仮に交渉に失敗したとしても、ランサーズという大きな力がある。彼らの力はフレンドシップカップで証明されてますし、シンクロ次元の力も加えることで、より大きな力となります。いかがでしょう?あなたにとっても、まったく損にならない話でしょう。信用していただけますね…?」

ロジェが話す間、遊矢はじっと目を閉じて聞いていた。

映像が生み出す先入観にとらわれないように。

そして、もともとこの次元の出身者ではないということから彼の言葉の冷たさの正体を知った遊矢は目を開く。

「じゃあ…その革命の中で犠牲になる人たちはどうなる?」

「仕方ありません。創造は破壊の中でしか生まれない。何かを成し遂げるためにはそれなりの代価が必要になるもの。等価交換ですよ」

「等価…交換…」

 

「翔太君!!」

「ああ、久しぶりだな。伊織」

アジトに到着した翔太を伊織たちシェイドのメンバーが出迎える。

漁介と鬼柳は笑いながら翔太の肩をたたく。

みんな、まるで翔太がこのタイミングで帰ってくることが分かっているかのように見える。

「おい、サプライズじゃなかったのか?」

「月影から教えてもらった。お前が情報を持って戻ってくると…。再会を喜んでいる場合ではないようだな」

ジョンソンの発言で、若干浮かれていた周囲が落ち着きを取り戻す。

全員が落ち着いたのを確認した後で、翔太は後ろを向く。

「それは俺よりもこいつが言ったほうがいいだろう。なぁ、素良!」

「素良??」

いち早く、翔太の言葉に柚子が反応する。

そして、建物の陰からゆっくりと素良本人が姿を見せる。

「あいつ、アカデミアの…」

「漁介、黙っとれ」

「僕は…伝えに来たんだ。柚子と伊織、みんなに…その、いろいろと…」

「まぁ待て。ここじゃあなんだ。まずは落ち着ける場所へ行って、そこで話せるようにしよう」

話そうとする素良を遮るかのように、モハメドが提案する。

ここから話す内容はあまり表ざたにならないほうがいい、という判断だ。

それにうなずいた素良は柚子の案内で宿舎に入っていく。

「翔太君、素良って…」

「ま、あいつの言葉を聞いて、そのあとで判断するさ」

 

宿舎1階の一番大きな部屋に、翔太たちが集まる。

なお、次元戦争について知っている面々以外は部屋に入っていない。

「素良…話せ」

「うん。まず、プロフェッサーはシンクロ次元に柚子とセレナがいるって情報をつかんだ。おそらく、このフレンドシップカップが終盤に近づくくらいにオベリスク・フォースが乗り込んでくる。2人をさらい、獲物を狩るために…」

「居場所をつかんだって…どうして!?」

「デニスがアカデミアのスパイなんだ。彼は黒咲に敗れた後、融合次元へ逃げた」

素良がデニスを逃がした、ということは翔太と月影によって口止めされた。

その言葉で彼がやはりアカデミアの味方だという先入観を与えない全員に与えないようにするためだ。

素良は話を進める。

「シンクロ次元に乗り込む目的はもう1つ。ロジェの存在だ」

「ロジェとアカデミアに何か関係があるの?」

「うん。ロジェはもともと、アカデミアの人間なんだ。けど、プロフェッサーに従うのが嫌で、リアルソリッドビジョンシステムの設計図をもって脱走したんだ。自分だけの王国を作るために…」

「じゃあよぉ、セルゲイってイカレヤローと227が《融合》を持っていたのは…」

「ロジェが渡したんだと思う。彼以外、考えられない」

素良からの情報に一同が騒然となる。

だが、彼の言葉はつじつまが合う以上、それが事実であると受け取らざるを得ない。

「それから、もう1つ情報があるんだ。伊織についてだけど…」

「え??私の??」

まさか自分のことが話題になるとは思いもよらず、びっくりしながら素良を見る。

翔太もこれについては聞きたかったと思ったのか、先ほどの興味なさげに窓から外を見る不真面目な態度を一変させる。

「…これは僕も本当かどうかはわからない。しかも、これは伊織たち自身の目で確かめなきゃならないけど…」

「御託はいい。さっさと話せ」

「うん…。伊織、君のお父さんは…融合次元にいる」

「…え??」

「君は…融合次元の人間なんだ」

素良の口から伝えられた衝撃の情報に翔太たちが、誰よりも伊織自身が動揺する。

今までスタンダード次元で育ち、ほかの次元について何も知らずに育った自分が融合次元出身だということが信じられなかった。

「で、でも…私は舞網市の院長先生に拾われて、施設に…!!」

「だが、お前が持っているそのE・HEROデッキ、施設に来た頃から持っているといってたよな。《融合》のカード込で」

「それは…私にもわからないよ!私だって…聞きたいよ。どうして、HEROデッキと《融合》を持っているのか…」

大声を上げた伊織はその場で頭をかきむしる。

後半から涙声になっていて、そこには能天気で明るい翔太のよく知る伊織の姿がなかった。

「あくまで仮説だよ。けど…真実を確かめる方法は1つだけある」

「方法…?」

「それは、融合次元へ行くことだよ。アカデミアでは融合次元に住んでいるすべての人のDNAデータを持ってる。そこで真実を確かめることができる」

「DNAを…また奇妙なことを…」

アカデミアの規模がどれほどのものかは判断できないが、一つの次元の人間すべてのDNAデータを手にすることができるというのはあまりにも異常に思えた。

「僕が伝えられる情報は…これだけだ」

「…で、おまえ自身はこれからどうするんだ?まさかアカデミアへ帰るって言わないだろうな?」

立ち上がった翔太は素良の胸ぐらをつかみながらにらみつける。

今の翔太は明らかに機嫌がよくなかった。

「…わからない。翔太には言ったよね…。僕はまだ、どちらが正しいのかわからないって。プロフェッサーのいうことが正しいのか、遊矢たちが言ってることが正…!?」

言い終わらぬうちに素良の頬に翔太の拳が叩き込まれる。

殴り飛ばされた素良の姿を見た柚子が非難めいた眼で翔太を見る。

だが、それに意を返すことなく、デュエルディスクを展開する。

「お前に迷う時間が与えられてると思ってるのか、甘ったれ小僧が!」

「僕が…甘ったれ…」

「迷って、中途半端でいりゃあ俺らが手を差し伸べると思っていたか!?裏切るんなら今、この場で盛大に裏切れ。悪党のままであいるなら最後まで悪党らしくいろ!」

翔太の言葉を黙って聞いた素良の口の中が切れたのか、口元に血が流れる。

その血を手の甲でふき取り、立ち上がった素良はデュエルディスクを構える。

「お前に…何がわかる…僕の気持ちを…」

「わからないな。お前の気持ちを考えてるほど暇じゃあないからな」

「くっ…!」

「覚悟しろよ。半端な覚悟で勝たせてやれるほど…俺は甘くねえ!!」

 

翔太

手札5

ライフ4000

 

素良

手札5

ライフ4000

 

開始宣言無しにデュエルが開始され、素良はカードを5枚引く。

それを確認した翔太はターンを開始した。

「俺は手札から魔法カード《魔装門》を発動。お前のフィールドに《魔装幻影トークン》2体を特殊召喚し、デッキから魔装カード1枚を手札に加える。俺はデッキから《魔装弓士ロビン・フッド》を手札に加える。そして、手札から魔法カード《手札断殺》を発動。お互いに手札2枚を墓地へ送り、デッキからカードを2枚ドローする。さあ、手札を墓地へ送れ」

「《手札断殺》?素良のデッキは墓地を最大限に活用できるのに…」

柚子のいう通り、素良は墓地のカードを活用できる。

それだけでなく、様々な状況下で必要なカードをサーチしていき、何度も融合召喚を行う。

そんな彼を相手に《手札断殺》を使うのは下策と言ってもいい。

「俺は《魔装槍士タダカツ》と《代償の宝札》を墓地へ送る」

「僕は…《エッジインプ・DT・モドキ》と《魔玩具融合》を墓地へ送る…!」

お互いに宣言したカードが墓地へ送られ、カードをドローする。

そして、翔太の墓地が光る。

「この瞬間、《代償の宝札》の効果発動。俺はデッキからカードを2枚ドローする。更に、俺はモンスターを裏守備表示で召喚。カードを3枚伏せ、ターンエンド」

 

翔太

手札5→7→3(うち1枚《魔装弓士ロビン・フッド》)

ライフ4000

場 裏守備モンスター1

  伏せカード3

 

素良

手札5

ライフ4000

場 魔装幻影トークン×2 レベル6 攻撃2000

 

「僕のターン、ドロー!」

 

素良

手札5→6

 

「僕は手札から永続魔法《デストーイ・ファクトリー》を発動!1ターンに1度、墓地の融合またはフュージョン魔法カード1枚を除外することで、デストーイ融合モンスターを融合召喚できる。僕は…墓地へ送られた《魔玩具融合》を除外し、手札の《エッジインプ・シザー》と《ファーニマル・ペンギン》、《ファーニナル・シープ》を融合。悪魔の爪よ、凍てつきし翼よ、生贄の獣よ、神秘の渦で1つとなりて、新たな力と姿を見せよ!融合召喚!現れ出ちゃえ、融合召喚!現れ出ちゃえ!すべてを引き裂く密林の魔獣!《デストーイ・シザー・タイガー》!」

3体のモンスターが渦に取り込まれ、その中から小さい子供や女性にとってはグロテスクな姿の虎のぬいぐるみを見せる。

生では初めて見る里香は見た瞬間失神し、漁介に支えられる。

 

デストーイ・シザー・タイガー レベル6 攻撃1900

 

「《デストーイ・シザー・タイガー》、遊矢から聞いたぜ。俺たちへの決別のカードらしいな。そのカードを相変わらず大事に持ってたなんてな…」

「うるさい!《デストーイ・シザー・タイガー》は融合召喚に成功したとき、素材となったモンスターの数だけフィールド上のカードを破壊できる!僕は裏守備モンスターと伏せカード2枚を破壊する!」

《デストーイ・シザー・タイガー》が巨大なハサミを使って翔太のフィールドに襲い掛かる。

だが、そのモンスターは急に青い炎に包まれて消滅してしまった。

「何!?」

「カウンター罠《大革命返し》。カードを2枚以上破壊する相手のカード効果の発動を無効にし、除外する。どうした?らしくないプレイを見せてくれるな」

「くぅ…!」

悔しげに《デストーイ・シザー・タイガー》のカードをデッキケースにしまう。

だが、素良のフィールドには翔太が特殊召喚した《魔装幻影トークン》が2体存在する。

攻撃力2000であれば、並のレベル4以下のモンスターを倒せないトークンではない。

そして、まだ発動していないモンスター効果がある。

「僕は《ファーニマル・ペンギン》の効果を発動!このカードをデストーイ融合モンスターの融合素材としたとき、デッキからカードを2枚ドローし、手札を1枚捨てる!僕は手札から《トイポッド》を墓地へ送る!そして、《トイポッド》の効果発動!このカードが墓地へ送られたとき、デッキから《エッジインプ・シザー》もしくはファーニマルモンスター1体を手札に加える。僕はデッキから《ファーニマル・ドッグ》を手札に加える!更に、《ファーニマル・ドッグ》を召喚!」

 

ファーニマル・ドッグ レベル4 攻撃1700

 

「《ファーニマル・ドッグ》の効果発動!このカードを手札から召喚・特殊召喚に成功したとき、デッキから《エッジインプ・シザー》かファーニマルモンスター1体を手札に加える。僕はデッキから《ファーニマル・ベア》を手札に加える。そして、手札の《ファーニマル・ベア》の効果発動!このカードを手札から墓地へ送ることで、デッキから《トイポッド》をセットする。そして、セットした《トイポッド》を発動し、効果発動!手札1枚を墓地へ送り、デッキからカードを1枚ドローする!そのカードがファーニマルモンスターなら特殊召喚し、それ以外のモンスターなら墓地へ捨てる!」

素良の手札にある《ファーニマル・ウィング》がコインとなって《トイポッド》に搬入される。

そして、それの丸いレバーが動くと同時に赤いカプセルが出て、その中からチョコレートがついたドーナッツを持つ、天使の羽根がついた青いネズミのぬいぐるみが出てくる。

「僕がドローしたカードは《ファーニマル・マウス》!よって、手札から特殊召喚する!」

 

ファーニマル・マウス レベル1 攻撃100

 

「やけくそ気味なソリティアを見せてくれるな。よっぽど、俺に殴られたのが癪に障ったか?」

「うるさい!お前に何がわかる!アカデミアで教わった正義を忘れられず、遊矢達がくれた笑顔を捨てきれない…。僕にとってはどちらも…」

「甘ったれるな!アカデミア兵として俺たち全員を倒す気がない、これから起こる侵略を止める気もないならさっさとこの場から消えろ!俺は罠カード《選択》を発動!相手が3回以上モンスターを召喚・特殊召喚し、俺のフィールド上に表側表示で存在するカードがない時、相手のターンを終了させる!」

翔太の怒りと共に発動されたカードから赤と青の2色で彩られた扉が出現し、素良の前に置かれる。

「そして、お前はこれから1つの選択をする」

「選択…?何を…」

「1つは次のお前のターン終了時まで、俺はお前にダメージを与えることができない。1つはお前はデッキからカードを2枚ドローする。1つは俺のフィールド上に存在するすべてのカードを墓地へ送る。1つはデッキからカードを1枚選択して手札に加える。最後の1つは俺の手札を見て、その中からカードを1枚選択してデッキに戻す。この中から1つを選べ」

「翔太君、そんなカードをデッキに…」

相手のターンを終わらせるのはいいが、相手に破格のアドバンテージを与える、使いどころを誤れば自滅するようなカードに伊織は驚く。

「選択だって…?」

「ああ、そうだ。選択肢の数は変化するが、選べるのは1つだけ。そして、その選択によっておこる結果はすべて受け入れるしかない。お前に今、足りないのは受け入れる覚悟だ」

「受け入れる…覚悟…」

「そうだ。俺たちはアカデミアを止めるためにランサーズ、そしてシェイドに加わった。自分たちがアカデミアの兵士に敗れる覚悟もしてだ。お前が仮に俺たちのもとへもう1度来るなら、お前に求められるのは元同胞を自分の手で倒す覚悟だ。アカデミアに戻る場合は俺たちに倒される覚悟…。どちらにしてもいばらの道であることには変わらない。だから、その選択で起こるすべてを受け入れる気があれば、今ここで選べ」

「僕は…」

素良はアカデミアに戻ってから、こうして翔太とデュエルをするときまでのことを思い出す。

ドクターNに自分の体について聞かされたときは、正直に言うと怖かった。

訓練の賜物なのか、人前でその恐怖を言うことも顔に表現することもなかったが。

柚子とセレナのことがあり、せめて弟子である柚子だけでもとシンクロ次元に来たが、まさかこのようなことになるとは想像できなかった。

選択は予測できないタイミングで突然迫られる、教官からの教えの1つだが、それを今、肌で感じている。

(僕に残された時間は少ない…。迷っている間に死ぬのなら、僕は…!)

自分の体の中にあるものを感じた後で、素良の心は決まった。

「僕は…相手フィールド上のカードをすべて墓地へ送る!」

扉が開き、翔太のフィールドのカードが消滅していく。

 

墓地へ送られたカード

・魔装霊レブナント

・エヌルタの慈悲

 

翔太

手札3(うち1枚《魔装弓士ロビン・フッド》)

ライフ4000

場 なし

 

素良

手札6→2

ライフ4000

場 魔装幻影トークン×2 レベル6 攻撃2000

  ファーニナル・ドッグ レベル4 攻撃1700

  ファーニマル・マウス レベル1 攻撃100

  トイポッド(永続魔法)

  デストーイ・ファクトリー(永続魔法)

 

選択

通常罠カード

(1):相手がモンスターを召喚・特殊召喚を3回以上行った相手ターンにのみ発動できる。そのターンを終了させる。その後、相手は以下の効果の中から1つを選択する。

●自分はデッキからカードを2枚ドローする。

●相手フィールド上に存在するすべてのカードを墓地へ送る。

●自分のデッキからカードを1枚手札に加える。

●相手の手札を確認し、その中から1枚を墓地へ送る。

 

 

「その選択で、後悔はないんだな?」

空っぽになった自分のフィールドを見て、翔太は確認するように尋ねる。

「うん…。これが、僕が覚悟して選んだ道」

「…。俺のターン!」

 

翔太

手札3→4

 

「俺は手札の《魔装弓士ロビン・フッド》の効果を発動。相手フィールド上にのみモンスターが存在するとき、手札のこのカードを表向きでエクストラデッキに置くことで、エクストラデッキ・墓地の魔装ペンデュラムモンスター1体を手札に加える。俺は墓地の《魔装槍士タダカツ》を手札に加える。そして、相手フィールド上にのみモンスターが存在するとき、このカードはリリースなしで召喚できる。《魔装近衛エモンフ》を召喚」

 

魔装近衛エモンフ レベル5 攻撃1000

 

「《エモンフ》が召喚されたってことは…!」

手札の《魔装槍士タダカツ》、そしてフィールドに現れた《魔装近衛エモンフ》に伊織たちはこれから翔太がやるパターンを察する。

素良も腕を下ろし、潔く攻撃を受ける覚悟を固めていた。

「このカードをエクシーズ素材とするとき、他のエクシーズ素材は手札の魔装モンスターでなければならない。俺はレベル5の《エモンフ》と手札の《タダカツ》でオーバーレイ!万物を測りし漆黒の騎士よ、むさぼりし者たちに飢餓をもたらせ!エクシーズ召喚!!現れろ、《魔装騎士ブラックライダー》!!」

 

魔装騎士ブラックライダー ランク5 攻撃2800

 

「《ブラックライダー》の効果。メインフェイズ1にオーバーレイユニットを2つ取り除くことで、このターン、相手フィールド上のすべてのモンスターに攻撃できる」

オーバーレイユニットを取り込んだ漆黒の騎士の天秤が揺れ動き、4つの隕石が召喚される。

「来い、翔太!!」

「《ブラックライダー》で素良のすべてのモンスターを攻撃!ブラック・リブラ・メテオ」

召喚された4つの隕石が素良のフィールドに降りかかる。

隕石に直撃した4体のモンスターは次々と消滅し、素良を爆風に包まれていく。

 

素良

ライフ4000→3200→2400→1300→0

 

敗北した素良は大の字になってその場にあおむけで横たわっていた。

「あーあ、負けちゃった…」

敗北したらすべてが終わりだと言っていたころが嘘だったかのように、素良の表情はおだやかだった。

そんな彼に翔太は手を差し伸べる。

「これで、アカデミアの兵士、紫雲院素良は死んだ。これからは遊勝塾の紫雲院素良だ」

「…まったく、ほんの少しだけ僕より先に塾に入ったばかりでその言い方…。でも、今はそれでいい…」

翔太の手を握り、素良はゆっくりと立ち上がった。

 

「さぁ、改めて聞きます。私とともにシンクロ次元を理想郷に変える手伝いをしていただけますか?」

「…答えは、ノーだ」

「ノー?自分の今の立場をわかっていて、ノーというのですか?」

否定されたロジェは遊矢から手を放し、ゆっくりと後ろへ下がる。

遊矢の目は再びあのオッドアイへと変わっていた。

「やっぱり、あなたは俺たちと同じよそ者。だけど…あなたはシンクロ次元で生きている人たちのことを何にも考えてない!だから人の命を軽く見る。そんな人のことを…俺は信用できない!」

「私が、信用できない…??」

ピクピクと表情をゆがめるのを抑えながらロジェは穏やかな言動を崩さずに遊矢と話す。

だが、もうすぐその仮面は砕ける。

そうなるように、遊矢は言うのを続ける。

「あなたの言う理想郷はあなた個人にとっての理想郷、シンクロ次元の人たちのためのものなんかじゃない!本当に理想郷を作りたいなら、この次元にいる人を1人も残さず全員幸せにしろ!この次元の人々の命を…あなたのちっぽけな自己満足のために奪わせるもんか!」

「私に…指図するなぁ!!」

ついに怒りを爆発させたロジェは我を忘れて隠し持っていた護身用のピストルを発砲する。

弾丸は遊矢の左腹部に命中する。

「柚…子…」

左手を銃創にあてながら、遊矢は倒れ、意識を失った。

背中に傷がないため、貫通していないことが分かる。

「これは、警告です。榊遊矢。この次元の王に歯向かうとどうなるか…この痛みに苦しみながら考えるといいでしょう」

すぐにセキュリティ隊員が長官室にやってきて、遊矢を確保する。

そして、彼を地下の独房へ連行していった。



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第76話 烏とハヤブサ

地下の独房の扉が開き、その中に気を失った遊矢が放り込まれる。

手当てされた形跡がなく、腹部からの血が遊矢のライディングスーツを濡らす。

ロジェの人形と化した隊員は中を確認することなく、扉を閉めてその場を後にした。

「遊矢殿…」

天井についている、それと同じ色柄の布が外れ、そこから月影が下りてくる。

意識を失ったままの遊矢をあおむけにし、傷口を確認する。

「すまぬ、遊矢殿…。今、おぬしを助けることができぬ。せめて、傷の治療はさせてもらう」

月影を初めてする風魔デュエル塾の塾生は忍者修行の一環として、簡単な治療技術も学んでいる。

幸い、ここに侵入する前にヒイロが調達した治療用の道具や薬をいくつか受け取っており、この場でひそかに治療することが可能となっている。

「死んではならぬぞ、まだ遊矢殿は何も成し遂げていないのだから…」

 

(それでは、舞網チャンピオンシップ2回戦第3試合を行いたいと思います!!対戦カードは…1回戦最終試合を圧倒的な大逆転で飾った黒咲選手、盟友シンジ・ウェーバーの無念を晴らすことができるのか!?黒い旋風、クロウ・ホーガン!!)

遊矢とシンジのデュエルが終わり、それから十分もたたないうちに次の試合が開始される。

お昼時であるためか、観客の中には弁当やサンドイッチを食べる人がおり、トップスの客に対してはステーキやフカヒレスープといった極上のランチがもてなされる。

「頼むぞ、クロウ・ホーガン!!」

「コモンズの意地を見せてやれーーー!!」

シンジが敗北したことで、コモンズの観客たちには落ち込みが見受けられた。

だが、彼らは最後の1人となったクロウに思いを託し、必死に応援をする。

彼なら敗北した3人のコモンズの思いをつなげてくれる。

トップスに一泡吹かせてくれると。

「クロウ・ホーガン…」

先にスタート地点に到着していた黒咲はじっとクロウを見る。

2人は収容所から脱走するときに初めて顔を合わせただけで、互いにデュエルをしたことがなければ、会話もしたことがない。

共通点があるとしたら、遊矢と翔太に面識があるという程度だ。

だが、このフレンドシップカップのルールの存在から、この対戦カードは自分たちにとって都合がよかった。

あまり相手について知らない者同士であるため、お互いに気兼ねなく、本気で倒しに行くことができる。

「悪いが、このデュエル…俺が勝たせてもらう。俺自身の目的のために…!」

「それは俺のセリフだぜ!遊矢には悪いが、俺にも負けられねえ理由がある!」

愛機であるブラックバードのハンドルを握りしめつつ、コモンズの自宅で待つ子供たちに思いをはせる。

クロウはシンジと同じく孤児で、ギャングには彼に誘われる形で入った。

殺人をしたことはないが、窃盗や強盗、密輸、トップスからのぼったくりに手を貸したことがあり、生きるためにやれることはなんでもやった。

デュエルについても、シンジに匹敵する高い実力があり、当時所属していたギャングからも一目置かれていた。

そんな彼に転機が訪れたのはフランク、タナー、アマンダとの出会いだ。

ある雨の日、いつものようにトップスへの強盗に成功し、分け前を受け取った後で自宅へ戻ったとき、3人はその家のそばで雨宿りをしていた。

幼い子供がこうしているのはコモンズではよくある光景で、たいていは屑鉄拾いや乞食で糊口をしのいでいる。

3人も同じで、物心ついてからずっと3人一緒で、両親については分からないという。

当初はいつものことだからと無視をし続けていたが、日がたつにつれてだんだん放っておけなくなり、やがて彼らの面倒を見るようになった。

彼らを養うために、ギャングの仕事にも精を出してきたが、次第に犯罪に手を染める自分に対して疑問を抱くようになる。

汚れた金や物でフランク達を食べさせていって、本当に良いのか。

彼らに対して、今の自分を胸張って見せることができるのか。

できるならば、まっとうな生き方で彼らの面倒を見たい。

そう思ったクロウはギャングを抜け、彼らと共に屑鉄拾いや日雇い労働をしながら生活するようになった。

そのことから、クロウを逃げたギャングと影口をたたく人間もいたが、シンジのように理解してくれる人物もいて、ギャング時代と比べて収入が激減したクロウを心配して、食糧などの物資を持ってきてくれる仲間もいる。

「ならば…何も言わん。来い、クロウ!!」

「同感だ。全力で行くぜ、黒咲!!」

(おおーーー!!両者気合十分、テンションMAX!これは熱いデュエルを見ることができるかもーーー!ではさっそく、フィールド魔法《スピード・ワールド・A》を発動!!」

フィールド魔法が発動し、両者のDホイールのエンジンが起動する。

もう2人は相手を見ていない。

見ているのは目の前に見える出口。

次にここへ戻ってくるときには、明暗がはっきり分かれている。

(ライディングデュエル…アクセラレーション!!)

信号が赤から青に変わり、互いにいきなり100キロオーバーのスピードをたたき出してスタジアムを飛び出す。

「ぐう…ううう!!!」

先手を取るためとはいえ、いきなりの大幅な加速は2人の体に負担をかけている。

「へ…この程度、昔と比べたら…大したこと、ねえんだよぉ!!」

気迫を見せつけながら、クロウはさらに加速していく。

そして、並走していた黒咲を追い越し、先に分岐点を左へ曲がる。

黒咲は2秒程度遅れて、右へと向かった。

 

クロウ

手札5

ライフ4000

 

黒咲

手札5

ライフ4000

 

「はあはあ…先攻は俺がもらうぜ。俺は手札からチューナーモンスター、《BF-上弦のピナーカ》を召喚!」

ターバンと弓矢を持った、デフォルメされた烏のようなモンスターが現れる。

 

BF-上弦のピナーカ レベル3 攻撃1200(チューナー)

 

「そしてこいつは俺のフィールド上にBFが存在するとき、手札から特殊召喚できる。《BF-砂塵のハルマッタン》を特殊召喚!」

《BF-上弦のピナーカ》が上空に向けて矢を放つと、その矢を中心に砂嵐が発生する。

そして、その中から黒を基調とした色をした鶴のような鳥が現れる。

 

BF-砂塵のハルマッタン レベル2 攻撃800

 

「このカードの召喚・特殊召喚に成功したとき、俺のフィールド上のBF1体のレベル分、こいつのレベルを上げることができる!俺は《ハルマッタン》のレベル分、2つ上昇させる!」

砂嵐が2つのチューニングリングへと変わり、《BF-砂塵のハルマッタン》もその姿をチューニングリングへと変えていく。

「俺はレベル4の《ハルマッタン》にレベル3の《ピナーカ》をチューニング!漆黒の翼翻し、雷鳴と共に走れ!電光の斬撃!シンクロ召喚!降り注げ、《ABF-驟雨のライキリ》!!」

《BF-上弦のピナーカ》がくぐるチューニングリングに向けて落雷が発生する。

その落雷を切り裂いて、《ABF-驟雨のライキリ》が姿を現す。

 

ABF-驟雨のライキリ レベル7 攻撃2600(チューナー)

 

「そして、俺はカードを3枚伏せ、ターンエンド!ここで《ピナーカ》の効果発動!このカードがフィールドから墓地へ送られたターン終了時、デッキからBFを1枚手札に加えることができる。俺はデッキから《BF-残夜のクリス》を手札に加える!」

 

クロウ

手札5→1(《BF-残夜のクリス》)

SPC0

ライフ4000

場 ABF-驟雨のライキリ レベル7 攻撃2600(チューナー)

  伏せカード3

 

黒咲

手札5

SPC0

ライフ4000

場 なし

 

(いきなりエースカードを召喚したクロウ選手!黒咲隼、この稲妻を宿した剣士にどう立ち向かうのか!?)

「俺の…ターン!」

 

黒咲

手札5→6

SPC0→2

 

クロウ

SPC0→2

 

互いに違うルートを進んでいるため、たとえアクションカードパネルを見つけたとしても、互いに邪魔をしあうことはない。

だが、相手と距離があればあるほど、攻撃に際して相手に時間を与えることになる。

次の分岐点に到達した黒咲は迷わず左へ向かい、クロウへの接近を図る。

「俺は手札から《RR-ラスト・ストリクス》を召喚!」

 

RR-ラスト・ストリクス レベル1 攻撃100

 

「このカードをリリースすることで、エクストラデッキからRRエクシーズモンスター1体を守備表示で特殊召喚することができる。ラストワンの叫びを聞きつけ、今こそ現れろ!《RR-デビル・イーグル》!!」

 

RR-デビル・イーグル ランク3 守備0

 

「ただし、この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効となり、ターン終了時にデッキに戻る。そして、このターン、相手に与える戦闘ダメージは0となる」

「そんなデケエデメリットを負ってまで、《デビル・イーグル》を…?」

仮にクロウが黒咲ならば、その前に何らかの手段でスピードカウンターを増やし、《RR-デビル・イーグル》以上のランクのエクシーズモンスターを特殊召喚する。

そして、増えたスピードカウンターを利用してランクアップマジックを発動し、《RR-サテライト・キャノン・ファルコン》のような高いランクのエクシーズモンスターへと変化させる。

だが、今の黒咲はランクの低い《RR-デビル・イーグル》を召喚し、スピードカウンターを増やす気配がない。

スピードカウンターが2つ以下で発動できるようなランクアップマジックをデニスとのデュエルでは見たことがない。

そんな不可解なプレイの答えを示すように、黒咲はエクストラデッキから1枚のカードを手に取る。

「このカードは手札のランクアップマジック1枚を墓地へ捨て、俺のフィールド上に存在するランク5以下のRRエクシーズモンスター1体をエクシーズ素材とすることで、エクシーズ召喚することができる!」

「何!?発動するんじゃなくて、捨ててランクアップするのかよ!?」

黒咲のデッキはランクアップ主体であるため、スピードカウンターを確保しておかなければ、高ランクのエクシーズモンスターを召喚できないという弱点がある。

スピードカウンターを増やすカードやダメージの回避といった対策と共に、黒咲はもう1つのランクアップの可能性を手に入れた。

エクシーズ・アームズシリーズによって、フルアーマードエクシーズの可能性を広げた漁介のように。

「俺は手札の《Sp-ソウル・シェイブ・ランクアップ》を墓地へ送り、《RR-デビル・イーグル》でオーバーレイネットワークを再構築!《ソウル・シェイブ・ランクアップ》はルール上、《RUM-ソウル・シェイブ・フォース》としても扱う!」

上空に出現した雷雲の中に《RR-デビル・イーグル》が飛び込んでいく。

雷雲から紫色の稲妻が走る。

「誇り高きハヤブサよ。愚鈍なる力を払うため、灼熱の雨を降らせ!ランクアップ・エクシーズチェンジ!現れろ、ランク6!《RR-レヴォリューション・ファルコン-エアレイド》!!」

稲妻走る雲の中からミサイルポッドを展開させた《RR-レヴォリューション・ファルコン》が下りてくる。

その眼はクロウを守る《ABF-驟雨のライキリ》にすでに向けられている。

 

RR-レヴォリューション・ファルコン-エアレイド ランク6 攻撃2000

 

「《レヴォリューション・ファルコン-エアレイド》の効果発動!このカードのエクシーズ召喚に成功したとき、相手フィールド上のモンスター1体を破壊し、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与える!」

「何!?」

《RR-ラスト・ストリクス》の効果の代償として、戦闘ダメージを与えることができないが、効果ダメージであれば問題はない。

エースを倒せる上に、特大なダメージでスピードカウンターを減らすこともできる。

「いけ、《エアレイド》!!」

《RR-レヴォリューション・ファルコン-エアレイド》がスラスターを利かせ、一気にクロウの真上まで飛んでいく。

そして、高度修正を行った後で、収納されていたすべての爆弾を落としていく。

「アクションカード!こいつなら…!」

爆弾をかわしながら、アクションカードパネルを通過し、手にしたカードを見る。

「(こいつじゃねえ!だったら…!)俺は罠カード《メタル・コート》を発動し、こいつを《ライキリ》に装備!これで、装備モンスターはカード効果では破壊されない!」

《メタル・コート》のソリッドビジョンから銀色のオーラを受けた《ABF-驟雨のライキリ》が刀を天に掲げ、雷雲を召喚する。

「防がれるか…戻れ、《エアレイド》!!」

落雷を浴びるとどうなるかわからない。

そう考えた黒咲は《RR-レヴォリューション・ファルコン-エアレイド》を自分のそばまで下がらせる。

その前にデッドウェイトとなったポッドをパージし、クロウのそばに落下させたうえで。

「うおお!?リアリストかよ、あいつは!!」

なんとか避けたものの、モンスターの特性をこういう形で使う黒咲に舌を巻く。

降り注ぐ爆弾の雨は《ABF-驟雨のライキリ》がすべて切り裂いていた。

「俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

クロウ

手札1(《BF-残夜のクリス》アクションカード1)

SPC2→3

ライフ4000

場 ABF-驟雨のライキリ(《メタル・コート》装備) レベル7 攻撃2600(チューナー)

  メタル・コート(通常罠)

  伏せカード2

 

黒咲

手札6→2

SPC2

ライフ4000

場 RR-レヴォリューション・ファルコン-エアレイド(オーバーレイユニット1) ランク6 攻撃2000

  伏せカード2

 

「《ライキリ》の刀は雷鳴を操る!距離があっても、雷雲で攻撃できるぜ!!俺のターン!」

 

クロウ

手札1→2

SPC3→5

 

黒咲

SPC2→4

 

「俺は《BF-残夜のクリス》を召喚!」

 

BF-残夜のクリス レベル4 攻撃1900

 

「そして、《驟雨のライキリ》の効果を発動!こいつは1ターンに1度、こいつ以外の俺のBFの数だけ相手フィールド上のカードを破壊する!BF-ライトニング・ソニック!!」

《ABF-驟雨のライキリ》が刀を天に掲げると、黒咲の頭上に雷雲が生まれる。

雷雲ができてから、落雷が発生するまでには若干のタイムラグがあるため、黒咲はアクションカードパネルを探す。

だが、このタイムラグの中で行ける場所にはなかった。

落雷が発生し、雷を受けた《RR-レヴォリューション・ファルコン-エアレイド》が爆散し、黄色い粒子と化す。

その粒子はそのまま霧散すると思われたが、再び集結し、その姿を《RR-レヴォリューション・ファルコン》へと変える。

 

RR-レヴォリューション・ファルコン ランク6 攻撃2000(オーバーレイユニット1)

 

「何!?なんでオーバーレイユニットを持った《レヴォリューション・ファルコン》がいんだよ!?まさか…!」

「そうだ。革命の炎は一度消えたとしても、再び燃え上がる。《エアレイド》は相手によって破壊されたとき、エクストラデッキから《レヴォリューション・ファルコン》を特殊召喚し、自らをオーバーレイユニットとすることができる!」

(クロウ選手が装備カードでエースを守ったのに対して、黒咲選手は相手の効果を利用して、新たなモンスターを呼び出したー!この一進一退の攻防を制するのはどちらかーー!!)

「やれー!黒咲ーー!!」

「もっと激しい攻防を見せてくれよ、クロウ!!」

互いのカードの応酬を見た観客たちが歓声を上げ、両者を応援する声にスタジアムが包まれていく。

シンジの時のような、憎しみのこもった声援はそこにはなかった。

「へ…やるじゃねえか、黒咲!《驟雨のライキリ》の力を利用してくれやがってよぉ!お前とは、別の形でデュエルがしたかったぜ」

面白いデュエリストとデュエルができることを感謝しながらも、その機会がフレンドシップカップで訪れてしまったことを悔やむ。

どちらが勝利したとしても、敗者が地下送りとなり、死ぬまで強制労働となる以上、2度とこの面白いデュエルをすることができなくなる。

「ならば、この1戦を全力で戦うぞ。お互いに悔いが残らんようにな!」

「そのつもりだぜ、黒咲!俺は手札からアクション魔法《ポッポちゃん参上!》を発動!デッキの上から3枚カードを確認し、その中にある通常魔法カード1枚を手札に加える。俺は《Sp-エンジェル・バトン》を手札に加え、残り2枚をデッキの一番上に置く!更に、手札から《Sp-エンジェル・バトン》を発動!スピードカウンターを4つ取り除き、デッキからカードを2枚ドローし、手札1枚を墓地へ送る!」

 

クロウ

SPC5→1

 

手札から墓地へ送られたカード

・BF-隠れ蓑のスチーム

 

「そしてこいつは自分フィールド上のBF1体をリリースすることで、1度だけ墓地から特殊召喚できる。俺は《驟雨のライキリ》をリリースし、《BF-隠れ蓑のスチーム》を特殊召喚!」

《ABF-驟雨のライキリ》が煙の中にその姿をくらまし、その中から忍装束を身にまとった、デフォルメされた烏型モンスターが現れる。

 

BF-隠れ蓑のスチーム レベル3 攻撃800(チューナー)

 

「《残夜のクリス》と《隠れ蓑のスチーム》のレベルの合計は7。また、《驟雨のライキリ》をシンクロ召喚するつもりか!?」

「残念だが、それはできねえ。コモンズの俺たちはレアカードを複数枚手に入れられるほどの金はねえ。《驟雨のライキリ》は3カ月必死に働いてようやく手に入れられたカード」

「ならばどうするという!?レベル7の別のシンクロモンスターを召喚するのか!?」

「いや、遊矢の言葉を借りる用で悪いけどよぉ…お楽しみはこれからだぜ!俺は罠カード《レベル・リチューナー》を発動!俺のフィールド上に存在するモンスター1体のレベルを2つまで低下させる。俺は《残夜のクリス》のレベルを4から2に低下させる!」

 

BF-残夜のクリス レベル4→2 攻撃1900

 

「そして、俺はレベル2の《クリス》にレベル3の《スチーム》をチューニング!黒き烈風よ、絆を紡ぐ追い風となれ!シンクロ召喚!飛び立て、《ABF-五月雨のソハヤ》!」

再び雷鳴がチューニングリングに向けて降り注ぎ、そこから《ABF-驟雨のライキリ》とは違い、色彩が青が基調となっている、一部の体が機械化された、烏と人が融合したモンスターが刀を手にして現れる。

現れると上空が雷雲から雨雲へ変わり、コース上に雨が降り始める。

 

ABF-五月雨のソハヤ レベル5 攻撃1500(チューナー)

 

「雷の次は雨か…。だが!!」

「俺は《隠れ蓑のスチーム》と《五月雨のソハヤ》の効果を発動!《隠れ蓑のスチーム》はフィールドから離れたとき、《スチームトークン》1体を特殊召喚できる。更に《五月雨のソハヤ》はBFを素材にシンクロ召喚したとき、チューナーとなる!また、シンクロ召喚に成功したとき、墓地からABF1体を特殊召喚できる!再び雷光の斬撃を放て!《ABF-驟雨のライキリ》!!」

雨雲を突然、紫色の稲妻が切り裂く。

そして、その裂け目から《ABF-驟雨のライキリ》が水蒸気で作られた《BF-隠れ蓑のスチーム》の分身と共に舞い降りる。

 

ABF-驟雨のライキリ レベル7 攻撃2600

スチームトークン レベル1 守備100

 

「今度こそ破壊するぜ!《驟雨のライキリ》の効果を発動!1ターンに1度、このカード以外のBFの数まで、相手フィールド上のカードを破壊できる!BF-ライトニング・ソニック・セカンド!」

クロウが走るコースの1つ隣のコースを走り始めた黒咲に向け、《ABF-驟雨のライキリ》が接近する。

そして、雷鳴を宿した刀で今度こそ《RR-レヴォリューション・ファルコン》を切り裂こうとする。

だが、刀を振るう直前に黒咲はアクションカードパネルを通過した。

「俺はアクション魔法《ミラー・バリア》を発動!カード効果による破壊を無効にする!」

鏡を模したバリアに刀が弾かれ、バリアが消えると同時に《RR-レヴォリューション・ファルコン》が口からビームを放つ。

ビームをかわしつつ、《ABF-驟雨のライキリ》はクロウの元へ戻った。

 

黒咲

SPC4→5

 

「まだだ!!俺はレベル7の《驟雨のライキリ》にレベル5の《五月雨のソハヤ》をチューニング!」

「更にここでシンクロだと!?」

「そうだ!まだまだ止まらねーぞ!!漆黒の翼よ!雷の力宿して鮮烈にとどろけ!シンクロ召喚!切り裂け!《ABF-神立のオニマル》!」

2体の刀を持ったモンスターが雨雲の中へ飛び込んでいく。

雨雲が稲妻を宿し、黒咲達が触れる雨水に電気が宿る。

やがて雲が灰色から黒へと変わると、その雲の中から黒い稲妻を模した刃を持つ刀を握る、刃のような6本の羽根のついた黒い鎧を装備した武者が飛び降りてくる。

コース上に着地すると同時に刀を横に一閃した。

 

ABF-神立のオニマル レベル12 攻撃3000(チューナー)

 

(クロウ選手!ここでレベル12の特大シンクロモンスターを召喚!1度や2度阻まれたとしても、あきらめない闘志を見たーーー!!)

「《神立のオニマル》はカード効果では破壊されない!そして、こいつがシンクロモンスターのみを素材にシンクロ召喚に成功した場合、1度だけダメージステップ時のみ、攻撃力が3000アップする!」

「無駄だ!《レヴォリューション・ファルコン》は特殊召喚されたモンスターと戦闘を行うとき、そのモンスターの攻撃力・守備力を0にする。どれほど攻撃力や守備力が高くとも、それは変わらん!」

「だったらこいつだ!俺は罠カード《戦線復帰》を発動!俺の墓地のモンスター1体を守備表示で特殊召喚する!《驟雨のライキリ》を特殊召喚!」

《ABF-神立のオニマル》が生み出した漆黒の雲の中から再び《ABF-驟雨のライキリ》が現れる。

もう3度目の登場であるためか、若干息切れをしているかのように見える。

 

ABF-驟雨のライキリ レベル7 守備2000

 

「三度目の正直だ!《驟雨のライキリ》の効果発動!BF-ライトニング・ソニック・トライ!!」

「く…!」

3度目の稲妻の刃が黒咲のフィールドを襲う。

このターン、もうアクションカードを手にすることができない黒咲はほかに回避の手立てがないのか、《RR-レヴォリューション・ファルコン》が破壊されるのを黙ってみていることしかできなかった。

「やっと…やっと《レヴォリューション・ファルコン》を破壊できたぜ…」

何度もよみがえった強敵の撃破に安心したのか、一気に疲れを見せるクロウ。

だが、デュエルが終わったわけではないため、すぐに気持ちを切り替えた。

「バトルだ!《神立のオニマル》でダイレクトアタック!同時に効果を発動し、攻撃力は3000アップだ!!」

雲から降ってきた黒い稲妻を受け止めた刀が青く光りはじめる。

そして、無防備となった黒咲に向けて刀を振るう。

この一撃で、主のワンショットキルを達成させるため。

「俺は罠カード《ハーフ・アンブレイク》を発動!フィールド上のモンスター1体はこのターン、戦闘では破壊されず、戦闘で発生する俺へのダメージが半分になる!」

「何!?」

「ぐおおおお!!」

《ハーフ・アンブレイク》から発生する泡により、刀に宿った稲妻が吸収され、力が弱まったものの、黒咲が受けた一撃はすさまじく、大きくスピンし始める。

「まだ…まだだぁ!!」

このままスピンを続ければ、壁に激突するところだったが、どうにか立て直し、デュエルを続行させることに成功する。

 

黒咲

ライフ4000→1000

SPC5→1

 

(黒咲選手!どうにか敗北は免れましたが、ライフはわずかに1000!更にスピードカウンターが1つとなってしまったーーー!ここからどう巻き返すのでしょうかーー!?それとも、このままクロウ選手が勝ってしまうのかー!?)

「首の皮一枚つなげるなんて…さすがだぜ、黒咲!俺はこれでターンエンド!

 

クロウ

手札2→1

SPC1

ライフ4000

場 ABF-神立のオニキリ レベル12 攻撃3000(チューナー)

  ABF-驟雨のライキリ レベル7 守備2000

  スチームトークン レベル1 守備100

  伏せカード1

 

黒咲

手札2

SPC1

ライフ1000

場 伏せカード1

 

「痛た…っ!」

「ごめん、しみた??」

「ちょっとだけ…」

アジトで、柚子に傷の手当てをしてもらっている素良。

手加減なしで翔太に殴られ、殴られた頬は赤く腫れている。

「でも、よかった…。また素良に会えて…」

「といって、柚子も僕を殴りたかったんじゃないの?みんなを騙してたわけだしさ」

「そうね。最新のハリセンで思いっきり、あなたをたたきたかったわ」

「うわ、即答…」

その時に見せた柚子の笑顔が、なぜか怖く感じられた。

これは翔太に殴られてチャラにしてもらって正解だったかもしれない。

そう思っていたら、アジトへフランク達がやってくる。

「あれ…?あなたたちは確か…」

「あのさ、いきなりで悪いんだけど、テレビを貸してくれない?」

「私たち、クロウの応援がしたくて、もうデュエルが始まってるの!」

「クロウの…」

クロウ、という名前を聞いて柚子はようやく思い出す。

彼らはクロウの下で世話になっている孤児だということを。

また、クロウは前にシェイドが管理する工場で起こったトラブルを解決してくれたことがある。

そんな彼に世話になっている子供たちの願いを無下にできない。

「わかったわ、こっちへ来て」

「わあ…ありがとう!!」

柚子に案内される形で、3人はアジトへ入っていく。

素良はそんな彼らの後姿をじっと見ていた。

「…一緒に見たいのなら、ついていけばどうだ?」

見張りをしているジョンソンがその場を動かない素良に声をかける。

彼のそばには修理されたラジオが置かれていて、フレンドシップカップのデュエルはそれを使って観戦している。

「前の僕なら、ついていこうって思っちゃうけど、今はそうもいかないよ」

寂しげな笑みを浮かべ、棒付きキャンディーを口にする。

「そういえば、翔太は今どうしてる?」

「あいつはカード化された仲間の解放をした後で休んでいる。あれはだいぶ体力を使うみたいだからな」

「ふーん…」

 

「このチャンネルで…よし!!」

柚子がリモコンで操作したテレビにクロウと黒咲がデュエルをする姿が映し出される。

状況はクロウの圧倒的有利で、あと一押しで黒咲を倒せるところまで来ている。

「いっけーーー!クロウ兄ちゃん!!」

「このまま押し切れー!」

フレンドシップカップにおける敗者の末路を知らない3人は無邪気にクロウを応援する。

「黒咲…」

そんな3人を見た柚子は複雑な表情を浮かべながら、黒咲を心配する。

デュエルが始まった以上、もうどうしようもないことはわかっているが、それでも黒咲とクロウの無事を願うしかなかった。

 

「俺の…ターン!」

 

黒咲

手札2→3

SPC1→3

 

クロウ

SPC1→3

 

「俺は手札から《RR-トリビュート・レイニアス》を召喚!」

 

RR-トリビュート・レイニアス レベル4 攻撃1800

 

「このカードの召喚・特殊召喚に成功したターンのメインフェイズ時、デッキからRRカード1枚を墓地へ送ることができる。俺はデッキから《RR-レディネス》を墓地へ送る。そして、このカードは俺のフィールド上のRRが存在するとき、手札から特殊召喚できる。《RR-ファジー・レイニアス》を特殊召喚!」

 

RR-ファジー・レイニアス レベル4 攻撃500

 

「俺はレベル4の《トリビュート・レイニアス》と《ファジー・レイニアス》でオーバーレイ!!」

2体のRRが螺旋を描きながら、上空へ向かって飛んでいく。

雲を突き破り、その先に生まれたオーバーレイネットワークに飛び込む。

「灼熱のハヤブサよ、渇望の翼を燃やし我が魂を照らせ!!エクシーズ召喚!!《RR-ブレード・バーナー・ファルコン》!!!」

オーバーレイネットワークが爆発し、その余波で雲が吹き飛んでいく。

そして、上空にはRRのマークが描かれた鉄の胸当てを装備した、緑と赤が基調のハヤブサが、刃のような翼に炎を宿して飛んでいる。

 

RR-ブレード・バーナー・ファルコン ランク4 攻撃1000

 

「攻撃力がたったの1000!?そんなモンスターじゃあ、《オニキリ》も《ライキリ》も…」

「いや、《ブレード・バーナー・ファルコン》は背水の陣の時にこそ真価を発揮する。絶体絶命の状況を燃やし尽くす!《ブレード・バーナー・ファルコン》の効果発動!このカードのエクシーズ召喚に成功したとき、相手のライフが俺よりも3000以上上回っている場合、このカードの攻撃力は3000アップする」

「何ぃーーー!?!?」

「燃え上がれ、《ブレード・バーナー・ファルコン》!!」

全身に炎を宿した《RR-ブレード・バーナー・ファルコン》が空に向けて咆哮する。

RR-ブレード・バーナー・ファルコン ランク4 攻撃1000→4000

 

「攻撃力4000!?」

(ピンチの主を見て、底力を見せるのか、《ブレード・バーナー・ファルコン》が一気にパワーアップー!!!ここから黒咲選手の逆襲が始まります!!)

「いけーー!黒咲ーー!!」

「このターンで決めてしまえーー!!」

いきなりの圧倒的な攻撃力を誇る《RR-ブレード・バーナー・ファルコン》の登場にスタジアムが盛り上がる。

今、黒咲の手に残っているカード、そして次のアクションカードで勝敗が左右する。

クロウのいるコースに入った黒咲は限界まで加速していき、クロウを追い抜く。

「バトルだ!《ブレード・バーナー・ファルコン》で《神立のオニキリ》を攻撃!火炎の一撃、バーニング・ストライク!!」

自らの体に宿る炎をさらに燃え上がらせた《RR-ブレード・バーナー・ファルコン》が上空で一回転してから、《ABF-神立のオニキリ》に向けて突撃する。

「ぐおおおおお!!」

敵モンスターの攻撃に目をくれることなく、クロウはリミッターを解除し、加速していく。

一気に加速し、更にピーキーな性能となったじゃじゃ馬、というよりもじゃじゃ烏の暴れっぷりに思わず苦笑してしまう。

「黒咲!ここまで俺を燃えさせてくれたのは…お前が初めてだぜ!!何が何でも…お前に勝ちたくなっちまう!!」

「ふん…(すまない、瑠璃。お前を取り戻すと約束したが…今だけはわがままを許してくれ)」

クロウに応えるように、黒咲もリミッターを解除する。

スピードカウンターがお互いに3つしかないにもかかわらず、200キロを超えるスピードでのデッドヒートを演じる。

その間に、《RR-ブレード・バーナー・ファルコン》の突撃が直撃し、《ABF-神立のオニキリ》が灰となる。

 

クロウ

ライフ4000→3000

SPC3→2

 

「更に、《ブレード・バーナー・ファルコン》の効果発動!このカードが戦闘で相手モンスターを破壊したとき、オーバーレイユニットを任意の数だけ取り除くことで、取り除いた数だけ相手のモンスターを破壊する!俺はすべて取り除き、《スチーム・トークン》と《驟雨のライキリ》を破壊する!」

灰となった《ABF-神立のオニキリ》に向け、急旋回した《RR-ブレード・バーナー・ファルコン》が2つのオーバーレイユニットを発射する。

オーバーレイユニットと灰がぶつかり合ったことで大爆発が発生し、それに巻き込まれた2体のモンスターが消滅する。

(ここでクロウ選手のモンスターが全滅!これで黒咲選手の攻撃は終わるのでしょうか!?)

「まだだ!《ファジー・レイニアス》は墓地へ送られたとき、デッキから《ファジー・レイニアス》を手札に加える。そして、俺は罠カード《かっとビング・チャレンジ》を発動!俺のターンに攻撃を行った俺のエクシーズモンスター1体はこのターン、もう1度だけ攻撃できる!更に、そのモンスターが攻撃するとき、相手は魔法・罠・モンスター効果を発動できない!」

《かっとビング・チャレンジ》発動と同時に、《RR-ブレード・バーナー・ファルコン》が再び突撃するためにその身に炎を宿す。

「うおおおおおお!!!」

曲線を描く壁を利用し、強引に加速させたクロウは黒咲を追い抜き、アクションカードパネルを通過する。

「俺はアクション魔法《フルカウル》を発動!このターン、1度だけ発生する戦闘または効果ダメージを半分にする!」

黒咲が攻撃宣言する一歩手前で、アクションカードの発動に成功する。

この効果でなら、《かっとビング・チャレンジ》の妨害を受けることはない。

「構うものか!いけ、《ブレード・バーナー・ファルコン》!!バーニング・ストライク・セカンド!!」

《フルカウル》の発動により、逆風が発生するものの、炎のハヤブサはそれを恐れず、ただ一直線にクロウに突撃した。

「ぐおおおおお!!!」

 

クロウ

ライフ3000→1000

SPC2→3→1

 

フルカウル(漫画オリカ・調整)

アクション魔法カード

(1):このカードを発動したターン、1度だけ発生する戦闘または効果ダメージを半分にする。

 

(なんとか敗北は免れましたが、黒咲選手とクロウ選手のライフは並びました!しかし、クロウ選手のモンスターは全滅、更にスピードカウンターはたったの1つ!どうする!?クロウ・ホーガン!!)

「俺はこれで、ターンエンド!」

 

クロウ

手札1

SPC1

ライフ1000

場 伏せカード1

 

黒咲

手札3→2(うち1枚《RR-ファジー・レイニアス》)

SPC3

ライフ1000

場 RR-ブレード・バーナー・ファルコン ランク4 攻撃4000

 

「負けるなー、クロウ兄ちゃん!!」

「まだライフは残ってるの!」

「まだ、まだチャンスはある!!」

テレビの前で子供たちがクロウの勝利を信じ、必死な声援を送る。

「黒咲…笑ってる?」

3人と一緒にテレビを見ていた柚子は黒咲が笑みを浮かべているように見えた。

遠巻きになったり、プレイヤーの目の前に急にきたりと大忙しに映像が変わるため、確証はないのだが。

 

「クロウ!これで貴様のモンスターは全滅した!これがお前のラストターンだ!」

「へっ…!この程度の逆境には慣れっこだ!俺とBFの底力を見せてやる!俺のターン!!」

 

クロウ

手札1→2

SPC2→3

 

黒咲

SPC3→5

 

「俺は手札から《BF-蒼炎のシュラ》を召喚!」

 

BF-蒼炎のシュラ レベル4 攻撃1800

 

「そして、こいつは自分フィールド上にBFが存在するとき、手札から特殊召喚できる!《BF-疾風のゲイル》を特殊召喚!」

 

BF-疾風のゲイル レベル3 攻撃1300(チューナー)

 

「《疾風のゲイル》の効果発動!1ターンに1度、相手フィールド上のモンスター1体の攻撃力・守備力を半分にする!」

召喚されたばかりの《BF-疾風のゲイル》が突風を起こし、それに飲み込まれた《RR-ブレード・バーナー・ファルコン》の体に宿る炎が吹き飛ばされていく。

 

RR-ブレード・バーナー・ファルコン ランク4 攻撃4000→2000

 

「ちぃ…!」

「俺はレベル4の《シュラ》にレベル3の《ゲイル》をチューニング!黒き翼をもつ鳥の指揮者よ、その強き意思と速き翼を束ね、フィールドに嵐を巻き起こせ!シンクロ召喚!吹き荒さべ、《BFT-漆黒のホーク・ジョー》!!」

右手に鳥の足を模したガントレッドを装着した、金色の鎧と赤い羽根の衣を着ている黒い翼の戦士がクロウのもとに現れる。

 

BFT-漆黒のホーク・ジョー レベル7 攻撃2600

 

「《ホーク・ジョー》の効果発動!1ターンに1度、墓地に存在するレベル5以上の鳥獣族モンスター1体を特殊召喚できる!さあ来い、《ABF-驟雨のライキリ》!!」

《BFT-漆黒のホーク・ジョー》が口笛を吹くと、雨雲が発生して、雨と共に《ABF-驟雨のライキリ》が舞い降りる。

だが、何度も墓地へ行ったり特殊召喚されたりと忙しかったせいで、登場するとすぐにコース上に降りて、体力を回復させる。

 

ABF-驟雨のライキリ レベル7 攻撃2600

 

(クロウ選手、再びエースを呼び戻したーー!!けど、すっかりバテバテ!クロウ、さっさとデュエルを終わらせて休ませたほうが…)

「んなこと言われなくても分かってる!最後の一仕事、頼むぜ《ライキリ》!!《驟雨のライキリ》の効果発動!BF-ライトニング・ソニック!!」

ほんの少しだけだが、体力が回復した《ABF-驟雨のライキリ》が跳躍し、《RR-ブレード・バーナー・ファルコン》の頭上に着地する。

振り下ろそうと《RR-ブレード・バーナー・ファルコン》は体を揺らすが、《ABF-驟雨のライキリ》はそれに耐え、刀を突き立てる。

動力部を刀を貫かれた炎のハヤブサは《ABF-驟雨のライキリ》が離れると、大爆発した。

「く…!」

「バトルだ!《驟雨のライキリ》でダイレクトアタック!!」

《ABF-驟雨のライキリ》が無防備の黒咲に向けて突撃するが、急に発生した突風で吹き飛ばされる。

「何!?」

「俺は墓地に存在する罠カード《RR-レディネス》を発動した!その効果で、このターン俺が受けるダメージは0となる!」

「《トリビュート・レイニアス》の効果で墓地へ送っていたカード…やってくれるぜ!!俺はこれでターンエンド!」

 

クロウ

手札2→0

SPC3

ライフ1000

場 BFT-漆黒のホーク・ジョー レベル7 攻撃2600

  ABF-驟雨のライキリ レベル7 攻撃2600

  伏せカード1

 

黒咲

手札2(うち1枚《RR-ファジー・レイニアス》)

SPC5

ライフ1000

場 なし

 

「俺の…ターン!!」

 

黒咲

手札2→3

SPC5→7

 

クロウ

SOC3→5

 

「俺は《スピード・ワールド・A》の効果を発動!スピードカウンターを7つ取り除き、デッキからカードを1枚ドローする!そして、手札から《RR-バニシング・レイニアス》を召喚!」

 

RR-バニシング・レイニアス レベル4 攻撃1300

 

「このカードの召喚・特殊召喚に成功したターンのメインフェイズ時に1度、手札のレベル4以下のRR1体を特殊召喚できる!俺は手札から《RR-インペイル・レイニアス》を特殊召喚!」

 

RR-インペイル・レイニアス レベル4 攻撃1700

 

「更に、このカードは俺のフィールド上にほかのRRが存在するとき、手札から特殊召喚できる。《RR-ファジー・レイニアス》を特殊召喚!」

 

RR-ファジー・レイニアス レベル4 攻撃500

 

(黒咲選手、ここで怒涛の召喚ラッシュ!フィールドが空っぽになったとしても、決してあきらめない!!)

「俺はレベル4の《バニシング・レイニアス》、《インペイル・レイニアス》、《ファジー・レイニアス》でオーバーレイ!雌伏のハヤブサよ。逆境の中で研ぎ澄まされし爪を挙げ、反逆の翼翻せ!エクシーズ召喚!現れろ!ランク4!《RR-ライズ・ファルコン》!」

絶体絶命の状況下、それを何度も覆してきたエースが再び覆すべくフィールドへ飛んでくる。

 

RR-ライズ・ファルコン ランク4 攻撃100

 

「《ライズ・ファルコン》の効果!1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、相手フィールド上に特殊召喚されているモンスター1体の攻撃力を得る!」

《RR-ライズ・ファルコン》のオーバーレイユニットが砕け、その体が《RR-ブレード・バーナー・ファルコン》の時のように炎に包まれていく。

 

RR-ライズ・ファルコン ランク4 攻撃100→2700

 

取り除いたオーバーレイユニット

・RR-ファジー・レイニアス

 

「《ファジー・レイニアス》の効果発動!デッキから《ファジー・レイニアス》を手札に加える。そして、俺はペンデュラムゾーンにスケール8の《RR-ランチャー・ストリクス》をセッティング!」

黒咲の右側にRRのマークがついたミサイルポッドを後ろ側に装着した、青いフクロウ型のモンスターが光の柱を生み出す。

「バトルだ!俺は《RR-ライズ・ファルコン》で《漆黒のホーク・ジョー》と《驟雨のライキリ》を攻撃!ブレイブクロー・レボシューション!!」

炎を宿した《RR-ライズ・ファルコン》がクロウのフィールドめがけて突撃する。

2体のBFをすれ違いざまに鉤爪で切り裂き、一撃で撃破していく。

「更に、《ランチャー・ストリクス》のペンデュラム効果発動!俺のフィールド上に存在する、エクシーズ召喚されたRRが戦闘で相手モンスターを破壊したとき、1度だけ続けて攻撃することができる!これで俺の勝ちだ、クロウ!!」

《RR-ランチャー・ストリクス》に装備されているミサイルがすべて発射され、クロウを襲い掛かる。

(この攻撃が通れば、黒咲選手の勝利だーーー!!)

「クロウ兄ちゃんーーーー!!」

テレビの前で敗北寸前のクロウに向けて3人が力の限り叫ぶ。

「まだ終われるかよーーーー!!罠カード《シャドー・インパルス》発動!」

「何!?」

「俺のフィールド上に存在するシンクロモンスターが戦闘・効果で破壊されたとき、エクストラデッキからそのモンスターと同じレベルと種族で名前の異なるシンクロモンスター1体を特殊召喚する!俺が特殊召喚するのは、《ABF-涙雨のチドリ》!!」

発動と同時に、コース上に土砂降りの雨が降り始める。

それを降らせる分厚い雨雲の中から、見た目は《ABF-驟雨のライキリ》と同じであるものの、色彩が青を中心としているBFが下りてくる。

大雨の濡れた《RR-ライズ・ファルコン》の炎は若干勢いを弱めた。

 

ABF-涙雨のチドリ レベル7 攻撃2600

 

「このカードの攻撃力は…俺の墓地のBFの数×300アップする。俺の墓地に存在するBFは11体!よって、《涙雨のチドリ》の攻撃力は3300アップする!」

《ABF-涙雨のチドリ》がコースに降りると、その場で剣舞を始める。

剣舞をする彼の周りに11体のBFの魂が集まり、彼に力を与えていく。

 

ABF-涙雨のチドリ レベル7 攻撃2600→5900

 

RR-ランチャー・ストリクス

レベル1 攻撃100 守備200 闇属性 鳥獣族

【Pスケール:青8/赤8】

「RR-ランチャー・ストリクス」のP効果ははこのカードがPゾーンに存在する限り、1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に存在するX召喚された「RR」モンスターが戦闘で相手モンスターを破壊したときに発動できる。そのモンスターは続けてもう1度攻撃することができる。

【モンスター効果】

「RR-ランチャー・ストリクス」の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):EXデッキに表向きで存在するこのカードをデッキの一番下へ置き、自分フィールド上に存在する「RR」モンスター1体を対象に発動できる。自分フィールド上の「RR」モンスターのレベルはそのモンスターと同じになる。この効果を発動したターン、自分は「RR」以外のモンスターを特殊召喚できない。

 

クロウの最後の逆転の一手、《シャドー・インパルス》によって現れた《ABF-涙雨のチドリ》。

この瞬間をずっと、1ターン目から待ち続けてきたのだろう。

黒咲にはもはや《ABF-涙雨のチドリ》を倒す手がない。

だが、彼の表情はデニスの時とは対照的で、満たされていた。

「俺は…《ライズ・ファルコン》の攻撃を放棄。これでターンエンドだ」

 

クロウ

手札0

SPC5

ライフ1000→800

場 ABF-涙雨のチドリ レベル7 攻撃5900

 

黒咲

手札4→1(《RR-ファジー・レイニアス》)

SPC7→0

ライフ1000

場 RR-ライズ・ファルコン(オーバーレイユニット2) ランク4 攻撃2700

 

「俺の…ターン!!」

 

クロウ

手札0→1

SPC5→7

 

黒咲

SPC0→2

 

「行くぜ…黒咲ぃ!!」

「来い、クロウ!!」

「《涙雨のチドリ》で、《ライズ・ファルコン》を攻撃!!雷鳴の一撃、ライトニング・スラッシュ!!」

雨雲の中から落ちてくる青い落雷を受け止めた《ABF-涙雨のチドリ》が《RR-ライズ・ファルコン》に向けて突撃する。

「迎え撃て、《ライズ・ファルコン》!!」

黒咲の命令を受け、《RR-ライズ・ファルコン》が《ABF-涙雨のチドリ》に向けて突撃する。

互いによけようとせず、ただ一直線にぶつかり、そしてすれ違う。

コースに降りた《ABF-涙雨のチドリ》は刀の切っ先を空に向け、持ち手を額に当てる。

そして、《RR-ライズ・ファルコン》の炎は消え、地表へと転落した。

《ABF-涙雨のチドリ》の全身が雨にぬれ、その顔はまるで涙を流しているかのように見えた。

 

黒咲

ライフ1000→0

 

「やったーーー!!クロウ兄ちゃんが勝ったー!!」

クロウの勝利が決まり、3人はまるで我が事のようにそれを喜ぶ。

「黒咲…」

一方、柚子は敗北した黒咲の身を案じていた。

(決まったーーーー!!闇属性・鳥獣族使い同士の激しいぶつかり合い!手に汗握るデッドヒートを勝利したのは…クロウ・ホーガンだーーーー!!)

勝者が決まり、雨が止むと同時に2人がスタジアムに戻ってくる。

「はあ、はあ、はあ…黒咲…」

デュエルが終わり、気が抜けたのか、疲れでフラフラになりながらクロウはブラックバードを降り、ヘルメットを取る。

「クロウ…」

黒咲も同じなのか、マシンブルーファルコンを降りた彼の足はフラフラで、お互いにその場にあおむけで倒れてしまう。

「久しぶりだ…負けたのに、こんなに気持ちいいとは…」

アカデミアによってエクシーズ次元が蹂躙された日から、黒咲達に敗北が許されなくなった。

敗北=カード化、もしくは死と同義であったためだ。

シンクロ次元でも敗北は許されない点では変わりないが、なぜかそんなことが気にならないくらい、今の黒咲は満たされていた。

「黒咲…俺はこれからも戦い続ける。俺なりのやり方で、ガキどもの幸せのために…」

「俺もこのままで終わるつもりはない。地下に落とされようが、必ず這い上がって見せる」

倒れたまま、2人は拳をぶつけ合う。

「負けるなよ、クロウ」

「お前も、負けんじゃねえぞ、黒咲」



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第77話 覚醒する白き竜

「はあ、はあ、はあ…」

暗い独房の中、遊矢はゆっくりと目を覚ます。

目の前には疲れた表情を見せる月影の姿があり、自分の上半身は裸になっている。

「月影…うう!!」

腹部の痛みを右手で押さえながら、遊矢は起き上がろうとする。

だが、月影はそれを右手で制する。

「月影、どうしてここに…」

「素良殿についての情報を伝えようと思ったのだが、このように怪我をしていた。よって、治療をさせてもらった」

「治療…?じゃあ、俺の手当てを…」

忍者であるはずの月影が弾丸を取り出し、更に傷口を縫うことができるとは思わず、びっくりする。

「本来ならば病院まで連れて行って、正規の治療をせねばならぬが、今はそうも言っている状況ではない」

「わかってる…。それより、素良についてって…」

「今は時間がない。ただ、今のところは味方になったということだけ理解しておけ」

「味方…そっか、よかった…」

痛みのせいか、冷や汗をかきながらも素良がいきさつがどうであれ、味方になってくれたことが素直にうれしかった。

彼の汗を月影が手ぬぐいでふき取る。

「まだ治療が終わってから時間がそれほど経っておらん。今は体を休め、体力回復に努めよ。それから…」

月影は袋からいくつか空気注射器を出し、それを遊矢に見せる。

「風魔忍者が明治時代から使っている薬だ。これは痛みが耐えられないときに首筋に注射するといい。いつまでも、というわけではないが、痛みを緩和してくれる。だが、これは劇薬に近い。依存性はないが、短時間に何度も使うと、体に負担がかかる。何度も吐き気を催すだけであればまだしも、最悪の場合は意識不明となる」

「忍者と言っても、かなり…ハイカラ、なんだな…」

痛みに耐え、苦笑しながらしゃべる遊矢を見て、月影は少し安心する。

こうしてしゃべることができるのであれば、少なくとも命に別状はない。

そういうと、月影は注射器を腰に巻いてつけるカバンに入れ、遊矢のそばに置く。

「今、カバンの中にある注射は全部で10本。可能な限り、拙者も調達できるよう動くが、数に限りがある。どうか…有効に」

「あ…あ…」

だんだん意識が遠くなり、再び遊矢は目を閉じた。

 

(さあ、皆さま!!まもなくフレンドシップカップ2回戦第4試合が始まります!!)

3つのデュエルが終わり、もうすぐシティは夕方になろうとしていた。

だが、スタジアムを包む熱気は衰えを見せず、2回戦最後のデュエルへの期待が込められている。

(この2回戦最後のデュエルを飾るのはこの2人!!今大会の紅一点、セレナ選手とペンデュラムシンクロモンスターという未知のモンスターで沢渡選手を下した、ユーゴ選手!!)

名前が呼ばれた2人は別々の出入り口からDホイールに乗って出てきて、スタートラインに立つ。

すると、セレナはヘルメットを脱いでユーゴに目を向ける。

ヘルメットを着けたままあいさつすることは無礼だと彼女は思っているためだ。

「ユーゴというデュエリスト。1回戦でのデュエルは見事だった。だが、私にはやらねばならないことがある。悪いが、お前にはここで敗れてもらうぞ!」

「…」

ヘルメットを脱いだセレナの姿を見たユーゴが固まる。

髪や目の色、性格はまるで異なっているが、顔立ちがリンそっくりだったからだ。

「リ…」

(ユーゴ、彼女はリンではありませんよ。今はデュエルにだけ集中してください。そうでないと…)

「ああ、分かった。わかってる…クリアウィング」

ユーゴの脳裏でクリアウィングが語り掛ける。

彼女がリンではない、ということはユーゴ自身も分かっている。

アカデミアに連れ去られた彼女がここにいるのはありえない。

だが、セレナを見ると、どうしてもリンとだぶって見えてしまう。

自分に活を入れるため、ユーゴは自分の両頬を叩いた。

(さぁ…両者気合が入ったところで、フィールド魔法《スピード・ワールド・A》を発動。

《スピード・ワールド・A》が発動し、ユーゴとセレナのDホイールのエンジンが動き出す。

(クリアウィングのいう通りだ。リンそっくりなデュエリストが相手でも今は…!)

(アカデミアを倒すためにも、ここで負けるわけにはいかない。遊矢、私もお前に続く!)

(ライディングデュエル…アクセラレーション!!)

ソリッドビジョンでできた信号が赤から青に代わり、両者のDホイールが発進する。

 

「始まりましたか…。デュエルが」

局長室に戻ってきたロジェが椅子に座り、スタジアムから出てきたユーゴとセレナの姿をモニターで見る。

(セレナ…あなたに敗北は許されない。あなたには…私が作る理想郷の象徴となってもらわなければならないのです。榊遊矢と共に…)

ロジェはノートパソコンを開き、独房の様子をカメラで確認する。

独房の中は遊矢1人となっていて、彼は静かにあおむけで眠っている。

(手筈通り、治療済みですね…よいことです)

ランサーズの仲間が独房に侵入し、彼の治療をすることはロジェ自身わかっていた。

だが、まだ遊矢を自分の手中に収めることをあきらめておらず、彼の力を欲していたため、わざと見逃していた。

 

会場を飛び出した2台のDホイールは互いに互角のスピードを見せており、どちらが先攻を取ってもおかしくない状態だった。

(よし…!これなら先攻を取ることができる!)

真面目ではあるが、デュエル以外は全くのポンコツであるセレナだが、アカデミアで訓練を個別に受けていたこともあり、身体能力が高く、Dホイールも1度か2度乗ったくらいで乗りこなせるようになっていた。

Dホイールとライディングデュエルについてはベテランの域に達しているユーゴと互角でスピード勝負できるほどに。

これはユーゴ自身も驚いていた。

「すげえなあんた!ライディングデュエルを数えるくらいしかしてねーのに…。けどなぁ!!」

一気にアクセルを踏み込んだユーゴは更にスピードを上げ、セレナを右側から追い越す。

リンと2人で作り上げ、改造し続けたユーゴのDホイールの性能は黒咲のマシンブルーファルコンを上回っており、Dホイールの性能差を見せつける。

「よし、このまままっすぐ進んで…何!?」

急に右折と直進のコースが移動をはじめ、通行不可能となる。

おまけに通行不可能になると展開されるはずの壁が開かず、このまま曲がると最悪の場合、転落してしまう。

ライディングデュエルではコースに復帰できなくなった時点で負けが確定する。

「くそぉ!!」

やむなく、ユーゴはスピードを落とし、その間にセレナが追い抜いていく。

ユーゴをいつでも追い越せるように、左に車体を寄せていたセレナはすんなりと左のレーンへ進むことができた。

(ああーーーっと、どういうことでしょう!?急に分岐点の3つのコースのうちの2つが使えなくなってしまった――!えー、交通管理センターからの説明では、ここまでのデュエルでコースに損傷が発生したのが発見され、やむなく実行した措置であると…うーん、仕事熱心なのはわかるけど、もうちょっと融通きかけてほしいなー)

 

セレナ

手札5

ライフ4000

 

ユーゴ

手札5

ライフ4000

 

「…」

先攻を取ることができたセレナだが、このあまりにも不自然なアクシデントに不快感を感じている。

正々堂々を信条とする彼女にとって、たとえアクシデントであっても、ハンデをつけるようなことは認められないものだった。

「…私はモンスターを裏守備表示で召喚。カードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

セレナ

手札5→2

SPC0

ライフ4000

場 裏守備モンスター1

  伏せカード2

 

ユーゴ

手札5

SPC0

ライフ4000

場 なし

 

「俺のターン!!」

 

ユーゴ

手札5→6

SPC0→2

 

セレナ

SPC0→2

 

「俺は手札から《SRバンブーホース》を召喚!」

 

SRバンブーホース レベル4 攻撃1100

 

「こいつの召喚に成功したとき、手札からレベル4以下のSR1体を特殊召喚できる。俺は手札から《SR三つ目のダイス》を特殊召喚!」

 

SR三つ目のダイス レベル3 攻撃300(チューナー)

 

「俺はレベル4の《バンブーホース》にレベル3の《三つ目のダイス》をチューニング!その美しくも雄々しき翼翻し、光の速さで敵を討て!シンクロ召喚!現れろ、レベル7!《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》!」

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

(ユーゴ選手!エースモンスターである《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の召喚に成功!速攻で決めてしまうのでしょうか!?)

「く…!!」

このまま攻撃されるわけにはいかないと判断したセレナは目の前の分岐点を右に進み、ユーゴから遠ざかる道を選ぶ。

「中途半端に遠くへ行かなくてもいいぜ!《クリアウィング》のスピードは並みじゃねえからな!!」

そういいながら、ユーゴは直進し、2人が進むコースが別々になる。

 

「アクションカードパネルの配置変更を」

それと同時に、ロジェの指示で、オペレーターがコンソールを操作し、配置されているアクションカードパネルの配置が前もって変更されていく。

ユーゴのコースのパネルを消去し、セレナのコースにあるアクションカードパネルのカードを変更する。

(セレナ…あなたに敗北は許されないのですよ)

 

「バトルだ!《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》で裏守備モンスターを攻撃!旋風のヘルダイブスラッシャー!!!」

回転しながら《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》はセレナの裏守備モンスターめがけて突撃する。

そのスピードは200キロを超えており、あっという間にセレナに迫っている。

「よし…!!」

ちょうどアクションカードパネルを通過したセレナは入手したアクションカードを見て、すぐに発動する。

「アクション魔法《大脱出》!バトルフェイズを終了させる!」

裏守備モンスターの前にトランポリンが出現し、それを使ってセレナと共に上空へ飛んでいく。

攻撃に失敗した《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》はすぐにユーゴのフィールドへ戻っていく。

 

セレナ

SPC2→3

 

「ふうう…」

コースに着地したセレナはユーゴのもとへ戻っていく《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》を見る。

《大脱出》でバトルフェイズを終わらせた以上、もう相手は追撃を仕掛けることはない。

「くっそーーー!!俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド!」

 

セレナ

手札2

SPC3

ライフ4000

場 裏守備モンスター1

  伏せカード2

 

ユーゴ

手札5→1

SPC2

ライフ4000

場 クリアウィング・シンクロ・ドラゴン レベル7 攻撃2500

  伏せカード2

 

「私のターン!」

 

セレナ

手札2→3

SPC3→5

 

ユーゴ

SPC2→4

 

「あれは…」

ドローしたと同時に、新しいアクションカードパネルを通過する。

「私は手札からアクション魔法《ワープブースト》を発動。私のスピードカウンターを3つ増やす!」

「何ーーーー!?んなの、ありかよー!?」

 

「あり…なのですよ。私がいる限りね」

ユーゴの言葉に応えるように、笑いをこらえながらロジェがつぶやく。

今のデュエルは、言い換えればセレナとユーゴという2つの駒をロジェが動かす1人チェス。

ロジェの見えざる手によって、いくらでも状況をコントロールされる。

 

セレナ

SPC5→9

 

ワープブースト

アクション魔法カード

(1):自分用のスピードカウンターを3つ置く。

 

「だったら、俺も!!」

ユーゴも負けじとアクションカードパネルを探す、

だが、なぜか1つのコースに確実に1つは配置されているはずのアクションカードパネルがどれだけ走っても見つからない。

「パネルがねえ…どーなってんだよこれ!?俺、ついてねーーー!!」

(ついているついてない、という問題ではない気がしますが…)

頭を抱えるユーゴに対し、クリアウィングは冷静さを失わず、状況を分析し始めていた。

「私は手札から《Sp-スピード・フュージョン》を発動。私のスピードカウンターが4つ以上あるとき、融合召喚を行うことができる。私は手札の《月光紫蝶》と《月光紅狐》を融合!」

紫を基調とし、背中に蝶の羽がついたバレリーナのような女性と顔の右半分を金色の仮面で隠し、まるで怪盗のような雰囲気を見せる、赤い狐を模した女性がフィールドに現れ、上空には三日月が現れる。

その三日月の引力に引かれるかのように、2体のモンスターが飛んでいく。

「紫の毒持つ蝶よ、炎を宿した狐よ、月の引力により渦巻きて新たなる力と生まれ変わらん!融合召喚!現れ出でよ!月明かりに舞い踊る美しき野獣!《月光舞猫姫》!」

 

月光舞猫姫 レベル7 攻撃2400

 

「ここで融合召喚…!けどよぉ、攻撃力2400では…」

「私が何も考えもなしにこのような行動をしたと思ったか!?私は融合素材となった《月光紅狐》の効果を発動!このカードがカード効果で墓地へ送られたとき、相手フィールド上のモンスター1体の攻撃力をターン終了時まで0にすることができる!」

幻影となった《月光紅狐》が口から炎を吐く。

「はっ、甘えぜ!《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の効果発動!1ターンに1度、レベル5以上のモンスター1体のみを対象としたモンスター効果の発動を無効にし、破壊する!ダイクロイック・ミラー!!」

《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の翼から緑色の大出力ビームが発射される。

そのビームに炎ごとの見込まれた《月光紅狐》の幻影は消滅する。

「だが、効果破壊できていない以上、《クリアウィング》の攻撃力はアップしない!私は《スピード・ワールド・A》の効果発動。私のスピードカウンターを7つ取り除き、デッキからカードを1枚ドローする。そして、私は裏守備表示となっている《月光蒼猫》を反転召喚。そして、《月光舞猫姫》の効果発動!1ターンに1度、私のフィールド上のムーンライトモンスター1体をリリースすることで、このカードはこのターン、相手フィールド上のすべてのモンスターに2回ずつ攻撃することができる。そして、そのターン相手モンスターは1度ずつ戦闘では破壊されない」

《月光蒼猫》が紫色の粒子に代わり、《月光舞猫姫》を包み込む。

自らを包む光に合わせるように、彼女はその場で踊り始めた。

「無駄だぜ!攻撃力が足りてねーじゃねーか!」

「何度も言わせるな…。私は考えなしに行動しない!私の墓地に闇属性モンスターが3体存在するとき、このカードは手札から特殊召喚できる!《ダーク・アームド・ドラゴン》を特殊召喚!」

「何ぃ!?」

闇の力を得て、漆黒に染まった《アームド・ドラゴンLv7》が現れる。

これまでの可愛らしいモンスターたちとは対極の位置に立つモンスターの登場に、ユーゴは驚愕する。

 

ダーク・アームド・ドラゴン レベル7 攻撃2800

 

セレナ

SPC9→2

 

「私は《ダーク・アームド・ドラゴン》の効果を発動!墓地の闇属性モンスター1体を除外することで、フィールド上のカードを1枚破壊する!ダーク・ジェノサイド・カッター!」

《月光紅狐》の幻影から力を受けた《ダーク・アームド・ドラゴン》が咆哮しつつ、腹部から黒い刃を発射する。

刃で切り裂かれたユーゴの伏せカードがバラバラになって消滅する。

 

破壊された伏せカード

・シャドー・インパルス

 

「《シャドー・インパルス》…。《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》をおとりに《クリアウィング・ファスト・ドラゴン》を特殊召喚するつもりだったか!」

《クリアウィング・ファスト・ドラゴン》は《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》とは異なり、一定の条件下ではフリーチェーンで効果を発動できる。

そのため、仮に《シャドー・インパルス》の効果で特殊召喚され、おまけに効果によって《月光舞猫姫》の効果と攻撃力を奪われたら、ここからの戦略が破たんしていた。

《クリアウィング・ファスト・ドラゴン》ではなく、《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》を選んだことがアダとなってしまった。

「くっそぉ!!」

「バトルだ!《月光舞猫姫》で《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》を攻撃!」

「何!?攻撃力が低い《月光舞猫姫》で攻撃だと!?」

「罠カード《幻獣の角》を発動!発動後、このカードは装備カードとなって獣族・獣戦士族モンスター1体に装備できる!そして、このカードを装備したモンスターの攻撃力は800アップする!」

《幻獣の角》から力を受けた《月光舞猫姫》が踊りながら、コースを飛び越えてユーゴの前に来る。

「よし!アクションカードパネル!!」

ようやく見つけたアクションカードパネルを嬉しそうに通過したが、手にしたアクションカードを見た瞬間、表情が凍り付く。

「嘘だろ…!?アクション罠《平手打ち》…」

翔太が2度も被害を受けたあのアクション罠カードを手にしてしまい、いきなり白い大きな手袋に手をたたかれ、《SR-OMKガム》が墓地へ落ちてしまう。

そして、手に持っている短剣で《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》を斬りつける。

破壊はされなかったものの、それにより《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の体が傷つき、余波がユーゴを襲う。

「ぐああああ!!」

 

ユーゴ

ライフ4000→3300→3200

SPC4→3

 

月光舞猫姫 レベル7 攻撃2400→3200

 

「《月光舞猫姫》は攻撃宣言するたびに、相手に100ダメージを与える効果がある。そして、2回目の攻撃を始める!!」

《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》が反撃のために白いブレスを放つが、《月光舞猫姫》はバック転でかわし、ナイフを投げる。

だが、《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の前に現れた《SR三つ目のダイス》の幻影がそれを受け止めた。

そして、ユーゴの頬にソリッドビジョンで切り傷が再現される。

 

ユーゴ

ライフ3200→3100

 

「あっぶねー…《SR三つ目のダイス》は相手ターンにこいつを墓地から除外することで、1度だけ相手モンスターの攻撃を無効にできる…」

「だが、お前の敗北が少しだけ遠ざかっただけにすぎない。私は《ダーク・アームド・ドラゴン》で《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》を攻撃!」

《ダーク・アームド・ドラゴン》がユーゴめがけて腹部の刃を発射する。

もうアクションカードを手にすることができないユーゴは黙って攻撃を受けるしかなかった。

刃で切り刻まれた《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》が消滅する。

 

ユーゴ

ライフ3100→2800

 

「私はこれで、ターンエン…!」

「ここで俺は罠カード《リサイコロ》を発動!俺の墓地のスピードロイドチューナー1体を効果を無効にして特殊召喚する!俺は墓地から《SR-OMKガム》を特殊召喚!」

背中に小さな子供が買う食玩の箱を抱えているように見える小さな人型ロボットが現れる。

 

SR-OMKガム レベル1 守備800(チューナー)

 

「そして、サイコロを1階降り、出た目と同じレベルになる!」

「運任せなカードを…デュエルは戦略が命だ!そんなものなど…」

「どうだろうな?その運がデュエルにでかい波を起こすことだってあるんだぜ!!」

ディスプレイのサイコロのアイコンに触れると、サイコロが自動的に振られる。

「出目は1!よって、《OMKガム》のレベルは1、変化はしねえ!」

「どうする?《ダーク・アームド・ドラゴン》の効果はあと2回使えるだろ?《OMKガム》を破壊するって手もあるぜ?」

ユーゴのいう通り、このまま《ダーク・アームド・ドラゴン》の効果で破壊するという手もある。

だが、セレナの墓地に残っている2体のモンスターはそこにあってこそ、という要素がある。

除外から墓地へ復帰させるカードが手元にない以上、再利用は難しい。

ユーゴの言葉に乗り、《SR-OMKガム》を破壊した後に、彼が一気に展開させる可能性もある。

沢渡とのデュエルでは、フィールドにカードがない状態で一気に逆転勝利を果たしている。

「…《ダーク・アームド・ドラゴン》の効果は使わない…。私はこれで、ターンエンド!」

 

 

セレナ

手札3→0

SPC2

ライフ4000

場 月光舞猫姫(《幻獣の角》装備) レベル7 攻撃3200

  ダーク・アームド・ドラゴン レベル7 攻撃2800

  伏せカード1

 

ユーゴ

手札1

SPC3

ライフ3200

場 SR-OMKガム レベル1 守備800(チューナー)

 

「俺のターン!」

 

ユーゴ

手札1→2

SPC3→5

 

セレナ

SPC2→4

 

「俺のフィールド上に風属性モンスターが存在するとき、こいつは手札から特殊召喚できる!《SRタケトンボーグ》を特殊召喚!」

 

SRタケトンボーグ レベル3 攻撃600

 

「こいつは自信をリリースすることで、デッキからSRチューナー1体を特殊召喚できる。俺は《タケトンボーグ》をリリースし、《SRアクマグネ》を特殊召喚!」

《SRタケトンボーグ》が姿を消し、先の部分が斧のようになっている2つのU字磁石が悪魔の弾を模した青い持ち手にくっついている形のモンスターが現れる。

現れると同時に、その磁石に引っ張られるように《月光舞猫姫》が吸い寄せられていく。

 

SRアクマグネ レベル1 攻撃0(チューナー)

 

「おい、待て!?お前…一体何をした!?」

「《アクマグネ》は召喚・特殊召喚に成功したとき、相手フィールド上のモンスター1体とこいつを素材に風属性シンクロモンスターをシンクロ召喚できる。俺はレベル7の《月光舞猫姫》にレベル1の《アクマグネ》をチューニング!」

《SRアクマグネ》がチューニングリングと化し、それでも消えない磁力に引っ張られていく《月光舞猫姫》が7つの星となって取り込まれる。

「猛々しき獣の魂を宿した翼で、雲を切り裂き、天を目指せ!シンクロ召喚!現れろ、レベル8!《HSRカイトライダー》!!」

白虎を模した模様の凧を背中に取り付けた白い人型ロボットがユーゴの前に現れる。

そして、腰のベルトの両端についているレバーを倒してその場で跳躍すると、そのまま上空を飛び始めた。

 

HSRカイトライダー レベル8 攻撃2800

 

「《カイトライダー》の効果発動!こいつをSRチューナーをシンクロ素材にしてシンクロ召喚に成功したとき、デッキからカードを1枚ドローできる!バトルだ!俺は《カイトライダー》で《ダーク・アームド・ドラゴン》を攻撃!!」

凧の左右についているブースターが起動し、速度を倍以上に高めた《HSRカイトライダー》が《ダーク・アームド・ドラゴン》に向けて右拳を前へ出しながら突撃する。

それにこたえるように、《ダーク・アームド・ドラゴン》も右拳を構えて迎え撃つ。

「このまま相討ちを…!?」

「悪いな、《カイトライダー》は戦闘では破壊されない!」

ブースターの出力がさらに上昇し、《HSRカイトライダー》が更に突撃の勢いを強めていく。

自身の3分の1以下の大きさの人型ロボットに力負けする形で、《ダーク・アームド・ドラゴン》があおむけになって倒れ、爆発する。

「更に、《カイトライダー》の効果発動!このカードが戦闘で相手モンスターを破壊したとき、このカードは破壊される!」

ブースターのエネルギーが切れたのか、《HSRカイトライダー》の凧が動きを止め、そのまま地上へと落ちていく。

「そして、エクストラデッキに存在するレベル7以下の風属性・ドラゴン族シンクロモンスター1体をシンクロ召喚扱いで特殊召喚できる!」

「何!?」

「輝く翼、神速となり天地を照らせ!シンクロ召喚!現れろ、《クリアウィング・ファスト・ドラゴン》!!」

地表へ接触しつつあった《HSRカイトライダー》を《クリアウィング・ファスト・ドラゴン》が引き上げる。

そして、彼は後を仲間に託すと、姿を消した。

 

クリアウィング・ファスト・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

HSRカイトライダー

レベル8 攻撃2800 守備2500 シンクロ 風属性 機械族

「SR」チューナー+チューナー以外のモンスター1体

このカードはS召喚以外の方法で特殊召喚できない。

(1):「SR」チューナーを素材にこのカードのS召喚に成功したときに発動できる。デッキからカードを1枚ドローする。

(2):このカードは戦闘では破壊されない。

(3):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊したとき、このカードを破壊することで発動できる。レベル7以下の風属性・ドラゴン族Sモンスター1体をエクストラデッキからS召喚扱いで特殊召喚する。

 

「このまま追撃するぜ!《クリアウィング》!!」

《クリアウィング・ファスト・ドラゴン》が《HSRカイトライダー》の攻撃を無駄にしないため、そのまま猛スピードでセレナと距離を詰めていく。

そんな中、急に至近距離にアクションカードパネルが現れ、それを通過することになる。

(なぜここで…??)

再び不自然な形で入手したアクションカードを手にするセレナ。

そんなセレナの真上に到達した《クリアウィング・ファスト・ドラゴン》は彼女に向けて白いブレスを放つ。

「ぐああああ!!」

 

セレナ

ライフ4000→1500

SPC4→1→2

 

「く…私はアクション魔法《再出撃》を発動!私が1000ポイント以上のダメージを受けたとき、私の墓地からモンスター1体を特殊召喚する!私は《月光舞猫姫》を復活させる!」

再び上空に現れた三日月から、《月光舞猫姫》が踊りながら降りてくるが、彼女も違和感を覚えていた。

「更に私は罠カード《月光の宝札》を発動!私の墓地に存在するムーンライト融合モンスターの融合召喚に成功したとき、私のフィールド上にこれら以外のカードがない場合、デッキからカードを2枚ドローできる(まさか…このデュエルは…)」

「くっそー!あいつついてるぜ。またいいアクションカードをゲットしやがってー!」

(ユーゴ、このデュエルは…)

「ああ、分かってる分かってる!たまにはこういう天気だってある!そうだろ」

(いや、そういうわけでは…)

「だったら黙って、デュエルを続けようぜ!俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド!」

 

セレナ

手札0→2

SPC2

ライフ1500

場 月光舞猫姫 レベル7 攻撃2400

 

ユーゴ

手札1→0

SPC5

ライフ3200

場 SR-OMKガム レベル1 守備800(チューナー)

  クリアウィング・ファスト・ドラゴン レベル7 攻撃2500

  伏せカード1

 

月光の宝札

通常罠カード

「月光の宝札」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に「ムーンライト」融合モンスターが墓地から特殊召喚に成功したとき、自分フィールド上にこれらのカード以外のカードがない場合にのみ発動できる。自分はデッキからカードを2枚ドローする。

 

「すっげえ!運もいいし実力もある。最高だぜ、あんた!」

いきなりセレナに通信を入れたユーゴが満面の笑みを浮かべながらセレナに言う。

遊矢の言葉で、敗者が地下送りになるということを知っているだろうにもかかわらず。

そんなデュエルなのにこのようなことを言うユーゴのことをセレナは理解できなかった。

「バカか!?お前は!負ければ地下送りにされるのを知っているのか!?そんな命がけのデュエルだというのに楽しいだと…ふざけるな!!」

「ふざけてねぇよ。俺は本気で楽しんでるんだ。あんたはデュエルが楽しくないのか?」

「デュエルは戦いだ!楽しむというのは論外だ!」

アカデミアでは、セレナはほかの人間とかかわる機会がほとんど与えられず、ただデュエルと訓練をするばかりの日々だった。

デュエルの相手も精巧に作られたCPUが相手になることがほとんどで、人とデュエルをしたことがあまりない。

ただ強くなることだけを要求された彼女にはデュエルを楽しむ余裕などなかった。

アカデミアの異質な環境が今のセレナという人格を形成したのだ。

「デュエルが戦い…?楽しむのは論外…?つまんねえな」

「何!?」

「聞いてみろよ、スタジアムから聞こえる声を…」

2人が走っているのは、ちょうど2人が出ていった出入り口の反対側のコースだ。

スタジアムに近いため、大きな声援があれば、ここまで聞こえることがある。

「うおおお!!ユーゴ、もっと攻めろーー!!」

「いいぞ、セレナーー!!次はどんな融合召喚を見せてくれるんだー!?」

「どっちもいいぞ!!もっと俺を燃えさせろーー!!」

「ユーゴ!ユーゴ!!」

「セレナ!セレナ!!」

「これは…」

これまでデュエルだけに集中していたセレナはこの声が聞こえていなかった。

対戦相手と自分、そしてモンスターのことだけで手一杯で、周りを見渡すことができなかった。

「みんな楽しんでる…。俺とお前がこうさせたんだぜ?」

「私が…?」

「そりゃそうだろ。デュエルは1人ではできねえからさ。さあ、思いっきり盛り上げようぜ!俺たちの力で!!」

セレナのいるコースにユーゴが合流する。

そして、セレナと並走し、彼女にサムズアップをした後でスピードを上げていった。

(だが…このデュエルは…)

楽しむと言いながらも、このデュエルが何者かによって仕組まれていることに気付いたセレナにはそれができない。

このような結果の見えている出来レースで勝ったとしても、それが本当の勝利と言えるのか?

これが本当に楽しいデュエルだと言えるのか?

そんな問いが頭に浮かんでしまう。

「セレナーーー!!」

「勝ってくれーー!!!」

「女の意地を見せてやれーー!」

だが、そんな疑問を観客の歓声が徐々に吹き飛ばしていく。

そして、ずっと感じたことのなかった胸の高鳴りを感じ始める。

(この胸の高鳴り…そうか、これが…これが…)

「さあ、セレナ!!早くターンを始めねーと、観客がみんな待ちくたびれちまうぜ!!」

「…ああ!!」

口元が緩み、今までの真剣な表情が嘘だったかのような笑顔を見せながら、セレナは右手を上にあげる。

「レディースアンドジェントルメーン!!(遊矢、お前の言葉…使わせてもらうぞ!)これより、ランサーズの1人、セレナの融合召喚による華麗な攻撃をお見せする!!私のターン!」

 

セレナ

手札2→3

SPC2→4

 

ユーゴ

SPC5→7

 

「え…ランサーズ…!?」

ランサーズという言葉を聞いたユーゴの目が丸くなる。

彼の脳裏には翔太とのデュエル、そして彼からの尋問の時の記憶がよみがえる。

「あーーー!!まさか、あの俺をバナナ呼ばわりしやがったあいつの仲間ー!?」

 

「くしゅん!!」

「ん?どうした?」

「ハウスダストに反応したんだよ」

部屋の掃除をする翔太は鼻を指でさすりながら、ゴミ袋に集めたごみを放り込む。

「ん?こいつは…」

ふと、ゴミ袋の外に飛んでいる黄色い物体を拾った翔太はそれをごみ袋に入れ、じっと見る。

「…バナナの、皮だな。あいつ…ボロボロになってるか?」

 

「私は手札から《月光彩雛》を召喚!」

黄色いひな鳥を模した帽子と同じ色彩のマントを装備した、幼い少女型のモンスターが現れる。

 

月光彩雛 レベル4 攻撃1400

 

「このカードはデッキ・エクストラデッキからムーンライトモンスター1体を墓地へ送ることで、そのモンスターにターン終了時まで変身する。《月光舞豹姫》へ変身しろ!」

マントを翻すと、それに《月光舞豹姫》の姿が映し出される。

「そして、手札から《Sp-スピード・フュージョン》を発動!その効果で、私は《月光彩雛》、《月光舞猫姫》、そして手札の《月光蒼猫》を融合!美しきマントを纏う雛よ、月明かりに舞い踊る美しき野獣よ、蒼き闇を徘徊する猫よ、月の引力により渦巻きて新たなる力と生まれ変わらん!融合召喚!現れ出でよ!月光の原野の頂点に立って舞う百獣の王!《月光舞獅子姫》!」

融合と同時に夜となり、上空には満月が浮かぶ。

それから降り注ぐ光の下、赤い腰マントとビキニアーマーを装備した、紫色のライオンを模した女性モンスターが剣舞を披露した後で、セレナのもとへ向かう。

 

月光舞獅子姫 レベル10 攻撃3500

 

「エクストラデッキから特殊召喚したな!!俺は《クリアウィング・ファスト・ドラゴン》の効果を…」

「無駄だ!《月光舞獅子姫》は相手のカード効果の対象にならず、カード効果では破壊されない!」

《クリアウィング・ファスト・ドラゴン》が力と効果を奪おうと、舞姫に向けてブレスを放つが、彼女が持っている剣でそのブレスを切り裂いてしまった。

「更に、《月光舞獅子姫》は1ターンに2度攻撃することができる!まずは《クリアウィング・ファスト・ドラゴン》を攻撃!!」

《月光舞獅子姫》がブレスを切り裂かれ、動揺する《クリアウィング・ファスト・ドラゴン》を剣でそのまま真っ二つに切り裂いた。

悲鳴を上げながら《クリアウィング・ファスト・ドラゴン》が爆散し、その余波に巻き込まれた《SR-OMKガム》も破壊されてしまう。

「何!?《OMKガム》まで!!」

 

ユーゴ

ライフ3200→2200

SPC7→6

 

「《月光舞獅子姫》は1ターンに1度、モンスターを攻撃したダメージステップ終了時に相手フィールド上の特殊召喚されたモンスターをすべて破壊する効果がある」

《月光舞獅子姫》の剣先がユーゴに向けられる。

「さあ、最後は《獅子姫》の舞によって散れ!!」

《月光舞獅子姫》が剣舞をはじめ、剣を振るうたびに衝撃波を飛ばした。

「罠発動!《ガード・ブロック》!!俺が受ける戦闘ダメージを0にし、デッキからカードを1枚ドローする!」

しかし、ユーゴがドローしたのと同時に現れた透明のバリアが彼を衝撃波から守る。

「防がれたか…!だが、お前の切り札である《クリアウィング》は封じた!私はこれでターンエンドだ!」

 

セレナ

手札3→0

SPC4

ライフ1500

場 月光舞獅子姫 レベル10 攻撃3500

 

ユーゴ

手札0→1

SPC6

ライフ2200

場 なし

 

「ん、んん…」

ユーゴとセレナのデュエルがクライマックスを迎える中、遊矢はゆっくりと目を覚ます。

既に月影によって注射されているためか、痛みはないものの、強い倦怠感を覚えていて、起き上がるだけでもつらく感じる。

できることとしたら、こうして横になることだけだ。

「みんな、どうしているんだろう…ん??」

柚子たちの身を案じる中、遊矢のデッキが光る。

(ふん…小僧が伸びている間に事態が進んだようだな)

「オッドアイズ…」

(退屈しのぎだ)

再び遊矢の両目が黒と赤のオッドアイに変化していく。

「あ、ああ、あ…」

同時に遊矢の目に映る景色が緑色の光に包まれていく。

その光の中から、聞いたことのない男の声が聞こえ始める。

「まだだ!!俺はまだ満足していない!!もっと面白い、もっと激しいデュエルを見せてやる!!」

「誰だ…今の声は…?」

聞いたことがないにもかかわらず、なぜかどこかで聞いたことのあるような声に遊矢は困惑する。

次第に多くの人々の声が聞こえ始める。

「もっと激しいデュエルを!!…!!」

「もっと過激に!」

「もっと熱く!」

「もっと楽しませろ、…!!」

なぜか誰かの名前のところだけが、遊矢の耳には聞こえない。

「いいだろう!応えてやる…!お前たちの期待に!!お前たちの欲望に!!」

次第に光の中から1人のデュエリストの姿が見えてくる。

だが、光がまぶしいせいで、その姿を見ることができない。

「さあ、英知のカードよ!!俺に彼らの欲望に応える力を!!」

デッキから青い水晶でできたカードを出した彼はそれを天に掲げた。

 

「やってくれるぜ、だが、勝つのは俺だ!俺の…!?」

一方、ユーゴも急にめまいを感じ、車体がぐらつく。

そのめまいの間に、未加工の水晶をいくつも体につけた《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の姿が目に浮かぶ。

(どうやら…僕たちに敗北は許されないみたいですね)

「クリアウィング、今のは…」

めまいは一瞬で収まり、車体のぐらつきを抑えながら、ユーゴはクリアウィングに尋ねる。

(僕の封じられた力の一部が解放された、ということでしょう。”英知”の力によって…)

「英知、だって??」

(いつかわかりますよ。しかし、今は…)

「ああ、このデュエルを楽しねーとな!!俺のターン!!」

 

ユーゴ

手札1→2

SPC6→8

 

セレナ

SPC4→6

 

「俺は手札から《Sp-デッド・シンクロン》を発動!スピードカウンターが5つ以上あるとき、墓地のモンスターを素材にシンクロ召喚を行うことができる!」

「何!?」

「俺はレベル8の《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》にレベル1の《SR-OMKガム》をチューニング!」

フィールドに現れた《SR-OMKガム》の姿が水晶でできた壁に代わっていき、あとから現れた《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》がそれに向けて突っ込んでいく。

「神聖なる光蓄えし翼煌めかせ、その輝きで敵を撃て!シンクロ召喚!いでよ!レベル8!《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》!」

このまま水晶を突き破っていくと、その姿がユーゴがめまいの中で見たものへと変わっていった。

 

クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン レベル8 攻撃3000

 

(なんということでしょう…《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》が水晶の鎧をまといました!!うわーーきれーー!!)

《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》を見たメリッサがつい実況中であることを忘れて、見とれてしまう。

「せっかく召喚したモンスターだが、攻撃力3000では私の《月光舞獅子姫》は倒せないぞ!」

「バトルだ!《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》で《月光舞獅子姫》を攻撃!」

「何!?」

月の光に照らされ、黄色い光を放ちながら《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》が突撃を駆ける。

その光によって力を得たのか、水晶の竜のスピードが加速度的に上昇していく。

「バカな!?月の光が《クリスタルウィング》に味方するだと!?」

「《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》はレベル5以上のモンスターと戦闘を行うとき、ダメージ計算時のみ、戦う相手モンスターの攻撃力分、攻撃力がアップする!」

 

クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン レベル8 攻撃3000→6500

 

「バカな…!?」

「いっけえーーー!!烈風のクリスタロス・エッジ!!」

肉薄した《月光舞獅子姫》に向けて、水晶の爪で攻撃を仕掛ける。

1度は剣で受け止められたものの、それは左手の爪だけで、右手の爪を防ぐことができない。

その爪で剣を握る腕を引き裂かれ、その痛みで剣を放してしまった《月光舞獅子姫》を水晶のかけらが混じった白いブレスで焼き尽くそうとする。

 

「まずい…!!早くアクションカードパネルを!!」

焦ったロジェはすぐにオペレーターに指示を出す。

すぐにセレナの前にアクションカードパネルが出現する。

「…」

目を閉じたセレナはアクションカードパネルを横切った。

それと同時にブレスが放たれ、白い光の中に《月光舞獅子姫》が消えていった。

 

セレナ

ライフ1500→0

 

(決まったーーーー!!自らの不運を水晶の輝きで消し飛ばしたユーゴ選手!準決勝進出を決めましたーーー!!)

「ふうう…」

スタジアムに戻り、歓声に包まれる中、セレナはヘルメットを脱ぐ。

敗北したにもかかわらず、満たされた表情を見せていた。

だが、ユーゴは不機嫌そうで、ヘルメットを脱いでじっとセレナを見る。

「なんだ?」

「なんでだ?あのときアクションカードパネルを通過してたら、まだ勝負がわからなかっただろ?」

「あれはおそらく、私を勝たせようとする主催者側のいかさまだ。そんなものに乗る必要はない」

「え…?イカサマ??そんなの、あったっけかぁ??」

「何!?お前…まさか気づいていなかったのか…?」

(はぁ…バカだなぁ…やっぱりユーゴはミジンコレベルの脳みそですよ…)

「んあだとぉ!?誰がミジンコレベルだ!!」

(いえいえ、そうではありませんでしたね。あなたの脳みそはマイコプラズマレベルですよ!!)

急に誰も姿が見えないクリアウィングと大喧嘩を始めるユーゴ。

周囲の人々から見ると、それは一人口げんかにしか見えず、あまりにも痛々しい光景だった。

「はぁはぁ…悪い!!なんでもねーから、気にすんな!!」

「…ああ」

「おっと!そういえば、ランサーズだ!!なぁ、突然で悪いんだけど、俺もランサーズに入れ…」

「おい、そろそろいいか!」

「さぁ、負け犬の地獄へご案内だ」

ユーゴの話を遮り、2人のスタッフがセレナを確保する。

「おい、ちょっと待てよ!!?俺の話はまだ…!!」

「…ユーゴというデュエリスト。おそらく、準決勝か決勝で遊矢と会えるだろう。彼もランサーズの1人だ。入りたければ、彼に頼むんだな。悪いが、今の私にはそれができない」

「セレナ…」

「いつか必ず、お前にリベンジする!その時は、私が勝つ!」

ユーゴにリベンジ宣言を済ませると、セレナはスタッフに連れていかれた。

そんな彼女の後姿をユーゴはじっと見ていた。



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第78話 侵略の足音

「…!はぁ、はぁ…!!はぁ…」

ユーゴのデュエルが終わるとほぼ同時に、遊矢の目が元に戻る。

息を整えつつ、ゆっくりと立ち上がる。

なぜか、あの光景を見るまでの間に感じていたひどい疲労感は嘘みたいに消えていた。

「オッドアイズ…さっきの光景は?」

《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》のカードを手に取り、彼に答えを求める。

だが、こちらから話すそうが話すまいが、勝手に何らかの反応を返すはずのオッドアイズが返事をしない。

「知ってるんだろう!?あの光の中にいるデュエリストのこと!お前が見せたんだから!!ダーク・リベリオン!お前だって!!」

《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》のカードも手に取るが、2人からは一向に返事が帰ってこない。

「答えろよ!あのデュエリストとお前たちに何か関係があるんだろう!?英知のカードについても!」

(…。今の私たちには、それにこたえることができません)

「何!?答えられないって…」

(そのような些末なことよりも、ほかに気にするべきことがあるだろう)

「些末な事…って!?」

オッドアイズの言い方に腹を立てる遊矢だが、急に眠気に襲われる。

「一体…何を…?」

(次の試合まで眠っていろ、小僧)

オッドアイズに言い返すことができないまま、遊矢は意識を失っていった。

 

「よーし、ここのバリケードの準備はOKだ!」

「次は警報装置のテストだ!」

「ちょっと待ってくれよ、配線の整備が終わってねーんだぞ!」

「10分前に終わらせたんじゃなかったのかよ!?」

シェイドのメンバー達の声が響く中、アジトではアカデミア、及びアカデミアと共に動き出すであろうチームオーファンに備えて、防衛の準備が進められていた。

廃材を使ったバリケードづくりやセキュリティシステムの整備、警備の割り当てや訓練など、やることは様々で、翔太たちもそれの手伝いに追われている。

「そういえば、アカデミアがいつ頃進行してくるんか、素良は知っとるんか?」

発電機の組み立てをしている素良にバリケード用に廃材を運んでいる里香が尋ねる。

「急いだほうがいい。デニスが報告して、部隊の編成をしたうえでの転送だから…遅くでも明日の早朝、早くて今夜としか答えられない」

「今夜やって!?なんや…働きもんばっかやのぉ、アカデミアは…」

「素良、頼まれていた部品だ。これくらいしかないが…」

「充分だよ。これで、発電機の組み立てができる」

Dホイールで廃材を持ってきた鬼柳から渡された部品を手にした素良は数えた後で鬼柳に礼を言い、発電機の組み立てを一気に完了するところまで持ち込んでいく。

あとはテストをして、電気がどれだけできるかを確認するだけだ。

発電量によって、セキュリティシステムの動きが左右される。

「…あ、ちょっとキャンディ舐めたいから、テストはお願いできる?」

「キャンディだと…?ここで食べればいいだろう?」

「こんな埃っぽいところで食べてもおいしくないよ。じゃ!」

そういって、キャンディを手にした素良は宿舎へと走っていく。

勝手なことを、と思いながらも、今は1分1秒たりとも時間が惜しいため、やむなく鬼柳が発電機のテストを始めることとなった。

 

「ふうう…はぁ、はぁ…」

宿舎の誰もいない部屋に入った素良は胸を抑え、発作に耐えながら懐から注射器を出す。

首筋にそれを打つと、徐々に発作が収まっていく。

「まったく…ドクターも…もっと長く効くナノマシンを用意してくれたら…よかったのに…」

中身が空になった注射器を懐に入れ、キャンディーを舐め始める。

幸い、誰かが近づいてくる気配はなく、ここでナノマシンを注射したことはだれにも知られていない。

素良にとって、問題は自分のことよりもフレンドシップカップに出場しているメンバーのことだった。

セレナが敗北したという情報は既につかんでおり、気になるのはそのあとの彼女の消息だ。

普通であれば、地下の終了所へ送られるのだが、あのロジェが彼女に関してはそんなことをするはずがない。

確実に自分の見える範囲で捕獲して置き、アカデミアとの交渉材料として使用するはずだ。

なお、彼女を含めたランサーズの救出については素良がジョンソンと鬼柳とチームを組んで行うことが決まっている。

「きっと、これが最後の1つになるかも…」

そうであれば、時間が許す限り味わっておこうと思い、素良はいつも以上にゆっくりとキャンディを舐め続けた。

 

「おい…約束通り来てやったぞ。こうして無事に帰ってきたことくらい祝ってくれてもいいだろ?」

シェイドが作業をしている中、翔太は1人でチームブレイドのアジトに来ていた。

手元にはエリク直筆の手紙が握られており、内容は今後の打ち合わせのため、指定された時刻にアジトへ来てほしいというものだった。

翔太は約束通りの時間、そして約束通りの場所に来たものの、中にはだれもおらず、警備しているであろうブレイドのメンバーの姿も見えない。

「…どういうつもりだ?」

「いやぁ、お待ちしてましたよ。翔太さん。本当にめでたい話だ、チームシェイドのリーダー無事の帰還。ここまでの軌跡を脚本にして映画にしたら、どれだけ稼げるかな…?」

「お前は…」

エレベーターが開き、小川がデュエルディスクをつけた状態で出てくる。

警戒する翔太を見て、にやけ顔をして見せる。

「小川純。いやぁ、あんまりひねった名前じゃないから、もう忘れたか」

「お前らのボスと会う約束をした。通してもらう」

「それは…できない相談だな。こっちも君がフレンドシップカップを楽しんている間、いろいろあってね」

エレベーターから降りると同時に、小川はデュエルディスクを操作する。

(フィールド魔法《クロス・オーバー》発動)

デュエルディスクから音声が流れると同時に周囲に浮いた透明な足場が出現する。

「お前…」

「デュエルの前に頼みたいことがあるのさ。…永瀬伊織って女の子、こっちに渡してくれないか?」

「…はぁ?」

なぜここで伊織の名前が出てくるのか、翔太には理解できなかった。

素良の話で、彼女の出生が関係しているのは融合次元のアカデミア。

シンクロ次元のギャングの一勢力に過ぎないチームブレイドとは何も関係がないはず。

「重要機密だから、理由は言えない。素直に渡せば…」

「ふざけるんじゃねえよ。なんで秘密主義の野郎に仲間を渡さないといけねえんだ?」

「さぁ…?ボスにあまり信用されてねえってことじゃないの?おたくが」

「お前…!!」

小川の挑発に乗った翔太はデュエルディスクを展開する。

両者がデュエルディスクを展開したということは、デュエルをすると言う意味になる。

これこそ、彼が望んでいることだ。

「この前はボスにお預け食らってしまったが…これで最後までやりあえる。俺さ…あんたのひねくれてるけどわかりやすいところ、嫌いじゃないのさ」

「下らねえことしゃべってねーで始めるぞ。俺にはあまり時間がない」

「さて…ゲームの始まりだ!」

「「デュエル!!」」

 

小川

手札5

ライフ4000

 

翔太

手札5

ライフ4000

 

「俺の先攻。俺は手札から《TGラッシュ・ライノ》を召喚。カードを1枚伏せて、ターンエンド」

 

小川

手札5→3

ライフ4000

場 TGラッシュ・ライノ レベル4 攻撃1600

  伏せカード1

 

翔太

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「俺のターン!」

 

翔太

手札5→6

 

「俺はスケール2の《魔装槍士タダカツ》とスケール9の《魔装剣士ムネシゲ》でペンデュラムスケールをセッティング!来たれ、時の果てに眠りし英雄の魂。漆黒の魂と契約し、封印から解き放たん!ペンデュラム召喚!来い、《魔装獣ユニコーン》!《魔装銃士マゴイチ》!《魔装騎士ペイルライダー》!」

 

魔装獣ユニコーン レベル4 攻撃1600

魔装銃士マゴイチ レベル4 攻撃1600

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

 

「《ユニコーン》の効果発動。このカードは1ターンに1度、装備カードとなって魔装騎士に装備することができる。このカードを装備したモンスターの攻撃力は800ポイントアップする」

初めてのデュエルでもやった、シンプルながら強力な2体の連携。

これで、《魔装騎士ペイルライダー》で《TGラッシュ・ライノ》を戦闘破壊し、そしてそのあとすぐに《魔装銃士マゴイチ》の直接攻撃を決めれば、1ターンキル確定だ。

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500→3300

 

「バトルだ。《ペイルライダー》で《ラッシュ・ライノ》を攻撃!クアトロ・デスブレイク!」

《魔装獣ユニコーン》に乗った《魔装騎士ペイルライダー》が愛馬を走らせながら右手の銃を連射する。

銃から放たれるビームを次々と浴びた《TGラッシュ・ライノ》は消滅し、攻撃の余波が小川を襲う。

「う…ぐううう!!」

 

小川

ライフ4000→2300

 

「まだだ!《ユニコーン》を装備したモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊し墓地へ送ったとき、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える!」

《魔装騎士ペイルライダー》の銃がミサイルランチャーに変化し、小川に向けて一斉射する。

ミサイルの爆発を何度も間近で受けながらも、小川は表情を崩さず、吹き飛ばされることもないまま攻撃を受けきる。

 

小川

ライフ2300→700

 

「更に、《タダカツ》のペンデュラム効果発動!俺のペンデュラムモンスターが戦闘で相手モンスターを攻撃したとき、続けてもう1度だけ攻撃できる!さっさとどけ!!」

ミサイルランチャーを投げ捨て、腰のビームサーベルを引き抜いた《魔装騎士ペイルライダー》が小川に向けて突撃する。

「俺は手札の《速攻のかかし》の効果発動!こいつを手札から墓地に捨てることで、その攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了させる。更に俺は罠カード《ショック・ドロー》を発動。このターン、俺が受けたダメージ1000ポイントごとに1枚、デッキからカードをドローする。俺が受けたダメージは3300。よって、3枚ドローだ」

「ちっ…だが、これでお前のライフは残り700だ。次のターンで勝てばいい。俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

「ここで俺は《ラッシュ・ライノ》の効果を発動。フィールド上に存在するこいつが破壊され墓地へ送られたターン終了時、デッキから《ラッシュ・ライノ》以外のTG1体を手札に加えることができる。俺はデッキから《TGストライカー》を手札に加える」

 

小川

手札3→6(うち1枚《TGストライカー》)

ライフ700

場 なし

 

翔太

手札6→0

ライフ4000

場 魔装騎士ペイルライダー(《魔装獣ユニコーン》装備) レベル7 攻撃3300

  魔装銃士マゴイチ レベル4 攻撃1600

  魔装槍士タダカツ(青) Pスケール2

  魔装剣士ムネシゲ(赤) Pスケール9

  伏せカード1

 

「ハハハ、容赦のない攻撃だ。だが…これでOKだ!!俺のターン!」

 

小川

手札6→7

 

「相手フィールド上にのみモンスターが存在するとき、このカードは手札から特殊召喚できる。《TGストライカー》を特殊召喚!」

 

TGストライカー レベル2 攻撃800(チューナー)

 

「更にこいつはレベル4以下のモンスターが特殊召喚されたとき、手札から特殊召喚できる。《TGワーウルフ》を特殊召喚!」

 

TGワーウルフ レベル3 攻撃1200

 

「レベル3の《ワーウルフ》にレベル2の《ストライカー》をチューニング。古今東西のデータを管理する頭脳が俺の手札を潤す!シンクロ召喚!レベル5!《TGハイパー・ライブラリアン》!」

 

TGハイパー・ライブラリアン レベル5 攻撃2400

 

「まだだ!俺は手札から《TGミラージュ・ワイバーン》を召喚!」

 

TGミラージュ・ワイバーン レベル3 攻撃1400

 

「レベル5の《ハイパー・ライブラリアン》にレベル3の《ミラージュ・ワイバーン》をチューニング!未来に住まう機械仕掛けの騎士よ、時間を越えて戦場へ走れ!シンクロ召喚!レベル8!《NTGライジング・ベルセルク》!」

「ちっ…1ターン目からそのモンスターか!?」

初めてのデュエルの時にも召喚された、銀髪のサイボーグ戦士の登場に翔太は舌打ちする。

このモンスターが現れた以上、翔太はこれ以上小川にシンクロモンスターを召喚させるわけにはいかなくなった。

 

NTGライジング・ベルセルク レベル8 攻撃2200

 

「こいつは俺のフィールド上に存在するTGシンクロモンスターの攻撃力を600アップさせる。おまけに《ミラージュ・ワイバーン》は自らをシンクロ素材として墓地へ送ったとき、デッキからカードを1枚ドローする」

 

NTGライジング・ベルセルク レベル8 攻撃2200→2800

 

「だが、攻撃力2800じゃあ、俺の《ペイルライダー》は倒せない!そして《ムネシゲ》は1ターンに1度、ペンデュラムモンスターを破壊から守ることができる」

「だろうな…。だが、こうすればどうだろうな?俺のフィールド上にTGシンクロモンスターが存在するとき、このカードは1度だけ手札・墓地から特殊召喚できる。《TGシンセベーサー》を特殊召喚!」

頭部の上半分を覆ったゴーグルと緑色の回路でできたスーツを着た男がベースを弾きながら現れる。

 

TGシンセベーサー レベル2 攻撃1000(チューナー)

 

「こいつがフィールド上に存在する限り、TGシンクロモンスターの攻撃力は1000アップする。おまけにTGモンスターがフィールド上に存在する限り、相手はこいつを攻撃対象とすることができない!」

《TGシンセベーサー》の奏でる音に反応したのか、《NTGライジング・ベルセルク》の義眼が赤く光る。

 

NTGライジング・ベルセルク レベル8 攻撃2800→3800

 

TGシンセベーサー

レベル2 攻撃1200 守備500 チューナー 地属性 サイバース族

「TGシンセベーサー」は自分フィールド上に1枚しか存在できず、(1)の効果はデュエル中1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に「TG」Sモンスターが存在するときに発動できる。手札・墓地に存在するこのカードを特殊召喚する。

(2):このカードがフィールド上に存在する限り、自分フィールド上に存在する「TG」Sモンスターの攻撃力は1000アップする。

(3):自分フィールド上にほかの「TG」モンスターが存在するとき、相手はこのカードを攻撃対象とすることができない。

 

「バトルだ!《ライジング・ベルセルク》でペイルライダーを攻撃!」

高圧電流が流れる大剣を手に、《NTGライジング・ベルセルク》がゆっくりと《魔装騎士ペイルライダー》に向けて接近する。

「ダメージは受けるだろうが、《ムネシゲ》のペンデュラム効果で《ペイルライダー》を破壊から守る!」

《魔装剣士ムネシゲ》の盾から生み出される青い光の障壁が《魔装騎士ペイルライダー》を包む。

「だったら、こいつを使う。アクション魔法《肉弾戦》!俺のモンスターが攻撃している間、ダメージステップ終了時まで攻撃モンスター以外のカード効果を無効にする!」

「アクションカードだと!?」

「ああ。お前のモンスターが起こした攻撃の余波で飛んできてくれたのさ」

《NTGライジング・ベルセルク》が大剣を真上から振り下ろす。

《魔装騎士ペイルライダー》を包んでいたバリアをそのまま大剣で力任せに打ち砕き、そのまま愛馬もろとも死の騎士を真っ二つに切り裂いた。

「くうう…!」

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃3300→2500

 

翔太

ライフ4000→2700

 

肉弾戦

アクション魔法カード

(1):自分フィールド上に存在するモンスターが攻撃するときに発動できる。ダメージステップ終了時まで、攻撃モンスター以外のカードの効果を無効にする。

 

「せっかく破壊したが、《ペイルライダー》はペンデュラムモンスター。ペンデュラムスケールさえ整えば、何度でも復活する!」

「だろうな。俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

小川

手札7→1

ライフ700

場 NTGライジング・ベルセルク レベル8 攻撃3800

  TGシンサベーサー レベル2 攻撃1200(チューナー)

  伏せカード2

 

翔太

手札0

ライフ2700

場 装銃士マゴイチ レベル4 攻撃1600

  魔装槍士タダカツ(青) Pスケール2

  魔装剣士ムネシゲ(赤) Pスケール9

  伏せカード1

 

「俺のターン!」

 

翔太

手札0→1

 

「ここで俺は罠カード《砂塵の大竜巻》を発動。これで《魔装剣士ムネシゲ》を破壊する!」

「ちぃ…!」

砂漠の砂を含んだ竜巻に巻き込まれた《魔装剣士ムネシゲ》が消滅する。

「俺は手札から《魔装軍師オリヴィエ》を召喚!」

 

魔装軍師オリヴィエ レベル4 攻撃800(チューナー)

 

「このカードの召喚に成功したとき、エクストラデッキに表向きで存在する魔装剣士1体を効果を無効にして特殊召喚できる。俺は《魔装剣士ムネシゲ》を特殊召喚する!」

 

魔装剣士ムネシゲ レベル3 守備2000

 

「俺はこれでターンエンド!」

ターン終了と同時に、翔太はアクションカードを探すために走り出す。

 

小川

手札1

ライフ700

場 NTGライジング・ベルセルク レベル8 攻撃3800

  TGシンサベーサー レベル2 攻撃1200(チューナー)

  伏せカード2

 

翔太

手札1→0

ライフ2700

場 装銃士マゴイチ レベル4 攻撃1600

  魔装剣士ムネシゲ レベル3 守備2000

  魔装軍師オリヴィエ レベル4 攻撃800(チューナー)

  魔装槍士タダカツ(青) Pスケール2

  伏せカード1

 

「俺のターン、ドロー!」

 

小川

手札1→2

 

「バトル!俺は《ライジング・ベルセルク》で《オリヴィエ》を攻撃!」

《NTGライジング・ベルセルク》が大剣を手にゆっくりと《魔装軍師オリヴィエ》に向けて歩いて接近していく。

サイボーグ化によって肉体は強化されているものの、それでも重量のあるその武器で素早く動くのは難しいようだ。

その間に翔太は足場を何度も飛び移り、アクションカードを手にする。

「俺はアクション魔法《身代わり》を発動!攻撃対象を別のモンスターに変更させる!」

追い詰められた《魔装軍師オリヴィエ》の前に立った《魔装剣士ムネシゲ》がニヤリと笑いながら、盾で振り下ろされた大剣を受け止める。

軍師が退避を済ませた後で、彼は笑みを浮かべたまま真っ二つに切り裂かれ、消滅する。

 

身代わり

アクション魔法カード

(1):相手モンスターの攻撃宣言時に発動できる。攻撃対象を自分フィールド上に存在するモンスター1体に変更する。

 

「そして、《ムネシゲ》が破壊されたとき、デッキから魔装ペンデュラムモンスター1体を手札に加えることができる。俺はデッキから《魔装鍛冶クルダレゴン》を手札に加える」

「なら、俺は《TGシンサベーサー》で《オリヴィエ》を攻撃!」

《TGシンサベーサー》がベースを弾くと同時に、衝撃波が《魔装軍師オリヴィエ》を襲う。

それを受けた軍師が消滅し、余波が翔太を襲う。

「く…!!」

 

翔太

ライフ2700→2300

 

「さらに俺はここで罠カード《TGX-SX1》を発動!俺のTGが戦闘で相手モンスターを破壊し墓地へ送ったとき、墓地からTGシンクロモンスター1体を特殊召喚できる。俺は墓地から《TGハイパー・ライブラリアン》を特殊召喚!《ライジング・ベルセルク》と《シンサベーサー》の効果で、攻撃力は1600アップする!」

 

TGハイパー・ライブラリアン レベル5 攻撃2400→3400→4000

 

「このまま《マゴイチ》を攻撃…!といきたいところだが、そいつには破壊されたとき、デッキから魔装モンスターをサーチする効果がある。迂闊に破壊するわけにはいかないなっと…。俺はこれでターンエンドだ」

 

小川

手札2

ライフ700

場 NTGライジング・ベルセルク レベル8 攻撃3800

  TGシンサベーサー レベル2 攻撃1200(チューナー)

  TGハイパー・ライブラリアン レベル5 攻撃4000

 

翔太

手札0→1(《魔装鍛冶クルダレゴン》)

ライフ2300

場 魔装銃士マゴイチ レベル4 守備1600

  魔装槍士タダカツ(青) Pスケール2

  伏せカード1

 

「俺のターン!」

 

翔太

手札1→2

 

「俺は罠カード《アレスの誓約》を発動。俺のフィールド上に魔装モンスターが存在し、相手フィールド上にエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターが存在するとき、デッキから魔装モンスター1体を墓地へ送り、デッキからカードを1枚ドローする。俺はデッキから《魔装獣バステト》を墓地へ送る。そして、手札から魔法カード《魔装の杯-ナルタモンガ》を発動。俺のフィールド上に存在する魔装モンスターのレベルもしくはランクと同じ数値のレベルの魔装モンスター1体をデッキから表側守備表示で特殊召喚する。俺はデッキからレベル4の《魔装竜ファーブニル》を特殊召喚する」

翔太のフィールドに出現した杯の中から出てきた黄金が集まり、《魔装竜ファーブニル》が姿を見せる。

 

魔装竜ファーブニル レベル4 守備1200

 

アレスの誓約

通常罠カード

「アレスの誓約」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に「魔装」モンスターが存在し、相手フィールド上にEXデッキから特殊召喚されたモンスターが存在するときに発動できる。デッキから「魔装」モンスター1体を墓地へ送り、デッキからカードを1枚ドローする。

 

「さらに、《ナルタモンガ》を発動したとき、俺の墓地に魔装モンスターが3種類以上存在する場合、次の俺のターンのドローフェイズ時に追加でデッキからカードを1枚ドローする。そして、俺はスケール8の《クルダレゴン》をセッティング。これで俺はレベル3から7のモンスターを同時に召喚可能。来たれ、時の果てに眠りし英雄の魂。漆黒の魂と契約し、封印から解き放たん!ペンデュラム召喚!来い、《魔装騎士ペイルライダー》、《魔装剣士ムネシゲ》!」

2体のペンデュラムモンスターが生み出すゲートから、2体のモンスターが下りてくる。

エクストラデッキで十分に休んでいたためか、2体ともすぐに動ける態勢に入っていた。

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

魔装剣士ムネシゲ レベル3 守備2000

 

「さらに、《クルダレゴン》のペンデュラム効果発動。1ターンに1度、俺が魔装モンスターのペンデュラム償還に成功したとき、墓地から魔装モンスター1体を手札に加えることができる。俺は墓地から《魔装軍師オリヴィエ》を手札に加える。そして、俺は手札に加えた《魔装軍師オリヴィエ》を召喚」

 

魔装軍師オリヴィエ レベル4 攻撃800(チューナー)

 

「そして、俺は手札から魔法カード《魔装融合》を発動!魔装モンスター専用の融合カードだ!俺はフィールド上の《ムネシゲ》、《オリヴィエ》、《マゴイチ》を融合する。義理を守りし剣士よ、友愛に殉した軍師よ、時代に抗いし銃士よ、魔導の力によりて、今1つとならん。融合召喚!真紅の騎士、《魔装騎士レッドライダー》!!」

 

魔装騎士レッドライダー レベル8 攻撃3000

 

「へええ…《ペイルライダー》に《レッドライダー》。黙示録とはベタなテーマのカードだねえ。それに、あんたとよっぽど深いつながりがあると見える」

小川は驚かずに変化した翔太の目を見る。

「…俺も詳しいことはよくわからないがな」

「だ、ろうな…」

「《レッドライダー》はモンスターの特殊召喚に成功した俺のターンのバトルフェイズ中だけ、攻撃力が1000アップする。そして、戦闘で相手モンスターの破壊に成功したとき、続けてもう1度だけ攻撃することができる」

「おっと、こいつはまずい…」

《ペイルライダー》も《魔装槍士タダカツ》のペンデュラム効果により、条件付きで2回連続攻撃が可能になっている。

さすがにこのまま受けるのはまずいと考えた小川はアクションカードを探し始める。

「バトルだ!《レッドライダー》で《ライジング・ベルセルク》を攻撃!必殺真剣!」

これまでの仲間が受けた攻撃のお返しと言わんばかりに、《魔装騎士レッドライダー》は大剣を手にして《NTGライジング・ベルセルク》に向けて走っていく。

《NTGライジング・ベルセルク》も大剣を手にし、2体の刃がぶつかり合う。

だが、わずかに攻撃力が上回った《魔装騎士レッドライダー》が競り勝ち、《NTGライジング・ベルセルク》が吹き飛ばされる。

そして、壁に激突すると同時に機能を停止させた。

 

魔装騎士レッドライダー レベル8 攻撃3000→4000

 

小川

ライフ700→500

 

TGハイパー・ライブラリアン レベル5 攻撃4000→3400

 

「《レッドライダー》の効果発動!今度は《ハイパー・ライブラリアン》を攻撃する!」

撃破した《NTGライジング・ベルセルク》から今度は《TGハイパー・ライブラリアン》に視線を変えた赤い騎士が彼を切り裂くために接近する。

だが、その前に足場の裏に張り付いていたアクションカードを小川が手にする。

「俺は手札からアクション魔法《鉄壁》を発動!このターン、俺が戦闘で受けるダメージは0になる!」

《TGハイパー・ライブラリアン》が《魔装騎士レッドライダー》に真っ二つに切り裂かれるが、攻撃の余波は周囲に展開された灰色のバリアによって防ぐことに成功する。

これで、翔太はこのターンに小川を倒すことが不可能となった。

 

鉄壁

アクション魔法カード

(1):このターン、自分が受ける銭湯ダメージは0となる。

 

「これで《シンサベーサー》を守るモンスターはいない!《ファーブニル》で《シンサベーサー》を攻撃!」

《魔装竜ファーブニル》が放つ金色のブレスによって、《TGシンサベーサー》が焼き尽くされていく。

「《ファーブニル》の効果。このカードが戦闘で相手モンスターを破壊したとき、デッキからレベル4以下の魔装モンスター1体を攻撃表示で特殊召喚できる。俺は《魔装妖ビャッコ》を特殊召喚する」

「キュイーー!」

いつの間にか一番高い足場に現れたビャッコがみたらし団子を食べながらのんびり休み始めた。

 

魔装妖ビャッコ レベル3 攻撃300

 

「そして、俺は墓地の《魔装獣バステト》の効果発動。俺のフィールド上に魔装モンスターが存在するとき、このカードは手札・墓地から特殊召喚できる」

「キュキュ!?キュイー!」

自分の隣に現れた《魔装獣バステト》にビャッコがみたらし団子を差し出す。

差し出されたみたらし団子を食べた砂漠の猫は嬉しそうに鳴き声を上げた。

 

魔装猫バステト レベル1 攻撃0(チューナー)

 

「さらにビャッコは魔装モンスターのシンクロ、エクシーズ素材となるとき、レベルを4として扱うことができる。レベル4の《ビャッコ》とレベル4の《ファーブニル》にレベル1の《バステト》をチューニング」

「キュイーーー!!」

食べ終えたみたらし団子の櫛をリュックサックに入れたビャッコが《魔装獣バステト》とともに飛び降りる。

そして、地上から飛んできた《魔装竜ファーブニル》とともにシンクロ償還の準備を整える。

「勝利と支配をもたらす第2の騎士よ、終戦を告げるその矢で敗者を鎮めよ!シンクロ召喚!《魔装騎士ホワイトライダー》!!」

 

魔装騎士ホワイトライダー レベル9 攻撃3100

 

「そして、《ビャッコ》が魔装モンスターのシンクロ素材、もしくはエクシーズ素材となったとき、デッキからカードを1枚ドローする。俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

小川

手札2

ライフ500

場 なし

 

翔太

手札2→0

ライフ2300

場 魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

  魔装騎士レッドライダー レベル8 攻撃3000

  魔装騎士ホワイトライダー レベル9 攻撃3100

  魔装槍士タダカツ(青) Pスケール2

  魔装鍛冶クルダレゴン(赤) Pスケール8

  伏せカード1

 

「さあ、これでお前ご自慢のモンスターは全滅だ。さっさとサレンダーしてもらうぞ」

「いいや…ここからさ」

「何?」

まるでお預けを食らったごちそうを出してもらった時のような嬉しそうな表情を小川が見せるのを翔太は奇妙に感じられた。

彼の言葉が正しければ、ここからが本当のデュエルということになる。

「俺のターン…ドロー!」

 

小川

手札2→3

 

「俺は手札から魔法カード《ミラクルシンクロフュージョン》を発動!」

「何!?《融合》だと!?まさか…!」

ロジェの関係者が融合召喚を使うことに対してはもう驚くまいと思っていた翔太だが、まさかチームブレイドが融合次元の関係者であるとは思いもよらなかった。

胡散臭い連中とは思っていたが…。

「ま…事実は小説よりも奇なりってやつさ。俺は墓地の《ライジング・ベルセルク》と《ハイパー・ライブラリアン》を除外し融合!稲妻宿りしサイボーグよ、電脳空間の司書よ、今こそ一つとなりて、新たなテクノロジーを生み出せ。融合召喚!現れろ、レベル10!《NTGデスペラード・ベルセルク》!」

2体のTGシンクロモンスターが融合し、その姿を真っ黒な装甲で覆われ、左目を眼帯で隠した銀髪のサイボーグが現れる。

持っている獲物も大剣ではなく、真っ黒な刀身で、稲妻が宿った刀となっている。

 

NTGデスペラード・ベルセルク レベル10 攻撃3500

 

「なんでお前が融合召喚を使えるんだ?」

「さあ?なんでだろうな。近づいてきた俺らはあんたらの味方ではなく、味方だったってことじゃあないか?」

おどけた口調でしゃべる小川が癪に障ったのか、翔太は拳を握りしめる。

「で、なんで伊織が必要なんだ?」

「答える義務がないな…」

「だったら…倒して吐かせる」

「ふーん…。でも、そんなことできるかな?」

《NTGデスペラード・ベルセルク》の右目が赤く光り、同時に突然発生した落雷がビルの天井を突き破っていく。

その雷を刀で受け止めた隻眼のサイボーグが赤いオーラに包まれていく。

 

NTGデスペラード・ベルセルク レベル10 攻撃3500→5300

 

「攻撃力が上がった!?」

「《デスペラード・ベルセルク》は融合召喚に成功したとき、相手のライフが俺を上回っている場合、その数値分攻撃力がアップする。バトル!《デスペラード・ベルセルク》で《ペイルライダー》を攻撃!」

赤いオーラのせいか、髪の毛も赤く染まった《NTGデスペラード・ベルセルク》が猛スピードで走り出し、《魔装騎士レッドライダー》に居合で切りかかる。

《魔装騎士レッドライダー》は大剣で応え、、鍔迫り合いを演じるが、徐々に両腕の力が鈍くなったのか、押し負けていく。。

「こいつは…!?」

「《デスペラード・ベルセルク》は相手のカード効果で破壊されねえ。おまけに戦闘するとき、相手フィールド上に特殊召喚されたモンスターの攻撃力を半分にし、効果も無効にしちまうのさ。ま、ターン終了と同時に元通りになるから、その点は安心しな」

「何!?」

特殊召喚主体の環境にとっては致命的となる効果を持つ《NTGデスペラード・ベルセルク》に戦慄する。

そんな中でも、アクションカードを探すために足場を飛び移り続ける。

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500→1250

魔装騎士レッドライダー レベル8 攻撃3000→1500

 

「く…よりによって!」

空中に浮かんでいるアクションカードを手にした翔太の表情がゆがむ。

「俺は手札からアクション罠《失踪》を発動!俺のフィールド上に存在するモンスター1体を破壊する。俺は《ペイルライダー》を破壊する!ぐうう…!!」

《魔装騎士ペイルライダー》が姿を消し、同時に《魔装騎士レッドライダー》が両断される。

両断された赤い騎士が消滅し、攻撃の余波が直撃した翔太は地面に落下する。

「ぐあああ!!てめえ…!!」

 

翔太

ライフ2300→300

 

「ハハハ!まともに食らってくれたな!」

「バカ言うなよ…まだまだ、デュエルはここからだ…」

「そういいたいみたいだがよ、それがここまでなのさ…。俺はカードを1枚伏せ、手札から速攻魔法《ダブル・サイクロン》を発動。お互いのフィールド上に存在する魔法・罠カードを1枚破壊する。俺はさっき伏せたカードと《魔装鍛冶クルダレゴン》を破壊する」

互いのそばに突然発生した竜巻が2枚のカードを吹き飛ばしていく。

だが、翔太の側の竜巻が役目を終えるとすぐに消えたにもかかわらず、小川の側のそれはそのままゆっくりと翔太のもとへ近づいていく。

「俺が破壊した伏せカードは《荒野の大竜巻》。こいつがセットされた状態で破壊されたとき、フィールド上で表側表示で存在するカード1枚を破壊する。俺が破壊するのは残ったペンデュラムモンスター、《魔装槍士タダカツ》だ!」

近づいてきた竜巻によって残った光の柱も消え去り、翔太のフィールドには伏せカード1枚と《魔装騎士ホワイトライダー》が残るのみとなった。

「で、こいつはおまけだ。手札からアクション魔法《クールダウン》を発動」

「まさか…《ダブル・サイクロン》の時に…!」

「ああ。俺のそばに飛んできてくれた。いやー、アクションデュエルだと、こういう演出も時には戦局に影響を与えるから、面白いんだよなー。次の相手ターンのバトルフェイズ時、フィールド上に存在するすべてのモンスターの攻撃力が元に戻る。たとえメインフェイズ時にパワーアップしても無駄ってこと。ちなみにこの効果はカード効果を受けない《ホワイトライダー》にも及ぶから、気をつけな。俺はこれでターンエンド」

 

小川

手札3→0

ライフ500

場 NTGデスペラード・ベルセルク レベル10 攻撃3500

 

翔太

手札0

ライフ300

場 魔装騎士ホワイトライダー レベル9 攻撃3100

  伏せカード1

 

クールダウン

アクション魔法カード

(1):次の相手ターンのバトルフェイズ開始時、お互いのフィールド上に存在するモンスターの攻撃力は元に戻る。この効果は「カードの効果を受けない」効果を持つモンスターも受ける。

 

「さぁ、どうする?お前の手札は0。頼みの綱は《ホワイトライダー》と伏せカード1枚。そして、次のターンにドローするカードだ。それでお前は《デスペラード・ベルセルク》を倒し、俺のライフを0にしなければならない。それから1つ言っておくが、《デスペラード・ベルセルク》は破壊され墓地へ送られたとき、墓地のシンクロモンスター以外のTGを2体特殊召喚できる効果がある。だから気をつけな」

つまり、仮に《NTGデスペラード・ベルセルク》を破壊しても小川のライフを0にできなかった場合、その2体のモンスターを利用して反撃されて負けるという結末が待っているということだろう。

ペンデュラムスケールはすでになく、この状態で新たなペンデュラムスケールをセッティングし、大量償還するのは至難の業だ。

おまけに特殊召喚されたモンスターは《NTGデスペラード・ベルセルク》の効果の餌食となる。

「俺の…ターン!《魔装の杯-ナルタモンガ》の効果により、俺は合計2枚カードをドローする」

 

翔太

手札0→2

 

「そして…俺は罠カード《戦線復帰》を発動。墓地の《魔装獣ユニコーン》を守備表示で特殊召喚する」

 

魔装獣ユニコーン レベル4 守備800

 

「そして、《魔装獣ユニコーン》の効果発動。こいつを《ホワイトライダー》に装備する!」

毛色が白く変わった《魔装獣ユニコーン》の背に《魔装騎士ホワイトライダー》が乗る。

そして、ゆっくりと矢を《NTGデスペラード・ベルセルク》に向ける。

 

魔装騎士ホワイトライダー レベル9 攻撃3100→3900

 

「無駄だよ。《クールダウン》によって、バトルフェイズ開始時には…」

「いいや、もうバトルフェイズはないぜ。お前にも…俺にもな」

「何!?」

「俺は手札から魔法カード《マジックコード:α》と《β》を発動!」

翔太のフィールドに現れる2つのマジックコード。

その2つの記号から力を受けた《魔装騎士ホワイトライダー》が弓を構える。

「その魔法カードは…!?」

「お前を敗北へ導くカードだ!《マジックコード:α》は魔装モンスターが存在するとき、ターン終了時まで相手モンスター1体の効果を無効にし、そして《β》は魔装モンスターの攻撃力以下の相手モンスター1体を破壊し、破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを与える…」

「…へっ、最後の最後に…気ぃ、抜いちまったか…」

ハハハと笑いつつ、翔太をじっと見る。

「なぁ…どうして彼女に肩入れする?俺がお前なら、はいどうぞって渡しちまうぜ…?」

「…仲間は売らねえ。それだけだ」

2つの力が込められた矢が放たれる。

矢は《NTGデスペラード・ベルセルク》を貫き、そのまま小川の胸に直撃する。

小川は胸を抱えつつ、フラフラとその場に座り込んだ。

 

小川

ライフ500→0

 

NTGデスペラード・ベルセルク

レベル10 攻撃3500 守備3300 融合 地属性 機械族

「NTG」Sモンスター+「TG」Sモンスター

このカードは融合召喚でのみ特殊召喚できる。

「NTGデスペラード・ベルセルク》の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードは相手の効果では破壊されない。

(2):このカードが戦闘を行うダメージステップ開始時に発動する。ターン終了時まで相手フィールド上に存在する特殊召喚されたモンスターの攻撃力を半分にし、効果を無効にする。

(3):このカードが破壊され墓地へ送られたとき、自分の墓地に存在するSモンスター以外の「TG」モンスター2体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。

 

「惜しかったな…小川…」

翔太にとってもこの2枚の登場は驚きだった。

こんな偶然は今までにはないことだ。

きっと、同じことをもう1度やれと言われても、不可能だろう。

「おい…どういう形であれ、俺が勝ったんだ…。しゃべってもらうぞ」

ゆっくりと小川に近づき、肩を叩くものの、彼からは何も反応が返ってこない。

「何してんだ。寝たってわけじゃ…!?」

顔を両手でつかみ、無理やり持ち上げようとするが、かなりの重量で、中々盛り上げることができない。

深呼吸しながら、思いっきり動かすと、バキリという音と同時に小川の頭がもげた。

「な…!?」

一瞬、本当に首をもぎ取ってしまったのかと思い、ブルっとしてしまった翔太だが、すぐに深呼吸をし、心を落ち着かせる。

そして、裂け目の部分をじっと見る。

「こいつは…ロボット!?」

裂け目にあったのは鉛色の機械部品や回路で、内蔵や血管、骨といった人間、いや生物を構成させる要素が何もなかった。

外側の皮膚も、合成繊維で作った精巧な偽物だ。

暖かさも触り心地も人間に肌と変わりないが、血は一滴も流れていない。

「偽物か…それとももともと…。ん?」

デュエルディスクの電話機能が起動し、送信者の顔写真と名前が表示される。

小川のロボットの頭部を投げ捨て、電話に出る。

「伊織か…?もしもし」

(翔太君大変!!チームオーファンが攻撃してきたの!急いで戻ってきて!!)

「ちっ…融合次元よりも先に奴らが…!わかった、今行く!!」

電話を切り、翔太はマシンキャバルリーに乗ってアジトへ急ぐ。

Dホイールを走らせながら、翔太はあのロボットについて考えていた。

(あのロボット、シンクロ次元でもスタンダード次元でも作れないできすぎな代物だ。もし、融合次元が作ったものだとしたら…!)



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第79話 砕ける夜

「榊遊矢、出ろ」

独房の扉が開き、セキュリティの隊員がその中で座っている遊矢に声をかける。

「出るって…まさか、次の試合に俺を出そうと?」

「今の貴様は質問できる立場にはない。さっさとついてこい」

従わないのなら、強引に連れていくまでと言わんばかりに、暴徒鎮圧用のスタンガンをちらつかせる。

人間らしからぬ、抑揚のないしゃべり方から、彼もまたロジェの人形だろう。

この施設の中には、彼のような人形がまだ何十人もおり、遊矢にはここの中の構造は頭に入っていない。

ここで彼を倒して脱出したとしても、残り何十人の人形に捕まえられるのがオチだ。

遊矢は黙って彼についていくしかなかった。

 

「やっぱり、ここにもいない…」

小川を倒したばかりの翔太はチームブレイドのアジトの中を走り回る。

ここにいるかもしれないエリクに問いただすためだ。

小川がロボットだったことについて、彼が使用した融合召喚について、そしてエリク自身の目的について。

だが、いくら探してもエリクの姿ばかりか、ほかの構成員の姿も確認できない。

「どうなっているんだ?…ぐぅ…!?」

急に例の頭痛が翔太に襲い掛かる。

壁にもたれて頭を抑える。

「おい…こんな時間差で来るなんて…聞いてないぞ!?それに、カードの波動を感じる力には反応してなかった…ぞ…」

前に翔太は眠りの中で、『彼』から記憶に関係するカードの波動を感知する能力が与えられている。

だが、与えられてから今日まで何も感知しておらず、おまけに今回は何も反応のないモンスターと戦ったことで、この頭痛が発生している。

「くっそ…だんまりか…よ…」

どんどん視界が白く染まっていき、その光景が真っ暗なとある場内の一室に変化する。

そこにはオレンジ色の髪の少年が母親と一緒に病床の父親と話をしている。

だが、なぜか彼らの声は一切翔太の耳に届かない。

父親のほうが怒りの形相を見せており、ゆっくりと起き上がろうとしているのを見ると、3人は口論しているということがわかる。

最終的には父親のほうが何を考えたのか息子を殺そうと剣を取り、彼の胸を貫こうとする。

だが、その前に母親が息子をかばって剣を受けて絶命し、それと同時に父親のほうも急に苦しみだして、そのまま死んでしまった。

病床にいたことを考えると、既に死にかけの状態だったのかもしれない。

「こいつは…強烈だな。だが、それと俺に何の関係が…」

再び視界が白くぼやけていき、光景が元に戻っていく。

(ちっ…5枚目を見つけやがった)

「ようやく声を出したか。ま…悔しがる声で何よりだ。…で、お前がよこした力の接触不良、どう説明するんだ?」

(あーあー、お察しの通り、渡してなかったんだよ。てめーの困る顔が見たくてなぁ!)

今回は負けを認めたのか、『彼』が投げやりになりながらも真実を話す。

いつもは上から笑ってばかりの彼を悔しがらせることができたことを嬉しく思ったのか、翔太は笑みを浮かべる。

「じゃあ、よこせよ。その力を」

(ちっ…勝手にしろ。記憶のカードを持つデュエリストを感知したら、左手の痣の色が赤に変わる)

声が聞こえなくなると同時に、左手に一瞬違和感を覚える。

だが、それは一瞬で収まった。

「今度は不良品じゃないことを祈るぞ…ん?」

デュエルディスクの電話機能が起動したが、見たことのない番号が表示されたことで翔太は首をかしげる。

ゆっくりと受話器ボタンを押す。

(無事な帰還、おめでとうございます。翔太さん)

「エリク…」

(わかりますよ。あなたが聞きたいことは…)

「ああ…小川そっくりなロボット、融合召喚、伊織のこと、そしてあんた自身のことだ。耳をそろえて答えてもらおうか?」

(残念ですが…今の私はそれにこたえることができません。今は答えるタイミングではありませんので。ですので…代わりに情報を提供しましょう)

エリクの急な提案に思わず「はぁ?」と答えてしまう。

今、話の主導権を握っているのはいつの間にかエリクのほうになっていた。

(沈黙は肯定として扱わせていただきます。ご心配なく。決してあなたや伊織さんに不利益にはならない情報です)

「不利益にならない?お前、どの口が…」

(これから襲ってくるであろうオベリスクフォース、そして懲罰部隊についてです)

エリクの言葉を聞いた翔太は沈黙する。

素良からも今夜あたりに融合次元がシンクロ次元に攻撃を仕掛けることは聞いていたが、その詳しい規模や時間までの精密な情報をつかむことができなかった。

仮にその情報を手に入れることができれば、よりシンクロ次元と柚子、そしてセレナの防衛がしやすくなる。

(これから、そちらのデュエルディスクにデータを送ります。そのデータをどう使うか、それはあなた次第です。では…)

データが送られてくると同時に、電話が切れてしまう。

「何勝手に切っているんだ…!?」

エリクの行動に怒りを覚えた翔太は着信履歴からもう一度電話をかけなおす。

(おまけになった電話番号は現在使われておりません。間違った番号を入力している恐れが…)

「ちっ…」

電話を切った翔太は舌打ちをしながら、送られてきたデータを確認し始めた。

 

(みなさん、お待たせいたしました!これより、本日の最終試合である準決勝を開始したいと思います!!)

夜になり、もうこれ以上試合がないだろうと帰り支度をしていた観客たちが試合開始の知らせを聞いて歓声を上げる。

だが、こうして実況をするメリッサ自身もこの予定前倒しには疑問を覚えていた。

普段のスケジュールでは、フレンドシップカップの1回戦は2日かけて行い、2回戦・準決勝は1日ずつ、そして決勝戦と優勝者とキングによるデュエルを1日の合計5日かけて行う形になっている。

天候などの問題でそれが変更されるのはよくある話ではあるが、メリッサの認識している範囲ではそのような知らせや報道は一切ない。

また、行方不明になった翔太についての行方も分からない。

何も報告がなければ、ユーゴについてはこのままシードということで自動的に決勝へ上ることになる。

スクリーンにはその試合を行う2人の顔写真が表示される。

(同じ闇属性・鳥獣族デッキとの激戦を制したクロウ・ホーガン選手と、完全アウェーの中で見事勝利をもぎ取った榊遊矢選手です!それでは両者、入場してください!)

メリッサが言い終わると同時に、2台のDホイールがスタジアムに出てくる。

「クロウ、やっちまえーー!!」

「前みたいなあっと驚く展開を見せてくれーー!」

2人に対して、観客たちはこの状況を理解することなく声援を送り続ける。

(小僧、薬はいいのか?)

「大丈夫…。さっきうっておいたから」

「おい、遊矢…。いくら相手がお前だとしても、負ける気はねーからな」

スタートラインに立ったクロウが遊矢に声をかける。

遊矢にとって、クロウはシンクロ次元で初めて世話になった人物で、あるアクシデントで収容所に入ることになった際も、失敗したものの協力して脱獄しようとしたこともある。

お互いに倒すのを躊躇してしまうような関係だが、倒さなければジャックにたどり着くことができない。

だが、遊矢の今の目的はそれではない。

「クロウ…。俺は負ける」

「はぁ…?負けるって、どういうことだよ」

シンジや227を倒してまでここまで登ってきた相手の言葉に思えず、クロウは首をかしげる。

「今の俺のやるべきことは…負けることでしか達成できない」

「…八百長でもするつもりかよ?」

「そんなことはしない。俺が行くのは…」

ひときわ歓声が強まる中、遊矢は小さい声でもクロウに聞こえるよう、今度はDホイールの通信で彼と会話する。

遊矢の話を聞いたクロウは驚くも、笑みを浮かべて首を縦に振る。

「そうか…ならいいぜ。だがよ、それまで俺に負けなければの話だぜ」

「ああ…」

通信を切ると、気合を入れなおすために自分の両頬を叩く。

だが、それと同時に急に自分の中に疑問が浮かぶ。

(なんでだ…?なんで俺、セレナが負けたってことを知ってるんだ?)

遊矢はここまでに起こった2つの試合の結果について何も知らされていない。

クロウがいるため、彼と当たった可能性のある黒咲かユーゴ、セレナが敗れた可能性がある。

だが、なぜピンポイントでセレナが敗れたということが分かったのか、どうしても遊矢にはわからなかった。

クロウ自身は遊矢は部屋のテレビで試合を見たから、分かっているのだと思っているため、特におかしいとは思っていない。

その疑問がぬぐえないまま、信号機が現れ、《スピード・ワールド・A》が発動する。

(それでは、準決勝戦開始です!ライディングデュエル…アクセラレーション!!)

2台のDホイールが同時に発進し、同時にクロウのブラックバードが遊矢のマシンレッドクラウンを引き離していく。

そして、差が縮まらないまま両者はスタジアムを出て、直進のコースを進んだ。

 

クロウ

手札5

ライフ4000

 

遊矢

手札5

ライフ4000

 

「俺の先攻!俺は手札から《BF-蒼炎のシュラ》を召喚!」

 

BF-蒼炎のシュラ レベル4 攻撃1800

 

「そして、カードを3枚伏せてターンエンド!」

 

クロウ

手札5→1

SPC0

ライフ4000

場 BF-蒼炎のシュラ レベル4 攻撃1800

  伏せカード3

 

遊矢

手札5

SPC0

ライフ4000

場 なし

 

(頼むぞ、クロウ…。ほんの少しだけ時間を稼げばいいんだ…)

マシンレッドクラウンのディスプレイを操作し、ここから先のコースを調べ始める。

次の分岐点を右へ向かい、そしてそのまま30キロ走れば、治安維持局へと続くメインストリートに差し掛かる。

そこから飛行可能なモンスターを使って飛び降りることができれば、このままセレナを救出しに向かうことができる。

たとえ運悪く、飛行可能なモンスターがいない状態になったとしても、このDホイールのシルエットの1つである、トンボ型シルエットシステムのドラゴンフライを使えば飛行が可能となる。

とにかく、それまでの間デュエルが続いていれば遊矢にとっては勝利。

あとはクロウが決勝へ進み、遊矢はセレナの救出へ向かう。

運が良ければ、月影か零児と合流して一緒に進むこともできるだろう。

「俺のターン、ドロー!」

 

遊矢

手札5→6

SPC0→2

 

クロウ

SPC0→2

 

「俺は手札から《EMシルバー・クロウ》を召喚!」

 

EMシルバー・クロウ レベル4 攻撃1800

 

「バトルだ!《シルバー・クロウ》で《蒼炎のシュラ》を攻撃!」

(なんと同じ攻撃力のモンスターを攻撃!?相討ち狙いなのでしょうか!?)

「《シルバー・クロウ》は攻撃宣言時、俺のフィールド上に存在するEMモンスターの攻撃力をバトルフェイズ終了まで300アップさせる!」

アスファルトの道を走る狼が青いオーラに一瞬包まれ、爪が若干長くなる。

 

EMシルバー・クロウ レベル4 攻撃1800→2100

 

「させるかよ!!」

ブラックバードを加速させ、クロウは目の前にあるアクションカードパネルを通過する。

「俺はアクション魔法《奇跡》を発動!《蒼炎のシュラ》は戦闘では破壊されず、受ける戦闘ダメージも半分になる!」

自らの身を引き裂こうとする狼の爪を《BF蒼炎のシュラ》は右手の鉤爪で受け止める。

だが、わずかに攻撃に余波が発生しており、それがクロウを襲う。

 

クロウ

ライフ4000→3700

SPC2→3

 

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド!」

 

クロウ

手札1

SPC3

ライフ3700

場 BF-蒼炎のシュラ レベル4 攻撃1800

  伏せカード3

 

遊矢

手札6→4

SPC2

ライフ4000

場 EMシルバー・クロウ レベル4 攻撃2100→1800

  伏せカード1

 

「俺のターン!」

 

クロウ

手札1→2

SPC3→5

 

遊矢

SPC2→4

 

「俺は手札から《Sp-エンジェル・バトン》を発動!スピードカウンターを4つ取り除き、デッキからカードを2枚ドローし、手札1枚を墓地に捨てる。俺は手札の《BF-精鋭のゼピュロス》を墓地へ捨てる!そして…!」

再びクロウがアクションカードパネルを通過し、分岐点を右に曲がる。

遊矢もクロウが通ったそれの隣にあるアクションカードパネルを通過した。

「「俺はアクション魔法《緊急召喚》を発動!」」

(なんと2人とも同じアクションカードを持っていました!こんな偶然があるなんて…だからアクションライディングデュエルは面白い!)

「こいつは手札のレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚できる!俺は手札から《BF-銀盾のミストラル》を特殊召喚!」

「俺は手札から《EMセカンドンキー》を特殊召喚!」

2人同時にデュエルディスクにカードを置いたためか、上空から《EMセカンドンキー》をつかんだ状態で《BF-銀盾のミストラル》が現れる。

地上に到着すると、《EMシルバー・クロウ》に大きな宅配便の伝票のようなものを見せた。

それにハンコ代わりに肉球の痕をつけてもらうと、急いでクロウのフィールドへ向かった。

なお、伝票にある宅配便の名前は『ブラックバード・デリバリー』というが、現実にそのような企業は存在しない。

 

BF-銀盾のミストラル レベル2 守備1800(チューナー)

EMセカンドンキー レベル4 守備2000

 

クロウ

SPC5→1→2

 

遊矢

SPC4→5

 

「なんだよあれ!?」

「モンスターがモンスターを配達!?そんな演出があるのかー…」

ヘンテコな演出を見た観客たちは苦笑しながら2匹のモンスターをモニターから見ている。

なお、さすがに重たかったのか、《BF-銀盾のミストラル》はハアハアと息を整えている。

「なんだか変な光景だったけど…。俺は《セカンドンキー》の効果発動!このカードの召喚・特殊召喚に成功したとき、デッキから《セカンドンキー》以外のEM1体を墓地へ送ることができる。俺はデッキから《EMロングフォーン・ブル》を墓地へ送る!」

「だったら俺は罠カード《BF-フェスティバル》を発動!俺のフィールド上にBFが存在し、相手がモンスターの特殊召喚に成功したとき、《BFトークン》3体を特殊召喚する!ほらほら、せっかくこんなにモンスターがいるんだ!歌えや踊れぇ!」

《BF-フェスティバル》のソリッドビジョンから出てくる3匹の口がラッパとなっている烏3匹の演奏と共に、フィールド上のモンスターたちが踊り始める。

(コラーー!2人とも、デュエルに集中しなさーい!!)

メリッサの声を無視するかのようなモンスターたちは踊り続け、観客たちはモンスターたちのカーニバルを見て楽しそうに笑っていた。

 

BFトークン×3 レベル1 守備0

 

BF-フェスティバル(アニメオリカ)

通常罠カード

(1):自分フィールドに「BF」モンスターが存在し、相手フィールドにモンスターが特殊召喚された場合に発動できる。自分フィールドに「BFトークン」(鳥獣族・闇・星1・攻/守0)3体を特殊召喚する。

 

BFトークン

レベル1 攻撃0 守備0 トークン 闇属性 鳥獣族

「BF-フェスティバル」の効果で特殊召喚される。

 

(あと10キロ…!これを…!)

遊矢はドラゴンフライのカードを手にし、いつでもコースから飛び出せるように準備をする。

《BF-蒼炎のシュラ》も踊りながら飛び降りる地点へ向かい、そこで遊矢を待つ。

「俺はこれでターンエンド!」

 

クロウ

手札2→1

SPC2

ライフ3700

場 BF-蒼炎のシュラ レベル4 攻撃1800

  BF-銀盾のミストラル レベル2 守備1800(チューナー)

  BFトークン×3 レベル1 守備0

  伏せカード2

 

遊矢

手札4→3

SPC5

ライフ4000

場 EMシルバー・クロウ レベル4 攻撃1800

  EMセカンドンキー レベル4 守備2000

  伏せカード1

 

「俺のターン!」

 

遊矢

手札4→5

SPC5→7

 

クロウ

SPC2→4

 

(いけ、遊矢…!できることなら、地下にいる仲間たちのことも…!)

あと十数秒で例のポイントまで到達するところまできた。

最後は遊矢がコースから飛び降りれば、こちらの役目が終わる。

 

「ふむ…榊遊矢、君がそうすることはお見通しですよ」

オペレータールームの長官席から遊矢とクロウのデュエルを見ていたロジェは不敵な笑みを浮かべながら遊矢を見る。

「コード・Zero H入力」

「了解。コード・Zero H入力」

ロジェの命令に従ったオペレーターがコンソールにコードを打ち込んだ。

 

「う…!?」

コードが入力されたと同時に、遊矢の脳に電気が直接流されたかのようなしびれが発生する。

「なんだ、今の…!?あ、ああ…」

電圧が徐々に強くなっていき、より強い刺激が直接遊矢の脳に襲い掛かる。

同時に遊矢の目が赤と黒のオッドアイに変わり、周囲の思念を感じ始める。

「う、ああ、あ…!!」

電気のせいか、その力が暴走し、クロウだけでなくより広範囲の周囲の人々の思念が入ってきて、遊矢の脳に容赦なく浸透していく。

「おい、遊矢!?どうしたんだよ!?」

急に苦しみ始めた遊矢を心配したクロウは急いで彼のそばに並走する。

その状態で飛び降りるはずのポイントを通過してしまった。

「来るな…来るな、来ないでくれーーーー!!」

「しっかりしろ、いったい何があったんだ!?」

ゴーグルのせいで、遊矢の目が変わったこと、そしてオッドアイになったときの遊矢の感応能力を知らないクロウは必死に遊矢に声をかける。

「あああああああーーーー!!!ク…クロウ…クロウ・ホーガン…」

「な…!?」

「離れ…ろ。遊矢から、離れ…ろ!!」

徐々に声が遊矢のものからユートの物へと変わっていき、声の変化にクロウは驚きを見せる。

同時に、マシンレッドクラウンのファントムライトシステムが起動し、遊矢とDホイールが赤い光に包まれていく。

「この機能は…!?」

「うわあああああ!!!」

黒い眼の色が徐々に赤く染まったいき、遊矢は一気にマシンレッドクラウンを加速させていく。

「お、おい!?待てよ遊矢!!」

先ほどまでとはかけ離れたスピードで走るマシンレッドクラウンを追いかけるため、アクセルを踏み込む。

「ぐう、う…ダーク・リベリオン…力を貸せ…!俺はレベル4の《セカンドンキー》と《シルバー・クロウ》でオーバーレイ!漆黒の闇より愚鈍なる力に抗う反逆の牙!今、降臨せよ!エクシーズ召喚!現れろ!ランク4!《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》!」

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ランク4 攻撃2500

 

フィールドに現れたダーク・リベリオンが黒いオーラを発生させ、遊矢の赤く染まりつつあった目を黒へと戻していく。

(急いでください…ユート。長くはもちません)

「ああ…わかっている!!クロウ・ホーガン、聞こえるか!!」

マシンレッドクラウンの通信機能をブラックバードにつなげ、遊矢、いやユートがクロウに話しかける。

「遊矢!?でも…声が違うぞ!?」

「俺はユート。わけあって、今は遊矢の中にいる」

「はぁ!?それってどういう…」

「今は説明している場合ではない!クロウ・ホーガン、おそらくこれから遊矢は暴走する…」

「暴走…??」

ユートの言葉が信じられないクロウだが、今の遊矢の様子がおかしいということ、そしてこのまま放置するわけにはいかないということだけは理解できた。

「そうだ…。そして、彼はそのもととなるかもしれないドラゴンを召喚する。そのドラゴンを倒すことができれば…ぐうう!?」

「おい遊矢…じゃねえ、ユート!?」

「すまない…今の俺には遊矢を止める力はない…」

ダーク・リベリオンの力を借りても、遊矢は現在進行形で暴走に陥りつつある。

黒い眼が徐々にまた赤く染まっていくにつれて、表層に出てきたユートの精神がまた押し込まれていく。

「頼む、遊矢を止めてくれ!彼を悪魔にしな…うおおおおおおお!!!!」

完全に両目が赤く染まり、再びユートの精神が遊矢の中へ閉じ込められていく。

それと同時に、激しく咆哮しつつ、1枚のカードを手に取る。

「俺は《スピード・ワールド・A》の効果を発動!スピードカウンターを7つ取り除き、デッキからカードを1枚ドローする!そして、スケール3の《相克の魔術師》とスケール8の《相生の魔術師》でペンデュラムスケールをセッティング!これで俺はレベル4から7のモンスターを同時に召喚可能!揺れろ、魂のペンデュラム!天空に描け、光のアーク!ペンデュラム召喚!現れろ、我がしもべのモンスター!《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!!」

遊矢らしからぬドスの利いた声。

一度も聞いたことのないその声でクロウは遊矢がユートの言う通り、悪魔になりかけているのだろうと確認する。

その証拠に、遊矢から強いプレッシャーが放たれており、それが針のように次々と肌に刺されるような感覚を引き起こされている。

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

「《相生の魔術師》のペンデュラム効果発動!1ターンに1度、俺のフィールド上に存在するエクシーズモンスター1体のランクを俺のフィールド上に存在するレベル5以上のモンスター1体のレベルの数値と同じにする!」

《相生の魔術師》から放たれた2本の矢が《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》と《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》に刺さり、両者が赤いオーラに包まれていく。

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ランク4→7 攻撃2500

 

「更に、《相克の魔術師》のペンデュラム効果発動!1ターンに1度、俺のフィールド上に存在するエクシーズモンスター1体をターン終了時までそのランクと同じ数値のレベルのモンスターに擬態させる!」

《相克の魔術師》が武器を上空に投げると、そこに赤く染まったオーバーレイネットワークが生まれていく。

「俺はレベル7の《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》とランク7の《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》でオーバーレイ!!」

赤いオーラに包まれた2体の竜の目が赤く染まり、オーバーレイネットワークに向けて飛んでいく。

その中で《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》が赤い粒子となって消滅し、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》に吸収されていく。

「二色の眼の竜よ。深き闇より蘇り、怒りの炎で地上の全てを焼き払え!エクシーズ召喚!いでよ、ランク7!」

赤いオーバーレイネットワークと共に黒竜を吸収した《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が方向とともに爆発し、その爆発と共に激しい揺れがシティ中を襲う。

「うわあああ!?なんだよ、こいつは!?」

激しい揺れによりコースにひびが入り、更にコース内の電子回路にも深刻なダメージが発生する。

 

「何…!?」

遊矢のとんでもない状態を見て驚きを見せるロジェ。

同時に揺れの影響で停電が発生した。

「すぐに非常電源に切り替えなさい!!」

「りょ、了解です!」

この施設で一度も停電を体験したことのないオペレーターは動揺するものの、すぐにマニュアルに従ってコンソールを動かし、非常電源が起動する。

同時に一部の隊員が電源装置の修理のために地下へと向かう。

「おのれ…奴はセルゲイ以上の獣、ということか…!だが、今はそれでいい…」

セルゲイのノートパソコンには評議会内部の光景が映し出されており、そこにはロジェの人形たちに包囲された零児の姿があった。

 

「私は《DDD運命王ゼロ・ラプラス》で《ゴヨウ・エンペラー》を攻撃!」

骨によって構成された玉座のような形の悪魔が手に握る紫色の球体から同じ色のビームを発射し、《ゴヨウ・エンペラー》を焼き尽くしていく。

「《ゼロ・ラプラス》の攻撃力はダメージステップ終了時まで戦闘する相手モンスターの元々の攻撃力の倍となる。よって、攻撃力は6600」

「グオオオオ!!」

 

セキュリティ

ライフ2900→0

 

倒れたセキュリティに見向きもせず、零児はさらに現れるセキュリティに目を向ける。

戦っているのは零児1人。

だが、椅子に座っている5人の人物は一向に戦おうとしなければ、避難しようともしない。

「私はフィールド上の《ゴヨウ・ガーディアンMkⅡ》と《ゴヨウ・チェイサー》を融合!融合召喚!現れろ、《ゴヨウ・エンペラー》!!」

 

ゴヨウ・エンペラー レベル10 攻撃3300

 

「更に私は手札から速攻魔法《トラップ・ブースター》を発動!手札1枚を墓地へ捨て、手札から罠カード《デモンズ・チェーン》を発動!」

セキュリティが発動した《デモンズ・チェーン》に縛られた《DDD運命王ゼロ・ラプラス》が動きを止める。

「これで貴様の《ゼロ・ラプラス》の効果と攻撃は封じられる!さあ、お縄につくがいい!!」

《ゴヨウ・エンペラー》の口から炎が放たれ、骸骨の悪魔を焼き尽くそうとする。

「アクション魔法《奇跡》を発動!」

急に何者かが発動した《奇跡》によって、《DDD運命王ゼロ・ラプラス》がバリアに包まれ、炎から守られる。

「乱入ペナルティ、2000…」

セキュリティたちの前に立ち、内部にいる彼らを零児と挟み撃ちにするような形となる。

「ヒイロ・リオニス…」

眼鏡を直した零児は自分を救った男の名前を呼ぶ。

 

ヒイロ

ライフ4000→2000

 

「加勢する。だが…奴らは戦わないのか?」

ヒイロの目が5人の男女に向けられる。

「なぜ、私たちが戦わねばならないのです?」

青い服を着た中年女性のアスールがヒイロの『戦え』というニュアンスの言葉に異議を唱える。

「我々はこの君たちの言うシンクロ次元、つまりこのシティを管理する立場にある」

「その立場の私たちが前に出て戦うと、だれもシティの指揮を執る人間がいなくなってしまう。ですな?代表」

「その通り。あなたがたランサーズは融合次元の多次元への侵略の阻止と対抗している組織。そして、ロジェはその融合次元の侵略者。よって、あなた方が彼を倒すことに何も問題はないでしょう」

オレンジと灰色の服の小男、グレイとオレンジ色の服の男、ボルドーの言葉を肯定するように、白い服を着た白髪の老人、ホワイト・タキ代表が笑みを浮かべたまま、まるで自分たちが守られることが当然だと言わんばかりの言動を見せる。

「零児、やはり奴らは…」

「そうです。ロジェがアカデミアの人間だということを知っていました。そして…」

「これ以上言う必要はない。なら…」

「ええ。この次元の事態が収束した後は…任せます」

「わかっている。こういう仕事はお前たちよりも、俺向きだからな」

 

「うう…遊、矢…」

シティの一画で、月影に背負われる形でセキュリティの追跡を逃れていたセレナのブレスレッドが光り始める。

彼女は敗北後、身柄確保のために何らかの薬が注射されており、現在はデュエルができないほど衰弱してしまっている。

このまま連行されそうになったところを零児の命令で彼のもとから離れていた零羅に救出され、そのあとで合流した月影とこうして逃避行を続けている。

「遊矢殿に何かあった…とでも?」

「わからない…だが、胸騒ぎがする…」

「了解した。しかし、まずはセレナ殿をシェイドへ…」

「月影!?あれ…!!」

零羅が驚きながら上空を指さす。

「これは…!」

彼が指さす方向に目を向けた月影は自分の予測以上に進んだ事態を感じる。

夜空にはスカイグライダーやオスプレイのような形のヘリコプターがいくつも舞っている。

双眼鏡を手にした月影はスカイグライダーを操る人物を見る。

「アカデミアか…!」

 

「…!遊矢!?」

突然の揺れで発電機が故障し、真っ暗となったアジト周辺をたき火で明るくしている中、柚子はブレスレッドの光と共に遊矢に危険が迫っていることを感じた。

「柚子!?何しとるんや!急いでこっちに火をもってこんか!」

「ご、ごめんなさい!!里香!」

柚子は急いでライターを里香のもとへもっていく。

「しっかしなんやったんや、あの揺れは。おかげで停電しとるし発電機もおしゃか。ふんだりけったりや!」

先ほどの揺れは短時間の地震だと思った里香はプリプリ怒りながら集めた薪や可燃ごみの塊に火をつける。

今は全員が防衛の準備をしているため、だれもフレンドシップカップを見ている人はいない。

録画はしているというものの、この停電で録画することもテレビを見ることもできない。

「遊矢…」

柚子はこの揺れと遊矢の危機が関係していると思わずにはいられなかった。

このブレスレッドの光は揺れと同時に発していて、その時に同時に遊矢のことが頭に浮かんだからだ。

「オベリスク・フォースが来るぞ!懲罰部隊込みの二個中隊だ!もう来ているぞ!!」

マシンキャバルリーに乗ったまま戻ってきた翔太が準備をするメンバー全員に向けて叫ぶ。

「来ている…じゃと!?」

「狙いは柚子とセレナだ…。柚子はアジトの中に隠れるんだ!」

「え…素良!?」

素良に腕をつかまれた柚子がそのまま彼に引っ張られる形でアジトへ連れていかれる。

望遠鏡を使って警戒していたメンバーも月影と同じものを見たのか、警報音替わりに鐘を鳴らす。

「翔太君、どうして二個中隊だってことが…」

「チームブレイドからの情報だ。詳しいことは後で説明するから、お前も準備しろ!」

「う、うん!!急ごう、ビャッコ!」

「キュイー!」

伊織はなぜかそばにいたビャッコと共にアジトのそばへ行く。

彼女と素良が最終防衛ラインで、3段構えの布陣と漁介、里香、鬼柳、ジョンソンの遊撃部隊でアジトに近づくアカデミアを撃破していくという算段だ。

(チームブレイド…信頼していいんだな…?)

情報提供者があまりにもうさんくさく、翔太は入手したデータを信頼していいのか迷っていた。

だが、データにある時間通りに兵士が上空からきており、それについては正確と言っていい。

問題はその送り込まれた兵士たちの中の1人についてだ。

「ユーリ…アカデミア最強の兵士ってやつか」

 

「災い呼ぶ烈火の竜、《覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン》!」

遊矢の叫びと共に爆発したオーバーレイネットワークの中から《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》と似た色彩であるものの、人型で悪魔に近い外見と背中に生えた炎の翼が印象的なまがまがしい竜が姿を現した。

そのモンスターのせいか、周囲の気温が上昇していき、クロウの手が汗でぬれる。

 

覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン ランク7 攻撃3000

 

「なんだ…あのドラゴンは!?」

(よし、非常電源がついた!ええっと…榊遊矢選手、ペンデュラムモンスターとエクシーズモンスターを使ってエクシーズ召喚に成功!うわあ…なんだか熱いぃ…)

非常電源によってマイクとスピーカーが動くようになり、再び実況をするメリッサが温度計を見ると、実況席内の気温はすでに30度後半に入っている。

熱中症になるのを避けるべく、備え付けのスポーツドリンクを飲む。

(ええっと、あのドラゴンのせいでしょうか?一気に気温が上がっています。客席の皆さんも熱中症にご注意をー…)

「《オッドアイズ・レイジング・ドラゴン》の効果発動!1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、相手フィールド上に存在するすべてのカードを破壊する!更に、破壊したカード1枚につき、《レイジング・ドラゴン》の攻撃力はターン終了時まで200アップする!」

「何!?」

《覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン》がオーバーレイユニットを捕食すると同時に、高熱の熱風が発生する。

熱風によって5体のモンスターが伏せカードもろとも焼き尽くされていく。

「ぐおおおお!!くっそぉ、んだよ、この熱は…!」

全身が焼けるように熱くなったクロウはそれに耐えながら、《覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン》を見る。

 

破壊された伏せカード

・攻撃の無力化

・デルタ・クロウ-ブラック・アーツ

 

覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン ランク7 攻撃3000→4400

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・EMセカンドンキー

 

(なんてひどい効果!?相手フィールド上のカードを全滅させるだけでなく、自身のパワーアップ!?おまけに攻撃力4400!!一撃で相手プレイヤーを倒せる攻撃力だーーー!!)

「《相生の魔術師》は自分フィールド上に存在するカードの数が相手より多い場合、ペンデュラムスケールが4となる。バトルだ!《オッドアイズ・レイジング・ドラゴン》でダイレクトアタック!憤激のデストラクションバースト!!」

2色の瞳が光り、口から光の奔流のように次々と回転する炎を放っていく。

「させねえぜ!!《銀盾のミストラル》の効果発動!!」

《BF-銀盾のミストラル》の幻影がクロウの盾となって炎を防いでいく。

「こいつが破壊され墓地へ送られたターン、1度だけ俺が受ける戦闘ダメージを0にする!」

《BF-銀盾のミストラル》の力で敗北は免れたものの、クロウの周辺はあの怒りの竜の攻撃の爪跡が生々しく残っていた。

あまりの熱で溶解しかけた壁にコース上で燃え続ける炎。

おまけに近くのビルにも命中したようで、そこでは火災が発生している。

(まずいぜ…こいつを攻撃させるわけにはいかねえ!攻撃させると町が…!!)

クロウの脳裏にトップスもコモンズも問わず、焼き尽くされていく町の光景が浮かぶ。

そして、その炎の中に消えている3人の子供たちの姿も…。

「くっそお!!しっかりしやがれ、遊矢!お前はエンターテイナーになるんじゃなかったのかよ!?」

「《オッドアイズ・レイジング・ドラゴン》は1ターンに1度攻撃することができる!!」

「何!?」

遊矢からまるで死刑宣告を突き付けんばかりにクロウにもう1つの効果を宣言する。

再び目が光った《覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン》があの炎の奔流を放とうとしている。

「やめろーーーー!!!」

先ほどはコースや建物に被害が発生するだけで済んだ。

だが、そんな幸運は何度も続かない。

このような威力の炎を街中で放たれたら、多くの犠牲者が生まれてしまう。

クロウは目の前のアクションカードパネルを通過する。

「俺はアクション魔法《大脱出》を発動!バトルフェイズを強制終了させる!」

バトルフェイズが終わったことで、《覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン》の口に宿った炎が消えていく。

根本的な対処とはならないが、これで1ターンは生き延びるチャンスを手に入れることができた。

 

クロウ

SPC4→5

 

「俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド!!」

 

 

クロウ

手札1

SPC5

ライフ3700

場 なし

 

遊矢

手札4→2

SPC7→0

ライフ4000

場 覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン(オーバーレイユニット3) ランク7 攻撃4400→3000

  伏せカード3

  相克の魔術師(青) Pスケール3

  相生の魔術師(赤) Pスケール8

 

「くっそぉ、遊矢…!」

なんとか《大脱出》のおかげで、攻撃を防ぐことができたものの、これ以上攻撃を許したらシティが崩壊してしまう。

トップスもコモンズも関係なく、あの炎に焼かれてしまう。

「シティを守るためにも、まずはそのドラゴンを倒してやるぜ!俺のターン!!」

 

クロウ

手札1→2

SPC5→7

 

遊矢

SPC0→2

 

「俺は《スピード・ワールド・A》の効果発動!スピードカウンターを7つ取り除き、デッキからカードを1枚ドローする!そして、俺は手札から《BF-極北のブリザード》を召喚!」

 

BF-極北のブリザード レベル2 攻撃1300(チューナー)

 

「このカードの召喚に成功したとき、墓地からレベル4以下のBF1体を特殊召喚できる!俺は墓地から《BF-蒼炎のシュラ》を特殊召喚!」

クロウのデュエルディスクの墓地が光り、その中から《BF-蒼炎のシュラ》が飛び出す。

 

BF-蒼炎のシュラ レベル4 攻撃1800

 

「俺はレベル4の《蒼炎のシュラ》にレベル2の《極北のブリザード》をチューニング!竜の心臓を貫きし剣よ、星空の元、黒き翼の手に現れろ!シンクロ召喚!吹きすさべ、《BF-星影のノートゥング》!!」

 

BF-星影のノートゥング レベル6 攻撃2400

 

「《星影のノートゥング》の効果発動!1ターンに1度、このカードの特殊召喚に成功したとき、相手に800のダメージを与え、相手モンスター1体の攻撃力・守備力を800ダウンさせる!舞い戻る剣!!」

《BF-星影のノートゥング》が剣を投げる。

剣は召喚エネルギーに弾かれ、遊矢自身に命中しなかったものの、そのまま《覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン》の胴体を傷つける。

自身にて傷を負わせた剣の持ち主を《覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン》はにらみつける。

 

遊矢

ライフ4000→3200

SPC9→8

 

覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン ランク7 攻撃3000→2200

 

「更に俺は《星影のノートゥング》の効果を発動!こいつがフィールド上に存在する限り、俺は手札のBF1体を追加で通常召喚できる!俺は手札から《BF-竜巻のハリケーン》を召喚!」

 

BF-竜巻のハリケーン レベル1 攻撃0(チューナー)

 

「こいつは1ターンに1度、自身の攻撃力をターン終了時までフィールド上のシンクロモンスター1体と同じにすることができる!俺は《BF-星影のノートゥング》を選択!」

 

BF-竜巻のハリケーン レベル1 攻撃0→2400(チューナー)

「バトルだ!《星影のノートゥング》で《オッドアイズ・レイジング・ドラゴン》を攻撃!!」

剣を手にした《BF-星影のノートゥング》が飛翔し、正面から《覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン》を切り裂こうとする。

「俺は罠カード《ハーフ・アンブレイク》を発動!フィールド上に存在するモンスター1体はこのターン、戦闘では破壊されず、俺が受ける戦闘ダメージも半分になる!」

《覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン》の羽根代わりに宿っている炎がバリアに変化し、怒りの竜を包んでいく。

龍殺しの剣と炎のバリアがぶつかり合い、攻撃の余波が遊矢を襲う。

 

遊矢

ライフ3200→3100

 

「だったら、可能な限り戦闘ダメージを与えてやるぜ!《竜巻のハリケーン》で攻撃だ!」

《BF-竜巻のハリケーン》の自分の体を回転させ、その名の通りハリケーンを発生させる。

ハリケーンをうけた《覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン》だが、やはり先ほどと同じように炎のバリアに防がれてしまう。

 

遊矢

ライフ3100→3000

 

「まだだ!俺はレベル6の《星影のノートゥング》にレベル1の《竜巻のハリケーン》をチューニング!漆黒の翼翻し、雷鳴と共に走れ!電光の斬撃!シンクロ召喚!降り注げ、《ABF-驟雨のライキリ》!!」

 

ABF-驟雨のライキリ レベル7 攻撃2600(チューナー)

 

「そして、墓地の《デルタ・クロウ-ブラック・アーツ》の効果発動!俺が3回目のBFの特殊召喚に成功したとき、1度だけ墓地に存在するこのカードを俺のフィールド上にセットできる!そして、墓地の《精鋭のゼピュロス》の効果発動!俺のフィールド上に存在するカード1枚を手札に戻すことで、墓地から特殊召喚できる!」

墓地から戻ってきたばかりの《デルタ・クロウ-ブラック・アーツ》を手札に戻し、《BF-精鋭のゼピュロス》が墓地から飛び出してくる。

 

BF-精鋭のゼピュロス レベル4 守備1000

 

「そして、俺は400のダメージを受ける!!」

 

クロウ

ライフ3700→3300

 

「更に《驟雨のライキリ》の効果発動!1ターンに1度、俺のフィールド上に存在するこのカード以外のBFの数だけ、相手フィールド上に存在するカードを破壊する!今度こそ《オッドアイズ・レイジング・ドラゴン》を破壊してやるぜ!!」

雷鳴を刀に宿した《ABF-驟雨のライキリ》がその刃で炎のバリアの中に身を隠す《覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン》を切り裂こうとする。

「俺は罠カード《ペンデュラム・バリア》を発動!俺のフィールド上に存在するペンデュラムモンスター、またはペンデュラムカード1体を選択し、そのカードはこのターン、戦闘及びカード効果では破壊されない!」

「くっそぉ!また防がれるのかよ!?」

炎のバリアの上にさらにピンク色のバリアが発生し、二段構えのバリアで雷鳴の刃が受け止められる。

 

ペンデュラム・バリア

通常罠カード

(1):自分モンスターゾーンに存在するPモンスター、もしくはPゾーンに存在するPカード1枚を対象に発動できる。そのカードはターン終了時まで戦闘、及び効果によって破壊されない。

 

(ちっくしょお…これでも破壊できねえとしたら、あとはこいつだけか…)

クロウは先ほど手札に加えたカードをじっと見る。

そして、自分の前を走り続ける遊矢に目を向けた。

「…。俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

クロウ

手札2→0

SPC7→0

ライフ3700

場 ABF-驟雨のライキリ レベル7 攻撃2600(チューナー)

  BF-精鋭のゼピュロス レベル4 守備1000

  伏せカード2

 

遊矢

手札2

SPC2

ライフ3000

場 覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン(オーバーレイユニット3) ランク7 攻撃2200

  伏せカード1

  相克の魔術師(青) Pスケール3

  相生の魔術師(赤) Pスケール8

 

「俺の…ターン!!」

 

遊矢

手札2→3

SPC2→4

 

クロウ

SPC0→2

 

「罠発動!《ブレイクスルー・スキル》!!相手フィールド上のモンスター1体の効果をターン終了時まで無効にする!」

《ブレイクスルー・スキル》から放たれる白い本流を受けた《覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン》の体に宿る炎が小さくなる。

これで、あの大量破壊・パワーアップ効果を発動できなくなった。

コースがダメージを負っているせいか、アクションカードパネルが消滅しており、もう2人はアクションカードを手にすることができない。

「俺は手札から罠カード《覇王激高》を発動。このカードは俺のフィールド上に存在するモンスターが覇王モンスター1体のみの場合、手札から発動できる」

「何ぃ!?」

「このカードは俺のフィールド上に存在する覇王モンスターの攻撃力をターン終了時まで1500アップさせる」

 

覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン ランク7 攻撃2200→3700

 

覇王激高

通常罠カード

自分フィールド上に存在するモンスターが「覇王」モンスター1体のみの場合、手札から発動できる。

(1):自分フィールド上に存在する「覇王」モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターの攻撃力をターン終了時まで1500アップする。

 

(なんと罠カードの効果で《オッドアイズ・レイジング・ドラゴン》の攻撃力がアップ!どうする?クロウ・ホーガンーーー!!)

「バトルだ!《オッドアイズ・レイジング・ドラゴン》で《驟雨のライキリ》を攻撃!!」

攻撃宣言と同時に小さくなっていた炎が再び大きくなり、口には炎の奔流が宿る。

再びクロウをシティもろとも焼き尽くそうと、先ほど以上に力を口に集中させていく。

「させるかよぉーー!!俺は罠カード《デルタ・クロウ-ブラック・アーツ》を発動!!」

《ABF-驟雨のライキリ》が炎を放とうとする前に切り裂こうと飛翔、突撃していく。

(《驟雨のライキリ》、主を守るため、わが身を盾に飛び出していくーーー!!)

「俺のフィールド上に存在するBFシンクロモンスターが相手モンスターと戦闘を行うとき、ダメージステップ終了時まで、戦闘する相手モンスターの攻撃力分、攻撃力がアップする!!《ブレイクスルー・スキル》を防げなかった時点で《オッドアイズ・レイジング・ドラゴン》!!てめーの敗北は確定していたんだよ!!」

「何!?」

目の前の羽虫を焼くため、口から炎の奔流を放つが、その炎は《ABF-驟雨のライキリ》が飛び散らした黒羽に触れた瞬間、電撃に変わって刀に吸収されていく。

 

ABF-驟雨のライキリ レベル7 攻撃2600→6300

 

「いっけえええ、《驟雨のライキリ》!!」

膨大な電気を宿した刀を手に《ABF-驟雨のライキリ》が雲を突き破って上昇していく。

そして、空中で反転し、そのまま落下しながら《覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン》を真っ二つに切り裂いた。

切り裂かれた怒りの竜は悲鳴を上げながら爆発し、爆風が2人を襲う。

「うおおおおお!!」

「がああああ!!」

 

遊矢

ライフ3000→400

SPC4→1

 

クロウ

ライフ3700→1100

SPC2→0

 

「ぐうう…《デルタ・クロウ-ブラック・アーツ》の効果を受けた俺のモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊したとき、発生した戦闘ダメージと同じ数値分のダメージを受ける…!」

 

デルタ・クロウ-ブラック・アーツ

通常罠カード

「デルタ・クロウ-ブラック・アーツ」の(2)の効果はデュエル中1回しか発動できない。

(1):自分フィールド上に存在する「BF」Sモンスターが相手モンスターと戦闘を行うときに発動できる。ダメージステップ終了時まで、そのモンスターの攻撃力は戦闘を行う相手モンスターの攻撃力分アップする。その効果を受けたモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊したとき、発生した戦闘ダメージと同じ数値分、自分はダメージを受ける。

(2):自分が「BF」モンスターを3回特殊召喚に成功したターンに発動できる。墓地に存在するこのカードを自分の魔法・罠ゾーンにセットする。この効果でセットされたこのカードはそのターンに発動できる。

 

「目を覚ませ、遊矢!!」

《覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン》が破壊されたためか、遊矢を包む召喚エネルギーが消えていき、むき出しになったマシンレッドクラウンのフレームの色が黒く変色していく。

「俺…は…罠カード…《ペンデュラム・ショック》を発動…。俺のフィールド上に存在する…ペンデュラムモンスターが破壊されたとき…そのモンスターの…元々の攻撃力分のダメージを…相手に、与える…」

意識がうつろになった状態で、遊矢は最後の罠カードを発動する。

「くそ…遊矢!道は開くぜーーー!!」

刀を投げ捨てた《ABF-驟雨のライキリ》がマシンレッドクラウンをつかむ。

そして、《ペンデュラム・ショック》からビームが発射されると同時に《ABF-驟雨のライキリ》はそれをコースの外へ投げ込んだ。

偶然、このコースは一番高さが低いコースであり、落下したとしてもライディングスーツが体を守ってくれる。

「クロ…ウ…」

「悪い、遊矢…!俺にできることはここまでだ…絶対にセレナを助けろーーー!!ぐあああああ!!」

《ペンデュラム・ショック》が直撃し、ブラックバードがボロボロのコース状をバウンドしたせいで、クロウの体が投げ出され、コース状を転げまわる。

「クロウーーーーー!!!」

ようやく意識が戻った遊矢は落下する中、必死にクロウに手を伸ばし続けた。

コース上でうつぶせに倒れるクロウの額や口元からは血が流れており、バイザーにも大きなひびが入っている。

「やってみせろ…よ…遊、矢…」

 

クロウ

ライフ1100→0

 

「クロウ…!うおおおお!!」

気持ちを切り替えた遊矢はトンボ型シルエット『ドラゴンフライ』を実体化し、マシンレッドクラウンと合体させる。

空中で姿勢を制御し、路上を低空飛行しながらそのシルエットを解除、そのまま着地した。

「くそぉ!!俺は…俺はまた!!」

ヘルメットを投げ捨てた遊矢はディスプレイに拳をたたきつける。

再び、舞網チャンピオンシップの時のような暴走を起こしてしまった。

それを抑えるカードを受け取っていたにもかかわらず。

遊矢の想像を上回るほど、その力は強くなってしまっているということか。

「くっ…今はそんなことを考えるよりも!」

もうすでにロジェはセキュリティを使ってセレナを探している。

ここに立ち止まる暇のない遊矢は後悔を振り払いながら、マシンレッドクラウンを走らせた。

 

「ふっ、もう時間稼ぎは十分です」

2人のデュエルを観戦していたロジェは通信を治安維持局の研究施設につなげる。

そこにも非常電源があり、既に起動しているおかげか、すぐにつながった。

「私です。調整は完了していますね?では…彼に柊柚子とセレナの確保を…」



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第80話 仲間の分身

「《ペイルライダー・ムーンレイス》で相手フィールド上のモンスターすべてを攻撃!」

《魔装騎士ペイルライダー・ムーンレイス》の全身の火器が一斉発射し、オベリスクフォースの古代の機械モンスター達を焼き尽くしていく。

「「ぐおおおお!?!?」」

 

オベリクスフォースA

ライフ1200→0

 

オベリスクフォースB

ライフ2100→0

 

オベリスクフォースC

ライフ200→0

 

倒されたオベリスクフォースが気を失い、デュエルディスクで自動的に融合次元へ転送される。

「奴らにリンチ戦法を許すな!なんとしても1VS1に持ち込め!」

次々と現れるオベリスクフォースを撃破しつつ、翔太はシェイドのメンバーたちに指示を出す。

オベリスクフォースが襲来してから既に1時間。

翔太1人ですでに10人以上のオベリスクフォースを撃破しており、周囲に敵がいない間に翔太は自身の状況をリセットする。

これでまた手札5・ライフ4000からデュエルを開始できる。

「モハメド、状況はどうなってる?」

「ああ。基地に空中から接近してきた奴らは遊撃部隊が倒している。だが、やはり相手の数は俺たちよりも多い。信号がロストした味方の数は4だ」

モハメドからの通信を受けた翔太は沈黙する。

翔太は指揮をモハメドに任せ、最前線でオベリスクフォースを狩り続けている。

しかし、どうしても撃ち漏らしてしまう敵もあり、さらに別方面からの部隊の存在もあり、いくら連戦連勝を重ねたとしても味方に犠牲が出てしまう。

あとどれだけ戦えば、相手が撤退するのかわからない。

「ついでに報告だ。セキュリティの奴らは融合次元の兵士たちと交戦している。うまくいけば、奴らがつぶしあって数を減らしてくれ…る、か…」

急に通信機に砂嵐の音が鳴り始める。

プラシドの時のような、ジャミングが近くで発生しているのか、ほかの味方に通信をつなげようとしてもつながらない。

「ちっ…」

通信をあきらめた翔太はジャミングを起こしている犯人を捜そうと立ち上がる。

翔太の左右を挟み撃ちするかのように、2機のディアボロが近づいている。

さらに、前方からは3人のオベリスクフォースが近づいてきている。

(奴らにかませ犬になってもらうか)

立ち上がるのをやめた翔太は匍匐状態になり、がれきの中に身を隠して、遭遇したディアボロとオベリスクフォースのデュエルを観戦する。

「ヘッ、ただの機械の俺たちオベリスクフォースが負けるはずがないだろう!」

2機のディアボロがモンスターを裏守備表示で召喚した後、3人のオベリスクフォースは常套手段として、《古代の機械猟犬》による連続効果ダメージでディアボロ2機にダメージを与える。

だが、笑っていられたのは最初のターンだけだった。

「私は《ヒキャ-Q》の効果で相手フィールド上に特殊召喚した《超重武者ビッグベン-K》にレベル2の《タマ-C》をチューニング。シンクロ召喚。レベル10。《超重荒神スサノ-O》!」

「こいつは…!」

ディアボロがシンクロ召喚した《超重武者スサノ-O》の姿、そして即座に装備された《超重武者装留ダブル・ホーン》と《超重武者装留イワトオシ》を見た翔太は驚きを見せた。

その戦略は最近全く姿を見ていない権現坂の戦術のそのものだったからだ。

ディアボロが治安維持局の兵器であるなら、おそらくフレンドシップカップで出場者たちのデュエルデータを入手し、彼らの戦術とデッキをコピーしたのだろう。

貫通効果を得た上に、2回攻撃できるようになった《超重武者スサノ-O》は相手フィールド上の《超重武者ツヅ-3》を撃破し、オベリスクフォースの1人を1ショットキルで仕留める。

さらに、《超重武者ツヅ-3》の効果で復活した《超重武者ビッグベン-K》と《超重武者スサノ-O》による攻撃でさらにもう1人も葬られる。

最後に残った1人は怖気づいて、逃げ出そうとするがもう1人のディアボロが見逃すはずもなく、ペンデュラム召喚した《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》と《EMスライハント・マジシャン》による連続攻撃によって倒された。

「おいおい、遊矢と権現坂の両方が相手かよ?」

バトルロワイヤルルールでのデュエルであるため、遊矢のデータを持つディアボロが魔法・罠カードを使っても、権現坂のデータを持つディアボロには影響はない。

手加減して勝てる相手ではない2人のデータを持つディアボロがセンサーによって周囲を捜索しはじめ、翔太を見つける。

「仕方ないな…こいつを通すわけにはいかないからな…!」

起き上がった翔太は状況をリセットした2機のディアボロと対峙する。

「おい、ポンコツロボットども!この前の奴と同じように、スクラップにしてやる!」

「対象を発見。速やかに、対象を拘束し、柊柚子の情報を手に入れる」

「並びに、不足データの回収も行う。アクションフィールド、《クロス・オーバー》発動」

「俺のデータがほしいか…?だったら、いくらでもくれてやるよ」

周囲に透明の足場とアクションカードがいくつも生み出される中で、2機のディアボロが横並びになって翔太と対峙する。

周囲ではディアボロとセキュリティの連合とオベリスクフォースがつぶしあいを演じている。

「「デュエル!!」」

 

翔太

手札5

ライフ4000

 

ディアボロ(遊矢)

手札5

ライフ4000

 

ディアボロ(権現坂)

手札5

ライフ4000

 

「俺の先攻。俺はモンスターを裏守備表示で召喚。ターンエンド」

 

翔太

手札5→4

ライフ4000

場 裏守備モンスター1

 

ディアボロ(遊矢)

手札5

ライフ4000

場 なし

 

ディアボロ(権現坂)

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「私のターン。私はスケール1の《EMユーゴーレム》とスケール8の《EMオッドアイズ・ユニコーン》でペンデュラムスケールをセッティング」

2つのU字がたでクリーム色のレンガでできた煙突をくっつけたように石人形と《EMオッドアイズ・ユニコーン》が青い光の柱を生み出す。

「ペンデュラム召喚。現れろ、《EMオッドアイズ・ライトフェニックス》、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》」

青いゲートの中から《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》と同じ目でシルクハットをつけたオレンジ色の鳥獣と《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が飛び出してくる。

機械が召喚したモンスターのせいか、咆哮することなく、ただ光の中から出てきただけだ。

 

EMオッドアイズ・ライトフェニックス レベル5 攻撃2000

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

「私はこれでターンエンド」

 

翔太

手札4

ライフ4000

場 裏守備モンスター1

 

ディアボロ(遊矢)

手札5→1

ライフ4000

場 EMドアイズ・ライトフェニックス レベル5 攻撃2000

  オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500

  EMユーゴーレム(青) Pスケール1

  EMオッドアイズ・ユニコーン(赤) Pスケール8

  

ディアボロ(権現坂)

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「私のターン、私は手札より《超重武者カゲボウ-C》を召喚」

 

超重武者カゲボウ-C レベル3 攻撃500

 

「このカードをリリースすることで、手札から超重武者モンスター1体を特殊召喚できる。私は手札から《超重武者ビッグベン-K》を守備表示で特殊召喚。これでターンエンド」

 

翔太

手札4

ライフ4000

場 裏守備モンスター1

 

ディアボロ(遊矢)

手札1

ライフ4000

場 EMオッドアイズ・ライトフェニックス レベル5 攻撃2000

  オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500

  EMユーゴーレム(青) Pスケール1

  EMオッドアイズ・ユニコーン(赤) Pスケール8

  

ディアボロ(権現坂)

手札5→3

ライフ4000

場 超重武者ビッグベン-K レベル8 守備3500

 

「俺のターン!」

 

翔太

手札4→5

 

「俺はセットしている《魔装霊レブナント》を反転召喚し、リバース効果を発動!デッキから《魔装騎士ペイルライダー》を手札に加える」

 

魔装霊レブナント レベル2 攻撃600(チューナー)

 

「さらに手札から魔法カード《魔装融合》を発動。手札の《ペイルライダー》と《ムネシゲ》、そしてフィールド上の《レブナント》を融合。第4の騎士よ、義理を守りし剣士よ、現世によみがえりし死者の魂よ、魔導の力によりて、今1つとならん。融合召喚!真紅の騎士、《魔装騎士レッドライダー》!!」

 

魔装騎士レッドライダー レベル8 攻撃3000

 

「《レッドライダー》はモンスターの特殊召喚に成功した俺のターンのバトルフェイズ中だけ、攻撃力が1000アップする。そして、俺は手札から魔法カード《魔装天啓》を発動。墓地から《ペイルライダー》と《ムネシゲ》を手札に加える。そして、俺はスケール2の《魔装槍士タダカツ》とスケール9の《魔装剣士ムネシゲ》でペンデュラムスケールをセッティング。来たれ、時の果てに眠りし英雄の魂。漆黒の魂と契約し、封印から解き放たん!ペンデュラム召喚!来い、《魔装砲士ボナパルド》!」

 

魔装砲士ボナパルド レベル5 攻撃2100

 

「《ボナパルド》の効果発動。このカードを手札からペンデュラム召喚に成功したとき、相手フィールド上に存在するモンスターの数が俺よりも多いとき、デッキからカードを2枚ドローできる。さらに俺は《魔装壁ゴルゴー》を召喚!」

 

魔装壁ゴルゴー レベル2 攻撃0(チューナー)

 

「レベル5の《ボナパルド》にレベル2の《ゴルゴー》をチューニング。黄金の剛腕を持つ漆黒の戦士、その気高き力で道を拓け。シンクロ召喚!現れろ、《魔装剛毅クレイトス》!」

 

魔装剛毅クレイトス レベル7 攻撃2600

 

「《ゴルゴー》を素材にシンクロ召喚されたモンスターは相手のカード効果では破壊されない!」

準備を整えた翔太は足場を飛び移り、空中に浮かんでいるアクションカードを手にする。

「バトルだ。《レッドライダー》で《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を攻撃!必殺真剣!」

《魔装騎士レッドライダー》が大剣をふるい、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を真っ二つに切り裂く。

切り裂かれたモンスターは特に何も反応を示さないまま消滅した。

 

魔装騎士レッドライダー レベル8 攻撃3000→4000(バトルフェイズ中のみ)

 

ディアボロ(遊矢)

ライフ4000→2500

 

「更に、《レッドライダー》の効果発動。このカードが戦闘で相手モンスターを破壊したとき、続けてもう1度だけ相手モンスターに攻撃することができる。今度は《ビッグベン-K》を攻撃!」

《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》の消滅を見届けた《魔装騎士レッドライダー》の目が《超重武者ビッグベン-K》に向けられる。

大剣を手に、巨大な機械僧兵の前までひとっとびで接近し、横に両断した。

「さらに俺はアクション魔法《ワンダーチャンス》を発動。この効果で《レッドライダー》はもう1度攻撃できる。俺は《レッドライダー》で《オッドアイズ・ライトフェニックス》を攻撃!」

《魔装騎士レッドライダー》が上空でぷかぷか浮いたままの《EMオッドアイズ・ライトフェニックス》に向けて大剣を投げつける。

肉厚の刀身に貫かれた2色眼の不死鳥は消滅した。

 

ディアボロ(遊矢)

ライフ2500→500

 

「《クレイトス》で劣化遊矢を攻撃。ゴールデン・アッパー!」

《魔装剛毅クレイトス》の拳がディアボロ(遊矢)の腹部を貫き、手足と頭部をバラバラに吹き飛ばした。

 

ディアボロ(遊矢)

ライフ500→0

 

「さらに俺は手札から速攻魔法《ロンギヌスの槍》を発動。俺のフィールド上に存在する魔装と名の付くシンクロ、エクシーズ、融合モンスターはもう1度だけ攻撃できる。だが、この効果を受けたモンスターはバトルフェイズ終了時に破壊される。《レッドライダー》で権現坂モドキにダイレクトアタック!」

大剣が手元にない《魔装騎士レッドライダー》はディアボロ(権現坂)をつかむと、そのまま拳ごと壁に叩き込んだ。

大剣を獲物にしているだけあって、腕の力は4騎士の中でも一番である赤い騎士の一撃を受けたディアボロ(権現坂)は叩き込まれると同時にばらばらに吹き飛んでいった。

 

ディアボロ(権現坂)

ライフ4000→0

 

ロンギヌスの槍

速攻魔法

「ロンギヌスの槍」の(1)(2)の効果は1ターンに1度にいずれかしか発動できない。

(1):自分フィールド上に存在する「魔装」S・X・融合モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターはもう1度だけ攻撃できる。この効果を受けたモンスターはバトルフェイズ終了時に破壊される。

(2):自分フィールド上に存在する「魔装騎士」モンスターが戦闘で相手モンスターを破壊できなかったとき、墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。そのモンスターは続けてもう1度だけ攻撃することができる。その時、そのモンスターの攻撃力はダメージステップ終了時まで倍となる。

 

「楽に倒せたとはいえ、気分が悪いな…」

ばらばらになった2機のディアボロを見て、舌打ちした翔太はそれらの残骸からデュエルディスクを回収する。

しかし、墓地とエクストラデッキ、デッキにあるカードはすべて真っ白になっていた。

「機密保持のためか…あの機皇帝を使ってたやつと違って、レベルが低くて助かったぜ」

前に戦ったあのロボットは十分にテストと効率化を果たして投入されたおかげか、かなりの実力を持っていたが、今回は違った。

フレンドシップカップが開催中であり、テストをする時間があまりなかったのか、あっさりと1ターン2キルしてしまい、拍子抜けする。

(こいつらが学習を重ねたら、危ないだろうな…)

ピリリリ…と、デュエルディスクから音が鳴る。

「モハメドか」

(翔太、いったい何があった!?)

「前のロボットと同じジャミング付きと戦っていた」

(だから通信がつながらなかったのか…!?それが…柚子の嬢ちゃんがいなくなった!)

「はぁ!?伊織と素良が見ていただろ??」

(それが…素良が倒れて…)

「ちっ…居場所を教えろ!俺があのバカを連れ戻す!」

翔太のことがあったため、伊織たちのデュエルディスクには発信機がつけられており、いざというときには互いに場所が分かるようになっている。

なお、翔太もアジトに戻った際に同じ発信機をデュエルディスクに取り付けてもらっている。

「場所は…よし!全員に伝えろ、フレンドシップカップの出場者のデュエルデータとデッキを持ったロボットを治安維持局が使っているとな!」

通信を切ると、翔太は受信している信号に従い、柚子の捜索を始めた。

 

「はあ、はあ、はあ…ちょっとだけ、うつ量が足りてなかったかな…?」

「素良…何か病気でも…?」

伊織に介抱された素良は注射を打った後、伊織の質問に答えることなくキャンディを舐め始める。

「答えてよ、素良!」

「ごめん…今は何も聞かないでほしい。あと、さっきのことは誰にも言わないで。もう、大丈夫だから…!」

立ち上がった素良はデュエルディスクを展開し、宿舎を出ようと歩き出す。

「伊織は柚子を追いかけて。今は僕よりも君が動いた方がいい」

「素良…」

「頼んだよ、伊織」

伊織の目をじっと見ながらそういうと、素良は外へ出ていく。

伊織のそばには先ほど彼が使っていたからの注射器が残されていた。

(素良…)

伊織はデュエルディスクを操作し、柚子の居場所を特定する。

そして、モハメドに連絡をした後でアジトを飛び出していった。

 

「ったく、単独行動が2人って…どれだけ立て直しをすればいいんだ?」

胃薬を飲みたくなるような思いになりながら、モハメドはメンバーに指示を続ける。

(上空に複数のヘリが出現!!)

「ヘリだと…?映像を送れ!」

前線から入ってきた情報に驚きながらも、すぐに通信してきた兵士に指示を出す。

すると、手元の端末にすぐにその映像が送られてきた。

灰色の装甲で、横に緑色の羽根が左右についている白いライオンの頭部を模ったエンブレムがついている。

「これは…ヴァプラ隊だ。援軍を…?」

(続けて報告!チームオーファンのなわばりからロボットが!!)

「奴ら…やはり治安維持局と…!」

チームオーファンの戦力が治安維持局側に加わり、こちらにはヴァプラ隊が加わった。

だが、チームオーファンの戦力がコモンズの約半分を支配している分、数は相手の方が上なのは確実だ。

もうすぐ、時刻は午後11時になろうとしている。

夜が明けたとき、果たしてランサーズとロジェ、そしてアカデミア、その3者の中で誰が笑うのか、まだだれにもわからなかった。



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第81話 熊男と狂人

「座標は…ああ、ここだな!!」

マシンキャバルリーに乗る翔太は地下鉄構内に柚子のデュエルディスクの反応があることをつかむ。

周囲にはオベリスクフォースやディアボロ、セキュリティといった面々が倒れており、彼らをにらむように《魔装騎炎ブリュンヒルデ》が彼のそばに立つ。

オベリスクフォースについては、1人ずつデュエルディスクから発生した青いゲートの中へ消えていった。

「もうこいつらは再起不能だ。いくぞ」

マシンキャバルリーでディアボロを引きつぶすと、そのまま地下鉄の入り口へ急ぐ。

(にしても、どうなっているんだ?この空は…)

少し前から、シンクロ次元の夜空が緑と青、紫とオレンジの雲でできた渦が表れており、消えずにそのまま残っている。

その不気味な渦に嫌悪感を抱きつつ、翔太は目の前に見えてきた地下鉄の入り口に突入する。

入るとすぐにオベリスクフォース3人とバレット、遊矢に柚子、そしてセレナと零羅の姿があった。

鎖で拘束されている遊矢と彼に対峙するバレットを見ると、どうやら遊矢はバレットとデュエルをしていて、彼の2枚の永続罠カードによって文字通り身動きを封じられているようだ。

おまけにセレナは何か薬を打たれたせいで、零羅のそばで倒れていて、1人では動くことすらできなくなっている。

さらに、鎖で拘束される遊矢のそばには柚子までいる。

「翔太!?どうしてここへ!?」

「ああ、お前を心配して勝手に飛び出したバカをぶん殴って連れ戻そうと思ったが、邪魔者がいるみてーだな」

マシンキャバルリーに取り付けていたデュエルディスクを腕に装備し、翔太は遊矢の隣に立つ。

「よぉ、熊男。負け犬の癖にまた俺の前に現れやがって」

(乱入ペナルティ、2000ポイント)

「ったく、そんなの入れるくらいなら、最初から乱入できないようにしろって…」

 

翔太

手札5

ライフ4000

場 なし

 

遊矢

手札1

ライフ600

場 ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン(《紅鎖の獣闘機勲章》の影響下 ORU2) ランク4 攻撃0

  オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン(《鉄鎖の獣闘機勲章》の影響下) レベル7 攻撃0

  相克の魔術師(青) Pスケール3

  相生の魔術師(赤) Pスケール8

 

バレット

手札0

ライフ4000

場 獣闘機パンサー・プレデター レベル6 攻撃2000

  獣闘機ウルフ・ケンプファー レベル6 攻撃2200

  紅鎖の獣闘機勲章(永続罠)

  鉄鎖の獣闘機勲章(永続罠)

  獣闘機融合装置(永続魔法)

 

紅鎖の獣闘機勲章(アニメオリカ)

永続罠カード

(1):自分フィールドに「獣闘機」モンスターが存在しない場合にこのカードは破壊される。

(2):相手フィールドにエクストラデッキからモンスターが特殊召喚された場合、

そのモンスター1体を対象としてこの効果を1度だけ発動できる。このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、そのモンスターは攻撃できず、表示形式の変更もできない。また、戦闘では破壊されない。さらに、このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、対象のモンスターのコントローラーはモンスターを召喚・特殊召喚できず、魔法・罠カードを発動できない。

 

鉄鎖の獣闘機勲章(アニメオリカ)

永続罠カード

(1):自分フィールドに「獣闘機」モンスターが存在しない場合にこのカードは破壊される。

(2):相手フィールドにモンスターが特殊召喚された場合にこの効果を1度だけ発動できる。このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、そのモンスターは攻撃できず、表示形式の変更もできない。また、戦闘では破壊されない。

(3):相手がダメージを受けた場合に発動する。相手フィールドの全てのモンスターの攻撃力はその数値分だけダウンする。

 

「貴様はあの時の…」

「ああ。まだクビになってなかったみてーだな」

「翔太…知ってるのか!?」

「ああ。バトルロワイヤル中にあった雑魚だ」

「私と榊遊矢の真剣勝負に乱入など認めん!!」

1VS1の真剣勝負の邪魔をされたバレットは怒りを覚え、翔太に目を向ける。

だが、翔太もバレットの『真剣勝負』という言葉を聞き、表情を硬くする。

「黙れよ、クズ野郎が…」

「な…!?」

急に翔太から突然発生する強い殺意にも似たプレッシャーを感じ、さらに自分の流儀を一刀両断されたことに驚きを見せる。

「てめえの流儀を勝手に押し付けてんじゃねえ。侵略なんてくだらないことをしているくせによ。邪魔だからさっさと雑魚を連れて消えるんだな」

「く…貴様!?」

「我々が雑魚だと!?」

雑魚呼ばわりされた3人のオベリスクフォースが怒りを覚え、翔太を倒そうとデュエルディスクを展開しようとする。

オベリスクフォースはアカデミアの中でも一番のエリートであり、そんな自分たちのことを雑魚呼ばわりされたことを許せなかった。

「下がれ!!」

「な…!?」

「バレット隊長!?」

しかし、バレットの一括を受けた3人が展開を止める。

「へえ、負け犬がずいぶん偉くなったみてーだな」

バレットが舞網で率いていたのは懲罰部隊。

バレットと同じ作戦中の不祥事や犯罪といった前科の抹消を条件に危険な任務ばかり割り当てられる愚連隊だ。

経緯はわからないが、何らかの形で武功を重ねたバレットは晴れてきれいな体でオベリスクフォースの指揮官となったのだろう。

「痛いところをついてくれるな、貴様。名は」

「…秋山翔太」

「私の名はバレット。認めよう、貴様も榊遊矢と同じく、信念を持った戦士であることを」

「てめえに認められてもうれしくもなんともねーよ、熊男。俺のターン!」

 

翔太

手札5→6

 

「俺はスケール2の《魔装槍士タダカツ》とスケール9の《魔装剣士ムネシゲ》でペンデュラムスケールをセッティング。来たれ、時の果てに眠りし英雄の魂。漆黒の魂と契約し、封印から解き放たん!ペンデュラム召喚!来い、《魔装騎士ペイルライダー》!」

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

 

「さらに、俺は手札から速攻魔法《次元突破》を発動。俺のフィールド上に存在する魔装騎士の攻撃力をターン終了時まで倍にする」

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500→5000

 

「攻撃力5000!?」

「《ペイルライダー》で《ウルフ・ケンプファー》を攻撃!クアトロ・デスブレイク!」

《魔装騎士ペイルライダー》は腰の光剣を抜き、全身を鋼の鎧で包み、黒いマントをつけた牛に似たモンスターを縦に両断する。

切り裂かれた《獣闘機ウルフ・ケンプファー》は爆発とともに消滅し、その爆風の中から《漆黒の戦士ワーウルフ》と《ダーク・センチネル》が飛び出す。

「《ウルフ・ケンプファー》は戦闘で破壊されたとき、融合素材としたモンスターを墓地から特殊召喚できる!」

 

バレット

ライフ4000→1200

 

漆黒の戦士ワーウルフ レベル4 攻撃1600

ダーク・センチネル レベル4 攻撃1500

 

獣闘機ウルフ・ケンプファー(アニメオリカ)

レベル6 攻撃2200 守備1400 融合 闇属性 機械族

レベル4以下の獣戦士族モンスター+レベル4以下の機械族モンスター

(1):相手に戦闘ダメージを与えた時に発動できる。300ダメージを相手に与える。

(2):このカードが戦闘で破壊された場合に発動できる。このカードの融合素材としたモンスター一組を自分の墓地から特殊召喚する。

 

「さらに、《獣闘機融合装置》の効果で、私は1ターンに1度、私のフィールド上に存在するモンスターを素材に獣闘機融合モンスターを融合召喚できる!」

「いや、もうお前に次のターンはない。《タダカツ》のペンデュラム効果で、相手モンスターを戦闘破壊した《ペイルライダー》は続けてもう1度だけ攻撃できる!」

「なに!?」

2本目の光剣を抜いた第4の騎士がもう1機の獣闘機に襲い掛かる。

「く…!」

「消えろ!」

二刀流となった《魔装騎士ペイルライダー》によって、《獣闘機パンサー・プレデター》がバラバラに切り裂かれる。

切り裂かれた獣は爆発し、爆風によって吹き飛ばされたバレットが地下鉄の冷たい床を転げる。

「ぐおおおお!!」

 

バレット

ライフ1200→0

 

獣闘機融合装置(アニメオリカ)

永続魔法カード

(1):1ターンに1度、自分の手札・フィールドから、「獣闘機」融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

(2):このカードが自分の魔法・罠ゾーンに存在する限り、自分は通常召喚できない。

 

「バレット隊長!?」

「貴様…よくも隊長を!」

「はいはい、君たち雑魚は邪魔をしないのっと」

3人のオベリスクフォースの背後に、ジェルマンのエンブレムが刻まれた襟のある白いジャケットを着た、長いもみあげのある長い金髪と禿げ上がった頭をした男が現れる。

「貴様は…ゲイツ!」

「ええ、そうよそうよ。ジェルマンのゲイツ様だよ。だからそこ、どきなさいよ」

「ふざけるな!これはオベリスクフォースの仕ご…」

ゲイツに抗議していたオベリスクフォースの首の静脈から血が噴き出し、彼は手でそれを抑えつつ、口から血を流しながらあおむけに倒れる。

ゲイツの左手には先ほどまでなかったナイフが握られていた。

「う…そ…!?」

「見るな、柚子!!」

鎖が解けた遊矢は必死に柚子の目を自身の手で隠す。

「デタラメいうなって!!人のお仕事をとっちゃダメって先輩から教わらなかったっけ?あー、あー、聞こえますかー??」

すでにこと切れているオベリスクフォースの頭をつかみ、耳の穴にナイフを差し込みながらゲイツが話しかける。

ナイフを抜くと、刀身は血でべっとりと濡れていた。

「うわぁ、なんとぉー!!死んじゃってる!!死んじゃったよこれぇ!!あー!! この世界はどうなっとるんだ!! 残酷な死で満ち溢れているではないか!! 私は悲しい! とても悲しい!!」

「な…なんだ!?なんなんだ、あいつは!?」

ふざけた口調で、おまけに衝動的に仲間を殺したサイコパスに遊矢は恐怖を覚える。

残った2人は恐れを抱いたのか、デュエルディスクで融合次元に逃げ帰ってしまった。

「あ、もしかして譲ってくれた!?いやー、うれしーなー。やっぱり人には親切にしないとね、うんうん。ねー、君もそう思うでしょー?」

相変わらず死体に嬉しそうに話しかけるゲイツはナイフをしまうと、ゆっくりとセレナに近づく。

「や…やめろぉ!!」

零羅がデュエルディスクを展開させ、セレナの盾になろうとするが、セレナが右手で彼を制止する。

「セレナ…?」

「やめろ…奴はゲイツ…。アカデミアでもユーリに匹敵する最悪の男だ…」

「うほー!セレナちゅぁーん!イメチェンしちゃってかわいいでちゅねー。さあさあ、おじさまと一緒に夢の世界へトリップトリップー!そして、君はおじさまへサービスサービスぅ!」

「黙れ!…お前についていく、だが遊矢たちには手を出すな!」

「そんな…セレナ!!」

「へぇー、もしかしておじさまとデュエルするきー?いいよいいよ?でも、死んじゃっても知らないよ?」

ナイフを抜き、まだ血で濡れている刀身をペロリとなめながらゲイツは遊矢を見る。

なめ終えると、そのナイフを捨て、デュエルディスクを装着する。

「やめろと言っているのがわからないのか!?今、ここにいる私たちでは奴に勝てないんだぞ!」

「セレナ殿!」

苦無を手にした月影がゲイツの背後に現れ、彼の首筋にそれをあてる。

「おっと、忍者!?」

「おとなしくしてもらおう、貴様はデュエリストの矜持がないようだからな」

オベリスクフォースの死体を見た月影がゲイツを拘束しようと麻酔薬を打ち込もうとする。

何のためらいもなく仲間を殺す彼を月影自身も危険だと判断したのだろう。

「んー?こういう時はこういえばいいのっかなー?アイエエエエ!ニンジャ!?ニンジャナンデ!?」

「グオオ!!」

みぞおちに鈍い一撃を受けた月影の手から苦無が落ちてしまう。

そして、自由になったゲイツは苦無をつかみ、それを彼の方に突き刺した。

「アハハぁ!油断はダメよぉ、ダメダメぇ!」

「月影!?」

「ヌハハハハ!!お嬢ちゃんの頼みもあるし、お前らは見逃してやるよぉー。んじゃあ、おじさまはもみあげのお手入れとセレナちゃんとの夢の時間があるので…グッバァイ!」

セレナを抱き寄せ、左手で胸を触りながらデュエルディスクの転送装置を起動する。

ゲイツとセレナが青い粒子に包まれていく。

「セレナ!!」

「すまない…遊矢、柚子、みんな…だが、信じてる!必ず私を助け出してくれ!!」

セレナの必死の叫びを最後に、2人は粒子とともに姿を消す。

「く…くっそぉぉぉぉ!!」

「遊矢…」

「く…ジェルマンめ、直属の特務部隊であることをいいことに…」

起き上がったバレットは部下の死体を見つつ、ゲイツへの怒りをあらわにする。

そして、じっと遊矢たちに目を向ける。

「またやる気かよ…あんた」

「…」

遊矢たちをスルーして、バレットは部下の遺体のそばまで行くと、デュエルディスクの転送装置を起動する。

「榊遊矢、秋山翔太…決して忘れん」

そう言い残すと同時に、遺体とともにバレットもまた姿を消した。

「セレナ…」

「くっ…融合次元にあのような化け物が…」

「黙ってろ」

翔太の手で、肩に刺さった苦無が抜かれる。

痛みに耐えながら、月影は布を取り出してそれを包帯代わりにして刺さった個所を覆う。

「サイコ野郎の介入があったとはいえ、セレナが捕まるなんてな…」

「セレナ…セレナぁ…」

一番近くにいながら、セレナを守ることができなかったことを悔やみ、零羅が涙を流す。

どうしようもなかったこととはいえ、幼い零羅にはとても受け入れがたい出来事だった。

「さてっと、じゃあ説明してもらおうか。なんで勝手にアジ…」

邪魔者がいなくなったことで、ようやく話せる機会ができたと思った矢先、駅の天井が砕け、そこからセルゲイが飛び降りてくる。

「ちっ…一難去ってまた一難かよ!?」

一度は破壊したはずのセルゲイの再びの登場に驚きながら、翔太はデュエルディスクを構える。

セルゲイの左目はじっと遊矢のそばにいる柚子を見ていた。

 

「セレナがいない!?逃げられたというのか!?」

局長室で、ノートパソコンを通したセルゲイの左目のカメラが映す光景を見ているロジェはセレナがいなくなっていることに驚きを見せる。

セキュリティからの報告で、セレナが零羅と一緒にいるという情報をつかんでおり、現にその場には零羅の姿がある。

しかし、一緒にいるはずのセレナの姿がなく、今の彼女が一人で逃げるのは不可能。

そして月影も原因はわからないが、負傷している。

「まぁいいでしょう。セルゲイ、柊柚子を確保しなさい。失敗は許しませんよ」

 

「了解。柊柚子を確保する」

(あのどM、人格が変わったか?)

「逃げろ、柚…!?」

柚子を逃がそうとデュエルディスクを展開しようとする遊矢だが、薬が切れたせいで、腹部の激痛がよみがえり、その痛みのせいでその場にうずくまってしまう。

「遊矢!!」

「逃げ…ろ…」

「ちっ、ドM、俺が相手に…」

「いや、相手になるのは俺だ」

壊れた屋上から飛び降りてきたブーンが翔太の前に立ち、デュエルディスクを展開すると同時にそれから妨害電波を発生させる。

「これで、俺と貴様以外はデュエルをすることができない。更に、この周囲一帯の通信機能も無力化した。この電波を止めるには、お前が俺に勝つしかない」

「くそ…!」

セルゲイも含めて、翔太とブーン以外がデュエルできなくなったことで、彼と止めるすべを失った。

この中では月影について身体能力の高い翔太でも、セルゲイを止めることができない。

「逃げろ…柚子…」

「でも…でも!!」

柚子には遊矢を見捨てて逃げるという選択肢を選ぶことができなかった。

セルゲイは柚子をつかむと、両足を展開し、隠されていたブースターを起動させる。

「柚子…柚子…!!」

「遊矢ーーー!!」

互いに相手に向けて手を伸ばすが、もうその手は届かない。

柚子はセルゲイとともに不気味な夜空に向けて飛んで行ってしまった。

「柚子…ぐうう、うおおおおおお!!」

幼馴染で、一番大切な少女が奪われたくやしさを込めて、遊矢は叫ぶ。

翔太もこぶしを震わせ、怒りを覚えながらブーンに目を向ける。

「秋山翔太、お前は我々にとって危険な存在だ。ゆえに排除させてもらう」

「御託はいい。今の俺は最高に機嫌が悪いんだ…死んでも、恨むなよ?」

「「デュエル!!」」

 

ブーン

手札5

ライフ4000

 

翔太

手札5

ライフ4000

 

「俺の先攻、俺は手札から《鋼の歯車蛸》を召喚。このカードは俺のフィールド上にモンスターが存在しないとき、リリースなしで召喚できる」

側面から見ると、ひし形のような形をしていて、円柱型のポッドを前方に縦に設置されている灰色の戦車が現れる。

「メタルギア、アンティーク・ギアとは違うってことだな?」

「当然だ。行儀がいいだけの輩とは違うのでな」

 

鋼の歯車蛸 レベル5 攻撃2100

 

「更に、このカードの召喚に成功したとき、デッキからレベル4以下のメタルギア、もしくは《鋼の歯車融合》を手札に加えることができる。俺はデッキから《鋼の歯車蛹》を手札に加える。カードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

ブーン

手札5→3(うち1枚《鋼の歯車蛹》)

ライフ4000

場 鋼の歯車蛸 レベル5 攻撃2100

  伏せカード2

 

翔太

手札5

ライフ4000

場 なし

 

鋼の歯車蛸(メタルギア・ビューパ)

レベル5 攻撃2100 守備1000 効果 地属性 機械族

(1):自分フィールド上にモンスターが存在しないとき、このカードはリリースなしで召喚できる。

(2):このカードの召喚に成功したとき、デッキに存在するレベル4以下の「メタルギア」モンスター1枚もしくは「鋼の歯車融合」1枚を対象に発動できる。そのカードを手札に加える。

 

「俺のターン!」

 

翔太

手札5→6

 

「俺は手札から《魔装陰陽師セイメイ》を召喚!」

 

魔装陰陽師セイメイ レベル3 攻撃1000(チューナー)

 

「このカードの召喚に成功したとき、手札からレベル4以下の魔装モンスター1体を特殊召喚できる。俺は《魔装妖ビャッコ》を特殊召喚」

「キュイ!」

《魔装陰陽師セイメイ》の肩に乗っているビャッコが口元を扇子で隠す彼から耳打ちされると、すぐに飛び降りて翔太の前に立つ。

いつもはみたらし団子を食べるなどしてリラックスし、気ままに動くビャッコだが、今回は空気を読んだのか、まじめな表情を見せている。

 

魔装妖ビャッコ レベル3 攻撃400

 

「こいつは魔装モンスターのシンクロ素材、エクシーズ素材となるとき、レベルを4として扱うこともできる。レベル4の《ビャッコ》にレベル3の《セイメイ》をチューニング。黄金の剛腕を持つ漆黒の戦士、その気高き力で道を拓け。シンクロ召喚!現れろ、《魔装剛毅クレイトス》!」

 

魔装剛毅クレイトス レベル7 攻撃2600

 

「《ビャッコ》の効果発動。このカードがシンクロ素材またはエクシーズ素材となったとき、デッキからカードを1枚ドローする。バトルだ、俺は《クレイトス》で《鋼の歯車蛸》を攻撃、ゴールデン・アッパー!」

《魔装剛毅クレイトス》が籠手の五芒星を輝かせつつ、《鋼の歯車蛸》を拳で中央から貫こうとする。

しかし、急に上空から現れた、3枚の円盤状の翼をもっている、赤と灰色が基調の飛行兵器が下部に搭載されているレールガンと機首に搭載しているミサイルポッドで牽制射撃をし始めた。

このまま近づけば、的になってしまうと判断した《魔装剛毅クレイトス》はやむなく攻撃を中断し、翔太のもとへ戻る。

「俺は手札の《鋼の歯車蛹》の効果を発動した。俺のフィールド上に存在するメタルギアモンスターが攻撃対象となったとき、このカードを手札から特殊召喚することで、その攻撃を無効にする。更に、この効果でこのモンスターを特殊召喚したターン、俺のフィールド上に存在する融合モンスター以外のメタルギアモンスターは戦闘では破壊されない」

 

鋼の歯車蛹 レベル4 攻撃1700

 

鋼の歯車蛹(メタルギア・クリサリス)

レベル4 攻撃1700 守備1500 効果 地属性 機械族

このカード名の(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しか行えない。

(1):自分フィールド上に存在する「メタルギア」モンスターが攻撃対象となったときに手札から発動できる。このカードを自分フィールド上に特殊召喚することで、その攻撃を無効にする。この効果で特殊召喚したターン、自分フィールド上に存在する融合モンスター以外の「メタルギア」モンスターは戦闘では破壊されない。

 

「更に俺は永続罠《AI's Payment》を発動。俺のフィールド上に融合モンスター以外の鋼の歯車モンスターが特殊召喚されたとき、デッキからカードを1枚ドローする」

「ちっ…。俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

 

ブーン

手札3

ライフ4000

場 鋼の歯車蛸 レベル5 攻撃2100

  鋼の歯車蛹 レベル4 攻撃1700

  AI's Payment(永続罠)

  伏せカード1

 

翔太

手札6→4

ライフ4000

場 魔装剛毅クレイトス レベル7 攻撃2700

  伏せカード1

 

AI's Payment

永続罠カード

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に融合モンスター以外の「メタルギア」モンスターが特殊召喚されたときに発動する。デッキからカードを1枚ドローする。

 

「俺のターン、ドロー」

 

ブーン

手札3→4

 

「俺は手札から《鋼の歯車弩級戦車》を召喚。このカードは元々の攻撃力を1900にする代わりに、リリースなしで召喚できる」

ブーンの前に、翔太が以前戦った《ダーク・フラット・トップ》に匹敵する大きさを誇るキャタピラ付きで戦艦のような形をした灰色の戦車が現れる。

そのあまりの大きさで駅の天井がガラガラと崩れ落ち、動けない零羅と遊矢を月影がカバーする。

 

鋼の歯車弩級戦車 レベル8 攻撃3000→1800

 

「遊矢殿!」

月影は遊矢の懐から出した薬を彼の首筋に注射する。

「…はあ、はあ、はあ…」

「遊矢殿、大事ないか!?」

「ああ…助かったよ、月影…」

薬が効き、腹部の痛みが嘘のように消えていく。

だが、あくまでも薬でごまかしているだけに過ぎず、腹部の銃創はきちんと病院で手術をしなければならない。

仮にこのまま激しい動きをすることになると、傷口が開いてしまうだろう。

「そして、俺は手札から魔法カード《鋼の歯車融合》を発動。俺のフィールド上に存在するモンスターを素材に、メタルギア融合モンスターを融合召喚する。俺は《蛸》、《蛹》、《弩級戦車》を融合する。大地と水中を走る要塞よ、獲物を撃ち抜く狩人よ、障害を踏みつぶす戦車よ、歯車を絡ませ、任務遂行の標となれ。融合召喚!現れろ、レベル10!《鋼の歯車毒蛇》!」

3機の灰色の兵器が融合し、頭部に球体型の自爆装置、左に大型質量弾を発射できるレールガンを搭載した灰色の4本脚兵器が現れる。

その大きさは《鋼の歯車弩級戦車》と同じで、出現と同時に後ろ側に2本脚が前側のそれに収納され、2本足で動き出した。

 

鋼の歯車毒蛇 レベル10 攻撃3600

 

「攻撃力…3600…!?」

「更に、融合素材となった《鋼の歯車弩級戦車》の効果発動。このカードを素材にメタルギアモンスターの融合召喚に成功したとき、墓地に存在するこのカードを装備カード扱いとして、その融合モンスターに装備する」

《鋼の歯車毒蛇》の背後に現れた《鋼の歯車弩級戦車》のカードのソリッドビジョンから放出される灰色のオーラが《鋼の歯車毒蛇》に吸収される。

「このカードを装備したモンスターが相手モンスターと戦闘を行うとき、そのモンスターの効果は無効化される」

「ちっ…!」

《魔装剛毅クレイトス》はエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターとバトルをするとき、攻撃力がダメージステップ終了時まで1000アップする効果がある。

だが、装備カードとなった《鋼の歯車弩級戦車》のせいで、その効果を発動できなくなってしまった。

 

鋼の歯車弩級戦車(メタルギア・コクーン)

レベル8 攻撃3600 守備1800 効果 地属性 機械族

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードはリリースなしで召喚できる。その時、このカードの元々の攻撃力は1800となる。

(2):このカードを素材に「メタルギア」融合モンスターの融合召喚に成功したとき、墓地から発動できる。このカードを装備カード扱いとしてそのモンスターに装備する。

(3):このカードの効果でこのカードを装備したモンスターが相手モンスターを戦闘を行うとき、ダメージステップ終了時までそのモンスターの効果は無効化される。

 

「バトルだ。《鋼の歯車毒蛇》で《魔装剛毅クレイトス》を攻撃」

《鋼の歯車毒蛇》がレールガンを《魔装剛毅クレイトス》に合わせ、大型質量弾を発射する。

《魔装騎士ペイルライダー・ムーンレイス》のそれを上回るスピードで弾丸は飛び、胴体を撃ち抜いた。

腹部に穴が開いた《魔装剛毅クレイトス》が爆発し、爆風が翔太を襲う。

「ぐうう…!」

 

翔太

ライフ4000→3000

 

「更に、《毒蛇》の効果発動。このカードが戦闘で相手モンスターを破壊したとき、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与える」

 

翔太

ライフ3000→400

 

「一気に翔太殿のライフが400に!?」

「翔太…」

あっという間に翔太のライフがレッドゾーンに陥る。

おまけに、《鋼の歯車毒蛇》の効果を考えると、もうモンスターをその毒蛇に倒されるのが許されなくなった。

「更に俺は罠カード《立ち上がる鋼の歯車》を発動。俺のフィールド上に存在するメタルギア融合モンスターが戦闘で相手モンスターを破壊し、相手に戦闘ダメージを与えたターン、、デッキから与えたダメージ以下の数値の攻撃力を持つメタルギアモンスター1体を特殊召喚する。俺はデッキから《鋼の歯車IR》を特殊召喚」

黒い人間の足をそのまま転用したかのような生々しい2本足を持ち、灰色の戦車を模した部品の上にミサイルポッドを取り付けた兵器が天井の穴から飛び降りて、ブーンの前に立つ。

 

鋼の歯車IR レベル4 攻撃1000

 

立ち上がる鋼の歯車(メタルギア)

通常罠カード

このカード名のカードは1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に存在する「メタルギア」融合モンスターが戦闘で相手モンスターを破壊し、相手に戦闘ダメージを与えたターンのバトルフェイズ中に発動できる。デッキからそのダメージの数値以下の攻撃力を持つ「メタルギア」モンスター1体を特殊召喚する。

 

「まずい…!今の翔太のフィールドにモンスターはいない。このままダイレクトアタックを受けたら…!」

「《AI's Payment》の効果で、デッキからカードを1枚ドローする。終わりだ。《IR》でダイレクトアタック」

照準補正をすでに済ませていた《鋼の歯車IR》がミサイルを全弾発射する。

「翔太!!」

「俺は罠カード《死を告げる風》を発動!俺のフィールド上にモンスターが存在しない状態で相手の直接攻撃宣言時、その攻撃を無効にする。そして、手札・デッキ・墓地から《魔装騎士ペイルライダー》を特殊召喚する」

翔太の周囲を黒い風が包み込み、その風に触れたミサイルが次々と爆発していく。

ミサイルがなくなり、風も消えると、そこには《魔装騎士ペイルライダー》の姿があった。

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

 

「ふん…。ここで《ペイルライダー》を召喚してきたか。だが、《鋼の歯車毒蛇》はカード効果では破壊されず、除外もされない。更に、《鋼の歯車IR》の効果発動。1ターンに1度、このカードを守備表示にすることで、デッキからレベル4以下のメタルギアモンスター1体を特殊召喚する。俺はデッキから《鋼の歯車騎兵》を特殊召喚」

 

鋼の歯車IR レベル4 攻撃1000→守備1900

鋼の歯車騎兵 レベル3 守備1000

 

「俺はこれで、ターンエンド」

 

ブーン

手札4→3

ライフ4000

場 鋼の歯車毒蛇(《鋼の歯車弩級戦車》装備) レベル10 攻撃3600

  鋼の歯車IR レベル4 守備1900

  鋼の歯車騎兵 レベル3 守備1000

  AI's Payment(永続罠)

 

翔太

手札4

ライフ400

場 魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

 

鋼の歯車IR(メタルギア・アーヴィング)

レベル4 攻撃1000 守備1900 効果 地属性 機械族

このカード名の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に攻撃表示で存在するこのカードを対象に発動できる。そのカードを守備表示にする。その後、デッキからレベル4以下の「メタルギア」モンスター1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。

 

「く…今のは効いたぜ…」

《魔装騎士ペイルライダー》を召喚し、どうにか敗北だけは避けることができた。

しかし、ライフはわずか300で、おまけに攻撃力3600の《鋼の歯車毒蛇》は効果による破壊や除外ができないだけでなく、戦闘する相手モンスターの効果を一時的にかき消す装備カードを装備している。

倒すのは至難の業だ。

だが、倒せないモンスターではない。

「俺のターン!」

 

翔太

手札4→5

 

ドローしたカードを見た翔太が笑みを浮かべる。

「おあつらえ向きのカードが来たか…。俺は手札から《PCM-シルバームーン・アーマー》を発動!」

「ほぉ…」

翔太が発動したカードをブーンは特に驚く様子もなく見つめる。

発動と同時に、《魔装騎士ペイルライダー》が青い魔法陣に包まれていく。

「俺のフィールド上に存在するレベル7のペンデュラムモンスター1体を同じ種族でランク7のエクシーズモンスターに変化させる。俺は《魔装騎士ペイルライダー》でオーバーレイ!月の鎧に拘束されし第4の騎士よ、その重力を戒めとし覚醒せよ。ムーンライトエクシーズチェンジ!現れろ、月の鎧纏いし死の騎士、《MLX-魔装騎士ペイルライダー・ムーンレイス》!」

魔法陣が消え、月の力を宿した重装備に包まれた《魔装騎士ペイルライダー》が姿を現す。

 

魔装騎士ペイルライダー・ムーンレイス ランク7 攻撃2500

 

「《シルバームーン・アーマー》の効果で特殊召喚されたモンスターは次の俺のターンのスタンバイフェイズまで、戦闘及びカード効果では破壊されない。そして、俺のライフが1000以下の時、こいつは相手フィールド上のすべてのモンスターに1回ずつ攻撃できる。更に、こいつが《ペイルライダー》をエクシーズ素材としているとき、1ターンに1度、墓地の魔装モンスター1体を除外することで、相手モンスター1体の攻撃力・守備力をターン終了時まで0にすることができる」

背中のウェポンラックから大型レールガンを取り出し、その中に《魔装陰陽師セイメイ》が取り込まれていく。

「対象はもちろん、《鋼の歯車毒蛇》だ!ムーンライト・シューティング!」

質量弾が発射され、それが搭載されているレールガンに命中する。

耐久値が限界を超えたと判断したAIによって、そのレールガンがパージされ、最大の攻撃手段を失う。

 

鋼の歯車毒蛇 レベル10 攻撃3600→0

 

墓地から除外されたカード

・魔装陰陽師セイメイ

 

「く…!」

「バトルだ、フルバースト・デスブレイク!!」

レールガンを投げ捨てた《魔装騎士ペイルライダー・ムーンレイス》が全身の火器を展開し、一斉射撃を開始する。

ガトリングによって、両足が穴だらけになった《鋼の歯車IR》が体勢を維持できなくなって崩れ落ち、ビームによって全身を焼かれた《鋼の歯車騎兵》が消滅する。

そして、《鋼の歯車毒蛇》は下部に搭載されているガトリング砲と各部に搭載されていた対空機銃でミサイルを撃ち落としていき、ガトリングの弾丸をその堅牢な装甲で受け止め続ける。

だが、左手のビーム砲を最大出力で発射されたことにより、その装甲を貫かれ、機能停止に追い込まれる。

「ぐ、ぐううう!!」

 

ブーン

ライフ4000→1500

 

「く…だが、《鋼の歯車毒蛇》の効果発動。このカードが戦闘で破壊されたとき、互いのフィールド上に存在するすべてのカードを破壊する!」

AIの最後の命令により、搭載された球体型の自爆装置が大爆発する。

爆風に飲み込まれた《AI's Payment》が消滅するが、《魔装騎士ペイルライダー・ムーンレイス》は周囲に展開された薄黄色のバリアによって防がれてしまう。

「だが、《シルバームーン・アーマー》の効果で《ペイルライダー》は次の俺のターンのスタンバイフェイズまで破壊されない!」

 

鋼の歯車毒蛇(メタルギア・バシリスク)

レベル10 攻撃3600 守備3500 融合 地属性 機械族

レベル5以上の「メタルギア」モンスター+「メタルギア」モンスター×2

このカードは「鋼の歯車融合」の効果でのみ特殊召喚できる。

(1):このカードはカード効果では破壊・除外されない。

(2):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊したときに発動できる。そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。

(3):このカードが戦闘で破壊され墓地へ送られたときに発動する。フィールド上に存在するすべてのカードを破壊する。

 

「く…!!」

攻撃完了と同時に、翔太の頭に激痛が走る。

「翔太!?」

「大丈夫だ、零羅…。翔太は記憶を取り戻そうとしてるんだ…」

「記憶…」

零羅や月影は翔太が記憶を取り戻す方法を遊矢から口できいただけで、実際の光景を見たことがない。

実際、翔太が感じている痛みは1分間に3回後頭部をハンマーで殴られるのと同じくらいのもので、その痛みに苦しむ彼を見たら、事情を知っていたとしても心配してしまうのは仕方のないことだ。

(ねえ、これどうやって遊ぶの?)

だが、今回の翔太は何も光景が浮かばない。

2人の声が聞こえるだけだ。

幼い少年が誰かに何かの遊ぶ道具の使い方を教えてもらえるようせがんでいるように聞こえる。

(これはデュエルだ。モンスターを召喚したり、魔法や罠カードで相手をあっと言わせることもできる)

その少年と話す人物の声ははっきりと聞き覚えがある。

ランサーズに正式に入る前に戦った、石倉純也のCPUの声と同じだ。

(教えてやるよ。少し難しいかもしれないが、やってみたら面白いぞ?)

(うん!)

頭痛が消え、同時に脳裏で聞こえた2人の声も消えていく。

「(どういうことだ…?両親が目の前で死んだことと言い、ガキの声といい、一体それが俺と何の関係があるってんだ!?)俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

 

ブーン

手札3

ライフ1500

場 なし

 

翔太

手札5→2

ライフ400

場 魔装騎士ペイルライダー・ムーンレイス(《PCM-シルバームーン・アーマー》の影響下 ORU1) ランク7 攻撃2500

  伏せカード2

 

「よし…!《鋼の歯車毒蛇》を倒した。これならば、翔太殿は…」

「ふっ、まさかたった1体のモンスターで俺のモンスターを全滅させるとはな、だが、そこまでだ。俺のターン」

 

ブーン

手札3→4

 

「俺の墓地に存在する《鋼の歯車融合》の効果を発動。墓地のメタルギア融合モンスター1体をエクストラデッキに戻すことで、このカードを手札に戻すことができる。更に、俺は手札から《鋼の歯車歩兵》を召喚」

 

鋼の歯車歩兵 レベル2 攻撃500

 

「このカードの召喚に成功したとき、俺のフィールド上にエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターが存在しないとき、デッキからレベル4以下のメタルギアを特殊召喚できる。俺はデッキから《鋼の歯車狼》を特殊召喚」

 

鋼の歯車狼 レベル2 攻撃400

 

「更に、手札から魔法カード《機械複製術》を発動。俺のフィールド上に存在する攻撃力500以下の機械族モンスター1体と同じ名前のモンスターをデッキから特殊召喚する。俺は《鋼の歯車狼》を更に2体特殊召喚する」

 

鋼の歯車狼×2 レベル2 守備400

 

「ちっ…融合カードを確保して、あっという間に素材をフィールドにそろえやがった…!」

《魔装騎士ペイルライダー・ムーンレイス》は《PCM-シルバームーン・アーマー》の効果で破壊耐性を得ているものの、戦闘ダメージは免れることができない。

攻撃力2500では、すぐにそれを上回る攻撃力をモンスターを出されてしまう可能性が高い。

「まだだ。更に俺は手札から永続魔法《鋼の歯車工場》を発動。このカードの発動時、俺の墓地に存在するレベル4以下のメタルギア1体を特殊召喚できる。俺は墓地から《鋼の歯車騎兵》を復活させる」

 

鋼の歯車騎兵 レベル3 守備1000

 

「そして、手札から魔法カード《鋼の歯車融合》を発動!俺が融合素材とするのは…」

(待て、ブーン…)

耳についている通信機から声が聞こえたブーンは宣言を中断する。

「なんだ?お楽しみの最中だというのに…」

翔太たちには聞こえないよう、小さい声でブーンは通信相手と話をする。

(必要なものは手に入った。もはや、ロジェとシンクロ次元に用はない。ジェルマンは次の作戦段階へ進む)

「次の作戦だと?プロフェッサーが?」

(そうだ。お前たちの潜入任務は終了ということになる。いいな?)

「…了解。俺は《鋼の歯車歩兵》と《鋼の歯車狼》2体を融合。大地を走る兵器よ、敵を斬り刻む狼よ、任務を遂行する感情無き兵士よ、歯車を絡ませ、任務遂行の標となれ。融合召喚!現れろ、レベル8!《鋼の歯車RAY》!」

 

鋼の歯車RAY レベル8 攻撃2300

 

「このカードはフィールド上に存在するすべてのモンスターに1回ずつ攻撃することができるだけでなく、このカードよりも攻撃力の高いモンスターと戦闘を行う場合、ダメージ計算時のみ攻撃力を1000アップさせる」

「何!?」

攻撃力の低い融合モンスターの召喚を不審に思ったが、ふたを開けてみれば案の定、条件付きで攻撃力3300の全体攻撃が可能な化け物だった。

ライフがわずか400しかない翔太にとって、これは絶体絶命の状況だ。

「《鋼の歯車工場》の効果で、このカードの上にメタルギアカウンターを1つ乗せる。バトルだ!《鋼の歯車RAY》で《ペイルライダー》を攻撃!ファイア!!」

敵が単体であり、面を制圧する攻撃は不要と判断した《鋼の歯車RAY》が口部を展開し、高圧水流を発射する。

「罠発動!《魔装狂宴》。俺のフィールド上に魔装モンスターが存在し、俺がダメージを受けるとき、墓地から攻撃力2000以下の魔装モンスター1体を特殊召喚する。俺は墓地から《魔装妖ビャッコ》を特殊召喚する」

黄色い光のバリアで高圧水流のカッターをしのいだ《魔装騎士ペイルライダー・ムーンレイス》。

一方翔太はビャッコ召喚と同時に出現した目の前に波紋が発生したかのようなバリアが発生してそれを受け止める。

「そして、この効果で特殊召喚したモンスターの攻撃力以下のダメージをターン終了時まで無効にする」

「キュイ!」

 

魔装妖ビャッコ レベル3 守備400

 

「だが、《RAY》は相手フィールド上に存在するすべてのモンスターに1回ずつ攻撃できる。その雑魚を薙ぎ払え!」

自分の攻撃の邪魔をしたビャッコに向けて、再び《鋼の歯車RAY》が高圧水流を発射する。

攻撃が着てびっくりしたビャッコはランドセルから葉っぱを出し、それを頭にのせると同時に煙のように姿を消してしまった。

「まだ俺のターンは終わっていない。手札から魔法カード《対峙する鋼の歯車》を発動。俺のフィールド上に存在するメタルギア融合モンスター1体の攻撃力の半分の数値分のダメージを与える」

《鋼の歯車RAY》から脚部ミサイルが発射され、翔太を襲う。

「罠発動《ダッジ・ロール》!1度だけ俺が受けるダメージを0にする!」

翔太を今度こそ仕留めようと発車されたミサイルが透明なドーム状のバリアで弾かれる。

「(防がれたか…だが、《対峙する鋼の歯車》は墓地に存在することで真価を発揮する。このカードが墓地に存在し、自分フィールド上に存在するモンスターがメタルギアモンスター1体のみの場合、墓地に存在する鋼の歯車モンスター1体を召喚条件を無視して特殊召喚し、そのモンスターの攻撃力を俺のフィールド上のメタルギアモンスター1体に加えることができる。より盤石な布陣だ。だが…もう勝ち負けの意味はないがな)俺はこれで、ターンエンド」

 

ブーン

手札4→0

ライフ1500

場 鋼の歯車RAY レベル8 攻撃2300

  鋼の歯車工場(メタルギアカウンター1)(永続魔法)

 

翔太

手札2

ライフ400

場 魔装騎士ペイルライダー・ムーンレイス(《PCM-シルバームーン・アーマー》の影響下 ORU1) ランク7 攻撃2500

 

対峙する鋼の歯車(メタルギア)

通常魔法カード

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に存在する「メタルギア」融合モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターの攻撃力の半分の数値分のダメージを相手に与える。

(2):自分フィールド上に存在するモンスターが「メタルギア」融合モンスター1体のみの場合、墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。墓地に存在する「メタルギア」モンスター1体を相手フィールド上に召喚条件を無視して、表側守備表示で特殊召喚する。その後、自分フィールド上に存在する「メタルギア」融合モンスター1体の攻撃力は特殊召喚したモンスターの元々の攻撃力分アップする。この効果はこのカードが墓地へ送られたターン、発動できない。

 

「俺のターン!このターンのスタンバイフェイズ時に、《シルバームーン・アーマー》の効果は消える」

《魔装騎士ペイルライダー・ムーンレイス》を進んでいた黄色いバリアが消えていく。

消えていくバリアは絶体絶命な翔太自身を象徴しているかのようだった。

 

翔太

手札2→3

 

「俺は手札から魔法カード《魔装門》を発動!相手フィールド上に《魔装トークン》2体を特殊召喚し、デッキから魔装と名の付くカード1枚を手札に加える。俺はデッキから《魔装融合》を手札に加える!」

 

魔装トークン×2 レベル6 攻撃2000

 

「更に、俺は手札から魔法カード《魔装融合》を発動!フィールド上の《ムーンレイス》、墓地の《ビャッコ》、手札の《魔装亀テンセキ》で融合!月の力宿りし第4の騎士よ、可憐なる妖狐よ、万年の知識を持つ亀よ、魔導の力によりて、今1つとならん。融合召喚!真紅の騎士、《魔装騎士レッドライダー》!!」

 

魔装騎士レッドライダー レベル8 攻撃3000

 

「《レッドライダー》は俺のターンにモンスターの特殊召喚に成功した場合、そのターンのバトルフェイズ時のみ攻撃力を1000ポイントアップさせることができる」

大剣に刻まれた五芒星が輝き、炎が宿ると、《魔装騎士レッドライダー》は自慢げにその剣を振るう。

「ふっ…任務完了だ」

「バトルだ!《レッドライダー》で魔装トークンを攻撃!必殺真剣!」

炎が宿った大剣を振り回した《魔装騎士レッドライダー》はそれで《魔装トークン》を真っ二つに切り裂く。

切り裂かれたと同時に爆炎がブーンを襲う。

「ふん…次で勝負だ」

そう言い残したブーンは炎の中で姿を消していった。

 

ブーン

ライフ1500→0

 

「翔太君!!」

ブーンが消えたと同時に、伊織が地下鉄駅に到着し、デュエルを終えたばかりの翔太に駆け寄る。

「ああ、伊織か…」

「ああじゃないよ!?一体どうしたの?急に柚子ちゃんの反応が消えちゃったし、それに通信も使えなくなって、必死に探したんだよ??」

「ああ、ああわかってる分かってる。それよりも、バッドニュースだ…。あのバカ、治安維持局にさらわれやがった…」

「ええー!?」

伊織が驚く中、ブーンが消えたことで妨害電波の干渉を受けなくなった翔太のデュエルディスクの通信機能が動き出す。

またも非通知で、だれの電話かわからない。

ゆっくりと通信機能を起動する。

「もしもし」

(翔太さん、エリクです)

「てめえ…今頃になってまた連絡か?」

(今はこちらからの操作で、あなたにしか聞こえないようにしています。伊織さんについて話したいことがあります。どうか、ここまで来てください。あなたに…すべてをお話しします)

「おい…どの面下げてそんな話を…おい、待て!!」

一方的に電話をされ、一方的に切られたことに腹を立てながら、翔太はデュエルディスクに表示された座標を見る。

そこは旧不動区の中心地にある旧第2モーメント研究所、モハメドからの情報が正しければ、そこはチームオーファンのアジトだ。

(あいつ…まさか…)

これが意味することを察した翔太は拳を握りしめる。

「翔太君…?」

「伊織、チームブレイドのリーダー、エリクの正体は…チームオーファンのリーダーだ」



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第82話 突入

「…じゃあ、セレナちゃんはアカデミアに、そして柚子ちゃんは…」

「治安維持局に、だ。あのドMめ…」

ブーンの妨害があったとはいえ、柚子を連れ去るのを見ていることしかできなかったことを悔やむ翔太。

零羅もセレナを救えなかったことで意気消沈しており、遊矢も沈黙する。

バラバラバラバラ…。

「ヘリコプター…?」

大きなプロペラ音と共にこの一帯に強風が発生する。

真上から照明の光が降り注ぎ、急にまぶしくなったことで翔太たちは腕で目を守る。

ヘリコプターの横側にはヴァプラ隊のエンブレムが刻まれている。

(こちらハイヤー!こちらハイヤー!ランサーズを発見!これより、彼らを回収します!)

翔太たちの姿をヘリのコックピットにあるレーダーから見たハイヤーがゆっくりと降下する。

地下鉄の天井が崩壊したことで、皮肉にもヘリで翔太たちを探していたヴァプラ隊に見つけてもらいやすくなった。

ブーンとのデュエルに集中していたため、気づいていなかったが、空は既に元の夜空へと戻っていた。

 

「…つまり、チームオーファンは治安維持局と手を組んだ。ってことだな?」

「そうなるかな。治安維持局のロボットとチームオーファンのロボットはどちらも同じ形で同じシステム。そんなことができる理由は1つしか思いつかない」

ヘリから降りてきたハイヤーと翔太が情報を交換する。

現在、ヴァプラ隊は半分をスタンダード次元に残し、もう半分をこのシンクロ次元へ派遣している。

シンクロ次元で行方不明となっていたとある人物と連絡がつながり、ランサーズの現在の状況を鑑みた結果、このような大規模な派兵を決めたとのこと。

地下の収容所に閉じ込められたランサーズの面々の救出、及び治安維持局とオベリスクフォースの掃討を行っている。

「けど、どちらに転ぶかわからないのが今の状況だな。戦力は五分五分。どっちに転んでもおかしくないし、仮に捕まった柚子ちゃんを人質にされたら…」

「…ロジェは、柚子を手土産にアカデミアと交渉するつもりだ」

今まで黙り続けていた遊矢が口を開く。

確実にそうするという感じで言っていたことに翔太は違和感を持つ。

「遊矢、なんであの野郎がそうすると思った?」

「ロジェが言ってた。柚子とセレナはアカデミアが行っているアークエリアプロジェクトっていう計画の重要なカギ。2人を交渉材料にして、シンクロ次元への侵攻を辞めさせるって…」

「セレナが捕まったことを考えると、交渉材料になるのは柚子1人。ま…妥当だな」

スタンダード次元でセレナが言っていたことが正しければ、柚子そっくりの少女が4人そろわなければ、そのアークエリアプロジェクトという計画は破たんする。

1人だけでも手元に確保していれば、充分アカデミアと交渉することができる。

そして、シンクロ次元をロジェにとっての理想郷にすることができる。

「まずいな…。となると、なおさら彼女を助けに行かないと。でも…」

おそらく、ロジェは最終防衛ラインとしてあのセルゲイを置いていると思われる。

翔太が一度倒したものの、このように五体満足で再び姿を現したこと、そしてサイボーグであり、デュエリスト・クラッシャーという異名を手にするほどの実力があると考えると、倒すにはかなりの数が必要となる。

しかし、今の状況ではヴァプラ隊から人員を割く余裕がない。

零児とヒイロは評議会に迫るセキュリティへの対応で手いっぱいだ。

潜入が得意な月影もゲイツの攻撃で負傷している。

「とにかく、まずは君たちを翔太君たち別動部隊のアジトへ連れて…」

「…」

遊矢はマシンレッドクラウンを実体化させ、ヘルメットをつけてそれに乗る。

「遊矢殿…?」

「遊矢君、何を!?」

「…治安維持局へ行って、柚子を助け出す」

「1人で…やるつもりかよ」

翔太の言葉に遊矢は黙って首を縦に振る。

ゴーグルに隠れて見えないが、遊矢から放たれるプレッシャーが今の遊矢の決意を翔太たちに教えている。

「無茶だ!街中にはアカデミアやセキュリティ、ロボットでいっぱいなんだぞ!行くにしても、せめて僕たちと一緒に近くまで…」

ハイヤーの言葉を聞かないまま、遊矢はマシンレッドクラウンを発進させる。

いきなりアクセルを全開にし、全速力で治安維持局に向けて走り去っていった。

「遊矢君!!翔太君、早く追いかけ…」

「馬鹿の相手は馬鹿にしか務まらないってことか…」

「え?」

翔太はうずくまったままの零羅をつかみ、ヘリに乗り込む。

そして、座席に座ると月影に肩を貸しているハイヤーに目を向ける。

「なぁ、頼みがあるんだが…」

 

「う、う、うう…」

コース上に横たわっていたクロウがゆっくりと目を覚ます。

ヘルメットのバイザーには大きなひびが入っていて、額からは血が流れ、左目が赤く染まっている。

コース上であれば、さすがの大会の運営委員も進行に支障をきたすということから、自分を医務室か地下収容所まで運ぶだろうと踏んでいたのだが、何か異常があったせいか、自分が倒れている場所もブラックバードが倒れている場所にも変化はない。

「一体、どうなってやがる…うう!!」

左腕の関節から激痛を感じ、やむなく右腕で体を起こし、コースの壁にもたれる。

「脱臼か…ギャングで暴れてた時以来だぜ…くぅ!!」

右手を使い、強引に外れた関節を元に戻す。

本来であれば、脱臼は医者の治療を受けたうえで、1年近く安静させなければならないが、コモンズには医者が少なく、いたとしてもヤブ医者かモグリの場合が多いうえに、幸運にも免許持ちの医者を見つけたとしても、そういう人間はたいていトップスの住民の治療に集中しており、コモンズ出身者には見向きもしない。

だから、本来なら病院で治すべきこういう怪我も自力で治さなければならない。

「はあはあ、よ…し…」

左腕をゆっくりと動かし、大丈夫だろうと自己判断したクロウはゆっくりとブラックバードのもとへ向かう。

倒れたそれを起こし、エンジンを起動させる。

「まだまだ動きそうじゃねーか…ブラックバード…。まだ左腕に痛みがあるし、左目も真っ赤だけど、贅沢は言ってられないぜ」

まずはいまどのような状況になっているのかの情報をつかむため、クロウはブラックバードをスタジアムへ向けて走らせる。

 

「ハアハアハア、里香、生きとるんかー…?」

「当然、や…。あんなデクの棒に負けるウチや…ハァ、あらへん…」

「兄ちゃんたち、これ…!」

体力の限界により、後方に下がった漁介と里香にタナーがおにぎりが入ったタッパーを差し出す。

現在、アジトはコモンズやトップスでデュエルのできない、もしくはオベリスクフォースやディアボロと戦えないデュエリスト達の避難場所となっており、避難してきた人々の中にはタナーのように手伝いをする人もいる。

タナーとは別に、フランクとアマンダも水や食料を戻ってきた、もしくはこれから前線に出るメンバーに渡したり、おにぎりやサンドイッチを作ったりしている。

コモンズという環境の都合で、おにぎりやサンドイッチにあまりお目にかかっていない彼らにとっては慣れない仕事だが、それでも、自分たちを守ってくれるシェイドやヴァプラ隊、ランサーズのために必死に働いている。

(鬼柳、ジョンソン!前に出てくれ!)

「はあ…もう出動か。行くぜ、ジョンソン」

「ああ…やってくれ」

ジャンク屋から買い取ったセキュリティの廃棄処分されたDホイールを修復したものに乗った鬼柳はサイドカーにジョンソンを乗せて、再び前線へと出ていく。

これで、あの2人が出動するのは3回目。

後何回、行って戻ってを繰り返せばこの戦いは終わるのか、と思いながら、漁介と里香は受け取ったおにぎりを口にした。

 

「《古代の機械参頭猟犬》で3回目の攻撃だ!」

魔法カードの効果により、攻撃力を半分にして直接スティーラーの懐に飛び込んできた、3つの頭を持ち、中央部分に歯車がついた青い機械に食らいつかれる。

「ぐうう…!!」

 

スティーラー

ライフ1200→300

 

「ハハハハ!そうだそうだ。プロフェッサーと我々に歯向かうものはこうなるのだ!」

「おとなしくカードになるんだな、ザコめが!」

攻撃が終わり、自身のフィールドに戻ってきた《古代の機械参頭猟犬》を撫でつつ、フラフラになりながら起き上がったスティーラーをすでに勝ったかのように見下す。

「これで私はターンエンド!」

 

オベリスクフォースA

手札2

ライフ2000

場 古代の機械参頭猟犬 レベル7 攻撃1800

  古代の機械猟犬×2 レベル3 攻撃1000

 

オベリスクフォースB

手札1

ライフ3000

場 古代の機械参頭猟犬 レベル7 攻撃1800

 

スティーラー

手札3

ライフ300

場 スカブ・スカーナイト レベル4 攻撃0

 

古代の機械参頭猟犬(アニメオリカ)

レベル7 攻撃1800 守備1000 融合 地属性 機械族

「古代の機械猟犬」+「古代の機械猟犬」+「古代の機械猟犬」または「古代の機械猟犬」+「古代の機械双頭猟犬」

(1):このカードは1度のバトルフェイズ中に3回までモンスターに攻撃できる。

(2):このカードが攻撃する場合のダメージステップ終了時まで、相手は魔法・罠カードを発動できない。

 

「はあ、はあ…やはり、実戦というのは辛いものだ。ガーダーやラインマン達はすごいな」

ゆっくりとカードをドローしつつ、スティーラーは前線で戦うことの多い彼らのすごさを改めて実感する。

 

スティーラー

手札3→4

 

病気を経験したこともあり、体力が低いスティーラーは主に後方でヴァプラ隊やランサーズの候補生の強化に努めていた。

今回の出撃では、彼は必ずしも出撃する必要はなかったものの、自分よりも年齢の低い少年少女たちばかりに戦わせるのは忍びないと懇願し、こうして出撃を許可してもらった。

この2人と戦う前までに既にオベリスクフォースは3人、ディアボロは4機撃破している。

しかし、実質休憩なしで何度もデュエルを繰り広げることになって集中力や体力が消耗しきっている。

事実として、前のターンに《スピリットバリア》が破壊された際にもカウンター罠で迎撃する準備が整っていたにもかかわらず、疲労で体が動かなかったせいで間に合わなかった。

(どうやら…覚悟を決めなければならないらしい…)

ドローした《サンダー・ブレイク》と手札のあるカードを見たスティーラーはフッと笑いながらつぶやく。

そして、自分の魂の象徴である《スカブ・スカーナイト》のもう1つの姿、さびてボロボロになった鎧と楯、そして刃がついた籠手を左右に装備したローマ時代の剣闘士の姿を目に浮かべる。

(《スカブ・スカーナイト》…お前は破壊されたとき、その姿を《クライング・スカーナイト》に変える。今の体力だと、このターンが僕が自由にできるラストターンらしい…。だったら、奴らを道連れにする…)

《クライング・スカーナイト》は戦闘を行う相手モンスターと同じ攻撃力となり、更に戦闘では破壊されない効果を持つ。

しかし、スティーラーが狙っている効果はそれではなく、自爆効果だ。

「(このカード自身をリリースすることで、フィールド上のすべてのモンスターを破壊し、破壊したモンスターの数×500のダメージを全員が受ける…。これで、少なくとも彼ら2人を道連れにできる。まぁ…絶望の中で死ぬよりははるかに建設的…だ)私はカードを1枚伏せて、ターンエンド」

 

オベリスクフォースA

手札2

ライフ2000

場 古代の機械参頭猟犬 レベル7 攻撃1800

  古代の機械猟犬×2 レベル3 攻撃1000

 

オベリスクフォースB

手札1

ライフ3000

場 古代の機械参頭猟犬 レベル7 攻撃1800

 

スティーラー

手札4→2

ライフ300

場 スカブ・スカーナイト レベル4 攻撃0

  伏せカード1

 

クライング・スカーナイト(アニメオリカ・調整)

レベル1 攻撃0 守備0 効果 闇属性 戦士族

「クライング・スカーナイト」の(3)の効果はデュエル中1度しか発動できない。

このカードは通常召喚できない。

自分フィールド上に存在する「スカブ・スカーナイト」が破壊されたとき、このカードは手札から特殊召喚できる。

(1):このカードは戦闘で破壊されない。

(2):このカードが相手モンスターと戦闘を行うダメージ計算開始時に発動する。ダメージ計算終了時までこのカードの元々の攻撃力はそのモンスターの攻撃力と同じになる。

(3):自分または相手ターンのメインフェイズ時に、このカードをリリースすることで発動できる。フィールド上のモンスターをすべて破壊する。その後、破壊したモンスターの数×500のダメージを互いに受ける。

 

「へっ…使える手はそれだけか!このままカードになるがいい!私の…」

(カードになるのは…君たちも、かもね)

彼がドローした瞬間、発動しようとスティーラーはゆっくりとデュエルディスクのパネルに手を伸ばす。

「おいおい、スティーラー!あきらめるの速すぎだぜ!」

突如、スティーラーとオベリスクフォース達に割って入ったガーダーがカードを引く。

 

ガーダー

手札5→6

ライフ4000→2000

 

「ガーダー…」

「悪いなぁ、自爆の覚悟を台無しにしちまって。ま、そんな覚悟はまだいらねーけどな!俺は手札から《おとぼけオポッサム》を召喚!」

 

おとぼけオポッサム レベル2 攻撃800

 

「このカードは相手フィールド上にこいつよりも攻撃力の高いモンスターが存在するとき、自爆することができる!そして、俺のフィールド上に存在する獣族モンスターが破壊されたとき、ライフを1000支払うことで、このカードは手札・墓地から特殊召喚できる!《森の番人グリーン・バブーン》を特殊召喚!」

 

森の番人グリーン・バブーン レベル7 攻撃2600

 

ガーダー

ライフ2000→1000

 

 

「バトルだ。《シンクロ・ストライク》の効果で攻撃力がアップした《マリンフォース・ドラゴン》で《古代の機械参頭猟犬》を攻撃。マリン・ブラスト!」

(ハアアアアア!!)

《マリンフォース・ドラゴン》の口から放たれるドリルのような水に貫かれた《古代の機械参頭猟犬》が爆発し、オベリスクフォースが水で流されてしまう。

「ギャアアア!!」

 

オベリスクフォース

ライフ3000→0

 

「バトルだ。私は《DDD疾風大王エグゼクティブ・アレクサンダー》で《古代の機械巨人》を攻撃!」

鎧についている青い球体の数が増し、更にマントが蝶の羽のような形に変わった《DDD疾風王アレクサンダー》が仲間のDDDモンスターたちから力を受け、剣を一振りする。

すると巨大な竜巻が発生し、それに飲み込まれた《古代の機械巨人》がバラバラに粉砕されていく。

「うおおおおお!!」

 

セキュリティ

ライフ2800→0

 

「ひと段落…と言ったところか」

デュエルディスクを収納したヒイロはデュエルの状況をリセットする。

零児も同じようにしつつ、眼鏡を直して今の状況を分析する。

(あのセキュリティ…オベリスクフォースを狙わず、私とヒイロを狙った…。あのロジェとアカデミアが結託したのか、それとも…)

(零児、聞こえるか零児!?)

「遊矢か…?」

級にデュエルディスクに遊矢から通信が入り、零児は彼に返事をする。

「なぜ、私の番号がわかった?」

(前に零羅から教えてもらったんだ。零児、柚子が…ロジェに捕まった。それから、セレナはアカデミアに…)

「何…?」

(ごめん…。だから、せめて柚子だけでも助けに行く。零児はほかのみんなとシンクロ次元の人たちを守ってくれ!)

「待て遊矢!まさか…1人で治安維持局へ…おい、待て!!」

遊矢との通信が切れ、オベリスクフォースかセキュリティかどちらかわからないものの、数人の足音が聞こえてくる。

静寂の束の間、また評議会は戦場となる。

途中、合流した行議会の職員もデュエルに加わったものの、既に全滅している。

5人の評議員は相変わらずその場を動かず、零児たちを傍観している。

「ヒイロ。あなたは治安維持局へ向かってくれ」

「ああ…。だが、1人で押さえきれるか?」

足音から判断すると、これからやってくる人数は10人。

これから10VS1のデュエルをすることになる。

「この程度のデュエリスト、束になってかかってきても、私にとっては同じことだ」

「いいだろう。言った以上、行動してもらう」

ヒイロはデュエルディスクにあるボタンを押すと、屋外に仕掛けられていたC4が爆発し、天井が崩れる。

そして、グラップリングフックを使ってその穴から屋外へと飛び出していった。

爆風の中、出ていくヒイロを見送った零児は即座に入ってきた10人のセキュリティに目を向ける。

「ロジェの人形…貴様らが私に勝てる確率は…零だ!」

 

「んだよ…これ…」

スタジアムにたどり着いたクロウの目が大きく開いている。

あれほどの盛況だったスタジアムの中には人っ子1人おらず、風で飛んできた会場のペットボトルや菓子袋といったゴミが飛んできている。

放置されているのはごみだけでなく、上着やカバン、デュエルディスクなどもあり、何か大きな事件が起こって避難したのかと予想する、というよりはそうあってほしいと願望している。

スタジアムの中央にいる銀色のロングヘアーで白い制服を着た男性が選手入場門から姿を現す。

「おや…まだ1人残っていたのか」

「何者だよ、てめえ」

「名を名乗るほどの男じゃないさ。少なくとも、この腐りきった次元の人間に対しては…ね」

そういいながら、男はクロウに向けて3枚のカードを投げつける。

カードにはメリッサと2人の敗者を連行し続けてきた職員の姿が描かれていた。

「こ、こいつは…!?」

「会場にいる人間は1人残らずこうさせてもらったよ。安心したまえ、彼らはこの次元よりもより良い世界へ連れて行ったやる。俺たち…アカデミアがね」

「てめえがアカデミア…。遊矢が言っていた侵略者か!?」

ブラックバードから飛び降りたクロウはデュエルディスクを展開する。

「侵略者…。こんな次元に侵略価値なんてないさ。そうだな、このまま焼け野原にしてもかまわないな」

「てめえ!!」

トップスに対してならともかく、シンクロ次元すべてを見下す彼の言動を許せず、怒気のこもった声を出す。

「ふ…どうせもう任務は終わりなんだ。最後は気味で楽しませてもらおうか」

柔らかな笑みを浮かべ、男もデュエルディスクを展開する。

(なんだ…?こいつ!?)

「さあ…始めようか。君の人生最後のデュエルを…」

 

「よーし、もうすぐだ!本当にいいのかい!?翔太君!!」

「ああ、高さも…グゥ、充分だ!」

ヘリのドアを開け、襲い掛かる強い風に耐えながら、翔太は地表を見下ろす。

そこは旧不動区の上空で、中心となっている旧第2モーメント研究所はスタジアム以上の大きさであり、そこから湯水のごとくディアボロが出撃していく。

翔太の背にはパラシュートが装備されている。

「伊織はアジトへ戻ってろ」

「ううん、私も行く!」

「お前…」

「翔太君1人だけで本拠地に突入するなんて無茶だし、放っておけないもん!」

「お前じゃ足手まといだ、帰れ!」

「やだ!足手まといじゃないってこと、TDCで証明したし!」

TDCのことを言われると、翔太も口を閉ざしてしまう。

たまにミスがあったりしたものの、それでも準決勝進出まで行くことができ、彼女がいなければ負けていたと思える場面もある。

足手まといとは言うものの、本心では彼女を巻き込みたくないと思っているだけだ。

「駄目って言っても、くっついてついてきちゃうから」

「ったく…勝手にしろ!俺から離れるなよ」

「うん!」

そういうと、すぐに伊織は翔太の前へ向かい、彼に抱き着いた。

「お、お前!?パラシュートまだあるだろ!?」

「だって、このパラシュートは2人でも大丈夫なものでしょ?しっかり翔太君が支えてくれるから、問題なし!」

「ちっ…キャバルリーを持ってくればよかった…」

マシンキャバルリーにパラシュートを装備して降下すれば、こういうことにはならなかったが、今乗っているヘリコプターにマシンキャバルリーを乗せるのは無理だった。

けが人である月影と子供の零羅を乗せる必要があり、おけるスペースもない。

「翔太君、大丈夫かい!?パラシュートでの降下、やったことないだろ!?」

「使い方は説明してもらったからわかっている!あとはその場で対応する!」

「ったく、知らないぞ!!」

「翔太殿、伊織殿、ご武運を!」

「よし…行くぞ!!」

伊織を抱きしめた翔太はヘリコプターから飛び降りる。

彼女はいつでもパラシュートが開けるようにグリップをグリップをつかんだ。

2人分の重さになっており、落下速度は1人で降下している時よりも早いが、効果自体がはじめてな翔太にはそんなことは分からない。

「ぐうう、うう…!!」

左腕のデュエルディスクに現在の高度が表示される。

「ぐうう…伊織、俺が今だ、と言ったら、すぐにグリップを引っ張れ!」

「う…うん!!」

ゴー、という激しい音と共に落ちていく感覚を始めて感じた伊織は下を見ないように、じっと空か翔太を見るようにする。

まだ飛び降りてから何秒もたっていないのに、伊織には十分以上たったかのように感じた。

 

「これで、お前は終わりだ」

「く…そぉ…!!」

体中が傷だらけになっているクロウはフラフラしながら男が召喚したモンスターを見る。

下半身が蛇のような様相となっていて、透き通った紫色の翼と2本の腕を持つ竜のみが彼のフィールドに存在する。

だが、そのモンスター1体のせいで、クロウの手札とフィールドは全滅してしまった。

「安心しろ。お前は新しい理想郷で新しい人生を歩むことができる。今までの苦痛と屈辱にまみれた人生を捨てて…」

「野郎…勝手に俺の人生を…評価してんじゃ、ねえぞ…!」

「さようならだ。シンクロ次元の誰かさん」

その竜の口から黒いビームが発射され、その光がクロウを焼き尽くしていく。

「うわあああああ!!(フランク…アマンダ…タナー…みんな、済まねえ…!)」

 

クロウ

ライフ2300→0

 

竜のリアルソリッドビジョンとビームが消えると、そこにはクロウの姿がなく、彼の姿が描かれたカードだけが残っていた。

そのカードを男は手にすると、デュエルディスクを起動し、青い光の中に姿を消す。

クロウを含めた、フレンドシップカップの観客やMC、職員全員の消息不明が明らかになったのは、これから3時間経過した後のことだった。



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第83話 絶対王者の心

「はああ!!」

治安維持局の中で、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》と《覚醒の魔導剣士》、《EMハンマーマンモ》が3人のセキュリティを吹き飛ばす。

遊矢の周囲には倒されたセキュリティの面々が横たわっているが、ロジェの人形となっているセキュリティは何も動揺を見せることなく、遊矢に襲い掛かる。

「どけよ…」

遊矢の口から彼の物ともユートのものとも思えない低い声が出る。

それを気にすることなく、セキュリティは《ゴヨウ・エンペラー》を融合召喚し、更に《ゴヨウ・キング》をシンクロ召喚する。

「どけ、と言ったはずだ。どかなければ、この力で貴様らを排除する!」

遊矢の体がファントムライトと同じ赤い召喚エネルギーの嵐に包まれ、ペンデュラムの色も赤く染まる。

そして、フィールド上の《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》と手札のモンスターを素材に《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》を融合召喚した。

 

「《ペイルライダー》、奴を消し飛ばせ!!」

旧不動区に着地し、拠点である研究所に入った翔太たちを出迎えたディアボロ達を《魔装騎士ペイルライダー》がマシンガンで薙ぎ払う。

この攻撃で3体のディアボロを撃破したものの、それでもまだ数えきれないほどのディアボロが研究所内にいて、侵入してきた翔太と伊織を倒そうと動き出す。

「ぐう…こんなに、敵がいるなんてー…」

「本拠地なんだ…数が多くて、当然だろ!?」

そういう翔太も、シェイドと全面戦争を開始している以上、ある程度ディアボロは出払っていると思っていた。

だが、大量生産のシステムがずっと前からすでにできていたかのように、数多くのディアボロが配備されており、こうしている間にも外にいるディアボロが中に入ってくる。

「翔太君!この階段を使えば…!」

「ああ…だったら、こいつらが邪魔だな!」

扉を守るように、2機のディアボロが立っている。

翔太と伊織はデュエルディスクの状況をリセットし、2機と対峙する。

 

ディアボロA&B

手札

A5

B5

ライフ4000

 

翔太&伊織

手札

翔太5

伊織5

ライフ4000

 

「私のターン…。私は手札から永続魔法《黒い旋風》を発動。そして、手札から《BF-蒼炎のシュラ》を召喚」

 

BF-蒼炎のシュラ レベル4 攻撃1800

 

「《黒い旋風》の効果発動。デッキから《蒼炎のシュラ》以下の攻撃力を持つBF、《BF-疾風のゲイル》を手札に加える。《疾風のゲイル》は自分フィールド上にBFが存在するとき、手札から特殊召喚できる」

 

BF-疾風のゲイル レベル3 攻撃1300(チューナー)

 

「更に、手札から《BF-残夜のクリス》を特殊召喚。このカードは自分フィールド上にBFが存在するとき、手札から特殊召喚できる」

 

BF-残夜のクリス レベル4 攻撃1900

 

「《BF-突風のオロシ》も同様の効果で特殊召喚」

 

BF-突風のオロシ レベル1 攻撃400(チューナー)

 

「こいつ…あのトゲトゲMデコのデッキをコピーしている…!」

「レベル4の《蒼炎のシュラ》にレベル3の《疾風のゲイル》をチューニング。レベル4の《残夜のクリス》にレベル1の《突風のオロシ》をチューニング」

直立した4体のモンスターが必要最低限の動きでシンクロ召喚の体勢に入る。

「うわ…まったくモンスターに動きがない…」

「やっぱり機械にはモンスターが動く面白さがわからないみたいだな」

「お…?あの翔太君が面白さについて話をするなんてー」

「んだよ…?」

面白そうに笑う伊織を不愉快に思ったのか、彼女に目を合わせないようにする。

「ダブルシンクロ召喚。《ABF-驟雨のライキリ》、《ABF-五月雨のソハヤ》」

やはり2体のシンクロモンスターも直立したまま天井に現れたチューニングリングから降りてくる。

クロウが召喚したときは雷雲が発生するなど、とても派手な演出が繰り広げられていたのを考えると、何かむなしいものがある。

 

ABF-驟雨のライキリ レベル7 攻撃2600(チューナー)

ABF-五月雨のソハヤ レベル5 守備2000(チューナー)

 

「更に、手札から《BF-砂塵のハルマッタン》を特殊召喚。このカードも《疾風のゲイル》と同じ効果で特殊召喚できる」

 

BF-砂塵のハルマッタン レベル2 攻撃800

 

「レベル2の《砂塵のハルマッタン》にレベル5の《五月雨のソハヤ》をチューニング。シンクロ召喚。《ABF-涙雨のチドリ》」

 

ABF-涙雨のチドリ レベル7 攻撃2600

 

「《涙雨のチドリ》は墓地のBFの数×300攻撃力がアップ」

 

ABF-涙雨のチドリ レベル7 攻撃2600→4400(チューナー)

 

「これで、ターンエンド」

 

ディアボロA&B

手札

A5→0

B5

ライフ4000

場 ABF-涙雨のチドリ レベル7 攻撃4400(チューナー)

  ABF-驟雨のライキリ レベル7 攻撃2600(チューナー)

  黒い旋風(永続魔法)

 

翔太&伊織

手札

翔太5

伊織5

ライフ4000

場 なし

 

「おいおい、劣化権現坂と同じパターンかよ…」

権現坂のデータを得たディアボロとデュエルをしたときのことを思い出す。

強力なモンスターを召喚しただけで、伏せカードもない。

《黒い旋風》以外に魔法・罠カードがなかったため、仕方がないかもしれないが、それでも何か本人たちとのデュエルよりも物足りなさを感じてしまう。

「ま…その方がやりやすいけど…な!俺のターン!」

 

翔太

手札5→6

 

「俺は手札の《魔装騎士ケントゥリア》の効果を発動。こいつは手札・墓地の魔装騎士1体を除外することで、手札・エクストラデッキから特殊召喚できる。俺は《ペイルライダー》を除外し、《ケントゥリア》を特殊召喚」

 

魔装騎士ケントゥリア レベル2 攻撃300(チューナー)

 

「更に俺はスケール4の《魔装斬鬼ロクベエ》とスケール8の《魔装鬼ストリゴイ》をペンデュラムスケールにセッティング。更に、《ロクベエ》のペンデュラム効果発動。このカードは俺のフィールド上に存在するモンスターが魔装騎士1体のみの場合、ペンデュラムゾーンから特殊召喚できる」

《魔装斬鬼ロクベエ》が自ら斬馬刀で青い光の柱を切り裂いて、フィールドへ飛び出してくる。

 

魔装斬鬼ロクベエ レベル4 攻撃1800

 

「そして、空いたペンデュラムゾーンにスケール4の《魔装弓士ロビン・フッド》をセッティング。そして、俺はペンデュラムゾーンに存在するレベル3の《ロビン・フッド》とレベル5の《ストリゴイ》にレベル2の《ケントゥリア》をチューニング!」

3体のモンスターが天井を突き破り、シンクロ召喚の体勢に入る。

そして、チューニングリングの中から現れた《魔装騎士ペイルライダー》の鎧にひびが入る。

「死者と生者を整理せし漆黒の力、今こそ惰生をむさぼりし魂を無へ落とせ!ペンデュラムシンクロ!現れろ、魂を無へ導く者、《魔装騎士HADES》!」

鎧が完全に砕け散り、その中から《魔装騎士HADES》が現れる。

「うわぁ、惰生をむさぼりし魂を無へ落とせって…すっごい物騒なセリフ…」

「放っておけ。遊矢の《オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン》よりはマシだ」

伊織と話しながら、翔太は自分の体の異常を確かめる。

初めてこのカードを召喚したときはとてつもない殺意によって暴走しかけたが、今回は何も影響がない。

 

魔装騎士HADES レベル10 攻撃3000

 

「《HADES》の効果発動!このカードがシンクロ召喚に成功したとき、フィールド上のカードを3枚まで破壊することができる!」

《魔装騎士HADES》が2本のナイフを2体のABFに向けて投げつける。

ナイフが刺さった瞬間、それがマグマに変化したそのモンスターを焼き尽くしていく。

自分の体が燃えているにもかかわらず、彼らは最後まで表情1つ変えず、動作することもなかった。

「《HADES》と《ロクベエ》でダイレクトアタック!」

《魔装騎士HADES》と《魔装斬鬼ロクベエ》が斬馬刀を手に、2機のディアボロを真っ二つに切り裂いた。

 

ディアボロA&B

ライフ4000→1000→0

 

2体の攻撃が余波によって、2機の背後のドアが砕け散る。

「翔太君!」

「ちっ…もうここまで…」

背後や左右からディアボロの集団がやってくる。

扉を壊してしまったことで、入った後で封鎖するというやり方が取れない。

「翔太君…ここは私が足止めする!だから…!」

「何言っている!?どれだけあのロボットがいるか…」

「だからこそ、だよ!!それに、翔太君が一番奥にいるチームオーファンのボスを倒せば勝ち!ここで2人一緒に戦い続けていたら、永遠に勝てないよ!」

伊織は翔太の背中を押し、扉の向こうまで飛ばす。

「おい!!」

「ちょっとくらい信頼してよ…。大丈夫だから」

そういいながら、翔太にニコリと笑顔を見せる。

なぜかその笑顔がいつも以上に魅力的に見えてしまい、一瞬翔太の心がドキリとする。

「ああ、分かったよ!!くたばるんじゃねえぞ!!」

翔太はそれだけ言い残すと、伊織に背を向けて走っていく。

「さーぁ、一騎当千のヒーローショーの始まりだよー!」

自分自身に喝を入れる用に、両頬を強くひっぱたいた後で、伊織はディアボロ達とデュエルを開始した。

 

「はあ、はあ、はあ…」

襲い掛かるセキュリティを次々と倒した遊矢は最上階に到着し、扉の前で膝をつく。

そして、腹部から再び生じ始めた痛みを耐えるため、薬を注射する。

「この先に…ロジェと…柚子が…」

ゆっくりと立ち上がった遊矢は扉を開けると、そこには赤い絨毯で床が覆われた大部屋に出て、その先にある大きな扉の前にジャックの姿があった。

「ジャック…」

「ふん。エキシビションマッチ以来だな、榊遊矢」

「まさか…ジャックがロジェのほうについていたなんて…」

驚きを見せる遊矢はゆっくりとデュエルディスクを展開する。

彼の目はオッドアイに変化している。

(マスター…すっかり変わっちゃったね。僕を拾ってくれた時のマスターじゃなくなっちゃってる…)

遊矢のそばにナディが現れ、悲しそうな眼でジャックを見つめる。

「キングは勝つ戦いしかしない。勝たなければ、存在価値は認められない」

「そんな言葉でごまかすな、ジャック」

「ごまかす…だと?」

「ああ、そうだ。ジャック!あんたは自分で自分に嘘をついてる!」

遊矢の言葉に若干動揺を見せるジャックだが、すぐに表情を元に戻す。

自分が嘘をついていると面と向いて言った対戦相手は遊矢が初めてだった。

「ジャック…感じるんだ。あんたの心の中にある悲しみ…いや、諦めが…。何があんたにそんな感情を…」

「敵にそのようなことをべらべらと話すと思うか?」

ジャックもデュエルディスクを展開し、背後にあるドアのそばにあるリモコンとデュエルディスクを無線接続する。

「これで、俺を倒さない限り、ここから先へ行くことはできない」

「ジャック…」

「デュエルで知ってもらうぞ。お前の言う笑顔の限界を…」

「ジャック、俺が解放する…。あなたを、その牢獄から!!それを望んでいる俺の仲間のために!」

「「デュエル!!」」

 

ジャック

手札5

ライフ4000

 

遊矢

手札5

ライフ4000

 

「俺の先攻だ。俺は手札から《レッド・リゾネーター》を召喚」

 

レッド・リゾネーター レベル2 攻撃600(チューナー)

 

「このカードの召喚に成功したとき、手札からレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚できる。俺は手札から《レッド・スプリンター》を特殊召喚する」

 

レッド・スプリンター レベル4 攻撃1700

 

「レベル4の《レッド・スプリンター》にレベル2の《レッド・リゾネーター》をチューニング!赤き魂、ここに1つとなる。王者の雄叫びに震撼せよ!シンクロ召喚!現れろ、《レッド・ワイバーン》!」

 

レッド・ワイバーン レベル6 攻撃2400

 

「俺はカードを3枚伏せ、ターンエンド!」

 

ジャック

手札5→0

ライフ4000

場 レッド・ワイバーン レベル6 攻撃2400

  伏せカード3

 

遊矢

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「俺のターン!」

 

遊矢

手札5→6

 

「俺はスケール1の《竜脈の魔術師》とスケール8の《時読みの魔術師》でペンデュラムスケールをセッティング!そして、《竜脈の魔術師》のペンデュラム効果発動!もう片方のペンデュラムゾーンに存在するカードが魔術師の場合、手札のペンデュラムカード1枚を墓地へ送ることで、フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を破壊できる!俺が破壊するのは、《レッド・ワイバーン》!ドラゴニック・ストリーム!!」

手札の《EMオッドアイズ・ミノタウロス》が墓地へ送られ、《竜脈の魔術師》が《レッド・ワイバーン》に向けて青い光を放つ。

光りはかまいたちに変化し、それを受けた《レッド・ワイバーン》の炎が消え、そのまま青い粒子となって消滅する。

(《レッド・ワイバーン》はシンクロ召喚されたこのカードよりも攻撃力の高いモンスターが存在するとき、1度だけフィールド上に存在する最も攻撃力の高いモンスター1体を破壊する効果がある。榊遊矢、それを避けるために…)

「更に俺は手札から《EMセカンドンキー》を召喚!」

 

EMセカンドンキー レベル4 攻撃1000

 

「このカードの召喚・特殊召喚に成功したとき、デッキからセカンドンキー以外のEM1体を墓地へ送る。でも、俺のペンデュラムゾーンにカードが2枚ある場合、手札に加えることができる。俺はデッキから《EMオッドアイズ・シンガー》を手札に加える!」

遊矢は手札にあるもう1枚のカードをじっと見る。

(マスター!)

「わかってる、ナディ!お前の力を貸してくれ!!俺はセッティング中の《竜脈の魔術師》と《時読みの魔術師》でペンデュラム召喚をする!揺れろ、魂のペンデュラム!天空に描け、光のアーク!ペンデュラム召喚!現れろ、俺のモンスター!《EMオッドアイズ・シンガー》!!」

 

EMオッドアイズ・シンガー レベル6 守備2500

 

「更に、このカードはペンデュラムゾーンに魔術師を2枚セッティングしている場合、手札・墓地から特殊召喚できる!いけ、《調律の魔術師》!」

「ハアーーー!!」

2体の魔術師の力を受けたナディがフィールドに飛び出し、ジャックと対峙する。

 

調律の魔術師 レベル1 攻撃0(チューナー)

 

「更に、《調律の魔術師》の効果発動!このカードの召喚・特殊召喚に成功したとき、俺は400ダメージを受け、相手は400ライフを回復する!」

「ええーい!」

ナディが持っている杖から放たれる波紋によって、ジャックと遊矢のライフが変動する。

そして、その波紋によって遊矢のオッドアイが彼の心の中を垣間見る。

 

遊矢

ライフ4000→3600

 

ジャック

ライフ4000→4400

 

「これは…」

コモンズの一画で寒さに耐えながら縮こまる少年の姿が目に浮かぶ。

髪形と顔立ちを見て、彼が幼いころのジャックだと気づいた。

そんな彼が柱の上にあるトップスの町を見上げていると、1枚のカードが落ちてくる。

幼いジャックはそれを手にする。

「このカード…なんて読むんだろう…?」

当時、文字が読めなかったジャックはすぐにそのカードが何なのかわからなかった。

(ありがと!!ボクを拾ってくれて!)

「うわあ!?!?」

急に背後に現れたナディを見て、ジャックはびっくりする。

これがジャックとナディの出会いだった。

 

この波紋で見えた光景はここまでだった。

遊矢はナディを見ると、彼女は遊矢に振り返り、首を縦に振る。

「俺はレベル6の《オッドアイズ・シンガー》にレベル1の《調律の魔術師》をチューニング!二色の眼の竜よ、怒りの業火で闇を焦がせ!シンクロ召喚!レベル7!大地を焼き尽くす業火の竜!《オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン》!!」

 

オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

「《オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン》の効果発動!このカードの特殊召喚に成功したとき、ペンデュラムゾーンに存在するペンデュラムモンスター1体を特殊召喚できる!俺は《竜脈の魔術師》を特殊召喚!バーニング・コール!」

 

竜脈の魔術師 レベル4 攻撃1800

 

3体のモンスターの攻撃力の合計はジャックのライフを上回った。

しかし、《オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン》は《竜脈の魔術師》を特殊召喚した代償として、攻撃が封じられている。

「いくぞ!《竜脈の魔術師》、《セカンドンキー》でダイレクトアタック!」

《EMセカンドンキー》のカバンから放たれた青い光を《竜脈の魔術師》の剣が受け止める。

青く光る剣を手に、《竜脈の魔術師》はジャックにとびかかる。

「ふんっ!永続罠《スクリーン・オブ・レッド》!このカードは相手モンスターの攻撃を封じる!」

ジャックの周囲を薄赤色の水晶の壁が覆う。

壁の周りを確認しても、ジャックの姿を見ることができないため、攻撃をあきらめて遊矢の元へ戻る。

(ダメだ…あの人の心に壁ができてる…!)

「くそ…でも、俺のターンはまだ終わっていない!俺はレベル4の《竜脈の魔術師》と《セカンドンキー》でオーバーレイ!漆黒の闇より愚鈍なる力に抗う反逆の牙!今、降臨せよ!エクシーズ召喚!現れろ!ランク4!《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》!」

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ランク4 攻撃2500

 

「俺はカードを1枚伏せて、ターンエンド!」

 

ジャック

手札0

ライフ4400

場 スクリーン・オブ・レッド(永続罠)

  伏せカード2

 

遊矢

手札6→0

ライフ3600

場 オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン レベル7 攻撃2500

  ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン(オーバーレイユニット2) ランク4 攻撃2500

  伏せカード1

  時読みの魔術師(赤) Pスケール8

 

「ふん…!少しは頭を使った動きを見せたようだな。だが、その程度でこのジャック・アトラスを倒せると思うな!俺のターン!」

 

ジャック

手札0→1

 

「俺は手札から魔法カード《逆境の宝札》を発動!俺のフィールド上にモンスターが存在せず、相手フィールド上に特殊召喚されたモンスターが存在するとき、デッキからカードを2枚ドローできる。そして、このカードは相手フィールド上にのみモンスターが存在するとき、手札から特殊召喚できる!来い、《バイス・ドラゴン》!ただし、この効果で特殊召喚されたこのカードの攻撃力・守備力は半分になる」

 

バイス・ドラゴン レベル5 攻撃2000→1000

 

「更に俺は手札から《レッド・スネーク》を召喚!」

 

レッド・スネーク レベル3 攻撃1300(チューナー)

 

「レベル5の《バイス・ドラゴン》にレベル3の《レッド・スネーク》をチューニング。王者の咆哮、今天地を揺るがす。唯一無二なる覇者の力をその身に刻むがいい!シンクロ召喚!荒ぶる魂、《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》!」

前夜祭で遊矢を敗北へ陥れたあの竜がフィールドに現れる。

オッドアイズによって受けた左目の傷は残っており、じっと遊矢を見ている。

 

レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト レベル8 攻撃3000

 

(なんだ…あのドラゴン、悲しんでる…??)

オッドアイのせいか、前夜祭の時には感じなかった《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》の感情を直感で気づいてしまう。

「《スカーライト》の効果発動!1ターンに1度、このカード以外の、このカードの攻撃力以下の特殊召喚された効果モンスターをすべて破壊し、破壊したモンスターの数×500のダメージを相手に与える!」

遊矢のフィールドに攻撃力3000を超えるモンスターはいない上に、どちらも特殊召喚されたモンスター。

この効果を受けると、遊矢のモンスターが全滅し、ダイレクトアタックのチャンスを与えてしまう。

「アブソリュート・パワー・フレイム!!」

《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》が拳を床に叩き込み、ひびが入り、砕けた床から灼熱の炎が吹きあがる。

遊矢の周囲の床も砕け、噴き出した炎によって2体のモンスターが焼き尽くされ、遊矢を強い熱気が襲う。

「ぐうう…!!」

 

遊矢

ライフ3600→2600

 

「そうだ…ジャック、それでいい…。お前の声を…お前の魂を…俺にぶつけろ!!」

遊矢を包む炎と共に、脳裏に再び光景が浮かぶ。

 

ナディを手に入れたジャックは1人、コモンズの廃棄物処理場やゴミ捨て場をあさり、カードを手に入れていた。

トップスはレアカードにこだわる反面、ステータスやレベル・レアリティが大したことのないカードをないがしろにしており、そのようなカードは捨てられていた。

それらのカードはコモンズにとっては貴重で、時にはそのカードで文字の読み書きの教材ともなっていた。

「見ろよ…あいつ、キングになるって豪語している奴だぜ?」

「馬鹿だろ?そんなカードだけで何になる?」

「おとなしくカードをギャングに売ればいいのに…」

カードを集め、ゴミ捨て場を出ていくジャックを周囲のコモンズの人々は異常だと思い、影口を叩き続けていた。

それは数年が過ぎ、Dホイールのパーツを集め、作っているときも変わりなかった。

 

「ジャックには…ナディ以外の仲間が…いなかった…?」

「キングの一撃の前に、ひれ伏すがいい!《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》で榊遊矢にダイレクトアタック!!灼熱のクリムゾン・ヘル・バーニング!!」

《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》が口から炎を放つ。

守る者のいない遊矢はその炎に包まれる。

「俺は罠カード《ショック・リボーン》を発動!俺が受ける戦闘ダメージを半分にする!ぐう…ああああ!!」

 

遊矢

ライフ2600→1100

 

「はあはあ…そして、墓地から受けたダメージ以下の攻撃力のモンスター1体を特殊召喚する!甦れ、《EMセカンドンキー》!!」

 

EMセカンドンキー レベル4 守備2000

 

「《セカンドンキー》の効果で、俺はデッキから《EMユニ》を墓地へ送る」

「どうにか罠カードの効果でしのいだようだが、その程度のモンスターで何ができる!?」

「その程度のモンスターを使いこなして…勝ち上がってきたんだろう、ジャック!!」

「何…!?」

「お前は…見捨てられたカードを集めて、見捨てられたパーツを集めて…デッキとDホイールを作り上げた…。そして…」

「…何の話をしている!?」

「そして、そのデッキを手に、たった1人でコモンズを制覇して、《レッド・デーモンズ》を…」

《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》の攻撃を受けて、遊矢はジャックがこのカードを手に入れた経緯を知った。

デッキとDホイールを完成させたジャックは一匹オオカミとして、コモンズやシティのデュエリストと戦い続けた。

シティのデュエリストと戦う機会は裏の大会しかなかったが、シティへ出て戦わなければならないジャックにとってはよい成長の材料となった。

そして、当時コモンズ最強だったデュエリストを撃破したジャックは《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》を手に入れた。

「土足で俺の…キングの心に入り込むな!道化が!!俺はこれでターンエンド!同時に、《スクリーン・オブ・レッド》の効果発動!維持コストとして、ライフを1000支払う!」

 

ジャック

手札0

ライフ4400→3400

場 レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト(《レッド・スネーク》の影響下)レベル8 攻撃3000

  スクリーン・オブ・レッド(永続罠)

  伏せカード2

 

遊矢

手札0

ライフ1100

場 EMセカンドンキー レベル4 守備2000

  時読みの魔術師(赤) Pスケール8

 

「俺のターン、ドロー!!」

 

遊矢

手札0→1

 

「…俺は《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》をペンデュラムスケールにセッティング。ターンエンド…。同時に、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》のペンデュラム効果発動!俺のターンのエンドフェイズ時に、このカードを破壊することで、デッキから攻撃力1500以下のペンデュラムモンスター1体を手札に加える。俺はデッキから《慧眼の魔術師》を手札に加える!」

 

ジャック

手札0

ライフ3400

場 レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト(《レッド・スネーク》の影響下)レベル8 攻撃3000

  スクリーン・オブ・レッド(永続罠)

  伏せカード2

 

遊矢

手札1(《慧眼の魔術師))

ライフ1100

場 EMセカンドンキー レベル4 守備2000

  時読みの魔術師(赤) Pスケール8

 

「心に入り込んできてその程度か?結局…すべては無駄だ。奴らの満足するようなデュエルだけをしていればいいだけのことだ…」

「…?」

「俺のターン!」

 

ジャック

手札0→1

 

「俺は手札から魔法カード《ゴールド・オブ・レッド》を発動!俺のフィールド上にレッド・デーモンと名の付くシンクロモンスターが存在するとき、俺のフィールド上に存在するレッドと名の付くカード1枚を墓地へ送ることで、デッキからカードを2枚ドローできる。俺は《スクリーン・オブ・レッド》を墓地へ送り、デッキからカードを2枚ドローする!」

 

ゴールド・オブ・レッド

通常魔法カード

このカード名の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に「レッド・デーモン」Sモンスターが存在するときに発動できる。自分フィールド上に存在する「レッド」カード1枚を墓地へ送り、デッキからカードを2枚ドローする。

 

「そして、《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》の効果発動!奴の死にぞこないの獣を焼き尽くせ、アブソリュート・パワー・フレイム!!」

《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》の拳によって召喚された炎が再び遊矢と彼のモンスターに襲い掛かる。

炎に包まれた《EMセカンドンキー》が消滅し、遊矢のライフが減る。

 

遊矢

ライフ1100→600

 

「《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》でダイレクトアタック!灼熱のクリムゾン・ヘル・バーニング!!」

立て続けの攻撃宣言したジャックに応えるように、《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》が遊矢に向けて炎を放つ。

「俺は墓地の《EMユニ》の効果発動!」

「そのカードは…!?」

「このカードと墓地のEM1体を除外することで、俺が受ける戦闘ダメージを1度だけ0にする!」

《EMセカンドンキー》の効果で墓地へ送られた《EMユニ》が彼と力を合わせてバリアを展開し、遊矢を炎から守る。

炎の中で、キングとなったジャックの姿が映し出される。

 

コモンズの王者となり、更にトップスの王者に上り詰めたジャックは富と名声を手に入れた。

そして、そうなったとたんにトップスとコモンズのジャックの見る目が変わった。

ジャックを身の程知らずと馬鹿にし続けていたコモンズの人々はジャックをコモンズの理想の形と見なすようになり、中には彼に媚びる人々も現れた。

トップスの人々もジャックに媚びる人がいれば、昔から彼の才能に期待していたと嘯く金持ちや今までコモンズの人々と同様に人間扱いしてこなかった彼らがジャックに笑顔を見せる。

まるで勝ったから、お前を人間として扱ってやると言わんばかりに。

そして、デュエルの時にはジャックにより強いエンタメを要求してきた。

 

「これが…ジャックの、絶望…」

「俺はこれで、ターンエンド」

 

ジャック

手札2

ライフ3400

場 レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト(《レッド・スネーク》の影響下)レベル8 攻撃3000

  伏せカード2

 

遊矢

手札1(《慧眼の魔術師))

ライフ600

場 時読みの魔術師(赤) Pスケール8

 

「…見たな、遊矢。俺の絶望を…」

ジャックの言葉に遊矢は何も言わずに首を縦に振る。

「キングとなったことで、俺が見たものは醜悪、トップスとコモンズの腐りきった姿だった…。コモンズの人間がキングとなったとしても、奴らは何も変わらない。ただ、むなしいだけだ」

シンクロ次元が腐っていることは遊矢も分かっていた。

トップスからの解放を望みながらも、強い存在が登場しなければ何もできず、彼らにすがることしかできないコモンズ。

勝利したことを言い訳にして富と特権を当たり前のように享受し、自らは守られて当然と考えるトップス。

シンクロ次元の歪みは救いようがないほどに深かった。

それはこの次元に来て数カ月の遊矢にもよくわかる。

「所詮、奴らはその程度の存在。たとえ救ったとしても、何も変わらない。そんな奴らのために戦う必要はあるというのか?」

ジャックはトップスのためにも、コモンズのためにも戦おうという気持ちにはなれなかった。

彼らのために戦ったとしても、彼らの醜さをまた思い知るだけ。

それならばと、ロジェの企みに乗った。

生き残るため、そしてトップスとコモンズに復讐するため。

「でも…でも、違う!!」

「違う、だと…?」

「それだけが…その歪みだけが、彼らのすべてじゃない!!」

しかし、遊矢は思い出す。

サムやクロウ、彼に世話になっている子供たち、シンジ、徳松、227…。

彼らはある時は自分を助け、敵として現れたとしても、自分に道を示したし、自分なりの意地を見せたりもした。

歪みを知りながらも、彼らの存在がそれだけがシンクロ次元ではないということを教えてくれた。

「俺は…少なくても、俺はクロウやシンジといった、俺を助けてくれた人、そして仲間や待っていてくれている人たちのために戦っている!そして、ジャックの心の中に残っている炎をよみがえらせるために!」

「俺の心に…だと??」

「そうだ!そして、ジャックの先には柚子が…俺が守りたい人がいる!そのためにも…負けるわけにはいかないんだ!俺のターン!!」

 

遊矢

手札1→2

 

「俺はスケール5の《慧眼の魔術師》をペンデュラムスケールにセッティング!そして、モンスター効果発動!もう片方のペンデュラムゾーンに存在するカードがEM、または魔術師の場合、このカードを破壊し、デッキからEMまたは魔術師と名の付くペンデュラムモンスター1体をセッティングできる!俺はスケール1の《星読みの魔術師》をペンデュラムスケールにセッティング!」

《慧眼の魔術師》が姿を消し、《星読みの魔術師》が青い光の柱に入る。

遊矢が初めてペンデュラム召喚を成功させた2体が彼とナディに目を向け、互いにうなずく。

「今一度揺れろ、魂のペンデュラム!天空に描け、光のアーク!ペンデュラム召喚!現れろ、俺のモンスター!《EMオッドアイズ・シンガー》《慧眼の魔術師》《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!!」

一気に3体のモンスターが現れ、ジャックの《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》と対峙する。

 

EMオッドアイズ・シンガー レベル6 守備2500

慧眼の魔術師 レベル4 攻撃1500

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

「さらに俺は手札から魔法カード《ペンデュラム・トレジャー》を発動!俺のフィールド上にペンデュラムモンスターが3体以上存在し、それらモンスターの攻撃力が相手フィールド上に存在する最も攻撃力の低いモンスター以下のとき、デッキからカードを2枚ドローする!」

 

ペンデュラム・トレジャー

通常魔法カード

このカード名の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上にPモンスターが3体以上存在し、これらのモンスターの攻撃力が相手フィールド上に存在する最も攻撃力の低いモンスターよりも低い場合にのみ発動できる。デッキからカードを2枚ドローする。

 

「そして、俺は《オッドアイズ・シンガー》の効果発動!墓地から《EMオッドアイズ・ミノタウロス》を特殊召喚する!」

《EMオッドアイズ・シンガー》の歌声と共に遊矢のデュエルディスクが光り、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》と同じ2色の目を持つ、青い髪があるミノタウロスが斧を手にして現れる。

 

EMオッドアイズ・ミノタウロス レベル4 攻撃1200

 

「更に俺は手札から魔法カード《死者蘇生》を発動!その効果で俺はジャックの墓地から《レッド・ワイバーン》を特殊召喚する!」

「何!?俺の墓地のモンスターを…!?」

遊矢のフィールド上に1ターン目はジャックのそばにいた《レッド・ワイバーン》が現れる。

 

レッド・ワイバーン レベル6 攻撃2400

 

「だが、《レッド・ワイバーン》の効果はシンクロ召喚されていなければ使えん!!」

「違う、ジャック!俺が狙っているのはその先だ!!俺はレベル6の《レッド・ワイバーン》にレベル4の《慧眼の魔術師》をチューニング!」

「何!?チューナーモンスターではない《慧眼の魔術師》でチューニングだと!?」

遊矢のペンデュラムが一瞬青く輝き、それと同じ色の4つのチューニングリングへと《慧眼の魔術師》の姿が変わる。

そして、その中を《レッド・ワイバーン》は通る。

「平穏なる時の彼方から、あまねく世界に光を放ち、蘇れ!シンクロ召喚!現れろ、レベル10!《涅槃の超魔導剣士》!!」

部屋中が青い光に包まれる中、青い袈裟と銀色の鎧が融合したような重装な防具と帽子を着用し、手には両手でしか扱えなさそうな大剣を右手1本でつかんだ剣士が現れる。

《クリアウィング・ファスト・ドラゴン》と同じペンデュラムシンクロモンスターが誕生した瞬間だった。

 

涅槃の超魔導剣士 レベル10 攻撃3300

 

「なんだ…このシンクロモンスターは…!?」

目の前に現れた未知のモンスターにジャックは心を奪われる。

それはまるで初めて《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》を見たときのような気分だった。

「このカードは今の俺の精いっぱいの答え…。俺の進化の途上のカードだ!」

「進化の途上だと…?榊遊矢…」

「そうだ!俺はこれからも進化を続けていく!みんなと一緒に!!《涅槃の超魔導剣士》はペンデュラム召喚したペンデュラムモンスターをチューナーの代わりに素材にすることができる!そして、そのモンスターを素材にシンクロ召喚に成功したとき、墓地のカード1枚を手札に加えることができる。俺は墓地の《ペンデュラム・トレジャー》を手札に加える!バトルだ!《涅槃の超魔導剣士》で《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》を攻撃!トゥルース・スカーヴァティ!!」

《涅槃の超魔導剣士》の大剣の刀身が青く染まっていく。

そして、青い魔力を宿したその刃と《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》のブレスがぶつかり合う。

「さらに、《オッドアイズ・ミノタウロス》の効果発動!俺のフィールド上に存在するペンデュラムモンスターが開いてモンスターと戦闘を行うとき、ダメージ計算時のみ相手モンスターの攻撃力を俺のフィールド上に存在するEM、オッドアイズの数×100ダウンさせる!」

 

レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト レベル8 攻撃3000→2700

 

(なんだ…この熱は…!?)

攻撃がぶつかり合った瞬間、ジャックは胸に何か熱いものを感じ始めていた。

体のすべてを焼き尽くしてしまうと思ってしまうほどの熱を。

(それは、あなたがもともと持っていたものだよ)

「これが…」

(思い出して、初めてあのドラゴンを召喚した時のことを…)

ナディの言葉により、ジャックは彼女が言うその時のことを思い出す。

トップスでプロデュエリストとデュエルを繰り広げていたとき、ジャックは初めて《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》を破壊されてしまったことがあった。

そのとき、ジャックの中にある勝ちたいという思いが爆発的に強くなり、その時にあるドラゴンを召喚し、勝利を収めた。

(まさか、これほど熱いものだったとは…。だからか、キングとなってから胸の中が冷たいと思えたのは…)

《涅槃の超魔導剣士》の大剣が競り勝ち、《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》を真っ二つに切りたく。

切り裂かれた傷だらけのドラゴンの体は炎に包まれて消滅していった。

 

ジャック

ライフ3400→2800

 

「《涅槃の超魔導剣士》の効果発動!このカードが戦闘で相手モンスターを破壊したとき、相手ライフを半分にする!」

 

ジャック

ライフ2800→1400

 

ジャックの魂の象徴、《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》がペンデュラムシンクロモンスターによって撃破され、同時にライフも逆転される。

そして、ほかにも遊矢のフィールドには攻撃可能なモンスターが残っており、それらのモンスターの攻撃により、勝負が決まってしまう。

「…俺は《レッド・デーモンズ・スカーライト》の素材となった《レッド・スネーク》の効果を使い、戦闘で破壊された《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》を特殊召喚する」

 

レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト レベル8 攻撃3000

 

「俺は…カードを1枚伏せて、ターンエンド!」

 

ジャック

手札2

ライフ1400

場 レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト(《レッド・スネーク》の影響下)レベル8 攻撃3000

  伏せカード2

 

遊矢

手札2→1(《ペンデュラム・トレジャー》)

ライフ600

場 涅槃の超魔導剣士 レベル10 攻撃3300

  EMオッドアイズ・シンガー レベル6 守備2500

  EMオッドアイズ・ミノタウロス レベル4 攻撃1200

  オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500

  伏せカード1

  星読みの魔術師(青) Pスケール1

  時読みの魔術師(赤) Pスケール8

 

「榊遊矢…礼を言うぞ」

「えっ…?」

「今の攻撃の瞬間、俺はずっと忘れていたものを取り戻すことができた…。冷たくなった心に、キングを目指していたころに確かにあった熱を…」

晴れやかな表情を見せながら、ジャックは本心で遊矢に語る。

そんな彼を見たナディは嬉しそうに笑っていた。

「その礼はこのターンで返す!受け取れ、遊矢!取り戻した俺の魂、バーニングソウルを!!俺のターン!!」

 

ジャック

手札2→3

 

「俺は手札から魔法カード《手札抹殺》を発動!その効果で俺たちは手札をすべて捨て、捨てた枚数分だけカードをドローする!これで貴様の《ペンデュラム・トレジャー》は失われる!」

「くっ…!」

ペンデュラム召喚主体の遊矢のデッキでは重要な手札補充カードの1枚である《ペンデュラム・トレジャー》が墓地へ落ちていく。

そして、2人は捨てた枚数分カードをドローする。

 

手札から墓地へ送られたカード

ジャック

・バリア・リゾネーター

・ミラー・リゾネーター

 

遊矢

・ペンデュラム・トレジャー

 

「更に俺は罠カード《スカーレッド・カーペット》を発動!俺のフィールド上にドラゴン族シンクロモンスターが存在するとき、墓地のリゾネーターを2体まで特殊召喚できる。俺は《バリア・リゾネーター》と《ミラー・リゾネーター》を特殊召喚!」

 

バリア・リゾネーター レベル1 攻撃300(チューナー)

ミラー・リゾネーター レベル1 攻撃0(チューナー)

 

2体のリゾネーターが登場すると同時に、ジャックは拳を左胸に当てる。

その拳からは炎が吹きあがり、同時に彼の目が赤く染まる。

「今こそ見せる!ジャック・アトラスがキングとして、存在する証を!!俺はレベル8の《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》にレベル1の《バリア・リゾネーター》と《ミラー・リゾネーター》をダブルチューニング!!」

「ダブルチューニング!?」

2体のリゾネーターが炎のチューニングリングに変わり、その中に傷だらけのドラゴンが飛び込んでいく。

炎の中で、今までの強敵から受けてきた傷が消えていき、真紅の鎧を纏う。

かつて、ジャックを絶体絶命の窮地から救った、燃え盛る魂のドラゴン。

「王者と悪魔、今ここに交わる。赤き竜の魂に触れ、天地創造の雄たけびをあげよ!シンクロ召喚!現れろ!レベル10、《レッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラント》!」

 

レッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラント レベル10 攻撃3500

 

「ジャック…」

このドラゴンを召喚せずとも、ジャックは《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》の効果によって遊矢のモンスターを破壊し、そのまま勝利する道を選ぶことができたはずだ。

だが、自分の闘志宿る心に従ったジャックにとってはそのような勝利では不満足だった。

「見るがいい、遊矢!!我が魂の炎を!!《レッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラント》の効果!俺のメインフェイズ1に1度、このカード以外のモンスターの攻撃を不能にする代わりにこのカード以外のフィールド上のカードをすべて破壊する!アブソリュート・パワー・インフェルノ!!」

全身に炎を宿した《レッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラント》が叫び声をあげ、同時に炎が全周囲に向けて飛んでいく。

何かに触れた瞬間、爆発的に膨張するその炎に触れたモンスターは次々と焼き尽くされていく。

「ぐうう…これが、ジャックの魂…だけど、俺も負けるわけにはいかないんだ!俺は罠カード《ホーリーライフバリアー》を発動!手札1枚を捨て、相手から受けるすべてのダメージを0にする!」

 

手札から墓地へ送られたカード

・EMガンバッター

 

フィールドから墓地へ送られた伏せカード

・強化蘇生

・ショック・ウェーブ

 

「更に、破壊された《涅槃の超魔導剣士》はペンデュラムゾーンに置くことができる!」

「ふっ…《レッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラント》は1ターンに1度、バトルフェイズ中に魔法・罠カードが発動したとき、その発動を無効にし、破壊する効果を持つ。だが、このタイミングで発動されては防ぐことはできん。俺はカードを1枚伏せてターンエンド!」

 

ジャック

手札3→2

ライフ1400

場 レッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラント レベル10 攻撃3500

  伏せカード1

 

遊矢

手札1→0

ライフ600

場 涅槃の超魔導剣士(赤) Pスケール8

 

「さあ来い、榊遊矢!!次は貴様がさらなる進化を見せる時だ!」

「俺の…ターン!!!」

 

遊矢

手札0→1

 

「俺は空いているペンデュラムゾーンにスケール2の《EMペンデュラム・マジシャン》をセッティング!これで俺はレベル3から7までのモンスターを同時に召喚可能!揺れろ、魂のペンデュラム!天空に描け、光のアーク!ペンデュラム召喚!現れろ、俺のモンスター!《EMオッドアイズ・シンガー》《EMオッドアイズ・ミノタウロス》《竜脈の魔術師》《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!!」

 

EMオッドアイズ・シンガー レベル6 攻撃400

EMオッドアイズ・ミノタウロス レベル4 攻撃1200

竜脈の魔術師 レベル4 攻撃1800

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

「《ペンデュラム・マジシャン》の効果発動!俺のフィールド上に存在するEMの攻撃力をターン終了時まで1000アップさせる!」

 

EMオッドアイズ・シンガー レベル6 攻撃400→1400

EMオッドアイズ・ミノタウロス レベル4 攻撃1200→2200

 

「更に、《EMオッドアイズ・シンガー》の効果発動!墓地から《慧眼の魔術師》を特殊召喚する!」

 

慧眼の魔術師 レベル4 攻撃1000

 

「それがどうした!?貴様が召喚したモンスターはいずれも《レッド・デーモンズ・タイラント》よりも攻撃力が低い!そのモンスターたちで何を見せてくれる!?」

「見せられるさ、みんなの力を!!」

「それでいい、もっと俺を熱くして見せろ!俺は罠カード《スカーレッド・フォース》を発動!俺のフィールド上に存在するレベル10以上のレッド・デーモンシンクロモンスターの攻撃力を俺の墓地に存在するチューナー1体につき、800ポイントアップする!更に、その効果を受けたモンスターはこのターン、戦闘及びカード効果では破壊されない!」

 

レッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラント レベル10 攻撃3500→6700

 

スカーレッド・フォース

通常罠カード

このカード名の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上にレベル10以上の「レッド・デーモン」Sモンスターが存在する場合にのみ発動できる。そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで、自分の墓地に存在するチューナーの数×800アップする。また、その効果を受けたモンスターはターン終了時まで戦闘・効果では破壊されない。

 

「バトルだ!《EMオッドアイズ・シンガー》で《レッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラント》を攻撃!!」

《EMオッドアイズ・シンガー》が歌いはじめ、歌と同時に発生する波紋が《レッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラント》に襲い掛かる。

「無駄だ!攻撃力1400の《オッドアイズ・シンガー》では…!?!?」

歌い続ける《EMオッドアイズ・シンガー》の体が《涅槃の超魔導剣士》の大剣に宿っていたのと同じ光に包まれている。

彼女だけではなく、遊矢のモンスターすべてが同じ光を宿していた。

「《涅槃の超魔導剣士》のペンデュラム効果発動!俺のペンデュラムモンスターが攻撃するとき、そのモンスターは戦闘では破壊されず、俺が受ける戦闘ダメージも0になる!更に、ペンデュラムモンスターが攻撃したダメージステップ終了時、相手フィールド上に存在するモンスターの攻撃力をターン終了時までそのモンスターの攻撃力分ダウンさせる!」

 

レッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラント レベル10 攻撃6700→5300

 

「何!?」

「行け、《オッドアイズ・ミノタウロス》!!《レッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラント》を攻撃しろ!!」

《EMオッドアイズ・ミノタウロス》が持っている斧をブーメランのように投げつける。

回転して襲い掛かる斧を受けた《レッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラント》の鎧にひびが入る。

 

レッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラント レベル10 攻撃5300→3100

 

「《竜脈の魔術師》と《慧眼の魔術師》で攻撃!!」

続いて《慧眼の魔術師》の魔力を受けた剣を手にした《竜脈の魔術師》が切りかかる。

剣を炎を宿した拳で受け止めた《レッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラント》の体が青いオーラで包まれていき、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》に後を託すために《竜脈の魔術師》は後退する。

 

レッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラント レベル10 攻撃3100→2100→300

 

「なんと…《レッド・デーモンズ・タイラント》の攻撃力が…」

「俺の思いを受け取れ、ジャック!!《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》で《レッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラント》を攻撃!!螺旋のスカーヴァティ・バーストォ!!!」

《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》の口から青い螺旋するブレスが放たれる。

ブレスで貫かれた《レッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラント》はどこか満足げな表情を浮かべると、静かに消滅していった。

 

ジャック

ライフ1400→0

 

「ふっ…榊、遊矢…」

「…残念だよ、ジャック。できれば、もっと違う形でデュエルをしたかった…」

確かにジャックとのデュエルは楽しかった。

だが、本来ならばこのようなデュエルは大勢の観客の中で、娯楽としてやるべきこと。

このような形になってしまったことが遊矢にとって唯一の悔いだった。

「ふっ…こうして長い間デュエルをしていると、どこか自分の限界というものを感じてしまうものだ…。お前のように、諦めさえしなければ…」

「俺だって、そんなに強いわけじゃないよ。けど…こんな俺を支えてくれる、立ち上がらせてくれる仲間がいた。みんなが…もちろん、ジャックもいたから、俺は戦えるんだ」

「そうか…俺も、そういう仲間と出会えれば…な…」

ゆっくりと起き上がったジャックはゆっくりと遊矢に右手を差し出す。

それにこたえて、遊矢が握手をしようとしたとき、ジャックの背後の扉が開いた。

「…!!離れろ!!」

何かを察知したジャックは遊矢の腕をつかみ、放り投げる。

そして、振り返ると同時にジャックの腹部に大きな拳が叩き込まれた。

「うわあ!?ジャック…!!」

壁に衝突し、痛みに耐えながらジャックを見た遊矢の目に入ったのは、ジャックに攻撃するセルゲイの姿だった。

「貴様…どういう了見でこのような馬鹿な真似をする…。キングとそのライバルの間に水を差すなぁ!!」

ジャックの体をつかんだセルゲイは彼を扉のそばの壁に叩き込む。

セルゲイの手から離れたジャックの体はゆっくりと横に倒れた。

「お前は…!!うう…!?」

薬が切れたのか、それともずっと前に切れていて、ジャックとのデュエルが夢中になって忘れていたのか、痛みがよみがえる。

歯を食いしばり、痛みに耐えながら注射をする遊矢の足元に《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》のカードが落ちていた。



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第84話 地縛

ジャックが意識を失ったのを確認したセルゲイの目線が遊矢に向けられる。

そして、遊矢の目の前にはソリッドビジョンでロジェの姿が映し出される。

「まったく、厄介なことをしてくれましたね。榊遊矢。あなたのせいで、ジャック・アトラスが使い物にならなくなった」

「ロジェ…!!」

遊矢は怒りのこもった目でロジェを見る。

彼がセルゲイを操り、柚子をさらった上に、ようやく分かり合えたジャックを傷つけた。

そんな彼を遊矢は許せなかった。

「これでは、ランサーズを始末して、それも交渉材料にしなければならない…。まったく、仕事が増えて困る」

「遊矢…遊矢!!」

「柚子!?」

ソリッドビジョンにはさらに柚子の姿も映る。

両腕を天井からおろした縄によって縛られ、両足も枷をつけられていて身動きが取れない。

「じっくり見ておきなさい、柊柚子。本当の力がどのようなものなのかを…」

右手で柚子の顔をつかみ、下種な笑みを浮かべながら自信たっぷりに言う。

彼にとって、今のセルゲイはまさに史上最強の駒。

彼がいる限り、自らの繁栄は約束されていると思い込んでいる。

「必ず助ける…。待ってろ、柚子!!」

遊矢が叫ぶと同時に、ソリッドビジョンが消えて、セルゲイがデュエルディスクを展開し、更に開いていたドアも閉じる。

「フィールド魔法…《クロス・オーバー》…セット!」

《クロス・オーバー》が発動し、周囲に透明な足場とアクションカードが生まれる。

そして、足元に落ちている《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》を手にし、倒れているジャックに目を向ける。

(俺に力を貸してくれ…ジャック!!)

(マスター…)

「ナディはジャックのそばにいてくれ。ジャックの分も…俺は戦う!!」

覚悟を決めた遊矢はエクストラデッキにそのカードを入れ、ナディはジャックのそばへ向かう。

そして、かつての主の手に触れ、彼の無事を願った。

(今のボクにはこれくらいしかできないけれど、それだけでも…!)

「「デュエル!!」」

 

セルゲイ

手札5

ライフ4000

 

遊矢

手札5

ライフ4000

 

「俺の先攻…俺は手札から《地縛囚人グランド・キーパー》を召喚…」

紫色の模様がついた、黒一色の人型がひび割れた床を砕いてフィールドに現れる。

 

地縛囚人グランド・キーパー レベル1 攻撃300(チューナー)

 

「更に、このカードはフィールド上にカードが存在するとき、手札から特殊召喚できる。《地縛囚人ストーン・スィーパー》を特殊召喚!」

《地縛囚人グランド・キーパー》が生み出した穴の中から青い模様が描かれた黒いシャチが飛び出してくる。

 

地縛囚人ストーン・スィーパー レベル5 攻撃1600

 

地縛囚人ストーン・スィーパー(アニメオリカ・調整)

レベル5 攻撃1600 守備1600 効果 闇属性 悪魔族

このカードの(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しか行えない。

(1):フィールド上にカードが存在するとき、このカードは手札から特殊召喚できる。この効果で特殊召喚に成功したターン、自分は「地縛」モンスターしか召喚・反転召喚・特殊召喚できない。

 

「地縛…?」

遊矢は翔太、そしてデイモンとデュエルをしたときのセルゲイのデッキを思い出す。

その時の彼のデッキは自らのライフをギリギリまで減らし、それがトリガーとなるカード効果を使った一発逆転を狙う茨の囚人デッキだ。

セルゲイはロジェによって新たな改造が施されたと同時に、新たなデッキも手に入れたのだろう。

「更に、俺は手札から魔法カード《異界共鳴-シンクロ・フュージョン》を発動。俺のフィールド上に存在するモンスターを素材に、シンクロ召喚と融合召喚を同時に行う。俺は《ストーン・スィーパー》と《グランド・キーパー》を墓地へ送り、この2体で融合とシンクロ召喚を行う!!」

「何!?」

融合召喚とシンクロ召喚を同時に行うことができるそのカードに遊矢は驚愕する。

そして、セルゲイの背後には融合の渦が出現し、その中で2体のモンスターがチューニングを行う。

「大地に縛られし2つの戒隷よ、呪われし魂を食み、その血をけがすために現れよ!《地縛戒隷ジオグレムリン》!《地縛戒隷ジオグレムリーナ》!」

両腕と両足が枷と鎖で拘束された、青い模様のある2本角の黒い巨人と首と片翼のない、黄色い模様と茶色い革の拘束具に木星の枷がついた4本脚の黒い獣が現れる。

 

地縛戒隷ジオグレムリン レベル6 攻撃2000

地縛戒隷ジオグレムリーナ レベル6 攻撃2000

 

地縛囚人グランド・キーパー(アニメオリカ)

レベル1 攻撃300 守備300 チューナー 闇属性 悪魔族

(1):このカードがフィールド上に存在する限り、自分フィールド上に存在する「地縛」モンスターは1ターンに1度、戦闘では破壊されない。

 

異界共鳴-シンクロ・フュージョン(アニメオリカ・調整)

通常魔法カード

このカード名の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールドから、Sモンスターカードによって決められたS素材モンスターであり、また融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターでもある一組のモンスターを墓地へ送り、そのSモンスター1体と融合モンスター1体をEXデッキからそれぞれS召喚・融合召喚する。

 

「フフフフ…これが私が生み出した力!私の融合召喚とこの次元のシンクロ召喚を融合させた、まさに私にしか使えない効果だ!!ハハハハハ!!」

セルゲイが同時召喚したシンクロモンスターと融合モンスターを自室の机上にあるノートパソコンで見ながら、ロジェは狂喜する。

「ふざけないで…!そんなに自分の力と言って見せびらかしたいなら…あなた自身が遊矢とデュエルをしなさいよ!!」

他人に力を与えて命令するだけで、自分からは何もしないロジェに柚子は抗議する。

その言葉が耳に入ったロジェは笑うのをやめ、柚子の目の前へ行き、彼女の頬にビンタをする。

「この次元の王に意見するとは…少しは自分の立場というものを認識したまえ!」

痛みに耐え、涙を浮かべる柚子を見つめるロジェ。

痛みに耐える柚子は悲鳴を上げもしなければ、声を上げることもしなかった。

(こんな痛み…遊矢が今まで受けた痛みと比べたら、これくらい…!)

 

「そして、俺はカードを2枚伏せて、ターンエンド…」

 

セルゲイ

手札5→0

ライフ4000

場 地縛戒隷ジオグレムリン レベル6 攻撃2000

  地縛戒隷ジオグレムリーナ レベル6 攻撃2000

  伏せカード2

 

 

遊矢

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「俺のターン、ドロー!」

 

遊矢

手札5→6

 

「シンクロと融合?こっちはシンクロ、融合、エクシーズ、ペンデュラムのすべてだ!俺は手札からフィールド魔法《天空の虹彩》を発動!アクションデュエルでは、フィールド魔法は永続魔法として扱う!更に、俺はスケール2の《EMドラミング・コング》とスケール6の《EMリザードロー》でペンデュラムスケールをセッティング!」

《EMドラミング・コング》と襟が?マークのついたカード数枚となっている紫色の道化師の服装をした、右目に大きな五芒星のペイントの有るオレンジ色のトカゲが青い光の柱を生み出す。

「更に、俺は《リザードロー》の効果発動!このカード以外のもう片方の俺のペンデュラムゾーンに存在するカードがEMの場合、このカードを破壊することで、デッキからカードを1枚ドローできる!」

《EMリザードロー》が恭しきお辞儀をすると、持っているステッキが光りはじめ、そのモンスターは光の柱もろとも複数羽の鳩に変わってフィールドから姿を消した。

「更に、《天空の虹彩》の効果発動!このカード以外の自分フィールド上に表側表示で存在するカード1枚を破壊することで、デッキからオッドアイズカード1枚を手札に加えることができる!俺は《EMドラミング・コング》を破壊し、デッキから《オッドアイズ・フュージョン》を手札に加える!」

せっかく発動したペンデュラムカードを2枚とも自ら除去し、手札を増強する。

ペンデュラムカードはフィールドから墓地へ送られるとき、代わりのエクストラデッキへ行く上、遊矢のデッキにはまだまだ多くのペンデュラムカードが眠っている。

それらをうまく使えば、破壊したペンデュラムカードはすぐにフィールドに出ることができる。

「俺は手札から魔法カード《オッドアイズ・フュージョン》を発動!このカードはオッドアイズ専用の融合魔法で、相手フィールド上にモンスターが2体以上存在するとき、エクストラデッキに存在するオッドアイズを2体まで融合素材として使用することができる!俺が素材とするモンスターは《覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン》と《覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン》!!」

遊矢のエクストラデッキが光りだし、2体の怒りと憎しみの力を宿したドラゴンが赤と緑が混ざり合った渦の中で一つになっていく。

「怒りの眼と憎しみを重ねし竜よ、二色の眼の輝きのもとに、新たな力を生み出さん!融合召喚!雷鳴纏いし疾風の竜、《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》!!」

渦の中から《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》が雷鳴を起こしながら現れる。

敵であるセルゲイに向けて咆哮する中、《地縛戒隷ジオグレムリン》の枷が光り始める。

 

オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

「《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》は特殊召喚に成功したとき、相手フィールド上に攻撃表示で存在するモンスター1体を手札に戻すことができる!」

遊矢はデュエルディスクを操作し、セルゲイのフィールド上から追放すべきモンスターをどちらにするか考え始める。

「《ジオグレムリン》は相手モンスター1体を対象に、そのモンスターを破壊するかその攻撃力分まで自分のライフを回復させるかの選択を迫るモンスター…。だけど、それはこのカードが特殊召喚されたターンにしか使えない…)

《地縛戒隷ジオグレムリン》の効果は後半になり、強力なモンスターが相手フィールド上に存在することで真価を発揮する。

だが、先攻1ターン目にどうしても使いたい場合は、《トーチ・ゴーレム》のような相手フィールド上に特殊召喚できるモンスターやトークンを使う必要がある。

「(それに、攻撃力は2000。どちらも《オッドアイズ》で倒せる…)俺は《ジオグレムリーナ》をデッキに戻す!ライトニング・トルネード!!」

「カウンター罠《地縛魔封》を発動。俺のフィールド上にエクストラデッキから特殊召喚された地縛モンスターが存在するとき、相手のカード効果の発動を無効にし、破壊する」

「何!?

4枚の羽に雷鳴を宿そうとした《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》が鎖によって拘束され、そのまま地面を向けて転落していく。

その鎖には時限爆弾が仕込まれていて、あと数秒で爆発する。

その数秒の間にアクションカードを探すことができるが、カウンター罠にチェーンして発動することができない。

カウントが0になり、鎖が爆発して《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》は消滅した。

 

地縛魔封(アニメオリカ・調整)

カウンター罠カード

このカード名の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上にEXデッキから特殊召喚された「地縛」モンスターが存在するときに発動できる。相手の魔法・罠・モンスター効果の発動を無効にし、破壊する。

 

「更に、《ジオグレムリーナ》の効果発動」

《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》の消滅を目にした《地縛戒隷ジオグレムリーナ》の黄色い模様が輝きはじめ、それに反応して青い模様が光り始めた《地縛戒隷ジオグレムリン》が苦しみ始める。

「これは…セルゲイ、いったい何を!?」

「相手フィールド上に存在するモンスターがカード効果によって破壊されたとき、俺のフィールド上に存在する地縛モンスターをすべて破壊する」

「自分のモンスターを自爆させる…!?」

苦しみながら《地縛戒隷ジオグレムリン》が消滅し、それに続いて《地縛戒隷ジオグレムリーナ》も消滅する。

そして、彼らだった青と黄色の粒子がビームとなって遊矢に襲い掛かる。

「更に、この効果で破壊されたモンスターの数×1000のダメージを与える!」

「うわあああ!!」

ビームが直撃した遊矢の体が吹き飛び、真後ろにある壁に激突する。

 

遊矢

ライフ4000→2000

 

「そして、この効果を発動したターン、相手モンスターは攻撃できない」

「ぐうう…」

あおむけに倒れた遊矢はゆっくりと起き上がる。

セルゲイはフィールドを自らがら空きにしたにもかかわらず、モンスターから攻撃を受ける心配がなくなっていた。

 

地縛戒隷ジオグレムリーナ(アニメオリカ・調整)

レベル6 攻撃2000 守備1000 融合 闇属性 悪魔族

「地縛」モンスター×2

このカード名の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードが自分フィールド上に存在し、相手フィールド上に存在するモンスターが効果で破壊されたときに発動できる。自分フィールド上に存在する「地縛」モンスターをすべて破壊し、その数×1000のダメージを相手に与える。この効果を発動したターン、相手は攻撃宣言できない。

 

地縛戒隷ジオグレムリン(アニメオリカ)

レベル6 攻撃2000 守備1000 シンクロ 闇属性 悪魔族

「地縛」チューナー+チューナー以外の「地縛」モンスター1体以上

(1):このカードの特殊召喚に成功したターンのメインフェイズ1に1度、相手フィールド上に存在するモンスター1体を対象に発動できる。相手は以下の効果から1つを選択する。

●そのモンスターを破壊し、このターンのバトルフェイズをスキップする。

●そのモンスターの攻撃力分、このカードのプレイヤーのLPを回復する。

 

「だったら…俺はスケール2の《EMラクダウン》とスケール6の《EMギタートル》でペンデュラムスケールをセッティング!」

大きなダメージを受けた遊矢だが、まだ彼のターンは始まったばかりだ。

今度は縦長の帽子をかぶった黄色いラクダと腹部からしっぽの部分がその名の通りギターとなっている青い亀が光りの柱を生み出す。

「更に《ギタートル》の効果発動!1ターンに1度、もう片方のペンデュラムゾーンで発動したカードがEMの場合、デッキからカードを1枚ドローできる。揺れろ、魂のペンデュラム!天空に描け、光のアーク!ペンデュラム召喚!現れろ、俺のモンスター!エクストラデッキから《EMリザードロー》、《EMドラミング・コング》!!

 

EMリザードロー レベル3 守備600

EMドラミング・コング レベル5 攻撃1600

 

「さらに手札から《EMシルバー・クロウ》!《EMペンデュラム・マジシャン》!!」

 

EMシルバー・クロウ レベル4 攻撃1800

EMペンデュラム・マジシャン レベル4 攻撃1500

 

「《ペンデュラム・マジシャン》の効果発動!このカードの特殊召喚に成功したとき、自分フィールド上のカードを2枚まで破壊できる!俺は《シルバー・クロウ》と《ペンデュラム・マジシャン》を破壊する!」

《EMペンデュラム・マジシャン》の振り子から放たれる青い波紋を受けた2体のモンスターが消滅する。

「そして、破壊した数だけデッキから《ペンデュラム・マジシャン》以外のEMを手札に加える。俺が手札に加えるのは《EMドクロバット・ジョーカー》と《EMオッドアイズ・ユニコーン》!更に、俺は手札から《EMドクロバット・ジョーカー》を召喚!」

 

EMドクロバット・ジョーカー レベル4 攻撃1800

 

「このカードの召喚に成功したとき、デッキからEMか魔術師ペンデュラムモンスター、もしくはオッドアイズモンスター1体を手札に加えることができる。俺はデッキから《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を手札に加える!そして、カードを1枚伏せて、ターンエンド!」

 

セルゲイ

手札0

ライフ4000

場 伏せカード1

 

 

遊矢

手札5→2(《EMオッドアイズ・ユニコーン》《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》

ライフ2000

場 EMドクロバット・ジョーカー レベル4 攻撃1800

  EMドラミング・コング レベル5 攻撃2000

  EMリザードロー レベル3 守備600

  天空の虹彩(永続魔法扱い)

  伏せカード1

  EMラクダウン(青) Pスケール2

  EMギタートル(赤) Pスケール6

 

「俺のターン…」

 

セルゲイ

手札0→1

 

「俺は手札からフィールド魔法《地縛園》。アクションデュエルでは、フィールド魔法は永続魔法として扱う」

発動と同時に、床や壁、天井が黒く染まっていき、周囲が紫色の炎の壁に包まれていく。

炎に触れたアクションカードは燃え尽きていき、これにより両者はアクションカードの入手が困難になっていく。

遊矢はどうにかアクションカードを確保しようと走る。

「更に、俺は永続罠《リビングデッドの呼び声》を発動。その効果で、俺は墓地から《地縛戒隷ジオグレムリーナ》を特殊召喚」

墓地から遊矢のライフを一気に半分消し飛ばしたあの不気味な獣が現れる。

現れたと同時に、紫色の炎の勢いも増した。

 

地縛戒隷ジオグレムリーナ レベル6 攻撃2000

 

「更に、《地縛園》の効果発動。俺のフィールド上に地縛戒隷が存在し、相手フィールド上にモンスターが存在するとき、デッキからカードを2枚ドローできる」

「手札増強のフィールド魔法だって!?」

セルゲイのデッキの弱点としたら、強いて言えば手札を消費しやすいというところと《異界共鳴-シンクロ・フュージョン》に上級モンスターの展開を依存しているところだ。

《地縛園》の効果で実質1ターンに3枚カードをドローできるようになったことで、2枚目以降のそのカードや墓地のそのカードを回収できるカードや、素材となるモンスターを一気にそろえることができる。

速めに除去しなければ、どんどん遊矢を価値から遠ざけていくカードだ。

 

セルゲイ

手札1→2

 

「更に、俺は手札から魔法カード《地縛救魂》を発動。フィールド魔法が発動しているとき、墓地に存在する地縛モンスターと《異界共鳴-シンクロ・フュージョン》1枚を手札に加える」

「何!?」

《融合回収》とほぼ同じような効果を持つ魔法カードによって、セルゲイの手に再び《異界共鳴-シンクロ・フュージョン》が手札に加わる。

ここからのどうなるのか、だれもがわかるだろう。

 

地縛救魂(アニメオリカ・調整)

通常魔法カード

(1):フィールド魔法が発動しているとき、自分の墓地に存在する「地縛」モンスター1体と「異界融合-シンクロ・フュージョン」1枚を対象に発動できる。そのカードを手札に加える。

 

「そして、手札から《地縛囚人グランド・キーパー》を召喚」

 

地縛囚人グランド・キーパー レベル1 攻撃300(チューナー)

 

「更に、手札から魔法カード《異界共鳴-シンクロ・フュージョン》発動。俺は《グレムリーナ》と《グランド・キーパー》でシンクロ召喚と融合召喚を行う。大地に縛られし2つの戒隷よ、呪われし魂を食み、その血をけがすために現れよ!《地縛戒隷ジオゴーレム》!《地縛戒隷ジオハイドラ》!」

再び生まれたあの不気味な渦の中から真っ黒な魔石が数か所に埋め込まれた、灰色の大きな石人形と紫の模様が描かれた6匹の黒い蛇が融合したかのような不気味なモンスターが現れる。

 

地縛戒隷ジオゴーレム レベル7 攻撃2400

地縛戒隷ジオハイドラ レベル7 攻撃2600

 

「《ジオハイドラ》の効果発動。このカードの融合召喚に成功したとき、相手フィールド上に存在する特殊召喚されたモンスターをすべて破壊する」

「何!?」

《地縛戒隷ジオハイドラ》の6匹のうちの3匹の蛇が大きな口を開き、遊矢のフィールド上に存在する3体のモンスターを捕食する。

捕食されたとしても、エクストラデッキに行くというのは分かっているが、それでもあまりにも露骨なまでにグシャリグシャリとくらっていて、見ている遊矢はあやうく嘔吐しかけた。

「更に、この効果で破壊したモンスター1体につき、ターン終了時まで攻撃力が300アップする」

 

地縛戒隷ジオハイドラ レベル7 攻撃2600→3500

 

地縛戒隷ジオハイドラ

レベル7 攻撃2600 守備1300 融合 闇属性 悪魔族

「地縛」モンスター×2

このカード名の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードの融合召喚に成功したときに、自分フィールド上にほかにカードが表側表示で存在する場合にのみ発動できる。相手フィールド上に存在する特殊召喚されたモンスターをすべて破壊する。その後、このカードの攻撃力はターン終了時まで破壊したモンスターの数×300アップする。

 

ペンデュラム召喚によって守りを固めたことがあだとなった。

すべてが特殊召喚されたモンスターということで蹂躙され、結果として遊矢は丸裸になる。

「榊遊矢のライフは2000。この2体のうちのいずれかの直接攻撃を受ければ、終わりですね」

「遊矢…」

勝利を確信し、駒をいじるロジェに対して、柚子は遊矢の身を案じる。

「バトル。《ジオハイドラ》で榊遊矢にダイレクトアタック」

《地縛戒隷ジオハイドラ》の口から強い毒が入った液体が連続で発射される。

液体が当たった足場や床はジュッという音を一瞬立てた後で溶けてしまう。

(アクションカードを…!)

アクションカードを手にしようと足場を上る遊矢だが、急に腹部から激痛を覚える。

「ぐうう…!?こんな、時に!!」

ジャックとのデュエルの後のセルゲイとの連戦。

そして、連続で使ったことで体にある程度免疫ができてしまったせいか、思ったよりも短い時間で薬が切れてしまい、遊矢の腹部の激痛がよみがえる。

よく見ると、傷口が開いてしまっており、既に出血している。

これではアクションカードを取ることができない。

「俺は…速攻魔法《イリュージョン・バルーン》を発動…!俺のフィールド上に存在するモンスターが破壊されたターン、デッキの上から5枚をめくり、その中にあるEM1体を特殊召喚できる!…よし!俺は《EMアメンボート》を特殊召喚!」

 

EMアメンボート レベル4 攻撃500

 

「そして、《アメンボート》の効果発動!攻撃表示で存在するこのカードが攻撃対象となったとき、このカードを守備表示にすることで…その攻撃を無効にする…ハァハァ…」

《EMアメンボート》によって守られた遊矢はゆっくりと起き上がる。

まだ薬はあと1本残っており、それを打てば痛みが消えるのだが、既に遊矢の脳裏からその最後の1本の存在が消えていた。

あるのはセルゲイとロジェを倒し、柚子を救うことだけだった。

「《ジオゴーレム》で《アメンボート》を攻撃…」

《地縛戒隷ジオゴーレム》の頭部にある魔石から紫色のレーザーが発射され、それに直撃した《EMアメンボート》が消滅する。

フィールドからカードがなくなったものの、これで遊矢は首の皮1枚をつなげることができた。

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド…」

 

セルゲイ

手札2→0

ライフ4000

場 地縛戒隷ジオゴーレム レベル7 攻撃2400

  地縛戒隷ジオハイドラ レベル7 攻撃3500→2600

  地縛園(永続魔法扱い)

  伏せカード1

 

 

遊矢

手札2(《EMオッドアイズ・ユニコーン》《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》

ライフ2000

場 天空の虹彩(永続魔法扱い)

  EMラクダウン(青) Pスケール2

  EMギタートル(赤) Pスケール6

 

「俺の…ターン…!グゥ…!!」

シャツに血が染みつき、もはや遊矢はアクションカードを探すことができる状態ではなかった。

よく見ると、セルゲイは一向にアクションカードを探そうとしない。

まるで、遊矢相手に不確定要素の多いアクションカードを使わないほうがいいと判断したかのように。

 

遊矢

手札2→3

 

「俺は…《天空の虹彩》の効果を発動…!《ギタートル》を破壊し、デッキから《EMオッドアイズ・ディゾルヴァー》を手札に加える…。そして、俺はスケール8の《EMオッドアイズ・ユニコーン》をセッティング…!」

《EMオッドアイズ・ユニコーン》をセッティングすると同時に、遊矢の視界がぼやけ始める。

痛みや出血のせいか、それとも疲労のせいかは分からない。

だが、仮にこの痛みがなかったら意識まで持っていかれていたかもしれない。

遊矢は今だけはロジェに撃たれたことを幸運に思いつつ、声を上げる。

「揺れろ、魂のペンデュラム!天空に描け、光のアーク!ペンデュラム召喚!現れろ、俺のモンスター!エクストラデッキから《EMシルバー・クロウ》、《EMペンデュラム・マジシャン》、《EMドラミング・コング》、《EMドクロバット・ジョーカー》、そして手札から…《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!!」

エクストラデッキと手札から一気に合計5体のモンスターが遊矢を守らんとフィールドに集結する。

同時に、遊矢のペンデュラムが赤く輝き、遊矢の体をファントムライトが包んでいく。

なぜマシンレッドクラウンに乗っていないのに、このようなことになるのかは遊矢にはわからないが、まだ戦えるだけの力を得られるのであれば、正体は何でもよかった。

 

EMペンデュラム・マジシャン レベル4 攻撃1500

EMシルバー・クロウ レベル4 攻撃1800

EMドラミング・コング レベル5 攻撃1600

EMドクロバット・ジョーカー レベル4 攻撃1800

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

「《ドラミング・コング》は1ターンに1度、相手モンスターと戦闘を行う自分のモンスターの攻撃力をバトルフェイズ終了時まで600アップさせる効果がある!それを《オッドアイズ》に使うことができれば…!」

今のセルゲイは《地縛戒隷ジオグレムリーナ》の効果に守られていない。

そして、《EMペンデュラム・マジシャン》をはじめとするレベル4モンスター2体を素材にすることで、《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》をエクシーズ召喚できる。

これで一斉攻撃でセルゲイのフィールド上のモンスターを全滅させた上に勝利することができる。

「果たして、そのような都合のいいことが実現できるでしょうかね…彼を前にして」

(それに、早くデュエルを終わらせないと…遊矢が…)

どういう理屈かわからないが、赤い光を纏った遊矢は痛みを気にすることなく立ち上がった。

だが、例の傷からは出血をしたままで、このまま放置していいはずがない。

遊矢が柚子を救いだし、生き残るにはセルゲイを倒すしかない。

 

「《ジオゴーレム》の効果発動」

《地縛戒隷ジオゴーレム》が突然両拳を床にたたきつける。

すると、真っ黒に染まった床が激しい揺れを引き起こし、遊矢のフィールド上に存在する5体のモンスターが守備表示に変わってしまう。

 

EMペンデュラム・マジシャン レベル4 攻撃1500→守備800

EMシルバー・クロウ レベル4 攻撃1800→守備700

EMドラミング・コング レベル5 攻撃1600→守備900

EMドクロバット・ジョーカー レベル4 攻撃1800→守備100

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500→守備2000

 

「何!?」

「《ジオゴーレム》が存在し、俺のフィールド上にこのカード以外の地縛モンスターが存在するとき、相手フィールド上に存在する特殊召喚されたモンスターはすべて守備表示となる…」

救いなのは《地縛戒隷ジオハイドラ》の効果が融合召喚に成功したターンにしか発動できないことだ。

仮に1ターンに1度発動できる効果だったら、また遊矢のフィールド上のカードが全滅していた。

「俺は…《ペンデュラム・マジシャン》の効果発動…!俺は《ドクロバット・ジョーカー》と《EMオッドアイズ・ユニコーン》を破壊する!そして、デッキから《EMオッドアイズ・シンクロン》と《EMカード・ガードナー》を手札に加える…。そして、空いたペンデュラムゾーンにスケール6の《EMオッドアイズ・シンクロン》をセッティング…!」

《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》と同じレンズで歯車上の形をしたサングラスをしていて、シルクハットをつけた丸い頭に手足がついたようなモンスターが光の柱を生み出す。

「《オッドアイズ・シンクロン》のペンデュラム効果発動!1ターンに1度、俺のフィールド上に存在するEM、オッドアイズ1体をこのターン、レベルを1にし、チューナーに変えることができる」

 

EMペンデュラム・マジシャン レベル4→1 守備800(チューナー)

 

遊矢はゆっくりと目線を意識を失ったままのジャックと彼に声をかけ続けるナディに向ける。

「(いくよ…ジャック!)レベル7の《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》にレベル1の《ペンデュラム・マジシャン》をチューニング!王者の咆哮、今天地を揺るがす。紅蓮の炎と共に、覇者の力宿して今こそ現れろ!シンクロ召喚!王者の魂、《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》!!」

遊矢の手によって、ジャックの魂のカードが召喚される。

ジャックが荒ぶる魂を取り戻したせいか、傷の半分以上がすでに消えており、何よりもそのドラゴンの目そのものが活力に満ちていた。

 

レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト レベル8 攻撃3000→守備2500

 

「何!?ジャック・アトラスのカードを…榊遊矢め…!!」

ジャックのカードをエクストラデッキに入れていたことを知らないロジェは驚きながら遊矢を見る。

自分にとって使い物にならなくなったジャックの処分だけを重視していて、彼の手から《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》が離れていたことに全く気付いていなかった。

「遊矢…」

「ええい、小娘め…!これで勝った気になるなぁ!!」

余裕な態度をかなぐり捨てたロジェは両手で柚子の胸ぐらをつかむ。

そのような姿をさらしているだけで王の器ではないということを証明しているにもかかわらず。

「あなたなんかに…遊矢は倒せない…!」

「貴…様ぁ…いい気になるなぁ!!」

ロジェは柚子の服に手をかけ、チャックを一気に下へおろす。

ピンク色の下着で胸部が隠れた上半身がさらされ、羞恥心から顔を赤く染め、涙をためる柚子はじっとロジェをにらむ。

「今の貴様は何もできない、ただの交渉材料だ!!そんな貴様が…王に口答えするなどぉ!!」

「あなたは…王様なんかじゃない!!自分では何もしない、何もできないただの弱い男よ!」

 

「俺に力を貸してくれ、《レッド・デーモンズ》!!1ターンに1度、このカードの攻撃力以下のこのカード以外の特殊召喚された効果モンスターをすべて破壊し、破壊したモンスターの数×500のダメージを相手に与える!アブソリュート・パワー・フレイム!!」

遊矢にうなずいた《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》が炎を宿した拳を地面にたたきつける。

底を中心に赤い炎が周囲に拡散していき、このカード以外のすべてのモンスターがその炎の中へ消えていった。

「破壊されたモンスターの数は5体!よって、2500のダメージだ!!」

「ヌオオオオオ!?!?《ジオゴーレム》の効果発動…このカードがフィールドを離れたとき、相手フィールド上に存在する特殊召喚されたモンスターはすべて攻撃表示となる…!」

 

セルゲイ

ライフ4000→1500

 

レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト レベル8 守備2500→攻撃3000

 

地縛戒隷ジオゴーレム

レベル7 攻撃2400 守備1200 シンクロ 闇属性 悪魔ぞzく

「地縛」チューナー+チューナー以外の「地縛」モンスター1体以上

(1):このカードが自分フィールド上に存在し、自分フィールド上にこのカード以外の「地縛」モンスターが存在するとき、相手フィールド上に存在する特殊召喚されたモンスターはすべて守備表示となる。

(2):このカードがフィールドから離れたときに発動する。相手フィールド上に存在する特殊召喚されたモンスターはすべて攻撃表示となる。

 

《地縛戒隷ジオゴーレム》の効果により、《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》が攻撃表示となる。

そして、今はまだメインフェイズ1であるため、バトルフェイズ中に攻撃が可能となった。

「バトルだ!《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》でダイレクトアタック!!」

ジャックの無念を晴らさんと、《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》の口から炎がはなたれ、その炎がセルゲイに襲い掛かる。

この攻撃が決まれば、遊矢の勝利が決まる。

「速攻魔法《地縛融合》発動!俺のフィールド上にモンスターが存在せず、相手フィールド上にモンスターが存在するとき、フィールド・墓地のモンスターを素材に地縛融合モンスターを融合召喚できる。俺は墓地の《ジオゴーレム》と《ジオハイドラ》を除外し、融合!融合召喚!現れろ、レベル10!《地縛戒隷ジオグラシャ=ラボラス》!」

墓地に眠る2体の囚人が1つとなり、赤い模様が描かれたコンドルに似た姿の黒いドラゴンが現れ、そのドラゴンを見た瞬間、《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》の動きが止まる。

 

地縛戒隷ジオグラシャ=ラボラス レベル10 攻撃3000

 

地縛融合(アニメオリカ・調整)

速攻魔法カード

(1):自分フィールド上にモンスターが存在せず、相手フィールド上にモンスターが存在する場合にのみ、EXデッキに存在する「地縛」融合モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。

 

同じ攻撃力3000の融合モンスターが現れた以上、ここから攻撃することは自殺行為。

遊矢は攻撃再開を命令することなく、バトルフェイズを終える。

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

セルゲイ

手札0

ライフ1500

場 地縛戒隷ジオグラシャ=ラボラス レベル10 攻撃3000

  地縛園(永続魔法扱い)

 

 

遊矢

手札2(《EMオッドアイズ・ディゾルヴァー》《EMカード・ガードナー》)

ライフ2000

場 レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト レベル8 攻撃3000

  天空の虹彩(永続魔法扱い)

  伏せカード1

  EMラクダウン(青) Pスケール2

  EMオッドアイズ・シンクロン(赤) Pスケール6

 

「俺のターン…」

 

セルゲイ

手札0→1

 

「さらに、《地縛園》の効果。デッキからカードを2枚ドローする。そして、手札から魔法カード《地縛救魂》を発動。墓地から《異界共鳴-シンクロ・フュージョン》と《地縛囚人グランド・キーパー》を手札に加える。更に、手札から魔法カード《死者蘇生》を発動。その効果で墓地から《地縛戒隷ジオハイドラ》を特殊召喚」

 

地縛戒隷ジオハイドラ レベル7 攻撃2600

 

「そして、《地縛囚人グランド・キーパー》を召喚」

 

地縛囚人グランド・キーパー レベル1 攻撃300(チューナー)

 

「更に、手札から魔法カード《異界共鳴-シンクロ・フュージョン》を発動。その効果で、《ジオハイドラ》と《グランド・キーパー》をシンクロ素材、そして融合素材となる」

今回のデュエルで実に3回目となるそのカードに遊矢は警戒する。

今度はレベル8のシンクロモンスターとともに新たな地縛融合モンスターが現れることになる。

「大地に縛られし2つの戒隷よ、呪われし魂を食み、その血をけがすために現れよ!《地縛戒隷ジオグリフォン》!《地縛戒隷ジオクラーケン》!」

渦の中から黄緑色の模様が描かれた黒いグリフォンと紫色の模様が描かれた巨大なクラーケンが現れる。

 

地縛戒隷ジオグリフォン レベル8 攻撃2500

地縛戒隷ジオクラーケン レベル8 攻撃2800

 

ここで召喚された2体のモンスターはいずれも《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》よりも攻撃力が低い。

だが、これで《地縛戒隷ジオグラシャ=ラボラス》に相討ちさせることで、そのまま遊矢に直接攻撃をかけることが可能となる。

「バトル。《地縛戒隷ジオグラシャ=ラボラス》で《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》を攻撃」

《地縛戒隷ジオグラシャ=ラボラス》の口から紫色の炎が吐き出される。

《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》は口から炎を吐き、相殺しようとするが、なぜかいくら力を集中させても炎を吐くことができない。

「《ジオグラシャ=ラボラス》の効果。このカードと戦闘を行うモンスターの攻撃力をバトルフェイズ終了時まで0にする」

 

レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト レベル8 攻撃3000→0

 

「フハハハハハ!!榊遊矢、これで貴様は終わりだぁ!私の手駒となれば、このような苦しみを感じなくて済んだものをぉ!!」

炎を吐くのをあきらめ、遊矢を守るためにわが身を盾にする《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》を見ながらロジェは狂ったように笑い始める。

「くっ…まさか…!?」

遊矢の体を包むファントムライトが消え、再び体から力が抜けていく。

もう、指もまともに動かすことができない。

(そんな…ここまで、なのか…!?)

動けない遊矢は観念するかのように目を閉じる。

「遊矢ーーーーーー!!!!!」

一瞬、遊矢の耳に柚子の叫びが聞こえ、再び遊矢の目が開く。

「俺は…罠カード…《シンクロ・バリアー》…発動…!」

必死に指を動かし、罠カードを発動すると同時に再びファントムライトが遊矢の体を包んでいく。

「俺のシンクロモンスター1体をリリースすることで、次のターン終了時まで、俺が受けるすべてのダメージを0にする!」

《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》の体が紅蓮の炎に変わり、遊矢を包み込む。

紫色の炎はそのまま遊矢を襲おうとしたが、その炎によってかき消された。

「…カードを1枚伏せ、ターンエンド…」」

 

セルゲイ

手札3→0

ライフ1500

場 地縛戒隷ジオグラシャ=ラボラス レベル10 攻撃3000

  地縛戒隷ジオグリフォン レベル8 攻撃2500

  地縛戒隷ジオクラーケン レベル8 攻撃2800

  地縛園(永続魔法扱い)

  伏せカード1

 

 

遊矢

手札2(《EMオッドアイズ・ディゾルヴァー》《EMカードガードナー》)

ライフ2000

場 天空の虹彩(永続魔法扱い)

  EMラクダウン(青) Pスケール2

  EMオッドアイズ・シンクロン(赤) Pスケール6

 

地縛戒隷ジオグラシャ=ラボラス(アニメオリカ・調整)

レベル10 攻撃3000 守備1800 融合 闇属性 悪魔族

「地縛戒隷」モンスター×2

このカード名のカードはフィールド上に1枚しか存在できない。

(1):このカードが相手モンスターと戦闘を行う場合に発動できる。そのモンスターの攻撃力をバトルフェイズ終了時まで0にする。

 

「ええい、何をしているセルゲイ!?さっさと榊遊矢にとどめをさせ!!」

《シンクロ・バリアー》でダメージを与えられない状態であるにもかかわらず、ロジェは怒り狂いながらセルゲイに無理な命令を繰り返す。

ロジェによって完全な人形に改造されているセルゲイは不可能な命令に従う理由なしと判断しているのか、何もアクションを起こさない。

「俺の…ターーーーン!!」

 

遊矢

手札2→3

 

「《天空の虹彩》の効果発動!《EMオッドアイズ・シンクロン》を破壊し、デッキから《オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン》を手札に加える!そして、俺はスケール8の《オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン》をペンデュラムスケールにセッティング!」

体の色は緑色であるものの、その姿は《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を小さくしたようなものに見えるドラゴンが青い光の柱を生み出す。

「揺れろ、魂のペンデュラム!天空に描け、光のアーク!ペンデュラム召喚!現れろ、俺のモンスター!エクストラデッキから《EMカード・ガードナー》、《EMオッドアイズ・シンクロン》、《EMドラミング・コング》、《EMペンデュラム・マジシャン》、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!!」

 

EMカード・ガードナー レベル3 守備1000

EMオッドアイズ・シンクロン レベル2 攻撃200

EMドラミング・コング レベル5 攻撃1600

EMペンデュラム・マジシャン レベル4 攻撃1500

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

さすがに度重なる召喚に疲れ果てたのか、《EMペンデュラム・マジシャン》と《EMドラミング・コング》は疲れを見せている。

遊矢自身、もうこれ以上時間をかけるつもりはなかった。

「罠発動《地縛獄門》。相手がエクストラデッキからモンスターの特殊召喚に成功し、俺のフィールド上の地縛戒隷を2体までリリースすることで、その数だけ相手の手札を墓地へ送る」

《地縛戒隷ジオグリフォン》と《地縛戒隷ジオクラーケン》がその黒い体を液体に変え、遊矢の腕に襲い掛かる。

そして、遊矢の手札にある《EMオッドアイズ・ディゾルヴァー》と《PCM-シルバームーン・アーマー》にへばりつき、無理やり墓地へ落とした。

「更に、この効果で墓地へ送ったカード1枚につき、600のダメージを与える」

 

遊矢

ライフ2000→800

 

地縛獄門

通常罠カード

(1):相手がEXデッキからモンスターの特殊召喚に成功したとき、自分フィールド上に存在する「地縛獄門」モンスターを2体までリリースすることで発動できる。その数だけ相手の手札をランダムに選択して墓地へ送る。この効果で墓地へ送られたカードの効果は発動できない。その後、この効果で墓地へ送られたカードの数×600のダメージを相手に与える。この効果は相手のカード効果では無効化されない。

 

 

地縛戒隷ジオグリフォン(アニメオリカ)

レベル8 攻撃2500 守備1500 シンクロ 闇属性 悪魔族

「地縛」チューナー+チューナー以外の「地縛」モンスター1体以上

(1):自分フィールドの「地縛」モンスターが破壊された場合、相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。その相手モンスターを破壊する。

 

地縛戒隷ジオクラーケン(アニメオリカ)

レベル8 攻撃2800 守備1200 融合 闇属性 悪魔族

「地縛」モンスター×2

(1):自分ターンに1度、相手フィールドにモンスターが特殊召喚された場合に発動できる。このターンに特殊召喚された相手フィールドのモンスターを全て破壊し、その破壊したモンスターの数×800ダメージを相手に与える。

 

「まだだ!!俺はレベル5の《ドラミング・コング》にレベル2の《EMオッドアイズ・シンクロン》をチューニング!エクストラデッキから特殊召喚された《オッドアイズ・シンクロン》はシンクロ素材となったとき、除外される!二色の眼の竜よ、怒りの業火で闇を焦がせ!シンクロ召喚!レベル7!大地を焼き尽くす業火の竜!《オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン》!!」

 

オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

「そして、《メテオバースト・ドラゴン》の効果発動!このカードの特殊召喚に成功したとき、ペンデュラムゾーンにセッティングしている俺のペンデュラムモンスター1体を特殊召喚できる!バーニング・コール!!」

咆哮と共に燃え上がる光の柱から《オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン》が飛び出す。

 

オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン レベル3 攻撃1200

 

「更に、俺はレベル7の《オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン》にレベル3の《EMカード・ガードナー》をチューニング!!」

「シンクロモンスターとペンデュラムモンスターでシンクロ召喚だと!?!?」

「平穏なる時の彼方から、あまねく世界に光を放ち、蘇れ!シンクロ召喚!現れろ、レベル10!《涅槃の超魔導剣士》!!」

 

涅槃の超魔導剣士 レベル10 攻撃3300

 

「更に、《涅槃の超魔導剣士》の効果発動!このカードがペンデュラム召喚に成功したペンデュラムモンスターをチューナーとしてシンクロ召喚に成功したとき、墓地からカードを1枚手札に加えることができる。俺は《PCM-シルバームーン・アーマー》を手札に加え、発動!このカードは俺のフィールド上に存在するレベル7のペンデュラムモンスター1体を同じ種族でランク7のエクシーズモンスターに変化させる。俺は《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》でオーバーレイ!!」

「エクシーズ…召喚…」

セルゲイの脳裏に翔太が召喚したあの死をもたらす美女の姿がよみがえる。

月の光に照らされながら、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》に銀の鎧が装備されていく。

「月の光よ、今こそ憎悪の心を鎮め、魂を救済する刃を生み出せ。ペンデュラムエクシーズチェンジ!!月の鎧纏いし二色の眼、《MLX-オッドアイズ・月下・ドラゴン》!!」

 

MLX-オッドアイズ・月下・ドラゴン ランク7 攻撃2500

 

「美…しい…」

機械であるはずのセルゲイの目から涙がこぼれる。

「《オッドアイズ・月下・ドラゴン》で《地縛戒隷ジオグラシャ=ラボラス》を攻撃!!」

「まずい…セルゲイ!!アクションカードでその攻撃を回避しろーーー!!」

攻撃力の劣る《MLX-オッドアイズ・月下・ドラゴン》の攻撃を危険だと判断したロジェが叫ぶものの、今のセルゲイにその声は届かない。

次第に笑みを浮かべると同時に、《地縛戒隷ジオグラシャ=ラボラス》が迎撃のために紫色の炎を放つ。

「バカ者ぉおおおお!!なぜだ、なぜ私の命令に従わない!?」

「《オッドアイズ・月下・ドラゴン》の効果!俺のライフが1000以下の時、このカードは戦闘では破壊されず、俺が受ける戦闘ダメージも0になる!」

自身に襲い掛かる炎を刀で切り裂き、《地縛戒隷ジオグラシャ=ラボラス》に肉薄していく。

「更に、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》をオーバーレイユニットとしているとき、攻撃した相手モンスターをダメージステップ終了時に破壊し、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与える!!」

「アクションカードを取れぇぇぇぇ!!!」

「月光のムラマサ・スラッシュ!!」

《MLX-オッドアイズ・月下・ドラゴン》の刃が《地縛戒隷ジオグラシャ=ラボラス》を真っ二つに両断する。

両断された哀れな奴隷は爆発とともに消滅し、その爆風にセルゲイは吹き飛ばされた。

だが、彼は笑みを浮かべたままだった。

 

セルゲイ

ライフ1500→0

 

地縛園

フィールド魔法カード

(1):1ターンに1度、自分フィールド上に「地縛戒隷」モンスターが存在し、相手フィールド上にモンスターが存在するときに発動できる。自分はデッキからカードを2枚ドローする。

 

ドゴンと激しい音と共にセルゲイが激突したドアが外れ、大きく吹き飛ぶ。

「遊矢!」

「馬鹿な…そんな、馬鹿な!?」

自らの最も忠実であり、最も強い駒であるはずのセルゲイが倒されたことに動揺するロジェと遊矢の勝利を喜ぶ柚子。

そんな2人の前に、ファントムライトを発動したままの遊矢がゆっくりと入ってくる。

「あ、あ、ありえない!!そうだ!!こんなのありえるはずがない!この役立たずが私の命令に従ってさえいれば…こんな、こんな小僧には!!」

机の下から銃を取ったロジェは遊矢に向けて発砲する。

しかし、あまりの動揺で手が震えているためか、それともファントムライトによって軌道が変化したためか、弾丸は遊矢には当たらず、ドアがあった場所の囲いに当たる。

「ば、ば、ば…化け物めーーーー!!!!」

再び発砲音が鳴り響く。

その瞬間、ロジェの肩に弾丸が当たり、それから感じる激痛で叫び声をあげながら、ロジェは銃を落としてしまう。

「あの人は…!」

「ヒ…ヒ…ヒイロ・リオニスぅ!!」

左手で方からの出血を止めながら、怒りのこもった目で遊矢の後ろにいる男の名を呼ぶ。

彼の右手にはピストルが握られていて、デュエルディスクのついている左手にはショットガンが握られていた。



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第85話 見えない敵

「…お待ちしてましたよ、翔太さん」

「ああ。来てやったぜ、エリク」

自動ドアが開き、真っ暗な部屋の中に翔太が入ってくる。

廊下には数多くのディアボロの残骸があり、翔太が伊織と離れた後、どれだけディアボロと戦ったかがこれを見るだけで分かってしまう。

「ああ、来たぜ…。はっきりしてもらおうって思ってな」

「はっきりと…。かまいません。私もそのつもりであなたをここにお呼びしましたから」

デュエルディスクを操作し、部屋の中の電源を起動する。

照明がつき、同時に翔太が通った自動ドアが自動的に閉鎖される。

「この話は、あまり外で聞かせるものではありませんから…。私から言えること、それは…伊織さんの両親のことです」

「両親…?融合次元にいる本当の…か?」

「はい。単刀直入に言わせていただきますと、彼女には父親がいます。彼が今の彼女にとってのたった1人の肉親です」

「母親は…って聞くのは野暮か」

母親、という言葉を聞いたエリクは少し難しい表情を浮かべた。

先ほどのエリクの発言で、母親の方はもうこの世にいないことは分かっている。

もしかしたら、その話は地雷なのかもしれないと思い、質問を辞めた。

「おそらく、伊織さんはE・HEROデッキを使用していますね?」

エリク自身、伊織がそのデッキを使ったデュエルをしているのを見たことがないためか、確認するようにたずねてくる。

それを肯定するように、翔太が無言で首を縦に振ると、エリクは話を進める。

「あのデッキは本来、デュエルアカデミアの一般のデュエル戦士が使用するはずだったプロトタイプ。それがある理由で伊織さんもろともスタンダード次元へ飛ばされてしまい、その結果第2候補として試作されたアンティーク・ギアデッキが採用されることになりました」

「で、そのデッキと伊織に何の関係がある?あいつの親父が作った、ってことか?」

「結論から言うと、そういうことになります。そして、彼はアカデミアの命令で次元転移システムの開発を行っていました。そして、その際に起こった事故により、赤ん坊だった彼女はスタンダード次元へ飛ばされてしまったのです。プロトタイプのデッキ、そしていつか彼女がデュエルをする日のためにと用意したデュエルディスクと共に…」

「気の早い親父だな…」

赤ん坊だった伊織がデュエルディスクをつけてデュエルができるようになる日が来るとしたら、少なくとも小学生くらいの年齢でだろう。

それなのに、赤ん坊のうちに彼女のデュエルディスクを入手し、プレゼントするというのはどういう神経かと疑問に感じてしまう。

「あなたにこの話を聞かせたのはほかでもない。伊織さんをスタンダード次元へ戻し、ランサーズから抜けさせていただきたいのです」

「何…?」

「彼は…自分の娘がこの戦争に巻き込まれるのを望んでいません。ですから、伊織さんと最も距離が近いあなたに伝えるようにと命じられました」

「だとしたら、なんでシンクロ次元なんだ?単に警告するのなら、舞網チャンピオンシップでのアカデミアの攻撃の時に紛れ込めばいいだろう?」

「これでも、私はアカデミアの兵士ということになっています。その時にはすでにシンクロ次元での潜入任務を受けていたため、不可能な話です」

本当はそうではないと言いたげな、回りくどい発言をするエリクにイライラを募らせつつ、翔太はじっと彼の話を聞く。

ロジェの手先であるセルゲイが融合召喚を使ったこともあり、潜入任務の目的がロジェの監視、もしくは排除であることは予測できた。

だが、なぜ自分と伊織のことをその男が知っているのかがわからなかった。

話の続きを口にしようとしたエリクだが、急に表情を変え、車いすについているデュエルディスクを起動する。

「何のつもりだ?」

「翔太さん…予定が変わりました。あなたにはカードになってもらいます」

カードを引き、じっと翔太を見続けるエリクからプレッシャーを感じた翔太はそれにこたえるように、デュエルディスクを展開する。

どういうつもりかわからないが、そのプレッシャーから、本気で彼とデュエルをしなければ負けると本能が警告していた。

(ま…その方が好都合だけどな…)

手袋で隠れているが、翔太の左手の痣の光が赤く染まっている。

エリクのデッキに記憶の鉤となるカードが眠っているという証だ。

もちろん、その痣を与えた存在が嘘をついていなければ、という話ではあるが。

「アクションフィールドを用意しても結構ですよ。この体なので、アクションカードはすべてあなたの物になりますが」

「あいにく、俺はフェアーなデュエルしかしない。このままやらせてもらう」

「その言葉、後悔しないようにしてくださいね…」

「「デュエル!!」」

 

翔太

手札5

ライフ4000

 

エリク

手札5

ライフ4000

 

「俺の先攻。俺はモンスターを裏守備表示で召喚。ターンエンド」

 

翔太

手札5→4

ライフ4000

場 裏守備モンスター1

 

エリク

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「モンスターを召喚してターン終了ですか…。消極的ですね。では…私のターン、ドロー」

 

エリク

手札5→6

 

「私は手札から魔法カード《レッドアイズ・インサイト》を発動。手札・デッキからレッドアイズモンスター1体を墓地へ送り、デッキからこのカード以外のレッドアイズ魔法・罠カード1枚を手札に加える。私はデッキから《レッドアイズ・ダークネスメタル・ドラゴン》を墓地へ送り、デッキから《真紅眼融合》を手札に加える」

「ちっ…いきなり融合魔法を…!」

「私は手札から魔法カード《真紅眼融合》を発動。手札・デッキ・フィールド上に存在する私のモンスターを素材にレッドアイズモンスターを融合召喚できる。私はデッキの《真紅眼の黒竜》と《真紅眼の鉄騎士-ギア・フリード》を融合」

《真紅眼の黒竜》の背に、光沢のある黒い鉄の鎧を身にまとった《鉄の騎士ギア・フリード》がともに後方に現れた渦に飛び込んでいく。

「赤き瞳を持つ黒竜よ、黒竜より力を与えられし鉄騎士の力を宿し、その身に刃を纏え。融合召喚!現れろ、黒鉄の鎧纏いし真紅の竜、《真紅眼の黒刃竜》!」

赤黒い体を黒一色に染め上げ、その身を同じ色の鎧で纏った《真紅眼の黒竜》が渦の中から飛び出してくる。

 

真紅眼の黒刃竜 レベル7 攻撃2800

 

「バトルです。《真紅眼の黒刃竜》で裏守備モンスターを攻撃。黒炎刃」

咆哮した《真紅眼の黒刃竜》が口からドリルのような形をした黒炎弾を発射する。

それと同時に、墓地に落ちていた《真紅眼の鉄騎士-ギア・フリード》がオーラとなってそのモンスターの身に宿る。

「《真紅眼の黒刃竜》の効果発動。レッドアイズモンスターが戦闘を行うとき、墓地に存在する戦士族モンスター1体を攻撃力200アップの装備カードとしてそのモンスターに装備させることができる」

 

真紅眼の黒刃竜 レベル7 攻撃2800→3000

 

攻撃力アップと同時に、大きくなった黒炎刃が裏守備モンスターを貫き、撃破した

 

裏守備モンスター

魔装楯タカモリ レベル4 守備2000(チューナー)

 

「これで、お前の攻撃できるモンスターはいないな…?」

「ええ、そうですが…何か?」

「俺は手札の《魔装画伯シャラク》の効果を発動。俺のフィールド上に存在する魔装モンスターが相手モンスターの攻撃によって破壊されたターンのバトルフェイズ終了時、手札から特殊召喚できる」

五芒星が刻まれた黒が基調のフルフェイスの面をかぶり、筆を持った江戸時代の町人の着物姿の画伯が翔太のフィールドに現れる。

 

魔装画伯シャラク レベル4 攻撃1200

 

「そして、この効果で特殊召喚に成功したとき、このターン戦闘で破壊された魔装モンスター1体を守備表示で特殊召喚できる。俺は墓地から《魔装楯タカモリ》を守備表示で特殊召喚する」

《魔装画伯シャラク》が和紙に《魔装楯タカモリ》の浮世絵を描くと、その絵の中からそのモンスターが飛び出してきた。

 

魔装楯タカモリ レベル4 守備2000(チューナー)

 

「なるほど…そのカードがあったから、あえて私が攻撃しやすいように…。ですが、私が複数モンスターを召喚し、一斉攻撃をしていたら、それでは通用しなかったでしょうね?」

「さあ…どうだろうな?仮にそのモンスターを5体用意したとしても、このターンしのぐ自信はあったぜ?」

ニッと笑いながら、大ぼらを吹くように翔太は言う。

嘘をついているというのは分かっているが、あまりにも堂々としていて、逆にすがすがしさを覚えてしまい、エリクは笑みを浮かべる。

「では…私はカードを2枚伏せて、ターンエンド」

 

翔太

手札4→3

ライフ4000

場 魔装画伯シャラク レベル4 攻撃1200

  魔装楯タカモリ(《魔装画伯シャラク》の影響下) レベル4 守備2000(チューナー)

 

エリク

手札6→3

ライフ4000

場 真紅眼の黒刃竜(《真紅眼の鉄騎士-ギア・フリード》装備) レベル7 攻撃3000

  伏せカード2

 

「俺のターン!」

 

翔太

手札3→4

 

「このカードは俺のフィールド上に存在する魔装モンスター1体の攻撃力を半分にすることで、手札から特殊召喚できる。《シャラク》の攻撃力を半分にし、《魔装鬼ストリゴイ》を特殊召喚」

《魔装画伯シャラク》の心臓に直接尻尾を突き刺し、血を吸った《魔装鬼ストリゴイ》は赤い目を光らせ、上空を舞う。

 

魔装画伯シャラク レベル4 攻撃1200→600

魔装鬼ストリゴイ レベル5 攻撃2100

 

「そして、俺はレベル4の《シャラク》にレベル4の《タカモリ》をチューニング。茨の園より生まれし稲妻の竜よ、空を振るわし、大地に鉄槌を。シンクロ召喚!現れろ、《魔装雷竜リンドヴルム》!」

 

魔装雷竜リンドヴルム レベル8 攻撃3000

 

「更に、このカードは俺のフィールド上に存在する魔装モンスター1体をリリースすることで、手札から特殊召喚できる。《ストリゴイ》をリリースし、《魔装鳥フェニックス》を特殊召喚」

《魔装鬼ストリゴイ》が自らの体を炎に変化させ、その姿を《魔装鳥フェニックス》へと変えていく。

 

魔装鳥フェニックス レベル7 攻撃2300

 

「そして、手札から魔法カード《魔装天啓》を発動。俺のエクストラデッキ・墓地に存在する魔装ペンデュラムモンスター2体を手札に加える。俺は《シャラク》と《ストリゴイ》をエクストラデッキから手札に加える。そして、俺はスケール3の《魔装画伯シャラク》とスケール8の《魔装鬼ストリゴイ》でペンデュラムスケールをセッティング」

一度はさらなる魔装モンスター召喚のための足場となった2体のペンデュラムモンスターが青い光の柱を生み出す。

そして、《魔装画伯シャラク》はその光の中で再び浮世絵を書き始めた。

「更に、《魔装画伯シャラク》のペンデュラム効果発動。このカードを発動したターン、もう片方のペンデュラムゾーンに魔装ペンデュラムカードが存在するとき、デッキから魔装モンスター1体を手札に加えることができる。俺はデッキから《魔装騎士ペイルライダー》を手札に加える」

《魔装騎士ペイルライダー》の浮世絵を完成させた《魔装画伯シャラク》の仮面の五芒星が光りはじめ、デッキから《魔装騎士ペイルライダー》が自動的に排出される。

 

魔装画伯シャラク

レベル4 攻撃1200 守備1400 闇属性 魔法使い族

【Pスケール:青3/赤3】

このカード名の(2)のP効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。

(2):このカードを発動したターンのメインフェイズ時、もう片方の自分のPゾーンに「魔装」Pカードが存在するときにのみ発動できる。デッキから「魔装」Pモンスター1枚を手札に加える。この効果を発動したターン、自分は「魔装」モンスター以外のモンスターを召喚・特殊召喚できない。

【モンスター効果】

このカード名の(1)(2)のモンスター効果はそれぞれ1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に存在する「魔装」モンスターが相手モンスターの攻撃によって破壊された相手ターンのバトルフェイズ終了時に発動できる。このカードを手札から特殊召喚できる。

(2):この効果で特殊召喚に成功したとき、墓地に存在するこのターン戦闘で破壊された「魔装」モンスター1体を対象に発動する。そのモンスターを特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。

 

「そして、俺はレベル4から7のモンスターのペンデュラム召喚を行う!来たれ、時の果てに眠りし英雄の魂。漆黒の魂と契約し、封印から解き放たん!ペンデュラム召喚!現れろ、第4の騎士、《魔装騎士ペイルライダー》!」

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

 

「そして、俺は手札から魔法カード《黙示録のラッパ》を発動。俺がペンデュラム召喚に成功したモンスターが《魔装騎士ペイルライダー》1体のみの場合、俺のフィールド上に存在するそいつ以外の魔装モンスターの数だけ、デッキからカードをドローできる。俺のフィールド上に存在するのは《魔装雷竜リンドヴルム》と《魔装鳥フェニックス》。よって、俺はデッキからカードを2枚ドローする」

 

黙示録のラッパ

通常魔法カード

このカード名のカードは1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分がP召喚に成功したモンスターが「魔装騎士ペイルライダー」1体のみの場合に発動できる。自分フィールド上に存在するそのカード以外の「魔装」モンスターの数だけデッキからカードをドローする。

 

「バトルだ。《ペイルライダー》で《真紅眼の黒刃竜》を攻撃!」

「攻撃力の劣る《ペイルライダー》で攻撃…?裏がありますね?」

エリクの予想が正しいと言わんばかりに、青い光の柱の中から《魔装鬼ストリゴイ》が飛び出してきて、尻尾を《真紅眼の黒刃竜》の心臓に突き刺し、力を奪っていく。

「当然だ。《魔装鬼ストリゴイ》のペンデュラム効果。魔装騎士の攻撃宣言時、相手フィールド上に存在するモンスターの攻撃力・守備力を600ダウンさせる」

 

真紅眼の黒刃竜 レベル7 攻撃3000→2400

 

「クアトロ・デスブレイク!」

《魔装騎士ペイルライダー》がライフルを上空で立体機動をしながら、ライフルを発射する。

ライフル発射と同時に、血を吸う鬼は青い光の柱の中へ去っていき、残された赤い瞳のドラゴンはビームで打ち抜かれ、消滅する。

「く…だが、私は《真紅眼の黒刃竜》の効果発動…!このカードが破壊されたとき、このカードに装備されているモンスターを可能な限り特殊召喚できる。私は《真紅眼の鉄騎士-ギア・フリード》を守備表示で特殊召喚」

消滅した《真紅眼の黒刃竜》のオーラがフィールドに残り、それが本来の姿を取り戻してエリクの盾となる。

 

真紅眼の鉄騎士-ギア・フリード レベル4 守備1600

 

エリク

ライフ4000→3900

 

「なら俺は《魔装鳥フェニックス》で《ギア・フリード》を攻撃!」

《魔装鳥フェニックス》が口から火球を放つ。

火球を受けた《真紅眼の鉄騎士-ギア・フリード》は焼き尽くされ、消滅していく。

これで、エリクを守るモンスターはフィールドからいなくなった。

「更に《リンドヴルム》でダイレクトアタック!ライトニング・ストライク!」

《魔装雷竜リンドヴルム》が雷を纏い、エリクに向けて突撃する。

「《リンドヴルム》の効果発動!このカードが攻撃するとき、攻撃対象となったモンスターの攻撃力以下のモンスター、もしくは魔法・罠カード1体を破壊する。俺はお前の伏せカードを破壊する!」

突撃すると同時に、床から茨が出てきて、それがエリクの伏せカードを串刺しにする。

串刺しにされたそのカードは茨から発生した電撃を浴びる。

 

破壊された伏せカード

・鎖付き真紅眼牙

 

「ならば、私は罠カード《パワー・ウォール》を発動。私が相手モンスターの攻撃によって戦闘ダメージを受けるとき、ダメージ500ごとにデッキの上からカードを1枚墓地へ送ることで、戦闘ダメージを0にする」

エリクのデッキから6枚のカードが墓地へ送られ、透明な盾が《魔装雷竜リンドヴルム》の突撃からエリクを守る。

 

デッキから墓地へ送られたカード

・ライトパルサー・ドラゴン

・竜の霊廟

・攻撃の無力化

・王者の看破

・真紅眼の凶星竜-メテオ・ドラゴン

 

「防がれたか…。俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

翔太

手札4→1

ライフ4000

場 魔装雷竜リンドヴルム レベル8 攻撃3000

  魔装鳥フェニックス レベル7 攻撃2300

  魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

  伏せカード1

  魔装画伯シャラク(青) ペンデュラムスケール3

  魔装鬼ストリゴイ(赤) ペンデュラムスケール8

 

エリク

手札3

ライフ3900

場 なし

 

「私のターン、ドロー」

 

エリク

手札3→4

 

「私は手札から魔法カード《死竜蘇生》を発動。手札1枚を墓地へ送り、私かあなたの墓地からドラゴン族モンスター1体を特殊召喚する。私は《カーボネドン》を墓地へ送り、《レッドアイズ・ダークネスメタル・ドラゴン》を特殊召喚」

 

レッドアイズ・ダークネスメタル・ドラゴン レベル10 攻撃2800

 

死竜蘇生

通常魔法カード

(1):手札1枚を墓地へ送ることで発動できる。自分または相手の墓地に存在するドラゴン族モンスター1体を特殊召喚する。

 

「そのドラゴンは…!」

《レッドアイズ・インサイト》の効果で墓地に仕掛けられたドラゴン族御用達のモンスター。

更に、追い討ちと言わんばかりに《カーボネドン》まで墓地に仕掛けられた。

ここからエリクによるドラゴン祭りが始まる。

「私は《レッドアイズ・ダークネスメタル・ドラゴン》の効果を発動。1ターンに1度、手札・墓地からドラゴン族モンスター1体を特殊召喚できる。私は墓地から《メテオ・ドラゴン》を特殊召喚」

 

真紅眼の凶星竜-メテオ・ドラゴン レベル6 攻撃1800

 

「更に墓地の《カーボネドン》の効果発動。墓地のこのカードを除外することで、手札・デッキからレベル7以下のドラゴン族通常モンスター1体を特殊召喚することができる。私はデッキから《真紅眼の黒竜》を特殊召喚」

 

真紅眼の黒竜 レベル7 攻撃2400

 

「更に、私は《メテオ・ドラゴン》を再度召喚し、デュエル効果を発動する」

「ちっ…通常召喚の権利をここで…!」

「このカードが存在する限り、このカード以外のレッドアイズモンスターは戦闘及びカード効果では破壊されない。これで、あなたは《メテオ・ドラゴン》を倒さない限り、ほかのレッドアイズモンスターを破壊できなくなりました。更に、私は手札の《黒鋼竜》の効果発動。このカードを攻撃力600アップの装備カード扱いにし、レッドアイズモンスター1体に装備する。私はこのカードを《メテオ・ドラゴン》に装備」

 

真紅眼の凶星竜-メテオ・ドラゴン レベル6 攻撃1800→2400

 

「更に、私の墓地に存在する闇属性モンスターが3体であるため、このカードは手札から特殊召喚できる。《ダーク・アームド・ドラゴン》を特殊召喚」

 

ダーク・アームド・ドラゴン レベル7 攻撃2800

 

「ちっ…」

《魔装雷竜リンドヴルム》が存在するため、バトルに対してはある程度抵抗できるのだが、《ダーク・アームド・ドラゴン》が現れたとなると話は別になる。

「《ダーク・アームド・ドラゴン》の効果発動。墓地の闇属性モンスター1体を除外することで、フィールド上のカード1枚を破壊できる。私は墓地の《真紅眼の鎧騎士-ギア・フリード》を除外し、《リンドヴルム》を破壊」

《ダーク・アームド・ドラゴン》の腹部の回転カッターが発射され、それが《魔装雷竜リンドヴルム》を襲う。

茨を召喚し、それを盾にしようとするが、刃によって次々と切り裂かれていき、ついには自身の体をそれで盾に真っ二つに両断されてしまった。

「更に私は墓地の《真紅眼の黒刃竜》を除外し、《魔装鬼ストリゴイ》を破壊」

休むことなく続けて発射された回転カッターが今度は《魔装鬼ストリゴイ》を切り裂く。

これで翔太はペンデュラム召喚を行えなくなっただけでなく、相手モンスターの弱体化もできなくなった。

「バトル。《真紅眼の黒竜》で《魔装鳥フェニックス》を攻撃。黒炎弾」

黒炎弾が発射され、それの直撃を受けた《魔装鳥フェニックス》が消滅する。

カード効果によって破壊されると次のターンに復活する不死鳥だが、戦闘破壊であっては意味がない。

 

翔太

ライフ4000→3900

 

「更に《レッドアイズ・ダークネスメタル・ドラゴン》で《ペイルライダー》を攻撃」

《レッドアイズ・ダークネスメタル・ドラゴン》の口から黒い炎のブレスが放たれる。

炎に焼かれた《魔装騎士ペイルライダー》は道連れにするためにライフルを撃つが、ビームは黒い体に弾かれる。

「《メテオ・ドラゴン》の効果を受けた《レッドアイズ・ダークネスメタル・ドラゴン》は破壊されない」

「俺は手札の《魔装守衛ランマル》の効果発動。俺のフィールド上に存在する魔装騎士が破壊されるとき、代わりにこのカードを手札から墓地へ捨てることができる」

《魔装守衛ランマル》のソリッドビジョンから力を受けた《魔装騎士ペイルライダー》が自身を包む炎をビームの剣で切り払う。

「更に、この効果を発動したとき、俺のフィールド上に存在するモンスターが1体のみの時、デッキからカードを1枚ドローすることができる」

 

翔太

ライフ3900→3600

 

「なるほど…これでこのターンをしのぐ、ということですね?《ダーク・アームド・ドラゴン》で《ペイルライダー》を攻撃」

続けて《ダーク・アームド・ドラゴン》の黒い炎が宿った拳が《魔装騎士ペイルライダー》を襲う。

「永続罠《エヌルタの慈悲》を発動!1ターンに1度、魔装シンクロ・エクシーズ・融合モンスター、もしくは魔装騎士モンスターが相手モンスターを戦闘を行うとき、発生する相手への戦闘ダメージを倍にする」

「このタイミングでは無意味な効果…ということは、狙いは別の…」

《真紅眼の凶星竜-メテオ・ドラゴン》に守られていない《ダーク・アームド・ドラゴン》は《魔装騎士ペイルライダー》の効果で破壊されてしまうのは明白で、拳を受けると同時に胸部をビームで打ち抜かれ、相討ちという形で消滅する。

 

翔太

ライフ3600→3300

 

「《エヌルタの慈悲》は俺のフィールド上に魔装モンスターが存在しない場合、墓地へ送られる。そして、このカードが自身の効果で墓地へ送られたとき、デッキから魔装ペンデュラムモンスター1体を手札に加えることができる。俺はデッキから《魔装斬鬼ロクベエ》を手札に加える」

「そして、《メテオ・ドラゴン》でダイレクトアタック」

《真紅眼の凶星竜-メテオ・ドラゴン》の口から発射される黒い炎の岩石の直撃を受け、翔太の体が後方の閉鎖された自動ドアにたたきつけられる。

「グアア…グゥ…!!」

 

翔太

ライフ3300→900

 

「私はこれで、ターンエンド…(果たして、《エヌルタの慈悲》を見誤ったことがどう響いてくるか…)」

 

翔太

手札1→2(うち1枚《魔装斬鬼ロクベエ》)

ライフ900

場 魔装画伯シャラク(青) ペンデュラムスケール3

 

エリク

手札4→0

ライフ3900

場 レッドアイズ・ダークネスメタル・ドラゴン レベル10 攻撃2800

  真紅眼の黒竜 レベル7 攻撃2400

  真紅眼の凶星竜-メテオ・ドラゴン(《黒鋼竜》装備 効果モンスター扱い) レベル6 攻撃2400

 

危機は脱したものの、翔太のライフは一気に900まで減ってしまった。

有利な状況を展開するエリクだが、彼は翔太が手にした《魔装斬鬼ロクベエ》に注目する。

(《エヌルタの慈悲》の効果があれば、翔太さんはスケール8以上のペンデュラムモンスターを手札に加え、再び《ペイルライダー》や《ストリゴイ》を召喚し、守りを固めることもできた。しかし、手札に加えた《ロクベエ》のスケールは4…)

当然、スケール3と4の幅でペンデュラム召喚できるモンスターはいない。

侑斗が持っていた《霊獣の聖剣士-ユウ》のような特定の条件下でペンデュラムスケールを無視してペンデュラム召喚できるモンスターも翔太のデッキにはない。

「俺のターン!」

 

翔太

手札2→3

 

「はぁ、はぁ、はぁ…」

(伊織さん、これ以上は…)

傷だらけになり、荒くなった息を整えながら、伊織は《E・HEROセラフィム》でディアボロを1機撃破する。

しかし、いくら倒してもまた次のディアボロが現れ、ロボットとは違って疲れという概念のある人間が追い詰められるのは明白だ。

伊織も、疲労のせいで3つ前のディアボロを撃破したときからプレイミスを起こすようになっていた。

「大丈夫、大丈夫…。私はまだ…!あ、あれ…?」

自覚していなかった疲れが襲ってきたのか、伊織がフラリとした後でその場に座り込んでしまう。

立ち上がろうと足に力を入れるが、脳と心の命令に肉体が追い付かない。

「くうう…」

幸い、指と腕が動くため、伊織は必死にカードを手にする。

しかし、それと同時に伊織にゆっくりと近づいてきていたディアボロが足を止める。

「あ…あれ??」

伊織の周囲を包囲するディアボロが動きを止めていき、両目の光も消えていく。

何が起こったかわからない伊織は腕を使ってゆっくりとディアボロに這って近づいていく。

近づいても何も反応を見せておらず、デュエルディスクも電源が切れてしまっている。

「どうなってるんだろう…?」

ダメもとで伊織はディアボロのデッキを取って、中身を確認する。

当然のように、カードはすべて真っ白になっており、使い物にならなくなっていた。

 

「俺は手札から魔法カード《ペンデュラム・ホルト》を発動。エクストラデッキにペンデュラムモンスターが3体以上表向きで存在するとき、デッキからカードを2枚ドローする。ただし、このカードを発動したターン、俺はペンデュラム召喚を行えない」

 

ペンデュラム・ホルト(漫画オリカ・調整)

通常魔法カード

このカード名のカードは1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分のEXデッキの表側表示のPモンスターの数が3体以上の場合に発動できる。デッキからカードを2枚ドローする。このカードを発動したターン、自分はP召喚を行えない。

 

「更に俺は手札から魔法カード《エクストラ・フュージョン》を発動。エクストラデッキのモンスターを素材に融合召喚を行う。俺が融合素材にするのは《魔装騎炎ブリュンヒルデ》と《魔装騎士ホワイトライダー》。滅びの炎纏いし美しき死神よ、第1の騎士よ、魔導の力によりて、今1つとならん。融合召喚!炎の聖女、《魔装聖女ジャンヌ》!このカードの攻撃力は融合素材にした魔装モンスターの元々の攻撃力の合計になる!」

 

魔装聖女ジャンヌ レベル8 攻撃5900

 

「攻撃力5900…しかし、《メテオ・ドラゴン》の効果でこのカード以外のレッドアイズは戦闘及びカード効果では破壊されません」

「で…《メテオ・ドラゴン》を攻撃しろと?そういうリクエストには答えられないな」

翔太の言葉にさすがに自分の思う通りに行動はとらないなと思いながら、エリクは笑みを浮かべる。

《真紅眼の凶星竜-メテオ・ドラゴン》に装備されている《黒鋼竜》はフィールドから墓地へ送られたとき、デッキからレッドアイズと名の付くカードを1枚手札に加える効果がある。

それを利用して、再び《真紅眼融合》を手札に加えられてしまう可能性がある。

攻撃力が5900の《魔装聖女ジャンヌ》を破壊するようなモンスターを召喚されてしまう可能性が大きい。

「だから、お前にダメージを与えることを優先する!俺は《魔装聖女ジャンヌ》で《真紅眼の黒竜》を攻撃!」

炎に包まれた刀身の片手剣を手にした《魔装聖女ジャンヌ》が《真紅眼の黒竜》に切りかかる。

攻撃そのものは、突然現れた黒い炎の楯に阻まれたものの、攻撃の余波はエリクに届いている。

 

エリク

ライフ3900→1400

 

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

翔太

手札4→2(うち1枚《魔装斬鬼ロクベエ》)

ライフ900

場 魔装聖女ジャンヌ レベル8 攻撃5900

  伏せカード2

  魔装画伯シャラク(青) ペンデュラムスケール3

 

エリク

手札0

ライフ1400

場 レッドアイズ・ダークネスメタル・ドラゴン レベル10 攻撃2800

  真紅眼の黒竜 レベル7 攻撃2400

  真紅眼の凶星竜-メテオ・ドラゴン(《黒鋼竜》装備 効果モンスター扱い) レベル6 攻撃2400

 

「私のターン、ドロー」

 

エリク

手札0→1

 

「私は手札から魔法カード《七星の宝刀》を発動。手札・フィールドに存在するレベル7のモンスター1体を除外し、デッキからカードを2枚ドローする」

《真紅眼の黒竜》がフィールドから姿を消し、エリクの手に2枚のカードが加わる。

それを見たエリクはフッと笑みを浮かべ、まずは《レッドアイズ・ダークネスメタル・ドラゴン》に目を向ける。

「《レッドアイズ・ダークネスメタル・ドラゴン》の効果発動。墓地から《ライトパルサー・ドラゴン》を特殊召喚」

 

ライトパルサー・ドラゴン レベル6 攻撃2500

 

「更に私は手札から魔法カード《ミニマム・ガッツ》を発動。自分フィールド上に存在するモンスター1体をリリースし、相手フィールド上に存在するモンスター1体の攻撃力をターン終了時まで0にする」

「何!?」

《ライトパルサー・ドラゴン》が光の球体となって、《魔装聖女ジャンヌ》に向けて飛んでいく。

炎の聖女はやむなく剣でそれを受け止めると、光の球体はその刀身を砕いた後で消滅してしまった。

 

魔装聖女ジャンヌ レベル8 攻撃5900→0

 

「よりによってそのカードを引くかよ…!?」

「運は私に味方した、ということでしょう。《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》で《魔装聖女ジャンヌ》を攻撃」

《レッドアイズ・ダークネスメタル・ドラゴン》の炎のブレスが《魔装聖女ジャンヌ》を襲う。

このモンスターだけではない、残り1体のレッドアイズの攻撃を受けたとしても、翔太のライフが0になってしまう。

「罠発動!《アイギスの盾》!俺のフィールド上に存在する魔装モンスターが攻撃対象となったとき、デッキからカードを1枚ドローし、バトルフェイズを終了させる!」

五芒星が刻まれ、外周に黄色いラインのある鋼の盾が聖女の目の前に召喚され、彼女はそれで炎を受け止める。

そして、翔太は効果によりカードをドローする。

(こいつは…!)

「…私はカードを1枚伏せ、ターンエンド。《ミニマム・ガッツ》の効果は消えますが、《ジャンヌ》の攻撃力は戻りません」

 

翔太

手札2→3(うち1枚《魔装斬鬼ロクベエ)

ライフ900

場 魔装聖女ジャンヌ レベル8 攻撃0

  伏せカード1

  魔装画伯シャラク(青) ペンデュラムスケール3

 

エリク

手札1→0

ライフ1400

場 レッドアイズ・ダークネスメタル・ドラゴン レベル10 攻撃2800

  真紅眼の凶星竜-メテオ・ドラゴン(《黒鋼竜》装備 効果モンスター扱い) レベル6 攻撃2400

  伏せカード1

 

アイギスの盾

通常罠カード

(1):自分フィールド上に存在する「魔装」モンスターが攻撃対象となったときに発動できる。デッキからカードを1枚ドローし、バトルフェイズを終了する。

 

「俺のターン!」

 

翔太

手札3→4

 

「俺は空いたペンデュラムスケールにスケール4の《魔装斬鬼ロクベエ》をセッティング。そして、このカードは俺の手札・墓地に存在する魔装騎士1体を除外することで、手札から特殊召喚できる。俺は墓地の《ホワイトライダー》を除外し、《魔装騎士ケントゥリア》を特殊召喚」

 

魔装騎士ケントゥリア レベル2 攻撃300(チューナー)

 

「ペンデュラムチューナー…無属性とは…」

「とっておきを見せてやるよ…。俺はペンデュラムゾーンに存在するレベル4の《シャラク》と《ロクベエ》にレベル2の《ケントゥリア》をチューニング!」

ペンデュラムスケールを生み出していた2体のモンスターを2つの透明なチューニングリングが包んでいく。

「死者と生者を整理せし漆黒の力、今こそ惰生をむさぼりし魂を無へ落とせ!ペンデュラムシンクロ!!現れろ、魂を無へ導く者、《魔装騎士HADES》!」

 

魔装騎士HADES レベル10 攻撃3000

 

召喚された《魔装騎士HADES》が指を鳴らすと、彼の背後にマグマでできた巨大な蛇が現れ、その蛇が2体のモンスターをにらみつける。

「《HADES》…。死者が赴く場所、もしくは冥府の神。なるほど、黙示録の四騎士から派生したモンスターとしてはふさわしい名前だ」

「そんな余裕をかましている場合かよ。俺は《HADES》の効果を発動!このカードのシンクロ召喚に成功したとき、フィールド上に存在するカードを3枚まで破壊できる。俺は《メテオ・ドラゴン》と《レッドアイズ・ダークネスメタル・ドラゴン》、そして伏せカードを破壊する!」

炎の蛇が大きく口を開き、エリクのフィールドに向けて突っ込んでいく。

《レッドアイズ・ダークネスメタル・ドラゴン》は上空へ飛んで回避したが、伏せカードと《真紅眼の凶星竜-メテオ・ドラゴン》が飲み込まれていく。

飲み込まれたそれらはそのまま炎で焼き尽くされていき、炎の蛇は姿を消していった。

 

破壊された伏せカード

・レッドアイズ・バーン

 

「おいおい、伏せカードはブラフかよ。もしくは引き分けでも狙っていたのか?」

「最悪の場合は、ですがね。《黒鋼竜》がフィールドから墓地へ送られたことにより、効果を発動。私はデッキから《真紅眼融合》を手札に加える」

「俺は手札から《魔装獣ユニコーン》を召喚」

 

魔装獣ユニコーン レベル4 攻撃1600

 

「このカードは魔装騎士の装備カードとなることができ、装備モンスターの攻撃力は1000アップする」

《魔装獣ユニコーン》の背中に乗った《魔装騎士HADES》が上空から落ちてきた巨大な鎌を手にし、《レッドアイズ・ダークネスメタル・ドラゴン》をじっと見る。

鎌の刀身はまるで鏡のように輝いており、その黒い竜の顔が映っている。

 

魔装騎士HADES レベル10 攻撃3000→4000

 

エリクは目を閉じ、潔く攻撃を受ける決心をする。

「バトルだ。《HADES》で《レッドアイズ・ダークネスメタル・ドラゴン》を攻撃!」

《魔装獣ユニコーン》が嘶くと、まっすぐ《レッドアイズ・ダークネスメタル・ドラゴン》に向けて突っ込んでいく。

《魔装騎士HADES》の大鎌は《レッドアイズ・ダークネスメタル・ドラゴン》の胴体と頭を切り離し、その頭部は床に転げ落ちた。

「《ユニコーン》を装備したモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊したとき、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える」

 

エリク

ライフ1400→1200→0

 

ソリッドビジョンが消滅するとともに、翔太の頭に激痛が発生する。

「ぐ…!?ま、またか…!?!?」

視界が白く染まり、やがてそれは真っ暗な石造りの空間へと変化していく。

そこでは青いタコかイカをかぶったかのような髪形の男がオレンジ色の髪の男とデュエルをしていた。

時代が違うのか、使っているのはカードではなく石板ではあるが。

オレンジの男のフィールドには頭に紫色の杖が横に刺さっているかのような形をした、ギリシャ神話に登場するラミアのような姿のゴーレムがいて、青の男のフィールドには水色で杖を持った巨人がいる。

「消えろ!…!!」

青の男がオレンジの男の名前を大声で叫ぶが、案の定というべきか、その声だけ翔太の耳には聞こえなくなっている。

巨人の杖による一撃が決まり、オレンジの男は敗北し、あおむけで床に倒れる。

「妹の…民たちの、貴様に殺されたすべての者たちの仇だ!!」

「ふざけんじゃねえ…ふざけんじゃねえぞ!?てめえに負ける道理がどこにある!?俺には…負けれねえ理由があるんだよ!!」

「前に言っていたな、…。俺の心に宿るやさしさと正義が弱点だと。だが…それが俺に力を与えた。そして、俺のもだえ苦しむ姿見たさに策謀を重ねたことが、俺の怒りを爆発させ、貴様を自滅への道へ突き進ませた!」

「…!!てめえだけは、てめえだけは…!?!?な、なんだ!?なんだこれは!?」

なおも食い下がろうとオレンジの男は剣を手にし、青の男を殺そうとするが、剣を持つ手が透明な細い手に捕まれ、さらに複数の手がその腕をつかんで彼の腕の骨をバキバキと折っていく。

「うわああああ!?!?な、なんだ…!なんだお前ら!?!?」

「俺にはわかるぜ、…。死んでいった奴らが貴様に復讐したいとな」

翔太はオレンジの男を襲う手の正体を見る。

その透明な手の先には人型の亡霊がいて、右腕だけでは飽き足らず、左腕や頭など、その手は全身にまで及んでいた。

そして、その腕は骨を折り、肉を引き裂いていく。

「ガアアアアア!!許さねえ、…!!地獄へ落ちたとしても、何度生まれ変わったとしても、てめえだけは絶対殺してやる、殺してやるぜ、…!!!」

オレンジの男の声を聞くことなく、青の男はその場を後にしていく。

その空間は男の断末魔の声に包み込まれていき、その場にはそれが人間かどうかわからないほどに木っ端みじんとなった遺体だけが残っていた。

「これが彼の末路…。このまま冥界でおとなしくしていればよかったのに」

翔太の隣に石倉純也の小さいころそっくりな姿の少年が現れ、その遺体をじっと見つめている。

その声は翔太の耳に聞こえた「思い出してはいけない」という声とそっくりだった。

「お前かよ、俺にこれ以上思い出すなって言ったのは」

「そう…。あいつは信用できないから…」

「で、誰なんだよお前は」

「僕?僕は…もう1人のあなただ」

「もう1人の俺…?おい、それはどういう!?!?」

少年に問い詰めようとするが、彼は姿を消し、同時に翔太はその空間の中から消えていく。

(ちっ…てめえに自由になり資格はねえぞ!?あいつは…俺の所有物なんだぜ?)

誰もいなくなった空間の中で、声だけが響いた。

 

「…太君、翔太君!!」

「伊織…??」

「翔太君!!ああ、よかった!!」

目を開いた翔太の目には涙をためた伊織の姿があり、彼が目覚めたのを見た彼女は思いっきり抱き着いてきた。

「よかった!!翔太君、ここで見つけたときには倒れてて、息もしてなくて…」

「…記憶の鍵を手に入れたからな。それより、あいつは…エリクは…!?」

伊織から解放された翔太は即座に彼のことを尋ねる。

今いる場所は翔太がエリクとデュエルをした場所であり、彼の姿はどこにもない。

「わからない…。ついた時には翔太君が倒れてて、エリクさんの姿はどこにも…。それから、ディアボロも動かなくなっちゃって」

「あいつを倒したことで、停止したのか?それとも…」

翔太はエリクがいた場所をじっと見る。

チームオーファンのボスを名乗っていた彼とのデュエルは確かに勝った。

しかし、彼は自分が記憶を取り戻す間に行方不明となり、ディアボロ達は動きを止めた。

そして、記憶の中で出会った少年。

謎が、ただ謎だけが翔太の中に残った。

そんな翔太と伊織のデュエルディスクに通信が入る。

(秋山翔太と永瀬伊織、聞こえているか?)

「ようやくか…。シンクロ次元では初めて声を聞くな、ボス」

皮肉交じりに声の主である零児を呼ぶ翔太。

別行動をさせ、このような事態になっても何も指示を出さない零児に対して、文句の一つは言いたくなる。

(君たちシェイドとランサーズのおかげで、セキュリティ及びアカデミアの撃退に成功した。その際、コモンズやトップスからも協力者がいた。住民やこの次元のデュエリストの中には犠牲者も出たが、まずはこの次元を守り抜けたことは大きな成果だ)

「そっか…勝ったんだ…よかった…」

混沌を極めたシンクロ次元での戦いに勝利できたことにほっとする伊織。

零児が言うように犠牲者、つまりはカードにされてしまった人々がいることを考えると素直には喜べないが。

(だが、残念な知らせがある。榊遊矢のことだが…)

「…ええ!?遊矢君が!?」

「くそっ…!!」

零児からの言葉を聞いた伊織と翔太は言葉を失った。



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オリカ紹介Ⅴ

第68話から第85話までのオリカと非公式オリカ(効果調整あり)を紹介。


Sp-ファイティング・ドロー

「Sp-ファイティング・ドロー」は1ターンに1度しか発動できず、このカードの発動に対して、相手は魔法・罠・モンスター効果を発動できない。

(1):自分フィールド上にカードがなく、手札がこのカードだけのとき、自分のスピードカウンターをすべて取り除くことで発動できる。相手が前のターンに特殊召喚したモンスターの数だけ、デッキからカードをドローする。

 

RR-ライトニング・イーグル

レベル3 攻撃1400 守備1000 闇属性 鳥獣族

【Pスケール:青1/赤1】

「RR-ライトニング・イーグル」のP効果はこのカードがPゾーンに存在する限り、1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に「RR」XモンスターがX召喚されたターンのメインフェイズ時に発動できる。デッキから「RUM」魔法カード1枚を手札に加える。

【モンスター効果】

「RR-ライトニング・イーグル」の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):相手モンスターの攻撃によってこのカードが戦闘を行い、自分が戦闘ダメージを受けたときに発動できる。自分はその時受けたダメージの数値以下の攻撃力を持つ「RR」モンスター1体をデッキから手札に加える。

 

RR-ターゲット・フラッグ(アニメオリカ)

永続罠カード

(1):相手フィールドのモンスター1体を対象として発動する。自分はデッキから1枚ドローし、お互いに確認する。その対象のモンスターがフィールドを離れた時、このカードを破壊し、相手の手札を確認する。確認したカードの中にこのカードの効果でドローしたカードと同じ種類のカード(モンスター・魔法・罠)がある場合、 その全てを破壊し墓地へ送る。

 

Emダブル・ジャグラー

レベル4 攻撃1200 守備1000 闇属性 魔法使い族

【Pスケール:青6:赤6】

(1):1ターンに1度、自分にダメージを与える魔法・罠・モンスターの効果が発動した時、自分フィールド上に存在する魔法使い族Xモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターはこのターン、一度のバトルフェイズ中に2回攻撃することができる。

【モンスター効果】

このカードは手札からP召喚できない。

(1):自分のメインフェイズ1にこのカードをゲームから除外し、自分フィールド上に存在する魔法使い族Xモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターはフィールド上に表側表示で存在する限り、1度のバトルフェイズ中に2回攻撃することができる。この効果を発動してから2回の目の自分のターンのスタンバイフェイズ時、この効果を発動するために除外したこのカードを自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する。

(2):(1)の効果を発動したとき、対象となったモンスターが「Em」モンスターだった場合、自分はデッキからカードを1枚ドローすることができる。

 

Sp-スピンアタック

通常魔法カード

(1):自分のスピードカウンターが2つ以上あるとき、自分フィールド上に存在するモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターが守備表示モンスターを攻撃した時にその守備力を攻撃力が越えていれば、その数値だけ相手に戦闘ダメージを与える。

 

ミラー・バリア(アニメオリカ)

アクション魔法カード

(1):フィールド上のモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターはカード効果では破壊されない。

 

 

RR-ボミング・レイニアス

レベル4 攻撃1700 守備1000 闇属性 鳥獣族

【Pスケール:青5/赤5】

「RR-ボミング・レイニアス」のP効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に存在する「RR」Xモンスターが戦闘で破壊され墓地へ送られたときに発動できる。Pゾーンに存在するこのカードを自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する。

【モンスター効果】

(1):1ターンに1度、相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にこのカード以外のモンスターが存在しない場合に発動できる。墓地からレベル4の「RR」モンスター1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。

 

Sp-スキップ・ランクアップ

このカードのカード名はルール上、「RUM-スキップ・フォース」としても扱う。

(1):自分のスピードカウンターが4つ以上あるとき、自分フィールドの「RR」Xモンスター1体を対象とて発動できる。そのモンスターよりランクが2つ高い「RR」モンスター1体を、対象の自分のモンスターの上に重ねてX召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

(2):自分の墓地からこのカードと「RR」モンスター1体を除外し、自分の墓地の「RR」Xモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動できない。

 

加速(アニメオリカ)

アクション魔法カード

(1):自分にダメージを与える効果が発動した場合に発動できる。 その効果で自分が受けるダメージを0にする。

 

Emディメンション・イーター

レベル4 攻撃1600 守備200 効果 闇属性 魔法使い族

「Emディメンション・イーター」の(1)(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードの特殊召喚に成功したとき、フィールド上に存在する魔法・罠カード1枚を対象に発動する。そのカードを破壊する。

(2):「Em」カードの効果により、このカードの特殊召喚に成功したとき、相手フィールド上に存在する魔法・罠カード1枚を対象に。(1)の代わりに発動できる。そのカードを除外する。

 

Sp-ペンデュラム・ネクロ

通常魔法カード

「Sp-ペンデュラム・ネクロ」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分のスピードカウンターが5つ以上あるとき、自分Pゾーンに存在するPカード1枚を破壊して発動できる。相手の墓地に存在するモンスターを2体まで相手フィールド上に特殊召喚する(表示形式は相手が決める)。その効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。

 

RR-ユニティ

通常罠カード

(1):自分フィールド上にX素材がある「RR」Xモンスターが存在する場合にのみ発動できる。ターン終了時まで、自分フィールド上に存在する「RR」の攻撃力・守備力は自分フィールド上の「RR」XモンスターのX素材の数×700アップする。

 

Sp-ソウル・シェイブ・ランクアップ

通常魔法カード

このカードのカード名はルール上、「RUM-ソウル・シェイブ・フォース」としても扱う。

(1):自分のスピードカウンターを6つ取り除き、自分の墓地の「RR」Xモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚し、そのモンスターよりランクが2つ高いXモンスター1体を、対象のモンスターの上に重ねてX召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

 

RR-フラッシュ・ヴァルチャー

レベル4 攻撃1500 守備1200 闇属性 鳥獣族

【Pスケール:青2/赤2】

「RR-フラッシュ・ヴァルチャー」のP効果ははこのカードがPゾーンに存在する限り、1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に存在する「RR」Xモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで1000アップする。この効果は相手ターンでも発動できる。

【モンスター効果】

(1):このカードをX素材としてX召喚に成功した「RR」Xモンスターは以下の効果を得る。

●1ターンに1度、このカードが戦闘で特殊召喚された相手モンスターを破壊し墓地へ送ったときに発動できる。自分はデッキからカードを1枚ドローする。

 

エクシーズ・アームズ-VN(ヴァリアブル・ネイル)

装備魔法カード

このカードはXモンスターのみ装備可能。

(1):装備モンスターはルール上、「FA(フルアーマード)」モンスターとしても扱う。

(2):このカードを発動したとき、フィールド上に表側表示で存在する魔法・罠カードを1枚破壊する。その後、装備モンスターの攻撃力は自分フィールド上に存在する「FA」Xモンスター1体につき、500アップする。

 

エクシーズ・アームズ-SR(ショットランサー)

装備魔法カード

このカードはXモンスターのみ装備可能。

「エクシーズ・アームズ-BR」の(2)の効果はこのカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、1度だけ発動できる。

(1):装備モンスターはルール上、「FA(フルアーマード)」モンスターとしても扱う。

(2):自分の墓地に存在する装備モンスターと同じ属性のXモンスター以外のモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを装備モンスターの下に重ね、X素材とする。

(3):装備モンスターの攻撃力・守備力は600アップする。

 

アームズ・バリア

永続魔法カード

「アームズ・バリア」は自分フィールド上に1枚しか存在できない。

(1):このカードが魔法・罠ゾーンに存在する限り、自分フィールド上のすべての「FA」Xモンスターは1ターンに1度、戦闘・効果では破壊されない。

(2):自分フィールド上に存在するこのカードが相手の効果によって破壊されたとき、デッキに存在する「エクシーズ・アームズ」装備魔法カード1枚を対象に発動する。そのカードを手札に加える。

 

炎の舞

アクション魔法カード

(1):相手フィールド上に存在するモンスター1体の攻撃力を1000ダウンさせる。

 

儀式の宝札

通常魔法カード

「儀式の宝札」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分が儀式召喚に2回以上成功したターンのメインフェイズ時にのみ発動できる。自分はデッキからカードを2枚ドローする。

 

ポッポちゃん参上!

アクション魔法カード

(1):自分のデッキの上から3枚カードを確認する。確認したカードの中に通常魔法カードがあった場合、その1枚を相手に見せて手札に加える。その後、確認したカードを好きな順番でデッキの一番上に戻す。

 

エクシーズ・アームズ-DA(ダブルアックス)

装備魔法カード

このカードはXモンスターのみ装備可能。

(1):装備モンスターはルール上、「FA(フルアーマード)」モンスターとしても扱う。

(2):1ターンに1度、自分のターンのバトルフェイズ開始時に、装備モンスターのX素材を1つ取り除くことで発動できる。装備モンスターはこのターン、1度のバトルフェイズ中に2回攻撃できる。

 

茨の囚人(ソーン・プリズナー)-ヴァン(アニメオリカ)

レベル1 攻撃0 守備0 効果 闇属性 悪魔族

(1):このカードが攻撃対象に選択された場合、手札の「茨の囚人」モンスター1体を相手に見せ、400LP払って発動できる。 その攻撃で自分が受ける戦闘ダメージを0にする。 その後のダメージステップ終了時、墓地からこのカードと、手札からこのカードの発動時に相手に見せた「茨の囚人」モンスター1体を攻撃表示で特殊召喚する。

 

茨の囚人-ダーリ(アニメオリカ)

レベル1 攻撃0 守備0 チューナー 闇属性 悪魔族

(1):このカード以外の「茨の囚人」モンスターが自分フィールドに存在する場合、相手バトルフェイズに1度、相手モンスターの攻撃宣言時に400LPを払って発動できる。 その攻撃を無効にする。

 

リリース&ブースト

アクション魔法カード

(1):自分フィールド上に存在するモンスター1体をリリースし、そのモンスターのレベルの数値分、スピードカウンターを乗せる。

 

茨の囚人-ユオン

レベル1 攻撃0 守備0 効果 闇属性 悪魔族

「茨の囚人-ユオン」の(1)(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):相手のターンのメインフェイズ1に1度、400LPを支払い、相手フィールド上に裏側守備表示で存在するモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを表側攻撃表示に変更する(そのとき、リバース効果は発動しない)。その後、そのカードに茨カウンターを1つ乗せる。

(2):自分のターンのメインフェイズ1に、自分フィールド上に存在するこのカードをリリースし、墓地に存在する「茨の囚人」モンスターを2体まで対象にして発動できる。そのモンスターを表側守備表示で特殊召喚する。その後、この効果で特殊召喚したモンスター1体につき、400LPを失う。

 

茨の囚人アブト

レベル1 攻撃0 守備0 チューナー 闇属性 悪魔族

「茨の囚人-アブト」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に存在するこのカードがカード効果によって破壊されたとき、400LPを支払うことで発動できる。自分はデッキからカードを1枚ドローする。

(2):このカードが墓地に存在するとき、400LPを支払うことで発動できる。デッキから「融合」「フュージョン」魔法カード1枚を手札に加える。この効果を発動したターン、自分は「茨」モンスター以外のモンスターを特殊召喚できない。

 

 

茨の戒人(ソーン・オブザーバー)-ズーマ(アニメオリカ・調整)

レベル2 攻撃0 守備0 シンクロ 闇属性 悪魔族

チューナー+「茨の囚人」モンスター1体

(1):このカードがS召喚に成功した場合、フィールドの全てのモンスターに茨カウンターを1つ置く。

(2):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、茨カウンターが置かれたモンスターは攻撃できず、お互いのプレイヤーは、それぞれ自分のスタンバイフェイズ毎に、それぞれのフィールドの茨カウンターの数×400ダメージを受ける。

(3):このカードが攻撃対象に選択された場合、 このカードのS召喚に使用したS素材モンスター一組が自分の墓地に揃っている場合、 400LPを払い、その素材モンスター一組を対象として発動できる。 その攻撃で自分が受ける戦闘ダメージを0にする。 その後のダメージステップ終了時、墓地からこのカードと対象のモンスターを攻撃表示で特殊召喚する。

 

死を告げる風

通常罠カード

(1)自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、相手の直接攻撃宣言時に発動できる。その攻撃を無効にする。その後、自分の手札・デッキ・墓地に存在する「魔装騎士ペイルライダー」1体を特殊召喚する。

 

Sp-オーバー・アクセル

通常魔法カード

(1)自分のスピードカウンターが4つ以上あるときにのみ発動できる。このターン、自分のモンスターの攻撃は無効化されない。

 

魔装伝心

通常罠カード

「魔装伝心」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分のPゾーンに存在する「魔装」Pカード1枚を対象に発動できる。そのカードのPスケールを1~10のいずれかの数値に変更する。

 

魔装砲士ボナパルド

レベル5 攻撃2100 守備1000  地属性 戦士族

【Pスケール:青7/赤7】

「魔装砲士ボナパルド」の(2)のP効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。

(2):自分フィールド上に「魔装騎士」が存在する場合、相手フィールド上に存在するモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターはターン終了時まで効果を発動できない。この効果は相手ターンでも発動できる。

【チューナー:効果】

「魔装砲士ボナパルド」の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードを手札からP召喚に成功したとき、相手フィールド上に存在するモンスターの数が自分フィールド上に存在するモンスターの数よりも多い場合に発動できる。自分はデッキからカードを2枚ドローする。

 

茨の超越戒人(ソーン・オーバーザーバー)-ヴァン・ダーリ・ズーマ(アニメオリカ・調整)

レベル8 攻撃0 守備0 融合 闇属性 悪魔族

「茨の囚人-ヴァン」+「茨の囚人-ダーリ」+「茨の戒人-ズーマ」

(1):このカードの攻撃力は、2500から自分のLPの数値分を引いた数値の倍になる。

(2):1ターンに1度、100LPを払い、相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。その相手モンスターの攻撃力はターン終了時まで100になる。この効果は相手ターンでも発動できる。

 

魔装騎炎ブリュンヒルデ

ランク7 攻撃2800 守備2500 エクシーズ 無属性 戦士族

【Pスケール:青3/赤3】

(1):1ターンに1度、自分のPゾーンに存在するこのカードを破壊することで発動できる。自分の手札・エクストラデッキに存在する「魔装騎士」モンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する。

(2):このカードはエクストラデッキへ送られるとき、裏向きとなる。

【モンスター効果】

「魔装騎士ペイルライダー」+Pゾーンに存在するPスケールが同じカード2枚

フィールド上に存在するこのカードはルール上、「魔装騎士」モンスターとして扱う。

レベル7がP召喚可能な場合にエクストラデッキの表側表示のこのカードはP召喚できる。

「魔装騎炎ブリュンヒルデ」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードのX素材を1つ取り除くことで発動できる。互いの墓地に存在するカードを5枚までゲームから除外する。その後、このカードの攻撃力は除外したカードの数×400アップし、相手フィールド上に存在するすべてのモンスターの攻撃力・守備力は除外したカードの数×300ダウンする。

(2):モンスターゾーンのこのカードが戦闘・効果によって破壊された場合に発動できる。自分のPゾーンに存在するカードをすべて破壊し、このカードを自分のPゾーンに置く。

 

天空の有翼幻獣キマイラ

レベル6 攻撃2100 守備1800 融合 風属性 獣族

「深緑の幻獣王ガゼル」×「幻獣先帝バフォメット」

「天空の有翼幻獣キマイラ」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードが融合召喚に成功したとき、エクストラデッキに存在する「幻獣」Pモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。

(2):このカードの攻撃力は自分フィールド上に存在する「幻獣」モンスターの数×300アップする。

(3):このカードが破壊された時、自分の墓地の、「バフォメット」モンスターまたは「幻獣王ガゼル」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。

 

B・F(ビー・フォース)-必中のピン(アニメオリカ・調整)

レベル1 攻撃200 守備300 効果 風属性 昆虫族

「B・F-必中のピン」の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):1ターンに1度、自分のターンのメインフェイズ時に発動できる。相手に200ダメージを与える。

(2):自分の「B・F」カードの効果によって相手にダメージを与えたとき、自分フィールド上に「B・F-必中のピン」以外のモンスターが存在しない場合に発動できる。デッキからレベル4以下の「B・F」モンスター1体を特殊召喚する。

 

B・F-早撃ちのアルバレスト(アニメオリカ・調整)

レベル4 攻撃1800 守備800 効果 風属性 昆虫族

(1):このカードが戦闘で破壊されたときに発動できる。手札から「B・F」モンスター1体を特殊召喚する。

 

B・F-隠撃のクロスボウ

レベル2 攻撃1000 守備600 チューナー 風属性 昆虫族

このカードはX素材とすることができず、このカードをS素材とする場合、昆虫族モンスターのS素材にしか使用できない。

「B・F-隠撃のクロスボウ」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分のデッキの上から3枚までカードを墓地へ送ることで発動できる。このカードのレベルを墓地へ送ったカードの数だけ上げる。

(2):このカードをS素材として「B・F」モンスターのS召喚に成功したときに発動する。自分の墓地からレベル2以下の「B・F-隠撃のクロスボウ」以外の「B・F」モンスター1体を特殊召喚する。

 

 

B・F-霊弓のアズサ(アニメオリカ)

レベル5 攻撃2200 守備1600 シンクロ・チューナー 風属性 昆虫族

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

(1):このカード以外の「B・F」モンスターが自分フィールドに存在し、

「B・F」モンスターの効果でダメージが発生した場合に発動できる。

そのダメージは倍になる。

 

Sp-シャドー・シンクロ・サポート

通常魔法カード

(1):自分のスピードカウンターが4つ以上存在するとき、自分フィールド上に存在するチューナー1体を対象に発動できる。そのモンスターはターン終了時まで以下の効果を得る。

●自分フィールド上に存在するこのカードをS召喚に使用する場合、このカードをチューナー以外のモンスターとして扱う事ができる。

 

B・F-降魔弓のハマ(アニメオリカ)

レベル8 攻撃2800 守備2000 シンクロ 風属性 昆虫族

Sモンスターのチューナー+チューナー以外の「B・F」モンスター1体以上

(1):このカードは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃できる。

(2):1ターンに1度、このカードが相手に戦闘ダメージを与えた場合、相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。その相手モンスターの攻撃力はバトルフェイズ終了時まで、その戦闘ダメージの数値分ダウンする。

(3):戦闘ダメージが発生しなかった自分バトルフェイズ終了時に発動できる。自分の墓地の「B・F」モンスターの数×300ダメージを相手に与える。

 

スピード違反レベル1

アクション魔法カード

(1)相手ターンのドローフェイズ時に発動できる。このターンのスタンバイフェイズ時、相手は「スピード・ワールド」魔法カードの効果でスピードカウンターを置くことができない。

 

B・F-奉納のアトラトル

レベル3 攻撃1500 守備1500 効果 風属性 昆虫族

(1):自分フィールド上に存在する「B・F」モンスターが攻撃対象となったときに手札から発動できる。このカードを自分フィールド上に特殊召喚し、攻撃モンスターを破壊する。

 

手札封鎖

アクション魔法カード

(1):このターン、相手は手札に存在するモンスターの効果を発動できない。

 

刻苦

アクション魔法カード

(1):自分はデッキからカードを1枚ドローする。その後、800ダメージを受ける。

 

エクストラ・ペナルティ

通常罠カード

(1):相手フィールド上に存在するエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターの攻撃宣言時に発動できる。相手フィールド上に存在するエクストラデッキから特殊召喚されたモンスター1体を除外する。

 

ど根性

アクション魔法カード

(1):自分が受ける効果ダメージを0にし、800LP回復する。

 

B・F・N(ビー・フォース・ネスト)(アニメオリカ・調整)

永続罠カード

「B・F・N」はフィールド上に1枚しか存在できない。

(1):自分フィールド上に存在する「B・F」モンスターが攻撃対象となったとき、自分の手札に存在するレベル4以下の「B・F」モンスター1体を対象に発動できる。そのカードを特殊召喚し、バトルフェイズを終了させる。

(2):このカードは発動後、2回目の自分スタンバイフェイズ時に墓地へ送られる。

 

EMオッドアイズ・シンガー

レベル6 攻撃400 守備2500 闇属性 魔法使い族

【Pスケール:青3/赤3】

(1):もう片方のPゾーンに「EM」「オッドアイズ」「魔術師」カードが存在するときに発動できる。このカードのPスケールをターン終了時まで6にする。

【モンスター効果】

「EMオッドアイズ・シンガー」はフィールド上に1枚しか存在できず、(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分の墓地に存在するレベル4以下のモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化され、このターン攻撃できない。

(2):自分フィールド上にこのカード以外の「EM」「オッドアイズ」「魔術師」モンスターが存在するとき、相手はこのカードを攻撃対象とすることができない。

 

選択

通常罠カード

(1):相手がモンスターを召喚・特殊召喚を3回以上行った相手ターンにのみ発動できる。そのターンを終了させる。その後、相手は以下の効果の中から1つを選択する。

●自分はデッキからカードを2枚ドローする。

●相手フィールド上に存在するすべてのカードを墓地へ送る。

●自分のデッキからカードを1枚手札に加える。

●相手の手札を確認し、その中から1枚を墓地へ送る。

 

フルカウル(漫画オリカ・調整)

アクション魔法カード

(1):このカードを発動したターン、1度だけ発生する戦闘または効果ダメージを半分にする。

 

RR-ランチャー・ストリクス

レベル1 攻撃100 守備200 闇属性 鳥獣族

【Pスケール:青8/赤8】

「RR-ランチャー・ストリクス」のP効果ははこのカードがPゾーンに存在する限り、1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に存在するX召喚された「RR」モンスターが戦闘で相手モンスターを破壊したときに発動できる。そのモンスターは続けてもう1度攻撃することができる。

【モンスター効果】

「RR-ランチャー・ストリクス」の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):EXデッキに表向きで存在するこのカードをデッキの一番下へ置き、自分フィールド上に存在する「RR」モンスター1体を対象に発動できる。自分フィールド上の「RR」モンスターのレベルはそのモンスターと同じになる。この効果を発動したターン、自分は「RR」以外のモンスターを特殊召喚できない。

 

ワープブースト

アクション魔法カード

(1):自分用のスピードカウンターを3つ置く。

 

HSRカイトライダー

レベル8 攻撃2800 守備2500 シンクロ 風属性 機械族

「SR」チューナー+チューナー以外のモンスター1体

このカードはS召喚以外の方法で特殊召喚できない。

(1):「SR」チューナーを素材にこのカードのS召喚に成功したときに発動できる。デッキからカードを1枚ドローする。

(2):このカードは戦闘では破壊されない。

(3):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊したとき、このカードを破壊することで発動できる。レベル7以下の風属性・ドラゴン族Sモンスター1体をエクストラデッキからS召喚扱いで特殊召喚する。

 

月光の宝札

通常罠カード

「月光の宝札」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に「ムーンライト」融合モンスターが墓地から特殊召喚に成功したとき、自分フィールド上にこれらのカード以外のカードがない場合にのみ発動できる。自分はデッキからカードを2枚ドローする。

 

TGシンセベーサー

レベル2 攻撃1200 守備500 チューナー 地属性 サイバース族

「TGシンセベーサー」は自分フィールド上に1枚しか存在できず、(1)の効果はデュエル中1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に「TG」Sモンスターが存在するときに発動できる。手札・墓地に存在するこのカードを特殊召喚する。

(2):このカードがフィールド上に存在する限り、自分フィールド上に存在する「TG」Sモンスターの攻撃力は1000アップする。

(3):自分フィールド上にほかの「TG」モンスターが存在するとき、相手はこのカードを攻撃対象とすることができない。

 

肉弾戦

アクション魔法カード

(1):自分フィールド上に存在するモンスターが攻撃するときに発動できる。ダメージステップ終了時まで、攻撃モンスター以外のカードの効果を無効にする。

 

アレスの誓約

通常罠カード

「アレスの誓約」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に「魔装」モンスターが存在し、相手フィールド上にEXデッキから特殊召喚されたモンスターが存在するときに発動できる。デッキから「魔装」モンスター1体を墓地へ送り、デッキからカードを1枚ドローする。

 

クールダウン

アクション魔法カード

(1):次の相手ターンのバトルフェイズ開始時、お互いのフィールド上に存在するモンスターの攻撃力は元に戻る。この効果は「カードの効果を受けない」効果を持つモンスターも受ける。

 

NTGデスペラード・ベルセルク

レベル10 攻撃3500 守備3300 融合 地属性 機械族

「NTG」Sモンスター+「TG」Sモンスター

このカードは融合召喚でのみ特殊召喚できる。

「NTGデスペラード・ベルセルク》の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードは相手の効果では破壊されない。

(2):このカードが戦闘を行うダメージステップ開始時に発動する。ターン終了時まで相手フィールド上に存在する特殊召喚されたモンスターの攻撃力を半分にし、効果を無効にする。

(3):このカードが破壊され墓地へ送られたとき、自分の墓地に存在するSモンスター以外の「TG」モンスター2体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。

 

BF-フェスティバル(アニメオリカ)

通常罠カード

(1):自分フィールドに「BF」モンスターが存在し、相手フィールドにモンスターが特殊召喚された場合に発動できる。自分フィールドに「BFトークン」(鳥獣族・闇・星1・攻/守0)3体を特殊召喚する。

 

BFトークン

レベル1 攻撃0 守備0 トークン 闇属性 鳥獣族

「BF-フェスティバル」の効果で特殊召喚される。

 

ペンデュラム・バリア

通常罠カード

(1):自分モンスターゾーンに存在するPモンスター、もしくはPゾーンに存在するPカード1枚を対象に発動できる。そのカードはターン終了時まで戦闘、及び効果によって破壊されない。

 

覇王激高

通常罠カード

自分フィールド上に存在するモンスターが「覇王」モンスター1体のみの場合、手札から発動できる。

(1):自分フィールド上に存在する「覇王」モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターの攻撃力をターン終了時まで1500アップする。

 

デルタ・クロウ-ブラック・アーツ

通常罠カード

「デルタ・クロウ-ブラック・アーツ」の(2)の効果はデュエル中1回しか発動できない。

(1):自分フィールド上に存在する「BF」Sモンスターが相手モンスターと戦闘を行うときに発動できる。ダメージステップ終了時まで、そのモンスターの攻撃力は戦闘を行う相手モンスターの攻撃力分アップする。その効果を受けたモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊したとき、発生した戦闘ダメージと同じ数値分、自分はダメージを受ける。

(2):自分が「BF」モンスターを3回特殊召喚に成功したターンに発動できる。墓地に存在するこのカードを自分の魔法・罠ゾーンにセットする。この効果でセットされたこのカードはそのターンに発動できる。

 

ロンギヌスの槍

速攻魔法

「ロンギヌスの槍」の(1)(2)の効果は1ターンに1度にいずれかしか発動できない。

(1):自分フィールド上に存在する「魔装」S・X・融合モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターはもう1度だけ攻撃できる。この効果を受けたモンスターはバトルフェイズ終了時に破壊される。

(2):自分フィールド上に存在する「魔装騎士」モンスターが戦闘で相手モンスターを破壊できなかったとき、墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。そのモンスターは続けてもう1度だけ攻撃することができる。その時、そのモンスターの攻撃力はダメージステップ終了時まで倍となる。

 

紅鎖の獣闘機勲章(アニメオリカ)

永続罠カード

(1):自分フィールドに「獣闘機」モンスターが存在しない場合にこのカードは破壊される。

(2):相手フィールドにエクストラデッキからモンスターが特殊召喚された場合、

そのモンスター1体を対象としてこの効果を1度だけ発動できる。このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、そのモンスターは攻撃できず、表示形式の変更もできない。また、戦闘では破壊されない。さらに、このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、対象のモンスターのコントローラーはモンスターを召喚・特殊召喚できず、魔法・罠カードを発動できない。

 

鉄鎖の獣闘機勲章(アニメオリカ)

永続罠カード

(1):自分フィールドに「獣闘機」モンスターが存在しない場合にこのカードは破壊される。

(2):相手フィールドにモンスターが特殊召喚された場合にこの効果を1度だけ発動できる。このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、そのモンスターは攻撃できず、表示形式の変更もできない。また、戦闘では破壊されない。

(3):相手がダメージを受けた場合に発動する。相手フィールドの全てのモンスターの攻撃力はその数値分だけダウンする。

 

獣闘機ウルフ・ケンプファー(アニメオリカ)

レベル6 攻撃2200 守備1400 融合 闇属性 機械族

レベル4以下の獣戦士族モンスター+レベル4以下の機械族モンスター

(1):相手に戦闘ダメージを与えた時に発動できる。300ダメージを相手に与える。

(2):このカードが戦闘で破壊された場合に発動できる。このカードの融合素材としたモンスター一組を自分の墓地から特殊召喚する。

 

獣闘機融合装置(アニメオリカ)

永続魔法カード

(1):1ターンに1度、自分の手札・フィールドから、「獣闘機」融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

(2):このカードが自分の魔法・罠ゾーンに存在する限り、自分は通常召喚できない。

 

鋼の歯車蛸(メタルギア・ビューパ)

レベル5 攻撃2100 守備1000 効果 地属性 機械族

(1):自分フィールド上にモンスターが存在しないとき、このカードはリリースなしで召喚できる。

(2):このカードの召喚に成功したとき、デッキに存在するレベル4以下の「メタルギア」モンスター1枚もしくは「鋼の歯車融合」1枚を対象に発動できる。そのカードを手札に加える。

 

鋼の歯車蛹(メタルギア・クリサリス)

レベル4 攻撃1700 守備1500 効果 地属性 機械族

このカード名の(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しか行えない。

(1):自分フィールド上に存在する「メタルギア」モンスターが攻撃対象となったときに手札から発動できる。このカードを自分フィールド上に特殊召喚することで、その攻撃を無効にする。この効果で特殊召喚したターン、自分フィールド上に存在する融合モンスター以外の「メタルギア」モンスターは戦闘では破壊されない。

 

AI's Payment

永続罠カード

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に融合モンスター以外の「メタルギア」モンスターが特殊召喚されたときに発動する。デッキからカードを1枚ドローする。

 

鋼の歯車弩級戦車(メタルギア・コクーン)

レベル8 攻撃3600 守備1800 効果 地属性 機械族

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードはリリースなしで召喚できる。その時、このカードの元々の攻撃力は1800となる。

(2):このカードを素材に「メタルギア」融合モンスターの融合召喚に成功したとき、墓地から発動できる。このカードを装備カード扱いとしてそのモンスターに装備する。

(3):このカードの効果でこのカードを装備したモンスターが相手モンスターを戦闘を行うとき、ダメージステップ終了時までそのモンスターの効果は無効化される。

 

立ち上がる鋼の歯車(メタルギア)

通常罠カード

このカード名のカードは1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に存在する「メタルギア」融合モンスターが戦闘で相手モンスターを破壊し、相手に戦闘ダメージを与えたターンのバトルフェイズ中に発動できる。デッキからそのダメージの数値以下の攻撃力を持つ「メタルギア」モンスター1体を特殊召喚する。

 

鋼の歯車IR(メタルギア・アーヴィング)

レベル4 攻撃1000 守備1900 効果 地属性 機械族

このカード名の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に攻撃表示で存在するこのカードを対象に発動できる。そのカードを守備表示にする。その後、デッキからレベル4以下の「メタルギア」モンスター1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。

 

鋼の歯車毒蛇(メタルギア・バシリスク)

レベル10 攻撃3600 守備3500 融合 地属性 機械族

レベル5以上の「メタルギア」モンスター+「メタルギア」モンスター×2

このカードは「鋼の歯車融合」の効果でのみ特殊召喚できる。

(1):このカードはカード効果では破壊・除外されない。

(2):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊したときに発動できる。そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。

(3):このカードが戦闘で破壊され墓地へ送られたときに発動する。フィールド上に存在するすべてのカードを破壊する。

 

対峙する鋼の歯車(メタルギア)

通常魔法カード

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に存在する「メタルギア」融合モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターの攻撃力の半分の数値分のダメージを相手に与える。

(2):自分フィールド上に存在するモンスターが「メタルギア」融合モンスター1体のみの場合、墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。墓地に存在する「メタルギア」モンスター1体を相手フィールド上に召喚条件を無視して、表側守備表示で特殊召喚する。その後、自分フィールド上に存在する「メタルギア」融合モンスター1体の攻撃力は特殊召喚したモンスターの元々の攻撃力分アップする。この効果はこのカードが墓地へ送られたターン、発動できない。

 

古代の機械参頭猟犬(アニメオリカ)

レベル7 攻撃1800 守備1000 融合 地属性 機械族

「古代の機械猟犬」+「古代の機械猟犬」+「古代の機械猟犬」または「古代の機械猟犬」+「古代の機械双頭猟犬」

(1):このカードは1度のバトルフェイズ中に3回までモンスターに攻撃できる。

(2):このカードが攻撃する場合のダメージステップ終了時まで、相手は魔法・罠カードを発動できない。

 

クライング・スカーナイト(アニメオリカ・調整)

レベル1 攻撃0 守備0 効果 闇属性 戦士族

「クライング・スカーナイト」の(3)の効果はデュエル中1度しか発動できない。

このカードは通常召喚できない。

自分フィールド上に存在する「スカブ・スカーナイト」が破壊されたとき、このカードは手札から特殊召喚できる。

(1):このカードは戦闘で破壊されない。

(2):このカードが相手モンスターと戦闘を行うダメージ計算開始時に発動する。ダメージ計算終了時までこのカードの元々の攻撃力はそのモンスターの攻撃力と同じになる。

(3):自分または相手ターンのメインフェイズ時に、このカードをリリースすることで発動できる。フィールド上のモンスターをすべて破壊する。その後、破壊したモンスターの数×500のダメージを互いに受ける。

 

ペンデュラム・トレジャー

通常魔法カード

このカード名の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上にPモンスターが3体以上存在し、これらのモンスターの攻撃力が相手フィールド上に存在する最も攻撃力の低いモンスターよりも低い場合にのみ発動できる。デッキからカードを2枚ドローする。

 

スカーレッド・フォース

通常罠カード

このカード名の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上にレベル10以上の「レッド・デーモン」Sモンスターが存在する場合にのみ発動できる。そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで、自分の墓地に存在するチューナーの数×800アップする。また、その効果を受けたモンスターはターン終了時まで戦闘・効果では破壊されない。

 

地縛囚人ストーン・スィーパー(アニメオリカ・調整)

レベル5 攻撃1600 守備1600 効果 闇属性 悪魔族

このカードの(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しか行えない。

(1):フィールド上にカードが存在するとき、このカードは手札から特殊召喚できる。この効果で特殊召喚に成功したターン、自分は「地縛」モンスターしか召喚・反転召喚・特殊召喚できない。

 

地縛囚人グランド・キーパー(アニメオリカ)

レベル1 攻撃300 守備300 チューナー 闇属性 悪魔族

(1):このカードがフィールド上に存在する限り、自分フィールド上に存在する「地縛」モンスターは1ターンに1度、戦闘では破壊されない。

 

異界共鳴-シンクロ・フュージョン(アニメオリカ・調整)

通常魔法カード

このカード名の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールドから、Sモンスターカードによって決められたS素材モンスターであり、また融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターでもある一組のモンスターを墓地へ送り、そのSモンスター1体と融合モンスター1体をEXデッキからそれぞれS召喚・融合召喚する。

 

地縛魔封(アニメオリカ・調整)

カウンター罠カード

このカード名の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上にEXデッキから特殊召喚された「地縛」モンスターが存在するときに発動できる。相手の魔法・罠・モンスター効果の発動を無効にし、破壊する。

 

地縛戒隷ジオグレムリーナ(アニメオリカ・調整)

レベル6 攻撃2000 守備1000 融合 闇属性 悪魔族

「地縛」モンスター×2

このカード名の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードが自分フィールド上に存在し、相手フィールド上に存在するモンスターが効果で破壊されたときに発動できる。自分フィールド上に存在する「地縛」モンスターをすべて破壊し、その数×1000のダメージを相手に与える。この効果を発動したターン、相手は攻撃宣言できない。

 

地縛戒隷ジオグレムリン(アニメオリカ)

レベル6 攻撃2000 守備1000 シンクロ 闇属性 悪魔族

「地縛」チューナー+チューナー以外の「地縛」モンスター1体以上

(1):このカードの特殊召喚に成功したターンのメインフェイズ1に1度、相手フィールド上に存在するモンスター1体を対象に発動できる。相手は以下の効果から1つを選択する。

●そのモンスターを破壊し、このターンのバトルフェイズをスキップする。

●そのモンスターの攻撃力分、このカードのプレイヤーのLPを回復する。

 

地縛救魂(アニメオリカ・調整)

通常魔法カード

(1):フィールド魔法が発動しているとき、自分の墓地に存在する「地縛」モンスター1体と「異界融合-シンクロ・フュージョン」1枚を対象に発動できる。そのカードを手札に加える。

 

地縛戒隷ジオハイドラ

レベル7 攻撃2600 守備1300 融合 闇属性 悪魔族

「地縛」モンスター×2

このカード名の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードの融合召喚に成功したときに、自分フィールド上にほかにカードが表側表示で存在する場合にのみ発動できる。相手フィールド上に存在する特殊召喚されたモンスターをすべて破壊する。その後、このカードの攻撃力はターン終了時まで破壊したモンスターの数×300アップする。

 

地縛戒隷ジオゴーレム

レベル7 攻撃2400 守備1200 シンクロ 闇属性 悪魔ぞzく

「地縛」チューナー+チューナー以外の「地縛」モンスター1体以上

(1):このカードが自分フィールド上に存在し、自分フィールド上にこのカード以外の「地縛」モンスターが存在するとき、相手フィールド上に存在する特殊召喚されたモンスターはすべて守備表示となる。

(2):このカードがフィールドから離れたときに発動する。相手フィールド上に存在する特殊召喚されたモンスターはすべて攻撃表示となる。

 

地縛融合(アニメオリカ・調整)

速攻魔法カード

(1):自分フィールド上にモンスターが存在せず、相手フィールド上にモンスターが存在する場合にのみ、EXデッキに存在する「地縛」融合モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。

 

地縛戒隷ジオグラシャ=ラボラス(アニメオリカ・調整)

レベル10 攻撃3000 守備1800 融合 闇属性 悪魔族

「地縛戒隷」モンスター×2

このカード名のカードはフィールド上に1枚しか存在できない。

(1):このカードが相手モンスターと戦闘を行う場合に発動できる。そのモンスターの攻撃力をバトルフェイズ終了時まで0にする。

 

地縛獄門

通常罠カード

(1):相手がEXデッキからモンスターの特殊召喚に成功したとき、自分フィールド上に存在する「地縛獄門」モンスターを2体までリリースすることで発動できる。その数だけ相手の手札をランダムに選択して墓地へ送る。この効果で墓地へ送られたカードの効果は発動できない。その後、この効果で墓地へ送られたカードの数×600のダメージを相手に与える。この効果は相手のカード効果では無効化されない。

 

 

地縛戒隷ジオグリフォン(アニメオリカ)

レベル8 攻撃2500 守備1500 シンクロ 闇属性 悪魔族

「地縛」チューナー+チューナー以外の「地縛」モンスター1体以上

(1):自分フィールドの「地縛」モンスターが破壊された場合、相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。その相手モンスターを破壊する。

 

地縛戒隷ジオクラーケン(アニメオリカ)

レベル8 攻撃2800 守備1200 融合 闇属性 悪魔族

「地縛」モンスター×2

(1):自分ターンに1度、相手フィールドにモンスターが特殊召喚された場合に発動できる。このターンに特殊召喚された相手フィールドのモンスターを全て破壊し、その破壊したモンスターの数×800ダメージを相手に与える。

 

地縛園

フィールド魔法カード

(1):1ターンに1度、自分フィールド上に「地縛戒隷」モンスターが存在し、相手フィールド上にモンスターが存在するときに発動できる。自分はデッキからカードを2枚ドローする。

 

魔装画伯シャラク

レベル4 攻撃1200 守備1400 闇属性 魔法使い族

【Pスケール:青3/赤3】

このカード名の(2)のP効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。

(2):このカードを発動したターンのメインフェイズ時、もう片方の自分のPゾーンに「魔装」Pカードが存在するときにのみ発動できる。デッキから「魔装」Pモンスター1枚を手札に加える。この効果を発動したターン、自分は「魔装」モンスター以外のモンスターを召喚・特殊召喚できない。

【モンスター効果】

このカード名の(1)(2)のモンスター効果はそれぞれ1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に存在する「魔装」モンスターが相手モンスターの攻撃によって破壊された相手ターンのバトルフェイズ終了時に発動できる。このカードを手札から特殊召喚できる。

(2):この効果で特殊召喚に成功したとき、墓地に存在するこのターン戦闘で破壊された「魔装」モンスター1体を対象に発動する。そのモンスターを特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。

 

黙示録のラッパ

通常魔法カード

このカード名のカードは1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分がP召喚に成功したモンスターが「魔装騎士ペイルライダー」1体のみの場合に発動できる。自分フィールド上に存在するそのカード以外の「魔装」モンスターの数だけデッキからカードをドローする。

 

ペンデュラム・ホルト(漫画オリカ・調整)

通常魔法カード

このカード名のカードは1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分のEXデッキの表側表示のPモンスターの数が3体以上の場合に発動できる。デッキからカードを2枚ドローする。このカードを発動したターン、自分はP召喚を行えない。

 

死竜蘇生

通常魔法カード

(1):手札1枚を墓地へ送ることで発動できる。自分または相手の墓地に存在するドラゴン族モンスター1体を特殊召喚する。

 

 

 

 



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第86話 喪失と獲得

戦いが収束し、オペレーターやロジェに賛同した面々がヴァプラ隊によって拘束され、ヘリに乗せられていく。

それとは別のヘリにはタンカが運ばれ、それには遊矢が横たわり、柚子が寄り添っている。

「こちら、パロット3。現在、ジャン・ミシェル・ロジェを乗せ、離陸。これより、スタンダード次元へ連行する」

ヘリの1機、パロット3に乗せられているロジェの両手首には手錠をかけられており、銃弾で打ち抜かれた片腕の治療を受ける彼は放心状態となっており、うつむいた表情を見せている。

彼はこれから、スタンダード次元で尋問を受けることになり、融合次元に関する情報を自白する日々を送ることになる。

「こちらガル2、カード化された人々を回収中。融合次元にすでに持ち去られてしまったカードの存在もあり、人数の計算には時間がかかると思われる」

「こちらパロット4、ジャック・アトラスは意識不明。現在、抑えたトップスの中央病院へ搬送し、緊急治療中」

「了解、引き続きカードの回収を求む。こちらは榊遊矢、柊柚子を回収。榊遊矢は重賞により意識不明。現在、応急処置をしつつ、スタンダード次元へ向かっている。全部隊、ここからはパロット1の指示に従うことを求む。パロット2、アウト」

通信を切ったパロット2は自動操縦に切り替え、後方で治療を受けている遊矢を見る。

治療用のマスクをつけた遊矢に対して、医療兵が輸血を行っている。

ジャックとセルゲイの2人と連続で激しいデュエルを繰り広げたことで、ロジェによって受けた傷が開いており、あと少し輸血が遅れていたら、取り返しのつかない事態となっていた。

「遊矢…」

輸血され、眠っている遊矢の右手を握る柚子は目を涙を浮かべる。

彼女の目が彼の右手からゆっくりと左手のところへ向かう。

遊矢の左腕のひじの部分には包帯がまかれていて、そこから先の、本来はあるはずの左手がなくなっていた。

 

「ヒイロ・リオニスぅ!!」

時間はヒイロがロジェの肩を撃ち抜いたところまでさかのぼる。

「ヒイロ…さん…?」

「ヒイロさんって…??」

ヒイロに目を向けた遊矢は何者かと思い、彼をじっと見る。

遊矢にとって、ヒイロは初対面であり、何より彼から感じるデュエリストとしては異質なプレッシャーを感じ、本能的に警戒心が高くなる。

「そうだ。榊遊矢、ジャックは生きている。治療が必要だがな」

「ジャックが…」

ヒイロの言葉を聞いた遊矢は一瞬驚くものの、ジャックの無事を知り、わずかに安堵する。

ヒイロは拳銃をおろし、ロジェの部屋に入ると、遊矢のそばで倒れているセルゲイを見る。

そして、左手に持っているショットガンをセルゲイの右腕の肘関節に向けて発射する。

「グオオオオ!?!?」

「抵抗されたらまずいからな。悪く思うな」

セルゲイの悲鳴を無視し、片手でリロードをして再び散弾を同じ場所に叩き込む。

2発目の散弾を受けたことで彼の腕がちぎれ飛び、フィルムでできた不自然な皮膚とその下に隠れた機械が白昼のもとにさらされる。

それだけでは飽き足らず、更にヒイロは左腕、両足も同じようにショットガンで破壊していく。

「お、おのれ…!!私の『欠片』を奪うだけでは飽き足らず…!!」

「これ以上の抵抗はやめろ。お前はもう…終わっている」

拳銃を捨てたヒイロは懐から何かの装置のボタンを取り出し、それについている赤いボタンを押す。

すると、彼の背後にあるモニターに様々な映像と音声が流れ始めた。

「こ、これは…!?」

その映像を見て、音声を聞いたロジェの顔が青く染まっていく。

評議会に融合次元で手に入れたソリッドビジョンシステムの情報開示と引き換えに治安維持局長官のポストを得る取引、自らの私兵とするためにセキュリティに対して行った体内へのチップの埋め込み手術のカルテと手術した人物のリスト、トップスの人々とおこなった裏取引の証拠の領収書や署名、更には最近の出来事としてロジェによるフレンドシップカップ中の裏から行った操作への指示の音声などが流れている。

「今ではこれはシンクロ次元のネットやテレビ、ラジオに全部ばらまかれている。貴様に待っているのは、内乱罪による刑事裁判だ」

「内乱…罪…」

治安維持局長官であるロジェは当然、この次元に内乱罪があることは知っている。

 

『国の統治機構を破壊し、もしくはその領内で国権を排除して権力を行使し、現行の法律の定める統治の基本秩序の破壊・混乱を目的として暴動を起こした者は次の区別をもって罰する。

1.首謀者は死刑、または無期懲役に処し、釈放は認められない。

2.内乱の計画にかかわり、指揮を行った者は無期または3年以上の懲役、もしくは禁固に処し、その他の職務従事者については1年以上、10年以下の懲役、もしくは禁固に処す。

3.附和随行し、単に暴動に参加したものは、3年以上の禁固に処す。

4.前項の罪の未遂は罰する』

 

今回の場合、ランサーズらによって鎮圧されているものの、未遂とはならないため、首謀者であるロジェに待っているのは死刑、もしくは二度と出られない牢獄。

つまり、トップスが遊び半分にコモンズを閉じ込め続けたあの収容所に入れられることになる。

トップスではトップクラスの位置にある彼がそこでほかの囚人と共に過ごして無事に済むはずがない。

彼らから復讐としてリンチされ、いじめつくされて死んでいくパターンが目に見えている。

「だが、安心しろ。お前の身柄はヴァプラ隊が隠し持つ。せいぜい彼らに融合次元に関する情報をすべて吐き出すんだな」

「そ、そんな…」

「お前の一日天下は終わった、ということだ」

ヒイロの無慈悲な言葉を受け、ロジェは崩れ落ちる。

そして、ヒイロは落ちている拳銃を手にすると、柚子の両腕を釣り上げるように拘束している枷を撃ち抜いた。

枷が外れ、服を整えた柚子の元へ、ファントムライトが消えた遊矢は駆け寄る。

「柚子…!」

「遊矢…遊矢ぁ!!」

抱きしめあった2人は涙を流し、互いのぬくもりを感じる。

「ごめんよ、柚子…。遅くなってしまって…」

「ごめんなさい、遊矢…。あたしが勝手な行動をしたから…」

「何も言わないでくれ、柚子。今、こうして柚子がそばにいることが…何よりもうれしいから…」

遊矢の言葉を受け、柚子は目を閉じ、ただ遊矢のぬくもりを感じる。

自分を助けるために、たった1人で治安維持局に殴り込んだせいか、汗臭さが伝わるが、今はそれさえも彼女にとっては愛おしかった。

「まもなくヴァプラ隊が到着する。それまで、言い訳でも考えるんだな」

「…」

静まり返った空間の中で、ガサリと無機質な音が響く。

ロジェへ近づこうとしたヒイロは何かと思い、その音が聞こえた方向に目を向ける。

両腕と両腕を失ったセルゲイがニヤリと笑みを浮かべながら抱き合う2人を見ていて、柚子に向けて左目を展開した出現させたレーダー砲が発射される。

「…柚子!!」

何か異質な気配を感じた遊矢を柚子を左腕で押しのける。

押しのけられた柚子は遊矢から離れ、尻餅をつく。

その瞬間、赤い光が遊矢の左腕の肘を貫いていった。

「え…??」

一瞬、わけがわからなくなった柚子の目の前で何かがゴトリと落ち、それを見た彼女の思考が凍り付く。

そこにあったのは遊矢の左腕で、遊矢は肘を手で抑えながら、その場に倒れてしまった。

「ちぃ!!」

ヒイロは拳銃でセルゲイの左目を撃ち抜き、破壊する。

そして、ロジェのもう片方の腕に向けて発砲する。

激痛を感じるロジェだが、狂気に満ちた笑みを浮かべて叫ぶ

「馬鹿め!!貴様らなぞに捕まるものか!!もうすでに貴様らはチェックメイトなのだ!!」

血の付いたノートパソコンのエンターボタンの上に彼の左手人差し指を置いている。

余裕な表情をかなぐり捨て、脂汗をかきながら笑う彼には、もはやシンクロ次元の王としての姿はどこにもなかった。

「ふ、ふふふ!!治安維持局の地下に作った次元転送装置…!それを暴走させて、この街すべてを消し飛ばしてやる!!私は…私は10年かけたのだ!!もう、だれにも頭を下げる必要もなく、だれにも馬鹿にされることのない…私の本当の居場所を作るために!!その邪魔をした貴様らなどにはー!!」

「御託はいい…。さっさと押せ」

「何??」

ヒイロの言葉が理解できず、ロジェの動きが止まる。

このボタンを押せば、待っている結末はこの街の滅亡とランサーズ、シェイド、ヴァプラ隊の全滅。

もちろん、ヒイロも消し飛んでしまうというのに、彼は何の気もなしにただ一言、『押せ』と言っている。

彼が焦って自分に許しを請うというイメージしか頭になかったロジェにとっては想定外のことだ。

「ふ、ふん!!どうせ…どうせハッタリだ!!後悔して…後…悔…こう…な、なぜ…なぜ!?!?」

ロジェはボタンを押し、わずかに時間が流れるが、何も起きる気配がない。

たっぷりと汗を流すロジェは何度もエンターボタンを押し、ノートパソコンのモニターを見るが、出るのは『Error』という5文字だけ。

「なぜ…なぜだ!?なぜ動かん!?」

「当然だ。お前の自慢の次元転送装置は俺が破壊したんだからな。…王手、だ」

「あ、あ、ああ…ああああ…」

ロジェとは違うと証明するかのように、あえて将棋で同じ意味の単語を口にしたヒイロの言葉で彼は崩れ落ちる。

あまりのショックを短時間で何度も受けすぎたせいなのか、すっかり気力を失っており、失禁してしまっていた。

複数人の足音がここに近づいてくる。

「遊…矢…?」

足音のせいか、正気を取り戻した柚子は倒れた遊矢に近づく。

激しい痛みに耐えながら、遊矢はゆっくりと柚子を見つめる。

「柚子…けがは、ない…?」

「うん…うん…」

遊矢が伸ばす右手を撫で、涙を浮かべながら柚子はただうなずくことしかできなかった。

彼女の無事を知って安心したのか、遊矢はゆっくりと意識を失っていった。

「こちらスワロー8、到着しました!」

「ロジェを拘束、そしてあのロボットを回収しろ。そして、医療ヘリを呼び、ジャック・アトラスと榊遊矢に応急処置を!!」

 

「赤馬零児…」

「ヒイロ・リオニス…」

評議会の屋上に立つ零児のもとへ、ヒイロがやってくる。

ここからはトップス、コモンズ双方の景色を見ることができ、どちらも戦場となったせいか、煙が黙々と上空へ舞っており、シェイドのメンバーや地下から脱出してきた人々の手で消火が行われている。

「今回の戦い、アカデミアの関係者であるジャン・ミシェル・ロジェの確保に成功した。そして、彼らのシンクロ次元攻略を阻止した。その点では勝ち、と言ってもいいが…」

「セレナはアカデミアに連行され、ヴァプラ隊やシェイド、シンクロ次元の住民に犠牲者が出た。そして、榊遊矢は左腕を失う重傷…。痛み分けというべきでしょう」

零児は端末を操作し、犠牲者のリストを確認する。

「クロウ・ホーガン、早島和樹、メリッサ・クレール、エルドレッド・スミス、雑賀孫助…相当な数だな」

「特にスタジアムでは捜索の結果、カードを一枚も見つけることができなかった」

「ロジェも評議会も、自分たちのことを考えるだけで、住民の安全には無頓着だったからな」

「…彼らの存在を放置していては、後ろから撃たれる可能性が高い。彼らは勝ち馬に乗るだけ、一つの次元を守るという考えでそうするのであれば正しいが、彼らの場合は自己保身のためにそう考えているに過ぎない…。頼めますか?」

零児の言っている『頼み事』の意味をヒイロは理解していた。

そして、本当にそれでいいかと確かめるように零児の目を見る。

「アカデミアの…自分の父親の妄執を止めるためには冷徹な手段もとる…か。いいだろう」

「すみません、ヒイロさん」

「いい。こういうことはお前たちではなく、俺向きだ。それよりも、まずは義弟の頭をなでてやるんだな」

そう言い残し、ヒイロは屋上を後にする。

そして、彼と入れ替わるように零羅が包帯を巻いた月影とともに姿を見せる。

「零児殿…」

「月影、零羅…」

「兄様…僕、僕…セレナを…」

セレナを守れなかった後悔に苦しむ零羅は泣くのを我慢していた。

彼にとって、このような後悔に対するささやかな抵抗だった。

「セレナのことは聞いている。それよりも…」

零羅に近づいた零児はそっと彼の頭を優しく撫でる。

そして、優しく笑みを浮かべながら膝を曲げ、彼と目線を合わせる。

「よく無事に帰ってきてくれた、よく頑張ったな、零羅」

「兄様…兄様ぁ!!」

我慢できなくなった零羅は零児に抱き着き、ワンワン泣き始めた。

2人は勝利のためとはいえ、幼い彼を巻き込んだことへの罪悪感を抱きつつ、泣き止むまでずっとそばに居続けた。

 

そして、1週間が経ち…。

「よーし、こいつで最後の荷物だ。1時間後に出発じゃー!」

「ああ、もっと丁寧に運ばんかい!?かなりデリケートな荷物なんやぞぉ??」

シェイドのアジトから荷物が運び出され、ヴァプラ隊が手配したヘリに乗せられていく。

荷物が運び込まれる中、翔太はモハメドと話をしていた。

「ここのアジトとシェイド、セキュリティの後処理はあんたに任せる。好きにやれ」

「言われなくても、そうしてやる。ま…融合次元への総攻撃までにいろいろ準備はしとくさ。トップスの方も、そのつもりみたいだしな」

あの戦いの翌日、評議会のメンバーの戦没が報じられた。

民衆とシンクロ次元の社会を守るために前に出て、その命を散らせたという発表と共に、トップスとコモンズが共同の臨時政府を設置し、今後のアカデミアの対応を決めることが決定した。

また、ロジェによって掌握されていた治安維持局についても人員整理が行われ、モハメドが追放解除と共に臨時長官となった。

最も、これは融合次元という脅威を取り除くための一時的な措置であり、そのあとはどのようになるかはわからない。

トップスとコモンズのゆがんだ競争社会を取り除くにしても、保守的なトップスがどこまで許容するか、そしてコモンズがどこまで求めるのか。

平等に挑戦するチャンス、そして失敗しても再び再挑戦できる権利を求めるまでならまだいい。

しかし、トップスの富はコモンズから搾取されたものだと主張し、それらの返還を要求するところまで来たら、大きな内乱に発展する恐れがある。

アカデミア打倒後の行く末は別次元の人間であるランサーズやシェイド、ヴァプラ隊が介入すべき事態ではないし、介入するにしても、それは正式に別次元と交流することができるようになった時だ。

せめて、フランス革命の恐怖政治の過ちが繰り返されないことを願うことしかできなかった。

「だが、大変なのはお前らも同じだ。せいぜい決戦の時まで、楽しく過ごしとくんだな」

「言われなくてもそうするさ。じゃあな」

モハメドと固い握手を交わした翔太はコンテナの上にビャッコやセラフィムと一緒に座っている伊織の元へ向かう。

「よぉ、伊織。こことの別れの挨拶は済ませたか?」

「うん…。ねえ、翔太君…」

「なんだ?」

「結局、あのエリクって人は何者だったのかな…?私のお父さんについて、何かを知っていたみたいだったけど…」

「さっぱりわからないな…。結局、俺が気を失っている間に姿を消してしまったしな…」

この1週間の間、ヴァプラ隊の力を借りてエリクの捜索を行ったが、結局見つけることができなかった。

融合次元に戻ったという見解が有力で、アカデミアと全面戦争をすることを考えると、いつか必ず彼と会うことになるかもしれない。

「もしかしたら、お前の親父はアカデミアの関係者かもしれない。自分の生まれの秘密を知ったら、もしかしたら…」

翔太はあえて、伊織の父親がアカデミアの関係者であることを断定することなく、あくまで仮定として話した。

融合次元の関係者であることでショックを受けた彼女であるため、エクシーズ次元に侵略し、多くの人々をカードに変えてきた悪魔の子供だと知ってしまったら、と思い、断定的に答えることができなかった。

ビャッコの頭を撫でながら、伊織は笑顔で答える。

「それでも、私は知りたい。自分の親がどんな人で、どんな思いで私を産んでくれたのか。翔太君だって、どんな形で会っても、自分の記憶を取り戻したいでしょ?」

「当然だ」

「それで、自分の正体が世界を滅ぼす大魔王だったってわかってしまうことになっても?」

「どこのRPGの敵キャラなんだよ?ま…それでもだ。どんな悪人であったにしろ、思い出さない限り、俺は前へ進めないからな」

あまりにもひどい例に少し嫌な表情を見せた翔太だが、彼女の目を見ながら明確に自分の答えを口にする。

その言葉を聞いた伊織はビャッコを抱いたまま立ち上がる。

「じゃあ、翔太君も私と同じだね。これからも、一緒に頑張ろう!」

「仕方ねえな。そのためにも帰るぞ。スタンダード次元へ…」

伊織が出した右拳に翔太も自身の拳をぶつけた。

 



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第87話 道化師の目覚め

「ん、んん…」

病院の白いベッドの中で眠っていた少年の瞼がゆっくりと開く。

彼の赤い目はうっすらとだが、真っ白な天井とそこでゆっくりと回っている扇風機を見つめる。

目覚めると同時に右手に覚えのあるぬくもりを感じ、ベッドの右側を見る。

(やっぱり…)

そこで手を握って眠る柚子を見た遊矢は舞網チャンピオンシップの後で夢の中でユートとデュエルをした後のことを思い出す。

目を覚ましたその時にも、柚子がこうして自分の手を握っていた。

遊矢が意識を取り戻すことを願ってのことだろうか。

彼が意識を取り戻すのを待っていたかのように、医者と看護師が部屋に入ってくる。

「目が覚めたみたいだね。ここは舞網市の病院。君はこのベッドで5日眠っていた」

「5日…」

淡々と事実だけを話す医者の言葉に遊矢は実感を抱きづらかった。

遊矢にとって、意識を失ってからこうして目を覚ますまでの時間がそれほど経過していないように感じられたからだ。

そして、医者は遊矢のベッドの左側へ向かう。

「気づいているかもしれないが、君はシンクロ次元でのデュエルで左腕を失っている。正確には、肘から先をだが…。レーザーで切られていて、治療が難しいうえに今のランサーズには君の治療を気長に待つ時間も与えられていない」

左腕を失った、という話を聞いた遊矢だが、なぜか取り乱すことも悲しむこともなく、ああそうか、というどこか他人事のように彼の耳には聞こえてしまった。

肘から先の部分が右腕よりも少し重いような感じがするのを今になって実感し始めている。

「これが、君の新しい腕だ」

掛け布団を少しどかし、遊矢に今の自分の左腕を見せる。

肘から先の部分には赤い機械でできた義手が取り付けられていて、試しに遊矢はその手をグー・チョキ・パーの順で動かす。

神経接続されているのか、まるで元の手のように5本の指が動いている。

「バイオニックアーム…私も聞いた時は驚いた。まさか別次元にこのような技術があるとは…」

「バイオニックアーム…」

自分の新しい左腕の名前を遊矢は静かにつぶやいた。

 

「バイオニックアーム…神経接続タイプの義手か…」

久しぶりに帰った来たレオコーポレーション本社の社長室の椅子に座った零児は研究員から受け取った遊矢のバイオニックアームの設計図を見ている。

「シンクロ次元でロジェに家族を人質にされ、研究を強要されていた技術者の協力が大きいですね。筋電義手そのものは実用化されましたが、コストが高く、一般ではなかなか手の届くものではありません。シンクロ次元ではスタンダード次元と比較して、かなり低コストで筋電義手を作ることができますが、まさか神経接続型義手まで普及していたとは…」

「主な顧客はトップスの面々だったみたいだが。それで、遊矢のものについては?」

「回収したセルゲイというサイボーグのデータがあり、デュエルディスク機能やDホイールとの神経接続による反応速度向上も可能になっています」

ロジェに協力していた技術者からの証言と治安維持局から接収したセルゲイのパーツの解析を行った結果、彼専用に神経接続とサイボーグとしての体によって普通の人には耐えられないほどの反応速度と加速スピード、馬力などを手に入れたDホイールが用意されていたことが明らかとなった。

現在、そのデータを基にして、遊矢のマシンレッドクラウンの改造が行われている。

シンクロ次元でデュエルが行われるとは限らず、ライディングデュエルそのものがこれからこの戦争中にすることになるかはわからないが、少なくとも移動手段としては不自由ない状態にはできるとのこと。

「了解だ。引き続き、解析を行ってくれ。可能であれば、今回同行してもらったシンクロ次元の技術者に協力の要請を」

「よろしいのですか…?」

「もうロジェは再起不能だ。そして、彼に賛同して協力していた奴の場合、もうシンクロ次元に居場所はない。説得すればコロリと転がる。だが、アカデミアのスパイについては気を付ける必要がある」

零児の脳裏にはフレンドシップカップで黒咲に敗れた後、アカデミアへ逃げ帰ったデニスのことを念頭に置きながら話す。

彼はブロードウェイ校所属で、経歴についてはアメリカ国内にある平凡な学校の出身者であること、そして出身はシカゴで、学校には寄宿舎から通っていたことまでは分かっている。

両親は数年前に事故で死亡し、入港申込書に書いた住所の家も引き払ったとされていた。

スタンダード次元に帰った後、零児の指示でブロードウェイ校は念のためにデニスの経歴についての調査を行った。

結果、卒業した学校には確かに卒業名簿に彼の名前があったが、それは偽装されたものだということが判明した。

住所の家の主については3年前に交通事故で死んだ老夫婦のものであり、その子供たちによって家が解体されたことも判明した。

つまり、デニスの経歴はやはりと言うべきか、まったくの出鱈目だった。

こんなに出鱈目な経歴をどうして信じてしまったのか恥ずかしくなるくらいだ。

(といっても、仕方のないことではあるな…。別次元の存在を当時知っていたのは私と母さん、本社の一部の人間とあの人くらいだ…)

技術者は頭を下げると、社長室を出ていき、彼と入れ替わるように侑斗が入ってくる。

侑斗の手には青白い遊戯王カードの破片を模したような物体が入ったカプセル2つが握られており、社長室に入った彼は零児の机の上にそれらを置く。

「ヒイロさんが回収したものと…」

「スタンダード次元で回収された『欠片』…」

2つの『欠片』を見た零児は侑斗に目を向ける。

「赤馬零王…君のお父さんは人をカード化するだけじゃなくて、これも探していた…で、いいんだよね?」

「そうだ…」

零児は3年前、会社と家族を放置して何も言わずに出ていった彼を追いかける形で融合次元へやってきたことがある。

そこで彼は父親に自分たちに何も言わずに出ていった理由、異次元の存在とそこへ侵攻する目的、デュエルアカデミアという存在について問いただすが、なにも答えを得られないままスタンダード次元へ戻されてしまった。

『欠片』の存在に気付いたのは出ていく前に零王が破棄したデータの復元を行っていた2年前のことだ。

そのデータの中で『欠片』とそれが各次元に1つずつ、例外の1つを含めて合計5つ存在するということが分かった。

すべてのデータの復元ができていないため、詳しいことは分からないが、それらが零王にとって重要な存在であることは確からしい。

ヒイロが手に入れた『欠片』も、ロジェによって厳重に保管されていた。

「これが、あなた方が我々と協力する大きな理由…というわけだ」

「うん。前に話したよね?この『欠片』が君たちの次元を…世界を生み出したって」

『欠片』が入ったカプセルを撫で、侑斗は確認するようにたずね、零児は何も言わずに首を縦に振る。

「この『欠片』の数だけ世界は存在する。そして、その欠片が砕けたとき、その数だけ再び世界が生まれる。けど…僕にもわからない。なんで4つじゃなくて、5つなのか」

「そして、5つ目の『欠片』がどこにあるのか…?」

融合次元、エクシーズ次元にあると思われる『欠片』は既にアカデミアの手に落ちていると考えるのが妥当だろう。

シンクロ次元、スタンダード次元に存在する欠片は今、零児たちランサーズの手の中。

「けど、カプセルを持ってくることができたのはよかったよ。放置したままだと、何が起こっても不思議じゃないから…」

「ああ。秋山翔太の件もある。彼がああなり、そして石倉純也が行方不明になったのは、この次元の母ともいえるこれが原因だからな」

「彼にはまだ、話していないよね?」

「ああ…。だが、いいのか?私たちから話さなくても…」

「今の彼は他人が正体を話したとしても、信用しないだろうからね。それに…もしかしたら、今の彼なら、勝てるかもしれない」

侑斗は翔太とは数回しかあったことがなく、デュエルをしたこともない。

しかし、なぜか確信したかのように、自信をもってそう答えることができた。

「高く買っているんだな、彼を。なぜだ…?」

「さあ、なんでだろうね…?けど、今はそれよりも気になることがあるよ」

「ああ…。クローバー校とダイヤ校のレジスタンスが相次いで行方不明になっている、ということだな?」

零児の言葉に侑斗は何も言わずにうなずく。

エクシーズ次元にいたころ、侑斗は彼らレジスタンスの自衛力を高めるために、RUMを渡し、更には彼らのデュエルの指導などを行った。

しかし、レジスタンスのすべてが彼の支援を受けたかというとそうではない。

彼の、別の世界から来た得体のしれない人間の力を借りることを良しとしなかったクローバー校とダイヤ校と支援を受けることを決めたスペード校とハート校で意見が真っ二つに分かれて、その結果レジスタンスが二分してしまうという結果を招いた。

互いに敵対することはないものの、クローバー校とダイヤ校はスペード校とハート校との一切の連携を絶っており、唯一彼らに関する情報を得るためのパイプが彼らの元へ潜入した侑斗の仲間1人だけだ。

しかし、最近彼と連絡ができなくなっている。

身元がばれてしまった拘束されたか、カード化されてしまった可能性がある。

ちょうどそれは、彼らが相次いで行方不明になっているという情報を受け取った時期と重なる。

「エクシーズ次元は次元戦争の最前線。それに、翔太たちが遭遇したジェルマンという特務部隊…」

「最悪なケースもあり得るかもしれない。でも、本当にそうなのかをまずは確かめないと…」

「…わかった。人選は此方でする。だが…まぁ、しないとは思うが、彼のような抜け駆けだけはしないでくれ。剣崎」

「うん…。わかってるよ、零児君」

 

「えい…!!よし、これで…!」

遊矢が目覚めて2日後、早朝の遊勝塾で、《アスレチック・サーカス》のフィールドで遊矢は梯子を上る、空中ブランコを使う。ロープを使って上まで登るなどして左腕のリハビリを行っている。

「遊矢の奴、もう2時間使ってやがる…」

翔太が朝練のために来たのは午前5時。

伊織については強引に起こして連れてきている。

しかし、遊矢はその30分前の午前4時半にすでにここに来ていて、こうしてリハビリをしていた。

昨日の夜に病院を退院していて、意識を回復する前にある程度手術をしたせいか、それともその神経接続型の義手の性能のおかげか、既に日常生活では問題がない程度にはその腕を動かすことができるようになっている。

「一日でも早く前線へ戻りたいってのか…?あんなにデュエルを戦いの道具にするのを嫌がってたやつが…」

「うん…。でも…」

「うん?」

「今の遊矢君、どこか無理をしているような感じがする…」

「遊矢、そろそろ水分補給に戻れ!熱中症になるぞー!」

制御室から修造の声が響き、それが聞こえた遊矢はトランポリンに向けて高台から飛び降りた後でフィールドを出る。

出入り口では柚子がストロー付きの水筒とタオルを持って待っていた。

「お疲れさま、遊…」

「ありがとう。ん、ああ…」

右手でタオルを受け取っていた遊矢は左手で水筒を手にして、左腕のバイオニックアームが柚子の視界に入っていた。

それを見た柚子は沈黙し、遊矢の様子を見にそこまで来ていた修造も遊矢の左腕を見て黙り込む。

「ど、どうしたんだよ。塾長も柚子も。らしくないって。俺、大丈夫だし、それに左腕だけで済んで、逆に幸運だったというか…」

柚子と修造を元気づけようと、遊矢は必死に自分に異常がないことをアピールする。

そんな遊矢の左手を柚子は包み込むように両手でつかむ。

「柚子…」

「遊矢…ごめん、ごめんなさい…」

膝が折れ、額を左腕に当てながら、柚子は涙声で遊矢に詫びていた。

 

「さーてっと、遊矢達が無事に帰ってきたってことで、まだ次元戦争が終わったわけじゃないが、ひとまず乾杯だぁ!!」

「「乾杯!!」」

8時になり、遊勝塾に集まった翔太たち塾生と講師の修造、そして洋子がフィールドにテーブルや椅子を置き、料理を並べている中で、修造の号令の元、集まったメンバーが乾杯する。

料理については未知男に作ってもらい、魚は鉄平に釣ってきてもらったものを使っている。

彼らは今、ヴァプラ隊でランサーズのサポートをするために訓練を受けている。

なお、権現坂については修造が連絡したものの、彼から連絡はなかった。

集まったメンバーの中には素良の姿もあった。

「素良…」

乾杯を終え、皆が料理を手にする中で遊矢はフィールドの隅でキャンディーを口にしている素良の元へ向かう。

「何やってんだよ。みんなの中に入って…」

「裏切者の僕には、そんな資格はないよ」

「それじゃあ、なんでここに来たんだよ。それはお前自身、遊勝塾の生徒としていたいってことなんだろう?」

アカデミアを裏切ることになり、このような形で戻ってくることになった素良の気持ちは遊矢にはわからない。

だが、少なくとも仲間である彼が戻ってきてくれたのはうれしいことに感じた。

「それに、塾生が塾のパーティーに参加するのに何か理由がいるのか?」

「…僕はまだ、遊勝塾の生徒…?アカデミアの兵士で、罪を重ねてきた僕が…?」

遊矢に腕を引っ張られる素良の脳裏に兵士としての日々がよみがえってくる。

事故が起こるような過酷な訓練の繰り返しとエクシーズ次元で人々がカードに変わり、町が地獄絵図と化していくさま。

すべての次元を1つにすると言う崇高な目的を盲信していたその時の素良はそれを見たも何の感慨もわかなかったが、今は違う。

その時の罪悪感が彼の心に突き刺さり、今ではドリルのように内へ内へとじわじわ追い立てている。

遊矢達と出会い、デュエルの面白さを知ることがなければ、このような思いを味わわずに済んだかもしれない。

しかし、それでは自分の罪と向き合う機会が永遠に来なかったかもしれない。

「当たり前だろう?ほら、行くぞ」

遊矢に引っ張られた素良が翔太たちの元までくる。

素良を見た彼らは少しの間沈黙する。

遊矢と柚子、翔太と伊織ならともかく、修造達にはまだ気持ちの整理がついていないところがある。

「…ねぇ、素良は何が食べたい?」

「え…?」

「ほら、早く選んで。私はこのポテトサラダとフレンチトースト!」

「え、じゃ、じゃあ…僕はこのアイスクリームを…」

「駄目だろ、素良。ちゃんとバランスを考えて取らないと、フトシみたいに太るよ?」

「おいおい、なんでそこで俺を出すんだよー??」

アユの言葉が皮切りとなって、タツヤとフトシが会話に加わっていく。

3人の、次元戦争が始まる前の何気ない掛け合いを見た素良の目には涙が浮かぶ。

(そっか…ここだったんだ、僕の帰るべき場所は…)

泣いていることに気付かれないように、涙を拭いた素良は彼らに割り込んで料理を手にする。

「ああ、素良ズルイ!!」

「へへっ、おしゃべりに夢中になってると、僕が全部取っちゃうもんねー」

「くぅー…こうなったら、フランドチキンとハンバーグは全部俺がーー!!」

「だからバランスをー…ああ、もう!!」

「こうなったら私はこっちを取っちゃおうかなー?」

年少組が料理を取り合い、そのいつもの何気ない光景の中で素良に笑顔が生まれた。

しかし、その笑顔の裏では何か強い決意を宿していた。

(そうだ…この光景を守るためなら、僕は…)

 

「あー、翔太君、こんなところに!」

遊勝塾が盛り上がるなか、伊織は翔太を探しに外へ出ていた。

伊織の予想通り、翔太は川辺で寝っ転がっていた。

伊織も翔太をまねて、隣であおむけに横になる。

「ったく、何勝手に俺の隣で寝っ転がってんだよ?安眠妨害だ」

「別にいいじゃん。気持ちいいんだもん、ねー、ビャッコちゃん!」

「キュイー!」

「ビャッコ…ああ、もう驚かねえ」

神出鬼没で伊織の言葉に同意するように鳴いたビャッコにうんざりしながら、翔太は起き上がる。

シンクロ次元から戻ってきて1週間がたち、ウソみたいな平和な日々を過ごしている。

その間にスタンダード次元やシンクロ次元にアカデミアが攻撃を仕掛けたという報告はなく、零児から連絡が来ることもない。

「ねえ、翔太君」

「んだよ…?」

「次元戦争が終わったら、翔太君は何がしたい?」

「戦争が続こうが終わろうが、俺がやることは…」

「記憶探し以外で!」

翔太のいうことが分かっていたのか、伊織は大声でそれ以外の答えを要求する。

再び寝転がる翔太は答えが出ず、沈黙したままだ。

「やっぱり、翔太君って記憶探し以外にやりたいことは何もないの?」

「…」

「沈黙してるってことは、そういう意味なんだね」

「じゃあ、お前はどうなんだよ?そういう質問をするってことは、お前にはあるんだろう?」

伊織の言葉に腹が立った翔太は逆に伊織に同じ質問を返す。

これで答えられなかったらどうしてやろうかと皮算用をするが、予想だにしない答えが返ってくる。

「私は…施設の先生になる勉強をする!私を育ててくれた施設長さんみたいに、私もそういう子供たちを助けられる人になりたいから…。そのためにも、ちゃんと大学には奨学金で入って、予備校にも通って、試験で合格できるようにならないと…」

まぶしいくらいまっすぐに翔太に目を向けながら、伊織は自分の将来のビジョンを語る。

奨学金という言葉で、翔太は零児から提示されたランサーズへの戦争終結後の報酬について思い出した。

現在の私立大学の文系の学校で学費は4年間でおよそ530万円、理系だとおよそ660万円。

大学に入るとなると、一番近い場所では隣の県の大学で、そこは私立。

伊織が文系と理系のどちらを選択しているのかはわからないが、それでも上記の費用が掛かるのは間違いないだろう。

当然、施設を出て下宿することになるため、そのための家賃や光熱費、交通費、更にはサークルに入った場合には活動費なども必要になる。

だが、零児から提示されている1人当たりの報酬は800万円。

大企業の幹部の年収クラスの額だ。

これだけの金があれば、あとはアルバイトをするなり節約するなりすることで、4年間の大学生活はどうにかなる。

ここまであっさりと答えられてしまっては、翔太に立場はない。

「翔太君、戦いが終わるまでに、でいいから、何か記憶を取り戻す以外にやりたいことを見つけてみたら?記憶を取り戻すのも大事だと思うけど、それだけだときっと、それが終わったら、生きていく目的を見失っちゃうと思うから…」

「おいおい、大げさな…」

「なんとなく、だけど…そんな気がしたから…」

ビャッコの頭を撫でながら、伊織は翔太を心配そうに見ながらそう口にする。

それに対して、翔太は何も言い返すことができず、彼女の背を向けるように横になった。

 

「ハア、ハア、ハア…うおおお!!」

昼間の山の中で、《XX-セイバーガトムズ》2体のダイレクトアタックを受けた権現坂が吹き飛び、後ろに這えている大木に背中をぶつける。

「おい、権現坂。いったん休憩だ。集中力が切れてるぜ?」

刃がデュエルディスクをしまい、権現坂の前に歩いてくる。

遊矢が朝練を始めたのと同じ時間帯に権現坂は刃にこうして連続でデュエルを行い、修行をしている。

先ほどのデュエルで30回目に突入しており、権現坂の勝率はギリギリ5割。

今回のデュエルでは、権現坂が《超重武者シュテンドウ-G》の召喚タイミングをミスしたことで、そこからXセイバー必殺のハンデスコンボを叩き込まれたうえ、そのまま逆転できずに敗れるという結果となった。

「ハアハア…もう1戦頼む!!」

「勘弁してくれよ…俺だって、けっこー疲れてるんだからよぉ。お前も、帰ってきたんなら、少しは休めよ…」

権現坂がこうして特訓の相手になってもらっているのは刃だけではない。

帰ってきた翌日の早朝からヴァプラ隊やLDSなどのデュエリストに頼み込んで、こうして特訓を続けている。

昨日はオルガやガーダー、そして最近新しくスクラップデッキを作った未知男といったシンクロ召喚を主体としたデュエリスト達と朝から夜まで特訓を続けていて、日本ではLDSの寮で滞在しているオルガは帰ってきたころにはぐったりしていたのを刃は目にしている。

「そうはいかん!今の俺は…まだ、弱い…!!」

「遊矢とセレナって女の子のことか?そいつは残念なことだとは思うけどよぉ、あの時のお前じゃあ、どうしようもなかっただろ?」

フレンドシップカップでクロウに敗れ、地下収容所へ送られた権現坂が外に出ることができたのはアカデミアとセキュリティの衝突が始まったころだ。

警備が甘くなった隙に収容所にいる沢渡などのランサーズらと結束して脱出したのはいいものの、そこで待っていたのはオベリスクフォースやディアボロとの泥沼の戦いだった。

権現坂達は生き延びるためにも、襲ってくる彼らへの対応に忙殺されることになり、そして民間人が避難しているシェイドのアジトなどの守りに向かわざるを得ず、遊矢を助けに行くことができなかった。

「だからといって、それでは俺の気が収まらん!俺はもっと強くなる。仲間を…この次元を守れるくらい…もっと!!」

「…あーあー、分かったよ!!どうせ、止めても無駄だろうからな!」

権現坂の気迫に負け、説得をあきらめた刃はため息をつくと再びデュエルディスクを出す。

「だが…ここから先、1回でもお前が負けたら、その時は無理やりでも休んでもらうぞ!!」

「…おう!!」

立ち上がった権現坂はカードをドローし、デュエルが開始される。

そして、日が暮れるまで山の中では戦士と武者がぶつかり合い続けていた。



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第88話 『欠片』の意味

レオコーポレーションの社長室に、ランサーズとシェイド、そして侑斗、素良が集合する。

早朝に零児から電話で連絡があり、それに従って集まったため、今の時刻は午前の8時前だ。

「すまない、朝早くに集まってもらうようなことになってしまった」

「まったくだぜ、せっかくはちみつたっぷりシフォンケーキを食べようとしてたところだってのに…」

(うげー…団長の甘党っぷりには頭が下がるぜー…)

サッシー(《魔界劇団-サッシー・ルーキー》の精霊に沢渡がつけた名前)はスタンダード次元に戻ってから、ずっと沢渡の糖尿病になるかもしれないほどの甘党っぷりを見てきた。

先ほど言っていたはちみつたっぷりシフォンケーキだけでなく、角砂糖をたっぷり入れたコーヒーや普段飲む飲料がイチゴ牛乳と、彼の将来が心配になるほどだ。

「権現坂…すっかりボロボロだけど、大丈夫か?」

タスキや制服がボロボロで、鉄下駄には修理された痕跡がある上に、体中に傷のある権現坂を見た遊矢は苦笑する。

話によると、ここに集合するギリギリまでずっと修行を続けていたらしい。

「問題ない。いや…むしろ問題なのは貴様だ、遊矢」

「俺?なんで??」

「とぼけるな!!そのような腕で…!!」

権現坂は強引に遊矢の左腕を引っ張る。

いつもならマントのように肩にかけていた制服だが、袖を通しており、両手を手袋で隠していることからあまり目立っていないが、それによってそれに隠れていたバイオニックアームがわずかに露出する。

彼が左腕を失ったという話は全員聞いているが、権現坂を除く遊勝塾関係者以外で遊矢がそれを装着しているのを見るのはこれが初めてだ。

「大丈夫だって!これ、あんまりリハビリしなくてもアクションデュエルに問題がないくらい動かせたんだ。それに、やろうと思えば利き腕と同じくらい動かすことだってできるし、それに…」

スパァン、と遊矢の頭に柚子のハリセンが炸裂する。

いきなりのハリセン攻撃にびっくりした遊矢は右手で頭をさすりながら柚子を見る。

そんな彼に柚子はまたハリセンをたたきつける。

「強がらないで、遊矢!!」

眼に涙を浮かべた柚子は再びハリセンをぶつける。

しかし、1度目や2度目とは異なり、力が抜けているためか、相対的に痛みが少ない。

「待てよ柚子、俺、強がってなんか…」

「ううん、強がってる…!なんで、なんで泣かないのよ!?左腕をなくして、本当はすごくつらいはずなのに…どうして!?」

帰ってきて、遊矢が目を覚ましてからずっと、柚子は疑問に思っていた。

左腕を失うほどのけがをしたのに、彼は泣いたり、誰かに八つ当たりしたりしなかった。

自然に受け止めて、いつも通りに、いや、いつも以上に笑顔で生活をしていた。

まるで自分の心をそれで隠そうとしているかのように。

「あたしのせいなのに…あたしが、もっと気を付けていたら、こんなことにならずに済んだのに!!」

「柚子…」

「お願い、遊矢…。無理に笑顔を作らないで…。泣きたいときくらい…思いっきり泣いてよ…」

ずっと我慢してきた想いを爆発させ、ハリセンを手放した柚子は遊矢の胸に顔を押し付け、泣きじゃくる。

突然のことに戸惑う遊矢はおそるおそる柚子を抱きしめていた。

「遊矢…」

「初めてだよ。泣いていいって、言ってくれたの…」

遊勝が失踪し、心を閉ざしてから遊矢は笑顔になることを求められ続けていた。

遊勝からも、笑顔の大切さを教わっていて、そのせいか泣くことは悪いことのように思えるようになってきていた。

だが、柚子のその言葉がその泣くことの大切さを少しずつだが思いだせた。

「だって…泣けないのって、悲しいことだと思うから…」

「ちっ…何勝手に2人だけの世界に入ってるんだ」

翔太の空気の読めない言葉で現実に帰ってきた2人の顔が赤くなり、互いに距離を取る。

あんまりな発言に伊織達の目線が翔太に集中する。

「…んだよ?」

「…本題に、入っていいか?」

零児の言葉により、遊矢たちの視線が彼に向けられる。

眼鏡を整えた零児は2つの『欠片』が入ったカプセルを彼らに見せる。

「青い…何かの破片か?」

何なのかわからない沢渡はそばまで行き、上や正面、横など様々な方向から見てみるが、分かるのはそれが何かのカードの破片のようなものであるということだけで、詳しいことは何もわからなかった。

「これは…『欠片』だよ。アカデミアは世界を一つにする計画のためにこれを狙っている」

「計画のために…?なぜそれが重要なのだ??剣崎殿」

カプセルに入れられていることから、何か重要な意味合いがあることは少しだけわかった権現坂だが、それに何の価値があるのか、よく理解できなかった。

「シンクロ次元でとらえた男、ジャン・ミシェル・ロジェが自白した。嘘発信機も使って確認したため、間違いはないはずだ」

「ロジェは…『欠片』について何て…?」

「正確にはプロフェッサーが言っていたことのようだが、各次元に1つずつ存在する『欠片』には各次元を制御する力、そして触れた人間に知識を与える力があるとのことだ。ヒイロ・リオニスが破壊した次元転送装置、そしてディアボロという翔太達が戦ったことのあるロボットはロジェがそれに触れて手に入れた知識で作ったものとのことだ」

「まるで知恵のリンゴだな」

『欠片』に宿る力を皮肉るように、翔太は言う。

その言葉はある意味的を射ているのか、零児はフッと笑い、説明を続ける。

「彼の言う通りかもしれない。『欠片』は現実として、我々にとって脅威となる存在を生み出した。特に次元転送装置については、一歩間違えばシンクロ次元を崩壊させたかもしれないブラックテクノロジーともいえるだろう。それだけの力を与えるということは、逆に言えば、それに飲まれる可能性が高いということだ」

ロジェが自白した『欠片』の話をテープレコーダーで聞いた零児はなぜ零王がアカデミアを統べ、他の次元を侵略するという強行に至ったのか予想できた感じがした。

何らかの理由で融合次元にたどり着き、そこで手に入れた『欠片』に魅せられてしまったのだろう。

まるで、その『欠片』の力を受けたことで神に等しい存在になったと誤解したかのように。

そして、エクシーズ次元の侵略により、最悪の場合はその『欠片』を2つもっていることになる。

「これからの方針を考えると、エクシーズ次元へ向かい、可能であればその次元にある『欠片』を回収する必要がある。これ以上、『欠片』によってアカデミアの戦力が拡大するのを防ぐために…」

「エクシーズ次元へ向かうメンバーは既に選抜してるよ。そこでの目的はあくまで『欠片』の回収で、黒咲君が所属しているレジスタンスと協力して行うことになる。だから、こちらからは少数のメンバーで向かい、残ったメンバーはスタンダード次元の防衛に動く。その都合上、僕とウィンダ、黒咲君と遊矢君はエクシーズ次元へ行く」

「遊矢も行く…っていうのは、ユートが遊矢の中にいるからですか?」

柚子の質問に肯定するように、侑斗は首を縦に振る。

遊矢も選ばれた以上は行くつもりでいるのか、反対せずに真剣な目をしている。

「零児、1つ尋ねるが、『欠片』を手に入れて、お前はそれをどうするつもりだ?」

翔太の質問を聞き、零児はじっと2つの『欠片』を見つめる。

そして、それを見たままその質問の答えを出す。

「毒を以て毒を制す。この『欠片』を使って、アカデミアを倒す力を得る」

「そんなお前が『欠片』の力に飲まれない保証はあるのか?飲まれる可能性が高い、といったのは間違いなくお前だろ?」

18歳にして大企業であるレオコーポレーションの社長を務め、更にランサーズのボスとして戦った彼の精神力の強さはだれもが認めている。

だが、そんな彼でも『欠片』の力の誘惑に耐えることができる保証はない。

遊矢達の中で、『欠片』に耐えられると自信をもって答えられる人物は誰1人としていないのだから。

「もし、私が『欠片』に飲まれてしまったら、その時は私を殺せ」

そういった零児は机の中から封筒を出し、その中にある紙を翔太達に見せる。

それは零児直筆の遺言状だった。

「この遺言状には、仮に私が『欠片』に飲まれ、殺されたとしても、私を殺した人物に対して一切の刑事的・民事的責任を追及しないようにと記している。レオコーポレーションが雇っている弁護士にも、そのことは伝えている」

「ということは、『欠片』を手に入れた奴らはそれだけの覚悟がなければ勝てない相手、だな?」

「そうだ。そして、このエクシーズ次元における行動がこの戦局に大きな影響を与えることになる」

「わかった。だったら、俺も行くぜ。記憶探しのついでなら、ちょうどいい」

零児の答えを聞き、わずかながら安心した翔太は即座に同行を表明する。

そして、机の上にある2つの『欠片』に目を向ける。

(だが…なんだ?この感覚は…?)

『欠片』を見てから感じ始めた言葉にできないような不快感と懐かしさのようなものを感じていた。

まるで、自分はそれについて昔から知っていたかのように。

「うん…。だけど、エクシーズ次元は現在進行形で侵略を受けてる。だから、融合召喚に関してはかなりナーバスになっているから、彼らが近くにいるときはなるべくそれを控えてほしい。僕ももともと使っていたデッキを持っていくから。あとは…」

「待って、私も行く!」

侑斗の話を遮るように、伊織は手を上げる。

「ついていく理由は…自分の生まれの秘密を知りたいから…か?」

伊織については、既に零児も報告を受けている。

彼女が融合次元の、強いて言えばアカデミアの関係者と関係している可能性が強い。

スタンダード次元で育ってきたことから、裏切りが起こる可能性は低いものの、元々融合召喚を得意とする彼女が行くことには難色を示していた。

「シンクロ次元から持って帰ったデッキを使えば、融合召喚を使わなくても大丈夫だし、それに…」

伊織がチラリと翔太に目を向ける。

なぜ自分に目を向けてきたのかわからない翔太は首をかしげる。

「それに、翔太君のストッパー役をしないといけないし!」

「はぁ?」

まるで自分のことを問題児のように言う伊織の発言に翔太は思わず声を上げてしまう。

翔太から見れば、伊織の方がはるかに問題児に見えている。

自分を客観視できていないのもあるかもしれないが…。

「…わかった。エクシーズ次元行を認めよう」

「やった!」

「なお、柊柚子にもエクシーズ次元へ行ってもらう」

「柚子も…どうして!?」

反論するように、遊矢は声を上げる。

エクシーズ次元は侑斗の言う通り、アカデミアが侵略を続けている次元であり、そこではいつアカデミアのデュエル戦士と遭遇するのかわからない。

そんな場所で、柚子を守る余裕があるかどうかははっきりとは言えない。

彼女がシンクロ次元で戦い抜き、そして訓練で力をつけたことは分かっているが、それでも心配になってしまう。

「確かに、リスクは大きいが、エクシーズ次元で『欠片』を探すためには彼女と彼女の持つブレスレッドが必要だ」

「それは、どういう…?」

「カプセルを少しだけ開くぞ」

カプセルのついているテンキーにパスワードを入力すると、カプセルが開き、密閉されていた『欠片』があらわとなる。

それと同時に、柚子のブレスレッドが反応するように点滅した。

「これは…!?」

「理由は分からないが、柊柚子のブレスレッドは『欠片』に反応する。リスクは大きいが、『欠片』を短時間で見つけるにはこの方法を取らざるを得ない。残念なことに、今のレオコーポレーションの、いや、この次元とシンクロ次元の技術では『欠片』を見つけるためにセンサーを作ることは不可能だ」

「じゃあ、ブレスレッドだけをもっていけば…」

「では、試してみろ。柊柚子、遊矢にブレスレッドを」

「は、はい…!じゃあ、遊矢…」

柚子はブレスレッドを遊矢に渡す。

柚子の手から離れた瞬間、ブレスレッドから光が消え、『欠片』に近づけても反応しなくなった。

「ブレスレッドは彼女が装備することで初めて機能する。どちらが欠けていても、『欠片』を見つけることができない。理解してもらえたか?」

「でも…」

「グダグダ言ってんだよ、遊矢。だったらお前が守ればいいだけだろう?」

「翔太…」

「安心しろ。俺もお前と零児と同じ、すべての召喚法を使えるデュエリストだ。下手したら、お前よりも強いかもな。だから、お前は彼女を守るのに集中しろ」

「そうそう!柚子ちゃんも遊矢君に守られてる方が安心するし!」

「い、伊織!?」

顔を赤くした柚子は思わず伊織の頭にハリセンをたたきつける。

すっかり油断していた伊織は目を回してその場に倒れてしまう。

「あ…やりすぎた…」

「フゥ…とにかく、エクシーズ次元には秋山翔太、永瀬伊織、榊遊矢、柊柚子、剣崎侑斗、ウィンダ・フェーン、黒咲隼の7人で行ってもらう。これで決定だ」

「ほとんど留守番か…。ま、しょうがないね。僕は元々、アカデミアの人間だったんだし」

既に自分が同行しないことを納得しているかのように、飄々とした態度をとる素良は次のキャンディーを口にする。

権現坂もまだ自分が納得できるくらいの強さがないと感じているのか、黙って受け入れていた。

しかし、納得していない面々もいる。

「おいおい、なんでランサーズ最強デュエリストの俺は行けねーんだよ!?」

「俺はエクシーズ召喚使いじゃぞ!?なんに、どうしてか!?」

沢渡と漁介の2人がそろって零児に文句を言う。

2人とも、エクシーズ次元で本気のデッキでデュエルをしても問題のない面々であることは確かだ。

沢渡はともかく、漁介の場合はTDCでも見せたようにタッグデュエルに関しても一定の評価がある。

沢渡に関しては現在使っている魔界劇団を含めて、複数のデッキを所持し、それを使いこなせるだけの実力と向上心がある点については零児も否定していない。

「わかっている。君たちには君たちで別の役目がある。その時までは、スタンダード次元で守りについてもらう」

「別の役目…?」

「なんか、そりゃあ…」

「いずれ分かる。私も来るべき決戦の準備をするため、この次元に残る。そして…君たち7人の働きはその決戦を左右することになる。戦果を期待する。出発は今日の夜だ」

 

「…これの準備、あとどれくらいかかるかな?」

翔太達が帰った後で、侑斗と零児はレオコーポレーション地下で建造されている大型の装置を見ていた。

当初はスタンダード次元の研究者だけで行っていたが、シンクロ次元の研究者と資材などが入ったことでそれの準備が着々と進んでいる。

「あと1カ月か2か月と言ったところだ。これの有無で融合次元との決戦が大きく左右される」

「シンクロ次元、エクシーズ次元の住民もスタンダード次元に避難することになるんだったね。彼らを守るためにも、これは必ず必要になる」

研究員から受け取った端末を受け取り、その装置の設計図を見る。

侑斗はこの設計図を最初に見せられた時のことを思い出す。

スタンダード次元にはない技術が盛り込まれた、まるで夢物語のような中身に最初は驚きを隠せなかった。

しかし、零児が提示した新技術により、ようやく開発が始めることとなった。

その新技術をどのようにして得たのかはすでに明白だ。

「…すまないと思ってるよ、僕が背負うべきなのかもしれないけど、どうやら僕は『欠片』に拒絶されているみたいだから…」

「気にしないでくれ。プロフェッサーはいわば身内の恥だ。ゆえにその業は私が背負う必要がある」

「でも、つらい時は辛いとはっきり言ってよ?何もできないかもしれないけど、話せないよりマシだと思うから…」

「…感謝する」

眼鏡のついた埃をふき取り、零児は先に戻っていく。

残った侑斗は端末を近くの研究者に返した。

「防御システム『ニヴルヘイム』…。できれば、これが使われることがないことを願いたいよ…」



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第4章 廃墟の中の希望
第89話 廃墟の町へ


廃墟と化した町に雨が降り、雨音だけが響いている。

夜空は黒い雲に完全に隠れており、月も星も見ることができない。

そんな場所に突然青い光が発生し、それが消えると同時に7人のデュエリストが現れる。

先頭に立つ侑斗はデュエルディスクで座標を確認する。

「よし…誤差はない。ここはエクシーズ次元のハートランドシティだ」

「正確にはその中学校の敷地内だがな…」

がれきの山を見ながら、黒咲は静かにつぶやく。

今回の作戦では土地勘の問題から、やむなく黒咲を同行させることになったが、侑斗は彼がエクシーズ次元の惨状を再び肉眼で見てしまうことで、彼が憎しみに取り込まれてしまわないか心配していた。

デニスの件は既に耳にしており、彼が肥えてはいけない一線を越えるのだけは耐えたので、一安心した。

「うう、それにしても雨で嫌な感じ。どこかで雨宿りを…」

「静かにしろ。奴らだ…」

何かが見えた翔太は身を屈めるように促すと、物陰からグラウンドの方をじっと見る。

そこには3人のデュエル戦士の姿があり、1人は黄色い制服で2人は赤い制服を着ている。

オベリスクフォースのような精鋭ではないものの、彼らもまた、プロフェッサーの命令でやってきた侵略者だ。

「一体この場所には何人デュエル戦士がいるんだろう…?ウィンダ」

「うん…ガルド、お願い!」

侑斗とウィンダはそれぞれの愛鳥であるフォーチュンとガルドを飛ばし、偵察させる。

「緑色の鳥…?あれで偵察を…?」

2羽の鳥の姿が見えた遊矢が侑斗たちに尋ねる。

遊矢の質問を聞いた侑斗は少し驚きながら彼を見ていた。

遊矢が《調律の魔術師》の精霊であるナディが見えることはすでに侑斗も話に聞いている。

そうなったのは彼の中に宿るもう1つの魂の影響か、それとも力が成長したことによる副産物かまではわからなかった。

数分が経過すると、2羽の鳥が戻ってきて、それぞれの主に偵察結果を伝える。

「半径200メートル範囲で、あの3人以外のデュエル戦士はいない。倒そうと思えば倒せるけど、今の目的はスペード校へ向かうことだ」

エクシーズ次元へ転移する前に行われた作戦会議で、今回の作戦のプランがすでに提示されている。

第一黒咲やユートが所属するレジスタンスの拠点となっているスペード校へ向かい、情報収集及び可能であれば救援を行うことが第一段階。

第二段階は行方不明となっている侑斗の仲間を見つけ出し、行方不明になっているクローバー校とダイヤ校のレジスタンスに関する情報を手に入れること。

最終段階は彼らを見つけ、エクシーズ次元にいるアカデミアを駆逐し、『欠片』を手に入れることだ。

それらのことを考えると、敵の目を盗んで進み、可能な限り戦いを避けるのが効率的だろう。

しかし、彼らは遊び半分で人をカード化する愚連隊。

放っておくと、彼らによってカード化されてしまう人が現れてしまう恐れがある。

「ま、ま、待てよ!!俺はデュエリストじゃないぞ!!」

「黙れ!どうやら、レジスタンスの協力者らしいな…!」

少し離れたところからデュエル戦士がエクシーズ次元の一般市民を襲っている光景が見えた。

男性の後ろには幼い少女がいて、彼女はガタガタ震えながら彼の背中にしがみつく。

彼らのそばには横倒しになったカートと、それに入っていたと思われる大量の缶詰があり、どうやらこの親子は食糧確保のために崩壊したスーパーからそれらを回収し、持って帰ろうとしていたのだろう。

「レジスタンスの協力者はカード化していいって命令だ。オベリスクフォース入隊のため、私たちの点数になってもらう!」

「だ、だったら、せめて娘だけは…!」

「いいや、どちらもカードになってもらう!!見逃して、歯向かわれたら面倒だ」

「やめろ!!」

デュエルディスクを展開し、2人をカード化しようとした3人に向けて、立ち上がった黒咲が叫ぶ。

任務のことはわかっているが、それでも目の前で誰かがカードにされるのは耐えられない。

「なんだ?エクシーズ次元の残党か??」

「ちっ…実地訓練のつもりだったがここはズラかって…」

イレギュラーの出現により、レジスタンスがある程度強化されていることをすでに知っている黄色い制服のデュエル戦士は今日初陣の赤服2人とともに下がろうとする。

いまだにレジスタンスの重要拠点の1つとなっているスペード校を陥落させることができず、膠着状態にあるうえ、実戦経験のない2人と一緒に戦うのに不安を覚えたからだ。

しかし、その進路をふさぐように翔太と伊織が乗ったマシンキャバルリーがその目の前で着地し、逃げ道をふさぐ。

「な、なんだそのバイクは!?」

「カードにして携帯可能…かなり便利だな」

転移前に追加された機能により、マシンキャバルリーは2人が下りると同時にカードになって翔太の手に戻る。

「エクシーズ次元を侵略する悪いデュエリスト!私たちランサーズがやっつける!!」

「うわ…バカ!!」

いきなり自分たちの正体を口にした伊織に翔太は頭を抱える。

ランサーズがここに来ているのがばれてしまった。

「ランサーズだと…!?ちぃ、まさか奴らも『欠片』を!!」

焦りを見せる黄服のデュエル戦士がデュエルディスクを展開する。

「た、隊長!?」

「貴様らは逃げろ!!ランサーズが来たことを指令に伝えるんだ!!」

シンクロ次元での戦いで勝利したランサーズは今やアカデミアでは危険な存在として認識されている。

下手をするとアークエリアプロジェクトを破たんさせかねない。

隊長である彼は何とか時間を稼ごうとするが、それはできない相談だった。

逃げ道は侑斗とウィンダ達によってふさがれている。

「あなたたちは包囲されている!早く降参しなさい!!」

ウィンダはビシッと3人に指をさす。

赤服の2人はもはやこれまでと戦意を喪失させるが、黄服は違った。

「誰が…降伏などするものか!!」

黄服が懐から手りゅう弾のようなものを取り出し、ピンを抜いて足元に投げつける。

「これは…!?」

彼らが何をするつもりかを察した黒咲がデュエルディスクに取り付けているデュエルアンカーを射出すると同時に手りゅう弾から煙幕が発生する。

「まずい…奴らを逃がすな!!」

「逃がすなって言ってるけど、こんな濃い煙幕じゃ…!」

黒咲のデュエルアンカーには手ごたえがあり、だれかのデュエルディスクに取り付けることに成功したことを告げるアイコンが表示された。

翔太と侑斗もデュエルアンカーを射出するが、手ごたえはなかった。

煙幕が消え、残っていたのは黒咲にデュエルアンカーで拘束された黄服だけだった。

彼はデュエルディスクを外して逃走しようとしていたようだが、デュエルアンカーには取り付けた相手のデュエルディスクを取り外せなくするシステムが追加されており、できない相談だった。

「さあ…無抵抗な人間をカードにしようとした罪…償ってもらうぞ!」

「く、くそ…!お前ら、ちゃんと逃げろよ…」

部下の無事を祈りながら、黄服はデュエルディスクを展開する。

黒咲の覇気を感じた彼は、このデュエルには勝てないかもしれないと感じていた。

しかし、せめて傷跡を残すことを考え、カードを引く。

「「デュエル!!」」

 

黒咲

手札5

ライフ4000

 

黄服

手札5

ライフ4000

 

「俺の先攻!俺は手札から《RR-ミミクリー・レイニアス》を召喚」

 

RR-ミミクリー・レイニアス レベル4 攻撃1100

 

「更に、俺は手札から魔法カード《スワローズ・ネスト》を発動。自分フィールド上に存在する鳥獣族モンスター1体をリリースし、デッキからそのモンスターと同じレベルの鳥獣族モンスター1体を特殊召喚する。俺は《ミミクリー・レイニアス》をリリースし、《RR-バニシング・レイニアス》を特殊召喚!」

 

RR-バニシング・レイニアス レベル4 攻撃1400

 

「更に、俺は墓地の《ミミクリー・レイニアス》の効果発動!このカードが墓地へ送られたターンのメインフェイズ時、墓地から除外することで、デッキからRRカード1枚を手札に加えることができる。俺はデッキから《RR-ネスト》を手札に加える。更に、《バニシング・レイニアス》は召喚・特殊召喚に成功した俺のターンのメインフェイズ時に1度、手札からレベル4以下のRR1体を特殊召喚できる。俺は手札から《RR-インペイル・レイニアス》を特殊召喚する」

 

RR-インペイル・レイニアス レベル4 攻撃1700

 

「そして、手札から永続魔法《RR-ネスト》を発動!1ターンに1度、俺のフィールド上にRRが2体以上存在するとき、デッキ・墓地からRRモンスター1体を手札に加えることができる。俺はデッキから《RR-シンキング・ストリクス》を手札に加える。そして、俺はレベル4の《バニシング・レイニアス》と《インペイル・レイニアス》でオーバーレイ!冥府の猛禽よ、闇の眼力で真実をあばき、鋭き鉤爪で栄光をもぎ取れ!エクシーズ召喚!飛来せよ!ランク4!《RR-フォース・ストリクス》!」

 

RR-フォース・ストリクス ランク4 守備2000

 

「更に、《フォース・ストリクス》の効果発動!1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、デッキから鳥獣族・闇属性・レベル4モンスター1体を手札に加えることができる。俺はデッキから《RR-ファジー・レイニアス》を手札に加える」

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・RR-インペイル・レイニアス

 

「手札に《シンキング・レイニアス》と《ファジー・レイニアス》。そして、実質手札消費は1枚…。まだまだ展開できる…」

黒咲の今の手札は4枚で、おまけにどちらのRRも特殊召喚できる効果がある。

うまくいけば、ここから2回以上エクシーズ召喚を行うことができるかもしれない。

問題はそのあとの黄服の行動だ。

オベリスクフォースではないものの、隊長を任されることもあり、実力については警戒する必要がある。

「更に、俺のフィールド上にRRが存在することにより、《RR-ファジー・レイニアス》は手札から特殊召喚できる」

 

RR-ファジー・レイニアス レベル4 攻撃500

 

「そして、俺のフィールド上にエクシーズモンスターが存在するとき、《RR-シンキング・レイニアス》は手札から特殊召喚できる」

 

RR-シンキング・レイニアス レベル4 攻撃100

 

「俺はレベル4の《シンキング・レイニアス》と《ファジー・レイニアス》でオーバーレイ!エクシーズ召喚!飛来せよ!ランク4!《RR-フォース・ストリクス》!」

 

RR-フォース・ストリクス ランク4 守備2000

 

「《フォース・ストリクス》の効果発動!オーバーレイユニットを1つ取り除き、デッキから《RR-ブースター・ストリクス》を手札に加える。さらに、《ファジー・レイニアス》の効果発動。このカードが墓地へ送られたとき、デッキから《ファジー・レイニアス》を手札に加えることができる。そして、俺はカードを2枚伏せて、ターンエンド。《フォース・ストリクス》はこのカード以外の自分フィールド上に存在する鳥獣族モンスター1体につき、攻撃力・守備力が500アップする」

 

黒咲

手札5→2(《RR-ブースター・ストリクス》《RR-ファジー・レイニアス》)

ライフ4000

場 RR-フォース・ストリクス(オーバーレイユニット1)×2 ランク4 守備2000→2500

  RR-ネスト(永続魔法)

  伏せカード2

 

黄服

手札5

ライフ4000

場 なし

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・RR-ファジー・レイニアス

 

「ええい…忌々しいエクシーズモンスターめ!!すぐに蹴散らしてくれる!!私のターン!!」

 

黄服

手札5→6

 

「私は手札からフィールド魔法《歯車街》を発動!さらに手札から魔法カード《古代の機械射出機》を発動!私のフィールド上にモンスターが存在しないとき、私のフィールド上に表側表示で存在するカードを1枚破壊し、デッキからアンティーク・ギアモンスター1体を召喚条件を無視して特殊召喚する。私は《歯車街》を…」

「そうはさせるか。カウンター罠《ラプターズ・ガスト》を発動。俺のフィールド上にRRが存在するとき、魔法・罠カードの発動を無効にし、破壊する」

《ラプターズ・ガスト》から発生する竜巻が《古代の機械射出機》をバラバラにして破壊していく。

これにより、2体の上級レベルのアンティーク・ギアモンスター2体が一度に現れるという事態を阻止することができた。

(《古代の機械射出機》は墓地から除外することで、私のフィールド上に表側表示で存在するカードを破壊し、《古代の歯車トークン》1体を特殊召喚できる効果がある。だが、この(2)の効果は(1)の効果を使用したターンは使うことができない…くっ!)

「どうした?さっそく戦略をつぶされたのがこたえたか?」

「黙れ!!ならば別の手段を使うのみ!手札から速攻魔法《サイクロン》を発動!《歯車街》を破壊する!」

出現したばかりの歯車の無機質な街並みが竜巻によって破壊されていく。

その光景を見た黒咲はチッと舌打ちをする。

破壊されていく街がアカデミアによって崩壊していくエクシーズ次元と重なって見えたからだ。

「更に、《歯車街》の効果発動!このカードが破壊され墓地へ送られたとき、手札・デッキ・墓地からアンティーク・ギア1体を特殊召喚できる。私は《古代の機械巨竜》をデッキから特殊召喚!」

 

古代の機械巨竜 レベル8 攻撃3000

 

「更に、手札から魔法カード《メテオストライク》と《ミスト・ボディ》を装備!これで《古代の機械巨竜》は貫通効果を得たばかりでなく、戦闘では破壊されなくなる!また、攻撃するとき、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない!まさに究極のモンスターだ!!」

勝った気になって高笑いする黄服を見た黒咲はあきれ果ててため息をつく。

侑斗や翔太達も何とも言えない様子だ。

そんなことを気にすることなく、黄服はデュエルを進める。

「バトルだ!《古代の機械巨竜》で《フォース・ストリクス》を攻撃!!」

《古代の機械巨竜》の口が開き、ビームを放つためにエネルギーを収束し始める。

だが、突然黒咲のフィールドに《RR-ブースター・ストリクス》が出現し、そんな機械の竜にむけて特攻を仕掛ける。

「何!?」

「《ブースター・ストリクス》の効果だ。俺のフィールド上に存在するRRが攻撃対象となったとき、このカードを手札から除外することで、その攻撃モンスターを破壊する」

「モ、モンスター…効果…」

「これで貴様の究極のモンスターは終わりだ」

《RR-ブースター・ストリクス》が接触すると同時に、黄服のフィールドで大爆発が発生する。

煙が消えると、《古代の機械巨竜》は部品一つ残さず消滅していた。

「貴様の究極のモンスターなど、その程度…!」

「くぅ…!ならば、私はカードを1枚伏せ…」

「速攻魔法《サイクロン》を発動。その伏せカードを破壊する」

無駄な抵抗は許さないと言わんばかりに発動される《サイクロン》。

せっかく伏せた《聖なるバリア-ミラーフォース》が吹き飛んでいく。

「た、ターン…エンド…」

 

黒咲

手札2→1(《RR-ファジー・レイニアス》)

ライフ4000

場 RR-フォース・ストリクス(オーバーレイユニット1)×2 ランク4 守備2500

  RR-ネスト(永続魔法)

 

黄服

手札6→0

ライフ4000

場 なし

 

「俺の…ターン!!」

 

黒咲

手札0→1

 

黄服にはもはや手札がなく、おまけにフィールドにもカードがないうえに墓地で発動できるカードも今の状況では意味がなさない。

あまりにも哀れな状況だが、それでも黒咲は手を緩めない。

「俺は手札から《RR-ファジー・レイニアス》を特殊召喚。そして、2体の《フォース・ストリクス》の効果発動!デッキから《RR-バニシング・レイニアス》と《RR-ミミクリー・レイニアス》を手札に加える」

 

RR-ファジー・レイニアス レベル4 攻撃500

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・RR-シンキング・レイニアス

・RR-バニシング・レイニアス

 

「更に、俺は《RR-バニシング・レイニアス》を召喚。更に、《バニシング・レイニアス》の効果で手札から《RR-ミミクリー・レイニアス》を特殊召喚」

 

RR-バニシング・レイニアス レベル4 攻撃1400

RR-ミミクリー・レイニアス レベル4 攻撃1100

 

「そして、2体の《フォース・ストリクス》を攻撃表示に変更。《フォース・ストリクス》は自身以外の鳥獣族モンスター1体につき、攻撃力・守備力は500アップする!」

 

RR-フォース・ストリクス×2 ランク4 守備2500→4000→攻撃2100

 

「く…そんな、馬鹿な…!」

彼は侵略されたエクシーズ次元の召喚法であるエクシーズ召喚を馬鹿にしていた。

ランサーズであり、危険な相手だと思っていたが、《RR-フォース・ストリクス》を召喚し、エクシーズ召喚を使うことが分かった黒咲には勝てるだろうと思っていた節がある。

だが、やったことすべてが叩き潰されて、今ここで馬鹿にしてきた存在に引導を渡されることになる。

「バトル!!いけ、2体の《フォース・ストリクス》!!」

2体の《RR-フォース・ストリクス》が黄服を囲むように飛行しながら、超音波で攻撃を仕掛ける。

脳を揺さぶるような激しい超音波に黄服は耳をふさぎ、悲鳴を上げながら倒れた。

 

黄服

ライフ4000→1900→0

 

「1ターンキル…なんだこいつ、めちゃくちゃ弱いじゃねえか」

デュエルの一部始終を見た翔太はあまりにもあっけない黄服のデュエルを見て、あきれ果てる。

これだったら、オベリスクフォース数人とデュエルをしていたほうがはるかにやりがいがある。

黒咲は黄服を殴り起こし、胸ぐらをつかむ。

「答えてもらうぞ…。貴様らの侵略拠点はどこだ!?」

「侵略拠点…?」

なぜ黒咲がそれを質問したのか、疑問に思った柚子は侑斗に目を向ける。

「3年前に侵略を受け、レジスタンスを結成してから何度か侵略された地域の調査や奪還を行った。けど、いくら探しても侵略拠点になっている基地が見つかっていないんだ」

膠着状態となり、スタンダード次元からの極秘裏の支援を受けてある程度戦力を得たレジスタンスが決定打に欠く最大の理由がそれだった。

中継地点となっている小規模の基地はいくつも存在するが、それらを指揮する拠点を攻撃できないため、鼬ごっこのような状況が続いている。

また、物量についてはいまだにアカデミアの方が上であるため、基地を一つ陥落させている間に新たに2つ基地ができたケースもある。

そのため、レジスタンスは防衛を中心とした戦略を組み立てざるを得なかった。

「ハハ…そんなもの、しゃべるものか!!エクシーズ次元は…もうすぐ、終わりだ…!!」

「何…それはどういう意味…ちっ…」

黒咲が手を放すと、黄服はフラリとその場に倒れる。

侑斗とウィンダが伊織達を今の彼の姿を見せないように周囲の見張りと助けた親子のカバーを頼み、黒咲は手袋をつけて黄服の口の中を調べる。

奥歯にはカプセルの欠片が見え、奥歯にはそれが仕込まれたと思われる痕が残っていた。

「ちっ…自白を避けるためか…」

黄服のデュエルディスクも完全に機能を停止しており、中身を見ることができない。

スペード校へ向かい、そこでメカニックに解析してもらうことはできなくもないが、こういう場合はたいていの場合、解析不可能ということが経験上多く、あまり期待できそうにない。

(それにしても、今回のデュエル戦士の練度が低く感じられる…。どういうことなんだ…?)

3年前に来たときのデュエル戦士の技量は最下級である赤服でさえも彼のような粗末なデュエルはしなかった。

デュエル戦士も人間であり、アカデミアも彼らを無限に持っているわけではない。

シンクロ次元やスタンダード次元への攻撃には精鋭であるオベリスクフォースのみが出撃しており、彼らの場合はこうしてエクシーズ次元への攻撃と融合次元の防衛に徹しているはずだ。

彼らの会話で、赤服の2人が心配だということは分かっている。

単なる偶然かもしれないが、それでも侑斗には違和感がなくならない。

「ありがとう、お兄ちゃんたち!でも、見ない顔だね…?」

「ああ。俺たちはランサーズ。アカデミアを止めるためのチームなのさ!」

少女の目線に合わせるように膝を曲げた遊矢は笑顔で名乗る。

聞いたことのない名前に少女は首をかしげる。

「ランサーズ…?」

「それよりも、早くここを離れて、安全なところへ行こう。またアカデミアが来るかもしれないから…」

「でしたら、スペード校へ行きましょう。あそこなら安全です。近くにトラックを止めてあります」

伊織と柚子、ウィンダが落ちた缶詰を拾い、カートに入れている中、父親が翔太たちにお礼を言う。

そして、カートを押しながら7人にトラックのある場所まで案内する。

そこにはボロボロな軽トラが一台置かれており、荷台には雨避けのためのブルーシートがある。

「ブルーシートの中で隠れていてください。揺れますが、気を付けて…」

親子は軽トラの運転席と助手席に乗り、翔太達は荷台に乗ってブルーシートの中にカート共々隠れる。

軽トラがスペード校に向けて走る中、翔太はブルーシートの中から荒廃した町の光景を見ていた。

(なんだ…この街は…??)

翔太にはなぜかこの街に既視感のようなものを感じていた。

近未来的な街並みとゴミを集めるロボットの姿をなぜか思い出してしまう。

(俺は…ここに来たことがあるのか…?)



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第90話 レジスタンス

翔太たちを隠したトラックががれきを積んで作られた粗末な検問所を通り、スペード校の敷地内に入る。

かつて、生徒たちが楽しくデュエルをしていた校庭は避難してきた人たちのテントで埋め尽くされていて、ちょうど朝ごはんの時間帯のためか、長い列ができている。

現在は1人1杯ずつのシチューとおにぎりの配給が行われている。

それらがレオコーポレーションから送られてきた物資で、それによって彼らは生きながらえている。

食事を配る男の背後にある、レオコーポレーションのロゴが刻まれたコンテナが何よりの証拠だ。

「着きました、みなさん。もう大丈夫です」

ブルーシートが外され、翔太達は荷台から降りる

「これが…レジスタンスの基地か…」

レジスタンスの基地の状況は零児と侑斗からあらかじめ聞いていたが、やはり百聞は一見に如かずということか。

自分たちと同じ少年少女がこうして自衛のために校舎の中で訓練を受け、そして24時間体制で守りを固めている。

「エクシーズ次元の都市、ハートランドの生き残った人たちの多くがここに集まってるんだ。3年前から、この町の外がどうなっているか、何も情報が入ってきていない。ハートランドを彼らが完全に封鎖してしまったから…」

「ちょっと待てよ、だったら俺たちはこの町の外に座標をセットして転移したほうがよかったんじゃないのか?」

「それはできない。《ディメンション・ムーバー》で転移できるのはこのハートランドだけなんだ。シンクロ次元でシティという街に転移したのと同じ理屈だよ(そう…きっと、それはここに『欠片』があるという証拠…)」

侑斗が舞網市の海で見つけた『欠片』、ヒイロがシティでロジェから奪った『欠片』、どちらの『欠片』も転移した先にある地域で発見されている。

治安維持局から接収したデータバンクを調査した結果、シンクロ次元の『欠片』が

発見されたのは地下のごみ処理施設内であることが分かった。

また、侑斗たちがエクシーズ次元からスタンダード次元に転移した際、到着したのは舞網市だ。

《ディメンション・ムーバー》の開発が行われた際、シティやハートランド以外の地域への転移を可能にできるように開発が行われているが、今でもそれら以外の場所への転移が不可能な状態だ。

それらのことを踏まえると、『欠片』がハートランドにあるとみて、間違いないだろう。

「黒咲…黒咲なの!?」

「その声は…まさか、サヤカか!?」

聞き覚えのある少女の声を耳にした黒咲は動けない高齢者や障害者、負傷者や病人に食事を配り終えていた、ピンクと薄紫のショートヘアで丸眼鏡をかけた少女に目を向ける。

しかし、彼女を見た黒咲の表情は喜びよりも驚きのほうが強かった。

「どうして、ここにいるんだ!?お前はカイトと一緒にいたんじゃなかったのか?」

「カイト…?カイトって誰なんだ?」

「分裂したレジスタンスのリーダーの男だ。彼はクローバー校の生徒で、彼女、笹山サヤカも同じスクールだったから、彼と行動を共にしていた。だからこそ、気になる。なぜ、彼女がここにいるのか…」

黒咲が知るサヤカは控えめで、頼りないところがあるが、自分にできることを精一杯することができる少女で、途中で逃げ出すことがない。

だからこそ、ここに彼女がいることが大きな疑問となっていた。

「サヤカちゃん…クローバー校で何かあったの?」

「あれ…?瑠璃…?ううん、似てるけど、ちょっと違う…」

「あたしは柊柚子。ランサーズの一人よ。よろしくね」

「待て、ここは俺が…」

「ここは柚子に任せなよ、黒咲。お前だと威圧感があるからな」

「遊矢…!」

黒咲にとっては理不尽にしか聞こえない理由だが、侑斗たちは納得しているのか、誰も異議を出さない。

仲間ができたことで、少しは丸くなった黒咲だが、顔の問題なのか、それとも元の性格の問題なのか、質問をするときはたいていの場合、威圧感を出してしまい、相手を怖がらせてしまう。

黒咲自身に悪気がないのはわかるが、彼自身あまり自覚していないため、たちが悪い。

「事実だろ」

「翔太!!」

火に油を注ぎかねない翔太の言葉に激怒した黒咲を見て、侑斗はアハハと苦笑する。

しかし、彼も成長しているのか、右こぶしに力が入っているものの、それが翔太に向くことはなかった。

「あの…」

「ごめんごめん、今は放っておいて。それより…」

「うん。剣崎さんとウィンダさんが来て、あの人たちのツテでレオコーポレーションから支援を受けることができるようになって…レジスタンスはアカデミアにある程度対抗できるようになったわ。けど、カイトをはじめとしたメンバーがほかの次元の人たちを信用できないって…」

「仕方ないよ。アカデミアに侵略されて、ほかの次元を信用できなくなる気持ちは分かるよ。僕がもう少し気を付けて行動したら…」

後悔を宿した目で、表情を曇らせる侑斗の手をウィンダは優しく握る。

彼を安心させるために。

「そんなことないです!剣崎さんたちが助けてくれなかったら、全滅していましたから…。だから、感謝してます」

「ありがとう、その言葉だけでも救われるよ」

「…。私は、カイト達を見捨てることができなくて、クローバー校と行動していたけど、最近…」

「待て、場所を変えよう。きっと、その話は不特定多数に聞いていい話ではない」

何か嫌な予感を感じた黒咲は制止する。

アカデミアのスパイがこのキャンプの中に入り込んでいる可能性が彼の頭をよぎっていた。

素良やデニスの一件も大きい。

特に、デニスに関しては瑠璃が捕まった上にエクシーズ次元崩壊の最大の原因となっている。

そのことが彼の警戒心を増幅させた。

「そうだね。ねえ、どこか話せる場所はない?」

「校舎にある談話室でなら…」

ウィンダの質問に少し考えたサヤカは一つだけいい場所を思いつく。

彼女はある理由でスペード校に出入りすることがあったため、中の構造についてはある程度知っており、談話室については荒れていることから人があまり入らないことも知っていた。

「俺も同意見だ。そこで話そう」

 

校舎2階の外側に設置されている談話室。

3年前まではここで生徒たちは休憩を取り、昼食を取りながらデュエル談義を行い、楽しんでいた。

しかし、今ここにあるのは壊された机や椅子、そしてガレキばかりで、そこにはもはや平和な時の面影はない。

かろうじて形を保っている椅子や机も、ヒビだらけでもはや使い物にならない。

翔太達は適度な高さで平らになっているがれきに座り、サヤカの話を聞く。

「スタンダード次元や剣崎さん達からの支援を拒絶したクローバー校は…同じ意見のダイヤ校と一緒に抵抗運動をつづけたわ。カイトのような強いデュエリストがいたから、どうにか戦ってこれたけど、日がたてばたつほど、一緒に戦ってきたメンバーが…」

仲間を失った時のことを思い出してしまうのか、サヤカはここから先の言葉を口にできなかった。

どうなったのかわかっている翔太達は咎めることなく、彼女が話を続けるのを待つ。

「…けど、最近になってカイトが変わってしまったの。彼は…アカデミアのデュエリストだけじゃなくて、同じレジスタンスの仲間をカードに変え始めたの」

「馬鹿な…!?あのカイトが…!!」

驚愕した黒咲は立ち上がり、サヤカの言葉が信じられずにいた。

彼の知っているカイトは仲間をカードに変える、ある意味では仲間を殺すような行動を起こす男ではなかった。

何かの間違いかと思ったが、サヤカの表情を見て、事実と認めざるを得なかった。

彼女はこのような状況でうそをつくような人物ではないうえ、何よりも彼女は恐れを抱き、体を震えさせながらしゃべっていた。

「彼は言ったの…。アカデミアを倒すには、毒を以て毒を制すしかないって。カード化した人達の命の力を使い、力を得ることで、初めて倒すことができる…」

(カード化した人の命の力を使う…。もし、それが本当なら、アカデミアが人々をカードに変える理由は…)

カイトのその言葉が真実であるかはわからないが、仮にそれが事実と仮定するならば、人々をカード化することのつじつまが合ってくる。

アークエリアプロジェクトのためのエネルギーとして、カード化した人々の命を使うつもりなのだろう。

「どうして、カイトがそのことを知ったのかはわからない。けど、そのために仲間を犠牲にするのは間違ってるって言ったら、今度はカイトが私をカードに変えようとした。あの人に助けてくれなかったら、きっと今頃…」

「あの人?あの人って、誰なの?」

「…神代って人。あの人もクローバー校のレジスタンスのメンバーだったの。その人に助けられて、私はここまで逃げることができた」

「神代…まさか、その人は水属性デッキを使っていなかったかい!?」

驚いた侑斗はサヤカに詰問する。

彼の仲間の中で、神代という名前のデュエリストは2人しかいない。

そして、この次元でいる可能性があるのは1人だけ。

「は、はい。確か、《ビッグ・ジョーズ》とか《ナイトメア・シャーク》を使っていて…」

「それで、彼は今どこに…?」

「わからないんです。スペード校に到着する前に、離れ離れになってしまって…」

「そうか…だから、連絡が取れなくなったのか…」

「おい、その神代って奴は何者なんだ?」

「神代凌牙…。僕と一緒にこの次元へ来た仲間なんだ。彼にはカイト君たちのレジスタンスに入って、僕に彼らの動きを知らせてくれた。でも…こうなると、連絡できなくなるのはよくわかるよ」

「ユウ…凌牙君は大丈夫だよ。きっと…」

彼の身を案じる侑斗をウィンダが励ます。

親友の恋人の兄である彼のことを信頼しているものの、その彼に助力を願ったのは侑斗本人であり、このような事態になって事に責任を感じていた。

彼はある力が使える只一人の人物であり、デュエルの実力もあるため、簡単にはやられないとは思うが、速く合流しなければ、危険な状況に陥ることは目に見えている。

「それで…離れ離れになる前に、その人が私にこれを…」

ポケットから1枚のカードを出したサヤカは侑斗にそれを渡す。

見た目はただの魔法カードだが、イラストも名前もなく、テキストは黒塗りされていた。

「何も書いてない…どうなっているんだ?」

「わからない…。デュエルディスクに入れてみたけど、何も反応がなくて」

彼女の言う通りで、侑斗もデュエルディスクに入れても、カードは反応しない。

不正カードではないようで、警告音も出ない。

試しに侑斗は風の目を発動し、そのカードをじっと見る。

すると、だんだん黒塗りの部分が消えていき、テキスト部分に文章が現れる。

「『欠片』と…共にある…だって!?」

「『欠片』って…まさか、その人がエクシーズ次元の!?」

『欠片』という言葉に動揺が広がり、意味が分からないサヤカは首をかしげる。

それについて何も知らないのだから、仕方がない。

「サヤカちゃん、その人と最後にどこで別れたのか、知らない?」

「確か…ハート校の近くにあるコンビニエンスストアの跡地…。名前は確か、『オービタル』って…」

「じゃあ、そこを中心に探そう。『欠片』を彼が持っているっていうなら、きっと…」

グー、と侑斗のおなかの音が鳴り、それが聞こえたウィンダ達、というよりも談話室にいる人全員が彼に目を向ける。

シリアスな空気を読まないその音を鳴らしてしまった侑斗は恥ずかしさで顔を赤く染める。

そのギャップが面白かったのか、サヤカがプッと吹き出してしまい、ウィンダは笑いをこらえている。

しかし、再びおなかが鳴ったことでついに耐え切れなくなったのか、2人とも笑いはじめ、同時に遊矢達もつられて笑い始めた。

「ちょ、ちょっと…笑わないでよ!!」

「はぁー…何をやっているんだ、…」

笑いに包まれる中、翔太はため息をつく。

「アハハハ…ご、ごめんなさい。じゃあ…何か食べますか?探しに行くにも、おなかが減ってたら、何もできませんよ?」

「え、でも…さすがにここの食料を食べるわけには…」

「困ったときはお互いさまって剣崎さんが言っていたでしょう?ちょっとだけでもお礼をさせて」

「そ、それなら…お言葉に甘えて…」

早朝に出発したため、侑斗たちはまだご飯を食べていない。

侑斗のように、おなかが鳴るわけではないが、それでもおなかがすいている。

「しっかりしてくれ、剣崎さん」

食事をとること自体は反対しない黒咲だが、侑斗はエクシーズ次元では救世主みたいな存在として見られているため、少しその自覚を持ってほしいと願った。

彼にそんな自覚がないし、救世主であることを否定するかもしれないが、そのようにふるまわなければ、レジスタンスの士気にかかわってしまう。

それだけ、今の侑斗はこのエクシーズ次元で大きな影響を与える存在になってしまった。

 

「う…まず…」

外に出て、おにぎりをもらった翔太はそれを口にするが、口に合わないのか顔をしかめる。

具材が入っていないうえに、塩もわずか。

おまけに古い米を使っているため、ごはん本来のおいしさも感じられない。

「嫌なら、無理に食べなくてもいいんだよー?」

「キュイー」

「お前はいいよ、ビャッコからみたらし団子もらえるんだしよ」

ニコニコ笑い、ビャッコと一緒におにぎりを食べる伊織に悪態をつく。

そばにある紙皿の上にはビャッコのみたらし団子の串が何本かおかれている。

それらはすべて伊織とビャッコが食べたもので、翔太が食べた分はない。

「あ、真っ白なキツネさんだー!」

「かわいいー!」

近くで遊んでいた子供たちがビャッコを見て、駆け寄ってくる。

ビャッコが子供たちの前に来て、彼らに撫でられたりモフモフされたりしている。

「わぁ…やっぱり、ビャッコちゃんって人気者だね」

「あんまり、そうなってほしくねーけどな」

姿が見えているとはいえ、ビャッコは一応、精霊だ。

そんな彼があまり人前に出るのはいろんな意味で危ないことだ。

そのため、可能な限りは人前には出さないようにし、出さざるを得ないときには猫などに変身させたりしている。

だが、彼は神出鬼没で急に姿を消したり、急に姿を現したりするため、主である翔太ですらコントロールできない。

一方、遊矢は子供たちの前で勉強したばかりの手品を披露していた。

「すっげー、ボールが消えちゃった!」

「今度は鳩が出てきたー!!」

避難生活で娯楽に飢えているのか、子供たちは遊矢の手品に夢中だ。

リアルソリッドビジョンを最大限に利用しており、やり方さえわかればすぐにできるものだが、それでも好評を博していた。

アンコールもあり、しばらく続けるがやはり疲れたのか、近くのテントで休みを取る。

「お疲れさま、遊矢」

「ありがとう。っていっても、さすがに手品はデニスのようにはいかないなー…」

黒咲とのデュエル、そして舞網チャンピオンシップでのデュエルで見せた彼の手品を思い出しながら、遊矢は柚子からもらった水筒の水を飲む。

デニスの名前を聞いた柚子の表情が曇る。

「デニス…まさか、アカデミアのスパイだったなんて…」

柚子は舞網チャンピオンシップでデニスと接触し、デュエルをしたことがある。

彼のデュエリストとしての実力もエンターテイナーとしての力量も高く、彼の楽しませようとする思いは相手をした彼女自身も強く感じていた。

そのため、彼がアカデミアのスパイだと発覚したときは信じられなかった。

だが、舞網チャンピオンシップでオベリスクフォースが襲来した際に、混乱の中で彼は姿を消していたこと、そしてそのあとでユーリと遭遇したことを考えると、どうしてもつじつまが合ってしまう。

「確かに、デニスはアカデミアのスパイだった。俺たちの敵だった。けど…」

「けど?」

「あいつが…エンターテイナーでありたいという思いは本物だった。そんな気がするんだ。だから」

呑み終えた遊矢は立ち上がり、柚子に体を向ける。

曇りのない笑みを浮かべ、じっと彼女を見る。

「だから、早く次元戦争を終わらせよう。デニスがエンターテイナーとして生きられるように。彼だけじゃない。みんながなりたい自分になれるようにさ」

「…うん」

「といっても、今の俺にできるのはこんな手品しかないけど、いつかはデュエルでみんなを笑顔にできれば…」

「デュエルで…笑顔に…?」

洗濯物の受け取りをするために籠を持って歩いていたサヤカが遊矢の言葉を聞き、立ち止まる。

籠を置いた彼女は急いで遊矢と柚子がいるテントの中へ駆け込んだ。

「ねえ、さっきデュエルで笑顔を…って、言ってなかった!?それ、だれから教えてもらった言葉!?」

突然入ってきたサヤカに驚きを隠せず、控えめな彼女がグイグイと詰問する。

一体どうしたのかと思いながらも、遊矢は質問に答えた。

「父さん…。俺の父さんが教えてくれた言葉」

「ということは…もしかして、あなたのお父さんって…榊遊勝さんなの…?」

「え…?」

遊勝の名前を聞いた遊矢と柚子は驚愕する。

3年前に行方不明になった彼の名前が、なぜ彼とは無関係なはずのエクシーズ次元で出てきたのか、大きな疑問が浮かんだ。



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第91話 妖精デッキと混沌の雷

「詳しく、教えてくれないか?その…俺の父さんがエクシーズ次元で何をしていたのか?そして、今どこにいるのかを」

テントの中で、目の前に座るサヤカに遊矢は尋ねる。

3年前にストロング石島の直前に消息を絶った彼には言いたいことが山ほどある。

なぜ、あの日に彼の前へ現れなかったのか?

なぜ、3年もの間帰ってこなかったのか?

この3年間何をしていたのか?

他にも聞きたいことがたくさんあるが、そのためにも、彼の居場所を突き止めなければならない。

サヤカは深呼吸をした後で、遊矢の質問に答え始める。

「遊勝さんは3年前、ハートランドに突然現れたの。そこで、私たちにデュエルのすべてと笑顔を教えてくれたの」

彼からの教えをサヤカは今でも覚えている。

どんな時でも、笑顔を忘れてはならない。

まるで、これから起こることを予期していたかのようなその言葉があったから、サヤカはこうして自分にできることをやることができている。

「でも、どうして父さんがこの次元へ…?」

どこへ行ってもやることは変わらない父親に安心した遊矢だが、どうしてエクシーズ次元へ飛んだのかという疑問が残った。

スタンダード次元から別次元へ転移する方法をつかんでいるのはレオコーポレーションだけで、3年前にそのような技術を持っていたかどうかは遊矢自身にはわからない。

実際には、既に持っているというのが答えなのだが、零児とプロフェッサーの関係を知らない遊矢にはわかりようがない。

「それで、サヤカちゃん。遊勝さんは今どこへ…?」

「それが…アカデミアがハートランドを壊滅させた日から、遊勝さんの姿を見た人がいないんです」

「え…それって、まさか…!?」

遊矢の脳裏に最悪な可能性がよぎる。

アカデミアのデュエリストに敗れ、カードに変えられる遊勝の姿が目に浮かんでしまう。

実際、カード化された人々は回収される傾向にあり、たとえカード化されたとしても、そのまま見つからないケースの方が多い。

そのため、アカデミアによる襲撃後に行方がわからない人については、一律にカード化されたとして処理するのがスタンダード次元での方針だ。

「カードに変えられたっていう人がいれば、きれいごとだけを言って、最後は怖気づいて逃げた臆病者って言う人もいるわ」

テントの中で、周りに聞かれないように話をした理由がそれだった。

遊勝のその後については認識が分かれており、それゆえにエクシーズ次元の人々にとって、遊勝について話すのは一種のタブーとなっている。

内部対立を起こすという愚を繰り返さないためだ。

「カード化されたとしたら、この次元にいるアカデミアの兵士から聞き出すことができれば、もしかしたら父さんを…」

「お前ら、そろそろ出発だぞ。準備しろ」

テントの外から翔太が声をかける。

おそらく、人から遊矢たちのいる場所を聞いたから、このテントの中にいることが分かったのだろう。

「ああ、分かった!柚子」

「うん、わかってる」

遊勝の居場所をつかむためにも、とにかくここから出て情報を集める必要がある。

侑斗の仲間である凌牙の居場所をつかむことが、もしかしたらそれとつながるかもしれないと信じて、遊矢は立ち上がる。

「待って、私も連れて行って!」

出発しようと、テントを開けた遊矢と柚子にサヤカは言う。

待っていた翔太も聞いており、舌打ちする。

「外はアカデミアのデュエル戦士がうろついている。足手まといはいらないぞ」

翔太の言い方はあんまりだが、正しいためか遊矢と柚子は口を挟めなかった。

デュエル戦士たちはシンクロ次元などで戦ったオベリスクフォースと比較すると、練度が落ちているとはいえ、それでも数が多く、1対複数で攻撃された場合は脅威となる点には変わりない。

見た目だけで判断すると、か弱い雰囲気が先行するサヤカでは勝てない。

正面からそう言われたことで、ショックを受けるサヤカだが、首を横に振り、じっと翔太を見る。

「分かってる!けど…だけど、何もしないで後悔するのだけは…嫌だから…。それに、私を助けてくれたあの人を少しでも助けたくて…」

今、カイトの元へ行っていた自分がスペード校でレジスタンスの手伝いができているのは、凌牙が助けてくれたおかげだ。

行方不明になっている凌牙は、きっと孤独な戦いを続けている。

そんな彼を助けたいという思いが彼女の中にある後悔も手伝って、強くなっていた。

まさか、正面からそう反論するとは思わなかった翔太は鳩が豆鉄砲を食らったような顔になるが、すぐにため息をつき、頭をかく。

「んじゃあ、足手まといにならないってことを証明しろよ。デュエルでな」

「おーい、翔太君たち!いったい何を…?」

翔太達を呼びに来た侑斗とウィンダがデュエルディスクを展開させた翔太を見て、立ち止まる。

「ええー!?デュエル??今はそれをしてる時間は…」

「悪い。出発は少し延長だ。こいつを試す」

緊張した面持ちで翔太を見ていたサヤカだが、彼に応えるようにデュエルディスクを装着し、それを展開した。

「ユ、ユウ…大丈夫かな…?」

「この3年の間でどれだけやったかにかかってる…としか、言いようがないよ。でも、ここでデュエルをしたら、みんなに迷惑がかかる。やるんなら、こっちで」

侑斗が翔太達を屋外にある仮設のデュエルリングへ連れていく。

場所が開けているだけのお粗末な場所で、アクションデュエルをするには狭すぎるが、ノーマルのデュエルをするのに限るのであれば、別に問題はない。

「手加減はしないからな?いくぞ!」

「は…はい!!」

「「デュエル!!」」

 

翔太

手札5

ライフ4000

 

サヤカ

手札5

ライフ4000

 

「俺の先攻。俺は《魔装竜ファーブニル》を召喚!」

 

魔装竜ファーブニル レベル4 攻撃1900

 

「カードを2枚伏せて、ターンエンド」

 

翔太

手札5→2

ライフ4000

場 魔装竜ファーブニル レベル4 攻撃1900

  伏せカード2

 

サヤカ

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「わ、私のターン、ドロー!」

 

サヤカ

手札5→6

 

ドローしたカードを見たサヤカの表情が明るくなる。

お気に入りのカードであり、このデッキのかなめになっているカードを引き当てていた。

「私は手札から《リトル・フェアリー》を召喚!」

緑色の蝶の羽根をつけた、赤髪の妖精がサヤカの周囲を飛び回ってからフィールドに出る。

 

リトル・フェアリー レベル3 攻撃800

 

「《リトル・フェアリー》の効果発動!手札を1枚墓地へ送ることで、このカードのレベルを1つ上げることができる。私は手札の《RUM-フェアリー・フォース》を墓地へ送って、《リトル・フェアリー》のレベルを1つ上げる!」

《RUM-フェアリー・フォース》が《リトル・フェアリー》の星のついたステッキに吸収され、そのモンスターは赤いオーラに包まれる。

 

リトル・フェアリー レベル3→4 攻撃800

 

「更に、このカードは私のフィールド上に光属性・天使族モンスターが存在するとき、手札から特殊召喚できる。《スリープ・フェアリー》を特殊召喚!」

水色の髪でダークブルーの羽根をつけた、枕をもって眠ったままの妖精が現れる。

《リトル・フェアリー》は眠っている彼女を何度もステッキで叩いて起こそうとするが、一向に起きる気配がない。

 

スリープ・フェアリー レベル4 攻撃1200

 

「レベル4のモンスターが2体…。これは、来るな…」

「私はレベル4の《リトル・フェアリー》と《スリープ・フェアリー》でオーバーレイ!」

ゆっくりを目を開いた《スリープ・フェアリー》と《リトル・フェアリー》がフィールドに出現したオーバーレイネットワークの中へ飛び込んでいく。

「戦い続ける勇者に天使のほほえみを!エクシーズ召喚!ランク4!《フェアリー・チア・ガール》!」

両手に黄色いボンボンをつけた青い妖精がオーバーレイネットワークから飛び出し、サヤカを応援するかのようにボンボンを振る。

 

フェアリー・チア・ガール ランク4 攻撃1900

 

「ここで私は墓地に存在する《フェアリー・フォース》の効果発動!私のフィールドにランク4・光属性・天使族のエクシーズモンスターがエクシーズ召喚されたとき、墓地に存在するこのカードを除外することで、デッキからRUMを1枚手札に加えることができる。私はデッキから《RUM-バリアンズ・フォース》を手札に加える!」

「RUMをサーチ!?意外と抜け目がないな…」

フィールドに出現した《RUM-フェアリー・フォース》が《RUM-バリアンズ・フォース》に変化し、同時にデッキからそのカードが自動排出され、サヤカの手札に加わる。

「そして、エクシーズ素材となった《スリープ・フェアリー》の効果発動!このカードを素材にフェアリーと名の付くエクシーズモンスターのエクシーズ召喚に成功したとき、デッキからカードを1枚ドローする!更に、《フェアリー・チア・ガール》の効果発動!1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、デッキからカードを1枚ドローする!」

エクシーズ召喚に成功したうえに、手札を再び6枚まで戻すことに成功する。

おまけに《RUM-バリアンズ・フォース》が手札に加わったことで、まだまだ動くことが可能だ。

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・スリープ・フェアリー

 

スリープ・フェアリー

レベル4 攻撃1200 守備1200 効果 光属性 天使族

このカード名の(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできない。

このカードはX素材とする場合、「フェアリー」モンスターのX召喚にしか使用できない。

(1):自分フィールドに光属性・天使族モンスターが存在するとき、このカードは手札から特殊召喚できる。

(2):このカードをX素材として「フェアリー」モンスターのX召喚に成功したときに発動する。自分はデッキからカードを1枚ドローする。

 

RUM-フェアリー・フォース

通常魔法カード

このカード名の(2)の効果はデュエル中1度しか発動できない。

(1):自分フィールドに存在する「フェアリー」Xモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターよりもランクが1つ高い、同じ属性の「フェアリー」Xモンスター1体を対象のモンスターの上に重ね、X召喚扱いとしてEXデッキから特殊召喚する。

(2):自分フィールドにランク4・光属性・天使族XモンスターがX召喚されたとき、墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。デッキから「RUM」魔法カード1枚を手札に加える。

 

「そして、手札から《RUM-バリアンズ・フォース》を発動!自分フィールドのエクシーズモンスター1体を同じ種族でランクが1つ上のカオスエクシーズモンスターにランクアップさせる!」

発動と同時に、上空に紫色のオーバーレイネットワークが出現し、《フェアリー・チア・ガール》がその中へ飛び込んでいく。

「カオスエクシーズチェンジ!現れて、混沌の中から光を放つ天使!ランク5!《ダーク・フェアリー・チア・ガール》!」

背中の羽根が黒く染まり、紫を基調としたドレスと髪へと変化した《フェアリー・チア・ガール》がオーバーレイネットワークから降りてくる。

 

CXダーク・フェアリー・チア・ガール ランク5 攻撃2500

 

「カオスエクシーズモンスター!?んだよ、それは…!」

フィールドに出現したカオスエクシーズモンスターを見た翔太は一瞬、強く心臓が高鳴ったのを感じ、右手で胸を抑えつける。

嫌な脂汗がたっぷりと出ていて、吐き気まで覚えた。

「お、おい翔太!?一体どうしたんだよ…!?」

急に様子がおかしくなった翔太を見た遊矢たちが動揺する中、侑斗はじっと翔太を見つめている。

(やっぱり、反応している…。カオスエクシーズモンスターに…)

「翔太!?こんなんじゃあデュエルできないよ。俺か柚子に交代して…」

「やめろ…!!」

遊矢の胸を右手で押し、脂汗を袖で強引にふき取ると、じっとサヤカと《CXダーク・フェアリー・チア・ガール》に目を向ける。

「さあ…デュエルを続けるぞ…!」

「え…でも…」

目に見えて、様子がおかしくなっていたのを見たサヤカはデュエルを続けていいのか迷い始める。

「サヤカちゃん、デュエルを続けて。必要なら、こっちからストップをかけるから」

「剣崎さん…。…わかりました。バトル!私は《ダーク・フェアリー・チア・ガール》で《ファーブニル》に攻撃!フェアリー・ターン・パーティクル!!」

《CXダーク・フェアリー・チア・ガール》がステッキを回転させ、紫色の炎を発生させると、《魔装竜ファーブニル》に向けて放つ。

炎を浴びた《魔装竜ファーブニル》が焼き尽くされ、消滅する。

 

翔太

ライフ4000→3400

 

「そして、《ダーク・フェアリー・チア・ガール》の効果発動!このカードが相手モンスターを戦闘で破壊したとき、カオスオーバーレイユニットを1つ取り除くことで、手札の枚数×400のダメージを与える!」

サヤカの5枚の手札が紫色に光り、その光がカオスオーバーレイユニットに吸収させる。

それを《CXダーク・フェアリー・チア・ガール》がステッキで砕くと、そこから発生する衝撃波が翔太に襲い掛かる。

「ぐ…ううう!!」

 

翔太

ライフ3400→1400

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・リトル・フェアリー

 

「翔太のライフが一気に1400まで…!」

初めて見るカオスエクシーズモンスターに遊矢は戦慄する。

《RUM-バリアンズ・フォース》のような、カオス化させるRUMは黒咲も使っていない。

だが、それよりも気になるのはそのモンスターに対する翔太の反応だ。

(カオスエクシーズモンスター…。翔太の失われた記憶と何か関係があるのか?)

「はあ、はあ…。バトルフェイズ終了時、俺は手札の《魔装画伯シャラク》の効果を発動する!俺のフィールド上に存在する魔装モンスターが相手モンスターの攻撃によって破壊されたバトルフェイズ終了時、こいつは手札から特殊召喚できる」

 

魔装画伯シャラク レベル4 守備1400

 

「更に、この効果で特殊召喚に成功したとき、このターン戦闘で破壊された魔装モンスター1体を効果を無効にして特殊召喚する」

《魔装画伯シャラク》が描いた《魔装竜ファーブニル》の浮世絵から、破壊されたばかりのそのモンスターが飛び出してくる。

 

魔装竜ファーブニル レベル4 攻撃1900

 

「更に俺は永続罠《ペンデュラム・スイッチ》を発動。1ターンに1度、俺のモンスターゾーンのペンデュラムモンスター1体をペンデュラムゾーンに移動させることができる。俺は《シャラク》をペンデュラムゾーンへ移す」

《魔装画伯シャラク》が消滅し、翔太の右側に青い光の柱を生み出しながらそのモンスターが再び出現する。

「私は手札からフィールド魔法《天空の聖域》を発動!」

発動と同時に、サヤカのフィールドに雲が発生し、背後には古代ギリシャ風の神殿が出現する。

「これで、天使族モンスターの戦闘で発生するそのコントローラーへのダメージが0になる。私はカードを2枚伏せて、ターンエンド!」

 

翔太

手札2→1

ライフ1400

場 魔装竜ファーブニル レベル4 攻撃1900

  魔装画伯シャラク(青) ペンデュラムスケール3

  ペンデュラム・スイッチ(永続罠)

  伏せカード1

 

サヤカ

手札6→2

ライフ4000

場 CXダーク・フェアリー・チア・ガール(ORU1) ランク5 攻撃2500

  天空の聖域(フィールド魔法)

  伏せカード2

 

「はあはあはあ…」

たっぷりと息を吸い込み、翔太はいつもの調子を取り戻していく。

(カオスエクシーズ…何だ、この既視感は…)

強いて言えば、《RUM-バリアンズ・フォース》もなぜか見たことがあるカードのように感じられた。

しかし、そのカードは確かにイラストや名前、テキストは似ているが、なぜか自分の知っているそれとは全く違う感じがした。

この矛盾した感覚が翔太を不快にする。

「俺のターン!!」

 

翔太

手札1→2

 

「このカードは俺のフィールド上に存在する魔装モンスター1体の攻撃力を半分にすることで、手札から特殊召喚できる。《ファーブニル》の攻撃力を半分にし、《魔装鬼ストリゴイ》を特殊召喚!」

 

魔装鬼ストリゴイ レベル5 攻撃2100

魔装竜ファーブニル レベル4 攻撃1900→950

 

「更に、俺は手札から魔法カード《魔装の宝札》を発動。俺のフィールドに存在する攻撃力2000以上の魔装モンスター1体をリリースし、デッキからカードを2枚ドローする」

《魔装竜ファーブニル》の心臓の血を吸って登場した《魔装鬼ストリゴイ》がエクストラデッキに消え、翔太はドローした2枚のカードを見る。

「そして、俺は手札から魔法カード《魔装門》を発動。相手フィールド上に《魔装幻影トークン》2体を特殊召喚し、デッキから魔装カード1枚を手札に加える。俺はデッキから《魔装剣士ムネシゲ》を手札に加える」

 

魔装幻影トークン×2 レベル6 攻撃2000

 

「翔太の手札にスケール9の《ムネシゲ》が加わった…」

「これでレベル4から8のモンスターを同時に召喚できる」

《魔装門》の効果で相手に献上することになった《魔装幻影トークン》がかすんで見えるほどのアドバンテージを翔太は手にした。

ここからがペンデュラム召喚の有無がはっきりとわかる展開になるのかもしれない。

「俺はスケール9の《魔装剣士ムネシゲ》をセッティング。これで俺はレベル4から8のモンスターを同時に召喚可能。来たれ、時の果てに眠りし英雄の魂。漆黒の魂と契約し、封印から解き放たん!ペンデュラム召喚!現れろ、《魔装砲士ボナパルド》!」

 

魔装砲士ボナパルド レベル5 攻撃2100

 

「更に、《ボナパルド》の効果発動。このカードを手札からペンデュラム召喚に成功したとき、相手フィールド上に存在するモンスターの数が俺のフィールド上のモンスターよりも多い場合、デッキからカードを2枚ドローできる」

翔太の手にもたらされる2枚のカード。

手札消費の激しいペンデュラム召喚にとっては、このカードも先ほどの《魔装の宝札》もうれしい存在だ。

「更に俺は手札から《魔装猫バステト》を召喚」

 

魔装猫バステト レベル1 攻撃0(チューナー)

 

「レベル5の《ボナパルド》にレベル1の《バステト》をチューニング!神の血を身に宿す槍士、雷鳴のごとき苛烈さを得て戦場で踊れ!シンクロ召喚!現れろ、《魔装槍士クーフーリン》!!」

 

魔装槍士クーフーリン レベル6 攻撃2100

 

翔太のフィールドに現れるシンクロモンスター、《魔装槍士クーフーリン》。

しかし、エクシーズ次元にはなく、アカデミアが使っているとは思えない召喚法であるシンクロ召喚を見ても、サヤカはあまり驚いたような反応を見せていない。

よく考えると、先ほど翔太が使ったペンデュラム召喚も、都合により1体しか召喚していないためでもあるかもしれないが、反応が薄い。

「お前…もしかして、ペンデュラム召喚もシンクロ召喚も知ってるのか?」

「直接見るのは初めてで、ペンデュラム召喚はついさっき、剣崎さんから聞いたばかりだけど…」

(シンクロ召喚を知っている…?おまけに、あいつが今使っている霊獣デッキ、あれはペンデュラム召喚と融合召喚が主体。そして…)

次に翔太が目を向けたのは侑斗のそばにいるウィンダだ。

少し大人びた姿になっているが、彼女そっくりなモンスターをカードショップで見たことがある。

あれは《ガスタの巫女ウィンダ》で、ガスタデッキにはエクシーズモンスターも入っている。

(つまりは、エクシーズ召喚も知っている。こんなことあり得るのか…?)

「あの…デュエルを続けないと…」

「ちっ…わかってる。俺は《クーフーリン》の効果発動!1ターンに1度、俺のフィールドの魔装モンスターと相手フィールドのモンスターを1体ずつ選択し、選択した相手モンスターの攻撃力・守備力をターン終了時まで俺の魔装モンスターのレベルかランク1つにつき400ダウンさせる!ゲイ・ボルグ!」

《魔装槍士クーフーリン》が投げた槍が数十本の銛となって《CXダーク・フェアリー・チア・ガール》へと飛んでいく。

ステッキを振り回し、銛を弾いていくが、それでも腕や足などに銛が次々と刺さっていく。

 

CXダーク・フェアリー・チア・ガール ランク5 攻撃2500→100

 

「さっきのお返しをさせてもらう!《クーフーリン》で《ダーク・フェアリー・チア・ガール》を攻撃!ニードル・スピア!」

手元に新たに出現した槍を《魔装槍士クーフーリン》が投擲する。

高速で一直線に飛んでいくその槍で胸部を貫かれた《CXダーク・フェアリー・チア・ガール》が消滅し、槍がそのままサヤカに向けて飛んでいくが、バリアがそれを阻む。

「《天空の聖域》の効果で、私に発生する戦闘ダメージは0になる。更に、そして、《ダーク・フェアリー・チア・ガール》の効果。このカードがフィールドから墓地へ送られたとき、デッキからカードを1枚ドローする」

「俺は《魔装竜ファーブニル》を守備表示に変更。ターンエンド」

 

翔太

手札2→1

ライフ1400

場 魔装竜ファーブニル レベル4 攻撃950→守備1200

  魔装槍士クーフーリン レベル6 攻撃2100

  魔装画伯シャラク(青) ペンデュラムスケール3

  魔装剣士ムネシゲ(赤) ペンデュラムスケール9

  ペンデュラム・スイッチ(永続罠)

  伏せカード1

 

サヤカ

手札2→3

ライフ4000

場 天空の聖域(フィールド魔法)

  伏せカード2

 

「私のターン、ドロー!」

 

サヤカ

手札3→4

 

「私は手札から魔法カード《逆境の宝札》を発動。相手フィールド上に特殊召喚されたモンスターが存在し、自分フィールドにモンスターがいないとき、デッキからカードを2枚ドローできる。そして、罠カード《エクシーズ・リボーン》を発動!墓地からエクシーズモンスター1体を特殊召喚して、このカードをオーバーレイユニットにする。私は《フェアリー・チア・ガール》を特殊召喚!」

 

フェアリー・チア・ガール ランク4 攻撃1900

 

「更に、《フェアリー・チア・ガール》の効果発動!オーバーレイユニットを1つ取り除き、デッキからカードを1枚ドローする。そして、カードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

翔太

手札1

ライフ1400

場 魔装竜ファーブニル レベル4 守備1200

  魔装槍士クーフーリン レベル6 攻撃2100

  魔装画伯シャラク(青) ペンデュラムスケール3

  魔装剣士ムネシゲ(赤) ペンデュラムスケール9

  ペンデュラム・スイッチ(永続罠)

  伏せカード1

 

サヤカ

手札4

ライフ4000

場 フェアリー・チア・ガール ランク4 攻撃1900

  天空の聖域(フィールド魔法)

  伏せカード4

 

「光属性の《フェアリー・チア・ガール》が攻撃表示のまま?やりにくい…」

伏せカードが4枚もあるにもかかわらず、サヤカの手札は4枚もある。

翔太の脳裏に《オネスト》の存在がちらつく。

「俺のターン!」

 

翔太

手札1→2

 

「私は永続罠《カウンター・フォース》を発動!カウンター罠が発動されるたびに、このカードにチャージカウンターを1つ置くことができる!」

「俺は永続罠《ペンデュラム・スイッチ》の効果発動!セッティングされている《魔装画伯シャラク》を特殊召喚する」

 

魔装画伯シャラク レベル4 攻撃1200

 

「更に、俺はスケール4の《魔装騎士ペイルライダー》をペンデュラムスケールにセッティング。これで、俺腫れ絵ベル5から8のモンスターを同時に召喚可能。来たれ、時の果てに眠りし英雄の魂。漆黒の魂と契約し、封印から解き放たん!ペンデュラム召喚!現れろ、《魔装砲士ボナパルド》、《魔装鬼ストリゴイ》!」

 

魔装砲士ボナパルド レベル5 攻撃2100

魔装鬼ストリゴイ レベル5 攻撃2100

 

「私は自分フィールドのモンスター1体をリリースして、カウンター罠《昇天の角笛》を発動!モンスターの召喚・反転召喚・特殊召喚を無効にして、破壊する!」

「何!?」

フィールドに出現した白い角笛を《フェアリー・チア・ガール》が大きく息を吸い込んで、ラッパのように吹く。

それから流れる甘美な音色に魅了されるように、2体のモンスターは消滅し、疲れ果てた《フェアリー・チア・ガール》も角笛とともに姿を消す。

「そして、カウンター罠を発動したことで、《カウンター・フォース》にチャージカウンターを1つ置く!」

サヤカのフィールドに赤いキャノン砲が出現し、側面にある液晶画面に「1」が表示される。

 

カウンター・フォース チャージカウンター0→1

 

「そして、《カウンター・フォース》は発動した次の私のターンのスタンバイフェイズ時に墓地へ送られる。そして、その時に乗っているチャージカウンター1つにつき、1000のダメージを与える」

「うぐ…!」

サヤカの説明により、翔太は身動きを止める。

彼女のフィールドにはモンスターがいないとはいえ、2枚の伏せカードが残っている。

《魔装騎士ペイルライダー》のペンデュラム効果は《昇天の角笛》のせいで発動できなくなった。

《魔装画伯シャラク》と《魔装槍士クーフーリン》、《魔装竜ファーブニル》がフィールドに残っており、一斉攻撃することで、一気にサヤカのライフを0にすることができるが、問題は2枚の伏せカードだ。

その中の1枚が《攻撃の無力化》だった場合、《カウンター・フォース》に再びチャージカウンターが乗ることになる。

そして、その場合は次のターンに《カウンター・フォース》が墓地へ送られることで2000のダメージを受けて翔太の負けとなる。

「俺は…これで、ターンエンド…」

 

翔太

手札1

ライフ1400

場 魔装竜ファーブニル レベル4 守備1200

  魔装槍士クーフーリン レベル6 攻撃2100

  魔装騎士ペイルライダー(青) ペンデュラムスケール4

  魔装剣士ムネシゲ(赤) ペンデュラムスケール9

  ペンデュラム・スイッチ(永続罠)

  伏せカード1

 

サヤカ

手札4

ライフ4000

場 天空の聖域(フィールド魔法)

  カウンター・フォース(永続罠)

  伏せカード2

 

カウンター・フォース(アニメオリカ・調整)

永続罠カード

(1):カウンター罠カードが発動されるたびに、このカードにチャージカウンターを1つ置く。

(2):このカードを発動した次の自分ターンのスタンバイフェイズ時、フィールドに存在するこのカードを墓地へ送ることで発動する。このカードの上に置かれているチャージカウンターの数×1000ダメージを相手ライフに与える。

 

「私のターン、ドロー!」

 

サヤカ

手札4→5

 

「この瞬間、《カウンター・フォース》の効果を発動。このカードを墓地へ送り、相手にチャージカウンターの数×1000のダメージを与える!」

《カウンター・フォース》から赤い質量弾が発射され、それが翔太の腹部に直撃する。

「ぐうう…カオスエクシーズといいカウンター罠といい…んだよ、この女は…!?」

 

翔太

ライフ1400→400

 

「翔太のライフが400に!?」

「それに、サヤカちゃんのライフ、始まってから1ポイントも減ってない!これが…レジスタンスの、黒咲の仲間の実力…」

敗北=カード化という極限の環境の中を生き延びるために手にした彼らの力に柚子は戦慄する。

小柄でどこにでもいそうな気弱な少女にしか見えないサヤカがここまで強いとは思いもよらなかっただろう。

「あいつ…ここまで強くなっていたのか」

「黒咲!?」

いつまでも来ない侑斗たちを呼びに来たのか、黒咲が遊矢達の元へやってきて、翔太とサヤカのデュエルを見る。

このレジスタンスと合流してからそれほど時間が立っていないにもかかわらず、RUMを使いこなし、おまけに翔太の動きをカウンター罠と豊富な手札で封じ込めている。

(今の彼女は俺が手加減して勝てる相手じゃない。翔太、どうやってこの状況を潜り抜ける?)

「私は手札から魔法カード《天空の宝札》を発動!手札の光属性・天使族モンスター1体を除外して、デッキからカードを2枚ドローする」

 

手札から除外されたカード

・豊穣のアルテミス

 

「更に、手札から魔法カード《強欲で謙虚な壺》を発動。デッキの上から3枚を確認して、その中の1枚を手札に加えて、それ以外をデッキに戻す」

 

デッキトップから3枚のカード

・救済のレイヤード

・踊る妖精

・オネスト

 

「私は《オネスト》を手札に加えて、残る2枚をデッキに戻す。そして、カードを2枚伏せ、ターンエンド!」

 

翔太

手札1

ライフ400

場 魔装竜ファーブニル レベル4 守備1200

  魔装槍士クーフーリン レベル6 攻撃2100

  魔装騎士ペイルライダー(青) ペンデュラムスケール4

  魔装剣士ムネシゲ(赤) ペンデュラムスケール9

  ペンデュラム・スイッチ(永続罠)

  伏せカード1

 

サヤカ

手札5→3(うち1枚《オネスト》)

ライフ4000

場 裏守備モンスター1

  天空の聖域(フィールド魔法)

  伏せカード4

 

「俺のターン!」

 

翔太

手札1→2

 

「バトルだ!《魔装槍士クーフーリン》でダイレクトアタック!ニードル・スピア!」

今度こそ攻撃を命中させようと、《魔装槍士クーフーリン》は至近距離まで接近し、胸部を槍で貫こうとする。

しかし、目の前に発生した次元の渦によって槍が吸い込まれ、攻撃手段を失ってしまう。

「カウンター罠《攻撃の無力化》!これで、《クーフーリン》による攻撃を無効にして、バトルフェイズを終了する。更に、手札の《バリア・フェアリー》の効果発動。私がカウンター罠の発動に成功したとき、このカードは手札から特殊召喚できる!」

自分の体を青い水晶のようなバリアーで覆った、水色の髪で羽の妖精が現れる。

 

バリア・フェアリー レベル4 守備2100

 

「更に、《バリア・フェアリー》の効果発動!このカードが自分の効果で特殊召喚に成功したとき、デッキからカードを1枚ドローする」

「ちっ…俺はこれで、ターンエンドだ!」

 

翔太

手札2

ライフ400

場 魔装竜ファーブニル レベル4 守備1200

  魔装槍士クーフーリン レベル6 攻撃2100

  魔装騎士ペイルライダー(青) ペンデュラムスケール4

  魔装剣士ムネシゲ(赤) ペンデュラムスケール9

  ペンデュラム・スイッチ(永続罠)

  伏せカード1

 

サヤカ

手札2(うち1枚《オネスト》)

ライフ4000

場 バリア・フェアリー レベル4 守備2100

  裏守備モンスター1

  天空の聖域(フィールド魔法)

  伏せカード3

 

バリア・フェアリー

レベル4 攻撃1200 守備2100 効果 光属性 天使族

このカード名の(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできない。

(1):自分がカウンター罠の発動に成功した場合に発動できる。手札に存在するこのカードを特殊召喚する。

(2):この効果で特殊召喚に成功したときに発動する。デッキからカードを1枚ドローする。

 

 

翔太の予想通り、サヤカの布施カードの中には《攻撃の無力化》が存在した。

仮に《カウンター・フォース》発動中に攻撃していたら、翔太の負けが決まっていただろう。

「私のターン、ドロー!」

 

サヤカ

手札3→4

 

「私は《バリア・フェアリー》をリリースして、《天魔神インヴィシル》をアドバンス召喚!」

白と黒をベースとした色彩で、下半身が蛇となっている白い髪の天使が現れる。

 

天魔神インヴィシル レベル6 攻撃2200

 

「光属性・天使族モンスターをリリースしてアドバンス召喚に成功した《天魔神インヴィシル》が存在する限り、フィールド上の魔法カードの効果は無効になる」

「何!?」

《王宮の勅命》と同じ効果を持つ《天魔神インヴィシル》によって、サヤカの《天空の聖域》は効果を失うが、翔太のペンデュラムゾーンのモンスターも効果を失ってしまう。

カウンター罠主体のサヤカよりも、翔太の方がこの場合のダメージが大きい。

「バトル!《インヴィシル》で《クーフーリン》を攻撃!」

《天魔神インヴィシル》の口から灰色の光線が発射され、それを受けた《魔装槍士クーフーリン》が消滅する。

 

翔太

ライフ400→300

 

「私はこれで、ターンエンド!」

 

翔太

手札2

ライフ300

場 魔装竜ファーブニル レベル4 守備1200

  魔装騎士ペイルライダー(青) ペンデュラムスケール4

  魔装剣士ムネシゲ(赤) ペンデュラムスケール9

  ペンデュラム・スイッチ(永続罠)

  伏せカード1

 

サヤカ

手札4→3(うち1枚《オネスト》)

ライフ4000

場 天魔神インヴィシル レベル6 攻撃2200

  天空の聖域(フィールド魔法)

  伏せカード3

 

(《インヴィシル》で効果は封じられてはいるが、ペンデュラム召喚そのものはできる。だが…)

《魔装騎士ペイルライダー》はペンデュラムゾーンに置かれている状態でペンデュラム召喚に成功したとき、相手フィールド上のカードを1枚破壊する効果がある。

それを使って、伏せられているカウンター罠を処理することがそのせいでできなくなってしまった。

《融合》も当然使えないため、《融合》なしでの融合召喚をしなければならない。

「面倒なことをやってくれるぜ…!俺のターン!」

 

翔太

手札2→3

 

「だったら、まずは《インヴィシル》を排除してやる!《ペンデュラム・スイッチ》の効果発動!1ターンに1度、ペンデュラムゾーンにセッティングされているペンデュラムモンスター1体を特殊召喚できる。俺は《魔装騎士ペイルライダー》を…」

「ライフを2000支払って、カウンター罠《神の警告》を発動!モンスターを特殊召喚する効果を含むカード効果の発動を無効にして、破壊する!」

無駄な抵抗は許さないといわんばかりの《神の警告》。

《ペンデュラム・スイッチ》が砕け散り、《魔装騎士ペイルライダー》はペンデュラムゾーンから出られない。

 

サヤカ

ライフ4000→2000

 

「更に、手札の《冥王竜ヴァンダルギオン》の効果発動!相手がコントロールするカードをカウンター罠で無効にしたとき、手札から特殊召喚できる!」

「おいおい、妖精のデッキに闇属性のドラゴンかよ!?」

肩や足、翼などに青い球体が埋め込まれている、漆黒のドラゴンが追撃のために姿を現す。

可憐な少女と激しいギャップがあり、その巨体で翔太を威圧している。

 

冥王竜ヴァンダルギオン レベル8 攻撃2800

 

「《ヴァンダルギオン》の効果発動!この方法で特殊召喚に成功したとき、無効にしたカードの種類によって効果を発動する!私が無効にしたのは罠カード。だから、相手フィールド上のカード1枚を破壊する。私は《魔装騎士ペイルライダー》を破壊する!」

《冥王竜ヴァンダルギオン》の拳が光りの柱を生み出す《魔装騎士ペイルライダー》に向けて振り下ろされる。

光の柱ごと拳で砕かれた《魔装騎士ペイルライダー》が消滅し、ペンデュラム召喚が使えなくなる。

(くそ…!このタイミングでこいつは発動できるが…)

翔太は伏せているカードを見るが、今そのカードを発動したとしても、翔太に勝機がもたらされることはない。

サヤカの墓地に存在するカードに彼にとってめぼしいものはないため、使うだけ無駄だ。

このまま次の行動を選択しようとした翔太だが、そんな彼に頭痛が襲う。

「ぐうう…こんな、時に…!?」

「翔太さん!?一体どうしたの!?」

急におかしくなった翔太を見たサヤカが彼に駆け寄ろうとする。

だが、翔太は右手で頭を抑えながら、左手で彼女を制止する。

「邪魔…するな…。お前ら全員…邪魔を、するな!!」

痛みに耐えながら叫ぶと同時に、翔太の体から薄紫の波動が発生する。

波動を見た侑斗は冷や汗をかき、遊矢達も動揺を見せる。

「な、何!?今の…??」

「紫色の光が見えた。…!?こ、これは!?」

遊矢の眼が赤と黒のオッドアイに変わり、彼の瞳に映る翔太の姿が変化する。

(翔太の中に…3つの光…。青い大きな光の周りを白と紫の光が回って…)

波動が発生すると同時に翔太の左手の痣も紫色に光る。

だが、翔太と彼の痣が放つ光も数秒で収まり、頭痛も収まった翔太はハアハアと息を整えながらサヤカに目を向ける。

「ハアハア…デュエルを…つづけるぞ…」

「翔太さん、本当に大丈夫なんですか??」

「構うな…!俺は罠カード《ユライの略奪》を発動!俺のフィールドに存在する魔装騎士カードが相手によって破壊され墓地へ送られたとき、相手の墓地に存在する魔法カード1枚を手札に加える」

「え…えええ!?」

翔太の発動した罠カードを見た遊矢たちは困惑する。

そのカードは使い方次第では相手のパワーカードを奪うことのできる存在だが、今のサヤカの墓地には《RUM-フェアリー・フォース》や《RUM-バリアンズ・フォース》など、翔太のデッキには役に立たないカードしかない。

魔法カードの効果を無効にする《天魔神インヴィシル》が存在することもあり、そんなカードを手札に加えたところで、今の状態では宝の持ち腐れだ。

「俺は…墓地の《RUM-バリアンズ・フォース》を手札に加える…。そして、スケール2の《魔装槍士タダカツ》をペンデュラムゾーンにセッティング…!」

「私はカウンター罠《魔宮の賄賂》を発動!相手の魔法・罠カードの発動を無効にして、破壊する!そして、空いてはデッキからカードを1枚ドローする!」

せっかく発動した《魔装槍士タダカツ》が消滅し、ペンデュラム召喚が封じられる。

だが、ドローしたカードを見た翔太は即座に動く。

「俺がドローしたカードはペンデュラムモンスターの《魔装船ヴィマーナ》!よって、こいつをセッティングする!」

破壊された《魔装槍士タダカツ》の痕を埋める用に出現する《魔装船ヴィマーナ》が浮上し、光の柱を生み出す。

「これで俺はレベル4から8のモンスターを同時に召喚可能。来たれ、時の果てに眠りし英雄の魂。漆黒の魂と契約し、封印から解き放たん!ペンデュラム召喚!現れろ、《魔装砲士ボナパルド》!《魔装鬼ストリゴイ》!《魔装騎士ペイルライダー》!」

 

魔装砲士ボナパルド レベル5 攻撃2100

魔装鬼ストリゴイ レベル5 攻撃2100

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

 

「そして、俺は手札の《RUM-バリアンズ・フォース》を墓地へ送り…《ペイルライダー》を進化させる!」

《RUM-バリアンズ・フォース》が紫色に光に変化し、フィールドにいる《魔装騎士ペイルライダー》を包み込んでいく。

「混沌の力を得た死の騎士が冥界へ魂を誘う!カオスエクシーズチェンジ!現れろ、けがれた富に包まれし魂を死へ誘う獣、《CX魔装死獣プルートー》!」

《魔装騎士ペイルライダー》の鎧が砕け散り、三日月を模した水晶の角をこめかみを貫かれたかのようにつけている、白い鬣を持った2本足の獣が姿を現す。

フィールドに降り立つと、両腕や手足の指についている水晶の爪を研ぎ澄まし、激しく咆哮する。

 

CX魔装死獣プルートー ランク8 攻撃3500

 

「このカードはペンデュラムゾーンに魔装カードが2枚存在するとき、手札のRUM1枚を墓地へ送ることで、エクシーズ召喚できる…カオスエクシーズモンスターだ。《プルートー》の効果発動!このカードのペンデュラム召喚に成功したとき、相手フィールド上にセットされているカードをすべてこのカードのカオスオーバーレイユニットにする!」

「だったら、私はカウンター…」

「無駄だ!魔装騎士をオーバーレイユニットにした《プルートー》が効果を発動するとき、相手は魔法・罠・モンスター効果を発動できない!バアル・ライトニング!!」

《CX魔装死獣プルートー》の方向と共に、水晶の爪と刃から雷鳴が発生する。

雷鳴はサヤカの伏せカードを次々と貫いていき、雷鳴を受けたカードは炭化し、オーバーレイユニットへ変えられていく。

 

「バトルだ!《プルートー》で《天魔神インヴィシル》を攻撃!ユーピテル・クロウ!!」

雷鳴を宿した《CX魔装死獣プルートー》の爪が《天魔神インヴィシル》の体を引き裂く。

引き裂かれた箇所から雷が発生し、その雷の中へ彼女の肉体が消滅する。

「キャアアア!!」

 

サヤカ

ライフ2000→700

 

「更に、《プルートー》の効果発動!このカードが相手モンスターと戦闘を行ったダメージステップ終了時、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、続けてもう1度攻撃することができる!その時攻撃力はダメージステップ終了時まで1000アップする」

 

CX魔装死獣プルートー ランク8 攻撃3500→4500

 

発生した雷が《CX魔装死獣プルートー》の爪に吸収されていき、同時に上空に雷雲が発生する。

それから発生した雷が角に落ち、雷の獣の体が稲光に包まれていく。

「あ、ああ…」

「《プルートー》でプレイヤーへダイレクトアタック!トールブラスター!!」

《CX魔装死獣プルートー》の口から真っ白なビームが発射され、その光の中にサヤカが包まれていく。

「キャアアアア!?!?」

ビームを受けたサヤカは吹き飛び、あおむけになって倒れた。

 

サヤカ

ライフ700→0

 

CX魔装死獣プルートー

ランク8 攻撃3500 守備3000 エクシーズ 無属性 戦士族

【Pスケール:青0/赤0】

(1):1ターンに1度、Pゾーンに存在するこのカードを裏向きでEXデッキに戻すことで発動できる。EXデッキに表向きで存在する「魔装騎士」モンスター1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化され、このターン、自分は「魔装」モンスターしか召喚・特殊召喚できない。

(2):このカードがPゾーンに存在するとき、自分は「魔装」以外のモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚できない。この効果は無効化されない。

【モンスター効果】

レベル8の「魔装騎士」モンスター×2

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

このカードはルール上、「魔装騎士」モンスターとしても扱う。

このカードは以下の方法でのみ特殊召喚できる。

●自分Pゾーンに「魔装」カードが2枚存在するとき、手札の「RUM」魔法カード1枚を墓地へ送り、自分フィールドに存在する「魔装騎士」モンスター1体を対象に発動できる。EXデッキに存在するこのカードをそのカードの上に重ねてX召喚扱いで特殊召喚する。

(1):このカードのX召喚に成功したときに発動する。相手フィールドにセットされているカードをこのカードの下に重ねてX素材にする。

(2):このカードが相手モンスターと戦闘を行ったダメージステップ終了時、このカードのX素材を1つ取り除くことで発動できる。このカードの攻撃力をターン終了時まで1000アップし、続けてもう1度攻撃することができる。

(3):このカードのX素材に「魔装騎士」モンスターが存在し、このカードの効果を発動するとき、相手は魔法・罠・モンスター効果を発動できない。

(4):モンスターゾーンのこのカードが破壊されたときに発動する。自分Pゾーンに存在するカードをすべて破壊し、このカードを自分Pゾーンに置く。



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第92話 出発と黒い影

「サヤカ、大丈夫!?」

翔太に敗北し、吹き飛ばされたサヤカの元へ柚子が駆け寄る。

一方、黒咲は翔太の《CX魔装死獣プルートー》のやり過ぎた攻撃に腹をたて、彼の胸ぐらをつかむ。

「翔太!あの攻撃は何だ!?サヤカを殺す気…か…??」

胸ぐらをつかまれた翔太は白めになっていて、グラリと頭を後ろに傾けている。

左手の痣の色は元の緑色へと戻っており、黒咲に対して何も行動を起こさない。

(こいつ…気を失っているのか?)

「隼、私…私は大丈夫だから。その人を放して!」

柚子に助けられる形で起き上がったサヤカが黒咲に説得する。

派手に吹き飛ばされたものの、学校である程度訓練を受けていたおかげか、彼女は怪我をせずに済んでいた。

彼女の無事な姿を見て黒咲は安心する。

「奴は気を失っている。テントへ連れていくぞ」

「分かった。どこか、使えるテントがないか探してくるよ!」

「待ってユウ、私も探す!」

侑斗とウィンダがフィールドを後にし、黒咲は翔太をフィールドで横にし、彼のデュエルディスクに置かれている《CX魔装死獣プルートー》を見る。

「こんなカード…翔太が今まで使ったことないみたいだし、それに見たことがない」

《ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》などの未知のカードを生み出した遊矢が言っても説得力がないものの、翔太がなぜそのようなカードを持っているのか、疑問を感じていた。

とくにこのカオスエクシーズペンデュラムモンスターといえるこのカードは明らかにサヤカが使った《RUM-バリアンズ・フォース》と関係がある。

それに、《CXダーク・フェアリー・チア・ガール》を見たときに見せた翔太の異常な反応。

「サヤカ、そのRUMとカオスエクシーズモンスターって、剣崎さんが教えてくれたんだよな?」

「え…うん。剣崎さんがどうやってそのカードの存在を知ったのかはわからないけど…」

侑斗からそれらのカードについて学び、それらを使った戦術の訓練をしていた際、数人のレジスタンスのメンバーがどのような経緯でその存在を知り、そして手に入れたのかを尋ねることがあった。

しかし、侑斗はそれについての答えを常にはぐらかしていた。

「なあ…剣崎さんって、エクシーズ次元の人なのか?」

遊矢達は侑斗のことはレジスタンスとレオコーポレーションの協力者でありヴァプラ隊の創設者であること、カードの精霊の力を宿していること、ウィンダが彼女であること以外のことをほとんど知らない。

黒咲に聞いたことがあるが、彼もアカデミアの攻撃以前に彼がどこで何をしていたのかを知らないという。

「何者なんだろう…剣崎さんって」

 

「すまない…。お前まで犠牲にしてしまうとは…」

コンクリートでできた部屋の中で、黒い服の少年が同じレジスタンスの仲間と思われる、同年代の少年を罪悪感で満ちた悲しい目で見る。

しかし、彼は逆に誇らしいと思っているのか、笑いながら首を横に振る。

「覚悟はできてる。俺の幼馴染はアカデミアに奪われたんだ。その仇を討てるというなら、この命は惜しくない」

3年前の悲劇を思い出しながら、彼の眼が少年から彼のフィールドにいるモンスターに向けられる。

背中に超の羽根のような透き通った光の羽根をつけた《銀河眼の光子竜》に似た姿のドラゴンだ。

一方、少年のフィールドにはカードがなく、手札は1枚だが、この状況をしのぐことができないことをわかっており、もうそれを見ることはない。

アカデミアを倒すために、カイトたちクローバー校のレジスタンスが決めたルールに従い、敗れた彼はその身を捧げる。

「《銀河眼の光波竜》でダイレクトアタック!殲滅のサイファーストリーム!!」

《銀河眼の光波竜》の口から放たれた青い光のブレスを受け、彼は吹き飛ばされる。

「アカデミア…俺たちの…奪われた者の怒りを…思い知れ…!」

少年がアカデミアを討ってくれる光景を目に浮かべながら、彼はカードに変わり、少年の手に渡った。

「力集めは順調のようだな…天城カイト」

白いコートを着た、白いロングヘアーの少年がカードを持つカイトの元へやってくる。

カイトは彼に何も言うことなく、カード化した仲間を渡した。

「なんだ…その顔は?仕方ないだろう?犠牲なくして何も得ることはできない。力を手に入れるんなら、それ相応の犠牲を払わないとな。その点、犠牲もなしにどこの馬の骨かわからないやつについていった彼らより…お前は強い」

「…その力が手に入るまで、あとどれだけデュエリストをカードに変えればいいんだ?…レナード・テスタロッサ」

「そうだな。仮にアカデミアを滅ぼせるだけの力がほしいとなると…より良質なデュエリストを手に入れないとな。君の知っているデュエリストで、強いデュエリストを知っているか?」

部屋の隅に置かれたパイプ椅子に座り、おいてあるノートパソコンを操作しながら質問する。

カイトにとって、その質問の答えになるようなデュエリストが2人頭に浮かんだ。

「隼…そして、ユート」

「あと付け加えるとしたら、彼らに力を与えたデュエリスト、剣崎侑斗もだ。彼らをカードにすれば、おそらく30人分の力を集めることができる。そして…力を手に入れるのに必要なデュエリストの数はあと…40人」

「その3人を30人の代わりとしたならあと13人…」

ノートパソコンの操作は短時間で終わり、閉じたレナードはじっとカイトを見つめる。

「ある人は言った。1人殺せば殺人者だが、100万人殺せば英雄だ。死者の思いを背負い、その力をアカデミアにぶつければ、特にな…」

「…俺は英雄になるつもりはない」

「なら、救世主と置き換えよう。君はエクシーズ次元を救うんだ。そして、家族と仲間たちの無念を晴らせ。多くの屍の山を築き上げたとしても」

レナードは出ていき、部屋にはカイト1人が取り残される。

(レナード・テスタロッサ…。斜に構えた物言いだが…)

カイトがレナードと知り合ったのは数か月前で、そのころはクローバー校のレジスタンスは物資や人員など、ありとあらゆる面で切羽詰まった状態だった。

レオコーポレーションなどの支援を受けておらず、ゲリラ戦を主体としている彼らはそうした物資を現地調達しなければならなかった。

現在、彼らがつけているデュエルディスクの多くは倒したアカデミアのデュエル戦士から奪ったものだ。

そして、カイトにはリーダーとしてのカリスマ性はあり、デュエルの力量にも恵まれてはいたものの、軍師としての才能には恵まれていなかった。

そんな中でレナードが現れ、彼の策によって難攻不落だったデュエル庵基地の陥落に成功したことで、カイトらから信任されるようになった。

他にも防衛や物資などの確保のためのプランを次々と提示しており、今では彼はクローバー校のレジスタンスではなくてはならない存在となった。

カイトも最初は素性のわからない彼について不信感を抱いていたものの、今では信頼している。

(隼…ユート、許せよ。エクシーズ次元を救うには…もう、この手段しかない。そして、平和をもたらしたその時には…)

 

「…太君、翔太君!!」

「うう、うるせえ…な…」

テントの中で、ゆっくり目を開いた翔太は伊織に悪態をつきながら体を起こす。

「うるせー、じゃないよ。デュエルの後で気を失ったって聞いて、それに変なこともいろいろ起こったみたいだから、心配したんだよ!?」

「ふう…悪かった。悪うございました」

「なによ!その態度!!」

2人のやり取りを見ていた柚子が起こった表情を見せ、翔太に目を向ける。

「んだよ…?」

「伊織がどれだけ心配していたかわかってるの!?伊織だけじゃない!デュエルをしてたサヤカちゃんも、ここにいるランサーズのみんなも、あなたを心配してた!それなのに、そんな心配されるのは迷惑みたいな言葉…いい加減にして!!」

翔太がテントに運ばれて、すぐに出口に待っていたほかのメンバーに彼が倒れたことなどが伝えられた。

伊織はいてもたってもいられず、大急ぎでテントまで行き、翔太の看病をした。

にもかかわらず、相変わらずそういう言動をする翔太に柚子は我慢できなかった。

「お、おう…」

「だいたい翔太は伊織に会って、遊勝塾に来てからもいつもいつも…」

「ゆ、柚子…。翔太だって反省してるんだし、そろそろ…」

あまり時間がないことを考えると、そろそろ出発したほうがいいと思い、遊矢は声をかける。

「黙ってて!!」

「ひぃ!」

一瞬、オッドアイに変わった遊矢は柚子からドス黒い悪魔のような強いプレッシャーが見えてしまい、それに気圧されてしまう。

尻餅をついた遊矢を無視し、翔太への説教が再開された。

「じゃ、じゃあ!忘れ物がないかのチェックをしようか!」

「う、うん。一度出たら、ここには当分戻れないからね」

「じゃ、出発進こー…おー…」

「黒咲、一緒にデッキのチェックをしないか…」

「あ、ああ…」

小さく拳を上げた伊織を先頭にして、翔太を見捨てた6人組がテントから出ていく。

「あ、あいつら…!」

「キュイー!」

いつの間に翔太の後ろにいたビャッコも伊織についていき、彼は自分の精霊にすら見捨てられる格好となってしまった。

日頃のツケは悪い時に廻って来るという話があるが、今の翔太はそんな感じだ。

「あいつら、後で覚えておけよ…!」

「聞いてるの!?」

「…はい」

 

「みんな、お待たせー!」

約1時間後、6人が待つ基地の出入り口に柚子と翔太がやってくる。

翔太を見た伊織は声をかけようと思ったが、今の彼の様子を見て、あっさりと断念した。

文字通り絞られたのか、やせ細っており、白目をむいてしまっている。

そんな状態でテントからここまで歩いてくることができただけでも奇跡としか言いようがない。

「翔太がこうなっている間に、最後の準備をしておいた。この軽トラは俺たちが使ってもいいとのことだ。運転は俺がやる」

「黒咲、軽トラの運転もできるの?」

「だいたいの車とバイクはできる。免許はないがな。遊矢もさっき渡したカード、使えるな?」

「ん…ああ。やってみるよ。ユートの…カードなんだから…」

翔太を待っている間に黒咲から渡されたカードケースに入っている幻影騎士団カードをじっと見る。

これらはスタンダード次元へ飛ぶ際、デッドウェイトとなることから置いていかざるを得なかったカードで、スペード校のユートが使っていたロッカーの中に入っていた。

EM、魔術師、オッドアイズの3つのカテゴリーが入った遊矢のデッキに入る余裕があるかは疑問だが、新しい戦略としてこれらのカードを使うというのも一つの手だと考えることが現状での遊矢の結論だ。

「サヤカちゃん、あなたを助けてくれた凌牙君って人を最後に見た場所は分かる?」

「うん。そこまでの案内はできるわ」

「なら、お前は助手席に乗れ。残りは全員荷台だ」

メンバーから受け取った鍵で軽トラのエンジンをかけ、全員が乗り込む。

本来の軽トラの最大積載量は350キロだが、レジスタンス内で改造が行われた結果、オフロードに対応できるタイヤに交換されたうえ、600キロまで積むことが可能になっている。

人々に見送られながら、8人を乗せた軽トラは発進した。

 

「はーい、はいはいはい。さっさと起きなさいよっと。まったく、最近の若い者はなっとらん!早寝早起きは3文の得ぅ!ママから教わらなかったかなぁ?」

天井にはLED電球1つが光っているだけの牢屋のような暗い部屋の中で、ゲイツはバケツに入っている水を椅子に座っているデニスにぶちまける。

彼の腕と足は椅子に固定される形で縛られており、おまけに首には高圧電流の流れる枷がつけられていることから、逃げることができない。

「それでぇ、なんで、計画に、失敗したんですかぁー?もしかして…スパイやってるうちに情が移ったとか?」

背後に回り、両肩に手を置いたうえで耳元でつぶやく。

このようなデニスとゲイツのやり取りは1時間続いているが、その間デニスは一言もしゃべっていない。

「ふぅーむ…だんまり。私は君の仕事を済ませた後、セレナちゅあんとトリップしたいのさぁー。今日で済ませたら、瑠璃ちゃんとリンちゃんでハーレムもできるってさぁー。だからさぁ、いろいろ教えてー。計画については聞かないからさぁー」

ゲイツに与えられている任務はアカデミアに戻り、シンクロ次元に柚子とセレナがいることを報告する以外、一切口を開かないデニスからランサーズに関するさらなる情報を聞き出すことだ。

手足や眼、臓器などへダメージを与えることを禁止したうえで、それ以外なら何をやってもいいという条件だ。

「うーん、拷問担当ならブーンがいるのに、なぁーんで私が選ばれたんだぁー。私が情報を聞こうとしたら、なぁーぜかもう死んじゃってたり、殺してくれとしか言わなくなっちゃったりするのさぁー。なんでか…教えてくれる?」

「…あんたが、へたくそだからじゃないの…?」

3日間、ゲイツという人間を嫌というほど見てきたデニスはようやく口を開く。

彼はコミカルさで自らの残虐非道を隠している人物であり、おまけに3日に1回は女性のデュエル戦士に手を出すような、今まであった中では史上最低の男だ。

彼に傷つけられた女性戦士は大抵戦線に出ることができず、アカデミア内の療養施設に入ることになる。

「へたくそ…?この私が?…まあいい。じゃ…余興として何か私に手品を見せてくれ。例えば、この高速状態からの大脱出ショーとか」

ピクピクと反応し、ナイフを抜いたゲイツはゆっくりと自分を抑えつつ、刀身を撫でながらデニスに言う。

しかし、帰ってきたのはデニスの血が混じった唾で、それがゲイツの頬に付着する。

いつもヘラヘラ笑っているが、それは自分にとって楽しいからにすぎず、だれともその笑顔を共有できない。

そんな彼を笑顔にするようなエンタメをデニスはするつもりはない。

「あっそ…。となると…もうこうするしかないなぁ」

「僕を殺す気かい…?いいさ、デュエル戦士になった以上、もうその覚悟は…」

「あぁーーん!?なーに勘違いしてんだ、このブァーカ。お前を苦悩から救ってやるのさー!」

ナイフを投げ捨てたゲイツはコートのポケットから緑色の液体が入った注射器を出す。

その液体を見たデニスの体からは冷や汗があふれ出る。

「それは…!?」

「ナノマシンさ…プロフェッサー特製の。といっても、あのプロフェッサーじゃないかもしれないけどなぁ」

「どういう…意味だ?」

「別にぃ、特に意味はない…」

そういった瞬間、首の枷が外れ、注射器がデニスの首筋に刺さり、ナノマシンが注ぎ込まれる。

首から感じる激痛に脂汗を流しながら苦しむデニスはそのまま意識を失った。

「…ボクに、とってはね」

注射を終えたゲイツは彼を拘束する縄をすべてほどき、外で待っているデュエル戦士3人を入れる。

「こいつを部屋に入れとけ。私のお仕事はこれでおしまいだ。あと、ポップコーンとコーラを買って来い。これからのお楽しみタイムに必要だからなぁ…ん?」

デニスが運ばれていくのを見送るゲイツは携帯電話を見る。

メールが届いており、その内容を確認した後で、それをしまった。

「これは…いつも以上に面白いイベントが起こりそうだな。エクシーズ次元で。さてっと…じゃあお客さんのお・も・て・な・しの準備をしないとっと♪」

両腕を伸ばし、スキップしながらゲイツは片づけをせずにその部屋を後にした。



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第93話 包囲網を突破せよ

「柚子、ブレスレッドの反応は?」

「ううん…何も起こらない。ここからはもう遠くへ行っているってことじゃないかしら…?」

遊矢の問いかけにブレスレッドを確認した柚子が答える。

サヤカの言ったとおりの場所にトラックを止め、侑斗は地図を使って周辺を確認し、その場所が正しいかどうか確認する。

確認した結果、この場所は確かにサヤカが言っていた場所で間違いないのだが、ブレスレッドが反応しない。

となると、ここから遠くへ行っているという柚子の考えは正しいかもしれない。

「凌牙君が行きそうな場所…」

考え始めた彼はハートランドにあるものを思い出していく。

4つのデュエルスクール、ハートの塔、港…。

あの場所とは確かに異なる建物が多いが、それでも共通する場所が存在する。

「もしかしたら…あの場所かもしれない」

「あの場所…?わかるのか、剣崎さん」

「うん。もしかしたら…だけどね。みんな、乗って!」

侑斗に呼びかけられ、遊矢達は再びトラックへ乗り込み、トラックはその場を後にする。

トラックがいなくなると、近くのがれきに歪みが発生し、そこから2人の黒いスニーキングスーツを着用した2人の少女が現れる。

1人は白いロングヘアーで猫のような黄色い眼、もう1人は薄い金色のロングヘアーで赤紫の瞳をしており、2人はじっと走り去っていくトラックを見ていた。

「見えたな…さすがはジェルマンだ。いい情報を仕入れる」

「グロリア姉さん、どうするの?」

双眼鏡でトラックの行き先を確認するグロリアに妹と思われる白髪の少女が問いかける。

がれきが多いものの、オフロード向きに改造されたトラックであるため、速度減少はあまり期待できない。

リアルソリッドビジョンによって、デッキの中にあるとあるモンスターを召喚すれば、追跡は不可能ではない。

しかし、そのモンスターはどちらかというと短距離向きであり、長距離の追跡には向いていない。

「総司令に連絡するぞ」

「ええ…それに、早くこの服から着替えたいし…!」

「我慢して、グレース。基地に戻るまでは我慢だ」

グレースの言葉がわからないでもないが、任務が任務であるため、仕方がない。

アカデミアで開発されたこのスニーキングスーツはオクトカム・カモフラージュという風景だけでなく、質量や温度などをリアルタイムで再現できるシステムが備わっており、偵察や潜入に向いている。

おまけにゴムのような素材をベースとして体にフィットするように作られているため、引っかかるところも少なく、外界に溶け込みやすい。

それだけでなく、臓器を圧迫して機能を促進する、傷の治癒を早める、体温調節を行うなどといったとても優れた性能を持っている。

ただし、全身にフィットしているということで、来ているときつい感じがする上に女性が着用する場合は胸や尻などの形がわかるようになってしまう。

グロリアと違い、軍人気質ではないグレースはそれが嫌で仕方がない。

こうなったら、これを開発した人間に文句を言ってやりたいと思ったグレースだが、残念ながら今の状況では不可能だ。

 

「よし、この道を通れば、あの場所に行ける」

1本道に差し掛かり、トラックはまっすぐ進んでいく。

ブルーシートの中に隠れる柚子のブレスレッドが淡く光り始める。

「剣崎さんの言ったとおりだ。柚子のブレスレッドが反応してる」

「じゃあ、その場所に本当に凌牙さんっていう人が…キャア!!」

急に爆発音が鳴り響き、同時に振動がトラックに襲い掛かる。

ブルーシートの中にいる彼らには何が起こったのかわからない。

「何があった!?」

運転席と助手席のある方向の装甲を叩いた翔太が叫ぶ。

同時に、ガラガラと建物が崩れる音がする。

「みんな、伏せろ!!」

ズシィン、とけたたましい音が鳴り響くと同時の一陣の強風が吹く。

ブルーシートは4方から固定されているため、吹き飛びはしなかったが、バラバラと何かが当たる音が聞こえてくる。

少しして、ドアが開く音がし、同時にブルーシートが剥がされる。

「みんな、けがはない?」

「私たちは大丈夫。ユウ、何が起こったの??」

「どうやら、僕たちの動きが読まれていたみたいなんだ…。ほら」

遊矢達がトラックから降り、トラックの前方を見る。

左右にあるビルが崩れており、そのがれきによってここから先の道をふさがれてしまっている。

それと爆発音から、翔太はこれは敵が仕掛けた爆弾のせいだということが分かった。

3年前の戦いで、元々もろくなっていたビルであるため、ごく少量の火薬の爆弾でも容易に崩れてしまう。

おかげで、この道は使えなくなった。

「この道はもう使えない。どうする、剣崎さん」

トラックを使って進むなら、ほかに迂回ルートがあり、その道を黒咲は知っている。

そこを使っていくことも可能だ。

「いや、ここからは歩いていこう。もしかしたら、そのルートにも同じ罠が仕掛けられてるかもしれない」

今回は黒咲が間一髪で急ブレーキを踏んだおかげで、巻き込まれずに済んだ。

同じことが2度3度発生したら、今度こそ崩れるビルに巻き込まれてしまう。

そう考えると、ここからは歩いていった方が相対的に安全だと侑斗は判断した。

「ちっ…用意周到な野郎がいたもんだな。そこにいるんだろ?隠れてないで出てこい!」

「翔太…俺たち」

「ああ、遊矢。もう俺たちは胃袋の中みたいだな」

翔太の声に応じたのか、20人以上のアカデミアの兵士たちが物陰から出てくる。

赤服や黄色服だけでなく、オベリスクフォースも含まれている。

崩れたがれきの上には、襟などに金色の刺繍が施されたグレーの制服にプロフェッサーが着ているものと似た構造のマントを重ね着した、グレーの髪の少年が立っており、その隣には茶色いキノコのような髪型をした、黒いハイネックシャツと赤いインナー、青いスーツを重ね着した男が胸元にぶら下げている懐中時計で時刻を確認している。

「フフフ…時間通り。さすがです、エド・フェニックス総司令」

「3年の間に、ここの地形は頭に叩き込んだ。別に大したことじゃないさ。野呂」

今回、このように彼らを包囲できたのはジェルマンから彼らの存在を知り、グロリアとグレースのタイラー姉妹が偵察して居場所と目的地を特定してくれたからだ。

あとは爆発物を封鎖できるようにセットし、伏兵を用意しておけばいい。

しかし、野呂は今回のエドの策を勝算はしているものの、不満足な部分も感じていた。

(あの爆弾で、トラックごと壊してしまえばよかったものを…)

今回使用した爆弾はトラックが通る手前で爆発するようにプログラムするように、エドが指示をしていた。

相手はランサーズであり、デュエル戦士として、デュエルで彼らを倒してこそ、自分たちの戦いの正当性を示すことができる、という言い分だ。

デュエル以外の手段で実力行使をしてくる相手には、やむなく後味の悪い手段をとらざるを得なかったものの、デュエルで相手を倒すのがエドの基本スタンス。

だが、それがエクシーズ次元の侵攻スピードを遅らせているのは事実であり、以前に野呂は難民に変装した兵士でレジスタンスの基地に侵入し、爆弾テロを起こすことを提案したが、不採用となった。

侵略だけを考えると、野呂の考えは正しいのだが、エドの信条に反する提案だったこと、そして現場のデュエル戦士と最近補充要因としてアカデミアから派遣されたタイラー姉妹が彼を信頼していたためにそうなった。

時間と効率を重視する野呂にとって、エドは頭の痛い上司といえる。

アークエリア・プロジェクトの要である柚子が巻き込まれてしまうのだが、それは彼にとって、どうでもいいことだった。

「いいか、柊柚子の確保を第一目標。そして、ランサーズは1人残らずデュエルで撃破しろ」

「「ハッ!!」」

トラックの後方からもデュエル戦士たちが現れ、数はこちらの3倍以上。

しかも、彼らの会話から総司令がここにいるということで、さらに援軍がこちらにやってくる可能性が高い。

「じゃあ、柊柚子の確保は」

「私たちが!!」

グレース姉妹が一斉に柚子を確保するため、彼女に襲い掛かる。

「柚子!!」

そばにいた遊矢が彼女を守るために前に立つ。

「邪魔をするな!!」

グロリアが遊矢に向けて、右足で蹴りを入れようとする。

対人戦闘訓練の一環として、アカデミアではこうした体術の訓練も加えられており、グロリアは特にこの蹴り技を得意としている。

左腕でガードしたが、それでも腕の感覚を失うくらいの衝撃を与え、ひるませることができただろうと思った。

しかし、左腕にあたったときに発したガアンという金属に当たったような感触と、逆に足に伝わる痛みに驚く。

「遊矢!!」

「大丈夫、義手でよかった…!」

シンクロ次元で左腕を失い、代わりに手に入れた義手のおかげで柚子を守り、自分もダメージを抑えられた。

皮肉なものを感じながら、遊矢は袖を通している制服の上着を脱ぐ。

同時に、デュエルディスクをつけ、フィールド魔法《クロス・オーバー》を発動し、アクションデュエルの状態にする。

「アクションデュエル…。なんだかおもしろそう」

「関係ない。私たちの役目は柊柚子の確保。デュエルで拘束する」

「いいわ、姉さん。2人で行くわよ」

タイラー姉妹もデュエルディスクを展開する。

2人、特にグロリアは不敵な笑みを浮かべており、シンクロ次元での戦いの中でランサーズでも有数の実力者に成長しつつある遊矢に対して、余裕の態度を見せている。

「私たち、タイラー姉妹のタッグデュエル」

「知らないみたいだから、このデュエルでたっぷり教えてあげる」

「タッグデュエルなら、あたしも!!」

「柚子!?」

遊矢の隣に立った柚子もデュエルディスクを展開する。

これにより、タッグデュエルの条件が満たされ、デュエルディスクが自動的にタッグデュエルモードに設定が変更される。

「あたしも戦う。あたしだって、ランサーズなんだから」

「柚子…」

「あなたと一緒なら、怖くないわ。遊矢」

「ああ…一緒に戦ってくれ、柚子」

偽りのない、心からの言葉を聞き、遊矢も自然と笑みを浮かべる。

空気が甘くなり、それを見たグレースが少しうっとりしているが、グロリアににらまれて集中しなおした。

「プロフェッサーのためにも、柊柚子は確保させてもらう!」

「そんなことはさせるか!柚子は俺が守る!!」

「「デュエル!!」」

 

グレース&グロリア

手札

グレース5

グロリア5

ライフ4000

 

遊矢&柚子

手札

遊矢5

柚子5

ライフ4000

 

「私が先に行くわ、グロリア姉さん。私は手札から《アマゾネス王女》を召喚!」

青いライオンの鬣のような飾りを頭につけ、右手に長刀を持った、露出度の高い赤いビキニアーマー姿で黒い肌の少女が現れる。

 

アマゾネス王女 レベル3 攻撃1200

 

「《アマゾネス王女》の効果発動。このカードの召喚・特殊召喚に成功したとき、デッキからアマゾネス魔法・罠カード1枚を手札に加えるわ。私は《アマゾネスの叫声》を手札に加える。そして、速攻魔法《アマゾネスの叫声》を発動!」

浮いている足場を上り、一番上に到着した《アマゾネス王女》がイラストに描かれている《アマゾネスの射手>と同じように叫ぶ。

「デッキから、《アマゾネスの叫声》以外のアマゾネスカードを1枚手札に加えるか墓地へ送ることができるわ」

「サーチも墓地肥やしもできる速攻魔法だって!?」

「私はデッキから《アマゾネスペット仔虎》を墓地へ送るわ。さらに、手札からフィールド魔法《アマゾネスの里》を発動!アクションデュエルだから、このカードは永続魔法扱いになるわ!」

《アマゾネスの里》発動と同時に、廃墟には不釣り合いな密林が出現し、竪穴式住居風の家屋がいくつも現れる。

それについている窓や出入り口から、2人は何者かの目線を感じた。

「フィールドのアマゾネスの攻撃力は200アップするわ。そして、3枚カードを伏せて、ターンエンド」

 

グレース&グロリア

手札

グレース5→0

グロリア5

ライフ4000

場 アマゾネス王女 レベル3 攻撃1200→1400

  アマゾネスの里(永続魔法扱い)

  伏せカード3

 

遊矢&柚子

手札

遊矢5

柚子5

ライフ4000

場 なし

 

「あの男が…榊遊矢…」

エドはがれきの上から、デュエルを行う遊矢を見ていた。

彼を実際に見るのは初めてだが、プロフェッサーから何度も彼について話を聞いている。

また、スタンダード次元とシンクロ次元で戦ったオベリスクフォースのデュエルディスクについている録画機能で、映像として彼の姿を見たことがある。

「奴が…あの榊遊勝の息子なら…」

「そんなにのんびりとみてる場合か?総司令殿?」

ガレキの上まで1回のジャンプでたどり着いた翔太がエドをにらみ、デュエルディスクを展開する。

人間離れした翔太の身体能力に驚き、安全だと思ったエドのそばに敵が現れたことでびっくりした野呂は後ろに下がる。

「こういう時、大将首を取れば勝ちって相場だよなぁ?」

「邪魔をするな。僕は君なんかじゃなくて、榊遊矢に用があるんだ?」

「そんな要求をはい、そうですかと呑む敵がいるわけねえだろ?おいしいところは俺がもらう」

エドのデュエルディスクを見ながら、翔太はデュエルディスクを展開した。

 

「俺のターン、ドロー!!」

 

遊矢

手札5→6

 

「俺はカードを2枚伏せ、同時に罠カード《幻影騎士団シェード・ブリガンダイン》を発動!」

「伏せてすぐに発動できる罠カード!?」

「このカードは俺の墓地に罠カードがない場合、セットしたターンに発動できる!そして、発動後は通常モンスターとして俺のフィールド上に特殊召喚できる。さあ、まずは前座だ!」

球体型の鎧が急に《アマゾネス王女》の目の前に現れる。

急に現れた物体が何なのか、気になった少女はそれに触れると、急に鎧から青い炎が噴き出す。

びっくりした《アマゾネス王女》は足場から飛び降り、グレースのもとへ走って逃げた。

 

幻影騎士団シェード・ブリガンダイン レベル4 守備300

 

「びっくり箱のつもりか!?」

「さらに、俺は手札から魔法カード《螺旋のストライクバースト》を発動!デッキから《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を手札に加える。そして、俺は手札から《調律の魔術師》を召喚!」

「はあああ!」

召喚されたナヴィが元気よくフィールドに飛び出す。

 

調律の魔術師 レベル1 攻撃0(チューナー)

 

「《調律の魔術師》の効果!このカードの召喚・特殊召喚に成功したとき、俺たちは400のダメージを受け、相手は400ライフを回復する」

 

遊矢&柚子

ライフ4000→3600

 

グレース&グロリア

ライフ4000→4400

 

「マスター、こっち!」

「ありがとう、ナヴィ」

ナヴィに指をさされた木に向けて遊矢は走り、その木をよじ登る。

そして、葉に引っかかっているアクションカードを手にする。

「アクション魔法《昇格》を発動!俺のフィールドのモンスター1体のレベルを1から3上昇させる!俺は《調律の魔術師》のレベルを1から4に上げる!」

 

調律の魔術師 レベル1→4 攻撃0(チューナー)

 

昇格

アクション魔法カード

(1):自分フィールドのモンスター1体のレベルを1から3上げる。

 

「チューナーモンスター!?」

「レベル4の《幻影騎士団シェード・ブリガンダイン》にレベル4の《調律の魔術師》をチューニング!」

《調律の魔術師》が4つのチューニングリングへと姿を変え、炎を宿す鎧を取り込んでいく。

「剛毅の光を放つ勇者の剣!今ここに閃光と共に目覚めよ!シンクロ召喚!レベル8!《覚醒の魔導剣士》!」

 

覚醒の魔導剣士 レベル8 攻撃2500

 

「よし、アクションカード!!」

足場を上り、頭上の足場に貼り付けられているアクションカードを手にする。

「俺はアクション魔法《再動》を発動!このターンに発動した通常魔法カード1枚の効果を使う!俺は《螺旋のストライクバースト》を発動!デッキから《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》を手札に加える!」

遊矢の手札に、新たなオッドアイズが手札に加わる。

このカードはシンクロ次元から戻った遊矢のデッキの中にいつの間にか入っていたカードだ。

旅立つ前に、オッドアイズにこのカードが何かを尋ねたときの答えがこうだ。

「これは小僧のもう1つの可能性のカード。貴様がそれをつかむか、それとも堕ちるか…見させてもらうぞ…」

その答えを聞いたとき、これまでのように自分が彼とダーク・リベリオンに試されているような気がした。

だったら、それに自分なりの答えを出さなければならない。

彼にデュエルモンスターも笑顔にするといったからには。

 

再動

アクション魔法カード

(1):自分の墓地に存在する、このターン発動した通常魔法カード1枚の効果を得る。このカードを発動したターン、自分はアクションカードを手札に加えることができない。

 

「俺はスケール3の《EMオッドアイズ・ライトフェニックス》とスケール8の《EMオッドアイズ・ユニコーン》でペンデュラムスケールをセッティング!これで俺は、レベル4から7までのモンスターを同時に召喚可能!揺れろ、魂のペンデュラム!天空に描け、光のアーク!ペンデュラム召喚!現れろ、二色の眼を持つ2体のドラゴン!!《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》、《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》!」

《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》とともに、彼と同じオッドアイをした、全身を骸骨のような白い鎧に覆われた青い体のドラゴンが現れる。

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500

オッドアイズ・ファントム・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

「これが…遊矢の新しいオッドアイズ…!」

遊矢のフィールドに、攻撃力2500のモンスターが3体そろう。

グレースの伏せカードが何かはわからないものの、彼女のフィールドにいるモンスターは攻撃力1400の《アマゾネス王女》1体のみ。

「バトルだ!《覚醒の魔導剣士》で《アマゾネス王女》を攻撃!」

《覚醒の魔導剣士》が持っている2本の剣を合体、長刀状にして回転させながら彼女に切りかかろうとする。

「罠発動!《アマゾネス転生術》!私のフィールドに存在するアマゾネスモンスターをすべて破壊する!」

草陰や物陰から次々と矢が発射され、《覚醒の魔導剣士》は飛んでくる矢を斬るなどして回避に専念する。

その間に《アマゾネス王女》は密林の中へ姿をくらました。

「そして、破壊したモンスターと同じ数だけ墓地からレベル4以下のアマゾネスモンスターを守備表示で特殊召喚できるわ。私は墓地から《アマゾネス王女》を特殊召喚!」

矢が収まり、《アマゾネス王女》を見失った《覚醒の魔導剣士》が周囲を警戒する。

そんな彼の背後から、緑色の目と赤い肌の子供の虎に乗った《アマゾネス王女》がとびかかってくる。

びっくりした彼だが、遊矢のそばにいた《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が咆哮し、子供の虎がひるんだすきに脱出する。

「さらに、《アマゾネスペット仔虎》は自分フィールドにアマゾネスモンスターが召喚・特殊召喚されたとき、手札・墓地から特殊召喚できるわ!」

 

アマゾネス王女 レベル3 守備900→1100

アマゾネスペット仔虎 レベル2 守備500

 

「更に、《アマゾネス王女》の効果発動!デッキから《アマゾネスの秘宝》を手札に加えるわ。そして、《アマゾネスペット仔虎》は墓地のアマゾネスカードの数×100アップする!」

 

アマゾネスペット仔虎 レベル2 守備500→700

 

タイミングを逃しているため、《アマゾネスの里》の効果は発動しないものの、《アマゾネス王女》が守備表示となった上に、新たに《アマゾネスペット仔虎》が現れた。

そして、再びサーチ効果でデッキからカードが手札に加わっている。

しかし、《覚醒の魔導剣士》の攻撃は終わったわけではない。

「俺は《覚醒の魔導剣士》でもう1度、《アマゾネス王女》を攻撃!」

「罠発動!《密林融合-アマゾネス・フュージョン》。相手の攻撃宣言時、私のフィールドに存在するアマゾネスモンスターを素材に融合召喚をすることができるわ!」

「なに!?」

「私が融合素材にするのは《アマゾネスペット仔虎》と《アマゾネス王女》!《アマゾネスペット仔虎》はフィールド・墓地に存在するとき、カード名を《アマゾネスペット虎》として扱う。牙剥く密林の野獣よ。密林の王女を得て、新たな猛獣となりて現れよ。融合召喚!出現せよ、レベル7!《アマゾネスペット虎獅子》!」

密林の中に現れた渦の中へと2体のモンスターが消えていき、その中から赤い隻眼で両肩に黒いとげ付きのアーマーを装着したライガーが飛び出してくる。

 

アマゾネスペット虎獅子 レベル7 攻撃2500→2700

 

「そして、《密林融合》の効果で、攻撃モンスターの攻撃対象は融合召喚されたモンスターに変更される。そして、この効果で融合召喚されたモンスターはその戦闘では破壊されず、戦闘で発生する私たちへのダメージは0になるわ!」

《覚醒の魔導剣士》の刃と《アマゾネスペット虎獅子》の爪がすれ違いざまにぶつかり合う。

そして、剣士はウゥ、と苦しげな声を出して消滅し、ライガーは勝利を喜んでいるのか、空へ向けて咆哮する。

 

密林融合-アマゾネス・フュージョン

通常罠カード

このカード名のカードは1ターンに1度しか使用できない。

(1):相手の攻撃宣言時、自分のEXデッキに存在する「アマゾネス」融合モンスター1体を対象に発動できる。自分フィールドに存在する融合素材となるモンスターを墓地へ送ることで、そのモンスターを融合召喚扱いで特殊召喚する。そして、攻撃対象はそのモンスターに変更される。また、この効果で特殊召喚されたモンスターはその戦闘では破壊されず、発生するお互いへの戦闘ダメージは0となる。

 

《アマゾネスの里》の効果により、攻撃力が2700となった《アマゾネスペット虎獅子》には2体のオッドアイズでも歯が立たない。

1ターンキルされる状況を2枚の伏せカードだけで回避し、おまけにエースカードを召喚し、こちらの上級モンスター1体を破壊した。

遊矢は彼女のデュエルの腕が純粋にすごいと思った。

だから、このような形でしかデュエルできないことを残念に思っている。

「さあ、どうするの?」

「メインフェイズ2に、俺はレベル7の《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》と《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》でオーバーレイ!」

しかし、柚子を守るためにも立ち止まるつもりはない。

遊矢の宣言とともに、上空に現れたオーバーレイネットワークに2体のオッドアイズが取り込まれていく。

「二色の眼の竜よ、人々の涙を束ね、解放への道を示せ!エクシーズ召喚!ランク7!悲しき世界を穿つ氷河の竜、《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》!!これで、ターンエンドだ!」

 

グレース&グロリア

手札

グレース0→1(《アマゾネスの秘宝》)

グロリア5

ライフ4400

場 アマゾネスペット虎獅子 レベル7 攻撃2700

  アマゾネスの里(永続魔法扱い)

  伏せカード1

 

遊矢&柚子

手札

遊矢6→0

柚子5

ライフ3600

場 オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン(ORU2) ランク7 攻撃2800

  伏せカード1

  EMオッドアイズ・ライトフェニックス(青) ペンデュラムスケール3

  EMオッドアイズ・ユニコーン(赤) ペンデュラムスケール8

 

「さあ、グロリア姉さん!」

「私のターン、ドロー」

 

グロリア

手札5→6

 

「私は手札から《アマゾネス王女》を召喚」

出だしはグレースと同じく、《アマゾネス王女》を召喚してくる。

問題はその効果でサーチされるカードと、そこからの動きだ。

 

アマゾネス王女 レベル3 攻撃1200→1400

 

「当然、効果は知ってるな。《アマゾネス王女》の効果で、デッキから《アマゾネスの闘志》を手札に加える。そして、私は手札から魔法カード《融合》を発動。手札の《アマゾネス女王》と《アマゾネスの剣士》を融合する!」

グレースとは異なり、手札の素材を即座に融合素材にする。

《アマゾネス王女》が大人に成長し、筋肉質な肉体を持った女王が片刃の剣を手に取り、赤とオレンジが混ざった鮮やかな、整っていない自然な髪をしたアマゾネスの戦士とともに渦の中へ消えていく。

「密林の女王よ、勇猛なる剣士の力を取り込みすべてを統べる帝国を築け!融合召喚!現れろ!レベル8、《アマゾネス女帝》!」

2本角の動物のどくろで作った冠と甘いマントを新たに装備した《アマゾネス女王》が皇帝の名を手にし、アマゾネスのすべての部族を統一した証を手にする。

彼女が剣を遊矢と柚子に向けた瞬間、《アマゾネスペット虎獅子》は咆哮し、密林に隠れるアマゾネス達が雄たけびを上げる。

 

アマゾネス女帝 レベル8 攻撃2800→3000

 

「更に、墓地の《アマゾネスペット仔虎》の効果発動。私のフィールドにアマゾネスモンスターが召喚・特殊召喚されたとき、墓地のこのカードを特殊召喚できる」

 

アマゾネスペット仔虎 レベル2 攻撃500→1400

 

「更に、手札から永続魔法《アマゾネスの闘志》を発動。私たちのフィールドに存在するアマゾネスが自分よりも攻撃力の高いモンスターを攻撃するとき、ダメージ計算時のみ、攻撃力を1000アップさせる。バトル!《アマゾネスペット虎獅子》で《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》を攻撃!」

右手に剣を手にした《アマゾネス女帝》が自身よりも大柄な《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》にひるむことなく切りかかる。

「《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》の効果!攻撃宣言時にオーバーレイユニットを1つ取り除くことで、その攻撃を無効にできる!リボーン・バリア!!」

《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》の前にオーバーレイユニットが変化した氷のバリアが出現し、氷が彼女の剣を阻む。

「さらにその後、手札・墓地からオッドアイズモンスター1体を特殊召喚できる。現れろ、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!!」

砕けた氷が集結し、その姿が《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》へと変わっていく。

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

取り除かれたORU

・オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン

 

「かまわん!私は《アマゾネス虎獅子》で《アブソリュート・ドラゴン》を攻撃!《アマゾネスの闘志》の効果で、攻撃力をダメージ計算時のみ、1000アップさせる」

《アマゾネスの闘志》がオレンジ色に光り、《アマゾネスペット虎獅子》が咆哮する。

 

アマゾネス虎獅子 レベル7 攻撃2700→3700(ダメージ計算時のみ)

 

「それでも、《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》の効果で、その攻撃も防ぐ!リボーン・バリア!!」

もう1つのオーバーレイユニットで生まれた氷のバリアに阻まれたライガーはその氷を腹いせとしてかみ砕いた。

しかし、砕かれた氷は《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》へと姿を変え、ライガーと女帝から遊矢と柚子を守る防壁となる。

 

オッドアイズ・ファントム・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

取り除かれたORU

・オッドアイズ・ファントム・ドラゴン

 

「ならば私は、《アマゾネス王女》で《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》を攻撃!」

「なんで…!?《アマゾネスの闘志》で攻撃力を上げても、《アマゾネス王女》の攻撃力は…!」

長刀を持った《アマゾネス王女》がオレンジ色の闘志を宿し、《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》に切りかかる。

「同時に、《アマゾネス王女》の効果発動。このカードの攻撃宣言時、手札・フィールドからこのカード以外のカードを墓地へ送ることで、デッキからアマゾネスモンスター1体を守備表示で特殊召喚できる。私は《アマゾネスペット仔虎》を墓地へ送り、《アマゾネスペット虎》を特殊召喚する!」

《アマゾネスペット仔虎》が密林の中へ姿を消し、その中からそのモンスターが成長した姿といえる大きな虎が現れる。

 

アマゾネスペット虎 レベル4 守備1500

 

それでも、長刀でできたのは彼の鎧を傷つけることだけで、《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》が口から放った回転する炎のブレスに飲み込まれる。

「く…!!」

 

グレース&グロリア

ライフ4400→4300

 

アマゾネス王女 レベル3 攻撃1400→2400(ダメージ計算時のみ)

 

「《アマゾネス虎獅子》の効果発動!私たちのアマゾネスが相手モンスターを攻撃したダメージ計算終了時に、相手フィールドに存在するモンスター1体の攻撃力を800ダウンさせる!」

《アマゾネス虎獅子》の閉じていた目が開き、赤い瞳が露出する。

その目から発生する渦が《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》の力を弱める。

 

オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン ランク7 攻撃2800→2000

 

「けど…これで《アマゾネス王女》は…」

「《アマゾネス女帝》が存在する限り、このカード以外のアマゾネスカードは戦闘・効果では破壊されない」

「何!?」

ブレスが消え、そこにはオレンジの闘志を宿したまま耐えた《アマゾネス王女》の姿があった。

攻撃を耐えた彼女の頭を《アマゾネス女帝》が笑みを浮かべながらなでる。

「でも、《アマゾネス女帝》を倒せば…」

「それは無理とは言わないけれど、難しいわね。《アマゾネスペット虎獅子》が存在する限り、ほかのアマゾネスを攻撃対象にできないわ。当然、この子も《アマゾネス女帝》の効果で戦闘・効果では破壊されない。後、この効果は《アマゾネスペット虎》も持ってる。つまり…」

「しゃべりすぎだ、グレース」

有利になり、余裕ができた妹を諫め、グロリアはカードを手に取る。

「私はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

グレース&グロリア

手札

グレース0→1(《アマゾネスの秘宝》)

グロリア6→1

ライフ4300

場 アマゾネスペット虎獅子 レベル7 攻撃2700

  アマゾネス女帝 レベル8 攻撃3000

  アマゾネスペット虎 レベル4 守備1500

  アマゾネス王女 レベル3 攻撃1400

  アマゾネスの闘志(永続魔法)

  アマゾネスの里(永続魔法扱い)

  伏せカード2

 

遊矢&柚子

手札

遊矢0

柚子5

ライフ3600

場 オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン ランク7 攻撃2000

  オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500

  オッドアイズ・ファントム・ドラゴン レベル7 攻撃2500

  伏せカード1

  EMオッドアイズ・ライトフェニックス(青) ペンデュラムスケール3

  EMオッドアイズ・ユニコーン(赤) ペンデュラムスケール8

 

グレースの言葉を聞いた遊矢は相手の布陣が完成したことを感じる。

2体の虎によって遊矢たちはダイレクトアタック以外の攻撃が不可能になった。

おまけにこちらが攻撃力の高いモンスターを召喚したとしても、《アマゾネス虎獅子》の効果で攻撃力を下げることですぐに突破されてしまう。

仮に攻撃できたとしても、《アマゾネス女帝》による破壊耐性が待っている。

(でも…どちらか一方でも崩せば、攻撃できる!)

幸い、柚子のデッキにはそれを可能にするカードが入っている。

そのカードを召喚できる条件が整うことを願いつつ、デッキトップに指をかける。

「あたしのターン、ドロー!」

 

柚子

手札5→6

 

「あたしは手札からレベル4から7のモンスターをペンデュラム召喚するわ!揺れなさい、魂のペンデュラム!天空に描いて、光のアーク!ペンデュラム召喚!現れて、私のモンスターたち!」

上空のペンデュラムが柚子の願いにこたえるかのように揺れ、2体のモンスターがフィールドに現れる。

「《幻奏の歌姫セレナ》、《幻奏の音女エクローグ》!」

 

幻奏の歌姫セレナ レベル4 攻撃400

幻奏の音女エクローグ レベル4 攻撃1600

 

「レベル4のモンスターが2体。これは…!」

「あたしはレベル4の《セレナ》と《エクローグ》でオーバーレイ!」

柚子の目の前にオーバーレイネットワークが出現し、2体の幻奏モンスターがその中へ飛び込んでいく。

「柚子がエクシーズ召喚を…?」

「あたしだって、成長してるんだから…!エクシーズ召喚!現れて、ランク4!《鳥銃士カステル》!」

 

鳥銃士カステル ランク4 攻撃2000

 

「攻撃力2000のエクシーズモンスター…?攻撃できない状況で、そのモンスターを召喚しても…」

「《鳥銃士カステル》の効果発動!1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、相手フィールドに存在するモンスター1体を裏守備表示に変更できるわ。私は《アマゾネスペット虎獅子》を裏守備表示に変える!」

「何?」

《鳥銃士カステル》が上空から《アマゾネスペット虎獅子》に向けて散弾を発射する。

上空から飛んでくる散弾を凌ぐため、ライガーは密林にある岩陰に隠れ、様子をうかがう。

 

取り除かれたORU

・幻奏の音女エクローグ

 

「まだよ!更にあたしは永続罠《幻影霧剣》を《アマゾネス女帝》に対して発動!」

《アマゾネス女帝》の持つ剣から紫色の霧が発生し、その霧の中に彼女が飲み込まれていく。

「《幻影霧剣》の対象となった効果モンスターは攻撃対象にならないけど、攻撃と効果が封じられる。これで、あたしたちのモンスターは攻撃できるし、アマゾネスカードを破壊できる!」

攻撃をブロックするライガーと虎の一角を崩し、さらには彼らを守るはずの《アマゾネス女帝》を封じ込めた。

あとは崩した2頭を今のうちに撃破し、少しでも有利な状態で遊矢にターンを譲るだけだ。

「バトルよ。あたしは《鳥銃士カステル》で《アマゾネスペット虎》を攻撃!」

銃に弾を込めた《鳥銃士カステル》が照準を合わせると、徹甲弾を発射する。

額を撃ち抜かれた《アマゾネスペット虎》は消滅した。

「やった!これで…」

「《アマゾネスの里》の効果発動!1ターンに1度、アマゾネスモンスターが先頭・効果で破壊されたとき、そのモンスターの元々のレベル以下のアマゾネスモンスター1体を特殊召喚できる。私はデッキからもう1枚の《アマゾネスペット虎》を特殊召喚!」

密林の中から、木でできた檻が出現し、鍵が外された瞬間、《アマゾネスペット虎》が飛び出してくる。

 

アマゾネスペット虎 レベル4 攻撃1100→1300

 

「アマゾネスペット虎は自分フィールドに存在するアマゾネスモンスターの数×400攻撃力がアップする!私のフィールドに存在するアマゾネスモンスターは3体!」

 

アマゾネスペット虎 レベル4 攻撃1300→2500

 

「だったら、《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》で裏守備になっている《アマゾネスペット虎獅子》を攻撃するわ!」

《アマゾネス女帝》が力を失い、裏守備になっているうちにライガーを倒す。

そのモンスターさえ倒せば、彼女たちの連携を崩せる。

「グロリア姉さん、私のカードを!」

「ええ。さらに私は罠カード《アマゾネスの弩弓隊》、さらに永続罠《アマゾネスの急襲》を発動!」

「まずは《アマゾネスの弩弓隊》の効果よ。相手の攻撃宣言時、私のフィールド上にアマゾネスが存在するとき、相手フィールド上のモンスターはすべて攻撃表示になり、攻撃力は500ダウンするわ」

密林の中から弓矢を装備したアマゾネス達が出てきて、遊矢と柚子のフィールドのモンスターたちに一斉に矢を放つ。

《鳥銃士カステル》は地上へ降りて矢をしのぎ、3体のオッドアイズは2人を守るために前に立ち、矢を受ける。

 

オッドアイズ・ファントム・ドラゴン レベル7 攻撃2500→2000

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500→2000

オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン ランク7 攻撃2000→1500

 

「更に、相手モンスターは可能な限り攻撃しないといけないわ!」

石の裏に隠れていた《アマゾネスペット虎獅子》が姿を現し、攻撃力が減った《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》が放つブレスをジャンプして回避する。

そして、《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》の首にかみついた。

 

遊矢&柚子

ライフ3600→3200

 

アマゾネスペット虎 レベル4 攻撃2500→2900

 

「さらに、《アマゾネスの急襲》の効果発動。私たちのアマゾネスと戦闘を行った相手モンスターはダメージ計算終了時に除外される」

噛みつかれた《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》は密林の中から出てきた巨大なコブラに飲み込まれる形で消滅する。

「《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》が…!」

除外されたペンデュラムモンスターはエクストラデッキに置くことができない。

《鳥銃士カステル》の攻撃のタイミングに発動しなかったのはペンデュラムモンスターである《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》か《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》の攻撃を誘うためだった。

だが、生き残った《アマゾネスペット虎獅子》と《アマゾネスペット虎》がフィールドにいるため、再びライガーと虎によるブロックが構築され、もう2人のモンスターは攻撃できない。

「なら…!」

グレースが《アマゾネスペット虎獅子》の背中に乗り、足場を次々と飛んで移動する。

そして、手にしたアクションカードをさっそく発動した。

「私はアクション罠《セキュリティ解除》を発動。私のフィールドに存在するモンスター1体の効果をターン終了時まで無効にするわ。私は《アマゾネスペット虎獅子》の効果をターン終了時まで無効にする!」

「そんな!ということは…」

「そう、残りのドラゴン達も攻撃しなければならないということだ」

 

セキュリティ解除

アクション罠カード

(1):自分フィールドに存在するモンスター1体の効果をターン終了時まで無効化する。

 

遊矢と柚子は手分けをしてアクションカードを探しに行く。

このままでは、《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》だけでなく、2体のオッドアイズまで破壊もしくは除外されることになってしまう。

しかし、柚子には2体のオッドアイズをどのように攻撃するかを選択する権利だけは与えられている。

(《アマゾネス虎獅子》の守備力は2400。《アマゾネス王女》は1400で、《アマゾネスペット虎》は2500。攻撃力で下回ってるのは《アマゾネス王女》だけ。でも…)

攻撃に成功したとしても、2体のオッドアイズが除外されることには変わりない。

どのみちがら空きになったフィールドで、後はどうにかするしかない。

「あたしは…《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》で《アマゾネス王女》を攻撃…」

《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》の回転する炎のブレスを受け、《アマゾネス王女》が消滅する。

しかし、背後から現れたコブラに飲み込まれ、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》も除外されてしまう。

 

グレース&グロリア

ライフ4300→3100

 

アマゾネスペット虎 レベル4 攻撃2900→2500

 

「更に、《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》で《アマゾネスペット虎獅子》を攻撃…!」

《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》の口から放たれた氷のブレスが起こす逆風を《アマゾネスペット虎獅子》はものともしない。

そして、密林から出てくるコブラによって、悲しみのドラゴンもまた飲み込まれてしまった。

 

遊矢&柚子

ライフ3200→2300

 

3体のオッドアイズがフィールドから消え、攻撃できるモンスターも、壁になるモンスターもいない。

「さあ…まだお前のターンが残っている」

「それとも、ここでサレンダーする?サレンダーしたなら、ほかの仲間たちは見逃してあげるわ」

「え…?」

グレースの言葉に柚子が揺れ、同時にセレナが融合次元へ連れ戻されてしまった時の状況を思い出す。

彼女は自分たちではかなわない敵だとわかっており、自らを犠牲にした取引によって遊矢達を守った。

そのあとに起こったことを考えると、それが良い選択肢だったかはわからない。

だが、衰弱したセレナにとって、できる精一杯はそれだけだったのは確かだ。

今、柚子はセレナのような状況に陥ってる。

「グレース…。はぁ、いいわ。少なくとも、私たちは手を出さないことを約束する。必要なら、総司令を説得する」

自分たちの最優先事項は柊柚子の確保だ。

ランサーズを倒すよりもそれは優先されるため、彼女を連れて融合次元へ戻れば、ランサーズを見逃したとしてもおつりが出る。

デュエルで決着をつけるという信条を持つ総司令なら、こちらの説得に応じてくれる可能性は高い。

それに、妹の約束を破られるような状況を姉であるグロリア自身が作るようなことをしたくなかった。

「…本当に、遊矢達には手を出さない?」

「当然だ。サレンダーしたならな。デュエル戦士の誇りにかけて、偽りは言わない」

「私は…」

「駄目だ、柚子!!」

遊矢の声を聞いた柚子は我に返り、遊矢に目を向ける。

柚子とは違い、今の遊矢にはまだ闘志が残っていた。

「遊矢…」

「まだライフが残ってるし、柚子のターンも終わってない。どんなに絶望的な状況でも…俺は柚子のそばにいる!一緒に戦う!だから、諦めるな!!」

すぐ後ろ向きになる遊矢とは思えないセリフに驚く柚子だが、彼女の手はデッキの上から離れていく。

シンクロ次元での戦いで、遊矢の心にも影響を与え、彼を強くしていた。

「…。あたしは…メインフェイス2に移るわ!」

「柚子…」

デュエル続行を宣言する柚子に遊矢は安どする。

しかし、状況はこちらが圧倒的に不利なことには変わりない。

「あたしは《幻奏の音女セレナ》の効果を使うわ!このカードが特殊召喚に成功したターン、通常召喚に加えて1度だけ、幻奏モンスターを召喚できる!」

メインフェイズ1で、柚子はペンデュラム召喚しか使っていないことから、柚子は条件付きながら2度の通常召喚の権利がある。

「このカードは相手フィールド上にのみモンスターが存在するとき、手札から特殊召喚できる。《幻奏の歌姫ソロ》を特殊召喚!」

赤い情熱的なバラをイメージさせるドレスを着たピンクの肌の天使がバレエのような舞を見せながらフィールドに現れる。

 

幻奏の歌姫ソロ レベル4 攻撃1600

 

「更に、あたしは手札から《幻奏の歌姫ソプラノ》を召喚!」

 

幻奏の歌姫ソプラノ レベル4 攻撃1400

 

「そして、《ソプラノ》の効果発動!1ターンに1度、あたしのフィールドに存在するこのカードを含むモンスターを素材に幻奏モンスター1体を融合召喚できる。あたしは《ソプラノ》と《ソロ》を融合!天使のさえずりよ!天使の羽ばたき!タクトの導きにより力重ねよ!融合召喚!今こそ舞台に安らぎの序曲を!《幻奏の音姫プレピュード・デビュッシー》!」

 

幻奏の音姫プレピュード・デビュッシー レベル7 攻撃2400

 

「この状況で、《融合》無しの融合召喚だと!?」

「《プレビュード・デビュッシー》の効果発動!このカードの特殊召喚に成功したとき、相手に1000ダメージを与えることができる!微睡のフルート!」

《幻奏の音姫プレピュード・デビュッシー》が奏でるフルートの旋律が柚子のまさかの逆襲に動揺するタイラー姉妹を襲う。

「何…?この音楽。アカデミアで聞いてるのと違う…」

アカデミアでは、軍歌くらいしか聞いたことがないためか、グレースにはその音が新鮮に聞こえていた。

 

グレース&グロリア

ライフ3100→2100

 

「更にこのカードが《ソプラノ》を素材に融合召喚されている場合、1ターンに1度、相手フィールド上の魔法・罠カードを2枚破壊できる!あたしは《アマゾネスの急襲》と《アマゾネスの里》を破壊するわ!」

発動宣言と同時に、急に曲のスタイルが変わり、一つ一つの音にキレが出てきて、同時に鎌鼬が発生する。

鎌鼬によって密林と家屋が切り刻まれ、《アマゾネスの急襲》もバラバラになって消滅する。

「おのれ…!窮鼠猫を噛むとはこのことか!だが、《アマゾネスの急襲》の効果発動!このカードが破壊され墓地へ送られたとき、墓地からアマゾネスモンスター1体を特殊召喚できる。私は《アマゾネス王女》を特殊召喚!」

 

アマゾネスペット虎 レベル4 攻撃2100→1900

アマゾネスペット虎獅子 レベル7 守備2400 攻撃2700→2500

アマゾネス女帝 レベル8 攻撃3000→2800

アマゾネス王女 レベル3 攻撃1200

 

「更に、《アマゾネス王女》の効果。デッキから《アマゾネスの叫声》を手札に加える」

「(今のあたしにできるのはここまで…遊矢、お願い)あたしはカードを2枚伏せて、ターンエンド!」

 

グレース&グロリア

手札

グレース1(《アマゾネスの秘宝》)

グロリア6→1(《アマゾネスの叫声》)

ライフ2100

場 アマゾネスペット虎獅子 レベル7 守備2400

  アマゾネス女帝 レベル8 攻撃2800(《幻影霧剣》の影響下)

  アマゾネスペット虎 レベル4 攻撃2500

  アマゾネス王女 レベル3 攻撃1200

  アマゾネスの闘志(永続魔法)

 

遊矢&柚子

手札

遊矢0

柚子6→0

ライフ2300

場 幻奏の音姫プレビュード・デビュッシー レベル7 攻撃2400

  幻影霧剣(永続罠)

  伏せカード2

  EMオッドアイズ・ライトフェニックス(青) ペンデュラムスケール3

  EMオッドアイズ・ユニコーン(赤) ペンデュラムスケール8

 

「おい…グレース!!何をしている!?お前のターンだぞ!?」

相手の2枚の伏せカードが何かわからない以上、勝利を確実なものとするためにアクションカードを探し始めたグロリアは《幻奏の音姫プレビュード・デビュッシー》の先ほどの演奏にすっかり見とれてしまったグレースに向けて叫ぶ。

姉の声に我に返ったグレースだが、なぜかそれに納得できないような自分を感じていた。

そんな自分を振り払うため、強引に頭を振ったグレースはデッキトップに指をかける。

「私のターン、ドロー!」

 

グレース

手札1→2

 

「私は手札から装備魔法《アマゾネスの秘宝》を《アマゾネスペット虎獅子》に装備!装備モンスターは1ターンに1度、戦闘では破壊されず、攻撃した相手モンスターをダメージ計算終了後に破壊するわ」

緑色の玉石が埋め込まれた人形が首にネックレスのようにぶら下げられた《アマゾネスペット虎獅子》が咆哮する。

「《アマゾネスペット虎獅子》を攻撃表示に変更。バトル!《アマゾネスペット虎獅子》で《プレビュート・デビュッシー》を攻撃。更に、《アマゾネスペット虎獅子》の効果発動!このカードが攻撃するとき、ダメージステップ時のみ、攻撃力を500アップさせる!」

 

アマゾネスペット虎獅子 レベル7 守備2400→攻撃2500→3000

 

(たとえ、《ハーフ・アンブレイク》であっても…!)

グレースは柚子が伏せたカードの中の1枚が《ハーフ・アンブレイク》や《聖なるバリア-ミラーフォース》のような攻撃反応型の伏せカードだと考えた。

(たとえ、《ミラーフォース》のようなカードであっても、私の手札には《アマゾネスの防御兵》がいる。このカードは手札から墓地へ送ることで、魔法・罠カードによるアマゾネスモンスターの破壊を無効にする効果がある。これなら、《アマゾネスペット虎獅子》を守ることができる)

 

アマゾネスの防御兵

レベル4 攻撃300 守備2100 効果 地属性 戦士族

(1):このカードを手札から墓地へ送り、自分フィールドに存在する「アマゾネス」モンスターを対象に発動できる。そのモンスターはこのターン、魔法・罠カードの効果では破壊されない。この効果は相手ターンでも発動できる。

 

「あたしは罠カード《エンジェル・カーペット》を発動!あたしのフィールドに存在する、エクストラデッキから特殊召喚された光属性・天使族モンスター1体をリリースし、墓地からレベル4以下の光属性・天使族モンスター2体を守備表示で特殊召喚できる。あたしは《プレビュート・デビュッシー》をリリース!」

《幻奏の音姫プレビュード・デビュッシー》がフルートを拭くと、その姿を麦の匂いがする風の中に消していく。

「現れて、《幻奏の歌姫ソロ》、《幻奏の歌姫ソプラノ》!」

 

幻奏の歌姫ソロ レベル4 守備1000

幻奏の歌姫ソプラノ レベル4 守備1400

 

エンジェル・カーペット

通常罠カード

このカード名のカードの効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドに存在するEXデッキから特殊召喚された光属性・天使族モンスター1体をリリースすることで発動できる。自分の墓地からレベル4以下の光属性・天使族モンスター2体を特殊召喚する。

 

「なら、《アマゾネスペット虎獅子》で《ソプラノ》を攻撃!」

攻撃対象を失った《アマゾネスペット虎獅子》が《幻奏の歌姫ソプラノ》に目をつけると、彼女に向かってとびかかり、かみつくことで撃破した。

「(《幻影霧剣》の効果で、《アマゾネス女帝》が封じられていなかったら、貫通ダメージを与えられたけれど…!)更に、《アマゾネス王女》で《幻奏の歌姫ソロ》を攻撃!更に、《アマゾネス王女》の効果発動。《アマゾネスの秘宝》を墓地へ送り、《アマゾネスの大賢者》を特殊召喚!」

茶色い布のマントで身を包んだ、杖を持つ青い長髪のアマゾネスが白馬に乗って現れる。

 

アマゾネスの大賢者 レベル6 攻撃2400

アマゾネスペット虎 レベル4 攻撃2500→3000

 

《アマゾネス王女》が木の上から飛び降り、《幻奏の歌姫ソロ》を地面にあおむけに倒し、馬乗りになって長刀を突き刺して撃破する。

「《幻奏の歌姫ソロ》の効果発動!このカードが戦闘で破壊され墓地へ送られたとき、デッキから幻奏モンスター1体を特殊召喚できる。あたしは《幻奏の音姫プロディシー・モーツァルト》を特殊召喚!」

 

幻奏の音姫プロディシー・モーツァルト レベル8 守備2000

 

「《アマゾネスの大賢者》で《プロディシー・モーツァルト》を攻撃!更に、《アマゾネスの大賢者》の効果発動!このカードの攻撃宣言時、フィールドに存在する魔法・罠カードを1枚破壊できる。この効果を発動するとき、私のフィールドにエクストラデッキから特殊召喚されたアマゾネスが存在する場合、相手は魔法・罠カードを発動できないわ。私は《幻影霧剣》を破壊するわ!」

杖から発生する青い波紋が《幻影霧剣》を破壊し、《アマゾネス女帝》の効果が復活する。

そして、《アマゾネスの大賢者》を乗せた馬が駆けだし、杖の先についている宝石が鋭利な刃に変化する。

その槍で《プロディシー・モーツァルト》が貫かれ、彼女は消滅する。

「《プロディシー・モーツァルト》!!」

「《アマゾネス女帝》の効果が復活したことで、そのモンスターの効果が発動するわ!」

「私たちのフィールドに存在するアマゾネスモンスターは守備表示モンスターを攻撃するとき、貫通ダメージを与える」

 

遊矢&柚子

ライフ2300→1900

 

アマゾネスの大賢者

レベル6 攻撃2400 守備1700 効果 地属性 戦士族

このカード名のカードの効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードの攻撃宣言時、フィールド上に存在する魔法・罠カード1枚を対象に発動できる。そのカードを破壊する。自分フィールドにEXデッキから特殊召喚された「アマゾネス」モンスターが存在する場合、相手はこの効果の発動に対して、魔法・罠カードを発動できない。

 

「《アマゾネスペット虎》でプレイヤーへダイレクトアタック!」

「あたしは墓地の《エクローグ》の効果を発動!あたしの墓地に幻奏融合モンスターが存在し、あたしの手札が0枚で相手がダイレクトアタックするとき、1度だけこのカードを墓地から特殊召喚することでその攻撃を無効にするわ!」

上空に出現した魔法陣から《幻奏の音女エクローグ》が舞い降り、歌を歌い始める。

柚子に向けて攻撃しようとした《アマゾネスペット虎》はおとなしくなり、タイラー姉妹の元へ戻っていく。

 

幻奏の音女エクローグ レベル4 攻撃1600

 

「《アマゾネス女帝》で《エクローグ》を攻撃!」

先ほどまで、力を封じられたうっ憤を晴らしたいのか、《アマゾネス女帝》は口笛を吹き、虎にもう1本の剣を持ってこさせる。

二刀流となった彼女は《幻奏の音女エクローグ》に連続で切りかかり、彼女を消滅させ、衝撃が柚子を襲う。

「キャアア!!」

「柚子!!」

柚子を抱き、発生する衝撃を遊矢が代わって受ける。

 

遊矢&柚子

ライフ1900→700

 

「遊矢…!」

「柚子は俺が守るって…言っただろ?早く《エクローグ》の効果を!」

「え、ええ!《エクローグ》の効果発動!このカードが相手モンスターの攻撃によって破壊され、墓地へ送られたとき、墓地の幻奏モンスター1体とデッキから《融合》を手札に加えるわ」

墓地から排出された《幻奏の音姫ソプラノ》とデッキから《融合》を手にする柚子。

しかし、相手フィールドの状況を考えると、ここで手札に加えたこれらのカードが活躍できるか否かは遊矢にかかっている。

「私はこれで、ターンエンドよ」

 

グレース&グロリア

手札

グレース2→1(《アマゾネスの防御兵》)

グロリア6→1(《アマゾネスの叫声》)

ライフ2100

場 アマゾネスペット虎獅子 レベル7 攻撃2500

  アマゾネス女帝 レベル8 攻撃2800

  アマゾネスペット虎 レベル4 攻撃3000

  アマゾネス王女 レベル3 攻撃1200

  アマゾネスの大賢者 レベル6 攻撃2400

  アマゾネスの闘志(永続魔法)

 

遊矢&柚子

手札

遊矢0

柚子0→2(《幻奏の音姫ソプラノ》《融合》)

ライフ700

場 伏せカード1

  EMオッドアイズ・ライトフェニックス(青) ペンデュラムスケール3

  EMオッドアイズ・ユニコーン(赤) ペンデュラムスケール8

 

「遊矢!!」

「ああ、俺の…ターン!!」

 

遊矢

手札0→1

 

「俺は手札から魔法カード《逆境の宝札》を発動!俺のフィールド上にモンスターが存在せず、相手フィールド上に特殊召喚されたモンスターが存在するとき、デッキからカードを2枚ドローする。更に手札から速攻魔法《揺れる眼差し》を発動!お互いのフィールド上に存在するペンデュラムゾーンのカードをすべて破壊し、破壊した枚数によって、効果が決まる!」

《EMオッドアイズ・ライトフェニックス》と《EMオッドアイズ・ユニコーン》が消滅し、フィールドを透明な波紋が包む。

「破壊したカードは2枚!相手に500ダメージを与え、デッキからペンデュラムモンスター1体を手札に加える。俺はデッキから《慧眼の魔術師》を手札に加える」

 

タイラー姉妹

ライフ1700→1200

 

「そして、手札から魔法カード《強欲で貪欲な壺》を発動!デッキの上から10枚のカードを裏向きで除外して、デッキからカードを2枚ドローする!(頼むぞ…俺のデッキ!)」

一気に10枚のカードを取り出し、デッキケースに入れ、2枚のカードを指にかける。

このドローするカードの中に魔術師のペンデュラムカードがなかったら、ペンデュラム召喚をすることができない。

「ドロー!!」

ドローした2枚のカードを見る。

「レディースアンドジェントルメーン!!」

「な…!?」

急に声をあげ、スポットライトに包まれる遊矢を見たグロリアは困惑する一方、グレースはなぜかワクワクしながら遊矢を見ている。

「これより、ドラゴンによる歌、そしてアマゾネスのみなさんによる舞を披露させていただきます!まずは、スケール5の《慧眼の魔術師》とスケール8の《時読みの魔術師》をペンデュラムスケールをセッティング。更に、《慧眼の魔術師》の効果発動!もう片方のペンデュラムゾーンに魔術師かEMのペンデュラムカードが存在する場合、このカードを破壊し、デッキから魔術師ペンデュラムカードをペンデュラムゾーンに置くことができる。それでは、まず《慧眼の魔術師》の変身をご覧ください!」

《慧眼の魔術師》がマントの中に身を隠す。

「1・2・3!!」

遊矢が指を鳴らすと同時にマントが宙を舞い、スケール1の《星読みの魔術師》がその中から現れる。

「スケール1の《星読みの魔術師》とスケール8の《時読みの魔術師》、これで俺は、レベル2から7までのモンスターを同時に召喚可能!揺れろ、魂のペンデュラム!天空に描け、光のアーク!ペンデュラム召喚!現れろ、俺のモンスターたち!《EMオッドアイズ・ライトフェニックス》、《慧眼の魔術師》《EMシルバー・クロウ》!」

 

EMオッドアイズ・ライトフェニックス レベル5 攻撃2000 

慧眼の魔術師 レベル4 攻撃1500

EMシルバー・クロウ レベル4 攻撃1800

 

「今更2体のモンスターのペンデュラム召喚をしたくらいで、アマゾネスの布陣を突破するなど…!!」

「いいや、まだ踊り手の登場がまださ!俺は墓地の《調律の魔術師》の効果発動!俺のペンデュラムゾーンに魔術師カードが2枚存在するとき、手札・墓地から特殊召喚できる。もう1度力を貸してくれ、ナヴィ!」

「はい!マスター!」

墓地から飛び出した《調律の魔術師》が彼女を中心に波紋を起こす。

 

調律の魔術師 レベル1 攻撃0(チューナー)

 

遊矢&柚子

ライフ700→300

 

グレース&グロリア

ライフ2100→2500

 

「更に、俺は罠カード《戦線復帰》を発動!墓地のモンスター1体を守備表示で特殊召喚する。《プレビュード・デビュッシー》を特殊召喚!」

 

幻奏の音女プレビュード・デビュッシー レベル7 守備2000

 

「それでは、歌い手にご登場願いましょう!俺はレベル7の《プレビュード・デビュッシー》にレベル1の《調律の魔術師》をチューニング!王者の咆哮、今天地を揺るがす。紅蓮の炎と共に、覇者の力宿して今こそ現れろ!シンクロ召喚!王者の魂、《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》!!」

チューニングリングをくぐった《幻奏の音女プレビュード・デビュッシー》が炎を纏った傷だらけの赤いドラゴンへと変わっていく。

 

レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト レベル8 攻撃3000

 

「攻撃力3000!?だが、《アマゾネス女帝》の効果でこのカード以外のアマゾネスモンスターは戦闘でも高価でも破壊されない!そして、《アマゾネスペット虎》と《アマゾネスペット虎獅子》の効果で、ダイレクトアタック以外の攻撃は封じられる。今更、そのようなモンスターを…」

「確かに、今の《レッド・デーモンズ》では勝てない。けど、まだ歌い手と踊り手だけ。後、足りないものがあるんじゃない?」

「足りないもの…??」

娯楽に疎いタイラー姉妹は遊矢が何を言っているのかわからなかった。

しかし、一緒に戦っている柚子はハッとする。

「もしかして…音楽家?」

「正解!それじゃあ、今度は音楽の用意だ!俺はレベル4の《シルバー・クロウ》と《慧眼の魔術師》でオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろ、ランク4!《交響魔人マエストローク》!!」

《交響魔人マエストローク》がオーバーレイネットワークの中から現れ、同時にどこからともなくピアノによるスペイン風の熱い情熱的な音楽が聞こえてくる。

 

交響魔人マエストローク ランク4 攻撃1800

 

「何々!?この音楽…!!」

聞こえてくる音色に笑顔を見せるグレース。

デュエルを忘れて、聞いたことのないその音楽に心を奪われていく。

「《マエストローク》の効果発動!1ターンに1度、オーバーレユニットを1つ取り除くことで、相手フィールド上の攻撃表示モンスター1体を裏守備表示にする!」

「何!?」

「女帝様は特別に、特等席へご案内!」

《クロス・オーバー》が生み出した足場の一番高い場所に玉座が現れ、《アマゾネス女帝》がそこに座り、音楽を聞き始める。

最初は何かわからず、困惑した彼女だが、聞いているとだんだん楽しくなったのか、人差し指で手すりを叩いてリズムを刻み始める。

 

取り除かれたORU

・EMシルバー・クロウ

 

「更に、《レッド・デーモンズ》の効果発動!1ターンに1度、このカード以外のフィールド上に存在するこのカードの攻撃力以下の攻撃力を持つ特殊召喚された効果モンスターをすべて破壊し、破壊したモンスターの数×500のダメージを相手に与える!破壊されるカードは6枚。よって、3000のダメージだ!」

「しまった…!!」

《交響魔人マエストローク》の効果で《アマゾネス女帝》が裏守備表示となったため、アマゾネス達は破壊耐性を失っている。

《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》が咆哮し、フィールドが炎に包まれ、そのあとで上空を舞いながら咆哮する。

咆哮がフィールド中に響き渡ると、《アマゾネスペット虎獅子》と《アマゾネスペット虎》も吠えて駆けまわり、《EMオッドアイズ・ライトフェニックス》も彼らの咆哮に合わせて鳴く。

また、《アマゾネス王女》と《アマゾネスの大賢者》もまた踊り始めた。

「なんだ…なんなんだ、これは!?」

自分のモンスターまでもが楽しく歌い、踊り始めるという訳の分からない状況にグロリアは困惑する。

このようなデュエルは見たことも聞いたこともなく、デュエル戦士としての誇りがそれを認めなかった。

「生真面目なんだな、あなたは」

「何!?」

「でもさ、デュエルは楽しいものなんだ。ほら、だからモンスターたちも…あなたの姉妹も笑ってる」

遊矢の言葉を聞き、グロリアはグレースに目を向ける。

彼女はもういてもたってもいられなくなったようで、敵であるはずの柚子を巻き込み、フィールドにいるほかのアマゾネス達と一緒に踊っていた。

最初は驚いていた柚子だが、楽しくなったのか、グレースと一緒に踊り始めていた。

「…私たちの…完敗か…」

フッと何か馬鹿らしく感じたグロリアは仕方ないなと思いながら、笑みを浮かべた。

 

グレース&グロリア

ライフ2500→0



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第94話 神代凌牙

「タイラー姉妹が敗れた…だと!?」

「それに、何なんだあの状況は!?遊んでいるのか…!?」

「よそ見をするな!バトル!!《RR-ライズ・ファルコン》!!奴らのモンスターを引き裂け!!ブレイブクロー・レボリューション!!」

《古代の機械猟犬》5体を《RR-ライズ・ファルコン》が容赦なく切り裂いていき、爆風が3人のデュエル戦士を吹き飛ばした。

ライフが0になり、彼らはデュエルディスクの機能によって強制送還される。

アカデミアでは、タッグデュエルにおいて最強と名高いタイラー姉妹が敗れたのは大きな衝撃だった。

しかも、そのうちの1人であるグレースは遊矢のエンタメに魅了されてしまったのか、相手であるはずの柚子を巻き込んで踊ってしまっている。

「ちぃ…榊遊矢、あの忌まわしい男の息子め!!」

「よそ見してんじゃねえよ、俺たちのお楽しみはこれから…だろ?」

このような状態を生み出した遊矢を憎々しげに見るエドに翔太が皮肉交じりに言う。

エドのフィールドには赤いDが刻まれた黄色い仮面をつけた、ダーブブルーのスーツ姿の男がおり、翔太のフィールドには《魔装騎士ペイルライダー》が存在する。

「《D-HEROディストピアガイ》…おいおい、アカデミアは理想郷を作るんだろう?そのための兵士が絶望郷が名前についたエースカードを使うなんてな…」

「黙れ!貴様、さっきから相手を舐めた言葉ばかり…!!デュエリストとしての誇りはないのか!?」

「バカ言ってんじゃねえ。テロリストのくせに誇りなんて言葉を使うなんて、どれだけ面の皮が厚いんだ?」

翔太の言葉にエドは拳を握りしめ、黙り込む。

彼の脳裏には3年前、エクシーズ次元に始めて来た時の光景が浮かぶ。

そこでデュエルをした男は「デュエルで笑顔を」などという生ぬるい考えを持った男で、そんな男が気に食わず、デュエルをした。

しかし、そんな彼のデュエルは自分の想定をはるかに超えたもので、結果としてそのデュエルではその男に敗れた。

「とうとう反論もできなくなったか?じゃあ、せめてデュエルで俺を否定してみろよ?絶望郷の総司令殿!」

「…いいだろう!貴様の減らず口をここで終わらせてやる!《ディストピアガイ》の効果発ど…」

「総司令!!」

割り込むように、野呂がエドの前に飛び出してくる。

「邪魔をするな!」

「も、申し訳ありません!それが…ジェルマンのレナード隊長より通信が…」

「通信…?」

「準備が整った…とのことです。それ以外は何も…」

「そうか…。総員、ただちに撤退!次に備えろ!」

急に撤退命令に野呂達アカデミアの面々は困惑する。

タイラー姉妹が敗れ、こちらの士気に大きな影響があるとはいえ、それだけで撤退するのは明らかに早計だ。

野呂には先ほどの通信がその撤退の理由だということは理解できたが、通信にある準備の意味がいまだに分からず、頭を混乱させている。

しかし、総司令の命令には逆らえないため、デュエル戦士たちはデュエルディスクを操作し、青い粒子を放ちながら転移していく。

「き…貴様らも早く撤退しろ!柊柚子も連れてだ!!」

混乱する野呂は周囲の急な動きの変化に動揺する彼女たちに命令すると、自分も転移していった。

エドも転移の準備をはじめ、彼のフィールドの《D-HEROディストピアガイ》も姿を消す。

「おい、逃げる気か?」

「お前たちとはいずれ、しかるべき場所で決着をつける。だが…僕が倒すべき相手は君じゃない…」

「何…?」

「榊遊矢に伝えろ。アカデミアエクシーズ次元侵攻軍総司令エド・フェニックスが貴様を倒し、榊遊勝を否定する…とな」

「榊遊勝…だと!?おい…!!」

呼び止めようとする翔太だが、その時にはすでにエドは転移しており、その場から消えてしまっていた。

グロリアとグレースだけその場に残されたが、2人は動く気配を見せず、デュエルディスクを操作しようともしない。

ソリッドビジョンが消え、音楽もダンサーもなくなったことで、グレースも踊りを辞めているが、いまだに柚子の近くにいる。

野呂の命令に従い、柚子をさらって転移することも不可能ではないはずだ。

「君たちは…撤退しないのかい?」

2人の前へ歩いてきた侑斗が2人の顔を見る。

どちらも悩んでいるような表情で、生真面目にアカデミアのデュエル戦士の誇りを持っていた少女と先ほどまで敵である柚子を巻き込んでダンスを楽しんだ少女の姿はそこにはなかった。

2人とも、侑斗の質問に答えずことができず、沈黙している。

「もしかして、遊矢君と柚子ちゃんに負けたショックとか?」

「そういうのとは違う…かな?分からなくなった…ということ?」

「私…は…」

最初にグロリアが口を開くが、どういえばいいのかわからず、再び口を閉ざしてしまう。

先ほどまで、アカデミアに忠誠を誓い、すべての次元を1つにして理想郷を築くために戦うデュエル戦士であることに誇りを持っていた。

デュエルはそのための神聖な戦いの手段であると、自分に言い聞かせてきた。

しかし、遊矢と柚子のデュエルはそれと対極の位置にある。

そのデュエルを知ってしまったグロリアには何が正しいのかわからなくなった。

「グロリア姉さん…私は…」

グレースも、遊矢のエンタメデュエルにはまってしまったが、自分にそんなデュエルをする資格があるのか疑問を抱いていた。

グロリアと同じで、自分もアカデミアの兵士として手を汚してしまっているからだ。

「すぐに答えを出す必要はないさ」

悩む2人に遊矢は笑みを浮かべながら声をかける。

「榊遊矢…」

「ゆっくり考えてから、それから答えを出せばいいと思う。アカデミアとか次元戦争とか、そういうのは全部抜きにしてさ」

遊矢の意外な言葉に2人は驚きながらも、何か心のつっかえが取れたような感じがした。

そして、仮に自分たちは融合次元ではなく、スタンダード次元で生まれたなら、もしかしたら遊矢みたいにデュエルを楽しめたのではないかと考える。

だが、遊矢の言葉が正しければ、デュエルを楽しむのに生まれた次元は関係ないということになる。

そんな、生まれや所属に縛られないとしたら、どのような選択をするか。

「…姉さん。私は…」

「これ以上は言わなくていい、グレース。あなたは残ればいい」

顔を上げたグロリアは遊矢達に背を向け、歩き始める。

「グロリア姉さん!?」

「私はもう少し、考えてみる。1人にして…」

そう言い残し、グロリアは《アマゾネスペット虎》をリアルソリッドビジョンで実体化し、その背中に乗って立ち去って行った。

「姉さん、待って!!」

「行かせてあげよう…。彼女はきっと、まじめな女の子なんだ。遊矢の言う通り、時間が必要なんだよ」

彼女の後姿を見ながら、侑斗は静かに言う。

そんな彼を見たウィンダはなぜか面白くなさそうにジト眼で彼を見る。

「ウ…ウィンダ?なんでそんな目を…」

「だって、私がいるのにユウってば、他の女の子を見てるんだもん」

「うう…ごめん…」

「敵は退いた。急ぐぞ」

黒咲はガレキを上り、今いる大通りの先にある大きな建物を見る。

ハートランドでは最大の大きさの病院の廃墟がそこにはそびえたっていた。

 

「ふうう…」

懐中電灯の明かりだけを頼りに、真っ暗な部屋の中で紫色のコートを着た少年は缶詰を開き、その中にある豆を口に中に放り込む。

病院の中で見つけた非常食で、味も栄養も良好だ。

また、大きな建物であり、避難所としての使用が想定されていたこともあり、大量に備蓄されていた。

「ったく、あとどれだけここにいりゃあいいんだ…」

少年は座っているパイプ椅子のそばに置いてあるリュックサックから『欠片』を出し、目の前の折り畳みテーブルの上に置く。

この『欠片』を見ていると、数年前の戦いを思い出してしまう。

2つの世界のデュエリストが互いの世界の命運をかけてデュエルを繰り広げ、世界を書き換える力を手に入れようとしていたときのことを。

「まったく、『コイツ』とは妙な縁で結ばれているよな…」

扉が開く音が聞こえ、彼は机の上の懐中電灯の明かりを消す。

ジャリ、ジャリと足音が近づくとともに、別の明かりがこちらに近づいてくる。

入られてもすぐに見つからないように棚やガラクタでバリケードを作っているが、ここまで来るのは時間の問題だ。

もしもの時のため、少年はデュエルディスクを展開する。

紫をベースとした、槍のような形のもので、これはこの次元に来る際に調達したものだ。

入ってきた人物が見えた瞬間、とあるエクシーズモンスターのカードを置く。

すると彼の手には紫色の槍が現れ、短めに持ったうえでその人物に穂先を向ける。

「この槍…《S・H・Dark Knight》のものだね、凌牙君」

「ったく、遅えーぞ。侑斗」

声を聞くも、確認のために凌牙はそばにある発電機にスイッチを入れる。

十数秒すると、天井にあるLED電球が光り、白い光が部屋中を照らし始める。

槍を向けた相手が本当に侑斗だとわかると、ようやく凌牙は槍を消した。

「んもー、凌牙君ってば物騒だよ!ユウに槍なんて向けてー!ちょっとでも手元が狂ったら…」

「悪かったな…」

侑斗の後ろから出てきたウィンダに詫びを入れ、パイプ椅子に座る。

侑斗の後に続くように、翔太達も部屋に入ってきた。

「凌牙さん!!」

部屋に入ったサヤカは凌牙の元へ走ってくる。

最後に会った時と比較すると、コートに汚れがある上に髪も若干乱れている。

しかし、無事な様子を見て安心していた。

「そうか…お前が一緒に来たということは、俺の伝言を伝えてくれたみたいだな」

「剣崎、このイカみたいな変な髪のコイツがお前の仲間か?」

髪形のことを指摘された凌牙はムッとした表情を浮かべる。

自分の知っているライバルの中にはエビのような髪形をした男がいる。

そんな彼と比較すると、自分の髪形はマシだと自負している。

「うん。彼が神代凌牙。僕の仲間の1人だ。凌牙君、彼が例の…」

「あいつが…」

『例の』という言葉で理解した凌牙はじっと翔太を見る。

なぜ自分をそんな目で見るのかわからない翔太は不快な様子を見せる。

「おい、例のってのは…」

「凌牙君。これが…エクシーズ次元の『欠片』だね」

翔太の言葉を遮り、侑斗は『欠片』を手に取る。

柚子のブレスレッドはそれに反応するかのように光っていた。

「確かに…本物だ。凌牙君、よく見つけたね」

「見つけたのは俺じゃない。この男だ」

凌牙は懐から写真を出す。

それには襟にジェルマンのバッジをつけたレナードの姿が映っていた。

「ジェルマン…」

「それって、翔太と伊織が言っていた、アカデミアの特務部隊じゃ…!」

「やはりか…。身元の分からない男で、『欠片』まで持っていたから、もしかしたらと思ったが、やはりアカデミアの人間だったか…」

ジェルマンはシンクロ次元に潜入するまでその存在が知られていなかった。

そのため、凌牙にはレナードの正体を知るすべもない。

「この人が…」

サヤカはこの写真の男と1度だけ、クローバー校の中ですれ違ったことを思い出す。

一見するとおだやかな優男だが、なぜか彼の眼から冷たさが感じられた。

そして、カイトに反論し、カードにされそうになった時、彼はカイトのそばにいた。

「凌牙さん…やっぱりこの人が…」

「ああ、カイトをたぶらかし、自分の手で仲間をカードに変えるように仕向けたクソ野郎だ!」

写真を足元に投げ捨てた凌牙の拳にぶるぶると震えるほど力がこもる。

そして、かつて神になろうとした男の自分や仲間たちに向けて起こした数々の非道な所業を思い出してしまう。

話を聞いていたグレースも本当にそれがアカデミアの所業なのかと信じられずにいた。

このような作戦はエドが発案したものとは到底思えない。

「これが…アカデミアの、ジェルマンのやり方…」

「ま、ショックを受けても仕方ないと思うぜ。そういう教育を受けてきたみてーだからな」

「凌牙君、そのレナードって人は『欠片』をどこで見つけたか教えてくれたの?」

「いいや。だが、これではっきりわかった。アカデミアはレジスタンスの分断を図ろうとしている。あわよくば、レジスタンス同士を戦わせて、自滅させるために…」

エクシーズ次元では、今ではレジスタンスが唯一アカデミアに抵抗している。

黒咲やユートのようなデュエリストがほかにいる可能性があり、力押しで勝利できるとしても、アカデミアに損害が出るのは確かだ。

アカデミアの兵力温存を考えると、分断と内乱へもっていくのは都合がいい。

それに、分断については既に達成しており、あとは内乱へもっていけばいいだけだ。

「そうなると最悪だ。カイトには…スペード校に攻撃する理由ができてしまっている…」

凌牙とサヤカはカイトが起こした凶行を思い出す。

仲間をもカードに変えて自らの力に変えている彼がその矛先をそちらへ向けたとしても不思議ではない。

「じゃあ、急いでスペード校に知らせて、防衛の準備をしないと!!」

「やめろ!」

デュエルディスクで通信しようとした伊織の腕を凌牙がつかみ、通信機能をOFFに変更する。

どうしてかと言いたげにじっとこちらを見る伊織に凌牙は答える。

「クローバー校のレジスタンスが攻撃してくるかもしれないから防衛の準備をしろと言って、彼らが信じると思っているのか?いや、仮に信じたとしても、それがレジスタンスに与える影響は大きいぞ」

分断されたとはいえ、両レジスタンスはアカデミアに攻撃するとしても、分かれた相手と戦うことはなかった。

道は違えたとしても、アカデミアを倒し、エクシーズ次元を取り戻すという根幹については一致していると信じているからだ。

だが、このことは綱渡りのような不可侵関係を壊してしまう一大事だ。

そして、レジスタンス同士の、エクシーズ次元の同胞同士の内乱はメンバーの士気を地に落とす。

それで喜ぶのはアカデミアだ。

どちらが勝ったとしても、ボロボロになったレジスタンスをあとは横やりを入れる用に撃破すればいいだけになる。

そんな事態になる前に、カイトを止めなければならない。

「カイト君を止めるには、レナードが吹き込んだカード化した人達の命の力を使い、力を得ることが真実なのか、それとも嘘なのかを確かめないといけない」

カード化したデュエリストがどうなるのか、そしてそのカードをどうするのか、LDSが総力を挙げて調査しているが、今でも全く分かっていない。

唯一わかることは、翔太の左手の痣の力で解放することができるということだけだ。

素良から聴取しているが、彼もなぜそうする必要があるのか分からないらしい。

侑斗と凌牙は『欠片』に目を向ける。

もしかしたら、これに触れることで、それについて何かを知ることができるのかもしれない。

「考えていることは一緒か…。だが、俺とお前じゃあ駄目だ。『欠片』に拒絶されてしまっているからな」

「拒絶…どういうことだよ?」

「ええっと、『欠片』の力が使えないってこと!原因はよくわからないけど…ユウと凌牙君は『欠片』に触っても、それの力が使えないの」

ウィンダに説明されたが、いまいち納得がいかない。

なぜ彼らは『欠片』に拒絶されているのか、その説明が全くないからだ。

『欠片』に頼ることの危険性は既に使っている零児から聞かされている。

ほかに手段があるとしたら…。

「お前、秋山翔太っていうみたいだな。俺と来い」

「はぁ?なんでお前と…」

「俺とお前で餌になる。デュエルでな…」

 

病院の入り口前の広場に立った2人はデュエルディスクを展開し、対峙する。

病院の入り口の設置されている監視カメラは2人を捉えており、他のメンバーは地下室にあるノートパソコンから観戦している。

「おい、目的は移動中に聞いたが、分からねえな。なんで俺がお前とやらなきゃいけないんだ?」

目的を達成するためなら、他のランサーズのデュエリストとデュエルをしても達成する。

だが、凌牙は誰の意見も聞く間もなく翔太を選んだ。

「一番近くにお前がいた。理由はそれだけで十分だ」

「それはあの剣崎って野郎が…」

「悪いが、俺はアクションデュエルに慣れていねえ。スタンディングでやらせてもらうぜ」

「ちっ…無視かよ。ああいいぜ。その代り、先攻は俺だ」

翔太の交換条件に凌牙は静かに首を縦に振った。

「「デュエル!!」」

 

翔太

手札5

ライフ4000

 

凌牙

手札5

ライフ4000

 

 

「俺のターン。俺はモンスターを裏守備表示で召喚。ターンエンド」

 

翔太

手札5→4

ライフ4000

場 裏守備モンスター1

 

凌牙

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「挑発的な口調の割には、かなり消極的なプレーじゃねえか。俺のターン、ドロー!」

 

凌牙

手札5→6

 

「このカードは手札の水属性モンスター1体を墓地へ送ることで、手札から特殊召喚できる。《白棘鱏》を特殊召喚!」

凌牙のフィールドに水しぶきが上がり、純白のエイのようなモンスターが空中に現れる。

 

白棘鱏 レベル4 攻撃1400

 

手札から墓地へ送られたカード

・竜宮の白タウナギ

 

「さらに、俺は手札から《ダブルフィン・シャーク》を召喚!」

 

ダブルフィン・シャーク レベル4 攻撃1000

 

「このカードの召喚に成功したとき、墓地からレベル3または4の魚族・水属性モンスター1体を守備表示で特殊召喚できる。俺は墓地から《竜宮の白タウナギ》を特殊召喚」

 

竜宮の白タウナギ レベル4 守備1200(チューナー)

 

「俺はレベル4の《白棘鱏》と《ダブルフィン・シャーク》でオーバーレイ!吠えろ未知なる轟き!深淵の闇より姿を現わせ!!エクシーズ召喚!!《バハムート・シャーク》!!」

再び噴き出る水しぶきとともに、鮫とドラゴンの特徴を併せ持つ凌牙のエースモンスターがフィールドに現れる。

 

バハムート・シャーク ランク4 攻撃2600

 

「更に、このカードは俺のフィールドに存在するエクシーズモンスターのオーバーレイユニットを2つ取り除くことで、手札から特殊召喚できる」

 

エクシーズ・リモーラ レベル4 攻撃800

 

取り除かれたORU

・白棘鱏

・ダブルフィン・シャーク

 

「更に、《エクシーズ・リモーラ》の効果発動!この方法で特殊召喚に成功したとき、墓地から魚族・レベル4モンスター2体を守備表示で特殊召喚できる。俺は《白棘鱏》と《ダブルフィン・シャーク》を特殊召喚!」

 

白棘鱏 レベル4 守備1200

ダブルフィン・シャーク レベル4 守備1000

 

「これでまたランク4のモンスターのエクシーズ召喚でもする気か!?」

「今の俺のデュエルはそんな単調なものじゃねえ。俺はレベル4の《エクシーズ・リモーラ》にレベル4の《竜宮の白タウナギ》をチューニング!深淵に眠る大いなる勇魚。生と死を廻る大海原に目覚めろ!シンクロ召喚!現れろ!!《白闘気白鯨》!!!」

チューニングリングとその中に飛び込んだ《エクシーズ・リモーラ》が白い光を放つとともに水があふれだす。

その水とともに、巨大な白いクジラが出現する。

これが彼の新たな切り札の1枚で、新しい戦略の可能性だ。

 

白闘気白鯨 レベル8 攻撃2800

 

「さらに《ダブルフィン・シャーク》と《白棘鱏》でオーバーレイ!」

(な、何だ…?この胸糞が悪くなるような感覚は…!)

凌牙のフィールドに2回目に出現したオーバーレイネットワークを見た翔太は右手でぎゅっと服の胸部当たりを握りしめる。

どうしてそのような感覚になるのかはわからないが、これからエクシーズ召喚されるモンスターが翔太の記憶と関連するモンスターであるのは確かのようだ。

「現れろ!No.101!満たされぬ魂を乗せた方舟よ。光届かぬ深淵より浮上せよ!《S・H・Ark Knight》!」

オーバーレイネットワークの中から機械の箱舟が現れる。

翔太は胸の苦しみに耐えながら、そのモンスターをじっと睨みつけた。

 

No.101S・H・Ark Knight ランク4 攻撃2100

 

「すごい…1ターンでランク4のエクシーズモンスター2体のレベル8のシンクロモンスターを…」

前までの凌牙は魚族エクシーズモンスターに特化した戦術だった。

しかし、今の彼はエクシーズ召喚だけでなく、シンクロ召喚をも組み込むことに成功している。

さらに手ごわくなった自分の旧知の仲間に侑斗とウィンダは喜んでいた。

 

「バトルだ!《白闘気白鯨》で裏守備モンスターを攻撃!」

《白闘気白鯨》が大きな口を開き、白い水のブレスを放つ。

ブレスは裏守備モンスターを飲み込み、翔太をも襲う。

「《白闘気白鯨》は守備モンスターを攻撃したとき、貫通ダメージを与える!」

「ぐううう…!」

 

裏守備モンスター

魔装霊レブナント レベル2 守備500(チューナー)

 

翔太

ライフ4000→1700

 

「翔太君のライフが一気に減っちゃった!!」

「それだけじゃない。《白闘気白鯨》は1ターンに2度攻撃することができる。当然、その攻撃でも貫通ダメージは発生する」

「ええーーー!?」

シンクロ素材が水属性モンスターに限定されているだけあって、すさまじい効果を持つ巨大なクジラに伊織は戦慄する。

このままその2度目の攻撃を許せば、翔太の敗北が決まってしまう。

「俺は《レブナント》のリバース効果を発動!デッキから魔装モンスター1体を手札に加える。俺は《魔装魔戦士ペルセウス》を手札に加える。そして、《レブナント》はリバースしたターン、戦闘では破壊されない」

「こいつで終わりだ!《白闘気白鯨》で《レブナント》を攻撃!」

ブレスを吐き終えたは今度はその巨大で翔太を押しつぶさんと、上空から落下してくる。

しかし、五芒星と蛇の首が描かれたローブ姿の戦士が現れ、両手で生み出した五芒星の結界で翔太を守る。

「手札の《ペルセウス》の効果!俺のフィールドに存在する魔装モンスターが攻撃対象となったとき、このカードを手札から特殊召喚することで、相手のバトルフェイズを終了させる!」

 

魔装魔戦士ペルセウス レベル5 攻撃2300

 

「なら、そのモンスターは封じてやる!《S・H・Ark Knight》の効果発動!オーバーレイユニットを2つ取り除くことで、相手フィールド上に存在する特殊召喚された攻撃表示モンスター1体をオーバーレイユニットにする。エターナル・ソウル・アサイラム!」

《No.101S・H・Ark Knight》のオーバーレイユニットが取り込まれ、そのモンスターから発射された錨で貫かれた《魔装魔戦士ペルセウス》がオーバーレイユニットとなり、コンテナに収納される。

 

取り除かれたORU

・ダブルフィン・シャーク

・白棘鱏

 

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

翔太

手札4

ライフ1700

場 魔装霊レブナント レベル2 守備500(チューナー)

 

凌牙

手札6→1

ライフ4000

場 白闘気白鯨 レベル8 攻撃2800

  バハムート・シャーク ランク4 攻撃2600

  No.101S・H・Ark Knight(ORU1) ランク4 攻撃2100

 

「俺のターン!」

 

翔太

手札4→5

 

「俺はスケール2の《魔装槍士タダカツ》とスケール9の《魔装剣士ムネシゲ》でペンデュラムスケールをセッティング!」

「来るか…ペンデュラム召喚!」

2体のモンスターが生み出す青い光の柱を見て、凌牙はつぶやく。

そして、侑斗が語っていたもう1つのペンデュラム召喚の謎を思い出す。

(ペンデュラムモンスターのオリジナルを持っているのは遊矢1人だけのはずだ。だが、奴の持っているペンデュラムモンスターの間違いなくオリジナルに近い。だとしたら、どうやって…?)

「来たれ、時の果てに眠りし英雄の魂。漆黒の魂と契約し、封印から解き放たん!ペンデュラム召喚!現れろ、《魔装騎士ペイルライダー》、《魔装獣ユニコーン》!」

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

魔装獣ユニコーン レベル4 攻撃1600

 

「こいつは…」

《魔装騎士ペイルライダー》を見た凌牙はその背後にうっすらと見えた幻影に警戒心をあらわにする。

蝙蝠の羽がついた、白と黄色をベースとしたスーツ姿の魔導士。

かつての宿敵が使っていたエースモンスター。

(まさか…本当にあいつの中で生きているのか?あの野郎が…!)

「さらに、俺は手札から装備魔法《魔装の聖盾-アイギス》を《ペイルライダー》に装備」

死の騎士には不釣り合いな、ヤギの皮が張られてひし形の聖なる盾が左腕に装着される。

さらに、その騎士は光剣を抜き、そばにいる老いた一角獣の背に乗る。

「そして、《魔装獣ユニコーン》は魔装騎士の装備カードとなり、装備モンスターの攻撃力を800アップさせる」

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500→3300

 

「バトル。《魔装騎士ペイルライダー》で《白闘気白鯨》を攻撃!クアトロ・デスブレイク!」

《魔装獣ユニコーン》が嘶くと、病院の壁を蹴って上空の《白闘気白鯨》に向けて飛んでいく。

そして、背に乗る《魔装騎士ペイルライダー》がすれ違いざまに光剣で横に真っ二つに切り裂いた。

「ぐうう…!俺は罠カード《ダメージ・ダイエット》を発動!俺がこのターン受けるダメージを半分にする!」

 

凌牙

ライフ4000→3750

 

「更に、《魔装獣ユニコーン》を装備したモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊したとき、そのモンスターの攻撃力分のダメージを与える!」

真っ二つとなった白クジラが地上に落ち、発生する衝撃波が凌牙を襲う。

 

凌牙

ライフ3750→2350

 

「だが、この程度で俺は倒せねえ。《白闘気白鯨》の効果発動!このカードが相手によって破壊され墓地へ送られたとき、墓地の水属性モンスター1体を除外することでチューナー扱いで特殊召喚できる。俺は《竜宮の白タウナギ》を除外する!」

真っ二つになったはずの《白闘気白鯨》の体が元に戻り、再び浮上する。

 

白闘気白鯨 レベル8 攻撃2800(チューナー)

 

「そうかよ。なら、もう1度斬るだけだ。《魔装槍士タダカツ》のペンデュラム効果発動!1ターンに1度、俺のペンデュラムモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊したとき、そのモンスターは続けてもう1度だけ攻撃できる」

《魔装槍士タダカツ》が持っている槍を正面に立てて祈りを捧げ、《魔装騎士ペイルライダー》の光剣が槍に変化する。

「クアトロ・デスブレイク・セカンド!」

再び浮上した《白闘気白鯨》を倒そうと、《魔装騎士ペイルライダー》は手にした槍を上空に向けて投げつける。

それに貫かれた《白闘気白鯨》は爆発し、爆風が凌牙を襲う。

 

凌牙

ライフ2350→2100→700

 

「やったー!一気に逆転だー!!」

魔装カードのコンボで一気に凌牙のライフを700まで減らすことに成功した翔太のことを我が事のように喜ぶ。

再び自身の効果で蘇生される可能性があるものの、それでも攻撃力3300の《魔装騎士ペイルライダー》を上回ることができない。

それがわかっているのか、凌牙は《白闘気白鯨》の効果を使おうとしない。

「バトルフェイズ終了時、《魔装の聖盾-アイギス》の効果を発動。装備モンスターが戦闘で相手モンスターを破壊した場合、デッキからカードを1枚ドローする。そして、カードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

翔太

手札5→0

ライフ1700

場 魔装霊レブナント レベル2 守備500(チューナー)

  魔装騎士ペイルライダー(《魔装獣ユニコーン》《魔装の聖盾-アイギス》装備) レベル7 攻撃3300

  伏せカード1

  魔装槍士タダカツ(青) ペンデュラムスケール2

  魔装剣士ムネシゲ(赤) ペンデュラムスケール9

 

凌牙

手札1

ライフ700

場 バハムート・シャーク ランク4 攻撃2600

  No.101S・H・Ark Knight(ORU1) ランク4 攻撃2100

 

「俺のターン、ドロー!」

 

凌牙

手札1→2

 

「俺は手札から装備魔法《エクシーズの王冠》を《バハムート・シャーク》に装備!装備モンスターのランクはレベルに変化し、2体分のエクシーズ素材になる。俺はレベル4となった《バハムート・シャーク》でオーバーレイ!」

《バハムート・シャーク》が2体に分身し、上空のオーバーレイネットワークに飛び込んでいく。

そして、その中から蜘蛛のような腕と足をした白い海竜が現れる。

右腕には「37」という番号が刻まれており、右腕の爪を《魔装騎士ペイルライダー》に向ける。

「眠りし大地と海の力が紡がれしとき新たな命の光が噴出する!エクシーズ召喚!目覚めよ、《No.37希望織竜スパイダー・シャーク》!」

 

No.37希望織竜スパイダー・シャーク ランク4 攻撃2600

 

「更に、俺は手札から速攻魔法《サイクロン》を発動。装備カード《アイギス》を破壊する!」

凌牙のフィールドに出現した《サイクロン》のソリッドビジョンから発生する竜巻に装着していた盾が吹き飛ばされ、消滅する。

「《アイギス》を装備した《ペイルライダー》は相手モンスターの効果を受けない。穴をあけてきたか…!」

翔太はフィールドに残っている《No.101S・H・Ark Knight》の効果に警戒していた。

このモンスターは何らかの手段でオーバーレイユニットを手にしたとき、再び相手モンスターをオーバーレイユニットに変える効果が使えるようになる。

だが、今気にしなければならないのは《No.37希望織竜スパイダー・シャーク》だ。

「(にしても、ナンバーズだって?あの《S・H・Ark Knight》といい、どうしてこんなにあのカードを見ると腹が立つんだ…?)俺は《魔装の聖盾-アイギス》の効果を発動。このカードが相手によって破壊され墓地へ送られたとき、お互いにデッキからカードを1枚ドローする」

 

魔装の聖盾-アイギス

装備魔法カード

このカード名のカードは自分フィールド上に1枚しか存在することができない。

「魔装」モンスターのみ装備可能。

(1):装備モンスターが相手モンスターを戦闘で破壊した自分バトルフェイズ終了時に発動する。自分はデッキからカードを1枚ドローする。

(2):装備モンスターが「魔装騎士」モンスターの場合、そのモンスターは相手モンスターの効果を受けない。

(3):このカードが墓地へ送られたときに発動する。お互いにデッキからカードを1枚ドローする。

 

「バトルだ!《スパイダー・シャーク》で《ペイルライダー》を攻撃!スパイダー・トルネード!!」

《No.37希望織竜スパイダー・シャーク》の口から蜘蛛の糸が発射され、《魔装騎士ペイルライダー》と《魔装獣ユニコーン》がからめとられる。

「《スパイダー・シャーク》の効果!自分か相手モンスターの攻撃宣言時、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、ターン終了時まで相手フィールドに存在するモンスターの攻撃力を1000ダウンさせる」

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃3300→2300

 

「攻撃力を落としたみたいだが、《ペイルライダー》はその程度じゃ倒せないぞ。《魔装剣士ムネシゲ》のペンデュラム効果発動!1ターンに1度、俺のモンスターゾーンに存在するペンデュラムモンスター1体を破壊から守る!」

円盤状のバリアが《魔装騎士ペイルライダー》の前に展開され、《No.37希望織竜スパイダー・シャーク》の口から次に発射された水流を受け止める。

 

翔太

ライフ1700→1400

 

「そして、《ペイルライダー》の効果だ。戦った相手モンスターをダメージステップ終了後、破壊する!」

右腕を使って糸を振りほどいた《魔装騎士ペイルライダー》が右腕についているビームガンを連射する。

発射された赤いビームが次々と《No.37希望織竜スパイダー・シャーク》に着弾し、そのモンスターは爆発・消滅する。

「《スパイダー・シャーク》の効果発動!このカードが戦闘・効果によって破壊されたとき、このカード以外の俺の墓地のモンスター1体を特殊召喚することができる。俺は墓地から《白闘気白鯨》を特殊召喚!」

爆発の後で残った《No.37希望織竜スパイダー・シャーク》の残骸が集結し、海とつながるワームホールが出現する。

その中から《白闘気白鯨》が姿を現す。

 

白闘気白鯨 レベル8 攻撃2800

 

「ちっ…またそのモンスターかよ!?」

破壊しても厄介な効果を発揮する《No.37希望織竜スパイダー・シャーク》に怒りを見せる。

2度も攻撃できるうえに貫通効果を持つそのモンスターの攻撃の前では、翔太の残ったライフは一瞬で消し飛んでしまう。

「こいつで《ペイルライダー》には退場してもらう!!《白闘気白鯨》で《ペイルライダー》を攻撃!」

上空の《白闘気白鯨》の口がゆっくりと開き、水のブレスを発射しようとする。

もう《魔装剣士ムネシゲ》の効果はこのターン、使うことができない。

「俺は罠カード《ペンデュラム・ハンド》を発動!俺のフィールドに存在するモンスターがペンデュラムモンスター1体のみで、そのモンスターが攻撃対象となったとき、相手フィールドの攻撃モンスター以外のモンスター1体のコントロールを奪い、そのモンスターの装備カードとなる。そして、攻撃対象をそのモンスターに変更させる!俺がコントロールを奪うのは、《S・H・Ark Knight》!」

2本の光の柱の間から透明で巨大な手が出現し、《No.101S・H・Ark Knight》をつかんで《魔装騎士ペイルライダー》の前へ移動させる。

《白闘気白鯨》のブレスは味方のはずの《No.101S・H・Ark Knight》に直撃する。

「へえ…こいつはいい効果だな。自分が破壊されるとき、オーバーレイユニットを身代わりにできるなんてな。なら、《魔装魔戦士ペルセウス》は返してもらうぜ」

「くっ…だが、それでもお前は700の戦闘ダメージを受けるぞ!」

 

翔太

ライフ1700→1000

 

「そして、《白闘気白鯨》は2回攻撃することができる。もう1度《S・H・Ark Knight》を攻撃する!!」

再び口を開いた《白闘気白鯨》が今度こそ仲間を取り戻そうとブレスを放とうとする。

その宣言を聞いた瞬間、翔太はにやりと笑う。

「俺は装備カードとなっている《ペンデュラム・ハンド》のもう1つの効果を発動!装備モンスターが攻撃対象となったとき、このカードを墓地へ送ることで、攻撃モンスターと装備モンスターのコントロールを入れ替える!」

「何!?」

《No.101S・H・Ark Knight》をつかんでいた透明な手が爆発し、水蒸気が発生する。

水蒸気が消えると、なぜか凌牙のフィールドに《No.101S・H・Ark Knight》がおり、翔太のフィールドに《白闘気白鯨》がいて、水のブレスを放とうとしていた。

「そして、入れ替わったモンスター同士でバトルを行う!」

 

「すっごーい!これで凌牙さんの自滅で勝利…ってあれ、《ペンデュラム・ハンド》の効果を1回目の攻撃に時に使えばよかったんじゃ…」

「《ペンデュラム・ハンド》のその効果は装備カードになった直後には発動できないんだ」

翔太と同じく、ペンデュラムモンスターを主体で使い、こうしたペンデュラムモンスターをサポートするカードをよく見ている遊矢が解説する。

「仮に《ペイルライダー》を攻撃対象とした場合は《ペンデュラム・ハンド》のその効果を発動できなかった」

それを可能にしたのは《No.101S・H・Ark Knight》が凌牙にとって大切なカードだからだ。

そのモンスターのコントロールを奪い、その効果を使うことでうまく挑発した。

それがうまくはまり、凌牙を自滅へ追いやろうとしている。

 

ペンデュラム・ハンド

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドに存在するモンスターがPモンスター1体のみで、相手フィールドに表側表示モンスターが2体以上存在する場合、相手モンスターの攻撃宣言時に攻撃モンスター以外の相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。その表側表示モンスターのコントロールを得て、このカードをそのモンスターの装備カードにし、攻撃対象をそのモンスターに移し替えてダメージ計算を行う。

(2):この効果で装備カードとなったこのカードを装備したモンスターが攻撃対象となったとき、このカードを墓地へ送ることで発動する。攻撃モンスターと装備モンスターのコントロールを入れ替える。その後、コントロールの入れ替わったモンスター同士でダメージ計算を行う。この効果は(1)の効果を発動したダメージ計算時に発動することができない。

(3):このカードがフィールドに表側表示で存在する限り、自分はP召喚以外の方法でEXデッキからモンスターを特殊召喚できない。

 

「さあ…これで終わりだ!」

「まだ終わってねえ!俺は手札から速攻魔法《RUM-クイック・カオス》発動!」

「何…!?」

「お前の装備魔法の効果でドローしたカードだ!!俺のフィールドに存在するカオスエクシーズ以外のナンバーズをカオス化する!俺は《S・H・Ark Knight》でオーバーレイ!」

発動したRUMを見た翔太は《RUM-バリアンズ・フォース》を見た時と同じような不快感に襲われる。

上空の紫色のオーバーレイネットワークの中に《No.101S・H・Ark Knight》が消え、《白闘気白鯨》のブレスを回避する。

「現れろ、CNo.101!満たされぬ魂の守護者よ!暗黒の騎士となって導け!《S・H・Dark Knight》!!」

オーバーレイネットワークの中から、何度破壊されたとしてもオーバーレイユニットがある限り、いくらでもよみがえる槍士が下りてくる。

そのモンスターを見た翔太の右拳に力が入る。

「この…モンスターは…!!」

 

CNo.101S・H・Dark Knight ランク5 攻撃2800

 

「バトルだ!《S・H・Dark Knight》で《白闘気白鯨》を攻撃!」

槍を手元で数回回転させた後で、《CNo.101S・H・Dark Knight》は槍を仲間である《白闘気白鯨》に投げつけて攻撃をする。

「どうして!?《ペンデュラム・ハンド》の効果がなくなったから、相討ちを狙わなくても…」

「いや、これでいい」

「え…?」

侑斗とウィンダ、凌牙の切り札のそのカードのことを知っている彼らにとって、凌牙の今の判断は的確に思えた。

《白闘気白鯨》が放つブレスと槍が交差し、互いに直撃すると同時に彼らは消滅した。

「リターン・フロム・リンボ…」

「何?」

「オーバーレイユニットを持つそいつが破壊され墓地へ送れたとき、墓地に《S・H・Ark Knight》がいるとき、復活する…。そして、そいつの攻撃力分ライフが回復する…」

知るはずもないカードの効果を翔太が持ち主である凌牙に変わって説明したうえに、効果の名前までもを言ってしまう。

その時、翔太は頭を右手で抑えており、左手の痣が紫色に光っていた。

彼の言う通り、ブレスを受けてボロボロになった鎧を着た《CNo.101S・H・Dark Knight》がフィールドに舞い戻った。

 

CNo.101S・H・Dark Knight ランク5 攻撃2800

 

凌牙

ライフ700→3500

 

「…リターン・フロム・リンボの効果で復活した《Dark Knight》はこのターン、攻撃できない。ターンエンドだ」

 

翔太

手札0→1

ライフ1000

場 魔装霊レブナント レベル2 守備500(チューナー)

  魔装槍士タダカツ(青) ペンデュラムスケール2

  魔装剣士ムネシゲ(赤) ペンデュラムスケール9

 

凌牙

手札2→0

ライフ3500

場 No.101S・H・Dark Knight ランク5 攻撃2800

 

「お前…なんでこいつの効果を知っている?」

凌牙はギロリとにらみながら尋ねる。

侑斗に協力を頼まれたとき、凌牙はほかの誰でもなく、自分に最初に求めたのかを尋ねる。

その理由の一つが『彼』と強い因縁の有る人物であること。

そして、ある世界の力を持った最後の1人であること。

「…知らねーよ…。なぜか、頭の中からささやかれた。そいつの効果を…」

たっぷりと息を吸い、袖で汗で拭いた翔太はデッキトップのカードを引く。

 

翔太

手札1→2

 

「俺は手札から魔法カード…《魔装天啓》を発動…。エクストラデッキ・墓地の魔装ペンデュラムモンスター2体を手札に加える…。俺は墓地の《魔装魔戦士ペルセウス》、エクストラデッキの《魔装騎士ペイルライダー》を手札に加える…。そして、レベル3から8までのモンスターのペンデュラム召喚を行う…。来たれ、時の果てに眠りし英雄の魂。漆黒の魂と契約し、封印から解き放たん!ペンデュラム召喚…!現れろ、《魔装魔戦士ペルセウス》、《魔装騎士ペイルライダー》、《魔装僧正テンカイ》」

魔戦士と騎士と共に、背中に五芒星が刻まれた赤い袈裟を纏い、口元を黒いガスマスクで隠した白いロングヘアーの僧侶が現れる。

 

魔装魔戦士ペルセウス レベル5 攻撃2300

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

魔装僧正テンカイ レベル3 攻撃1300(チューナー)

 

「《テンカイ》の効果発動。このカードのペンデュラム召喚に成功したとき、俺のペンデュラムゾーンに存在するカードがどちらも魔装カードの場合、デッキから魔装と名の付く魔法・罠カード1枚を手札に加える。俺はデッキから《魔装伝心》を手札に加える」

《魔装僧正テンカイ》が数珠を握りしめ、祈りをささげると、デッキから《魔装伝心》が自動排出され、翔太の手札に加わる。

 

魔装僧正テンカイ

レベル3 攻撃1300 守備0 闇属性 魔法使い族

【Pスケール:青10/赤10】

(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。

(2):自分は「魔装」モンスター以外の特殊召喚を行えない。この効果は無効化できない。

(3):1ターンに1度、EXデッキから特殊召喚された「魔装騎士」モンスター1体を対象に発動できる。ターン終了時まで、そのモンスターの攻撃力を800アップさせる。この効果は相手ターンでも発動できる。

【チューナー】

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードのP召喚に成功したとき、自分Pゾーンに存在するカードが「魔装」カードのみの場合に発動できる。デッキから「魔装」魔法・罠カード1枚を手札に加える。

 

魔装魔戦士ペルセウス

レベル5 攻撃2300 守備1600 光属性 戦士族

【Pスケール:青1/赤1】

このカード名の(3)のP効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。

(2):自分は「魔装」モンスター以外の特殊召喚を行えない。この効果は無効化できない。

(3):相手の直接攻撃宣言時に発動できる。Pゾーンに存在するこのカードを特殊召喚し、バトルフェイズを終了させる。

【モンスター効果】

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドに存在する「魔装」モンスターが攻撃対象となったときに発動できる。このカードを手札から特殊召喚し、バトルフェイズを終了させる。

 

「く…っ!!」

「バトルだ!《魔装騎士ペイルライダー》で《S・H・Dark Knight》を攻撃。クアトロ・デスブレイク!」

《魔装騎士ペイルライダー》が《魔装剣士ムネシゲ》の構築したバリアに包まれた状態で突撃し、光剣と槍がぶつかり合う。

「《ムネシゲ》の効果で、《ペイルライダー》は1ターンに1度、破壊から守られる!そして、《ペイルライダー》の効果で戦った相手モンスターは破壊され…!?」

効果の説明を終える直前に激しい頭痛が翔太を襲い、同時に《魔装騎士ペイルライダー》の動きが止まる。

「う、うう…ああああああ!!!」

斧で脳を真っ二つにされたかのような激痛に襲われ、その場で膝をつき、両手で頭を抑える。

これまでの頭痛と比較すると、今回のそれの痛みは段違いにひどいものだった。

凌牙はあわてて翔太に駆け寄ろうとするが、背後から何者かの気配を感じ、振り返った。

デュエルディスクを展開し、黒いコート姿をした彼はうっすらと笑みを浮かべながら、凌牙を見つめていた。

「どうやら、君主催のパーティーに間に合うことができたようだな…。まだ料理はなくなってないんだろう?」

「レナード…テスタロッサ…」

じっとレナードをにらむ凌牙の体が紫色のオーラに包まれる。

一瞬驚きを見せたレナードだが、すぐに元の表情に戻し、彼をじっと見た。

「なるほど…これが異次元の力。4つの次元にはない力…。興味深いな…」



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第95話 狂気再び

「間違いないわ…この人、この人が…」

カメラが捉えた、白髪の優男を見たサヤカが震えるのを耐えながら、じっと見つめる。

いつの間にかカイトの隣に立ち、彼を惑わしているその男の薄ら笑いは今でも目に焼き付いている。

「グレースちゃん…間違いないの?」

アカデミアに所属していたグレースにウィンダが確認するように尋ねる。

サヤカと凌牙を除くと、レナードについて知っていると思われる人物は彼女だけだ。

グレースは肯定するかのように、首を縦に振る。

「ええ…レナード・テスタロッサ。ジェルマンのリーダー…」

 

「余裕な態度だな。俺らの策に敢えて乗って出てきたってのか?」

対峙するレナードに身構えながら、凌牙は単刀直入に問う。

(こいつが…レナード…)

デュエルが中断し、頭痛がゆっくりと和らいできた翔太も顔を上げ、レナードを見る。

そして、凌牙が放つ紫色のオーラに目を大きく開いた。

「カオスの…力…」

「へえ、カオスの力か…。そのことをなぜ君が知っているんだろうな…?」

「質問に答えろ、レナード!」

凌牙を無視し、翔太の言葉に興味を示すレナードに怒りを見せる凌牙のオーラが強まっていく。

 

(カオス…一体何を言っているんだ!?)

よくわからない言葉に疑問を浮かべる遊矢の眼がオッドアイに変わり、画面越しの3人を見る。

すると、凌牙と翔太からは同じ力が感じられ、翔太をうっすらと包むカオスのオーラが見えてしまう。

そして、レナードの中にあるドス黒い何かも…。

それらを見た遊矢の額を冷たい汗が流れた。

「ええっと、よくわからないけど…翔太君と凌牙さんって、何か関係が…あるんですか??」

2人のデュエルを見ていた伊織は状況を整理しきれず、頭を抱えながら侑斗に尋ねるが、返事が返ってくることはなかった。

そんな、何も答えない侑斗を黒咲はじっと見る。

(剣崎さんとウィンダさん、凌牙さん…。一体、3人は俺たちに何を隠しているというんだ?)

 

「ああ…すまない。君の質問に答えるのが先だった。そうだ、君が何を知りたいのか、教えてあげようと思ったのさ」

教えてやる、という上から目線な言い方が癪に障るものの、ゆっくりと呼吸して落ち着きを取り戻していき、凌牙はレナードをにらむ。

しかし、その程度のにらみは彼にとっては痛くもかゆくもないようで、薄ら笑いはそのままだ。

「まぁ…そうだな。目的はレジスタンスで無駄な抵抗を続けるデュエリストを救済するためさ」

「救済…だと!?」

「そうさ。いい加減諦めればいいものを性懲りもなく戦い続けている君たちのようなデュエリストを救いたいのさ。こんな歪んでしまった世界のために命を懸ける…フッ、ばかげた話だ」

(歪んだ…世界…?)

「てめえ…!!!」

仲間や愛する人達、そして故郷である自分たちの世界を守るために戦うレジスタンスやランサーズを侮辱するようなレナードの言動に、凌牙は抑えようとしていた怒りに火が付くのを感じた。

そして、人々をカードに変えることを救済ととらえている彼に歪みを感じた。

「だが、すべての人間を救済しようとするとかなりの労力がかかる。だから、彼に協力してもらったのさ。そして、彼が手に入れた力をアカデミアのために使わせてもらう」

「アカデミアのため…?やっぱり、カイトに力を与える気も、アカデミアを倒す気もサラサラねえってことだな!?」

「勘違いしてもらっては困る。俺は力の手に入れ方を教えただけだ。そして、選択したのはカイト本人。ただ、それだけの話だ」

「ふざけんな!よくもアイツを…!」

怒りを我慢できなくなった凌牙は飛び出し、レナードに殴りかかろうとする。

しかし、殴る直前に腹部にレナードの膝がめり込み、凌牙は腹を抱えてその場で倒れてしまう。

同時に、彼を包んでいたカオスのオーラも消えてしまった。

「心配しなくていい。カードになった仲間たちは新世界の贄として救済される。むしろ誇るべきことだろう…?」

「黙…れ…!」

凌牙はクローバー校のレジスタンスの潜入していたときの彼らを思い出す。

彼らは確かに頑なだが、自分たちだけの力で故郷と仲間を守りたいという思いの強さを肌で感じることができた。

そんな彼らの思いを踏みにじったレナードを許すことができなかった。

「さて…俺は最後の準備があるから、これで失礼することに…」

「待てよ、勘違いナルシスト」

凌牙たちに背を向け、立ち去ろうとするレナードに翔太はデュエルディスクを構える。

しかし、レナードは背中を向けたままで、決して翔太を見ようとしない。

「悪いが、俺は忙しい…。相手なら、彼が代わってしてくれる。それで我慢するといいさ」

「待て!!」

デュエルディスクに何かを入力し始めたレナードを取り押さえようと、翔太は走り出すが、すぐに彼は青い粒子となって姿を消してしまった。

「ちっ…あの野郎!」

「ほーんっとに、人使いが荒いんだよねぇーあの小僧はよぉー。分かってくれた?おじさまたちの苦労」

背後から聞き覚えのある声が聞こえ、振り返るとそこにはセレナをさらったゲイツの姿があった。

そして、振り返ると同時に彼のデュエルディスクからアンカーが発射され、翔太のデュエルディスクを捉える。

強制的に翔太のデュエルディスクがデュエルモードに移行し、翔太の操作を受け付けなくなっていた。

「そこのイカ頭坊ちゃんはのびてるみたいだしー、オジサンを楽しませてくれるかねー?僕ぅー?」

「キモいおっさんだな。もみあげも含めて」

「ほぉー、私のもみあげの素晴らしさがわからんとは…悲しいねえ。人生のほとんどをこれで損してる。よかろう!私がデュエルでその素晴らしさを教えてやろう!!」

「ノーサンキューだ!お前には借りがあるからな…ぶちのめす」

カードを引き、互いにデュエルの準備が整う。

そして、デュエル開始の宣言をすることなく、ゲイツが先に動いた。

 

ゲイツ

手札5

ライフ4000

 

翔太

手札5

ライフ4000

 

「私はモンスターを裏守備表示で召喚!カードを3枚伏せて、ターンエンド!」

 

ゲイツ

手札5→1

ライフ4000

場 裏守備モンスター1

  伏せカード3

 

翔太

手札5

ライフ4000

場 なし

 

(ちっ…狂っているくせに油断できねえ…)

先攻のゲイツの動きを見て、ある程度彼のデッキを把握しようとした翔太だが、裏守備モンスターを含めて3枚もの伏せカードを用意されたことでわからない部分が多くなったうえに攻撃しづらくなった。

「俺のターン!」

 

翔太

手札5→6

 

「俺はスケール3の《魔装船ヴィマーナ》とスケール6の《魔装剣士ローラン》でペンデュラムスケールをセッティング!さらに、セッティングした《ローラン》のペンデュラム効果を発動。1ターンに1度、ペンデュラムゾーンに存在するカード1枚のスケールを2つ変動させることができる。俺は《ローラン》のスケールを2つ増やす」

現れたばかりの《魔装剣士ローラン》がロングソードを天に掲げ、頭上に浮かんでいる数字を6から8へと変えた。

 

魔装剣士ローラン(赤) ペンデュラムスケール6→8

 

「これで俺はレベル4から7までのモンスターを同時に召喚可能!来たれ、時の果てに眠りし英雄の魂。漆黒の魂と契約し、封印から解き放たん!ペンデュラム召喚!来い、《魔装鳥キンシ》、《魔装竜ファーブニル》!」

 

魔装鳥キンシ レベル7 攻撃2400

魔装竜ファーブニル レベル4 攻撃1900

 

「《ヴィマーナ》のペンデュラム効果。俺か相手がペンデュラム召喚に成功したとき、デッキからカードを1枚ドローする。さらに俺は手札から魔法カード《魔装一閃》を発動。俺が魔装モンスターのペンデュラム召喚に成功したターンにのみ発動でき、ペンデュラム召喚した魔装モンスターの数だけ魔法・罠カードを破壊できる。そして、このカードの発動に対して、対象となったカードは発動できない」

《魔装鳥キンシ》と《魔装竜ファーブニル》が口から炎を放ち、ゲイツの伏せてあった2枚のカードを焼き尽くす。

「うおおお!?熱、熱いって!!どーすんの!?私のモミアゲが燃えちゃったらどうすんの!?」

「モミアゲ、モミアゲうるせえな。そんなに大事なら、墓場まで持っていけ!」

リアルソリッドビジョンにより、温度はある程度再現されるものの、物を燃やしたり凍らせたりするほどの再現はリミッターをかけることで抑えられている。

長いもみあげに息を吹きかけ、ホッと一息つくゲイツに翔太はいら立ちをあらわにしていた。

 

破壊された伏せカード

・パワー・ウォール

・リビングデッドの呼び声

 

魔装一閃

通常魔法カード

このカード名のカードは1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分が「魔装」モンスターのP召喚に成功したターンのメインフェイズにのみ、P召喚された「魔装」モンスターの数だけフィールドの魔法・罠カードを対象に発動できる。そのカードを破壊する。このカードの発動に対して、対象となったカードは発動できない。

 

「さらに俺は手札から《魔装学者ゲンナイ》を召喚」

 

魔装学者ゲンナイ レベル1 攻撃0

 

「このカードの召喚に成功したとき、俺の手札・フィールドのモンスター1体をデッキに戻し、そのモンスターのレベルを合計が下回るように、デッキから魔装モンスター2体を効果を無効にして特殊召喚できる。俺は《魔装鳥キンシ》をデッキに戻し、《魔装壁ゴルゴー》と《魔装妖ビャッコ》を特殊召喚!」

 

魔装壁ゴルゴー レベル2 守備1000(チューナー)

魔装妖ビャッコ レベル3 攻撃400

 

「キュイー!!」

《魔装壁ゴルゴー》の前で丸くなるビャッコをゲイツはじーっと見る。

目が笑っているものの、なぜか嫌な予感を感じたビャッコは急いで壁の後ろに隠れた。

「ええっ!?なんで隠れちゃうわけ!?オジサン、傷ついちゃう…」

「そうされる理由、自分の心に聞いてみろ」

「ええーーー!?私はかわいいものは大好きだよ?だって、血祭りにあげて、生皮を…」

「レベル3の《ビャッコ》とレベル4の《ファーブニル》、レベル1の《ゲンナイ》にレベル2の《ゴルゴー》をチューニング!」

「ああ、ビャッコちゃん!!そんなー行かないでくれよー!そんなことしたら、生皮剥ぎ取れないじゃないかーーー!!」

「勝利と支配をもたらす第2の騎士よ、終戦を告げるその矢で敗者を鎮めよ!シンクロ召喚!《魔装騎士ホワイトライダー》!!」

ゲイツの言葉をこれ以上聞きたくないのか、翔太はいつも以上に大きな声で叫ぶ。

そして、勝利と支配をもたらす第2の騎士が下劣な戦士を裁くためにフィールドに舞い降りた。

 

魔装騎士ホワイトライダー レベル9 攻撃3100

 

「さらに、《ビャッコ》の効果。このカードをシンクロ、エクシーズ素材としたとき、デッキからカードを1枚ドローする。バトル!《ホワイトライダー》で裏守備モンスターを攻撃!アロー・オブ・ルール!!」

《魔装騎士ホワイトライダー》が光の矢を放ち、撃ち抜かれたモンスターが白い粒子となって消滅する。

 

裏守備モンスター

魔導雑貨商人 レベル1 守備700

 

「おおーーーっと!!ここで《魔導雑貨商人》のリバース効果発動ぉー!魔法・罠カードが出てくるまでデッキの上からカードをめくる。さぁー、どれだけ墓地肥やしでっきるっかなぁー?」

ニヤリと笑いつつ、ゲイツはデッキを確認し、カードを次々と墓地へ送っていく。

そして、13枚目のカードが魔法・罠カードのようで、そのカードを手札に加えた。

 

デッキから墓地へ送られたカード

・魔界発冥界行きバス

・シャドール・ビースト

・インフェルノイド・デカメロン

・ヴォルカニック・クイーン

・インフェルノイド・アシュメダイ

・インフェルノイド・アドラメレク

・インフェルノイド・ネヘモス

・インフェルノイド・シャイターン×2

・インフェルノイド・ルキフグス

・インフェルノイド・アスタロス×2

 

手札に加えたカード

・色欲の壺

 

「おお、ラッキー!《シャドール・ビースト》は効果で墓地へ送られたとき、デッキからカードを1枚ドローできる。あっりがっとさん」

一期に墓地を肥やされた挙句、手札を2枚増やしてしまう結果となり、自分のうかつさを感じながら翔太はゲイツの墓地に送られた12枚のカードを確認する。

《シャドール・ビースト》については徳松のデッキにも入っていたことを記憶しているが、問題は9枚ものインフェルノイドだ。

そのカードは今まで見たことがない。

「さらに、《魔装鳥キンシ》でダイレクトアタック!」

「罠発動、《ガード・ブロック》!!私が受ける戦闘ダメージを0にし、デッキからカードを1枚ドローする」

《魔装鳥キンシ》の放つ炎が透明なバリアによって防がれてしまう。

「ちっ…この攻撃もダメか!?」

「アヴェマリ~ア~…」

挑発のためなのか、ゲイツはバリアに守られている間、腰を振りながらアヴェマリアを熱唱し始める。

まるで対戦相手である自分を馬鹿にするような振る舞いに腹を立てながら、翔太はカードを手に取る。

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド!!」

 

ゲイツ

手札1→4(うち1枚《色欲の壺》)

ライフ4000

場 なし

 

翔太

手札6→1

ライフ4000

場 魔装騎士ホワイトライダー レベル9 攻撃3100

  魔装鳥キンシ レベル7 攻撃2400

  伏せカード1

  魔装船ヴィマーナ(青) ペンデュラムスケール3

  魔装剣士ローラン(赤) ペンデュラムスケール8

  

「私のターン、ドローだぁ!!」

 

ゲイツ

手札4→5

 

「私は手札から永続魔法《煉獄の虚無》を発動!そして、このカードをフィールドから墓地へ送ることで、私の手札・フィールドのモンスターを素材にインフェルノイド融合モンスター1体を融合召喚できる!!」

「手札のインフェルノイドってモンスター2体を素材にするつもりか?」

「いんやぁー、相手フィールドにのみ、エクストラデッキから特殊召喚されたモンスターが存在する場合、私のデッキのモンスターを6体まで融合素材にできる!!」

「何!?」

「さぁー、煉獄の悪魔の登場だぁー!ケツの穴をキチンと守らないとねぇー!!《インフェルノイド・ティエラ》ぁ!」

ゲイツのデッキから放出された5枚のインフェルノイドモンスターのカードが黒い炎となって《煉獄の虚無》に吸収される。

そして、そこから黒い火柱が発生し、そこから下半身が蛇でそれ以外が人型で黒い体の悪魔が現れる。

そのモンスターはシンクロ次元でクロウにとどめを刺したモンスターでもある。

 

インフェルノイド・ティエラ レベル11 攻撃3400

 

融合素材となったモンスター

・インフェルノイド・デカメロン

・インフェルノイド・ベルゼブル

・インフェルノイド・ベルフェゴル

・インフェルノイド・ヴァエル

・インフェルノイド・リリス

 

「攻撃力3400!?」

「攻撃力だけで驚くなんて、青臭いガキだなぁ。こいつは融合素材となったインフェルノイドの数によって効果が発動できる。まずは…融合素材が3種類以上の時、それぞれエクストラデッキから3枚カードを墓地へ送る!さあ、墓地へ送るカードを選べぇ!!」

ゲイツはさっそくエクストラデッキに残った2枚の《インフェルノイド・ティエラ》を墓地へ送る。

彼のエクストラデッキに入っているカードは《インフェルノイド・ティエラ》3枚だけのようで、相手のエクストラデッキの中身は0になっている。

翔太は舌打ちしつつ、エクストラデッキのカードを墓地へ送った。

 

エクストラデッキから墓地へ送られたカード

・魔装鳥獣グリフィン

・魔装騎士HADES

・魔装妖キュウビ

 

「そしてぇ、5種類以上の時、俺たちはデッキの上から3枚のカードを墓地へ送る!!さあ、さっさと墓地へ送れぇ!」

「今度はデッキか!せめていい落ち方だといいけどな…」

 

デッキから墓地へ送られたカード

ゲイツ

・遡洸する煉獄

・E-HEROヘル・ゲイナー

・ジャンク・コレクター

 

翔太

・騎士の逆鱗

・魔装鬼ヨシヒロ

・魔装旋風

 

「更に、手札からもう1枚《煉獄の虚無》を発動!!これで、私のインフェルノイド達のレベルは1になり、相手に与える戦闘ダメージは半分になる?」

 

インフェルノイド・ティエラ レベル11→1 攻撃3400

 

「自分のモンスターのレベルを下げた…?」

「インフェルノイドは私のフィールドの効果モンスターのレベルの合計が8以下でないと特殊召喚できない。私のモミアゲも長すぎちゃあいけないってことさぁ。そしてぇ!!このカードは私のフィールドの効果モンスターのレベルの合計が8以下の時、手札・墓地のインフェルノイド1体を除外することで、手札から特殊召喚できる!墓地の《インフェルノイド・デカメロン》を除外し、《インフェルノイド・シャイターン》を特殊召喚!」

紫色のいびつな構造な装甲で身を包み、右の肩甲骨から紫色の翼を生やした悪魔が《インフェルノイド・デカメロン》のカードを食らい、フィールドに現れる。

 

インフェルノイド・シャイターン レベル1 守備0

 

「《シャイターン》の効果発動ぉ!1ターンに1度、相手フィールドにセットされている魔法・罠カードを1枚デッキに戻す!そして、この効果に対して対象となったカードは効果を発動できない…消え去れぇ!!」

《インフェルノイド・シャイターン》の眼から紫色のビームが発射され、それを受けた伏せカードが消滅し、デッキに戻っていく。

「ちっ…!」

「更に、このカードは手札・墓地のインフェルノイド2体を除外することで、手札・墓地から特殊召喚できる。墓地の《インフェルノイド・デカメロン》と《インフェルノイド・ベルゼブル》を除外し、《インフェルノイド・アシュメダイ》を特殊召喚!!」

左手に銅でできた杖を持つ、ハエのような羽根と鎧を着た悪魔がフィールドに現れる。

 

インフェルノイド・アシュメダイ レベル5→1 攻撃2200

 

3体のインフェルノイドがフィールドに現れ、翔太を守るように前に立つ《魔装騎士ホワイトライダー》をにらむ。

「フフフフ…レナードが使っていたデッキっていうのはシャクに障るが、中々面白いデッキじゃあないかぁ」

ゲイツはフィールドにいるモンスターを見ながら、彼からデッキを渡されたときのことを思い出す。

どういう意図で、ジェルマン結成時から使い続けていたそのデッキを自分に渡したのかはわからない。

だが、墓地を肥やすことで一気に戦局を変えることができる爆発力を持つそのデッキをすぐにものにすることができた。

「まだまだぁ!このカードも手札・墓地のインフェルノイド2体を除外することで、手札・墓地から特殊召喚できる!《インフェルノイド・アスタロス》2体を除外し、墓地から《インフェルノイド・ヴァエル》を特殊召喚!!」

槍を持った、羽根付の龍人のような黒い鎧を纏った、青い炎がフィールドに現れる。

ペンデュラム召喚を使わず、一気に4体ものモンスターを召喚したインフェルノイドデッキの展開力に翔太は舌を巻く。

 

インフェルノイド・ヴァエル レベル7→1 攻撃2600

 

「そして、私は手札から魔法カード《色欲の壺》を発動!ゲームから除外されているモンスター5体をデッキに戻し、デッキからカードを2枚ドローする!」

「除外版の《貪欲な壺》かよ…!?」

除外したばかりの5体のインフェルノイドがデッキに戻り、ゲイツはカードを引く。

「バトルぅ!《インフェルノイド・ティエラ》で《ホワイトライダー》を攻撃!消えろぉぉぉ!!!!」

《インフェルノイド・ティエラ》の口に青い炎が集結していき、弾丸のように発射される。

《魔装騎士ホワイトライダー》が光の矢を発射するが、炎の勢いが上回っているのか、ぶつかると同時に矢は消滅し、炎が騎士を焼き尽くした。

「ぐうう…!」

 

翔太

ライフ4000→3850

 

色欲の壺

通常魔法カード

このカード名のカードは1ターンに1度しか使用できない。

(1):ゲームから除外されている自分のモンスター5体をデッキに戻すことで発動できる。自分はデッキからカードを2枚ドローする。

 

「《インフェルノイド・ヴァエル》で《魔装鳥キンシ》を攻撃ぃーーー!!」

《インフェルノイド・ヴァエル》が槍を数回振り回すと、刀身に黒い炎を宿した状態で投擲する。

《魔装鳥キンシ》は回避するために上空を飛び回るが、その槍には追尾機能があるのか、どこまでも追いかけていく。

最終的には港の上空で槍に貫かれ、その体は海に沈んでいき、消滅した。

「ぐうう…《キンシ》はペンデュラムモンスター…。よって、エクストラデッキに行く」

 

翔太

ライフ3850→3750

 

 

「そしてぇ、《インフェルノド・アシュメダイ》でダイレクトアターーーック!!」

《インフェルノイド・アシュメダイ》が獲物にしている杖を投擲し、翔太の目前の地面に刺さる。

刺さった個所から炎と衝撃波が発生し、炎で体を焼かれた翔太は吹き飛ばされ、壁に衝突する。

「ガアア…グウウ…」

《煉獄の虚無》の効果によって、発生する戦闘ダメージは半分になっているものの、襲ってくるダメージはたいして変化しておらず、服についた火を右手で叩いて消す。

幸い、カードは燃えていないようで、立ち上がった翔太はじっと攻撃してきた3体のインフェルノイドを見る。

 

翔太

ライフ3750→2650

 

「翔太君!!」

大きなダメージを受けた翔太をテレビで見た伊織が叫ぶ。

同時に扉が開く音が聞こえ、黒咲と侑斗は身構える。

「何者だ!?」

「目標を発見。柊柚子、及びランサーズとその協力者」

「「彼(あいつ)は…!」」

姿を見せた男に侑斗と黒咲は驚きを見せる。

彼は遊矢と柚子、翔太、月影、零羅が言っていた男、ブーンだった。

セルゲイと共に柚子をさらいに現れたことから、ロジェの部下だと思われたが、シンクロ次元の事件が収束してからは彼の行方が全く分からなくなっていた。

しかし、襟についているバッジから、彼が何者かは分かった。

「ジェルマン…!」

「ご名答だ。アカデミアの敵」

 

「私はさらに、《インフェルノイド・ティエラ》の効果発動!!こいつが相手モンスターを攻撃したバトルフェイズ終了時、フィールド上のカード1枚を除外できる!!」

「何!?」

「ご自慢のペンデュラム召喚はこれで退場だぁーーー!!」

港から飛んで戻ってくる槍が《魔装剣士ローラン》の胴体を背後から貫く。

剣士は自分がいつ致命傷を負ったのかを気付く暇もなく黒い炎に包まれ、消滅した。

「カードを1枚伏せて、ターンエンド…。おいおい、早く抵抗しないと負けちまうぞー…?」

 

ゲイツ

手札5→2

ライフ4000

場 インフェルノイド・ティエラ レベル1 攻撃3400

  インフェルノイド・シャイターン レベル1 守備0

  インフェルノイド・アシュメダイ レベル1 攻撃2200

  インフェルノイド・ヴァエル レベル1 攻撃2600

  煉獄の虚無(永続魔法)

  伏せカード1

 

翔太

手札1

ライフ2650

場 魔装船ヴィマーナ(青) ペンデュラムスケール3

 

「くそ…!まさか1ターンで《ホワイトライダー》を抜かれるなんてな…」

《魔装騎士ホワイトライダー》は魔装装備カード以外のカード効果を受けない上に、高い攻撃力を誇っていることから、少なくとも1ターンは持ってくれると思っていた。

しかし、それ以上の純粋な攻撃力を持つ《インフェルノイド・ティエラ》の登場で一変してしまった。

おまけにペンデュラムゾーンの片割れが消滅してしまい、ペンデュラム召喚すらできなくなってしまった。

「俺のターン!」

 

翔太

手札1→2

 

「俺は手札から魔法カード《逆境の宝札》を発動。相手フィールドに特殊召喚されたモンスターが存在し、俺のフィールドにモンスターが存在しないとき、デッキからカードを2枚ドローする」

せめてもの望みと、翔太はデッキトップを見る。

《煉獄の虚無》の効果で、こちらが受ける戦闘ダメージが半分になっているとはいえ、その攻撃をいつまで設けるわけにはいかない。

《インフェルノイド・アシュメダイ》の効果が不透明であるとはいえ、少なくとも《インフェルノイド・ヴァエル》は除去しなければ、勝利が難しくなる。

翔太は一気に2枚のカードを引き、それらのカードを確認する。

「よし…!俺はスケール3の《魔装画伯シャラク》をセッティング」

「おいおい…同じスケールのペンデュラムカードをセッティングするってブァッカかぁー??ペンデュラム召喚できないじゃあないのーーー!!」

「《シャラク》のペンデュラム効果発動。このカードを発動したターンのメインフェイズ時、もう片方のペンデュラムゾーンに魔装ペンデュラムモンスターが存在するとき、デッキから魔装ペンデュラムモンスター1体を手札に加える。俺は《魔装槍士ロンギヌス》を手札に加える。そして、手札から魔法カード《魔装の炎剣-レーヴァテイン》を発動。俺のペンデュラムゾーンに存在するカードがどちらも魔装モンスターの場合、デッキからレベル7以下の魔装ペンデュラムモンスター1体を特殊召喚する。ただし、この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効となり、ターン終了時に破壊される。俺は《魔装騎士ペイルライダー》を特殊召喚!」

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

 

「さらに、このカードが墓地へ送られたとき、自分フィールドに魔装騎士が存在する場合、デッキからカードを1枚ドローする」

 

魔装の炎剣-デュランダル

通常魔法カード

このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分Pゾーンに存在する2枚のカードがいずれも「魔装」カードの場合、自分のデッキに存在するレベル7以下の「魔装」Pモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化され、ターン終了時に破壊される。

(2):このカードが墓地へ送られたとき、自分フィールドに「魔装騎士」モンスターが存在する場合に発動する。デッキからカードを1枚ドローする。

 

「更に、このカードは俺のフィールドに魔装騎士が存在するとき、手札から特殊召喚できる。《魔装槍士ロンギヌス》を特殊召喚」

 

魔装槍士ロンギヌス レベル3 守備0

 

「そして…俺はレベル7の《魔装騎士ペイルライダー》とスケール3の《魔装船ヴィマーナ》、《魔装画伯シャラク》でオーバーレイ!」

「な…なにぃ!?ペンデュラムゾーンのモンスターを素材にエクシーズ召喚だとぉ!?生意気なぁーー!!」

「秩序の黒を纏いし炎の死神よ、さまよえる魂を焼き、眠りへ導け。ペンデュラムエクシーズチェンジ!現れろ、《魔装騎炎ブリュンヒルデ》!!」

 

魔装騎炎ブリュンヒルデ ランク7 攻撃2800

 

「《ブリュンヒルデ》の効果発動!オーバーレイユニットを1つ取り除き、墓地に存在するカードを5枚まで除外する!スピリット・パニッシュ!!」

《魔装騎炎ブリュンヒルデ》の前にゲイツの墓地から出てきた5枚のカードが飛んでいき、黒い炎へと変わる。

その5枚の哀れな羊を美しき死神がオーバーレイユニットの宿った釜で切り裂いた。

 

除外されたカード

・インフェルノイド・ベルフェゴル

・インフェルノイド・ルキフグス

・インフェルノイド・ネヘモス

・インフェルノイド・リリス

・インフェルノイド・アドラメレク

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・魔装騎士ペイルライダー

 

「なーーー!?ナナナ、なんとぉ!私の、私のインフェルノイドちゃんたちがぁーーー!?」

《魂の解放》に近い効果によって、墓地に存在することで有用性のあるものを中心にインフェルノイド達が除外され、ゲイツは慌て始める。

墓地に残ったインフェルノイドは《インフェルノイド・シャイターン》と《インフェルノウド・ティエラ》2枚ずつになってしまった。

しかし、女死神の効果はそれだけでは終わらない。

「更に、除外したカード1枚につき、攻撃力が400アップし、相手フィールド上に存在するモンスターの攻撃力を300ダウンさせる!」

 

魔装騎炎ブリュンヒルデ ランク7 攻撃2800→4800

インフェルノイド・ティエラ レベル1 攻撃3400→1900

インフェルノイド・アシュメダイ レベル1 攻撃2200→700

インフェルノイド・ヴァエル レベル1 攻撃2600→1100

 

「バトル!《魔装騎炎ブリュンヒルデ》で《インフェルノイド・シャイターン》を攻撃!」

《魔装騎炎ブリュンヒルデ》が魂を刈り取ったばかりの鎌を守備表示の《インフェルノイド・シャイターン》に向けて投げつける。

(《魔装槍士ロンギヌス》は魔装騎士に貫通効果を与える…。《ブリュンヒルデ》はルール上、魔装騎士モンスターとして扱われる以上、その効果を受ける…!)

自身の効果で攻撃力が4800に跳ね上がった《魔装騎炎ブリュンヒルデ》の一撃で、ゲイツのライフを一気に0にすることができる。

「うおおお!?そんなそんな!!タイムタァーイム!!」

「誰が待ったを認めるかよ、この一撃で負けろ!」

「いやいや、こんな廃墟じゃあ私のモミアゲが元気をなくしてしまうのさぁ。だから…《インフェルノイド・シャイターン》《アシュメダイ》、《ヴァエル》の効果発動!!」

攻撃対象となったはずの《インフェルノイド・シャイターン》が2体の仲間共々自分たちの姿を黒い炎そのものに姿を変え、翔太のデュエルディスクに入り込む。

左腕からじかに熱した棒をつけられたかのような熱さに翔太は左腕を抑える。

「お前…何を!?」

「ふぅ…これでモミアゲの手入れができる。こいつらは1ターンに1度、自分フィールドのモンスター1体をリリースすることで、相手の墓地のカード1枚を除外できる!インフェルノイドを墓地に肥やせるうえ、貴様の使えるカードを処分できるってえわけだぁ!!」

「ちっ…くるってる癖にキツい手を…!」

熱が収まるとともに、墓地から3枚のカードが自動的に排出され、それらのカードを翔太はデッキケースにしまう。

 

墓地から除外されたカード

・魔装騎士ホワイトライダー

・魔装騎士ペイルライダー

・魔装鬼ヨシヒロ

 

「《魔装鬼ヨシヒロ》は貴様のフィールドの魔装カードが戦闘・効果で私のモンスターを破壊した時、墓地から攻撃表示で特殊召喚できる便利なユニオンモンスター。そんなカードに出番は与えんよぉ!」

「なら、《ブリュンヒルデ》で《インフェルノイド・ティエラ》を攻撃!」

獲物を刈り取れず、宙を舞うままの鎌を《魔装騎炎ブリュンヒルデ》が指を動かしてその軌道を制御し始める。

鎌はグルリとゲイツと翔太の周囲を一回転した後で《インフェルノイド・ティエラ》を背後から横に真っ二つに切り裂いた。

その時に発生した衝撃波がゲイツを襲い、彼の左側のモミアゲが数本切れる。

「ぬおおおお!!」

 

ゲイツ

ライフ4000→1100

 

「よし…やっときつい一発をおみまいできたぜ…」

「まったく…よくも私のライフとモミアゲを傷つけてくれたなぁ…?生意気なガキのくせによぉー!!」

ライフ以上に、こだわりのあるモミアゲを傷つけられたことに腹を立て、ゲイツの額に青筋ができる。

「罠発動!《ショック・ドロー》!私が受けた戦闘ダメージ1000につき1枚、デッキからカードをドローする!私が受けたダメージは2900!よって、2枚カードをドローする!」

「俺はこれで、ターンエンド!」

 

ゲイツ

手札2→4

ライフ1100

場 煉獄の虚無(永続魔法)

 

翔太

手札2→1

ライフ2650

場 魔装騎炎ブリュンヒルデ(ORU2) ランク7 攻撃4800

  魔装槍士ロンギヌス レベル3 守備0

 

「私のぉ…ターーーーーン!!!」

 

ゲイツ

手札4→5

 

「私は手札から速攻魔法《異次元からの埋葬》を発動!ゲームから除外されているモンスターを3体まで墓地に戻すことができる。私は《インフェルノイド・ネヘモス》、《アドラメレク》、《リリス》を墓地へ戻す。そして、このカードは手札・墓地のインフェルノイド3体を除外することで、手札・墓地から特殊召喚できる。《インフェルノイド・シャイターン》3体し、墓地から《インフェルノイド・ネヘモス》を特殊召喚!!」

3体の《インフェルノイド・シャイターン》が墓地から炎となって出て来て、その炎が集結するとともに赤い蛇へと変化していく。

そして、その体に蝙蝠のような紫色の羽がつき、そこを中心に人間の骸骨も鎧のように浮かび上がった。

 

インフェルノイド・ネヘモス レベル10→1 攻撃3000

 

「ちっ…!」

「《ネヘモス》の効果発動ぉーー!!このカードの特殊召喚に成功したとき、このカード以外のフィールドのモンスターをすべて破壊する!!」

装着している骸骨の口から黒いビームがショットガンのように拡散しながら発射され、それに貫かれた《魔装騎炎ブリュンヒルデ》と《魔装槍士ロンギヌス》が消滅する。

「《ブリュンヒルデ》の効果発動!このカードが破壊されたとき、俺のペンデュラムゾーンのカードをすべて破壊し、このカードをペンデュラムゾーンに置くことができる!」

消滅したはずの女死神が翔太の隣に出現し、笑みを浮かべると同時に上空を舞い、青い光の柱に包まれる。

 

魔装騎炎ブリュンヒルデ(青) ペンデュラムスケール3

 

「そしてぇ、このカードは手札・墓地のインフェルノイド2体を除外することで、手札・墓地から特殊召喚できる。《インフェルノイド・アドラメレク》と《リリス》を除外し、《インフェルノイド・ヴァエル》を復活!!」

 

インフェルノイド・ヴァエル レベル7→1 攻撃2800

 

「そしてぇ、このカードは手札・墓地のインフェルノイド1体を除外することで、手札から特殊召喚できる!《インフェルノイド・アスタロス》を特殊召喚!!」

《インフェルノイド・ティエラ》が消滅し、右手の甲の短剣の刃をつけている黒いドラゴンの骸骨のような鎧姿の悪魔が現れる。

 

インフェルノイド・アスタロス レベル4→1 攻撃1800

 

駄目押しと言わんばかりに再びフィールドに展開されたインフェルノイドに翔太は舌打ちする。

これらのモンスターの一斉攻撃を凌がなければならないうえ、彼らにはこちらの墓地のカードを除外する効果も持っている。

墓地を利用したくても、しづらい状態だ。

「さぁ…私のモミアゲを汚した報いを受けてもらおうかぁーーーー!!《インフェルノイド・アスタロス》の効果発動!1ターンに1度、このカードの攻撃を放棄する代わりに、フィールドの魔法・罠カード1枚を破壊する!今度こそ消えてもらうぞーー、かわいい死神ちゅぁーーん!」

《魔装騎炎ブリュンヒルデ》にゲイツが投げキッスをすると同時に《インフェルノイド・アスタロス》は腕についている刃を発射する。

その刃に額を貫かれた女死神は消滅する。

「《ブリュンヒルデ》が破壊され、エクストラデッキへ行くとき、裏向きになる」

《魔装騎炎ブリュンヒルデ》は自らを破壊することで、手札・エクストラデッキの魔装騎士1体を特殊召喚できる効果がある。

この効果で現在、特殊召喚できるのは《魔装騎士ブラックライダー》1体のみだ。

しかし、彼女のペンデュラムスケールが3であるため、次に来るカード次第ではペンデュラム召喚で上級モンスターを召喚できる可能性があった。

破壊されたことで、それができなくなったが…。

「さぁー、邪魔者はなくなったぁ!バトル!《インフェルノイド・ネヘモス》でダイレクトアタックぅ!!」

《インフェルノイド・ネヘモス》のどくろの口から黒いビームが発射され、今度は拡散することなく、一直線に飛んでいき、翔太を貫く。

「ぐうううう…!」

 

翔太

ライフ2650→1150

 

「グアッハハハハ!!また直撃だぁ!!」

「俺は…手札から罠カード《ペンデュラム・アラート》を発動…。俺が戦闘ダメージを受けたとき、デッキからレベル4以下のペンデュラムモンスター1体を守備表示で特殊召喚できる。その効果で特殊召喚されたモンスターはこのターン、戦闘では破壊されず、ターン終了時に表側表示でエクストラデッキに行く…。俺は《魔装剛毅ヒデヒサ》を特殊召喚」

首に五芒星が描かれた鈴で作られた数珠をかけ、左肩部分に黒墨で『無』と大きく書いた金色の陣羽織姿の男がフィールドに現れる。

格闘家のような筋肉質な肉体で、数多くの傷跡が見えている。

 

魔装剛毅ヒデヒサ レベル4 守備1500

 

ペンデュラム・アラート

通常罠カード

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分が戦闘ダメージを受けたダメージステップ終了時に発動できる。デッキからレベル4以下のPモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールドに表側守備表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターはこのターン、戦闘では破壊されず、ターン終了時に表側表示でEXデッキに行く。

(2):このカードは自分フィールドにモンスターが存在しない場合、手札から発動できる。

 

「そして、《ヒデヒサ》の効果発動!このカードの召喚・特殊召喚に成功したとき、俺のフィールドにほかのカードがない場合、デッキ・墓地から魔装モンスター1体を手札に加えることができる。俺はデッキから《魔装弓士ロビン・フッド》を手札に加える」

「なぁるほどぉ。これで私はとどめを刺せなくなったという訳か…。なら、私は手札から永続魔法《煉獄の消華》を発動。手札1枚を捨て、デッキから煉獄と名の付く魔法・罠カード1枚を手札に加える。私はデッキから《煉獄の死徒》を手札に加える。そして、カードを1枚伏せて、ターンエンド」

ゲイツのターン終了宣言と同時に、《魔装剛毅ヒデヒサ》がフィールドから消えていった。

 

ゲイツ

手札5→1(伏せカード、手札のいずれか1枚《煉獄の死徒》)

ライフ1100

場 インフェルノイド・ネヘモス レベル1 攻撃3000

  インフェルノイド・ヴァエル レベル1 攻撃2800

  インフェルノイド・アスタロス レベル1 攻撃1800

  煉獄の虚無(永続魔法)

  煉獄の消華(永続魔法)

  伏せカード1

 

翔太

手札1(《魔装弓士ロビン・フッド》)

ライフ1150

場 なし

 

(さぁ…絶体絶命だ…)

手札に加わった《魔装弓士ロビン・フッド》を翔太はじっと見る。

墓地のカードを当てにできなくなった翔太に残されたのは手札のこのカード、そして次のドローするカードの2枚。

そのカードにかけることになる。

「俺の…ターン!!」

 

翔太

手札1→2

 

「俺は手札の《魔装弓士ロビン・フッド》の効果を発動。相手フィールドにのみモンスターが存在するとき、手札のこのカードを表側表示でエクストラデッキに置くことで、墓地・エクストラデッキの魔装ペンデュラムモンスター1体を手札に加えることができる。俺はエクストラデッキから《魔装剛毅ヒデヒサ》を手札に加え、そのままペンデュラムゾーンにセッティングする」

「ムハハハハ!!そうだよなぁ!?インフェルノイド達がいる限り、墓地のカードを利用できないよなぁ!?」

「そして、俺はスケール8の《魔装鬼ストリゴイ》をペンデュラムゾーンにセッティング。この瞬間、《魔装剛毅ヒデヒサ》のペンデュラム効果発動。このカードがペンデュラムゾーンに存在し、もう片方のペンデュラムゾーンに魔装ペンデュラムカードが存在するとき、このカードを破壊し、デッキからカードを1枚ドローする!」

「わざわざペンデュラム召喚できる状況を捨てて、これからドローするカードにすべてをかけるつもりかぁ?」

「そういうことだ!」

翔太はカードをドローし、そのカードを見る。

デッキは彼の思いに答えつつあった。

「俺は手札から魔法カード《ペンデュラム・ホルト》を発動!俺のエクストラデッキに表側表示で存在するペンデュラムモンスターが3枚以上の時、デッキからカードを2枚ドローする。そして、このカードの発動後、俺はターン終了時までデッキからカードを手札に加えることができない」

 

魔装剛毅ヒデヒサ

レベル4 攻撃1800 守備1500 地属性 戦士族

【Pスケール:青2/赤2】

このカード名の(2)のP効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。

(2):自分メインフェイズにもう片方の自分のPゾーンに「魔装剛毅ヒデヒサ」以外の「魔装」カードが存在する場合に発動できる。このカードを破壊し、自分はデッキから1枚ドローする。

【モンスター効果】

(1):このカードの召喚・特殊召喚に成功したとき、自分フィールドにこのカード以外のカードが存在しない場合、デッキ・墓地に存在する「魔装」モンスター1体を対象に発動できる。そのカードを手札に加える。

 

「更に俺は手札の《魔装騎士ケントゥリア》をセッティング。同時に《ケントゥリア》のペンデュラム効果発動。このカードを発動したとき、このカードを破壊することで、エクストラデッキに表側表示で存在するペンデュラムモンスター1体をペンデュラムゾーンに置くことができる。俺はスケール1の《魔装鳥キンシ》をセッティング。これで俺はレベル2から7までのモンスターを同時に召喚可能!ペンデュラム召喚!現れろ、《魔装騎士ケントゥリア》、《魔装弓士ロビン・フッド》、《魔装剛毅ヒデヒサ》、《魔装槍士ロンギヌス》!」

 

魔装騎士ケントゥリア レベル2 攻撃300(チューナー)

魔装剛毅ヒデヒサ レベル4 攻撃1800

魔装弓士ロビン・フッド レベル3 攻撃1000

魔装槍士ロンギヌス レベル3 攻撃800

 

「そして、俺は手札から魔法カード《異界共鳴-シンクロ・フュージョン》を発動!」

「何!?そのカードは…??」

「お前らの裏切り者が作ったカードのコピーだ。こいつは同じ素材でシンクロ召喚と融合召喚を同時に行うことができる。俺はレベル3の《ロビン・フッド》、《ロンギヌス》にレベル2の《ケントゥリア》をチューニングと同時に融合!現れろ、《魔装騎士レッドライダー》、《魔装雷竜リンドヴルム》!」

 

魔装騎士レッドライダー レベル8 攻撃3000

魔装雷竜リンドヴルム レベル8 攻撃3000

 

「《レッドライダー》の効果。俺がモンスターの特殊召喚に成功したターンのバトルフェイズ時、このカードの攻撃力はバトルフェイズ終了時まで1000アップする」

 

魔装騎士レッドライダー レベル8 攻撃3000→4000

 

「ちいい…!」

「バトル!《レッドライダー》で《インフェルノイド・ネヘモス》を攻撃!同時に、《魔装鬼ストリゴイ》のペンデュラム効果発動!俺の魔装騎士が攻撃するとき、相手フィールド上のモンスターの攻撃力・守備力をターン終了時まで600ダウンさせる!」

「むうう…私は速攻魔法《煉獄の死徒》を発動!これで、《ネヘモス》はこのターン、相手の効果を受けない!」

《魔装鬼ストリゴイ》の五芒星と眼がギラリと光り、同時に《インフェルノイド・ネヘモス》を除くゲイツのモンスターたちが赤い光に包まれ、攻撃力をダウンさせる。

 

インフェルノイド・ヴァエル レベル1 攻撃2800→2200

インフェルノイド・アスタロス レベル1 攻撃1800→1200

 

「私は《煉獄の消華》の効果発動!私のインフェルノイドが相手モンスターと戦闘を行ったダメージ計算後に、フィールドのこのカードを墓地へ送ることで、戦闘を行った互いのモンスターを除外する!」

《煉獄の消華》が黒い炎と化し、巨大な口のような形に変化する。

そして、戦闘を行う2体のモンスターを丸ごと飲み込んでいった。

「だが、戦闘ダメージは受けてもらうぞ!」

 

ゲイツ

ライフ1100→100

 

「そして、《魔装雷竜リンドヴルム》で《インフェルノイド・ヴァエル》を攻撃!」

《魔装雷竜リンドヴルム》の口に電気が集まっていき、それが《インフェルノイド・ヴァエル》に向けて発射される。

たとえインフェルノイドの効果を使ったとしても、この攻撃を防ぐ手段がなく、ゲイツは傷ついたモミアゲを撫でる。

「フッ…あんな小僧にモミアゲを傷つけられたのが運の尽き…か。さらば、わが愛しき人生。もみあげよ、せめて風に乗って新しい世界へ飛んでいけ…」

潔く自分の敗北を受け入れ始めたゲイツはデュエルディスクにパスワードを入力する。

雷が《インフェルノイド・ヴァエル》に直撃すると同時に、ゲイツのデュエルディスクが爆発、彼はその光に包まれていった。

 

ゲイツ

ライフ100→0

 

「自爆…しただと…?」

ソリッドビジョンが消え、ゲイツがいた場所には何一つ、彼がいた証となるものが残されていなかった。

ブーンは何らかの目的で敗北後はすぐに姿を消したのに、この違いはいったい何なのか。

(いや、それ以上に…)

今の翔太は敵よりも、あの頭痛と同時に見えた記憶のことが気になっていた。

あの光景が正しければ、自分の正体は…。

翔太は頭を乱暴に振り回しその考えを消すと、凌牙の元へ向かう。

「おい、生きてるか?」

「…ああ。さっきの爆発音は…何だ?」

「あいつがやった。負けたと同時にな…」

「ちっ、そうか…。自分の口を封じやがったか…」

翔太の手を借り起き上がる凌牙はゲイツがいた場所をにらむ。

火薬のにおいがするため、彼が自爆して果てたという翔太の言葉が真実だと理解できる。

「…!こうしちゃいられねえ!急いで地下室へ戻るぞ?」

「はぁ?いきなりどうした?」

「急げ!あのレナードがあの野郎1人だけをよこすとは思えねえ!!」

焦りに満ちた表情を浮かべ、凌牙は痛みに耐えながら地下室へ向かう。

(ったく、いったい何が何なんだよ…?)

状況を飲み込めない翔太は凌牙の後を追う。

心の中にできた大きな暗い影を振り払おうと、いつもよりも足に力が入り、動きも速くなっていた。



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第96話 鋼の意思VS鋼の歯車

「なぜ、ジェルマンの貴様がロジェと行動を共にしていた!?」

デュエルディスクを展開し、構えながら黒咲はブーンに疑問をぶつける。

セルゲイが柚子をさらう任務を遂行していたとき、彼はセルゲイをサポートするような動きを見せていた。

治安維持局から接収した資料を調べた結果、彼がシンクロ次元に現れたのはロジェが長官になった翌年。

それからはずっとロジェの側近として裏から彼をサポートしていた。

「簡単な話だ。もう奴が捕らえられた以上、隠しても無駄なことだからな。俺はただのスパイだ。奴の生み出した技術はもうすでにアカデミアに流出している」

「技術を盗むためだけに、だと?」

「過去に中国などの他国からやってきた産業スパイと同じ理屈だ」

表情を変えず、淡々と述べるブーンだが、遊矢たちにはよくわからないところもあった。

ロジェは柚子かセレナ、もしくはその両方を確保し、アカデミアと交渉するつもりでいた。

そんな交渉が通じるかどうかは今となっては未知数だが、ブーンの行いは一歩間違えれば、ロジェにその2人を与えかねない行動だった。

だが、今の彼の態度を見ていると、ロジェがランサーズに敗れることは予測していたようだ。

「話はここまでだ。柊柚子を渡してもらう」

「ふざけるな!貴様らアカデミアには…もうなに一つ与えるつもりはない!!」

デッキからカードを引き、いつでもデュエルを開始できるようになった黒咲は叫ぶ。

ブーンはもうそれが分かっているかのように、既に左手には5枚のカードを手にしていた。

「黒咲隼…ハートランド・デュエル・スクールスペード校所属。ピースの1つ、黒咲瑠璃の兄…ということになっている男か」

ブーンの淡々とした口調の中から聞こえた、まるでドラマの設定で瑠璃の兄になっているような言葉に黒咲は静かに怒りを覚える。

これからデュエルになる以上、冷静さを失ってはならないが、どうしてもその言葉が許せなかったうえ、気になっていた。

「いいだろう。貴様らランサーズはレジスタンスの希望の象徴。それを奪うことで、アカデミアに貢献するとしよう」

そうつぶやいたブーンはデュエルディスクを操作し、妨害電波を発生させる。

遊矢たちのデュエルディスクが動作しなくなったうえ、カメラの映像を映していたテレビの映像が乱れ、見れなくなっていた。

「これで、誰もこのデュエルに乱入することはできない。そして…誰も助けに来ない」

「貴様は俺1人で倒す!」

「「デュエル!!」」

 

ブーン

手札5

ライフ4000

 

黒咲

手札5

ライフ4000

 

 

「俺の先攻。俺手札から魔法カード《緊急発進》を発動。俺のフィールドにモンスターが存在しないとき、デッキからレベル4以下の機械族モンスター1体を特殊召喚できる。俺はデッキから《鋼の歯車人間》を特殊召喚。この効果で特殊召喚されたモンスターの攻撃力・守備力は0となり、ターン終了時に除外される」

ブーンのフィールドに片腕と両足が白い金属製の強化外骨格となっていて、両手に電気を帯びた特殊警棒を装備した人間が現れる。

 

鋼の歯車人間 レベル2 攻撃1300→0

 

緊急発進

通常魔法カード

このカード名のカードは1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドにモンスターが存在しないとき、自分のデッキに存在するレベル4以下の機械族モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの攻撃力・守備力は0となり、ターン終了時に除外される。

 

「更に手札から魔法カード《機械複製術》を発動。自分フィールドの攻撃力500以下の機械族モンスター1体と同じ名前の機械族モンスターをデッキから2体まで特殊召喚する。俺はさらに2体の《鋼の歯車人間》を特殊召喚」

 

鋼の歯車人間×2 レベル2 攻撃1300

 

「更に手札から魔法カード《AI's Society》を発動。俺のフィールドにメタルギアが存在するとき、デッキからメタルギアカード1枚を手札に加え、デッキトップからカードを1枚墓地へ送る。私はデッキから《鋼の歯車工場》を手札に加える」

 

デッキから墓地へ送られたカード

・鋼の歯車偵察機

 

Ai's Society

通常魔法カード

(1):自分フィールドに「メタルギア」モンスターが存在するとき、デッキに存在する「メタルギア」カード1枚を対象に発動できる。そのカードを手札に加える。その後、デッキの上からカードを1枚墓地へ送る。

 

「そして手札に加えた《鋼の歯車工場》を発動。その効果により、墓地からレベル4以下のメタルギア、《鋼の歯車偵察機》を特殊召喚」

フィールドに現れた《鋼の歯車工場》のソリッドビジョンの中から3本脚がついた苦労球体が現れ、それについているカメラが黒咲の様子を捉える。

 

鋼の歯車偵察機 レベル1 守備2000

 

「《鋼の歯車偵察機》の効果発動。俺のフィールドのこのカードを含めたモンスターを素材にメタルギアモンスターを融合召喚する。俺が融合素材とするのは《鋼の歯車偵察機》と《鋼の歯車人間》3体」

《鋼の歯車偵察機》の3本脚が鋭利な槍に変化し、それらが《鋼の歯車人間》の新造を貫く。

そして、上空に現れた鉛色の渦に4体が飲み込まれていく。

「自爆する定めを持つ偵察機よ、心封じられし兵士たちを取り込み、任務遂行の標とせよ。融合召喚。現れろ、レベル10。《鋼の歯車最古人類》」

鉛色の渦が大型化していき、天井や壁を破壊していく。

「何!?なんで大型化してるの!?」

「みんな、伏せるんだ!!」

侑斗の叫びを聞き、遊矢たちは急いでうつ伏せになり、両手で頭を抑える。

天井が崩れ、1階の床だったがガレキが落ちてくるが、ウィンダと風の眼を発動した侑斗が風を起こしてそれらが侑斗たちに当たらないようにした。

この光景は病院の中に戻った翔太と凌牙も目撃していた。

「これは…《融合》、なのか!?」

「くそっ、もうおっぱじめてやがったか!」

鉛色の渦が徐々に高度を上げていき、病院を破壊していく。

渦に巻き込まれるわけにはいかず、翔太達はやむなく病院を出るが、同時に病院が半壊し、屋上があった場所に渦が止まる。

そして、その中から《古代の機械混沌巨人》に匹敵する大きさの、鉛色の装甲をした人型の兵器が姿を現した。

「あんなモンスター…まだアカデミアにいたのかよ…?」

初めて二本足で立った世界最古の人類、サヘラントロプスの名前を持つ鋼の巨人を見た翔太はそうつぶやいた。

 

「はあ、はあ、はあ…みんな、大丈夫…?」

疲れ果て、座り込んだウィンダが伏せている遊矢たちに尋ねる。

「ああ…ウィンダさん、ありがとう…。柚子、大丈夫か?」

「ええ。でも、あんなのがリアルソリッドビジョンで…」

体や髪についた小石や砂を払い、起き上がった柚子は目の前に見える鉛色の2本足に驚きを隠せなかった。

スタンダード次元でそれほどのリアルソリッドビジョンを作り出すには遊勝塾やレオコーポレーションなどに用意されているアクションデュエル用のリアルソリッドビジョンシステムを使う必要がある。

だが、アカデミアのデュエルディスクに搭載されているリアルソリッドビジョンシステムは単独でこれほどの大型モンスターを出すことが可能になっていた。

「アカデミアめ…!」

この地下室に入るためにつかったドアはガレキで埋まっていて、そこから上へあがることはできない。

侑斗とウィンダもがれきから全員を助けるために力を使ってしまったがために、疲労でしばらくは精霊の力を使うことができない。

黒咲は《鋼の歯車最古人類》の足に捕まり、上へあがっていく。

登りながら見上げると、その巨大人型兵器の肩の上にはブーンの姿があり、そこからエクシーズ次元を見下ろす彼がとても気に食わなかった。

どうにか地上まで出ることができ、巨大兵器から距離をとる黒咲の姿を翔太と凌牙が見つける。

「黒咲、やはり敵が…!」

「そうだ…。はめられていたようだ。ほかのみんなは無事だ!」

足から離れた黒咲は睨むようにブーンを見た。

「だったら、俺はあいつらを助けに行くぞ」

そう言い残し、黒咲のことを凌牙に押し付けた翔太は急いで彼が出てきた穴のところへ向かった。

 

鋼の歯車最古人類 レベル9 攻撃2000

 

「融合素材の数とレベルにしては、攻撃力が低いな…」

4体ものフィールドのモンスターを素材に融合召喚された《鋼の歯車最古人類》は同じ大きさの《古代の機械混沌巨人》と異なり、攻撃力は低い。

そうなると警戒しなければならないのは、モンスター効果。

「《鋼の歯車工場》の効果。俺がメタルギア融合モンスターの融合召喚に成功したとき、このカードにメタルギアカウンターを1つ置く」

 

鋼の歯車工場 メタルギアカウンター0→1

 

「さらに、《鋼の歯車人間》の効果発動。このカードがメタルギア融合モンスターの融合素材として墓地へ送ったとき、デッキからカードを1枚ドローする」

3体の《鋼の歯車人間》を素材としたことから、ブーンは一気に3枚カードをドローする。

これにより、ブーンの手札が再び5枚に戻った。

 

鋼の歯車人間(メタルギア・ヒューマン)

レベル2 攻撃1300 守備1200 効果 地属性 機械族

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが「メタルギア」融合モンスターの融合素材として墓地へ送られたときに発動する。自分はデッキからカードを1枚ドローする。

(2):自分ターン開始時、自分の手札が0枚の場合に墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。デッキから「メタルギア」カード1枚を手札に加える。

 

「さらに私は手札から《鋼の歯車騎兵》を召喚」

 

鋼の歯車騎兵 レベル3 攻撃1000

 

「《騎兵》の効果発動。このカードの召喚に成功したとき、手札・デッキの同名モンスター2体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効となり、攻撃力・守備力は0となる。俺はデッキから《鋼の歯車騎兵》2体を特殊召喚」

 

鋼の歯車騎兵×2 レベル3 攻撃1000→0

 

「さらに手札から魔法カード《鋼の歯車融合》を発動。俺のフィールドのメタルギアを融合する。融合素材とするのは《鋼の歯車騎兵》3体。大地を走る兵器たちよ、歯車を絡ませ、任務遂行の標となれ。融合召喚。現れろ、レベル8、《鋼の歯車T-REX》」

 

鋼の歯車T-REX レベル8 攻撃2800

 

鋼の歯車工場 メタルギアカウンター1→2

 

「そして、《鋼の歯車工場》の効果発動。1ターンに1度、このカードの上のメタルギアカウンターを2つ取り除くことで、デッキからメタルギアカード1枚を手札に加えることができる。俺はデッキから《対峙する鋼の歯車》を手札に加える。更に、《鋼の歯車最古人類》の効果。このカードの攻撃力は俺のフィールドに存在する、融合召喚されたメタルギアモンスターの数×1000アップする」

 

鋼の歯車最古人類 レベル9 攻撃2000→4000

鋼の歯車工場 メタルギアカウンター2→0

 

「ちっ…やはり攻撃力アップの効果があったか!?」

「まだだ。俺は手札から魔法カード《対峙する鋼の歯車》を発動。俺のフィールドのメタルギア融合モンスター1体の攻撃力の半分のダメージを相手に与える。私が対象とするのは《鋼の歯車最古人類》。よって、貴様には2000のダメージを受けてもらう」

「先攻1ターン目でいきなりかよ…!?」

発動された《対峙する鋼の歯車》の効果を受けた《鋼の歯車最古人類》が腰にさしている黒い金属製の蛇腹剣を抜く。

黒いしなやかな刀身には火花が飛んでおり、それを地面に突き刺すと同時に黒咲の周囲に赤黒いとげのような岩石が隆起する。

ブーンは薄い笑みを浮かべ、右手の指を鳴らすと、その岩が大爆発した。

「黒咲!?」

「ぐう、う…!」

爆発の勢いはすさまじく、翔太と凌牙が両腕で爆風から顔を隠しつつ、それに飲み込まれた黒咲に目を向ける。

煙が消えると、そこには全身が傷だらけの状態になって倒れる黒咲の姿があった。

 

黒咲

ライフ4000→2000

 

「私はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

ブーン

手札5→3

ライフ4000

場 鋼の歯車最古人類 レベル9 攻撃4000

  鋼の歯車T-REX レベル8 攻撃2800

  鋼の歯車工場(メタルギアカウンター0 永続魔法)

  伏せカード1

 

黒咲

手札5

ライフ2000

場 なし

 

《鋼の歯車最古人類》のバックパックに火が付き、巨体がゆっくりと上昇する。

そして、両足が病院の地下から完全に出て、そのまま地上に着地した。

「ぐ、うう…おのれ…!」

プルプルと震える両手で体を支え、痛みに耐えながら立ち上がる。

額の一部が切れたようで、そこから流れる血が黒咲の左眉と目を赤く濡らしており、着ているコートもボロボロだ。

「ほぉ…この爆発を受けても立ち上がることができるとは…」

「貴様が言っただろう!?俺が…ランサーズが敗れれば、レジスタンスは希望を失う…」

悔しいが、それは黒咲も認めざるを得なかった。

クローバー校レジスタンスが実質ジェルマンに乗っ取られている今の状況で、追い打ちをかけるようにランサーズが敗れるような事態になってしまうと、スペード校レジスタンスの式に大きな影響を与える。

その隙をレナードがつかないはずがない。

カイトをそそのかし、スペード校とクローバー校のレジスタンス同時の戦争を起こし、つぶし合わせる。

その結果、漁夫の利でアカデミアがエクシーズ次元を完全に掌握する。

そのようなことを起こすわけにはいかない。

「負けるわけには…いかない!俺の…ターン!!」

 

黒咲

手札5→6

 

「俺はスケール2の《RR-フラッシュ・ヴァルチャー》とスケール5の《RR-ボミング・レイニアス》でペンデュラムスケールをセッティング!これで俺はレベル3と4のモンスターを同時に召喚可能!戦場を舞い、戦火に身を焦がす鳥たちよ、揺れ動く戦況を空より見極めよ。ペンデュラム召喚!!現れろ、俺のモンスター!!《聖鳥クレイン》、《終末の騎士》、《RR-ミミクリー・レイニアス》!」

 

聖鳥クレイン レベル4 攻撃1600

終末の騎士 レベル4 攻撃1400

RR-ミミクリー・レイニアス レベル4 攻撃1100

 

「《聖鳥クレイン》の効果!このカードの特殊召喚に成功したとき、デッキからカードを1枚ドローする。そして、《終末の騎士》の効果。このカードの召喚・反転召喚・特殊召喚に成功したとき、デッキから闇属性モンスター1体を墓地へ送る。俺はデッキから《RR-ミミクリー・レイニアス》を墓地へ送る。さらに、墓地へ送った《ミミクリー・レイニアス》の効果。このカードを墓地から除外することで、デッキからRRカード1枚を手札に加える。俺はデッキから《RR-ネスト》を手札に加える。更に俺は手札から速攻魔法《鳥合無象》を発動。俺のフィールドに存在する獣族・獣戦士族・鳥獣族モンスター1体をリリースし、そのモンスターと同じ種族のモンスターをエクストラデッキから特殊召喚する。《聖鳥クレイン》をリリースし、《RR-サテライト・キャノン・ファルコン》を特殊召喚!」

ペンデュラム召喚されたばかりの《聖鳥クレイン》がフィールドから消滅し、入れ替わるように上空に《RR-サテライト・キャノン・ファルコン》が現れる。

 

RR-サテライト・キャノン・ファルコン ランク8 攻撃3000

 

「更に手札から永続魔法《RR-ネスト》を発動!自分フィールドにRRが2体以上存在するとき、1ターンに1度、デッキ・墓地のRR1体を手札に加える。俺はデッキから《RR-バニシング・レイニアス》を手札に加える」

「《鳥合無象》の効果で特殊召喚されたモンスターは攻撃できず、ターン終了時に破壊される…。目的はランクアップか…」

「その通りだ!俺は手札から魔法カード《RUM-スキップ・フォース》を発動!俺のフィールドのRRをランクが2つ高いRRにランクアップさせる。俺は《サテライト・キャノン・ファルコン》でオーバーレイネットワークを再構築!」

《RR-サテライト・キャノン・ファルコン》が上空に現れたオーバーレイネットワークの中へ消えていく。

そして、その中で《RR-アルティメット・ファルコン》へとその姿を変えようとしていた。

「俺は《鋼の歯車最古人類》の効果発動。1ターンに1度、エクストラデッキからの特殊召喚、もしくはモンスターを特殊召喚する効果を持つ魔法・罠カードの発動を無効にし、破壊する!」

「何!?」

《鋼の歯車最古人類》の右腕に装着されているレールガンが上空のオーバーレイネットワークに向けられ、そこにミサイルが発射される。

《RR-アルティメット・ファルコン》に変化しつつあった《RR-サテライト・キャノン・ファルコン》がミサイルの直撃を受けると、元の姿に戻って地上へ転落した。

「くぅ…!」

「これで、《鳥合無象》の効果で特殊召喚された《サテライト・キャノン・ファルコン》はフィールドに残る…」

黒咲は《RR-アルティメット・ファルコン》をエクシーズ召喚し、その効果で攻撃力をダウンさせたうえで戦闘破壊する作戦だった。

そのモンスターはほかのカードの効果を受けないことから、攻撃を妨害される心配が少ないが、召喚そのものを無効にされてはどうしようもない。

「だが…まだだ!俺はレベル4の《終末の騎士》と《ミミクリー・レイニアス》でオーバーレイ!冥府の猛禽よ、闇の眼力で真実をあばき、鋭き鉤爪で栄光をもぎ取れ!エクシーズ召喚!飛来せよ!ランク4!《RR-フォース・ストリクス》!」

 

RR-フォース・ストリクス ランク4 守備2000

 

「《フォース・ストリクス》の攻撃力・守備力は俺のフィールドに存在するこのカード以外の鳥獣族モンスターの数×500アップする」

 

RR-フォース・ストリクス ランク4 守備2000→2500

 

「そして、《フォース・ストリクス》の効果。1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除き、デッキから闇属性・鳥獣族・レベル4モンスター1体を手札に加える。俺はデッキから《RR-ファジー・レイニアス》を手札に加える。そして、《ファジー・レイニアス》は俺のフィールドにRRが存在するとき、手札から特殊召喚できる」

 

RR-ファジー・レイニアス レベル4 攻撃500

RR-フォース・ストリクス ランク4 守備2500→3000

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・終末の騎士

 

「更に、俺は手札から《RR-バニシング・レイニアス》を召喚!」

 

RR-バニシング・レイニアス レベル4 攻撃1300

 

「俺はレベル4の《ファジー・レイニアス》と《バニシング・レイニアス》でオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろ、2体目の《フォース・ストリクス》!」

 

RR-フォース・ストリクス ランク4 守備2000→3000

 

「2体目の《フォース・ストリクス》の効果。オーバーレイユニットを1つ取り除き、デッキからもう1体の《RR-バニシング・レイニアス》を手札に加える。そして、オーバーレイユニットとして墓地へ送った《ファジー・レイニアス》の効果発動。デッキからもう1枚の《ファジー・レイニアス》を手札に加える。そして、《バニシング・レイニアス》の効果。このカードの召喚・特殊召喚に成功したターンのメインフェイズ時に1度、手札に存在するレベル4以下のRR1体を特殊召喚できる。俺は《バニシング・レイニアス》を特殊召喚。そして、先ほど特殊召喚した《バニシング・レイニアス》の効果により、手札の《ファジー・レイニアス》を特殊召喚!」

 

RR-バニシング・レイニアス レベル4 攻撃1300

RR-ファジー・レイニアス レベル4 攻撃500

 

「これで再び《フォース・ストリクス》をエクシーズ召喚する条件が整った、ということか…」

「その通りだ。俺はレベル4の《バニシング・レイニアス》と《ファジー・レイニアス》でオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろ、3体目の《フォース・ストリクス》!」

 

RR-フォース・ストリクス ランク4 守備2000→3500

RR-フォース・ストリクス×2 ランク4 守備3000→3500

 

「3体目の《フォース・ストリクス》の効果。オーバーレイユニットを1つ取り除き、デッキから《RR-ミミクリー・レイニアス》を手札に加える。更に俺は手札から魔法カード《エクシーズ・トレジャー》を発動!フィールド上に存在するエクシーズモンスターの数だけ、俺はデッキからカードをドローする!」

「狙いはそのカードか…!」

《RR-アルティメット・ファルコン》の召喚に失敗してもなお、何度も《RR-フォース・ストリクス》をエクシーズ召喚した最大の理由がそれだった。

今の黒咲のフィールドにいるエクシーズモンスターは4体。

よって、このカード1枚で一気に4枚ものカードをドローすることができる。

黒咲は4枚のカードを指にかける。

「(あの《鋼の歯車最古人類》が存在する限り、RUMもエクシーズ召喚も妨害される…。奴を仕留めることのできるカードを…!)ドロー!!」

4枚のカードをドローした瞬間、彼を中心に一陣の風が起こり、周囲に残っている岩石の欠片が吹き飛ぶ。

「よし…!俺は手札から《RUM-レイド・フォース》発動!俺のフィールドのエクシーズモンスター1体をランクの1つ高いRRにランクアップさせる!俺は2体目の《フォース・ストリクス》でオーバーレイネットワークを再構築!」

《RR-フォース・ストリクス》が《RR-サテライト・キャノン・ファルコン》が脱落したオーバーレイネットワークの中に飛び込んでいく。

《鋼の歯車最古人類》は再びレールガンを発射して妨害しようとたくらむが、冷却時間の問題でそれを発射することができなかった。

「獰猛なるハヤブサよ。激戦を切り抜けしその翼翻し 寄せ来る敵を打ち破れ!ランクアップエクシーズチェンジ!現れろ!ランク5!《RR-ブレイズ・ファルコン》!」

 

RR-ブレイズ・ファルコン ランク5 攻撃1000

 

「《ブレイズ・ファルコン》の効果!1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除き、相手フィールドの特殊召喚されたモンスターをすべて破壊し、破壊したモンスター1体につき500のダメージを与える!」

《RR-ブレイズ・ファルコン》に搭載されているビットが複数分離した後で飛んでいき、2体のメタルギアに向けて四方からビームを発射する。

「これで貴様のフィールドのモンスターは全滅だ!」

「カウンター罠《ミラーコート》を発動。相手のエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターの効果の発動を無効にし、破壊する」

「く…!」

2体のメタルギアの装甲が鏡のようにコーティングされ、ビームが《RR-ブレイズ・ファルコン》に向けて跳ね返る。

次々とビームが直撃し、《RR-ブレイズ・ファルコン》は爆発とともに消滅した。

 

ミラーコート

カウンター罠カード

(1):EXデッキから特殊召喚された相手モンスターの効果が発動したときに発動できる。その発動を無効にし、破壊する。

 

「俺は…カードを2枚伏せ、ターンエンド…。同時に、《鳥合無象》の効果により、《サテライト・キャノン・ファルコン》は墓地へ送られる」

 

ブーン

手札3

ライフ4000

場 鋼の歯車最古人類 レベル9 攻撃4000

  鋼の歯車T-REX レベル8 攻撃2800

  鋼の歯車工場(メタルギアカウンター0 永続魔法)

 

黒咲

手札6→1

ライフ2000

場 RR-フォース・ストリクス×2(ORU1) ランク4 守備3500→2500

  RR-ネスト(永続魔法)

  伏せカード2

  RR-フラッシュ・ヴァルチャー(青) Pスケール2

  RR-ボミング・レイニアス(赤) Pスケール5

 

「俺のターン、ドロー」

 

ブーン

手札3→4

 

「俺は手札から魔法カード《貪欲な壺》を発動。俺の墓地のモンスター5体をデッキに戻し、デッキからカードを2枚ドローする。俺は《鋼の歯車人間》2枚と《鋼の歯車騎兵》3体をデッキに戻し、デッキからカードを2枚ドローする」

状況によっては一気に展開できる《鋼の歯車騎兵》が再びデッキに戻っただけでなく、更に手札を補充する。

ドローした後で、彼は黒咲の2枚の伏せカードを見る。

「なるほど…その2枚の伏せカードにかけているか。ならば、それを断ち切るのみ。俺は手札から魔法カード《メタルギア・ストーム》を発動。俺のフィールドにメタルギア融合モンスターが存在するとき、フィールド上にセットされている魔法・罠カードをすべて破壊する。その時、相手はセットしている魔法・罠カードの効果を発動できない」

黒咲のフィールドを鉛色の嵐が襲い掛かり、2枚の伏せカードを破壊しようとする。

その時、伏せているカードのうちの1枚が淡く光る。

「貴様が破壊する魔法・罠カードの内の1枚は《RR-ブレイク》。セットされているこのカードが破壊され墓地へ送られるとき、デッキからRRカード1枚を墓地へ送ることができる。俺はデッキから《RR-レディネス》を墓地へ送る」

「うまいな…」

黒咲が墓地へ送った《RR-レディネス》を見たブーンがつぶやく。

破壊した《RR-ブレイク》の効果はRR版の劣化《聖なるバリア-ミラーフォース》のような効果を持っている。

仮に気にせずに攻撃した場合はその効果で2体のメタルギアが撃破されていた可能性があり、たとえ破壊されたとしても《RR-レディネス》を墓地へ落したことで、その2つ目の効果でダメージを防ぐことができる。

何が何でもこのターンをしのぎ、チャンスを得ようとする彼の気迫を感じた。

 

破壊された布施カード

・RR-ブレイク

・エクシーズ・リボーン

 

 

メタルギア・ストーム

通常魔法カード

(1):自分フィールドに「メタルギア」融合モンスターが存在するときに発動できる、フィールド上のセットされている魔法・罠カードをすべて破壊する。この効果に対し、相手はセットしているカードの効果を発動できない。

 

RR-ブレイク

通常罠カード

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):相手フィールドの特殊召喚されたモンスターが自分フィールドの「RR」Xモンスターを攻撃対象としたときに発動できる。相手フィールドの特殊召喚された攻撃表示モンスターをすべて破壊する。

(2):セットされているこのカードが墓地へ送られたとき、自分のデッキに存在する「RR」カード1枚を対象に発動できる。そのカードを墓地へ送る。

 

 

「俺は《鋼の歯車IR》を召喚」

 

鋼の歯車IR レベル4 攻撃1000

 

「《IR》の効果。攻撃表示で存在するこのカードを守備表示にすることで、デッキからレベル4以下のメタルギア1体を特殊召喚する。俺は《鋼の歯車蛹》を特殊召喚」

 

鋼の歯車IR レベル4 攻撃1000→守備1900

鋼の歯車蛹 レベル4 攻撃1700

 

「そして、俺のフィールドにメタルギアモンスターが存在するとき、手札の《鋼の歯車狼》は特殊召喚できる」

 

鋼の歯車狼 レベル2 攻撃400

 

「手札から魔法カード《鋼の歯車融合》を発動。俺が融合素材とするのは《IR》、《蛹》、《狼》の3体だ。戦場をかけるヤモリよ、獲物を撃ち抜く狩人よ、敵を斬り刻む狼よ、歯車を絡ませ、任務遂行の標となれ。融合召喚!現れろ、レベル8!《鋼の歯車RAY》!」

 

鋼の歯車RAY レベル8 攻撃2300

鋼の歯車最古人類 レベル9 攻撃4000→5000

鋼の歯車工場 メタルギアカウンター0→1

 

「くそ…またメタルギアの融合モンスターか…!」

3体のメタルギア融合モンスターの存在により、《鋼の歯車最古人類》の攻撃力がさらに上がる。

たとえダメージを与えられないとしても、さらに盤石な態勢を整えることをブーンは選んでいた。

「バトル。《鋼の歯車最古人類》で《フォース・ストリクス》を攻撃」

《鋼の歯車最古人類》が上空を飛ぶ《RR-フォース・ストリクス》をセンサーでとらえると、バックパックに搭載している4基の筒状のドローンを分離、飛行させる。

ドローンが攻撃対象としたモンスターをとらえると、展開して内部にあるミサイルが一斉発射される。

ミサイルは《RR-フォース・ストリクス》を破壊するだけでなく、近くの建物や路上にも着弾する。

「く…俺は墓地の《RR-レディネス》の効果発動!俺の墓地にRRが存在するとき、このカードを墓地から除外することで、このターン、俺が受けるすべてのダメージは0となる!」

墓地に眠る《RR-サテライト・キャノン・ファルコン》の幻影が薄黒いバリアとなって黒咲を包む。

ミサイルの爆発から逃れるため、距離をとる凌牙はまだ飛んでいるミサイルの1発とその軌道を見てはっとする。

「あのミサイル…翔太!!」

翔太は今、穴の中にいる遊矢たちを助けるために使える道具がないか周囲を探している。

凌牙の声が聞こえ、ミサイルに気付いた彼だが、ミサイルは一直線に彼に向けて飛んでいっている。

「ちっ…!?」

回避できないとわかり、舌打ちをする翔太だが、なぜか左手の痣が光り、勝手に左腕が動く。

手が飛んでくるミサイルの前にかざされたと思ったら、そこから紫色の光線が発射される。

そのビームはミサイルを貫き、爆散させた。

「何!?今の光は…!?」

凌牙の中の何かがあの光の正体を即座に本人に理解させる。

というよりも、理解するしかなかった。

そして、彼についても…。

「フィールドのRRの数が減ったことにより、もう1体の《フォース・ストリクス》の守備力は下がる」

 

RR-フォース・ストリクス ランク4 守備2500→2000

 

「く…だが、オーバーレイユニットの《ファジー・レイニアス》の効果発動。デッキからもう1枚の《ファジー・レイニアス》を手札に加える」

「さらに、《RAY》でもう1体の《フォース・ストリクス》を攻撃」

《鋼の歯車RAY》が水圧カッターを放ち、《RR-フォース・ストリクス》を両断する。

これで、黒咲のフィールドのモンスターは全滅した。

(今の俺のペンデュラムゾーンに存在する《ボミング・レイニアス》は俺のRRエクシーズモンスターが戦闘破壊されたとき、特殊召喚できる効果を持つ。だが、奴にはまだ《鋼の歯車T-REX》が残っている。今その効果を使っても意味がない…)

「俺はこれでターンエンドだ」

 

ブーン

手札4→0

ライフ4000

場 鋼の歯車最古人類 レベル9 攻撃5000

  鋼の歯車T-REX レベル8 攻撃2800

  鋼の歯車RAY レベル8 攻撃2300

  鋼の歯車工場(メタルギアカウンター1 永続魔法)

 

黒咲

手札1→2(うち1枚《RR-ファジー・レイニアス》)

ライフ2000

場 RR-ネスト(永続魔法)

  RR-フラッシュ・ヴァルチャー(青) Pスケール2

  RR-ボミング・レイニアス(赤) Pスケール5

 

「くっ…!」

《RR-レディネス》が生んだバリアが消滅し、黒咲は3体のメタルギアをにらむ。

うち1体の《鋼の歯車最古人類》が特に厄介で、うかつのRUMとエクシーズ召喚をしたら餌食になる。

だが、あの夫人を攻略するための力を得る手段はそれら以外にはない。

黒咲はデッキトップに指をかける。

ふと、侑斗から聞いた話を思い出す。

自分がかつて一緒に戦ったとあるデュエリストの話で、彼は自分のデッキを信じ、どんなことがあってもあきらめない心で強敵と戦い、勝利してきたらしく、そんな彼を尊敬していると言っていた。

最初はそれだけで勝てるほど生易しいものではないと思っていたが、その次の言葉が黒咲をハッとさせた。

(確かに、それだけでは勝てないのも確かだよ。でも…自分の力を信じられない人に何ができるのかな…?)

この状況でそんなことを思い出してしまった自分をおかしく思ったのか、わずかに黒咲は笑みを浮かべる、

(おそらく、これが俺に残されたラストターン…頼む、俺のデッキよ…)

目を閉じ、黒咲はカードを引いた。

 

黒咲

手札2→3

 

「引いたぞ…貴様と同じ《貪欲な壺》を…」

「そうか…」

即座に黒咲はそのカードを発動し、墓地にある5枚のカードをデッキに戻し、デッキからカードを2枚ドローした。

 

墓地からデッキに戻ったカード

・RR-ファジー・レイニアス×2

・RR-サテライト・キャノン・ファルコン

・終末の騎士

・RR-フォース・ストリクス

・RR-バニシング・レイニアス

 

「そして、このカードは俺のフィールドの魔法・罠カード1枚を破壊することで、手札・エクストラデッキから特殊召喚できる。俺は《ボミング・レイニアス》を破壊し、《RR-デコイ・ストリクス》を特殊召喚する!」

ペンデュラムゾーンの《RR-ボミング・レイニアス》が爆発とともに消滅し、黒咲の真上に《RR-バニシング・レイニアス》を模したダミーバルーンを両翼に2つずつつけている、白と赤がベースの梟型モンスターが現れる。

 

RR-デコイ・ストリクス レベル5 攻撃1500

 

「そして、俺は手札からスケール6の《デコイ・ストリクス》をセッティング!」

《RR-ボミング・レイニアス》と入れ替わるように、もう1体の《RR-デコイ・ストリクス》が現れ、光の柱を生み出す。

「これで俺はレベル3から5までのモンスターを同時に召喚可能!現れろ、俺のモンスター!!《RR-ミミクリー・レイニアス》、《RR-ボミング・レイニアス》!!」

 

RR-ミミクリー・レイニアス レベル4 攻撃1100

RR-ボミング・レイニアス レベル4 攻撃1700

 

「さらに俺は永続魔法《RR-ネスト》の効果発動。デッキから《ファジー・レイニアス》を手札に加える」

《ファジー・レイニアス》を手札に加えた黒咲はここで手を止め、ブーンも沈黙したまま黒咲を見る。

(これで、奴のフィールドにはレベル4のモンスターが2体。だが…通常召喚を行っていない上に手札の《ファジー・レイニアス》は墓地へ送られたときに同じ名前のモンスターをデッキから手札に加える効果がある。そして、俺の《最古人類》がエクストラデッキからの特殊召喚、もしくはモンスターを特殊召喚する効果を持つ魔法・罠カードを無効にできるのは1ターンに1度のみ…)

黒咲のエクストラデッキのモンスターの中で、現時点で《鋼の歯車最古人類》に対抗できる可能性のあるカードは《RR-ライズ・ファルコン》と《RR-レヴォリューション・ファルコン》、《RR-レヴォリューション・ファルコン-エアレイド》、《RR-アルティメット・ファルコン》と先ほど《貪欲な壺》の効果でエクストラデッキに戻った《RR-サテライト・キャノン・ファルコン》。

これらはいずれもフレンドシップカップにおける黒咲のデュエルデータを調べた際に判明しているカードであり、先ほど使用された《RR-デコイ・ストリクス》についてはデータがない。

そして、今エクシーズ召喚できるのはランク4、もしくは《RR-ミミクリー・レイニアス》の効果を組み合わせてランク5。

だが、それ以上に問題なのはRUMで、黒咲の場合は《RUM-スキップ・フォース》と《RUM-レイド・フォース》、《RUM-レヴォリューション・フォース》以外のものは戦闘破壊されたモンスターや墓地のモンスターを復活させてランクアップさせるという特殊なものが多い。

そのため、手札がたったの1枚という状況であっても油断できない。

1度しか使えないその効果を誤ったタイミングで使用すれば、圧倒的に有利な状況である自分が逆に追い込まれる恐れがある。

「俺は墓地の《RUM-スキップ・フォース》の効果を発動。墓地のこのカードとRR1体を除外することで、墓地のRRエクシーズモンスター1体を特殊召喚する。俺は《フォース・ストリクス》を除外し、墓地の《ブレイズ・ファルコン》を特殊召喚する!」

 

RR-ブレイズ・ファルコン ランク5 攻撃1000

 

「更に手札から《RUM-レヴォリューション・フォース》を発動!俺のフィールドのRRエクシーズモンスター1体をランクの1つ高いRRにランクアップさせる!俺が素材とするのは《ブレイズ・ファルコン》!」

「《レヴォリューション・ファルコン》をエクシーズ召喚し、その効果を使うつもりか…。ならば、《最古人類》の効果発動!《レヴォリューション・フォース》の発動を無効にし、破壊する!」

レールガンの冷却が完了したのを確認した《鋼の歯車最古人類》が照準を再び上空に現れたオーバーレイネットワークに向けられ、ミサイルが発射される。

ミサイルはオーバーレイネットワークの中に吸い込まれ、爆発するとオーバーレイネットワークは粉々に砕けた。

「ならば…このカードは俺のフィールドにRRが存在するとき、手札から特殊召喚できる!《ファジー・レイニアス》を特殊召喚!」

 

RR-ファジー・レイニアス レベル4 攻撃500

 

「レベル4の《ファジー・レイニアス》と《ボミング・レイニアス》、《ミミクリー・レイニアス》でオーバーレイ!雌伏のハヤブサよ。逆境の中で研ぎ澄まされし爪を挙げ、反逆の翼翻せ!エクシーズ召喚!現れろ!ランク4!《RR-ライズ・ファルコン》!」

 

RR-ライズ・ファルコン ランク4 攻撃100

 

「《ライズ・ファルコン》の効果!オーバーレイユニットを一つ取り除くことで、相手フィールドの特殊召喚されたモンスター1体の攻撃力をこのカードに加える!俺が対象とするモンスターは《鋼の歯車最古人類》!」

「何!?」

《RR-ライズ・ファルコン》は黒咲の怒りと自らの効果の影響を受け、全身を紅蓮の炎に包んでいく。

その炎は《鋼の歯車最古人類》に匹敵する大きさとなっていて、その熱気が凌牙たちを襲う。

「すげえ…こんなエネルギーを…」

 

RR-ライズ・ファルコン ランク4 攻撃100→5100

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・RR-ミミクリー・レイニアス

 

「そして、《ライズ・ファルコン》は特殊召喚された相手モンスターすべてに1回ずつ攻撃できる!」

攻撃力5100となった《RR-ライズ・ファルコン》に対して、《鋼の歯車RAY》は2300で、《鋼の歯車T-REX》は2800。

《鋼の歯車最古人類》を含めて、3体に対して攻撃を行った場合、ブーンに与える戦闘ダメージは合計5200。

一気に勝負を決めることができる。

「バトルだ!《ライズ・ファルコン》で3体のメタルギアを攻撃!ブレイブクローレボリューション!!」

紅蓮を宿した《RR-ライズ・ファルコン》が一気に高度を上げていき、そのあとで急降下すると、その勢いのままブーンが乗る《鋼の歯車最古人類》に突撃する。

《鋼の歯車最古人類》は両手でそのモンスターを受け止めるが、激しい熱でマニピュレータが溶解を始めており、乗っているブーンにも激しい衝撃が襲う。

「これで勝負を決めるつもりか…だが、俺は墓地の《鋼の歯車偵察者》の効果を発動!このカードは俺のメタルギア融合モンスターが攻撃対象となったとき、墓地から特殊召喚し、バトルフェイズを終了させる!」

「何!?」

出力のリミッターを解除した《鋼の歯車最古人類》が《RR-ライズ・ファルコン》を一度持ち上げると、そのまま地面にたたきつけた。

地面にたたきつけられた《RR-ライズ・ファルコン》は悲鳴を上げ、装甲にはひびが入る。

そして、《鋼の歯車偵察者》がフィールドに現れる。

 

鋼の歯車偵察者 レベル1 守備2000

 

鋼の歯車偵察者(メタルギア・サーチャー)

レベル1 攻撃0 守備2000 効果 地属性 機械族

このカード名の(1)の効果はデュエル中1回しか発動できず、(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが墓地に存在し、自分フィールドの「メタルギア」融合モンスターが攻撃対象となったときに発動できる。このカードを自分フィールドに特殊召喚し、バトルフェイズを終了させる。

(2):このカードがフィールドに存在する場合、自分メインフェイズ時に発動できる。「メタルギア」融合モンスターカードによって決められた、このカードを含む融合素材モンスターを手札から墓地へ送り、その融合モンスター1体をEXデッキから「鋼の歯車融合」による融合召喚扱いとして融合召喚する。

 

「これで終わりか…?黒咲隼」

「まだだ!俺は墓地の《ミミクリー・レイニアス》の効果発動!このカードが墓地へ送られたターンのメインフェイズ時、このカードを墓地から除外することで、デッキからRRカード1枚を手札に加える。俺は《ネクロ・ヴァルチャー》を手札に加える。更に、墓地の《レイド・フォース》の効果発動!このカードと手札のRRカード1枚を除外することで、墓地のRUM1枚を手札に加える。俺は手札の《ネクロ・ヴァルチャー》を除外し、墓地の《レヴォリューション・フォース》を手札に加える。そして、俺は手札の《レヴォリューション・フォース》を捨て、《ライズ・ファルコン》を素材に《RR-レヴォリューション・ファルコン-エアレイド》をエクシーズ召喚する!誇り高きハヤブサよ。愚鈍なる力を払うため、灼熱の雨を降らせ!ランクアップ・エクシーズチェンジ!現れろ、ランク6!《RR-レヴォリューション・ファルコン-エアレイド》!!」

攻撃を封じられてもなお、勝利のために黒咲はさらなる手を打つ。

状況を考えると、これが最後の行ってなのかもしれない。

 

RR-レヴォリューション・ファルコン-エアレイド ランク6 攻撃2000

 

「《エアレイド》の効果発動!このカードのエクシーズ召喚に成功したとき、相手フィールドのモンスター1体を破壊し、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える!」

「よし…!奴の《最古人類》の攻撃力は5000!これが通れば…!」

「消えろ、《鋼の歯車最古人類》!!」

黒咲の叫びと共に、上空の《RR-レヴォリューション・ファルコン-エアレイド》が爆弾を投下する。

地上と《鋼の歯車最古人類》の装甲に落下した爆弾は次々と爆発し、ブーンのフィールドを煙で包み込む。

「はあ、はあ、はあ…」

手を尽くした黒咲は疲れ果て、爆発を受けたときのダメージもあってその場に膝をつく。

「黒咲!」

デュエルが終わったと思った凌牙が黒咲に駆け寄る。

「はあはあはあ…これで…」

「見事だった。だが、相手が悪かったな」

煙の中からブーンの声が聞こえ、終わったと思っていた2人の眼が大きく開く。

煙が消えると、そこには3体のメタルギアが無傷な状態で立っていた。

「馬鹿な…!?あの効果で《最古人類》は破壊され、貴様に…」

「俺は《最古人類》のもう1つの効果を発動した。このカードが破壊されるとき、代わりに俺のフィールドのメタルギア1体を破壊できる。対象となった《最古人類》の破壊に失敗した時点で、俺へのダメージも不発に終わった」

 

 

鋼の歯車最古人類(メタルギア・サヘラントロプス)

レベル9 攻撃2000 守備4000 融合 地属性 機械族

「鋼の歯車」モンスター×4

このカードは「鋼の歯車融合」の効果でのみ特殊召喚できる。

(1):このカードの攻撃力は自分フィールドに存在する融合召喚された「メタルギア」モンスターの数×1000アップする。

(2):1ターンに1度、以下の効果のうちのいずれかを発動できる。

●相手がEXデッキからモンスターの特殊召喚に成功したときに発動できる。その特殊召喚を無効にし、破壊する。

●相手がモンスターを特殊召喚する効果を持つ魔法・罠カードを発動したときに発動できる。その発動を無効にし、破壊する。

(3):フィールドに存在するこのカードが破壊されるとき、自分フィールドに存在するほかの「メタルギア」モンスター1体を対象に発動できる。そのカードを代わりに破壊する。

 

「さあ、ここからどうする…?」

ブーンはまるで期待しているかのように、黒咲に問いかける。

だが、今の黒咲にできることは何もなかった。

「…ターン…エンド…」

 

ブーン

手札4→0

ライフ4000

場 鋼の歯車最古人類 レベル9 攻撃5000

  鋼の歯車T-REX レベル8 攻撃2800

  鋼の歯車RAY レベル8 攻撃2300

  鋼の歯車工場(メタルギアカウンター1 永続魔法)

 

黒咲

手札4→0

ライフ2000

場 RR-レヴォリューション・ファルコン-エアレイド(ORU3) ランク6 攻撃2000

  RR-ネスト(永続魔法)

  RR-フラッシュ・ヴァルチャー(青) Pスケール2

  RR-デコイ・レイニアス(赤) Pスケール6

 

RR-デコイ・レイニアス

レベル5 攻撃1500 守備2500 闇属性 機械族

【Pスケール:青6/赤6】

(1):1ターンに1度、自分フィールドの「RR」モンスターが戦闘・効果で破壊されるときに発動できる。代わりに自分の墓地に存在する「RUM」魔法カード1枚を除外する。

【モンスター効果】

このカード名の(1)の方法による特殊召喚はデュエル中1度しか行えない。

(1):このカードが手札に存在する、またはEXデッキに表側表示で存在する場合、自分フィールドの魔法・罠カード1枚を対象に発動できる。そのカードを破壊し、手札・EXデッキに存在するこのカードを特殊召喚する。

 

「私のターン…ドロー」

 

ブーン

手札0→1

 

「終わりだ…レジスタンスの戦士。《鋼の歯車最古人類》で《レヴォリューション・ファルコン-エアレイド》を攻撃」

ブーンの死刑宣告にも似た言葉と共に、《鋼の歯車最古人類》がレールガンを上空の《RR-レヴォリューション・ファルコン-エアレイド》に向けられる。

レールガンから発射されたミサイルは追尾機能を持っており、回避しようと後ろへ下がる《RR-レヴォリューション・ファルコン-エアレイド》をどこまでも追いかける。

そして、ミサイルが命中すると革命の名を持つ隼は爆発とともに消滅した。

「うわああああ!!(ば、馬鹿な…!?俺が、こんなところで…)」

 

黒咲

ライフ2000→0



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第97話 傷と次

「はあ、はあ、はあ…」

真っ暗な廃墟の中、ボロボロになった黒咲は目の前のアカデミアとデュエルをしている。

お互いのライフは1000で、相手フィールドには《古代の機械巨人》が残っている。

しかし、黒咲は先ほど、《RR-ライズ・ファルコン》のエクシーズ召喚に成功し、自身の効果でパワーアップもさせていた。

「《ライズ・ファルコン》で《古代の機械巨人》を攻撃!ブレイブクロー・レヴォリューション!!」

炎のようなオーラを纏った《RR-ライズ・ファルコン》の突撃によって、《古代の機械巨人》は消滅する。

しかし、相手のライフを0にすることができず、そのまま相手のターンになる。

「私のターン…」

相手の声が聞こえるのと同時に地面が大きく揺れ始め、彼のフィールドに《鋼の歯車最古人類》が現れる。

「何!?このモンスターは…まさか、貴様は…!!」

「眠れ、誇り高きレジスタンスの戦士よ」

相手の姿がブーンに変わると同時に、《鋼の歯車最古人類》の剣が《RR-ライズ・ファルコン》を貫き、爆散させた。

「うわあああ!!!」

 

黒咲

ライフ1000→0

 

爆発の衝撃で吹き飛んだ黒咲は壁にぶつかり、前のめりに倒れる。

「く…くそぉ…」

周囲が炎に包まれていき、その炎を悔しげに見る黒咲の眼に信じられない光景が浮かぶ。

「あ、あれは…」

そこには倒れたユートと瑠璃の姿があり、彼らはオベリスクフォースによって担がれ、どこかへ連れていかれつつあった。

「ま、待て…ユート、瑠璃を…放せ…」

追いかけようと地面をはいずる黒咲だが、その右手をブーンが踏みつける。

右手に伝わる激痛に耐えながら、黒咲はブーンを見た。

「アカデミア…め…!」

「お前の戦いは、ここで終わりだ」

ブーンがデュエルディスクを操作し、そこから紫色の光が発生する。

それは人間をカードに変える、黒咲たちにとって忌まわしき光だった。

「うわあああああ!!!!」

 

「ユート、瑠璃!!」

「黒咲!?」

「大丈夫?黒咲…」

いきなり目を覚まし、親友と妹の名前を叫んだ黒咲に遊矢と柚子は驚きを見せる。

遊矢の手には交換された包帯が握られていて、柚子の手には濡れたタオルがあった。

周りを見ると、そこはスペード校の難民キャンプのテントの中のようで、そばにあるランタンが唯一の光源となっていた。

「スペード校…か…?」

「うん…」

「そうか…俺は、敗れたのか…。だが、なぜここに…?」

黒咲は必死に記憶をたどるが、夢の中に出てきたブーンとのデュエルで敗れて以降の記憶がぷっつりと途切れてしまっている。

あの軍人のような性格をしているブーンが自分を破ったにもかかわらず、なぜ柚子がさらわれずにここにいるのかが分からなかった。

質問された柚子は何も言えず、暗い表情となって目をそらす。

「柚子…黒咲、俺が説明するよ。あの後、何があったのかを…」

 

《鋼の歯車最古人類》の一撃を受け、敗れた黒咲はあおむけになって力尽きた。

「黒咲!!」

「レジスタンスの戦士は倒した。あとは…」

ブーンは黒咲をカードに変えることなく、穴から出てくる遊矢たちに目を向ける。

彼らは翔太が病院から調達したはしごで脱出していた。

「柊柚子、任務遂行のため、来てもらうぞ」

ブーンの言葉に従うように、《鋼の歯車最古人類》は柚子に手を伸ばす。

「まずい…逃げろ、柚子!!」

「間に合わない…!!」

登って出てきたばかりの柚子はすぐに走り出すことができず、そのまま巨大な手が柚子をさらおうとしていた。

「柚子ちゃん!!」

その時、伊織が柚子をかばい、《鋼の歯車最古人類》に捕まってしまった。

「伊織!!」

「何…??」

翔太の叫ぶように読んだ彼女の名前を耳にしたブーンはピクリと反応する。

そして、《鋼の歯車最古人類》がつかんでいる伊織を自分の目の前まで動かせた。

彼女を見たブーンはデュエルディスクを操作し、転送を開始する。

「おい、逃げるつもりか!?」

直にでもデュエルができることをアピールするかのように、翔太はデュエルディスクを展開する。

しかし、ブーンたちを包む青い光は消える気配がない。

「この少女は預かる。取り戻したければ、この次元の我らの拠点まで柊柚子と共に来い」

そう言い残したブーンは《鋼の歯車最古人類》と伊織諸共光の中へ消えてしまった。

 

「…くそぉ!!俺が…奴に敗れたばかりに…!!」

遊矢の話を聞き、やり切れぬ思いをぶつけるかのように床に右拳をたたきつける。

しかし、同時に包帯で包まれている右腕から激痛が発し、左手でそれを抑える。

「動くな、黒咲!体のあちこちが火傷していて、打撲もある!しかも、右腕と六傑が何本も骨折しているんだぞ!?」

「その傷が何だと言うんだ!?仲間がさらわれたのなら、すぐにでも…うう…」

無理に起き上がろうとした黒咲だが、痛みと共に脱力感に襲われ、抗うことができないまままた横になった。

「今は安静にしてくれ、今は剣崎さんと神代さんが作戦を立ててる。だから…」

「…くそっ、くそぉ…」

左腕で目を隠した黒咲を見て、遊矢は柚子の腕を握り、そのまま外へ連れ出す。

1人だけになったテントの中で、黒咲は声を殺して泣いた。

破れたにもかかわらず、生き恥をさらす屈辱と仲間をさらわれた無念をかみしめながら。

 

「遊矢…黒咲、大丈夫かしら?」

テントを出て、談話室へ向かう中、柚子はテントに残した黒咲の身を案じていた。

体へのダメージ以上に、ブーンに敗北したショックの方が大きく思えた。

遊矢達も黒咲があのような一方的に負けたのを見るのは初めてだ。

「今は立ち直るのを信じるしかないよ…。俺たちは、俺たちの今できることをやろう」

「そう…そう、よね…」

アカデミアと何年も戦い続けた黒咲に、数カ月程度しか戦ったことのない自分たちが言葉をかけたとしても、彼の心に届くことはない。

みんなを笑顔にしたいと思う遊矢はその何もできない悔しさを胸にしまい、侑斗とウィンダ、凌牙の待つその場所へ向かうしかなかった。

 

「違う…もう少し罠カードを入れるべきか…」

一方、翔太は外で自分のデッキと向き合いつつ、抜くカードと新たに加えるカードの選別を行っていた。

魔装カードそのものは石倉純也が使っていた既存のカテゴリーであるものの、翔太が使うそれとは勝手が違う。

使えるとしたら、比較的汎用性の高い効果を持つ物しか入れることができない。

「仲間が捕まったにしては、かなり冷静みたいね」

レジスタンスのメンバー3人の監視を受けながら、グレースが翔太に声をかける。

3人とも疑いの眼差しを向けているが、それについてはあまり気にしないことにしていた。

そんな彼女に目を向けることなく、翔太は黙々とカードをいじる。

そして、ある程度カードの選別を終え、カードケースにしまうと、グレースに声をかける。

「あのブーンって野郎が言っていた、エクシーズ次元でのアカデミアの拠点の場所は分かるか?」

「…知って、どうするつもり?」

「言わないと…分からないか?」

じっとグレースをにらむように見ながら、小さいもののわずかにいらだちの色のこもった声で問いかける。

それを知った場合、彼がどうするかはグレースには手に取るように理解できた。

「たった1人で向かうつもりでしょう?それは…あなたのボスが許さないと思うわ」

「放っておけ。あの野郎はボスじゃない。それに、遊矢もたった1人で治安維持局の本部をつぶしたんだからな。俺にもそれくらいのことはできる」

「その話は聞いてる…。けど、わけが違うわ。それに、『欠片』が使えない限りはそこへ向かうのは不可能。ハートランド中を探したとしても、見つけられない」

「何…?」

確かに、レジスタンスはこれまでハートランド中のレジスタンスの掃討を兼ねて、しらみつぶしに本部を探していたが、見つかったという報告がいまだにない。

今のレジスタンスの行動範囲はハートランドの2分の1程度で、残り2分の1を探せばいいとばかり翔太は考えていた。

だが、グレースが言うにはそのような話では終わらないようだ。

「アカデミアのエクシーズ次元本部があるのはハートランドであって、ここのハートランドではないわ」

「…何を言っている?」

「どうやったかわからないけれど、アカデミアはここと同じもう1つの次元を作って、そこを拠点にしているわ。そして、そこから転送装置を使って出撃していたの」

「転送…?」

翔太はここを出発する前、アカデミアの中継拠点をつぶしたレジスタンスが帰ってきたときのことを思い出した。

彼らは奪取した物資とカードと一緒に、何か球体が載ったピラミッドのような不可解な端末を持っていた。

それはこれまでつぶした中継拠点に必ず1つはあったようで、レジスタンス内では解析ができないということで、1つはスタンダード次元へ送り、残りはすでに解体している。

「おかしいとは思わないかしら?なぜ転送装置で次元転移を含めた瞬間移動ができるアカデミアがこうした中継拠点を作っているのかを…」

「まさかとは思うが、そのピラミッドみたいな端末を設置することで、転移できる範囲を広げて…」

翔太の予測を肯定するように、グレースは首を縦に振る。

シンクロ次元の一件の後、レオコーポレーションはシティと舞網チャンピオンシップ中の舞網市の監視カメラの映像データを解析し、アカデミアのデュエル戦士たちの転移地点を割り出した。

解析した結果、次元転移可能であるにもかかわらず、デュエル戦士たちが転移したポイントが一部に集中しており、任意の場所へのピンポイントな転移は難しいことが明らかになった。

実際、黒咲のデュエルディスクを解析して開発した次元転移装置である《ディメンション・ムーバー》も同じで、現在もシンクロ次元でで転移できる場所はごく一部に限られていて、シティの外へ転移することは不可能だ。

そう考えると、エクシーズ次元侵攻のために、無線LANの子機のような中継地点を各地に置くのも分かる。

「中継拠点をつぶすという方針は正しいけど、その中継装置の量産体制は既にできてる。このままでは鼬ごっこよ」

「そうだな…」

「だから、行くとしたら、『欠片』の力を使った転移しかないわ。ちなみに、私のデュエルディスクでは、もうそこへの転移は不可能よ。アカデミアの遠隔操作で、ブロックをかけられてる…」

「…」

カードをしまった翔太は何も言わずにその場を後にする。

その後ろ姿をグレースは静かに見ていた。

(でも…わからない。あの子にいったいどんな価値があるというの?)

 

「しばらくここでおとなしくしてもらうぞ」

電子ロックがついた独房に入れられた伊織はブーンの無機質な物言いに不満を感じ、頬を膨らませる。

そんなことを気にする男ではないブーンは静かにその場を後にし、赤服のデュエル戦士が見張りとなる。

手足の拘束はないものの、デュエルディスクもデッキも没収され、手持ちの道具は何もない。

脱出手段のない伊織にできることは何もなかった。

「でも…ここってどこ…?」

気絶させられることなく、転移させられた伊織はこの場所の光景を見ていた。

廃墟と化したハートランドとは思えないような整った町並みで、アカデミアのデュエル戦士ばかりであることをのぞいたら、普通の町と変わりない。

この牢屋は地下にあり、その景色をもう1度見たいと思っても、今は見ることができない。

「町並みは…黒咲君が言っていたのとよく似てるけど…」

ランサーズの面々はハートランドのかつての光景を黒咲から聞かされていた。

町の中心部は遊園地になっていて、モノレールと車が通常の移動手段。

オボットという卵のような形のロボットが町中を循環し、ごみの処理をしていることも聞かされており、実際にハートランドの廃墟の中にはオボットの残骸もあった。

「もしかして、ここってもう1つのハートランド…って、そんなわけないよねー…」

考えすぎだと思い、いったんここがどこかを考えるのをやめることにした。

しかし、もう1つの問題が伊織の脳裏に浮かぶ。

「どうして私をカード化しないんだろう…?それに…」

ブーンはあの時、やろうと思えば柚子をあのままさらって帰ることもできた。

しかし、伊織だけを連れて帰り、カード化することもなく、牢屋に閉じ込めている。

まるで自分に利用価値があるかのように。

それに、ブーンは伊織の名前を聞いたとき、ピクリと反応を見せていた。

もしかしたら、自分の出自に関係があるのかもしれない。

「私って…何者なんだろう…?」

 

「『欠片』を使うことで、拠点に乗り込むことができる。けれど、問題はその間にクローバー校が攻め込む可能性があるということ。その間…」

「ここは丸腰になる。それに、レジスタンス同士が戦うとなると、士気にかかわるだろうな…」

スペード校に戻ってから、黒咲が負傷したことだけは伝えたものの、彼がアカデミアに敗れたこと、そしてクローバー校がこちらに攻め込んでくる可能性があることは伝えることができなかった。

できれば、ランサーズだけでクローバー校の問題をどうにかしたいものの、黒咲の負傷離脱は痛い。

アカデミアとの闘いであればともかく、同じレジスタンスのクローバー公と本気で戦えるメンバーは果たしてどれだけいるか。

「ランサーズは二手に分けるしかないね…でも、優先すべきはレジスタンス同士の戦いを終わりにすることだよ。アカデミアについては陽動をかけたほうがいい」

「陽動って、どんな陽動をかければいいの…?」

「…竜司だったら、何かいいアイデアを出してくれたかも…」

自分にとって、一番の切れ者だと思っている幼馴染である竜司のことを思いながら、侑斗は地図を見ながら何をすべきかを考える。

アカデミアへの陽動とカイトのこれ以上の狂行の阻止。

そのどちらも達成するための作戦が脳裏に淡く浮かぶ。

「凌牙君、今わかっている中継基地の場所は…この地図の中のものだけで全部?」

「いや、あとは…」

凌牙は地図のそばに置かれているノートパソコンにUSBメモリを差し込む。

そして、そのメモリの中に入っている地図を表示し、それについているマークに従って、地図に追記していく。

「クローバー校のデータかい?」

「ああ、逃げる前に失敬しておいた」

「うん…。あとは、いまレジスタンスで動員できる人数は?」

「お前…何がしたいんだ?」

「中継基地全部に対する一斉攻撃だよ。今はアカデミアのエクシーズ次元本部がハートランドにないことを把握したということを知られないようにするんだ」

グレースへの事情聴取で、凌牙と侑斗は本部が『欠片』を使って次元転移しなければ突入できないことを知った。

今は情報漏えいを避けるため、ほかの面々への公開はしていない。

今なら、レジスタンスのメンバーは中継基地への攻撃を依頼したとしても、あまり疑問を浮かべずにやってくれる可能性が高い。

「なるほどな…。で、少数の本命でクローバー校を攻撃か」

「うん。けど、よりアカデミアが本命だと思わせなきゃいけない。だから、ランサーズのメンバーの一部は陽動に加えよう」

「だとしたら、内情を知っている俺は陽動に回った方がいいかもな」

「あとは、カイト君の説得…だね。可能な限り、その方がいいけど…」

リーダーであるカイトを説得することができれば、平和的に事を済ませることができるが、残念なことにそれは理想論に過ぎない。

しかし、説得できるかもしれない黒咲は離脱していて、たとえ黒咲に説得させたとしても、聞き入れてもらえる可能性は低い。

「侑斗、黒咲とカイトのことは考えるな。悪いが…」

凌牙の言いたいことを理解した侑斗は沈黙する。

この作戦で、カイトの生死を目的に含めることはできない。

レジスタンスすら欺く形で仕掛ける、クローバー校を止めるための作戦。

失敗すれば、ランサーズとスペード校に大きな打撃が避けられない。

「よし…しれで、一つ提案だが…」

「提案?」

「ああ、サヤカのことだ。あいつをクローバー校攻略のメンバーに加えてほしい」

「それは…」

翔太とのデュエルの話を聞いているため、サヤカの技量が上がっていることは侑斗も理解できている。

しかし、それでもサヤカは遊矢や柚子よりも幼い。

そんな彼女を、場合によってはカイトを倒さなければならないその場所へ連れていくのは気が引ける。

「あいつにはクローバー校の裏の道を知っている。正面突破して、無駄な時間を使わずに済む」

「でも…」

「分かっているのか!?勝たなきゃならねえんだ…そのためには、使えるものは何でも使う!!それでも、お前はヴァプラ隊のボス、命を預かるリーダーかよ!?」

凌牙の一喝を受け、侑斗はハッとする。

エクシーズ次元、スタンダード次元へ向かい、レジスタンスの強化とヴァプラ隊とランサーズの結成をしたのはアカデミアを倒し、アークエリアプロジェクトをつぶすため。

そして、何よりも侑斗と凌牙自身のけじめをつけるためだ。

「俺たちの世界の戦いが…今回の原因を作ったんだ。だから、その責任を取らなきゃならねーだろ…。そのこと、よく考えておけ」

凌牙はUSBメモリを抜くと、談話室を出ていき、その部屋には侑斗とウィンダだけが残った。

「命を預かるリーダー…か…」

凌牙の言葉を反復するように、侑斗は静かにつぶやく。

凌牙の言うことにも一理ある。

だが、それでも侑斗の中には割り切れないものがあった。

「ユウ…」

「ウィンダ、正直怖いんだ…。仲間を…見知った誰かを犠牲にしてしまうんじゃないかって…」

両親を目の前で失った経験のある侑斗はそういう近くの誰かがいなくなる恐怖を敏感に感じているところがある。

最終的には戻ってきたとはいえ、あの戦いで次々と仲間を失ったことは侑斗にとって大きな衝撃だった。

侑斗の震える手をウィンダは優しく握る。

「ウィンダ…」

「大丈夫だよ、ユウ。何があっても、私はユウのそばにいる。ずっと…ユウはもっと信じてあげて。ユウ自身のこと、みんなのことを…」

「みんあのことを…」

ウィンダの手を握り返し、彼女の緑色の瞳を見つめる。

彼女のぬくもりがまるで自分を包む迷いの霧を吹き飛ばしているような気がした。



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第98話 作戦開始

「よし…これで補給の準備は完了…と」

Dホイールで中継地点への物資の輸送を終え、一息ついた赤服のデュエル戦士はベンチに腰掛け、支給された栄養剤を口にする。

「にしても、Dホイールか…。ジェルマンの奴、こんなものを手に入れるなんてな…」

今乗ってきたDホイールはシンクロ次元での任務を終えたジェルマンが奪取した研究データを元にアカデミアで製造されたもので、教育型コンピュータのおかげで短期間の訓練で使用が可能になっている。

ただし、Dホイール整備のノウハウがまだ不足しており、整備士の教育もアカデミア内でしか行われていないことから、整備の際はいちいち融合次元に転送しなければならない。

レジスタンスがたまに中継拠点を攻撃し、その際に物資を奪っていくこともあり、移動中は不安でいっぱいになっていた。

しかし、物資を所定の拠点に運び終え、あとは本部に連絡をすればここからおさらばできる。

連絡をしようと、Dホイールへ向かおうとした瞬間、左腕に装着しているデュエルディスクが後方から飛んできたデュエルアンカーで捉えられる。

「くそっ!?デュエルアンカーだと!?まさか、レジスタンスが…!!」

振り返ると、そこには翔太の姿があり、もうすでに手札5枚を左手に握っていた。

「き、貴様は…ランサーズ!!」

オベリスク・フォースを倒すほどの実力を誇る彼らを相手にできるわけがないと、デュエル戦士はおびえた表情を見せ、数を頼みにできればと周囲を見渡す。

しかし、中継拠点を守っているデュエル戦士たちは皆、どこからともなく現れたレジスタンスを相手にしていて、とても助ける余裕がない。

「始めろよ…今の俺は、すっげぇ機嫌が悪いんだ」

 

「《精霊獣使いウィンダ》でダイレクトアタック」

「巫女の風・霊獣バージョン!!」

ウィンダが放つ、精霊獣の姿をした緑色の風がデュエル戦士に襲い掛かる。

「ギャアアア!!」

 

デュエル戦士

ライフ1200→0

 

「剣崎さんに後れを取るなぁ!!《ガントレット・シューター》で《古代の歯車猟犬》を攻撃!!」

侑斗がデュエル戦士を倒したことで戦意高揚したレジスタンスの1人がエースである《ガントレット・シューター》で《古代の歯車猟犬》を粉砕し、攻撃に余波がデュエル戦士に及ぶ。

「グホォォ!?」

 

デュエル戦士

ライフ1900→0

 

「《バハムート・シャーク》で攻撃力が0になった《古代の歯車巨人》を攻撃!!鮫の牙で、砕け散れ!!」

「うおおおお!!」

 

デュエル戦士

ライフ2300→0

 

「よし…4班は物資を奪え!残りの班は俺と共に次の中継拠点を破壊するぞ!」

凌牙の指示の元、レジスタンスのメンバーは自分たちの足で次の中継拠点へ向かう。

今、侑斗たちはスペード校には防衛のためのメンバーを可能な限り残したうえで、中継拠点への攻撃を開始している。

侑斗たちランサーズとその関係者以外は中継拠点をすべて潰して、その中で見つけた情報をもとにそのまま本部をつぶすという作戦だと説明を受けており、ようやく攻勢に出られることから士気が高い。

移動する中、凌牙はデュエルディスクの通信機能を動かし、侑斗と通信を繋げる。

「こちら凌牙、1Fと9Uはつぶした。次は7Yへ向かう」

「分かった。続けて、中継拠点潰しを…」

「ああ。遊矢たちから連絡は?」

凌牙にとって気がかりなのは、自分たちと別行動をし、クローバー校へ攻撃を行う遊矢たちだ。

サヤカが同行し、彼女が抜け道を知っているとはいえ、侵入成功の連絡がない限りはまだ安心できない。

「到達していてくれよ…遊矢」

 

「うええ…ひどい匂いだ」

パシャリ、パシャリと歩くたびに水音が真っ暗な空間の中で響き渡る。

コンクリートでできた狭い円状のトンネルを通っている遊矢は鼻に伝わる不快な匂いに鼻が曲がる。

「元々、クローバー校の下水道なの。3年前の戦いで機能が止まっちゃってるの」

「ゆ、遊矢…いったん引き返して、もう1つマスクを手に入れたほうが…」

先導しているサヤカと柚子は途中で遭遇したクローバー校レジスタンス2人から奪ったガスマスクをつけている。

デュエルで倒したわけではなく、不意打ちで気絶させたうえで入手している。

「今更戻るわけにはいかないだろ?うう…」

彼らが所持していたガスマスクはおそらく、この下水道を通るために使用しているものだと思われる。

おそらく、凌牙がサヤカと一緒に脱出した際に使用したためにそこを知られたのかもしれない。

救いなのは知られている人間がまだわずかと考えたのか、それほど見張りがいるわけではないことだ。

「サヤカちゃん、あとどれくらい?」

「凌牙さんと一緒に逃げてた時を考えると…あと、3分くらいで…」

「3分。3分でいいんだな…3分なら余裕だぜー…」

「遊矢…全然余裕に見えないけど…」

鼻が曲がり切って、涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった、悲惨な顔になった遊矢に苦笑いを見せる。

このままこの場所にいたら、もう遊矢の顔がそれで固定されてしまうかもしれない。

(気を付けろ…遊矢!前から来る)

「え…?」

急にユートの声が脳裏に響き、遊矢は足を止める。

足を止めた遊矢を気にし、柚子とサヤカも足を止める。

すると、前方から響く水音が3人の耳に入った。

「ああ…!!」

前からやってくる人影が見えたサヤカは驚きのあまり声を上げてしまう。

背丈はサヤカと同じくらいで、外型に黄色いラインのある茶色い癖のある髪で、青いマントで上半身を隠し、ガスマスクをつけている。

その少年の左腕にはデュエルディスクが装着されており、彼がクローバー校のデュエリストだということが分かった。

「アレン…神月アレン…」

「今更、どんな顔下げて戻ってきたんだよ…サヤカ」

「知ってるの…?」

「うん。同じクローバー校でデュエルを学んだ仲間」

「仲間…?カイトを見捨てたお前はもう仲間なんかじゃねえよ」

アレンの言葉から明確な敵意が感じられ、有無も言わさぬ様子だ。

「待ってくれ!なんでレジスタンス同士で戦う必要があるんだよ!戦うべきなのはアカデミアじゃないのか!?」

レジスタンス同士のつぶしあいで都合が良いのはアカデミアで、何より仲間同士が憎みあって戦うことを嫌う遊矢はわずかな望みをとアレンを説得する。

彼らの中に少しでも耳を傾けてくれる人がいることを願った。

アレンは口を開こうとするが、遊矢の顔を見て、その口を一度閉ざす。

「お前…名前は?」

「榊…遊矢…」

「榊遊矢…榊遊勝の…あの臆病者の息子かよ。親子そろってこっちに干渉してきやがって!てめえをカードに変えて…」

「やめて!!」

デュエルアンカーを発射しようとしたアレンだが、サヤカの叫びで手を止める。

ゆっくりとアレンに近づいたサヤカは懇願するように彼を見つめる。

「黙って行ってしまったことは…本当にごめんなさい。でも…カイトのやっていること、間違ってると思うの」

「間違ってる…?なら、お前らはどうなんだよ?守ってばっかりで、アカデミアを追い出せていねえじゃねえか!けどな…俺たちはあと少しだ。あと少しでアカデミアを倒す力が手に入る…。レナードさんが言っていた。隼、剣崎、ユート…それからあと10人をカードに変えれば…」

アレンの狂気にも似た言葉に遊矢は恐怖を覚えた。

追い詰められたためか、もしくはレナードの口車に踊らされ、自分も仲間をカードに変え続けてしまった罪悪感からか、アレンは正常に判断する能力を失っているように感じられた。

「ちょうどいいぜ。お前らを倒して、カードに変えればあと10人」

「駄目!!あなたはそのレナードっていう人に騙されて…」

「黙れ!レナードさんは何度も俺たちやカイトを助けてくれた。同じエクシーズ次元のデュエリストとして、クローバー校に力を貸してくれた…。そんな人が俺たちを騙すはずがないだろう!!」

「違う!そんな人なら、どうして仲間同士で戦うことを良しとするんだ!!」

アレンから見たら、もしかしたらレナードは恩人かもしれない。

だが、レナードをおびき寄せ、彼の真意を聞いていた遊矢たちにとってはカイトたちクローバー校を凶器に陥れた憎むべき悪魔だ。

しかし、アレンには遊矢の、状況を混乱させるようなよそ者の言葉は届かない。

「そんなにお前らが正しいっていうなら、俺を倒してみろ!!それができないなら、さっさとカードになってしまえよ!!」

「く…やるしか…」

これ以上足を止めるわけにはいかず、遊矢はデュエルディスクを展開しようとする。

しかし、その前にサヤカがデュエルディスクを展開させ、カードを引いた。

「サヤカ…」

「サヤカちゃん!?」

「行って、遊矢、柚子。アレンをこんな風にさせてしまったのは私…だから、私自身が決着をつける!」

「けど…」

「このまままっすぐ進んで、突き当りを左に曲がったところにはしごがあるわ。そこからクローバー校の裏庭に入れる。私も後から追いかけるから」

この抜け道の案内をし終えたなら、もう自分が先導しなくても遊矢たちは行けると信じ、サヤカはじっとアレンに目を向ける。

「そうかよ…ずっとおびえてばかりだった弱虫のお前が俺の相手かよ。いいぜ、まずはお前からカードにしてやる。後の2人はその後だ!!」

「サヤカ!仲間同士で戦うのは…」

納得できない遊矢はどうにかして止めようと言葉を探す。

しかし、エクシーズ次元のレジスタンスではない遊矢には彼らの気持ちは分からない。

説得するにも、ありきたりな、彼らの心に響かないような言葉しか思いつかない。

「…アレンの言う通り、私は弱虫よ。瑠璃がさらわれたのも…もとはと言えば私のせい」

「それって…どういうこと?」

サヤカは右手を握りしめ、視線をわずかに下に落とす。

そして、2秒程度すると話す決心がついたのか、顔を上げた。

「3年前…アカデミアの攻撃を受けていたとき、私は瑠璃とユートや遊矢によく似た人とデュエルをしているのを見たの。きっと、アカデミアのデュエリスト」

「それって、柚子が言っていた…」

遊矢は柚子から聞いた、ユートでもユーゴでもない、もう1人の自分そっくりのデュエリストのことを思い出す。

彼の実力は圧倒的で、侑斗の助けがなければそのまま柚子も捕まっていた。

そんな彼がエクシーズ次元に来ていたとしてもおかしくない。

「できることなら助けたかった…けど、その人が強すぎて、瑠璃が何もできずに追い詰められていって…私はそれを…そして捕まってしまうのを見ていることしかできなかった…!」

「サヤカちゃん…」

実際に彼とデュエルをした柚子だからこそ、仮にサヤカが加勢したとしても勝てなかったかもしれないということは分かる。

しかし、サヤカは見捨てたと思い、それを罪としてずっと抱えたままこの3年を戦い続けていた。

「今度こそ…私は仲間を助ける。もう…弱虫だった私には戻らない!だから…行って!!遊矢、柚子!!」

「サヤカ…」

「遊矢、行くわよ!!」

遊矢の手を握り、柚子は彼を引っ張るように進んでいく。

「待ってくれよ、柚子!サヤカが…」

「今はサヤカちゃんを信じてあげて、遊矢!!」

納得できない遊矢を無視し、柚子はつかむ手に力を込めて歩く。

先を進む2人を見向きもしないアレンはじっとサヤカを見る。

「デュエルよ…アレン」

「いいぜ…。どうせあいつらは俺たちの仲間にカードにされるんだ。誰がカードにするかが代わっただけだ」

アレンはデュエルアンカーを発射し、サヤカのデュエルディスクを捕らえる。

これで、デュエルが終わるまで2人はその場を動けなくなった。

「「デュエル!!」」

 

アレン

手札5

ライフ4000

 

サヤカ

手札5

ライフ4000

 

「俺の先攻!俺は手札からフィールド魔法《転回操車》を発動!」

発動と同時に、2人の足元に鉄道のレールが出現し、天井には信号機が現れる。

このフィールド魔法の効果はアレンと何度もデュエルをしているサヤカには理解できた。

「もうわかっているよな!このフィールド魔法の効果を!このカードは2つある効果のうちの1つだけを1ターンに1度、使うことができる。俺は手札の《深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト》を召喚!このカードは攻撃力が0になる代わりに、リリースなしで召喚できる!」

天井の信号機の色が赤から青に変化し、そのレールを通って下半身が列車になっている銀色の鎧騎士が現れる。

 

深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト レベル10 攻撃3000→0

 

「そして、《転回操車》の効果発動!俺のフィールドに機械族・地属性・レベル10のモンスターが召喚・特殊召喚されたとき、デッキから攻撃力1800以上の機械族・地属性モンスター1体をレベル10にして特殊召喚できる。俺はデッキから《無頼特急バトレイン》を特殊召喚!」

赤いデコトラをほうふつとさせる特急列車が《深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト》の後に続いてレールを走ってくる。

側面にはレベル10になった証として、6つの星印がつけられていた。

 

無頼特急バトレイン レベル4→10 攻撃1800

 

「レベル10のモンスターが2体…!」

「行くぜ!!俺はレベル10の《ナイト・エクスプレス・ナイト》と《バトレイン》でオーバーレイ!」

2体の列車がフィールドの中央に現れたオーバーレイネットワークの中へ消えていく。

そして、その中から自身の倍近い長さの砲身のキャノン砲をつけた茶色い一両の列車が出てくる。

「裏切者を粉砕する恐れ知らずの列車!エクシーズ召喚!出て来い、《超弩級砲塔列車グスタフ・マックス》!」

 

超弩級砲塔列車グスタフ・マックス レベル10 攻撃3000

 

「出た…アレンのエースモンスター…!」

ランク10であるため、敷居が高いイメージのあるそのカードだが、他のランクの高いエクシーズモンスターと比較するとこのカードは出しやすさが売りとなっている。

おまけに、このカードの効果はデュエルを一気に決着まで追い込む効果になっている。

「《グスタフ・マックス》の効果発動!1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、相手に2000のダメージを与える!ビッグ・キャノン!サヤカをぶち抜け!!」

《超弩級砲塔列車グスタフ・マックス》が照準をサヤカに固定し、徹甲弾を彼女に向けて発射する。

しかし、その銃弾は彼女の目の前で消滅し、フィールドには気球のような形をした、真っ白で綿のような体のモンスターが現れた。

「《フワポン》の効果発動!このカードは私がダメージを受けるとき、手札から墓地へ送ることでそのダメージを0にする!」

「そのカード…剣崎から」

「そう、私のラッキーカード」

《フワポン》は特訓する中で、初めてデュエルで勝つことができた際に侑斗から受け取ったカードだ。

なぜそれがラッキーカードなのかは今でも分からない。

しかし、なぜかこのカードをデッキに入れていると心が落ち着くように感じた。

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・無頼特急バトレイン

 

「俺はカードを2枚伏せて、ターンエンド!同時に、墓地へ送られた《バトレイン》の効果発動!このカードが墓地へ送られたターン終了時、デッキから機械族・地属性・レベル10モンスター1体を手札に加える。俺はデッキからもう1枚の《ナイト・エクスプレス・ナイト》を手札に加える!」

 

アレン

手札5→2(うち1枚《深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト》)

ライフ4000

場 超弩級砲塔列車グスタフ・マックス(ORU1) ランク10 攻撃3000

  伏せカード2

  転回操車(フィールド魔法)

 

サヤカ

手札5→4

ライフ4000

場 なし

 

「ちっ…気に入らねえぜ…」

先攻1ターン目の先制パンチを防いだラッキーカードにアレンは怒りを覚える。

平和だったころも、アレンは何度かサヤカとデュエルをしていた。

そのころのサヤカはこの効果を防ぐことができず、先制を許すことが多かった。

しかし、今のサヤカは侑斗の特訓を受けたことで強くなっていた。

黒咲と同じように。

強くなること自体は問題ないが、よそ者の力を借りていることが気に食わなかった。

「私のターン、ドロー!」

 

サヤカ

手札4→5

 

「私は墓地の《フワポン》の効果発動!1ターンに1度、手札の光属性・天使族モンスター1体を墓地へ送ることで、このカードを手札に戻すことができる!」

再び《フワポン》がサヤカの手札に加わり、彼女を守る壁となる。

光属性・天使族モンスターを手札に温存できる状態を維持できる限り、彼女は1ターンに1度だけだが、どんなダメージも防ぐことができる。

 

手札から墓地へ送られたカード

・天空聖騎士アークパーシアス

 

フワポン

レベル1 攻撃200 守備300 効果 光属性 天使族

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分がダメージを受けるとき、このカードを手札から墓地へ捨てることで発動できる。そのダメージを0にする。

(2):自分の墓地にこのカードが存在するとき、手札の光属性・天使族モンスター1体を墓地へ送ることで発動できる。このカード1枚を手札に戻す。

 

「そして、手札から魔法カード《聖天使の施し》を発動!私のフィールドにカードがない時、デッキからカードを2枚ドローして、手札1枚を墓地へ捨てる!」

 

手札から墓地へ送られたカード

・踊る妖精

 

「そして、《力天使ヴァルキリア》を召喚!」

白金の鎧と盾、そして槍を装備した浅黒い肌の天使がコンクリートでできた無機質な空間に舞い降りる。

 

力天使ヴァルキリア レベル4 攻撃1800

 

「《オネスト》とのコンボで、《グスタフ・マックス》を破壊するつもりかよ!?」

「私はカードを2枚伏せて、ターンエンド!」

 

アレン

手札2(うち1枚《深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト》)

ライフ4000

場 超弩級砲塔列車グスタフ・マックス(ORU1) ランク10 攻撃3000

  伏せカード2

  転回操車(フィールド魔法)

 

サヤカ

手札5→2(うち1枚《フワポン》)

ライフ4000

場 力天使ヴァルキリア レベル4 攻撃1800

  伏せカード2

 

「ちっ…攻めづらい状態にしてくれやがって…!」

《力天使ヴァルキリア》が光属性で、彼女の手札の残り1枚の正体が《オネスト》である可能性が考えられる。

おまけに、《力天使ヴァルキリア》の効果がカウンター罠に対応する効果である以上、何らかのカウンター罠を貼っていても不思議ではない。

元々はフェアリーモンスター中心で、そのモンスターを様々なカード効果でパワーアップさせるタイプのデッキだったのが侑斗との特訓でカウンター罠とRUMという新しい戦術を組み込んだ。

だが、アレンもクローバー校のレジスタンスとして、カイトの力になるために鍛錬を積んできている。

カイトや仲間のためにも、負けるわけにはいかない。

「俺のターン、ドロー!」

 

アレン

手札2→3

 

「俺は《ナイト・エクスプレス・ナイト》をリリースなしで召喚!」

 

深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト レベル10 攻撃3000→0

 

「更に、《転回操車》の効果で、デッキから《バトレイン》を特殊召喚!」

 

無頼特急バトレイン レベル4→10 攻撃1800

 

「更に俺のフィールドに機械族・地属性モンスターが召喚・特殊召喚されたとき、《重機貨列車デリックレーン》を特殊召喚できる!だが、この効果で特殊召喚されたモンスターの攻撃力・守備力は半分になる!」

後方に大型クレーンの付いた車両をつけている黄色いディーゼル列車が出現する。

 

重機貨列車デリックレーン レベル10 攻撃2800→1400 守備2000→1000

 

「行くぜ!俺はレベル10の《ナイト・エクスプレス・ナイト》、《バトレイン》、《デリックレーン》でオーバーレイ!エクシーズ召喚!出て来い、《超次元ロボギャラクシー・デストロイヤー》!」

オーバーレイネットワークの中から天井を突き破るほどの大きさをした青い戦隊物の大型ロボットが出現する。

 

超次元ロボギャラクシー・デストロイヤー ランク10 攻撃5000

 

「《ギャラクシー・デストロイヤー》の効果!オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、相手フィールドの魔法・罠カードをすべて破壊する!この効果の発動に対して、お前は魔法・罠カードを発動できない!」

「ええっ!?」

「ギャラクシー・ストリーム!!」

《超次元ロボギャラクシー・デストロイヤー》の両拳が回転し、強い酸性の竜巻が2つ発生する。

その竜巻はサヤカの2枚の伏せカードを酸化・消滅させた。

「更に、取り除かれた《デリックレーン》の効果!エクシーズモンスターの効果発動のためにこいつが取り除かれたとき、相手フィールドのカード1枚を破壊できる!俺は《力天使ヴァルキリア》を破壊!」

幻影となって出現した《重機貨列車デリックレーン》が《力天使ヴァルキリア》に最大速度で突撃する。

時速160キロ以上のスピードで突進する巨体な鉄の体を避けることができず、《力天使ヴァルキリア》はその列車と共に消滅した。

 

破壊された伏せカード

・無償交換

・クロス・カウンター・トラップ

 

「バトルだ!《ギャラクシー・デストロイヤー》でダイレクトアタック!ギャラクシー・ブラスター!!」

《超次元ロボギャラクシー・デストロイヤー》の胸部装甲が真っ赤に燃え上がり、そこから火炎放射がサヤカに襲い掛かる。

「私は墓地の罠カード《クロス・カウンター・トラップ》の効果発動!」

「何!?そいつは俺が破壊した…」

「このカードが破壊され墓地へ送られたターン、私は1枚だけ手札から罠カードを発動できる!私が発動するのは《攻撃の無力化》!」

サヤカの目の前に次元の渦が発生し、その中に炎が飲み込まれていく。

これで、アレンのバトルフェイズも終了となった。

「更に、墓地の《天空聖騎士アークパーシアス》の効果発動!私がカウンター罠を発動したとき、手札・フィールド・墓地の天使族モンスター2体を除外することで、手札・墓地から特殊召喚できる!」

「くそ…!そいつは《フワポン》が!?」

破壊された《力天使ヴァルキリア》と《踊る妖精》の幻影がサヤカのフィールドで消滅し、天井に虹色のゲートが出現する。

そして、背中に日輪のような光の環をつけ、下半身が自身の顔と同じような形をし、2枚の翼を付けた乗り物になっている、金と青、白のトリコロールの天使が現れる、

その手には自身の配色と似た剣と盾を装備しており、彼女を中心に真っ暗な下水道を光で染めていく。

 

天空聖騎士アークパーシアス レベル9 攻撃2800

 

「ちっ…!俺はメインフェイズ2に《グスタフ・マックス》の効果を発動!オーバーレイユニットを1つ取り除き、お前に2000のダメージを与える!」

「私は手札の《フワポン》の効果を発動!そのダメージを0にする!」

再び発射された徹甲弾が《フワポン》によって阻まれる。

オーバーレイユニットを使い切った《超弩級砲塔列車グスタフ・マックス》は攻撃力3000のバニラ同然となった。

「俺はこれで…ターンエンド」

 

アレン

手札3→1

ライフ4000

場 超弩級砲塔列車グスタフ・マックス ランク10 攻撃3000

  超次元ロボギャラクシー・デストロイヤー(ORU2) ランク10 攻撃5000

  伏せカード2

  転回操車(フィールド魔法)

 

サヤカ

手札2→0

ライフ4000

場 天空聖騎士アークパーシアス レベル9 攻撃2800

 

「私のターン、ドロー!」

 

サヤカ

手札0→1

 

このターンを凌いだとはいえ、サヤカのフィールドには《天空聖騎士アークパーシアス》が1体いるだけ。

攻撃力は2900で、アレンのフィールドに存在する2体のエクシーズモンスターには及ばない。

「私は手札から魔法カード《エクシーズ・トレジャー》を発動!フィールド上のエクシーズモンスターの数だけ、デッキからカードをドローできる!」

アレンのエクシーズモンスターを利用し、サヤカは手札を増強する。

「更に、私は手札から《ヘルプ・フェアリー》を召喚!」

頭に看護婦の帽子をつけ、白衣に身を包んだ金髪の妖精がサヤカのフィールドに現れ、《天空聖騎士アークパーシアス》の周囲を飛ぶ。

 

ヘルプ・フェアリー レベル1 攻撃0

 

「《ヘルプ・フェアリー》の効果!1ターンに1度、相手フィールド上のエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターが存在し、私のフィールドにエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターが存在しないとき、ライフを800支払うことで、デッキからカードを1枚ドローできる」

ライフを支払い、おまけに攻撃力3000以上の脅威の前に攻撃力0を棒立ちさせるという無謀な手段を取ってまでドローするカード。

それに価値があることを願いながら、サヤカはカードを引く。

 

サヤカ

ライフ4000→3200

 

「バトル!《アークパーシアス》で《ギャラクシー・デストロイヤー》を攻撃!」

「まさか、ドローしたカードは…!」

「私は手札の《オネスト》の効果発動!私の光属性モンスターが相手モンスターと戦闘を行うとき、手札のこのカードを墓地へ送ることで、私のそのモンスターの攻撃力を戦う相手モンスターの攻撃力分アップする!」

 

天空聖騎士アークパーシアス レベル9 攻撃2800→7800

 

《オネスト》の力で宿っている翼が強い光を発し、刀身も白い輝きに満たされる。

その刃で《超次元ロボギャラクシー・デストロイヤー》を一刀両断した。

「ぐう…う!!」

 

アレン

ライフ4000→1100

 

「更に、《アーク・パーシアス》の効果発動!このカードが相手に戦闘ダメージを与えたとき、デッキからパーシアスと名の付くカード、もしくはカウンター罠カード1枚を手札に加えることができる。私はデッキから《パーシアスの神域》を手札に加える。そして、手札に加えた《パーシアスの神域》を発動!このカードはフィールド・墓地に存在する限り、カード名を《天空の聖域》として扱い、フィールドの天使族モンスターの攻撃力・守備力を300アップさせる!」

 

天空聖騎士アークパシアス レベル9 攻撃7800→8100

ヘルプ・フェアリー レベル1 攻撃0→300

 

「俺は罠カード《エクシーズ・リボーン》を発動!墓地の《ギャラクシー・デストロイヤー》を特殊召喚し、こいつをオーバーレイユニットにする!

「そして、カードを1枚伏せてターンエンド」

「俺は墓地に送られた《バトレイン》の効果発動!デッキから3枚目の《ナイト・エクスプレス・ナイト》を手札に加える!」

 

アレン

手札1→2(うち1枚《深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト》)

ライフ1100

場 超弩級砲塔列車グスタフ・マックス ランク10 攻撃3000

  超次元ロボギャラクシー・デストロイヤー(ORU1) ランク10 攻撃5000

  伏せカード1

  転回操車(フィールド魔法)

 

サヤカ

手札1→0

ライフ4000

場 天空聖騎士アークパーシアス レベル9 攻撃8100→3100

  ヘルプ・フェアリー レベル1 攻撃300

  パーシアスの神域(永続魔法)

  伏せカード1

 

アレンに先生ダメージを与えることに成功したが、《エクシーズ・リボーン》の効果で《超次元ロボギャラクシー・デストロイヤー》がよみがえり、オーバーレイユニットも得た。

この効果でサヤカの伏せカードを破壊したいものの、《パーシアスの神域》の効果によって、サヤカの伏せカードはカード効果の対象にならず、破壊もされない。

そのため、アレンはカウンター罠を排除するには、まずは《パーシアスの神域》を破壊しなければならない。

「俺のターン、ドロー!」

 

アレン

手札2→3

 

しかし、《ヘルプ・フェアリー》の攻撃力は《パーシアスの神域》の効果でパワーアップしているとはいえ、たったの300。

《超次元ロボギャラクシー・デストロイヤー》の攻撃が決まれば、一撃でサヤカを倒すことができる。

「バトル!!《ギャラクシー・デストロイヤー》で《ヘルプ・フェアリー》を攻撃!ギャラクシー・ブラスター!!」

胸部装甲から再び発射される火炎放射に《ヘルプ・フェアリー》が飲み込まれ、更にサヤカにも襲い掛かる。

「思い知れ!!裏切られた怒りを!!」

「キャアア!!私は《ヘルプ・フェアリー》の効果発動!このカードとの戦闘で発生する私への戦闘ダメージは半分になる!!」

《ヘルプ・フェアリー》が両手をかざし、サヤカの正面にバリアを展開させる。

《ヘルプ・フェアリー》消滅と同時にバリアも消えたものの、それでもサヤカへのダメージは軽減される。

 

サヤカ

ライフ4000→1650

 

「ちっ…《ヘルプ・フェアリー》にそんな効果が…!」

もし、《超次元ロボギャラクシー・デストロイヤー》で《天空聖騎士アークパーシアス》を攻撃した後で、《超弩級砲塔列車グスタフ・マックス》で《ヘルプ・フェアリー》を攻撃していれば、より多くのダメージを与えることができた上に、モンスターを全滅させることができた。

決着に急ぐあまり、攻撃対象にしたモンスターの効果を見落としてしまっていた。

「そして、受けた戦闘ダメージ以下の攻撃力を持つ光属性・天使族モンスター1体を墓地から特殊召喚できる!よみがえって、《オネスト》!!」

 

オネスト レベル4 攻撃1100

 

ヘルプ・フェアリー

レベル1 攻撃0 守備0 効果 光属性 天使族

このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドにEXデッキから特殊召喚されたモンスターが存在せず、相手フィールドにEXデッキから特殊召喚されたモンスターが存在するとき、800LPを支払うことで発動できる。デッキからカードを1枚ドローする。

(2):このカードが相手モンスターを戦闘を行うときに発動する。その戦闘で発生する自分へのダメージが半分になる。その後、受けたダメージ以下の攻撃力を持つ光属性・天使族モンスター1体を自分フィールドに特殊召喚する。

 

「なら、俺は手札から魔法カード《車両増設》を発動!このカードを俺のフィールドのランク10以上の機械族エクシーズモンスターのオーバーレイユニットにする!そして、《グスタフ・マックス》の効果発動!オーバーレイユニットを1つ取り除き、サヤカにとどめを刺す!」

最後の徹甲弾がキャノンに装填され、サヤカに向けて発射される。

「カウンター罠《ダメージ・ポラリライザー》を発動!ダメージを与える効果の発動と効果を無効にする!」

サヤカを守るように展開された透明のバリアが徹甲弾を受け止める。

破壊効果を持たない《ダメージ・ポラリライザー》であるため、《超弩級砲塔列車グスタフ・マックス》は破壊されず、フィールドに残った。

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・車両増設

 

「そして、私たちはデッキからカードを1枚ドローする」

2人は自分のデッキトップを見つめる。

次にドローするカードが互いの明暗を分ける可能性がある。

2人は一斉にカードをドローし、アレンは即座にそのカードを発動した。

「俺は手札から魔法カード《臨時ダイヤ》を発動!墓地に存在する攻撃力3000以上の機械族モンスター1体を守備表示で特殊召喚する!俺は墓地から《ナイト・エクスプレス・ナイト》を守備表示で特殊召喚!」

 

深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト レベル10 守備3000

 

「更に、《転回操車》の効果発動!デッキから《デリックレーン》を特殊召喚!」

 

重機貨列車デリックレーン レベル10 攻撃2800

 

「俺は《ナイト・エクスプレス・ナイト》と《デリックレーン》でオーバーレイ!エクシーズ召喚!出て来い、2体目の《グスタフ・マックス》!!」

 

超弩級砲塔列車グスタフ・マックス ランク10 攻撃3000

 

2体目の《超弩級砲塔列車グスタフ・マックス》が現れ、もうすでに徹甲弾の装填を終え、いつでも発射できる体制を整えていた。

「《グスタフ・マックス》の効果発動!オーバーレイユニットを1つ取り除き、お前に2000のダメージを与える!今度こそ、終わりだぁ!!」

今回3回目の《超弩級砲塔列車グスタフ・マックス》の徹甲弾が発射され、サヤカに襲い掛かる。

伏せカードがないサヤカだが、彼女もアレンと同じように《ダメージ・ポラリライザー》の効果でドローしたカードに手を付けた。

「私は手札の《ハネワタ》の効果を発動!このカードを手札から墓地へ送ることで、このターン私が受ける効果ダメージを0にする!」

オレンジ色の綿でできた小さな妖精がサヤカの前に現れ、徹甲弾の勢いをその綿で吸収し、受け止めて消滅した。

「はあ…ありがとう、《ハネワタ》…」

「くそっ…また生き延びやがって…!だが、オーバーレイユニットとして墓地へ送られた《デリックレーン》の効果発動!《オネスト》を破壊!!」

《オネスト》が幻影となった《重機貨列車デリックレーン》の突撃を受けて消滅する。

これで、サヤカは次のターンに《オネスト》の効果を使うことができなくなった。

「更に俺は罠カード《貪欲な瓶》を発動!墓地のカード5枚をデッキに戻し、デッキからカードを1枚ドローする!」

 

墓地からデッキに戻ったカード

・深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト

・無頼特急バトレイン×2

・臨時ダイヤ

・重機貨列車デリックレーン

 

「更に、カードを1枚伏せて、《ギャラクシー・デストロイヤー》の効果発動!オーバーレイユニットを1つ取り除き、《パーシアスの神域》を破壊!ターンエンド!!更にオーバーレイユニットとして墓地へ送られた《車両接続》の効果発動!次のターン終了時まで、《グスタフ・マックス》は戦闘・効果では破壊されない!」

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・エクシーズ・リボーン

 

アレン

手札3→1(うち1枚《深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト》)

ライフ1100

場 超弩級砲塔列車グスタフ・マックス×2(うち1体ORU1) ランク10 攻撃3000

  超次元ロボギャラクシー・デストロイヤー ランク10 攻撃5000

  伏せカード1

  転回操車(フィールド魔法)

 

サヤカ

手札0

ライフ1650

場 天空聖騎士アークパーシアス レベル9 攻撃3100→2800

 

車両接続

通常魔法カード

(1);自分フィールドに存在するランク10以上の機械族Xモンスター1体を対象に発動できる。このカードをそのカードの下に重ねてX素材にする。

(2):X素材となったこのカードが墓地へ送られたターン終了時に発動する。このカードをX素材としていたモンスターは次のターン終了時まで効果では戦闘・破壊されない。

 

結局、このターンで決着がつくことなく、サヤカにターンが回る。

しかし、サヤカには手札がなく、フィールドには《天空聖騎士アークパーシアス》がいるだけ。

有利なのはオーバーレイユニットを持つ《超弩級砲塔列車グスタフ・マックス》と攻撃力5000の《超次元ロボギャラクシー・デストロイヤー》のいるアレンの方だ。

だが、サヤカを見たアレンは驚きを感じていた。

(あいつ…おびえてねえ…)

自分が知っているサヤカはピンチになると動揺を顔に出し、弱気な姿を見せてしまうことが多かった。

だが、今の彼女からはそんなものが感じられない。

「お願い…私のデッキ。アレンに私の思いを届ける力を!」

この3年の間、ずっと一緒に戦ってきた相棒に願いを込め、サヤカはカードを引く。

 

サヤカ

手札0→1

 

「私は手札から魔法カード《報復者の宝札》を発動!墓地のカウンター罠カード3枚を除外して、デッキからカードを2枚ドローする!」

 

墓地から除外されたカード

・攻撃の無力化

・無償交換

・攻撃の無力化

 

報復者の宝札

通常魔法カード

(1):自分の墓地に存在するカウンター罠カード3枚を除外することで発動できる。デッキからカードを2枚ドローする。

 

「私は手札から魔法カード《パーシアスの啓示》を発動!墓地のレベル4以下の天使族モンスター1体を特殊召喚する。私は墓地から《フワポン》を特殊召喚!」

 

フワポン レベル1 攻撃200

 

 

「このタイミングで《フワポン》だと!?だが…そんな雑魚モンスターに何ができるってんだよ!?」

「《パーシアスの啓示》の効果発動!私のフィールドにパーシアスが存在するとき、墓地のこのカードを除外することで、私のフィールドの天使族モンスター1体とパーシアス1体のレベルをその合計にすることができる。私は《フワポン》と《アーク・パーシアス》のレベルを10に!」

《フワポン》がプカプカと浮かび、《天空聖騎士アーク・パーシアス》の頭上に移動する。

同時に、2体がオレンジ色の光に包まれ、レベルが統一されていく。

 

天空聖騎士アーク・パーシアス レベル9→10 攻撃2800

フワポン レベル1→10 攻撃200

 

パーシアスの啓示

通常魔法カード

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドに「パーシアス」モンスターが存在するとき、自分の墓地に存在するレベル4以下の天使族モンスター1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターはこのターン、攻撃できない。

(2):自分の墓地に存在するこのカードを除外し、自分フィールドに存在する「パーシアス」モンスター1体と天使族モンスター1体を対象に発動できる。それらのモンスターは、その2体のレベルを合計したレベルになる。

 

「レベル10のモンスターが2体!?まさか…」

「私はレベル10の《アーク・パーシアス》と《ハネワタ》でオーバーレイ!!」

サヤカはエクストラデッキから1枚のカードを引き抜き、それをアレンに見せる。

「その…カードは…!?」

「剣崎さんがあなたに渡そうとしたカードよ!エクシーズ召喚!現れて、ランク10!《No.35ラノベス・タランチュラ》!!」

青い10本足を持つ、一つ目の巨大な蜘蛛がサヤカの背後に現れ、腹部に刻まれている35の文字が光る。

それはアレンが拒絶し、捨てたカードの1枚だった。

 

No.35ラノベス・タランチュラ ランク10 攻撃0

 

「《ラノベス・タランチュラ》の効果発動!自分フィールドのモンスターの攻撃力・守備力は私たちのライフの差と同じ数値分アップする!」

 

 

No.35ラノベス・タランチュラ ランク10 攻撃0→550 守備0→550

 

《超弩級砲塔列車グスタフ・マックス》と併用することができれば、一気にステータスを引き上げることのできる、アレンのデッキにこそ可能性を見出すことのできるモンスターだ。

しかし、今の2人のライフに大した差がなく、上昇する能力値も微々たるものにとどまった。

「だが、攻撃力がたかが550のそんなモンスターでは…!」

「まだよ!このカードはまだ途中!!私はオーバーレイユニットを2つもつ《ラノベス・タランチュラ》でオーバーレイネットワークを再構築!」

「何!?」

エクシーズ召喚したばかりの《No.35ラノベス・タランチュラ》が再びオーバーレイネットワークに飛び込んでいき、黄土色だった腹部が緑色の変化していき、数字も35から84へと変化していく。

「このカードはオーバーレイユニットを2つもつランク8から10の闇属性エクシーズモンスターを素材に召喚できる!エクシーズ召喚!現れて、ランク11!《No.84ペイン・ゲイナー》!!」

 

No.84ペイン・ゲイナー ランク11 守備0

 

「《ペイン・ゲイナー》の守備力は私のフィールドに存在するエクシーズモンスターのランクの合計×200になる!」

 

No.84ペイン・ゲイナー ランク11 守備0→2200

 

「守備力2200!?その程度のモンスターで俺の3体のエクシーズモンスターは…」

「《ペイン・ゲイナー》の効果発動!1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、相手フィールドに存在するこのカードの守備力よりも低い守備力のモンスターをすべて破壊する!」

「何!?」

「《ギャラクシー・デストロイヤー》の守備力は2000!よって、《ギャラクシー・デストロイヤー》は破壊される!」

《No.84ペイン・ゲイナー》がオーバーレイユニットを捕食すると、刃のように鋭い糸を発射し、《超次元ロボギャラクシー・デストロイヤー》を貫く。

動力部を破壊されたことで機能を停止し、フィールドから姿を消した。

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・No.35ラノベス・タランチュラ

 

「《ギャラクシー・デストロイヤー》!!」

「さらに、私は手札から永続魔法《ランクアップ・スパイダーウェブ》を発動!自分フィールドのエクシーズモンスター1体をオーバーレイユニットを1つ取り除くことで、そのモンスターよりもランクの1つ高いエクシーズモンスターにランクアップさせることができる!」

「《ペイン・ゲイナー》も…途中だというのかよ!!」

「このカードで…あなたを止める!!私は《ペイン・ゲイナー》でオーバーレイ!!」

オーバーレイネットワークの飛び込んだ《No.84ペイン・ゲイナー》は自ら生み出した繭の中に身を隠す。

そして、数秒経過すると繭にひびが入り、その中から白をベースとし、関節よりも先の足が青く透き通ったものになった蜘蛛が現れる。

「ランクアップ・エクシーズチェンジ!現れて、《No.77ザ・セブン・シンズ》!!」

 

No.77ザ・セブン・シンズ ランク12 攻撃4000

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・フワポン

 

ランクアップ・スパイダーウェブ(漫画オリカ・調整)

永続魔法カード

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドに存在するXモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターのX素材を1つ取り除き、EXデッキに存在するそのカードよりもランクが1つ高いXモンスター1体をそのカードの上に重ねてX召喚扱いで特殊召喚する。

(2):このカードがフィールドに存在する限り、自分は「RUM」の効果でEXデッキからXモンスターをX召喚できず、Xモンスター以外をEXデッキから特殊召喚できない。

(3):このカードの効果でX召喚されたモンスターがフィールドから離れた時に発動する。このカードをゲームから除外する。この効果は無効化されない。

 

「《ザ・セブン・シンズ》…」

「アレン…自分たちだけの力でエクシーズ次元を取り戻す…それは間違っていないわ。でも、そんなやり方に未来があるというの!?」

「黙れ!!アカデミアに対抗するには…俺たちから未来を奪ったあいつらに復讐するにはそれしか…」

アレンはこぶしに力を籠め、救えなかった家族や友達、仲間のことを思い出す。

そんな彼らにこたえるためにはアカデミアを倒すしかない。

そのためには悪魔にでもなんにでもなる覚悟があった。

「私たちはまだ未来を失っていない!復讐以上に、私たちには考えなければならないことがある!!エクシーズ次元を復興させるって未来が!!」

「復興…だと??」

サヤカの言葉にアレンは動揺する。

アレンの脳裏にはアカデミアを倒すということばかりしかなく、エクシーズ次元をもう1度平和な次元に復興するというビジョンがなかった。

アカデミアを倒さなければ、その先の未来がないと考え、その考えを封印していた。

「そう!そのためにも、みんなが生きて、エクシーズ次元を解放しないといけない!その未来を自分の手で壊して、なんになるというの!?」

反論できないアレンは黙り込む。

いや、内心ではこのようなやり方は間違っているということは理解していた。

こんなやり方をして復讐を果たしたとしても、犠牲しか残らない。

きっと、それはカイトも理解している。

「けど…だけど、俺たちはこのためにもう何人も仲間をカードに変えてしまった!!今更…今更後戻りできるかよ!!」

今ここで、間違えを認めてしまうと犠牲になった人々がすべて無駄になる。

だからこそ、それに報いるためにもとまることができなかった。

「だったら、私が止める!!あなたに託されるはずだったカードで!《ザ・セブン・シンズ》の効果発動!オーバーレイユニットを2つ取り除くことで、相手フィールドの特殊召喚されたモンスターをすべて除外する!そして、除外したモンスターのうちの1体をこのカードのオーバーレイユニットにする!スパイダー・シルク・レイン!!」

「なに!?除外だって…!!」

オーバーレイユニットを捕食し、《No.77ザ・セブン・シンズ》の青い足が光り始める。

そして、口から発射された白い球体が天井間近で光の網となって2体の《超弩級砲塔列車グスタフ・マックス》を取り込む。

そのうちの1体が光の粒子となって消滅し、もう1体はオーバーレイユニットへと変化した。

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・No.84ペイン・ゲイナー

・天空聖騎士アークパーシアス

 

「あ、ああ…」

「バトル!!《ザ・セブン・シンズ》でダイレクトアタック!」

《No.77ザ・セブン・シンズ》の口から白いビームが発射され、アレンに襲い掛かる。

「目を覚まして、アレン!!」

アレンは自分の伏せているカード、そして手札に残った《深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト》を見る。

これらのカードがあれば、今なら逆転することができる。

(俺が伏せているカードは《メタル・リフレクト・スライム》…。こいつを発動すれば、この攻撃をしのぐことができる。そして…)

次のターンに手札のそのモンスターを召喚し、《転回操車》の効果を使って《無頼特急バトレイン》をレベル10の状態で特殊召喚する。

そして、エクストラデッキに残った最後の《超弩級砲塔列車グスタフ・マックス》をエクシーズ召喚し、その効果を使えばサヤカを倒すことができる。

だが、倒した後はどうなる?

最初に宣言した通り、遊矢と柚子を襲い、カードに変えて、エクシーズ次元を救う力にする。

そして、スペード校のレジスタンスも彼らの後を追わせ、手に入れた圧倒的な力でアカデミアを葬る。

それによって、自分たちがカードに変えた人たちにも報いる。

だが、この後はどうする?

多くの屍を積み上げてアカデミアを倒した後にどのような未来が待っている。

いや、その先に未来はない。

そのことに気づいてしまったアレンにはそのカードを発動させる勇気がなかった。

目を閉じ、サヤカの思いの一撃を受けるしかなかった。

 

アレン

ライフ1100→0

 

「アレン…」

デュエルが終わり、冷たい水の上にあおむけで倒れるアレンにサヤカは声をかける。

「どうして、こうなっちまったんだろうな…。いや、違うな…。別に道があったのに、俺たちが目をそむけただけ、か…」

「ごめんなさい、アレン。私…」

「知ってるだろ?サヤカ…。カイト、アカデミアの攻撃で家族をみんな失っちまったんだ。家族の敵を討とうと…必死だった…」

平和だったころのカイトを思い出しながら、アレンはつぶやくように言う。

その頃のカイトはぶっきらぼうなところがあったものの、優しい一面もあり、アレンにとってはあこがれの存在だった。

しかし、家族を失い、仲間を失うのを繰り返す中で心をすり減らし、アカデミア殲滅のために力を求めるシュラと化してしまった。

「俺は…もう1度あの頃のカイトに戻ってほしかった。でも…」

アレンの目から涙があふれる。

ガスマスクをしているせいでふくことができないのがもどかしかった。

「でも、俺は…カイトの力になることができなかった…」

「アレン…」

ここに至って、初めてサヤカはアレンも自分と同じだと理解できた。

そして、強くなろうとしていたからこそ、カイトから離れた自分のことが許せなかった。

「お願いだ…サヤカ。カイトを止めてくれ…頼むから…」

「…わかったわ、アレン。私たちでカイトを止める」

サヤカは3枚のナンバーズをデッキから出し、アレンのデッキに入れる。

そして、アレンに背を向けると遊矢たちを追いかけていった。



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第99話 遊矢VSカイト

「《ブルーム・ディーヴァ》で《ガントレッド・シューター》を攻撃!」

《幻奏の華歌聖ブルーム・ディーヴァ》の歌声が《ガントレッド・シューター》を包み込み、その歌声に心奪われた機械の戦士は消滅する。

「く、くっそぉ!!なんだ、あいつは!?」

 

クローバー校レジスタンス

ライフ2000→0

 

「そこをどいてくれ!《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》でダイレクトアタック!螺旋のストライク・バースト!!」

《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》の螺旋のブレスの直撃を受け、デュエリストは大きく吹き飛ばされ、気を失う。

 

クローバー校レジスタンス

ライフ2300→0

 

「はあ、はあ…これで、先に進める…」

倒したデュエリスト達を念のため、侑斗から受け取った結束バンドで両腕を固定し、目覚めたとしても満足に動けない状態にする。

これはレオコーポレーションが作った特別製で、たとえ両腕を振り上げて腰にぶつけたとしても外れないように設計されている。

水路を出てから1時間、遊矢と柚子は2人でクローバー校のレジスタンスたちとデュエルをしつつ先へ進んでいた。

まさかの奇襲で動揺していたが、それでもこちらに抵抗するようにデュエルに挑んでくる。

陽動の部隊があとどれだけ持つかわからない以上、これ以上時間をかけるわけにはいかなかった。

「サヤカ、どうしてるのかしら…?」

来た道を振り返り、アレンとデュエルしているであろうサヤカの身を案じる。

「急ごう。これ以上、サヤカとアレンみたいに仲間同士で戦うのはよくないんだ」

「…ええ!」

2人は階段を上り、カイトがいるであろう最上階を目指す。

だが、4階への階段の踊り場で下の階からやってきた3人のデュエリストがデュエルアンカーを発射する。

アンカーがわずかにずれたおかげで、2人のデュエルディスクに命中することはなかったが、このままでは挟み撃ちにされるのも時間の問題だった。

「くそ!このままじゃ、カイトのところにつく前に…」

「だったら、あたしが!!」

追いかけてくる3人の前に柚子はデュエルディスクを展開し、いつでもできるように構える。

「何をやってるんだ柚子!?」

「遊矢!ここであたしが足止めするから、あなたはカイトのところへ!」

「でも…!」

「お願い!クローバー校を止めないと、先に行かせてくれたサヤカも思いも、陽動している剣崎さん達の働きも無駄になるわ!」

柚子の言葉は理解できるし、次元戦争が始まってから強くなろうと努力し、タッグデュエルでその強さを見せてくれたため、彼女が弱いとは思っていない。

しかし、クローバー校にあとどれだけのデュエリストがいるのかわからず、場合によっては大人数を柚子1人で倒さなければならなくなる。

休憩もなしにそれを続けたら、じり貧になるのは明白だ。

「お願い…これはきっと、遊矢と、あなたの中のユートにしかできないことかもしれないから」

「ユートの…?」

(遊矢…)

急に遊矢の脳裏にユートの声が響く。

遊矢のデュエルディスクのエクストラデッキも光っていて、その光は《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》が放っていた。

「ユート…??」

(頼む、遊矢。俺はカイトの…仲間のところへ連れて行ってくれ。彼にこれ以上、罪を重ねさせたくない…)

ユートと一体化しているせいか、彼の言葉がよりダイレクトに遊矢の心に響く。

その声に目を背けることができない。

遊矢はグッと目を閉じる。

「負けるなよ、柚子!!」

決して振り向くまいと、遊矢は大股で階段を駆け上がる。

その遊矢の後姿を見て安心した柚子のデュエルディスクにはデュエルアンカーが固定されていた。

3階のフロアから足音がこちらに近づいてくる。

「さあ、コンサートの始まりよ!」

自分を鼓舞するかのように叫ぶとともに、デュエルが始まった。

 

「うわああ!」

「くっそぉ、また出てきたぞ!!」

「はあはあ、集中力が…」

デュエルを続ける侑斗の通信機にひっきりなしに仲間たちの声が響く。

いくらデュエル戦士を倒したとしても、どこからか次々と召喚され、ラチが明かない。

既に中継拠点を3分の1つぶしたが、それでもデュエル戦士たちは次々と転移してきて、こちらにデュエルを挑んでくる。

レジスタンスも何人も倒され、カードに変えられていることは既に侑斗も知っていた。

(でも、少しだけだけど変化がある…)

侑斗に入ってきた報告によると、中継拠点をつぶしたことでデュエル戦士が転移する範囲が狭まっている。

そのため、デュエル戦士が転移する心配のない場所に疲労がたまった、もしくは負傷したレジスタンスを避難させ、そこで治療や回復を行うことになった。

だが、相手もこれ以上範囲を狭められることがないよう、端末を輸送するトラックもDホイールやトラックも出動している。

それだけでなく、虎の子のオベリスク・フォースまで転移し始めていた。

(まだだ。まだここで下がるわけにはいかない…!)

やがて訪れるチャンスが来るまで耐えなければならない。

それが訪れれば、逆転できる。

両頬を思いっきりはたき、気合を入れなおした侑斗はカードを引いた。

 

「ここでいいんだな、ユート!」

「そうだ!間違いない、ここにカイトがいる!」

最上階に到着し、ユートの声に導かれるように、遊矢は思い切り扉を開く。

そこは大きなデュエルリングになっており、その周囲には多くのレジスタンスの姿があった。

そして、デュエルリングにはカイトと傷だらけのレジスタンスの姿があった。

「カイト!お前が…お前がカイトなんだな!?」

「…榊遊矢、貴様か」

なぜ自分の名前を遊矢が知っているかわからないが、レナードから提供された情報で遊矢の存在はつかんでいた。

しかし、今の段階ではそんなことはどうでもよく、それ以上にやらなければならないことが目の前に存在する。

「やめろ、カイト!お前は…」

「少し黙ってもらおうか。彼が悲壮の覚悟で救世主となろうとしているんだ。水を差さないでくれ。おい」

レナードに頷き、近くにいる3人が遊矢に向けてデュエルアンカーを発射する。

「邪魔を…するなぁ!!」

遊矢が叫び、それと同時に首にぶら下げているペンデュラムが一瞬赤く光る。

すると、彼の体がセルゲイとのデュエルの時のようにファントムライトに包まれる。

召喚エネルギーの嵐がソリッドビジョンなしで実体化しており、襲い掛かるデュエルアンカーを吹き飛ばしていた。

「これが例のファントムライトか…。カイト、これほどの召喚エネルギーを作り出す彼は想定外の一品だ。これほどのデュエリストならば、彼1人ですべての準備が整うぞ」

「…そうか。ならば、あとは奴をカードに変えるだけでいいんだな?本当に…」

「そうだ。これでお前は最強になれる。アカデミアを滅ぼし、エクシーズ次元の救世主となる」

「やれ、カイト!俺たちの命でこの次元を救えるなら、本望だ!」

「…《銀河眼の光波竜》でダイレクトアタック!殲滅のサイファーストリーム!!」

「やめろーーーーー!!!」

《銀河眼の光波竜》から発射される光のブレスの中に戦っていたデュエリストが消えていく。

光が消えると、その場には彼の姿が描かれたカードだけが残された。

レナードがそのカードを拾い、使ったカードをデッキに戻したカードはファントムライトを展開したままの遊矢を見る。

「次は…お前だ。榊遊矢。ユートとよく似ているな」

「カイト…」

先ほどカイトの名前を呼んだとき、どうして記憶の中で彼の顔と名前が即座に一致したのかはわからなかった。

だが、先ほど目の前で仲間のはずのデュエリストをカードに変えたことで、その疑問は吹き飛んでいた。

今目の前にいるカイトは記憶の中にいるカイトとは違う。

大勢の仲間を犠牲にしている、自分たちの敵。

「待て、遊矢。今のお前にこのデュエルは任せられない」

「何!?」

「お前の体を借りるぞ!頭を冷やせ!」

何を言っているのかと尋ねようとしたが、急の頭痛が起こり、だんだん体の力が抜けていく。

状況がよくわからず、だからといってわかる必要もないと判断したカイトはデュエルアンカーを発射する。

デュエルアンカーは遊矢のデュエルディスクに固定され、これでデュエルから逃げることができなくなった。

「構えろ。貴様を…アカデミア打倒のための最期の生贄にする」

「生贄…か。お前の口からそんな言葉が出てくるとは思わなかったぞ、カイト」

「何…!?」

急に目の前の男の口調と声色が変化し、さすがのカイトもピクリと眉が動く。

「どういう手品だ。ユートになったつもりか?」

「手品をしたつもりはない、カイト。俺はユートだ」

「何…?」

目の前にいる男のことがわからなくなり、カイトの中に彼への疑問が膨れ上がる。

遊矢のことはレナードからユートに似ている、ランサーズの有力なデュエリストの一人としか聞いていない。

また、スタンダード次元でユートがユーゴに敗れ、魂が遊矢の中に取り込まれたことなど知る由もない。

「何をしている、カイト。お前の覚悟はその程度か?そんなものでは、エクシーズ次元を救うことも、アカデミアを滅ぼすこともできないぞ」

「…分かっている!奪われたすべてに報いるためにもだ…」

アカデミアの侵攻によって、平和だったエクシーズ次元のすべてが破壊されてしまった。

デュエル戦士たちによって多くの人々がカードに変えられ、今でも彼らは我が物顔でエクシーズ次元を闊歩し、無差別に人々を襲い続けている。

カイトはその戦いの中で家族をすべてカードに変えられた上に、仲間も数多く失った。

彼らのためにも、アカデミアをすべて根絶やしにするまで、止まることができない。

「榊遊矢、貴様が何者だろうと、もう関係ない。貴様をアカデミアを滅ぼす糧にさせてもらう」

「俺の言葉が聞こえないのか!?こんなことをしても…」

「くどい!!デュエルをするつもりがないなら、さっさとカードになれ!!」

レナードのせいなのか、今のカイトにはどんな言葉をかけたとしても、届くことはない。

説得できたら、と考えたユートだが、今の体が自分のものではなく遊矢のもの。

事情の知らない人間に説明したとしても、こうなった詳しい要因が自分自身でもわからない以上、この状況では信用してもらう方が難しい。

「…分かった。お前を止めてみる、カイト!仲間として…友として」

「貴様の仲間にも友にもなった覚えはない!」

「「デュエル!!」」

 

カイト

手札5

ライフ4000

 

ユート

手札5

ライフ4000

 

「俺の先攻。俺は手札から《光波剣士》を特殊召喚。このカードは俺のフィールドにカードがない時、手札から特殊召喚できる」

薄緑の光を刀身とした双剣を手にした、銀色の鎧の騎士がフィールドに現れ、逆手で握るその剣を交差させて構える。

 

光波剣士 レベル4 攻撃1400

 

「そして、俺のフィールドにサイファーモンスターが存在するとき、《光波翼機》は手札から特殊召喚できる」

《光波剣士》の双剣の刀身と同じ光の六枚羽根を展開する緑色のキューブが続けてフィールドに現れる。

 

光波翼機 レベル4 攻撃1400

 

「更に俺は手札から《ストームサイファー》を召喚」

紫色の叩き割った岩石をそのままいくつも組み合わせたようなアーマーで身を包み、赤いマフラーをつけた戦士がフィールドに現れ、これでカイトのフィールドにいるサイファーモンスターは3体となる。

最も、《ストームサイファー》については2体のモンスターが見せるような薄緑の光を放つ物を持っておらず、それ故に異質さが感じられる。

 

ストームサイファー レベル4 攻撃2400

 

「《光波翼機》の効果発動。このカードをリリースすることで、ターン終了時まで俺のサイファーモンスターのレベルを4上げる」

《光波翼機》が消滅し、薄緑色の光のシャワーがカイトのフィールドに降り注ぐ。

残り2体のモンスターがその光を受けたことで、同じ色のオーラを纏い始めていた。

 

光波剣士 レベル4→8 攻撃1400

ストームサイファー レベル4→8 攻撃2400

 

「レベル8のサイファーモンスターが2体…先攻で準備を整えるとはな…」

ユートが知るカイトのデッキは後攻の時に真価を発揮しやすいタイプで、相手が展開するのを待ってから動くことをよく知っていた。

そのため、カイトは先攻を取った場合はモンスターを召喚せず、2ターン目に来る攻撃を魔法・罠カードを活用して凌ぐことが多かった。

侑斗ら別次元の人間の援助を断り、自分たちだけでエクシーズ次元を救おうとするカイトの考えや思いは伊達ではなく、こうした成長を見せることで証明している。

「俺はレベル8の《光波剣士》と《ストームサイファー》でオーバーレイ。闇に輝く銀河よ。復讐の鬼神に宿りて我がしもべとなれ!エクシーズ召喚!降臨せよ!ランク8!《銀河眼の光波竜》!」

 

銀河眼の光波竜 ランク8 攻撃3000

 

「エクシーズ素材となった《光波剣士》の効果発動。このカードをエクシーズ素材としてサイファーモンスターのエクシーズ召喚に成功したとき、相手フィールドに《光波トークン》1体を特殊召喚し、俺はデッキからカードを1枚ドローする!」

遊矢のフィールドに《N・グローモス》のような胞子でできた小柄な体で、それに合わせたような《光波剣士》の鎧をまとったトークンが現れる。

そのモンスターを見たユートは苦い表情を浮かべ、ここから何が起こるのかを予見していた。

 

光波トークン レベル8 攻撃2800

 

光波剣士

レベル4 攻撃1400 守備1000 効果 光属性 戦士族

このカード名の(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しか行えない。

(1):自分フィールドにカードが存在しないとき、このカードは手札から特殊召喚できる。

(2):このカードをX素材として「光波(サイファー)」XモンスターのX召喚に成功したときに発動する。相手フィールドに「光波トークン」1体を特殊召喚し、自分はデッキからカードを1枚ドローする。

 

光波トークン

レベル8 攻撃2800 守備2000 トークン 光属性 戦士族

「光波剣士」の効果で特殊召喚される。

 

「そして、《銀河眼の光波竜》の効果発動。1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、相手フィールドの表側表示モンスター1体のコントロールをターン終了時まで得る。この効果を受けたモンスターはターン終了時まで効果を失い、攻撃力は3000となり、カード名を《銀河眼の光波竜》として扱う。サイファープロジェクション!」

《銀河眼の光波竜》の翼にオーバーレイユニットが宿り、そこから白と赤の光の嵐が《光波トークン》に向けて放たれる。

光を受けたそのモンスターは消滅し、カイトのフィールドにもう1体の《銀河眼の光波竜》が姿を現す。

 

光波トークン→銀河眼の光波竜 レベル8 攻撃2800→3000

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・光波剣士

 

「だが、先攻1ターン目は攻撃できない」

「そうだ。俺は手札から魔法カード《アドバンス・ドロー》を発動。俺のフィールドのレベル8モンスター1体をリリースし、デッキからカードを2枚ドローする。俺はコントロールを奪った《銀河眼の光波竜》をリリースし、デッキからカードを2枚ドローする」

相手フィールドに送ってしまったトークンを処理したうえに、これによって実質手札消費1枚で《銀河眼の光波竜》の召喚に成功する形となった。

(今の俺の言葉がカイトに届くかはわからない…だが、今のこのモンスターは紛れもなく…)

カイトの口上にもあったように、《銀河眼の光波竜》には怒りの鬼神が宿ったかのように、体の中に蓄えられている光の中に血のような赤い光が多く混じっている。

過去に見た、暖かな光の竜は憎しみによって汚されていた。

「俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

カイト

手札5→2

ライフ4000

場 銀河眼の光波竜(オーバーレイユニット1) ランク8 攻撃3000

  伏せカード2

 

ユート

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「…!?ここは!?」

力が抜け、意識を失ったと思っていた遊矢が目覚めると、そこは元いたデュエルリングだった。

しかし、周囲にガレキはなく、いるのは制服姿で笑顔をした生徒たちばかり。

そして、デュエルをしているのは…。

「今日は俺が勝つぞ、カイト」

「確かにこの前と戦術が変わっているかもしれないが、それは俺も同じだ!俺は《光波剣士》を特殊召喚!」

戦っているユートとカイト。

デュエルをしているカイトの表情は光を失い、やさぐれたものではなく、純粋にデュエルを楽しむ、次元戦争前のスタンダード次元のデュエリストそのものだった。

カイトの背後を見ると、そこにはカイトの華族と思われる男性と女性、そして幼い少年の姿があった。

だが、急にデュエルリングが激しい揺れを起こし、天井や照明が崩れて床に落ちる。

「この揺れって…まさか!!」

壁の一部が崩れると、そこから外の景色を見ることができた。

様子を見に行こうと崩れた壁のところまで走る。

途中、逃げ惑う生徒とぶつかったと思ったが、なぜか遊矢の体がその生徒の体をすり抜けていた。

だが、今の遊矢はそんなことよりも今何が起こっているのかを知る方が重要だった。

(まさか…これって!?)

外を見ると、そこには古代の機械モンスターたちが前進していて、《古代の機械巨人》や《古代の機械混沌巨人》は手当たり次第に建物を攻撃し、逃げ遅れた人々はそのがれきの下敷きになっていった。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

ユート

手札5→6

 

「俺はカードを1枚伏せ、罠カード《幻影騎士団シェード・ブリガンダイン》を発動。このカードは俺の墓地に罠カードが存在しないとき、セットしたターンに発動できる。そして、発動後は通常モンスターとなり、俺のフィールドに守備表示で特殊召喚される」

 

幻影騎士団シェード・ブリガンダイン レベル4 守備300

 

「そして、手札から《幻影騎士団クラックヘルム》を特殊召喚」

青い鬼火を宿した鉄仮面が現れ、その左右には緑色の手袋2つがまるで手が入っているかのように膨らんだ状態で浮遊を始める。

 

幻影騎士団クラックヘルム レベル4 攻撃1500

 

「レベル4の《クラックヘルム》と《シェード・ブリガンダイン》でオーバーレイ!漆黒の闇より愚鈍なる力に抗う反逆の牙!今、降臨せよ!」

「そのセリフは…!?」

耳にタコができるくらい聞いたそのセリフを聞いたカイトの眼が大きく開く。

そして、自らの存在を証明するかのように、ユートの背後には反逆の竜が舞い降りる。

「エクシーズ召喚!現れろ!ランク4!《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》!」

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ランク4 攻撃2500

 

「《ダーク・リベリオン》…ユートのエースモンスター…」

カイトが知る限りでは、《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》はユートしか持っていないカード。

そのモンスターから感じるプレッシャーは過去にユートが召喚したときと変わらない。

「ユート…どういうことだ?」

ようやく目の前の遊矢がユートでもあることを認めたのか、カイトはユートに尋ねる。

「詳しくは分からない。だが…今の俺は別次元の俺自身かもしれない存在、遊矢と1つになって行動を共にしている」

「別次元の同一人物…?」

「そうだ。だが、今はそのことはどうでもいい。カイト、俺の言葉がわかるなら、今すぐ仲間を犠牲にするようなことはやめてくれ。お前はそんなことをする奴じゃないだろう!?」

「ユート…」

もし遊矢のままだったら、他人であるためその言葉が届くことはなかったかもしれない。

だが、ライバルである親友であるユートの言葉はかすかに、だが確実にカイトの心に届いていた。

「アカデミアを倒さない限り、エクシーズ次元を取り戻すことはできない。それは俺も同じ考えだ。だが…」

「おしゃべりはここまでだ」

ユートの言葉を遮ったレナードはカードケースを開き、その中にあるカードの何枚かを取り出す。

そのカードを見たユートは驚きのあまり、眼を大きく開く。

「その…カードは…!!」

「天城カイト、君の足元の屍たちだ。君の仲間たちも、倒したデュエル戦士も、すべて君をエクシーズ次元の救世主とするためにささげられたものだ。彼らの思いを君は無下にするつもりかな?」

レナードの言葉にカイトは苦悩と共に歯を食いしばる。

脳裏にはカイトのために自らカードとなった仲間たち、そしてカードになることを恐れ、背を向けて逃げる仲間を無理やりカードに変えてしまった時の光景が浮かぶ。

自ら仲間をカードに変え始めたときは恐怖と罪悪感のあまり、嘔吐し、食事ものどを通らず、夜はうなされていた。

だが、エクシーズ次元を取り戻し、アカデミアを滅ぼすにはそれしか手段がないと思い、それを成し遂げるために続けた結果、もうカードに変えた人数がデュエル戦士の方が上か、それとも仲間やエクシーズ次元の住民の方が上かわからなくなったうえにだんだん恐怖が薄れていくのも感じていた。

仲間殺しに慣れてしまったのか、そんな嫌な予想が頭に浮かぶ。

だとしたら、そんな狂人は自分1人でいい。

エクシーズ次元を取り戻すためなら人間をやめる。

その覚悟が再びカイトのとまりかけていた足を動かし始める。

「デュエルを続けるぞ…ユート」

「カイト…!」

「たとえ友であるお前の頼みだとしても、今回ばかりは聞けない。犠牲になった仲間のためにも…」

「…なら、このデュエルで無理やりにでもお前を止める!《ダーク・リベリオン》の効果!オーバーレイユニットを2つ取り除くことで、相手モンスター1体の攻撃力を半分奪う。トリーズン・ディスチャージ!!」

オーバーレイユニットを取り込んだ《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》が両翼を展開させ、稲妻を《銀河眼の光波竜》に向けて放つ。

稲妻を受けた《銀河眼の光波竜》はそれに縛り上げられ、力を吸い取られていく。

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン リンク4 攻撃2500→4000

銀河眼の光波竜 ランク8 攻撃3000→1500

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・幻影騎士団シェード・ブリガンダイン 

・幻影騎士団クラックヘルム

 

「バトル!《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》で《銀河眼の光波竜》を攻撃!反逆のライトニング・ディスオベイ!!」

牙に稲妻を宿した《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》が低空飛行しながら《銀河眼の光波竜》に向けて突撃する。

「罠発動。《光波防輪》。このカードは俺のギャラクシーアイズエクシーズモンスター、もしくはサイファーエクシーズモンスターのオーバーレイユニットとなる。そして、対象となったモンスターはこのターン、1度だけ破壊されない」

「だが、戦闘ダメージは受けてもらう!」

オーバーレイユニットが円盤状の盾となって、反逆の竜の牙を受け止める。

だが、攻撃の余波はカイトを襲い、3000ものダメージによって大きく吹き飛ばされた。

「ぐうう…!!」

 

カイト

ライフ4000→1000

 

「俺は手札の《光波巫女》の効果発動。俺のサイファーエクシーズモンスターが戦闘を行い、俺が戦闘ダメージを受けたとき、このカードは手札から特殊召喚できる」

白と赤の光のラインでできたヴェールで頭を完全に隠し、ドレスを身にまとった巫女がフィールドに現れる。

 

光波巫女 レベル4 守備1800

 

「この効果でこのカードの特殊召喚に成功したとき、デッキから受けたダメージ以下の攻撃力を持つギャラクシー、もしくはサイファーモンスター1体を手札に加える。俺はデッキから《銀河の魔術師》を手札に加える」

 

光波巫女

レベル4 攻撃1600 守備1800 効果 光属性 魔法使い族

このカード名のカードの(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しか行えない。

(1):このカードが手札に存在し、自分フィールドの「サイファー」Xモンスターが相手モンスターと戦闘を行い、自分が戦闘ダメージを受けたときに発動できる。手札のこのカード1体を自分フィールドに特殊召喚する。

(2):この方法による特殊召喚に成功したとき、デッキに存在するその時受けたダメージの数値以下の攻撃力の「サイファー」「ギャラクシー」モンスター1体を対象に発動できる。そのカードを手札に加える。

 

「俺はカードを3枚伏せ、ターンエンド」

 

カイト

手札2(うち1枚《銀河の魔術師》)

ライフ1000

場 銀河眼の光波竜(オーバーレイユニット2) ランク8 攻撃1500

  光波巫女 レベル4 守備1800

  伏せカード1

 

ユート

手札6→1

ライフ4000

場 ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ランク4 攻撃4000

  伏せカード3

 

「俺のターン、ドロー」

 

カイト

手札2→3

 

「俺は手札から《銀河の魔術師》を召喚!」

 

銀河の魔術師 レベル4 攻撃0

 

「レベル4の《銀河の魔術師》と《光波巫女》でオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろ、《輝光子パラディオス》!」

 

輝光子パラディオス ランク4 攻撃2000

 

「更に俺は手札から魔法カード《エクシーズ・トレジャー》を発動。俺たちのフィールドに存在するエクシーズモンスターの数だけデッキからカードをドローする。よって、デッキから3枚カードをドロー。そして、《銀河眼の光波竜》の効果発動。オーバーレイユニットを1つ取り除き、《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》のコントロールを得る!サイファープロジェクション!」

「く…永続罠《幻影霧剣》を発動!フィールド上のモンスター1体は攻撃対象にならないが、攻撃不能となり、効果も無効となる!」

紫色の霧が《銀河眼の光波竜》を包み込んでいき、翼から放たれるはずだった光の波は霧によって消滅していく。

これで、《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》を奪われることはないが、これは一時しのぎにしかならない。

「だが、お前も知っているはずだ。《パラディオス》の効果を。1ターンに1度、オーバーレイユニットを2つ取り除くことで、相手モンスター1体の効果を無効にし、攻撃力を0にする!」

《輝光子パラディオス》の水晶の刃の剣にオーバーレイユニットが宿り、そこから発生られる青い光を浴びた《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》は力を失い、浮かんでいたその体を地面に落とす。

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ランク4 攻撃4000→0

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・銀河の魔術師

・光波巫女

 

「バトル。《輝光子パラディオス》で《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》を攻撃!フォトン・ディバンディング!」

水晶の剣を振りかざした《輝光子パラディオス》が動けない《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》を両断する。

両断された反逆の竜は消滅し、攻撃の余波がユートに及ぶ。

「ぐ…ううう!!」

 

ユート

ライフ4000→2000

 

「俺は罠カード《ダメージ・コンデンサー》を発動。手札1枚を墓地へ送り、俺が受けたダメージ以下の攻撃力を持つモンスターをデッキから特殊召喚する。俺は《カードガンナー》を特殊召喚」

 

カードガンナー レベル3 守備400

 

手札から墓地へ送られたカード

・幻影死槍

 

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

カイト

手札3

ライフ1000

場 銀河眼の光波竜(オーバーレイユニット1 《幻影霧剣》の影響下) ランク8 攻撃1500

  輝光子パラディオス ランク4 攻撃2000

  伏せカード2

 

ユート

手札1→0

ライフ2000

場 カードガンナー レベル4 守備400

  幻影霧剣(永続罠)

  伏せカード1

 

「俺のターン、ドロー!」

 

ユート

手札0→1

 

「俺は《カードガンナー》の効果発動。デッキの上からカードを3枚まで墓地へ送り、ターン終了時までこの効果で墓地へ送ったカード1枚につき、500攻撃力をアップさせる」

 

デッキから墓地へ送ったカード

・終焉の精霊

・ネクロ・ガードナー

・幻影騎士団シャドーベイル

 

「更に、俺は手札から《クレーンクレーン》を召喚」

 

クレーンクレーン レベル3 攻撃300

 

「このカードの召喚に成功したとき、俺の墓地に存在するレベル3モンスター1体を特殊召喚できる。俺は《ネクロ・ガードナー》を特殊召喚」

 

ネクロ・ガードナー レベル3 攻撃600

 

「レベル3の《ネクロ・ガードナー》と《クレーンクレーン》でオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろ、ランク3!《彼岸の旅人ダンテ》!」

赤いジャケットと黒い服を重ね着し、黒っぽいターバンをつけた若者がフィールドに現れる。

ほっそりとしていて、荒事とは無縁な雰囲気を醸し出している。

 

彼岸の旅人ダンテ ランク3 攻撃1000

 

「《ダンテ》の効果。1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、デッキの上からカードを3枚まで墓地へ送り、墓地へ送ったカード1枚につき、攻撃力をターン終了時まで500アップさせる」

 

彼岸の旅人ダンテ ランク3 攻撃1000→2500

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・ネクロ・ガードナー

 

デッキから墓地へ送られたカード

・幻影騎士団サイレントブーツ

・彼岸の悪鬼グラバースニッチ

・ブービートラップE

 

「この瞬間、墓地へ送られた《グラバースニッチ》の効果発動。デッキから《グラバースニッチ》以外の彼岸モンスター1体を特殊召喚できる。俺は《彼岸の悪鬼スカラマリオン》を特殊召喚する」

顔の上半分を鉄の仮面で隠し、黒い翼と4本の長い爪を伸ばした指を持つ悪鬼が地中から現れる。

 

彼岸の悪鬼スカラマリオン レベル3 攻撃800

 

「《スカラマリオン》の効果。俺のフィールドに彼岸モンスター以外のモンスターが存在するとき、このカードは破壊される」

現れたばかりの《彼岸の悪鬼スカラマリオン》が地中深くへ姿を消す。

そして、《彼岸の旅人ダンテ》が剣を抜く。

「バトル。《ダンテ》で《パラディオス》を攻撃。神曲の刃!」

《彼岸の旅人ダンテ》の背後の白いトーガを纏った男の幻影が現れ、右手から青い光を刃に送り込む。

青く光る剣で《輝光子パラディオス》を切り裂き、撃破した。

 

カイト

ライフ1000→500

 

「《パラディオス》の効果。フィールドのこのカードが相手によって破壊されたとき、デッキからカードを1枚ドローする」

「《彼岸の旅人ダンテ》の効果。このカードは攻撃したバトルフェイズ終了時に守備表示となる」

 

彼岸の旅人ダンテ ランク3 攻撃2500→守備2500

 

カイト

手札3→4

 

「俺はこれでターンエンド。同時に、墓地へ送られた《スカラマリオン》の効果。デッキから闇属性・悪魔族・レベル3モンスター1体を手札に加える。俺は《魔界発現世行きバスガイド》を手札に加える」

 

カイト

手札4

ライフ500

場 銀河眼の光波竜(オーバーレイユニット1 《幻影霧剣》の影響下) ランク8 攻撃1500

  伏せカード2

 

ユート

手札1(《魔界発現世行きバスガイド》)

ライフ2000

場 カードガンナー レベル4 守備400

  彼岸の旅人ダンテ(オーバーレイユニット1) ランク3 守備2500

  幻影霧剣(永続罠)

  伏せカード1

 

「俺のターン、ドロー!」

 

カイト

手札4→5

 

「俺は罠カード《ロケットハンド》を発動。このカードは発動後、攻撃力800の装備カードとなって俺のモンスター1体に装備できる。俺は《銀河眼の光波竜》に装備」

《銀河眼の光波竜》の右腕に青い機械の小手が装着される。

 

銀河眼の光波竜 ランク8 攻撃1500→2300

 

「更に、《ロケットハンド》の効果によりこのカードを墓地へ送り、効果を発動。フィールド上に表側表示で存在するカードを1枚破壊する。俺は《彼岸の旅人ダンテ》を破壊」

霧の中から照準をつけることなく《ロケットハンド》が発射される。

しかし、その小手そのものに追尾機能がついているようで、自動修正されて《彼岸の旅人ダンテ》の胸部を貫き、撃破した。

「く…だが、《彼岸の旅人ダンテ》の効果。このカードが墓地へ送られたとき、このカード以外の墓地に存在する彼岸カード1枚を手札に加える。俺は墓地から《グラバースニッチ》を手札に加える」

「そして、《ロケットハンド》を装備していたモンスターの攻撃力は0となり、表示形式の変更は不可能となる」

 

銀河眼の光波竜 ランク8 攻撃1500→0

 

「そして俺は手札から魔法カード《セブンストア》を発動。俺のフィールドのエクシーズモンスター1体をリリースし、オーバーレイユニットの数+1枚、デッキからカードをドローする。オーバーレイユニットの数は1つ。よってデッキからカードを2枚ドローする」

 

セブンストア(アニメオリカ)

通常魔法カード

このカード名のカードは1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールドのXモンスター1体をリリースして発動できる。そのモンスターのX素材の数+1枚デッキからカードをドローする。

 

「《幻影霧剣》は対象となったモンスターがフィールドから離れたとき、破壊される」

「そして、俺は罠カード《貪欲な瓶》を発動。俺の墓地のカード5枚をデッキに戻し、デッキからカードを1枚ドローする」

「このターンで、4枚もカードを…!」

カイトのフィールドにはモンスターがいないが、手札が7枚まで増強された。

この状態ではカイトがどのような動きを見せてもおかしくない。

 

墓地からデッキに戻ったカード

・光波剣士

・銀河の魔術師

・銀河眼の光波竜

・セブンストア

・エクシーズ・トレジャー

 

「そして、俺は罠カード《戦線復帰》を発動。墓地から《光波翼機》を特殊召喚」

 

光波翼機 レベル4 守備1200

 

「更に手札から速攻魔法《地獄の暴走召喚》を発動。相手フィールドにモンスターが表側表示で存在し、俺のフィールドに攻撃力1500以下のモンスター1体のみが特殊召喚されたとき、手札・デッキ・墓地に存在する同名カードを可能な限り攻撃表示で特殊召喚する」

 

光波翼機×2 レベル4 攻撃1400

 

「そして、お前は自分フィールドに表側表示で存在するモンスター1体と同じ名前のモンスターを手札・デッキ・墓地から可能な限り特殊召喚する」

「俺はデッキから《カードガンナー》を守備表示で特殊召喚」

 

カードガンナー レベル3 守備400

 

「俺は《光波翼機》の効果発動。このカードをリリースし、俺のフィールドのサイファーモンスターのレベルを4つ上昇させる」

 

 

光波翼機×2 レベル4→8 攻撃1400

 

「また《銀河眼》をエクシーズ召喚するつもりか!?」

「俺はレベル8の《光波翼機》2体でオーバーレイ!闇に輝く銀河よ。復讐の鬼神に宿りて我がしもべとなれ!エクシーズ召喚!降臨せよ!ランク8!《銀河眼の光波竜》!」

《幻影霧剣》と《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》により、力を奪われていた《銀河眼の光波竜》が完全な姿となって再びフィールドに舞い戻る。

 

銀河眼の光波竜 ランク8 攻撃3000

 

「そして俺は《銀河眼の光波竜》の効果発動。オーバーレイユニットを1つ取り除き、相手の表側表示モンスター1体のコントロールを得る。その時、そのモンスターの攻撃力は3000となり、効果が無効になるとともに、カード名を《銀河眼の光波竜》として扱う!」

効果発動を宣言したカードだが、問題なのはどのモンスターのコントロールを得るかだ。

《彼岸の旅人ダンテ》は墓地へ送られたとき、墓地の彼岸カードを手札に戻す効果があり、2体の《カードガンナー》はいずれもフィールドから墓地へ送られたとき、デッキからカードを1枚ドロー。

いずれのモンスターも墓地へ送ると厄介なことには変わりない。

ユート相手に選択ミスはそのまま敗北を意味することをカイトはだれよりも理解していた。

「俺は《カードガンナー》のコントロールを得る。サイファープロジェクション!」

《銀河眼の光波竜》の光を受けた《カードガンナー》がその姿をその竜に変わり、カイトのフィールドに移動する。

「そして、《銀河眼の光波竜》となった《カードガンナー》を攻撃表示に変更」

 

カードガンナー(《銀河眼の光波竜》扱い) レベル3 守備400→攻撃3000

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・光波翼機

 

「更に俺は《光波双顎機》を召喚」

サイファーモンスター特有の光を翼にスクリーンのように宿している小さなティラノサウルスのような機械が現れる。

 

光波双顎機 レベル4 攻撃1600

 

「《光波双顎機》の効果。手札1枚を墓地へ送り、手札・デッキからサイファーモンスター1体を特殊召喚する。俺は《光波剣士》を特殊召喚」

 

光波剣士 レベル4 攻撃1400

 

手札から墓地へ送られたカード

・極星宝ブリージング・メン

 

「レベル4の《光波剣士》と《光波双顎機》でオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろ、ランク4!《光波騎士エウヌス》!」

光で構築された古代ローマ風の鎧と剣を持つ浅黒い肌で茶色い髪の戦士が現れる。

 

光波騎士エウヌス ランク4 攻撃1000

 

「オーバーレイユニットとなった《光波剣士》の効果。お前のフィールドの《光波トークン》を特殊召喚する」

 

光波トークン レベル8 守備2000

 

「そして、フィールドの《銀河眼の光波竜》でオーバーレイネットワークを再構築。闇に輝く銀河よ、星屑になり果てし兵の意思を束ね、刃に宿れ!エクシーズ召喚!現れろ、ランク9!《銀河眼の光波刃竜》!」

オーバーレイネットワークの中で《銀河眼の光波竜》の両肩に光を放つ大型の球体がついたユニットが装着される。

そして、そこから発せられる光が両腕に宿り、それぞれの腕に2本ずつの光の刃が構築された。

姿が変わった《銀河眼の光波刃竜》はその刃でオーバーレイネットワークを切り裂き、フィールドに舞い戻る。

 

銀河眼の光波刃竜 ランク9 攻撃3200

 

「《銀河眼の光波竜》の姿が変わっただと…!?」

このカードは今までユートがカイトとデュエルをする中で一度も見たことがない。

分かれている間に手に入れたカードなのだろう。

そのモンスターを見たレナードは笑みを浮かべる。

(試作品は順調だ…。だとしたら、今のエネルギーでも十分生み出せるだろうな…)

手元にあるカード化した人々を見つつ、レナードは笑みを浮かべた。

 

「そうか…この日はアカデミアがエクシーズ次元を…!」

クローバー校から脱出した遊矢は外の様子を見ている間に見失ってしまったユートとカイトの行方を追う。

周囲には次々とカードに変えられる人々がいて、デュエル戦士たちが獲物を探しているが、遊矢を見向きもしていない。

「あれは…!」

助けることができないことに歯がゆさを覚えた遊矢の眼に家族とともに逃げるカイトの姿が映る。

時折カイトは近づくデュエル戦士を《銀河眼の光波竜》で倒していた。

逃げている間に何人も倒していたため、さすがのデュエル戦士たちもカイトを警戒してか、複数人で次々とデュエルを仕掛けてくる。

クローバー校でもトップクラスの実力を誇るカイトでも、何度もデュエルを続けていると疲労してミスを起こす。

ついに《古代の機械巨人》の一撃で《銀河眼の光波竜》が破壊され、カイトは敗北した。

しかし、デュエル戦士たちはカイトをカードに変えず、彼をうつぶせに倒させ、顔を無理やり前に向けさせる形で拘束した。

そして、仲間を何人も倒したカイトへの当てつけか、彼の目の前で家族を1人ずつカードに変えていく。

「やめろ…やめろーーーー!!」

カードに変えられていく家族を助けようと必死にもがくが、疲れ果てた体では抜け出すこともできず、ついには全員カードに変えられてしまった。

家族を1人残らずなくしたカイトは絶望と共に気力を失い、抵抗することを辞めてしまった。

それですっきりしたのか、カイトをカードに変えようとしたが、その直前にユートと黒咲が助けに来て、彼らを1人残らず撃破した。

「そうか…カイトは家族の仇を討つために…」

 

「俺は《光波騎士エウヌス》の効果発動!俺のフィールドにギャラクシーアイズ、またはサイファーエクシーズモンスターが特殊召喚されたとき、次の相手ターン終了時まで攻撃力を1000アップさせる」

 

光波騎士エウヌス ランク4 攻撃1000→2000

 

「《エウヌス》のさらなる効果。オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、このターン俺のフィールドのギャラクシーアイズ、サイファーエクシーズモンスターは守備モンスターを攻撃するとき、貫通ダメージを与えることができる」

「何!?」

《光波騎士エウヌス》の剣にオーバーレイユニットが宿り、そこから青い波紋が発生する。

波紋を受けた2体の《銀河眼の光波竜》は黄色いオーラを纏う。

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・光波剣士

 

「くっ…」

今のユートのライフは2000。

2体のギャラクシーアイズと《光波騎士エウヌス》の一斉攻撃を凌げない。

「ユート、これが俺の覚悟だ…」

 

「はあ、はあ、はあ…」

一方、足止めをしていた柚子だが、次々と湧いて出てくるレジスタンスたちに苦戦していた。

12人目を倒した後から数える気力もなくなり、あまりの数からもしかしたら倒したはずのレジスタンスが復活して入ってきているのかと誤解してしまうほどだ。

《ガガガガンマン》の攻撃で《幻奏の音姫プロディシー・モーツァルト》が破壊され、更に《ガガガザムライ》のダイレクトアタックを受けてしまい、ライフを大幅に減らしてしまっている。

「あの黒咲の妹にそっくりな奴…何なんだよ!?」

一方レジスタンスも柚子の予想以上の粘りに驚愕しており、中々彼女を突破することができない。

早く彼女を倒し、カイトの邪魔をしようとしている遊矢を倒さなければならない。

「遊矢の邪魔は…させないわ!!あたしの…」

「私のターン、ドロー!!」

柚子に割り込むように、聞き覚えのある少女の声が聞こえてくる。

同時に、《CXダーク・フェアリー・チア・ガール》がエクシーズ召喚され、《ガガガザムライ》を撃破した。

「良かった…無事で」

「サヤカ!!」

「貴様らの相手は彼女たちだけではないぞ!」

「その声は…!!」

鉄下駄の音が下り階段から聞こえ、サヤカの隣に柚子がよく知る少年が立つ。

踊り場にいたレジスタンスたちは見たことのないデュエリストの登場でサヤカの時以上に混乱していた。

「権現坂…!」

「剣崎殿の要請で来た。貴様らのことは聞いている。倒れた黒咲にかわり、この俺が貴様らを止める!」

 

「《光波刃竜》の効果発動。1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、フィールドのカードを1枚破壊できる。俺は《光波トークン》を破壊!」

オーバーレイユニットが腕の刃に宿り、そこから剣閃が3発発射され、それで切り裂かれた《光波トークン》が消滅した。

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・光波翼機

 

「バトル!《カードガンナー》で《カードガンナー》を攻撃!殲滅のサイファーストリーム!」

《カードガンナー》が変化した《銀河眼の光波竜》が仲間であるはずの《カードガンナー》を光のブレスで撃ち抜き、撃破する。

そして、そのビームはそのままユートに向かっていく。

「終わりだ、ユート!」

「俺は罠カード《幻影悪夢防御》を発動。このカードを発動したターン、俺のモンスターの戦闘で発生する俺へのダメージは0となり、俺のフィールドの幻影騎士は戦闘では破壊されない!」

ユートを黒いバリアが包み、光のブレスを受け止める。

「そして、《カードガンナー》が破壊され墓地へ送られたとき、デッキからカードを1枚ドローする」

「だが、その効果はモンスターとの戦闘だけだ。《銀河眼の光波刃竜》で《彼岸の旅人ダンテ》を攻撃!撃滅のサイファースラッシュ!」

《銀河眼の光波刃竜》が再び剣閃が放たれる。

それで切り裂かれた《彼岸の旅人ダンテ》は消滅するが、バリアがユートに届きかけた剣閃をかき消した。

「《彼岸の旅人ダンテ》の効果。墓地の《グラパースニッチ》を手札に加える」

「これでモンスターは全滅した!いけ、《光波騎士エウヌス》!」

《光波騎士エウヌス》がユートに向かって走り、右手に握っている剣で縦に切り裂こうとした。

(ユート…お前の犠牲が最後だ。だが、エクシーズ次元を救った時は俺も…)

「俺は墓地の《ネクロ・ガードナー》の効果発動。このカードを墓地から除外することで、攻撃を無効にする!」

しかし、ユートの前に《ネクロ・ガードナー》の幻影が現れてその刃を受け止めた。

 

幻影悪夢防御(ファントム・ナイトメア・ガード)

通常罠カード

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードを発動したターン、自分のモンスターと相手モンスターとの戦闘で発生する自分へのダメージが0となる。そして、自分フィールドの「幻影騎士団」モンスターはこのターン、戦闘では破壊されない。

(2):このカードが墓地に存在し、自分フィールドの「幻影騎士団」Xモンスターが攻撃対象となったときに発動できる。このカードをそのモンスターの下に重ねてX素材とする。この効果の対象となったモンスターはこのターン、戦闘・効果では破壊されない。この効果を発動したこのカードは墓地へ送られたときに除外される。

 

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド…。《カードガンナー》は貴様のフィールドに戻る」

 

カイト

手札4→3

ライフ500

場 銀河眼の光波刃竜(オーバーレイユニット1) ランク9 攻撃3200

  光波騎士エウヌス(オーバーレイユニット1) ランク4 攻撃2000

  伏せカード2

 

ユート

手札1→4(《彼岸の悪鬼グラバースニッチ》《魔界発現世行きバスガイド》)

ライフ2000

場 カードガンナー レベル3 攻撃400

 

《幻影悪夢防御》と《幻影騎士団スエサイドシールド》のおかげでこのターンの敗北は防ぐことができた。

しかし、カイトのフィールドには《銀河眼の光波刃竜》と《光波騎士エウヌス》が残っていて、《光波騎士エウヌス》の効果で彼のサイファーモンスターは1ターンのみだが、貫通効果を得ることができる。

次のターン、また《銀河眼の光波竜》がエクシーズ召喚され、攻撃モンスターを増やされたらもうユートに防ぐ手立てがなくなってしまう。

「分かったか、カイト。俺たちにはもっと力が必要だ…。俺たちだけの力でアカデミアを叩くための力を」

「カイト…」

「他次元の奴らは信用ならない。あの剣崎という男も、今はいい顔をしているが、あの得体のしれない男がいつ裏切るかわからない」

「裏切るだと…!?」

「そうだ。奴はエクシーズ次元の人間ではない。そんな人間が俺たちの次元を守って、何の恩恵がある。そして、何かにすがらなければ自分たちの次元すら守れない…それは屈辱的なことだ」

力がなければ何も守ることができない。

アカデミアとの戦いでそのことを嫌というほど学んだ。

そして、別次元の人間のことを信じることができなかった。

別次元とのファーストコンタクトが戦争という形になってしまった以上、そんな不信感を抱いてしまうことは否定できない。

(だが…!)

「けど、違う!」

急にユートの口調が変化し、遊矢のものへと変わっていく。

(遊矢…!?)

元々、肉体が遊矢のものであるため、ユート以上に遊矢の意思がここでは優先される。

「カイト…君のアカデミアを憎む気持ちは分かる。俺も、アカデミアのやってきたことを見たから…」

無差別に人々を襲ってカードに変え、スタンダード次元の平和を壊した。

シンクロ次元をロジェとの戦争に巻き込んだ。

遊矢のアカデミアを許すことができない。

しかし、カイトのやり方を認めることもできない。

「けど、俺は信じてる。デュエルは戦争の道具じゃない。みんなを笑顔にするためのものだ!」

「笑顔…!?」

かつてのユートの言葉を思い出す。

ユートもデュエルは人々を笑顔にするためにやるべきものだと言っていた。

「今のカイトのデュエルは…悲しみしか生んでいない。きっと、カイト。お前自身も!そして…仮に俺たちが負けて、お前がアカデミアを滅ぼしたとしても…お前は未来を失う!生きる理由がなくなる!」

「そんな…ことは…!」

カイト自身、こんなことをしてエクシーズ次元を救ったとしても未来はないことは分かっている。

エクシーズ次元を救ってからの未来を描いていないのは本当のことだからだ。

きっと、こんなやり方でレナードの言う救世主になったとしても、いなくなってしまった家族の誇れない。

だが、多くの仲間やデュエル戦士をカードに変え、屍を重ねてきたカイトにはそれ以外の選択肢がない。

「だが…俺はもう止まれない!あと一歩で、アカデミアを滅ぼす力が手に入る!止まれないんだ!!」

「…分かったよ、カイト。それでも止まれないというなら、もう俺たちも戦うことをためらわない!」

「行くぞ、カイト!!俺のターン、ドロー!!」

瞬時に人格がユートのものに変わり、カードをドローする。

 

ユート

手札4→5

 

「俺はスケール1の《幻影騎士団スエサイドシールド》をセッティング!」

「ユートが…ペンデュラムを!?」

表面にどくろが刻まれ、黒いオーラを宿した鉛色のタワーシールドが青い光の柱を生み出す。

ランサーズをはじめとしてスタンダード次元のデュエリストがペンデュラム召喚を使うことはレナードから聞いていた。

遊矢と一体化したことで何か彼に影響を与えているかもしれないと思ったが、まさか幻影騎士団のペンデュラムカードができるとは思いもよらなかった。

しかし、セッティングしているのは1枚。

ペンデュラム召喚するためにはまだあと1枚足りない。

「俺は墓地の《幻影霧剣》の効果発動。このカードを墓地から除外し、墓地の幻影騎士団1体を特殊召喚する。俺は《幻影騎士団サイレントブーツ》を特殊召喚」

 

幻影騎士団サイレントブーツ レベル3 攻撃200

 

「そして、《カードガンナー》の効果発動!デッキからカードを3枚墓地へ送り、攻撃力アップ」

 

カードガンナー レベル3 攻撃400→1900

 

デッキから墓地へ送られたカード

・幻影騎士団シャドー・ベイル

・幻影騎士団ロスト・ヴァンブレイズ

・幻影騎士団ダスティローブ

 

「レベル3の《カードガンナー》と《サイレントブーツ》でオーバーレイ!戦場に倒れし騎士たちの魂よ。今こそ蘇り、闇を切り裂く光となれ!エクシーズ召喚!現れろ!ランク3、《幻影騎士団ブレイクソード》!」

 

幻影騎士団ブレイクソード ランク3 攻撃2000

 

「《ブレイクソード》の効果。1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、自分及び相手フィールドのカードを1枚ずつ破壊する!俺が破壊するのは《ブレイクソード》と《銀河眼の光波刃竜》!」

オーバーレイユニットが大剣に宿り、《幻影騎士団ブレイクソード》の炎がすべてその剣に吸収される。

残った力でその大剣を投げた後でそのモンスターは消滅した。

大剣に貫かれた《銀河眼の光波刃竜》の光が消え、消滅する。

「俺が《銀河眼の光波刃竜》の効果を発動。エクシーズ召喚されたこのカードが相手によって破壊されたとき、墓地から《銀河眼の光波竜》を特殊召喚できる」

 

銀河眼の光波竜 ランク8 攻撃3000

 

「更に俺は罠カード《光波分光》を発動。自分フィールドのオーバーレイユニットを持つサイファーエクシーズモンスターが戦闘または相手の効果によって破壊され墓地へ送られたとき、そのモンスターを墓地から特殊召喚する!」

 

銀河眼の光波刃竜 ランク9 攻撃3200

 

「そして、エクストラデッキからそのモンスターと同じ名前のモンスター1体を特殊召喚する!」

 

銀河眼の光波刃竜 ランク9 攻撃3200

 

「《光波騎士エウヌス》の効果発動!ギャラクシーアイズ、サイファーエクシーズモンスターが特殊召喚されたことで、攻撃力がアップする」

 

光波騎士エウヌス ランク4 攻撃2000→5000

 

「エクシーズ召喚された《ブレイクソード》が破壊されたとき、墓地の同じレベルの幻影騎士団2体を特殊召喚できる…。だが俺は、その効果を使わない!」

「何!?」

「俺は《スエサイドシールド》のペンデュラム効果発動!俺のフィールドにモンスターが存在しないとき、フィールドのこのカードを破壊することで、デッキからカードを1枚ドローできる」

「ペンデュラム召喚を放棄するつもりか!?」

ユートのフィールドからカードがなくなり、カイトのフィールドには3体のギャラクシーアイズと攻撃力5000の《光波騎士エウヌス》がいる。

だが、手札に《魔界出現世行きバスガイド》と《彼岸の悪鬼グラバースニッチ》を含めて5枚。

カイトのように一気に有利な展開を作っても不思議ではない。

「俺のフィールドに魔法・罠カードが存在しないとき、《グラバースニッチ》は手札から特殊召喚できる」

 

彼岸の悪鬼グラバースニッチ レベル3 攻撃1000

 

「そして、《彼岸の悪鬼ガトルホッグ》も《グラバースニッチ》と同じ条件で特殊召喚できる」

 

灰色で2本足で歩く、筋肉質な牛がフィールドに現れる。

 

彼岸の悪鬼ガトルホッグ レベル3 攻撃1200

 

「レベル3の《グラバースニッチ》と《ガトルホッグ》でオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろ、ランク3!《彼岸の旅人ダンテ》!」

 

彼岸の旅人ダンテ ランク3 攻撃1000

 

「《ダンテ》の効果発動。オーバーレイユニットを1つ取り除き、デッキの上から3枚までカードを墓地へ送り、1枚につき500、このカードの攻撃力をアップさせる」

 

デッキから墓地へ送られたカード

・幻影死槍

・彼岸の悪鬼ファーファレル

・幻影騎士団フラジャイルアーマー

 

彼岸の旅人ダンテ ランク3 攻撃1000→2500

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・彼岸の悪鬼グラバースニッチ

 

「墓地へ送られた《ファーファレル》と《グラバースニッチ》の効果。フィールド上のモンスター1体をターン終了時まで除外する。俺は《光波騎士エウヌス》を除外する!」

「ちっ…!」

《光波騎士エウヌス》の足元に赤い穴が現れ、その中へ落ちていく。

(《光波騎士エウヌス》は自らをリリースすることで、サイファーモンスターを対象としたカード効果を無効にし、破壊する効果がある。それを防がれたか…!)

 

光波騎士エウヌス

ランク4 攻撃1000 守備1000 エクシーズ 光属性 戦士族

「サイファー」レベル4モンスター×2

(1):自分フィールドに「ギャラクシーアイズ」「サイファー」Xモンスターが特殊召喚されたときに発動する。このカードの攻撃力は次の相手ターン終了時まで1000アップする。

(2):1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除くことで発動できる。このターン、自分フィールドの「ギャラクシーアイズ」「サイファー」Xモンスターが守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ戦闘ダメージを与える。

(3):自分フィールドの「サイファー」モンスターを対象とするカード効果が発動されたとき、フィールドに存在するこのカードをリリースすることで発動できる。その発動を無効にし、破壊する。

 

「更に、《グラバースニッチ》の効果。デッキから《彼岸の悪鬼バルバリッチャ》を特殊召喚する!」

棘付きの鉄球を抱えた、片方の角が折れた老齢の悪鬼が現れる。

 

彼岸の悪鬼バルバリッチャ レベル3 攻撃1700

 

「そして、このカードは手札の彼岸モンスター1体を墓地へ送り、自分フィールドのダンテと名の付くモンスターの上に重ねることでエクシーズ召喚できる。俺は手札の《彼岸の悪鬼リビオッゴ》を墓地へ送り、《彼岸の旅人ダンテ》でオーバーレイ!」

赤黒いオーバーレイネットワークが出現し、《彼岸の旅人ダンテ》が飛び込んでいく。

すると、その赤黒かったオーバーレイネットワークから白い光が発生し、そこからピンク色の衣を纏い、白いヴェールで頭を隠した女性がフィールドへ降りてくる。

「愛の象徴となりし淑女よ、地獄と煉獄を越えし若者を導き、光をもたらせ!エクシーズ召喚!現れろ、ランク6!《永遠の淑女ベアトリーチェ》!」

 

永遠の淑女ベアトリーチェ ランク6 攻撃2500

 

「《ベアトリーチェ》…奴のもう1体のエースモンスターか!?」

「彼岸モンスター以外のモンスターがフィールドに存在することにより、《バルバリッチャ》は破壊される。そして、俺は《バルリルッチャ》の効果発動!まずは《バルバリッチャ》の効果だ。このカードが墓地へ送られたとき、墓地の《バルバリッチャ》以外の彼岸カードを3枚まで除外し、1枚につき300のダメージを与える!俺が除外するのは《グラバースニッチ》と《リビオッゴ》。600のダメージだ!」

墓地から2つの炎がカイトに向けて発射される。

小さな炎だが、それらを受けたらカイトのライフは尽きることになる。

「俺は罠カード《光波治癒》を発動。俺のフィールドのサイファーモンスターの元々の攻撃力分、俺のライフを回復する。俺は《光波刃竜》を対象にする」

カイトの体が光りに包まれ、ライフが回復すると同時に炎がカイトに命中する。

 

カイト

ライフ500→3700→3100

 

「そして…この効果の対象となったモンスターはこのターン、破壊されない」

 

光波治癒(サイファー・ヒーリング)

通常罠カード

(1):自分フィールドに存在する「サイファー」モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターの元々の攻撃力分LP回復する。この対象となったモンスターはターン終了時まで戦闘・効果では破壊されない。

 

「そして、《ベアトリーチェ》の効果。オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、デッキからカードを1枚墓地へ送る」

 

デッキから墓地へ送られたカード

・幻影騎士団リグレットメイス

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・彼岸の悪鬼ガトルホッグ 

 

「そして、墓地の《リグレットメイス》の効果。墓地のファントム魔法・罠カード1枚を除外することで、1度だけこのカードとエクストラデッキに表側表示で存在する幻影騎士団ペンデュラムモンスターを俺のペンデュラムゾーンにセッティングできる!」

《幻影騎士団スエサイドシールド》と共に、棘の付いたメイスを持つ青い炎の右腕が青い光の柱を生み出す。

 

幻影騎士団リグレットメイス

レベル4 攻撃1400 守備1500 闇属性 戦士族

【Pスケール:青6/赤6】

このカード名の(1)のP効果はデュエル中1度だけ発動できる。

(1):このカードが墓地に存在し、自分魔法・罠ゾーンにPカードが存在しないとき、自分の墓地に存在する「ファントム」魔法・罠カード1枚を除外することで発動できる。このカードと自分EXデッキに表側表示で存在する「幻影騎士団」Pモンスター1体を自分Pゾーンに置く。

(2):このカードがPゾーンに存在する限り、「幻影騎士団」モンスター、ドラゴン族Pモンスター以外P召喚できない。この効果は無効化できない。

【モンスター効果】

(1):このカードをX素材としたモンスターは以下の効果を得る。

●このカードが相手モンスターを戦闘で破壊し墓地へ送ったとき、自分のデッキに存在する「RUM」「ファントム」魔法・罠カード1枚を対象に発動できる。そのカードを手札に加える。

 

「《リグレットメイス》のペンデュラムスケールは6。よって、レベル2から5までのモンスターを同時に召喚可能。だが、俺は《幻影騎士団スエサイドシールド》のペンデュラム効果発動!ペンデュラム召喚するとき、俺のフィールドにいるモンスターの数が相手よりも少ない場合、手札・エクストラデッキからのペンデュラム召喚を放棄する代わりに墓地のレベルの異なる幻影騎士団モンスター2体をペンデュラム召喚扱いで特殊召喚できる」

「何!?」

「生と死のはざまにさまよう魂よ、反逆の時が来た。今こそ現世に舞い戻り、寄せ来る敵を焼き尽くせ。ペンデュラム召喚!現れろ、《幻影騎士団サイレントブーツ》、《幻影騎士団フラジャイルアーマー》!」

 

幻影騎士団サイレントブーツ レベル3 攻撃200

幻影騎士団フラジャイルアーマー レベル4 攻撃1000

 

「墓地からペンデュラム召喚だと…!?だが、《サイレントブーツ》と《フラジャイルアーマー》のレベルは3と4。お前の《ダーク・リベリオン》はエクシーズ召喚できないぞ!」

「《スエサイドシールド》のもう1つのペンデュラム効果。この効果でペンデュラム召喚されたモンスターのレベルは2体のモンスターの合計になる」

 

幻影騎士団サイレントブーツ レベル3→7 攻撃200

厳正騎士団フラジャイルアーマー レベル4→7 攻撃1000

 

幻影騎士団スエサイドシールド

レベル4 攻撃1400 守備2000 闇属性 戦士族

【Pスケール:青1/赤1】

このカード名の(1)のP効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドにモンスターが存在しないとき、自分Pゾーンに存在するこのカードを破壊することで発動できる。デッキからカードを1枚ドローする。

(2):自分がP召喚を行うとき、自分フィールドのモンスターの数が相手フィールドのモンスターより少ない場合に発動できる。自分の墓地に存在するレベルの異なる「幻影騎士団」モンスター2体をP召喚できる。その時、そのモンスターのレベルはこの効果で特殊召喚したモンスターのレベルの合計となる。また、その時自分は手札・EXデッキのモンスターをP召喚できない。

【モンスター効果】

このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが相手モンスターと戦闘を行ったバトルフェイズ終了時に発動する。このカードを破壊し、デッキから「幻影騎士団」Pモンスター1体を手札に加える。

(2):EXデッキに表側表示で存在するこのカードを除外することで発動できる。自分フィールドに存在するXモンスター1体の攻撃力をターン終了時までX素材となっている「幻影騎士団」モンスターの数×800アップする。この効果はこのカードがEXデッキに置かれたターン、発動できない。

 

「レベル7の《サイレントブーツ》と《フラジャイルアーマー》でオーバーレイ!」

レベル7となった2体の幻影騎士団たちが上空のオーバーレイユニットに飛び込んでいく。

その中で再び形成された《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》の背後の《覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン》が現れ、その肉体を銀色の鎧に変えて《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》に装備されていく。

真っ黒だった反逆の竜の肉体の色が青がかっていき、翼部には金色のパーツが出現する。

「闇の帳を切り裂きしは、新たな力を得た反逆の牙!!エクシーズ召喚!現れろ、ランク7!《ダーク・アンセリオン・ドラゴン》!」

オーバーレイネットワークの中から、覇王黒竜の力を得た《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》が舞い降りる。

「ペンデュラムエクシーズモンスター…これが、ユートの新たな力だというのか…!?」

スタンダード次元で遊矢とペンデュラム召喚と出会い、遊矢と1つとなったことで目覚めたもう1つの力にカイトは戦慄する。

 

ダーク・アンセリオン・ドラゴン ランク7 攻撃3000

 

(ユート…ようやくこうして話すことができますね…)

「ダーク・リベリオン…なのか?」

遊矢の記憶から、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》ら自分たちのドラゴンには意思があることは知っていた。

実際に話すのは初めてだが、やはりエースモンスターとして長らく使っていたせいか、初めて話すとは思えなかった。

(ユート…悲しみを超えるため、あなたの力となります)

「頼む…」

「だが、エクシーズ召喚した貴様のモンスターの攻撃力は3000。《銀河眼の光波竜》と同じだ」

「俺は《ダーク・アンセリオン・ドラゴン》の効果発動。1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、相手フィールドのモンスター1体の攻撃力を半分奪い、奪った数値分俺のライフを回復する!」

両翼を展開され、《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》の時と同様、稲妻が《銀河眼の光波刃竜》を拘束し、その力を奪っていく。

そして、ユート自身にも稲妻が及び、それが彼の傷をいやしていた。

 

ダーク・アンセリオン・ドラゴン ランク7 攻撃3000→4600

銀河眼の光波刃竜 ランク8 攻撃3200→1600

 

ユート

2000→3600

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・幻影騎士団サイレントブーツ

 

「更に墓地の《サイレントブーツ》の効果発動。このカードを墓地から除外し、デッキからファントム魔法・罠カード1枚を手札に加える。俺はデッキから《幻影反逆爪》を手札に加える。そして装備魔法《幻影反逆爪》を《ダーク・アンセリオン・ドラゴン》に装備!このカードは幻影騎士団、もしくは幻影騎士団をエクシーズ素材としたモンスターに装備でき、装備モンスターは幻影騎士団モンスターとしても扱う」

《ダーク・アンセリオン・ドラゴン》の両腕に青白い炎を宿した爪が装着される。

「バトル!《ダーク・アンセリオン・ドラゴン》で《銀河眼の光波刃竜》を攻撃!アブゾーブ・エクリプス!!」

《ダーク・アンセリオン・ドラゴン》の口から稲妻が走る黒い球体が発射される。

球体が《銀河眼の光波刃竜》の直前で停止すると、次元のはざまに変化していき、《銀河眼の光波刃竜》を飲み込み始めた。

「罠発動!《聖なるバリア-ミラーフォース》!これで貴様の攻撃表示モンスターをすべて破壊する!」

「《ダーク・アンセリオン・ドラゴン》はこの効果を発動したターン、戦闘・効果では破壊されない!」

「何!?」

「そして、《幻影反逆爪》を装備したモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊し墓地へ送ったとき、そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを与える!この一撃で目を覚ませ、カイトォ!!」

次元のはざまが光の竜を飲み込み、消滅すると、両腕に爪を装備した《ダーク・アンセリオン・ドラゴン》がカイトに飛び込んでいく。

そして、両腕を振り下ろしてカイトを切り裂いた。

「ぐあああああ!!!」

 

カイト

ライフ3100→100→0

 

ダーク・アンセリオン・ドラゴン(漫画オリカ)

ランク7 攻撃3000 守備2500 エクシーズ 闇属性 ドラゴン族

【Pスケール:青10/赤10】

(1):1ターンに1度、手札の魔法・罠カード1枚を墓地へ送り、自分のEXデッキに表側表示のドラゴン族Pモンスター1体を対象に発動できる。そのカードを手札に加える。

【モンスター効果】

(1):1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、相手フィールドに存在するモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターの攻撃力を半分にし、その数値分このカードの攻撃力をターン終了時までアップする。その後、変化した攻撃力の数値分自分LPを回復する。その効果を発動したターン、このカードは戦闘・効果では破壊されない。この効果は相手ターンでも発動できる。

(2):モンスターゾーンのこのカードが破壊された場合に発動できる。このカードを自分Pゾーンに置く。

 

幻影反逆爪(ファントム・リベリオン・クロー)

装備魔法カード

このカード名の(3)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

「幻影騎士団」、または「幻影騎士団」をX素材としたXモンスターに装備可能。

(1):装備モンスターはルール上、「幻影騎士団」モンスターとしても扱う。

(2):装備モンスターが相手モンスターを戦闘で破壊し墓地へ送ったときに発動する。破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。

(3):装備モンスターが破壊されたことによってこのカードが墓地へ送られたときに発動する。デッキから「幻影騎士団」モンスター1体を手札に加える。



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第100話 破滅への選択

「なぁ…」

「ん?どうしたんだよ?」

スペード校で警備のために残ったメンバーの1人が出入り口の守りを固めた状態でしゃべりだす。

守りのための最低限のメンバーだけが残っている状態で、作戦が開始してからはアカデミアのデュエル戦士がここにやってくることは1度もない。

そのため、暇でしょうがないようで、こうして誰かと話でもしないとあくびが出てしまう。

「いやぁ…な。俺もアカデミア攻撃に加わりたかったよ。なんで、俺はここの守りなんだぁ?」

「仕方ないだろ。誰かが守らなきゃあ…。だって、ここは最後の砦なんだぞ?」

「それはわかってるけど…」

しかし、ここまで暇だとデュエル戦士退治に出撃したほうがずっといい。

懐から支給品のカロリーメイトを取り出し、乾いた口で咀嚼する。

食べていると、近くから物音が聞こえた。

「なんだ?この物音?」

「え?物音したかぁ?」

「間違いない。見てくる」

食べるのに夢中になっていた相方を放っておいて、物音がした場所を身に向かう。

彼の後姿を見送っていた彼だが、急に何かに殴られた痛みで気を失ってしまった。

 

「はあ、はあ、はあ…」

《ダーク・アンセリオン・ドラゴン》の一撃を受け、あおむけに倒れたカイトをユートが息を荒くしながら見る。

強くなったライバルとの激突は想像以上に体力を使い、おまけに肉体が遊矢のものであるためか、疲労も相対的に激しい。

「ユート…」

倒れたままのカイトがユートにかろうじて聞こえるくらいの小さな声でライバルの名前を呼ぶ。

「カイト…どうしてだ?どうして、こうなってしまったんだ…。俺たちのデュエルは、もっと楽しいものじゃなかったのか?」

遊矢の体を借りるしかないとはいえ、カイトと生きてもう1度デュエルができたのはよかった。

しかし、このような悲しい形のデュエルを望んではいない。

「…すまない、父さん…母さん…ハルト…みんな…俺は、みんなの敵を討てず…奪ってしまったみんなの思いにこたえることができなかった…」

カイトの目から涙がこぼれる。

本当はこのようなことはしたくなかったが、これしかエクシーズ次元を取り戻し、アカデミアを滅ぼす方法が思いつかなかった。

「一人で背負い込みだ…カイト。それに、失ったものは戻らないんだ。それ以上に、いま生きている仲間やみんなのためにできることをすべきだったんだ…」

「それが…お前の答えか?」

「答えになっているかどうかは…わからないがな」

ユートに思いつく、そのできることは遊矢に力を貸すことくらいだ。

だが、その先にきっと、平和な未来が待っていると信じている。

「そう…か…。ユート、俺のデュエルディスクを使え。俺を…カードに変えてほしい」

「カイト…!?」

「俺は、多くの仲間たちをカードに変えてしまった。その償いをしなければならない…だから」

「いや…見事な友情劇だ。見事すぎるよ」

廃墟に近いデュエルリングの中では不釣り合いな拍手の音が響く。

拍手をしているのはレナードで、表情こそ柔らかいものの、その拍手からは祝福が感じられなかった。

「その友情に満ちたデュエルのおかげで、準備は整ったよ」

レナードは機械でできたデッキケースを取り出すと、その中にカード化した人々を入れていく。

すると、ケースの中央にあるオレンジ色のランプが赤く光り、そのままデュエルディスクにセットする。

「それ…は…」

「感謝するよ、天城カイト。力を集めてくれて…先ほどのデュエルで、不足分のエネルギーを集めることができたよ」

「エネルギー…だと!?」

「カード化したデュエリストの方が効率が良かったが、こうした高い実力のデュエリストがぶつかり合うことで生まれるエネルギー…デュエルエナジーもなかなかだ。これで…」

デッキケースが外れ、レナードはデュエルディスクに残ったカードを見る。

そのカードを見たレナードは笑みを浮かべた。

「素晴らしい…弱い次元の人間のエネルギーなどたかが知れていると思ったが、それなりに力になったようだ。ならば、プロフェッサーの理想も近いな」

「プロフェッサー…どういうことだ!?レナード!」

「カイト…奴はアカデミアの人間だ。おそらく、特務部隊ジェルマンの…」

「な…!?」

「君はまさに俺の理想としていた人間だったよ。だが…もう少し友達の声を聴いたほうがよかったな」

「貴様…!!」

怒りに燃えるカイトはレナードにとびかかる。

しかし、そのカイトの腹部に強烈な膝蹴りが遅い、あまりの激痛にカイトの表情がゆがむ。

「君の流儀は違うだろう。本当のデッキはアイツに渡してしまったが…これからはこれが俺の新たな力だ」

「力…だと!?自分で生み出したものじゃないだろう…!?」

息を整えながらカイトはデュエルディスクを展開する。

周囲のクローバー校レジスタンスのメンバーもレナードを襲おうとするが、急に装着しているデュエルディスクから電気ショックが起こり、全員気を失ってしまった。

「さすがに今は総出で来られるとまずいからな。眠ってもらうぞ。さあ…君にはこのデッキの実験台になってもらう」

「レナード…貴様は…俺の、俺たちの覚悟をけがした…その報いを受けろ!!」

カイトはデュエルディスクを展開する。

家族を目の前で失った以上の憎しみがカイトの心をどす黒く焼き尽くそうとしていた。

「カイト!」

「手を出すな、ユート!!奴は…奴だけはこの俺が!!」

「いい覚悟だ。さあ…始めよう。エクシーズ次元を救おうとした英雄の最期のデュエルを…」

 

レナード

手札5

ライフ4000

 

カイト

手札5

ライフ4000

 

「俺に先攻だ。俺は手札からフィールド魔法《選択の迷宮》を発動」

発動と同時に、レナードとカイトの周囲が壁に覆われていく。

そして、その中は文字通り迷宮が出来上がっていた。

「そして、俺は手札から魔法カード《宝札の選択》を発動。俺のフィールドに《選択の迷宮》が存在するとき、俺はデッキからカードを2枚ドローする。そして、カイト。君はこれから2つのうち、1つの選択をしてもらう」

「選択だと…!?」

「1つは、君はデッキからカードを2枚ドローする。もう1つはデッキからカードを1枚選択して手札に加える。さあ、どちらにする?君の自由だ」

《強欲な壺》のような禁止カードレベルのドローソースかと思ったら、相手にも破格のアドバンテージを与えるそのカードの効果にカイトは困惑する。

「これは協力してくれた君へのささやかな返礼だよ。生まれたデッキはどうも癖が強いみたいでね、どのカードもこうした選択を相手にさせるものが多い。それを君自身の勝利につなげるか、それとも敗北につなげるかは君次第だ」

まるでカイトを見下しているかのような口調がカイトの怒りの炎に油を注ぐ。

怒りに震えながら、カイトは手札を見る。

「俺は…デッキからカードを1枚選択して手札に加える。俺はデッキから《光波剣士》を手札に加える」

「この瞬間、《選択の迷宮》の効果発動。相手は以下の効果から1つを選択して適用するとテキストに記されているカード効果が発動するとき、このカードの上に選択カウンターを1つ乗せる」

 

選択の迷宮(フィールド魔法) 選択カウンター0→1

 

宝札の選択

通常魔法カード

このカード名のカードは1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールドに「選択の迷宮」が存在するときに発動できる。デッキからカードを2枚ドローする。その後、相手は以下の効果から1つを選択して適用する。

●自分はデッキからカードを2枚ドローする。

●自分はデッキからカードを1枚手札に加える。

 

「俺は手札から永続魔法《フィールドバリア》を発動。これで、お互いのフィールド魔法は破壊されず、俺たちは新たなフィールド魔法を発動できない。俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

レナード

手札5→2

ライフ4000

場 選択の迷宮(フィールド魔法)選択カウンター1

  フィールドバリア(永続魔法)

  伏せカード2

 

カイト

手札5→6(うち1枚《光波剣士》)

ライフ4000

場 なし

 

「俺のターン、ドロー!」

 

カイト

手札6→7

 

「俺のフィールドにカードが存在しないとき、このカードは手札から特殊召喚できる。《光波剣士》を特殊召喚!」

 

光波剣士 レベル4 攻撃1400

 

「そして、俺のフィールドにサイファーモンスターが存在するとき、《光波翼機》は手札から特殊召喚できる」

 

光波翼機 レベル4 攻撃1400

 

「そして、《ストームサイファー》を召喚!」

 

ストームサイファー レベル4 攻撃2400

 

「さっきのデュエルの1ターン目の動きそのままだな。君のことだ、どうせ《光波翼機》の効果を使い、《銀河目の光波竜》をエクシーズ召喚するつもりだろう?」

「そうだ…!貴様に俺たちの怒りを…憎しみをぶつける!《光波翼機》の効果発動!このカードをリリースすることで、俺のフィールドのサイファーモンスターのレベルを4つ上げる!」

 

光波剣士 レベル4→8 攻撃1400

ストームサイファー レベル4→8 攻撃2400

 

「俺はレベル8の《光波剣士》と《ストームサイファー》でオーバーレイ。闇に輝く銀河よ。復讐の鬼神に宿りて我がしもべとなれ!エクシーズ召喚!降臨せよ!ランク8!《銀河眼の光波竜》!」

カイトのフィールドにカイトの憎しみの象徴ともいえるドラゴンが現れ、怒りゆえか、赤く染まった瞳でレナードをにらむ。

 

銀河眼の光波竜 ランク8 攻撃3000

 

「復讐の鬼神か。だが、筋違いなことを言ってくれる。君の仲間を奪ったのは僕ではなく、君自身。そうだろう?」

レナードの言っていることは間違いではない。

実際、彼の口車に乗せられる形で仲間を次々とカードに変えてしまい、ついにはサヤカを裏切り者としてカードに変えようとした。

いつの間にか、自分が一番憎むデュエル戦士と同じ存在になってしまった実感はある。

そんな自分にエクシーズ次元を救う英雄になる資格はない。

「だが…それが、貴様を倒さない理由にはならない!」

「カウンター罠《拒絶の選択》を発動。エクストラデッキからの特殊召喚、もしくはエクストラデッキからモンスターを特殊召喚するカード効果が発動した時に発動できる。それを無効にし、破壊する」

「何!?」

《拒絶の選択》から放たれる紫色の光線で打ち抜かれた《銀河目の光波竜》が粒子となって消滅する。

「そして、君はここで再び選択する。君はこのターン、もう1度だけ手札からモンスターを召喚できる。そして、もう1つは破壊されたモンスターと同じ攻撃力の《選択者トークン》を特殊召喚する。さあ、選べ」

「…俺は再びモンスターを召喚する権利を選ぶ!俺は手札から《光波僧正》を召喚!」

背中に円盤状のバックパックを装着し、右手には錫杖が握られた袈裟姿の白い顔なしの僧侶が現れる。

 

光波僧正 レベル4 攻撃1600

 

選択の迷宮(フィールド魔法) 選択カウンター1→2

 

「《光波僧正》の効果発動!墓地のサイファーエクシーズモンスターをエクストラデッキに戻すことで、墓地からレベル4以下のサイファーモンスター1体を特殊召喚できる。俺は墓地から《光波剣士》を特殊召喚!そして、この効果で特殊召喚されたモンスターとこのカードのレベルを4つ上げる」

錫杖を地面に突き刺し、《光波僧正》が祈りをささげると、上空に光の渦が生まれ、その中から《光波剣士》がフィールドに舞い戻る。

 

光波剣士 レベル4→8 攻撃1400

光波僧正 レベル4→8 攻撃1600

 

拒絶の選択

カウンター罠カード

(1):相手フィールドにEXデッキからモンスターが特殊召喚されたとき、またはEXデッキからモンスターを特殊召喚する魔法・罠・モンスター効果が発動したときに発動できる。その召喚・効果の発動を無効にし、破壊する。その後、相手は以下の効果から1つを選択して適用する。

●このターン、自分はもう1度手札からモンスターを召喚できる。

●自分フィールドに「選択者トークン」1体を特殊召喚する。

 

選択者トークン

レベル8 攻撃? 守備? トークン 闇属性 戦士族

「拒絶の選択」の効果で特殊召喚される。

このカードの攻撃力・守備力はその効果で破壊されたモンスターの元々の攻撃力・守備力と同じになる。

 

「レベル8の《光波僧正》と《光波剣士》でオーバーレイ!エクシーズ召喚!再び現れろ、《銀河眼の光波竜》!!」

 

銀河目の光波竜 ランク8 攻撃3000

 

「そして、《光波僧正》をオーバーレイユニットとしたことで、《銀河眼の光波竜》は効果を得る。このカードのエクシーズ召喚に成功したとき、自分フィールドにほかのモンスターが存在しないとき、《光波水晶トークン》1体を特殊召喚する!」

光が内部に濃縮されている大きな水色の水晶がフィールドに現れる。

 

光波水晶トークン レベル4 攻撃1600

 

光波僧正

レベル4 攻撃1600 守備2000 効果 光属性 機械族

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードの召喚に成功したとき、自分の墓地に存在する「サイファー」Xモンスター1体を対象に発動する。そのモンスターをEXデッキに戻し、墓地からレベル4以下の「サイファー」モンスター1体を特殊召喚する。その後、このカードとこの効果で特殊召喚されたモンスターのレベルを4つ上げる。

(2):このカードをX素材とした「サイファー」Xモンスターは以下の効果を得る。

●このカードのX召喚に成功したとき、自分フィールドにほかのモンスターが存在しないときに発動できる。自分フィールドに「光波水晶トークン」1体を特殊召喚する。

 

「バトルだ!《銀河眼の光波竜》でダイレクトアタック!殲滅のサイファーストリーム!!」

《銀河眼の光波竜》が光のブレスを放つが、青いバリアがレナードを包みこむ。

「罠カード《代価の選択》。相手モンスターの攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了する。そして、君は選択する…」

今度は攻撃を防がれ、このデュエル3回目の選択を迫られたカイトは舌打ちする。

「君は攻撃モンスターの攻撃力分のダメージを受ける。もう1つは攻撃モンスターを墓地へ送る。さあ、どうする?」

今度は相手にマイナスの2つの効果の選択となる。

カイトのエクストラデッキには《銀河眼の光波竜》があと2枚残っていて、やろうと思えば再びそのモンスターをエクシーズ召喚できる。

「俺は…《銀河眼の光波竜》を墓地へ送る…」

《銀河眼の光波竜》が姿を消し、フィールドには《光波水晶トークン》1体がフィールドに残る。

「俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

代価の選択

通常罠カード

(1):相手の攻撃宣言時に発動できる。その攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了させる。その後、相手は以下の効果から1つを選択して適用する。

●攻撃モンスターを墓地へ送る。

●攻撃モンスターの攻撃力分のダメージを自分は受ける。

 

レナード

手札2

ライフ4000

場 選択の迷宮(フィールド魔法)選択カウンター3

  フィールドバリア(永続魔法)

 

カイト

手札7→1

ライフ4000

場 光波水晶トークン レベル4 攻撃1600

  伏せカード2

 

「俺のターン、ドロー…」

 

レナード

手札2→3

 

「俺は《選択の迷宮》の効果発動。選択カウンターを2つ取り除き、デッキから選択と名の付く魔法・罠カード1枚を俺のフィールドにセットする。そして、この効果でセットしたカードはセットしたターンに発動できる。…感じるかな?君の選択が…君自身をゆっくりと追い詰めていっているのを」

迷宮の構造が変化するとともに、レナードのフィールドにカードが1枚セットされる。

 

選択の迷宮(フィールド魔法) 選択カウンター3→1

 

「そして、俺はさらにカードを2枚伏せてターンエンド」

 

レナード

手札3→1

ライフ4000

場 選択の迷宮(フィールド魔法)選択カウンター1

  フィールドバリア(永続魔法)

  伏せカード3

 

カイト

手札1

ライフ4000

場 光波水晶トークン レベル4 攻撃1600

  伏せカード2

 

「このターンも、モンスターを召喚しないで終わった…」

レナードが手にしたそのデッキのコンセプトがだんだんユートには分かってきた。

魔法・罠カードを多用し、モンスターを使わずに相手の手を封じるのだが、問題はそれでどうやってレナードが勝つつもりなのかだ。

気になるのは先ほどのレナードの言葉で、それがどういう意味なのか、それはユートにもカイトにもわからなかった。

「俺のターン、ドロー!」

 

カイト

手札1→2

 

「俺は罠カード《エクシーズ・リボーン》を発動!墓地のエクシーズモンスター1体を特殊召喚し、このカードをそのモンスターのオーバーレイユニットとする。蘇れ、《銀河眼の光波竜》!」

 

銀河目の光波竜 ランク8 攻撃3000

 

再びカイトのフィールドに2体のモンスターが並び、これでその2体が一斉攻撃に成功したら勝てる状況になる。

だが、先ほどのターンのことを考えると、確実にレナードは何らかのカードを発動してカイトの坑道を妨害する。

そして、カイト自身に選択を迫る。

迷宮の中で、カイトはレナードが伏せた3枚のカードを思い浮かべるが、カイトは迷わなかった。

「バトル!《銀河眼の光波竜》でダイレクトアタック!殲滅のサイファーストリーム!」

《銀河眼の光波竜》の口に光がたまっていき、再びレナードに向けて発射される。

「俺は永続罠《選択の苦痛》、更に罠カード《代価の選択》を発動。これで、その攻撃は無効となり、バトルフェイズも終了となる」

「ならば、俺は《銀河眼の光波竜》を墓地へ送る」

3000もの効果ダメージを受けるよりはましと考え、カイトは機械的に《銀河眼の光波竜》を墓地へ送る。

 

選択の迷宮 選択カウンター1→2

 

「そして、《選択の苦痛》の効果。相手は以下の効果から1つを選択して適用するとテキストに記されているカード効果が発動したときに発動でき、選択カウンターが乗るたびに相手フィールドのモンスターの攻撃力を600ダウンさせ、相手に600ダメージを与える」

「何!?」

天井に出現した鏡から光線が発射され、光線は《光波水晶トークン》とカイトを撃ち抜く。

 

光波水晶トークン レベル4 攻撃1600→1000

 

カイト

ライフ4000→3400

 

「く…俺はこれで、ターンエンド…」

 

レナード

手札1

ライフ4000

場 選択の迷宮(フィールド魔法)選択カウンター2

  選択の苦痛(永続罠)

  フィールドバリア(永続魔法)

  伏せカード1

 

カイト

手札2

ライフ3400

場 光波水晶トークン レベル4 攻撃1000

  伏せカード1

 

ターン終了宣言したカイトは《光波水晶トークン》を見る。

(《光波水晶トークン》は俺のサイファーエクシーズモンスターの効果を受けたモンスターのコントロールが相手に移ったときにそのモンスターを破壊する効果がある。だが…奴がモンスターを召喚しない以上は…)

 

光波水晶トークン(サイファークォーツトークン)

レベル4 攻撃1600 守備2000 トークン 光属性 機械族

「光波僧正」の効果で特殊召喚される。

(1):このカードがフィールドに存在する限り、自分フィールドの「サイファー」Xモンスターの効果を受けたモンスターのコントロールが相手に移ったときに発動できる。そのモンスターを破壊する。

 

「俺のターン、ドロー」

 

レナード

手札1→2

 

「俺はモンスターを裏守備表示で召喚。これで、ターンエンド」

 

レナード

手札2→1

ライフ4000

場 裏守備モンスター1

  選択の迷宮(フィールド魔法)選択カウンター2

  選択の苦痛(永続罠)

  フィールドバリア(永続魔法)

  伏せカード1

 

カイト

手札2

ライフ3400

場 光波水晶トークン レベル4 攻撃1000

  伏せカード1

 

初めて、レナードが自分からモンスターを召喚したが、それでも裏守備表示で、仮に《銀河眼の光波竜》の効果を使ったとしても、裏守備モンスターのコントロールを奪うことはできない。

「俺のターン…ドロー」

 

カイト

手札2→3

 

「俺は手札から魔法カード《死者蘇生》を発動。墓地の《銀河眼の光波竜》を特殊召喚する」

 

銀河目の光波竜 ランク8 攻撃3000

 

「バトル!《銀河眼の光波竜》で裏守備モンスターを攻撃!殲滅のサイファーストリーム!」

再び光のブレスが発射され、今度は妨害されることなく裏守備モンスターを包み、消滅させる。

 

裏守備モンスター

絶対王バック・ジャック レベル1 守備0

 

「《絶対王バック・ジャック》の効果。このカードが墓地へ送られたとき、デッキの上から3枚を好きな順番に並び替える」

「ならば、俺は《光波水晶トークン》でダイレクトアタック!」

《光波水晶トークン》からレーザー光線がレナードに向けて発射される。

しかし、彼の前に破壊したはずの《絶対王バック・ジャック》が現れ、その手には裏向きのカードが握られていた。

「何!?」

「《絶対王バック・ジャック》の効果。相手ターンにこのカードを墓地から除外することで、デッキの一番上をめくり、そのカードが通常罠であれば俺のフィールドにセットする。そして、その効果でセットしたカードはこのターンでも発動できる。ただし、通常罠カード以外の場合は墓地へ送る。当然、デッキの一番上のカードは通常罠カード《苦難の選択》。この効果により、相手のダイレクトアタックを無効にする」

レーザー光線が《絶対王バック・ジャック》が持つカードを盾替わりにされたことで消滅し、そのカードを残してそのモンスターは消滅する。

「さあ、選択の時間だ。君は攻撃モンスター以外のモンスターのコントロールを俺に渡す。もしくはこのターンのバトルフェイズを終了する」

「…当然俺は…バトルフェイズを終了する」

「いいだろう。選択を果たしたことで、選択カウンターが1つ乗る」

 

選択の迷宮(フィールド魔法) 選択カウンター2→3

 

「更に、《選択の苦痛》の効果により、君のフィールドのモンスターの攻撃力は600ダウンし、君は600のダメージを受ける」

《選択の苦痛》から波紋が発生し、それを受けた2体のモンスターの攻撃力が低下するとともに、カイトにもダメージを与える。

「く…!」

 

カイト

ライフ3400→2800

 

銀河目の光波竜 ランク8 攻撃3000→2400

光波水晶トークン レベル4 攻撃1000→400

 

苦難の選択

通常罠カード

(1):相手の直接攻撃宣言時に発動できる。その攻撃を無効にする。その後、その後、相手は以下の効果から1つを選択して適用する。

●攻撃モンスター以外の自分のモンスター1体のコントロールを相手に渡す。

●バトルフェイズを終了する。

 

「カイト!!」

(なんだよ…あのカイトが一方的に…)

カイトのデッキは相手フィールドに表側表示のモンスターのコントロールを奪い、攻撃力3000のモンスターに変化させる、相手を利用するデッキと言える。

しかし、レナードのデッキはモンスターの召喚に消極的で、魔法・罠カードを巧みに利用し、からめ手で相手を封じる。

実際、カイトのモンスターの攻撃は先ほどの《絶対王バック・ジャック》への攻撃を除いてすべて失敗しており、更にはカイトだけライフが減っている状態だ。

(けど、ユート…。問題なのは)

「ああ、そうだ。問題なのはなぜ、奴が《選択の迷宮》の効果を使わなかったのかだ)

《選択の迷宮》の効果を使えば、わざわざ《絶対王バック・ジャック》の効果を使わなかったとしても《苦痛の選択》を発動することができた。

裏守備モンスターで守りをわずかに固め、そしてそのモンスターの効果でデッキを操作したかったのであれば説明はつく。

実際、《絶対王バック・ジャック》の効果はこのデッキと相性がいい。

唯一、理由があるとしたら、他の選択カウンターの効果を使うためにわざと温存する道を選んだ、くらいだろう。

「俺はこれで…ターンエンド」

 

レナード

手札1

ライフ4000

場 裏守備モンスター1

  選択の迷宮(フィールド魔法)選択カウンター3

  選択の苦痛(永続罠)

  フィールドバリア(永続魔法)

  伏せカード1

 

カイト

手札2

ライフ2800

場 光波水晶トークン レベル4 攻撃400

  銀河眼の光波竜 ランク8 攻撃2400

  伏せカード1

 

「俺のターン、ドロー…」

 

レナード

手札1→2

 

「俺は手札から魔法カード《宝札の選択》を発動。デッキからカードを2枚ドローする。カイト…君もカードを2枚ドローするか、好きなカード1枚を手札に加えるか、選択するといい」

「…俺は、デッキからカードを2枚ドローする」

選択すると同時に、再び《選択の苦痛》の波紋がカイトのモンスターとカイト自身を襲う。

 

カイト

ライフ2800→2200

 

銀河目の光波竜 ランク8 攻撃2400→1800

光波水晶トークン レベル4 攻撃400→0

選択の迷宮(フィールド魔法) 選択カウンター3→4

 

「そして、俺は手札の《融合》を墓地へ送り、墓地の《代価の選択》、《宝札の選択》、《苦難の選択》を除外する」

「《融合》…!?」

《融合》が墓地へ送られると同時に墓地に眠る3枚の選択魔法・罠カードの幻影が出現する。

「このカードは手札の《融合》を墓地へ送り、更に墓地の選択と名の付く魔法・罠カードを3枚除外することで融合召喚できる。あまたの選択の果てに残る滅亡の結末よ、悪魔の肉体に宿りて審判を下せ。融合召喚。現れろ、《審判者カフカ》」

《融合》の渦の中に3枚のカードが溶け込んでいき、その中から真っ黒なスーツとネクタイをした、紫の翼の生えた悪魔が下りてくる。

鼻眼鏡をかけたその悪魔の手には分厚い書物が握られていた。

 

審判者カフカ レベル10 攻撃?

 

「このモンスターの特殊召喚に成功したとき、君は効果を1つ選択する。1つは君のフィールドの最も攻撃力の高いモンスターを装備カード扱いとしてこのカードに装備する。その場合、このカードの攻撃力は装備しているモンスターの元々の攻撃力と同じになる。もう1つはこのカードの元々の攻撃力は俺のフィールドの選択カウンターの数×1000にする。さあ…どうする?」

「くっ…!俺が選ぶのは…」

どちらの効果を選択したとしても、《審判者カフカ》の攻撃力が3000以上になることは確定する。

更に、ここで選択を行ったことで再び《選択の迷宮》に選択カウンターが1つ乗る。

だとしたら、選ぶのは…。

「…《銀河眼の光波竜》を差し出す」

眼を閉じ、苦渋の決断をするとともに《銀河眼の光波竜》は消滅する。

そして、《審判者カフカ》の本のページにそのモンスターのイラストが刻まれた。

 

審判者カフカ レベル10 攻撃0→3000

 

「そして、選択したことにより《選択の迷宮》に選択カウンターが1つ乗る。更に、君のフィールドのモンスターの攻撃力が600下がり、君に600のダメージだ」

 

選択の迷宮(フィールド魔法) 選択カウンター4→5

 

カイト

ライフ2800→2200

 

光波水晶トークン レベル4 攻撃400→0

 

「《光波水晶トークン》の攻撃力が0に!?」

今の《審判者カフカ》の攻撃力は3000で、攻撃力0になった《光波水晶トークン》に攻撃した場合、カイトのライフは0になる。

だが、カイトのフィールドには伏せカードがあり、レナードの攻撃に対応することができるかもしれない。

「俺は手札から速攻魔法《禁忌の選択》を発動。魔法か罠か…君が選択した種類のカードをこのターン、君は発動できなくなる。さあ…どちらを選ぶ?」

「決まっている…俺は!!」

「この瞬間、《審判者カフカ》の効果。俺のフィールドの選択カウンターを3つ取り除くことで、選択権が俺に移動する」

「何!?」

「俺が選択するのは…罠カードだ」

レナードの宣言と同時に、カイトの伏せカードが氷漬けになる。

カイトの眼が泳いでいて、彼の手札がスルリと床に落ちていく。

「そして、《選択の迷宮》と《選択の苦痛》の効果だ…」

 

選択の迷宮(フィールド魔法) 選択カウンター5→1

 

カイト

ライフ2200→1600

 

禁忌の選択

速攻魔法カード

このカード名のカードは1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドに「選択の迷宮」が存在する場合にのみ発動できる。相手は以下の効果から1つを選択して適用する。

●このターン、自分は魔法カードを発動できない。

●このターン、自分は罠カードを発動できない。

 

「さあ…覚悟はいいかな?《審判者カフカ》で《光波水晶トークン》を攻撃」

《審判者カフカ》の本のページが開き、その中にある《銀河眼の光波竜》が姿を現し、《光波水晶トークン》に向けて光のブレスを放つ。

(馬鹿な…俺は、いったい何のために…!?)

ブレスに包まれるカイトはこの敗北に納得することができないまま、その姿をカードに変えていった。

 

カイト

ライフ1600→0

 

選択の苦痛

永続罠カード

このカード名のカードは自分フィールドに1枚しか存在できない。

(1):「相手は以下の効果から1つを選択して適用する」とテキストに記されている魔法・罠・モンスター効果が発動したときに発動できる。

(2):自分フィールドのカードに選択カウンターが乗ったとき、相手フィールドに存在するモンスターの攻撃力が600ダウンし、相手に600ダメージを与える。

(3):このカードがフィールドに存在する限り、自分フィールドの「選択の迷宮」は相手によって破壊されず、相手はフィールド魔法を発動できない。

 

選択の迷宮

フィールド魔法カード

(1):「相手は以下の効果から1つを選択して適用する」とテキストに記されている魔法・罠・モンスター効果が発動し、相手が選択したとき、このカードの上に選択カウンターを1つ乗せる。

(2):このカードが効果によって破壊されるときに発動できる。代わりにこのカードの上に乗っている選択カウンターを1つ取り除く。

(3):このカードの選択カウンターが4つ以上存在するとき、戦闘で発生する自分へのダメージは0となる。

(4):このカードの上に乗っている選択カウンターを以下の数だけ取り除き、その効果を発動できる。

●2つ:デッキから「選択」魔法・罠カードを自分フィールドにセットする。この効果でセットしたカードはこのターン発動できる。

●4つ:自分の墓地に存在する「選択」魔法・罠カード1枚を手札に加える。

 

審判者カフカ

レベル10 攻撃? 守備? 融合 闇属性 悪魔族

このカードは手札の「融合」を墓地へ送り、自分の墓地に存在する発動に成功して墓地へ送られた「選択」魔法・罠カードを3枚(1種類につき1枚のみ)除外することで、EXデッキから融合召喚できる。

(1):このカードの特殊召喚に成功したとき、相手は以下の効果から1つを選択して適用する。

●自分フィールドの最も攻撃力の高いモンスター1体を装備カード扱いとしてこのカードに装備する。このカードの攻撃力・守備力はこの効果で装備したモンスターの元々の攻撃力・守備力と同じになる。

●このカードの攻撃力・守備力はこのカードの特殊召喚時に自分フィールドに存在する選択カウンターの数×1000となる。

(2):「相手は以下の効果から1つを選択して適用する」とテキストに記されている魔法・罠・モンスター効果が発動したとき、自分フィールドの選択カウンターを3つ取り除くことで発動できる。その効果による選択を代わりに自分が行い、相手に適用する。

 

「カイト…」

カイトだったカードがふわりとレナードの手に飛んでいく。

「ありがとう、天城カイト。アカデミアのためにここまで尽くしてくれて。後はゆっくり休んでくれていいよ。アークエリアプロジェクトの成就を祈っていてくれ」

眼を閉じ、語り掛けるようにつぶやいたレナードはそのカードをカードケースに納めた。

「貴様…!よくも、俺の友を!!」

「俺が?心外だな、彼は自ら敗北への道を選んだ。つまりは…負けたのは彼自身のせいじゃないか?」

「ふざけるな!貴様がそのように導いただけだろう!カイトを騙し、多くの仲間を奪った貴様を…俺がこの手で倒す!」

怒りに燃えるユートはデュエルディスクを展開する。

そんなユートの怒りに満ちた目を見たレナードはフゥ、とため息をつく。

「なぜ、エクシーズ次元のデュエリストはここまで野獣のように戦いを求めるのだろうな…。いいだろう、そこまで仲間の後を追いたいというなら、特別に相手になってやるよ」

上から見下すようにユートを見つつ、レナードはデッキを直す。

ここでの自分の役目が終わった以上、これ以上この次元にいる理由はない。

だが、カイトとのデュエルだけではデュエルデータのサンプルが不足すると考え、ユートをちょうどいい実験相手と考えただけだ。

そんなレナードの脳裏に『敗北』の二文字は存在しない。

あくまで自分が勝利するという前提での『選択』だ。

「「デュエル!!」」

 

ユート

手札5

ライフ4000

 

レナード

手札5

ライフ4000



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第101話 選択の代償

「よし、これで全部だな」

権現坂は倒したクローバー校メンバーたちをリアルソリッドビジョンで生み出した縄で縛り、階段の踊り場に集める。

2人とも、激しいデュエルを続けたことでいくつも傷を負っており、権現坂のタスキはちぎれて床に落ちている。

もうこちらに集まってくる相手はいないが、ここでかなり時間を食ってしまった。

今、遊矢とカイトがどうしているのかもわからない。

「急ぎ、遊矢と合流しなければな。行くぞ、柚子」

「ええ」

「はあ、はあ…」

「足音…まだ生き残りがいたか!?」

下り階段から足音が聞こえ、権現坂は柚子を守るように前に出て、デュエルディスクを構える。

だが、上がってきたデュエリストを見た柚子は驚きを見せる。

彼女は急いで、来るはずのないデュエリストに駆け寄る。

「黒咲!?なんでここへ!?」

「黒咲だと…だが、この怪我は!?」

「柚子…権現坂か…なぜお前がいるのかはわからんが、今はいい…」

けがをした理由を権現坂に言わないまま、黒咲は手すりを使い、ゆっくりと上へあがっていく。

右手が使えないため、逆の左腕を頼りにしているうえに折れた肋骨も治っていないため、歩くたびに痛みを感じる。

「黒咲!?カイトのところへ行くつもり!?駄目よ、そんな怪我じゃ!」

「それでも…だ。カイトに…これ以上罪を重ねさせないためにも…」

踊り場までようやく上ることができた黒咲だが、躓いて倒れてしまう。

左腕に力を入れ、どうにか起き上がろうとする黒咲だが、痛みのせいで力が抜けるのを感じた。

「くっ…何?」

自力で立ち上がる力を失っていた黒咲は悔しさに唇をかむが、急に体が宙を浮き、権現坂の肩の上に体が乗る。

「権現坂…」

「理由は移動しながら聞かせてもらうぞ」

「権現坂!黒咲は…」

「そうだ。だが…奴はそれでもあきらめんだろう」

「それは…そうだけど…」

「揺れて傷が痛むかもしれんが、我慢してくれ」

傷に響かないように気を付けながら、権現坂は黒咲を抱えたまま階段を昇っていく。

「…礼は言わんぞ」

「かまわん。仲間のために当然のことをしているだけなのだからな」

 

ユート

手札5

ライフ4000

 

レナード

手札5

ライフ4000

 

「俺の先攻。俺は手札から《カードガンナー》を召喚!」

 

カードガンナー レベル3 攻撃400

 

「《カードガンナー》の効果。デッキの上から3枚までカードを墓地へ送り、墓地へ送ったカードの数×500このカードの攻撃力がアップする」

 

カードガンナー レベル3 攻撃400→1900

 

デッキから墓地へ送られたカード

・彼岸の悪鬼ハロウハウンド

・幻影騎士団リグレットメイス

・幻影騎士団ダスティローブ

 

「墓地へ送られた《ハロウハウンド》の効果。このカードが墓地へ送られたとき、デッキから彼岸魔法・罠カード1枚を墓地へ送ることができる。俺はデッキから《旅人の結彼岸》を墓地へ送る。更に、《ダスティローブ》の効果。このカードを墓地から除外することで、デッキから《ダスティローブ》以外の幻影騎士団カード1枚を手札に加える。俺は《幻影騎士団リグレットメイス》を墓地へ送る。そして、カードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

ユート

手札5→2

ライフ4000

場 カードガンナー レベル3 攻撃1900→400

  伏せカード2

 

レナード

手札5

ライフ4000

 

「ふん…《カードガンナー》は効果を失い、攻撃力は400か…」

レナードはユートが最後に伏せた2枚のカードを見る。

攻撃力の低い《カードガンナー》をわざと攻撃表示で出し、あからさまに攻撃できる状況を作る。

分かりやすい罠だが、問題はその伏せているカードだ。

ユートもまた、カイトと黒咲に匹敵するエクシーズ次元の実力者。

何重に罠を貼っていたとしてもおかしくない。

「俺のターン、ドロー」

 

レナード

手札5→6

 

「俺は手札からフィールド魔法《選択の迷宮》を発動」

ユートを包むように、石造りの迷宮が展開される。

カイトのデュエルを見ているからこそ、ここからレナードが何をしようとするのかは分かる。

「俺は手札から魔法カード《救済の選択》を発動。俺のフィールドにモンスターが存在しないときに発動でき、お前は選択してもらう。1つは君の手札を確認し、その中で最もレベルの低いモンスター1体を特殊召喚する。1つは俺の手札を君が確認し、その中で最もレベルの低いモンスター1体を特殊召喚する。ただし、どちらもモンスターが特殊召喚できない場合、俺はデッキからカードを1枚ドローする。選択するのは君だ…」

ユートは残った2枚の手札を見る。

これらの手札情報をレナードに知られた場合はどうなるか?

どちらにしても、相手はモンスターを特殊召喚するか、カードを1枚ドローする。

情報公開の対象がどちらかとなると、もう選びようがない。

「見せろ、お前の手札を…」

「それが君の選択なら…」

レナードはためらいなく、4枚の手札を見せる。

 

レナードの手札

・選択の苦痛

・融合

・守護者の選択

・絶対王バック・ジャック

 

「俺は手札の《絶対王バック・ジャック》を特殊召喚。そして、《選択の迷宮》に選択カウンターを1つ乗る」

 

絶対王バック・ジャック レベル1 守備0

選択の迷宮 選択カウンター0→1

 

救済の選択

通常魔法カード

(1):自分フィールドにモンスターが存在しない場合に発動できる。相手は以下の効果から1つを選択して適用する。

●自分の手札を公開し、その中に存在する最もレベルの低いモンスター1体を相手フィールドに特殊召喚する。その中にこの効果で特殊召喚できるモンスターが存在しない場合、デッキからカードを1枚ドローする。

●相手の手札を確認し、その中に存在する最もレベルの低いモンスター1体を相手フィールドに特殊召喚する。その中にこの効果で特殊召喚できるモンスターが存在しない場合、デッキからカードを1枚ドローする。

 

「そして、カードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

ユート

手札2

ライフ4000

場 カードガンナー レベル3 攻撃400

  伏せカード2

 

レナード

手札6→1(手札、及び伏せカード《融合》《選択の苦痛》《守護者の選択》)

ライフ4000

場 絶対王バック・ジャック レベル1 守備0

  伏せカード2

  選択の迷宮(フィールド魔法 選択カウンター1)

 

「俺のターン…ドロー!」

 

ユート

手札2→3

 

「《カードガンナー》の効果!デッキの上からカードを3枚墓地へ送り、攻撃力アップ」

 

カードガンナー レベル3 攻撃400→1900

 

デッキから墓地へ送られたカード

・貪欲な壺

・幻影騎士団サイレントブーツ

・ダメージ・ダイエット

 

「そして、手札から《幻影騎士団ラギッドグローブ》を召喚」

 

幻影騎士団ラギッドグローブ レベル3 攻撃1000

 

「レベル3の《カードガンナー》と《ラギッドグローブ》でオーバーレイ!戦場に倒れし騎士たちの魂よ。今こそ蘇り、闇を切り裂く光となれ!エクシーズ召喚!ランク3!《幻影騎士団ブレイクソード》!」

 

幻影騎士団ブレイクソード ランク3 攻撃2000

 

「オーバーレイユニットとなった《ラギッドグローブ》の効果。このカードをエクシーズ素材としてエクシーズ召喚に成功したモンスターの攻撃力は1000アップする」

《幻影騎士団ラギッドグローブ》の幻影が《幻影騎士団ブレイクソード》に宿り、体に宿り青い炎の勢いが強くなる。

 

幻影騎士団ブレイクソード ランク3 攻撃2000→3000

 

「《ブレイクソード》の効果。1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、お互いのフィールドのカードを1枚ずつ破壊することができる。俺は俺の伏せカードと《選択の迷宮》を破壊する」

《幻影騎士団ブレイクソード》の体から青い波紋が発生し、周囲を包囲する石造りの壁にひびが入り始めていた。

「やはり《選択の迷宮》を狙ってきたか、だがそうはさせん。俺はカウンター罠《守護者の選択》を発動。カードを破壊する効果を無効にする」

分かっていたとはいえ、再び選択の機会を押し付けられたことにユートは顔をしかめる。

「そんなに悪い話じゃないさ。確かに、選択の1つは効果を無効にしたモンスターを破壊するがあるが、もう1つの選択もある。俺がカードを1枚ドローするだ。《ブレイクソード》の効果は1ターンに1度。次のターン、もう1度使うチャンスがあるということにならないか?」

「だが…俺が選択することで、選択カウンターが乗るだろう?」

どちらにしても、こちらにとってはデメリットでしかない。

おまけに、選択カウンターを2つ取り除くことでデッキから新しい選択魔法・罠カードがセットされてしまう。

たとえ《幻影騎士団ブレイクソード》を生き延びさせ、もう1度訪れるであろう効果発動のチャンスを得たとしても、再び防がれるのがおちだ。

「俺は…《ブレイクソード》を破壊する」

《幻影騎士団ブレイクソード》はユートの宣言と同時に光の粒子と化して消滅する。

 

選択の迷宮(フィールド魔法) 選択カウンター1→2

 

守護者の選択

カウンター罠カード

(1):手札・フィールドのカードを破壊する魔法・罠・モンスター効果が発動したときに発動できる。その発動を無効にする。その後、相手は以下の効果から1つを選択して適用する。

●効果の対象となったモンスターを破壊する。

●相手はデッキからカードを1枚ドローする。

 

「それは残念だ…」

「この瞬間、《ブレイクソード》の効果発動!エクシーズ召喚されたこのカードが破壊された場合、俺の墓地に存在する同じレベルの幻影騎士モンスター2体をレベルを1つ上げた状態で特殊召喚する。俺は《ラギットグローブ》と《サイレントブーツ》を特殊召喚!」

 

幻影騎士団ラギットグローブ レベル3→4 攻撃1000

幻影騎士団サイレントブーツ レベル3→4 攻撃200

 

「そして、レベル4の《ラギットグローブ》と《サイレントブーツ》でオーバーレイ!闇の中で目覚めし宝石騎士の屍よ、闇の中でよみがえり、戦場へ向かえ。エクシーズ召喚!現れろ、ランク4!《暗遷士カンゴルゴーム》!」

青白い鎧のヒビから青い水晶を露出させ、全身から紫色のオーラを放ち続けている、変わり果てたジェムナイトがカチャリ、カチャリと足音をたてながらユートのフィールドに現れる。

 

暗遷士カンゴルゴーム ランク4 攻撃2450

 

「《ダーク・リベリオン》ではなく、《カンゴルゴーム》を召喚したか…」

「バトル!《カンゴルゴーム》で《絶対王バック・ジャック》を攻撃!」

《暗遷士カンゴルゴーム》が右腕の巨大な筒状の物体をそのまま《絶対王バック・ジャック》に向けて振り下ろす。

「更に俺は罠カード《幻影翼》を発動!この効果で、《カンゴルゴーム》の攻撃力を500アップさせる!」

(このタイミングで《幻影翼》を…?)

《暗遷士カンゴルゴーム》には貫通効果がなく、攻撃力をアップさせたとしても、レナードにダメージを与えることができない。

赤黒い光の翼を得た《暗遷士カンゴルゴーム》の筒の一撃を受けた《絶対王バック・ジャック》は消滅する。

 

暗遷士カンゴルゴーム ランク4 攻撃2450→2950

 

「どういうつもりかは分からないが、俺はここで《バック・ジャック》の効果発動。このカードが墓地へ送られたとき、デッキの上から3枚を確認し、それらを好きな順番で並べ替える」

 

並びかえられたカード

・宝札の選択

・拒絶の選択

・代価の選択

 

「俺はカードを1枚伏せ…ターンエンド」

 

ユート

手札3→1

ライフ4000

場 暗遷士カンゴルゴーム(《幻影翼》装備) ランク4 攻撃2950

  伏せカード2

 

レナード

手札1(手札、及び伏せカード《融合》《選択の苦痛》)

ライフ4000

場 伏せカード1

  選択の迷宮(フィールド魔法 選択カウンター2)

 

「俺のターン、ドロー」

 

レナード

手札1→2

 

「俺は手札から魔法カード《宝札の選択》を発動。俺のフィールドに《選択の迷宮》が存在するとき、デッキからカードを2枚ドローする。そして、ユート…。君の選択はどうする?」

「俺はデッキからカードを2枚ドローする」

「即決か…」

ためらいなく、2枚ドローすることを選んだユートにレナードは違和感を抱く。

確かに、2枚無条件にドローするアドバンテージは大きいものの、もう1つの選択であるデッキからカードを1枚手札に加えるというのもかなりのうまみがある。

当然一瞬でも悩むものだが、ユートはすぐに選んだ。

カイトとのデュエルで発動したことがあるとしても、それだけでは納得がいかない。

 

選択の迷宮 フィールド魔法 選択カウンター2→3

 

「俺は速攻魔法《手札断札》を発動!お互いに手札を2枚墓地へ送り、デッキからカードを2枚ドローする!」

 

手札から墓地へ送られたカード

レナード

・拒絶の選択

・代価の選択

 

ユート

・ネクロ・ガードナー

・幻影騎士団フラジャイルアーマー

 

「手札交換…?攻撃力アップ…まさか!」

「俺は《カンゴルゴーム》をリリースし、罠カード《闇のデッキ破壊ウイルス》を発動!宣言するのは罠カード!!」

《暗遷士カンゴルゴーム》の姿が黒いウイルスへと変化していき、レナードのフィールドを侵食していく。

《闇のデッキ破壊ウイルス》の発動に気付くのが一歩遅れたことにレナードは顔をしかめる。

「このカードの効果は分かっているな。攻撃力2500以上の闇属性モンスター1体をリリースし、魔法・罠カードのどちらかを宣言する。そして、相手フィールド・手札・相手ターンで数えて3ターンの間に相手がドローしたカードをすべて確認し、その中で宣言したカードをすべて破壊する。さあ、貴様の手札を見せろ。レナード!」

「やってくれるな…」

「カイトが戦ってくれたおかげだ…」

レナードは静かに3枚の手札すべてをユートに公開するとともに、伏せていた《選択の苦痛》を墓地へ送る。

魔法・罠カードを満載したレナードのデッキにとって、《闇のデッキ破壊ウイルス》はまさに天敵のカードだった。

 

レナードの手札

・融合

・苦難の選択

・裏切りの選択

 

「罠カードは《苦難の選択》のみか。そのカードを墓地へ送ってもらうぞ」

「だが、これ以降対象となるのは3ターンの間に俺がドローしたカードのみだ。俺は《選択の迷宮》の効果発動。選択カウンターを2つ取り除き、デッキに存在する選択と名の付く魔法・罠カード1枚をセットする。俺はデッキから《惑わしの選択》をセット。そして、この効果でセットしたカードはそのターンでも発動できる」

フィールドを包むウイルスだが、《惑わしの選択》には侵食しない。

レナードの言う通り、《闇のデッキ破壊ウイルス》の効果が発生するのはここからはドローしたカードのみ。

デッキからサーチしたカード、もしくはこのようにデッキから直接セットしたカードであれば対象にならない。

ただし、あくまでもそれは《選択の迷宮》と選択カウンターが存在すればこそで、綱渡り状態だ。

「俺はこれで、ターンエンド」

 

ユート

手札1

ライフ4000

場 なし

 

レナード

手札2(《融合》《裏切りの選択》)

ライフ4000

場 伏せカード1(《惑わしの選択》)

  選択の迷宮(フィールド魔法 選択カウンター3→1)

 

「俺のターン、ドロー!」

 

ユート

手札1→2

 

「俺は手札から《RUM-埋葬されし幻影騎士団》を発動!墓地の幻影騎士団エクシーズモンスター1体を特殊召喚する。俺は《幻影騎士団ブレイクソード》を特殊召喚」

 

幻影騎士団ブレイクソード ランク3 攻撃2000

 

「そして、特殊召喚したモンスターよりランクが2つ高い闇属性エクシーズモンスターにランクアップする!」

《幻影騎士団ブレイクソード》が上空のオーバーレイネットワークの中へ消えていく。

そして、その中で肉体が《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》へと変化するものの、更に翼がステンドガラスのようなきらびやかなものへと変わっていき、骨でできた鎧を胴体に装着する。

「煉獄の底より、いまだ鎮まらぬ魂に捧げる反逆の歌!永久に響かせ現れよ!ランクアップ・エクシーズチェンジ!出でよ、ランク5!《ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン》!」

 

ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン ランク5 攻撃3000

 

「《埋葬されし幻影騎士団》の効果により、俺はこのターンバトルフェイズを行えない…。俺はカードを1枚伏せ、ターンエンドだ」

 

ユート

手札2→0

ライフ4000

場 ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン(ORU1) ランク5 攻撃3000

  伏せカード1

 

レナード

手札2(《融合》《裏切りの選択》)

ライフ4000

場 伏せカード1(《惑わしの選択》)

  選択の迷宮(フィールド魔法 選択カウンター1)

 

RUM-埋葬されし幻影騎士団(ベアリアル・ファントム・ナイツ)(アニメオリカ・効果調整)

通常魔法カード

(1):自分の墓地に存在する「幻影騎士団」Xモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを特殊召喚し、そのモンスターよりもランクが2つ高い闇属性Xモンスター1体を対象のモンスターの上に重ねてX召喚扱いとしてEXデッキから特殊召喚する。この効果を発動したターン、自分はバトルフェイズを行えない。

 

「攻撃力3000のモンスターをたった1枚のカードで召喚したことは評価できるが、俺にダイレクトアタックするチャンスを逃すとはな」

「チャンスとは思っていない。貴様が《選択の迷宮》で伏せたカードがそれに対応するカードだと言うならな」

《惑わしの選択》の効果はカイトのデュエルで使われていないカードのため、よくわからない。

だが、わざわざ《闇のデッキ破壊ウイルス》の影響下では貴重な選択カウンターを取り除いてまで伏せたカードであり、フィールドががら空きになっている状況では、こちらの攻撃に対応するカードと見ても不自然ではない。

たった1枚の伏せカードだけでも、レナードのような相手では油断できない。

「俺のターン、ドロー」

 

レナード

手札1→2

 

ドローしたカード

・与奪の選択

 

「こいつは魔法カード。よって、《闇のデッキ破壊ウイルス》の効果は受けない。俺は《与奪の選択》を発動。こいつは《選択の迷宮》が存在するときにだけ発動できる。《選択の迷宮》に選択カウンターを2つ乗せるか、お前がライフを1500失うか。どちらかを決めるのは当然、お前だ」

「当然だ。ライフを1500失うのを選ぶ。ぐぅ…!」

宣言と同時に、体が紫のオーラに包まれ、ユートの肉体にじわじわと倦怠感が侵食していく。

脂汗を流しながらも、どうにか耐えてたってカードを操作するだけの体力は維持していた。

(く…!《ダメージ・ダイエット》は墓地から除外することで、このターン俺が受ける効果ダメージを半分にすることができる。だが、ライフを失うは効果ダメージではない以上、その効果は使えない…!)

 

ユート

ライフ4000→2500

 

選択の迷宮(フィールド魔法) 選択カウンター1→2

 

与奪の選択

速攻魔法カード

(1):自分フィールドに「選択の迷宮」が存在する場合にのみ発動できる。相手は以下の効果から1つを選択して適用する。

●相手フィールドに存在する「選択の迷宮」に選択カウンターを2つ乗せる。

●自分は1500LPを失う。

 

「俺は手札の《融合》を墓地へ送り、エクストラデッキの《審判者カフカ》の効果発動。墓地の《与奪の選択》、《宝札の選択》、《守護者の選択》を除外し、このカードを特殊召喚する」

「来たか…!」

カイトに引導を渡した悪魔の審判者が今度はユートを葬ろうとフィールドに舞い降りる。

 

審判者カフカ レベル10 攻撃?

 

「もう効果は知っているな?こいつに自分の最も攻撃力の高いモンスター1体を差し出すか、それとも攻撃力を今俺のフィールドに存在する選択カウンターの数×1000にするか、選んでもらうぞ」

「…選択カウンター×1000を選ぶ。《ダーク・レクイエム》は渡さん!」

 

審判者カフカ レベル10 攻撃2000

選択の迷宮(フィールド魔法) 選択カウンター2→3

 

「だが、その苦労は無駄に終わる。俺は手札から魔法カード《裏切りの選択》を発動。こいつはお前の墓地のモンスター1体を俺のフィールドに特殊召喚するか、お前のフィールドのモンスター1体のコントロールを得る。だが、《カフカ》の効果発動。俺のフィールドの選択カウンターを3つ取り除くことで、選択権は俺に映る。お前の《ダーク・リベリオン》の進化形、《ダーク・レクイエム》のコントロールはもらうぞ」

「くそ…!」

《ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン》の瞳の色が無色となり、レナードのフィールドに移動する。

これで、ユートのフィールドはがら空きになったうえに、ライフも2500にされてしまった。

 

選択の迷宮(フィールド魔法) 選択カウンター3→0→1

 

裏切りの選択

通常魔法カード

このカード名のカードは1ターンに1度しか使用できない。

(1):相手は以下の効果から1つを選択して適用する。

●自分フィールドのモンスター1体のコントロールを相手に渡す。

●自分の墓地に存在するモンスター1体を相手フィールドに特殊召喚する。なお、その場合特殊召喚するモンスターを選ぶのは相手になる。

 

「バトルだ。《ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン》でダイレクトアタック。君自身のモンスターの手で新たな世界へ生まれ変わるがいい!」

《ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン》が翼を展開され、牙に稲妻を宿した状態でユートに突撃する。

「これは…!?」

攻撃命令の直後、部屋に入ってきた柚子、権現坂、黒咲はユートのモンスターであるはずの《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》に似たモンスターの攻撃がユートに迫るのを見る。

「遊矢!!」

ユートが主導権を握っていることに気付いていない柚子は彼が負けるかもしれないという恐怖を振り切るように遊矢の名を呼ぶ。

「俺は墓地の《ネクロ・ガードナー》の効果発動!このカードを墓地から除外することで、相手モンスター1体の攻撃を無効にする!」

ユートの目の前に《ネクロ・ガードナー》の幻影が現れ、稲妻の牙を両手で受け止める。

「《ネクロ・ガードナー》…《手札断札》の時に墓地へ送っていたか。だが、まだ《審判者カフカ》の攻撃が残っている。《審判者カフカ》でダイレクトアタック」

《審判者カフカ》の書物のページが開き、その中からカイトが描かれたページをユートに見せる。

すると、そのページの中から黒いカイトの幻影が現れる。

「君の仲間が君も新しい世界へ連れていきたいみたいだな」

「カイトのことを…馬鹿にするな!!」

確かに、カイトの仲間をカードにかえた行為は許されるものではない。

たとえそれがレナードの口車に乗せられる形であったとしてもだ。

だが、少なくともカイトはエクシーズ次元を守るために手を尽くしていた。

そんな彼を侮辱するようなレナードの言葉と行動を許すことができなかった。

カイトの幻影がユートの迫り、彼の腹部に拳を叩き込む。

「が…!!」

メリメリと腹部にめり込んでいき、ユートの口から逆流した胃液が出る。

幻影が姿を消すと、ユートは腹部を抑えながら片膝をついた。

 

ユート

LP2500→500

 

「俺は罠カード《ショック・ドロー》を発動。俺がこのターン受けたダメージの合計1000につき1枚、デッキからカードをドローする!」

「俺はこれで、ターンエンドだ。《裏切りの選択》の効果でコントロールを奪った《ダーク・レクイエム》はお前のフィールドには戻らないからな」

 

ユート

手札0→2

ライフ500

場 なし

 

レナード

手札0

ライフ4000

場 審判者カフカ レベル10 攻撃2000

  ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン(ORU1) ランク5 攻撃3000

  伏せカード1(《惑わしの選択》)

  選択の迷宮(フィールド魔法 選択カウンター1)

 

「遊矢…じゃない。ユートなの…?」

このターンを生き延びたユートの声を聴いた柚子は今の遊矢が遊矢ではないことに気付く。

「どういうわけか分からないが、今の遊矢はユートということか。だが、さっきの幻影は…」

黒咲はレナードのモンスターが出したカイトの幻影が気がかりだった。

もうすでにカイトはレナードに倒されてしまったのかという最悪の可能性が頭をよぎる。

レナードとユートの発言も、その可能性が否定できない内容だった。

「奴のライフは4000なうえに、攻撃力3000と2000のモンスターが1体ずつ。対して遊矢…じゃない、ユートのライフはわずか500でモンスターもいない…」

「ユート…」

(《ダーク・レクイエム》…なるほど、《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》をオーバーレイユニットとすることで初めて真価を発揮できるモンスターか…)

《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》をオーバーレイユニットとした《ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン》は2つの効果を手にする。

1つはオーバーレイユニットを1つ取り除くことで、相手モンスター1体の攻撃力をすべて奪う。

もう1つはオーバーレイユニットを1つ取り除くことで、相手のモンスター効果の発動を無効にし、破壊する。

そして、墓地のエクシーズモンスター1体を特殊召喚する。

どちらもオーバーレイユニットの使用が前提とはいえ、有用な効果だ。

だが、《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》をオーバーレイユニットとしていない以上、今の《ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン》は攻撃力3000のただのモンスターでしかない。

「さあ、もうあきらめてカードになるといい。心配するな、目覚めたときには新世界だ」

「新世界…貴様らアカデミアはエクシーズ次元を…ほかの次元を破壊して一体何がしたい!?」

「簡単なことだ。すべての次元を1つにして理想郷を作るのさ。極めて効率的な方法で、だ」

「効率的な方法だと!?」

「そうだ。そのためにはどうしてもエネルギーが必要だ。カードに変えた人間のエネルギーはクリーンで上質だ。特に、デュエリストがな」

「貴様ら…人間を、人間を何だと思っている!?」

目の前の男は他の次元の人間を人間としても見ていない。

そんなレナードの言葉にユートの怒りが燃え上がる。

そのユートの表情を見ても、レナードに変化はなかった。

「当然だろう?水35リットル、炭素20キログラム、アンモニア4リットル、石灰1.5キログラム、リン800グラム、フッ素7.5グラム、鉄5グラム、ケイ素3グラム、その他少量の15の元素に遺伝子情報。これが人間の材料だととある錬金術師が言っている。遺伝子情報は血を少し加えれば済む話だ。それが混ざった存在でしかない人間を崇高な目的のため、次元を統一するためのエネルギーにしてやっているんだ。むしろ感謝してもらいたいくらいだな。君たちにも、そしてカイトにも」

レナードはカード化したばかりのカイトのカードを手にする。

「くそ…カイト…」

「ひどい…!」

カイトが倒れたことを確認してしまった黒咲は崩れ落ち、柚子は目に涙を浮かべながら口元を抑える。

権現坂は顔を見せないように背を向けると、壁に拳を叩きつけた。

「安心しろ。君たちもすぐにエネルギーに変えてやる。そして…」

「黙れ…」

「何?」

「命を…人を道具としてしか考えられない奴になぜ理想郷が作れる!?寝言を言うなぁ!!」

ユートの叫びと共に、ファントムライトが展開される。

ペンデュラムに蓄積された召喚エネルギーが一瞬激しく放出されると、衝撃波となって周囲を襲う。

「ぐう…これは…!」

柚子と黒咲を両手で抑えながら、襲ってきた衝撃波に耐えた権現坂はユートと、なぜか遊矢のレナードへの激しい怒りが感じられた。

命を踏みにじり、デュエルを汚す彼らを許すことができない。

その怒りのすさまじさは彼の想像を超えていた。

「そんなに理想郷がほしいなら、お前が消えろ!消えなければならないのは、命と…心の重さを理解できない貴様らだ!」

「ふっ…命?心?凡人はその言葉にしがみつく。まるで、命と心が大切だというお題目を掲げたらなんでも正義になると思っているかのように…」

「凡人だからこそだ!貴様のような男になるくらいなら、凡人のままでいい!俺のターン!!」

 

ユート

手札2→3

 

「俺は手札から魔法カード《聖天使の施し》を発動!俺のフィールドにカードがない時、デッキからカードを2枚ドローし、手札1枚を墓地へ捨てる!」

一番求めていたカードの発動に成功したユートは即座にカードをドローする。

それを見た彼の眼が大きく開く。

(これは…!?)

このカードは自分のデッキに入っているはずのないカード。

なぜそのカードが入っているのかはわからないが、だが、その意味は理解できた。

 

手札から墓地へ送られたカード

・幻影騎士団シャドーベイル

 

「そして、手札の《幻影騎士団スエサイドシールド》をセッティング。《スエサイドシールド》のペンデュラム効果発動!俺のフィールドにモンスターが存在しないとき、このカードを破壊してデッキからカードを1枚ドローする!そして、墓地の《幻影騎士団リグレットメイス》の効果発動!墓地の《幻影騎士団シャドーベイル》を除外し、墓地のこのカードとエクストラデッキの《スエサイドシールド》をセッティングする!」

破壊されたばかりの《幻影騎士団スエサイドシールド》が《幻影騎士団リグレットメイス》と共に宙を舞い、光の柱を生み出す。

「更に、《スエサイドシールド》のペンデュラム効果発動!俺のフィールドのモンスターの数が相手よりも少ない場合、墓地のレベルの異なる幻影騎士団モンスター2体をペンデュラム召喚できる!生と死のはざまにさまよう魂よ、反逆の時が来た。今こそ現世に舞い戻り、寄せ来る敵を焼き尽くせ。ペンデュラム召喚!現れろ、《幻影騎士団ラギッドグローブ》、《幻影騎士団フラジャイルアーマー》!」

 

幻影騎士団ラギッドグローブ レベル3 攻撃1000

幻影騎士団フラジャイルアーマー レベル4 攻撃1000

 

「更に、この効果でペンデュラム召喚されたモンスターのレベルはその2体のレベルの合計となる!」

 

幻影騎士団ラギッドグローブ レベル3→7 攻撃1000

幻影騎士団フラジャイルアーマー レベル4→7 攻撃1000

 

「レベル7のモンスターが2体…あのモンスターを召喚するつもりか?」

「レベル7の《ラギッドグローブ》と《フラジャイルアーマー》でオーバーレイ!闇の帳を切り裂きしは、新たな力を得た反逆の牙!!エクシーズ召喚!現れろ、ランク7!《ダーク・アンセリオン・ドラゴン》!」

 

ダーク・アンセリオン・ドラゴン ランク7 攻撃3000

 

「オーバーレイユニットとなった《ラギッドグローブ》の効果発動!攻撃力を1000アップする!」

 

ダーク・アンセリオン・ドラゴン ランク7 攻撃3000→4000

 

「そして、《ダーク・アンセリオン・ドラゴン》の効果発動!オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、相手モンスター1体の攻撃力を半分奪い、奪った数値分俺のライフを回復する。俺は《ダーク・レクイエム》を選択する!」

紫の稲妻が《ダーク・アンセリオン・ドラゴン》の翼から放たれると、それにこたえるように《ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン》の翼からも稲妻が発生する。

互いの稲妻がぶつかり合い、エネルギーが《ダーク・アンセリオン・ドラゴン》の体に吸収されていく。

 

ダーク・アンセリオン・ドラゴン ランク7 攻撃4000→5500

ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン ランク5 攻撃3000→1500

 

ユート

ライフ500→2000

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・幻影騎士団スエサイドアーマー

 

「そして、手札から装備魔法《リベリオン・ウイング》を《ダーク・アンセリオン・ドラゴン》に装備!このカードは闇属性・ドラゴン族エクシーズモンスターにのみ装備でき、そのモンスターの攻撃力を1000アップさせる」

《ダーク・アンセリオン・ドラゴン》の背中に黒いオーラが宿り、力を得たドラゴンは激しく咆哮する。

 

ダーク・アンセリオン・ドラゴン ランク7 攻撃5500→6500

 

「バトルだ!《ダーク・アンセリオン・ドラゴン》で《審判者カフカ》を攻撃!」

「《審判者カフカ》の攻撃力は2000!この攻撃が通ったら、ユートの…!」

《ダーク・アンセリオン・ドラゴン》が天井を突き破り、真っ暗な空のもとで一回転した後で《審判者カフカ》にめがけて一直線に突撃する。

「そううまくいくと思ったか!俺は速攻魔法《惑わしの選択》を発動!相手モンスター1体を選択し、貴様はそのモンスターの攻撃力を0にするか、その攻撃力分のダメージを受けるかの選択をしなければならない!貴様のがんばりすぎだな!」

ユートのライフは《ダーク・アンセリオン・ドラゴン》の効果で回復しているとはいえ、《ダーク・アンセリオン・ドラゴン》の攻撃力は6500で、それを大きく上回っている。

しかも、攻撃力を0にしてとしても戦闘は続行となり、《審判者カフカ》の迎撃ダメージでユートが敗北してしまう。

 

惑わしの選択

速攻魔法カード

(1):相手フィールドに存在するモンスター1体を対象に発動できる。相手は以下の効果から1つを選択して適用する。

●そのモンスターの攻撃力を次の自分のスタンバイフェイズ時まで0にする。

●そのモンスターの攻撃力分のダメージを自分は受ける。

 

「どちらにしても、貴様の負けだな。このまま我らの理想郷へ旅立つがいい!」

「終わるのは貴様だ!俺は手札から《二色眼との接触》を発動!俺のフィールドのレベル、またはランクが7のドラゴン族モンスター1体をリリースする!俺は《ダーク・アンセリオン・ドラゴン》をリリース!」

「何!?」

攻撃を仕掛けようとしていた《ダーク・アンセリオン・ドラゴン》が消滅し、《惑わしの選択》が不発に終わる。

「そして、手札・デッキ・墓地から攻撃力2500のペンデュラムモンスター1体を特殊召喚する。俺は手札の《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を特殊召喚!」

「そのカードって…遊矢の!?けど…」

遊矢のエースカードであるはずの《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》がユートの前に現れ、《審判者カフカ》に向けて咆哮する。

その方向はは主である遊矢自身の怒りを表しているようだった。

 

オッドアイズ・ファントム・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

二色眼との接触

速攻魔法カード

このカード名のカードの効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールドのレベル、またはランクが7のドラゴン族モンスター1体をリリースして発動できる。手札・デッキ・墓地から元々の攻撃力が2500のドラゴン族ペンデュラムモンスター1体を特殊召喚する。

 

「ピンチを脱したようだが、攻撃力2500の《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》程度では俺を倒すことはできないぞ!」

「いいや、貴様は勘違いしている。貴様を倒すのは…俺たちだ!俺は墓地の《リベリオン・ウィング》の効果発動!墓地のこのカードと、エクストラデッキ・墓地に表向きで存在する闇属性・ドラゴン族エクシーズモンスター1体を除外することで、俺のフィールドのドラゴン族ペンデュラムモンスター1体の攻撃力を除外したモンスターの元々の攻撃力分アップする!」

「な…!?」

「俺たちの怒りを受けろ!!」

墓地へ送られた《リベリオン・ウィング》が《ダーク・アンセリオン・ドラゴン》と共に消滅し、フィールドに《ダーク・アンセリオン・ドラゴン》の幻影が姿を現す。

《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》のらせん状の炎と紫の稲妻が融合したエネルギーが凝縮されていく。

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500→5500

 

リベリオン・ウィング

装備魔法カード

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

闇属性・ドラゴン族Xモンスターにのみ装備可能。

(1):装備モンスターの攻撃力が1000アップする。

(2):このカードが墓地に存在するとき、このカードとEXデッキ・墓地に表向きで存在する闇属性・ドラゴン族Xモンスター1体を除外することで発動できる。自分フィールドのドラゴン族Pモンスター1体の攻撃力はこの効果で除外したモンスターの元々の攻撃力分アップする。この効果は相手ターンでも発動できる。

 

「そして、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》は相手モンスターと戦闘を行うとき、相手への戦闘ダメージを倍にする!」

「《審判者カフカ》の攻撃力は2000…《オッドアイズ》の攻撃力は5500。俺が受けるダメージは7000…!」

「これが俺たちの選択だ!《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》で《審判者カフカ》を攻撃!逆襲のスパイラル・デストラクション!」

稲妻を宿した螺旋のブレスが《審判者カフカ》の胴体を貫き、レナードに襲い掛かる。

その炎をまともに受けたレナードは吹き飛び、後ろの壁に激突した。

「ぐおおおお!!!!」

 

レナード

ライフ4000→0

 



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第102話 脱走

「はあ、はあ…」

倒れたレナードを見たユートは疲れ果て、その場に座り込む。

カイトとレナード、2人の強敵とデュエルをすることになり、勝利しなければならないプレッシャーにほぼ休みなしでさらされ、実体化したダメージでユートは想像以上に疲労していた。

「ユート…」

権現坂の手を借りた黒咲がユートの元に近づいていく。

カイトを惑わせたうえに彼を倒したレナードを仕留めてくれたこと、ユートと再会できたことを嬉しいと思うはずだが、今の黒咲はとても喜ばしいとは思えなかった。

実際、数多くのクローバー校のレジスタンスを含めたエクシーズ次元の人々がカード化され、レナードに利用されたからだ。

もっと早く行動すれば、もしかしたらもっと犠牲を減らすことができたのではないかという思いが強くなる。

仮定の話をしても仕方ないことは分かっているが、感情はそれに納得していない。

「はあ、はあ…すまない、黒咲…」

「ユート…」

「俺は…結局、カイトを失ってしまった。助けることが…できなかった…」

ファントムライトが消え、フラリと前のめりに倒れる。

倒れるとともに、うなされる声が聞こえ、その声はユートではなく遊矢のものに変化していた。

黒咲の視線が遊矢から倒れるレナードに目を向ける。

「貴様…!よくも俺たちの仲間を!!」

黒咲は傷を押してステージを上り、レナードの胸ぐらをつかみ、彼のニヤケ面に右ストレートをさく裂させる。

頬が赤く腫れ、口の中を切って血を流しているが、レナードの笑みに変化はない。

「ふふふ…レジスタンスどもを共倒れにしてやろうと思ったが…。まさか、貴様らに邪魔されるとはな…」

「貴様…うおおおお!!!」

黒咲は拳に力を籠め、レナードに向けて振るう。

しかし、拳はレナードのそばの床に当たり、拳からは血がにじんでいた。

「ふ…デニス・マックフィールドをカード化しなかったようだな」

「それがどうした!?貴様は殺さない…連行して、情報を吐かせる!!」

「ふっ…誰がそのようなことをするか。だが、安心しろ。お前たちもすぐに知ることになる。理想郷を…プロフェッサーごときでは成しえない、本当も優しい世界を…」

「優しい世界だと!?いったいどの口が言って…??」

レナードの眼が一瞬大きく見開いたかと思ったら、急にグラリと力なく首を傾ける。

まさかと思った黒咲はレナードの閉じた瞼を無理やり開く。

彼の眼の瞳孔は完全に開いており、体は徐々に冷たくなっていく。

「奴め…奥歯に毒を仕込んでいたか」

任務に失敗した以上は生きて帰らない。

オベリスク・フォースとは違う、ジェルマンの恐ろしい任務への意思が感じられた。

だが、できるのであれば自分の手でカイトの仇であるレナードを裁きたかった黒咲は怒りと共にレナードの体を床にたたきつける。

彼のデュエルディスクを調べるが、既にデータが抹消されているうえに使っていたデッキも白紙のカードに変わっていた。

「黒咲…」

「大丈夫だ。これで、クローバー校の暴走も止まる。少なくとも、すべてをアカデミアに向けることができるはずだ…」

レナードの手にあるデュエリスト達だったカードを手にするが、どれも白紙と化していた。

デュエル中にレナードが見せたはずのカイトのカードもそれに含まれていた。

「まずは…今ここにいる生き残りを起こして、怒ったことを説明しなければならない…手伝ってもらうぞ」

 

「おい、もっと増援を送れ!レジスタンスどもの攻撃が激しくなっているぞ!」

「分かっている!D班、D班!!応答しろ!!」

「E班は既にB班の救援に回っている。到着までの3分、持ちこたえろ!!」

デュエル戦士たちがあわただしく牢獄付近の廊下を駆け抜ける。

兵士の声が閉じ込められている伊織の耳にも届いていた。

「もしかして、翔太君たちが戦っているの?」

きっと、それは自分を助けるため以上にエクシーズ次元を解放するためという意味合いが強いのだろう。

だが、それでも自分を助けに来てくれていると思い込んだ方が自分にとってはよかった。

それに、牢獄を監視している戦士もいなくなっており、脱獄するなら今がチャンスだ。

「うーん、ここってどうやったら開くのかな?」

ここに入れられるまで、目隠しさせられていた伊織はここは普通の鍵なのかカードキーなのか分からない。

普通の鍵なら、何らかの手段でこじ開けることができるかもしれないが、カードキーであればどうにもならない。

カードキーを持っているデュエル戦士がここを通るのを待ち、不意打ちで奪うしかない。

「伊織さん、伊織さん!」

「クリクリー!」

「その声…!」

だが、伊織にはデッキの中にも仲間が存在する。

彼女の目の前にセラフィムとクリボーマンが姿を現した。

精霊である2人なら、すり抜けて様子を見ることができる。

「キュイー!」

更に、なぜか天井近くの高さの壁の通気口が開き、その中からビャッコが飛び降りてくる。

どうやってそこに入ったのかはわからないが、体がこすれで若干毛が黒くなっている。

しかし、ブルブルと体を振るわせるだけで、簡単に元の毛並みに戻った。

「ビャッコも…!もしかしたら、いけるかも…!」

「キュイ!」

自分が来たからにはもう安心と言わんばかりに、2本の尻尾で立ち、腕を組んで見せる。

そして、クリボーマンは柵をすり抜けて扉の鍵を調べた。

「クリボーマンさん、鍵は…」

「クリクリクリー!」

「カードキー、ですね。だとしたら、後は…」

「キュキュー!」

ビャッコは柵の隙間から外へ飛び出す。

彼がカードキーを探しに行ってくれるようだ。

「私がビャッコさんのサポートをします。クリボーマンさんは伊織さんのこと、お願いします」

カードの精霊がどこまでカードから距離を離すことができるのかはわからない。

だが、見つかるわけにはいかない以上は誰かがビャッコのサポートをした方が成功率が上がる。

「じゃあ、頑張って。セラフィム、ビャッコ」

「キュキュ!」

「はい、お任せください。伊織さん!」

ビャッコがわずかに開いているドアから牢獄を飛び出していき、セラフィムも扉をすり抜けて後に続いた。

 

「キュキュー!」

廊下の柱の陰に隠れるなどして走っているデュエル戦士たちの視界から逃れつつ、ビャッコはセラフィムと共に最上階の司令室へ走る。

牢獄のカードキーを持つ戦士がどこにいるのかわからず、その牢屋番が待機している場所も分からない。

牢獄の一番近くにある部屋はただの仮眠室だった。

今は仮眠室で眠っているデュエル戦士の姿がなく、部屋の中を探したが特に良いものは見つからなかった。

「…!ビャッコさん、デュエル戦士が近づいてきます!」

「キュキュ!?」

もうすでに数人のデュエル戦士の走って近づいてくる音が聞こえて来て、ビャッコは周囲を見渡す。

影となりうる柱も、通気口もない。

縮こまって悩むビャッコだが、何かを思いついたのか、頭の上に葉を乗せる。

「もしかして、変身ですか!?」

シンクロ次元では猫に、TDCでは車に変身したビャッコ。

今度は赤服のデュエル戦士に変身した。

頭に赤いキャップ帽をかぶり、ゴーグルをつけたどこのコナミ君だというべき姿だった。

変身したことにびっくりしたセラフィムだが、どこか大丈夫かなと不安を覚える。

そうしている間に、デュエル戦士3人がこちらに近づいてくる。

「おい、何しているんだ!?さっさとお前も持ち場に就け!奴らが動いてるぞ!!」

「…!!」

返事をしようと口を開くビャッコだが、なぜか言葉をしゃべることができない。

猫の時は猫の鳴き声になったため、人間に変身できた以上はその言葉を離せるだろうと思っていたセラフィムはああ、と頭を抱える。

「お、おい、どうしたんだ?返事をしろ!!」

「放っておけ!ってちょっと待て、デュエルディスクをつけてないじゃないか!?」

「…!!」

ビャッコはデュエル戦士に変身することばかり考えるあまり、うっかりデュエルディスクをつけることを忘れていた。

ごまかそうにもしゃべれないビャッコにはどうしようもない。

「ったく、デュエル戦士がデュエルディスクを忘れるってどういうことだ!?3階の倉庫から取って来い!!」

怪しいものの、今は持ち場に行かなければならない以上は彼にかかわっている場合ではないと考えたデュエル戦士はそう言い残すと、そのまま仲間の2人と一緒に立ち去ってしまう。

「うーん、ちょっと変ですが…情報が手に入ってよかったですね。じゃあ、3階へ行きましょう」

「…!」

しゃべれないビャッコは再び走り出し、エレベーターを見つける。

翔太と伊織がどうやって操作をしていたかを思い出しながら、ビャッコは3階のボタンを押し、扉を閉めた。

 

「ちっ…数だけは揃えやがって…!」

倒しても倒しても、次々やってくるデュエル戦士たちに翔太は息を切らせ、不快感を口にする。

4時間以上経過しているように体感する中で、もうすでに20人以上とデュエルをし、倒している。

20人数えた時点でもう面倒くさくなって数えることすらやめているため、それが正確な数字である保証はない。

「くそ…あの男、どれだけタフなんだ!」

「ひるむな!数は此方が圧倒的に有利!そして…奴を倒せば、特別報酬が待っているぞ」

デュエル戦士たちは今回の戦闘前に送られた通達を思い出す。

ランサーズの一員である秋山翔太を倒し、カード化したデュエリストには特別に一生遊んで暮らせるだけの大金が支給されるうえに出世が約束される。

どういう原理かは分からないものの、翔太にはカード化してしまった人々を元に戻す能力があり、それがアークエリアプロジェクトにとって大きな障害となるらしい。

彼らは人々をカードに変えはするものの、その後でそのカードはすべて回収されるため、それがこの後どうなるかは管轄外だ。

この通達が来たことで、カード化そのものに計画と大きな関係があることが分かったが、今はそれだけで十分だ。

下手な疑問を抱くよりも、悩まずにカード化していった方が彼らにとって有益なのだから。

「やれやれ…有名人は辛いな…。俺はスケール2の《魔装槍士タダカツ》とスケール9の《魔装剣士ムネシゲ》でペンデュラムスケールをセッティング!」

 

「キュキュー!」

通気口を使い、倉庫に侵入することに成功したビャッコは少し疲れたのか、その場で座り込みながらみたらし団子を食べ始める。

「ビャッコさん…!そんなところでみたらし団子を食べないでください!」

「キュー…」

「そんなウルウルした眼で見られても…!」

大好きな食べ物を食べたいという気持ちは分かるが、時と場合による。

こんなところでみたらし団子を食べ、タレがこぼれたらそれでばれてしまう可能性が高い。

セラフィムをハラハラさせながら食べ終えたビャッコは変身し、倉庫の中にあるデュエルディスクの1つを手にする。

装着した瞬間、今度はデュエルディスクにパスワード入力画面が表示された。

「パ、パスワード!?そんなの…分からないですよ!」

「…!!」

当然、ビャッコもパスワードが分からない。

あてずっぽうに入力するという手もあるが、こういうものの場合は何回か入力に失敗するとロックがかかる。

他のデュエル戦士に聞くこともできるわけがない。

「私、盗み見してきます!」

セラフィムは倉庫から出て、出撃しようとしているデュエル戦士を探し始める。

3階よりも上にデュエル戦士たちの宿舎があり、そこにならもしかしたらまだ出撃していないデュエル戦士がいるかもしれない。

予想通り、4階の宿舎にはまだ出撃していないデュエル戦士がいて、デュエルディスクを装着したばかりだった。

「あのランサーズって奴らのせいでエクシーズ次元の奴ら、戦意が上がってるぞ」

「プロフェッサーの気高い理想が理解できない奴らめ…!」

自分たちの行いを正義と疑わないデュエル戦士たちは悪の権化ともいえるランサーズとそのリーダーである零児への怒りを漏らしながら自分たちのデュエルディスクを装着する。

彼らは自分の制服と同じ色のIDカードを手にしていて、そのカードにある4ケタの番号をデュエルディスクに入力していた。

(IDカードを盗むか、新しいカードを作れば、ビャッコさんがあのデュエルディスクを使える…!)

問題はそのカードを発行する機能がこの施設にあるかどうかだ。

万が一そのカードを紛失したときのために、バックアップのカードを作る場所くらいはあるはずだ。

その場所を探そうと一度部屋を出ると、セラフィムは牢屋番をしていたデュエル戦士を見つける。

「くそ…次の奴が行ってしまったんじゃあ、俺がやるしかないってのか…。くそっ、あの愚連隊が!」

交代の時間で、ようやく部屋でゆっくりできると思ったのに次に牢屋番をやるはずのデュエル戦士が出撃したまま帰ってこない。

交代要員を出す余裕がないことから、引き続き牢屋番をするように命令された彼はこの原因を作ったエクシーズ次元とランサーズ、ヴァプラ隊に悪態をつく。

統一されたデッキを使わず、制服も着ていない、おまけにプロフェッサーのような理想のない彼らにどうして自分たちがここまでてこずらなければならないのか。

そのうさを牢獄の囚人をいじめて晴らそうかと考えながら、エレベーターへ走っていく。

その姿を見たセラフィムは何かを思いつき、急いで倉庫へ戻っていった。

 

「じゃんけんぽん!あっちむいて、ホイ!」

「クリクリ!!」

待っている伊織はあまりの退屈さをどうにかしようと、クリボーマンとあっち向いてホイをして楽しんでいた。

牢屋番がいない以上、どんなに騒いでも誰にも叱られるはずもなく、気兼ねなく精霊と遊ぶことができる。

クリボーマンは最初、どうやって遊べばいいのかわからなかったものの、伊織にやり方を教えてもらい、何度もやる中で楽しくなってきたようだ。

「これで10VS8!さあ、ドンドンやろー!」

「クリー!」

「伊織さん、クリボーマンさん!お待たせしましたー!」

扉が開き、牢獄にセラフィムと赤服のデュエル戦士が入ってくる。

なぜデュエル戦士と一緒にいるのかわからず、1人と1匹は身構える。

「大丈夫です。この人、ビャッコさんです!」

「…!」

「あ、ビャッコちゃん。なーんだ、良かったぁ」

しゃべれないデュエル戦士が持ち出したみたらし団子で、彼がビャッコだということが分かった伊織は緊張が切れてその場に座り込む。

「ああ、それに尻尾もあるよねー」

「!?」

ハッとしたビャッコは自分のお尻のあたりに手を置くと、そこには真っ白な2本の尻尾があった。

猫に変身していたときはともかく、車の変身したときも尻尾は残っていた。

だが、初めてデュエル戦士、というよりも人間に変身したため、尻尾のことをすっかり忘れていた。

尻尾を誰かに見られなかったか心配になるが、今はそれよりも重要なことがある。

ビャッコは手に入れたカードキーを使い、伊織を牢屋から出す。

「はああ…助かったぁ」

「伊織さん、あなたの荷物を取り返しましょう!」

「きっと、この中にあるよね。私のデッキとデュエルディスクも!」

ビャッコからすでにロックが解除されたデュエルディスクを受け取り、その中にあるカードを確認する。

どうやらどちらもデュエル戦士の物を奪ったもので、内容はやはり古代の機械デッキ。

いつも使っているE・HEROデッキではないが、ないよりはましだ。

「おい、何を勝手に牢屋から出ている!?」

牢屋番が入ってくると同時に叫び出し、自分のベルトについているデッキケースを手にしようとする。

だが、なぜかいつもならある位置にデッキケースの感触がない。

すぐに彼は伊織が奪ったデュエルディスクの中に自分のデッキがあることに気付く。

「ええっと…ごめんね?」

「な、な…!?」

伊織はデュエルディスクに内蔵されているリアルソリッドビジョンを展開し、《古代の機械猟犬》を召喚する。

召喚した人物であれば、たとえアカデミアの人間でなくても従うようで、その猟犬はためらいなく牢屋番を襲った。

「あ、あ、ああーーーーー!!」

「ワンちゃん、ワンちゃん!気絶にとどめてね!!」

伊織の命令通り、牢屋番を気絶させた後で《古代の機械猟犬》は姿を消す。

しかし、大声を出させてしまったことで気づかれてしまった可能性が高い。

現に、オベリスク・フォースの1人が牢獄に入ってきた。

「何!?貴様、どうやって脱走した!?」

「教えないもん!!」

2人はデュエルディスクを展開する。

伊織はジェルマンと彼らで自分への扱いに違いがあるように感じられた。

彼にとっては伊織がただの囚人でしかないようで、既に自分をカードにする気で満々だ。

だが、伊織にはカードになる理由はない。

自分の荷物を取り戻し、翔太と合流し、自分の生まれの真実をつかむまでは負けられない。

「「デュエル!!」」

 

オベリスク・フォース

手札5

ライフ4000

 

伊織

手札5

ライフ4000

 

「私の先攻、私は手札から《古代の機械猟犬》を召喚」

 

古代の機械猟犬 レベル3 攻撃1000

 

「このカードの召喚に成功したとき、相手に600ダメージを与える!」

《古代の機械猟犬》の口から発射されるエネルギー弾が伊織を襲う。

正面から受ける伊織だが、彼女の目の前に青い光の障壁が展開される。

「セラフィム!?」

「カードが伊織さんの元にないとしても、これくらいならできます!」

 

伊織

ライフ4000→3400

 

「セラフィム…?何をわけのわからないことを…!私は手札から魔法カード《二重召喚》を発動。その効果により、更に手札から《古代の機械飛竜》を召喚」

蛇のような細長い体つきをした錆びた鉛色の飛竜の機械が現れる。

 

古代の機械飛竜 レベル4 攻撃1700

 

「このカードの召喚・特殊召喚に成功したとき、《古代の機械飛竜》以外のアンティーク・ギアカードを手札に加える。私は《古代の機械箱》を手札に加える。更に、《古代の機械箱》の効果。ドロー以外の方法でこのカードをデッキ・墓地から手札に加えたとき、デッキから《古代の機械箱》以外の攻撃力または守備力500の機械族・地属性モンスター1体を手札に加えることができる。私は《古代の機械素体》を手札に加える。そして、《古代の機械猟犬》の効果発動!1ターンに1度、私の手札・フィールドのモンスターを素材にアンティーク・ギア融合モンスターを融合召喚できる」

《古代の機械猟犬》が天井に向けて咆哮すると、上空に《融合》の渦が生まれ、その中に《古代の機械飛竜》と手札に加わった2体を含めた4体のアンティーク・ギアモンスターが飛び込んでいく。

「融合召喚!現れろ、《古代の機械混沌巨人》!」

「そのカードって…!」

シンクロ次元のテレビで見た、デニスの真の切り札を伊織は思い出す。

さすがに地下で召喚するためか、大きさは調整されているが、それでも自分よりも大きいそのモンスターに伊織は驚いていた。

 

古代の機械混沌巨人 レベル10 攻撃4500

 

「《古代の機械飛竜》の効果を発動したターン、私はカードをセットできない。これでターンエンドだ」

 

オベリスク・フォース

手札5→2

ライフ4000

場 古代の機械混沌巨人 レベル10 攻撃4500

 

伊織

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「私のターン、ドロー!」

 

伊織

手札5→6

 

伊織はドローしたカードを含めた手札をすべて確認する。

「私は手札からフィールド魔法《歯車街》を発動!更に手札から魔法カード《古代の機械射出機》を発動!私のフィールドにモンスターが存在しないとき、私のフィールドに表側表示で存在するカード1枚を破壊することで、デッキからアンティーク・ギアモンスター1体を召喚条件を無視して特殊召喚できる。私は《古代の機械飛竜》を特殊召喚!」

 

古代の機械飛竜 レベル4 攻撃1700

 

「《古代の機械飛竜》の効果!デッキから《古代の機械箱》を手札に加える!更に《古代の機械箱》の効果で、デッキから更に《古代の機械素体》を手札に加える!そして、《歯車街》の効果発動!このカードが破壊され墓地へ送られたとき、手札・デッキ・墓地からアンティーク・ギアモンスター1体を特殊召喚できる。《古代の機械巨竜》を特殊召喚!」

 

古代の機械巨竜 レベル8 攻撃3000

 

「ふん!《歯車街》の効果を即座に理解して使ったのはさすがだが、攻撃力4500の《古代の旗艦混沌巨人》は倒せないぞ!!」

「そして、私は手札から《古代の機械素体》を召喚!」

《古代の機械戦士》の装甲がすべて取り除かれ、フレームだけになったようなモンスターが現れる。

 

古代の機械素体 レベル4 攻撃1600

 

「更に手札から速攻魔法《リミッター解除》を発動!これで、攻撃力倍!」

 

古代の機械飛竜 レベル4 攻撃1700→3400

古代の機械巨竜 レベル8 攻撃3000→6000

古代の機械素体 レベル4 攻撃1600→3200

 

「な、リ、《リミッター解除》だと!?」

「これで…終わり!!」

3体のアンティーク・ギアモンスターが《古代の機械混沌巨人》に向けて2体はブレスを、1体はフレームむき出しのままのパンチを放つ。

ブレスで溶解した装甲に拳が叩き込まれ、《古代の機械混沌巨人》がバラバラになって崩れ落ちる。

「う、うわああああ!!!」

オベリスク・フォースは崩壊する切り札の下敷きになった。

 

オベリスク・フォース

ライフ4000→2500→0

 

「よし、行こう!」

気絶したオベリスク・フォースからデッキを奪い、伊織はビャッコを肩の上にのせて走り出した。



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第103話 動く戦場

「そうか…カイトは…」

「そうだ。お前たちはアカデミアの特務部隊に利用されていた。だが、そいつは遊矢が倒した」

今まで自分たちのやってきたことが、ただアカデミアの利する行為でしかなかったことに気付き、クローバー校のレジスタンスたちは肩を落とす。

自分たちはこれまで、スペード校とたもとを分かつことになったとはいえ、自分たちの行動がエクシーズ次元の未来につながると信じて戦ってきた。

それを見事に否定され、挙句の果てには利用されたとなると、もはや自分たちはピエロに思えてしまう。

「カイトもレナードもいない…。俺たちはどうすれば…?」

「どうすれば?決まっているだろう。もう1度だけ、一緒に戦ってほしい。カイトもそれを望んでいるはずだ」

「だが、俺たちは…」

「悩む時間はもう俺たちには残されていない!お前たちのやったことについてはエクシーズ次元を復興させた後だ!」

おそらく、仲間を奪われたメンバーを中心に反発を招くかもしれない。

だが、それでもエクシーズ次元を解放するにはエクシーズ次元全体の力を結集させる必要がある。

そのためには、後回しにしなければならない問題は後回しにし、今やるべきことをやるだけだ。

「…分かった。少しでも償いになるのなら、可能な限り手を貸そう」

「驚いたわ。まさか、対立するレジスタンスをもう1度一つにしようだなんて」

「その声は…?」

入ってきた女性にデュエルリング中のデュエリストたちの視線が向く。

彼女は病院前での戦いの後、消息を絶っていたグロリアだった。

見覚えのないデュエリストで、警戒したレジスタンスたちはデュエルディスクを展開しようとする。

「待ってくれ、彼女は…」

「私は敵じゃないわ。今のところは、だけど…」

警戒を解くため、グロリアは装着していたデュエルディスクを外し、カードケースも含めて床に置く。

そして、両手をかざし、自分が無防備だということを証明した。

「あなたたちに話があって来たわ。準備がいいのなら、だけど」

「準備…?」

「そう、うまくいけば、あなたたちで本部へ奇襲できるかもしれない…永瀬伊織の救出もできるかもしれないわ」

「伊織の救出?もしかして、伊織は本部にいるの?」

「そうだ。今は牢獄に収監されているが、近いうちに融合次元へ送られる可能性が高い。急ぐ必要があるぞ」

「グロリア、どうしてそんな情報を…?」

グロリアが話している情報はおそらく、アカデミア内の機密情報だろう。

そんなことをアカデミアの敵であるランサーズの遊矢達に話していいはずがない。

だが、話したとなるとおそらくは覚悟を決めてのことだろう。

「…今も、分からない。アカデミアの正義を信じて、これまで戦ってきた。それを信じたいという気持ちがどこかで残っている。だから、あなたたちが証明して。あなたたちが正しいって…」

あまりにも人任せな願いだと自分でもおかしくて笑ってしまう。

それでも、自分なりにできる精一杯を今はしている。

あとはそれをどう受け止めてもらえるかだ。

「分かった…。教えてくれ、グロリア。どうしたら奇襲ができる?」

「ジェルマンは内部にレナードを送り込んだ。おそらく保険として、本部からデュエル戦士を転送するための受信機がこの中にあるはずよ。レジスタンス総出の陽動のおかげで、使われていないようだがな」

「場所は分かるのか?」

「それが問題だ。私にはこの施設のどこかにあるということしか…」

「あるよ。それ…体育館にある避難用シェルターの中」

「アレン…?」

サヤカと共にデュエルリングへやってきたアレンがうつむいた状態で、小さな声で答える。

カイトのことは彼も既に知っているようで、そのショックは大きいだろう。

今はサヤカの手を借りないと経っていられないくらい憔悴している。

「多分、だけど…。俺、前にこっそりシェルターの中を見に行ったことがあるんだ。それで、変な部屋を見つけて。気になってたから、覚えてた…」

それはシェルターの中にまだ残っている食料を運び出しに行った時のことだ。

その時に偶然、そのシェルターにはないはずのもう1つの部屋のドアの存在に気づき、扉を開けようとしたが、鍵がかかっていて空けることができなかった。

何度もシェルターの出入りをしているアレンはある程度シェルターの構造を知り尽くしていたため、その不可思議な部屋の存在が頭に残っていた。

「案内してくれるか…?アレン」

「うん…ついてきて」

 

「おとなしくしろ。また戻って襲われたら面倒だからな」

倒したデュエル戦士のデュエルディスクを取り上げ、結束バンドで彼の腕を封じる翔太は次の相手を探すために周囲を見渡す。

既に戦いが始まってから数時間経過しようとしていて、疲れを見せるレジスタンスのメンバーもいる。

今は此方が攻勢になっているものの、まだ相手の本丸にすらたどり着いていない。

このままではスタミナ切れでこちらが壊滅する可能性があり得る。

「早く本部への道を…ちっ、またお前かよ」

再び自分の目の前に現れた、大柄な隻眼の男に翔太はため息をつく。

スタンダード次元でもシンクロ次元でも一度は倒したはずなのに、懲りずにまた現れる。

彼には学習能力がないのかとため息をついてしまう。

「セレナは連れて帰ったんだろ?まだ足りないのか…?おっさん」

「セレナ様のことは関係ない。今の私はエクシーズ次元攻撃のために派遣された兵士の1人だ」

「気高きプロフェッサー様の理想実現のための捨て駒、だろ?」

挑発するような言動をする翔太だが、バレットはフッと軽く笑って受け流す。

伊達に年を重ねたつもりも、戦歴を積んできた覚えもない。

ただ、今自分の中には別の何かが芽生えているように感じられた。

それを生み出しているのは今、目の前にいる彼だ。

「さあ、俺たちは敵同士だ。やるべきことはわかっているだろう?」

「…なら、しゃべってねえでさっさと始めるぞ。てめえに付き合ってる暇はねえんだ」

「ほぉ?仲間のことを気にしているのか?私も時間をかけられる立場ではない。手短に済ませよう」

 

バレット

手札5

ライフ4000

 

翔太

手札5

ライフ4000

 

「先攻は私がもらう。私は手札から永続魔法《獣闘機融合装置》を発動。1ターンに1度、私の手札・フィールドのモンスターを素材に獣闘機モンスター1体を融合召喚できる。私は手札の《ダーク・センチネル》と《激昂のミノタウルス》を融合。怒りに燃える牛人よ、聖なる闇の番人と交じり合いて、新たな狂戦士となれ!融合召喚!現れ出でよ、《獣闘機タウルス・バーサーカー》」

口から上の大部分が機械となり、背中からは斧を持つサブアーム2本を装着した《激昂のミノタウルス》が現れるとともに、雄たけびを上げる。

 

獣闘機タウルス・バーサーカー レベル6 攻撃2100

 

「私はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

バレット

手札5→1

ライフ4000

場 獣闘機タウルス・バーサーカー レベル6 攻撃2100

  獣闘機融合装置(永続魔法)

  伏せカード1

 

翔太

手札5

ライフ4000

場 なし

 

(新しい獣闘機…攻撃力の低いこいつを棒立ちか?)

これまでバレットが使ってきた獣闘機はいずれも攻撃力がそれほど高くないモンスターばかりだ。

効果は積み重なれば手間取るが、ここは速攻で片づけてしまえば問題はない。

あくまで、これまで彼が使った2枚のモンスターからつかんだ傾向で、全体像がつかめているわけではないが。

「俺のターン、ドロー」

 

翔太

手札5→6

 

「俺は手札から《魔装獣ユニコーン》を召喚」

 

魔装獣ユニコーン レベル4 攻撃1600

 

「そして、このカードは俺のフィールドに存在する魔装モンスター1体をリリースすることで、手札から特殊召喚できる。《魔装鳥フェニックス》を特殊召喚」

 

魔装鳥フェニックス レベル7 攻撃2300

 

「バトル。《フェニックス》で《タウルス・バーサーカー》を攻撃!」

《魔装鳥フェニックス》が上空から《獣闘機タウルス・バーサーカー》に向けて炎の玉を発射する。

炎を受けた狂戦士はあまりの熱で叫びをあげる。

「これで…!」

「無駄だ。《タウルス・バーサーカー》は狂戦士。故に窮地であろうと退かず、だ」

炎を受けたはずの《獣闘機タウルス・バーサーカー》は叫び声を上げながら持っているすべての斧を上空の《魔装鳥フェニックス》に向けて投げつける。

上空の《魔装鳥フェニックス》は1本目の斧は体をそらして回避し、2本目3本目を口から放つ炎で溶解させる。

しかし、避けたはずの斧がブーメランのように戻ってきて、不死鳥の背中に刺さる。

背後からの一撃を受けたそのモンスターは地表に転落した後で消滅する。

そして、その衝撃がバレットを襲う。

「ぐう…う!!《獣闘機タウルス・バーサーカー》と戦った相手モンスターはダメージステップ終了時に破壊される」

 

バレット

ライフ4000→3800

 

「ちっ…だが、《フェニックス》は不死鳥だ。こいつはカード効果で破壊されたターン終了時に、墓地から復活する」

「らしいな。だが、この程度で済ませるつもりはない。私は永続罠《刃の獣闘機勲章》を発動。1ターンに1度、私の獣戦機モンスターが相手モンスターを戦闘・効果で破壊したとき、そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを与える」

「何…!?」

いくつもの刃が表面につけられた勲章が出現し、そこから発射される剣閃が翔太を襲う。

「くう…!!」

 

翔太

ライフ4000→1700

 

「くそ…そっちだったか」

翔太はバレットが遊矢を追い詰めたときに使っていた《紅鎖の獣闘機勲章》を思い出す。

そのカードはエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターを対象にし、そのモンスターの身動きを封じるだけでなく、更には召喚・特殊召喚と魔法・罠カードの発動を封じる強烈な効果を持っている。

彼が伏せていたカードがそれだと考えた翔太はエクストラデッキからの召喚ではなく、手札から特殊召喚したモンスターでどうにかしようと考えたが、誤算だった。

そして、当然のごとく別の効果も発動する。

「そして、《タウルス・バーサーカー》の効果。このカードが戦闘で破壊され墓地へ送られたとき、墓地から融合素材となったモンスターを特殊召喚できる」

 

激昂のミノタウルス レベル4 攻撃1700

ダーク・センチネル レベル4 攻撃1500

 

獣闘機タウルス・バーサーカー

レベル6 攻撃2100 守備1800 融合 闇属性 機械族

レベル4以下の獣戦士族モンスター+レベル4以下の機械族モンスター

(1):このカードが相手モンスターと戦闘を行ったダメージステップ終了時に発動する。その相手モンスターを破壊する。

(2):このカードが戦闘で破壊された場合に発動できる。 このカードの融合素材としたモンスター一組を自分の墓地から特殊召喚する。

 

「これで…お前は次のターンに獣闘機を融合召喚できる…そういうことか」

おそらく、彼のエクストラデッキにはまだ《獣闘機タウルス・バーサーカー》がある。

ターン終了時に復活する《魔装鳥フェニックス》にもう1度攻撃し、その効果で撃破することで翔太のライフを一気に0にすることができるだろう。

堅実なデュエルをする男とセレナは称していて、彼と2度デュエルをした翔太もそれを体験したが、このやり方は想定外だった。

「どういう心境の変化だ?俺に手痛い一発を食らわせやがって」

「戦場は何が起こるかわからん。臨機応変さが問われる。それだけのことだ」

「面白くねえ奴だよ、てめーは。俺は手札から魔法カード《聖天使の施し》を発動。俺のフィールドにカードがない時、デッキからカードを2枚ドローし、手札1枚を墓地へ捨てる」

 

手札から墓地へ捨てたカード

・ロンギヌスの槍

 

「そして、カードを1枚伏せてターンエンド。そして、ターン終了と同時に《魔装鳥フェニックス》は復活する」

翔太のデュエルディスクから大きな炎が出現し、その炎に五芒星の光が宿る。

その光を中心に炎は次第に《魔装鳥フェニックス》へと変化していった。

 

バレット

手札1

ライフ3800

場 激昂のミノタウルス レベル4 攻撃1700

  ダーク・センチネル レベル4 攻撃1500

  獣闘機融合装置(永続魔法)

  刃の獣戦機勲章(永続罠)

 

翔太

手札6→3

ライフ1700

場 魔装鳥フェニックス レベル7 攻撃2300

  伏せカード1

 

「私のターン、ドロー」

 

バレット

手札1→2

 

「私は《獣闘機融合装置》の効果発動。フィールドの《ミノタウルス》と《ダーク・センチネル》を融合。融合召喚。現れ出でよ、《獣闘機タウルス・バーサーカー》」

 

獣闘機タウルス・バーサーカー レベル6 攻撃2100

 

「更に、私は手札から装備魔法《守護者の獣闘機勲章》を《タウルス・バーサーカー》に装備」

復活したばかりの《獣闘機タウルス・バーサーカー》の胸部にぶつかり合う2つの盾が刻まれた勲章が装着される。

「バトル。《タウルス・バーサーカー》で《フェニックス》を攻撃!」

「俺は伏せカードを…何!?」

伏せカードを発動しようとする翔太だが、その伏せカードが勲章から発射される緑色の光によって封じられる。

「無駄だ。《守護者の獣闘機勲章》を装備したモンスターの攻撃に対して、相手は魔法・罠カードを発動できない。これでその不死鳥を守る手段を封じた!」

《獣闘機タウルス・バーサーカー》がとびかかり、《魔装鳥フェニックス》を組み伏せる。

2体のモンスターは背後にあるビルにぶつかり、爆発とともに消滅する。

そして、その衝撃でビルが折れ、翔太に向かって落ちてくる。

「《刃の獣闘機勲章》の効果により、お前は《フェニックス》の元々の攻撃力2300のダメージを受ける。貴様はここまでだ!」

ビルが翔太を巻き込んで地面に落ち、その周辺が粉塵に包まれていく。

たとえデュエルを続けることができるとしても、ビルの倒壊に巻き込まれては助からない。

バレットは背を向け、立ち去ろうとする。

「待てよ…まだデュエルは終わってねえだろ…?」

「何…?」

翔太の声が聞こえ、バレットは思わず振り返る。

粉塵が風で吹き飛ばされると、そこには紫色の光のバリアで包まれた翔太と五芒星が刻まれた茶色い石板を手にし、白と青をベースとした古代ギリシャ風の服装をした白髪の老人の姿があった。

「俺は手札の《魔装学者ヘロドトス》の効果を発動した。こいつは俺が効果ダメージを受けるとき、手札から特殊召喚できる」

 

魔装学者ヘロドトス レベル3 守備1500(チューナー)

 

バレット

ライフ3800→3600

 

「そして、その効果ダメージを0にし、更にデッキから受けるはずだった効果ダメージ以下の攻撃力を持つ魔装モンスター1体を手札に加える。俺はデッキから《魔装亀テンセキ》を手札に加える」

「なるほど…その効果で己の身を守ったというのか…だが…」

バレットがそれ以上に気になるのは翔太を包む奇妙な紫色の光だ。

アカデミアがこれまで集めた情報では、カード化した人々を解放する能力があることは分かっているが、このような力を持っているとは聞いていない。

ヴァプラ隊の隊長である侑斗や彼の仲間であるヒイロ・リオニス、神代凌牙は特殊な力を持っていることから、おそらく彼らとつながりがあるかもしれない。

だが、その疑問は今のデュエルでは関係ないことだ。

「しかし、まだ私のバトルフェイズは終わっていない。《守護者の獣闘機勲章》の効果発動。このカードが装備モンスターが破壊されたことで墓地へ送られたとき、墓地から獣闘機モンスター1体をエクストラデッキに戻し、デッキからカードを1枚ドローできる。私は《タウルス・バーサーカー》をエクストラデッキに戻し、カードを1枚ドロー。そして、先ほど戦闘破壊された《タウルス・バーサーカー》の効果。墓地から《激昂するミノタウルス》と《ダーク・センチネル》を特殊召喚!」

 

激昂するミノタウルス レベル4 攻撃1700

ダーク・センチネル レベル4 攻撃1500

 

守護者の獣闘機勲章

装備魔法カード

「獣闘機」モンスターにのみ装備可能。

(1):このカードを装備したモンスターが攻撃するとき、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。

(2):装備モンスターが破壊されたことによってこのカードが墓地へ送られたとき、自分の墓地に存在するそのカード以外の「獣闘機」融合モンスター1体を対象に発動できる。そのカードを自分のEXデッキに戻し、デッキからカードを1枚ドローする。

 

「《激昂するミノタウルス》で《ヘロドトス》を攻撃」

「俺は《魔装亀テンセキ》の効果発動。このカードを手札から墓地へ送り、このターン俺の魔装モンスターは戦闘では破壊されず、俺が受ける戦闘ダメージも0となる」

《魔装亀テンセキ》の甲羅が《激昂するミノタウルス》の斧を受け止める。

翔太の襲うはずだった余波もその甲羅が吸収してしまった。

《魔装亀テンセキ》が手札になければ、このまま貫通ダメージと《ダーク・センチネル》の攻撃で敗北していた。

「私はカードを2枚伏せ、ターンエンドだ…」

「ターン終了時に、墓地の《フェニックス》は蘇る」

 

バレット

手札2→0

ライフ3600

場 激昂のミノタウルス レベル4 攻撃1700

  ダーク・センチネル レベル4 攻撃1500

  獣闘機融合装置(永続魔法)

  刃の獣戦機勲章(永続罠)

  伏せカード2

 

翔太

手札3→2

ライフ1700

場 魔装鳥フェニックス レベル7 攻撃2300

  魔装学者ヘロドトス レベル3 守備1500(チューナー)

  伏せカード1

 

「俺のターン、ドロー」

 

翔太

手札2→3

 

「俺は手札から魔法カード《魔装門》を発動。相手フィールドに《魔装幻影トークン》2体を特殊召喚し、デッキから魔装カード1枚を手札に加える。俺はデッキから《魔装融合》を手札に加える」

 

魔装幻影トークン×2 レベル6 攻撃2000

 

「そして、俺は手札から魔法カード《魔装融合》を発動。その効果で、俺は魔装モンスター1体を融合召喚できる。俺は《フェニックス》、《ヘロドトス》、そして墓地の《ユニコーン》を融合!幾度となる蘇る不死鳥よ、歴史の語り部よ、騎士の馬よ、魔導の力によりて、今1つとならん。融合召喚!真紅の騎士、《魔装騎士レッドライダー》!!」

 

魔装騎士レッドライダー レベル8 攻撃3000

 

「このタイミングで《レッドライダー》を融合召喚したか…だが無駄なことだ。私は速攻魔法《先駆けの獣闘機勲章》を発動。相手がモンスターを召喚・特殊召喚した相手ターンに発動でき、私の手札・フィールドのモンスターを素材に獣闘機モンスターを融合召喚する。私は《激昂するミノタウルス》と《ダーク・センチネル》を融合。融合召喚。現れ出でよ、《獣闘機エレファント・ガードナー》」

人間と象を組み合わせたような体つきのモンスターが体の左半分を機械化させた状態で現れる。

 

獣闘機エレファント・ガードナー レベル6 守備2600

 

先駆けの獣闘機勲章

速攻魔法カード

このカード名のカードは1ターンに1度しか発動できない。

(1):相手がモンスターを召喚・特殊召喚に成功した相手ターンにのみ発動できる。自分の手札・フィールドから、「獣闘機」融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。

 

「そして、このカードは俺のフィールドに魔装騎士が存在するとき、手札から特殊召喚できる。《魔装槍士ロンギヌス》を特殊召喚」

 

魔装槍士ロンギヌス レベル3 守備0

 

「《レッドライダー》の効果。俺がモンスターの特殊召喚に成功した俺のターンのバトルフェイズの間、攻撃力を1000アップさせる」

 

魔装騎士レッドライダー レベル8 攻撃3000→4000(バトルフェイズ終了時まで)

 

「攻撃力4000…。だが、《エレファント・ガードナー》が存在する限り、お前は《エレファント・ガードナー》以外の俺のモンスターを攻撃対象とすることができない」

「バトル。《レッドライダー》で《エレファント・ガードナー》を攻撃!必殺真剣!」

《魔装騎士レッドライダー》が両手剣を振り回し、力任せに《獣闘機エレファント・ガードナー》を両断しようとするが、《獣闘機エレファント・ガードナー》は機械化した左手からビームシールドを展開する。

「《エレファント・ガードナー》の効果。このカードは獣闘機勲章が私の魔法・罠ゾーンに存在する場合、1ターンに1度、戦闘・効果では破壊されない」

「だが、ダメージは受けてもらう!《魔装槍士ロンギヌス》が存在する限り、魔装騎士が守備モンスターを攻撃したとき、貫通ダメージを与える」

攻撃の余波がバレットを襲い、彼は両腕で身を護るように受け止める。

 

バレット

ライフ3600→2200

 

「《レッドライダー》は相手モンスターを戦闘破壊したとき、続けてもう1度だけ相手モンスターを攻撃できる。それを利用して《魔装幻影トークン》を攻撃し、一気に終わらせるつもりのようだったが、残念だったな」

「いいや、これでデュエルは終わりだ…てめーの負けでな」

「何…?」

「俺は墓地の《ロンギヌスの槍》の効果発動!俺の魔装騎士が戦闘で相手モンスターを破壊できなかったとき、墓地のこのカードを除外することで、続けてもう1度だけ攻撃できる。その時、そのモンスターの攻撃力はダメージステップ終了時まで倍となる!」

《魔装槍士ロンギヌス》が握っている槍を天に掲げる。

すると、穂先から赤い光が発生し、その光を吸収した《魔装騎士レッドライダー》の力が高まる。

 

魔装騎士レッドライダー レベル8 攻撃4000→8000(ダメージステップ終了時まで)

 

「続けて攻撃しろ、《レッドライダー》!」

更に攻撃力を高めた《魔装騎士レッドライダー》が《獣闘機エレファント・ガードナー》を今度は縦に両断するために振り下ろそうとする。

「く…!罠発動!《魔法の筒》!その攻撃を無効にし、攻撃モンスターの攻撃力分のダメージをお前に与える!」

「カウンター罠《魔宮の賄賂》!相手の魔法・罠カードの発動を無効にし、破壊する!」

「な…!?」

逆転の一手のはずの《魔宮の賄賂》が消滅し、ビームシールドを展開する出力を失っている《獣闘機エレファント・ガードナー》の肉体が生身の部分と機械の部分が器用に両断された状態で破壊される。

「うわあああああ!!」

 

バレット

ライフ2200→0

 

魔装学者ヘロドトス

レベル3 攻撃1500 守備1500 闇属性 魔法使い族

【Pスケール:青4/赤4】

このカード名の(2)のP効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。

(2):Pゾーンに存在するこのカードをリリースし、自分フィールドに存在するP召喚された「魔装」モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターはターン終了時までチューナーモンスターとしても扱う。

【チューナー】

このカード名の(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しか行えない。

このカードをS素材とする場合、「魔装」モンスターのS召喚にしか使用できない。

(1):自分が効果ダメージを受けるときに発動できる。手札のこのカードを特殊召喚し、その効果で受けるダメージを0にする。その後、そのダメージの数値以下の攻撃力を持つ「魔装」モンスター1体をデッキから手札に加える。

 

刃の獣闘機勲章

永続罠カード

このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールド・墓地の「獣闘機」モンスターが相手モンスターを戦闘・効果によって破壊したときに発動できる。破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。

(2):自分フィールドに存在する「獣闘機」カードが破壊されるときに発動できる。代わりにこのカードを破壊する。

 

獣闘機エレファント・ガードナー

レベル6 攻撃1000 守備2600 融合 闇属性 機械族

レベル4以下の獣戦士族モンスター+レベル4以下の機械族モンスター

(1):このカードがフィールドに存在する限り、相手は「獣闘機エレファント・ガードナー」以外を攻撃対象とすることができない。

(2):自分魔法・罠ゾーンに「獣闘機勲章」魔法・罠カードが存在する限り、このカードは1ターンに1度、戦闘・効果では破壊されない。

(3):このカードが戦闘で破壊された場合に発動できる。 このカードの融合素材としたモンスター一組を自分の墓地から特殊召喚する。

 

「はあはあ…」

倒れたバレットを見た翔太はゆっくりと彼の前へ歩を進める。

バレットは先ほどのダメージのせいか起き上がることができず、近づく翔太に目を向ける。

戦士として戦い、敗れた以上は覚悟はできている。

バレットは目を閉じ、カード化される覚悟を固める。

だが、近づいていた足音は素通りし、後ろへと響き始める。

「…なぜ、私をカードにしない?」

バレットの質問が聞こえた翔太は足を止める。

少しだけ静寂が流れた後で、翔太は振り返ることなくつぶやく。

「さあな…?俺にもわからねえよ。っていうより、カード化するほど暇じゃあねえんだ」

「仲間をすくうためか…?ならば、無意味だな。どんなに戦ったとしても、本部にたどり着くことすらできな…!?」

バチバチと翔太の左手の痣から紫色の光が発生する。

そこから感じる強い痛みから、何かがあることを感じ始めていた。

(なんだ…?奴の痣は?いったい何だというのだ…?)

「少しでも動けるんなら、さっさと帰れよ。レジスタンスにリンチされても知らねーぞ」

「いいのか…?ここで私をカード化しないことを後悔することになるぞ」

「…しねーよ」

やはり、前へ進むたびに痛みがどんどん強まる。

本当はこういう痛みは歓迎しないが、決定打となるなら話は別だ。

翔太の進む方向にはエクシーズ次元、ハートランドシティの象徴と言える遊園地、ハートランドがある。

ボロボロの入場ゲートをリアルソリッドビジョンで召喚した《魔装騎士ペイルライダー》のライフルで破壊し、翔太は中へ入った。



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第104話 目覚める悪魔

「これだよ…。融合次元本部への入り口…」

シェルターの中にあるドアが開き、その中に隠されていた大型の球体型装置に遊矢たちは息をのむ。

3メートル以上の大きさのその装置を秘密裏にここに用意していたのだろう。

「起動は任せて」

グロリアは装置とデュエルディスクを接続し、操作を開始する。

その中で、アレンは暗い表情を浮かべながらその装置を見つめていた。

「アレン…」

「…なんでだろうな。もっと早く気づくことができたら…」

あくまで仮定の話で、そんなことをしても今は意味がない。

それに、もし気づくことができたとしても、アレンは話すことができなかった可能性が高い。

カイトは家族や仲間たちの無念を晴らすためにあのやり方に賭けていて、それが心の支えとなっていた。

きっと、それが無意味だと分かってしまったら、彼はよりどころを失っていた。

「…カイトはカイトで、この次元を守るために戦っていた。…それでいいんじゃないか?」

「遊矢…」

「カイトの思いを、俺たちで引き継ごう。俺たちなりのやり方で」

そのやり方は、もしかしたらカイトたちにとっては望まれたものではないかもしれない。

それを彼らが望むかどうかは、もう聞くことはできない。

押しつけの善意、言い訳かもしれないが、それでも遊矢は受け継ぎたかった。

カイトの思いを無駄にしたくなかった。

それはきっと、自分の中のユートも同じだ。

「準備、できたわ。これでここから中へ入ることができる」

球体の中央部分にあるパーツが回転をはじめ、そこから青いエネルギーの光が漏れる。

「これから遊矢、柚子、権現坂、あなたたちを本部へ転送するわ。けど、もしかしたらその本部の中で離れ離れになってしまう可能性が高いわ。到着したら、まずは固まることを考えて」

「待て!俺も…」

「黒咲、負傷したあなたは治療を受けないと…!歩くだけでもやっとなのに!!」

「しかし…」

「黒咲。アカデミアとの戦いがこれで終わるわけではない。エクシーズ次元の戦いが終われば、次は…」

シンクロ次元、エクシーズ次元の戦いの次は、おそらくは融合次元での戦い。

アカデミアとの直接対決の時が来る。

「きっと、アカデミアでの戦いが瑠璃を救出する唯一のチャンスだ。彼女を助けるためにも、今は大事を取ってくれ」

「遊矢…」

「本部に入った後で、やってほしいことは逐一通信で伝えるわ。うまくいけば、外で戦っているレジスタンスやランサーズを一気に本部に送り込んで、戦局を打開できるかもしれない」

本部の中には、デュエル戦士たちを転送・転入するための装置がある。

それを奪うことができれば、グロリアの言っていることが現実のものとなる。

今ある装置では少人数の転送・転入しか行えず、一度操作すると長いインターバルが発生する。

ステルス性は評価できるが、大人数の移動には不向きだ。

だから、ここへランサーズやレジスタンスを呼んで送るといったことは行えない。

「待ってくれ、通信を送るって、グロリアは本部に入らないってことか?それで、どうやって俺たちや中の状況をつかむんだ?」

「これを使うわ。本部から調達したものよ」

車輪のついた2本足で、ビデオカメラのような形の胴体に3連ターレット状のメインカメラが正面についた頭部パーツの小型機械を遊矢に手渡す。

「この機械は…?」

「融合次元で試作中のナビゲーター機よ。名前はついてないけど、私はナビって呼んでる」

「それって…大丈夫なの?」

試作品ということは、信頼性はまだまだ確立されていない。

そして、アカデミアで調達したものだとしたら、アカデミア側に逆にこちら側のうごきが筒抜けになってしまう可能性だってある。

「心配ないわ。そういった仕掛けは全部取り外してる。これは登録したデュエルディスクを装備しているデュエリストに追従するようにプログラムされてる。それに、通信についても一定の条件があるけど、別次元とつなげることができる。まずは、それを遊矢のデュエルディスクに登録して。電源をつけて、あなたのデュエルディスクを見せるだけでいい」

「ええっと、電源は…」

電源の位置はスクリーンの左横にあり、そこにあるスイッチを押すとナビが起動する。

グロリアの言う通りに、遊矢は自身のデュエルディスクをナビのカメラに近づける。

「デュエリストID:53624SY…認証完了」

「ナビは認証したデュエルディスクから操作することも可能よ。それで偵察することもできる。ナビが手に入れた映像を私のデュエルディスクが拾って、それを元に指示を出す。残念だけど、入手できたナビは1機だけだけど…」

「充分だよ、ありがとうグロリア」

「別に…礼を言われるほどのことじゃないわ…」

ずっと、デュエル戦士としての生き方をし続けてきたグロリアは誰かに感謝されることがなかった。

そのため、遊矢から面と向かって感謝されるとは思いもよらず、少し顔を赤く染めてそっぽを向いた。

起動したばかりのナビを抱えた遊矢は柚子、権現坂と一か所に固まった状態で転送を待つ。

気休め程度だが、少しでもバラバラに転送されてしまうのを避けるためだ。

「サヤカ、アレン。黒咲を頼む」

「私たちが彼をスペード校まで連れて帰るわ。安心して行って来て」

「…」

「アレン…」

罪悪感からか、アレンは転送されようとする遊矢達にかける言葉を見つけることができない。

そもそも、自分にその資格があるかという疑問を抱いてしまう。

「アレン。黒咲のこと、頼むな」

「遊矢…」

「あいつ、一人にすると勝手に突っ走っちゃうからさ」

そう言い残し、遊矢達は本部へ転送されていく。

さすがの黒咲もその遊矢のいいようが我慢ならず、文句を言おうとしたが、消えてしまったことで傷が響いたこともあり、言いそびれてしまった。

「遊矢…」

どうして、自分を信用してくれたのか?

一度はカイトと共に仲間のレジスタンスをカードに変えていったのに。

その疑問に答えたのは、サヤカだった。

「エクシーズ次元を救いたいって気持ち、仲間を守りたいって気持ちが同じだってわかったから…じゃない?」

「サヤカ…」

(それにしても、あの機械…なぜ彼は私にそれを遊矢に渡せと…?)

 

「どけよ!」

《魔装騎士ペイルライダー》と《魔装騎士ブラックライダー》の同時攻撃で2人のデュエル戦士が吹き飛ばされる。

ハートランドに入ってから、デュエル戦士たちの抵抗が激しくなっていく。

同時に、翔太の左手の痣にも変化が生じている。

「うずくかぁ…そりゃあそうだろうな。もうすぐ、目的地に差し掛かるんだからなぁ」

「…うるせえ」

「おっと、俺様にその言い方はねえんじゃないかぁ?この力をくれてやったのによぉ」

脳裏に響く声を無視し、翔太はハートランドのジェットコースター付近に差し掛かる。

痣からは光が漏れており、痛みで左手がプルプル震えている。

ここに何かがあることを察した翔太は左手の痣をかざすと、痣の光が上空へと向かい、上空には緑色の裂け目が現れる。

その裂け目はハートランドを横断できるほどの大きさだった。

「ぐ…ううう、あああ!!!」

「そうだ…そうだ!!もっと力を使え!!そうすれば…そうすれば…!」

おそらく、この力をこれ以上解放するとろくでもないことが起こる。

きっと、それはこの声の主が望んでいることだろう。

だが、エクシーズ次元を解放し、伊織を救い出すには、これしか手段が見つからない。

「あああああ!!!!」

痣が左手にとどまらず、腕へ、胴体へ、そして翔太の顔の左半分へと侵食していく。

その時、彼の左目は痣と同じ光を発していた。

 

「…!?なんだ、この感覚は!?」

突然、何かに貫かれるような頭痛を感じた凌牙は空を見上げる。

レジスタンスもデュエル戦士たちも、空に発生した異変に驚き、手を休めて空を仰ぐ。

「この力…俺と同じものを!?」

凌牙の中にあるバリアンの力がその発生源がハートランドのジェットコースター付近にあることを突き止める。

そして、その力は明らかに自分や侑斗にとって、忌むべき存在のものだということも感じていた。

「…悪い!!これ以上、あいつを野放しにはできない!」

凌牙はジェットコースターへ向けて走っていく。

上空の裂け目にはもう1つのハートランドシティの光景が浮かび上がっていた。

 

「ここが…エクシーズ次元のアカデミアの基地…」

転送され、目を開いた遊矢の視界に広がるのは舞網チャンピオンシップで黒咲と素良がデュエルしたアクションフィールド、《未来都市ハートランド》そのものの光景だった。

真昼間のような太陽の光に照らされていて、平和な街そのものに見えるが、そこには住民の姿は見当たらない。

いるのはデュエル戦士たちだけだった。

「権現坂と柚子は…?」

「遊矢!!」

2人を探そうと周囲を見渡そうとしたとき、背後から柚子の声と彼女が走ってくる音が聞こえてくる。

振り返ると、やはり柚子の姿があった。

「柚子!権現坂は…?」

「わからない…でも、遊矢とあたしが近くにいたなら、きっと権現坂も近くにいるはずよ!」

「だな…うわっ!?」

急に強い緑色の光が空から降り注ぎ、反射的に2人は目を腕で隠す。

ゆっくりと腕をどかし、空を見上げると、上空には緑色の裂け目が生まれていて、その裂け目には本来のハートランドの光景が広がっていた。

「何…!?もしかして、この裂け目って…」

「…える?聞こえる!?遊矢!!」

「グロリア!」

ナビからグロリアの声が聞こえ、急いで遊矢と柚子は路地裏に隠れる。

ナビの液晶画面部分にはグロリアの姿が映っていた。

「良かった…。そっちはどう?」

「ああ、柚子と合流した。これから権現坂と合流するつもりだけど…空に変な裂け目ができたんだ。何か知らないか?」

「裂け目…実は、こちらの空にも緑色の光の裂け目ができたわ…?もしかして、そっちも同じ?」

「あ、ああ!どうして、そんなものが…??」

「それに、裂け目には本部の景色が見えるわ…まさかとは思うけど、そちらから見えるのはハートランド?」

「そうだ…。でも、どうしたらこんなのが…!?」

「分からない…。でも、もしかしたら本部ではこの光景ができたことで動きに乱れができたかもしれない。その隙に乗じて、まずは権現坂と合流して」

「分かった。グロリア、気を付けてくれ」

通信を切ると、デュエルディスクで本部のどこかにいると思われる権現坂と通信を繋げる。

「こちら、権現坂だ。遊矢か?」

「ああ…。どこにいる?これから柚子と合流…」

「いや、来るな!!今、俺のところへは…うわあああ!!」

「権現坂!?おい、どうした!?権現坂!?」

「く…貴様は…」

「やぁ、榊遊勝の息子、榊遊矢」

急に別の日との声が聞こえてくるが、別のデュエルディスクからの割り込みはない。

権現坂のデュエルディスクとつながったままで、別の誰かが彼のデュエルディスクで此方に連絡を取っている。

「君の仲間は僕が預かる。これから指定する座標へ1時間以内に来い」

遊矢のデュエルディスクに新しく本部の地図のデータがダウンロードされ、その中で、学校の体育館が強調される。

今いる場所はハートランドの内部で、そこから徒歩で行くのは厳しい。

「彼に手出しされたくなければ、早く来い。お前を倒して、榊遊勝をおびき出す」

「おい、なんで父さんのことを知っている!?お前は何者だ!?」

「…エド・フェニックス。エクシーズ次元方面軍総司令だ」

その言葉を最後に通信が切れ、遊矢は右拳を壁にたたきつける。

「権現坂が…どうするの?遊矢」

丁寧に場所を指定されている以上、罠を仕掛けられている可能性が高い。

今、ここで動けるのは遊矢と柚子の2人だけ。

何の手立てもなしに向かったら2人とも捕まってしまう。

「…行くしかない。権現坂を助けるためにも、それに…父さんのことを知っているかもしれないから…」

「遊矢…」

遊矢はマシンレッドクラウンを出し、ヘルメットを装着する。

柚子に予備のヘルメットをわたし、急いで乗って義手と神経接続を行う。

ブルッと左手から脳に何かが入ってくる感覚がし、画面に接続完了と表示される。

サイドカーがないため、やむなく柚子は遊矢の後ろに乗り、離れないように後ろから抱き着く。

「指定された場所まで飛ばすぞ!」

「遊矢…無茶をしないで!!」

一気にアクセルを踏み込み、猛スピードでハートランドを駆け抜けていく。

走る中で、遊矢はまた別の嫌な予感をしていた。

(あの裂け目…どうして生まれたんだ?何か、恐ろしいことが起こるんじゃ…)

 

凌牙はハートランドのジェットコースターに到着し、そこで背中を向けている翔太を見つける。

「翔太!!」

今の翔太は普通の人間とは思えない姿に変わっていた。

紫色の水晶が足を除く左半身全体に生えてきていて、その水晶はあまりにも見慣れたものだ。

「こいつは…バリアライト!」

「…フフフフ。まだまだ力が完全に戻ったわけじゃあねえが、この体をコントロールするには十分だ」

「てめえは…」

明らかにそれは翔太の声ではない。

振り返る彼の左目は赤く光っていて、ゆがんだ笑いを浮かべていて、翔太が見せるようなものではない。

「くそ…こんな予想、外れたほうが良かったぜ…ベクター!!」

「久しぶりだな、神代凌牙…いや、ナッシュ!!」

 

「…キュイーーーー!!!キュキュ!!キュキューーー!!」

「何!?どうしたの、ビャッコちゃん!」

急にプルプル震えあがったと思ったら、飛び跳ね始めたビャッコに伊織は困惑する。

デュエルディスクとデッキを取り戻し、ようやく外に出たと思ったら、空にはわけのわからない裂け目が見え、そこにはエクシーズ次元のハートランドシティの姿が見える。

その裂け目を見た瞬間、ビャッコの動きがおかしくなった。

「ビャッコさん…あの裂け目が気になっているのでしょうか?」

「キュキュ!!キュキュイ!キュイーーー!!」

「ね、ねえビャッコちゃん!どこへ行くの!?待ちなさい!!」

急にビャッコが走り出し、伊織とセラフィムは急いで彼を追いかける。

ビャッコのらしくない動きに伊織は大きな不安を感じていた。

(一体、何が起ころうとしているの…?翔太君…)

 

「ハハハ…ようやく、こいつの体を、俺の手で使うことができる!!あとは力を取り戻すだけだ!」

左掌を開けたり閉じたりし、入っているデッキを確認する。

中身を見た後で、翔太、いやベクターは凌牙に目を向ける。

「ベクター!まさか、体をドン・サウザンドに砕かれたのに、生きていたとはな…」

「ああ…。完全に砕ける寸前に、魂と体から引き離したのさ。おかげで、力をすべて失っちまったがな…」

「魂だけを…なら、この肉体はどうした!?」

「ああ…こいつはドン・サウザンドが残したスペアだ」

「スペアだと…?」

「ああ。ドン・サウザンドはヌメロン・コードに飽き足らず、より力を得ることをもくろんでいたのさ。だが、得た力に体が耐えられなくなる可能性だってある。だから、その時のために肉体を用意して、封印していたのさ」

遺跡での戦いで遊馬に敗れ、傷ついたベクターはバリアン世界でドン・サウザンドと一体化となることで生き延びた。

その際に、その肉体について知っていた。

魂だけになったベクターは遊馬と凌牙、そしてドン・サウザンドに復讐するために、この肉体を手に入れた。

「なら…なぜ、お前はスタンダード次元にいた!?そもそも…秋山翔太は何者だ!?」

「おっと、質問タイムはここまでだ…。まだまだ力は戻ってねーが、てめえに復讐する分は十分だ。ナッシュ!!」

右手をかざすとともに、ベクターと凌牙の周囲を紫色のカードで構築された空間で包まれていく。

「バリアンズスフィア…」

「今の俺の力なら、この程度のフィールドを作るのはわけねえぜ…さあ、俺様の新しい誕生祝いをしてくれよ、ナッシュぅ!!」

「ちっ…遊矢たちには、あとで詫びを入れるしかねえか」

まだ力が完全になっていないとはいえ、今のベクターはドン・サウザンドのスペアの肉体を手に入れているうえ、何をしてくるか分からない。

今止めなければ、収拾がつかなくなる可能性が高いのを考えると、ここでベクターを倒すしかない。

アカデミアとレジスタンス・ランサーズ連合軍の戦局は気になるが、今はそれに気を取られている場合ではない。

「やるしかねえ…うおおおおお!!!」

凌牙の体が紫の光に包まれていく。

その姿はもう2度となることはないと思っていたバリアン七皇にして、バリアン最後の1人、ナッシュのもの。

ベクターを滅ぼすため、再びその姿に戻った。

「「デュエル!!」」

 

ベクター

手札5

ライフ4000

 

凌牙

手札5

ライフ4000

 

「先攻は俺がもらうぜ…。俺様は《魔装獣ユニコーン》を召喚!」

 

魔装獣ユニコーン レベル4 攻撃1600

 

「魔装デッキ…翔太のものを!?」

「まだ俺のデッキは完成してねーからな…てめえ相手なら、この依代のデッキで十分だ!更に俺は、手札からスケール5の《魔装獣スフィンクス》をセッティング!」

伝承の通り、ライオンの体と人の顔をした怪物、スフィンクスが額に五芒星を刻まれた状態で浮かび上がり、光の柱を生み出す。

「《スフィンクス》の効果発動!1ターンに1度、デッキの上から3枚までカードを墓地へ送ることで、このカードのペンデュラムスケールをその数だけ変動させることができる!俺が墓地へ落とすカードは3枚!よって、こいつのペンデュラムスケールは2まで落ちる!」

 

魔装獣スフィンクス(青) ペンデュラムスケール5→2

 

デッキから墓地へ送られたカード

・魔装鬼ヨシヒロ

・蘇生融合

・魔装鳥ガルーダ

 

「そして、《魔装獣ユニコーン》を墓地へ送り、手札から魔法カード《リリース・リース》を発動。俺のフィールドのモンスターが1体のみの時、そのモンスター1体をリリースし、デッキからリリースしたモンスターのレベル以下のモンスター1体を手札に加える。俺はデッキから《魔装剣士ムネシゲ》を手札に加える。そして、手札に加えた《ムネシゲ》をペンデュラムゾーンにセッティング!」

「1ターン目からペンデュラム召喚の準備を整えたか…!」

「さっそくだ…俺様初のペンデュラム召喚を見せてやるぜ!!現れろ!!《魔装騎士ペイルライダー》!!」

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

 

「《ペイルライダー》…翔太のエースカード…!」

「翔太の…?馬鹿言ってんじゃあねえよ!これはお・れ・さ・ま・の四騎士の1人だよぉ!イレギュラーのくせに、勝手に使いやがって…」

「四騎士…?まさか、奴が残したのはスペアの肉体だけじゃあねえってことか?」

ドン・サウザンドはベクターを利用して、ほかの七皇の力を奪い、ヌメロン・コードをも手に入れて人間世界をバリアン世界と一体化させようとしていた。

気になったのは、ドン・サウザンドが仮に自分たちを打倒し、人間世界を飲み込んだ後の動向だ。

彼が人間世界だけに飽き足らず、ほかの世界をも飲み込もうとしていた可能性もある。

それを彼自ら行うのは考えにくい。

また、仮に自分以外の七皇の記憶がよみがえり、力が不完全な状態で反旗を翻された場合も彼が考えていたとしてもおかしくない。

「ご名答!今じゃあ魔装騎士、なんて名前に変わっちまったが、こいつらは裏切り者になる可能性のある俺らをつぶすために用意していた駒だ!!だが、今はそんなことは関係ねえ。正真正銘、俺様のものになる予定だからなぁ!俺は手札から魔法カード《魔装の杯-ナルタモンガ》を発動!俺のフィールドの魔装モンスター1体のレベルかランクの数値以下のレベルの魔装モンスター1体をデッキから守備表示で特殊召喚する。俺はデッキから《魔装剛毅アトレウス》を特殊召喚!」

水色の瞳で、白い肌をした十代前半くらいの少年が、五芒星が刻まれた木製の弓と狼の毛皮でできた服を装備して現れる。

 

魔装剛毅アトレウス レベル3 攻撃1000(チューナー)

 

「《アトレウス》の効果!このカードの召喚・特殊召喚に成功したとき、俺様のペンデュラムゾーンに魔装カード2枚が存在するとき、デッキからカードを1枚ドローする。そして、ドローしたカードがペンデュラムモンスターの場合、そのカードを相手に公開し、さらにデッキからカードを1枚ドローする。ドロー!俺様がドローしたカードは《魔装郷士リョウマ》!よって、さらにもう1枚ドローだ!そして、カードを1枚伏せて、ターンエンド!《スフィンクス》の効果は消える!」

 

ベクター

手札5→1(《魔装郷士リョウマ》)

ライフ4000

場 魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

  魔装剛毅アトレウス レベル3 攻撃1000(チューナー)

  伏せカード1

  魔装獣スフィンクス(青) ペンデュラムスケール2→5

  魔装剣士ムネシゲ(赤) ペンデュラムスケール9

 

凌牙

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「ベクター!何度来ようと同じだ!俺のターン、ドロー!」

 

凌牙

手札5→6

 

「俺がドローしたカードは《RUM-七皇の剣》!このカードは自分のドローフェイズ時に通常のドローをしたこのカードを相手に公開し続けることで、そのターンのメインフェイズ1開始時に発動できる!」

「げぇ!?バリアンズカオスドローもなしに引き当てたのかよ…!?」

「もうこの効果は知っているな!?エクストラデッキからオーバーハンドレッドナンバーズを特殊召喚し、カオス化する!俺は《S・H・Ark Knight》を特殊召喚!」

上空にバリアンの紋章が出現し、それがオーバーレイネットワークへと変化する。

そして、凌牙の目の前に地割れが発生し、その中から《No.101S・H・Ark Knight》が浮上する。

 

No.101S・H・Ark Knight ランク4 攻撃2100

 

「そして、《Ark Knight》をカオス化する!現れろ、CNo.101!満たされぬ魂の守護者よ!暗黒の騎士となって導け!《S・H・Dark Knight》!」

上空のオーバーレイネットワークへ飛び込んだ《No.101S・H・Ark Knight》が砕け散り、その中から《CNo.101S・H・Dark Knight》が現れ、オーバーレイネットワークから凌牙のフィールドへ帰還する。

 

CNo.101S・H・Dark Knight ランク5 攻撃2800

 

「《Dark Knight》の効果!1ターンに1度、相手フィールドの特殊召喚されたモンスター1体をこのカードのオーバーレイユニットにする!俺は《魔装騎士ペイルライダー》を選択する!ダークソウル・ローバー!!」

《CNo.101S・H・Dark Knight》が槍から紫のエネルギー波を発射し、それを受けた《魔装騎士ペイルライダー》がカオスオーバーレイユニットへと変化し、そのモンスターの前に移動する。

「ちぃ…!」

「まだだ!!俺は手札から魔法カード《おろかな埋葬》を発動。デッキから《フィッシュボーグ-アーチャー》を墓地へ送る。そして、《フィッシュボーグ-アーチャー》は手札の水属性モンスター1体を墓地へ送ることで、墓地から特殊召喚できる!」

カワウソが入った水槽とアシカが入った水槽の2つが上下にくっついていて、ケンタウロスのような四本脚と2つの小型ハープーンガンを両腕に装着した機械が現れる。

 

フィッシュボーグ-アーチャー レベル3 攻撃300(チューナー)

 

手札から墓地へ送られたカード

・潜水するビッグ・ジョーズ

 

「チューナーモンスター…剣崎侑斗と同じように、シンクロ召喚も使えるようになったってか?」

「そうだ。いつまでも昔の俺と同じだと思うな!」

ヌメロン・コードをめぐる戦いを終えた凌牙はほかの生き残ったバリアンの住民がアストラル世界の住民となり、アストラルと同じ体へと変化し、七皇たちが人間として生き返る中、凌牙はただ1人のバリアンとなった。

生き残ってはいたものの、ヌメロン・コードの影響を受ける前にベクターに力を奪われた璃緒と異なり、凌牙は七皇の力を持っていて、おまけにリーダー格だったことが大きかったのかもしれない。

だが、人間だろうとバリアンだろうと、自分の生き方は変わらない。

高等部卒業後は世界各地へ武者修行し、デュエリストとしての技量を磨き続けた。

シンクロ召喚を習得し、デッキ改造とテストプレイも数えきれないくらい行ってきた。

 

「そして、俺は手札から《ハーミッド・サーディン》を召喚!」

鰯を模したモンスターが現れるが、背後に出現した自分よりも大きな黒い霧が出現すると、急いでその中へ隠れてしまった。

 

ハーミッド・サーディン レベル2 攻撃400

 

「そして、墓地の《潜水するビッグ・ジョーズ》の効果。こいつは俺が通常魔法カードを発動したターンのメインフェイズ1に墓地から特殊召喚できる!」

《ビッグ・ジョーズ》と比較すると、若干体に傷跡があり、肌の色が浅黒くなった鮫がフィールドに現れる。

 

潜水するビッグ・ジョーズ レベル3 攻撃1800

 

「いくぞ!レベル2の《ハーミッド・サーディン》とレベル3の《潜水するビッグ・ジョーズ》にレベル3の《フィッシュボーグ-アーチャー》をチューニング!深淵に眠る大いなる勇魚。生と死を廻る大海原に目覚めろ!シンクロ召喚!現れろ!!《白闘気白鯨》!!!」

 

白闘気白鯨 レベル8 攻撃2800

 

「そして、墓地へ送られた《ハーミッド・サーディン》の効果発動!このカードがフィールドから墓地へ送られたとき、デッキから《ハーミッド・サーディン》1枚を手札に加えることができる。そして、シンクロ素材またはオーバーレイユニットとして墓地へ送られた《潜水するビッグ・ジョーズ》は墓地へ送られるとき、代わりにゲームから除外する」

 

潜水するビッグ・ジョーズ

レベル3 攻撃1800 守備300 効果 水属性 魚族

このカードは通常召喚できない。

このカードの(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しか行えない。

(1):自分は通常魔法カードを発動したターンのメインフェイズ1にこのカードが墓地に存在する場合に発動できる。このカードを墓地から特殊召喚する。この効果で特殊召喚したターン、自分は水属性以外のモンスターの特殊召喚を行えない。

(2):このカードはX素材として墓地へ送られたとき、またはS召喚またはリンク召喚の素材として墓地へ送られた場合、ゲームから除外される。

 

ハーミッド・サーディン

レベル2 攻撃400 守備1500 効果 水属性 魚族

このカード名の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。

(1):このカードがフィールドから墓地へ送られた場合に発動できる。デッキから「ハーミッド・サーディン」1枚を手札に加える。

(2):このカードがX素材として墓地へ送られた場合に発動できる。デッキから「ハーミッド・サーディン」1枚を手札に加える。

 

「そして、シンクロ召喚した《白闘気白鯨》の効果発動!このカードのシンクロ召喚に成功したとき、相手フィールドに存在する攻撃表示モンスターをすべて破壊できる!」

《白闘気白鯨》が咆哮するとともに、白い水の大波が発生し、それに《魔装剛毅アトレウス》が飲み込まれようとする。

「ちっ…《ムネシゲ》のペンデュラム効果!1ターンに1度、俺様のフィールドのペンデュラムモンスターを破壊から守る!」

《魔装剛毅アトレウス》が透明なバリアに包まれ、大波から脱出する。

だが、立て続けに召喚された凌牙のエースモンスター2体を前に、攻撃力1000の《魔装剛毅アトレウス》に持ちこたえるだけの力はない。

「ぐぬぬぬ…ナッシュ、てめえ!!」

「このまま2体でとどめをさしてえところだが、貴様のことだ。罠を張っていて当然だよな」

何度かベクターとデュエルをしてきた凌牙はベクターの手口を理解している。

一言でいえば、持ち上げて落とすを地で行っていて、前のデュエルではダイレクトアタックで大きな先制攻撃に成功したと思ったら、そこから一気にほかの七皇から奪ったオーバーハンドレッドナンバーズ展開につなげ、一時は窮地に陥った。

だから、その伏せてあるカードを見逃すつもりはなかった。

「俺は手札から魔法カード《サイクロン》を発動!お前の伏せカードを破壊する!」

発動した《サイクロン》がベクターの唯一の伏せカードを吹き飛ばし、消滅させる。

「これで、てめえを守るカードは《アトレウス》以外にはねえ。残った手札は《魔装郷士リョウマ》ってことは分かってる。覚悟は…できてるよなぁ?」

もう命乞いしたとしても、聞く気はない。

彼を生かしたところで、得をする人はだれ一人いない。

それは彼自身が招いた結果だ。

1ターンキル成立の状況に追い込まれたベクターは顔を下に向けており、凌牙にはそれを見ることができない。

「バトルだ!俺は…」

「…くく、プーッククク!!甘い、甘えんだよぉ!!チャンスをくれて、ありがとさーーん!!」

急に大笑いし始めたベクターに凌牙は自分の失策を悟った。

「てめえが破壊してくれた伏せカード《波紋同調》の効果発動!こいつがカード効果で破壊されたとき、俺のフィールドのペンデュラムチューナー1体とペンデュラムゾーンのペンデュラムモンスター1体を素材にシンクロ召喚を行うことができる!俺はペンデュラムゾーンのレベル5の《魔装獣スフィンクス》にレベル3の《魔装剛毅アトレウス》をチューニング!」

「やはり…シンクロ召喚を…!」

「てめえが進化したように、俺様も進化したんだよぉ!現れな!《魔装雷竜リンドヴルム》!」

 

魔装雷竜リンドヴルム レベル8 攻撃3000

 

魔装獣スフィンクス

レベル5 攻撃2300 守備1900 地属性 獣族

【Pスケール:青5/赤5】

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。

(2):自分のデッキの上から3枚までカードを墓地へ送り、以下の効果から1つを選択して発動できる。

●ターン終了時まで、このカードのPスケールをその効果で墓地へ送ったカードの数だけ減らす。

●ターン終了時まで、このカードのPスケールをその効果で墓地へ送ったカードの数だけ増やす。

【モンスター効果】

このカード名のカードのモンスター効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):「魔装」モンスターをリリースして、このカードのアドバンス召喚に成功したとき、自分の墓地・EXデッキに表側表示で存在する「魔装」モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

魔装剛毅アトレウス

レベル3 攻撃1000 守備1200 水属性 戦士族

【Pスケール:青2/赤2】

(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。

(2):1ターンに1度、自分フィールドに存在する「魔装」モンスターが戦闘を行うときに発動できる。そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで800アップする。

【チューナー:モンスター効果】

このカード名のモンスター効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードの召喚・特殊召喚に成功したとき、自分Pゾーンに「魔装」カードが2枚存在する場合にのみ発動できる。自分はデッキからカードを1枚ドローし、そのカードを公開する。そのカードがPモンスターの場合、更にデッキからカードを1枚ドローする。この効果を発動したターン、自分はP召喚以外の方法でモンスターを特殊召喚できない。

 

波紋同調

通常罠カード

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドにモンスターが存在せず、相手フィールドにモンスターが存在するときに発動できる。自分のEXデッキに表側表示で存在するPモンスターであり、チューナーであるモンスター1体とチューナー以外のPモンスター1体を特殊召喚する。その後、その効果で特殊召喚したモンスター2体を素材にS召喚を行う。この効果を発動したターン、自分はEXデッキからモンスターを特殊召喚できない。

(2):魔法&罠ゾーンにセットされているこのカードが効果によって破壊され墓地へ送られたターンのバトルフェイズ開始時に発動できる。自分モンスターゾーンに存在するPモンスターであり、チューナーであるモンスター1体と自分Pゾーンに存在するチューナー以外のPモンスターを素材にS召喚を行う。

 

「バトルフェイズ開始時にシンクロ召喚…それに、攻撃力3000だと…!」

「《白闘気白鯨》も《S・H・Dark Knight》も攻撃力は2800。これじゃあ、《リンドヴルム》を倒すことはできねえなぁ。はい、残念ーー!」

《魔装剛毅アトレウス》はペンデュラムチューナーで、ペンデュラム召喚の準備が整えば、《魔装獣スフィンクス》共々ペンデュラム召喚をすることができる。

今の凌牙にはそのモンスターを倒す力はない。

「俺は…カードを1枚伏せ、ターンエンド!」

 

ベクター

手札1(《魔装郷士リョウマ》)

ライフ4000

場 魔装雷竜リンドヴルム レベル8 攻撃3000

  魔装剣士ムネシゲ(赤) ペンデュラムスケール9

 

凌牙

手札6→2(うち1枚《ハーミッド・サーディン》)

ライフ4000

場 CNo.101S・H・Dark Knight(ORU2) ランク5 攻撃2800

  白闘気白鯨 レベル8 攻撃2800

  伏せカード1

 

「俺様のターン、ドロー!」

 

ベクター

手札1→2

 

「そして、墓地の《魔装の杯-ナルダモンガ》の効果。こいつを発動したとき、墓地に魔装モンスターが3種類以上存在した場合、ここで俺はもう1枚デッキからカードをドローする。そして、手札からスケール1の《魔装魔戦士ペルセウス》をセッティング!これで俺はレベル2から8までのモンスターを同時に召喚可能!ペンデュラム召喚!エクストラデッキから《魔装剛毅アトレウス》、《魔装獣スフィンクス》、そして手札から《魔装郷士リョウマ》《魔装鍛冶クルダレゴン》!!」

 

魔装剛毅アトレウス レベル3 攻撃1000(チューナー)

魔装獣スフィンクス レベル5 攻撃2300

魔装郷士リョウマ レベル4 攻撃1900

魔装鍛冶クルダレゴン レベル2 守備500

 

「そして、《魔装郷士リョウマ》の効果発動!こいつを手札からペンデュラム召喚に成功したとき、墓地から魔装モンスター1体を手札に加える。俺は墓地から《魔装鬼ヨシヒロ》を手札に加える。ちなみに、《アトレウス》の効果は使わないぜ」

一気に4体ものモンスターがペンデュラム召喚され、ベクターのフィールドが魔装モンスターで埋め尽くされる。

攻撃力はいずれも凌牙の2体のモンスターには及ばないが、問題はチューナーである《魔装剛毅アトレウス》、そして《魔装鍛冶クルダレゴン》の効果の使い方だ。

「《クルダレゴン》の効果。こいつの召喚・特殊召喚に成功したとき、俺の手札・フィールドの魔装モンスター1体のレベルを2つまで上げることができる。俺は《クルダレゴン》のレベルを2つ上げる」

 

魔装鍛冶クルダレゴン レベル2→4 守備500

 

「いくぜ!俺はレベル4の《リョウマ》と《クルダレゴン》でオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れな、《魔装獣ケルベロス》!」

 

魔装獣ケルベロス ランク4 攻撃2300

 

「更に、俺は手札から《RUM-魔装の刻印》を発動!こいつは俺のフィールドの魔装エクシーズモンスター1体をランクが1つ高い魔装エクシーズモンスターにランクアップさせる!俺は《ケルベロス》でオーバーレイネットワークを再構築!」

ベクターが自らの力で生み出したRUMなのか、上空に出現するオーバーレイネットワークには薄い紫の霧が発生していた。

その中に、《魔装獣ケルベロス》が飛び込んでいき、その姿を黒い騎士へと変えていく。

「ランクアップエクシーズチェンジ!現れな、《魔装騎士ブラックライダー》!」

 

魔装騎士ブラックライダー ランク5 攻撃2800

 

「そして、発動した《魔装の刻印》の効果。相手フィールドに存在するモンスター1体の効果を無効にし、ターン終了時までその効果をエクシーズチェンジした俺のエクシーズモンスターのものにする!俺はてめえのエース、《S・H・Dark Knight》の効果をいただく!!」

「何!?」

《CNo.101S・H・Dark Knight》の胸部に五芒星が刻まれ、そこから放出される紫のエネルギーが《魔装騎士ブラックライダー》へと吸収されていく。

 

RUM-魔装の刻印

通常魔法カード

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドに存在する「魔装」Xモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターよりもランクの1つ高い「魔装」Xモンスター1体をそのモンスターの上に重ねてX召喚扱いでEXデッキから特殊召喚する。その後、相手フィールドに存在するモンスター1体の効果をターン終了時まで無効にする。また、その効果で無効にしたモンスターに記された効果をこのターン、そのモンスターの効果として1度だけ発動できる。

 

「さあてっと…どうすっかなぁ…」

ベクターは嬉しそうに笑いながら、凌牙の2体のモンスターを品定めする。

《CNo.101S・H・Dark Knight》を吸収するか、それとも《白闘気白鯨》を吸収するか。

「待て、ベクター!」

「あん…?」

「忠告しといてやる。貴様が奪った《Dark Knight》の効果…使うのは止めねえ。だが、選択を間違えたら、ベクター!貴様が負けることになるぜ!」

「はっ!はったりかますんじゃあねえよ!」

「はったりかどうかは…貴様次第だ」

相変わらず自分をイラつかせる凌牙の言動にベクターの表情がゆがむ。

《CNo.101S・H・Dark Knight》はオーバーレイユニットを持っている状態で破壊されたとき、復活する上に自身の元々の攻撃力分ライフ回復を行う。

《白闘気白鯨》は相手によって破壊されたとき、墓地の水属性モンスター1体を除外することで復活できるうえにチューナーになることができる。

問題は1ターンのうちに発動できる回数で、前者が1度だけに対し、後者は墓地に水属性モンスターが存在する限りは何度でも使える。

「分かったぜ…!《ブラックライダー》の効果発動!てめえの《白闘気白鯨》をオーバーレイユニットにする!ダークソウル・ローバー!」

《魔装騎士ブラックライダー》の天秤から発生する黒い瘴気が《白闘気白鯨》を飲み込み、オーバーレイユニットに作り替えていく。

オーバーレイユニットと化した白鯨はそのまま黒騎士の周囲を旋回し始めた。

「更に、俺は手札から《魔装鬼ヨシヒロ》を召喚!」

 

魔装鬼ヨシヒロ レベル3 攻撃800

 

「こいつは俺の魔装モンスター1体の装備カードとして装備させることができる。そして、こいつを装備したモンスターの攻撃力は800アップ!」

《魔装鬼ヨシヒロ》が変形した槌を《魔装騎士ブラックライダー》が手にし、それを《CNo.101S・H・Dark Knight》に向ける。

 

魔装騎士ブラックライダー ランク5 攻撃2800→3600

 

「更に、《魔装騎士ブラックライダー》の効果発動!オーバーレイユニットを2つ取り除くことで、こいつは相手フィールドに存在するすべてのモンスターに1回ずつ攻撃できる!これで、たとえてめえがモンスターをこの瞬間に増やしても余計傷口が広がるだけだ!

奪ったばかりの物を除く2つのオーバーレイユニットを天秤に吸収した《魔装騎士ブラックライダー》が槌を地面にたたきつけると、上空の裂け目から緑色の光る隕石が落ちてき始めた。

 

取り除かれたORU

・魔装鍛冶クルダレゴン

・魔装郷士リョウマ

 

「バトル!《魔装騎士ブラックライダー》で《S・H・Dark Knight》を攻撃!ブラック・リブラ・メテオ!」

落ちてきた隕石に押しつぶされた《CNo.101S・H・Dark Knight》が消滅し、その場にクレーターが出来上がる。

そして、落下によって発生した衝撃波に凌牙は両腕を構えて必死に耐える。

「《ブラックライダー》に装備された《ヨシヒロ》の効果!装備モンスターが相手モンスターとの戦闘で発生する相手への戦闘ダメージは倍になる!」

 

凌牙

ライフ4000→2400

 

「ぐう…だが、《Dark Knight》の効果!こいつはオーバーレイユニットを持った状態で破壊された場合、墓地から蘇る!リターン・フロム・リンボ!」

鎧と槍にひびが入った状態の《CNo.101S・H・Dark Knight》が再びフィールドに舞い戻り、傷ついた凌牙の縦になるかのように前に立つ。

「そして、こいつの元々の攻撃力分、俺のライフは回復する」

 

CNo.101S・H・Dark Knight ランク5 攻撃2800

 

凌牙

ライフ2400→5200

 

「関係ねえ!もう1度《ブラックライダー》で攻撃するだけだ!!」

再び上空から降ってくる隕石が復活したばかりの《CNo.101S・H・Dark Knight》を押しつぶし、衝撃波で凌牙を吹き飛ばす。

「ぐあ、あああ!!!」

吹き飛ばされた凌牙は背後に崩れかけた壁に背中を激突させ、前のめりに倒れてしまった。

 

凌牙

ライフ5200→3600

 

「更に、《リンドヴルム》でダイレクトアタック!」

《魔装雷竜リンドヴルム》の口から発射される電撃が倒れている凌牙に死体蹴りをするかのように襲い掛かる。

「永続罠《アビス・シールド》を発動!ダイレクトアタックで発生する俺への戦闘ダメージを半分にする!」

水でできた円楯が電撃を受け止めるものの、すぐに突破されて凌牙の体を電撃が襲う。

「うわああああ!!」

 

凌牙

ライフ3600→2100

 

「く…そして、俺がダイレクトアタックを受けるたびに、アビスカウンターを1つ乗せる」

 

アビス・シールド(永続罠) アビスカウンター0→1

 

「ちっ…これで、とどめをさせなくなったか…!」

「さあ、どうする?俺にもっとダメージを与えるか…?念のために教えておいてやるぜ。《アビス・シールド》は発動した次の俺のターンのスタンバイフェイズ時に墓地へ送られる。そして、乗っていたアビスカウンターと同じ数のレベルの水属性・魚族モンスター2体をデッキから攻撃力・守備力を0にして特殊召喚できる。あと2体攻撃できるモンスターがいて、そいつらがダイレクトアタックで俺にダメージを与えたら…どうなるか分かっているよな?」

「ちっ…」

そうなると、凌牙のライフは550になるが、アビスカウンターが3つになる。

その結果、レベル3のモンスター2体を特殊召喚するチャンスを与えることになる。

そして、その2体でエクシーズ召喚できるモンスターは《No.47ナイトメア・シャーク》。

そのモンスターを直接カオス化することで、今度は《CNo.47ナイトメア・シャーク・ノワール》が出現する。

ライフが1000以下の時、そのモンスターはオーバーレイユニットを1つ取り除くたびに仲間のモンスター1体に直接攻撃をする力を与えていく。

攻撃力2000以上のモンスターを何らかの手段で召喚された瞬間、ベクターの敗北が確定する。

「くそ…!バトルフェイズはこれで終了だ!俺はこれで、ターンエンド!」

 

ベクター

手札3→0

ライフ4000

場 魔装雷竜リンドヴルム レベル8 攻撃3000

  魔装騎士ブラックライダー(ORU2 《魔装鬼ヨシヒロ》装備) ランク5 攻撃3600

  魔装剛毅アトレウス レベル3 攻撃1000(チューナー)

  魔装獣スフィンクス レベル5 攻撃2300

  魔装魔戦士ペルセウス(青) ペンデュラムスケール1

  魔装剣士ムネシゲ(赤) ペンデュラムスケール9

 

凌牙

手札2(うち1枚《ハーミッド・サーディン》)

ライフ2100

場 アビス・シールド(永続罠 アビスカウンター1)

 

(へっ…だが、奴の手札の1枚が《ハーミッド・サーディン》なのは分かっている!《アビス・シールド》の効果で特殊召喚されるのはレベル1の雑魚モンスター2体。それで俺様をどうにかできるとでも…?)

 

「キュキュ!キュイーーー!!」

走り続けたビャッコはジェットコースターの前で足を止める。

「ここまで走ってどうし…ああ!?」

「伊織さん、あれって…!」

そこはちょうど、翔太が裂け目を開いた場所だからか、ここからは裂け目に映る向こう側の世界の光景がよく見えた。

それには眼の色や表情、そして左半身がおかしくなった翔太が味方であるはずの凌牙とデュエルを繰り広げていた。

「翔太君!?んもう、いったい何してるの!?」

アカデミアとの戦いの中で、どうしてまた味方同士で戦うのか理解できない伊織だったが、今の翔太が瘴気じゃないということだけは分かった。

どうにかして止めたいが、今は別世界にいる伊織にはどうすることもできない。

だが、急にビャッコの体が淡い緑色の光を発し始める。

「ビャッコさん、この光…裂け目と同じ…?」

「キュキュキュキュキューーーー!!」

「え…きゃ!?」

その光は伊織達を包み込んでいき、球体へと変化していくと、そのまま裂け目に向かって飛んでいった。

 

「俺のターン…ドロー!」

 

凌牙

手札2→3

 

「《アビス・シールド》の効果発動。こいつを墓地へ送り、デッキから《ドワーフ・ゴビー》2体を特殊召喚する」

世界最小の魚と言われるゴマハゼを模した2体の小さな魚がフィールドに現れる。

 

ドワーフ・ゴビー×2 レベル1 守備0(チューナー)

 

アビス・シールド

永続罠カード

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが表側表示で存在する限り、自分が相手の直接攻撃によって受ける戦闘ダメージが半分になる。そして、相手の直接攻撃によって戦闘ダメージを受けるたびにこのカードの上にアビスカウンターを1つ置く。

(2):このカードを発動した次の自分スタンバイフェイズ時にこのカードを墓地へ送ることで発動する。乗っていたアビスカウンターと同じ数のレベルを持つ水属性・魚族モンスター2体をデッキから特殊召喚する。その効果で特殊召喚されたモンスターの攻撃力・守備力は0となる。

 

「そして、俺は手札から魔法カード《エクシーズ・リミットリバース》を発動。俺の墓地のエクシーズモンスター1体をターン終了時まで効果を無効にして特殊召喚し、このカードをそのモンスターのオーバーレイユニットにする。俺が特殊召喚するのは《S・H・Dark Knight》だ」

 

CNo.101S・H・Dark Knight ランク5 攻撃2800

 

エクシーズ・リミットリバース

通常魔法カード

(1):自分の墓地に存在するXモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚し、このカードをそのモンスターの下に重ねてX素材とする。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果はターン終了時まで無効化される。

 

「効果無効…?それじゃあ、俺のモンスターをオーバーレイユニットにすることはできねえなぁ…」

「ああ、そうだ。てめえの言う通りだ。まだ、《ブラックライダー》には2つのオーバーレイユニットがある。このままじゃあ俺が負けるのは当然だ…」

「ああん…?だから、最後まで抵抗してかっこいい姿を見せようってのか!?ちっ、ギザな奴だぜ!!」

「だが、まだ俺にはこの手がある!俺はランク5の《Dark Knight》にレベル1の《ドワーフ・ゴビー》2体をダブルチューニング!」

「何!?エクシーズモンスターを素材にシンクロ召喚だと!?

レベルを持たないエクシーズモンスターをシンクロ素材にすることはルール上できない行いだ。

だが、2体の《ドワーフ・ゴビー》は2つの水の輪へと変化し、その中へ飛び込んだ《CNo.101S・H・Dark Knight》の鎧が徐々に水色へと色を変えていく。

「このカードはチューナー2体にランク5の水属性エクシーズモンスターを素材とすることでシンクロ召喚できる!!激瀧の力宿りし守護者よ!今こそ、混沌を浄化し、魂に安らぎをもたらせ!!シンクロ召喚!!現れろ、《SNo.101S・H・Abyss Knight》!」

《No.73激瀧神アビス・スプラッシュ》を彷彿させる鎧とマント、そして三又の槍を手にした水色の守護者が凌牙の新たな力として目覚める。

 

SNo.101S・H・Abyss Knight レベル7 攻撃3000

 

「《Abyss Knight》の効果発動!墓地に存在する水属性エクシーズモンスター、またはシンクロモンスター1体をデッキに戻し、そのどちらかによって効果が決まる!俺は墓地の《Dark Knight》をデッキに戻す!」

《CNo.101S・H・Dark Knight》の幻影が《SNo.101S・H・Abyss Knight》に宿り、槍の穂先が紫色に染まる。

「エクシーズモンスターをデッキに戻した場合、このカードは相手フィールドのすべてのモンスターに1回ずつ攻撃できる!」

「な…何ぃ!?だ、だがそれでも!!攻撃力3000じゃあ、たとえ《スフィンクス》と《アトレウス》を攻撃して、《リンドヴルム》と相討ちがせいぜ…」

「そして、このカードは相手モンスターを攻撃したダメージステップ終了時、そのモンスターを装備カード扱いとしてこのカードに装備し、その効果で装備したカード1枚につき、攻撃力を400アップさせる!」

「な…にぃ!?」

「再び冥界へ落ちろ、ベクター!!《Abyss Knight》で攻撃!アビス・ソウル・ブレイカー!!」

《SNo.101S・H・Abyss Knight》が槍を天にかざすと、背後に大量の同じ形の槍が生まれ、それが一気にベクターのフィールドに降り注ぐ。

容赦なく降る槍の雨を受けた《魔装剛毅アトレウス》、《魔装獣スフィンクス》、《魔装雷竜リンドヴルム》の順番に消滅していく。

「ナッシュ!!てんめええええええ!!!」

 

SNo.101S・H・Abyss Knight レベル7 攻撃3000→3400→3800

 

ベクター

ライフ4000→2000→900→0

 

 

SNo(シンクロナンバーズ).101S・H・Abyss Knight(サイレント・オナーズ・アビス・ナイト)

レベル7 攻撃3000 守備2800 シンクロ 水属性 水族

チューナー2体+水属性Xモンスター1体

このカードは上記の組み合わせでのみ、S召喚できる。

このカードのS召喚を行うとき、S素材となるXモンスターはそのモンスターのランクと同じ数値のレベルのモンスターとして扱う。

このカードはS召喚以外の方法で特殊召喚できない。

(1):このカードが相手モンスターを攻撃したダメージステップ終了時に発動できる。その相手モンスターを装備カード扱いとして、このカードに装備する。このカードの攻撃力はその効果で装備したカードの数×400アップする。

(2):1ターンに1度、自分の墓地に存在する水属性Sモンスター、Xモンスターのいずれか1体をデッキに戻して発動できる。次の自分のスタンバイフェイズ時まで、その効果でデッキに戻したカードの種類によって以下の効果を得る。

●Sモンスター:このカードは戦闘・効果では破壊されず、このカードの戦闘で発生する自分へのダメージは0となる。

●Xモンスター:このターンのバトルフェイズ時、このカードは相手フィールドに存在するすべてのモンスターに1回ずつ攻撃できる。その時、自分フィールドのほかのモンスターは攻撃できない。

(3):このカードが相手によって破壊され墓地へ送られたとき、自分のEXデッキに存在するそのカードの装備カードの数と同じ数値のレベルまたはランクの水属性モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

リリース・リース(アニメオリカ・調整)

通常魔法カード

このカード名の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。

(1):自分フィールドに存在するモンスターが1体のみの時、そのモンスターをリリースすることで発動できる。デッキからそのモンスターのレベル以下のレベルのモンスター1体を手札に加える。

(2):自分フィールドにモンスターが存在せず、相手フィールドにモンスターが存在するとき、墓地に存在するこのカード1枚を除外することで発動できる。墓地からレベル4以下のモンスター1体を手札に加える。

 

ドワーフ・ゴビー

レベル1 攻撃0 守備0 チューナー 水属性 魚族

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか行えない。

(1):このカードの召喚に成功したとき、自分の墓地に存在する水属性モンスター1体を対象に発動できる。ターン終了時まで、このカードのレベルはそのモンスターと同じになる。この効果を発動したターン、自分は水属性以外のモンスターをEXデッキから特殊召喚できない。




今回、登場したナビの元ネタはメタルギアシリーズのメタルギアMk-Ⅱです。


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第105話 D-HEROの恐怖

「くそ…が、ナッシュぅ…!」

凌牙の一撃で大きなダメージを負い、敗北してもなお立ち上がるベクターだが、足はがくがく震えていて、傷だらけだ。

立っているだけでもやっとなのは火を見るよりも明らかだ。

「ベクター、お前がそれを自分の力だと思っていたようだが、違ったようだな」

「何…?」

人間の姿に戻った凌牙は睨むようにベクターを見た後で、彼のデュエルディスクに入っている翔太のデッキを見る。

「確かにこのデッキの大本を生み出したのは貴様かもしれない。だがな、翔太は自分の記憶を取り戻すため、デッキを強くしていった。あいつ自身がな。それはもはや、てめえの力じゃねえって何よりの証拠だろう」

確かにこのデッキを使うベクターは強かった。

おそらく、バリアン世界で戦った時よりもだ。

だが、結局のところどちらも借り物の力でしかなかった。

借り物の力だからと否定するつもりはないが、その中にはベクターの血を感じることができなかった。

「ざけんじゃねえ…!まだだ、まだ俺は…」

なおも凌牙に復讐しようとあがくベクターだが、裂け目から緑色の光の球体が振ってくるのが見えた。

凌牙たちの前に落ちてきたその光は消滅し、なぜか伊織とビャッコ、セラフィムが現れた。

「お前…なんでこんなところに!?」

「ここってエクシーズ次元の…翔太君!?」

まさか次元転移できるとは思わなかった伊織は驚く中、裂け目に見えた通りの姿になっている翔太に目を向ける。

その姿は生身の人間とは思えなかった。

「こうなったら、あの女を人質にして…!」

「キュイーーーー!!」

「な…てめえは!!」

ビャッコの姿を見た瞬間、ベクターは恐れるように後ずさりする。

そして、ビャッコはベクターにとびかかると同時に、両者が光りに包まれていった。

「ビャッコさん!!」

「翔太君!!」

「何が…起こるというんだ…?」

 

「キュイーーー!キュイーーーー!!」

「…る、せえよ…今、起きてるだろう…??」

ビャッコの鳴き声をうっとうしく思いながら、真っ暗な空間の中で翔太が目を覚ます。

なぜか激しい倦怠感と眠気が全身を襲っていて、このまま永遠に眠り続けたい願望が彼に宿っている。

頭を振ってその願望を必死に排除しながら、翔太はなぜここにいるのかに思考を傾ける。

「そうだ…俺はアカデミアの基地を暴くために力を…そうしたら、あの野郎が…」

「間一髪だったね…。あと少し遅かったら、完全に君は消滅していた」

「ああ…?」

後ろから声が聞こえ、振り返るとそこには真っ白な光でできた人間の形をした幻影が立っていた。

その声になぜか聞き覚えのある翔太だが、誰の者だったのか、やはり思い出せない。

「ベクターからもらった力を活性化させたことで、主導権を奪われていたんだ」

「ちっ…やはりそうかよ…」

痣の力を使った時、嫌な予感を感じていたものの、それを使わなければ道を切り開くことができなかった。

「記憶のカードを君は既に7枚解放している。それも、力の強化につながっているんだ…」

「記憶のカード…その記憶っていうのは、俺のものじゃねえんだろう?」

これまで解放を続ける中、薄々感じていた。

それらから見た記憶は自分のものではないということを。

そして、おそらく記憶は2人分存在する。

「そうだ…記憶は僕と…ベクターのものなんだ」

「で、てめえは誰だよ」

「…名前だけは思い出したよ。僕は…石倉純次」

「石倉…順次だと?」

翔太の脳裏に石倉純也と聖子の姿が浮かぶ。

同じ苗字である彼があの2人の関係者である可能性が高い。

「で、俺はこれからどうなる?このまま消滅するのか?」

「ううん。もうすぐ君は再び体の主導権を取り戻す。けれど、ベクターはまた君の体を奪おうとする。それがいつになるのかは僕にもわからない」

「てめえはどうだんだ?お前も俺の体を奪えるんじゃないのか?」

純次もベクターと同じ、記憶のカードに記憶が存在していた。

つまりはやろうと思えば、彼もまたベクターと同じく翔太の体を奪い取ることができると翔太は予想していた。

「君の懸念は分かってる。僕も…ある意味ではベクターと同じで、自分の体を失っているからね。信じてもらえないかもしれないけど…僕はこの体は君の者であるべきだと思うんだ。だから…君が完全にこの体に定着するためにも、残り3枚の記憶のカードと戦う必要があると思うんだ」

「はぁ…?それじゃあ奴に力を与えるのと同じだろう!?」

「確かに、ベクターの記憶のカードとすべて戦ってしまったからね。けれど、まだ僕の記憶のカードが残ってる。その力で拮抗させるんだ。その状態なら、ベクターと対峙できる。そして、彼を倒すチャンスができる。そのチャンスができるまで、僕がベクターを抑え込むよ」

純次が上に手を伸ばすと、上空から無数のカードが振ってきて、それが合体して行って巨大な門へと変化していく。

そして、純次の姿がだんだん消えていく。

「1つ、質問いいか?」

「何かな?」

「なぜ俺に肩入れする?」

翔太自身に選択肢はなく、気に入らないが、今は純也の言葉に従うしかない。

ベクターのような下心がないとは思えず、そのような質問をしてしまった。

「君に…生きていてほしいからだよ」

答えを聞くと同時に扉が開く。

答えになっていない答えに思えた翔太だが、今はここにいるわけにはいかず、ビャッコと共に扉をくぐった。

 

「う、ぐう…!」

体中から感じる痛みが権現坂を眠りから覚ます。

両手首には手錠がかけられ、それが天井から垂れているロープとつなげられている。

「目が覚めたようだな、ランサーズ、権現坂昇」

「貴様…!」

目の前にはエドが立っていて、不敵な笑みで彼を見下すように見つめている。

いつもの権現坂なら、この状態でもロープを引きちぎることができるが、実体化したデュエルダメージを負っているせいで、今はどうすることもできない。

「安心しろ。お前をまだ殺したりはしないさ。お前と、それから奴と一緒にいる柊柚子には特等席で観戦してもらうことになる。榊遊勝のエンタメデュエルがアカデミアのデュエルに敗れる光景を」

「遊勝殿…?」

エドは権現坂のデュエルディスクを奪って通信していたときも、遊勝の名前を出していた。

行方不明の遊勝について、彼は何か知っているのかもしれない。

「エド・フェニックス…なぜ、貴様は遊勝殿のことを知っている!?あの御仁はいったいどこにいる!?」

「奴を特等席へ案内しろ。抵抗するなら、多少痛めつけても構わん」

「ハッ!」

「おい、質問に答えろ!遊勝殿は…ぐおおおお!!」

しつこく司令官に質問する権現坂にデュエル戦士はスタンガンを使用する。

高圧電流で筋肉が硬直し、激痛が襲う。

放心状態になった権現坂をデュエル戦士は3人がかりで背負い、連れていく。

彼らと入れ替わるように、野呂が体育館に入ってくる。

「司令…なぜ榊遊矢をここへ連れてくる必要があるのです?そんなもの、デュエル戦士を差し向ければ済むだけの話でしょう?それに…何ですか?榊遊矢たちに一切手を出すなと??」

数分前に通信で送られたエドの命令が野呂には全く理解できなかった。

遊矢は確かに、シンクロ次元でセルゲイとジャックを倒し、この次元でもタイラー姉妹を倒したデュエリスト。

だが、バトルロイヤルモードを強制された状態で、デュエル戦士が集団で襲う方が、わざわざ総司令であるエドが直接闘うよりも明らかにリスクが少ない。

にもかかわらず、遊矢を自分の手で倒すことにこだわっている。

その疑問に答えるように、エドは懐から半分だけになったカードを出す。

自分に良からぬ影響を与えた忌むべきカード、《スマイル・ワールド》。

「僕は…アカデミアの教えの正しさを証明しなければならない。そのためにも、榊遊矢と…彼の父親、遊勝を僕の手で始末する!」

彼ら親子を始末するため、必死に訓練をし、武功を重ねて鍛え上げたデッキと手に入れたエクシーズ次元派遣軍総司令のポスト。

今のエドにとって重要なのは、エクシーズ次元征服よりも榊遊矢の始末だった。

「やれやれ…考えを曲げられるつもりはないのですね?」

「当然だ」

「分かりました。では、私は戦況確認をしなければなりませんので、これで…」

恭しく頭を下げた野呂は体育館を後にする。

扉を閉め、その向こうで遊矢を待つエドを横目に見た彼はうっすらと笑みを浮かべる。

(そうです…それでいいのです。エド・フェニックス。そして、証明してください。あなたが真のアカデミアのデュエル戦士であることを…あなたの命が惜しければ)

 

「遊…矢…」

放心状態で体の動きが取れないまま、権現坂は真っ暗な部屋の中で椅子に座らせられ、両腕と両足を拘束具で固定される。

ここが例の特等席なのか、それともまた別の場所へ向かうための中間地点なのか、今の権現坂にはわからない。

今、彼の頭にあるのは自分を助けるためにここへ来るであろう遊矢のことだった。

(気を付けろ…遊矢。奴は…)

 

「《ビッグベン-K》で《古代の機械巨人》を攻撃!」

《超重武者ビッグベン-K》の拳が《古代の機械巨人》の胸部装甲を貫き、爆散させる。

爆風で吹き飛んだデュエル戦士は背後の壁に激突し、力尽きる。

そんな彼を気にせず、権現坂はデュエルディスクで遊矢と柚子の居場所を確認する。

「反応なし。まだ転移できていないというのか…?」

若干のタイムラグと場所のズレは覚悟していたとはいえ、それでも早く合流しなければいずれデュエル戦士の集団にリンチされることになる。

声を出して探すこともできないため、自分の足で走って探すしかない。

そう思い、進もうとした瞬間、どこからか拍手する音が聞こえてくる。

ゆっくりとした、賞賛とは程遠い不気味な拍手のせいか、権現坂の背筋を冷たい空気が撫でる。

「見事だよ。裏切者の協力を得たとはいえ、まさか我らの本拠地への侵入ルートを手に入れ、実際に侵入してくるとは…正直君たちのことを舐めていた」

物陰から拍手をしながら近づいてくる男に権現坂は身構える。

近くに倒れているデュエル戦士が何人もいるのに、平然としていて、倒した本人である権現坂を前にしても同様一つ見せない。

「権現坂昇。君はランサーズの中でもとびきりユニークなデッキを使うようだね。そのデッキの力、僕に見せてもらえると嬉しいんだが…」

拍手を辞め、不敵な笑みを見せる男、エドはデュエルディスクを展開する。

「何者だ?貴様」

「おっと、あいさつもなしに失礼。僕はエド・フェニックス。君たちに分かりやすく答えるなら、エクシーズ次元を攻撃するアカデミアの総司令だ」

「何…!?」

目の前の、高校生くらいの少年が総司令を名乗ったことに権現坂は驚いた。

普通、総司令のような立場なら討ち取られるリスクを抑えるために司令室などにいるはずで、彼がどうして戦闘中にもかかわらずこうして自分の目の前にいるのかわからなかった。

未成年にその役目を任命しなければならないくらい、人材不足だからという安易な想像はあり得ない。

おそらく、総司令を名乗るくらいの実力を彼は持っている。

まだ居場所のつかめない2人と合流するために逃げることも考える。

だが、エドはそんな権現坂の考えが分かっているのか、少し考えるそぶりを見せる。

「確かに、僕みたいな男が総司令を名乗ったとしても、信じてもらえないだろう。そうだな…」

何かを思いついたエドはデュエルディスクで通信を始める。

すると、権現坂の進路を阻むようにデュエル戦士が集まってきた。

「これで、少しは信じてもらえたかな?ここを突破するには…僕をデュエルで倒すしかない」

「くっ…」

「だが、デュエルはフェアーにやるのが筋だ。そうだな…もし君が僕に勝ったなら、その時点で軍を融合次元へ撤収し、エクシーズ次元は解放しよう」

「何…!?」

それはあまりにも権現坂にとっては大きなアンティだ。

もしそうなれば、スタンダード・シンクロ・エクシーズによる三次元同盟でアカデミアに総攻撃する大きな一歩となる。

だが、そんな条件を提示するとなると、権現坂にも大きなアンティを差し出さなければならなくなるだろう。

甘い取引などこの世には存在せず、それに乗ると破滅することはよくある話だ。

とはいうものの、周囲に集まるデュエル戦士は10人以上。

彼らと戦いながら逃げ回るのは難しく、仮にその状態で遊矢と柚子を巻き込んでしまうとそのまま全滅することもあり得る。

「いいだろう!この男、権現坂!貴様のデュエルを受ける!」

権現坂はデュエルディスクを展開すると、エドのデュエルディスクからデュエルアンカーが発射され、自分のそれに固定される。

「これで、僕の部下の邪魔は入らない。そして、仮に僕が敗れたとしても、彼らは僕の命令がない限りは君を襲わない」

その言葉に、権現坂は彼が相当な自信をもってデュエルに望んでいることを感じた。

だが、応じた以上はもう後戻りできない。

「アクションフィールドを発動しても構わない。だが、僕はアクションデュエルが嫌いでね。アクションカードはすべて君にくれてやる」

「生憎、俺もアクションカードを使わん。アクションフィールドはなしだ!」

「そうか…。君がそれでいいのなら」

互いに5枚のカードをドローする。

アクションフィールドは発動されず、静寂に包まれる中で互いに対戦相手をにらむように見た。

「「デュエル!!」」

 

エド

手札5

ライフ4000

 

権現坂

手札5

ライフ4000

 

「僕の先攻だ。僕は手札から魔法カード《聖天使の施し》を発動。僕のフィールドにカードがない時、デッキからカードを2枚ドローし、手札1枚をセメタリーへ捨てる」

 

手札から墓地へ送られたカード

・D-HEROディアボリックガイ

 

「そして、手札から魔法カード《オーバー・デステニー》を発動。セメタリーのD-HEROのレベル以下のD-HERO1体をデッキから特殊召喚できる。《ディアボリックガイ》のレベルは6。よって、レベル4の《ダイヤモンドガイ》を特殊召喚する!」

「D-HERO!?伊織殿のHEROと違うのか…!?」

権現坂の知っているHEROは伊織が持っているカードだけで、D-HEROは見たことも聞いたこともないカードだ。

「あれはただのプロトタイプだ。僕のD-HEROこそが真のHERO。アークエリアプロフェクトを成功に導く英雄だ」

全身からダイヤモンドを生やした、暗い緑のマントと黒い紳士服姿をした褐色の男が現れる。

 

D-HEROダイヤモンドガイ レベル4 攻撃1400

 

「《ダイヤモンドガイ》のエフェクト!1ターンに1度、デッキの一番上をめくり、通常魔法カードならセメタリーへ送り、次の僕のターンのメインフェイズ時にそのエフェクトを発動する」

《D-HEROダイヤモンドガイ》のダイヤにその効果でドローされたカードイラストが映し出される。

彼がドローしたのは《デステニー・ドロー》、通常魔法だ。

笑みを浮かべたエドはそのカードを墓地へ捨てる。

「これで、次のターン、僕は《デステニー・ドロー》のエフェクトでデッキからカードを2枚ドローすることができる。更に、僕は手札から《D-HEROディシジョンガイ》を召喚」

ヒレが左右についた紫色の頭で、紫と黒がかった青がベースのライダースーツのような強化服姿をしたHEROがフィールドに現れる。

 

D-HEROディシジョンガイ レベル4 攻撃1600

 

「《ディシジョンガイ》のエフェクト発動!ターン終了時、僕はセメタリーのD-HERO1体を手札に戻すことができる。そして、セメタリーの《ディアボリックガイ》のエフェクト発動。このカードをセメタリーから除外することで、デッキから《ディアボリックガイ》1体を特殊召喚できる。カモン、アナザーワン!」

背中に悪魔の羽を生やし、3本角の悪魔をモチーフとした仮面をつけた筋肉質の男が地中から現れる。

 

D-HEROディアボリックガイ レベル6 攻撃800

 

「そして、《ダイヤモンドガイ》、《ディシジョンガイ》、《ディアボリックガイ》をリリース!」

「何!?3体ものモンスターをリリースするだと!?」

権現坂の予測では、ここから展開した3体を利用して融合召喚を行うものとばかり考えていた。

しかも、通常召喚を使っている以上アドバンス召喚もできない。

「このカードにそれは関係ないよ。このカードは僕のフィールドのモンスター3体をリリースすることで、手札から特殊召喚できる。崇高なる青き血を宿すHERO!《D-HERO Bloo-D》!」

リリースされた3体のモンスターが青い血に変わっていき、それが1つの塊へと変化していく。

やがて、その塊が砕け、その中から右手が魔獣の牙となり、ドラゴンの3本爪を模した飾りを背中に就けた、赤黒い鎧の戦士が現れる。

 

D-HERO Bloo-D レベル8 攻撃1900

 

「《Bloo-D》!これが、エド・フェニックスのエースカード!?」

「更に僕は手札からフィールド魔法《ダーク・シティ2-バッド・ナイト》を発動」

発動と同時に夜空となり、周囲に建物が真っ暗なアメリカの都市のような光景へと変化していく。

周囲にある壁にはアメリカの若者が書いたものと思われる落書きがそこかしこに描かれていた。

「《バット・ナイト》のエフェクト発動。1ターンに1度、デッキからD-HERO1枚をセメタリーへ送る。僕はデッキから《D-HEROダッシュガイ》をセメタリーへ送る。更に、カードを1枚伏せてターンエンド。そして、《ディシジョンガイ》のエフェクトにより、セメタリーから《D-HEROダイヤモンドガイ》を手札に戻す」

 

エド

手札5→1(《D-HEROダイヤモンドガイ》)

ライフ4000

場 D-HERO Bloo-D レベル8 攻撃1900

  伏せカード1

  ダーク・シティ2-バッド・ナイト(フィールド魔法)

 

権現坂

手札5

ライフ4000

場 なし

 

(レベル8にも関わらず、攻撃力1900とはどういうことだ…?)

エースモンスターであることは確かに思えるが、この低い攻撃力が違和感になる。

先ほどエドが発動した《ダーク・シティ2-バッド・ナイト》の効果にはD-HEROの攻撃力をアップさせるものがある。

それを使って守ろうという魂胆なのだろうか。

(いや…何を怖気づいている!?この男、権現坂、相手が誰であろうと己のデュエルを貫くのみ!)

頭を振り、雑念を払った権現坂はデッキトップに指をかける。

「俺のターン、ドロー!」

 

権現坂

手札5→6

 

「俺は手札から《超重武者タマ-C》を召喚!」

 

超重武者タマ-C レベル2 攻撃100(チューナー)

 

いきなり手札に来てくれたこのカードは権現坂にとって僥倖に思えた。

このカードなら、あのモンスターを容易に除去できる。

「《タマ-C》は俺のフィールドに超重武者以外に存在せず、俺の墓地に魔法・罠カードがない時、相手フィールドのモンスター1体とこのカードを素材に超重武者をシンクロ召喚できる!俺は貴様の《Bloo-D》を選択する!」

「フルモンスターか…確かに面白い。だけど、当てが外れたね」

「何!?」

不敵な笑みを見せるエドが右手を伸ばし、《超重武者タマ-C》を握りつぶすかのように拳を固める。

権現坂のフィールドに青い血の池が出現し、その血が《超重武者タマ-C》を縛り付ける。

「なんと…!?」

「《Bloo-D》の効果の1つ…。それは相手フィールドのモンスター効果を無効にすることだ。残念だが、君の作戦は失敗に終わったということだ」

相手フィールドのモンスターの効果を封じる、それはフルモンデッキの権現坂にとって、超重武者の力の大部分を奪われることを意味する。

守備表示で守備力を使って攻撃することができなくなり、その大きな特徴が死ぬことにつながる。

「く…ならば俺は手札の《超重武者装留チュウサイ》の効果発動!このカードを自分フィールドの超重武者の装備カードとすることができる!」

4つのマニピュレータを持つ義手が《超重武者タマ-C》の腕に装着される。

6本腕となった小さな武者はよろけながらもふんばってその場に立ち続ける。

「そして、《チュウサイ》のの効果。このカードを装備したモンスターをリリースし、デッキから超重武者1体を特殊召喚する!」

《超重武者タマ-C》がオレンジの光の柱を生み出しながら消滅し、その中から《超重武者ビッグベン-K》が姿を現す。

「現れろ、《超重武者ビッグベン-K》!」

 

超重武者ビッグベン-K レベル8 守備3500

 

「装備カードとなっているなら、《Bloo-D》の効果の対象外か…。だけど、せっかく守備表示で召喚した《ビッグベン-K》もこの状態では攻撃できないな」

青い血がペンキのように権現坂のエースモンスターの装甲と関節を青く濡らしていく。

関節からはビキビキと嫌な音が響き渡り、それだけでこの状態で攻撃することがどれだけ危険かが分かってしまう。

「(《Bloo-D》の呪縛から解放されない限り、俺に勝機はない…)俺はこれで、ターンエンド!」

 

エド

手札1(《D-HEROダイヤモンドガイ》)

ライフ4000

場 D-HERO Bloo-D レベル8 攻撃1900

  伏せカード1

  ダーク・シティ2-バッド・ナイト(フィールド魔法)

 

権現坂

手札6→4

ライフ4000

場 超重武者ビッグベン-K レベル8 守備3500

 

「僕のターン、ドロー!」

 

エド

手札1→2

 

「更に、《ダイヤモンドガイ》の効果で墓地へ送った《デステニー・ドロー》のエフェクト発動」

 

エド

手札2→4

 

召喚のために消耗した手札が一気に4枚まで回復する。

そして、《ダーク・シティ2-バッド・ナイト》の効果で、墓地に再びD-HEROが落とされる。

「《バッド・ナイト》のエフェクト、デッキから《ディバインガイ》をセメタリーへ送る。そして、《Bloo-D》のエフェクト発動!1ターンに1度、相手フィールドのモンスター1体をこのカードの装備カードとする!」

「何!?」

「《チュウサイ》のエフェクトもまた、無駄になったというわけさ」

《D-HERO Bloo-D》の両翼から青い血が雨のように《超重武者ビッグベン-K》を襲う。

多くの血を浴びたことでどんどん装甲と関節がさびていき、やがて機体そのものが青い血へと変わっていく。

「《ビッグベン-K》…」

なすすべもなく血へと変えられる相棒を見た権現坂は血が凍ったかのように立ち尽くす。

そして、血となったその機械は《D-HERO Bloo-D》の肉体に一部となった。

「《Bloo-D》の攻撃力は装備カードとしたモンスターの攻撃力の半分アップする」

 

D-HERO Bloo-D レベル8 攻撃1900→2400

 

「そして、手札から《D-HEROドリルガイ》を召喚」

右腕の巨大なドリルを中心に、体にいたるところにドリルを装着した、オレンジ色の肌の戦士が現れる。

 

D-HEROドリルガイ レベル4 攻撃1600

 

「《ドリルガイ》のエフェクト発動。このカードの召喚・特殊召喚に成功したとき、このカードの攻撃力以下のD-HEROを手札から特殊召喚できる。カモン、《ダイヤモンドガイ》!」

 

D-HEROダイヤモンドガイ レベル4 攻撃1400

 

「君のデッキは面白いと聞いたが…残念だよ。君には榊遊矢の餌になってもらおうか」

「何…?遊矢の?」

「バトル!《Bloo-D》でダイレクトアタック!ブラッディー・フィアーズ!!」

《D-HERO Bloo-D》の羽から青い血の雨が権現坂に向けて発射される。

血が鋭利な刃物のように突き刺さり、権現坂の全身を傷つけていく。

「ぐうううう!うう!!」

 

権現坂

ライフ4000→1600

 

「へえ、《Bloo-D》のダイレクトアタックを受けて、立っていられるなんてな」

「ぐ…俺は手札の《超重武者ココロガマ-A》の効果発動!俺の墓地に魔法・罠カードがない状態で戦闘ダメージを受けたとき、このカードを手札から特殊召喚できる!」

 

超重武者ココロガマ-A レベル3 守備2100

 

「守備力2100…。当然、効果は無効になっているが、《ドリルガイ》の攻撃では倒せないか」

《超重武者ココロガマ-A》のおかげで権現坂にとってのピンチは去った。

だが、攻撃力2400の《D-HERO Bloo-D》の攻撃でたやすく突破されてしまうのは確かだ。

「僕は《ダイヤモンドガイ》のエフェクト発動。デッキトップのカードは《同胞の絆》。次のターンのエフェクトは確定する。僕はこれで、ターンエンドだ」

 

エド

手札4→2

ライフ4000

場 D-HERO Bloo-D(《超重武者ビッグベン-K》装備) レベル8 攻撃2400

  D-HEROドリルガイ レベル4 攻撃1600

  D-HEROダイヤモンドガイ レベル4 攻撃1400

  伏せカード1

  ダーク・シティ2-バッド・ナイト(フィールド魔法)

 

権現坂

手札4→3

ライフ1600

場 超重武者ココロガマ-A レベル3 守備2100

 

「《ビッグベン-K》…済まぬ!」

青い血に取り込まれた相棒に目を向けたあと、権現坂は自分のデッキを見る。

この状況を突破できるカードは今の権現坂の手札にはない。

あるとしたら、このデッキの中だけだ。

「(不動の兵たちよ、我が不動のデュエルの勝利の道を作れ!)俺のターン、ドロー!」

 

権現坂

手札3→4

 

「俺の墓地に魔法・罠カードが存在しないとき、《超重武者ヒキャ-Q》は手札から特殊召喚できる」

 

超重武者ヒキャ-Q レベル5 守備1800

 

「そして、《ヒキャ-Q》の効果発動!このカードをリリースすることで、手札のモンスター2体を守備表示で相手フィールドに特殊召喚し、俺はデッキからカードを2枚ドローする。俺は《グロウ-V》と《ツヅ-3》を特殊召喚し、カードを2枚ドロー!」

 

超重武者グロウ-V レベル3 守備1000

超重武者ツヅ-3 レベル1 守備300(チューナー)

 

「そして、俺は手札から《超重武者装留グレート・ウォール》を召喚!」

 

超重武者装留グレート・ウォール レベル3 攻撃1200

 

「バトルだ!《グレート・ウォール》で《グロウ-V》を攻撃!」

《超重武者装留グレート・ウォール》に真上から押しつぶされる形で《超重武者グロウ-V》が破壊される。

「《グロウ-V》の効果!俺の墓地に魔法・罠カードがない状態でこのカードが墓地へ送られたとき、デッキの上から5枚を好きな順番に並べ替える!そして、俺の墓地に魔法・罠カードが存在しないとき、《ホラガ-E》は手札から特殊召喚できる!」

 

超重武者ホラガ-E レベル2 攻撃300(チューナー)

 

「レベル3の《グレート・ウォール》にレベル2の《ホラガ-E》をチューニング!長き刃を手に燕を切り裂く剣豪よ、暗夜の街に現れよ!シンクロ召喚!レベル5、《超重剣聖コゴ-6》!」

同じレベル5の超重武者シンクロモンスター、《超重剣聖ムサ-C》とは対照的に、青と黒をベースとした暗い色彩の鎧と自身の倍の長さの刀身を持つ刀を背負った超重武者が現れる。

 

超重剣聖コゴ-6 レベル5 守備2300

 

「せっかくシンクロ召喚したようだが、やはりそのモンスターも《Bloo-D》の効果を…」

「いいや!《コゴ-6》はシンクロ召喚に成功したとき、俺の墓地に魔法・罠カードが存在しない場合、このカードをリリースすることで発動できる!デッキの上からカードを2枚まで墓地へ送ることができる」

権現坂は操作したばかりのデッキのカード2枚を墓地へ送った。

「そして、この効果で墓地へ送った超重武者の数だけ、相手フィールドのカードを破壊する!俺は《Bloo-D》と《ツヅ-3》を破壊する!」

《超重剣聖コゴ-6》が抜いた刀に2つの光が宿る。

そして、相手フィールドに向けて振り下ろした後で、更に上へ切り上げた。

その瞬間、対象となった2体のモンスターが真っ二つとなり、消滅する。

 

デッキから墓地へ送られたカード

・超重武者装留バスター・ガントレット

・超重武者装留ビッグバン

 

「《Bloo-D》を破壊するなんて…!」

「これで、貴様のエースカードは倒し、《ビッグベン-K》を取り戻せる!破壊された《ツヅ-3》の効果発動!フィールド上のこのカードが破壊され墓地へ送られたとき、墓地の超重武者1体を特殊召喚できる。俺は《ビッグベン-K》を特殊召喚する!」

錆がなくなり、完全な状態に戻った《超重武者ビッグベン-K》がフィールドに舞い戻る。

 

超重武者ビッグベン-K レベル8 守備3500

 

「俺はこれでターンエンド!そして、《コゴ-6》の効果発動!自らの効果でリリースされたカードが墓地に存在し、俺の墓地に魔法・罠カードが存在しないとき、墓地から特殊召喚でき…」

「罠発動、《D-フュージョン》!」

「何!?このタイミングでだと!?」

ターン終わりのところで発動されたそのカードから渦が発生し、《D-HEROドリルガイ》と《D-HEROダイヤモンドガイ》が飛び込んでいく。

「君のデッキの底力を見せてくれてうれしかったよ…ありがとう。これで、僕のエースを召喚できる」

「何!?《Bloo-D》がエースではなかったのか!?」

「そうさ。これが僕の本当の切り札さ。このカードはD-HERO専用の融合カードだ!僕は《ドリルガイ》と《ダイヤモンドガイ》を融合する!運命の岩盤を穿つ英雄よ、純潔の宝石を纏いし英雄よ、今一つとなりて暗黒の未来に君臨せよ!!融合召喚!!カモン!《D-HEROディストピアガイ》!」

黄色い丸みを帯びた肩パットがついた紫色のライダースーツを着用し、額部分にDと描かれた仮面で顔を隠した英雄が渦の中から飛び出す。

 

D-HEROディストピアガイ レベル8 攻撃2800

 

「《ディストピアガイ》のエフェクト発動。このカードの特殊召喚に成功したとき、自分の墓地のレベル4以下のD-HERO1体の攻撃力分のダメージをお前に与える…」

「何!?」

《D-HEROドリルガイ》の幻影が現れ、それが紫色のエネルギー弾となって《D-HEROディストピアガイ》の右手人差し指に宿る。

そして、右手を銃に見立て、指先を権現坂に向ける。

「まさか…ずっと、俺のことを躍らせていたというのか…!?」

やろうと思えば、前のターンで決着をつけることができたはずだ。

にもかかわらず、それをしなかったのは権現坂の底力を見せてもらうため、そして勝利できるかもという幻想を見せるため。

だが、《D-HERO Bloo-D》を倒したことで見えた幻想が実は暗黒郷への道標でしかなかった。

「消えろ、雑魚が」

権現坂を愚弄する言葉と共にエネルギー弾が発射され、それが彼を襲う。

悲鳴を上げることすら忘れ、立ち尽くす権現坂はそれをまともに受けると、せめてものエドへの抗議のためなのか、前のめりとなって倒れた

 

権現坂

ライフ1600→0

 

超重剣聖コゴ-6(コゴロー)

レベル5 攻撃300 守備2300 シンクロ 地属性 機械族

チューナー+チューナー以外の「超重武者」モンスター1体以上

このカード名の(2)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しか行えない。

このカードはルール上、「超重武者」カードとしても扱う。

(1):このカードのS召喚に成功したとき、自分の墓地に魔法・罠カードが存在しない場合、このカードをリリースすることで発動できる。自分はデッキの上からカードを2枚まで墓地へ送る。その時、墓地へ送った「超重武者」モンスターの数だけ、相手フィールドのカードを破壊する。

(2):(1)の効果を発動したターン終了時にこのカードが墓地に存在する場合に発動できる。このカード1枚を墓地から守備表示で特殊召喚する。

 

「…坂!権現坂!聞こえるか!?」

倒れた権現坂の耳元に遊矢の声が聞こえてくる。

デュエルディスクから聞こえており、あまりのダメージで一瞬なぜ自分がこうして倒れているのか忘れたは通信に応える。

「こちら、権現坂だ…遊矢か…?」

「ああ…。どこにいる?これから柚子と合流…」

通信を聞く中で、権現坂は先ほどのデュエルのことを思い出す、

エドの前に1ポイントもライフを削ることができず、挙句の果てにピエロのように踊らされて倒された。

そんな恐ろしい相手と会わせるわけにはいかない。

「いや、来るな!!今、俺のところへは…うわあああ!!」

傷ついた権現坂の体をエドが無慈悲にも踏みつける。

そして、デュエルアンカーを外した後で彼からデュエルディスクを取り上げる。

「く…貴様は…!」

「やぁ、榊遊勝の息子、榊遊矢」

ダメージのせいで、だんだん意識が遠のいていく。

デュエルディスクを持ったエドが離れていき、周りで待機していたデュエル戦士たちが権現坂に集まる中、彼は意識を失った。

 



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第105話 EM VS D-HERO

「ふう、ふう、ふう…」

「翔太君!!」

「キュイー!!」

だんだんと感覚が戻っていき、視界が意識を失う直前のハートランドに戻っていくのが分かった。

たっぷりと呼吸をした翔太は自分に声をかける伊織とビャッコに目を向ける。

「伊織…お前、どうしてここに…?」

「ビャッコちゃんの助けを借りて、ここまで逃げてきたの!まさか、次元を飛び越えることもできるなんて、びっくりしたぁ!それに、翔太君もおかしくなって…」

「俺が…ああ、そうだな…」

おかしくなった、というのはベクターに乗っ取られたことを言っているのだろうと解釈し、疲労のためかその場に座り込む。

そして、にらみつける視線に気づいた翔太はそれを放っている凌牙に目を向ける。

「ベクター…いや、今は秋山翔太か…」

「ベクター…ああ、俺を乗っ取った奴の名前か…?」

「のっとった…は語弊があるがな。…まぁいい。お前についてはこの戦闘が終わった後だ!」

今はエクシーズ次元での戦いに集中すべきで、翔太のことは後回しにすべきだとル洋画は自分の中で結論付ける。

表面化したベクターを撃破したこと、そして何より凌牙の中に翔太を始末することへの迷いがあったことで、そういう結論となった。

「そうしてくれ…。俺も、俺自身について知っておいてほしいことがあるからな…」

「分かった。これで、ここの安全は確保できたな…」

凌牙はデュエルディスクで侑斗と通信を繋げる。

イレギュラーは発生したものの、作戦通りエクシーズ次元における融合次元の本拠地を見つけることができた。

ここからが第2フェイズとなる。

「凌牙君」

「侑斗、道は開けたぞ」

「うん、こっちも見えてる。これから、《ディメンジョン・ムーバー》を送信して、突入を行うよ。スタンダード次元にも、合図を送る」

違う次元同士の通信は非常に困難で、融合次元のデュエル戦士たちはデュエルディスクに内蔵されているとある装置のおかげでその通信が可能となっているうえに、いざとなれば融合次元へ帰還することができる。

素良がランサーズに寝返ったことで、彼のデュエルディスクを解析し、その装置を搭載したデュエルディスクを開発しようという動きがあるが、シンクロ次元の技術者の協力を得ても、そのデュエルディスクの再現が現在もできない状態だ。

唯一可能なのは大昔にはやったポケベルレベルのメール通信だ。

スタンダード次元で侑斗がシンクロ次元に潜伏していたヒイロと通信を行った手段がそれだ。

ただし、ポケベルレベルというだけあって長い文章を送ることができず、可能なのはシンプルで短い文章だけだ。

だが、座標さえ分かればそれを入力するだけでいい。

既に送った座標に向けて送る準備をするように、出発前に零児と段取りをしている。

「了解だ。それから、翔太のことだが…」

「翔太君が…どうしたの」

「やはり、奴はベクターの魂を宿していた。それが一時的に表面化したが、今は翔太が主導権を取り戻している」

「そうか…。そうなる可能性はあると考えてはいたけど…」

凌牙はそのベクターとデュエルをしたことを明言することを避けた。

もし言ってしまったら、侑斗に要らぬ心配をかけてしまうため、それよりはアカデミアとの戦いの指揮に集中してもらいたかった。

指揮官が少しでも動揺や迷いを見せたら兵士たちへの士気に影響を与えるという前世の教訓が生きていた。

問題は翔太をどうするかだ。

「俺はいくぞ…《ディメンジョン・ムーバー》を使うか、こいつを使うかだ…」

「キュイ?」

「お前だろ?伊織をここへ飛ばしたのはよぉ…」

ビャッコを抱えた翔太はじろりと彼を見る。

(それにしても、本当にビャッコちゃんって不思議だな…。翔太君の暴走を止めちゃったし…)

ビャッコが放った光によって、翔太の体から生えていたクリスタルが消滅し、彼の暴走も止まった。

おまけに、どうやったのかは知らないが伊織をここまで転移させたことも精霊としては規格外の力と言って過言ではない。

翔太も伊織と同じように、ビャッコが普通の精霊とは思えず、眠っている中で出会った純次との接点を考えずにはいられなかった。

(確かに、こいつが俺に何かしたおかげで、俺は正気に戻ったうえに俺の中にいるもう1人の魂、石倉純次をはっきり意識することができた。何者なんだ…こいつは?)

だが、《ディメンジョン・ムーバー》を使うよりはビャッコの力を使って飛んだ方が確実だと思えた。

ビャッコの負担を考えると、何人も連続で転移させるのは難しいうえに、ビャッコも一緒に転移する必要がある。

「ビャッコ、俺ら3人を転移させろ。そこの座標を送れば、確実だろう?」

「お前…本気でこのまま進むつもりか?」

「当然だ。道を開いてはい終わりだと?冗談じゃねえよ」

「翔太君…どうしたの?」

「ああ…別にどうもしてねえだろ?」

「焦ってる…?」

「はぁ!?」

思わず大声を出してしまったが、伊織は心配そうに翔太を見つめるままだ。

そんな声を出してしまった時点ですでに図星だ。

否定したい翔太だが、伊織たちの視線にもうごまかし切れないことを悟る。

「…ああ、ああそうだよ!今の俺は俺の中にいるベクターってクソ野郎を抑えるのに必死だ!仮に奪われて暴走するなら、敵陣の中でなった方がましだろう!?」

純次とベクター、2人の魂を感じたことで、翔太は本来存在しない存在だということを知ってしまった。

おまけにベクターは自分にとってはヘドが出るくらいの屑な男だ。

もしかしたらそうかもしれないと、薄々と感じていたが、それを受け止める覚悟ができていなかった。

しかも、ベクターにまたいつ体を乗っ取られるか分からない状態だ。

その事実が重くのしかかり、喚き散らしたくもなる。

「さあ、ビャッコ!連れていけ!奴らの基地に…」

「ふざけんな!!」

翔太の顎に凌牙の拳が叩き込まれ、その一発でめまいを覚えた翔太はうつぶせに倒れてしまう。

「嘘…」

「キュイー…」

「翔太さんが、一発でダウンしちゃいましたね…」

「俺の仲間の一人がプロボクサーをやってるのさ。そいつからジャブを軽く教わっただけだ。お前は翔太とそのキツネを連れて戻ってろ」

「え…?でも、転移するにはビャッコちゃんがいないと…」

「俺には…問題ねえよ」

そうつぶやくと、凌牙の体をカオスの光が包み込んでいく。

そして、伊織の目の前でバリアンの姿へと変化した。

「変身…!?もしかして、精霊…?」

「精霊じゃねえ、バリアンだ。俺のことは今度説明してやる。いいか?スペード校に戻したら、独房に入れておけ。こいつは頭を冷やす必要がある」

そう言い残した凌牙は宙に浮かび、紫色の光の球体に包まれていく。

そして、上空の裂け目めがけて飛んでいってしまった。

「精霊じゃないって言われても…精霊みたいに思えちゃう…」

「伊織さん、急いで翔太さんを連れて戻りましょう。伊織さんの回復のためにも…」

「仕方…ないよね?ビャッコちゃん、お願い!」

「キュキュ!」

ビャッコはその場で車に変身し、伊織は翔太を後部座席に乗せた後で助手席側に乗る。

ビャッコが変身した車は自動的に発進し、スペード校を目指した。

 

(秋山翔太…奴もまた、あの戦いで生まれてしまった存在…)

次元のはざまを飛びながら、凌牙は翔太のことを考える。

自分の中にベクターのような最悪な存在がいて、そんな存在に体を奪われる可能性をはらんでいるとしたら、きっと凌牙も正気ではいられないかもしれない。

過去に、自分の正体が当時は人類の敵であるバリアンかもしれないと思った時はとても苦悩したのを今でも覚えている。

そして、妹のために、前世で自分のせいで犠牲となり、バリアン世界で転生してしまった人々を守るために、仲間である侑斗たちに一度は背を向けてしまった。

(あの選択が間違いだったとは思っちゃいねえ…。だが、俺一人で抱え込んでしまったせいで、多くを犠牲にしてしまったのは事実だ。あんな後悔を…あいつにさせるわけにはいかねえ…)

自嘲するように、凌牙の口角が軽く上がる。

憎きベクターから生まれた翔太はベクターではないというのは頭では分かっているが、やはり心の中では割り切れないものがある。

おまけに、翔太の体は元々自分たちの運命をゆがめたドン・サウザンドが生み出したスペアの肉体。

それだけで憎む要素があるというのに、憎み切れない自分がいる。

だから、侑斗に自分とベクターがデュエルをしたと伝えることができなかったのだろう。

次第に、凌牙の目の前にアカデミアの基地が見えてくる。

(考えるのはあとだ。今は…それよりも、アカデミアを叩く!奴への対処はその後だ)

 

「権現坂!!」

バンと体育館のドアが吹き飛び、遊矢と柚子を乗せたマシンレッドクラウンが飛び込む。

体育館中央にあるデュエルリングには既にエドがいつでもデュエルができるように準備を整えていた。

だが、エドと数人のデュエル戦士がいるだけで、捕まっているはずの権現坂の姿が見えない。

「やぁ、父親があの男だから逃げ出したのかと思ったが、本当に来てくれるとは思わなかったよ。榊遊矢」

「エド・フェニックス…!」

「さあ、お前を倒し、捕えれば…榊遊勝は僕の前に姿を見せるだろう。そして…」

エドのデュエルディスクから発射されたデュエルアンカーが遊矢のデュエルディスクを固定し、互いに一定距離以上離れることができなくする。

「そして奴を倒すことで、僕は真のデュエル戦士であることを証明できる…!3年前の僕を完全に殺すことができる」

「3年前…それに、遊勝さんって…」

「エド!?父さんを知っているのか!?父さんはどこにいる!?権現坂は!!」

「うるさいな…質問は1つずつが普通だろう。君の父さんはこのエクシーズ次元にいた。今は融合次元のどこかにいるかもしれないな…。そして、君の仲間はあそこにいる」

エドが天井に指をさし、遊矢と柚子の視線がそちらに向かう。

天井には両手足を拘束された状態で椅子に座らされている権現坂の姿が見えた。

「権現坂!!お前…!!」

「大丈夫だ。今のところは生きている。けれど…これからのデュエルの状況によっては…彼の命は保証しかねる」

「そんな…どうして!?融合次元はどうしてそんなひどいことができるの!?」

「ひどい…?君たちのようなたかが遊びでデュエルをする君たちにはわからないだろうな。すべての次元を1つにするという崇高な目的のために行う僕たちのデュエルを…」

「崇高な目的…」

遊矢は舞網チャンピオンシップで素良と戦っていたときに、素良が言っていた言葉を思い出す。

彼は融合召喚のことを言っていたが、その内容は先ほどエドが言っていたのとニュアンスが一致している。

端的に言えば、その目的のためならばどんな犠牲も許されるという意味には遊矢に聞こえる。

「あの男は忌むべき男だよ…。3年前に、ハートランドに来て間もない僕にエンタメデュエルなんてものを見せて…おまけにデュエルは人を笑顔にするためにやるものだ、なんてきれいごとを言った」

「父さんが…」

3年前のストロング石島のデュエル直前に失踪し、逃げたチャンピオンの息子として遊矢は周囲の人々から馬鹿にされ続けてきた。

遊矢は必死に父親は逃げたわけでもないし臆病者でもないと自分に言い聞かせ続けてきた。

だが、エドの言葉を聞いて、どうして別次元に来てしまったのかはわからないが、自らの信条に従うようにアカデミアにもそのデュエルを伝えようとしていたことが分かった。

「おまけに僕を倒して、アカデミアの正義を一瞬でも疑問に思わせた。そして、俺にこのカードを渡してきた!」

投げつけるようにエドが遊矢に見せたのは破れた《スマイル・ワールド》のカードだ。

おそらく、これはエドが自分自身の手で破ったのだろう。

「そんな男を僕は許せない!今度こそ奴を倒し、アカデミアの正義を…」

「良かった…」

「何!?」

「遊矢…」

「父さんは…臆病者なんかじゃなかった…。俺の知らないところで、アカデミアを止めるために戦ってくれていたんだ…」

結果として、つらい3年間を送ることになったうえに、結局アカデミアがスタンダード次元を攻撃し、ランサーズ結成に至っている。

そして、遊矢自身も戦いに巻き込まれることになった。

だが、臆病者ではないと信じた自分は間違っていなかった、自分が信じていた父親は本物だったと確信できたことがうれしかった。

「エド・フェニックス!なら、今度は俺が、俺自身のエンタメデュエルでお前に伝える!デュエルは戦争の道具じゃないってことを!」

「何をふざけたことを…この状況が分かっているのか!?」

権現坂が人質に取られ、周囲にはデュエル戦士たちがいる。

やろうと思えば、デュエル戦士たちと共に集団戦に持ち込み、数の暴力で打ち負かしたうえで柚子を捕獲することだってできる。

だが、遊矢の視線はしっかりとエド1人に向けられている。

「その眼が気に入らないんだ…!お前たちは手を出すな!この男は…この男だけは僕1人で倒す!このデュエルが終わるまで、奴にも柊柚子にも手を出すことは総司令である僕が許さない!」

デュエルの準備をしようとしていたデュエル戦士たちはエドの命令により動きを止め、その場で静観の態度をとる。

「アクションフィールドは好きにしろ。僕は榊遊勝もアクションデュエルも認めない。フィールドのアクションカードもすべてくれてやる」

「分かった…。でも、使いたくなったら好きにしてくれ。アクションカードを手にするときはどんなカードが出るかわからない。そして、求めているカードを手にしたらうれしくなる。きっと、面白いぞ!」

目をキラキラさせ、アクションデュエルの楽しさを口にする遊矢にエドは聞く耳を持たない。

遊矢はランダムでアクションフィールドを選択する。

「フィールド魔法発動!《マジカル・ブロードウェイ》!」

皮肉なことに、遊勝が得意としていたフィールドが出現し、体育館内が夜のハリウッドのような華やかな街並みに包まれる。

その光景に3年前のことを思い出したのか、エドは苦い表情を浮かべる。

(あの男が得意としているフィールド…僕の…アカデミアの正義を一度は打ち負かした…)

(父さん…俺、やるよ。彼のためにも、権現坂や柚子のためにも…そして、俺自身のためにも…)

シンクロ次元での戦いで、守るべきもののためには、時には非常な選択をしなければならない現実を知り、その中でデュエルチェイサー227を、シンジを倒し、地下送りにしてしまった。

すべては柚子たちを守るため、そしてジャックを倒してシンクロ次元の狂った競争社会を否定するためだ。

だが、その狂った競争社会で勝者となり、そのうえでその社会を否定してデュエルの楽しさを示すというのは大きな矛盾がある。

だが、大きすぎる悪ほど歪んだ常識として肯定され、その常識の範囲内で正当な手段で覆すことができないのも事実だ。

覚悟を決めて、戦い続け、ジャックやセルゲイを倒し、狂った競争社会も変化を生じ始めた。

しかし、デュエルの楽しさを示すことができず、戦争の手段として使うことしかできなかった。

遊矢はデュエルが人を笑顔にする力を持っていることを自分に証明したかった。

「行くぞ!戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が、モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い、フィールド内を駆け巡る!見よ、これぞデュエルの最終進化形、アクショーーン、デュエル!!」

「その遊びのような陽気な物言い、うっとうしいことこの上ないな!!」

 

遊矢

手札5

ライフ4000

 

エド

手札5

ライフ4000

 

「く、うう…」

一度は沈んだ権現坂の意識が徐々に戻っていき、視界が開けていく。

ぼやけた視界が徐々に戻っていくのを感じる。

「ここは…つりさげられているというのか…?」

両手足は動かすことができず、仮に拘束を外して椅子から立ったとしても、ここは天井からつりさげられている状態であるため、むしろそれをやった方が危険と言える。

下を見ると、そこにはデュエルアンカーで繋がっている遊矢とエドの姿が見えた。

「遊矢、柚子…」

分かっていたとはいえ、やはり彼は来ていた。

仲間である自分を救うために。

 

「俺の先攻。俺はスケール3の《EMパートナーガ》とスケール6の《EMリザードロー》でペンデュラムスケールをセッティング!」

さっそく2つの光の柱が生まれ、遊矢のペンデュラム召喚のチャンスを与える。

「そして、《リザードロー》の効果。《リザードロー》以外のEMがもう片方のペンデュラムゾーンの置かれている場合、このカードを破壊することで、デッキからカードを1枚ドローできる。そして、空いているペンデュラムゾーンにスケール6の《EMオッドアイズ・シンクロン》をセッティング。これで俺はレベル4または5のモンスターを同時に召喚可能!揺れろ、魂のペンデュラム!天空に描け、光のアーク!ペンデュラム召喚!手札から《EMペンデュラム・マジシャン》、《EMセカンドンキー》!」

 

EMペンデュラム・マジシャン レベル4 攻撃1500

EMセカンドンキー レベル4 守備2000

 

「《ペンデュラム・マジシャン》と《セカンドンキー》の効果!まずは《セカンドンキー》の効果。このカードの召喚・特殊召喚に成功したとき、そして俺のペンデュラムゾーンにカードが2枚存在する場合、デッキから《セカンドンキー》以外のEM1枚を手札に加える。俺は《ドクロバット・ジョーカー》を手札に加える。そして、《ペンデュラム・マジシャン》の効果。このカードの特殊召喚に成功したとき、俺のフィールドのカードを2枚まで破壊し、破壊したカードの数だけデッキから《ペンデュラム・マジシャン》以外のEMを手札に加える。俺は《オッドアイズ・シンクロン》と《パートナーガ》を破壊し、デッキから《スライハント・マジシャン》と《スマイル・マジシャン》を手札に加える」

「《スマイル・マジシャン》だと…!?」

そのカードを見たエドは遊勝とのデュエルを思い出す。

《スマイル・ワールド》と共に使ってきたカードで、このカードもまたエドにとっては忌むべきカードだ。

「そして、スケール1の《スマイル・マジシャン》とスケール8の《ドクロバット・ジョーカー》でセッティング。俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

遊矢

手札5→2(うち1枚《EMスライハント・マジシャン》)

ライフ4000

場 EMペンデュラム・マジシャン レベル4 攻撃1500

  EMセカンドンキー レベル4 守備2000

  伏せカード1

  EMスマイル・マジシャン(青) ペンデュラムスケール1

  EMドクロバット・ジョーカー(赤) ペンデュラムスケール8

 

エド

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「僕のターン、ドロー!」

 

エド

手札5→6

 

「僕はフィールド魔法《ダーク・シティ2-バッド・ナイト》永続魔法扱いで発動する!」

アクションデュエルを否定するエドだが、将来そのルールで戦わなければならなくなる可能性を踏まえ、ルールだけは熟知していた。

発動と共に、《マジカル・ブロードウェイ》の一部の建物が崩れ、ペンキの落書きが書かれた廃ビルが地中から姿を現す。

「《バッド・ナイト》のエフェクト。1ターンに1度、デッキのD-HERO1体をセメタリーへ送る。僕は《ドリームガイ》をセメタリーへ送る。そして、手札から《D-HEROディバインガイ》を召喚」

背中に円盤状の刃を背負っている、黒と茶色のスニーキングスーツ姿の戦士が現れる。

 

D-HEROディバインガイ レベル4 攻撃1600

 

「バトル!《ディバインガイ》で《ペンデュラム・マジシャン》を攻撃!そして、《ディバインガイ》のエフェクト発動!このカードの攻撃宣言時、相手フィールドに存在する魔法カード1枚を破壊し、相手に500ダメージを与える!」

《D-HEROディバインガイ》が背中の刃を遊矢のフィールドに投げつける。

刃は《EMスマイル・マジシャン》を真っ二つに切り裂き、遊矢を斬りつける。

アクションカードを探しに行きたいところだったが、飛んでくる刃への守りを考えるとそうしている場合ではない。

「くっ…!」

左腕で守ったおかげで、衝撃を感じるだけで済んだものの、もし生身の腕で守っていたら斬られて出血していたかもしれない。

 

遊矢

ライフ4000→3500

 

「遊矢…!な、ぐああああああ!!」

遊矢がダメージを受けると同時に、権現坂の体に電気が流れる。

権現坂の悲鳴が聞こえた遊矢と柚子は思わず上を見上げる。

「権現坂!」

「君がダメージを受けるたびに、彼の体に電撃が流れるようになっている。一度に受けるダメージが大きければ大きいほど、その威力は増す。2000以上のダメージを一度に受けたら、死ぬだろうね」

「く…エド…!!」

「《パートナーガ》のエフェクトは自分フィールドのモンスター1体の攻撃力を自分フィールドのEMの数×300アップさせる効果がある。そして、《スマイル・マジシャン》のペンデュラムエフェクトは元々の攻撃力よりも高い攻撃力を持つ自分のモンスターが破壊されたとき、ペンデュラムゾーンから特殊召喚できる効果を持つ。ペンデュラム召喚と《スマイル・マジシャン》のペンデュラム効果は封じさせてもらう」

遊矢の怒りをよそに、エドは淡々と《D-HEROディバインガイ》がこの攻撃で見せた有用性を説明する。

レベル8の《EMスマイル・マジシャン》をペンデュラム召喚するには、スケール9以上のペンデュラムモンスターが必要となる。

そのカードが遊矢のデッキになく、ペンデュラムスケールを操作するカードも少ないため、エクストラデッキから特殊召喚しづらい状態だ。

《D-HEROディバインガイ》で2つの展開手段を破壊した。

そして、右手の拳で《EMペンデュラム・マジシャン》を貫き、破壊する。

 

遊矢

ライフ3500→3400

 

「そして、ダメージを受けたことで…」

「うおおお!!」

また、権現坂の体を電気ショックが遅い、弱った権現坂の体を痛めつける。

「権現坂ぁ!!」

「そして、僕は手札の《D-HEROフュージョンガイ》のエフェクト発動!僕のバトルフェイズ中、僕のフィールドに存在するモンスターがD-HERO1体のみの場合、手札のこのカードとそのモンスターを素材にHERO融合モンスターを融合召喚する!」

《融合》の渦が描かれたスーツ姿で、顔にDとFが重ねて大きく書かれた白い仮面をつけた男と《D-HEROディバインガイ》が上空に出現した《融合》の渦の中へ消えていく。

「渦の中に溶け込む英雄よ、切り裂く刃を背負いし英雄よ、今一つとなりて死神の刃となれ!融合召喚!カモン!《D-HEROデッドリーガイ》!」

ダークブルーのマントで全身を隠し、両肩や仮面に鋭い悪魔の角の飾りをつけた闇のHEROが現れる。

 

D-HEROデッドリーガイ レベル6 攻撃2000

 

「《デッドリーガイ》のエフェクト。手札1枚をセメタリーへ捨て、手札・デッキからD-HERO1体をセメタリーへ送ることで、ターン終了時まで僕のフィールドのD-HEROの攻撃力をセメタリーのD-HEROの数×200アップさせる」

《D-HEROデッドリーガイ》の体が浅黒いオーラに包まれていて、それが彼の右拳に収束されていく。

 

手札から墓地へ送られたカード

・D-HEROディスクガイ

 

デッキから墓地へ送られたカード

・D-HEROディアボリックガイ

 

D-HEROデッドリーガイ レベル6 攻撃2000→3000

 

「《デッドリーガイ》で《セカンドンキー》を攻撃!デッドエンド・ナックル!」

《D-HEROデッドリーガイ》がその拳で《EMセカンドンキー》の胴体を貫き、消滅させる。

これで遊矢のフィールドからモンスターがいなくなってしまった。

「僕かカードを1枚伏せ、ターンエンド。《デッドリーガイ》のエフェクトは消える」

 

遊矢

手札2(うち1枚《EMスライハント・マジシャン》)

ライフ3400

場 伏せカード1

  EMドクロバット・ジョーカー(赤) ペンデュラムスケール8

 

エド

手札6→1

ライフ4000

場 D-HEROデッドリーガイ レベル6 攻撃3000→2000

  伏せカード1

  ダーク・シティ2-バッドナイト(永続魔法扱い)

 

「くっ…」

「そうだ、その顔だよ。この怒りに満ちた顔で、どうやって見せるというんだ?デュエルで人を笑顔にするというのを…」

現に、それを口にした遊矢自身の顔から笑顔が消え、怒りを見せている。

「そもそも、親父にできなかったことを…その親父に劣るお前ができるわけがないだろう…?」

「…俺の、ターン!!」

エドの言葉を振り払うように、遊矢はカードをドローする。

「遊矢…」

自分のデュエルを否定されつつある中、それでも権現坂を救うためには戦わなければならない。

遊矢の苦悩を感じた柚子は何も言葉をかけることができない。

 

遊矢

手札2→3

 

「俺は…スケール2の《ドラミング・コング》をセッティング…。これで俺はレベル3から7までのモンスターを同時に召喚可能!」

幸いというべきか、ドローした《EMドラミング・コング》のスケールは2で、再びペンデュラム召喚が可能な状態となる。

「揺れろ、魂のペンデュラム!天空に描け、光のアーク!ペンデュラム召喚!現れろ、俺のモンスターたち!《EMペンデュラム・マジシャン》、《EMリザードロー》、《EMパートナーガ》、《EMスライハント・マジシャン》!」

赤と黒の道化師の服と帽子、そして目元がT字の穴が開いている白マスクを身に着けたモンスターが青い水晶が飾られた杖を天にかざす。

すると、一気に3体のEMが上空に出現した青いゲートから飛び出してきた。

 

EMスライハント・マジシャン レベル7 攻撃2500

EMペンデュラム・マジシャン レベル4 攻撃1500

EMリザードロー レベル3 攻撃1200

EMパートナーガ レベル5 守備2100

 

「《ペンデュラム・マジシャン》と《パートナーガ》の効果発動!まずは《パートナーガ》の効果。《スライハント・マジシャン》の攻撃力を俺のフィールドのEMの数×300アップさせる!」

《EMパートナーガ》が体を伸ばしていき、その体を3体のEM達がつかんでいく。

そして、4体分の力が《EMスライハント・マジシャン》に集約していく。

 

EMスライハント・マジシャン レベル7 攻撃2500→3700

 

「そして、《ペンデュラム・マジシャン》の効果。《リザードロー》と《パートナーガ》を破壊し、デッキから《EMオッドアイズ・ディゾルヴァー》と《オッドアイズ・ユニコーン》を手札に加える。そして、手札から魔法カード《ペンデュラム・ホルト》を発動。俺のエクストラデッキに表側表示で存在するペンデュラムモンスターが3体以上存在するとき、デッキからカードを2枚ドローする」

手札に2枚のペンデュラムモンスターをサーチしたうえに、手札補充まで行うことでいまだに遊矢の手札は4枚。

手札を確認した後で、遊矢はエドの《ダーク・シティ2-バッド・ナイト》を見る。

(《スライハント・マジシャン》は1ターンに1度、手札1枚を捨てることで、フィールド上に表側表示で存在するカード1枚を破壊できる効果がある。その効果で《バッド・ナイト》を破壊すれば、これ以上D-HEROを墓地に落とさないで済む…けど…)

遊矢を迷わせるのはエドの伏せカードだ。

仮に《天罰》などのカウンター罠で、《EMスライハント・マジシャン》が破壊されてしまった場合、フィールドには《ペンデュラム・マジシャン》だけになってしまう。

遊矢にとって、このタイミングでそのカードを発動されたら致命的だ。

「バトルだ!《スライハント・マジシャン》で《デッドリーガイ》を攻撃!」

「《バッド・ナイト》のエフェクト。僕のD-HEROが自分よりも攻撃力の上回るモンスターと戦闘を行うとき、ダメージステップ終了時まで攻撃力を1000アップする。

 

D-HEROデッドリーガイ レベル6 攻撃2000→3000

 

「でも、攻撃力は《スライハント・マジシャン》の方が上だ!更に、《ドラミング・コング》のペンデュラム効果発動!1ターンに1度、モンスター同士で戦闘が行われるとき、その自分のモンスターの攻撃力をターン終了時まで600アップさせる!エンタメ・マジック!」

《EMスライハント・マジシャン》の杖から放たれる黒い魔力の弾丸を受けた《D-HEROデッドリーガイ》が爆発・消滅する。

「ちっ…!」

 

EMスライハント・マジシャン レベル7 攻撃3700→4300

 

エド

ライフ4000→2700

 

「そして、《ペンデュラム・マジシャン》でダイレクトアタック!」

続けて《EMペンデュラム・マジシャン》が持っている振り子で振動を起こし、エドにダメージを与えようとする。

「僕は《ダーク・シティ2-バッド・ナイト》のエフェクト発動!僕のフィールドにモンスターが存在せず、セメタリーにD-HEROが5体以上存在する状態で直接攻撃を受けるとき、このカードをセメタリーへ送ることで、その攻撃を無効にする!」

「何!?《バッド・ナイト》にはそんな効果が…!」

エドの周囲を落書きのある壁が覆い、《EMペンデュラム・マジシャン》の攻撃を受け止める。

受け止めた後、壁が砕け、エドの背後に黒い大きな人影が現れる。

「あ、ああ…!」

「そして、手札・デッキ・セメタリーからあるモンスターを《幽獄の時計塔》の効果による特殊召喚扱いで特殊召喚できる…。カモン、時計塔に囚われし狂戦士、《D-HEROドレッドガイ》!」

ずしり、ずしりと足音を響かせ、エドの目の前に背後の男が移動する。

《マジカル・ブロードウェイ》の人工的な光がその姿を暴き出す。

鉄仮面で顔を隠し、ちぎれた拘束具を両手足につけた褐色の巨漢が遊矢の前で叫び声を上げる。

 

D-HEROドレッドガイ レベル8 攻撃?

 

ダーク・シティ2-バッド・ナイト

フィールド魔法カード

このカード名の(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか発動できない。

(1):1ターンに1度、自分のデッキに存在する「D-HERO」モンスター1体を対象に発動できる。そのカードを墓地へ送る。

(2):自分フィールドの「D-HERO」が戦闘を行うとき、戦闘を行う相手モンスターの攻撃力が戦闘を行う自分のモンスターよりも上回っている場合に発動できる。戦闘を行う自分のモンスターの攻撃力がダメージステップ終了時まで1000アップする。

(3):自分フィールドにモンスターが存在せず、自分の墓地に「D-HERO」が5体以上存在する状態で、相手の直接攻撃宣言時に発動できる。このカードを墓地へ送ることで、その攻撃を無効にする。その後、自分の手札・デッキ・墓地から「D-HEROドレッドガイ」1体を「幽獄の時計塔」の効果による特殊召喚扱いで自分フィールドに特殊召喚する。

 

「《ドレッドガイ》のエフェクト…。《幽獄の時計塔》のエフェクトで特殊召喚された場合、僕のフィールドのD-HERO以外のモンスターをすべて破壊し、セメタリーからD-HERO2体を特殊召喚する。僕は《デッドリーガイ》と《ディバインガイ》を特殊召喚する」

 

D-HEROデッドリーガイ レベル6 攻撃2000

D-HEROディバインガイ レベル4 攻撃1600

 

「そして、《ドレッドガイ》の攻撃力と守備力は僕のフィールドのD-HEROの攻撃力の合計となる」

 

D-HEROドレッドガイ レベル8 攻撃0→3600

 

「更に、《ドレッドガイ》が特殊召喚されたターン、D-HEROは破壊されず、僕が受ける戦闘ダメージも0となる…」

「くっ…!」

《D-HEROデッドリーガイ》が再び現れたうえに、それ以上の力を誇る《D-HEROドレッドガイ》が現れてしまった。

(《ドレッドガイ》も《デッドリーガイ》も、俺とのデュエルでは召喚されなかったモンスター…。エド・フェニックス、D-HERO、底が全く見えん…!)

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド!」

 

遊矢

手札3(うち2枚《EMオッドアイズ・ディゾルヴァー》、《EMオッドアイズ・ユニコーン》)

ライフ3400

場 EMスライハント・マジシャン レベル7 攻撃4300→2500

  EMペンデュラム・マジシャン レベル4 攻撃1500

  伏せカード2

  EMドラミング・コング(青) ペンデュラムスケール2

  EMドクロバット・ジョーカー(赤) ペンデュラムスケール8

 

エド

手札1

ライフ2700

場 D-HEROデッドリーガイ レベル6 攻撃2000

  D-HEROドレッドガイ レベル8 攻撃3600

  D-HEROディバインガイ レベル4 攻撃1600

  伏せカード1

 

ライフは上回っているが、状況はほぼ互角。

《D-HEROドレッドガイ》の無敵のバリアが消えた今なら、遊矢はD-HERO達を破壊することができる。

だが、あくまでそれは今は、だ。

「僕のターン、ドロー」

 

エド

手札1→2

 

「僕は手札から魔法カード《死者蘇生》を発動。セメタリーから《ディスクガイ》を特殊召喚する」

腕や背中にディスクを装着している灰色の戦士が現れる。

 

D-HEROディスクガイ レベル1 守備300

D-HEROドレッドガイ レベル8 攻撃3600→3900

 

「《ディスクガイ》のエフェクト!このカードがセメタリーから特殊召喚に成功したとき、1度だけデッキからカードを2枚ドローできる。そして、手札から魔法カード《融合》を発動」

「フィールドには4体のD-HERO…遊矢、気を付けろ!これから召喚されるモンスターは…危険だぁ!!」

権現坂は傷ついた体に鞭を打ち、警告するために叫ぶ。

「権現坂…遊矢!!気を付けて!!」

「何…!?」

「僕が融合素材とするのは《ディスクガイ》と《ディバインガイ》。円盤を備えし英雄よ、切り裂く刃を背負いし英雄よ、今一つとなりて暗黒の未来に君臨せよ!融合召喚!カモン!《D-HEROディストピアガイ》!」

権現坂を倒した失楽園の英雄が今度はランサーズの道化師を葬るために《マジカル・ブロードウェイ》に降臨する。

 

D-HEROディストピアガイ レベル8 攻撃2800

D-HEROドレッドガイ レベル8 攻撃3900→4800

 

「《ディストピアガイ》…これが…」

「《ディストピアガイ》、《デッドリーガイ》、《ドレッドガイ》…。貴様は彼らによって無様に敗れ去る!《ディストピアガイ》のエフェクト発動!このカードの特殊召喚に成功したとき、セメタリーに存在するレベル4以下のD-HERO1体の攻撃力分のダメージを相手に与える!僕は《ディバインガイ》を対象にする。スクイズ・パーム!!」

《D-HEROディストピアガイ》の手から発射される黒いビームが遊矢を撃ち抜く。

「うわあああ…ぐっ!!」

吹き飛ばされた遊矢はビルに背中をぶつけた後で、前のめりに倒れる。

 

遊矢

ライフ3400→1800

 

「そして、そのダメージが君の仲間にも及ぶ」

「ぐあああああ!!!」

先ほどまでとは比べ物にならないほどの激しい電撃が権現坂を襲い、権現坂の嗅覚を焦げた匂いが刺激する。

倒れた遊矢の視線はそんな権現坂に向いていた。

「くそ…権現坂ぁ…!」

「彼を気にしている場合か?僕は《デッドリーガイ》のエフェクト発動!手札1枚と、デッキのD-HERO1枚を墓地へ送る。そして、墓地のD-HEROの数×200、僕のフィールドのD-HERO達の攻撃力をアップさせる」

 

手札から墓地へ送られたカード

・D-HEROダイヤモンドガイ

 

デッキから墓地へ送られたカード

・D-HEROダイハードガイ

 

D-HEROディストピアガイ レベル8 攻撃2800→4200

D-HEROドレッドガイ レベル8 攻撃4800→6200

D-HEROデッドリーガイ レベル6 攻撃2000→3400

 

「そんな…攻撃力6200と4200、3400…」

《D-HEROデッドリーガイ》の効果によって、遊矢のモンスターの攻撃力をはるかに上回るモンスターが3体も生まれてしまった。

当然、今の遊矢のライフでは、《ドレッドガイ》による《EMスライハント・マジシャン》の攻撃を受け止めきることができない。

それに、その攻撃で遊矢が受けるダメージは3700。

その分の電撃を受けてしまったら、権現坂の命にかかわる。

「《ディストピアガイ》のエフェクト発動。1ターンに1度、このカードの攻撃力が元々の攻撃力と異なるとき、フィールドのカード1枚を破壊し、攻撃力を元に戻す!」

「何!?」

「ノーブルジャスティス!」

Dのポーズを取った後で、《D-HEROディストピアガイ》の胸部からビームが発射され、遊矢の伏せカードの1枚を撃ち抜き、消滅させる。

 

D-HEROディストピアガイ レベル8 攻撃4200→2800

 

破壊された伏せカード

・EMピンチ・ヘルパー

 

現状では唯一の迎撃手段だったと思われる伏せカードを失った遊矢はアクションカードを手にするために走り出す。

デュエルアンカーで拘束されていて、探索できる範囲は制限されているものの、それでも何枚かは見つけることができるはずだ。

「バトル!《ドレッドガイ》で《スライハント・マジシャン》をプレデター・オブ・ドレッドノート!!」

《D-HEROドレッドガイ》が四つん這いになり、激しい雄たけびを上げる。

叫び声を受けた《EMスライハント・マジシャン》が消し飛び、更にはその衝撃波が遊矢を襲う。

「このダメージを受けたら、遊矢が…権現坂が…!!」

「これで終わりだ、榊遊矢!!」

「いいや、まだだ!!これは…アクションデュエルなんだ!!」

遊矢は道路に貼り付けるように置かれていたアクションカードを手にする。

「アクション魔法、《オフ》を発動!俺が受ける戦闘ダメージまたは効果ダメージを1度だけ0にする!」

衝撃波が遊矢の目の前でかき消され、遊矢へのダメージが0となる。

 

オフ

アクション魔法カード

(1);自分が受ける戦闘ダメージ、または効果ダメージを0にする。

 

「このタイミングで、そんなカードを…!」

「デュエルを始める前にも言っただろう?これがアクションデュエルの醍醐味だって…!」

遊矢もこのカードを手にするまで、敗北を覚悟しなければならなかった。

モンスターが破壊されてしまい、その状態では《奇跡》も《回避》も発動できない状態だ。

だから、確実にダメージを0にできるアクション魔法カードが必要だったが、どんぴしゃりとはまった。

だが、まだ《D-HEROディストピアガイ》と《D-HEROデッドリーガイ》の攻撃が残っていて、遊矢のフィールドに残っているモンスターは《EMペンデュラム・マジシャン》1体のみ。

《EMドラミング・コング》のペンデュラム効果は使っていないため、その効果を使ってダメージを軽減させることはできる。

「《デッドリーガイ》で《ペンデュラム・マジシャン》を攻撃!デッドエンド・ナックル!」

《D-HEROデッドリーガイ》の拳が《EMペンデュラム・マジシャン》に迫る。

「《ドラミング・コング》、《ペンデュラム・マジシャン》に力を!!」

《EMドラミング・コング》が体についているドラムを叩き、それに鼓舞された《EMペンデュラム・マジシャン》はバリアを張る。

しかし、それでも力を増した《D-HEROデッドリーガイ》の攻撃を防ぐことができず、バリア共々体を貫かれて消滅した。

「うわあああ!!」

「ぐおおおお!あああああ!!」

ダメージを受けた遊矢が路上を転げまわり、同時に権現坂も強い電撃に襲われる。

 

EMペンデュラム・マジシャン レベル4 攻撃1500→2100

 

遊矢

ライフ1800→500

 

「遊矢のライフがあと…500…」

次は《D-HEROディストピアガイ》が攻撃しようと遊矢に指をさす。

指には闇の破壊エネルギーが凝縮されていく。

「終わりだ…榊遊矢。お前も、お前の仲間も、柊柚子も…!?」

「《ペンデュラム・マジシャン》は破壊されていない!!」

立ち上がった遊矢の宣言と共に、ビルの屋上で破壊されたはずの《EMペンデュラム・マジシャン》が無事な姿を見せていた。

そして、その背後には《EMオッドアイズ・ディゾルヴァー》の姿があった。

「俺は手札の《EMオッドアイズ・ディゾルヴァー》の効果を発動したんだ!俺のペンデュラムモンスターが相手モンスターと戦闘を行うダメージステップ開始時に手札から特殊召喚し、そのモンスターを戦闘による破壊から守るんだ」

 

EMオッドアイズ・ディゾルヴァー レベル8 守備2600

 

「それがどうした!?《ディストピアガイ》の攻撃力は2800!《ペンデュラム・マジシャン》への攻撃が通れば、お前の負けだ!」

確かに、たとえ《EMオッドアイズ・ディゾルヴァー》の効果で《EMペンデュラム・マジシャン》を守ったとしても、これでは意味がない。

遊矢は再びアクションカードを手にするために動き出す。

デュエルアンカーで拘束しているエドだが、引っ張ったりして妨害しようとはしない。

彼が見ているのは再び攻撃対象となる《EMペンデュラム・マジシャン》だけだ。

「《ディストピアガイ》で《ペンデュラム・マジシャン》を攻撃!ディストピアブロー!!」

《D-HEROディストピアガイ》が拳を握りしめ、《EMペンデュラム・マジシャン》に向けて振るう。

拳と《EMペンデュラム・マジシャン》の振り子の波紋がぶつかり合うと同時に再び爆発が起こり、煙が遊矢と遊矢のモンスターを包み込む。

「これで、お前へのダメージは700。このデュエルは僕の…!?」

攻撃が通ったはずなのに、デュエル終了と共に外れるはずのデュエルアンカーが外れていない。

まだ何かしらの理由で彼とのデュエルが続いていることを意味していた。

煙が消えると、そこには《EMオッドアイズ・ディゾルヴァー》と遊矢の姿があった。

「アクション魔法…《奇跡》!フィールド上のモンスター1体はこの戦闘では破壊されず、俺への戦闘ダメージが半分になる!」

「何!?だが、お前のフィールドに《ペンデュラム・マジシャン》はいないぞ!」

「《ペンデュラム・マジシャン》じゃない。《ディストピアガイ》にかけたのさ!」

「ちぃ…!」

 

遊矢

ライフ500→150

 

遊矢のライフが残ったうえに、再び《EMペンデュラム・マジシャン》がエクストラデッキに戻った。

これで、遊矢は再びペンデュラム召喚で《EMペンデュラム・マジシャン》の効果を使うことができる。

「だが…これでまた、君の仲間が苦しむ…!」

権現坂を再び電撃が襲う。

先ほどと比べたら大したことはないが、弱っている権現坂には辛いことには変わりない。

しかし、権現坂は黙して耐えた。

(遊矢…!お前の、友のデュエルを信じる…このくらいはどうということもないわ…!)

「…僕のフィールドに、もう攻撃できるモンスターはいない。僕はこれでターンエンド…!」

 

遊矢

手札3→2(うち1枚《EMオッドアイズ・ユニコーン》)

ライフ150

場 EMオッドアイズ・ディゾルヴァー レベル8 守備2500

  伏せカード1

  EMドラミング・コング(青) ペンデュラムスケール2

  EMドクロバット・ジョーカー(赤) ペンデュラムスケール8

 

エド

手札2→0

ライフ2700

場 D-HEROデッドリーガイ レベル6 攻撃3400→2000

  D-HEROドレッドガイ レベル8 攻撃6200→4800

  D-HEROディストピアガイ レベル8 攻撃2800

  伏せカード1

 

(くそ…!まさかたった2枚のアクションカードが僕の勝利を遠ざけるとは…!)

遊勝とのデュエルもそうだった。

あと少しで勝利するところを、アクションカードの引きによって遠ざけられた。

その時の悔しさを思い出してしまう。

(悔しい…まさか、僕は悔しいと思ったのか??)

アカデミアでの昇格のためのデュエルでも、ここでの戦いの時も、そのような気持ちをあの時以来感じたことはなかった。

その感情すら、デュエル戦士となるために遠ざけていた。

「俺のターン、ドロー!!」

 

遊矢

手札2→3

 

「俺は手札から永続魔法《魂のペンデュラム》を発動!」

発動と同時に、遊矢の頭上にペンデュラムのソリッドビジョンが現れ、静かに揺れ動く。

「《魂のペンデュラム》は1ターンに1度、自分のペンデュラムゾーンのカード2枚のペンデュラムスケールを1つ変動させることができる。俺は《ドクロバット・ジョーカー》のペンデュラムスケールを1つ増やし、《ドラミング・コング》のスケールを1つ減らす!」

 

EMドラミング・コング(青) ペンデュラムスケール2→1

EMドクロバット・ジョーカー(赤) ペンデュラムスケール8→9

 

「これで俺はレベル2から8までのモンスターを同時に召喚可能!再び揺れろ、魂のペンデュラム!天空に描け、光のアーク!ペンデュラム召喚!《EMペンデュラム・マジシャン》、《EMリザードロー》、《EMパートナーガ》、そして、人々を笑顔にする奇術師、《EMスマイル・マジシャン》!」

 

EMペンデュラム・マジシャン レベル4 攻撃1500

EMリザードロー レベル3 攻撃1200

EMパートナーガ レベル5 攻撃500

EMスマイル・マジシャン レベル8 攻撃2500

 

「ちっ…忌々しい《スマイル・マジシャン》を再び…!」

「《魂のペンデュラム》は俺がペンデュラムモンスターをペンデュラム召喚するたびに、カウンターを1つ乗せる。そして、フィールド上のペンデュラムモンスターの攻撃力はそのカウンターの数×300アップする」

ペンデュラムの中央に1の数字が点灯し、遊矢のペンデュラムモンスターたちが青いオーラに包まれる。

 

魂のペンデュラム カウンター0→1

EMペンデュラム・マジシャン レベル4 攻撃1500→1800

EMリザードロー レベル3 攻撃1200→1500

EMパートナーガ レベル5 攻撃500→800

EMスマイル・マジシャン レベル8 攻撃2500→2800

EMオッドアイズ・ディゾルヴァー レベル8 攻撃2000→2300

 

「更に、《スマイル・マジシャン》の効果!このカードの召喚・特殊召喚に成功したとき、デッキからスマイルと名の付く魔法・罠カード1枚を手札に加えることができる。俺は《スマイル・ワールド》を手札に加える!」

「《スマイル・ワールド》だと…!やはり貴様もそれを…!」

榊遊勝がエンタメデュエルの象徴として持っていた《スマイル・ワールド》。

あのデュエルの後、デュエルの楽しさを教えたいと言ってこのカードを渡してきたのを覚えている。

だが、そのカードを手にするとアカデミアの正義を裏切ることになりかねず、彼はそれを半分に破った。

「エド…お前は本当は分かってるだろう?デュエルの楽しさを!」

「黙れ!アカデミアの…すべての次元を一つにし、理想郷とする崇高な理想!そのための…」

「違う!だったら、どうしてお前はその《スマイル・ワールド》のカードを捨てなかった!本当に否定したいなら、捨ててしまえばよかっただろう!」

「それは…」

実際、エドは何度もこの敗れた《スマイル・ワールド》を捨てようと思っていた。

だが、なぜか捨てることができず、今もこうして自分の手の中にある。

「それは父さんとのデュエルが楽しかったからだろう!あのデュエルをもっとやりたいからだろう!」

「黙れ!!黙れ黙れ黙れ!!お前も…お前までも僕を…アカデミアを否定するなぁ!」

「だったら、もう1度思い出させてやる!《パートナーガ》の効果発動!《スマイル・マジシャン》の攻撃力を1500アップさせる!」

 

EMスマイル・マジシャン レベル8 攻撃2800→4300

 

「更に、《ペンデュラム・マジシャン》の効果発動!《ドクロバット・ジョーカー》と《ドラミング・コング》を破壊し、デッキから《EMゴムゴムートン》と《EMユーゴーレム》を手札に加える!そして…俺は《スマイル・マジシャン》の効果発動!俺のフィールドに存在するモンスターがEM、魔術師ペンデュラムモンスター、オッドアイズのみで、このカードの攻撃力が元々の攻撃力よりも高い時、俺のフィールドの元々の攻撃力よりも高い攻撃力を持つモンスターの数だけデッキからカードをドローする!」

「何…!?」

今の遊矢のフィールドはEMで満たされており、おまけに全員ペンデュラムモンスターであることから《魂のペンデュラム》の効果で攻撃力が300アップしている。

「つまり…遊矢がドローするカードは…5枚!!」

「そうだ!この効果で俺はカードを5枚ドローする!」

遊矢は一気に5枚のカードをドローし、手札が10枚にまで増強される。

だが、これほどのドロー効果に対しては必ず制約が課せられる。

「ただし、この効果を発動したターン、俺はモンスターを特殊召喚できない。けれど、俺にはまだ通常召喚が残っている!俺は《パートナーガ》と《リザードロー》をリリースし、《スマイル・マジシャン》が手札に加えさせてくれたこのカードを召喚する!!運命の狭間で止まったペンデュラムが新次元で新たな時を刻む!アドバンス召喚!現れろ、二色の眼を持つ幻影の竜!《オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン》!」

2体のモンスターがまるで幻だったかのように姿を消し、遊矢の真上のペンデュラムが大きく揺れ動く。

そして、そのペンデュラムが一瞬2つの分身すると、その間から虹色の光でできた翼を両腕に宿した白がかった体の《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が現れる。

 

オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン レベル8 攻撃3000→3300

 

「ペンデュラムモンスターをアドバンス召喚しただと!!」

これで、遊矢のフィールドに《D-HEROディストピアガイ》と《D-HEROデッドリーガイ》を倒すことのできるモンスターが出現した。

《D-HEROドレッドガイ》の攻撃力と守備力が自分フィールドのD-HEROの攻撃力の合計となる以上、そのモンスターがフィールドからいなくなった場合は攻撃力が0の只のモンスターになってしまう。

「そして、俺は《オッドアイズ・ディゾルヴァー》を攻撃表示に変更!」

 

EMオッドアイズ・ディゾルヴァー レベル8 守備2500→攻撃2300

 

「バトルだ!《スマイル・マジシャン》で《ディストピアガイ》を攻撃!スマイル・マジック!!」

《EMスマイル・マジシャン》が手から笑顔を模したエフェクトを《D-HEROディストピアガイ》に向けて発射する。

笑顔のエフェクトを受けた《D-HEROディストピアガイ》の仮面が砕け、その中に隠れた顔が一瞬笑むと、そのモンスターが消滅する。

「《ディストピアガイ》!うわああ!!」

 

エド

ライフ2700→1200

 

「僕が押されている!?罠発動!《奇跡の残照》!このターン、戦闘で破壊された僕のモンスター1体を特殊召喚する!僕は《ディストピアガイ》をセメタリーから再び呼び戻す!」

 

D-HEROディストピアガイ レベル8 守備2400

 

 

「そして、《ディストピアガイ》のエフェクト発動!墓地のレベル4以下のD-HERO1体の攻撃力分のダメージを与える!これで終わりだ!!」

《D-HEROディバインガイ》の力を得た《D-HEROディストピアガイ》が黒い弾丸を遊矢に向けて発射する。

ライフ150の遊矢にそれを凌ぐ力は残っていない。

「俺は手札の《EMレインゴート》の効果を発動!このカードを手札から墓地へ送り、俺がこの効果で受けるダメージを0にする!!」

「何!?まさかそのカード…!」

「《スマイル・マジシャン》の効果でドローしていたのさ!!」

水色のレインコートが弾丸から遊矢の身を守り、消滅する。

エドの起死回生のカウンター攻撃は《EMスマイル・マジシャン》によって封じられた。

「《オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン》で《デッドリーガイ》を攻撃!!《オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン》の効果発動!このカードが相手モンスターを攻撃するとき、ダメージ計算時のみそのモンスターの攻撃力を俺のエクストラデッキに表側表示で存在するペンデュラムモンスターの数×1000ダウンさせる!」

「今の遊矢のエクストラデッキにあるペンデュラムモンスターは4枚!ということは、《デッドリーガイ》の攻撃力は…」

 

D-HEROデッドリーガイ レベル6 攻撃2000→0

 

「攻撃力0!?」

「この攻撃が通れば、俺の勝ちだ!!ファンタスティック・フォース!!」

《オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン》の口から放たれた灰色のブレスが《D-HEROデッドリーガイ》を焼き尽くそうとする。

「僕は…セメタリーの《ドリームガイ》のエフェクト発動!僕がD-HEROが戦闘を行うとき、このカードをセメタリーから特殊召喚できる!」

黒いとんがり帽子と魔術師の服を身に着け、星や月をモチーフとした飾りをいくつも付けている魔導士が現れると同時に、《D-HEROデッドリーガイ》が透明なバリアに包まれる。

 

D-HEROドリームガイ レベル1 守備0

 

「そして、そのモンスターは戦闘では破壊されず、僕が受けるダメージも0になる!」

ブレスとバリアがぶつかり合い、相殺されるものの、その中にいた《D-HEROデッドリーガイ》は無傷な姿を見せつける。

「《オッドアイズ・ディゾルヴァー》で《デッドリーガイ》を攻撃!」

《EMオッドアイズ・ディゾルヴァー》が杖から青い電撃を放ち、それを受けた《D-HEROデッドリーガイ》が消滅する。

「くっ…!!」

 

エド

ライフ1200→900

 

D-HEROドレッドガイ レベル8 攻撃4800→2800

 

「そして、メインフェイズ2に俺はスケール1の《EMゴムゴムートン》とスケール8の《EMオッドアイズ・ユニコーン》をセッティング。カードを2枚伏せて、ターンエンド!」

 

遊矢

手札3→6(うち2枚《EMユーゴーレム》、《スマイル・ワールド》)

ライフ150

場 EMオッドアイズ・ディゾルヴァー レベル8 攻撃2300

  EMスマイル・マジシャン レベル8 攻撃4300

  オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン レベル8 攻撃3300

  EMペンデュラム・マジシャン レベル4 攻撃1800

  魂のペンデュラム(永続魔法)(カウンター1)

  伏せカード3

  EMゴムゴムートン(青) ペンデュラムスケール1

  EMオッドアイズ・ユニコーン(赤) ペンデュラムスケール8

 

エド

手札0

ライフ900

場 D-HEROドレッドガイ レベル8 攻撃2800

  D-HEROディストピアガイ レベル8 守備2400

  D-HEROドリームガイ レベル1 守備0

 

「これで、一気に勝負が分からなくなったな、エド!」

「黙れ!お前のライフは残り150。《オッドアイズ・ディゾルヴァー》か《ペンデュラム・マジシャン》を《ディストピアガイ》か《ドレッドガイ》で攻撃すれば、その程度のライフは…」

だが、遊矢の手札はまだ6枚あり、そのうちの4枚の正体は分からない。

それに、新たに伏せられた2枚のカードの存在も、エドの勝利を阻む可能性をはらんでいる。

それに、《EMスマイル・マジシャン》と《魂のペンデュラム》を放置していたら、遊矢は次のターン再び5枚カードをドローする可能性もある。

このような状況は遊勝とのデュエルの時以来、遭遇したこともない。

「エド、お前のターンだ。このドローがもしかしたら、デュエルを大きく動かすかもしれない。そう思うと、わくわくしてこないか?」

デュエルのダメージですっかりボロボロになっているはずの遊矢がエドに笑顔を見せる。

あれほど嫌っている笑顔にもかかわらず、エドはそれへの嫌悪感が薄まっているように感じられた。

(なんだ…?この胸をうならせるものは…僕は、わくわくしているのか…?)

あの時からずっと封印し続けてきた感情。

アカデミアの正義を信じ、封印し続けてきたそれが必死にエドの中から飛び出そうとしている。

「そうだ、立場とか生まれとか、それ以上にエド…お前が本当にやりたいデュエルをやってみろよ。お前の本当の気持ちに従えよ」

「僕の…本当の、気持ち…」

エドは自分のデッキトップに指をかけ、目を閉じる。

アカデミアに入る前のエドは孤児で、スラム街で生活をしていた。

その中で、捨てられたカードを集めてデッキを作り、年長者の子供からデュエルを学んだ。

何度も破れたものの、そのたびにカードを拾い、デッキを改造し、それでようやく勝利を収めたときは本当にうれしかった。

その時を思い出し、エドに口角がわずかに上がる。

「なんだと…?」

「あの司令が…笑った!?」

観戦していたデュエル戦士たちは初めて見るエドの純粋な笑顔に動揺する。

「いいだろう、榊遊矢!このドローで僕の勝利を呼び寄せて見せる!僕のターン、ドロー!!」

 

エド

手札0→1

 

「僕がドローしたカードは…魔法カード《D-アドベント》!僕のフィールドにD-HERO融合モンスターが存在するとき、僕のフィールドに存在するすべてのモンスターをデッキに戻す!《ドリームガイ》はフィールドを離れるとき、除外される」

エドのフィールドのモンスターがすべて消え去り、無防備な姿を遊矢の前にさらす。

「そして、その効果でフィールドから離れたカード+1枚、僕はデッキからカードをドローする」

 

D-アドベント

通常魔法カード

このカード名のカードの効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドの「D-HERO」融合モンスターが存在するときに発動できる。自分フィールドのモンスターをすべて持ち主のデッキに戻す。その後、この効果でデッキに戻したカードの数+1枚デッキからカードをドローする。このカードを発動したターン、自分は「D-HERO」「Dragoon D-END」以外のモンスターを召喚・特殊召喚できない。

 

「これで、エドの手札は4枚…」

「そして、手札から魔法カード《デステニー・ドロー》を発動。手札のD-HERO1体をセメタリーへ送り、デッキからカードを2枚ドローする」

 

エド

手札1→4

 

手札から墓地へ送られたカード

・D-HEROダイナマイトガイ

 

「そして、僕はセメタリーの《フュージョンガイ》のエフェクト発動!このカードがセメタリーに存在し、相手フィールドにのみモンスターが存在するとき、このカードと手札・セメタリーのモンスターを素材にD-HEROを融合召喚できる!」

「何!?《D-アドベント》でフィールドからモンスターを消したのはそのために…!?」

「僕が融合素材とするのは《デッドリーガイ》と《フュージョンガイ》!死神の刃を持つ英雄よ、渦の中に溶け込む英雄よ、今1つになりて黄昏の理想郷に君臨せよ!融合召喚!カモン、《D-HEROダスクユートピアガイ》!」

これまでのD-HEROとは異なり、黄金の鎧を身にまとい、羽根を模した飾りを肩や左腕につけている英雄がフィールドに現れる。

 

D-HEROダスクユートピアガイ レベル10 攻撃3000

 

D-HEROフュージョンガイ

レベル1 攻撃0 守備0 効果 闇属性 戦士族

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できず、(2)の効果はデュエル中1度しか発動できない。

(1):自分バトルフェイズ中、自分フィールドに存在するモンスターが「D-HERO」モンスター1体のみの場合、手札から発動できる。このカードと自分フィールドのそのモンスターを素材に「HERO」融合モンスター1体を融合召喚する。この効果を発動したターン、自分は「HERO」融合モンスター以外を特殊召喚できない。

(2):このカードが墓地に存在し、自分フィールドにモンスターが存在せず、相手フィールドにモンスターが存在する場合に発動できる。手札・墓地から「D-HERO」融合モンスターカードによって決められた、このカードを含む融合素材モンスターを除外し、その融合モンスター1体をEXデッキから特殊召喚する。この効果を発動したターン、自分は「HERO」モンスター以外を召喚・特殊召喚できない。

 

「《ダスクユートピアガイ》のエフェクト発動!このカードの融合召喚に成功したとき、手札・フィールドのモンスターを素材に融合召喚できる。僕は手札の《ドリルガイ》と《ダッシュガイ》を融合!運命の岩盤を穿つ英雄よ、神速の世界の英雄よ、今一つとなりて暗黒の未来に君臨せよ!!融合召喚!!カモン!《D-HEROディストピアガイ》!」

 

D-HEROディストピアガイ レベル8 攻撃2800

 

「《ディストピアガイ》のエフェクト発動!墓地の《ドリルガイ》の攻撃力分、1600のダメージをお前に与える!スクイズ・パーム!!」

融合召喚で再びフィールドに呼び戻されたばかりの《D-HEROディストピアガイ》の胸部から発射されたビームが遊矢に襲い掛かる。

「永続罠《ペンデュラム・バリア》!俺のペンデュラムゾーンにペンデュラムカードが2枚存在するとき、俺が受ける効果ダメージを0にする!」

ペンデュラムゾーンに待機する2体のペンデュラムモンスターが両手を前にかざすと、遊矢の前に障壁が出現し、それが彼の身を護る。

「更に僕は手札から魔法カード《フュージョン・デステニー》を発動!手札・デッキのモンスターを素材にD-HEROを融合召喚する!」

「このターンで3回目の融合召喚!?」

「僕が融合素材とするのはデッキにある《ドグマガイ》と《Bloo-D》!自らの正義に殉ずる英雄よ、悪を血へ還す英雄よ、今一つとなりて、究極のDへと姿を変えよ!融合召喚!カモン!《Dragoon D-END》!」

フィールドに《D-HERO Bloo-D》が現れると、黒いドラゴンの頭を模した兜と鎧、尻尾を模した剣が上空から降りて来て、それらをそのモンスターが身に着けた。

それらを装着し終えた究極のDは上空へ飛び、遊矢のモンスターたちを威嚇するように雄たけびを上げる。

 

Dragoon D-END レベル10 攻撃3000

 

「僕はセメタリーの《ダイナマイトガイ》のエフェクト発動!このカードを墓地から除外し、僕のD-HERO1体の攻撃力を次の相手ターン終了時まで1000アップさせる!僕は《ディストピアガイ》の攻撃力をアップ!」

 

D-HEROディストピアガイ レベル8 攻撃2800→3800

 

「そして、《ディストピアガイ》のエフェクト発動!このカードの攻撃力が元々の攻撃力と異なるとき、フィールド上のカード1枚を破壊し、攻撃力を元に戻す!僕は《オッドアイズ・ユニコーン》を破壊する!ノーブル・ジャスティス!」

《D-HEROディストピアガイ》の胸部から発射されたビームが《EMオッドアイズ・ユニコーン》に襲い掛かる。

「俺は速攻魔法《ペンデュラム・モラトリアム》を発動!このターン、お互いのペンデュラムゾーンのカードは相手のカード効果では破壊されず、ペンデュラムゾーンのカードを対象として発動した相手のカード効果を無効にする!」

「くっ…!!」

発射されたビームが《EMオッドアイズ・ユニコーン》に命中する直前に消滅する。

何度も発動した効果であるためか、やはり発動を妨害されることとなった。

「無効となった以上、《ディストピアガイ》の攻撃力はこの効果で元に戻ることはない!《Dragoon D-END》のエフェクト発動!1ターンに1度、相手フィールドのモンスター1体を破壊し、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える!」

《Dragoon D-END》の胸部のドラゴンから黒い炎が発射され、その炎が《EMスマイル・マジシャン》を焼き尽くす。

「《スマイル・マジシャン》はペンデュラムモンスター!破壊されても墓地へ行かず、エクストラデッキへ行く!」

「《Dragoon D-END》の破壊と効果ダメージは同時!ペンデュラムモンスターのルールでたとえエクストラデッキへ行ったとしても、ダメージは遊矢!お前にも及ぶ!」

「《ペンデュラム・バリア》の効果でその効果ダメージは0になる!」

再び2体のペンデュラムモンスターが生み出したバリアが遊矢を《Dragoon D-END》からの効果ダメージから守る。

「《Dragoon D-END》がこの効果を発動したターン、僕はバトルフェイズを行えない…だが!!」

急にエドが走り出し、アクションカードを探し始める。

アクションデュエルを否定し、アクションカードはすべて相手に使わせるというスタンスだったエドのパラダイムシフトにデュエル戦士たちのみならず、遊矢と柚子も驚きを見せた。

「エド…」

驚いていた遊矢だが、次第にそれはエドがデュエルの楽しさを思い出してくれたことへの喜びへと変わっていった。

そして、エドは建物の入り口に貼り付けられているアクションカードを手にする。

「よし…!僕はカードを1枚伏せてターンエンド!そして、《Dragoon D-END》は《フュージョン・デステニー》の効果の代償として破壊される。だが、このカードは僕のスタンバイフェイズ時にセメタリーに存在するとき、セメタリーのD-HERO1体を除外することでセメタリーから特殊召喚できる!」

 

遊矢

手札6(うち2枚《EMユーゴーレム》、《スマイル・ワールド》)

ライフ150

場 EMオッドアイズ・ディゾルヴァー レベル8 攻撃2300

  オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン レベル8 攻撃3000

  EMペンデュラム・マジシャン レベル4 攻撃1800

  魂のペンデュラム(永続魔法)(カウンター1)

  ペンデュラム・バリア(永続罠)

  伏せカード1

  EMゴムゴムートン(青) ペンデュラムスケール1

  EMオッドアイズ・ユニコーン(赤) ペンデュラムスケール8

 

エド

手札4→1(アクションカード)

ライフ900

場 D-HEROディストピアガイ レベル8 攻撃3800

  D-HEROダスクユートピアガイ レベル10 攻撃3000

  伏せカード1

 

アクションカードを手にした時に笑みを見せたにもかかわらず、すぐに発動することなく、結局は《Dragoon D-END》の制約によってバトルフェイズを行うことなくターンを終えた。

だが、《ペンデュラム・モラトリアム》の効果が終了したことでペンデュラムゾーンのカードを守る術を失い、《D-HEROディストピアガイ》の攻撃力も3800のままだ。

「(エドは…俺のターンでも動いてくるつもりだ…!)俺のターン、ドロー!」

 

遊矢

手札6→7

 

「この瞬間、《ディストピアガイ》のエフェクト発動!君の《オッドアイズ・ユニコーン》を破壊し、攻撃力を元に戻す!ノーブル・ジャスティス!」

再び発射される《D-HEROディストピアガイ》のビームが今度は《EMオッドアイズ・ユニコーン》を消滅させる。

 

D-HEROディストピアガイ レベル8 攻撃3800→2800

 

「そして、僕はアクション魔法《バブル・ショック》を発動!3ターン目以降で、相手の手札が6枚以上存在するスタンバイフェイズ時に発動でき、相手のメインフェイズ1開始前に僕のバトルフェイズを行う!」

「何!?メインフェイズ1に割り込むだって!?」

 

バブルショック

アクション魔法カード

(1):3ターン目以降の、相手の手札が6枚以上存在する相手スタンバイフェイズ時に発動できる。相手のメインフェイズ1開始前に自分バトルフェイズを行う。

 

「バトル!《ディストピアガイ》で《オッドアイズ・ディゾルヴァー》を攻撃!」

《D-HEROディストピアガイ》の右手か黒の光線が発射され、それを受けた《EMオッドアイズ・ディゾルヴァー》を焼き尽くし、遊矢を襲う。

「《ペンデュラム・バリア》の効果!俺のペンデュラムモンスターが戦闘を行うとき、このカードを墓地へ送ることでこのターン、自分のペンデュラムモンスターとの戦闘で発生する俺へのダメージを0にする!」

破壊され、消滅するはずの《EMオッドアイズ・ディゾルヴァー》がバリアへと変化し、遊矢を包み込んで黒の光線を防ぐ。

 

ペンデュラム・バリア

永続罠カード

(1):自分Pゾーンにカードが2枚存在するとき、自分が受ける効果ダメージが0となる。

(2):自分Pモンスターが戦闘を行うとき、自分フィールドに表側表示で存在するこのカードを墓地へ送ることで発動できる。このターン、自分Pモンスターが行う戦闘で発生する自分への戦闘ダメージが0となる。

 

「ちっ…だが、戦闘破壊までは防ぐことはできない!《ダスクユートピアガイ》で《オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン》を攻撃!」

《D-HEROダスクユートピアガイ》が右手から黄金の光線を発射し、《オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン》が反撃のためにブレスを放つ。

その間にエドはアクションカードを見つけ出し、即座に発動する。

「アクション魔法《論争》!これで攻撃力を《オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン》と同じにする」

 

D-HEROダスクユートピアガイ レベル10 攻撃3000→3300

 

「けど、これなら相討ち…」

「それはどうかな?」

攻撃力が同じであるにもかかわらず、黄金の光線が競り勝ち、《オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン》を消滅させる。

「何!?」

「《ダスクユートピアガイ》のエフェクトさ。フィールド上のモンスター1体はこのターン、戦闘・効果では破壊されず、そのモンスターの戦闘で発生するお互いへの戦闘ダメージは0になるのさ」

その効果を使ったことで、《D-HEROダスクユートピアガイ》はフィールドに残ることができた。

同時に、遊矢がこのターン破壊できるモンスターは《D-HEROディストピアガイ》1体だけになった。

遊矢のライフを考えると、このターンで決着をつけなければならない。

(僕が伏せているカードは《D-シールド》。僕のD-HEROが攻撃対象となったとき、そのモンスターを守備表示にし、このカードを装備させる。そして、このカードを装備したモンスターは戦闘では破壊されない…。貫通ダメージ効果を持たない限り、僕に戦闘ダメージは来ない…)

既に《D-HEROディストピアガイ》を破壊できるモンスターである《オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン》も《EMスマイル・マジシャン》もフィールドから離れている。

だが、スケール8以上のペンデュラムモンスターを遊矢が手札に加えていたら、《魂のペンデュラム》の効果でペンデュラム召喚可能な状況を作ることができる。

もっとも、それが遊矢の手札にあればの話だが。

「遊矢…」

状況は遊矢の圧倒的不利。

祈るように柚子は遊矢の名を呼ぶ。

その瞬間、遊矢が笑みを見せる。

「かかったな、エド!!」

「何!?」

「俺は罠カード《ペンデュラム・リボーン》を発動!エクストラデッキに表側表示で存在する、もしくは墓地のペンデュラムモンスター1体を特殊召喚できる。俺は《オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン》を特殊召喚!」

 

オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン レベル8 攻撃3000→3300

 

「そして、スケール2の《EMラクダウン》をセッティング!そして、《ラクダウン》のペンデュラム効果発動!相手フィールドのモンスターすべての守備力を800ダウンさせる!そして、このターン俺のモンスター1体は守備モンスターを攻撃するとき、貫通ダメージを与える!」

その宣言と同時に、2人はアクションカードを手にするために走り始める。

 

D-HEROディストピアガイ レベル8 守備2400→1600

 

「《オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン》で《ディストピアガイ》を攻撃!!」

これで、たとえ《D-HEROディストピアガイ》が守備表示になったとしても、貫通ダメージが入るうえに、たとえ攻撃表示のままにしても、《オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン》の効果で攻撃力が0になるため、エドのライフが尽きることになる。

望みはアクションカードで、上空に浮かぶ2枚のカードを手にするために大きくジャンプをした。

 

「おかしいぜ…一体どうなってやがる…?」

1人でアカデミアの基地へ乗り込むこととなった凌牙は人っ子一人いない周囲の状況に違和感を覚える。

召喚エネルギー反応から、体育館に誰かがいることは分かっている。

しかし、ここに入ってきてから1時間近く経過しているのに、まだデュエル戦士と遭遇していない。

「隠れているのか…?それとも…!?」

何かを感じた凌牙は背後に振り返り、デュエルディスクを盾替わりにして構える。

路地裏からのっそりと野呂が歩いて出てきた。

「お待ちしておりました、ヴァプラ隊の1人、神代凌牙…」

口角を釣り上げ、普段は気にするはずの時計を見る動きを見せない。

そこには基地でエドやほかのデュエル戦士に見せたような気弱な中間管理職としての姿はなかった。

「やるのか…?」

「いえいえ、とんでもない。私の実力ではあなたには到底及ばない。このまま素通りし、体育館へ向かっていただければ結構。私には別の任務がございますので…」

恭しくお辞儀をした野呂はゆっくりと路地裏へと戻ろうとする。

追いかけようと思った凌牙だが、動く前に自分の体に嫌な汗が流れていることに気付いた。

「ああ、そうそう。早く向かわれるといい。面白いものを見ることができますから…」

「面白いもの…だと!?」

「それを見て、判断するといいでしょう。これは正真正銘の戦争だということを…」



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第106話 蝙蝠の呪い

「おおおおお!!」

「このカードを…!!」

遊矢とエドの手がそれぞれのアクションカードに届き、それぞれがそのカードを見る。

勝敗を分ける最後のカードの正体が明暗を分ける。

「アクション魔法《奇跡》!」

戦闘するモンスター1体の破壊を無効にし、自分への戦闘ダメージを半減させるアクションカード。

これで、エドのライフは50残り、《D-HEROディストピアガイ》も生き残る。

だが、今回勝利の女神がほほ笑んだのは遊矢だった。

「アクション魔法《エクストリームソード》!《オッドアイズ》の攻撃力を1000アップさせる!!」

 

オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン レベル8 攻撃3300→4300

 

「何…!?」

「ファンタスティック・フォース!!」

《オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン》のブレスが《D-HEROディストピアガイ》を包み込む。

両腕でガードして受け止め続ける《D-HEROディストピアガイ》だが、やがて力尽き、消滅する。

そして、そのブレスはエドをも巻き込んでいく。

「ふっ…」

どうしても勝ちたいと願っていた相手の息子に敗れて悔しいはずなのに、なぜかエドにはそんな感情がほんのわずかしかない。

あるのはさばさばとした、どこか安らぎを抱いている。

あおむけに倒れるエドはじっと上を見上げ、口元はわずかに緩んでいた。

 

エド

ライフ900→0

 

「そんな…総司令がやられた…!?」

「あり得ない…これが、現実だというのか!?」

敗北したエドを見たデュエル戦士たちの間に動揺が走る。

エクシーズ次元のデュエル戦士たちの中では最強のはずのエドがランサーズのデュエリストに敗れた。

それを見た彼らが平然としていられるはずがない。

「終わったのか…?」

体育館へ飛び込んだ凌牙は消えていくリアルソリッドビジョンと倒れているエドの姿を見る。

それだけでここで起こったことの顛末が分かった。

同時に、つりさげられていた権現坂が自動的に椅子ごと床に降ろされていく。

「柚子、権現坂を頼む」

「ええ…!」

遊矢はあおむけに倒れているエドの元へ走る。

エドは倒れたままで、遊矢に目を向けようともしない。

「なんだ…これは?榊遊勝の息子であるお前に負けたのに…」

遊勝に敗北したとき、あの時は悔しさがあった。

だが、今はその悔しさが感じられない。

その理由が分からない。

「楽しかっただろ…?デュエル」

「楽しい…」

「素直になれよ。本当に思っていることにさ」

笑顔を見せる遊矢がエドに手を差し伸べる。

その笑顔とあの時、遊勝が見せた笑顔が重なって見える。

そして、胸の中にずっと封印してきた感情が激しくたたいてくる。

「ああ、そうか…。僕は…」

エドはゆっくりと遊矢に手を伸ばし、彼の手を握り、ゆっくりと立ち上がる。

ようやくエドも曇りのない笑顔を見せる。

だが、その瞬間、急にエドは左手で胸を抑え、苦しみ始める。

「う、うう…!?」

「おい、どうしたんだ!?エド!!」

なんでエドが苦しみ出したのかわからず、片膝をついた彼の肩に手を当てる。

デュエルでのダメージではない、何かが起こっているように感じた。

遊矢の片目が黒く染まり、じっとエドの体を見る。

(何だ…これは!?)

エドの体の中に何か得体のしれないものが見えてくる。

抽象的にしか表せないが、何か怖いものがエドの体の中で暴れまわっている。

「フフフフ…面白いものが始まりましたよ。神代凌牙、柊柚子、そして…榊遊矢」

ステージ裏から出てきた野呂が口角を右だけ釣り上げて、遊矢たちの様子を愉快そうに眺める。

ナビのカメラから今の野呂の姿を見るグロリアはとても普段の彼とは思えない。

いつも典型的な中間管理職のように、時間と作戦の侵攻ばかりを気にしていた。

そんな彼が今はこれまで見たことのない表情をこちらに見せている。

「おっと、カメラ越しではありますが、久しぶりですね。グロリアさん…ですが、今はあなたに用はない」

ナビを見て、ニヤリと笑い続ける野呂は今度は苦しんでいるエドに目を向ける。

愉快そうに笑い、左腕のデュエルディスクで計算を始める。

「ふむ…やはり、効果ありですな。BAT-DIEは確かにエド・フェニックスの体を蝕んでいる」

「BAT-DIE…!?」

「あなた方にわかりやすいように説明すれば、裏切者を自動的に殺してくれるナノマシンですよ」

「裏切者を…!!じゃあ、エドが苦しんでいるのは…」

「その、BAT-DIEというもののせいだな…体中を傷つけて回っているのを感じる…」

痛みに耐えるエドはいつBAT-DIEが体内に入れられたのかに察しがついた。

定期的に行われる検診で、毎回のように注射を受けていた。

おそらく、その時にBAT-DIEも投与されたのだろう。

「ええ…。あなたの本心が再び呼び起こされたとき、あなたはアカデミアに反旗を翻す。そうなると、これからの作戦に…真のアークエリア・プロジェクトに支障をきたす。不安要素を…裏切りを未然に防ぐのは効率が良いでしょう?」

「野呂…貴様の任務は…」

「そうですよ。エド・フェニックス。私はあなたの監視役、そしてあなたへの死刑執行の見届け人です」

「そんな…じゃあ、俺がやったことは…」

エドに笑顔を与えるためにデュエルをしたが、それ故にエドの体内のBAT-DIEを発動させることになった。

その事実が彼の心に重くのしかかる。

「遊矢…こんなのって…」

「くっ…遊矢…」

「そうですよ。榊遊矢…あなたがエド・フェニックスを殺したのです。あなたの…エンタメデュエルでねぇ!!」

せせら笑いながら冷酷に事実を突きつける。

遊矢の顔が青く染まっていき、その場に座り込む。

「そんな…俺が…俺が…」

「こんな奴に耳を貸すんじゃねえ、遊矢!そのBAT-DIEっていうふざけた代物が原因だろうが!!」

凌牙はデュエルディスクを展開し、野呂をにらむ。

周囲のデュエル戦士たちはBAT-DIEの話を聞き、恐怖と共にデュエルディスクを展開し始める。

「そう、そうです…。もしも、裏切ろうなどとしたらエド・フェニックスと同じ運命をたどることになる…。生きるためには戦うのです。死ぬまで!!すべてはアークエリア・プロジェクトのために!!」

「ちっ…まずいな…」

野呂1人だけなら、戦うことができたかもしれない。

だが、今体育館にいるデュエル戦士だけでも数十人。

それに、ここ以外にも数多くのデュエル戦士がいる可能性だってある。

柚子は権現坂のカバーに入らなければならず、遊矢はショックで戦意を喪失している。

実質的に戦えるのは凌牙1人だけだ。

「いや、1人じゃねえな…。間に合ったみてえだ」

「ほぉ…」

 

アカデミア本部周囲に水色の渦がいくつも出現し、そこからレオコーポレーションのロゴが刻まれたヘリコプターが飛び出してくる。

ヘリコプターの扉が開き、そこから沢渡が顔を出す。

「シンクロ次元の時に見たときはびっくりしたが、まさか本当に乗り物ごと転移できるなんてな!!くぅーーー!」

遊矢達がエクシーズ次元にわたってから、沢渡らほかのランサーズ達はずっとスタンダード次元で訓練を受けながら待機し続けてきた。

スタンダード次元ではデュエル戦士たちが侵入したことはなく、沢渡はずっと退屈で、早くアカデミアと戦いたくてうずうずしていた。

ヘリから見下ろすと、多くのデュエル戦士がいて、動揺が見える。

「へへ…誰も俺らが入ってくるとは思っていねーみてーだな!行くぞ、お前ら…ぶほぉ!!」

「なんであんたがでしゃばんねん!!さっさと…行かんかい!!」

沢渡を殴った里香は今度は彼でヘリコプターから蹴り落とす。

沢渡にはパラシュートが装備されており、落ちていくのと同時にパラシュートが展開される。

それがあるとはいえ、まさか本気で蹴るとは思いもよらず、一緒に出撃待機していた漁介が思わずドン引きする。

「少し…加減せえって。死んだらどうすんじゃ!」

「馬鹿は死なん!いくでぇ!」

漁介の言葉に聞く耳を持たず、里香もヘリコプターから飛び降りていく。

パラシュートがあるとはいえ、上空400メートル以上もの高さから飛び降りるのには勇気がいる。

下を見たら下手な恐怖を感じてしまうため、漁介は上を見上げ、ヘリコプターから飛び降りた。

「増援!?こんなタイミングで!?」

「ひ、ひるむな!!迎え撃てぇ!!」

デュエル戦士たちは迎撃のために動き出す。

だが、突然の奇襲に足並みがそろっておらず、得意の集団戦闘が難しい状態にあった。

 

「なるほど…あなたや榊遊矢たちがここへ来た時点で、勝負は決まっていたと…」

デュエルディスクにランサーズ襲来の情報が飛び込んできたが、聞く耳を持たず、野呂は無関心に通信を一方的に遮断する。

「お前…」

部下の危機であるにもかかわらず、笑みを浮かべたままでなにもしようとせず、あまつさえ彼らにBAT-DIEを仕込んで闘わせようとする野呂から凌牙はベクターのような強烈な悪意を感じずにはいられなかった。

だが、ベクターについては己の欲を満たすためという意味合いが強い。

それに対して、野呂のそれは身震いするほどの空虚が感じられた。

体育館にも、ランサーズと共に出撃したヴァプラ隊やエクシーズ次元で戦っていたレジスタンスたちも突入してくる。

「き…来たぞ!!」

「くっそぉ!!やるよ!やればいいんだろう!!」

もしやらなければ、エドのようになる。

殺される恐怖を押し殺すように叫び声をあげ、デュエル戦士たちは突入してきたレジスタンスたちに挑む。

「そう、それです…。生存本能を極限に高めれば、窮鼠猫を噛むのように、惰弱な兵士も屈強な兵士に変わる…」

「てめえ…!部下を、命を何だと思っていやがる!!」

「すべてはアークエリア・プロジェクトを成し遂げるための捨て駒です。私と同じように…」

「こいつ…!」

笑みを浮かべる彼だが、目は笑っていない。

彼は凌牙を見て、デュエルディスクを展開する。

「エクシーズ次元における目標は達成しています。もう放棄しても問題はありません。ですが、あなたには消えてもらいましょう」

「消えるのは…てめえだ!人形が!!」

怒気に満ちた声をぶつけながら、凌牙もデュエルディスクを展開する。

だが、野呂はそのような怒りすらも笑って受け流していた。

「ええ…。私は人形ですよ。彼らと同じように…。だから、真のアークエリア・プロジェクト達成のためなら、いくらでも障害を排除し、そして死にましょう」

「ざけんな…!なら、俺がここでお前を地獄へ送ってやる!!」

「「デュエル!!」」

 

野呂

手札5

ライフ4000

 

凌牙

手札5

ライフ4000

 

(そういえば、野呂のデュエルは今まで見たことがないわね…)

ナビで野呂の様子を見るグロリアはこれまでの野呂のことを思い出す。

彼は常に補給をはじめとした事務要因として動き続けていて、デュエルをした様子を一度も見たことがない。

実戦に出たことなく、保身ばかり考えていることから人望がなく、よく妹のグレースと共にノロマと馬鹿にしていた。

だが、この姿と本当の任務から、すべて演技だったのだろう。

そして、万が一の時には見届け人から死刑執行人へと変わっていたかもしれない。

(けれど、もし彼の言葉が本当なら、私やグレースも…?)

 

「私の先攻です。手札から魔法カード《苦渋の決断》を発動。デッキからレベル4以下の通常モンスターを墓地へ送り、デッキから同じ名前のカードを手札に加える。私は《メタルフォーゼ・スティエレン》を墓地へ送り、もう1枚の《メタルフォーゼ・スティエレン》を手札に加える」

ニヤリと笑う野呂は手札に加えたばかりの《メタルフォーゼ・スティエレン》を凌牙に見せる。

通常モンスターと言っていたが、下半分は魔法カードのように外ぶちが緑色になっていた。

「まさか…ペンデュラムモンスター!?」

「ペンデュラム召喚はしっかりと研究させてもらいました。おかげさまで、我々もペンデュラム召喚が可能となったのです。その点はランサーズには感謝しておりますよ…。そして、私はスケール1の《レアメタルフォーゼ・ビスマギア》とスケール8の《メタルフォーゼ・ヴォルフレイム》でペンデュラムスケールをセッティング」

七色の装甲をしたバイクに乗る紫のロングヘアーで装甲と同じ色の体をした女性ライダーと、炎のような赤と黒の装甲のバイクと右手に炎を宿した刀を握る水色の髪のライダーが青い光の柱を生み出す。

「そして、私は手札から《メタルフォーゼ・ゴルドライバー》を召喚」

橙色の四輪車に乗り、右手に燃える斧を握ったマッシブな体つきのライダーがけたたましくエンジンをふかしながらフィールドに飛び出す。

 

メタルフォーゼ・ゴルドライバー レベル4 攻撃1900

 

「《メタルフォーゼ・スティエレン》にペンデュラム効果発動。1ターンに1度、私のフィールドのこのカード以外の表側表示のカード1枚を破壊し、デッキからメタルフォーゼ魔法・罠カード1枚をセットします。私は《ゴルドライバー》を破壊する」

《メタルフォーゼ・ヴォルフレイム》が刀の先を《メタルフォーゼ・ゴルドライバー》に向け、炎を発射する。

炎を受けた《メタルフォーゼ・ゴルドライバー》は消滅し、野呂のデュエルディスクからカードが1枚自動排出される。

「そして、デッキから《メタルフォーゼ・コンビネーション》をセット。更に私は手札から魔法カード《ワン・フォー・ワン》を発動。手札のモンスター1体を墓地へ送り、手札・デッキからレベル1のモンスター1体を特殊召喚します。私は《メタルフォーゼ・シルバード》を墓地へ送り、《おもちゃ箱》を特殊召喚」

 

おもちゃ箱 レベル1 攻撃0

 

「そして、《ビスマギア》の効果発動。このカードも《スティエレン》と同じペンデュラム効果を持っています。よって、《おもちゃ箱》を破壊し、デッキから《錬装融合》をセットします」

「やはり…《融合》もデッキにあったか!!」

「それだけではありませんよ?破壊された《おもちゃ箱》の効果。このカードが破壊され、墓地へ送られたとき、デッキから攻撃力か守備力が0のカード名の異なる通常モンスター2体を表側守備表示で特殊召喚できる。私は《メタルフォーゼ・スティエレン》と《竜剣士マスターP》を特殊召喚」

《メタルフォーゼ・スティエレン》と共に、金色の羽根をつけている、純白の鎧と盾、そして剣を装備した竜騎士がフィールドに現れる。

その優雅な姿は無骨な一面の有るメタルフォーゼには不釣り合いな者だった。

 

メタルフォーゼ・スティエレン レベル2 守備2100

竜剣士マスターP レベル4 守備0

 

「そして、魔法カード《錬装融合》を発動。このカードはメタルフォーゼ専用の《融合》。私は《スティエレン》と《マスターP》を素材とします。黒鉄の体を持つライダーよ、白銀の竜騎士よ、大いなる計画の元、今一つとなりて、新たな人形へと姿を変えよ。融合召喚。現れなさい、紅蓮の刃を持つ剛の者、《メタルフォーゼ・アダマンテ》」

《メタルフォーゼ・スティエレン》のバイクが変形し、上半身を包む軽装なアーマーとなって彼の体に装着される。

そして、そのアーマーに《竜剣士マスターP》が吸収され、彼が持っていた剣は炎の刀となって《メタルフォーゼ・スティエレン》の手に渡った。

 

メタルフォーゼ・アダマンテ レベル5 攻撃2500

 

「そして、《錬装融合》の効果。このカードが墓地に存在するとき、そのカードをデッキに戻し、デッキからカードを1枚ドローできる。そして、融合素材となった2体はペンデュラムモンスター。よって、エクストラデッキに加わる」

「くっ…!」

残りの手札が罠カードの《メタルフォーゼ・コンビネーション》であることから、ここから展開できないと思っていたが、《錬装融合》に自己再生とドロー効果を持っていることは予想外だった。

ペンデュラムモンスターの特性を考えると、これで野呂は毎ターン《錬装融合》でメタルフォーゼ融合モンスターを融合召喚できるということになる。

「そして、私はペンデュラム召喚を行う。現れなさい。私の人形たち、《メタルフォーゼ・スティエレン》、《竜剣士マスターP》、《メタルフォーゼ・ゴルドライバー》」

融合素材として一度はフィールドから消えた2体と、カード効果で破壊された《メタルフォーゼ・ゴルドライバー》がフィールドに舞い戻る。

 

メタルフォーゼ・スティエレン レベル2 守備2100

竜剣士マスターP レベル4 攻撃1950

メタルフォーゼ・ゴルドライバー レベル4 攻撃1900

 

「そして、カードを1枚伏せて、ターンエンド」

 

野呂

手札5→0

ライフ4000

場 メタルフォーゼ・アダマンテ レベル5 攻撃2500

  メタルフォーゼ・スティエレン レベル2 守備2100

  竜剣士マスターP レベル4 攻撃1950

  メタルフォーゼ・ゴルドライバー レベル4 攻撃1900

  伏せカード2(うち1枚《メタルフォーゼ・コンビネーション》)

  レアメタルフォーゼ・ビスマギア(青) ペンデュラムスケール1

  メタルフォーゼ・スティエレン(赤) ペンデュラムスケール8

 

凌牙

手札5

ライフ4000

場 なし

 

ペンデュラム召喚を使ったとはいえ、融合モンスターを含めて4体ものモンスターが展開されたうえに、2枚の伏せカードがある。

うち1枚の正体は分かっているが、問題はもう1枚のカードだ。

おまけに、ペンデュラムスケールを生み出している2体をどうにかしなければ、毎ターンメタルフォーゼ魔法・罠カードのサーチを許してしまう。

「俺のターン、ドロー!」

 

凌牙

手札5→6

 

ドローしたカードを見た凌牙は笑みを浮かべる。

「(さっそく使わせてもらうぜ…侑斗!)俺はスケール2の《クリスタル・シャーク》とスケール6の《アビス・シャーク》でペンデュラムスケールをセッティング!」

「ほぉ…あなたもペンデュラム召喚を…」

氷のように冷たいクリスタルでできた鮫と青と金色の鎧を身に着けた水色の鮫が現れ、水柱を上げるとともに光の柱を生み出す。

「これで俺は、レベル3から5までのモンスターを同時に召喚可能!海の王者の叫びに応え、激流と共に現れろ!ペンデュラム召喚!現れろ、俺のモンスターたち!《キラー・ラブカ》!《スターフィッシュ》!」

 

キラー・ラブカ レベル3 攻撃700

スターフィッシュ レベル3 攻撃300

 

「そして、俺はレベル3の《キラー・ラブカ》と《スターフィッシュ》でオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろ、《No.47ナイトメア・シャーク》!」

 

No.47ナイトメア・シャーク ランク3 攻撃2000

 

「ペンデュラム召喚からのエクシーズ召喚ですか…。しかし、攻撃力はわずか2000。私の《メタルフォーゼ・アダマンテ》には届いていません」

「だが、《ナイトメア・シャーク》は1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、俺のフィールドの水属性モンスター1体のダイレクトアタックを可能にする。そして、《アビス・シャーク》のペンデュラム効果はこのカードが表側表示で存在する限り、1度だけ俺の水属性エクシーズモンスターが攻撃するとき、その攻撃力を元々の攻撃力の倍にする」

《アビス・シャーク》の効果で攻撃力4000となった《No.47ナイトメア・シャーク》のダイレクトアタック

が野呂を襲い、1ショットキルとなる。

凌牙は彼と長々とデュエルをするつもりなどなかった。

「確かに、私の絶体絶命ですねぇ…。うまくいけばの話ですが…」

「その余裕の顔、すぐにぶっ壊してやる!《ナイトメア・シャーク》の効果発動!オーバーレイユニットを1つ取り除き、自らのダイレクトアタックを可能にする!ダイレクト・エフェクト!!」

《No.47ナイトメア・シャーク》がオーバーレイユニットを食らうとともに大きく飛翔する。

そして、再び口を大きく開いた。

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・キラー・ラブカ

 

「バトルだ!《ナイトメア・シャーク》でダイレクトアタック!!更に、《アビス・シャーク》のペンデュラム効果!!《ナイトメア・シャーク》の攻撃力が倍になる!」

《アビス・シャーク》の胸部の青い宝石が光り、野呂に飛び込んでいく《No.47ナイトメア・シャーク》の体が青いオーラに包まれる。

 

No.47ナイトメア・シャーク ランク3 攻撃2000→4000

 

「罠発動!《進入禁止!No Entry!!》。フィールド上で攻撃表示で存在するモンスターをすべて守備表示に変更する」

発動と同時に、フィールドに警告音とパトカーのライトの光に照らされ、モンスターたちは警戒して守備表示に変わる。

 

No.47ナイトメア・シャーク ランク3 攻撃4000→守備2000

 

 

メタルフォーゼ・アダマンテ レベル5 攻撃2500→守備2500

竜剣士マスターP レベル4 攻撃1950→守備0

メタルフォーゼ・ゴルドライバー レベル4 攻撃1900→守備500

 

「ちっ…《錬装融合》の効果でそのカードをドローしていたのかよ!!」

1ショットキルがかわされたものの、墓地に《キラー・ラブカ》を落とした。

少なくとも、これで《No.47ナイトメア・シャーク》を1度は守ることができる。

それに、《クリスタル・シャーク》の効果も使っていない。

「俺はカードを1枚伏せて、ターンエンド」

 

野呂

手札0

ライフ4000

場 メタルフォーゼ・アダマンテ レベル5 守備2500

  メタルフォーゼ・スティエレン レベル2 守備2100

  竜剣士マスターP レベル4 守備0

  メタルフォーゼ・ゴルドライバー レベル4 守備500

  伏せカード1(《メタルフォーゼ・コンビネーション》)

  レアメタルフォーゼ・ビスマギア(青) ペンデュラムスケール1

  メタルフォーゼ・スティエレン(赤) ペンデュラムスケール8

 

凌牙

手札6→1

ライフ4000

場 No.47ナイトメア・シャーク(オーバーレイユニット1) ランク3 守備2000

  伏せカード1

  クリスタル・シャーク(青) ペンデュラムスケール2

  アビス・シャーク(赤) ペンデュラムスケール6

 

「ふふふ…怒りに任せて1ショットキルを決めたかったようですが、残念でしたね…」

「一つ、聞いておくぜ。てめえ…真のアークエリア・プロジェクトってほざいていたが、こいつらに知らされているアークエリア・プロジェクトと違うのか?」

「いいえ、何一つ変わりません。すべての次元が一つになることも…それが人々の幸福につながることも。しかし、ここまででだいぶスケジュールが乱れた…。より効率的に遂行するためにも、ここからが重要です。まぁ、よそもののあなたには関係のない話ですが」

「俺たちの素性…知っているみてーだな」

「ええ…。非効率的な理由でここにきている。そんなあなた方では、この計画のすばらしさは分からないでしょう…。私のターン、ドロー」

 

野呂

手札0→1

 

「私は手札から装備魔法《盗人の煙玉》を《アダマンテ》に装備。そして、《ビスマギア》のペンデュラム効果発動。《盗人の煙玉》を破壊し、デッキから《錬装融合》をセット…。そして、《盗人の煙玉》は装備されている状態でカード効果によって破壊されたとき、相手の手札を確認し、その中から1枚を墓地へ送る」

「くそ…!」

目を閉じ、歯を食いしばりながら、凌牙は手札を野呂に見せる。

「ふん…《死者蘇生》を残していたわけですか…。残念ですが、墓地へ捨ててもらいましょう」

凌牙の手から《死者蘇生》が離れていく。

おまけに野呂の手札には再び《錬装融合》が加わってしまう。

「更に私は永続罠《メタルフォーゼ・コンビネーション》を発動。1ターンに1度、融合モンスターが融合召喚されたとき、そのモンスターよりもレベルの低いメタルフォーゼを1体、墓地から特殊召喚できる。そして、手札から《錬装融合》を発動。私が融合素材とするのは《スティエレン》、《ゴルドライバー》、そして《マスターP》。黒鉄の体を持つライダーよ、黄金のライダーよ、白銀の竜騎士よ、大いなる計画の元、今一つとなりて、新たな人形へと姿を変えよ。融合召喚。現れなさい、灼熱の鎧纏いし巨人、《メタルフォーゼ・カーディナル》」

3体のモンスターが赤く熱した鉄と変わって、融合していく。

そして、その姿を赤い太さと無骨さを併せ持つ、丸みを帯びた大型アーマーを装着した人型モンスターへと変化させていく。

そして、両腕から炎の刃を展開させ、凌牙に向ける。

 

メタルフォーゼ・カーディナル レベル9 攻撃3000

 

「3体はペンデュラムモンスターですので、エクストラデッキへ行きます。そして、《メタルフォーゼ・コンビネーション》の効果発動。墓地から《スティエレン》を特殊召喚」

《メタルフォーゼ・カーディナル》が刃を《メタルフォーゼ・コンビネーション》に向けると、《苦渋の選択》で墓地へ送られていた《メタルフォーゼ・スティエレン》が舞い戻る。

 

メタルフォーゼ・スティエレン レベル2 守備2100

 

「そして、《錬装融合》の効果。墓地のこのカードをデッキに戻し、デッキからカードを1枚ドローする。更に、《スティエレン》のペンデュラム効果発動。《メタルフォーゼ・コンビネーション》を破壊し、デッキから《メタルフォーゼ・カウンター》をセット。そして、《メタルフォーゼ・コンビネーション》の効果。このカードがフィールドから墓地へ送られたとき、デッキからメタルフォーゼモンスター1体を手札に加えることができます。私は《メタルフォーゼ・シルバード》を手札に加えます。そして、ここで私はペンデュラム交換を行います。現れろ、《マスターP》、《ゴルドライバー》」

 

竜剣士マスターP レベル4 攻撃1950

メタルフォーゼ・ゴルドライバー レベル4 攻撃1900

 

融合召喚を行ったにもかかわらず、逆にフィールドのモンスターの数が増えてしまい、中には攻撃力3000のモンスターまでいる。

「融合召喚とペンデュラム召喚の組み合わせがこんなに…キャ!!」

よそ見してしまった柚子は《古代歯車の兵士》に《幻奏の音女アリア》を攻撃され、戦闘ダメージを受けてしまう。

「柚子…!!ぐうう…!!」

ダメージを受けた柚子を見た権現坂はたび重ねる電気ショックでボロボロな体を起こし、左腕のデュエルディスクを展開する。

幸い、デュエルディスクもデッキも奪われてはおらず、故障もしていなかった。

「権現坂!?」

「相手を見ろ、生き残るためにも…今は自分の身を守れ!!」

「バトル!《メタルフォーゼ・カーディナル》で《ナイトメア・シャーク》を攻撃!」

2本の炎の刃を重ね合わせ、天井を貫くほどの長い炎の刃を作り出した《メタルフォーゼ・カーディナル》が《ネイトメア・シャーク》を切り裂こうとする。

しかし、刃がぶつかると同時に炎が消えてしまい、余波が野呂を襲う。

「ぐうう…まさか、《クリスタル・シャーク》のペンデュラム効果を…」

「そうだ。《クリスタル・シャーク》のペンデュラム効果だ。こいつが表側表示で存在する限り1度だけ、俺の水属性エクシーズモンスターが相手モンスターと戦闘を行うとき、戦闘を行う相手モンスターの攻撃力を元々の攻撃力の半分にする」

 

メタルフォーゼ・カーディナル レベル9 攻撃3000→1500

 

野呂

ライフ4000→3500

 

「ならば、《メタルフォーゼ・アダマンテ》で《ナイトメア・シャーク》を攻撃」

「《キラー・ラブカ》の効果発動!俺の水族・魚族・海竜族が攻撃対象となったとき、墓地のこのカードを除外することで、その攻撃を無効にし、攻撃モンスターの攻撃力を500下げる!」

《キラー・ラブカ》が紫色の魔法陣から飛び出し、攻撃を仕掛けようとした《メタルフォーゼ・アダマンテ》にかみつく。

噛みついた《キラー・ラブカ》は姿を消すが、噛まれた箇所の装甲には大きなひびが入っていた。

 

メタルフォーゼ・アダマンテ レベル5 攻撃2500→2000

 

「《ナイトメア・シャーク》を守り抜きましたか…。だが、これで《アビス・シャーク》も《クリスタル・シャーク》も効果を使ってしまいましたね…。私はカードを1枚伏せて、ターンエンド」

 

野呂

手札1→0

ライフ4000

場 メタルフォーゼ・アダマンテ レベル5 攻撃2000

  メタルフォーゼ・カーディナル レベル9 攻撃1500→3000

  メタルフォーゼ・スティエレン レベル2 守備2100

  竜剣士マスターP レベル4 守備0

  メタルフォーゼ・ゴルドライバー レベル4 守備500

  伏せカード1

  レアメタルフォーゼ・ビスマギア(青) ペンデュラムスケール1

  メタルフォーゼ・スティエレン(赤) ペンデュラムスケール8

 

凌牙

手札1→0

ライフ4000

場 No.47ナイトメア・シャーク(オーバーレイユニット1) ランク3 守備2000

  伏せカード1

  クリスタル・シャーク(青) ペンデュラムスケール2

  アビス・シャーク(赤) ペンデュラムスケール6

 

「俺のターン、ドロー」

 

凌牙

手札0→1

 

「俺は…《サイレント・シャーク》を召喚」

黒々とした鎧を身に着け、左目に傷のある鮫が現れる。

 

サイレント・シャーク レベル4 攻撃1600

 

「このカードの召喚に成功したとき、俺のフィールドのオーバーレイユニットとなっている水属性モンスター1体を特殊召喚できる。俺は《スター・フィッシュ》を特殊召喚」

オーバーレイユニットとして旋回していた《スター・フィッシュ》が元の姿を取り戻して、凌牙のフィールドへ戻る。

「そして、この効果で特殊召喚されたモンスターのレベルは4になる」

 

スター・フィッシュ レベル3→4 攻撃300

 

「ふむ…?」

「レベル4の《スター・フィッシュ》と《サイレント・シャーク》でオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろ、《No.101S・H・Ark Knight》!!」

 

No.101S・H・Ark Knight ランク4 攻撃2100

 

「《Ark Knight》の効果!オーバーレイユニットを2つ取り除くことで、相手フィールドの攻撃表示で存在する特殊召喚されたモンスター1体をこのカードのオーバーレイユニットにする。俺は《カーディナル》をオーバーレイユニットに変える!エターナル・ソウル・アサイラム!」

オーバーレイユニットを取り込んだ《No.101S・H・Ark Knight》がアンカーを発射し、それで《メタルフォーゼ・カーディナル》を突き刺し、コンテナに格納しようとする。

「ふふふ…それで勢いを取り戻そうとでも?私は速攻魔法《重錬装融合》を発動!メタルフォーゼ融合モンスターの融合召喚を行います!」

「ぐうう…!やはり、速攻魔法の融合魔法があったか…!」

「私が融合素材とするのは《スティエレン》と《カーディナル》。黒鉄の体を持つライダーよ、灼熱の鎧纏いし巨人よ、大いなる計画の元、今一つとなりて、新たな人形へと姿を変えよ。融合召喚。現れなさい、すべてを取り込む錬金術師、《フルメタルフォーゼ・アルカエスト》」

アンカーが突き刺さる直前に赤い金属の液体へと変わり、同じく液体となった《メタルフォーゼ・スティエレン》と共に背後の渦に取り込まれていく。

そして、その中から背中にバイクのエンジンを付けた緑色のローブ姿の錬金術師が現れる。

 

フルメタルフォーゼ・アルカエスト レベル1 守備0

 

「攻撃力も守備力も0の融合モンスターだと…?」

拍子抜けするステータスだが、相手は取り込まれる寸前だったとはいえ、攻撃力3000の《メタルフォーゼ・カーディナル》を素材にしてまで融合召喚したモンスター。

必ず何かがあることをデュエリストとしての勘がささやいている。

「《アルカエスト》の効果。相手ターンに1度、フィールド上の効果モンスター1体を装備カード扱いとして取り込むことができる。私はあなたの《Ark Knight》を取りこむ!」

「何!?」

《フルメタルフォーゼ・アルカエスト》の杖から炎のロープが飛んでいき、それに縛られた《No.101S・H・Ark Knight》が炎の粒子に分解されていき、そのモンスターに取り込まれていく。

「そして、《アルカエスト》の守備力は取り込んだ効果モンスターの元々の攻撃力分アップ」

 

フルメタルフォーゼ・アルカエスト レベル1 守備0→2100

 

「俺は…オーバーレイユニットのない《ナイトメア・シャーク》でオーバーレイネットワークを再構築!アーマードエクシーズチェンジ!現れろ、《FA―ブラック・レイ・ランサー》!」

 

 

FA―ブラック・レイ・ランサー ランク4 攻撃2100

 

「ランクアップマジック以外でのエクシーズチェンジですか…」

「《ブラック・レイ・ランサー》の攻撃力は…このカードのオーバーレイユニット1つにつき、200アップする」

 

FA-ブラック・レイ・ランサー ランク4 攻撃2100→2300

 

「へっ…あんた、効率を重視するって言った割には読みが甘えな。こいつはオーバーレイユニットのないランク3・水属性のエクシーズモンスターを素材にエクシーズ召喚できるモンスターだ。もし、《ナイトメア・シャーク》の方を取り込ませりゃあ、こいつを召喚されずに済んだのにな」

「なるほど…あなたはそれを見越して、《ナイトメア・シャーク》のオーバーレイユニットを失わせたわけですか…」

「バトルだ!《ブラック・レイ・ランサー》で《フルメタルフォーゼ・アルカエスト》を攻撃!」

《FA-ブラック・レイ・ランサー》を槍を《フルメタルフォーゼ・アルカエスト》に向けて投げつける。

胸部をそれで貫かれた錬金術師は消滅する。

「まだ終わりじゃねえ!《ブラック・レイ・ランサー》の効果!こいつが戦闘で相手モンスターを破壊したとき、相手の魔法・罠カードを1枚破壊できる。俺はペンデュラムゾーンの《スティエレン》を破壊する!」

背中に装着されているブースターから発射されるミサイルがペンデュラムゾーンの《メタルフォーゼ・スティエレン》に向けて複数発射される。

ミサイルの爆発の中にそのモンスターは消え、これで野呂はペンデュラム召喚を行えない状態になった。

「俺はこれで、ターンエンドだ」

 

野呂

手札0

ライフ4000

場 メタルフォーゼ・アダマンテ レベル5 攻撃2000

  竜剣士マスターP レベル4 守備0

  メタルフォーゼ・ゴルドライバー レベル4 守備500

  レアメタルフォーゼ・ビスマギア(青) ペンデュラムスケール1

 

凌牙

手札1→0

ライフ4000

場 FA-ブラック・レイ・ランサー(オーバーレイユニット1) ランク4 攻撃2300

  伏せカード1

  クリスタル・シャーク(青) ペンデュラムスケール2

  アビス・シャーク(赤) ペンデュラムスケール6

 

「おやおや、これは痛いですねぇ…《アルカエスト》はメタルフォーゼ融合モンスターの融合召喚を行う際、装備しているモンスターを融合素材として使うことができる効果があります。そのモンスターをペンデュラムゾーンごと破壊されるとは…」

額に手を当て、読み誤ったと残念がる野呂だが、それが演技なことは凌牙は分かっていた。

まだ《レアメタルフォーゼ・ビスマギア》が存在し、そのモンスターの効果でメタルフォーゼ魔法・罠カードをサーチすることができる上に、まだまだ2体のペンデュラムモンスターが存在する。

いくらでも巻き返しができる一方、凌牙のフィールドには伏せカード1枚と《FA-ブラック・レイ・ランサー》がいるだけで、2体のペンデュラムモンスターの効果はもう使えない。

(《ブラック・レイ・ランサー》は破壊されるとき、代わりにオーバーレイユニットを1つ取り除くことができる。だが…それで耐えることができるかは…奴の動きを見るしかない…)

「ここまでのデュエル…まだ2人ともライフが1ポイントも減っていない…。けれど、状況は神代凌牙の方が不利ね…」

「私のターン、ドロー」

 

野呂

手札0→1

 

「《ビスマギア》のペンデュラム効果。《ゴルドライバー》を破壊し、デッキから《錬装融合》をセット。更に、ペンデュラムゾーンに《ヴォルフレイム》をセッティング」

並列型のミサイルポッドを握ったマニピュレーターを左右につけている、赤い四輪車に乗ったライダーが光りの柱を生み出す。

そのモンスターも先ほどいた《メタルフォーゼ・スティエレン》と同じスケール8のペンデュラムモンスター。

おまけに、ペンデュラム効果も同じだ。

「《ヴォルフレイム》のペンデュラム効果。《マスターP》を破壊し、デッキからもう1枚の《メタルフォーゼ・コンビネーション》をセット。そして、ペンデュラム召喚。現れなさい、私のモンスターたち。《スティエレン》2体、《ゴルドライバー》、《マスターP》」

 

メタルフォーゼ・スティエレン×2 レベル3 守備2100

竜剣士マスターP レベル4 攻撃1950

メタルフォーゼ・ゴルドライバー レベル4 攻撃1900

 

「ふむ…また私のペンデュラムゾーンのカードが破壊されるようなことがあってはまずいですね…ですので、私はフィールドの《スティエレン》と《マスターP》をリリース」

「今度は《融合》なしで融合召喚か!」

「その通り。このモンスターは融合素材となるモンスターを私のフィールドからリリースした場合にのみ、エクストラデッキから特殊召喚できます。私は《剛竜剣士-ダイナスターP》を特殊召喚」

2体のモンスターがエクストラデッキへ向かい、同時に水色の外套型のパーツ付きのアーマーを装着し、タワーシールドと大剣を握る竜剣士が入れ替わるように現れる。

 

剛竜剣士-ダイナスターP レベル8 守備2950

 

「このカードが存在する限り、私のモンスターゾーンとペンデュラムゾーンに存在するペンデュラムモンスターは戦闘及びカード効果では破壊されません」

「ペンデュラムモンスターをモンスターゾーンでもペンデュラムゾーンでも守るカードか!!」

「それだけで終わらない…分かっていますよね?私はセットしている魔法カード《錬装融合》を発動。私が融合素材とするのは《ゴルドライバー》と《スティエレン》。黄金のライダーよ、黒鉄のライダーよ、大いなる計画の元、今一つとなりて、新たな人形へと姿を変えよ。融合召喚。現れなさい、異世界の金属の騎士、《メタルフォーゼ・ミスリエル》」

2体のモンスターが液体に変わり、交わりあうことで、背中に6枚羽根のパックパックをつけた銀色のアーマーを装着した紫色の髪の戦士が現れる。

 

メタルフォーゼ・ミスリエル レベル6 攻撃2600

 

「そして、墓地の《錬装融合》の効果。このカードをデッキに戻し、デッキからカードを1枚ドローします。更に、《ミスリエル》の効果。1ターンに1度、墓地のメタルフォーゼカード2枚をデッキに戻し、フィールド上のカード1枚を手札に戻す」

(ちっ…!バウンスじゃあ、《ブラック・レイ・ランサー》の効果が使えない!!)

《重錬装融合》と《メタルフォーゼ・スティエレン》がデッキへ戻っていき、バックパックの左右に存在する赤いファンから竜巻が発生する。

竜巻に飲み込まれた《FA-ブラック・レイ・ランサー》がフィールドから消え、凌牙のフィールドががら空きになる。

「バトル。《ミスリエル》でダイレクトアタック」

《メタルフォーゼ・ミスリエル》のファンから発生する竜巻が今度は凌牙を襲う。

「うわあああ!!」

竜巻に巻き込まれた凌牙は上空を舞い、収まると同時に地面へ転落した。

 

凌牙

ライフ4000→1400

 

「ぐ…くそ…!」

「まだ立ち上がる力があるとは…さすがですね」

体中が傷だらけになった凌牙は残り2体の攻撃可能モンスターを見る。

この2体のモンスターのいずれかの攻撃が通っても、凌牙の負けが決まってしまう。

「まだです!《アダマンテ》でダイレクトアタック!」

《メタルフォーゼ・アダマンテ》がとどめを刺すべき、炎の刃を凌牙に向けて振るう。

「罠発動!《ハイドロ・エクシーズ・ディメンション》!!俺の墓地に存在する水属性エクシーズモンスター1体を除外し、除外したモンスターと同じランクの水属性エクシーズモンスター1体を特殊召喚する!俺は《ナイトメア・シャーク》を除外し、エクストラデッキから《リバリアン・シャーク》を特殊召喚!」

左の翼に自分のナンバーを刻んだ、《No.17リバイス・ドラゴン》が紫がかった体となったかのようなモンスターが激流と共にフィールドに現れ、《メタルフォーゼ・アダマンテ》の刃を受け止める。

 

No.71リバリアン・シャーク ランク3 守備2000

 

「その程度の守備力では、届きませんね!私は手札から速攻魔法《突進》を発動」

再び振りかざした炎の刃の次の一撃が迫る。

最初の一撃を受けたときに、深い傷を負った《No.71リバリアン・シャーク》にそれを耐えきる力はなく、切り裂かれるとともに消滅した。

 

メタルフォーゼ・アダマンテ レベル5 攻撃2000→2700

 

「《リバリアン・シャーク》の効果!このカードが墓地へ送られたとき、デッキのRUM1枚をデッキトップへ移動させることができる。俺は《七皇の剣》をデッキトップへ移動させる!」

「《七皇の剣》…!そうですか、そのカードを得るために《リバリアン・シャーク》を…」

《RUM-七皇の剣》のデータは既にあり、その効果は野呂も知っている。

条件が重い代わりに、フィールド・墓地に素材となるオーバーハンドレッドナンバーズが存在すれば、そのモンスターをカオス化できる。

そして、彼のデッキには《CNo.101S・H・Dark Knight》が存在する。

それに、そもそも攻撃モンスターがまだ野呂のフィールドに残っている。

「残念ながら、そのカードを使う機会はもうあなたにはありません…!《ゴルドライバー》でダイレクトアタック」

「俺は墓地へ送られた罠カード《ハイドロ・エクシーズ・ディメンション》の効果発動!このカードが墓地に存在する状態で相手の直接攻撃宣言時、墓地のこのカードを除外することで、ゲームから除外されているランク3以下の水属性エクシーズモンスター1体を特殊召喚する!俺は《ナイトメア・シャーク》を特殊召喚!」

 

No.47ナイトメア・シャーク ランク3 攻撃2000

 

「そして、次の俺のターンのスタンバイフェイズ時にデッキからカードを1枚ドローする」

「攻撃は中断ですね…ターンエンド」

 

ハイドロ・エクシーズ・ディメンション

通常罠カード

(1):自分の墓地に存在する水属性Xモンスター1体を除外することで発動できる。自分EXデッキからそのモンスターと同じランクでカード名の異なる水属性Xモンスター1体を自分フィールドに特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターはこのターン、攻撃できない。

(2):相手の直接攻撃宣言時、自分の墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。ゲームから除外されているランク3以下の自分の水属性Xモンスター1体を特殊召喚し、攻撃対象をそのモンスターに変更する。

 

野呂

手札1→0

ライフ4000

場 メタルフォーゼ・アダマンテ レベル5 攻撃2700→2000

  メタルフォーゼ・ミスリエル レベル6 攻撃2600

  剛竜剣士-ダイナスターP レベル8 守備2950

  メタルフォーゼ・ゴルドライバー レベル4 攻撃1900

  伏せカード1(《メタルフォーゼ・コンビネーション》)

  レアメタルフォーゼ・ビスマギア(青) ペンデュラムスケール1

  メタルフォーゼ・ヴォルフレイム(赤) ペンデュラムスケール8

 

凌牙

手札0

ライフ1400

場 No.47ナイトメア・シャーク ランク3 攻撃2000

  クリスタル・シャーク(青) ペンデュラムスケール2

  アビス・シャーク(赤) ペンデュラムスケール6

 

これで、凌牙は少なくとも次のターンにつなげることができた。

(あとは…《七皇の剣》の次にドローするカードだ…)

たとえ《No.101S・H・Dark Knight》を召喚したとしても、戦局を打開できるとは思えない。

最後の頼みはもう1枚確約されたドローカードだ。

凌牙はデッキトップに指をかける。

「俺のターン、ドロー!!」

 

凌牙

手札0→1

 

「俺がドローしたカードは《七皇の剣》!」

「ええ。ですが、問題はその次のカードですよ…?」

そのカードが2人の明暗を決めることを野呂も分かっている。

凌牙はドローしたばかりの《RUM-七皇の剣》を手札に加え、次のカードを指にかける。

そして、目を閉じてそのカードを引き抜いた。

ドローしたカードを目を開き、じっと見る。

「引いたぜ…まずは《七皇の剣》を発動!墓地から《S・H・Ark Knight》を特殊召喚!」

 

No.101S・H・Ark Knight ランク4 攻撃2100

 

「そして、《Ark Knight》をカオス化する!カオスエクシーズチェンジ!現れろ、CNo.101!満たされぬ魂の守護者よ!暗黒の騎士となって導け!《S・H・Dark Knight》!」

 

CNo.101S・H・Dark Knight ランク5 攻撃2800

 

「《Dark Knight》の効果!1ターンに1度、相手フィールドの特殊召喚されたモンスター1体をこのカードのカオスオーバーレイユニットとする!ダークソウルローバー!!」

《CNo.101S・H・Dark Knight》の槍からはなられるカオスのエネルギーが《メタルフォーゼ・ミスリエル》に注ぎ込まれ、カオスオーバーレイユニットへと変換する。

(《ミスリエル》はフィールドから墓地へ送られたとき、エクストラデッキに表側表示で存在するメタルフォーゼペンデュラムモンスター、または墓地に存在するメタルフォーゼ1体を特殊召喚できる効果がある…。だが、オーバーレイユニットに変えられたのなら、効果を発動しない…)

「そして、俺は手札から装備魔法《激瀧神の杖》を《Dark Knight》に装備!!このカードはランク5以上の水属性エクシーズモンスター専用の装備魔法だ!!」

握っていた槍が《No.73激瀧神アビス・スプラッシュ》が装備していた杖へと変化し、それと同時に彼の鎧も金と水色をベースとしたカラーリングへと変化していく。

「《激瀧神の杖》の効果!1ターンに1度、自分フィールドのほかの水属性エクシーズモンスター1体の攻撃力をターン終了時まで装備モンスターに加える。《ナイトメア・シャーク》の攻撃力は2000!よって、攻撃力が2000アップする!」

 

CNo.101S・H・Dark Knight ランク5 攻撃2800→4800

 

「バトルだ!《S・H・Dark Knight》で《メタルフォーゼ・アダマンテ》を攻撃!!ファイナル・カオスフォール!!」

《CNo.101S・H・Dark Knight》が杖に力を籠め、横に薙ぎ払うと同時にカオスのエネルギーで染まった巨大な波が発生し、野呂のフィールドを襲う。

「ぐううああああ!!!」

波に飲み込まれた《メタルフォーゼ・アダマンテ》が消滅し、野呂は大きく吹き飛ばされる。

 

野呂

ライフ4000→1200

 

「まだだ!!《激瀧神の杖》の効果発動!装備モンスターが戦闘で相手モンスターを破壊したとき、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、続けてもう1度だけ攻撃できる!!」

「何!?」

「地獄へ落ちろ、野呂ぉ!!」

凌牙の叫びと共に、再び《CNo.101S・H・Dark Knight》が杖に力を宿し、カオスの波を召喚する。

再び発生した波は最初よりも大きく、《メタルフォーゼ・ゴルドライブ》と野呂を飲み込んでいった。

 

野呂

ライフ1200→0

 

アビス・シャーク

レベル3 攻撃1200 守備1500 水属性 魚族

【Pスケール:青6/赤6】

(1):このカードが表側表示で存在する限り1度だけ、自分フィールドの水属性Xモンスターの攻撃宣言時に発動できる。ターン終了時までそのモンスターの攻撃力を元々の攻撃力を倍にした数値にする。

【モンスター効果】

このカード名のカードの効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードの召喚に成功したとき、自分フィールドにほかのモンスターが存在しない場合に発動する。自分の墓地に存在する水属性Xモンスター1体を特殊召喚し、このカードをそのモンスターの下に置いてX素材とする。この効果で特殊召喚されたモンスターはターン終了時、X素材が存在しない場合、破壊される。

 

クリスタル・シャーク

レベル5 攻撃2200 守備1800 水属性 魚族

【Pスケール:青2/赤2】

(1):このカードが表側表示で存在する限り1度だけ、自分フィールドの水属性Xモンスターが相手モンスターと戦闘を行うときに発動できる。ターン終了時まで戦闘を行う相手モンスターの攻撃力を元々の攻撃力を半分にした数値にする。

【モンスター効果】

(1):水属性Xモンスターをリリースしてこのカードのアドバンス召喚に成功したときに発動する。デッキから同じレベル・種族の水属性モンスター2体を手札に加える。(同名カードは1枚まで)

(2):P召喚に成功したこのカードを素材に水属性XモンスターのX召喚に成功したとき、そのXモンスターは以下の効果を得る。

●このカードは戦闘では破壊されない。

 

サイレント・シャーク

レベル4 攻撃1600 守備1600 水属性 魚族

【Pスケール:青4/赤4】

(1):このカードが表側表示で存在する限り1度だけ、自分フィールドの水属性Xモンスターを対象に発動できる。そのモンスターはターン終了時まで戦闘では破壊されず、相手のカード効果を受けない。

【モンスター効果】

(1):このカードの召喚に成功したとき、自分フィールドのX素材となっている水属性モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化され、レベルは4となり、攻撃できない。

(2):このカードをEXデッキからP召喚に成功したとき、自分フィールドにこのカード以外のモンスターが存在しない場合に発動できる。墓地からレベル4・水属性モンスターを2体まで特殊召喚する。その後、それらのモンスターを素材として水属性XモンスターのX召喚を行う。

 

激瀧神の杖

装備魔法カード

ランク5以上の水属性Xモンスターにのみ装備可能。

(1):1ターンに1度、自分フィールド・墓地に存在する水属性Xモンスター1体を対象に発動できる。ターン終了時まで、装備モンスターの攻撃力はそのモンスターの元々の攻撃力分アップする。

(2):1ターンに1度、装備モンスターが戦闘で相手モンスターを破壊したときに発動できる。装備モンスターのX素材を1つ取り除き、もう1度だけ続けて攻撃する。

 

「ふ、ふふふ…」

敗北したにもかかわらず、表情を変えることなく、笑う余裕すら見せる野呂を凌牙はにらみつける。

野呂が敗れてもなお、デュエル戦士たちは植え付けられた恐怖心から戦いを辞める様子がない。

「私を倒したとしても…何も、変わりません。神代凌牙、既に時計の針は動いている。あなたがしたことは、ただその針をほんのわずかに遅らせただけです…」

デュエルディスクを操作し、底から発生する光を自らに向ける。

それを見た凌牙は彼に背中を向けた。

「特等席を確保して…お待ちしていますよ」

その言葉を最後に、野呂の姿は光とともに消え、その場には笑みを浮かべる野呂がイラストとなっているカードだけが残った。

「くそっ…!早く来てくれ!!このままじゃあ!!」

傷を押して戦う権現坂と柚子やヴァプラ隊に守られる遊矢は必死に連絡を取るが、デュエル戦士の抵抗が激しく、あとどれくらいで到着できるかわからない状態だった。

だが、エドは苦しみながらもどこか頭の中がすっきりした感じがした。

「無駄だ…遊矢。僕はもう、助からない…」

「エド!!あきらめるなよ!!BAT-DIEなんかに…」

「遊矢、いいんだ…」

遊矢の手に自分の手を重ね、穏やかな表情で首を横に振る。

遊矢も、エドを助けることができないのは頭の中では分かっていた。

ただ、認めたくないだけだった。

「遊矢…僕の死体は必ず回収しろ…。そして、突き止めるんだ…。BAT-DIEの正体と…治療法を…。そうすれば、僕以外にBAT-DIEを打たれている人たちを…救える…うう!!!」

「エド!!俺のせいだ…俺がエドを…」

エドに笑顔を与えてしまったがために、今エドがここで死ぬことになってしまった。

何のためのデュエルだったのか、エンタメデュエルを否定されたも同然な悲しい結末に涙する。

「いいんだ…。君との、デュエルで…ようやく僕は素直になれた…。遊矢、君は僕を殺したんじゃない…。君は…僕を…救った…んだ…」

体から力が抜け、遊矢の手に重ねていた手がぶらりと下に垂れる。

(ああ…そんな!これが…エドの…人の死…命の消滅…!!)

ボロボロと涙があふれ出て、止まらない。

もし少し出会いが違えば、デュエルの楽しさを分かり合える仲間に慣れたはずの彼が今、死んでしまった。

「うわあああああああ!!!!」



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第107話 解放の代償

ハートランドの空は鉛色に染まり、戦場を洗い流すように雨が降り続ける。

雨の中、デュエルディスクとデッキを没収されたデュエル戦士たちがレジスタンス達の手で連行される。

連行するレジスタンス達と避難民たちは憎しみのこもった目で彼らを見ていた。

「あいつらが家族を…俺たちの街を!!」

「殺してやる!!殺してやりたいよ!」

ヴァプラ隊も警備の列に加わっており、いつでも鎮圧できるようにデュエルディスクを展開している。

デュエル戦士達だけでなく、憎しみで暴走するかもしれない住民やレジスタンスメンバーをいつでも対処できる。

スタンダード次元にいるヴァプラ隊の大半を送り込んでいるため、今のヴァプラ隊とレジスタンスの比率は3:2。

鎮圧されることは分かっているため、憎しみを無理にでも飲み込むしかない。

侑斗はその光景を校舎の談話室の窓から見ていた。

「ユウ…これ、カード化された人達の…」

いつもなら笑顔を見せるウィンダだが、今は違う。

悲しげで、今にも泣き出しそうな表情だ。

確かに、エクシーズ次元の解放には成功した。

彼の手にはエクシーズ次元の基地で見つかった『欠片』が入ったカプセルが握られている。

レジスタンスにもヴァプラ隊にも、少なくない犠牲者が出ている。

ウィンダから受け取ったタブレット端末を手にする。

あくまで手元にあるのは現状確認できるだけの数でしかない。

「…」

「それに、翔太君のことも」

「うん。彼の中にベクターがいる…」

今回は凌牙が止めたおかげで、一時的にベクターを抑えることができた。

しかし、だからといって、ベクターがもう表出しないとは限らない。

現状、翔太を殺す以外にベクターを抹殺する方法はないだろう。

しかし、翔太を生かしつつ、ベクターを消滅させる手段もある。

(残り3枚の記憶のカード…それで翔太君が体の主導権を完全に掌握できる…か)

戻ってきて、少しだけ落ち着きを取り戻した翔太が伝えてくれたことだ。

彼の中にいるというもう1つの魂、石倉純也の弟である石倉純次の存在。

普通の人なら世迷言として信じなかったかもしれない。

だが、その普通とは違う経験をいくつも重ねてきたからこそ、彼の言葉を信じることができた。

「あとは、彼自身がどれだけベクターを押さえつけることができるか」

彼のことも気がかりだが、今はそれ以上に重要なことが残っている。

エクシーズ次元のレジスタンスの協力を取り付け、3つの次元の連合軍でアカデミアを攻撃する。

決戦のための準備のため、スタンダード次元へ戻らなければならない。

同時に、BAT-DIEのこともある。

(BAT-DIEを消さない限り、アカデミアとの戦争がどちらかが全滅するまで終わらない殲滅戦になってしまう…)

その地獄の入り口を凌牙たちは目にしている。

BAT-DIEに殺される恐怖にかられたデュエル戦士達の悲しい姿。

その恐怖に突き動かされたデュエルから遊矢たちを守るために、増援で駆け付けたヴァプラ隊の何人かが犠牲になった。

戦いが収束した後で、そのデュエルの当事者となった沢渡と権現坂は怒りをあらわにしていた。

(俺はアカデミアの奴らが許せねえ…けど、そいつらに戦いを強要して、駒みたいにしてやがることがもっと許せねえよ!!)

(なぜだ…?なぜアカデミアはこうもデュエルを汚すことができる!?仲間の命をも一片の紙のごとく捨てることができるのだ!?)

「BAT-DIE、そしてアークエリア・プロジェクト…。エクシーズ次元を解放しても、少し計画が遅れるだけ…」

おそらく、それは『欠片』を失ったとしても変わらないことなのだろうか。

そもそも、なぜアカデミアは人々をカード化する、いやしなければならないのかも疑問だ。

そのようなまどろっこしい方法を取らなくても、侵略はできるはずだ。

(真実に近づけたと思ったけれど、結局わからないことだけが増えてしまった…。一体、アークエリアプロジェクトは…赤馬零王の計画は何なんだ…?)

 

学校外の開けた場所で、エドの遺体が入ったカプセルがヴァプラ隊の手でヘリに運ばれ、ヘリは上空で次元転移をする。

スタンダード次元のLDS管轄の病院で、エドを殺したBAT-DIEの解析と治療法を見つけてくれるはずだ。

「エド…」

柚子と共に遊矢はそれを見送っていた。

ヘリが見えなくなると、遊矢はすぐに屋内へのドアへ向けて歩いていく。

「遊矢…」

「行こう、柚子。見送りは済んだから…さ」

振り返り、笑みを見せる遊矢だが、柚子にはそれがあまりにも悲しすぎた。

柚子が見たい笑顔は曇り一つない、純粋に心の底から見せてくれる笑顔だ。

今の笑顔からは喜びではなく、悲しみしか感じることができない。

思わず柚子は駆け寄り、後ろから彼を抱きしめる。

「柚子…」

「我慢、しなくていいよ…遊矢…。誰も、見てないから…」

今ここにいるのは2人だけ。

周りのことなど気にする必要もない。

だからこそ、素直に感情を出してもいい。

悲しみを我慢しなくていい。

柚子の手に触れる遊矢の手が次第に震え始める。

震えが次第に胴体に、足に伝染していき、膝から崩れる形でその場にうずくまる。

「俺は…俺は、エドを…救えなかった…!!」

確かにエドを笑顔にすることができた。

だが、BAT-DIEにむしばまれ、死んでいくエドをただ見ていることしかできなかった。

冷たくなっていく彼に何もできなかった。

その現実と己の無力さが遊矢に絶望を突きつける。

遊矢の理想をあざ笑うかのように否定する。

次第に遊矢の目から涙が零れ落ちる。

雨と同じく、ポタポタと床に落ちるが、どれも等しく床を濡らすだけだった。

そんな遊矢をどうやって慰めればいいのか、柚子にはわからない。

エドの言葉をもう1度伝えたからと言って、それで区切りをつけることなどできないだろう。

だから、柚子にできるのはこれだけだった。

次第に耐えきれなくなった遊矢は振り返り、柚子を抱きしめ、声を上げて泣き始める。

その彼の悲しみを感じ、柚子も目を閉じ、彼を抱きしめたまま静かに泣いた。

明日からの、これからの自分たちの未来が見えないまま…。

 

「そうか…エクシーズ次元を取り戻したのは喜ばしいが、まさかBAT-DIEを味方に撃ち込んでいたとはな…」

レオコーポレーションの社長室で、侑斗と次元間通信を行う零児はあまりのことに目を閉じ、考え込む。

裏切者を抹殺するためとはいえ、味方を殺すウイルスをあらかじめデュエル戦士たちに投与しておく。

大局的に見ると正しいかもしれないが、それは人間のやることではない。

(ここまで…狂気に落ちてしまったというのか、父さん…!!)

幼いころの、自分と母を捨てる前の零王を零児は思い出す。

 

幼いころから秀才だった零児のため、零王は日美香に説得して家族そろってアメリカに引っ越し、彼を名門学校へ進学させてくれた。

そして、彼は家族のために日夜レオコーポレーションの社長としての仕事に励んでいた。

そんなある日、学校から帰ってきた零児を待っていたのは、まだ会社にいるはずの零王だった。

余り笑っておらず、説教のためだろうと思った零児は心当たりもあることから、「ただいま」というだけで沈黙していた。

日美香は買い物に出て不在で、2人はテーブルをはさんで対面する形で椅子に座る。

「零児、どうしたんだ?教授から成績が落ちたと連絡が来たぞ。さすがにその年齢で大学は無理だろう…とな」

「お説教のつもり…?」

穏やかな口調で、あまり怒っているようには見えない。

零王はコーヒーを一口飲んだ後で、もう1度零児を見る。

「まぁ、そうでもあり、そうでもない。お前が望むならそうすればいい。私はお前があの大学の授業についていけていないということなど思っていない。わざと…テストを白紙で提出したな?」

フフフと笑いながら、見透かすように零児を見る。

そのテストは国際経営学の小テストで、零児はそのテストを白紙で提出し、それを見た教授は大いに驚いていたという。

「間違った答えを書くのはプライドが許さなかったか?それでも、罠を張るときはその罠にリアリティを持たせるべきだ。例えば…まるで正解みたいにもっともらしく間違った答えを書くとか。それにしても、驚いたよ。わざと成績を下げて私の興味を引こうなどと…」

すっかり説教する気がないようで、笑いながら零児の肩に手を置く。

その後は再び同じようなことになったときのもっともらしい間違った答えの書き方講座が彼女が帰ってくるまで続いた。

そして、その日は珍しく家族そろっての晩御飯になり、楽しく談笑しながらその時間を過ごした。

 

(あの時…中々父さんと会えなくて寂しかった。それを分かってくれて、わざわざ休みを取って、私のために時間を作ってくれた…)

変わってしまう前の零王はまさに零児にとっては人生の目標というべき存在で、頼れる理想的な父親だった。

そんな彼だからこそ、今ではすっかり彼を毛嫌いしている日美香も彼と結婚し、人生を共にしようと思ったのかもしれない。

(だが…今はどうだ!?家族もレオコーポレーションも捨て、別次元を侵略する独裁者に変わってしまった…!そして、私たちの故郷を…スタンダード次元をもその矛先としている…父さん、『欠片』があなたをここまで変えてしまったというのか!?)

エクシーズ次元の『欠片』を手にしたことで、これで残る『欠片』は融合次元の、アカデミアが持っている1つだけになった。

その1つを奪い、アカデミア本部と零王を倒さなければ、この戦いは終わらない。

(そして、この戦いが終わった暁には、すべての『欠片』をもう誰の手にもわたらないよう封印する…。私や父さんのように、『欠片』の力で世界を混乱させるようなことがあってはならない…)

ノートパソコンに設計図が送られてきて、それを読む零児の額から冷たい汗が流れる。

設計図の機械の名前は『アキレスの盾』。

アカデミアとの決戦で欠かすことのできない重要なピースだ。

そして、これは零児が『欠片』から得た知識で生み出されている。

「ふっ…私も、毒されているな。『欠片』に…。血は争えないというのか…?」

『欠片』の力を使うたびに、心の中に欲望が浮かび上がる。

その力でスタンダード次元を統べたい、人々を思うようにコントロールしたいという支配欲。

融合次元そのものを破壊することで最小限の犠牲による次元戦争終結という恐ろく狂気じめた発想。

おまけに『欠片』の力を得た自分が世界で最高の存在だという妄想までもがあふれ出ていた。

そのような感情を浮かべることを恐れ、何度か『欠片』を捨てようと考えたこともある。

だが、『欠片』に立ち向かうことができるのは『欠片』のみ。

そして、この戦争の原因は父親である零王。

だからこそ、零児は1人で『欠片』の誘惑に耐えながら、その力を使い続けてきた。

(戦争が終わるまででいい…。持ちこたえてくれ…)

 

「翔太君、ごはん持ってきたよー」

校舎地下の独房代わりに使われている倉庫に入った伊織はそこに入れられている翔太に弁当箱を渡す。

こちらへ派遣されたヴァプラ隊が補給物資とともに持ってきたもので、レオコーポレーションが開発したレーションだ。

その容器を見た翔太は見慣れた嫌いなものに露骨なほど嫌がるが、腹を空かせているため、文句は言えない。

エクシーズ次元へ向かう前に、味に慣れるためということで翔太達は何度もそれを食べた。

栄養価は高いものの、かなりまずいとのことで、特に味にうるさい沢渡が嘔吐してしまうほどだ。

そんなものを食べなければならないのかとがっかりしながら、容器のふたを開ける。

中身は苦い汁が入った油揚げのようなハンバーグとパサパサした米、梅干し以上に酸っぱい葉物野菜ともはや色が元々の贖罪の者とは全く別物と化してしまった根野菜が詰まっている。

一番無難なのはパサパサ米で、それを口に運ぶ。

食べている間、ずっと無言のままの翔太が気になり、伊織は彼の隣に座る。

(なんて、言えばいいのかな…?)

凌牙によって気絶させられる直前の、あの取り乱した翔太の姿が頭に浮かぶ。

今はおとなしくしているものの、心の中では自分の中にいるベクターを恐れ、嫌悪しているのだろう。

おそらく、今どんな言葉をかけたとしても、翔太にとっては逆効果にしかならないだろう。

「ちっ…まずいメシだ」

黙って座る伊織には目を合わせず、翔太はひたすらそのまずいレーションを食べ続ける。

そんな彼を見た後で、伊織は倉庫の中を見る。

(思ったより広い…ここ…)

倉庫とは言うが、バスケットボールなどの本来なら入って当たり前のはずの球技道具などはすべて運びされており、中に残っているのはそれらを入れていたカートや棚だけで、それらはすっかりボロボロになっている。

元々この校舎には800人以上の生徒と教師を収容していたようで、そのせいかこの倉庫も遊勝塾のデュエルリングの半分くらいの広さだ。

アクションデュエルはできないが、それでもデュエルをするには十分だ。

幸い、独房に入れられる際にはデュエルディスクとデッキは没収されていない。

今の彼のデュエルディスクはリアルソリッドビジョンシステムに一部制限が加えられているが、それでも普通のデュエルをするには何の問題もない。

ならば、やることは一つと伊織は立ち上がる。

「翔太君、久しぶりに私とデュエルをしない?」

翔太の前へ行き、展開したデュエルディスクを構える。

翔太の箸の動きが一度は止まるものの、結局また動きはじめ、やがて米を食べきる。

「いいからデュエルしようよ!ずっとこんなところで縮こまってても、体がなまるだけだよ?」

「好きでこんなところにいるんじゃねえよ…」

気が付いたらここに押し込められていて、スタンダード次元への帰還の日が来るまで出られないということになっていたから出ていないだけ。

少なくとも、扉越しに凌牙からはそういわれた。

「だったら、すごく暇でしょ?早く食べ終えて、デュエルの準備をして!」

「うるせえなぁ…今はデュエルをする気はねえよ」

「ふーん、もしかして、今の私とデュエルをするのが怖いってこと?」

「何…?」

挑発するかのように眉を動かし、口角を釣り上げてみてくる伊織に翔太の手が止まる。

明らかに怒気のこもった声で、それでこそ伊織にとっては好都合な話だ。

「そりゃあ、そうだよねー。だって、次元戦争でいろんな人とデュエルをしてきて、すっごく強くなったんだから…今なら翔太君も楽勝かも」

「ふざけたことを言ってんじゃねえぞ…?伊織のくせに」

「そーんなことを言っても怖くなーいよ。翔太君のくせにー」

これまで何度も自分に対して上から目線で言葉を吐いてきた翔太にこれを機にやり返してやろうとせめたてる。

我慢できなくなったのか、それともいい加減にまずいレーションを食べたくなくなったのか、翔太は残りを床にぶちまけて立ち上がる。

既にデュエルディスクは展開されており、5枚のカードもドロー済みだ。

「そうそう、そうじゃなきゃ」

「さんざん言ってきたんだ…その安い挑発に乗ってやるよ」

「安い挑発で悪かったわねー。でも、その挑発に乗ったこと、後悔させてあげる」

勝敗は伊織にとっては問題ないことだが、やはり負けるよりは勝った方がいい。

これまで何度か翔太とデュエルをしてきたが、いまだに白星がない。

ここで1つでも白星がほしいところだ。

「さあ、楽しもう!翔太君!」

「楽しむ…?勝手に言ってろ」

「「デュエル!!」」

 

伊織

手札5

ライフ4000

 

翔太

手札5

ライフ4000

 

「私の先攻!手札から《E・HEROブレイズマン》を召喚!」

 

E・HEROブレイズマン レベル4 攻撃1200

 

「《ブレイズマン》の効果発動!デッキから《融合》を1枚手札に加えるよ。そして、手札の《スノーピクシー》の効果発動。手札のこのカードと私のフィールドのE・HEROを素材に融合召喚を行うことができる!私は《スノーピクシー》と《ブレイズマン》を融合。雪の妖精よ、炎の切り込み隊長よ、今こそ1つになりて、新たなヒーローに進化せよ!融合召喚!現れて、永久凍土の申し子、《E・HEROアブソルートZero》!!」

 

E・HEROアブソルートZero レベル8 攻撃2500

 

「いきなり、《アブソルートZero》か…」

「そして、私はカードを2枚伏せてターンエンド!」

 

伊織

手札5→1(伏せカード、と手札のうち1枚《融合》)

ライフ4000

場 E・HEROアブソルートZero レベル8 攻撃2500

  伏せカード2

 

翔太

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「面倒だな…」

「フフン。怖気づいちゃった?」

余裕な伊織はドヤ顔を見せてくる。

それにはムカッとした翔太だが、むやみに《E・HEROアブソルートZero》を除去できないうえ、伏せカードにも問題がある。

「《アブソルートZero》と《マスク・チェンジ》、《M・HEROアシッド》か…」

この3枚の組み合わせによって、伊織は相手フィールドのカードを全滅させることができる。

伏せカードのうちの1枚に《マスク・チェンジ》が隠れていても不思議ではない。

「俺のターン、ドロー」

 

翔太

手札5→6

 

「俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

伊織

手札1(伏せカード、と手札のうち1枚《融合》)

ライフ4000

場 E・HEROアブソルートZero レベル8 攻撃2500

  伏せカード2

 

翔太

手札6→4

ライフ4000

場 伏せカード2

 

「あれあれー?モンスターを召喚しなくていいの?もしかして、そんなに《アブソルートZero》が怖いのかなー?」

「言ってろ。お前のターンだぞ」

うっとうしく感じた翔太はぶっきらぼうに手を振って、彼女を急かすが、あまり覇気が感じられない。

あるのはさっさとデュエルを終わらせたいという思いだけだった。

「ふーん、まぁいいや。私のターン、ドロー!」

 

伊織

手札1→2

 

「私は手札から《E・HEROエアーマン》を召喚!」

 

E・HEROエアーマン レベル4 攻撃1800

 

「《エアーマン》の効果発動!デッキからHEROモンスター1体を手札に加えるか…」

「こいつ以外のHEROの数だけ、フィールドの魔法・罠カードを破壊できる」

「うん?」

急に翔太が《E・HEROエアーマン》のもう1つの効果を宣言したことに、伊織は違和感を抱く。

ちょっと気落ちしている翔太だが、無意味にそんなことを言っているようには思えない。

「気をつけな。もしここで効果の選択を誤れば、お前の虎の子の《アブソルートZero》と《アシッド》のコンボは不発に終わるぞ」

「あ…やっぱり、《マスク・チェンジ》が気になっちゃう?でも、もっと気にしなきゃいけないことがあるんじゃない?」

《E・HEROエアーマン》と《E・HEROアブソルートZero》がフィールドに存在し、翔太のフィールドにはモンスターはいない。

この2体のダイレクトアタックが決まれば、これで勝敗がついてしまう。

「うーーん。あ、もしかして!!」

伊織の脳裏に1枚のカードが思い浮かぶ。

そのカードがあれば、たとえあのコンボを使ったとしても、逆転されることに変わりはなくなってしまう。

「じゃあ、私は《エアーマン》の効果で翔太君の右側の伏せカードを破壊!!」

《E・HEROエアーマン》の両翼のファンから発生する竜巻が翔太の伏せカードを飲み込み、粉々に破壊する。

(もう1枚の伏せカードが気になるけど、これなら…!)

「俺はお前が破壊した伏せカード、《ミラーフォース・ランチャー》の効果を発動」

「え…?」

「セットされているこのカードが相手の効果によって破壊され墓地へ送られたとき、墓地のこのカードと手札・デッキ・墓地に存在する《聖なるバリア-ミラーフォース》を俺のフィールドにセットすることができる」

破壊したはずの《ミラーフォース・ランチャー》が何事もなかったかのようにセットされた状態でフィールドに戻ってきたうえに、《聖なるバリア-ミラーフォース》のセットまで許してしまった。

「で、でも…!セットしたターンなら、《ミラーフォース》は発動できないはず!バトル!!《アブソルートZero》でダイレクトアタック!瞬間氷結!!」

《E・HEROアブソルートZero》両手から吹雪を発生させ、翔太を氷漬けにしようとする。

「悪いが、《ミラーフォース・ランチャー》と《ミラーフォース》はこの効果でセットされた場合、セットしたターンでも発動できる。俺は《ミラーフォース》を発動。これで、お前のフィールドの攻撃表示モンスターはすべて破壊される」

「ううう…でも、私は速攻魔法《マスク・チェンジ》を発動!私のフィールドのHERO1体を同じ属性のM・HEROに変身させる!私は《エアーマン》を選択!疾風の戦士よ、今こそ神風の力を宿し、新たなヒーローに進化せよ!変身召喚!《M・HEROカミカゼ》!!」

吹雪を受け止めた《聖なるバリア-ミラーフォース》から光が拡散し、その光の中に《E・HEROアブソルートZero》が消えていく。

そして、仮面を装着した《E・HEROエアーマン》はその姿を《M・HEROカミカゼ》へと変化させ、拡散する光を上空で飛び回って回避していく。

 

M・HEROカミカゼ レベル8 守備1900

 

「《カミカゼ》がフィールドに存在する限り、翔太君はバトルフェイズ中にモンスター1体しか攻撃できないよ!」

「だが、《カミカゼ》の守備力は1900。突破できるモンスターの方が多いな」

「それはそうだけど…でも、《ミラーフォース》に巻き込まれないだけマシ!私はこれで、ターンエンド!」

 

伊織

手札2→1(伏せカード、と手札のうち1枚《融合》)

ライフ4000

場 M・HEROカミカゼ レベル8 守備1900

  伏せカード1

 

翔太

手札4

ライフ4000

場 伏せカード2(うち1枚《ミラーフォース・ランチャー》)

 

《ミラーフォース・ランチャー》1枚のために崩されたのは痛いが、フィールドにモンスターを残すことができたのは伊織にとって幸いだ。

だが、手札の枚数では翔太の方が勝っており、伊織の手の中にある《融合》は今の状況で死に札だ。

《M・HEROカミカゼ》の壁も、破壊さえできれば大したことはない。

「俺のターン、ドロー」

 

翔太

手札4→5

 

「俺はスケール2の《魔装剛毅アトレウス》とスケール5の《魔装獣スフィンクス》でペンデュラムスケールをセッティング…これで俺はレベル3と4のモンスターを同時に召喚可能。更に、俺は《スフィンクス》のペンデュラム効果を発動。デッキの上からカードを3枚まで墓地へ送り、ターン終了時まで墓地へ送ったカードの数だけ、このカードのスケールを変動させる。俺は3枚カードを墓地へ送り、《スフィンクス》のスケールを5から8に変更する」

 

デッキから墓地へ送られたカード

・魔装光

・魔装猫バステト

・魔装獣ユニコーン

 

魔装獣スフィンクス(赤) Pスケール5→8

 

「これで、俺はレベル3から8までのモンスターを同時に召喚可能。来たれ、時の果てに眠りし英雄の魂。漆黒の魂と契約し、封印から解き放たん。ペンデュラム召喚。現れろ、《魔装騎士ペイルライダー》、《魔装郷士リョウマ》)

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

魔装郷士リョウマ レベル4 攻撃1900

 

「俺は《リョウマ》の効果を発動。このカードが手札からペンデュラム召喚に成功したとき、墓地の魔装モンスター1体を手札に戻す。俺は《ユニコーン》を手札に戻す。そして、《ユニコーン》を通常召喚」

 

魔装獣ユニコーン レベル4 攻撃1600

 

「《ユニコーン》の効果。このカードを《ペイルライダー》の装備カードとし、攻撃力を800アップさせる」

《魔装騎士ペイルライダー》を背に乗せた《魔装獣ユニコーン》の体が青く染まり、第4の騎士は光剣を手にする。

「これで…今度は俺が1ターンキルできる状態になったな」

《魔装獣ユニコーン》を装備した《魔装騎士ペイルライダー》が戦闘で相手モンスターを破壊し墓地へ送ったとき、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与える。

これで、《M・HEROカミカゼ》を戦闘破壊すれば、伊織に2700のダメージを与えることができる。

更に、その後で《魔装郷士リョウマ》でダイレクトアタックをすれば、勝敗が決まる。

(あとは、あいつの伏せカードだがな…)

伊織のフィールドに残った最後の1枚の伏せカード。

除去しておきたいところだが、自分が《ミラーフォース・ランチャー》を使ったこともあり、下手に刺激するととんでもないしっぺ返しが待っている可能性がある。

「バトル!《ペイルライダー》で《カミカゼ》を攻撃。クワトロ・デスブレイク」

《魔装騎士ペイルライダー》を乗せた《魔装獣ユニコーン》が走り出し、《魔装騎士ペイルライダー》は光剣で彼を両断する。

両断された《M・HEROカミカゼ》が消滅し、その衝撃が伊織を襲う。

「キャアアア!!」

 

伊織

ライフ4000→1300

 

「私は罠カード《ヒーロー・シグナル》を発動!デッキからレベル4以下のE・HERO1体を特殊召喚する。私は《シャドー・ミスト》を特殊召喚!」

 

E・HEROシャドー・ミスト レベル4 守備1500

 

「「ちっ…なら、《リョウマ》で《シャドー・ミスト》を攻撃」

《魔装郷士リョウマ》がピストルを連射し、特殊召喚されたばかりの《E・HEROシャドー・ミスト》を穴だらけにして消滅させた。

「《シャドー・ミスト》の効果!このカードが墓地へ送られたとき、デッキから《シャドー・ミスト》以外のE・HEROを手札に加えることができる。私はデッキからもう1枚の《エアーマン》を手札に加える!」

「俺は永続罠《ミラーフォース・ランチャー》を発動。俺のターンのメインフェイズ時に、手札のモンスター1体を墓地へ送り、デッキ・墓地から《ミラーフォース》をセットする。俺は墓地の《ミラーフォース》をセット」

 

手札から墓地へ送られたカード

・魔装壁ゴルゴー

 

「俺はこれで、ターンエンドだ。同時に《スフィンクス》のペンデュラム効果は終了する」

 

伊織

手札1→2(《融合》、《E・HEROエアーマン》)

ライフ1300

場 なし

 

翔太

手札5→0

ライフ4000

場 魔装騎士ペイルライダー(《魔装獣ユニコーン》装備) レベル7 攻撃3300

  魔装郷士リョウマ レベル4 攻撃1900

  魔装剛毅アトレウス(青) Pスケール2

  魔装獣スフィンクス(赤) Pスケール8→5

  ミラーフォース・ランチャー(永続罠)

  伏せカード2(うち1枚《聖なるバリア-ミラーフォース-》)

 

(《エアーマン》が手札に加わったのはいいけど、これだと…)

墓地に《魔装猫バステト》が落ちたうえに、ペンデュラムゾーンには《魔装剛毅アトレウス》がいる上に《ミラーフォース・ランチャー》の効果で再びフィールドに戻った《聖なるバリア-ミラーフォース-》がある。

(でも、安心した…。翔太君のデュエル、ブレがなくて)

ベクターのことを聞き、独房の中の翔太からは気力が感じられなかった。

でも、今の翔太のプレイはいつもの彼のものだ。

「負けられない…!私のターン、ドロー!」

 

伊織

手札2→3

 

「私は手札から魔法カード《聖天使の施し》を発動。私のフィールドにカードがない時、デッキからカードを2枚ドローして、その後で手札1枚を墓地へ捨てる!」

 

手札から墓地へ送られたカード

・E・HEROゴルディオン・ヴァルキリー

 

「そして、手札から《E・HEROエアーマン》を召喚!」

 

E・HEROエアーマン レベル4 攻撃1800

 

「《エアーマン》の効果発動!デッキから《ドラゴンガール》を手札に加える。そして、手札から魔法カード《融合》を発動!《エアーマン》と《ドラゴンガール》を融合!疾風の戦士よ、竜を愛でる少女よ!今こそ1つになりて、新たなヒーローに進化せよ!融合召喚!現れて、竜巻の王者、《E・HERO Great TORNADO》!!」

 

E・HERO Great TORNADO レベル8 攻撃2800

 

「《Great TORNADO》の効果発動!このカードの融合召喚に成功した時、相手フィールド上のモンスターの攻撃力・守備力を半分にするよ!ダウン・バースト!!」

鉤から放たれる暴風が翔太のフィールドを襲い、風を受けたモンスターたちの力を奪っていく。

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃3300→1650

魔装郷士リョウマ レベル4 攻撃1900→950

 

「更に《ドラゴンガール》の効果!!このカードを融合素材としてHEROと名のつく融合モンスターの融合召喚に成功した時、デッキからカードを2枚ドローして、その後で手札を1枚墓地へ送るよ!!」

 

手札から墓地へ送られたカード

・E・HEROムーンナイト

 

「墓地の《ムーンナイト》の効果発動!墓地のこのカードを除外することで、デッキから攻撃力1500以下のHERO1体を特殊召喚できる。私は《バブルマン》をデッキから特殊召喚!」

伊織の背後に三日月を模したレリーフがついた水色のスーツを着たオレンジ色の髪の剣士の幻影が現れ、その姿が《E・HEROバブルマン》に変化・実体化してフィールドへとジャンプする。

 

E・HEROバブルマン レベル4 攻撃800

 

「そして、手札から速攻魔法《マスク・チェンジ》発動!《バブルマン》をM・HEROに変身させる!水のトリックスターよ、酸の力を宿し、新たなヒーローに進化せよ!変身召喚!《M・HEROアシッド》!!」

 

M・HEROアシッド レベル8 攻撃2600

 

「ここで《アシッド》か…!」

「《アシッド》の効果発動!このカードの特殊召喚に成功したとき、相手フィールドの魔法・罠カードをすべて破壊し、相手フィールドのモンスターの攻撃力を300ダウンさせる!アシッドレイン!」

「なら俺は速攻魔法《揺れる眼差し》を発動。ペンデュラムゾーンの《スフィンクス》と《アトレウス》を破壊し、お前に500のダメージを与える!」

強酸の雨が降る前に2体のペンデュラムモンスターが姿を消し、フィールドの中央から波紋が発生する。

 

伊織

ライフ1300→800

 

「そして、デッキから《魔装砲士ボナパルド》を手札に加える。更に俺は罠カード《アレスの誓約》を発動。俺のフィールドに魔装モンスターが存在し、相手フィールドにエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターが存在するとき、デッキから魔装モンスター1体を墓地へ送り、デッキからカードを1枚ドローする」

 

デッキから墓地へ送られたカード

・魔装盾イージス

 

「でも、これで《ミラーフォース・ランチャー》と《ミラーフォース》は破壊できる!」

強酸の雨が翔太の魔法・罠カードを溶かしていき、《魔装獣ユニコーン》が消滅する。

そして、雨を浴びた2体のモンスターの体からは煙が出て、力を弱める。

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃1650→850→550

魔装郷士リョウマ レベル4 攻撃950→650

 

「ふふん!これで形勢逆転だよ!」

「ちっ…一気に展開してきやがって」

たった1枚のドローから一気に状況をひっくり返してきた伊織のデュエルにさすがの翔太も舌を巻く。

ペンデュラムゾーンをがら空きにせざるを得なくなり、2体のモンスターの攻撃力も一気に低下した。

このまま2体の融合モンスターの攻撃を許せば、翔太の敗北が決まる。

「バトル!《Great TORNADO》で《ペイルライダー》を攻撃!!」

《E・HERO Great TORNADO》が煙を出した状態で片膝をつく《魔装騎士ペイルライダー》を鉤で切り裂く。

だが、《魔装騎士ペイルライダー》は握っていた光剣に力を籠め、攻撃を受けながらもその刃を嵐のヒーローのj腹部に突き刺す。

「《ペイルライダー》は…戦闘した相手モンスターを破壊する!!」

「でも、ダメージは来るよ!」

 

翔太

ライフ4000→1750

 

「そして、《アシッド》で《リョウマ》を攻撃!!これで終わりぃ!!」

《M・HEROアシッド》の銃から放たれる酸のこもった弾丸が《魔装郷士リョウマ》の額を撃ち抜き、消滅させる。

そして、弾丸はそのまま翔太を襲うが、彼の目の前に五芒星が中央に刻まれた白銀の盾を左手に握る女性の天使が現れ、弾丸を受け止める。

「俺は墓地の《魔装盾イージス》の効果を発動。墓地のこのカードを特殊召喚し、魔装モンスターとの戦闘で発生する俺へのダメージを0にする」

 

魔装盾イージス レベル4 守備1900

 

「ううう、間一髪で止められちゃった…」

「ヒヤリとは、したけどな…」

どうにか敗北は免れたが、一歩間違えば敗北が決まっていた分、ここまで自分を追い込んだ伊織に驚きを覚える。

「でも、良かった。翔太君…ちゃんと翔太君のデュエルができてるから」

「はぁ…?俺のデュエル?」

「うん。だから…翔太君は絶対にベクターに勝てるよ」

「無責任なことを…」

「それでもそう思ってる!あーーー、翔太君の中のベクター!ここで私が宣言するよ!!秋山翔太は絶対にあなたに勝つ!!どんなことがあっても!!だから…おとなしく翔太君の中に引きこもってなさーーい!!」

叫ぶ伊織自身も、この声がベクターに聞こえているとは思っていない。

だが、ひたすらに翔太を信じる伊織の言葉が少なからず翔太の心にしみこんでいく。

(あいつ…なんでここまで俺を…?)

「ふうう…すっきりした。私はカードを1枚伏せてターンエンド!」

 

伊織

手札3→0

ライフ800

場 E・HERO Great TORNADO レベル8 攻撃2800

  M・HEROアシッド レベル8 攻撃2600

  伏せカード1

 

 

翔太

手札0→2(うち1枚《魔装砲士ボナパルド》)

ライフ1750

場 魔装盾イージス レベル4 守備1900

 

「分からねえな…」

翔太のターンとなり、デッキトップに指をかける翔太がデッキトップに指をかけ、小さくつぶやく。

伊織のこともそうだが、どうしてここまで他人のために何かをしようとすることができるのか。

記憶を取り戻すことを中心にしか考えていない翔太には理解できない。

「翔太君だって同じだよ。忘れたことがないよ、私を初めて助けてくれた時のことを」

「…俺は何も言ってねーぞ」

いきなり自分の心を読んだかのような伊織の言葉にうろたえる。

「どれだけ一緒に戦ってると思ってるの?わかるよ」

「ちっ…」

舌打ちしてしまうが、なぜかそれが悪く感じられない。

あの時は確かに、伊織を助けることで頭がいっぱいだった。

そんなことは一度しかなく、それからまもなく多くの問題が降りかかったことでそのことはとっくに忘れていた。

正義の味方というのは柄じゃないが、少なくとも自分だけが違うというわけではないことがやっとわかった気がする。

「俺のターン、ドロー!」

 

翔太

手札2→3

 

「俺は手札から魔法カード《魔装天啓》を発動。俺のエクストラデッキ・墓地の魔装ペンデュラムモンスター2体を手札に加える。俺は《アトレウス》と《スフィンクス》を手札に加える。そして、再びこいつらでペンデュラムスケールをセッティング!」

再び翔太の前に2体のペンデュラムモンスターが現れ、光の柱を生み出す。

「そして、《スフィンクス》の効果発動。デッキの上からカードを3枚墓地へ送り、ペンデュラムスケールを3つ上げる」

 

魔装獣スフィンクス(赤) Pスケール5→8

 

デッキから墓地へ送られたカード

・魔装融合

・貪欲な壺

・魔装鬼ロクベエ

 

「これで俺はレベル3から7までのモンスターを同時に召喚可能。来たれ、時の果てに眠りし英雄の魂。漆黒の魂と契約し、封印から解き放たん。ペンデュラム召喚。現れろ、《魔装騎士ペイルライダー》、《魔装郷士リョウマ》、《魔装砲士ボナパルド》」

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

魔装郷士リョウマ レベル4 攻撃1900

魔装砲士ボナパルド レベル5 攻撃2100

 

「そして、俺は手札の《RUM-魔装の刻印》を墓地へ送り、《ペイルライダー》を進化させる」

「そのカードって、もしかしてサヤカちゃんとのデュエルで…!!」

「こいつは俺のペンデュラムゾーンに2体の魔装カードが存在するときに、その方法でエクシーズ召喚できる。混沌の力を得た死の騎士が冥界へ魂を誘う!カオスエクシーズチェンジ!現れろ、けがれた富に包まれし魂を死へ誘う獣、《CX魔装死獣プルートー》!」

《魔装騎士ペイルライダー》の姿が猛々しい獣へと変貌していき、その眼はギロリと伊織のヒーローたちに向けられる。

 

CX魔装死獣プルートー ランク8 攻撃3500

 

「こいつの効果は知ってるよな?こいつのエクシーズ召喚に成功したとき、相手フィールドのセットされているカードをすべてこいつのオーバーレイユニットにする!」

その効果も既にサヤカから聞いており、その恐ろしさも知っている。

オーバーレイユニットと相手モンスターが存在する限り、オーバーレイユニットを取り除くことで、何度でも攻撃力をアップさせて連続攻撃することもできる。

「ということは…!!」

「そうだ。お前の頼みの綱の伏せカードを失う!バアル・ライトニング!!」

《CX魔装死獣プルートー》が引き起こした雷が独房を駆け巡り、伊織の伏せカードを貫く。

雷を受けた伏せカードはカオスオーバーレイユニットとなり、死の獣の糧となる。

「《プルートー》で《アシッド》を攻撃!ユーピテル・クロウ!!」

《CX魔装死獣プルートー》が雷で光る水晶の爪で《M・HEROアシッド》を引き裂こうとする。

今の伊織にはその攻撃を防ぐ手立てがなく、これは受けるしかない。

しかし、ただで終わるつもりはなかった。

「翔太君!今回は私、負けるつもりなんてないから!!」

「何?」

「私は墓地の《E・HEROゴルディオン・ヴァルキリー》の効果発動!!」

「そいつは…!」

伊織が《聖天使の施し》の効果で墓地へ送ったカードを思い出す。

伊織のフィールドに青色の服と金色の鎧を重ね着した、三つ編みをした金色のロングヘアーの少女が両手で剣を握り、《CX魔装死獣プルートー》の爪を正面から受け止める。

「このカードは私のHERO融合モンスターが相手モンスターの攻撃対象になったとき、墓地から除外することで、攻撃モンスターを破壊する!」

「ちっ…このタイミングだと…!」

《CX魔装死獣プルートー》は魔装騎士をカオスオーバーレイユニットにしている状態で効果を発動するとき、相手のカード効果の発動を禁じる。

しかし、それ以外のタイミングでは相手のカード効果の発動を妨害できない。

「まだまだ翔太君にはかなわないけど…これくらいならできる!!」

爪を仲間が受け止めている間に《M・HEROアシッド》が銃身が焼けるまで撃ち続け、《CX魔装死獣プルートー》の体が強酸の弾丸でボロボロになっていく。

「そして、破壊されたモンスターの攻撃力の半分のダメージをお互いに受ける!!」

「《プルートー》の攻撃力は3500!!ということは…!」

「そう!1750のダメージを受ける!!」

爪を受け止め続けた女騎士の体からまぶしい光が発生し、その光の中にフィールドと翔太達は飲み込まれていく。

光が収まると、お互いのフィールドのモンスターが消え、翔太と伊織だけが残っていた。

 

翔太

ライフ1750→0

 

伊織

ライフ800→0

 

魔装盾イージス

レベル4 攻撃0 守備1900 効果 光属性 天使族

(1):自分フィールドの「魔装」モンスターが戦闘を行うときに発動できる。手札・墓地に存在するこのカードを自分フィールドに特殊召喚し、その戦闘で発生する自分へのダメージを0にする。この効果を発動したターン、このカードは(2)の効果を発動できない。

(2):自分フィールドに存在する「魔装騎士」モンスター1体を対象に発動できる。自分フィールドに存在するこのカードを守備力1000アップの装備カード扱いとしてそのモンスターに装備する。

(3):この効果で装備カード扱いとなったこのカードの装備モンスターが破壊されるときに発動できる。代わりにこのカードを墓地へ送る。そして、そのモンスターはこのターン、戦闘・効果では破壊されない。

 

E・HEROムーンナイト

レベル4 攻撃1600 守備1500 効果 闇属性 戦士族

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールドの「HERO」モンスターが相手モンスターを攻撃するとき、相手モンスターの攻撃力が攻撃モンスターを上回っている場合のダメージステップ開始時に発動できる。手札のこのカードを特殊召喚し、攻撃モンスターの攻撃力をターン終了時までその相手モンスターの攻撃力+1000にする。この効果で特殊召喚されたこのモンスターはターン終了時に墓地へ送られる。

(2):自分の墓地に存在するこのカードを除外し、自分にデッキに存在する攻撃力1500以下の「HERO」モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。この効果を発動したターン、自分は「HERO」以外のモンスターを召喚・特殊召喚できない。

 

E・HEROゴルディオン・ヴァルキリー

レベル4 攻撃1500 守備1600 効果 光属性 戦士族

このカード名の(1)(2)の効果は1ターンにそれぞれ1度しか発動できない。

(1):1ターンに1度、自分のデッキから「HERO」モンスター1体を除外することで発動できる。このカードの攻撃力をターン終了時まで500アップさせる。この効果で墓地へ送られたカードはこの効果を発動してから2回目の自分スタンバイフェイズ時に自分の手札に加える。

(2):自分LPが相手よりも低く、自分フィールドの「HERO」融合モンスターが相手モンスターの攻撃対象となったとき、墓地のこのカードを除外することで発動できる。その攻撃を無効にし、攻撃モンスターを破壊する。その後、破壊したモンスターの攻撃力の半分の数値分のダメージをお互いに受ける。

 

「ったく、負けず嫌いなのかよ?お前は…」

勝てると思ったデュエルがまさかの自爆カードによって引き分けにされ、その場に座り込んだ翔太はため息をつく。

だが、内心はデュエルをする前よりも晴れやかになっていた。

「さあ?どうでしょー?」

「そういうの、ムカつくな。で、俺はいつここを出ればいいか、話はついたのか?」

「ああ、すっかり忘れてた!!今日の夕方、出ていいんだって!スタンダード次元へ戻る手伝いをしてほしいって…」

「忘れるなよ…」

自分が出れるか否かはどうでもいいのかと少しがっかりした翔太は敷布団代わり体操用マットで横になる。

肉体労働中心になるかもしれず、少しでも多く睡眠をとっておこうと考え、目を閉じる。

「えへへ、ごめんごめん。じゃあ、夕方ね!」

手を振った後で、伊織は独房を出ていき、鍵がかけられる。

「…ありがとうな」

再び1人になった空間の中で、誰にも聞こえないだろうと感謝の言葉を小さく口にする。

そして、固いマットの上であるにもかかわらず、ものの数分で眠りについた。



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オリカ紹介Ⅵ

第86話から第107話までのオリカと非公式オリカ(効果調整あり)を紹介。


スリープ・フェアリー

レベル4 攻撃1200 守備1200 効果 光属性 天使族

このカード名の(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできない。

このカードはX素材とする場合、「フェアリー」モンスターのX召喚にしか使用できない。

(1):自分フィールドに光属性・天使族モンスターが存在するとき、このカードは手札から特殊召喚できる。

(2):このカードをX素材として「フェアリー」モンスターのX召喚に成功したときに発動する。自分はデッキからカードを1枚ドローする。

 

 

 

RUM-フェアリー・フォース

通常魔法カード

このカード名の(2)の効果はデュエル中1度しか発動できない。

(1):自分フィールドに存在する「フェアリー」Xモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターよりもランクが1つ高い、同じ属性の「フェアリー」Xモンスター1体を対象のモンスターの上に重ね、X召喚扱いとしてEXデッキから特殊召喚する。

(2):自分フィールドにランク4・光属性・天使族XモンスターがX召喚されたとき、墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。デッキから「RUM」魔法カード1枚を手札に加える。

 

カウンター・フォース(アニメオリカ・調整)

永続罠カード

(1):カウンター罠カードが発動されるたびに、このカードにチャージカウンターを1つ置く。

(2):このカードを発動した次の自分ターンのスタンバイフェイズ時、フィールドに存在するこのカードを墓地へ送ることで発動する。このカードの上に置かれているチャージカウンターの数×1000ダメージを相手ライフに与える。

 

CX魔装死獣プルートー

ランク8 攻撃3500 守備3000 エクシーズ 無属性 戦士族

【Pスケール:青0/赤0】

(1):1ターンに1度、Pゾーンに存在するこのカードを裏向きでEXデッキに戻すことで発動できる。EXデッキに表向きで存在する「魔装騎士」モンスター1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化され、このターン、自分は「魔装」モンスターしか召喚・特殊召喚できない。

(2):このカードがPゾーンに存在するとき、自分は「魔装」以外のモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚できない。この効果は無効化されない。

【モンスター効果】

レベル8の「魔装騎士」モンスター×2

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

このカードはルール上、「魔装騎士」モンスターとしても扱う。

このカードは以下の方法でのみ特殊召喚できる。

●自分Pゾーンに「魔装」カードが2枚存在するとき、手札の「RUM」魔法カード1枚を墓地へ送り、自分フィールドに存在する「魔装騎士」モンスター1体を対象に発動できる。EXデッキに存在するこのカードをそのカードの上に重ねてX召喚扱いで特殊召喚する。

(1):このカードのX召喚に成功したときに発動する。相手フィールドにセットされているカードをこのカードの下に重ねてX素材にする。

(2):このカードが相手モンスターと戦闘を行ったダメージステップ終了時、このカードのX素材を1つ取り除くことで発動できる。このカードの攻撃力をターン終了時まで1000アップし、続けてもう1度攻撃することができる。

(3):このカードのX素材に「魔装騎士」モンスターが存在し、このカードの効果を発動するとき、相手は魔法・罠・モンスター効果を発動できない。

(4):モンスターゾーンのこのカードが破壊されたときに発動する。自分Pゾーンに存在するカードをすべて破壊し、このカードを自分Pゾーンに置く。

 

昇格

アクション魔法カード

(1):自分フィールドのモンスター1体のレベルを1から3上げる。

 

再動

アクション魔法カード

(1):自分の墓地に存在する、このターン発動した通常魔法カード1枚の効果を得る。このカードを発動したターン、自分はアクションカードを手札に加えることができない。

 

密林融合-アマゾネス・フュージョン

通常罠カード

このカード名のカードは1ターンに1度しか使用できない。

(1):相手の攻撃宣言時、自分のEXデッキに存在する「アマゾネス」融合モンスター1体を対象に発動できる。自分フィールドに存在する融合素材となるモンスターを墓地へ送ることで、そのモンスターを融合召喚扱いで特殊召喚する。そして、攻撃対象はそのモンスターに変更される。また、この効果で特殊召喚されたモンスターはその戦闘では破壊されず、発生するお互いへの戦闘ダメージは0となる。

 

セキュリティ解除

アクション罠カード

(1):自分フィールドに存在するモンスター1体の効果をターン終了時まで無効化する。

 

アマゾネスの防御兵

レベル4 攻撃300 守備2100 効果 地属性 戦士族

(1):このカードを手札から墓地へ送り、自分フィールドに存在する「アマゾネス」モンスターを対象に発動できる。そのモンスターはこのターン、魔法・罠カードの効果では破壊されない。この効果は相手ターンでも発動できる。

 

アマゾネスの大賢者

レベル6 攻撃2400 守備1700 効果 地属性 戦士族

このカード名のカードの効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードの攻撃宣言時、フィールド上に存在する魔法・罠カード1枚を対象に発動できる。そのカードを破壊する。自分フィールドにEXデッキから特殊召喚された「アマゾネス」モンスターが存在する場合、相手はこの効果の発動に対して、魔法・罠カードを発動できない。

 

魔装の聖盾-アイギス

装備魔法カード

このカード名のカードは自分フィールド上に1枚しか存在することができない。

「魔装」モンスターのみ装備可能。

(1):装備モンスターが相手モンスターを戦闘で破壊した自分バトルフェイズ終了時に発動する。自分はデッキからカードを1枚ドローする。

(2):装備モンスターが「魔装騎士」モンスターの場合、そのモンスターは相手モンスターの効果を受けない。

(3):このカードが墓地へ送られたときに発動する。お互いにデッキからカードを1枚ドローする。

 

ペンデュラム・ハンド

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドに存在するモンスターがPモンスター1体のみで、相手フィールドに表側表示モンスターが2体以上存在する場合、相手モンスターの攻撃宣言時に攻撃モンスター以外の相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。その表側表示モンスターのコントロールを得て、このカードをそのモンスターの装備カードにし、攻撃対象をそのモンスターに移し替えてダメージ計算を行う。

(2):この効果で装備カードとなったこのカードを装備したモンスターが攻撃対象となったとき、このカードを墓地へ送ることで発動する。攻撃モンスターと装備モンスターのコントロールを入れ替える。その後、コントロールの入れ替わったモンスター同士でダメージ計算を行う。この効果は(1)の効果を発動したダメージ計算時に発動することができない。

(3):このカードがフィールドに表側表示で存在する限り、自分はP召喚以外の方法でEXデッキからモンスターを特殊召喚できない。

 

魔装僧正テンカイ

レベル3 攻撃1300 守備0 闇属性 魔法使い族

【Pスケール:青10/赤10】

(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。

(2):自分は「魔装」モンスター以外の特殊召喚を行えない。この効果は無効化できない。

(3):1ターンに1度、EXデッキから特殊召喚された「魔装騎士」モンスター1体を対象に発動できる。ターン終了時まで、そのモンスターの攻撃力を800アップさせる。この効果は相手ターンでも発動できる。

【チューナー】

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードのP召喚に成功したとき、自分Pゾーンに存在するカードが「魔装」カードのみの場合に発動できる。デッキから「魔装」魔法・罠カード1枚を手札に加える。

 

 

 

魔装魔戦士ペルセウス

レベル5 攻撃2300 守備1600 光属性 戦士族

【Pスケール:青1/赤1】

このカード名の(3)のP効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。

(2):自分は「魔装」モンスター以外の特殊召喚を行えない。この効果は無効化できない。

(3):相手の直接攻撃宣言時に発動できる。Pゾーンに存在するこのカードを特殊召喚し、バトルフェイズを終了させる。

【モンスター効果】

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドに存在する「魔装」モンスターが攻撃対象となったときに発動できる。このカードを手札から特殊召喚し、バトルフェイズを終了させる。

 

魔装一閃

通常魔法カード

このカード名のカードは1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分が「魔装」モンスターのP召喚に成功したターンのメインフェイズにのみ、P召喚された「魔装」モンスターの数だけフィールドの魔法・罠カードを対象に発動できる。そのカードを破壊する。このカードの発動に対して、対象となったカードは発動できない。

 

魔装の炎剣-デュランダル

通常魔法カード

このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分Pゾーンに存在する2枚のカードがいずれも「魔装」カードの場合、自分のデッキに存在するレベル7以下の「魔装」Pモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化され、ターン終了時に破壊される。

(2):このカードが墓地へ送られたとき、自分フィールドに「魔装騎士」モンスターが存在する場合に発動する。デッキからカードを1枚ドローする。

 

ペンデュラム・アラート

通常罠カード

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分が戦闘ダメージを受けたダメージステップ終了時に発動できる。デッキからレベル4以下のPモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールドに表側守備表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターはこのターン、戦闘では破壊されず、ターン終了時に表側表示でEXデッキに行く。

(2):このカードは自分フィールドにモンスターが存在しない場合、手札から発動できる。

 

魔装剛毅ヒデヒサ

レベル4 攻撃1800 守備1500 地属性 戦士族

【Pスケール:青2/赤2】

このカード名の(2)のP効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。

(2):自分メインフェイズにもう片方の自分のPゾーンに「魔装剛毅ヒデヒサ」以外の「魔装」カードが存在する場合に発動できる。このカードを破壊し、自分はデッキから1枚ドローする。

【モンスター効果】

(1):このカードの召喚・特殊召喚に成功したとき、自分フィールドにこのカード以外のカードが存在しない場合、デッキ・墓地に存在する「魔装」モンスター1体を対象に発動できる。そのカードを手札に加える。

 

緊急発進

通常魔法カード

このカード名のカードは1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドにモンスターが存在しないとき、自分のデッキに存在するレベル4以下の機械族モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの攻撃力・守備力は0となり、ターン終了時に除外される。

 

Ai's Society

通常魔法カード

(1):自分フィールドに「メタルギア」モンスターが存在するとき、デッキに存在する「メタルギア」カード1枚を対象に発動できる。そのカードを手札に加える。その後、デッキの上からカードを1枚墓地へ送る。

 

鋼の歯車人間(メタルギア・ヒューマン)

レベル2 攻撃1300 守備1200 効果 地属性 機械族

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが「メタルギア」融合モンスターの融合素材として墓地へ送られたときに発動する。自分はデッキからカードを1枚ドローする。

(2):自分ターン開始時、自分の手札が0枚の場合に墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。デッキから「メタルギア」カード1枚を手札に加える。

 

ミラーコート

カウンター罠カード

(1):EXデッキから特殊召喚された相手モンスターの効果が発動したときに発動できる。その発動を無効にし、破壊する。

 

メタルギア・ストーム

通常魔法カード

(1):自分フィールドに「メタルギア」融合モンスターが存在するときに発動できる、フィールド上のセットされている魔法・罠カードをすべて破壊する。この効果に対し、相手はセットしているカードの効果を発動できない。

 

RR-ブレイク

通常罠カード

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):相手フィールドの特殊召喚されたモンスターが自分フィールドの「RR」Xモンスターを攻撃対象としたときに発動できる。相手フィールドの特殊召喚された攻撃表示モンスターをすべて破壊する。

(2):セットされているこのカードが墓地へ送られたとき、自分のデッキに存在する「RR」カード1枚を対象に発動できる。そのカードを墓地へ送る。

 

鋼の歯車偵察者(メタルギア・サーチャー)

レベル1 攻撃0 守備2000 効果 地属性 機械族

このカード名の(1)の効果はデュエル中1回しか発動できず、(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが墓地に存在し、自分フィールドの「メタルギア」融合モンスターが攻撃対象となったときに発動できる。このカードを自分フィールドに特殊召喚し、バトルフェイズを終了させる。

(2):このカードがフィールドに存在する場合、自分メインフェイズ時に発動できる。「メタルギア」融合モンスターカードによって決められた、このカードを含む融合素材モンスターを手札から墓地へ送り、その融合モンスター1体をEXデッキから「鋼の歯車融合」による融合召喚扱いとして融合召喚する。

 

鋼の歯車最古人類(メタルギア・サヘラントロプス)

レベル9 攻撃2000 守備4000 融合 地属性 機械族

「鋼の歯車」モンスター×4

このカードは「鋼の歯車融合」の効果でのみ特殊召喚できる。

(1):このカードの攻撃力は自分フィールドに存在する融合召喚された「メタルギア」モンスターの数×1000アップする。

(2):1ターンに1度、以下の効果のうちのいずれかを発動できる。

●相手がEXデッキからモンスターの特殊召喚に成功したときに発動できる。その特殊召喚を無効にし、破壊する。

●相手がモンスターを特殊召喚する効果を持つ魔法・罠カードを発動したときに発動できる。その発動を無効にし、破壊する。

(3):フィールドに存在するこのカードが破壊されるとき、自分フィールドに存在するほかの「メタルギア」モンスター1体を対象に発動できる。そのカードを代わりに破壊する。

 

RR-デコイ・レイニアス

レベル5 攻撃1500 守備2500 闇属性 機械族

【Pスケール:青6/赤6】

(1):1ターンに1度、自分フィールドの「RR」モンスターが戦闘・効果で破壊されるときに発動できる。代わりに自分の墓地に存在する「RUM」魔法カード1枚を除外する。

【モンスター効果】

このカード名の(1)の方法による特殊召喚はデュエル中1度しか行えない。

(1):このカードが手札に存在する、またはEXデッキに表側表示で存在する場合、自分フィールドの魔法・罠カード1枚を対象に発動できる。そのカードを破壊し、手札・EXデッキに存在するこのカードを特殊召喚する。

 

フワポン

レベル1 攻撃200 守備300 効果 光属性 天使族

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分がダメージを受けるとき、このカードを手札から墓地へ捨てることで発動できる。そのダメージを0にする。

(2):自分の墓地にこのカードが存在するとき、手札の光属性・天使族モンスター1体を墓地へ送ることで発動できる。このカード1枚を手札に戻す。

 

ヘルプ・フェアリー

レベル1 攻撃0 守備0 効果 光属性 天使族

このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドにEXデッキから特殊召喚されたモンスターが存在せず、相手フィールドにEXデッキから特殊召喚されたモンスターが存在するとき、800LPを支払うことで発動できる。デッキからカードを1枚ドローする。

(2):このカードが相手モンスターを戦闘を行うときに発動する。その戦闘で発生する自分へのダメージが半分になる。その後、受けたダメージ以下の攻撃力を持つ光属性・天使族モンスター1体を自分フィールドに特殊召喚する。

 

車両接続

通常魔法カード

(1);自分フィールドに存在するランク10以上の機械族Xモンスター1体を対象に発動できる。このカードをそのカードの下に重ねてX素材にする。

(2):X素材となったこのカードが墓地へ送られたターン終了時に発動する。このカードをX素材としていたモンスターは次のターン終了時まで効果では戦闘・破壊されない。

 

報復者の宝札

通常魔法カード

(1):自分の墓地に存在するカウンター罠カード3枚を除外することで発動できる。デッキからカードを2枚ドローする。

 

パーシアスの啓示

通常魔法カード

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドに「パーシアス」モンスターが存在するとき、自分の墓地に存在するレベル4以下の天使族モンスター1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターはこのターン、攻撃できない。

(2):自分の墓地に存在するこのカードを除外し、自分フィールドに存在する「パーシアス」モンスター1体と天使族モンスター1体を対象に発動できる。それらのモンスターは、その2体のレベルを合計したレベルになる。

 

ランクアップ・スパイダーウェブ(漫画オリカ・調整)

永続魔法カード

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドに存在するXモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターのX素材を1つ取り除き、EXデッキに存在するそのカードよりもランクが1つ高いXモンスター1体をそのカードの上に重ねてX召喚扱いで特殊召喚する。

(2):このカードがフィールドに存在する限り、自分は「RUM」の効果でEXデッキからXモンスターをX召喚できず、Xモンスター以外をEXデッキから特殊召喚できない。

(3):このカードの効果でX召喚されたモンスターがフィールドから離れた時に発動する。このカードをゲームから除外する。この効果は無効化されない。

 

光波剣士(サイファー・ソードマン)

レベル4 攻撃1400 守備1000 効果 光属性 戦士族

このカード名の(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しか行えない。

(1):自分フィールドにカードが存在しないとき、このカードは手札から特殊召喚できる。

(2):このカードをX素材として「光波(サイファー)」XモンスターのX召喚に成功したときに発動する。相手フィールドに「光波トークン」1体を特殊召喚し、自分はデッキからカードを1枚ドローする。

 

 

 

光波トークン

レベル8 攻撃2800 守備2000 トークン 光属性 戦士族

「光波剣士」の効果で特殊召喚される。

 

光波巫女(サイファー・シスター)

レベル4 攻撃1600 守備1800 効果 光属性 魔法使い族

このカード名のカードの(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しか行えない。

(1):このカードが手札に存在し、自分フィールドの「サイファー」Xモンスターが相手モンスターと戦闘を行い、自分が戦闘ダメージを受けたときに発動できる。手札のこのカード1体を自分フィールドに特殊召喚する。

(2):この方法による特殊召喚に成功したとき、デッキに存在するその時受けたダメージの数値以下の攻撃力の「サイファー」「ギャラクシー」モンスター1体を対象に発動できる。そのカードを手札に加える。

 

セブンストア(アニメオリカ)

通常魔法カード

このカード名のカードは1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールドのXモンスター1体をリリースして発動できる。そのモンスターのX素材の数+1枚デッキからカードをドローする。

 

幻影悪夢防御(ファントム・ナイトメア・ガード)

通常罠カード

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードを発動したターン、自分のモンスターと相手モンスターとの戦闘で発生する自分へのダメージが0となる。そして、自分フィールドの「幻影騎士団」モンスターはこのターン、戦闘では破壊されない。

(2):このカードが墓地に存在し、自分フィールドの「幻影騎士団」Xモンスターが攻撃対象となったときに発動できる。このカードをそのモンスターの下に重ねてX素材とする。この効果の対象となったモンスターはこのターン、戦闘・効果では破壊されない。この効果を発動したこのカードは墓地へ送られたときに除外される。

 

光波騎士(サイファーナイト)エウヌス

ランク4 攻撃1000 守備1000 エクシーズ 光属性 戦士族

「サイファー」レベル4モンスター×2

(1):自分フィールドに「ギャラクシーアイズ」「サイファー」Xモンスターが特殊召喚されたときに発動する。このカードの攻撃力は次の相手ターン終了時まで1000アップする。

(2):1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除くことで発動できる。このターン、自分フィールドの「ギャラクシーアイズ」「サイファー」Xモンスターが守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ戦闘ダメージを与える。

(3):自分フィールドの「サイファー」モンスターを対象とするカード効果が発動されたとき、フィールドに存在するこのカードをリリースすることで発動できる。その発動を無効にし、破壊する。

 

光波治癒(サイファー・ヒーリング)

通常罠カード

(1):自分フィールドに存在する「サイファー」モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターの元々の攻撃力分LP回復する。この対象となったモンスターはターン終了時まで戦闘・効果では破壊されない。

 

幻影騎士団リグレットメイス

レベル4 攻撃1400 守備1500 闇属性 戦士族

【Pスケール:青6/赤6】

このカード名の(1)のP効果はデュエル中1度だけ発動できる。

(1):このカードが墓地に存在し、自分魔法・罠ゾーンにPカードが存在しないとき、自分の墓地に存在する「ファントム」魔法・罠カード1枚を除外することで発動できる。このカードと自分EXデッキに表側表示で存在する「幻影騎士団」Pモンスター1体を自分Pゾーンに置く。

(2):このカードがPゾーンに存在する限り、「幻影騎士団」モンスター、ドラゴン族Pモンスター以外P召喚できない。この効果は無効化できない。

【モンスター効果】

(1):このカードをX素材としたモンスターは以下の効果を得る。

●このカードが相手モンスターを戦闘で破壊し墓地へ送ったとき、自分のデッキに存在する「RUM」「ファントム」魔法・罠カード1枚を対象に発動できる。そのカードを手札に加える。

 

幻影騎士団スエサイドシールド

レベル4 攻撃1400 守備2000 闇属性 戦士族

【Pスケール:青1/赤1】

このカード名の(1)のP効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドにモンスターが存在しないとき、自分Pゾーンに存在するこのカードを破壊することで発動できる。デッキからカードを1枚ドローする。

(2):自分がP召喚を行うとき、自分フィールドのモンスターの数が相手フィールドのモンスターより少ない場合に発動できる。自分の墓地に存在するレベルの異なる「幻影騎士団」モンスター2体をP召喚できる。その時、そのモンスターのレベルはこの効果で特殊召喚したモンスターのレベルの合計となる。また、その時自分は手札・EXデッキのモンスターをP召喚できない。

【モンスター効果】

このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが相手モンスターと戦闘を行ったバトルフェイズ終了時に発動する。このカードを破壊し、デッキから「幻影騎士団」Pモンスター1体を手札に加える。

(2):EXデッキに表側表示で存在するこのカードを除外することで発動できる。自分フィールドに存在するXモンスター1体の攻撃力をターン終了時までX素材となっている「幻影騎士団」モンスターの数×800アップする。この効果はこのカードがEXデッキに置かれたターン、発動できない。

 

ダーク・アンセリオン・ドラゴン(漫画オリカ)

ランク7 攻撃3000 守備2500 エクシーズ 闇属性 ドラゴン族

【Pスケール:青10/赤10】

(1):1ターンに1度、手札の魔法・罠カード1枚を墓地へ送り、自分のEXデッキに表側表示のドラゴン族Pモンスター1体を対象に発動できる。そのカードを手札に加える。

【モンスター効果】

(1):1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、相手フィールドに存在するモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターの攻撃力を半分にし、その数値分このカードの攻撃力をターン終了時までアップする。その後、変化した攻撃力の数値分自分LPを回復する。その効果を発動したターン、このカードは戦闘・効果では破壊されない。この効果は相手ターンでも発動できる。

(2):モンスターゾーンのこのカードが破壊された場合に発動できる。このカードを自分Pゾーンに置く。

 

幻影反逆爪(ファントム・リベリオン・クロー)

装備魔法カード

このカード名の(3)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

「幻影騎士団」、または「幻影騎士団」をX素材としたXモンスターに装備可能。

(1):装備モンスターはルール上、「幻影騎士団」モンスターとしても扱う。

(2):装備モンスターが相手モンスターを戦闘で破壊し墓地へ送ったときに発動する。破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。

(3):装備モンスターが破壊されたことによってこのカードが墓地へ送られたときに発動する。デッキから「幻影騎士団」モンスター1体を手札に加える。

 

宝札の選択

通常魔法カード

このカード名のカードは1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールドに「選択の迷宮」が存在するときに発動できる。デッキからカードを2枚ドローする。その後、相手は以下の効果から1つを選択して適用する。

●自分はデッキからカードを2枚ドローする。

●自分はデッキからカードを1枚手札に加える。

 

拒絶の選択

カウンター罠カード

(1):相手フィールドにEXデッキからモンスターが特殊召喚されたとき、またはEXデッキからモンスターを特殊召喚する魔法・罠・モンスター効果が発動したときに発動できる。その召喚・効果の発動を無効にし、破壊する。その後、相手は以下の効果から1つを選択して適用する。

●このターン、自分はもう1度手札からモンスターを召喚できる。

●自分フィールドに「選択者トークン」1体を特殊召喚する。

 

 

 

選択者トークン

レベル8 攻撃? 守備? トークン 闇属性 戦士族

「拒絶の選択」の効果で特殊召喚される。

このカードの攻撃力・守備力はその効果で破壊されたモンスターの元々の攻撃力・守備力と同じになる。

 

光波僧正(サイファー・セイジ)

レベル4 攻撃1600 守備2000 効果 光属性 機械族

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードの召喚に成功したとき、自分の墓地に存在する「サイファー」Xモンスター1体を対象に発動する。そのモンスターをEXデッキに戻し、墓地からレベル4以下の「サイファー」モンスター1体を特殊召喚する。その後、このカードとこの効果で特殊召喚されたモンスターのレベルを4つ上げる。

(2):このカードをX素材とした「サイファー」Xモンスターは以下の効果を得る。

●このカードのX召喚に成功したとき、自分フィールドにほかのモンスターが存在しないときに発動できる。自分フィールドに「光波水晶トークン」1体を特殊召喚する。

 

代価の選択

通常罠カード

(1):相手の攻撃宣言時に発動できる。その攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了させる。その後、相手は以下の効果から1つを選択して適用する。

●攻撃モンスターを墓地へ送る。

●攻撃モンスターの攻撃力分のダメージを自分は受ける。

 

苦難の選択

通常罠カード

(1):相手の直接攻撃宣言時に発動できる。その攻撃を無効にする。その後、その後、相手は以下の効果から1つを選択して適用する。

●攻撃モンスター以外の自分のモンスター1体のコントロールを相手に渡す。

●バトルフェイズを終了する。

 

選択の苦痛

永続罠カード

このカード名のカードは自分フィールドに1枚しか存在できない。

(1):「相手は以下の効果から1つを選択して適用する」とテキストに記されている魔法・罠・モンスター効果が発動したときに発動できる。

(2):自分フィールドのカードに選択カウンターが乗ったとき、相手フィールドに存在するモンスターの攻撃力が600ダウンし、相手に600ダメージを与える。

(3):このカードがフィールドに存在する限り、自分フィールドの「選択の迷宮」は相手によって破壊されず、相手はフィールド魔法を発動できない。

 

 

 

選択の迷宮

フィールド魔法カード

(1):「相手は以下の効果から1つを選択して適用する」とテキストに記されている魔法・罠・モンスター効果が発動し、相手が選択したとき、このカードの上に選択カウンターを1つ乗せる。

(2):このカードが効果によって破壊されるときに発動できる。代わりにこのカードの上に乗っている選択カウンターを1つ取り除く。

(3):このカードの選択カウンターが4つ以上存在するとき、戦闘で発生する自分へのダメージは0となる。

(4):このカードの上に乗っている選択カウンターを以下の数だけ取り除き、その効果を発動できる。

●2つ:デッキから「選択」魔法・罠カードを自分フィールドにセットする。この効果でセットしたカードはこのターン発動できる。

●4つ:自分の墓地に存在する「選択」魔法・罠カード1枚を手札に加える。

 

 

 

審判者カフカ

レベル10 攻撃? 守備? 融合 闇属性 悪魔族

このカードは手札の「融合」を墓地へ送り、自分の墓地に存在する発動に成功して墓地へ送られた「選択」魔法・罠カードを3枚(1種類につき1枚のみ)除外することで、EXデッキから融合召喚できる。

(1):このカードの特殊召喚に成功したとき、相手は以下の効果から1つを選択して適用する。

●自分フィールドの最も攻撃力の高いモンスター1体を装備カード扱いとしてこのカードに装備する。このカードの攻撃力・守備力はこの効果で装備したモンスターの元々の攻撃力・守備力と同じになる。

●このカードの攻撃力・守備力はこのカードの特殊召喚時に自分フィールドに存在する選択カウンターの数×1000となる。

(2):「相手は以下の効果から1つを選択して適用する」とテキストに記されている魔法・罠・モンスター効果が発動したとき、自分フィールドの選択カウンターを3つ取り除くことで発動できる。その効果による選択を代わりに自分が行い、相手に適用する。

 

救済の選択

通常魔法カード

(1):自分フィールドにモンスターが存在しない場合に発動できる。相手は以下の効果から1つを選択して適用する。

●自分の手札を公開し、その中に存在する最もレベルの低いモンスター1体を相手フィールドに特殊召喚する。その中にこの効果で特殊召喚できるモンスターが存在しない場合、デッキからカードを1枚ドローする。

●相手の手札を確認し、その中に存在する最もレベルの低いモンスター1体を相手フィールドに特殊召喚する。その中にこの効果で特殊召喚できるモンスターが存在しない場合、デッキからカードを1枚ドローする。

 

守護者の選択

カウンター罠カード

(1):手札・フィールドのカードを破壊する魔法・罠・モンスター効果が発動したときに発動できる。その発動を無効にする。その後、相手は以下の効果から1つを選択して適用する。

●効果の対象となったモンスターを破壊する。

●相手はデッキからカードを1枚ドローする。

 

RUM-埋葬されし幻影騎士団(ベアリアル・ファントム・ナイツ)(アニメオリカ・効果調整)

通常魔法カード

(1):自分の墓地に存在する「幻影騎士団」Xモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを特殊召喚し、そのモンスターよりもランクが2つ高い闇属性Xモンスター1体を対象のモンスターの上に重ねてX召喚扱いとしてEXデッキから特殊召喚する。この効果を発動したターン、自分はバトルフェイズを行えない。

 

与奪の選択

速攻魔法カード

(1):自分フィールドに「選択の迷宮」が存在する場合にのみ発動できる。相手は以下の効果から1つを選択して適用する。

●相手フィールドに存在する「選択の迷宮」に選択カウンターを2つ乗せる。

●自分は1500LPを失う。

 

裏切りの選択

通常魔法カード

このカード名のカードは1ターンに1度しか使用できない。

(1):相手は以下の効果から1つを選択して適用する。

●自分フィールドのモンスター1体のコントロールを相手に渡す。

●自分の墓地に存在するモンスター1体を相手フィールドに特殊召喚する。なお、その場合特殊召喚するモンスターを選ぶのは相手になる。

 

惑わしの選択

速攻魔法カード

(1):相手フィールドに存在するモンスター1体を対象に発動できる。相手は以下の効果から1つを選択して適用する。

●そのモンスターの攻撃力を次の自分のスタンバイフェイズ時まで0にする。

●そのモンスターの攻撃力分のダメージを自分は受ける。

 

二色眼との接触

速攻魔法カード

このカード名のカードの効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールドのレベル、またはランクが7のドラゴン族モンスター1体をリリースして発動できる。手札・デッキ・墓地から元々の攻撃力が2500のドラゴン族Pモンスター1体を特殊召喚する。

 

リベリオン・ウィング

装備魔法カード

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

闇属性・ドラゴン族Xモンスターにのみ装備可能。

(1):装備モンスターの攻撃力が1000アップする。

(2):このカードが墓地に存在するとき、このカードとEXデッキ・墓地に表向きで存在する闇属性・ドラゴン族Xモンスター1体を除外することで発動できる。自分フィールドのドラゴン族Pモンスター1体の攻撃力はこの効果で除外したモンスターの元々の攻撃力分アップする。この効果は相手ターンでも発動できる。

 

獣闘機タウルス・バーサーカー

レベル6 攻撃2100 守備1800 融合 闇属性 機械族

レベル4以下の獣戦士族モンスター+レベル4以下の機械族モンスター

(1):このカードが相手モンスターと戦闘を行ったダメージステップ終了時に発動する。その相手モンスターを破壊する。

(2):このカードが戦闘で破壊された場合に発動できる。 このカードの融合素材としたモンスター一組を自分の墓地から特殊召喚する。

 

守護者の獣闘機勲章

装備魔法カード

「獣闘機」モンスターにのみ装備可能。

(1):このカードを装備したモンスターが攻撃するとき、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。

(2):装備モンスターが破壊されたことによってこのカードが墓地へ送られたとき、自分の墓地に存在するそのカード以外の「獣闘機」融合モンスター1体を対象に発動できる。そのカードを自分のEXデッキに戻し、デッキからカードを1枚ドローする。

 

先駆けの獣闘機勲章

速攻魔法カード

このカード名のカードは1ターンに1度しか発動できない。

(1):相手がモンスターを召喚・特殊召喚に成功した相手ターンにのみ発動できる。自分の手札・フィールドから、「獣闘機」融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。

 

魔装学者ヘロドトス

レベル3 攻撃1500 守備1500 闇属性 魔法使い族

【Pスケール:青4/赤4】

このカード名の(2)のP効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。

(2):Pゾーンに存在するこのカードをリリースし、自分フィールドに存在するP召喚された「魔装」モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターはターン終了時までチューナーモンスターとしても扱う。

【チューナー】

このカード名の(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しか行えない。

このカードをS素材とする場合、「魔装」モンスターのS召喚にしか使用できない。

(1):自分が効果ダメージを受けるときに発動できる。手札のこのカードを特殊召喚し、その効果で受けるダメージを0にする。その後、そのダメージの数値以下の攻撃力を持つ「魔装」モンスター1体をデッキから手札に加える。

 

 

 

刃の獣闘機勲章

永続罠カード

このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールド・墓地の「獣闘機」モンスターが相手モンスターを戦闘・効果によって破壊したときに発動できる。破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。

(2):自分フィールドに存在する「獣闘機」カードが破壊されるときに発動できる。代わりにこのカードを破壊する。

 

 

 

獣闘機エレファント・ガードナー

レベル6 攻撃1000 守備2600 融合 闇属性 機械族

レベル4以下の獣戦士族モンスター+レベル4以下の機械族モンスター

(1):このカードがフィールドに存在する限り、相手は「獣闘機エレファント・ガードナー」以外を攻撃対象とすることができない。

(2):自分魔法・罠ゾーンに「獣闘機勲章」魔法・罠カードが存在する限り、このカードは1ターンに1度、戦闘・効果では破壊されない。

(3):このカードが戦闘で破壊された場合に発動できる。 このカードの融合素材としたモンスター一組を自分の墓地から特殊召喚する。

 

潜水するビッグ・ジョーズ

レベル3 攻撃1800 守備300 効果 水属性 魚族

このカードは通常召喚できない。

このカードの(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しか行えない。

(1):自分は通常魔法カードを発動したターンのメインフェイズ1にこのカードが墓地に存在する場合に発動できる。このカードを墓地から特殊召喚する。この効果で特殊召喚したターン、自分は水属性以外のモンスターの特殊召喚を行えない。

(2):このカードはX素材として墓地へ送られたとき、またはS召喚またはリンク召喚の素材として墓地へ送られた場合、ゲームから除外される。

 

 

 

ハーミッド・サーディン

レベル2 攻撃400 守備1500 効果 水属性 魚族

このカード名の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。

(1):このカードがフィールドから墓地へ送られた場合に発動できる。デッキから「ハーミッド・サーディン」1枚を手札に加える。

(2):このカードがX素材として墓地へ送られた場合に発動できる。デッキから「ハーミッド・サーディン」1枚を手札に加える。

 

魔装獣スフィンクス

レベル5 攻撃2300 守備1900 地属性 獣族

【Pスケール:青5/赤5】

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。

(2):自分のデッキの上から3枚までカードを墓地へ送り、以下の効果から1つを選択して発動できる。

●ターン終了時まで、このカードのPスケールをその効果で墓地へ送ったカードの数だけ減らす。

●ターン終了時まで、このカードのPスケールをその効果で墓地へ送ったカードの数だけ増やす。

【モンスター効果】

このカード名のカードのモンスター効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):「魔装」モンスターをリリースして、このカードのアドバンス召喚に成功したとき、自分の墓地・EXデッキに表側表示で存在する「魔装」モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

 

 

魔装剛毅アトレウス

レベル3 攻撃1000 守備1200 水属性 戦士族

【Pスケール:青2/赤2】

(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。

(2):1ターンに1度、自分フィールドに存在する「魔装」モンスターが戦闘を行うときに発動できる。そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで800アップする。

【チューナー:モンスター効果】

このカード名のモンスター効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードの召喚・特殊召喚に成功したとき、自分Pゾーンに「魔装」カードが2枚存在する場合にのみ発動できる。自分はデッキからカードを1枚ドローし、そのカードを公開する。そのカードがPモンスターの場合、更にデッキからカードを1枚ドローする。この効果を発動したターン、自分はP召喚以外の方法でモンスターを特殊召喚できない。

 

 

 

波紋同調

通常罠カード

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドにモンスターが存在せず、相手フィールドにモンスターが存在するときに発動できる。自分のEXデッキに表側表示で存在するPモンスターであり、チューナーであるモンスター1体とチューナー以外のPモンスター1体を特殊召喚する。その後、その効果で特殊召喚したモンスター2体を素材にS召喚を行う。この効果を発動したターン、自分はEXデッキからモンスターを特殊召喚できない。

(2):魔法&罠ゾーンにセットされているこのカードが効果によって破壊され墓地へ送られたターンのバトルフェイズ開始時に発動できる。自分モンスターゾーンに存在するPモンスターであり、チューナーであるモンスター1体と自分Pゾーンに存在するチューナー以外のPモンスターを素材にS召喚を行う。

 

RUM-魔装の刻印

通常魔法カード

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドに存在する「魔装」Xモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターよりもランクの1つ高い「魔装」Xモンスター1体をそのモンスターの上に重ねてX召喚扱いでEXデッキから特殊召喚する。その後、相手フィールドに存在するモンスター1体の効果をターン終了時まで無効にする。また、その効果で無効にしたモンスターに記された効果をこのターン、そのモンスターの効果として1度だけ発動できる。

 

アビス・シールド

永続罠カード

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが表側表示で存在する限り、自分が相手の直接攻撃によって受ける戦闘ダメージが半分になる。そして、相手の直接攻撃によって戦闘ダメージを受けるたびにこのカードの上にアビスカウンターを1つ置く。

(2):このカードを発動した次の自分スタンバイフェイズ時にこのカードを墓地へ送ることで発動する。乗っていたアビスカウンターと同じ数のレベルを持つ水属性・魚族モンスター2体をデッキから特殊召喚する。その効果で特殊召喚されたモンスターの攻撃力・守備力は0となる。

 

エクシーズ・リミットリバース

通常魔法カード

(1):自分の墓地に存在するXモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚し、このカードをそのモンスターの下に重ねてX素材とする。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果はターン終了時まで無効化される。

 

 

SNo(シンクロナンバーズ).101S・H・Abyss Knight(サイレント・オナーズ・アビス・ナイト)

レベル7 攻撃3000 守備2800 シンクロ 水属性 水族

チューナー2体+水属性Xモンスター1体

このカードは上記の組み合わせでのみ、S召喚できる。

このカードのS召喚を行うとき、S素材となるXモンスターはそのモンスターのランクと同じ数値のレベルのモンスターとして扱う。

このカードはS召喚以外の方法で特殊召喚できない。

(1):このカードが相手モンスターを攻撃したダメージステップ終了時に発動できる。その相手モンスターを装備カード扱いとして、このカードに装備する。このカードの攻撃力はその効果で装備したカードの数×400アップする。

(2):1ターンに1度、自分の墓地に存在する水属性Sモンスター、Xモンスターのいずれか1体をデッキに戻して発動できる。次の自分のスタンバイフェイズ時まで、その効果でデッキに戻したカードの種類によって以下の効果を得る。

●Sモンスター:このカードは戦闘・効果では破壊されず、このカードの戦闘で発生する自分へのダメージは0となる。

●Xモンスター:このターンのバトルフェイズ時、このカードは相手フィールドに存在するすべてのモンスターに1回ずつ攻撃できる。その時、自分フィールドのほかのモンスターは攻撃できない。

(3):このカードが相手によって破壊され墓地へ送られたとき、自分のEXデッキに存在するそのカードの装備カードの数と同じ数値のレベルまたはランクの水属性モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

 

 

リリース・リース(アニメオリカ・調整)

通常魔法カード

このカード名の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。

(1):自分フィールドに存在するモンスターが1体のみの時、そのモンスターをリリースすることで発動できる。デッキからそのモンスターのレベル以下のレベルのモンスター1体を手札に加える。

(2):自分フィールドにモンスターが存在せず、相手フィールドにモンスターが存在するとき、墓地に存在するこのカード1枚を除外することで発動できる。墓地からレベル4以下のモンスター1体を手札に加える。

 

 

 

ドワーフ・ゴビー

レベル1 攻撃0 守備0 チューナー 水属性 魚族

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか行えない。

(1):このカードの召喚に成功したとき、自分の墓地に存在する水属性モンスター1体を対象に発動できる。ターン終了時まで、このカードのレベルはそのモンスターと同じになる。この効果を発動したターン、自分は水属性以外のモンスターをEXデッキから特殊召喚できない。

 

超重剣聖コゴ-6(コゴロー)

レベル5 攻撃300 守備2300 シンクロ 地属性 機械族

チューナー+チューナー以外の「超重武者」モンスター1体以上

このカード名の(2)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しか行えない。

このカードはルール上、「超重武者」カードとしても扱う。

(1):このカードのS召喚に成功したとき、自分の墓地に魔法・罠カードが存在しない場合、このカードをリリースすることで発動できる。自分はデッキの上からカードを2枚まで墓地へ送る。その時、墓地へ送った「超重武者」モンスターの数だけ、相手フィールドのカードを破壊する。

(2):(1)の効果を発動したターン終了時にこのカードが墓地に存在する場合に発動できる。このカード1枚を墓地から守備表示で特殊召喚する。

 

ダーク・シティ2-バッド・ナイト

フィールド魔法カード

このカード名の(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか発動できない。

(1):1ターンに1度、自分のデッキに存在する「D-HERO」モンスター1体を対象に発動できる。そのカードを墓地へ送る。

(2):自分フィールドの「D-HERO」が戦闘を行うとき、戦闘を行う相手モンスターの攻撃力が戦闘を行う自分のモンスターよりも上回っている場合に発動できる。戦闘を行う自分のモンスターの攻撃力がダメージステップ終了時まで1000アップする。

(3):自分フィールドにモンスターが存在せず、自分の墓地に「D-HERO」が5体以上存在する状態で、相手の直接攻撃宣言時に発動できる。このカードを墓地へ送ることで、その攻撃を無効にする。その後、自分の手札・デッキ・墓地から「D-HEROドレッドガイ」1体を「幽獄の時計塔」の効果による特殊召喚扱いで自分フィールドに特殊召喚する。

 

オフ

アクション魔法カード

(1);自分が受ける戦闘ダメージ、または効果ダメージを0にする。

 

D-HEROフュージョンガイ

レベル1 攻撃0 守備0 効果 闇属性 戦士族

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できず、(2)の効果はデュエル中1度しか発動できない。

(1):自分バトルフェイズ中、自分フィールドに存在するモンスターが「D-HERO」モンスター1体のみの場合、手札から発動できる。このカードと自分フィールドのそのモンスターを素材に「HERO」融合モンスター1体を融合召喚する。この効果を発動したターン、自分は「HERO」融合モンスター以外を特殊召喚できない。

(2):このカードが墓地に存在し、自分フィールドにモンスターが存在せず、相手フィールドにモンスターが存在する場合に発動できる。手札・墓地から「D-HERO」融合モンスターカードによって決められた、このカードを含む融合素材モンスターを除外し、その融合モンスター1体をEXデッキから特殊召喚する。この効果を発動したターン、自分は「HERO」モンスター以外を召喚・特殊召喚できない。

 

バブルショック

アクション魔法カード

(1):3ターン目以降の、相手の手札が6枚以上存在する相手スタンバイフェイズ時に発動できる。相手のメインフェイズ1開始前に自分バトルフェイズを行う。

 

ペンデュラム・バリア

永続罠カード

(1):自分Pゾーンにカードが2枚存在するとき、自分が受ける効果ダメージが0となる。

(2):自分Pモンスターが戦闘を行うとき、自分フィールドに表側表示で存在するこのカードを墓地へ送ることで発動できる。このターン、自分Pモンスターが行う戦闘で発生する自分への戦闘ダメージが0となる。

 

アビス・シャーク

レベル3 攻撃1200 守備1500 水属性 魚族

【Pスケール:青6/赤6】

(1):このカードが表側表示で存在する限り1度だけ、自分フィールドの水属性Xモンスターの攻撃宣言時に発動できる。ターン終了時までそのモンスターの攻撃力を元々の攻撃力を倍にした数値にする。

【モンスター効果】

このカード名のカードの効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードの召喚に成功したとき、自分フィールドにほかのモンスターが存在しない場合に発動する。自分の墓地に存在する水属性Xモンスター1体を特殊召喚し、このカードをそのモンスターの下に置いてX素材とする。この効果で特殊召喚されたモンスターはターン終了時、X素材が存在しない場合、破壊される。

 

 

 

クリスタル・シャーク

レベル5 攻撃2200 守備1800 水属性 魚族

【Pスケール:青2/赤2】

(1):このカードが表側表示で存在する限り1度だけ、自分フィールドの水属性Xモンスターが相手モンスターと戦闘を行うときに発動できる。ターン終了時まで戦闘を行う相手モンスターの攻撃力を元々の攻撃力を半分にした数値にする。

【モンスター効果】

(1):水属性Xモンスターをリリースしてこのカードのアドバンス召喚に成功したときに発動する。デッキから同じレベル・種族の水属性モンスター2体を手札に加える。(同名カードは1枚まで)

(2):P召喚に成功したこのカードを素材に水属性XモンスターのX召喚に成功したとき、そのXモンスターは以下の効果を得る。

●このカードは戦闘では破壊されない。

 

 

 

サイレント・シャーク

レベル4 攻撃1600 守備1600 水属性 魚族

【Pスケール:青4/赤4】

(1):このカードが表側表示で存在する限り1度だけ、自分フィールドの水属性Xモンスターを対象に発動できる。そのモンスターはターン終了時まで戦闘では破壊されず、相手のカード効果を受けない。

【モンスター効果】

(1):このカードの召喚に成功したとき、自分フィールドのX素材となっている水属性モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化され、レベルは4となり、攻撃できない。

(2):このカードをEXデッキからP召喚に成功したとき、自分フィールドにこのカード以外のモンスターが存在しない場合に発動できる。墓地からレベル4・水属性モンスターを2体まで特殊召喚する。その後、それらのモンスターを素材として水属性XモンスターのX召喚を行う。

 

 

 

激瀧神の杖

装備魔法カード

ランク5以上の水属性Xモンスターにのみ装備可能。

(1):1ターンに1度、自分フィールド・墓地に存在する水属性Xモンスター1体を対象に発動できる。ターン終了時まで、装備モンスターの攻撃力はそのモンスターの元々の攻撃力分アップする。

(2):1ターンに1度、装備モンスターが戦闘で相手モンスターを破壊したときに発動できる。装備モンスターのX素材を1つ取り除き、もう1度だけ続けて攻撃する。

 

魔装盾イージス

レベル4 攻撃0 守備1900 効果 光属性 天使族

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドの「魔装」モンスターが戦闘を行うときに発動できる。手札・墓地に存在するこのカードを自分フィールドに特殊召喚し、その戦闘で発生する自分へのダメージを0にする。この効果を発動したターン、このカードは(2)の効果を発動できない。

(2):自分フィールドに存在する「魔装騎士」モンスター1体を対象に発動できる。自分フィールドに存在するこのカードを守備力1000アップの装備カード扱いとしてそのモンスターに装備する。

(3):この効果で装備カード扱いとなったこのカードの装備モンスターが破壊されるときに発動できる。代わりにこのカードを墓地へ送る。そして、そのモンスターはこのターン、戦闘・効果では破壊されない。

 

 

 

E・HEROムーンナイト

レベル4 攻撃1600 守備1500 効果 闇属性 戦士族

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールドの「HERO」モンスターが相手モンスターを攻撃するとき、相手モンスターの攻撃力が攻撃モンスターを上回っている場合のダメージステップ開始時に発動できる。手札のこのカードを特殊召喚し、攻撃モンスターの攻撃力をターン終了時までその相手モンスターの攻撃力+1000にする。この効果で特殊召喚されたこのモンスターはターン終了時に墓地へ送られる。

(2):自分の墓地に存在するこのカードを除外し、自分にデッキに存在する攻撃力1500以下の「HERO」モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。この効果を発動したターン、自分は「HERO」以外のモンスターを召喚・特殊召喚できない。

 

 

 

E・HEROゴルディオン・ヴァルキリー

レベル4 攻撃1500 守備1600 効果 光属性 戦士族

このカード名の(1)(2)の効果は1ターンにそれぞれ1度しか発動できない。

(1):1ターンに1度、自分のデッキから「HERO」モンスター1体を除外することで発動できる。このカードの攻撃力をターン終了時まで500アップさせる。この効果で墓地へ送られたカードはこの効果を発動してから2回目の自分スタンバイフェイズ時に自分の手札に加える。

(2):自分LPが相手よりも低く、自分フィールドの「HERO」融合モンスターが相手モンスターの攻撃対象となったとき、墓地のこのカードを除外することで発動できる。その攻撃を無効にし、攻撃モンスターを破壊する。その後、破壊したモンスターの攻撃力の半分の数値分のダメージをお互いに受ける。

 



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第108話 侑斗の罪

「よし…!《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》でダイレクトアタック!螺旋のストライクバーストォ!!」

《剣の墓場》ので、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が放つブレスがフィールドががら空きになったタツヤを襲う。

「うわあああ!!」

 

タツヤ

ライフ2300→0

 

「くうう…結局、1ポイントもライフを削れなかった…」

「悪い…大丈夫か?タツヤ」

「大丈夫、というより、むしろそれが言いたいのは僕の方。遊矢兄ちゃんこそ、大丈夫なの?」

ランサーズがスタンダード次元に戻ってから半月が経過する中、遊矢はずっとデュエルに明け暮れていた。

先週は権現坂道場へ行き、権現坂を含めた弟子全員とのほとんど休みなしのデュエルに明け暮れ、昨日は霧隠料理スクールなど、舞網チャンピオンシップ出場のために公式戦を行ったデュエルスクールに通い、そこでかつてデュエルした3人と戦った。

そんな彼についていき、その姿を見ていた柚子がとても心配そうに見ていて、そんな彼女の彼を心配する声はタツヤ達も聞いている。

「別に。とにかく、今は強くならないといけないんだ…。いくらデュエルで笑顔を与えるって言っても、それを成し遂げる力がなくちゃ、意味がないんだ…」

「遊矢兄ちゃん…」

今の遊矢からは能天気なところがなりを潜めている。

デュエルで笑顔をという信念は崩れていないように見えるが、それ以上に彼が力を求めているように見えた。

(なんだろう…?遊矢兄ちゃんが変わっていってる…。一体、どうなっちゃうの?)

シンクロ次元で左腕を失い、エクシーズ次元では自分が救おうとしたとあるデュエリストがそうしようとしたことが原因で死んでしまったと聞いている。

そんな過酷な次元戦争が彼を変化させていっていることがタツヤは恐ろしかった。

 

「柚子…その話、本当なのか?」

「うん…遊矢がエド・フェニックスから聞いたって…」

塾長室で柚子から遊勝の話を聞いた修造は一瞬その話が信じられなかった。

3年前から一向に音沙汰のない彼はもしかしたら死んでしまったのではないかとさえ思っていた。

気になるのは、そんな彼がなぜエクシーズ次元へ行き、更には融合次元に今いるのかだ。

「融合次元に、先輩が…遊勝さんがいる」

「ええ…。きっと、遊矢にとって次元戦争以上に大きな意味があるかもしれないの。でも…」

「柚子?どうした?」

遊勝の居場所が分かったことは喜ばしいことのはずなのに、柚子の表情が暗いのが気になった。

遊勝以外のことで、何か不安なことがあるのだろうか。

「…遊矢のことか?」

「うん…」

「まぁ、そうだな…。今のあいつは変わっていっている。俺でも、戸惑ってしまうくらいにな…」

修造も今の遊矢の変化を感じている。

次元戦争が遊矢から笑顔を奪っているように思えた。

力がなければ、信念も正義も示すことのできない現実が遊矢に容赦なく攻撃している。

修造自身は戦場に出たわけではないため、それがどれだけ過酷なのかはわからない。

きっと、それは実際に戦った遊矢達でなければわからないことかもしれない。

「お父さん…あたし、どうしたらいいの?遊矢を守りたい、支えたいのに…」

遊矢のためにできることが分からなくなり、涙を浮かべながら父親に訴える。

シンクロ次元ではロジェに捕まり、遊矢に助けられて、彼は左腕を失った。

そして、エクシーズ次元ではいつも一緒に行動していたが、遊矢がカイトを救えず、エドを失った絶望に対して、何もすることができなかった。

自分には遊矢のために何もできないのか、そんな疑念が彼女に悲しみを与える。

「柚子。俺は難しいことは分からん。熱血だ、とか根性論を言うことしかできない。ったく、情けないな…。娘が泣いているのにどうすることもできないなんて…講師失格、父親失格だなあ」

「お父さん…?」

暑苦しいほど一直線な彼がこのような弱音を吐くのが信じられず、驚いた柚子は泣くのを忘れて頭をかく修造を見る。

掌で目の周りを隠し、しばらく考え込んだ修造は手をどかして柚子を見る。

「でもな…これだけは言える。あいつは今、一番柚子にそばにいてほしいって思っているはずだ。誰よりも、あいつのことを見てきたお前に。それがあいつの一番の支えになる。もしお前なしで戦っていたら、きっと遊矢の心は壊れていたかもしれない。あいつは…本当は戦う男じゃない、誰かの笑顔を大切にできる、優しいやつだからな…」

「お父さん…」

「だから、柚子。お前だけでも、あいつを認めてやれ。お前だけでも、あいつのそばで、味方になってやれ。それはお前だけにしか、できないことなんだ…」

遊勝が失踪してから、臆病者の息子の烙印を押され、嘲笑され続けた遊矢。

そんな彼が傷つくのを、そして父親を否定する言葉を許していなかったことを柚子は誰よりも見てきた。

そんな彼が成長し、今こうして戦い続ける姿も。

父親としては、柚子には戦ってほしくないとは思っている。

しかし、それを柚子本人が望んでいない、守りたいものがあるというなら、きっと修造には止めることはできないだろう。

だからせめて、生きて帰ること、勝つモチベーションを持たせることしかできない。

涙を拭いた柚子は何も言わず、首を縦に振った。

 

「これが…エド・フェニックスの検死結果…」

「うん。おそらく、血液の中に本来、人間が持っていないはずの成分が見つかっていて、特に心臓部分にある血液が顕著だったよ…」

社長室で資料を見る零児に侑斗が医者から聞いた情報を説明する。

レオコーポレーション傘下の病院で、エドの検死を行った結果分かったことで、医者の結論ではナノマシンの一種らしい。

ナノマシンについてはシンクロ次元から招へいした技術者に解析してもらっている。

「エド・フェニックスが言っていたBAT-DIEの正体はそのナノマシンなのか…?」

「蝙蝠を殺すシステム…。まるで、機械みたいな考え方だよ」

小さいころに読み聞かせで聞いた卑怯な蝙蝠の話を思い出す。

裏切者が牙をむくのを止めるためのもので、そのシステムに無理やり従わされているデュエル戦士達のことを思わず同情してしまう。

「でも、デュエル戦士全員の体には入っていないみたいだよ。グロリアとグレースの血液を調べたけど、BAT-DIEは検出されていない。2人はかなりの力量を持っているデュエリストのはずなのに…」

「BAT-DIEを投与する人間の選抜基準が気になるところだが…」

エドはエクシーズ次元侵攻軍の最高責任者であるため、その彼が裏切った場合のリスクを考えると、彼を選ぶのは妥当だ。

だが、オベリスクフォースへの指揮権が一部与えられていたはずの素良には投与されていない。

先日翔太が倒し、自殺したオベリスクフォースの遺体からはBAT-DIEが検出されており、それゆえにその基準が見えてこない。

「見えてこない分、恐ろしいね。誰に投与されているかわからない。その状態で裏切者を殺すBAT-DIEの存在を知ったら…」

「否が応でも従わざるを得ない。そして、恐慌状態で私たちに襲い掛かる」

「今はBAT-DIEを解除させるナノマシンを作っているよ。でも…完成するかどうかは不透明だ。シンクロ次元でもナノマシンそのものは試作段階で、スタンダード次元に限ってはそもそもそのノウハウ自体ゼロだからね」

「…」

「駄目だよ。最近の君は『欠片』を使い過ぎだ」

融合次元との決戦のために作った例の装置も、零児が何度も『欠片』に触れて、その情報を手に入れたことで作ることができたものだ。

人の手に余るものを使い続け、それによる狂気を必死に抑え込んでいることは侑斗がよく知っている。

いくらプロフェッサーの正体が自分の父親で、彼を止めなければならない使命感があるとはいえ、これ以上『欠片』に触れるのは自殺行為と言える。

「…剣崎、『欠片』は…望むものを与える…恐ろしい誘惑を持っている。まさに、アダムとイブをエデンの楽園から追放した知恵のリンゴだ…だが、同時に私に教えてくれた…。『欠片』がなぜ生まれたのか…。あなたが一番よく知っているはずだ…」

零児の指摘に侑斗は沈黙し、首を縦に振る。

初めて零児と出会い、異世界についての話をする中で、一つだけ隠していたことがある。

場合によっては関係を破たんさせかねない重大な秘密で、おそらくこれがこの世界の始まりであり、この混乱の原因。

「そうだよ…。僕は数年前、この『欠片』の本体だったものと遭遇して…破壊した。これが二度と僕たちの世界ととある2つの世界に悲劇を招くことがないように…。『欠片』はヌメロン・コードだったものだよ」

数年前、バリアン世界の神であるドン・サウザンドがヌメロン・コードを欲し、アストラル世界と侑斗たちの世界を巻き込んだ戦争を起こした。

ヌメロン・コードは世界の運命を決定づけ、世界を生み出す力を持ったものだ。

一時的にヌメロン・コードを支配したドン・サウザンドはその力を使って相手が発動したカードを別のものに差し替える、自分にとって都合のいい事象への書き換えを行った。

それは使いようによっては誰でも好き勝手に世界を作り替えることのできる恐ろしい存在で、事後報告という形にはなったものの、それの破壊については誰も反対しなかった。

ドン・サウザンドは消滅し、消滅するはずだったバリアン世界はアストラル世界と融合することで生き延び、戦いの犠牲になった人々も戻って来たことでめでたし、めでたしとなるはずだった。

しかし、その破壊したヌメロン・コードは数えきれないほどの欠片となって飛び散り、その1つ1つが世界を作り出すという事態を招くことになった。

世界そのものを都合よく書き換えるだけの力はないとはいえ、それでも零児に知識を与えるなどの人知を超えた力を宿しているのは確かだ。

使い方を誤れば、災いを招く可能性があるため、侑斗たちは様々な世界を巡り、『欠片』を回収することに決めた。

『欠片』が失われてもそれが生み出した世界そのものは存在し続けることは、ヌメロン・コードが失われても侑斗たちのいる世界が亡くならなかったことから証明されている。

これまで複数個の『欠片』を回収したが、いずれの世界も滅びることなく、今でも存続している。

ただ、問題なのはどれだけの数の『欠片』が存在するかだ。

それについては皆目見当がつかず、世界の数だけ『欠片』が存在するとしか言うほかない。

侑斗の協力者である科学者一家が次元レーダーを開発し、それを使って世界の探知をしているが、今どれだけの世界が存在するかが全く分からないのが現状だ。

おそらく、一生かかっても回収し終えるのは不可能かもしれない。

(そうなると、あの『欠片』が見せた剣崎のあの姿は…)

知識を得る中で何度も見た光景。

それは侑斗が剣でヌメロン・ドラゴンを貫き、ヌメロン・コードを破壊する光景だった。

『欠片』が生まれる最大の原因だったからこそ、それが強く映像として残っているのかもしれない。

そして、それが『欠片』が侑斗を拒絶し、侑斗に何も与えない理由となっている。

「君のお父さんがああなったのも、もしかしたら『欠片』が原因かもしれない。だとしたら…」

「それはあなたの考えすぎだ。人間一人の行動が世界のすべてを決めるというのは傲慢だ。それに…『欠片』が望むものを与える力があるとするなら、それは赤馬零王が野心や欲望を持っていたのが原因だ。あなたがすべての原因というわけじゃない。だから、少しは気を楽にしてくれ」

「零児君…」

「この話は今は私の胸にしまっておく。皆にはあなたが伝える時だと思った時に伝えてくれればいい」

「分かったよ。その…ありがとう」

零児に頭を下げた侑斗は社長室を後にし、1人になった零児は疲れ果てたかのように背もたれに身を任せ、握るように服の心臓当たりのところを握りしめる。

「はあはあ…私に残された時間も残り少ないか…」

侑斗と会っている間、零児はずっと何ともないように装っていたが、気持ちが切れたことで一気にその反動がやって来た。

「まだだ…少なくとも、プロフェッサーを止めるまでは…持ちこたえてくれ…」

 

「おい、これまでの人数出していいのかよ?この人数だともし、またアカデミアが来たら…」

「俺に聞くなよ。上に聞け」

「上に聞いても、大丈夫だの一点張りだよ。クソッ、融合次元に決戦を挑むのはいいが、俺らの安全も考えねえと…」

エクシーズ次元では、レジスタンスメンバー達の中でランサーズと共に融合次元へ向かうメンバーの選抜が行われており、全体の半分以上がそこへ行くことになる。

家族や仲間、故郷を奪われた怒りから、参加を志願するメンバーが絶えないものの、比較的冷静な面々はここの防衛の心配をしていた。

エクシーズ方面軍と拠点を陥落させたことで、アカデミアからの攻撃がなくなったエクシーズ次元だが、いつまたアカデミアが攻めてくるかわからない。

今いるレジスタンスの半分以上が抜けるとなると、またエクシーズ方面軍以上の規模のデュエル戦士達が来たら、このスペード校のキャンプを守れるかどうかすら怪しくなる。

その中で、スペード校の屋上では黒咲がじっとまだ薄暗いハートランドシティの空を見ていた。

「カイト…俺はお前と同じだ。俺は…お前に反論する言葉がない」

語り合うことができないまま別れてしまった仲間のことを思いながら、黒咲はつぶやく。

まだ松葉杖がないと辛いのは変わりないが、それでも決戦までにおそらく1カ月はかかる。

それまでに戦線に復帰できる程度までの回復はできるはずだ。

「逃げていたんだ…俺も、お前も。守れなかった絶望、失った悲しみから…俺は、今も逃げ続けている」

アカデミアに復讐するため、瑠璃を救うため、デュエル戦士たちを次々とカードに変えていき、フレンドシップカップではデニスを完膚なきまでに叩きのめした。

だが、いくら屍を積み重ねたとしても、会ったのはむなしさだけだった。

瑠璃がさらわれる最大の要因となったデニスを倒しても、エドが倒され、死んだと聞いても同じだった。

「そうしなければ…耐えられなかった。俺自身が耐えられなかった。エクシーズ次元のため、瑠璃のためと言っておきながら、結局俺は自分のことしか考えていなかった…」

その復讐のための戦いは既に過去となり、どうあがいてもやり直すことができない。

やり直せない以上は今からどうするかを考えるしかない。

「けりをつけて、瑠璃を取り戻したら…俺はもう1度、向き合うつもりだ。こうすることでしか耐えることのできなかった俺自身に、そして…この現実に」

 

「うーーん、いい風で気持ちいい!!やっぱり、平和っていいねー!!」

「ったく、本音はここにきたいからついてきただけだろ?料金出させやがって…」

「いいじゃん。翔太君もたまにはこうしてリフレッシュしないと!それに、ここならあんまり人来ないから、ビャッコちゃんも好きに遊べるし」

「キュイー!!」

野原でビャッコは楽しそうに蝶と追いかけっこをしている。

また、セラフィムは野原でのんきに昼寝を始めている。

翔太達はYS県立病院で聖子のお見舞いをした後で、舞網市へ戻る途中にあるインターチェンジから降りた先にあるこの野山に来ていた。

伊織が友人から聞いた話では、そこはきれいな夜空を見ることができる穴場スポットらしく、昼間はあまり人が来ないらしい。

見舞いを終えた後は施設でぐっすり寝るつもりでいた翔太だが、伊織の昼ご飯代や駐車代を出さなければならなくなり、ランサーズの給料があるとはいえ、想定外の出費となった。

さすがに昼ご飯代くらいは自分の小遣いから出せと文句を言ったが、女の子のご飯代は男が出すのが当然というわけのわからない理屈の一点張りで、無理やり支払わされることになった。

おまけに注文したのはYSサービスエリアで一番高いオベリスクステーキランチで、4000円もの出費となった。

「エクシーズ次元も、こんな景色が戻ってくるかな?次元戦争が終わったら!」

「おいおい、まだ終わってもねーのに、なんでここで終わった後の話をするんだよ?」

「いいじゃん。その方がファイトがわくんだし!!」

平和だったころのエクシーズ次元のハートランドシティについては黒咲からたびたび聞いている。

お掃除ロボットであるオボットが何台も走って街をきれいにしてくれており、町の近くには自然豊かな山がいくつも存在していたという。

復讐と瑠璃を救うことだけを目的としていた彼がそんなささやかなことを話してくれたということは、何か彼の中で変化があったのかもしれない。

「それでさ…翔太君はどうするの?戦いが終わったら?」

「俺に聞くのかよ?」

「聞かせてよ!もしかして、恋人を作るとか?」

「そんなわけあるかよ…」

きっと、この戦いというのは次元戦争だけの意味ではない。

翔太の中にいるベクターとの決着をつけるということもあるのだろう。

実のところ、そこからどうするかはまだ何も決めていない。

記憶を取り戻すことを至上目的としていた翔太はその先を見出していなかった。

「そうだな…石倉純也って奴を探しに行くかな。俺の中にいる奴と、今も寝てる聖子って人のためにもな」

「あ…珍しいね。翔太君が人のためにやるって自分から口にするの」

「どうせ似合わねえよ」

「そんなことない!かっこいいよ、翔太君!」

「ちっ…ま、そのためにもまずは生きて帰るだけだけどな。それで、お前はどうなんだよ、伊織?言い出しっぺのお前の答えを聞かせろ」

「私は…まだ、決めてない。お父さんに会って、全部が分かってから決める」

これまでの伊織にとっては、スタンダード次元の施設で暮らす孤児の女子高校生ということだけが真実だった。

融合召喚が使えるという違いがあるだけで、どこにもほかの人と変わりがないと思っていた。

だが、次元戦争がはじまり、その戦いに巻き込まれる中でそうではないことに気付かされた。

自分は融合次元の人間で、そこには自分の父親がいる。

融合次元の人間だからと言って、翔太達の敵に回るつもりもなければ、アカデミアのために戦うつもりは毛頭ない。

融合次元の人間であり、アカデミアの一員であった素良も最終的にこちらの味方になり、タイラー姉妹も寝返ったのだから、別次元の人間だから敵という考えに陥る必要はない。

だが、戦いが終わった後でそうするかを決める前に、伊織は向き合いたいと思っていた。

自分に命をくれた父親に会い、自らのルーツのすべてを知る。

「決めてねーのかよ…ま、いいけどな」

「キュイー」

「頑張りましょう、伊織さん。私たちも応援しますから」

「クリクリー!!」

「うん、ありがとう!セラフィム、ビャッコちゃん、クリボーマン!」

 

「はあはあ…一体どーなってんだよ?それに、どうしてこんなところに飛ばされなきゃならねーんだよ…」

真夜中になり、街灯もない真っ暗な街中で、Dホイールを背もたれ代わりにしているユーゴが盗んだパンを口にする。

彼の周囲には倒れているアカデミアのデュエル戦士たちがいて、この集団はつい数分前にユーゴが倒した面々だ。

「まさか…シンクロ次元で集まって、いきなり融合次元に飛ばされるなんて…」

「ええっと、お前の言葉が正しければ、俺そっくりの奴が遊矢とあの紫色の髪の奴が集まって、そこに柊柚子って女が入ってきて、ブレスレットが光ったからこうなった…だよな」

ユーゴはこの次元に来る前後の記憶が全く抜け落ちている。

よくわからないうちにシンクロ次元にはないレンガ造りの街中に来ていて、クリアウィングに言われなければここが融合次元だということは分からなかった。

理屈は分からないが、少なくともこれで融合次元に囚われているリンを探しに行けると気合を入れなおしたユーゴだが、ここに来てから1カ月、なにも手掛かりを得ていない。

何度か襲ってくるデュエル戦士たちを蹴散らし、街中で食料を盗んでさまよってばかりだ。

幸いなのはユーゴのDホイールの動力源がモーメントであることで、それのおかげで燃料の補給はしなくて済む。

ただ、シンクロ次元ではないために当然、Dホイールのパーツを手に入れることはできないので、もし壊れたりしたらその時点で移動手段が徒歩のみとなる。

(そもそも、アカデミアの本拠地ってどこにあるんだよ?走り回ってりゃあ見つかると思ったのによぉ…)

デュエル戦士達は転移装置を使っているのか、いつも神出鬼没で飛び出して来て、こちらにデュエルを仕掛けてくる。

人だかりの中だろうとおかまいなしに彼らはリアルソリッドビジョンでデュエルを仕掛けてくる。

フレンドシップカップでランサーズの沢渡を倒し、準決勝まで勝ち進んだユーゴは並みのデュエリストには負けない自信はあるが、さすがに連続の奇襲のせいでおちおち休んでもいられない。

「くそ…!翔太って野郎に会ってから全くろくなことがねえ。こうなったら、今度会ったらあいつをぶっ倒してすっきりしてえが…」

「今はそんなつまらないことを考えるより、海を渡る方法を考えましょう。あとは海路で探すしかありませんから…」

いくら情報を集めても、今いる地域を走り回ってもアカデミアの場所を突き止めることができず、残されたのは海を渡ることだけだ。

この次元には舞網市のような海が広がっており、定期船を何度も見たことがある。

しかし、定期船を取り仕切っているのはアカデミアで、ジョイ戦の際には必ずと言っていいほど身分をチェックされる。

そうなれば身元不明者である上にアカデミアからは追われる身のユーゴは乗ることもできない。

船を奪って、それで移動することも手段としてはあるが、船の操縦方法が分からないため、そもそも却下だ。

「ああ、どうしたらいいんだよ…どうしたら…」

「あなたかしら?今この地域でデュエル戦士たちと戦っているデュエリストというのは」

「あん?誰だ!!」

眠気を覚える自分の頬を叩いて、気を確かにしたユーゴが振り返り、デュエルディスクを構えて声が聞こえた方向にいる少女を見る。

金色のロングヘアーで、白い前開きに該当に青いミニスカート姿をしており、背丈だけを見ると高校生くらいで、ユーゴよりも年上だ。

「私は天城院明日香。あなたに会いに来たの」

「俺に…?姉ちゃん、俺は忙しいんだ!後にしてくれ」

明日香の制服がどこかアカデミアのデュエル戦士をほうふつとさせるもので、ユーゴはそれが好きになれなかった。

直感だけで考えると、おそらく彼女は敵ではない。

だが、今は彼女と話すよりもアカデミアへ向かうことが最優先だった。

「アカデミアへ向かう手段を持っているわ。あなたに協力できるかもしれないの」

明日香の言葉に、Dホイールを走らせようとするユーゴの動きが止まる。

本当なのか、半信半疑に再び彼女を見つめる。

「ついてきて。私たちに協力してくれたら、そのお礼にアカデミアへ連れて行ってあげるわ」



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第109話 もう1つの遊勝塾

明日香に案内され、ユーゴはDホイールを引きながら夜の街の路地裏を進んでいく。

街灯が少なく、迷路みたいな道のりではあるが、幼いころからコモンズとしてスラムのような街中で生きてきたユーゴにとっては慣れた道のりだ。

知らない道というだけで、雰囲気は特に変わりがない。

そんな道を進んでいくと、粗末な板でできた看板がそばに置かれている木製のドアの前で明日香の足が止まる。

「誰も後をつけていないわね…。ここに、あなたに会わせたい人がいるわ」

「会うのはいいけどよ、お前らは何者なんだよ?アカデミアじゃあねえみてーだけど、いまいち胡散臭いぜ」

直感に従って行動はしているが、ここまで移動している間、明日香は一切ユーゴに自分のことを話していない。

それが彼にとっては疑念を生む大きな理由となっている。

そのことは明日香も分かっており、話そうとは思っているが、話すべき場所はもう目の前にある。

「ごめんなさい。けれど、あまり知られたくないから…。一緒に中へ入って。それから、悪いけれど、そのバイクは隠しておいて」

「はぁ…?隠せって言われても…」

周りを見渡して、隠せる場所を探すユーゴだが、唯一あるとしたら隅に押し込めるようにして積み上げられたゴミの山だ。

デュエルの時の相棒と言えるDホイールをそんな汚いところに隠すのは気が引けて、近づくと何とも言えない臭い匂いがして、ゲンナリしてしまう。

だが、隠さないと中に入れず、治安の悪いコモンズで手癖の悪い輩に見つからないように、時にはもっと汚い場所にDホイールを隠さざるを得なかったこともある。

ユーゴはやむなくゴミの中にDホイールを押し込める。

明日香はドアについている小さな窓を開け、そこから自分のデッキから出したカードを中に見せるようにかざす。

すると、中から鍵が開く音がして、明日香は扉を開けると戻って来たユーゴを手招きする。

ユーゴはゴミの中にいる相棒の身を案じながら、明日香に連れられて中へと入っていった。

 

 

「静かに進んで。子供たちが起きてしまうから…」

ランタンを手にして進む明日香の後ろをついていくユーゴは小さな窓からそばにある部屋の中を見る。

そこには数人の子供が明日香と同じくらいの年齢の少年と一緒に雑魚寝となっており、彼らは全員まだ小学生くらいの年齢に見えた。

この部屋だけでなく、進んでいく中で通った2つくらいの部屋にも同じくらいの人数の子供たちと明日香と同年代の少年少女が眠っている。

先ほど門番をしていたのは自分と同年代くらいの少年だった。

「あいつら…どうして、こんなところにいるんだ?それに、遊勝塾ってなんだよ…?」

塾や学校の概念などないユーゴにはそこでは何をするのか全く分からない。

ここまでの光景からすると、世話になっていた孤児院と同じような存在のように思えてしまう。

ただ、その認識はここの場合では半分正解だろう。

「彼らは…アカデミアから脱走してきた子供たちよ。見つかったら、カードにされてしまうわ…」

「アカデミアから脱走…?」

アカデミアの一員としたら、頭に浮かぶのはオベリスクフォースをはじめとしたデュエル戦士とリンをさらった男、ユーリくらいだ。

プロフェッサーのため、アークエリアプロジェクトのためというお題目で非道の限りを尽くす彼らばかりだと思っていた分、明日香の話は信じられなかった。

「信じられないのも仕方ないわ。それだけのことをアカデミアはしている…それを知ってしまったから…」

「知ってしまった…?」

「ここに、あなたに会ってほしい人がいるわ」

ユーゴの疑問を遮り、明日香は一番奥の部屋のドアをノックした後で扉を開ける。

古いベッドとタンス、そして小さな丸いテーブルが置かれているだけの粗末な部屋の中には車いすに乗る一人の男性の姿があった。

暗がりの部屋の中で、テーブルの上にある小さなろうそくだけが視界の頼りとなっており、男性の視線が明日香たちに向けられる。

「やぁ…ようやく、見つけてくれたか…。明日香、彼が例の…」

「はい、アカデミアと戦っているデュエリストです、先生」

「先生…?」

「紹介するわ、ユーゴ。彼がこの遊勝塾の先生、榊遊勝よ」

ランタンの明かりでその男の姿をユーゴはしっかりと見ることができた。

ライオンの鬣のように棘のあるオールバックな髪形をしており、薄髭を蓄えた40代くらいの男性で、気になるのはその顔色と服装だった。

若干顔色が悪い様子で、車いすに乗っている彼の体は青い病人服に包まれていて、若干痩せているような感じをしていた。

「やぁ…こんな病人のような格好で迎えることになってしまってすまないな。俺が榊遊勝だ…。よろしくな、…ユーゴ君」

車いすを動かそうとする遊勝を止めるように、明日香が車いすまで移動する。

そして、彼女が車いすを動かして遊勝をユーゴの前まで連れていき、遊勝はすまなそうに明日香に笑みを向けた後で、ユーゴに右手を差し出す。

戸惑った遊勝だが、見る限り友好的である以上は応じなければならないと思い、握手した。

(なるほど…彼に、遊矢に似ているな…)

ユーゴのことは明日香をはじめとした遊勝塾のメンバーの情報収集によって、ある程度把握していた。

彼のいでたちなどを聞く中で、息子である遊矢そっくりだということは分かっていた。

「で、おっさん。やつれてるみてーだけど…何か病気してるのか?」

「ストレートに言ってくるな…。そうだな、ここ半年…体を弱らせていてね。今では車いすがないと辛いところまで来ている…。本当に、年はとりたくないものだ」

話していると、発作を起こし始めた遊勝は胸を抑え、明日香はそんな彼を心配そうに見ながらも、タンスの中から使い捨ての空気注射器を持ってくる。

注射器を受け取った遊勝は首筋にそれを突き立て、中に入っている薬品を押し込んだ。

注射を終えた遊勝はゆっくり深呼吸をしていき、抑えている腕を放していく。

「おいおい、ガキばかりな上に病気のオッサン。とんだ隠れ家だな…。そんなんでよく脱走した奴らを…」

「そう、だな…。エンタメデュエルの先駆者、などと言われてきたが、一皮むけば、このザマだ…。…いや、すまない。こんな話をするために君をここに連れてきたわけじゃないのにな」

なぜか初対面で、あって間もないはずのユーゴに弱い本来の自分の思いをベラベラと話してしまう。

最愛の息子である遊矢に似ているから、ついつい甘えてしまうのか。

だが、今は感傷に浸っているわけにもいかず、彼は遊矢ではなくユーゴだ。

そのことを自分に言い聞かせ、本題に入る。

「ユーゴ…。俺は3年前からここで脱走してきた子供たちを匿って、デュエルを教えている。デュエルの楽しさと、侵略の道具じゃないことを伝えるために…。今はごくわずかだが、そのことを理解してくれる人がこの次元の中にも出てきていて、彼らに助けられて暮らしている…。だが、それもそろそろ限界を迎えようとしている」

「アカデミアが先生の居場所をつかんで、捕まえようと動いているの。もし、見つかってしまったら…」

その後どうなるかは誰も言わずとも分かることだ。

見つかって、本気を出して来たらこんな古ぼけたアジトに隠れる遊勝達にはひとたまりもない。

「俺はともかく、彼らをこのままにするわけにはいかない。だから…ここから移動しなければならない。彼らを匿ってもらった上で、アカデミアへ向かう…プロフェッサーと決着をつけるために」

「決着をつけるって…何があったんだよ??話が見えねえけど…」

「順を追って説明しよう。おそらく、君は別の次元から来たのだろう。だから、きっと俺の話も分かるかもしれない…。俺は元々、ここでもシンクロ次元でもなく、スタンダーヂ次元と呼ばれる次元で暮らしていた…そこで俺はエンタメデュエルの先駆者などと呼ばれ、プロデュエリストとして、俺なりにみんなを笑顔にするためにデュエルをしてきた」

それを続ける中で妻となる洋子と出会い、彼女との間に最愛の息子である遊矢を授かった。

そして、エンタメデュエルの理想を子供たちに伝えるべく、後輩である修造と共に遊勝塾を作った。

転機を迎えたのは3年前で、零児がアカデミアに対抗するためにランサーズを結成しようと計画を立て始めたことだ。

そこでその隊長として選ばれたのは遊勝だった。

彼が選ばれたのはエンタメデュエルの先駆者であり、プロデュエリストであることもそうだが、彼がプロフェッサー、赤馬零王と友人関係であったことも大きい。

アマチュアのデュエリストとして活動していた遊勝は同時期にレオコーポレーションの前身といえる町工場を作っていた零王と出会い、彼に誘われてリアルソリッドビジョンを活用した新しいデュエルを共に作っていた。

その傑作が今のアクションデュエルで、それがきっかけで二人は親友の間柄となった。

そして、遊勝はプロデュエリストとなり、そのアクションデュエルを娯楽として人々に普及することに尽力し、零王は工場をレオコーポレーションへと発展させ、同時にLDSを立ち上げた。

これはリアルソリッドビジョンが扱い方によっては兵器として、戦争の道具としても使えてしまう技術でもあることから、そうなってしまう前に人々の平和と笑顔の象徴にしようと約束しあった結果だ。

零児に呼ばれ、零王が家族や会社を捨てて、プロフェッサーとして他次元への侵略行為を始めたことを聞いた時はその約束もあって、信じることができなかった。

だが、零児が自分の父親を貶めるような嘘をつくような人間ではないことを分かっていたこともあり、それを信じるしかなかった。

しかし、デュエルを戦争の道具にする愚を自分まで犯すことができないと考え、決心したのは零王への説得だった。

遊勝はレオコーポレーションの試作次元転移システムを使い、零王がいる融合次元へ飛ぼうとした。

だが、たどり着いたのは融合次元ではなく、エクシーズ次元だった。

そこで遊勝は融合次元へ向かうための手段を探しつつ、その次元の人々にエンタメデュエルを教えていた。

そして、半年前にアカデミアの侵略が始めり、遊勝はそれを止めるためにエドに挑んだ。

勝利を収めたものの、彼の手で再び次元転移させられたことで、棚から牡丹餅という形で融合次元にたどり着いた。

アカデミアへ向かい、零王の元へたどり着いて説得しようとしたが失敗し、逃げる中で脱走していた明日香と出会った。

そして、彼女と共に遊勝塾を作って、そこで脱走した子供たちを匿う日々を過ごしている。

 

「情けのない話だ…。親友だと思っていた彼の心を理解できず…説得に失敗して、戦争を止めることができなかった…。エンターテイナー失格だな」

「先生…」

「俺はもう1度、彼に会わなければならない。何としてでも、彼を止める。それが今が…あいつにしてやれることだ」

リアルソリッドビジョンを戦争の道具にさせない、その約束は今での遊勝の胸に宿っている。

その約束を交わした時の彼を今も心に焼き付いている。

零王はその約束を破ったが、だからこそそれを止める義務があると思っている。

「アカデミアへ向かう手段はできている。だが…彼の元へ行くためには今の戦力では足りない。だから…君の力を借りたい。アカデミアのデュエル戦士達と戦えるだけの力を持つ君の力を」

「んん…難しいことは分からねえけど、あんたに協力したら、アカデミアに行けるんだろう?ていうんなら…」

少なくとも、嘘をついておらず、この戦いを止めたいという思いがある。

直感としてそれを感じとったユーゴに断る理由はなかった。

承諾してくれたことで安心したように、遊勝は静かに目を閉じる。

「ありがとう…協力してくれる人が3日後には船を用立ててくれる。それを使ってアカデミアへ向かう。それまではここで…子供たちの世話をしてくれ」

「世話だぁ…??俺、そういうことしたねえけど…」

孤児院では年少の子供たちの世話をした覚えがなく、やったことがあるとしたらデュエルに付き合ったり、教えたりすること、そして自分のDホイールを操縦したり整備したりしている姿を見せることくらいで、彼の言う世話をやっていたのはリンくらいだ。

彼女の真似事ができるとは思えず、どうしたらいいのか悩んでしまう。

「簡単なことよ。私たちにできることを…まずは朝、一緒に見せてあげましょう」

「俺たちにできること…?」

 

翌朝、太陽の光でランタンやろうそくが不要となった遊勝塾の一番広い部屋には遊勝を除く全員が集まっており、中心で対峙する明日香とユーゴを囲むように全員が座っていた。

「みんな、今日からみんなを助けてくれるユーゴさんがデュエルを見せてくれるわ。シンクロ召喚っていう召喚法を見せてくれるわよー!」

「シンクロ召喚…?」

「融合召喚とどう違うのかな…?」

「俺、聞いたことないぞ??楽しみだなー」

明日香の言葉に子供たちがシンクロ召喚に興味を持ち始め、ユーゴに視線が向けられる。

フレンドシップカップ以来の多くの人目を感じるデュエルとなるが、ここまで大勢の子供たちに近くから見られるのは今回が初めてで、軽いプレッシャーを感じてしまう。

「ユーゴ、このデュエルはあなたの実力を確かめるという意味合いもあるわ…。手加減はなしでお願い」

「そんなこと、はなっからするかよ!そんなこと言うなら、見せてやるぜ。俺の実力を!!」

「ユーゴ、彼女の実力は未知数です。用心深く、ですよ」

「んなこと分かってるっつーの!」

2人のデュエルディスクが展開し、互いに5枚のカードを引く。

「「デュエル!!」」

 

ユーゴ

手札5

ライフ4000

 

明日香

手札5

ライフ4000

 

「先攻は俺だ。俺は《カードガンナー》を召喚!」

 

カードガンナー レベル3 攻撃400

 

「《カードガンナー》の効果発動。デッキの上からカードを3枚まで墓地へ送り、墓地へ送ったカード1枚につき、攻撃力を500アップさせる」

 

デッキから墓地へ送られたカード

・スピードリバース

・SR電々大公

・貪欲な壺

 

カードガンナー レベル3 攻撃400→1900

 

「更に俺は墓地の《電々大公》の効果発動!このカードを墓地から除外することで、手札・墓地のスピードロイドチューナー1体を特殊召喚できる。俺は手札から《SR三つ目のダイス》を特殊召喚」

 

SR三つ目のダイス レベル3 攻撃300(チューナー)

 

「チューナーモンスター…??もしかして、これってシンクロ召喚の…??」

「その通りだ!チューナーはシンクロ召喚のための必須カード。今からそれを見せてやるぜ!俺はレベル3の《カードガンナー》にレベル3の《三つ目のダイス》をチューニング!十文字の姿もつ魔剣よ。その力ですべての敵を切り裂け!シンクロ召喚!現れろ、レベル6!《HSR魔剣ダーマ》!」

 

HSR魔剣ダーマ レベル6 攻撃2200

 

初めて見るシンクロ召喚に子供たちの目が釘付けとなり、中には声を挙げずにただ笑っている子供もいた。

「俺は《魔剣ダーマ》の効果発動!こいつは俺の墓地の機械族モンスター1体を除外することで、相手に500ダメージを与えることができる。俺は《カードガンナー》を除外!!」

《カードガンナー》の幻影が弾丸となって明日香を撃ち抜く。

「キャッ!!」

 

明日香

ライフ4000→3500

 

「更に俺は手札から装備魔法《カッチン・ボール》を《魔剣ダーマ》に装備!こいつはスピードロイド、またはクリアウィングシンクロモンスターにのみ装備できる装備魔法だ!」

《HSR魔剣ダーマ》の周囲に2つの透明な玉状のエネルギーが発生し、旋回し始める。

「《カッチン・ボール》の効果!1ターンに1度、装備モンスターのレベル×100のダメージを相手に与える!」

2つのエネルギー玉がぶつかり合うとともに衝撃波が発生し、それが明日香を襲う。

「1ターン目から、ライフを削ってくるなんて…!」

 

明日香

ライフ3500→2900

 

「そして、その後で装備モンスターの攻撃力を500アップさせる」

 

HSR魔剣ダーマ レベル6 攻撃2200→2700

 

「俺はこれで、ターンエンドだ!」

 

ユーゴ

手札5→2

ライフ4000

場 HSR魔剣ダーマ(《カッチン・ボール》装備)レベル6 攻撃2700

  カッチン・ボール(装備魔法)

 

明日香

手札5

ライフ2900

場 なし

 

「先攻1ターン目でいきなり1100もダメージを与えてくるなんて…。やるわね」

「こんなのはまだ序の口だぜ!まだまだこれからだ!!(それに、墓地には除外することで相手の攻撃を封じる《三つ目のダイス》がある。そして、《魔剣ダーマ》は俺のスタンバイフェイズ時にフィールドにカードがない場合、墓地から復活する効果もある。やられたとしても、立て直しはできる…!)」

「私のターン、ドロー!」

 

明日香

手札5→6

 

「私は手札から魔法カード《逆境の宝札》を発動。私のフィールドにモンスターが存在せず、相手フィールドに特殊召喚されたモンスターが存在するとき、デッキからカードを2枚ドローする。そして、手札からフィールド魔法《祝福の教会-リチューアル・チャーチ》を発動!」

発動と共に殺風景だった部屋が白と赤がベースのきらびやかとした教会へと変わっていく。

「《リチューアル・チャーチ》の効果。私のターンのメインフェイズ時に、手札の魔法カード1枚を墓地へ送ることで、デッキから光属性儀式モンスター1体か儀式魔法1枚を手札に加える。私はデッキから《機械天使の儀式》を手札に加える」

 

手札から墓地へ送られたカード

・融合

 

「更に私は手札から永続魔法《昇華する魂》を発動。1ターンに1度、儀式召喚に成功したときにリリースしたモンスター1体を手札に戻すことができる。手札に加えた《機械天使の儀式》を発動!手札・フィールドのモンスターをリリースして、手札からサイバー・エンジェル儀式モンスターを儀式召喚できる。私は《サイバー・エンジェル-伊舎那-》をリリース!《サイバー・エンジェル-茶吉尼-》を儀式召喚!」

青い肌をした、三度笠とオレンジ色のビキニアーマー姿をした四本腕の女戦士が現れる。

両手に握るのは錫杖で、残り2本の手には蛮刀が握られていた。

 

サイバー・エンジェル-茶吉尼- レベル8 攻撃2700

 

「そして、《昇華する魂》の効果発動。リリースした《伊舎那》を手札に戻すわ」

「だき…いしゃ、な…?よく分からねえ名前のモンスターだけど、まさか実質素材なしで儀式召喚するのかよ…??」

ユーゴのいる次元でも、儀式召喚を使うデュエリストはいたが、明日香のようにそれ主体としているデュエリストとは会ったことがない。

あくまでもシンクロ召喚の補助という意味合いの方が大きい。

ユーゴは知らないことだが、他の次元でも儀式召喚を使うデュエリストは存在し、まれにはそれに完全特化したデュエリストも存在する。

そのもっともな例が遊矢が依然戦った方中ミエルだ。

「そして、《茶吉尼》の効果発動!このカードの儀式召喚に成功したとき、相手は自分のモンスター1体を墓地へ送らなければならないわ!」

「何!?俺が墓地へ送れるモンスターは1体だけ…」

《サイバー・エンジェル-茶吉尼-》が錫杖を《HSR魔剣ダーマ》に向け、呪文を唱える。

呪文を受けたそのモンスターは勝手にバラバラになってフィールドから消滅した。

「くっそぉ!!だが、《カッチン・ボール》は装備モンスターがフィールドから離れたことで墓地へ送られた場合、ターン終了時に手札に加えるぜ!」

「けれど、これであなたのフィールドはがら空きよ。バトル!《サイバー・エンジェル-茶吉尼-》でプレイヤーへダイレクトアタック!」

《サイバー・エンジェル-茶吉尼-》が2本の蛮刀を振り回し、剣閃がユーゴに向けて飛んでいく。

「俺は墓地の《三つ目のダイス》の効果発動!こいつを除外することで、攻撃を無効にする!!」

《SR三つ目のダイス》の幻影がユーゴをかばい、剣閃を受け止めた後で消滅する。

「抜け目がないわね…私はカードを1枚伏せて、ターンエンド。同時に、《サイバー・エンジェル-茶吉尼-》の効果発動。私のターン終了時に、墓地の儀式モンスターか《機械天使の儀式》1枚を手札に戻すことができるわ。私は《機械天使の儀式》を手札に戻す」

「なら、俺も《カッチン・ボール》の効果を発動。こいつを手札に戻すぜ」

 

ユーゴ

手札2→3(うち1枚《カッチン・ボール》)

ライフ4000

場 なし

 

明日香

手札6→3(《機械天使の儀式》、《サイバー・エンジェル-伊舎那-》)

ライフ2900

場 サイバー・エンジェル-茶吉尼- レベル8 攻撃2700

  伏せカード1

  昇華する魂(永続魔法)

  祝福の教会-リチューアル・チャーチ(フィールド魔法)

 

カッチン・ボール

装備魔法カード

「SR」「クリアウィング」Sモンスターにのみ装備可能。

このカード名のカードは自分フィールドに1枚しか表側表示で存在できない。

(1):1ターンに1度、装備モンスターのレベル×100のダメージを相手に与える。その後、装備モンスターの攻撃力が500アップする。

(2):装備モンスターがフィールドを離れたことでこのカードが墓地へ送られたターン終了時に発動できる。墓地に存在するこのカードを手札に加える。

 

「くぅー、実質リリースなしで儀式モンスターを召喚してくるなんてなぁ」

《昇華する魂》と《サイバー・エンジェル-茶吉尼-》、そして《祝福の教会-リチューアル・チャーチ》。

3点セットで儀式モンスターを次々と召喚してくる。

「(逆に言えば、そのどれかを崩せば…流れを持っていくことができる!)俺のターン!!」

 

ユーゴ

手札3→4

 

「俺は墓地の《魔剣ダーマ》の効果発動!こいつは俺のフィールドにカードが存在しないメインフェイズ時、墓地から特殊召喚できる。ただし、この効果を発動したターン、俺はモンスターを召喚できない。蘇れ、《HSR魔剣ダーマ》!!」

 

HSR魔剣ダーマ レベル6 攻撃2200

 

「そこから《カッチン・ボール》を装備して、効果ダメージを与えるつもり!?」

「そんなことするつもりはねえ!俺は手札から魔法カード《ワン・フォー・ワン》を発動!手札1枚を墓地へ送り、手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する。俺はデッキから《SR赤目のダイス》を特殊召喚!」

 

SR赤目のダイス レベル1 攻撃100(チューナー)

 

手札から墓地へ送られたカード

・アーマロイドガイデンゴー

 

「いくぜ!レベル6の《魔剣ダーマ》にレベル1の《赤目のダイス》をチューニング!」

2度目のシンクロ召喚のモーションが始まり、子供たちは次に難のモンスターがシンクロ召喚されるのか楽しみなようで、前のめりにユーゴのフィールドを見始める。

「その美しくも雄々しき翼翻し、光の速さで敵を討て!シンクロ召喚!現れろ、レベル7!《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》!」

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

「新しいシンクロモンスター…」

「俺は手札に加えた装備魔法《カッチン・ボール》を今度は《クリアウィング》に装備だ!さあ、効果ダメージを受けてもらうぜ!!」

発動と同時にエネルギーの球体2つが《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の周囲を旋回し、ぶつかり合うと同時に衝撃波が再び明日香を襲う。

「同じ攻撃を二度も受けるつもりはないわ!罠カード《レインボー・ライフ》を発動!手札1枚を墓地へ送り、ターン終了時まで私が受けるダメージはすべて回復に変換されるわ」

 

明日香

ライフ2900→3600

 

手札から墓地へ送られたカード

・儀式魔人リリーサー

 

「くっ…だが、これで《クリアウィング》の攻撃力はアップするぜ」

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン レベル7 攻撃2500→3000

 

「これで攻撃力は《茶吉尼》を上回ったぜ!バトルだ!《クリアウィング》で《茶吉尼》を攻撃!!旋風のヘルダイブスラッシャー!!」

《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》がドリルのように回転しながら《サイバー・エンジェル-茶吉尼-》に向けて突撃する。

胴体を貫かれた《サイバー・エンジェル-茶吉尼-》は爆発するが、その体は緑の粒子となって明日香をいやす。

 

明日香

ライフ3600→3900

 

「俺はカードを1枚伏せて、ターンエンドだ!!」

 

ユーゴ

手札4→0

ライフ4000

場 クリアウィング・シンクロ・ドラゴン(《カッチン・ボール》装備) レベル7 攻撃3000

  カッチン・ボール(装備魔法)

  伏せカード1

 

明日香

手札3→2(《機械天使の儀式》、《サイバー・エンジェル-伊舎那-》)

ライフ3900

場 昇華する魂(永続魔法)

  祝福の教会-リチューアル・チャーチ(フィールド魔法)

 

「私のターン、ドロー!」

 

明日香

手札2→3

 

「私は《サイバー・ガード・エンジェル》を召喚」

左手の天使の羽根が描かれた純白の盾を装備した、目元を金髪で隠している白衣の天使が現れる。

 

サイバー・ガード・エンジェル レベル4 攻撃1200

 

「このカードの召喚・特殊召喚に成功したとき、デッキからサイバー・エンジェル儀式モンスターとサイバー・エンジェルのカード名が記された儀式魔法カードを1枚ずつ手札に加える。私はデッキから《機械天使の儀式》と《サイバー・エンジェル-美朱濡-》を手札に加える。そして、《機械天使の儀式》を発動!私は手札の《伊舎那》と墓地の《儀式魔人リリーサー》を儀式の供物をするわ!」

「何!?墓地のモンスターを素材にできるのかよ!?」

「《リリーサー》は墓地から除外することで、儀式素材とすることができるの。無窮なる力を秘めし光の天使よ。今あまねく世界にその姿現し万物を照らせ!降臨せよ!《サイバー・エンジェル-美朱濡-》!」

白いヴェールを腰につけ、一輪の花を模したかのような服装と頭髪のした美女がフィールドに舞い降りる。

背中には黄土色の歯車のような円盤がついており、降臨したそのモンスターは6本腕をユーゴに向けて伸ばした。

 

サイバー・エンジェル-美朱濡- レベル10 攻撃3000

 

「レベル10の儀式モンスター…攻撃力は《クリアウィング》と同じか…!」

「安心するのは早いわよ。《昇華する魂》の効果により、リリースした《伊舎那》を手札に戻す。そして、《美朱濡》の効果発動!このカードの特殊召喚に成功したとき、エクストラデッキから特殊召喚された相手フィールドのモンスターをすべて破壊し、破壊した数×1000のダメージを与える!」

「んなことさせっかよ!《クリアウィング》の効果発動!1ターンに1度、レベル5以上のモンスターの効果の発動を無効にし、破壊する!ダイクロイックミラー!!」

6本の手で印を切り、呪文を唱え始める《サイバー・エンジェル-美朱濡-》に対抗すべく、《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》が両翼からプリズム状の光を発射する。

「そして、破壊したモンスターの元々の攻撃力をこのカードに加える!これで、せっかくの儀式モンスターは…」

「そうはいかないわ!あなたが自慢にしている《クリアウィング》には大きな穴があるわ。この《美朱濡》はその穴を容赦なく襲う。《美朱濡》の効果発動!1ターンに1度、フィールドのカードを破壊する効果が発動したとき、墓地の儀式モンスター1体をデッキに戻すことで、その発動を無効にし、破壊するわ」

「何!?」

《サイバー・エンジェル-美朱濡-》をかばうように、《サイバー・エンジェル-茶吉尼》の幻影が現れ、ビームをその身で受け止める。

無傷で済んだ仲間を見て安心した彼女は促すように首を縦に振る。

促された《サイバー・エンジェル-美朱濡-》は呪文を唱え続け、《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の頭上に巨大な白い魔法陣が生まれ、そこから巨大な光の柱が落ちてくる。

光を受けた《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》が消滅し、守っていた《サイバー・エンジェル-茶吉尼》も消滅した。

「くそ…!《美朱濡》は対象を取らねえ…!これじゃあ、《クリアウィング》のもう1つの効果も使えねえ…!」

「まさかとは思いますが…彼女はあなたのデッキを知っているということでしょう」

「んな…!?だから、《クリアウィング》の盲点を知ってやがったのか!?」

幸い、1つ目の効果で破壊されたわけではないため、ユーゴにダメージは発生しなかった。

しかし、それでも攻撃力3000の儀式モンスターを前にがら空きな状態をさらしている。

「1つ目の効果で相手にダメージを与えることに成功した場合、このカードはこのターン、2回攻撃することができる。けれど、ダメージを与えられなかった以上は不発ね。バトル!《美朱濡》でダイレクトアタック!」

《サイバー・エンジェル-美朱濡-》が歌声を響かせるとともに衝撃波がユーゴを襲う。

「ユーゴ!!このカードであなたの身を…」

「駄目だ!今は…うわあああ!!」

クリアウィングの助言を無視し、ユーゴは《サイバー・エンジェル-美朱濡-》の攻撃を受け、大きく吹き飛ばされる。

床に転がり、うつ伏せに倒れたユーゴはどうにか起き上がる。

「痛てて…リアルソリッドビジョンでこれだけ痛いのかよ…!」

 

ユーゴ

ライフ4000→1000

 

「まだよ!《サイバー・ガード・エンジェル》でダイレクトアタック!」

《サイバー・ガード・エンジェル》の盾から白いビームが発射される。

「罠発動!《シンクロ・スピリッツ》!俺の墓地のシンクロモンスター1体を除外して、シンクロ素材となったモンスター一組を墓地から特殊召喚する。俺は《クリアウィング》を除外!!戻って来い!《魔剣ダーマ》!《赤目のダイス》!」

「《リリーサー》を素材とした《サイバー・エンジェル-美朱濡-》がフィールドに存在する限り、あなたはモンスターを特殊召喚できないわ」

「何!?」

フィールドに戻り、ユーゴの盾となるはずだった2体のモンスターは最初から存在しなかったかのように塵となって消滅する。

守りの最後の一手を封じられ、《サイバー・ガード・エンジェル》のビームが一直線にユーゴに向けて飛んでいく。

「くそ…こんな、あっさり負けちまうなんて…!!」

 

ユーゴ

ライフ1000→0

 

サイバー・ガード・エンジェル

レベル4 攻撃1200 守備1200 効果 光属性 天使族

このカード名のカードの効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードの召喚・特殊召喚に成功したとき、デッキに存在する「サイバー・エンジェル」儀式モンスターと「サイバー・エンジェル」のカード名が記された儀式魔法カードの1枚ずつを対象に発動できる。それらのカードを手札に加える。この効果を発動したターン、自分はP召喚以外の方法でEXデッキからモンスターを特殊召喚できない。

 

「ちくしょうちくしょう!!まったくのいいとこ無しじゃねえかよぉ!!」

その場に座り込んだユーゴは悔し紛れに拳を床にたたきつける。

既に脱退したとはいえ、アカデミアのデュエリストに《融合》無しでやられてしまったことが悔しくて仕方がなかった。

そして、明日香の発言が正しければ、彼女は自分のデッキのことを知り尽くしている可能性が高い。

「あなたの実力はよくわかったわ」

座り込むユーゴの目前に立ち、見下ろしてくる。

視線を逸らすユーゴだが、敗北したという現実は受け止めざるを得ず、もしかしたら協力を撤回されるかもしれない。

敗者はすべてを失う世界で生きてきたユーゴにはそう思えて仕方がなかった。

「合格よ。ユーゴ」

「は…?」

破れたにもかかわらず、どうして合格なのか?

悔しいが、実力で言えば今は自分よりも明日香が上だ。

おそらく、アカデミアには明日香以上の実力者がごろごろいるだろう。

そのことを考えると、余計にその合格という言葉が不自然に思えた。

「どうしてだよ?どうして合格なんだよ??あんたにいいようにやられたじゃねえか!」

「そうね。けど…時間はわずかだけれど、あなたはもっと強くなれる。そう感じたわ」

「何を、根拠に…」

「あなたのデュエルはどちらかと受け身ね。相手の動き、強いて言えば状況を逆手にとって勝利する。違う?」

明日香の指摘は間違っておらず、リンからもそうしたデュエルをしていることはよく言われている。

トップスとは違い、パワーカードやレアカードを数多く持つことが難しいため、《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の存在も手伝って、それに勝つための戦術として、無意識にそうしたやり方を取るようになっていた。

実際、そのおかげで勝利を重ねてきたのは間違いない。

「それはどんな状況にも、どんな相手にも対応できるという意味がある。けれど、逆に言えば相手任せ、状況任せで自分がない。特に、そのおかげで発動できたはずの《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》のようなエースのカウンターをされた場合、何もできなくなる」

まさにそれは最後のターンに明日香にされたことだった。

《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の力を発動しようとした瞬間、更なるカウンターで阻まれ、結果として負けてしまった。

おまけに特殊召喚制限の効果も手伝って、両手両足をふさがれた。

仮に、どうにかしてあのターンを凌いだとしても、勝利は難しかったかもしれない。

「けれど、そんなあなたが自分から動き出す戦術を得たとき、もっと強くなる。その強さなら、きっとあなたの大切な人を救うこともできるはずよ」

「大切な人…リンを、知ってるのか!?」

「情報を提供してくれる人がいて、その人が教えてくれたわ。その人とも、明後日会うことができる。その時、すべてを知ることができるわ」

「全部明後日かよ…なんだか、じれってえなあ…」

「それだけは我慢して。それより…あなた、あの子たちに気に入られたみたいね」

「え…?」

「ねえねえ、お兄ちゃん!さっきのシンクロ召喚、やり方教えてよ!!」

「お兄ちゃんのかっこいいドラゴン、俺も使ってみてーよ!!」

いつの間にか子供たちが負けたはずのユーゴに集まってきて、教えを請いてくる。

負けた自分がどうしてここまでと動揺するユーゴだが、悪い気分ではなかった。

そして、デュエル戦士として勝つための手段としてのデュエルして教わることのできないアカデミアのデュエリストたちよりも、彼らの方が幸せそうに思えた。

「ああ…仕方ねえな。教えてやるよ、シンクロ召喚を!!」

気持ちを切り替え、子供たちに自分のカードを見せながらシンクロ召喚を教え始める。

そんなユーゴを少し離れた場所から明日香は見つめていた。

(それに…あなたのデッキなら勝てるかもしれないわ…。彼に…ユーリに…)

アカデミア最強であり、最狂のデュエル戦士といえる存在。

彼は最終兵器であり、彼を倒さなければプロフェッサーに立ち向かうこともできない。

少なくとも、明日香は彼に勝てる実力はないと感じている。

しかし、光る原石のあるユーゴなら、融合次元にない戦術を持つ彼なら可能性があるかもしれない。

その可能性を信じるしかなかった。



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第110話 出発前

「ええっと…あー、あー、これでいいの?もうちょっと離れた方がいい??」

「ううん。距離はOK!ここから撮影だけど、準備OK?」

「あ、待って!伊織!どうしよう…また緊張してきちゃった…」

多くのコンテナが積まれた薄暗い倉庫の中で、伊織が持つデジタルカメラの前で、すっかり緊張してしまった柚子はその場にうずくまり、このやり取りを何度もこの1時間でしてきた伊織は思わずため息をつく。

「んもう、これだとみんなにビデオレターを送れないじゃん!!それに、忙しくなるからせめてビデオレターでも、って言ったのは柚子でしょ?」

「…ごめんなさい」

「おいおい、勘弁してくれよ。まだ終わってないのかよー」

いつまでたっても順番が回ってこないことに不満を覚えた遊矢はがっくりと肩を落とす。

いよいよあと8時間後にはスタンダード次元から融合次元へ転移し、アカデミアとの決戦となる。

次元戦争を終わらせ、遊勝に再会する。

そのためには決意を固めなければならないその時に柚子の緊張が台無しにしていた。

「仕方ないなぁ…柚子、代わって」

「うう…」

しぶしぶと遊矢と交代し、伊織のカメラには遊矢の姿が映る。

伊織が録音ボタンを押すと、遊矢はわざとらしい咳払いをした後で、左手の手袋を外し、袖をまくる。

「みんな、これから俺たちは融合次元へ行く。この次元戦争で、俺たちはたくさんのものをなくしてしまった。俺は左腕をなくした。仲間をなくした。力を得るために向かった2つの次元でも、手を取り合えるはずだった人を…俺はなくしてしまった」

シンクロ次元に来たばかりの時にセキュリティから救ってくれたクロウ、トップスを破壊し、革命を起こそうとしたシンジ、家族を奪った復讐に燃えていたカイト、一度は楽しいデュエルを否定していたエド。

デュエルをすることで分かりあい、それで笑顔を取り戻せたはずだった。

だが、次元戦争はそのはかない希望や光を打ち砕いていった。

「でも、こんな悲しい戦争はもうすぐなくなる。アカデミアに自分や家族、仲間を奪われる恐怖や悲しみがこれ以上増えることはなくなるんだ。そのために、ランサーズができて、仲間たちが集まってくれた」

幼いころから知っている柚子や権現坂、ランサーズ構想を打ち立て、長年にわたってアカデミアとの戦いの準備を続けてきた零児とその義弟の零羅。

すっかり腐れ縁となった沢渡に、遊勝塾に新しく入った翔太と伊織。

エクシーズ次元で仲間たちを失った黒咲や元シェイドのメンバーたち。

他にも、侑斗やウィンダといったヴァプラ隊のメンバーやヒイロもいる。

次元戦争を終わらせるという一つの目的のために、多くの人が今、スタンダード次元を出ようとしている。

「アカデミアはすべての次元を一つにすることで理想郷を作ろうとしている。その理想郷がどんなものかは分からない。けど、一方的にそのエゴを押し付け、悲しみを与えるそのやり方を俺は認めない!そして、この戦争の終わりのために、みんなの命はいらない!誰一人欠けることなく、必ず生きてスタンダード次元へ帰る!だから、みんなで待っていてくれ。必ず、帰ってくるから!」

「遊矢…」

「遊矢君…」

遊矢の戦争を終わらせることへの強い意志が一つ一つの言葉からにじみ出ており、伊織は思わず録画を止めるのを忘れてしまった。

翔太に肩を叩かれたことで、ようやくそれに気づいて録画を止める。

「…ごめん。軽く帰ってくるから待ってろ…そういうつもりだったけど、これじゃあすっかりみんなへのメッセージにもなってしまってるな」

「別にいいんじゃねえか?俺も、まだベクターとの決着がついてねーからな、死ぬつもりなんてサラサラない」

「私も同じ!それに、私にはお父さんに会うっていう目的ができちゃったから」

「親父…か…」

ベクターの記憶も宿してしまった翔太にはその言葉にあまりいい感情がわかない。

頭に浮かぶのは強権的で、自分の意のままに動かなければ殺そうとさえする暴君しかいない。

秋山翔太となってからはそうした親と言える存在は当然いない。

「そのためには、翔太君の力も必要だから…お願いね!」

「ちっ…仕方ねえな。ん…?」

急に全員が静まり返り、遊矢達の視線が向けられていることに違和感を覚える。

どうしてか分からず、首をかしげる中で柚子が口を開く。

「口調は変わってないのに…頼みにあっさりと答えちゃった」

「翔太…変わったな」

「はぁ…?変わった?俺が??」

「うんうん、いい傾向だね、翔太君!この調子でもっと素直になってくれれば…」

「ちっ…うるせーな」

これ以上聞きたくないと思った翔太が倉庫から飛び出していく。

それが滑稽に見えたのか、伊織は思わず笑ってしまった。

 

レオコーポレーション社長室では、零児がデスクでパソコンを操作していて、ちょうどそれを終えて電源を切ったところで零羅が入って来た。

「兄様、出発の準備がもうすぐ終わるよ。みんな、待ってる」

「ああ、分かっている。その前に零羅…お前に渡しておきたいものがある」

「渡したいもの…?」

なんだろうと思い、まっすぐに零児の元へ歩いていく。

席を立ち、前へ歩いていき、零羅と正面で向き合う形になると、零児は膝を曲げて視線を零羅に合わせると、持っているUSBメモリを零羅の小さな手に握らせた。

「これは…?」

「お守りだ。お前にはすまないと思っている。私たち家族の愚かしい争いに巻き込んでしまった」

戦災孤児である彼を仮にヒイロが連れて帰らなかったとしたら、きっと彼は今頃命を落としていたか、少年兵として消耗品扱いにされていただろう。

連れて帰ったとしても、施設に入れるなど、彼の将来のためにできることはほかにもあったはずだ。

だが、できたことは零羅という名前を与えることとプロフェッサーとの戦いに巻き込むことだけだった。

日美香が零羅の特異な能力に目をつけ、彼を切り札にしようとしたことについては否定するつもりはない。

きっと彼女も、この次元戦争を終わらせるためにできる最大限の手段としてそれを選んだだろう。

しかし、零児は時折思ってしまう。

こんなことをしたことで、逆に零羅の未来を閉ざしてしまったのではないかと。

「もし、これ以上闘うのが嫌なら、今すぐランサーズを抜けてくれても構わない。そして、本当にやりたいことを探すんだ。それがきっと…」

「…ううん。戦うよ、兄様」

「零羅…?」

じっと零児の目を見て、怯えを見せることなく零羅は答える。

「確かに、セレナを守れなかったときはとてもつらかった…。でも、こんな僕を必要としてくれる人がいる。何もない僕を兄様たちが家族にしてくれた。それが、うれしいんだ」

「零羅…」

「だから、もう二度とそんなことで僕に謝ることなんてしないで。今の僕が一番やりたいことは…母様や兄様、みんなの力になることだから」

ここまで自分の言葉で何かを言ってくるのは初めてのことで、零児も驚いてしまった。

だが、おどおどしていた彼がここまで成長してくれたことを嬉しくも思ってしまう。

これを日美香が喜ぶかどうかは分からないが。

「兄様、僕とデュエルをして」

「私と…?」

「うん。今の僕の持っている力を見せたいんだ。僕の手で作ったこのデッキで」

シンクロ次元に戻ってから、零羅は無力な自分が許せずに、黙々と特訓を続けた。

元シェイドのメンバーや残っているランサーズの仲間たちのところにも押しかけて、デュエルを磨き続けた。

その中でようやく作ることのできた、零児からもらったものではない、正真正銘の自分のデッキ。

このデッキはほかの誰にも見せてはいない、今初めて見せている。

「ふっ…兄として、そこまで言われたのなら、相手にするしかないな」

出発までのスケジュールを考えると、スタンディングデュエルだけなら1回はできるだけの時間の余裕はある。

そして、これからのことを頭に浮かべると、どうしても今の零羅を焼き付けておきたいという気持ちもある。

零児は零羅から距離を取ると、デュエルディスクを展開する。

「本気で来い、今のお前の思いを私にぶつけろ!」

「いくよ…兄様!!」

「「デュエル!!」」

 

零羅

手札5

ライフ4000

 

零児

手札5

ライフ4000

 

「僕の先攻。僕は手札から《カードガンナー》を召喚!」

 

カードガンナー レベル3 攻撃400

 

(《カードガンナー》…?零羅の今までのデッキにはなかったカードだ)

「《カードガンナー》の効果発動!デッキの上から3枚までカードを墓地へ送ることで、1枚につき、攻撃力を500アップさせる!」

 

カードガンナー レベル3 攻撃400→1900

 

デッキから墓地へ送られたカード

・水晶機巧-サルファフナー

・緊急同調

・チューニング・サポーター

 

「そして、墓地の《サルファフナー》の効果発動。このカードが手札・墓地に存在するとき、手札のクリストロン1枚を捨てることで、特殊召喚できる。僕は《水晶機巧-シストバーン》を墓地へ送り、《サルファフナー》を復活させる!」

黄金の水晶でできた体と鎧姿をした4本脚の翼竜がフィールドに現れる。

 

水晶機巧-サルファフナー レベル5 守備1500

 

「そして、《サルファフナー》はこの効果で特殊召喚に成功した場合、自分フィールドのカードを1枚破壊する。僕は《サルファフナー》を破壊する!」

召喚されたばかりの《水晶機巧-サルファフナー》が粉々に砕け散り、その破片である水晶が零羅のフィールドに浮遊した状態でとどまる。

「そして、フィールドに存在する《サルファフナー》は戦闘・効果で破壊された場合、デッキからクリストロン1体を守備表示で特殊召喚できる。僕は《シトリィ》を特殊召喚」

浮遊する水晶が再び集結し、その姿が金色のワンピース姿の小柄な少女になった。

 

水晶機巧-シトリィ レベル2 攻撃500(チューナー)

 

「そして、手札からフィールド魔法《スターライト・ジャンクション》を発動!カードを1枚伏せて、ターンエンド!」

 

零羅

手札5→1

ライフ4000

場 水晶機巧-シトリィ レベル2 攻撃500(チューナー)

  カードガンナー レベル3 攻撃1900→400

  伏せカード1

  スターライト・ジャンクション(フィールド魔法)

 

零児

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「私のターン、ドロー!」

 

零児

手札5→6

 

ドローしたカードを確認した後で、零児は零羅のフィールドを見る。

フィールドには攻撃力の低い2体のモンスターが棒立ちで、そのうちの1体はチューナー。

気になるのはなぜシンクロ召喚を行わなかったかだ。

普通なら、《カードガンナー》と《水晶機巧-シトリィ》で《A・O・Jカタストル》や《フレムベル・ウルキサス》などをシンクロ召喚できる。

だが、その答えは零羅が発動した《スターライト・ジャンクション》にある。

(《スターライト・ジャンクション》は相手ターンに自分がシンクロモンスターをエクストラデッキから特殊召喚した場合、フィールド上のカード1枚をデッキに戻す…。何らかの手段で、零羅は私のターンにシンクロ召喚を行ってくる)

問題はそこで召喚してくるのが何か、そしてシンクロ召喚を行うタイミングだ。

「私は手札から永続魔法《地獄門の契約書》を発動。その効果により、私はデッキから《DDスワラル・スライム》を手札に加える。そして、《スワラル・スライム》の効果発動。このカードと手札のモンスターを素材にDDD融合モンスターの融合召喚を行う。私は《スワラル・スライム》と《アビス・ラグナロク》を融合。自在に形を変える神秘の渦よ、神々の黄昏よ、今ひとつとなりて新たな王を生み出さん!融合召喚!生誕せよ!《DDD烈火大王エグゼクティブ・テムジン》!」

まずは小手調べと、背中に日輪を背負い、鎧も《DDD烈火王テムジン》と比較するとより磨かれて鋭利なものとなっている、進化した王が現れる。

 

DDD烈火大王エグゼクティブ・テムジン レベル8 攻撃2800

 

「…!僕は《シトリィ》の効果発動!相手メインフェイズ時、もくしはバトルフェイズ時に墓地のチューナー以外のモンスター1体を効果を無効にして特殊召喚できる!僕は墓地から《水晶機巧-サルファフナー》を特殊召喚!」

《水晶機巧-シトリィ》が手から放った水晶が増殖していき、その姿が彼女の元の姿であったはずの《水晶機巧-サルファフナー》へと変化していく。

 

水晶機巧-サルファフナー レベル5 攻撃2000

 

「そして、この効果で特殊召喚されたモンスターと《シトリィ》を素材にシンクロ召喚を行う。けど、この効果で素材となった2体のモンスターは除外される!」

「そういうことか…!」

「レベル5の《サルファフナー》にレベル2の《シトリィ》をチューニング!」

《水晶機巧-シトリィ》の体が黄金の水晶でできたチューニングリングへと変わり、その中で《水晶機巧-サルファフナー》が飛び込んでいく。

「シンクロ召喚!現れて、レベル7!《鬼動武者》!」

光と共に背中に刀を差した、三日月状の飾りのある兜を付けた、ステレオタイプの鎧武者型の機械が現れる。

 

鬼動武者 レベル7 攻撃2600

 

「更に、《スターライト・ジャンクション》の効果発動!《エグゼクティブ・テムジン》を兄様のデッキに戻す!」

《スターライト・ジャンクション》のソリッドビジョンが光り、底から発射される青い光を受けた《DDD烈火大王エグゼクティブ・テムジン》が消滅し、自動的にエクストラデッキに戻る。

その光景を見た零児はフッと唇を緩める。

(《エグゼクティブ・テムジン》はフィールドに存在し、私がDDを召喚・特殊召喚を行った時、1ターンに1度だけ、墓地のDDモンスター1体を特殊召喚できる効果がある。さらなる展開を止めるために、ここでシンクロ召喚をしてきたか)

そして、フィールドにいる《鬼動武者》は相手のカード効果でフィールドから離れたとき、墓地の機械族モンスター1体を特殊召喚できる効果がある。

戦闘する場合でも、ダメージステップ終了時まで零児の魔法・罠・モンスター効果の発動を封じる上に、バトルフェイズの間だけ、戦闘を行った相手モンスターの効果まで封じる。

墓地に存在する機械族モンスターは《水晶機巧-シストバーン》のみなので、まだ脅威とまではいかないが、このカード自身が墓地に存在していた場合はその限りではない。

「私はスケール1の《DD魔導賢者コペルニクス》とスケール10の《DD魔導賢者ニュートン》でペンデュラムスケールをセッティング!これで私はレベル2から9までのモンスターを同時に召喚可能。我が魂を揺らす大いなる力よ。この身に宿りて、闇を引き裂く新たな光となれ!ペンデュラム召喚!生誕せよ、《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》!《DDD超視王ゼロ・マクスウェル》!」

 

DDD死偉王ヘル・アーマゲドン レベル8 攻撃3000

DDD超視王ゼロ・マクスウェル レベル8 攻撃2800

 

「いきなり、《ヘル・アーマゲドン》を…!」

「私も手加減するつもりはない。今のお前の力のすべてを受け止め、それを超える力を見せよう。バトルだ!私は《ヘル・アーマゲドン》で《鬼動武者》を攻撃!」

《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》の水晶から発射される複数のビームが《鬼動武者》の装甲を次々と撃ち抜いていき、爆散させた。

「あああああ!!」

 

零羅

ライフ4000→3600

 

「更に《ゼロ・マクスウェル》で《カードガンナー》を攻撃」

《DDD超視王ゼロ・マクスウェル》の頭部から発射される大出力のビームで《カードガンナー》が消滅し、更には零羅をも襲う。

「ぐ、ううううう!!」

 

零羅王

ライフ3600→1200

 

「《カードガンナー》の効果。このカードが破壊されたとき、デッキからカードを1枚ドローする。更に僕は罠カード《クリストロン・インパクト》を発動。除外されている僕のクリストロン1体を特殊召喚する。僕は《シトリィ》を呼び戻す!」

 

水晶機巧-シトリィ レベル2 守備500(チューナー)

 

零羅

手札1→2

 

「そして、相手フィールドに表側表示モンスターが存在する場合、そのモンスターの守備力を0にする!」

「…!?」

《水晶機巧-シトリィ》が手から放つ黄金の波動を受けた2体のだが、失われたのは守備力だけで、力が失われたわけではないためか、一歩も後ろに下がる気配がない。

 

DDD死偉王ヘル・アーマゲドン レベル8 守備1000→0

DDD超視王ゼロ・マクスウェル レベル7 守備2500→0

 

「だが、攻撃力に変化はない。私はこれでターンエンドだ」

 

零羅

手札2

ライフ1200

場 水晶機巧-シトリィ レベル2 攻撃500(チューナー)

  スターライト・ジャンクション(フィールド魔法)

 

零児

手札6→0

ライフ4000

場 DDD死偉王ヘル・アーマゲドン レベル8 攻撃3000

  DDD超視王ゼロ・マクスウェル レベル7 攻撃2800

  地獄門の契約書(永続魔法)

  DD魔導賢者コペルニクス(青) ペンデュラムスケール1

  DD魔導賢者ニュートン(赤) ペンデュラムスケール10

 

「僕のターン、ドロー!!」

 

零羅

手札2→3

 

「カードを1枚伏せ、墓地の《シストバーン》の効果発動!墓地のこのカードを除外して、デッキからクリストロンモンスター1体を手札に加える。僕はデッキから《スモーガー》を手札に加える。そして、《スモーガー》を召喚!」

背中から2本角のような水晶の棘を生やした白銀の虎が零羅の背後から飛び出してくる。

 

水晶機巧-スモーガー レベル3 攻撃1000

 

「更に手札から永続魔法《補給部隊》を発動し、《スモーガー》の効果。自分フィールドの表側表示のカード1枚を破壊することで、デッキからクリストロンチューナー1体を特殊召喚できる。僕は《スモーガー》自身を破壊し、《クオン》を特殊召喚!」

《水晶機巧-スモーガー》の体が砕け散り、その欠片が再結集すると、薄水色の鎧と水晶の小さな騎士の姿へと変貌する。

 

水晶機巧-クオン レベル1 攻撃500(チューナー)

 

「《補給部隊》の効果発動。1ターンに1度、僕のフィールドのモンスターが戦闘・効果で破壊されたとき、デッキからカードを1枚ドローする!」

「いずれのチューナーも、私のターンにシンクロ召喚をするための…!」

「更に僕は手札から魔法カード《精神操作》を発動!相手フィールドのモンスター1体のコントロールをターン終了時まで得る。僕は兄様の《ヘル・アーマゲドン》のコントロールを得る!」

「何!?」

零羅のフィールドに引っ張られるように、《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》が移動していく。

チューナーがフィールドに存在する上での《精神操作》の意味は零児にはすぐに理解できた。

「僕はレベル8の《ヘル・アーマゲドン》にレベル1の《クオン》をチューニング!シンクロ召喚!現れて、レベル9!《灼銀の機竜》!」

下半身が戦車のキャタピラで、上半身がドラゴンとなっているうえに背中にはキャノン砲、両腕にはレールガンなどの火器を贅沢に装着した白銀の兵器が現れる。

現れたと同時に、《灼銀の機竜》は零児を威嚇するかのように咆哮した。

 

灼銀の機竜 レベル9 攻撃2700

 

「《灼銀の機竜》の効果発動!1ターンに1度、手札・墓地・フィールドに表側表示で存在する僕のチューナー1体を除外することで、フィールド上のカードを1枚破壊できる。僕は墓地の《クオン》を除外して、兄様のフィールドの《コペルニクス》を破壊する!」

背中のキャノン砲が火を噴き、撃ち抜かれた《DD魔導賢者コペルニクス》が腹部に大穴を開けて消滅する。

「そして、僕はカードを1枚伏せてターンエンド!」

 

 

零羅

手札3→0

ライフ1200

場 灼銀の機竜 レベル9 攻撃2700

  水晶機巧-シトリィ レベル2 攻撃500(チューナー)

  補給部隊(永続魔法)

  伏せカード2

  スターライト・ジャンクション(フィールド魔法)

 

零児

手札0

ライフ4000

場 DDD超視王ゼロ・マクスウェル レベル7 攻撃2800

  地獄門の契約書(永続魔法)

  DD魔導賢者ニュートン(赤) ペンデュラムスケール10

 

(《ゼロ・マクスウェル》ではなく、《コペルニクス》を除去するか…これで、ペンデュラム召喚ができなくなった、ということか)

シンクロ素材となった《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》はエクストラデッキに休眠状態に入っている。

次にドローするカードがスケール7以下のペンデュラムモンスターなら、セッティングすることで再び生誕させることができる。

「私のターン、ドロー!」

 

零児

手札0→1

 

「スタンバイフェイズ時に《地獄門の契約書》の効果を発動。私は…1000のダメージを受ける!ぐぅ!!」

《地獄門の契約書》から出る黒い霧が零児を取り込み、同時に零児は激痛を覚えてその場で膝をつく。

だが、ここから勝利へ向かうためには必要な痛みであることを理解しているためか、甘んじて受けていた。

 

零児

ライフ4000→3000

 

「メインフェイズに入った瞬間、僕は《シトリィ》の効果を発動!墓地の《カードガンナー》を特殊召喚!」

 

カードガンナー レベル3 攻撃400

 

「そして、レベル3の《カードガンナー》にレベル2の《シトリィ》をチューニング!そして…永続罠《魔封じの芳香》を発動!!」

「何!?」

相手ターンシンクロ召喚と同時に発動してきたカードにさすがの零児の目も大きく開く。

このタイミングで、ペンデュラム召喚を多用するデッキには大きく刺さるカードが登場した。

「このカードが存在する限り、僕たちは魔法カードはセットしなければ発動できず、セットしたプレイヤーから見て自分のターンになるまで、そのカードは発動できない!更にシンクロ召喚!《水晶機巧-アメトリクス》!!」

紫色のアメジストと黄色のシトリンを組み合わせて作られた、ほっそりとした体格で背中に2枚羽根をつけた悪魔のようなモンスターが現れる。

 

水晶機巧-アメトリクス レベル5 攻撃2500

 

「この瞬間、《スターライト・ジャンクション》の効果発動!まずは兄様のフィールドの《地獄門の契約書》をデッキに戻す!更に、《アメトリクス》のシンクロ召喚に成功したとき、相手フィールドの特殊召喚された表側表示モンスターをすべて守備表示にする!」

《水晶機巧-アメトリクス》の羽根から発生する光の奔流を受けた《DDD超視王ゼロ・マクスウェル》が体を沈め、守備表示となる。

そして、零児は指定された《地獄門の契約書》をデッキに戻した。

 

DDD超視王ゼロ・マクスウェル レベル7 攻撃2800→守備0

 

《DDD超視王ゼロ・マクスウェル》自身は表示形式を変更すれば、また攻撃できる。

それ以上に厄介なのは《スターライト・ジャンクション》と《魔封じの芳香》だ。

その2枚が零児の動きを妨害し、今ここでペンデュラム召喚まで封じてくる。

(まさか、あの零羅がここまでやってくれるとはな…)

追い詰められたにもかかわらず、零羅の成長を素直に喜ばずにはいられない。

だが、だからといって素直に負ける理由はない。

「私はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

零羅

手札0

ライフ1200

場 灼銀の機竜 レベル9 攻撃2700

  水晶機巧-アメトリクス レベル5 攻撃2500

  魔封じの芳香(永続罠)

  補給部隊(永続魔法)

  伏せカード1

  スターライト・ジャンクション(フィールド魔法)

 

零児

手札1→0

ライフ3000

場 DDD超視王ゼロ・マクスウェル レベル7 守備0

  伏せカード1

  DD魔導賢者ニュートン(赤) ペンデュラムスケール10

 

「僕のターン、ドロー!!」

 

零羅

手札0→1

 

「バトル!《アメトリクス》で《ゼロ・マクスウェル》を攻撃!!」

《水晶機巧-アメトリクス》が上空へ飛びあがり、再び羽根から光の奔流を放つ。

その光を受けた《DDD超視王ゼロ・マクスウェル》は消滅し、零児のフィールドががら空きになる。

「更に、《灼銀の機竜》でダイレクトアタック!そして、罠カード《シンクロ・ストライク》を発動!ターン終了時まで、シンクロ召喚したモンスター1体の攻撃力をシンクロ素材にしたモンスターの数×500アップさせる!」

 

灼銀の機竜 レベル9 攻撃2700→3700

 

機動した《灼銀の機竜》がキャタピラ側面に装着されているミサイルを全弾発射し、それが零児に襲い掛かる。

(この攻撃が通れば…!」

「罠発動!《DDDの緊急会合》!!私が直接攻撃によってダメージを受けるとき、そのダメージを半分にする!!ぐうう!!」

激しいミサイルの弾幕に耐え、零児はデッキから自動排出されたカードを手にする。

 

零児

ライフ3000→1150

 

「そして…受けたダメージ以下の攻撃力を持つDDモンスターをデッキから特殊召喚する。現れろ!《DD魔導賢者トーマス》!」

真っ白な人面のある『何か』が入った、金色の台のついた試験管がフィールドに現れ、その『何か』の目がギロリと開く。

 

DD魔導賢者トーマス レベル8 攻撃1800

 

「倒せなかった…僕はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

 

零羅

手札1→0

ライフ1200

場 灼銀の機竜 レベル9 攻撃2700

  水晶機巧-アメトリクス レベル5 攻撃2500

  魔封じの芳香(永続罠)

  伏せカード1

  スターライト・ジャンクション(フィールド魔法)

 

零児

手札0

ライフ1150

場 DD魔導賢者トーマス レベル8 攻撃1800

  DD魔導賢者ニュートン(赤) ペンデュラムスケール10

 

ライフは同じになったが、フィールドのアドバンテージを考えると、有利なのは零羅の方で、今の零児にはペンデュラム召喚を行うことができない状態。

零児はデッキトップに指をかける。

「私のターン、ドロー」

 

零児

手札0→1

 

「《トーマス》の効果発動。ペンデュラムゾーンのDDカードを1枚破壊し、デッキからレベル8のDDDモンスター1体を守備表示で特殊召喚する。私は《ニュートン》を破壊し、デッキからもう1体の《ヘル・アーマゲドン》を特殊召喚する」

 

DDD死偉王ヘル・アーマゲドン レベル8 守備2500

 

「更に私は墓地の《DDDの緊急会合》の効果発動!私のフィールドにDDDペンデュラムモンスターが特殊召喚されたとき、私のペンデュラムゾーンにカードがない場合、このカードを墓地から除外することで、エクストラデッキに存在するペンデュラムスケールの異なるDDペンデュラムモンスター2体を手札に加える。私は《ニュートン》と《コペルニクス》を手札に加える!」

「ペンデュラムモンスターを手札に戻した!?けど…《魔封じの芳香》がある以上、このターンにペンデュラム召喚は…」

「私はレベル8の《DD魔導賢者トーマス》と《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》でオーバーレイ!!2つの太陽が昇るとき、新たな世界の地平が開かれる! エクシーズ召喚!現れいでよ!ランク8!《DDD双暁王カリ・ユガ》! 」

2本角の悪魔を模した紫の鎧を身に着けた男が黄土色の玉座に座った状態で現れる。

 

DDD双暁王カリ・ユガ ランク8 攻撃3500

 

「《カリ・ユガ》の効果発動!このカードがエクシーズ召喚に成功したターン、このカード以外のフィールド上のすべてのカードの効果を発動不能にし、効果を無効にする!」

《DDD双暁王カリ・ユガ》が両手を空に掲げると、その手から発生する波紋によって、零羅の魔法・罠ゾーンのカードが灰色に変わり、その力を一時的に失ってしまう。

「更に《カリ・ユガ》の効果。オーバーレイユニットを1つ取り除き、フィールド上の魔法・罠カードをすべて破壊する!!」

それだけでは飽き足らないのか、オーバーレイユニットを右手に宿した《DDD双暁王カリ・ユガ》がそれを振るうと、激しい衝撃波が発生し、無力化した零羅の魔法・罠カードが消滅した。

 

破壊された伏せカード

・シンクロン・リフレクト

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・DD魔導賢者トーマス

 

「これで私はペンデュラム召喚を行える。私はスケール1の《DD魔導賢者コペルニクス》とスケール10の《DD魔導賢者ニュートン》で再びペンデュラムスケールをセッティング!!これで私はレベル2から9までのモンスターを同時に召喚可能。。我が魂を揺らす大いなる力よ。この身に宿りて、闇を引き裂く新たな光となれ!ペンデュラム召喚!生誕せよ、《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》!《DDD超視王ゼロ・マクスウェル》!」

 

DDD死偉王ヘル・アーマゲドン レベル8 攻撃3000

DDD超視王ゼロ・マクスウェル レベル8 攻撃2800

 

「あ、ああ…」

破壊されたはずの2体の王が新たな王と共に再び零羅の前に壁となって立ちはだかる。

もう零羅にはその3体の王を止めるだけの手段はなかった。

「零羅…行くぞ。私は3体のDDDで攻撃する」

3体のDDDが放つ魔力が上空で融合していき、それが小さな太陽へと変化していく。

そして、その太陽はゆっくりと零羅のフィールドに落ちていき、2体のシンクロモンスターと零羅を飲み込んでいった。

 

零羅

ライフ1200→500→0

 

DDDの緊急会合

通常罠カード

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):相手の直接攻撃宣言時に発動できる。その戦闘で発生する自分へのダメージが半分になる。その後、自分が受けた戦闘ダメージ以下の攻撃力を持つ「DD」モンスター1体をデッキから特殊召喚する。

(2):自分フィールドに「DDD」Pモンスターが特殊召喚されたとき、自分Pゾーンにカードがない場合、墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。自分EXデッキに表側表示で存在するPスケールの異なる「DD」Pモンスター2体を手札に加える。この効果はこのカードが墓地へ送られたターン、発動できない。

 

「負けた…やっぱり、兄様、強い…」

追い詰めたのはいいが、最後の最後で逆転されてしまい、その悔しさで零羅はその場に座り込む。

零児はそんな縮こまっている零羅の前で膝を降り、彼の頭を撫でる。

顔を上げると、そこには優しく笑う零児の顔があった。

「強くなったんだな、零羅…。正直に言うと、負けるかもしれない…そう思ってしまったよ」

「兄様」

「強くなりたいという気持ちを大事にするんだ。それがお前に可能性を作り出してくれる。それで、次元戦争を越えた先の未来を…うう!!」

突然苦しみ出した零児はわずかに後ろに下がると、胸に手を当てて痛みに耐える。

「兄様!?」

「なんでも…ない!」

近づこうとする零羅を制止させ、零児は懐にある使い捨ての空気注射器を出し、それを首筋に当てる。

ピストンを押し込み、その中にある液体が首筋から体内へと入っていく。

次第に発作が収まると、零児はゆっくりと呼吸をして、体を落ち着かせる。

「兄様…病気なの?」

「少し、疲れただけだ。心配する必要はない。お前は先に『船』へ行くんだ。私もあとから行く。それから、今渡したメモリと私のことは…誰にも言うな。いいな?」

「う、うん…」

何も言えなくなった零羅は回れ右をして社長室を後にする。

1人になった零児はゆっくりと起き上がり、使ったばかりの空気注射器を見つめる。

(ふふ…『欠片』の誘惑に耐えてはきたが、まさか体に影響が出るとはな…)

健全なる魂は健全なる精神と健全なる肉体に宿る、という古代ローマのユフェナリウスの言葉を思い出す。

これはその精神と肉体は互いに影響しあっているともとれる。

『欠片』によって精神的に追い詰められているのを必死に耐えた結果、そのダメージが自分の体へ向かってしまった。

侑斗から何度も警告されたにも関わらず、使い続けたツケと言えるだろう。

(だが、まだだ…。少なくとも、父を…プロフェッサーを止めるまでは、死ぬわけにはいかない…)

体が元通りに戻るのを感じた零児は社長室を出る。

果たして、ここにもう1度入る時が来るのか、それを知ることもせずに。



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第111話 決戦の地へ

「まったく、戦争しに行くとはいえ、こいつは大げさすぎじゃあねえか?」

出発時間が近づき、翔太は舞網市の港で、改めて決戦の地への乗り物となる船にため息をつく。

自衛隊が保管していた退役イージス艦をレオコーポレーションが購入し、改修したもののようで、武装は完全に取り外されているとはいえ、それでも現役で働いていたイージス艦というだけあって、張り詰めた気にさせるものには変わりない。

レーダーはレオコーポレーションが開発した多機能レーダーが装備されていて、召喚エネルギー反応の探知も可能になっている。

また、単艦での次元転移も可能となっており、転移可能な乗り物としては最大規模の大きさといえる。

「しかし、これほどのものを用意しなければ、アカデミアに対抗できない。ランサーズ、転移の手段、ペンデュラム召喚…アカデミアに対抗する手段はすべて整った」

「ま、解決できていねえ問題は多いがな。特に、俺のな」

翔太の中にいるベクター、遊矢とユート、ユーゴ、ユーリの4人のうり二つの用紙の少年、さらわれた柚子とうり二つの3人の少女たち、BAT-DIEにアークエリアプロジェクト。

解決していない不安定要素が多い中での決戦となる。

だが、エクシーズ次元を解放し、戦力が充実し、アカデミアが浮足立っている今がアカデミアに総攻撃を仕掛けるチャンスだ。

(それに、私の体もどれだけ持つかわからないからな…)

「だがま、さっさとケリをつけることには賛成だ。本部でふんぞり返っているプロフェッサーって野郎を蹴り落としてやろうぜ」

手をひらひらと降り、翔太はイージス艦に乗り込んでいく。

そのあとで遅れて侑斗とウィンダがトルネイダーに乗った状態でやってくる。

「ごめん、遅くなった」

「零児君。あれの準備はできてるよ!これでスタンダード次元の守りは大丈夫!」

「感謝する。ヴァプラ隊も多くが同行してくれるようだな」

「うん。もちろん、大事を取って最低限のメンバーは残す形になるけど。それにしても、ようやく時が来たね…」

「10年…。長かった。本気でそう思う」

父親の暴走が招いたこの戦争を止めるため、本当に長い時間をささげてきた。

母親の日美香と弟の零羅、そしてレオコーポレーションの社員を除くと、侑斗とウィンダが一番長くともに戦った関係になる。

「でも、大丈夫なの?もしかしたら、この戦いで君はお父さんを…」

「覚悟はもうできている。真意を知りたいという気持ちはあるが、それ以上に4つの次元の平和を取り戻したいという気持ちがある。もし、止めることができないとするなら…父を、いや…プロフェッサーをこの手で殺す覚悟もある」

「そっか…。親子って、難しいんだね」

零児と零王。

この2人の親子はどういうわけか、ぶつかり合うことしかできなくなっていた。

侑斗自身は前世では親の顔を知らずに育ち、人間として生まれ変わった時も数年前に両親を事故で亡くしている。

一緒に過ごす時間は少なかったが、2人とも自分を愛してくれていたことは知っている。

そう考えると、そういう親子関係しか知らない自分はある意味幸せだったのだろうと思えてしまう。

本当なら、そのような悲しい戦いは止めなければならないが、これは零児と零王の2人の問題だ。

だから、答えを出すことができるのも、終わらせることができるのも、彼らしかいない。

「だが、ある意味私もあの男と変わりないかもしれん。この戦いに、あなたをはじめ、大勢の人間を巻き込んでしまった…」

次元戦争を終わらせるという大義名分があるだろう。

しかし、零王もまた、すべての次元を一つにして、理想郷を作るという大義名分を掲げている。

そして、そのために人を集め、戦わせている。

そんな自分と憎むべき父親と何が違う?

最近になって、そう思えてしまう時がある。

これも、『欠片』を使いすぎたことで、精神的に弱っているせいなのだろうか。

それを否定するかのように、侑斗は首を横に振る。

「僕は自分が正しいと信じて行動して、結果として君についていっている。それだけだよ。きっと、プロフェッサーという人は誰にも真実を打ち明けることができなかった。そして、デュエル戦士たちは彼の答えに縛られているだけ。君はプロフェッサーと同じじゃないよ。じゃあ、中にいるヴァプラ隊のみんなに声をかけてくるよ」

2人を乗せたトルネイダーがイージス艦に入っていく。

零児は何も言わずに空を見上げる。

(剣崎はああ言ってくれたが、それでも私もまた、この戦いの元凶の一つ。いずれ、その裁きを受けなければならない時が来る。だから、終わらせなければ…私自身が潔く罰を受けるときを迎えるためにも…)

 

「へええ、メチャクチャ広い部屋があるぜ!くぅーーー!!それにこのソファー、気持ちいいぜーーー!」

まぁ、俺様の家のソファーと比べたらまだまだだけどな、と自慢を忘れずに、沢渡はソファーにもたれかかる。

今、沢渡を含めたランサーズは全員この部屋に集まっており、このイージス艦の中では一番大きな空間だ。

ソファーがいくつもある上に、テーブルやカウンター、ステージまであり、とてもイージス艦の中のものとは思えない場所だ。

やろうと思えば、結婚式もできるかもしれない。

「ああ、なんだかムズムズする場所だな。居心地が悪い」

漁師を目指す漁介にとって、この場所は慣れた空間とは言えず、船であるにもかかわらず存在するこの異質な空間に息苦しさを感じていた。

「とても、これから戦いに行く感じじゃないな」

「ええ。軍艦って、こんな部屋もあって当たり前なのかしら…」

現代の戦艦にあまり詳しくない柚子でも、この部屋があまりにも場違いだということはわかる。

「はいはい、みんな注目。まずはしっかりご飯を食べないと」

「その声、もしかして!!」

ミルフィーユ風とんかつやアクアピッツァのにおいと聞き覚えのある柔和な少年の声に遊矢は反応する。

厨房があるであろうとなりの部屋から料理を乗せたカートを引いて入ってきたのは、かつてジュニアユース選手権出場のために戦い、一度はオベリスクフォースに敗れた未知夫だった。

「未知夫!?どうして…」

「どうしてって…。僕も同行するんだよ。ヴァプラ隊兼料理担当として、ほら。おいしいごはんを食べないと、ちゃんと戦えないだろう?両親と塾長にも許しはもらってる」

「でも…」

「それに、やられっぱなしで終わるのも、悔しいからね」

「ミッチーのいう通りや!ワイも、カードに変えられたこと、倍返ししてやりたいんや!」

続けて、厨房から出てきたのはクジラを模した帽子をかぶった、カバのような顔をした、権現坂ほどではないものの、それでも大柄な体をした少年だ。

見るからに釣りが趣味の男に見え、ほっそりとしているが、日焼けしているうえに引き締まった体をしている漁介とは対照的だ。

「おぬしは大漁旗鉄平。まさか、おぬしまで参加するとは…」

彼もまた、翔太に助けられたとはいえ、カードにされたことのある身だ。

本当なら、その時の恐怖を覚えているのなら、戦うのをためらってしまうはずだ。

「ほらほら、みんな。食べて食べて。もうお昼だしね!」

「じゃ、じゃあ…あたしはこれを!」

「私はこれ!翔太君も、食べようよ!」

「おいおい!この沢渡シンゴ様を差し置いて、勝手に料理を選んでんじゃねー!!」

著名な少年料理人である茂古田未知夫の料理ということで、部屋にいる多くのメンバーがこぞって料理をとっていき、舌鼓を打つ。

「料理もいいけど、僕はこれがいいかな」

素良は料理よりももってきているお菓子を口に運ぶのに夢中な様子だ。

遊矢達がエクシーズ次元に行っている間、素良は捕虜という扱いにはなったが、ヴァプラ隊の下で訓練を受けて、今回の戦闘に参加することになった。

元アカデミアのデュエル戦士であること、そして日影やデュエリストたちをカード化してきた人物ということで、懸念の声も上がったものの、侑斗の説得やセレナという前例があることから受け入れられた。

「大丈夫、まだまだお変わりは用意しているから。順番だよ!鉄平君、お代わりを取りに行こうか」

「はぁ…なんでワイが肉体労働せなあかんのや」

「皆、よく集まってくれた」

急にステージから零児の声が響き、部屋にいるメンバー全員の手が止まり、視線がステージの上に立つ彼に目を向ける。

「赤馬零児…」

「皆、よく集まってくれた。これから私たちが向かうのは融合次元、アカデミア。そこで我々はアカデミアと決着をつける」

「いよいよか…瑠璃、カイト…」

零児の言葉で、唐揚げを口にしていた黒咲がようやく待ち望んでいた決戦の時を感じ、同時にこれまでの戦いのことを思い出す。

自分ひとりだけになったとしても、アカデミアと戦い、瑠璃を救い出す。

そのつもりで戦ってきた。

だが、戦いの中で侑斗に、次元を超えて零児や遊矢といった多くの人と出会った。

仮に彼らと出会うことがなかったら、きっと一人で戦い続けることになり、何一つ成し遂げることなく敗れていたかもしれない。

憎しみにとらわれてしまったカイトのように。

(今なら言える。この戦いは俺だけのものではない。この次元に生きているすべての人のための戦い…負けるわけにはいかない戦いだということを)

「スタンダード次元、シンクロ次元、エクシーズ次元、我々はいくつもの次元でアカデミアと闘ってきた。そして、その中で犠牲となっていった人々の姿、倒れた仲間たち、そして我々自らの手で倒していった敵がいる。次元戦争を終わらせるためとはいえ、我々もまた、力によって倒してきた。あまりにも矛盾したやり方といえるだろう。しかし、たとえ矛盾していたとしても、我々は勝たなければならない。このような過ちを未来へつなげないためにも、因果をすべてこの一戦で断ち切る。だからこそ、あと少し…諸君の力を貸してほしい。そして、全員で生きて…笑って、もう1度スタンダード次元へ戻ろうではないか!」

「生きて、笑って…か」

零児の演説を聞く中、素良は相変わらず飴をなめ続けていた。

アカデミアでの指導ではそんなことを言われたことはない。

あるのはただ、プロフェッサーからの任務を完遂することだけ。

そのための犠牲は敵も味方も、問題としていなかった。

その狂気に一度飲まれてしまったからわかる。

他者から与えられる、絶対的な答えがどれほど心地よいものなのか。

そして、それによって自覚なしに奴隷となってしまう恐ろしさを。

ステージの後ろのカーテンが開き、そこに隠されているスクリーンに海図が表示される。

「これはエクシーズ次元のアカデミア本部から接収した海図だ。シミュレーション結果としては、この船は転移後、予想としてはこの座標に出る」

そこは太平洋のような巨大な海のほぼ中央で、周囲に陸地がないことから地上からの監視を心配する必要のない場所だ。

そこからアカデミアへの航路が点と線で表示されていく。

「そして、そこからアカデミア本部へ直接向かうことになる。船旅は4日かかる」

港を経由することのない上に回り道のルートとなっていて、長い航海は船旅をしたことのない面々にとっては負担になる。

しかし、アカデミアにギリギリまで警戒されることなく進むにはこのルートしかない。

説明が続く中で、素良が無断でステージの上へあがっていく。

「…どうした?紫雲院素良」

「この海図で、一つ足りないものがあるんだ。アカデミアへ向かう前に、そこへ向かう必要がある」

「はぁ?お前がなんでそんなことを知ってるんだ?嘘じゃないだろうな?」

元々はアカデミアの人間だということで、素良に半信半疑なところのある沢渡が口を挟む。

口を出さない遊矢達とは違い、沢渡は素良とはあまり面識をもっていない。

だからこそ、むやみに信じることができず、警戒心を解くことができない。

「沢渡の言いたいこともわかる。でも、ひとまず僕の話を最後まで聞いてほしい。そのうえで、信じるか信じないかは決めて」

「よほどの自信だな…?その情報が俺たちにとって勝てるだけのものなのか!?俺たちは勝つためにやってるんだ。下手な情報だったら承知しねーぞ!」

沢渡以外は言わないが、これは素良とあまりかかわりのないメンバーでは共通した認識だ。

素良も簡単に信じてもらえるとは思っていない。

だからこそ、信じてもらえるように努力するしかない。

それに、素良自身にも残された時間が少ないから。

「ファウスト島…。かつて、リアルソリッドビジョンシステムや次元転移装置といって技術の開発が行われた島。そこで開発された技術が今でも、アカデミアで使われているんだ。そして…何よりもそこにはアカデミアの根底にかかわる秘密が眠っている」

「秘密…?」

「そう。それがどんなものなのかは僕も想像できない。けれど、アカデミアに勝てるだけの価値はある。だからこそ、ファウスト島についての情報はすべて抹殺されていたんだ」

「じゃあ、そんなのなんでお前が知ってるんだよ?」

「僕も、最近までは知らなかった。けれど…僕がシンクロ次元に行くことができたのは…そこに幽閉されているたった一人の科学者のおかげなんだ。その人の名前はドクターN。記録上では5年前に死んだとされている、かつてプロフェッサーと一緒に今のアカデミアを作った人」

「何…!?」

これまで零児が集めた情報の中には、今のアカデミアを作ったのは零王一人のはずだった。

それ以外の別の人物の存在については何一つつかんでいない。

そんな人物がどうして、死んだものとして幽閉され続けているのか、そして素良の実質的に離反の手助けをしたのか。

その意図を気にせずにはいられない。

「ファウスト島の場所はアカデミアの北にある。近いっていうけれど、それでも100キロ近く離れていて、雪と氷で隠されている。彼に会うことができれば、秘密を教えてくれて、手を貸してくれるはずだ」

これは素良が彼と取引したためだ。

素良は任務失敗の責任によって、事実上の処刑ともいえる任務を言い渡され、それが可能となるように手術まで受けている。

しかし、どのような手段を使ったのか、ドクターNが素良を救い出し、ファウスト島にかくまってくれた。

そして、素良の望みにこたえて遊矢達の居場所を突き止めたうえで、彼をシンクロ次元へと送ってくれた。

それをする条件として提示されたのはただ一つ、アカデミアに抵抗するスタンダード次元のデュエリストをファウスト島へ連れてくることだった。

「手を貸してくれるって…そんなのどう信じたら…」

そもそも、そんな島があるなんて情報を立証することができない以上、素良の言っていることが嘘かもしれない。

そんなもののために遠回りな上にとてつもなく寒い場所へ行くというのは考えられない。

「しかし…仮にその秘密を手に入れることができるとしたなら、我々にとって大きな武器となる。武器は一つでも多いほうがいい」

不安定要素を抱えているうえに、必ず勝たなければならない勝負。

虎穴に入らずんば虎子を得ず、という言葉もあるが、その虎穴へ飛び込むには入念な準備も必要だ。

アカデミアという虎穴へ飛び込むため、手札は1枚でも多いほうがいい。

「俺は素良を信じる」

「遊矢、てめえ…」

「確かに、デュエル戦士としてやってきたことが消えることはない。けれど、あいつは本気でみんなのために戦って、情報をくれている。だから…俺は素良を信じるよ」

「私も、素良を信じるわ。同じ遊勝塾の生徒として。あなたの弟子として!」

「遊矢、柚子…」

素良にとっては遊勝塾生徒としての時間は短く、仮初の時間とさえ思っていたこともある。

だが、遊矢のエンタメデュエルに触れ、アカデミアでは感じることのできなかった驚きや楽しみといった当たり前を感じたことが、素良の本来の心を取り戻していた。

「ちっ…なら、そのよしみで俺も賛成ってことにするか」

「私も賛成!それに、ファウスト島ってなんだか気になるもん!」

「翔太、伊織…」

「ああ、甘い甘い。そんな理由で信用するなんてよぉ」

「ふっ…決まりだな。第一目的地はファウスト島、最終目的地がアカデミア本部だ」

 

場所と次元が変わり、シンクロ次元のかつてフレンドシップカップが開催されたスタジアムをホイール・オブ・フォーチュンが疾走する。

コースは最低限整備されているが、客席の修理は現在も行われている。

あの戦いの後、このスタジアムではデュエルが行われておらず、見に来る客もいない。

だからこそ、工事の音は気になるが、誰の視線も気にすることなくDホイールを走らせることができる。

ある程度走行を終えたホイール・オブ・フォーチュンはピットに止まり、そこにはヒイロの姿があった。

「驚いたな。もうDホイールに乗れるのか」

デュエルでのダメージ、そしてセルゲイの一撃を受け、大けがを負ったはずの彼の今の状態はヒイロには予想外なところがあった。

良くてようやく自分の足で走れるくらい、悪くて今も寝たきり。

その予想を覆してくれた彼に、ヒイロは仲間の、チーム5D'sを思い出す。

Dホイールから降りたジャックはジロリとヒイロをにらむ。

「ヒイロ・リオニス…。またこの次元に戻ってくるとはな」

「お前の迎えだ。場合によっては、おいていくつもりでもあったがな」

「ふん…。もう体は十分治した。それに、キングである俺がいつまでも寝ているわけにはいかんからな」

ジャックの頭になかにあるのはシンクロ次元をめちゃくちゃにした融合次元への怒り、そしてナヴィとともに魂を呼び覚ましてくれた遊矢だ。

アカデミアをこのまま放っておくと、またシンクロ次元で争いが起こるのは必定。

それに、遊矢に作った借りもある。

「そうか。なら、これをもっておけ」

「こいつは…?」

「遊矢とデュエルをしたお前なら、わかるだろう?」

ヒイロから受け取った数枚のカードを見たジャックは静かにそれをデッキケースに入れる。

本当ならここからテストプレイと行くだろうが、もうその時間もないのだろう。

「連れていけ、ヒイロ・リオニス。戦うべき場所へ」

「いいだろう。だが…覚悟しておけ。2度とシンクロ次元に戻れないかもしれないということを」



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第112話 雪原の決闘

「《ディメンジョン・ムーバー》システム問題なし、座標入力」

「座標入力完了、次元レーダー展開、周囲及び潜入地点周辺不審な影無し」

艦橋のモニターには素良が提供した座標情報で出た地点とその周辺の光景が映し出される。

レオコーポレーションが開発した次元レーダーのおかげで、転移と同時に敵に遭遇するアクシデントは大幅に減るものと予想されている。

その地点から海路でファウスト島へ向かうことになる。

「バラスト水、異常なし。燃料補給完了」

「出力安定、システムオールグリーン。いつでも発進できますよ!」

「これで、ここにはほとんど戦力は残るまい」

艦橋にいる零児は今自分たちが背水の陣を敷いていることをもう1度心にとどめる。

アカデミア攻撃のため、このイージス艦にはランサーズだけでなく、ヴァプラ隊やエクシーズ次元、シンクロ次元から志願したデュエリストを可能な限り乗せている。

防衛のために乗り切れなかった人々もいるが、それはわずかで、彼らが3つの次元の防衛を担うことになる。

保険はかけているとはいえ、それでも仮に自分たちが敗れてしまったら最後。

アカデミアの攻撃によって3つの次元は落ち、アークエリアプロジェクトが完成することになる。

その後に待っているのはアカデミアにとっての理想郷であり、それ以外の次元の人々にとっては地獄と言える世界。

そのような世界を許すつもりはなかった。

「次元跳躍船『クレイトス』、発進」

クレイトスがアンカーを収容し、舞網市の港から離れていく。

沖に出るとともに徐々に浮上し始めるとともに船体が緑色の光に包まれていく。

「…!!」

「翔太君、どうしたの?」

「いや…痣がうずいただけだ」

次元転移が始まるとともに、翔太の痣も反応し、バチバチと光を放つ。

やがて、クレイトスは光と共に姿を消していった。

 

雪と氷に包まれた海は視界を真っ白に覆い隠していき、雪明りが時間間隔を狂わせる。

アカデミアより北へ100キロ離れた海は北極や南極に匹敵する寒さと氷に包まれた海で、少なくとも融合次元の人々はその海へ行こうとはしなかった。

そこには資源がなく、過酷なその海に入り、帰ってきても釣り合うほどの旨みも存在しない。

それ故に今では船が出入りすることもない、静寂と氷雪だけが取り柄の海となっていた。

だが、そんな海を大型のコンテナ船が氷を突き破りながら進んでいく。

氷を砕き、ぶつかるとともに揺れが起こり、船室のベッドで横たわる遊勝もその揺れを感じていた。

「やはり、ここは本当にひどい海だな…はあ、はあ…」

「先生。大丈夫ですか?」

遊勝のことを心配した明日香がノックをした後で入ってくる。

彼が重たくなった体に鞭打ち、布団の中から左腕を出すと、彼女はその腕に持っていた注射器を押し付け、その中にあるナノマシンを遊勝の体内に流し込む。

注射を受けながら、遊勝は部屋の壁にかけられている時計を見る。

前に注射をしたのが昼の13時。

そして、今回注射をしたのが夕方の17時半。

3年前は1週間に1回で済んだこの注射も、今では注射する時間間隔が狭まっている。

「すっかり、私の体はこの薬が効かなくなり始めたみたいだな…」

注射のおかげで体が楽になっては来たが、それでも起き上がるのはまだ辛い状態のままだ。

残された時間の短さを感じつつ、遊勝は昨日見た夢のことを思い出す。

幼い遊矢にデュエルを、笑顔の大切さを教えた時のことだ。

遊勝の記憶の中の彼は3年前で止まっている。

零王を止めたら帰るつもりでいたが、今のこの体では帰れるかどうかすらわからない状態だ。

「先生…このままではあなたの体は…もう…」

「分かっているさ、明日香。もう私に未来はないということくらいは…。だが、せめてこの戦争を終わらせなければ、死んでも死にきれない」

「プロフェッサーがあなたの親友だから…ですか?」

「それもある。だが…それ以上に…」

「おっさん、明日香さん、もうすぐだぜ!ええっと…ああ、そうだ!ファウスト島が!!」

ノックもせずに対寒服姿で入って来たユーゴがうっかり忘れかけた目的地の名前を思い出しながら2人に伝える。

ユーゴのDホイールはあくまでライディングデュエル用な上に自作であることから、寒冷地での運用など想定されているはずがなく、今コンテナ船の中にはそれを整備できるのはユーゴのみなうえに、寒冷地仕様に改良する技術も資材もない。

そのため、ユーゴの左腕にはDホイールに取り付けてあったデュエルディスクが装着されている。

「そうか…。なら、早く出発の準備をしないとな…」

「おっさんは寝てていいぜ?俺と明日香さんだけで行っても…」

「いや…私が行かなければならん。やらなければ…」

ゆっくりと体を起こし、ベッドのそばに置いてある杖を手にして中から抜け出していく。

そこから車いすのところまで歩いていき、それに腰掛けると備え付けてあるコントローラーでそれを動かす。

「私は…彼を止めることができなかったから、今も戦争が続いている…。私には、止める義務がある」

「義務…なんだ、それ?よくわかんねえけど…」

難しいことは分からないと自覚しているユーゴだが、遊勝が動かずにはいられないという気持ちは分かる。

無理やりおいていって、一人で残したとしても勝手についてくるなら、連れて行った方がいい。

そう考えたユーゴは彼が操作する車いすの後ろに向かい、それを押して進んでいった。

 

「うおおおおおお!!!寒いーーーーー!!!!」

コンテナ船を出て、さっそく出迎えた激しい雪と突き刺すような冷たい風にユーゴは絶叫すると同時に地団太する。

コモンズにいたとはいえ、比較的温暖な場所で暮らしていたユーゴにとってはここは防寒着を着用したとしても、あまりにも寒すぎた。

「静かにして。もしかしたら、アカデミアの連中が私たちに気付いている可能性もあるわ」

「その通りだ。一回中に入れば、寒さをしのげる。すまないが、それまで我慢してくれ」

「んなことは、分かってるけどよぉー…」

段々鼻水が出て来て、我ながら情けない姿を見せているなと思いながら、3人でファウスト島に降り立つ。

冷たい雪にマッチする、冷たくて硬いコンクリートの大地。

本来、このような場所に人工島を作るメリットはないにも等しいが、一つだけアドバンテージがあるとしたなら、隠密性があることだ。

遊勝から聞いた話だが、この島の存在はアカデミアでもほとんど知られておらず、その協力者がいたからこそ、場所と名前を知っている。

そして、そこにアカデミアの秘密が隠されていることも。

遊勝は車いすを操作し、デュエルディスクを展開して、液晶部分に地図を表示する。

「彼からの情報が正しければ、ここから北西へ進んでいくと施設への非常用の出入り口がある。そこからなら、唯一施設の中に入ることができるはずだ」

「なら、ありがてえよ。さっさと行こうぜ」

一刻も早くこの極寒地獄から抜け出したいと、ユーゴは足早に車いすを押しながら進み、遊勝の指示に従いながら進んでいく。

最初は真っ白な視界で、代わり映えなんて何もなかったが、次第に鉛色の巨大なシルエットが見えてくる。

かさついた無機質な足音と風の音だけが聞こえ、近づくにつれてそのシルエットの正体が見えてくる。

真っ黒で四角形のキューブが組み合わさったような巨大な施設が露となり、トップスの高層ビルくらいしか巨大な建物を見たことのないユーゴはその今まで見たことのない施設に息をのむ。

「ここだ。ここから西へ壁伝いに進むんだ。そうすれば…」

「お待ちしておりました。榊遊勝さん。お元気…というわけではありませんでしょうが」

若い男性の穏やかな声とキリキリと車輪の動く音がかすかに聞こえ、閉鎖されているはずの正面の戦車が通れるほどの大きな扉が開く。

そこから出てきたのはエリクで、既にデュエルディスクを展開した状態で3人に近づいていく。

「あなたは…エリク」

「知ってるのか?おっさん」

「ああ。彼が協力者との仲介人だ。私にナノマシンを定期的に持ってきてくれている。だが、なぜここへ…?」

「立場上、私はアカデミアの特務部隊であるジェルマンの一員です。密命として、ここでN教授の監視をしています」

まるでそれは映画監督から言われた役目を遂行しているだけだと言わんばかりに、密命についてもはっきりと答えている。

立場上はアカデミアの一員といえる彼と親し気に会話する遊勝にユーゴは首をかしげる。

「なぁ、明日香さん。このおっさん、味方だよな?怪しい雰囲気がすごいぜ??」

「信頼できる人よ。あのひとはN教授に大きな恩があると言っているわ」

明日香も最初に会った時はその怪しい雰囲気と逃げたばかりで気持ちに余裕がなかったことも手伝って、敵だと誤認してデュエルをしてしまったことがある。

右腕しか自由に使える手足がなく、車いすを操縦する彼であるにもかかわらず、デュエルの技量はとてつもなく、その時は一方的に負けてしまったという苦い思い出がある。

後で誤解は解けて、味方であることは分かっているが、それでもその時の敗北の記憶が強く焼き付いており、明日香にとっては少し苦手な人物といえる。

「そちらの方は…?」

遊勝とある程度話をしたエリクの視線がユーゴに向けられる。

その顔を見たと同時にエリクの脳裏にユーリの姿が浮かぶ。

だが、言動や声がまるで違うこともあり、同一人物ではないと考えた彼は一瞬でも抱いてしまった警戒心を解く。

「紹介しよう。彼はユーゴ。シンクロ次元から来た。彼の知人であるリンという少女が捕まっている。おそらくは…」

「なるほど。少なくとも敵でないということだけは分かりました。しかし…」

急に開きっぱなしになっていたはずの扉が閉じてしまい、勝手にユーゴのデュエルディスクが展開する。

「お、おいおいおい!どうなってんだよ!?俺はなにもしてねーよ??味方だろぉ??」

「ここから先へ向かい、真実を知ったら、もう引き返すことはできない。あなたに進む覚悟があるのか、確かめさせてもらいます」

「はぁ…?だからなんで俺が試されなきゃならねーんだよ?それに、俺には時間がねえんだぞ!!」

明日香の話を聞き、味方だと信じたものの、試すなどと自分を下に見るような言動が気に食わない。

それに、ファウスト島へ行くことがリンを助ける近道になると納得して遊勝達に同行している。

今はもうこの1戦すら時間が惜しい。

「私をデュエルで倒さねければ、この施設の扉は一切開きません。いわば、私は宝の番人といったところでしょう。宝がほしければ、私を倒して力づくで奪ってみることです」

「くそ…上等だぜ、てめえ!!」

もう何が何だかわからないが、倒さなければ前へ進めないことだけはわかったユーゴは激高しつつ、デュエルディスクを展開する。

(エリク…一体どうしたというのだ?なぜ、こんな形で彼とデュエルを…?)

「「デュエル!!」」

 

エリク

手札5

ライフ4000

 

ユーゴ

手札5

ライフ4000

 

「私の先攻。私は手札から《伝説の黒石》を召喚」

 

伝説の黒石 レベル1 攻撃0

 

「このカードをリリースすることで、デッキからレベル7以下のレッドアイズ1体を特殊召喚できます。私は《伝説の黒石》を墓地へ送り、《真紅眼の亜黒竜》を特殊召喚」

《真紅目の黒竜》と比較すると、赤身が増した黒い鱗となった竜が彷徨し、周囲の雪を吹き飛ばしていく。

 

真紅眼の亜黒竜 レベル7 攻撃2400

 

「さらに私は手札から魔法カード《レッドアイズ・インサイト》を発動。手札・デッキからレッドアイズ1体を墓地へ送り、デッキからレッドアイズ魔法・罠カード1枚を手札に加える。私はデッキから《真紅眼の黒竜》を墓地へ送り、デッキから《真紅眼融合》を手札に加える」

「《融合》…!ってことは、ここで…!」

「安心してください。このカードを発動したターンはこのカード以外の方法で私はモンスターを召喚・特殊召喚できない。もうすでにモンスターを召還しているため、このターンはこのカードを使うことはできません。そして、私は永続魔法《巨神竜の遺跡》を発動」

発動と同時にエリクとその背後にある扉を阻むように竜の化石がおかれた台座が出現する。

「そして、私はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

エリク

手札5→2(うち1枚《真紅眼融合》)

ライフ4000

場 真紅眼の亜黒竜 レベル7 攻撃2400

  巨神竜の遺跡(永続魔法)

  伏せカード1

 

ユーゴ

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「味方の癖に、俺の邪魔をしやがって!さっさと道を開けやがれ!!俺のターン、ドロー!!」

 

ユーゴ

手札5→6

 

「俺は手札から《SRベイゴマックス》を特殊召喚!こいつは俺のフィールドにモンスターが存在しない場合、手札から特殊召喚できる!」

 

SRベイゴマックス レベル3 攻撃1200

 

「そして、《ベイゴマックス》の効果!こいつの召喚・特殊召喚に成功したとき、デッキからスピードロイド1体を手札に加えることができる。俺はデッキから《SR赤目のダイス》を手札に加える。さらに俺は手札から《赤目のダイス》を召喚!」

 

SR赤目のダイス レベル1 攻撃100(チューナー)

 

「チューナーモンスター…。これで、あなたはレベル4のシンクロモンスターをシンクロ召喚できますね」

「そんなモンスターを召喚するつもりはねー!《赤目のダイス》は召喚・特殊召喚に成功したとき、ほかのスピードロイド1体のレベルを1から6までの好きな数値に変更できるんだぜ!俺は《ベイゴマックス》のレベルを6に変更!」

 

SRベイゴマックス レベル3→6 攻撃1200

 

「レベル6の《ベイゴマックス》にレベル1の《赤目のダイス》をチューニング!その美しくも雄々しき翼翻し、光の速さで敵を討て!シンクロ召喚!現れろ、レベル7!《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》!」

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

「ユーゴ。注意してください。彼はかなりの手練れ。簡単に挑発に乗ると…」

「るせー!俺は先へ行かなきゃならねーんだよ!バトルだ!《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》で《真紅眼の亜黒竜》を攻撃!旋風のヘルダイブスラッシャー!!」

相棒の忠告を無視し、ユーゴの攻撃命令により、《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》が回転しながら《真紅眼の亜黒竜》に向けて突撃する。

胴体に大穴が開いた黒竜はガラスのように砕け散る。

「ふっ…《真紅眼の亜黒竜》の効果発動。このカードが戦闘または相手のカード効果によって破壊されたとき、私の墓地に存在するレベル7以下のレッドアイズ1体を特殊召喚できます。その効果で特殊召喚されたモンスターが《真紅眼の黒竜》の場合、その元々の攻撃力は倍になる」

「なに!?」

「よみがえりなさい、《真紅眼の黒竜》」

ガラスのように砕けた肉体が再び集結し、《真紅眼の黒竜》の姿となって再生する。

 

真紅眼の黒竜 レベル7 攻撃2400→4800

 

エリク

ライフ4000→3900

 

「何やってんだ、ユーゴ!!忠告を無視して攻撃なんかしやがって!!私の効果は墓地のモンスターには届かねーことはわかってんだろーが!!」

「るっせー!そんな効果があるなんて知らなかったんだよ!!それなら、墓地のモンスターも対象にできるようになれ!!」

「ふざけんな!!それは私が《クリスタルウィング》になったからできることだ!!無茶な注文すんじゃねー!バカユーゴ!!」

「バカっつーな!バカって!!」

「な…なに、これ??」

ユーゴとクリアウィングがデュエル中であるにもかかわらず大喧嘩を繰り広げるが、当然明日香たちにはクリアウィングの声など聞こえるわけがない。

ただ、ユーゴが一方的にリアルソリッドビジョンの《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》に怒声を浴びせているだけにしか見えない。

「ユーゴさん、そんな痛いことをしていても大丈夫ですか?リンさんを一刻も早く助けたいのではないのですか?」

「痛いっつーな!痛いって!てめーがそもそもこんなデュエルをしなきゃ…ああ、くそぉ!!俺はカードを2枚伏せて、ターンエンドだぁ!!」

 

エリク

手札2(うち1枚《真紅眼融合》)

ライフ3900

場 真紅眼の黒竜 レベル7 攻撃4800

  巨神竜の遺跡(永続魔法)

  伏せカード1

 

ユーゴ

手札6→2

ライフ4000

場 クリアウィング・シンクロ・ドラゴン レベル7 攻撃2500

  伏せカード2

 

先制ダメージを与えることには成功したが、その代償としてもともとの攻撃力が4800まで上昇した《真紅眼の黒竜》の召喚を許す結果となってしまった。

この攻撃力の前では、たとえ《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》でも粉砕されてしまう。

「私のターン、ドロー」

 

エリク

手札2→3

 

「私は手札から魔法カード《黒炎弾》を発動。このカードを発動したターン、私の《真紅眼の黒竜》は攻撃できない。しかし、私のフィールドの《真紅眼の黒竜》1体のもともとの攻撃力分のダメージを与える」

「《真紅眼の黒竜》の元々の攻撃力は2400…じゃない!!《真紅眼の亜黒竜》の効果でもともとの攻撃力そのものが…」

「だから、ユーゴが受けるダメージは2400ではなく…4800…!」

初期ライフを一撃で消し飛ばす真っ黒な炎が《真紅眼の黒竜》の口に圧縮されていく。

まだ発射されたというわけでもないにもかかわらず、ビリビリとプレッシャーがユーゴの肌に伝わる。

この攻撃を受けた瞬間、1ショットキルでユーゴの敗北が決定する。

「いけ、《真紅眼》」

《真紅眼の黒竜》の口から無情な炎がはなたれ、それがまっすぐにユーゴに迫る。

「くっそお!!俺は罠カード《シンクロ・バリアー》を発動!俺のフィールドのシンクロモンスター1体をリリースすることで、次の俺のターンが終わるまで、俺が受けるすべてのダメージを0にする!!」

《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》がバリアへと変化し、ユーゴを敗北へ追い込もうとした炎を受け止める。

「ぐ…あぶねえ…!!」

「私はこれで、ターンエンド」

 

エリク

手札3→2(うち1枚《真紅眼融合》)

ライフ3900

場 真紅眼の黒竜 レベル7 攻撃4800

  巨神竜の遺跡(永続魔法)

  伏せカード1

 

ユーゴ

手札2

ライフ4000

場 伏せカード1

 

「なんとかこのターンの敗北は防いで、ユーゴのターンまで彼はダメージを受けない。けど…」

エリクのフィールドには攻撃力が4800となった《真紅眼の黒竜》と効果のわからない《巨神竜の遺跡》が存在する。

それに対して、ユーゴのフィールドは伏せカード1枚のみで、手札も残り2枚。

明らかにユーゴの不利が明確だ。

「どうしましたか?あなたの実力はこの程度なのですか?」

「くそ…!この俺がこの程度で終われるかよ!俺のターン、ドロー!!」

 

ユーゴ

手札2→3

 

「俺は罠カード《ロスト・スター・ディセント》を発動!俺の墓地のシンクロモンスター1体を効果を無効にし、守備力を0にして、守備表示で特殊召喚する。俺は墓地の《クリアウィング》を特殊召喚!」

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン レベル7→6 守備2000→0

 

「そして、手札から《SRドミノバタフライ》を召喚!」

 

SRドミノバタフライ レベル2 攻撃100(チューナー)

 

「チューナーモンスター…」

「いくぜ!俺はレベル6になった《クリアウィング》にレベル2の《ドミノバタフライ》をチューニング!神聖なる光蓄えし翼煌めかせ、その輝きで敵を討て!シンクロ召喚!いでよ!レベル8!《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》!」

 

クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン レベル8 攻撃3000

 

「せっかくシンクロ召喚に成功したようですが…攻撃力3000では私の《真紅眼》を倒すことなどできませんよ」

「そんなの関係ねえ!《クリスタルウィング》はレベル5以上の相手モンスターと戦闘を行うとき、ダメージ計算時のみ、自分の攻撃力を相手モンスターの攻撃力分アップする!」

レベル5以上という条件さえクリアできれば、《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》はどんなに攻撃力の高いモンスターであろうと上回ることができる。

これなら、エリク自慢の《真紅眼の黒竜》を倒すことができる。

「それは…どうでしょうか?残念ですが、このターンにそれはできないですね」

「はぁ!?何を言って…!?」

鎮座している竜の化石の瞳がきらりと光ると同時に、《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》の体が紫色の光に包まれる。

力が抜けているのか、その場で地に伏した格好となってしまった。

「お、おい!!どうしちまったんだよ!?おい!!」

「《巨神竜の遺跡》の効果です。私のフィールドにレベル7か8のドラゴン族モンスターが存在し、墓地以外からモンスターが特殊召喚された場合、そのモンスターの効果はこのターン、無効となる。よって、今の《クリスタルウィング》はこのターンのみですが、効果を失っています」

「ぐっ…!!けどよぉ、《巨神竜の遺跡》の効果はこのターンだけだ!次のターンで倒してやる!俺はカードを枚伏せて、ターンエンド!!」

 

エリク

手札2(うち1枚《真紅眼融合》)

ライフ3900

場 真紅眼の黒竜 レベル7 攻撃4800

  巨神竜の遺跡(永続魔法)

  伏せカード1

 

ユーゴ

手札3→1

ライフ4000

場 クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン レベル8 攻撃3000

  伏せカード1

 

「私のターン、ドロー…」

 

エリク

手札2→3

 

「《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》…。1ターンに1度、私のモンスター効果を封じ、破壊し、破壊したモンスターの元々の攻撃力をターン終了時まで奪う効果を持つドラゴン…」

「《クリスタルウィング》の効果を知ってるのか!?」

「当たり前です。私はジェルマン。アカデミアに所属するデュエリストのデュエルデータは閲覧できますから」

シンクロ次元のギャングとして潜入していたこともあり、《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》の効果はよく知っている。

そして、その弱点も。

「私は手札から《真紅眼融合》を発動。手札・デッキ・フィールドのモンスターを素材に真紅眼融合モンスター1体をカード名の《真紅眼の黒竜》として扱った上で融合召喚できる。私はデッキの《真紅眼の黒魔術師》とフィールドの《真紅眼の黒竜》を素材に融合!赤き瞳を持つ黒魔術師よ、赤き瞳の竜よ、今こそ1つとなり、新たな力へと姿を見せよ。融合召喚!現れろ、竜の力を宿す黒き魔術師、《超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ》」

赤い瞳と赤黒いローブを身にまとう《ブラック・マジシャン》に似た容姿の魔術師と《真紅眼の黒竜》が融合し、その姿を赤い宝石をいたるところにつけた、黒竜をイメージさせるローブで身を包み、右手にはのこぎりのような刃の剣を握った魔術師が姿を現す。

 

超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ レベル8 攻撃3000

 

(攻撃力4800のモンスターを捨ててまで融合召喚する…?それだけの価値があのモンスターに…?)

レベル5以上であることには変わりないにもかかわらず、しかも魔法使い族であることから《巨神竜の遺跡》の効果まで捨てる形になっている。

そうしてまで融合召喚したそのモンスターにクリアウィングのみならず、ユーゴ自身も警戒していた。

「《ドラグーン・オブ・レッドアイズ》…。絆を持つ者が1つとなることで難敵を打ち破る。融合召喚とは、その交わる力で不足する者を補い、困難に立ち向かうための調和の力であるのに、アカデミアはそれを踏みにじっている」

「調和の力…?」

「仕方のないことです。今のプロフェッサーを名乗る者にはそんな力の真実すら見極める力を持つはずなどないのですから…」

(今のプロフェッサー…?どういう意味だ??)

遊勝は今のエリクの言葉の意味を理解しかねていた。

協力者であり、信頼できる相手であることには間違いないが、エリクにはまだ自分にすら伝えていない真実を握っているのか。

だとしたら、なぜ伝えない、もしくは伝えることができないのか。

「《ドラグーン・オブ・レッドアイズ》の効果。私のメインフェイズ時に、相手フィールドのモンスター1体を破壊し、そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える…」

「《クリスタルウィング》の効果発動!1ターンに1度、このカード以外のモンスター効果を無効にし、破壊する!そして、ターン終了時までそのモンスターの元々の攻撃力分攻撃力がアップする!」

《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》の口から放たれる白いブラスが効果を発動しようとする《超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ》を飲み込んでいく。

しかし、これで効果を無効にできるはずなのに心に宿る嫌な予感を捨て去ることができない。

何か取り返しのつかない失敗をしているのかとさえ思ってしまう。

「《ドラグーン・オブ・レッドアイズ》の効果発動。1ターンに1度、カード効果が発動したとき、手札1枚を捨てることで、その発動を無効にし、破壊する」

「何!?」

ブレスを穿つように、のこぎり状の剣が一直線に《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》めがけて投擲される。

その刃が喉を貫通し、《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》は消滅した。

「そして、このカードの攻撃力を1000アップさせる」

 

超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ レベル8 攻撃3000→4000

 

手札から墓地へ送られたカード

・天罰

 

「マジ…かよ…!」

せっかく起死回生の切り札とした召喚した《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》があっという間に破壊されただけでなく、再びユーゴのフィールドががら空きになった状態で攻撃力4000のモンスターが出現することになった。

また一撃受けたら敗北という最悪な状況が生まれる。

「いかがでしょうか?どう動いても敗北への道を突き進む今の状況は」

確かに、ここで《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》の効果を発動しないという選択肢もあっただろう。

しかし、その場合は3000のダメージを受ける上にダイレクトアタックを受けて敗北という未来が待っているだけ。

どう動こうと、この絶望的な状況が生まれるのを指をくわえてみていることしかできない。

「ちくしょう!今回のデュエル程、もてあそばれたって気分になるデュエルはなかったぜ!!」

「バトル。《ドラグーン・オブ・レッドアイズ》でプレイヤーへダイレクトアタック」

《超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ》が剣を地面に刺し、両手で魔力を凝縮させて黒炎弾を生み出し、それをユーゴに向けて発射する。

「この攻撃を受けたら、ユーゴのライフが0に!!」

「だからといって…こんなところで、こんなところで終われるかよ!罠発動!《スピードターン&リバース》!!俺の風属性シンクロモンスターが墓地へ送られたターンにだけ発動できて、俺が受けるダメージをこのターン、半分にする!うわあああ!!」

風の障壁で一時的に受け止められた黒い炎だが、やがて突き破ってユーゴを襲い、真正面から受けたユーゴの体が冷たいコンクリートと雪の地面に転がる。

「私はこれで、ターンエンド」

「そして…ターン終了時に俺の墓地に存在する風属性シンクロモンスター1体を特殊召喚する!よみがえれ、《クリスタルウィング》!!」

 

クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン レベル8 攻撃3000

 

ユーゴ

ライフ4000→2000

 

エリク

手札3→1

ライフ3900

場 超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ レベル8 攻撃4000

  巨神竜の遺跡(永続魔法)

  伏せカード1

 

ユーゴ

手札1

ライフ2000

場 クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン レベル8 攻撃3000

 

「どうにか《クリスタルウィング》がユーゴのフィールドに戻ったが…エリクのフィールドには《ドラグーン・オブ・レッドアイズ》がいる…」

「《クリスタルウィング》の効果は封じられたも同然だ。ユーゴ…どう戦うつもりだ?」

エリクの真意が気になるのはもちろんだが、デュエリストの性なのか、2人のデュエルがどうなるかという興味をどうしても抱いてしまう。

今のエリクのフィールドにはレベル7か8のドラゴン族は存在しないため、《巨神竜の遺跡》の効果は発動していない。

自由に動けるが、《超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ》の効果という次の壁が待つ。

「俺の…ターン!!」

 

ユーゴ

手札1→2

 

「俺は…カードを2枚伏せて、ターンエンド…」

 

エリク

手札1

ライフ3900

場 超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ レベル8 攻撃4000

  巨神竜の遺跡(永続魔法)

  伏せカード1

 

ユーゴ

手札2→0

ライフ2000

場 クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン レベル8 攻撃3000

  伏せカード2

 

「私のターン、ドロー…」

 

エリク

手札1→2

 

「…君の《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》はレベル5以上のモンスターと戦闘を行うとき、ダメージ計算時のみ戦う相手モンスターの攻撃力分、攻撃力がアップする」

「そうだぜ…。けど、あんたの《ドラグーン・オブ・レッドアイズ》は1ターンに1度、手札を1枚捨てることで、カード効果の発動を無効にして、破壊する上に攻撃力が1000アップするんだろ?だが、《クリスタルウィング》のもう1つの効果はこいつ以外のモンスター効果が発動したとき、その発動を無効にして、破壊することができる。そして、破壊したモンスターの攻撃力分、攻撃力がターン終了時までアップする」

ここでエリクから動いた場合、半自動的にそれらの効果が発動し、軍配が上がるのはユーゴになる。

だが、そんなことはエリクも分かっている。

必ず何らかの対策をするに決まっている。

「…バトル!《ドラグーン・オブ・レッドアイズ》で《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》を攻撃…!」

《超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ》が握っている剣を振るい、黒い剣閃が一直線に《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》に向けて飛んでいく。

「俺は《クリスタルウィング》の効果を発動!《ドラグーン・オブ・レッドアイズ》の攻撃力分、攻撃力がアップする!」

「私は手札の《真紅眼の竜戦士》の効果を発動。私のフィールドに存在するレッドアイズが相手モンスターを攻撃するとき、手札のこのカードを墓地へ送ることで、その相手モンスター1体の攻撃力をターン終了時まで0にする!」

白と赤を基調とした翼竜のようなアーマーを身に着けた金髪の少年が出現し、《超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ》を倒そうとする水晶の竜の懐に飛び込み、拳を叩き込もうとする。

「相討ちにするつもりかよ!!俺は《クリスタルウィング》の効果を発動!《真紅眼の竜戦士》の効果を無効にし、破壊する!!」

「《ドラグーン・オブ・レッドアイズ》の効果を忘れましたか?手札を1枚墓地へ送り、《クリスタルウィング》のその効果の発動を無効にし、破壊します!」

剣閃が黒い炎の鎖に変化して、《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》の肉体を縛り付ける。

そして、身動きが封じられたそのドラゴンの胴体に《真紅眼の竜戦士》の拳が叩き込まれ、その個所を中心に爆発が起こる。

(私が伏せているカードは《レッドアイズ・インサイト》。たとえ手札に攻撃を阻むカードがあろうと、このカードで追撃できるレッドアイズを蘇生できる…)

《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》を突破し、勝利を確信しようとしたが、突然腹部を貫かれたはずのその水晶の竜の体が透明になっていく。

そして、巨大なエネルギー体へと変化していった。

「何…?」

「発動、したぜ…。俺の最後の返しだ!!罠カード《コズミックブラスト》!俺のフィールドのドラゴン族シンクロモンスターがフィールドから離れたターンに発動できて、そのモンスターの攻撃力分のダメージを与える!」

「しかし、私のライフは3900。その1枚では…」

「そうだ!こいつ1枚じゃあ倒し切れねえ!だが、こいつならどうだ!!」

ユーゴはもう1枚の《コズミックブラスト》を発動する。

2枚の《コズミックブラスト》の効果で、エリクが受けるダメージは合計6000となる。

「まさか、そんな力任せな反撃をするとは…予想外でしたよ」

まさかの一撃を受ける形となったエリクだが、悔しさはなく、いつもと同じ薄い笑みだけだった。

エネルギー体はエリクを飲み込んでいき、デュエルの終幕を告げた。

 

エリク

ライフ3900→900→0

 

スピードターン&リバース

通常罠カード

(1):自分フィールドに存在する風属性Sモンスターが墓地へ送られたターンにのみ発動できる。このターン、自分が受けるダメージを半分する。そして、このカードを発動したターン終了時、自分の墓地に存在する風属性Sモンスター1体を自分フィールドに特殊召喚する。

 

真紅眼の黒魔術師(レッドアイズ・マジシャン)

レベル7 攻撃2500 守備2100 効果 闇属性 魔法使い族

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードは「真紅眼」融合モンスターの融合素材となるとき、カード名を「ブラック・マジシャン」としても扱う。

(2):自分が「レッドアイズ」魔法・罠カードを発動したターンのメインフェイズ1に、自分フィールドに存在するこのカードをリリースし、自分の墓地に存在する「真紅眼の黒魔術師」以外のレベル6以上の「レッドアイズ」モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

真紅眼の竜戦士(レッドアイズ・ドラゴンウォリアー)

レベル7 攻撃2400 守備2000 効果 闇属性 戦士族

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールドの「レッドアイズ」モンスターが相手モンスターを攻撃するとき、手札に存在するこのカード1枚を墓地へ送ることで発動できる。その相手モンスターの攻撃力をターン終了時まで0にする。

(2):このカードは「真紅眼」融合モンスターの融合素材とするとき、カード名を「真紅眼の黒竜」としても扱い、種族をドラゴン族として扱うことができる。

 

コズミックブラスト(アニメオリカ・改変)

通常罠カード

(1):自分フィールドのドラゴン族Sモンスターがフィールドから離れたターンにのみ発動できる。そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。この効果を発動したターン、自分はモンスターを特殊召喚できない。

 

「ふっふふふ…まさか、このような形で私が敗れるとは…。《コズミックブラスト》を2枚伏せるとは…ね。大胆なことをしてくれますね、ユーゴ…」

「うっせえよ!ただ、手札に来て、こいつしかあんたを倒せる手がねえと思ったからやったんだよ…」

正直、最後のドローで《コズミックブラスト》がもう1枚こなかったら、もう敗北を覚悟していた。

勝利してほっとする気持ちもあるが、同時に敗北したにもかかわらず笑う彼に疑問を抱く。

「答えてほしいな、エリク。なぜこのようなデュエルを…」

「その理由が、もう到着したところのようですね」

「何…?」

エリクが遊勝らのいる方向に指をさし、3人は後ろに振り返る。

そこには十数人の集団が歩いてきていて、その集団の中には遊勝にとっては見覚えのある人物の姿もあった。

「まさか…遊矢…なのか…??」

「教授に残された時間は短い。故に、そろって聞いていただけた方が都合がよろしいので」



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第113話 ドクターNとアカデミア

クレイトスが吹雪に包まれた人工島に止まり、防寒着を身に着けた集団が出てくる。

一番小柄な素良が先頭に立ち、遊矢と柚子、権現坂、零児、沢渡、黒咲、翔太、伊織、侑斗、ウィンダが出てくる。

「ああーーーー!!なんだよ!防寒着着てんのに、どうしてこんなに寒みーんだよー!!」

「団長は寒がりっすねー。こんなの寒いうちに入らないでしょー?」

「うっせー!寒さ感じねーのに、偉そうに言いやがって!!」

寒さでいらだつ中、沢渡は笑うサッシー・ルーキーに怒りをぶつける。

傍から見るとたった1人でそこにはいない誰かと大喧嘩をしているようにしか見えず、黒咲達が若干引いていた。

(そういえば、シンクロ次元から戻ってから、沢渡のそばに何かいるような…)

訓練中、何かと話している様子を何度か見た遊矢は彼のそばに何かがいるのを感じていた。

それは伊織や翔太のそばから感じる何かと同様だが、それが何かという明確な答えは出ない。

オッドアイズやナヴィから感じるものとはまるで違っていた。

「翔太君、止めたほうがいいんじゃない…?」

「いや、むしろ騒がせてやれ。面白そうだしな」

「うわ…翔太君が悪い考えになってる」

その証拠に録画しようとスマホまで出している始末だ。

犯罪に使うことはないかもしれないが、それで沢渡に恥をかかせようという気持ちは感じ取れた。

「沢渡、気が狂うほどの寒さではなかろう。正気に戻れ」

「大丈夫、沢渡君は正気だよ。ただ、普通は見えないもの、聞こえないものと話しているだけだよ」

「…あなたの言う精霊のことですか?」

黒咲の言葉を肯定するように、侑斗が首を縦に振る。

零児と黒咲は精霊のことを侑斗からある程度説明されており、実際にウィンダが精霊に戻った姿も見たことがある。

侑斗の両目が風の眼へと変化する。

すると、口論中のサッシー・ルーキーの姿が遊矢達の前にさらされた。

「嘘…!?これって、沢渡の《サッシー・ルーキー》??」

「やはり貴様にも精霊が…」

「こんなの、俺の精霊じゃねーよ!俺が持つべき精霊はもっとグレートで…」

「ええーー、ひどいッスよ団長ー!俺は1ターンに1度、破壊されないうえに、破壊されたとしても…」

「黙ってろ!さっさと…カードに、戻れーーー!!」

沢渡の平手打ちによってサッシー・ルーキーは姿を消し、沢渡は荒くなった息を整える。

そんな彼を冷めた目で見終えた素良は進むべき方向に目を向ける。

「この方向へ行けば、ドクターNのいるラボに行くことができる。けれど、ここはアカデミアが存在を抹消した場所。けれど、仮に侵入者が入って来た時の備えがあるかもしれない。気を付けて」

「吹雪がひどい、固まって動くぞ。決して、離れるな」

素良を先頭に、そして権現坂が殿となって進んでいく。

雪と風によって足音がかき消され、足跡もまた簡単に消えていく。

先導無しでは迷い、氷の彫像となるその島を進んでいく。

素良が警戒する備えの気配は感じられず、白一色だった景色に徐々に灰色の箱物の影が浮かんでくる。

「あそこだよ。あそこがドクターNのラボで、アカデミアの秘密が眠っている」

「この中に…」

その秘密を知ることができるというなら、アークエリアプロジェクトの真相を知ることができるかもしれない。

もしかしたら零王が自分たちを捨てた理由もわかるかもしれない。

思えば、それを知るために零児はこれまで戦い続けてきたのかもしれない。

「入口…かな?人がいる」

「人…?もしかして!」

侑斗の言葉に、全員が身構える。

「おい…素良、こいつらは待ち伏せか??」

「もしかして、僕たちがここに来ることをアカデミアに知られた??」

「勘弁してくれ…うん?」

警戒する中で、翔太のデュエルディスクの通信機能が起動し、表示された番号に翔太は舌打ちする。

その番号はエリクのもので、得体のしれないものにためらいはしたが、回線を開く。

「もしもし…」

「翔太さん、お久しぶりです。申し訳ありませんが、この音声は録音されたものです。ですので、あなたからの発言や質問には一切お答えできませんので、ご容赦の上、聞かれてください」

「ちっ…手の込んだことをしやがる」

「この音声はあなたがこのファウスト島のドクターNのラボの近くにたどり着いた時にかかるようにプログラムしています。ここまで来たということは、おそらくここからランサーズによるアカデミアへの攻撃が始まるということでしょう。その点はお祝いさせていただきます。おめでとうございます」

「ふざけたことを言いやがって…要件だけに録音しやがれ…」

聞かれていないことは分かっているが、それでも怒りをこみあげてしまい、愚痴をこぼさずにはいられない。

「さて、要件だけお伝えしましょう。あなたの仲間である榊遊矢のお父上、榊遊勝についてです」

「榊遊勝…?」

「父さん…だって!?」

翔太に駆け寄った遊矢は翔太のデュエルディスクをつかもうとするが、体をそらす。

「待てよ…今、スピーカー機能を動かす」

ここまで異常がない以上、スピーカーで音量を出したとしても問題ないだろう。

しかも、吹雪の中ではスピーカーを使ったとしても、かなり近づかないと聞き取れない。

翔太を中心に全員が囲み、スピーカーからエリクの声が流れる。

「彼もまた、このラボを目指しています。そこでお会いすることができるでしょう。彼もまた、この戦争を止めるために動いています」

「父さんが…あそこに…」

「おそらく、ここで知る事実は希望となるでしょう。しかし…ある意味深い絶望を与えることになるかもしれません。それを恐れるというのであれば、引き返すことをお勧めします。ですが…あなた方に真実を知ってもなお、立ち向かう。その覚悟があるというなら、どうぞ…お進みください。私からは以上です」

音声が切れると同時に、再び翔太達の周りを雪と風が包み込む。

しばらく誰もが口を閉ざす中、翔太が最初に口を開く。

「あの野郎…外からわけのわからねーことばかりしゃべりやがって」

「翔太君…」

「俺の中にも問題はあるが、今は後回しだ。俺は進む。次元戦争のことは知ったことじゃないが、これ以上あんな奴に踊らされるのは御免だ」

進む道があるなら進むだけ。

それは誰に命じられたというわけでもなく、自分が選んだうえで。

「俺も、進む。そのエリクって人のことは良く知らないけど、俺は父さんに会いたい。生きていて、そこにいるというなら、今すぐでも…会いたい」

「遊矢…」

「お前はどうなんだ、零児。その絶望ってのはお前にとってのものかもしれねーぞ?」

この次元戦争で、一番かかわりがあるとしたらランサーズの創設者である零児だ。

プロフェッサーが彼の父親であり、事実を知るとなる以上は無論、そのことも関係する。

零児は口角をわずかに上げると、眼鏡の位置を直す。

「愚問だな。私は真実をつかみ、この戦争を終わらせるために来た。ならば、これ以上好都合なことはない。その中にたとえ絶望があったとしても、払って見せる」

「じゃあ、進もう。あんまり長居はしたくないし」

再び歩みを進め、ようやくラボの間近にまでたどり着く。

そこには4人の人影があり、その中の3人については見覚えがあった。

「お待ちしておりました。やはり、あの警告を聞いてもなお、あなた方はここまで来ましたね」

「ああ、来てやったぞ。で、なんだバナナまでいるんだ?」

「バナナいうな!俺はユーゴだ!久々に会って、それはねーだろが!!」

(あれ…どうなっているの??)

ユーゴが一方的に翔太と言い争うのを見た柚子はブレスレットとそばにいる遊矢に目を向ける。

遊矢とユーゴが近くにいるのに、シンクロ次元で更にユーリが加わったときとは異なり何も異変が起こっておらず、おまけにブレスレッドにも何も反応はなかった。

「父さん…」

遊矢の視線が車いすに座り遊勝に向けられる。

服装は変わりないが、車椅子での生活が余儀なくされており、苦労もあったのか、少し肌色が悪く、やせているところが見受けられる。

車椅子を動かす明日香が遊勝の体が遊矢と向き合うように動かす。

「久しぶりだな…遊矢」

「父さん…父さん!!」

眼に涙を浮かべた遊矢が遊勝に向けて駆け寄る。

笑みを浮かべる遊勝だが、そんな彼の頬を遊矢の右拳が襲う。

無抵抗でそれを受けた遊勝の口の中が切れ、口元から血が流れる。

「ゆ、遊矢!?」

今まで誰かを殴ったのを見たことのない柚子にはその光景が信じられなかった。

その視線を気にすることなく、再び遊矢は弱っている遊勝を殴る。

「どうして…どうして3年も、3年も俺と母さんを放っておいたんだ!!何も言わずに次元を超えて、融合次元まで行って音沙汰無し!!しかも…しかも、そんな車椅子になんか座って、弱った姿になって…!!」

嬉しいはずなのに、急にこみあげてくる怒りの衝動を遊矢にはコントロールできない。

遊勝がいなくなったあの日の夜、暗い部屋の中で一人で泣いていた洋子の姿を見た。

子供心でそれを放してはいけないと思い、ずっと黙っていた。

妻であり、大切な人であるはずの彼女まで悲しませた。

そのことが許せなかった。

「なんで…なんで何も言ってくれなかったんだよ。家族じゃないのかよ…父さん、父さん…!!」

段々殴る拳の力が弱まり、ペチペチと頬に当たるだけだ。

次第に膝から崩れ、彼の膝に顔を押し付けて泣いていた。

左手で流れる血をぬぐった遊勝はそのことを責めることなく、遊矢の頭を撫でる。

「すまない…すまなかった…。お前たちを巻き込むまいと思っていたが、結局…こんな形になってしまったか。それに…」

遊勝の視線が膝に置かれている遊矢の左手に向けられる。

手袋で隠されてはいるが、わずかに見える赤い機械。

義手となってしまった左腕を見た遊勝は何も言うことができなかった。

「遊勝さん、なぜあなたが融合次元に…?」

「零児君か…。済まない、それは…」

一瞬、答えるのをためらった遊勝だが、勝手に試作次元転移装置を使って次元を超えてからここにたどり着くまでのいきさつを説明した。

戦争を未然に防ぐためとはいえ、勝手に、しかも実証実験もろくにされていない次元転移装置を使ったとなると無謀ともいえた。

実際、それでたどり着いたのはエクシーズ次元で、結果としてプロフェッサーを止めることすらできなかった。

「この償いは必ずする。話したいこともあるかもしれないが、今は…」

「ええ、あまり時間はありません。私についてきてください」

 

暗がりの、多くのコンピュータと装置、端末に囲まれた部屋の中、ドクターNは部屋の中央に新たに作られたベッドに横たわっている。

口元には生命維持装置が、左腕には点滴用の注射が刺されており、ベッドの真上には複数のモニターが取り付けられていた。

「ああ、そうか…ようやく、時が来たのか…。ああ、そうか…」

モニターに映る、エリクに先導されて中へと入っているランサーズと遊勝の姿。

ずっと、ドクターNは心待ちにしていた。

そして、その中には最も会いたいと思っていた少女の姿もある。

彼女がランサーズに加わり、ここに来るというのは運命なのかと錯覚してしまう。

科学者として、運命という存在はないと信じているというのに。

だが、これですべての心残りを消すことができる。

成すべきことに集中できる。

逡巡する中で、自動ドアが開き、足音と車椅子の音が近づいてくる。

「久しぶりに見るよ…この部屋」

部屋に入る素良は目覚めてから、シンクロ次元へ向かうまで短い間世話になったその暗がりな部屋を思い出す、

そこでドクターNと出会い、彼に救われた。

「暗い部屋だな…。で、どこにいるんだ?時間がねえんだろ?」

「こちらです…ドクターN」

「ああ、待っていた…。真実を伝える時を…過ちを終わらせるときを…」

「遅くなりました、ここまで弱られていたとは…」

「ナノマシンを体内に入れることで、人は勝手に健康になると言われることはあるが…やはり、難しいものだな。ひどく疲れて、体を壊すだけだ」

「そう、ですね…。同感です」

フフ、と少し表情を暗くしながらもエリクは低い声を出して笑う。

「榊遊勝か…。こうして、もう1度会えるとは思っていなかったよ…」

「私もだ。お互いに…」

「知っているの?父さん」

「ああ、私が融合次元に潜伏しているとき、助けられた。彼がいなければ、今頃私はこの世にいなかっただろう」

「危険じゃねえのか?あんた、アカデミアの関係者だろう?そんなあんたが裏切りを…」

「裏切り…」

遊矢の脳裏にBAT-DIEとその発作で死んだエドの姿が浮かぶ。

その時の悲しみが胸を締め付けるが、今はそれに付き合っている時間もない。

「そうだ…。これは裏切り行為。アカデミアへの…プロフェッサーへの…友への、な」

「友…?」

「アカデミアで使われている次元転移装置、カード化システム…多くの技術を私はプロフェッサーと共に作り上げた。特に、次元転移装置については私が基礎を作り上げていた。アカデミアが作られる前から…」

「何のためだ…?」

アカデミアができる前だとしたら、おそらく別世界のことを何も知らないはずだ。

シンクロ次元でも、エクシーズ次元でも、アカデミアの存在が知られるまでは別世界の存在など認知されたことすらなかった。

ノーヒントにも等しいそれをどうやって知ったのか。

「私はしがない研究者だった。若いころには妻もいた。だが…」

ドクターNが寂しげな目になって、そばに置かれている写真立てを見る。

その中には若いころのドクターNと思われる白衣の男性と同じ白衣を身にまとう、黒い髪の女性の姿が映っていた。

翔太の視線が自然にその写真に向けられ、無意識に口が開く。

「いお…り…?」

「へ?」

「伊織に似ているな」

口元のほくろや目の形、髪の色。

髪形は違うが、その容姿は大人になった伊織そのままの姿のように思えた。

「彼女は研究者であると同時にデュエリストだった。子供を授かったときは夢を見ていたよ。いつか生まれてくる子供とデュエルがしたいと…。だが、彼女は…子供を産んですぐに死んでしまった。失った空白に耐えられなかった。そんな時、私は…見つけたのだ。これを…」

「これは…」

モニターに映る青水晶の、まるで遊矢が持っているペンデュラムにも似た物質に零児の目が止まる。

遊矢も驚きながらも、ぶら下がっているペンデュラムを掌に載せ、柚子と権現坂の視線もそこに向けられる。

「妻の亡骸を葬り、悲しみに暮れる中で、私はそれを見つけた。今はアカデミアの手の中にあるが…。それに触れたとき、私は知った。異世界の…数多くの平行世界の存在を。そして、ほんの一瞬だけ見えたのだ。失った妻の笑って、私に手を伸ばす姿を…」

その光景を見てから、ドクターNは再び研究に励むようになった。

別世界へ行くための技術を作り上げ、もう1度妻に、人目でもいいから会うために。

それが死んだ彼女と同一人物でないことは分かっている。

それでも、探さずにはいられない。

それが彼の生きる目的となっていた。

いや、本音を言うと死にたかったのかもしれない。

彼女と同じ時に一緒に死ぬことで、いつまでも一緒のいたかった。

「そして、試作機を作り上げた。私はそれを使って、妻がいる次元へ旅立とうとした。それを実証実験とした。しかし…研究は失敗した。装置は暴走し、どうにか私は緊急停止コードを入れた。だが…その装置は私と妻の大切なものを奪い取った。彼女のデュエルディスクとデッキも、一緒に…」

実験の際、赤ん坊である我が子にもその光景を見せようと連れてきてしまった。

このようなことになると分かっていたなら、連れてくるべきではなかった。

「私は…妻を失い、我が子とも生き別れた…。再び一人になって、それから私は酒浸りになった。私の行った研究が取り戻すどころか、私のもう1つの欠け街のない者を私自身の手で手放すことになったのだから…。研究を捨て、何もかもを捨てて、生き続ける私は10年前に出会った」

アカデミアは零王主導の元で作られたばかりの小規模な組織に過ぎないものの、多くの資金と資材、更には技術力まで持っている将来有望と称される組織だった。

世捨て人のように暮らしていた彼の耳にも届くほどだった。

「彼に…プロフェッサーに。彼は言っていたよ。あなたにも失ったものがあるように、私にも失ったものがある。それを取り戻したい。そのために力を貸してほしいと…」

「取り戻したい…だと?」

それが零王がアカデミアを手にし、アークエリアプロジェクトによって人々をカードに変え、柚子たちを捕まえようとする目的なのか。

「ふざけるな!取り戻したいものがあるから…そのためには他人の…関係のない者の大切なものを奪ってもいいというのか!!」

「お前は…そうか。奪われたのだな…プロフェッサーと同じ目をしている…」

「馬鹿なことを!奴と同じ目だと!!俺を…」

「待つんだ、黒咲君!」

振り上げた拳を侑斗がつかみ、彼の顔を見た黒咲はフウウウ、と長く呼吸して自分を落ち着かせる。

「済まぬな…。すべてを話し終えたら、私をどうするかは好きにするといい。憎しみを捨てきれぬのであれば、その手で私を殺してもいい。プロフェッサーの犯した罪の一部を…私もまた、背負っているのだから…。私は彼と共にもう1度、研究をつづけた。このファウスト島で。アカデミアからの資金援助もあって、順調に進んだ。最も、援助の条件として、転移装置開発と並行して別の技術の開発も頼まれたがな」

プロフェッサーはスポンサーであると同時に、個人的にも付き合いを重ねていた。

その時、彼の肉親のことも言っていて、その姿はどこか妻と我が子を失った時の自分と重なって見えた。

お互いに大切なものを失い、それを取り戻そうとしているために、シンパシーを感じていたのかもしれない。

プロフェッサー本人が本気でそう思っていたかは今は確かめようがないが。

確かに、並行して開発しなければならないものにも時間を割く必要はあったが、研究スタッフや資金、設備の手配をプロフェッサーがしてくれたおかげで、独力で続けていた時以上に順調に開発は進んだ。

プロフェッサー自身も、次元転移装置を作って融合次元に転移しており、そのデータを提供してくれたが、完全に彼一人しか転移できないもので、操作をわずかでも誤るとほかの次元へ転移することになり、二度と元の次元にも融合次元にも変えることができなくなる可能性のある危険のはらんだものだった。

そんな危険を冒してでも成し遂げたいものがあるなら、それを助けるだけ。

そうして試作機を完成させることができた。

「そして、どうにか私は完成させたよ。次元転移装置を。それは5年前の話だ」

「5年前…ちょうどあんたが公には死んだとされた時だな」

「ああ、だが、知っての通り、次元転移装置も私とプロフェッサーが生み出した技術も…すべてこの次元戦争に使われた。私がやったことは…戦争の火種を生み出すに等しい行いだった。だが…それによって、私はようやく願いをかなえることができた…」

「願い…」

「そうです。ドクターNが取り戻したかった子供…それは、あなたのことなのです。…永瀬伊織」

「写真のあの人がお母さんで…この人が、私の…お父さん…」

伊織の頭の中が真っ白になっていく。

せっかく会いたいと願った肉親と会えたというのに、病気のせいなのか弱った体となっている彼が見ていられないのか、何も感情を出すことができない。

「伊織…スタンダード次元にいたのだな。どうやって、生きて来て…」

「…スタンダード次元の、舞網市っていう町で、冴島栄次郎っていう人に拾われて、孤児院で育ったの…」

「そうか…そうか。すまぬな…16年も、ずっと私はお前のそばにいてやれなかった…。こんな私が今更…」

「そんなこと、言わないでよ。やっと、会えたのに…お父さん…」

幼いころからずっと、親と共に過ごす同年代の少年少女をうらやましいと思い続けてきた。

確かに親代わりとなる大人はいるが、それでも本当の血の通った親ではない。

なんで自分だけ、お父さんもお母さんも分からないのか。

不公平だとさえ思い続けてきた。

でも、形はどうであれようやく知ることができた。

ようやく感情が出て来て、目から涙がこぼれる。

「伊織…」

「ねえ、聞かせて。転移したときから持ってるデッキがあるの。この…E・HERO…これって、お母さんが使っていたカードなの?」

「ああ、そうだ…。そうか、ずっと使ってくれていたのだな…。母さんも喜ぶ…」

「そっか…こんなに近くにあったんだ。お母さん…」

デッキを抱くように握り、目を閉じて今はいない母親に思いをはせる。

そんな彼女を優しく見つめた後で、ようやく話を戻した。

「装置を完成させた翌日、プロフェッサーは私に教えてくれた。自分が取り戻そうとしているものと、その手段を…そして、この世界の真実を…。ここからの話は…お前たちにとっての希望、そして…絶望…。パンドラの箱だ」

「世界…?」

遊矢達がここに来るまでの間、彼もまた悩んだ。

プロフェッサーから伝えられた真実、彼とアカデミアからの決別を決める引き金となったそれはこの世界だけでなく、4つの次元すべての根底を揺るがしかねないものだ。

伝えず、ただ流れを見送ることも選択肢にあるかもしれない。

だが、娘と娘がこれから歩む未来のためにも、老人たちが生み出した負の遺産は清算されなければならない。

それを受け継がせないためにも、今知る限りのすべてを伝えなければならない。

「赤馬零児…君と君の母親の存在はプロフェッサーから聞いている。だが、聞いたことはないだろう。君には…同じ父親を持つ姉がいたことを」

「姉…ですと??」

「信じられんことだろう。彼女の名前はレイ…。デュエリストであり、モンスターの声を聞くことができたという」

「モンスターの声…?」

それで翔太達が真っ先に頭に浮かんだのはそれぞれが持っている精霊だ。

精霊と彼の言うモンスターが同一なのであれば、自分たちと同じものを持っていたのかもしれない。

「レイ…馬鹿な…」

「そして、レイと同じく、モンスターの声を聞くことのできる人間が存在した。彼の名前はズァーク」

「ズァーク…!?」

その名前を聞くと同時に、ほんの一瞬だけ遊矢の心臓が高鳴った感じがした。

遊矢の中にいるユート、そして今ここにいるユーゴも同じだった。

「なんだよ…?その、ズァークって奴は?レイとズァークが何か関係があるのかよ?」

「ある意味では、同じ素質を持った人間であったのかもしれないな。プロフェッサーは否定するかもしれないが。そして…ズァークは世界の破壊者となった。英知のカードと己が持つ素質を使って…」

「世界の破壊者、英知のカード…」

シンクロ次元で見た幻覚。

その中にいるデュエリストがその名前のカードを使っていた。

仮にその英知のカードがそれであるなら、幻覚の中のデュエリストはズァークということになる。

(どうして…そのデュエリストの姿が…)

「ズァークもレイも、モンスターの声が聞こえること、それ以外は特別な能力を持たない平凡なデュエリストだった…あくまでプロフェッサー、いや…零王が言っていたな」

 

「ズァーク…モンスターの声が聞こえる。まさか、そのようなオカルトが実在するとはな」

その日、アカデミアのプロフェッサーの自室で、プロフェッサーとドクターNは2人っきりで話をすることとなった。

開発の返礼として、自分の取り戻したいものについてすべてを話したいとプロフェッサーから言い出したことだ。

そして、娘のレイのこと、そして彼女がモンスターの声を聞くことができることを教えられた。

「私も、初めに聞いた時は信じていなかった。だが、科学というのは発展していくと、もはや魔法と何も変わらなくなる…そういう言葉もあるというのに」

「考えてみれば、私が次元転移装置を作るきっかけとなった物質…いや、君の言葉で言えば『欠片』か…。あれも魔法と変わりないな」

「話を戻そう。レイと同じくズァークもまた、モンスターの声が聞こえるデュエリストだった。だが、彼はデュエルで世界の頂点に立つという夢を持っていた。マイナーリーグから少しずつ勝ち上がり、ファンが増えていった。そして、その中で人々の想いに応えたいと思うようになった。それ自体は何も問題はないはずだった…。だが、リアルソリッドビジョンシステムが完成してから、それが徐々に歪んでいった」

「待て…リアルソリッドビジョンシステムを作ったのは君ではないのか?」

「確かに作ったのは私だ。だが、本当は二十年近く前に存在していたロストテクノロジーだ。それをもう1度作り直したに過ぎない。それによって、モンスターの声を聞く力によって、召喚するモンスターとの高度な連携が可能となり、それによってズァークは一気に知名度を上げていった」

彼とモンスターの連携による演出と更にそれによって磨かれたデュエルの技量によって、より多くのファンを獲得した。

まさにズァークにとっての黄金時代の幕開けであり、彼の夢である頂点に立つのも時間の問題かと思われた。

しかし、そんな中で決定打となる事件が起こった。

「彼がプロとして認定され、プロリーグで初陣を飾った日。そのデュエルは彼が白星を挙げた。しかし、とどめのダイレクトアタックの際、対戦相手に事故で重傷を負わせてしまった。その時、彼が使ったカードが…《オッドアイズ・ドラゴン》。彼の4体のエースモンスターの内の1体」

原因はリアルソリッドビジョンの不具合によるダメージレベルの一時的な上昇で、そのブレスを受けた対戦相手は壁にたたきつけられ、すぐに救急車が呼び込まれる事態となった。

最初はまさかの事態にズァークも観客も動揺した。

しかし、次第に観客の中で歓声を上げる人が出て、それからスタンディングオベーションが始まった。

次の試合では、再び対戦相手を負傷させることがあってはならないとズァークは可能な限り手を抜くこととなり、その結果として敗北ギリギリまで追い込まれた。

その時に起こったのはズァークへのブーイングだ。

昨日のようなデュエルはどうした、消極的なプレイでプロを名乗るつもりか、そんなデュエルしかできないなら田舎へ帰れ、と。

そんなブーイングの嵐の中で、ズァークは最後の1ターンで逆転勝利をおさめた。

だが、その時もまた対戦相手を負傷させるほどの強烈な一撃を与えてしまった。

その時の観客たちはそんな対戦相手に目をくれることなく、興奮する大逆転劇を見せたズァークを称賛した。

観客だけでなく、メディアでも。

「その結果、ズァークは観客が求めるままにより激しく、過激なデュエルを行うようになった。そんなズァークを手本として、後に続くデュエリスト達も過激なデュエルを楽しむようになった。たとえ、対戦相手が怪我をしようが、死のうが関係ないというほどのな。そして、彼はついにデュエルチャンピオンとなった…。だが、観客もズァークも、それでも満たされることはなかった…」

観客もズァークも、更に激しく、皿に興奮するデュエルを求めた。

血に飢えて、他には何も興味を示さなくなった狂気の飢狼と化していた。

そんな観客たちに応えるとして、ついにズァークははじけた。

「奴はデュエルを終えてもなお、召喚されたエースモンスター…《オッドアイズ・ドラゴン》、《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》、《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》…そして、ユーリというアカデミアのデュエリストが持つ《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》を使って…思うがままの破壊行動を開始した」

そこから始まったのは悪夢だった。

まずは観客たちにドラゴン達の攻撃が向けられた。

本来であれば、観客たちに攻撃がいかないようにプログラムされていたはずなのに、そのプログラムが機能しなくなっていて、ダメージも本来なら設定にすら存在しないはずの100%実体化が設定され、モンスターたちのブレスは一瞬で多くの人々の命を奪っていった。

会場を破壊しつくすと、ズァークは今度はその矛先を街へ、国へ、そして世界へと向けていった。

各国の軍もそんなズァークを止めるために攻撃したが、そのドラゴン達に既存の兵器は通用しなかった。

「今思えば…その原因が彼の持つ英知のカード…『欠片』の力が大きかったのかもしれない。『欠片』が永瀬、君に平行世界を見せたように…」

「そう考えると、『欠片』は人の手に余る存在かもしれないな」

「そうだ。その手に余るものの力と己の欲望におぼれ、ズァークは破壊の限りを尽くした。そして、力を求めたズァークは自らと、4体のドラゴンを融合させた。英知のカードによって生み出したカード、《アストログラフ・マジシャン》の力によって…」

それによって、生まれたのは、己の全長に匹敵するほどの長い漆黒の翼を持ち、細長い蛇のような体を持つドラゴン。

その100メートル以上もの全長をもつドラゴンと融合し、ズァークは《覇王龍ズァーク》となった。

「世界は崩壊へと向かい、私はそれに対抗する手段を求めた。その中で見つけたのはこの地球そのものの力。太古より根付き、人間の欲望をもはねのける自然界そのものの力を4枚のカードに宿した。だが、そのカードは使った人間を依代として発動するもの。私は自らこのカードを使うことで、ズァークを倒そうとした。しかし…レイはあろうことかそのカードを奪い、私の代わりにズァークに挑んだのだ」

レイは4枚のカードを発動するとともに、《覇王龍ズァーク》を生み出した4体のドラゴンをズァークの魂と肉体もろとも分離させて封印した。

「確かに、これによってズァークは封じられた。しかし…レイもその代償によって…4人に一瞬別れて…消えてしまった。そして…気が付くと私はまったく別の世界に立っていた。そこは融合もシンクロもエクシーズもなく、リアルソリッドビジョンすら存在しない世界、スタンダード次元だった。私自身も、名前と技術者としての技量以外には何も思い出せなくなっていた…」

とにかく生き延びるために、零王は町工場を立ち上げ、リアルソリッドビジョンなどを作り出した。

その中で、榊遊勝と出会い、彼の考案によってアクションデュエルが作られ、その結果、アクションデュエルの生みの親であり最先端技術を持つ工場ということで知名度を得て、レオコーポレーションという巨大企業へと変化していった。

その中で妻子を得て、順風満帆な人生を送る中で、零王は時折夢を見るようになった。

ズァークと戦うレイの姿、そして4つに分かれる世界を。

「私は夢の正体を確かめるため、各地を旅して、夢で見た光景と同じ場所がないか探し続けた。会社そのものは私無しでもある程度機能するようになっていたから、問題はなかった。そして…私は見つけた。『欠片』を…」

それは夢の光景と何も関係のないはずのエジプトのピラミッドの中だ。

手がかりもなく、途方に暮れる中で偶然デュエルの起源であるとされるエジプトのピラミッドの調査への協力依頼があった。

それに応じて、ピラミッドの中を探し、そこにあったモンスターの石板のデータを集める中で、『欠片』を見つけた。

それに触れた瞬間、過去の記憶がよみがえり、同時に今のこの世界の真実を知ってしまった。

「この世界はレイとズァークによって、4つに分かれて生まれた世界だったのだ。そのことを『欠片』によって知った」

「待て、その『欠片』はどうした?なぜ今持っていない?」

「あれはスタンダード次元の私の友である遊勝にペンデュラムと称して譲ったよ。彼はズァークと関係を持たない。故に彼になら、渡しても問題はないと思った。それから私は今から10年前、どうにか私は次元転移装置を作り上げ、手掛かりを求めて融合次元にやって来た。そして、そこで私の娘の分かれた1人であるセレナ…そして、ズァークの分かれた存在であるユーリを見つけた。ようやく見つけることができたのだ、娘を…レイを取り戻すための手掛かりを。だが、同時に娘と世界を奪ったズァークの亡霊とまで出会うことになるとはな…」

「それで、娘を取り戻すために、まさか…」

「そうだ。レイの分身である4人を統合させる。そのための技術もある。あとは…仕掛けるだけだ。そのために、アカデミアを設立したのだからな」

 

「そして…話してくれた。どうやって、実の娘を取り戻すのか…。それは、4人を統合すること。そのためのエネルギーが…多くの人間を材料に作り出すエネルギーだ」

「まさか…デュエル戦士達が人々をカードに変えたのは…!!」

「そうだ。そのエネルギーにするためだ。カードに変えられた人々は融合次元に送られる。そして、エネルギーにするために封印される…」

その言葉に零児の拳が震え始めた。

ほんの少しだけ、曲がりなりにも世界をよりよくするために動いていると思っていた。

だが、そんなわずかな甘い気持ちもプロフェッサーはあざ笑うように吹き飛ばした。

自分の娘とはいえ、たった1人のために数えきれない人々を犠牲にする彼のエゴに恐怖した。

「私は反対したよ。そんなことをして取り戻したとしても、第2第3のレイを…零王の娘を作ることになるだけだと…」

 

「やめるんだ、零王!もっと別の方法があるはずだろう…??」

「いや、それ以外に…それ以外に方法がないのだ!わかってくれ、永瀬。君の娘はかかわらせない」

「それでもだ。零王、話してくれたのはうれしいが、そのようなやり方しか取れないというのが、残念だ」

「そうか…ならば、仕方がない」

プロフェッサーが手を挙げると、3人の男が入ってくる。

デュエル戦士のものではない、黒いコートを着た男たちで、全員がジェルマンのエンブレムをつけている。

「彼らは…ジェルマン!!」

「そう、君と私の研究成果だ。彼らが君を連行する。すべてが終わるまで、ファウスト島でおとなしくしていてくれ」

 

「そして、私はこのファウスト島に軟禁された。だが、軟禁されるだけで私の行動は自由にさせてくれていたよ。外部との通信もできて、研究もできる。頼めば、研究材料でも食料でも何でも調達してくれる。ある意味では、貴族のような暮らしだ。そして、ファウストの中にエリクがいてくれたこともだ」

「お父さんと、エリクさんってどういう関係なの…?」

「私は訓練中に重傷を負ったのです。それをあなたのお父さんに救われたのです。ジェルマンは私のような重傷者や志願者に改造・強化手術を行うことで強力なデュエル戦士に変えるプロジェクトです。今では、プロフェッサー直属の特務部隊、表向きは、ですが…」

「表向き…どういうことだ?本当はそうじゃないって言いたいみたいだな」

翔太の言葉を肯定するように、エリクが首を縦に振る。

ドクターN、いや永瀬だけではない、彼もまた、知る限りの真実を伝えるためにここに来た。

たとえそれがどのような結果が自分に降りかかることになったとしても。

「みなさん、お伝えします。今のアカデミアを率いているのはプロフェッサーではありません。今は…」

「そうだ。プロフェッサーのアークエリアプロジェクトを引き継いだ者がいる。だが、貴様らはそれを知る必要はない」

「その声…またお前かよ!!」

部屋の中で聞こえる、翔太にとっては何度も聞いた声。

翔太が振り返ると、そこにはバレットの姿があった。

「やはり、情報通りだ。ドクターN、そしてエリク…まさか特務部隊の中に裏切者がいるとは思わなかったぞ」

「永瀬さんのおかげですよ。知らないかもしれませんが、裏切者防止のため、ジェルマンには脳にインプラントを取り付けるのです。私の場合は、取り外しましたよ。結果として、体はこの状態ですが、それでも自由です」

「死ぬ確率の高い手段だな。だが、これで裏切りの証拠はそろった。貴様らはアカデミアの名のもと、始末する」

バレットが懐から拳銃を引き抜く。

その銃口がベッドに横たわる永瀬に向けられている。

「おい、てめえ…。ろくに銃を握れねえ2人に、銃を向けるのかよ?落ちたな、勲章野郎」

「なんとでも言え、任務のためであれば、私情も捨てる」

「私の命はともかく…若い命を無駄に散らせるわけにはいかないな…」

永瀬がつぶやくと同時に、ベッドとその周囲に集まる翔太達を網のような赤外線の箱が包囲する。

即座にバレッドが発砲するが、その障壁が受け止める。

「チッ…防御用の罠を用意していたか!ならば、解除させてもらう!」

この任務でファウスト島に入れられる際、デュエルディスクにこの施設のマスターキーを入れてもらっている。

これを操作すれば、その罠を解除して、任務を遂行できる。

「ちっ、そんな下らねえ任務をさせるわけにはいけねえよ!」

叫ぶ翔太が左手を伸ばすとともに痣が光り始める。

止めようと伸ばす伊織の手を無視し、前へ進んでいく。

痣の光に反応するかのように赤外線の光が翔太が進む箇所だけ消え、通過すると同時に元に戻る。

デュエルディスクを操作する手を止め、バレットがにらむように翔太を見る。

「貴様…なんのつもりだ?」

「スタンダード次元、シンクロ次元、エクシーズ次元…さんざんてめえと戦ってきた。てめえにもアカデミアにも、これ以上伊織と伊織の親父を邪魔させるわけにはいかねえ。あいつらに代わって、俺がてめえを止めてやるよ」

「…ふっ、どうやら貴様を倒さなければ、任務を遂行できないようだな」

口元を緩ませたバレットはデュエルディスクを展開し、デッキをセットする。

「貴様にはさんざんやられてきた…。今度こそ倒してやろう…」

「今度も、負けるのはお前だよ、紋章野郎!」

「「デュエル!!」」

 

バレット

手札5

ライフ4000

 

翔太

手札5

ライフ4000

 



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第114話 荒熊

バレット

手札5

ライフ4000

 

 

 

翔太

手札5

ライフ4000

 

「先攻は私がもらう。私はスケール1の《メタリック・サイクロプス》とスケール5の《メタリック・ミノタウロス》でペンデュラムスケールをセッティング」

「ちっ…融合次元でもペンデュラム召喚かよ」

「いつまでも貴様らだけのものだと思わないことだ。見せてやろう、アカデミアのペンデュラム召喚というものを」

左腕と右足が機械のものに変わっている《サイクロプス》と《ミノタウロス》が青い光の柱を生み出す。

「ペンデュラム召喚!現れろ、《ダーク・センチネル》、《不屈闘士レイレイ》」

《ダーク・センチネル》と共に下半身が猿になっている筋肉質の武闘家が青いゲートから飛び出してくる。

 

ダーク・センチネル レベル4 攻撃1500

不屈闘士レイレイ レベル4 攻撃2300

 

「そして、私は《メタリック・サイクロプス》のペンデュラム効果を発動。自分フィールドのモンスターを素材に、獣闘機を融合召喚できる。融合素材とするのは《ダーク・センチネル》と《不屈闘士レイレイ》。先駆けの闘士よ、聖なる闇の番人と交じり合いて、新たな闘士となれ!融合召喚!現れ出でよ、《獣闘機ソニック・グラディエイター》!!」

左目に眼帯型端末を装着し、下半身が完全に青い装甲の機械へと変わった《不屈闘士レイレイ》が2体と入れ替わるように現れる。

 

獣闘機ソニック・グラディエイター レベル6 攻撃1900

 

「《ソニック・グラディエイター》の効果発動。このカードの融合召喚に成功したとき、デッキからレベル4以下の獣戦士族モンスター1体を手札に加える。私は《パンサー・ウォリアー》を手札に加える。更に私は手札の《ダーク・チェイン》の効果を発動。手札のこのカードと獣戦士族モンスター1体を素材に獣闘機を融合召喚できる。。獰猛なる黒豹よ、宿命の鎖と混じりあいて、新たな雄たけびを上げよ。融合召喚!現れ出でよ、《獣闘機パンサー・プレデター》!!」

フィールドに飛び出した《漆黒の豹戦士パンサー・ウォリアー》が背後に現れた青い鎖を胴体とした蛇にからめとられ、その体が徐々に《獣闘機パンサー・プレデター》のものへと変わっていった。

 

獣闘機パンサー・プレデター レベル6 攻撃1600

 

「《ソニック・グラディエイター》の効果。自分フィールドにほかに獣闘機が存在する場合、獣闘機1体につき攻撃力を500アップさせ、更に《ソニック・グラディエイター》以外を戦闘・効果の対象にできなくする」

 

獣闘機ソニック・グラディエイター レベル6 攻撃1900→2900

獣闘機パンサー・プレデター レベル6 攻撃1600→2600

 

「更に《パンサー・プレデター》の効果発動。1ターンに1度、自らの攻撃力の半分のダメージを与える!」

《獣闘機パンサー・プレデター》から発射されたビームが翔太の胴体を撃ち抜く。

いきなり1300ものダメージを先攻1ターン目で受けることになった翔太は胴体に手を当てる。

「くそ…このおっさん、相変わらずガチガチできやがって!!」

 

翔太

ライフ4000→2700

 

「更に、《メタリック・ミノタウロス》のペンデュラム効果発動。1ターンに1度、私の獣闘機が相手にダメージを与えることに成功したとき、デッキからカードを1枚ドローできる。自分はこれで、ターンエンド」

 

バレット

手札5→1

ライフ4000

場 獣闘機ソニック・グラディエイター レベル6 攻撃2900

  獣闘機パンサー・プレデター レベル6 攻撃2600

  メタリック・サイクロプス(青) Pスケール1

  メタリック・ミノタウロス(赤) Pスケール5

 

 

翔太

手札5

ライフ2700

場 なし

 

「1ターン目から1300もダメージを受けるなんて…」

「あのバレットってデュエリスト…前にもデュエルをしたことがあるけど、あの時は翔太が乱入してくれなかったら、俺が負けていた…」

攻撃力はそれほど大したことのないモンスターだが、いずれも堅実な効果を持っており、おまけに遊矢の場合は完全に身動きが取れない状態にされてしまっていた。

彼の技量はアカデミアの中でもトップクラスといえるだろう。

そんな彼がペンデュラム召喚まで使ってきたとなると、翔太が勝てるかどうかわからない。

「翔太君…」

「心配するんじゃねえよ、伊織。この程度のダメージでくたばるわけがないからな」

「減らず口を叩いてくれる。貴様にはさんざん煮え湯を飲まされてきた。今回のデュエルで蹴りをつけさせてもらう」

「いい加減しつこいぜ、熊男。こうなるくらいなら、エクシーズ次元で再起不能にすべきだったな…。俺のターン!」

 

翔太

手札5→6

 

「俺はスケール2の《魔装槍士タダカツ》とスケール3の《魔装画伯シャラク》でペンデュラムスケールをセッティング。そして、《シャラク》のペンデュラム効果発動。このカードを発動したターンのメインフェイズ時、もう片方のペンデュラムゾーンに魔装カードが存在する場合、デッキから魔装ペンデュラムモンスター1体を手札に加える。俺はデッキから《魔装騎士ケントゥリア》を手札に加える」

「だが、スケール2と3ではペンデュラム召喚できない。どうするつもりだ?」

「あんたもペンデュラムカードを使ってくれた。おかげで俺は、こいつをもっと有意義に使える。俺は速攻魔法《揺れる眼差し》を発動。お互いのペンデュラムゾーンに存在するカードをすべて破壊する!」

「何…?」

「アカデミアがペンデュラムカードを使う可能性は織り込み済みなんだよ、熊男」

翔太とバレットのペンデュラムモンスターが消滅し、2枚ともエクストラデッキに自動的に加えられる。

「破壊したカードは4枚。よって、まずはお前に500のダメージを与える」

 

バレット

ライフ4000→3500

 

「更に俺はデッキからペンデュラムモンスター、《魔装騎士ペイルライダー》を手札に加える。そして、フィールド上のカードを1枚除外する。俺はお前の《獣闘機ソニック・グラディエイター》を除外する」

「くっ…!」

背後に突然現れた黒い渦の中に引きずり込まれた《獣闘機ソニック・グラディエイター》が渦諸共姿をくらます。

「更に、俺はデッキから《揺れる眼差し》1枚を手札加えることができる。《ソニック・グラディエイター》が消えてくれたことで、《パンサー・プレデター》の攻撃力は元に戻る」

 

獣闘機パンサー・プレデター レベル6 攻撃2600→1600

 

 

「だが、私は破壊された《メタリック・ミノタウロス》の効果を発動。ペンデュラムゾーンに存在するこのカードが相手によって破壊された時、デッキから獣闘機勲章1枚を手札に加える。私は《ひび割れた獣闘機勲章》を手札に加える」

「そして、俺はスケール4の《魔装騎士ケントゥリア》とスケール8の《魔装剣士ムネシゲ》でペンデュラムスケールをセッティング。更に《ケントゥリア》のペンデュラム効果発動。このカードをペンデュラムゾーンに置いた時、このカードを破壊することで、エクストラデッキのペンデュラムモンスター1体を手札に加えることができる。俺は《ケントゥリア》を破壊し、《魔装槍士タダカツ》を手札に加える。そして、スケール2の《タダカツ》を再びペンデュラムゾーンにセッティングする。これで俺はレベル2から8までのモンスターを同時に召喚可能。来たれ、時の果てに眠りし英雄の魂。漆黒の魂と契約し、封印から解き放たん!ペンデュラム召喚!現れろ、《魔装画伯シャラク》、《魔装騎士ペイルライダー》、《魔装郷士リョウマ》」

 

魔装画伯シャラク レベル4 攻撃1200

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

魔装郷士リョウマ レベル4 攻撃1900

 

「そして、俺はレベル4の《シャラク》と《リョウマ》でオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろ、ランク4。魔装僧ラスプーチン》」

額に五芒星の焼き印が刻まれた、真っ黒な牧師服姿で長い髪と髭が印象的な僧侶が現れる。

 

魔装僧ラスプーチン ランク4 攻撃1600

 

「《ラスプーチン》の効果。このカードがペンデュラムモンスターのみをオーバーレイユニットとしてエクシーズ召喚に成功したとき、デッキから《RUM-審判の魔装騎士》を手札に加える。更に、《ラスプーチン》の効果。オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、デッキから魔装モンスター1体を守備表示で特殊召喚できる。俺はデッキから《魔装獣ユニコーン》を特殊召喚」

オーバーレイユニットを焼き印に宿した《魔装僧ラスプーチン》が祈りをささげると、フィールドに魔法陣が出現し、そこから《魔装獣ユニコーン》が姿を現す

 

魔装獣ユニコーン レベル4 守備800

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・魔装画伯シャラク

 

「この効果で特殊召喚されたモンスターはターン終了時に破壊される。そして、俺は手札から《RUM-審判の魔装騎士》を発動。俺のフィールドのエクシーズモンスター1体をランクが1つ高い魔装騎士へとランクアップさせる。俺は《ラスプーチン》でオーバーレイネットワークを再構築する」

不敵な笑みを浮かべた《魔装僧ラスプーチン》が上空に出現したオーバーレイネットワークの中へと飛び込んでいく。

「万物を測りし漆黒の騎士よ、むさぼりし者たちに飢餓をもたらせ!ランクアップエクシーズチェンジ!!現れろ、《魔装騎士ブラックライダー》!!」

 

魔装騎士ブラックライダー ランク5 攻撃2800

 

「そして、発動した《審判の魔装騎士》の効果発動。ランク5以上の魔装騎士のエクシーズ召喚に成功したとき、1度だけこのカードを手札に戻すことができる」

「まさか…《ブラックライダー》を素材にランク6へと…」

侑斗がエクシーズ次元にもたらした、RUMを使ったエクシーズモンスターのパワーアップはアカデミアにとっては警戒対象となっている。

ランサーズもそれを使ってくる可能性も否定できない。

「俺がそれだけしか能がねえと思うか?俺は手札に戻った《審判の魔装騎士》を墓地へ送り、《魔装騎士ペイルライダー》でオーバーレイネットワークを構築する!」

「何!?」

「やはり出すのか…あのモンスターを!!」

《RUM-審判の魔装騎士》を取り込むと同時に、《魔装騎士ペイルライダー》の鎧にひびが入る。

「混沌の力を得た死の騎士が冥界へ魂を誘う!カオスエクシーズチェンジ!現れろ、けがれた富に包まれし魂を死へ誘う獣、《CX魔装死獣プルートー》!」

鎧が砕けると同時に現れた稲妻の獣にバレットと《獣闘機パンサー・プレデター》が戦慄する。

その魔装騎士の異様な進化は今までのモンスターと明らかに違うように感じられた。

 

CX魔装死獣プルートー ランク8 攻撃3500

 

「《プルートー》はエクシーズ召喚に成功したとき、相手フィールドのセットされているカードをカオスオーバーレイユニットにする効果がある…ま、てめえのフィールドにはそんなカードはないけどな」

「翔太君、1ターン目から攻撃力2800と3500って…」

(《ブラックライダー》も《プルートー》も、連続攻撃できる効果がある。この2体の攻撃を止めることができなければ…)

後攻1ターンキルが成立しそうな勢いの翔太のフィールドを冷静に見つめるバレット。

そんな彼に違和感を抱きながらも、翔太はデュエルを進める。

「《ユニコーン》の効果発動。僕のフィールドの魔装騎士の装備カードにすることができる。僕は《プルートー》に装備。《プルートー》はルール上、魔装騎士としても扱うことができる」

《魔装獣ユニコーン》が青い魔力の粒子へと姿を変えて、《CX魔装死獣プルートー》に取り込まれる。

「そして、《ユニコーン》を装備したモンスターの攻撃力は800アップする」

 

CX魔装死獣プルートー ランク8 攻撃3500→4300

 

「そして、《ユニコーン》を装備したプルートーが相手モンスターを戦闘で破壊したとき、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える。バトル!《プルートー》で《パンサー・プレデター》を攻撃!」

《CX魔装死獣プルートー》が稲妻を宿した爪で《獣闘機パンサー・プレデター》の胴体を容赦なく引き裂く。

引き裂かれたそのモンスターの肉体が稲妻に変わり、それがバレットを襲う。

「これで、合計ダメージは4300。1ショットキルだ」

稲妻がバレットに到達するが、突然フィールドに現れた《獣闘機エレファント・ガードナー》が盾となっていた。

「残念だが、まだ私のライフは残る。私は手札から罠カード《ひび割れた獣闘機勲章》を発動した。自分の獣闘機が戦闘で破壊された時、エクストラデッキからそのモンスターとは異なる獣闘機1体を特殊召喚できる。そして、この効果を発動したターン、自分が受けるすべてのダメージを0にする。なお、この効果は自分フィールドにモンスターが存在しない場合、手札から発動できる」

「ちっ…厄介なカードを」

 

獣闘機エレファント・ガードナー レベル6 守備2600

 

バレット

ライフ4000→1300

 

「更に、《パンサー・プレデター》の効果。融合素材となった《パンサー・ウォリアー》と《ダーク・チェイン》を特殊召喚する」

 

漆黒の豹戦士パンサー・ウォリアー レベル4 守備1600

ダーク・チェイン レベル1 守備0

 

「だったら、せめてお前のフィールドのモンスターを1匹でも多く倒すだけだ。《プルートー》の効果発動。このカードが相手モンスターと戦闘を行ったダメージステップ終了時に、カオスオーバーレイユニットを1つ取り除くことで、続けてもう1度攻撃できる。更にその時、攻撃力もターン終了時まで1000アップする。やれ、《エレファント・ガードナー》を攻撃しろ!」

カオスオーバーレイユニットを爪で引き裂いた《CX魔装死獣プルートー》が《獣闘機エレファント・ガードナー》を引き裂き、消滅させる。

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・魔装騎士ペイルライダー

 

「融合召喚していない《エレファント・ガードナー》はもうよみがえらせることはできない。更に俺は《タダカツ》のペンデュラム効果を発動。俺のペンデュラムモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊したとき、続けてもう1度だけ攻撃できる。《パンサー・ウォリアー》をつぶせ、《プルートー》」

続けざまに《CX魔装死獣プルートー》が咆哮するとともに天井を突き破るほどの雷が起こり、それを受けた《漆黒の豹戦士パンサー・ウォリアー》が黒焦げになって砕け散る。

「続けて、《ブラックライダー》で《ダーク・チェイン》を攻撃!」

《魔装騎士ブラックライダー》が天秤を揺らせることで召喚した隕石が《ダーク・チェイン》を押しつぶした。

「俺はカードを1枚伏せて、ターンエンド。次のターンで終わらせてやる」

 

バレット

手札1

ライフ1300

場 なし

 

 

翔太

手札6→0

ライフ2700

場 CX魔装死獣プルートー(《魔装獣ユニコーン》装備) ランク8 攻撃4300

  魔装騎士ブラックライダー(オーバーレイユニット2) ランク5 攻撃2800

  魔装獣ユニコーン(装備魔法)

  魔装槍士タダカツ(青) Pスケール2

  魔装剣士ムネシゲ(赤) Pスケール9

  伏せカード1(《揺れる眼差し》)

 

勝利までもっていくことはできなかったとはいえ、それでもバレットのフィールドからカードがなくなり、彼の手札も1枚だけになった。

そして、翔太のフィールドには《CX魔装死獣プルートー》と《魔装騎士ブラックライダー》が存在する。

バレットにとっては絶望的な状況だ。

「私のターン、ドロー」

 

バレット

手札1→2

 

「秋山翔太…。貴様にはスタンダード次元で初めて出会った時から、私の邪魔ばかりしてくれる」

「ああ…?」

「そして、シンクロ次元、エクシーズ次元でぶつかり、そしてこの融合次元でも…」

「うるせえよ。てめえが勝手に前に立っているだけだろ?」

だが、考えてみるとアカデミアと関係するデュエリストの中で、バレットとだけ翔太は複数回デュエルをしている。

おまけに各次元で1回ずつ。

最も、オベリスクフォースについては仮面をつけているため、もしかしたら同じ人間とデュエルをしたことがあるかもしれないが。

「そして、分からなくなった…。私の信じる戦い、私の信じる正義…もはや、アカデミアにはそのようなものが存在しないかもしれないな」

「何…?」

これまで戦ってきたバレットらしからぬセリフに眉を顰める。

フッ、と自分らしくない言葉を言ってしまったと自覚すると、思わず鼻で笑ってしまう。

「…私は墓地の《ダーク・チェイン》の効果を発動。自分フィールドにモンスターが存在せず、このカードが墓地に存在する場合、墓地に存在するこのカードを含む融合素材モンスターを除外することで、完全獣闘機を融合召喚する」

「ちっ…墓地融合に完全獣闘機だと!?」

「私が融合素材とするのは《ダーク・チェイン》、そして2体の獣闘機。今こそ、勲章の元に集いし機械仕掛けの獣たちが新たな1つの兵となる」

フィールドに出現した《ダーク・チェイン》の幻影が渦へと変わっていき、その中に2体の獣闘機が飛び込んでいく。

「これが最強の獣闘機であり、私の最後の切り札。融合召喚!出現せよ、《完全獣闘機キマイラ・デストロイヤー》」

《有翼幻獣キマイラ》と同じ姿をしているが、翼部分が黒と赤がベースの3本の刃とブースターが複合したものへと変わっており、暗い血のような色のヘッドギアで頭部を丸々隠している状態のモンスターが渦の中から飛び出してくる。

 

完全獣闘機キマイラ・デストロイヤー レベル10 攻撃0

 

「攻撃力0…?にしては、嫌な感じのモンスターだな」

「これこそが完全なる獣闘機、勝利と名誉のために戦うマシーンだ。更に私は手札から装備魔法《贖いの獣闘機勲章》を《キマイラ・デストロイヤー》に装備。このカードは獣闘機専用の装備カード。この効果により、《キメイラ・デストロイヤー》は戦闘を行うとき、このカードと自身以外のカード効果を受けない。バトル。《キマイラ・デストロイヤー》で《プルートー》を攻撃」

ブースターを吹かせ、上空へ飛びあがった《完全獣闘機キマイラ・デストロイヤー》のヘッドギアの口の部分が開くと同時に銃口が伸びる。

「《キマイラ・デストロイヤー》の攻撃力は戦闘を行う相手モンスターの攻撃力を100上回った数値となる」

 

完全獣闘機キマイラ・デストロイヤー レベル10 攻撃0→4400

 

「だが、《ムネシゲ》には俺のフィールドのペンデュラムモンスター1体を1度だけ破壊から守る効果が…」

「無駄だ。《キマイラ・デストロイヤー》が戦闘を行う相手モンスターはダメージステップ終了時まで効果が無効化され、他のカード効果を受けなくなる。《ムネシゲ》のペンデュラム効果も無意味だ」

「くそ…!効果を打ち消したうえで、必ず戦闘に勝つというわけか!?」

銃口から銀色の弾丸が発射され、頭部を撃ち抜かれた《CX魔装死獣プルートー》が消滅する。

 

 

翔太

ライフ2700→2600

 

「更に、《キメイラ・デストロイヤー》の効果。このカードが戦闘で相手モンスターを破壊する度に、このカードの上にカウンターを1つ置く」

 

完全獣闘機キマイラ・デストロイヤー レベル10 カウンター0→1

 

「なら俺は破壊された《プルートー》の効果を発動!モンスターゾーンのこのカードが破壊された時、俺のペンデュラムゾーンに存在するカードをすべて破壊し、このカードをペンデュラムゾーンに置く!」

《魔装槍士タダカツ》と《魔装剣士ムネシゲ》が消え、消滅したはずの《CX魔装死獣プルートー》が新たに青い光の柱を生み出す。

「私はこれで、ターンエンドだ」

 

バレット

手札2→1

ライフ1300

場 完全獣闘機キマイラ・デストロイヤー(カウンター1 《贖いの獣闘機勲章》装備)) レベル10 攻撃0

  贖いの獣闘機勲章(装備魔法)

 

 

翔太

手札0

ライフ2600

場 魔装騎士ブラックライダー(オーバーレイユニット2) ランク5 攻撃2800

  CX魔装死獣プルートー(青) Pスケール0

  伏せカード1(《揺れる眼差し》)

 

「ちっ…やばいモンスターを出してきたな」

《魔装騎士ペイルライダー》の効果を使えば、簡単に倒せる可能性があるものの、生憎そのモンスターはカオスオーバーレイユニットとして、墓地へ送られてしまった。

おまけに、ペンデュラムゾーンのカードが1枚のみとなると、《揺れる眼差し》の効果で使えるのは効果ダメージのみ。

「秋山翔太、この《キマイラ・デストロイヤー》を倒さない限り、貴様に勝利はない」

「そいつを倒さないと勝てない…?ふざけたことを言ってるんじゃねえぞ。俺のターン!」

 

翔太

手札0→1

 

「ちっ…!俺は《ブラックライダー》を守備表示に変更。これでターンエンドだ」

 

 

バレット

手札1

ライフ1300

場 完全獣闘機キマイラ・デストロイヤー(カウンター1 《贖いの獣闘機勲章》装備)) レベル10 攻撃0

  贖いの獣闘機勲章(装備魔法)

 

 

翔太

手札1

ライフ2600

場 魔装騎士ブラックライダー(オーバーレイユニット2) ランク5 攻撃2800→守備2000

  CX魔装死獣プルートー(青) Pスケール0

  伏せカード1(《揺れる眼差し》)

 

「やはり、何もできずだ。私のターン、ドロー」

 

バレット

手札1→2

 

「バトル。《キマイラ・デストロイヤー》で《ブラックライダー》を攻撃。貴様の2体目の魔装騎士もこれで葬られる!」

天秤に魔力を集中させてバリアを展開する《魔装騎士ブラックライダー》だが、突撃してきた《完全獣闘機キマイラ・デストロイヤー》に突破され、胴体を食いちぎられ、破壊される。

「《キマイラ・デストロイヤー》の効果。カウンターが1つ置かれる」

 

完全獣闘機キマイラ・デストロイヤー レベル10 カウンター1→2

 

「《キマイラ・デストロイヤー》の効果。このカードの上に乗っているカウンターを2つ取り除くことで、このカードは続けてもう1度だけ攻撃できる。その時、その攻撃力はこのターン、戦闘で破壊した相手モンスター1体と同じになる」

 

完全獣闘機キマイラ・デストロイヤー レベル10 攻撃0→2800

 

「翔太君のライフは2600!この攻撃を受けたら、翔太君が…!!」

「いけ、《キマイラ・デストロイヤー》!今度こそ牙を奴に届けて見せろ!」

《完全獣闘機キマイラ・デストロイヤー》が視線を翔太に向けると、口の中に隠れた銃口を再び露出させ、とどめの弾丸を発射する。

スローモーションに映るその銃弾を見た翔太は即座に温存していたカードを出す。

「俺は手札の《魔装壁モトタダ》の効果を発動!俺がダイレクトアタックを受けるとき、そのモンスターの攻撃力が俺のライフを上回っている場合、手札から墓地へ送ることでそのダメージを0にする」

左足の義足に五芒星が刻まれている、茶色い重装な鎧姿で白い髪をした侍が翔太の盾となって、その弾丸を受け止め、消滅する。

「そして、墓地に存在する魔装騎士1体を守備表示で特殊召喚できる。蘇れ、《魔装騎士ペイルライダー》」

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 守備2100

 

「たとえ《ペイルライダー》を召喚したことで、《キマイラ・デストロイヤー》の敵ではない。私はこれで、ターンエンドだ」

 

バレット

手札2

ライフ1300

場 完全獣闘機キマイラ・デストロイヤー(《贖いの獣闘機勲章》装備)) レベル10 攻撃0

  贖いの獣闘機勲章(装備魔法)

 

 

翔太

手札0

ライフ2600

場 魔装騎士ペイルライダー レベル7 守備2100

  CX魔装死獣プルートー(青) Pスケール0

  伏せカード1(《揺れる眼差し》)

 

「俺のターン!」

 

翔太

手札0→1

 

「俺は手札からスケール2の《魔装剛毅ヒデヒサ》をセッティングし、効果を発動。《ヒデヒサ》はもう片方のペンデュラムゾーンに《ヒデヒサ》以外の魔装カードが存在する場合、自らを破壊することでデッキからカードを1枚ドローできる」

出現したばかりの《魔装剛毅ヒデヒサ》が消え、翔太はデッキトップに指をかける。

視線はカードではなく、相手である《完全獣闘機キマイラ・デストロイヤー》に向けられていた。

(こいつを倒すための手段はある、だが…)

問題はそれを阻む壁だ。

それを超えるカードが来るのを翔太は待っている。

勢いよくドローした翔太はそのカードを見ることなく、そのままセットする。

「俺はこれで…ターンエンドだ」

 

 

バレット

手札2

ライフ1300

場 完全獣闘機キマイラ・デストロイヤー(《贖いの獣闘機勲章》装備)) レベル10 攻撃0

  贖いの獣闘機勲章(装備魔法)

 

 

翔太

手札1→0

ライフ2600

場 魔装騎士ペイルライダー レベル7 守備2100

  CX魔装死獣プルートー(青) Pスケール0

  伏せカード2(うち1枚《揺れる眼差し》)

 

(何…?確認しないままセットしただと?)

デュエルディスクは正常に機能しているため、当然伏せられたのはルールに従っている魔法・罠カード。

一体何をセットしたのかはわからないが、それでも行動に変化はない。

「私のターン、ドロー」

 

バレット

手札2→3

 

「私は手札から装備魔法《色褪せた獣闘機勲章》を貴様の《ペイルライダー》に装備。このカードは私のフィールドに獣闘機融合モンスターが存在する場合にのみ発動できる」

「俺のモンスターに勲章を与える…?どういうつもりだ」

《魔装騎士ペイルライダー》の左胸の装甲に青と赤の布飾りがついたカイトシールド型の勲章が装備されるが、布には若干切れている個所があり、おまけにサビが目立つ。

「私のモンスターは装備モンスター以外を攻撃対象とすることができないが、獣闘機が装備モンスターと戦闘を行うとき、そのモンスターの表示形式を変更することができる。更に、このカードを装備したモンスターが獣闘機との戦闘またはそのモンスターの効果によってフィールドを離れた場合、そのモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える」

「翔太君のライフは2600で、《ペイルライダー》の攻撃力は2500…もし、攻撃表示に変わった《ペイルライダー》が《キマイラ・デストロイヤー》に攻撃されたら…!」

「《キマイラ・デストロイヤー》の攻撃力は《ペイルライダー》を攻撃する場合、2600になる。戦闘ダメージ100と効果ダメージ2500で、合計2600のダメージを受けて、翔太君は…負ける」

「そんな…!!」

おまけに《贖いの獣闘機勲章》の効果によって、カード効果から守られる《完全獣闘機キマイラ・デストロイヤー》を止める手段がない。

「秋山翔太…一つだけ、聞きたいことがある」

「ああ…?」

「もし、貴様の信じる正義がすべて間違いだったとしたら、もし自分が正しいと思ってやってきたことすべてが否定されたとしたら、貴様はどうする?とどめを刺す前に、それだけ聞かせてくれ」

これまで忠実なアカデミアのデュエル戦士としてふるまってきたバレットらしからぬ言葉に翔太の目が留まる。

表情そのものはこれまで戦ってきたときと変わらない。

だが、その言葉を発した瞬間の彼からは何かありえないものが感じられた。

「知らねえな、正義がどうの正しいかどうの。俺は自分のために戦っているだけだ。御大層な正義なんて、俺が持っているわけねえだろ」

あくまで戦っているのは自分の中にいるベクターを倒すため。

アカデミアと戦うのはそのついで。

同時に伊織と永瀬博士を守るのもそのついで。

その道を決めているのは自分。

誰かに操られて戦っているわけでも、誰かに100%従って戦っているわけでもない。

「そうか…。フッ、そんな貴様だから気が食わないわけか。勲章に縛られず、ただただ自分のやりたいようにやる。それが…私の道を乱す」

「勝手に乱れるなよ。勝手に乱れて、勝手に俺のせいにして、いい迷惑だぜ。ほら…さっさと攻撃しろよ。勝てるかも、しれねーだろ?」

そんなことを言って、素直に倒されるつもりもないのは翔太の口元を見ると明らかだ。

彼の言葉に乗り、そのままバトルをした場合にどうなるか。

その結末はおそらく、バレットの思い通りにならないものだろう。

それでも、バレットはためらうことなく宣言する。

「バトル。《キマイラ・デストロイヤー》で《ペイルライダー》を攻撃!同時に、《ペイルライダー》の表示形式を《色褪せた獣闘機勲章》の効果によって、攻撃表示に変更する」

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 守備2100→攻撃2500

 

「そして、《キマイラ・デストロイヤー》の攻撃力は《ペイルライダー》の攻撃力を100上回った数値となる!これで、貴様は終わりだ」

 

完全獣闘機キマイラ・デストロイヤー レベル10 攻撃0→2600

 

「翔太君!!」

《完全獣闘機キマイラ・デストロイヤー》が放つ弾丸が《魔装騎士ペイルライダー》を撃ち抜こうと一直線に襲い掛かる。

ゆっくりと襲い掛かる敗北の一撃。

だが、翔太はこの瞬間を待っていた。

「罠発動!!《砂塵の大竜巻》相手フィールドの魔法・罠カードを1枚破壊する」

「そのカードで《色褪せた獣闘機勲章》を破壊するつもりか!?」

「いや、俺が破壊するのは《贖いの獣闘機勲章》!」

「何!?」

《贖いの獣闘機勲章》が消えたものの、それでも放たれた弾丸の勢いは衰えない。

ここで《色褪せた獣闘機勲章》を破壊すれば、このターンを生き残る可能性があるにもかかわらず、自らそれを捨てる格好に見えた。

「無駄なことを…!!」

「そうか?だが、これで《キマイラ・デストロイヤー》は無敵じゃねえよな。俺は墓地の《魔装壁モトタダ》の効果を発動!俺のフィールドの魔装騎士がエクストラデッキから特殊召喚された相手モンスターと戦闘を行うとき、このカードを墓地から除外することで、その相手モンスターの攻撃力を0にし、効果を無効化する!」

「何!?」

光剣を抜いた《魔装騎士ペイルライダー》が弾丸を一刀両断する。

そして、《完全獣闘機キマイラ・デストロイヤー》が目の前に現れた老将の幻影が投げつけた槍で頭部を貫かれ、力を失う。

 

完全獣闘機キマイラ・デストロイヤー レベル10 攻撃2600→0

 

「攻撃力…0!?」

「終わりだ…熊野郎。クワトロ・デスブレイク」

弾丸を斬った勢いに乗ったまま、《魔装騎士ペイルライダー》が力尽きた《完全獣闘機キマイラ・デストロイヤー》に斬りかかる。

一刀両断されたそのモンスターが左右に倒れた後で爆発し、巻き込まれたバレットはあおむけになって倒れた。

 

バレット

ライフ1300→0

 

 

メタリック・サイクロプス

レベル4 攻撃1200 守備1000 地属性 獣戦士族

【Pスケール:青1/赤1】

(1):1ターンに1度、自分メインフェイズ時に発動できる。「獣闘機」融合モンスターによって決められた、このカードを含む融合素材モンスターを自分フィールドから墓地へ送り、その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。

【モンスター効果】

(1):Pゾーンに存在するこのカードが破壊された時、自分の墓地に存在する「獣闘機」融合モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールドに表側守備表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターはターン終了時に破壊される。

 

獣闘機ソニック・グラディエイター

レベル6 攻撃1900 守備1200 融合 闇属性 機械族

レベル4以下の獣戦士族モンスター+レベル4以下の機械族モンスター

このカード名のカードは自分フィールド上に1体しか表側表示で存在できない。

(1):自分フィールドにこのカード以外の「獣闘機」モンスターが存在する場合、自分フィールドの「獣闘機」モンスターの攻撃力は自分フィールドに存在する「獣闘機」モンスターの数×500アップする。そして、相手はこのカード以外の「獣闘機」モンスターを戦闘・効果の対象にできない。

(2):このカードの融合召喚に成功したときに発動する。デッキからレベル4以下の獣戦士族モンスター1体を手札に加える。

 

ダーク・チェイン

レベル1 攻撃0 守備0 効果 闇属性 機械族

このカード名の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか発動できない。

(1):このカードが手札に存在するとき、自分メインフェイズ時に発動できる。「獣闘機」融合モンスターによって決められた、このカードを含む融合素材モンスターを手札から墓地へ送り、その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。

(2):自分フィールドにモンスターが存在せず、このカードが墓地に存在する場合に発動できる。「完全獣闘機」融合モンスターによって決められた、このカードを含む融合素材モンスターを墓地から除外し、その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。この効果はこのカードが墓地へ送られたターン、発動できない。

 

メタリック・ミノタウロス

レベル4 攻撃1700 守備1000 地属性 獣戦士族

【Pスケール:青5/赤5】

このカード名の(1)のP効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドの「獣闘機」モンスターが戦闘・効果によって相手にダメージを与えたときに発動できる。自分はデッキからカードを1枚ドローする。

【モンスター効果】

(1):Pゾーンに存在するこのカードが相手によって破壊された時に発動する。自分はデッキから「獣闘機勲章」魔法・罠カード1枚を手札に加える。

 

魔装僧ラスプーチン

ランク4 攻撃1600 守備1000 エクシーズ 闇属性 魔法使い族

レベル4の「魔装」モンスター×2

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードのX召喚に成功したとき、このカードのX素材がPモンスターのみの場合に発動できる。自分はデッキから「RUM-審判の魔装騎士」1枚を手札に加える。

(2):このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。デッキから「魔装」モンスター1体を守備表示で特殊召喚する。この効果を発動したターン、自分は「魔装」以外のモンスターを召喚・特殊召喚できず、この効果で特殊召喚されたモンスターはターン終了時に破壊される。

 

RUM-審判の魔装騎士

通常魔法カード

このカード名の(2)の効果はデュエル中1度だけ発動できる。

(1):自分フィールドに存在するXモンスター1体を対象として発動できる。EXデッキからランクが1つ高い「魔装騎士」Xモンスター1体を、対象としたモンスターの上に重ねてX召喚する。

(2):自分がランク5以上の「魔装騎士」XモンスターのX召喚に成功したとき、このカードが墓地に存在する場合に発動できる。このカード1枚を手札に加える。この効果を発動したターン、自分は「魔装」以外のモンスターを召喚・特殊召喚できない。

 

ひび割れた獣闘機勲章

通常罠カード

(1):自分フィールドの「獣闘機」モンスターが戦闘で破壊され墓地へ送られた時、EXデッキに存在するそのモンスターとは名前の異なる「獣闘機」融合モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。その後、ターン終了時まで自分が受けるすべてのダメージが0となる。

(2):このカードは自分フィールドにモンスターが存在しない場合、手札から発動できる。

 

魔装壁モトタダ

レベル5 攻撃100 守備2500 効果 地属性 戦士族

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):相手の直接攻撃宣言時、攻撃モンスターの攻撃力が自分LPを上回っている場合に手札のこのカードを墓地へ送ることで発動できる。その攻撃で発生する自分へのダメージを0にする。その後、自分の墓地に存在する「魔装騎士」モンスター1体を表側守備表示で特殊召喚する。

(2):自分フィールドの「魔装騎士」モンスターがEXデッキから特殊召喚された相手モンスターを戦闘を行うダメージ計算時、墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。ターン終了時までその相手モンスターの攻撃力は0となり、効果も無効化される。

 

完全獣闘機(パーフェクト・ビーストボーグ)キマイラ・デストロイヤー

レベル10 攻撃0 守備0 融合 地属性 獣戦士族

闇属性・機械族モンスター+「獣闘機」融合モンスター2体

(1):このカードは効果によって破壊されない。

(2):このカードが相手モンスターと戦闘を行うとき、このカードの攻撃力・守備力はダメージステップ終了時までその相手モンスターの攻撃力+100の数値となる。

(3):このカードが相手モンスターを戦闘で破壊したときに発動できる。このカードの上にカウンターを1つ乗せる。

(4):このカードが相手モンスターと戦闘を行ったダメージステップ終了時、このカードに乗っているカウンターを2つ取り除くことで発動できる。続けてもう1度攻撃できる。その時に相手プレイヤーへ直接攻撃する場合、このカードの攻撃力はダメージステップ終了時までこのターン、このカードが戦闘で破壊したモンスターの攻撃力と同じになる。

 

贖いの獣闘機勲章

装備魔法カード

「獣闘機」融合モンスターにのみ装備可能。

(1):装備モンスターが戦闘を行うとき、そのモンスターはダメージステップ終了時までこのカードと自身以外のカード効果を受けない。

 

「はあ、はあ、はあ…」

「はあ、はあ、はあ…強いな、貴様は…どこまでも強くなる…。完全の名を持つ獣闘機すら…私の最後の切り札さえも乗り越えた…」

このデュエルには自分が持っているすべてを翔太にぶつけたつもりだった。

確かにあと少しで勝利をつかむことはできただろう。

だが、結果として今ここでの勝者は彼であり、敗者は自分だ。

「バレット…」

「う、ううう…」

「お父さん!!」

苦しみ出す自分の父親の名前を呼ぶ伊織は彼の手に触れると同時に、大きく目を見開いた。

永瀬博士はそっと呆然とする彼女の頬に触れ、優しい笑みを見せる。

「すまんなぁ…。本当は暖かい手で触れてやりたかったが…もう、そうはいかない。今の私はかりそめの命。こうして真実を伝えるためだけに延命していたに過ぎない…。よく聞け、プロフェッサーは自らの夢を、失った家族を取り戻す願いをAIにゆだねた。それが今…アカデミアを動かしている」

「AI…!?でも、プロフェッサーの命令に…」

「そう思い込まされているに過ぎない。今のプロフェッサーはAIによって作られた虚像。そして、アカデミアはそれに操られる…哀れな人形…」

息が徐々に絶え絶えとなっていき、心拍数に乱れが生じる。

「駄目…駄目、お父さん!!死んじゃ、嫌だよ!!」

「伊織…悲しむことはない。私はいつでも、お前と一緒にいる。これからは離れることはないのだ…」

震える手を抑え、永瀬博士は懐からカードケースを出し、それを差し出す。

「持っていきなさい…この中に、私の伝えたい全てが入っている。本当は私の口ですべて伝えたかったが…残念だが、もう時間はない…」

「永瀬博士、一つ確認したい。父は…プロフェッサーは…死んだのか?」

「分からない…だが、もうすでにAIにすべてをゆだねている以上は、死んでいるか…生きているとしても、もう口が利ける状態とは思えないが…」

「…そうか」

それはある意味、もう父と対話する機会がないかもしれないという無慈悲な言葉だった。

だが、今の零児はそれを寂しいとも悔しいとも思えない。

いつかきっと、その感情が爆発するときが来るかもしれないが、なぜか今はそれをただの現象としかとらえることができずにいた。

「私も…プロフェッサーと同じだ…。失ったものを取り戻そうともがいて…今を…未来を捨てた、生きた屍。そのようなものに縛られないでくれ…。我々老人が…未来を奪うわけにはいかん。だから…」

「うん…分かってる。次元戦争を止める。お父さんが叶えたかったものはちゃんと叶えるから…だから、安心して…」

「ああ…ありがとう、伊織…愛している…よ」

目を閉じると同時に伊織に触れる手が落ちる。

「お父さん…お父さん!!」

崩れ落ちた伊織はもう動かない彼の手に触れ、声をあげて泣き始める。

かける言葉を見つけることができず、侑斗は視線をそらし、遊矢は顔を下に落とす。

「なんなんだよ、これ…悲しいことばっかりじゃないか。悲しくなくするために、戦っているはずなのに…」

「ちっ…」

伊織達を見ることができず、翔太は睨むように倒れるバレットを見つめる。

彼の視線を受けてもなお、バレットは起き上がる気配がない。

「憎いなら好きにしろ。もう私はアカデミアに戻ることはできない」

「どういうことだ…?」

「私がここに1人で送り込まれたのは、もう俺には兵士としての価値はない、鉄砲玉にするくらいがちょうどいいと判断されたからだ。アカデミアは既にお前たちがここまで来ることは予測できただろうにな…。だが、最後に貴様と戦うことくらいならできるかもしれない。そう思って来たが、最後はこの状態…。報いなのだろうな、これが…」

戦士としての名誉のため、戦い続けてきたが、結局やっていることは侵略であり、平和に暮らしていたはずの3つの次元を戦場に変えたことだけだ。

そのことは気づいていたはずだが、見て見ぬふりをして、プロフェッサーの命令を免罪符にしていたに過ぎない。

だが、それを認めてしまったら、戦士でいられなくなる。

今までの自分をすべて否定することになる。

そのことが怖かった。

アカデミアの忠実な戦士を演じながらも、一皮むけばこのザマ。

そのような自分を思わず嘲笑してしまう。

「報い?こんなものを報いなんて思わないでもらう。お前やアカデミアの馬鹿野郎どもにはたっぷり苦しんで、なじられて、無様に生き延びて…真っ当に罪を償ってもらうぜ」

「まっとうに償う…か。考えたこともなかった…」

きっと、もう戦士として生きることはできなくなるだろう。

だが、もう疑問を抱きながら、戦士を演じる必要がないことになぜか安心感を抱いている自分が感じられた。



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第115話 深海より目覚めるドラゴン

「遊矢…ご飯、持ってきたわよ」

コンコンと遊矢の部屋をノックした柚子だが、返事は聞こえない。

ファウスト島を出てから3日、島で手に入れた海路図を基に、アカデミアが仕掛けているであろう機雷やレーダーから逃れるべく、現在は迂回している。

船長からの情報によれば、あと4日でアカデミアに到着できるとのことだ。

ファウスト島からは目と鼻の先であり、まっすぐ進みたいところだが、何が何でも勝たなければならないことから、少しでも危険を避けることが賢明なのかもしれない。

柚子は置きっぱなしになっているトレーに目を向ける。

朝持ってきたものだが、冷めていて、手を付けた痕跡もない。

「遊矢…ちゃんと、食べてね」

今の柚子にはできることは、そうして声をかけることくらいだった。

 

(小僧、食わぬのか?)

自室のベッドに横たわり、起きる気配を見せない遊矢にオッドアイズが声をかけるが、反応を見せない。

遊矢の脳裏に浮かぶのはエドと永瀬博士の死に顔、そして悲しむ柚子の顔。

次元戦争を止めるために、笑顔を取り戻すために戦っているにもかかわらず、悲しみが増える一方だ。

(マスター…その、元気出してよ。マスターはボクに、あの人に笑顔を…)

(やめておけ、小娘。今のあの男には言葉は届かん)

(オッドアイズ、けど…けど、ほうっておけないよ!今のままじゃ、マスターは…)

(ああ、そうだ。これこそが、この絶望こそが時計の針を進める。だが、それを止めるのは俺でも貴様でもない)

(じゃあ、誰が…?柚子さんが?)

(いや…この甘い小僧に必要なのは荒療治、といったところか)

 

ヒイロの自室には零児と翔太、伊織、侑斗、ウィンダが集まり、ヒイロがノートパソコンを操作し続ける。

ノートパソコンに刺さっているUSBメモリは伊織が永瀬博士から託されたカードケースの中にカードと一緒に入っていたものだ。

「これで…よし。あの博士から受け取ったデータの解析は終わった。これで、自由に閲覧できる」

「お父さんが伝えたかったことが、全部見れるの…?」

「そうだ。時間がかかってしまったがな」

「いえ、それでもあなたがいなければ解析しきれなかった。感謝します、ヒイロ・リオニス」

零児の感謝の言葉をよそに、ヒイロは仲間の一人である遊星のことを頭に浮かべる。

彼にかかれば、一日でこのデータの解析を終わらせることができただろう。

「アークエリアプロジェクト、プロフェッサーの代理人であるAI、世界の分断の引き金を引いたレイとズァーク…そのすべてがこれから分かってくるか…」

「で、アークエリアプロジェクトがそのレイって女をよみがえらせることで、その4人が…なるほどな、そういうことかよ」

データの中にある4人の少女の写真データを見た翔太が顔をしかめる。

アカデミアがそれにこだわる理由をようやく理解できたが、人身御供になる彼女たちのことを哀れに思わずにはいられない。

「プロフェッサーが作ろうとしている理想郷はまさに自分のためだけのもの、欠片で記憶を取り戻してから、今のこの世界を現実ととらえることができなくなったのかもしれない。悲しい話だけど」

だからこそ、次元戦争を引き起こし、大勢の人の命を代償にするような計画を起こすことができ、そしてBAT-DIEのようなものまで作れてしまう。

命を軽んじるそんな彼を許すことはできないが、憐れまずにはいられない。

「そして、ズァークか…。世界の破壊者の遺伝子は引き裂かれてもなお、残った…。…侑斗、ウィンダ、手を貸してくれ。ほかの奴らは全員部屋を出ろ」

「手を貸すのはいいですけど、何を…?」

「2つ、やることがある。1つはこれからやる。もう1つは…それが終わってからだ。すぐに出てくれ」

「おい、何をしようとしているんだ?俺がいちゃ、邪魔なのかよ?」

「保険はかけないといけないからな。特に、ベクターを宿している時限爆弾のお前に、手の内を明かすわけにはいかないだろう?」

「ちっ…!」

そんなことを言われたら、納得するしかないが、スパイのように思われることには納得いかず、舌打ちをし、大股で歩いて部屋を出ていく。

「あ、待ってよ、翔太君!」

「ふう…あとは2人にお任せする」

追いかけるように部屋を出た伊織に続き、零児も2人に頭を下げてから部屋を後にする。

ウィンダがドアに鍵をかけ、翔太は部屋にある棚からケースを出す。

「すぐに1つ目に取り掛かるぞ。こいつを使って、物を作る」

「これは…!?これを、加工するんですか!?それに、これは…」

ケースの中にある原材料と設計図を一通り見た侑斗は驚くしかなく、それで何をしようというのかというヒイロの意図を読むことができなかった。

一番先に思い浮かんでしまうのは、これで遊矢にあまりにも残酷な決断をさせてしまうことだ。

「使うようなことがなければいい。だが、ああなってしまったらあいつには覚悟を決めてもらう。世界のためにな」

「ひどいことを考えますね…シンクロ次元の時といい、あなたは…」

「そうだな、そんな考えを浮かぶような人間は…俺一人で十分だ。このことは榊遊勝にも話す」

 

食事の時間が過ぎ、誰もいない食堂で伊織は机の上に乗っているビャッコを撫でる。

「キュー、キュイー…」

「励ましてくれているの?ありがとう、ビャッコちゃん」

優しく笑った伊織は形見のデッキケースの中にあったカードを手に取る。

これらのカードはきっと、伊織との再会を夢見て、その時のために用意してくれていたのだろう。

「伊織」

「あ、翔太君。ありがとう」

手にしていたカードをテーブルに置き、お茶を受け取った伊織はさっそくそれを飲み始める。

「おい…大丈夫か?」

「え?大丈夫だよ、ほらいつも通りで、カードも手に入ったから思いっきりパワーアップさせて…」

「はぁ…。で、空回りか?まぁ、俺が言う義理じゃあないが、無理すんなよ。お前の無理ははっきり言って、笑えないからな」

ため息交じりの言葉に、笑顔を作っていた伊織の表情が固まる。

次第に体を震わせ、顔を下に向ける。

「やっと、あえて…あんな体になっていたから、もう難しいってことは…そんなことは分かってた。けど…」

伊織の脳裏には本当の父親である彼の思い出はほんのわずかの時間のものでしかない。

そして、一番強烈に残る記憶が彼の死になってしまった。

「けど…本当はお父さんとほんの少しでもいいから、普通に暮らしたかった…。周りのみんなと同じように、普通に笑いあいたかった…」

ポロポロと涙をこぼし、我慢していた感情を吐き出していく。

そんな伊織の顔を翔太は自分の胸に押し付ける。

「これで、周りは気づかねえだろ…?」

「翔太君…う、うう…」

声を押し殺し涙を流す伊織に翔太は何も言うことはなかった。

しばらく涙を流して、流して、流しつくした伊織はようやく翔太から離れる。

「ごめんね、翔太君。けど…元気が出た。翔太君も翔太君で大変なのに」

「当たり前だ、弱音はこれくらいにしろよな」

(秋山翔太、榊遊矢、ユーゴ、1730に船内デュエルリングへ向かえ。繰り返す、秋山翔太、榊遊矢、ユーゴ、1730船内デュエルリングへ…)

「デュエルリングへ呼び出し…?何だよ、時間まで指定して」

普通ならば、緊急での呼び出しの時に放送されるはずだが、放送でわざわざ時間まで指定してくるのは異例の話だ。

不可解な命令に疑問を抱きながらも、翔太は時計を確認する。

まだそれまでに時間があり、おまけにデュエルリングということはデュエルをする可能性も考えられた。

 

「永瀬博士…プロフェッサー…そして、アークエリアプロジェクト…なるほど…」

船内の病床に横たわる遊勝はヒイロから伝えられた一つ一つの言葉を自分の中でかみ砕いていき、飲み込んでいく。

ようやく親友の暴走の理由を知ることができたが、知ってしまったがために余計に彼への説得が困難だということ、それにそもそもその説得が可能かどうかすらわからなくなった。

そして、遊矢もまたそのプロジェクトの中にいて、彼の身に起こるであろう可能性とそれへの処置方法を聞き、彼の視線はヒイロではなく天井に向けられる。

「ヒイロ・リオニス、こんなことを直接話すということは、少なくとも誠意を見せようとしているのだろう。そのことは分かる。だが…あまりにも卑怯だな」

秘密裏にそうしてくれていて、そのことを後から気づくことができたのであれば、父親としてヒイロを許すことができず、エンターテイナーとしてはあるまじきことではあるかもしれないが、彼を憎んだだろう。

それが彼のためであり、世界のためであることを理解できたとしても。

だが、正面からそのようなことを言われたのであれば、どんなに憎んだとしても、心の片隅に彼を許さなければならないという感情が生まれてしまう。

その葛藤をどう始末すればいいのか、そのような悩みをヒイロが与えてしまう。

「詫びるつもりはない。俺を卑怯者だと思うならそれでいい。あとは…あんたの息子、榊遊矢本人の問題なのだからな」

「遊矢…ユート、ユーゴ、そして…融合次元にいる遊矢に似た少年」

「ユーリ…奴は侑斗が顔を合わせている。実際にデュエルをしたこともある」

その時は決着がつかなかったものの、その時の状況はウィンダから教えてもらっている。

彼のエースモンスターといえる《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》とテーマである捕食植物。

あの侑斗ですら苦戦した相手で、おそらくはアカデミアにとってはジョーカーともいえるカードだろう。

オベリスクフォースすら恐れる彼を倒さなければ、おそらくはプロフェッサーのもとにたどり着くことすらできないかもしれない。

「毒には毒を持って制する…。奴がジョーカーであるなら、俺たちもジョーカーをぶつけるだけだ」

「戦わせるというのか…遊矢に、危険すぎる!」

「分かっている。そして、今の榊遊矢に戦わせるわけにはいかない。だから…見極める。あいつの可能性を」

「可能性…か、ひどい父親だな、俺は。息子をこのような苦難の道へ歩かせることになるとは…」

 

「離してくれよ、翔太。俺は…疲れていて」

「知っている。いいからおとなしくしてろ」

約束の時間になり、遊矢の腕をつかみ、ひっぱりながら翔太が指定されたデュエルリングへと足を踏み入れる。

アクションデュエルやライディングデュエルといったあらゆるデュエルが可能になるように、階層1つを丸々デュエル専用にしており、中央には4人分のスペースが用意され、その周囲にはサーキットもある。

翔太の視線にはすでに青コーナーのスペースに入っているヒイロと侑斗の姿、そして侑斗の背後で精霊の姿になっているウィンダの姿が映る。

そして、赤コーナーにはすでにユーゴが待機していた。

「待っていたよ、翔太君、遊矢君」

「おっせーぞ!お前ら!!」

「こいつの場合、来たがってすらいなかったがな」

翔太のにらむような視線を遊矢は横目に逸らす。

実際、翔太は遊矢が自力で来ないだろうと踏んでおり、無理やり部屋を蹴り開けて、無理やり彼を連れて来ていた。

不機嫌になる遊矢だが、翔太にとってはどうでもいいことだ。

「永瀬博士の遺したデータの解析が終わった。そして、その中でとても重要なデータを見つけた。榊遊矢、お前とユート、ユーゴ…そしてこの融合次元にいるもう1人のお前に似た少年、ユーリについてのことだ」

「俺たちのこと…?」

(ああ、そうだ…。あの時、シンクロ次元で確かに俺たちは感じたはずだ)

偶然にも4人がそろい、そこで遊矢達は何か大きな重力に引っ張られるような感触を味わった。

そして、1つになることを願った。

あの時柚子が来て、ブレスレッドを発動していなければどうなっていたかはわかったものではない。

「お前たちには恐ろしい秘密が隠されている。そのすべてを俺たちは知った。そして、榊遊矢。特にお前はそのことを知ったその瞬間、覚悟を決めなければならない」

「おい、だったら俺はいらないだろう?」

遊矢達4人の問題だというなら、自分には関係のないことのようにおもえてしまう。

特に自らにはベクターという存在がはらんでいる以上、それにかかわる余裕はない。

「君にも、僕から伝えることがある。だから、君にも来てもらったんだ。でも、その前に…」

「榊遊矢、ユーゴ…お前たちにそれを知ってもなお、突き進む覚悟があるのか、デュエルで見極めさせてもらう」

「ちっ…勝手な野郎だ。ほらよ!」

翔太に投げられる形で席へ入れさせられた遊矢は出ようとするが、その前にすでに侑斗とウィンダが出ており、3人がいる状態でデュエルリングが起動して、それぞれを乗せた席が上へと上がっていく。

「ああ、エリクの時といい、なんだよ!そのまどろっこしいのは!俺はそーゆーのが一番嫌いだぜ!!」

既にこういうシチュエーションはユーゴにはおなかがいっぱいな展開だ。

ヒイロという人間についてはよくわからないうえに、どこか上から目線な様子が気に食わない。

「その…ヒイロさん、俺…今はデュエルをする気分じゃ…」

「なんだ?」

「いろいろあって、疲れてるんだ。今は…アカデミアとの決戦に」

「ふん、そんなぶれた覚悟でアカデミアに勝てるほど、笑顔を取り戻せるほどお前の手にしたいものは安っぽいものか?」

「なんだと…!?」

カチンとくるもののあるヒイロの言葉に反論しようとする遊矢だが、目を合わせた瞬間に黙り込んでしまう。

彼の目から来るプレッシャーをオッドアイを通してダイレクトに感じてしまっていた。

「お前のこれからしようとすること、そして取り戻そうとしている物はとてつもなく巨大なものだ。それをつかむ覚悟があるなら、何があろうと叩き潰して前へ進め」

「俺は…くぅ!!」

遊矢はデッキをセットし、同時に中央のフィールドゾーンが虹色の光を発する。

シンクロ次元で手に入れたモーメントを利用したリアルソリッドビジョンシステムが起動した合図だ。

「来い…!!」

「俺は気が立っているんだ!さっさと終わらせてやる!!」

「「デュエル!!」」

 

ヒイロ

手札5

ライフ8000

 

ユーゴ&遊矢

手札

ユーゴ5

遊矢5

ライフ4000

 

「遊矢…」

伊織から話を聞いてデュエルリングに来た柚子はデュエルを始める遊矢の、傷ついている姿を客席から見ることしかできなかった。

「先攻は俺だ。俺は手札からフィールド魔法《幻獣界》を発動」

発動と同時に周囲に岩山のソリッドビジョンが出現し、目の前は草花に彩られたのどかな空間へと変わっていく。

一見のどかな自然の中だが、周囲に浮かぶ淡い光の玉たちがここが現実の者でないことを教えてくれていた。

「なんだよ、このフィールドは…!?」

「え…オッドアイズ!?」

フィールド魔法の力の影響なのか、遊矢とユーゴの目の前にはそれぞれが持つドラゴンの幻影が現れ、それがはっきりと見えていた。

「気持ちのいいフィールドですね。心が穏やかになる…そうですよね?オッドアイズ、ダーク・リベリオン」

「ふん…」

「しかし…私たちの姿をはっきりと映すとは。一体このカードは…」

「お前たちがそれぞれのドラゴンとつながっているように、俺はカードの精霊とつながっている」

「クリクリー!!」

ヒイロの頭上に彼の精霊であるプチクリボー、コロが姿を現す。

彼は興味津々にオッドアイズたちの姿を眺めていた。

「何…これ??もしかして、これが伊織が言っていた、カードの精霊で…」

精霊を見ることのできない柚子もまた、遊矢達の精霊がはっきりと見ることができた。

「このフィールドは俺の精霊たちが生まれた場所。…最も、俺以上に精霊とつながりのある奴はほかにもいるが」

侑斗もそうで、元の世界で子供と共に帰りを待っている女性もそうだ。

2人と比べると、カードの精霊とつながっているという言葉を口にするのはおこがましいのかもしれない。

「デュエルを続けるぞ。このフィールド魔法の発動処理として、俺はデッキから《幻獣の子コロ》を手札に加える。そして、《幻獣の子コロ》を召喚」

「クリクリー!!」

両腕に緑色の水晶が埋め込まれたブレスレットをつけたコロがヒイロの頭から飛び降りてフィールドに降り立つ。

 

幻獣の子コロ レベル1 攻撃0(チューナー)

 

「このカードはシンクロ素材とする場合、他のシンクロ素材は手札の幻獣を選択できる。俺は手札のレベル6の《幻獣盾ウォールゴーレム》とレベル1の《コロ》をチューニング」

両腕で水晶の盾をつけた岩石のゴーレムがコロの生み出すチューニングリングの中へと飛び込んでいく。

「シンクロ召喚。現れろ、《幻獣猿人ゼーマン》」

 

幻獣猿人ゼーマン レベル7 攻撃2500

 

「そして、《幻獣界》の効果。俺のフィールドの幻獣の攻撃力・守備力は300アップする」

 

幻獣猿人ゼーマン レベル7 攻撃2500→2800 守備1800→2100

 

「久しぶりだな、ヒイロ・リオニスよ。しばらく見ぬうちに、年を取ったようだな」

「お前は変わらないな、ゼーマン。俺はカードを1枚伏せて、ターンエンド」

 

ヒイロ

手札5→1

ライフ8000

場 幻獣猿人ゼーマン(《幻獣界》の影響下) レベル7 攻撃2800

  伏せカード1

  幻獣界(フィールド魔法)

 

ユーゴ&遊矢

手札

ユーゴ5

遊矢5

ライフ4000

 

「1ターン目から攻撃力2800のモンスター、それに…」

「そんなシンクロモンスター、見たことがねえ。何者なんだよ、こいつは…??」

どうやらそのカードも精霊のようで、ヒイロと話し合っている。

困惑しているユーゴ達に気付いたのか、ヒイロは視線を彼らに向ける。

「どうした?デュエルを進めろ」

「う、うるせえ!まずは俺がお前のそのシンクロモンスターを倒してやるよ!俺のターン、ドロー!!」

 

ユーゴ

手札5→6

 

「俺のフィールドにモンスターが存在しない場合、《SRベイゴマックス》は手札から特殊召喚できる!」

 

SRベイゴマックス レベル3 攻撃1200

 

「《ベイゴマックス》の効果発動!このカードの召喚・特殊召喚に成功したとき、デッキからこいつ以外のスピードロイド1体を手札に加えることができる。俺は《赤目のダイス》を手札に加え、そのまま召喚!」

 

SR赤目のダイス レベル1 攻撃0(チューナー)

 

「《赤目のダイス》の効果発動!こいつ以外のスピードロイド1体のレベルを1から6の好きな数値に変更できる。俺は《ベイゴマックス》のレベルを6に変更!」

 

SRベイゴマックス レベル3→6 攻撃1200

 

「行くぜ!俺はレベル6の《ベイゴマックス》にレベル1の《赤目のダイス》をチューニング!!その美しくも雄々しき翼翻し、光の速さで敵を討て!シンクロ召喚!現れろ、レベル7!《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》!」

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

「《クリアウィング》の攻撃力は2500。攻撃力2800になった《ゼーマン》を倒すことはできない」

「そんなのは分かっている!俺は手札から装備魔法《カッチン・ボール》を《クリアウィング》に装備!こいつはクリアウィング、そしてスピードロイドシンクロモンスター専用の装備カードだ!」

2つの透明の球体型エネルギーが《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》を中心に旋回する。

現状、攻撃力が高い《幻獣猿人ゼーマン》を倒すための手段がこれだ。

「《カッチン・ボール》の効果発動!1ターンに1度、装備モンスターのレベル×100のダメージを相手に与え、その後で装備モンスターの攻撃力を500アップさせる!」

2つの球体がぶつかり合うと同時に発生したエネルギーがヒイロを襲う。

「…」

 

ヒイロ

ライフ8000→7300

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン レベル7 攻撃2500→3000

 

「バトルだ!《クリアウィング》で《ゼーマン》を攻撃!旋風のヘルダイブスラッシャー!!」

「はあああああ!!」

ドリルのように回転を始めた《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》で《幻獣猿人ゼーマン》めがけて突撃する。

「《ゼーマン》の効果発動。1ターンに1度、モンスター1体の攻撃を無効にする」

「無駄だぜ!《クリアウィング》の効果は1ターンに1度、こいつ以外のフィールド上のレベル5以上のモンスターが効果を発動したとき、その発動を無効にし、破壊する!ダイクロイック・ミラー!!」

回転を止めない《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》のプリズム状の羽根から次々とビームが発射され、バリアを展開する《幻獣猿人ゼーマン》を襲う。

だが、そのビームはバリアを破壊することはできたが、《幻獣猿人ゼーマン》本体には傷一つ付けることができなかった。

「何!?」

「《ゼーマン》のシンクロ素材となった《ウォールゴーレム》の効果だ。こいつをシンクロ素材としたシンクロモンスターは1ターンに1度、破壊されない」

「破壊されないなら、そのまま戦闘破壊してやるぜ!!そのままぶち抜け、《クリアウィング》!!」

バリアがないことで、攻撃を邪魔するものがなくなった《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》がそのまま突撃する。

胴体を貫かれた《幻獣猿人ゼーマン》は消滅し、攻撃の余波がヒイロを襲う。

「…」

 

ヒイロ

ライフ7300→7100

 

「へ…どうだ!?せっかくシンクロ召喚した《ゼーマン》を倒して、おまけにダメージも与えてやったぜ!」

「先制することは有効だ。だが、相手の全容を見ずに勝ち誇った瞬間、そいつは敗北する」

「何!?」

「破壊された《ゼーマン》の効果。こいつは戦闘で破壊され墓地へ送られた時、デッキから新たな幻獣を手札に加える。俺は《幻獣王ロックリザード》を手札に加える。更に、《幻獣界》の効果。自分フィールドの幻獣シンクロモンスターが相手によって破壊された時、エクストラデッキからそのモンスターと同じレベルのシンクロモンスター1体をシンクロ召喚扱いで特殊召喚できる。《ゼーマン》のレベルは7。よって、俺はエクストラデッキからレベル7の《ローズオーディン》をシンクロ召喚」

真上に緑色の魔法陣が出現し、その中から《幻獣ローズオーディン》が姿を現す。

 

幻獣ローズオーディン レベル7 攻撃2800→3300

 

「ちっ…!俺はカードを1枚伏せて、、ターンエンドだ!!」

 

ヒイロ

手札1→2(うち1枚《幻獣王ロックリザード》)

ライフ7100

場 幻獣ローズオーディン(《幻獣界》の影響下) レベル7 攻撃3300

  伏せカード1

  幻獣界(フィールド魔法)

 

ユーゴ&遊矢

手札

ユーゴ6→2

遊矢5

ライフ4000

場 クリアウィング・シンクロ・ドラゴン(《カッチン・ボール》装備) レベル7 攻撃3000

  カッチン・ボール(装備魔法)

  伏せカード1

 

「俺のターン、ドロー」

 

ヒイロ

手札2→3

 

「バトル。《幻獣ローズオーディン》で《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》を攻撃。ローズブレード!」

バラを模した美しい彫刻が施された剣を手にした《幻獣ローズオーディン》が《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》を切り裂く。

切り裂かれた《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》が消滅する。

「くそ…!けど、ダメージは少しだ。これくらいなら…」

 

ユーゴ&遊矢

ライフ4000→3700

 

「俺は《ローズオーディン》の効果を発動。このカードが戦闘で相手モンスターを破壊し墓地へ送ったとき、墓地から幻獣1体を攻撃力・守備力を0にして特殊召喚する。俺は墓地から再び《幻獣猿人ゼーマン》を呼び戻す」

 

幻獣猿人ゼーマン レベル7 守備1800→0→300

 

「くそぉ!せっかく倒したってのに、厄介なモンスターを…!」

「それで済むと思うな…。俺は手札の《幻獣ジャックフロスト》の効果発動。墓地から幻獣の特殊召喚に成功したとき、このカードは手札から特殊召喚できる」

ヒイロのフィールドに氷の粒が集まっていき、次第にその姿を羽根が氷でできた水色の妖精へと変えていく。

 

幻獣ジャックフロスト レベル1 攻撃200(チューナー)

 

「そして、そのモンスターとこのカードのみを素材としてシンクロ召喚を行う!俺はレベル7の《ゼーマン》にレベル1の《ジャックフロスト》をチューニング」

「バトルフェイズ中にシンクロ召喚だと!?」

「深海に眠りし破邪の水龍よ!敵の技を無にし、激流の如く邪悪を薙ぎ払え!シンクロ召喚!出でよ!《マリンフォース・ドラゴン》!!」

《幻獣猿人ゼーマン》が《幻獣ジャックフロスト》が生み出したチューニングリングをくぐり、その姿をヒイロのエースモンスターたる《マリンフォース・ドラゴン》へと変貌させる。

「ようやく、ボクの出番!!」

 

マリンフォース・ドラゴン レベル8 攻撃2600

 

「そして、シンクロ素材となった《ジャックフロスト》の効果。このカードをシンクロ素材とした次の相手バトルフェイズ中、お前たちは攻撃できない」

「攻撃まで封じてくるのかよ!くそぉ!」

《幻獣ジャックフロスト》の幻影が現れると同時に、遊矢とユーゴのフィールドを寒波が襲う。

氷で閉ざされたそのフィールドはモンスターが動くのをためらうほどの低温となっていた。

「《マリンフォース・ドラゴン》でダイレクトアタック。マリン・ブラスト」

《マリンフォース・ドラゴン》の口から放たれる大量の水が《幻獣ジャックフロスト》の冷気によって氷の塊となって2人を襲う。

「うわああああ!!」

「ああああ!」

 

遊矢&ユーゴ

ライフ3700→1100

 

「くっそ!ここまでやるのかよ…!」

「けど…これで、このカードを発動できる。俺は手札から罠カード《ビック・リボーン》を発動!このカードは俺のフィールドにカードがない場合、手札からでも発動できる!そして、直接攻撃によってダメージを受けたとき、そのダメージ以下の攻撃力を持つモンスター1体を墓地から特殊召喚できる。俺はユーゴの墓地の《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》を呼び戻す!!」

「遊矢…」

再びフィールドに舞い戻った《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》が咆哮し、《マリンフォース・ドラゴン》と対峙する。

(やはり、あの《マリンフォース・ドラゴン》というモンスター、只者ではありませんね)

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

「再び《クリアウィング》を呼び戻したか…。だが、《マリンフォース・ドラゴン》はカード効果で破壊することはできない。そして、俺は手札から魔法カード《シンクロ・クリード》を発動。フィールド上に存在するシンクロモンスターが3体以上の場合、デッキからカードを2枚ドローする。そして、カードを1枚伏せてターンエンド」

 

ヒイロ

手札3(うち1枚《幻獣王ロックリザード》)

ライフ7100

場 幻獣ローズオーディン(《幻獣界》の影響下) レベル7 攻撃3300

  マリンフォース・ドラゴン レベル8 攻撃2600

  伏せカード2

  幻獣界(フィールド魔法)

 

ユーゴ&遊矢

手札

ユーゴ2

遊矢5→4

ライフ1100

場 クリアウィング・シンクロ・ドラゴン レベル7 攻撃2500

  伏せカード1

 

「さあ、次はお前のターンだ。榊遊矢。お前の力を見せてみろ」

(俺の…力…)

遊矢の脳裏に浮かぶのはシンクロ次元、そしてエクシーズ次元での戦い。

ジャックやセルゲイ、エドといった数多くの強敵とデュエルを繰り広げてきた。

運よく勝利してきたが、それでも本当の目的であるみんなの笑顔を取り戻すことはできていない。

そんな自分の力が小さく見えてしまい、それが自らを委縮させる。

「何やってんだよ、遊矢!あのふざけた野郎に好き勝手言われてたまるかよ!」

「俺は…」

ここで踏み出せないようでは、余計に道が見えなくなる。

そのことは分かっているが、顔を上げるとすぐにヒイロからの鋭いプレッシャーを感じてしまう。

「どうした…?おびえるだけか?今のお前は…」

「俺は…俺の、ターン…」

 

遊矢

手札4→5

 

「俺は手札1枚を捨てて…手札から《ペンデュラム・アライズ》を発動…。デッキから《竜脈の魔術師》と《竜穴の魔術師》を手札に加える…」

 

手札から墓地へ捨てられたカード

・EMチアモール

 

「俺は…スケール1の《竜脈の魔術師》とスケール8の《竜穴の魔術師》で…ペンデュラムスケールをセッティング。これで、俺はレベル2から7までの…」

「くだらないな。今のお前に克己の力はない。ペンデュラム召喚を使う資格はない」

「何…?」

ヒイロの言葉で、翔太の脳裏にある言葉がよみがえる。

シンクロ次元でセルゲイと戦っていたときに突然知ることになった言葉。

(進化の青、調和の紫、開拓の白、秩序の黒、克己の緑…)

「俺は永続罠《波紋消滅》を発動。発動後、3回目の俺のスタンバイフェイズ時まで、俺たちはペンデュラム召喚を行えず、ペンデュラム効果も無効となる」

「何!?」

2つに青い光の柱が灰色へと変わり、2体のペンデュラムモンスターもまた、石化してしまった。

それに合わせるかのように、遊矢のペンデュラムゾーンに置いてあるカードも石になったかのように灰色に染まってしまった。

「今のお前にはそれがお似合いだ。立ち止まる道を選ぼうとするお前にはな…」

「そんな…俺…」

「そもそも、お前の行為は偽善だ。笑顔を取り戻して、次元戦争を止める…?そのために戦う、守る者のために戦うというのがそもそもの矛盾だ。デュエルは戦い。必ずと言っていいほど勝敗がつく。その本質はたとえ、お前がデュエルで笑顔をもたらそうとしても、結局は変わらない」

「それは…」

「そもそも、次元戦争を根本的にどう止める?勝者と敗者が決まるまで、終わらない。笑顔に戦争を止める力はない。これまで、お前は一度でもそれを成し遂げることができたか?」

ヒイロの質問に対して、遊矢は何も答えることができない。

シンクロ次元でも、エクシーズ次元でも、結局は勝利することでしか事件を収束させることができなかった。

そして、シンクロ次元ではフランス革命のような泥沼が起こる可能性があり、エクシーズ次元でも、アカデミアに対する人々の憎しみは根深い。

「だったら…だったら俺は間違っているのか…??俺の願いも…」

「それを決めるのはお前だ。それとも、俺に教えを乞うほど、お前の答えは他人任せなのか?さあ、デュエルを続けろ」

「…俺は手札から魔法カード《ペンデュラム・エクシーズ》を発動。俺のペンデュラムゾーンのカード2枚のみを素材に、エクシーズ召喚を行う。その時、ペンデュラムカード1体のレベルをもう1体と同じにできる。俺は…《竜脈の魔術師》のレベルを《竜穴の魔術師》と同じ7にする」

光が消え、なおも石になったままの2体の魔術師の体が淡く光る。

そして、その2体は上空のオーバーレイネットワークの中へ消え、そこから《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》が進化した新たなドラゴンが舞い降りる。

「レベル7の2体の魔術師でオーバーレイ…!!闇の帳を切り裂きしは、新たな力を得た反逆の牙!エクシーズ召喚…《ダーク・アンセリオン・ドラゴン》」

 

ダーク・アンセリオン・ドラゴン ランク7 攻撃3000

 

「反逆の牙…今のお前にそんなものは存在しない」

「俺は《ダーク・アンセリオン・ドラゴン》の効果を発動!!オーバーレイユニットを1つ取り除き、相手フィールドのモンスター1体の攻撃力を半分奪う!!デビルズ・ドロップ!!」

《ダーク・アンセリオン・ドラゴン》が放つ稲妻が《幻獣ローズオーディン》を拘束し、その力を吸収していく。

 

幻獣ローズオーディン レベル7 攻撃3300→1650

ダーク・アンセリオン・ドラゴン ランク7 攻撃3000→4650

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・龍脈の魔術師

 

「これで、ヒイロさんのフィールドの2体のモンスターは倒せる…けれど…」

柚子の目には圧倒的な攻撃力を手にした《ダーク・アンセリオン・ドラゴン》を前にしても平然とするヒイロと、焦りを深める遊矢が映る。

状況としては、ヒイロが不利にもかかわらず、とてもそうには見えない。

「バトルだ!《ダーク・アンセリオン・ドラゴン》で《マリンフォース・ドラゴン》を…」

「忘れたか?《ジャックフロスト》の効果でお前たちはこのターン、攻撃できない」

「あ…!!」

発動されていたその効果をすっかり失念していた遊矢にはもう、このターンどうすることもできなかった。

「俺は…カードを1枚伏せて、ターンエンド…」

 

ヒイロ

手札3(うち1枚《幻獣王ロックリザード》)

ライフ7100

場 幻獣ローズオーディン(《ダーク・アンセリオン・ドラゴン》《幻獣界》の影響下) レベル7 攻撃1650

  マリンフォース・ドラゴン レベル8 攻撃2600

  波紋消滅(永続罠)

  伏せカード1

  幻獣界(フィールド魔法)

 

ユーゴ&遊矢

手札

ユーゴ2

遊矢5→1

ライフ1100

場 クリアウィング・シンクロ・ドラゴン レベル7 攻撃2500

  ダーク・アンセリオン・ドラゴン(オーバーレイユニット1) ランク7 攻撃4650

  伏せカード2

 

「俺のターン、ドロー」

 

ヒイロ

手札3→4

 

「俺は《ローズオーディン》をリリースし、手札から魔法カード《幻獣の紋章》を発動。リリースしたモンスターのレベルの合計が同じになるように、墓地の幻獣チューナーとチューナー以外のモンスターを1体ずつ特殊召喚する。俺は《コロ》と《ウォールゴーレム》を呼び戻す」

 

幻獣の子コロ レベル1 攻撃0(チューナー)

幻獣盾ウォールゴーレム レベル6 守備2000

 

「レベル6の《ウォールゴーレム》にレベル1の《コロ》をチューニング。力を借りるぞ、エンシェント・フェアリー」

(いいでしょう…ヒイロ・リオニス)

「新しい…精霊?」

遊矢の目にはヒイロの背後に現れた新たな精霊の姿、《エンシェント・フェアリー・ドラゴン》が映る。

一体どれだけの精霊とヒイロが共にいるのか、分からなくなるくらい。

彼女の出現と共に、彼の背後からは数多くの精霊の気配が感じられた。

「古の時代より、大地に豊穣をもたらす妖精の王よ、破壊と創造の力をここに示せ。シンクロ召喚。現れろ、《妖精竜エンシェント》」

《エンシェント・フェアリー・ドラゴン》の腹部にシグナーのような紋章が宿り、モンスターとしてヒイロのフィールドに舞い降りる。

 

妖精竜エンシェント レベル7 攻撃2100

 

「新しいシンクロモンスター…!?でもなぁ、今の俺たちのフィールドには攻撃力4650の《ダーク・アンセリオン・ドラゴン》がいる!それに、そもそも攻撃力が…」

「俺はフィールド魔法《幻獣界》を墓地へ送り、手札から新たなフィールド魔法《幻獣空》を発動」

発動と同時にフィールドから大地が消え、真っ白な雲が広がる快晴の空へと変わっていく。

「発動と同時に、《妖精竜エンシェント》の効果発動。俺のターンに俺がフィールド魔法を発動したとき、デッキからカードを1枚ドローする」

「なら、俺は《クリアウィング》の効果を発動!1ターンに1度、レベル5以上の相手モンスターの効果の発動を無効にし、破壊する!そして、そのモンスターの元々の攻撃力をターン終了時まで《クリアウィング》に…」

「破壊は無理だな。《幻獣空》が存在する限り、俺のフィールドのシンクロモンスターは1ターンに1度、戦闘及びカード効果では破壊されない」

「何!?」

《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》から放たれるプリズム状の光は《妖精竜エンシェント》に到達することなく消滅する。

ドローを阻止することはできたが、破壊に失敗したことで《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》は攻撃力を上げることができなかった。

「そして、《エンシェント》の効果発動。1ターンに1度、フィールド魔法が存在する場合、フィールドに表側攻撃表示で存在するモンスター1体を破壊できる。スピリット・ベリアル」

《妖精竜エンシェント》の目が淡く光るとともに、周囲の雲が《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》を包んでいく。

そして、その雲が一瞬で雷雲へと変化して雷をゼロ距離から叩き込んだ。

「くそ…《クリアウィング》が破壊されちまった!!」

「そして、《マリンフォース・ドラゴン》の効果。1ターンに1度、フィールド上のカード1枚を手札に戻す。マリン・パニッシュ」

《マリンフォース・ドラゴン》が翼をはためかすと同時にフィールドに雨が降り始める。

雨は次第に豪雨へと変わり、その雨を浴びた《ダーク・アンセリオン・ドラゴン》が姿を消そうとする。

「くっ…!!俺は《ダーク・アンセリオン・ドラゴン》の効果を発動!《マリンフォース》の攻撃力を半分にする!!」

《ダーク・アンセリオン・ドラゴン》がせめてもの一撃として、口から稲妻を放つ。

それを受けた《マリンフォース・ドラゴン》はよろけたものの、それでもフィールドに残り続け、《ダーク・アンセリオン・ドラゴン》が姿を消す。

 

マリンフォース・ドラゴン レベル8 攻撃2600→1300

 

「傷跡をつけたか…。だが、お前たちのライフをすべて削るには十分だ」

遊矢とユーゴの残りライフは1100。

《妖精竜エンシェント》か《マリンフォース・ドラゴン》のどちらかの直接攻撃が決まれば、2人の敗北が決まる。

「お前たちには不可能であるなら、この戦争の幕引きは俺がやる。安心して、負けろ。《妖精竜エンシェント》でダイレクトアタック。フェアリー・テイル・ウィップ!」

《妖精竜エンシェント》が自らの尾で2人を薙ぎ払おうとする。

「遊矢!!」

「そ、速攻魔法《イリュージョン・バルーン》を発動!!俺のフィールドのモンスターが破壊されたターン、デッキの上から5枚をめくり、その中のEM1体を特殊召喚できる!」

遊矢は即座に5枚のカードをめくり、その中にある1枚を手に取る。

「俺が…特殊召喚するモンスターは《EMオッドアイズ・ディゾルヴァー》!!」

 

EMオッドアイズ・ディゾルヴァー レベル8 守備2600

 

「守備力2600の《ディゾルヴァー》なら…!!」

「甘いな。俺は罠カード《シンクロ・ストライク》を発動。俺のシンクロモンスター1体の攻撃力をターン終了時まで、シンクロ素材としたモンスターの数×500アップさせる」

 

妖精竜エンシェント レベル7 攻撃2100→3100

 

「ぐう…」

「やれ、《エンシェント》」

《妖精竜エンシェント》の尾の一撃を受け、吹き飛ばされた《EMオッドアイズ・ディゾルヴァー》が消滅し、遊矢のエクストラデッキへ送られる。

「《マリンフォース・ドラゴン》でダイレクトアタック。マリン・ブラスト」

続けて、《マリンフォース・ドラゴン》の口から放たれる激流が2人を飲み込もうとする。

「負ける…!?」

「ぼさっとしてんじゃねーぞ、遊矢!!俺は罠カード《ダイスロール・バトル》を発動!!俺の墓地のスピードロイド1体と手札のスピードロイドチューナーを除外して、シンクロ召喚を行う!俺は墓地の《SRベイゴマックス》と手札の《SR三つ目のダイス》でチューニング!十文字の姿もつ魔剣よ。その力ですべての敵を切り裂け!シンクロ召喚!現れろ、レベル6!《HSR魔剣ダーマ》!」

2体のスピードロイドが2つのサイコロとなって転がり、それが波紋となってその中から《HSR魔剣ダーマ》を呼び覚ます。

 

HSR魔剣ダーマ レベル6 攻撃2200

 

「壁を出したか、なら俺は《マリンフォース・ドラゴン》の攻撃を…」

「攻撃は続けてもらうぜ!てめーがシンクロモンスターをエースにしてくれているおかげだ!」

「何?」

「俺は墓地の《ダイスロール・バトル》を除外して、効果を発動!俺とお前のシンクロモンスターで強制バトルだ!!いけ、《魔剣ダーマ》!!

《HSR魔剣ダーマ》が放つ剣のようなビームが水流もろとも《マリンフォース・ドラゴン》を切り裂き、消滅させた。

(すまない…アクア)

 

ヒイロ

ライフ7100→6200

 

「よし…!てめえの自慢の《マリンフォース・ドラゴン》は倒してやったぜ!それに、《エンシェント》の攻撃力は2100に戻る!!」

「ユーゴ…」

「俺は…諦めねえ!リンを取り戻して、一緒にシンクロ次元へ帰るまで、立ち止まれねえんだ!!」

ユーゴには次元戦争もアカデミアによる侵略も関係なかった。

ただ、あるのはリンと共に帰ること、ただそれだけだ。

それを邪魔するものがあれば、何であろうと叩きのめして進む。

「…。俺はこれで、ターンエンドだ」

 

ヒイロ

手札4→3(うち1枚《幻獣王ロックリザード》)

ライフ6200

場 妖精竜エンシェント レベル7 攻撃3100→2100

  波紋消滅(永続罠)

  幻獣空(フィールド魔法)

 

ユーゴ&遊矢

手札

ユーゴ2

遊矢1

ライフ1100

場 HSR魔剣ダーマ レベル6 攻撃2200

 

(《魔剣ダーマ》の攻撃力なら、《エンシェント》を倒せる。だが…)

ヒイロのフィールド魔法《幻獣空》はシンクロモンスターを1ターンに1度だけ、破壊から守る効果を持つ。

そして、《妖精竜エンシェント》にはフィールド魔法発動中、1ターンに1度、フィールド上の攻撃表示モンスター1体を破壊できる効果を持つ。

(今の俺たちのライフは1100…このまま持ちこたえられるとは思えねえ…だがよぉ!!)

ユーゴの指がデッキトップにかかり、にらむようにヒイロを見る。

「ぶち抜いてやる…!俺が!!俺のターン!!」

 

ユーゴ

手札2→3

 

「来たぜ…てめえにほえ面をかかせるカードがよぉ…!」

「何?」

「俺は手札から《SRアクマグネ》を召喚!」

悪魔のようなとがったデザインのU字磁石を2つ左右につけ、口元がプラスネジになっている小型のモンスターが出現すると同時に、左右の磁石に引き寄せられるかのように《妖精竜エンシェント》が引っ張られていく。

 

SRアクマグネ レベル1 攻撃0(チューナー)

 

「そのモンスターは…」

「こいつは召喚・特殊召喚に成功したとき、このカードと相手モンスター1体を素材に風属性シンクロモンスターのシンクロ召喚を行える!俺はレベル7の《妖精竜エンシェント》にレベル1の《アクマグネ》をチューニング!!神聖なる光蓄えし翼煌めかせ、その輝きで敵を討て!シンクロ召喚!いでよ!レベル8!《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》!」

(この姿にしたのであれば、つまらない敗北は許しませんよ?)

「ちっ…まだあの事を根に持ってるのかよ…」

明日香とのデュエルの敗北のことが頭をよぎる。

だが、ほんのわずかな時間ではあるが遊勝塾で特訓もしている。

そして、あの時のことを反省している以上は負けるつもりはさらさらなかった。

 

クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン レベル8 攻撃3000

 

「これで、てめえのフィールドはがら空きだぜ!」

「モンスターを奪う…。いい作戦だな」

「感心するのはまだ早いぜ!俺は手札から装備魔法《団結の力》を《クリスタルウィング》に装備!こいつは俺のフィールドのモンスターの数×800、装備モンスターの攻撃力をアップさせる!」

 

クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン レベル8 攻撃3000→4600

 

「攻撃力…4600…」

「これで、2体のダイレクトアタックが決まれば俺の勝ちだ!バトル!!俺は《クリスタルウィング》でダイレクトアタック!!烈風のクリスタロス・エッジ」

水晶の欠片のような輝きを周囲にまき散らしながら《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》がヒイロめがけて突撃する。

だが、彼の前に透明なバリアが展開され、阻まれてしまう。

「何!?」

「俺は墓地の《幻獣の紋章》を除外し、効果を発動。俺のフィールドにモンスターが存在しない状態でダイレクトアタックを受けるとき、その攻撃を無効にする。そして、デッキから幻獣カード1枚を手札に加える。俺が手札に加えるのは《幻獣霊ボディレスファントム》」

「ちっ…けどよぉ、2度目の攻撃は防げねえ!《魔剣ダーマ》でダイレクトアタック!!」

《HSR魔剣ダーマ》がヒイロめがけて突撃し、ヒイロはそれを避けることなく、正面から受ける。

表情一つ変えず、攻撃を終えた相手モンスターを見送るだけの余裕まで見せていた。

 

ヒイロ

ライフ6200→4000

 

「へっ…俺はこれでターンエンドだ!どうだよ、これでも俺を認めねえってか!!」

 

ヒイロ

手札3→4(うち2枚《幻獣王ロックリザード》《幻獣霊ボディレスファントム》)

ライフ4000

場 波紋消滅(永続罠)

  幻獣空(フィールド魔法)

 

ユーゴ&遊矢

手札

ユーゴ3→2

遊矢1

ライフ1100

場 HSR魔剣ダーマ レベル6 攻撃2200

  クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン レベル8 攻撃3000

 

「ふっ…確かに俺のフィールドにモンスターはいない。それに、お前の《クリスタルウィング》のモンスター効果無効の能力はフィールドだけにとどまらず、レベル5以上のモンスターで戦闘したとしても、攻撃力が跳ね上がる…。嫌な相手だ」

「ああ、そうだぜ!こいつを倒さねえ限り、負けるのはてめえだ!」

「お前は悪くはないな、あとは…あいつか。俺のターン」

 

ヒイロ

手札4→5

 

「俺は手札から魔法カード《逆境の宝札》を発動。相手フィールドに特殊召喚させたモンスターが存在し、俺のフィールドにモンスターが存在しない場合、デッキからカードを2枚ドローする。そして、俺は手札から速攻魔法《トラップ・ブースター》を発動。手札の《幻獣霊ボディレスファントム》を墓地へ送り、手札の罠カード1枚を発動する。俺は手札の罠カード《パニック・ウェーブ》を発動」

「何!?そのカードは…」

「俺のフィールドのカード1枚を破壊し、ターン終了時まで表側表示で存在するモンスター、永続罠、永続魔法の効果を無効にする。俺が破壊するのは《幻獣空》」

空の光景が消えるとともに波紋が3人のフィールドを包み、それを受けた《HSR魔剣ダーマ》と《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》が力を失う。

「そして、破壊された《幻獣空》の効果。このカードが破壊され墓地へ送られた時、デッキから新たな幻獣フィールド魔法1枚を手札に加えることができる。俺が手札に加えるのは《幻獣海》。そして、俺は《幻獣海》を発動」

「空の次は海かよ…けど」

「《パニック・ウェーブ》の影響を受けるのは、発動時にフィールドにあったカードだけだ」

先ほどまでの空とは違う、光の刺さない深い海のフィールドへと変わる。

水底には何者かが築いたと思われる古代の遺跡の姿もあった。

「そして、墓地の《幻獣霊ボディレスファントム》の効果。フィールド魔法を発動しているとき、1度だけこのカードは墓地から特殊召喚できる」

十字架が刻まれた白い布の中に隠れた黒い影がフィールドに現れる。

その影の口の部分だけがなぜか実体化しており、何かをしゃべっているようだったが、言葉になっていない。

 

幻獣霊ボディレスファントム レベル3 攻撃0

 

「そして、《ボディレスファントム》をリリース。《幻獣王ロックリザード》をアドバンス召喚。このカードは幻獣1体のリリースでアドバンス召喚することができる」

 

幻獣王ロックリザード レベル7 攻撃2200

 

「レベル7のモンスターを…。でもよぉ、攻撃力2200じゃあ俺の《クリスタルウィング》は倒せねえよ!」

「そうだな。確かに《ロックリザード》1体では倒せない。《パニック・ウェーブ》の効果で力を奪ったとしても。バトルだ。《ロックリザード》で《クリスタルウウィング》を攻撃」

「何!?」

ヒイロの命令を受けた《幻獣王ロックリザード》が《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》に向けて岩石の爪で斬りかかる。

《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》は接近する前に口から水晶の輝きを持つブレスで焼き尽くし、消滅させる。

「《幻獣王ロックリザード》はペンデュラムモンスター。エクストラデッキへ行く。そして、《幻獣海》の効果。幻獣の戦闘で発生する俺へのダメージは0になる」

「だったら、なんで攻撃したんだよ?!」

「《幻獣海》の効果。幻獣の攻撃を受けた相手モンスターの攻撃力は攻撃モンスターの攻撃力分ダウンする」

 

クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン レベル8 攻撃3000→800

 

「そして、俺は手札の《転生幻獣リバースカラドリウス》の効果発動。俺の幻獣が破壊された時、手札から特殊召喚できる」

頭にウロボロスを模した冠をつけた白鳥が現れる。

 

転生幻獣リバースカラドリウス レベル3 攻撃400(チューナー)

 

「そして、俺の墓地に存在する幻獣1体を効果を無効にして特殊召喚できる。蘇れ、《幻獣猿人ゼーマン》」

冠を光らせた《転生幻獣リバースカラドリウス》がヒイロの墓地からカードを1枚とり、それをモンスターゾーンに置く。

同時に《幻獣猿人ゼーマン》が現れ、ヤレヤレと言わんばかりに目を閉じて冠を直す。

「ヒイロよ、久々の出番は喜ばしい限り。だが…働かせすぎではないかね?」

 

幻獣猿人ゼーマン レベル7 攻撃2500

 

「安心しろ。もうすぐ終わる。《ゼーマン》で《クリスタルウィング》を攻撃」

《幻獣猿人ゼーマン》が杖から黒い電撃を放ち、それが《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》を襲う。

「この攻撃を受けたら、あいつらのライフが尽きる…!!」

「うわああああ!!俺は手札の《SRポケサーキッド》の効果発動!俺の風属性シンクロモンスターが攻撃を受けるとき、こいつを手部だから墓地へ捨てることで、戦闘ダメージを半分にする!!」

胴体部分が赤いF1カーのようなラジコンになっている小さな子供のような人型モンスターが現れると、黒い電撃に向けて突っ込んでいく。

電撃をある程度受けると消滅し、その余波が《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》を襲い、破壊していく。

「くううう!!」

 

遊矢&ユーゴ

ライフ1100→250

 

「はあはあ…しのいだぜ、その攻撃!そして、この効果を発動した次の俺のスタンバイフェイズ時に、デッキからカードを1枚ドローする。まぁ、ドローするのは遊矢だけど…な」

「ユーゴ…俺…」

ユーゴのおかげで、あと1ターンとはいえ時間稼ぎができた。

しかし、今の遊矢にはこの状況を逆転できるかどうかの自信はない。

手札は1枚で、ヒイロのフィールドには戦闘ダメージを0にする《幻獣海》と攻撃力2500の《幻獣猿人ゼーマン》がいる。

圧倒的にヒイロが有利な状況に変わりはない。

「いつまで腑抜けた顔してやがる!!俺はてめえのことはよく知らねえ…けどなぁ、俺に似た顔の奴が、弱気になってんのを見ると、むかっ腹が立つぜ!!」

もう、これ以上動くことのできないユーゴにできるのはここまで。

あとは遊矢が決めてくれることを信じたいが、今の遊矢の状態では負けることは目に見えていた。

「俺はこれで、ターンエンドだ。同時に、《リバースカラドリウス》の効果。自らの効果で特殊召喚されたこのカードはターン終了時にエクストラデッキへ眠る」

 

ヒイロ

手札5→1

ライフ4000

場 幻獣猿人ゼーマン(《転生幻獣リバースカラドリウス》の影響下) レベル7 攻撃2500

  波紋消滅(永続罠)

  幻獣海(フィールド魔法)

 

ユーゴ&遊矢

手札

ユーゴ2→1

遊矢1

ライフ250

場 HSR魔剣ダーマ レベル6 攻撃2200

 

「さあ、榊遊矢。お前のターンだ。今、お前は実感しているはずだ。己の無力さを…」

「俺は…無力…」

「そうだ、お前には力はない。そして、間違っていた。破壊だけしか生まない力を、お前が笑顔のために使おうとした時点でな。お前がペンデュラム召喚を…力を使う目的は何だ?」

「俺…は…」

デュエルで人々を笑顔にすることができないというのなら、何のためにデュエルをするのか。

エンターテイナーという前提が音を立てて崩れていくのを感じる。

目的が見えなくなり、視界が黒く染まっていく。

「俺に勝てない、目的も失ったというなら、今すぐサレンダーしろ。安心しろ。ただ、お前がこの舞台から降りるだけだからな。後のことは気にする必要はない」

遊矢の視線がデッキに向けられる。

ただ、その上に手を置くだけで元の暮らしが戻ってくる。

父親の帰りを待ちながら、エンタメデュエルを求め続けるだけの日々。

母親がいて、遊勝塾があって、みんながいるあの日常が戻ってくる。

その穏やかな誘惑が遊矢の心を襲い、右手が伸びていく。

「遊矢!!てめえ!!」

「決めるのは彼だ。お前は俺が止めたとしても、行くだろうからな」

「俺は…」

右手がデッキに届こうとした瞬間、スパァンと痛快な音が両耳に響き、同時に頭を鋭い痛みが襲う。

両手で頭を抱え、背後を見るとそこには柚子の姿があった。

「柚子…??」

「久しぶりだな、ハリセン。にしても…」

外から見ていた翔太は柚子の客席からの動きに呆れてしまう。

デュエルリングの足場を登り、遊矢がサレンダーするギリギリのところでハリセンで止めたのだから。

傾いた足場に立って、席には入れるスペースもないために左手で手すりにつかまってバランスをとっている状態だ。

「あ、危ないだろ柚子…早く戻って…」

「遊矢!!!」

それだけでは我慢できないのか、今度はハリセンを手放した柚子の右手のひらが遊矢の頬にさく裂する。

痛み以上に、なんでこんなことをするのかわからない遊矢の呆けた目には涙ぐむ柚子の顔が映っていた。

「遊矢…あなたは一人でなんか戦っていない!お父さんやアユミちゃん、フトシ君、タツヤ君…それだけじゃない、スタンダード次元にシンクロ次元、エクシーズ次元…あなたはそこにいる戦えない人達の代わりに、戦ってる!あたしはずっと見てた!どんなに苦しかったのか、助けたいと思っていた人を助けられなくて、それで苦しんで…泣いていたのも、全部見てる!!」

遊矢の戦いをずっと見てきたからわかる。

自分を守るために左腕を失って、悲しみを背負いながらも戦い続けて。

心がもうパンクしてしまいそうになっていることは分かっている。

「遊矢…あなたの夢は何?」

「夢…夢は…」

「あなたの夢はエンターテインメイトデュエリスト!みんなを笑顔にするデュエリストのはず!ほかのみんなが…世界中のみんなが否定しても!あたしは絶対に言う!榊遊矢はみんなを笑顔にする人だって!!」

「柚子…」

「力がどうとかなんて、あたしにはわからない。でも、あなたの目指したいものは分かる!だから…キャ!!」

遊矢に必死に言葉をかけるのに夢中になってしまった柚子は足を滑らせ、同時に手を離してしまう。

落ちてしまう柚子を翔太が両手で受け止める。

「ったく、無茶なところはそっくりだな。おい、遊矢!そういうことだ。いい加減に目を覚ませ!」

「柚子…翔太…。俺は…!」

遊矢は手袋で隠れた義手を見つめる。

そして、思いっきり自分の頬をそれで殴った。

生身とは違う、強烈な痛みが頬を襲い、ヒリヒリ痛むのを耐えながら遊矢はヒイロに体を向ける。

「目つきが変わったな…。だが、《波紋消滅》の効果でペンデュラム効果もペンデュラム召喚も封じられているぞ」

「分かってる!けど…ペンデュラム召喚がなくても、戦える。あなたを…倒せるはずだ!俺のターン、ドロー!更に、ユーゴが発動してくれた《ポケサーキッド》の効果で更に1枚ドローだ!!」

 

遊矢

手札1→3

 

「俺は…手札から魔法カード《運命の振り子》を発動。俺のペンデュラムゾーンにカードがない時、デッキからペンデュラムモンスター1体を表側表示でエクストラデッキに置く。そして…俺はデッキからカードを1枚ドローする」

《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》をエクストラデッキに置き、視線がデッキトップに向けられる。

(今の手札じゃ、ペンデュラム召喚なんてできない。その先…あの人に勝つためには)

ペンデュラム召喚はできないが、だからといって負けたわけではない。

《ペンデュラム・エクシーズ》を使って、《ダーク・アンセリオン・ドラゴン》のエクシーズ召喚に成功したように、やり方はある。

「(確かに、あの人の言う通りかもしれない。けれど…だからといって、あきらめたくない。笑顔にすることも、戦争を終わらせることも!!)ドロー!!」

勢いよくカードを引き、ドローしたばかりのカードを見る。

「…俺は、スケール1の《星読みの魔術師》とスケール8の《EMオッドアイズ・ユニコーン》でペンデュラムスケールをセッティング」

「無駄だ。ペンデュラム効果もペンデュラム召喚も、《波紋消滅》によって消え去る」

再び現れた光の柱も灰色となり、それを生み出すペンデュラムモンスターもまた、石と化す。

だが、遊矢の中に揺れているペンデュラムはまだ止まっていない。

「まだだ!俺のモンスターたち、俺に力を貸せ!!」

「うん…?」

遊矢の言葉に呼応するかのように、石化したペンデュラムモンスターが淡く光を放ち始め、同時に灰色に染まった光が青を取り戻していく。

そして、ペンデュラムのソリッドビジョンが出現し、それはゆっくりと揺れながらひび割れていく。

「運命の狭間に止まった振り子が新次元に新たな時を刻む!オーバースケールペンデュラム召喚!!」

「ペンデュラム召喚…だと?」

「そうだ!このカードは俺のペンデュラムゾーンにペンデュラムカードが2枚存在し、俺のエクストラデッキにオッドアイズが表側表示で存在する場合、手札から特殊召喚できるペンデュラムモンスターだ!!現れろ、《オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン》!!」

ペンデュラムが砕け散り、そこから真っ白に染まり、虹色の輝きを放つ翼を左右につけた《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が飛び立つ。

 

オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン レベル8 攻撃3000

 

「バトルだ!《オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン》で《幻獣猿人ゼーマン》を攻撃!!そして、《オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン》の効果発動!相手モンスターを攻撃するダメージ計算時、戦う相手モンスターの攻撃力を俺のエクストラデッキに表側表示で存在するペンデュラムモンスターの数×1000ダウンする!今の俺のエクストラデッキに存在するペンデュラムモンスターは2体!!よって、《ゼーマン》の攻撃力は2000ダウン!!」

 

幻獣猿人ゼーマン レベル7 攻撃2500→500

 

「いけ!ファンタスティック・フォース!!」

《オッドアイズ・ファンラズマ・ドラゴン》が口から虹色の螺旋のブレスを放つ。

虹色の光の中でモンスターは消滅し、ヒイロもそれに飲み込まれる。

「くっ…」

 

ヒイロ

ライフ4000→2000

 

「《幻獣猿人ゼーマン》の効果。デッキから《幻獣妖精バリアカーバンクル》を手札に加える」

「これでトドメだ!!《魔剣ダーマ》でダイレクトアタック!!」

あとはこの一撃が決まれば勝てる。

《HSR魔剣ダーマ》がヒイロに向けてビームを放つ。

「俺は手札の《幻獣妖精バリアカーバンクル》の効果を発動。相手の直接攻撃宣言時、このカードを手札から特殊召喚し、その攻撃力をターン終了時まで0にする!」

額に淡い純粋なルビーを宿し、羽根飾りを頭につけた白い子猫が現れ、そのルビーの光がビームを消滅させた。

 

幻獣妖精バリアカーバンクル レベル2 守備1200

HSR魔剣ダーマ レベル6 攻撃2200→0

 

「くっそお!後一撃が届かねえのかよ!!」

「けれど、もうモンスターは《バリアカーバンクル》1体。次のターンで勝てる!」

ヒイロの手札は1枚のみで、次のターンで《波紋消滅》の効果も切れる。

そうなれば、《EMオッドアイズ・ユニコーン》の効果も使えるようになる。

圧倒的に遊矢達に勢いが傾く。

「俺はこれで、ターンエンド!」

 

ヒイロ

手札1

ライフ2000

場 幻獣妖精バリアカーバンクル レベル2 守備1200(チューナー)

  波紋消滅(永続罠)

  幻獣海(フィールド魔法)

 

ユーゴ&遊矢

手札

ユーゴ1

遊矢3→0

ライフ250

場 HSR魔剣ダーマ レベル6 攻撃2200

  オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン レベル8 攻撃3000

 

「俺のターン、3回目のスタンバイフェイズとなったことで、《波紋消滅》の効果は消える」

 

ヒイロ

手札1→2

 

「榊遊矢、ユーゴ…お前のデュエル、悪くなかった。だが…俺の勝ちだ」

「何!?」

「俺は手札から魔法カード《ミラクルシンクロフュージョン》を発動。俺のフィールド・墓地から融合素材モンスターを除外し、シンクロモンスターを融合素材として要求する融合モンスター1体を融合召喚する。俺は墓地の《マリンフォース・ドラゴン》と《幻獣猿人ゼーマン》を融合」

「融合…だって!?このタイミングで!!」

「伝説と神話の力を束ねし水竜よ、世界を震わし新たな可能性を照らし出せ!融合召喚!!《幻獣剣神オーシャン》!!」

「行くよ、マスター!!」

剣士へと姿を変えたアクアは何十年もヒイロと共に生きてきたにもかかわらず、相変わらずの子供っぽい言動と笑顔を見せた。

 

幻獣剣神オーシャン レベル10 攻撃3600

 

「攻撃力…3600…!?」

「バトル。《オーシャン》で《オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン》を攻撃」

「いくよ!はああああ!!」

アクアが持つ剣が青い光を放ち、それを振り下ろすと同時に《オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン》が両断させる。

そこから青い光が広がっていき、遊矢達を包んでいった。

 

遊矢&ユーゴ

ライフ250→0

 

 

 

 

 

幻獣界

フィールド魔法

(1):このカードの発動時の効果処理として、デッキから「幻獣」モンスター1体を手札に加える。

(2):自分フィールドに存在する「幻獣」モンスターの攻撃力・守備力は300アップする。

(3):1ターンに1度、自分フィールドの「幻獣」Sモンスターが相手によって破壊された時に発動できる。EXデッキからそのモンスターと同じレベルのSモンスター1体をS召喚扱いとして特殊召喚する。

 

幻獣の子コロ

レベル1 攻撃0 守備0 チューナー 地属性 獣族

(1):このカードを「幻獣」または「マリンフォース」SモンスターのS素材とする場合に発動できる。自分の手札に存在する「幻獣」モンスター1体をS素材として使用することができる。この効果はこのカードが(2)の効果で特殊召喚されている場合、発動できない。

(2):自分フィールドにモンスターが存在しない状態で自分がダメージを受けるとき、墓地にこのカードが存在する場合に発動できる。このカードを墓地から特殊召喚し、ターン終了時まで自分が受けるダメージを0にする。この効果で特殊召喚されたこのカードはフィールドから離れたとき除外される。

 

幻獣盾ウォールゴーレム

レベル6 攻撃0 守備2000 地属性 岩石族

【Pスケール:青5/赤5】

(1):1ターンに1度、自分フィールドの「幻獣」モンスターが相手モンスターと戦闘を行うときに発動できる。そのモンスターはその戦闘では破壊されず、自分が受ける戦闘ダメージは半分になる。

【モンスター効果】

(1):このカードをS素材としたSモンスターは1ターンに1度、戦闘・効果では破壊されない。

 

幻獣ジャックフロスト

レベル1 攻撃200 守備200 チューナー 水属性 水族

このカードの(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しか行えない。

(1):自分フィールドに「幻獣」モンスターが墓地から特殊召喚された時に発動できる。手札に存在するこのカードを特殊召喚する。

(2):このカードの効果でこのカードが特殊召喚に成功したとき、そのモンスターとこのカードのみをS素材としてS召喚を行う。

(3):このカードをS素材としてSモンスターのS召喚に成功した場合に発動する。次の相手バトルフェイズ中、相手は攻撃宣言を行えない。

 

ビック・リボーン

通常罠カード

(1):相手の直接攻撃によって自分が戦闘ダメージを受けたときに発動できる。そのダメージ以下の数値の攻撃力を持つモンスターを自分の墓地から特殊召喚する。

(2):自分フィールドにカードがない場合、このカードは手札から発動できる。

 

波紋消滅

永続罠カード

このカードは発動後、3回目の自分スタンバイフェイズ時に墓地へ送られる。

(1):お互いのプレイヤーはペンデュラム召喚を行えず、Pゾーンに存在するPカードの効果を発動できない。

 

幻獣の紋章

通常魔法カード

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドに存在する「幻獣」Sモンスター1体をリリースすることで発動する。自分の墓地に存在する「幻獣」チューナー1体とチューナー以外の「幻獣」モンスター1体をレベルの合計がそのモンスターと同じになるように選択し、自分フィールドに特殊召喚する。この効果を発動したターン、自分は「幻獣」以外のモンスターを手札・墓地から特殊召喚できない。

(2):自分フィールドにモンスターが存在しない状態で相手の直接攻撃宣言時、墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。その攻撃を無効にする。その後、デッキから「幻獣」カード1枚を手札に加える。この効果を発動したターン、自分はデッキからカードを手札に加えることができない。

 

幻獣空

フィールド魔法カード

(1):自分フィールドのSモンスターは1ターンに1度、戦闘及び効果では破壊されない。

(2):このカードが破壊され墓地へ送られた時に発動できる。デッキから「幻獣」フィールド魔法カード1枚を手札に加える。

 

幻獣霊ボディレスファントム

レベル3 攻撃0 守備0 闇属性 アンデット族

【Pスケール:青3/赤3】

(1):1ターンに1度、自分フィールドに「幻獣」Sモンスターが特殊召喚された時に発動できる。そのモンスターのS素材となった「幻獣」モンスター1体を自分フィールドに表側守備表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。

【モンスター効果】

このカード名のカードのモンスター効果はデュエル中1度しか発動できない。

(1):フィールド魔法が存在する自分メインフェイズ時に発動できる。自分の墓地・EXデッキに表側表示で存在するこのカードを自分フィールドに表側守備表示で特殊召喚する。

 

幻獣海

フィールド魔法カード

(1):自分フィールドの「幻獣」モンスターの戦闘で発生する自分へのダメージは0となる。

(2):自分フィールドの「幻獣」モンスターが相手モンスターを攻撃したダメージステップ終了時に発動する。その相手モンスターの攻撃力を戦闘を行った自分のモンスターの攻撃力分ダウンさせる。

 

SRポケサーキッド

レベル3 攻撃1000 守備1000 効果 風属性 機械族

(1):自分フィールドの風属性Sモンスターが相手モンスターの攻撃対象となったとき、手札に存在するこのカードを墓地へ捨てることで発動できる。その戦闘で発生する自分へのダメージを半分にする。この効果を発動した次の自分スタンバイフェイズ時、自分はデッキからカードを1枚ドローする。

 

転生幻獣リバースカラドリウス

レベル3 攻撃400 守備300  光属性 鳥獣族

【Pスケール:青7/赤7】

このカード名の(1)のP効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドの「幻獣」モンスターが戦闘・効果によって破壊され墓地へ送られたときに発動できる。Pゾーンに存在するこのカードを破壊することで、墓地に存在するそのモンスターを特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。

【チューナー:効果】

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールドの「幻獣」モンスターが戦闘・効果によって破壊された時に発動できる。手札に存在するこのカードを自分フィールドに表側攻撃表示で特殊召喚する。その後、自分の墓地に存在する「幻獣」モンスター1体を自分フィールドに特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。この効果で特殊召喚されたこのカードは自分ターン終了時、表側表示でEXデッキに置く。

 

運命の振り子

通常魔法カード

(1):自分のPゾーンにカードがない場合にのみ発動できる。自分のデッキに存在するPカード1枚をEXデッキに表側表示で置く。その後、デッキからカードを1枚ドローする。

 

幻獣妖精バリアカーバンクル

レベル2 攻撃0 守備1200 光属性 獣族

【Pスケール;青8/赤8】

(1):1ターンに1度、自分フィールドに表側攻撃表示で存在する「幻獣」モンスターが相手モンスターの攻撃対象となったときに発動できる。その自分モンスターを守備表示に変更する。その後、ターン終了時までそのモンスターの守備力は1000アップする。

【チューナー:効果】

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):相手の直接攻撃宣言時に発動できる。手札のこのカードを自分フィールドに特殊召喚する。その後、攻撃モンスターの攻撃力をターン終了時まで0にする。

 

 

「目は…覚めたか?」

デュエルが終わると同時に、ヒイロから2人に問いかけられる。

「目が覚めたって…どういう意味だよ?」

(ユーゴ、彼はあなたと遊矢君にデュエルを挑んだのは、2人の頭を冷やさせる為だったんですよ)

「んだよ、そのためだけに俺ら2人まとめて相手をしたってのかよ」

口数が少なく、クールに見える彼だが、そんなことのためにこんなデュエルをしてきたことに思わず呆れてしまう。

ヒイロのそばには元の姿に戻ったアクアの姿があった。

「一直線に走るだけが戦いじゃない。勝ちたいなら、相手を知り、己を知ることだ。そして、己のできることで、相手の最も嫌がることをしろ。そして…」

ヒイロの視線が遊矢に向けられる。

そして、懐から1枚のカードを出すと、それを彼に向けて投げた。

「これは…?」

「お前の力の使い方は矛盾している。だが、たとえ矛盾をはらんだとしても、その願いに向けて突き進む意思があれば、お前は何かをなせるだろう。良くも悪くも、だろうが」

「ヒイロさん…」

遊矢は投げ渡されたカード、《超融合》のカードを見る。

遊矢の目にはそのカードから、恐ろしいほどの何かが組み込まれているように感じられた。

「これをどう使うかはお前次第だ。特別に貸してやる。そのカードと、親父さんのカードで、探してみろ。本当のお前のデュエルをな。それから、お前たちにその秘密というものを話してやる前に…」

ヒイロの視線が今度は翔太に向けられ、視線に気づいた翔太がにらむ。

「この流れで、今度は俺かよ?で、対戦相手ってのは…あんたか?」

「いや。お前の相手は剣崎侑斗だ。彼とデュエルをしてもらう」

デュエルリングを元に戻し、ヒイロと交代するように侑斗が席に入る。

「今度は君を確かめないといけない。君が本当にベクターに勝てるかどうかを…」

エクシーズ次元で初めてベクターが表面化し、彼のデュエルを見たことではっきりわかったことは、バリアン世界で凌牙が倒した時と比較するとさらにパワーアップしていることだ。

今、翔太の中で眠りについている中でもそれが続いている可能性は高い。

おそらくは、翔太自身がベクターに引導を渡さなければならないだろう。

その時、彼が負けてしまうようなことがあってはならなかった。

「俺が…あいつに負けるほどヤワだとでも?」

「それは分からない。けれど、少なくとも僕と互角に戦えないようなら、きっと勝てないよ」

侑斗は腰に下げているカードケースからではなく、懐からデッキを出し、リングにセットする。

遊矢とユーゴが下りてくるのを待った翔太は入れ替わるように乗り込む。

「なぁ、遊矢。その《超融合》ってカードは何だよ?融合次元が使っているカードなのか?」

「いや、俺が今までデュエルをしたアカデミアが使っている様子はなかった。けど…きっと、これは融合次元のものじゃない」

「…?なんで、そう言い切れるんだよ?」

「きっと、これは…ヒイロさんの言葉を借りるなら、精霊の世界で作られたカードだ…」



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第116話 精霊の魂を持つ男

ヒイロと遊矢、ユーゴペアのデュエルが終わり、入れ替わった侑斗と翔太を乗せた席が持ち上がり、ソリッドビジョンも起動する。

先ほどデュエルをした面々は柚子と同様、客席に映ってデュエルを観戦する。

「なぁ、あの剣崎ってデュエリストのことはあんまりよく知らねーんだけど、強いのか?」

「俺は実際にデュエルをしたことはないけど…どうなんだ?」

「剣崎さん…1人でアカデミアのデュエリストを5人も倒していたわ」

「5人をまとめて!?」

「も、もちろん途中で志島北斗が入って、それから2人追加で入ったけれど…圧倒していたわ。その時は確か、霊獣っていう融合召喚主体のデッキを使っていたわ」

柚子の脳裏に浮かぶのは融合召喚と解除をモンスター効果によって繰り返して効果をかわし、臨機応変に立ち回ってオベリスクフォースを翻弄する侑斗の姿だ。

今のデッキがそれかは分からないが、翔太が苦戦する未来が頭に浮かぶ。

「てめえが強かろうが弱かろうが関係ない。俺が勝つだけだからな」

「それでいい。それがベクターにも通じることを願うよ」

「そういうことは、勝ってから言えよ。いくぞ…」

「「デュエル!!」」

 

侑斗

手札5

ライフ4000

 

翔太

手札5

ライフ4000

 

「僕の先攻。僕はモンスターを裏守備表示でセット。カードを1枚伏せて、ターンエンド」

 

侑斗

手札5→3

ライフ4000

場 裏守備モンスター1

  伏せカード1

 

翔太

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「大口叩いた割には滅茶苦茶慎重じゃねえか、ビビってるのか?」

「仮にも、君はジェルマンを倒しているし、実力もある。様子を見ない手はないよ」

「けっ…!俺のターン!」

 

翔太

手札5→6

 

「俺は手札から《魔装陰陽師セイメイ》を召喚」

 

魔装陰陽師セイメイ レベル3 攻撃1000(チューナー)

 

「こいつの召喚に成功したとき、手札からレベル4以下の魔装モンスター1体を特殊召喚できる。俺は手札の《魔装妖ビャッコ》を特殊召喚」

「キュイ!!」

《魔装陰陽師セイメイ》が召喚した大きな人形が紙飛行機のように飛び、その上に乗っていたビャッコが飛び降りる。

そして、ランドセルから串に刺さった4つのみたらし団子を出して、食べ始める。

 

魔装妖ビャッコ レベル3 攻撃400

 

「こいつは魔装モンスターのシンクロ、エクシーズ素材となる場合、レベルを4としても扱うことができる。レベル4の《ビャッコ》にレベル3の《セイメイ》をチューニング。黄金の剛腕を持つ漆黒の戦士、その気高き力で道を拓け。シンクロ召喚!現れろ、《魔装剛毅クレイトス》!」

 

魔装剛毅クレイトス レベル7 攻撃2600

 

「攻撃力2600のシンクロモンスター…エクストラデッキから特殊召喚された相手モンスターと戦闘を行う場合、ダメージステップ終了時まで攻撃力が1000アップする、か…」

「ああ、そうだ。下手なモンスターをエクストラデッキから召喚したら、大けがするぜ。そして、シンクロ素材となった《ビャッコ》の効果により、デッキからカードを1枚ドローする。更に、俺は手札から永続魔法《魔装剣ソハヤ》を《クレイトス》に装備」

《魔装剛毅クレイトス》の右腕のグローブが外れ、その代わりに筋肉質な彼には不釣り合いともいえる、刀身に五芒星が刻まれた細身の太刀を手にする。

「このカードを装備したモンスターが守備モンスターを攻撃するとき、貫通ダメージを与える。いけ、《クレイトス》。その裏守備モンスターを真っ二つにしろ」

《魔装剛毅クレイトス》が大股でフィールドを駆け抜けると、持っている刀で裏守備モンスターを両断する。

 

裏守備モンスター

ガスタ・イグル レベル1 守備400(チューナー)

 

「裏守備モンスターの守備力は400。よって、お前に2200のダメージだ!」

五芒星の光に反応するように刀身が緑に染まり、再びそれを振るうと同時に緑の剣閃が侑斗を襲う。

「ぐうう!!」

 

侑斗

ライフ4000→1800

 

「へっ…いきなり2200のダメージだな」

「けれど、《イグル》の効果を発動。このカードが戦闘で破壊された時、デッキからレベル4以下でチューナー以外のガスタ1体を特殊召喚できる。僕はデッキから《ガスタの神官ムスト》を特殊召喚」

 

ガスタの神官ムスト レベル4 攻撃1800

 

「更に僕は罠カード《サブテラーの宣告》を発動。手札・フィールドの僕のモンスター1体を墓地へ送り、デッキからそのモンスターと同じ属性でカード名の異なるリバースモンスター1体をセットする。僕は手札の《ガスタ・グリフ》を墓地へ送り、デッキから《ガスタの希望カムイ》をセットする。そして、《ガスタ・グリフ》の効果。このカードが手札から墓地へ送られた時、デッキからガスタ1体を特殊召喚できる。僕はデッキから《ガスタの静寂カーム》を特殊召喚」

 

ガスタの静寂カーム レベル4 攻撃1700

 

「ちっ…なら俺はカードを1枚伏せて、ターンエンドだ」

 

侑斗

手札3→2

ライフ1800

場 裏守備モンスター1(《ガスタの希望カムイ》)

  ガスタの神官ムスト レベル4 攻撃1800

  ガスタの静寂カーム レベル4 攻撃1700

 

翔太

手札6→2

ライフ4000

場 魔装剛毅クレイトス(《魔装剣ソハヤ》装備) レベル7 攻撃2600

  魔装剣ソハヤ(装備魔法)

  伏せカード1

 

「あれ?ガスタ…?聖霊獣騎じゃない??」

このターンに侑斗が召喚したモンスターはいずれも、以前侑斗が使っていた聖獣獣騎とは雰囲気は似ているものの、異なる特性や姿をしたモンスターばかりだ。

「デッキを変えたってことか?」

「いや、そうじゃない。聖霊獣騎はスタンダード次元で手に入れたカード。今使っているガスタが正真正銘、あいつの本来のデッキだ」

「本来のデッキ…ということは、これが侑斗さんの本気ですか?ヒイロさん」

「そうだ。よく見ておけ、あいつのデュエルを」

 

 

「僕のターン、ドロー」

 

侑斗

手札2→3

 

「僕はセットしている《ガスタの希望カムイ》を反転召喚」

 

ガスタの希望カムイ レベル2 攻撃200

 

「《カムイ》のリバース効果。デッキからガスタと名の付くチューナーモンスター1体を特殊召喚する。《ガスタ・ファルコ》を特殊召喚」

《ガスタの希望カムイ》が口笛を吹き、どこからともなく彼の相棒である《ガスタ・ファルコ》が飛んでくる。

《ガスタ・ファルコ》は彼の小さな肩の上に乗り、嬉しそうに頬ずりした。

 

ガスタ・ファルコ レベル2 守備1400(チューナー)

 

「ペンデュラム召喚なしで4体もモンスターを!?」

「更に僕は手札から永続魔法《風の継承》を発動。そして、僕はレベル2の《カムイ》にレベル2の《ファルコ》をチューニング。希望の風を呼ぶ少年よ、友の背に乗り、旋風を起こせ。シンクロ召喚。来い、《ダイガスタ・ファルコス》!!」

(久々にいくぜ、ユウ兄ちゃん!!)

大きくなった《ガスタ・ファルコ》の背に乗った《ガスタの希望カムイ》の声が侑斗の脳裏に響く。

2人で飛び回る姿を侑斗は微笑みながら見つめていた。

 

ダイガスタ・ファルコス レベル4 攻撃1400

 

「《ダイガスタ・ファルコス》の効果。このカードのシンクロ召喚に成功したとき、フィールド上のすべてのガスタの攻撃力を600アップさせる」

(うおりゃあああ!!みんな、パワーアップだぁ!!)

持っている杖を振り回し、風を起こすと3体のガスタが緑のオーラに包まれていく。

 

ダイガスタ・ファルコス レベル4 攻撃1400→2000

ガスタの静寂カーム レベル4 攻撃1700→2100

ガスタの神官ムスト レベル4 攻撃1800→2200

 

「はっ!攻撃力がそれでも《クレイトス》には届いてねえぞ!」

「そして、僕は《風の継承》の効果を発動。このカードは僕がエクストラデッキからガスタの特殊召喚に成功したとき、その種類によって効果を発動できる。ただし、どれも発動できるのは1ターンに1度だけだけどね。《ダイガスタ・ファルコス》はシンクロモンスター」

《風の継承》のソリッドビジョンから白がかった緑色の風が起こり、侑斗のデッキの中のカードを1枚を吹き飛ばす。

そして、風が収まると同時にそのカードはヒラヒラと侑斗の手に落ちてくる。

「デッキからガスタ1体を手札に加える。僕が手札に加えるのは《ガスタの新風レラ》」

(お久しぶりです、ユウ様)

手札に加わった《ガスタの新星レラ》の姿は霊獣使いの時と比較すると、瞳にガスタ共通の風車のようなシルエットがあり、身に着けているマントにはフードが追加されている。

(願っているよ、レラ。君と、ガスタの未来に幸があることを)

「ユウーーー??」

急に背後から冷たい感じがして、急に顔を青くした侑斗は後ろを見る。

そこには精霊に戻ったウィンダの姿があり、面白く無さげにその様子を見ていた。

「ユウ、レラちゃんとかガスタの未来を思ってもいいけど、今はデュエルに集中しようね?」

「は、はい…」

(何者なんだ…?あいつは)

ウィンダの正体は知っていて、レラやカムイも精霊らしいため、別に話していることは問題ではない。

だが、彼らの話を聞く限りは、まるで侑斗もガスタの精霊のような口ぶりだった。

「(後でウィンダに埋め合わせしとかないと…)僕は《カーム》の効果を発動。1ターンに1度、墓地のガスタ2体をデッキに戻し、デッキからカードを1枚ドローできる。僕は墓地の《カムイ》と《コドル》をデッキに戻し、デッキからカードを1枚ドローする。更に、《ムスト》の効果を発動。1ターンに1度、墓地のガスタ1体をデッキに戻すことで、フィールド上のモンスター1体の効果をターン終了時まで無効にする。ムスト先生、お願いします」

(ふっ…まだ年寄りを働かせるとはな)

《ガスタの神官ムスト》が杖に額を当てて祈ると、緑色の風が《魔装剛毅クレイトス》を包む。

風が消えると同時に苦しみ出した《魔装剛毅クレイトス》は膝をついた。

 

墓地からデッキに戻ったカード

・ガスタ・ファルコ

 

「そして、僕はレベル4の《ファルコス》と《カーム》でオーバーレイ!エクシーズ召喚。来い、《ガスタの剣豪オキクルミ》。頼みます、師匠」

(ユウか…。転生してからも磨き続けているようだな)

魔剣を手にした《ガスタの剣豪オキクルミ》は髭を撫でつつ、再会した愛弟子の成長した姿に喜びを見せる。

 

ガスタの剣豪オキクルミ ランク4 攻撃2300

 

「そして、《風の継承》の効果は発動。エクシーズモンスターをエクストラデッキから特殊召喚した場合、攻撃力を1000アップさせる」

 

ガスタの剣豪オキクルミ ランク4 攻撃2300→3300

 

「くっ…!」

「バトル。《オキクルミ》で《クレイトス》を攻撃。そして、《オキクルミ》の効果発動。攻撃時、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、このターン、僕のガスタが攻撃する場合、相手は魔法・罠カードを発動できなくなる」

《ガスタの剣豪オキクルミ》が左右に握る魔剣にオーバーレイユニットが宿ると同時に、翔太の伏せカードが緑色の風によって拘束される。

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・ダイガスタ・ファルコス

 

「ちぃ…!!」

「ウィンディ・オリジン・ストラッシュ!」

《ガスタの剣豪オキクルミ》が両手の剣で《魔装剛毅クレイトス》を切り裂き、消滅させる。

 

翔太

ライフ4000→3300

 

「くそ…!だが俺はここで《魔装剣ソハヤ》の効果を発動!こいつを装備したモンスターが相手によって破壊された時、その装備モンスターがエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターの場合、デッキからそのモンスターのランクかレベルの数値以下のレベルの魔装モンスター1体を効果を無効にして特殊召喚できる。破壊された《クレイトス》のレベルは7。よって、俺はデッキから《魔装騎士ペイルライダー》を特殊召喚する!」

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

 

「けれど、僕にはまだ通常召喚が残っているよ。僕は手札から《ガスタの新風レラ》を召喚!」

(ユウ様、ウィンダ様、私も頑張ります!)

浮遊する杖に乗った状態のレラがフィールドに現れ、地上へ降りると同時にスカートをポンポンと叩いてから杖を手にした。

 

ガスタの新風レラ レベル1 攻撃100

 

「このカードの召喚に成功したとき、僕の墓地に存在するシンクロモンスター、またはエクシーズモンスターのガスタ1体を効果を無効にして、守備表示で特殊召喚できる。僕は墓地の《ダイガスタ・ファルコス》を特殊召喚」

 

ダイガスタ・ファルコス レベル4 守備1200

 

「そして、この効果で特殊召喚されたモンスターをチューナー扱いにし、エクシーズモンスターの場合はそのランクをレベルとして扱う。僕はレベル1の《レラ》にレベル4の《ダイガスタ・ファルコス》をチューニング!」

「またシンクロ召喚するのか!」

(はあああああ!!!)

杖を空に掲げ、魔力を込めて叫ぶレラがチューニングリングと化した《ダイガスタ・ファルコス》の中へと飛び込む。

「族長の意思を代行する少女よ、友たる鳥獣の背に乗り、今こそ飛翔せよ!」

「さあ、私の出番だよ!」

精霊の姿のウィンダが口笛を吹くと、どこからか大きくなった《ガスタ・ガルド》が現れて、ウィンダがその背中に乗る。

「シンクロ召喚!来い、《ダイガスタ・ガルドス》!」

 

ダイガスタ・ガルドス レベル5 攻撃2200

 

「《レラ》はペンデュラムモンスター。よって、このカードは墓地へは行かずにエクストラデッキに行く。そして、《ダイガスタ・ガルドス》は1ターンに1度、墓地のガスタ2体をデッキに戻すことで、相手フィールドに表側表示で存在するモンスター1体を破壊できる!」

「けどなぁ、今のお前の墓地に存在するガスタは1体だけ。おまけにシンクロモンスターはその効果でデッキに戻せない。それじゃあ効果を発動できないぜ」

《ダイガスタ・ガルドス》の攻撃力は2200で、《魔装騎士ペイルライダー》の攻撃力は2500。

さすがに攻撃力3300となった《ガスタの剣豪オキクルミ》を倒すことはできないが、《ダイガスタ・ガルドス》を戦闘破壊することならできる。

「確かに、このままだと《ガルドス》が破壊されるだけ。だから、僕は手札から魔法カード《テイク・オーバー5》を発動。デッキの上から5枚のカードを墓地へ送る」

 

デッキから墓地へ送られたカード

・ガスタの疾風リーズ

・聖なるバリア-ミラーフォース

・ガスタの救命劇

・ガスタの見習い剣士ユウ

・ガスタ・サンボルト

 

「これで、条件を満たす墓地のガスタは3体。僕は《ガルドス》の効果を発動。墓地の《ユウ》と《リーズ》をデッキに戻し、《ペイルライダー》を破壊!」

「お願い、ガルド!!」

ウィンダの願いを聞いた《ダイガスタ・ガルドス》が両翼から風を起こし、《魔装騎士ペイルライダー》を吹き飛ばした。

「くそ…運のいい奴め!」

「そうかもね、けれど…それにちゃんと答えてくれるから。僕はこれで、ターンエンド」

 

侑斗

手札3→1

ライフ1800

場 ダイガスタ・ガルドス レベル5 攻撃2200

  ガスタの剣豪オキクルミ(オーバーレイユニット1 《風の継承》の影響下) ランク4 攻撃3300

  ガスタの神官ムスト レベル4 攻撃2200

  風の継承(永続魔法)

 

翔太

手札2

ライフ3300

場 伏せカード1

 

「ちっ…やってくれるぜ。俺のターン!」

 

翔太

手札2→3

 

《魔装剛毅クレイトス》が破壊される可能性を考えて、せっかく《魔装剣ソハヤ》の効果でエースカードを呼び出すことができたものの、結局そのモンスターも破壊されることになった。

おまけに、フィールドには攻撃力3300が1体と2200が2体。

たとえペンデュラム召喚で《魔装騎士ペイルライダー》を呼び戻すことができたとしても、それでは逆転には全然足りない。

「俺は手札から《魔装門》を発動。相手フィールドに《魔装幻影トークン》2体を特殊召喚する代わりに、デッキから魔装カード1枚を手札に加える。俺は《魔装の杯-ナルタモンガ》を手札に加える」

 

魔装幻影トークン×2 レベル6 攻撃2000

 

「そして、俺は《魔装獣ユニコーン》を召喚」

 

魔装獣ユニコーン レベル4 攻撃1600

 

「更に俺は手札から魔法カード《魔装の杯-ナルタモンガ》を発動。俺のフィールドの魔装モンスター1体のレベルまたはランクの数値以下のレベルの魔装モンスター1体を守備表示で特殊召喚する。俺が特殊召喚するのは《魔装楯タカモリ》」

 

魔装盾タカモリ レベル4 守備2000(チューナー)

 

「更に《ナルタモンガ》は発動時、俺の墓地に魔装モンスターが3種類以上存在する場合、次の俺のターンのドローフェイズ時に更に1枚カードをドローできる。そして、俺のエクストラデッキに魔装モンスターが表向きで存在し、俺のペンデュラムゾーンにカードがない場合、手札の《魔装魚メロウ》を特殊召喚できる」

薄緑色の鱗と五芒星が刻まれた緑のフードが特徴的な人魚が姿を現す。

 

魔装魚メロウ レベル1 攻撃0

 

「レベル4の《ユニコーン》とレベル1の《メロウ》にレベル4の《タカモリ》をチューニング。勝利と支配をもたらす第2の騎士よ、終戦を告げるその矢で敗者を鎮めよ!シンクロ召喚!《魔装騎士ホワイトライダー》!!」

 

魔装騎士ホワイトライダー レベル9 攻撃3100

 

「《ホワイトライダー》…魔装装備カード以外のすべての効果を受けない第2の騎士」

「そうだ。《ダイガスタ・ガルドス》の効果もこれなら受けないだろう?そして、シンクロ素材となった《メロウ》の効果発動。フィールド上のこのカードを素材に魔装モンスターのシンクロ、エクシーズ、融合召喚に成功したとき、墓地の魔装カード1枚を除外することで、デッキから《魔装降臨の儀式》と魔装儀式モンスター1体を手札に加える。俺は儀式モンスター、《魔装騎士デュラハン》を手札に加える」

「儀式モンスターに儀式魔法…。今まで使ってきていないカードだね」

最初からシンクロ、エクシーズ、融合、ペンデュラムとこの世界のエクストラデッキを使うすべての召喚法を使って来た翔太だが、儀式召喚をしたことはこれまでに一度もない。

ランサーズやヴァプラ隊でも儀式召喚を使うデュエリストはわずかだ。

「俺も…進化するからな。俺は手札から《魔装降臨の儀式》を発動。俺の手札・フィールドの魔装モンスターを素材として、手札の魔装儀式モンスターを儀式召喚する」

「えー?でも、フィールドには《ホワイトライダー》しかいないし、それに手札には儀式モンスターの《魔装騎士デュラハン》しかいないよ」

《魔装騎士ホワイトライダー》は現段階では侑斗に大きなダメージを与えることのできるモンスターで、せっかくシンクロ召喚したそのモンスターをすぐに儀式素材として手放すのはもったいない話だ。

仮にそれをするとしたら、そのモンスター以上の効果を持つモンスターでなければ意味がない。

「そうだ、だが《魔装降臨の儀式》は俺のエクストラデッキに存在する魔装騎士1体を除外することで、儀式素材とすることができる。俺は《ペイルライダー》を除外する」

「《ペイルライダー》を破壊したことが仇になった…!」

《魔装騎士ペイルライダー》の幻影が翔太の頭上に現れ、その装甲が急速にさび付いていく。

そして、ひび割れていくと同時にその中にある青白い炎が上空に現れた、鎖で縛られている黒一色の棺桶へと取り込まれていく。

棺桶には十字架も名前も刻まれておらず、その周囲を7つの青い炎がともる。

「契約は交わされた。四騎士の魂よ、首なき死の予言者を呼び覚ませ。儀式召喚。現れろ、《魔装騎士デュラハン》」

鎖が砕けると同時に棺桶が開き、その中から五芒星がのどぼとけのあたりに刻まれた、《魔装獣ユニコーン》と似た体つきではあるが首のない馬が灰色の馬車を引いて出てくる。

その中に恐らくは《魔装騎士デュラハン》がいるのだろうが、中から出てくる気配はない。

 

魔装騎士デュラハン レベル7 攻撃2100

 

「バトルだ。《魔装騎士デュラハン》で《ガスタの剣豪オキクルミ》を攻撃」

「攻撃力の低い《デュラハン》で攻撃だって!?」

「ああ、だが《デュラハン》は戦闘では破壊されず、戦闘で発生する俺へのダメージも0になる」

攻撃命令を出されたにもかかわらず、騎士を乗せる馬は馬車の重量があるのか、ゆっくりと《ガスタの剣豪オキクルミ》の前まで歩くことしかしなかった。

攻撃力が自らよりも下で、迎撃できることから《ガスタの剣豪オキクルミ》は両手の剣を振るうが、刃はなぜかすり抜けるだけで斬ることができない。

「そして、戦闘を行った相手モンスターに宣告カウンターを1つ置く」

 

ガスタの剣豪オキクルミ ランク4 宣告カウンター0→1

 

「宣告カウンター…?」

「ああ、更に俺は《ホワイトライダー》で《ダイガスタ・ガルドス》を攻撃。アロー・オブ・ルール」

《魔装騎士ホワイトライダー》がその手に握る弓で矢を放つ。

矢を受けたガルドが羽根をまき散らして元の姿に戻る。

「ピー…」

「ごめん、2人とも…」

「気にしないで、それよりもユウ、ライフがもう…」

「最初の一撃は痛かったからね…」

 

侑斗

ライフ1800→900

 

「俺はこれでターンエンド。同時に《デュラハン》の効果発動。こいつはターン終了時に次の俺のターンのスタンバイフェイズ時まで墓地へ送られる」

《魔装騎士デュラハン》の背後に再び自分が入っていた棺桶が現れ、開くと自らその中へと戻っていく。

「そして、宣告カウンターの乗っているモンスターも墓地へ送られる」

「何!?師匠!」

ウググ、と苦しみ出した《ガスタの剣豪オキクルミ》の体が黒く染まり、何かに引っ張られるかのように棺桶に中へと引き込まれていく。

2体のモンスターを入れた棺桶は閉じると、姿を消してしまった。

 

侑斗

手札1

ライフ900

場 ガスタの神官ムスト レベル4 攻撃2200

  魔装幻影トークン×2 レベル6 攻撃2000

  風の継承(永続魔法)

 

翔太

手札3→0

ライフ3300

場 魔装騎士ホワイトライダー レベル9 攻撃3100

  伏せカード1

 

「おいおい、試すって大口叩いた割には大したことないじゃあねえか?」

確かに《ガスタの剣豪オキクルミ》や《ダイガスタ・ガルドス》といったモンスターは脅威であったものの、それでもこうして倒すことができた。

今フィールドに残っている《ガスタの神官ムスト》では《魔装騎士ホワイトライダー》を倒すことはできないうえに、次の翔太のターンに再び《魔装騎士デュラハン》が戻ってくる。

「確かにまずい状況だけど、逆転できないものじゃないよ。僕のターン、ドロー」

 

侑斗

手札1→2

 

「更にスタンバイフェイズ時に《テイク・オーバー5》の効果発動。このカードを墓地から除外して、更にもう1枚カードをドローする」

 

侑斗

手札2→3

 

「そして、手札から魔法カード《ガスタの再生術》を発動。墓地のガスタ4体をデッキに戻し、デッキからカードを2枚ドローする」

 

墓地からデッキに戻ったカード

・ガスタの剣豪オキクルミ

・ガスタの静寂カーム

・ダイガスタ。ファルコス

・ダイガスタ・ガルドス

 

侑斗

手札3→4

 

「一気に手札補充かよ…」

「まだだよ。更に僕は手札から速攻魔法《ガスタの口笛》を発動。僕のフィールドのモンスター1体をリリースし、デッキからそのモンスターよりも低いレベルのガスタ1体を手札に加える。僕は《魔装幻影トークン》1体をリリースし、デッキから《ガスタ・ライオン》を手札に加える。そして、僕は手札からスケール8の《ガスタ・ライオン》をセッティング」

《精霊獣アペライオ》と似て、赤い毛並みをしたライオンの子供が青い光の柱を生み出しながら宙を舞う。

彼の瞳にもウィンダらと同様の風車が宿っていて、眠たいのかあくびをしていた。

「ごめんごめん、まだ眠たい時間だった?ちょっとだけ、我慢して。僕は《ガスタ・ライオン》のペンデュラム効果を発動。もう片方のペンデュラムゾーンにカードが存在しない場合、僕のフィールドのモンスター1体をリリースすることで、エクストラデッキに存在するガスタをペンデュラムゾーンに置くことができる。僕は《魔装幻影トークン》をリリースして、《レラ》をセットする。もう1度、お願いするよ。レラ!」

(アペライオも来てくれた!おーい!)

青い光の柱を生み出したレラが相棒であるライオンの子供に嬉しそうに声をかける。

レラの声が聞こえたアペライオは彼女に目を向けると、嬉しそうに尻尾を振る。

「可愛いーー…」

「柚子??」

「これで僕はレベル2から7までのモンスターを同時に召喚可能。風と緑溢れる大地の守護者よ、今こそ異界より来たれ!ペンデュラム召喚!来い、僕のモンスターたち!《ガスタの静寂カーム》《ガスタの鍛冶職人セイ》《ガスタ・ガルド》!」

 

ガスタの静寂カーム レベル4 攻撃1700

ガスタの鍛冶職人セイ レベル4 攻撃1900

ガスタ・ガルド レベル3 攻撃500(チューナー)

 

「またチューナーモンスター…ってことは!」

「僕はレベル4の《セイ》にレベル3の《ガルド》をチューニング!守り手の剣を受け継ぎし新たな星よ、今ここへ力を示せ!シンクロ召喚!来い、新たなガスタの剣!《ガスタの新星ノチウ》!」

(ン…分かった)

侑斗の脳裏に少年の声が響く。

どこかそっけない声に思わず失笑してしまう。

(彼か…。新しい時代の、僕と同じ役目を持つのは…まぁ、世界は万人の手にある、人の数だけ世界があるのは、デュエルモンスターズも同じか)

そんなことを思う中で、風車が刻まれた分厚い刀身の片刃剣が降ってくる。

その後で背中のあたりに風車が刻まれた、ボロボロな茶色のマントで身を包んだ、薄緑色の若干長めの整っていない髪をした少年が降りて来て、最初に振って来たその片刃剣を軽々と右手で振るって、背中に背負った。

 

ガスタの新星ノチウ レベル7 攻撃2500

 

「《風の継承》の効果発動。シンクロ召喚に成功したことで、僕はデッキから新たなガスタ、《ガスタの神裔ピリカ》を手札に加える。そして、《ピリカ》を召か…」

(あーーーーー!!ノチウ!また髪の毛直してない!!)

いきなり青い光の柱の中からレラがフィールドの《ガスタの新星ノチウ》に怒った表情を見せると、勝手に彼のところへ行き、なぜか持ってきていた櫛で彼の髪を無理やり治そうとする。

(別にいいでしょ?どうせ、戦闘なんてしてたらまたボサボサになるし。この方がしっくりくるし)

(よくない!ユウ様みたいな魔剣士になるんでしょ!だったら、身なりをちゃんとしないと!!それだと、このマントが泣くわよ!!)

(あの人はあの人、俺は俺でしょ。俺なりの守り手になればいいだけだし)

プリプリ怒るレラをノチウがすました顔で受け流していく。

そんな精霊たちのやり取りを侑斗はハハハと力なく笑うしかない。

「ええっと…レラ、彼が…前世の僕の次の…?」

(あ、ユウ様、ごめんなさい!!その、彼が…)

尊敬するユウとウィンダを前にあまりにも恥ずかしい姿を見せてしまったことに、顔を赤くしたレラがペコペコと頭を下げる。

一方のノチウはそんなことを気にすることなく、獲物の剣を構える。

(彼、ノチウは孤児で、私と一緒に育って…悪い人じゃないんですけど、すごくズボラで…)

(孤児か…前世の僕と同じだ)

精霊だったころの侑斗もまた孤児で、ウィンダールの元でウィンダと一緒に育った。

そして、ウィンダールへの恩を返すため、そしてずっと一緒に育ってきた愛するウィンダを守るために魔剣を学び、守り手となった。

そんな自分と同じ守り手となった少年、ノチウも何の因果か同じ孤児という繋がりがあることは驚いたが、ひどくズボラなところや重量のある剣を手にしているところを見ると、違いがあまりにも多い。

「ねえ、剣崎さんってどうしたの?ソリッドビジョンに向けて何か話しているみたいなんだけど…」

精霊が見えない柚子には侑斗が何もしゃべらず、まだ動きを見せないモンスターのソリッドビジョンに向けて話しかけているようにしか見えない。

一方で、精霊が見える遊矢と翔太にとって、彼らの会話は驚きであふれていた。

「おい、剣崎。どういうことだ?前世が精霊??頭を打ったんじゃあないのか?」

次元戦争に巻き込まれ、自分もベクターと石倉純次がぶつかり合って生まれた、人の川をかぶった異形の存在であることからこうした現実ではありえないことについては耐性があるという自負がある。

しかし、この目の前の男は異世界から来たというだけでは飽き足らず、精霊の生まれ変わりだとも言ってきている。

「別に頭を打ったわけじゃないよ。言葉通りの意味だよ。僕は精霊の生まれ変わり。だから、精霊に触れることができて、声を聞くことができる。そのせいか、半分人間で半分精霊みたいなもの、かな。うまく説明できないけれど」

それを自覚し始めたのはウィンダと再会してから、そして彼女と共に仲間たちと出会い、ナンバーズを巡る戦いをしてきたことで前世の自分と一体化し、その影響で精霊としての力も目覚めた。

「まぁ、その話はまた追々で…」

 

ガスタの神裔ピリカ レベル3 攻撃1000

 

「《ピリカ》の効果発動。このカードの召喚に成功したとき、墓地から風属性チューナーモンスター1体を特殊召喚できる。もう1度戻って来い、《ガルド》!!」

 

ガスタ・ガルド レベル3 攻撃500(チューナー)

 

「レベル3の《ピリカ》にレベル3の《ガルド》をチューニング。機械天使に与えられし鎧を装備した風の女戦士よ。その報いの精神で仲間を守れ!シンクロ召喚!《ダイガスタ・スフィアード》!」

 

ダイガスタ・スフィアード レベル6 攻撃2000

 

「《ダイガスタ・スフィアード》の効果。このカードのシンクロ召喚に成功したとき、墓地からガスタカード1枚を手札に加える。僕はもう1度《ピリカ》を手札に加える。そして、レベル4の《カーム》と《ムスト》でオーバーレイ。エクシーズ召喚。来い、《No.00ガスタの魔剣士ユウ》!」

自らの前世のカードをモンスターゾーンに置くが、なぜかソリッドビジョンが反応を見せない。

「おい、こんな時にソリッドビジョンが故障か?」

「さあ、どうなんだろう?でも、すぐに解決するから待って」

「はぁ…?何を言って…」

「フォーチュン、お願い」

「ピー!!」

侑斗の声にこたえ、前世の彼の相棒であるフォーチュンが出てくる。

彼の周りで楽しそうに一回転したフォーチュンは緑の光を放ちながら彼に向けて背中から突撃する。

「これは…!?」

「え、何??いったい何が起こって…?」

(見ろ、小僧)

(どうやら、私たちは剣崎侑斗という人物の正体を見ることになりそうですね)

「あいつの正体を??っておい、なんだよ…これ。コスプレにしてはかなりリアルだぞ…!?」

フォーチュンと一体化した侑斗の姿は両目が風の目となり、背中からフォーチュンのような翼を生やした鳥人間ともいえる姿へと変わった。

「ふう…精霊としての力をすべて発揮できるのはいいけどな…」

 

No.00ガスタの魔剣士ユウ ランク4 攻撃2500

 

「どうなってんだよ…あんたの体は…?」

「僕は精霊の生まれ変わりで、人間と精霊の魂を半分ずつ持っているんだ。だから精霊の力の一部を使うことができる。けれど、完全に使おうとするなら…こうして魂を精霊に近づけないといけない。だから、フォーチュンに協力してもらって、精霊化しているんだ」

精霊化しているせいなのか、若干エコーがある声が侑斗の口から出てくる。

戸惑いを見せる面々にまあ当然かと笑って受け流す。

「まあ、慣れないかもしれないけど、元にはいつでも戻れるから心配しないで。《風の継承》の効果発動。エクシーズ召喚に成功した《ユウ》の攻撃力は1000アップする」

 

ガスタの魔剣士ユウ ランク4 攻撃2500→3500

 

「ちぃ!!」

(なんか、生意気だな。大剣つかう俺よりも攻撃力が高くなるなんてさ)

(もう、ノチウ!ユウ様になんて失礼なことを!!)

「バトル。《スフィアード》で《ホワイトライダー》を攻撃」

「攻撃力の低い《スフィアード》で攻撃だと??」

「《スフィアード》は戦闘では破壊されず、このカードがフィールドに存在する限り、ガスタの戦闘で発生する僕へのダメージはすべて相手に跳ね返る!」

「何!?」

《ダイガスタ・スフィアード》が杖から波紋を発生させ、波紋を受けた《魔装騎士ホワイトライダー》は後ずさりする。

それと同時に、本来なら侑斗が受けるはずだった戦闘ダメージが翔太へと向かう。

「くそ…ふざけたことを!!」

 

翔太

ライフ3300→2200

 

「《ノチウ》で《ホワイトライダー》を攻撃」

「また反射ダメージを性懲りもなく!!」

「いや、僕は《ノチウ》の効果を発動。シンクロ召喚したこのカードが相手モンスターを攻撃するダメージステップ開始時、墓地のガスタカード2枚をデッキに戻すことで、その攻撃力をダメージステップ終了時まで元々の倍にする」

 

ガスタの新星ノチウ レベル7 攻撃2500→5000(ダメージステップ終了時まで)

 

墓地からデッキに戻ったカード

・ガスタの武器職人セイ

・ガスタ・ガルド

 

「攻撃力5000!?」

「ウィンディ・ブレイク!」

(しょうがない…一気にやるか)

2体のガスタの力を宿し、緑色に光り出した両手剣を手にしたノチウが本来なら攻撃力が上回るはずの《魔装騎士ホワイトライダー》に向けて突撃する。

弓矢で迎撃を開始するが、両手剣の分厚い刀身を盾替わりにしてしのぎ、ついに至近距離まで近づくと、相手に向けて横一閃する。

体が真っ二つになった《魔装騎士ホワイトライダー》は爆発と共に消滅し、その衝撃が翔太に及ぶ。

「ぐあああああ!!」

 

翔太

ライフ2200→300

 

「これで《ガスタの魔剣士ユウ》がダイレクトアタックをしたら、翔太のライフは0になる。けど…」

確かにこれで勝てるかもしれないが、それでも侑斗のプレイングは遊矢にとって少し疑問があった。

確かに《ガスタの神裔ピリカ》なしでは《ダイガスタ・スフィアード》のシンクロ召喚は難しかったため、彼女を手札に加えるためにシンクロ召喚を行ったことは分かる。

しかし、《ガスタ・ガルド》にはフィールドから墓地へ送られたときにデッキからレベル2以下のガスタを特殊召喚する効果がある。

そして、《ダイガスタ・スフィアード》による反射ダメージを利用することで、一気に勝負をつけることもできたはずだ。

「とどめだ。僕でダイレクトアタック!」

魔剣を抜いた侑斗が背中に生えた翼を使ってフィールドを旋回する。

そして、右手の魔剣の剣先を翔太に向けると、そこを中心に魔法陣が出現し、そこから緑色の魔力でできた魔剣が次々と翔太に向けて発射される。

「させる…かよ!俺は罠カード《魔装の呪縛》を発動!相手の直接攻撃宣言時、そのモンスターの攻撃と効果を封じ、バトルフェイズを終了させる」

翔太の前に五芒星の障壁が出現して、刃から翔太を守る。

そして、侑斗の魔剣にも同じ五芒星が刻まれ、剣に宿る魔力が封じられた。

「そうきたか…」

目的は達しているとはいえ、それでもエースである《No.00ガスタの魔剣士ユウ》の効果を封じられたことは少し恥ずかしいと思えてしまう。

「(もうNo.の力はないけど…カード効果を封じて、それがモンスターなら攻撃力をダウンさせることのできる《ガスタの魔剣士ユウ》の効果まで使えないのはな…)僕はこれで、ターンエンド」

 

侑斗

手札2→0

ライフ900

場 ガスタの新星ノチウ レベル7 攻撃2500

  No.00ガスタの魔剣士ユウ(《風の継承》《魔装の呪縛》の影響下 オーバーレイユニット2) ランク4 攻撃3500

  ダイガスタ・スフィアード レベル6 攻撃2000

  風の継承(永続魔法)

  ガスタの新風レラ(青) Pスケール1

  ガスタ・ライオン(赤) Pスケール8

 

翔太

手札0

ライフ300

場 魔装の呪縛(通常罠カード)

 

(次のターンで《デュラハン》が戻ってくる。だが…)

このターンを凌ぐことはできたが、問題は侑斗の《ダイガスタ・スフィアード》をどうするかだ。

このモンスターが存在する限り、戦闘ダメージが反射され、ライフが300しかない翔太が負ける可能性は濃厚だ。

《魔装騎士デュラハン》の効果を使えば、このターンで退場させることだけはできるが、あくまでもそれができるのはターン終了時。

「このドローで、勝ち負けがはっきりする…」

《魔装の杯-ナルタモルガ》の効果で、合計2枚のカードをドローできる。

考えるのはそれからだ。

「俺のターン!!」

 

翔太

手札0→2

 

「俺は墓地の《デュラハン》の効果発動。自分の効果で墓地へ送られたこのカードはスタンバイフェイズ時にフィールドへ戻る」

再び無機質な棺桶が翔太のフィールドに現れ、その中から《魔装騎士デュラハン》がフィールドへ舞い戻る。

 

魔装騎士デュラハン レベル7 攻撃2100

 

「そして、俺は《魔装の呪縛》の効果を発動。俺のフィールドに魔装騎士が特殊召喚された時、表側表示で存在するこのカードを墓地へ送ることで、エクストラデッキとデッキから魔装ペンデュラムモンスター1体ずつを手札に加える。俺は《魔装魚メロウ》と《魔装槍士タダカツ》を手札に加える。そして、俺はスケール2の《タダカツ》とスケール10の《メロウ》でペンデュラムスケールをセッティング!来たれ、時の果てに眠りし英雄の魂。漆黒の魂と契約し、封印から解き放たん!ペンデュラム召喚!現れろ、《魔装郷士リョウマ》、《魔装術士ジェルマン》」

《魔装郷士リョウマ》と共に、両目に五芒星が刻まれたフランス貴族のような装いをした青年がペンデュラムの導きによって現れる。

翔太が何度も戦ったジェルマンと同じ名前を持っているそのモンスターには演技の悪さを感じるが、この状況から逆転を狙うにはこの一手が大事だった。

 

魔装郷士リョウマ レベル4 攻撃1900

魔装術士ジェルマン レベル3 攻撃0

 

「手札からペンデュラム召喚した《リョウマ》の効果発動。墓地から《魔装盾タカモリ》を手札に加える。そして、《魔装魚メロウ》のペンデュラム効果発動。俺のフィールドの魔装モンスター1体をチューナーにするか、俺のフィールドのすべてのモンスターのレベルをそのモンスターに統一させることができる。俺は《デュラハン》のレベルで統一する」

 

魔装郷士リョウマ レベル4→7 攻撃1900

魔装術士ジェルマン レベル3→7 攻撃0

 

「レベル7のモンスターを3体に…。そこからランク7のエクシーズモンスターを!?」

「へっ、残念だが俺のデッキにはランク7のエクシーズモンスターは存在しない。だが…こいつならどうだ?俺は《ジェルマン》の効果発動。俺のフィールド上に存在するこのカードを含む融合素材を墓地へ送り、魔装融合モンスターを融合召喚できる!」

(けど…翔太の融合モンスターは…)

遊矢の脳裏に浮かぶのは《魔装騎士レッドライダー》だが、そのモンスターを使ってもこの状況を変えることはできない。

それに、そのモンスターの素材となるモンスターは魔装モンスター3体で、レベルの制限はかかっていない。

そう考えると、《魔装魚メロウ》の効果が無意味になる。

「俺が融合素材とするのはレベル7になった《ジェルマン》、《リョウマ》、《デュラハン》だ。幻の賢者よ、変革を求めし郷士よ、首なき死神よ、魔導の力によりて、今1つとならん。融合召喚!現れろ、月を支配する死の天使。《魔装天使サリエル》!」

上空に《魔装騎士ペイルライダー》の幻影が現れ、3体のモンスターが黒い瘴気となって取り込まれていく。

取り込んだ《魔装騎士ペイルライダー》の鎧は粉々に砕け散り、その中から現れたのは真っ黒な翼を生やし、背中から頭にかけて満月のような飾りをつけた黒髪の若い優男が姿を現す。

その手には黒い鍵のような形をした杖が握られていて、額にも目があり、自らの羽根で作ったと思われる装束からもその天使の不気味さを感じ取らずにはいられない。

(魔装…どうして、カードにコンセプトがまるでないのか分かってきた気がするよ)

日本や欧米、欧州などの世界中のあらゆる歴史や伝説、神話が混ざり合った魔装デッキとそれを生み出した原因であるであろうベクター。

この世界のあらゆるものをわがものにし、神となろうとたくらむ彼の考えが頭に浮かぶ。

 

魔装天使サリエル レベル10 攻撃0

 

「こいつは魔装騎士を含めたレベル7以上、またはランク5以上の魔装モンスターを素材とすることで融合召喚できるモンスターだ」

「なるほど…。だから、《メロウ》の効果を使ってわざわざレベルを上げたのか」

「そういうことだ。そして、バトルフェイズ開始時に《サリエル》の効果発動。ムーン・フォース・ドレイン」

《魔装天使サリエル》が杖を回転させると同時に背中の月の飾りが淡く光り始める。

その光を浴びた《ダイガスタ・スフィアード》と《No.00ガスタの魔剣士ユウ》の体もまた、同じ色のオーラを宿してしまう。

「うう…これは!?」

「ユウ!!」

(この光…まずい)

片膝をつき、苦しむ2人を見たノチウは《魔装天使サリエル》の効果に警戒する。

「バトルフェイズ開始時、相手フィールドのモンスター2体の効果を無効にし、その攻撃力をターン終了時まで自らの攻撃力にする」

 

魔装天使サリエル レベル10 攻撃0→5500

 

「《ダイガスタ・スフィアード》の効果がない今なら、反射ダメージを気にすることなく攻撃できる!」

「剣崎さんのライフは900。一番攻撃力の高い《ガスタの魔剣士ユウ》でも、その攻撃力は3500。そのまま《サリエル》の攻撃が決まれば、翔太が勝つ」

「バトルだ。《魔装天使サリエル》で《ダイガスタ・スフィアード》を攻撃。キー・オブ・デスペナルティ」

杖を振り回した《魔装天使サリエル》は《ダイガスタ・スフィアード》に狙いを定め、杖に魔力を注ぎ込む。

魔力を吸収した杖は真っ黒な光で染まり、その状態のまま投擲される。

真っ黒な矢のように飛ぶ杖は力を失った《ダイガスタ・スフィアード》を貫き、消滅させる。

同時に杖から黒い魔力の衝撃波が侑斗のフィールド全体を襲う。

「これで俺の勝ちだ。うん…?」

攻撃が決まり、デュエルが終わったはずだが、デュエルリングの電源は入ったまま。

そして、衝撃波が収まったフィールドにはまだ2体の魔剣士が無事な姿を見せていた。

「僕は墓地の《ガスタの口笛》の効果を発動したよ。墓地のこのカードとガスタカード1枚を除外することで、このターン、僕が受けるすべてのダメージが0になる」

 

墓地から除外されたカード

・ガスタの再生術

 

「くそ…!」

起死回生の一撃がまさかの形で回避され、翔太はこぶしを握り締める。

《No.00ガスタの魔剣士ユウ》の効果が決まれば、《魔装天使サリエル》は効果を失う。

そして、そのまま攻撃を受けて、勝負が決まる。

だが、もう翔太には打つ手が残されていなかった。

「俺はこれで…ターン、エンドだ…」

 

 

侑斗

手札2→0

ライフ900

場 ガスタの新星ノチウ レベル7 攻撃2500

  No.00ガスタの魔剣士ユウ(《風の継承》の影響下 オーバーレイユニット2) ランク4 攻撃3500

  風の継承(永続魔法)

  ガスタの新風レラ(青) Pスケール1

  ガスタ・ライオン(赤) Pスケール8

 

翔太

手札2→0

ライフ300

場 魔装天使サリエル レベル10 攻撃5500→0

 

「僕のターン、ドロー」

 

侑斗

手札0→1

 

「翔太君…。君がベクターと決着をつけることを願うよ。《ガスタの魔剣士ユウ》の効果発動。1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、相手フィールドのカード1枚の効果を無効にする。そして、そのカードがモンスターの場合、そのモンスターの攻撃力を500ダウンさせる。ウィンド・バインド」

オーバーレイユニットを右手に宿し、緑色の光る右手で印を切った侑斗は薄緑色の羽根がいくつも浮かぶ風を《魔装天使サリエル》に向けて放つ。

風を受けた《魔装天使サリエル》は自らに宿っている魔力を失う。

だが、たとえ敗れるとしてもこのまま素直に倒れるつもりはないのか、自らの獲物である杖を構えた。

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・ガスタの神官ムスト

 

「バトル。《ガスタの魔剣士ユウ》で《魔装天使サリエル》を攻撃。ウィンディ・ストラッシュ!」

2本の魔剣を手にした侑斗が《魔装天使サリエル》に向けてとびかかる。

同時に振り下ろした刃を一度は杖で受け止められたが、地を蹴ると同時に後ろへ大きく飛翔するとともに、背中の羽根を弾丸のように飛ばす。

羽根そのものの威力はそれほど大したことはないが、わずかながら目くらましとなってしまい、その間に一瞬で肉薄した侑斗に胴体を切り裂かれ、消滅した。

 

翔太

ライフ900→0

 

 

魔装剣ソハヤ

装備魔法カード

「魔装」モンスターにのみ装備可能。

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):装備モンスターが守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ戦闘ダメージを与える。

(2):装備モンスターが相手によって破壊された時に発動できる。デッキからそのモンスターのレベルまたはランクと同じ数値のレベルを持つ「魔装」モンスター1体を特殊召喚する。装備モンスターがEXデッキから特殊召喚されたモンスターの場合、代わりにそのモンスターのレベルまたはランクの数値以下のレベルを持つ「魔装」モンスターを選択できる。

 

ガスタの新風レラ

レベル1 攻撃100 守備2000 風属性 サイキック族

【Pスケール:青1/赤1】

(1):自分は「ガスタ」モンスターしかP召喚できない。この効果は無効化されない。

(2):自分フィールドに存在する「ガスタ」Sモンスターが破壊されたターン、自分フィールドにモンスターが存在しない場合に発動できる。Pゾーンに存在するこのカードを手札に戻す。

【モンスター効果】

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードの召喚に成功したとき、自分の墓地に存在する「ガスタ」S・Xモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを効果を無効にして、守備表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターはチューナーとして扱い、Xモンスターの場合は通常モンスターとして扱い、そのモンスターのランクと同じ数値のレベルとなる。この効果を発動後、ターン終了時まで自分は「ガスタ」モンスターしか特殊召喚できない。

 

魔装魚メロウ

レベル1 攻撃0 守備0 水属性 水族

【Pスケール:青10/赤10】

このカードの(2)のP効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。

(2):自分フィールドに存在する「魔装」モンスター1体を対象に発動できる。以下の効果からいずれかを適用する。

●ターン終了時までそのモンスターをチューナーとして扱う。

●ターン終了時まで、それ以外の自分フィールドのモンスターのレベルをそのモンスターと同じにする。

【特殊召喚:モンスター効果】

このカードは通常召喚できない。

自分EXデッキに「魔装」モンスターが表側表示で存在し、自分Pゾーンにカードがない場合、このカードは手札から特殊召喚できる。

(1):このカードを素材として「魔装」S・X・融合モンスターの特殊召喚に成功したときに発動できる。自分の墓地に存在する「魔装」カード1枚を除外し、デッキから「魔装降臨の儀式」1枚と「魔装」儀式モンスター1体を手札に加える。

 

魔装降臨の儀式

儀式魔法カード

「魔装」儀式モンスターの降臨に必要。

(1):レベルの合計が儀式召喚するモンスターのレベル以上となるように、手札・フィールドに存在する「魔装」モンスターをリリースし、手札から「魔装」儀式モンスター1体を儀式召喚する。その時、自分フィールドに存在するモンスターが「魔装騎士」モンスター1体のみの場合、自分EXデッキに存在する「魔装騎士」モンスター1体を除外することで、その儀式召喚に必要なレベル分のモンスターとすることができる。

(2):自分フィールドにモンスターが存在しない場合、墓地に存在するこのカードと「魔装騎士」モンスター1体を除外して発動できる。ゲームから除外されている儀式モンスター以外の「魔装騎士」モンスター1体を自分フィールドに特殊召喚する。この効果はこのカードが墓地へ送られたターン、発動できない。

 

魔装騎士デュラハン

レベル7 攻撃2100 守備1200 儀式 無属性 戦士族

「魔装降臨の儀式」により降臨。

(1):このカードは戦闘では破壊されず、自分が受ける戦闘ダメージは0となる。

(2):このカードが相手モンスターと戦闘を行ったダメージステップ終了時に発動できる。その相手モンスターに宣告カウンターを1つ置く。

(3):ターン終了時に発動する。自分フィールドに存在するこのカードを墓地へ送り、フィールド上に存在する宣告カウンターが乗っているカードをすべて墓地へ送る。

(4):(3)の効果を発動した次の自分スタンバイフェイズ時に発動できる。墓地に存在するこのカードを特殊召喚する。

 

サブテラーの宣告

通常罠カード

このカード名のカードは1ターンに1度しか発動できない。

(1):手札及び自分フィールドの表側表示モンスターの中から、モンスター1体を選んで墓地へ送り、同じ属性でカード名が異なるリバースモンスター1体をデッキから自分フィールドにセットする。

 

風の継承

永続魔法カード

(1):自分フィールドに以下の種類の「ガスタ」モンスターがEXデッキから特殊召喚された時、それぞれの効果を1ターンに1度ずつ発動できる。

●Sモンスター:デッキから「ガスタ」モンスター1体を手札に加える。

●Xモンスター:そのモンスターの攻撃力を1000アップする。

●Pモンスター:次のターン終了時まで、自分が受けるすべてのダメージが半分になる。

 

ガスタの新星ノチウ

レベル7 攻撃2500 守備2100 風属性 サイキック族

【Pスケール/青8:赤8】

(1):自分フィールドの「ガスタ」モンスターがカードの効果によって特殊召喚に成功したとき、そのモンスターの数だけこのカードの上にガスタカウンターを1つ置く。

(2):このカードの上にガスタカウンターが6つ以上乗っているときに発動できる。Pゾーンに存在するこのカードを自分フィールドに特殊召喚する。

【シンクロ:効果】

「ガスタ」チューナー+チューナー以外の風属性モンスター1体以上

(1):このカードを「ガスタ」モンスターのみを素材としてS召喚に成功したこのカードが相手モンスターを攻撃するダメージステップ開始時に発動できる。墓地の「ガスタ」カード2枚をデッキに戻し、ダメージステップ終了時まで、このカードの攻撃力は元々の攻撃力の倍となる。

(2):P召喚またはこのカードのP効果によって、特殊召喚に成功したこのカードがフィールド上に存在する限り、バトルフェイズ中に相手はバトルフェイズ中にモンスター効果を発動できない。

(3):このカードが攻撃するとき、ダメージステップ終了時まで相手はカード効果を発動できない。

(4):このカードが破壊された時に発動できる。このカードを自分Pゾーンに置く。

 

ガスタの口笛

速攻魔法カード

このカード名の(1)(2)は1ターンにそれぞれ1度しか発動できない。

(1):自分フィールドのモンスター1体をリリースすることで発動できる。デッキからそのモンスターよりも低いレベルの「ガスタ」モンスター1体を手札に加える。

(2):墓地に存在するこのカードと「ガスタ」カード1枚を除外することで発動できる。このターン、自分が受けるすべてのダメージを0にする。

 

ガスタ・ライオン

レベル2 攻撃900 守備100 風属性 炎族

【Pスケール:青8/赤8】

このカード名の(1)のP効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードがPゾーンに存在し、もう片方の自分Pゾーンにカードがない場合、自分フィールドのモンスター1体をリリースすることで発動できる。EXデッキに表側表示で存在する「ガスタ」Pカード1枚を自分Pゾーンに置く。

【チューナー:効果】

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードがフィールドから離れたとき、自分のデッキに存在する「ガスタ」サイキック族モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果はターン終了時まで無効化される。

 

魔装の呪縛

通常罠カード

(1):相手の直接攻撃宣言時、その攻撃モンスターを対象に発動できる。その攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了させる。その後、選択されたモンスターは攻撃できず、効果は無効化される。そのモンスターが破壊された時、このカードは破壊される。

(2):このカードが自分フィールドに表側表示で存在し、自分フィールドに「魔装騎士」モンスターが特殊召喚された時に発動できる。このカードを墓地へ送り、EXデッキに表側表示で存在する「魔装」Pカード1枚とデッキに存在する「魔装」Pモンスター1体(同名及び同じPスケールのカードは1枚まで)を手札に加える。この効果を発動したターン、自分は「魔装」以外のモンスターを召喚・特殊召喚できず、カードをセットすることができない。

 

魔装術士ジェルマン

レベル3 攻撃0 守備0 闇属性 魔法使い族

【Pスケール:青1/赤1】

(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。

(2):自分フィールドの「魔装」融合モンスターが相手によって破壊され墓地へ送れた時、Pゾーンに存在するこのカードを破壊することで発動できる。そのモンスターを墓地から表側守備表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。

【モンスター効果】

(1):1ターンに1度、自分メインフェイズに発動できる。「魔装」融合モンスターカードによって決められた、このカードを含む「魔装」融合素材モンスターを自分フィールドから墓地へ送り、その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。

(2):このカードを素材として融合召喚に成功したモンスターはこのターン、戦闘・効果では破壊されない。

 

魔装天使サリエル

レベル10 攻撃0 守備0 無属性 天使族

【Pスケール:青12/赤12】

(1):自分フィールドの「魔装」モンスターが相手モンスターと戦闘を行ったダメージステップ終了時に発動できる。その相手モンスターを破壊する。

【融合:モンスター効果】

「魔装騎士」を含めたレベル7以上、またはランク5以上の「魔装」モンスター3体

このカードはルール上、「魔装騎士」モンスターとしても扱う。

(1):バトルフェイズ開始時、相手フィールドに存在するモンスターを2体まで対象として発動できる。それらのモンスターの効果を無効化し、ターン終了時までそれらのモンスターの攻撃力の合計分、このカードの攻撃力がアップする。

(2):モンスターゾーンのこのカードがこのカードが戦闘・効果で破壊された場合に発動できる。このカードを自分のPゾーンに置く。



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第117話 絶滅体

侑斗と翔太のデュエルが終わり、侑斗とヒイロの案内で翔太達は船内のヒイロの部屋に入れられる。

パソコンと机、そしてベッドのみの殺風景な部屋の中、ヒイロがパソコンを動かす。

「お前たちとのデュエルで、現状での実力とお前たちに真実を見る覚悟があるかは見させてもらった。そのうえで、ここからの話は覚悟をしたという認識の上で話させてもらうぞ」

鋭い目つきで2人を見た後で、ヒイロが最初に開いたファイル。

それには遊矢によく似た銀髪の青年の姿、そして彼が操る4体のドラゴンの姿が映った画像が乗っていた。

「このドラゴン…」

「《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》…《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》」

「確か、あの紫のドラゴンは…」

柚子の脳裏に、舞網チャンピオンシップでユーリと戦っていたときの記憶がよみがえる。

彼が召喚したあのドラゴン、体のいたるところに紫か薄いオレンジの球体がついていて、刃物のような鋭さのある細長い尻尾を持つ紫のドラゴン。

ユーリのエースモンスターであり、遊矢たちの持つドラゴンと関係があるとみて間違いないだろう。

「《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》…ユーリのエースモンスター、そして…」

「《オッドアイズ・ドラゴン》…。そして、この銀髪の男は…」

「奴がドクターNが言っていたズァーク、世界の破壊者だ。そして、世界が4つに砕かれた日、《覇王龍ズァーク》が倒された日…ズァークとレイも、世界に道連れにされるかのように4つに分かれてしまった…。それが、榊遊矢、柊柚子…お前たちのこと、そして…お前たちがその中核だ」

「俺と…柚子が…??」

「そうだ、そして遊矢…特にお前は今、一つに戻って、ズァークへと戻ってしまう可能性が高い。実際、お前はユートと融合してしまったからな」

「嘘…遊矢がズァークに…そんなこと、ありえない!!だって、遊矢は…」

柚子は必死に否定しようとするが、当の遊矢本人は反論せず、黙って聞いているだけだった。

ユートと一つになり、その中で覚醒した《覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン》と《覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン》。

それら2体を召喚したときは意識が何者かに乗っ取られていたような感覚がして、何もかもを破壊しつくしたいという衝動に襲われていた。

きっと、それはズァークの持つ破壊衝動と同じものではないかと、今冷静に考えると思えてしまう。

(そうだ、遊矢…。俺たちはズァークの『欠片』。俺たち1人1人がズァークから確かに受け継いでいるものがある。俺が受け継いだのは…『悲しみ』。ユーゴが受け継いだのは『短慮』。そして、遊矢…お前が受け継いだのは、『憎しみ』だ)

「『憎しみ』…」

エンターテイナーに最も似つかわしくないもの。

だが、オベリスクフォースが無抵抗な人間たちをカードに変えていった時、そしてシンクロ次元で人々を蹴落としていくのを当たり前に考える人々を、遊矢は確かに憎んだ。

「だが、それをレイという女は黙ってみているはずもない。運命がそうさせたのか…レイの『欠片』となった少女たちもまた、ズァークの『欠片』のそばにいた。ズァークを復活させないために、ズァークが一つになろうとした場合に遠くへ離すために」

「じゃあ、あたしのブレスレットが光って、ユーゴ達が消えたのって…」

「そうだ。おそらくはその作用だろう」

「じゃあ、待てよ。このままだったら俺、またどっかへ飛ばされるんじゃあ…」

「安心しろ。『欠片』の力を使って、その力を阻害させている。お前はもうワープすることはないだろうから安心しろ」

「ホッ…」

どういう理屈かはわからないが、飛ばされないのならばいい。

次元の狭間に取り残されたり、別次元へ飛ばされて迷子になるよりも何百倍もマシだ。

「榊遊矢、仮にお前がズァークになった場合、お前が守りたかったものをすべて、お前自身の手で壊してしまう可能性がある。だから…」

ヒイロは懐からリボルバーを出し、その中にある弾倉を見せる。

中には1発だけ銃弾が入っていた。

「酷なことを言うことになるが…もしお前がズァークになることが抑えられなくなったら…その時は、これで自殺してでも復活を止めろ。この話はお前の親父にも通している。彼も、納得している」

「そんな…ヒイロさん、ひどいです!!自殺なんて…」

「あくまでも、ズァークになってしまった場合の保険だ。そうならないように、俺たちも可能な限り努力はするが、一番の問題なのはお前自身だからな」

弾倉を戻したリボルバーを何も言わずに受け取った遊矢の前に、ヒイロは右手を銃を握ったような形にし、それを右のこめかみへもっていく。

そして、人差し指を動かし、自殺のシミュレーションをしてみせた。

「狙うなら、ここだ。心臓を撃つというやり方もあるが、失敗した例もあるから、推奨はしない。自分の頭を撃つようなことにならないように、覚悟をしておくんだな」

銃を手に取る今の遊矢にはヒイロの言葉は聞こえない。

生まれて初めて持つ銃。

ヒイロにとっては既にて慣れているものかもしれないが、平和な世界にいた人間にとって、その銃は確かな重みと冷たさが感じられる。

だが、この銃の意味は相手を殺すのではなく、自分を殺すためのもの。

「遊矢…」

「ヒイロさん、あなたも銃を持っているんでしょう。なら…俺がもし、どうにもならなくなった時は、その時は…お願いします」

「お前…死ぬつもりかよ?」

永瀬博士の言葉が正しければ、遊矢が死ぬとズァークも復活できなくなる。

本当なら遊矢達を生かしつつ、ズァークを止めるという方法を考えるべきだろうが、アカデミアとの決戦もあることを考えると、どこまでそれに労力を避けるかは分からない。

おまけに、質の悪いことにこのズァークのことは遊矢が生きている限り、永遠に続く問題になる。

「ズァークを永遠に復活させないようにするためには…俺が死ぬしかない、か…」

「ああ…お前が生きている間、寿命で死ぬまでそれに耐えることができるかは、分からないがな…」

人生百年と言われている昨今で考えると、遊矢は仮に生きてズァークを復活させない道を進むとなれば、そのズァークとあと80年近く戦い続けることになる。

その気の遠くなる時間を考えると、自殺もまた一つの手段かもしれない。

ズァーク諸共抹殺することで、世界はズァークという驚異から永遠に救われる。

遊矢は銃を机に置き、首に下げているペンデュラムを取る。

遊勝が遊矢に渡した『欠片』であり、散らばった英知のカード。

「ズァークが壊して、バラバラにした4つの世界がこれからどうなっていくのかはわからない。失ったものを取り戻すことを考えたら、もしかしたらプロフェッサーの言葉が正しいかもしれない。でも、俺たちは確かにこの世界で生きてる。生きてさえいれば、未来を自分たちの手で作ることができる。ほんのわずかな時間だったとしても」

4つの次元を旅して、敵味方問わず多くのデュエリストと出会った。

誰もが自分の願いを叶えようと、未来を創ろうと戦っていた。

きっと、デュエル戦士達も純粋にそう思って戦っていたのかもしれない。

たとえそれが誰かの未来を踏みにじることになったとしても。

「今の4つの次元は次元戦争でボロボロになってる。でも、それを直して、今度こそ…今度は4つの次元がどうにか共存して、今度こそ壊れないように努力することだってできる…。ペンデュラム召喚を手に入れるまでの俺は、正直に言うと何もかもがどうでもよかった。ただ、自分のことしか見ていなかった」

遊勝の失踪と共に、臆病者の息子と糾弾される日々。

尊敬する父親を否定され、卑屈になって、道化のように笑ってごまかすことで生きてきた。

権現坂や柚子のように、自分を信じてくれる大切な人もいたが、彼らのやさしさにすら目を背けていた。

「ずっと、自分は孤独だと思い込んで、過去にしがみついて自分をごまかしてきた…馬鹿なピエロだった。でも、そんな俺でも、確かに何かができた。ほんのささやかなことでも…」

ほんのわずかな時間だけでも、純粋にデュエルを楽しんで死んだエド。

命令ではなく、心に従って味方になってくれた素良。

色あせてしまった心に灯をともしたジャック。

自分のデュエルで確かに笑顔にできた人がいる。

きっと、自分が見えていないだけで、そんな遊矢のデュエルで笑顔を取り戻した人もいるかもしれない。

「俺は…俺を信じてくれる人のいる世界を…未来を、壊したくない」

そのためにも、アカデミアを止めて次元戦争を終わらせる。

そして、ズァーク復活も阻止する。

「どうして…遊矢?どうしてそこまで戦おうとするの?」

「柚子…?」

「自分がズァークになってしまうのが怖くないの!?しかも…せっかく頑張って戦っているのに、もしズァークになるようだったら死んでくれって…そんなの、そんなの勝手すぎる…」

遊矢に何の罪があって、ここまで苦しまなければならないのか。

どうして遊矢ばっかり辛い役割を背負わなければならないのか。

それでも、戦おうとする遊矢が悲しく感じられ、柚子は涙を流す。

そして、そんなことになっているにもかかわらず、涙を流さない遊矢が腹立たしい。

こんなに苦しいなら、八つ当たりだろうがなんだろうがしてほしかった。

それでこそ、普通の人間だ。

「次元戦争のことも、他の戦える人に任せればいいのに…」

「柚子、これは…俺がやらなきゃいけないこと。俺自身が…決着をつけなきゃいけないことなんだよ」

自分がズァークの一部であるなら、世界が分かれてしまったこと、そして零王が暴走して次元戦争を起こした原因は自分自身。

自分がこの世界や、多くの人の未来を狂わせてしまった。

本当なら、レイとして父親である零王と共に過ごすはずだった柚子たちの未来さえも。

「俺たちが…世界を壊して、狂わせてしまった…。だから、俺にはそれを止める義務があるんだ」

遊矢は今、ズァークが犯した罪すらも自分の罪として背負おうとしている。

ズァークが始めたこと、そしてそれによって生まれてしまった負の遺産。

それが次元戦争という最悪な形となり、それがまだ未来に災いをもたらす。

そのようなものをこれからの未来に背負わせるわけにはいかない。

4つに分かれた次元はどうしようもないとしても、それ以外のズァーク、そしてアークエリアプロジェクトとそれをプロフェッサーの名を借りて継承した無機質な代理人は存在させるわけにはいかない。

「遊矢…」

今の遊矢を止めることはもうできない。

ずっと幼馴染として遊矢と共にいるからわかる。

そして、今の言葉はとてもいつもの遊矢の者とは思えない。

確かに今、遊矢は目の前にいる。

しかし、今そばにいる遊矢がなぜか遠くにいるように感じられた。

それを否定するかのように、遊矢の袖をぎゅっとつかんだ。

(榊遊矢…お前はこの次元を壊す絶滅体になるか、それとも救世主になるか…もはや、ピエロじゃなくて、トリックスターだな…お前は)

「で、俺はどうなんだ?俺にもその銃を渡すのか?」

遊矢達の話を聞いた翔太はヘッと口角を上げる。

ベクターに完全に支配されてしまうというなら、ヒイロの理論から言わせるとその前に自殺しろということになる。

翔太も、ベクターに支配される気はさらさらない。

だが、残り3枚のカードがアカデミアにあるかは定かではない。

遊矢と比較すると危険要素が一番強いのは、一度乗っ取られてしまった翔太自身だと自分で考えている。

「そうだな…。その方が楽なのは確かだが、お前の場合は特殊だ。たとえお前が死んだとしても、それでベクターも死ぬかどうかは分からない」

「どういうことだ?」

「今の君の体は…君の証言が正しければ、石倉純次の体にドン・サウザンドのスペアの体とベクターの魂が欠片の力で融合してしまった存在なんだ。そして、体は元々はベクターのものではないし、ベクターは魂だけの存在。肉体がたとえ滅びたとして、それに連動して彼が死ぬかと言えば、分からないんだ」

ベクターの肉体はバリアンとの戦いで凌牙に敗れたとき、ドン・サウザンドによって侑斗たちの目の前で粉々に砕け散った。

「乗っ取られて、それを食い止めるために仮に自殺したとしても、おそらくは問題の解決にはならないと思った方がいい」

「ちっ…難儀なんだな、俺は」

 

「いよいよ、明日…か」

自室でノートパソコンがいじる零児がぽつりとつぶやく。

航海士からの報告では、明日にもアカデミアに船は到着する。

明日からがアカデミアとの、零王との戦いの決着となる。

思えば、零王が失踪してからずっと、零児にとってはこのことだけが生きがいとなっていた。

零王が残したレオコーポレーションを発展させ、更には業界最大手のデュエルスクールを作ったのも、すべてはこのため。

これまでの努力が報われるときがくる。

「兄様…」

「零羅、どうした…?」

いつもなら一人で過ごすことの多い自室で、今は夜で見張り以外は寝静まっている状態。

そして、その時間には眠っているはずの零羅は何かを感じたのか、今は零児の部屋にいる。

自室へ戻ろうとせず、ここで寝たいと言ってきて、零児も受け入れている。

「兄様は、この戦いが終わったら、何かしたいことがあるの?」

「したいこと…?変わらないさ。またレオコーポレーションの社長として…」

「変わるよ、だって…これまでのようにはならないでしょ…?」

零羅の言葉に零児の手が止まる。

この戦いで、おそらくはアカデミアのリーダーである零王は死ぬか、生きているとしても表舞台からは完全に消すことになる。

そして、アカデミアに対抗するという意味ではLDSは存在意義を失うことになるだろう。

また、零児もアカデミアと戦うという現段階の人生最大の目的を失うことになる。

そんな彼がこれまで通りレオコーポレーション社長として、一人のプロデュエリストとして生きていけるとは思えない。

「僕は…ちゃんと学校へ行きたいって思ってるんだ。普通に友達を作って、みんなと一緒に勉強したいんだ」

「零羅…」

零羅は一応、学校には通っているものの、病気を理由にほとんど行けていない状態だ。

その間は家で最低限の勉強をしつつ、アカデミアとの戦争のために訓練を続けていた。

せっかく紛争地域から平和な日本へ来ることができたというのに、その普通の生活をすることがまるでできていない。

血のつながった兄ではないが、零児もだんだんと成長していく零羅には幸せになってもらいたいと願っている。

「そうだな…お前には幸せになる資格が、いや…義務がある。全部終わったら、そうしよう」

「兄様…」

「私は何がしたいかはわからない…。だが、きっとそれはこの決戦が教えてくれるはずだ、きっと…うん?」

デュエルディスクから通話機能を受信したことを伝えるバイブが発生し、零児は電話に出る。

「榊遊矢…。珍しいな、君から電話をするとは」

「零児、零児はもう聞いているんだよな?プロフェッサーのこと、世界のこと…ズァークとリンのことを」

「…ああ。剣崎とリオニスさんからその話は聞いている。君のことも…」

「そうか、だったら話は早い。零児、明日必ずアカデミアを止めよう。そして、零児のお父さんの暴走の責任がズァークに…俺にあるのだとしたら、すべての裁きは、俺が背負うべきだ」

遊矢のその言葉に零児はフゥとため息をつくとともに目を閉じる。

できれば、そのような言葉を口に出してほしくなかった。

彼にはエンターテイナーでいてほしかった。

だが、たとえ自分がそれを許したとしても、遊矢はきっと戦いから身を引くことはできないだろう。

ズァークのことを、過去に始めてしまったことを知ってしまったのだから。

「それだけ、言いたかったのはそれだけだ。じゃあ…」

「待て、榊遊矢。この裁き…罰を受けるのは私と君の2人で十分だ」

「零児…」

「私の父が始めたこと、それを止められなかった責任が私にある。だから、君独りだけにはさせない」

「ああ…そう、だな」

「まったく、お互いにひどい父親を持ったものだな。自分のやりたいことのために、家族を含めたすべてを犠牲にする。性質が悪い」

「災難、だな…」

「ああ、まったくだ。それを埋め合わせなければならないのだからな…」

 

「お疲れ様です、どうぞ」

「ああ…助かる」

船の甲板で見回りをする黒咲は同じく見張りをしているクルーから差し出された缶コーヒーを受け取り、礼を言った後でその中の暖かなそれでのどを潤す。

ファウスト島から離れたことで、南極のような寒さからは解放されたものの、まだまだ寒いことには変わりない。

缶コーヒーそのものは次元戦争が始まってから飲んだことがなく、スタンダード次元に来てからも同じだ。

「ふうん、そんなのを飲むんだ、君は」

「紫雲院素良…」

背後から聞こえる声に、振り返ることなくその声の主の名を呼ぶ。

若干棘のある声と他人行儀な呼び方に素良は肩をすくめる。

「ひどいなぁ、仲間だろう?だったら、素良って呼んでよ」

「俺は貴様を仲間と認めたわけではない」

「そ…まぁ、仕方ないよね。アカデミアがエクシーズ次元や君にしたことを考えると…」

そんな加害者である自分が被害者である黒咲と今さら仲よくしようなどと虫が良すぎる。

キャンディーを舐める素良は黒咲に背中を向け、空を見上げる。

(ま…今さら仲間になった、仲良くなったところで、君を悲しませるだけだけど…)

そう考えると、今の関係の方が心地いい。

心残りを一つ減らすことができる。

(そういえば、デニス、だっけ。あいつもアカデミアにいるのかな…?)

シンクロ次元で消息を絶ち、エクシーズ次元でも姿を見せていないデニス。

そうなると、彼はおそらくアカデミアにいる。

そこで彼と戦うことになるだろう。

気になるのは彼にBAT-DIEが注射されているかどうかだ。

(もし、そうだとしたら…あいつ、死ぬのかな?)

遊矢が看取ったというエドと同じように。

だが、BAT-DIEで死ぬことができるのはまだいいのかもしれない。

少なくとも看取ってくれる人がいて、遺体も残るのだから。

「あ…そうだ、黒咲」

「何だ…?」

「今から僕とデュエルしない?部屋で、明日のデッキの最終調整をしたんだ。本当にこれでいいのかどうか、確かめたい」

「…俺は見張りの任務中だ。それが終わるまでは無理だ」

「意外だね、断るかと思ったのに…」

「勘違いするな、貴様を今の俺のデッキの実験台にするだけだ」

相変わらず棘はあるが、それでも少なくとも敵とみなしているわけではない。

それなら、これからの決戦で足を引っ張りあうようなことはないだろう。

素良は黒咲とは反対方向に回り、そこで見張りを続ける。

念のために確認したローテーション表では、黒咲が交代するまではあと1時間くらいある。

その一時間後のデュエルを、素良は空を見上げながら待ち続けた。

 

交代の時間になり、交代のクルーが甲板に上がる。

それから2人は船内のデュエルリングへ向かう。

その間の2人の間には会話らしきものは1つもない。

誰もいないデュエルリングに上がり、そこでお互いにデッキを置く。

(黒咲…きっと、君とのデュエルはこれが最後になる。だから…見せてくれ。リンを助けて、アカデミアを止めるだけの力を君が持っているのかを…)

「「デュエル!!」」

 

素良

手札5

ライフ4000

 

黒咲

手札5

ライフ4000

 

「僕の先攻。僕は手札から魔法カード《聖天使の施し》を発動。僕のフィールドにカードがない時、デッキからカードを2枚ドローし、手札1枚を墓地へ捨てる」

 

手札から墓地へ送られたカード

・ファーニマル・マジシャン

 

「そして、僕は手札から魔法カード《おろかな埋葬》を発動。デッキから《ゾンビキャリア》を墓地へ送る。そして、墓地の《ゾンビキャリア》は手札1枚をデッキの一番上に置くことで、墓地から特殊召喚できる」

 

ゾンビキャリア レベル2 守備200(チューナー)

 

(チューナーモンスター…。シンクロ召喚の要素を加えた、というよりも…)

重要なのはおそらく、デッキの一番上を操作すること。

それが必要なカードはもちろん、素良のデッキに入っている。

「そして、僕は手札から永続魔法《トイボット》を発動。1ターンに1度、手札1枚を墓地へ送ることで、デッキからカードを1枚ドローする。そのカードがファーニマルの場合、手札からモンスター1体を特殊召喚し、それ以外なら墓地へ捨てる。僕がドローしたのは当然、ファーニマルの《ファーニマル・ドッグ》。よって、このカードを特殊召喚」

 

ファーニマル・ドッグ レベル4 攻撃1700

 

「《ファーニマル・ドッグ》の効果発動。このカードを手札から召喚・特殊召喚に成功したとき、デッキから《エッジインプ・シザー》かファーニマル1体を手札に加える。僕が手札に加えるのは《エッジインプ・シザー》。更に、僕は手札から《ファーニマル・オウル》を召喚」

 

ファーニマル・オウル レベル2 攻撃1000

 

「《ファーニマル・オウル》の効果発動。このカードを手札から召喚・特殊召喚に成功したとき、デッキから《融合》を1枚手札に加える。そして、僕はレベル2の《ファーニマル・オウル》とレベル4の《ファーニマル・ドッグ》にレベル2の《ゾンビキャリア》をチューニング。蠅の王の名を持つ禁忌の龍よ、魔王の名と共にその姿を現せ!シンクロ召喚!現れろ、レベル8!《魔王龍ベエルゼ》!」

黒髪の女性の頭から腹部までの体を起点として2つに分かれた首と頭を持つ蛇龍が素良の前に現れる。

蠅の王の名前を持ちながらもその姿はとても蠅とは思えず、むしろ蛇に近いと言える。

 

魔王龍ベエルゼ レベル8 攻撃3000

 

「《魔王龍ベエルゼ》…。デストーイの融合モンスターを使わないのか…?」

「今の状況なら、このカードの方がいいって思っただけさ。自分の効果で蘇生した《ゾンビキャリア》はフィールドから離れたとき、除外される。僕はカードを1枚伏せて、ターンエンド」

 

素良

手札5→1(《融合》)

ライフ4000

場 魔王龍ベエルゼ レベル8 攻撃3000

  トイボット(永続魔法)

  伏せカード1

 

黒咲

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「俺の…ターン!!」

 

黒咲

手札5→6

 

「俺は手札から《RR-バニシング・レイニアス》を召喚」

 

RR-バニシング・レイニアス レベル4 攻撃1300

 

「このカードの召喚・特殊召喚に成功したターンに1度だけ、手札からレベル4以下のRR1体を特殊召喚できる。俺は手札から《RR-トリビュート・レイニアス》を特殊召喚」

 

RR-トリビュート・レイニアス レベル4 攻撃1800

 

「《トリニュート・レイニアス》の効果。このカードの召喚・特殊召喚に成功したターンのメインフェイズ時、デッキからRR1体を墓地へ送ることができる。俺は《ミミクリー・レイニアス》を墓地へ送る。そして、《ミミクリー・レイニアス》は墓地へ送られたターンの自分メインフェイズ時に除外することで、デッキから新たなRRを手札に加えることができる。俺はデッキから《ファジー・レイニアス》を手札に加える。更に俺は手札から永続魔法《RR-ネスト》を発動。俺のフィールドにRRが2体以上存在する場合、デッキから新たなRRを手札に加えることができる。俺はデッキから《レイダーズ・ウィング》を手札に加える。このカードはルール上、RRカードおよび幻影騎士団カードとしても扱う」

「RRであり、幻影騎士団か…。ちょっと珍しいカードだね、それ」

「ああ、そうだ。友が託してくれたカードだ」

ファウスト島から離れ、船旅を続けている間に遊矢の体を借りたユートが急に黒咲の部屋に来て。何も言わずに何枚かのカードを渡した。

そのうちの1枚がこのカードで、これ以外にもRRであり、幻影騎士団でもあるカードが入っている。

そんなカードを渡した意味はまだ分からないが、それでもユートがまだ生きていることが分かっただけでもまだいい。

生きてさえいれば、死ぬ以上にできることがあるのだから。

「そして、《ファジー・レイニアス》は自分フィールドにRRが存在する場合、手札から特殊召喚できる」

 

RR-ファジー・レイニアス レベル4 攻撃500

 

「更に俺は手札からフィールド魔法《レイダーズ・フォレスト》を発動」

発動と同時にフィールドが夜の森へと変貌を遂げていき、木々のせいで見晴らしは良くない環境で、それらの大半は枯れ木となっていた。

「俺はレベル4の《ファジー・レイニアス》と《バニシング・レイニアス》でオーバーレイ!冥府の猛禽よ、闇の眼力で真実をあばき、鋭き鉤爪で栄光をもぎ取れ!エクシーズ召喚!飛来せよ!ランク4!《RR-フォース・ストリクス》!」

 

RR-フォース・ストリクス ランク4 守備2000

 

「そして、フィールド魔法《レイダーズ・フォレスト》の効果。俺がRUM以外の方法でRRのエクシーズ召喚に成功したとき、デッキからRRペンデュラムモンスター1体を手札に加えることができる。俺はデッキから《RR-ライトニング・イーグル》を手札に加える。そして、この効果は同じランクのモンスターをエクシーズ召喚した場合は発動できず、《レイダーズ・フォレスト》発動中、俺はエクシーズ召喚、ペンデュラム召喚、そしてRR以外の効果によってエクストラデッキからモンスターを特殊召喚できない。そして、《フォース・ストリクス》の効果発動。1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、デッキからレベル4、闇属性・鳥獣族モンスター1体を手札に加える。俺は《シンキング・レイニアス》を手札に加える」

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・RR-ファジー・レイニアス

 

「そして、墓地へ送られた《ファジー・レイニアス》の効果発動。デッキからもう1体の《ファジー・レイニアス》を手札に加える。更に、《レイダーズ・ウィング》は自分フィールドの闇属性エクシーズモンスター1体のオーバーレイユニットを1つ取り除くことで手札・墓地から特殊召喚できる」

体の各部についているプロペラントタンクから青い炎を放出させている猛禽類のモンスターが《RR-フォース・ストリクス》のオーバーレイユニットを吸収し、上空へ飛翔する。

 

レイダーズ・ウィング レベル4 攻撃0

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・RR-バニシング・レイニアス

 

「そして、自分フィールドにエクシーズモンスターが存在する場合、《シンキング・レイニアス》は特殊召喚できる」

 

RR-シンキング・レイニアス レベル4 攻撃100

 

「そして、俺はレベル4の《レイダーズ・ウィング》と《シンキング・レイニアス》でオーバーレイ!反逆の騎士よ、砕かれし翼を鎧と変え、漆黒の帳より現れろ!エクシーズ召喚!現れろ、ランク4!《レイダーズ・ナイト》!」

両肩と馬の首筋にから炎を噴出させているタンクが装備されている漆黒の騎士が左手に投槍を装備した状態で真っ暗な闇の中から歩いてくる。

 

レイダーズ・ナイト ランク4 攻撃2000

 

「《レイダーズ・ナイト》の効果。オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、このカードよりもランクが1つ差のあるRR、幻影騎士団、エクシーズ・ドラゴン1体にエクシーズチェンジできる!俺は《レイダーズ・ナイト》でオーバーレイ!」

黒咲のエクストラデッキから、遊矢を介してユートから託されたエースカードを手にする。

これらのカードはこれまでのユートの手持ちにはなかったもの。

そんなカードがなぜ遊矢が持っているのかはわからないが、それでもユートの想いが詰まっていることには変わりない。

「光と闇を繋ぐ架け橋の竜よ、絆を奪う力を俺に貸せ!!ランクアップエクシーズチェンジ!現れろ、ランク5!《アーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》!!」

上空のオーバーレイネットワークの中で、《RR-ライズ・ファルコン》と《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》のシルエットが出現し、それらが1つに交わっていく。

そして、その姿を背中の部分が《RR-ライズ・ファルコン》と同じものとなった《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》というべき姿のドラゴンが姿を現した。

 

アーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ランク5 攻撃3000

 

「《アーク・リベリオン》…。ランク5で攻撃力3000のドラゴン族。これが黒咲の新たなエースモンスター…」

「違う、間違っているぞ。これは俺とユートのエースだ!《アーク・リベリオン》の効果発動。オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、このカードの攻撃力にフィールド上のほかのすべてのモンスターの元々の攻撃力を加える!ブレイブソウル・ハウリング!!」

オーバーレイユニットを宿した《アーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》のタンクから火を噴くと同時に、青い炎を模したオーラが全身を包んでいく。

 

アーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ランク5 攻撃3000→3100→6100

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・レイダーズ・ウィング

 

「攻撃力6100!?けど、《ベエルゼ》は戦闘でも効果でも破壊されない。そして、《ベエルゼ》の戦闘かカード効果で僕がダメージを受けたとき、受けたダメージ分、《ベエルゼ》の攻撃力がアップする!」

たとえ《アーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》の攻撃力アップ効果が永続的なものであったとしても、《魔王龍ベエルゼ》は自分が受けるダメージと引き換えにどんどん攻撃力を高めることができる。

だが、黒咲はそのことも織り込み済みだ。

「《アーク・リベリオン》が闇属性エクシーズモンスターをオーバーレイユニットとした状態でこの効果を発動したとき、このカード以外のすべての表側表示のモンスターの効果は無効化される」

「何!?」

「まだ終わりではない!更に俺はスケール1の《RR-ライトニング・イーグル》をセッティング!そして、ペンデュラム効果を発動。俺がRRをエクシーズ召喚に成功したターン、1度だけデッキからRUMを1枚手札に加えることができる。俺は《RUM-レイド・フォース》を手札に加え、発動!俺のフィールドのエクシーズモンスター1体を素材に、ランクが1つ高いRRにランクアップさせる!俺はランク4の《フォース・ストリクス》でオーバーレイ!まだ見ぬ勇猛なハヤブサよ。猛き翼に秘めし未知なる力、今ここに知らしめよ!エクシーズ召喚!現れろランク5、《RR-エトランゼ・ファルコン》!」

黄色と紫をベースとした配色をしている、鎌か三日月を彷彿とさせる翼をもつハヤブサがオーバーレイネットワークから飛び立つ。

 

RR-エトランゼ・ファルコン ランク5 攻撃2000

 

「くっ…!《アーク・リベリオン》の効果発動後にエクシーズ召喚されたから、効果は生きているね…?」

「ああ、そうだ!!《エトランゼ・ファルコン》の効果発動!エクシーズモンスターをオーバーレイユニットとしている場合、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、相手フィールドのモンスター1体を破壊し、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与える!」

オーバーレイユニットとなった《RR-フォース・ストリクス》がその姿を《RR-エトランゼ・ファルコン》に似た紫の幻影へと変え、《魔王龍ベエルゼ》に向けて突撃する。

幻影の突撃を受けた蠅のドラゴンが爆発とともに消滅し、その余波が素良を襲う。

「くうう…容赦ないね、黒咲…!!」

 

素良

ライフ4000→1000

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・RR-フォース・ストリクス

 

「とんだ肩透かしだ…。だが、とどめは刺す!《アーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》でダイレクトアタック!!ライトニング・レヴォリューション!!」

オーラを纏ったままの《アーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》が上空を旋回し、その後で素良に向けて突撃する。

「僕は罠カード《ドレインシールド》を発動!!相手モンスターの攻撃を無効にして、その攻撃力分ライフを回復する!」

「ちっ…しのいだか」

だが、たとえ今回凌ぐことができて、ライフが回復したとしても、あと1ターン生き延びられるかどうかの状態だ。

おまけに手札で残っているのは《融合》1枚のみ。

フィールドには《トイボット》が1枚。

このままの状態では素良の敗北は明白だ。

 

素良

ライフ1000→7100

 

「俺はこれで、ターンエンドだ」

 

素良

手札1(《融合》)

ライフ7100

場 トイボット(永続魔法)

 

黒咲

手札6→3(うち1枚《RR-ファジー・レイニアス》)

ライフ4000

場 RR-エトランゼ・ファルコン ランク5 攻撃2000

  アーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン(オーバーレイユニット1) ランク5 攻撃6100

  RR-ネスト(永続魔法)

  レイダーズ・フォレスト(フィールド魔法)

  RR-ライトニング・イーグル(青) ペンデュラムスケール1

 

「僕のターン、ドロー!!」

 

素良

手札1→2

 

「黒咲…君のデュエルやこれまでの戦いで分かったよ。エクシーズ召喚のすごさを。だから…使わせてもらうよ、このカードを!!」

「何!?これは…」

「僕がドローしたカードは《RUM-七皇の剣》!!」

そのカードは凌牙がよく使っているカードで、RUMの特訓を兼ねた訓練の際にも、よくこのカードに辛酸をなめつくした。

そんなカードがあろうことか素良の手にある。

「ちょうどデッキトップを操作できるカードもあるから入れてみたけど、運が良かったよ。このカードの効果は分かっているよね!?ドローフェイズ時にドローしたこのカードを公開し続けることで、メインフェイズ開始時に発動できる!エクストラデッキ・墓地からオーバーハンドレッドナンバーズ1体を特殊召喚する。僕が特殊召喚するのは《No.101S・H・Ark Knight》!」

 

No.101S・H・Ark Knight ランク4 攻撃2100

 

「そして、《Ark Knight》でオーバーレイネットワークを再構築!カオスエクシーズチェンジ!!現れろ、ランク5!《CNo.101S・H・Dark Knight》!!」

 

CNo.101S・H・Dark Knight ランク5 攻撃2800

 

「くっ…凌牙さんのエースモンスターをまさか、貴様が使うとはな」

確かに素良のデッキと《RUM-七皇の剣》は相性がいい。

エクストラデッキのひっ迫にさえ目をつむれば、使うことができるカードだ。

そして、ここから何が始まるかも嫌というほどわかっている。

「《Dark Knight》の効果発動!1ターンに1度、相手フィールドの特殊召喚されたモンスター1体をこのカードのカオスオーバーレイユニットにする!ダーク・ソウル・ローバー!!」

黒いエネルギーを宿した槍から発射されたビームを受けた《アーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》がカオスオーバーレイユニットへと変換されて、素良のフィールドへ向かう。

「常に最悪な事態を想定して動いてきた君でも、カオスオーバーレイユニットにされるのは想定外じゃなかったかい?」

「ちぃ…」

《CNo.101S・H・Dark Knight》と《ドレインシールド》。

いずれも《RUM-レヴォリューション・フォース》と《RR-ライズ・ファルコン》へのカウンターともなりえるカードで、黒咲とのデュエルでの敗北の経験が素良の中にこびりついているようだ。

「バトルだ!《Dark Knight》で《エトランゼ・ファルコン》を攻撃!」

続けて、槍を構えた《CNo.101S・H・Dark Knight》が槍を投擲し、それに貫かれた《RR-エトランゼ・ファルコン》が爆散する。

「ぐおおおお!!だが、《エトランゼ・ファルコン》は相手によって破壊されたときに発動できる効果がある!」

 

黒咲

ライフ4000→3200

 

「俺の墓地に存在するRRエクシーズモンスター1体を特殊召喚し、このカードをオーバーレイユニットにする!俺は《レイダーズ・ナイト》を特殊召喚!」

 

レイダーズ・ナイト ランク4 攻撃2000

 

「更に、《レイダーズ・フォレスト》の効果。デッキから《ランチャー・ストリクス》を手札に加える」

「僕はこれで、ターンエンド」

 

素良

手札1(《融合》)

ライフ7100

場 CNo.101S・H・Dark Knight(オーバーレイユニット2) ランク5 攻撃2800

  トイボット(永続魔法)

 

黒咲

手札3→4(うち2枚《RR-ファジー・レイニアス》《RR-ランチャー・ストリクス》)

ライフ3200

場 レイダーズ・ナイト(オーバーレイユニット1) ランク4 攻撃2000

  RR-ネスト(永続魔法)

  レイダーズ・フォレスト(フィールド魔法)

  RR-ライトニング・イーグル(青) ペンデュラムスケール1

 

せっかくの《アーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》をつぶされ、モンスターも全滅した。

だが、他のエクシーズモンスターに変わることのできる《レイダーズ・ナイト》だけは残っている。

「俺の…ターン!!」

 

黒咲

手札4→5

 

「《レイダーズ・ナイト》の効果発動!オーバーレイユニットを1つ取り除き、ランクが1つ異なる幻影騎士団、RR、エクシーズ・ドラゴンへエクシーズチェンジさせる!《レイダーズ・ナイト》でオーバーレイ!!獰猛なるハヤブサよ。激戦を切り抜けしその翼翻し 寄せ来る敵を打ち破れ!エクシーズ・チェンジ!現れろ!ランク5!《RR-ブレイズ・ファルコン》!」

 

RR-ブレイズ・ファルコン ランク5 攻撃1000

 

「そして、《レイダーズ・フォレスト》の効果。俺はデッキから《フラッシュ・ヴァルチャー》を手札に加える。そして、俺は手札からスケール8の《ランチャー・ストリクス》をセッティング!更に、《RR-ネスト》の効果。デッキから《リフレクティング・イーグル》を手札に加える。そして、俺はレベル2から7までのモンスターを同時に召喚可能。戦場を舞い、戦火に身を焦がす鳥たちよ、揺れ動く戦況を空より見極めよ。ペンデュラム召喚!!現れろ、俺のモンスター!!《RR-ファジー・レイニアス》、《RR-フラッシュ・ヴァルチャー》、《RR-インペイル・レイニアス》、《RR-リフレクティング・イーグル》!」

2つの光の柱の中心に青い渦が現れ、その中から一気に4体のRRが飛び出してくる。

その中には両翼と胸部、額に鏡のように透き通った銀色のプロテクターを装着したタカがいた。

 

 

RR-ファジー・レイニアス レベル4 攻撃500

RR-フラッシュ・ヴァルチャー レベル4 攻撃1500

RR-インペイル・レイニアス レベル4 攻撃1700

RR-リフレクティング・イーグル レベル5 攻撃2000

 

「そして、俺はレベル4の《ファジー・レイニアス》と《フラッシュ・ヴァルチャー》でオーバーレイ!「紅蓮に燃えさかるハヤブサよ!渇望の翼を燃やし我が魂を照らせ!!エクシーズ召喚!!《RR-ブレード・バーナー・ファルコン》!!!」

 

RR-ブレード・バーナー・ファルコン ランク4 攻撃1000

 

「《ブレード・バーナー・ファルコン》の効果!俺のライフが相手よりも3000以上下回っている状態でエクシーズ召喚に成功したとき、その攻撃力を3000アップさせる!」

 

RR-ブレード・バーナー・ファルコン ランク4 攻撃1000→4000

 

「更に、《レイダーズ・フォレスト》の効果。デッキから《ボミング・レイニアス》を手札に加える。そして、手札から《ボミング・レイニアス》を通常召喚」

 

RR-ボミング・レイニアス レベル4 攻撃1700

 

「1ターンでエクシーズモンスター2体を含めて5体のモンスター…おまけに、攻撃力4000の《ブレード・バーナー・ファルコン》…さすがだね、黒咲」

「バトル!《ブレイズ・ファルコン》はオーバーレイユニットを持っている場合、相手プレイヤーに直接攻撃できる。行け、ダイレクトアタックだ!!」

《RR-ブレイズ・ファルコン》が《C.No.101S・H・Dark Knight》をすり抜け、炎を纏った状態で素良に突撃する。

「ぐうう…!」

 

素良

ライフ7100→6100

 

「《ブレイズ・ファルコン》の効果。このカードが相手に戦闘ダメージを与えたとき、相手フィールドのモンスター1体を破壊する。俺は《Dark Knight》を破壊する」

《RR-ブレイズ・ファルコン》が急上昇し、真下にいる《CNo.101S・H・Dark Knight》に瞳を輝かせる。

同時に、そのモンスターの肉体が真っ二つに切り裂かれ、爆発とともに消滅した。

「くううう…けど、《Dark Knight》の効果発動!オーバーレイユニットを持っているこのカードが破壊され墓地へ送られた時、墓地に《Ark KNight》が存在する場合、このカードは墓地から特殊召喚できる!」

爆発とともに消滅したはずの槍士が地面に出現した魔法陣の中から舞い戻る。

 

CNo.101S・H・Dark Knight ランク5 攻撃2800

 

「そして、このカードの攻撃力分、僕のライフを回復する」

 

素良

ライフ6100→8900

 

「だが、オーバーレイユニットがない今なら問題などない!《ブレイズ・バーナー・ファルコン》で《Dark Knight》を攻撃!!火炎弾!!」

《RR-ブレイズ・バーナー・ファルコン》の口から炎の弾丸が発射され、撃ち抜かれて胸部に大穴を開けた《CNo.101S・H・Dark Knight》が消滅する。

 

素良

ライフ8900→7700

 

「そして、俺は《ランチャー・ストリクス》のペンデュラム効果を発動!このカードがペンデュラムゾーンに表側表示で存在し、俺のフィールドにエクシーズ召喚されたRRが戦闘で相手モンスターを破壊したとき、そのモンスターは続けてもう1度だけ攻撃できる。火炎二連弾!!」

再び炎をためた《RR-ブレイズ・バーナー・ファルコン》がそれを弾丸に変えて発射し、それを正面から受けた素良が大きく吹き飛ばされる。

「うわああああ!!」

 

素良

ライフ7700→3700

 

「まだだ!!《インペイル・レイニアス》でダイレクトアタック!」

フィールドががら空きになった素良に今度は《RR-インペイル・レイニアス》の鉤爪が襲い掛かり、それを腕を盾にしてしのぐ。

 

素良

ライフ3700→2000

 

「これで終わりだ!!《リフレクティング・イーグル》でダイレクトアタック!」

最後に残った《RR-リフレクティング・イーグル》が額の鏡からレーザーを素良に向けて発射する。

この攻撃が通れば、素良のライフはちょうど0になる。

だが、黒咲はこれでデュエルが終わるとは到底思えなかった。

「まだ出し惜しみするつもりか!?貴様の本気を見せろ、紫雲院素良!!」

「ああ…当然だよ!!僕は墓地の《ファーニマル・マジシャン》の効果発動!僕のライフの数値以上の攻撃力を持つ相手モンスターのダイレクトアタック宣言時に発動できて、その攻撃を無効にする!!」

素良のフィールドに真っ黒で黄土色の2つ目部分だけが光り、ブカブカな三角帽子と天使の羽根がついた緑色の法衣姿の魔法使いというべきモンスターが飛び出し、右手に持っている杖から白いバリアを展開し、レーザーから素良を守る。

「そして、墓地に存在するこのカードを含めた融合素材モンスターを除外して、デストーイ融合モンスター1体を融合召喚する!!僕が融合素材とするのは《ファーニマル・マジシャン》、《ファーニマル・ドッグ》、《ファーニマル・オウル》、《エッジインプ・シザー》!魔界の魔術師よ、地獄の番犬よ、煉獄の眼よ、悪魔の爪よ、今一つとなりて新たな力と姿を見せよ!融合召喚!現れ出ちゃえ、すべてを引き裂く密林の魔獣!《デストーイ・シザー・タイガー》!」

 

デストーイ・シザー・タイガー レベル6 攻撃1900

 

「《デストーイ・シザー・タイガー》の効果!このカードの融合召喚に成功したとき、融合素材となったモンスターの数だけ、フィールド上のカードを破壊できる!僕は《RR-ネスト》と2枚のペンデュラムカード、そして《レイダーズ・フォレスト》を破壊する!!」

腹部に突き刺さっている巨大な鋏を広げた《デストーイ・シザー・タイガー》は4枚のカードのソリッドビジョンをいっぺんに両断した。

「くっ…《レイダーズ・フォレスト》がフィールドを離れるとき、俺のフィールドのモンスターはすべて破壊される。だが、《リフレクティング・イーグル》の効果!俺のフィールドのRRエクシーズモンスター1体をこのターン、戦闘及びカード効果による破壊から守る!《ブレイズ・バーナー・ファルコン》を守れ!!」

《RR-ブレイズ・バーナー・ファルコン》の周囲を《RR-リフレクティング・イーグル》から離れた装甲達が展開する。

そして、黒咲のフィールドに落雷が発生し、装甲に守られたモンスター以外の黒咲のモンスターをすべて消滅させた。

「攻撃力4000の《ブレイズ・バーナー・ファルコン》だけは残っちゃったか…。《シザー・タイガー》は僕のフィールドのデストーイモンスターの攻撃力を僕のフィールドのファーニマル、デストーイモンスターの数×300アップさせる」

 

デストーイ・シザー・タイガー レベル6 攻撃1900→2200

 

「俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

素良

手札1(《融合》)

ライフ2000

場 デストーイ・シザー・タイガー レベル6 攻撃2200

  トイボット(永続魔法)

 

黒咲

手札5→0

ライフ3200

場 RR-ブレイズ・バーナー・ファルコン ランク4 攻撃4000

  伏せカード2

 

ペンデュラムカードとサーチカードを一気に失ったのは痛いが、それでも黒咲のフィールドには攻撃力4000のエクシーズモンスターだけは残すことができた。

そして、素良の墓地には融合素材となるモンスターはもうない。

残り1枚の手札が何かは分かっている。

「僕のターン、ドロー!!」

 

素良

手札1→2

 

「僕はカードを1枚伏せて、ターンエンド」

 

素良

手札2→1(《融合》)

ライフ2000

場 デストーイ・シザー・タイガー レベル6 攻撃2200

  トイボット(永続魔法)

  伏せカード1

 

黒咲

手札0

ライフ3200

場 RR-ブレイズ・バーナー・ファルコン ランク4 攻撃4000

  伏せカード2

 

「俺の…ターン!!」

 

黒咲

手札0→1

 

「バトルだ。俺は…」

「バトルフェイズ開始時に、僕は罠カード《マジカルシルクハット》を発動!デッキから魔法・罠カードを2枚選んで…」

「させるか!カウンター罠《ラプターズ・ガスト》。俺のフィールドにRRカードが存在するとき、魔法・罠カードの発動を無効にし、破壊する」

「くっ…!」

せっかく発動した《マジカルシルクハット》が消滅し、丸裸となった《デストーイ・サーベル・タイガー》が残る。

「バトルだ!《ブレイズ・バーナー・ファルコン》で《デストーイ・シザー・タイガー》を攻撃!!火炎弾!」

《RR-ブレイズ・バーナー・ファルコン》が炎の弾丸を口から放ち、焼き尽くされる形で《デストーイ・シザー・タイガー》が破壊されてしまう。

「うわああああ!!」

 

素良

ライフ2000→200

 

「俺はこれで、ターンエンド」

 

素良

手札1(《融合》)

ライフ200

場 トイボット(永続魔法)

 

黒咲

手札1

ライフ3200

場 RR-ブレイズ・バーナー・ファルコン ランク4 攻撃4000

  伏せカード1

 

「まったく、やっぱりカウンター罠を伏せてる。おかげで、《マジカルシルクハット》からのコンボが狙えなかったよ…」

まだ素良のデッキの中には《トイボット》があり、《マジカルシルクハット》の効果によってモンスターとなったこのカードを破壊することで、ちょっとした仕掛けをしようと考えていたが、不発に終わってしまった。

まさに絶体絶命の状態だが、そのようなことは黒咲相手なら当然のことだ。

「僕のターン、ドロー!!」

 

素良

手札1→2

 

「僕は《トイボット》の効果を発動!手札1枚を墓地へ送り、デッキからカードを1枚ドローする!そして、ドローしたカードがファーニマルの場合、手札からそのまま特殊召喚できる。僕はドローしたカードは《ファーニマル・ドッグ》!!」

 

ファーニマル・ドッグ レベル4 攻撃1700

 

手札から墓地へ送られたカード

・ファーニマル・ウィング

 

「《ファーニマル・ドッグ》の効果発動。デッキから《パッチワーク・ファーニマル》を手札に加える。そして、僕は手札から魔法カード《融合》を発動!《ファーニマル・ドッグ》と《パッチワーク・ファーニマル》、そして《デストーイ・シザー・タイガー》を墓地へ送り、融合!地獄の番犬よ、2つの顔を持つ悪魔よ、殺戮の虎よ、今一つとなりて新たな力と姿を見せよ!融合召喚!現れ出ちゃえ、全てに牙むく魔境の猛獣、《デストーイ・サーベル・タイガー》!」

 

デストーイ・サーベル・タイガー レベル8 攻撃2400

 

「《サーベル・タイガー》の効果発動!このカードの融合召喚に成功したとき、墓地のデストーイモンスター1体を特殊召喚できる。僕は《シザー・タイガー》を特殊召喚!」

 

デストーイ・シザー・タイガー レベル6 攻撃1900

 

「そして、墓地の《ファーニマル・ウィング》の効果発動。僕のフィールドに《トイボット》が存在するとき、墓地のこのカードとファーニマルモンスター1体を除外することで、デッキからカードを1枚ドローする。僕は《パッチワーク・ファーニマル》を除外して、デッキからカードを1枚ドローする。そして、《ファーニマル・ウィング》のもう1つの効果。この効果を発動した後で、《トイボット》を墓地へ送ることで更にもう1枚ドローする。そして、《トイボット》が墓地へ送られた時、デッキから《エッジインプ・シザー》かファーニマルモンスター1体を手札に加える。僕は《ファーニマル・スネーク》を手札に加える」

「一気に3枚手札を補充したか…」

「そして、僕は手札から《ファーニマル・スネーク》を召喚」

天使の羽根がついた、デフォルメされた蛇のぬいぐるみというべき姿のモンスターが現れる。

 

ファーニマル・スネーク レベル1 攻撃400

 

「《ファーニマル・スネーク》の効果発動。このカードの召喚に成功したとき、ゲームから除外されているエッジインプモンスターとファーニマルモンスターを1体ずつ手札に加える。僕は除外している《ファーニマル・ウィング》と《エッジインプ・シザー》を手札に加える。更に僕は手札から魔法カード《融合》を発動!《エッジインプ・シザー》と《ファーニマル・ウィング》、そして《ファーニマル・スネーク》を融合!悪魔の爪よ、死神の羽根よ、毒を宿す蛇よ、今一つとなりて新たな力と姿を見せよ!融合召喚!現れ出ちゃえ、悪夢を呼ぶ戦慄の乙女、《デンジャラス・デストーイ・ナイトメアリー》!!」

素良の背後に巨大なカーテンが出現し、それが左右に開くとともに真っ白で巨大なワンピースが見えてくる。

カーテンが開き切ると、その中から出てきたのは金色の長い髪を下げた巨大な女性の人形で、その顔立ちは泣いている口裂け女というべきものと言える。

「このモンスター…今までのデュエルでは使ってこなかったカードか!?」

「そう、僕の新しいカードだ」

 

デンジャラス・デストーイ・ナイトメアリー レベル10 攻撃2000

 

「《ファーニマル・スネーク》の効果発動。このカードをデストーイ融合モンスターの融合素材として墓地へ送ったとき、墓地のエッジインプモンスター1体を手札に戻す。僕は《エッジインプ・シザー》を手札に戻す。そして、《ナイトメアリー》は自分のターンの間、その攻撃力を墓地の天使族・悪魔族モンスターの数×300アップする。そして、《デストーイ・サーベル・タイガー》は僕のフィールドのデストーイモンスターの攻撃力を400アップさせ、《シザー・タイガー》は僕のフィールドのファーニマルモンスター、デストーイモンスターの数×300、僕のフィールドのデストーイモンスターの攻撃力をアップさせる。墓地の天使族・悪魔族モンスターは3体。フィールド上にはデストーイモンスターが3体。」

 

デンジャラス・デストーイ・ナイトメアリー レベル10 攻撃2000→2900→3300→4200

デストーイ・サーベル・タイガー レベル8 攻撃2400→2800→3700

デストーイ・シザー・タイガー レベル6 攻撃1900→2300→3200

 

「くっ…本気を見せてきたが、紫雲院素良!!」

新たな融合モンスターを含めた3体もの大型モンスターに黒咲は戦慄する。

そのうちの1体は《RR-ブレイズ・バーナー・ファルコン》を上回り、これらのモンスターの一斉攻撃がこれから来る。

「バトルだ!!《デンジャラス・デストーイ・ナイトメアリー》で《ブレイズ・バーナー・ファルコン》を攻撃!!」

攻撃命令を受けた《デンジャラス・デストーイ・ナイトメアリー》の瞳が怪しく光るとともに、耳をつんざくような悲鳴を上げる。

悲鳴は衝撃波となって周囲を襲い、《RR-ブレイズ・バーナー・ファルコン》が粉々に粉砕される形で消滅した。

「ぐううううう!!!!」

 

黒咲

ライフ3200→3000

 

「これで終わりだ!!《デストーイ・サーベル・タイガー》でダイレクトアタック!!」

続けて、《デストーイ・サーベル・タイガー》が咆哮した後で黒咲に向けてとびかかり、両手の爪で引き裂こうとする。

この一撃が決まれば、黒咲のライフは尽きる。

だが、その爪は黒咲に届かない。

「何…!?」

「俺は…速攻魔法《RUM-デス・ダブル・フォース》を発動した。このターン、戦闘で破壊されたRR1体を特殊召喚し、そのモンスターの倍のランクを持つRRにランクアップさせる…蘇り、勝利への道を作れ!!《ブレイズ・バーナー・ファルコン》!!」

黒咲をかばうように現れ、爪を受け止めた《RR-ブレイズ・バーナー・ファルコン》が上空のオーバーレイネットワークの中へと飛び込んでいく。

「勇猛果敢なるハヤブサよ。怒りの炎を巻き上げ、大地をも焼き尽くす閃光となれ!ランクアップ・エクシーズチェンジ!飛翔しろ!ランク8、《RR-サテライト・キャノン・ファルコン》!」

 

RR-サテライト・キャノン・ファルコン ランク8 攻撃3000

 

「くうう…デニスを倒したエクシーズモンスター…」

そのモンスターの登場により、素良は手出しできなくなる。

あの効果は相手ターンでも発動でき、下手に攻撃したら返り討ちを食らうのは明白。

そして、最後に残ったカードではもはやここを切り抜けることはできない。

「…ターン、エンド…」

 

素良

手札2→1

ライフ200

場 デンジャラス・デストーイ・ナイトメアリー レベル10 攻撃4200

  デストーイ・サーベル・タイガー レベル8 攻撃3700

  デストーイ・シザー・タイガー レベル6 攻撃3200

 

黒咲

手札1

ライフ3000

場 RR-サテライト・キャノン・ファルコン(オーバーレイユニット1) ランク8 攻撃3000

 

「俺のターン、ドロー!!」

 

黒咲

手札1→2

 

「《サテライト・キャノン・ファルコン》の効果!オーバーレイユニットを1つ取り除き、墓地のRRの数×800、相手モンスター1体の攻撃力をダウンさせる!俺の墓地に眠るRRは12体!よって、貴様の《デストーイ・シザー・タイガー》の攻撃力は9600ダウンさせる!!」

オーバーレイユニットを取り込んだ《RR-サテライト・キャノン・ファルコン》が上空へとび、人工衛星から受信したビームからエネルギー供給を受ける。

そして、船上にいる《デストーイ・シザー・タイガー》に向けてビームを発射する。

「ぐああああ!!…はは、さすが、だよ…黒咲!!」

もうこの時点で素良の敗北は決まったようなもの。

だが、素良には悔いはなかった。

(これだけ暴れてくれるなら、きっと遊矢は大丈夫だ。たとえ、僕がいなくなったとしても…)

 

デストーイ・シザー・タイガー レベル6 攻撃3200→0

 

「バトルだ!!いけ、《サテライト・キャノン・ファルコン》!!《シザー・タイガー》を攻撃しろ!!エターナル・アベンジ!!」

余剰エネルギーで再びチャージ、及び砲身の強制冷却をした《RR-サテライト・キャノン・ファルコン》の照準が黒焦げになった《デストーイ・シザー・タイガー》に向けられる。

既に身動きを取れず、守りを固めることもかなわない哀れなぬいぐるみを射程に収めるのは容易で、高濃度圧縮エネルギーでできたビームが発射される。

それに撃ち抜かれた《デストーイ・シザー・タイガー》が消滅するのを見た素良の脳裏に、舞網チャンピオンシップでの遊矢とのデュエルを思い出す。

遊矢の《MLX-オッドアイズ・月下・ドラゴン》の一撃で倒された時は本当に驚いてしまった。

(本当に…なんだろうな。遊矢に黒咲…柚子…みんなのせいで、未練ができすぎてるじゃないか…)

そのせいで、覚悟をもう決めているのに、もう時間がないことは分かっているのに、それでも生きたいと思ってしまう。

そんな自分が滑稽に思え、思わず口元が緩んでしまった。

 

素良

ライフ200→0

 

デュエルリングの席が下りる中、破れたにも関わらず心地よさを感じる自分がいるように素良には思えた。

ずっと長い間、アカデミアに入ってからずっと忘れていたもの。

それが分かっただけでも、思い出すことができただけでも、生き続けてよかったと思える。

「…いいデュエルだった」

歩いてきた黒咲が視線をそらしながら、つぶやくように素良に声をかける。

そのしぐさを見て、プッと笑いかけた素良が黒咲に袋に入った状態のキャンディーを投げ渡す。

「これで1勝2敗、次のデュエルでイーブンにしてみせるよ。覚悟しなよ?」

「…それだけの力を付けたらな」

キャンディーを受け取った黒咲は一足先にデュエルリングを後にする。

1人になったと同時に、急に胸を強く締め付けられる感覚に襲われた素良が脂汗をかきながらその場に倒れこむ。

どうにか懐から注射器を出し、首筋に中のナノマシンを打ちこむ。

胃液が口元から流れ出ていて、唾にはない独特の味を感じながら、倒れる素良はじっくりとそれが収まるのを待つ。

「もう少し…もう少しだけでいいんだ。もしかしたら、これが切り札になる…。持ちこたえてくれ…」

 

レイダーズ・フォレスト

フィールド魔法カード

(1):このカードが存在する限り、自分はX召喚、P召喚、「RR」カードの効果以外の方法でEXデッキからモンスターを特殊召喚できない。この効果は無効化されない。

(2):自分フィールドに「RUM」以外の方法で「RR」Xモンスターの特殊召喚に成功したときに発動できる。デッキ・EXデッキから「RR」Pモンスター1体を手札に加える。このターン、同じランクの「RR」Xモンスターを特殊召喚に成功した場合、自分の「レイダーズ・フォレスト」の効果を発動できない。

(3):このカードがフィールドから離れたときに発動する。自分フィールドのモンスターをすべて破壊する。

 

RR-リフレクティング・イーグル

レベル5 攻撃2000 守備0 闇属性 鳥獣族

【Pスケール:青3/赤3】

(1):このカードがPゾーンに表側表示で存在する限り1度だけ、自分フィールドに存在する「RR」Xモンスター1体を対象に発動できる。ターン終了時までそのモンスターは戦闘・効果では破壊されない。この効果は相手ターンでも発動できる。

【モンスター効果】

このカードの(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しか行えない。

(1):相手フィールドにEXデッキから特殊召喚されたモンスターが存在し、自分フィールドにモンスターが存在しないとき、このカードは手札から表側攻撃表示で特殊召喚できる。その時、このカードのレベルは4となり、攻撃力が半分になる。

(2):このカードがモンスターゾーンに表側表示で存在する限り1度だけ、自分フィールドに存在する「RR」Xモンスター1体を対象に発動できる。ターン終了時までそのモンスターは戦闘・効果では破壊されない。この効果は相手ターンでも発動できる。

 

ファーニマル・マジシャン

レベル6 攻撃2000 守備1200 効果 光属性 天使族

このカード名の(1)の効果はデュエル中1度だけ発動できる。

(1):自分LPの数値以上の攻撃力を持つ相手モンスターの直接攻撃宣言時、このカードが墓地に存在する場合に発動できる。その攻撃を無効にする。その後、EXデッキに存在する「デストーイ」融合モンスター1体の融合素材となる自分の墓地に存在するこのカードを含めたモンスターを除外し、その融合モンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

ファーニマル・スネーク

レベル1 攻撃400 守備400 効果 光属性 天使族

このカード名のカードの(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードの召喚に成功したとき、ゲームから除外されている「エッジインプ」モンスターと「ファーニマル」モンスターを1体ずつ対象として発動する。それらのモンスターを自分の手札に加える。この効果を発動したターン、自分は融合召喚以外の方法でEXデッキからモンスターを特殊召喚できない。

(2):このカードが「デストーイ」融合モンスターの融合素材として墓地へ送られた時、自分の墓地に存在する「エッジインプ」モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを手札に加える。



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第118話 突入の日

次第に日が昇り、光が海と島にそびえる建造物を照らす。

中世の城塞と言える、観光客を呼び込みそうな建物で、港にはいくつもの船が浮かび、赤やオレンジの制服を着たデュエル戦士達が見回る。

「なあ、いつまで俺たち、こんなことをしてたらいいんだ?」

「アークエリアプロジェクトが完了するまで、だろうな。ったく、暇すぎるぜ…。これでも、イエローじゃあ中々の成績を出したのになぁ」

おしゃべりしあうレッドとイエローはいずれもアカデミアに入って日が浅い。

かつての素良のように、孤児であったところをアカデミアのスカウトに引き取られ、デュエル戦士として鍛えられた。

彼らの場合は入って2年くらいで、厳しい訓練を受けたものの、アカミデアの教育が行き届いているわけではない。

その傾向はブルー、イエロー、レッドの順番に強まり、中には思想教育よりもデュエルや軍人としての教育を受けたというデュエル戦士もいるほどだ。

エクシーズ次元を侵略してから、アカデミアが直面したのはデュエル戦士不足で、本来はオベリスクフォースのみで侵略を行い、イエローとレッドはアカデミア防衛をしながら経験を積ませていき、昇格試験にクリアした戦士からブルーに昇格させ、オベリスクフォースに加えるという計画も、占領後の残党狩りや拠点防衛に回す形に変更された。

先ほどイエローのデュエル戦士は中々の成績を出したと言っていたが、その言葉通り成績は中の上といえるものだ。

本当に優秀な戦士は既にエクシーズ次元に送られていて、彼らは知らないが既にレジスタンスと現地に駐屯しているヴァプラ隊によって捕縛され、現地で尋問を受けるかスタンダード次元に連行されている。

オベリスクフォースもスタンダード次元やシンクロ次元への侵攻の失敗で多くが倒されるか捕縛されている。

ここに残っているのは実力者もいるものの、多くが侵攻軍に選抜されなかった戦士ばかりだ。

「エクシーズ次元へ行ったあいつ…元気にしてっかなぁ。連絡ないのは分かり切っているけどな」

「忙しいんだろ。まだエクシーズ次元には抵抗しているレジスタンスもいるみたいだからな。ま、いずれ帰ってきて、自慢げにカードを見せるだろうな」

そして、その成果と一緒に見せるのがオベリスクフォースの仮面と制服だろう。

もう少ししゃべりたいところだったが、隊長になっている年長のイエローがやってきて、気配に気づいた2人は慌てて元の位置に戻る。

たとえ警備したとしても、侵入者が来るはずがないのに。

ランサーズが結成されたという話もあるが、それがどんなものかなんてわからず、彼らのデュエル戦士や物量なんてたかが知れている。

そんな彼らが突入できるはずがない。

夜明けとともに、ようやく宿舎に戻って朝ごはんを食べて、寝ることができる。

あと少しポケーッとしていればいい。

そう思っていたが、水平線に動いているものが見えた。

「クジラかぁ…?近づいてる?」

もしクジラなら、捕まえてその肉を唐揚げか混ぜご飯に入れて作ってほしいと思ってしまう。

最近は落ち着いてきたが、エクシーズ次元の侵攻を終えてから配給される食糧が減っていた。

腹を空かせて訓練する戦士もいて、中にはそれで倒れてしまう戦士もいたほどだ。

だが、最初はクジラかと思っていた彼だが、近づいてくるにつれてシルエットがだんだんと見えてくる。

よく見ると建物のように見えて、少なくともそれはクジラではない。

「まさか…これは、戦艦?アカデミアにはないぞ!ということは…」

あのランサーズがここまで来たのか?

そんな予感が頭をよぎった。

 

「見えてきた…ようやくか…」

飛行用シルエットであるイーグルが取り付けられたマシンブルーファルコンに乗り、甲板からアカデミアを見る黒咲は右拳を左掌にぶつける。

瑠璃がさらわれ、彼女のいるアカデミアへ来るまでにどれほどの時を耐え抜いてきたか。

だが、もうすぐそれも報われる。

次元戦争を終わらせることができる。

「黒咲、俺たちは…」

隣で、同じく飛行用シルエットのドラゴンフライを装備したマシンレッドクラウンに乗る遊矢の問いかけに、黒咲は視線を向けず、ただ一言だけ返す。

「俺たちのやるべきことは分かっている」

その言葉に、遊矢は少しだけ安心した。

そして、首にぶら下げているペンデュラムを握る。

柚子と遊勝は船内に待機し、デュエルディスクでいつでも通信できる状態になっている。

船内でも、船が港に突入してから動き出す部隊が準備をしており、その先頭に立つのは翔太だった。

「ちっ…俺のバイクはシルエットを付けれるほどの余裕はないってのかよ」

作戦としては、飛行できる2人が先発して港を攪乱する。

そして、船は巨大な次元間のGPSとして機能しており、そこからスタンダード次元などで待機している部隊を転移させ、突入させていく。

目標はプロフェッサーへの一点突破と瑠璃とリン、そしてセレナの救出。

この一戦を次元戦争における最後の戦いにする。

全員が決意を固める中で、零児からの通信が船内に響く。

「諸君、我々ランサーズの戦いはついに最終局面に到達した。少なくない犠牲の果てに、我々は敵の本拠地にこれから足を踏み入れる。我々はシンクロ次元でアカデミアを撃退し、そしてエクシーズ次元を解放した。追い詰められている以上、奴らはあらゆる手段をもって我々を妨害するだろう。そして、戦いの中で犠牲者も出るだろう。君自身が、君と共に戦う誰かが。だが、この勝利をもって、この愚かしい戦争に終止符を打つことができる。だが…その勝利の条件に君たちの死は含まれない。故に、勝利し、生きて必ず故郷へ戻るぞ。以上だ、諸君らの健闘を祈る」

通信が終わり、作戦開始のタイマーが全員のデュエルディスクで起動する。

同時に、先発の遊矢と黒咲が飛び立ち、2台のDホイールが宙を舞う。

「空を飛ぶバイクが来ている!?」

「う、撃ち落とせぇ!!」

警備しているデュエル戦士達がデュエルディスクを展開し、それぞれが《古代の機械兵士》を召喚し、遊矢と黒咲に向けて発砲する。

「うわああああ!!」

「奴らは俺がやる!」

銃弾をかわす黒咲がスピードを上げ、港へ到達するとともにイーグルを強制排除する。

シルエットには機密保持のための自爆機能がついていて、それが《古代の機械兵士》の一体に接触すると同時に爆発する。

「貴様ぁ!!」

「ふん…貴様らなど、相手は俺一人で十分だ」

地上へ降りたマシンブルーファルコンから降り、黒咲はデュエルディスクを構え、3人に襲い掛かった。

 

爆煙で視界から隠れ、先へと進む遊矢は港の出口にある巨大な門の前に降り立つ。

空から確認し、マシンレッドクラウンのレーダーでもチェックしたが、ここ以外に港から侵入するルートはない。

「これを開けるとしたら…」

近くに門をコントロールできる機械があるはず。

近くを探そうと走り出そうとする遊矢だが、急にヒュウウンと何かが飛ぶ音が聞こえた。

ドンと上空から爆発音が聞こえ、思わず上を向くと、上空にはなぜか花火があがっていた。

しかもそれは複数で、とてもアカデミアがやるものとは思えない。

「WELCOME、ようこそアカデミアへ、遊矢!!」

声が聞こえた方向は門の上で、それに気づいて見上げた遊矢の目の前までデニスは飛び降りる。

気さくな笑みを見せるデニスだが、その服装はアカデミアのブルーの制服で、青いデュエルディスクを装着していた。

「デニス…」

「見えていたよ、君たちがこれから来るということは。そろそろクライマックスということか…」

「俺とデュエルをするのか…?」

「Oh!!それもいいけれど、僕はもっと戦いたい相手がいるからね。君と戦いたいって相手に譲るさ。そろそろ、来ることだね…」

「そろそろ…!!」

(小僧、構えろ。嫌な気配だ…)

急に針で全身が差されるようなプレッシャーを感じ、遊矢は振り返る。

そこにいるのは筋肉質な体を赤い武闘着で覆い、紫の長い髪と鋭い瞳の少年がにらむように遊矢を見ながら歩いてくる。

「お前は…勝鬨勇雄!?」

遊矢の脳裏に舞網チャンピオンシップでの彼とのデュエルが浮かぶ。

勝つためには手段を択ばず、そしてプロデュエリストになるまでは大会以外で外に出ることすら許されない全寮制の梁山泊塾の生徒である彼は1年前の舞網チャンピオンシップジュニアユースで準優勝を勝ち取った。

彼の、というよりは彼の塾でのデュエルは手段を択ばないという言葉通り、反則スレスレの暴力を用いてアクションカードを手にするもの。

しかも、反則にならない加減についても徹底的に教え込まれているのだから質が悪い。

また、遊矢自身もデュエルをして分かったように、デュエルの実力もLDSに匹敵するものがある。

そんな彼と、遊矢は第2回戦でデュエルをした。

闘争心をむき出しにする彼に一時は敗北寸前まで徹底的に追い詰められたが、ラストターンでズァークの思念に一時的に飲まれてしまい、その中で《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》を召喚。

その力で彼を倒した。

「榊遊矢…貴様を、貴様を倒す!倒す!倒す!!」

「俺を倒すだって!?お前…自分がどこで何をしているのかわかっているのか!?」

デュエルで倒すだけならいい。

それなら、道場破りだろうと大会だろうと納得できる。

だが、ここはアカデミアでしかも次元戦争の最中だ。

しかも本来ならスタンダード次元にいるはずの彼がどうしてここにいるのか?

「実はさ、彼…君に負けた後、破門にされちゃったんだよ…。居場所のない彼を僕が拾ってあげたのさ」

「何!?」

「君と戦える…殺しあえると話したら、彼…すんなり転んだよ。いい駒ができて、何よりさ」

スタンダード次元でスパイ活動をしていたころ、遊矢に敗北した勝鬨の元に向かったことがある。

敗北をとがめられ、破門にされた勝鬨は路頭を迷うことになった。

プロデュエリストになる道を閉ざされ、プロデュエリストになるまで帰らないという両親との約束に縛られて故郷へ帰ることもできない彼は抜け殻のようになっていた。

デニスがやったのはそんな彼に生きる理由を与えることだった。

「チャオ、遊矢。彼とのデュエル、楽しんでね。ああ…それから、彼を倒さないと、この門…開かないから」

「待て、デニ…」

「よそ見を…するなぁ!!」

自分のことなど眼中にないと考えているととらえた勝鬨が遊矢に飛び蹴りを放ち、遊矢は左腕で受け止める。

地面に降りた勝鬨は蹴ったときの甲高い音と脚に感じた違和感を察し、遊矢の左腕を見る。

「義手…?」

「ああ、そうさ。すごく、痛かったよ…」

手袋を外し、バイオニックアームの左手を見せると同時に、デュエルディスクを展開する。

「フィールド魔法《修練の梁山》、発動!」

勝鬨のデュエルディスクへの音声入力と同時に、無機質な港だった周辺が霧に包まれた山中へと変貌していく。

「どうしても、やるんだな…?だったら、もう容赦はしない!!」

説得することもできただろうが、遊矢にもやらなければならないこと、守らなければならないものがある。

だから、退くことはできない。

「「デュエル!!」」

 

勝鬨

手札5

ライフ4000

 

遊矢

手札5

ライフ4000

 

「ぐううう…自分の、ターン!!自分は手札から永続魔法《梁山の咆哮》を発動!1ターンに1度、自分フィールドにモンスターが存在しない場合、手札から戦士族モンスター1体を特殊召喚できる。ただし、この効果で特殊召喚されるモンスターの攻撃力・守備力は半分になる。自分は手札の《天昇星テンマ》を特殊召喚!!」

勝鬨の背後の木々が砕け散り、それが遊矢を襲う。

そして、その中から飛び出したのは青い馬を模した兜と中国の武人の鎧を身に着けた細長い顔をした青髪の戦士だ。

両腕で身を護る遊矢はその特殊召喚されたモンスターをにらむ。

 

天昇星テンマ レベル5 攻撃2100→1050

 

「このカードの召喚・特殊召喚に成功したとき、自分は手札から戦士族・地属性・レベル5モンスター1体を特殊召喚できる。自分は《地翔星ハヤテ》を特殊召喚」

続けてフィールドに現れたのは白い虎を模した兜と鈍い金色の棍を握る戦士で、先に現れた《天昇星テンマ》と共に、勝鬨の前に立つ。

 

地翔星ハヤテ レベル5 攻撃2100

 

「《ハヤテ》の効果。手札から戦士族・光属性・レベル5モンスター1体を特殊召喚できる。《天融星カイキ》を特殊召喚!」

更に現れる武人。

今度は胴体部分が悪魔の顔を模したつくりをした群青色の甲冑姿で、そのモンスターが先に現れた2体の武人の間に立つ。

 

天融星カイキ レベル5 攻撃2100

 

「《カイキ》の効果。このカードの特殊召喚に成功したとき、自分のライフを500支払い、手札・フィールドのモンスターを素材に戦士族融合モンスター1体を融合召喚する。自分が素材とするのは《テンマ》と《カイキ》!2つの天よ、今ひとつとなって、悠久の覇者たる星と輝け!融合召喚!来い!レベル10!《覇勝星イダテン》!」

前後に三又の穂先がついた槍を手にした、紫の鎧を身に着けた屈強な武人が現れる。

 

覇勝星イダテン レベル10 攻撃3000

 

勝鬨

ライフ4000→3500

 

「《覇勝星イダテン》…」

勝鬨のエースモンスターであり、舞網チャンピオンシップで遊矢を追い詰めたモンスター。

再び現れたそのモンスターの能力は脅威だ。

少しでも弱める手段、止める手段を求める遊矢はアクションカードを探し始める。

「させん!!」

さっそく勝鬨は手ごろな細さの枝を手にし、遊矢に向けて投げ槍のように投擲する。

遊矢は左手を手刀としてその枝を叩き、体への直撃は避けたがその間に近くまで走りこんでいた勝鬨が遊矢の腹部に向けて拳を叩き込む。

「ガァ…!?」

落ちぶれたとはいえ、相手への攻撃のための訓練も積んだ勝鬨の拳は遊矢の肉体にダメージを与え、唾と胃液を吐き出した遊矢はその場にうずくまる。

そして、遊矢が見つけたアクションカードは勝鬨の手に渡る。

「自分は《イダテン》の効果を発動。このカードの融合召喚に成功したとき、デッキから戦士族・レベル5モンスター1体を手札に加える。自分は《ターレット・ウォリアー》を手札に加える。そして、自分はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

勝鬨

手札5→2(アクションカード、《ターレット・ウォリアー》)

ライフ3500

場 覇勝星イダテン レベル10 攻撃3000

  地翔星ハヤテ レベル5 攻撃2100

  梁山の咆哮(永続魔法カード)

  伏せカード1

  

 

遊矢

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「ぐううう…」

「どうした?貴様のターンだ」

倒れている遊矢を木の上から見下ろす勝鬨。

ゆっくりと起き上がる遊矢は勝鬨をにらむと、デッキトップに指をかける。

「俺のターン、ドロー!!」

 

遊矢

手札5→6

 

「俺は手札から魔法カード《螺旋のストライク・バースト》を発動!その効果で俺はデッキもしくはエクストラデッキのレベル7のオッドアイズを手札に加えることができる。俺は《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を手札に加える!更に、俺は手札から《EMサイバース・プロスペクター》を召喚」

VRのようなヘッドギアをつけた探検家衣装の青年が現れるとともに、左腕につけているコンソールの操作を開始する。

 

EMサイバース・プロスペクター レベル4 攻撃1600

 

《サイバース・プロスペクター》の効果。このカードの召喚に成功したとき、お互いのフィールドに存在するカードの枚数以下のレベルを持つEMをデッキから効果を無効にして特殊召喚できる。今、フィールドには5枚のカードがある!よって、レベル5以下のEMを特殊召喚できる。来い、《EMシルバー・クロウ》!」

コンソールから導き出された数字である「4」が彼の目の前に表示され、同時にその隣に渦が出現する。

そして、その中から《EMシルバー・クロウ》が飛び出した。

 

EMシルバー・クロウ レベル4 攻撃1800

 

「そして、俺はレベル4の《サイバース・プロスペクター》と《シルバー・クロウ》でオーバーレイ!漆黒の闇より愚鈍なる力に抗う反逆の牙!今、降臨せよ!エクシーズ召喚!現れろ!ランク4!《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》!」

「《ダーク・リベリオン》…!!」

エクシーズ召喚されたそのモンスターは勝鬨にとっては過去の敗北の象徴と言えるモンスター。

このモンスターの効果と一撃によって敗れ、今この場にいる。

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ランク4 攻撃2500

 

「《ダーク・リベリオン》の効果!オーバーレイユニットを2つ取り除き、相手フィールドのモンスター1体の攻撃力を半分奪う!トリーズン・ディスチャージ!!」

《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》が放つ紫の電撃が《覇勝星イダテン》を拘束する。

その電撃がそのモンスターに宿る力を奪っていき、主である《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》に吸収されていく。

 

覇勝星イダテン レベル10 攻撃3000→1500

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ランク4 攻撃2500→4000

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・EMシルバー・クロウ

・EMサイバース・プロスペクター

 

「更に俺は手札から装備魔法《竜皇の秘宝》を《ダーク・リベリオン》に装備!このカードはドラゴン族専用の装備カードで、装備モンスターの攻撃力を1500アップさせる!」

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ランク4 攻撃4000→5500

 

(《イダテン》には自分のレベル以下の相手モンスターと戦闘を行うダメージ計算時に1度、その相手モンスターの攻撃力をダメージ計算時だけ0にする効果がある。けど、《ダーク・リベリオン》なら…)

あの時、遊矢がデュエルで勝てたのは《覇勝星イダテン》を《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》の効果によって破ったからだ。

そして、今の《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》の攻撃力は5500で、《覇勝星イダテン》の攻撃力は1500。

これから始める攻撃が決まれば、一撃で片が付く。

「バトルだ!《ダーク・リベリオン》で《覇勝星イダテン》を攻撃!反逆のライトニング・ディスオベイ!!」

早々に幕引きとすべく、《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》が動けなくなった《覇勝星イダテン》に向けて、稲妻の牙で襲い掛かる。

牙がそのモンスターを貫いた瞬間、大きな爆発が起こり、遊矢達を爆煙が包んでいく。

「これで、俺の…」

「まだだ!!自分は《梁山の咆哮》の効果発動!自分の戦士族融合モンスターが攻撃対象となったとき、フィールド上のこのカードを墓地へ送ることで、互いのモンスターはその戦闘では破壊されず、戦闘で受ける互いへのダメージも0となる!!」

腹部を貫かれたはずの《覇勝星イダテン》は激しい雄たけびを上げ、なおも死なないそのモンスターに向けてもう一撃浴びせるべく、《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》がいったん離れてから突撃しようと構える。

「下がれ、ダーク・リベリオン。貴様ではこやつは倒せん」

「…そのようですね。遊矢、警戒しなさい。あの男の妬みのこもった憎しみに侵食されないで)

オッドアイズの言葉を聞いたダーク・リベリオンは構えを解き、遊矢のフィールドへ戻る。

「くっ…けれど、まだ俺のターンは終わっていない!俺はスケール4の《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》とスケール8の《オッドアイズ・アークペンデュラム・ドラゴン》でペンデュラムスケールをセッティング!俺はこれで、ターンエンド…。同時に、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》の効果。このカードを破壊して、デッキから攻撃力1500以下のペンデュラムモンスター1体を手札に加える。俺は《オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン》を手札に加える。更に、《オッドアイズ・アークペンデュラム・ドラゴン》のペンデュラム効果発動。1ターンに1度、俺のフィールドの表側表示で存在するオッドアイズが破壊された時、手札・デッキ・墓地からオッドアイズモンスター1体を特殊召喚できる。俺は《オッドアイズ・ウィザード・ドラゴン》をデッキから特殊召喚!」

「自分は《カイキ》の効果を発動!元々の攻撃力とは異なる攻撃力を持つレベル5以上の戦士族モンスターが存在する相手ターンに1度、このカードは墓地から蘇る!」

 

勝鬨

手札2(アクションカード、《ターレット・ウォリアー》)

ライフ3500

場 覇勝星イダテン(《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》の影響下) レベル10 攻撃1500

  地翔星ハヤテ レベル5 攻撃2100

  天融星カイキ レベル5 攻撃2100

  伏せカード1

  

 

遊矢

手札6→4(うち1枚《オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン》)

ライフ4000

場 ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン(《竜皇の秘宝》装備) ランク4 攻撃5500

  オッドアイズ・ウィザード・ドラゴン レベル7 守備2500

  竜皇の秘宝(装備魔法)

  オッドアイズ・アークペンデュラム・ドラゴン(赤) ペンデュラムスケール8

 

上級モンスター2体を出すことができたとはいえ、《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》による《覇勝星イダテン》の戦闘破壊に失敗してしまった。

攻撃力が元に戻ることはないが、勝鬨の手札には《ターレット・ウォリアー》がある。

(《ターレット・ウォリアー》は自分フィールドの戦士族モンスター1体をリリースすることで特殊召喚できるモンスター…。そして、そのモンスターの元々の攻撃力を加える。でも、それでも攻撃力は4200になるくらいだ。攻撃力5500の《ダーク・リベリオン》なら…)

「油断してはなりませんよ、遊矢。彼の心の闇…真実なき光を妬む闇を侮ってはなりません」

「真実なき…光?」

「自分の…ターン!!」

 

勝鬨

手札2→3

 

「このカードで…貴様を、貴様を殺す!!《カイキ》の効果発動!ライフを500支払い、《カイキ》と《イダテン》を融合!!」

「《イダテン》を素材に更に融合召喚だって!?」

「天にとけし者よ、悠久の覇者よ、重ねし力で天下を取らん!融合召喚!来い、レベル12!《覇道星シュラ》!うおおおおおおお!!」

勝鬨の叫びと共に、黒いオーラと化した《天融星カイキ》を取り込んだ《覇勝星イダテン》が苦しみだす。

鎧が徐々に暗い緑と黒をベースとした色合いに変わっていき、赤く染まった瞳を《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》に向ける。

肉体も余計なものを切り捨てたほっそりとしたものに変わったが、放つプレッシャーは以前以上のものとなっていた。

 

覇道星シュラ レベル12 攻撃0

 

勝鬨

ライフ3500→3000

 

「攻撃力0…一体、どんな効果を持っているんだ!?」

「そう慌てるな…。貴様を殺すにはまだ足りない…。手札からアクション魔法《補給》を発動。デッキからカードを1枚ドローする…。そして、自分は手札から魔法カード《寄生融合-パラサイト・フュージョン》を発動!手札の《パラサイト・フュージョナー》を墓地へ送り…手札・フィールドのモンスターを素材に融合召喚を行う!」

「また融合召喚!?《シュラ》をさらに融合素材にして…!?」

遊矢の言葉を鼻で笑う勝鬨の背後から赤いオタマジャクシのような寄生虫が飛び出してくる。

そのモンスターは遊矢の《オッドアイズ・ウィザード・ドラゴン》の頭部に飛びつくと、6本の鉄でできた脚で自らを固定させ、尻尾を頭部に突き刺した。

苦しんだ《オッドアイズ・ウィザード・ドラゴン》だが、目を虚ろにした状態で宙を舞い、上空の融合の渦の中へ《地翔星ハヤテ》と共に取り込まれていく。

「そんな!?《オッドアイズ・ウィザード・ドラゴン》が…どうして!?」

「《パラサイト・フュージョン》のもう1つの効果…。相手フィールドのモンスター1体を《パラサイト・フュージョナー》が寄生し、融合素材とする。そして、その相手モンスターは融合モンスターカードにカード名が記された融合素材モンスター1体の代わりにできる!!地を飛ぶ星よ、内なる声を聞き、新たな力を呼び覚ませ!融合召喚!現れろ、レベル8!《超魔導騎士-ブラック・キャバルリー》!!」

漆黒の馬が渦の中から飛び出し、その背中に乗っているのは《ブラック・マジシャン》を彷彿とさせる鎧姿で、両手に黒い槍を手にした騎士。

だが、融合素材となった要因である《パラサイト・フュージョナー》の影響を受けているためなのか、ところどころにそのモンスターの尾が生えていた。

 

超魔導騎士-ブラック・キャバルリー レベル8 攻撃2800

 

自分のモンスターを素材にされたこともそうだが、遊矢は《オッドアイズ・ウィザード・ドラゴン》をこのような形で除去されたことに苦虫をかみつぶす。

(《オッドアイズ・ウィザード・ドラゴン》は相手によって破壊されて墓地へ送られた時、デッキ・墓地から別のオッドアイズを特殊召喚して、更にデッキから《螺旋のストライク・バースト》1枚を手札に加えることのできるカード…けど、融合素材にされたなら、その効果は不発…。それに…)

「ふふふ…どうだ?榊遊矢!まんまと己のモンスターを奪われた感想は!!最も、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を奪いたかったがなぁ!!」

「くっ…勝鬨…!!」

「そうだ!その顔だ!苦悩と苦痛!貴様を引きずり込んだうえで、殺してやるぅ!!《ブラック・キャバルリー》の攻撃力はお互いのフィールド・墓地の魔法・罠カードの数×100アップする!今、フィールド・墓地に存在する魔法・罠カードは7枚!!」

 

超魔導騎士-ブラック・キャバルリー レベル8 攻撃2800→3500

 

「バトルフェイズと同時に、俺は《シュラ》の効果を発動!自分・相手バトルフェイズ時に1度、相手フィールドのモンスターすべての攻撃力を0にする!!」

「何!?」

《覇道星シュラ》の激しい咆哮が衝撃波となり、《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》が大きく吹き飛ばされて木々をなぎ倒しながらあおむけに倒れる。

まだ倒れていない木をつかんでどうにか起き上がったものの、その肉体はただ咆哮を受けただけとは思えないほどに傷ついていた。

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ランク4 攻撃5500→0

 

「ダーク・リベリオン!?」

傷だらけになったダーク・リベリオンに駆け寄ろうとする遊矢だが、彼女が右手を伸ばして制止させる。

満身創痍の彼女の姿に勝鬨は歓喜の笑みを浮かべる。

もうすぐ、屈辱を晴らしたうえで遊矢を殺すことができる。

その後どうなるかなど知ったことではない。

ただ、彼を殺すことができるならなんでもいい。

「バトル!!《覇道星シュラ》で《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》を攻撃!そして、同時に《シュラ》の効果!!モンスター同士がバトルを行うダメージ計算時に1度、互いのモンスターの攻撃力はそのダメージ計算時のみ、自らのレベル×200アップする。《シュラ》のレベルは12…だが、貴様の《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》にはレベルはない…。よって、攻撃力は0のままだ!!」

 

覇道星シュラ レベル12 攻撃0→2400(ダメージ計算時のみ)

 

「更にぃ!!」

追い討ちをかけるべく、枝にかかっているアクションカードを跳躍して手にし、着地と同時に発動する。

「アクション魔法《痛撃》を発動!!ダメージ計算時のみ、自分の攻撃モンスターの攻撃力を1800アップさせる!!」

 

覇道星シュラ レベル12 攻撃2400→4200(ダメージ計算時のみ)

 

先ほどのターンと一転して、今度は遊矢が1ショットキルされる展開に突入する。

「くっ!!俺は罠カード《ブレイクスルー・スキル》を発動!!相手フィールドのモンスター1体の効果をターン終了時まで無効に…」

「《ブラック・キャバルリー》の効果発動。フィールド上のカードを対象とするカード効果が発動された時、手札1枚を墓地へ送ることで、その発動を無効にし、破壊する」

《超魔導騎士-ブラック・キャバルリー》が左手に握る槍を投げつけ、遊矢が発動したばかりの《ブレイクスルー・スキル》を貫き、破壊する。

そして、《覇道星シュラ》はその手に握っている槍でボロボロの《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》を何度も何度もめった刺しにする。

恨みのこもった槍を何度も受けた彼女は消滅する。

 

手札から墓地へ送られたカード

・ターレット・ウォリアー

 

「これで…4200の戦闘ダメージが榊遊矢、貴様にぃ!!」

「俺はアクション魔法《エナジー・メイト》を発動!俺のライフを500回復させる!!」

《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》に注意が向けられている間に手に入れることのできたアクションカード。

それが攻撃の余波が向かう直前に遊矢に一時しのぎできるだけの力を与えた。

だが、すぐに余波が及び、遊矢は大きく吹き飛ばされて背後の気に激突する。

「うわ、あああ…!!」

血を吐いた遊矢はたたきつけられるように地面に倒れる。

 

遊矢

ライフ4000→4500→300

 

かろうじてライフを残した遊矢は起き上がろうとするが、上げようとする顔が再び地面にぶつかり、味のない草と土が口に入る。

後頭部から伝わる痛みから、明らかに勝鬨に踏みつけられていることが分かる。

「はあ、はあ…エクシーズ素材になった《サイバース・プロスペクター》の効果…。このカードをエクシーズ素材としてエクシーズ召喚されたドラゴン族モンスターが戦闘・効果で破壊された時…デッキからカードを1枚ドローする…」

「それがどうした!?これで…貴様にはもう身を護る手段はない!!もう貴様は俺に勝てない!!あとは…《ブラック・キャバルリー》が攻撃することで貴様のライフは尽き、貴様は死ぬ!!貴様も味わえ!!俺の闇を!!俺の受けた屈辱を!!思い知れ、思い知れ!!思い知れ思い知れ思い知れぇ!!」

何度も踏みつけ、笑いだす勝鬨。

血を流しながら受け続ける遊矢は奥歯をかみしめる。

破門され、屈辱と共に生きてきたことへの責任があることは分かる。

デュエルの結果、勝敗の結果となり、それが勝鬨を苦しめる結果となったのなら、非は笑顔を与えることのできなかった自分にもあるかもしれない。

だが、それを晴らすためにデュエルを貶め、そして自分を殺す道具にしていることが遊矢には許せない。

そうなった時点で、もはや勝鬨はデュエリストではない。

「思い…知るかよ!!俺は手札の《ヴァレット・リチャージャー》の効果発動!!」

「何!?」

遊矢の効果発動宣言と同時に、頭部に弾丸がついているかのような赤い小さなドラゴンが飛び出し、勝鬨に向けて突撃する。

回避のためにその場を離れると、自由になった遊矢は起き上がり、額から流れる血を左すそで拭う。

「《ヴァレット・リチャージャー》…だと!?」

カテゴリーもそうだが、明らかに兵器をモチーフとしてデザインのモンスターで、それは勝鬨のイメージの中の遊矢が使うことがないはずのカードだ。

「《ヴァレット・リチャージャー》はエクストラデッキから特殊召喚された自分の闇属性モンスターが戦闘・効果で破壊された時、このカードを手札・フィールドから墓地へ送ることで、そのモンスターと元々の名前の異なる闇属性モンスター1体を墓地から特殊召喚できる!俺は…《オッドアイズ・ウィザード・ドラゴン》を再び特殊召喚する!!」

 

オッドアイズ・ウィザード・ドラゴン レベル7 守備2500

 

「…《エナジー・メイト》が墓地へ送られたことで、《キャバルリー》の攻撃力はアップする」

 

超魔導騎士-ブラック・キャバルリー レベル8 攻撃3500→3600

 

「更に《ブラック・キャバルリー》は守備モンスターを攻撃したとき、貫通ダメージを与える。たとえ《オッドアイズ・ウィザード・ドラゴン》を守備表示で召喚したとしても、無意味!!《ブラック・キャバルリー》で《オッドアイズ・ウィザード・ドラゴン》を攻…何!?」

 

超魔導騎士-ブラック・キャバルリー レベル8 攻撃3600→3700

 

「なぜだ!?なぜ《ブラック・キャバルリー》の攻撃力がさらにアップしている!?」

「はあ、はあ…発動、したんだ…アクション魔法《大脱出》を!これで、バトルフェイズは終了した」

遊矢がデュエルディスクに入れた、血で濡れたアクションカード。

ちょうど倒れていたところにあったことが、遊矢に命拾いさせた。

「ちぃ…ターンエンド!!」

 

勝鬨

手札3→0

ライフ3000

場 覇道星シュラ レベル12 攻撃0

  超魔導騎士-ブラック・キャバルリー レベル8 攻撃3700

  伏せカード1

  

 

遊矢

手札4→5(うち1枚《オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン》)

ライフ300

場 オッドアイズ・ウィザード・ドラゴン レベル7 守備2500

  オッドアイズ・アークペンデュラム・ドラゴン(赤) ペンデュラムスケール8

 

どうにか敗北を免れた遊矢だが、残りライフは300で、勝鬨のフィールドには《覇道星シュラ》と《超魔導騎士-ブラック・キャバルリー》がいる。

特に《覇道星シュラ》が遊矢にとっては脅威で、どうにかそのモンスターを取り除かなければ、バトルフェイズ中遊矢のすべてのモンスターが一方的にそのモンスターにやられることになる。

また、守備表示で出したとしても、貫通効果を持つ《超魔導騎士-ブラック・キャバルリー》の餌食になる。

「(でも…負けるわけにはいかない!邪魔をするというなら、乗り越えるだけだ!!)俺のターン、ドロー!!」

 

遊矢

手札5→6

 

「俺は墓地の《竜皇の秘宝》の効果を発動!俺のフィールドにレベル7のドラゴン族モンスターが存在するとき、墓地のこのカードを除外することで、俺の墓地のドラゴン族エクシーズモンスター1体を効果を無効にして、特殊召喚できる!甦れ、《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》!!」

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ランク4 攻撃2500

 

「そして、この効果で特殊召喚されたモンスターはターン終了時までランクが7になり、そのランクと同じ数値のレベルのモンスターとしてエクシーズ素材にすることができる」

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ランク4→7 攻撃2500

 

「ランクを操作し、更なるエクシーズ素材にしたからといっても、レベルがないことは変わらん!《覇道星シュラ》の餌食になるだけだ!!」

「いや、これでいい!倒して見せる!《覇道星シュラ》を!俺はレベル7の《オッドアイズ・ウィザード・ドラゴン》と《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》でオーバーレイ!!」

遊矢の脳裏に、シンクロ次元でクロウとのデュエルの際に召喚したズァークの片鱗を思い浮かべる。

あれ以来、遊矢のデッキに眠っていたそのカードを今度は遊矢本人の意思で召喚する。

「二色の眼の竜よ。深き闇より蘇り、怒りの炎で地上の全てを焼き払え!エクシーズ召喚!いでよ、ランク7!災い呼ぶ烈火の竜、《覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン》!」

 

覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン ランク7 攻撃3000

 

「何だ…この、ドラゴンは…!?」

これまた遊矢らしからぬモンスターであり、激しい怒りの炎でその身を包んでいるように見えた。

光の中にいるはずの遊矢がなぜそのようなカードが使えるのか?

そのかすかな疑問をそのドラゴンの効果が焼き尽くす。

「《オッドアイズ・レイジング・ドラゴン》の効果!エクシーズモンスターを素材にエクシーズ召喚されたこのカードは1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、相手フィールドのすべてのカードを破壊し、破壊したカード1枚につき、攻撃力を200アップさせる!!」

「何!?」

「焼き尽くせ!!デストロイ・ギガ・フレア!!!」

オーバーレイユニットを取り込んだ《覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン》が激しく咆哮すると同時に全身から炎を噴出させる。

その炎は木々を業火に包むとともに《超魔導騎士-ブラック・キャバルリー》を消滅させ、《覇道星シュラ》をも焼き尽くそうとする。

「くぅ…自分は罠カード《メタル・コート》を発動!このカードを《覇道星シュラ》に装備し、装備モンスターはカード効果では破壊されない!!」

「破壊するカードは《ブラック・キャバルリー》と《メタル・コート》!よって、《オッドアイズ・レイジング・ドラゴン》の攻撃力は400アップする!!」

 

覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン ランク7 攻撃3000→3400

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・オッドアイズ・ウィザード・ドラゴン

 

「それがどうした!?いかに攻撃力があろうともエクシーズモンスターである以上、レベルがない!《覇道星シュラ》の前では無力!!」

「甘いぞ、勝鬨!!俺は手札から《ヴァレット・シンクロン》を召喚!」

「何!?またヴァレットだと…榊遊矢!?エンタメデュエルはどうした!?貴様の生ぬるいデュエルはどうした!?」

今度は弾丸つきの青いドラゴンが出現する。

確かに今の遊矢のデッキはオッドアイズ中心だが、いつもなら使っているはずのEMの姿がない。

勝鬨が憎悪するエンタメデュエルの象徴がいまだにこのデュエルでは姿を見せていない。

 

ヴァレット・シンクロン レベル1 攻撃0(チューナー)

 

「《ヴァレット・シンクロン》の効果!このカードの召喚に成功したとき、墓地に存在するレベル5以上の闇属性・ドラゴン族モンスター1体を効果を無効にして、守備表示で特殊召喚できる。この効果で特殊召喚されたモンスターはターン終了時に破壊される!もう1度現れろ、《オッドアイズ・ウィザード・ドラゴン》!!」

 

オッドアイズ・ウィザード・ドラゴン レベル7 守備2500

 

「そして、俺はレベル7の《オッドアイズ・ウィザード・ドラゴン》にレベル1の《ヴァレット・シンクロン》をチューニング!!王者の咆哮、今天地を揺るがす。紅蓮の炎と共に、覇者の力宿して今こそ現れろ!シンクロ召喚!王者の魂、《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》!!」

「王者…覇者…!?」

ジャックから借り受けたドラゴンが再び遊矢に力を貸すべく姿を現す。

ランサーズとして戦ってきた遊矢をわずかな記録でしか見ていない勝鬨にはわからないことだ。

 

レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト レベル8 攻撃3000

 

「《スカーライト》の効果発動!1ターンに1度、《スカーライト》以外の、このカードよりも攻撃力の低い特殊召喚された効果モンスターをすべて破壊し、破壊したモンスター1体につき500のダメージを与える!!」

「何!?」

「《覇道星シュラ》を焼き尽くせ!!アブソリュート・パワー・フレイム!!」

《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》が燃え上がる森の中で拳を地面にたたきつける。

そこを中心に地割れが発生するとともにマグマがあふれ出し、それが生み出す灼熱の業火に焼かれた《覇道星シュラ》は消滅する。

「ぐおおおお!!おのれぇ!!だが、融合召喚された《シュラ》が相手によって破壊された時、エクストラデッキに存在する《覇勝星イダテン》を融合召喚扱いで特殊召喚できる!現れろ、《覇勝星イダテン》!!」

 

覇勝星イダテン レベル10 攻撃3000

 

勝鬨

ライフ3000→2500

 

再び勝鬨が召喚した《覇勝星イダテン》。

だが、攻撃力3000では《覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン》には及ばない。

そして、遊矢の墓地にはあのカードがある。

「俺は墓地の《ブレイクスルー・スキル》の効果発動…。自分のターンに墓地のこのカードを除外することで、相手の効果モンスター1体の効果をターン終了時まで無効にする」

特殊召喚されたばかりの《覇勝星イダテン》が《ブレイクスルー・スキル》で縛られ、効果のすべてを奪われる。

それでも、逆転の手をつかむべく、勝鬨はアクションカードを探そうとする。

燃え上がる炎の中、そしてそれが制限なしのリアルソリッドビジョンで生み出されているものであれば、たとえ訓練している勝鬨であってもただでは済まない。

だが、どんなに火傷を負っても、たとえ死ぬことになったとしても、勝鬨は再びの敗北を認めるわけにはいかなかった。

「勝鬨…次元を超えても、梁山泊塾を出ても…お前は変われなかったんだな」

「ふざけるな!ふざけるな!!貴様のせいだ!!貴様のせいで、自分は…自分はぁ!!」

「いい加減にしろよ!!勝つことだけに固執して、それ以外のすべてを捨てるお前は…俺がいなくても、同じなんだよ!!《オッドアイズ・レイジング・ドラゴン》はエクシーズモンスターをオーバーレイユニットとしている場合、1ターンに2度攻撃することができる!!行け、《オッドアイズ・レイジング・ドラゴン》!!」

《覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン》が激しい咆哮と共に紅蓮の炎を吐き出す。

更なる獄炎に包まれた《覇勝星イダテン》は勝利の星をつかむことができないまま灰となり、炎は勝鬨をも飲み込んでいく。

「貴様だけは!貴様だけは!!殺してやる!呪ってやる!!榊遊矢!!榊遊矢ぁぁぁ!!!」

 

勝鬨

ライフ3000→2600→0

 

 

梁山の咆哮

永続魔法カード

(1):1ターンに1度、自分フィールドにモンスターが存在しない場合に発動できる。手札から戦士族モンスター1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの攻撃力・守備力は半分となる。

(2):自分フィールドの戦士族融合モンスターが相手モンスターの攻撃対象となったとき、自分フィールドに存在するこのカードを墓地へ送ることで発動できる。互いのモンスターはその戦闘では破壊されず、戦闘で受けるお互いへのダメージは0となる。

 

EMサイバース・プロスペクター

レベル4 攻撃1600 守備1200 効果 闇属性 サイバース族

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードの召喚に成功したとき、自分のデッキに存在する、フィールド上に存在するカードの枚数以下の数値のレベルを持つ「EM」モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。

(2):このカードを素材としてS召喚・融合召喚・X召喚・リンク召喚されたドラゴン族モンスターは以下の効果を得る。

●このカードが戦闘・効果によって破壊されたときに発動する。自分はデッキからカードを1枚ドローする。

 

竜皇の秘宝

装備魔法カード

ドラゴン族のみ装備可能。

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):装備モンスターの攻撃力が1500アップする。

(2):このカードが墓地に存在し、自分フィールドにレベル7のドラゴン族モンスターが存在する場合、このカードを除外し、自分の墓地に存在するドラゴン族Xモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。また、ターン終了時までそのモンスターのランクは7となり、そのランクと同じ数値のレベルのモンスターとしてX召喚の素材にできる。

 

補給

アクション魔法カード

(1):自分はデッキからカードを1枚ドローする。

 

寄生融合-パラサイト・フュージョン

通常魔法カード

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分の手札に存在する「パラサイト・フュージョナー」1体を墓地へ捨てて発動できる。自分の手札・お互いのフィールドから、融合モンスターによって決められた融合素材モンスターを、相手モンスター1体を含めた状態で墓地へ送り、その融合モンスター1体をEXデッキから特殊召喚する。その際、素材となる相手モンスターは融合モンスターカードにカード名が記された融合素材モンスター1体の代わりにできる。

 

痛撃

アクション魔法カード

(1):自分モンスターが攻撃するダメージ計算時にのみ発動できる。ダメージ計算時のみ、そのモンスターの攻撃力が1800アップする。

 

リアルソリッドビジョンが消え、港の扉が開かれていく。

敗北した勝鬨はうつぶせに倒れていて、体からはデュエルによるダメージの影響からか、煙が出ている。

「…勝鬨、俺の言った言葉、よく考えてくれよ」

気を失っているであろう勝鬨にその言葉が届いているかは分からない。

だが、今の遊矢にはそのことを気にかけている場合ではない。

扉が開いた以上は進むだけ。

作戦では、遊矢は遊撃兼斥候として先へ進む必要がある。

「こちら遊矢、港の扉は開いた。俺は先に進む」

黒咲の元へ向かったデニスのことは気になるが、黒咲であれば負けることはない。

彼を倒して、追いかけてくると信じて、遊矢は先へ進んだ。

 

「ふん…雑魚どもが」

3人がかりで襲い掛かってきたにもかかわらず、1ポイントもこちらのライフを減らすことができないまま倒れたデュエル戦士達を黒咲は見下すように見る。

彼らをカード化することはせず、拘束具をつけたうえで先へ進もうとするが、何者かの気配を感じたことで足を止める。

「デニス・マックフィールド…。いつまで隠れている?」

「はは…やっぱり、君に対しては隠れるなんて意味がないかもね。けど、甘いんじゃないかな?倒したデュエル戦士をカードにしないなんて」

物陰から出てきたデニスは拘束されただけのデュエル戦士を見つめる。

シンクロ次元では、デニスがカード化される可能性があったが、されたのは腹への蹴りだった。

「俺はデュエル戦士ではない。デュエリストだ。一緒にするな。特に…貴様とはな」

「はは…言ってくれるね。君のせいで、僕もいろいろと事情ができてしまったよ…だから」

デニスがデュエルディスクを展開し、構えた状態で黒咲をにらむ。

「いいだろう…。もう1度貴様を叩き潰すだけだ」

デニスが手加減して勝てる相手ではないため、少なくとも1度は勝利している黒咲が戦った方が勝率が高く、彼を引き付けることはできる。

互いにカードを引くとともに、アクションフィールドが自動的に展開されていく。

「アクションフィールド、《ヴァイキング・フィヨルド》発動」

吹雪が発生し、港が9世紀ごろのノルウェーのフィヨルドのような光景へと変貌していく。

「「デュエル!!」」

 

デニス

手札5

ライフ4000

 

黒咲

手札5

ライフ4000



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第119話 迷いし道化師

「よし…遊矢が道を開いた。突入できるわ!」

「港の掌握は完了したか?」

確かに道は開けたが、まだそれは港にいるデュエル戦士が全滅したとは限らない。

そんな零児の警戒心が当たっていて、イージス艦のカメラでとらえた港の光景の中には、今にもデュエルを開始しようとしているデニスと黒咲の姿がある。

「デニス・マックフィールド…。やはり、彼もいるか」

 

デニス

手札5

ライフ4000

 

 

黒咲

手札5

ライフ4000

 

「僕の先攻だ。まずは…これだね。僕は手札から魔法カード《魔法族の里》を発動」

発動と共に、雪と氷とコンクリートに包まれていたはずのフィールドに次々と木が生えてくる。

それらの木々にはホタルのような淡い光がいくつも漏れ出ている。

その魔法カードの発動に黒咲は顔をしかめる。

(剣崎が言っていた…あいつともし、デュエルをするとき、気を付けるべきカードを!!)

その1枚がまさに《魔法族の里》で、デニスにとっては相性のいいカードで、黒咲には間違いなく刺さる。

「このカードは僕のフィールドにのみ魔法使い族モンスターが存在する場合、君は魔法カードを発動できなくなる。そして、僕の場合は自分フィールドに魔法使い族が存在しない場合、魔法カードを発動できない。最も、君のデッキには魔法使い族はいない。だから…僕のフィールドに魔法使い族モンスターがいる限り、君は魔法カードを発動できない。厄介なRUMもね」

「ほざいていろ…!ならば、貴様のフィールドの魔法使い族モンスターを全滅させるか、その永続魔法扱いとなっているカードを破壊するまでだ!」

「そうだね。それができたらいいけど、そうはいかない。僕は手札から《Emトリック・クラウン》を召喚」

 

Emトリック・クラウン レベル4 攻撃1100

 

「更に僕はもう1枚の永続魔法《古文書の結界》を発動。これが存在する限り、このカード以外のお互いのフィールドの永続魔法を戦闘・効果で破壊することができなくなるのさ」

「くっ…」

黒咲のデッキにはRUMだけでなく、ペンデュラムモンスターも存在し、しかも今はアクションデュエルだ。

実質、ペンデュラム召喚もアクション魔法も封じられたことになる。

「せっかくのリターンマッチなんだから…君に対しては是が非でも勝たせてもらうよ。僕にだって、プライドはある」

「ふん…のこのこ生き恥をさらして戻った貴様に、そんなプライドがあるとは思えんが」

いや、そもそもデュエル戦士に対してデュエリストのプライドを解くなど馬の耳に念仏だろう。

それがひとかけらでもあるというなら、こんなバカげた戦争などしない。

「好きに言えばいいさ。そういっていられるのも、今の間だけなんだから。このカードは僕のフィールドに魔法・罠カードが2枚以上表側表示で存在する場合、手札から特殊召喚できる。《Emセカンド・ディーラー》を特殊召喚」

虹色の縁をした片淵眼鏡をかけた、燕尾服で白髪のディーラーが手持ちのトランプをシャッフルしながらフィールドに現れる。

 

Emセカンド・ディーラー レベル4 攻撃1000

 

「そして、このカードの召喚・特殊召喚に成功したとき、デッキからEm1体を選択し、裏向きの状態で除外する。そして、次のターンのドローフェイズ時に通常のドローの代わりに僕はこの効果で除外したカード1枚を手札に加えることができる」

「セカンドディールか、貴様らしいな」

「…そうだね、僕もそう思うよ」

マジックの仕込みのテクニックとして認められているその技術は元々はギャンブルのイカサマのためのもの。

卑怯なことをしている自覚の有るデニスには黒咲の言葉を否定できない。

だが、それが敗北につながるわけではない。

「僕はレベル4の《セカンド・ディーラー》と《トリック・クラウン》でオーバーレイ!ショーマストゴーオン!!天空の奇術師よ 華やかに舞台を駆け巡れ!エクシーズ召喚!現れろ!ランク4!《Emトラピーズ・マジシャン》!」

 

Emトラピーズ・マジシャン ランク4 攻撃2500

 

「僕はカードを1枚伏せて、ターンエンドだ」

 

デニス

手札5→0

ライフ4000

場 Emトラピーズ・マジシャン(オーバーレイユニット2) ランク4 攻撃2500

  古文書の結界(永続魔法)

  魔法族の里(永続魔法扱い)

  伏せカード1

 

 

黒咲

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「俺の…ターン!!」

 

黒咲

手札5→6

 

「俺は手札から《RR-バニシング・レイニアス》を召喚!」

 

RR-バニシング・レイニアス レベル4 攻撃1300

 

「そして、《バニシング・レイニアス》の効果。このカードの召喚・特殊召喚に成功したターンに1度だけ、手札のレベル4以下のRR1体を特殊召喚できる。俺はもう1枚の《バニシング・レイニアス》を特殊召喚!」

 

RR-バニシング・レイニアス レベル4 攻撃1300

 

「そして、ここから2体の《バニシング・レイニアス》を素材に《フォース・ストリクス》をエクシーズ召喚…するつもりなんだろう?じゃあ、こういう趣向はどうだい?罠カード《次元障壁》を発動!僕がこれから、儀式モンスター、融合モンスター、シンクロモンスター、エクシーズモンスター、ペンデュラムモンスターの中から1つ、種類を宣言する。宣言した種類のモンスターをこのターン、僕たちは特殊召喚することができず、しかも効果は無効化される。僕が宣言するのは当然…エクシーズモンスターだ」

「ちぃ…!!」

先攻1ターン目に続き、後攻でも黒咲のここからの動きを封じてきた。

おまけにデニスのフィールドには《Emトラピーズ・マジシャン》が存在する。

このモンスターはオーバーレイユニットを1つ取り除くことで、このカード以外のフィールド上のモンスターに2回攻撃の権利を与えることができる。

仮に攻撃力2100以上のモンスターの召喚に成功し、そのモンスターに効果を使われた場合、2体の一斉攻撃で黒咲のライフは尽きる。

今のデニスのデッキはとにかく黒咲の動きを封じる、アンチ黒咲デッキといえる。

「さあ、今の君は魔法カードを使うことも、エクシーズ召喚もすることはできない。どうするのかな…?」

「…俺は、カードを1枚伏せて、ターンエンドだ」

 

デニス

手札0

ライフ4000

場 Emトラピーズ・マジシャン(オーバーレイユニット2) ランク4 攻撃2500

  古文書の結界(永続魔法)

  魔法族の里(永続魔法扱い)

 

 

黒咲

手札6→3

ライフ4000

場 RR-バニシング・レイニアス×2 レベル4 攻撃1300

  伏せカード1

 

「拍子抜けだね。たった2枚のカードで動きが封じられてしまうなんて。その程度で妹を助けられるのかな…?僕のターン、ドロー」

 

デニス

手札0→1

 

「おっと、これはラッキーだ」

ドローしたと同時に、木に引っかかっているアクションカードを見つけたデニスはそれをつかむ。

「僕はアクション魔法《エクストラ・ドロー》を発動!僕のフィールドに存在するモンスターがエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターだけの場合、デッキからカードを1枚ドローする!へえ…これはいい。僕は手札から《Emダブル・ジャグラー》を召喚」

 

Emダブル・ジャグラー レベル4 攻撃1200

 

「《ダブル・ジャグラー》の効果。このカードを除外して、僕のフィールドの魔法使い族エクシーズモンスター1体は1度のバトルフェイズ中に2回攻撃できるようになる。更に、その対象にしたカードがEmの場合、僕はデッキからカードを1枚ドローする」

《Emダブル・ジャグラー》から受け取った2つのボールを取り込み、紫に染まる《Emトラピーズ・マジシャン》。

デニスが辛酸をなめたあのフレンドシップカップと同じ姿となった相棒に笑みを見せる。

「どうやら、《トラピーズ・マジシャン》もあの時のお返しがしたくてたまらないみたいだ。僕は手札から装備魔法《トラピーズ・ロッド》を《トラピーズ・マジシャン》に装備!このカードは魔法使い族エクシーズモンスターにのみ装備出来て、装備モンスターが戦闘で相手モンスターを破壊したとき、デッキからカードを1枚ドローする」

《Emトラピーズ・マジシャン》の手に自分の身長と同じくらいの長さで、両端に黄色い球体がついた杖が出現する。

それを握った瞬間、2つの球体が杖から離れて《Emトラピーズ・マジシャン》の周囲を旋回する。

「さあ、バトルだ!《トラピーズ・マジシャン》で《バニシング・レイニアス》を攻撃!!」

《Emトラピーズ・マジシャン》の周囲に浮かんでいる球体の1つが杖の動きに従って旋回し、その後で《RR-バニシング・レイニアス》に向けて飛んでいく。

球体は《RR-バニシング・レイニアス》の胴体を貫き、爆散させると同時に黒咲を襲う。

「ぐっ…!!」

球体を受けた黒咲は吹き飛ばされるが、どうにか転倒することなく、両足と右手で着地する。

 

黒咲

ライフ4000→2800

 

「そして、《トラピーズ・ロッド》の効果によって、僕はデッキからカードを1枚ドローする。そして、2回目の攻撃だ!《トラピーズ・マジシャン》!」

黒咲を攻撃した球体が再び《トラピーズ・ロッド》の力によって制御されて浮かび、今度は真上から《RR-バニシング・レイニアス》に向けて落下してくる。

頭にそれが直撃して消滅し、地面にぶつかると同時に砕けた氷のつぶれが黒咲を襲う。

「ぐうう…!!」

 

黒咲

ライフ2800→1600

 

「更に僕は《トラピーズ・ロッド》の効果でドローだ。さすがに魔法カードなしでは厳しいかな…?」

「罠発動!《ショック・ドロー》!俺がこのターン、受けたダメージの合計1000ごとに1枚、デッキからカードをドローする…」

 

黒咲

手札3→5

 

「ふうん、罠カードか。《魔法族の里》の効果の範囲外だけど…その2枚のカードで何ができるんだろうね…?僕はこれで、ターンエンドだ」

 

デニス

手札1→2

ライフ4000

場 Emトラピーズ・マジシャン(オーバーレイユニット2 《Emダブル・ジャグラー》の影響下 《トラピーズ・ロッド》装備) ランク4 攻撃2500

  トラピーズ・ロッド(装備魔法)

  古文書の結界(永続魔法)

  魔法族の里(永続魔法扱い)

 

 

黒咲

手札5

ライフ1600

場 なし

 

フィールドからカードがなくなり、ライフも大幅に削られた。

アクションカードにも、RUMにも頼れない黒咲はまさに絶体絶命。

(だが…それがどうした!?)

エクシーズ次元での修羅場と比べれば、大したことはないと強がる。

瑠璃を救うため、アカデミアに来た以上はこの程度の機器は覚悟の上。

「俺の…ターン!!」

 

黒咲

手札5→6

 

「俺は手札から《RR-トリビュート・レイニアス》を召喚!」

 

RR-トリビュート・レイニアス レベル4 攻撃1800

 

「このカードの召喚・特殊召喚に成功したターンのメインフェイズ時、俺はデッキからRRカード1枚を墓地へ送る」

 

デッキから墓地へ送ったカード

・RR-ミミクリー・レイニアス

 

「墓地へ送られた《ミミクリー・レイニアス》の効果。墓地のこのカードを除外することで、デッキからRRカード1枚を手札に加える。俺は《ファジー・レイニアス》を手札に加える。そして、《ファジー・レイニアス》は俺のフィールドに《ファジー・レイニアス》以外のRRが存在する場合、手札から特殊召喚できる」

 

RR-ファジー・レイニアス レベル4 攻撃500

 

「いくぞ!俺はレベル4の《トリビュート・レイニアス》と《ファジー・レイニアス》でオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろ、ランク4!《零鳥獣シルフィーネ》!」

黒咲のこれまで使ったRRとは大きく異なり、青い氷のような色をした細い女性的な体つきで、青い装甲でできた翼をつけた鳥人がオーバーレイネットワークの中から飛び降りる。

 

零鳥獣シルフィーネ ランク4 攻撃2000

 

「《シルフィーネ》?《フォース・ストリクス》じゃない??」

「そうだ。だが、この効果で貴様の守りを突破する!《シルフィーネ》の効果発動!オーバーレイユニットを1つ取り除き、相手フィールドに表側表示で存在するすべてのカードの効果を次の俺のターンのスタンバイフェイズ時まで無効にする!そして、《シルフィーネ》の攻撃力はその効果を受けたカード1枚につき300アップする!」

オーバーレイユニットを宿した《零鳥獣シルフィーネ》が両翼から吹雪をデニス達に向けて放つ。

吹雪を受けた魔力の木が氷漬けになり、《Emトラピーズ・マジシャン》は寒さで体を震わせ、鼻水を垂れ流し始めていた。

「くうう、寒い!《魔法族の里》と《古文書の結界》の効果もなくなっちゃうよぉ!!」

 

零鳥獣シルフィーネ ランク4 攻撃2000→3200

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・RR-ファジー・レイニアス

 

「そして、《ファジー・レイニアス》の効果。このカードが墓地へ送られた時、デッキから《ファジー・レイニアス》を1枚手札に加えることができる。更に俺は魔法カード《オーバーレイ・コンバート》を発動!俺のフィールドのモンスター1体のオーバーレイユニットを1つ取り除き、そのモンスターと同じランクのエクシーズモンスター1体をエクシーズ召喚扱いで特殊召喚する。俺は《シルフィーネ》のオーバーレイユニットを取り除き、エクストラデッキから《RR-ブレード・バーナー・ファルコン》を特殊召喚する!」

 

RR-ブレード・バーナー・ファルコン ランク4 攻撃1000

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・RR-トリビュート・レイニアス

 

「まだだ!更に手札から速攻魔法《RUM-ファントム・フォース》を発動!俺の墓地の闇属性モンスターを任意の数除外し、俺のフィールドの闇属性エクシーズモンスター1体を除外したモンスターの数だけランクの高い幻影騎士団、RR、エクシーズ・ドラゴンにランクアップさせる!俺は4体のRRを除外し、《ブレード・バーナー・ファルコン》でオーバーレイ!勇猛果敢なるハヤブサよ。怒りの炎を巻き上げ、大地をも焼き尽くす閃光となれ!ランクアップ・エクシーズチェンジ!飛翔しろ!ランク8、《RR-サテライト・キャノン・ファルコン》!」

 

RR-サテライト・キャノン・ファルコン ランク8 攻撃3000

 

墓地から除外されたカード

・RR-バニシング・レイニアス×2

・RR-トリビュート・レイニアス

・RR-ファジー・レイニアス

 

「Wow!僕の《魔法族の里》の効果を無効にして、その上で一気に2体もエクシーズモンスターをフィールドに出すなんて…それにしても、よりによってそのうちの1体が《サテライト・キャノン・ファルコン》だなんてね…」

フレンドシップカップでフィニッシャーとなった《RR-サテライト・キャノン・ファルコン》はデニスにとっては苦いモンスターだ。

そのモンスターを再び召喚してきた彼が意地悪だと思ってしまう。

「《サテライト・キャノン・ファルコン》の効果!このカードがRRを素材としてエクシーズ召喚に成功した場合、相手フィールドの魔法・罠カードをすべて破壊する!俺を縛っていたすべてのカードがこれで消えてなくなる!!」

《RR-サテライト・キャノン・ファルコン》の両翼に備わっている砲台から次々とビームが発射され、氷漬けになっている樹木を焼き払っていく。

ヴァイキングの大地となっていたはずのフィールドが炎に包まれていく中、デニスの口角が釣りあがる。

「これで、《魔法族の里》は《古文書の結界》諸共消えてなくなった…。そして、《トラピーズ・マジシャン》の愛用アイテム、《トラピーズ・ロッド》もフィールドから消えた…」

「バトルだ!《サテライト・キャノン・ファルコン》で《Emトラピーズ・マジシャン》を攻撃!」

マイクロウェーブを受信した《RR-サテライト・キャノン・ファルコン》が今回は出力を抑えた状態で両翼からビームを連射する。

次々と飛んでくるビームを空中ブランコをしながら回避していた《Emトラピーズ・マジシャン》だったが、あまりの弾幕に耐えることができずに命中し、消滅する。

「《トラピーズ・マジシャン》!!でも、《トラピーズ・マジシャン》の効果で、このカードの攻撃力以下のいかなるダメージも僕には通らない!そして、《トラピーズ・マジシャン》が戦闘か相手の効果によって破壊された時、デッキからEm1体を特殊召喚できる!僕は《ストリング・フィギュア》を特殊召喚!」

緑色のブロッコリーが左右に分かれたかのような髪形をしている青ベースの派手な衣装姿のピエロがデニスを守るように飛び出てくる。

 

Emストリング・フィギュア レベル1 守備0

 

「更に《トラピーズ・マジシャン》と一緒に墓地へ送られた《トリック・クラウン》の効果も発動!このカードが墓地へ送られた時、墓地のEm1体を攻撃力・守備力を0にして特殊召喚できる。もう1度頼むよ、《トラピーズ・マジシャン》!!」

 

Emトラピーズ・マジシャン ランク4 守備2000→0

 

「そして、僕は1000のダメージを受ける…!」

 

デニス

ライフ4000→3000

 

「はは…《ストリング・マジシャン》は戦闘では破壊されず、戦闘で発生する僕へのダメージも0になる…!」

「ならばもう1度貴様のピエロを破壊するだけだ!《シルフィーネ》で《トラピーズ・マジシャン》を攻撃!!」

《零鳥獣シルフィーネ》が再び両翼から吹雪を放ち、氷漬けとなった《Emトラピーズ・マジシャン》は粉々に砕け散る。

「く…《トラピーズ・マジシャン》の効果は1ターンに何度でも使える!今度は《Emハットトリッカー》を特殊召喚する!」

 

Emハットトリッカー レベル4 守備1100

 

「俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

デニス

手札2

ライフ3000

場 Emハットトリッカー レベル4 守備1100

  Emストリング・フィギュア レベル1 守備0

 

 

黒咲

手札6→2(うち1枚《RR-ファジー・レイニアス》)

ライフ1600

場 RR-サテライト・キャノン・ファルコン(オーバーレイユニット1) ランク8 攻撃3000

  零鳥獣シルフィーネ ランク4 攻撃3200

  伏せカード2

 

「ふふふ…やるね。黒咲。まさか《魔法族の里》も《トラピーズ・マジシャン》も、根こそぎ撃破していくなんてね」

おまけに自らの象徴ともいえる《Emトラピーズ・マジシャン》を2度も戦闘破壊した。

こちらの作戦もあったとはいえ、これほどまでに痛めつけてきたのは彼が初めてだ。

「デニス、サレンダーしろ。そして、受けるべき罰を受けろ」

「それはできない…。もう、僕も君たちも引き返せないところまで来たんだから。それに…サレンダーするのは君の方だよ…?僕のターン、この瞬間…僕は《セカンド・ディーラー》の効果を発動!通常のドローを放棄するかわりに、裏向きで除外していたカードを手札に加える!」

ドローの動きと同時に、除外されていたはずのカードがデニスの手札に加わる。

 

デニス

手札2→3

 

「ここで僕は《ストリング・フィギュア》の効果を発動!このカードを含む、僕のフィールドのモンスターを素材に魔法使い族融合モンスターの融合召喚を行うことができる!僕が素材とするのは《ストリング・フィギュア》と《ハットトリッカー》だ!戦場を奏でる玩具よ、奇術の帽子と一つとなり、戦場を狩る魔女となれ!融合召喚!現れろ、レベル7!《Emトラピーズ・フォース・ウィッチ》!!」

《Emトラピーズ・マジシャン》の時と同じように、空中ブランコを演じながら女性のピエロがフィールドに現れる。

明るい色だった《Emトラピーズ・マジシャン》とは対照的に黒や暗い緑をベースとした服装をしていて、融合モンスターであることから彼の象徴とは対照的な印象を抱く。

 

Emトラピーズ・フォース・ウィッチ レベル7 攻撃2400

 

「《トラピーズ・フォース・ウィッチ》…貴様の真のエースカードか…!」

「僕の本当のエースは《トラピーズ・マジシャン》だよ。勘違いしないでほしいな…。本当なら、もっとあそこで楽しい時間を過ごせるはずだったのに…」

「人のせいか…?見苦しい蝙蝠だな、貴様は」

「ああ…そうだね。だったら、その見苦しい蝙蝠に食い殺される気持ちを味わってもらおうか!僕は墓地の《トラピーズ・ロッド》の効果発動!僕のフィールドに《トラピーズ・フォース・ウィッチ》が存在する場合、墓地のこのカードを除外することで、墓地から《トラピーズ・マジシャン》を効果を無効にして特殊召喚できる!」

 

Emトラピーズ・マジシャン ランク4 攻撃2500

 

 

「さてっと…気になるのは君のフィールドにセットされている2枚のカードだ…」

素良のデュエルデータの中には、デニスとのデュエルでは使われていなかったRUMも存在し、その中には先ほど使った《RUM-マジカル・フォース》と同じく、戦闘破壊が引き金となるRUMも存在する。

そして、黒咲のエクストラデッキにはまだまだ強力なRRが存在する。

「(ランク9とかランク10のエクシーズモンスターなんてものが存在するなら、もしかしたら《サテライト・キャノン・ファルコン》以上に厄介な効果を持っているモンスターに違いない。今のうちにその芽はつんでおかないとね)僕は手札から魔法カード《カード・バインドチェーン》を発動!ライフを1000支払う代わりに、君のフィールドにセットされている魔法・罠カード2枚を発動不能にする!この効果の発動に対して、僕たちはカード効果を発動できない!!」

「何!?」

《カード・バインドチェーン》のソリッドビジョン出現と同時に鎖が黒咲のフィールドの伏せカードを固定する。

これで、《RUM-ラプターズ・フォース》や《RUM-デス・ダブル・フォース》といった厄介なRUMとその先にいるRRエクシーズモンスター達の出現を封じ込めた。

 

デニス

ライフ3000→2000

 

「これで一安心っと…バトルだ!《トラピーズ・マジシャン》で《シルフィーネ》を攻撃!」

「馬鹿な!?《シルフィーネ》の攻撃力は3200!《トラピーズ・マジシャン》では…」

「更に僕は《トラピーズ・フォース・ウィッチ》の効果発動!僕のEmが相手モンスターと戦闘を行う時、その相手モンスターの攻撃力を600ダウンさせることができる!」

《Emトラピーズ・フォース・ウィッチ》が《零鳥獣シルフィーネ》に向けて投げキッスをし、ピンクのエフェクトが飛んでいく。

それを受けた《零鳥獣シルフィーネ》が若干体勢を崩すが、すぐに持ち直し、こちらに攻撃してくる《Emトラピーズ・マジシャン》を翼で真っ二つに切り裂いた。

 

デニス

ライフ2000→1900

 

零鳥獣シルフィーネ ランク4 攻撃3200→2600

 

「ダメージ覚悟で、更にEmをデッキから特殊召喚するつもりか!?」

「いいや、間違っているよ…黒咲。この瞬間、僕は手札から《RUM-マジカル・フォース》を発動!」

「何!?貴様がRUMだと…!?」

「ああ…僕と君とのデュエルデータを元に、アカデミアで作ったプロトタイプさ…。最も、エクシーズを馬鹿にする奴らが多いから、僕しか使っていないけどね…」

あのデュエルで学んだ黒咲とエクシーズ召喚の強さ。

黒咲を倒すためにはさらなる力の必要性を感じたデニスはデータを提供すると同時に、RUMを求めた。

融合召喚とエクシーズ召喚の両方の力を使って、黒咲を超えるために。

その願いが叶い、このカードを手に入れることができた。

誇り高きデュエル戦士が外道に堕ちた、などと馬鹿にされもしたが、今はそんなものは関係ない。

「このカードはこのターン、戦闘で破壊された僕の魔法使い族エクシーズモンスター1体を特殊召喚し、そのモンスターよりもランクが1つ高い魔法使い族エクシーズモンスター1体を特殊召喚し、このカードをオーバーレイユニットにする。僕は《トラピーズ・マジシャン》を復活させ…オーバーレイ!!Show must go on!!天空の奇術師よ、もっと華やかに…もっと戦慄に…さらなる大舞台へと駆け巡れ!ランクアップ・エクシーズチェンジ!現れろ、ランク5!《Emトラピーズ・ハイ・マジシャン》!!」

復活した《Emトラピーズ・マジシャン》がオーバーレイネットワークへと飛び込んでいき、その中でとんがり帽子がシルクハットへと変わり、衣装もピエロから中世の貴族のようなものへと変わっていく。

そして、黒い仮面を身に着けると両手から魔力を放って重力を操作し、ゆっくりとフィールドへと降りてきた。

 

Emトラピーズ・ハイ・マジシャン ランク5 攻撃2700

 

「そして、戦闘破壊された《トラピーズ・マジシャン》の効果も使う。デッキから《Emダメージ・ジャグラー》を特殊召喚」

 

Emダメージ・ジャグラー レベル4 攻撃1500

 

先ほどのターンと打って変わり、今度は黒咲が危機的な状況に追い込まれた。

《Emトラピーズ・ハイ・マジシャン》の効果は分からないが、攻撃力2700で、おまけに《Emトラピーズ・フォース・ウィッチ》の効果が加わる。

《RR-サテライト・キャノン・ファルコン》の効果を使用するとしても、《Emトラピーズ・フォース・ウィッチ》にはEm達を相手のカード効果の対象にできなくする効果を持っている。

相手ターンでも発動できる《RR-サテライト・キャノン・ファルコン》の効果も、これではターゲットすら存在しないも同じだ。

「これで、君のフィールドのモンスターを全滅させることができる上に、君のライフも0になる。どうする…?今ならサレンダーして…妹に会わせてあげてもいいよ」

「…」

「怖いなぁ。彼女と…あとはリン、セレナ、そして柚子は計画の要。それを殺すわけがないじゃないか。それに、アークエリアプロジェクトが完遂したなら、また一緒に暮らせる。平和な世界で、昔のように…」

デニスにとって、これは黒咲には悪くない話に映るだろう。

確かに、アカデミアが原因でエクシーズ次元がボロボロになったことは否定できない。

そして、結果として瑠璃をさらったことも事実だ。

だが、アカデミアが生み出す未来なら、彼らのかつての平和な暮らしが約束される。

その計画もあと少しのところまで来ている。

だとしたら、そのほんのわずかの間の協力で平和な未来が約束される。

そんなうまい話だが、どんなにいい話でも、デニスの知る黒咲なら…。

「言いたいことはそれだけか?」

「何…?」

「貴様の御託などどうでもいい!アカデミアが俺たちの平和な世界を奪ったんだろう!?今度はその事実まで奪おうというのか!?」

黒咲にとっての平和な暮らしはあの時のエクシーズ次元にしかない。

たとえアカデミアが楽園を作ったとしても、それはただの虚像でしかない。

もう、平和なデュエルしか知らなかったエクシーズ次元の生活には戻れない。

「仮に楽園を作るというなら…作るのはその次元に生きる人々のものだ!誰が楽園を作ってくれと頼んだ!?押し付けもいいところだ!!」

「黒咲…ふっ、やっぱり、応じないって思ったよ。それだから君らしいけれどね」

「さあ、デュエルを続けろ!!」

「当然さ。なら…カードに変えた状態で会わせることにするよ!いけ、《トラピーズ・ハイ・マジシャン》!《サテライト・キャノン・ファルコン》を攻撃!!」

《Emトラピーズ・ハイ・マジシャン》の両手から魔力でできた玉が発射される。

「更に、《トラピーズ・フォース・ウィッチ》の効果!《サテライト・キャノン・ファルコン》の攻撃力は600ダウンだ!」

《Emトラピーズ・フォース・ウィッチ》の投げキッスのエフェクトが2つの球体の間に入る。

数珠のようにつながった3つは一直線にそのモンスターの胴体を貫き、爆散させた。

「ぐうううう!!」

 

RR-サテライト・キャノン・ファルコン ランク8 攻撃3000→2400

 

黒咲

ライフ1600→1300

 

「そして、《トラピーズ・フォース・ウィッチ》で《シルフィーネ》を攻撃!《トラピーズ・フォース・ウィッチ》の戦闘でも、この効果は発動するよ!」

《Emトラピーズ・ハイ・ウィッチ》が右手人差し指を銃身に見立て、ハートの光線を《零鳥獣シルフィーネ》に向けて発射する。

胸部を撃ち抜かれ、ハート型の大穴ができるとそのモンスターは爆散した。

 

零鳥獣シルフィーネ ランク4 攻撃2600→2000

 

黒咲

ライフ1300→900

 

「さあ、とどめだ…!《ダメージ・ジャグラー》でダイレクトアタック!!」

最後に残った《Emダメージ・ジャグラー》がジャグリングしている4つの玉をすべて黒咲に向けて投げつける。

この攻撃が決まれば、黒咲のライフは尽きる。

「終わりだ…黒咲」

「終わり…?そんなもの、誰が決められるものでもない!!」

駆けだした黒咲は氷の塊の中にあるアクションカードを見つける。

ふつうはモンスターに氷を溶かしてもらう必要があるが、モンスターが全滅している黒咲は右拳で殴り、一撃で氷を砕いてしまった。

「アクション魔法《奇跡》!モンスター1体はその戦闘では破壊されず、俺が受ける戦闘ダメージが半分になる!ぐおおおお!!」

《奇跡》が生み出すバリアーに守られた黒咲だが、それを突破した2つの球体を受け、吹き飛ばされた。

 

黒咲

ライフ900→150

 

「はあ、はあ、はあ…」

アクションカードのおかげで紙一重の差で生き延びることができた。

だが、3体のEmに守られている状況で、黒咲のフィールドにモンスターはいない。

「しぶとく生き延びたね…。でも、1ターン生き延びただけさ。僕はこれで、ターンエンド」

 

デニス

手札3→2

ライフ1900

場 Emトラピーズ・ハイ・マジシャン(オーバーレイユニット2) ランク5 攻撃2700

  Emトラピーズ・フォース・ウィッチ レベル7 攻撃2400

  Emダメージ・ジャグラー レベル4 攻撃1500

 

黒咲

手札2(うち1枚《RR-ファジー・レイニアス》)

ライフ150

場 伏せカード2(《カード・バインドチェーン》の影響下)

 

「俺の…ターン!!」

 

黒咲

手札2→3

 

「僕はここで《トラピーズ・ハイ・マジシャン》の効果発動!メインフェイズ時にオーバーレイユニットを1つ取り除くことで、このターン、このカードは3回まで破壊されない!」

オーバーレイユニットを両手で握った《Emトラピーズ・ハイ・マジシャン》はそれから取り込んだ力でバリアを展開する。

これで、《Emトラピーズ・ハイ・マジシャン》を戦闘破壊することは現実的でない状態になった。

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・Emトラピーズ・マジシャン

 

「俺は手札から《RUMソウル・シェイブ・フォース》を発動!ライフを半分支払い、墓地のRR1体を特殊召喚し、ランクの2つ高いエクシーズモンスターへとランクアップさせる!俺は《サテライト・キャノン・ファルコン》を特殊召喚し、オーバーレイ!!」

残り少ない黒咲のライフを代価に、再び舞い戻った《RR-サテライト・キャノン・ファルコン》がオーバーレイネットワークへと飛び込んでいく。

「究極至高のハヤブサよ。数多なる朋友の遺志を継ぎ、勝利の天空へ飛び立て!ランクアップ・エクシーズチェンジ!現れろランク10!《RR-アルティメット・ファルコン》!」

これまでの暗い色や炎のような赤が色彩の中心となっていたこれまでのRRとは異なり、青と金の派手な色彩となり、背中には日輪のようなパーツがついた隼がオーバーレイネットワークの中から強い輝きを放ちながら現れる。

 

RR-アルティメット・ファルコン ランク10 攻撃3500

 

黒咲

ライフ150→75

 

「《アルティメット・ファルコン》はほかのカード効果を受けない!そして、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、このターン、相手フィールドのすべてのモンスターの攻撃力は1000下がり、相手はカード効果を発動できない!」

「これで、《トラピーズ・フォース・ウィッチ》の効果を封じるつもりだろうけれど、そうはさせないよ!僕は手札の《Emフェイク・ディーラー》の効果を発動!相手がモンスター効果を発動したとき、このカードを手札から墓地へ送ることで、このターン、僕のEm1体は相手のカード効果を受けない」

《Emセカンド・ディーラー》とは異なり、ルーレット用のボールを複数個握る白髪のディーラーが現れ、持っているボールを《Emトラピーズ・フォース・ウィッチ》に向けて投げる。

ボールは彼女の周囲で停止すると、バリアを展開する。

「更に、この効果を発動したターン、相手の攻撃対象は僕が決めることができる」

「それが…《セカンド・ディーラー》の効果で手札に加えたカードか…」

「その通りさ。それに、《トラピーズ・ハイ・マジシャン》の効果はまだ生きている。戦闘ダメージは避けられないけど、生き延びれるさ」

《RR-アルティメット・ファルコン》の背中の飾りにオーバーレイユニットが宿ると同時に黄金のビームが連続発射されてフィールドに降り注ぐ。

バリアに守られた《Emトラピーズ・フォース・ウィッチ》は守られたものの、それ以外のEmはビームを受けて弱体化する。

 

Emトラピーズ・ハイ・マジシャン ランク5 攻撃2700→1700

Emダメージ・ジャグラー レベル4 攻撃1500→500

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・RR-サテライト・キャノン・ファルコン

 

「そして、墓地に存在する《フェイク・ディーラー》は僕のフィールドにEmエクシーズモンスターが存在する場合、墓地から除外することで相手に1000ダメージを与える。そして、《アルティメット・ファルコン》はほかのカード効果を受けない以上、RUMで更にランクアップすることもできない!これで君の負けだ!!」

「いいや…まだデュエルは終わっていない!バトルだ!《アルティメット・ファルコン》で攻撃!!」

「悪あがきだよ…!《トラピーズ・ハイ・マジシャン》でその攻撃を受ける!!」

《RR-アルティメット・ファルコン》が口を開き、大出力のビームを発射する。

バリアを展開した《Emトラピーズ・ハイ・マジシャン》はそれを正面から受け止め、無傷のまま持ちこたえるが、その攻撃の余波はデニスに及ぶ。

「う。ううううう!!でも…しのぎ切れる!これで攻撃できるモンスターがいない以上、もう君の勝利は…」

 

デニス

ライフ1900→100

 

「いいや!《アルティメット・ファルコン》の攻撃を止められなかった時点で、貴様の敗北は決まった!メインフェイズ2に、俺は手札から《RR-ラダー・ストリクス》を召喚!」

《RR-アルティメット・ファルコン》の頭上に青いフクロウと飛行機が組み合わさったかのようなモンスターが現れる。

 

RR-ラダー・ストリクス レベル4 攻撃0

 

「このカードが召喚された時、もしくはRRの効果で特殊召喚された時、相手に600ダメージを与える…」

「何!?」

「終わりだ…デニス!!」

《RR-ラダー・ストリクス》が飛び立ち、デニスに向かって突っ込んでいく。

3体のEm達はそれを止めようと動き出すが、《RR-アルティメット・ファルコン》の効果で傷ついている状態、もしくはバリアに力を送り込んだことへの疲労で動くことができず、残る《Emトラピーズ・フォース・ウィッチ》もあと少しといったところで間に合わない。

「うわあああああああ!!!」

あと少しで、本当に勝つまで少しのところまで来たのに。

また、そこで黒咲に敗れるのか?

その現実に絶叫するデニスの腹部に《RR-ラダー・ストリクス》が突撃し、それを受けたデニスの体は吹き飛ばされて、港の床を転げまわった。

 

デニス

ライフ100→0

 

古文書の結界(漫画オリカ・調整)

永続魔法カード

(1):このカード名のカードはフィールド上に1枚しか表側表示で存在できない。

(2):このカードが魔法・罠ゾーンに存在する限り、お互いのフィールドに存在するこのカード名のカード以外の永続魔法カードは戦闘・効果では破壊されない。

 

Emセカンド・ディーラー

レベル4 攻撃1000 守備1000 効果 闇属性 魔法使い族

このカード名の(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しか行えず、(2)の効果はデュエル中1度だけ発動できる。

(1):自分フィールドの魔法・罠ゾーンにカードが2枚以上表側表示で存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。

(2):このカードの召喚・特殊召喚に成功したとき、自分のデッキに存在する「Em」モンスター1体を対象に発動する。そのカードを裏向きの状態でゲームから除外する。この効果を発動した次の自分ドローフェイズ時、通常のドローの代わりにこの効果で除外したカード1枚を手札に加えることができる。

 

エクストラ・ドロー

アクション魔法カード

(1):自分フィールドに存在するモンスターがEXデッキから特殊召喚されたモンスターのみの場合に発動できる。自分はデッキからカードを1枚ドローする。

 

Emストリング・フィギュア(アニメオリカ・調整)

レベル1 攻撃0 守備0 効果 闇属性 魔法使い族

(1):このカードは戦闘では破壊されず、このカードの戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になる。

(2):相手モンスターの直接攻撃宣言時に発動できる。このカードを手札から特殊召喚し、攻撃対象をこのカードに移し替える。

(3):EXデッキに存在する魔法使い族融合モンスター1体を対象に発動できる。そのカードによって決められた、このカードを含む融合素材モンスターを自分フィールドから墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

トラピーズ・ロッド

装備魔法カード

「Emトラピーズ・マジシャン」にのみ装備可能。

このカード名の(1)の効果は1ターンに2度しか使用できず、(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):装備モンスターが戦闘で相手モンスターを破壊したときに発動する。自分はデッキからカードを1枚ドローする。

(2):自分フィールドに「Emトラピーズ・フォース・ウィッチ」が存在する場合、墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。自分の墓地に存在する「Emトラピーズ・マジシャン」1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。この効果はこのカードが墓地へ送られたターン、発動できない。また、この効果を発動したターン、自分は「Em」以外のモンスターを召喚・特殊召喚できない。

 

RUM-マジカル・フォース(アニメオリカ・調整)

速攻魔法カード

このカード名のカードは1ターンに1度しか発動できない。

(1):このターンに戦闘で破壊され自分の墓地へ送られた魔法使い族Xモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを効果を無効にして特殊召喚し、そのモンスターよりランクが1つ高い魔法使い族Xモンスター1体を、対象のモンスターの上に重ねてX召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚し、このカードを下に重ねてX素材とする。

 

Emトラピーズ・フォース・ウィッチ(アニメオリカ)

レベル7 攻撃2400 守備1800 融合 闇属性 魔法使い族

「Em」モンスター×2

(1):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分フィールドの「Em」モンスターは効果では破壊されず、相手の効果の対象にならない。

(2):自分フィールドにこのカード以外の「Em」モンスターが存在する限り、相手はこのカードを攻撃対象にできない。

(3):自分フィールドの「Em」モンスターが相手モンスターと戦闘を行う場合、その相手モンスター1体を対象として発動できる。その相手モンスターの攻撃力は600ダウンする。

 

Emトラピーズ・ハイ・マジシャン(アニメオリカ)

ランク5 攻撃2700 守備2200 エクシーズ 光属性 魔法使い族

魔法使い族レベル5モンスター×2

(1):自分・相手のメインフェイズに1度、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。このターン、このカードは3回まで戦闘・効果では破壊されない。

(2):このカードがランク4以下の魔法使い族Xモンスターを素材としてX召喚に成功したターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。このターン、このカードは1度のバトルフェイズ中に3回まで攻撃できる(直接攻撃は1回まで)。

 

Emフェイク・ディーラー

レベル4 攻撃1600 守備1200 効果 闇属性 魔法使い族

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):相手フィールドに存在するモンスターが効果を発動したとき、自分フィールドに「Em」モンスターが存在する場合、手札に存在するこのカードを墓地へ送ることで発動できる。自分フィールドの「Em」モンスター1体はこのターン、相手のカード効果を受けない。そして、この効果を発動したターンのバトルフェイズ中に相手モンスターが攻撃するとき、攻撃対象を自分が決める。

(2):自分フィールドに「Em」Xモンスターが存在するとき、自分の墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。相手に1000ダメージを与える。この効果はこのカードが墓地へ送られたターン、発動できない。

 

「はあ、はあ、はあ…」

「はあ…君の、勝ちだよ。黒咲…」

大の字になって倒れたデニスは立ち上がるそぶりを見せず、体の痛みに耐えながら黒咲が彼に近づく。

「どうした…?フレンドシップカップの時のように、ためらうのかい…?ためらったら…また、君の邪魔をするかもしれないよ…?」

今の黒咲からは殺気が感じられず、デュエルディスクを操作する動きも見せない。

あの時はカード化しようとしていたのに。

「…瑠璃の居場所を教えろ。それだけでいい」

「僕が…いうと思うかい…?」

「教えろ…二度は言わん…」

その場に座り、再び問いかけてくる。

そんなに聞きたいなら、拷問でも何でもすればいいのに、今の黒咲は問いかけるか黙るかしかしてこない。

戦場のど真ん中で何をやっているのか、呆れて笑ってしまう。

黒咲に、そして馬鹿な自分に。

「…瑠璃は、ここの西にある塔に幽閉されている。東には…もう1人、アカデミアが捕まえた子が幽閉されているよ。でも…気を付けなよ。どちらにも…見張りがいる…」

「…そうか」

それだけ答えると、再び立ち上がった黒咲はマシンブルーファルコンに乗り、エンジンをかける。

場所さえ分かれば、あとは飛べばいい。

そのエネルギーも十分残っている。

発進しようとアクセルを踏みかけた黒咲はその足を止める。

「…なぜ、教えた?」

「君が…教えろと、言ったからじゃないか…。いや、そうじゃないな…。なんでだろうな、僕にも、もう、分からないよ…」

ただ、あの楽しかったエクシーズ次元での日々に戻りたいと思ったからなのか。

そんなことをしても、もう戻れないと分かっているのに。

やっぱり、黒咲の言う通り、自分はただの卑怯な蝙蝠でしかない。

デニスの答えらしからぬ答えを聞いた黒咲は振り返ることなくマシンブルーファルコンを飛ばし、立ち去っていく。

動かないデニスの耳に船が近づく音が聞こえてくる。

もうすぐ、ランサーズがやってきて、アカデミアをつぶしに来る。

きっと、ここに来たら、自分のことを捕まえるだろうが、もう遅い。

強い心臓の高鳴りと共に、痛みを覚えたデニスは脂汗を書きながら胸を抑える。

「はは…2度目の裏切りは許さない、か…」

これもきっと、デュエル戦士にもランサーズにも、エンターテイナーにもなれなかった己への罰。

蝙蝠にふさわしい末路が待っている。

痛みで意識が薄れていく中、だんだんと靄に包まれた頭の中が逆にクリアになっていくように感じた。

(ああ…そうだ。そうだった…。僕たちは、理想郷とかエンターテイナーとか…何かにすがらないと、やっていけなかったんだ…)

ふと、脳裏に勝鬨に勝利したであろう遊矢の姿が映る。

どうしてこんなタイミングで遊矢を思い出すのか。

でも、もうそんなことはデニスにとってどうでもよかった。

(遊矢…君は僕たちのようになるなよ。君だけは…本物の、エンターテイナーに…)



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第120話 月に挑む

「…。全員聞いてくれ。榊遊矢と黒咲隼の活躍により、港を解放した。そこから我々は突入可能だ」

「くそ…遊矢の奴、Dホイールがあるからって真っ先に活躍しやがって…!!」

零児からの通信を聞いた沢渡は悔しがりながら右こぶしを左手のひらにぶつける。

だが、まだ門が開いたばかりで、まだまだこの先にはデュエル戦士やプロフェッサー、そして彼が作ったAIもある。

まだまだ活躍のチャンスはあると気持ちを切り替え、武者震いを覚える自分に言い聞かせる。

港に船が到着すると、ランサーズとヴァプラ隊が一斉に飛び出していき、アカデミアへと突入していく。

侵入者の報告が既に伝達されているようで、赤と黄のデュエル戦士たちがやってきて、ヴァプラ隊員がランサーズを行かせるため、率先して相手となって道を作っていく。

「雑魚にはかまうな!あくまでも我々の目的はプロフェッサーだ」

「おい、司令官。バナナはどこへ行った?」

突入してからユーゴの姿を見ていない。

遊矢と黒咲は突入後は遊撃を行うことになり、途中で合流する形になる。

2人はそれぞれセレナと瑠璃の救出を行うことになっている。

「彼はリンという少女の救出に向かった。合流の目的はそもそも、それだったからな」

「ちっ…甘えな」

「彼は訓練を受けていない。それに、今は彼らをバラバラに配置していたほうがいい」

今は侑斗とヒイロの助力によって、遊矢とユーゴが一緒にいても暴走を起こすことがなく、そしてブレスレッドの力が抑えられている。

だが、それもいつまでもつかわからず、アカデミアにはユーリがいる。

毒をもって毒を制す形にはなるが、おそらく彼を倒すことができるのはこの2人だろう。

「なら俺も単独行動させろって話だぜ…っと、来たか…」

突入を続ける中で、2人のオベリスクフォースが現れ、デュエルディスクからアンカーを発射する。

すかさず前に出た翔太はそれらすべてを受け止める。

「先に行け、俺は…準備運動をする」

デュエルディスクを展開した翔太は睨むように2人を見る。

ここへ向かう途中、港でデニスの遺体を見た。

おそらく、エドと同じくBAT-DIEによって殺されたのだろう。

そのことで翔太は言いようもない怒りを腹に抱えていた。

「地獄を見せてやるよ…人形どもが!!」

 

「ここか…瑠璃!!」

西の塔にたどり着き、マシンブルーファルコンを降りた黒咲が扉まで走ろうとする。

だが、突然何かの気配を感じた黒咲は足を止める。

「…見事ね。気配を消したつもりでいたけれど、見破るなんて」

黒咲に気づかれたことを察したのか、女性の声が聞こえてくる。

そして、瑠璃がいるであろう部屋への扉の前に現れたのは紫の制服姿で、備え付けられているフードで目元を隠した女性だった。

かすかにだが、フードから露出している薄紫の髪も見える。

「私はディアナ、ここの番人。エクシーズ次元のデュエリストがここまでこれたなんて…正直侮っていたわ」

「それは俺1人の力ではない。剣崎さんやランサーズが協力してくれたからだ。そして…何よりもここに瑠璃がいるというなら、進むだけだ!」

「黒咲瑠璃…あなたの妹ね。返すわけにはいかない理由がある以上、残念だけれど…引き下がることはできないわ」

「引かぬというなら…!」

両者が同時にデュエルディスクを展開する。

目の前の相手、ディアナは見たことのない制服姿で、ジェルマンでもオベリスクフォースでもない。

だが、ただの相手ではないことを本能で感じていた。

「「デュエル!!」」

 

ディアナ

手札5

ライフ4000

 

黒咲

手札5

ライフ4000

 

「私の先攻。私は手札から《マスマティシャン》を召喚」

 

マスマティシャン レベル3 攻撃1500

 

「《マスマティシャン》は召喚に成功したとき、デッキからレベル4以下のモンスター1体を墓地へ送ることができる。私は《月光黄鼬》を墓地へ送る」

「月光…。セレナが使っていたカテゴリーか…」

「ええ。当然の話よ。彼女にデュエルを教えたのは私。つまり、私は彼女の師匠にあたるといってもいいわね」

最も、与えられたのはあくまでデュエルの力量を上げることだけ。

監視についてはバレットにその役目が与えられていた。

だから、脱走したセレナを連れ戻す役割は与えられなかった。

「私は墓地へ送った《月光黄鼬》の効果を発動。このカードが効果によって墓地へ送られたとき、デッキからムーンライト魔法・罠カード1枚を手札に加える。私は《月光輪廻舞踊》を手札に加える。そして、私はカードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

ディアナ

手札5→3(手札、伏せカードのうち1枚《月光輪廻舞踊》)

ライフ4000

場 マスマティシャン レベル4 攻撃1500

  伏せカード2

 

黒咲

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「俺の…ターン!!」

 

黒咲

手札5→6

 

「俺は手札から《レイダーズ・ウィング》を召喚」

 

レイダーズ・ウィング レベル4 攻撃0

 

「そして、俺のフィールドに闇属性モンスターが存在する場合、手札から《RR-ストラングル・レイニアス》を特殊召喚」

《RR-サテライト・キャノン・ファルコン》に似た色彩をした装甲をしていて、紫の稲妻を帯びた杭が搭載されたパイルバンカーを下半身部分に装着されている鳥が現れる。

 

RR-ストラングル・レイニアス レベル4 攻撃1600

 

「さらに俺は手札から永続魔法《RR-ネスト》を発動。俺のフィールドにRRが2体以上存在するとき、デッキ・墓地からRR1体を手札に加えることができる。俺は《RR-ファジー・レイニアス》を手札に加える。そして、俺のフィールドにRRが存在する場合、《ファジー・レイニアス》は手札から特殊召喚できる」

 

RR-ファジー・レイニアス レベル4 攻撃500

 

「そして、俺は《レイダーズ・ウィング》と《ファジー・レイニアス》でオーバーレイ!!冥府の猛禽よ、闇の眼力で真実をあばき、鋭き鉤爪で栄光をもぎ取れ!エクシーズ召喚!飛来せよ!ランク4!《RR-フォース・ストリクス》!」

 

RR-フォース・ストリクス ランク4 守備2000

 

「《フォース・ストリクス》の効果。1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、デッキからレベル4の闇属性・鳥獣族モンスター1体を手札に加える。俺はデッキから《RR-シンキング・レイニアス》を手札に加える」

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・RR-ファジー・レイニアス

 

「墓地へ送られた《ファジー・レイニアス》の効果。デッキから《ファジー・レイニアス》を手札に加える。そして、俺は手札から《RUM-スキップ・フォース》を発動。俺のフィールドのRR1体をランクが2つ高いRRへとランクアップさせる。俺は《フォース・ストリクス》でオーバーレイネットワークを再構築!誇り高きハヤブサよ。英雄の血潮に染まる翼翻し 革命の道を突き進め!ランクアップエクシーズチェンジ!現れろ!ランク6!《RR-レヴォリューション・ファルコン》!」

 

RR-レヴォリューション・ファルコン ランク6 攻撃2000

 

「1ターン目からランク6のエクシーズモンスターをエクシーズ召喚してきたか…!」

「さらに俺は《ストラングル・レイニアス》の効果を発動。俺のフィールドに闇属性エクシーズモンスターをオーバーレイユニットとしているエクシーズモンスターが存在する場合、俺の墓地に存在するレベル4以下のRR1体を特殊召喚できる。俺は再び《ファジー・レイニアス》を特殊召喚」

 

RR-ファジー・レイニアス レベル4 攻撃500

 

「そして俺はレベル4の《ファジー・レイニアス》と《ストラングル・レイニアス》でオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろ、ランク4!《RR-フォース・ストリクス》!」

 

RR-フォース・ストリクス ランク4 守備2000

 

「《フォース・ストリクス》の効果。オーバーレイユニットを1つ取り除き、オーバーレイユニットを1つ取り除き、デッキから《バニシング・レイニアス》を手札に加える」

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・RR-ストラングル・レイニアス

 

(だが、奴のフィールドにセットされているカードは…)

前のターンにサーチしたカードである《月光輪廻舞踊》が伏せている可能性が高い。

セレナとは訓練でデュエルをしたことがあり、その時にそのカードでひどい目にあった記憶がある。

「(あのカードは自分フィールドのモンスターが破壊されたとき、デッキからムーンライトモンスターを2体まで手札に加える効果がある。融合素材を集められては厄介だ)俺は手札から速攻魔法《サイクロン》を発動!フィールド上の魔法・罠カードを1枚破壊する。俺が破壊するのは左側の伏せカードだ!」

《サイクロン》から発動した竜巻が左側の伏せカードを襲い掛かり、吹き飛ばしていく。

 

破壊された伏せカード

・融合解除

 

「ちっ…!」

「外れね。さあ、どうするのかしら?《マスマティシャン》を攻撃する…?」

「ああ…当然だ!《レヴォリューション・ファルコン》の効果。オーバーレイユニットを1つ取り除き、相手フィールドのモンスター1体を破壊し、破壊したモンスターの攻撃力の半分のダメージを与える!《マスマティシャン》を破壊しろ!」

オーバーレイユニットを宿した《RR-レヴォリューション・ファルコン》が上空を舞い、爆弾をディアナのフィールドに落としていく。

次々と落ちる爆弾の炎に包まれた《マスマティシャン》が消滅し、爆発の余波がディアナを襲う。

「く…!」

 

ディアナ

ライフ4000→3250

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・レイダーズ・ウィング

 

「だが、私は罠カード《月光輪廻舞踏》を発動。私のモンスターが破壊されたとき、デッキからムーンライトモンスターを2体まで手札に加える。私は《月光虎》と《月光狼》を手札に加える」

「だが、《マスマティシャン》の効果でドローされるよりもいい!バトルだ!《レヴォリューション・ファルコン》でダイレクトアタック!」

空になったコンテナを強制排除した《RR-レヴォリューション・ファルコン》が今度は大型の爆弾をディアナに向けて発射する。

爆弾を受けたディアナは左腕で身を守るだけで、動く気配はなかった。

 

ディアナ

ライフ3250→1250

 

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

 

ディアナ

手札3→5(うち2枚《月光虎》《月光狼》)

ライフ1250

場 なし

 

黒咲

手札6→2(《RR-ファジー・レイニアス》《RR-シンキング・レイニアス》)

ライフ4000

場 RR-レヴォリューション・ファルコン(オーバーレイユニット1) ランク6 攻撃2000

  RR-フォース・ストリクス(オーバーレイユニット1) ランク4 守備2000

  RR-ネスト(永続魔法カード)

  伏せカード1

 

「私の…ターン」

 

ディアナ

手札5→6

 

「私はスケール1の《月光狼》とスケール5の《月光虎》でペンデュラムスケールをセッティング」

「ペンデュラムモンスター…セレナのデッキを解析したか!」

「その通りだ。これで私はレベル2から4までのモンスターを同時に召喚可能。現れろ、《月光蒼猫》、《月光紅狐》」

 

月光蒼猫 レベル4 攻撃1600

月光紅狐 レベル4 攻撃1800

 

「そして、私は《月光虎》のペンデュラム効果を発動。1ターンに1度、墓地のムーンライト1体を特殊召喚できる。甦れ、《月光黄鼬》を特殊召喚」

 

月光黄鼬 レベル4 攻撃800

 

「モンスターを特殊召喚したところで、《レヴォリューション・ファルコン》に対しては無意味だ!《レヴォリューション・ファルコン》は特殊召喚された相手モンスターとの戦闘を行うとき、その相手モンスターの攻撃力と守備力を0にする!」

セレナとのデュエルでは《RR-レヴォリューション・ファルコン》による猛攻でけりをつけることが多かった。

だが、相手はセレナの師匠だったデュエリスト。

それを突破してくる可能性もあり得る。

「私は手札から魔法カード《融合》を発動。私が融合素材とするのは《月光蒼狐》と《月光黄鼬》!蒼き闇を徘徊する猫よ、黄の幻影を魅せる鼬よ、今一つとなりて、新たな力を呼び覚ませ。融合召喚!現れろ、レベル7!《月光舞猫師》!」

2体のムーンライトが一つとなり、姿を見せたのは《月光舞猫姫》と似た容姿をしているようだが、服装が白い巫女福のようなものとなっていて、仮面ついてもフルフェイスのライオンの仮面になっている。

フィールドに降りると、背中にさしている大剣を抜き、剣舞を披露した。

 

月光舞猫師 レベル7 攻撃2300

 

「このカードはフィールド上のモンスターしか融合素材とすることができないモンスター。だが、その代わりに手にした効果がある。私のフィールドのほかのムーンライト1体をリリースすることで、このカードは相手フィールドのすべてのモンスターに1回ずつ攻撃できる。そして、戦闘を行う相手モンスターの効果はターン終了時まで無効となる」

「ちぃ…!!」

《月光紅狐》がフィールドから消え、手にしている大剣に炎が宿る。

「さらに私は手札から永続魔法《月光剣舞》を発動。このカードが存在する限り、私は融合モンスター以外のモンスターで攻撃できない。しかし、ムーンライト融合モンスターが戦闘で相手モンスターを破壊したとき、このカードの上に剣舞カウンターが1つ乗る。そして、バトルよ。革命の炎など無粋よ。消えなさい」

《月光舞猫師》が剣舞をしつつ、刃から炎を飛ばす。

発射された炎を受けた2体のRRエクシーズモンスターは爆発し、その余波が黒咲を襲う。

「く…!」

 

黒咲

ライフ4000→3700

 

「《月光剣舞》の効果で、カウンターが2つ乗る」

 

月光剣舞(永続魔法カード) 剣舞カウンター0→2

 

「バトルフェイズ終了時、《月光舞猫師》の効果を発動。戦闘で相手モンスターを破壊したバトルフェイズ終了時、このカードの攻撃力は500アップする」

 

月光舞猫師 レベル7 攻撃2300→2800

 

「そして、《月光剣舞》の剣舞カウンターを2つ取り除くことで、効果を発動。私の墓地に存在する《融合》と融合素材としたモンスター1体を手札に加える。私は《月光黄鼬》を手札に加える。そして、手札に加えた《月光黄鼬》を召喚」

 

月光黄鼬 レベル4 攻撃800

 

「そして…手札から再び《融合》を発動!私が融合素材とするのは《月光黄鼬》と《月光舞猫師》、黄の幻影を魅せる鼬よ、舞姫を導く師よ、今一つとなりて、新たな力を呼び覚ませ。融合召喚!現れろ、レベル8!《月光舞豹師》!」

再びフィールドに現れたばかりの《月光黄鼬》とともに《月光舞猫姫》がフィールドから消えていく。

そして、再び現れたのは先ほどの融合モンスターと似た衣装と武器を装備した《月光舞豹姫》というべきモンスターだった。

 

月光舞豹師 レベル8 攻撃2700

 

「また新たなムーンライト融合モンスターか…!!」

「そう。そして、私のフィールドに存在するモンスターがこのカードのみで、私のペンデュラムゾーンにムーンライトペンデュラムカードが2枚存在する場合、相手フィールドのモンスターの効果はすべて無効となる」

「何…!?」

「躍り手は2人もいらない、ということよ」

《月光舞豹師》が大剣を手に剣舞を披露する。

その剣舞とともに空気中の水分が凍り付いていき、次第に黒咲の周囲が雪と氷で包まれていく。

「そして、《月光黄鼬》の効果。デッキから《月光教導》を手札に加える。そして、魔法カード《月光教導》を発動。私のフィールドに存在するモンスターがムーンライト融合モンスター1体のみで、手札に存在するカードがこのカードのみの時に発動でき、デッキからカードを2枚ドローする。そして、カードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

ディアナ

手札6→1

ライフ1250

場 月光舞豹師 レベル8 攻撃2700

  月光剣舞(永続魔法)

  伏せカード1

  月光狼(青) ペンデュラムスケール1

  月光虎(赤) ペンデュラムスケール5

 

黒咲

手札2(《RR-ファジー・レイニアス》《RR-シンキング・レイニアス》)

ライフ3700

場 RR-ネスト(永続魔法カード)

  伏せカード1

 

「ちぃ…!」

モンスター効果を封じ込められたことで、黒咲は純粋な攻撃力のみで《月光舞豹師》を倒さなければならなくなった。

おそらくは、《月光舞豹姫》と同じく、カード効果で破壊できないモンスターだろう。

純粋な攻撃力が低い傾向のある黒咲のデッキにとって、このカードは脅威だ。

しかし、高ランクのエクシーズモンスターを召喚することができれば、攻撃力ではまだ望みがある。

「俺の…ターン!!」

 

黒咲

手札2→3

 

ドローしたカードを見た黒咲はすかさずそのカードを発動しようとした。

「《ソウル・シェイブ・フォース》!そのカードは発動させないわ」

「何…?」

「罠カード《マインドクラッシュ》を発動。カード名を1つ宣言し、宣言したカードが手札に存在する場合、相手はそのカードをすべて捨てる。しかし、そのカードが相手の手札に存在しない場合、私は手札を1枚捨てる。私が宣言するのは《RUM-ソウル・シェイブ・フォース》よ」

「ぐぅ…!」

発動しようと手にしていた《RUM-ソウル・シェイブ・フォース》をやむなくディアナに見せた黒咲はそれをおとなしく墓地へ捨てる。

「申告してもらう必要はないわね。残り2枚のカードはわかりきっているから…」

《RUM-ソウル・シェイブ・フォース》を発動し、ライフ半分を代償に《RR-サテライト・キャノン・ファルコン》をエクシーズ召喚するつもりでいた。

このピンポイントのタイミングで《マインドクラッシュ》を使われたことには黒咲も動揺は隠せない。

「さあ…どうしたのかしら?まだデュエルは続いている。それに、あなたのライフは3700で、私のライフは1250。あなたがまだまだ有利な状況でしょう?」

「…。俺は、モンスターをセット。ターンエンドだ」

 

ディアナ

手札1

ライフ1250

場 月光舞豹師 レベル8 攻撃2700

  月光剣舞(永続魔法)

  月光狼(青) ペンデュラムスケール1

  月光虎(赤) ペンデュラムスケール5

 

黒咲

手札3→1(手札、または裏守備モンスターのうち1枚《RR-ファジー・レイニアス》《RR-シンキング・レイニアス》)

ライフ3700

場 裏守備モンスター1

  RR-ネスト(永続魔法カード)

  伏せカード1

 

「私のターン、ドロー」

 

ディアナ

手札1→2

 

「私は《月光虎》の効果を発動。その効果で私は墓地の《月光舞猫師》を特殊召喚」

 

月光舞猫師 レベル7 攻撃2300

 

「バトル。《月光舞猫師》で裏守備モンスターを攻撃」

大剣を手にした《月光舞猫師》が舞いながら剣を振るい、裏守備モンスターを粉々にする。

 

裏守備モンスター

RR-ファジー・レイニアス レベル4 守備1500

 

「破壊された《ファジー・レイニアス》の効果…。デッキからもう1体の《ファジー・レイニアス》を手札に加える」

「けれど、これであなたのフィールドはがら空きね。《月光剣舞》の効果により、このカードの上に剣舞カウンターが1つ乗る」

 

月光剣舞(永続魔法カード) 剣舞カウンター0→1

 

「《月光舞豹師》でダイレクトアタック」

《月光舞豹師》が大きく跳躍し、頭上から黒咲に大剣を振り下ろす。

頭上から受けた一撃をどうにか両腕で守りながら受けたが、腕に強烈な痛みが襲い掛かる。

斬られることはなかったが、感覚がなくなるほどの一撃に手札が落ちてしまった。

「ぐうう…!!」

 

黒咲

ライフ3700→1000

 

「大幅にライフが減ったわね…」

「ああ…だが、これでこのカードを発動できる…!俺は罠カード《RR-カウンター》を発動!俺が直接攻撃によってダメージを受けたとき、墓地からRRエクシーズモンスター1体を効果を無効にして特殊召喚し、このカードを装備する!甦れ、《レヴォリューション・ファルコン》!!」

 

RR-レヴォリューション・ファルコン ランク6 攻撃2000

 

「さらに、装備モンスターの攻撃力は俺は受けた戦闘ダメージの数値分アップする!!」

 

RR-レヴォリューション・ファルコン ランク6 攻撃2000→4700

 

「なるほど…そんな伏兵を用意していたのね」

「そうだ。次のターン、《レヴォリューション・ファルコン》で《月光舞豹師》を攻撃すれば、俺の勝利が決まる」

だが、そんな簡単に勝利できるとは黒咲本人も思っていない。

まだ彼女の手札は2枚残っている。

「けれど、私にはまだこのカードがある…。私は手札から《融合》を発動。私が融合素材とするのはフィールドの《月光舞猫師》と《月光舞豹師》。舞姫を導く師よ、月明かりの舞の伝授者よ、今一つとなりて、新たな力を呼び覚ませ。融合召喚!現れろ、レベル10!《月光舞白獅子師》!」

2体のムーンライト融合モンスターが1つとなり、呼び覚まされたのは白獅子の名前があるように、純白の肉体と巫女服姿の《月光舞獅子姫》となり、これまで剣舞で使われていた大剣を二刀流にしていた。

 

月光舞白獅子師 レベル10 攻撃3000

 

「このカードの融合召喚に成功したとき、このカードの攻撃力は墓地に存在するムーンライト融合モンスター1体につき、1000アップする」

 

月光舞白獅子師 レベル10 攻撃3000→5000

 

「そして、私たちのフィールドに存在するこのカードよりも攻撃力の低いすべてのモンスターの効果は無効になる。さらに私は手札から装備魔法《月光舞殺》を《月光舞白獅子師》に装備し、ターンエンド。それと同時に、《月光舞白獅子師》に装備した《月光舞殺》の効果。このカードはレベル9以上のムーンライト融合モンスターにのみ装備でき、1ターンに1度、相手が魔法・罠カードを発動したとき、その発動を無効にし、破壊する。そして、装備モンスターは1ターンに1度、戦闘およびカード効果では破壊されない。私はこれで、ターンエンド」

 

ディアナ

手札2→0

ライフ1250

場 月光舞白獅子師(《月光舞殺》装備) レベル10 攻撃5000

  月光剣舞(剣舞カウンター1)(永続魔法)

  月光舞殺(装備魔法)

  月光狼(青) ペンデュラムスケール1

  月光虎(赤) ペンデュラムスケール5

 

黒咲

手札1→2(《RR-ファジー・レイニアス》《RR-シンキング・レイニアス》)

ライフ1000

場 RR-レヴォリューション・ファルコン(《RR-カウンター》装備) ランク6 攻撃4700

  RR-ネスト(永続魔法カード)

  RR-カウンター(通常罠)

 

「黒咲隼…一つ言っておくわ。《月光舞白獅子師》が存在する限り、あなたがエクストラデッキからモンスターを特殊召喚したとき、そのモンスターの攻撃力を500ダウンさせ、あなたに500のダメージを与える。そして、《月光舞殺》の効果でこのターン、私は1度だけあなたが魔法・罠カードを発動したとき、それを無効にする」

黒咲の残りライフは1000。

よって、黒咲がこのターン、エクストラデッキから特殊召喚できるのは1度だけになる。

しかも、RUMも実質発動不能という状態だ。

そして攻撃力5000以下のモンスターの効果は無効になるため、《RR-ライズ・ファルコン》による勝ち筋はない。

「瑠璃…!」

ようやく瑠璃まであと一歩のところまで来たところで現れた巨大な壁。

エクシーズ次元でブーンに敗れた時のことを思い出す。

だが、これを乗り越えて勝利することで、ようやく念願をかなえることができる。

黒咲にはサレンダーするという選択肢は存在しない。

「(RUMが使えなくとも…!!)俺の…ターン!!!!」

 

黒咲

手札2→3

 

ドローしたカードを見た瞬間、黒咲の脳裏を電気が走ったように感覚が襲う。

デュエリストとしての本能に従うように、黒咲はカードを手に取る。

「俺のフィールドにRRが存在するとき、《ファジー・レイニアス》は特殊召喚できる!」

 

RR-ファジー・レイニアス レベル4 攻撃500

 

「そして、俺のフィールドにエクシーズモンスターが存在する場合、《RR-シンキング・レイニアス》は特殊召喚できる!」

 

RR-シンキング・レイニアス レベル4 攻撃100

 

「そして、《RR-ネスト》の効果発動!俺はデッキから《RR-バニシング・レイニアス》を手札に加える。そして、《バニシング・レイニアス》を召喚!」

 

RR-バニシング・レイニアス レベル4 攻撃1300

 

「そして、俺は手札の《RR-リベンジング・フェニックス》の効果発動!!俺のフィールドにRRエクシーズモンスター1体を含めたRRが2体以上存在する場合、このカードを手札から墓地へ送ることで、そのエクシーズモンスター1体以外のすべての俺のモンスターを墓地へ送る!」

黒咲の背後から炎をまとっているものの、ヒヨコ程度の大きさしかない鳥が飛び出し、その鳴き声に従うようにせっかく召喚された3体のRRが炎となって、黒咲のデッキに吸収されていく。

「そして、この効果で墓地へ送ったモンスターの数だけデッキの上からカードを墓地へ送り、その中にRUMが存在した場合、その中の1枚の効果を《リベンジング・フェニックス》の効果として使用できる!だが…墓地へ送ったカードの中にRUMが存在しない場合、俺はライフを2000失う!!」

「馬鹿な…!?デッキの操作もせずにそのようなカードを…?自滅するつもりなの!?」

「いいや…このカードで貴様に勝ち、瑠璃を取り戻す!デッキよ…俺に答えろ!!」

燃え上がる黒咲のデッキとともに、黒咲の右手にも炎が宿る。

炎の宿る手で1枚目のカードを引く。

「1枚目は《RR-コール》!!」

RUMではなく、そのカードは燃え尽きていく。

そして、そのまま2枚目を引く。

「くっ…《ラプターズ・ガスト》か!!」

そのカードも燃え尽き、最後の3枚目に黒咲の目が行く。

「わかっているわね。この状況を覆すにはRUMを…なおかつ、攻撃力5000以上のエクシーズモンスターを出せるようなものでないといけないわ。これがあなたの最後のエクシーズ召喚か、自爆…かもしれないわね」

確かに、何も作戦もなく《RR-リベンジング・フェニックス》の効果を使うのは自爆行為でしかない。

これまでは運任せといえるカードを使ってこなかった黒咲とは真逆を行くモンスターだ。

そんなカードを使わなければならなくなるほど追い詰められたというべきか、それとも最後の切り札か。

それはこのカードをデッキに入れた黒咲にしかわからないことだ。

「…!!3枚目!!!!」

燃え上がる手で最後の1枚をドローする。

ドローした瞬間、そのカードは激しく燃え上がった。

「俺が引いたカードは…《RUM-ファントム・フォース》!!」

「何!?」

燃え上がる《RUM-ファントム・フォース》の炎を取り込んだ《RR-リベンジング・フェニックス》が巨大な炎をなって《RR-レヴォリューション・ファルコン》に宿り、上空に生まれた炎のオーバーレイネットワークに飛び込んでいく。

「《ファントム・フォース》は墓地の闇属性モンスターを任意の数だけ除外し、俺のフィールドの闇属性エクシーズモンスターを除外したモンスターの数だけランクが高いRR、エクシーズ・ドラゴン、幻影騎士団へとランクアップさせる。俺は墓地の《ファジー・レイニアス》と《シンキング・レイニアス》を除外し、《レヴォリューション・ファルコン》でオーバーレイ!!勇猛果敢なるハヤブサよ。怒りの炎を巻き上げ、大地をも焼き尽くす閃光となれ!ランクアップ・エクシーズチェンジ!飛翔しろ!ランク8、《RR-サテライト・キャノン・ファルコン》!」

灼熱のオーバーレイネットワークの中から舞い降りるのは同じく炎で身を包んだ《RR-サテライト・キャノン・ファルコン》」

黒咲の思いにこたえるべく、身を焦がし続ける。

 

RR-サテライト・キャノン・ファルコン ランク8 攻撃3000

 

「《月光白獅子舞師》の効果!《サテライト・キャノン・ファルコン》の攻撃りょきは500下がり、あなたに500のダメージを与える!!」

2本の大剣で剣舞を披露する《月光白獅子舞師》から放たれる剣閃が黒咲と《RR-サテライト・キャノン・ファルコン》を襲う。

剣閃は《RR-サテライト・キャノン・ファルコン》の炎を吹き飛ばし、黒咲の頬をかすめる。

 

RR-サテライト・キャノン・ファルコン ランク8 攻撃3000→2500

 

黒咲

ライフ1000→500

 

「そして、《サテライト・キャノン・ファルコン》の効果は無効になっている。もう打つ手はないわ!!」

「いいや、まだだ!!まだ炎は燃え尽きていない!!俺は墓地の《リベンジング・フェニックス》の効果を発動!!墓地のこのカードとRRエクシーズモンスター2体を除外することで、俺のフィールドのRRエクシーズモンスター1体の攻撃力をターン終了時まで、そのモンスターの元々の攻撃力分アップさせる!!」

「何!?」

上空から燃え上がる2体の《RR-フォース・ストリクス》が舞い降り、《RR-サテライト・キャノン・ファルコン》に憑依する。

消えたはずの炎が再び燃え上がり、《RR-サテライト・キャノン・ファルコン》が咆哮する。

 

RR-サテライト・キャノン・ファルコン ランク8 攻撃2500→5500

 

「攻撃力5500…!?」

「これで貴様の舞姫の呪縛から解放される!《サテライト・キャノン・ファルコン》の効果発動!オーバーレイユニットを1つ取り除き、相手フィールドのモンスター1体の攻撃力を俺の墓地のRR1体につき、800ダウンさせる!俺の墓地に存在するモンスターは7体!よって、攻撃力を5600ダウンさせる!!」

オーバーレイユニットを宿した《RR-サテライト・キャノン・ファルコン》の炎が蒼くなり、青いビームを7発連続で発射する。

7発のビームから身を守ろうと、大剣を盾にするがその圧倒的な火力を受けきれるはずがなく、剣は砕け散り、体を焼き尽くされて地面に倒れる。

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・RR-レヴォリューション・ファルコン

 

「見事よ…黒咲隼」

自らの敗北を認めたディアナがデュエルディスクを下ろし、じっと黒咲を見る。

倒れていた《月光舞白獅子師》も立ち上がり、手元に残った柄を投げ捨てた。

「この一撃、身をもって受けるわ。けれど…気を付けることね。あなたの望む結末がこの先にあるとは限らないのだから…」

「いいや、結末は…一つだけだ!やれ!!《サテライト・キャノン・ファルコン》!!!」

身に宿った蒼い炎を正面に集中させ、膨大な熱量の球体を生み出した《RR-サテライト・キャノン・ファルコン》は迷うことなくそれを発射する。

圧倒的な熱量の炎は《月光舞白獅子師》を一瞬で消滅させ、ディアナの姿もまた炎の中に消えていった。

 

ディアナ

ライフ1250→0

 

月光舞猫師(ムーンライト・キャット・トレーナー)

レベル7 攻撃2300 守備2100 融合 闇属性 獣戦士族

自分フィールドの「ムーンライト」モンスター×2

(1):このカードは戦闘では破壊されない。

(2):1ターンに1度、自分メインフェイズ1にこのカード以外の自分フィールドの「ムーンライト」モンスター1体をリリースして発動できる。このターン、このカードは全ての相手モンスターに1回ずつ攻撃できる。その時、戦闘を行う相手モンスターの効果はターン終了時まで無効化される。

(3):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊したバトルフェイズ終了時に発動する。このカードの攻撃力は500アップする。

 

月光教導(ムーンライト・トレーニング)

通常魔法カード

(1):自分フィールドに存在するモンスターが「ムーンライト」融合モンスター1体のみで、手札に存在するカードがこのカードのみの場合に発動できる。自分はデッキからカードを2枚ドローする。

 

RR-カウンター

通常罠カード

(1):相手の直接攻撃によって自分が戦闘ダメージを受けたときに発動できる。自分の墓地に存在する「RR」Xモンスター1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。その後、発動したこのカードを装備カード扱いとしてそのモンスターに装備する。装備モンスターの攻撃力がその時自分が受けた戦闘ダメージの数値分、アップする。

 

月光舞豹師(ムーンライト・パンサー・トレーナー)

レベル8 攻撃2700 守備2600 融合 闇属性 獣戦士族

自分フィールド上の「月光舞猫師」+自分フィールド上の「ムーンライト」モンスター1体

このカードは上記のカードを融合素材とした融合召喚でのみ、EXデッキから特殊召喚できる。

(1):このカードは相手の効果では破壊されない。

(2):1ターンに1度、自分メインフェイズ1に発動できる。このターン、このカードはすべての相手モンスターに1回ずつ攻撃できる。

(3):自分フィールドに存在するモンスターがこのカードのみで、自分Pゾーンに「ムーンライト」カードが2枚存在する場合、相手フィールドに存在するすべてのモンスターの効果は無効化させる。

 

月光舞殺(ムーンライト・アサシンダンス)

装備魔法カード

レベル9以上の「ムーンライト」融合モンスターのみ装備可能。

(1):1ターンに1度、相手が魔法・罠カードを発動したときに発動できる。その発動を無効にし、破壊する。

(2):装備モンスターは1ターンに1度、戦闘・効果では破壊されない。

 

月光舞白獅子師(ムーンライト・ホワイトライオ・トレーナー)

レベル10 攻撃3000 守備3000 融合 闇属性 獣戦士族

自分フィールド上の名前の異なる「ムーンライト」融合モンスター2体

このカードは上記のカードを融合素材とした融合召喚でのみ、EXデッキから特殊召喚できる。

(1):このカードの融合召喚に成功したときに発動する。このカードの攻撃力は自分の墓地に存在する「ムーンライト」融合モンスターの数×1000アップする。

(2):このカードが存在する限り、フィールド上に存在するこのカードの攻撃力以下の攻撃力を持つ、このカード以外のモンスターの効果は無効化される。

(3):相手がEXデッキからモンスターの特殊召喚に成功したときに発動する。その相手モンスターの攻撃力が500ダウンし、相手に500ダメージを与える。

 

RR-リベンジング・フェニックス

レベル1 攻撃0 守備0 効果 闇属性 鳥獣族

(1):自分フィールドに「RR」Xモンスター1体を含めた「RR」モンスターが2体以上存在する場合、手札に存在するこのカードを墓地へ送ることで発動できる。自分フィールドに存在するXモンスター以外の「RR」モンスターをすべて墓地へ送る。その後、この効果で墓地へ送ったカードの数だけデッキの上からカードを墓地へ送る。墓地へ送ったカードの中に「RUM」魔法カードが存在する場合、そのうちの1枚を選択する。このカードの効果はそのカードの効果と同じになる。墓地へ送ったカードの中に「RUM」魔法カードが存在しない場合、自分は2000LPを失う。

(2):自分の墓地からこのカードと「RR」Xモンスター2体を除外し、自分フィールドの「RR」Xモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターの攻撃力はターン終了時までそのモンスターの元々の攻撃力分アップする。



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第121話 太陽との戦い

ユーゴを乗せたDホイールが螺旋階段の凸凹をものともせず突き進んでいき、ユーゴはその先に待っているであろうリンに思いをはせる。

零児に単独行動を許されてここまでくる中で、何人かのデュエル戦士を葬った。

「もうすぐですね、ユーゴ。リンまで手が届く」

「ああ…。待ってろよ、リン!!」

翔太からランサーズのことを聞いたときはリンを救うためにも、それに加わりたいと思っていた。

だが、ランサーズは次元戦争を終わらせることを目的とした組織であり、ユーゴには次元戦争のことははっきり言って、どうでもよかった。

あくまでも、目的はリンを救い、シンクロ次元へ戻ることだけなのだから。

そう考えると、自分にはランサーズに加わる資格はないのかもしれない。

それに、元々の性分として、何かに従って動くことなどできないだろう。

そんなことを考える中で、Dホイールは螺旋階段を上り終える。

「な…!?」

「なんだよ、これ…!!」

しかし、上り終えたユーゴの目に飛び込んだのはなぜかここを上がる直前に最初に見た螺旋階段のついた塔で、振り返るとそこにあるはずの螺旋階段がなく、あるのは一番下のはずの光景だ。

「どういうことだよ!一番上までいったはずなのに、どうして一番下にいるんだよ!おかしいだろ!?くそ…!もう1度登って…!!」

「待ってください、ユーゴ!おかしいですよ、これは!!」

クリアウィングの制止の声がユーゴの耳に届くが、それに意を介することをせずに、ユーゴはDホイールを塔に向けて走らせる。

だが、走っても走っても塔に近づくことができず、なぜか遠ざかっているように見える。

「止まってくださいユーゴ!落ち着いて…落ち着けっつってんだろ!このくそばかがぁ!!」

「誰がクソバカだぁ!!」

頭に血が上ったクリアウィングの暴言によってようやくDホイールを止めたユーゴ。

すると、遠ざかっていたはずの塔もまた止まっているように見えた。

「よく考えろよ!こんなんでいくら進んでも同じことの繰り返しだぞ!もう、私たちは罠にはまっちまってんだよ!!」

「罠…!?んじゃあ、なんだよここは…!」

「見事なものだろう?ここは」

「…!!」

急に背後から声が聞こえ、振り返ろうとしたユーゴの頭を大きな手がわしづかみし、そのまま片手で持ち上げられていく。

黒咲が戦ったディアナに似た服装をしているが、朱色の肩当と兜をつけていて、2メートル近い大柄で筋肉質な男はじたばたと手足を動かしながら抵抗するユーゴをそのまま投げた。

地面を転がるユーゴは痛みを感じる顔を抑えながら立ち上がる。

「ちっくしょう…てめえは…」

「俺の名はアポロ。東の塔の番人だ」

「どうなってんだよ、ここは!!」

「侵入者を排除しろという命令だ。この場所は私を倒さない限り、決して出ることはできない」

そういうと、アポロはそばにあるユーゴのDホイールからデュエルディスクを取り外し、それをユーゴに投げ渡す。

すると、周囲に広がっていたはずの景色が消えていき、床だけのある何もない空間へと変化してしまった。

そして、アポロのそばに置かれたはずのDホイールも消えてしまった。

こうなっては、もうアポロを倒す以外にリンの元へ行く道はない。

投げ渡されたデュエルディスクを装着し、展開する。

「くそ…!だったら、やってやるよ!てめえがリンを阻む壁なら、ぶっ壊すだけだ!!」

「「デュエル!!」」

 

アポロ

手札5

ライフ4000

 

ユーゴ

手札5

ライフ4000

 

「俺の先攻。俺はカードを2枚伏せ…ターンエンド」

 

アポロ

手札5→3

ライフ4000

場 伏せカード2

 

ユーゴ

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「カードを2枚伏せただけ…?なんだよ、筋肉マッチョのくせに消極的だな!!」

「さあ、貴様のターンだ。さっさとドローしろ」

「ち…!わかってるっつーの!」

 

ユーゴ

手札5→6

 

(嫌な状態です…。デュエルが始まる前から、ユーゴは相手デュエリストのペースに乗せられている…!)

「俺のフィールドにモンスターが存在しないとき、《SRベイゴマックス》は手札から特殊召喚できる!」

 

SRベイゴマックス レベル3 攻撃1200

 

「そして、《ベイゴマックス》の召喚・特殊召喚に成功したとき、デッキから新たなスピードロイドを手札に加える。俺が手札に加えるのは《赤目のダイス》!俺は《赤目のダイス》を召喚!」

 

SR赤目のダイス レベル1 攻撃100(チューナー)

 

「こいつの召喚・特殊召喚に成功したとき、《赤目のダイス》以外のスピードロイド1体のレベルを1から6のいずれかに変更させることができる。俺は《ベイゴマックス》のレベルを4にする!」

 

SRベイゴマックス レベル3→4 攻撃1200

 

(これで、ユーゴはレベル5のシンクロモンスターをシンクロ召喚できる…)

相手フィールドにモンスターがいないこの状況で、早急に蹴りをつけるのであれば、シンクロ召喚するモンスターは1体のみ。

(ここで、《HSRチャンバライダー》をシンクロ召喚する!こいつは1ターンに2度攻撃できて、攻撃力は2000!一気に…)

「ふん…シンクロ召喚をするつもりか。だが、果たしてうまくいくかな…?」

「なんだと!?」

「俺は永続罠《マクロコスモス》を発動。このカードを発動すると同時に、手札・デッキから《原始太陽ヘリオス》を特殊召喚できる」

発動と同時に青々としていたはずの空が夜のように真っ暗になり、同時に何もない空に太陽が浮かぶ。

そして、その太陽の中から頭の部分が太陽となっていて、体が包帯で巻かれた細身の女性というべき姿のモンスターが出てくる。

 

原始太陽ヘリオス レベル4 攻撃0

 

「攻撃力0!?」

「《原始太陽ヘリオス》の攻撃力は除外されているモンスターの数×100となる。そして、《マクロコスモス》が存在する限り、墓地へ送られるカードはすべて墓地へ向かうことなく除外される」

「な…!?」

除外コンセプトはユーゴのデッキには大きな弱点となる。

墓地のカードを利用することの多いユーゴは奥歯をかみしめる。

「でもよぉ!ここでシンクロ召喚して、こいつらが除外されたとしても、《ヘリオス》の攻撃力は200!そんなもんじゃ、何の意味もねえよ!俺はレベル4の《ベイゴマックス》にレベル1の《赤目のダイス》をチューニング!その躍動感溢れる、剣劇の魂。出でよ、レベル5!《HARチャンバライダー》!」

 

HSRチャンバライサー レベル5 攻撃2000

 

原始太陽ヘリオス レベル4 攻撃0→200

 

「こいつは1ターンに2度攻撃でき、こいつが戦闘を行うダメージステップ開始時に攻撃力が200アップする!こいつなら、《ヘリオス》を倒して、そのままダイレクトアタックでお前のライフを…」

「愚かなことを…。俺は速攻魔法《惑星直列》を発動。私のフィールドに《ヘリオス》が存在するとき、相手フィールドのすべてのモンスターを破壊し、お前に300のダメージを与える」

「何!?」

せっかくシンクロ召喚されたはずの《HSRチャンバライダー》が砕け散り、その破片がユーゴを襲う。

「く…そんな!!」

 

ユーゴ

ライフ4000→3700

 

「《マクロコスモス》の効果により、そのシンクロモンスターは除外される。…なるほど、《チャンバライダー》は墓地へ送られたとき、除外されているスピードロイドカード1枚を手札に加える効果があったか…。その効果を使えず、残念だったな」

「てめえ…!!」

「ユーゴ!挑発に乗ってはいけません!それに乗れば乗るほど、リンから遠ざかっていきますよ!!」

「く…う!!」

クリアウィングの忠告がようやく届き、ユーゴは握りしめた拳を見る。

リンがさらわれて、多くのアカデミアのデュエル戦士と戦ってきたが、アポロのようなタイプと戦うのは初めてだ。

ユーゴは浅慮を反省しつつ、アポロに向き直る。

「さらに、《惑星直列》の効果により、デッキから《錬金釜-カオス・ディスティル》を手札に加える」

「…俺はカードを1枚伏せ、ターンエンドだ!!」

 

アポロ

手札3→4(うち1枚《錬金窯-カオス・ディスティル》)

ライフ4000

場 原始太陽ヘリオス レベル4 攻撃200→300

  マクロコスモス(永続罠)

 

ユーゴ

手札6→3

ライフ3700

場 伏せカード1

 

「俺のターン、ドロー」

 

アポロ

手札4→5

 

「俺は手札から永続魔法《錬金窯-カオス・ディスティル》を発動。発動処理として、俺はデッキからヘリオス1体を手札に加える。俺が手札に加えるのは《ヘリオス・デュオ・メギストス》。そして、《ヘリオス・デュオ・メギストス》は俺のフィールドの《原始太陽ヘリオス》をリリースすることで、特殊召喚できる」

《原始太陽ヘリオス》の頭の太陽が赤々と光るとともにその体が太ったものへと変貌していった。

 

ヘリオス・デュオ・メギストス レベル6 攻撃0→800

 

「《ヘリオス・デュオ・メギストス》の攻撃力は除外されているモンスターの数×200となる。さらに俺は手札から《原始太陽の従者》を召喚」

《ヘリオス・デュオ・メギストス》のそばに、彼女と同じく包帯姿をした男が槍を持って現れる。

顔は太陽ではなく、それを模した仮面で隠しており、召喚されたと同時に彼女にひざまずく。

 

原始太陽の従者 レベル4 攻撃1800

 

「このカードは《マクロコスモス》、もしくはヘリオスモンスターが存在する場合にのみ、召喚が許されるカードだ。そして、手札から魔法カード《成功報酬》を発動。お前は手札が6枚になるようにデッキからカードをドローし、俺はドローしたカードの数×1000ライフを回復する」

「俺の手札を増やすだと…!?」

アポロのライフが回復することは気に入らないが、それでもシンクロ召喚に失敗し、墓地を使えないユーゴには手札が増えるのはありがたい話だった。

 

ユーゴ

手札3→6

 

アポロ

ライフ4000→7000

 

「さらに俺は手札から魔法カード《手札抹殺》を発動。お互いに手札をすべて捨て、捨てたカードの数だけデッキからカードをドローする」

「な…てめえ!!そのためにドローさせやがったのか!汚ねえぞ!!」

「ただで敵に塩を送るとは思うな、小僧」

怒りで震える手を抑えながら、ユーゴは手札すべてをデッキケースに入れ、改めて6枚カードをドローする。

アポロもそれにならうと、除外されたカードが増えたことで《ヘリオス・デュオ・メギストス》の力が上がる。

 

除外されたカード

アポロ

・異次元の偵察機

・原始太陽ヘリオス

 

ユーゴ

・SRドミノバタフライ

・ダイスロール・バトル

・緊急同調

・SRオハジキッド

・SR-OMKガム

・スピードリフト

 

 

ヘリオス・デュオ・メギストス レベル6 攻撃800→1800

 

「そして、モンスターをセットし…バトル。《ヘリオス・デュオ・メギストス》でダイレクトアタック。ウルカヌスの炎」

《ヘリオス・デュオ・メギストス》の太陽から炎が発生し、それがユーゴを襲う。

「く…うおおおお!!」

炎を浴びたユーゴは全員が焼ける感覚がし、声を上げたことで炎が喉を焼くのを感じる。

炎が収まると、焼けれた痛みでその場に倒れこむ。

 

ユーゴ

ライフ3700→1900

 

「ユーゴ!!これは…実体化しているというのですか…!?」

リアルソリッドビジョンはプレイヤーへのダメージを抑えるために、再現度をある程度調整することができるが、このアポロはそのリミッターをはずしている。

そのせいで、《ヘリオス・デュオ・メギストス》の炎によるダメージで実際にユーゴの体が焼かれることになった。

「警告する。サレンダーをして、この場を立ち去れ」

あくまでも、これはまだ警告。

攻撃力1800だから、まだ火傷でおさまっているが、この攻撃力がデュエルをつづけることで高まっていくのは明白。

最悪の場合、焼け死ぬ可能性も否定できない。

「か…はぁ!!だ、誰が…そんな、こと…する、かよ…」

痛みに耐え、起き上がるユーゴだが、息苦しさを感じるとともに声もかすれている。

拳を握りしめ、キッとアポロをにらむ。

「こん、なの…なんだってんだ…!!これくらい…待っているリンが受けている痛みと、比べれば…どうってこと…!」

「強情だな。《原始太陽の従者》でダイレクトアタック」

続けて、《原始太陽の従者》が手から炎を放ち、それがユーゴを襲う。

「され…かよ!俺は手札の…《SRブリキライダー》の効果を発動…!俺がこのターン、戦闘ダメージを受けている状態でダイレクトアタックされるとき…こいつを手札から特殊召喚できる…」

昭和時代の日本の白バイに乗った、ブリキでできた人型のロボットがユーゴの背後から飛び出してくる。

ユーゴの目前にまで来ていた炎を自らが盾となり受け止めた。

「そして、バトルフェイズを終了する…」

炎が収まると、ユーゴの前には焼け焦げた《SRブリキライダー》が残っていて、車体のいたるところから煙が上がっていた。

 

SRブリキライダー レベル5 守備2300(チューナー)

 

「2撃目は許さん、か…。ならば俺は《原始太陽の従者》の効果を発動。このカードは装備カード扱いとしてヘリオスモンスターに装備できる。そして、装備モンスターの攻撃力を1000アップする」

《原始太陽の従者》の体が炎へと変わり、《ヘリオス・デュオ・メギストス》に取り込まれていく。

従者の炎を手にしたことで、彼女の太陽の力が強まる。

 

ヘリオス・デュオ・メギストス レベル6 攻撃1800→2800

 

「そして、カードを1枚伏せて…ターンエンド。そして、除外された《異次元の偵察機》の効果。このカードは除外されたターン終了時に特殊召喚できる」」

 

アポロ

手札5→1

ライフ7000

場 ヘリオス・デュオ・メギストス(《原始太陽の従者》装備) レベル6 攻撃2800→2600

  異次元の偵察機 レベル2 攻撃800

  マクロコスモス(永続罠)

  錬金窯-カオス・ディスティル(永続魔法)

  伏せカード1

 

ユーゴ

手札6→5

ライフ1900

場 SRブリキライダー レベル5 守備2300(チューナー)

  伏せカード1

 

「ユーゴ、わかっていますね?《マクロコスモス》が存在する限り、君のデッキの力が封じられます。ここは…」

「ああ…わかってる…。《マクロコスモス》を破壊すりゃあ、いいんだろ…?俺のターン…!!」

 

ユーゴ

手札5→6

 

「《ブリキライダー》の効果…!俺のフィールドに《ブリキライダー》以外のモンスターが存在しない場合…《SRトークン》1体を特殊召喚する…!」

緑色の風をまとった《SRブリキライダー》というべき分身が《SRブリキライダー》の背後から現れるとともに、彼と並列になる。

 

SRトークン レベル1 攻撃0

 

「さらに…俺は手札から《SRダルマヘッド》を召喚…!」

続けて、上空から達磨落としの達磨の頭の部分だけとなっているモンスターが空から落ちてくる。

ころころと転がったそれは足元から発生する緑色の竜巻の上に乗った状態で態勢を整える。

 

SRダルマヘッド レベル1 攻撃500

 

「《SRトークン》の効果…こいつを、スピードロイドチューナーと一緒にシンクロ素材にする場合、こいつのレベルを2として扱うことができる…!レベル2の《SRトークン》とレベル1の《ダルマヘッド》に…レベル5の《ブリキライダー》をチューニング…!吹き荒れる勝利の風よ、希望の翼に宿り、すべてを決する竜となれ!シンクロ召喚!現れろ、レベル8!《HSRカイドレイク》!!」

3体のモンスターがチューニングされ、生まれたのは《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》に似た体つきをした青いドラゴンだ。

しかし、機械族のようにその体は金属でできた装甲で構成されている。

 

HSRカイドレイク レベル8 攻撃3000

 

「《ダルマヘッド》をシンクロ素材として風属性シンクロモンスターのシンクロ召喚に成功したターン終了時に、こいつ以外のシンクロ素材1体を墓地から手札に加える効果がある…!」

「だが、せっかくのシンクロ素材も《マクロコスモス》によりこの次元から消え去る。そして、除外されたモンスターが3体増えたことで、《ヘリオス・デュオ・メギストス》の攻撃力もアップする」

 

ヘリオス・デュオ・メギストス レベル6 攻撃2600→3200

 

「これで、せっかくの《カイドレイク》の攻撃力も《ヘリオス・デュオ・メギストス》には及ばない」

「そんなの関係、ねえ…!《カイドレイク》のシンクロ召喚に成功したとき、2つの効果から1つを選択できる。俺が選択するのは、相手フィールドに存在するカードの効果をすべて無効にする効果だ!」

《HSRカイドレイク》の装甲に光が走り、それが光線となってアポロのフィールドに襲い掛かる。

「これで、《マクロコスモス》は効果を失い、《ヘリオス・デュオ・メギストス》の攻撃力も0に…!」

「ふん…。やってくれる。俺は手札の《原始太陽の守り人》の効果発動。相手ターンのメインフェイズ時、俺のフィールドにヘリオスモンスターが存在するとき、このカードを手札から除外することで、ヘリオスモンスターの効果を無効にし、ターン終了時まで俺のフィールドのヘリオスモンスター、《マクロコスモス》、《錬金窯-カオス・ディスティル》は相手のカード効果を受けない。ただし、この効果を発動した次のターン、俺はドローできない」

太った体を包帯で包み、両腕にタワーシールドを装備した人型モンスターが現れ、盾で襲い掛かる光線を受け止める。

だが、《ヘリオス・デュオ・メギストス》の太陽が真っ黒になる。

 

ヘリオス・デュオ・メギストス レベル6 攻撃3200→1000

 

「く…けどよぉ、これで《ヘリオス・デュオ・メギストス》の攻撃力は1000!これなら《カイドレイク》で戦闘破壊できる。バトルだ!《カイドレイク》で《ヘリオス・デュオ・メギストス》を攻撃!!」

口を大きく開いた《HSRカイドレイク》が青い光の奔流を《ヘリオス・デュオ・メギストス》にぶつける。

光を受けた《ヘリオス・デュオ・メギストス》は消滅し、その勢いは収まることなくアポロを襲う。

「ぐうううう!!」

 

アポロ

ライフ7000→5000

 

「よっしゃあ!これで《ヘリオス・デュオ・メギストス》はおしまいだぜ!」

「《錬金窯-カオス・ディスティル》の効果。俺のフィールドのヘリオスモンスターが破壊されたとき、そのカードは除外されることなく墓地へ送られる」

「ああ…?でも、戦闘破壊できたことには変わりねえ!俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド!!」

「変わりない…?そう考えた愚かさを呪うがいい。《ヘリオス・デュオ・メギストス》の効果。このカードが戦闘で破壊され墓地へ送られたターン終了時、攻撃力・守備力を300アップさせた状態で特殊召喚される」

「何!?」

消滅したはずの太陽が再びアポロのフィールドに出現し、そこからみるみると《ヘリオス・デュオ・メギストス》が無傷の状態で再生されていく。

 

アポロ

手札1→0

ライフ5000

場 ヘリオス・デュオ・メギストス レベル6 攻撃2400→2700

  異次元の偵察機 レベル2 攻撃800

  マクロコスモス(永続罠)

  錬金窯-カオス・ディスティル(永続魔法)

  伏せカード1

 

ユーゴ

手6→3

ライフ1900

場 HSRカイドレイク レベル8 攻撃3000

  伏せカード3

 

「俺のターン…。俺は《原始太陽の守り人》の効果の代償として、このターンはドローを行えない。俺は罠カード《ウルカヌスの炎》を発動。俺のフィールドにヘリオスモンスターが存在するとき、俺はデッキの上からカードを3枚確認し、その中の1枚を手札に加え、それ以外を除外する。俺が手札に加えるのは《封印の黄金櫃》。そして、残り2枚のカードは除外される」

 

ゲームから除外されたカード

・魔導雑貨商人

・ネクロフェイス

 

「そして、除外された《ネクロフェイス》の効果発動。お互いのプレイヤーはデッキの上からカードを5枚除外する」

「ちっ…!」

舌打ちをしたユーゴは泣く泣くデッキの上から5枚をデッキケースに入れる。

 

ゲームから除外されたカード

アポロ

・ヘリオス・デュオ・メギストス

・D.D.R

・邪帝ガイウス

・サイクロン

・次元幽閉

 

ユーゴ

・SR電々大公

・死者蘇生

・シンクロ・リフレクト

・カードガンナー

・ヒドゥン・ショット

 

「そして、除外されたモンスターが《ヘリオス・デュオ・メギストス》の力を高める」

 

ヘリオス・デュオ・メギストス レベル6 攻撃2700→3900

 

「まだだ…。魔法カード《封印の黄金櫃》を発動。デッキからカードを1枚選択して除外し、発動後2回目の自分スタンバイフェイズ時に手札に加える。俺が除外するのは《ネクロフェイス》。さあ、再びデッキの上からカードを5枚除外してもらうぞ」

「またかよ…ちくしょう!!」

再びカードをデッキケースに入れていくユーゴの脳裏に、アポロが使ってきたカードたちが浮かぶ。

(《ネクロフェイス》に《ヘリオス・デュオ・メギストス》、《マクロコスモス》…。《成功報酬》と《手札抹殺》…。おまけにこのターンで俺のデッキからカードが10枚も…)

 

除外されたカード

アポロ

・次元誘爆

・カオス・グリード

・マクロコスモス

・メタモルポッド

・ヘリオス・トリス・メギストス

 

ユーゴ

・ファイティング・スピリッツ

・重力崩壊

・SRパッシングライダー

・トラップ・スタン

・エクスプレスロイド

 

ヘリオス・デュオ・メギストス レベル6 攻撃3900→4700

 

「そして、俺は《錬金窯-カオス・ディスティル》の効果発動。このカードを除外し、除外されているモンスターをデッキに戻すことで、ヘリオス融合モンスターの融合召喚を行う。俺が融合素材とするのは《原始太陽ヘリオス》、《ヘリオス・デュオ・メギストス》、《ヘリオス・トリス・メギストス》」

「除外されたモンスターで融合召喚だとぉ!!?」

《錬金窯-カオス・ディスティル》が3体のヘリオスモンスターを取り込み、3体の構造をすべて分析したうえで分解していく。

「太陽の原子を統べる3体の人工生命体よ、新たな世界に浮かぶ太陽を生み出せ。融合召喚。現れろ、《原始太陽ヘリオス・ネオ・メギストス》」

《錬金窯-カオス・ディスティル》が粉々に砕け散り、その中から太陽の頭をし、両手に太陽を握る包帯まみれの巨人が現れる。

包帯には魔法陣や太陽が組み込まれていて、巨人の大きさは《ジャイアント・ボマー・エアレイド》以上だ。

 

原始太陽ヘリオス・ネオ・メギストス レベル10 攻撃4000

ヘリオス・デュオ・メギストス レベル6 攻撃4700→4100

 

「《ヘリオス・ネオ・メギストス》はゲームから除外されているモンスターの数によって、効果が決まる。除外されているモンスターは19体。そして、《ネオ・メギストス》の効果。除外されているモンスターが10体以上存在する場合、このカード以外のフィールド上のカードをすべて除外する」

「何!?」

3つの太陽が活性化するとともにオレンジ色の光線がフィールドを襲い掛かる。

まずは仲間のはずの《異次元の偵察機》と《ヘリオス・デュオ・メギストス》を焼き払い、さらには《HSRカイドレイク》も消し飛ぶ。

それだけでは飽き足らず、ビームはさらに魔法・罠カードをも消滅させていった。

 

ゲームから除外されたカード

・リサイコロ

・異次元からの願い星

・聖なるバリア-ミラーフォース

 

「これで、フィールドからカードが消えた。そして、残るは《ヘリオス・ネオ・メギストス》のみ。このままダイレクトアタックをすることで、勝負が決まる…拍子抜けだな」

「くっ…!!」

フィールドからカードが消え、今のユーゴにできるのはこの太陽の巨人の直接攻撃を受けることだけ。

この状況にユーゴは拳を握りしめる。

「シンクロ次元からここまで来て、塔にいる彼女を救おうとしたことについては評価してやろう。だが、悲しいな。力が及ばなかったな…。バトルだ、楽になれ。新たな次元で彼女を待つがいい!《原始太陽ヘリオス・ネオ・メギストス》でダイレクトアタック」

《原始太陽ヘリオス・ネオ・メギストス》が右手を空に掲げてから、それをユーゴに向けて振り下ろしていく。

近づくにつれて地面が振動し、灼熱がユーゴを襲う。

「うぐ…ぐおおおおお!リンーーーーー!!!」

 

ユーゴ

ライフ1900→0

 

 

惑星直列(アニメオリカ・調整)

速攻魔法カード

(1):自分フィールドに特殊召喚された「ヘリオス」モンスターが存在する場合に発動できる。相手フィールドに存在するモンスターをすべて破壊し、相手に300ダメージを与える。その後、デッキ・墓地から「錬金窯-カオス・ディスティル」1枚を手札に加える。

 

成功報酬(アニメオリカ)

通常魔法カード

(1):相手は手札が6枚になるようにデッキからカードをドローする。その後、この効果で相手がドローしたカード1枚につき、自分は1000LP回復する。

 

錬金窯-カオス・ディスティル(アニメオリカ・調整)

永続魔法カード

(1):このカードの発動時の効果処理として、デッキから「ヘリオス」モンスター1体を手札に加える。

(2):自分フィールドに存在する「ヘリオス」モンスターが破壊されるとき、そのカードは除外されることなく墓地へ送られる。

(3):自分メインフェイズ時、フィールド上に存在するこのカードを除外し、EXデッキに存在する「ヘリオス」モンスターを含む融合素材を指定している融合モンスター1枚を対象に発動できる。除外されているそのカードによって決められた融合素材モンスターを持ち主のデッキに戻し、そのモンスターを融合召喚する。

 

原始太陽の従者

レベル4 攻撃1800 守備1800 効果 炎属性 炎族

このカードは自分フィールドに「マクロコスモス」または「ヘリオス」モンスターが存在する場合にのみ、召喚できる。

(1):1ターンに1度、自分メインフェイズ時に発動できる。このカードを攻撃力1000アップの装備カード扱いとして自分フィールドの「ヘリオス」モンスターに装備する。

(2):自分フィールドに存在する「マクロコスモス」「錬金窯-カオス・ディスティル」または「ヘリオス」モンスターが破壊されるとき、代わりに装備されているこのカードを破壊する。

 

SRブリキライダー

レベル5 攻撃1200 守備2300 チューナー 風属性 機械族

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):相手の直接攻撃宣言時、そのターンに自分が戦闘ダメージを受けている場合にのみ発動できる。手札に存在するこのカードを特殊召喚し、バトルフェイズを終了させる。

(2):自分メインフェイズ時、自分フィールドにこのカード以外のモンスターが存在しない場合に発動できる。自分フィールドに「SRトークン」1体を特殊召喚する。この効果を発動したターン、自分はS召喚以外の方法でEXデッキからモンスターを特殊召喚できない。

 

SRトークン

レベル1 攻撃0 守備0 トークン 風属性 機械族

「SRブリキライダー」の効果で特殊召喚される。

(1):このカードをS素材とする時、S素材の中に「スピードロイド」チューナーが存在する場合、このカードのレベルを2として扱うことができる。

 

SRダルマヘッド

レベル1 攻撃500 守備500 風属性 機械族

【Pスケール:青6/赤6】

このカード名の(1)のP効果はデュエル中1度しか発動できない。

(1):自分フィールドにモンスターが存在しない場合、自分Pゾーンにこのカード以外の「スピードロイド」カードが存在する場合、自分の墓地にチューナーを含む「スピードロイド」モンスター2体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚し、そのモンスターのみを素材に風属性SモンスターのS召喚を行う。

【モンスター効果】

(1):このカードをS素材とする場合、このカード以外のS素材がすべて「スピードロイド」モンスターの場合、このカードはチューナーとしても扱うことができる。

(2):このカードをS素材として風属性SモンスターのS召喚に成功したターン終了時に発動できる。このカード以外のS素材としたモンスターのうち、1体を墓地から手札に加える。

 

原始太陽の守り人

レベル4 攻撃0 守備2100 効果 炎属性 炎族

(1):相手メインフェイズ時、自分フィールドに「ヘリオス」モンスターが存在する場合、手札に存在するこのカードを除外することで発動できる。ターン終了時まで自分フィールドの「ヘリオス」モンスターの効果は無効化され、自分フィールドに存在するカードは相手のカード効果を受けない。この効果を発動した次の自分ドローフェイズ時、自分はカードをドローできない。

 

原始太陽ヘリオス・ネオ・メギストス

レベル10 攻撃4000 守備4000 融合 炎属性 炎族

「原始太陽ヘリオス」+「ヘリオス・デュオ・メギストス」+「ヘリオス・トリス・メギストス」

(1):このカードは除外されているモンスターの数により、以下の効果を得る。

●3体以上:このカードが相手モンスターと戦闘を行うとき、ダメージステップ終了時まで相手は魔法・罠・モンスター効果を発動できない。

●7体以上:このカードは相手のカード効果を受けず、相手はこのカード以外のモンスターを攻撃対象とすることができない。

●10体以上:自分メインフェイズ時に発動できる。このカード以外のフィールド上に存在するすべてのカードを除外する。

(2):このカードは破壊されたとき、ゲームから除外される。

(3):このカードが除外されてから次のスタンバイフェイズ時、ゲームから除外されている自分の炎属性・炎族モンスター1体をデッキに戻すすることで発動できる。除外されているこのカードを自分フィールドに特殊召喚する。この効果を発動したターン、自分は「ヘリオス」以外のモンスターを召喚・特殊召喚できない。

 

「ふん、つぶれたか…」

《原始太陽ヘリオス・ネオ・メギストス》が腕をどかすと、そこにはうつぶせに倒れ、全身から煙を出しているユーゴの姿があった。

「…」

あまりのダメージで声を上げることができず、虚ろな表情になっていた。

(ちくしょう…体中が熱い。力も、入らねえ…ここまで、なのかよ…)

リンまであと少しなのに、せっかくここまで来たのに。

(何をしているんですか!?ユーゴ!立って、立ってください!!)

クリアウィングの声が聞こえてくる。

立ち上がらなきゃいけないこと、そんなことはわかっている。

でも、もう立ち上がるだけの力がない。

だんだんと視界が暗くなっていく。

(立ち上がって)

今度はクリアウィングでも、リンでもない、ほかのだれかの声が聞こえてくる。

若干柚子かリンと似たような声のせいか、なぜか懐かしさが感じられる。

(立ち上がって、あなたにはまだ…立ち上がる力が残っている)

「俺に、力…」

「うん、これは…」

ユーゴのライフが0になり、デュエルが終了したはずなのに、なぜか《原始太陽ヘリオス・ネオ・メギストス》がいつまでも消えないことに違和感を抱き始めたアポロの前に大きなサイコロが落ちてきて、くるくると回転し始める。

「なんだ、このサイコロは…まさか、カード効果を発動したのか…!?」

フィールドにカードがなく、手札から発動した様子もない上に、ユーゴの墓地にそのようなカードは存在しないのに。

「…6、だ…」

「何?」

「ゲームから除外されている罠カード…《異次元からの流れ星》の効果…。俺が、ライフが直接攻撃でライフが0になるダメージを受けるとき…除外されているこいつを墓地へ戻し、サイコロを転がして…その目を俺が宣言する…。そして、当たった場合…俺のライフは…100、残る…」

くるくると回り続けたサイクロがようやく倒れ、出目がユーゴの宣言通り6になる。

そして、ユーゴはなけなしの力を振り絞り、立ち上がる。

 

ユーゴ

ライフ0→100

 

「そして…エクストラデッキからレベル7の風属性シンクロモンスター1体をシンクロ召喚扱いで特殊召喚する…。出てこい、《クリアウィング・ファスト・ドラゴン》…」

 

クリアウィング・ファスト・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

「どうにかシンクロモンスターを呼び出したようだが、《ヘリオス・ネオ・メギストス》はゲームから除外されているモンスターが7体以上存在する場合、相手のカード効果を受けず、このカード以外を攻撃対象とすることができない。俺はこれで、ターンエンドだ。そして、除外されている《異次元の偵察機》を特殊召喚する」

 

アポロ

手札0

ライフ5000

場 原始太陽ヘリオス・ネオ・メギストス レベル10 攻撃4000

  異次元の偵察機 レベル2 攻撃500

 

ユーゴ

手札3

ライフ100

場 クリアウィング・ファスト・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

どうにか首の皮一枚がつながったものの、それでもユーゴが絶体絶命の状況であることには変わりない。

《マクロコスモス》が消え、カードが除外されることはなくなったのはいいが、せっかく召喚した《クリアウィング・ファスト・ドラゴン》の効果を使うことができない。

今のユーゴの手札にはそれを打開する手段もない。

(ユーゴ!!)

「ああ…俺は…まだ!!俺の、ターン!!」

 

ユーゴ

手札3→4

 

「俺は手札から速攻魔法《マグネット・リバース》を発動!俺の墓地、もしくは除外されている通常召喚できない岩石族か機械族モンスター1体を特殊召喚する!俺は《HSRカイドレイク》を特殊召喚!」

 

HSRカイドレイク レベル8 攻撃3000

 

「そして、《カイドレイク》をリリースし…手札から魔法カード《受け継がれる力》を発動!《カイドレイク》の力を《クリアウィング・ファスト・ドラゴン》に!!」

 

クリアウィング・ファスト・ドラゴン レベル7 攻撃2500→5500

 

「これで、攻撃力は《クリアウィング》が上回る!!」

「それがどうしたというのだ?《ヘリオス・ネオ・メギストス》は破壊されたときに除外される。そして、除外されたこのカードは次のターンのスタンバイフェイズ時、除外されている炎属性・炎族モンスター1体をデッキに戻すことで復活する。そして、再び《ヘリオス・ネオ・メギストス》の効果を使うことで、貴様の命綱は消える!

!」

「てめえに次のターンはねえ!!俺は手札から魔法カード《ハイ・スピード・リレベル》を発動!墓地のスピードロイド1体を除外し、俺のシンクロモンスター1体のレベルを除外したモンスターと同じにする!俺は《カイドレイク》を除外する!」

《HSRカイドレイク》の幻影が《クリアウィング・ファスト・ドラゴン》の前に一瞬だけ現れると、青い風となってそのモンスターを包んだ。

「そして、攻撃力を除外したモンスターのレベル×500アップさせる!!」

 

クリアウィング・ファスト・ドラゴン レベル7→8 攻撃5500→9500

 

「攻撃力9500だと!?」

「いけ!!《クリアウィング・ファスト・ドラゴン》!リンを阻む最後の壁をぶっ壊せぇ!!」

《クリアウィング・ファスト・ドラゴン》が咆哮するとともに口から青い光線を発射する。

光線を撃ちぬかれた《原始太陽ヘリオス・ネオ・メギストス》が消滅し、光はアポロにも襲い掛かる。

「ぐ、うう…アークエリアプロジェクト達成まであと少しというところで…。プロフェッサー…申し訳、ありません…!!」

 

アポロ

ライフ5000→0

 

 

ウルカヌスの炎

通常魔法カード

(1):自分フィールドに「ヘリオス」モンスターが存在し、手札が0枚の場合に発動できる。デッキの上からカードを3枚確認し、その中から1枚を手札に加え、それ以外のカードをゲームから除外する。

 

異次元からの流れ星

通常罠カード

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):ゲームから除外されている風属性Sモンスター1体をEXデッキに戻すことで発動できる。自分の墓地に存在するそのモンスターと同じレベルのSモンスター1体を墓地から特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。発動後、このカードは墓地へ送らずゲームから除外する。

(2):相手の直接攻撃宣言時、そのモンスターの攻撃力が自分LPよりも上回っている場合、ゲームから除外されているこのカードを墓地へ戻すことで発動できる。サイコロを1回降り、その出目を宣言する。出目が宣言したものと同じだった場合、自分のライフを100にすることでこのターンに発生する自分へのすべてのダメージを0にする。その後、EXデッキからレベル7・風属性・ドラゴン族Sモンスター1体をS召喚扱いで特殊召喚する。この効果は(1)の効果を発動したターン、発動できない。



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第122話 悲しきL

扉をくぐれば、自分の戦いが終わる。

修羅場をくぐり続けた黒咲はそう思っていた。

この先には助けを求める最愛の妹がいて、彼女が安心したような笑顔を向けてくれる。

そう信じていた。

そう信じていたから、黒咲はずっと戦い続けることができた。

だが、今の黒咲にはそのような甘い幻想は叩き潰されていた。

首に伝わる圧迫感と浮かぶ体が黒咲に現実を突きつける。

黒咲の首をつかみ、持ち上げているのはそうするには華奢な白い腕。

その腕の主は黒咲にとって、命に代えてでも救いたい家族のはずの瑠璃のものだった。

「何…を、する!?瑠璃…!!」

「兄さん…私の使命の、邪魔をしないで…」

今まで聞いたことのない、心の通わない冷たい声色を見せた瑠璃はそのまま黒咲を片手で放り投げる。

地面を転がる黒咲は塔から転落するギリギリのところで勢いを抑えることができたが、この状況をいまだに飲み込むことができない。

(どういう、ことだ…瑠璃!?なぜ、お前が俺を…)

「いい?兄さん。私に近づかないで。もし次に近づいたら…殺すから」

見下したように見る瑠璃は黒咲に背を向け、その場から立ち去ろうとする。

だが、何かが飛んでくるような音が聞こえ、足を止めた瑠璃は振り返ると飛んできたものをつかむ。

「これは…?」

「《リトル・フェアリー》…。お前の友の…サヤカのカードだ…」

エクシーズ次元を出るときにサヤカから託されたカード。

このカードには彼女の瑠璃への謝罪と帰ってきてほしいという願いが込められている。

「お前を取り戻したいのは、俺だけの願いじゃない…」

ユートやサヤカといった、エクシーズ次元の仲間たちや自分を鍛えてくれた侑斗と凌牙。

黒咲のために戦ってくれた仲間たちのおかげで、今ようやく瑠璃の前まで来ることができた。

せっかくたどり着いたゴールに自分から背を向けるわけにはいかない。

「デュエルだ!瑠璃!お前の目を覚まさせて、一緒にエクシーズ次元へ帰る!!」

「私の使命は…ここにある。エクシーズ次元は、私の帰る場所じゃない」

「いいや、違う!お前がアカデミアに何を吹き込まれたかは知らないが、俺たちが生きて、デュエルをして、触れ合ったのはどこだ!?こんな場所じゃない!俺たちの故郷だろう!!それを帰る場所じゃないと言わせるものか!!」

「そう…どうあっても邪魔をするというのね。なら…あきらめさせてあげる」

そうつぶやくとともに瑠璃の左腕が光り、そこにはまるでいくつもの虫が組み合わさったかのようないびつなデュエルディスクが現れる。

可憐な瑠璃には全く似合わないそのデュエルディスクに顔をしかめつつ、黒咲もデュエルディスクを展開する。

「「デュエル!!」」

 

黒咲

手札5

ライフ4000

 

瑠璃

手札5

ライフ4000

 

 

「いけ!《覚醒の魔導剣士》!《オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン》!」

2体のモンスターの剣とブレスが《古代の機械巨人》を撃破し、イエローのデュエル戦士2人を吹き飛ばす。

遊矢とともにいる翔太も《MLX-魔装騎士ペイルライダー・ムーンレィス》の一斉射撃で《古代の機械猟犬》の軍団をせん滅していく。

「クソッ!数が多すぎんじゃねえか!?」

「ここは本拠地だ。これぐらいの数で喚くな!」

「喚く…?誰が!これだけのオーディエンスなんだ、逆にファイトがわくっても…!?」

権現坂の煽りを受け、奮起しようとする沢渡だが、急に次々と現れた人型ロボットたちに表情が固まる。

まるで瞬間移動したかのように次々と現れるロボットに翔太たちは包囲される。

「これは…確か、シンクロ次元で!!」

「あのクソ野郎の置き土産をそっくりアカデミアが持って行っていたってわけか!!」

ロジェが作ったライディングロイドをもとにしたであろうそれらのロボットたちがデュエルディスクを展開し、次々と古代の機械モンスターたちを召喚してくる。

「アカデミア…もう人間も必要ねえっていうのか!?」

 

「俺の先攻…。俺は《終末の騎士》を召喚」

 

終末の騎士 レベル4 攻撃1400

 

「このカードの召喚・反転召喚・特殊召喚に成功したとき、俺はデッキから闇属性モンスター1体を墓地へ送ることができる。俺は《BF-精鋭のゼピュロス》を墓地へ送る。そして、手札からフィールド魔法《ランクアップ・サンクチュアリ》を発動」

発動と同時に空がオーバーレイネットワークのような銀河へと変化していき、そこから一筋の光が黒咲と瑠璃の間に降り注ぐ。

「《ランクアップ・サンクチュアリ》…?」

「このカードの発動処理として、俺はデッキからRUMを1枚手札に加える。俺が手札に加えるのは《RUM-レイド・フォース》。そして、墓地の《精鋭のゼピュロス》は俺のフィールドに表側表示で存在するカード1枚を手札に戻すことで1度だけ墓地から特殊召喚できる」

発動したばかりの《ランクアップ・サンクチュアリ》が消え、空が元に戻るとともに黒咲のフィールドに《BF-精鋭のゼピュロス》が現れる。

 

BF-精鋭のゼピュロス レベル4 攻撃1500

 

「そして、俺は400のダメージを受ける」

 

黒咲

ライフ4000→3600

 

「これでレベル4のモンスターが2体…」

「俺はレベル4の《終末の騎士》と《精鋭のゼピュロス》でオーバーレイ!冥府の猛禽よ、闇の眼力で真実をあばき、鋭き鉤爪で栄光をもぎ取れ!エクシーズ召喚!飛来せよ!ランク4!《RR-フォース・ストリクス》!」

 

RR-フォース・ストリクス ランク4 攻撃100

 

「そして、俺は再び《ランクアップ・サンクチュアリ》を発動。発動処理に伴う効果については1ターンに1度しか使用できない効果。よって、その効果はここで発動しない。だが、《フォース・ストリクス》の効果発動。1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、デッキから鳥獣族・闇属性・レベル4モンスター1体を手札に加える。俺が手札に加えるのは《RR-ファジー・レイニアス》」

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・BF-精鋭のゼピュロス

 

「そして、俺は手札から《RUM-レイド・フォース》を発動!俺のフィールドのエクシーズモンスター1体をランクが1つ高いRRへとランクアップさせる。俺はランク4の《フォース・ストリクス》でオーバーレイネットワークを再構築!まだ見ぬ勇猛なハヤブサよ。猛き翼に秘めし未知なる力、今ここに知らしめよ!エクシーズ召喚!現れろランク5、《RR-エトランゼ・ファルコン》!」

 

RR-エトランゼ・ファルコン ランク5 攻撃2000

ランクアップ・サンクチュアリ ランクカウンター0→1

 

「ランクカウンター…?」

「そうだ、《ランクアップ・サンクチュアリ》はRUMの効果でエクシーズモンスターの特殊召喚に成功するたびに、そのモンスターの数だけランクカウンターを1つ置く。そして、俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

黒咲

手札5→2(うち1枚《RR-ファジー・レイニアス》)

ライフ3600

場 RR-エトランゼ・ファルコン ランク5 攻撃2000

  伏せカード2

  ランクアップ・サンクチュアリ(フィールド魔法 ランクカウンター1)

 

瑠璃

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「私のターン、ドロー…」

 

瑠璃

手札5→6

 

「私は手札から永続魔法《ドン・サウザンドの契約》を発動」

発動と同時に瑠璃の体が赤紫のオーラに包まれていく。

髪が揺れ、瑠璃の口角が吊り上げっていく。

「このカードの発動処理として、私と兄さんはライフを1000失い、デッキからカードを1枚ドローする。さあ、さっさと引きなさい!」

瑠璃の手から放たれる赤紫のオーラが黒咲を襲い、それを受けた黒咲の全身に激痛が襲う。

「ぐ、あ、ああああ!!なんだ、これは…!!」

「場所代よ、ここは私が使命を果たすための聖域。土足で入るのはたとえ兄さんでも認められないわ」

 

瑠璃

ライフ4000→3000

 

黒咲

ライフ3600→2600

 

痛みに苦しむ黒咲を後目に瑠璃はカードを引き、そのカードを黒咲に見せつける。

「私がドローしたカードは《LL-バード・コール》。《ドン・サウザンドの契約》の効果で、このカードが存在する間にドローしたカードはお互いに公開する。そして、公開したカードの中に魔法カードが存在する場合、そのプレイヤーは通常召喚を行えない。さあ、兄さんがドローしたカードを見せて」

「くっ…」

脂汗をかく黒咲は言われるがままカードを引き、それを瑠璃に見せる。

「《RR-バニシング・レイニアス》…。ついているわね、兄さん。私は手札から《LL-バード・コール》を発動。デッキからLL1体を手札に加えるか墓地へ送る。私は《ベリル・カナリー》を手札に加える。そして、手札から名前の異なるLL1体を特殊召喚できる。私が特殊召喚するのは《コバルト・スパロー》」

スズメのコスプレを身に着けたかのような薄金色の髪の少女が現れる。

現れたそのモンスターは瑠璃の姿を見た瞬間、怖いと思ったのかガタガタと震え始め、半分泣いているような状態になっていた。

 

LL-コバルト・スパロー レベル1 攻撃0

 

「《コバルト・スパロー》の効果。このカードの特殊召喚に成功したとき、デッキから鳥獣族・レベル1モンスター1体を手札に加える。私は《セレスト・ワグテイル》を手札に加える。そして、手札から魔法カード《ワン・フォー・ワン》を発動。手札1枚を墓地へ送り、手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する。私は《サファイア・スワロー》をデッキから特殊召喚」

続いて現れたのは燕のコスプレ姿の少女だ。

彼女も今の瑠璃が非常に怖いようで、仲間である《LL-コバルト・スパロー》と抱き合い、ガタガタ震えていた。

 

LL-サファイア・スワロー レベル1 攻撃0

 

手札から墓地へ送られたカード

・LL-セレスト・ワグテイル

 

「さらに手札から魔法カード《テイク・オーバー5》を発動。デッキの上からカードを5枚墓地へ送る」

 

デッキから墓地へ送られたカード

・ゴッドバードアタック

・サイクロン

・LL-ターコイズ・ワーブラー

・リトル・フェアリー

・D.D.クロウ

 

「そして、手札の《ベリル・カナリー》の効果。このカードは墓地にLLが存在するとき、そのモンスターとともに特殊召喚できる」

墓地に落ちたはずのトルコ石のついたウグイスのコスプレ姿の少女とともにカナリア姿の少女も現れる。

 

LL-ベリル・カナリー レベル1 攻撃0

LL-ターコイズ・ワーブラー レベル1 攻撃100

 

「そして、私は《ベリル・カナリー》、《ターコイズ・ワーブラー》、《サファイア・スワロー》、《コバルト・スパロー》でオーバーレイ。麗しき翼を持つ鳥たちよ。戦場に集いて気高く輝け!エクシーズ召喚!舞い降りよ!ランク1、《LL-アセンブリー・ナイチンゲール》!」

4体の小鳥たちがオーバーレイネットワークの中で一つとなり、やがてその姿が白・ピンク・青のトリコロールの衣装と体を持つ女性の鳥人へと変貌を遂げる。

そのモンスターは黒咲にとっては何度も見てきた、瑠璃のエースモンスター。

 

LL-アセンブリー・ナイチンゲール ランク1 攻撃0

 

「《アセンブリー・ナイチンゲール》はオーバーレイユニットとしているモンスター1体につき、攻撃力が200アップする」

 

LL-アセンブリー・ナイチンゲール ランク1 攻撃0→800

 

「そして、《セレスト・ワグテイル》の効果。このカードが墓地に存在するとき、このカードを私のフィールドのLLのオーバーレイユニットにすることができる」

 

LL-アセンブリー・ナイチンゲール ランク1 攻撃800→1000

 

「さらに、《アセンブリー・ナイチンゲール》のオーバーレイユニットになっている《ベリル・カナリー》の効果。フィールド上のこのカードを素材としてエクシーズ召喚に成功したモンスターの攻撃力は200アップし、そのモンスターのコントロールを変更することができなくなる」

 

LL-アセンブリー・ナイチンゲール ランク1 攻撃1000→1200

 

「そして、《アセンブリー・ナイチンゲール》は相手プレイヤーに直接攻撃でき、オーバーレイユニットの数だけ1度のバトルフェイズ中に攻撃することができる」

今の《LL-アセンブリー・ナイチンゲール》のオーバーレイユニットは5つで、攻撃力は1200。

5回連続攻撃で一気に黒咲のライフを0にすることができる。

「くっ…瑠璃!!」

「気安くその名前を呼ばないで…兄さん…いいえ、黒咲隼。さあ、この男を攻撃して!《アセンブリー・ナイチンゲール》!!」

命令を受けた《LL-アセンブリー・ナイチンゲール》が上空を舞い、《RR-エトランゼ・ファルコン》が黒咲を守るべく立ちはだかる。

だが、小柄な《LL-アセンブリー・ナイチンゲール》は比較的大柄なそのモンスターの脇を通り、黒咲に肉薄する。

「くっ…!罠発動!《和睦の使者》!!このターン、俺のフィールドのモンスターは戦闘では破壊されず、俺が受ける戦闘ダメージは0になる!!」

両足の爪で引き裂こうとする彼女の猛攻を黒咲の周囲に展開されたバリアが受け止める。

攻撃しても意味がないと判断したそのモンスターはおとなしく瑠璃のフィールドに戻った。

「和睦…?ふざけたことをするわね。私のために散々他人を蹴落としてきたあなたが」

「ああ…そうだ。わかっている!!その程度のこと…だが、今は!!」

「なんとでも言いなさい、黒咲隼。私はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

黒咲

手札2(うち1枚《RR-ファジー・レイニアス》)

ライフ2600

場 RR-エトランゼ・ファルコン ランク5 攻撃2000

  伏せカード1

  ランクアップ・サンクチュアリ(フィールド魔法 ランクカウンター1)

 

瑠璃

手札6→1

ライフ3000

場 LL-アセンブリー・ナイチンゲール(オーバーレイユニット5) ランク1 攻撃1200

  ドン・サウザンドの契約(永続魔法)

  伏せカード1

 

「ククク…いいぞ、黒咲瑠璃。これでいい…」

真っ暗な部屋の中で、タブレット端末から黒咲と瑠璃のデュエルの光景を見る白衣の男はニヤリと笑みを浮かべる。

部屋にはいくつもの試験官が置かれていて、その中には勝鬨が使用していた《パラサイト・フュージョナー》と似た虫が培養されている。

「ええ、ええ…わかっていますよ、プロフェッサー…。彼女こそが『創造』の鍵、そして…彼こそが『破壊』の鍵…。創造が破壊からしか生まれないように、アークエリアプロジェクトを完遂するためには…クククク…」

この研究者は今のプロフェッサーに感謝している。

かつての上司は寄生虫を利用した他者のコントロールや強化のすばらしさを理解しない俗物だった。

だが、今はその意味を理解してくれた存在のおかげでこうして大っぴらに動くことができる。

湯水のごとく提供されるデータや資金で、この虫たちの完成度も上がりつつある。

「さて…まだ彼女たちは途中だが、指示に従って、実践テストを開始するとしよう…」

 

「くそ!!このままでは!!」

「ひるむなぁ!数はまだ俺たちが上回っている!一斉攻撃で奴らを止めろ!!」

デュエル戦士たちは突入するランサーズやヴァプラ隊を止めることができず、苦戦する中でどうにか光明を見出そうとしていた。

見たことのないロボット達も参戦し、より数では上回ったものの、そのロボット達のデュエルに彼らは恐怖を覚える。

確かに自分たちと同じ古代の機械のカードや《融合》を使うロボットが多いものの、それらの大半が自分たちが支給されているデッキにはない、オベリスク・フォースなどが使用しているエリート用のカードを使用している。

おまけに、中には見たことのないカードや召喚法を使っているものもいて、彼らの注意がロボット達に向けられている。

もし、ロボット達だけの手柄でランサーズとヴァプラ隊が退けられる事態となったらどうなるか。

もはや自分たちはアカデミアにとって不要な存在となる。

そうなればどこにも居場所がなくなってしまう。

「奴らを倒れ!プロフェッサーのため…に…!?」

「これは…!!」

ロボット2体を撃破した侑斗の視界に頭を抱え苦しみ始めるデュエル戦士たちの姿が映る。

叫び声をあげ、異様な空間が生み出されていく中でも、ロボット達は味方のはずの彼らのことなど歯牙にもかけず、デュエルを続けている。

やがて叫び声が収まると、頭痛で苦しんでいたはずの彼らは無表情となり、遊矢たちに目を向ける

「あ、ああ…!!」

彼らの目を見た瞬間、オッドアイへと変わった遊矢の目は彼らから感じるどす黒い何かを感じ取ってしまう。

それが何もかもを塗りつぶしていき、塗りつぶされていく何かが助けを求めて手を伸ばしているが、その手すらも飲み込んでいく。

それを見た遊矢は耐えきれず、その場で膝をついて嘔吐してしまう。

「遊矢!!」

「おい、どうしたんだよ!?緊張のし過ぎで参っちまったのか!?」

遊矢の異常に驚く権現坂と沢渡だが、彼らも相手をしているロボット達への対応に集中せざるを得ず、遊矢を助けるだけの余裕がない。

豹変したデュエル戦士たちはロボットと合流して仕掛けてくる。

「私の、ターン…。私は手札、から《融合》…発動。手札の《パラサイト・フュージョナー》と《古代の機械兵士》を融合…」

「《パラサイト・フュージョナー》…!?」

フィールドに現れた《古代の機械兵士》に背後から取りついてきた《パラサイト・フュージョナー》が侵入していく。

グググと変な動きを見せ始めた《古代の機械兵士》の装甲にひびが入り、ひびや隙間などから触手や刃のようなものが出現していき、まるでそれは寄生虫にモンスターが乗っ取られたかのような光景だった。

「融合召喚…《古代の機械寄生兵》」

「くそ…機械を使うだけじゃ飽き足らず、やばいものを人間の体に植え付けやがって!!もうこいつらに倫理を解くだけ無駄か!」

「うえ…これじゃあ、キャンディーも食べられないよ」

気持ちの悪いものを見てしまい、遊矢ほどではないが気分が悪くなった素良は残念そうに口の中に入れていたキャンディーを捨てた。

 

「俺の…ターン!!」

 

黒咲

手札2→3

 

「《ドン・サウザンドの契約》の効果。さあ、ドローしたカードを見せなさい」

「ああ…俺がドローしたカードは魔法カード《RR-ネスト》。俺はこのカードを発動する!こいつは俺のフィールドにRRが2体以上存在する場合、デッキ・墓地からRR1体を手札に加えることのできるカードだ。そして、俺のフィールドにRRが存在するとき、手札の《RR-ファジー・レイニアス》は特殊召喚できる」

 

RR-ファジー・レイニアス レベル4 攻撃500

 

「そして、《RR-ネスト》の効果。俺はデッキから《RR-トリビュート・レイニアス》を手札に加える。そして、《トリビュート・レイニアス》を召喚!」

 

RR-トリビュート・レイニアス レベル4 攻撃1800

 

「このカードの召喚・特殊召喚に成功した俺のターンのメインフェイズ時、俺はデッキからRR1体を墓地へ送る。俺が墓地へ送るのは《RR-バリア》。そして、俺はレベル4の《ファジー・レイニアス》と《トリビュート・レイニアス》でオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろ、ランク4!《RR-フォース・ストリクス》!」

 

RR-フォース・ストリクス ランク4 守備2100

 

「《フォース・ストリクス》の効果。オーバーレイユニットを1つ取り除き、デッキから《レイダーズ・ウィング》を手札に加える」

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・RR-ファジー・レイニアス

 

「そして、オーバーレイユニットとして墓地へ送られた《ファジー・レイニアス》の効果。俺はデッキからもう1枚の《ファジー・レイニアス》を手札に加える。そして、《エトランゼ・ファルコン》のオーバーレイユニットを1つ取り除き、《レイダーズ・ウィング》を手札から特殊召喚する!」

 

レイダーズ・ウィング レベル4 守備2000

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・RR-フォース・ストリクス

 

(そして…)

《RR-エトランゼ・ファルコン》を見た後で、黒咲は手札に残った最後の1枚を見る。

侑斗からRUMを学び、ある程度修練を積んだ後で彼から託されたカード。

そのカードを受け取った時のことを思い出す。

 

レジスタンスでの修行の中、RUMでエクシーズ召喚した《RR-レヴォリューション・ファルコン》でユートに勝利した後のこと、呼び出された黒咲はさっそく侑斗から褒められることになった。

「黒咲君、君はすごいよ。もうRUMを自分の手足のように使いこなせてる。僕はここまでRUMを連携させることなんてできないよ」

「いや…剣崎さん。まだ足りない。アカデミアから、瑠璃を取り戻すには、まだ…」

「そうだね。アカデミアは僕たちよりも圧倒的に数がいる。君一人だけ、レジスタンスだけでは守るだけで精一杯。君の本当の願いをかなえることはできない。だから…」

一度言葉を止めた侑斗から渡されたのは黒咲にとっては今やなじんだ存在のカード。

だが、その中身を黒咲は理解できなかった。

「剣崎さん、このカードは…!?」

「アカデミアからエクシーズ次元を取り戻すには、もっと多くの力がいる。たくさんの人との協力が、信頼が必要になる。それができるかできないか…それにかかっているんだ」

 

(最初は理解できなかった…。このカードのこと、信頼のこと…)

今振り返ると、確かに黒咲はレジスタンスを、特にユートや家族である瑠璃のことを信頼していただろう。

だが、あくまでもその信頼は仲間内だけのことであり、狭い範囲での話。

スタンダード次元にやってきて、ランサーズに加わることに応じたのはあくまでも侑斗からの願いがあり、彼がここにいたからという理由が大きい。

彼がいなければ、ランサーズに加わらずに1人で戦っていたかもしれない。

だが、曲がりなりにもランサーズに加わり、戦う中で信頼できる仲間ができ、少しずつ変わっていった。

だから、今ならこのカードを使うことができる。

「俺は手札から《WRUM-トラスト・フォース》を発動!!このカードはお互いに自分のフィールドに存在するエクシーズモンスターを対象とすることで発動できる。俺が対象とするのは《エトランゼ・ファルコン》!!さあ、瑠璃!お前もエクシーズモンスターを選べ!」

「くっ…選ぶとしても、《アセンブリー・ナイチンゲール》しかいない…!私は《アセンブリー・ナイチンゲール》の効果を発動!オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、このターン私のLLは戦闘・効果では破壊されず、私が受ける戦闘ダメージを0にする!」

オーバーレイユニットを宿した《LL-アセンブリー・ナイチンゲール》は目を閉じて歌い始める。

歌によって生じた波紋が瑠璃の周囲で停滞し、バリアの代わりになる。

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・LL-セレスト・ワグテイル

 

「そして、俺のエクストラデッキからそれらのモンスターのランクの合計と同じランクを持つRRを2体選択し、それらのモンスターをオーバーレイユニットとしてエクシーズ召喚する!」

「自分のモンスターだけじゃなくて、私のフィールドのモンスターまでランクアップさせるなんて…」

そんなカードは下手をすれば相手に大きなアドバンテージを与えるかもしれないカード。

それに、コントロールを奪われる事態が起こらない限りはアカデミアとの戦いでは決して使われることがないであろうカード。

確かに、《LL-アセンブリー・ナイチンゲール》の持つ効果を考えるとそれに対応できるカードでもあるかもしれない。

だが、今の黒咲にとってそれはついででしかない。

「瑠璃…。俺は信じている。お前たちと一緒に故郷へ帰って、またこんなバカげた戦いの前までの日々を取り戻せることを。お前が何を吹き込まれたのかは知らない…だが、俺が見た瑠璃の笑顔を、楽しんでいた姿を、お前と過ごした時間のすべてを…俺は信じている!!」

「黒咲…兄、さん…」

「革命の炎をまといし2匹のハヤブサよ、その炎で欺瞞を焼き尽くし、真実への灯となれ!!ダブルランクアップ・エクシーズチェンジ!現れろ!《RR-レヴォリューション・ファルコン-エアレイド》!!《RR-レヴォリューション・ファルコン》!!」

《RR-エトランゼ・ファルコン》と《LL-アセンブリー・ナイチンゲール》が上空のオーバーレイネットワークに取り込まれて一つとなり、やがてそれらが2つの光へと分離する。

そして、黒咲のフィールドに《RR-レヴォリューション・ファルコン》が、瑠璃のフィールドに《RR-レヴォリューション・ファルコン-エアレイド》がそれぞれ舞い降りる。

 

RR-レヴォリューション・ファルコン ランク6 攻撃2000

 

RR-レヴォリューション・ファルコン-エアレイド ランク6 攻撃2000

 

「そして、《ランクアップ・サンクチュアリ》の効果。RUMの効果で特殊召喚されたモンスターは2体。よってランクカウンターが2つ乗る」

 

ランクアップ・サンクチュアリ(フィールド魔法) ランクカウンター1→3

 

「どういうつもりでそんなカードを使ったかは知らないけれど、《エアレイド》の効果を使わせてもらうわ!黒咲隼!《エアレイド》はエクシーズ召喚に成功したとき、相手フィールドに存在するモンスター1体を破壊して、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与える!その効果でせっかくの《レヴォリューション・ファルコン》を破壊するわ!!」

瑠璃のフィールドの《RR-レヴォリューション・ファルコン-エアレイド》が口から真っ赤な光線を発射し、それが己の分身へと襲い掛かる。

だが、その光線は彼に届く前に消滅してしまう。

「何!?」

「俺は墓地の《RR-バリア》の効果を発動した。俺のフィールドのRRエクシーズモンスターが破壊されるとき、代わりに墓地に存在するこのカードを除外できる」

 

「俺は《ランクアップ・サンクチュアリ》の効果を発動!ランクカウンターをすべて取り除き、俺のフィールドに存在するRR1体を取り除いたランクカウンターと同じ数のランクを持つRRにエクシーズ召喚させる!俺はランクカウンターを3つすべて取り除き、《レイダーズ・ウィング》でオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろ、ランク3!《RR-デビル・イーグル》!」

黒咲のこれまでエクシーズ召喚してきたRRと比較すると小柄な分類で、真っ黒な走行をした鷲が《レイダーズ・ウィング》を大体の素材として舞い降りる。

 

RR-デビル・イーグル ランク3 守備0

 

「《デビル・イーグル》の効果。オーバーレイユニットを1つ取り除き、相手フィールドの特殊召喚されたモンスター1体の攻撃力分のダメージを相手に与える!」

「何…!?そのために、《エアレイド》を私のフィールドに特殊召喚したというの!?」

「ああ…。お前が《アセンブリー・ナイチンゲール》を使ってくることも、信じていたということだ!」

瑠璃のデッキには攻撃力の低いモンスターが多く、《RR-デビル・イーグル》の効果を活用できない状況の方がいい。

だから、《WRUM-トラスト・フォース》は結果的に《RR-デビル・イーグル》に活躍の機会を与えた。

オーバーレイユニットを宿した《RR-デビル・イーグル》の鳴き声が衝撃波となって瑠璃を襲う。

「キャアアアア!!」

 

瑠璃

ライフ3000→1000

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・レイダーズ・ウィング

 

「さらに、《レヴォリューション・ファルコン》の効果発動!RRエクシーズモンスターをオーバーレイユニットとしている場合、1ターンに1度、相手フィールドのモンスター1体を破壊し、破壊したモンスターの攻撃力の半分の数値のダメージをお前に与える!!《エアレイド》の攻撃力は2000。よって、お前に1000のダメージを与える!目を覚ませ、瑠璃ぃぃぃ!!!」

《RR-レヴォリューション・ファルコン》が黒咲の叫びとともに体中を炎で包んでいく。

瑠璃のフィールドの《RR-レヴォリューション・ファルコン-エアレイド》もその体を炎へと変化させて本来の自分自身と一つになる。

巨大な炎の鳥へと変わった2体のRRが一直線に瑠璃へと突撃する。

瑠璃のいた場所で大きな爆発が起こり、その光から腕で目を守った黒咲は爆発が収まった場所を見る。

「瑠璃…!!」

これで、このデュエルに決着がつく。

そして、瑠璃は正気に戻って黒咲に元へ戻ってくる。

だが、そんなことはない。

効果の発動が終わっても、ソリッドビジョンが消えていないから。

「私は…罠カード《ダッジ・ロール》を発動したわ。私が受けるダメージを0にする…」

《RR-レヴォリューション・ファルコン》と《RR-デビル・イーグル》の猛攻をもってしても、このターンで決着をつけることができなかった。

それでも、瑠璃のフィールドから《LL-アセンブリー・ナイチンゲール》はなく、黒咲のフィールドには3体のエクシーズモンスターが存在する。

まだ望みがついえたわけではない。

「俺はこれで、ターンエンドだ…」

 

黒咲

手札3→0

ライフ2600

場 RR-レヴォリューション・ファルコン(オーバーレイユニット2) ランク6 攻撃2000

  RR-フォース・ストリクス(オーバーレイユニット1) ランク4 守備2100

  RR-デビル・イーグル ランク3 守備0

  伏せカード1

  ランクアップ・サンクチュアリ(フィールド魔法)

 

瑠璃

手札1

ライフ1000

場 ドン・サウザンドの契約(永続魔法)

 

「ラストターン、ドロー…」

 

瑠璃

手札1→2

 

「ドローしたカードは《リ・エクシーズ》。…《リ・エクシーズ》を発動…。墓地のエクシーズモンスター1体を墓地のモンスターを素材にエクシーズ召喚できる…」

「くっ…瑠璃…!!」

あの一撃が一歩届かず、ライフを削り切れなかったことで再び《LL-アセンブリー・ナイチンゲール》の出現を許すことになった状況に唇をかみしめる。

墓地に眠る5体のLLが再びフィールドに現れ、地面に出現したオーバーレイネットワークに飲み込まれていく。

「エクシーズ召喚…!再び現れなさい、《LL-アセンブリー・ナイチンゲール》!!」

 

LL-アセンブリー・ナイチンゲール ランク1 攻撃0→1000→1200

 

「《ナイチンゲール》のダイレクトアタックで勝負を決めるつもりか!?」

「これで終わり…さようなら、黒咲隼」

《LL-アセンブリー・ナイチンゲール》が上空を舞い、今度は翼を動かして真空波を生み出す。

「罠発動!《軍神の采配》!このカードは相手のバトルフェイズ中に発動でき、攻撃対象を俺が決める!ただし、その発生するお前へのダメージは0となる。攻撃対象は《レヴォリューション・ファルコン》!!」

黒咲の盾となるように割り込んだ《RR-レヴォリューション・ファルコン》がかまいたちを己の装甲で受け止める。

大きなひびが入ったが、それでも戦闘継続可能なレベルを維持していた。

「これで、残り4回攻撃を行ったとしても、無意味だ」

「無意味…?フフフ、笑わせないで。無意味は、あなたよ!!速攻魔法《LL-ストリーム》発動!私のフィールドにレベル1またはランク1のLLが存在するとき、デッキからレベル1のモンスター1体を特殊召喚できる。ただし、この効果で特殊召喚されたカードは攻撃できず、ターン終了時に破壊される!私が特殊召喚するのは《パラサイト・フュージョナー》!!」

「この、タイミングで特殊召喚だと!?それに、そのカードは…!!」

可憐な鳥たちに包まれた瑠璃のデッキに似つかわしくない不気味な寄生虫がフィールドに現れ、すぐに味方であるはずの《LL-アセンブリー・ナイチンゲール》にかみつく。

かみつかれた瑠璃のエースは最初は苦しんだものの、次第に目からトーンが消えていく。

そして、取りついた《パラサイト・フュージョナー》は中に入り込み、その体を作り替えていく。

「《パラサイト・フュージョナー》は特殊召喚に成功したとき、このカードを含む自分フィールドのモンスターを素材に融合召喚を行える!そして、《パラサイト・フュージョナー》自身はあらゆる融合モンスターの融合素材になれる!!闇夜に響く小夜鳴鳥のさえずりよ。内なる声と一つになりて更に激しく鳴くがいい。融合召喚!舞い降りよ!気高き孤高の夜鳴き鳥。《LL-インディペンデント・ナイチンゲール》!」

赤いオーラに包まれた《LL-アセンブリー・ナイチンゲール》だったモンスターの瞳は赤く染まり、血のような赤が混じった翼へと変貌を遂げていく。

その周囲には《パラサイト・フュージョナー》の幻影がいくつも浮遊していた。

 

LL-インディペンデント・ナイチンゲール レベル1 攻撃1000

 

「馬鹿な…瑠璃が、融合召喚を…。それに、LLだと…!?」

デュエル戦士たちの代名詞といえる召喚法を、それによって苦しめられたはずの瑠璃が何のためらいもなく使い、おまけに自らのエースカードを進化させたこの現実を受け止めることができなかった。

(だが、このターンだけしのげればいい…。《軍神の采配》の効果は生きている。そして、俺のターンのバトルフェイズ時にこのカードを墓地から除外すれば、《レヴォリューション・ファルコン》でダイレクトアタックができる…!)

「《インディペンデント・ナイチンゲール》は融合素材にしたエクシーズモンスターのオーバーレイユニットの数だけレベルが上がり、攻撃力は自らのレベル1つにつき500アップする…。《アセンブリー・ナイチンゲール》のオーバーレイユニットは5つ!!」

 

LL-インディペンデント・ナイチンゲール レベル1→6 攻撃1000→4000

 

「こ、こ…攻撃力4000…!?」

バトルフェイズ中に現れた寄生虫から力を受けただけで、労せずに《RR-レヴォリューション・ファルコン》の攻撃力をはるかに上回るモンスターを呼び出した。

今の黒咲にはここからの攻撃に耐えるだけの力はない。

《軍神の采配》は己へのダメージを抑える効果はない。

「さようなら…」

翼を広げた《LL-インディペンデント・ナイチンゲール》は目の前に巨大な闇と風のエネルギーを凝縮させていく。

そして、それは《RR-レヴォリューション・ファルコン》ともども黒咲を吹き飛ばすには十分すぎるほどの大きさへと膨張していく。

(ここまで、なにか…!?)

せっかく瑠璃の目の前までこれたのに。

もうすぐ彼女と一緒にエクシーズ次元へ帰れるはずだったのに。

その長い闘いが助けたいはずの瑠璃の手で幕を下ろすことになる。

その現実に衝撃を受ける黒咲だが、なぜか叫びたい思いはわかない。

思い浮かぶのは戦っているランサーズの仲間たちのこと、そして遊矢の中にいるユートのこと。

「(ああ…そうだ。俺が、終わりじゃない。これだけが、すべてじゃない…)瑠璃!!よく聞け、瑠璃!!たとえ俺が助けることができなくとも、俺の仲間が必ずお前を助ける!!」

彼らなら、きっと瑠璃をもとに戻して、彼女をエクシーズ次元に連れて帰ってくれる。

そこにもしかしたら自分はいないかもしれない。

だが、瑠璃が再び平和な日常へと帰ってくれるなら、そんなことは些末事だ。

「だから…待っていろ!!」

「それは遺言のつもり!?なら、もう十分ね!消えなさい!!」

膨張したエネルギーが発射され、《RR-レヴォリューション・ファルコン》が迎撃のためにミサイルを発射するが、いくらミサイルを受けても勢いは衰えることがない。

エネルギーを受けて《RR-レヴォリューション・ファルコン》が爆発する。

そして、エネルギーと爆風は黒咲を襲い、彼は吹き飛ばされていく。

宙を舞う体は塔から離れていき、やがて重力に従って落ちていく感じがした。

(すまない、剣崎さん…。ユート、あとは…頼む…)

 

黒咲

ライフ2600→0

 

古代の機械寄生兵(アンティーク・ギア・パラサイト・ソルジャー)

レベル5 攻撃2100 守備2100 融合 地属性 機械族

「パラサイト・フュージョナー」+レベル4以下の「アンティーク・ギア」モンスター

(1):このカードが攻撃する場合、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。

(2):このカードが戦闘・効果によって破壊され墓地へ送られたとき、自分の墓地にこのカードの融合素材となったモンスター一組がそろっている場合にのみ発動する。それらのモンスターを墓地から特殊召喚する。

 

WRUM-トラスト・フォース

通常魔法カード

このカード名のカードは1ターンに1度しか発動できない。

(1):お互いのフィールドにXモンスターが存在するとき、互いのプレイヤーは自分フィールドのXモンスターを1体ずつ対象とすることで発動できる。EXデッキから選択したモンスターのランクの合計と同じランクを持つ「RR」Xモンスター2体を対象としたそれぞれのモンスターの上に重ねてX召喚する。

 

RR-バリア

通常罠カード

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードは発動後、装備カード扱いとなって「RR」Xモンスター1体に装備できる。装備モンスターは以下の効果を得る。

●1ターンに1度、自分フィールドに存在する「RR」が相手によって破壊されるとき、代わりにこのカードのX素材を1つ取り除くことができる。

(2):自分フィールドに存在する「RR」Xモンスターが戦闘・効果によって破壊されるとき、代わりに墓地に存在するこのカードをゲームから除外することができる。

 

ランクアップ・サンクチュアリ

フィールド魔法カード

(1):このカードの発動処理時、自分はデッキから「RUM」魔法カードを1枚手札に加える。

(2):自分または相手が「RUM」魔法カードの効果でXモンスターの特殊召喚に成功したとき、特殊召喚したモンスターの数だけこのカードの上にランクカウンターを置く。

(3):自分フィールドのXモンスター以外のモンスター1体を対象とし、このカードに乗っているランクカウンターをすべて取り除くことで発動できる。取り除いたランクカウンターと同じ数のランクを持つ「RR」Xモンスター1体をそのモンスターの上に重ねてX召喚する。

 

LL-ストリーム

速攻魔法カード

このカード名のカードは1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドにレベル1またはランク1の「LL」モンスターが存在する場合にのみ発動できる。デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターは攻撃できず、ターン終了時に破壊される。

 

軍神の采配(アニメオリカ・調整)

通常罠カード

(1):相手ターンのバトルフェイズ中にのみ発動できる。このターン、相手モンスターの攻撃宣言時、攻撃対象を代わりに自分が選択する。この効果を発動したターン、戦闘で発生する相手への戦闘ダメージは0となる。

(2):自分ターンのバトルフェイズ時、墓地に存在するこのカードを除外し、自分フィールドのモンスター1体を対象に発動できる。このターン、そのモンスターは相手プレイヤーに直接攻撃できる。

 

 

「うおおおお!!」

D-HEROを操るデュエルロイドを《覚醒の魔導剣士》が切り捨てる。

周囲に広がるロボットの残骸を見つつ、周囲の敵の気配を感じなくなった遊矢は一息つく。

だが、何か冷たい風が通り過ぎるのを感じた。

「なんだ…この感じ!?」

(胸騒ぎがする…。まさか、隼…!?)



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第123話 蝕まれる者たち

「があ…!!リン、リン!!俺だ!ユーゴだ!!俺のことがわかんねーのかよ!?」

扉を開け、ようやくリンの姿を見ることができて一安心していたユーゴをリンの華奢な拳が襲い掛かった。

そこから放たれたとは思えない、まるで現役プロボクサーの一撃を受けたかのようなそのダメージにふきとばされたユーゴの意識が途切れかける。

どうにか唇を噛み、血を流しながらもその痛みでどうにか途切れかける意識を無理やり戻し、立ち上がるユーゴはフラフラと自分の前へ歩くリンを見る。

「リン…」

(気を付けてください、ユーゴ!彼女の中に何かを感じます…それが彼女を操って…)

「何かって何なんだよ!?正体は!?」

(そこまではわかりません!わからないから何かって言ってるでしょう!!)

「くそ…アカデミアめ、リンに何しやがった!?」

さらった上に、今度は洗脳という悪辣な手段に打って出たアカデミアに怒りを覚えるユーゴだが、今やるべきは目の前のリンをどうにかして洗脳から解放することだ。

(解くすべがない以上、これ以上危害を加える前に彼女を拘束すべきです!)

「拘束ったって…!!」

その手段を問うユーゴだが、その前にユーゴの左腕のデュエルディスクめがけてアンカーが飛んできて、それがデュエルディスクをつかむ。

同時にデュエルディスクが勝手に展開し、カード5枚が排出されて地面に散らばる。

「ユーゴ…あんたを抹殺するわ。この世界にために…」

「世界にために…それは…」

ズァークのこと、ユーゴの脳裏に真っ先に浮かんだのはそれだ。

アカデミアが目指すズァークの抹殺。

毒を以て毒を制すユーリは現状は別として、遊矢とユーゴは抹殺対象。

洗脳されているリンがユーゴの命を狙うのは道理だ。

「悪く思わないでね、あんたが死んでくれたら世界は救われるんだから…」

「くそ…リンの本心じゃねえことはわかってるけど、リンに言われてると思うと、刺さるぜ…」

同時に、そんなことをリンに言わせているアカデミアに怒りを抱く。

その怒りが意識を完全につなぎ止め、ユーゴは立ち上がる。

「来いよ…リン!お前の目を覚まさせてやる!!!」

「せめてもの情けよ…デュエルで殺してあげる…」

「デュエル!!」

 

ユーゴ

手札5

ライフ4000

 

リン

手札5

ライフ4000

 

「黒咲君…黒咲君応答を…!」

「ダメ…ユウ!こっちもつながらない…」

デュエルロイドとデュエル戦士の群れをある程度薙ぎ払った侑斗とウィンダが黒咲に通信をつなげようとするが、一向にその返事が来ない。

雑音が響き、やがて信号自体が途切れてしまった。

それは黒咲がカードに変えられたか、デュエルディスクが破壊されたことを意味していた。

「黒咲君…」

もしかして、塔にたどり着く前に力尽きてしまったのか。

だが、最後の信号は確かに塔の最上階で記録され、そこである程度時間が経過している。

そこで何があったかはわからないが。

「剣崎さん、作戦は…」

「…わかってる。僕たちは進む、それに変更はないよ!!」

ユーゴと黒咲はたとえ敗れて、瑠璃とリンの救出に失敗したとしても、2人を助けない。

瑠璃とリンを助けたいとは考えているが、そのために単独行動をとることになったユーゴと黒咲を助けに行くことによって更なる被害が出て、それによって戦いに敗れることになったら元も子もない。

アカデミアを倒し、次元戦争を終わらせるにはたとえ仲間が危機に陥ったとしても時には切り捨てないといけない。

既にともに突入したヴァプラ隊にも犠牲者は出ている。

「くっ…」

「つらいよね…遊矢君。でも、それに慣れちゃだめだ。つらいのを…悲しいのをごまかし続けたら、人の心の痛みがわからなくなってしまうから…」

「痛み…」

「その痛みがわかる優しい君なら、そのカードを使える。君の信条に反するカードかもしれないけど…」

少し悲し気な侑斗の言葉に遊矢はエクストラデッキに眠る新たなカードに目を向ける。

4つの次元とは異なる別世界で手に入れたと思われるカード。

遊矢は目の前で戦うデュエルロイド、そして自分のフィールドにいる《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》と《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》に目を向ける。

「俺は《トランプ・ウィッチ》のペンデュラム効果を発動!1ターンに1度、俺のフィールドのモンスターを素材に融合召喚を行う!俺は《オッドアイズ》と《ダーク・リベリオン》を融合!砕かれた世界に宿りし憎しみと悲しみ、今次元のはざまで一つとなる!融合召喚!」

《EMトランプ・ウィッチ》が生み出す数多くのトランプが生み出す渦の中に遊矢とユートのエースモンスターが飛び込んでいき、一つとなる。

その姿は《覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン》とも《覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン》とも違う。

リボルバーの中にあるチャンダーが胴体についていて、薄緑のラインのついた黒と赤の肉体を持つ人型の機械竜といえるモンスターが渦の中から現れる。

「現れろ!!《ヴァレルロード・F・ドラゴン》!!!」

本来ならこの次元で、遊矢が使うなどあり得ない怒り狂う竜が彼の手でフィールドに現れた。

 

ヴァレルロード・F・ドラゴン レベル8 攻撃3000

 

 

「俺の先攻!俺は《カードガンナー》を召喚!」

 

カードガンナー レベル3 攻撃400

 

「こいつは1ターンに1度、デッキの上からカードを3枚まで墓地へ送ることで、1枚につき500ポイント攻撃力がアップする!」

 

デッキから墓地へ送られたカード

・スピードリバース

・SR電々大公

・SRマジックハウンド

 

カードガンナー 攻撃400→1900

 

「そして、手札1枚を墓地へ捨て、手札から速攻魔法《SRルーレット》を発動!サイコロを1回振り、レベルの合計が出た目と同じになるように手札・デッキからSRを効果を無効にして特殊召喚する。だが、その効果でモンスターを特殊召喚できなかった場合、出た目1つにつき500ポイント俺はライフを失う!」

ユーゴの目の前にルーレットが出現し、回転するそれの上をサイコロが転がる。

ルーレットが止まると同時にサイコロも止まり、出た目は4となった。

「よっしゃあ!俺は《ドミノバタフライ》と《ビーダマシーン》を特殊召喚だ!」

 

手札から墓地へ送られたカード

・SR三つ目のダイス

 

SRドミノバタフライ レベル2 攻撃200(チューナー)

SRビーダマシーン レベル2 攻撃200

 

「これでレベルの合計は7…。出すつもりね、《クリアウィング》を」

「ああ…行くぜ!俺はレベル2の《ビーダマシーン》とレベル3の《カードガンナー》にレベル2の《ドミノバタフライ》をチューニング!その美しくも雄々しき翼翻し、光の速さで敵を討て!シンクロ召喚!現れろ、レベル7!《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》!」

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

「そして俺はカードを1枚伏せて、ターンエンド」

 

ユーゴ

手札5→1

ライフ4000

場 クリアウィング・シンクロ・ドラゴン レベル7 攻撃2500

  伏せカード1

 

リン

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「《クリアウィング》…破滅の風ね。ユーゴともども死んでもらうわ」

(死んでもらう…そうですね。私という心が生まれたのも、元々はユーゴを殺すため、きっと…彼らも…)

「私のターン、ドロー」

 

リン

手札5→6

 

「私のフィールドにモンスターが存在しない場合、手札の《WW-アイス・ベル》は特殊召喚できる」

水色の水晶でできた杖に腰かけたピンクの大きなリボンとスカートのついた白いドレス姿をした青い髪の魔法少女が空を飛んで現れる。

登場と同時に右手にスティックを出すと、それを振って上空に魔法陣を生み出す。

 

WW-アイス・ベル レベル3 攻撃1000

 

「そして、デッキから新たなWWを特殊召喚する。《WW-グラス・ベル》を特殊召喚」

魔法陣の中から飛び出したのは《WW-アイス・ベル》と同じ服装をしているものの、髪の色は薄緑色で乗っている杖には黄色い魔石が先端に埋め込まれている魔法少女だった。

 

WW-グラス・ベル レベル4 攻撃1500(チューナー)

 

「《アイス・ベル》の効果。このカードの召喚・特殊召喚に成功したとき、相手に500のダメージを与える」

再びスティックをふるうと、ユーゴの頭上に魔法陣が出現し、そこから風の刃がユーゴに向けて飛ばされる。

「ぐっ…!」

風の刃はユーゴのライディングスーツを傷つけ、その下の彼の肌を切り、出血させる。

 

ユーゴ

ライフ4000→3500

 

「さらに《グラス・ベル》の効果。このカードの召喚・特殊召喚に成功したとき、デッキからWW1体を手札に加える。私は《スノウ・ベル》を手札に加える。そして、《スノウ・ベル》は私のフィールドに風属性モンスターが2体以上存在し、それ以外の属性のモンスターが存在しない場合、手札から特殊召喚できる」

続けて召喚されたのは2体のWWとは大きく異なり、上部に天使の羽飾りがついた水色の鈴だった。

 

WW-スノウ・ベル レベル1 攻撃100(チューナー)

 

「レベル3の《アイズ・ベル》にレベル4の《グラス・ベル》をチューニング。真冬の風よ。雪も氷も我が力として吹き抜けよ!シンクロ召喚!現れよ!レベル7!《WW-ウィンター・ベル》!」

女性の上半身を思われる胴体をしているが、腕が刃のような鋭い羽根になっていて、サメのヒレのついた群青色の球体につながれたモンスター、ユーゴのよく知るリンのエースモンスターが敵として現れる。

 

WW-ウィンター・ベル レベル7 攻撃2400

 

「まだよ…レベル7の《ウィンター・ベル》にレベル1の《スノウ・ベル》をチューニング。不滅の水晶と氷河の魔女よ、吹雪となって永久の眠りをもたらせ!シンクロ召喚!現れよ、レベル8!《WW-ダイヤモンド・ベル》!」

シンクロ召喚されたばかりの《WW-ウィンター・ベル》を素材として、続けて出現したのは巨大な鈴ともとれる大きなスカートをつけた、ダイヤモンドでできた彫像のような女魔導士で、そこからは生物としての暖かさを感じることができない。

 

WW-ダイヤモンド・ベル レベル8 攻撃2800

 

「立て続けにシンクロ召喚で、一気に《ダイヤモンド・ベル》かよ!」

「《ダイヤモンド・ベル》の効果。このカードのシンクロ召喚に成功したとき、墓地のWWモンスター1体の攻撃力の半分のダメージを与える。《ウィンター・ベル》の攻撃力の半分、1200のダメージを受けてもらうわ!」

「くっ…!」

ユーゴの脳裏にシンクロ素材となった《WW-スノウ・ベル》が浮かぶ。

彼女をシンクロ素材とした風属性シンクロモンスターは相手のカード効果では破壊されないため、《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》で破壊することができない。

「なら、せめてダメージは防がせてもらうぜ!《クリアウィング》の効果!レベル5以上のモンスターが効果を発動したとき、その発動を無効にし、破壊する!!」

「《スノウ・ベル》、《ダイヤモンド・ベル》を守って」

《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》のプリズム状の部分から放たれる緑色のビームから《WW-ダイヤモンド・ベル》を守るように《WW-スノウ・ベル》の幻影が現れてそれを受け止めていく。

大きなダメージを防ぐことはできたものの、それでも《WW-ダイヤモンド・ベル》を止めることにはつながらない。

「バトル。《ダイヤモンド・ベル》で《クリアウィング》を攻撃」

《WW-ダイヤモンド・ベル》の背後からダイヤモンドでできた鳩が現れ、それらが《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の周囲を飛び回った後で、かまいたちを放つ。

「くっ…!俺は速攻魔法《インスタント・チューン》を発動!相手フィールドにモンスターが特殊召喚されたターン、こいつをレベル1のチューナー扱いとして俺のフィールドのシンクロモンスター1体とともにシンクロ素材としてシンクロ召喚を行う!レベル7の《クリアウィング》にレベル1の《インスタント・チューン》をチューニング!神聖なる光蓄えし翼煌めかせ、その輝きで敵を討て!シンクロ召喚!いでよ!レベル8!《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》!」

かまいたちに襲われ、体を傷つけられた《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》だったが、全身からビームを放って鳩たちを薙ぎ払うと、その姿を《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》へと変貌させ、傷ついた体も癒していく。

 

クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン レベル8 攻撃3000

 

「攻撃力3000…。攻撃中止ね。私は手札から魔法カード《マジックブラスト》を発動。私のフィールドの魔法使い族1体につき、200のダメージを与える」

リンのデュエルディスクから水色の魔力の球体が生み出され、それがユーゴに向けて発射される。

「この程度…!」

両腕で身を守り、それを受け止めるユーゴだが、それと同時に再び《WW-ダイヤモンド・ベル》の鳩が不審な動きを見せる。

 

ユーゴ

ライフ3500→3300

 

「《ダイヤモンド・ベル》の効果。1ターンに1度、相手がダメージを受けたとき、フィールド上のカードを1枚破壊できる。この効果はこのカードのシンクロ素材がWWのみの場合、1ターンに2度行うことができる」

「くっ…!《クリスタルウィング》の効果発動!1ターンに1度、このカード以外のモンスター効果が発動されたとき、その発動を無効にし、破壊する!」

「シンクロ素材になった《スノウ・ベル》の効果で、《ダイヤモンド・ベル》は破壊されない」

水晶から放たれるビームは動き出す鳩たちを焼き尽くすものの、本体といえる《WW-ダイヤモンド・ベル》を破壊するには至らなかった。

「そんなこと、わかっているわ。別に、この効果はあんたがターゲットじゃないから」

「何…!?」

「ユーゴ!!」

《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》となったクリアウィングの声で何かに気づいたユーゴは即座にそばにある自分のDホイールに目を向ける。

そこのそばには生き残っている鳩の姿があり、それがかまいたちでDホイールを攻撃していた。

「や、やめろーーー!!そいつだけは!!」

「離れてください、ユーゴ!!」

このDホイールはリンや仲間とともにコモンズでかき集めた廃材で作ったもの。

エネルギー源であるモーメントについては自力での調達ができなかったことから、こっそり盗んだものを使っている。

だが、子供であり知識も何もない少年少女だけでDホイールを作ることは難し。

そのため、少しでもよさげな服を着てシティに忍び込み、盗んだ本を読み書きができる仲間とリンの協力で読み解いていき、Dホイールの基礎などを吸収してようやく完成させたものだ。

ライディングデュエルができるように何度も改良を重ね、いつかシティの頂点に立つことを夢見て手入れし続けてきた夢の象徴が、あろうことかリン自らの手で破壊されようとしている。

ライディングデュエルに対応できるよう、強固な設計がされているDホイールも、集中攻撃を受ければ傷つき、破損する。

その破損個所めがけて、今度はダイヤモンドの鳩が体当たりを仕掛ける。

「やめろ…リン!やめてくれ!!このDホイールは…!」

「わかっているわよ。これは私の悪夢の象徴。世界を壊すあんたと深いかかわりを持ってしまった罪の証。だから…破壊するの。その清算のために」

まるで汚物を見るような目で壊れていくDホイールを眺めるリンの目にはユーゴの姿が映っていない。

どうにかDホイールを守ろうと飛び出そうとするユーゴだが、その前にダイヤモンドの鳩が露出したエンジンに向けて体当たりを仕掛けたことでエンジンが損傷する。

「罪って…罪ってなんだよ!?清算ってなんだよ!!いつかジャックを倒して、シティの表舞台でこいつを走らせるのが俺たちの夢じゃなかったのかよ!?その夢を見ることまで罪っていうのか!?目を覚ませよ、リン!!」

どうにかしてリンに言葉を届けようと、声高に叫ぶ。

それが効果があったのかはわからないが、急に《WW-ダイヤモンド・ベル》が動きを止め、鳩たちも攻撃を止める。

同時に、リンが急にうつむいた状態になる。

「リン…!!」

「…ユーゴ…」

ゆっくりと顔を上げたリンの目には涙が浮かんでいて、苦しげな表情を浮かべている。

そして、目の前の彼に向けて手を伸ばしていた。

「ユーゴ…助けて…」

「リン!!ああ、リン!!」

あの時、ユーリによってリンが襲われたときは救いの手を伸ばすことができなかった。

むざむざと彼が連れ去っていくのを見ていることしかできなかった。

今度こそ、今度こそその手をつかむことができる。

走り出したユーゴはリンの手をつかもうとする。

だが、そんな彼を襲ったのは腹部への鈍い痛みだった。

「馬鹿め…」

「あ…」

笑みを浮かべるリンの膝蹴りがユーゴの腹部に突き刺さっていて、腹を抱えた状態でその場に横たわるユーゴを後目にリンはボロボロになったDホイールのそばまで向かう。

「無駄に頑丈ね。ここまで痛めつけてもまだ走ることができる」

「リン…お前、何を…!?」

起動したDホイールのモニターを慣れた手つきで操作したリンが後ろに下がると、Dホイールは勝手に最低速度で前進を始める。

それはゆっくりと、確実に地上へ向けて進んでいる。

「や…めろぉ!!」

「もう遅いわ。…さようなら」

無慈悲な一言の後で、ユーゴの視界の中でDホイールは落ちていく。

幼いころからただ1つの目標の象徴として、何度もリンとともに手入れを欠かさずにいた相棒のDホイールが落ちていくのを前にユーゴは鈍い痛みに耐え、這いながら進んでいく。

無駄だと頭ではわかっていても、それでも落ちていく相棒に何もしないわけにはいかない。

どうにか起き上がり、地上を見たユーゴの目に映るのは粉々に砕け散り、無残な姿を故郷であるシンクロ次元からほど遠く、ライディングデュエルなど存在しない融合次元のコンクリートの上にその姿をさらしていた。

Dホイールの動力源であるモーメントは光を失い、それはDホイールの死を意味していた。

「あ、あああ…」

「あっけないものね。こうして落とせばほら、こんな感じで。どう…?あんたも落ちる?大好きなあのポンコツを墓標にできるんだから、いいわよね?。私はカードを2枚伏せて、ターンエンド」

 

ユーゴ

手札1

ライフ3300

場 クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン レベル8 攻撃3000

 

リン

手札6→2

ライフ4000

場 WW-ダイヤモンド・ベル レベル8 攻撃2800

  伏せカード2

 

「ユーゴ…」

力なくその場でひざを折るユーゴの姿をクリアウィングは見る。

いつものユーゴなら、すぐに立ち上がった相手に立ち向かうだろうが、今回はあまりにもユーゴにとってダメージが大きすぎた。

大切なDホイールがあろうことかリンの手で破壊されてしまったのだから。

「ユーゴ!!しっかりしなさい、ユーゴ!!ここで立ち上がらなければ、あなたはDホイールだけじゃない、リンまで失うことになるのですよ!?」

いつもなら怒った時は口調が汚くなり、暴言を吐くクリアウィングだが、今のクリアウィングも確かに怒っているが、口調はいつものまま。

その異常のせいか、ユーゴの視線がクリアウィングに向けられる。

「お前…」

「あなたが次元を飛び回り、戦い続けてきたすべてが無駄になるのですよ!?立ち上がってください、ユーゴ!!私は…あなたを殺したくありません…。見せてください、あなたがズァークではなく、ユーゴという1人の人間、リンとともに夢を追い求めた、私の主であるに値する男の姿を!!」

「くっ…」

ツー、と目から流れる涙をぬぐったユーゴは立ち上がり、ターンを終えたばかりのリンを見る。

「ああ…悪い、クリアウィング。目が覚めたぜ…。Dホイールはまた作りゃあいい…リンと一緒に。でも…」

そのためにも、過去の思い出を胸に未来を作っていくためにも、ここでリンまで失うことがあってはならない。

そして、取り戻すべきリンは確かに操られているようだが、目の前にいる。

目の前にいること、それだけがユーゴにとって重要なこと。

こんなビックチャンスは今までになかったのだから。

「そうだ、それでこそユーゴ…。だからこそ、私はあなたに、力を…!」

クリアウィングの声が響き、《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》が咆哮する。

その声が反応したのかどうかはわからないが、死に絶えたはずのモーメントが淡い光を放ち始める。

そして、その光がモーメントから飛び出し、地上に散らばるDホイールの残骸を吸収していく。

やがてそれがカードへと変貌すると、ユーゴのデュエルディスクめがけて一直線に飛んできた。

「これは…!!」

勝手に開いたエクストラデッキに入ったそのカードを見たユーゴの目が大きく開く。

驚きが最初に来たが、やがてそれは喜びへと変わっていく。

「そうか…そうだよな、お前もまだ終われねえ…終わってねえよな!!」

「スクラップがカードに…ズァークの力か…!?」

「違うぜ、リン…!ズァークは関係ねえ!こいつは俺とお前…そして、クリアウィングの力だ!俺のターン!!」

 

ユーゴ

手札1→2

 

「俺は…《SR電々大公》を召喚」

 

SR電々大公 レベル3 攻撃1000(チューナー)

 

「レベル8の《クリスタルウィング》にレベル3の《電々大公》をチューニング!!」

エクストラデッキから、Dホイールが転生したカードを引き抜いたユーゴはそれをフィールドに置く。

チューニングリングをくぐった《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》はその姿を破壊されたはずのDホイールへと変化していった。

そして、その真上に《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》が現れ、その姿をカウルと尻尾のようなパーツのついた強化装備へと変化させてそれと合体する。

「3つの心が生み出した夢の結晶よ!不死鳥のごとく甦り、未来への道をひた走れ!!転生シンクロ召喚!!甦れ!《HSR/CWライダー》!!」

甦ったDホイールがユーゴの前に止まり、それにまたがったユーゴはデュエルディスクをセットする。

 

HSR/CWライダー レベル11 攻撃3500

 

「ユーゴ、確かにDホイールは転生したかもしれませんが、これはただのシンクロ召喚。特殊なシンクロ召喚を行ったわけではありませんよ」

「うわあ!!いきなりモニターに出てくんなよ!それと…んなことわかってんだよ!ノリだよ、ノリ!」

「ふふ…その調子です」

モニターに映るクリアウィングの表情はあまり変化しているようには見えないが、その口ぶりから安心してくれていることがうかがい知れる。

「なら、その死にぞこないのDホイールともども、殺してあげるわ!罠発動!《シンクロ・プロミネンス》!!シンクロモンスターをコントロールしているプレイヤーは1000のダメージを相手に与える!」

「何!?ダメージ覚悟で《CWライダー》を破壊するつもりかよ!そうはさせっか!俺は手札から速攻魔法《罠解体》を発動!相手が通常罠カードを発動したとき、その発動を無効にしてそいつを俺のフィールドのモンスター1体に装備させる!《シンクロ・プロミネンス》を無効にして、そいつを《CWライダー》に装備するぜ!」

発動したばかりの《シンクロ・プロミネンス》が白い光と化して《HSR/CWライダー》へと吸収される。

その光景にリンは舌打ちをする。

「そして、俺は《CWライダー》の効果発動!サイコロを1回振り、出た目の数だけ墓地の風属性モンスターをデッキに戻す!」

モニターに1の目のみが《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の顔となっているサイコロが表示され、クルクルと回転し始める。

回転が止まると、出目が3と表示された。

「よし…俺は墓地の《クリアウィング》と《クリスタルウィング》をデッキに戻し、伏せカードと《CWライダー》が装備している《シンクロ・プロミネンス》を破壊する!」

リンの周りを走るユーゴのそばに《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》と《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》の幻影が現れ、それらがリンの伏せカードに向けて突撃する。

「くっ…!私は罠カード《スキル・サクセサー》を発動!私のフィールドのモンスター1体の攻撃力をターン終了時まで400アップさせる!!」

風に飲み込まれ、消滅する《スキル・サクセサー》だが、その力はかろうじてフィールドに残る《WW-ダイヤモンド・ベル》に宿った。

 

WW-ダイヤモンド・ベル レベル8 攻撃2800→3200

 

「それでも、《CWライダー》には届かないぜ!さらに《CWライダー》はこの効果でカードを破壊したことで、ターン終了時まで攻撃力を破壊したカードの数×500アップする!」

 

HSR/CWライダー レベル11 攻撃3500→4500

 

「攻撃力4500!?」

「行くぜ!!《ダイヤモンド・ベル》を攻撃だ!!」

アクセルを全開にしたユーゴは《HSR/CWライダー》に向けて突撃する。

「ぐ、おおおお!!!!なんだよ、この加速は!?」

いきなりトップスピードに突入するこの急加速に意識が持っていかれかけたユーゴだが、どうにか持ちこたえる。

彼らを包むように《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》を模したオーラが発生し、それとともに突っ込んでくるユーゴに《WW-ダイヤモンド・ベル》が再びダイヤの鳩を生み出して攻撃を仕掛けるが、そのオーラがバリアとなって攻撃を防ぎ、突撃しようとする鳩たちの傷つくことのないはずのダイヤの体を粉々に粉砕する。

そして、弾丸のように《WW-ダイヤモンド・ベル》の胴体を穿ち抜き、彼女を爆散させた。

「くっ…!!」

 

リン

ライフ4000→2700

 

「はあ、はあ…元気がいいじゃねえか、相棒…」

一度Dホイールを止めたユーゴは体にかかった負担に驚きつつ、息を整えていく。

「おいおいクリアウィングさんよぉ、どんな設定にしてんだよ、これ…」

「すみませんね、ぶっつけ本番で試しているので、今のが90%です。楽しんでいただけましたか?」

「お前よぉ…なんか、俺に似てきた?」

「それはありません」

何も間を開けることなく否定されたユーゴは苦い表情を浮かべつつ、Dホイールの機首をリンに向けなおす。

「俺はこれでターンエンドだ!どうだ、リン!お前のエースの進化系をぶっ潰してやったぜ!」

 

ユーゴ

手札2→0

ライフ3300

場 HSR/CWライダー レベル11 攻撃4500→3500

 

リン

手札2

ライフ2700

場 なし

 

「私のターン…ドロー…」

 

リン

手札2→3

 

「私は手札から魔法カード《聖天使の施し》を発動…。デッキからカードを2枚ドローし、手札1枚を墓地へ捨てる…」

 

手札から墓地へ送られたカード

・パラサイト・フュージョナー

 

「そのカードは…!?」

「ユーゴ!警戒してください!あのカードは危険です!!」

リンのデッキに今まで入っておらず、彼女にはあまりにも似つかわしくないカード。

彼女が操られている原因はまさしくそれだとユーゴも判断できた。

「そして、手札から魔法カード《死者蘇生》を発動。墓地の《ウィンター・ベル》を特殊召喚する」

 

WW-ウィンター・ベル レベル7 攻撃2400

 

「《ウィンター・ベル》の効果…。墓地のWW1体のレベル×200のダメージを相手に与える。私は墓地の《ダイヤモンド・ベル》を選択…」

《WW-ウィンター・ベル》から吹雪が発生し、それがユーゴとDホイールを襲う。

「くう…寒いが、それがなんだってんだ!!」

 

ユーゴ

ライフ3300→1700

 

「さらに手札から魔法カード《スピード・ヴィジョン》を発動。墓地からレベル2以下のモンスター1体を特殊召喚できる。この効果で特殊召喚されたモンスターはターン終了時に破壊される。私は《パラサイト・フュージョナー》を特殊召喚」

墓地からよみがえった寄生虫はそれと同時にフィールドの《WW-ウィンター・ベル》に飛びつき、その体に入り込む。

寄生虫に体内からいじられ始めた彼女は苦しみながら、その姿をボキボキと醜い音を立てながら変質させていく。

「うげえ…」

「そして、《パラサイト・フュージョナー》は特殊召喚に成功したとき、このカードを含む融合素材モンスターを墓地へ送ることで、モンスターを融合召喚できる…!真冬の雪原を走り抜ける風の音よ。内なる声とひとつになりて、更に激しく響き渡れ。融合召喚!現れろ、荘厳に響く水晶の鐘。《WW-クリスタル・ベル》!」

変質したその姿は先ほどまでリンのフィールドにいた《WW-ダイヤモンド・ベル》に近い姿であるものの、背中についている羽根が3枚に減り、まがまがしい紫がベースの色彩となっていた。

そして、紫色に染まった目は忌々し気にユーゴを見つめる。

 

WW-クリスタル・ベル レベル8 攻撃2800

 

「リンが融合を…!けど、《CWライダー》の攻撃力は3500!そのモンスターじゃ…!」

「いえ、ユーゴ!リンの墓地には《スキル・サクセサー》が存在します!そのカードの効果を忘れましたか!?」

墓地に存在する《スキル・サクセサー》は自分のターン限定ではあるものの、墓地から除外をすることで自分フィールドのモンスター1体の攻撃力を800アップさせることができる。

そうなると、《WW-クリスタル・ベル》の攻撃力は3600となり、《HSR/CWライダー》の攻撃力を上回ることになる。

「ユーゴ、ここはもう1つの効果を…」

「ああ、そうだな…!俺は《CWライダー》の効果を発動!相手ターンのメインフェイズ時にシンクロ召喚したこいつをリリースすることで、エクストラデッキからレベル7の風属性シンクロモンスター2体を特殊召喚する!出ろ!《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》!《クリアウィング・ファスト・ドラゴン》!」

強化パーツが分離し、それが2つの風の球体へと変換される。

そして、その中から2体のモンスターが飛び出した。

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン レベル7 攻撃2500

クリアウィング・ファスト・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

「そして、《クリアウィング・ファスト・ドラゴン》の効果発動!1ターンに1度、エクストラデッキから特殊召喚された相手フィールドのモンスター1体の攻撃力をターン終了時まで0にし、その効果を無効にする!」

「私は手札の《WW-ノースベル》の効果。私のフィールドのWWが相手モンスターの効果の対象となった時、手札のこのカードを墓地へ送ることで、その効果を無効にする」

ゴツゴツとした氷でできた丸いベルの幻影がフィールドに現れ、それが音を鳴らしたことで《WW-クリスタル・ベル》を包む風が消えてなくなる。

「バトル。《クリスタル・ベル》で《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》を攻撃…!」

《WW-クリスタル・ベル》の紫の目が光ると同時にかまいたちが放たれ、それで両断された《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》が破壊される。

「く…!!」

 

ユーゴ

ライフ1700→1400

 

「そして、《クリスタル・ベル》の効果。1ターンに1度、墓地のモンスター1体の姿をターン終了時までコピーし、その名前と効果を得る…。私は《ウィンター・ベル》を選ぶ」

「何!?」

再びゴキゴキと醜い音を立て始めた《WW-クリスタル・ベル》はその姿を《WW-ウィンター・ベル》に戻す。

その効果を止めるべき《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》は既にフィールドになく、《クリアウィング・ファスト・ドラゴン》の効果も使えない。

「そして、《ウィンター・ベル》の効果を発動…。墓地のWW1体のレベル×200のダメージを与える…」

「リン…!」

「消えて…」

背中を向けたリンがそうつぶやくと同時に《WW-ダイヤモンド・ベル》から力を得た《WW-クリスタル・ベル》が紫色の吹雪を発生させ、それがユーゴを襲う。

「うわあああああああ!!」

Dホイールごと吹き飛ばされたユーゴの体がそれから離れ、塔から離れていく。

(リン…!)

落ちていくユーゴは去ろうとするリンに手を伸ばそうとするが、もはやそれは届かない。

重力に従い、落ちていくしかない。

「ユーゴ!!」

操縦者のいないDホイールに宿るクリアウィングだが、空を飛ぶことのできないそれにはユーゴのそばまで行くだけの力は残っていない。

せめてできることは、装着されているデュエルディスクを彼に向けて飛ばすことだけだった。

 

ユーゴ

ライフ1400→0

 

シンクロ・プロミネンス(アニメオリカ)

通常罠カード

(1):Sモンスターをコントロールしているプレイヤーは相手のライフポイントに1000ポイントのダメージを与える。

 

スピード・ヴィジョン

通常魔法カード

(1):自分の墓地に存在するレベル2以下のモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターはターン終了時に破壊される。

 

WW-ノース・ベル

レベル5 攻撃1800 守備1600 効果 風属性 魔法使い族

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールドに存在する「WW」が相手モンスターの効果の対象となった時、手札に存在するこのカードを墓地へ送ることで発動できる。その効果を無効化する。

(2):自分フィールドの「WW」相手モンスターと戦闘を行うとき、墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。戦闘を行うお互いのモンスターの攻撃力はダメージステップ終了時まで相手モンスターと同じになる。

 

「…クク、クククク…!!」

研究室の中で2つのデュエルを見届けたドクトルは狂ったように笑い始め、両手で顔をふさぎ、小躍りを始める。

《パラサイト・フュージョナー》は想像以上の結果を上げ、まさか滅ぼすべきズァークの一部まで撃破することができた。

手に入れたデータはすぐにでも今デュエル戦士たちにとりつかせている《パラサイト・フュージョナー》に自動的に送り込んでいく。

「アハハハハハ!けれど、まだ足りない…。まだまだ《パラサイト・フュージョナー》に力を与え…クフフフフ…」

止まらない笑いをどうにか抑える努力をしつつ、端末を使ってリンと瑠璃にとりついている《パラサイト・フュージョナー》に命令を出す。

2人の少女は《パラサイト・フュージョナー》によって体と精神を操られ、塔を出ていずこかへと去っていった。



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第124話 戦いの獣

ランサーズとヴァプラ隊による攻撃が徐々にアカデミアに近づいていき、授業中のデュエル戦士候補生たちも次々と教師の命令のもとに前線へと駆り出される。

「ええい、スタンダード次元め…!ここまで攻め込んでくるとは…!」

黒い制服を身にまとい、戦士らしく整った髭と大柄で引き締まった体つきをした男、サンダースは苦々しい今の状況に歯ぎしりを立て、愛用の鞭を握りしめる。

最初期のオベリスクフォースとして選ばれ、エクシーズ次元で数多くの人々をカードに変えた功績から今では教師として多くのデュエル戦士を育てることを命じられた彼のもとで育ったデュエル戦士の中にはオベリスクフォースに選ばれるほどのエリートも存在する。

そんな彼らをも片付けたランサーズに、スタンダードと侮っていた連中についにはまだ育てて間もない生徒までも動かさなければならない程に追い詰められている。

「お困りのようだな、サンダース。こんな奴ら、いくら束にしても今のランサーズを討ち取ることはできんよ」

「ブーン…貴様!」

壁にもたれかかり、前線へと向かう幼いデュエル戦士たちを見送るだけのブーンをサンダースはにらむ。

オベリスクフォースを超えるプロフェッサー直属の特務部隊ジェルマンであるにも関わらず、あげた成果とすればBAT-DIEのデータ収集とセレナの奪還程度。

セレナの奪還についても、構成員の暴走によってオベリスクフォースのメンバーの一人が殺されている。

「怒るなら、そのエネルギーを敵にぶつけるんだな。俺にぶつけるのはお門違いといったところだ」

「黙れ…!貴様こそなんだ!?出撃もせずにここでさぼるつもりか!?」

「あくまで俺たちが従うのはプロフェッサーのみ。上官でもプロフェッサーでもないお前の命令を聞く理由はない。それに、あんたにはまだ切り札があるだろう?」

「あいつのことか…!?」

ブーンの言う切り札の力は育てた張本人であるサンダースも分かっている。

オベリスクフォースを上回る実力を発揮した彼なら、ランサーズと戦っても渡り合える。

だが、その強さと引き換えに大きな欠陥を抱えているから、サンダースは切り札を出すことをためらっている。

かつては今まで育てたデュエル戦士の中では最強だとサンダースも考え、認めていた彼だが、ある日の訓練中に突然発狂し、なんと味方であるはずのデュエル戦士をカードに変えてしまった。

そのことから現在、彼には欠陥品の烙印が押され、独房に入れられている。

「もう手段を選んでいる場合じゃないだろう。それに、奴は欠陥品というよりも劇薬だ。その毒を使うときじゃないのか?」

「貴様…命令を聞く理由がないといいながら私に指図を…」

「ああ…こういえばいいか。これはプロフェッサーからの命令だ。お前の切り札、BBを投入しろ。問題ない、こいつを使えばいいのだから」

ニヤリと笑うブーンはサンダースに使い捨ての空気注射器を手渡す。

その中に入っているものが何かに気づいたサンダースは顔をゆがませ、ブーンは口角を吊り上げた。

 

「痛…て。て…。くそ、体がまだ痛むぜ…」

地上に落ちていたユーゴは意識を取り戻したが、先ほどまでは全身に感じる激痛のせいでしばらく起き上がることができなかった。

Dホイールの練習をしていた際に何度か操作を誤って転倒したり、衝突したりしたことがあり、それでけがをしたこともあるが、今回はそれ以上のダメージだ。

いくらか骨折もしていて、どうにか起き上がって歩くことができるだけでも奇跡だ。

「デュエルディスクが左腕に…。でも、クリアウィングの声が聞こえねえ。Dホイールもねえ…」

デュエルディスクの中には《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》も《HSR/CWライダー》も入っているが、いつも聞こえているはずだったクリアウィングの声が聞こえない。

おそらく、甦ったDホイールに宿ったせいなのかもしれない。

「あいつが復活させたんだ…。壊れるなんてことはねえだろうが…」

彼のことが心配だが、今度こそリンを助けるためにもう1度動き出さなければならない。

その過程でもしかしたら、クリアウィングとも再会できるかもしれない。

(にしても、初めてだな…。あいつの声が聞こえねえなんてことは)

ユーゴにとって、彼の声が聞こえるのは当たり前の状況だった。

物心ついてから彼の声が聞こえ、口喧嘩をすることもあったが、それでもリンと同じく幼いころから一緒に過ごしてきた仲間の一人だ。

最も、クリアウィングと話すときは彼の姿が見えないことから周囲には独り言を言っている変な奴だとみられることが多かった。

例外はリンで、リンはクリアウィングと話せることを信じてくれた。

「待ってろ、リン…」

 

「いけ!《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!ダイレクトアタックだ!!」

「《魔装騎士ペイルライダー》でダイレクトアタック」

「「うわああああ!!!」」

 

デュエル戦士A

ライフ2300→0

 

デュエル戦士B

ライフ1000→0

 

「よし…もうちょっとで中に入れるな」

倒したデュエル戦士に目もくれず、翔太はその先にある大きなグラウンドとその先に見える大きな扉に目を向ける。

そこから校内に突入することもできるが、なぜかグラウンドには人っ子一人いない。

先ほどまではデュエルロイドやデュエル戦士が山ほどいたにもかかわらず、グラウンドを突破されると校内に入られるのは敵も分かっているはずだが。

「気をつけろ、遊矢。こういう場所には罠が待っているものだ」

「罠…?」

「わかりやすくもある…。だが…」

だとしたら、ほかのルートから校内に侵入する手立てを探すことも選択肢の一つだろう。

だが、その別のルートを見つけることができるかはわからないうえに、再び多くのデュエル戦士とデュエルロイドと戦うことになりうる。

そして、このルートを確保するために多くのヴァプラ隊員が犠牲になっている。

「進むしかない…。戦いを終わらせるために犠牲になった彼らに報いるためにも。たとえ、それが罠だとしてもだ」

「兄さま…」

「だったら、俺が先に入ってやるよ!一番乗りはこの俺、沢渡シンゴだ!」

「なんだよ、はりきっちまって。今までろくに出番をもらえなかったから、目立とうとしてやがるな?」

「うるせー!それはてめーも同じことだろうが!!」

プンスカ怒りながらグラウンドに入ると同時に急に何もない砂だけのはずの空間が揺れ始める。

「地震…!?」

「いや、これは…!!」

「おいおいおい、こいつは…リアルソリッドビジョン!?」

グラウンドがみるみるとアマゾンの密林のような空間へと変貌を遂げ、校舎が林とその中に見え隠れする遺跡によって覆い隠されてしまう。

真っ先に入った沢渡はその木々に覆い隠されてしまう。

「沢渡!!」

「よせ、あの密林の中には何があるか分かったものではないぞ!おそらく罠が…」

「いや…もう私たちは罠にはまっている。この密林のデュエルフィールドが出現した時点で」

全員のデュエルディスクは強制的にバトルロイヤルモードに切り替えられており、デュエルディスクが展開されていた。

 

「くそーーー!なんだよ!?戻ってるんじゃねーのか?!」

密林に閉じ込められた沢渡は反対方向を歩いて遊矢たちと合流しようともくろむが、ほんの数歩だけ先に進んでいただけなのにもかかわらず、どれだけ引き返しても彼らの姿が見えず、密林の中を進むばかり。

彼のデュエルディスクも零児達と同様、バトルロイヤルモードに切り替わっていた。

バトルロイヤルモードについてはLDSの授業の中で学んでいる。

(乱入ペナルティが廃止され、最後の一人になるまでデュエルが終わらねえ…。タッグデュエルとは違って、味方への攻撃も可能…ま、バトルロイヤルモードに敵も味方もねえが…)

だが、それはあくまでもルールの中での話。

このルールでは数人で手を組んで一人のデュエリストにリンチをかけることもできる。

舞網チャンピオンシップなどでオベリスクフォースが仕掛けてきたのと同じように。

こんな危険な状況を早々に脱したいと考える沢渡だが、近くから草が動く音が聞こえてくる。

「敵か!?おい!気づいてんだよ、さっさと姿を見せろ!!」

デュエルディスクを構え、音が聞こえた方向に目を向けた沢渡が叫ぶ。

(だ、団長…)

「ああ、なんだよルーキー。びびってんじゃねえ!」

肩の上の小人のような大きさで現れたサッシー・ルーキーに驚くことなく叱咤する中、草むらから出てきたのは毛皮でできたアマゾンの原住民族の服装を模した姿で、目元を墨で塗りたくった男だった。

乱暴にナイフで切っているためか、髪は整っておらず、獣のようなうなり声をあげている。

「こいつもアカデミアの…?にしても、制服を着てねえってのはどういうことだよ!?」

今までのデュエル戦士にはない野性的な凶暴さの見え隠れする目の前のデュエル戦士に驚く沢渡だが、彼は既にデュエルの準備を整えている。

バトルロイヤルモードが既に開始されている以上、もう彼とのデュエルも始まっている。

 

「バトル・ビースト…。サンダース教授が生み出した化け物」

校舎内でタブレット端末を手にし、そこから流れる密林の中でデュエルをする野生の少年と沢渡の映像を見るブーンはにやりと笑う。

「最も、化け物と臆病者の境界線はあいまいだ。それに、狼は…」

 

バトル・ビースト

手札5

ライフ4000

 

沢渡

手札5

ライフ4000

 

「おーい、どこにいる沢渡!?返事をしろー!!」

密林に入らざるを得なかった権現坂達は先に入ったはずの沢渡を探し始める。

そんなに先に進んでいないはずの沢渡の姿はいくらまっすぐ進んでも見つけることができない。

集団で動いたことで彼以外ははぐれずに済んでいるが、このフィールドがどこかおかしいということは理解できた。

「ユウ、このフィールド…なんか、いやだ」

精霊の姿に戻ったウィンダの言葉に侑斗は何も言わずに首を縦に振る。

「僕もそう感じるよ…。嫌な力が働いてる。きっと、沢渡君と合流できないのも、そのせいだ」

 

「ぐうう!!俺の、俺の先攻!!俺は、《剣闘獣アトリクス》を召喚!!」

湾曲した短剣を手にしたメスの豹をモチーフとしている剣闘獣が密林の中から飛び出してくる。

 

剣闘獣アトリクス レベル4 攻撃800

 

「け、剣闘獣だぁ!?」

剣闘獣は翔太と伊織が世話になっているという施設の院長である栄次郎が使っていると聞いているデッキで、沢渡もLDSの授業で何度も聞いたことのある。

「カードを2枚伏せ、永続魔法《剣闘排斥波》を発動!ターンエンド…」

 

バトル・ビースト

手札5→1

ライフ4000

場 剣闘獣アトリクス レベル4 攻撃800

  剣闘排斥波(永続魔法)

  伏せカード2

 

沢渡

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「沢渡…沢渡。おい!!サワガニ、応答しろ!ちっ、だめだ。つながらねえ…」

「船とも通信できないなんて…」

翔太と伊織だけでなく、遊矢たちもどうにか外にいる仲間や沢渡と通信をつなげようとする。

だが、通信は一向につながる気配がなく、雑音が響くばかりだ。

「どうやら、この密林を攻略しない限り…我々は外の世界と寸断される。孤立無援と同じか…」

おまけに下手にバラバラになれば、沢渡のように合流できない状態になる。

進むにも退くにも、行き先は誰にもわからない。

 

「伏せカード2枚に《剣闘排斥波》かよ…だったら、てめーのフィールドを剣闘獣の山にするわけにはいかねえ!さっさと蹴散らしてやるぜ!俺のターン、ドロー!!」

 

沢渡

手札5→6

 

「俺はスケール2の《魔界劇団-ワイルド・ホープ》とスケール9の《魔界劇団-ティンクル・リトルスター》でペンデュラムスケールをセッティング!」

「ぐうううう…」

《魔界劇団-ワイルド・ホープ》とともに魔界劇団の重鎮といえる《魔界劇団-ビッグ・スター》の帽子と《魔界劇団-プリティ・ヒロイン》の靴を身に着け、左右に人の顔が描かれた紅葉をもしたぬいぐるみを浮かべた赤毛の少女が宙を舞い、光の柱を生み出す。

「これで俺はレベル3から8までのモンスターを同時に召喚可能!現れろ、《魔界劇団-ビッグ・スター》!《魔界劇団-デビル・ヒール》!!」

 

魔界劇団-ビッグ・スター レベル7 攻撃2500

魔界劇団-デビル・ヒール レベル8 攻撃3000

 

「《デビル・ヒール》の効果発動!このカードの召喚・特殊召喚に成功したとき、相手フィールドのモンスター1体の攻撃力を俺のフィールドの魔界劇団1体につき1000ダウンさせる!」

「ぐうううう!!《剣闘排斥波》の効果!!俺のフィールドの剣闘獣はバトルフェイズ以外では相手のカード効果の対象にならない!!」

「んなことわかってんだよ!やれ!《デビル・ヒール》!!」

《魔界劇団-デビル・ヒール》の口から放たれる紫の炎が《剣闘獣アトリクス》ではなく、バトル・ビーストの背後の木々をも巻き込む。

(よく燃えてくれよ!そして、あいつらに俺の居場所を知らせてくれ!!)

「さらに俺は手札から《魔界台本「火竜の住処」》を《デビル・ヒール》を対象に発動!」

滝や火山、洞窟、平原といった様々な地域が混ざり合った台本が現れ、そこから放たれた炎が《魔界劇団-デビル・ヒール》の体を包んでいく。

「《「火竜の住処」》の効果を受けた《デビル・ヒール》が戦闘で相手モンスターを破壊したとき、お前は自分のエクストラデッキからカードを3枚選んで除外しなきゃならねえ!こいつでお前のエクストラデッキを空っぽにしてやるぜ!」

剣闘獣の武器はフィールドに並んだ仲間を利用した《融合》なしでの融合召喚。

それによって強力な剣闘獣融合モンスターを召喚されるのであれば、除外してそれを封殺する。

エクストラデッキに依存するデッキには《魔界台本「火竜の住処」》がいい薬になる。

「バトルだ!《デビル・ヒール》で《アトリクス》を攻撃!剛腕鉛武拳!!」

炎をまとった《魔界劇団-デビル・ヒール》がその炎を右拳に集中させ、それを《剣闘獣アトリクス》に向けてふるう。

(このまま《デビル・ヒール》と《ビック・スター》、ライバル同士のパワーアタックで決めて…!)

「俺は罠カード《和睦の使者》を発動!このターン、俺のフィールドのモンスターは戦闘では破壊されず、俺が受ける戦闘ダメージも0になる」

《魔界劇団-デビル・ヒール》の剛腕と本来ならそれで軽くつぶされることになるはずの《剣闘獣アトリクス》の短剣がぶつかり合い、互角のつばぜり合いを演じる。

「ちぃ…このままさっさと倒せたはずなのによぉ!!」

そして、ここから始まる剣闘獣による特殊召喚ラッシュが沢渡の脳裏に浮かぶ。

「グオオオオオ!!!《アトリクス》の効果発動!このカードが戦闘を行ったバトルフェイズ終了時、このカードをデッキに戻すことで、デッキから新たな剣闘獣を特殊召喚できる!俺は《剣闘獣サジタリィ》を特殊召喚!!

!!」

《剣闘獣アトリクス》が密林の中へと消えていき、入れ替わるように下半身が馬となっている射手が飛び出してくる。

 

剣闘獣サジタリィ レベル3 攻撃1400

 

「さらに《剣闘排斥波》の効果発動!デッキから剣闘獣の特殊召喚に成功したとき、さらにデッキから俺のフィールドに存在しない種族の剣闘獣を守備表示で特殊召喚できる!《ベストロウリィ》を特殊召喚!」

 

剣闘獣ベストロウリィ レベル4 守備800

 

「そして、《サジタリィ》の効果。手札の剣闘獣カード1枚を捨て、デッキからカードを2枚ドローする!!」

 

バトル・ビースト

手札1→2

 

手札から墓地へ捨てたカード

・剣闘獣アウグストル

 

「くそっ!《ベストロウリィ》まで!!」

沢渡の脳裏に浮かんだのは《剣闘獣ガイザレス》。

《剣闘獣ベストロウリィ》とほかの剣闘獣をデッキに戻すだけで現れるそのモンスターはフィールド上のカードを2枚まで破壊できる効果を持つ。

おまけに戦闘を行ったバトルフェイズ終了時にエクストラデッキに戻すことで、新たな剣闘獣を2体もデッキから呼び出すことができる。

そのモンスターの特殊召喚だけは防がなければならない。

「俺は手札から魔法カード《魔界台本の執筆》を発動!俺の手札がこのカードのみで、俺のペンデュラムゾーンに魔界劇団が2枚存在するときにだけ発動でき、俺のフィールドのレベル7以上の魔界劇団の種類だけデッキからカードをドローする。俺のフィールドにいるレベル7以上の魔界劇団は《ビック・スター》と《デビル・ヒール》。よって、カードを2枚ドローする。そして、手札から魔法カード《一時休戦》を発動!お互いにデッキからカードを1枚ドローし、次のお前のターン終了時までお互いに受けるすべてのダメージを0にする。そして、カードを1枚伏せてターンエンド」

 

バトル・ビースト

手札2→3

ライフ4000

場 剣闘獣ベストロウリィ レベル4 守備800

  剣闘獣サジタリィ レベル3 攻撃1400

  剣闘排斥波(永続魔法)

  伏せカード1

 

沢渡

手札6→0

ライフ4000

場 魔界劇団-ビッグ・スター レベル7 攻撃2500

  魔界劇団-デビル・ヒール レベル8 攻撃3000

  伏せカード1

  魔界劇団-ワイルド・ホープ(青) Pスケール2

  魔界劇団-ティンクル・リトルスター(赤) Pスケール9

 

「俺の…俺のターン!」

 

バトル・ビースト

手札3→4

 

「ちょっと待ったぁ!俺は《ビッグ・スター》をリリースして、罠カード《魔のデッキ破壊ウイルス》を発動!こいつは俺のフィールドの攻撃力2000以上の闇属性モンスターをリリースすることで、お前のフィールド、手札、そしてこれから3ターンの間お前がドローするカードの中に攻撃力1500以下のモンスターが存在する場合、そいつらをすべて破壊する!」

《魔界劇団-ビッグ・スター》が帽子を残して姿を消し、残された帽子の中から「魔」の一文字が描かれたウイルスの大群がバトル・ビーストを襲う。

ウイルスに飲まれたフィールド上の2体の剣闘獣が消滅していく。

そして、バトル・ビーストは自分の手札を沢渡に見せる。

 

バトル・ビーストの手札

・剣闘獣ラクエル

・剣闘獣ウェスパシアス

・団結する剣闘獣

・スレイブタイガー→《魔のデッキ破壊ウイルス》の効果により破壊される。

 

「《団結する剣闘獣》だと…?!」

見たくなかった1枚にせっかく見えていた《剣闘獣ガイザレス》のいないデュエルのイメージが消滅する。

幸いここから3ターンの間、手札に来る剣闘獣の妨害はできるものの、これから特殊召喚されるものに対してはどうのしようもない。

「俺は《剣闘獣ラクエル》を召喚!!」

 

剣闘獣ラクエル レベル4 攻撃1800

 

「バトルフェイズに入り、手札から速攻魔法《団結する剣闘獣》を発動!俺かお前のターンのバトルフェイズ中にだけ発動でき、手札・フィールド・墓地の剣闘獣をデッキに戻すことで、エクストラデッキから新たな剣闘獣融合モンスターを召喚条件を無視して特殊召喚できる!俺は墓地の《サジタリィ》、《ベストロウリィ》をデッキに戻し、《剣闘獣ガイザレス》を特殊召喚!!」

 

剣闘獣ガイザレス レベル6 攻撃2400

 

「《ガイザレス》の効果発動!!このカードの特殊召喚に成功したとき、フィールド上のカードを2枚まで破壊できる!《デビル・ヒール》と《ワイルド・ホープ》を破壊!!」

《剣闘獣ガイザレス》の両翼からかまいたちを引き起こし、それらが《魔界劇団-デビル・ヒール》と《魔界劇団-ワイルド・ホープ》を真っ二つに切り裂いて消滅させる。

「やばいよ、やばいよ団長ーー!!これじゃあペンデュラム召喚できないよー!!」

「んなことわかってるっての!《一時休戦》の効果でダメージは受けないから心配すんな!!」

《団結する剣闘獣》を使われたのは予想外だが、それでも最悪の事態だけは回避できるようにはしている。

ただし、《一時休戦》はあくまでダメージを0にするだけで、戦闘を止めることはできない。

「バトル!!《ガイザレス》と《ラクエル》でダイレクトアタック!!」

バトル・ビーストの命令で突撃する《剣闘獣ラクエル》と《剣闘獣ガイザレス》だが、沢渡を包む見えないバリアがそれを受け止める。

そして、攻撃を終えたそれらモンスターは飛翔し、太陽と重なってその姿を隠す。

「《ガイザレス》の効果!俺のターンのバトルフェイズ中に戦闘を行ったこのカードをバトルフェイズ終了時にエクストラデッキに戻すことで、デッキから剣闘獣を2体特殊召喚する!俺はデッキから《剣闘獣エクイテ》、《剣闘獣ノクシウス》を特殊召喚!《エクイテ》の効果!戦闘を行ったこのカードをバトルフェイズ終了時にデッキに戻し、デッキから《剣闘獣ウェスパシアス》を特殊召喚!」

《剣闘獣ガイザレス》の代わりに上空から降りてきたのは《剣闘獣エクイテ》と両腕に大型クローをつけた手甲をつけ、両足と胴体に機械のアーマーを装着した二本足の虎が降りてくる。

そして、その2体の後ろに飛び降りてきたのは左手に薄い金色の剣を握る青い海竜だ。

 

剣闘獣エクイテ レベル4 攻撃1600

剣闘獣ノクシウス レベル5 守備1000

剣闘獣ウェスパシアス レベル7 攻撃2300

 

「《エクイテ》の効果!このカードを剣闘獣カードの効果で特殊召喚に成功したとき、墓地の剣闘獣カード1枚を手札に戻す。俺は《団結する剣闘獣》を手札に戻す。さらに《ノクシウス》の効果。デッキから剣闘獣1体を墓地へ送る。俺は《ベストロウリィ》を墓地へ送る!」

「くそ…!これで次の俺のターンでまた《ガイザレス》を特殊召喚できるのかよ!!」

「そして、《剣闘排斥波》の効果!デッキからさらに《剣闘獣ムルミロ》を特殊召喚!」

 

剣闘獣ムルミロ レベル3 守備400

 

戦闘という間を挟むものの、それを維持することでバトル・ビーストは毎ターン2枚のカードを破壊できる状況を作り上げた。

破壊された沢渡のカードはいずれもペンデュラムカードのため、ペンデュラムスケールを準備できればまたすぐにフィールドに戻すことができる。

《剣闘獣ガイザレス》の攻撃力も2400で、戦闘破壊できないほどのカードでもない。

「《ウェスパシアス》の効果発動ぉ!!剣闘獣モンスターの効果で特殊召喚に成功したこのカードがフィールドに存在する限り、自分フィールドのモンスターの攻撃力を500アップさせる!」

 

剣闘獣エクイテ レベル4 攻撃1600→2100

剣闘獣ノクシウス レベル5 攻撃0→500

剣闘獣ウェスパシアス レベル7 攻撃2300→2800

剣闘獣ムルミロ レベル3 攻撃800→1300

 

「そして、俺はカードを1枚伏せてターンエンド!!」

 

バトル・ビースト

手札4→0

ライフ4000

場 剣闘獣エクイテ(《剣闘獣ウェスパシアス》の影響下) レベル4 攻撃2100

  剣闘獣ノクシウス(《剣闘獣ウェスパシアス》の影響下) レベル5 守備1000

  剣闘獣ウェスパシアス(《剣闘獣ウェスパシアス》の影響下) レベル7 攻撃2800

  剣闘獣ムルミロ(《剣闘獣ウェスパシアス》の影響下) レベル3 守備400

  剣闘排斥波(永続魔法)

  伏せカード2(うち1枚《団結する剣闘獣》)

 

沢渡

手札0

ライフ4000

場 魔界劇団-ティンクル・リトルスター(赤) Pスケール9

 

「くそ…!俺のフィールドは《ティンクル・リトルスター》だけで、手札0かよ…!」

《一時休戦》のおかげでライフは減らなかったとはいえ、4体の剣闘獣がフィールドに存在する上に《団結する剣闘獣》の効果でバトルフェイズ突入とともに融合召喚が行われる準備まで整っている。

《剣闘獣ガイザレス》以外にも数多くの剣闘獣融合モンスターが存在することは授業で学んでおり、今のバトル・ビーストは状況に応じてその強力なモンスターを召喚できる。

「団長、もしかして…これ、オイラたちの負け??」

「負け…?フッ、誰がそんなことを決めたんだよ」

確かにバトル・ビーストは強いデュエリストであることは沢渡もこのターンで認めている。

だが、彼には唯一誤算がある。

それは相手が沢渡だということだ。

「俺をだれだと思っている?俺は無敵のデュエリスト、沢渡シンゴ様だぜ!?俺のターン!!」

 

沢渡

手札0→1

 

「俺は手札から魔法カード《逆境の宝札》を発動!自分フィールドにモンスターが存在せず、相手フィールドに特殊召喚されたモンスターが存在するとき、デッキからカードを2枚ドローできる。そして、俺は《エキセントリック・デーモン》をセッティング!」

悪魔の骸骨でできた仮面をつけ、右手にスティックを握る灰色の肌の少女がニヤニヤと笑いながら上空に浮遊し、光の柱を生み出す。

「《エキセントリック・デーモン》のペンデュラム効果発動!こいつとこのカード以外の魔法・罠カードを1枚破壊する!俺は《剣闘排斥波》と《エキセントリック・デーモン》を破壊だ!」

光の柱から飛び出した《エキセントリック・デーモン》がバトル・ビーストの《剣闘排斥波》のソリッドビジョンに向けて飛び込んでいく。

そして、どこからか爆弾を取り出すとためらうことなくそれに火をつけ、自爆した。

 

破壊された伏せカード

・団結する剣闘獣

 

「よし…そして、俺は手札から《魔界小道具「ジャグリングボール」》を発動!こいつは俺のフィールドにモンスターが存在せず、相手フィールドにエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターが存在するとき、デッキから魔界劇団1体と魔界台本1枚を手札に加える。俺は《魔界劇団プリティ・ヒロイン》と《魔界台本「悲劇の姫君」》を手札に加える。そして、スケール2の《プリティ・ヒロイン》をセッティング!これで俺はレベル3から8までのモンスターを同時に召喚可能!ペンデュラム召喚!現れろ、《魔界劇団-ビッグ・スター》、《魔界劇団-デビル・ヒール》、《魔界劇団-ワイルド・ホープ》!!」

 

魔界劇団-ビッグ・スター レベル7 攻撃2500

魔界劇団-デビル・ヒール レベル8 攻撃3000

魔界劇団-ワイルド・ホープ レベル4 攻撃1600

 

「《ワイルド・ホープ》の効果発動!こいつの攻撃力を俺のフィールドの魔界劇団の種類1つにつき100アップさせる!」

 

魔界劇団-ワイルド・ホープ レベル4 攻撃1600→1900

 

「さらに《ビッグ・スター》の効果。1ターンに1度、デッキから魔界台本1枚をセットすることができる。この効果でセットされたカードはターン終了時に墓地へ送られる。俺がセットするのは《魔界台本「魔王の降臨」》!そして、セットした《「魔王の降臨」》を発動!俺のフィールドに攻撃表示で存在する魔界劇団の種類の数まで、フィールド上に表側表示で存在するカードを破壊する!俺のフィールドに存在する魔界劇団は3種類!よって、《ウェスパシアス》と《エクイテ》と《ノクシウス》を破壊する!」

《魔界劇団-ビッグ・スター》が取り出した台本が広がり、そこからは真っ黒なオーラをまとった、巨大な悪魔のようなシルエットが現れる。

それの口から放たれた炎が3体の剣闘獣を焼き尽くしていった。

「まだいくぜ?俺はさらに手札から《魔界台本「悲劇の姫君」》を発動!俺のフィールドにレベル7以上の魔界劇団が存在するとき、相手フィールドにセットされているカードをすべて破壊する!」

続けて現れた台本には氷に閉ざされた城が出現し、その中には氷漬けになった姫君がとらわれている。

台本から発生した吹雪はバトル・ビーストの2枚の伏せカードを氷漬けにした後、粉々に砕け散らせた。

 

破壊された伏せカード

・団結する剣闘獣

・いがみ合う剣闘獣

 

「ハッハッハッ!俺様ってばカードに選ばれてるぅ!この状況を一気にひっくり返してやったぜぇ!!」

これでバトル・ビーストのフィールドに残ったのは《剣闘獣ムルミロ》1体のみ。

それに対して沢渡のフィールドには3体の魔界劇団が存在する。

このまま3体による一斉攻撃を決めれば、バトル・ビーストを倒せる。

「バトルだ!まずは《ワイルド・ホープ》で《ムルミロ》を攻撃!!」

まず先手を打つ《魔界劇団-ワイルド・ホープ》が手に持っている銃で《剣闘獣ムルミロ》を撃ちぬく。

「そして、《デビル・ヒール》と《ビッグ・スター》でダイレクトアタック!!」

続けて、《魔界劇団-デビル・ヒール》がその巨体を大きく跳躍させ、ボディプレスを決める。

巨体の下敷きになったバトル・ビーストはグウウウウとうなり声をあげて痛みに耐える。

 

バトル・ビースト

ライフ4000→1000

 

そして、その巨体が離れた後でとどめに一撃と言わんばかりに《魔界劇団-ビッグ・スター》が根本が槍のように鋭くなっているバラを出すと、それをバトル・ビーストに向けて投げつけた。

「これで俺の勝ちだ!!」

「グウウウウ!!俺は墓地の罠カード《いがみ合う剣闘獣》を発動!!」

「何?!こいつは俺が破壊した…」

「俺が直接攻撃を受けるとき、墓地の剣闘獣を相手フィールドに特殊召喚し、バトルフェイズを終了させる!そして…俺はこの効果で特殊召喚された剣闘獣の攻撃力分のダメージを受ける…俺が特殊召喚するのは《剣闘獣ウェスパシアス》!!」

「何!?《ウェスパシアス》の攻撃力は2300!自爆する気か!?」

「ヒ、ヒヒ、ヒ…!ハーーーハハハハハハハハハハハ!!」

先ほどまでの獣のようなしぐさとは正反対に高笑いを始めるバトル・ビースト。

敗北のショックで狂ったのかと思った沢渡だが、それはすぐに否定される。

「何!?こ、こいつ…こいつら!!」

密林の中から出てくる人影。

それに沢渡は動揺を隠すことができない。

その人影は既にデュエルディスクをセットし、バトルロイヤルモードによって乱入していた。

そのフィールドに《剣闘獣ウェスパシアス》が現れ、剣から放たれたビームがバトル・ビーストを襲う。

「アハハハハハハハハハハハ!!!!」

高笑いしながらビームを受けたバトル・ビーストはやがて笑わなくなり、その場に倒れる。

 

バトル・ビースト

ライフ1000→0

 

 

 

 

魔界台本の執筆

通常魔法カード

このカード名のカードは1ターンに1度しか使用できず、このカードを発動したターン、自分は「魔界劇団」以外のモンスターの召喚・特殊召喚を行えない。

(1):自分の手札に存在するカードがこのカードのみで、自分Pゾーンに「魔界劇団」カードが2枚存在する場合に発動できる。自分フィールドに存在するレベル7以上の「魔界劇団」モンスターの種類の数だけデッキからカードをドローする。

 

魔界小道具「ジャグリングボール」

通常魔法カード

このカード名のカードは1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドにモンスターが存在せず、相手フィールドにEXデッキから特殊召喚されたモンスターが存在する場合にのみ発動できる。デッキから「魔界劇団」モンスター1体と「魔界台本」魔法・罠カード1枚を手札に加える。この効果を発動したターン、自分が「魔界劇団」モンスターの召喚・反転召喚・特殊召喚を行わなかった場合、もしくは「魔界台本」魔法・罠カードの効果を発動しなかった場合、ターン終了時に2000LPを失う。

 

魔界台本「悲劇の姫君」

通常魔法カード

(1):自分フィールドにレベル7以上の「魔界劇団」モンスターが存在する場合にのみ発動できる。相手フィールドにセットされているカードをすべて破壊する。

(2):自分EXデッキに「魔界劇団」Pモンスターが存在し、セットされたこのカードが相手の効果によって破壊された場合に発動できる。フィールド上のモンスター1体を墓地へ送り、そのモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える。

 

いがみ合う剣闘獣

通常罠カード

(1):自分フィールドに「剣闘獣」が存在する場合に発動できる。手札に存在する「剣闘獣」1体を相手フィールドに特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターは戦闘では破壊されず、ターン終了時に持ち主の手札に戻る。

(2):相手の直接攻撃宣言時、墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。自分の墓地に存在する「剣闘獣」1体を相手フィールドに特殊召喚し、バトルフェイズを終了させる。その後、自分はこの効果で特殊召喚されたモンスターの攻撃力分のダメージを受ける。

 

そして、その姿はなぜかデュエルロイドへと変化した。

「こいつは…ロボット!?人間じゃねえのかよ!?」

「だ、団長…」

「なんだよ、これ…。俺ってば、最後まで生き残るんじゃなかったのかよ…?そういう役回りじゃないのかよ…?」

 

「ハ、ハハハ…ハハハ…素晴らしい。これは、実に素晴らしい!なんということだ!あの欠陥品をこうして使うことで完成させることができるとは!!」

どこかの部屋のモニターで密林での沢渡が追い詰められていく様子にサンダースは笑いを隠すことができない。

その様子を後ろから眺めるブーンは口角を吊り上げる。

「確かにバトル・ビーストは制御の利かないけだもの。だが、そんなものはドクトルが作ったあの虫で制御できる。そして、それをワンオフにするのはもったいない…。ならば」

 

「くっ…!!伊織、大丈夫かよ!?」

「う、うん!でも、これって…何!?どうして…」

円陣を組んだ状態でデュエルを行う翔太たちの周りには数多くのバトル・ビーストの姿があり、剣闘獣達がフィールドに並んでいた。

「アカデミアは気でも狂ったのか!?クローンでも作ったのかよ!」

「じゃあ、まさか沢渡も…」

「うわあああああああああああああ!!!!!」

「沢渡!?沢渡ーーーーー!!」

どこからか聞こえる沢渡の悲鳴。

だが、誰も彼を助けるすべも余裕も持ち合わせていなかった。

 

密林のフィールドのどこかで、集まっていたバトル・ビースト達が次の獲物を求めて再びその中へと消えていく。

そこに残ったのは苦悶の表情を浮かべた沢渡が描かれたカード1枚だけだった。



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第125話 獣狩り

「遊矢!遊矢!応答して!!」

戦艦周辺ではデュエルロイドとデュエル戦士による攻撃が行われており、護衛のヴァプラ隊とデュエルを繰り広げている。

遊矢に何度も通信をしているが、ジャミングされているためか一切つながらない。

「グレース!遊矢たちは大丈夫なの?!」

「ダメ…こっちからもつながらないわ。もしかしたら、アカデミアの罠に…」

可能であれば助けに行きたいが、攻撃が続いている以上は動くわけにはいかず、柚子の守りを割くわけにはいかない。

できることは、彼らが自力で突破することを願うことだけ。

(遊矢…無事でいて…)

 

 

 

「消し飛びやがれ!!人形が!!」

翔太の叫びとともに4体の魔装騎士がバトル・ビーストを模したデュエルロイド4体にダイレクトアタックを仕掛け、ライフが0になった4体が粉々にはじけ飛ぶ。

翔太だけでも撃破したバトル・ビーストもどきは10体以上で、そこからはもう数を数えることも忘れている。

伊織や遊矢、零児達もバトル・ビーストもどきを倒し続けているが、いくら倒しても一向にその数が減ることがない。

次々と投入されるデュエルロイドの数に押され、いずれ押し切られる可能性も目に見えている。

そんなデュエルが繰り広げられる中で、侑斗はデュエルに参加せずにその場で座り、目を閉じて念じ続けている。

「みんな、お願い!もうちょっとだから、粘って!!」

ウィンダもデュエルに参加し、息を切らしながらも遊矢たちを鼓舞する。

うっすらと目を開ける侑斗の両目は風の目を発動している。

ここでは下手に進んでも迷い込むだけで、いずれはこのデュエルロイド達の餌食になるだけ。

だが、どんなにフィールドを変化させたとしても、風はごまかさない。

風の流れを読んでいき、このフィールドを生み出している根源、そしてバトル・ビーストの本体を探していく。

「見えた!!」

バトル・ビーストの本体を特定した侑斗が立ち上がり、右手に力を籠め、正面に向けてふるう。

正面を視界をふさぐ木々が突然発生したかまいたちによってなぎ倒され、その先の景色をあらわにする。

両腕と両足が枷によって拘束され、獣のようにうなり声をあげるバトル・ビースト。

遊矢の目もオッドアイに変えたことで、ここまで戦ってきたバトル・ビーストとの違いを特定する。

どんなに強い相手であろうと、デュエルロイドである以上は人間レベルの感情を出すことができず、同時にプレッシャーもない。

だが、この拘束されているバトル・ビーストからは強いプレッシャーが感じられる。

見つかったことで敵が来ることを感じた本物のバトル・ビーストは自らを拘束する枷の鎖を引きちぎっていく。

居場所が分かったその獣への道をふさぐべく、なぎ倒された木々が徐々に再生していく。

「いけ、遊矢!権現坂もだ!こいつを止めろ!!」

「翔太!?」

「今、手が空いているのはお前らだ!さっさとそいつを倒して、この無限ループを止めろ!!」

二人に迫ろうとするデュエルロイドに割って入った翔太が無理やり彼らとのデュエルを開始する。

「迷うなよ…?迷えば、負けだ!!」

「くっ…!わかった!みんな、負けるな!!」

他に何も言うことができず、遊矢が拘束から無理やり出てきたバトル・ビーストに向けて走り出し、権現坂も続く。

走っていく2人の姿もまた、再生した木々によって阻まれ、消えてしまう。

(頼むよ…2人とも…)

 

「場所を特定されたか!?だが、今のバトル・ビーストであれば負けることはない。さあ、見せてもらうぞ。私の最高傑作の力を!!」

モニターに映る、本体の元へ向かう2人の姿に多少の驚きを見せたものの、サンダースの脳裏に浮かぶのは彼の勝利のイメージしかない。

バトル・ビーストを投影したデュエルロイドは本人とほぼ同等の力を発揮できるものの、それを成し遂げるには本体が近くにいる必要があるという弱点がある。

ブーンの説明によると、本体のデュエルエナジーをデュエルロイドが供給されることで真価を発揮できるようだが、その理論のほとんどはブラックボックス化しているらしい。

かつての不安定な彼であれば、自ら前に出て抑え込むという手段をとっただろう。

だが、今の彼にはその必要はなく、常にベストな状態で戦える。

「ふっ…。ほめたたえるのはいいが、せいぜい足元をすくわれるような真似になるなよ。ここにも、敵が来る可能性はあるのだからな」

ニヤリと笑うブーン、そして今まで閉ざされていた扉が開く。

そこにはヒイロの姿があり、この部屋まで続く通路には倒されたデュエルロイド達の残骸が散乱していた。

「まさか、ここまで1人で突入してくるとは思わなかったぞ…?ヒイロ・リオニス」

 

バトル・ビーストに向けて一心不乱で走る遊矢とその後ろを走る権現坂。

遊矢の背中、そして制服の袖と手袋で隠れた左腕を見る。

(遊矢…この次元戦争で確実に変わっていっている…)

戦争が始まる前、ペンデュラム召喚を使う前までの遊矢は確かに精神的にもろく、気弱なイメージが強い頼りない友人だったが、暴力を嫌う心優しい少年だった。

だが、次元戦争に巻き込まれ、シンクロ次元では左腕を失うほどの重傷を負い、エクシーズ次元では救おうと思っていたエドが自分の行いが引き金となって死ぬことになり、融合次元で自分の正体を知ることになった。

それらの遊矢が背負うには重たすぎるほどの悲劇と真実が少しずつ彼を変えていった。

デュエルロイドとのデュエルでも、覇王の名を持つドラゴン、そして侑斗から受け取ったドラゴンを使いこなし、戸惑うことなく敵を倒す姿を見せた。

それはランサーズにとって、そしてアカデミアを敵とみなす者にとってはよいことかもしれない。

だが、権現坂が恐れているのはその中で遊矢から本来の心が消えてしまうことだった。

(遊矢…心を見失うな。それを無くしたとき、お前はズァークに…)

「ぐおおおおおお!!!」

獣のような咆哮をするバトル・ビーストが正面から飛んできて、四つん這いになって2人を威嚇しながらデュエルディスクを展開する。

「こいつを止めて、翔太たちを助ける!いくぞ、権現坂!」

「ああ…。やるぞ、遊矢!」

「「デュエル!!」」

「グオオオオオオ!!!」

 

バトル・ビースト

手札5

ライフ4000

 

遊矢&権現坂

手札

権現坂5

遊矢5

ライフ4000

 

「俺の…ターン!!俺は《剣闘獣ラクエル》を召喚!!」

 

剣闘獣ラクエル レベル4 攻撃1800

 

「ぐうう…そして、自分フィールドに剣闘獣が存在するとき、手札の《スレイブタイガー》を特殊召喚できる…!!」

 

スレイブタイガー レベル3 攻撃600

 

「そして、手札から永続魔法《剣闘排斥波》を発動。さらに、《スレイブタイガー》の効果…。このカードをリリースし、フィールド上の俺の剣闘獣1体をデッキに戻すことで、デッキから剣闘獣1体を剣闘獣の効果で特殊召喚されたものとして特殊召喚できる…。俺は《ラクエル》をデッキに戻し、デッキから《剣闘獣アウグストル》を特殊召喚!!」

 

剣闘獣アウグストル レベル8 攻撃2600

 

「1ターン目からいきなりレベル8のモンスターを!?」

「まだだああ!!!《剣闘排斥波》の効果。デッキから剣闘獣の特殊召喚に成功したとき、デッキから俺のフィールド上には存在しない種族の剣闘獣1体を守備表示で特殊召喚できる!俺はデッキから再び《ラクエル》を特殊召喚!!」

 

剣闘獣ラクエル レベル4 守備400

 

「《アウグストル》が剣闘獣の効果で特殊召喚に成功したとき、手札から剣闘獣1体を守備表示で特殊召喚できる!!俺はさらに手札から《剣闘獣ムルミロ》を特殊召喚!!」

 

剣闘獣ムルミロ レベル3 守備400

 

「そして、俺のフィールドの剣闘獣は自らをデッキに戻すことで、エクストラデッキから剣闘獣融合モンスターを《融合》なしで特殊召喚できる!!俺は《ムルミロ》、《ラクエル》、《アウグストル》をデッキに戻し、融合!!彷徨える古の剣闘士の亡霊どもよ。皇帝の名のもとに集い、その力を捧げよ!融合召喚!来い!《剣闘獣アンダバタエ》!」

《剣闘獣アウグストル》が翼を広げ、彼の前に2体の剣闘獣がひざまずく。

そして、上空に出現した渦の中に3体が飛び込んでいき、中から現れたのは皇帝の名を持つ剣闘獣をもとにしたものとは思えないほっそりとした体つきをした、翼替わりの装甲をつけた黒い蜥蜴のような剣闘獣だった。

 

剣闘獣アンダバタエ レベル7 攻撃1000

 

「《剣闘獣アンダバタエ》…?」

「デュエルロイドは使ってこなかったカードだな…。警戒しろ、遊矢」

「《アンダバタエ》の効果…。このカードをこの方法で特殊召喚に成功したとき、エクストラデッキからレベル7以下の剣闘獣融合モンスター1体を召喚条件を無視して特殊召喚できる!現れろ、《剣闘獣ガイザレス》!!」

 

剣闘獣ガイザレス レベル6 攻撃2400

 

「そして、《アンダバタエ》と《ガイザレス》をエクストラデッキに戻し、融合!!」

「何!?今度は融合モンスター同士での融合だと!?」

「現れろ…!!剣闘獣の支配者!!《剣闘獣総監エーディトル》!!」

今度は口上なしでエクストラデッキから排出されたカードをデュエルディスクに設置し、目的のモンスターがリアルソリッドビジョンによって降臨する。

剣闘獣を名乗りながらも杖を手にし、総監の名を持つ鹿のようなこのモンスターはこれまで戦った剣闘獣とはあらゆる意味で異質といえた。

 

剣闘獣総監エーディトル レベル8 守備3000

 

「《エーディトル》の効果発動!!1ターンに1度、エクストラデッキから《エーディトル》以外の剣闘獣融合モンスター1体を召喚条件を無視して特殊召喚する!俺は《剣闘獣ドミティアノス》を特殊召喚!」

杖についている魔石から光でできた鞭が出現し、それを振るうと同時に森の中から《剣闘獣ドミティアノス》が飛び出す。

 

剣闘獣ドミティアノス レベル10 攻撃3500

 

「《ドミティアノス》!?」

このモンスターの1ターンに1度だけとはいえ、モンスター効果を無効にして破壊する効果はフルモンスターの権現坂には刺さる。

おまけに攻撃対象を決める権利を奪われるとなると、下手にバトルフェイズに映り、攻撃を行うわけにもいかない。

「俺は…カードを1枚伏せ、ターンエンド!!」

 

バトル・ビースト

手札5→0

ライフ4000

場 剣闘獣総監エーディトル レベル8 守備3000

  剣闘獣ドミティアノス レベル10 攻撃3500

  剣闘排斥波(永続魔法)

  伏せカード1

 

 

遊矢&権現坂

手札

権現坂5

遊矢5

ライフ4000

場 なし

 

(《ドミティアノス》は奴のデュエルロイドとのデュエルで何度も見たが、《エーディトル》だと…?それは初めて見る…)

やはり本体のすべてをデュエルロイドでは再現することができないのか、それとも彼の身を守るためにあえて強力なカードを用意していたのかはわからない。

一つわかることは、そのモンスターが存在することが2人の状況を不利にすることだ。

「ならば…俺のターン!!」

 

権現坂

手札5→6

 

「俺は手札より《超重武者カゲボウ-C》を召喚!」

 

超重武者カゲボウ-C レベル3 攻撃500

 

「《カゲボウ-C》の効果。このカードをリリースすることで、手札から超重武者1体を特殊召喚できる」

(権現坂のデッキの中で最大の守備力を持っているのは《ビックベン-K》。《ドミティアノス》の攻撃力は3500)

守備表示のまま攻撃できる《超重武者ビッグベン-K》で《剣闘獣ドミティアノス》を相討ちさせることもできる。

だが、それを通すほど本体のバトル・ビーストは甘くない。

「《ドミティアノス》の効果…。1ターンに1度、相手モンスターの効果の発動を無効にし、破壊する!」

《剣闘獣ドミティアノス》の杖から放たれる電撃が《超重武者カゲボウ-C》を襲い掛かり、破壊する。

「だが…その効果も1ターンに1度のみ!俺の墓地に魔法・罠カードが存在しないとき、《超重武者ヒキャ-Q》は手札から特殊召喚できる!」

人間の骨格に直接ピンクの装甲が装着された状態で、飛脚のような様相をしている超重武者が飛び出すと、バトル・ビーストのフィールドへと走っていく。

 

超重武者ヒキャ-Q レベル5 守備1800

 

「《ヒキャ-Q》の効果。俺の墓地に魔法・罠カードが存在しない場合、このカードをリリースすることで、相手フィールドに俺の手札のモンスターを2体まで特殊召喚する。俺は手札の《ツヅ-3》と《イワトオシ》を貴様のフィールドに特殊召喚する!」

肩に背負っている小包の布をほどくと、その中から《超重武者ツヅ-3》と《超重武者装留イワトオシ》が飛び出してきた。

 

超獣武者ツヅ-3 レベル1 守備300(チューナー)

超獣武者装留イワトオシ レベル4 守備0

 

「そして、この効果で特殊召喚されたモンスターと同じ数だけデッキからカードをドローする。そして、さらに俺は手札の《超重武者装留タネガシマ》の効果発動。俺の墓地に魔法・罠カードが存在せず、俺のフィールドにモンスターが存在しないとき、手札のこのカードを墓地へ送ることで、デッキからカードを2枚ドローし、その後で手札の超重武者1体を墓地へ送る。その時に手札に超重武者が存在しない場合、手札をすべて墓地へ送られなければならない。俺はカードを2枚ドローし、手札の《ビックベン-K》を墓地へ送る」

フィールドに侍用の甲冑の残骸をつなぎ合わせたような状態の鉄砲が現れると、権現坂の手札にあった《超重武者ビッグベン-K》を撃ちぬく。

「そして、相手フィールドにのみモンスターが存在するとき、このカードは手札から特殊召喚できる。俺は《超重武者ヨシツ-Ne》を特殊召喚」

超重武者の名を持ち、武士の甲冑を身にまといながらも、女性のようなほっそりとした体つきをしているうえに白銀の布を頭からかけているためにこれまでとは違う趣を持つ超重武者が権現坂達の頭上を大きく跳躍してフィールドに現れる。

 

超重武者ヨシツ-Ne レベル7 守備2500

 

「そして、《ヨシツ-Ne》の効果。俺の墓地に魔法・罠カードが存在しない場合、1ターンに1度、フィールド上のカードを1枚破壊できる!」

「《剣闘排斥波》の効果。バトルフェイズ以外で俺の剣闘獣は相手の効果の対象にならない!」

「俺が対象とするのは《ツヅ-3》だ!いけ、《ヨシツ-Ne》!!」

2本の刀を逆手に握った《超重武者ヨシツ-Ne》が再び大きく跳躍すると、《超重武者ツヅ-3》の前に着地するとともにそのモンスターをバラバラに切り裂いた。

「そして、この効果で破壊したカードがモンスターの場合、その元々の攻撃力分のダメージを貴様に与える!」

「ぐうう!!」

剣閃がバトル・ビーストを襲い、その頬をかすめる。

体から感じる痛みに憤りを感じながら権現坂を見る。

 

バトル・ビースト

ライフ4000→3700

 

「《ツヅ-3》の効果。フィールド上に存在するこのカードが破壊され墓地へ送られたとき、墓地の超重武者1体を特殊召喚できる。俺は《ビッグベン-K》を特殊召喚する!」

権現坂のフィールドへ戻った《超重武者ヨシツ-Ne》の目の前にひざまずくような態勢で《超重武者ビッグベン-K》がフィールドに現れる。

そして、相手であるバトル・ビーストに向けて振り返ると、背中にさしてある刺叉を抜く。

 

超重武者ビッグベン-K レベル8 守備3500

 

「バトルだ!《ビッグベン-K》で攻撃する!さあ、攻撃対象を貴様が選ぶのだろう!?」

「グウウウ!!《ビッグベン-K》の相手は、お前が召喚した《イワトオシ》だ!!」

《超重武者ビッグベン-K》の拳が地面に突き立てられると同時に《超重武者装留イワトオシ》の足元から火柱が発生する。

炎の中にそのモンスターが消滅するとともに、権現坂のデッキからカードが1枚自動排出される。

「そして、《イワトオシ》の効果。このカードがフィールドから墓地へ送られたとき、デッキから《イワトオシ》以外の超重武者1枚を手札に加える。俺が手札に加えるのは《超重武者装留ビッグバン》!そして、メインフェイズ2に手札の《ビッグバン》の効果を発動。手札のこのカードを俺のフィールドの超重武者1体に装備させ、守備力を1000アップさせる。俺は《ビッグベン-K》にこのカードを装備する。俺はこれで、ターンエンドだ!」

 

バトル・ビースト

手札0

ライフ3700

場 剣闘獣総監エーディトル レベル8 守備3000

  剣闘獣ドミティアノス レベル10 攻撃3500

  剣闘排斥波(永続魔法)

  伏せカード1

 

 

遊矢&権現坂

手札

権現坂6→3

遊矢5

ライフ4000

場 超重武者ビッグベン-K(《超重武者装留ビッグバン》装備) レベル8 守備3500→4500

  超重武者ヨシツ-Ne レベル7 守備2500

 

ほんの些細ではあるが、ダメージを受けたことでバトル・ビーストの視線が権現坂に向けられる。

その様子を表情一つ変えずに見つめる権現坂。

(そうだ…来い、向かうのならば、俺に向かってこい!!)

「俺の…ターン!!!」

 

バトル・ビースト

手札0→1

 

「消し飛ばしてやる…!!《エーディトル》の効果発動!エクストラデッキから《剣闘獣ガイザレス》を特殊召喚する!」

再び鞭が振るわれ、フィールドには剣闘獣デッキには王道といえるモンスターが現れる。

すべては己を傷つけた男のモンスターを破壊するために。

 

剣闘獣ガイザレス レベル6 攻撃2400

 

「《ガイザレス》の効果!!このカードが特殊召喚に成功したとき、フィールド上のカードを2枚まで破壊できる!俺が破壊するのは2体の超重武者だ!!」

いかに守りを固めようとも、《剣闘獣ガイザレス》が生み出す真空波を前にしては容易に切り裂かれるだけ。

現に発生する無数の刃は《超重武者ヨシツ-Ne》を引き裂き、さらには周囲の木々や権現坂をも傷つける。

「権現坂!!」

「ぐうう…《ビッグベン-K》は破壊させん!!俺は手札の《超重武者装留ファイヤー・アーマー》の効果を発動!!手札のこのカードを墓地へ送り、俺のフィールドの超重武者1体の守備力をターン終了時まで800ダウンさせる代わりに、このターンの間は戦闘でも効果でも破壊されなくする!!」

「《ドミティアノス》の効果で、その効果は無効だああ!!」

フィールドに出現した《超重武者装留ファイヤー・アーマー》が《剣闘獣ドミティアノス》が放つ電撃によって消滅し、守りを失っている《超重武者ビッグベン-K》が両腕で我が身を守る。

装甲に数えきれないほどの傷が生まれ、やがて背中から倒れてしまう。

「俺は手札の《超重武者ツグノ-Bu》の効果発動!俺の墓地に魔法・罠カードが存在せず、俺のフィールドの超重武者が戦闘または相手の効果によって破壊されたとき、このカードを手札から特殊召喚できる!」

倒れた《超重武者ビッグベン-K》の前に青白い人型の炎が現れ、その身に包んだ甲冑を盾替わりにして真空波を受け止める。

 

超重武者ツグノ-Bu レベル2 守備0

 

「そして、墓地からその時破壊されたモンスター1体を特殊召喚し、それらを素材としてシンクロ召喚を行う!!俺はレベル8の《ビッグベン-K》にレベル2の《ツグノ-Bu》をチューニング!!」

真空波が収まるとともに鎧を強制排除した《超重武者ツグノ-Bu》の炎が2つのチューニングリングへと変換され、その中に《超重武者ビッグベン-K》が飛び込む。

「荒ぶる神よ、千の刃の咆哮と共に獣が住まう密林に現れよ!シンクロ召喚!いざ、出陣!レベル10!《超重荒神スサノ-O》!!」

シンクロ召喚された《超重荒神スサノ-O》がその場に座り、手にしている刀をバトル・ビーストに向ける。

 

超重荒神スサノ-O レベル10 守備3800

 

「よし…!《スサノ-O》の守備力は3800!!《ドミティアノス》の攻撃力を上回った!」

「グウウウウ!!俺は永続罠《剣闘海戦》を発動!!1ターンに1度、手札か墓地の剣闘獣1体をデッキに戻すことで、俺のフィールドの剣闘獣1体の攻撃力をターン終了時まで元々の守備力分アップさせる!俺は手札の《ホプロムス》をデッキに戻し、《ドミティアノス》の攻撃力をアップ!!」

 

剣闘獣ドミティアノス レベル10 攻撃3500→4700

 

「攻撃力4700!?」

せっかくシンクロ召喚した《超重荒神スサノ-O》の守備力3800がほんの一瞬で逆転されてしまった。

このままそのモンスターが戦闘破壊され、さらに攻撃表示に変更されるであろう《剣闘獣総督エーディトル》と《剣闘獣ガイザレス》のダイレクトアタックを受けたら、2人のライフは0になる。

「俺は《エーディトル》を攻撃表示に変更!!」

 

剣闘獣総督エーディトル レベル7 守備3000→攻撃2400

 

「バトル!!《ドミティアノス》で《スサノ-O》を攻撃!!」

《剣闘海戦》の効果によってパワーアップした《剣闘獣ドミティアノス》が杖を空に掲げ、同時に上空に分厚い雷雲が生まれる。

そこから落ちてくる雷が一撃で《超重荒神スサノ-O》を爆散させた。

「グオオオオオ!!さらに、《ガイザレス》でダイレクトアタック!!」

ギャオオオオと激しく鳴く《剣闘獣ガイザレス》がかまいたちを起こし、それが権現坂に襲い掛かる。

両腕で身を守り、それを受ける権現坂だが、その体は宙を舞い、後ろにある木に激突した。

「ガ…あ!!」

「権現坂!!!」

 

権現坂&遊矢

ライフ4000→1600

 

「続けて、《エーディトル》で…」

「いいや…ここで、俺は手札の《超重武者タダノ-Bu》の効果を発動。俺がダイレクトアタックにより戦闘ダメージを受けたとき、手札のこのカードを守備表示で特殊召喚できる」

左腕の裾で口元の血をぬぐい、カードを操作した権現坂の前に《超重武者ヨシツ-Ne》に似た甲冑姿をしたやや大柄の超重武者が主の盾とならんと3体の剣闘獣の前に立ちはだかる。

「そして、俺が受けたダメージと同じ数値の守備力を持つ《超重武者トークン》2体を特殊召喚する」

さらに《超重武者タダノ-Bu》の左右を固めるようにやや簡素な平安武者の甲冑を身に着けた超重武者が現れる。

 

超重武者タダノ-Bu レベル4 守備1800

超重武者トークン×2 レベル4 守備2400

 

「グウウウウ!!《エーディトル》!!《タダノ-Bu》を蹴散らせ!!」

本来であれば剣闘獣に命令するためにふるう鞭が敵である《超重武者タダノ-Bu》にふるわれる。

鞭を受けた《超重武者タダノ-Bu》が消滅した。

「そして、《ガイザレス》の効…!?」

発動を宣言しようとしたバトル・ビーストだが、急にそれを動きを止め、戸惑った様子を見せる。

その理由がわかっている権現坂は起き上がるとともに不敵な笑みを見せる。

「どうした…?効果によってデッキの仲間を呼び出すのではないのか?」

それが今の状況ではできないことはわかっている。

権現坂の墓地へ送られたカード、《超重武者装留ビッグバン》のせいで。

(《ビッグバン》は自分フィールドに超重武者が表側守備表示で存在する状態でバトルフェイズ中に相手がカード効果を発動したとき、墓地から除外することでその発動を無効にして、破壊する。そして、フィールド上のモンスターをすべて破壊して、お互いに1000のダメージを受ける…権現坂はこのために)

フィールドには2体の《超重武者トークン》が残り、バトルフェイズ終了時もバトルフェイズの一部。

発動条件は満たされる。

「俺は…効果を発動しない。ターンエンド!!《剣闘海戦》の効果は消える!!」

 

バトル・ビースト

手札1→0

ライフ3700

場 剣闘獣総監エーディトル レベル8 攻撃2400

  剣闘獣ドミティアノス レベル10 攻撃4700→3500

  剣闘獣ガイザレス レベル6 攻撃2400

  剣闘排斥波(永続魔法)

  剣闘海戦(永続罠)

 

 

遊矢&権現坂

手札

権現坂3→2

遊矢5

ライフ1600

場 超重武者トークン×2 レベル4 守備2400

 

「う、ぐう…」

「権現坂!!」

バトル・ビーストの動きが止まり、それを見た権現坂は若干ふらつき始め、遊矢がその巨体を支えようとする。

だが、権現坂は左手で振り払う。

「集中しろ、遊矢!!お前のターンだぞ!!」

「権現坂…」

「このターンが勝負だぞ…」

せっかく墓地へ落した《超重武者装留ビッグバン》の剣闘獣の動きを封じる効果はフィールドに守備表示の超重武者がいなければ発動できない。

当然、2体の《超重武者トークン》はこのままバトル・ビーストのターンが来れば破壊されるのは目に見えている。

「俺のターン、ドロー!!」

 

遊矢

手札5→6

 

「俺はスケール3の《EMシール・イール》とスケール6の《EMオッドアイズ・ミノタウロス》でペンデュラムスケールをセッティング!」

カラフルなウナギ型のモンスターと二色の眼を持つデフォルメされたミノタウロスというべきモンスターが遊矢の左右で光の柱を生み出す。

「《シール・イール》のペンデュラム効果発動!1ターンに1度、相手フィールドに存在するモンスター1体の効果をターン終了時まで無効にする!」

光の柱から飛び出した《EMシール・イール》が発射した×のシールが《剣闘獣ドミティアノス》に命中する。

同時に巨大化したシールはそのモンスターの身動きを封じて見せた。

「これで、攻撃対象を俺が決めることができ、モンスター効果も妨害されない!そして、俺はレベル4から5のモンスターを同時に召喚可能!揺れろ、魂のペンデュラム!天空に描け、光のアーク!ペンデュラム召喚!現れろ、《EMチェンジ・スライム》《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!!」

光の中から現れたのは左目のあたりの星のタトゥーをつけ、白黒のシルクハットを受けた水色のスライムだった。

 

EMチェンジ・スライム レベル5 守備1900

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

「《チェンジ・スライム》の効果。このカードをリリースすることで、俺のフィールドのモンスターの属性と種族をターン終了時まで俺が宣言したものに変更する。俺が宣言するのは闇属性・ドラゴン族だ!」

《EMチェンジ・スライム》が大きくその体を膨張させ、元々闇属性・ドラゴン族である《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》は無視して、2体の《超重武者トークン》を取り込んでいく。

そして、スライム部分が消えると現れたのは黒い甲冑へと変貌し、顔立ちがドラゴンに似たものとなった2体の《超重武者トークン》だった。

「さらに、俺は手札から《EMトランプ・ウィッチ》を召喚!」

 

EMトランプ・ウィッチ レベル1 攻撃200

 

「《トランプ・ウィッチ》の効果。1ターンに1度、俺のフィールドのモンスターを素材に融合召喚を行うことができる!俺が融合素材にするのは《チェンジ・スライム》の効果で闇属性・ドラゴン族になった2体の《超重武者トークン》!!」

(そうだ…俺の布陣は剣闘獣の動きを止め、弾丸を生み出すための物!!)

《EMトランプ・ウィッチ》が杖を振るい、トランプのスートがちりばめられた渦を生み出すと、その中に2体の《超重武者トークン》が飛び込んでいく。

「友を守る2つの盾が今一つとなる!融合召喚!現れろ、《ヴァレルロード・F・ドラゴン》!!」

 

ヴァレルロード・F・ドラゴン レベル8 攻撃3000

 

(《ヴァレルロード・F・ドラゴン》…。剣崎殿から受け取った、遊矢の新たなドラゴンの1体)

「バトルフェイズ開始とともに、《F・ドラゴン》の効果を発動!1ターンに1度、自分フィールドのモンスター1体と相手フィールドのカード1枚を破壊することができる!俺は《トランプ・ウィッチ》と《ドミティアノス》を破壊する!」

《EMトランプ・ウィッチ》が光の球体となって《ヴァレルロード・F・ドラゴン》に吸収される。

《ヴァレルロード・F・ドラゴン》の口が開き、口内に隠されていた銃身があらわとなる。

そこから発射された弾丸が《剣闘獣ドミティアノス》を撃ちぬき、爆散させた。

「続けて攻撃だ!《F・ドラゴン》で《エーディトル》を攻撃!」

続けて弾丸を生み出した《ヴァレルロード・F・ドラゴン》はそれを《剣闘獣総督エーディトル》に向けて発射する。

着弾と同時にそのモンスターも先ほどの《剣闘獣ドミティアノス》と同様爆散し、爆風がバトル・ビーストを襲う。

「グオオオオオ!!!」

 

バトル・ビースト

ライフ3700→3100

 

「さらに、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》で《ガイザレス》を攻撃!螺旋のストライク・バースト!!」

《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が放つ螺旋の炎が最後に残った剣闘獣を焼き尽くし、炎はバトル・ビーストにも及ぶ。

「《オッドアイズ》が相手モンスターと戦闘を行ったとき、相手に与える戦闘ダメージは倍になる!!」

「グルルル…」

 

バトル・ビースト

ライフ3100→2900

 

「そして、カードを1枚伏せて、ターンエンド」

 

バトル・ビースト

手札0

ライフ2900

場 剣闘排斥波(永続魔法)

  剣闘海戦(永続罠)

 

 

遊矢&権現坂

手札

権現坂2

遊矢6→0

ライフ1600

場 ヴァレルロード・F・ドラゴン レベル8 攻撃3000

  オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500

  EMシール・イール(青) Pスケール2

  EMオッドアイズ・ミノタウロス(赤) Pスケール6

  伏せカード1

 

 

「く…くそ!!」

「どうした?この程度か…?」

ヒイロとデュエルを行うサンダースは《マリンフォース・ドラゴン》のモンスター効果によってエクストラデッキに戻された《剣闘獣総督エーディトル》を見て、今自分が置かれている状況がいかに悪いものかを感じていた。

今はバトル・ビーストの状況を見る余裕はなく、おまけに一緒にいるブーンは加勢する様子を見せない。

「ブーン、貴様!!今すぐ加勢しろ!!奴を倒さねば、プロフェッサーに危害が!!」

「悪いな、あんたに俺たちジェルマンを命令する権限はない。そのプロフェッサーからジェルマン独自の行動を許されている。いわば、俺たちはアカデミアの中の独立した部隊というわけだ」

「き、貴様…!」

「悪いな、サンダース教官。安心しろ、お前がいなくなったとしても、プロフェッサーの身は安全だ」

 

「ジェルマン…。なるほど。アカデミアの中でも異質な部隊だということは遊矢たちからの話でも分かったが…」

「ええ…。ですが、変わらないものもあります。プロフェッサーの…いえ、赤馬零王の狂気から生まれた点です」

船内の病室の中でエリクから話を聞く遊勝の拳に力が入り、弱った体が震える。

身体障碍の著しい彼には遊勝の護衛を任されており、侵入してきたらすぐにデュエルができるようにデュエルディスクは装着したままにしている。

「プロフェッサーの登場によってアカデミアはデュエル戦士養育のための組織となりました。しかし、一定年齢に達した少年少女を集めて、訓練するのには時間がかかります。そして、本人の素質の問題もある。それを解決する手段として生まれたのが我々、ジェルマンなのです」

訓練してきたデュエル戦士の中でも高い素質を持つ少年少女のDNAを採取し、それから生み出したIPS細胞を利用して人工的に精子と卵子を精製する。

そして、最高の相性と認められた精子と卵子を人工授精して生み出された人間の集団がジェルマンだ。

「生み出されたデザインベビーは成長促進のための処置が施されます。そして、インプラントによって脳を制御すれば、アカデミアにとって最高の戦士となる…。しかし、今のジェルマンはプロフェッサーではなく、プロフェッサーの代理人であるAIそのものに忠誠を誓っています」

「AIそのものへの忠誠…か…。遅すぎたのかもしれないな…。すべてが…」

 

「ぐう…ぐうう…」

モンスターが全滅し、おまけに遊矢と権現坂のフィールドには2体のドラゴンが存在する。

この状況はバトル・ビーストにとっては絶望的な状況だ。

不意に脳裏にかすめたのがここから逃げるという選択肢。

だが、その選択肢はすぐに消えてしまい、視線がデッキに向けられた。

「俺の…ターン!!!」

 

バトル・ビースト

手札0→1

 

「俺は手札から魔法カード《逆境の宝札》を発動!!相手フィールドに特殊召喚されたモンスターが存在し、自分フィールドにモンスターが存在しないとき、デッキからカードを2枚ドローする!!そして、俺は手札から《静寂の剣闘》を発動!相手フィールドにのみモンスターが存在するとき、デッキから剣闘獣1体と剣闘獣魔法カード1枚を手札に加える。俺は《団結する剣闘獣》と《剣闘獣ホプロムス》を手札に加える!そして、俺は手札から《スレイブライオン》を召喚!」

密林の中からのそりのそりとゆっくりとした足取りで《スレイブタイガー》に似た様相の鎧を身にまとったライオンが現れる。

違いがあるとすれば、四肢と首に鎖付きの拘束具が装着されていることだ。

 

スレイブライオン レベル3 攻撃300

 

「こいつがフィールド上に存在する限り、こいつも剣闘獣扱いになる!そして、こいつの召喚に成功したとき、自分フィールドに他にモンスターが存在しない場合、相手フィールドに存在する特殊召喚されたモンスターと同じ数まで墓地から剣闘獣をエクストラデッキに戻すことができる!今フィールドに存在するのは《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》と《ヴァレルロード・F・ドラゴン》!よって、墓地の《エーディトル》と《ガイザレス》をデッキに戻す!そして、戻したカードと同じ数だけデッキから剣闘獣を効果を無効にして特殊召喚する!俺は《ベストロウリィ》と《ウェスパシアス》を特殊召喚!」

《スレイブライオン》が空に向けて咆哮し、密林の中から2体の剣闘獣が飛び出し、彼の両サイドに立つ。

 

剣闘獣ベストロウリィ レベル4 攻撃1500

剣闘獣ウェスパシアス レベル7 攻撃2300

 

「俺は《F・ドラゴン》の効果を発動!このモンスターの効果は相手ターンでも発動できる!《オッドアイズ》と《剣闘排斥波》を破壊する!!」

《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が変化した光を吸収した《ヴァレルロード・F・ドラゴン》の口から放たれる弾丸が《剣闘排斥波》のソリッドビジョンを撃ちぬく。

これで新たな剣闘獣をフィールドに呼び出されることを防いだものの、まだバトル・ビーストの動きは止まらない。

「そして、俺は《ベストロウリィ》と《スレイブライオン》をデッキに戻し、融合する!!現れろ、《剣闘獣ガイザレス》!!」

 

剣闘獣ガイザレス レベル6 攻撃2400

 

「《ガイザレス》の効果発動!!このカードの特殊召喚に成功したとき、フィールド上のカードを2枚まで破壊できる!《ヴァレルロード・F・ドラゴン》と伏せカードを破壊する!!」

《剣闘獣ガイザレス》が大きく飛び上がり、かまいたちを起こそうとする。

「ここでフィールドががら空きになっては…!!」

「それはさせない!!俺は罠カード《ペンデュラム・ブロック》を発動!俺のペンデュラムゾーンにペンデュラムカードが2枚存在するとき、このターン俺のフィールドのモンスター1体は戦闘・効果では破壊されない!」

2本の光の柱が生み出したバリアが《ヴァレルロード・F・ドラゴン》を包み、その身を守る。

「バトルフェイズ開始と同時に、俺は手札から速攻魔法《団結する剣闘獣》を発動!!手札・フィールド・墓地の剣闘獣をデッキに戻し、剣闘獣融合モンスターをエクストラデッキから特殊召喚する!!俺は墓地の《アンダバタエ》、フィールドの《ガイザレス》をデッキに戻し、再び現れろ!!《剣闘獣総督エーディトル》!!」

 

剣闘獣総督エーディトル レベル8 守備3000

 

「そして、メインフェイズ2に《エーディトル》の効果!!再びエクストラデッキから《ガイザレス》を特殊召喚する!!」

《剣闘獣総督エーディトル》のふるう鞭に従い再び戦場に姿を現す《剣闘獣ガイザレス》。

再びフィールドを薙ぎ払うべく、翼に風をためていく。

「《ガイザレス》の効果!!お前の2枚のペンデュラムカードを破壊する!!」

再び吹き荒れる風が光の柱を粉々に打ち砕き、さらにはそれを生み出していた2体のペンデュラムモンスターを粉みじんにしていく。

「俺はこれで…ターンエンド…」

「《ペンデュラム・ブロック》の効果。この効果の対象となったモンスターがペンデュラムモンスターじゃない場合、ターン終了と同時に墓地へ送られる」

バリアが消えると同時に《ヴァレルロード・F・ドラゴン》も姿を消す。

守ってくれる存在のいない2人を2体の剣闘獣がにらむ。

 

バトル・ビースト

手札1(《剣闘獣ホプロムス》)

ライフ2900

場 剣闘獣総督エーディトル レベル8 守備3000

  剣闘獣ガイザレス レベル6 攻撃2400

  剣闘海戦(永続罠)

 

 

遊矢&権現坂

手札

権現坂2

遊矢0

ライフ1600

場 なし

 

「はあ、はあ…まだ、まだ…いる、ね…」

フラフラになった伊織はその場に座りかける自分に活を入れるべく足を叩くが、それでも体の疲労をごまかすことができない。

この中では一番持ちこたえているであろう零児も、十数人目のデュエルロイドを相手する段階でとうとう契約書の効果以外でのダメージを受けるようになっていた。

「ちっ…いくら倒しても機械じゃあな…」

「大丈夫だよ。遊矢君と権現坂君が勝って、本体を止めればこれも終わる。あとは、耐えればいいだけだ」

遊矢と権現坂もそうだが、気がかりなのは敗れた沢渡だ。

おそらくはカードにされている可能性が高く、デュエルロイドの中にもし沢渡のカードを持っている個体があれば、そこから回収して翔太の力で救出することができる。

そのためにも、2人には頑張ってもらうしかない。

 

「俺の…ターン!!」

 

権現坂

手札2→3

 

「獣め!このターンで終わらせてくれる!!俺のフィールドにモンスターが存在せず、相手フィールドに2体以上モンスターが存在する場合、《超重武者テンB-N》は特殊召喚できる!」

 

超重武者テンB-N レベル4 守備1800

 

「そして、このカードの召喚・特殊召喚に成功したとき、墓地からレベル4以下の超重武者1体を特殊召喚できる。俺が特殊召喚するのは《カゲボウ-C》だ!!」

 

超重武者カゲボウ-C レベル3 守備1000

 

「そして、俺は《テンB-N》と《カゲボウ-C》をリリースし、アドバンス召喚!老将の刃よ、密林の中で燃え上がれ!!《超重武者装留ホムラカネフサ》!!」

2体の超重武者が姿を消しと同時に権現坂と遊矢の目の前の地面が砕け、火柱が発生する。

その中から現れたのは切り傷や刺さったままの大量の矢が印象的な平安武者の鎧で、隙間からは炎が漏れ出ている。

火柱が収まると、鎧の中にあるのであろう炎が激しく燃え上がり、全身を炎でまとった状態で立ち上がる。

 

超重武者装留ホムラカネフサ レベル8 攻撃0

 

「《ホムラカネフサ》の効果…。このカードの召喚に成功したとき、墓地に存在するレベル7または8の超重武者を効果を無効にし、守備表示で特殊召喚し、このカードを装備させる!甦れ、《ビッグベン-K》!!」

砕けた地面から右腕が出てきて、それが地面をつかむ。

そこから出てきたのはボロボロな状態の《超重武者ビッグベン-K》で、這い出るとともにその装甲の破片が地面に落ち、内部の回路が露出していく。

そんな彼の身を守るべく、《超重武者装留ホムラカネフサ》が全身を分離させ、それらが《超重武者ビッグベン-K》に装着されていく。

紅蓮の鎧を身にまとった《超重武者ビッグベン-K》は新たに手にした燃える刀身の長刀を振るう。

「《ホムラカネフサ》を装備した《ビッグベン-K》の守備力は1000アップする!!」

 

超重武者ビッグベン-K レベル8 守備3500→4500

 

(これなら、《エーディトル》は倒せるかもしれない。でも…)

それでも、守備表示であるためにダメージを与えることができず、《剣闘獣ガイザレス》がフィールドに残ることになる。

フィールドに残る剣闘獣の数があればあるほど、バトル・ビーストの選択肢は広がることになる。

「そして、俺は墓地の《ペンデュラム・ブロック》の効果を発動!このカードを除外し、《ビッグベン-K》にこのターンのみ、戦闘または効果で破壊されたときに復活できる効果を与える!」

これで墓地から魔法・罠カードがなくなり、超重武者たちは再び真の力を発揮できるようになった。

だが、効果を無効化された《超重武者ビッグベン-K》は守備表示のまま攻撃することができない。

今の状態のバトルフェイズであれば、《超重武者装留ビッグバン》の効果を使うことができるが、そのことはバトル・ビーストも分かっていることだ。

「俺は《ホムラカネフサ》の効果を発動!俺のライフを半分支払い、フィールド上のこのカードの装備モンスターの守備力以下の攻撃力を持つモンスターすべてと魔法・罠カードを焼き尽くす!!」

「な…何ぃ!?」

「修羅の炎に焼かれるがいい!!」

一瞬目を光らせた《超重武者ビッグベン-K》が長刀を地面に突き刺すと同時に大爆発を引き起こす。

爆発とともにそこから発生する炎の嵐は森を焼き尽くし、2体の剣闘獣と《剣闘海戦》も灰となっていく。

「う、ああ…うわあああああ!!!!!」

荒れ狂う炎の中、崩壊していく布陣にバトル・ビーストは頭を抱え、声を上げるしかなかった。

 

「この感じ…?」

デュエルロイドとデュエルをする侑斗もまた、権現坂が引き起こした事態を感じ取った。

同時に、これは下手をするとこちらも巻き込みかねないスケールのものだということも感じていた。

「みんな!僕のところに集まるんだ!!!」

「はあ…?何を言って」

「いいから!!」

有無を言わさぬ態度に文句を言いたげな翔太だが、侑斗に従うように彼に近くまで後ずさる。

翔太に続いて零児や伊織たちも集まったのと前後するかのように、急に暑さを感じ始める。

「この暑さ…これは…」

「ウィンダ!」

「ユウ!!」

侑斗とウィンダが互いに風を起こし、それを障壁にして仲間たちの盾にした直後、激しい炎が侑斗たちに襲い掛かる。

炎を受けたデュエルロイド達は高温によって動きが鈍り、中には冷却が追いつかずに機能停止するものも出てくる。

焼かれていく森だが、それでも再生しようという動きを見せるも、続けてやってくる炎の嵐に再び焼かれる。

ほんの数分の嵐が過ぎ、風の障壁を解除した後に広がったのは焼け焦げた木々、そして何らかの機能を停止させるか何らかの障害を起こしているデュエルロイド達の姿だった。

「おいおい…何がどうしたら、こんなことが起こるんだよ…?」

「遊矢か権ちゃんがやったのって思ったけど…その通りみたい」

森が焼き尽くされたことで、バトル・ビーストとデュエルを行う2人の姿、そしてデュエルアカデミアの正門の光景を肉眼で見ることができた。

(この森のリアルソリッドビジョンの本来の大きさは30メートル程度。でも、僕たちの感覚ではそれ以上の広さに感じられた。ソリッドビジョンそのものの仕掛けというしかないのかな…?)

 

「そして、《ホムラカネフサ》の効果によって破壊された《ビッグベン-K》は《ペンデュラム・ブロック》から得た効果により、墓地からよみがえる!!」

焼けた地面に再び大穴が空き、そこから出てきたのは黒く焦げた装甲姿で、炎の長刀を握った《超重武者ビッグベン-K》だった。

 

超重武者ビッグベン-K レベル8 守備3500

 

遊矢&権現坂

ライフ1600→800

 

「とどめだ、獣よ!!《ビッグベン-K》でダイレクトアタック!!」

頭上で数回長刀を回転させた後、それをバトル・ビーストにむけてふるう。

「ギャアアアアアアア!!!」

刃を受けたバトル・ビーストの体は焼けた地面の上を転げまわり、正門に激突してようやく止まった。

 

バトル・ビースト

ライフ2900→0

 

 

 

 

 

 

超重武者装留タネガシマ

レベル3 攻撃1200 守備1500 効果 地属性 機械族

このカード名の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できず、(3)の効果はデュエル中1度だけ発動できる。

(1):自分メインフェイズに自分フィールドの「超重武者」モンスター1体を対象として発動できる。自分の手札・フィールドからこのモンスターを守備力800アップの装備カード扱いとしてその自分のモンスターに装備する。

(2):このカードの効果でこのカードが装備されている場合に発動できる。装備されているこのカードを手札に戻す。この効果は相手ターンでも発動できる。

(3):自分の墓地に魔法・罠カードが存在しないとき、手札に存在するこのカードを墓地へ送ることで発動できる。デッキからカードを2枚ドローし、その後手札の「超重武者」モンスター1体を墓地へ送る。その時手札に「超重武者」モンスターが存在しない場合、手札をすべて墓地へ送る。

 

超重武者ヨシツ-Ne

レベル7 攻撃1500 守備2500 効果 地属性 機械族

このカード名の(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しか行えない。

(1):自分フィールドにモンスターが存在せず、相手フィールドにモンスターが存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。

(2):手札に存在するカードはこのカードのみの場合、このカードはリリースなしで表側守備表示で召喚できる。

(3):1ターンに1度、自分の墓地に魔法・罠カードが存在しない場合、フィールド上のカード1枚を対象に発動できる。そのカードを破壊する。その効果で破壊したカードがモンスターカードの場合、そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。

 

超重武者ツグノ-Bu

レベル2 攻撃0 守備0 スピリット・チューナー 地属性 機械族

このカードは(2)以外の方法で特殊召喚できず、(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが召喚・リバースしたターンのエンドフェイズに発動する。

このカードを持ち主の手札に戻す。

(2):相手ターン中、自分フィールドの「超重武者」モンスターが戦闘または相手の効果によって破壊されたとき、自分の墓地に魔法・罠カードが存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚できる。その後、破壊されたそのモンスターを墓地から特殊召喚し、このカードと特殊召喚したモンスター1体のみを素材として「超重武者」SモンスターのS召喚を行う。

(3):このカードの召喚に成功したとき、自分の墓地に魔法・罠カードが存在しない場合、自分フィールドに存在する「超重武者」1体を対象に発動できる。そのモンスターはこのターン、1度だけ戦闘・効果では破壊されない。

 

超重武者タダノ-Bu

レベル4 攻撃0 守備1800 効果 地属性 機械族

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):相手の直接攻撃によって自分が戦闘ダメージを受けたときに発動できる。手札に存在するこのカードを特殊召喚する。その後、自分が受けた戦闘ダメージと同じ数値の守備力を持つ「超重武者トークン」1体を表側守備表示で特殊召喚する。その時、自分の墓地に魔法・罠カードが存在しない場合、代わりに「超重武者トークン」2体を表側守備表示で特殊召喚する。

(2):このカードが墓地に存在し、自分フィールドの「超重武者」モンスターが破壊されるときに発動できる。代わりにこのカードをゲームから除外する。

 

超重武者トークン

レベル4 攻撃0 守備0 トークン 地属性 機械族

「超重武者タダノ-Bu」の効果で特殊召喚される。

 

EMチェンジ・スライム

レベル5 攻撃1600 守備1900 効果 水属性 水族

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードをリリースし、自分が属性・種族を1つずつ宣言することで発動できる。ターン終了時まで自分フィールドのモンスターの属性・種族は宣言したものと同じになる。

 

静寂の剣闘獣

通常魔法カード

このカード名のカードは1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドにモンスターが存在せず、相手フィールドにのみモンスターが表側表示で存在する場合にのみ発動できる。デッキから「剣闘獣」モンスター1体と「剣闘獣」魔法カード1枚を手札に加える。この効果で手札に加えた魔法カードはこのターン、1度しか使用できず、このカードを発動したターン、自分は「剣闘獣」以外のモンスターを召喚・特殊召喚できない。

(2):自分フィールドの「剣闘獣」が相手モンスターの攻撃対象となった時、墓地に存在するこのカードと「剣闘獣」モンスター1体を除外することで発動できる。そのモンスターはこのターン、戦闘では破壊されない。

 

スレイブライオン

レベル3 攻撃300 守備300 効果 地属性 獣族

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

このカードがフィールドに表側表示で存在する限り、ルール上「剣闘獣」モンスターとしても扱う。

(1):このカードの召喚に成功したとき、自分フィールドに他のモンスターが存在しない場合にのみ発動する。相手フィールドに存在する特殊召喚されたモンスターの数まで墓地から「剣闘獣」融合モンスターをEXデッキに戻す。その後、その効果でEXデッキに戻したカードと同じ数だけデッキから「剣闘獣」モンスターを攻撃表示で特殊召喚する(同名のモンスターは1体まで)。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。この効果を発動したターン、自分は「剣闘獣」以外のモンスターを召喚・特殊召喚できない。

 

ペンデュラム・ブロック

通常罠カード

(1):自分PゾーンにPカードが2枚存在する場合にのみ発動できる。ターン終了時まで自分フィールドのモンスター1体は戦闘・効果では破壊されない。この効果を受けたモンスターがPモンスター以外の場合、ターン終了時に墓地へ送られる。

(2):墓地に存在するこのカードを除外し、自分フィールドに存在するモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターはターン終了時まで以下の効果を得る。この効果はこのカードは墓地へ送られたターン、発動できない。

●このカードが戦闘・効果によって破壊されたときに発動できる。このカードを墓地またはEXデッキから表側守備表示で特殊召喚する。

 

超重武者装留ホムラカネフサ

レベル8 攻撃0 守備0 効果 炎属性 機械族

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードの召喚・特殊召喚に成功したとき、自分の墓地に存在するレベル7または8の「超重武者」モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを表側守備表示で特殊召喚する。その後、このカードを装備カード扱いとしてそのモンスターに装備する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。

(2):このカードが「超重武者」モンスターの装備カード扱いとして自分魔法・罠ゾーンに存在するとき、自分LPを半分支払うことで発動できる。フィールド上に存在する装備モンスターの守備力の数値以下の攻撃力を持つモンスターとお互いのフィールドの魔法・罠カードをすべて破壊する。

 

「はあ、はあ、はあ…」

倒れたバトル・ビーストを見た権現坂はようやく疲労を自覚したのか、その場で膝をつく。

そして、このデュエルの切り札となった《超重武者装留ホムラカネフサ》のカードを見た。

(親父殿が此度の決戦の餞別として託してくれたカード…)

 

エクシーズ次元から戻った権現坂は傷の回復を待たず、再び山籠もりを始めた。

その時の彼の心を突き動かしていたのは、何よりも無力感だった。

エドに敗れ、人質となって遊矢の心を追い詰める道具にされた挙句、エドを救えなかったことに悲しむ遊矢に対して、何の力になることもできなかった。

そんな弱い自分を鍛えなおそうと滝に打たれ、熊と戦い、拳を大木を倒し…。

それでも、体が傷つくだけで何の足しにもならない。

刃からシンクロ召喚を学び、そのうえで修業していた時は何らかの変化があったにもかかわらず。

そのことに悩み、苦しむ中で父親から渡されたのがこのカードだった。

(昇よ、シンクロ召喚を学び、新たな不動のデュエルの道を進むおぬしに儂からかけることのできる言葉はない。だが、このカードであれば、道を示してくれるだろう)

 

(今の俺にできること…修羅の道を進まざるを得ない遊矢の、友の盾となること…)

ただ受け止めるだけではない。

受け止めて、焼き尽くして障害を排除する。

このカードはまさにその焼き尽くす役目を担うカードといえた。

「よくやった、2人とも。ここからであれば、アカデミアの内部へ突入することができるだろう」

「そうだ…沢渡のカードは…!?」

バトル・ビーストを止めたことでデュエルロイド達の動きも止まった今なら探せる。

動こうとする遊矢に対して、零児達は動くそぶりを見せない。

「どうしたんだよ!?沢渡を見つけないと…」

「探したよ。けれど…見つからなかった」

「きっと、もうすでに回収されてしまったんだ…。翔太の能力はアカデミアも知ってるからな」

「くそっ!!沢渡…」

「でも、回収されたというならきっと、この中にあるはず…助けられないことはないはずだよ」

幸いというべきか、ここはアカデミアで、もう中へ突入できる状態だ。

だとしたら、助け出せる可能性は目に見えている。

「なら、行こ…」

扉を開き、先へ進む決意を固める中、風を切る音が侑斗の耳に届く。

デュエルに敗北し、気を失っていたはずのバトル・ビーストが獣のような四本足で疾走し、遊矢にとびかかろうとする。

「まずい…遊矢!!」

遊矢を殴り飛ばした権現坂の左肩にバトル・ビーストが食らいつく。

牙のような鋭い歯が権現坂の肉を貫き、骨にまで達する。

肩から流れる血と激しい熱が権現坂の体を汗で濡らす。

「ぐ、うう…うう!!」

「権現坂!!」

「くっ…どくんだ!!」

風の目を発動した侑斗が起こした風を感じたバトル・ビーストが権現坂から離れ、大きく後ろへ跳躍する。

口と歯にべっとりとついた血をぬぐうそぶりを見せず、遊矢たちとデュエルをした時と違い、感情も見せていない。

「ちぃ…まさかとは思うが、ロジェがセキュリティに仕掛けていたものと同じことを…」

ロジェがセキュリティの人員を操り人形にするために行った仕掛け。

それによって、バトル・ビーストは機械のように動き、遊矢たちを止めようとしている。

敗れたというなら、相討ちになってでも止めろというAIの命令を実行するかのように。

体格のある権現坂ですら、肩に重傷を負ってしまった。

精霊の力を持つ侑斗とウィンダでも、止められるかわからない。

再び遊矢たちに攻撃を仕掛けようと駆け出すバトル・ビースト。

それを見た素良はデュエルディスクを外す。

「大丈夫…みんな。僕に任せて」

「紫雲院素良…?」

「素良、何を!?」

素良は首筋に注射器を押し付け、中のナノマシンを注入する。

そして、それを投げ捨てた後でバトル・ビーストに向けて走り出した。

体格が小さい素良だが、アカデミアでデュエル戦士として鍛えられた体でかろうじてバトル・ビーストを抑える。

だが、彼を排除しようとバトル・ビーストの牙が彼の首を襲う。

「素良ー!!」

「か‥うう…やっぱり、そうか…君は…」

首からの出血に耐え、バトル・ビーストにしがみつく素良には彼から感じるはずの体温が異様に冷たいのが感じられた。

エクシーズ次元での戦線に参加したとき、1度だけ触れた住民の遺体と同じ冷たさ。

自分の道連れにふさわしい相手。

「みんな、僕たちから…離れるんだ。今から…僕の中に仕掛けられている爆弾が爆発する!!」

「何…!?」

「冗談…に聞こえるよね…?けど、本当なんだ。ずっと…ナノマシンを注射して止めてたけど…今回は、特別だ…!」

血が流れ出ているのに、徐々に体温が高まっていくのを感じる。

体内に仕掛けられた、裏切り者ともども遊矢たちを抹殺するための爆弾が炸裂へのカウントダウンを始めている。

誤算があるとしたら、巻き込まれる相手がバトル・ビーストだということだ。

「ダメだ…素良!!やめろって!!」

何かできることがあるはず、そう言いたかった遊矢だが、それを口にすることができなかった。

もう彼を救う手立てがない、それを直感で分かってしまったから。

それに、たとえ爆弾を解除したとしても出血量を考えるともう長くはない。

「ごめん…やっぱり、僕…みんなと一緒にいる資格なんてないよ。みんなと一緒にいて、笑ってデュエルをするには…僕、血で汚れすぎたみたい…」

だが、そんな血にまみれた自分でも、未来のための礎になることができる。

遊矢たちなら、きっとアークエリア・プロジェクトよりも、このAIが導き出す次元統一よりもマシな未来を作ってくれる。

そんな未来を見たかったという気持ちはあるが、その願いはほかのだれかに託すことができる。

「あのさ…1つだけ、頼んでいい…?僕、アカデミアに引き取られる前に、生き別れた妹がいるんだ」

「え…?」

「美宇って女の子。もし、生きていたら…会ってあげて」

「そんなの…そんなの、自分で会いに…!!」

「約束してくれ、遊矢!!約束してくれなきゃ…僕…死んでも…父さんと母さんに、会わせる顔がないんだ…!!」

記憶のかなたに消え、どんな人だったのかすらわからない父親と母親。

守るべき妹と離れ離れになり、デュエル戦士となり、人殺しをしてきた素良にとって、これが美宇と両親にできる唯一の孝行。

もう助からず、死へと一直線に進む素良にかけられる言葉は一つしかなかった。

「…わかったよ。…ありがとう、素良…」

「ちっ…チビが…」

「素良君…」

「…もし、生まれ変わることがあったら…今度は、みんなと笑ってデュエルができるかな…?」

その言葉を最後に、素良とバトル・ビーストを包むように閃光が走る。

次の瞬間、その光を中心に激しい爆発が起こる。

激しい爆風が襲い掛かる中、侑斗とウィンダが風のバリアを展開する。

光から両腕で目を守る遊矢の目から涙があふれ、とどまることを知らなかった。

 



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第126話 ブーン

「どうした…?お前は戦わないのか?」

デュエルディスクを展開させたままのヒイロが一向にデュエルをしようというそぶりを見せないブーンをにらむ。

そばにはデュエルに敗北し、倒れたサンダースの姿があり、仲間のはずの彼の敗北に対して、ブーンは見向きもしない。

「ああ…お前は確かにこの計画の邪魔をする脅威だ。だが…既に計画は最終段階に入っている。お前たちがここに来た時点でな」

「何…?」

「少しだけ、ヒントをやろう。すべての創造は破壊からしか生まれない。そして、お前がその破壊を目撃することはない」

サンダースが敗北の窮地に陥ったとしても加勢しなかったブーンが急にデュエルディスクを展開し、ヒイロをにらむ。

さらには逃げられないようにするため、デュエルアンカーを射出してヒイロのデュエルディスクと接続する。

「…何のつもりだ?」

「お前の望み通りにデュエルをしてやるというだけだ。最も、前に戦ったあのガキでもよかったがな。彼はどうしている?」

「さあな。もうすでに妹を救出したところじゃないのか?」

「で、あればいいがな」

「「デュエル…」」

 

ヒイロ

手札5

ライフ4000

 

ブーン

手札5

ライフ4000

 

「俺の先攻…。俺のフィールドにモンスターが存在しないとき、このカードはリリースなしで召喚できる。俺は《幻獣デスアニマ》を召喚」

地面から真っ黒な棺のようなものが現れ、それが開くとその中から両腕を交差させた状態で手錠をかけられ、さらには右目を除いて全身を包帯で包まれた女性というべきモンスターが現れる。

 

幻獣デスアニマ レベル7 攻撃2400

 

「そして、カードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

ヒイロ

手札5→3

ライフ4000

場 幻獣デスアニマ レベル7 攻撃2400

  伏せカード1

 

ブーン

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「俺のターン、ドロー」

 

ブーン

手札5→6

 

「俺は手札から《鋼の歯車人間》を召喚」

 

鋼の歯車人間 レベル2 攻撃1300

 

「さらに、手札から永続魔法《鋼の歯車の叫び》を発動。このカードの発動処理として、俺はデッキからメタルギア2体を墓地へ送る」

 

デッキから墓地へ送られたカード

・鋼の歯車蛸

・鋼の歯車弩級戦車

 

「《鋼の歯車の叫び》の効果。1ターンに1度、手札の《鋼の歯車融合》を相手に見せることで、墓地から融合モンスター以外のメタルギア1体を効果を無効にして特殊召喚できる。俺が特殊召喚するのは《鋼の歯車弩級戦車》」

《鋼の歯車工場》のソリッドビジョンの中から《鋼の歯車弩級戦車》が飛び出してくる。

緊急整備をされた上での出撃のためか、ところどころに破損したままの個所や取り付けられていない状態の砲台もあるものの、それでも融合素材としては十分な存在だ。

 

鋼の歯車弩級戦車 レベル8 攻撃3000→0

 

「そして、手札から《鋼の歯車融合》を発動。フィールドの《人間》《弩級戦車》を融合素材にする。任務を遂行する感情無き兵士よ、障害を踏み潰す戦車よ、、歯車を絡ませ、任務遂行の標となれ。融合召喚!現れろ、レベル5!《鋼の歯車G》」

2体のメタルギアが1つとなり、現れたのは《鋼の歯車兵士》のような二足歩行戦車で、違いがあるのはセンサーやカメラなどの情報支援装備が多く、足が3本爪になっているところだ。

フィールドに現れたそれは周囲の状況をそれらの装備で確認し始める。

 

鋼の歯車G レベル5 攻撃1900

 

「《鋼の歯車人間》の効果。このカードがメタルギアの融合素材として墓地へ送られたとき、デッキからカードを1枚ドローする。そして、《鋼の歯車G》の効果。このカードがフィールドに存在する限り、俺は通常の召喚に加えて、さらに手札のメタルギアを召喚できる。俺はさらに《鋼の歯車騎兵》を召喚」

 

鋼の歯車騎兵 レベル3 攻撃1000

 

「《鋼の歯車騎兵》の効果。このカードの召喚に成功したとき、さらに手札・デッキから《鋼の歯車騎兵》2体を特殊召喚する」

 

鋼の歯車騎兵×2 レベル3 攻撃1000

 

「そして、《鋼の歯車G》の効果。フィールド上に存在するこのカードを含む手札・フィールドのモンスターを素材にメタルギアの融合召喚を行う。俺が融合素材とするのは2体の《鋼の歯車騎兵》と《鋼の歯車G》。大地を走る兵器たちよ、歯車を絡ませ、任務遂行の標となれ。融合召喚。現れろ、レベル8、《鋼の歯車T-REX》」

 

鋼の歯車T-REX レベル8 攻撃2800

 

「さらに、墓地の《鋼の歯車融合》の効果。墓地のメタルギア融合モンスター1体をデッキに戻し、墓地から手札に加える。俺が墓地からデッキに戻すのは《鋼の歯車G》。そして、カードを2枚伏せ、バトル。《鋼の歯車T-REX》で《幻獣デスアニマ》を攻撃」

《鋼の歯車T-REX》から発射される複数のミサイルが《幻獣デスアニマ》に次々と命中し、爆炎の中で彼女は消滅する。

 

ヒイロ

ライフ4000→3600

 

「俺は罠カード《レベル・レジストウォール》を発動。俺のフィールドのモンスターが戦闘または相手の効果で破壊されたとき、レベルの合計がそのモンスターのレベルと同じになるように、デッキからモンスターを効果を無効にして特殊召喚する。俺はデッキから《幻獣ホワイトビスマルク》、《シンクロ・エクスクルーダー》、《幻獣の子コロ》を特殊召喚」

 

幻獣ホワイトビスマルク レベル4 守備200(チューナー)

シンクロ・エクスクルーダー レベル2 守備0

幻獣の子コロ レベル1 守備0(チューナー)

 

「モンスターを増やしたとしても無駄だ。《T-REX》は1ターンに2度攻撃することができる。《T-REX》で《ホワイトビスマルク》を攻撃」

3体のモンスターの存在を補足した時点で、レーザー砲の準備を終えていた《鋼の歯車T-REX》が3体の中では一番排除すべきである《幻獣ホワイトビスマルク》に向けてそれを発射しようとする。

「俺は手札の《幻獣の守り手》の効果を発動。俺のフィールドの幻獣が相手の攻撃対象となった時、このカードを手札から特殊召喚し、攻撃対象をこのカードに変更させる」

レーザーを発射しようとする《鋼の歯車T-REX》のレドームにカンカンとリボルバーの銃弾が数発当たる。

フィールドには《シンクロ・エクスクルーダー》のように口元を布で隠しているものの、ボロボロなフード付きのマントで全身を隠した少年がいて、右手にはリボルバーが握られていた。

 

幻獣の救い手 レベル4 守備1500

 

「そして、この効果で特殊召喚されたこのカードはこのターン、戦闘では破壊されず、戦闘で発生する俺へのダメージは0となる」

レドームに執拗に攻撃を仕掛ける《幻獣の救い手》に照準を変更してレーザーを発射するが、少年は大きく跳躍してレーザーを回避する。

「ちっ…俺はこれで、ターンエンド」

 

ヒイロ

手札3→2

ライフ3600

場 幻獣ホワイトビスマルク(《レベル・レジストウォール》の影響下) レベル4 守備200(チューナー)

  シンクロ・エクスクルーダー(《レベル・レジストウォール》の影響下) レベル2 守備0

  幻獣の子コロ レベル1(《レベル・レジストウォール》の影響下) 守備0(チューナー)

  幻獣の救い手 レベル4 守備1500

 

ブーン

手札6→2(うち1枚《鋼の歯車融合》)

ライフ4000

場 鋼の歯車T-REX レベル8 攻撃2800

  鋼の歯車騎兵 レベル3 攻撃1000

  鋼の歯車の叫び(永続魔法)

  伏せカード2

 

「俺のターン」

 

ヒイロ

手札2→3

 

「《幻獣デスアニマ》の効果。召喚されたこのカードが相手によって破壊された次の俺のターンのスタンバイフェイズ時、このカードは墓地から特殊召喚できる」

地面に魔法陣が出現し、その中から棺が現れる。

それが開くと、再び《幻獣デスアニマ》が姿を現した。

 

幻獣デスアニマ レベル7 攻撃2400

 

「レベル7の《デスアニマ》にレベル1の《幻獣の子コロ》をチューニング。深海に眠りし破邪の水龍よ、敵の技を無にし、激流の如く邪悪を薙ぎ払え。シンクロ召喚。出でよ。《マリンフォース・ドラゴン》。頼むぞ、アクア」

「うん、マスター!」

 

マリンフォース・ドラゴン レベル8 攻撃2800

 

「さらに俺はレベル2の《シンクロ・エクスクルーダー》にレベル4の《ホワイトビスマルク》をチューニング。シンクロ召喚。現れろ、《幻獣海龍リヴァイアサン》」

 

幻獣海龍リヴァイアサン レベル6 攻撃2400

 

「…?どうした?アクア」

「マスター…この人って、何だろう?何も、感じられないよ」

プルプルと震えているように見えるアクアと彼の視線の先にいるブーン。

おそらく、こういうことになるとわかっていたヒイロは動揺するそぶりを見せない。

「同じだ…奴は。昔の俺とな」

ヒイロの脳裏に記憶をすべて奪われ、アルカディアムーブメントの尖兵として戦っていた時の記憶がよみがえる。

心を無くし、命令のままに人々を傷つけ、時には殺してきた忌まわしい記憶。

だが、忌まわしいと思い始めたのは記憶を取り戻してからで、それまでは何の変哲もない日常としかとらえていなかった。

(AIによって生み出され、AIによって育てられた…。そして、AIの命令のままに疑問もなく行動する…か)

「マスター…?」

「気にするな、奴を終わらせるぞ。《シンクロ・エクスクルーダー》の効果。このカードを素材にドラゴン族シンクロモンスターのシンクロ召喚に成功したとき、相手フィールドのモンスター1体の攻撃力と守備力を0にする。《T-REX》の攻撃力を0にするぞ」

「ふん…それによって《T-REX》を倒して、そのまま俺のライフを0にするつもりのようだが、そうはさせん。俺は速攻魔法《AI's strategy change》を発動。俺のフィールドに存在するメタルギア融合モンスター1体をデッキに戻し、墓地からそのモンスターの融合素材となったモンスターと同じ数だけメタルギアを効果を無効にして特殊召喚する。ただし、この効果で特殊召喚できる同名モンスターは1体だけだ。俺は《T-REX》をデッキに戻し、《鋼の歯車弩級戦車》、《鋼の歯車人間》、《鋼の歯車騎兵》を特殊召喚する」

《シンクロ・エクスクルーダー》の幻影が杖から放つ魔力を受ける前に《鋼の歯車T-REX》が姿を消し、入れ替わるように3体のメタルギアが姿を現す。

またフィールドには攻撃表示のまま残っている《鋼の歯車騎兵》が残っているものの、それでもこのターンの決着が厳しくなったことは間違いない。

 

鋼の歯車弩級戦車 レベル8 守備1800

鋼の歯車人間 レベル2 守備1200

鋼の歯車騎兵 レベル3 守備1000

 

「そして、この効果で特殊召喚されたモンスターを素材に融合召喚を行う」

「その効果で、再び《T-REX》の融合召喚を行うつもりか…?」

「どうだろうな?俺は再び《弩級戦車》、《人間》、《騎兵》を融合。障害を踏みつぶす戦車よ、心封じられし兵士よ、大地を走る兵器よ、歯車を絡ませ、任務遂行の標となれ。融合召喚。現れよ、《鋼の歯車TX-55》」

胴体の左半分が2連装の大型ミサイルポッドとガトリングガン、レーザー砲となっていて、《鋼の歯車T-REX》以上の巨体を誇る二足歩行戦車が出現するとともに、牛のような鳴き声が周囲に響き渡る。

 

鋼の歯車TX-55 レベル8 攻撃3000

 

「《鋼の歯車TX-55》は相手のカード効果を受けない。よって、《マリンフォース・ドラゴン》の効果は受けない。さらに、融合素材となった《鋼の歯車人間》の効果により、デッキからカードを1枚ドローする

「なら、俺は《リヴァイアサン》の効果を発動。手札1枚を墓地へ送り、デッキ・墓地からレベル4以下の幻獣1体を手札に加えることができる。俺はデッキから《幻獣クリエイトクーシー》を手札に加える」

 

手札から墓地へ送られたカード

・幻獣クレイエンキドゥ

 

「そして、俺はスケール3の《幻獣クリエイトクーシー》をペンデュラムゾーンにセッティング」

真っ白な大きな卵を抱えている羽根の生えた犬というべき幻獣がフィールドに現れ、青い光の柱を生み出す。

「《クリエイトクーシー》のペンデュラム効果。俺のフィールドに幻獣シンクロモンスターか《マリンフォース・ドラゴン》が存在するとき、ペンデュラムゾーンから特殊召喚できる」

青い光の柱が消え、《マリンフォース・ドラゴン》の頭に乗る形で《幻獣クリエイトクーシー》がモンスターゾーンへ移動する。

 

幻獣クリエイトクーシー レベル2 攻撃1000(チューナー)

 

「レベル6の《リヴァイアサン》にレベル2の《クリエイトクーシー》をチューニング」

《幻獣クリエイトクーシー》が背負っていた卵が割れ、その中から飛び出した白い光がチューニングリングを生み出して2体を包んでいく。

「幻獣の名を得た疾風の騎士よ、鎖なき翼ではばたけ。シンクロ召喚。現れろ、《幻獣騎士ウィンドナイト》」

(はああああ!!)

チューニングリングが強い光を発した後、現れたのはかつてヒイロが使っていた《EMウィンドナイト》だが、翼を拘束している鎖はなく、翼も青い光で構成されたものに変わっていた。

腰に差している軍刀を抜き、その切っ先を《鋼の歯車TX-55》に向けた。

 

幻獣騎士ウィンドナイト レベル8 攻撃2400

 

「2体目のレベル8のシンクロモンスター…だが、攻撃力はたったの2400では、《TX-55》には勝てない」

「ああ…そうだ。今のままじゃな。《ウィンドナイト》の効果。このカードをシンクロモンスターをシンクロ素材としてシンクロ召喚に成功したとき、墓地に存在するシンクロモンスター1体を装備カード扱いとしてこのカードに装備する。《幻獣海龍リヴァイアサン》を装備」

シンクロ素材として眠りについたはずの《幻獣海龍リヴァイアサン》が再びフィールドに姿を現すと、青い光となって《幻獣騎士ウィンドナイト》の軍刀に宿る。

刀身は青く染まり、激流のような水が放出されていた。

「そして、このカードの攻撃力は装備カードとなったモンスターの元々の攻撃力の半分の数値分アップする」

 

幻獣騎士ウィンドナイト レベル8 攻撃2400→3600

 

「攻撃力3600…ちぃ…」

「バトル。《幻獣騎士ウィンドナイト》で《TX-55》を攻撃」

(覚悟しろ、水流斬!!)

激流を放つ軍刀を手に、《幻獣騎士ウィンドナイト》が《鋼の歯車TX-55》に向けて突撃する。

接近してくる高エネルギー体を感知した《鋼の歯車TX-55》のAIはそのスピードから逃げるのは困難だと判断し、ミサイルとビームで迎撃を開始する。

だが、ミサイルもビームも水が生み出しバリアが阻み、止めることができない。

やがて至近距離まで接近した《幻獣騎士ウィンドナイト》の軍刀によって重厚な装甲もろとも両断され、爆散した。

 

ブーン

ライフ4000→3400

 

「そして、《ウィンドナイト》の効果。装備カードを装備しているこのカードが戦闘で相手モンスターを破壊したとき、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与える」

「ふっ…これで、俺のライフも残り400ということか…。だが、俺は《TX-55》の効果を発動。このカードが相手によって破壊されて墓地へ送られたとき、デッキからメタルギアモンスター1体を手札に加える。俺は《鋼の歯車卵》を手札に加える」

 

ブーン

ライフ3400→400

 

「ああ…あとはこれで終わりだ。《マリンフォース・ドラゴン》で《鋼の歯車騎兵》を攻撃。マリン・ブラスト」

《マリンフォース・ドラゴン》が口から水のブレスを放ち、それがたった1体残された《鋼の歯車騎兵》に襲い掛かる。

ブレスを受けたそのモンスターは消滅し、水はブーンを襲うが、なぜか彼の目の前でそれは勢いを失い、彼の足元を水浸しにするだけでとどめる。

「何…?」

「悪いな、俺は手札に存在する《鋼の歯車卵》の効果を発動した。俺のライフが1000以下の状態で俺が戦闘ダメージを受けるとき、手札のこのカードを特殊召喚することで、そのダメージを0にする」

黒い卵型の機械がフィールドに現れると同時に、格納されていた3本の腕が展開される。

 

鋼の歯車卵 レベル1 攻撃500

 

「さらに、《鋼の歯車卵》の効果。この効果で特殊召喚に成功したとき、手札・デッキ・墓地からさらに《鋼の歯車卵》を2体まで特殊召喚できる」

 

 

鋼の歯車卵×2 レベル1 攻撃500

 

「これでさらにメタルギアを融合召喚できるということか…。俺は《マリンフォース・ドラゴン》の効果を発動。1ターンに1度、フィールド上のカード1枚を手札に戻すことができる。俺はセットされているカードを手札に戻す」

「なら俺は罠カード《AI's Garage》を発動。このターン、相手によって破壊されたメタルギア融合モンスター1体を召喚条件を無視して特殊召喚する。再び現れろ、《鋼の歯車TX-55》」

《マリンフォース・ドラゴン》に押し流される前に発動したそのカードの中から飛び出す《鋼の歯車TX-55》。

せっかく破壊したモンスターが復活するだけでなく、さらなる融合召喚の呼び水となるモンスターをそろえる手伝いをしたという現実にヒイロは顔をしかめる。

 

鋼の歯車TX-55 レベル8 攻撃3000

 

「俺はモンスターを裏守備表示でセット。そして、カードを1枚伏せてターンエンド」

 

ヒイロ

手札3→0

ライフ3600

場 幻獣騎士ウィンドナイト(《幻獣海龍リヴァイアサン》装備) レベル8 攻撃3600

  マリンフォース・ドラゴン レベル8 攻撃2800

  裏守備モンスター1

  伏せカード1

 

ブーン

手札2→3(うち1枚《鋼の歯車融合》)

ライフ400

場 鋼の歯車TX-55(《Ai's garage》の影響下) レベル8 攻撃3000

  鋼の歯車卵×3 レベル1 攻撃500

  鋼の歯車の叫び(永続魔法)

 

「俺のターン…」

 

ブーン

手札3→4

 

「《鋼の歯車の叫び》の効果発動。手札の《鋼の歯車融合》を見せ、墓地の《鋼の歯車人間》を特殊召喚する」

 

鋼の歯車人間 レベル2 攻撃1200→0

 

「そして、《鋼の歯車融合》を発動。フィールドの《卵》3体と《人間》、そして《TX-55》を融合。砕かれし世界の再生を目指す歯車たちよ、今こそ至高の巨人となれ!!融合召喚!現れろ、レベル12!《鋼の歯車エクセルサス》!」

融合モンスターを含む5体のメタルギア達が渦の中へ消え、その中から赤熱化したカマキリの刃のような腕が2本出てくる。

やがてその中から出てきたのは、かつてデュエルをした地縛神たちを上回るほどの巨大な赤い蜘蛛のような形状の兵器で、現れたと同時に天井も壁も粉砕されていく。

「貴様は危険人物だ。このカードで処分するにふさわしいだろう」

 

鋼の歯車エクセルサス レベル12 攻撃4000

 

「なんだ…揺れ!?」

素良が開いてくれた道を進む翔太たちも、そのモンスターの登場による異常が発生していた。

その場で立つことさえままならなくなるほどの揺れにひび割れる天井。

「何が起こっているというのだ…!?まさか、誰かが破壊工作を…?」

「いや…デュエルだ。デュエルをしているんだ、誰かが…!」

「…わかるのかよ?」

「うん…これは、その影響だ」

なぜだかわからないが、遊矢には断言できた。

遊矢の目はオッドアイになっていて、一瞬ではあるが、黒い部分が赤く染まったように見えた。

 

「ヒイロ・リオニス…。これがジェルマン最高の切り札にして、メタルギアの究極の姿だ」

「確かにな…自分の住処を粉々にするほどにな」

巨大な《鋼の歯車エクセルサス》を前にしても、ヒイロは平然としていた。

こうしたモンスターは既にダークシグナーとの戦いの中で見慣れている。

「《鋼の歯車人間》の効果により、俺はデッキからカードを1枚ドローする。そして、《エクセルサス》の効果。このカードの融合召喚に成功したとき、墓地に存在するメタルギア融合モンスターを装備カード扱いとして、このカードに装備させる」

融合素材としてフィールドから消えたはずの《鋼の歯車TX-55》が再びフィールドに現れ、装備されているレールガンだけを残して消滅する。

レールガンは《鋼の歯車エクセルサス》の胴体に外付けされ、エネルギーが供給される。

「《エクソルサス》はメタルギアを1体しか装備できないが、装備したモンスターの効果を得る。よって、《エクソルサス》は相手のカード効果を受けない。バトル。《エクソルサス》で《マリンフォース・ドラゴン》を攻撃!」

「罠発動!《シンクロ・コンバットゾーン》!自分フィールドのカードが破壊されるとき、代わりに俺のシンクロモンスター1体を破壊する!」

「ふん…ならば身代わりに散れ!《ウィンドナイト》!!」

エネルギー供給を受けたレールガンから大型の質量弾が発射される。

弾速はビームに匹敵していて、《マリンフォース・ドラゴン》をかばった《幻獣騎士ウィンドナイト》の肉体に接触すると同時にその体を粉々に粉砕した。

「く…すまない…」

 

ヒイロ

ライフ3600→2400

 

「《ウィンドナイト》の効果。このカードがフィールドから離れたとき、このカードをペンデュラムゾーンに置く」

「俺は手札から速攻魔法《AI's combat》を発動。このターン、融合召喚された俺のメタルギアが戦闘で相手モンスターを破壊したとき、続けて2回まで攻撃できる。ヒイロ・リオニス…異物にはこのアークエリアプロジェクトに礎になってもらう」

前足部分に装備されているブレードにエネルギーが供給され、赤く染まっていく。

その熱量は周囲の可燃物に火をつけ、刃が《マリンフォース・ドラゴン》にむけてふるわれる。

(マスター!私の効果を使え!!)

「ああ…。俺は《ウィンドナイト》のペンデュラム効果を発動!俺のフィールドに《マリンフォース・ドラゴン》が存在するとき、ペンデュラムゾーンのこのカードを破壊することで、このターン、俺の《マリンフォース・ドラゴン》は破壊されない」

《マリンフォース・ドラゴン》とヒイロを覆うように滝のような水が降り注ぎ、巨大な刃を受け止める。

水は炎上する周囲の物質を沈下していく。

「そして、戦闘で発生する俺へのダメージも0となる。さらに俺はデッキから幻獣ペンデュラムモンスター1体を手札に加える。俺は《幻獣の守り手》を手札に加える」

「ふん…《マリンフォース・ドラゴン》を守ったとしても、このターンのみだ。ならば、その裏守備モンスターを攻撃だ!」

水を強引に破ろうと《鋼の歯車エクソルサス》が出力を上げていき、刃がヒイロと《マリンフォース・ドラゴン》へと向かう。

二人に危害が及ぶ様子を見て、剣のような角をつけた一角獣が裏守備表示を解除して飛び出し、2人に代わりに刃を受けて消滅した。

 

裏守備モンスター

幻獣ソードユニコーン レベル2 守備1200

 

「俺は魔法カード《AI's cure》を発動。俺のフィールドのメタルギア融合モンスターの攻撃力分俺のライフを回復する。そして、この効果の対象となったモンスターにAIカウンターを1つ置く」

 

ブーン

ライフ400→4400

 

鋼の歯車エクソルサス レベル12 AIカウンター0→1

 

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンドだ」

 

ヒイロ

手札0→1(《幻獣の守り手》)

ライフ2400

場 マリンフォース・ドラゴン レベル8 攻撃2800

 

ブーン

手札1

ライフ4400

場 鋼の歯車エクソルサス(《鋼の歯車TX-55》装備 AIカウンター1) レベル12 攻撃4000

  鋼の歯車の叫び(永続魔法)

  伏せカード1

 

「俺のターン!」

 

ヒイロ

手札1→2

 

(《エクソルサス》は俺のカード効果を受けることがないとしても、装備カードになっている《TX-55》は…)

「罠発動。《デモンズ・チェーン》。フィールド上の効果モンスター1体の攻撃を不能にし、効果も無効にする」

《デモンズ・チェーン》から放たれた鎖が《幻獣騎士ウィンドナイト》が守った《マリンフォース・ドラゴン》を縛り上げ、その力を奪う。

《マリンフォース・ドラゴン》の効果が使えない以上、《鋼の歯車エクソルサス》は純粋に戦闘破壊しなければならなくなった。

「貴様のエースカードの力は使わせん」

「そうかな…?俺は俺はスケール8の《幻獣の守り手》をセッティング」

セッティングされたことでフィールドに現れたのは《シンクロ・エクスクルーダー》に似た服装と杖を手にしているものの、ツインテールからロングヘアーへと髪型が変わり、女性への成長途上といえる体つきとなった少女だ。

「《幻獣の守り手》の効果。このカードをペンデュラムゾーンに置いたとき、もう片方のペンデュラムゾーンにカードがない場合、エクストラデッキの《幻獣の救い手》をセッティングできる」

彼女の背後に《幻獣の救い手》が現れ、背中合わせとなった2人は静かにうなずき、ヒイロの左右へと移動する。

「そして、《幻獣の救い手》のペンデュラム効果発動。もう片方のペンデュラムゾーンに《幻獣の守り手》が存在する場合、エクストラデッキか墓地に存在する幻獣チューナー1体を特殊召喚できる。俺はエクストラデッキから《幻獣クリエイトクーシー》を特殊召喚」

《幻獣の救い手》が手にしている銃を地面に向けて発砲する。

銃弾が当たった床に魔法陣が出現し、その中から《幻獣クリエイトクーシー》が再び現れる。

 

幻獣クリエイトクーシー レベル2 攻撃1000(チューナー)

 

「そして、墓地の《幻獣クレイエンキドゥ》の効果。俺のフィールドにシンクロモンスターとチューナーモンスターが1体ずつ存在するとき、墓地から特殊召喚できる」

《幻獣クリエイトクーシー》に続けて現れたのは体中が土でできていて、獣のような毛と角のある人間の姿をしていた。

 

幻獣クレイエンキドゥ レベル2 攻撃0(チューナー)

 

「そして、俺は手札から魔法カード《融合》を発動。俺のフィールドの《クリエイトクーシー》と《クレイエンキドゥ》で融合する。命を生み出す子犬よ、神に作られし土の咎人よ、今一つとなり、未来への繋ぎ手となれ。融合召喚!現れろ、《幻獣共振機スタッグ》」

2体のチューナーが1つとなり、かつてヒイロにフュージョンシンクロへの道を示した共振機が幻獣の名を手にしてフィールドへと現れる。

機械的だったかつての外見とはやや異なり、ところどころに魔法陣が刻まれ、装甲の一部が岩石に代わっているなどの差異はあるものの、その役目は変わらない。

 

幻獣共振機スタッグ レベル2 攻撃1000(チューナー)

 

「融合チューナーだと!?」

「レベル8の《マリンフォース・ドラゴン》にレベル2の《スタッグ》をチューニング。欠片の運命によって交わりし2つの世界の力よ、深海の竜に宿り、運命を切り開く力となれ。フュージョンシンクロ!現れろ、《マリンフォース・ドラゴン・メルビエイ》!」

《幻獣共振機スタッグ》が生み出したチューニングリングをくぐり、《マリンフォース・ドラゴン》の体を透き通った水晶のような鎧が宿る。

右手には同じ水晶でできた剣が出現し、その刃を振るった。

 

マリンフォース・ドラゴン・メルビエイ レベル10 攻撃3200

 

「《マリンフォース・ドラゴン・メルビエイ》の効果。このカードのシンクロ召喚に成功したとき、俺の墓地に存在するシンクロモンスターの数だけマリンカウンターを置く。俺の墓地に存在するシンクロモンスターは2体」

 

マリンフォース・ドラゴン・メルビエイ マリンカウンター0→2

 

「バトルだ…。《マリンフォース・ドラゴン・メルビエイ》で《エクソルサス》を攻撃」

(いくよ、マスター!!)

剣を手にしたアクアが自らよりも攻撃力の高い《鋼の歯車エクソルサス》へと向かう。

「何をするつもりだ…?」

「《メルビエイ》の効果。このカードの攻撃力はバトルフェイズ中、乗っているマリンカウンター1つにつき、攻撃力が1500アップする」

 

マリンフォース・ドラゴン・メルビエイ レベル10 攻撃3200→5200(バトルフェイズ中のみ)

 

「だが、《TX-55》の効果を得た《エクソルサス》の効果。このカードが相手モンスターを戦闘を行うダメージステップ時、その相手モンスターの効果を無効化し、攻撃力と守備力を元の数値に戻す!」

「《幻獣の守り手》のペンデュラム効果。1ターンに1度、俺のフィールドの幻獣またはマリンフォース・ドラゴンと名の付くシンクロモンスターを対象に発動できる。そのモンスターはターン終了時まで相手のカード効果を受けない」

《幻獣の守り手》が杖から放つ波紋がアクアを包み込む。

接近してくるアクアに向けてレールガンを放つ《鋼の歯車エクソルサス》だが、波紋によってセンサーに異常が生じていたのか、弾丸はアクアのわずかに上を飛んでいき、やがて海へと消えていく。

懐に入ったアクアはマリンカウンターによって力を得た剣を《鋼の歯車エクソルサス》に向けてふるうが、刃は装甲を切り裂くことができなかった。

「ふん…」

 

ブーン

ライフ4400→3200

 

「何…?」

「《エクソルサス》の効果だ。このカードが破壊されるとき、代わりに自らの効果で装備されたカードを破壊できる。そして、このカードがメタルギア融合モンスターを装備していない場合、1ターンに1度、墓地かエクストラデッキのメタルギア融合モンスターを装備できる」

無事な姿を見せる《鋼の歯車エクソルサス》の姿に、不意にヒイロは《パワーツール・ドラゴン》を思い出す。

毎ターンのように装備カードを確保し、なおかつそれを身代わりにすることもできる。

だが、それが無敵の効果というわけでもない。

その抜け道をつくとしても、今のヒイロにはもう手札はない。

「俺はこれで、ターンエンドだ」

 

ヒイロ

手札2→0

ライフ2400

場 マリンフォース・ドラゴン・メルビエイ(マリンカウンター2) レベル10 攻撃3200

  幻獣の救い手(青) ペンデュラムスケール1

  幻獣の守り手(赤) ペンデュラムスケール8

 

ブーン

手札1

ライフ3200

場 鋼の歯車エクソルサス(《AIカウンター1) レベル12 攻撃4000

  鋼の歯車の叫び(永続魔法)

  伏せカード1

 

「俺のターン…ドロー」

 

ブーン

手札1→2

 

「《エクソルサス》の効果。再び《TX-55》を《エクソルサス》に…」

「《メルビエイ》の効果!エクストラデッキから特殊召喚されたモンスターの効果が発動したとき、マリンカウンターを1つ取り除くことで、相手フィールドに表側表示で存在するすべてのカードの効果をターン終了時まで無効化する!」

「何!?」

《マリンフォース・ドラゴン・メルビエイ》の剣から放出される青い波紋が《鋼の歯車エクソルサス》を襲う。

波紋を受けたことで機体に異常が発生し、背後に現れつつあった《鋼の歯車TX-55》がその姿をくらます。

さらにはフィールドに残っていた《鋼の歯車の叫び》のソリッドビジョンも青く染まり、力を発揮できなくなる。

「さらに、この効果を発動したのが相手ターンの場合、相手フィールドのすべてのモンスターの攻撃力と守備力を次の俺のターンの終了時まで0にする!」

 

鋼の歯車エクソルサス レベル12 攻撃4000→0

 

マリンフォース・ドラゴン・メルビエイ レベル10 マリンカウンター2→1

 

「攻撃力0…なるほど。ならば、俺は《エクセルサス》を守備表示に変更。ターンエンドだ」

 

ヒイロ

手札0

ライフ2400

場 マリンフォース・ドラゴン・メルビエイ(マリンカウンター1) レベル10 攻撃3200

  幻獣の救い手(青) ペンデュラムスケール1

  幻獣の守り手(赤) ペンデュラムスケール8

 

ブーン

手札1

ライフ3200

場 鋼の歯車エクソルサス(AIカウンター1、《マリンフォース・ドラゴン・メルビエイ》に影響下) レベル12 攻撃0→守備0

  鋼の歯車の叫び(永続魔法)(《マリンフォース・ドラゴン・メルビエイ》の影響下)

  伏せカード1

 

「俺のターン…」

 

ヒイロ

手札0→1

 

「俺は手札から魔法カード《貪欲な壺》を発動。墓地のモンスター5体をデッキに戻し、デッキからカードを2枚ドローする」

 

墓地からデッキに戻ったカード

・幻獣デスアニマ

・幻獣の子コロ

・幻獣海龍リヴァイアサン

・シンクロ・エクスクルーダー

・幻獣ホワイトビスマルク

 

「俺は手札から装備魔法《幻獣王の剣-ロックブレード》を《メルビエイ》に装備。このカードは幻獣もしくはマリンフォースの名の付くモンスターにのみ装備できる。そして、1ターンに1度、デッキから幻獣1体を墓地へ送ることで、そのモンスターの攻撃力の半分の数値分、装備モンスターの攻撃力を次の相手のターン終了時までアップさせる。俺はデッキから《幻獣王ロックリザード》を墓地へ送る」

巨大な岩石が《マリンフォース・ドラゴン・メルビエイ》の目の前に落ちてくる。

落ちてきた岩石は砕け、その中に隠された黒曜石でできた剣を手にした《マリンフォース・ドラゴン・メルビエイ》の背後に《幻獣王ロックリザード》の幻影が現れる。

 

マリンフォース・ドラゴン・メルビエイ レベル10 攻撃3200→4300

 

「そして、この効果を発動したターン、装備モンスターが守備モンスターを攻撃したとき、貫通ダメージを与える」

これで、守備力0になった《鋼の歯車エクソルサス》への攻撃が決まれば、ヒイロの勝利が決まる。

「ふっ…ジェルマン最大の切り札をここまで追いつめるとはな…ヒイロ・リオニス」

「バトルだ…《メルビエイ》で《鋼の歯車エクソルサス》を攻撃」

ブーンの言葉を無視して攻撃宣言するとともに、《マリンフォース・ドラゴン・メルビエイ》が黒曜石でできた剣を振るう。

もはや反撃するだけの力を残していない《鋼の歯車エクソルサス》の六本脚を切断していき、最後はコアを切りつけて決着をつけようとする。

だが、胴体に攻撃を仕掛けようという直前でその中央部分からコックピットが射出され、それが《マリンフォース・ドラゴン・メルビエイ》の眼前に落下する。

「何のつもりだ…?」

「《エクセルサス》の上に乗っているAIカウンターだ。このカウンターが乗っているモンスターの戦闘によって俺がダメージを受けるとき、代わりにこのカウンターを取り除くことができる。そして、《エクセルサス》の最後の効果だ。このカードが相手によって破壊されたとき、エクストラデッキから《鋼の歯車超人》を融合召喚扱いで特殊召喚する」

コックピットハッチが開き、その中から真っ黒な装甲で身を包んだ、2メートル近い筋肉質の男性というべき姿の機械が現れる。

《鋼の歯車エクソルサス》と比較するとはるかに小さいものの、その機械からはそれよりもはるかに上回る力のようなものが感じられる。

 

鋼の歯車超人 レベル12 攻撃0

 

「《鋼の歯車超人》の効果。このカードの特殊召喚に成功したとき、エクストラデッキか墓地のメタルギア融合モンスター1体の攻撃力と守備力をコピーする。俺は《エクソルサス》を選ぶ」

 

鋼の歯車超人 レベル12 攻撃0→4000

 

「そして、このカードがフィールドに存在する限り、このカード以外のフィールド上に存在するすべてのカードの効果は無効となる」

《鋼の歯車超人》の黒々とした拳にマグマのような熱が発生し、それを地面にたたきつける。

そこを中心に激しい揺れが発生し、同時に熱波が周囲に拡散する。

熱波を受けた《幻獣王の剣-ロックブレード》が粉々に砕け、《マリンフォース・ドラゴン・メルビエイ》はひざを折る。

「効果が無効になったことで、《メルビエイ》に乗っているマリンカウンターも消える」

 

マリンフォース・ドラゴン・メルビエイ レベル10 マリンカウンター1→0

 

「メインフェイズ2だ。俺は…」

「悪いが、ペンデュラム召喚はもうさせん。罠カード《AI's desutruction》を発動。俺がメタルギア融合モンスターの融合召喚に成功したとき、フィールドの魔法・罠カードをすべて破壊する。そして、このカードは無効化されない」

両拳をぶつけあった《鋼の歯車超人》が咆哮すると同時に発生した熱波がすべての魔法・罠カードのソリッドビジンを灰にし、ヒイロの左右にいる《幻獣の救い手》と《幻獣の守り手》を吹き飛ばした。

「俺はこれで、ターンエンドだ」

 

ヒイロ

手札1

ライフ2400

場 マリンフォース・ドラゴン・メルビエイ(《鋼の歯車超人》の影響下) レベル10 攻撃3200

 

ブーン

手札1

ライフ3200

場 鋼の歯車超人 レベル12 攻撃4000

 

お互いのフィールドはモンスター1体ずつとなり、ブーンのターンへと移る。

単純な攻撃力では《鋼の歯車超人》が《マリンフォース・ドラゴン・メルビエイ》を上回り、さらにはこのカード以外のフィールド上のすべてのカード効果は無効となる。

(俺の今の状況では、元々の攻撃力が4000以上のモンスターを召喚することはできない。だが…)

「俺の、ターン…」

 

ブーン

手札1→2

 

「どうやら…これで決着がつくようだな。俺は手札の《鋼の歯車零式》の効果を発動。手札のこのカードを墓地へ送ることで、メタルギア融合モンスター1体の攻撃力をターン終了時まで倍にする」

《鋼の歯車T-REX》に似た姿をしているものの、やや黄土色に近いカラーリングとなっているメタルギアが現れ、そのエネルギーが《鋼の歯車超人》へと送り込まれていく。

あまりにも膨大なエネルギーを吸収したことにより強い熱を帯びたそのモンスターは炎のような赤い光をフレームから発行すると同時に排熱も行っていた。

 

鋼の歯車超人 レベル12 攻撃4000→8000

 

「くっ…」

「《メルビエイ》の攻撃力は3200。攻撃力8000となった《鋼の歯車超人》の一撃で、貴様のライフは尽きる。バトルだ!《鋼の歯車超人》で《メルビエイ》を攻撃!」

激しく熱を放出させながら《鋼の歯車超人》が《マリンフォース・ドラゴン・メルビエイ》に向けて突っ込んでいく。

そして、シンプルではあるがそれ故に力強い鉄拳を叩き込む。

腹部に大穴を開けた《マリンフォース・ドラゴン・メルビエイ》が大爆発を起こし、それにヒイロも飲み込まれた。

「終わりだ、ヒイロ・リオニス…。貴様もまた、大きな障害だった」

ヒイロを倒したとしても、まだ戦いが終わったわけではなく、まだランサーズも止まっていない。

彼らを倒し、計画を完遂するまでジェルマンの任務は終わらない。

背を向けようとするブーンだが、デュエルが終わってもなお消えない《鋼の歯車超人》の姿と煙の中に未だに立っている人影に目を大きく開く。

「貴様…なぜまだ立っている?」

「まだデュエルが終わっていないからだ、そうだろう?コロ」

「クリクリー!!」

未だに立っているヒイロのそばにはコロが嬉しそうに飛び回る。

長年共にデュエルをしてきた相棒が再びヒイロを窮地から救って見せた。

「俺は手札の《プチクリボー》の効果を発動した。こいつを手札から特殊召喚することで、発生する俺へのいかなるダメージも1度だけ0にする」

 

プチクリボー レベル1 守備0

 

「ふん…死にぞこないが」

「ああ、そうだ。お前はこの一撃で俺を確実に倒せると思った…。だが、それは大きな間違いだ」

「何?」

「俺は墓地の罠カード《シンクロ・コンバットゾーン》の効果を発動!相手モンスターの攻撃によって俺のシンクロモンスターが破壊された時、墓地のこのカードを除外することで、破壊されたモンスターを復活させる。戻れ、《マリンフォース・ドラゴン・メルビエイ》」

地面に出現した魔法陣からよみがえる《マリンフォース・ドラゴン・メルビエイ》。

一度は敗れた《鋼の歯車超人》に今度こそ勝つといわんばかりに、仲間の《レッド・デーモンズ・ドラゴン》をまねて右手で拳を作る。

 

マリンフォース・ドラゴン・メルビエイ レベル10 攻撃3200

 

「そして、《メルビエイ》と《超人》で再度戦闘を行う!その時、《メルビエイ》の攻撃力は相手モンスターの攻撃力分アップする」

心の中で闘志を燃やす《マリンフォース・ドラゴン・メルビエイ》の拳に水のオーラが宿る。

再び現れた敵の姿を見た《鋼の歯車超人》もまた、拳に力を籠めると彼に向けて突っ込んでいく。

そして、両者の拳がぶつかり合い、最初は《マリンフォース・ドラゴン・メルビエイ》の拳に大きな亀裂ができた。

だが、その後で《鋼の歯車超人》の右腕全体にひびが入り、そこから胴体、頭部にもひびができていき、やがて爆散した。

「馬鹿…な…!?」

「勝利を急いだな…」

 

マリンフォース・ドラゴン・メルビエイ レベル10 攻撃3200→11200

 

ブーン

ライフ3200→0

 

 

 

 

鋼の歯車の叫び(メタルギア・シャウト)

永続魔法カード

(1):このカードの発動時の効果処理として、自分はデッキから「メタルギア」モンスター2体を墓地へ送る。(同名のカードは1枚まで)

(2):1ターンに1度、手札の「鋼の歯車融合」1枚を相手に見せることで発動できる。自分の墓地から「メタルギア」モンスター1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化され、攻撃力・守備力は0となる。この効果を発動したターン、自分はEXデッキから「メタルギア」以外のモンスターを特殊召喚できない。

 

鋼の歯車G(グスタフ)

レベル5 攻撃1900 守備1900 融合 地属性 機械族

「鋼の歯車」モンスター×2

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードがフィールド上に存在する限り、通常召喚に加えてもう1度だけ、手札の「メタルギア」モンスター1体を召喚できる。

(2):自分メインフェイズ時に発動できる。自分の手札・フィールドから「メタルギア」融合モンスターカードによって決められたこのカードを含む融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。

 

幻獣デスアニマ

レベル7 攻撃2400 守備1200 効果 闇属性 アンデッド族

(1):自分フィールドにカードが存在しない場合、このカードはリリースなしで召喚できる。

(2);召喚されたこのカードが相手によって破壊された次の自分のスタンバイフェイズ時、このカードが墓地に存在する場合に発動できる。このカードを特殊召喚する。

 

幻獣の救い手

レベル4 攻撃1900 守備1500 風属性 戦士族

【Pスケール:赤1/青1】

このカード名の(2)のP効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールドの「幻獣」「マリンフォース」モンスターが相手によって破壊されるとき、Pゾーンに存在するこのカードを代わりに破壊できる。

(2):このカードがPゾーンに存在し、もう片方のPゾーンに「幻獣の守り手」が存在するときに発動できる。EXデッキ・墓地に存在する「幻獣」チューナーモンスター1体を特殊召喚する。

【モンスター効果】

(1):このカードが手札に存在し、自分フィールドの「幻獣」モンスターが相手の攻撃対象となった時に発動できる。このカードを特殊召喚し、攻撃対象をこのカードに変更させる。この効果で特殊召喚に成功したターン、このカードは戦闘では破壊されず、戦闘で発生する自分へのダメージは0となる。

(2);このカードがフィールドに存在する限り、相手はこのカード以外の「幻獣」「マリンフォース」モンスターを攻撃できず、効果の対象にできない。

 

AI's strategy change

速攻魔法カード

(1):自分メインフェイズ・相手メインフェイズかバトルフェイズ時、自分フィールドに存在する「メタルギア」融合モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターをEXデッキに戻し、自分の墓地に存在する融合モンスター以外の「メタルギア」モンスターを融合素材としたモンスターと同じ数だけ自分フィールドに表側守備表示で特殊召喚する(同名モンスターは1体まで)。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。その後、この効果で特殊召喚されたモンスターを素材に融合召喚を行う。この効果による特殊召喚は「鋼の歯車融合」による融合召喚として扱う。

 

幻獣クリエイトクーシー

レベル2 攻撃1000 守備1000 光属性 獣族

【Pスケール:青3/赤3】

このカード名の(1)のP効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):Pゾーンにこのカードが存在し、自分フィールドに「幻獣」Sモンスターまたは「マリンフォース・ドラゴン」が存在する場合に発動できる。このカードを特殊召喚する。

【チューナー:モンスター効果】

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードの召喚に成功したとき、自分フィールドにモンスターが存在しない場合、自分の墓地に存在するレベル4以下の「幻獣」モンスター2体を対象に発動できる。そのモンスターを表側攻撃表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。この効果を発動したターン、S召喚以外の方法でEXデッキからモンスターを特殊召喚できない。

 

鋼の歯車TX-55

レベル8 攻撃3000 守備3000 融合 地属性 機械族

「メタルギア」モンスター3体

(1):このカードは相手のカード効果を受けない。

(2):このカードが戦闘を行うダメージステップ開始時に発動できる。ダメージステップ終了時までそのモンスターの効果を無効化し、攻撃力と守備力を元の数値に戻す。

(3):このカードが相手によって破壊され墓地へ送られたときに発動できる。デッキから「メタルギア」モンスター1体を手札に加える。

 

鋼の歯車卵(メタルギア・エッグ)

レベル1 攻撃500 守備500 効果 地属性 機械族

このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが手札に存在し、自分のライフが1000以下で相手モンスターの攻撃によって自分が戦闘ダメージを受けるときに発動できる。手札に存在するこのカードを特殊召喚し、自分が受けるダメージを0にする。

(2):このカードを(1)の効果で特殊召喚に成功したときに発動できる。手札・デッキ・墓地から「鋼の歯車卵」を2体まで特殊召喚できる。この効果で特殊召喚されたモンスターがフィールドに存在する限り、自分は「メタルギア」以外のモンスターを特殊召喚できない。

 

AI's garage

通常罠カード

(1):自分フィールドの「メタルギア」融合モンスターが相手によって破壊されたターンにのみ発動できる。墓地に存在するこのターン破壊された「メタルギア」融合モンスター1体を召喚条件を無視して特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。

 

AI's combat

速攻魔法カード

(1):このターンに融合召喚に成功した「メタルギア」融合モンスターが戦闘で相手モンスターを破壊したときに発動できる。そのモンスターはこのターン、続けて2回まで攻撃することができる。

 

AI's cure

通常魔法カード

(1):自分フィールドに存在する「メタルギア」融合モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターの攻撃力分自分LPを回復する。その後、対象となったモンスターの上にAIカウンターを1つ置く。AIカウンターが乗っているモンスターが戦闘を行ったことで戦闘ダメージが発生するとき、代わりにそのモンスターに乗っているAIカウンターを1つ取り除く。

 

幻獣騎士ウィンドナイト

レベル8 攻撃2400 守備2000 風属性 鳥獣族

【Pスケール:青12/赤12】

(1):自分フィールドに存在する「幻獣」モンスターは戦闘では破壊されず、戦闘で発生するお互いへのダメージは0となる。

(2):自分フィールドに「マリンフォース・ドラゴン」が存在するとき、Pゾーンに存在するこのカードを破壊することで発動できる。このターン、自分フィールドに存在する「マリンフォース・ドラゴン」は戦闘および効果では破壊されず、戦闘で発生する自分へのダメージは0となる。その後、デッキから「幻獣」Pモンスター1体を手札に加える。

【シンクロ:効果】

「幻獣」チューナー1体+チューナー以外のモンスター1体以上

(1):このカードがSモンスターを素材にS召喚に成功したとき、自分の墓地に存在するSモンスター1体を対象に発動できる。そのカードを装備カード扱いとしてこのカードに装備する。

(2):このカードの攻撃力は(1)の効果で装備したモンスターの元々の攻撃力の半分の数値分アップする。

(3):装備カードを装備しているこのカードが相手モンスターを戦闘で破壊したときに発動する。破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える。

(4):このカードがフィールドから離れたときに発動できる。このカードを自分Pゾーンに置く。

 

幻獣共振機スタッグ

レベル2 攻撃1000 守備1000 地属性 機械族

【Pスケール:赤10/青10】

このカード名の(1)のP効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドに存在する「幻獣」モンスター1体を対象に発動できる。Pゾーンに存在するこのカードを特殊召喚する。その後、対象となったモンスターとこのモンスターのみを素材としてS召喚を行う。この効果でS召喚に成功したモンスターはカード効果では破壊されない。

【融合・チューナー】

レベル2以下のチューナー×2

このカード名の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれかしか発動できない。

(1):このカードの融合召喚に成功したとき、自分の墓地に存在するレベル8以下のSモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。この効果で特殊召喚に成功したモンスターの効果は無効化され、攻撃力と守備力は0となる。また、この効果を発動したターン、自分はバトルフェイズを行えない。この効果はメインフェイズ1にしか発動できない。

(2):このカードをEXデッキからP召喚に成功したとき、自分フィールドに他にモンスターが存在しない場合に発動できる。自分の墓地に存在するSモンスター1体を特殊召喚する。その後、そのモンスター2体のみを素材としてS召喚を行う。

(3):このカードをS素材としてSモンスターのS召喚に成功した時に発動できる。このカードをPゾーンに置く。

 

幻獣の守り手

レベル3 攻撃1000 守備1200 光属性 魔法使い族

【Pスケール:青8/赤8】

このカード名の(1)のP効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードを発動したとき、もう片方の自分Pゾーンにカードがない場合に発動できる。EXデッキに表側表示で存在する「幻獣の救い手」をPゾーンに置く。

【モンスター効果】

このカード名の(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しか行えず、(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分が「幻獣」チューナーの召喚に成功したときに発動できる。手札に存在するこのカードを特殊召喚できる。

(2):このカードをS素材として「幻獣」「マリンフォース」SモンスターのS召喚に成功したときに発動できる。相手フィールドのモンスター1体の攻撃力・守備力を0にする。

 

幻獣クレイエンキドゥ

レベル2 攻撃0 守備1000 チューナー 地属性 獣戦士族

(1):このカードが墓地に存在し、自分フィールドにSモンスターとチューナーモンスターが1体ずつ存在する場合に発動できる。このカードを自分フィールドに特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたこのカードはフィールドから離れたとき、除外される。

 

マリンフォース・ドラゴン・メルビエイ

レベル10 攻撃3200 守備2800 シンクロ 水属性 ドラゴン族

融合チューナー+チューナー以外のSモンスター1体

(1):このカードのS召喚に成功したときに発動する。自分の墓地に存在するSモンスターの数だけ、このカードの上にマリンカウンターを置く。

(2):バトルフェイズ時、このカードの攻撃力はこのカードの上にのっているマリンカウンターの数×1000アップする。

(3);EXデッキから特殊召喚された相手モンスターの効果が発動したとき、このカードに乗っているマリンカウンターを1つ取り除くことで発動できる。相手フィールドに表側表示で存在するすべてのカードの効果をターン終了時まで無効化する。その効果を相手ターンに発動した場合、相手フィールドに存在するモンスターの攻撃力と守備力は次の自分ターン終了時まで0にする。

 

幻獣王の剣-ロックブレード

装備魔法カード

「幻獣」「マリンフォース」モンスターにのみ装備可能。

(1):1ターンに1度、自分のデッキに存在する「幻獣」モンスター1体を墓地へ送ることで発動できる。装備モンスターの攻撃力は次の相手ターン終了時まで、墓地へ送ったカードの元々の攻撃力の半分の数値分アップする。この効果を発動したターン、装備モンスターが守備モンスターを攻撃した場合、の守備力を攻撃力が超えた分だけ戦闘ダメージを与える。

(2):自分スタンバイフェイズ時にこのカードが墓地に存在する時、手札の「幻獣」モンスター1体を墓地へ送ることで発動できる。このカードを手札に加える。

 

鋼の歯車エクソルサス

レベル12 攻撃4000 守備4000 融合 地属性 機械族

融合モンスターを含む「メタルギア」モンスター4体

(1):このカードの融合召喚に成功したとき、自分の墓地に存在する「メタルギア」融合モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを装備カード扱いとしてこのカードに装備する。

(2):1ターンに1度、このカードが「メタルギア」融合モンスターを装備していない場合に発動できる。墓地・EXデッキに存在する「メタルギア」融合モンスター1体を装備カード扱いとしてこのカードに装備する。

(3):このカードは装備カードを1枚しか装備できない。この効果は無効化されない。

(4):(1)または(2)の効果で「メタルギア」融合モンスターを装備しているこのカードはそのカードの元々の効果を得る。また、このカードが破壊されるとき、代わりに装備カード1枚を破壊することができる。

(5):このカードが相手によって破壊されたときに発動できる。EXデッキから「鋼の歯車鋼鉄超人」1体を融合召喚扱いで特殊召喚する。

 

鋼の歯車鋼鉄超人(メタルギア・サイボーグ)

レベル12 攻撃0 守備0 融合 地属性 戦士族

「メタルギア」融合モンスター5体

このカードは融合召喚または「鋼の歯車エクソルサス」の効果でしか特殊召喚できない。

(1):このカードの特殊召喚に成功したとき、墓地またはEXデッキに存在する「メタルギア」融合モンスター1体を対象に発動できる。このカードの元々の攻撃力・守備力はそのモンスターの攻撃力と同じ数値となる。この効果の発動に対して、相手はカード効果を発動できない。

(2):このカードがフィールドに存在する限り、このカード以外のフィールド上のすべてのカードの効果は無効化される。

 

AI's desutruction

通常罠カード

このカード名のカードはデュエル中1度しか発動できない。

(1):自分フィールドに「鋼の歯車」融合モンスターの融合召喚に成功したときに発動できる。フィールド上に存在する魔法・罠カードをすべて破壊する。この効果は無効化されない。

 

鋼の歯車零式(メタルギア・ジーク)

レベル8 攻撃2800 守備2400 効果 地属性 機械族

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドに「メタルギア」融合モンスターが表側表示で存在するとき、手札に存在するこのカードを捨てることで発動できる。ターン終了時まで、自分フィールドの「メタルギア」融合モンスター1体の攻撃力は倍となる。

(2):このカードが墓地に存在し、自分フィールドにカードが存在しない場合に発動できる。このカードを表側攻撃表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚に成功したこのカードはフィールドから離れたとき、除外される。

 

シンクロ・コンバットゾーン

通常罠カード

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドのカードが破壊されるとき、自分フィールドにSモンスターが存在する場合に発動できる。代わりに自分フィールドのSモンスター1体を破壊する。

(2):自分フィールドのSモンスターが相手モンスターによる攻撃で破壊されたとき、墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。その後、この効果で特殊召喚されたモンスターとそのモンスターと戦闘を行った相手モンスターで戦闘を行い、ダメージ計算を行う。その時、攻撃モンスターの攻撃力はダメージステップ終了時まで戦闘を行った言相手モンスターの攻撃力分アップする。この効果はこのカードが墓地へ送られたターン、発動できない。

 

「…まさか、この俺が敗れるとは…」

デュエルに敗北し、膝をつくブーンの姿を見たヒイロはデュエルディスクを収納すると、彼の目前まで近づく。

「教えてもらうぞ、プロフェッサーの居場所を」

「ふん…馬鹿な男だ。俺が素直に話すとでも…甘いな」

ニヤリと笑うブーンの目から何かを感じたヒイロは即座に彼から離れようとする。

その目は零羅を拾ったあの戦場の中で兵士の中が時折見せた目。

己の命に対して生殺与奪の権限を得たと思いあがった愚かな相手を道連れにできると確信できたときに見せる目だ。

隠し持っていた手りゅう弾のピンが抜かれ、爆発の中にブーンが消える。

爆発はかつては部屋だった空間を巻き込み、気絶していたサンダースもまた、巻き込まれることとなった。

 



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第127話 風と闇の激突

爆発によって生まれた煙と火薬のにおい、そして吹き飛んだ扉。

「紫雲院素良…。命を賭して道を開いてくれたか…」

「遊矢、辛いのはわかるが、今は…」

今はいないけれども、この爆発に気づいたデュエル戦士やデュエルロイドがここにやってくる可能性がある。

彼らが来ないうちに扉をくぐり、中枢へ突入しなければならない。

デュエルアカデミアを制御するAIを破壊しない限り、いつまでもこの次元戦争は終わらない。

だが、それでも涙が止まらない。

遊矢の脳裏に犠牲になった人たちの姿が浮かぶ。

きっと、その中にはいない、存在すら知らずに消えてしまった存在だってある。

そのことへの悲しみが遊矢の心を縛る。

「おい、遊矢…」

「…」

翔太に名前を呼ばれても、一向に顔を挙げない遊矢。

そんな彼に業を煮やしたが遊矢の胸倉をつかむ。

「何を止まってやがる遊矢!!」

「翔太君、やめて!!」

「ここで止まれば、今のあいつの犠牲も今までの犠牲も無駄になるんだぞ!?それでてめえはいいのか?それがてめえの戦いか!?」

「俺は…」

(遊矢さん!!)

誰かの声が脳裏に響き、同時にDホイールが走る音が近づいてくる。

涙をためる遊矢は音が聞こえる方向に目を向けると、そこにはユーゴのDホイールの姿があった。

「あれ、は…」

「あのバナナのDホイール…にしては、形が変だが…」

翔太が手を離すと、遊矢は近くに止まったDホイールに向けて走っていく。

Dホイールのモニターにはクリアウィングの姿が映っていた。

「こうして話すのは初めてですね…。私はクリアウィング。理由があって、今はこのDホイールと一体化している状態です」

「クリアウィング、ユーゴはどうしたんだよ!?なんでユーゴと一緒にいないんだ!?」

「すみません…ユーゴと一緒にリンの元に行くことができたのはよかったですが…肝心のリンがアカデミアによって洗脳されてしまったのです」

「洗脳!?じゃあ…」

「ええ…ユーゴとともにどうにか彼女を止めようとデュエルをしたのですが敗れて…。ユーゴがアカミデア内に存在することだけはわかるのですが…」

(まずいぞ、遊矢!)

「ユート!?」

(ユーリが…いる…。もしユーゴとユーリが戦うことになったとしたら…俺たちのようなことが起こるぞ)

どちらが勝利したとしても、ユーゴとユーリは一体化し、ズァーク復活への道に近づいてしまう。

遊矢はヒイロから受け取った銃を手にする。

最悪な事態に陥った時はこの銃で自らの命を絶たなければならない。

その事態が少しずつ迫っていることを感じずにはいられない。

「止めないと…急がないと!!」

「乗ってください、遊矢!ユーゴを探しましょう!」

「わかった!!」

涙を拭いた遊矢はヘルメットをかぶってDホイールに乗り込む。

操縦のサポートは中にいるクリアウィングがどうにかしてくれるため、操縦する感覚としては遊矢のDホイールに近い。

「待て、遊矢!君まで行っては…」

「…ごめん!!」

零児の言葉を遮った遊矢はDホイールを走らせ、真っ先に内部へ突入していく。

ユーゴとユーリが激突する可能性が高い中で、遊矢を単独で行動させるリスクは大きすぎる。

だが、今の遊矢を止めることができなかった。

 

「くっそ…やっぱ、Dホイールがねえと移動に時間がかかるな…体も痛えし…」

アカデミア内部で、ヘルメットを脱ぎ捨てた状態のユーゴが壁にもたれながら歩く。

体中が傷だらけで、額に巻いている布はカーテンをどうにかして破って使っているものだ。

リンに敗れ、塔から転落して気を失ったユーゴが目を覚ました時にはDホイールの姿はなく、クリアウィングの声も聞こえない。

もう一度塔を上って、部屋を見たがリンの姿がなかったため、やむなく一人でアカデミアの内部に突入した。

入口そのものはどこかで起こった爆発の影響で砕けた窓から侵入することができた。

あれだけの高さから落ちたにもかかわらず、骨折をしていないのは幸運で、額からの出血についてはカーテンを包帯代わりにすることでどうにか抑えている。

体の節々からくる痛みはいまだに軽くなってはいないが、今はそんなことを言っている場合ではない。

「くそ…どこだ、どこにいやがんだよリン!お前を元に戻して…」

「やぁ、こうして待っていたら誰か来るだろうと思っていたけれど、まさか君と会えるなんてね」

正面から遊矢に似た声が聞こえてくる。

だが、最近聞いた遊矢の声とは若干異なり、どこか泥のようなねっとりとしたものが感じられ、それだけで遊矢の声じゃないと確信できた。

「お前は…ユーリ…」

「また会えたね、ユーゴ。すっかりボロボロな上に愛用のDホイールもない…。本当に無様な姿だね」

「どきやがれ!!俺はリンを探しているんだ。お前にかまっていられねーんだ!!」

「そんなこと、言っていられるのかな?そんなボロボロな体じゃ、僕を振り切れないよ」

「黙れ!!」

「証拠にさ…ほら」

ユーリがデュエルディスクに《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》を置くと同時にユーゴの足元に茨が出てきて、それが彼の体を縛る。

棘が体に刺さる感覚がして、鋭い痛みが全身を駆け巡る。

「わかっただろう?君は逃れられない。僕とデュエルをしない限りね…」

「クソ…!やるしか、ねえのかよ…!」

悔しいが、ユーリの言う通り今のユーゴでは強引に突破することができない。

クリアウィングの声は聞こえないが、彼のカードもリンとのデュエルで生まれたカードもデッキに残っているため、全力は出せるかもしれない。

だが、デュエルをして敗北したら最後、ユートと同じ末路をたどることになることは知っている。

「さあ…僕を楽しませてよ。とことんあがいてさ…」

ユーリが指を鳴らすとと同時にユーゴを拘束していた茨が消え、代わりに周囲に茨でできた壁が出現する。

これで、もう完全に逃げることができなくなった。

(リン…待っていてくれよ!!)

「「デュエル…!!」」

 

ユーリ

手札5

ライフ4000

 

ユーゴ

手札5

ライフ4000

 

「僕の先攻。僕はモンスターをセット。3枚カードを伏せて、ターンエンド」

 

ユーリ

手札5→1

ライフ4000

場 裏守備モンスター1

  伏せカード3

 

ユーゴ

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「消極的な動きをしやがって…!俺のターン!!」

 

ユーゴ

手札5→6

 

「俺のフィールドにモンスターが存在しない場合、手札の《SRベイゴマックス》は特殊召喚できる!」

 

SRベイゴマックス レベル3 攻撃1200

 

「こいつの召喚・特殊召喚に成功したとき、デッキからスピードロイド1体を手札に加えることができる。俺は《SR赤目のダイス》を手札に加える!そして、《赤目のダイス》を召喚!」

 

SR赤目のダイス レベル1 攻撃100(チューナー)

 

「《赤目のダイス》の効果!こいつの召喚・特殊召喚に成功したとき、こいつ以外の俺のフィールドのSR1体のレベルを1から6のいずれかに変更できる。俺は《ベイゴマックス》のレベルを6に変更!」

 

SRベイゴマックス レベル3→6 攻撃1200

 

「レベル6の《ベイゴマックス》にレベル1の《赤目のダイス》をチューニング!!その美しくも雄々しき翼翻し、光の速さで敵を討て!シンクロ召喚!現れろ、レベル7!《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》!」

シンクロ召喚され、フィールドに現れた《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》からは普段感じる親しみが感じられない。

いつも会話をしていた彼がいないからか、そのことに心細さを覚えた。

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

「ユーゴ…どこなんだ、ユーゴ!!」

アカデミア内部を走る遊矢がユーゴの名を何度も呼ぶ。

無駄だとはわかっているが、その声に反応して何か動きがあるかもしれないという淡い期待を抱いていた。

そう期待しなければ、どうしようもなかった。

(遊矢、ユーゴがデュエルをしています。急いでください)

「く…わかってるよ!!」

(やけに親しく会話をしているな、クリアウィングよ)

(オッドアイズ…ようやくこうして話すことができますね)

デッキの中に眠るオッドアイズのテレパシーがクリアウィングに伝わり、クリアウィングもまたテレパシーで返す。

この会話は決して遊矢には聞こえない状態だ。

(貴様はユーゴの奴と親しくなりすぎだ。それでは、情けをかけることになるぞ。われらの役目は…)

(わかっています。ズァークとなるかもしれないときには命を奪わなければならないことくらいは。けれど…そうならない可能性を信じたいのです。それだから、あなたも遊矢に力を貸すのでしょう?)

(ふん…。だが、奴は…スターヴ・ヴェノムの場合はどうなのだろうな)

3体のドラゴンはいずれも宿主と会話をすることができる。

だが、ユーリとスターヴ・ヴェノムがどのような状態なのかは3人ともわからない状態だ。

(それ以上によくわからんのはユーゴとクリアウィングだ。俺とダーク・リベリオンがこうして話すことができるようになったのは小僧が覇王黒竜などというものを呼び覚ました故だ。だが…)

ユーゴ達は幼少のころからお互いに話すことができるようになっていて、そのきっかけについては彼も分からないという。

彼と2体のドラゴンに何の違いがあるのかはわからないが、それを考えている場合ではなかった。

 

「そして、フィールドにシンクロモンスターが存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。《シンクローン・リゾネーター》を特殊召喚!」

金と緑の音符を上下でくっつけたような飾りを背中につけたリゾネーターモンスターが《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の頭上に現れる。

 

シンクローン・リゾネーター レベル1 攻撃100(チューナー)

 

「ふーん、意外だね。そんなカードをデッキに入れてるなんて」

「俺のデッキと相性がいいってことだから入れたんだよ!俺はレベル7の《クリアウィング》にレベル1の《シンクローン・リゾネーター》をチューニング!!神聖なる光蓄えし翼煌めかせ、その輝きで敵を討て!シンクロ召喚!いでよ!レベル8!《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》!」

 

クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン レベル8 攻撃3000

 

「たった1ターンで《クリスタルウィング》をシンクロ召喚か…。まあ、これくらいしてくれないと面白くないけどね…」

「ほざけ!お前と遊んでいる暇はねえんだ!!俺はさらに手札から装備魔法《メテオストライク》を《クリスタルウィング》に装備!これで、こいつは守備モンスターを攻撃したとき、貫通ダメージを与える!バトル!!《クリスタルウィング》で裏守備モンスターを攻撃!!烈風のクリスタロス・エッジ!!」

《メテオストライク》の効果を受けた《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》が体を回転させながら裏守備モンスターに突撃する。

撃ちぬかれた裏守備モンスターは姿を洗わず暇もなく粉砕され、その姿をユーリはニヤリと笑いながら見つめていた。

 

裏守備モンスター

捕食植物セラセニアント レベル1 守備600

 

ユーリ

ライフ4000→1600

 

「《セラセニアント》の効果。このカードと戦闘を行った相手モンスターをダメージステップ終了時に破壊する」

「んなもんが効くかよ!!《クリスタルウィング》は1ターンに1度、こいつ以外のモンスター効果が発動したとき、その発動を無効にして破壊できる!!」

「そうだね…けど、これはどうかなぁ?僕は罠カード《リベンジ・サクリファイス》を発動。僕のモンスターが相手モンスターの攻撃によって破壊されたとき、その相手モンスターをリリースすることで手札からモンスターをアドバンス召喚できる」

「何!?」

「焦りすぎだよ…今はデュエルを楽しむときなんじゃないの??」

発動された《リベンジ・サクリファイス》のソリッドビジョンからミミズのような触手が出てきて、それが《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》の肉体を拘束する。

拘束したモンスターを取り込んだ《リベンジ・サクリファイス》は消滅し、ユーリはモンスターを召喚する。

「僕がアドバンス召喚するのは《捕食植物バンクシアオーガ》」

ヤマモガシを模した木の実にいくつも目と口のついたいびつなモンスターがフィールドに現れる。

そのモンスターについている目はジロリとユーゴを見つめ、口元はニヤリと笑っている。

 

捕食植物バンクシアオーガ レベル6 攻撃2000(チューナー)

 

「そして、戦闘破壊された《セラセニアント》の効果。このカードがカード効果で墓地へ送られたとき、もしくは戦闘で破壊されたとき、デッキから新たな捕食植物を手札に加えることができる。僕は《サンデウ・キンジー》を手札に加える」

(くそ…《クリスタルウィング》が!おまけに、新しいモンスターまで…!)

ただでさえ、魔法・罠カードへの対応能力に課題のある《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》をむやみに攻撃させた上に、相手の展開を手伝いする羽目になった己のうかつさを痛感するとともに、そんなときに叱ってくれる彼の存在がないことに心細さを覚える。

だが、それ以上にユーゴの脳裏に浮かんでいるのはいまだに操られているであろうリンの姿だ。

(でも、あきらめねえ…!やっと会えたんだ!ここで終わってたまるかよ!!)

「俺はカードを3枚伏せ、ターンエンド!!」

 

ユーリ

手札1(《捕食植物サンデウ・キンジー》)

ライフ1600

場 捕食植物バンクシアオーガ レベル6 攻撃2000(チューナー)

  伏せカード2

 

ユーゴ

手札6→0

ライフ4000

場 伏せカード3

 

「へえ、僕の真似をするんだ。どこまでそれが通用するんだろうねえ。僕のターン、ドロー」

 

ユーリ

手札1→2

 

「それじゃあ…こういう指向はどうかな?僕は罠カード《ピンポイント奪取》を発動。お互いにエクストラデッキ裏側表示のカードを1枚選ぶ。選んだカードが同じ種類の場合、相手は選んだカードを墓地へ送り、僕が選んだカードを特殊召喚する。さらにそのモンスターの元々の種族と属性が同じの場合、相手は自分が選んだモンスターの元々の攻撃力分ライフを失う。そして、もし選んだカードが違う種類の場合、僕が選んだカードは墓地へ送られ、君が選んだカードは特殊召喚できる。どう…?これなら、まだまだ頑張れるんじゃない?」

「てめえ…!!」

《捕食植物バンクシアオーガ》がチューナーであることは気になるが、お互いのエクストラデッキには同じ種類のカードが存在しないことはわかり切っていることのはず。

意図としては、わざとユーゴにモンスターを特殊召喚させようという腹積もりだろう。

「なら…俺はこのカードを選ぶ!」

「僕はこのカード…楽しみだね、君がどんなカードを選んだのかが…」

お互いに選んだカードが裏向きの状態でソリッドビジョンとして現れ、それらを隔てるように《ピンポイント奪取》のソリッドビジョンが出現し、赤外線でその正体が特定される。

「俺が選んだカードは《HSR/CWライダー》!!」

「僕が選んだのは《捕食植物キメラフレシア》。シンクロモンスターと融合モンスターか…。おめでとう、君の《CWライダー》は特殊召喚だ」

 

HSR/CWライダー レベル11 攻撃3500

 

「僕は《捕食植物サンデウ・キンジー》を召喚」

ユーリの周囲にモウセンゴケが発生し、それが集結するとエリマキトカゲのような姿のモンスターへと変化する。

口から真っ赤な舌を伸ばし、そばにいる《捕食植物バンクシアオーガ》をなめる。

 

捕食植物サンデウ・キンジー レベル2 攻撃600

 

「《サンデウ・キンジー》の効果。このカードを含む僕のフィールドのモンスター、そして君のフィールドの捕食カウンターが乗っているモンスターを素材に闇属性融合モンスターの融合召喚を行う。僕は《サンデウ・キンジー》と《バンクシアオーガ》を融合。魅惑の香りで虫を誘う二輪の美しき花よ!今ひとつとなりて、その花弁の奥の地獄から、新たな脅威を生み出せ!融合召喚!現れろ!飢えた牙持つ毒龍。レベル8!《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》!」

《捕食植物サンデウ・キンジー》の舌が仲間のはずの《捕食植物バンクシアオーガ》を縛り上げ、カメレオンのように飲み込んでいく。

すると、その体にひびが入り、粉々に砕けると当時にその中から《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》が姿を現した。

 

スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン レベル8 攻撃2800

 

「フィールドから墓地へ送られた《バンクシアオーガ》の効果。相手フィールドに存在するすべてのモンスターに捕食カウンターを1つ置く。そして、捕食カウンターが乗ったレベル2以上のモンスターのレベルが1になる」

《HSR/CWライダー》の装甲に種が打ち込まれ、そこから茨が発生して拘束する。

 

HSR/CWライダー レベル11→1 捕食カウンター0→1

 

「そして、《スターヴ・ヴェノム》の効果。このカードの融合召喚に成功したとき、相手フィールドの特殊召喚されたモンスター1体の攻撃力分、このカードの攻撃力をアップさせる」

「んなことさせるかよ!!俺は罠カード《風霊術-『雅』》を発動!俺のフィールドの風属性モンスター1体をリリースして、相手フィールドのカード1枚をデッキの一番下に置く。俺は《CWライダー》をリリースして、お前の《スターヴ・ヴェノム》をエクストラデッキへ送る!!」

自らを拘束する茨をもろともせず加速する《HSR/CWライダー》が《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》に向けて突撃する。

ぶつかると同時にお互いのモンスターが最初からその場にいなかったかのように姿をくらました。

「あーあ。せっかく融合召喚したのに。ひどいことをするね」

「ひでえのはどっちだ!リンのことをさらいやがったクソ野郎が!!」

「仕方ないでしょ。それがプロフェッサーの命令なんだから…。それにしても、デュエルをした時はいい顔をしていたよ。最初は負けん気を見せていたけど、だんだんと顔を真っ白にして、とうとう助けてなんて言い出してさぁ…」

「黙りやがれ!!てめえと話すことなんてねえ!!さっさとデュエルを続けろ!!」

「わかったよ、僕を楽しませてくれるんなら…ね。僕は手札から魔法カード《一時休戦》を発動。お互いにデッキからカードを1枚ドローする代わりに、次の君のターンの終わりまで、お互いにダメージを受けない。僕はこれで、ターンエンド」

 

ユーリ

手札1

ライフ1600

場 伏せカード1

 

ユーゴ

手札0→1

ライフ4000

場 伏せカード2

 

「俺のターン!!」

 

ユーゴ

手札1→2

 

「ここで僕は《ピンポイント奪取》の効果で墓地へ送られた《キメラフレシア》の効果を発動。このカードが墓地へ送られた次のスタンバイフェイズ時、デッキから融合またはフュージョン魔法カード1枚を手札に加える。僕は《烙印融合》を手札に加える」

「んだよ、そのカードは…」

「それは、次のターンのお楽しみだよ」

「…俺は手札から魔法カード《貪欲な壺》を発動!墓地のモンスター5体をデッキに戻して、デッキからカードを1枚ドローする!!」

 

ユーゴ

手札2→3

 

墓地からデッキに戻ったカード

・クリアウィング・シンクロ・ドラゴン

・クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン

・HSR/CWライダー

・シンクローン・リゾネーター

・SRベイゴマックス

 

「そして、《カードガンナー》を召喚!」

 

カードガンナー レベル3 攻撃400

 

「《カードガンナー》はデッキの上からカードを3枚まで墓地へ送り、ターン終了まで墓地へ送ったカード1枚につき、攻撃力を500アップする」

 

カードガンナー レベル3 攻撃400→1900

 

デッキから墓地へ送ったカード

・スピードリバース

・SRオハジキッド

・キューキューロイド

 

「さらに俺は手札から魔法カード《サモン・ストーム》を発動!ライフを800支払い、手札からレベル6以下の風属性モンスター1体を特殊召喚する。俺は《SR電々大公》を特殊召喚!」

 

SR電々大公 レベル3 攻撃1000

 

ユーゴ

ライフ4000→3200

 

「レベル3の《カードガンナー》にレベル3の《電々大公》をチューニング!十文字の姿もつ魔剣よ。その力ですべての敵を切り裂け!シンクロ召喚!現れろ、レベル6!《HSR魔剣ダーマ》!」

 

HSR魔剣ダーマ レベル6 守備1600

 

「俺はこれで、ターンエンドだ!」

 

ユーリ

手札1→2(うち1枚《烙印融合》)

ライフ1600

場 伏せカード1

 

ユーゴ

手札3→0

ライフ3200

場 HSR魔剣ダーマ レベル6 守備1600

  伏せカード2

 

「それで守りを固めたつもり?拍子抜けだよ…。僕のターン」

 

ユーリ

手札2→3

 

「じゃあ…僕は手札から魔法カード《烙印融合》を発動。手札・フィールド・デッキのモンスターを素材に、《アルバスの落胤》を融合素材とする融合モンスターを融合召喚する。僕はデッキから《アルバスの落胤》と《セラセニアント》を墓地へ送り、融合する!」

「デッキのモンスターで融合召喚だと!?んなことあるかよ!?」

「生まれながらに罪を背負いし少年よ、美しき闇の花の力を受け、竜の力を取り戻すがいい!融合召喚!現れろ、《神炎竜ルベリオン》」

ユーリの背後を覆う茨が爆発とともに砕け、そこから入ってきたのは血のような暗い赤の肉体に白い骨格を持つドラゴンの姿だった。

入り終えると同時に茨が再生し、再び道をふさぐ。

 

神炎竜ルベリオン レベル8 攻撃2500

 

「デッキから墓地へ送られた《セラセニアント》の効果。デッキから《ドロソフィルム・ヒドラ》を手札に加える。さらに、《ルベリオン》の効果。このカードの融合召喚に成功したとき、手札を1枚捨てることで、フィールドと墓地、そして除外されている僕のモンスターを素材にレベル8以下の融合モンスターの融合召喚をすることができる。その時、素材になった僕のモンスターはデッキに戻る。僕が融合素材にするのは《ルベリオン》と墓地の《アルバスの落胤》。裁きの炎を宿す竜よ、罪深き少年とともに美しき花の竜となれ。融合召喚!《捕食植物ドラゴスタペリア》!」

《神炎竜ルベリオン》の頭上に白い髪の少年の幻影が現れ、2体のモンスターを姿が茨によって覆い隠される。

茨が消えると、そこに存在したのは茨と花によって形作られたドラゴンだった。

 

捕食植物ドラゴスタペリア レベル8 攻撃2700

 

手札から墓地へ送られたカード

・捕食植物ドロソフィルム・ヒドラ

 

「《ドラゴスタペリア》の効果!1ターンに1度、相手フィールドに存在するモンスター1体に捕食カウンターを一つ置く。そして、捕食カウンターの乗っているモンスターがレベル2以上の場合、そのレベルを1にする」

《捕食植物ドラゴスタペリア》の口から放たれた種が《HSR魔剣ダーマ》の装甲に突き刺さる。

そして、そこから発生する茨が全身を覆っていった。

 

HSR魔剣ダーマ レベル6→1 守備1600

 

「そして、墓地の《ドロソフィルム・ヒドラ》の効果。フィールド上に存在する捕食カウンターが乗っているモンスター1体をリリースすることで、手札・墓地から特殊召喚できる。《魔剣ダーマ》をリリース」

身動きの取れない《HSR魔剣ダーマ》の足元に穴ができてそこからヒドラを模した食虫植物が姿を現し、機械のはずのそのモンスターをバリバリと捕食していく。

食らい尽くすと地上に飛び出し、ユーリのフィールドに降りた。

 

捕食植物ドロソフィルム・ヒドラ レベル5 守備2300

 

「さらに僕は手札から《捕食植物スピノ・ディオネア》を召喚」

続けて現れる、背中にハエトリグサを生やしたスピノザウルスというべき捕食植物。

獲物であるユーゴをにらみ、口からはよだれを垂れ流していた。

 

捕食植物スピノ・ディオネア レベル4 攻撃1800

 

「これで、2体のダイレクトアタックが決まれば、君のライフは0になる。あっけないね…。僕と付き合う暇がないなんて抜かして、こんな結果なんてねえ!!バトルだ!!《ドラゴスタペリア》でダイレクトアタック!」

《捕食植物ドラゴスタペリア》が飛翔し、ユーゴにめがけて紫色の炎を放つ。

炎はユーゴを包み、頭を縛るカーテンの生地にも火をつける。

「うわああ!!くっそお!!」

火のついたカーテンを無理やりはぎとったユーゴの額から流れる血が片目を赤く染めた。

 

ユーゴ

ライフ3200→500

 

「さらに、《スピノ・ディオネア》でダイレクトアタック」

続けて《捕食植物スピノ・ディオネア》が咆哮した後でユーゴめがけて突っ込んでいく。

口を大きく広げ、ユーゴを丸のみにしようという魂胆が見え見えだ。

「罠発動!《ソニック・シンクロ》!!相手がダイレクトアタックをする時、その攻撃を無効にする!!」

ユーゴを包む鎌鼬が《捕食植物スピノ・ディオネア》の接近を阻止する。

攻撃を防いだ鎌鼬は消えることなく、風の中に《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の幻影が姿を見せる。

「そして、俺の墓地に存在するスピードロイドのチューナーとチューナー以外のモンスターを1体ずつ除外し、そのモンスターのレベルの合計が同じ風属性シンクロモンスター1体をシンクロ召喚する!!俺は墓地の《魔剣ダーマ》と《赤目のダイス》を除外!!シンクロ召喚!出番だぜ、《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》!!」

鎌鼬が収まるとともに姿を見せる《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》。

だが、普段の口喧嘩をいつもするクリアウィングと比較すると、かすかに生気がないようにユーゴには感じられた。

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

「転んでもただでは起きないか…いいねいいね、そういうの!!!もっと僕を楽しませてよ…。僕はこれで…ターンエンド」

 

ユーリ

手札3→1

ライフ1600

場 捕食植物スピノ・ディオネア レベル4 攻撃1800

  捕食植物ドラゴスタペリア レベル8 攻撃2700

  伏せカード1

 

ユーゴ

手札0

ライフ500

場 クリアウィング・シンクロ・ドラゴン レベル7 攻撃2500

  伏せカード1

 

「はあ、はあ…てめえを…楽しませて、たまっかよ…!」

どうにか敗北は免れたものの、これまでのデュエルによるダメージが確実にユーゴを消耗させていた。

気が遠くなるような感じがして、そんなときに尻を叩いてくれるであろうリンやクリアウィングの声が聞こえない。

「俺の…ターン…」

 

ユーゴ

手札0→1

 

ドローしたカードを見ようとするユーゴだが、なぜかそのカードがかすんで見えた。

よく考えると、周囲の光景もユーゴの目にはぼやけて見えてしまう。

(ちっくしょう…あの攻撃をモロに食らったせいか…!!)

目からかすかに焼けるような痛みを感じる。

デュエルをする中でこの状態はあまりにも致命的だ。

「どうしたの?遅延行為は反則だよ…?」

「黙れ…よ…!!くっそおおおお!!」

座り込むユーゴは傷ついた額を思い切り床にたたきつける。

ドクドクと流れる血が絨毯を濡らし、鋭い痛みがどうにかユーゴの闘志をつなぎとめる。

そのおかげか、血でぬれていない片方の目だけは若干視力が戻り、かろうじてカードの名前が見える程度にはなる。

(そういやぁ、リンによく、自分が使うカードのことは覚えとけって言われてたっけ…?)

幼いころ、孤児院の年上の先輩に何度もデュエルをしても勝てず、ふさぎ込みかけた時期があった。

そんな時にリンから言われたその言葉。

ユーゴはデッキに入れているカードを1枚残らず名前と効果をすべて暗記した。

教材がろくにないコモンズで読み書きの教材となりえる存在の1つがカードだったことが功を奏し、すべて暗記することができたユーゴは自分のデッキの回し方を再認識することができ、結果として一度も勝てなかった先輩に勝つことができた。

その習慣は今も実践しており、これでならかろうじてデュエルを続行することができる。

「俺は手札から魔法カード《水晶竜の壺》を発動!俺のフィールドにクリアウィングシンクロモンスター、もしくは《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》が存在するとき、デッキからカードを2枚ドローできる。このカードを発動したターン、俺はモンスターを召喚・特殊召喚できない!」

召喚・特殊召喚の権限をすべて放棄してまでもたらされる2枚のカード。

そのカード名を見たユーゴがにやりと笑う。

「引いたぜ…」

「え…?」

「俺は墓地の《スピードリバース》の効果を発動!こいつを墓地から除外することで、墓地のスピードロイド1体を手札に加える。俺は《オハジキッド》を手札に加える。そして、《オハジキッド》を墓地へ送り、手札から装備魔法《SRアサルトアーマー》を《クリアウィング》に装備!!こいつを装備した《クリアウィング》の攻撃力は除外されている俺のシンクロモンスター1体につき、800アップする!」

《HSR魔剣ダーマ》が再びユーゴのフィールドに現れる。

装甲が砕けると、その中に隠された水晶の鎧が姿を現し、それが《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》に装着される。

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン レベル7 攻撃2500→3300

 

「バトルだ!!《クリアウィング》で《スピノ・ディオネア》を攻撃!!」

《SRアサルトアーマー》を装着した《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の胸部部分の水晶が光り、そこからエネルギー弾が発射される。

エネルギー弾を受けた《捕食植物スピノ・ディオネア》が粉々に吹き飛び、余波がユーリを襲う。

「僕は手札の《捕食植物ムナジモタートル》の効果を発動。僕の捕食植物が相手モンスターと戦闘を行うとき、手札のこのカードを墓地へ送ることで、戦闘で発生する僕へのダメージを0にする。さらに、相手フィールド上のモンスター1体に捕食カウンターを1つ置く。僕は《クリアウィング》に捕食カウンターを置く」

背中にムナジモを生やした亀がユーリをかばうとともに、エネルギー弾を放った《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》に向けて種を放つ。

種を受け、そこから発生する茨によって若干身動きを封じられはするものの、それでも今の子のドラゴンを止めるには足りない。

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン 捕食カウンター0→1 レベル7→1

 

「そして、《ドラゴスタペリア》の効果。相手が発動した捕食カウンターが乗っている相手モンスターの効果を無効化する。これで、《クリアウィング》の効果は使用できない」

「それがどうした!?まだ俺のバトルフェイズは終わっちゃいねえ!《SRアサルトアーマー》の効果発動!こいつを装備したモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊したとき、墓地のスピードロイド1体を除外することで、続けてもう1度だけ攻撃できる!俺は《電々大公》を除外!続けて攻撃しろ!《クリアウィング》!!」

再びエネルギーをチャージした《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の視線が自らを縛る《捕食植物ドラゴスタペリア》に向けられる。

発射されるエネルギー弾の直撃を受けたそのモンスターは消滅し、爆風がユーリを襲う。

 

ユーリ

ライフ1600→1000

 

「どうだ!てめえの自慢のモンスターを粉砕してやったぜ!!」

これで、今度はユーゴが有利な状況になった。

ユーリの手札は0枚。

次のターンにモンスターを召喚できなければ、そのまま《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》のダイレクトアタックで勝負を決めることができる。

視力の問題は解決していないが、まだ完全に見えなくなるわけではない。

かすかにでも見えるなら、リンの姿をもう1度見るまで止まらない。

「ふ…ふふ、ふふふふ…アハハハハ!!ハハハハハハ!!」

気が狂ったかのように手で目を隠しながら大笑いを始めるユーリ。

踊るようにその場で動き回る彼のシルエットがかすかに目に映り、ユーゴは拳を握りしめる。

「何がおかしい!!」

「アハハハハ!!だって、だっておかしいじゃないか。君は今、自分で自分の首を絞めたんだから!!」

「何を言ってやがる!もうお前のフィールドにモンスターは…」

「そんな心配をする必要はないよ!!速攻魔法《捕食融合-プレデター・フュージョン》を発動!!僕のフィールドの捕食植物が破壊されたターン、破壊された捕食植物と同じ数だけデッキから捕食植物を効果を無効にして特殊召喚する!さあ、現れろ!《捕食植物ヘリアンフォリンクス》、《捕食植物セラセニアント》!!」

ヘリアンフォラという植物で構成されたランフォリンクスが背中に《捕食植物セラセニアント》を生やした状態で姿を現す。

上空からユーゴを見つめるそのモンスターの目は敗者となる彼をあざ笑うかのようだった。

 

捕食植物ヘリアンフォリンクス レベル8 攻撃1200

捕食植物セラセニアント レベル1 攻撃100

 

「そして…この効果で特殊召喚したモンスターを裏側表示で除外し、それらを素材とした融合モンスター1体の融合召喚を行う!!」

2体のモンスターが地面に生まれた紫の瘴気の渦の中へ飛び込み、同時にユーリの体もまた同じ色のオーラに包まれていく。

「空を羽ばたく美しき花よ、奈落へ誘う香しき花よ。今一つとなりて、思いのままにすべてを貪れ!融合召喚!現れろレベル10、《グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》!」

紫の瘴気が爆発し、そこから現れたのは暗い紫の頭と手足を青白い蛇のような体から生やしたドラゴンで、背中からはいくつか紫の花のようなパーツがついていて、そこからは紫の光を放っていた。

 

グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン レベル10 攻撃3300

 

「なん、だよ…このモンスターは…」

これまで対峙してきた《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》とは比べ物にならないほどの威圧感が襲いかかる。

そして、自分の手が震えるのが感じられた。

(んだよ…これ…。怖いっていうのかよ、あのモンスターが…)

「さあ…ここから、どうするの?」

「…ターン、エンド…」

 

ユーリ

手札1→0

ライフ1600

場 グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン レベル10 攻撃3300

 

ユーゴ

手札0

ライフ500

場 クリアウィング・シンクロ・ドラゴン(捕食カウンター1 《SRアサルトアーマー》装備) レベル1 攻撃3300

  伏せカード1

 

「僕のターン、ドロー」

 

ユーリ

手札0→1

 

「僕は手札から魔法カード《ナイト・ショット》を発動。君のフィールドのセットされている魔法・罠カードを1枚破壊する」

《ナイト・ショット》から放たれる閃光がユーゴの伏せカードである《シンクロン・リフレクト》が消滅する。

お互いのフィールドには攻撃力3300のモンスターだけが残った。

「そして、《グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》の効果発動。1ターンに1度、フィールド上のモンスター1体をターン終了時まで効果を無効にし、攻撃力を0にする」

《グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》の目が光るとともに、地面から巨大な茨が複数本出現し、それが《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》を襲う。

《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の効果を知っているはずのユーリがこのタイミングで自殺行為のような行動を起こしたのには必ず裏があることはわかっている。

だが、通すと敗北することがわかっている以上、もうユーゴは発動するしかない。

「《クリアウィング》の効果!!レベル5以上のモンスターが効果を発動したとき、その発動を無効にして破壊する!!ダイクロイックミラー!!」

《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》のプリズム状の翼から放たれるビームが茨を焼き払うとともに《グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》を襲う。

ビームは確かに《グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》を貫いた。

だが、そのモンスターの体が無数のバラの花びらへと変貌し、それがフィールドを包んでいく。

「《グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》の効果。このカードが破壊されて墓地へ送られたとき、フィールド上のすべてのモンスターを破壊する」

「何!?」

バラの花びらの中にいる《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の肉体が徐々に紫色に代わるとともに、その部分から灰化していく。

その痛みに耐えられずに叫び声をあげながら《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》は灰となった。

「ああ…」

「そして、墓地に存在するレベル8以上の闇属性モンスター1体を除外することで、《グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》は墓地から特殊召喚する」

触れたものを灰にするバラの花びらが再びユーリの目の前で終結すると、その姿を《グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》へと戻した。

 

グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン レベル10 攻撃3300

 

墓地から除外されたカード

・捕食植物ヘリアンフォリンクス

 

「なかなか面白かったよ、ユーゴ。じゃあね」

「んだよ、これ…なんなんだよ…!!」

もう打つ手のないユーゴには退路もなく、できるのはこれから放たれる《グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》の攻撃を受けること、そしてユーリに取り込まれることだけ。

このまま、リンを助けることができないまま終わる現実がユーゴにのしかかる。

(すまねえ、リン…助けられなくてよぉ。遊矢、クリアウィング…頼む、俺の代わりにリンを…!!)

「《グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》でダイレクトアタック」

目を光られた《グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》の口から紫の炎が放たれる。

炎に飲まれたユーゴの体は光となって消滅し、ユーリに取り込まれていき、炎が消えるとその場にはデュエルディスクとカードだけが遺された。

 

ユーゴ

ライフ500→0

 

リベンジ・サクリファイス(アニメオリカ・調整)

通常罠カード

(1);自分フィールドのモンスターが相手モンスターの攻撃によって破壊されたとき、その相手モンスター1体をリリースすることで発動できる。手札からそのモンスター1体のリリースでアドバンス召喚できるモンスター1体をアドバンス召喚する。

 

ソニック・シンクロ

通常罠カード

(1):相手に直接攻撃宣言時に発動できる。その攻撃を無効にする。その後、自分の墓地に存在する「スピードロイド」チューナーとチューナー以外の「スピードロイド」モンスター1体を除外することで、レベルの合計が同じ風属性Sモンスター1体をEXデッキからS召喚扱いで特殊召喚する。

 

水晶竜の壺

通常魔法カード

このカード名のカードは1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールドに「クリアウィング」Sモンスター、または「クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン」が存在する場合に発動できる。デッキからカードを2枚ドローする。この効果を発動したターン、自分はモンスターを召喚・特殊召喚できない。

 

捕食植物ムナジモタートル

レベル4 攻撃0 守備2000 効果 闇属性 植物族

(1):自分フィールドの「捕食植物」モンスターが相手モンスターと戦闘を行うとき、手札に存在するこのカードを捨てることで発動できる。その戦闘で発生する自分へのダメージを0にする。その後、相手フィールドに存在するモンスター1体に捕食カウンターを1つ置く。捕食カウンターが置かれたレベル2以上のモンスターのレベルは1になる。

 

SRアサルトアーマー

装備魔法カード

手札の「SR」モンスター1体を墓地へ送ることで発動できる。

「クリアウィング」「クリスタルウィング」Sモンスターにのみ装備可能。

(1):装備モンスターの攻撃力はゲームから除外されている自分のSモンスターの数×800アップする。

(2):装備モンスターが戦闘で相手モンスターを破壊したときダメージステップ終了時、自分の墓地に存在する「SR」モンスター1体を除外することで発動できる。装備モンスターは続けてもう1度だけ攻撃することができる。

 

捕食融合-プレデター・フュージョン-

速攻魔法カード

このカード名のカードは1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドの「捕食植物」モンスターが2体以上破壊されたターンにのみ発動できる。このターン破壊された「捕食植物」モンスターと同じ数だけデッキから「捕食植物」モンスターを効果を無効にして特殊召喚する。その後、その効果で特殊召喚したモンスターをすべて裏側表示で除外し、それらのモンスターを融合素材とする融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。このカードを発動したターン、自分はモンスターをモンスターを召喚・特殊召喚できない。

 

「ふ、ふふふふ…ははは…いいね、力があふれてくるよ!!」

遺されたデュエルディスクとカード、《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》を手に入れ、ユーゴは今、一つとなった。

だが、これだけでは足りない。

餓狼のような欲望がぶくぶくと割れない風船のように膨らんでいく。

「そうだ…一つになれば力が手に入る。だとしたら…あいつだ」

脳裏に浮かぶのは今、アカデミアに攻め込んでいる遊矢。

彼を倒せば、遊矢だけでなく、ユートの力を手に入れることもできる。

これですべてが一つになり、圧倒的な力を得ることができる。

「待っていて…。一つになろう。ああ、そうだ。力を手に入れたらここにいる人間をすべてカードに…アハハハハハハハハ!!!」

ユーリの体を黒いオーラが包んでいく。

そのオーラが一瞬光った後で、ユーリの姿は消えてしまった。



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オリカ紹介Ⅶ

DDDの緊急会合

通常罠カード

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):相手の直接攻撃宣言時に発動できる。その戦闘で発生する自分へのダメージが半分になる。その後、自分が受けた戦闘ダメージ以下の攻撃力を持つ「DD」モンスター1体をデッキから特殊召喚する。

(2):自分フィールドに「DDD」Pモンスターが特殊召喚されたとき、自分Pゾーンにカードがない場合、墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。自分EXデッキに表側表示で存在するPスケールの異なる「DD」Pモンスター2体を手札に加える。この効果はこのカードが墓地へ送られたターン、発動できない。

 

スピードターン&リバース

通常罠カード

(1):自分フィールドに存在する風属性Sモンスターが墓地へ送られたターンにのみ発動できる。このターン、自分が受けるダメージを半分する。そして、このカードを発動したターン終了時、自分の墓地に存在する風属性Sモンスター1体を自分フィールドに特殊召喚する。

 

 

 

真紅眼の黒魔術師(レッドアイズ・マジシャン)

レベル7 攻撃2500 守備2100 効果 闇属性 魔法使い族

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードは「真紅眼」融合モンスターの融合素材となるとき、カード名を「ブラック・マジシャン」としても扱う。

(2):自分が「レッドアイズ」魔法・罠カードを発動したターンのメインフェイズ1に、自分フィールドに存在するこのカードをリリースし、自分の墓地に存在する「真紅眼の黒魔術師」以外のレベル6以上の「レッドアイズ」モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

 

 

真紅眼の竜戦士(レッドアイズ・ドラゴンウォリアー)

レベル7 攻撃2400 守備2000 効果 闇属性 戦士族

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールドの「レッドアイズ」モンスターが相手モンスターを攻撃するとき、手札に存在するこのカード1枚を墓地へ送ることで発動できる。その相手モンスターの攻撃力をターン終了時まで0にする。

(2):このカードは「真紅眼」融合モンスターの融合素材とするとき、カード名を「真紅眼の黒竜」としても扱い、種族をドラゴン族として扱うことができる。

 

 

 

コズミックブラスト(アニメオリカ・改変)

通常罠カード

(1):自分フィールドのドラゴン族Sモンスターがフィールドから離れたターンにのみ発動できる。そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。この効果を発動したターン、自分はモンスターを特殊召喚できない。

 

メタリック・サイクロプス

レベル4 攻撃1200 守備1000 地属性 獣戦士族

【Pスケール:青1/赤1】

(1):1ターンに1度、自分メインフェイズ時に発動できる。「獣闘機」融合モンスターによって決められた、このカードを含む融合素材モンスターを自分フィールドから墓地へ送り、その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。

【モンスター効果】

(1):Pゾーンに存在するこのカードが破壊された時、自分の墓地に存在する「獣闘機」融合モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールドに表側守備表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターはターン終了時に破壊される。

 

 

 

獣闘機ソニック・グラディエイター

レベル6 攻撃1900 守備1200 融合 闇属性 機械族

レベル4以下の獣戦士族モンスター+レベル4以下の機械族モンスター

このカード名のカードは自分フィールド上に1体しか表側表示で存在できない。

(1):自分フィールドにこのカード以外の「獣闘機」モンスターが存在する場合、自分フィールドの「獣闘機」モンスターの攻撃力は自分フィールドに存在する「獣闘機」モンスターの数×500アップする。そして、相手はこのカード以外の「獣闘機」モンスターを戦闘・効果の対象にできない。

(2):このカードの融合召喚に成功したときに発動する。デッキからレベル4以下の獣戦士族モンスター1体を手札に加える。

 

 

 

ダーク・チェイン

レベル1 攻撃0 守備0 効果 闇属性 機械族

このカード名の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか発動できない。

(1):このカードが手札に存在するとき、自分メインフェイズ時に発動できる。「獣闘機」融合モンスターによって決められた、このカードを含む融合素材モンスターを手札から墓地へ送り、その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。

(2):自分フィールドにモンスターが存在せず、このカードが墓地に存在する場合に発動できる。「完全獣闘機」融合モンスターによって決められた、このカードを含む融合素材モンスターを墓地から除外し、その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。この効果はこのカードが墓地へ送られたターン、発動できない。

 

 

 

メタリック・ミノタウロス

レベル4 攻撃1700 守備1000 地属性 獣戦士族

【Pスケール:青5/赤5】

このカード名の(1)のP効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドの「獣闘機」モンスターが戦闘・効果によって相手にダメージを与えたときに発動できる。自分はデッキからカードを1枚ドローする。

【モンスター効果】

(1):Pゾーンに存在するこのカードが相手によって破壊された時に発動する。自分はデッキから「獣闘機勲章」魔法・罠カード1枚を手札に加える。

 

 

 

魔装僧ラスプーチン

ランク4 攻撃1600 守備1000 エクシーズ 闇属性 魔法使い族

レベル4の「魔装」モンスター×2

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードのX召喚に成功したとき、このカードのX素材がPモンスターのみの場合に発動できる。自分はデッキから「RUM-審判の魔装騎士」1枚を手札に加える。

(2):このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。デッキから「魔装」モンスター1体を守備表示で特殊召喚する。この効果を発動したターン、自分は「魔装」以外のモンスターを召喚・特殊召喚できず、この効果で特殊召喚されたモンスターはターン終了時に破壊される。

 

 

 

RUM-審判の魔装騎士

通常魔法カード

このカード名の(2)の効果はデュエル中1度だけ発動できる。

(1):自分フィールドに存在するXモンスター1体を対象として発動できる。EXデッキからランクが1つ高い「魔装騎士」Xモンスター1体を、対象としたモンスターの上に重ねてX召喚する。

(2):自分がランク5以上の「魔装騎士」XモンスターのX召喚に成功したとき、このカードが墓地に存在する場合に発動できる。このカード1枚を手札に加える。この効果を発動したターン、自分は「魔装」以外のモンスターを召喚・特殊召喚できない。

 

 

 

ひび割れた獣闘機勲章

通常罠カード

(1):自分フィールドの「獣闘機」モンスターが戦闘で破壊され墓地へ送られた時、EXデッキに存在するそのモンスターとは名前の異なる「獣闘機」融合モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。その後、ターン終了時まで自分が受けるすべてのダメージが0となる。

(2):このカードは自分フィールドにモンスターが存在しない場合、手札から発動できる。

 

 

 

魔装壁モトタダ

レベル5 攻撃100 守備2500 効果 地属性 戦士族

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):相手の直接攻撃宣言時、攻撃モンスターの攻撃力が自分LPを上回っている場合に手札のこのカードを墓地へ送ることで発動できる。その攻撃で発生する自分へのダメージを0にする。その後、自分の墓地に存在する「魔装騎士」モンスター1体を表側守備表示で特殊召喚する。

(2):自分フィールドの「魔装騎士」モンスターがEXデッキから特殊召喚された相手モンスターを戦闘を行うダメージ計算時、墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。ターン終了時までその相手モンスターの攻撃力は0となり、効果も無効化される。

 

 

 

完全獣闘機(パーフェクト・ビーストボーグ)キマイラ・デストロイヤー

レベル10 攻撃0 守備0 融合 地属性 獣戦士族

闇属性・機械族モンスター+「獣闘機」融合モンスター2体

(1):このカードは効果によって破壊されない。

(2):このカードが相手モンスターと戦闘を行うとき、このカードの攻撃力・守備力はダメージステップ終了時までその相手モンスターの攻撃力+100の数値となる。

(3):このカードが相手モンスターを戦闘で破壊したときに発動できる。このカードの上にカウンターを1つ乗せる。

(4):このカードが相手モンスターと戦闘を行ったダメージステップ終了時、このカードに乗っているカウンターを2つ取り除くことで発動できる。続けてもう1度攻撃できる。その時に相手プレイヤーへ直接攻撃する場合、このカードの攻撃力はダメージステップ終了時までこのターン、このカードが戦闘で破壊したモンスターの攻撃力と同じになる。

 

 

 

贖いの獣闘機勲章

装備魔法カード

「獣闘機」融合モンスターにのみ装備可能。

(1):装備モンスターが戦闘を行うとき、そのモンスターはダメージステップ終了時までこのカードと自身以外のカード効果を受けない。

 

幻獣界

フィールド魔法

(1):このカードの発動時の効果処理として、デッキから「幻獣」モンスター1体を手札に加える。

(2):自分フィールドに存在する「幻獣」モンスターの攻撃力・守備力は300アップする。

(3):1ターンに1度、自分フィールドの「幻獣」Sモンスターが相手によって破壊された時に発動できる。EXデッキからそのモンスターと同じレベルのSモンスター1体をS召喚扱いとして特殊召喚する。

 

 

 

幻獣の子コロ

レベル1 攻撃0 守備0 チューナー 地属性 獣族

(1):このカードを「幻獣」または「マリンフォース」SモンスターのS素材とする場合に発動できる。自分の手札に存在する「幻獣」モンスター1体をS素材として使用することができる。この効果はこのカードが(2)の効果で特殊召喚されている場合、発動できない。

(2):自分フィールドにモンスターが存在しない状態で自分がダメージを受けるとき、墓地にこのカードが存在する場合に発動できる。このカードを墓地から特殊召喚し、ターン終了時まで自分が受けるダメージを0にする。この効果で特殊召喚されたこのカードはフィールドから離れたとき除外される。

 

 

 

幻獣盾ウォールゴーレム

レベル6 攻撃0 守備2000 地属性 岩石族

【Pスケール:青5/赤5】

(1):1ターンに1度、自分フィールドの「幻獣」モンスターが相手モンスターと戦闘を行うときに発動できる。そのモンスターはその戦闘では破壊されず、自分が受ける戦闘ダメージは半分になる。

【モンスター効果】

(1):このカードをS素材としたSモンスターは1ターンに1度、戦闘・効果では破壊されない。

 

 

 

幻獣ジャックフロスト

レベル1 攻撃200 守備200 チューナー 水属性 水族

このカードの(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しか行えない。

(1):自分フィールドに「幻獣」モンスターが墓地から特殊召喚された時に発動できる。手札に存在するこのカードを特殊召喚する。

(2):このカードの効果でこのカードが特殊召喚に成功したとき、そのモンスターとこのカードのみをS素材としてS召喚を行う。

(3):このカードをS素材としてSモンスターのS召喚に成功した場合に発動する。次の相手バトルフェイズ中、相手は攻撃宣言を行えない。

 

 

 

ビック・リボーン

通常罠カード

(1):相手の直接攻撃によって自分が戦闘ダメージを受けたときに発動できる。そのダメージ以下の数値の攻撃力を持つモンスターを自分の墓地から特殊召喚する。

(2):自分フィールドにカードがない場合、このカードは手札から発動できる。

 

 

 

波紋消滅

永続罠カード

このカードは発動後、3回目の自分スタンバイフェイズ時に墓地へ送られる。

(1):お互いのプレイヤーはペンデュラム召喚を行えず、Pゾーンに存在するPカードの効果を発動できない。

 

 

 

幻獣の紋章

通常魔法カード

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドに存在する「幻獣」Sモンスター1体をリリースすることで発動する。自分の墓地に存在する「幻獣」チューナー1体とチューナー以外の「幻獣」モンスター1体をレベルの合計がそのモンスターと同じになるように選択し、自分フィールドに特殊召喚する。この効果を発動したターン、自分は「幻獣」以外のモンスターを手札・墓地から特殊召喚できない。

(2):自分フィールドにモンスターが存在しない状態で相手の直接攻撃宣言時、墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。その攻撃を無効にする。その後、デッキから「幻獣」カード1枚を手札に加える。この効果を発動したターン、自分はデッキからカードを手札に加えることができない。

 

 

 

幻獣空

フィールド魔法カード

(1):自分フィールドのSモンスターは1ターンに1度、戦闘及び効果では破壊されない。

(2):このカードが破壊され墓地へ送られた時に発動できる。デッキから「幻獣」フィールド魔法カード1枚を手札に加える。

 

 

 

幻獣霊ボディレスファントム

レベル3 攻撃0 守備0 闇属性 アンデット族

【Pスケール:青3/赤3】

(1):1ターンに1度、自分フィールドに「幻獣」Sモンスターが特殊召喚された時に発動できる。そのモンスターのS素材となった「幻獣」モンスター1体を自分フィールドに表側守備表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。

【モンスター効果】

このカード名のカードのモンスター効果はデュエル中1度しか発動できない。

(1):フィールド魔法が存在する自分メインフェイズ時に発動できる。自分の墓地・EXデッキに表側表示で存在するこのカードを自分フィールドに表側守備表示で特殊召喚する。

 

 

 

幻獣海

フィールド魔法カード

(1):自分フィールドの「幻獣」モンスターの戦闘で発生する自分へのダメージは0となる。

(2):自分フィールドの「幻獣」モンスターが相手モンスターを攻撃したダメージステップ終了時に発動する。その相手モンスターの攻撃力を戦闘を行った自分のモンスターの攻撃力分ダウンさせる。

 

 

 

SRポケサーキッド

レベル3 攻撃1000 守備1000 効果 風属性 機械族

(1):自分フィールドの風属性Sモンスターが相手モンスターの攻撃対象となったとき、手札に存在するこのカードを墓地へ捨てることで発動できる。その戦闘で発生する自分へのダメージを半分にする。この効果を発動した次の自分スタンバイフェイズ時、自分はデッキからカードを1枚ドローする。

 

 

 

転生幻獣リバースカラドリウス

レベル3 攻撃400 守備300  光属性 鳥獣族

【Pスケール:青7/赤7】

このカード名の(1)のP効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドの「幻獣」モンスターが戦闘・効果によって破壊され墓地へ送られたときに発動できる。Pゾーンに存在するこのカードを破壊することで、墓地に存在するそのモンスターを特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。

【チューナー:効果】

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールドの「幻獣」モンスターが戦闘・効果によって破壊された時に発動できる。手札に存在するこのカードを自分フィールドに表側攻撃表示で特殊召喚する。その後、自分の墓地に存在する「幻獣」モンスター1体を自分フィールドに特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。この効果で特殊召喚されたこのカードは自分ターン終了時、表側表示でEXデッキに置く。

 

 

 

運命の振り子

通常魔法カード

(1):自分のPゾーンにカードがない場合にのみ発動できる。自分のデッキに存在するPカード1枚をEXデッキに表側表示で置く。その後、デッキからカードを1枚ドローする。

 

 

 

幻獣妖精バリアカーバンクル

レベル2 攻撃0 守備1200 光属性 獣族

【Pスケール;青8/赤8】

(1):1ターンに1度、自分フィールドに表側攻撃表示で存在する「幻獣」モンスターが相手モンスターの攻撃対象となったときに発動できる。その自分モンスターを守備表示に変更する。その後、ターン終了時までそのモンスターの守備力は1000アップする。

【チューナー:効果】

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):相手の直接攻撃宣言時に発動できる。手札のこのカードを自分フィールドに特殊召喚する。その後、攻撃モンスターの攻撃力をターン終了時まで0にする。

 

魔装剣ソハヤ

装備魔法カード

「魔装」モンスターにのみ装備可能。

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):装備モンスターが守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ戦闘ダメージを与える。

(2):装備モンスターが相手によって破壊された時に発動できる。デッキからそのモンスターのレベルまたはランクと同じ数値のレベルを持つ「魔装」モンスター1体を特殊召喚する。装備モンスターがEXデッキから特殊召喚されたモンスターの場合、代わりにそのモンスターのレベルまたはランクの数値以下のレベルを持つ「魔装」モンスターを選択できる。

 

 

 

ガスタの新風レラ

レベル1 攻撃100 守備2000 風属性 サイキック族

【Pスケール:青1/赤1】

(1):自分は「ガスタ」モンスターしかP召喚できない。この効果は無効化されない。

(2):自分フィールドに存在する「ガスタ」Sモンスターが破壊されたターン、自分フィールドにモンスターが存在しない場合に発動できる。Pゾーンに存在するこのカードを手札に戻す。

【モンスター効果】

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードの召喚に成功したとき、自分の墓地に存在する「ガスタ」S・Xモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを効果を無効にして、守備表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターはチューナーとして扱い、Xモンスターの場合は通常モンスターとして扱い、そのモンスターのランクと同じ数値のレベルとなる。この効果を発動後、ターン終了時まで自分は「ガスタ」モンスターしか特殊召喚できない。

 

 

 

魔装魚メロウ

レベル1 攻撃0 守備0 水属性 水族

【Pスケール:青10/赤10】

このカードの(2)のP効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。

(2):自分フィールドに存在する「魔装」モンスター1体を対象に発動できる。以下の効果からいずれかを適用する。

●ターン終了時までそのモンスターをチューナーとして扱う。

●ターン終了時まで、それ以外の自分フィールドのモンスターのレベルをそのモンスターと同じにする。

【特殊召喚:モンスター効果】

このカードは通常召喚できない。

自分EXデッキに「魔装」モンスターが表側表示で存在し、自分Pゾーンにカードがない場合、このカードは手札から特殊召喚できる。

(1):このカードを素材として「魔装」S・X・融合モンスターの特殊召喚に成功したときに発動できる。自分の墓地に存在する「魔装」カード1枚を除外し、デッキから「魔装降臨の儀式」1枚と「魔装」儀式モンスター1体を手札に加える。

 

 

 

魔装降臨の儀式

儀式魔法カード

「魔装」儀式モンスターの降臨に必要。

(1):レベルの合計が儀式召喚するモンスターのレベル以上となるように、手札・フィールドに存在する「魔装」モンスターをリリースし、手札から「魔装」儀式モンスター1体を儀式召喚する。その時、自分フィールドに存在するモンスターが「魔装騎士」モンスター1体のみの場合、自分EXデッキに存在する「魔装騎士」モンスター1体を除外することで、その儀式召喚に必要なレベル分のモンスターとすることができる。

(2):自分フィールドにモンスターが存在しない場合、墓地に存在するこのカードと「魔装騎士」モンスター1体を除外して発動できる。ゲームから除外されている儀式モンスター以外の「魔装騎士」モンスター1体を自分フィールドに特殊召喚する。この効果はこのカードが墓地へ送られたターン、発動できない。

 

 

 

魔装騎士デュラハン

レベル7 攻撃2100 守備1200 儀式 無属性 戦士族

「魔装降臨の儀式」により降臨。

(1):このカードは戦闘では破壊されず、自分が受ける戦闘ダメージは0となる。

(2):このカードが相手モンスターと戦闘を行ったダメージステップ終了時に発動できる。その相手モンスターに宣告カウンターを1つ置く。

(3):ターン終了時に発動する。自分フィールドに存在するこのカードを墓地へ送り、フィールド上に存在する宣告カウンターが乗っているカードをすべて墓地へ送る。

(4):(3)の効果を発動した次の自分スタンバイフェイズ時に発動できる。墓地に存在するこのカードを特殊召喚する。

 

 

 

サブテラーの宣告

通常罠カード

このカード名のカードは1ターンに1度しか発動できない。

(1):手札及び自分フィールドの表側表示モンスターの中から、モンスター1体を選んで墓地へ送り、同じ属性でカード名が異なるリバースモンスター1体をデッキから自分フィールドにセットする。

 

 

 

風の継承

永続魔法カード

(1):自分フィールドに以下の種類の「ガスタ」モンスターがEXデッキから特殊召喚された時、それぞれの効果を1ターンに1度ずつ発動できる。

●Sモンスター:デッキから「ガスタ」モンスター1体を手札に加える。

●Xモンスター:そのモンスターの攻撃力を1000アップする。

●Pモンスター:次のターン終了時まで、自分が受けるすべてのダメージが半分になる。

 

 

 

ガスタの新星ノチウ

レベル7 攻撃2500 守備2100 風属性 サイキック族

【Pスケール/青8:赤8】

(1):自分フィールドの「ガスタ」モンスターがカードの効果によって特殊召喚に成功したとき、そのモンスターの数だけこのカードの上にガスタカウンターを1つ置く。

(2):このカードの上にガスタカウンターが6つ以上乗っているときに発動できる。Pゾーンに存在するこのカードを自分フィールドに特殊召喚する。

【シンクロ:効果】

「ガスタ」チューナー+チューナー以外の風属性モンスター1体以上

(1):このカードを「ガスタ」モンスターのみを素材としてS召喚に成功したこのカードが相手モンスターを攻撃するダメージステップ開始時に発動できる。墓地の「ガスタ」カード2枚をデッキに戻し、ダメージステップ終了時まで、このカードの攻撃力は元々の攻撃力の倍となる。

(2):P召喚またはこのカードのP効果によって、特殊召喚に成功したこのカードがフィールド上に存在する限り、バトルフェイズ中に相手はバトルフェイズ中にモンスター効果を発動できない。

(3):このカードが攻撃するとき、ダメージステップ終了時まで相手はカード効果を発動できない。

(4):このカードが破壊された時に発動できる。このカードを自分Pゾーンに置く。

 

 

 

ガスタの口笛

速攻魔法カード

このカード名の(1)(2)は1ターンにそれぞれ1度しか発動できない。

(1):自分フィールドのモンスター1体をリリースすることで発動できる。デッキからそのモンスターよりも低いレベルの「ガスタ」モンスター1体を手札に加える。

(2):墓地に存在するこのカードと「ガスタ」カード1枚を除外することで発動できる。このターン、自分が受けるすべてのダメージを0にする。

 

 

 

ガスタ・ライオン

レベル2 攻撃900 守備100 風属性 炎族

【Pスケール:青8/赤8】

このカード名の(1)のP効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードがPゾーンに存在し、もう片方の自分Pゾーンにカードがない場合、自分フィールドのモンスター1体をリリースすることで発動できる。EXデッキに表側表示で存在する「ガスタ」Pカード1枚を自分Pゾーンに置く。

【チューナー:効果】

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードがフィールドから離れたとき、自分のデッキに存在する「ガスタ」サイキック族モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果はターン終了時まで無効化される。

 

 

 

魔装の呪縛

通常罠カード

(1):相手の直接攻撃宣言時、その攻撃モンスターを対象に発動できる。その攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了させる。その後、選択されたモンスターは攻撃できず、効果は無効化される。そのモンスターが破壊された時、このカードは破壊される。

(2):このカードが自分フィールドに表側表示で存在し、自分フィールドに「魔装騎士」モンスターが特殊召喚された時に発動できる。このカードを墓地へ送り、EXデッキに表側表示で存在する「魔装」Pカード1枚とデッキに存在する「魔装」Pモンスター1体(同名及び同じPスケールのカードは1枚まで)を手札に加える。この効果を発動したターン、自分は「魔装」以外のモンスターを召喚・特殊召喚できず、カードをセットすることができない。

 

 

 

魔装術士ジェルマン

レベル3 攻撃0 守備0 闇属性 魔法使い族

【Pスケール:青1/赤1】

(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。

(2):自分フィールドの「魔装」融合モンスターが相手によって破壊され墓地へ送れた時、Pゾーンに存在するこのカードを破壊することで発動できる。そのモンスターを墓地から表側守備表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。

【モンスター効果】

(1):1ターンに1度、自分メインフェイズに発動できる。「魔装」融合モンスターカードによって決められた、このカードを含む「魔装」融合素材モンスターを自分フィールドから墓地へ送り、その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。

(2):このカードを素材として融合召喚に成功したモンスターはこのターン、戦闘・効果では破壊されない。

 

 

 

魔装天使サリエル

レベル10 攻撃0 守備0 無属性 天使族

【Pスケール:青12/赤12】

(1):自分フィールドの「魔装」モンスターが相手モンスターと戦闘を行ったダメージステップ終了時に発動できる。その相手モンスターを破壊する。

【融合:モンスター効果】

「魔装騎士」を含めたレベル7以上、またはランク5以上の「魔装」モンスター3体

このカードはルール上、「魔装騎士」モンスターとしても扱う。

(1):バトルフェイズ開始時、相手フィールドに存在するモンスターを2体まで対象として発動できる。それらのモンスターの効果を無効化し、ターン終了時までそれらのモンスターの攻撃力の合計分、このカードの攻撃力がアップする。

(2):モンスターゾーンのこのカードがこのカードが戦闘・効果で破壊された場合に発動できる。このカードを自分のPゾーンに置く。

 

レイダーズ・フォレスト

フィールド魔法カード

(1):このカードが存在する限り、自分はX召喚、P召喚、「RR」カードの効果以外の方法でEXデッキからモンスターを特殊召喚できない。この効果は無効化されない。

(2):自分フィールドに「RUM」以外の方法で「RR」Xモンスターの特殊召喚に成功したときに発動できる。デッキ・EXデッキから「RR」Pモンスター1体を手札に加える。このターン、同じランクの「RR」Xモンスターを特殊召喚に成功した場合、自分の「レイダーズ・フォレスト」の効果を発動できない。

(3):このカードがフィールドから離れたときに発動する。自分フィールドのモンスターをすべて破壊する。

 

 

 

RR-リフレクティング・イーグル

レベル5 攻撃2000 守備0 闇属性 鳥獣族

【Pスケール:青3/赤3】

(1):このカードがPゾーンに表側表示で存在する限り1度だけ、自分フィールドに存在する「RR」Xモンスター1体を対象に発動できる。ターン終了時までそのモンスターは戦闘・効果では破壊されない。この効果は相手ターンでも発動できる。

【モンスター効果】

このカードの(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しか行えない。

(1):相手フィールドにEXデッキから特殊召喚されたモンスターが存在し、自分フィールドにモンスターが存在しないとき、このカードは手札から表側攻撃表示で特殊召喚できる。その時、このカードのレベルは4となり、攻撃力が半分になる。

(2):このカードがモンスターゾーンに表側表示で存在する限り1度だけ、自分フィールドに存在する「RR」Xモンスター1体を対象に発動できる。ターン終了時までそのモンスターは戦闘・効果では破壊されない。この効果は相手ターンでも発動できる。

 

 

 

ファーニマル・マジシャン

レベル6 攻撃2000 守備1200 効果 光属性 天使族

このカード名の(1)の効果はデュエル中1度だけ発動できる。

(1):自分LPの数値以上の攻撃力を持つ相手モンスターの直接攻撃宣言時、このカードが墓地に存在する場合に発動できる。その攻撃を無効にする。その後、EXデッキに存在する「デストーイ」融合モンスター1体の融合素材となる自分の墓地に存在するこのカードを含めたモンスターを除外し、その融合モンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

 

 

ファーニマル・スネーク

レベル1 攻撃400 守備400 効果 光属性 天使族

このカード名のカードの(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードの召喚に成功したとき、ゲームから除外されている「エッジインプ」モンスターと「ファーニマル」モンスターを1体ずつ対象として発動する。それらのモンスターを自分の手札に加える。この効果を発動したターン、自分は融合召喚以外の方法でEXデッキからモンスターを特殊召喚できない。

(2):このカードが「デストーイ」融合モンスターの融合素材として墓地へ送られた時、自分の墓地に存在する「エッジインプ」モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを手札に加える。

 

古文書の結界(漫画オリカ・調整)

永続魔法カード

(1):このカード名のカードはフィールド上に1枚しか表側表示で存在できない。

(2):このカードが魔法・罠ゾーンに存在する限り、お互いのフィールドに存在するこのカード名のカード以外の永続魔法カードは戦闘・効果では破壊されない。

 

 

 

Emセカンド・ディーラー

レベル4 攻撃1000 守備1000 効果 闇属性 魔法使い族

このカード名の(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しか行えず、(2)の効果はデュエル中1度だけ発動できる。

(1):自分フィールドの魔法・罠ゾーンにカードが2枚以上表側表示で存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。

(2):このカードの召喚・特殊召喚に成功したとき、自分のデッキに存在する「Em」モンスター1体を対象に発動する。そのカードを裏向きの状態でゲームから除外する。この効果を発動した次の自分ドローフェイズ時、通常のドローの代わりにこの効果で除外したカード1枚を手札に加えることができる。

 

 

 

エクストラ・ドロー

アクション魔法カード

(1):自分フィールドに存在するモンスターがEXデッキから特殊召喚されたモンスターのみの場合に発動できる。自分はデッキからカードを1枚ドローする。

 

 

 

Emストリング・フィギュア(アニメオリカ・調整)

レベル1 攻撃0 守備0 効果 闇属性 魔法使い族

(1):このカードは戦闘では破壊されず、このカードの戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になる。

(2):相手モンスターの直接攻撃宣言時に発動できる。このカードを手札から特殊召喚し、攻撃対象をこのカードに移し替える。

(3):EXデッキに存在する魔法使い族融合モンスター1体を対象に発動できる。そのカードによって決められた、このカードを含む融合素材モンスターを自分フィールドから墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

 

 

トラピーズ・ロッド

装備魔法カード

「Emトラピーズ・マジシャン」にのみ装備可能。

このカード名の(1)の効果は1ターンに2度しか使用できず、(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):装備モンスターが戦闘で相手モンスターを破壊したときに発動する。自分はデッキからカードを1枚ドローする。

(2):自分フィールドに「Emトラピーズ・フォース・ウィッチ」が存在する場合、墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。自分の墓地に存在する「Emトラピーズ・マジシャン」1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。この効果はこのカードが墓地へ送られたターン、発動できない。また、この効果を発動したターン、自分は「Em」以外のモンスターを召喚・特殊召喚できない。

 

 

 

RUM-マジカル・フォース(アニメオリカ・調整)

速攻魔法カード

このカード名のカードは1ターンに1度しか発動できない。

(1):このターンに戦闘で破壊され自分の墓地へ送られた魔法使い族Xモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを効果を無効にして特殊召喚し、そのモンスターよりランクが1つ高い魔法使い族Xモンスター1体を、対象のモンスターの上に重ねてX召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚し、このカードを下に重ねてX素材とする。

 

 

 

Emトラピーズ・フォース・ウィッチ(アニメオリカ)

レベル7 攻撃2400 守備1800 融合 闇属性 魔法使い族

「Em」モンスター×2

(1):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分フィールドの「Em」モンスターは効果では破壊されず、相手の効果の対象にならない。

(2):自分フィールドにこのカード以外の「Em」モンスターが存在する限り、相手はこのカードを攻撃対象にできない。

(3):自分フィールドの「Em」モンスターが相手モンスターと戦闘を行う場合、その相手モンスター1体を対象として発動できる。その相手モンスターの攻撃力は600ダウンする。

 

 

 

Emトラピーズ・ハイ・マジシャン(アニメオリカ)

ランク5 攻撃2700 守備2200 エクシーズ 光属性 魔法使い族

魔法使い族レベル5モンスター×2

(1):自分・相手のメインフェイズに1度、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。このターン、このカードは3回まで戦闘・効果では破壊されない。

(2):このカードがランク4以下の魔法使い族Xモンスターを素材としてX召喚に成功したターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。このターン、このカードは1度のバトルフェイズ中に3回まで攻撃できる(直接攻撃は1回まで)。

 

 

 

Emフェイク・ディーラー

レベル4 攻撃1600 守備1200 効果 闇属性 魔法使い族

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):相手フィールドに存在するモンスターが効果を発動したとき、自分フィールドに「Em」モンスターが存在する場合、手札に存在するこのカードを墓地へ送ることで発動できる。自分フィールドの「Em」モンスター1体はこのターン、相手のカード効果を受けない。そして、この効果を発動したターンのバトルフェイズ中に相手モンスターが攻撃するとき、攻撃対象を自分が決める。

(2):自分フィールドに「Em」Xモンスターが存在するとき、自分の墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。相手に1000ダメージを与える。この効果はこのカードが墓地へ送られたターン、発動できない。

 

月光舞猫師(ムーンライト・キャット・トレーナー)

レベル7 攻撃2300 守備2100 融合 闇属性 獣戦士族

自分フィールドの「ムーンライト」モンスター×2

(1):このカードは戦闘では破壊されない。

(2):1ターンに1度、自分メインフェイズ1にこのカード以外の自分フィールドの「ムーンライト」モンスター1体をリリースして発動できる。このターン、このカードは全ての相手モンスターに1回ずつ攻撃できる。その時、戦闘を行う相手モンスターの効果はターン終了時まで無効化される。

(3):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊したバトルフェイズ終了時に発動する。このカードの攻撃力は500アップする。

 

 

 

月光教導(ムーンライト・トレーニング)

通常魔法カード

(1):自分フィールドに存在するモンスターが「ムーンライト」融合モンスター1体のみで、手札に存在するカードがこのカードのみの場合に発動できる。自分はデッキからカードを2枚ドローする。

 

 

 

RR-カウンター

通常罠カード

(1):相手の直接攻撃によって自分が戦闘ダメージを受けたときに発動できる。自分の墓地に存在する「RR」Xモンスター1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。その後、発動したこのカードを装備カード扱いとしてそのモンスターに装備する。装備モンスターの攻撃力がその時自分が受けた戦闘ダメージの数値分、アップする。

 

 

 

月光舞豹師(ムーンライト・パンサー・トレーナー)

レベル8 攻撃2700 守備2600 融合 闇属性 獣戦士族

自分フィールド上の「月光舞猫師」+自分フィールド上の「ムーンライト」モンスター1体

このカードは上記のカードを融合素材とした融合召喚でのみ、EXデッキから特殊召喚できる。

(1):このカードは相手の効果では破壊されない。

(2):1ターンに1度、自分メインフェイズ1に発動できる。このターン、このカードはすべての相手モンスターに1回ずつ攻撃できる。

(3):自分フィールドに存在するモンスターがこのカードのみで、自分Pゾーンに「ムーンライト」カードが2枚存在する場合、相手フィールドに存在するすべてのモンスターの効果は無効化させる。

 

 

 

月光舞殺(ムーンライト・アサシンダンス)

装備魔法カード

レベル9以上の「ムーンライト」融合モンスターのみ装備可能。

(1):1ターンに1度、相手が魔法・罠カードを発動したときに発動できる。その発動を無効にし、破壊する。

(2):装備モンスターは1ターンに1度、戦闘・効果では破壊されない。

 

 

 

月光舞白獅子師(ムーンライト・ホワイトライオ・トレーナー)

レベル10 攻撃3000 守備3000 融合 闇属性 獣戦士族

自分フィールド上の名前の異なる「ムーンライト」融合モンスター2体

このカードは上記のカードを融合素材とした融合召喚でのみ、EXデッキから特殊召喚できる。

(1):このカードの融合召喚に成功したときに発動する。このカードの攻撃力は自分の墓地に存在する「ムーンライト」融合モンスターの数×1000アップする。

(2):このカードが存在する限り、フィールド上に存在するこのカードの攻撃力以下の攻撃力を持つ、このカード以外のモンスターの効果は無効化される。

(3):相手がEXデッキからモンスターの特殊召喚に成功したときに発動する。その相手モンスターの攻撃力が500ダウンし、相手に500ダメージを与える。

 

 

RR-リベンジング・フェニックス

レベル1 攻撃0 守備0 効果 闇属性 鳥獣族

(1):自分フィールドに「RR」Xモンスター1体を含めた「RR」モンスターが2体以上存在する場合、手札に存在するこのカードを墓地へ送ることで発動できる。自分フィールドに存在するXモンスター以外の「RR」モンスターをすべて墓地へ送る。その後、この効果で墓地へ送ったカードの数だけデッキの上からカードを墓地へ送る。墓地へ送ったカードの中に「RUM」魔法カードが存在する場合、そのうちの1枚を選択する。このカードの効果はそのカードの効果と同じになる。墓地へ送ったカードの中に「RUM」魔法カードが存在しない場合、自分は2000LPを失う。

(2):自分の墓地からこのカードと「RR」Xモンスター2体を除外し、自分フィールドの「RR」Xモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターの攻撃力はターン終了時までそのモンスターの元々の攻撃力分アップする。

 

ウルカヌスの炎

通常魔法カード

(1):自分フィールドに「ヘリオス」モンスターが存在し、手札が0枚の場合に発動できる。デッキの上からカードを3枚確認し、その中から1枚を手札に加え、それ以外のカードをゲームから除外する。

 

 

 

異次元からの流れ星

通常罠カード

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):ゲームから除外されている風属性Sモンスター1体をEXデッキに戻すことで発動できる。自分の墓地に存在するそのモンスターと同じレベルのSモンスター1体を墓地から特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。発動後、このカードは墓地へ送らずゲームから除外する。

(2):相手の直接攻撃宣言時、そのモンスターの攻撃力が自分LPよりも上回っている場合、ゲームから除外されているこのカードを墓地へ戻すことで発動できる。サイコロを1回降り、その出目を宣言する。出目が宣言したものと同じだった場合、自分のライフを100にすることでこのターンに発生する自分へのすべてのダメージを0にする。その後、EXデッキからレベル7・風属性・ドラゴン族Sモンスター1体をS召喚扱いで特殊召喚する。この効果は(1)の効果を発動したターン、発動できない。

 

古代の機械寄生兵(アンティーク・ギア・パラサイト・ソルジャー)

レベル5 攻撃2100 守備2100 融合 地属性 機械族

「パラサイト・フュージョナー」+レベル4以下の「アンティーク・ギア」モンスター

(1):このカードが攻撃する場合、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。

(2):このカードが戦闘・効果によって破壊され墓地へ送られたとき、自分の墓地にこのカードの融合素材となったモンスター一組がそろっている場合にのみ発動する。それらのモンスターを墓地から特殊召喚する。

 

 

 

WRUM-トラスト・フォース

通常魔法カード

このカード名のカードは1ターンに1度しか発動できない。

(1):お互いのフィールドにXモンスターが存在するとき、互いのプレイヤーは自分フィールドのXモンスターを1体ずつ対象とすることで発動できる。EXデッキから選択したモンスターのランクの合計と同じランクを持つ「RR」Xモンスター2体を対象としたそれぞれのモンスターの上に重ねてX召喚する。

 

 

 

RR-バリア

通常罠カード

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードは発動後、装備カード扱いとなって「RR」Xモンスター1体に装備できる。装備モンスターは以下の効果を得る。

●1ターンに1度、自分フィールドに存在する「RR」が相手によって破壊されるとき、代わりにこのカードのX素材を1つ取り除くことができる。

(2):自分フィールドに存在する「RR」Xモンスターが戦闘・効果によって破壊されるとき、代わりに墓地に存在するこのカードをゲームから除外することができる。

 

 

 

ランクアップ・サンクチュアリ

フィールド魔法カード

(1):このカードの発動処理時、自分はデッキから「RUM」魔法カードを1枚手札に加える。

(2):自分または相手が「RUM」魔法カードの効果でXモンスターの特殊召喚に成功したとき、特殊召喚したモンスターの数だけこのカードの上にランクカウンターを置く。

(3):自分フィールドのXモンスター以外のモンスター1体を対象とし、このカードに乗っているランクカウンターをすべて取り除くことで発動できる。取り除いたランクカウンターと同じ数のランクを持つ「RR」Xモンスター1体をそのモンスターの上に重ねてX召喚する。

 

 

 

LL-ストリーム

速攻魔法カード

このカード名のカードは1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドにレベル1またはランク1の「LL」モンスターが存在する場合にのみ発動できる。デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターは攻撃できず、ターン終了時に破壊される。

 

 

 

軍神の采配(アニメオリカ・調整)

通常罠カード

(1):相手ターンのバトルフェイズ中にのみ発動できる。このターン、相手モンスターの攻撃宣言時、攻撃対象を代わりに自分が選択する。この効果を発動したターン、戦闘で発生する相手への戦闘ダメージは0となる。

(2):自分ターンのバトルフェイズ時、墓地に存在するこのカードを除外し、自分フィールドのモンスター1体を対象に発動できる。このターン、そのモンスターは相手プレイヤーに直接攻撃できる。

 

シンクロ・プロミネンス(アニメオリカ)

通常罠カード

(1):Sモンスターをコントロールしているプレイヤーは相手のライフポイントに1000ポイントのダメージを与える。

 

 

 

スピード・ヴィジョン

通常魔法カード

(1):自分の墓地に存在するレベル2以下のモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターはターン終了時に破壊される。

 

 

 

WW-ノース・ベル

レベル5 攻撃1800 守備1600 効果 風属性 魔法使い族

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールドに存在する「WW」が相手モンスターの効果の対象となった時、手札に存在するこのカードを墓地へ送ることで発動できる。その効果を無効化する。

(2):自分フィールドの「WW」相手モンスターと戦闘を行うとき、墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。戦闘を行うお互いのモンスターの攻撃力はダメージステップ終了時まで相手モンスターと同じになる。

 

魔界台本の執筆

通常魔法カード

このカード名のカードは1ターンに1度しか使用できず、このカードを発動したターン、自分は「魔界劇団」以外のモンスターの召喚・特殊召喚を行えない。

(1):自分の手札に存在するカードがこのカードのみで、自分Pゾーンに「魔界劇団」カードが2枚存在する場合に発動できる。自分フィールドに存在するレベル7以上の「魔界劇団」モンスターの種類の数だけデッキからカードをドローする。

 

 

 

魔界小道具「ジャグリングボール」

通常魔法カード

このカード名のカードは1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドにモンスターが存在せず、相手フィールドにEXデッキから特殊召喚されたモンスターが存在する場合にのみ発動できる。デッキから「魔界劇団」モンスター1体と「魔界台本」魔法・罠カード1枚を手札に加える。この効果を発動したターン、自分が「魔界劇団」モンスターの召喚・反転召喚・特殊召喚を行わなかった場合、もしくは「魔界台本」魔法・罠カードの効果を発動しなかった場合、ターン終了時に2000LPを失う。

 

 

 

魔界台本「悲劇の姫君」

通常魔法カード

(1):自分フィールドにレベル7以上の「魔界劇団」モンスターが存在する場合にのみ発動できる。相手フィールドにセットされているカードをすべて破壊する。

(2):自分EXデッキに「魔界劇団」Pモンスターが存在し、セットされたこのカードが相手の効果によって破壊された場合に発動できる。フィールド上のモンスター1体を墓地へ送り、そのモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える。

 

 

 

いがみ合う剣闘獣

通常罠カード

(1):自分フィールドに「剣闘獣」が存在する場合に発動できる。手札に存在する「剣闘獣」1体を相手フィールドに特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターは戦闘では破壊されず、ターン終了時に持ち主の手札に戻る。

(2):相手の直接攻撃宣言時、墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。自分の墓地に存在する「剣闘獣」1体を相手フィールドに特殊召喚し、バトルフェイズを終了させる。その後、自分はこの効果で特殊召喚されたモンスターの攻撃力分のダメージを受ける。

 

超重武者装留タネガシマ

レベル3 攻撃1200 守備1500 効果 地属性 機械族

このカード名の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できず、(3)の効果はデュエル中1度だけ発動できる。

(1):自分メインフェイズに自分フィールドの「超重武者」モンスター1体を対象として発動できる。自分の手札・フィールドからこのモンスターを守備力800アップの装備カード扱いとしてその自分のモンスターに装備する。

(2):このカードの効果でこのカードが装備されている場合に発動できる。装備されているこのカードを手札に戻す。この効果は相手ターンでも発動できる。

(3):自分の墓地に魔法・罠カードが存在しないとき、手札に存在するこのカードを墓地へ送ることで発動できる。デッキからカードを2枚ドローし、その後手札の「超重武者」モンスター1体を墓地へ送る。その時手札に「超重武者」モンスターが存在しない場合、手札をすべて墓地へ送る。

 

 

 

超重武者ヨシツ-Ne

レベル7 攻撃1500 守備2500 効果 地属性 機械族

このカード名の(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しか行えない。

(1):自分フィールドにモンスターが存在せず、相手フィールドにモンスターが存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。

(2):手札に存在するカードはこのカードのみの場合、このカードはリリースなしで表側守備表示で召喚できる。

(3):1ターンに1度、自分の墓地に魔法・罠カードが存在しない場合、フィールド上のカード1枚を対象に発動できる。そのカードを破壊する。その効果で破壊したカードがモンスターカードの場合、そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。

 

 

 

超重武者ツグノ-Bu

レベル2 攻撃0 守備0 スピリット・チューナー 地属性 機械族

このカードは(2)以外の方法で特殊召喚できず、(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが召喚・リバースしたターンのエンドフェイズに発動する。

このカードを持ち主の手札に戻す。

(2):相手ターン中、自分フィールドの「超重武者」モンスターが戦闘または相手の効果によって破壊されたとき、自分の墓地に魔法・罠カードが存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚できる。その後、破壊されたそのモンスターを墓地から特殊召喚し、このカードと特殊召喚したモンスター1体のみを素材として「超重武者」SモンスターのS召喚を行う。

(3):このカードの召喚に成功したとき、自分の墓地に魔法・罠カードが存在しない場合、自分フィールドに存在する「超重武者」1体を対象に発動できる。そのモンスターはこのターン、1度だけ戦闘・効果では破壊されない。

 

 

 

超重武者タダノ-Bu

レベル4 攻撃0 守備1800 効果 地属性 機械族

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):相手の直接攻撃によって自分が戦闘ダメージを受けたときに発動できる。手札に存在するこのカードを特殊召喚する。その後、自分が受けた戦闘ダメージと同じ数値の守備力を持つ「超重武者トークン」1体を表側守備表示で特殊召喚する。その時、自分の墓地に魔法・罠カードが存在しない場合、代わりに「超重武者トークン」2体を表側守備表示で特殊召喚する。

(2):このカードが墓地に存在し、自分フィールドの「超重武者」モンスターが破壊されるときに発動できる。代わりにこのカードをゲームから除外する。

 

 

 

超重武者トークン

レベル4 攻撃0 守備0 トークン 地属性 機械族

「超重武者タダノ-Bu」の効果で特殊召喚される。

 

 

 

EMチェンジ・スライム

レベル5 攻撃1600 守備1900 効果 水属性 水族

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードをリリースし、自分が属性・種族を1つずつ宣言することで発動できる。ターン終了時まで自分フィールドのモンスターの属性・種族は宣言したものと同じになる。

 

 

 

静寂の剣闘獣

通常魔法カード

このカード名のカードは1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドにモンスターが存在せず、相手フィールドにのみモンスターが表側表示で存在する場合にのみ発動できる。デッキから「剣闘獣」モンスター1体と「剣闘獣」魔法カード1枚を手札に加える。この効果で手札に加えた魔法カードはこのターン、1度しか使用できず、このカードを発動したターン、自分は「剣闘獣」以外のモンスターを召喚・特殊召喚できない。

(2):自分フィールドの「剣闘獣」が相手モンスターの攻撃対象となった時、墓地に存在するこのカードと「剣闘獣」モンスター1体を除外することで発動できる。そのモンスターはこのターン、戦闘では破壊されない。

 

 

 

スレイブライオン

レベル3 攻撃300 守備300 効果 地属性 獣族

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

このカードがフィールドに表側表示で存在する限り、ルール上「剣闘獣」モンスターとしても扱う。

(1):このカードの召喚に成功したとき、自分フィールドに他のモンスターが存在しない場合にのみ発動する。相手フィールドに存在する特殊召喚されたモンスターの数まで墓地から「剣闘獣」融合モンスターをEXデッキに戻す。その後、その効果でEXデッキに戻したカードと同じ数だけデッキから「剣闘獣」モンスターを攻撃表示で特殊召喚する(同名のモンスターは1体まで)。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。この効果を発動したターン、自分は「剣闘獣」以外のモンスターを召喚・特殊召喚できない。

 

 

 

ペンデュラム・ブロック

通常罠カード

(1):自分PゾーンにPカードが2枚存在する場合にのみ発動できる。ターン終了時まで自分フィールドのモンスター1体は戦闘・効果では破壊されない。この効果を受けたモンスターがPモンスター以外の場合、ターン終了時に墓地へ送られる。

(2):墓地に存在するこのカードを除外し、自分フィールドに存在するモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターはターン終了時まで以下の効果を得る。この効果はこのカードは墓地へ送られたターン、発動できない。

●このカードが戦闘・効果によって破壊されたときに発動できる。このカードを墓地またはEXデッキから表側守備表示で特殊召喚する。

 

 

 

超重武者装留ホムラカネフサ

レベル8 攻撃0 守備0 効果 炎属性 機械族

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードの召喚・特殊召喚に成功したとき、自分の墓地に存在するレベル7または8の「超重武者」モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを表側守備表示で特殊召喚する。その後、このカードを装備カード扱いとしてそのモンスターに装備する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。

(2):このカードが「超重武者」モンスターの装備カード扱いとして自分魔法・罠ゾーンに存在するとき、自分LPを半分支払うことで発動できる。フィールド上に存在する装備モンスターの守備力の数値以下の攻撃力を持つモンスターとお互いのフィールドの魔法・罠カードをすべて破壊する。

 

鋼の歯車の叫び(メタルギア・シャウト)

永続魔法カード

(1):このカードの発動時の効果処理として、自分はデッキから「メタルギア」モンスター2体を墓地へ送る。(同名のカードは1枚まで)

(2):1ターンに1度、手札の「鋼の歯車融合」1枚を相手に見せることで発動できる。自分の墓地から「メタルギア」モンスター1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化され、攻撃力・守備力は0となる。この効果を発動したターン、自分はEXデッキから「メタルギア」以外のモンスターを特殊召喚できない。

 

 

 

鋼の歯車G(グスタフ)

レベル5 攻撃1900 守備1900 融合 地属性 機械族

「鋼の歯車」モンスター×2

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードがフィールド上に存在する限り、通常召喚に加えてもう1度だけ、手札の「メタルギア」モンスター1体を召喚できる。

(2):自分メインフェイズ時に発動できる。自分の手札・フィールドから「メタルギア」融合モンスターカードによって決められたこのカードを含む融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。

 

 

 

幻獣デスアニマ

レベル7 攻撃2400 守備1200 効果 闇属性 アンデッド族

(1):自分フィールドにカードが存在しない場合、このカードはリリースなしで召喚できる。

(2);召喚されたこのカードが相手によって破壊された次の自分のスタンバイフェイズ時、このカードが墓地に存在する場合に発動できる。このカードを特殊召喚する。

 

 

 

幻獣の救い手

レベル4 攻撃1900 守備1500 風属性 戦士族

【Pスケール:赤1/青1】

このカード名の(2)のP効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールドの「幻獣」「マリンフォース」モンスターが相手によって破壊されるとき、Pゾーンに存在するこのカードを代わりに破壊できる。

(2):このカードがPゾーンに存在し、もう片方のPゾーンに「幻獣の守り手」が存在するときに発動できる。EXデッキ・墓地に存在する「幻獣」チューナーモンスター1体を特殊召喚する。

【モンスター効果】

(1):このカードが手札に存在し、自分フィールドの「幻獣」モンスターが相手の攻撃対象となった時に発動できる。このカードを特殊召喚し、攻撃対象をこのカードに変更させる。この効果で特殊召喚に成功したターン、このカードは戦闘では破壊されず、戦闘で発生する自分へのダメージは0となる。

(2);このカードがフィールドに存在する限り、相手はこのカード以外の「幻獣」「マリンフォース」モンスターを攻撃できず、効果の対象にできない。

 

 

 

AI's strategy change

速攻魔法カード

(1):自分メインフェイズ・相手メインフェイズかバトルフェイズ時、自分フィールドに存在する「メタルギア」融合モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターをEXデッキに戻し、自分の墓地に存在する融合モンスター以外の「メタルギア」モンスターを融合素材としたモンスターと同じ数だけ自分フィールドに表側守備表示で特殊召喚する(同名モンスターは1体まで)。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。その後、この効果で特殊召喚されたモンスターを素材に融合召喚を行う。この効果による特殊召喚は「鋼の歯車融合」による融合召喚として扱う。

 

 

 

幻獣クリエイトクーシー

レベル2 攻撃1000 守備1000 光属性 獣族

【Pスケール:青3/赤3】

このカード名の(1)のP効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):Pゾーンにこのカードが存在し、自分フィールドに「幻獣」Sモンスターまたは「マリンフォース・ドラゴン」が存在する場合に発動できる。このカードを特殊召喚する。

【チューナー:モンスター効果】

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードの召喚に成功したとき、自分フィールドにモンスターが存在しない場合、自分の墓地に存在するレベル4以下の「幻獣」モンスター2体を対象に発動できる。そのモンスターを表側攻撃表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。この効果を発動したターン、S召喚以外の方法でEXデッキからモンスターを特殊召喚できない。

 

 

 

鋼の歯車TX-55

レベル8 攻撃3000 守備3000 融合 地属性 機械族

「メタルギア」モンスター3体

(1):このカードは相手のカード効果を受けない。

(2):このカードが戦闘を行うダメージステップ開始時に発動できる。ダメージステップ終了時までそのモンスターの効果を無効化し、攻撃力と守備力を元の数値に戻す。

(3):このカードが相手によって破壊され墓地へ送られたときに発動できる。デッキから「メタルギア」モンスター1体を手札に加える。

 

 

 

鋼の歯車卵(メタルギア・エッグ)

レベル1 攻撃500 守備500 効果 地属性 機械族

このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが手札に存在し、自分のライフが1000以下で相手モンスターの攻撃によって自分が戦闘ダメージを受けるときに発動できる。手札に存在するこのカードを特殊召喚し、自分が受けるダメージを0にする。

(2):このカードを(1)の効果で特殊召喚に成功したときに発動できる。手札・デッキ・墓地から「鋼の歯車卵」を2体まで特殊召喚できる。この効果で特殊召喚されたモンスターがフィールドに存在する限り、自分は「メタルギア」以外のモンスターを特殊召喚できない。

 

 

 

AI's garage

通常罠カード

(1):自分フィールドの「メタルギア」融合モンスターが相手によって破壊されたターンにのみ発動できる。墓地に存在するこのターン破壊された「メタルギア」融合モンスター1体を召喚条件を無視して特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。

 

 

 

AI's combat

速攻魔法カード

(1):このターンに融合召喚に成功した「メタルギア」融合モンスターが戦闘で相手モンスターを破壊したときに発動できる。そのモンスターはこのターン、続けて2回まで攻撃することができる。

 

 

 

AI's cure

通常魔法カード

(1):自分フィールドに存在する「メタルギア」融合モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターの攻撃力分自分LPを回復する。その後、対象となったモンスターの上にAIカウンターを1つ置く。AIカウンターが乗っているモンスターが戦闘を行ったことで戦闘ダメージが発生するとき、代わりにそのモンスターに乗っているAIカウンターを1つ取り除く。

 

 

 

幻獣騎士ウィンドナイト

レベル8 攻撃2400 守備2000 風属性 鳥獣族

【Pスケール:青12/赤12】

(1):自分フィールドに存在する「幻獣」モンスターは戦闘では破壊されず、戦闘で発生するお互いへのダメージは0となる。

(2):自分フィールドに「マリンフォース・ドラゴン」が存在するとき、Pゾーンに存在するこのカードを破壊することで発動できる。このターン、自分フィールドに存在する「マリンフォース・ドラゴン」は戦闘および効果では破壊されず、戦闘で発生する自分へのダメージは0となる。その後、デッキから「幻獣」Pモンスター1体を手札に加える。

【シンクロ:効果】

「幻獣」チューナー1体+チューナー以外のモンスター1体以上

(1):このカードがSモンスターを素材にS召喚に成功したとき、自分の墓地に存在するSモンスター1体を対象に発動できる。そのカードを装備カード扱いとしてこのカードに装備する。

(2):このカードの攻撃力は(1)の効果で装備したモンスターの元々の攻撃力の半分の数値分アップする。

(3):装備カードを装備しているこのカードが相手モンスターを戦闘で破壊したときに発動する。破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える。

(4):このカードがフィールドから離れたときに発動できる。このカードを自分Pゾーンに置く。

 

 

 

幻獣共振機スタッグ

レベル2 攻撃1000 守備1000 地属性 機械族

【Pスケール:赤10/青10】

このカード名の(1)のP効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドに存在する「幻獣」モンスター1体を対象に発動できる。Pゾーンに存在するこのカードを特殊召喚する。その後、対象となったモンスターとこのモンスターのみを素材としてS召喚を行う。この効果でS召喚に成功したモンスターはカード効果では破壊されない。

【融合・チューナー】

レベル2以下のチューナー×2

このカード名の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれかしか発動できない。

(1):このカードの融合召喚に成功したとき、自分の墓地に存在するレベル8以下のSモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。この効果で特殊召喚に成功したモンスターの効果は無効化され、攻撃力と守備力は0となる。また、この効果を発動したターン、自分はバトルフェイズを行えない。この効果はメインフェイズ1にしか発動できない。

(2):このカードをEXデッキからP召喚に成功したとき、自分フィールドに他にモンスターが存在しない場合に発動できる。自分の墓地に存在するSモンスター1体を特殊召喚する。その後、そのモンスター2体のみを素材としてS召喚を行う。

(3):このカードをS素材としてSモンスターのS召喚に成功した時に発動できる。このカードをPゾーンに置く。

 

 

 

幻獣の守り手

レベル3 攻撃1000 守備1200 光属性 魔法使い族

【Pスケール:青8/赤8】

このカード名の(1)のP効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードを発動したとき、もう片方の自分Pゾーンにカードがない場合に発動できる。EXデッキに表側表示で存在する「幻獣の救い手」をPゾーンに置く。

【モンスター効果】

このカード名の(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しか行えず、(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分が「幻獣」チューナーの召喚に成功したときに発動できる。手札に存在するこのカードを特殊召喚できる。

(2):このカードをS素材として「幻獣」「マリンフォース」SモンスターのS召喚に成功したときに発動できる。相手フィールドのモンスター1体の攻撃力・守備力を0にする。

 

 

 

幻獣クレイエンキドゥ

レベル2 攻撃0 守備1000 チューナー 地属性 獣戦士族

(1):このカードが墓地に存在し、自分フィールドにSモンスターとチューナーモンスターが1体ずつ存在する場合に発動できる。このカードを自分フィールドに特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたこのカードはフィールドから離れたとき、除外される。

 

 

 

マリンフォース・ドラゴン・メルビエイ

レベル10 攻撃3200 守備2800 シンクロ 水属性 ドラゴン族

融合チューナー+チューナー以外のSモンスター1体

(1):このカードのS召喚に成功したときに発動する。自分の墓地に存在するSモンスターの数だけ、このカードの上にマリンカウンターを置く。

(2):バトルフェイズ時、このカードの攻撃力はこのカードの上にのっているマリンカウンターの数×1000アップする。

(3);EXデッキから特殊召喚された相手モンスターの効果が発動したとき、このカードに乗っているマリンカウンターを1つ取り除くことで発動できる。相手フィールドに表側表示で存在するすべてのカードの効果をターン終了時まで無効化する。その効果を相手ターンに発動した場合、相手フィールドに存在するモンスターの攻撃力と守備力は次の自分ターン終了時まで0にする。

 

 

 

幻獣王の剣-ロックブレード

装備魔法カード

「幻獣」「マリンフォース」モンスターにのみ装備可能。

(1):1ターンに1度、自分のデッキに存在する「幻獣」モンスター1体を墓地へ送ることで発動できる。装備モンスターの攻撃力は次の相手ターン終了時まで、墓地へ送ったカードの元々の攻撃力の半分の数値分アップする。この効果を発動したターン、装備モンスターが守備モンスターを攻撃した場合、の守備力を攻撃力が超えた分だけ戦闘ダメージを与える。

(2):自分スタンバイフェイズ時にこのカードが墓地に存在する時、手札の「幻獣」モンスター1体を墓地へ送ることで発動できる。このカードを手札に加える。

 

 

 

鋼の歯車エクソルサス

レベル12 攻撃4000 守備4000 融合 地属性 機械族

融合モンスターを含む「メタルギア」モンスター4体

(1):このカードの融合召喚に成功したとき、自分の墓地に存在する「メタルギア」融合モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを装備カード扱いとしてこのカードに装備する。

(2):1ターンに1度、このカードが「メタルギア」融合モンスターを装備していない場合に発動できる。墓地・EXデッキに存在する「メタルギア」融合モンスター1体を装備カード扱いとしてこのカードに装備する。

(3):このカードは装備カードを1枚しか装備できない。この効果は無効化されない。

(4):(1)または(2)の効果で「メタルギア」融合モンスターを装備しているこのカードはそのカードの元々の効果を得る。また、このカードが破壊されるとき、代わりに装備カード1枚を破壊することができる。

(5):このカードが相手によって破壊されたときに発動できる。EXデッキから「鋼の歯車鋼鉄超人」1体を融合召喚扱いで特殊召喚する。

 

 

 

鋼の歯車鋼鉄超人(メタルギア・サイボーグ)

レベル12 攻撃0 守備0 融合 地属性 戦士族

「メタルギア」融合モンスター5体

このカードは融合召喚または「鋼の歯車エクソルサス」の効果でしか特殊召喚できない。

(1):このカードの特殊召喚に成功したとき、墓地またはEXデッキに存在する「メタルギア」融合モンスター1体を対象に発動できる。このカードの元々の攻撃力・守備力はそのモンスターの攻撃力と同じ数値となる。この効果の発動に対して、相手はカード効果を発動できない。

(2):このカードがフィールドに存在する限り、このカード以外のフィールド上のすべてのカードの効果は無効化される。

 

 

 

AI's desutruction

通常罠カード

このカード名のカードはデュエル中1度しか発動できない。

(1):自分フィールドに「鋼の歯車」融合モンスターの融合召喚に成功したときに発動できる。フィールド上に存在する魔法・罠カードをすべて破壊する。この効果は無効化されない。

 

 

 

鋼の歯車零式(メタルギア・ジーク)

レベル8 攻撃2800 守備2400 効果 地属性 機械族

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドに「メタルギア」融合モンスターが表側表示で存在するとき、手札に存在するこのカードを捨てることで発動できる。ターン終了時まで、自分フィールドの「メタルギア」融合モンスター1体の攻撃力は倍となる。

(2):このカードが墓地に存在し、自分フィールドにカードが存在しない場合に発動できる。このカードを表側攻撃表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚に成功したこのカードはフィールドから離れたとき、除外される。

 

 

 

シンクロ・コンバットゾーン

通常罠カード

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドのカードが破壊されるとき、自分フィールドにSモンスターが存在する場合に発動できる。代わりに自分フィールドのSモンスター1体を破壊する。

(2):自分フィールドのSモンスターが相手モンスターによる攻撃で破壊されたとき、墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。その後、この効果で特殊召喚されたモンスターとそのモンスターと戦闘を行った相手モンスターで戦闘を行い、ダメージ計算を行う。その時、攻撃モンスターの攻撃力はダメージステップ終了時まで戦闘を行った言相手モンスターの攻撃力分アップする。この効果はこのカードが墓地へ送られたターン、発動できない。

 

リベンジ・サクリファイス(アニメオリカ・調整)

通常罠カード

(1);自分フィールドのモンスターが相手モンスターの攻撃によって破壊されたとき、その相手モンスター1体をリリースすることで発動できる。手札からそのモンスター1体のリリースでアドバンス召喚できるモンスター1体をアドバンス召喚する。

 

 

 

ソニック・シンクロ

通常罠カード

(1):相手に直接攻撃宣言時に発動できる。その攻撃を無効にする。その後、自分の墓地に存在する「スピードロイド」チューナーとチューナー以外の「スピードロイド」モンスター1体を除外することで、レベルの合計が同じ風属性Sモンスター1体をEXデッキからS召喚扱いで特殊召喚する。

 

 

 

水晶竜の壺

通常魔法カード

このカード名のカードは1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールドに「クリアウィング」Sモンスター、または「クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン」が存在する場合に発動できる。デッキからカードを2枚ドローする。この効果を発動したターン、自分はモンスターを召喚・特殊召喚できない。

 

 

 

捕食植物ムナジモタートル

レベル4 攻撃0 守備2000 効果 闇属性 植物族

(1):自分フィールドの「捕食植物」モンスターが相手モンスターと戦闘を行うとき、手札に存在するこのカードを捨てることで発動できる。その戦闘で発生する自分へのダメージを0にする。その後、相手フィールドに存在するモンスター1体に捕食カウンターを1つ置く。捕食カウンターが置かれたレベル2以上のモンスターのレベルは1になる。

 

 

 

SRアサルトアーマー

装備魔法カード

手札の「SR」モンスター1体を墓地へ送ることで発動できる。

「クリアウィング」「クリスタルウィング」Sモンスターにのみ装備可能。

(1):装備モンスターの攻撃力はゲームから除外されている自分のSモンスターの数×800アップする。

(2):装備モンスターが戦闘で相手モンスターを破壊したときダメージステップ終了時、自分の墓地に存在する「SR」モンスター1体を除外することで発動できる。装備モンスターは続けてもう1度だけ攻撃することができる。

 

 

 

捕食融合-プレデター・フュージョン-

速攻魔法カード

このカード名のカードは1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドの「捕食植物」モンスターが2体以上破壊されたターンにのみ発動できる。このターン破壊された「捕食植物」モンスターと同じ数だけデッキから「捕食植物」モンスターを効果を無効にして特殊召喚する。その後、その効果で特殊召喚したモンスターをすべて裏側表示で除外し、それらのモンスターを融合素材とする融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。このカードを発動したターン、自分はモンスターをモンスターを召喚・特殊召喚できない。



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第128話 虫

「これは…」

ユーゴの反応が消えた場所にたどり着く遊矢が見た光景、それはデュエルの影響でボロボロになった廊下だった。

絨毯からは焼け焦げたにおいを感じ、ガレキまみれになったこの空間がそこで行われたデュエルの激しさを物語っている。

そして、ユーゴの反応が消えたということは出る答えは一つだけだ。

「…ユーリに敗れた、ということでしょう。そして…」

「言うな!クリアウィング…!!いわないでくれ…」

そこから起こったことを否定しようと首を振る遊矢だが、その答えは覆ることがないことは遊矢本人が一番よくわかっている。

自分の中にいるユートと同じようなことが起こった。

そして、同時にズァーク復活にまた一歩近づいてしまった。

遊矢はヒイロから手渡された銃を見る。

ズァークが起こした悲劇、そしてこの世界の成り立ちを思い出し、遊矢は銃をしまう。

「クリアウィング、オッドアイズ、ダーク・リベリオン…。俺、決めたよ」

「小僧…」

「遊矢さん…」

「ユーリは…ユーリは俺が倒す。そして…終わらせる。ズァークを…」

 

「…い…。い…失っ…ですか??」

「ん、うう…お前は…黒咲…」

ガレキの山を背もたれにした状態で倒れるヒイロが目を開き、傷だらけの黒咲に目を向ける。

太陽の傾きを見て、長い間気を失っていたことを知る。

「ああ…すまない。ブーンというジェルマンのデュエリストに自爆に巻き込まれた。デュエルに勝利して、油断してしまった…」

「そうですか…。奴を。しかし、あなたの体は…」

「訳ありの体だ、というよりも…こいつのおかげだろうな…」

ヒイロの中指にはめられている指輪に埋め込まれた赤い石をそっと撫で、再びそれに救われたことに感謝する。

かつて、ダークシグナーとの戦いで命を失ったとき、龍亜が目覚めつつあったシグナーの力をくれたことで生まれた命の石。

傷ついた体を癒す力はシグナーの力を失ってもなお健在だ。

黒咲が傷ついた体を押してガレキの中からヒイロの体は骨や体の一部がつぶれ、破片が突き刺さった状態で、正直に言えばもう死んだものとさえ思っただろう。

だが、命の石の力がヒイロの肉体を修復し、あまりの重傷故に長い時間がかかりはしたものの、こうして立ち上がるだけの力を取り戻してくれた。

「お前はどうした…?妹は、救えていないようだが…」

「ああ…。アカデミアに操られている。殺されかけた…」

瑠璃に敗れ、塔から海へ落されてから、どうやって陸に上がったのかは黒咲も覚えていない。

気が付いたときには壁にもたれるように倒れていて、そこから瑠璃を探してさまよう中でここに来ただけだ。

最も、そこでヒイロを見つけることになることは想定外ではあったが。

「なら、その大本を叩くだけだ。少し、肩を貸してくれ…」

「わかりました」

黒咲の肩を借りて起き上がるヒイロは自分の年齢を感じてしまう。

今回の怪我はひどかったとはいえ、それでも命の石で回復してからすぐにまともに動けたかつてと比べると、年を取ったことでガタを感じてしまう。

もうかつてのように、壁や柱伝いにビルをよじ登るようなことはできないだろう。

 

「ここだ…おそらくは、ここにアカデミアの中枢がある」

疲れ果てた体を押して、零児は階段の先にある扉に指をさす。

遊矢が離れ、内部に突入してからも零児達はデュエル戦士やデュエルロイドと戦い続け、激戦と連戦が体力を確実に奪っていた。

だが、それでもようやくここまでたどり着くことができた。

あとはこの扉を開き、そこにいるであろう今のプロフェッサーたるAIを破壊すれば、この愚かな戦争は終わる。

そして、扉を開けることで零児は零王の死を完全に受け入れるしかなくなるだろう。

彼の死のことは伝聞でしか聞いておらず、まだ零児にはそれが現実のようには思えていない。

幼少期の家族を愛していた頃の彼と、プロフェッサーとなり、今と未来を捨てた彼。

そのどちらもがごちゃ混ぜとなり、それが零児に問いかける。

自分は父親である零児を憎んでいるのか、それとも愛しているのか。

ランサーズを結成し、明確に敵対することとなったにもかかわらず、割り切れない自分を今になって感じてしまう。

「行こう、もうこんなことは終わらせないと」

「ああ…そうだな」

一段一段階段を上がっていき、たどり着いた扉を零児は力いっぱい開く。

そこには緑色の光を放つ機械と4つのカプセルを背景とし、絨毯と椅子だけが存在する無機質な空間が広がっていた。

背景となっているものが放つ光で椅子に座る人間のシルエットが見えたものの、それが零王のものなのか、それとも別の人間の物なのかはまだ判別できない。

部屋に入り、近づいて行ってようやく見ることができたその姿に零児の目が大きく開く。

「…これ、が…」

扉が開き、こうして近づいたというのに微動だにしないことから、予感はしていたものの、それでもこうしてみた椅子に座る男、赤馬零王のその姿は零児に衝撃を与えるには十分すぎる者があった。

ただれたような皺だらけの肌に閉じた瞳、背もたれがなければ今にも倒れそうなほどの弱弱しい体。

鼻や口からつなげられたチューブに閉じたままの目。

かつての記憶の中にある父親としての零王とも、プロフェッサーとしての零王とも似ても似つかないその姿。

「なんだ…これは…」

「零児君…」

「プロフェッサーですよ、先代の…ではありますが」

椅子の後ろから姿を見せるドクトルがニヤリと笑い、ボロボロな姿の零王を見る。

「赤馬零王…彼はすばらしい人物だった。このアカデミアと融合次元にアークエリアプロジェクトという理想を見せ、夢を与えてくれた。そして、それを実現するだけの力をもたらした。だが…プロフェッサーとして先頭を行き続けるにはあまりにも心が弱かった。哀れなものだ…それほどの理想を実現したいというなら、自分の心を捨てればよかったものを。その点は、現在のプロフェッサーを見習ってほしいものだ」

「馬鹿なことを…。あの男はそのようなものを求めていない。奴が求めたのは…もう失ったものを取り戻すこと。自分の過去だけだ」

目の前に現れた敵に対して、零児はランサーズのリーダーとしての仮面をかぶる。

感情を飲み込む事情をもたらしてくれたこの男に感謝しながら。

「ああ…知っているよ。彼が疲れ果て、病に倒れてからね…プロフェッサーが教えてくれました。そして、命令したのです。彼を生かせ…アークエリアプロジェクトを実行せよと。その最終段階が近づいている」

カチリ、とドクトルが手元にあるボタンを押す。

4つのカプセルのうちの2つに光が発生し、その中にリンと瑠璃、そしてセレナが現れる。

3人とも、目から光を失っていて、こんな異質な空間の中にいるにもかかわらず、何も抵抗する様子を見せない。

「セレナ…」

「あの2人が…瑠璃とリンって奴か…」

「3人とも、今は私に従順だ。私の虫のおかげで…」

「なんて卑劣な…」

ニヤニヤと笑いながらカプセルの中の3人を見つめるドクトルに侑斗は怒りを覚える。

その虫とその根源であろうドクトルを倒さなければ、3人を取り戻すことはできないだろう。

「おい、ジジイ。てめえをぶっ倒して、あの3人を解放する。ついでに、そこの死にぞこないの身柄ももらう」

「私を…倒す??…いいだろう、私の虫の力を見せてあげよう」

左腕に装着されている幾百の虫が融合したようないびつな姿のデュエルディスクを展開するドクトルがニヤリと笑う。

デュエルディスクにはジェルマンの紋章が刻まれている。

「やっぱり、ジェルマンかよ…。ろくな奴がいねえ…」

(なんだろう…この感じ。このデュエルに嫌な予感を感じる、翔太君…)

「「デュエル!!」」

 

ドクトル

手札5

ライフ4000

 

翔太

手札5

ライフ4000

 

「私の先攻。私は手札から魔法カード《融合徴兵》を発動。エクストラデッキに存在する融合モンスター1体を見せ、デッキから融合素材となるモンスター1体を手札に加える。私が手札に加えるのは《デーモンの召喚》。そして、手札からフィールド魔法《パラサイト・ネットワーク》を発動」

発動と同時に周囲に大小さまざまな形状の《パラサイト・フュージョナー》が姿を見せ、それらが血管のようなチューブで相互に接続されていく。

よく見ると床や壁にも張り付くように《パラサイト・フュージョナー》が存在する。

「気持ち悪いフィールド魔法を…!」

「《パラサイト・ネットワーク》の効果。1ターンに1度、手札・墓地から《パラサイト・フュージョナー》1体を特殊召喚できる」

壁に張り付いていた《パラサイト・フュージョナー》が血管のようなチューブを取り外し、ドクトルのフィールドに這うように移動する。

 

パラサイト・フュージョナー レベル1 攻撃0

 

「そして、《パラサイト・フュージョナー》の効果。このカードを含む手札・フィールドのモンスターを素材に融合召喚できる。そして、《パラサイト・フュージョナー》は融合モンスターに記入されている融合素材モンスター1体の代わりにできる」

「待て…!《パラサイト・フュージョナー》の効果は知っている!!そのカードの効果はフィールド上のモンスターしか…」

「《パラサイト・ネットワーク》の効果により、手札のモンスターも選択できるのだ。最も、その代償として私は融合召喚以外の方法でエクストラデッキからモンスターを特殊召喚できないが…。私は《パラサイト・フュージョナー》と手札の《デーモンの召喚》を融合。稲妻の悪魔よ、我が虫と一つとなり、新世界への礎となるがいい。融合召喚。現れよ、《デーモンの顕現》」

フィールドに現れた《デーモンの召喚》が《パラサイト・フュージョナー》に侵食され、その翼を巨大化させるとともに、全身に紫の稲妻を帯電させる。

 

デーモンの顕現 レベル6 攻撃2500

 

「《デーモンの顕現》はモンスターゾーンに存在する限り、カード名を《デーモンの召喚》として扱う。そして、《デーモンの顕現》がフィールドに存在する限り、《デーモンの召喚》の攻撃力は500アップする」

 

デーモンの顕現(《デーモンの召喚》扱い) レベル6 攻撃2500→3000

 

「そして、手札から永続魔法《パラサイト・ウォール》を発動。1ターンに1度、私のフィールドの《パラサイト・フュージョナー》を融合素材として融合召喚したモンスター1体に墓地の《パラサイト・フュージョナー》を装備カード扱いとして装備する」

地面が砕け、そこから再び姿を現した《パラサイト・フュージョナー》が《デーモンの顕現》の体にまとわりつく。

「そして、《パラサイト・フュージョナー》を装備カードとしたモンスターが破壊されるとき、代わりに装備されているこのカードを破壊する。私はカードを1枚伏せ…ターンエンド」

 

ドクトル

手札5→0

ライフ4000

場 デーモンの顕現(《デーモンの召喚》扱い、《パラサイト・フュージョナー》装備) レベル6 攻撃3000

  パラサイト・ウォール(永続魔法)

  伏せカード1

  パラサイト・ネットワーク(フィールド魔法)

 

翔太

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「《パラサイト・フュージョナー》…気持ち悪いカードをつかいやがって!俺のターン!」

 

翔太

手札5→6

 

「俺は手札から魔法カード《逆境の宝札》を発動!相手フィールドに特殊召喚されたモンスターが存在し、俺のフィールドにモンスターが存在しないとき、デッキからカードを2枚ドローする。そして、俺はスケール2の《魔装槍士タダカツ》とスケール9の《魔装剣士ムネシゲ》でペンデュラムスケールをセッティング!来たれ、時の果てに眠りし英雄の魂。漆黒の魂と契約し、封印から解き放たん!ペンデュラム召喚!現れろ、《魔装騎士ペイルライダー》、《魔装銃士マゴイチ》、《魔装獣ユニコーン》」

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

魔装銃士マゴイチ レベル4 攻撃1600

魔装獣ユニコーン レベル4 攻撃1600

 

「《ユニコーン》の効果。このカードを魔装騎士の装備カードとし、装備モンスターの攻撃力を800アップさせる」

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500→3300

 

「そして、装備モンスターが戦闘で相手モンスターを破壊したとき、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与える」

「ふむぅ…《デーモンの顕現》をそのモンスターで破壊し、さらにダイレクトアタックで勝負を決めると…?」

「バトルだ。《魔装騎士ペイルライダー》で《デーモンの顕現》を攻撃!」

《魔装獣ユニコーン》が駆け出し、光剣を抜いた《魔装騎士ペイルライダー》が構える。

接近してくる敵に向けて雷を放つ《デーモンの顕現》だが、雷と雷の隙間をかいくぐるように駆け抜ける《魔装獣ユニコーン》を止めることができず、光剣の刃が迫る。

だが、取り付いていた《パラサイト・フュージョナー》が盾となって刃を受け止めて消滅する。

「残念…そのようなことはできない。《パラサイト・フュージョナー》は装備モンスターの身代わりになれる」

「だろうな、だが…《ペイルライダー》の効果を発動。戦闘を行った相手モンスターを破壊する」

守りを失った《デーモンの顕現》に向けて、上空から降ってきたミサイルライチャーを手にした《魔装騎士ペイルライダー》が全弾をそのモンスターに向けて放つ。

高火力のミサイルの雨を受けた《デーモンの顕現》が消滅し、爆風がドクトルを襲う。

「ぐお…くう!!」

 

ドクトル

ライフ4000→3700

 

「しかし…破壊された《デーモンの顕現》の効果。融合召喚されたこのカードが破壊されたとき、《デーモンの召喚》を特殊召喚できる」

 

デーモンの召喚 レベル6 攻撃2500

 

「さらに、《パラサイト・ネットワーク》の効果。《パラサイト・フュージョナー》を融合素材とした融合モンスターが相手によって破壊されたとき、エクストラデッキに存在する融合モンスターを相手に見せることで、そのカードに記されている融合素材モンスター1体を手札に加える。私はエクストラデッキの《E・HEROネオス・ナイト》を見せ、デッキから《E・HEROネオス》を手札に加える」

「E・HERO!?これって、お父さんの!!」

「ええ…永瀬博士はいいカードを用意してくれた。アカデミアの…我らの役に立ってもらおう…」

「これで、次のターンに奴は《パラサイト・フュージョナー》の効果を使い、再び融合召喚を…!」

「知るかよ、俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

ドクトル

手札0→1(《E・HEROネオス》)

ライフ3700

場 デーモンの召喚 レベル6 攻撃2500

  パラサイト・ウォール(永続魔法)

  伏せカード1

  パラサイト・ネットワーク(フィールド魔法)

 

翔太

手札6→0

ライフ4000

場 魔装騎士ペイルライダー(《魔装獣ユニコーン》装備) レベル7 攻撃3300

  魔装銃士マゴイチ レベル4 攻撃1600

  伏せカード2

  魔装槍士タダカツ(青) ペンデュラムスケール2

  魔装剣士ムネシゲ(赤) ペンデュラムスケール9

 

「私のターン…ドロー」

 

ドクトル

手札1→2

 

「私は《パラサイト・ネットワーク》の効果を発動。墓地の《パラサイト・フュージョナー》と特殊召喚し、このカードと手札の《ネオス》を融合。宇宙の闇より希望を届けし英雄よ、我が虫と一つとなりて、新世界への礎となれ。融合召喚。現れよ、《覇道星シュラ》」

《パラサイト・フュージョナー》にとりつかれた《E・HEROネオス》の瞳が赤く染まるとともに、その肉体が粉々に砕け散る。

そして、その肉体を《パラサイト・フュージョナー》がつなぎ合わせ、欠損分を自らの体で補うことで、体のところどころが茨と化した《覇道星シュラ》が現れる。

「くっそ…気色の悪い融合召喚を!!」

 

覇道星シュラ レベル12 攻撃0

 

「ふふふ…さらに、私は手札から《パラサイト・リザード》を召喚」

《覇道星シュラ》の背後から這いずるように、《パラサイト・フュージョナー》に似た寄生虫に頭部を規制され、両目が白目になっているトカゲ型モンスターが現れる。

 

パラサイト・リザード レベル4 攻撃1800

 

「そして、《パラサイト・ウォール》の効果。墓地の《パラサイト・フュージョナー》を《覇道星シュラ》に装備。バトルフェイズ開始と同時に、《覇道星シュラ》の効果発動。フィールド上のすべてのモンスターの攻撃力を0にする」

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃3300→0

魔装銃士マゴイチ レベル4 攻撃1600→0

 

デーモンの召喚 レベル6 攻撃2500→0

パラサイト・リザード レベル4 攻撃1800→0

 

「バトル。《覇道星シュラ》で《魔装騎士ペイルライダー》を攻撃。そして、《シュラ》の効果。モンスター同士が戦闘を行うとき、戦闘を行うお互いのモンスターの攻撃力は自身のレベル×200アップする」

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃0→1400

覇道星シュラ レベル12 攻撃0→2400

 

「ちっ…!《ペイルライダー》は戦闘を行った言相手モンスターを破壊するが…」

「《パラサイト・フュージョナー》が身代わりとなる」

上段から振り下ろされた斧が《魔装騎士ペイルライダー》を真っ二つにすると思われたが、それを2本の光剣で受け止めていた。

「身代わりには盾だ。《魔装剣士ムネシゲ》のペンデュラム効果。俺のフィールドのペンデュラムモンスター1体を1度だけ破壊から守る。ダメージは通すがな…」

 

翔太

ライフ4000→3000

 

「なるほど…これは厄介だ。だが、《パラサイト・リザード》の効果。自分フィールドの《パラサイト・フュージョナー》を融合素材とした融合モンスターが相手モンスターと戦闘を行ったダメージステップ終了時、このカードをリリースすることで、そのモンスターは続けてもう1度攻撃することができる」

「何!?」

《パラサイト・リザード》に寄生していた寄生虫が《魔装騎士ペイルライダー》にとりつき、嚙みついて取り込んだ栄養でその肉体を巨大化させていく。

それによって身動きが取れなくなった第4の騎士に修羅と化した戦士が斧を振るう。

「く…だが、《ペイルライダー》の効果は生きている!そのモンスターも道連れだ!!」

今度こそ真っ二つになった《魔装騎士ペイルライダー》だが、そこから放たれる闇の瘴気が《覇道星シュラ》を取り込み、消滅させる。

だが、それと同時に襲い掛かったのは頭痛だった。

「ぐ、ううう!なんだ、これは!!」

記憶を取り戻すときの頭痛と似ているが、今回は若干異なる。

今の景色と重なるように見えたのは女性の腕に抱かれた赤ん坊の姿。

生まれたばかりのその子をいつくしむ母親の姿は確かに心温まるものを感じるが、今の翔太は激痛のせいでそれを感じる余裕がない。

その姿が消えてもなお、翔太には頭痛が残る。

「くっそ…まさかの、記憶のカードか!!」

 

翔太

ライフ3000→2000

 

「破壊された《シュラ》の効果を発動。融合召喚されたこのカードが相手によって破壊されたとき、エクストラデッキから《覇勝星イダテン》を融合召喚扱いで特殊召喚する」

 

覇勝星イダテン レベル10 攻撃3000

 

「さらに、《パラサイト・ネットワーク》の効果。エクストラデッキの《神炎竜ルベリオン》を見せ、デッキから《アルバスの落胤》を手札に加える。さらに永続罠《リビングデッドの呼び声》発動。その効果により、墓地から《デーモンの顕現》を特殊召喚」

 

デーモンの顕現 レベル6 攻撃2500→3000

デーモンの召喚 レベル6 攻撃0→500

 

「まずいぞ…今の翔太のフィールドに存在するのは攻撃力が0となった《魔装銃士マゴイチ》のみ!!これでは、《イダテン》の攻撃で翔太のライフが尽きる!!」

「光栄に思いなさい。真っ先にこの新しき世界の礎となることができるのだから…《覇勝天イダテン》でダイレクトアタック!!」

燃え上がる槍を手に、翔太にとどめを刺そうと《覇勝天イダテン》が飛び上がる。

「罠発動!《ガード・ブロック》!!俺が受ける戦闘ダメージを0にし、デッキからカードを1枚ドローする!」

槍とともに降りかかる《覇勝天イダテン》は《魔装銃士マゴイチ》を槍で貫き、そ個から発生する衝撃波が翔太を襲うが、バリアによってそれが阻まれ、再びドクトルのフィールドに戻る。

「そして、《マゴイチ》の効果。デッキから魔装モンスター1体を手札に加える。俺はデッキから《魔装剛毅アトレウス》を手札に加える」

 

翔太

手札0→2

 

「手札を1枚増やしたところで、まだモンスターは残っている。さあ、とどめをさせ、《デーモンの顕現》!」

バリアが消えたと同時に《デーモンの顕現》が雷を翔太に向けて放つ。

「罠発動!《敵襲警報-イエローアラート-》。相手の攻撃宣言時、手札のモンスター1体を特殊召喚する。そして、この効果で特殊召喚されたモンスターがフィールドに存在する限り、相手はそのモンスター以外を攻撃対象にできない。俺は《アトレウス》を特殊召喚する」

 

魔装剛毅アトレウス レベル3 守備1200

 

「そして、《アトレウス》の効果。このカードの召喚・特殊召喚に成功したとき、俺のペンデュラムゾーンに魔装カードが2枚存在する場合、デッキからカードを1枚ドローし、それを互いに公開する。俺がドローしたカードは《魔装魚メロウ》!この効果でドローしたカードがペンデュラムモンスターの場合、さらにデッキからカードを1枚ドローする」

「ふん…ならば少しでもライフを削るのみ。攻撃続行」

雷は盾となった《魔装剛毅アトレウス》が受け止めて消滅する。

続けて、己のかつての姿である《デーモンの召喚》が咆哮すると同時に雷が翔太を襲う。

「これくらい…!!」

 

翔太

ライフ2000→1500

 

「私はこれで…ターンエンド」

 

ドクトル

手札2→1(《アルバスの落胤》)

ライフ3700

場 デーモンの召喚(《デーモンの顕現》《覇道星シュラ》の影響下) レベル6 攻500

  覇勝星イダテン レベル10 攻撃3000

  デーモンの顕現(《リビングデッドの呼び声》の影響下) レベル6 攻撃3000

  パラサイト・ウォール(永続魔法)

  リビングデッドの呼び声(永続罠)

  パラサイト・ネットワーク(フィールド魔法)

 

翔太

手札0→2(うち1枚《魔装魚メロウ》)

ライフ1500

場 魔装槍士タダカツ(青) ペンデュラムスケール2

  魔装剣士ムネシゲ(赤) ペンデュラムスケール9

 

「俺のターン!」

 

翔太

手札2→3

 

「俺はセッティング済みの《タダカツ》と《ムネシゲ》でペンデュラム召喚を行う!現れろ、《魔装剛毅アトレウス》、《魔装騎士ペイルライダー》!」

 

魔装剛毅アトレウス レベル3 守備1200

魔装騎士ペイルライダー レベル7 守備2100

 

「ペンデュラム召喚された《アトレウス》の効果。デッキからカードを1枚ドローし、公開する。俺がドローしたカードは《魔装融合》。ペンデュラムモンスターじゃない以上、追加のドローは無し。そして、《アトレウス》の効果を発動したターン、俺はペンデュラム召喚以外の方法でモンスターを特殊召喚できない」

「愚かな…。せっかくの融合がそれでは台無しだ…」

「かもな…。俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

ドクトル

手札1(《アルバスの落胤》)

ライフ3700

場 デーモンの召喚(《デーモンの顕現》《覇道星シュラ》の影響下) レベル6 攻500

  覇勝星イダテン レベル10 攻撃3000

  デーモンの顕現(《リビングデッドの呼び声》の影響下) レベル6 攻撃3000

  パラサイト・ウォール(永続魔法)

  リビングデッドの呼び声(永続罠)

  パラサイト・ネットワーク(フィールド魔法)

 

翔太

手札2(《魔装融合》《魔装魚メロウ》)

ライフ1500

場 魔装騎士ペイルライダー レベル7 守備2100

  魔装剛毅アトレウス レベル3 守備1200

  伏せカード2

  魔装槍士タダカツ(青) ペンデュラムスケール2

  魔装剣士ムネシゲ(赤) ペンデュラムスケール9

 

「ふふ…私のターン」

 

ドクトル

手札1→2

 

「私は《パラサイト・ネットワーク》の効果を発…」

「待てよ、俺はここで永続罠《魔装騎士の裁き》を発動。俺のフィールドに魔装騎士が存在するとき、1ターンに1度、相手の墓地に存在するカードを1枚除外できる!俺が除外するのは…《パラサイト・フュージョナー》だ!」

「むっ…?」

再びフィールドに現れそうになった《パラサイト・フュージョナー》だが、背後に現れた異次元の渦に飲み込まれる形で消滅する。

その様子を見たドクトルの表情が固まる。

「まずは1枚…」

「なるほど、除外することで私の虫を止めるとは…。しかし…残念なことだ。君はこのカードを防ぐことができない。私は《アルバスの落胤》を召喚」

 

アルバスの落胤 レベル4 攻撃1800

 

「このカードの召喚・特殊召喚に成功したとき、手札を1枚捨てることで、このカードを含むフィールド上のモンスターを素材に融合召喚を行う。私が融合素材とするのは《アルバスの落胤》、そして相手フィールドの《魔装騎士ペイルライダー》」

「何!?《超融合》みたいに、相手フィールドのモンスターも融合素材に!!」

《アルバスの落胤》が頭を抱え、叫ぶと同時に上空に渦が生まれ、その中へ飛び込んでいく。

渦はブラックホールのように周囲の物を吸収し始め、それに巻き込まれた《魔装騎士ペイルライダー》が飲み込まれていく。

「第4の騎士よ、罪深き竜と一つとなり、新世界への礎となるがいい!融合召喚!現れよ、《神炎竜ルベリオン》」

 

神炎竜ルベリオン レベル8 攻撃2500

 

手札から墓地へ送られたカード

・パラサイト・フュージョナー

 

《魔装騎士ペイルライダー》が消え、フィールドに残ったモンスターは《魔装剛毅アトレウス》のみ。

《魔装剣士ムネシゲ》の効果で、1度だけ《魔装剛毅アトレウス》の破壊は防げるかもしれないが、それでも3体の一斉攻撃を受けた場合、翔太のライフは尽きる。

「いかがかな…?君自身のエースである《ペイルライダー》が使われた気分は」

「いいものじゃねえな。俺のエースは何体かデッキに入ってるがな。ま、それで勝った気になっているお前の顔を見るのも不愉快だけどな」

「減らず口を…。ならば、《デーモンの召喚》を守備表示に変更」

 

デーモンの召喚 レベル6 攻撃500→守備1200

 

「バトル。《神炎竜ルベリオン》で《魔装剛毅アトレウス》を攻撃」

激しく咆哮する《神炎竜ルベリオン》が炎を《魔装剛毅アトレウス》に向けて放つが、《魔装剛毅アトレウス》を包むバリアがそれを受け止める。

「《魔装剣士ムネシゲ》のペンデュラム効果。1ターンに1度、俺のペンデュラムモンスター1体を破壊から守る」

「しかし、それも1度のみ。続けて《デーモンの顕現》で《アトレウス》を攻撃」

バリア消失直後に続けて飛んでくる《デーモンの顕現》の雷が《魔装剛毅アトレウス》を襲い、雷で体を焦がしたそのモンスターは悲鳴を上げながら消滅する。

「これで翔太君のフィールドががら空きに!!」

「終わりだ…。《覇勝星イダテン》でダイレクトアタック」

守ってくれる存在のいなくなった哀れな翔太にとどめを刺すべく、槍を手にした《覇勝星イダテン》がズシリ、ズシリと迫ってくる。

目前まで迫ると、槍を大きく振りかざし、翔太に振り下ろした。

「これで、終わり…」

「いいや、まだデュエルは続いてるぜ」

「何…?」

ドクトルの目に映るのは確かに槍を振り下ろした《覇勝天イダテン》の姿だが、その穂先は翔太に届いていなかった。

翔太の目の前には透明な《魔装騎士ペイルライダー》の姿があり、それが抜いている2本の光剣が槍を受け止めていた。

「俺は永続罠《魔装騎士の裁き》のもう1つの効果を発動した。こいつは俺のフィールドにモンスターが存在しない状態で直接攻撃を受けるとき、フィールド上に存在するこのカードを墓地へ送ることで、俺が受ける戦闘ダメージを0にする」

「フフフ…無駄なあがきを見せる。私はこれで、ターンエンド」

 

ドクトル

手札0

ライフ3700

場 デーモンの召喚(《デーモンの顕現》《覇道星シュラ》の影響下) レベル6 守備1200

  覇勝星イダテン レベル10 攻撃3000

  デーモンの顕現(《リビングデッドの呼び声》の影響下) レベル6 攻撃3000

  神炎竜ルベリオン レベル8 攻撃2500

  パラサイト・ウォール(永続魔法)

  リビングデッドの呼び声(永続罠)

  パラサイト・ネットワーク(フィールド魔法)

 

翔太

手札2(《魔装融合》《魔装魚メロウ》)

ライフ1500

場 伏せカード1

  魔装槍士タダカツ(青) ペンデュラムスケール2

  魔装剣士ムネシゲ(赤) ペンデュラムスケール9

 

「持ちこたえたぜ…俺のターン!!」

 

翔太

手札2→3

 

「俺は再びペンデュラム召喚を行う!現れろ、《魔装騎士ペイルライダー》、《魔装剛毅アトレウス》」

 

魔装剛毅アトレウス レベル3 守備1300

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

 

「そして、俺は手札から《魔装融合》を発動。手札の《魔装魚メロウ》とフィールドの《ペイルライダー》、《アトレウス》を素材に融合。海の歌い手よ、第4の騎士よ、誇り高き騎士の名を継ぐ少年よ、魔導の力によりて、今1つとならん。融合召喚!真紅の騎士、《魔装騎士レッドライダー》!!」

 

魔装騎士レッドライダー レベル8 攻撃3000

 

「融合素材となった《メロウ》の効果。このカードを素材に魔装モンスターの特殊召喚に成功したとき、墓地の魔装カード1枚を除外することで、デッキから《魔装降臨の儀式》と魔装儀式モンスターを1枚ずつ手札に加える。俺は《魔装降臨の儀式》と《魔装騎士デュラハン》を手札に加える」

 

墓地から除外されたカード

・魔装融合

 

「そして、俺は手札から《魔装降臨の儀式》を発動。手札とフィールドの魔装モンスターをリリースすることで、魔装モンスター1体の儀式召喚を行う。この時、俺のフィールドに存在するモンスターが魔装騎士1体の場合、エクストラデッキに存在する魔装騎士1体を除外することで儀式召喚のための素材にできる。俺はエクストラデッキの《ペイルライダー》を除外する。契約は交わされた。四騎士の魂よ、首なき死の予言者を呼び覚ませ。儀式召喚。現れろ、《魔装騎士デュラハン》」

 

魔装騎士デュラハン レベル7 攻撃2100

 

「バトルフェイズ開始と同時に《レッドライダー》の効果発動。俺のターンにモンスターの特殊召喚に成功したバトルフェイズ開始時、このカードの攻撃力はバトルフェイズ終了時まで1000アップする」

 

魔装騎士レッドライダー レベル8 攻撃3000→4000

 

「《レッドライダー》で《デーモンの顕現》を攻撃!必殺真剣!!」

《魔装騎士レッドライダー》の剛腕がら放たれる大剣の一撃は《デーモンの顕現》の悪魔の体を両断する。

同時に放たれる剣閃がドクトルを襲い、彼の老体が壁にたたきつけられる。

「ぐおおおお!!!!」

 

ドクトル

ライフ3700→2700

 

「まだだ!《レッドライダー》が戦闘で相手モンスターを破壊したとき、続けてもう1度だけ相手モンスターを攻撃できる!《神炎竜ルベリオン》を攻撃!」

大剣を肩で担ぎなおした《魔装騎士レッドライダー》が次に《神炎竜ルベリオン》に目を向ける。

正面から歩いて接近するその騎士に向けて《神炎竜ルベリオン》が炎を放つが、いくら炎を受けたとしても全身を辞めず、無傷で目の前までたどり着いたそのモンスターに戦慄する。

そんな竜の肉体に容赦なく大剣が突き刺さり、そのモンスターは爆発とともに消滅した。

 

ドクトル

ライフ2700→1200

 

「!?マジ…かよ!!」

《神炎竜ルベリオン》を倒したと同時に翔太の頭に激痛が襲い掛かる。

次に見えたのは海の中にいる石倉順次の姿だ。

長らく潜っていた彼の目に映ったのは『欠片』で、それに触れると同時に彼の肉体が『欠片』に吸収されていく。

「『欠片』が…人を、飲み込んだ…だって?どういう仕組みなんだよ、これは!?」

短時間で襲い掛かった2度の頭痛は翔太に疲労を与える。

だが、幸運にもこれで記憶を取り戻し、あの時石倉純次の言っていた通り、ここまでの2枚は彼の記憶。

あと1枚で、記憶のカードはすべてそろう。

「はあ、はあ、はあ…《デュラハン》で、《覇勝星イダテン》を攻撃!!!《デュラハン》は戦闘では破壊されず、戦闘で発生する俺へのダメージも0になる。そして、戦闘を行った相手モンスターに宣告カウンターを1つ置く!!」

馬車のカーテンが開き、そこから発生する黒い霧が《覇勝星イダテン》を包み込む。

不気味な冷たさを感じるそれを振り払おうと槍を振るうものの、その旅に霧は濃くなっていく。

 

覇勝星イダテン レベル10 宣告カウンター0→1

 

「俺はこれで、ターンエンド。同時に、《デュラハン》の効果発動。このカードとフィールド上に存在する宣告カウンターの乗っているモンスターをすべて墓地へ送る」

《魔装騎士デュラハン》と《覇勝星イダテン》の背後に開いた棺桶が現れ、引きずられるようにその中に吸収されていった。

 

ドクトル

手札0

ライフ1200

場 デーモンの召喚(《デーモンの顕現》《覇道星シュラ》の影響下) レベル6 守備1200

  パラサイト・ウォール(永続魔法)

  パラサイト・ネットワーク(フィールド魔法)

 

翔太

手札3→1

ライフ1500

場 魔装騎士レッドライダー レベル8 攻撃4000→3000

  伏せカード1

  魔装槍士タダカツ(青) ペンデュラムスケール2

  魔装剣士ムネシゲ(赤) ペンデュラムスケール9

 

脅威であった《覇勝星イダテン》を撃破し、フィールドには《魔装騎士レッドライダー》が残った。

《魔装騎士デュラハン》も次のターンのスタンバイフェイズ時にフィールドへ戻ってくる。

だが、ネックなのはドクトルの墓地に存在する《パラサイト・フュージョナー》の存在だ。

手札の内容次第では、再び融合モンスターを呼び出してくる可能性が高い。

「私のターン…ドロー」

 

ドクトル

手札0→1

 

「スタンバイフェイズ時に、リリースされていた《パラサイト・リザード》の効果発動。このカードは自らの効果でリリースされてから2回目の私のスタンバイフェイズ時に、攻撃力を0にしてフィールドに戻ってくる」

 

パラサイト・リザード レベル4 攻撃1800→0

 

「そして…手札から魔法カード《強欲で貪欲な壺》を発動。デッキの上から10枚のカードを裏向きのまま除外し、デッキからカードを2枚ドローする」

10枚ものカードを除外するリスクを背負ってまでドローした2枚のカード。

それらを見たドクトルはしばらく表情を固める。

そして、肩を震わせるとこらえきれなくなったかのように笑い始める。

「ふ、ふふふ…ふふふふふふふふ…」

「何がおかしい!?」

「いや…失礼。どうやら、これが最後のターンになると思われるから…。これが、アークエリアプロジェクトにおける私の最後の役目。私は《パラサイト・ネットワーク》の効果を発動。墓地の《パラサイト・フュージョナー》を特殊召喚」

 

パラサイト・フュージョナー レベル1 攻撃0

 

「ここで《パラサイト・フュージョナー》の効果を使用したいところではあるが、今回は使用しない」

「何…?」

「私は手札1枚を墓地へ送り、速攻魔法《超融合》を発動」

「《超融合》!?それって、ヒイロさんの…!!」

ヒイロから借りた《超融合》のカードは今、遊矢のデッキの中にある。

今までアカデミアのデュエリストで《超融合》を使用したデュエリストは確認されていない。

「《超融合》のカードは既にアカデミアで解析済みということだ…。この効果は既に知っているだろう?相手フィールドを含めたフィールド上のモンスターを素材に融合召喚を行う!!私が融合素材とするのは《パラサイト・フュージョナー》と《レッドライダー》!」

上空に出現した、雷を帯びた渦が2体のモンスターを飲み込んでいく。

翔太とドクトルは渦が生み出した雷雲の中に閉じ込められ、渦の中から現れたのは茨に体を蝕まれた《魔装騎士レッドライダー》の姿だった。

「現れろ、《パラサイト・オーバーフュージョナー》」

 

パラサイト・オーバーフュージョナー レベル? 攻撃?

 

「《パラサイト・オーバーフュージョナー》のレベルと攻撃力は融合素材となったモンスターのそれぞれの数値の合計によって決まる」

 

パラサイト・オーバーフュージョナー レベル?→8 攻撃?→3000

 

「翔太君!翔太君、大丈夫なの!!」

「なんだこの雷雲は!!これでは…状況がわからん!!」

渦から発せられる雷は離れていても静電気として遊矢たちを襲う。

そんな渦に近づいたらどうなるかは想像しなくても分かることだろう。

できるのはこの中に閉じ込められている翔太の無事を信じることだけだった。

 

「バトル!《パラサイト・オーバーフュージョナー》でダイレクトアタック!」

《パラサイト・フュージョナー》に寄生された《魔装騎士レッドライダー》が苦しみの声を挙げながら大剣を振るい、翔太に襲い掛かる。

「俺は罠カード《死を告げる風》を発動!俺のフィールドにモンスターが存在しない状態での相手の直接攻撃宣言時、その攻撃を無効にする!そして、《魔装騎士ペイルライダー》を特殊召喚する!」

振り下ろされた大剣を目の前に現れた《魔装騎士ペイルライダー》が2本の光剣で受け止める。

その光景を見たドクトルの口角が吊り上がる。

「《オーバーフュージョナー》は私の墓地に存在する融合モンスターの数だけ、相手モンスターを攻撃できる。そして、その効果で2回目以降の攻撃で相手モンスターを破壊した場合、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージをお互いに受ける!!」

「何!?」

「フフフフ…ありがとう、秋山翔太。これで、アークエリアプロジェクトは最終段階に入る!!」

再び振るわれる大剣を前に、《魔装騎士ペイルライダー》はやむなくその腹部に向けて光剣を突き立てる。

同時に刃が振り下ろされて《魔装騎士ペイルライダー》が真っ二つになると、2体は大爆発を引き起こし、爆発は雷雲を吹き飛ばし、翔太とドクトルを巻き込んだ。

「ぐああああああ!!!」

「フフ、フフフフ…」

 

翔太

ライフ1500→0

 

ドクトル

ライフ1200→0

 

 

パラサイト・ウォール

永続魔法カード

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールドに存在する「パラサイト・フュージョナー」を融合素材として融合召喚されたモンスター1体を対象に発動できる。墓地に存在する「パラサイト・フュージョナー」1枚を装備カード扱いとしてそのモンスターに装備する。

(2):「パラサイト・フュージョナー」を装備カードとした装備モンスターが戦闘・効果によって破壊されるとき、代わりに装備されている「パラサイト・フュージョナー」1枚を破壊する。

 

パラサイト・ネットワーク

フィールド魔法

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分の手札・墓地に存在する「パラサイト・フュージョナー」1体を対象に発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。

(2):自分フィールドに存在する「パラサイト・フュージョナー」が効果を発動するとき、代わりに手札に存在するモンスターを対象にすることができる。

(3):自分フィールドの「パラサイト・フュージョナー」を融合素材とした融合モンスターが相手によって破壊されたとき、自分のEXデッキに存在する融合モンスター1体を相手に見せることで発動できる。デッキからにカード名が記されている融合素材モンスター1体を手札に加える。

(4):自分は融合召喚以外の方法でEXデッキからモンスターを特殊召喚できない。この効果は無効化されない。

 

魔装騎士の裁き

永続罠カード

(1):1ターンに1度、自分フィールドに「魔装騎士」が存在する場合、相手の墓地に存在するカード1枚を対象に発動できる。そのカードを除外する。

(2):相手の直接攻撃宣言時、自分フィールドにモンスターが存在しない場合、フィールド上に存在するこのカードを墓地へ送ることで発動できる。その戦闘で発生する自分へのダメージを0にする。

 

パラサイト・リザード

レベル4 攻撃1800 守備0 効果 闇属性 昆虫族

(1):1ターンに1度、自分フィールドの「パラサイト・フュージョナー」を融合素材として融合召喚に成功した融合モンスターが相手モンスターと戦闘を行ったダメージステップ終了時、自分フィールドに存在するこのカードをリリースすることで発動できる。そのモンスターは続けてもう1度攻撃することができる。

(2):このカードの効果でリリースされ墓地へ送られてから2回目の自分スタンバイフェイズ時に発動する。墓地に存在するこのカードを表側攻撃表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたこのカードの攻撃力は0となる。

 

パラサイト・オーバーフュージョナー

レベル? 攻撃? 守備? 融合 闇属性 昆虫族

「パラサイト・フュージョナー」+融合モンスター1体以上

このカード名のカードは自分フィールドに1体しか存在できない。

(1):このカードのレベル・攻撃力・守備力は融合素材となった融合モンスターのそれぞれの元々の数値の合計と同じとなる。

(2):このカードは自分の墓地に存在する融合モンスターと同じ数だけ、相手フィールドのモンスターを攻撃できる。これにより、2回目以降の銭湯で相手モンスターを破壊したときに発動する。破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを互いに受ける。この効果による自分へのダメージは無効化されない。



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第129話 破滅の時

「翔太君!!」

同時にライフがゼロとなり、攻撃の衝撃で吹き飛ばされ、あおむけに倒れた翔太に伊織が駆け寄る。

「ぐ、うう…クソ…たれぇ!!」

攻撃によるダメージ、そして記憶の鍵となるモンスターと戦闘を行った影響による頭痛のせいで翔太には伊織に返事をする余裕がなくなっていた。

「ふ、ふふふ…これで、アークエリアプロジェクト…いいえ、リバイバルゼロが始まる!!」

「リバイバル…ゼロ??どういうことだ!?あのAIはプロフェッサーの…父さんの意思を継いで、すべての次元を1つにして、そして…」

「アハハハハハ!!そして、娘であるレイを取り戻すと。あのAIの結論では、もうその必要はない。先代のプロフェッサーが抱くリバイバルゼロは確かにそれだった。だが…今のプロフェッサーは違う!アークエリアを…楽園を生み出すために、古きものをすべて消去…ゼロにすること。これこそが、リバイバルゼロなのだ」

(その通りだ。これまでよくぞ戦ってくれた。ドクトルよ)

突然、周囲から機械音交じりの男性の声が響き渡る。

その声は少なくとも零児にとっては聞き覚えのあるものだ。

「プロフェッサー…赤馬零王か!?」

「赤馬零児、我が創造主たるプロフェッサーの息子。私と血を分けた兄弟か。初めましてというべきかな。私はプロフェッサー、アークエリアプロジェクト、そしてリバイバルゼロを託された者だ」

「機械の分際で血を語るな!すべてを消去とはどういうことだ!!」

「言葉通りの意味だよ。覇王龍ズァークの誕生により、旧次元は崩壊した。そして、レイと相討ちとなったことでズァーク、レイの道連れとなり、次元は4つに分断された。その分断された次元を1つに統合する。そのためには膨大なエネルギーが必要となる。そのエネルギーとなりうるのがカードとなった人間たちだ。彼らのデュエルエナジー、そして生命エネルギーを使い、次元を統合することで楽園が生まれ、その中で4人に分かれたレイは統合され、赤馬レイがよみがえる。だが、その先を幾重にもわたりシミュレーションした私の考えは違う。たとえ、次元を一つに統合したとしても、楽園は生まれない。当然だ。彼の目的は娘一人のみなのだから」

そのためだけに、多くに人間と世界を犠牲にするくだらない計画が立てられた。

肉親を失う苦しみを関係のない多くの人々にまで味合わせて。

父親の声を借りるAIはあくまでも淡々と、感情なく話すのみで、その話を聞く零児達の気持ちなどくみ取る気配はない。

「私の中には『欠片』がある。それが見せた、多くの世界のビジョン。幾千幾万の世界。そのすべてのデータを蓄積する中での結論づけたのだ」

とある世界では、際限のない発展の中で人々の心は誘惑や欲望一色に染まり、それを人の心を読み取り、それによって性質や力を変える生きたエネルギーである遊星粒子を利用した半永久エネルギー機関たるモーメントが読み取ることで暴走を引き起こした。

そして、その世界のネットワークはその状況から世界の破滅を予見し、その原因となる人類を抹殺すべく、機械の軍団を作り出した。

そして、人類と機械による戦争が勃発し、人々は次々と死んでいく中、それでもゆがみ切った心は、深々と根付いた誘惑と欲望は解消されることなく、ネットワークは世界に見切りをつけ、すべてのモーメントを自爆させることで世界ごと人類を滅ぼした。

とある世界では未知なる鉱石にオレイカルコスと名付け、それを利用して急速に発展を遂げる中、先ほどの世界と同じように人々の心が闇に染まっていった。

やがてその世界の王も心を闇に染め、自らの手で国を滅ぼし、やがて世界をも滅ぼした。

それがオレイカルコスから伝えられた、人類に見切りをつけた世界の意思と受け取って。

「滅びた世界の共通点は人間の弱さ、人間の心の闇。貴様たちも理解しているであろう?その弱さを…融合次元、エクシーズ次元、シンクロ次元、スタンダード次元、すべての次元のすべてが持っていることを…」

そのAIの言葉に反論できる人間はここにはいない。

各次元を旅する中で、そうした人間の醜さを間近で見たこともまた、事実なのだから。

「特に融合次元の、アカデミアのデュエル戦士なるものは御しやすいが、同時に醜くもあった。都合のいい真実を信じ、疑うこともない。故に成長することなく、人形となる愚かな存在。故に結論付けた。ここから先の新世界の人間など不要、出来損ないの人間こそが世界を滅ぼす…絶滅体であると」

「ならば、ここで貴様を破壊し、このくだらない戦いを終わらせる!」

「それは不可能だ。見よ、あの虫にとらわれ続ける娘たちを」

AIの言葉に零児達の視線がカプセルの中にいるセレナ達に向けられる。

先ほどのデュエルでドクトルは確かに倒れたが、あくまでもそれは相討ちとなったからにすぎない。

そのためか、虫は解除されず、洗脳されたままの少女たちはそれぞれの服のポケットの中に手を入れ、その中にあるカプセルを手にする。

そして、それをちょうど口に含み、前歯でカプセルが破れないギリギリの力で噛んでいる。

「この状況はこの次元すべてに放送している。そして、カプセルの中にあるのは青酸カリ。わずかな量を服用しただけでも数分で人を殺すことができる」

リバイバルゼロをレイの復活ではなく、人類の消滅とするのであればもはや彼女たちの存在はAIにとっては不要だ。

「世界をとるか、彼女たちをとるかの選択を我々にさせるつもりか!?」

「半分は正解だ。だが、決めるのは貴様らではない。この光景は既にこの次元全体で放送されているということを。当然、今この場にいない人間もこの状況を知っている。そして、選ぶのは…ただ1人。罪深き世界の破壊者の因子を持つ道化師だ」

 

「やめろ!!みんな、やめろぉ!!」

ユーゴの犠牲を知った遊矢のデュエルディスクに突然流され始めた映像。

そこに映る毒の入ったカプセルを噛むセレナ達の姿。

零児達やAIのやり取りの声も聞こえていて、状況を知った遊矢にはどうするべきなのかわからない。

「榊遊矢、罪深きズァークの一人。貴様に1つだけチャンスを与える。貴様はここに現れるもう1人のお前、ユーリと戦え。そうすれば、彼女たちは自由の身としよう」

「何!?ユーリと…!」

(これが、奴の狙いか。俺たちが戦い、一つになることが…!)

イレースのためのリバイバルゼロ、そしてカード化した人々を生贄としたアークエリアプロジェクト。

リバイバルゼロを引き起こすための手段として選ばれた手段、それはズァークを復活させること。

その狙いを悟ったユートだが、瑠璃の命を人質に取られている以上は彼女を捨てる選択肢をとれるはずがない。

「赤馬零王、そしてアカデミアが育てた怪物と友である榊遊勝が育て、道化師の仮面をつけた怪物。せいぜい楽しみたまえ。このデュエルを」

「そして、人々に知らせてあげて。過ちを繰り返し、同じ形で滅ぶ愚かしさと浅ましさを」

柚子たちに似た、けれどもどこか違う女性の声が続けて聞こえ、それにもまた機械音が混ざっている。

拳を握りしめる遊矢の前に黒い渦が出現し、その中からユーリが現れる。

「なるほどね…最高の舞台を用意してくれるんだね。僕と…そして、彼に」

「ユーリ!!」

「前から思ってたんだよ。君とデュエルをしたいなって…。だって、負けたら存在を含めてすべて奪われて、勝ったら相手のすべてを手にする!!スリルがあって、最高じゃないか!!」

「そんなの…そんなの最高なわけないだろう!?そんなことをして、どうなるかわかっているのか!?」

「ああ、わかってるさ!でもさ…僕はこんな世界なんてどうでもいい。みんなカードにすることも考えたけど、それ以上に面白そうじゃないか。僕たちが戦い、一つになって…すべてを滅ぼすのって。君たちだって変わらない。どうせ、僕と戦う以外の選択肢を自分からふさいじゃってるんだから。彼女たちのために、すべてを滅ぼすんだ。遊矢、君も柊柚子が同じ場所にいたら、もうその選択肢かできないんじゃないか?」

「ぐう…!!」

「そうだ、これもまた人間の弱さ。世界と己の愛を天秤にかけたとき、時折己の愛を選ぶ人間もいる。それが生み出す悲劇が何かを知ったうえで」

「悲しいわね。そんなことをして、救われた一人は果たして喜ぶかしら?」

「さあ、怪物たちよ。戦え。すべてを滅ぼすために。それとも、世界を救うために彼女たちを…」

「…わかった!!わかったから…」

もうこれ以上あのAIの話を聞いていると、頭と心がおかしくなってしまう。

ふと脳裏に浮かぶのはAIと対峙する翔太たちの存在だ。

もしかしたら、デュエルをしている間に彼らがなんとかしてくれるかもしれない。

そんな都合のいい未来を思い浮かべてしまうほど、もう遊矢とユートは追い詰められている。

「うおおおおおお!!!!」

「さあ、始めようか!!存在をかけた最高のデュエルを!!」

 

ユーリ

手札5

ライフ4000

 

遊矢

手札5

ライフ4000

 

「これは…本当にとんでもない状況になったわね…」

クレイトス内で自分のデュエルディスクから突然流れた映像にグレースの表情が固まる。

どちらが勝ったとしても、ズァーク復活という最悪の事態が訪れることになるのはわかり切っている。

先ほどの映像は融合次元にいる全員が見聞きしており、それ故か生き残りのデュエル戦士たちの中には状況が理解できずに困惑する者もいて、皮肉にもそれが今の戦闘を停止させるには大きな効果があった。

「嫌な予感がする…まさか!!」

この映像を見て、真っ先に動く人間がいることを悟ったグレースは大急ぎで柚子の部屋へ向かう。

扉は既に開いており、そこには案の定、彼女の姿はなかった。

(柚子…あの子は!けど、柚子だけじゃない!もしかしたら!!」

 

「うぐ、くそ、お!!!」

「翔太君、しっかりして!!」

激しい頭痛にのたうち回る翔太に声をかける伊織だが、時折目の錯覚なのか、その姿が翔太とベクター、交互に変化しているように見えた。

やがて、あれほど苦しんでいた翔太が急に黙り込んでしまい、糸が切れたかのように動きを止める。

目は開いたままで、口からは唾を垂れ流している状態だ。

「翔太君、ねえ、どうしたのよ!!ねえ!!」

体温はあり、呼吸もあるが、どう見ても異常としか思えない今の翔太に伊織ができることはなかった。

 

「僕から先攻とさせてもらうよ。僕は手札から魔法カード《手札断殺》を発動。お互いに手札2枚を墓地へ送り、デッキからカードを2枚ドローする」

 

手札から墓地へ送られたカード

ユーリ

・スポーア

・捕食衝動

 

遊矢

・EMディスカバー・ヒッポ

・EMキャスト・チェンジ

 

「そして、僕はモンスターを裏守備表示で召喚。カードを2枚伏せて、フィールド魔法《ブラック・ガーデン》を発動」

発動と同時に周囲の壁や床に鋭い棘のある黒薔薇であふれかえっていく。

「僕はこれで…ターンエンドだ」

 

ユーリ

手札5→0

ライフ4000

場 裏守備モンスター1

  伏せカード2

  ブラック・ガーデン(フィールド魔法)

 

遊矢

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「貴様!!早く貴様の虫を解除しろ!!!」

ドクトルの胸倉をつかむ権現坂が鬼の形相で彼をにらむ。

だが、どんな表情をしても、どんなに圧をかけてもドクトルはニヤリと笑うだけだ。

「解除…?するわけがないではないか。これからの楽園のためにも、あの怪物どもには戦ってもらわないとならない。そのためだけの存在なのだよ、彼女たちは…。そして、今の秋山翔太の状態では、カード化の解除もできないだろう、だから…」

「権現坂、奴から離れろ!!」

零児の言葉とドクトルのデュエルディスクから発生する光にハッとした権現坂は急いで彼から距離をとる。

光に包まれるドクトルは高笑いし、最後にデュエルディスクから流れる遊矢とユーリのデュエルを見る。

「プロフェッサー…世界は楽園になりますよ…」

ドクトルの姿とともに光は消え、カード化した彼が床に落ちる。

やはりそれでもセレナ達の中にいる虫たちは解除されることなどなく、カプセルを口にくわえたままだ。

「くっそおおおおおお!!!!」

拳を壁にたたきつける権現坂には、今起こっているデュエルを止めるすべはなかった。

そして、追い打ちをかけるように、零児たちの装着しているデュエルディスクにも異常が発生する。

「何!?デュエルディスクが停止しただと!?」

「連絡機能もすべて使えぬ…まさか!!」

「この次元のすべてのデュエルディスクの機能は私が停止した。これで、この次元でデュエルができるのはあの化け物二人のみだ」

「あなたたちは楽しんでいけばいいわ。この化け物たちのデュエルを」

 

「遊矢、遊矢!どこにいるの!?」

デュエルディスクが止まり、混乱する現場の中を走る柚子のデュエルディスクも停止し、遊矢と連絡を取ることができない。

彼のいる場所も分からず、とにかく走ることしかできない。

最重要ターゲットである柚子がいるはずなのに、デュエル戦士たちは彼女を捕まえようとせず、ただこのわけのわからない状況に対してプロフェッサーに救いを求めることしかできなかった。

「焦るな…柚子。落ち着いて、まずはアカデミアに入ることを考えろ。あそこに遊矢たちが突入していることを考えれば…」

車椅子に乗り、柚子の後に続く遊勝だが、今のその言葉はまるで自分に言い聞かせているかのようだった。

(遊矢…たとえ、お前の正体がズァークの一部だったとしても、だとしても、お前が過ごしてきた時間、俺と過ごした時間は…)

 

「ほら、起きろよ…。決着をつける時だぜ?秋山翔太」

「ぐ、う…」

ベクターの声が響き、目を開いた翔太がいたのは真っ赤な空の下で、赤い水晶がいくつも生えた古代ローマのコロッセオのような場所だ。

そこには玉座があり、そこにベクターがふんぞり返っている。

彼の背後には10枚の石板があり、それらには記憶のカードがそれぞれ刻まれていた。

「ようやく起きたか…さっさと始めようぜ。あとはお前が持っている俺の力を返してもらうだけだ」

「うるせえよ…俺は俺だ!てめえに指図されるいわれはねえ…!」

 

 

「俺の…ターン!!」

 

遊矢

手札5→6

 

「俺は《EMドクロバット・ジョーカー》を召喚!」

 

EMドクロバット・ジョーカー レベル4 攻撃1800

 

「《ドクロバット・ジョーカー》の効果発動!このカードの召喚に成功したとき、デッキからEM、魔術師、オッドアイズペンデュラムモンスター1体を手札に加える!俺が手札に加えるのは《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!」

「この瞬間、《ブラック・ガーデン》の効果発動!《ブラック・ガーデン》の効果以外でモンスターが召喚・特殊召喚されたとき、そのモンスターの攻撃力は半分になる」

地面から鋭い棘のある黒薔薇が生え、それが《EMドクロバット・ジョーカー》に絡みつく。

棘が刺さり、そこから発生する毒が彼の体を蝕んでいく。

 

EMドクロバット・ジョーカー レベル4 攻撃1800→900

 

「そして、そのモンスターのコントローラーは相手フィールドに《ローズ・トークン》1体を攻撃表示で特殊召喚する」

続けて、ユーリのフィールドには黒薔薇で構成された小人といえるトークンが姿を現した。

 

ローズ・トークン レベル1 攻撃800

 

「ぐ…俺は、スケール4の《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》とスケール8の《虹鮮の魔術師》でペンデュラムスケールをセッティング!」

《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》と共に、赤いローブ姿で彼と同じ二色の眼を持つ魔術師が青い光の柱を生み出す。

「これで俺はレベル5から7までのモンスターを同時に召喚可能!揺れろ、魂のペンデュラム!天空に描け、光のアーク!ペンデュラム召喚!!現れろ、《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》、《EMマンモスプラッシュ》!」

ペンデュラムの力で呼び出された2体のモンスターもまた、《ブラック・ガーデン》の呪縛から逃れることはできず、黒薔薇によって拘束される。

そして、ユーリのフィールドに黒薔薇の小人がさらに1体出現する。

 

オッドアイズ・ファントム・ドラゴン レベル7 攻撃2500→1250

EMマンモスプラッシュ レベル6 攻撃1900→950

 

ローズ・トークン レベル1 攻撃800

 

「ここで僕は罠カード《増殖の宝札》を発動。このターン、僕たちが1回以上モンスターの特殊召喚に成功し、このターンに特殊召喚されたモンスターが4体以上の時、僕はデッキからカードを2枚ドローする。ただし、このカードを発動後、ターン終了時まで僕はデッキからカードを手札に加えることはできないけどね」

 

ユーリ

手札0→2

 

「君のデッキには《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》がいる。そいつをフィールドに出させるわけにはいかないね。僕は速攻魔法《超融合》を発動!」

「《超融合》!?それって、ヒイロさんが…!!」

「別に盗んでないよ、既に解析済みでコピーできたってだけさ!手札1枚を捨て、お互いのフィールドのモンスターを素材に融合する!僕が素材にするのは《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》、《ドクロバット・ジョーカー》、《ローズ・トークン》!闇に沈む3体のモンスターよ、今一つとなりて、美しき竜となれ!融合召喚!現れろ、レベル9!《捕食植物トリフィオヴェルトゥム》」

上空に現れた渦の中に3体のモンスターが飲み込まれていき、その中から3つの頭を持つ、茨でできた肉体のドラゴンが降りてくる。

そんなモンスターも黒薔薇に縛られ、そして遊矢のフィールドに《ローズ・トークン》が現れる。

 

捕食植物トリフィオヴェルトゥム レベル9 攻撃3000→1500

 

ローズ・トークン レベル1 攻撃800

 

手札から墓地へ捨てられたカード

・捕食植物コーディセップス

 

「安心しなよ。僕の融合素材として使われた君の2体のモンスターはペンデュラムモンスター。エクストラデッキに戻るだけだ。それに、《ローズ・トークン》もプレゼントしてあげたんだから」

「くぅ…!」

遊矢のフィールドに残った《ローズ・トークン》と《EMマンモスプラッシュ》だけでは、今の遊矢のエクストラデッキから融合モンスターを出すことはできない。

そして、今ユーリが融合召喚した《捕食植物トリフィオヴェルトゥム》を戦闘破壊することを考えると、攻撃力3000以上のモンスターが必要で、そんなモンスターはメインデッキにはいない。

「なら…俺は手札から速攻魔法《クイック・リボルブ》を発動!デッキからヴァレットモンスター1体を特殊召喚する。俺はデッキから《ヴァレット・トレーサー》を特殊召喚!」

デッキから飛び出してきたのは赤い弾丸のような体をしたドラゴンで、そのスピードで飛ぶドラゴンにもまた、《ブラック・ガーデン》の呪縛が襲う。

 

ヴァレット・トレーサー レベル4 攻撃1600→800(チューナー)

 

ローズ・トークン レベル1 攻撃800

 

「《ヴァレット・トレーサー》の効果発動!1ターンに1度、自分フィールドの表側表示のカード1枚を破壊し、デッキからヴァレットモンスター1体を特殊召喚する!俺は《虹彩の魔術師》を破壊し、デッキから《ヴァレット・リチャージャー》を特殊召喚!」

黒薔薇にとらわれながらも口から発射された弾丸が《虹彩の魔術師》を撃ちぬく。

青い光の柱が消え、光の粒子へ変わったそのモンスターはすぐにその姿を頭に弾丸をつけた黒いドラゴンへと変えた。

 

ヴァレット・リチャージャー レベル4 攻撃0

 

「《ヴァレット・リチャージャー》の攻撃力は0!《ブラック・ガーデン》の効果は適用されない!そして、破壊された《虹彩の魔術師》の効果発動!このカードが破壊されたとき、デッキからペンデュラムグラフカード1枚を手札に加える!俺はデッキから《星霜のペンデュラムグラフ》を手札に加える!そして、《マンモスプラッシュ》の効果発動!自分フィールドのモンスターを素材に、ドラゴン族融合モンスターの融合召喚を行う!俺が融合素材にするのは、《ヴァレット・トレーサー》と《ヴァレット・リチャージャー》!」

《EMマンモスプラッシュ》の鼻から発生する水しぶきが融合の渦へと変わり、2体のモンスターが飛び込んでいく。

(《トリフィオヴェルトゥム》は融合召喚されている場合、相手がエクストラデッキからモンスターを特殊召喚するとき、その特殊召喚を無効にし、破壊する効果がある。知ってか知らずかは知らないけど、カード効果を使われたら、この効果は使えない…)

「弾丸を名を持つ2体のドラゴンよ、今一つとなりて、新たな力を示せ!融合召喚!現れろ、《ヴァレルロード・F・ドラゴン》!!」

 

ヴァレルロード・F・ドラゴン レベル8 攻撃3000→1500

 

ローズ・トークン レベル1 攻撃800

 

「《ヴァレルロード》の効果発動!1ターンに1度、俺のフィールドのモンスター1体と、相手フィールドのカード1枚を破壊できる!俺は《ローズ・トークン》と《トリフィオヴェルトゥム》を破壊する!!」

エネルギーに変換された《ローズ・トークン》を取り込んだ《ヴァレルロード・F・ドラゴン》がそれを弾丸として《捕食植物トリフィオヴェルトゥム》に向けて発射する。

弾丸を受けたそのモンスターの胴体に大穴ができ、爆発とともに消滅する。

「あーあ、せっかく《超融合》を使って召喚したのに」

「バトルだ!《ヴァレルロード・F・ドラゴン》と《マンモスプラッシュ》で《ローズ・トークン》2体を攻撃!」

続けて、通常の弾丸を体内で装てんした《ヴァレルロード・F・ドラゴン》がそれをユーリのフィールドにいる《ローズ・トークン》に向けて発射する

弾丸を受けた《ローズ・トークン》が消滅し、攻撃の余波がユーリを襲う。

続けて、《EMマンモスプラッシュ》が鼻で《ローズ・トークン》をつかみ、ユーリに向けて投げつけた。

「アハハハ、ハハ…ユーゴに続き、君まで先制ダメージを与えてくるなんて」

 

ユーリ

ライフ4000→3300→3150

 

「俺は…カードを1枚伏せて、ターンエンド。そして、ターン終了時に《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》の効果。ペンデュラムゾーンに存在するこのカードを破壊し、デッキから攻撃力1500以下のペンデュラムモンスター1体を手札に加える。俺は《慧眼の魔術師》を手札に加える」

 

ユーリ

手札1

ライフ3150

場 裏守備モンスター1

  ローズ・トークン レベル1 攻撃800

  伏せカード1

  ブラック・ガーデン(フィールド魔法)

 

遊矢

手札6→3(うち2枚《星霜のペンデュラムグラフ》、《慧眼の魔術師》)

ライフ4000

場 ヴァレルロード・F・ドラゴン(《ブラック・ガーデン》の影響下) レベル8 攻撃1500

  EMマンモスプラッシュ(《ブラックガーデン》の影響下) レベル6 攻撃950

  伏せカード1

 

「僕の…ターン!!」

 

ユーリ

手札1→2

 

「僕は手札から《捕食植物スピノ・ディオネア》を召喚」

 

捕食植物スピノ・ディオネア レベル4 攻撃1800→900

 

ローズ・トークン レベル1 攻撃800

 

「《スピノ・ディオネア》の効果発動。このカードの召喚・特殊召喚に成功したとき、相手フィールドのモンスター1体に捕食カウンターを1つ置く。捕食カウンターの乗ったレベル2以上のモンスターのレベルは1になる…」

《捕食植物スピノ・ディオネア》が口から放つ種が《ヴァレルロード・F・ドラゴン》に付着し、そこから茨が成長していく。

茨に取り込まれる《ヴァレルロード・F・ドラゴン》だが、それでも攻撃手段となっている口までの侵食だけは両腕で茨を引きちぎることで阻止していた。

 

ヴァレルロード・F・ドラゴン レベル8→1 捕食カウンター0→1

 

「そして、僕は墓地の《トリフィオヴェルトゥム》の効果発動。相手フィールドのモンスターに捕食カウンターが置かれている場合、1ターンに1度、墓地から守備表示で特殊召喚できる」

地面が砕け、そこから先ほど弾丸で粉砕されたはずの《捕食植物トリフィオヴェルトゥム》が無傷な状態で出てくる。

 

捕食植物トリフィオヴェルトゥム レベル9 守備3000 攻撃3000→1500

 

ローズ・トークン レベル1 攻撃800

 

「また《トリフィオヴェルトゥム》が…!」

「《トリフィオヴェルトゥム》はフィールド上の捕食カウンターが乗っているモンスターの元々の攻撃力分、攻撃力がアップする」

「何!?」

取り付いている茨が成長し、それが《捕食植物トリフィオヴェルトゥム》の肉体と接続する。

そこから《ヴァレルロード・F・ドラゴン》の力を読み取り、《捕食植物トリフィオヴェルトゥム》の力へと変換していく。

 

捕食植物トリフィオヴェルトゥム 攻撃1500→4500

 

「そして、僕はセットしているモンスターを反転召喚。《憑依するブラッド・ソウル》!」

セットモンスターが解放され、隠れている血のような赤い炎で構築された悪魔が現れる。

 

憑依するブラッド・ソウル レベル3 攻撃1200

 

「《憑依するブラッド・ソウル》の効果。このカードをリリースすることで、相手フィールドに存在するレベル3以下のすべてのモンスターのコントロールを得る。君のフィールドに存在するモンスターはレベル1になった《ヴァレルロード・F・ドラゴン》と《ローズ・トークン》2体。そのコントロールを奪う!」

「そんなことさせるか!!俺は《ヴァレルロード・F・ドラゴン》の効果を発動!俺のフィールドのモンスター1体と、相手フィールドのカード1枚を破壊する!俺は《ヴァレルロード》と《トリフィオヴェルトゥム》を破壊する!!」

己を縛る茨と黒薔薇を無理やり引きちぎった《ヴァレルロード・F・ドラゴン》がよみがえったばかりの《捕食植物トリフィオヴェルトゥム》に向けて特攻する。

激突と同時にゼロ距離から発射される弾丸。

その爆発は両者を巻き込み、そして消滅させる。

「あーあ、せっかくよみがえったのに…。けど、2体の《ローズ・トークン》のコントロールはもらうよ」

消滅する《憑依するブラッド・ソウル》と入れ替わるように、遊矢のそばにいた2体の《ローズ・トークン》がユーリのフィールドへ歩いていく。

これで、ユーリのフィールドには4体の《ローズ・トークン》と《捕食植物スピノ・ディオネア》の5体となる。

仮に遊矢のフィールドに《EMマンモスプラッシュ》がいなかったら、5体のダイレクトアタックで勝負が決まっていただろう。

「僕はこれで、ターンエンド」

 

ユーリ

手札1

ライフ3150

場 捕食植物スピノ・ディオネア(《ブラック・ガーデン》の影響下) レベル4 攻撃900

  ローズ・トークン×4 レベル1 攻撃800

  伏せカード1

  ブラック・ガーデン(フィールド魔法)

 

遊矢

手札3(うち2枚《星霜のペンデュラムグラフ》、《慧眼の魔術師》)

ライフ4000

場 EMマンモスプラッシュ(《ブラックガーデン》の影響下) レベル6 攻撃950

  伏せカード1

 

ライフは確かに遊矢が多いものの、ユーリのフィールドには5体ものモンスターが存在する。

幸い、いずれも《EMマンモスプラッシュ》で倒せる。

「ねえ、どうしたの?そんなにつらそうな顔をして…。ライフは4000ちゃんとあって、《マンモスプラッシュ》はフィールドに残ってるんだ…。明るくなってくれないかなぁ」

「そんなの…そんなの、明るくなれるわけないだろ!?こんなデュエルに…何の意味が…!!」

「意味なんてないよ、意味がないから楽しいんだよ。僕がさぁ!ほら、さっさとターンを進めてよ!!」

「俺は…」

「デュエルを放棄するのか?榊遊矢、ならばあの娘たちには死んでもらうだけだ。生かしたいなら、最後まで戦え」

AIからの呪いのようなデュエル継続の命令。

無機質で機械的な言葉に拳を握りしめるしかできない。

「俺の…ターン!!」

 

遊矢

手札3→4

 

「俺は…永続魔法《星霜のペンデュラムグラフ》を発動!そして、スケール1の《星読みの魔術師》とスケール5の《慧眼の魔術師》をセッティング!《慧眼の魔術師》のペンデュラム効果!もう片方のペンデュラムゾーンに魔術師かEMが存在する場合、このカードを破壊することで、デッキから魔術師ペンデュラムモンスターをセッティングできる。俺は《時読みの魔術師》をセッティング!さらに、《星霜のペンデュラムグラフ》の効果!表側表示の魔術師ペンデュラムモンスターが俺のモンスターゾーンまたはペンデュラムゾーンから離れたとき、デッキから新たな魔術師ペンデュラムモンスター1体を手札に加えることができる。俺が手札に加えるのは《降竜の魔術師》!これで俺はレベル2から7までのモンスターを同時に召喚可能!ペンデュラム召喚!現れろ、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》、《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》、《EMドクロバット・ジョーカー》、《降竜の魔術師》!!」

ペンデュラムの力により、一気に4体ものモンスターが遊矢のフィールドに舞い降りる。

黒薔薇の呪縛にかかろうとも、それでもいずれもユーリのフィールドのモンスターをなぎ倒すだけの力は残る。

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500→1250

オッドアイズ・ファントム・ドラゴン レベル7 攻撃2500→1250

降竜の魔術師 レベル7 攻撃2500→1250

EMドクロバット・ジョーカー レベル4 攻撃1800→900

 

「やるねえ…仕込みをしていたとはいえ、一気に4体もモンスターを…」

「まだだ!俺は更にレベル7の《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》と《降竜の魔術師》でオーバーレイ!二色の眼の竜よ、人々の涙を束ね、解放への道を示せ!エクシーズ召喚!ランク7!悲しき世界を穿つ氷河の竜、《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》!!」

 

オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン ランク7 攻撃2800→1400

 

「バトルだ!《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》で《スピノ・ディオネア》を攻撃!氷結のアブソリュート・ゼロ!!」

《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》が放つ吹雪は《捕食植物スピノ・ディオネア》を氷の彫像へと変えた後、尻尾で粉砕した。

 

ユーリ

ライフ3150→2650

 

「さらに、《ドクロバット・ジョーカー》で《ローズ・トークン》を攻撃!同時に、《アブソリュート・ドラゴン》の効果発動!1ターンに1度、オーバーレイユニットを一つ取り除くことで、モンスター1体の戦闘を無効にする!そして、墓地からオッドアイズ1体を特殊召喚する。もう1度現れろ、《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》!」

 

オッドアイズ・ファントム・ドラゴン レベル7 攻撃2500→1250

 

「さらに、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》で…」

「罠発動《アナザー・フュージョン》。墓地の融合魔法カード1枚を除外することで、その魔法カードの発動時の効果を発動できる。僕が除外するのは当然、《超融合》」

「何!?」

発動された《アナザー・フュージョン》のイラストが《超融合》のものへと変化するとともに再び上空に発生する渦。

その渦の中に《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》と《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》が飲み込まれていく。

「別次元の僕の2体のドラゴンよ、今ひとつとなりて、その花弁の奥の地獄から、新たな脅威を生み出せ!融合召喚!現れろ!飢えた牙持つ毒龍。レベル8!《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》!」

「あ、ああ!!」

動揺する遊矢の目の前に、融合次元の遊矢といえるユーリの切り札のドラゴンがついに出現する。

(現れましたか…《スターヴ・ヴェノム》!!)

Dホイールからその様子を見るクリアウィングの表情が一層険しくなる。

そのモンスターからはダーク・リベリオンやオッドアイズと似たものが感じられなかった。

 

スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン レベル8 攻撃2800→1400

 

ローズ・トークン レベル1 攻撃800

 

「《スターヴ・ヴェノム》の効果。このカードの特殊召喚に成功したとき、相手フィールドに存在する特殊召喚されたモンスター1体の攻撃力をターン終了時まで得る。僕が選ぶのは《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》」

 

スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン レベル8 攻撃1400→2800

 

「さあ…どうするの?まだ僕のフィールドには《ローズ・トークン》が4体も残ってる。そして、《マンモスプラッシュ》は攻撃できるよ?」

「くっ…!俺は《マンモスプラッシュ》を守備表示に変更。ターンエンド」

 

ユーリ

手札1

ライフ2550

場 スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン レベル8 攻撃2800→1400

  ローズ・トークン×4 レベル1 攻撃800

  ブラック・ガーデン(フィールド魔法)

 

遊矢

手札4→1

ライフ4000

場 EMマンモスプラッシュ(《ブラックガーデン》の影響下) レベル6 攻撃950→守備2300

  オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン(オーバーレイユニット1 《ブラック・ガーデン》の影響下) ランク7 攻撃1400

  星読みの魔術師(青) ペンデュラムスケール1

  時読みの魔術師(赤) ペンデュラムスケール8

  星霜のペンデュラムグラフ(永続魔法)

  伏せカード1

 

まだ遊矢はライフを減らしていないのに、顔には強い焦りの色が宿っている。

対するユーリは不敵な笑みをうかべ、焦り続ける遊矢の反応を楽しむ余裕もある。

「僕のターン、ドロー…」

 

ユーリ

手札1→2

 

「僕は手札から速攻魔法《魔力の泉》を発動。相手フィールドの表側表示で存在する魔法・罠カードの数だけデッキからカードをドローし、僕のフィールドの表側表示の魔法・罠カードの数だけ手札を墓地へ捨てる。僕は3枚ドローして、1枚捨てる」

 

手札から墓地へ捨てられたカード

・捕食植物ロリドゥラマンティス

 

「そして、僕は手札から魔法カード《捕食回収》を発動。僕のフィールドの闇属性・植物族モンスター2体をリリースし、墓地か除外されている融合またはフュージョン魔法カード1枚を手札に加える。僕が手札に加えるのは…もちろん、これだよ」

2体の《ローズ・トークン》がフィールドから消え、再び手札に加わった《超融合》を見せるユーリ。

「ふふふ…遊矢。まだ君の力はそんなものじゃないだろう?もっと…力を見せて僕を笑顔にしてよ。僕も、力を見せてあげるからさ!!僕は手札から《捕食植物セラセニアント》を召喚」

 

捕食植物セラセニアント レベル1 攻撃100→50

 

ローズ・トークン レベル1 攻撃800

 

「そして、手札から《融合》を発動!僕のフィールドの《スターヴ・ヴェノム》と《セラセニアント》を融合。飢えた牙持つ毒龍よ。奈落へ誘う香しき花よ。今一つとなりて、思いのままにすべてを貪れ!融合召喚!現れろレベル10《グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》!」

フィールドに現れたばかりの《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》が《捕食植物セラセニアント》を取り込み、その姿を《グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》へと変化させる。

変化と同時に激しい咆哮をし、遊矢は腕で頭を守る。

(なんだ…あの、モンスターは…それに…)

オッドアイとなった遊矢が見たあのドラゴンからは何も感じられない。

まるで、一歩でも踏み込んだら二度と這い上がれない底なしの沼のような空虚。

恐怖を感じた遊矢はすぐにオッドアイを解除してしまった。

 

グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン レベル10 攻撃3300→1650

 

ローズ・トークン レベル1 攻撃800

 

「この、モンスターから感じます…ユーゴの、仇のドラゴン…!!」

ユーゴと離れてしまい、彼の末路を見ることができなかったクリアウィングだが、そのモンスターから感じる残り香のような気配から確信する。

そして、ユーリのデッキにはおそらく、ユーゴから奪ったであろう己の本体、そしてそこから進化したカードたちもある。

「フィールドから墓地へ送られた《セラセニアント》の効果。デッキから《捕食植物ビブリスプ》を手札に加える!さらに、僕は《ブラック・ガーデン》のもう1つの効果を発動!!このカードと、フィールド上に存在する植物族モンスターをすべて破壊する!まあ、残っているのは僕と君のフィールドにいる合計4体の《ローズ・トークン》だけだけどね!!」

フィールドにいる4体の《ローズ・トークン》たちがユーリの目の前に集結し、まるで組体操を始めるかのように絡み合い、姿を変えていく。

そして、フィールドを覆っていた黒薔薇たちもその塊に引き寄せられていく。

「そして、この効果で破壊される植物族モンスターたちの攻撃力の合計と同じ数値の攻撃力を持つモンスター1体を墓地から特殊召喚する!さあ、再び現れるんだ。《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》!!」

黒薔薇の塊が砕け、その中から再び現れる《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》。

己の進化体と並び立つ形となり、2体のドラゴンの目は獲物たる遊矢に向けられる。

 

スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン レベル8 攻撃2800

 

「《グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》の効果発動!1ターンに1度、フィールド上の表側表示のモンスター1体の効果をターン終了時まで無効にし、攻撃力を0にする!!」

《グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》の目が光ると同時に、《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》の足元に茨が発生し、氷の鎧を突き破って体に突き刺さる。

鋭い痛みと脱力感に襲われたそのモンスターは地面に伏し、《グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》はその様子に口角を吊り上げた。

 

オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン ランク7 攻撃1400→0

 

「さらに、《スターヴ・ヴェノム》の効果。1ターンに1度、相手フィールドのレベル5以上のモンスター1体のカード名と効果をターン終了時まで得る。僕が選ぶのはその《マンモスプラッシュ》だ」

「何だって!?」

《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》の目に《EMマンモスプラッシュ》が映り、体に埋め込まれた玉石の色が水色に変化する。

《EMマンモスプラッシュ》の効果を奪われたこともそうだが、それ以上に遊矢の警戒心を引き上げるのはユーリの手札に加わった《超融合》だ。

「バトル!《グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》で《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》を攻撃!!」

茨に拘束された《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》に向けて紫の毒を含んだ炎を放つ。

炎を受けた《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》の肉体は毒で溶け、炎で焼き尽くされていく。

そして、炎は当然遊矢にも襲い掛かる。

「うわああああ!!」

 

遊矢

ライフ4000→2350

 

「アハハハ!!もろに受けたね!」

「俺は…《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》の効果を発動!エクシーズ召喚されたこのカードが墓地へ送られたとき、エクストラデッキからオッドアイズを1体特殊召喚できる!現れろ、《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》!!」

炎の中に消えた《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》だが、残された肉体が光を放ち、青い渦を生み出すと、その中から《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》が飛び出した。

 

オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

「《ボルテックス・ドラゴン》の効果!このカードの特殊召喚に成功したとき、相手フィールドの表側攻撃表示モンスター1体を手札に戻す。俺が手札に戻すのは、《グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》!!」

「ハハハハ!このカードを使うって、わかってるくせに!!」

再び発動される《超融合》。

嵐を起こすはずだった《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》が《グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》もろとも渦に飲み込まれ、強引に1つの存在へと変化させられる。

「魅惑の香りで虫を誘う二輪の麗しき華よ。今一つとなりて、その花弁が誘う深淵より飢えたる牙を生み出せ!融合召喚!現れろ!全てを喰らう毒牙龍!レベル10!《スターヴ・ヴェノム・プレデター・フュージョン・ドラゴン》!」

渦の中から飛び出したそのドラゴンの姿は《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》とよく似ている。

だが、新たに緑やオレンジの玉石を手にしており、暗い赤のみだった玉石に色彩が組み込まれることとなった。

 

スターヴ・ヴェノム・プレデター・フュージョン・ドラゴン レベル10 攻撃3600

 

手札から墓地へ送られたカード

・捕食植物ビブリスプ

 

「手札から墓地へ送られた《ビブリスプ》の効果。このカードが墓地へ送られたとき、デッキから新たな捕食植物を手札に加えることができる。僕が手札に加えるのは《捕食植物ドローイン・パエパランツス》」

これで、残った攻撃可能なモンスターは《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》と融合召喚されたばかりの《スターヴ・ヴェノム・プレデター・フュージョン・ドラゴン》の2体。

遊矢のフィールドに残っている《EMマンモスプラッシュ》だけでは、もう守り切れない。

一見すると、遊矢の敗色濃厚だが、ユーリはそんなことは望まない。

ユーゴ以上の楽しみを彼に求める。

「さあ、見せなよ!君の力を!!《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》で《マンモスプラッシュ》を…」

「…罠発動!《EMマジックミラー》!!俺のフィールドに存在するモンスターがEM1体のみで、相手フィールドにエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターが2体以上存在するとき、俺たちの墓地に存在する速攻魔法1枚の発動時の効果を使用する!俺が選ぶのは…《超融合》!!」

「そんなカードをずっと伏せていたのか…!!」

そうだ、それでいい。

勝つわけにもいかず、かといって敗北するわけにもいかない状況でのあがき。

それがユーリの勝利に彩りを与え、笑顔をもたらしてくれる。

そんな考えをよそに、《EMマンモスプラッシュ》が鼻で大きな鏡を上空に向けて投げる。

ハート形だが、中央がギザギザにひび割れしているその鏡には《超融合》のカードが映り、鏡から渦が発生する。

「《超融合》はお互いのフィールドのモンスターを素材に融合召喚を行う!俺が融合素材とするのは《マンモスプラッシュ》と《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》!!…!!」

融合素材にユーリのドラゴンを選択した影響なのか、急に心臓が高鳴るのを感じる遊矢。

高鳴りと共に感じるのは目に映るものすべてを壊したくなる強い破壊衝動。

心の中に急速に膨らむそのゆがんだ感情を抑えるべく、遊矢が強引に首をふる。

「巨獣のしぶきよ、欲望の竜と一つとなりて、新たな種族としてよみがえれ!融合召喚!現れよレベル8!《EMガトリングール》!」

取り込まれ、一つとなったその姿はシルクハットと黒い燕尾服姿をしたグールで、その上品な服には不釣り合いなガトリングガンを背負い、それがエンターテイナーではなく破壊者であることを伝えていた。

 

EMガトリングール レベル8 守備900

 

「そう、そうだよ!!こんなに《超融合》を使ってあげてるんだ!君も使って、あがかないとさぁ!!アハハハハハ!!」

「笑っていられるのは今のうちだ!!《ガトリングール》の効果!!このカードの融合召喚に成功したとき、フィールド上に存在するカード1枚につき、200のダメージを与える!!」

ガトリングに銃弾が装てんされ、銃口がユーリに向けられる。

「今、フィールドに存在するカードは5枚!よって、1000のダメージを与える!!」

狂ったように笑い始めた《EMガトリングール》がユーリに向けてガトリングを発射する。

次々と銃弾を浴び、吹き飛ばされていくユーリ。

だが、苦しんでいる様子はなく、むしろ楽し気に笑っていた。

 

ユーリ

ライフ2550→1550

 

「さらに、《ガトリングール》の融合素材にペンデュラムモンスターを使用している場合、相手フィールドのカード1枚を破壊し、破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを与える!!」

転倒したユーリでなく、今度は《スターヴ・ヴェノム・プレデター・フュージョン・ドラゴン》に狙いを定める。

《スターヴ・ヴェノム・プレデター・フュージョン・ドラゴン》の元々の攻撃力は3600。

この効果が通れば、デュエルは遊矢の勝利に終わる。

「いいの…?この効果で勝負が決まれば、僕たちは…」

ズァークになる。

ユーリの言いたいことの続きは容易にわかる話だ。

だが、そうならないための手段がたった一つだけ残っている。

「…《スターヴ・ヴェノム・プレデター・フュージョン・ドラゴン》を破壊しろ、《ガトリングール》!!」

遊矢の命令を受けた《EMガトリングール》がガトリングを発射する。

銃弾は《スターヴ・ヴェノム・プレデター・フュージョン・ドラゴン》を撃ちぬき、ハチの巣にして、残りの銃弾がユーリを襲う。

「でもさ…まだ満足できないんだよ。君とのデュエルは!!僕は手札の《ドローイン・パエパランツス》の効果発動!」

突然フィールドにパエパランツス科の半食虫植物を背中に生やした亀が現れ、草がユーリに迫る弾丸を受け止めていく。

「このカードは僕がダメージを受けたターンに手札から特殊召喚できて、ターン終了時まで僕が受けるすべてのダメージを0にしてくれるのさ!!」

 

捕食植物ドローイン・パエパランツス レベル6 守備2600

 

「ぐっ…それでも、《スターヴ・ヴェノム・プレデター・フュージョン・ドラゴン》は破壊される!!」

「いいよ、けれど…ただでは死なないさ。《スターヴ・ヴェノム・プレデター・フュージョン・ドラゴン》は相手によって墓地へ送られたとき、墓地の闇属性モンスター1体を特殊召喚できる。僕は再び《スターヴ・ヴェノム・プレデター・フュージョン・ドラゴン》を特殊召喚する」

胴体に穴の開いた《スターヴ・ヴェノム・プレデター・フュージョン・ドラゴン》だが、その姿を黒薔薇の花びらへと変化させて宙を舞い、再び一つに集結すると無傷な状態でその姿を戻した。

 

スターヴ・ヴェノム・プレデター・フュージョン・ドラゴン レベル10 攻撃3600

 

「さあ、さっき殺された恨みを晴らすんだ!!《スターヴ・ヴェノム》!!」

ユーリの言葉と共に激しく咆哮する《スターヴ・ヴェノム・プレデター・フュージョン・ドラゴン》に宿る玉石から電撃が発生するとともに、再びその体を黒バラの花びらへと変化させる。

花びらに包まれた《EMガトリングール》の肉体が青い炎を発生させ、灰へと変わっていく。

「僕はこれで、ターンエンドだ…」

 

ユーリ

手札2→0

ライフ1550

場 スターヴ・ヴェノム・プレデター・フュージョン・ドラゴン レベル10 攻撃3600

  捕食植物ドローイン・パエパランツス レベル6 守備2600

 

遊矢

手札1

ライフ2300

場 星読みの魔術師(青) ペンデュラムスケール1

  時読みの魔術師(赤) ペンデュラムスケール8

  星霜のペンデュラムグラフ(永続魔法)

 

「フフフ、なかなかのデュエルを見せてくれるではないか。この化け物どもは。いかがかな?人間と精霊の魂を宿すデュエリストよ、我が怪物のデュエルは」

「何が、いいたいんだ…」

「剣崎侑斗、我らとは違う次元のデュエリスト。元はガスタの精霊の生まれ変わり。元々の魂が同じ故に融合したとしても、元の人格を維持することができる。君のように、人と精霊の魂が融合した存在は何人も存在する。いずれも、強力なデュエリストだ」

モニターに次々と映し出されるカードの精霊とデュエリストの画像。

その中には侑斗や遊城十代なども存在し、当然侑斗の知らない人物もいる。

「故に、我々は怪物をより怪物たらしめる手段をとった。かつて、覇王龍ズァークの一部となった人間とドラゴンであれば、可能であると…」

ユーリは生まれつき高いデュエリストとしての技量を誇り、それ故に疎まれ、孤独な生活を送っていた。

その中で、彼の持つドラゴンである《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》のみが友達だった。

それ故に自分が楽しければという思いはあっても、他人を傷つけるようなことはしなかった。

ユーリ本人は3年前のエクシーズ次元への攻撃に参加しておらず、別次元でデュエルをしたのは舞網チャンピオンシップの時が初めてだ。

「予測通り、彼と彼のドラゴンの魂を融合した結果、さらなる力の上昇を認められた。最も、人格についてはこのように、破綻したが。だが、期待値は上回った。それ故にここにいる、楽園を生み出すための生贄、化け物として」

「化け物って…あなたこそが、化け物じゃないか…!!」

 

ユーリのフィールドに残る《スターヴ・ヴェノム・プレデター・フュージョン・ドラゴン》。

そして、残った手札に遊矢の目が行く。

(エクストラデッキには《オッドアイズ》達がいる。なら…!)

「俺のターン、ドロー!!」

 

遊矢

手札1→2

 

「俺は…手札から魔法カード《施しのペンデュラムグラフ》を発動。俺のフィールドのペンデュラムグラフカード1枚を墓地へ送り、デッキからカードを2枚ドローする。もう1度頼むぞ、《時読み》、《星読み》!!ペンデュラム召喚!現れろ、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》、《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》、《EMセカンドンキー》!!」

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500

オッドアイズ・ファントム・ドラゴン レベル7 攻撃2500

EMセカンドンキー レベル4 攻撃1000

 

「この瞬間、《ドローイン・パエパランツス》の効果発動!相手ターンのメインフェイズ時、僕の墓地に存在するレベル2以下の植物族チューナーモンスター1体を特殊召喚できる。僕が特殊召喚するのはレベル1の《スポーア》!!」

 

スポーア レベル1 攻撃400(チューナー)

 

「チューナーモンスター…まさか!?」

「そして、《ドローイン・パエパランツス》とこの効果で特殊召喚されたチューナーモンスターのみを素材にシンクロ召喚を行う!その美しくも雄々しき翼翻し、光の速さで敵を討て!シンクロ召喚!現れろ、レベル7!《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》!」

ユーリの手によって召喚されるユーゴのエースモンスター。

Dホイールにクリアウィングの思念が宿っているため、存在するのは肉体のみではあるが、それでも自らの存在を使われたことにはクリアウィング自身、不快感しかない。

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

「どうだい…?会いたかっただろう?お仲間にさぁ!」

「くっ…!!」

顔をゆがめる遊矢だが、頭の中は違和感を抱くほど冷静だ。

ここで現れた《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》によって、フィールド上におけるレベル5以上のモンスターの効果、そしてフィールド上のレベル5以上のモンスター1対のみを対象としたモンスター効果を不用意に使うことができなくなった。

だが、ユーゴがユーリに敗れ、取り込まれた以上はこのような状況になることはわかっている。

「あのさぁ、遊矢。せっかくなんだから…召喚したらどうだい?もう1人のお仲間をさあ…」

「…俺は《セカンドンキー》の効果を発動。このカードが召喚・特殊召喚されたとき、デッキから新しいEM1体を墓地へ送る。ただし、俺のペンデュラムゾーンにカードが2枚存在する場合、墓地へ送られずに手札に加えることもできる。俺は、《ギッタンバッタ》を手札に加える。そして、《EMギッタンバッタ》を召喚!」

 

EMギッタンバッタ レベル4 攻撃100

 

「俺は…レベル4の《ギッタンバッタ》と《セカンドンキー》でオーバーレイ!!舞い降りろ!漆黒の翼はばたかせ反逆の牙を持つ龍!エクシーズ召喚!!!《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》!!!」

フィールドに集うズァークの因子となった4体のドラゴン。

違いがあるとしたら、遊矢が従える2体には意思があり、ユーリの2体にはそれがないことだ。

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ランク4 攻撃2500

 

「ぐ、うう、ぐう…!!」

これにより、遊矢に宿るズァークの因子が活性化し、同時に脳裏にあの言葉が響く。

(今こそ一つに…今こそ一つに…)

(小僧!)

「大丈夫…大丈夫だ、オッドアイズ!まだ、自分を…保ててる…まだ、戦える!!」

ギリギリと歯をかみしめ、ギロリとユーリを見る遊矢。

ユーリもズァークの因子が活性化しているにも関わらず、抵抗するそぶりを見せずにニヤニヤと笑ってる。

「アハハハハ!!この感じ、いい…最高だ…。最高だよ、この感じも…このデュエルも!!」

「そんな、こ、と…!!」

(遊矢、気をしっかり持て!)

「ユート…」

(今は…瑠璃たちを助けることだけを考えるんだ。ズァークのことは、その後でいい!!)

「ああ…そうだ!その通りだ!!《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》の効果発動!オーバーレイユニットを2つ取り除く、相手フィールドのモンスター1体の攻撃力を半分奪う!俺は、《スターヴ・ヴェノム・プレデター・フュージョン・ドラゴン》の攻撃力を半分奪う!!トリーズン・ディスチャージ!!」

「バーーーカ!!!《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の効果発動!フィールド上のレベル5以上のモンスター1体のみを対象とするモンスター効果が発動したとき、その発動を無効にして破壊する!ダイクロイック・ミラー!!」

オーバーレイユニットを取り込み、稲妻を起こして《スターヴ・ヴェノム・プレデター・フュージョン・ドラゴン》を捕縛しようとする《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》だが、《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》から放たれる光が稲妻を消し飛ばし、《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》を襲う。

(今です、遊矢、ユート!!)

「俺は手札から速攻魔法《RUM-幻影騎士団ラウンチ》を発動!お互いのターンにメインフェイズ時に発動でき、オーバーレイユニットのない闇属性エクシーズモンスター1体をランクの1つ高い闇属性エクシーズモンスターにランクアップさせる!!」

「何!?」

上空に発生する銀河の中へ《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》が飛び込んでいく。

教会のステンドガラスのような翼が生まれ、両足と胴体を白骨でできた甲冑が固めていく。

「煉獄の底より、いまだ鎮まらぬ魂に捧げる反逆の歌!永久に響かせ現れよ!ランクアップ・エクシーズチェンジ!出でよ、ランク5!《ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン》!」

銀河を突き破り、舞い降りる新たな《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》の姿。

このカードが遊矢の今の状況を打破し、勝利をもたらす。

 

ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン ランク5 攻撃3000

 

「そして、発動した《幻影騎士団ラウンチ》は《ダーク・レクイエム》のオーバーレイユニットになる。そして、《ダーク・レクイエム》の効果を発動!オーバーレイユニットを1つ取り除き、相手フィールドのモンスター1体の攻撃力をすべて奪う!!《スターヴ・ヴェノム・プレデター・フュージョン・ドラゴン》の攻撃力を奪え!!レクイエム・サルベーション!!」

効果を使ってしまった《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》はもう妨害できず、オーバーレイユニットを宿した《ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン》のステンドガラス状の翼からビームが放たれる。

ステンドガラスに閉じ込められた《スターヴ・ヴェノム・プレデター・フュージョン・ドラゴン》は身動きが封じられ、赤黒いオーラをまとった《ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン》が咆哮する。

 

ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン ランク5 攻撃3000→6600

スターヴ・ヴェノム・プレデター・フュージョン・ドラゴン レベル10 攻撃3600→0

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・RUM-幻影騎士団ラウンチ

 

「攻撃力を全部奪うなんて…。これで、《ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン》の攻撃力は6600。これで、勝負がつきそうだね」

ユーリのライフは1550。

攻撃力を失った《スターヴ・ヴェノム・プレデター・フュージョン・ドラゴン》に遊矢の3体のドラゴンのいずれかの攻撃が通れば、勝負が決まる。

「でも、いいのかな?君が勝てば、僕たちと一つになって、ズァークが…」

「そんなことはわかってる!けれど…俺は、世界を滅ぼすつもりなんてない。バトルだ!《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》で《スターヴ・ヴェノム・プレデター・フュージョン・ドラゴン》を攻撃!螺旋のストライク・バースト!!」

先手を打つのはペンデュラム召喚が生まれてからの仲間である《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》。

螺旋するブレスが《スターヴ・ヴェノム・プレデター・フュージョン・ドラゴン》を貫き、ユーリを襲う。

「僕は墓地の《捕食植物ロリギュラマンティス》の効果発動!僕のフィールドの闇属性・ドラゴン族融合モンスターが相手モンスターと戦闘を行うとき、墓地のこのカードを除外することで、お互いのモンスターを破壊する!」

頭上に現れる、ロリギュラ属の食虫植物で構成されたカマキリの幻影から力を受けた《スターヴ・ヴェノム・プレデター・フュージョン・ドラゴン》が最後の力を振り絞り、その肉体をバラの花びらに変化させる。

花びらはブレスを包んで消滅させ、さらには《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を包み、白い灰へと変貌させた。

「そして、自分フィールドのモンスター1体にこの効果で破壊された僕のモンスター1体の攻撃力を次の僕のターン終了時まで与える!!」

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン レベル7 攻撃2500→5800

 

「さらに、僕は墓地の罠カード《捕食衝動》の効果を発動!!僕のフィールドの捕食植物が破壊されたとき、墓地のこのカードを除外することで、そのモンスターを再び墓地から特殊召喚する!」

フィールドに残る花びらが再び集結し、《スターヴ・ヴェノム・プレデター・フュージョン・ドラゴン》が元の万全な状態に戻った。

 

スターヴ・ヴェノム・プレデター・フュージョン・ドラゴン レベル10 守備2500

 

「そして、《捕食衝動》の効果で特殊召喚されたモンスターのレベルの数×100、相手フィールドのモンスターの攻撃力はダウンする!!」

 

オッドアイズ・ファントム・ドラゴン レベル7 攻撃2500→1500

ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン ランク5 攻撃6600→5600

 

「これで、《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の攻撃力は《ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン》を上回る!次のターン、《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》に攻撃力がアップした《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》で攻撃すれば、君の負けだぁ…」

仮にペンデュラム召喚の際に、2体のオッドアイズのうちの1体のみを出す形にしておけば、勝負はわからなかったかもしれない。

次のターンがまわった瞬間、勝利はユーリのもの。

「次のターンがお前にあれば、な」

「何…?」

「もう、お前に次のターンなんてない!!《ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン》で《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》を攻撃!!」

攻撃力が既に上回っているはずの《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》に向け、《ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン》が翼から雷を放とうとする。

「血迷った!?攻撃力は僕の《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の方が…」

「俺は手札から速攻魔法《出撃の槍》を発動!自分モンスターの攻撃宣言時、自分フィールドの攻撃モンスター以外のモンスター1体をリリースすることで、ダメージステップ終了時まで攻撃モンスターの攻撃力をリリースしたモンスターの元々の攻撃力分アップさせる。俺は《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》をリリースし、《ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン》の攻撃力をアップ!」

 

ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン ランク5 攻撃5600→8100

 

「な…にぃ!?」

再び攻撃力が上回り、咆哮と共にユーリの周囲に落雷が発生する。

自分が負ける。

今までデュエルで負けたことのない自分がここで負ける。

その相手が別次元の自分である榊遊矢だというなら、あまり悪い気分じゃない。

「気を付けなよ…?僕を倒した瞬間、君は…ズァークになるんだから…」

「…いけ!《ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン》!!」

翼から放たれる稲妻が《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》を破壊し、ユーリを襲う。

爆発とともに吹き飛んでいくユーリの肉体。

だが、これから起こるであろう事態を思うと、自然とユーリの口角は吊り上がっていた。

 

ユーリ

ライフ1550→0

 

 

 

増殖の宝札

通常罠カード

このカード名のカードは1ターンに1度しか発動できない。

(1):お互いにモンスターの特殊召喚に1回以上成功し、このターンに特殊召喚されたモンスターの数が4体以上の場合にのみ発動できる。自分はデッキからカードを2枚ドローする。この効果を発動後、ターン終了時まで自分はデッキからカードを手札に加えることはできない。

 

アナザー・フュージョン(漫画オリカ:効果変更)

通常罠カード

このカード名のカードの効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分の墓地に存在する「融合」魔法カード1枚を除外することで発動できる。そのカードの発動時の効果を発動する。この効果を発動したターン、自分はモンスターの召喚・反転召喚・特殊召喚を行えない。

 

捕食回収(プレデター・リカバリー)

通常魔法カード

このカード名のカードは1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールドの闇属性・植物族モンスター2体をリリースすることで発動できる。墓地または除外されている自分の「融合」または「フュージョン」魔法カード1枚を手札に加える。この効果を発動したターン、自分は融合召喚以外の方法でEXデッキからモンスターを特殊召喚できない。

 

EMマジックミラー

通常罠カード

このカード名の(1)(2)は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。

(1):自分フィールドに存在するモンスターが「EM」モンスター1体のみで、相手フィールドにEXデッキから特殊召喚されたモンスターが2体以上存在する場合にのみ発動できる。自分または相手の墓地に存在する速攻魔法カード1枚の八童子の効果を発動する。この効果を発動後、ターン終了時まで自分は魔法カードを発動できない。

 

施しのペンデュラムグラフ

通常魔法カード

(1):自分フィールドに存在する「ペンデュラムグラフ」カード1枚を墓地へ送ることで発動できる。デッキからカードを2枚ドローする。自分Pゾーンに「魔術師」Pカードが2枚存在する場合、このカードの発動時に相手はカード効果を発動できない。

 

捕食植物ドローイン・パエパランツス

レベル6 攻撃2100 守備2400 効果 闇属性 植物族

このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分が戦闘・効果によるダメージを相手から受けたときに発動できる。手札に存在するこのカードを特殊召喚する。その後、自分はターン終了時まで受けるすべてのダメージが0となる。

(2):相手メインフェイズ時、自分の墓地に存在するレベル2以下の植物族チューナー1体を対象に発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。その後、このカードとこの効果で特殊召喚されたモンスターのみを素材としてS召喚を行う。この効果でS素材となったモンスターは除外される。

 

捕食植物ロリギュラマンティス

レベル7 攻撃2100 守備2600 効果 闇属性 植物族

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):1ターンに1度、捕食カウンターの乗っている相手フィールドのモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを破壊する。

(2):このカードが墓地に存在し、自分フィールドの闇属性・ドラゴン族融合モンスターが相手モンスターと戦闘を行うとき、墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。戦闘を行うお互いのモンスターを破壊する。その後、自分フィールドのモンスター1体の攻撃力を次の自分のターン終了時まで、この効果で破壊された自分のモンスターの元々の攻撃力分アップさせる。この効果はこのカードが墓地へ送られたターン、発動できない。

 

捕食衝動

通常罠カード

(1):自分フィールドに存在する「捕食植物」モンスター1体をリリースすることで発動できる。相手フィールドに存在するモンスターに捕食カウンターを1つ置く。捕食カウンターが置かれたレベル2以上のモンスターのレベルは1になる。

(2):自分フィールドの「捕食植物」モンスターが戦闘・効果で破壊されたとき、墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。その後、相手フィールドに存在するモンスターの攻撃力をこの効果で特殊召喚されたモンスターのレベル×100ダウンさせる。この効果は(1)の効果を発動したターン、発動できない。

 

出撃の槍

速攻魔法カード

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分のモンスターの攻撃宣言時、自分フィールドの攻撃モンスター以外のモンスター1体をリリースすることで発動できる。攻撃モンスターの攻撃力をダメージステップ終了時までリリースしたモンスターの元々の攻撃力分アップさせる。

(2):相手バトルフェイズ開始時、自分の墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。手札・デッキから「迎撃の盾」1枚を自分フィールドにセットする。この効果でセットされたカードはセットしたターンでも発動できる。



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第130話 降臨するもの

「ダメだ、レーダーはもう使えない!!とにかく奴から離れるんだ!!」

「嘘だろう!?まだアカデミアに残っている奴もいるんだぞ!?見捨てるのか!!」

「だからって、ここにいる皆を巻き添えにするのかよ!?」

遊矢とユーリのデュエルが終わり、ほんのわずかに時間が流れた。

その間に次元戦争は急速にその状況を変化させ、もはや敵も味方もそこには存在しない。

突如として現れた、島一つたやすく飲み込むであろうほどの巨大なドラゴン。

それはブレス一つで建物の多くをガレキに変え、飲み込んだ者はもはや骨のひとかけらも残らない。

ヴァプラ隊のメンバーの一部が犠牲になることを覚悟にそのドラゴンに戦いを挑み、ひきつけてくれたおかげでこの戦艦は可能な限りの人々を乗せ、出港することができた。

「みんな…ごめん…!」

あのドラゴンと戦っているであろう仲間たちを見捨てる結果となり、彼らが戦い、散っているであろう島を侑斗は目に焼き付ける。

このことが起こることは永瀬教授の話で分かっていたことなのに、止めることができなかった。

だが、この時間稼ぎも長くは続かず、あのドラゴンはいずれこの戦艦に狙いを定めるだろう。

次元統合が始まり、上空には肉眼で見えるほどのヒビがいくつも入り、七色が入り混じったいびつな色となっている。

そのヒビによって砕けた空間からはシンクロ次元やエクシーズ次元、スタンダード次元の光景が見え、そこからはその世界のものと思われる様々な物質がこの次元に引きずり込まれていく。

「こんな…無理やり次元が一つになったら、本当に世界が終わってしまう…!!」

ズァークとレイによって4つの分裂することとなった次元はそれぞれ安定し、その存在を維持し続けてきた。

だが、次元統合によって無理やり一つに統合されようとしている次元は衝突し、それぞれが存在を保てなくなり自壊する。

その自壊して発生するエネルギーは次元空間におけるビッグバンといえるものとなり、この4つの次元以外の別次元をも巻き込む惨事となりかねない。

「止める術は…ないのか…!」

「わからない、動き出してしまった以上は…」

「できるのは、時間稼ぎだけか…」

零児はスタンダード次元に残っている母親に思いをはせる。

最悪の事態に備え、既にスタンダード次元には可能な限り他の次元の人々を避難させている。

そして、本社地下に設置した装置であるニヴルヘイムが作動し、それが少なくともスタンダード次元を次元統合の影響から免れさせてくれている。

実際、砕けた空間から見えていたスタンダード次元の光景は白い霧のようなものに包まれつつあった。

「せめて、もう1度アカデミアに入ることができればいいけれど…もうそれもできないかもしれない…」

次元統合を引き起こしている装置とAIを止めれば、これ以上の被害を食い止めることはできるだろう。

だが、あのドラゴンはそれを阻止しようと動いている。

実際、ドラゴンの攻撃はのその装置のある場所に影響を与えないように動いていた。

 

「遊矢…この、大バカ者が…!」

戦艦内にある病室、そこには目を半開きの状態のままにし、口から唾を垂れ流しながらベッドの中にいる遊矢がいて、権現坂と柚子、遊勝と彼の車いすを押す明日香の姿があった。

柚子は涙を流して遊矢の手を握り、権現坂は悔しさのあまり拳を壁にたたきつける。

「遊矢…お願い、起きて…起きてくれないとあたし、あたし…」

 

遊矢がユーリを倒し、敗北したユーリは攻撃の余波を受けてその体を絨毯の上に転がす。

敗北し、体中が痛いはずのユーリは笑っているのに対して、勝者のはずの遊矢の表情は暗い。

「見事だ、我らの化け物を倒すとは。さすがはペンデュラム召喚を最初に行った男」

「約束通り、娘たちは返してやろう。そして、お前はズァークに戻るがいい」

「世界を破壊するのよ。そして、ゼロとなった世界から再び…」

「そんなこと…!?」

ズァークとなることを拒む遊矢だが、こうしてユーリとデュエルをし、勝利してしまった以上はもうこの重力に逆らうことはできない。

「ハハハハハ!!始まる、始まるんだよ!世界の終わりが!僕たちが一つになるときが!!みんな、みんなみんなみんなみんなみんなミンナミンナミンナ、壊レロ!!僕タチヲ奴隷ニシタ奴モ、次元モ、」

「「死ンデ、償エエエエエエエ!!」」

ユーリの口から別の何かの声が吐き出されていき、彼の目からは涙がこぼれる。

それに共鳴するかのように、遊矢も叫んでいた。

「我ら一つに…そして、世界を…!!」

「遊矢!!」

遊矢たちが一つとなろうとしているその瞬間、彼らを探していた柚子と遊勝がようやくたどり着く。

だが、遊矢とユーリは黒く禍々しいオーラに包まれていき、2人を見る遊矢の目は黄色く染まっていた。

「遅かったな…だが、歓迎しよう。貴様らが、我が復活の最初の立会人だ!!」

「遊矢…いや、ズァークか…!?」

「ダメ!!遊矢…!ズァークに負けないで、遊矢!!」

「もう、遅い!!貴様らの望み通り、我…ハ!?何を、する…やめろ!!」

ズァークになりつつあった遊矢に激しい頭痛が襲うとともに、目の色が元の赤へと戻っていく。

両手で頭を抱え、体を震わす。

「遊矢!!」

「来るな!!止まらない…止まらないんだ…!!」

かろうじてズァークから逃れようとする遊矢だが、もう彼の意思ではどうにもならないほどに統合が始まっている。

仮にユーゴがユーリとのデュエルを逃れていたなら、まだ救いはあったかもしれない。

だが、もはや時既に遅く、遊矢とユート、ユーリとユーゴが一つになっていくこの状況は止められない。

そして、4つの魂は勝者たる遊矢のもとに統合されつつある。

「邪魔をするな、たかが分身の分際でェェ!!」

「そうだ!俺もズァーク、お前の一部だ…だからこそ、できるんだ!!」

遊矢は懐に手を突っ込み、その中にある銃を手にする。

そして、銃口を自分のこめかみに押し付ける。

「遊矢!!」

「柚子…父さん、ごめん…!!もう、こうするしかないんだ!!みんなの…笑顔を守るためには!!」

ヒイロから受け取った銃。

これがズァーク復活を止める最後の手段。

それを止めようと飛び出す2人の姿を見た遊矢はわずかに笑みをうかべると、引き金を引いた。

柚子の中に、シンクロ次元で遊矢が左腕をレーザーで斬り落とされたときの衝撃がよみがえる。

だが、今目の前で起こっている光景はそれ以上の、柚子の中で考えられる最悪な光景。

銃から発生するかすかな火薬のにおいが鼻につき、遊矢の体が絨毯の上で横たわる。

同時に、遊矢とユーリを包んでいた黒いオーラが消えた。

「遊矢!!」

「遊矢、ぐぅ…!!」

倒れた遊矢に駆け寄る柚子と、言うことが聞かない体を必死に叱りながら遊矢の元へ歩く遊勝。

力を無くした遊矢の手から拳銃がこぼれ、倒れた遊矢の頭部には確かに銃弾で撃たれた痕があり、そこから血が流れている。

「いや…いや、いやあああああああああ!!!」

「遊、矢…クッ…親よりも、先に…」

遊矢を抱きしめ、大声で泣く柚子と杖が手から離れ、その場でひざを折る遊勝。

確かに遊矢が死ぬことで、ズァークが復活することは永遠になくなるだろう。

だが、彼らにとって榊遊矢という犠牲はあまりにも大きすぎる。

世界を救うという考えでは正しいが、エンターテイナーとしては間違っている。

だが、その彼の覚悟が最悪な事態を阻止すると信じていた。

「ク、ク、クククク…まさか、本当に自殺してでも我を拒絶しようとするとは…」

「え…??」

そんな甘い期待はユーリの言葉が嘲笑う。

ゆっくりと起き上がったユーリの目は先ほどの遊矢と同じく黄色く染まっていた。

「残念だが、器はこちらにさせてもらった。歯向かうのであれば貴様など不要!貴様はもはや我が分身ではない!!」

「う…そ…」

「ユーリ…いや、ズァーク…」

「先生、柚子!!」

二人を探していた明日香、そして彼女の応援となっている隊員2人が駆けつけ、彼らに映るのは黒いオーラを放つズァーク。

そして、黒いオーラは徐々に肥大化していき、それと接触した物質は容赦なく破壊されていく。

遊矢が止めていた、クリアウィングが宿っていたDホイールも接触すると同時に粉々に砕け散る。

「逃げるしかないわ…急いで!!」

遊矢の遺体は隊員が抱え、遊勝の体は明日香が支え、彼らはその場を後にする。

やがて肥大化したオーラはドラゴンの形となり、今アカデミアで暴れまわっている。

 

どうにか運び込まれ、こうして病室のベッドに横たわらせられた遊矢の遺体。

だが、ここに運び込まれてから彼の遺体にはいくつか違和感が発生する。

まずは遊矢が半開きの目の状態で、口がかすかに開いているが、そこからはかすかに声を出していること。

あ、あ、ああ、と言葉になっていないが、それでも声を出している。

そして、生存するギリギリというところで呼吸をしていて、心臓と脈も弱弱しくはあるが動いている。

何よりも一番の事態は銃弾を受けた傷がまるで最初からなかったかのように消えていることだ。

「ヒイロ・リオニス…遊矢が撃った銃を私のは君だ。何を仕掛けた…?」

病室に入ってきたヒイロに顔を向けることなく、遊勝が問いかける。

ヒイロのおかげで遊矢本人がズァークになることを脱したことについては感謝すべきかもしれない。

死んでいないかもしれないが、最愛の息子をこのような状態にしろと頼んだ覚えはない。

「レントゲンで奴の脳を確認した。あいつが撃った銃弾は確かに脳内にとどまっている。最も、銃弾そのものは特別製だがな」

「特別製…?」

「そうだ、あいつに渡した銃の弾丸、それは『欠片』を加工したものだ。そして、『欠片』が損傷した遊矢の脳を再生させている。そして…」

「これって…」

ヒイロが説明しようとするここからの事態を最初に目撃したのはそばにいる柚子だ。

遊矢のこめかみからすり抜けるかのように、『欠片』でできた銃弾がゆっくりと出てきて、ベッドの上に転がる。

「榊遊矢はズァークに取り込まれずに済んだ。だが、ここから目覚めるかは奴次第だ」

 

「少しは、落ち着いたか?」

艦内の食堂には柚子を除いたレイの分身たる3人がいて、凌牙がコーヒーを出す。

アカデミアから離れたこと、食堂には防音処理がされているためか、混乱が続く外とは不釣り合いな静寂がそこにはある。

3人とも、遊矢がデュエルを終えたと同時に解放され、口にしていた青酸カリは取り除かれた。

逆に言うと、ズァーク復活ができた時点でAIからはどうでもいい存在と認識されたのだろう。

「…そういえば、こうしてちゃんと顔を合わせるのって、初めて…よね」

沈黙に耐えきれず、最初にリンが口を開く。

アカデミアに拘束されてからはリンも瑠璃もセレナもあのカプセルの中から以外でお互いに顔を合わせたことがない。

カプセルではとても会話できる状態ではなく、こうして話せるのは初めてだ。

「不思議よね、病室にいる柚子も含めて、私たち…もともと一人の存在だったなんて…」

「そう…ね。…ユート達も…。…ごめんなさい、こんなこと言ってはいけないのは分かってる。けれど…どうして今あそこに寝ているのがユートじゃなくて、遊矢なんだろうって…」

おそらく、ズァークの中にはユートが存在する。

過程や今の状況がどうであれ、今眠っている遊矢はズァークになることがなかった点だけは幸運といえる。

こんな状況で、遊矢も死ぬ覚悟でそうしたことはわかっている分、そんな遊矢と彼とともにいる柚子に対して暗い感情を抱いてしまう自分に腹を立ててしまう。

「そんなの、わからねえよ。強い奴が生きて、弱い奴が死ぬほどこの世界は単純じゃねえ。それに、まだ全部が終わったわけじゃねえ。実際、お前たちはレイに統合されることなくここにいる。そして、ズァークは遊矢を取りこぼした。ほんのわずかだが、可能性がねえわけじゃねえ…」

ふと、凌牙の脳裏に故郷にいる仲間の一人の姿が浮かぶ。

彼はたとえどんなに絶望的な状況であっても、自分の理想を捨てることなく戦い続け、理想をかなえて見せた。

だから自分はここにいて、アストラル世界とバリアン世界が滅ぶことはなかった。

「かっとビング…か…」

 

「ようやく…ようやく集まったぜぇ…記憶のカードが。俺の始まりが…」

「ベクター…」

赤黒い空の下、中世のコロシアムのような建物の中に翔太とベクターがいて、ベクター本人は玉座に座り、上空には鎖でつながれた3人の遺体がある。

遊馬、ナッシュ、メラグ、いずれもベクターの思惑に反した憎むべき存在で、当然それらの遺体はベクターの妄想でしかない。

だが、こうすることができるだけの力を手に入れることができた。

「魂だけになった俺がドン・サウザンドの代替の肉体を手に入れ、ヌメロン・コードが砕けた余波で次元のはざまに飛ばされ、その果てでたどり着いたこの4つの次元。そこで感じたズァークって野郎の憎しみと力でシンクロ、融合、ペンデュラムを学び、ドン・サウザンドが配下として生み出そうとしていた四騎士にエクシーズを含めて、力を分け与えた。てめえがデュエルをするたびに感じたぜ…その力を。それが俺を高ぶらせ、力をみなぎらせてくれた…」

確かに、この次元へ飛んだ時に別の人間とぶつかり、さらにはその近くに『欠片』なんてものが存在したせいでその人間と融合したうえに全く別の人格である秋山翔太が生まれてしまったことは誤算だった。

だが、その誤算のおかげで遠回りにはなったものの、力を蓄える時間ができ、さらには復讐対象の一人である凌牙、ナッシュともう1度会うことができた。

エクシーズ次元でのデュエルでは不覚を取ったことは認めるが、すべての記憶のカードと戦い、四騎士に蓄えられた力をわがものとした今ならば、かつて神を自称した時以上の力を発揮することができる。

「あとは…邪魔者になっててめえと、呉島純次をぶっ殺して、肉体を完全に俺の物にする。そして…俺だけの次元を一から作り上げてやる」

「妄想はそこまでにしな…てめえは、器じゃねえんだよ…。ここでその妄想も終わらせてやる」

「やってみやがれ…人形が」

玉座から立ち上がったベクターが左腕にデュエルディスクを生み出すと当時に、鎖につながれた遺体と玉座が消滅する。

ベクターの周囲にカード状の光の結晶が集まると、それが次々とデュエルディスクのデッキスペースに吸い込まれていく。

「「デュエル!!」」

 

ベクター

手札5

ライフ4000

 

翔太

手札5

ライフ4000

 

「翔太君…」

激しい揺れが起こるプロフェッサーの部屋の中、伊織は眠ってしまった翔太の手を握る。

ズァーク復活の際、逃げるように零児たちには言われたが、なぜか伊織はここから動いてはいけない、そのように感じた。

次元統合による4つの次元の崩壊、それを止める切り札が翔太になる。

だが、今ここで翔太が離れてしまったら、その機械を永遠に失うことになる。

なぜそんなふうに思ったのかはわからないが、なぜか確信できた。

もうすでに議論する時間は残されておらず、どうにかカプセルから解放された3人のこともあって零児たちを行かせ、翔太の体を守るという理由で伊織もここに残っている。

ここの重要性を知っているのか、ズァークの攻撃は来ていないが、それでも激しい揺れと衝撃は立っていられなくなるほどの強さがあった。

 

「まーず、俺からいかせてもらうぜぇ?俺は手札からフィールド魔法《アンブラル・コロシアム》を発動!!」

発動と同時に、無人だった客席には次々と人の姿が現れ、同時にそこからベクターへの声援が響き渡る。

まるでフレンドシップカップの際の熱狂ともいえるが、現れた人間達に翔太は怪訝な表情を見せる。

「悪趣味だな…カード化されている人間の魂をここにとどめて、無理やり称賛させてるってか」

「ここは俺様のコロシアムだ。観客がいて当然、てめえはアウェーで当然。このコロシアムの発動処理として、俺はデッキからアンブラル1体を手札に加える。そして、俺は手札からスケール0の《アンブラル・ゲート》とスケール8の《アンブラル・ガーディアン》でペンデュラムスケールをセッティング!」

赤い水晶と岩石でできた門と同じ材質の甲冑と斧、大盾を装備した騎士がペンデュラムスケールを生み出し、上空には赤黒いペンデュラムのシルエットが生まれ、そのはざまで揺れ動く。

「揺れろ、俺様のペンデュラム!敵の首を切り落とし、その血で俺を喜ばせろ!!ペンデュラム召喚!現れな、俺様の下僕たち!!《アンブラル・シンクロン》、《アンブラル・マジシャン》、《アンブラル・ウィル・オ・ザ・ウィスプ》!!」

黒い渦が出現するとともに現れたのは灰色の包帯で身を包み、赤い右目だけをあらわにした《ジャンク・シンクロン》というべき姿のモンスターと、同じ包帯姿で赤い水晶のついた杖を手にした魔道士で、その2体に挟まれる形で《アンブラル・ウィル・オ・ザ・ウィスプ》も現れる。

 

アンブラル・シンクロン レベル3 攻撃1300(チューナー)

アンブラル・マジシャン レベル4 攻撃1500

アンブラル・ウィル・オ・ザ・ウィスプ レベル1 攻撃0

 

「《ウィル・オ・ザ・ウィスプ》の効果!こいつの召喚・特殊召喚に成功した時、このカード以外のフィールド・墓地のアンブラル1体のレベルに変更できる。俺は《アンブラル・マジシャン》を選択する!」

 

アンブラル・ウィル・オ・ザ・ウィスプ レベル1→4 攻撃0

 

「そして、《アンブラル・コロシアム》の効果発動。こいつは俺がペンデュラム召喚、エクシーズ召喚、融合召喚、シンクロ召喚を成功させた時、それ相応のプレゼントをしてくれるってわけだ」

(赤馬零児の《異形神の契約書》に似たモンか…)

「で、ペンデュラム召喚に成功した場合、俺はデッキからカードを2枚ドローし、手札1枚を墓地へ捨てることができる」

 

手札から墓地へ送られたカード

・アンブラル・アイ

 

「俺はレベル4の《アンブラル・マジシャン》、《ウィル・オ・ザ・ウィスプ》でオーバーレイ!!神の意思に反する者の名を刻み、裁きを下せ!!エクシーズ召喚!現れろ、《仮面審問官クラーマー》!!」

上空に生まれた銀河の中に消える2体のモンスター。

その命をオーバーレイユニットとして誕生したのは左手に真っ黒な書物、右手に天秤を持つ黒衣の僧侶。

黒いシルクハットからは前後をつき抜いたかのような黄色い角が生えており、帽子に隠れた顔からは赤い目を光らせる。

 

仮面審問官クラーマー ランク4 攻撃2500

 

「そして、エクシーズ召喚に成功したことで、《アンブラル・コロシアム》の効果を発動!俺はデッキからアンブラル魔法カード1枚を手札に加える。俺が手札に加えるのは《RUM-アンブラル・フォース》。そして、《クラーマー》の効果を発動。1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、俺はデッキからカードを1枚ドローし、ドローしたカードを公開する。さあーて、何が出るかな、何が出るかなー??」

オーバーレイユニットが書物に宿り、宙に浮いた書物がページを開くと、そこにベクターがドローしたカードが映し出された。

 

取り除かれたオーバーレユニット

・アンブラル・マジシャン

 

「俺様がドローしたカード…それは、《アンブラル・フュージョン》!!そして、相手はデッキから後悔したカードと同じ種類のカード1枚を墓地へ送らなければならない!その効果で相手がカードを墓地へ送れなかった場合、お前は1000のダメージを受ける。さあ、どのカードを墓地へ落すか決めな!!」

「ちっ…俺は、《魔装天啓》を墓地へ送る」

「さらに、オーバーレイユニットとして墓地へ送られた《アンブラル・マジシャン》の効果発動!こいつがアンブラルエクシーズモンスターの効果によって墓地へ送られたとき、墓地から特殊召喚できる!!」

 

アンブラル・マジシャン レベル4 攻撃1500

 

「さらに、墓地の《アンブラル・アイ》の効果!俺の墓地からアンブラルが特殊召喚されたとき、こいつを墓地から除外することで、デッキから新たなアンブラル1体を手札に加える。俺が手札に加えるのは《仮面剣闘士オーディン》!!」

三つ指の腕が地面から伸び、それに握られた赤い瞳が一瞬瞳を輝かせると、ベクターのデッキから彼が望んだカードが放出される。

そのカードをベクターが愉快そうな笑みをうかべ、翔太に見せる。

「ペンデュラムモンスター…おまけに、俺の《ペイルライダー》にそっくりじゃねえか」

「俺の、《ペイルライダー》だぁ?バーカいってんじゃねえよ、四騎士は俺のだ!!もっとも、もう用済みだけどよぉ。だから、紹介してやるぜ。俺の新たな四騎士をなぁ。俺は手札から《RUM-アンブラル・フォース》発動!俺のフィールドのアンブラルモンスター1体をランクが1つ高いアンブラルへとランクアップさせる。俺は《クラーマー》でオーバーレイ!!生者の名を刻みし書物を持つものよ、命を支配し、命に死をもたらせ!カオスエクシーズチェンジ!現れろ、《CX-仮面死天使アズラエル》!!」

《仮面審問官クラーマー》が上空に現れた紫のオーバーレイネットワークに飛び込んでいく。

衣が黒から白へと変わるものの、そこから浮かび上がる大量の目や耳、舌がすべてを塗りつぶしていく。

そして、銀の冠をかぶせられると再びフィールドに戻ってきた。

 

CX-仮面死天使アズラエル ランク5 攻撃2800

 

「さらに俺は手札から《アンブラル・フュージョン》を発動!こいつはアンブラル専用の融合魔法だ!!そして、《アンブラル・コロシアム》が存在する場合、デッキに存在するモンスター1体も融合素材にできる!!俺はデッキの《アンブラル・アンフォーム》とフィールドの《アンブラル・マジシャン》を融合!!2つの悪魔の影よ、今一つとなり、世界を闇で覆え!!融合召喚!!現れろ、《仮面騎士ジルドレ》!!」

2体の魔物が渦の中で溶け込み、中から血のような暗い赤色の鎧を身にまとった大剣の騎士がフィールドに出現する。

 

仮面騎士ジルドレ レベル8 攻撃3000

 

融合、エクシーズがフィールドに出現し、手札にはペンデュラムモンスター。

そして、チューナーがフィールドに残っているということはベクターがやることは一つ。

「俺は《アンブラル・コロシアム》の効果発動!アンブラルを融合召喚に成功した時、俺のフィールドに融合素材となったアンブラル1体と同じレベルと攻撃力を持つ《アンブラルトークン》1体を特殊召喚できる」

地面に黒い穴が出現し、その中から黒い液体が噴出してくる。

やがてそれが形を変え、《アンブラル・マジシャン》と似た姿へと変える。

 

アンブラルトークン レベル?→4 攻撃?→1500

 

「レベル4の《アンブラルトークン》にレベル3の《アンブラル・シンクロン》をチューニング。影が星空を食らうとき、見えざる矢が愚者を葬る。光無き闇へ落ちろ!!シンクロ召喚!現れろ、《仮面弓王レラジェ》!!」

急にその身を炎で包んだ《アンブラル・シンクロン》の体がチューニングリングへと変わり、その中に《アンブラルトークン》が消えていく。

黒い光が放たれると同時に出てきたのは赤いラインの入った黒い厚手のコートで、他の仮面の名を持つモンスターと同じく仮面で顔を隠した弓士が翔太に向けて弓を引く。

 

仮面弓王レラジェ レベル7 攻撃2400

 

「シンクロ召喚に成功したことで、《アンブラル・コロシアム》の効果発動!次の俺のターンのスタンバイフェイズ時まで、俺のフィールドのすべてのアンブラルの攻撃力を600アップ!」

 

仮面弓王レラジェ レベル7 攻撃2400→3000

仮面騎士ジルドレ レベル8 攻撃3000→3600

CX-仮面死天使アズラエル ランク5 攻撃2800→3400

 

「そして、墓地の《アンブラル・シンクロン》の効果発動!こいつを素材としてアンブラルシンクロモンスターのシンクロ召喚に成功した時、手札のアンブラル1体を特殊召喚できる。さあ、てめえも出ろ!!《仮面剣闘士オーディン》!!」

パカラ、パカラと馬の蹄の音が響き、コロシアムの扉が開かれる。

そこから現れたのは青白い馬に乗った、片目を眼帯で隠した骸骨の騎士で、右手には《魔装騎士ペイルライダー》と同じ光剣が握られていた。

 

仮面剣闘士オーディン レベル7 攻撃2500

 

「1ターンでてめえの四騎士が勢ぞろいかよ…!!」

「カッハッハッハッ!!ここまで順調に全部揃えることができて笑えるってモンだぜ!!これが、俺様の四騎士だぁ!!!」

天秤が揺れ、大剣を振るうと同時に空気が震える。

矢の殺気が翔太の胸や頭部に冷たい感覚を与え、青い馬の蹄が脳裏に響く。

「とまあ、これだけのことをしてしまったからー、俺様の手札0枚になっちゃったんだよねー。さーてさて、どうしますかねー…」

わざとらしく考えるふりをするベクターだが、明らかに視線は発動したペンデュラムゾーンのカードに向けられている。

「あ、ひらめいたー!というわけで俺は《アンブラル・ゲート》のペンデュラム効果を発動!!俺がRUMの効果でアンブラルのエクシーズ召喚に成功したターンに発動でき、このターンに発動したアンブラル魔法カードのカード名の数だけ、デッキからカードをドローする!俺様が発動したのは《RUM-アンブラル・フォース》、《アンブラル・フュージョン》、そして《アンブラル・コロシアム》!!よって、3枚ドロー!!ただーし、この効果を発動した次のターン、俺は通常のドローはできねえ上に、このターンの終わりまでデッキからカードを手札に加えることもできねえ!俺様はカードを1枚伏せ、ターンエンド!!」

 

ベクター

手札5→2

ライフ4000

場 仮面剣闘士オーディン レベル7 攻撃2500

  仮面弓王レラジェ(《アンブラル・コロシアム》の影響下) レベル7 攻撃3000

  仮面騎士ジルドレ(《アンブラル・コロシアム》の影響下) レベル8 攻撃3600

  CX-仮面死天使アズラエル(オーバーレイユニット2、《アンブラル・コロシアム》の影響下) ランク5 攻撃3400

  伏せカード1

  アンブラル・ゲート(青) ペンデュラムスケール0

  アンブラル・ガーディアン(赤) ペンデュラムスケール8

  アンブラル・コロシアム(フィールド魔法)

 

翔太

手札5

ライフ4000

 

「う、うぐ、うう…!!」

「翔太君!!」

うめき声を上げ始め、同時に痣が光り始めた翔太に伊織は彼の中で起こっている異変を感じた。

何もできず、想像することでしか彼に起こっている状況を把握できないことに歯がゆさを覚える中、ポンッという音とともに小さな煙が出る。

そして、その中からビャッコが飛び出す。

「ビャッコちゃん…?」

「キュイー!!」

 

「俺のターン!」

 

翔太

手札5→6

 

「お前が4つの召喚をしたっていうなら、俺もしてやるよ…。俺はスケール4の《魔装騎士ペイルライダー》をセッティング。そして、手札から速攻魔法《揺れる眼差し》を発動。ペンデュラムゾーンに存在するすべてのカードを破壊する」

発動されたばかりの《魔装騎士ペイルライダー》が消え去り、同時にベクターのペンデュラムゾーンの門と守り手も消え去る。

「ちっ…!」

「破壊されたカードは3枚。よって、お前に500のダメージを与える」

 

ベクター

ライフ4000→3500

 

「そして、俺はデッキから新たなペンデュラムモンスター、《魔装無頼リュウホウ》を手札に加える。そして、お前のフィールド魔法《アンブラル・コロシアム》を除外する」

「ちぃ…!」

《アンブラル・コロシアム》が消滅し、周囲に存在する観客たちもまた消えていく。

手傷を負わされただけでなく、あっさりとペンデュラムゾーンのカードもフィールド魔法も排除してきた翔太にベクターは舌打ちする。

「そして、俺は手札から永続魔法《魔装術書-エメラルド・タブレット》を発動。このカードは俺が魔装騎士の召喚に成功した時に効果を発動する。そして、俺はスケール3の《魔装無頼リュウホウ》とスケール10の《魔装覇王コウウ》でペンデュラムスケールをセッティング!」

酒の入った大きなひょうたんを左手に握り、右手の古代中国風の剣を手にした髭面の武人と、漆黒の馬にまたがり、重量のあるハルバードを軽々と右手だけで支える、《魔装無頼リュウホウ》とは対照的に若々しさの目立つ武人が現れ、ペンデュラムスケールが形成される。

ただ、やはりモチーフとなった2人が争い合った関係であるためなのか、にらみ合っているようにも見える。

「これで俺はレベル4から8までのモンスターを同時に召喚可能。来たれ、時の果てに眠りし英雄の魂。漆黒の魂と契約し、封印から解き放たん!ペンデュラム召喚!現れろ、《魔装騎士ペイルライダー》、《魔装近衛エモンフ》、《魔装術士スペンサー》」

五芒星が刻まれたシルクハットと仕込杖を手にし、顔を笑い顔の仮面で隠した燕尾服の男が《魔装騎士ペイルライダー》と《魔装近衛エモンフ》と共に現れ、ベクターに対して恭しく頭を下げた。

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

魔装近衛エモンフ レベル5 攻撃1000

魔装術士スペンサー レベル3 攻撃1000(チューナー)

 

「そして、《エメラルド・タブレット》の効果を発動。俺が魔装騎士のペンデュラム召喚に成功した時、デッキから魔装ペンデュラムモンスター1体を手札に加える。俺が手札に加えるのは《魔装槍士タダカツ》。そして、《エモンフ》の効果。このカードをエクシーズ素材とする場合、他のエクシーズ素材は手札の魔装モンスター1体としなければならない、俺はレベル5の《エモンフ》に手札のレベル5の《タダカツ》でオーバーレイ!万物を測りし漆黒の騎士よ、むさぼりし者たちに飢餓をもたらせ!エクシーズ召喚!!現れろ、《魔装騎士ブラックライダー》!!」

 

魔装騎士ブラックライダー ランク5 攻撃2800

 

「《エメラルド・タブレット》の効果。俺が魔装騎士のエクシーズ召喚に成功した時、相手フィールドのモンスター1体の攻撃力をターン終了時まで半分にする!」

「《ジルドレ》は相手のカード効果を受けねえ!半分にするなら、他のモンスターにするんだな」

「なら俺は《アズラエル》の攻撃力を半分にする!!」

 

CX-仮面死天使アズラエル ランク5 攻撃3400→1700

 

「そして、俺は《スペンサー》の効果を発動。俺のペンデュラムゾーンに存在する魔装モンスター1体を特殊召喚できる。俺は《リュウホウ》を特殊召喚する!」

《魔装術士スペンサー》がシルクハットを上空に向けて投げ、その中に《魔装無頼リュウホウ》が吸い込まれていく。

それから若干のタイムラグの後でシルクハットの中から《魔装無頼リュウホウ》が酒を飲みながら飛び出してくる。

 

魔装無頼リュウホウ レベル5 攻撃2100

 

「《魔装無頼リュウホウ》の効果。このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、デッキからレベル3以下の魔装モンスター1体を効果を無効にして特殊召喚できる。俺はレベル1の《魔装亀テンセキ》を特殊召喚する」

 

魔装亀テンセキ レベル1 攻撃0

 

「レベル1の《テンセキ》とレベル5の《リュウホウ》にレベル3の《スペンサー》をチューニング。勝利と支配をもたらす第2の騎士よ、終戦を告げるその矢で敗者を鎮めよ!シンクロ召喚!《魔装騎士ホワイトライダー》!!」

 

魔装騎士ホワイトライダー レベル9 攻撃3100

 

「魔装騎士のシンクロ召喚に成功したことで、《エメラルド・タブレット》の効果を発動!俺のフィールドに《魔装書トークン》1体を特殊召喚する」

古ぼけた書物がフィールドに置かれ、ページが開くと同時にその中から五芒星が顔面に刻まれた白い小人が現れる。

 

魔装書トークン レベル1 攻撃0

 

「そして、《魔装覇王コウウ》のペンデュラム効果。俺のフィールドに魔装モンスターが2体以上存在し、片方のペンデュラムゾーンにカードがない時、エクストラデッキに存在する魔装ペンデュラムモンスター1体をペンデュラムゾーンに置くことができる。俺は再び《リュウホウ》をペンデュラムゾーンに置く。そして、《リュウホウ》のペンデュラム効果発動。俺のフィールドに存在するモンスターを素材として、魔装モンスターの融合召喚を行うことができる。その時、俺のペンデュラムゾーンに存在するカードも素材にできる。俺は《魔装書トークン》、《リュウホウ》、《コウウ》を融合。書物より作られし命よ、覇王を打ち破りし無頼よ、刃で天下を治めし英雄よ、魔導の力によりて、今1つとならん。融合召喚!真紅の騎士、《魔装騎士レッドライダー》!!」

 

魔装騎士レッドライダー レベル8 攻撃3000

 

ベクターと同じように、翔太のフィールドに四騎士すべてが並び立ち、互いに互いの合わせ鏡となりうるモンスターに向けて武器を向ける。

己の存在をかけたこの戦いに並び立つ存在は決していない。

「《エメラルド・タブレット》の効果。魔装騎士の融合召喚に成功した時、俺はデッキからカードを1枚ドローする。そして、《レッドライダー》は俺のターンにモンスターの特殊召喚に成功したバトルフェイズ終了時まで、攻撃力が1000アップする」

 

魔装騎士レッドライダー レベル8 攻撃3000→4000

 

「なーるほど、なら俺は《アズラエル》の効果を発動!こいつがアンブラルエクシーズモンスターをエクシーズ素材としている場合、バトルフェイズ開始時にオーバーレイユニットを1つ取り除くことで、相手の攻撃対象は俺が決めることができる。さあ…まずはどのモンスターで戦闘を行うかを選びな!!」

《CX-仮面死天使アズラエル》の手から離れた天秤がフィールドの中央に置かれ、同時にそれぞれの四騎士を模した駒が左右の天秤に置かれていく。

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・アンブラル・ウィル・オ・ザ・ウィスプ

 

「あーでもでも、《レッドライダー》の攻撃力4000には俺様の四騎士、どれも勝てそーにないんスよねー。さーてさて、どう戦ってもらいましょーかー…あ、そうだぁ!!《レッドライダー》には《オーディン》と戦ってもらいましょー!!」

「何!?」

《魔装騎士レッドライダー》の大剣と《仮面剣闘士オーディン》の光剣がぶつかり合う。

《仮面剣闘士オーディン》の攻撃力は《魔装騎士レッドライダー》を下回り、おまけに光剣を持つ手が利き手の右手のみであるにもかかわらず、なぜか互角に刃をぶつけあう。

「へへへ、《オーディン》は自分よりも高い攻撃力を持つ相手モンスターと戦闘を行うとき、ダメージステップ終了時まで互いの攻撃力を入れ替えることができるのさあ!!」

 

仮面剣闘士オーディン レベル7 攻撃2500→4000(ダメージステップ終了時まで)

魔装騎士レッドライダー レベル8 攻撃4000→2500(ダメージステップ終了時まで)

 

「くっ!!」

「さあ、迎撃しろぉ!!《オーディン》!!」

《魔装騎士ペイルライダー》とは異なる意味での死神といえる《魔装剣闘士オーディン》の光剣が剛力を誇るはずの《魔装騎士レッドライダー》の胴体を両断する。

両断された騎士が爆発し、衝撃波が翔太を襲う。

「く、そぉ!!」

 

翔太

ライフ4000→2500

 

「《エメラルド・タブレット》の効果…。俺の魔装騎士が相手によってフィールドから離れた場合、このカードは破壊される…!!」

《魔装術書-エメタルド・タブレット》が消えるが、四騎士の召喚は既に成し遂げていることから既に役目は果たしているといえるだろう。

だが、残る3体の魔装騎士では今のベクターの四騎士を倒すことはできない。

「俺は手札から魔法カード《ペンデュラム・ホルト》を発動。俺のエクストラデッキにペンデュラムモンスターが3種類以上存在するとき、デッキからカードを2枚ドローできる。そして、俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド。同時に、《アンブラル・コロシアム》の効果は終わる」

「ここで俺は《アンブラル・ガーディアン》のペンデュラム効果を発動!このカードが相手によってフィールドから離れたターン終了時、デッキから新たなアンブラルをペンデュラムゾーンに置く。俺が置くのはスケール4の《アンブラル・マリオネット》!!」

青黒い人型のマリオネットが地面に落ちると、そのまま上空へと飛び、ペンデュラムスケールを生み出す。

 

 

ベクター

手札2

ライフ4000

場 仮面剣闘士オーディン レベル7 攻撃2500

  仮面弓王レラジェ レベル7 攻撃3000→2400

  仮面騎士ジルドレ レベル8 攻撃3600→3000

  CX-仮面死天使アズラエル(オーバーレイユニット1) ランク5 攻撃3400→2800

  アンブラル・マリオネット(青) ペンデュラムスケール4

  伏せカード1

 

翔太

手札6→0

ライフ2500

場 魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

  魔装騎士ブラックライダー(オーバーレイユニット2) ランク5 攻撃2800

  魔装騎士ホワイトライダー レベル9 攻撃3100

  伏せカード2

 

「キヒヒヒ…俺様のターン!!《アンブラル・ゲート》の効果の代償として、俺はこのドローフェイズにカードをドローできねえ。だが、俺様は手札から魔法カード《仮面舞踏会》を発動!俺のフィールドに存在するマスカレイドどもの種類の数だけ、俺様はデッキからカードをドローする!すなわち!!俺様はカードを4枚ドローだぁ!!」

「なら…俺もドローさせてもらうぜ。罠発動!《逆転の明札》。相手がドローフェイズ以外にデッキからカードをドローした時、もしくはデッキからカードを手札に加えたときに俺の手札が相手よりも少ない場合に発動でき、お前の手札の数だけ俺はデッキからカードをドローする」

これで翔太とベクターの手札は同じ5枚となる。

だが、どんなに手札を増やしたとしても、自分のターンがまわってこない限りあまり意味を持たない。

「ま…せっかくドローしたカードは無駄に終わるけどなぁ!!俺は手札から装備魔法《仮面魔槍》を《アズラエル》に装備!!」

天秤を手元に戻した《CX-仮面死天使アズラエル》の右手に《CNo.101S・H・Dark・Knight》の槍を模した赤黒い槍が出現する。

槍を手にしたと同時に、穂先が震え、右腕だけが甲冑で包まれる。

「こいつを装備したモンスターの攻撃力は1000アップし、装備モンスターが攻撃するとき、相手は魔法・罠カードを発動できねえ!」

 

CX-仮面死天使アズラエル ランク5 攻撃2800→3800

 

「そして、《アズラエル》のオーバーレイユニットになっている《クラーマー》の効果!こいつをオーバーレイユニットとしている《アズラエル》は相手フィールドのすべてのモンスターに1回ずつ攻撃できる!」

今の翔太のフィールドに残っている3体の騎士はいずれも攻撃力は《CX-仮面死天使アズラエル》を下回る。

この1体によってモンスターが全滅し、残りのベクターの騎士によるダイレクトアタックによってライフをすべて失うことになる。

《CX-仮面死天使アズラエル》の頭上に手にしている槍の幻影が次々と出現していく。

「バトルだ!《アズラエル》!!あいつのフィールドのすべてのモンスターを殺せぇ!!」

ベクターの命令と共に槍の雨が翔太のフィールドの3体の騎士に襲い掛かる。

貫かれた3体の騎士はなすすべもなくフィールドから消え、残った槍は容赦なく翔太を襲う。

「ぐおおおおお!!ふざけるなぁ!!俺は手札の《魔装剣姫バーイー》の効果発動!俺のフィールドの魔装騎士が攻撃対象となるとき、手札のこのカードを墓地へ送ることで、このターン、俺の魔装騎士たちは戦闘では破壊されず、俺への戦闘ダメージは半分になる!」

五芒星が刻まれた赤いマントで身を包み、タルワールと丸盾を手にした褐色の女性がフィールドに出現し、タルワールの剣先で円を作ると翔太たちを障壁が包み、彼女は姿を消す。

槍は障壁に阻まれるもやがて突破し、翔太を襲い、そのうちの1本が翔太の左腕をかすめる。

「く、うう!!」

 

翔太

ライフ2500→2150→1650→1000

 

「そして、戦闘を行った《ペイルライダー》の効果。戦った相手モンスターを破壊する!消えろ、《アズラエル》!!」

鎧にひびが入りながらも生き延びた《魔装騎士ペイルライダー》が刺さったまま残っている幻槍を手にし、それを《CX-魔装死天使アズラエル》に向けて投げる。

槍を受けた《CX-魔装死天使アズラエル》はなぜか笑みをうかべ、その後で消滅する。

「しぶてえ野郎だ…でもよぉ、俺にはまだ3体の騎士がいる。そして、《ジルドレ》は1ターンに2度攻撃できる。もうちょっとだけ、てめえのライフを削らせてもらう!!」

大剣を振るう《仮面騎士ジルドレ》と天秤から放つ波動でそれを受け止める《魔装騎士ブラックライダー》。

だが、攻撃の余波は翔太を襲い、翔太の命を削っていく。

 

翔太

ライフ1000→900→800

 

「さらに、《オーディン》で《ブラックライダー》を攻撃!!ダメージステップ開始と同時に《オーディン》の効果で、《オーディン》と《ブラックライダー》の攻撃力をダメージステップ終了時まで入れ替える!!」

《仮面剣士オーディン》の剣と《魔装騎士ブラックライダー》の天秤がぶつかり合い、その衝撃もまた翔太を襲った。

 

仮面剣士オーディン レベル7 攻撃2500→2800(ダメージステップ終了時まで)

魔装騎士ブラックライダー ランク5 攻撃2800→2500(ダメージステップ終了時まで)

 

翔太

ライフ800→650

 

「ヒヒヒ…ライフを失うたびに感じるだろ?お前という存在が消えていくのが…」

嘲り笑うベクターの言葉に対して、左腕の血をぬぐった右手首を見た翔太はそれを反論できない。

体が透明がかった状態になっており、それは翔太のデッキもフィールドに残っている騎士たちも同じだ。

「元々、てめえもてめえのカードもこの世界には存在しねえ、偶発的に生まれただけのイレギュラーだ。ライフが0になったところで、てめえは本来あるべき姿に戻るだけ。どこにも存在しねえ、『無』に還るだけだ!」

「ふ…ざけんなよ…そんなこと、決める資格はてめえには…ねえ…」

「それをいつまで言ってられるかな?バトルフェイズ終了と同時に、俺は手札から魔法カード《アンフェアー・ジャッジ》を発動。このターンのバトルフェイズ中に相手モンスターを戦闘で破壊できなかった時、俺のフィールドのモンスター1体の攻撃力よりも低い攻撃力または守備力を持つ相手フィールドのモンスターをすべて破壊する。俺は《ジルドレ》を選択。攻撃力3000よりも低い攻撃力または守備力のモンスターはすべて消し飛ぶ!!」

「だが、《ホワイトライダー》は魔装装備カード以外のカード効果を受けない!!」

再び動き出した《仮面騎士ジルドレ》が体験を横にふるうと同時に衝撃波が翔太のフィールドを襲い、それを受けた《魔装騎士ペイルライダー》と《魔装騎士ブラックライダー》が消滅する。

翔太はダメージを受けることがなかったものの、これでフィールドに残ったのは《魔装騎士ホワイトライダー》1体のみ。

「俺は罠カード《魔装光》を発動!俺のフィールドの魔装モンスターが相手によって破壊されたとき、手札の魔装モンスター1体を特殊召喚できる!俺は《魔装楯タカモリ》を特殊召喚」

 

魔装楯タカモリ レベル4 守備2000(チューナー)

 

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

ベクター

手札2

ライフ4000

場 仮面剣闘士オーディン レベル7 攻撃2500

  仮面弓王レラジェ レベル7 攻撃2400

  仮面騎士ジルドレ レベル8 攻撃3000

  アンブラル・マリオネット(青) ペンデュラムスケール4

  伏せカード2

 

翔太

手札0→4

ライフ650

場 魔装騎士ホワイトライダー レベル9 攻撃3100

  魔装楯タカモリ レベル4 守備2000(チューナー)

 

「嘘…何、これ…」

翔太のライフが危機的状況になったことへの影響は現実にも出始め、伊織ももう翔太が危ないことを認識せざるを得ない状態となっていた。

翔太の体がまるでガラス人形になっていくかのように透明になっていて、体温も低下しつつある。

どうにかしたいと思う伊織だが、彼女にもどうすればいいのかわからない状態だ。

そんな中、翔太の手を見ていたビャッコが急に伊織の頭の上に乗る。

「え、ええ!?ビャッコちゃん、どうしたの!?」

「キュイ、キュー---!!」

頭に葉を乗せ、何かを唱えると伊織とビャッコが光に包まれ、光ごと翔太の痣の中に吸い込まれていった。

 

「はあ、はあ…俺の、ターン!!」

 

翔太

手札4→5

 

「俺は…《魔装妖ビャッコ》を召喚」

煙と共にポンと出現する《魔装妖ビャッコ》だが、いつもの精霊としてではなく明確にソリッドビジョンでの出現のせいなのか、ただ出現するだけで何も反応を見せる様子はない。

 

魔装妖ビャッコ レベル3 攻撃400

 

「レベル3の《ビャッコ》にレベル4の《タカモリ》をチューニング!可憐なる妖魔よ、その秘められし妖の力を解放せよ。シンクロ召喚!《魔装妖キュウビ》!!」

 

魔装妖キュウビ レベル7 攻撃2000

 

「そして、シンクロ素材となった《ビャッコ》の効果により、俺はデッキからカードを1枚ドローする。そして、俺は手札から魔法カード《狐竜への進化》を発動。俺のフィールドに《キュウビ》が存在するときに発動でき、そのモンスターはこのターン、相手フィールドに存在するすべてのモンスターに1回ずつ攻撃できる。こいつでてめえがやってきたことをやり返させてもらう!!」

発動と同時に、《魔装妖キュウビ》の姿が徐々に竜を模したものへと変わっていき、1つ1つの尻尾に狐を模した炎が宿る。

「俺のフィールドにはまだ《ホワイトライダー》が存在し、俺の攻撃の選択権を奪った《アズラエル》はもういない。てめえのフィールドを蹂躙してやる!まずは《ホワイトライダー》で《レライエ》を攻撃!」

竜と化した《魔装妖キュウビ》の尻尾から放たれた炎が光線へと変化し、上空で待機する中で《魔装騎士ホワイトライダー》の矢が《仮面弓士レライエ》を撃ちぬく。

胸部に大穴が空いた《仮面弓士レライエ》が消滅し、矢はベクターの背後に床に当たると同時にその場所にクレーターが出来上がった。

 

ベクター

ライフ4000→3300

 

「ちぃ…なら、俺様は墓地へ送られた《レライエ》の効果を発動!こいつが墓地へ送られたターン、俺が受ける戦闘ダメージは半分になる!!」

「だが、これで《レライエ》はいねえ…。次は《キュウビ》で《ジルドレ》を攻撃!!」

上空で待機していた光線が雨のように《仮面騎士ジルドレ》を襲う。

光線を受けて炎上する《仮面騎士ジルドレ》は灰と化した。

「こいつが戦闘を行うとき、ダメージステップ終了時まで戦う相手モンスターの攻撃力を0にし、効果も無効にする!」

 

魔装騎士ジルドレ レベル8 攻撃3000→0(ダメージステップ終了時まで)

 

ベクター

ライフ3300→2300

 

「続けて、《オーディン》にも攻撃だ!!《オーディン》の攻撃力を入れ替える効果も、こちらから攻撃したというなら、意味がねえだろ!!」

上空に残っている光線が《仮面剣士オーディン》を襲うが、《仮面剣士オーディン》は光線を光剣で何度も斬って抵抗する。

光線では無理だと判断したのか、《魔装妖キュウビ》が口から紫のブレスを放ち、ブレスの中で《オーディン》が消滅し、ブレスはそのままベクターを襲う。

「ぐおおおお!!でもよぉ、《オーディン》はペンデュラムモンスターだ。破壊されたとき、エクストラデッキに行く!!」

 

魔装剣士オーディン レベル7 攻撃2500→0(ダメージステップ終了時まで)

 

ベクター

ライフ2300→1300

 

「はあはあはあ…これで、てめえのモンスターは…全滅、だな…」

ベクターのフィールドからモンスターはいなくなり、翔太のフィールドに2体のモンスターが残る。

彼の残りの手札、そしていまだに発動していない2枚の伏せカードと《アンブラル・マリオネット》のペンデュラム効果。

警戒すべきものは多いが、それでもベクターを追い詰めることができた。

目の前にいるベクターもまた、翔太と同じように透明になりつつあるのだから。

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

ターン終了と同時に、《魔装妖キュウビ》は元の姿に戻った。

 

 

ベクター

手札2

ライフ1300

場 アンブラル・マリオネット(青) ペンデュラムスケール4

  伏せカード2

 

翔太

手札5→4

ライフ650

場 魔装騎士ホワイトライダー レベル9 攻撃3100

  魔装妖キュウビ レベル7 攻撃2000

  伏せカード1

 

「へ、へへ…まだだ。まだまだ勝負はこれから、だぜ…?」

大きなダメージを負いながらも、ニヤリと笑うベクターの目に同じく透明になりつつある翔太が映る。

自らが肉体と力を取り戻すためのコマでしかないはずの彼がここまでの力を発揮したのはベクターも想定外で、己の想定を外れた行動を繰り返してきた彼らと姿が重なる。

だが、そんな存在が自分の中から生まれたことが腹立たしい。

「ほぉ…ここで、オーディエンスが登場するみたいだぜ?」

「オーディエンスだと…?」

翔太の背後に翔太の痣と同じ形に裂け目が出現し、そこからビャッコと伊織が飛び出してくると同時に裂け目が消滅する。

「伊織!?何しに来た?!」

「翔太君!これって…それに、なんで透明に!?」

「…こいつとのデュエルが原因だ。このデュエルに負けたら…俺は消える」

「え…嘘…」

何か悪い冗談だと思いたかった伊織だが、翔太とベクターの今の状態と翔太の声色から、それが本気の言葉だということを感じてしまう。

「初めまして、永瀬伊織ちゃーん。俺様の人形が世話になったなあ」

「あなたのことは剣崎さんと凌牙さんから聞いてる。翔太君は人形じゃない!!」

「いいや、人形だね!記憶なんて最初からねえただのイレギュラー!だからよぉ…これから見せてやるぜ。そんなこいつが消える姿を!!俺様のターン!!」

 

ベクター

手札2→3

 

「永続罠《アンブラル・ゾーク・ロード》発動、永続罠《アンブラル・ダークネス・ロード》を発動」

2枚の永続罠が発動するとともに、ベクターの背後には筋肉質な黒い肉体に赤いマントのような大きな翼をもつ悪魔、そして黒いローブで身を包み、5枚の羽根を背中につけた、ヤギのドクロと人間の外骨格でできたような骸骨が現れる。

「《ゾーク・ロード》は俺の墓地にアンブラルモンスターが5種類以上存在するときに発動でき、《ダークネス・ロード》はアンブラル融合モンスターが存在する場合に発動できる。そして、アンブラルシンクロモンスターが墓地に存在する場合、手札から永続魔法《アンブラル・ゾーン・ロード》を発動できる」

続けて出現するのは仮面の人間が乗る、白いアンモナイトのような機械が出現する。

「まだだぜ…アンブラルエクシーズモンスターが存在することにより、手札から永続魔法《アンブラル・サウザンド・ロード》を発動」

発動と共に、ベクターの体に黒い瘴気が発生し、それが彼の体を包んでいく。

1枚1枚のロードが発動するとともに、どんどんベクターから感じるプレッシャーが強まっていき、翔太の体が震える。

「ベクター…てめえ、何を!?」

「へへへ…おめえに殺された四騎士たちが怒っているんだぜ。そして、俺は《アンブラル・マリオネット》のペンデュラム効果を発動!こいつは俺のペンデュラムゾーンに存在するとき、このカードを破壊することで、エクストラデッキに存在するアンブラルペンデュラムモンスターをペンデュラムゾーンに置くことができる。俺は《仮面剣士オーディン》を置く」

《アンブラル・マリオネット》がゴキゴキと関節部が嫌な音を鳴らすとともに、腹部と頭部にひびが入る。

それを始まりとして粉々に砕け散るとともに、《仮面剣士オーディン》が姿を現し、

発動していた4枚のロードがオレンジ、紫、白、黒の光の柱を生み出す。

「俺は、この5柱の光を供物とし、このカードを特殊召喚する!!現れろ、《仮面暗黒帝ベクター》!!」

5つの光の柱が黒い瘴気に包まれているベクターに吸収されていき、一つとなると同時に嵐のように瘴気が吹き飛んでいく。

その中から現れたのは6枚の巨大な黒い翼を宿した人型のドン・サウザンドというべき姿。

だが、髪は灰色となっており、右手甲に《CX-仮面死天使アズラエル》、左手甲に《仮面弓士レライエ》、右足脛部に《仮面騎士ジルドレ》、左足脛部に《仮面剣士オーディン》のレリーフが埋め込まれていた。

 

仮面暗黒帝ベクター レベル12 攻撃0

 

「こいつこそが…てめえがこれまで集めてくれた力の結晶だ…。だからよぉ、こいつでとどめを刺してやるぜ」

《仮面暗黒帝ベクター》のオッドアイが光り、同時に右手には赤い水晶でできた剣が出現する。

そして、ほんの一瞬姿を消したかに見えた刹那、その姿が翔太の目の前に現れる。

「バトルだ…それとよ、おめえが今発動しようと思っている伏せカード…こいつには無意味だぜ」

「翔太君!!」

ズブリ、と嫌な音が響くとともに翔太の腹部を剣が貫いた。

同時に翔太のライフが0となり、彼の体が急速に透明になっていく。

痛みに耐えながら、翔太の視線が伊織に向けられ、彼女に向けて左手を伸ばす。

まだ透明になり切っていない左手の痣から放たれた光が伊織の手へと飛び、光は1枚のカードへと変化する。

「この、カードって…」

「悪い…な…」

その言葉を最後に急速に全身が透明となった翔太の体が粉々に砕け散った。

そして、彼だった欠片はベクターに吸収されていった。

「う…そ…」

「ちっ…妙なことをしやがって。でも、まあいいぜ。こいつにはもう用はねえ。てめえが言っている秋山翔太って野郎は今…死んだ!!」

 

 

 

アンブラル・コロシアム

フィールド魔法

(1):このカードがフィールドに存在する限り、自分は「シャイニング」「アンブラル」以外のモンスターを召喚・特殊召喚できない。この効果は無効化されない。

(2):このカードの発動処理として、自分はデッキから「アンブラル」モンスター1体を手札に加える。

(3):自分フィールドに以下の種類の「アンブラル」モンスターが特殊召喚されたとき、それぞれの効果を1ターンに1度ずつ発動できる。

●融合:融合素材となった「アンブラル」モンスター1体と同じ攻撃力とレベルを持つ「アンブラルトークン」1体を特殊召喚する。

●S:次の自分スタンバイフェイズ時まで、自分フィールドの「アンブラル」モンスターの攻撃力が600アップする。

●X:自分はデッキから「アンブラル」魔法カード1枚を手札に加える。

●P:自分はデッキからカードを2枚ドローし、手札1枚を墓地へ捨てる。

 

アンブラルトークン

レベル? 攻撃? 守備0 トークン 闇属性 悪魔族

「アンブラル・コロシアム」の効果で特殊召喚される。

このカードのレベル・攻撃力は融合素材となった「アンブラル」モンスター1体の元々の数値と同じになる。

 

仮面審問官(マスカレイド・インクイジター)クラーマー

ランク4 攻撃2500 守備2000 エクシーズ 闇属性 魔法使い族

「アンブラル」レベル4モンスター×2

このカードはルール上、「アンブラル」モンスターとして扱う。

(1):1ターンに1度、X素材を1つ取り除くことで発動できる。自分はデッキからカードを1枚ドローし、ソローしたカードを公開する。その後、相手は公開したカードと同じ種類(モンスター・魔法・罠)のカードを1枚墓地へ送る。この効果で相手がカードを墓地へ送ることができなかった場合、相手は1000ダメージを受ける。

(2):このカードをX素材とした闇属性Xモンスターは以下の効果を得る。

●このカードは相手フィールドに存在するモンスターに対して1回ずつ攻撃できる。

 

アンブラル・マジシャン

レベル4 攻撃1500 守備0 効果 闇属性 悪魔族

このカード名の(2)の効果はデュエル中1度だけ発動できる。

(1):1ターンに1度、自分フィールドの「アンブラル」モンスター1体を対象に発動できる。ターン終了時まで、このカードのレベルを対象としたモンスターのレベルと同じにする。

(2):このカードが「アンブラル」Xモンスターの効果によって墓地へ送られたときに発動できる。墓地に存在するこのカードを表側攻撃表示で特殊召喚する。

 

アンブラル・アイ

レベル1 攻撃0 守備0 効果 闇属性 悪魔族

このカード名のカードの効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分の墓地に存在する「アンブラル」モンスターが特殊召喚されたとき、墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。自分はデッキから「アンブラル」モンスター1体を手札に加える。

 

RUM-アンブラル・フォース

通常魔法カード

(1):自分フィールドに存在する「アンブラル」Xモンスター1体を対象に発動できる。EXデッキからそのモンスターよりもランクが1つ高い「アンブラル」Xモンスター1体をそのカードの上に重ね、X召喚する。

 

アンブラル・フュージョン

通常魔法カード

(1):自分の手札・フィールドから「アンブラル」融合モンスターによって決められた「アンブラル」融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。その時、自分のデッキの「アンブラル」モンスター1体を墓地へ送り、融合素材とすることもできる。

 

アンブラル・シンクロン

レべル3 攻撃1300 守備0 チューナー 闇属性 悪魔族

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードの召喚に成功した時、自分フィールドに他にモンスターが存在しない場合、自分の墓地に存在するレベル4以下の「アンブラル」モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを表側攻撃表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化され、攻撃力は0となる。

(2):このカードをS素材として「アンブラル」SモンスターのS召喚に成功した時、自分の手札に存在する「アンブラル」モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。

 

仮面騎士(マスカレイド・ナイト)ジルドレ

レベル8 攻撃3000 守備0 融合 闇属性 戦士族

「アンブラル」モンスター2体

このカードは「アンブラル・フュージョン」の効果でのみEXデッキから特殊召喚できる。

このカードはルール上、「アンブラル」モンスターとして扱う。

(1):このカードは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃できる。

(2):このカードがこのカードが守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ戦闘ダメージを与える。

 

アンブラル・ゲート

レベル1 攻撃0 守備0 闇属性 岩石族

【Pスケール:青0/赤0】

このカード名のカードのP効果はデュエル中1度だけ発動できる。

(1):自分が「RUM」の効果でによって「アンブラル」XモンスターのX召喚に成功したターン、自分の手札が0枚の場合に発動できる。このターンに発動した「アンブラル」魔法カードのカード名1つにつき1枚、自分はデッキからカードをドローする。この効果を発動した次の自分ドローフェイズ時、自分はカードをドローできない。また、発動後、ターン終了時まで自分はカードの効果でデッキのカードを手札に加えることができない。

【モンスター情報】

千の力を持つ神が手にした4つの門。主を失った門は今、暗黒に染まり、新たな主を招き入れる。

 

アンブラル・ガーディアン

レベル1 攻撃0 守備0 闇属性 悪魔族

【Pスケール:青8/赤8》

このカード名のカードのP効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):Pゾーンに存在するこのカードが相手によってフィールドから離れたターン終了時に発動できる。デッキから「アンブラル」Pカード1枚を自分Pゾーンに置く。この効果でフィールドに置かれたカードは次の自分ターン終了時まで破壊されない。

【モンスター情報】

4つの門を守る役目を与えられるはずだった守り手。完成せず、放置された存在を暗黒は見逃さなかった。

 

 

魔装術書-エメラルド・タブレット

永続魔法カード

このカードは自分フィールドに1枚しか存在できない。

(1):自分が以下の種類の「魔装騎士」モンスターの特殊召喚に成功した時、それぞれの効果を1ターンに1度のみ使用できる。

●Pモンスター:デッキから「魔装」Pモンスター1体を手札に加える。

●Xモンスター:相手フィールドのモンスター1体の攻撃力をターン終了時まで半分にする。

●Sモンスター:自分フィールドに「魔装書トークン」1体を特殊召喚する。

●融合モンスター:自分はデッキからカードを1枚ドローする。

(2):自分フィールドに存在する「魔装騎士」モンスターが相手によってフィールドから離れたときに発動する。フィールド上に存在するこのカードは破壊される。

 

仮面舞踏会(マスカレイド・パーティー)

通常魔法カード

このカード名のカードは1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールドに存在する「マスカレイド」モンスターの種類の数だけ、自分はデッキからカードをドローする。

 

魔装無頼リュウホウ

レベル5 攻撃2100 守備1000 地属性 戦士族

【Pスケール:青3/赤3】

このカード名の(2)のP効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。

(2):自分メインフェイズに発動できる。「魔装」融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを自分フィールドから墓地へ送り、その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。その際、自分のPゾーンに存在する融合素材モンスターも融合素材に使用できる。

(2):

【モンスター効果】

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、自分のデッキに存在するレベル3以下の「魔装」モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールドに表側攻撃表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。

 

魔装覇王コウウ

レベル8 攻撃2800 守備2500 風属性 戦士族

【Pスケール:青10/赤10】

このカード名の(2)のP効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。

(2):自分フィールドに「魔装」モンスターが2体以上存在し、もう片方の自分Pゾーンにカードがない場合に発動できる。EXデッキに存在する「魔装」Pモンスター1体をPゾーンに置く。

【モンスター効果】

(1):このカードは戦闘では破壊されない。

(2):このカードが戦闘を行うとき、自分フィールドに他にモンスターが存在しない場合に発動できる。相手フィールドのカードを1枚破壊する。

 

魔装剣姫バーイー

レベル6 攻撃2200 守備0 地属性 戦士族

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドに存在する「魔装騎士」モンスターが相手モンスターの攻撃対象となった時、手札に存在するこのカードを墓地へ捨てることで発動できる。このターン、自分フィールドに存在する「魔装騎士」モンスターは戦闘では破壊されず、戦闘で発生する自分へのダメージは半分になる。

(2):自分フィールドにモンスターが存在しないとき、墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。自分の墓地に存在する「魔装騎士」モンスター1体を自分フィールドに特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターは次の相手ターン終了時まで戦闘では破壊されない。

 

仮面魔槍(マスカレイド・マジック・スピア)

装備魔法カード

「マスカレイド」モンスターのみ装備可能。

(1):装備モンスターの攻撃力が1000アップする。

(2):装備モンスターが攻撃するとき、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。

 

アンフェアー・ジャッジ(アニメオリカ・調整)

通常魔法カード

(1):自分バトルフェイズ時に相手フィールドのモンスターを戦闘で破壊できなかった場合、そのターンのメインフェイズ2に自分フィールドのモンスター1体を対象に発動できる。相手フィールドに存在するそのモンスターの攻撃力の数値よりも低い攻撃力または守備力の数値を持つモンスターをすべて破壊する。

 

仮面弓士(マスカレイド・アーチャー)レライエ

レベル7 攻撃2400 守備0 シンクロ 闇属性 戦士族

「アンブラル」チューナー+チューナー以外の闇属性モンスター1体以上

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

このカードはルール上、「アンブラル」モンスターとしても扱う。

(1):このカードは相手のカード効果を受けない。

(2):このカードが墓地へ送られたときに発動できる。ターン終了時まで自分が受ける戦闘ダメージが半分になる。

 

狐竜への進化

通常魔法カード

(1):自分フィールドに「魔装妖キュウビ」が存在するメインフェイズ1に発動できる。このターン、そのモンスター1体は1度のバトルフェイズ中に相手フィールドに存在するモンスターすべてに1回ずつ攻撃できる。

 

仮面剣士(アンブラル・ソードマン)オーディン

レベル7 攻撃2500 守備2100 闇属性 戦士族

【Pスケール:青5・赤5】

(1):自分フィールド・墓地に存在する「アンブラル・ゾーク・ロード」「アンブラル・ダークネス・ロード」「アンブラル・ゾーン・ロード」「アンブラル・サウザンド・ロード」1枚ずつとPゾーンに存在するこのカードを除外することで発動できる。手札・デッキ・墓地から「仮面暗黒帝ベクター」を特殊召喚する。

【モンスター効果】

(1):このカードが相手モンスターと戦闘を行うダメージステップ開始時、相手モンスターの攻撃力がこのカードを上回っている場合に発動できる。ダメージステップ終了時までお互いのモンスターの攻撃力を入れ替える。



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第131話 再起

閉じられた瞼に白くて柔らかな光がわずかに差し込む。

柔らかな布団に包まれた、次元戦争が始まってからは味わったことのない、普段なら当たり前の暖かな感覚。

違いがあるとするなら、体中からひどく感じる疲れで、まるでそこかしこに鉛のついた枷をつけられているような、そんな感じだ。

ガチャリと扉が開く音が耳に聞こえる。

「こら、遊矢。いつまで寝てるんだい?早く起きなきゃ、塾に遅れるよ」

「母さん…」

「父さんのようなエンターテイナーになるんだろう?」

母親の、いつも通りのおせっかいが懐かしい。

いつもなら、これから起きて洋子が作ってくれた朝ごはんを食べて、遊勝塾へ行く。

そこで柚子のハリセンツッコミを受け、修造の暑苦しい言葉を聞き、時折来る権現坂とデュエルをする。

その当たり前が始まる。

だが、遊矢はゴロリと洋子に背中を向ける。

「いいんだ…寝かせてくれよ、母さん…」

「どうして?何かあったのかい?」

「なんでもないよ…もう、どうでもいい…。もう、起こさないでくれよ…」

だが、もうその当たり前の日々へ戻ることなどできない。

ペンデュラム召喚を初めて使ったときから…いや、遊勝が失踪してから?

そのどちらでもなく、榊遊矢としてこの世の生を受けたときからとっくにこの道は決まっていた。

次元戦争がはじまり、それを止めるためにランサーズとして異世界へ飛び、その中で知った、かつての自分であるズァーク。

ズァークとして、世界を破滅させ、そしてこの次元戦争の原因を生み出してしまった。

その罪深い自分はもう父親のようなエンターテイナーになるなど、口が裂けても言えない。

望むのはただ、こうして眠り、すべてを終わらせること。

眠ってさえいれば、もう何もする必要などなく、ただ痩せ枯れていき、やがて死んでいく。

それが今の遊矢の望みとなっていた。

 

「はあはあはあ…ウィンダ、これで…何匹、倒した…?」

「えっと…多分、20だと思うよ…ユウ…」

甲板には傷だからの侑斗とウィンダ、そして零児達の姿があり、その周囲には数多くの小型の《覇王龍ズァーク》というべきモンスターたちが存在していた。

アカデミアに陣取り《覇王龍ズァーク》は動く気配を見せず、その代わりに次元の裂け目から現れたのがこの小型のモンスターたちだ。

彼らが《覇王龍ズァーク》に代わって攻撃を開始しており、侑斗たちが応戦している格好だ。

1体1体は大したことがないが、恐ろしいのはその数であり、この船に攻撃しているモンスターだけでも千単位でいるのではないかと思えるほどだ。

更には《覇王龍ズァーク》の元となった4体のドラゴンに似たモンスターもいて、それらの強さは小型のモンスターたちよりもはるかにある。

「ニヴルヘイムもいるまでも持つものではない。このままでは…」

「倒すしかないよ、ズァークを…」

「伊織ちゃん、大丈夫かな…。翔太君も…」

島に残っている意識不明の翔太と、彼のそばに残った伊織。

アカデミアの中心部への攻撃する様子がないことから、そこにいる2人には被害がないとは思いたいが、このまま次元統合が進めば無事では済まないだろう。

 

「遊矢…俺はお前が思うほど…お前にあこがれられるほどの男じゃない。俺はお前に…父親として最低なことをしてしまった。お前と、母さんに寂しい思いをさせてしまったな…」

眠る遊矢の左手に触れ、そこから伝わる冷たい鉄の感触に遊勝はかつての己の行いを後悔する。

次元戦争を止めるために何もかもを放り出してきて、結局は何もできず、すべての子供たちに押し付けてしまった。

左腕を失い、それを義手で補ってなおも戦い、そして過酷な宿命を知った遊矢に何もできていないことを思い知る。

「おじさん…」

「だが、一つだけ言えることがある。少なくとも、俺がそばにいたあの時間…お前の父親として過ごした時間、そこで見たのは悪魔なんかじゃない。本当に誰かを笑顔にしたい、楽しみたいと思い、行動する…俺の自慢の息子だ。遊矢…」

「呼びかけ続けろ、呼びかけた後は…奴次第だ」

 

「いつまで寝てるんだよ、遊矢。まだ眠ってる場合じゃないだろ?」

「え…?」

急に耳に届いた、もう二度と聞くことがないと思っていた素良の声。

身を起こすとそこは真っ暗な空間で、あるのは自分が眠っていたベッド、そして椅子に座る素良の姿。

いつものように好物であるキャンディーを口にしている彼は穏やかに笑っていた。

「僕はもう目を覚ますことなんてできない。けど、遊矢は違う。まだ生きてるだろ?それに…僕を笑わせてくれた…戦争以外のデュエルを教えてくれたのは遊矢、君だよ」

「素良…でも、俺は…俺は素良を遊勝塾へ連れて帰れなかった。それに…死んでいくのを見てるしかなかった…。素良だけじゃない、エドだって…俺は救えなかった…」

「何を言っているんだ、君は。言っただろう、君は僕を救ったんだと」

ベッドのそばに現れるエドがそんなことも分からないのかとあきれたように口を開く。

二人とも本当に死んだ彼らの魂なのか、それともただの妄想なのか、今の遊矢には区別がつかない。

「大丈夫、遊矢は悪魔なんかじゃない。そうだな…思うのは本当にペンデュラムみたいな奴だな、なんて思ったよ」

「え…?」

「悲しい時はしっかり悲しんで、笑うときはとことん笑う。ま…メンタル弱いなって思うところはあったけど、それだけ人の笑顔と悲しみに寄り添える。そんな遊矢だから、僕は託せた。すべてを終わらせてくれると信じて、あの時にいけたんだ」

「アカデミアの理想に縛られ、心をなくした僕にもう1度、デュエルの楽しさを教えてくれたのを忘れたのか?確かにそれで死んだかもしれないが、あの時に僕は生き返ったんだ。死んでいくだけの僕の心を、君はもう1度よみがえらせた。だから…」

「あきらめないでよ、遊矢。君がみんなを笑顔にしていく姿…ずっと見てるから」

「ああ…」

椅子から立ち上がる素良、そしてエドが徐々に離れていき、暗闇の中へ消えていく。

体を起こす遊矢だが、急に起きた体は思うように動かず、ベッドから降りると同時に倒れてしまう。

パジャマ姿の遊矢は体を起こそうとするが、パジャマの袖から伸びているはずの左手がないことに気づく。

やむなく右手だけで体を起こすと同時に、目の前に柚子によく似た顔立ちの女性が現れる。

「初めまして…っていうべきかしら?」

「柚子…じゃない。君は…もしかして、レイ…」

「そう、赤馬レイ。こんな形であなたとお話ができるなんで思わなかったけれど…。あなたの頭の中にある『欠片』のおかげかしら」

「頭の中…それって、俺が撃った…!!」

確かに、ヒイロから受け取った自決用の銃の中に入っている銃弾は1発だけだが、まさかそれが『欠片』を材料に作っていたというのは想定していなかった。

そんな銃の銃弾が何なのか、用途が決まり切っている以上誰も見ることなどないだろうが。

「かつて、一つだった世界にも『欠片』が存在したわ。それを使ったのがズァークよ。彼はそれを英知のカードって呼んでいたわ」

レイが右手を広げると同時に水晶でできたカードが出現する。

それは遊矢とユーゴが共鳴したときに見たズァークが手にしていたカードそのものだった。

「当時はみんな、これはただの特殊なカードというだけの認知だった。そのカードの力でズァークはモンスターの声が聞こえるようになったらしいわ。けれど、より激しく、より強く、より刺激のあるデュエルを求めるようになった観客に応えるように、ズァークは戦った。そして、その願いに反応するかのように、英知のカードは彼のためにモンスターを生み出したの。それが、《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》、《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》、《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》よ。そして、その核となったのが《オッドアイズ・ドラゴン》。みんな…英知のカード、いいえ、『欠片』が人々の思いをズァークを介して叶えたもの、それが人の手に余る、世界を生み出し、作り変えるほどの力を持つことを知った時には…もう、すべてが遅かった。それでも、父はズァークを止めるためのカードを作った。この4枚のカードよ…」

遊矢の周囲を包むように出現した4枚の魔法カード。

そして、それぞれのカードの前にはブレスレッドも出現し、少なくとも2つ、遊矢には見覚えのあるものがあった。

「これは…柚子とセレナのブレスレッド…ただ、俺たちを遠ざけるだけの存在じゃなかったのか?」

「本当はこの4枚のカードの力を発揮するためのものよ。世界を作り出す自然に可能性を求めたの。《エン・フラワーズ》、《エン・ムーン》、《エン・ウィンズ》、《エン・バーズ》。この力を使って、私はズァークを倒したわ。いえ…倒したという言葉はおかしいわね。《覇王龍ズァーク》となった4体のドラゴンをズァークともども4つに強制的に分離させたというべきかしら。その反動を受けた私は4人に分かれ、そして…世界も引き裂かれた。そして…残った父は、やがて記憶を取り戻して、私を取り戻すためにこんな計画を…」

あの4枚のカードは元々、零王が自ら使い、ズァークと相討ちになる覚悟だったものだ。

だが、父親が犠牲になることを拒んだレイの善意が今回の事件の遠因となり、再び世界が破壊される呪いとなり果ててしまった。

「遊矢、今のズァークは全力じゃない。核となる肉体を持っているあなたを手にできなかったから。だから…今なら、ズァークを倒すことができるかもしれない。その願いをあなたに託すわ」

「そんな…俺は、ズァークなんだぞ!?それに…」

ユーリを倒し、ユーリと共鳴した状態で放った言葉を思い出す。

あの時、確かにズァークの思念が遊矢の中で目覚めていた。

その事実が自分もまたズァークであるという現実を遊矢に突きつける。

自分が目覚めることで、今度こそズァークの完全覚醒の呼び水となってしまうかもしれない。

そして、自分の手で世界を…。

震える右手を見つめる遊矢を安心させるかのように、レイが彼の手を握る。

その手のぬくもりは柚子のものとそっくりだった。

「大丈夫、あなたにならできる…。この次元戦争の悲劇の中でも、それでも誰かの笑顔をあきらめない、あなたなら…。もう一人の私を、柚子をお願い。これから、あなたを目覚めさせるわ」

「レイ…」

「こんなことに巻き込んでしまって…ごめんなさい…」

一筋の涙を流し、詫びの言葉を残したレイが消え、4枚のカードとブレスレッドが一つになる。

それが花の種となり、遊矢のペンデュラムと共鳴するように淡い光を放つ。

「柚子…」

種が発芽し、徐々に花となっていく。

それに向かって歩き出す遊矢の姿がパジャマ姿から普段着へと戻っていき、失っていた左腕に義手が出現する。

ピンクの花びらの花に触れると同時に周囲が光に包まれた。

 

「あ、あ…」

「遊矢…」

徐々に目を開けていく遊矢の右手を握る誰かの手。

しっかりと目が開き、視界に入ってくる、涙でぬれた柚子の顔。

顔がグシャグシャで、ずっと自分のために泣いてくれていたのがわかってしまう。

「柚子…」

「遊矢!!」

目覚めた遊矢に抱き着き、涙を流す柚子。

そんな柚子の背中に右腕を回した遊矢は目を閉じて柚子に体温を感じていた。

「心配かけて、ごめん…」

「本当よ…!!死んじゃったかと思った!!遊矢の馬鹿!!」

「ああ…そうだな、馬鹿だな…俺…。…柚子、俺、行くよ…」

「行くって、どこへ…?」

「もう1度、アカデミアへ。ズァークと、決着をつけてくる。デッキと、デュエルディスクを…」

「そんなの…ダメ!!遊矢は…お願い、もう…戦わないで…」

「柚子…?」

急に涙を浮かべる柚子の顔を見た遊矢は彼女の言葉を頭の中で反復させる。

そして、戦うなという言葉の意味を一瞬だけ理解できなかった自分に気づく。

「遊矢…あなたは、もう十分に戦った。ずっとあたしを守ってくれた。だから…もし、あなたが戦うというなら、私が代わりにズァークと戦う!あたしなら戦える!レイだった…ズァークを止めたあの人の一人のあたしなら…!」

「いい…いいんだ、柚子。これが…俺の、最後の戦いなんだ…。この戦いだけは、誰にも譲れない…」

「遊矢…」

今の遊矢を止めることができない。

ずっと彼のそばにいたから、そのことは頭ではわかっている。

けれど、柚子はどうしても止めたかった。

彼が死ぬかもしれないという恐怖を知ってしまった柚子には、彼を死地へ送り出す勇気が出ない。

そんな柚子に笑みをうかべた遊矢は彼女を抱きしめる。

「柚子…ズァークは、俺なんだ。俺の存在が、世界を狂わせてしまった。柚子の未来も…。だから、俺が止めなくちゃ」

「遊矢…」

抱きしめるのをやめた遊矢に遊勝が声をかける。

もしかしたら、これが息子と話す最後の機会になるかもしれず、伝えたいことが山ほどある。

だが、そのためなのか、今の遊勝にはかける言葉が見つからない。

本当は彼もまた、遊矢を止めたいと願っている。

「父さん…帰ったら、聞くよ。父さんがどんな思いで戦ってきたのか」

「遊矢…」

「じゃあ、行ってくるよ」

机に置かれているデュエルディスクとデッキを手にし、扉の前へ行く。

自動で開くとともに、戦いの音が病室に容赦なく響いてくる。

病室を出て、ドアが閉じる少しの時間、遊矢は口を開く。

「父さん…俺に、エンタメデュエルを教えてくれて、ありがとう。ヒイロさん、父さんたちを…お願いします」

扉が閉じるとともに、柚子がその場に崩れ落ち、遊勝は拳を震わせる。

「遊矢…すまない、すまない…」

 

「翔太、君…」

消滅した翔太の姿を信じることのできない伊織は彼が遺したカードを握りしめる。

ベクターの笑い声が響き渡るが、今の伊織の心を襲っているのは目の前で翔太が消えたことに対する絶望だった。

そして、それは次第に仇であるベクターへの怒りに代わっていく。

「キュー!!!」

それを代弁するかのように、ビャッコがベクターに威嚇する様子を見せ、尻尾には炎が宿る。

「おいおい、何を勘違いしてんだよー。こいつはただの幽霊。俺とええっと…誰だったかなあ、海の中で寝ぼけてたクソガキがぶつかり合った結果できたただの異物。それが元に戻っただけのことだろう?」

「そんなことない!!翔太君は…確かに生きてた。自分がだれかを追いかけ続けて、戦い続けてきた私たちの仲間!!そんな翔太君を…なかったことになんかさせない!!」

託されたカードをデッキに入れると同時に、ビャッコもまたその姿をカードへと変化させ、伊織のデッキに中へ飛び込んでいく。

(お願い…翔太君、一緒に…戦って!)

「へっ…この俺様の完全復活の祝いに対して、てめえじゃあ役不足だが…いいぜ、余興として付き合ってやるよ!!」

ベクターの背後に彼の四騎士を模した巨大な石像が出現し、それらが主の敵である伊織をにらみつける。

だが、恐怖よりも怒りが勝る今の伊織には通用しない。

「「デュエル!!」」

 

伊織

手札5

ライフ4000

 

ベクター

手札5

ライフ4000

 

甲板に次々とドラゴン達が襲い掛かり、その度に零児達のモンスターが蹴散らしていく。

それが何度も何度も繰り返され、なおも視界から消えないモンスターたち。

「あのモンスター…執拗に狙ってくる」

「きっと、遊矢君を危険視しているからだよ。ズァークが取り逃がして、一番の不安要素だから」

「ならば、なおさら…負けられん!!」

治療が完全に終わっていない権現坂も《超重武者ビッグベン-K》を召喚し、突っ込んでくるドラゴンを真正面から掴ませて、そのまま別のドラゴンに投げつける。

そんな修羅場が演じられる中で、遊矢が出てくる。

「遊矢君!?」

「遊矢…!目を覚ましたのか…!」

「ああ…心配かけてごめん」

甲板に出てきた遊矢の姿を見たモンスターたちが一瞬動きを止める。

そして、先ほどまで零児達を襲っていたのが嘘だったかのように、遊矢一人に襲い掛かる。

「やはり、そうか…だが!!」

零児が召喚した《DDDD超次元統王ゼロ・パラドックス》が引き起こす嵐が遊矢を襲おうとしたモンスターたちを一匹残らず吹き飛ばしていく。

その中で遊矢のそばにユーゴのDホイールが走ってくる。

「ありがとう…クリアウィング」

ヘルメットをかぶった遊矢はDホイールに乗り込む。

モニターはいつものDホイールと同じもので、やはりクリアウィングもまた取り込まれてしまったのか、そこからは意思は感じられない。

オッドアイズの声も聞こえない。

そんな状態で、わずかに残留したクリアウィングの思念が戦いに出ようとする遊矢のもとに走らせたのだろうか。

視線はズァークの巨大な影が浮かぶアカデミア本島。

「榊遊矢、君は…」

「零児、権現坂、剣崎さん、ウィンダさん。…全部、終わらせてくる。みんなのことを、頼む!」

「待て、遊矢!また一人で…」

権現坂が呼び止めるのを聞かず、Dホイールが発進し、ファントムライトを展開させるとともに飛び立ち、アカデミア本島へと向かう。

船に集結しようとしていたモンスターたちだが、遊矢が出たのを確認すると、わずかなモンスターだけを残して追撃に飛び出す。

「くそっ…!また、また俺は…遊矢を…」

一人戦いに行く遊矢の後姿に拳を握りしめる権現坂。

拳に入る力が強すぎて、爪が食い込んで血が流れるほど。

だが、そんな感傷に浸っている場合ではなく、残っているモンスターの中には遊矢たちが使っていたドラゴンのようなモンスターもいる。

「懺悔ならば、戦いの後でいくらでもする!だから…今は!!」

 

アカデミア本島に降り立つDホイールがわずかに走った後で停車し、遊矢は周囲に広がるガレキと炎を見渡す。

あたりには倒れているヴァプラ隊の隊員たちの姿があり、誰からも生気が感じられない。

唇をかみしめ、歩き出す遊矢はDホイールを走らせる。

ファントムライトのおかげでドラゴン達を振り切ってここまで来た遊矢の視線がズァークに向けられる。

遊矢の視線に気づいたズァークもまた、遊矢に目を向ける。

「来たな…榊、遊矢」

ブクブクと黒い煙に包まれたズァークの巨体が消えていき、煙は遊矢の目の前の一点に集中されていく。

煙の中から人間が出てきて、それは遊矢が見た幻覚の中にいるズァークと似ているが、黒い翼を生やし、裸になっている上半身は黒ががった灰色の肉体で、文字通り悪魔というべき姿になり果てていた。

「自分の姿を悪魔に変えてまで、そこまでして世界を壊したいのか…」

「ああ、そうだ。勝利と死闘を求め続けた奴らに応え、モンスターたちの宿す憎しみに応える。奴らに、死んで償わせるのだ…」

「…だったら、俺がお前を止める。俺自身のためにも…」

「ほぉ…やってみるがいい、くたばり損ないの片割れが」

ズァークの左腕が変化し、悪魔の頭と翼が組み合わさったようなデュエルディスクが出現する。

遊矢もデュエルディスクを展開させるとともに、《クロス・オーバー》をセットする。

周囲にアクションカードとカラフルな足場が出現し、互いにカードを引く。

「「デュエル!!」」

 

ズァーク

手札5

ライフ4000

 

遊矢

手札5

ライフ4000

 

「俺の先攻…。俺は手札から魔法カード《おろかな埋葬》を発動。デッキからモンスター1体を墓地へ送る。俺が墓地へ送るのは《覇王眷竜ダークヴルム》。そして、このカードが墓地に存在し、俺のフィールドにモンスターが存在しない場合、墓地から特殊召喚できる」

これまで遊矢たちを襲ってきたモンスターの1体である、小さくなった《覇王龍ズァーク》というべき姿のドラゴンが現れ、遊矢を威嚇するように叫ぶ。

 

覇王眷竜ダークヴルム レベル4 攻撃1800

 

「このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから覇王門ペンデュラムモンスター1体を手札に加える。俺が手札に加えるのは…《覇王門零》。そして、さらに俺は手札から《覇王眷竜ウィンドヴルム》を召喚」

続けて現れる、姿こそ《覇王眷竜ダークヴルム》と同じではあるものの、羽根には《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》が持つプリズムが装着されていた。

 

覇王眷竜ウィンドヴルム レベル4 攻撃1200(チューナー)

 

「このカードがシンクロ素材となるとき、このカード以外のシンクロ素材がすべて闇属性ペンデュラムモンスターの場合、レベルを3か5として扱うことができる。レベル4の《ダークヴルム》にレベル3となった《ウィンドヴルム》をチューニング。その美しくも雄々しき翼翻し、光の速さで敵を討て!シンクロ召喚!現れろ、レベル7!《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》!」

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

「《クリアウィング》…」

召喚された《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》は確かにユーゴが召喚したのと同じ姿。

だが、その瞳は赤く光っていて、その様子はまるで怒っているように見えた。

「シンクロ素材となった《ウィンドヴルム》の効果。このカードをシンクロ素材としてレベル7か8のドラゴン族シンクロモンスターのシンクロ召喚に成功した時、デッキから新たなレベル4以下の覇王眷竜を特殊召喚できる。俺はデッキから《覇王眷竜サンダーヴルム》を特殊召喚する」

《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の影の中から、今度は紫の稲妻を帯び、紫色の体をした《覇王眷竜ダークヴルム》といえるモンスターが現れる。

 

覇王眷竜サンダーヴルム レベル4 攻撃1900

 

「このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから覇王カード1枚を墓地へ送ることができる。俺は《覇王眷竜ローズヴルム》を墓地へ送る。そして、手札から魔法カード《死者蘇生》を発動。この効果により、墓地から《覇王眷竜ローズヴルム》を特殊召喚」

《覇王眷竜ダークヴルム》に似た、今度は紫の炎と毒々しいバラが咲いた茨を身にまとったドラゴン。

4体の覇王眷竜のいずれにも言えるのは、遊矢たちの持つ4体のドラゴンのうち、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》以外の3体の特徴を持っているドラゴンが1体ずつ存在し、中核となっているのが《覇王眷竜ダークヴルム》だということだ。

 

覇王眷竜ローズヴルム レベル4 守備2000

 

「レベル4の《サンダーヴルム》と《ローズヴルム》でオーバーレイ。漆黒の闇より愚鈍なる力に抗う反逆の牙!今、降臨せよ!エクシーズ召喚!現れろ!ランク4!《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》!」

「次は…《ダーク・リベリオン》…!」

続けて現れる、今度はユートから託され、ともに戦い続けてきたドラゴン。

そのドラゴンも怒りを瞳に宿しており、仲間のはずの遊矢をも刺殺せんとするほどの気迫が感じられた。

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン ランク4 攻撃2500

 

「ふふふ…覇王のフィールドにこのようなチンケなものなどいらん。俺の色に染め上げてやろう。俺は手札からフィールド魔法《覇王界》を発動!アクションデュエルでは…フィールド魔法は永続魔法扱いとなるのだったな?」

発動と同時にビリビリとズァークと遊矢の周囲に稲妻が発生し、同時に稲妻に触れた足場が砕け散っていく。

稲妻と共に発生するのは宇宙のような空間で、それは徐々に広がっていっているように見えた。

「《覇王界》は俺がこれより生み出す世界。4つの次元すべてを飲み込み、破壊する世界。このデュエルが続く限り、世界を侵食し、消滅させる!!」

「何!?」

「見るがいい、ここにいるしかばねたちを」

遊矢とともに飲み込まれた、ヴァプラ隊の亡骸たちが次々とガラスの彫像のような姿へと変わっていく。

やがてそれらはひびが入ると、粉々に砕け散っていく。

「あ、ああ…」

「安心しろ、デュエル中の貴様がこのような無様をさらすことなどないのだからな。この《覇王界》がフィールドに存在し、俺のフィールドにドラゴン族融合、シンクロ、エクシーズ、ペンデュラムモンスターが2種類以上存在する場合、1ターンに1度、デッキからカードを1枚ドローできる。そして、カードを2枚伏せて、ターンエンド」

 

ズァーク

手札5→1(《覇王門零》)

ライフ4000

場 ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン(オーバーレイユニット2) ランク4 攻撃2500

  クリアウィング・シンクロ・ドラゴン レベル7 攻撃2500

  伏せカード2

  覇王界(永続魔法扱い)

 

遊矢

手札5

ライフ4000

場 なし

 

最初の1ターンでユートとユーゴのドラゴンが出現し、さらには正体不明のペンデュラムモンスターがズァークの手札に存在する。

(ユート、ユーゴ…ダーク・リベリオン、クリアウィング…)

2体のドラゴンからはかつて感じられた意思は感じられず、ズァークからはその中にいるであろう2人が感じられない。

取り込まれたことで、もうその意思も消滅してしまったのか。

「俺のターン、ドロー!!」

 

遊矢

手札5→6

 

「俺はスケール1の《EMレディアンジュ》とスケール8の《EMジェントルード》でペンデュラムスケールをセッティング!」

どんなに絶望的な状況であったとしても、かつての己との戦いであったとしても、自分が目指すデュエルを変えてはならない。

薄紫の髪の天使のような少女が歌い、シルクハットと燕尾服姿で乱れた髪を隠した少年がその歌声に合わせる。

歌う2人が生み出すペンデュラムスケールに反応するように、遊矢のデッキが光る。

「《ジェントルード》のペンデュラム効果発動!もう片方のペンデュラムゾーンに《レディアンジュ》が存在するとき、デッキからオッドアイズカード1枚を手札に加えることができる。俺は《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》を手札に加える!そして、俺は手札から《EMオッドアイズ・バレット》を召喚!」

紫のシャツに燕尾服を重ね着した青年がフィールドに現れるも、その瞳の色はその名とは異なり、黒一色だった。

 

EMオッドアイズ・バレット レベル1 攻撃100

 

「このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、デッキからオッドアイズ1体を墓地へ送ることで、ターン終了時までこのカードのレベルを墓地へ送ったモンスターのレベルと同じにできる。俺は《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を墓地へ送り、《オッドアイズ・バレット》のレベルを7にする!」

カードを墓地へ送ると同時に《EMオッドアイズ・バレット》の瞳が《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》と同じになる。

同時に、このデュエルで初めて触れた《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》のカードの感触に、遊矢は物悲しさを覚えていた。

(オッドアイズ…お前も、お前もいないのか…)

他の3体のドラゴンとは異なり、確かに《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》のカードはデッキに残っていた。

だが、もはやこのカードには魂は感じられず、抜け殻になっていることを実感するだけ。

 

EMオッドアイズ・バレット レベル1→7 攻撃100

 

「そして、俺は今のペンデュラムスケールでなら、レベル2から7までのモンスターを同時に召喚可能!揺れろ、魂のペンデュラム!天空に描け、光のアーク!ペンデュラム召喚!現れろ、《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》!!《EMペンデュラム・マジシャン》」

 

オッドアイズ・ファントム・ドラゴン レベル7 攻撃2500

EMペンデュラム・マジシャン レベル4 攻撃1500

 

「《ペンデュラム・マジシャン》の効果!このカードの特殊召喚に成功した時、俺のフィールドのカードを2枚まで破壊し、破壊したカードの数だけデッキからEMを手札に加えることができる。俺は《レディアンジュ》と《ジェントルード》を破壊し、デッキから《EMシール・イール》と《EMグラビティ・エレファント》を手札に加える!そして、《ジェントルード》の効果!このカードが破壊されたとき、デッキから新たなEMをペンデュラムゾーンに置くことができる。俺は《EMオッドアイズ・ユニコーン》をペンデュラムゾーンに置く!そして、手札に加えた《シール・イール》をセッティング!そして、《シール・イール》のペンデュラム効果を発動!1ターンに1度、相手フィールドのモンスター1体の効果をターン終了時まで無効にする!俺は《クリアウィング》の効果を無効にする!」

モンスター効果を大きく阻害する《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》はいち早く対処すべきモンスターであり、同時にペンデュラムゾーンでは魔法カード扱いとなる《EMシール・イール》を防ぐ術を持たない。

バツ印のシールが張り付けられ、プリズムから光が失われる。

「そして、俺はレベル7の《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》と《オッドアイズ・バレット》でオーバーレイ!二色の眼の竜よ、人々の涙を束ね、解放への道を示せ!エクシーズ召喚!ランク7!悲しき世界を穿つ氷河の竜、《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》!!」

 

オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン ランク7 攻撃2800

 

「そして、俺は手札の《グラビティ・エレファント》の効果発動!このカードは俺のペンデュラムゾーンにEMが2体存在するとき、手札から特殊召喚できる!」

青い鞍を背中に着け、小さなシルクハットをつけた象がのそり、のそりと遊矢の背後から歩いてフィールドに現れる。

 

EMグラビティ・エレファント レベル7 攻撃1000

 

「《グラビティ・エレファント》の効果!このカードのレベルを任意の数値下げ、エクストラデッキから下げたレベルと同じ数値のレベルのEM、魔術師、オッドアイズをチューナー扱いにして特殊召喚できる。俺はレベルを4つ下げて、もう1度《ジェントルード》を特殊召喚!」

鳴き声を上げるとともに誰も乗っていない鞍に《EMジェントルード》が出現する。

《EMグラビティ・エレファント》はフィールドに存在する3体のドラゴンをわずかに上回る巨体であり、その背に乗る《EMジェントルード》は彼らを見下ろせることに気をよくしたかのように笑みをうかべる。

 

EMグラビティ・エレファント レベル7→3 攻撃1000

EMジェントルード レベル4 攻撃1500(チューナー)

 

「レベル3の《グラビティ・エレファント》にレベル4の《ジェントルード》をチューニング!二色の眼の竜よ、怒りの業火で闇を焦がせ!シンクロ召喚!レベル7!大地を焼き尽くす業火の竜!《オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン》!!」

 

オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

遊矢とズァーク、どちらのフィールドにもシンクロモンスターとエクシーズモンスターが並ぶ。

攻撃力だけで見たらわずかに上回る《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》が存在することから遊矢が有利に見える。

「バトルだ!《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》で《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》を攻撃!氷結のアブソリュート・ゼロ!!」

咆哮する《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》の尾に棘のある氷塊が宿り、それを振るうと動きを封じられている《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》の鳩尾あたりに重い一撃が叩き込まれた。

その一撃で大きく吹き飛んだそのモンスターは崩れた壁に激突すると同時に消滅した。

「ふん…」

「ズァークのライフが減らない…??」

「《覇王界》の効果により、俺がエクストラデッキから特殊召喚したドラゴン族モンスターが相手モンスターと戦闘を行う場合、戦闘で発生する俺へのダメージは0となる。更に、そのモンスターが相手によって破壊されたとき、エクストラデッキに眠る覇王眷竜1体を守備表示で特殊召喚できる。さあ、再び現れろ。《ダークヴルム》!」

 

覇王眷竜ダークヴルム レベル4 守備1200

 

「《オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン》の効果!バトルフェイズ中、相手はモンスター効果を発動できない!」

走り出す遊矢は足場から足場へと飛び移り、アクションカードを手にする。

「《オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン》で《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》を攻撃!!」

「本来は相討ち…だが…」

「俺はアクション魔法《ハイダイブ》を発動!フィールド上のモンスター1体の攻撃力をターン終了時まで1000アップさせる!」

アクション魔法の恩恵により、身を包む炎に勢いが増した《オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン》の口から放たれる火炎弾が《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》を撃ちぬく。

己のドラゴンが2体とも破壊されたにもかかわらず、ズァークが見せるのは余裕な笑み。

「《覇王界》の効果により、俺へのダメージは0」

「《EMペンデュラム・マジシャン》で《ダークヴルム》を攻撃!」

最後の1体となった覇王眷竜を《EMペンデュラム・マジシャン》の振り子から放たれるビームで撃ちぬき、撃破する。

これでズァークのフィールドからモンスターがいなくなり、残る手札は《覇王門零》のみ。

(ズァークが手札に加えたあのペンデュラムモンスター、確か…スケール0だった。ペンデュラムスケールって、最低でも1、最高でも10のはずなのに…)

《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》のオーバーレイユニットとなっていた2体の覇王眷竜は墓地へ送られているものの、2体ともペンデュラムモンスター。

ズァークのデッキは遊矢や零児と同じタイプのデッキといえる。

「さあ、どうした?貴様のターンはまだ終わっていないぞ?」

「俺は…カードを1枚伏せて、ターンエンド!」

 

ズァーク

手札1(《覇王門零》)

ライフ4000

場 伏せカード2

  覇王界(永続魔法扱い)

 

遊矢

手札6→1

ライフ4000

場 オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン(オーバーレイユニット2) ランク7 攻撃2800

  オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン レベル7 攻撃2500

  EMペンデュラム・マジシャン レベル4 攻撃1500

  伏せカード1

  EMシール・イール(青) ペンデュラムスケール3

  EMオッドアイズ・ユニコーン(赤) ペンデュラムスケール8

 

ターン終了宣言と同時に、ズァークがニヤリと笑う。

フィールドの2体のドラゴンを失い、手札はペンデュラムモンスター1体のみのこの状況で笑って見せる余裕に遊矢の心が冷める。

「俺のターン」

 

ズァーク

手札1→2

 

「《ダーク・リベリオン》と《クリアウィング》を倒したところで、無駄なことだ。俺の残りカスであるお前に勝てる道理はないのだからな。俺は墓地の《覇王眷竜ローズヴルム》の効果を発動。俺のフィールドにモンスターが存在しないとき、エクストラデッキまたは墓地に存在するこのカードとエクストラデッキに表側表示で存在する闇属性・ドラゴン族ペンデュラムモンスターを特殊召喚できる。再び現れろ、《覇王眷竜ローズヴルム》、《覇王眷竜ダークヴルム》!!」

地面がひび割れ、そこから再び現れる《覇王眷竜ローズヴルム》と《覇王眷竜ダークヴルム》。

2体の目は主に逆らう遊矢を見下しているかのようだった。

 

覇王眷竜ローズヴルム レベル4 攻撃1000

覇王眷竜ダークヴルム レベル4 攻撃1600

 

「そして、この効果で特殊召喚された2体のモンスターのみを素材として、ドラゴン族融合モンスター1体の融合召喚を行う!」

《覇王眷竜ローズヴルム》の茨が伸びていき、そばにいる《覇王眷竜ダークヴルム》を無理やり縛り付ける。

そして、上空に現れた渦の中に飛び込んでいき、その姿を変質させていく。

「融合…まさか!!」

「現れろ、《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》!!」

2体の覇王眷竜を素材とし、再び遊矢に牙を向ける《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》。

現れたそのドラゴンの目は2体とは異なり笑っていて、舌なめずりをしているかのようだった。

 

スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン レベル8 攻撃2800

 

「《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》の効果発動!このカードの融合召喚に成功した時、相手フィールドの特殊召喚されているモンスター1体の攻撃力分、このカードの攻撃力をターン終了時までアップさせる。さあ、貴様の力をよこせ…《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》!」

地面から出現した茨で身動きを封じられ、刺された箇所からモンスターの力を解析され、その情報が《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》へと伝達される。

伝達された情報を力へと変換させた《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》は咆哮する。

 

スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン レベル8 攻撃2800→5600

 

「さらに、《スターヴ・ヴェノム》の効果。1ターンに1度、相手フィールドのレベル5以上のモンスター1体の名前と効果を得る。《メテオバースト》の効果を使わせてもらう。これで、貴様はバトルフェイズ中、モンスター効果を発動できない。あの《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》の効果はね!!」

「くっ…!!」

《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》の2つの効果はいずれもバトルフェイズ中に意味を持つニュアンスが強い効果。

《オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン》で相手の首を絞めることができたと思いきや、今度は自分で自分の首を絞めることとなった。

「俺は手札から魔法カード《ペンデュラム・ホルト》を発動。俺のエクストラデッキにペンデュラムモンスターが表側表示で3種類以上存在する場合、デッキからカードを2枚ドローする。《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》で《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》を攻撃!」

《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》の体中の玉石から放たれる電撃が《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》を襲い、《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》は氷塊を生み出して身を守ろうとする。

だが、攻撃力5600となった《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》にとってはその程度の氷塊が紙に等しく、あっけなく打ち砕かれるとそのまま電撃を受けて爆散した。

「ぐうう、うわああああ!!」

爆発によって吹き飛ばされた遊矢がガレキに激突し、そのまま地面にあおむけに倒れる。

2800もの戦闘ダメージは大きく、遊矢の体が悲鳴を上げる。

 

遊矢

ライフ4000→1200

 

「くくく…大幅にライフが減ったな」

「く、う…俺は、罠カード《ショック・ドロー》を発動…。俺がダメージを受けたターンに発動でき、このターンに受けたダメージ1000ごとに1枚、デッキからカードをドローする…」

痛みに耐え、起き上がる遊矢は2枚のカードを引く。

お互いに手札は3枚となったが、モンスターとライフ、両方の面で状況がひっくり返ってしまった。

 

 

ズァーク

手札1(《覇王門零》)

ライフ4000

場 スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン レベル8 攻撃5600→2800

  伏せカード2

  覇王界(永続魔法扱い)

 

遊矢

手札1→3

ライフ1200

場 オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン レベル7 攻撃2500

  EMペンデュラム・マジシャン レベル4 攻撃1500

  EMシール・イール(青) ペンデュラムスケール3

  EMオッドアイズ・ユニコーン(赤) ペンデュラムスケール8

 

 

覇王眷竜ウィンドヴルム

レベル4 攻撃1200 守備1800 チューナー 風属性 ドラゴン族

【Pスケール:青3/赤3】

このカード名の(1)のP効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールドに「覇王眷竜」モンスターが存在するときに発動できる。Pゾーンに存在するこのカードを自分フィールドに特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたこのカードがフィールドを離れたとき、デッキの一番下に置く。

【チューナー:効果】

このカードをS素材とする場合、ドラゴン族モンスターのS召喚にしか使用できない。

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1);このカードをS素材とする時、このカードのレベルを3か5としても扱うことができる。その場合、このカード以外のS素材はすべて闇属性Pモンスターでなければならない。

(2):このカードをS素材として、レベル7・8のドラゴン族モンスターのS召喚に成功した時に発動できる。デッキからS素材としたモンスター以外の名前を持つレベル4以下の「覇王眷竜」モンスター1体を特殊召喚する。

 

EMグラビティ・エレファント

レベル7 攻撃1000 守備2800 効果 地属性 獣族

このカード名の(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しか行えず、(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分Pゾーンに「EM」カードが2枚存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。

(2):自分のEXデッキに表側表示で存在する、このカードよりもレベルが低い「EM」「魔術師」「オッドアイズ」Pモンスター1体を対象に発動できる。このカードのレベルをそのモンスターのレベルと同じ数値だけ下げ、そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化され、ターン終了時までチューナーとして扱う。この効果を発動したターン、自分は「EM」「魔術師」「オッドアイズ」以外のモンスターをEXデッキから特殊召喚できない。

 

覇王界

フィールド魔法

(1):1ターンに1度、自分フィールドのドラゴン族モンスターの種類(融合・S・X・P・儀式・リンク)が2種類以上存在する場合に発動できる。自分はデッキからカードを1枚ドローする。

(2):自分フィールドに存在する、EXデッキから特殊召喚されたドラゴン族モンスターが相手モンスターと戦闘を行うとき、戦闘で発生する自分へのダメージは0となる。

(3):自分フィールドに存在する、EXデッキから特殊召喚されたドラゴン族モンスターが相手によって破壊されたとき、自分のEXデッキに表側表示で存在する「覇王眷竜」Pモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールドに守備表示で特殊召喚する。

 

覇王眷竜ローズヴルム

レベル4 攻撃1000 守備2000 闇属性 ドラゴン族

【Pスケール:青6/赤6】

(1):自分フィールドのドラゴン族融合モンスターが相手によって破壊され墓地へ送られたときに発動できる。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。その後、Pゾーンに存在するこのカードをデッキの一番下に置く。

【モンスター効果】

このカード名の(1)の効果はデュエル中1度しか発動できない。

(1):このカードが墓地・EXデッキに表側表示で存在し、自分フィールドにモンスターが存在しない場合、「覇王眷竜ローズヴルム」以外のEXデッキに表側表示で存在する闇属性・ドラゴン族Pモンスター1体を対象に発動できる。このカードと、対象としたカードを自分フィールドに特殊召喚する。この効果で特殊召喚された対象のモンスターの効果は無効化される。その後、この効果で特殊召喚されたモンスターのみを素材として、闇属性・ドラゴン族融合モンスター1体の融合召喚を行う。

 

 

ズァークと遊矢のデュエルが行われ、ズァークが《覇王界》を発動したのとほぼ同時刻。

エクシーズ次元、シンクロ次元においてズァークの言葉通りの異変が起こりつつあった。

雷雲が次元すべてを覆いつくし、幾重もの雷が落ちる。

落雷地点を中心として、《覇王界》のようなフィールドが展開されて生き、外側から見ると展開されたフィールドはブラックホールの中のような暗黒空間に見えて、何も見えない。

ニヴルヘイムを起動し、多次元からの干渉をある程度防ぐことができているスタンダード次元においても、守り切れていない状態で、舞網市の上空は暗闇に包まれ、上空には次元の裂け目が出現しつつあった。

その様子をレオコーポレーション本社ビルの社長室から現在社長代行を務める日美香が見つめる。

「零児さん…零羅…」

「日美香様…急ぎ避難を。ここは危険です」

中島に促される日美香だが、彼女は一向に動く気配を見せない。

先日、次元間通信によって零児自ら伝えられた零王とレイ、そしてズァークの真実。

零児は次元戦争で自分が死ぬ可能性を考慮し、伝えられるときに可能な限り真実を伝えることが残っている母親に対する礼儀と考え、伝えたのだろう。

もしくは、何も言わずに家族を置き去りにした零王と同じ轍を踏みたくないという思いなのだろうか。

日美香の脳裏に浮かぶのは零児が生まれたときに見せてくれた零王の笑顔。

あの笑顔は嘘偽りないもので、もうすぐ生まれることを知った零王は海外で商談中だったにもかかわらず、早期でそれを終わらせるとそのままプライベートジェットに乗り込んで舞網市へ舞い戻り、自ら車を運転して病院まで突っ込んできた。

失踪し、次元戦争を引き起こすまでは確かに日美香にとって零王は良き夫であり、彼と過ごした日々は本当に幸せそのものだった。

だからこそ、そんな自分たちを捨てる形でいなくなり、敵となった零王を憎んだ。

だが、今こうしてその幸せな過去を思い出していることを考えると、憎み切れなかったのだろう。

それに今まで気づけなかった己を呪うとともに、一つの願いが浮かぶ。

「零児さん、零羅…どのような結果になったとしても、受け入れます…。だから、無事に…」



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第132話 覇王

「遊矢…」

遊矢が出ていった病室の中、ブレスレッドから放たれるかすかな光から、柚子は彼がズァークと戦いを繰り広げているのを感じた。

目覚めてから、出ていくまでの彼の姿が何度も脳裏によみがえる。

「榊遊矢…世界の破壊者の因子を受け継ぎ、縛られた男、か…」

ヒイロが思い出すのは元の世界で今も研究者としてネオドミノシティで活躍している仲間のことだ。

父親の研究で生み出したモーメントがゼロ・リバースを引き起こし、数多くの犠牲者とそこから始まる数々の災厄の要因となったことを彼はずっと感じ、苦しみ続けてきた。

だが、彼はそれを乗り越えて世界を救い、今も戦っている。

それができたのは彼自身の強さ、そして彼とともに戦った存在のおかげだろう。

逆にそうした強さと存在がなければ、縛られた鎖の重みに耐えきれずに堕ちていく。

(榊遊矢…お前には助けとなる存在がいる。あとは、お前自身が強さを得るかどうかだ…)

 

 

ズァーク

手札1(《覇王門零》)

ライフ4000

場 スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン レベル8 攻撃5600→2800

  伏せカード2

  覇王界(永続魔法扱い)

 

遊矢

手札3

ライフ1200

場 オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン レベル7 攻撃2500

  EMペンデュラム・マジシャン レベル4 攻撃1500

  EMシール・イール(青) ペンデュラムスケール3

  EMオッドアイズ・ユニコーン(赤) ペンデュラムスケール8

 

「俺の…ターン!!」

 

遊矢

手札3→4

 

「ここで俺は永続罠《波紋消滅》を発動。このカードは発動後、3回目の俺のスタンバイフェイズ時に墓地へ送られるが、こいつが存在する限り、お互いにペンデュラム召喚を行えず、ペンデュラム効果も発動できない。これで《オッドアイズ・ユニコーン》の効果も、《シール・イール》の効果も使えないな」

「ぐっ…!!」

まだ発動していない《EMオッドアイズ・ユニコーン》の効果を使えば、《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》の攻撃力を上回ることができた。

ズァークが警戒していたのは《ショック・ドロー》の効果で手札に加わったカードの中に、攻撃力1600以上でペンデュラム召喚可能なオッドアイズモンスターが存在する可能性だろう。

「俺は…手札から魔法カード《ペンデュラム・ホルト》を発動!俺のエクストラデッキにペンデュラムモンスターが3種類以上表側表示で存在するとき、デッキからカードを2枚ドローする!」

この状況を突破できるカードが手札にない以上は、これに掛けるしかない。

このドローの代償として、自分はターン終了時までデッキからカードを手札に加えることができない以上はこれが戦局を分けることになる。

「ドロー!!」

勢いよく引いた2枚のカードを見つめる遊矢。

一度目を閉じた遊矢はドローしたカードの内の1枚を手に取る。

「俺は手札から魔法カード《死者蘇生》を発動!その効果により、俺は墓地から《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を特殊召喚する!」

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

「俺は手札を1枚墓地へ捨て、速攻魔法《超融合》を発動!!」

「何…?」

「わかっているだろう!?このカードは手札を1枚墓地へ捨てることで、フィールド上のモンスターを素材に融合召喚を行う!俺が融合素材にするのは《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》とお前のフィールドの《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》!!」

上空に稲光が宿る渦が発生し、その中に2体のモンスターが飲み込まれていく。

「次元に隔たれし2体の闇の竜が今一つとなる!融合召喚!現れろ、《ヴァレルロード・F・ドラゴン》!!」

 

ヴァレルロード・F・ドラゴン レベル8 攻撃3000

 

手札から墓地へ送られたカード

・ミラージュ・オブ・オッドアイズ

 

「バトルだ!《ヴァレルロード・F・ドラゴン》でダイレクトアタック!!」

呼び出されたばかりの《ヴァレルロード・F・ドラゴン》の口から露出する銃身から放たれる弾丸がズァークに着弾すると同時に大きな爆発を引き起こす。

煙の中に姿を消すズァークから遊矢は《オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン》へと視線を移す。

「《オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン》でズァークを攻撃!!」

遊矢の攻撃命令が発せられ、これでデュエルが終了すると思っていた。

だが、遊矢の呼びかけに対して《オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン》は一切動きを見せない。

「どうして…」

「お前のバトルフェイズは、もう終わっている」

「何!?」

煙が晴れ、そこにはズァークと《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》の姿があった。

だが、その瞳の色は両方とも血のような暗い赤をしていた。

「お前のダイレクトアタックを受ける時、俺は罠カード《覇王の勅命》を発動した。俺がダイレクトアタックを受けた時、受けたダメージの数値分ライフを回復し、デッキからレベル7または8の闇属性・ドラゴン族ペンデュラムモンスター1体を特殊召喚し、バトルフェイズを終了させる」

 

ズァーク

ライフ4000→1000→4000

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

「でも、攻撃力なら、俺の《ヴァレルロード・F・ドラゴン》が上!俺は《F・ドラゴン》の効果を発動!1ターンに1度、俺のフィールドのモンスター1体と相手フィールドのカード1枚を破壊する!俺が破壊するのは《ペンデュラム・マジシャン》と《覇王界》!」

ズァークのフィールドに《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が残るのは気がかりだが、展開や守りの要となっている《覇王界》を無視することはできない。

それに、それを破壊することでこの次元侵食を止めることができるかもしれない。

《EMペンデュラム・マジシャン》が弾丸へと変化し、《ヴァレルロード・F・ドラゴン》に装てん、発射される。

地面に打ち込まれた弾丸が爆発したものの、フィールドは元の状態に戻らない。

「何!?」

「無駄だ!このフィールド魔法を破壊したとしても、この侵食は止まらない!!」

「くっ…!俺はこれで、ターンエンド…」

 

ズァーク

手札1(《覇王門零》)

ライフ4000

場 オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500

  伏せカード1

  波紋消滅(永続罠)

 

遊矢

手札4→3

ライフ1200

場 オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン レベル7 攻撃2500

  ヴァレルロード・F・ドラゴン レベル8 攻撃3000

  EMシール・イール(青) ペンデュラムスケール3

  EMオッドアイズ・ユニコーン(赤) ペンデュラムスケール8

 

「…お前、何をおびえている?そんなに怖いか?俺が…あのカードを出すのが」

ズァークの笑みをうかべながらの問いかけに遊矢は何も答えることができない。

このターンまでにズァークによって召喚された4体のドラゴン。

そして、その4体を融合して生み出した忌むべきドラゴンの姿が嫌でも遊矢の脳裏に浮かぶ。

「ならば、望み通り出してやろう。覇王龍を!!!俺のターン!!」

 

ズァーク

手札1→2

 

「俺は手札から魔法カード《マジック・プランター》を発動。俺のフィールドの永続罠1枚を墓地へ送り、デッキからカードを2枚ドローする。俺が墓地へ送るのは《波紋消滅》」

ズァークにとってはもう既に役目を終えている《波紋消滅》が消え、それと引き換えに2枚のカードがデッキから排出される。

手札にそろったこれらのカードと遊矢による協力。

それが生み出す結論は一つ、この世界もまた、かつてのように滅ぶべき。

「俺は墓地の《サンダーヴルム》の効果発動!このカードが墓地に存在するとき、俺のフィールドの闇属性ペンデュラムモンスター1体を手札に戻すことで、墓地から手札に加えることができる。俺の手札に戻れ!《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》、《覇王眷竜サンダーヴルム》!!」

ドクンと耳に大きく響くように心臓の高鳴りを遊矢は感じた。

それとともに駆け抜けた直感が遊矢に対して訴えていた。

「そして、俺はスケール0の《覇王門零》とスケール13の《覇王門無限》でペンデュラムスケールをセッティング!これで俺はレベル1から12のモンスターを同時に召喚可能!ペンデュラム召喚!現れろ、《覇王眷竜ダークヴルム》、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》、《覇王眷竜ウィンドヴルム》、《覇王眷竜サンダーヴルム》…そして、時を読み、星を読み、時空を操りし全知全能の魔術師よ。今ここに降臨しこの我に力を与えよ!出でよ《アストログラフ・マジシャン》!」

零と無限、それぞれの数字の形をした黒い石像が生み出すペンデュラムによって呼び出される3体のドラゴンと共に、《星読みの魔術師》とよく似た姿の魔術師が遊矢の前に現れる。

宇宙のような色彩をした体と化していて、遊矢を見下ろす目は冷たかった。

 

覇王眷竜ダークヴルム レベル4 攻撃1800

覇王眷竜ウィンドヴルム レベル4 攻撃1200(チューナー)

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500

アストログラフ・マジシャン レベル7 攻撃2500

覇王眷竜サンダーヴルム レベル4 攻撃1900

 

「《ダークヴルム》の効果により、俺はデッキから《覇王門の魔術師》を手札に加える。そして、《サンダーヴルム》の効果により、デッキから《覇王防壁》を墓地へ送る」

「俺は《ヴァレルロード・F・ドラゴン》の効果を発動!《メテオバースト・ドラゴン》と…《アストログラフ・マジシャン》を破壊する!!」

《オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン》が変化した炎の弾丸が《ヴァレルロード・F・ドラゴン》によって放たれる。

高熱の焼夷弾といえるそれを受けた《アストログラフ・マジシャン》は炎に包まれていく。

「これで…あのカードは…」

「罠発動、《覇王天龍の魂》!」俺のフィールドの攻撃力2500の魔法使い族ペンデュラムモンスター1体をリリースして発動する!」

発動された罠カードから受けた力により、身を包む炎をかき消した《アストログラフ・マジシャン》が上空へと飛び、手にしている杖を天へと掲げ、魔法陣を生み出していく。

「そして、手札、墓地、フィールド、エクストラデッキ、デッキから融合素材モンスターを除外し、《覇王龍ズァーク》を融合召喚する!さあ、糧となれ!《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》、《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》、《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》、《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》!」

「あ、あ、ああ…!!」

《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》以外の3体のドラゴンが再びフィールドに現れる。

4体のドラゴンは上空の魔法陣の中へと消えていき、やがて上空の《アストログラフ・マジシャン》も消滅したことで魔法陣のみが上空に残る。

そして、ズァークの体も宙に浮かび始め、魔法陣の中へと入っていく。

「クフフフフ…見るがいい、これがシンクロ、エクシーズ、融合、ペンデュラム…そのすべての力を得た究極のドラゴン…いや、神だ!!」

魔法陣の中で笑うズァークの四方をかつての《覇王龍ズァーク》であった4体のドラゴンが配置される。

粒子となったドラゴンがズァークに吸収されるとともに魔法陣が砕け散り、覇王龍と化したズァークの巨大な肉体が遊矢の前に舞い降りる。

「《覇王龍ズァーク》…」

 

覇王龍ズァーク レベル12 攻撃4000

 

「クククク…いいぞ、実にいい…。これが俺の…いや、我の力!!よもやそれを最初に味わうことになるのが我と一つになり損ねた貴様だとは思わなかったがな。我の効果!我の特殊召喚に成功した時、貴様のフィールド上のカードをすべて破壊する!」

《覇王龍ズァーク》が咆哮するとともにいくつもの落雷が発生し、それが遊矢の周囲に落ちる。

遊矢のペンデュラムゾーンのカードも《ヴァレルロード・F・ドラゴン》も雷を受けて消滅し、遊矢を守る存在が根こそぎ失われた。

「俺のフィールドの…カードが…」

「これで、貴様はもう終わりだ。せめてもの情けとして、我自ら葬ってくれよう」

《覇王龍ズァーク》の目が怪しく光り、それと同時に口から放たれる紫のブレス。

それはマグマにも匹敵し、人間の肉体など灰一つ残さないほどのものだ。

「うわああーーーーーー!!!俺は墓地の罠カード《ミラージュ・オブ・オッドアイズ》の効果を発動!俺のフィールドにカードがない状態でダイレクトアタックを受ける時、墓地のこのカードを除外して、バトルフェイズを終了させる!!そして、墓地のペンデュラムカード1枚をエクストラデッキに表側表示で起き、そのモンスターと同じレベルのペンデュラムモンスター1体をエクストラデッキから特殊召喚する。俺は墓地の《ファントム・ドラゴン》をエクストラデッキに置き、現れろ…《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》」

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

どうにか首の皮一枚がつながり、敗北を免れることができた遊矢だが、あくまでも敗北への道から一歩遠のいただけの状態だった。

「バトルフェイズ終了か…。だが、貴様に希望など何一つ存在しないことを教えてやる。我はレベル4の《ダークヴルム》にレベル4の《ウィンドヴルム》をチューニング!光の翼持つ眷属よ。その鋭利なる両翼で敵を討て!シンクロ召喚!現れろ《覇王眷竜クリアウィング》!」

《覇王龍ズァーク》の左に控えるように、緑色のラインが体に刻まれた《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》がフィールドに舞い降りる。

 

覇王眷竜クリアウィング レベル8 攻撃2500

 

「《クリアウィング》の効果発動。このカードがシンクロ召喚に成功した時、貴様のフィールドに表側表示で存在するすべてのモンスターは破壊される!」

「何!?」

「消え失せろ!!」

《覇王眷竜クリアウィング》から放たれる、血のような赤いプリズム状の光が遊矢がせっかく召喚した《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》をたやすく消滅させた。

フィールドのカードがすべて失われ、なおも落雷は続く。

「我はこれで、ターンエンドだ…」

 

 

ズァーク

手札2→1(《覇王門の魔術師》)

ライフ4000

場 覇王龍ズァーク レベル12 攻撃4000

  覇王眷竜クリアウィング レベル8 攻撃2500

  覇王眷竜サンダーヴルム レベル4 攻撃1900

  覇王門零(青) ペンデュラムスケール0

  覇王門無限(赤) ペンデュラムスケール13

 

遊矢

手札3

ライフ1200

場 なし

 

「残存している観測ポッド、すべて射出しました。命令通りに」

「ああ、それでいい。こちらに回すのは最低限だ。あとはすべて…」

《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》のビームが《覇王眷竜クリアウィング》を消滅させ、零児が見つめるのは遠く離れたアカデミア本島、遊矢がズァークと戦い、翔太と伊織が残った場所。

あの次元の中に入ることはできないだろうが、外側から観測した情報を船のシステムを使って解析し、デュエルの状況をかろうじて可視化し、記録していく。

たとえそれが敗北であり、4つの次元の終末であったとしても、こうして記録していくことに意味がある。

ただ、勝利の娯楽、刺激のみを強要してきた社会が生み出した怪物とその一部であった道化師のデュエル。

仮にかろうじて世界が生き延びたとき、この記録を見ることで何かを感じ取ってくれることを願うしかない。

そうでなければ、ズァークの誕生から次元戦争までの長き時の悲劇は何一つ報われないのだから。

 

「待ってくださいよぉ、ああ…もう。僕はこういうの専門じゃないんだってのに…」

艦内の通信室で解析のプログラムを組んでいくハイヤーはヴァプラ隊においては航空機や車両、船舶を操縦しての輸送のスペシャリストとして入っている。

こうした通信の仕事もできないというわけではないが、それを専門としていた隊員は既にカード化しており、翔太によって解放されていない今この仕事が一番できるのは彼となった。

そうした事態に備えてその隊員がある程度マニュアルを残してくれたから、それを頼りに観測ポッドからもたらされる不気味な映像を解析していく。

「あとはここの数値をいじれば…よし、どうだ!!って、でええ!!」

解析しなければよかった、そんな後悔がよぎる。

映ったのは遊矢と空っぽになっている彼のフィールド。

そして、2体の覇王眷竜と2つの石人形が左右に控え、中央にいるのは《覇王龍ズァーク》。

少しでも遊矢の状況を知りたいと通信室まで来ていた柚子たち4人はモニターに映る《覇王龍ズァーク》に戦慄するとともに、脳内に彼を封じるレイの姿がよみがえる。

「遊矢のフィールドにカードはない、この様子では、遊矢のターンではあるが…」

「遊矢…」

ここからでは何も助けることはできない。

できるのはただ、遊矢の勝利を祈ることだけだった。

 

「さあ、どうする?もはやフィールドには何もない。そして、我のフィールドには我と共に2体の覇王眷竜。よもやこれで終わりではなかろう…?」

「はあ、はあ、はあ…」

デッキトップに指をかける遊矢の手は震えが止まらず、目を閉じた遊矢は宣言なくカードを引く。

 

遊矢

手札3→4

 

「…俺はスケール1の《星読みの魔術師》とスケール8の《時読みの魔術師》でペンデュラムスケールをセッティング!」

手札にそろった2枚の、始まりのペンデュラム召喚の組み合わせである2人が久方ぶりに遊矢のフィールドに出現し、光の柱を生み出す。

《アストログラフ・マジシャン》の存在を考えると、彼らもまたズァークが生み出したカードの一部なのだろう。

だが、それよりも考えるべきはズァークを倒すことだけだ。

「これで俺はレベル2から7までのモンスターを同時に召喚可能!揺れろ、魂のペンデュラム!天空に描け、光のアーク!ペンデュラム召喚!もう1度力を貸してくれ!《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》、《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》、《EMペンデュラム・マジシャン》、《EMジェントルード》、《EMマンモスプラッシュ》!!」

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500

オッドアイズ・ファントム・ドラゴン レベル7 攻撃2500

EMペンデュラム・マジシャン レベル4 攻撃1500

EMジェントルード レベル4 攻撃1500

EMマンモスプラッシュ レベル6 攻撃1900

 

「《ペンデュラム・マジシャン》の効果発動!《ペンデュラム・マジシャン》と《ジェントルード》を破壊し、デッキから《EMオッドアイズ・ディゾルヴァー》と《EM天空の魔術師》を手札に加える!そして、《マンモスプラッシュ》の効果発動!《マンモスプラッシュ》を含めた俺のフィールドのモンスターを素材に、ドラゴン族融合モンスターを融合召喚できる!《マンモスプラッシュ》と《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を融合!ふた色の眼の龍よ!巨獣のしぶきをその身に浴びて、新たな力を生み出さん!融合召喚!雷鳴纏いし疾風の竜、《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》!!」

 

オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

「《ボルテックス・ドラゴン》…だが、我は相手のカード効果の対象にならず、相手のカード効果では破壊されぬ!」

「《ボルテックス・ドラゴン》の効果!俺は《クリアウィング》をエクストラデッキに戻す!ライトニング・トルネード!!」

覇王龍を戻すことができずとも、その眷属を取り除くことだけならできる。

《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》の起こす竜巻が《覇王眷竜クリアウィング》を吹き飛ばしていく。

だが、まだフィールドには《覇王龍ズァーク》が残っていて、《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》の攻撃力2500では到底かなわない。

フィールドに残っている《オッドアイズ・ファントム・ドラゴン》についても言うまでもない。

だとしたら、今は少しでもダメージを与えることだ。

「バトルだ!《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》で《覇王眷竜サンダーヴルム》を攻撃!轟け、雷光のスパイラルバースト!!」

雷を宿した竜巻が口から放たれ、それを受けた《覇王眷竜サンダーヴルム》が消滅する。

だが、ズァークをそのまま襲うはずだったブレスは《覇王門零》に取り込まれていく。

「何!?」

「我がフィールドに存在する限り、《覇王門零》のペンデュラム効果により、我が受けるダメージはすべて0となる。貴様のやることは無意味なのだ」

ズァークの手札に《覇王門の魔術師》が存在し、更にエクストラデッキに送られた《覇王眷竜サンダーヴルム》もある。

今のペンデュラムスケールでは、レベル1から12のモンスターを同時に召喚可能で、これではズァークの手伝いをしただけと思えた。

「安心するがいい、《覇王門無限》の効果により、我のフィールドにモンスターが存在する場合、我はペンデュラム召喚を行えない」

「俺は…手札から魔法カード《一時休戦》を発動。お互いにデッキからカードを1枚ドローし、次の相手のターンが終わるまで、お互いが受けるすべてのダメージを0にする。俺はこれで、ターンエンド…」

 

ズァーク

手札1→2(《覇王門の魔術師》)

ライフ4000

場 覇王龍ズァーク レベル12 攻撃4000

  覇王門零(青) ペンデュラムスケール0

  覇王門無限(赤) ペンデュラムスケール13

 

遊矢

手札3(うち2枚《EM天空の魔術師》、《EMオッドアイズ・ディゾルヴァー》)

ライフ1200

場 オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン レベル7 攻撃2500

  オッドアイズ・ファントム・ドラゴン レベル7 攻撃2500

  星読みの魔術師(青) ペンデュラムスケール1

  時読みの魔術師(赤) ペンデュラムスケール8

 

「クフフフフ!アハハハハハハハ!!認めよ、そして絶望せよ!己の無力を!」

苦し紛れに発動した《一時休戦》も、今の状況では敗北という終点がわずかに遠のいたに過ぎない。

今の状況で圧倒的に有利なのはズァークだ。

「我の…ターン!!」

 

ズァーク

手札2→3

 

「我は手札より永続魔法《ペンデュラム・エボリューション》を発動。このカードは我がフィールドに存在する場合、我は相手フィールドのすべてのモンスターへの攻撃を可能となる」

「何!?」

とっさに遊矢の脳裏に《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》の効果がよぎる。

今ここでこのカードの効果を使うことで、《ペンデュラム・エボリューション》の発動を無効にし、破壊することができる。

だが、たとえそれを無効にしたとしても、今の状況では2体のモンスターはすべて破壊されるだけ。

他の効果はわからないものの、今の状況で止めても何の意味もない。

「更に、《覇王門無限》の効果。我がフィールドに存在するとき、相手フィールドのモンスター1体の攻撃力分、我のライフを回復できる」

《覇王門無限》が淡く光るとともに、ズァークの体も光り始める。

高笑いするズァークと連動するようにデュエルディスクに表示されるライフの数値が上昇する。

 

ズァーク

ライフ4000→6500

 

ライフ回復効果に対しても、遊矢は《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》の効果を発動できなかった。

守りを固めるモンスターを少しでもエクストラデッキに残さなければという思いが強かった。

「さあ、バトルだ。我は貴様のフィールドのすべてのモンスターを攻撃する!!」

《覇王龍ズァーク》の黒いレーザーのようなブレスが遊矢のフィールドを一閃する。

わずかなタイムラグの後で激しい爆発が起こり、その爆発に飲み込まれた2体のオッドアイズが消滅し、遊矢の体がダメージ0であるにも関わらず、大きく吹き飛ばされていく。

「うわあああああ!!!!」

地面を転がり、義手から発する嫌な音が耳に届く。

関節部はまだ動くものの、手が機能を失い、手札として握っていた1枚が地面に落ちた。

勢いが収まり、地面から起き上がろうとする遊矢だが、こみ上げる吐き気でそれができず、思わず吐き出したそれは鮮やかな赤い血だった。

「い…た、い…」

今の攻撃で内臓にまでダメージがあったのか、体内からあふれ出る痛みに我慢できず、立ち上がることも地面に落ちたカードをつかむこともできない。

幸い、義手には手が動かなくなった場合に備えて、ライディングデュエルの時に使う手札保管のスペースがある。

それを使うためにも、立ち上がってデュエルを続けなければならないが、痛みのせいで起き上がることができない。

「ふん…立ち上がる力すら失せたか。もはや、デュエルを続けることもできぬだろう。次のターンで、貴様の敗北だ!我はこれで、ターンエンド!」

 

ズァーク

手札2(《覇王門の魔術師》)

ライフ6500

場 覇王龍ズァーク レベル12 攻撃4000

  ペンデュラム・エボリューション(永続魔法)

  覇王門零(青) ペンデュラムスケール0

  覇王門無限(赤) ペンデュラムスケール13

 

遊矢

手札3(うち2枚《EM天空の魔術師》、《EMオッドアイズ・ディゾルヴァー》)

ライフ1200

場 星読みの魔術師(青) ペンデュラムスケール1

  時読みの魔術師(赤) ペンデュラムスケール8

 

「俺…は…」

這いずる遊矢は右手を落ちているカードに向けて伸ばす。

視界がゆがみ、それが自分が追い詰められていることを思い知らせている。

だが、この手札も遊矢にとってはもはや意味のないカード。

かろうじて手にした遊矢だが、それが残った最後の力だったのか、それからピクリとも動かなくなる。

「ふん…死んだか。安心するがいい、すぐに貴様の愛する者も、仲間も、すべてが後を追う」

 

「遊矢、遊矢!立って、遊矢!!」

モニターに映る倒れた遊矢に声を上げる柚子だが、その声は今の遊矢にはシステムにも心にも届くはずがない。

ただ見ていることしかできず、レイとしてズァークを封じる役目すら果たす手段のないことにセレナは悔し紛れに拳を壁にたたきつけた。

拳から伝わる痛みはセレナの心をいやすはずもなく、むなしさを覚えさせるだけ。

「ユート…」

「ユーゴ…」

もはやズァークの一部と化した2人が遊矢に力を与えられる状態ではない。

《覇王龍ズァーク》の手が倒れた遊矢へと向かい、つかまれた遊矢の目は空ろだ。

このまま握りつぶされるのを待つだけの遊矢。

彼の目には《覇王龍ズァーク》と一体化しているズァークを映していて、視界がぶれるとともにユーリ達にも彼が見えた。

(ユート…ユーゴ、ユーリ…。俺には、誰も、助けられない…。笑顔に、できないのか…?)

「死ねぇ!!」

(オッドアイズ…ダーク・リベリオン…クリアウィング…スターヴ・ヴェノム…。みんなは、悪くない…。悪いのは、こんなことにしか…力が、使えなかった…俺たちの、弱…さ…)

視界が真っ黒に染まっていき、同時に全身に冷たさを覚える。

何もできずに死んでいき、そのまま世界も死んでいく。

絶望が心を塗りつぶしていく。

(それは…どうだろう?君は、ここで終わってしまうのかね?)

暗闇の中で、茶色いバケットハットをかぶり、茶色いコートで身を包んだ男の姿が映る。

その声は翔太そっくりで、動けない遊矢は声をかけようとするが、今は口すらうまく動かすことができなかった。

そっくりな声ではあるが、棘のある彼とは到底思えない穏やかな声。

一瞬で遊矢のそばに移動した彼が優しく頬を撫でる。

そこで遊矢は彼の顔を間近で見ることになった。

「翔…太…?」

「君はここで終わってはいけない。確かにここで戦うのは君一人、だが…ここではないどこかで戦っている人たちがいる。感じるんだ、彼らの思いを…彼らの戦いを…」

「ああ…」

脳裏に次々と浮かぶ、戦いの光景。

融合次元だけでなく、人々が避難しているスタンダード次元にも覇王眷竜が現れ、町を攻撃している。

だが、それにあらがう人々も存在する。

「まだだ…!柚子と遊矢が帰る場所を守るためにも!熱血だああああ!!!」

「塾長…」

「遊矢…あんたも戦っているんだろう?あんたが帰ってきたときに家も塾もなくなってましたなんて、話しにならないだろう!!」

「母さん…」

「ふん…我が魂も世界も、まだ屈しはしない!!見せてやろう、このジャック・アトラスの…我らの力を!!」

「ジャック…!」

「ジャックにばかりいい格好をさせるかよ!こうなったら、ぶっ倒れるまで戦い抜いてやる!これが…俺の贖罪だ!!」

「シンジ…!」

「くっそぉ!倒しても倒しても…次から次へと…」

「ダメよ!まだあきらめちゃダメ!!」

「アレン、サヤカ!!」

スタンダード次元での戦いの光景が消え、次に見えたのは融合次元での権現坂達の戦う姿。

「遊矢は必ず勝利する!!必ずだ!!」

「そうだ…故に、私たちは私たちのできることを!!」

「権現坂、零児…!」

「彼らだけじゃない…。まだまだ思いはこの世界と…君の勝利を信じている」

ポォッと柔らかな音とともに熱を持つ光が遊矢たちの周囲に集まる。

カードとなってしまい、いまだに解放されていない人々、そして死んだ仲間たち。

その熱が遊矢の心臓や心に伝わり、目から涙がこぼれる。

そして、男のそばにレイが現れる。

「私たちは信じている。あなたは…絶望と力におぼれたズァークの中に残された光。デュエルとみんなの笑顔を愛した彼の純粋な思いの欠片だということを…」

「さあ…目を覚ますんだ。榊遊矢」

「あなた、は…まさか!!」

 

「何?この光は…」

あとは握りつぶすだけのはずの遊矢の体から放たれる白く、熱のこもった光。

嫌悪感を抱いたズァークは彼を上空に向けて投げる。

「ならば、握りつぶすまでもない!焼き尽くしてくれる!!」

今だの手に残る熱を振り払うように、上空に浮かぶ遊矢に向けた放たれるブレス。

だが、それを阻んだのは4枚の魔法カード。

かつて、ズァークを封じた4枚のカードだ。

「貴様…レイかぁ!!」

「まだ…終わっていない…。俺も、世界も…」

まだ痛みが残る遊矢の手に吸い寄せられるように、地面に落ちていた遊矢のたった1枚の手札が飛んできて、右手でそれをつかんだ遊矢はそれをホルダーに納める。

そして、デッキトップに指をかける。

「俺の…ターン!!」

 

遊矢

手札3→4

 

「俺は…手札から魔法カード《揺れる眼差し》を発動!ペンデュラムゾーンに存在するカードをすべて破壊する!!」

「ふん…今更2枚の覇王門を破壊したとて、貴様も!!」

「4枚のペンデュラムカードが破壊されたことで、俺はデッキからもう1枚の《揺れる眼差し》と、ペンデュラムモンスターの《EMレディアンジュ》を手札に加える!そして、相手に500のダメージを与え、相手フィールドのカード1枚を除外する!俺が除外するのは、《覇王眷竜クリアウィング》!!」

破壊された4枚のペンデュラムカードの粒子がズァークと《覇王眷竜クリアウィング》を襲う。

(また…この光!?気持ちの悪い光を!!)

 

ズァーク

ライフ6500→6000

 

「それはどうした!?我はまだフィールドに存在する!そして、《ペンデュラム・エボリューション》の効果により、我はすべてのモンスターを攻撃できるのだぞ!!」

「ああ…わかってる!そして、これで俺のフィールドにカードがなくなった!俺は…手札から魔法カード《ユニバース・ペンデュラム》を発動!俺のフィールドにカードがない時、お互いのエクストラデッキ、そして墓地に表側表示で存在するドラゴン族モンスターを除外し、ドラゴン族融合モンスター1体を融合召喚する!俺が融合素材にするのは融合モンスター、《ヴァレルロード・F・ドラゴン》、シンクロモンスター、《オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン》、エクシーズモンスター、《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》、そして、ペンデュラムモンスター、《覇王眷竜ダークヴルム》!!」

「何!?我の覇王眷竜をも、融合素材に…!それに…融合、シンクロ、エクシーズ、ペンデュラムだと…!」

発動された《ユニバース・ペンデュラム》が上空へと飛び、その周囲にレイの4枚のカード、そして遊矢が指定した4枚のドラゴンが集まる。

それらが虹色の光を放ち、一体化していくと、虹色に光の柱となって遊矢を包んでいく。

「砕かれし4つの次元をさまよう光と闇。今こそ一つとなりて、、破顔一笑の光となれ!融合召喚!!現れろ、《覇王天龍オッドアイズ・アークレイ・ドラゴン》!!」

遊矢の体が宙に浮かび、彼を中心に光がドラゴンに肉体を構築していく。

その姿は対峙する《覇王龍ズァーク》とよく似ている。

だが、違いがあるとしたら、それは遊矢たち4人が持つそれぞれのドラゴンの特徴を引き継いでいることだ。

そして、現れたもう1体の覇王龍といえるドラゴンの咆哮が世界を侵食しつつあったフィールドを消し飛ばしていき、欠片は白い熱を持つ光へと還元されていった。

 

覇王天龍オッドアイズ・アークレイ・ドラゴン レベル12 攻撃4000

 

覇王眷竜サンダーヴルム

レベル4 攻撃1900 守備1500 闇属性 ドラゴン族

【Pスケール:青4/赤4】

(1):自分Pゾーンにカードがなく、相手フィールドにEXデッキから特殊召喚されたモンスターが存在するときに発動できる。EXデッキに表側表示で存在するこのカードを自分Pゾーンに置く。

【モンスター効果】

このカード名の(1)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードの召喚・特殊召喚に成功したときに発動する。自分はデッキから「覇王」カード1枚を墓地へ送る。

 

覇王の勅命

通常罠カード

(1):自分が直接攻撃によって戦闘ダメージを受けたときに発動できる。受けたダメージの数値分LPを回復する。その後、デッキからレベル7・8の闇属性・ドラゴン族Pモンスター1体を攻撃表示で特殊召喚し、バトルフェイズを終了させる。

 

 

ミラージュ・オブ・オッドアイズ

通常罠カード

(1):自分フィールドの「オッドアイズ」モンスター1体を対象として発動できる。発動後、このカードは装備カード扱いとしてそのモンスターに装備する。このカードを装備したモンスターは戦闘では破壊されず、戦闘で発生する自分への戦闘ダメージが0となる。

(2):相手の直接攻撃宣言時、自分フィールドにカードがない場合、墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。相手のバトルフェイズを終了させる。その後、自分の墓地に存在するPモンスター1体を自分のEXデッキに表側表示で置き、EXデッキに表側表示で存在するそのモンスターとは異なる名前で、同じレベルを持つPモンスター1体を攻撃表示で特殊召喚する。



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第133話 エンタメ

「嘘だろ…この反応は!」

「映像が回復する…!」

遊矢が発動した《ユニバース・ペンデュラム》が生み出すエネルギーによって一度はブラックアウトした映像が戻っていき、やがて検知された召喚エネルギーの反応にハイヤーは驚きを隠せなかった。

計測される召喚エネルギーから演算された結果、今アカデミア本島には《覇王龍ズァーク》が2体存在すると出ている。

回復した映像に映っているのは2体の《覇王龍ズァーク》。

お互いにデュエリストとモンスターが一体化している状態だ。

「遊矢…」

だが、柚子の目に映る、遊矢が召喚した《覇王龍ズァーク》と思わしきモンスターは決してズァークのものと同じではない。

遊矢が自ら生み出した、誰かを笑顔にするための力。

今の彼女にはそう確信できた。

 

(遊矢のメインフェイズ1)

ズァーク

手札2(《覇王門の魔術師》)

ライフ6000

場 覇王龍ズァーク レベル12 攻撃4000

  ペンデュラム・エボリューション(永続魔法)

 

遊矢

手札4(《揺れる眼差し》、《EMレディアンジュ》、《EM天空の魔術師》、《EMオッドアイズ・ディゾルヴァー》)

ライフ1200

場 覇王天龍オッドアイズ・アークレイ・ドラゴン レベル12 攻撃4000

 

「馬鹿な…残りカスである貴様が、貴様ごときが我と同じ力を発動するだと…!?」

遊矢が召喚した《覇王龍ズァーク》と似たモンスター。

《覇王龍ズァーク》を生み出したズァークだからこそ確信できる。

この目の前の己のコピーといえるモンスターは己に匹敵するほどの力を持っている。

「これは…みんなが信じて、生み出してくれた力…」

「ふざけるな!より刺激的な、より圧倒的なものを追い求め続けたあの下郎どもがいくら積み重なろうとも、このような…」

「確かに…ズァークの言う通りかもしれない。俺たちはみんな、弱くて…浅はかで…時にはうぬぼれて…誰かを傷つける」

遊勝が失踪に、傷ついた己を隠すように道化となった遊矢。

だが、いくら作り笑顔をしても、心の中にある傷と弱さはいつも自分を見ていた。

そんな中でペンデュラム召喚を手にしてストロング石島を倒し、自分だけの力に一時は天狗となった。

だが、翔太や零児といった新たなペンデュラム召喚を使うデュエリストが現れ、自分を上回る力を見せつけられた時は再びそれを手にする前の自分に戻りかけた。

そんな自分を修造が奮い立たせ、ペンデュラム召喚のパイオニアとして強くなり続ける道を選んだ。

それが、みんなを笑顔にするエンターテイナーとなる道だと信じて。

だが、次元戦争がはじまり、誰かを笑顔にするはずのデュエルが誰かを傷つけるための道具となっていることを知り、遊矢も戦いを止めるためと言いながら、それで誰かを傷つけてきた。

ズァークの言う下郎の中に、間違いなく遊矢も入っている。

そんな彼らに絶望したズァークの心も。

「でも…だからこそ、俺たちはつながっていくんだ!《アークレイ・ドラゴン》の効果!このカードがエクストラデッキから特殊召喚に成功した時、デッキからペンデュラムモンスター1体を俺のペンデュラムゾーンに置くことができる。俺が置くのはスケール2の《EMオッドアイズ・バトラー》!そして、俺は手札の《レディアンジュ》の効果を発動!手札のこのカードと他のEM1体を墓地へ送ることで、俺はデッキからカードを2枚ドローする」

 

手札から墓地へ送られたカード

・EM天空の魔術師

 

「そして、俺は手札から速攻魔法《魔法移し》を発動!フィールド上の魔法カード1枚のコントロールを得る!俺が得るのは《ペンデュラム・エボリューション》!」

「何!?」

《魔法移し》のカードが出現するとともにそのソリッドビジョンが《ペンデュラム・エボリューション》と同じものへと変化していく。

同時にズァークのフィールドから同じカードが消滅し、暖かな光が彼と彼のモンスターたちを包む。

「やめろ…やめろ!この気持ち悪い光で、我を…!!」

「バトルだ!《オッドアイズ・アークレイ・ドラゴン》で《覇王龍ズァーク》を攻撃!!」

ブレスを放つのではなく、右拳に力を込めてそれを《覇王龍ズァーク》にたたきつけようとする。

だが、動揺する《覇王龍ズァーク》も怒りのままに拳を作ると互いの拳がぶつかり合う。

頭突き、殴り、体当たり。

あまりにも泥臭い肉体のぶつかり合いが2体の覇王龍によって演じられる。

顔面に拳がぶつかり、吹き飛んだ体が海面とぶつかる。

ぶつかり合って生まれるエネルギーは大小さまざまな波を生み出した。

(こんなところで…お前と戦うわけにはいかない!!)

《覇王龍ズァーク》の両腕をつかみ、拘束した《覇王天龍オッドアイズ・アークレイ・ドラゴン》の視線が上空に残る次元の裂け目に向けられる。

「うおおおおおお!!!」

「き、貴様ぁぁぁぁ!!」

2体の覇王龍が次元の狭間の中へと飛び込んでいく。

それと同時にイージス艦が感知していたはずの2体の召喚エネルギーが消失した。

「遊矢…」

「僕たちを、巻き込まないためだ。きっと、2体の同じ力を持った覇王龍がぶつかり合ったら、次元一つ…ひとたまりもない」

 

次元の裂け目の中は宇宙のような空間が広がり、それぞれの次元のものと思われる星のような輝きが遊矢の目に映る。

そして、次元の狭間から放出されたと思われるガレキや建物などが浮かんでいた。

その静寂な光が見守る中で、2体の覇王龍がぶつかり合い続ける。

やがて互いの拳が顔面を打ち砕き、2体の覇王龍が爆発を引き起こし、爆発の中からズァークの体が飛び出す。

「我は破壊されたとき、我がペンデュラムゾーンに置く!」

「俺は手札の《EMオッドアイズ・ディゾルヴァー》の効果!俺のフィールドのペンデュラムモンスターが相手モンスターと戦闘を行うとき、このカードを手札から特殊召喚できる。そして、その戦闘で俺のモンスターは破壊されない!」

爆発が収まり、傷つきながらも健在は《覇王天龍オッドアイズ・アークレイ・ドラゴン》とそのモンスターと一体化している遊矢、そして彼らを守る《EMオッドアイズ・ディゾルヴァー》の姿があった。

 

EMオッドアイズ・ディゾルヴァー レベル7 攻撃2000

 

「《オッドアイズ・ディゾルヴァー》でズァークにダイレクトアタック!」

遊矢たちを守る役目を終えた《EMオッドアイズ・ディゾルファー》が杖から魔法の弾丸を放つ。

弾丸を正面から受けたズァークの体が吹き飛び、浮遊しているガレキに背中からぶつかった。

「おのれ…この我が、我が…俺が…!!」

 

ズァーク

ライフ6000→4000

 

「俺はカードを1枚伏せ、《オッドアイズ・ディゾルヴァー》の効果を発動。俺の手札、フィールド、ペンデュラムゾーンのモンスターを素材に融合モンスターの融合召喚を行う!俺はペンデュラムゾーンの《オッドアイズ・バトラー》とモンスターゾーンの《オッドアイズ・ディゾルヴァー》を融合!観客をもてなす執事よ、結束の力を操る魔道士よ、今一つとなりて、新たな力を生み出さん!融合召喚!雷鳴纏いし疾風の竜、《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》!!」

 

オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン レベル7 守備3000

 

「そして、俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

ズァーク

手札2(《覇王門の魔術師》)

ライフ4000

場 覇王龍ズァーク(赤) ペンデュラムスケール12

 

遊矢

手札4→1(《揺れる眼差し》)

ライフ1200

場 覇王天龍オッドアイズ・アークレイ・ドラゴン レベル12 攻撃4000

  オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン レベル7 守備3000

  ペンデュラム・エボリューション(永続魔法)

  伏せカード1

 

「俺が…我が、この、俺が…貴様ごときに覇王龍を破壊され、ダメージを受けるなど…!!」

「ズァーク…」

ガレキから離れ、浮遊するズァークのあまりにも激しい動揺。

それほどまでに切り札である《覇王龍ズァーク》が破壊されたこと、そして自分がダメージを受けたことが衝撃だったのか。

「俺は…最強でなければ、我は決して滅びてはならん!!うおおおおお!!!」

激高と共に全身から放たれる黒いオーラ。

そこからはさらなる力を感じるが、今の遊矢にはそこから恐怖は感じない。

「まだわからないのか、ズァーク!俺も、お前も、みんなと何も変わらないと!お前はただの人間だ!お前が見下し、恐れたただの人間なんだよ!」

「黙れ黙れ黙れ!すべてを破壊する力を手に入れた俺が、神となった俺が、そんなはずがないだろう!!これ以上の我への侮辱は許さん!我のターン!!」

 

ズァーク

手札2→3

 

「我は手札より魔法カード《覇王帰還》を発動。我がフィールドに存在するとき、墓地または除外されている覇王2枚をデッキに戻し、デッキからカードを1枚ドローできる。我は除外されている《ダークヴルム》、《クリアウィング》をデッキに戻す。そして、我はスケール1の《覇王門の魔術師》をセッティング!」

黒い渦が出現し、その中から再び姿を現す《覇王龍ズァーク》と共に、白く染まった《アストログラフ・マジシャン》というべき魔術師が現れる。

「これで我はレベル2から11までのモンスターを同時に召喚可能。ペンデュラム召喚!現れよ、我がモンスターたち!!」

 

覇王眷竜ローズヴルム レベル4 攻撃1000

覇王眷竜ウィンドヴルム レベル4 攻撃1200(チューナー)

覇王眷竜オッドアイズ レベル8 攻撃2500

 

「レベル4の《ローズヴルム》にレベル4の《ウィンドヴルム》をチューニング!光の翼持つ眷属よ。その鋭利なる両翼で敵を討て!シンクロ召喚!現れろ《覇王眷竜クリアウィング》!」

再びペンデュラム召喚でよみがえった覇王眷竜たちのシンクロ召喚で生み出された、ズァークの力に染まった《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》。

各地を襲った覇王龍の眷属となったドラゴンの1体がこのデュエルで遊矢に牙をむく。

「《クリアウィング》の効果!このカードのシンクロ召喚に成功した時、相手フィールドの表側表示で存在するすべてのモンスターを破壊する!」

《覇王眷竜クリアウィング》のプリズム状の羽根から放たれる光の奔流が遊矢と《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》を襲う。

「《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》の効果!1ターンに1度、カード効果を発動した時、エクストラデッキに表側表示で存在するペンデュラムモンスター1体をデッキに戻し、その発動を無効にし、破壊する!」

「我がペンデュラム効果!我がペンデュラムゾーンに存在する限り、相手の融合、シンクロ、エクシーズモンスターの効果の発動は許されん!!」

光の柱を生み出している《覇王龍ズァーク》の瞳が光るとともに、稲妻を放とうとした《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》が力を失い、《覇王天龍オッドアイズ・アークレイ・ドラゴン》もろとも光の奔流に飲み込まれていく。

2体のモンスターが爆散し、《覇王天龍オッドアイズ・アークレイ・ドラゴン》と一体化している遊矢の体が吹き飛ぶ。

「くうう…《アークレイ・ドラゴン》の効果!モンスターゾーンで破壊されたこのカードは俺のペンデュラムゾーンへ行く!これはエクストラデッキで発動する効果!《ズァーク》の効果の範囲外だ!」

吹き飛ぶ遊矢の体を光の柱を生み出す《覇王天龍オッドアイズ・アークレイ・ドラゴン》が受け止める。

肉体の形は《覇王龍ズァーク》と同じだが、こうしてそのモンスターの姿を見るのは初めての遊矢。

彼の目に映るそのモンスターは同じ覇王龍とは思えないやさしさが感じられた。

「だが、これで貴様のフィールドにモンスターは存在しない!ライフ1200の貴様にもうなすすべはない!《覇王眷竜クリアウィング》でダイレクトアタック!」

「俺は速攻魔法《イリュージョン・バルーン》を発動!俺のモンスターが破壊されたターン、デッキの上から5枚をめくり、その中にあるEM1体を特殊召喚できる!俺は《EMオッドアイズ・タイタン》を特殊召喚!」

追撃すべく再び羽根から光を放つ《覇王眷竜クリアウィング》の前に二色の瞳を持つ鋼鉄の機械でできた鎧とタスキ姿の巨人が現れ、光をその体で受け止める。

リーゼントヘアーとタスキ、その姿は親友である権現坂を彷彿させる。

 

EMオッドアイズ・タイタン レベル8 守備3000

 

「無駄だ!《クリアウィング》が相手モンスターと戦闘を行うとき、そのモンスターを破壊し、そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを与える!」

「《オッドアイズ・タイタン》の効果により、俺のフィールドのEM、オッドアイズは1ターンに1度、戦闘およびカード効果では破壊されない!!」

まともに光を受けたにもかかわらず、《EMオッドアイズ・タイタン》は傷一つない状態で遊矢を狙っているモンスターを威圧するように視線を向ける。

「そして、《クリアウィング》の攻撃は続行!」

「ちっ…」

《覇王眷竜クリアウィング》の効果は自らの攻撃を無効にするものではない以上は攻撃を続けるしかない。

少しでも傷をつけるべく、爪で切りかかるが、それでもダメージを与えることができず、衝撃波がズァークを襲う。

 

ズァーク

ライフ4000→3500

 

「我はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

ズァーク

手札3→0

ライフ3500

場 覇王眷竜クリアウウィング レベル8 攻撃2500

  覇王眷竜オッドアイズ レベル8 攻撃2500

  覇王門の魔術師(青) ペンデュラムスケール1

  覇王龍ズァーク(赤) ペンデュラムスケール12

  伏せカード1

 

遊矢

手札1(《揺れる眼差し》)

ライフ1200

場 EMオッドアイズ・タイタン レベル8 守備3000

  覇王天龍オッドアイズ・アークレイ・ドラゴン(赤) ペンデュラムスケール13

  ペンデュラム・エボリューション(永続魔法)

 

 

「遊矢…結局、お前にすべてを押し付けてしまった…」

遊矢が生み出したもう1体の《覇王龍ズァーク》というべきモンスターの出現、そして2体のモンスターが遊矢たちと共に次元の狭間へと消えたことで、あれほど激しく襲い掛かってきた覇王眷竜たちの勢いがおとなしくなる。

それでも襲ってくることには変わらないが、今の勢いのままであれば、船を守り切ることができる。

だが、自らの手の届かないところへ行ってしまった遊矢と残されることになり、もはや助けることもできない己。

拳を握りしめる権現坂はその怒りを目の前の覇王眷竜に向ける。

「うおおおおおおお!!!!」

叫びと共に《超重武者ビッグベン-K》の拳が《覇王眷竜オッドアイズ》の胴体を貫いた。

 

「俺のターン、ドロー!!」

 

遊矢

手札1→2

 

「俺は墓地の《レディアンジュ》の効果を発動!俺のフィールドに《ジェントルード》もしくはオッドアイズカードが存在するとき、墓地のこのカードをペンデュラムゾーンに置くことができる。そして、《オッドアイズ・アークレイ・ドラゴン》の効果を発動!ペンデュラムゾーンに存在するこのカードを特殊召喚できる!」

再び《覇王天龍オッドアイズ・アークレイ・ドラゴン》と一つとなる遊矢。

《覇王龍ズァーク》のペンデュラム効果により、モンスター効果は封じられているものの、それでも攻撃力4000は健在だ。

 

覇王天龍オッドアイズ・アークレイ・ドラゴン レベル12 攻撃4000

 

「そして、《ペンデュラム・エボリューション》の効果発動!俺のフィールドの《覇王龍ズァーク》はこのターン、相手フィールドのすべてのモンスターに1回ずつ攻撃できる!そして、《アークレイ・ドラゴン》は《覇王龍ズァーク》としても扱う!バトルだ!《アークレイ・ドラゴン》で《覇王眷竜クリアウィング》を攻撃!そして、《オッドアイズ・タイタン》の効果により、《クリアウィング》の効果では《アークレイ・ドラゴン》は破壊されない!」

瞳を輝かせた《覇王天龍クリアウィング》の背中にプリズムでできた翼が出現し、《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》のように回転を始めると、自らの分身に向けて突撃する。

迎撃する《覇王眷竜クリアウィング》がブレスを放ち、ブレスと肉体がぶつかり合う。

同じクリアウィングの力を持っているが、攻撃力の差は明白。

ブレスを耐え抜き、突破していく《覇王天龍オッドアイズ・アークレイ・ドラゴン》の突撃によって、クリアウィングの分身を粉々に粉砕した。

「ぐうう…」

 

ズァーク

ライフ3500→2000

 

「次だ!《アークレイ・ドラゴン》!《覇王眷竜オッドアイズ》を攻撃!!」

「これ以上のダメージは認めん!《覇王眷竜オッドアイズ》の効果!バトルフェイズ中にこのカードをリリースし、エクストラデッキの《覇王眷竜オッドアイズ》以外の覇王眷竜または覇王門を特殊召喚できる。現れよ、《覇王門零》、《覇王門無限》!!」

《覇王天龍オッドアイズ・アークレイ・ドラゴン》の体が元に戻り、口から螺旋のブレスを放つが、命中する前に《覇王眷竜オッドアイズ》が姿を消し、入れ替わるように《覇王門零》と《覇王門無限》が出現する。

その2体を薙ぎ払うようにブレスを放ち、2体はブレスの直撃を受けたと同時に爆散した。

「俺はこれで、ターンエンド…」

 

ズァーク

手札0

ライフ2000

場 覇王門の魔術師(青) ペンデュラムスケール1

  覇王龍ズァーク(赤) ペンデュラムスケール12

  伏せカード1

 

遊矢

手札2(うち1枚《揺れる眼差し》)

ライフ1200

場 EMオッドアイズ・タイタン レベル8 守備3000

  覇王天龍オッドアイズ・アークレイ・ドラゴン レベル12 攻撃4000

  EMレディアンジュ(青) ペンデュラムスケール1

  ペンデュラム・エボリューション(永続魔法)

 

「認めん…認めん、認めん認めん認めん認めん認めん認めん!!この我が…残りカスの貴様などに遅れを取るなどぉぉぉ!!!」

かつての世界でのデュエルにおいても、頂点に立つまでの過程で敗北を味わったこともある。

悔しい敗北を何度も経験したが、今回は敗北でないにもかかわらず、これまでにないほどの屈辱を覚えている。

自らと一つになり損ない、己に弓を引いたこのゴミが《覇王龍ズァーク》に匹敵する存在を生み出したばかりか、その力で《覇王龍ズァーク》すら破壊した。

そんな現実をズァークは認めることなどできない。

「認めるものか…認めるものかああああ!!我のターン!!」

 

ズァーク

手札0→1

 

「我は再びペンデュラム召喚を行う!現れよ、《覇王眷竜オッドアイズ》!《覇王眷竜ウィンドヴルム》、《覇王眷竜ローズヴルム》、《覇王眷竜サンダーヴルム》!!」

 

覇王眷竜オッドアイズ レベル8 攻撃2500

覇王眷竜サンダーヴルム レベル4 攻撃1900

覇王眷竜ウィンドヴルム レベル4 攻撃1200(チューナー)

覇王眷竜ローズヴルム レベル4 攻撃1000

 

 

「我は永続罠《覇王転生》を発動!1ターンに1度、我はモンスターゾーンの覇王カードをペンデュラムゾーンに置く、もしくはペンデュラムゾーンの我を召喚条件を無視して特殊召喚することができる。さあ、再び我に力を与えよ、《覇王龍ズァーク》!!」

宙を浮くズァークの肉体が光となり、光の柱から抜け出た《覇王龍ズァーク》に取り込まれる。

再び一体化した姿となり、その状態で再び遊矢と対峙する。

 

覇王龍ズァーク レベル12 攻撃4000

 

《覇王龍ズァーク》を中心に、4体の覇王眷竜が彼を守るように展開していく。

だが、これだけの数のモンスターを呼び出したとしても、《EMオッドアイズ・タイタン》の存在が《覇王天龍オッドアイズ・アークレイ・ドラゴン》を守る。

「我はレベル4の《サンダーヴルム》と《ローズヴルム》でオーバーレイ!漆黒の闇に住まう反逆の牙よ、我に屈し我に従え!エクシーズ召喚!ランク4、《覇王眷竜ダークリベリオン》!」

2体の覇王眷竜の力でエクシーズ召喚された、《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》と同じ姿だが、《覇王龍ズァーク》の力によってまがまがしい緑のラインが刻まれたドラゴン。

己の主である《覇王龍ズァーク》に仇名す存在である《覇王天龍オッドアイズ・アークレイ・ドラゴン》の巨体にひるむことなく咆哮した。

 

覇王眷竜ダーク・リベリオン ランク4 攻撃2500

 

「そして、我のフィールドの《オッドアイズ》と《ウィンドヴルム》をリリースし、融合!現れるがいい、《覇王眷竜スターヴ・ヴェノム》!!」

《融合》なしで上空に出現した渦の中へ飛び込む2体の覇王眷竜が融合して出現した、覇王龍の力を宿した《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》。

2体の覇王眷竜は遊矢の周囲を飛び回り、彼を守るようにそばに《EMオッドアイズ・タイタン》が立った。

 

覇王眷竜スターヴ・ヴェノム レベル8 攻撃2800

 

「《スターヴ・ヴェノム》の効果。1ターンに1度、フィールド・墓地のモンスター1体の名前と効果を得る。る。《クリアウィング》の力を受け取るがいい!!」

《覇王龍ズァーク》から放たれる黒い瘴気を受けた《覇王眷竜スターヴ・ヴェノム》の瞳が怪しく輝く。

同時に、瘴気はその1体だけでは飽き足らず、《覇王眷竜ダーク・リベリオン》にも乗り移る。

「そして、この効果を発動したターン、我のフィールドのモンスターは守備モンスターを攻撃するとき、貫通ダメージを与える」

「だが…《オッドアイズ・タイタン》の効果で1度だけ、俺のEMとオッドアイズ1体の破壊を無効にできる!そして、《アークレイ・ドラゴン》は破壊されても、ペンデュラムゾーンに行く!」

「それがどうした。我のフィールドに《ダーク・リベリオン》がいることを忘れたか?我は《ダーク・リベリオン》が相手モンスターと戦闘を行うダメージ計算前、オーバーレイユニットを一つ取り除くことで、戦闘を行う相手モンスターの攻撃力をターン終了時まで0にし、自らの攻撃力に加えることができる」

「何!?」

「バトル!《ダーク・リベリオン》で我の偽物を攻撃!そして、《ダーク・リベリオン》の効果発動!オーバーレイユニットを1つ取り除き、我が偽物の力を奪う!!」

オーバーレイユニットを牙に宿した《覇王眷竜ダーク・リベリオン》から放たれる緑色の稲妻が遊矢と一体化している《覇王天龍オッドアイズ・アークレイ・ドラゴン》を襲う。

「うわあああああああ!!!!」

 

覇王眷竜ダーク・リベリオン ランク4 攻撃2500→6500

覇王天龍オッドアイズ・アークレイ・ドラゴン レベル12 攻撃4000→0

 

「これで貴様は6500の貫通ダメージを受ける!貴様の敗北だ!!」

「俺は《オッドアイズ・タイタン》の効果を発動!俺のライフを上回る戦闘ダメージを受ける時、このカードをリリースすることでダメージを0にし、バトルフェイズを終了させる!!」

遊矢を守るように前に立ち、仁王立ちする《EMオッドアイズ・タイタン》を《覇王眷竜ダーク・リベリオン》の牙が貫く。

胴体パーツが粉々に砕けた《EMオッドアイズ・タイタン》が消滅するが、遊矢と《覇王天龍オッドアイズ・アークレイ・ドラゴン》は健在だった。

「そして、俺が受けるはずだった戦闘ダメージの数値以下の攻撃力を持つEMオッドアイズをデッキから特殊召喚する。俺は…《EMオッドアイズ・シンガー》を特殊召喚!」

(遊矢…!)

柚子の分身というべき姿である《EMオッドアイズ・シンガー》がフィールドに現れ、《覇王眷竜ダーク・リベリオン》の効果を受けて傷つく遊矢を心配そうに見つめる。

「あ、あ…大丈夫だ、まだ…デュエルは終わっていない…。《オッドアイズ・タイタン》の効果によって、《アークレイ・ドラゴン》は破壊されない!」

 

EMオッドアイズ・シンガー レベル6 攻撃400

 

「こざかしい真似を…!でくの坊に女、そんなものに守られる偽物など…それにしのがれるなど…!!我は手札より魔法カード《ペンデュラム・ホルト》を発動!我のエクストラデッキに表側表示で存在するペンデュラムモンスターが3種類以上存在するとき、デッキからカードを2枚ドローできる。我はカードを1枚伏せ、ターンエンド!!」

 

ズァーク

手札1

ライフ2000

場 覇王龍ズァーク レベル12 攻撃4000

  覇王眷竜ダーク・リベリオン(オーバーレイユニット1) ランク4 攻撃6500→4000

  覇王眷竜スターヴ・ヴェノム レベル8 攻撃2800

  覇王門の魔術師(青) ペンデュラムスケール1

  覇王転生(永続罠)

  伏せカード1

 

遊矢

手札2(うち1枚《揺れる眼差し》)

ライフ1200

場 EMオッドアイズ・シンガー レベル6 攻撃600

  覇王天龍オッドアイズ・アークレイ・ドラゴン レベル12 攻撃4000

  EMレディアンジュ(青) ペンデュラムスケール1

  ペンデュラム・エボリューション(永続魔法)

 

「俺のターン!!」

 

遊矢

手札2→3

 

「俺は手札から魔法カード《おろかな埋葬》を発動!その効果により、デッキから《EMオッドアイズ・シンクロン》を墓地へ送る。そして、《オッドアイズ・シンガー》の効果を発動!1ターンに1度、俺の墓地に存在するレベル4以下のモンスター1体を効果を無効にして、特殊召喚できる。俺は墓地の《EMオッドアイズ・シンクロン》を特殊召喚!」

(遊矢!!)

柚子の声をかすかに響き、《EMオッドアイズ・シンガー》がギターから奏でる音色が墓地の《EMオッドアイズ・シンクロン》を呼び覚ます。

 

EMオッドアイズ・シンクロン レベル2 攻撃200(チューナー)

 

「レベル6の《オッドアイズ・シンガー》にレベル2の《オッドアイズ・シンクロン》をチューニング!王者の咆哮、今天地を揺るがす。紅蓮の炎と共に、覇者の力宿して今こそ現れろ!シンクロ召喚!王者の魂、《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》!!」

 

レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト レベル8 攻撃3000

 

「《スカーライト》の効果!1ターンに1度、このカードの攻撃力以下の特殊召喚された効果モンスターをすべて破壊し、破壊したモンスター1体につき500のダメージを与える!アブソリュート・パワー・フレイム!!」

「ならば我は罠カード《覇王無礼》を発動!我がフィールドに存在するとき、我のフィールドの覇王カードの数まで、貴様の手札をランダムに墓地へ送る!我のフィールドの覇王カードは4枚!よって、貴様の手札をすべて墓地へ送る!」

《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》の口から放たれる灼熱の炎がズァークを襲い、《覇王龍ズァーク》が飛んで逃れる中、逃げ遅れた2体の覇王眷竜を焼いていく。

だが、《覇王眷竜ダーク・リベリオン》も《覇王眷竜スターヴ・ヴェノム》もただ破壊されるだけでは終わらぬと、《覇王天龍オッドアイズ・アークレイ・ドラゴン》を襲う。

《覇王天龍オッドアイズ・アークレイ・ドラゴン》が両拳に力を籠め、互いの拳をぶつけ合うと、頭上に複数の氷塊が出現し、それが《覇王眷竜ダーク・リベリオン》を襲う。

ミサイルのように飛ぶ数多くの氷塊を避けながら迫るが、《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》の炎で受けたダメージのせいでやがて限界を迎え、よけきれなくなった氷塊を受け始める。

だが、消滅する前に放ったブレスが遊矢の手札を襲い、1枚を吹き飛ばす。

そして、そのモンスターを盾替わりにしていた《覇王眷竜スターヴ・ヴェノム》が肉薄し、その腕で切りかかろうとする。

それに対しては雷を宿した拳をたたきつける形で防ぎ、その拳を中心に発生した雷嵐に飲み込まれた《覇王眷竜スターヴ・ヴェノム》。

体がバラバラになる前に、主の力になるべく口から放つブレスが遊矢の残った手札1枚を吹き飛ばした。

「そして、この効果で墓地へ送ったカード1枚につき、300のダメージを与える!ぐううう!!」

「うわあああ!!」

《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》の炎を受けるズァークと吹き飛ばされた3枚のカードから放たれる稲妻を受ける遊矢。

お互いに傷つき合い、モンスターと一体化してもなお、満身創痍といえた。

 

ズァーク

ライフ2000→1000

 

遊矢

ライフ1000→400

 

「はあ、はあ…これで、もうお前のフィールドに覇王眷竜はいない。あとは…覇王龍同士で攻撃して、《スカーライト》でダイレクトアタックすれば、勝利は…決まる…!」

2体の覇王眷竜をなぎ倒し、再び肉薄した《覇王龍ズァーク》に《覇王天龍オッドアイズ・アークレイ・ドラゴン》が再び拳を振るう。

迎撃するように《覇王龍ズァーク》から繰り出される拳とぶつかり合い、拳の応酬を繰り広げる。

「馬鹿な奴め!我は破壊されたとしても、ペンデュラムゾーンに行くのみ!そして、《覇王転生》の効果によってペンデュラムゾーンから特殊召喚できる!」

互いの拳が傷つき合い、距離を置くと互いのブレスがぶつかり合い、そこを中心に大きな爆発が巻き起こる。

「そして、我は手札の《覇王巫女》の効果を発動。我が破壊された時、我のフィールドに覇王門カードが存在する場合にこのカードを手札から墓地へ送ることで、相手フィールドのカードをすべて破壊する!」

「何!?」

「貴様のペンデュラムゾーンに《アークレイ・ドラゴン》が残るとしても、ペンデュラムゾーンに他のペンデュラムモンスターがいなければ、フィールドへは戻れまい!!そして、貴様の手札は0!もはやどうすることもできまい!!」

2体の覇王龍の間に入るように、《覇王龍ズァーク》と似た色の体をした、レイに似た巫女が姿を現すと、その手に2体のモンスターが放つブレスを吸収していく。

「貴様を殺し、4つの次元を崩壊させる!世界崩壊、これが貴様の世界の、最後のエンタメだ!!」

目を閉じ、吸収した力が宿った両手を空に掲げた《覇王巫女》が瞳を開くと同時にそのエネルギーが遊矢を襲う。

エネルギーの嵐の中に《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》と《EMレディアンジュ》、ズァークから奪った《ペンデュラム・エボリューション》が消し飛んでいく。

《覇王天龍オッドアイズ・アークレイ・ドラゴン》と分離した遊矢は吹き飛ばされ、宙に浮かぶがれきに背中をぶつけた。

「そして、《ペンデュラム・スイッチ》の効果により、我は再び顕現する…」

「ハア、ハア、ハア…」

傷ついた遊矢をあざ笑うかのように再び一体化した姿を見せつけるズァーク。

もう手札はなく、フィールドに残っているのは自らの効果によってペンデュラムゾーンに戻った《覇王天龍オッドアイズ・アークレイ・ドラゴン》1体のみ。

もはや、遊矢になすすべなどない。

「さあ、ターン終了の宣言をせよ!楽に殺してやる」

「…ハ、ハハ、ハハハ…」

体を震わせ、こらえている様子の遊矢にズァークは怪訝な顔を見せる。

とうとう我慢できなくなったのか、遊矢は体が痛いのがわかっているにもかかわらず、その場で腹を抱えて笑って見せた。

「何がおかしい!?まさか、敗北を悟って気でも狂ったとでもいうのか?」

「ハハハハ!!まさか、やっぱり…デュエルって面白いなって思ってさ」

「何…?」

「だって、そうだろ?お前だって、最初はデュエルが楽しくて楽しくて仕方なかった。だから、大会に出た。観客と一緒に笑い合うのが楽しかった、そうじゃないのか?」

痛む体を耐えながら、目の前のズァークに訴えかけ、ズァークの表情が固まっていく。

脳裏に浮かぶのは初めてカードを手に入れたとき。

誕生日プレゼントでもらったデュエルディスクと共に得たそれらの中に、4体のドラゴンがいた。

そして、苦労しながらもその4体のドラゴンを一気にフィールドに出した時に胸からこみ上げた暖かな感情。

「俺はこれから…墓地にあるカードを発動する。これは、お前が俺のフィールドのすべてのカードを薙ぎ払ったからこそ、発動できるカード。《オッドアイズ・リアライジング》。《覇王無礼》の効果で墓地へ送られたカードの1枚だ。このカードは俺のフィールドのオッドアイズペンデュラムモンスターが破壊されたターン、俺のフィールドにモンスターが存在しない場合に墓地から除外することで発動できる。俺のエクストラデッキに存在するレベル7・闇属性・ドラゴン族のペンデュラム効果モンスター1体を特殊召喚する。俺は《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を特殊召喚!」

「馬鹿なことを…今更《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を召喚したところで…何!?これ、は…!!」

耳が響くほどの激しい頭痛がズァークを襲い、その痛みに両手で頭を抱えるズァーク。

フィールドに現れた《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》は遊矢を背中に乗せると、目の前のズァークに向けて咆哮する。

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500

 

(よもや、奴の中に眠りについていた俺を再び呼び覚ますとはな、小僧)

「オッドアイズ…お前…」

(終わらせるぞ…榊遊矢!)

「ああ…!さらに俺は墓地の速攻魔法《ユニバース・ペンデュラム》の効果を発動!俺のフィールドに存在するモンスターが《オッドアイズ》1体のみの時、墓地に存在するこのカードと、エクストラデッキに表側表示で存在するEMオッドアイズ2体を除外することで、そのモンスターの攻撃力をエクストラデッキとペンデュラムゾーンに表側表示で存在するペンデュラムモンスター1体につき、攻撃力を500アップさせる!」

遊矢のエクストラデッキに眠る11体のペンデュラムモンスター、そして《覇王天龍オッドアイズ・アークレイ・ドラゴン》が再び姿を現した《EMオッドアイズ・タイタン》と《EMオッドアイズ・シンガー》と共に《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》の背後に現れ、それぞれから放たれる光がそのモンスターに宿る。

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500→8000

 

「攻撃力8000!?」

「たとえ、破壊されて再びペンデュラムゾーンに戻っても、ズァークのライフは尽きる!!見せてやる!これが…世界を救う、最高のエンタメだあああ!!」

光をまとった《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》と遊矢が覇王龍と一体化しているズァークに向けて飛ぶ。

その光に何かを感じた《覇王龍ズァーク》がブレスで迎撃するが、光がバリアとなって遮る。

そして、光が《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》に集中すると、螺旋のブレスとなってズァークを襲う。

「おのれ、おのれ、残りカスがあああ!!!!」

ブレスで撃ちぬかれた《覇王龍ズァーク》が叫びをあげながら消滅していき、ズァークの体が宙を舞う。

彼の目に映るのは光を宿した遊矢がこちらに向けて飛んでくる様子だった。

「ズァーーーーーーク!!!」

光が遊矢の右拳に集中し、それがズァークの頬に深々と突き刺さった。

 

ズァーク

ライフ1000→0

 

 

覇王転生

永続罠カード

このカード名の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。

(1):自分モンスターゾーンに存在する「覇王」Pモンスター1体を対象に発動できる。そのカードをPゾーンに置く。

(2):自分Pゾーンに「覇王龍ズァーク」が存在する場合に発動できる。そのカードを召喚条件を無視して特殊召喚する。

 

EMオッドアイズ・タイタン

レベル8 攻撃1000 守備3000 地属性 機械族

【Pスケール/青6:赤6】

(1):自分フィールドに存在する「EM」「オッドアイズ」「魔術師」カードが破壊されるときに発動できる。Pゾーンに存在するこのカードを代わりに破壊する。

【モンスター効果】

(1):1ターンに1度、自分フィールドの「EM」「オッドアイズ」「覇王天龍オッドアイズ・アークレイ・ドラゴン」カードが破壊されるときに発動できる。その破壊を無効にする。

(2):相手バトルフェイズ中、自分LPを上回る攻撃力を持つ相手モンスターが攻撃するとき、自分フィールドに存在するこのカードをリリースすることで発動できる。その攻撃で発生する自分へのダメージを0にし、バトルフェイズを終了させる。その後、その戦闘で受けるはずだった戦闘ダメージの数値以下の攻撃力を持つ「EMオッドアイズ」モンスター1体をデッキから攻撃表示で特殊召喚する。

 

覇王無礼(アニメオリカ・調整)

通常罠カード

このカード名のカードは1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールドに「覇王龍ズァーク」が存在する場合に発動できる。自分フィールドに存在する「覇王」カードの枚数まで、相手の手札をランダムに墓地へ送る。その後、この効果で墓地へ送ったカード1枚につき、300のダメージを与える。

 

覇王巫女

レベル1 攻撃0 守備0 効果 闇属性 天使族

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドの「覇王龍ズァーク」が相手によって破壊されたとき、自分フィールドに「覇王門」カードが存在する場合、手札のこのカードを墓地へ送ることで発動できる。相手フィールドに存在するすべてのカードを破壊する。

(2):自分フィールドに存在する「覇王龍ズァーク」が破壊されるときに発動できる。代わりに墓地に存在するこのカードを除外する。

 

 

オッドアイズ・リアライジング

通常罠カード

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールドの「オッドアイズ」Pモンスターが破壊されたときに発動できる。自分はデッキからカードを1枚ドローする。

(1):自分フィールドの「オッドアイズ」モンスターまたは「覇王天龍オッドアイズ・アークレイ・ドラゴン」が破壊されたとき、自分モンスターゾーンにカードがない場合、墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。自分のEXデッキに表側表示で存在するレベル7・闇属性・ドラゴン族P効果モンスター1体を特殊召喚する。

 

ユニバース・ペンデュラム

速攻魔法

このカード名の(1)(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドにこのカード以外のカードがない時に発動できる。ドラゴン族融合モンスターによって決められた融合素材をお互いのEXデッキ・墓地に表側表示で存在するドラゴン族モンスターから選択し、除外する。その後、その融合モンスターをEXデッキから融合召喚する。

(2):自分フィールドに存在するモンスターが「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン」1体のみで、自分Pゾーンに「覇王天龍オッドアイズ・アークレイ・ドラゴン」が存在する場合、墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。自分フィールドの「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン」1体の攻撃力は自分のEXデッキ、Pゾーンに表側表示で存在するPカードの数×500アップする。この効果はこのカードが墓地へ送られたターン、発動できない。また、この効果を受けたモンスターの効果は無効化される。



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第134話 死神の終焉

「翔太…君…」

翔太が遺したカードを握りしめる伊織の姿をニヤニヤと眺めるベクターの肉体がかつてのバリアン世界の神であるドン・サウザンドを灰色にしたような姿へと変化していく。

黒い瞳が伊織を見下ろし、彼が纏うオーラが強まる。

「みなぎる、みなぎるぜぇ…取り戻した!俺様の力を!!!」

ベクターの狂喜は今の伊織には届かない。

今、彼女が感じているのは翔太を失った悲しみと怒り。

伊織は彼が遺したカードをデッキに入れる。

「うわあああああ!!!」

「なんだぁ?俺様と…神とデュエルをするつもりかぁ?」

名にも力のないただの少女が戦おうとする愚かさをあざ笑うが、伊織のデッキからかすかに感じる力にベクターの笑いが収まる。

「ああ…そうだったなぁ。あの野郎が最後にやってくれた。不確定要素は、消してしまわねえとなぁ!!」

「「デュエル!!」」

 

ベクター

手札5

ライフ4000

 

伊織

手札5

ライフ4000

 

「俺様の先攻!まずは…《アンブラル・コロシアム》を発動!」

客席に次々と現れる人々と、そこから響くベクターへの狂喜の声援。

同時に彼らから発せられる黒い光がベクターに集中した。

「このカードの発動処理として、俺はデッキから《アンブラル・エンジェル》を手札に加える。そして、《アンブラル・エンジェル》は俺のフィールドにモンスターが存在せず、俺のフィールド魔法が発動している場合、手札から特殊召喚できる」

上空に紫の次元の裂け目が出現し、そこからマリオネットのように四肢が糸でつなげられている青い髪と真っ白な肌の天使が舞い降りる。

顔は髪で完全に隠れており、羽根もボロボロだ。

 

アンブラル・エンジェル レベル1 攻撃0

 

「このカードをリリースすることで、デッキからアンブラルペンデュラムモンスター1体を効果を無効にして特殊召喚できる。俺様は《アンブラル・エンジェル》をリリースし、現れな!《仮面剣闘士オーディン》!」

かすかにあらわとなった口から悲鳴を上げる《アンブラル・エンジェル》の体が消滅し、入れ替わるように《仮面剣闘士オーディン》がその姿を現す。

《魔装騎士ペイルライダー》に似たそのモンスターをベクターが使っていることに伊織は嫌悪感を抱かずにはいられない。

 

仮面剣闘士オーディン レベル7 攻撃2500

 

「そして、《アンブラル・コロシアム》の効果。ペンデュラムモンスターを特殊召喚したことにより、俺はデッキからカードを2枚ドローし、手札1枚を墓地へ捨てる」

 

手札から墓地へ捨てられたカード

・アンブラル・スライム

 

「そして、俺は手札から魔法カード《アンブラル・フュージョン》を発動!手札の《アンブラル・マジシャン》とデッキの《アンブラル・ウィル・オ・ザ・ウィスプ》を墓地へ送り、融合!2つの悪魔の影よ、今一つとなり、世界を闇で覆え!!融合召喚!!現れろ、《仮面騎士ジルドレ》!!」

 

仮面騎士ジルドレ レベル8 攻撃3000

 

「《アンブラル・コロシアム》の効果。融合素材となった《アンブラル・マジシャン》と同じレベルと攻撃力の《アンブラルトークン》を特殊召喚する」

 

アンブラルトークン レベル?→4 攻撃?→1500

 

「そして…手札から《アンブラル・シンクロン》を召喚」

 

アンブラル・シンクロン レベル3 攻撃1300(チューナー)

 

「レベル4の《アンブラルトークン》にレベル3の《アンブラル・シンクロン》をチューニング!影が星空を食らうとき、見えざる矢が愚者を葬る。光無き闇へ落ちろ!!シンクロ召喚!現れろ、《仮面弓王レラジェ》!!」

 

仮面弓王レラジェ レベル7 攻撃2400

 

「《アンブラル・コロシアム》の効果により、次の俺のスタンバイフェイズ時まで、俺のアンブラル達の攻撃力は600アップする」

 

仮面剣闘士オーディン レベル7 攻撃2500→3100

仮面騎士ジルドレ レベル8 攻撃3000→3600

仮面弓王レラジェ レベル7 攻撃2400→3000

 

「そして、俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

ベクター

手札5→1

ライフ4000

場 仮面剣闘士オーディン(《アンブラル・コロシアム》の影響下) レベル7 攻撃3100

  仮面騎士ジルドレ(《アンブラル・コロシアム》の影響下) レベル8 攻撃3600

  仮面弓王レラジェ(《アンブラル・コロシアム》の影響下) レベル7 攻撃3000

  伏せカード2

  アンブラル・コロシアム(フィールド魔法)

 

伊織

手札5

ライフ4000

場 なし

 

フィールドに現れる、翔太の四騎士とよく似たモンスターたち。

やたら似ている分、伊織の中のベクターへの怒りに油を注いでいく。

「私のターン、ドロー!!」

 

伊織

手札5→6

 

「翔太君を殺したあなたを…絶対に許さない!!」

「殺す…?何を言ってやがる。こいつはもともと存在しない奴なんだよ、存在しない奴をどうやったら殺せるのー?ねえねえ、教えてー、伊織お姉ちゃーん」

「私は…手札から魔法カード《E-エマージェンシー・コール》を発動!その効果で、私はデッキから《ソリッドマン》を手札に加える!そして、私は《ソリッドマン》を召喚!」

水晶の甲冑を身にまとい、モノアイのカメラが顔となっているヒーローが伊織の背後から大きく跳躍し、彼女を守るように前に出て着地する。

 

E・HEROソリッドマン レベル4 攻撃1300

 

「このカードの召喚に成功した時、手札のレベル4以下のHEROを特殊召喚できる!私は《V・HEROヴァイオン》を特殊召喚!」

《E・HEROソリッドマン》の隣に現れる彼と似た姿ではあるが、全身が紫色の色彩となっているE・HEROではないヒーロー。

伊織にとっては初めて使う存在だ。

 

V・HEROヴァイオン レベル4 攻撃1000

 

「このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、デッキからHERO1体を墓地へ送る!」

デュエルディスクからデッキを抜いた伊織はその中で出番を待つヒーローたちに目を向ける。

その中にある、翔太が遺したカードが徐々にその姿を見せていく。

「(翔太君…!)私はデッキから《シャドー・ミスト》を墓地へ送る!そして、《シャドー・ミスト》の効果!このカードが墓地へ送られたとき、デッキからHERO1体を手札に加えるよ!私が手札に加えるのは《リキッドマン》!更に、《ヴァイオン》の効果発動!墓地のHERO1体を除外して、デッキから《融合》を手札に加える!そして、手札に加えた《融合》を発動!私が融合素材にするのはフィールドの《ソリッドマン》と《ヴァイオン》!硬い意志を甲冑に宿したヒーローよ、幻影の中から力を生み出すヒーローよ、今こそ1つになりて、新たなヒーローに進化せよ!融合召喚!現れて、夜明けをもたらす不屈のヒーロー、《E・HEROサンライザー》!!」

2体のヒーローが融合の渦に飲み込まれると、渦が次第に小さな太陽へと変化する。

やがて太陽が爆発し、その中から青いマントと紅蓮のスーツを身にまとった《E・HEROエッジマン》というべきヒーローが現れた。

 

E・HEROサンライザー レベル7 攻撃2500

 

「そして、融合素材になった《ソリッドマン》の効果発動!このカードが魔法カードの効果でフィールドから墓地へ送られたとき、墓地のHERO1体を特殊召喚できる。もう1度現れて、《ヴァイオン》!」

 

V・HEROヴァイオン レベル4 守備1200

 

「更に、《サンライザー》の効果!このカードの融合召喚に成功した時、デッキから《ミラクル・フュージョン》を手札に加えるわ!」

融合召喚に成功し、素材となっていたモンスター1体を復帰させてなおも6枚の手札が伊織にはある。

そして、ベクターのフィールドにいる3体の騎士を倒すにはまだ足りない。

だが、あと一押しとなりうるカードはもう手の中にある。

「私は手札から魔法カード《フュージョン・デステニー》を発動!手札・デッキのモンスターを素材にD・HEROを融合召喚できる!」

かつてのD・HERO使いであるエドのカード。

スタンダード次元に戻った時、遊矢に頼んで譲り受けた彼のカードもまた、伊織に力を貸してくれる。

「私がデッキから融合素材にするのは《E・HEROセラフィム》…そして、《D・HERO(ディメンション・ヒーロー)タナトス》!!」

「何!?そいつは…あいつが…!!」

「翔太さん…」

デッキから飛び出したセラフィムの隣にいるのは《魔装騎士ペイルライダー》だが、彼女にはそのモンスターからかすかに翔太の遺志が感じられた。

二人の姿を見た彼が首を縦に振ると、身にまとっていた鎧が粉々に砕け散る。

中から現れたのはドクロの仮面をつけ、漆黒の喪服姿をした剣士。

左右の肩には棺桶のような飾りがあり、腰から抜いた剣は何も飾りがない、血のような暗い赤一色の刀身をしていた。

「《タナトス》は…翔太君が遺してくれた希望!このカードはルール上、E・HERO、D-HERO、E-HERO、M・HERO、V・HEROとしても扱う特別なヒーローだよ!2丁の銃を操る乙女よ!死の宿命を背負いしヒーローよ、2つの次元を超え、不死鳥の炎を生み出して!融合召喚!力を貸して、エド!!《D-HEROデストロイフェニックスガイ》!!」

セラフィムと翔太の二人が重なり合い、その姿を破壊と再生の炎を身にまとった新しいD-HEROへと変えていった。

 

D-HEROデストロイフェニックスガイ レベル8 攻撃2500

 

「キュー…」

「これが、エドさんの遺したヒーロー…」

遊矢とのデュエルでは現れることのなかったヒーロー。

本来の主ではない伊織が使うことを肯定するかのように、彼は伊織の前にひざまずく。

「《フュージョン・デステニー》を発動した後、私はターン終了時まで闇属性のHERO以外を特殊召喚できない。そして、《サンライザー》の効果!私のフィールドのモンスターの攻撃力は私のフィールドのモンスターの属性1つにつき200アップする!」

 

E・HEROサンライザー レベル7 攻撃2500→2900

D-HEROデストロイフェニックスガイ レベル8 攻撃2500→2900

 

「そして、《デストロイフェニックスガイ》の効果!相手フィールドのモンスターの攻撃力は私の墓地のHERO1体につき200ダウンする!」

「ちっ…だが、《レライエ》はは相手のカード効果を受けねえ!」

 

仮面剣闘士オーディン レベル7 攻撃3100→2500

仮面騎士ジルドレ レベル8 攻撃3600→3000

 

「バトル!《デストロイフェニックスガイ》で《仮面剣闘士オーディン》を攻撃!!」

全身の炎を活性化させた《D-HEROデストロイフェニックスガイ》が飛翔し、《仮面剣闘士オーディン》に向けて突撃する。

「その瞬間、《サンライザー》の効果発動!このカード以外の私のHEROが攻撃するとき、フィールド上のカードを1枚破壊できる!私が破壊するのは《ジルドレ》!!」

《D-HEROデストロイフェニックスガイ》が生み出す熱が両腕の刃に宿った《E・HEROサンライザー》が腕を振るい、炎の剣閃が《仮面騎士ジルドレ》を細切れにした。

同時に弾丸のような突撃を受けた《仮面剣闘士オーディン》が炎に包まれて消滅する。

「ちぃ…!」

 

ベクター

ライフ4000→3600

 

「更に、私は《デストロイフェニックスガイ》の効果を発動!自分または相手ターンに1度、自分フィールドのカードとフィールドのカードを1枚ずつ破壊できる!私が破壊するのは《デストロイフェニックスガイ》、そして《アンブラル・コロシアム》!!」

突撃を終えてもなお炎が勢いを増す《D-HEROデストロイフェニックスガイ》がその身を丸くし、炎を圧縮していく。

ターゲットはベクターに力を与える人形たち。

極限まで圧縮させた炎が大爆発を引き起こし、周囲のベクターに心なき声援と力を与える亡者たちを焼き尽くしていった。

「ちっ…せっかくのコロシアムまで…」

「《デストロイフェニックスガイ》の効果!このカードが破壊された次のスタンバイフェイズ時、墓地からD-HERO1体を特殊召喚できる。これで、あなたのターンのスタンバイフェイズ時に、私は《デストロイフェニックスガイ》か《タナトス》を特殊召喚できる」

「なめたことをしやがって…むかつく女に出会ったのは、これで2度目だぜ…」

ベクターの脳裏に浮かぶ、宿敵ナッシュの妹であるメラグ。

他の七皇から力を奪うために行動した時、メラグから力を奪うことには確かに成功した。

だが、もう1人のむかつく存在であるホークの妨害によって命を奪うことができなかった。

目の前の、何も力のないはずの少女からはメラグに似た苛立ちを覚える。

「俺は罠カード《ゾーク・ロールプレイング》を発動。俺のフィールド魔法が破壊されたターンに発動でき、こいつをフィールド魔法扱いとして俺のフィールドゾーンに置く!」

発動と共にコロシアムだったフィールドが砕けていき、景色が闇に包まれた砂漠へと変改する。

そして、周囲には建物の残骸であふれ、炎で包まれている。

「《ゾーク・ロールプレイング》がフィールド魔法扱いで存在する限り、お互いのターンのスタンバイフェイズ時に俺はサイコロを1回振る。そして、その出た目によって効果を発動する。更に俺は罠カード《覇王龍の英知》を発動!俺のフィールドのレベル7・闇属性・元々の攻撃力が2500のペンデュラムモンスターが破壊されたターン、俺のペンデュラムゾーンにカードがない場合、ペンデュラムゾーンに同じレベルのペンデュラムモンスター2体をペンデュラムゾーンに置くことができる。俺がペンデュラムゾーンに置くのはレベル1の《アンブラル・ゲート》と《アンブラル・ガーディアン》」

ベクターの背後に現れる《覇王龍ズァーク》の幻影。

咆哮と共に現れる2体のアンブラルペンデュラムモンスター。

これで次のターン、ペンデュラム召喚を行う下地が整った。

だが、伊織はひるむ様子を見せない。

「私はカードを3枚伏せて、ターンエンド!」

 

ベクター

手札1

ライフ3600

場 仮面弓王レラジェ レベル7 攻撃3000→2400

  ゾーク・ロールプレイング(フィールド魔法扱い)

  アンブラル・ゲート(青) ペンデュラムスケール0

  アンブラル・ガーディアン(赤) ペンデュラムスケール8

 

伊織

手札6→2(《ミラクル・フュージョン》《E・HEROリキッドマン》)

ライフ4000

場 E・HEROサンライザー(《E・HEROサンライザー》の影響下) レベル7 攻撃2900

  V・HEROヴァイオン レベル4 守備1200

  伏せカード3

 

「俺様の…ターン!!」

 

ベクター

手札1→2

 

「スタンバイフェイズ時に《デストロイフェニックスガイ》の効果発動!甦って、《デストロイフェニックスガイ》!!」

《アンブラル・コロシアム》を消滅すべく一度は自爆した《D-HEROデストロイフェニックスガイ》だが、再生の炎が彼の肉体を再び形成し、伊織を守るべく再臨する。

 

D-HEROデストロイフェニックスガイ レベル8 攻撃2500

 

ここで伊織にとって問題になるのは《D-HEROデストロイフェニックスガイ》の効果をどう使うかだ。

ベクターのデッキには《アンブラル・マリオネット》のような別のペンデュラムモンスターが存在する可能性がある。

そして、《アンブラル・ガーディアン》を破壊した場合、新たなアンブラルペンデュラムモンスターがペンデュラムゾーンに置かれる。

下手なことをすると、伊織自身の首を絞めることにつながる。

「スタンバイフェイズ時に、《ゾーク・ロールプレイング》の効果を発動!俺か相手のスタンバイフェイズ時に1度、サイコロを1回振る。1か2が出た場合、てめえのフィールドのモンスターは全滅!3から5が出た場合はてめえのフィールドのモンスターを1体だけ破壊する。6が出た場合はこいつはお役御免ってこった」

少なくとも、高確率で伊織のフィールドのモンスターが1体は破壊されることになる。

黒いサイコロを手にしたベクターがそれを空に掲げた後でフィールドに投げ込む。

クルクルと回転するサイコロの1の目は血のような暗い赤で、今のフィールドに溶け込みやすい。

「それにチェーンして、《デストロイフェニックスガイ》の効果を…」

「無駄ーーー!《ゾーク・ロールプレイング》のサイコロの効果に対して、俺たちはカウンター罠以外のカードを発動できねえ!黙って見てろってことだぁ!!」

指をくわえて眺めるしかないサイコロ。

やがて回転が止まり、3の目が表示される。

「出目は3!よって、《デストロイフェニックスガイ》には消えてもらうぜ!チャオー」

ニヤニヤ笑いながら手を振るベクターと、炎の中からいきなり出現した巨大な蛇のようなモンスター。

蛇は《D-HEROデストロイフェニックスガイ》を飲み込むと、再び炎の中へ消えていく。

「でも…《デストロイフェニックスガイ》は次のスタンバイフェイズ時に墓地のD-HEROをよみがえらせる!!」

「いーや、そんなことはさせねえ!俺は手札から速攻魔法《墓穴の使命者》を発動!相手の墓地のモンスター1体を除外し、次のターン終了時まで除外されたモンスターと元々のカード名が同じモンスターの効果を無効化する!これでご自慢の《デストロイフェニックスガイ》の効果は使えねえ!」

「くぅ…!」

悔しがる伊織は《D-HEROデストロイフェニックスガイ》をデッキケースに入れる。

これで伊織はベクターがこれから行うペンデュラム召喚を止めることができなくなった。

「さあ、行くぜ!!揺れろ、俺様のペンデュラム!敵の首を切り落とし、その血で俺を喜ばせろ!!ペンデュラム召喚!現れな、俺様の下僕!!《仮面剣闘士オーディン》!《アンブラル・マリオネット》!!」

 

仮面剣闘士オーディン レベル7 攻撃2500

アンブラル・マリオネット レベル3 攻撃1200

 

「《アンブラル・マリオネット》の効果発動。このカードを手札からペンデュラム召喚に成功した時、フィールドのこのカードと相手フィールドのモンスター1体のコントロールを入れ替えることができる!」

「ええ!?」

「てめえの《サンライザー》はいただくぜぇー?」

《アンブラル・マリオネット》の指から放たれる糸が《E・HEROサンライザー》の体を拘束し、《アンブラル・マリオネット》が伊織のフィールドに飛び移る。

伊織のフィールドにいた《E・HEROサンライザー》は為すすべなくベクターのフィールドへと歩いていき、どうにか拘束から逃れようと体を動かすが、全く解放されるそぶりがない。

「《サンライザー》の効果は俺のフィールドでも発揮できる。俺のフィールドのモンスターの属性は2つ」

 

仮面剣闘士オーディン レベル7 攻撃2500→2900

E・HEROサンライザー レベル7 攻撃2900

仮面弓士レライエ レベル7 攻撃2400→2800

 

「さあ、覚悟はいいかなー?お嬢ちゃん。ヘヘヘ!!バトルだぁ!!」

《仮面弓士レライエ》が放つ一矢が《V・HEROヴァイオン》を貫き、消滅させる。

そして、《仮面剣闘士オーディン》の光剣が《アンブラル・マリオネット》を切り裂き、爆発によっておこる衝撃波が伊織を襲う。

「キャアアア!!」

 

伊織

ライフ4000→2300

 

痛みでうずくまる伊織を見た《E・HEROサンライザー》がどうにか彼女を救おうと糸を引きちぎろうとする。

《アンブラル・マリオネット》がフィールドから消えたことでそれが容易にできるかと思われたが、背後に出現した《アンブラル・マリオネット》の幻影が糸を操り、それを許さない。

悪に屈するはずのない刃がうずくまる伊織に向けられる。

「罠発動!《パワー・ウォール》!!相手の攻撃によって私が戦闘ダメージを受ける時、ダメージ500につき1枚、デッキからカードを墓地へ送ることで、ダメージを0にする!」

刃が伊織の首に届くギリギリで止まり、伊織はデッキの上から6枚のカードを墓地へ送る。

手札に残る《E・HEROリキッドマン》、そして《ミラクル・フュージョン》につなげることができるカードが墓地へ行くことを信じて。

 

デッキから墓地へ送られたカード

・ヒーロー・パリィ

・貪欲な壺

・E・HEROエアーマン

・E・HEROブレイズマン

・E・HEROセラフィム

・攻撃の無力化

 

「ちっ…俺はこれで、ターンエンド」

 

ベクター

手札1

ライフ3600

場 仮面弓王レラジェ(《E・HEROサンライザー》の影響下) レベル7 攻撃2800

  仮面剣闘士オーディン(《E・HEROサンライザー》の影響下) レベル7 攻撃2900

  E・HEROサンライザー レベル7 攻撃2900

  ゾーク・ロールプレイング(フィールド魔法扱い)

  アンブラル・ゲート(青) ペンデュラムスケール0

  アンブラル・ガーディアン(赤) ペンデュラムスケール8

 

伊織

手札2(《ミラクル・フュージョン》《E・HEROリキッドマン》)

ライフ2300

場 伏せカード2

 

「私のターン、ドロー!!」

 

伊織

手札2→3

 

「《ゾーク・ロールプレイング》の効果。サイコロを振らしてもらうぜ」

相手フィールドにモンスターがいないとしても、発動しなければならないその効果。

わずかとはいえ、自壊する可能性がある以上は不必要なサイコロは避けたいところではあるが、それを決めるのはベクターではない。

「出目は…5だ」

「なら、何もないね!!私は手札から《E・HEROリキッドマン》を召喚!」

 

《E・HEROスパークマン》が青くなったかのようなヒーローがフィールドに現れる。

 

E・HEROリキッドマン レベル4 攻撃1400

 

「このカードの召喚に成功した時、墓地のレベル4以下のHERO1体を特殊召喚できる!もう1度現れて、《ヴァイオン》!!」

 

V・HEROヴァイオン レベル4 攻撃1000

 

「《ヴァイオン》の効果発動!デッキから《ネクロダークマン》を墓地へ送る!そして、《ヴァイオン》のもう1つの効果!墓地の《ネクロダークマン》を除外して、デッキから《融合》を手札に加えて、発動!私が融合素材にするのは《リキッドマン》と《ヴァイオン》!!水上を走る華麗な戦士よ、幻影の中から力を生み出すヒーローよ、今こそ1つになりて、新たなヒーローに進化せよ!融合召喚!現れて、永久凍土の申し子、《E・HEROアブソルートZero》!!」

 

E・HEROアブソルートZero レベル8 攻撃2500

 

「融合素材になった《リキッドマン》の効果発動!このカードがHEROの融合召喚のために融合素材として墓地へ送られるか除外されたとき、デッキからカードを2枚ドローして、手札1枚を墓地へ捨てることができる!」

 

手札から墓地へ捨てられたカード

・代償の宝札

 

「墓地へ送ったのは《代償の宝札》!このカードは手札から墓地へ送られたとき、デッキからカードを2枚ドローする!」

融合召喚を行ったにもかかわらず、《E・HEROリキッドマン》と《代償の宝札》の恩恵により一気に手札を5枚に戻す。

だが、それだけでは捕まっている《サンライザー》を救うことはできない。

「そして、私は罠カード《マジスタリー・アルケミスト》を発動!このカードは墓地またはフィールドに存在する私のHERO4体を除外することで、墓地のHERO1体を特殊召喚できる!出番だよ!《セラフィム》!!」

墓地の《E・HEROソリッドマン》、《E・HEROリキッドマン》、《E・HEROブレイズマン》、《E・HEROエアーマン》がフィールドに降り立ち、円陣を組むとその体をそれぞれ茶、水、赤、緑の光へと変えていく。

光は一つとなり、そこから墓地に眠っていた《E・HEROセラフィム》が舞い降りる。

 

E・HEROセラフィム レベル7 攻撃2400

 

「伊織さん!!」

「うん、お願いセラフィム!!《マジスタリー・アルケミスト》の効果で除外したモンスターが地属性、水属性、炎属性、風属性すべてそろっている時、この効果で特殊召喚されたモンスターの攻撃力は元々の倍になり、相手フィールドのすべてのカードの効果を無効にする!!」

「ハアアア!!」

4つの属性の光を受けた《E・HEROセラフィム》の背中に翼が生え、そこから発せられる波紋がベクターのフィールドを襲う。

波紋を受けたカードたちは力を失っていき、光に満ちた彼女の姿を見た《E・HEROサンライザー》は静かに首を縦に振った。

 

E・HEROサンライザー レベル7 攻撃2900→2500

仮面弓士レラジェ レベル7 攻撃2400

仮面剣闘士オーディン レベル7 攻撃2900→2500

 

E・HEROセラフィム レベル7 攻撃2400→4800

 

「そして、《セラフィム》の効果!このカードの特殊召喚に成功した時、相手フィールドに存在する特殊召喚されたモンスター1体を除外するよ!ディメンション・シュート!!!」

「いき…ます!!」

《E・HEROセラフィム》が銃を合体させ、魔力がこもった弾丸を《仮面剣闘士オーディン》に向けて発射する。

「させねえぞ!俺は墓地の《アンブラル・スライム》の効果を発動!相手ターンに1度、このカードが墓地に存在するとき、俺のフィールドのアンブラルモンスター1体を破壊することで墓地から攻撃表示で復活できる!!」

銃弾を受ける直前に《仮面剣闘士オーディン》がフィールドから消滅する。

そして、入れ替わるように現れた黒い水の球体はその姿を《仮面剣闘士オーディン》そっくりに変化させた。

 

アンブラル・スライム レベル1 攻撃0→2500

 

「攻撃力が《オーディン》と同じに!?」

「《アンブラル・スライム》は自らの効果で破壊したモンスターの攻撃力と同じ攻撃力を持つのさ」

「でも、攻撃力は《セラフィム》が上!それに、もう手札にこのカードが来てる!私は手札から速攻魔法《マスク・チェンジ》を発動!私のHERO1体を同じ属性のM・HEROに変身させる!私は《アブソリュートZero》を変身させる!永久凍土の申し子よ、今こそ酸の力を宿し、新たなヒーローに進化せよ!変身召喚!《M・HEROアシッド》!!」

 

M・HEROアシッド レベル8 攻撃2600

 

「《アブソリュートZero》と《アシッド》のダブル効果!相手フィールドの全部のカードを破壊するよ!!」

相手のカード効果を受けない《仮面弓士レラジェ》はともかく、これでベクターのフィールドは消し飛ぶ。

そして、伊織のフィールドの2体のモンスターの一斉攻撃で、翔太の仇を討つことができる。

酸の雨と吹雪がベクターのフィールドを襲い、情け容赦なく彼のモンスターとカードを消滅させていく。

「なら、俺様は破壊された《アンブラル・ガーディアン》の効果を発動!ペンデュラムゾーンに新たに《アンブラル・ゴルゴーン》を置く!」

頭から3体の蛇を生やし、両手両足の指も蛇となっている灰色の肌の女性といえるモンスターが新たに光の柱を生み出す。

だが、そんなことは伊織は知ったことではない。

ただ、攻撃可能であれば攻撃するのみ。

「バトル!!《アシッド》で《レラジェ》を攻撃!!acid bullet!!」

《M・HEROアシッド》の銃から放たれる酸の銃弾と《仮面弓士レラジェ》が放つ矢がぶつかり合う。

わずかに攻撃力の勝る《M・HEROアシッド》の銃弾の方が分があり、矢を溶かすとそのまま《仮面弓士レラジェ》の胸部を撃ちぬき、消滅させた。

「ちぃ…!!」

 

ベクター

ライフ3600→3500

 

「そして、《セラフィム》でダイレクトアタック!!」

「当たってください…!」

今度は逃がすまいとより精密に照準を合わせた《E・HEROセラフィム》が魔力の弾丸を発射する。

「俺は《アンブラル・ゴルゴーン》のペンデュラム効果を発動!1ターンに1度、俺が直接攻撃を受ける時、その相手モンスターの攻撃力をターン終了時まで0にする!!」

「そんなのって!!」

《アンブラル・ゴルゴーン》の目から放たれる紫の光線が銃弾を焼き尽くし、更にそれを受けた《E・HEROセラフィム》がその場に座り込んだ。

 

E・HEROセラフィム レベル7 攻撃4800→0

 

「…私は、カードを1枚伏せて、ターンエンド!!」

 

ベクター

手札1

ライフ3500

場 アンブラル・ゴルゴーン(青) ペンデュラムスケール2

 

伊織

手札3→4(うち1枚《ミラクル・フュージョン》)

ライフ2300

場 E・HEROセラフィム レベル7 攻撃0→2400

  M・HEROアシッド レベル8 攻撃2600

  伏せカード2

 

「く…ふふふふ!!残念だったねぇーお嬢ちゃーん、俺様のライフをここで0にできなくてー」

嘲笑い、おなかを抱えて笑い出すベクターに伊織は拳を握りしめる。

(伊織さん…)

「許さない…許さない、絶対に!!」

「てめーの許しなんていらねーんだよ、ブァーーーーカ!!俺様のターン、ドロー!!」

 

ベクター

手札1→2

 

「俺は手札から魔法カード《逆境の宝札》を発動!俺のフィールドにモンスターが存在せず、相手フィールドに特殊召喚されているモンスターが存在する場合、デッキからカードを2枚ドローできる。そして、俺は《アンブラル・アーキタイプ》を召喚」

ドロドロに溶けた胴体を包帯で隠し、3本爪のついた黄土色の屈強な四本足だけが健在な不気味なモンスターが現れ、今にも崩れそうな体をかろうじて保つ。

《アンブラル・ゴルゴーン》の力から解放された《E・HEROセラフィム》はその不気味で死にかけの存在に鳥肌を立てていた。

 

アンブラル・アーキタイプ レベル4 攻撃1400

 

「更に、俺様は手札から魔法カード《剥奪の代価》を発動。俺のフィールドの攻撃表示モンスター1体の攻撃力を0にし、そのモンスターの元々の攻撃力分ライフを回復し、デッキからカードを1枚ドローする。さあ、てめえの命をよこせ、《アンブラル・アーキタイプ》!!」

《アンブラル・アーキタイプ》が苦しみだし、体から放出されるエネルギーがベクターに注入されていく。

吸い尽くされた《アンブラル・アーキタイプ》の溶けた体が包帯からはみ出て地面を汚していく。

 

ベクター

ライフ3500→4900

 

アンブラル・アーキタイプ レベル4 攻撃1400→0

 

「自分のモンスターの攻撃力を下げた!?」

「あー、でもでもー、この効果を受けたモンスターはこのターン、戦闘を行わないといけないんだよねー。あーあ、あいつのフィールドのモンスターは攻撃力2400と2600。これじゃあダメージの方がでかくて損スルナー」

わざとらしく悩み始めるベクターだが、すぐにニヤリと笑う。

その視線は《M・HEROアシッド》に向けられた。

「どうせなら、派手な方がいいよなー!《アンブラル・アーキタイプ》で《アシッド》を攻撃!!」

どうにか4本足で体を起こす《アンブラル・アーキタイプ》がヨロヨロと《M・HEROアシッド》に向けて突撃を仕掛ける。

どういう意図で攻撃を仕掛けているのか、伊織にも《M・HEROアシッド》にもわからない。

だが、伊織を危険にさらすわけにはいかないと《M・HEROアシッド》が放つ酸の弾丸だその死に掛けの体を完全に消滅させた。

そして、弾丸は続けてベクターにも発射され、彼の体をかすめた。

「ぐうううおお!!痛えじゃねえか!!まともに食らったら、この俺様の体も溶けちまうじゃねえか!!」

 

ベクター

ライフ4900→2300

 

「そんなの知らないよ!それに、翔太君を殺したくせに、自分は痛いのが嫌だなんて不公平よ!!」

「いつまでも存在しねー奴の名前を口にしやがって…俺様は破壊された《アンブラル・アーキタイプ》の効果を発動!こいつが戦闘で破壊され、俺様が戦闘ダメージを受けたとき、攻撃力の合計が受けたダメージの数値以下となるように、デッキ・墓地からアンブラルモンスター2体を特殊召喚できる。俺様が受けたダメージは2600!よって、墓地の《アンブラル・ウィル・オ・ザ・ウィスプ》と《アンブラル・マジシャン》を特殊召喚!」

 

アンブラル・マジシャン レベル4 攻撃1500

アンブラル・ウィル・オ・ザ・ウィスプ レベル1 攻撃0

 

「《ウィル・オ・ザ・ウィスプ》の効果。こいつの召喚・特殊召喚に成功した時、レベルを俺のフィールドの別のアンブラルと同じにできる」

 

アンブラル・ウィル・オ・ザ・ウィスプ レベル1→4 攻撃0

 

「メインフェイズ2だ!俺様はレベル4の《アンブラル・マジシャン》と《アンブラル・ウィル・オ・ザ・ウィスプ》でオーバーレイ!神の意思に反する者の名を刻み、裁きを下せ!!エクシーズ召喚!現れろ、《仮面審問官クラーマー》!!」

 

仮面審問官クラーマー ランク4 攻撃2500

 

「《クラーマー》の効果!オーバーレイユニットを1つ取り除き、俺様はデッキからカードを1枚ドローする。そして、ドローしたカードを公開し、相手はそのカードと同じ種類のカードをデッキから墓地へ送る。墓地へ送れなかった場合、1000のダメージを与える!!ドロー!!ドローしたカードは《RUM-アンブラル・フォース》。さあ、魔法カードをデッキから墓地へ送りな!!」

「私はデッキから…《ヒーロー・パーシチェイス》を墓地へ送る!」

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・アンブラル・マジシャン

 

「なら、俺様はオーバーレイユニットとして墓地へ送られた《アンブラル・マジシャン》の効果。墓地のこのカードを特殊召喚!」

 

アンブラル・マジシャン レベル4 守備0

 

「更に、俺は手札から《RUM-アンブラル・フォース》を発動!その効果により、《仮面審問官クラーマー》でオーバーレイネットワークを再構築!生者の名を刻みし書物を持つものよ、命を支配し、命に死をもたらせ!カオスエクシーズチェンジ!現れろ、《CX-仮面死天使アズラエル》!!」

 

CX-仮面死天使アズラエル ランク5 攻撃2800

 

「こいつの効果はわかっているよなぁ?お前のバトルフェイズ開始時にオーバーレイユニットを1つ取り除くことで、攻撃対象を俺が選択する!そして、オーバーレイユニットとなった《クラーマー》により、《アズラエル》は1度のバトルフェイズ中に相手フィールドに存在するすべてのモンスターを攻撃できる。(ま…《アズラエル》の効果はそれだけじゃねえけどな…)」

「でも、メインフェイズ2だから…そんなことを…まさか!?」

「ああ、そうだ…こいつだよぉ!!俺は手札から《アンフェアー・ジャッジ》を発動。この効果により、《アズラエル》の攻撃力以下の攻撃力もしくは守備力を持つてめーのモンスターをすべて破壊する!!」

《CX-仮面死天使アズラエル》のオーブから放たれる衝撃波が伊織のフィールドを襲う。

衝撃波によって吹き飛ばされた2体のモンスターが消滅し、伊織を守る存在がいなくなる。

「《アシッド》!!《セラフィム》!!」

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンドだ…」

 

ベクター

手札2→0

ライフ2300

場 CX-仮面死天使アズラエル(オーバーレイユニット2) ランク5 攻撃2800

  アンブラル・マジシャン レベル4 守備0

  伏せカード1

  アンブラル・ゴルゴーン(青) ペンデュラムスケール2

 

伊織

手札4(うち1枚《ミラクル・フュージョン》)

ライフ2300

場 伏せカード2

 

「キュー…」

ライフは同じになったが、モンスターの存在で見た目は伊織が圧倒的不利な状況となった。

そんな伊織を心配そうに見つめるビャッコの視線に気づいた伊織は彼の頭を撫でる。

「大丈夫、だよ…ビャッコちゃん…。絶対、翔太君の仇は、討つから…!」

「仇を討つぅ?そんなの、何の力もないお前にできるのかなー?」

「うるさい!!私のターン、ドロー!!」

 

伊織

手札4→5

 

「罠発動!《ドン・サウザンドの裁き》!俺の手札が0枚の状態で相手がデッキからカードを手札に加えたとき、手札の枚数が4枚以上の場合に発動できる。お前は手札をすべて墓地へ捨てる!そして、お互いにデッキからカードを2枚ドローする」

「くっ…!!」

「《ミラクル・フュージョン》、捨ててもらうぜ…?」

ニヤリと笑うベクターに唇をかみしめ、伊織は手札をすべて捨てるしかなかった。

 

手札から墓地へ送られたカード

・ミラクル・フュージョン

・ヒーロー・アライブ

・E・HEROプリズマー

・貪欲な壺

・無敵の英雄-インビンジブル・ヒーロー-

 

頼みの綱となるのはこれからドローする2枚のカード。

伏せカードがあるとはいえ、これからドローするカード次第では、その時点で伊織の敗北が決まる。

伊織の視線がドローしようとする右手に向けられる。

そこで見えたのは小刻みに震えている自分の手だった。

そこで怒りで燃えていた心が少しずつ冷めていく感じがした。

考えてみると、翔太が勝てなかった相手とデュエルをすること自体、今回が初めてのことだ。

「翔太君…」

そして、このデュエルは伊織にとって命のかかったもの。

恐怖を抱くのは当然のこと。

「(でも…私は…!)ドロー!!」

一気に引いた2枚のカード。

そのうちの1枚、それに彼女の目が留まる。

扱いによっては伊織をさらなる窮地に追い込むカード。

だが、使いようによってはこの状況を突破できるカードだ。

「私は手札から魔法カード《亜空間バトル》を発動!」

発動と同時に2人のいる空間が虹色の淡い光に染まっていく。

伊織にとって、これは賭けといえるものだ。

「お互いにデッキからモンスターを3体選んで、選んだモンスターをお互いに1体ずつ同時に見せる。相手より低い攻撃力のモンスターを見せた場合、そのモンスターのコントローラーは500のダメージを受けて、モンスターを墓地へ送り、相手より高い攻撃力のモンスターを見せた場合はそのモンスターを手札に加える」

伊織がカードを選んでいる様子を見るベクターは彼女の様子をにらむ。

単なる自暴自棄なのか、それとも逆転のための布石か。

「じゃあ…いくよ!これが、私のモンスター!!」

 

伊織が見せたカード

①:V・HEROインクリース レベル3 攻撃力900

②:E・HEROフォレストマン レベル4 攻撃力1000

③:E・HEROバブルマン レベル4 攻撃力800

 

 

「俺様が見せるモンスターはこいつらだ!!」

①:アンブラル・ネオスフィア レベル10 攻撃4000

②:アンブラル・ドラグーン レベル5 攻撃2100

③:アンブラル・シャイニング レベル7 攻撃2700

 

「攻撃力はすべて俺のモンスターが上だ!死にやがれ!!」

全身に瞳がついたドロドロの黒い液体の巨人である《アンブラル・ネオスフィア》がその圧倒的な攻撃力を見せつけるかのように瞳から光線を放ち、伊織が見せた3体のモンスターをすべて吹き飛ばした。

「くぅ…!これで、私は3体のモンスターを墓地へ送り、あなたが3体のモンスターを手札に加える!」

 

伊織

ライフ2300→800

 

「攻撃力の低い3体のモンスター…てめえ、モンスターを墓地へ送るためにわざと!!」

「私は墓地の《インクリース》の効果を発動!私がダメージを受けたとき、墓地のこのカードを永続罠カード扱いとして、魔法罠ゾーンに置く!私は罠カード《貪欲な瓶》を発動!墓地のカード5枚をデッキに戻し、デッキからカードを1枚ドローする!」

 

墓地からデッキに戻したカード

・ミラクル・フュージョン

・貪欲な壺

・D-HEROデストロイ・フェニックスガイ

・ヒーロー・アライブ

・融合

 

「そして、私は手札から魔法カード《平行世界融合》を発動!除外されているモンスターをデッキに戻し、E・HEROを融合召喚できる!私が融合素材にするのは《シャドーミスト》と《ネクロダークマン》!」

消えていく光から帰還する2体のヒーロー。

二人は地上に出現した融合の渦に飛び込み、一つになっていく。

「融合召喚!現れて、《V・HEROアドレイション》!!」

漆黒のスーツ姿で渦の中から姿を見せるヒーロー。

両腕を組み、たった一人であるにもかかわらず、目の前の2体のモンスターに対してひるむそぶりを見せない。

 

V・HEROアドレイション レベル8 攻撃2800

 

「またV・HERO!?てめえ…どういうわけだ?」

翔太を取り込んだことで、ベクターには翔太の記憶を手にしている。

その中での伊織のデュエルを確認するが、彼女が使っているこれまでのHEROはE・HEROかM・HEROのみ。

《D-HEROデストロイ・フェニックスガイ》のようなD-HEROはともかく、別のHEROまで使ってきていることには違和感を感じずにはいられない。

(当然…だよ!だって、このデッキは…)

伊織の脳裏に浮かぶのは遊矢から受け取ったエドのデッキ。

死んだ彼の分も戦いたいと思っている遊矢だが、彼にはD-HEROが使いこなせない。

そのため、同じHEROデッキ、融合デッキを使っている伊織に託されることになった。

そして、死んだ父親の遺したカードとエドのカード、そして自分が集めたカードで改めて作ったこのデッキのことは翔太には言っていない。

そして、このデッキの目的は次元戦争で戦うためではない。

伊織にとっては大きな壁である翔太と戦うためのデッキ。

「そして、私は手札から魔法カード《ホープ・オブ・フィフス》を発動。その効果で墓地のE・HERO5体をデッキに戻して、デッキからカードを2枚ドローする」

 

墓地からデッキに戻ったカード

・E・HEROバブルマン

・E・HEROアブソリュートZero

・E・HEROシャドーミスト

・E・HEROサンライザー

・E・HEROフォレストマン

 

「来た…!《ネクロダークマン》の効果発動!このカードが墓地に存在するとき、1度だけ手札のE・HEROをリリースなしで召喚できる!私は《エッジマン》を召喚!」

 

E・HEROエッジマン レベル7 攻撃2600

 

「そして、《アドレイション》の効果発動!1ターンに1度、相手フィールドのモンスター1体の攻撃力と守備力を私の他のHERO1体の攻撃力分ダウンさせる!《エッジマン》の攻撃力分、《アズラエル》の攻撃力をダウンさせるよ!」

《E・HEROアドレイション》が腕を解き、両手から放つ魔力で《E・HEROエッジマン》の幻影を生み出す。

幻影が両腕の刃で切りかかり、刃を受けた《CX-仮面死天使アズラエル》が受けた傷を抑えつつ、消えていく幻影に怒りを見せる。

 

CX-仮面死天使アズラエル ランク5 攻撃2800→200

 

「こいつ…!!」

「バトルフェイズだよ!《アズラエル》の効果はどうするの!?」

「…使うわけねえだろ、クソが!!」

「じゃあ、《アドレイション》で《アズラエル》を攻撃!アンビション・サンクションズ!!」

魔力を拳に宿した《V・HEROアドレイション》がスウェーをしながら接近し、《CX-仮面死天使アズラエル》に向けてアッパーを放つ。

顎に強烈な一撃を受けた《CX-仮面死天使アズラエル》が爆散し、衝撃波がベクターを襲う。

「ちくしょう!ちくしょう!!どうなってんだこりゃあ!!俺は手札の《アンブラル・シャイニング》の効果を発動!俺のフィールドにアンブラルが存在するとき、手札のこのカードを墓地へ送ることで、このターンに戦闘で発生する俺へのダメージを0にする!!」

《No.104仮面魔道士シャイニング》の仮面からナンバー部分がひび割れで消され、汚れた衣装から黒い瘴気を放った状態となっているモンスターがその中に隠れた黒い瘴気をフィールドに解き放つ。

瘴気は衝撃波から身を守りつつ、ベクターの身を隠すことで《E・HEROエッジマン》の攻撃を防いでいた。

「くううう…!なら、《エッジマン》で《アンブラル・マジシャン》を攻撃!!」

すべてを覆い隠す瘴気の中からかすかに見える《アンブラル・マジシャン》。

たとえダメージを与えられないとしても、これだけは倒すべく、走り出した《E・HEROエッジマン》が両腕に取り付けられている刃を振るう。

刃によって真っ二つにされた《アンブラル・マジシャン》は消滅したが、ベクター本人にダメージが通ることはない。

「私は…カードを1枚伏せて、ターンエンド!」

 

ベクター

手札5→4(うち2枚《アンブラル・ネクスフィア》、《アンブラル・ドラグーン》)

ライフ2300

場 伏せカード1

  アンブラル・ゴルゴーン(青) ペンデュラムスケール2

 

伊織

手札2→0

ライフ800

場 E・HEROエッジマン レベル7 攻撃2600

  V・HEROアドレイション レベル8 攻撃2800

  V・HEROインクリース(永続罠扱い)

  伏せカード2

 

「へ、へへへ、へへ、へへへへ…」

「何がおかしいの!?」

瘴気が消え、フィールドからモンスターがいなくなり、手札が4枚あるとはいえ、伊織が有利な状況へと変化した中、ベクターは手札を落とし、顔を両手で覆って笑い始める。

その場に立つことができず、転がり、座り込み、気でも狂ったかのように笑う。

「おかしい…ああ、おかしい!おかしいに決まってんだろ!これでもう、てめえは勝てねーんだからよぉ!!俺様のターン!!」

 

ベクター

手札4→5

 

「俺様は墓地の《アンブラル・エンジェル》の効果を発動!俺の墓地にアンブラルと名のつく融合、シンクロ、エクシーズモンスターがそれぞれ1体以上存在し、更に俺のエクストラデッキにアンブラルペンデュラムモンスターが表側表示で1体以上存在するとき、墓地のこのカードを除外することで、もう1つの効果を発動できる!こいつを除外し、俺様の手札とフィールドのカードをすべて墓地へ送る!!」

上空に《アンブラル・エンジェル》が姿を現し、その姿を緑色の巨大な頭へと変化させる。

そして、口を開くとその中にベクターのフィールドに存在していたカード、そして落とした手札が吸い込まれて生き、それをグチャリ、グチャリと食べていく。

「そして、デッキ・墓地から《アンブラル・ゾーク・ロード》、《アンブラル・ダークネス・ロード》をセット、《アンブラル・サウザンド・ロード》、《アンブラル・ゾーン・ロード》を手札に加える。そして、この効果でセットされたカードはこのターン、発動できる!」

「そのカードって…!」

これらのカードで召喚されるモンスターは翔太を殺したあのモンスターしかいない。

だが、発動される4本の柱だけでは召喚できないことは翔太とのデュエルで分かっている。

(確か、あの4本の柱を《オーディン》の効果で…まさか!?)

「俺様は墓地の《アズラエル》の効果を発動!俺のフィールドにモンスターが存在しないとき、墓地のこのカードを除外することで、エクストラデッキに表側表示で存在するアンブラルペンデュラムモンスターを2体までペンデュラムゾーンに置くことができる。俺様は《オーディン》、《ゴルゴーン》をペンデュラムゾーンに置く!さあ…おぜん立ては終わりだぜ。俺様は4本の柱と《オーディン》を除外し、このカードを召喚する!現れろ、《仮面暗黒帝ベクター》!!!」

《仮面剣闘士オーディン》を中心に5柱が融合して再び姿を現した、伊織にとっては憎むべきモンスターと化したベクター。

翔太を取り込んだことでレリーフはより鮮やかになり、みなぎる力がベクターの全身を灰色のオーラとなって包む。

「ハハハハハ!!みなぎる!みなぎるぜ!!これが…ドン・サウザンドを超える力!融合、シンクロ、エクシーズ、ペンデュラムのすべて!それを得た俺様は…神だーーーーーーー!!!!」

 

仮面暗黒帝ベクター レベル12 攻撃0

 

「さあ、覚悟はいいな…ガキィ!!俺様はてめえにダイレクトアタック!!」

モンスターとなったベクターがゆっくりと歩き始め、彼女を守るべく《E・HEROエッジマン》が立ちはだかり、刃を振るう。

だが、刃が接触する寸前にベクターが瞬間移動し、《E・HEROエッジマン》の真後ろに出現すると、そのまま前進していく。

「俺様はどんなにてめえのフィールドにモンスターがいようと、ダイレクトアタックできる。確かに俺の攻撃力は0だが、てめえにダイレクトアタックをする時、俺の攻撃力はてめえのライフと同じになる」

 

仮面暗黒帝ベクター レベル12 攻撃0→800

 

「罠発動!《幻想の呪縛》!!相手モンスター1体の効果を無効にして、攻撃力を…」

「無駄だぜ!!俺の効果により、俺は魔法・罠カードの効果を受けねえ!《幻想の呪縛》は…無意味なんだよぉ!!」

発動した《幻想の呪縛》が拳で貫かれる形で消滅し、伊織の目前にまで迫ったベクターが再び拳を握りしめる。

「最期は…あいつのように腹をぶち抜いてやるよ…あばよぉ!!」

思い切り拳を振りかぶり、伊織の腹部に突き刺すように拳を放つ。

だが、拳は伊織に命中するギリギリのところで何者かの手がベクターの腕をつかみ、彼女を守っていた。

「何…こいつは…」

「私は…墓地の罠カード《無敵の英雄-インビンジブル・ヒーロー》を発動した…。私のライフ以上の攻撃力を持つ相手モンスターの直接攻撃宣言時、墓地のこのカードを除外することで、バトルフェイズを終了させる!そして、墓地の融合モンスター以外のHERO1体を効果を無効にして特殊召喚できる。私は…《タナトス》を特殊召喚」

 

D・HEROタナトス レベル7 攻撃2500

 

「ちっ…まぁ、バトルフェイズそのものを終了されりゃあ、従うしかねえ。だが、俺の効果はまだある。ターン終了時、俺の墓地もしくはエクストラデッキに表側表示で存在するアンブラルシンクロ、エクシーズ、融合、ペンデュラム1体を永続魔法カード扱いで俺の魔法・罠ゾーンに置く。俺は《オーディン》を置く」

 

ベクター

手札5→0

ライフ2300

場 仮面暗黒帝ベクター レベル12 攻撃0

  仮面剣闘士オーディン(永続魔法扱い)

 

伊織

手札0

ライフ800

場 E・HEROエッジマン レベル7 攻撃2600

  V・HEROアドレイション レベル8 攻撃2800

  D・HEROタナトス(《無敵の英雄-インビンジブル・ヒーロー》の影響下) レベル7 攻撃2500

  V・HEROインクリース(永続罠扱い)

  伏せカード1

 

どうにかこのターンの敗北を防ぐことはできたが、あくまでもこれは1ターンの延命でしかない。

一撃で伊織のライフがどれだけあろうともゼロにしてしまう《仮面暗黒帝ベクター》に魔法・罠カードは通用しない。

伊織の脳裏に浮かぶのは、墓地の《E・HEROアブソルートZero》。

(《Zero》はフィールドから離れたとき、相手フィールドのすべてのモンスターを破壊できる。モンスター効果なら、あいつを…!)

しかし、今の伊織のフィールドと墓地には彼を再度召喚させる手段はなく、手札も0。

次のドローにすべてがかかっている。

「(翔太君…力を貸して!)私のターン、ドロー!」

 

伊織

手札0→1

 

「私は《インクリース》の効果を発動!永続罠扱いで魔法・罠ゾーンに存在するこのカードは私のフィールドのHERO1体をリリースすることで特殊召喚できる!《タナトス》をリリース!!」

《D・HEROタナトス》がフィールドから消え、入れ替わるように《V・HEROインクリース》が姿を現す。

そして、新たなHEROを迎え入れるべく、手から光を放つ。

 

V・HEROインクリース レベル3 攻撃900

 

「《インクリース》の効果。このカードが魔法・罠ゾーンから特殊召喚に成功した時、デッキからレベル4以下のV・HERO1体を特殊召喚できる!私は《グラビート》を特殊召喚!」

赤い一つ目の仮面と黄金のアーマー、そして右腕に装備されている全身を覆うほどのタワーシールドが特徴のV・HEROが光の中から姿を見せる。

仮面についているカメラの倍率が操作され、同時に本来ならフィールドに存在しないはずの除外されたHERO達が映る。

 

V・HEROグラビート レベル4 攻撃500

 

「《クラビート》の効果。このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、除外されているHERO1体を手札に加えることができる。私は《リキッドマン》を手札に加える!そして、私は手札から魔法カード《融合》を発動!フィールドの《グラビート》と手札の《リキッドマン》を融合!もう1度現れて、《アブソリュートZero》!」

 

E・HEROアブソリュートZero レベル8 攻撃2500

 

「《アブソリュートZero》の融合素材になった《リキッドマン》の効果!デッキからカードを2枚ドローし、手札1枚を…!?」

ドローした2枚のカードのうちの1枚に伊織の目が留まる。

《D・HEROタナトス》はともかく、このカードを伊織はデッキに入れた覚えはない。

思わず視線がビャッコに向く。

「キュイキュイー!」

(頼むよ…永瀬伊織さん。終わらせて。そのために、僕もあなたに力を…)

ビャッコの声と重なるように聞こえる、聞いたことのない少年の声。

その声の主のことは分からないが、応じない理由はHEROにはない。

「私は…《E・HEROバブルマン》を墓地へ捨てる!」

「性懲りもなくモンスターを増やしたのはいいけどよぉ、本当にいいのか?」

「いい!!バトル!!《アブソリュートZero》で《ベクター》を攻撃!!」

マントをはためかせ、周囲の気温を下げた《E・HEROアブソリュートZero》がアイススケートのように滑ってフィールドを駆け、主の敵に肉薄する。

彼が右手で拳を作り、ベクターに向けてふるうが、待っていたのは《仮面魔剣士オーディン》の刃だった。

ベクターの手に握られたそれと拳がぶつかり合う。

「この剣…!?」

「俺様の効果だ…!モンスターと戦闘を行う場合、俺様の効果で永続魔法となったアンブラルモンスター1体の攻撃力を得る。《オーディン》の攻撃力は2500!!」

 

仮面暗黒帝ベクター レベル12 攻撃0→2500

 

「そして、俺様はそもそも戦闘では破壊されねえ!!」

拳もろとも、剣は《E・HEROアブソリュートZero》を切り裂く。

真っ二つとなったHEROが砕け散るが、彼はただ死ぬわけではない。

「でも…《アブソリュートZero》の効果で、あなたのフィールドのモンスターを全滅させる!これで…!!」

「俺様は墓地の《アンブラル・ネオスフィア》の効果を発動。俺様がフィールドに存在する状態で相手がモンスター効果を発動した時、墓地のこのカードを除外することでその発動を無効にする」

ドロドロの液体でできたツルでくみ上げられた巨人が《E・HEROアブソリュートZero》が存在していた場所から発生しようとする吹雪を腹部に生み出した穴で吸い込んでいく。

「そして、相手フィールドのモンスターをすべて破壊する」

「そんな!?」

吸い込んだ吹雪がそのまま伊織のフィールドに跳ね返され、フィールドのモンスターが全滅する。

吹雪が収まると、伊織のフィールドに残ったのは伏せカード1枚のみ。

「でも、これでもうモンスター効果は使えない!私は罠カード《フェイバリット・コンタクト》を発動!!」

「性懲りもなく、そんなカードを!!」

「まだあきらめない!私の手札・フィールド・墓地、そして除外されている私のモンスターを融合素材として、HEROを召喚条件を無視してエクストラデッキから特殊召喚する!!そして、この効果で融合素材となったモンスターはデッキの下にも戻す!私は墓地の《タナトス》、そして《アドレイション》をデッキに戻して…もう1度来て、《D-HEROデストロイフェニックスガイ》!!」

《貪欲な瓶》の効果によってデッキに戻った闇の不死鳥が彼女の敵を滅ぼすべく再び戦場に舞い降りる。

 

D-HEROデストロイフェニックスガイ レベル8 攻撃2500

 

「チッ!そいつの効果は…!」

「そう、《デストロイフェニックスガイ》は私のフィールドのカードとフィールドのカードを1枚ずつ破壊できる!モンスター効果なら、いくら神様になったあなたでも!!」

フィールドに他のカードがない以上、破壊できるのは自分だけ。

そして、融合召喚以外の手段で召喚された《D-HEROデストロイフェニックスガイ》はたとえ自らの効果を使ったとしても再臨できない。

だが、それでも突破口を開くだけで、今の彼には十分だ。

「お願い、《デストロイフェニックスガイ》!!あいつを倒して!!」

不死鳥の炎で再び我が身を包んだ《D-HEROデストロイフェニックスガイ》が飛翔し、ベクターに向けて突撃する。

「俺様をなめるんじゃねえ!俺様が破壊される時、代わりに他の俺のフィールドのアンブラルカードを破壊できる!!」

二人に間に割って入る《仮面剣闘士オーディン》。

炎の突撃を受けた剣闘士が最後に抵抗といわんばかりに刃を《D-HEROデストロイフェニックスガイ》に突き立てる。

力尽きた二人は仲良く消滅した。

「そんな…これもかわされた!?」

「これでてめえのフィールドにモンスターはいねえ!《デストロイフェニックスガイ》の効果を使うとしても、もうこいつ自身は復活させられねえ!もう、終わりなんだよ!てめえは!ギャハハハハハハハ!!!!」

たとえ墓地のどのHEROを復活させたとしても、伊織をベクターからの直接攻撃から守り抜くことはできない。

攻撃するモンスターもおらず、残されてのは手札1枚のみ。

伊織は目を閉じる。

「ターン…エンド…」

「ターン終了と同時に、俺は墓地の《ジルドレ》を魔法・罠ゾーンに置く」

 

ベクター

手札0

ライフ2300

場 仮面暗黒帝ベクター レベル12 攻撃0

  仮面騎士ジルドレ(永続魔法扱い)

 

伊織

手札1

ライフ800

場 なし

 

「ベクター…《ジルドレ》の攻撃力は《オーディン》よりも上。なら、最初からそのカードを選んだらよかったんじゃないの?」

伊織が《E・HEROアブソリュートZero》を召喚することは想定できなかったとしても、少なくとも攻撃力では《仮面騎士ジルドレ》が上回っている以上、そのモンスターを魔法・罠ゾーンにおいておけば、少なくとも伊織にダメージを与えることができたはず。

また、《アンブラル・アーキタイプ》で自爆攻撃を仕掛けたときも、《E・HEROセラフィム》に攻撃しても、その効果で特殊召喚する2体のモンスターは変わらなかった。

「決まってんだろう?楽しいからだよ…俺様が。デュエルは楽しいもの、だろう?伊織ちゃーん」

ニヤニヤと笑うベクターの言う通り、デュエルは本来楽しいもの。

たとえ次元戦争で戦いの道具となり果ててしまったとしても、それは変わってはいけない物。

そして、ベクターの楽しいと自分の楽しいは明白に違う。

「ま、その楽しいデュエルはこのターンで幕引きだ。さあ、覚悟はいいかーい?伊織ちゃーん」

 

ベクター

手札0→1

 

「《デストロイフェニックスガイ》の効果…。墓地の《グラビート》を特殊召喚…」

 

V・HEROグラビート レベル4 攻撃500

 

「《グラビート》の効果…。除外されている《エアーマン》を手札に加える…」

「あばよーーーー!!」

自分を守るモンスターが存在しない伊織にベクターは再び接近していく。

もうこの拳を伊織に腹部に突き刺せばすべてが終わる。

新たに手札に加わった《E・HEROエアーマン》も、復活した《V・HEROグラビート》も、攻撃を止める手段を持たない。

「キュイーーーーー!!!」

伊織に近づくベクターにビャッコがとびかかる。

精霊とはいえ、今のベクターを止める力などないビャッコ。

あしらわれるようにベクターは右手を振るい、ビャッコが地面に転がる。

だが、ビャッコは立ち上がり、再びベクターを襲い、ベクターがそれをあしらう。

何度もそれを繰り返し、その度にビャッコの傷が増えていく。

「キュー!!」

(あきらめないで!伊織さん!!今こそ、今こそ…!!)

「今こそ…?」

かすかに手札を握る伊織の手に熱を感じる。

熱の根源は《E・HEROリキッドマン》の効果によってもたらされたカード。

翔太が《D・HEROタナトス》を託したように、いつの間にかビャッコが、いや、ビャッコの中にいるであろう何者かが託してくれたもの。

「私は手札の《D・HEROナインテール》の効果発動!相手がダイレクトアタックを仕掛けたとき、その攻撃力が私のライフの数値以上の場合、手札のこのカードを特殊召喚できる!!」

「キューーーー!!」

伊織がカードを置くと同時に、ベクターから伊織を守り続けていたビャッコの体が光に包まれる。

光が収まると、ビャッコの姿が赤と白のツートンの陰陽師風の服装となり、狐の仮面で顔を隠した男に変わっていた。

彼にはその名の通り、9本の尻尾を生やしていた。

 

D・HEROナインテール レベル9 攻撃0

 

「なんだ…こいつは!?《タナトス》といいこいつといい、俺様の一部の分際でここまで!!」

「これは…私だけの力じゃないよ…翔太君やビャッコ、エドさん…お父さん…みんながくれた力!その力で、私はあなたを倒す!《ナインテール》の効果!このカードの特殊召喚に成功した時、エクストラデッキ・デッキ・墓地のHERO1体ずつを融合素材として、HEROを融合召喚できる!私はデッキの《タナトス》と墓地の《デストロイフェニックスガイ》、そしてエクストラデッキの《セラフィム》を除外して融合!」

フィールドに《D・HEROタナトス》と《D-HEROアブソリュートZero》が現れ、その間に《E・HEROセラフィム》が姿を現す。

《D・HEROタナトス》が黒い炎、《E・HEROアブソリュートZero》が青い炎となり、《E・HEROセラフィム》に宿る。

(感じます…伊織さんのデッキに宿る翔太さんの思い、エドさんの思い…これが、HEROの力!!)

「今こそ《セラフィム》はみんなの力を受けて、最高のヒーローになる!そして、《ナインテール》はこの効果で融合召喚されたHEROの装備カードになる!!」

「キュイーーーー!!」

姿が《魔装妖キュウビ》へと変わったビャッコが光となってセラフィムに飛び込んだ行く。

両手に握られていた銃が消滅し、白と赤のツートンの分厚い刀身のついたリボルバーというべき武器が再構成されてセラフィムの右手に握られる。

白銀の翼を宿し、青と白、黒のトリコロールの軍人服姿となった彼女はまさに伊織に託されたHEROだ。

 

Wake Up Your E・HERO レベル10 攻撃2500

 

「《ナインテール》を装備したモンスターが存在する限り、相手はそのモンスター以外を攻撃対象にできない!そして、今のセラフィムの攻撃力は融合素材となったモンスター1体につき、攻撃力は300アップする!」

 

Wake Up Your E・HERO レベル10 攻撃2500→3400

 

「ちっ…!《ジルドレ》以上の攻撃力のモンスターになりやがったか…!攻撃中止だ。俺様はこれでターンエンドだ!!同時に、俺様の効果により、再び《オーディン》をフィールドに戻す!」

 

ベクター

手札1

ライフ2300

場 仮面暗黒帝ベクター レベル12 攻撃0

  仮面騎士ジルドレ(永続魔法扱い)

  仮面剣闘士オーディン(永続魔法扱い)

 

伊織

手札1(《E・HEROエアーマン》)

ライフ800

場 Wake Up Your E・HERO(《D・HEROナインテール》装備) レベル10 攻撃3400

  V・HEROグラビート レベル3 攻撃500

 

「私のターン!!」

 

伊織

手札1→2

 

「私は手札から《E・HEROエアーマン》を召喚!」

 

E・HEROエアーマン レベル4 攻撃1800

 

「《エアーマン》の効果!私のフィールドのこのカード以外のHEROの数だけ、フィールドの魔法・罠カードを破壊する!私は永続魔法扱いになっている2体のアンブラルモンスターを破壊するよ!」

「それで俺様から力を奪うつもりだろうが、そうはいかねえ!!俺は墓地の《アンブラル・ネオスフィア》の効果を発動!永続魔法扱いとなっているアンブラルが2体以上存在するとき、俺の魔法・罠カードをすべて破壊することで、除外されているこのカードを永続魔法扱いとして俺の魔法・罠ゾーンに置く!」

伊織とセラフィムに立ちはだかるように再び姿を現す《アンブラル・ネオスフィア》がフィールドの2体のアンブラルを飲み込むと、黒いオーラとなってベクターに吸収されていく。

「これで…《エアーマン》の効果は不発!そして、俺様の攻撃力は4000になる!これで、てめえのせっかくのHEROも終わりだ!!」

「まだ終わりじゃない!!攻撃して、セラフィム!」

「わかりました、伊織さん!!」

攻撃力が上回ることになるベクターを相手にするにも関わらず、セラフィムは迷うことなく彼に向けて突撃する。

「馬鹿な奴だぜ!!俺様の効果により、《アンブラル・ネオスフィア》の攻撃力である4000を得る!こいつで返り討ちにしてやるぜ!!」

強烈なオーラを放つベクターがセラフィムの弾丸など意に介さず真正面から突っ込んでいく。

オーラがセラフィムの弾丸を消滅させ、肉薄したベクターの拳がセラフィムを襲う。

「伊織さん!!」

「私は手札から速攻魔法《ドリーマーズ・シュート》を発動!《セラフィム》もしくは《セラフィム》を融合素材としたHERO融合モンスターが存在し、相手がカード効果を発動したターン、《セラフィム》の攻撃力をターン終了時まで倍にする!」

拳をかろうじて銃で受け止めるセラフィム。

ベクターの力を前にそれを受けた場合、本来は砕け散るであろう銃身だが、白い光を放つそれに傷一つついておらず、すかさずセラフィムがわずかに距離をとると発砲する。

何発も発射される弾丸だが、それでもベクターに傷を与えることができない。

 

仮面暗黒帝ベクター レベル12 攻撃0→4000

Wake Up Your E・HERO(《D・HEROナインテール》装備) レベル10 攻撃3400→6800

 

「攻撃力はこれで、《セラフィム》が…!」

「ばーーーか!まだ俺様にはカードが残ってるんだよぉ!俺様は手札から罠カード《仮面の嘲笑》を発動!!こいつは俺様もしくはアンブラルエクシーズモンスターが相手モンスターと戦闘を行うダメージステップ開始時、墓地のアンブラルの攻撃力を自らに加えることができる。これは俺様が存在する場合は手札から発動できる!さあ、墓地の《アズラエル》の攻撃力を得るぜ」

 

仮面暗黒帝ベクター レベル12 攻撃4000→6800

 

「そして、この効果を受けた俺様はこのターン、破壊されねえ!死ぬのは…お前だけだぁ!!」

地面を思い切り踏みつけたベクターを中心に衝撃波が発生し、セラフィムが吹き飛ばされる。

そして、瞬間移動したかのように頭上に現れたベクターの拳がセラフィムの頭部に襲い掛かる。

「これで、てめえは終わりだぁーーーーー!!」

拳がセラフィムに直撃し、あとは彼女が消滅するのを待つのみ。

ニヤリと勝利の味を感じつつあったベクターだが、次の瞬間、ベクターは右拳から違和感を覚える。

ピキリ、ピキリと嫌な音が聞こえ、同時に激痛を感じ始めていた。

「な、なんだ!?なんだってんだ、これはああああああ!!」

「装備されている《ナインテール》の効果発動!装備モンスターが相手モンスターとの戦闘で破壊されるとき、装備されているこのカードを墓地へ送ることで、装備モンスターは戦闘では破壊されず、戦闘で発生する私へのダメージも0になる!!そして、装備モンスターの攻撃力を倍にする!!」

「はあああああああ!!!!」

叫ぶセラフィムがベクターを蹴りおろし、上空を舞う。

彼女の周囲には魔法陣が展開され、そこから数多くの銃火器が姿を現し、そのすべてがベクターに照準を合わせていた。

「こい…つは!?」

「そして、今の《セラフィム》は融合素材にした融合モンスターの数だけ、一度のバトルフェイズ中に相手モンスターに攻撃できる!私が融合素材にした融合モンスターは2体!だから、もう1度攻撃できる!」

 

Wake Up Your E・HERO レベル10 攻撃6800→13600

 

「こ…こ…攻撃力、13600!?馬鹿な…馬鹿な、馬鹿なぁ!!!」

エネルギーが凝縮されているセラフィムと彼女が召喚したすべての銃が輝く。

セラフィムの肩には元の姿に戻ったビャッコの姿があり、勝利宣言と言わんばかりに鳴く。

「キュイーーー!」

「翔太君と…あなたが苦しめたみんなの怒りを…13800の攻撃を…食らえーーーーーー!!!お願い、《セラフィム》!!!!!」

「はああああああああ!!!」

引き金を引きと共に地上に向けて放たれる弾丸とビーム、グレネード、ミサイル。

雨あられと降り注ぐ炎が神となったはずのベクターを焼き尽くしていく。

「ぐううう…あああああああ!!!!!」

神としての姿を失い、元の姿に戻ったベクターの肉体が地面に転がった。

 

ベクター

ライフ2300→0

 

 

 

 

 

 

ゾーク・ロールプレイング

通常罠カード

(1):自分フィールドゾーンに表側表示で存在するフィールド魔法が破壊されたターンに発動できる。発動後、このカードはフィールド魔法扱いとして自分フィールドゾーンに置く。

(2):フィールド魔法扱いとして自分フィールドゾーンにこのカードが存在する場合、このカードは以下の効果を得る。

●このカードはこのカード以外の効果では破壊されない。

●自分または相手スタンバイフェイズ時に1度、自分はサイコロを1枚振る。その出た目によって、以下の効果を適用する。この効果の発動に対して、お互いのプレイヤーはカウンター罠以外のカードを発動できない。

(1・2:相手フィールドのモンスターをすべて破壊する。

(3・4・5:相手フィールドのモンスター1体を破壊する。

(6:このカードを破壊する。この効果は無効化されない。

 

覇王龍の英知

通常罠カード

(1):自分フィールドに存在するレベル7・闇属性・元々の攻撃力が2500のPモンスターが相手によって破壊されたターン、自分Pゾーンにカードがない場合に発動できる。自分のデッキから同じレベルのPモンスター2体を自分Pゾーンに置く。この効果を発動したターン、自分Pゾーンのカードは破壊されない。

 

D・HERO(ディメンション・ヒーロー)タナトス

レベル7 攻撃2500 守備2100 効果 闇属性 戦士族

このカードはルール上「E・HERO」「D-HERO」「E-HERO」「M・HERO」「V・HERO」カードとしても扱う。

(1):このカードは1ターンに1度しか融合素材モンスターとすることができない。

 

アンブラル・マリオネット

レベル3 攻撃1200 守備0 闇属性 悪魔族

【Pスケール:青4/赤4】

(1):自分Pゾーンにこのカードが存在するとき、自分EXデッキに表側表示で存在する「アンブラル」Pモンスター1体を対象に発動できる。このカードを破壊し、対象のモンスターを自分Pゾーンに置く。

【モンスター効果】

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードを手札からP召喚に成功した時、相手フィールドに表側表示で存在するモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターとこのカードのコントロールを入れ替える。

 

アンブラル・スライム

レベル1 攻撃0 守備0 効果 闇属性 水族

このカード名の効果は1ターンに1度、発動できる。

(1):相手ターンに1度、このカードが墓地に存在するとき、自分フィールドに存在する「アンブラル」モンスター1体を対象に発動できる。そのカードを破壊し、このカードを墓地から攻撃表示で特殊召喚する。その時、このカードの元々の攻撃力・守備力は破壊したモンスターの元々の攻撃力と同じになる。この効果で特殊召喚されたこのカードはフィールドから離れたとき、除外される。

 

アンブラル・アーキタイプ

レベル4 攻撃1400 守備0 効果 闇属性 悪魔族

(1):このカードが相手モンスターとの戦闘で破壊され、自分が戦闘ダメージを受けたときに発動できる。攻撃力の合計が受けたダメージの数値以下となるように、デッキ・墓地から「アンブラル・アーキタイプ」以外の「アンブラル」モンスター2体を特殊召喚する。

 

剥奪の代価

通常魔法カード

(1):自分メインフェイズ1に自分フィールドに攻撃表示で存在するモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターの攻撃力を0にする。その後、そのモンスターの元々の攻撃力分自分のライフを回復し、デッキからカードを1枚ドローする。この効果を受けたモンスターはこのターン、戦闘を行わなければならない。

 

アンブラル・エンジェル

レベル1 攻撃0 守備0 効果 闇属性 天使族

(1):自分フィールドに存在するこのカードをリリースし、デッキに存在する「アンブラル」Pモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。

(2):このカードが墓地に存在し、自分の墓地に「アンブラル」融合・S・Xモンスターがそれぞれ1体以上存在し、自分EXデッキに「アンブラル」Pモンスターが表側表示で存在する場合、このカードを墓地から除外することで発動できる。自分の手札・フィールドに存在するカードをすべて墓地へ送り、デッキ・墓地から「アンブラル・ゾーク・ロード」「アンブラル・ダークネス・ロード」を1枚ずつセットし、「アンブラル・サウザンド・ロード」「アンブラル・ゾーン・ロード」を1枚ずつ手札に加える。この効果でセットしたカードはこのターン、発動できる。この効果を発動したターン、自分フィールドの魔法・罠カードは1ターンに1度、効果では破壊されない。

 

CX-仮面死天使アズラエル

ランク5 攻撃2800 守備0 エクシーズ 闇属性 天使族

「アンブラル」レベル5モンスター×3

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードのX素材に「アンブラル」Xモンスターが存在する場合、このカードは以下の効果を得る。

●相手バトルフェイズ開始時、このカードのX素材を1つ取り除くことで発動できる。このターン、相手の攻撃宣言時、攻撃対象を自分が決める。

(2):このカードが墓地に存在し、自分フィールドにモンスターが存在しない場合、墓地のこのカードを除外することで発動できる。EXデッキに表側表示で存在する「アンブラル」Pモンスターを2体まで手札に加える。

 

ドン・サウザンドの裁き

通常罠カード

このカード名のカードは1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドにEXデッキから特殊召喚された「アンブラル」モンスターが存在し、手札が0枚の状態で相手がデッキからカードを手札に加えたとき、相手の手札が4枚以上の場合に発動できる。相手は手札をすべて墓地へ捨てる。その後、お互いにデッキからカードを2枚ドローする。このカードは3ターン目以降にしか発動できない。

 

亜空間バトル(アニメオリカ)

永続魔法カード

(1):お互いのプレイヤーはデッキのモンスターカード3体を選択し、選択したモンスターカードを互いに1枚ずつ同時に相手に見せる。相手より攻撃力の低いモンスターカードは墓地に送られ、そのカードのコントローラーは500ポイントのダメージを受ける。相手より攻撃力の高いモンスターカードは自分の手札に加える。攻撃力が同じ場合、どちらも墓地へ送られる。この効果を繰り返した後、このカードを破壊する。

 

アンブラル・シャイニング

レベル7 攻撃2500 守備1200 効果 闇属性 魔法使い族

(1):自分フィールドに「アンブラル」モンスターが存在するとき、手札のこのカードを墓地へ送ることで発動できる。このターン、自分が受ける戦闘ダメージが0となる。この効果は相手ターンでも発動できる。

 

無敵の英雄-インビンジブル・ヒーロー(アニメオリカ・調整)

通常罠カード

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドに「HERO」モンスターが表側攻撃表示で存在する場合にのみ発動できる。このターン、自分フィールドに表側攻撃表示で存在する「HERO」モンスターは戦闘では破壊されない。

(2):このカードが墓地に存在し、自分LP以上の攻撃力を持つ相手モンスターの攻撃宣言時、墓地のこのカードを除外することで発動できる。相手バトルフェイズを終了させる。その後、自分の墓地に存在する融合モンスター以外の「HERO」1体を攻撃表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。

 

アンブラル・ネオスフィア

レベル12 攻撃4000 守備4000 特殊召喚/効果 闇属性 悪魔族

このカードは通常召喚できない。

このカードは自分フィールド・手札に存在する「アンブラル」モンスターを1体ずつリリースすることで、魔法・罠ゾーンから特殊召喚できる。

(1):自分フィールドに「仮面暗黒帝ベクター」が存在する状態で相手がモンスター効果を発動した時、墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。その発動を無効にし、破壊する。その後、相手フィールドに存在するすべてのモンスターを破壊する。

(2):自分魔法・罠ゾーンに永続魔法扱いとなっている「アンブラル」モンスターが2体以上存在するとき、このカードが除外されている場合に発動できる。自分の魔法・罠ゾーンのカードをすべて破壊し、このカードを永続魔法カード扱いとして自分魔法・罠ゾーンに置く。この効果で魔法・罠ゾーンに置いた場合、このカードは「仮面暗黒帝ベクター」の効果により永続魔法扱いとなったものとして扱う。この効果は相手ターンでも発動できる。

 

 

仮面暗黒帝ベクター

レベル12 攻撃0 守備0 特殊召喚/効果 闇属性 悪魔族

このカードは通常召喚できない。

このカードはルール上「アンブラル」モンスターとして扱う。

「仮面剣闘士オーディン」の効果でのみ特殊召喚できる。

(1):このカードは相手プレイヤーに直接攻撃できる。その時、このカードの攻撃力はターン終了時まで相手LPと同じになる。

(2):このカードは相手の魔法・罠カードの効果を受けない。

(3):自分・相手ターン終了時、自分の墓地・エクストラデッキに表側表示で存在する「アンブラル」モンスター1体を対象に発動できる。そのカードを永続魔法カード扱いとして自分の魔法・罠ゾーンに置く。

(4):このカードが相手モンスターと戦闘を行う時に発動できる。このカードの攻撃力をターン終了時まで自分魔法・罠ゾーンに置かれているこのカードの効果によって永続魔法扱いとなった「アンブラル」カード1枚の元々の攻撃力と同じになる。

(5):このカードは戦闘では破壊されない。

(6):自分フィールドに存在するこのカードが破壊されるとき、代わりに自分フィールドの他の「アンブラル」カード1枚を破壊できる。

 

D・HEROナインテール

レベル9 攻撃0 守備0 効果 闇属性 戦士族

このカード名の(1)(3)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):相手の直接攻撃宣言時、そのモンスターの攻撃力が自分のライフの数値以上の場合に発動できる。手札に存在するこのカードを特殊召喚する。その後、「HERO」融合モンスターによって決められた融合素材モンスターをデッキ・墓地・EXデッキからそれぞれ最大1枚まで除外し、その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。その後、このカードを装備カード扱いとしてそのモンスターに装備する。

(2):このカードを装備したモンスターがモンスターゾーンに存在する限り、相手は装備モンスター以外を攻撃対象にすることができない。

(3):装備モンスターが相手モンスターとの戦闘で破壊されるときに発動できる。代わりに装備されているこのカードを破壊する。その後、このカードを装備していたモンスターの攻撃力は倍になる。

 

仮面の嘲笑

通常罠カード

自分フィールドに「仮面暗黒帝ベクター」が存在する場合、このカードは手札から発動できる。

(1):自分フィールドの「仮面暗黒帝ベクター」もしくは「アンブラル」Xモンスターが相手モンスターと戦闘を行うダメージステップ開始時からダメージ計算前に発動できる。戦闘を行う自分のモンスターの攻撃力をターン終了時まで、墓地に存在する「アンブラル」モンスター1体の元々の攻撃力分アップする。この効果を受けたモンスターはこのターン、戦闘・効果では破壊されない。

 

ドリーマーズ・シュート

速攻魔法カード

(1):自分フィールドに存在する「E・HEROセラフィム」もしくは「E・HEROセラフィム」を融合素材とした融合モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターの攻撃力をターン終了時まで倍にする。

 

 

「はあ、はあ、はあ…」

デュエルが終わり、緊張の糸が解けた伊織がその場に座り込む。

そんな彼女の元へ元の姿に戻ったセラフィムと彼女の肩から降りたビャッコが寄り添う。

「伊織さん、大丈夫ですか!?」

「キュー…」

「はあ、はあ…なんとか、ね…ありがとう…セラフィム、ビャッコちゃん…それに…」

伊織の手に握られている、翔太がくれた力である《D・HEROタナトス》。

死をもたらす存在の名前を宿していながら、伊織に生きて戦う力をくれた。

「ま…だ、まだ…だぜ…」

足を引きずる音が聞こえ、3人の視線がそこへ向けられる。

あれだけの攻撃を受けたことで、元の姿に戻ったベクターの体は傷だらけになっていた。

片足はも動かすことができず、引きずるように動いており、血で真っ赤にぬれた瞳が伊織に向けられる。

「あり、えねえんだよ…ナッシュでも、遊馬でも…あいつでもねえ…ただの、人間のてめえに…俺様が、後れを!!そいつだろう!?そいつが…力を貸したから…」

ベクターの怒りの矛先が伊織の手にあるカード、そしてビャッコに向けられる。

それを理解したビャッコは伊織から引き離すべく、前に出て威嚇する。

「てめえなんぞ…に…!?」

ビャッコに手を伸ばそうとするベクターの体にビクリと鈍い音と共にひびが入る。

ひびは徐々に広がり、全身を駆け巡っていく。

「な、なんだよ、こいつは!?!?」

(てめえはもう終わりだよ、ベクター)

「貴様…まさか、まだ…!?」

「翔太君…?」

ベクターの中から聞こえる、もう聞くことができないと思われた男の声。

それに驚く伊織を前に、ベクターの体が砕けていく。

(ああ…そうだったな。てめえは粉々になって、本来の体を失ったんだったな。今回も同じだ。だが、今回は…てめえの魂も砕ける。おしまいだな)

「ふざけるんじゃねえ!こんな…こんな結末なんて、認められるかよ!!!!」

(次に生まれる時があったら、平和の王子でもやってろ)

「クソがあああああああ!!!」

ベクターの叫びが爆発するかのように霧散する肉体と魂もろとも消えていく。

そして、ベクターがいた場所には淡い光に包まれた翔太の姿があった。

「翔太君…無事…で…」

復活した、という都合のいいことが頭に浮かびかけた伊織だが、そうではないことは既に彼の体が証明していた。

翔太の体は徐々に消えていっており、足元は既に消滅していた。

「気にするんじゃねえよ、あの野郎の言う通り、俺はもともと存在しない。元に戻るだけだ」

「そんなこと…」

「体は返す、持ち主によろしく言っておいてくれ。お前らも、存在しない奴のことはさっさと忘れてしまえ」

「そんなの…できるわけない…。あんなに悪口言って、こんなところまで連れてきて…でも、みんなを守ってくれて…」

「俺は俺のやりたいことをやっただけだ。感謝されるいわれはねえ。伊織」

涙を浮かべる伊織の目の前に来た翔太が伊織の左手を握る。

違和感を覚えた伊織の視線が左手へ向かい、そこには翔太と同じ光る痣が生まれつつあった。

「こいつなら、次元を元に戻せる。これで、お前は正真正銘のヒーローだな」

ニヤリと笑う翔太の体が消滅するスピードが一気に速まっていく。

力を渡したことが、翔太にとっての正真正銘の最後の力だったのだろう。

「じゃあな…」

その言葉と笑顔を最後に、翔太の体が最初から存在しなかったかのように消滅し、その場にいた伊織たちもまた姿を消す。

後に残ったのは崩壊したコロシアムのみだった。

静寂に包まれたその場所で、二人の声が響く。

(本当に、これでいいのかい?)

(ああ…あとは、あいつらのやることだ。迷惑を、かけたな)



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第135話 終焉の光

船を襲う覇王眷竜たちが次々と光の粒子となって消えていく。

急にいなくなったモンスターたちに驚くも、誰もが長時間にわたる過酷な戦いの果てに傷つき、疲れ果てており、もはや立っていることさえ難しいほどだ。

「榊遊矢が勝った…ということか」

「多分、ね…」

次元の狭間に消えてから、ズァークの反応をつかむことができていない侑斗にはあいまいな答えしか返すことができない。

本当に真実を知りたいなら、戦っている張本人から聞くべきだが、もはや彼と話す手段がない。

 

 

遊矢の最後の一撃を受け、ズァークの体が次元の狭間で浮かぶ。

オッドアイズに乗る遊矢がそんな彼を間近で見つめている。

「貴様に敗れた…ということか…」

わずかに首を傾け、遊矢に言葉を発するズァークからは何も力が感じられない。

抑揚のない、事実確認を求めるだけのような質問に遊矢は首を縦に振る。

「どんなに人々を笑顔にしようとも、どれほど人々に応えようとも…どれほど愛そうとも…やがてそれ以上の何かを求め、それを見せることができなくなった瞬間…手の平を返す…。あまりにも身勝手、あまりにも愚か…。そんな輩を守ったところで…」

そんな人間を守るためにこんな次元の狭間まで追いやり、倒した自らの片割れの行動を理解することができない。

理解できて、当たり前だというのに。

静寂の中で混乱するズァークに遊矢が口を開く。

「そうかもしれない…でも、そんな人だけじゃないことも、俺は知ってる」

柚子や権現坂、零児、零羅、洋子、遊勝塾の年少組のみんな。

どんな時も遊矢を信じて、応援して、力を貸してくれた人々もいる。

この辛い次元戦争の中での出会いと別れで知った闇も、そうした掛け値なしに信じてくれる人々がいるから、抗うことができる。

「なぁ…ズァーク。もう1度、もう1度だけ…みんなを笑顔にするデュエルをしないか?」

「何…?」

かつての世界を滅ぼした己を許すかのような言葉にズァークの目が光り、オッドアイズも視線を背中に乗る男に向ける。

「全部を許したわけじゃない…。でも、償い終えたなら、きっと思い出せるはずだ。ただ純粋に自分もみんなもデュエルを楽しむことができた時を…。それを思い出せば、進めるはずだろう…?」

わずかなボタンの掛け違いが積み重なって生まれた悲劇を、今度は一つずつ元に戻していく。

その過程で生まれた涙をかみしめながら。

そして、かつてのズァークに戻ることができたなら、同じ道を歩んでいける。

遊矢にとって、彼もまた自分の一部なのだから。

「甘い…ことを言う…片割れだ…。お断りだ」

「ズァーク…あ…」

遊矢の目に光の粒子が見え、それを生み出しているのはズァークだ。

粒子が発生するにつれて体が崩れていく。

「皆が…貴様や、貴様の信じる人間にはなれん…。愚かで、どんなに愛そうとも…必ず裏切る。貴様の信じるデュエルは…俺となる道にも、つながっている」

捨て台詞のようなズァークの言葉を遊矢は反論することなく、彼の目を見ながら聞き続ける。

その兆候を戦争の中で感じ、耐えきれなくなったことで一度は自分の頭を銃で撃ちぬいたのだから。

だが、それが遊矢がズァークに吸収されることを回避し、この結果につながるとは思わなかったが。

「貴様がいる限り…俺は、消えん。目に見えずとも、姿を…感じずとも…。永劫の闇の中で…貴様が、俺となるのを…待っている。その消えることのない因果に…もがき苦しめ…榊、遊矢…」

その言葉を最後にズァークの体が消滅し、彼がいた場所には光の球体だけが残る。

これはズァークが覇王龍となるための力の源の残滓、遊矢にはそう感じた。

その球体に寄り添うように、3つの小さな光と、3つの、残滓には及ばないものの大きめの光が集まる。

「みんな…」

「遊矢、感謝する…。よく、ズァークを倒してくれた」

「見てたぜ…畜生、本当は俺がやりたかったんだけどな。あと、こいつ…どうにかならねえか、どうも全く違うキャラで調子狂うぜ」

「申し訳ありません。こうならないと、私もスターヴ・ヴェノムもマトモも戻れませんでしたから」

「え、ええ…!?」

遊矢もユーリの穏やかな口調に驚きを隠せなかった。

精神を破壊されていた時の彼の破滅的な言動が焼き付いているために、その落差は激しい。

「さて…この力の残滓、これをこのままにしておくわけにはいきませんね」

「なら…俺たちが次元の果てへと持っていこう。ズァークの一部だった、俺たちでしかできないことだ」

「え…?待てよ、そんなことをしたら、ユート…」

彼の言う次元の果てというものがどういうものなのかは遊矢には見当がつかない。

だが、危険なズァークの力の残滓を持っていくと言っているとなると、もう誰も手が届かない遠い場所であることは間違いないだろう。

「いいさ…俺たちの肉体は既に消滅している。帰る肉体がない以上、俺たちにできるのはそれくらいさ」

「ならば、役目を終えた俺もその終わらぬ旅に付き合うとしよう」

「オッドアイズ…お前まで!?」

「もはや、小僧のお守りなど不要だろう」

遊矢を振り下ろしたオッドアイズがその肉体を光の球体へと変え、ユート達の元へと向かう。

7つの光に取り囲まれたズァークの力の残滓は徐々に遊矢の元を離れていく。

「さらばだ、遊矢。黒咲やみんなを頼む」

「リンに伝えてくれ、俺のことは心配すんなって!」

「遠くから、あなたと皆様の幸福を願っております」

「待って、みんな…待ってくれ!!」

手を伸ばし、追いかけようとする遊矢だが、どんなに体を動かしてもその場から移動することができず、ただ彼らが遠くなっていくのを見ていることしかできない。

(気にするな、榊遊矢。すべてが、あるがままに還る、ただそれだけのこと…。貴様にも、いつかわかる日が来る)

 

「ん、ん…」

いつの間にか意識を失っていた伊織がゆっくりと目を開く。

ベクターと翔太の元へ向かう直前にいた、プロフェッサーの部屋の廃墟と言える場所で、戦闘が終わったためなのか、揺れがなく、静寂と生き残っているリバイバルゼロのシステム、そして翔太がいた場所にいるのは幼い少年の姿。

おそらく、この少年は翔太の言っていた、ベクターと融合することとなってしまった不運な少年、順次なのだろう。

それを見て、伊織は翔太が本当にいなくなったのだと実感し、目頭が熱くなるのを感じる。

視線を自分の左手へと向けると、そこには翔太から受け継いだ痣が光っていて、それは明らかにシステムと反応している。

「このシステムと、翔太君の力…これがあれば、私たちの今知っている次元に戻すことができる…。今ある、あるがままの世界を守る…。それが、あなたのしたいことなんだよね?これが、みんなのやりたいことなんだよね…」

「キュイー!」

伊織の足元にいつの間に現れたビャッコが足にほおずりをする。

励まそうとしている彼に笑みをうかべた伊織は優しく頭を撫でた。

「いくよ…翔太君…はあああああ…」

左手の痣に力を集めていくイメージを作り、それに反応するかのように痣の光が強まっていく。

痣の光が左手から腕へと広がり、やがて伊織の全身を包んでいく。

「あああああああああああ!!!!!!!!!!」

今まで感じたことのない、吹き飛ぶかのような感覚を大声をあげて耐え、光そのものとなったかのような左腕をシステムへと伸ばした。

光はシステムの中のエネルギーに反応し、そこから巨大な緑色の光の柱を生み出し、オーロラの空を貫いていく。

(これで…全部、終わる…)

 

 

「オッドアイズ…ユート…ユーゴ…ユーリ…みんな…」

たった一人となり、次元の狭間のどこかに取り残されることになった遊矢の体がそのままこの場を漂い続ける。

ズァークと決着をつけるため、彼ともどもこの場所に入り込んだ遊矢だが、今の彼にはそこから仲間たちのいる次元へと帰る手段がなかった。

ほんの少しだけでも体を動かしたかったが、オッドアイズ達がいなくなってから、体が鉛のように重たくなって動けない。

このままたった一人で、戻ることもできずに…。

その絶望が頭をよぎる。

(でも…ズァークを止められた…。もう、いい、よな…?)

置いていかれたが、ここで衰弱していけば、ズァークの因子を持つ者は一人もいなくなる。

それでいいと、目を閉じようとした遊矢の視界に入ってくる一人の人物の姿。

茶色いバケットハットをかぶり、茶色いコートで身を包んだ彼は遊矢のそばまで行くと、目に見ない椅子に座ったかのような姿勢になる。

「やぁ、お疲れ様。つらい戦いをよく、耐えてきた」

「だ…」

「じっとしていた方がいい。これまでの戦いで体がやられている。ほんの少しで動けるようになる」

正体を明かすつもりはないのか、顔を一切見せようとしない。

こんな次元の果てにいきなり現れて、怪しまない理由はないが、たとえ怪しんだとしても、今の遊矢にはどうすることもできない。

「心配しなくていい。すぐに君は仲間の元へ帰れる。その前に…ほんの少し、この次元を見るといい。既に知っているように次元は4つだけではない。君たちの次元から距離が離れているとはいえ、剣崎侑斗たちが暮らしている次元が存在し、次元が存在する。この次元の狭間は、ちょうど…その数多くの次元の光というものを見ることができる」

「次元の…光…」

「もうすぐ目が慣れてくる頃合いだろう。さあ…心を落ち着かせて…」

「ああ…」

遊矢の目に映る一つ一つの星。

それぞれからかすかに感じる人々や世界の息吹。

そのあまりの多さ、そしてそこから伝わる熱に遊矢の目に涙が浮かぶ。

「次元はいくつも存在する。今この場で見えないものも含めて…無数に…。そして、それを渡り歩いた果てに…きっと、彼らはいる」

「あ…」

無数の星々の光の中で、緑色の光の柱を放つものが見える。

その星から見えるのは、柚子や自分の帰りを待つ仲間たちの姿。

帰る場所が見えたことへの喜びと共に、なぜか何の感情かもわからない涙が浮かぶ。

やがて、動かなかった体が動き、徐々に帰る場所へと進んでいく。

「さあ、振り返ってはいけない。ただ、今は帰るんだ。そして、忘れるな。君たちの頭上には、数多の次元が、数多の世界が待っていることを。君たちの未来に、幸多からんことを」

 

 

(次元戦争が終わり、我々が帰還してしばしの時が経った…。再び次元は4つに分かれ、それぞれの次元が復興への道を今も歩き続けている)

「中島、融合次元へ派遣した者たちからの報告は?」

「はっ、崩壊したアカデミア本部の復旧は教育現場としての機能については完了。融合次元の子供たちの受け入れを徐々に開始していくと」

「そうか…必要な物資のリストはすぐにF班に回せ。準備出来次第、輸送を開始しろ」

指示を受けた中島が社長室を出ると、眼鏡を外した零児が背もたれに身を任せ、天井に目を向ける。

次元戦争が終ろうとも、別次元の存在を認識してしまったこと、そしてそれによって生まれてしまったつながりは消えることはない。

特に、次元戦争の原因となったアカデミアとそれを有した融合次元への憎しみは今もなお、エクシーズ次元には根付いている。

だが、そのアカデミアを生み出したのが他でもない零王である以上、息子としてその罪をこれからも背負っていく。

その清算の一歩として零児が行っているのはアカデミアの復興だ。

ただし、次元戦争のためのデュエル戦士養育のためではなく、あくまでも普通の学校として運営していく方針だ。

この学び舎で、戦いの道具というデュエルの認識を少しずつ変えていくのが零児の計画だ。

なお、終戦後に零王はスタンダード次元の病院へ極秘裏に移送された。

もはや目覚める見込みはなく、機械によって生きながらえていた零王。

零児は日美香と話をし、両者の合意によって生命維持装置を外されることとなった零王はそのまま息を引き取り、最低限の葬儀の上で火葬された。

あれほど零王を憎んでいた日美香だが、病室で零王を見たときに彼女が見せた憐みのような表情を零児は今も忘れられない。

誰よりも憎んだ男が弱り果て、そして最期を迎える。

それを二人とも零羅とともに心静かに過ごすこととなった。

「そういえば、今日だったな…。舞網中学の卒業式は」

「はい、例の物の準備ができています」

「そうか…卒業後は正式にプロになるとばかり思っていたが…だが、彼らしいというべきか…」

 

「ホーラ、まだ疲れる時間じゃないぞー。ここにはまだ運ぶ資材がゴマンとあるからなー」

シンクロ次元のトップスの一角において、がれきの撤去が終わった区域での建設作業が開始されており、そこにはトップスだけでなく、コモンズの人々も同じ空間で作業を行っている。

行政評議会が消え、新たな議会が出来上がった。

そこではトップスもコモンズも分け隔てることなく議員が入り、そこで皆が意見を交わしている。

かつてのような対立も見受けられはするものの、復興に関する議案を中心に徐々に歩み寄りも進められている。

「かぁー、疲れたぜー。やっとメシの時間か」

休憩時間となり、作業をしていたクロウがひと段落ついたところでその場に座り込む。

伊織が翔太から受け継いだ痣の力によって次元が修復された際、カードにされたクロウ達は解放された。

カード化のシステムも同時に失われ、人々がカード化されることはなくなった。

クロウにとって、カード化されてから再び目覚めるまでの間の記憶はないが、リンたちから話を聞いたことで、その間の出来事についてはあらかた把握している。

「にしても、シンジとジャック…あいつら、どこにいるんだろうな…」

今のシティには二人はいない。

次元戦争終結の恩赦によって釈放されたシンジはしばらくの間、シティの復興事業を手伝っていたものの、最近になったシティから旅立った。

自分が革命のために奪ってしまった命や死んだ仲間たちに向き合うため、巡礼をするという。

あのシンジから巡礼という言葉が出てくるとは思わなかったが、遊矢とのデュエルとしばらくの獄中生活の中で心境に変化があったのだろう。

ジャックはシティを出て、武者修行をしつつ、世界各地の大会に出場している。

時折、ニュースでジャックの活躍が話題となっており、人々を勇気づけている。

最近ではペルーで行われた世界大会で優勝したという。

「クロウ、弁当よ」

「お、リン!ありがとな」

大量の弁当が積まれたカードを押して運ぶリンから弁当を受け取ったクロウはさっそく蓋を開けて中に入っている卵焼きやおにぎりを次々と腹に詰めていく。

「お前、あんまり休んでる姿を見ねーな。昼間は俺らの弁当作りをして、夜は孤児院の手伝い。たまには休めよー」

「ちゃんと休んでいるから大丈夫よ。それに…」

リンの脳裏に浮かぶ、かつて共に過ごしたユーゴとの日々。

遠くへ行ってしまった彼のことを考えない日は一日たりともない。

「悲しんで、じっとしていたら、あいつに怒られちゃうから…」

「…そうか、そうだよな。ユーゴか…そいつと、デュエルをしてみたかったぜ」

 

「そうだ。融合召喚のための素材と《融合》魔法を手札に加えるためには…」

融合次元の遊勝塾で、セレナが子供たちに融合召喚を教えていた。

次元戦争が終わり、レオコーポレーションによってアカデミアが通常の学校として稼働を始める準備をしているが、生徒の受け入れが始まるまで、遊勝塾で可能な限り子供たちの世話をしている。

ただ、アカデミアが崩壊し、これまでアークエリアプロジェクトを信じて戦い続けていたデュエル戦士たちの多くが居場所を失うことになった。

中にはいまだにアークエリアプロジェクトを信じているデュエル戦士もいて、最近では彼らによるテロ事件が起こり、レオコーポレーションによって鎮圧されており、今後は元アカデミアのデュエル戦士たちによる取り締まりも行われるようになった。

「そろそろ交代よ、セレナ。あとは私がやるから、あなたは休憩して」

「ああ…。少し、外の空気を吸ってくる」

塾を出たセレナはようやく疲れを自覚し、外にあるベンチに腰掛けて空を見上げる。

次元戦争を終え、遊矢たちと別れたセレナは明日香に誘われたことと遊勝に頼まれたことで融合次元の遊勝塾の教師となった。

彼女だけでなく、戦争を生き延びたタイラー姉妹や目を覚ましたデュエル戦士たちもここで教師をしている。

アカデミアの中で生きてきた世間知らずの自分がまさか真似事とはいえ、教師になるとは夢にも思わなかった。

子供たちに慕われ、疲れ果ててはいるものの、今までにない充実した日々を送っている。

今の彼女の夢は融合次元の子供たちに平和なデュエルを教えること。

決して、デュエルを戦争やエゴの道具にされることがないように。

 

「じゃあ…行くのね。兄さん」

「ああ。復興の途中だというのに、悪いな」

「いいのよ。むしろ…うれしいの」

テントの中、コーヒーを飲む瑠璃に自らの決意を口にする黒咲。

中には瑠璃と黒咲だけでなく、アレンやサヤカ、レジスタンスの仲間たちの姿もあり、彼らはハートランドの復興にかかわっている。

「プロデュエリストになる…あいつの夢でもあったからな」

妹を救うことができ、カード化された仲間たちも帰ってきた。

だが、もう戻らない親友のユートのことを考えない日はない。

決して死んだわけではないが、もう二度と会えない彼のためにできること、自分にしかできないことで思い浮かぶことは共通の夢をかなえること。

だが、エクシーズ次元だけでそれになるつもりはない。

スタンダード次元、シンクロ次元にもプロデュエリストの制度がある。

いずれ融合次元でもプロデュエリストの制度が生まれるだろう。

四つの次元でプロデュエリストとなる。

壮大ではあるが、今の自分であればできる気がした。

次元転移の手はずはすでに整っている。

「頑張れよ、黒咲!俺たちも応援するから」

「きっと、剣崎さんたちがその話を聞いたらびっくりしたかも」

次元戦争が終わり、ヒイロや侑斗たちは後事を託して元の次元へ帰った。

黒咲にとっての心残りは彼らに一度も勝てなかったこと。

すべての次元でプロデュエリストとなり、彼らの次元へ行けるようになったその時には、きっと彼らと互角に戦えるだけの力が手に入るはず。

(俺はいつか、お前の耳に届くほどのデュエリストになる。どうか…見守っていてくれ、ユート)

 

「よし…遊矢。次元転移の準備はできたぞ」

「ありがとう、零児。俺のわがままを聞いてくれて」

「正当な報酬だ」

レオコーポレーションのスタジアム中央に設置された大きな門の形をした装置には虹色の渦が発生しており、Dホイールに乗る遊矢がその前に立っている。

義手だった左腕は元に戻っており、これはシンクロ次元から帰還してからレオコーポレーションで遊矢の細胞を培養して生み出された新たな左腕だ。

これを移植し、長いリハビリの末にかつての左腕と同じように動かせるようになった。

それに伴い、マシンレッドクラウンからは神経接続機能が取り外されたものの、今の遊矢はそれなしでもDホイールを乗りこなせる。

「しかし、残念ですね。ズァークを倒した英雄である今の遊矢君ならば、いいプロデュエリストになれるのですが…」

「まだ俺はそれだけのデュエリストじゃないよ。まだ…俺は自分のデュエルを見つけられていないから」

ペンデュラム召喚は決して特別な召喚法ではなく、融合召喚もシンクロ召喚もエクシーズ召喚もあくまでも手段の一つに過ぎない。

自分だけができる、人々を楽しませるデュエルが何か。

それを見つけるまで、デュエリストの模範となるプロデュエリストを名乗るのはおこがましいと思うようになった。

「まずはどの次元へ行く?」

「そうだな…まずはシンクロ次元へ行くよ。それから、エクシーズ次元、融合次元へ。そこだけじゃない。剣崎さんたちのいる次元とか、いろんな次元へ行って、そこにいる人たちとデュエルがしたいんだ」

「そうか…想像がつかないほどの長い旅になるだろう。だが、必ず戻れ。戻った暁には、私がプロデュエリストのテストをしてやる」

「ああ…感謝するよ。零児」

「遊矢、みんなに挨拶をしなくていいの?今日、卒業式だよ」

おそらく、今の時間は卒業式が終わるであろう時間。

遊矢は卒業式に参加することなく、ここにきて出発の準備をしていた。

BAT-DIEの治療のために入院している遊勝と洋子にだけ今日のことを伝え、口止めしている。

「いいさ…これが最後ってわけじゃないし。それに…湿っぽいのって、なんだか嫌だから」

「そうか…。だが、どうやら君の思い通りにはさせてくれないらしい」

「え…?」

キイイイ…。

Dホイールがこちらに近づく音が聞こえて、驚く遊矢はそれが聞こえてくる後方に振り替える。

見えてくるのはマシンレッドクラウンに似た形状で、ピンク色のフレームのDホイールと白とピンクのライディングスーツとヘルメットの少女の姿だった。

Dホイールが近くに停車すると、少女はヘルメットを脱ぐ。

「ゆ…柚子!?なんで…痛っ!?」

いきなりハリセンの一撃が頭に容赦なく直撃し、耳鳴りがするほどの痛みが遊矢を襲う。

涙目になって痛みに耐えながら遊矢はもう1度柚子を見る。

「遊矢!何を勝手に行こうとするの!?誰にも何も言わないで!」

「あ、いや、だって…」

「だってじゃない!ああ…もう!あなたが一人で行ったらろくなことにならないわ!だから、あたしも一緒に行く!!」

「え、ええ!?」

ひどいいわれようで文句の一つを言いたくなるのだが、柚子の同行宣言でその気持ちが収まる。

一緒に行くといわれても、これから遊矢が始めるのは何年かかるかわからない長い旅だ。

次元戦争以上の危険も待っているかもしれない。

修造のことを考えると、そんな旅に柚子を付き合わせるわけにはいかない。

「遊矢と、一緒にいたいの」

「俺と…」

「遊矢と一緒の物をみて、一緒に成長していきたいの。それが、どんな場所でも、どんな次元でも…。見届けさせて、あなたが世界一のエンターテイナーになる軌跡を」

「柚子…」

「おーい、遊矢ーーー!」

観客席から権現坂の声が聞こえ、二人が視線を向けるとそこには制服姿の権現坂や沢渡の姿があった。

「へへっ…残念だったな、榊遊矢ー!おめーのことなんざ、お見通しって奴だぜー!」

「行ってこい、遊矢!戻ったならば、さらに成長した俺の不動のデュエルを見せてやる!」

「遊矢ーーー!柚子ーーーー!頑張れよー!たまには、なんでもいいから連絡をくれー!」

「あんたを待っている人がこれだけいるんだ、帰ってこなきゃ、承知しないよー!」

権現坂だけでなく、修造や遊勝塾の子供たちや洋子、そして彼女が押す車椅子に座る遊勝の姿もあった。

まだ満足に声を出せるほどの体力が戻っていない遊勝だが、何も言わずに笑顔でサムズアップをしてみせた。

(行ってこい、遊矢…。俺ができなかったことを…お前なら、できるさ…)

「時間だ、装置を起動する」

渦が活性化していき、二人のDホイールのモニターに転移する次元の座標が表示される。

「行こう、遊矢!」

「ああ…行くぞ!!」

二人のDホイールが並走し、次元の渦の中へと飛び込んでいく。

遊矢の脳裏に浮かぶのはこれまでに出会い、そして別れてきた仲間たちの姿。

(行ってくるよ、みんな…。みんなで守った四つの次元を見るために…そして、それ以外の、まだ知らない次元に待っている『仲間』に会いに…)

 

「伊織ちゃん、入っても大丈夫かな?」

「おじいちゃん、いいよー、入っても」

伊織の許可が入り、伊織の部屋の扉を開ける栄次郎の目に映るのは荷物の準備をする伊織の姿だった。

「驚いたな…戻ってきたときはほとんど寝たきりという状態だったというのに…若いのはいい」

「本当に…こういうことになるって、先に教えてくれてよかったのに…。本当に、最初から最後まで、一言足りないんだから…」

寂しそうに自分の左手を見る伊織。

伊織の手には痣がなく、元の手に戻っていた。

伊織が翔太から受けついた痣の力は、アカデミアの装置を介して次元に干渉し、再び4つの次元へと修復した。

ランサーズによって救出されたときは疲れ果てて意識を失っており、目覚めたのはここに戻ってきてから一週間経過してからだ。

これほどの力を使ったのだから、伊織の体も無事に済むはずがなく、起きたときは首から下はまともに動かせなくなっていた。

それからリハビリをして、ようやく満足に体が動くようになったのはほんの数日前だ。

「それで…順次君はどうなの?」

「ああ…今日もここのみんなとデュエルをしている。だが…自分が行方不明になって、ここで目覚めるまでの記憶は何もないらしい」

「そう…」

ベクターと融合していた間の、秋山翔太の存在は消え、ベクターもまた消えた。

残ったのは翔太になる前の順次。

無理に思い出すことはないが、だが、一抹の寂しさを感じずにはいられない。

「面会に行くのかい?」

「うん、もしかしたら、聖子さん…目を覚ますかもしれないし。じゃあ!」

荷物を手にした伊織が部屋を飛び出していく。

後姿を見送る栄次郎はフッと笑う。

「次元戦争が遺した爪痕は深い…。だが、それを乗り越えていく。去っていった人、生き延びて未来を紡ぐ人のためにも…。そして、これも…若さの特権か…」

 

ガレージのシャッターを開け、そこにあるマシンキャバルリーの座席に座る伊織。

サイドカーは取り付けられたままで、本来は伊織が座っていたそこに荷物を置く。

マシンキャバルリーに座っていると、翔太と過ごした日々が脳裏に浮かぶ。

目の奥が熱くなるのを感じ、胸が締め付けられる。

「キュイキュイー!」

「ビャッコちゃん…」

どこからともなく現れたビャッコが伊織の頬をなめる。

励ましてくれる彼の頭をやさしくなで、笑顔を見せる。

その様子に安心したビャッコは荷物に紛れるようにサイドカーの座席に座る。

「(そうだね…楽しかったよね…翔太君)さあ、行こう!ビャッコ!」

伊織とビャッコを乗せたマシンキャバルリーが発進し、施設を飛び出していった。




長期にわたりありがとうございます。
かなりの難産になったものの、遊戯王ARC-V戦士の鼓動はこれで完結となります!

本編に不満があり、どうしてやろうかと思いながら書き続け、結局自分の書きたいように書いていったという感じとなりました。
甘い設定とかも結構ありましたが、笑って受け流してくれると幸いです。

なお、ご存じかもしれませんが、外伝として「遊戯王5D's外伝 異界の決闘神官」をかいています。
今後はそうした外伝、なんて書いていくのもありかな…なんて思っています。


作品予告
バリアンとの戦いから3年が経過したハートランド。
高校3年生となり、侑斗たちは進路のことを考え始める。
そんな中で、過去の怨念が未来への道を阻む。
「ずっと…待っていた。お前に復讐するときを!」
「クソ野郎が!やるなら、俺だけを狙いやがれ!!」
「ドン・サウザンドが記憶を改ざんしていたのはアリト達だけじゃない。俺を除いた…全員が…」
「お前に…お前にすべてを奪われた。騎士とての誇りも…。だから、今度は私がお前のすべてを奪ってやる!そして…お前のすべてが失われたのを見せつけた後は…」
「バリアンになろうが、人間になろうが…何百回何千回うまれかわってもよぉ…俺の生き方は何一つ変わらねえ!さあ…賭けようぜ!!」

遊戯王ZEXAL風の戦士たち外伝 紅蓮の博徒

「見せてやるよ…これが、過去と今が一つになった…俺の力だ!」


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