ハイスクールD×D~チートが転生させたそうですよ?~ (夜叉猫)
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〜ネタバレ注意〜
キャラ設定【1】


 

 

 

【名前】

『兵藤 士織』

 

【見た目】

デート・ア・ライブ『五河 士織』

 

【所有神器】

精霊天使(フェアリー・エンジェル)

→デート・ア・ライブに登場する精霊の力を使うことが出来る。

 

禁手(バランス・ブレイカー)

現界せし天魔の奇跡(ディセント・オブ・セフィロト)

→背後に複数個の果実を出現させる。

齧った果実によって使える能力が異なる。

 

神威霊装・神番(ヤハウェ・エロヒム)

→黒の袴に藍色の羽織。

二本の刀を腰に携え、首には漆黒の長布が巻かれている。

所謂士織のための霊装。

 

 

世界を構成する者(ファウンダー・エレメント)

→五大元素を操る能力。

 

禁手(バランス・ブレイカー)

『???』

→不明

 

 

【能力】

妖精の魔法(エンジェリック・スペル)

→アニメ『フェアリーテイル』の魔法を使うことが出来る。

 

【備考】

神々を司る神(シラヌイ)』によって転生した今作品の主人公。

原作主人公『兵藤一誠』の双子の兄として新たな生を受けたが、その見た目は完全に女のため、周りの人の扱いに四苦八苦する。

家族、仲間を大切にする性格のため、手を出された場合はどんな手を使ってでも相手を殲滅してしまう。

その本来の実力は世界最強と言われる『オーフィス』、『グレートレッド』と並ぶ。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

【名前】

『兵藤 一誠』

 

【見た目】

原作と差異なし。

強いて挙げるのならば凛々しい顔つきになっている。

 

【所有神器】

赤龍帝の篭手(ブーステッド・ギア)

→神滅具のひとつであり、二天龍『ドライグ』が封じ込められている。

10秒毎に所有者の力を2倍するというわかりやすい能力。

 

禁手(バランスブレイカー)

赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)

→10秒毎という制約を無視した瞬間的な倍加が可能になる。

原作と変わらない能力。

 

〖亜種禁手〗

赫龍帝の四皇鎧(ブーステッド・ギア・プロモーションメイル)

→『赤龍帝の鎧』よりもさらに赤さを増した美しい深紅の全身鎧。

元からの鋭角なフォルムがさらに増した、まさに【龍】の体躯のようなイメージを持たせる。

 

赫龍魔帝(ウェルシュ・ドラグーン・ビショップ)

→『赫龍帝の四皇鎧』の形態のひとつ。

左右の腰辺りに二丁のレールガンが装備され、両肩には原作に出てきた『龍牙の僧侶』時のビーム砲。

両腕には二丁のビームライフルを持ち、背後には剣の刀身部分を彷彿とさせる四対八機のドラグーンが出現する。

 

【備考】

原作の兵藤一誠とは違って極度の変態ではない。

士織と同様に家族、仲間を大切にする性格である。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

【名前】

原作→『木場 祐斗』(男性)

本作→『木場 祐奈』(女性)

本名→『イザイヤ』

 

【見た目】

原作13巻で登場する女体化した木場祐斗と同じ見た目。

 

【所有神器】

魔剣創造(ソード・バース)

→自らの想像した魔剣を創り出す能力。

どのような性能になるかは使用者の実力に比例する。

今作品では『剣』よりも『刀』を創造するのが多い。

 

〖亜種禁手〗

双覇の聖魔剣(ソード・オブ・ビトレイヤー)

→『聖』と『魔』という本来混じり合うあはずのない力を併せ持つ聖魔剣を創造する能力。

本来は亜種の禁手なのだが、通常の禁手が書かれていないため、実質こちらが通常の禁手のような扱いになっている。

 

【備考】

原作では男性だったが、今作品では女体化した士織のヒロインの1人。

士織から魔改造とまではいかないが鍛えられたため、戦闘スタイルが原作とは変わっており、刀系統の魔剣による『抜刀術』などを使った戦い方をする。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

【名前】

原作→『レイナーレ』

本作→『夕麻』

 

【見た目】

原作と差異なし。

 

【備考】

兵藤家に住む堕天使4人娘のひとり。

士織たちの母親の葵泉とともに家事に精を出している。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

【名前】

原作→『ミッテルト』

本作→『美憧』

 

【見た目】

原作と差異なし。

 

【備考】

兵藤家に住む堕天使4人娘の1人。

アーシアと仲が良く、よく買い物に行っている。

―――――が、その描写は書かれていない……。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

【名前】

原作→『ドーナシーク』

本作→『綯奈』

 

【見た目】

けんぷファー『瀬能 ナツル』

髪を黒く染め、つり目になっている。

 

【備考】

兵藤家に住む堕天使4人娘の1人。

アザゼルの『ちょっとした実験』に協力した結果、何故か女体化してしまった。

本人は全く気にしていないようだが、最近では精神が身体に引っ張られているようで、女性らしくなっている。

士織の眷属であり、【兵士】の駒を持つ。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

【名前】

原作→『カラワーナ』

本作→『華那』

 

【見た目】

原作と差異なし。

 

【備考】

兵藤家に住む堕天使4人娘の1人。

士織たちの父親の賢夜と共に修行するのが趣味。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

【名前】

『兵藤 賢夜』

 

【見た目】

長身でがっちりとした鍛えられた肉体をしている。

イメージキャラは今のところなし。

 

【備考】

士織たちの父親。

ただの人間にも関わらず、堕天使4人娘との修行もこなすことができ、コカビエルからイリナを守ろうと戦ったこともあったが死にはしなかった。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

【名前】

『兵藤 葵泉』

 

【見た目】

ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?『玉置 亜子』

 

【備考】

士織たちの母親。

家族が大好きで、何処か子供っぽい性格をしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回はある程度の設定を紹介しましたっ!(>_<)
まだまだ設定を見たいキャラがいたら感想欄でも、メッセージ出てもいいのでおっしゃってくださいっ!


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〜転生無敵のシオリ〜
~プロローグ~


初めまして皆様。
私は夜叉猫と申します。

そして、前作から読んで下さっている皆様。
更新が遅くなって申しわけありません……。

これからはゆっくりですが、この新作を入れた三作品で頑張って行きますのでどうぞ宜しくお願い致します。


それでは早速本編をどうぞ♪


黒い黒い底知れない闇が辺りに広がる。

 

―――嗚呼、寒い……。

 

目が、耳が、口が、鼻が、身体が、本来の機能を果たさない。

しかし、感じる―――『寒さ』。

 

―――嗚呼、怖い……。

 

何も感じない筈なのに襲ってくるこの『寒さ』。

それがとてつもなく『怖い』。

そもそも何故こんなことを考えられるのかも分からない。

機能を果たさない筈の自分の身体。

なのに思考という行為を行うことが出来る。

 

―――嗚呼、助けて……。

 

誰でも良い。何処でも良い。

それこそ地獄でも良いから此処から連れ出して……!!!

此処に居たら……自分が自分でなくなってしまう気がするから……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――そしてそんな時、眩い一条の光が差した。

黒い黒い底知れない闇の中にも関わらずその光は弱まることなど無く力強くその存在を主張し続けている。

 

―――嗚呼、暖かい……。

 

機能を果たさない筈の身体。

しかし、自分は確かにその光に向かって手を伸ばした。

 

―――そこに『俺』を連れて行って……!!!

 

差し込む光の原点。

『俺』はそこに向かって一心不乱に手を伸ばした。

 

―――暗闇(ここ)は嫌だ……『俺』は陽だまり(そこ)に行きたい……っ!!!

 

届かないのは分かっているが『俺』は諦め切れない。

どうしても陽だまり(そこ)に行きたいのだ。

 

―――嗚呼、神様……。

 

―――『俺』の願いを聞き届けて下さいませんか……?

 

―――最初で最後のお願いですから……。

 

『俺』は必死に手を伸ばしながらそんな言葉を頭に浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――『良いよ。そのお願い叶えてあげる』

 

 

 

突然響いた優しい声。

それと同時に今まで感覚の無かった自分の手に暖かい何かが触れた。

その瞬間『俺』は引っ張りあげられる感覚を感じた。

そして『俺』は――――――――――

 

 

―――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――――

 

 

 

「―――――はっ……!?」

 

引っ張りあげられる感覚を感じたのも束の間、俺は目を開いた(・・・・・)

 

視界に映るのはそこはかとなく安心感を感じる和室。

 

静かだが微かに揺れる風鈴の音が聴こえる。

 

口が開き、懐かしい香りが鼻をくすぐる。

 

脚に力を入れれば立ち上がることも、腕を組むことも、首を回すことも何の問題もなく出来る。

 

―――嗚呼、嗚呼、嗚呼。

 

目が、耳が、口が、鼻が、身体が、本来の機能を果たしている。

 

「……嗚呼、なんて素晴らしい事なんだ……」

 

ツゥっと頬を涙が流れた。

『普通』とはなんと素晴らしい事なのだろう。俺はそんなことを思った。

 

 

 

「―――感動しているところ悪いんだけど……良いかな?」

 

「っ……!?」

 

突然背後から声を掛けられる。

俺は直ぐに後ろに視線を向けてその声の主を確認した。そこには―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ、そんなに警戒しないで良いよ。

別に危害を加えるつもりは無いからね」

 

 

―――にこにこと笑う一人の少女がいた。

 

 

和服を着こなし羽織りを纏っている少女はそう言うと俺の前に腰を下ろした。

 

「……君は一体誰だ?」

 

「それを語るのも吝かじゃないけど……まずひとつ聞かせてくれないかな?」

 

少女は真面目な表情を浮かべると、ひとつ息を吐いて口を開いた。

 

 

 

「―――キミは自分が『死んでいる』と自覚しているかい?」

 

「……え……??」

 

一瞬思考が止まった。

俺が『死んでいる』……?

この少女は何を言っているのだろうか……?

 

「……その様子だと自覚していないみたいだね……」

 

少女は頭に手を当てると呟く様にそう言った。

 

「それじゃぁ、俺の正体云々の前に今のキミの『立ち位置』についてを話すことにしようか」

 

少女は立ち上がるとこほんと咳払いをして説明をし始める。

 

「まずそもそもなことだけど、キミは既に死んでいるよ?

その証拠に―――自分の事を思い出してみて?」

 

俺は少女に言われた通りに自分の事を思い出そうとする。

しかし―――――

 

 

 

「―――あれ?何にも思い出せない……?」

 

自分の名前も歳も家族も友人も何も思い出せない。

俺が何故?という思いを込めて少女を見詰めると、

 

「死者の魂にはしばらくの間は記憶が刻まれている。だけどそれは本当にしばらくの間だけなんだよ。

記憶は時期に薄れていき、完璧に消える。

そうなってしまうとその魂は真っさらの状態となり、次の輪廻の環に乗ることになる」

 

淡々と少女は語った。

何と言うか、難しい話であったが何とか理解することが出来る。

 

「キミがいた暗闇の空間はそんな輪廻の環に乗る寸前(・・)の魂が集まる場所だよ?」

 

「ということは俺が俺でなくなる寸前だったのか……危ない危ない……」

 

俺は胸に手を当て、ほっと息を吐き少女の言葉に安堵する。

 

 

 

「キミ、自分がどれだけ特殊なのか分かっているかい?」

 

少女は俺の方を真剣な目で見詰めながらそう言った。

 

「え?何が?」

 

「……キミがいたのは輪廻の環に乗る寸前の魂が集まる場所だよ?

ということは、記憶が無くなり真っさらの状態の筈なんだ。

なのにキミは自分の『意思』で『考え』であの場所から出たいと『願った』。

普通の魂ならまず自分の『意思』を持つことすらできない……」

 

「……えっと、つまりどういうこと?」

 

「簡単にいえばあそこではただ魂が浮いているだけの筈なのに君だけは生きている時と何ら変わらない事をすることが出来たということだよ。

まぁ、流石に記憶は消えていたみたいだけどね……」

 

少女はよく意味が分からなかった俺にわかり易く説明をしてくれる。

つまりは俺は少女から見れば異常なのだろう。

 

「まぁ、ともかくキミの立ち位置は『不思議な魂』って事だよ」

 

少女は再び俺の目の前に腰を下ろして最後にそう締めくくった。

 

 

 

閑話休題

 

 

 

「そろそろ君についてと此処は何処なのかについて教えてくれないか?

とりあえず俺が死んだって事はどういう形にしろ納得はしたからさ」

 

俺は少女に向かってそういった。

何となく分かったような気はするが一応確認も兼ねて直接聞いた方が良いだろう。

 

「ん。そうだね。

それじゃぁ、簡単な自己紹介でもしようかな」

 

少女は俺の言葉にそう反応するとゆっくりと間を開けて口を開いた。

 

 

 

「俺は俗に言う『神様』という存在だね。

まだ神様になってから日は浅い方だけど一応最強の神様として君臨している。

そして此処は俺の……【神の間】。

簡単に言えば俺の作った俺の為の空間みたいなモノだよ」

 

少女は淡々とまるで当たり前のようにそう語った。

まるで夢物語のような内容に俺は我が耳を疑う。

 

「神様って……何それ冗談?」

 

「うん……そんな反応が妥当だろうね……」

 

―――でも事実なんだよ。

少女は苦笑いを浮かべながらそういった。

 

「というよりキミ、記憶を完全に無くしてる訳じゃないみたいだね……それなら修復できるかも……待ってて……」

 

少女はそう言うと俺の額に手を当てると目を瞑った。

その整った顔立ちにどぎまぎしたのは秘密だ。

 

―――しばらくの後、俺の頭の中に何かが流れ込んでくるような感覚を感じた。

少女はその感覚が収まると成功したみたいだねと言ってにこりと魅力的な笑みを浮かべる。

 

「そうみたいだね……。

何と言うかちょっと変な感じはするけど……」

 

何と言うのだろう、記憶を辿るとそれはまるで映像を見ているような感覚がするのだ。

 

「まぁ、記憶が突然流し込まれればそんな感覚もするだろうね……」

 

「ちょっと混乱するけど……ありがとう俺の記憶を直してくれて」

 

俺は少女に頭を下げる。

何せ大切なモノを俺に返してくれたのだから。

 

記憶(それ)は元々キミのモノだからね。

それに思い出は……大切な宝物だよ」

 

少女は昔を懐かしむかのようにそう言った。

しばらく沈黙が続き、突然少女がパンと柏手を打つ。

 

 

 

「さて、物は相談なんだけど……キミ、転生してみる気は無いかな?」

 

首をこてんと倒しながら少女はそう言った。

 

「転生?」

 

「そうそう転生。

実は俺誰かひとり転生させてくださいって他の神様から言われててね……。一応その転生させるのに相応しい人をというか魂を探してたんだ」

 

少女は腕を組むと難しそうな顔をしてそう口にした。

 

「そんな時にキミが現れたって訳だ」

 

「……えっとつまりタイミングがいいから君転生しない?ってことか?」

 

「タイミングが良いっていうのもあるけどキミなら転生させても良いなって俺が思ったからだよ」

 

少女は俺を指さしながらウインクをひとつした。

 

(しかし、転生……所謂【神様転生】って感じかな?

確かに俺が生きてた頃はそういうのが大好きだったみたいだけどまさか自分が体験するなんて思いもしなかった……。

というか俺の記憶を辿ってるとなかなかオタクだったんだなって思わせられる……。

ん?もしかして……)

 

俺は少女の容姿をしっかりと確認する。

 

「どうかしたかい?」

 

少女は俺の視線に気がついたのか疑問の表情を浮かべながらそういった。

 

「いや、ちょっと自分の記憶を辿ってたら君の姿を見た気がしてね、よくよく考えたら君の姿って【空の境界】の両儀式と同じじゃないか」

 

「あはは……まぁ、姿はそうだけど気にしないで?一応別人だから」

 

少女は苦笑いを浮かべながら俺の言葉に返す。どうやら少女も【空の境界】を知っているようだ。

 

「それでそろそろ答えを聞きたいんだけど……?」

 

「あ、あぁ、答えね。

それなら―――良いよ。

むしろさせてもらいたいとこっちから頼みたいくらいだ」

 

俺がにっと笑いながら言うと少女は良かったという表情を浮かべて口を開いた。

 

「そうかい!

それなら話は早い。

早速色々なことを決めていこうか!」

 

そういった少女はぱちん、と指を鳴らす。すると周りの風景が一瞬にして変わり、辺り一面真っ白な空間になった。

俺が辺りをキョロキョロと見回していると、

 

「流石にあの場所は俺のプライベートルームだからね。

転生とかいう真面目な話は本来の場所で話さないと」

 

少女が親切にもそう言ってくれた。

 

「さて、まずはキミの転生する場所だけど……勝手ながら俺が決めさせてもらうよ。

転生先は【ハイスクールD×D】の世界。

内容は……知ってるかな?」

 

「あ、うん。

大丈夫だ。その小説なら俺が生きている時に大好きだったヤツだから」

 

「そうかい。なら原作知識は要らないね……。

おっと、先に言わせてもらうけどもしかしたら原作知識というものは役に立たないかもしれないからね。

キミが行くのはあくまで【ハイスクールD×D】の世界に似た場所だからさ」

 

それから少女は世界についてのことと俺の立ち位置について親切に説明してくれたのだった。

 

 

 

 

「なるほど、つまりはあんまり原作知識を頼りにしてると失敗するかもしれないんだな?」

 

「……簡単に纏めたね……まぁ、簡単に言えばそう言う事だよ」

 

少女はそう言うと少しだけ溜め息を漏らした。

どうやらあんな親切に説明をしたのにまさか此処まで短くされるとは思わなかったのだろう。

 

「ちなみに俺って何か転生特権とか貰えるの?」

 

流石にごくごく普通の一般人である俺が何の能力もなくあの世界に行ったら軽く死ねる気がするのだ。

 

「勿論だよ。

ちなみに聞くけどキミは無双してみたい人かな?」

 

「無双ね……確かにしてみたいな……」

 

こう、強いキャラを軽く捻るってみたいなことは正直やってみたい。

 

「ん。分かったよ。

じゃぁ、キミのスペックと能力はこんなものでどうかな?」

 

少女はそう言うと指をぱちん、と鳴らして虚空から紙を出現させた。

 

 

 

○○○○○○○○○○○○○○○○

 

容姿

【デート・ア・ライブの五河 士道】

 

身体能力

【世界最強と同じ程度】

 

魔力などの力

【一応無限だがリミッターを掛けるのは自由】

 

能力

【五大元素を操る能力】

【デート・ア・ライブに登場する精霊の力を使える能力】

【FAIRY TAILの魔法の知識】

 

備考

もしリクエストがあるのならどうぞ。

 

○○○○○○○○○○○○○○○○

 

 

 

「チートだねぇ……」

 

俺はその紙に書かれた事を読み上げるとついついそんな言葉を漏らしてしまった。

 

「キミが無双してみたいと言ったからね」

 

「それもそうだね……」

 

確かに自分が言ったことだがまさか叶えてくれるとは思わなかったのだ。

 

「ちなみにだけどこれに変更を加えることは可能か?」

 

「良いけど流石に行き過ぎだと思ったら俺が止めるからね?」

 

「了解。んじゃまずは―――――」

 

俺は少女を交えて自分の魔改造について話し合い始めた。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

「良し。とりあえずはこんなものだな」

 

「結構悩んだみたいだけどイイ感じにバグキャラになったね」

 

「まぁ、無双したいのならバグキャラにならざる負えないだろ?」

 

俺が少女に向かって笑いながらそう言うと、少女は瞳を閉じてふっ、と笑った。

 

「それじゃぁ、そろそろ転生してもらおうかな……。

ちなみにキミはいつの時間軸にどんな条件で送られたい?」

 

「そうだな……その辺は任せるよ。

俺が変に指定しても失敗しそうだしな」

 

「ん。了解したよ。

それじゃぁ、今から送るけど何か言いたいこととかあるかい?」

 

俺のリクエストを何も言わず叶えてくれる少女はそう言って俺を見詰めた。

 

「そうだな……じゃぁ、最後に君の名前教えてよ」

 

「ん?あぁ、そう言えば名乗って無かったね……良いよ教えてあげる」

 

少女は咳払いをすると俺を見詰めながら口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は【神々を司る神(シラヌイ)】。またの名を【不知火(しらぬい) 夜鶴(よづる)】。

一言でいうなら――――

――愛すべき者を幸せにする神様って所かな?」

 

「ワァォ……なんだか凄い神様なんだな。

何はともあれ、ありがとう夜鶴。

これからも宜しくな」

 

俺が少女―――夜鶴―――にそう言うと俺の身体は白い光に包まれる。

そして、意識は暗いながらも暖かいところへと落ちていった。

 

 

 

―――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――――

 

「ふぅ……初めて転生させたけど……まぁ、意外と疲れないものだね」

 

俺はそう言いながら首をこきっと鳴らす。

そして、いつも通りの和室の空間に戻した。

 

「ん~……!!

やっぱり此処が落ち着くね」

 

畳の上に寝転がり、背伸びをする。

ほのかに香る畳の匂いと風鈴の音は癒しを運んでくれる。

 

「後は此処に―――――」

 

俺は自らの愛する者たちの顔を浮かべる。

しかし、そんな中でもやはり彼女が頭の中で一番最初にそして長く浮かび続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――私が居れば完璧ですか?」

 

突然俺の頭の上から声が聞こえた。

俺はにやける顔を隠そうともせず起き上がるとその声の主を抱えて自分の胡座の上に座らせる。

 

「正解だよ―――――オーミ」

 

そしてその頭を優しく撫で、彼女という存在を愛でる。

 

「ふふふっ……。くすぐったいですよ夜鶴。

でもやっぱり気持ちいいです……」

 

そう言ってオーミは俺の胸に擦り寄る。

 

「やっぱりオーミが一番だね……」

 

俺はそんなオーミを抱きしめてそうつぶやいた。

そして、先ほど転生させたばかりの少年のスペックを書いた紙をひとまず放るとオーミとのひと時を存分に堪能するのだった。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

○○○○○○○○○○○○○○○○

 

容姿

【デート・ア・ライブの五河 士織バージョン】

 

身体能力

【世界最強と同じ程度。

しかし、基本的にはリミッターで上級悪魔よりも強いレベルで制限している】

 

魔力などの力

【一応無限だがリミッターを掛けるのは自由】

 

能力

【五大元素を操る能力】

【デート・ア・ライブに登場する精霊の力を使える能力】

【FAIRY TAILの魔法の知識】

【不知火式の知識】

 

備考

・【神々を司る神】とのコンタクトを取ることが出来る。

・成長限界が無し

 

○○○○○○○○○○○○○○○○

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編の方はいかがでしたでしょうか?

今日原作を10巻まで買いましたが……やはりこの作品も私は好きですね♪

スランプもある程度は抜け出して来ていますので早く続きを書いていきたいと思いますっ!!!
皆様、暖かい目で見守って下さいませっ!!!


それではまた次回お会いしましょう♪


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~ひとまずの確認~

というわけで連続投稿です♪

今回のものは説明のような話です♪


それでは早速!
本編をどうぞ♪


「……ぅん………」

 

ゆっくりと意識が浮上してくる。

目を開ければそこはベットの上。

身体を起こして辺りを見回せば何処にでもありそうなシンプルな部屋が広がっていた。

 

耳を澄ませばカチ、カチ、カチ、という時計の針の動く音のみが聴こえてくる。

置いてある家具からして今の自分が幼子ではない事を認識した。

都合のいいことに部屋には姿見が置いてあったため俺は現状を確認するためにそこに歩み寄って行った。

 

「……あれ?」

 

そして気がついた。

 

背をくすぐる位にまで伸びた暗めながらも美しい青髪。

中性的―――否、最早少女のような顔立ちは街を歩けば大半の人を振り返らせる程のモノだろう。

今の自分は所謂『美少女』というカテゴリーに分類される程の容姿だ。

 

つまり――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「姿のチョイスをミスったぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!」

 

何が悲しくて男から男の娘にジョブチェンジしなければならないのだろうか。

しかも声が高くなってた事も地味に俺を傷つけた。

 

「……というより本当に俺の性別は男なんだよな……?

まさか恐怖の性転換とかしてないよな?!」

 

急に恐ろしくなって自分の身体を触ってみる。

 

胸は――――――――――無い!!

 

下は――――――――――あるっ!!!

 

ホッと息を吐き、冷や汗を拭う。

どうやら性転換という洒落にならない変化は起きていなかったようだ。

 

 

 

閑話休題

 

 

 

時計の針が指し示す時間は午前五時。

起きた時にちらりと見た時計は確か午前四時を示していたため、俺は姿の確認と落ち込みから復活するために1時間も要した事になる。

 

「……ひとまずは俺の今の扱いを確認したいんだけど……」

 

どうしたものか、と考えながらベットに腰掛けると俺の横、枕元に一通の封蝋された手紙が置いてあるのに気がついた。

おそらく夜鶴が寄越したものだろう。

俺はその手紙を手に取ると何のためらいもなく開封した。

 

 

 

『男の娘への仲間入りおめでとう』

 

 

 

「第一声がそれかよ!!?」

 

しかもご丁寧にも紙を1枚使い無駄に達筆で書かれているのが腹立たしい。

とにもかくにも、これを読まないと色々と分からないので我慢しながら読み進めていくことにする。

 

 

 

『……とまぁ、冗談はさて置き、無事に転生出来たみたいだね。

俺自身誰かを転生させるのは初めてだったからうまく行ってホッとしているよ。

 

ひとまずキミの今の立場なんかを説明させてもらうね?

キミは【ハイスクールD×D】における主人公、兵藤 (ひょうどう)一誠(いっせい)の双子の兄という立ち位置にさせてもらったよ。名前を【兵藤(ひょうどう) 士織(しおり)】。

今は原作スタートの約二年前。

中学三年の時となっているよ。

容姿どころか名前まで女性みたいだけどキミはしっかり男性だから安心して欲しい』

 

 

 

「……夜鶴……せめて名前は男だと分かるものにして欲しかった……」

 

一枚目……いや、二枚目の手紙を読み終えた俺は無意識にそう呟いてしまっていた。

兵藤 士織って……絶対女だって間違われるだろうに……。

しかも主人公の……あの煩悩の塊みたいなのが俺の弟なのか……。

俺は今後どれほど苦労するのだろうと頭を悩ませながらも手紙を更に読み進める。

 

 

 

『次にキミに転生特権についてだけど、少しだけこちらで手を加えさせてもらったよ。

 

まず初めに【五大元素を操る能力】、【デート・ア・ライブに登場する精霊の力を使える能力】は2つとも神器(セイクリッド・ギア)になっているよ。

名前を【世界を構成する者(ファウンダー・エレメント)】、【精霊天使(フェアリー・エンジェル)】。

 

そして、残りの2つ【FAIRY TAILの魔法の知識】と【不知火式の知識】には手を加えた。

 

【FAIRY TAILの魔法の知識】はその量が膨大だから【検索魔法】としてキミの頭の中に刻み込んだよ。

使いたい魔法はその【検索魔法】を行使して探してみてくれるかな?

勿論、魔法を使う為にはある程度の慣れが必要だよ?

 

【不知火式の知識】についてだけど……これは俺の使っている武術だ。

おそらく知識だけでは使うことは難しいと思ったからね……ある程度の武術への才能を与えておいたよ。

勿論、知識にある【業】を使っていってもいいけど……出来ればキミだけの【業】というものも作って欲しいな 』

 

 

 

「おぉ……夜鶴って優しいんだな……。

ここまで俺にしてくれるとは……」

 

正直、全てを神器にしていなくて良かったと思う。確か神器の力を無効化する敵が居たはずだからな……。

俺は次に夜鶴に会ったら全力で感謝しようと心に決めた。

そして、最後の手紙へと目を移す。

 

 

 

『長くなったけどこれが最後だよ。

 

今キミがいるのはあくまで【ハイスクールD×D】に似た世界だ。

原作の物語があるからと言ってキミの行動の選択肢を狭めないで貰いたい。

 

せっかくの第二の人生だ。

どうか楽しく、そして道を間違えることのないように生きていって欲しい。

 

それでは、キミの人生に幸福あれ……』

 

 

 

「道を間違えたりは絶対にしないさ……。

人生は正しく楽しく……が一番だ!」

 

俺は夜鶴からの手紙を綺麗に折りたたむと元の状態に戻し、大事に引き出しの中へと仕舞った。

 

気がつけば既に時間は午前六時。

一体手紙を読むだけでどれほどの時間を使っているのだと言いたいがそれは置いておこう。

ひとまずは夜鶴からもらった能力の確認位は一通り終わらせたいものだ。

 

「まずは……比較的やりやすそうな知識の整理からかな……」

 

俺はそう呟くとベットに腰掛けながら【検索魔法】を行使するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編の方はいかがでしたでしょうか?

ちょっと急いで作りましたのでおかしいところもあるかもしれません……(苦笑)


感想などを頂けると嬉しいです♪


それでは次回お会いしましょう♪


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~予想外だそうですよ?~

こんばんは皆さん♪
最近スランプを脱出しかけている夜叉猫です♪

もうそろそろしたら問題児編も更新していこうと思いますのでしばらくはこのハイスクールD×D編をお楽しみくださいませ♪


それでは早速、本編をどうぞ♪


どうも、兵藤 士織だ。

 

俺が転生してから早くも半年。

これと言って特筆するものもなくただただ平凡な毎日を過ごしている。

 

「お~い士織起きてるか~?」

 

「起きてるよ……。

何か用?一誠」

 

俺はドア越しに聞こえてきた一誠の声に反応する。

 

「ん~……まぁ、ちょっとした相談事……なんだが……」

 

歯切れの悪い一誠の言葉に俺は不自然さを感じた。

腰掛けていたソファーから立ち上がり部屋の入口まで歩み寄ると、ドアを開けて一誠と対面する。

 

「とりあえず立ち話もなんだし……入る?」

 

俺は自分の部屋へと一誠を招き入れてソファーに座らせた。

何処かそわそわしている一誠。

俺は自分のベットに腰掛け、口を開く。

 

「それで?相談事って何?」

 

「ん?……あぁ……言うより見てもらった方が早いだろうから見てくれねぇか?」

 

そう言った一誠はおもむろに立ち上がると目を閉じて左腕を突き出した。

すると、一誠の左腕が光を放ち始める。

光は次第に形を成していき、左腕を覆っていく。

光が収まった時、そこには赤い籠手が装着されていた。

 

「……なんか最近トレーニングしてたら出てきちまってよ……コレ、なんだと思う?」

 

一誠は頬をポリポリと掻きながら俺を見詰めてきた。

 

(【赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)】!?

なんでこの時期に出現してるんだ!?)

 

転生してから半年。

早くも原作ブレイクしていました。

 

 

 

「……っていうか一誠トレーニングとかしてたんだ?」

 

俺は一誠の発言にふと、疑問を抱きそう口にした。

 

「まぁな。

というかきっかけは士織だぞ?」

 

「……え?俺がきっかけなの?」

 

「そうそう。

半年位前だったかな……?

士織が『お前鍛えたらいい線いくんじゃないか?』って言ったから今まで頑張ってるんだぜ?」

 

まさか俺が何気なく言った言葉がきっかけで原作ブレイクしてしまっているとは……。

ついつい苦笑いが浮かんでしまう。

 

「あれから半年……っ!

毎日、筋トレとランニングを頑張った……」

 

一誠は瞳を閉じながら思い出すかのようにしてそう語り、拳を握った。

そしてかっ、と瞳を開くと、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――これで俺もモテるかな!?」

 

きらきらとした瞳を俺に向けながらそう言った。

 

「無理だ」

 

「即答!?」

 

俺のばっさりと切り捨てるかのような言葉に一誠はそう言うと膝から崩れ落ちた。

 

「まずはその変態根性を何とかしろ。

話はそれからだ……」

 

そんな一誠を見た俺は頭に手を当てながらそう言う。

全く……我が弟ながらこの変態は……。

 

「とりあえずはその変態さを隠せ。

無くせとは言わないからせめてオープンにするな……」

 

「……うぅ……そしたらおれモテるかな……?」

 

泣きながらそう言う一誠は真剣そのものだった。

普通なら無理だと切り捨てる所だが少しくらい慰めてあげてもバチは当たらないだろう。

そこで俺は嘘ではないが真実ともまた少しだけ違うことを口にする。

 

「……わからない。

まぁ、とりあえずお前は顔はいいんだからその変態さを無くせば女の子の友達くらいなら直ぐにできるんじゃないか?」

 

「……おぉ……!!

分かったぜ!俺はこの情熱を隠す術を身につけてやる!!!」

 

拳を掲げて一誠はそう言った。

全く……一体どれだけ無駄なことに気合いを入れているのだろうか……。

 

 

 

「ハーレム王に俺はなるっ!!!」

 

……その夢はもうこの頃から抱いているんだね……。

最早苦笑いを浮かべるしかなかった。

 

 

 

閑話休題

 

 

 

「……で、この赤いやつ何なのか分かるか?」

 

一誠は自らの左腕を指しながら疑問符を浮かべる。

 

「あぁ~……よし、一誠。

俺の今から言うことは嘘偽りのない真実だが現実味がない話だ。

そして、この話を聞けばお前ももう後には引けなくなる。

 

―――――それでも聞くか?」

 

俺は至って真面目な表情で一誠の瞳を見詰めながらそう言った。

すると、一誠はゴクリと生唾を飲み口を開く。

 

 

「―――あぁ。聞く。

士織はもうその後には引けなくなる場所に居るんだろ?

だったら俺もその場所に立たせてくれ」

 

―――士織を護れるようになるのが俺の目標だからな。

 

ニカッ、と人懐っこい笑みを浮かべ、一誠は恥ずかしげもなくそう言った。

 

「あはは……弟に護られる兄はちょっと勘弁願いたいね……。

 

ともかく、一誠がそういうのなら話そうか。

 

―――――この世界の真実を」

 

そして俺は語り出す。

この【ハイスクールD×D】という世界に広がる真実という名のお話を。

 

 

 

―――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――――

 

 

「……えっとつまりは何だ?

この世界には悪魔と天使と堕天使が居て基本的にドンパチやってると?」

 

「まぁ、簡単に言えばそうだよ。

悪魔と天使と堕天使はそれぞれ三竦みの状態を太古の昔から続けているんだ」

 

「あぁ~……信じられねぇわ……」

 

一誠は頭をガシガシと掻きながらそう呟いた。

 

「確かに信じ難い話だよな。

―――――だけど真実だ」

 

「あぁ。それは分かってるよ。

俺は士織のこと信じてるし」

 

一誠はそういいながら俺の方を向いてにこりと笑った。

……やっぱり一誠って変態が無かったらモテるんじゃないかな……。

俺はそう思いながらも口には出さない。

何故ならば、確実に一誠が調子に乗るからである。

 

「とりあえずはその話は置いといて、この赤い籠手は何なんだ?

さっきから士織の話を聞いてると所々出て来た【神器(セイクリッド・ギア)】ってやつなのか?」

 

一誠はソファーの上で胡座をかきながらそう聞く。

 

「あぁ……。物分かりが良いようで助かるよ。

そうだ。一誠の赤い籠手は【神器(セイクリッド・ギア)】と呼ばれる言わば規格外の力の結晶だ」

 

「へぇ~……」

 

一誠は俺の説明に相槌を打ちながら熱心に聞き入ってくれる。

 

「しかも、一誠の持っているその赤い籠手は【赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)】と呼ばれる【神滅具(ロンギヌス)】の一つ。

扱い用によれば魔王や神ですら殺せるモノだ」

 

「スゲェんだな~……って神ですら殺せる!?

コレってかなりやばい代物じゃないか?!」

 

「かなりやばいな。

能力としては十秒ごとに所有者の力を倍加させるモノだ。

まぁ、所謂チート武装だな」

 

俺は【赤龍帝の籠手】についての率直な意見を述べる。

 

「そんなモンが俺に宿ってたんだなぁ……」

 

しみじみと言った風に一誠は呟く。

 

「ひとつ言うが一誠。

この話を聞いたからにはこれからもっとトレーニングしてもらうぞ?」

 

「はぁ!?な、なんでだよ……?」

 

「当たり前だろう?

お前の持っているモノは神ですら殺せる可能性を秘めたモノだぞ?

当然それを奪おうとしたりするやつが必ず現れる。

そんな時に弱くて勝てませんでしたじゃ話にならん」

 

実際原作では弱すぎて下級堕天使に殺されてるからな……。

もう既に【赤龍帝の籠手】を目覚めさせているのなら強くしておいても悪いことは無いだろう。

 

「……ちなみにだが一誠?」

 

「なんだ士織?」

 

一誠は【赤龍帝の籠手】を触りながら俺の方に視線を向けた。

 

「『赤い竜の帝王(ウェルシュ・ドラゴン)ドライグ』にはもう会ったか?」

 

「なんだそれ?」

 

一誠は頭に疑問符を付けながら首を捻った。

ドライグにまだ会っていない……?

ということは一誠の【赤龍帝の籠手】はまだ半覚醒状態なのか……。

そのことを確認した俺は一誠に言い渡した。

 

「ひとまずは今まで通りのトレーニングを続けてくれ一誠。

そして、当面の目標は『赤い竜の帝王(ウェルシュ・ドラゴン)ドライグ』に会い、【赤龍帝の籠手】を完全に覚醒させることだ」

 

「オッス!!!」

 

一誠はそう気合いをいれて言うとニカッ、と笑った。

 

(こりゃ俺ももっと強くならねぇとな……)

 

心の中でそう呟くとこれからのトレーニングメニューを頭の中で組み立て始める俺だった。

 

 

 

 

―――――原作開始まであと2年。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編はいかがでしたでしょうか?

ひとまずは一誠強化をしていきたいと思います♪


そしてアンケートの方ですが……ヒロイン候補が多いっ!!
やっぱりこの作品の特徴なのでしょうか……?

もうしばらくしたら中間結果として発表したいと思いますのでまだまだご意見お待ちしています♪


それでは皆さんまた次回お会いしましょう♪


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~誓いの時~

どうも皆さん!
ハイスクールD×D編だけはスランプから飛び出した夜叉猫です!!!

その代わり問題児編はスランプのままですが……(苦笑)

ひとまずはハイスクールD×D編をお楽しみくださいませ!


それでは本編をどうぞ♪


どうも、兵藤 士織だ。

 

一誠の【赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)】覚醒からおよそ半年。

赤い竜の帝王(ウェルシュ・ドラゴン)ドライグ』と一誠の邂逅は思いのほか早くに済ませることが出来た。

未だに禁手(バランスブレイカー)には至っていないが基本的スペックは底上げすることができたと思う。

 

 

 

「一誠!!そっちに行ったぞ!」

 

「了解!行くぜドライグ!」

 

Explosion(エクスプロージョン)!!』

 

その掛け声と共に一誠は空を舞う巨大な蝙蝠に向かって魔力波を打ち出した。

ちなみにだが今の俺と一誠ははぐれ悪魔を狩っている所だ。

 

魔力波は蝙蝠に当たるとそのまま赤い閃光と共に炸裂した。

 

「うっし!撃破!」

 

一誠は嬉しそうにそう言うと俺の方を向いて拳を突き出した。

 

(倍加5回であの威力か……まぁ、順調かな……)

 

そんな一誠に向かって俺も拳を突き出し笑みを浮かべる。

 

「お疲れ様一誠。

さっきの技は初めて見たけど練習してたのか?」

 

こちらに小走りで向かってきた一誠にそう言うと、瞳を輝かせながら楽しそうに口を開いた。

 

「そうだぜ!

俺って魔力の量が極端に少ないからな……。

ドライグの倍加を使えば強くなるんじゃないか?と思って練習してたんだ!

ちなみにどうだった?!」

 

期待したような眼差しでこちらを見る一誠。

俺はついくすりと笑ってしまうが、素直に一誠を褒める。

 

「なかなか良いと思うよ。

一誠が試行錯誤して作ったんだろ?

それだけでも大きな進歩だ」

 

ポン、と頭を優しく叩いて俺はニコッと笑みを浮かべる。

 

「ひとまずは家に帰ろうか。

そろそろ帰らないと明日からは忙しくなるからな」

 

「おう!!

にしても楽しみだな~!

明日から俺たちも高校生か!」

 

そう言った一誠は締まりのない顔をする。

十中八九エロい事でも考えてるのだろう。

 

「分かったからその締まりのない顔を何とかしろ。

それに、俺たちの通う高校は結構特殊だからな……」

 

俺は一誠の頭に手刀を落とし、真剣な顔でそう呟いた。

すると、一誠も頭を抑えながらだが真面目に口を開く。

 

「痛てぇよ士織……。

えっと何だっけ?

確か魔王の妹が通ってるんだったか?」

 

「自業自得だ。

そうだ。しかも二人も居る。

くれぐれも目をつけられるな?

後々面倒な事になる……」

 

俺は戦闘のために結っていたポニーテールを解き、背伸びをする。

 

「あぁ~!!!

なんでポニーテール解くんだよ士織!!」

 

すると一誠がこちらを指さしながらそう叫ぶ。

俺はさして髪型にこだわりがあるわけでも無いので淡々と事実を述べる。

 

「ポニーテールにしてたのは動くときに邪魔になったら駄目だからだ。

戦闘も終わったんだし楽な髪型の方が良いだろ?」

 

「くぅ~っ!!せっかく士織のポニーテール姿を堪能してたのにっ!!!」

 

一誠は涙を流しながら悔しそうにそう言った。

 

「……一誠……もしBL(そっち)の道なんざに進んだらその首叩き切るぞ……?」

 

俺は抑揚のない声で一誠にそう言った。

一誠はその声が心底恐ろしかったようで一歩後ずさると引き攣った笑みで、

 

「そ、その必要は一生ないから安心してくれ……!」

 

そう言ったのだった。

 

(はぁ……我が弟の行く末が心配だ……)

 

俺はもう慣れてしまった長い髪を弄りながら帰路を二人で歩んで行った。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――

Side 一誠

 

オッス!俺は兵藤 一誠!

皆は親しみを込めて『イッセー』と呼んでいる。

士織は頑なに『一誠』と呼ぶが…………

 

 

 

「何でだろうな?ドライグ」

 

『そんなもの俺が知ったことか……』

 

俺の目の前に座る巨大な赤い鱗を持つドラゴン。

その名を『赤い竜の帝王(ウェルシュ・ドラゴン)ドライグ』。

赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)】に封印される二天龍のうちの一匹だ。

 

『というより相棒。

相棒と士織は兄弟なんだよな?

俺から言わせれば全く似ていないのだが……?』

 

「兄弟だよ!!

俺が弟で士織が兄!しかも双子!」

 

『それにしては似てい無さ過ぎじゃないか?』

 

「ま、まぁ確かに……」

 

よくよく考えてみれば俺と士織で似ている所なんてあるのだろうか……?

見た目は……言わずもがな全然違う……。

士織は美少女と言っていい見た目だし。

言動は……士織の方が大人っぽいんだよな……。

というかこう考えると俺と士織って正反対のような気がする……。

 

『相棒みたいに助平では無いしな』

 

「う、うるさいやい!

最近はオープンにはして無いだろ!!」

 

『その代わり内ではかなりの変態さだがな』

 

「くっ……!!否定できねぇ……!!」

 

ドライグの言葉に反論の余地も見いだせない俺であった。

 

 

 

閑話休題

 

 

 

「それはそうとドライグ。

禁手にはまだなれそうにないか?」

 

『スペック的にはもう禁手に至ってもおかしくは無いが……何か劇的な事でもあったら至ると思うぞ?』

 

「マジか!?」

 

俺はまだまだ禁手なんて出来ないであろうと思っていたのだかドライグの言葉に心が踊った。

 

『士織に感謝しろよ?相棒。

アイツのトレーニングと模擬戦やはぐれ悪魔狩りで経験を詰めなければ相棒は禁手どころか俺を覚醒させることすらままならなかったぞ?』

 

「そんなこと―――――分かってるさ」

 

俺は『弱い』。

過去の赤龍帝たちと比べても足元にも及ばないほどの強さしかないのは分かっている。

士織を護るだなんて、まだまだ烏滸がましい夢だろう。

だからこそ俺は―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最高(・・)の赤龍帝になって士織を護るんだ……!!!」

 

俺はそう胸に誓った。

 

 

 

『相棒……決意を固めてるところ悪いが……。

相棒はなんでそこまでして士織を護りたいんだ?』

 

ドライグは心底分からないと言った風に言った。

 

「そうだな……何でだろうな……。

これと言った理由はあんまりないんだけど……。

ひとつ上げるとしたら『好きだから』……かな?」

 

俺がそう言うとドライグは一歩後ずさり慌てたように口を開いた。

 

『あ、相棒?!早まるな!

その道に進んだら士織のやつから殺されるぞ!?

BLの道に進んだ為に殺されるだなんて俺は御免だからな!!!?』

 

「ち、違ぇよ!!

あくまで俺のは兄弟として、兄として士織が好きなんだよ!!!

憧れと言っても良いぞ!!!」

 

『憧れ……?それまたどうしてだ?』

 

俺の言葉にドライグは首を傾げながらそう言った。

 

「俺って士織に護られてばかりだろ?」

 

『そうだな。

初めの方なんか最早足手まといだったな』

 

「くっ……!!悔しいけどドライグの言う通りだ……。

俺は足手まといだったよ……。

しかもそのせいで1回士織に怪我させちまったしな……」

 

初めてのはぐれ悪魔狩りの時、俺は敵であるはぐれ悪魔に捕まって……それを助けるために士織が怪我をしちまった……。

 

『俺が覚醒したのもその時の相棒の怒りだったな』

 

「あの時は自分があまりにも無力で情けなかったからな……」

 

俺は今でもその時の事を思い出せる。

そして、それがあったからこそ俺は今まで頑張って来れたんだ。

 

「あのはぐれ悪魔を狩った後の士織の言葉を覚えてるか?ドライグ」

 

『……確か、「お前は護りたいモノを探せ。そしたらお前はまだまだ強くなれる」……だったか?』

 

「あぁ……。

その時一番初めに思い浮かべたのは士織だったんだよ」

 

そう。俺は他の誰でもない。

兄である士織のことを思い浮かべたのだ。

 

『なら相棒。

相棒に他にも護りたいモノが出来たら……どうするんだ?』

 

ドライグは真面目な声色で俺にそう問うてきた。

俺は一瞬瞳を閉じると、ニヤリと笑いドライグに宣言した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んなもん。全部護るに決まってんだろ?」

 

今まではハーレムハーレムと言ってきたがそうじゃない。

俺は大切なモノを護れるようになりたいのだ。

 

「その為にはお前の力が必要だドライグ。

力、貸してくれるよな?相棒?」

 

俺がそう言って拳を突き出すとしばしの沈黙の後、

 

 

 

『アハハハハハハ!!!

良いぞ!今代の相棒は面白い!

相棒はそうでなくてはな!』

 

大きな笑い声と共にそう言った。

そして、その大きな竜の手を握り拳を作ると、とん、と俺の拳に当ててくる。

 

『勿論力は貸してやる。

なってやろうではないかその最高の赤龍帝とやらにな!相棒!』

 

「あぁ!!必ずだ!!」

 

俺はこの日新たに誓った。

 

―――大切なモノを護れる最高の赤龍帝になってみせると―――

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――原作開始まであと1年。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編のほうはいかがでしたでしょうか?

次回には原作に入ろうと思いますっ!!
一誠には少しくらいいい思いをさせても良いですよね?(笑)


そして!
今からアンケートの中間結果をだそうと思います♪
これから約30分後には出そうと思っていますので宜しければご覧下さい♪



それではまた次回お会いしましょう♪


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〜旧校舎のディアボロス〜
~原作始まりました~


と、言うわけで!!!
本日2話目です!!

しばらくはこのハイスクールD×D編を書いてリフレッシュして、問題児編に戻ろうと思います!!!
楽しみにされている皆様申し訳御座いませんっ!!!


ひとまず、本編をどうぞ♪


どうも、兵藤 士織だ。

 

あれから時が経つのも早く、俺と一誠は高校2年生となった。

そう。原作開始の時期だ。

 

 

 

「一誠!早くしないと置いて行くぞ」

 

「待ってくれよ士織!」

 

一誠はどたどたと慌ただしく廊下を走り玄関まで出てくる。

 

「遅いぞ一誠」

 

「そ、そんなこと言われたって……仕方ねぇだろ?

母さんがうるさいんだよ……」

 

疲れたように溜め息を漏らす一誠。

 

「まぁ、良いだろ?

ちょっと親馬鹿だがいい親には変わりない」

 

「……だな」

 

そう言って俺と一誠は笑いあった。

 

「一誠ちゃーん!士織ちゃーん!

何話してるの~?」

 

台所から飛び出してきた俺たちの母親―――兵藤(ひょうどう) 葵泉(あおい)―――は人懐っこい笑顔で俺たちに話しかけてくる。

まるで女子高生のような容姿をしており一緒に歩いていれば良くても姉、普通なら妹にしか間違われないというびっくりの母親である。

 

「母さんはいい親だなって話をしてたんだよ」

 

「そうそう」

 

俺と一誠は素直にそう答える。

すると、母さんは嬉しそうに笑って俺と一誠に抱き着いた。

 

「ありがとう2人とも~!!!」

 

「か、母さん!!?

恥ずかしいから!!」

 

一誠は慌てた様子でばたばたと動く。

 

「そうだな。

母さん、そろそろ行かないと駄目だから……ね?」

 

俺は苦笑いを浮かべながら母さんにそう告げる。

すると、母さんは頬を膨らませながら不満そうに、

 

「仕方ないなぁ~……」

 

言って渋々といった感じに離れていった。

 

「それじゃぁ母さん……」

 

「「行ってきます」」

 

俺と一誠は声を揃えてそう言うと玄関のドアを開け、学校に向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――私立駒王学園。

言わずもがな原作の舞台となる学校だ。

俺と一誠は此処に通っている。

 

この学校は数年前まで女子校だったせいか、男子生徒よりも女子生徒の割合が多い。

学年が下がる事に男子生徒の比率は上がるが、それでもやはり全体的に女子生徒が多かった。

発言力も未だ女子の方が圧倒的に強く、生徒会も女子生徒の方が多く、生徒会長も女性だ。

男子が強く出られない校風で過ごしにくいかと思っていたのだが―――――そうでもない。

実際、変態ではなくなった我が弟、一誠も元の顔が良かった為か結構多くの人気を勝ち取っている。

 

しかし――――――――――

 

 

 

 

「おはようイッセー君、士織ちゃん♪」

 

「おっはよう!イッセー君、しおりん♪」

 

「おはようございますイッセー君、士織様」

 

 

 

「何故俺だけ名前の呼ばれ方がおかしい!?」

 

俺の事を君付けで呼ぶ生徒が圧倒的に少ないのだ。

呼び捨てならまだいいだろう……しかしちゃん付けは地味に傷付くのだが?!

俺はこのことを無駄だと分かっていながら一誠に相談した。

すると、至極真面目そうな顔で、

 

「士織ってどう考えても見た目美少女じゃん。

普通に男扱いされるのは難しいんじゃないか?」

 

と、告げられた。

その日の夜に枕を濡らしたのはちょっとした黒歴史である。

 

 

 

閑話休題

 

 

 

とまぁ、関係のない事を語ったが本題はこれではない。

此処、駒王学園に通い始めてから2年目。

一向に俺と一誠のことに気づく様子のない悪魔の御一行様方。

はぐれ悪魔を何体も狩っているというのにそれに気付いた素振りすら見せない。

要するに―――――

 

 

 

「「無能……?」」

 

 

 

俺と一誠が声を揃えてそう言ってしまうほどなのである。

 

 

 

ちなみに只今の一誠の実力だが……正直な所眷属にすることはできないんじゃないか?そう思わせるほどの実力を付けている。

しかも驚いたことに煩悩を何処かに捨ててきたのか?というほど真面目になっていた。まぁ、変態さが無くなったわけでは無いと思うが……。

その証拠に、不本意な方法でだがしっかりと禁手(バランスブレイカー)にも至り、更には亜種の禁手にも目覚めている。

亜種の禁手と不本意な方法に関しては……後に語るとしよう。

 

なにせもうすぐ俺たちの教室に到着してしまうからな。

 

俺と一誠は自分の教室へと足を踏み入れる。

 

「「死ねぇぇぇ!イッセーぇぇぇぇ!!!士織ぃぃぃ!!」」

 

それと同時にクラスメイトである元浜と松田が飛びかかって来た。

松田の方は俺が腹にアッパーカット喰らわせ、元浜の方は一誠が顔面を蹴る。

 

「かふっ……っ!!!?」

 

「ぶふっ……っ!!!?」

 

そして仲良く床に沈んだ。

 

「全く……元浜も松田も学習しろよ……」

 

「毎朝俺と士織にやられてるくせによ……」

 

俺と一誠は互いに頭を抱えて溜め息を吐いた。

この二人は俺のことを呼び捨てで呼んでくれる数少ない人間で親友だが……やはり変態、エロさがどうも……。

 

「「うるさいぞ!!!お前たちのせいで俺たちがどれだけ酷い扱いを受けていると思ってるんだ!!!」」

 

「「自業自得だろ」」

 

俺と一誠は声を揃えてばっさりと切り捨てた。

すると、涙を流し始める元浜と松田。

 

「……なぁ、士織……こいつらなんか可哀想になってきたんだけど……」

 

素の自分がこうなっていたかもしれないと考えたのだろう。一誠は俺に向かってそう言ってきた。

 

「……で?俺にどうしろと?」

 

元浜と松田も期待の眼差しで一誠を見詰めている。

 

「いや、これと言って何かをしてやってくれとは言わないが?

だってこいつらの自業自得だし?」

 

「「悪魔めぇぇぇぇぇぇっ!!!」」

 

「何を言うか人聞きの悪い!」

 

一誠はそう言って元浜と松田の頭に手刀を落としていた。

 

「ほらほら、ホームルームを始めるぞ!

早く席につけ!」

 

ちょうど教室に入ってきたクラス担任が教卓に立ちながらそう言ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひょ、兵藤 一誠君ですかっ!?」

 

放課後、校門を出ようとしたその時一人の少女が飛び出して来た。

 

―――綺麗な黒髪をした素直そうな少女。

 

それが俺の第一印象だ。

 

「あ、あの……その……」

 

もじもじとしながら俯く少女に一誠は首を傾げている。

やはり変態さが隠れてしまうと鈍感系主人公になるんだな……一誠って……。

 

「ひ、一目惚れしましたっ!!!

わ、私と付き合って下さいっ!!」

 

顔を真っ赤にしながらそう言った少女。

一誠は少女の突然の告白に驚いているようだが嬉しそうである。

 

「君、名前は?」

 

比較的落ち着いた一誠の声。

以前までの一誠なら裏返った声で即刻OKを出していたことだろう。

 

「ゆ、夕麻……天野(あまの) 夕麻(ゆうま)ですっ!!!」

 

名乗られた名前にやはりと思う俺。

堕天使の力を感じた時からおそらくとは思っていたが……。

彼女が原作の一誠を殺した堕天使―――――レイナーレ……か。

 

「夕麻ちゃんか……良いよ。

俺なんかで良いなら宜しくお願いします」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

一誠の言葉にぱぁっと、輝くような笑みを見せるレイナーレ……いや、天野 夕麻。

その姿はまるで―――――

 

「あぁ。本当だよ」

 

「よ、良かったぁ~……!」

 

―――――本当に恋する乙女のようだった。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

突然の告白事件からしばらくして。

俺と一誠は家の近くの道を歩いていた。

 

「なぁ、士織……」

 

「何だ?一誠」

 

「……夕麻ちゃんから堕天使の気配を感じなかったか?」

 

神妙な面持ちで一誠はそう問うてきた。

 

「あぁ……感じたな」

 

「……やっぱりか……。

……夕麻ちゃんも俺の神器(・・)を狙ってんのかな……?」

 

悲しそうに呟く一誠は何処か弱々しく見えた。

辛いトレーニングの時にでもこんな弱々しい姿は見せなかったのに……だ。

 

「……かもしれないな。

でも、それにしては―――――

 

―――――堕天使の気配を必死で隠しすぎだ……」

 

「だよな……俺も一瞬普通の女の子かと思ったぜ……?」

 

そう。天野 夕麻は堕天使の気配を隠しすぎているのだ。

まるで―――――

 

「―――――自分を普通の女の子だと思って欲しいみたいに……隠している……」

 

俺が言おうとした言葉を一誠が続けた。

 

「それは俺も思ったよ……」

 

俺がそう言った後、二人の間に沈黙が広がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――良し。悩むのなんて俺らしくねぇよな。

士織、今度夕麻ちゃんとデートしてみるよ。

そこで見極める。

夕麻ちゃんが神器を狙っているのか……それとも……」

 

一誠はその後は続けなかった。

俺はふっ、と一瞬笑うと口を開く。

 

「あぁ。そうしろ。

少なくとも俺には―――――恋する乙女に見えたぞ?」

 

言うことだけ告げた俺はスタスタと歩き、目前にあった自宅のドアを開け、中に入っていった。

俺から少し遅れて家の中に入ってきた一誠の顔は何時も通りの元気なモノになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――原作と幻作の歯車は今、噛み合う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編はいかがでしたでしょうか?

あえて余計なことは述べませんが……皆様なら分かりますよね?(笑)


とまぁ、余裕も出てきたので久しぶりに雑談でも……(笑)

私、ハイスクールD×Dの原作を持っていなくて困っていたのですが、兄と姉に頼んで少し協力してもらったんですよ……(苦笑)
それで出された交換条件が……

兄……「お風r……じょ、冗談だよ!しばらく俺の事おにーちゃんって呼んで?(笑)」

姉……「お風呂一緒に入ろ~!!!」

でしたよ……(涙)

まぁ、やりましたけど……(苦笑)



と、言うわけでまた次回お会いしましょう♪


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~面倒なことになりました~

皆さんこんにちは♪

最近ハイスクールD×Dのキャラを浄化している夜叉猫です!(笑)

綺麗な、○○○○、綺麗な○○○○○、綺麗な○○○○。

いつぱい浄化したいキャラが居ますね!!


ともかく、本編をどうぞ♪




Side 一誠

 

オッス、兵藤 一誠だ。

 

堕天使の夕麻ちゃんから告白されて数日。

俺は彼女を見極めるためにデートに誘った。

その時の夕麻ちゃんの顔はとても嬉しそうな笑顔が浮かんでいたのを俺は忘れない。

 

 

 

「ご、ごめんなさい一誠君!

待たせちゃった……よね……」

 

待ち合わせ時間から5分過ぎた頃、夕麻ちゃんは慌てている様子で来るとしゅんとした表情を浮かべ、そう言った。

 

「大丈夫。そんなに待ってないから」

 

月並みだがそう夕麻ちゃんに返す。

5分遅れたくらい遅刻のうちにも入らないのに中々律儀な娘だ。

 

「ともかく行こうか?夕麻ちゃん」

 

俺は夕麻ちゃんに自らの右手を差し出してそう言った。

すると、夕麻ちゃんは嬉しそうに笑い俺の手を取った。

 

 

 

そこからのデートは……まぁ、ごくごく普通の高校生らしいデートをすることができたと思う。

洋服の店をいくつか回って夕麻ちゃんが気に入ったらしい服を一着だがプレゼントした。

ペットショップで猫と戯れる夕麻ちゃんの姿はとても幸せそうで見ているこちらが癒された。

食事は高校生らしくと言ったらおかしいかも知れないがファミレス。

それでも夕麻ちゃんは美味しそうにチョコレートパフェを食べていた。

 

(……昔の俺だったらこんな風に余裕を持ってデートも出来なかったんだろうなぁ……)

 

士織や周りの皆に性欲の塊、変態、エロガキと言われていた頃の自分を思い出しついつい苦笑いが浮かぶ。

本質は変わってないのだろうが、その代わり俺は常識というものを身に付け、オープンにすることを止めた。

 

そして極めつけは―――あの日の覚悟。

 

これが俺を変えた大きな理由だろう。

 

 

 

(おっと……こんなこと考えてないでデートを楽しまないとな……)

 

俺は今まで考えていたことを止め、デートに集中する。

……とは、言っても既に辺りは夕陽で赤く染まっており、デートの終わりも近い。

俺と夕麻ちゃんは夕暮れの公園にやって来ていた。

 

「一誠君。今日はとっても楽しかったよ」

 

夕陽を介して綺麗に輝く噴水の前で夕麻ちゃんは笑う。

 

「……ねぇ、一誠君……」

 

「ん?何?夕麻ちゃん」

 

夕麻ちゃんはふぅ、と息をひとつ吐き、何かを決心したかのようにして口を開く。

 

「あのね……私たちの記念すべき一回目のデートってことで……ひとつ、私のお願い聞いてくれる……?」

 

赤く染められた頬。

それは夕陽のせいか、あるいはそれ以外か。

俺は未だ明確な答えは出していなかった。

いや、出せなかったというべきだろう。

 

「……良いよ。お願い、言ってみて?」

 

俺は優しく夕麻ちゃんに言葉を掛ける。

夕麻ちゃんはギュッと手を握って恥ずかしそうに口を開いた。

 

 

 

「わ、私とキス――――――」

 

しかし、その言葉は最後まで聞くことは出来なかった。

背後から飛来する光の槍。

俺はそれを―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――喰らってしまったから。

 

「かふっ…………っ!!!?」

 

「い、一誠君っ!!!?」

 

倒れる俺の身体を抱き抱える夕麻ちゃん。

その表情は今にも泣き出しそうで、壊れそうだった。

夕麻ちゃんは非難するような表情で空を見上げる。

 

 

 

 

「―――――ドーナシークっ!!!!

なんで一誠君を……ッッ!!!!」

 

 

 

「―――ふん……貴女がもたもたしているからだろう?」

 

空から男の声が聞こえてくる。

掠れる視界に捉えたのは黒い翼を背から生やしたスーツ姿の男。

 

「……堕……天使……か……」

 

「ほぅ、私たちの存在を知っているのか人間……」

 

まるで嘲笑うかのようにいうドーナシークと呼ばれた男。

 

「テメェ……さっきの……槍、夕麻ちゃん……ごと……殺ろうと、した……だろ……!」

 

声を無理矢理絞り出して、男に言う。

 

「何を言っているのか分からんな」

 

白々しくスーツを直しながら男はそう返した。

その時、俺を支える夕麻ちゃんの手に力が入る。

 

「……良いから帰りなさいドーナシーク。

これ以上一誠君に何かすると言うのなら……殺す……!」

 

瞬間、夕麻ちゃんの背に男と同じ……いや、男のモノと比べるのは烏滸がましいほど綺麗な黒翼が出現した。

 

「……ふん……どうせその人間は死ぬのだ……勝手にしろ……」

 

ドーナシークと呼ばれた男は鼻で笑うと翼をはためかせ何処かへと飛びさって行った。

 

 

 

(あぁ……やばい……意識が朦朧とする……)

 

血を流し過ぎたせいだろうか……くそ……こんなことなら倍加しておくんだった……。

俺は自らの油断とも言える行いに後悔する。

俺には【赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)】がいないとただちょっと強い一般人だ……。光の槍を蹴り砕くだなんて士織のようなマネは、俺には出来ない……。

だから、夕麻ちゃんを護るには俺が盾になるしかなかった……。

 

「……ごめんね……ごめんね……一誠君……っ!!!」

 

涙を流しながら俺の身体を抱き締める夕麻ちゃん。

 

「痛かった……よね……苦しかった……よね……っ」

 

涙でぐちゃぐちゃになった夕麻ちゃんの顔が掠れる視界に映り込む。

 

 

 

「!?誰か……来てる……」

 

俺の胸で泣いていた夕麻ちゃんはぴくっと、顔を上げるとそう呟く。

そして、とても悲しそうな顔で俺を見詰めると―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――チュッ。

 

俺の唇に自分の唇を重ねて、

 

「さようなら……私の愛しい人……」

 

そう言い残して飛び立って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……あぁ……悪い……士織……俺、死ぬかも……)

 

薄れる意識の中、俺はそんなことを思っていた。

 

せっかく護るって決めたのに……。

 

俺の決意……無駄になっちまうのかなぁ……。

 

もっと――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――生きたかったなぁ……。

 

 

 

「―――あなたね、私を呼んだのは」

 

 

 

突然、俺の掠れ、ほとんど見えていない視界に誰かの影が移り込み、そして声を掛けてきた。

 

「死にそうね。

傷は……へぇ、面白いことになってるじゃないの。そう、あなたがねぇ……。本当に面白いわ」

 

人が死にかけなのに面白いとは……。

いつもなら苛立ちが湧くはずだが……その余裕すらない。

 

(こいつ……絶対……碌な奴じゃねぇ……)

 

その言葉を胸に抱き、俺の意識は途絶えた。

 

 

 

Side Out

~~~~~~~~~~~~~~~~

 

Side 紅髪の少女

 

「どうせ死ぬなら、私が拾ってあげるわ。あなたの命。私のために生きなさい」

 

私は目の前に倒れ、死にかけの少年に手に持つチェスの駒を―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――他人(ひと)の弟に何しようとしてるんですか?グレモリー先輩?」

 

―――与えようとした瞬間、誰かの声が聞こえてくる。

私はゆっくりと立ち上がり、声の主の方へと顔を向ける。

 

そこにいたのはひとりの少女。

否、少女のような風貌だが彼は男。

私の通う駒王学園に在学している確か―――――

 

 

 

「兵藤 士織ですグレモリー先輩。

以後お見知りおきを……」

 

 

 

まるで私の思考を読んだかのような自己紹介。私はつい警戒してしまう。

 

「そんなに警戒しないで下さい。

それと、そこどいてもらえません?

俺の弟本当に死んじゃうんですけど?」

 

敵意のない笑みを浮かべ、そういう少年―――兵藤 士織―――。

 

私はもう手遅れだと告げようと口を開くが……。

 

 

「うわぁ……手痛くやられたね一誠……。

まぁ、治すけどね……」

 

「……ッッッ!!?」

 

彼はいつの間にか私の横で弟と呼んだ少年を治療していた。

 

(い、いつの間に……移動を……!?)

 

気付かなかった……気付けなかった……。

しかも、驚くべきことに、彼が治療を始めるとポッカリと空いたお腹の穴が見る見るうちに塞がって行く。

 

「まさかあなたも神器(セイクリッド・ギア)を……!!!」

 

傷を完全に治してしまった彼は無表情のまま、

 

「その話はまた後日。

そうですね……明日の放課後でどうでしょうか?」

 

そう言った。

聞きたいことが山ほどある。

しかし、今此処で聞いても彼は答えないだろう。

私は彼の申し出に首を縦に振ると明日使いを出すという旨の話をして、肯定を表した。

 

「それではまた明日、放課後にお会いしましょうグレモリー先輩」

 

彼はそう言い残して怪我の治療をした少年を抱えると、その場から姿を消した。

 

「彼は……一体……」

 

明日の放課後が待ち遠しい。

 

 

 

Side Out

~~~~~~~~~~~~~~~~~

Side 士織

 

「はぁ……面倒なことになった……」

 

俺は一誠を抱えて自分の家に転移したあとそう呟いた。

まさか一誠がやられているとは思わなかったが……何かイレギュラーがあったと考えるのが妥当だろう。

もし、普通に戦闘していたのなら一誠の負けは万が一にも無いのだから……。

 

「明日はあのリアス・グレモリーとの話し合いか……」

 

そう思うと気分が悪くなる。

テンションだだ下がりとは今のことを指すのだろう。

俺は一誠をベットに寝かせると自分の部屋に戻りソファーに腰掛ける。

 

「どこまで話したものかなぁ……」

 

正直な所俺は自分の神器(セイクリッド・ギア)について話したく無いが……。

 

「……仕方がない……ひとつだけ教えておくか……」

 

本音はひとつも教えたくないが、教えないではあのリアス・グレモリーは納得しないだろう……。

 

「はぁ……全くもって面倒くさい……」

 

明日の話し合いに酷く憂鬱になる俺だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編はいかがでしょうか?

これで一誠のヒロインはひとり決まりましたね♪(笑)

そろそろ士織のヒロインも決定しなくては……(苦笑)


ともかく!
みなさんからの感想と言う名のエネルギーお待ちしています!!


それでは、また次回お会いしましょう♪


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~顔合わせしました~

皆さんこんばんは♪

一応完成しましたので投稿させていただきます!!


それでは本編をどうぞ♪


Side 一誠

 

「ん…………」

 

公園で意識を失った俺が次に起きたのは自室のベットの上だった。

時を刻む時計の音が聞こえる。

 

『やっと起きたか相棒』

 

「……ドライグか……」

 

何処かホッとしたようなドライグの声が聞こえてくる。

 

「……悪魔にはなってねぇみたいだな」

 

『あぁ。士織の奴が相棒を悪魔に転生させる前に助けていた。

一歩遅かったら相棒も眷属悪魔の仲間入りだったぞ?』

 

「それは勘弁願いたいな……」

 

苦笑いを浮かべながら俺はドライグに言う。

 

『そ、それよりだな……相棒』

 

「ん?なんだよドライグ」

 

歯切れが悪そうにドライグが何かを言う。

そして、何かを察知したかの如く、

 

『っ!……まぁ、頑張れ。

それと、感謝だけは忘れるな!』

 

そう言って神器の中に引っ込んでいった。

 

「ん?変なドライグだったな……」

 

俺はそう呟くと寝返りを打つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んぅ…………すぅすぅ……」

 

「……ゑ……?」

 

そして、驚愕する。

そこに居るはずのないものを見たから。

 

俺の目の前に居るのは少女―――否、少女のような我が兄様だった。

 

(……え?……え?どういうこと?どういうことなのドライグ?)

 

『……そう取り乱すな隣に居るのは兄だろう?

なら問題は無いではないか』

 

神器の中から引きずり出したドライグが言ったのはそんな言葉だった。

 

(馬鹿なの?ねぇ馬鹿なの?

士織は紛れもなく俺の兄だけど見た目こんなだよ?

なにこれ可愛いっ!!!)

 

シーツを握りながら寝息を立てる士織。

一応そっちのけは無いが流石にこれは刺激が強い。

今はマシになっているが素は煩悩の塊だった俺。些か目に毒である。

 

『相棒……死ぬぞ……?』

 

(安心しろドライグ。

この可愛いは癒されると言う意味の可愛いだ……。

それくらいなら許してくれる……はずだ)

 

などと言っているが俺の身体ががくがくと震え始めた。

 

(やべぇ……無意識の恐怖で俺の体が震えてやがる……!)

 

『……何を馬鹿なこと……を……』

 

(どうしたんだドライグ?)

 

いきなり言葉を詰まらせるドライグ。

 

『……死ぬな……相棒……』

 

「ゑ…………??」

 

俺はその言葉に目の前の兄にしっかりと視線を向ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……随分と面白い思考してるな一誠……?」

 

瞳を開きジト目でこちらを睨む兄様の姿がそこにはあった。

 

 

 

(あ、俺死んだわ…………)

 

 

 

俺はそこに死を覚悟し、瞳を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――全く……心配させるんじゃねぇよ……」

 

コツン、と俺の頭にほんのりと痛い衝撃が加えられる。

どうやら拳で軽く突かれたようだ。

 

「……悪ぃ……士織」

 

士織の声は心から俺を心配する声だった。

どうやら俺は―――――

 

 

 

―――――良い兄も持ったようだ。

 

 

 

閑話休題

 

 

 

「そう言えばなんで俺と一緒に寝てたんだ?士織」

 

ベットから身体を起こし背伸びをしている士織に俺はそう声を掛けた。

 

「ん?あぁ……母さんだよ。

『一誠ちゃんが心配だから士織一緒に寝てあげて!!』……ってうるさかったからな……」

 

げっそりしたような顔で言う士織。

母さんがどれだけ頼んだのか良く分かる顔である。

 

「あ、あはははは……ご苦労様だな……」

 

「……本当だぞ……」

 

二人して苦笑いを浮かべる。

 

 

 

「とりあえず……早く着替えろ一誠。

学校に遅刻するぞ?」

 

時計を見ればいつもなら既に家を出ている時間だ。

士織は俺にそう言うとベットから降りて、おもむろにパジャマを―――――

 

 

 

「『ちょ、ちょっと待て!!!!』」

 

 

まさかのドライグとシンクロして士織を止める俺。

 

「こ、此処で着替えるのか!?」

 

「当たり前だろ?時間が惜しい……」

 

『ま、待て士織!!!

それは相棒には些か刺激が強すぎる!』

 

「……なんだ一誠……まさか……」

 

ドライグの言葉に突然目を座らせてこちらを睨み始める士織。

 

「ばっ……!!!んなわけねぇだろ!?

俺は女の子が大好きだよ!!!」

 

俺は慌てながらそう言う。

しかし、士織はそのままこちらを睨んでいる。

もう駄目か……そう思ったそのとき―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――冗談だ。

そこまで元気があるならもう心配は要らないな……」

 

士織はそういいながら俺の部屋を出ていった。

 

まるで嵐のように俺を翻弄する兄。

怪我人に対しての当たりではないような気がした。

 

『……命があるだけマシだろう……』

 

「……だな……」

 

俺はドライグとそんな言葉を呟き、大人しく学校の制服に着替え始めるのだった。

 

 

 

Side Out

~~~~~~~~~~~~~~~~~

Side 士織

 

 

 

朝に一誠をからかったという事くらいしか特に何も無く無事学校も終わり、時は放課後。

 

―――――そう、リアス・グレモリーとの話し合いの時間が迫っていた。

 

「なぁ、士織。

使いの人が来るんだよな?」

 

一誠が暇そうに机に座って言う。

 

「そうだ。

おそらく来るのは―――――」

 

俺がその名前を言おうとした時、教室のドアが開く。

 

「兵藤 士織さんと兵藤 一誠君は居るかな?」

 

―――――木場(きば) 祐斗(ゆうと)

予想通りの男がそこには居た。

 

 

 

「此処に居るぞ」

 

俺は自分の席から立ちながら名乗りを上げる。

すると木場 祐斗はにこりと微笑みながらこちらへと近づいてきた。

廊下、教室の各所から黄色い歓声が沸く。

 

「リアス・グレモリーの使い……でいいのか?」

 

俺が率直にそう尋ねるとそうだよ、と言って頷いた。

 

「で?俺たちはどうしたら良いんだ?」

 

一誠が木場 祐斗に向かってそう言う。

いつの間にか机からも降りて俺の横に来ていた一誠。

 

「僕に着いて来て欲しい」

 

木場祐斗がそう言うと、今まで静かだった女子生徒が声を上げた。

 

 

「き、木場くん✕兵藤くんのカップリング!!」

 

「しかもそこに士織様もいるわ!!」

 

「なるほど、木場くんと兵藤くんが士織様を……!!」

 

「薄い本が厚くなりますな……!」

 

 

 

「「「…………」」」

 

これには流石の木場祐斗―――いや、少し親しみを込めて木場―――も参ったようで引き攣った笑みを浮かべていた。

一誠の顔なんてまるで福笑いのようになっている。

 

「と、ともかく早く出ようぜ!」

 

一誠は福笑いから復活して口早にそう言った。

 

「そ、そうだね……」

 

木場もそれに賛同し、俺たちは教室を足早に出ていったのだった。

 

……腐女子は苦手だ……。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「此処に部長が居るんだよ」

 

そう言った木場に連れられて来たのは校舎の裏手にある現在使われていない旧校舎。

見た目は古いが何処も壊れておらず、綺麗にしてある。

二階建ての木造校舎を進み、階段を登る。

さらに二階の奥まで歩を進めた。

 

そして木場はとある教室の前で歩みを止めた。

戸にかかるプレートには『オカルト研究部』と書かれている。

 

「部長、連れてきました」

 

木場が中にそう確認を取ると中から「えぇ、入って頂戴」というリアス・グレモリーの声が聞こえてくる。

 

それにしても『連れてきました』……か……。

些か礼儀がなって無いのでは無いだろうか。

 

ともかく、それ置いておくとして。

俺と一誠は木場の後に続いて部屋の中に足を踏み入れた。

 

 

 

「「……うっわ……」」

 

俺たちは中の様子につい声を漏らしてしまった。

一言で言えば悪趣味な内装。

 

だって考えてもみて欲しい。

部屋中面妖な文字を書き込まれ、魔法陣で纏めてみましたなんていう部屋を悪趣味と言わずして何と言うのだろうか?

 

 

 

閑話休題

 

 

 

「それでグレモリー先輩は何処に?」

 

俺はそう呟き辺りを見回す。

ソファーには少女がひとり腰掛け黙々と羊羹を食べている。

俺が小さく会釈すると食べるのをやめてしっかりと返してくれた。

 

(塔城(とうじょう) 小猫(こねこ)……)

 

この学校ではマスコットキャラクターのように扱われる1年生だったはずだ。

 

(……リアス・グレモリーは……)

 

やはり原作と同じなのだろうか……。

俺は落胆の表情を浮かべながら部屋の奥を見る。

 

 

 

「部長、これを」

 

部屋の奥。

カーテン越しにリアス・グレモリーとは違う女性の声が聞こえてくる。

 

「ありがとう、朱乃」

 

そしてリアス・グレモリーの声。

と、言うより彼女は何故シャワーを浴びているのだろうか……?

来客があるにも関わらずこの時間を選んだというのならあまりにも失礼である。

 

 

 

「……先輩、食べますか?」

 

と、俺がリアス・グレモリーへの評価を落としているとき、隣から小さなお皿を差し出された。

その声の主を見てみると先程まで無言で羊羹を食べていた塔城小猫であった。

 

「良いのか?」

 

こくり、と小さく頷く塔城小猫。

俺はその発言に甘え、差し出された羊羹をひとつ摘み口にする。

いい塩梅の甘さが口に広がり今までの苛立ちが少しだけだが解消されていく。

 

「お、士織良いな~……俺も貰って良いか?」

 

そんな俺の姿を見た一誠が塔城小猫―――塔城―――にそう言った。

 

「…………どうぞ」

 

しばし考えるようにした塔城は仕方がないという風にお皿を差し出した。

 

「サンキュー♪」

 

一誠は嬉しそうに羊羹を摘み口に放り込んだ。

 

 

 

「ごめんなさい。

昨夜少し用事があってシャワーを浴びていなかったから、今汗を流していたの」

 

カーテンを開き出てきた制服姿のリアス・グレモリーはこちらに向かって微笑みかけるとそう言った。

そしてもう一人。

黒髪のポニーテールをしたニコニコと笑う女性。

彼女はこちらを向くと深々とお辞儀をして、

 

「あらあら。

初めまして、私、姫島(ひめじま) 朱乃(あけの)と申します。

どうぞ、以後お見知りおきを」

 

丁寧に自己紹介をする。

リアス・グレモリーよりもしっかりしていると思うのは俺だけ……いや、一誠も思ってるみたいだな。

 

「……俺は、兵藤 士織。

こんななりをしているが一応男だ。

一応(・・)宜しく頼む」

 

「どうも。俺は兵藤 一誠。

士織の弟してます。

一応(・・)宜しくお願いします」

 

俺は無表情に、一誠はにこにこ笑いながら簡単な自己紹介をした。

 

 

 

「これで全員揃ったわね……。

兵藤士織君、兵藤一誠君。

いえ、士織、イッセー」

 

「「…………呼び捨て……」」

 

俺たちはいきなりの呼び捨てにボソりとそう呟いた。

親しくもない間柄なのにいきなり呼び捨ては……。

 

「私たち、オカルト研究部はあなたたちを歓迎するわ」

 

一拍開け、リアス・グレモリーは、

 

 

 

悪魔(・・)としてね」

 

 

 

―――キメ顔でそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編はいかがでしたでしょうか?

まず一言……

これってリアスアンチじゃないかな……??

うすうすは気がついていました……。
しかし、リアスが嫌いな訳ではありません!!!

今はこのような扱いですが、後には良い感じに!!

なってると思いたいです……はい……(苦笑)



とまぁ、ここからは雑談を少々……。

最近やってしまったと思ったことをいくつか……。

私この間バスケの試合みたいなものをしてきたのです!
勿論素人参加もOKなモノでして……。
私自身バスケ大好きなので友達と参加したのですが……。

これが面白すぎてついやり過ぎてしまいまして……(苦笑)
家につく頃にはヘトヘトになっていました……。

そこで、いざ汗を流そう!
と、思って服を脱いでお風呂場に入ったら…………



……兄が居ました。

私、タオルなんて巻かないので……まぁ、要するに全部見られました……(涙)
その時の私は自分ってこんな声が出るんだ……というような悲鳴をあげてしまいまして……家族が大混乱……。

これが一つ目。

もう一つありまして……(苦笑)

これは単純に寝ぼけてなのですが……
多分夜中に起きてフラフラとトイレにでも行ったんだと思いますが、そこから戻って寝た場所が…………



……姉の部屋。

起きたら姉がいて大パニックでした。
しかし、姉が嬉しそうな顔していたのが頭から離れません……(苦笑)

「いつでも来ていいよ♪」

だなんて言われる始末です……(苦笑)


とまぁ、夏休み中にいろいろとやらかしてしまった夜叉猫なのでした……(涙)


とりあえず、また次回お会いしましょう……!


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〜説明しました〜

皆さんどうも。
最近ネタを放り込みたくてうずうずしている夜叉猫です。


今回の話ですが……あまり納得できるできになりませんでした……(苦笑)


スランプというほどでは無いのですが筆が進みません……。


暖かい目で見守ってくださると嬉しいです。


それでは本編をどうぞ♪


「粗茶です」

 

「お構いなく」

 

「あっ、どうも」

 

ソファーに腰掛けた俺と一誠に姫島朱乃がお茶を淹れて渡してくる。

ちょうど喉が渇いていたということもあり、湯呑を傾ける。

 

「良い腕をしていますね」

 

「確かに、うまいですよ」

 

熱過ぎず、冷た過ぎず。

香りの良いお茶に、俺と一誠は素直な感想を述べる。

 

「あらあら、ありがとうございます」

 

うふふと嬉しそうに笑う姫島朱乃―――姫島先輩―――はお盆を抱えながらこちらを見詰める。

 

「朱乃、あなたもこちらに座って頂戴」

 

「はい、部長」

 

テーブルを挟んで反対側のソファーに座るリアス・グレモリーは姫島先輩にそう声をかける。

姫島先輩もそれに従ってお盆を別の場所に置くと、リアス・グレモリーの隣へと腰をおろした。

視線が俺と一誠に集まりしばしの沈黙の後、リアス・グレモリーが口を開いた。

 

 

「―――――単刀直入に言うわ。

私達は【悪魔】なの」

 

その発言に俺と一誠は顔を見合わせる。

この人は馬鹿なのではないか……?

 

(……やっぱり気が付いていなかったみたいだな……)

 

(流石『無能王』のあだ名を持つ人だな……)

 

アイコンタクトをとりながら俺たちは苦笑いを浮かべた。

 

 

 

「信じられないって顔ね。

まぁ、仕方がない―――――」

 

「いや、あなた方が悪魔だということは駒王学園(ここ)に来る前から知っていましたよ」

 

俺はリアス・グレモリーの言葉を途中で遮り、そう告げる。

 

「ちなみに生徒会の面子も悪魔ですよね?」

 

一誠は俺の言葉に続くようにそう口にする。

俺たちの言葉にリアス・グレモリー―――グレモリー先輩―――は勿論此処、オカルト研究部の面々も驚愕の表情を浮かべた。

 

「……なんで知っているのかしら……?」

 

グレモリー先輩は警戒したような雰囲気でこちらを見詰めるとゆっくりと口を開いた。

 

「以前も言いましたがそう警戒しないでください。

もし俺たちが敵なら―――――既にあなたたちはこの世に存在していませんよ……?」

 

笑みを浮かべながら俺は言う。

 

「「「「……っっ?!」」」」

 

それと同時……いや、少し遅いくらいの反応で、オカルト研究部の面々はソファーから立ち上がった。

 

「どうかしましたか?いきなり立ち上がったりして」

 

どう見ても臨戦態勢に入っているが―――――別段驚異にもならない。

 

「とりあえず座ったらどうですか?

話し合いをするために俺たちは此処に来たんですから……」

 

そう言って、再びお茶をすする。

しばしの静寂に包まれる部屋。

何もしない俺たちに安心したのかオカルト研究部の面々は臨戦態勢を解くと、ゆっくりとソファーに腰をおろした。

 

「……ごめんなさい。

恥ずかしい所を見せてしまったわね」

 

しかし、まだ動揺を隠せないグレモリー先輩。

まぁ、それも仕方がないことだろう。今まで一般人だと思っていた相手が自分たちの正体を知っており、更に重圧まで掛けてきたのだから。

 

「改めて聞かせてもらうわ……。

―――――あなたたちは一体何者……?」

 

俺たちのことを見定めるような視線を送りながらそう問うグレモリー先輩。

俺と一誠は軽く目を合わせると、事前に打ち合わせしていた事を話し始める。

 

「俺はちょっと変わった魔法を使う一般人ですよ」

 

「『俺は』……?」

 

俺の発言に眉を顰めるグレモリー先輩。

そしてその視線は一誠の方へと集まった。

 

「士織……その言い方だと俺にばっかり注目が集まるだろ……?」

 

「俺は事実を言ったまでだ」

 

一誠の非難するような声にさらっと返す。

勿論これも打ち合わせした会話である。

 

「全く……。

……俺はちょっと変わった神器(セイクリッド・ギア)を持った人間ですよ」

 

渋々といった風に一誠はそう言った。

 

 

 

「そう……。

あなたたちの使う魔法と神器(セイクリッド・ギア)を見せて貰ってもいいかしら?」

 

俺たちの話を聞いたグレモリー先輩は興味深そうにそう言ってくる。

その目は良い物を見つけたというような目であった。

 

「……良いですよ。

まず、俺が使う魔法は【妖精の魔法(エンジェリック・スペル)】という俺独自の魔法です」

 

「あなた独自の魔法……?」

 

「はい。

この魔法は俺の俺による俺のための魔法です。

よって、誰かが真似できる代物ではありません」

 

俺がそう説明し終わる(・・・・・・)と次は一誠が口を開いた。

俺の魔法の話で姫島先輩が残念そうにしたのは彼女が魔術師(ウィザード)タイプだからだろうか?

 

「次は俺の番だな……。

俺の神器(セイクリッド・ギア)は……これです」

 

そう言って、左腕を突き出した。

一誠の腕は光を発し、その光はすぐさま形を成す。そして現れたのは燃え盛る焔のように赤い籠手。

 

「これが俺の神器。

赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)】……。

つまり俺は―――――」

 

 

 

―――――今代の【赤龍帝】です。

 

 

 

一誠の言葉にその場にいた俺と一誠を除いた全員が息を呑んだ。

 

(掴みは上々……だな……)

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「あなたたち私の眷属にならないかしら?」

 

「「お断りします」」

 

俺と一誠の説明を聞き終えたグレモリー先輩は唐突にそう申し出てきた。

予想の範囲内ではあるが……まさか俺たちの話を聞いた上で言ってくるとは思わなかった。

 

「っ……!

な、何故か理由を聞いてもいいかしら?」

 

「そもそもあなたの実力じゃ、どの駒を使っても俺たちを転生させることはできませんよ」

 

俺は単純な事実を述べる。

原作の一誠を転生させるのに『兵士(ポーン)』の駒を8つも使ったのだ。

今の一誠を転生させるなんて不可能だろう。俺は……言わずもがな無理だ。

 

「な、なんですって……!

そんなのはやってみなければ分からないでしょう!」

 

グレモリー先輩は怒ったようにそう言うとチェスに使うような駒を取り出した。

しかし、どの駒も反応することはなく、グレモリー先輩は驚愕の表情を浮かべる。

 

「『兵士(ポーン)』8つでも転生出来ないなんて……」

 

「……ともかく、俺は今のところ悪魔に転生するつもりは無いですよ」

 

「俺もですね」

 

俺と一誠は淡々とそう述べた。

すると、先程まで沈んでいた様子のグレモリー先輩はしばらく何かを考えるような仕草をして、顔をあげる。

 

「じゃぁ、せめてオカルト研究部には入ってもらうわ。

あなたたちという存在を知ったからには私たちの目の届く範囲に居てもらわないと困るのよ」

 

上から目線な命令するような内容に俺は、

 

「―――――悪いが断らせてもらう」

 

今までの敬語もやめ、いつも通りの口調でそう言った。

 

「……なんですって?」

 

グレモリー先輩は怪訝そうな顔をして俺を見詰める。

おそらく、口調や雰囲気が変わったこと、そして何より俺の言った言葉に反応したのだろう。

 

「生憎と監視されるのは好きじゃないからな」

 

「そうはいかないわ。

もしかしたらという場合もある。

この土地の責任者としてあなたたちを野放しには出来ないわ!」

 

立ち上がり、こちらに向けて指を指す。

グレモリー先輩はキメ顔でそう言った。

 

 

 

 

 

「……はぁ、分かったよ。

オカルト研究部には属してやる。

ただし、基本的に俺は眷属になるつもりはないというのをしっかりと忘れないでくれ」

 

「士織が良いのなら俺も良いですよ。

それと、今のあなたには魅力を感じないので眷属になるつもりはありませんのであしからず」

 

しばしの沈黙の後、俺はそう言った。

心底嫌だが、これ以上話しても平行線だろう。此処は俺が折れてやる方が楽だ。

グレモリー先輩の監視程度なら無いに等しい。

これについては一誠も同じ考えのようだ。

 

「分かったわ。

宜しくね士織、イッセー」

 

グレモリー先輩は満足そうに頷くとにこりと微笑んで俺たちの名前を呼んだ。

 

 

 

閑話休題

 

 

 

「それじゃぁ、改めて自己紹介と行きましょう」

 

グレモリー先輩がそう言うとオカルト研究部の面々は自己紹介を始めた。

 

「僕は木場……祐斗。

クラスは違うけど兵藤さん達と同じ2年生です。

えーっと……僕も悪魔です。

宜しくね」

 

自分の名前を言うときに躊躇ったが何かあるのだろうか……?

 

「……1年生。……塔城小猫です。

宜しくお願いします。……悪魔です」

 

小さく頭を下げる塔城。

やはり原作通り【塔城小猫】を名乗っているらしい。

 

「3年生、姫島朱乃ですわ。

一応、研究部の副部長も兼任しております。

今後とも宜しくお願いします。

これでも悪魔ですわ。うふふ……」

 

姫島先輩は礼儀正しく頭を下げると微笑みを浮かべた。

こちらも原作通りのようだ……。

 

「そして、私が彼らの主であり、悪魔でもあるグレモリー家のリアス・グレモリーよ。

家の爵位は公爵となっているわ」

 

紅い髪を揺らしながら堂々とそう言った。

 

俺たちは一度自己紹介を終えているが皆自己紹介をしているという事でその流れにのり、口を開いた。

 

「兵藤士織だ。

一応魔法と武術を得意としている。

勿論だが人間だ」

 

「兵藤一誠です。

一応最高の赤龍帝を目指しています。

士織と同じく人間です」

 

 

あぁ……面倒な事にならなければいいのだが……。

俺は話していない俺の神器がバレた時のことなどを少しだけ心配した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編はいかがでしたでしょうか?

これからの展開を考えるのがだんだん難しくなってきました……。
2巻はなんとなくですが考えは出来ているのです……(苦笑)

この際1巻の内容はサクサクと進めてしまいましょう……!


それではまた次回お会いしましょう♪


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〜出会いました〜

バサ姉はっちーこんばとら〜(笑)

このネタがわかる人を私は尊敬します!!

と、なんとなく変なテンションが混ざっていますが……
今現在眠たくて意識が朦朧としている状態での投稿です(苦笑)


と、いうわけで、本編をどうぞっ!!!


オッス、兵藤一誠だ。

 

最近悪魔の仕事というものを手伝いながら日々を過ごしているせいか少々寝不足気味だ。

俺と同じようにやっている士織がどうしていつも変わらず過ごせているのか……。

 

「……士織の奴化物か……?」

 

『……相棒、殺されるぞ……?』

 

俺の呟きにドライグがそう言った。

 

 

 

そもそもなんで俺と士織が悪魔の仕事を手伝っているのか。

それは俺の一言が原因だった。

 

 

『今のあなたには魅力を感じないので眷属になるつもりはありませんのであしからず』

 

 

その言葉を聞いたリアス先輩は俺たちに悪魔の仕事をやってみないかと勧めてきたのだ。

なんでも、仕事を通して自分たちを知ってもらいたいらしい。

 

「……まぁ、それは良いとして……夜中は辛いな……」

 

欠伸を噛み殺しながらそう呟く。

ちなみに今は表向きの部活動を終え、家路についているところだ。

 

 

 

「はわうぅ!!」

 

後方から突然女性の声と同時に何かが路面に転がる音が聞こえてきた。

振り向いてみると、そこにはシスターの姿があった。

……一応記しておくが(シスター)ではない。修道女(シスター)である。

 

手を大きく広げ、顔面から路面へ突っ伏している。

 

「……だ、大丈夫?」

 

俺は倒れているシスターの元へ近寄ると、声をかけながら手を差し伸べた。

 

「あうぅ〜……。なんで転んでしまうのでしょうか……あぁ、すみません。

ありがとうございますぅぅ……」

 

(……フランス語……)

 

俺はシスターの使う言語に少し戸惑いながらもその手を引いて起き上がらせた。

 

「ありがとうござ……きゃっ!」

 

シスターがお礼をいう途中、一陣の風が吹きヴェールが飛ばされる。

それに伴い、ヴェールの中で束ねられていたであろう金色の長髪がこぼれ、露になる。

ストレートブロンドが夕日に照らされてキラキラと光ってた。

そしてシスターの素顔に俺の視線が移動する。

整った顔立ち、そして何より目を惹かれたのはその瞳。

グリーンの双眸はまるでエメラルドのように澄んだ輝きを持っていた。

 

「あ、あの……どうしたんですか……?」

 

訝しげな表情でシスターは俺の顔を覗き込んでくる。

 

「あぁ、ごめん。

君の瞳が綺麗だったからつい見入っちまった」

 

「あ、ありがとうございますぅ〜……」

 

恥ずかしそうに俯くシスター。

どうやら俺の使ったフランス語は間違いではなかったらしい。

 

(士織には感謝だな……)

 

俺は飛ばされたヴェールを拾うとシスターに差し出しながら口を開いた。

 

「旅行かな?」

 

「いえ、違うんです。

実はこの町の教会に今日赴任することとなりまして……あなたもこの町の方なのですね。

これから宜しくお願いします」

 

シスターはそう言うとぺこりと頭を下げた。

 

「この町に来てから困っていたんです。

その……私って、日本語うまく喋れないので……道に迷ってたんですけど、道行く人皆さん言葉が通じなくて……」

 

困惑の表情を浮かべながらシスターは胸元で手を合わせる。

 

「じゃぁ、俺が教会に送ってあげようか?」

 

「ほ、本当ですか!!

あ、ありがとうございますぅぅ!

これも主のお導きのおかげですね!!」

 

涙を浮かべながら俺に微笑むシスター。

 

(……あの教会はもう使われていなかったはずだけど……)

 

俺は少し不審に思いながらも、ひとまずシスターを連れて教会を目指した。

 

 

 

 

 

教会へ向かう途中、公園の前を横切る。

 

「うわあぁぁぁぁぁぁん」

 

その時聞こえてきたのは子供の泣き声。

 

「だいじょうぶ、よしくん」

 

母親がついているから大丈夫だろう。

どうやら転んだだけのようだし。

俺は再び足を進めようとするが、突然シスターが公園で泣いている子供のもとまで向かった。

 

「……おいおいおい」

 

俺もそのシスターの後を追って公園へと入る。

 

「大丈夫?男の子ならこのくらいの怪我で泣いては駄目ですよ」

 

シスターが子供の頭を優しく撫でる。

言葉は通じていないだろう。

しかし、その表情は優しさで満ち溢れていた。

―――――聖女。

彼女がシスターだからだろうか。

その姿はまるで聖女のようだった。

 

シスターはおもむろに自身の手のひらを子供が怪我をした場所にかざす。

シスターの手のひらから淡い緑色の光が発せられ、子供の怪我を治してゆく。

 

(……神器(セイクリッド・ギア)か……)

 

あの治療スピードからしてかなり珍しい神器なのではないかと思う。

 

「はい、傷は無くなりましたよ。

もう大丈夫」

 

シスターは子供の頭をひと撫ですると、俺の方へ顔を向ける。

 

「すみません……つい」

 

シスターは舌を出して小さく笑う。

目の前で信じ難い現象が起きたためか、子供のお母さんはしばらくきょとんとしていた。

その後シスターに頭を垂れると、子供を連れてまるで逃げるかのようにさっていってしまった。

 

「ありがとう!お姉ちゃん!」

 

遠くから先ほどの子供の声が聞こえてくる。

俺は日本語のわからないシスターに翻訳して伝える。

 

「ありがとう、お姉ちゃん。だってよ」

 

シスターは嬉しそうに微笑んだ。

 

「……その力……」

 

「はい。治癒の力です。

神様から頂いた素敵なものなんですよ」

 

そう言って微笑むシスター。

しかし、その微笑みは何処か寂しさを感じさせた。

 

「本当に……素敵な力だな……」

 

俺はシスターの頭を優しく撫でた。

こんなに優しいシスターはそう居ないだろう。

 

「さて、教会に向かおうか。

もうすぐ着くから後少し頑張ろう」

 

「はいっ!」

 

俺とシスターは再び教会を目指して歩み始めた。

 

 

 

 

 

「あ、ここです!

良かったぁ……」

 

地図の書かれたメモと照らし合わせながらシスターが安堵の息を吐く。

 

少し遠目に見えている古ぼけた教会。

そして感じる―――――堕天使の気配。

 

(……怪しいな)

 

俺は目を細めながらその協会を見詰める。

 

(……少し調べた方が良いかな……)

 

ともかく一度帰って士織と話した方が良いと判断した俺は、踵を返して口を開く。

 

「じゃぁ、俺はこれで帰るよ」

 

「待ってください!」

 

別れを告げて帰ろうとした俺をシスターが呼び止める。

 

「私をここまで連れてきて下さったお礼を教会で……」

 

「ん〜……それは魅力的だけど……今回は遠慮させてもらうよ」

 

「……でも、それでは……」

 

困ったような表情を浮かべるシスター。

俺はそんなシスターに口を開く。

 

「俺は兵藤一誠。周りからはイッセーって呼ばれてるから、イッセーでいいよ。

シスターさん、君の名前は?」

 

俺が名を名乗ると、シスターは笑顔で応えてくれる。

 

「私はアーシア・アルジェントと言います!アーシアと呼んでください!」

 

「じゃぁ、シスター・アーシア。

また今度会えたら良いね」

 

にこりと微笑みながらそう言う俺。

 

「はい!イッセーさん、必ずお会いしましょう!」

 

深々と頭を下げるシスター……いや、アーシア。

俺も手を振りながら別れを告げて帰路へと着いた。

 

(まずは……士織に報告だな……)

 

何故堕天使がいるのか。

それを確かめなければ。

もしかしたら―――――

 

俺はあの日のことを思い出した。

 

『さようなら……私の愛しい人……』

 

―――――夕麻ちゃんのことがわかるかもしれない。

 

 

俺の歩みは心なしか早歩きになっていた。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

―――――――――――――――――――――

 

 

―――――イッセーとアーシアが出会う前まで時間は遡る。

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 

「…………」

 

「…………」

 

オカルト研究部での部活を終えた俺は息抜きに散歩をしていた。

しかし、今は一人の小柄な少女と向き合い、立ち尽くしている。

 

(凄い奴に会っちまったな……)

 

「―――我、【無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)】オーフィス」

 

黒いゴスロリ服に身を包んだ少女はそう名乗った。

 

「【無限の龍神】が俺に何か用か?」

 

「我、おまえが気になる」

 

オーフィスは俺を見詰めながらそう言った。

 

「我とグレートレッドに等しい強さを持つ人間……おまえ、何?」

 

首をこてん、と横に倒しながらそういうオーフィス。

というより俺ってそんな強さだったんだ。

オーフィスから告げられることで自分のバグキャラ加減を思い知った俺。

 

「俺は兵藤士織。

ただの人間だよ」

 

オーフィスはしばしの沈黙の後口を開いた。

 

 

 

「―――――しおりん……」

 

「違う、士織だ」

 

「……失礼、噛みました」

 

「いいや、わざとだ」

 

「噛みまみた」

 

「わざとじゃない!?」

 

「我、噛んだ?」

 

「何故そこで疑問系?!」

 

そんな、やりとりをした。

何故かやり遂げた感を感じる俺。

オーフィスも心なしか満足げである。

 

「…………」

 

「…………」

 

俺とオーフィスは無言でサムズアップをした。

 

 

 

閑話休題

 

 

 

「士織、我と同じ位強い。

だから、グレートレッドを倒すの手伝って欲しい」

 

真剣な眼差しで見詰めながらオーフィスはそう言った。

 

「……なんでグレートレッドを倒したいんだ?」

 

「我、故郷の次元の狭間に戻り、真の静寂を得たい。

だからグレートレッドを倒さなければならない」

 

なるほど、この世界の龍神様もホームシックらしい。

 

「悪いけどその頼みは聞けないな」

 

「そう、残念……」

 

しゅんとした風になるオーフィス。

俺はそんなオーフィスの頭を撫でながら口を開いた。

 

「でもオーフィス。

静寂なんて寂しいだけだろ?」

 

「……?」

 

頭の上に疑問符を浮かべながら俺の手を受け入れるオーフィス。

何処か小動物めいた可愛さがある。

 

「じゃぁ聞くが次元の狭間には何があるんだ?」

 

「……何も……ない」

 

「オーフィスはそんな所に戻りたいと言うが……意味はあるのか?」

 

「それは…………」

 

オーフィスは言葉を詰まらせる。

しばしの沈黙の後、手を握り締めて口を開いた。

 

 

 

「……我の帰る場所あそこしかない……。

あそこ以外我は知らない……」

 

 

 

その言葉を聞いて俺は思った。

なんて寂しい目をしているんだろう。

泣きそうな目はしかし、涙を流さない。

俺はオーフィスの頭ではなく、その小さな頬を撫でた。

 

「……あったかい」

 

オーフィスは俺の手に頬擦りしながら幸せそうにそう呟く。

 

「……なぁ、オーフィス」

 

「何?士織」

 

「俺がお前の―――――居場所になってやる」

 

俺がそう言うとオーフィスは頬擦りするのを止めて俺の顔を見詰めてくる。

 

「士織が我の居場所……?」

 

「あぁ。

俺がオーフィスの居場所だ」

 

オーフィスは数回瞬きをすると、

 

「……それ、良い。

このあったかい手、いつも感じられる」

 

そう言ってオーフィスは再び俺の手に頬擦りをした。

 

 

 

 

 

 

「そう言えばオーフィス。

君には仲間は居るのかい?」

 

「いる。

我、グレートレッド倒すために組織作った。【禍の団(カオス・ブリゲード)】」

 

少し誇らしげにその名前を言うオーフィス。

俺は一体どうしようと考え、ひとまず真実を告げてみることにした。

 

「オーフィス。

そいつらはグレートレッドを倒すのに協力なんてしてくれないぞ?

ただオーフィスの力が欲しかっただけだ」

 

「……我、騙された?」

 

心なしか悲しそうな表情を浮かべているオーフィス。

 

「簡単に言えばそうだな。

だから、そこは早くに抜けた方が良い」

 

「ん。分かった。

士織がそう言うなら、我、抜ける」

 

オーフィスはそう言うと少し残念そうに俺から離れた。

 

「我、そろそろ行く。

早く我の居場所に帰るために」

 

「おう。

待ってるぞオーフィス。

全部終わらせてひと段落ついたら、俺の所に帰ってこい。

そんときは歓迎してやる」

 

「分かった」

 

そしてオーフィスはにこっと―――笑った。

 

(……可愛いじゃん……)

 

不覚にも俺はその笑顔に見惚れてしまったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編はいかがでしたでしょうか?

今回キャラ崩壊甚だしい場面が御座いましたがどうか寛大なご判断を……!!
どうしても士織とオーフィスでやらせたかったんですっ!!

そして今回私は思いました……オーフィスのキャラが難しい……!!

もっと原作を読んで理解度を高めたいと思いますっ!!!


それではまた次回お会いしましょう♪


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〜戦いました〜

皆さんお久しぶりです!

そして、お待ちになっていた皆様大変申し訳ありませんでしたっ!

最近は夏休みの課題と体育祭の準備で忙しかったので執筆をすることができなかったのです……。

テストなどで忙しくなりますが出来るだけ早くに投稿していきたいと思いますっ!!

ともかく!
久しぶりの本編の方をどうぞ♪


どうも、兵藤士織だ。

 

オーフィスと別れた後、一度家に帰った俺はやけに真剣そうな一誠と話をした。

内容は教会に堕天使がいるが目的がわからない、というものだ。

……原作通りならアーシア・アルジェントの神器の摘出が目的なのだが……。

天野夕麻―――レイナーレ―――を見た感じそんなことをする奴には見えない……。

それにいざとなれば俺と一誠が行けば対処は容易いだろう。

そう考えた俺は一誠に調べておくから安心しろという旨の話をしておいた。

 

 

 

そしてその日の夜。

今度はオカルト研究部の裏の面。

つまりは悪魔の仕事のために旧校舎の部室を訪れていた。

 

「……士織先輩一緒に食べませんか?」

 

「ん?今日は何があるんだ?」

 

「私おすすめのシュークリームです」

 

そう言った小猫は何処からともなくシュークリームが入った箱を取り出した。

 

「おぉ、良いな。

じゃぁ、お言葉に甘えて……」

 

「どうぞ」

 

そう言って俺は小猫の隣に腰を下ろす。

そして、小猫からシュークリームを受け取ると一口齧り付く。

 

「美味い……。

流石小猫。こういう物にハズレはねぇな」

 

「……喜んでもらえたなら嬉しいです」

 

小猫はそう言うと自分もシュークリームを手に取って幸せそうに頬張った。

 

「というか士織って小猫ちゃんと仲いいよな〜」

 

一誠がソファーでぐったりしながら俺の方を向いてそう言う。

 

「確かに小猫ちゃんと仲がいいね……。

小猫ちゃんにしては珍しいけど……何かしたのかい?」

 

それに続くように木場が俺の方をいつものにこにこフェイスとはどこか違う様な顔で見詰めながら言った。

 

「これと言って何もして無いんだが……。

強いて言うなら最近小猫とはスイーツを食べて回ってたから仲良くなったのか?」

 

俺はそう言いながら2個目のシュークリームを小猫から貰い、食べる。

 

「士織先輩はいいお店を知っていますから……」

 

「へぇ〜そうなのか。

なぁ、士織。今度俺も連れて行ってくれよ」

 

「一誠と行くと悪くてカップル良くても姉弟にしか間違われないから断る」

 

以前一誠と一緒にカフェに入ったらカップルと間違われ、カップル専用のメニューが出てきたのを思い出し、即座に断った。

 

「そんなこともあったな……。

まぁ、仕方ないか〜……。

なら木場〜今度男2人で虚しく飯喰いに行こうぜ〜」

 

一誠は更にぐったりとした様子でソファーに沈むと、木場を誘う。

 

「…………」

 

「木場〜?

流石に無視は傷付くぞ〜?」

 

「ん?……あぁ、ごめんね兵藤君。

少し考え事していたから……」

 

そう言った木場は何時も通りのにこにこフェイスを浮かべて一誠と話始めた。

あちらはあちらで仲良くしているようなので俺も小猫との親睦を深めるとしよう。

 

「なぁ、小猫。

俺は料理が得意でな。

たまにお菓子を作ったりするんだが……食べるか?」

 

「食べます!」

 

俺の言った言葉とほとんどタイムラグのない即答。

小猫の瞳が輝いているのは俺の見間違いでは無いだろう。

 

「そ、そうか。

なら今度作ってきてやるよ」

 

俺は小猫にそう言うと頭を軽く撫でてやった。

小猫は名前の通り猫っぽいからな……って、そういや猫だったな……。

最近原作の知識をうっかり忘れてたりするのは少々問題があるだろう。

 

「士織、私も食べてみたいのだけれど……駄目かしら……?」

 

いつものソファーに座ったグレモリー先輩はコーヒーカップを傾けながらそう聞いてきた。

 

「別に良いぞ?」

 

「ありがとう士織。

楽しみにしているわね?」

 

俺の言葉にグレモリー先輩はそう言うと何処か嬉しそうに笑う。

これはますます下手なものは作れないな……。まぁ、子猫が食べる時点で下手なものは作れないけど……。

 

「あらあら。仲がいいのですわね」

 

「姫島先輩か……こんばんは。

取り敢えず気配を消して近づいても俺を脅かすことは出来ませんよ?」

 

俺の背後に立つ姫島先輩にそう言うと残念そうにあらあら、と笑った。

 

「こんばんは〜姫島先輩。

士織を脅かしたいなら気配を消すじゃなくて気配を無くさないと駄目ですよ〜。

まぁ、それでも気付かれそうですけど〜」

 

ソファーに仰向けに沈んだ一誠は少しだけ顔を上げるとそう言って再び顔をソファーに埋めた。どうやら眠たいらしい。

 

「朱乃、どうかしたの?」

 

「はい。

大公から討伐の依頼が届きました」

 

「……はぐれ悪魔か……」

 

一誠がボソッと呟いた。

どうやら面倒ごとの予感だ。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

―――――【はぐれ悪魔】

 

この世界にはそう呼ばれる存在がいる。

眷属である悪魔が主を裏切り、または殺し、主無しとなる事件が極希に起こるのだ。

 

はぐれ悪魔……つまりは野良犬のようなモノ。野良犬は害を出してしまう。

見つけしだい主人、もしくは他の悪魔が消滅させなければならない。それがルールであり絶対。

【はぐれ】と呼ばれるモノは他の存在でも危険視されており、天使側堕天使側も見つけしだい殺すようにしているようだ。

 

「……血の臭い」

 

小猫はそう呟くと制服の袖で鼻を覆った。

場所は廃墟。辺りは背の高い雑草が生い茂り暗い雰囲気を醸し出している。

 

「確かに嫌な臭いだ……」

 

「ん〜……眠たいな……」

 

俺は小猫の言葉に同意し、一誠は欠伸を噛み殺しながら呟いた。

グレモリー先輩は腰に手を当てながら堂々とした態度を取っている。

 

「士織、イッセーいい機会だからあなたたちの力を見せてもらってもいいかしら?」

 

不意に俺たちの方を見詰めながらグレモリー先輩はそう口にした。

確かに俺も一誠もオカルト研究部のメンバーに戦闘を見せた事はなかったな……。

 

「俺は別に良いけど……一誠はどうする?」

 

「あ〜……俺は眠たいから遠慮させてくれ〜」

 

「……了解。

―――というわけで……グレモリー先輩。

今回は俺だけ戦わせてもらうけど良いか?」

 

一誠の言葉を聞いた俺はグレモリー先輩の方を向き直りそういった。

 

「えぇ……。

残念だけど今日は仕方ないわね……」

 

グレモリー先輩はそう言ったが何処か嬉しそうな顔をした。

……どうやら本音は俺の実力が見たかったらしい……。

 

まぁ、それもそうだろう。一誠は二天龍と称された『赤い竜の帝王(ウェルシュ・ドラゴン)ドライグ』が封印された【赤龍帝の籠手】を宿しているのだからそこそこのスペックを予想することはできるだろう。……当たっている訳はないが。

 

しかし、俺は例外的なモノを使っているからその実力は未知数。

知っておけるのなら早いうちが良いのだろう。

 

(……まぁ、本気なんて出すわけ無いけど……)

 

しばらくの間、神器を使うつもりはないのだから。

 

グレモリー先輩の歩みが止まる。

俺たちの前にひとつの影が近づいて来るのがわかった。

 

 

 

「不味そうな臭いがするぞ?でも美味そうな臭いもするぞ?

甘いのかな?苦いのかな?」

 

耳障りな低音が響く。

その声の主は月明かりに照らされ姿を現した。

 

女性の上半身と化物の下半身を持つ形容しがたい醜悪な姿。

両の手には得物らしき槍が一本ずつ握られている。

確かに大きな図体をしているがそれだけの見掛け倒しのようにしか見えない。

ケタケタケタケタ……という笑い声も耳を汚す音でしかなく早く消し去りたいものだ……。

 

「はぐれ悪魔バイザー。

主のもとを逃げ、己の欲望を満たす為だけに暴れ回るのは万死に値するわ。

グレモリー公爵の名において、あなたを消し飛ばしてあげる!」

 

そんな中、グレモリー先輩ははぐれ悪魔に対してそのような啖呵を切る。

 

「小賢しいぃぃぃぃ!小娘の分際でぇぇぇ!!

その紅の髪のように、お前の身体を鮮血で染め上げてやるわぁぁぁぁ!!!」

 

怒りの雄叫びをあげるはぐれ悪魔。

グレモリー先輩はそれを鼻で笑うと俺の方をちらりと見た。

 

「……あなたの実力、見せて頂戴」

 

「……了解……」

 

その言葉と共に俺は一歩踏み出した。

 

「なんだぁ?

この貧弱そうな小娘は……」

 

ニヤニヤとした笑みを浮かべるはぐれ悪魔。俺を馬鹿にしているようだ。

 

「……まずは様子見。

これくらいは耐えてくれよ?」

 

そう言って手のひらに拳を叩きつける。

魔力を流し込み、発動させるは氷の造形。

 

「【アイスメイク……“突撃槍”(ランス)】」

 

無数に現れた氷の槍ははぐれ悪魔に向かって飛翔する。

俺が指定した氷の槍の数は百。

その全てが狙いを外すことなく命中した。

 

「がぁっ……!!!?」

 

腕を交差させガードの体勢に入っていたはぐれ悪魔はしかし、貫く氷の槍に苦悶の表情を浮かべる。

人を見た目で判断するからこうなるのだ。

 

「これくらいじゃ死なないよな?

次は強力なやつ行くぞ……」

 

そう言って、俺は両の手に異なる魔法陣を展開させる。

右には雷の造形魔法陣を。

左には氷の造形魔法陣を。

 

「魔法陣を融合させるとどうなるか知ってるか……?」

 

呟き、両の手を合わせた。

異なる魔法陣は互いに反発し合いながらも混ざり、混色の魔法陣を形成する。

 

「【混合造形(オーバー・メイク)……“雷光・氷刃槍(スピア・レイ)”】」

 

俺の周りに雷光を纏った氷刃槍が出現する。そしてそれは先ほどの突撃槍とは比べ物にならないほどのスピードで射出され、はぐれ悪魔を貫いた。

 

「ぎゃァァァァぁぁぁぁッッ!!!?」

 

身体に穴を開けられ悲鳴をあげるはぐれ悪魔。

しかし、まだ死にはしない。それは悪魔であるが故の肉体の強靭さによるものだろう。まぁ、俺が手加減をしていると言われればそれまでだが……。

 

俺は止め用に魔法を構築させる。

はぐれ悪魔は逃げようと必死に身体を引きずっているが最早意味をなさない。

はぐれ悪魔に向かって手を突き出すと構築させた魔法を発動する。

魔法陣が5つ並び重なる。

それぞれ属性の違う5つの造形魔法陣だ。

 

 

 

「【真・混合造形(オーバー・メイク)】……“反発・象”」

 

重なり合う魔法陣から吐き出されたのは無色の球体。

それはゆらゆらと漂いはぐれ悪魔に命中した。

 

―――――瞬間。

 

閃光が弾け、突風が吹く。

俺と一誠以外のメンバーは顔を覆い隠してそれから身を守った。

 

そして、それが収まった後、はぐれ悪魔のいた場所を見てみると、そこには小さなクレーターが残っているだけで何も存在しなかった。

 

「……なんて……威力、なの……」

 

グレモリー先輩はそれを見ると予想外だという表情を浮かべる。

他のメンバーも驚愕の表情が張り付いていた。

 

「……俺の実力はこんなものだよ。

お気に召したかな?グレモリー先輩……?」

 

俺の言葉に固まっていたグレモリー先輩ははっ、とした表情になり、口を開いた。

 

「……予想外よ……。

確かに此処まで強いのなら私が眷属に出来るはずが無いわね……」

 

「まぁ、そう言う事だな」

 

言って、俺は欠伸を噛み殺した。

……実は俺もすごく眠たい。

 

 

 

その後、俺たちは後処理をして、そのまま解散となった。

後処理をしている時にオカルト研究部のメンバーから苦笑いを浮かべながら見られたときは何気に傷ついたのを記しておく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編の方はいかがでしたでしょうか?

楽しんでもらえたのなら幸いです!


早速雑談に入りますが……(笑)

体育祭の準備で忙しかった私ですが……。
なんと!
先輩に気に入られました(笑)

体育祭の時に使う絵を描いていたのですが一年生が私だけで気まずくなっているところを先輩方が話しかけてくれて緊張を解してくれたのです!
その中でも男の先輩二人と女の先輩一人とはLINEを交換するまでに仲良くなりました!

今度遊ぶ約束もしましたが……男の先輩だけというのは少し不安です(苦笑)
ですから、女の先輩も誘おうかと悩んでいる夜叉猫なのでした(笑)


さてさて、今回はここまでにして……

また次回お会いしましょう♪


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~遭遇しました~

皆さんこんばんは♪

久しぶりの更新となりましたが……やはり【ハイスクールD×D】編も書くのが楽しいです!
早く次を書いていきたいのですよ♪

それでは早速、本編をどうぞ♪


オッス、兵藤一誠だ。

 

はぐれ悪魔を士織が倒すという一件から次の日の深夜。

俺はいつも通り悪魔の仕事の一環として依頼者の居る一軒の家に訪れていた。

普通なら魔法陣によって行くはずなのだが、俺は魔力が極端に少ないため走って行くしかない。

インターホンを押そうと腕を伸ばすのだが、そこでひとつ奇妙な事に気が付いた。

 

玄関が―――――開いているのだ。

 

嫌な予感が頭を過ぎった。

 

(ドライグ……これは警戒した方がいいな……)

 

『あぁ……そうした方がいい。

それに相棒も気が付いてるだろうが……嫌な気配を感じる……』

 

ドライグは真剣な声音でそう言う。

確かに感じるその気配は屋内で動いている。

 

「……行くか……」

 

呟き、玄関から中を軽く覗いてみる。廊下に灯りはついておらず、二階へと続く階段にも同様だ。

唯一、一階奥の部屋にだけは淡い光が灯っていた。

頭を過ぎった嫌な予感が予感では無くなっていく。

 

(……ドライグ……力を溜めておいてくれるか?)

 

『任せておけ相棒』

 

『Boost ! !』という音声が体内で聞こえてくる。どうやらドライグが配慮してくれたようだ。

足音を殺しながらゆっくりと奥の部屋へと向かう。少しだけ開かれたドアから中へと視線を向けた。

 

(蝋燭……か……)

 

光を灯す蝋燭はゆらゆらと炎を揺らしていたのだ。

俺はドアを開き中へと足を踏み入れる。

見たところ普通のリビング。ソファーやテーブル、テレビなどのなんの変哲もない家具が揃っていた。

 

―――しかし、そんな中、異色のモノがあった。

壁に死体が貼り付けられていたのだ。

 

「……酷い事を……しやがる……っ!」

 

恐らくはこの家の人なのだろう。

リビングの壁に逆十字の格好で貼り付けられた男性の死体。切り刻まれた体からは、臓器らしきものが溢れていた。

そして、その男性の死体の貼り付けられている壁には巨大な血文字が描かれている。

 

「これは―――――」

 

「―――――『悪いことする人はおしおきよ!』って、聖なるお方の言葉を借りたものさ」

 

背後から若い男の声が聞こえてきた。

振り返りその姿を瞳に捉える。

神父のような服に身を包んだ白髪の少年。

 

「ん~……なんで人間がいるのかな~?」

 

白髪の少年は俺を見ると首を傾げながら言った。

 

「……これ、お前がやったのか?」

 

「イェスイェス。

俺が殺っちゃいましたが??

こいつ悪魔を呼び出す常習犯だったみたいだしぃ?―――――殺すしかねぇだろ?」

 

初めのうちは笑いながら言っていた白髪の少年だったが最後の一言だけは真顔であった。

 

「俺は悪魔祓い(エクソシスト)だからさ~。

こういう人の始末も仕事なんだわ~……ってなんで一般人にそんなこと話さないと駄目なのかな?かな?」

 

「……いや、自分でペラペラと喋っただけだろ……」

 

俺はジト目で白髪の少年を見詰めながらそういった。

すると、白髪の少年はハッとした表情を浮かべる。

 

「おぉっと……俺としたことが口が過ぎちゃいました~」

 

大袈裟なリアクションと共に口を開いた。

俺はどうしたものかと考えながら視線は外さずにいる。

 

「とりま……今日のことは忘れちゃって早く帰りなよYOU~。

今は結構機嫌が良いから逃がしてあげるよ~」

 

ニヤニヤとした笑みとともにそんなことを言ってきた。

 

(……どうしたら良いと思う……?ドライグ)

 

『俺は相棒のしたいようにやればいいと思うぞ?』

 

(……サンキュー)

 

俺はふぅ、とひとつ息を吐く。

そして―――――

 

 

 

 

「はいそうですか……。

―――――なんて言うわけねぇだろこの腐れ神父ッッ!!!」

 

「かふ……ッッ?!」

 

―――――白髪の少年に肉迫し、全力で拳を振るった。

ふらついた白髪の少年だったが、ニンマリと笑いこちらを睨んだ。

 

「何のつもりかなぁ……?

せっかく逃がしてやるって言ってんのによぉ~?」

 

「馬鹿かお前。

俺はお前にムカついてんだよ……」

 

「はぁ……?何言っちゃってんの??」

 

俺は拳を握り締め、白髪の少年を睨み付ける。

 

「人を殺しておいて……何も思わねぇのか?」

 

「何言ってんの?人を殺して何も思わないのか?

確かにただの一般人殺すのはちょっと躊躇うが……悪魔と取引した人間は別だ」

 

白髪の少年は憎むかの様な瞳をする。

そして歯を食いしばるような仕草をすると、勢い良く口を開いた。

 

「いいか?悪魔ってのはな最低最悪なんだよ。人の欲を糧に生きて居やがる。

そんな奴らに頼ってやがる奴に碌な奴は居ねぇんだよ。

だからぶっ殺す。悪魔も悪魔に魅入られた奴も全部な」

 

握り締めた拳で壁を殴り、白髪の少年は口を閉じる。

 

「……お前が何を思って殺してるのかはよく分かった……。

―――――だからこそ尚更お前を許さねぇ……!!」

 

『悪魔は最低最悪』。

その一言を何故か俺は聞き流すことが出来なかった。

何より、理由が理不尽すぎた。

 

「行くぞドライグ!!!」

 

『Boost ! !』

 

十二回目の倍加の音声と共に俺の左腕は赤い籠手に覆われる。

 

「ヒャハハハ!!!

イイね!イイね!分かりやすい!

俺も武力行使の方がやりやすいよ!!」

 

白髪の少年は懐から、刀身のない柄と白銀の拳銃を取り出し、愉しそうに笑った。

刀身のない柄を力強く振るったかと思えば、そこから光の刃が現れる。

 

「俺的には一応一般人っぽい奴を殺るのは気が引ける気がするけど……まぁ、気のせいだってことで!

行くぞ一般人クン!

取り敢えず苦しまないように殺してあげるぜ!!!」

 

白髪の少年はそう言うとまっすぐ俺に向かって駆け出す。

かなりのスピードでフェイントが混ぜられているからか、捉えにくい。

 

「―――だからって関係無いけどな!!」

 

俺は横薙ぎに振るわれた白髪の少年の光の刀身をアッパーカットの要領で防ぐ。

 

「フュゥ~♪

中々やるね一般人クン!

でもこれでオシマイ♪ってことでバイちゃ♪」

 

拳銃を密着させて俺に撃ち込もうとする白髪の少年。しかし、俺は拳銃を握った腕を膝で蹴り上げて銃口を天井に向けさせる。

 

「なっ?!どんな反射神経してんの一般人クン?!」

 

白髪の少年は俺の行動に驚いたのか目を見開き言った。

銃声音もなく発射された弾丸は天井に風穴を空ける。

 

「とりあえずぶっ飛びやがれ!」

 

『Explosion ! !』

 

十二回の倍加の力を解放し、右ストレートを放つ。

白髪の少年はそれを危険と見たようで光の刀身と白銀の拳銃を交差させて拳を防ぐ。

しかし、俺の十二回の倍加の力はかなりの力だ。光の刀身と白銀の拳銃を破壊し、吹き飛ばした。

 

「がは……ッッッ!!!?」

 

壁に叩きつけられめり込んだ白髪の少年。

口からは血を吐き出している。

 

「かぁ~……なんつぅ威力してんの一般人クン……。

死ぬかと思ったぜ……?」

 

ずるずると壁から地面へと倒れる白髪の少年。

 

「……いやいや、お前こそどんな身体してんだよ……。

普通なら身体貫通してんぞ?」

 

十二回の倍加の力を込めたのにも関わらず、白髪の少年は意識を保ち、更に立ち上がったのだ。

 

「残念ながら、まだ死ねないからねぃ……」

 

口の端から垂れた血を拭ってにやりと笑う。そして、壊れた自らの武器へと視線を移す。

 

「一般人クン一体何者?

その力……異常だよ?」

 

「……【赤龍帝】……で分かるか?」

 

俺がそう言うと白髪の少年は一瞬目を見開く。そして俺の左腕を見ると愉快そうに笑った。

 

「そうかそうか!

一般人クンがかの有名な【赤龍帝】か!

それならこの強さも納得納得」

 

白髪の少年はそう言うと壊れた武器を投げ捨て、もう一度懐を探る。

 

「尚更興味が湧いてきたわ~……もっと殺ろうぜ……?」

 

言って、二丁の拳銃を取り出し、構えた。

俺はそれに応じてファイティングポーズをとり、どう対応するかを考える。

しばしの沈黙。

そしてそれは―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……イッセーさん?」

 

―――――予想外の人によって崩された。

 

「し、シスター・アーシア……?なんでこんなところに……」

 

俺が動揺を隠しきれずそんな言葉を漏らすと、白髪の少年は何処かしらけたような顔でアーシアの方を見た。それに乗じて構えられた拳銃も下げられる。

 

「おんや、助手のアーシアちゃんじゃないですかぃ……。どうしたの?結界は張り終わったのかな?かな?」

 

「は、はい……。結界は張り終え―――――ッッ!?

い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

アーシアは壁に張り付けられた死体を視界にいれてしまったのだろう。悲痛な悲鳴を上げてその場でうずくまった。

 

「おぉぅ……いきなりの悲鳴ですか……。

そっかそっか……アーシアちゃんはこの手の死体は初めてですかねぇ……。

それならちょっぴり悪いことしちゃったかな??

でもこれからはこーゆーのいっぱい見ることになるからさぁ~馴れてねぇ?」

 

白髪の少年はアーシアの頭をポンポンと叩いた。

アーシアはゆっくりと顔を上げると俺の方を見つめてくる。

 

「な、なんでイッセーさんが此処に……?」

 

混乱したようなアーシアは若干震えたような声で言う。

 

「あれ?赤龍帝クン、アーシアちゃんとお知り合い?

まさか恋人同士だったりする??」

 

「うるせぇぞ腐れ神父。

シスター・アーシアとはこの間知り合ったばっかりだ」

 

要らない事を言ってくる白髪の少年に俺は真実を伝える。

 

「そうでござんしたか~。

まぁ、興味は無いんだけどね~」

 

カラカラと笑う白髪の少年。

その手にはまだ二丁の拳銃を持っているため警戒は解けない。

 

―――――と、その時、床が青白く光りだした。

 

「何事さ?」

 

疑問を口に出す白髪の少年。

そんな彼にそれが何かを教えるがの如く青白い光は徐々にとある形を作っていく。

 

(魔法陣……リアス先輩たちか……)

 

床に描かれた魔法陣は眩い光を発する。その光が止むのと同時に、魔法陣の上には見知った顔が揃っていた。

 

「兵藤くん助けに来たよ」

 

腰に一振りの剣を差し、スマイルを送ってくる木場。

 

「あらあら。ナイスタイミングですわね」

 

「……神父」

 

姫島先輩に小猫ちゃんも臨戦態勢をとっている。

 

「ごめんなさいイッセー……まさかこの依頼主のもとに『はぐれ悪魔祓い』の者が訪れるなんて計算外だったの……」

 

リアス先輩は申し訳なさそうな顔をしてそう言ってくる。

 

「全く……厄介事に巻き込まれんなよ一誠……」

 

そして、士織も面倒臭そうにしながらも白髪の少年を睨みながらそういった。

 

「……約一名違うけど……悪魔の団体……」

 

白髪の少年は瞳をギラギラと輝かせながらグレモリー眷属を睨む。

そんな白髪の少年に睨みを聞かせながらリアス先輩は口を開く。

 

「何かしらはぐれ悪魔祓いさん?」

 

「いやいや~俺の獲物がいっぱい現れちゃったからさ~ちょっと興奮しちゃって~。

でもさ~今は残念ながら武器が無いから~……―――――バイちゃ♪」

 

そう言った白髪の少年は煙玉を叩きつけた。

もうもうと立ち込める煙は部屋一面を真っ白に染める。

 

 

 

「……俺の名前は【フリード・セルゼン】だ。

じゃぁね赤龍帝クン。

また会おう……」

 

俺の耳元でそんな言葉が聞こえた。

ばっと振り返るがその気配はもう既に走り去っている。

煙が晴れた後には呆然と立ち尽くすアーシアとグレモリー眷属、そして難しい顔をした士織の姿しか視界に入らなかった。

 

「!部長、この家に堕天使らしき気配が複数近づいていますわ。

このままではこちらが不利になります」

 

「……仕方ないわ。朱乃、イッセーを回収して本拠地へ帰還するわ。ジャンプの用意を」

 

「はい」

 

リアス先輩に促された姫島先輩は何やら呪文のようなものを唱え始める。

どうやら転移魔法によって部室へと逃げるようだ。

俺はふいにアーシアの方へと視線を向けた。

 

「リアス先輩!あの娘も一緒に!」

 

「……無理よ。あの魔法陣を通れるのは基本悪魔だけ。後は特別に組み込んだあなたと士織だけなの」

 

俺はその言葉を聞き、もう一度アーシアの方へと視線を移す。

彼女はにっこりと笑う。

 

「シスター・アーシア!」

 

「行ってくださいイッセーさん。

また、またお会いしましょう?」

 

その言葉を皮切りに、朱乃さんの詠唱が終わり魔法陣が再び青白く輝き始める。

そして、俺は部室へと転送―――――

 

 

 

 

 

―――――される直前に魔法陣を抜け出した。

 

「イッセー!?」

 

「すみませんリアス先輩。

先に戻っておいてください。

すぐに俺も行きますから」

 

俺はリアス先輩にそう伝える。

その言葉が終わると同時にリアス先輩たちの姿は掻き消えていた。

 

「い、イッセーさん……なんで……」

 

「そんなの簡単なことだよ。

―――――君を助けるために……ね?」

 

俺は笑顔でアーシアにそう言った。

 

「に、逃げてください!

いくらイッセーさんでも死んじゃいますっ!!!」

 

アーシアは泣きそうな顔でそう懇願する。

俺はそんなアーシアの涙を拭ってあげると、

 

「大丈夫。俺を信じて」

 

言って、頭を優しく撫でる。

 

(さて……堕天使か……どうしたもんかなぁ……)

 

『【禁手(バランス・ブレイカー)】を使えば良いだろう?』

 

(……それもそうだな)

 

俺はドライグとの対話を参考に、【禁手】による強行突破をすることにした。

 

「さて、取り敢えずいっときますか!

禁手(バランスブレ)―――――」

 

俺が【禁手化(バランス・ブレイク)】しようとしたら矢先、頭をスパン!と何者かに叩かれた。

 

「痛てぇ!?何すんだ!!」

 

振り返ってみるとそこには―――――

 

 

 

 

「この馬鹿一誠。

なんでも力押しでいこうとするな」

 

―――――仁王立ちする我が兄、士織の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

Side Out

―――――――――――――――――――――

Side 士織

 

「な、なんで士織が此処に……?」

 

一誠は俺の姿を見るやいなやそんなことを口にする。

 

「俺もあの魔法陣から飛び出したんだよ。

そんなことも気づかなかったのか?」

 

「い、いや~……俺自身夢中だったからさ……」

 

そんなことをいう一誠に、俺はついつい溜め息を漏らす。

 

「修行が足りないぞ一誠……」

 

「……面目ない……」

 

しゅん、とした仕草をとる一誠。

全くもって情けない。

 

「あ、あの……」

 

と、一誠の、隣にいた少女―――――アーシア・アルジェント―――――は俺を見ながら疑問の声をあげた。

 

「あぁ、自己紹介がまだだったね。

俺は兵藤士織。コイツ、一誠の、兄だ」

 

「お、お兄さんですか!?

お姉さんではなく……?」

 

酷く驚いたような表情を浮かべたアーシア・アルジェントは素直にそう言う。

 

「まぁ、よく間違えられるけど俺は男だよ」

 

「そうなのですか……勉強になります……」

 

アーシア・アルジェントは何故かそんなことを言ってにこりと笑った。

 

(何の勉強になったのだろうか……)

 

「と、取り敢えず!

力押しで駄目ならどうするんだよ士織」

 

「ん?そんなの決まってるだろ。

―――――逃げるんだよ」

 

一誠の言葉に俺は少々得意気にそう言ってにやりと笑う。

そして、今までは使わなかった【神器(セイクリッド・ギア)】を使ってみることにした。

 

「この力は内緒だからな?

―――――【精霊天使(フェアリー・エンジェル)】モード【刻々帝(ザァァァァフキエェェェェェル)】!!」

 

そう叫んだ俺の身を光の粒子が包み込む。

背後に巨大な時計盤が現れる手には歩兵銃と短銃が握られる。

そして俺は、握られた歩兵銃を真上に、短銃を時計盤の“Ⅰ”の刻まれている部分に合わせて再び口を開く。

 

「【一の弾(アレフ)】」

 

その短い言葉と共に一誠とアーシア・アルジェントに銃口を向け、撃つ。

撃ち終わると最後に自分自身にも一発撃った。

【一の弾】とは、撃った対象の時間を速めるという能力を持った弾丸である。

その為、それによる高速移動も可能とするのだ。

 

「ほら、走るぞ一誠、アーシア・アルジェント」

 

「わ、わかった」

 

「は、はい!」

 

そうして、俺たち三人は家を後にし、部室を目指した。

 

 

ちなみに、一誠とアーシア・アルジェントが自分たちの走るスピードに驚いていたのは何だかとても面白かったとだけ記しておく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編の方はいかがでしたでしょうか?
楽しんで頂けたら幸いです♪

そして!
遂に登場フリードくん!!
皆さんの反応が気になります!!



さてさて、いつもどおりの雑談ですが。
先日、漫画喫茶に行ってきまして……何気なく一冊の漫画を手にして読んでみたのですが……とても面白かったです!!
題名は【となりの怪物くん】というものです!


私的には吉田春くんが好きです♪ニャハハハハ
あんなふうな恋愛って憧れます♪



とまぁ、本日はここまで!
また次回お会いしましょう♪


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~乗り込みました~

皆さんおは今晩日は♪
最近恋愛系の作品にハマっている夜叉猫です♪


来週はテストが始まるのでなんとかこの三連休で二巻の内容に入りたいものです……(苦笑)

それでは早速本編をどうぞ♪


Side 一誠

 

「なんて無茶をしたの……っ!!」

 

俺たちが部室に帰ってくると、リアス先輩が若干涙目でそう言った。

 

「……すみません。

気が付いたら体を動かしてました」

 

「あなたがいくら赤龍帝だとしても複数の堕天使を相手にするなんて……無謀なのよ?」

 

心配そうな瞳のリアス先輩。

しかし、その言葉は間違っている。

近づいて来ていた堕天使たちの気配からして、俺が敗ける可能性は限りなくゼロに近かったのだから。

 

 

 

「……心配させないでください士織先輩」

 

「そうだよ兵藤さん。

いつの間にか居なくなってるんだから……」

 

「あぁ、悪かったな……」

 

士織の方では小猫ちゃんと木場が何処か安心したような表情で話し掛けていた。

 

「……ひとまずは無傷だったことを喜びましょう……。

残りの問題といえば……」

 

リアス先輩はアーシアの方を向くと黙り込む。

アーシアはシスター、教会側の人間だ。扱いに困っているのだろう。

 

「あ、あの……あの……」

 

アーシアはリアス先輩に見つめられていることから慌てている。

わたわたと手を動かすアーシア。癒しとはこういうことを言うのだろう。

俺はそんなアーシアの頭にポン、と手を置く。

 

「安心してくださいリアス先輩。

アーシアのことに関しては―――――俺たちが解決します」

 

俺の言葉にリアス先輩は目を見開き、慌てながら口を開いた。

 

「なっ?!

相手は堕天使なのよ!?

もし何かあったら―――――」

 

 

 

「―――――その心配なら必要ないぞ」

 

リアス先輩の言葉に被せ、俺を援護する士織の言葉が聞こえてくる。

 

「……どういうことかしら?」

 

「その言葉のまんまの意味だが?

何せ今この土地に来ている堕天使たちは独断で動いてるんだろうしな……」

 

「そうなのか?」

 

俺は士織の言った言葉に疑問を口にしてしまう。何せそれは俺も知らない内容だったのだから。

リアス先輩も士織の次の言葉を待っているようだ。

 

「あぁ。

おそらく……というか十中八九、狙いはアーシア・アルジェントの【神器(セイクリッド・ギア)】だろうよ」

 

「わ、私ですか?!」

 

アーシアはその言葉にかなり驚いたらしく大きめの声をあげていた。

まさかとは思っていたが本当にそうだったとは……。

 

「回復系神器としての能力に目を見張るものがあるからな。

確か……【聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)】だったか?」

 

アーシアの方へ視線を移した士織は優しく問い掛けるような声音で言葉を発した。

アーシアは士織の言葉に首を縦にコクコクと振り、それが間違えではないことを伝えている。

 

「まぁ、何はともあれ。

堕天使たちの狙いであるが故に助けなければならないアーシア・アルジェントは既に救出済み。

後はその件に関わっている堕天使たちに―――――お灸を据えるだけだ」

 

言って士織は笑ったにこりと。

しかし、その笑みには何処か冷たさを感じた。

 

「……一誠に手を出しただけでも怒ってんのに……全く、懲りない奴らだ……」

 

「怒ってくれてたのか……」

 

士織の言葉についそんな呟きが漏れてしまう。

 

「当たり前だろ?

一応お前は俺の弟、家族なんだからよ」

 

「……士織……」

 

微笑む士織は何処か安らぎを感じさせてくれる。

糞ぅ……そっちの気は無いが惚れちまいそうだぜ士織っ!!!

 

『本当に殺されるぞ相棒……』

 

ドライグの言葉が聞こえてくると同時に背に冷たいモノを感じた。

 

「………………」

 

半眼でこちらを睨む無言の士織の姿が視界に入る。

毎回思うことだが士織はエスパーか何かの類なのだろうか……?俺の考えが筒抜けなような気がする……。

 

蛇に睨まれた蛙状態だった俺だがしばらくの後、士織からの無言の圧力も消えた。正直命の危険も感じていたのだが……。

 

「……取り敢えず……グレモリー先輩。

今回の件に関してはウチの愚弟の言葉通り俺たちに任せてくれると助かる。

悪魔である先輩たちが下手に動くより俺たちが動いた方が都合がいいしな」

 

士織はそれを言い終わると一瞬で転移魔法を発動させ、その場から俺たちごと転移させた。

 

 

 

 

 

 

 

Side Out

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

Side 士織

 

一誠達ごと転移魔法により自宅の自室に転移した俺は、ゆっくり背伸びをするとただそのまま口を開いた。

 

「……さてと、どうする一誠?

今から乗り込みに行くか?」

 

「……当たり前だろ」

 

迷いのない即答。

一誠の方を向いていないため、どんな表情をしているのかは分からない。しかし、その声音からどれ程の意気込みなのかは感じ取れた。

俺はもう一度転移魔法を展開する。

 

「……アーシア・アルジェント。

君はどうする?

オススメはこの家に居ることだが……」

 

「私も一緒に行きます!」

 

こちらも迷いのない即答。

自分の安全よりも優先すべき何かを見つけたのだろう。

 

「まぁ、分かってたけどな……。

んじゃ、行くか……」

 

苦笑いが浮かんでくるのを感じながらも俺は転移魔法を行使した。

 

(全く……家に転移したのが無駄になったぜ……)

 

目指すは堕天使たちのねぐら―――――

 

 

 

―――――廃墟となった教会だ。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

辺り一面の静寂。

寂れた教会からは不気味なほど何の音も聞こえてこない。

俺と一誠、アーシア・アルジェントは教会の入り口前に立っていた。

 

「準備はいいか?二人とも」

 

「大丈夫だぜ?」

 

「は、はいっ!!」

 

一誠は【赤龍帝の籠手】を既に準備し、アーシア・アルジェントは緊張した面持ちでそう口に出す。

俺はそんな二人に軽く笑みを向けると、眼前にある扉に蹴りを放ち、入口をこじ開けた。

おそらく俺たちが此処に来たことはもうバレているだろう。

俺はそんなことを考えながら奥へと続く道を駆ける。現れた聖堂へと続く扉を開き、まずは俺が足を踏み入れた。

長椅子と祭壇、蝋燭の淡い光が聖堂内を照らしている。

廃墟だと言われているがなんともまだ使えそうな内装だ。

 

「侵入者三名確認……っと……」

 

俺が辺りを見回していると柱の物陰から一人の少年が歩み出てきた。

 

「フリード・セルゼン……」

 

俺の隣にいる一誠が少年の名前を呼ぶ。

白髪の神父服に身を包んだ少年―――フリード・セルゼン―――は一誠の呟きに嬉しそうな表情を浮かべる。

 

「赤龍帝クン覚えててくれたんだね~」

 

ヘラヘラとした態度のフリード・セルゼンだったが隙を感じない。無防備に見えてかなりの警戒を敷いているようだ。

 

「あり?そっちのお嬢さんはどなたかな?かな?」

 

俺の方へと視線を向けたフリード・セルゼンは首を傾げながら興味深そうにする。

 

「俺はこいつの兄だよ兄。

姉じゃねえからな?」

 

「男性でござんしたか!?

これは失礼失礼……」

 

頭を下げながら笑うがその瞳は闘争心に満ち満ちていた。

 

「取り敢えず……大人しく此処を通してくれる―――――わけないよな」

 

俺の言葉の途中でフリード・セルゼンは懐から刀身のない柄と白銀の拳銃を取り出し、そして構えた。

 

「士織、こいつは俺が……」

 

一誠が一歩前に出てファイティングポーズをとる。

先程から何度目かの『Boost ! !』という音声が聞こえてきた。

フリード・セルゼンも嬉しそうな笑みを浮かべて臨戦態勢をとっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――僕が相手をしても良いかな?」

 

―――――刹那。

一誠とフリード・セルゼンの初動前に合われたかのように聞いたことのある声が聞こえてきた。

 

「き、木場!?

なんで此処に居るんだよ!?」

 

一誠は驚きの表情で背後から現れた木場を見詰め、フリード・セルゼンは不満気な表情を浮かべる。

 

「加勢しに来たんだよ。

ちょっと遅かったみたいだけどね」

 

木場は爽やかな笑みを浮かべて口を開いた。

俺はそんな木場を見ながら背後から近づく者を捕獲する。

 

「にゃっ?!」

 

俺は捕獲した者の襟首を掴みぶら下げながら俺の前に移動させた。

 

「―――――小猫は一体何をしてるんだ?」

 

ぶら下げられる少女―――小猫―――は手を前に突き出す形で静止している。

 

「……私も加勢しに来ました」

 

「俺の背後から気配を消して迫ってくる意味は?」

 

「……テヘッ」

 

小猫は手を頭に当ててそんな仕草を取った。

 

「……恥ずかしいならするなよ小猫」

 

「は、恥ずかしくないです」

 

俺が何のリアクションもせずに小猫を見つめているとまるで茹で上がったかのように顔を赤くした小猫は、俺の言葉を聞きそう返したが両の手で顔を隠す。

俺はそんな小猫を下ろしてやると不機嫌にこちらを見つめるフリード・セルゼンが視界に入った。

 

「……なんだいなんだい。

俺と赤龍帝クンの邪魔をする奴がいると思ったら悪魔クンではないですか~……」

 

その鋭い眼光は木場とそして小猫に向けられている。

 

「予定変更。

悪魔クンが俺の相手をしてくれるんだよねぇ~……?」

 

「うん。

僕がキミの相手をしよう」

 

「イイね!

悪魔クンが相手なら……手加減は無用だ」

 

言って、フリード・セルゼンから感じるプレッシャーの質が変わった。

一誠に向けられていたのはライバルと純粋に闘いを楽しもうとする上で出てくるモノ。

しかし、木場に向けられるそれは憎悪と嫌悪の入り混じったモノだった。

 

フリード・セルゼンは右手に刀身のない柄を、左手に白銀の拳銃を持ち直した。

刀身のない柄からは光の刃が現れる。

 

「んじゃ、一丁断罪タイムと行こうか!!」

 

吐き捨てるようにそう言ったフリード・セルゼンはその場から飛び出し、木場に襲いかかって来た。

横薙ぎに振るわれる光の刃を木場は剣で弾き持ち前のスピードで回避を取る。

 

「ありり?

この銃弾避けるなんてやるじゃん悪魔クン」

 

木場のいた所には三ヶ所の弾痕が刻まれていた。

 

「それを喰らう訳にはいかないからね」

 

そう言った木場はスピードを活かしてフェイント混じりの剣戟を繰り出す。

かなりのスピードを出しているがフリード・セルゼンはそれに遅れを取ることなくさばいている。

 

「やるね。かなりキミ強いよ」

 

「そういう悪魔クンもやるねぇ……。

騎士(ナイト)】の駒かな?無駄の無い動きとその速さ……今まで相手してきた奴らの中でもかなりのモノだよ」

 

二人は鍔迫り合いを演じながらそんなことを言う。

 

「これは僕も出し惜しみなんて出来ないね……」

 

木場はそう呟くと瞳を閉じて再び口を開いた。

 

「―――――喰らえ」

 

木場の低い声音が響く。

刹那、木場の剣から黒い靄が出現し、全体を覆いだした。

―――――闇の剣。

一言で表すならそれだろう。

闇の剣は鍔迫り合いをするフリード・セルゼンの光の刃にその闇を延ばし、侵食しだす。

 

「ちっ!!

悪魔クンも【神器】持ちか!!」

 

「【光喰剣(ホーリー・イレイザー)】、光を喰らう闇の剣さ」

 

「なんとも相性の悪いモノをお持ちで!!」

 

フリード・セルゼンは苦笑いを浮かべながらその場から跳びず去る。

そして銃口を向けると連続して発砲した。

 

「無駄だよ!!」

 

木場はその弾丸を【光喰剣】で斬り払う。

苦い表情を浮かべながら着地したフリード・セルゼン。

光に絶対の効果を示す剣が相手ではフリード・セルゼンの持つ武装は無いも同然のようだ。

 

「あぁ~……武装の選択ミスったな……。

まさかそんな【神器】持ってる奴が居るとは思わなかったぜ……」

 

悔しそうに顔を歪めるフリード・セルゼン。

 

「あぁ~あ……最近逃げてばっかだなぁ~……。

まぁ、死ぬよかマシか……」

 

そう呟いたフリード・セルゼンは懐から球体の何かを取り出す。

 

「逃がさないよっ!!!」

 

それを見た木場は全速力でフリード・セルゼンに走り寄るが数瞬遅かったらしくフリード・セルゼンの持つ球体は地面に叩きつけられた。

瞬間、眩い閃光が辺りを覆う。

不覚にも俺もその閃光に目をやられ一瞬視界を奪われてしまった。

 

「ちっ……!」

 

ほんの一瞬だったにも関わらず辺りにフリード・セルゼンの姿は居なくなっていた。しかし、気配は何となく感じる……。

 

「今回もまた逃げることになったが……赤龍帝クン……今度こそ殺ろうね……。

そして……騎士(ナイト)クン。

今回は敗けちゃったけど……今度は絶対に仕留めるから。

んじゃ、ばいちゃ♪」

 

その言葉を皮切りにフリード・セルゼンの気配は感じることすら出来なくなってしまった。

 

「……逃げられちゃったみたいだね……」

 

木場はそう言うと剣に纏わせた闇を霧散させる。

 

「逃げ足が速い奴だな……」

 

一誠は眉を顰めながらそう呟く。

 

「……あれ?そういや小猫は?」

 

先程までの木場とフリード・セルゼンの戦闘で気付かなかったが小猫が一言も喋ってい無い。

 

「小猫ちゃんなら其処に居るぞ士織」

 

一誠は俺の後ろを指さした。

俺はゆっくりと振り返ってみる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……私はなんであんなことを……『テヘッ』って……『テヘッ』って……」

 

体育座りでそんなことをブツブツと言っている黒いオーラを身に纏った小猫の姿があった。

 

「こ、小猫…ちゃん……?」

 

木場は若干引き攣った顔で小猫に声を掛ける。

 

「……何ですか祐斗先輩」

 

「い、いや、なんでもないよ……」

 

若干目の据わった小猫の姿に木場も冷や汗を垂らして顔を逸らした。

 

「……どうしよう兵藤さん……。

小猫ちゃんに恐怖を覚える僕が居るんだ……」

 

木場はこちらを向くと震えた声でそう言った。

 

「安心しろ木場。

―――――あれは誰でも怖い」

 

言って苦笑いを浮かべた俺なのであった。

 

 

 

 

 

「……百歩譲って『テヘッ』と言うのはいいとして……仕草までなんで……」

 

うん。やっぱり怖い。

俺と木場は互いに小猫から顔をそらす。

と、そんな中我らが一誠が小猫に近づくとポンと肩を叩いた。

 

「そんなに気にするなよ小猫ちゃん。

さっきの可愛かったぜ?

―――――なぁ、士織」

 

此処で俺に話を振るのか?!

俺はギギギギギと小猫の方に顔を向ける。

 

「本当……ですか……?」

 

黒いオーラは何処へやら。

小猫は涙目で此方を見つめていた。シカモ高低差的に上目遣いもプラスされる。

 

「……あぁ。可愛かったぜ?」

 

今の姿もかなり可愛い。

それに先程の『テヘッ』も可愛かったのは事実だ。

俺は意を決してそう小猫に伝えた。

 

 

 

 

 

「―――――さて、士織先輩行きましょう。

早く堕天使たちを片付けるのです」

 

素早く立ち上がった小猫はきりっとした表情でそんなことを言った。

あまりの状態の変化に先程の小猫の姿が幻想だったのでは無いかと思ってしまう。

 

「……そうだな。

早くに片付けて帰るか」

 

俺は苦笑いを浮かべながらそう呟くと堕天使たちが居るであろう場所を目指して足を進めた。

 

 

 

俺の後輩は可愛いけど怖いみたいだ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編はいかがでしたでしょうか?
楽しんでいただけたのなら幸いです♪


さてさて、雑談に入りますが……。
やっと……やっとハイスクールD×D全巻を読み終わることが出来ました……(苦笑)
ガブリエルをヒロインとしてどう絡めていくかに悩みます……(苦笑)

みなさんはどのキャラクターが好きですか??
私は男性キャラならヴァーリ、女性キャラなら小猫ちゃんが好きです♪


さてさて、それではまた次回お会いしましょう♪


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~決着つきました~

皆さんどうも、夜叉猫です……。

最近私のメンタルが豆腐だということに気付かされました……(涙)

ともかく、本編をどうぞ……(º﹃º )


Side 士織

 

フリード・セルゼンとの戦闘を終えた俺たちは祭壇の下に隠されていた地下階段を降りていた。

 

「…………」

 

誰一人として口は開かない。

先頭を黙々と突き進む一誠に置いていかれないようにただ進むのみだ。

階段を降り着れば奥へと続く長い一本道、そしてそれに隣接するように数多くの扉が存在した。

一誠はその隣接する扉には目も呉れず奥へと進んでいく。まるで自分の目的のモノの場所が分かっているかのように……。

 

(……いや、分かってるんだろうな……)

 

迷いのないその歩みを見ているだけでそれが分かった。

最奥に設置された巨大な扉。その前に到達した一誠は一瞬歩みを止める。

そして、はぁ……っと息を吐くと顔を上げ、扉を押し開けた。

 

見えてくる部屋の中には光の刃を展開させた剣を手にしたたくさんの神父とその先頭にいる―――――四人の堕天使。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――やぁ、夕麻ちゃん。

久し振り、元気だった?」

 

一誠は一人の堕天使に向けてそう言葉を発した。その顔には優しい微笑みが浮かぶ。

声を掛けられた堕天使は今にも泣きそうな顔で口を開く。

 

「―――――うん。元気だよ一誠君……」

 

それを聞いた一誠が再び口を開こうとしたがそれは隣の堕天使に遮られてしまった。

 

「これはこれはお初にお目にかかる。

我が名は【ドーナシーク】という」

 

紺色のコートを身に纏った男性の堕天使は丁寧に頭を下げ名乗る。

 

「―――さて、物は相談だが……ソレをこちらに渡してくれは貰えないだろうか?」

 

頭を上げた男性の堕天使―――ドーナシーク―――はアーシア・アルジェントの方を指さして言った。

 

「大人しく渡してくれれば我々も手荒な真似はしないでおいてやろう」

 

「うわぁ~ドーナシーク甘々~。

そんなの聞かずに無理矢理奪っちゃえばいいじゃ~ん」

 

黒のゴスロリ服を着た金髪ツインテールの少女はアハハハハと声を出して笑う。

 

「全くだ。

ミッテルトの言う通りそんな面倒臭いことをするなドーナシーク」

 

胸元の強調された黒いボディコンスーツの女性の堕天使は腕を腰に手を当ててにやりと笑う。

 

「そう言ってやるなミッテルト、カラワーナ。

見てみろ先頭の小僧に至っては俯いたまま動かぬではないか」

 

「うわぁ~ダッサーい」

 

「怖がらせ過ぎたか?」

 

3人の堕天使は馬鹿にするような笑みを浮かべて笑う。

それを見た木場と小猫は顔を歪め飛び出そうとした。

 

「……まて木場、小猫」

 

しかし、俺はそんな二人の肩を掴み行動を阻害する。

 

「なんで邪魔するんだい兵藤さん!!

あんなに馬鹿にされておいて悔しくないのかい?!あなたの弟だろう!?」

 

「……流石にあれはカチンときました」

 

二人は俺の行動に反発し、何故そんなことをしたのか分からないようだ。

俺は瞳を閉じて、ゆっくりと口を開く。

 

 

 

 

「悔しい?何を言ってんだ。

俺には―――――負け犬の遠吠えしか聞こえてこないな」

 

「「「……負け犬の遠吠え……?」」」

 

俺の言葉に堕天使3人が反応する。

天野夕麻―――レイナーレ―――は目を閉じて微動だにしない。

 

「俺の弟―――――舐めんじゃねぇぞ?」

 

 

 

 

 

『Explosion ! !』

 

―――――瞬間。

一誠から感じるオーラの質が跳ね上がった。

 

(このレベルなら……倍加20回分ってところか?)

 

俺はついつい微笑みが浮かんでしまう。

着々と強くなっているんだという思いが浮かぶのだ。

 

「な、なんだこの魔力の波動は?!」

 

「上級……いや、最早最上級の悪魔と……同等……!?」

 

「こ、これってヤバくね……?」

 

慌て始める堕天使たち。

レイナーレですら口に手を当てて驚いている。

 

 

 

「―――――ごちゃごちゃうるせぇな……。

俺は今機嫌が悪いんだ……」

 

一誠は一歩一歩ゆっくりと進んでいく。一誠から感じるその魔力の波動は重圧となり堕天使たちを襲う。

堕天使たちは膝を付く程度で済んでいるがそれよりも下級の存在である神父たちは床に沈んでいる。

 

「今アーシアを『ソレ』って言ったか?言ったよな?

テメェらきちんと名前で呼べよ。何物扱いしてんだよ」

 

拳を握り締め、顔を前に向ける。

後ろから見ている俺にはその表情は見えないが恐らく憤怒に歪んでいるのだろう。

 

「しかも目的がアーシアの【神器】を抜き取ることだと……?

ふざけたこと言ってんじゃねぇぞ!!!」

 

赤い―――――龍のオーラが一誠を包む。

堕天使3人はガクガクと体を震わせながら後ず去っていく。

 

「な、何なのだ貴様っ!!!

ただの人間かと思えば最上級悪魔並の魔力の波動を……!!」

 

ドーナシークは顔を恐怖で歪めながら口を開く。ミッテルト、カラワーナに至っては互いの体を抱き合って震えていた。

 

一誠は立ち止まりバスケットボール大の魔力球を作り出す。

 

 

 

「―――――赤龍帝、兵藤一誠だ憶えておけ……っっ!!!!!」

 

一誠はそれを叫ぶと魔力球を殴りつけ、極太のレーザーを放つ。

レーザーは3人の堕天使を飲み込み、彼方へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――かのように見えた。

 

「「「………………」」」

 

実際は一誠の放ったレーザーは堕天使たちに当たる直前で上方にそれたのだ。

故に当たる事無くレーザーは消えていった。

しかし、堕天使3人はあまりの恐怖に気絶している。

一誠はそれで満足したのか首をコキコキッと鳴らすと【赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)】を消してこちらへと踵を返してきた。

 

「あぁ~~~っ!!

スッキリしたぜ……」

 

ニコニコとした人懐っこい笑みを浮かべた一誠。

全く……殺していない所が一誠らしい……。

こちらにやって来た一誠に小猫は無表情で口を開いた。

 

「……えげつないです」

 

「た、確かにあんな攻撃されたら……ね……?」

 

木場までも苦笑いを浮かべている。

 

「あ、当ててねぇだろ?!」

 

「……当てていなかったとしてもアレはトラウマものです」

 

「少なくとも僕はアレを喰らった後兵藤君に平常心で会える自信がないよ……」

 

「酷ぇ!!?」

 

一誠は笑いながらそんなことを言った。

そして、今度は俺の方を向いてにやりと笑う。

俺はそれに対してふっ、と笑うと片腕を上にあげる。

 

「やってやったぜ!!」

 

「まぁ、ナイスだったぜ……」

 

一誠は嬉しそうな表情を浮かべて勢い良く近づいてくると、俺の手を綺麗に叩き、ハイタッチを決めた。

 

 

 

 

 

―――――閑話休題。

 

 

 

 

 

「さて……やっとゆっくり話ができるね……夕麻ちゃん……」

 

一誠は今までただ立っているだけだったレイナーレに向けて声を掛けた。

レイナーレは顔を俯かせながらコクリと頷く。

 

「単刀直入に聞くけど……何の為にこんなことをしたの?」

 

一誠の言葉にレイナーレはびくっと体を震わせる。そしてゆっくりながら口を開いた。

 

「……私、弱いから……もっと、強くなりたかった……」

 

「だからって……」

 

「分かってるっ!!

……でも、それしか考えつかなかったの……」

 

レイナーレは涙を流しながら言葉を続ける。

 

「初めは……何の躊躇いも無く出来ると思ってた……。

でも、アーシアちゃんを見ているうちに……アーシアちゃんと一緒にいるうちに……『あぁ、駄目だ……』と思ったの……」

 

一誠は無言でレイナーレの瞳を見つめながら話を聞く。俺たちもそれを静かに聞き入れた。

 

「こんな優しい娘から【神器】を取り出して私の力にするなんて……出来なかった……。

でも引こうにも引けないところまで来てしまってたの……」

 

レイナーレはそう言うとアーシア・アルジェントの方へと近づいて行く。

 

「ごめんなさいアーシアちゃん……。

私……貴女を殺そうとして……っ!!」

 

深く、深く頭を下げて震える声で謝罪をしたレイナーレ。

 

「許されるとは思っていないわ……でも……」

 

「―――――頭を上げてくださいレイナーレ様」

 

アーシア・アルジェントは頭を下げているレイナーレに手を差し伸べて優しく口を開く。

 

「……私は今生きています。

それにレイナーレ様が此処に連れて来てくれなかったらイッセーさんたちに会えませんでした」

 

レイナーレはアーシア・アルジェントの話を頭を下げたまま聞いていた。

 

「だから許します。

私はレイナーレ様を許します」

 

まさに聖母の微笑。

アーシア・アルジェントの微笑みはそう言わしめる程の物だ。

 

「あり……がとう……っ!」

 

頭を下げたままレイナーレはそう口にする。ぽたぽたと流れる涙は床に落ちていった。

 

しばらく経ち、何とか涙を止めたレイナーレが一誠の元へと歩み寄る。

 

「……一誠君……」

 

「何?夕麻ちゃん」

 

優しい声音で返事をした一誠。

レイナーレは一誠の胸に顔をうずめ、震えた声で言った。

 

 

 

「私を―――――殺してくれる?」

 

場の空気が―――――凍った。

一誠は引き攣った顔で自分の胸に顔をうずめているレイナーレへと視線を落とす。

 

「な、何を……言ってんだ……?」

 

「……私たちは独断で行動してるの……。

もし、【神器】を抜き取ろうとしていたことがバレたら……確実に処罰を受けるわ……それも一番厳しいものを……」

 

一番厳しい処罰。

それはおそらく―――――

 

「―――――処刑か……」

 

「……えぇ」

 

俺の呟きにレイナーレは弱々しい声でそう答えた。

 

「だから……どうせ死ぬのなら……愛しい人の腕の中で、死にたいわ……」

 

一誠の服をギュッと掴んだレイナーレ。

一誠はそんなレイナーレに迷うことなく、

 

 

 

「―――――断る」

 

はっきりとそう告げた。

 

「ッッ……!!!

そ、そうよね……ごめんなさい一誠君……」

 

レイナーレは体をびくっと震わせるとそう言って一誠から体を離れさせる。

そして、一歩下がると見ただけで無理矢理だと分かる笑みを浮かべた。

 

「さようなら一誠君……」

 

レイナーレはそれだけいうと一誠に背を向けて残りの3人の堕天使の元へ歩みだす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――何勘違いしてるの?」

 

一誠はそんなレイナーレを背後から抱き締めるとそういった。

 

「……え……?」

 

「断るとは言ったけどそれは夕麻ちゃんを殺すのを断ったんだよ?」

 

一誠はレイナーレを抱き締めながら言葉を続ける。

 

「夕麻ちゃん何もしてないだろ?

だから死ななくて良い。

―――――俺と一緒に来ないか?」

 

レイナーレはその言葉を聞くと体を震わせた。そして少し頭を下げると口を開く。

 

「……一誠君を殺したわ……」

 

「それは夕麻ちゃんが殺したわけじゃない。やったのはドーナシークっていう堕天使だ」

 

「……アーシアちゃんを苦しめたわ……」

 

「ついさっき許してもらったよな?」

 

「……私堕天使よ……」

 

「俺は人間だな」

 

「……一誠君の方が先に死んでしまうわ……」

 

「なら俺は悪魔にでも天使にでも堕天使にでも、何にでもなってやるよ」

 

レイナーレの言う言葉を即座に返す一誠。

その言い合いを繰り返す度にレイナーレの体の震えは大きくなり、声は掠れた。

 

「何の問題も無いだろ?

もう一回言う。

―――――俺と一緒に来ないか?」

 

レイナーレは一誠の回された腕を掴んで言った。

 

「―――――はい……」

 

その声は涙で震えとても聞き取れるモノではなかった。しかし、何故か不思議ととても綺麗なモノに聞こえた。

 

レイナーレはその場に泣き崩れ、一誠はその震える体を優しく包み込んだ。

 

 

 

「あらあら、うふふ……。

何やらいい雰囲気ですわね……」

 

「……姫島先輩か……。

随分と遅かったな?」

 

俺の隣に巫女服に身を包んだ姫島先輩が現れる。

 

「うふふ……外にいた悪い子たちにお仕置きしてたら遅くなりましたわ」

 

「……さいですか」

 

俺はそう言ってもう一人の先輩にも声をかける。

 

「グレモリー先輩はそんなところで何をしているんだ?」

 

俺たちの背後―――――とは言っても入口の扉近くだが―――――でグレモリー先輩はこそこそとこちらを見ていた。

俺に声をかけられたからかびくんと体を震わせるとこちらに歩んでくる。

 

「な、なんでもないわ」

 

「まぁ、取り敢えず……お疲れ様」

 

俺はそれだけいうとまた、一誠たちの方へと視線を戻した。

 

子供のように涙を流すレイナーレをあやすように一誠はその頭を撫でている。

俺と姫島先輩、グレモリー先輩は微笑ましいものを見るように、木場と小猫は何処か驚いたような、しかし、優しい瞳でそんな二人を見つめていた。

 

 

 

 

 

「……グレモリー先輩」

 

「何かしら?」

 

「あの堕天使たちを引き渡す時に――――――――――と言って貰えないか?」

 

「……分かったわ。

あなたがそう言うのなら伝えておいてあげる」

 

「助かるよ」

 

こうして騒がしい夜は明けていった。

 

 

 

イレギュラーはこれからも続くだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編はいかがでしたでしょうか?
楽しんでいただけたら幸いです!



さてさて、雑談ですが……。

やっと1巻の内容が後一話、エピローグで終わりそうです!!
2巻は結構書きやすそうなのでがんばります!

それにしてもみなさんは評価をどういう基準でつけていらっしゃいますか?
私は評価を付けるときに自分が出来るかどうかを考えて私が出来なかったり、面白ければ5以上、逆に私ならもっと出来るや、面白くなければ5以下としています。

以前小説を書いている友人にそういうのは大切だと言われて気をつけているのです……(苦笑)


さてさて、それではまた次回お会いしましょう♪*゚


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~エピローグです~

更新が遅くなってしまってすみません!!

私自身にいろいろあったのとテストなどがあって遅れてしまいました……(涙)

ともかく!
本編をどうぞ♪


オッス、兵藤一誠だ。

 

堕天使との一件から1週間が経った。

あの後夕麻ちゃん―――レイナーレ―――たちはリアス部長の監視の下、堕天使側に引き渡された。

初めはそれに関して俺は反発していたのだが、流石に夕麻ちゃんたちの無断行動を堕天使側に報告しない訳にはいかないということで、幾つかの条件を飲んでもらって俺は引き下がることにした。

その条件は至極簡単。あの三人の堕天使と夕麻ちゃんを殺さない、ということだ。

リアス先輩を通してその条件が飲まれたことも教えてもらっている。

 

 

 

「―――――つってももう1週間か……」

 

条件が飲まれたことは教えてもらったがどのような処罰が下ったのかまでは知らない。だからこそ心配になっているのだ。

俺はリビングのソファーに深く座るとハァ、と溜め息を漏らす。

 

「辛気臭いぞ一誠。

そんなに心配しなくても大丈夫だろうよ」

 

「あぁ……士織か……」

 

声を掛けられたため、視線を移動させるとふたつのコーヒーカップを持つ士織の姿があった。

 

「ほら、お前の分も淹れてやったから飲め」

 

「……サンキュー士織」

 

士織から差し出されたコーヒーカップを受け取る俺。

最近どうも調子が出ない。無意識のうちに溜め息が漏れる。

そんな俺を見かねたのか士織が口を開いた。

 

「そんなに心配か?」

 

「まぁ……な……。

どんな処罰を受けてるのかって考えたら気が気じゃない」

 

「ふぅん……」

 

士織は俺の話に興味なさげな声を出すとコーヒーカップをテーブルに置いて背伸びをする。

そして、思い出したかのように、

 

「取り敢えず今日は来客があるからそのしみったれた顔をなんとかしろ。

お見せできないよ状態だからな」

 

少し楽しそうにそう言った。

……そんなに俺は酷い顔をしているのか……。

俺は手に持ったままだったコーヒーカップをテーブルに乗せると、両の頬をパン!と叩き気を引き締める。

 

「まぁ……ちっとはマシになったか……」

 

俺の方を向いた士織はそう呟いた。

俺はそんな士織に笑みを向け、テーブルの上に置いたコーヒーカップを取って一気に飲み干す。

程よい苦味が口の中に広がる。あぁ……今の俺には丁度いい苦味だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あ、それ俺のコーヒー」

 

「ぶフッッッ!!!?」

 

士織の呟きに吹き出してしまう俺。

……何とも格好の着かない朝である。

 

 

 

 

 

Side Out

――――――――――――――――――――――

Side 士織

 

「取り敢えず一誠は着替えて来い。

そろそろ来るはずだからな」

 

飲み終わったコーヒーカップを片付けた俺は未だにパジャマ姿の一誠にそう言葉を掛けた。

 

「了解。

……ちなみに来客って誰が来るんだ?」

 

ソファーから立ち上がった一誠は疑問符を頭の上に浮かべる。

 

「ん~……一応偉い人?」

 

「い、一応……?」

 

苦笑いを浮かべる一誠。

俺はそんなことよりも早く着替えて来いと伝え、一誠を自室へと向かわせた。

 

それと同時か少し遅れてか、家のインターホンの音が響く。

どうやら来客予定の人たちが来たようだ。

俺は小走り気味に玄関まで向かうと、ゆっくりとドアを開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――いらっしゃいアザゼル(・・・・)

 

玄関のドアの向こうに居たのは黒髪のちょっと悪そうな雰囲気を纏わせた浴衣の男性―――――堕天使の幹部組織【神の子を見張る者(グリゴリ)】のトップ、堕天使総督アザゼルその人。

この人が本日の来客だ。

 

「総督を付けろ総督を……。

全く……俺への扱いが雑じゃねぇか?士織」

 

「アザゼルはこの扱いがちょうどいいだろ。

取り敢えず立ち話もなんだし入ってくれ」

 

「おう。邪魔するぜ」

 

軽く言葉を交わした俺とアザゼル。

来客用のスリッパをアザゼルに履かせるとリビングへと案内した。

アザゼルはリビングに入った瞬間流れるようにソファーに座りくつろぎ始める。

 

「コーヒーで良いか?アザゼル」

 

「おう、ブラックで頼む」

 

「了解した」

 

アザゼルへの確認を終えた俺は手早く、しかし丁寧にコーヒーを淹れ、客人であるアザゼルに振舞う。 

 

「お……中々美味いじゃねぇか」

 

コーヒーを一口啜るとアザゼルはそう呟く。

 

「まぁ、簡単なものだけどな」

 

アザゼルに向かって苦笑いを浮かべながらそう言うと俺もついでに淹れた二杯目のコーヒーを口に運ぶ。

 

 

 

「インターホン鳴ってたけどお客さんは―――――おっと、もういらっしゃってるみたいだな」

 

パジャマから服を着替えてきた一誠はリビングに入ってくるとアザゼルの姿が目に入ったようで軽くお辞儀をした。

 

「士織、こいつが例の弟か?」

 

アザゼルは一誠をしばしの間見つめると俺の方へと視線を移動させてそう言う。

 

「そうだぞ?

そいつが俺の弟で―――――今代の【赤龍帝】だ」

 

「へぇ……?」

 

アザゼルはそれを聞くと再び一誠の方を向いて面白いモノを見るような表情を浮かべた。

……いや、どちらかというと新しい玩具を前にした子供のようだと言った方が適切だろうか……。

 

「え、えっと……士織、このちょい悪系の人は一体……?」

 

困惑の表情を浮かべる一誠。

しかし、話の内容から関係者であることはわかっているようだ。

一誠の言葉を聞いたアザゼルは楽しそうな表情はそのままに口を開いた。

 

「おぉ!悪ぃ悪ぃ!自己紹介してなかったな!俺の名は【アザゼル】―――――」

 

アザゼルの背から6対12枚の薄暗く、常闇のような黒翼が出現する。

 

「―――――堕天使の総督だ。

これから宜しく頼むぜ?赤龍帝」

 

にやりと笑うアザゼル。

何処かキザったらしいがやっているのがアザゼルだからか似合っていた。

 

 

 

―――――閑話休題

 

 

 

「そういや赤龍帝」

 

「俺は 兵藤 一誠 です」

 

「んじゃ、一誠。

お前さんどれくらい強ぇんだ?」

 

簡単な自己紹介を済ませたアザゼルは興味津々といった風に一誠を見つめて言った。

一誠は少し考える仕草をすると自嘲気味な笑みを浮かべる。

 

「俺なんてそこら辺の一般人に毛が生えた程度ですよ。

士織に歯も立ちませんしね」

 

「そうなのか……」

 

アザゼルは残念そうな表情をするとコーヒーを一口飲む。

……どうやら一誠は勘違いしているらしい。

 

「何言ってんだ一誠。

お前は自分を過小評価し過ぎだ」

 

俺が一誠にそう言うとえっ?という表情になる。

アザゼルはコーヒーを飲みながら俺の言葉に耳を傾けているようだ。

 

「お前のあの(・・)禁手(バランス・ブレイカー)】ならアザゼルともいい勝負が出来るはずだぜ?」

 

「あぁ~……アレ(・・)か……。

でもあれは消耗が激しすぎて使えねぇだろ」

 

一誠は苦笑いを浮かべながらそう言った。

 

「まぁ、魔力が少ないのが痛いよな……」

 

「だな……。

今の俺の魔力量じゃせいぜい3回(・・)ってところだしな」

 

俺と一誠がそんな話をしていると先程まで静かに聞いていたアザゼルが慌てたように話に入ってくる。

 

「おいおいおい!

お前らは一体何の話をしてるんだ?!

何だよ『あの【禁手】』ってよ!!」

 

「何って一誠の【赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)】の【禁手】の話だぜ?」

 

俺が正直にそう言うとアザゼルは顎に手を添えて一瞬目を閉じると真剣な声音を発した。

 

「【赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)】の【禁手(バランス・ブレイカー)】つったら【赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)】か……?

……いや、だとしたら3回ってとこが腑に落ちねぇな……。

だったら考えつく答えはひとつ―――――」

 

アザゼルは俺と一誠の方を向くと真面目な表情で問い掛けてくる。

 

 

 

「―――――【亜種】の【禁手】か?」

 

 

 

その言葉に声を発することなくゆっくりと頷く。するとアザゼルは拳を握り締めて身体を震わせ始めた。

 

「か~っ!!!

神滅具(ロンギヌス)】の【亜種禁手】!?何だそれ超興味あるぞ!!

おい一誠!今度【神の子を見張る者(うち)】に来て【赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)】を調べさせろ!!」

 

興奮した様子のアザゼルは一誠に詰め寄ってそう言った。

あまりの迫力に一誠もたじたじである。

俺はアザゼルの頭を軽く叩くと咳払いをし、声を発する。

 

「その話はまた今度だアザゼル。

……それよりも、『あの件』については大丈夫なんだよな?」

 

「痛ぇな士織……もちっと手加減しやがれ。

『あの件』に関しては何の問題もねぇ。あいつら自身も不満は言ってねぇし、寧ろ喜んでたぞ?」

 

叩かれた部分を手で撫でながらアザゼルはそう言い、少しの間を空けて言葉を続ける。

 

「なんなら今からでも大丈夫だがどうする?」

 

「あぁ。早い方がいいだろうしな……。

頼むぜアザゼル」

 

「あいよ、了解だ」

 

そう言ったアザゼルはパチン、と指を鳴らす。すると、アザゼルの座っているソファーの隣に魔法陣が描かれ、光を発した。一誠は何がなんだか分かっていないらしく、その光景をただ見詰めている。

 

魔法陣からの光は徐々に収まっていき、その代わりに四つの人影が現れた。

 

―――――一人は黒いスーツに身を包んだ女性。

 

―――――一人は黒のゴスロリの服を纏った女の子。

 

―――――一人は漆黒のワンピースを来た少女。

 

―――――一人は紺色のコートを羽織った女性。

 

「……ッッ!!」

 

一誠の息を呑む声が聞こえてくる。

四人を見て思うところがあったのだろう。

そして俺は、その四人を見て、

 

「……ッッ?!」

 

―――――違う意味で息を呑んだ。

四人―――正確にはその中の1人―――の姿が明らかに記憶と食い違っている。

俺はアザゼルの方を向くと口を開いた。

 

「あ、アザゼル?

ドーナシークは一体―――「私に何かようか?」……ゑ……?」

 

俺の台詞に被せるように声が聞こえてくる。その声の主を確かめるために視線を移動させると、そこには俺が違和感しか感じなかった紺色のコートを羽織った女性の姿があった。

しばしの間その女性を見つめた後、勢い良くアザゼルの方を向きなおすと冷静に言葉を吐く。

 

「……アザゼルどういうことだ?

俺の頭がおかしくなった訳ではないのならドーナシークは男だったはずだぞ?」

 

「あぁ、そのことか。

ドーナシークはちょっと俺の実験に協力してもらったから性別が変わった」

 

あっけらかんとそんなことをのたまうアザゼルについつい真顔になってしまう。

俺は咳払いをひとつすると取り敢えず思った事を全て口にする。

 

 

 

 

 

「―――――アホかアザゼルッッ!!!

お前の実験に協力したら性別が変わるのか?!何の実験してんだよ!!?

そしてドーナシークはなんで性別が変わったのにそんなに落ち着き払ってるんだ?!普通は怒るだろ!?そして戻してもらうだろ!?

あれか?堕天使は皆意外と呑気か?呑気なのか?!」

 

「別に性別程度で狼狽えることはないだろう?」

 

「そうだぜ士織」

 

何言ってるのコイツという視線を俺に向けたアザゼルとドーナシークはそういった。

 

「俺がおかしいのか……?」

 

その反応に俺は頭を抱える。

分からない……分からない……。

 

 

 

―――――閑話休題

 

 

 

「……取り敢えず、一誠が混乱してるみたいだから説明すんぞ……アザゼル頼む……」

 

俺は若干の頭痛を感じながらもアザゼルに説明を求める。

 

「メンドクセェが……分かったぜ……」

 

当のアザゼル本人は気怠そうに頭を掻くと口を開いた。

 

「あぁ~……なんだ……簡潔に言うとコイツら四人を今日から此処に住ませてやってくれ」

 

「えっと……住ませる分には多分……というか確実に大丈夫ですけど……良いんですか?」

 

一誠は恐る恐るといった風に問う。

どうやら処罰に関して気にしているようだ。

 

「あぁ。問題はねぇぞ。

一応硬っ苦しく言うと『兵藤家での一生無償労働』という処罰を下してるからな」

 

「そう……ですか」

 

素っ気ない言葉に聞こえるが一誠の顔はニヤけていた。やはり嬉しいらしい。

アザゼルはそんな一誠の顔を見るとおもむろに立ち上がり何処か悪い笑みを浮かべる。

 

「んじゃ、俺は忙しいんでなそろそろ帰るぜ?取り敢えず―――――

 

 

 

―――――ヤリ過ぎには注意だぞ?餓鬼ども」

 

「余計なことを言ってないで帰るなら帰れアザゼルっ!!!」

 

俺はそう叫んでアザゼルを追い払った。

全く……アザゼルはなんであんなキャラなのだろうか……。

アザゼルの気配が完全に消えたのを確認するとくるりと背後に振り返る。そこには様々な反応をしている五人の姿が見受けられた。

 

「や、ヤリすぎ……??」

 

言葉を繰り返し首を傾げる黒のゴスロリの服を纏った女の子―――――ミッテルト。

どうやら外見の割にはそういう知識のない素直な娘らしい。

 

「は、ははは……総督も面白い事を言うな」

 

言いながら頬をほのかに紅く染める黒いスーツに身を包んだ女性―――――カラワーナ。

意味は分ったようだが見た目通りのクールな性格らしくそこまで恥ずかしがっていない。

 

「総督はよく恥ずかしげもなく言えるものだ」

 

そう言いながら笑う紺色のコートを羽織った女性―――――ドーナシーク。

……男の時はこんなキャラだっただろうか……?

 

「「や、ヤリすぎ……」」

 

漆黒のワンピースを来た少女―――――レイナーレと一誠は互いの顔を見てその顔を真っ赤に染めると俯いた。

……何と言うかこの二人……。

俺はそんな二人に微笑みを向ける。

 

 

 

 

 

「一誠ちゃ~ん?士織ちゃ~ん?

どなたかいらっしゃってるの~??」

 

「……騒がしいが誰か来たのか……?」

 

そんな両親の声が階段の方から聞こえて来る。ひとまずはこの場を落ち着けねぇとな……。

 

「ほらほら皆!

取り敢えずは落ち着け!」

 

ぱんぱん、と柏手を叩きそう言った俺。

 

 

 

どうやらまずは、四人を両親に紹介する所から始まりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編はいかがでしたでしょうか?
楽しんでいただけたのなら幸いです♪



さてさて、雑談ですが……。

テスト期間がやっと終わりました……っ!!!
今回は調子が悪かったのですがいい点数を取れました♪

そして、最近の悩みなのですが……三作品のアイデアが枯渇しています……(涙)
しかし!!
出来るだけ更新スピードを上げたいと思っています……(苦笑)


さてさて、それではまた次回お会いしましょう♪


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~戦闘校舎のフェニックス~
~何やら始まりそうです~


皆さんお久しぶりです!!

最近は期末テストの勉強で忙しくなってきたのですが……やはり小説も書きたいところなのですっ!!!

なんとか頑張って更新していきますっ!!

それでは本編をどうぞ!


Side 士織

 

「「「「「いただきます」」」」」

 

もう聞きなれた5人の女声がリビングに響く。

 

「はいはい♪たくさん食べてね♪」

 

「うむ。賑やかな食卓はやはり良いな」

 

母さんは嬉しそうに笑い父さんは満足そうに首を振っている。

 

「んじゃ、俺も食べるかな……いただきます」

 

「だな。いただきます」

 

俺と一誠も手を合わせてその言葉を発すると箸を手に取り食事を開始した。

 

5人の女性―――レイナーレ、カラワーナ、ドーナシーク、ミッテルト、そしてアーシア(・・・・)―――が家に住み始めてから既に1ヶ月。

あの日、堕天使の四人のことを話すと二つ返事で住むのを許可してくれた両親。更に後から来たアーシアまでも快く受け入れてくれた。

なんでも両親曰く、『賑やかになるのは大歓迎』だそうだ。

 

「葵泉さん、このお漬物の付け方今度教えてもらっても良いですか?」

 

「良いわよ夕麻(・・)ちゃん♪

今度一緒に漬けましょうか♪」

 

「だ、だったらウチもやりたい!」

 

「わ、私もです!!」

 

「ふふふっ♪じゃぁ美憧(・・)ちゃんとアーシアちゃんも一緒にしましょうね♪」

 

「本当っすか!!やった♪」

 

母さんはレイナーレ―――夕麻―――とミッテルト―――美憧(みと)―――、アーシアの三人と楽しそうに話をしている。

 

賢夜(けんや)殿、本日のお勤めは?」

 

「休みだ。

稽古でもつけてやろうか?綯奈(・・)

 

「それは魅力的な申し出……ひとつお願いします」

 

「良いだろう。

今回も扱いてやる」

 

「稽古なら私も参加しても?」

 

華那(・・)もか?

良いだろう。なら今日は本格的にやろう」

 

父さんはドーナシーク―――綯奈(とうな)―――とカラワーナ―――華那(かな)―――と食事後の計画をしているようだ。

 

そもそも何故ドーナシーク、ミッテルト、カラワーナ、レイナーレの名前が違うのかと言うと、両親に四人を紹介したその日。母さんが何処かへ電話を掛けたかと思うと次の日には四人の新たな戸籍が完成していたのだ。それ故に現在四人はその時につけられた名前を今は名乗っている。

そして、付けられた名前を考えたのは俺たちの父親【兵藤 賢夜(けんや)】。

長身でがっちりとした肉体、そして厳しそうな見た目だがとても優しく強い自慢の父親だ。

 

「「ごちそうさまでした」」

 

俺は歓談する皆を見ながら食事を済ませると同じく食べ終わった一誠とともに食器をキッチンに運び声を掛ける。

 

「一誠は今日何するんだ?」

 

「俺か?そうだな……実は士織に相談したいことがあったんだけど……大丈夫か?」

 

「今日は何をする予定も無かったし大丈夫だぞ?俺の部屋で良いか?」

 

俺がそう言うと、一誠はほっとした表情を一瞬浮かべ、直ぐに人懐っこい笑みになる。

 

「あぁ。大丈夫だぜ」

 

「なら、先に行っててくれ。

俺は皆に少し伝えてくるから」

 

「了解」

 

短くそう言った一誠は階段の方へと向かっていった。

……さてさて、今回は何の相談かな?

俺はそんなことを考えながら俺と一誠の分の食器を洗うのだった。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「んで……今日は何の相談だ?」

 

皆に自分の部屋へ戻る旨を伝えた俺は、足早に階段を上り、部屋の扉を開けるやいなや、ソファーに腰掛けていた一誠にそう言葉をかけた。

後ろ手に扉を閉めるとそれを待っていたかのように一誠が口を開く。

 

「……士織は【封印魔法】とか使えたりするか?」

 

「【封印魔法】?

使えるには使えるが……いきなりどうしたんだ?」

 

「……ちょっと悪魔にでも転生しようかなって思ったんだよ……」

 

一誠は簡潔に、そう呟いた。

一瞬の思考の後それがどう言う意味で、何故そういった考えに至ったのかが分かる。

 

「……つまり、今の一誠のスペックじゃ転生出来ないから転生出来るスペックになるまで自分の力を無理矢理抑え込むのか……」

 

「そう言う事だ」

 

無駄な説明が要らないから楽だな、一誠は苦笑いを浮かべながらそう言った。

 

「転生するからには主は決めてんのか?

身近なら生徒会長の【支取(しとり) 蒼那(そうな)】―――――シトリー家の次期当主かグレモリー先輩のどちらかだが……」

 

顎に手を当てながら一誠に問う。

すると一誠はこくりと首を縦に振ると―――――懐から8つの紅い駒を取り出した。

 

「……8つ……【兵士(ポーン)】の駒か……。

つぅことはグレモリー先輩を主として選んだのか……」

 

支取蒼那は既に【兵士】の駒を使っている。その為、8つ全てを持っているのならばそれはグレモリー先輩しかいないのだ。

 

「なんだかんだ言ってもリアス先輩には良くしてもらってるしな……。

俺が『眷属にしてもらえますか?』っていきなり言ったのに『此方から頼みたいほどだわ』って言ってくれたんだよ」

 

一誠はそう言うと微笑みながら駒を手に握った。

そして俺の方を真剣な目で見つめてくる。

 

「―――――だから頼む士織。

俺に【封印魔法】を教えてくれ」

 

頭を深々と下げながら一誠はそう言った。

【封印魔法】を掛けてくれではなく【封印魔法】を教えてくれと言ったのだ。

俺はそんな一誠が何処か微笑ましくて、優しい口調で声を発した。

 

「いいぜ、一誠。

俺に任せとけ!お前の納得できるような【封印魔法】を教えてやるよ!」

 

「ま、マジでか!?

ありがとう士織っ!!助かるぜ!」

 

人懐っこい一誠の笑顔。

最近ではこの笑顔を見ると心が暖かくなる。

 

 

……ブラコンでは決してない。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――

 

 

「あぁ~……疲れたな……」

 

一誠からの相談を聞いた後、俺は直ぐに一誠に合わせた【封印魔法】を構築し、練習させた。

一誠は魔力が極端に少ないため、【封印魔法】を行使するには無駄を極限まで省かなければならない。そこさえクリア出来れば直ぐにでも使いこなせるのだが―――――

 

 

 

「……如何せん、一誠は不器用だからなぁ……」

 

言いながら苦笑いが浮かんでくる。

俺は寝転がっていたベットから身体を起こすと、背伸びをして時計へと目を移した。

 

「あぁ~……もう1時か……。

俺もすっかり夜型になっちまったな……」

 

悪魔稼業を手伝っているとどうしても夜に仕事をしなければならないため、昼夜逆転とまではいかないが夜は目が冴えてしまう。だからと言って朝、昼と眠たいわけではない。

俺は暇つぶしにまだ使ったことのない【魔法】を整理していく。

 

「う~ん……一誠の魔力量はなんとかなんねぇもんかな……」

 

多種多様の【魔法】は直ぐに把握出来る訳ではない。

少しずつ、少しずつ、時間を掛けてどのような【魔法】があるのかを確認して行かなければならないのだ。

 

 

 

―――――その時。

俺の部屋の床に光が走る。光は円状に広がると、見覚えのある模様を描いた。

 

「グレモリー眷属の魔法陣……?」

 

一体誰がなんのために俺の部屋へと転移してきたのだろうか。

俺は光が収まるのを待った。

そして、そこに現れたのは―――――

 

 

 

「……何のようですか?グレモリー先輩」

 

―――――一誠が主として選んだ、紅髪の女性、リアス・グレモリーがそこに居た。

グレモリー先輩は俺の姿を確認するとズンズンと詰め寄り、焦ったような表情で口を開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「士織、私を抱きなさい」

 

 

 

全く、持って、意味が、分からない。

 

俺がポカンと口を開けてグレモリー先輩を見ていると、更に近づいてくる。

俺をベットへと押し倒し駄目押しと言わんばかりに一言。

 

 

 

「私の処女を貰って頂戴。至急頼むわ」

 

思い詰め様な表情で着ている制服を脱ぎ始めるグレモリー先輩。

俺は溜息を吐きながらそんなグレモリー先輩に話し掛けた。

 

「落ち着けグレモリー先輩。

何がしたいんだアンタは……」

 

俺の上に乗っているグレモリー先輩は息を整えると反応する。

 

「私では駄目かしら……?」

 

「駄目だとか駄目じゃないとかそういう問題じゃねぇよ……。

一体どうしたんだ?」

 

「色々と考えたのだけれど、これしか方法がないの」

 

……駄目だ。話が全然噛み合わない。

俺は頭を抱えた。

 

「既成事実ができてしまえば文句もないはず。

身近でそれが私とできそうなのはあなたしか居なかったわ……」

 

やはり浮かぶのは悲しそうな表情。

そこで俺はやっと思い出した。

この時期は―――――

 

 

 

―――――結婚騒動が起きる時期ではないか、と。

 

「……祐斗では駄目。根っからの騎士(ナイト)だし……それに……いえ、何でも無いわ。

そして、イッセーには夕麻がいる……。

だからこそ、士織しかいなかったの……」

 

そう言ったグレモリー先輩は更に服を脱ごうとする。

しかし、それは―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「止めろって言ってんだよこの馬鹿」

 

―――――俺が肩を押し、体勢を入れ替えることによって阻止された。

 

「きゃ……っ」

 

グレモリー先輩に馬乗りになる形で俺は動きを制限させる。

 

「一体何をそんなに焦っているんだ?グレモリー先輩」

 

「それは……」

 

また、悲しそうな表情を浮かべたグレモリー先輩は口を噤む。

 

「ハァ……。

取り敢えず聞けグレモリー先輩……いや、リアス・グレモリー。

アンタが何を悩んでるのかは知らねぇ。けどな、アンタは俺の弟が主として選んだ女だ。

そんな女が簡単に諦めてんじゃねぇよ!」

 

俺はグレモリー先輩の肩を掴み更に言葉を続ける。

 

「抗え!アンタがそれに従いたくないなら最後まで抗えよ!

安心しろ、アンタにはもう―――――

 

 

 

―――――最強の兵士(兵藤 一誠)がついてんだからよ」

 

微笑みながらグレモリー先輩の頭を撫でた。

それと同時に部屋の床が再び光り輝く。

広がるのは再びグレモリー眷属の魔法陣。

どうやらあの人が来るようだ。

 

光が収まった後、そこにいたのは銀色の髪をしたメイド服姿の女性。

銀髪のメイドは俺とグレモリー先輩の姿を確認すると、静かに口を―――――開く前に俺へと飛び掛ってきた。

 

「おっと……」

 

俺はそれを後ろに飛ぶことで躱す。

 

「こんなことをして破談へと持ち込もうというわけですか?」

 

俺の方へと明確な敵意を向けてメイドは淡々と言う。

それを聞いたグレモリー先輩は眉を釣り上げる。

 

「こんなことでもしないと、お父さまもお兄さまも私の意見を聞いてはくれないでしょう?」

 

「……このような野蛮で下賤な輩に(みさお)を捧げると知れば旦那さまとサーゼクスさまが悲しまれますよ」

 

メイドは睨むような視線をこちらに向けながらグレモリー先輩を守るように手を広げる。

それにしても酷い。

いきなり襲われたかと思えば突然現れたメイドに『野蛮で下賤な輩』と言われるとは……。

俺は頭を軽く掻くと少々不機嫌気味に口を開いた。

 

「……いきなり来ておいてなんて物言いだよ……。

被害者はこっちだっていうのに……

……『巫山戯んなよ?』」

 

「……ッッ?!」

 

俺が自らに掛けた【封印魔法】を一段階だけ解き、言葉を発するとメイドから感じられる敵意が膨れ上がった。

 

「ま、待って頂戴グレイフィア!!

士織は悪くないの!

私が自分から此処に来て士織をその……襲った……のよ……っ!!!」

 

頬を赤く染め、恥ずかしがりながらメイドに向かって言葉を発するグレモリー先輩。

メイド―――グレイフィアと呼ばれた―――はその言葉に直ぐには反応しなかったが徐々に敵意を消していった。

 

「……申し訳ございません。

お嬢さまが襲われていたのだと勘違いしてしまいました。

私はグレモリー家に仕える者です。

名を【グレイフィア・ルキフグス】と申します。以後お見知りおきを……」

 

謝罪の言葉を述べたグレイフィア・ルキフグスは簡単な自己紹介をして、頭を下げた。

 

「グレイフィア、あなたが此処へ来たのはあなたの意志?それとも家の総意?……それともお兄さまのご意思かしら?」

 

半眼で口をへの字に曲げたグレモリー先輩。年相応の女の子らしい反応は初めて見たため、新鮮だ。

 

「全部です」

 

グレイフィア・ルキフグスはそう即答した。それを聞いたグレモリー先輩は諦めたかのように深く息を吐く。

 

「そう。お兄さまの【女王(クイーン)】であるあなたが直々に人間界へ来るのだもの。そう言う事よね。分かったわ」

 

グレモリー先輩は脱ぎ掛けだった服を丁寧に着なおす。

正直もっと早くから着てくれれば嬉しかった。

 

「ごめんなさい、士織。

さっきのことは……その……忘れて頂戴。

あなたの言葉で目が覚めたわ。

ありがとう」

 

「気にするな。

グレモリー先輩もあんなことは二度とするな?」

 

「えぇ。わかっているわ」

 

柔らかな笑みを浮かべてグレモリー先輩はそう言った。

そして、グレイフィア・ルキフグスの方へと向き直る。

 

「グレイフィア、私の根城へ行きましょう。

話はそこで聞くわ。朱乃も同伴でいいわよね?」

 

「【雷の巫女】ですか?

私は構いません。上級悪魔たる者、【女王】を傍らに置くのは常ですので」

 

「―――――士織」

 

グレモリー先輩が俺を呼ぶ。

服をすべて着たのを見計らってなのか、そのまま俺の方へと近づいて、

 

 

 

―――――チュッ。

 

 

 

頬に触れる柔らかなナニカ。

 

「今夜はこれで許して頂戴。

迷惑掛けたわね。明日、また部室で会いましょう?来てくれるわよね?」

 

「あ、あぁ……。

明日は行くつもりだったからな。

何の問題もない」

 

その言葉を聞くと、グレモリー先輩とグレイフィア・ルキフグスは魔法陣を展開し、そのまま転移していった。

 

一人残された部屋には時計の針が時を刻む音が響く。

俺は頬を軽く撫でると口を開いた。

 

「……シャワーでも……浴びるか……」

 

何となく、そんな気分だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編はいかがでしたでしょうか?
楽しんでいただけたのなら幸いです♪


さてさて雑談ですが……。
ついこの間文化祭があったのですが、やはり先輩たちは凄いですね!
ダンスに歌、劇も見ごたえが凄くありました!

私はひとまず図書室で引きこもっていたのですが……やはり友達に引っ張り出されました(涙)
屋台?出店?そんなところを連れ回されてクタクタです(苦笑)

友達に「来年は夜叉猫(仮名)もダンスしてみたら?」と言われたのですが「恥ずかしいから嫌っ!」と言うとなんとも言えない笑みで「胸が邪魔だもんねぇ……」と言われて鷲掴みされました……(涙)
しかももう一人の友達はそれを写真に撮るという徹底っぷりです……(苦笑)

ともかく、初めての文化祭は意外と楽しかったので良しとします!(笑)


それではまた次回お会いしましょう♪


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~話し合いしました~

皆さんお久しぶりですっ!!

スランプに陥って一文字も書けない日々が続きましたが、何とか1話完成しました……(苦笑)

頑張って更新していこうと思いますので暖かい目で見守って下さいっ!!

それでは、本編をどうぞ♪


Side 士織

 

グレモリー先輩襲来から次の日。

何の変哲もない学校生活も終わり、俺、一誠、木場、アーシアはグレモリー眷属の溜まり場―――――旧校舎の部室へと向かっていた。

 

「なぁ、リアス部長って何か悩んでるのか?」

 

一誠が突然そんなことを言い始めた。

我が弟ながら変なところで鋭い……。

 

「部長のお悩みか……。

多分、グレモリー家に関わることじゃないかな?」

 

「なるほどなぁ……。

……最近リアス部長が『心ここにあらず』って状態だったから気になったんだけど……」

 

一誠は呟くようにそう言うと腕を組んだ。そして、少し首を捻ったかと思えばはっとした表情になる。

 

「朱乃先輩なら知ってるよな?」

 

「朱乃さんは部長の懐刀だから、勿論知っているだろうね」

 

木場は一誠の言葉に頷く。

 

「……取り敢えず部室に早く行くぞ……」

 

俺は二人の歩みを促す。

既に旧校舎には来ているのだから早く行ったほうが良いだろう。

 

部室の扉前に到着したとき、やっと、木場がはっとした表情になる。

 

「……僕がここまで来て初めて気配に気づくなんて……」

 

目を細め、顔を怖張らせる木場。

俺は溜息を吐きながら口を開いた。

 

「気づくのが遅すぎるぞ木場……。

俺と一誠はかなり前から気づいていたのに……」

 

「な……っ!?」

 

俺の言葉に木場が一誠の方を見る。

その視線には本当なのか?という意味が込められていた。

 

「あぁ~……気づいてたけどわざと反応してなかったのかと思ってたわ」

 

苦笑いを浮かべながら木場にそう言った一誠。

対する木場は開いた口が塞がらないようだ。

 

「ほらほら、もう部室の前なんだからさっさと中に入るぞ」

 

俺はそう言うと部室の扉を開く。

室内にはグレモリー先輩、姫島先輩、小猫、そして―――――銀髪のメイド、グレイフィア・ルキフグスが張り詰めた糸のような雰囲気をそれぞれ醸し出していた。

その雰囲気に気圧されたのだろう、アーシアは不安げな表情で一誠の制服を掴んでいる。

 

グレモリー先輩はメンバーを一人一人確認するとゆっくりと口を開いた。

 

「……全員揃ったわね。

では、部活を始める前に少し話があるの」

 

「お嬢さま、私がお話しましょうか?」

 

グレイフィア・ルキフグスの申し出を要らないと手を振っていなしたグレモリー先輩。

 

「実はね―――――」

 

それは言葉を続けようとした瞬間だった。

部室の床に描かれた魔法陣が光だし、転移現象を引き起こしたのだ。

魔法陣に描かれたグレモリー眷属の紋様が変化し、初めて見る形へと姿を変えた。

 

―――――なるほどこれが……

 

「―――――フェニックス」

 

木場がそう口から漏らす。

その紋様は俺の予想した通りフェニックスのものだったようだ。と、いうことは、これから登場するのはあの焼き鳥くんなのだろう。

俺は魔法陣からその焼き鳥くんが登場するのを待った。

 

魔法陣から発せられる眩い光。

その光が収まるのと同時に―――――

 

 

 

―――――魔法陣から炎が巻き起こる。

その炎を水の魔法で消そうかと思ったがそれは杞憂に終わった。

 

 

 

「―――――おっと、済まんな。

炎の出力を誤ったようだ……」

 

炎の中で佇む男性のシルエット。そこから比較的落ち着いた声音が聞こえてくる。

そして、その男性が腕を横に薙ぐと、炎が霧散したのだ。

 

「ふぅ……人間界は久しぶりだ」

 

そこにいたのは赤いスーツを着た一人の男。スーツを見事に気崩し、胸までシャツをワイルドに開いている。見たところ二十代前半と言った風貌だ。

整った顔立ちに、何処か悪ガキっぽい影がある。木場を爽やかなイケメンとするならこの男は悪系のイケメンと言ったところだろう。

男は部屋を見渡し、グレモリー先輩を捉えると口元を少しだけにやけさせた。

 

「愛しのリアス。会いに来たぜ」

 

グレモリー先輩はそう言う男を半眼で見詰め、とても歓迎しているとは思えない対応をとっている。

そんな様子のグレモリー先輩になんとも言えないような表情を一瞬浮かべた男。何処と無く悲しそうだ。

 

「さて、リアス。

来て早速だが、式の会場を見に行こう。

不本意ながら日取りを決められてしまったんだが……決めるなら早い方が良いだろう?」

 

言って、グレモリー先輩に手を差し出す男。

 

「……そんなこと知らないわ、ライザー」

 

低く迫力のある声でグレモリー先輩はその手を振り払う。その声音からグレモリー先輩が完全に怒っているのが分かった。

男―――ライザー―――は振り払われた手を見ると、苦笑いを浮かべる。

 

「……って言うか誰??」

 

一誠はライザーを見ながらポツリと呟いた。しばしの沈黙の後、

 

「ハハハハハッ!!

そう言えば自己紹介がまだだったな……」

 

ライザーが声をあげて笑う。

そして、一誠の方を向くと両の腕を開いた。

 

「俺は【ライザー・フェニックス】。

フェニックス家の三男、純血の上級悪魔だ」

 

ライザー・フェニックスはそう言うと、その背から炎の翼を出現させた。

 

「へぇ……アンタ強そうだな」

 

「まぁ、お前よりは強いと思うぞ?人間」

 

睨み合う一誠とライザー・フェニックス。

お互いにお互いが気になっているようだ。

 

「ライザーさま、兵藤一誠さま、お戯れは程々に……」

 

そんな二人へグレイフィア・ルキフグスは厳しめの声をかけた。

 

「心配しなくともただ実力を探りあってただけですよ。

取り敢えず名前は?一応本人から聞いておこう」

 

ライザー・フェニックスはわざとらしく肩を上げグレイフィア・ルキフグスに言うと、今度は一誠の方を向いてそう言った。

 

「俺は兵藤 一誠だよライザー・フェニックス。

一応リアス・グレモリーの【兵士(ポーン)】の予定だ」

 

「へぇ……転生するのか……」

 

一誠の言葉に面白そうなものを見たかのようににやりと笑ったライザー・フェニックス。自らを呼び捨てにされたのにも関わらず気にしていない……いや、気づいていない。

 

「……ライザーさま、今日は何故此処に来たのか分かっておられますか?」

 

「おっと怖い怖い……。

きちんと分かっていますよ」

 

苦笑いを浮かべながらそう言ったライザー・フェニックス。それを確認したグレイフィア・ルキフグスは咳払いをするとゆっくりと口を開いた。

 

「本日、此処に来た理由は単純です。

―――――リアスお嬢さまとライザーさまのご婚約についてです」

 

グレイフィア・ルキフグスの言葉に個々様々な反応を示した。

グレモリー先輩は眉をひそめ、ライザー・フェニックスは腕を組み、一誠は少しだけ目を見開く。特筆するべき反応はこのようなものだろう。

……さて、どのような結末を辿るのだろうか?

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

「リアスの【女王(クイーン)】が煎れたお茶は格別だな」

 

「痛み入りますわ」

 

ライザー・フェニックスの言葉にニコニコしている姫島先輩だが、そのニコニコも何処か演技のようなモノに感じる。

ひとつのソファーに隣り合って座るグレモリー先輩と配送ライザー・フェニックス。

グレモリー先輩は我慢できないと言った表情で立ち上がると声を荒らげた。

 

「いい加減にして頂戴!

ライザー、以前にも言ったけれど私は貴方とは結婚なんてしないわ」

 

「あぁ、以前にもそれは聞いた。

しかし、リアス、そういう訳にはいかないだろう?

キミの所の御家事情は意外にも切羽詰まってると思うし……何より俺が諦めきれない」

 

ライザーは真剣な眼差しでそう言う。

 

「そんなの余計なお世話よ!!

私が次期当主である以上、婿養子だってしっかりと迎え入れるつもりよ。

けどね、ライザー。―――――貴方とは絶対に嫌よ」

 

「……つまり俺と結婚する事はありえないと?」

 

「えぇ。例え天と地がひっくり返ったとしてもありえないわ」

 

グレモリー先輩とライザー・フェニックスによる口論は次第に収まっていく。

グレモリー先輩は絶対に譲らない、と体現しているように腕を組み、対するライザー・フェニックスは静かに腕を組む。

このままでは話がつかないだろう、そう思った俺は仕方なく口を挟んだ。

 

「このままじゃ何にも解決しないな……。

グレイフィア・ルキフグス、アンタはこの話を終わらせる手段、持って来ているんだろ?」

 

「……そうなの?グレイフィア」

 

俺の言葉にグレモリー先輩は反応し、視線を移した。その視線と言葉に、グレイフィア・ルキフグスは仕方が無いといった表情を浮かべて口を開いた。

 

「兵藤士織さまのおっしゃる通りです、お嬢さま。

正直申し上げますと、これが最後の話し合いの場だったのです。これで決着が着かない場合のことを皆様方は予測し、最終手段を取り入れることとなりました」

 

グレイフィア・ルキフグスは一瞬目を閉じると、息を整えてゆっくりと口を動かす。

 

「お嬢さまがどうしても自らの意志を押し通すと言うのでありましたら、ライザーさまと【レーティングゲーム】にて決着をつけるのはいかがでしょう?」

 

「―――――ッ!?」

 

グレイフィア・ルキフグスの提案に言葉を失うグレモリー先輩。

それにしても最終手段として【レーティングゲーム】とは……いささかフェアではない気がする。確かルールとして成人した爵位もちの上級悪魔が自分の下僕を戦わせるというゲームだったはず……。

 

「……リアス、ひとつ言っておくが俺は既に公式の【レーティングゲーム】を経験しているし、勝ち星も多い。

もし、受けるというのならしっかりと考えた方がいい」

 

そう言うライザー・フェニックス。

グレモリー先輩は顔を悔しそうに歪めた。

やはり、ライザー・フェニックスはゲームを既に経験しているらしい……。まだ成熟した悪魔ではないグレモリー先輩とでは経験の差があるのだ。

 

グレモリー先輩はしばし俯き、考えるようにすると、パッと前を向き、口を開いた。

 

「……例え不利だったとしても、私は私の意思で生きていきたい……!

その【レーティングゲーム】、受けるわ!」

 

ライザー・フェニックスに向けて指を突き出し、高らかに宣言した。

 

「良いだろう。

俺は手を抜くつもりはないぞ?リアス。

不本意ながら今回は敗ける訳には行かない……っ!!」

 

「私だってそうよライザー!

あなたを消し飛ばしてあげる!!!」

 

睨み合う両者。

一歩も引かない二人は凄まじい気迫を纏わせていた。

 

「承知いたしました。お二人のご意思は私、グレイフィア・ルキフグスが確認させて頂きました。

御両家の立会人として、私がこのゲームの指揮を執らせて頂きます。宜しいですね?」

 

「えぇ」

 

「あぁ」

 

グレイフィア・ルキフグスの問いにグレモリー先輩、ライザー・フェニックスは了承した。

 

「分かりました。

御両家の皆さんには私からお伝えいたします」

 

二人の了承を確認したグレイフィア・ルキフグスはペコリと頭を下げそう言った。

 

 

 

「……なぁ、リアス。

まさかとは思うがそこの兵藤一誠と兵藤……士織?だったか?ともかくその二人を抜いた此処に居る面子がキミの眷属なのか?」

 

ライザー・フェニックスの言葉に片眉を吊り上げるグレモリー先輩。

 

「だとしたらどうなの?」

 

「失礼だが率直に言わせてもらおう。

―――――その眷属たちでは俺には勝てない」

 

そう言いながらライザー・フェニックスは指をパチンと鳴らすと、部室の魔法陣が光り出し、フェニックスの紋章を浮かび上がらせた。

そして部室には総勢十五人の眷属悪魔らしき者たちが現れた。

 

「対抗できそうなのは……そうだな、キミの【女王】である【雷の巫女】と―――――」

 

視線を俺と一誠に移すライザー・フェニックス。

 

「そこの二人くらいだろうな」

 

その言葉を聞いたグレモリー先輩は鋭い眼光をライザー・フェニックスに向ける。

 

「おぉっと……勘違いして欲しくないんだが……決してキミの眷属が弱いわけではない。

ただ言うとしたら―――――経験が足りない。その一言に限る」

 

ライザー・フェニックスの言葉に再び悔しそうに顔が歪むグレモリー先輩。

そんな時、一誠が一歩前に出た。

 

「なら、俺が出るさ」

 

「へぇ……俺としては別に良いんだが……お前まだリアスの眷属じゃないんだろ?

なら出られな―――――」

 

 

 

「―――――ならこの場でリアス・グレモリーの眷属になってやろうじゃねぇか」

 

ライザー・フェニックスの言葉に被せながらそう言った一誠は足元にひとつの魔法陣を展開した。

 

「リアス部長にはまだ俺を眷属にできるほどの実力がねぇ……」

 

展開された魔法陣。それは見間違う事なき俺の教えた【封印魔法】のそれだ。

 

「なら、俺のスペックを落としてしまえば良いんだよ。

そして、眷属になった後、その都度開放していけばいい」

 

魔法陣は独特な光を発し、一誠の体へと収束していく。

そして、その光が完全になくなったかと思えば、一誠の手に握られた八つの【兵士】の駒が中に浮き、一誠の体に溶けるように消えていった。

 

「……イッセー……自分の力を封印してまで……」

 

グレモリー先輩は一誠に駒が溶け込んだのを見るとそう呟いた。

一誠はその背から悪魔の翼を展開させるとライザー・フェニックスを挑発するように口を開いた。

 

 

 

「お前には負けねぇよ種蒔き鳥」

 

一誠はライザー・フェニックスの眷属が全て女だという点を見てそういったようだ。

さて、ライザー・フェニックスはどう返すか?俺はそう思って視線を移す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「た、種蒔き……鳥……」

 

吐血するライザー・フェニックスの姿がそこにはあった。

 

『ライザー様!?』

 

眷属である十五人はその姿を見て叫びながら駆け寄った。

 

「ら、ライザー様!!しっかりしてくださいませ!!」

 

「ゆ、ユーベルーナ……すまないな……」

 

ふらふらとしながらライザー・フェニックスは立ち上がる。

 

「よくもライザーさまを馬鹿にしたなっ!!」

 

小柄で童顔な少女はそう叫ぶと武闘家が使うであろう長い棍を取り出し一誠に向かって突撃しようとする。

それに応じてか一誠も迎撃の構えを見せた。しかし、

 

「やめろ、ミラ」

 

そんな少女の肩を掴みライザー・フェニックスが突撃を制止させた。

 

「しかし、ライザーさま!!」

 

止められたことに不満気な声を漏らす少女。そんな少女に向かってライザー・フェニックスは、

 

 

 

「俺は“やめろ”と言った」

 

 

 

強い口調でそう言った。

 

「っ?!は、はい!

申し訳ありませんライザーさま!」

 

少女は頭を下げ、棍を仕舞う。

そんな少女の頭を撫でながらライザー・フェニックスは口を開く。

 

「すまんな、少し強く言った」

 

「い、いえ~だいじょうぶですぅ~♪」

 

気持ち良さそうに頭を撫でられている少女。そんな姿を見た一誠は構えを解き、俺の方へと寄って来た。

 

「……なぁ、ライザーってホントに悪い奴か?」

 

「……それは俺も思った」

 

コソコソと話しながら俺はライザー・フェニックスの方をもう一度見る。

 

柔らかな笑みを浮かべながら少女を撫でるライザー・フェニックス。

撫でられている少女を羨ましそうに見詰める他の眷属たち。

 

「「悪い奴じゃねぇだろ……あれ」」

 

俺と一誠は声を揃えてそう言った。

何故グレモリー先輩が毛嫌いしているのかが分からなくなった……。

 

 

 

閑話休題

 

 

 

「リアス、ゲームは10日後でどうだ?」

 

自らの眷属の後始末を終えたライザーはグレモリー先輩の方を向いてそう言った。

 

「……私にハンデをくれるというの?」

 

「いや、違う。

ただ単に俺とリアスの眷属たちの調整をするのにはそれくらいあっても良いだろうという事だ」

 

ライザーの言葉にグレモリー先輩は文句も言わず黙って聞いていた。

 

「それにしてもハンデか……。

俺とキミの間には経験の差があるというのは事実。そして眷属の数も違いすぎる……」

 

ライザーは悩むようにそう呟く。

そして、俺と目が合った。

 

「……いい事を思いついたぞ。

ひとつ聞きたいんですが助っ人の参加は可能ですか?」

 

グレイフィア・ルキフグスの方を向いてライザーはそう言った。

 

「普段ならは許可出来ないですが……これは非公式の【レーティングゲーム】ですのでおそらく一人までならなんとかなるでしょう」

 

ライザーはグレイフィア・ルキフグスの答えに満足そうに首を振ると再びグレモリー先輩の方を向いて口を開いた。

 

「此処で提案だリアス。

今回のゲームにそこの少女を参加させないか?

そうすれば面白いゲームが出来るだろう」

 

その言葉は遠まわしに今の眷属たちでは敵わないと言っているようなものだ。グレモリー先輩は眉をひそめて口を開く。

 

「……ライザー……あなた私たちをどれだけ馬鹿にすれば気が済むのかしら……っ!!」

 

「馬鹿になどしていないさ。

これは単純な事実。経験の差を簡単に埋められると思わない方がいい」

 

ライザーはそう言うと手を下に向けて魔法陣を再び起動させる。

 

「参加させるさせないはキミの自由だリアス。

俺はどちらになったとしても決して敗けない。決して……な?」

 

それだけを言い残すと、ライザーは眷属と共に魔法陣の光の中へと消えていった。

 

「…………」

 

グレモリー先輩は無言のまま立ち尽くす。

おそらく俺を参加させるかどうかを悩んでいるのだろう。

 

「……お嬢さま。

助っ人の参加は如何なさいますか?」

 

そんなグレモリー先輩にグレイフィア・ルキフグスはそう声をかける。

立会人としては早急に決めてもらいたいのだろう。

しばしの沈黙の後、

 

「……私は今回敗ける訳には行かないわ。

だから私は―――――ことにするわ」

 

「……かしこまりました。

では、そのようにお伝えします」

 

グレイフィア・ルキフグスはそう言うと魔法陣を展開し、消えて行った。

 

静まり返る部室内。

しかし、そこにいる全員から決して敗けないという気持ちがにじみ出ていたのを俺は感じ取っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編の方は如何でしたでしょうか?
あまりにも久しぶり過ぎておかしな点があったかもしれません……(苦笑)


さてさて、雑談ですが……

やっとハイスクールD×Dの最新刊を買うことが出来ました……(涙)
それを読んだことでこうやって新話を書くことができたのです!
……簡単にいえばモチベーションの問題なのですが(苦笑)

ともかく、これからも頑張りますのでどうぞ宜しくお願い致します♪


それでは、また次回お会いしましょう♪


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~修行開始しました~

皆さんこんばんゎです♪

久しぶりの更新となってしまいました……(苦笑)
お待ちしていた方、いらっしゃるのでしたらすみませんっ!!

これからの展開は朧げながら頭にはあるのですが如何せん文章に起こすのが難しいのですよ……(涙)

ひとまずこんな弱音を吐かないように頑張りたいと思いますっ!!

それでは本編をどうぞっ!!!


どうも、兵藤士織だ。

 

ライザーとの話し合いが終わり、次の日。

俺と一誠、グレモリー眷属たちは大量の荷物を背負って登山をしていた。

グレモリー先輩の話によれば修行をするとの話だ。

 

「……随分と楽そうに登るわね」

 

「楽そうじゃなくて楽なんだよ」

 

グレモリー先輩の言葉にあくびをしながら返した俺は、自分の背負っている荷物を改めて視界に入れる。

俺の背中には巨大なリュックサック、両肩にはパンパンに膨れたボストンバッグが掛けられている。

 

「……こんな大量の荷物、何が入ってんだよグレモリー先輩?」

 

「士織が持っているのは殆ど食材ね」

 

「通りでゴツゴツしてて地味に痛い訳だ……」

 

ずり落ちて来たリュックサックを背負い直した俺は溜め息を漏らして山道を登っていった。

 

 

 

 

登山の末にたどり着いた山頂には、木造の別荘が建っていた。

話を聞いた所この別荘はグレモリー家の所有物らしく、普段は魔力でその姿を風景に溶け込ませることで一般人には見つからないようにしているらしい。

 

「ひとまず中に入りましょうか」

 

グレモリー先輩の言葉に続いて俺たちは別荘へと足を踏み入れた。

 

「ん~……良い香りだ……」

 

木造独特の木の香りが俺の鼻を満たす。中々の物件のようだ。

 

「それじゃあ、私たちは2階で着替えて来るわね」

 

「あぁ、分った」

 

「俺たちは此処に居ますから」

 

俺と一誠はそう返事をして、女性陣を見送った。

 

「じゃあ、僕も着替えてくるね」

 

木場はそう言うと青色のジャージを持って一階にある浴室の方へ足を向けた。

 

「……覗かないでね?」

 

浴室への通路の壁からひょっこりと現れた木場は苦笑い気味にそう口にする。

 

「覗かねぇから安心しろ」

 

「右に同じく」

 

俺と一誠は即答でそう返事をする。

そもそも最近……いや、前からだが最近は木場×士織、一誠×士織、士織総受けという不本意な噂が飛び交っているのだ。

これ以上木場に関わって不本意な噂を広めるわけにはいかない……。

 

「取り敢えず俺たちも着替えるか……」

 

「だな」

 

俺は黒のジャージを持ってお手洗いへ、一誠は白のジャージを持ってキッチンへと向かった。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

全員が着替え終わり、別荘の前に集合したのを見計らって、俺は口を開いた。

グレモリー先輩から頼まれたことを果たすために。

 

「んじゃ、俺は指導役(・・・)っつうことで……大まかな予定は立ててきたんだが……」

 

そう、俺は助っ人として【レーティングゲーム】に参加するのではなく、参加するメンバーを鍛える側に回ることになったのだ。

 

「……正直、俺は皆のきちんとした実力を知らねぇから本当に大まかなモノしか決めてねぇんだわ。

だから、ひとまずは俺と組み手してもらえるか?」

 

俺がそう言うと、皆頷いてくれる。

 

「助かるぜ。

んじゃ、まずは誰から……」

 

俺の言葉を聞いて、誰よりも早く手を挙げたのは―――――

 

 

 

 

 

「まずは僕から良いかな?兵藤さん」

 

―――――腰に木刀を携えた木場だった。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「君とは一度剣を交えてみたかったんだ」

 

木場はそう言うと、爽やかなスマイルを浮べて木刀を中段に構える。

 

「俺が剣を使うとか言ったことあったか?」

 

「足運びが剣士のそれを匂わせていたからね……」

 

「へぇ……しっかりと【騎士(ナイト)】やってるみたいだな」

 

俺は少しばかりの笑みを浮かばせ、木刀を手に持つ。

 

「……この際だから見せようか。

俺が継いだ【不知火式】という剣を」

 

「【不知火式】……?

それが君の剣なのかい?」

 

「そういうことだよ。

取り敢えず―――――かかって来い」

 

木刀の剣先は地面に触れるか触れないかと言った程までに下げて持つ。

 

「言われなくとも……行くよっ!!」

 

木場は地面をしっかりと踏み蹴り、動き出す。なるほど、このスピードは人間なら捉える事は出来ないだろう……。

 

 

 

 

 

「―――――けど遅い」

 

「なっ!!!?」

 

背後から斬りかかって来た木場の木刀を見ることなく身体をずらすことで躱す。

そして、木場の懐に潜り込むように反転してしゃがむと木刀を引きその胸に向かって神速の刺突きを行う。

 

「不知火式“一刀”【二尽(ふたつき)】」

 

「かふ……っ!!!?」

 

木場は苦しそうに息を吐き出すと、そのまま後ろへ吹き飛ばされた。

そしてそのまま地面を引きずられるように滑り、停止した。

 

「…………」

 

その場に静寂が広がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょ、ちょっと士織!?

いくらなんでもやり過ぎよっ!!」

 

グレモリー先輩ははっとした表情になり、木場に駆け寄る。

俺は木刀を地面に突き刺すとふう、と息を吐き口を開いた。

 

「安心しなグレモリー先輩。

さっき木場が飛んだのは木刀が当たったわけじゃなくて、剣圧で吹き飛んだだけだから。

証拠にほら、木場の胸ん所見てみな」

 

グレモリー先輩は俺の言葉に従って倒れている木場の胸のあたりに視線を移す。

そこには何の傷も無い綺麗なジャージがあった。

 

「……ぼ、僕もさっきは大袈裟に反応しましたが……今となっては何の問題もありません」

 

木場もゆらゆらと立ち上がり傍に居たグレモリー先輩に微笑みかける。

それを見たグレモリー先輩はほっとした表情を浮かべた。

 

「それにしても強いね兵藤さん。

まさか僕の攻撃を見もしないで躱されるなんて……これは僕が自惚れてたってことかな?」

 

「いや、中々のスピードだったぞ?

磨けば光る原石ってとこだな」

 

俺がそう言うと、木場は目を大きく開き、その後爽やかなスマイルをこちらに向けた。

 

「ありがとう兵ど「士織で良いぞ」……えっ?」

 

「……これからは俺も祐斗って呼ぶからよ 」

 

「分かったよ……士織……さん」

 

祐斗は若干俺の名前を言うのに詰まったがしかし、きちんと呼んでくれる。

俺と祐斗は互いに歩み寄って握手を交わした。

 

「取り敢えずこれから鍛えていくから覚悟しろよ?」

 

「あはは……お手柔らかに頼むよ」

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

「……次は私の番です、士織先輩」

 

ハーフフィンガーグローブを装備した小猫は軽くストレッチをこなすとそう呟き、こちらへ視線を向けた。

 

「小猫は徒手空拳か?」

 

「……こっちの方が闘いやすいですから」

 

「なら、俺もそれに合わせるかな……」

 

俺は手をブラブラと振って準備運動をする。武器なしの肉弾戦なんて一誠としかやったことがないから良い経験になるだろう。

 

「……先輩はなんでも出来るんですね」

 

「ん~……まぁ、戦闘系は結構出来るよ」

 

そう言った俺は右手を小猫の方へと向けて指をクイックイッと曲げる。

 

「来いよ小猫。遊んでやる」

 

「……舐めないで下さい……っ!!」

 

身軽なフットワークで左右に振りながら小さな肢体を効果的に使用する小猫。

俺に接近してきた瞬間細かなジャブを放ってくる。

 

「中々素早いけど軽いな小猫。

まるでダメージが無いぞ?」

 

「……わかってます」

 

そう呟いた小猫は左足を前に出し、身体を捻りながら右拳を振るってきた。

抉るように振るわれた拳は俺の中心線を的確に狙っている。

 

「……だから軽いんだよ、小猫」

 

「……ッ!?」

 

俺はその拳を手のひらで受け止めるとそのまま一本背負いの要領で小猫を地面に叩きつける。

 

「……取り敢えずはここまでだな」

 

「……本当に士織先輩は人間ですか?」

 

「なんだその質問は……俺が人外にでも見えるか?」

 

「……悪魔よりも強い時点で人間を止めている気がします」

 

「まぁ、ごもっともで」

 

俺は苦笑いを浮かべながら地面に倒れている小猫を立ち上がらせた。

 

「小猫は取り敢えず技を磨いていくか。

一撃の威力を上げるってのはまた今度だな」

 

「……わかりました士織先輩」

 

俺は立ち上がせた小猫の頭を撫でた。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

「あらあら、連戦なんかして大丈夫ですの?」

 

「あぁ~……気にしないでくれ姫島先輩」

 

「そうですの?

なら、遠慮なくいかせてもらいますわね」

 

そう言った姫島先輩は悪魔の翼を広げ、宙に舞った。

 

「姫島先輩は魔術師(ウィザード)タイプだったな……なら俺は【妖精の魔法(エンジェリック・スペル)】 で行かせてもらおう」

 

俺がそう言うと姫島先輩は目を輝かせた。

 

「あらあら、うふふ……私士織君の【妖精の魔法】にとても興味がありましたの。

それが今日体験できるなんてラッキーですわぁ……」

 

恍惚とした表情でそう言う姫島先輩。

あれ?この人ってSじゃなかったか?俺の魔法を体験って……もしかしなくても喰らうことだよな?それなのにあんな表情をするって……実はMな人だったか?

 

「ともかく……いきますわよ?」

 

その言葉と共に俺に雷が降り注いだ。

降り注ぐ雷は中々の威力であるのには変わりないが……俺にとってはただの()である。

 

「あらあら?やりすぎたかしら?」

 

姫島先輩の言葉が聞こえてくるがそれは油断というものだ。

何かをやり遂げた時、それこそが一番隙だらけになる。それを姫島先輩は分かっているのだろうか?

 

 

 

「……なんだか不安ですわ……。

もう一度攻撃しておきましょう……」

 

あ、意外と容赦無く攻撃する人みたいだ。

それからの姫島先輩の動き出しは早かった。即座に雷を生み出し、それを俺に向けて放つ。

 

―――――しかし。

その雷が俺に当たることも、地面に当たることも無かった。

 

「な……っ!?」

 

何故ならば、姫島先輩の放った雷は―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「か、雷を……食べてる……!?」

 

―――――俺の口の中へと吸い込まれて行ったからである。

 

姫島先輩の雷を残さず()()()しまった俺は口元を軽く拭い、宙に浮かんでいる姫島先輩の方へと視線を移した。

 

「美味い雷だったよ姫島先輩」

 

「お、お粗末様……です?」

 

「取り敢えず……そのお礼として雷の【妖精の魔法】を喰らわせてやるよ」

 

言って、俺の身体から雷が迸る。

 

「……鳴り響くは招雷の轟き……天より落ちて灰燼と化せ……【レイジングボルト】!!」

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!!!?」

 

指を鳴らしたのと同時に、姫島先輩の体が極太の雷に飲み込まれた。

ほんの少しの魔力しか込めていないため、見掛け倒しの威力しかないが……ビリビリするのはまぬがれない。

俺はレイジングボルトを喰らって落ちてきた姫島先輩を抱きとめるとゆっくりと立たせる。

 

「大丈夫か?姫島先輩」

 

「え、えぇ……かなりビリビリしましたがダメージはあまりないようですわ……」

 

そう言ってふらふらとおぼつかない足取りの姫島先輩。

 

「取り敢えずさっきのレイジングボルトなら姫島先輩でも真似できそうだろ?」

 

「そうですわね……雷の収束と発生場所を自由自在に操るコントロール、それと放つスピード……この3つを同時にこなさないといけないようですわね……」

 

「まぁ、そうなんだけど……今回はコントロールを集中して修行しようか。

姫島先輩の攻撃は燃費が悪そうだ……」

 

俺が苦笑いを浮かべながらそう言うと、姫島先輩はわかりましたわ、といって頷いた。

 

 

 

「あ、そうだ……アーシア!」

 

「は、はひっ!?

なんでふか士織ひゃん!!」

 

俺と姫島先輩の組み手?を傍で見ていたアーシアをこちらに呼び寄せる。

それにしても噛み噛みだな……。

 

「魔力のコントロールについて姫島先輩と一緒に修行しな?

修行内容は前に言ってたやつと……後で渡すモノをしてくれ」

 

「わ、わかりました!頑張ります!!」

 

俺はアーシアの頭を軽く撫でて姫島先輩の方へと向き直る。

 

「アーシアとの修行は良い刺激になると思いますよ?」

 

「あらあら、士織君がそういうのなら楽しみにしておきましょうかしらね?」

 

姫島先輩は頬に手を当てながらニコニコと笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

「チェック・メイト」

 

「うっ……」

 

騎士(ナイト)】の駒を進めた俺はそう宣言してコーヒーを啜る。

3人との組み手の後、それぞれに修行内容を言い渡し、メモまで渡した俺は【(キング)】であるグレモリー先輩とチェスで対戦していた。

 

「これで俺の十連勝……グレモリー先輩勝つ気あるか?」

 

「あ、あなたが強過ぎるのよ!!」

 

初めは駒を取れていたグレモリー先輩だったが4戦目辺りからだんだんと取れなくなっていき、7戦目ともなるとひとつも駒を取ることが出来ずに負け始めた。

 

「……グレモリー先輩……アンタはサクリファイスを嫌う傾向にあるな」

 

「……」

 

「嫌いなら嫌いでいいが……覚えておけ?

時にはサクリファイスが必要な時が出てくるということを……」

 

俺が真剣な眼差しを向けながらそう言うと、グレモリー先輩は悩まし気な顔で頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……取り敢えずはもう一戦だグレモリー先輩」

 

「……えっ……!?」

 

「取り敢えず俺から駒をひとつ取れるまで続けるぞ?」

 

「そ、そんな……っ!?」

 

「そうだな……二十連敗したらペナルティーでも与えるか……」

 

「ちょ、ちょっと待ちなさ―――――」

 

「ひとまず二十連敗したらグレモリー先輩お尻ペンペンな?」

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!!!」

 

グレモリー先輩の悲鳴が響きわたった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは完璧な余談だが、グレモリー先輩は二十連敗してしまったのでお尻ペンペンを俺から喰らうこととなった。

あの時の悲鳴は中々……おぉっと……これ以上はグレモリー先輩のプライバシーに関わるので止めておこう……。

 

こうして修行の1日目が終わったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編はいかがでしたでしょうか?
楽しんで頂けたのなら幸いですっ!!


それにしても最近、士織しかり、夜鶴しかし、キャラがぶれ始めました……(涙)

書いていてあれ?っと思うことが多々あります(苦笑)

これもおそらくキャラを友達を元に作ってるからなのでしょう……(笑)


さてさて、次はもっと早くに更新できるように頑張ります!!!

それではまた次回お会いしましょう♪


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~試練与えました~

皆さんこんばんゎ♪

今回は結構早く更新できたので嬉しい夜叉猫です♪

この修行のお話が終わる頃には原作と劇的な変化を遂げる人が居ますのでそれをお楽しみに♪

それでは本編をどうぞ♪


どうも、兵藤士織だ。

 

初日にグレモリー眷属の中でも実力がよくわからなかった3人と組み手を行えたおかげで修行内容は修正することができた。

一応修行内容は伝えているが、1日に1回、皆の下へ訪れている。

 

今は祐斗の下へ訪れており、祐斗がギリギリついてこれるスピードで組み手を行っていた。

 

 

 

「―――――ほら、一瞬スピードが落ちたぞ祐斗」

 

「く……っ!!!」

 

背後を取られた祐斗。なんとか対処しようとするが……。

 

「背後を取られた後の反応が遅いな」

 

「うわぁっ!!!?」

 

俺は祐斗の肩を押し、軸となっている脚を払った。それによりバランスを崩し地面に倒れ込んだ。

 

「はぁ……はぁ……っく……!

い、いくらなんでも速すぎないかな……!」

 

「何言ってんだよ祐斗。

俺はお前が出せる最速と同じスピードで動いてるんだ。ついていけない道理は無いはずだぞ?」

 

地面に大の字で倒れている祐斗。

握られていた木刀も放り投げ荒い息を吐いていた。

俺は木刀を地面に突き刺してそれを眺めている。

 

「最速戦闘は今のところ持って10分か……。

最低でも30分は欲しいな……」

 

「さ、30分!?

無理だよ!10分でも死にそうなのに……」

 

祐斗は大の字に倒れたまま悲痛な声を上げた。体を起こして反応しない辺り本当に限界を迎えているのだろう。

 

「……仕方ねぇな……」

 

俺は倒れたままの祐斗に近づき、お腹に手を当てた。

 

「な、何をしてるのかな士織さん!?」

 

「ん~?まぁ、静かにしてろって」

 

言って、俺は魔法を発動させた。

祐斗の身体が一瞬光に包まれるのを見て、魔法の発動を確認する。

 

「体の調子はどうだ?祐斗」

 

「え、えっとね……不思議なことに……」

 

祐斗は倒れたまま引き攣った笑みを浮かべ―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――凄く身体が重たいよ?!」

 

そう叫んだ。

 

「あはははは!!

そりゃそうだろうな!」

 

「何これ全然動けない!?

指すらも動かないんだけどなっ!士織さん!?」

 

祐斗は視線だけ俺の方を向いて訴えかける。

俺はそんな祐斗に微笑みながら言葉をかけた。

 

「今祐斗の身体には【重力増加】の魔法を掛けた。

今日からその身体で修行をこなしな?」

 

「そ、そんな……っ!?」

 

祐斗は泣きそうな表情を浮かべる。

しかし、俺は立ち上がり歩み出す。

 

「まぁ、頑張りな?祐斗」

 

その言葉を聞いたときの祐斗の顔はそれはもう絶望の色しかなかった。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

「……当たって下さい」

 

「だから当ててみな?」

 

【重力増加】魔法により動けなくなった祐斗を放置した俺は小猫の所を訪れていた。

 

「……そこ……っ!」

 

「残念、それはわざと作った隙」

 

「うにゃっ!?」

 

拳を振り抜いた小猫の額にデコピンを当てる俺。そしてすかさずバックステップで小猫の裏拳を躱す。

 

「……なんで目隠ししてるのに当たらないんですか……」

 

「ん~……音だな。

小猫の息遣いと動く時の風を切る音。

この2つさえ分かれば大体の距離と次の動作は予想出来るんだよ」

 

真っ暗な視界の中おそらく小猫が居るであろう方向を向いてそう話した。

 

「……廃スペック過ぎます士織先輩」

 

「小猫ならいずれ出来るようになるだろうよ」

 

そう言った俺は手を振って軽いストレッチをする。

 

「……余裕そうですね」

 

「そうだなぁ……今の小猫相手ならいくら数を揃えられても敗ける気はしねぇな」

 

「……あまり舐めてないで下さい」

 

少しだけ怒気の孕んだ小猫の言葉。

その後直ぐに小猫が動いたのを感じ取った。

接近してきた小猫が行ったのはボクシングを応用した高速のラッシュ。

 

「ん~……リズムも取れてきたな……」

 

「……当れ……っ!!」

 

俺は小猫のラッシュをバックステップで抜け出すとひとつ言葉を吐いた。

 

「来な?小猫」

 

「……言われなくとも……っ!!」

 

再び接近してきた小猫は今度は動きながらラッシュを繰り出してくる。

しかし、そのラッシュ中俺は―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――ジャブ、ジャブ、右ストレート、ハイキック、左フック、右フック、ミドルキック、回し蹴り、左ボディー、右ボディー、右アッパー、膝蹴り、左アッパー」

 

―――――小猫の技を全て予測して口にしていった。

 

「回し蹴り、左フック、右アッパー、左ボディー、ローキック、右ストレート、ジャブ、ジャブ、ジャブ、左ボディー、回し蹴り、右ストレート、ハイキック……そろそろ飽きたな……」

 

俺はそう呟くと数回後に来た右ストレートを避けずに左腕で絡めとる。

 

「……えっ……?」

 

そして小猫の前に進むという力を利用してそのまま地面に組み伏せた。

 

「……小猫はリズムが取りやすいな。

良くも悪くも素直過ぎる」

 

俺は組み伏せた小猫から離れて目隠しを取りながらそう言った。

 

「確かに小回りは効くようだが次の動作が予測しやすいんだよ」

 

「……士織先輩が規格外過ぎるのでは?」

 

「俺じゃなくても小猫の攻撃は予測されるだろうよ」

 

背伸びをして、小猫の言葉に返事を返す。

小猫は俺の言葉を聞きながら手を握ったり開いたりしていた。

 

「間に混ぜるフェイントも何処か不自然だな。

これはフェイントですよって教えてるようなもんだぞ?ありゃ」

 

「……練習します」

 

「うし、そのいきだぜ小猫。

今晩は俺が飯作るから楽しみにしてな?」

 

「お腹を空かせます!」

 

小猫はそう言うと、何処かへ走り出して行った。

 

「……あいつ飯で釣ったらなんでもこなすんじゃねぇか……?」

 

俺は苦笑いを浮かべながらそう呟いた。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

「調子はどうだ?

アーシア、姫島先輩」

 

「士織さん!」

 

「あらあら、士織君」

 

魔力のコントロールについて修行している姫島先輩とアーシア。

今更な話だがアーシアはグレモリー先輩の【僧侶(ビショップ)】の駒で悪魔に転生している。

一誠が転生したのなら私も転生したいと言っていたところ、それを聞いたグレモリー先輩はこれは好機とアーシアにアタックを仕掛けたのだ。

アーシアはそれを受け入れ、めでたくグレモリー眷属となったのだった。

 

「見てください士織さん!

私、氷との相性が良いみたいです!!」

 

そう言ったアーシアは手に野球ボールサイズの魔力球を生み出し、それを氷へと変換させた。

 

「へぇ……魔力コントロールも良く出来てるし属性変換まで……。

今までの修行が報われたみたいだな」

 

「はいっ!

これも士織さんのお陰ですっ!」

 

嬉しそうに語るアーシア。

以前から家で魔力コントロールを修行させてはいたが、今回の修行でそれがしっかりと実を結んでいるのが分かった。

 

「それにしても氷との相性が良いのか……。

もしかしたら俺の【氷の造形魔法】を真似できるかもな」

 

「本当ですか!

今度教えて下さいっ!!」

 

「そうだな……教えるのは吝かでないが……もっと魔力の扱いが上手くなってからだな」

 

「わかりましたっ!

私、頑張ります!」

 

そう言ったアーシアの頭を優しく撫でた。

 

「あらあら……私は仲間外れですの?」

 

そんな俺とアーシアを見ていた姫島先輩は冗談めかしくそう言う。

 

「んな訳ねぇだろ。

で、どうだ?修行の方は」

 

「……やってみてはいるのですが……」

 

姫島先輩は困ったような表情を浮かべる。

そして、瞳を閉じると姫島先輩の周りにハンドボール大の魔力球が複数出現した。

 

「……10個か」

 

「はい。これが、今の私に、出来る……最大の数です」

 

区切り区切りに言葉を吐いた姫島先輩の顔は強ばっている。

この魔力球を生み出す修行は一見簡単そうに見えるがそんなことはない。生み出した魔力球の大きさは全て均等にしなければならず、少しでも気を抜けば大きさがバラバラになってしまうのだ。

 

「まぁ、頑張ってるみたいだな。

取り敢えず姫島先輩は修行終了までにその魔力球の大きさを変えることなく自由自在に操れるようになれ」

 

こんな風に……、と付け加えながら俺は周りに姫島先輩と同じ10個の魔力球を生み出す。そしてその魔力球を身動きひとつすることなく動かした。

10個の魔力球を円状に並べ替え高速回転させたり、10個全てを四方八方に散らせたりなどを行って見せる。

 

「……この止まった状態でもギリギリなのに更に動かせとおっしゃるんですか……?」

 

「そうだぜ?」

 

「……さ、流石にそれは……」

 

いつものようにニコニコと笑うのではなく引き攣った顔で笑う姫島先輩。

このままではモチベーション的にも達成することは不可能だろうと判断した俺はひとつの提案をした。

 

「もし、修行終了までに成功させれたら俺の【妖精の魔法(エンジェリック・スペル)】をひとつ伝授してやるよ」

 

「本当ですの!?」

 

俺の提案を聞いた姫島先輩は途端に瞳を輝かせる。

 

「あぁ……本当だ。

まぁ、伝授するのは仕組みだけだからそっから自分の技に昇華出来るかは姫島先輩次第だけどな」

 

「分かりましたわ!

やってみせましょう!!」

 

先程までとは打って変わって、姫島先輩はやる気に満ち溢れた表情を浮かべていた。

 

「士織君!約束ですからねっ!!」

 

そう言った姫島先輩はアーシアを連れて何処かへと足早に向かって行った。

 

 

 

 

 

「あ~……飯の準備でもすっか……」

 

一人残された俺は頭を掻きながらキッチンへと向かった。

 

「小猫には期待させること言っちまったからな~……。

まぁ、適度に頑張るか……」

 

俺は何を作るか考えながらそう呟いた。

ただひとつ決まっていることといえば、それは―――――

 

 

 

―――――大量に作らないといけないということだ。

小猫の大食いを舐めたらいけない。

 

人生の教訓にでもしてしまおうか?

 

苦笑いを浮かべながらもそんなことを思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、グレモリー先輩。

ちょうどいいや、グレモリー先輩俺にチェスで一勝出来なかったら裸踊りさせるから皆の前で」

 

「いきなり通りかかったかと思ったら死刑宣告なの!?」

 

キッチンへと向かう途中でグレモリー先輩がいたのでそう告げると読んでいた本を放り投げ、涙目で叫んだ。

 

「なに、俺に一勝すれば良いだけだ」

 

「だからそれが―――――」

 

「取り敢えず決定事項だから。

まぁ、死に物狂いで頑張りな~」

 

俺は相手にすることなく、手をひらひらと振って足を進めた。

 

 

 

「敗けたら死ぬ……敗けたら死ぬ……敗けたら死ぬ……敗けたら死ぬ……敗けたら死ぬ……敗けたら死ぬ……敗けたら死ぬ……敗けたら死ぬ……敗けたら死ぬ……敗けたら死ぬ……敗けたら死ぬ……敗けたら死ぬ……」

 

背後から呪詛の如くその言葉が聞こえてきたが俺は振り向かなかった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編は如何でしたでしょうか?
楽しんで頂けたのなら幸いです♪


さてさて、雑談なのです♪

本日夜叉猫はナルトの映画を見てまいりました♪
仲良くなった先輩(男性)に映画に誘われたので行ったらちょうどナルトが見たくなり、見ました♪

感想は……ヒナタちゃんが可愛かったのです♪
私的にはヒナタちゃんは好きなキャラなので満足できました~♪


さてさて、今回はこの辺りで……。
また次回お会いしましょう♪


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~休息しました~

皆さんお久しぶりですっ!!

お正月からだらけてしまっていたので更新が遅くなってしまいました……(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)

ひとまず、本編をどうぞ♪


Side 三人称

 

「ほら、今日は中華で攻めてみたぞ。

かなりたくさん作ったから遠慮せずに食え」

 

そう言った士織の前にあるテーブルには満漢全席とまではいかないがかなりの量の料理が所狭しと並んでいた。

その日の修行により疲れきった様子のリアス、朱乃、小猫、一誠は途端に目を輝かせる。しかし、誰一人として料理に手をつけようとはしない。

 

「どうした?食わねぇのか?」

 

「祐斗がまだ来ていないから……」

 

そう言ったリアスに士織はなるほど、と納得した表情を浮かべた。他の3人もその通りだと頷いている。

 

「祐斗の奴ならまだ当分は戻って来ねぇだろうから先に食っとけ」

 

「でも……」

 

「ウダウダ言ってねぇでさっさと食え。

そもそも祐斗が皆を待たせたと知ったら悲しむぞ?」

 

士織がそう言うとリアスは渋々ながらも分かったわと呟く。そして、手を合わせると、それに順じて朱乃、小猫、一誠も手を合わせた。

 

『頂きます!!』

 

四人はそう言うと、各々待ってましたと言わんばかりに大皿に盛られた料理を小皿に取り口へと運んだ。

 

「……美味しすぎる……」

 

「……自信がなくなりそうですわ……」

 

リアス、朱乃は士織の料理を食べると引き攣った笑みを浮かべてそう呟く。しかし、その箸は止まらない。

 

「流石士織。いつも通り美味いぜ」

 

「美味しいです士織先輩っ」

 

一誠、小猫はパクパクと箸をすすめていく。その表情はとても穏やかで嬉しそうなモノが浮かんでいる。

 

「取り敢えず全部褒め言葉として受け取っておくわ」

 

士織は苦笑いを浮かべながらも自分の席に座った。その苦笑いには何処か暖かい感情がこもっていたのは見間違いではあるまい。

腰につけていたエプロンを外すと背伸びをしながら一息吐く士織。

 

「……そう…はむっ…言えば…もぐもぐ…何で…ごくん…祐斗先輩が…あむっ…此処に…はふはふ…来ないって…ごくん…分かるんですか?」

 

「……食べるか聞くかどっちかにしろ小猫」

 

「……もぐもぐもぐもぐもぐもぐ……」

 

「食べる方に集中するのかよ!?」

 

目にも止まらぬスピードで消えていく料理とまさか聞くという選択を破棄したということに驚いた士織は椅子から立ち上がり叫んだ。

 

「……美味しすぎるので……つい」

 

3枚の大皿に盛り付けられた料理を殆ど一人で平らげた小猫は口元を拭きそう言った。

一応記しておくが、小猫が大皿3枚分の料理を食べたのはほんの一瞬の間である。

 

「小猫の行動はともかく、俺も気になるな。

木場のやつなんで此処に居ないんだ?」

 

一誠は苦笑いを浮かべながら士織にそう言った。

すると、士織は満面の笑みで口を開く。

 

 

 

「それなら祐斗が修行に苦戦してるからだな。

おそらく此処に来てないということは……動けてすらいないんだろうよ」

 

 

 

士織はそう言うと、小皿に取っていた春巻きを口に運んだ。もぐもぐ、と士織の咀嚼音だけがその場に流れる。

 

「……えっ……?

つ、つまり此処に祐斗がいないのはあなたのせいなの?」

 

唖然とした表情を浮かべながらリアスはそう問うた。若干の憤りが混じったようなそんな声音。

 

「そうだなぁ……。

まぁ、そうなるんじゃねぇか?」

 

「……あなたねぇ……」

 

リアスは頭を抱えながらため息混じりに呟く。それを見た朱乃はニコニコと笑いながらも何処か困ったような感情を醸し出していた。

 

「うふふ……士織君、程々にしてあげて下さいね?」

 

「ん~……まぁ、考えとくわ」

 

「士織お前考える気ないだろ……」

 

「……何か言ったか?一誠」

 

一誠の言葉にニッコリと笑顔を浮かべて言葉を返す士織。いつもならその笑顔に恐怖を感じるはずのない一誠も声のトーンから顔が強ばる。本来笑顔とは攻撃的なものなのだと再確認する一誠なのであった。

 

「……何でもございません……よ」

 

一誠の表情を強ばらせながらの一言。どことなく慣れたような返答だ。流石は兄弟と言うべきだろうそのやりとりには若干の微笑ましささえ感じてしまう。

 

―――――その後士織たちは祐斗についてグチグチと言い合いながらも楽しそうに食事を再開したのだった。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

Side 士織

 

皆が食事を終えたのを確認した俺は食器を片付け洗い物をしていた。

やはりというべきか、小猫の食欲には目を見張るものがある。まさか用意していた料理の半数以上を平らげてしまうとは……。

 

「まぁ、気持ちのいい食いっぷりだったな」

 

洗い終えた食器からしっかりと水気を拭き取り、元あった場所へ片付けた俺は背伸びをする。窓から見える外の景色はもう暗く閉ざされていた。

 

「士織~」

 

「ん?何だ一誠。俺に何か用か?」

 

「いや、俺たちは風呂に行くからって伝えに来たんだよ。

士織も一緒に入るか?」

 

そう言った一誠は人懐っこい笑みを浮かべ、着替えなのだろう浴衣を掲げて見せた。

 

「遠慮しとく。

俺は後から入るから気にすんな」

 

「やっぱりそうか?」

 

「おう。ついでに祐斗も迎えに行くから心配すんなってグレモリー先輩達にも伝えておいてくれ」

 

「りょ~かい」

 

一誠はサムズアップすると踵を返して風呂へと駆けていった。俺はその姿を眺めながら苦笑いを浮かべる。風呂に走っていく一誠の脚は浮き足立っているようにも見える。

 

「……取り敢えず祐斗を迎に行くとするか」

 

俺はそう呟くと服を一枚羽織り、用意しておいた水筒とタオル片手に祐斗が居るであろう場所へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「祐斗~生きてるか~?」

 

周囲を魔力球を使いながら照らし、祐斗の居場所を探す。

 

「し、士織……さん……」

 

掠れた声で俺の名が呼ばれる。

何処から聞こえたのかと辺りを照らし直すと少し離れているが俺の視界に入る距離に倒れている祐斗の姿を捉えた。

 

「おぉ、祐斗。

その様子じゃ動けねぇみたいだな。

連れて行ってやろうか?」

 

祐斗の傍へと移動した俺は意地悪な笑みを浮かばせそう口にする。

 

「……いや、大丈夫だよ……。

丁度良い、タイミングで、来てくれた……」

 

祐斗は辛そうにそう言うと深呼吸を始める。すると、祐斗の身体に魔力が纏われてゆく。

 

「……やっと魔力が回復してね……。

【身体強化】に回さないと動けないって分かったから取り敢えず必要最低限の魔力が回復するまで休んでいたんだ……」

 

ゆっくりと立ち上がり砂埃を払うとこちらを向いて爽やかなスマイルを浮かべる。

 

「へぇ……急ごしらえの【身体強化】にしてはやるじゃねぇか」

 

「【身体強化】をしたとしてもまだ身体が重たいんだけどね……」

 

魔力消費が少し多い気がするがまぁ、及第点は与えられるであろう【身体強化】。

祐斗はそういうが動けているだけでもなかなかのものである。

本来は立ち上がる事すら不可能だろうと思っていたのだが……少し見くびっていたようだ。

 

「取り敢えずほら、タオルと水分。

汗拭いてこれでも飲め」

 

「おっと……ありがとう士織さん」

 

祐斗は感謝の言葉を述べると俺が渡したタオルで汗を拭った。やはりタオルを持ってきて正解だったようだ。

 

「今日のところは別荘に戻るぞ。

他の奴らは風呂まで済ませてる」

 

「遅くなり過ぎたんだね……」

 

祐斗は苦笑いを浮かべながら俺の言葉に耳を傾ける。

と、そんな時。静かなその場にきゅ~っという音が聞こえてきた。

音の発生源を辿ってみると―――――

 

 

 

「……っ!!」

 

―――――顔を赤く染めた祐斗の姿が。

 

「お前は乙女かっ!!!」

 

「痛っ!ひ、酷いな士織さん!

僕は紛れもなく―――――じゃなくて!

手刀を落とすなんて酷いじゃないか!」

 

「お前が変な反応するからだろうが!」

 

そうは言ったものの、祐斗の発言に何処か引っかかるところがあったのは気のせいだったのだろうか……。

俺はひとまずその考えを置いておいて、祐斗の方を向いた。

 

「……飯なら新しく作ってやるから早く帰るぞ」

 

「士織さんのご飯か!

それはとても楽しみだ」

 

祐斗お馴染みのスマイルを浮かべながら俺と一緒に別荘の方へと歩み出した。俺は作るメニューを考えながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご馳走様でした」

 

「お粗末さん。

思いの外食ったな」

 

「士織さんの料理が美味しすぎたからね」

 

祐斗は満足そうな表情を浮かべていた。

別荘に戻ってきた俺は多めに祐斗の夕食を作ったのだがそれを素早く完食してしまったのだ。どれだけお腹が空いていたのかがわかる。

俺は祐斗の姿を改めて見ながら口を開く。

 

「俺は洗い物をするから風呂に入れ。

身体中汚れてて気持ち悪いだろ?」

 

「そうだね……。

それじゃぁ、お言葉に甘えて……」

 

祐斗はそう言うと立ち上がり、自分の部屋の方へと歩いて行く。

テーブルに置かれた空の食器を片付けていると、祐斗と入れ替わりに一誠が現れた。

 

「お疲れ様士織」

 

「あぁ、一誠か。

どうした?寝なくていいのか?」

 

重ねた食器を手に持ちながら一誠の方を向く。早めに洗ってしまいたのいだが……。

 

「そりゃ、寝るけど……それより」

 

一誠は俺の手から食器を奪い人懐っこい笑みを浮かべる。

 

「士織も疲れてるだろ?

風呂行ってこいよ。洗い物位俺がするからよ」

 

「……ったく。

サンキュ一誠。気ぃ使わせて悪いな」

 

「気にすんなよ士織。兄弟だろ?

それに、いつも士織ばっかり仕事してるからな。これくらいやらせてくれよ」

 

そういった一誠は食器を持ったままキッチンへと向かって行った。

 

「風呂でしっかり休めよ~っ!!」

 

キッチンの方から響いてくる一誠の声についつい笑みが溢れてしまう。

俺は背伸びをすると着替えを取りに向かう事にした。

祐斗も風呂に入っているが……まぁ、大丈夫だろう。

 

気が利く弟を持って俺は幸せだな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編はいかがでしたでしょうか?
楽しんでいただけたのなら幸いですっ!!

早くライザーとのゲームを書きたいのですが話が進まなくて……(苦笑)


さてさて、雑談なのですが……。
学校が始まってしまったのです……(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
課題は終わらせていたのですが如何せん身体が休日モードでして……。
最近は小説の先の展開が頭の中に浮かぶだけで文字に起こせない日々を過ごしております……(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)

次はできるだけ早めに更新が出来るように頑張りますので、どうぞ宜しくお願い致しますっ!!


それでは、また次回お会いしましょう♪


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~預かりました~

皆さんこんばんは♪
今回は比較的早く更新できたと思いますっ!!

ひとまず、本編をどうぞっ!!


Side 三人称

 

広い、広い露天風呂。

そこには一人の少年の姿以外は何処にも見当たらなかった。

 

「ふぅ……」

 

背伸びをする少年―――祐斗―――はその日の疲れを癒すようにゆったりとした動きだ。

祐斗の腹部には複雑な魔法陣が描かれており、それを視界に入れると苦笑いを浮かべる。

 

「……今日は本当に、疲れたなぁ……」

 

1日の出来事を思い出したのか何処か困ったような表情の祐斗。

それもそうだろう。祐斗は士織に掛けられた【重力増加】の魔法により一日中地面に押さえつけられていたと言っても過言ではないのだから。

今も祐斗は重たい身体を動かすために何よりも優先して【身体強化】を行っているのだ。残り少ない魔力を使いながら。

 

「ひとまず……明日に備えて疲れを取らないと……」

 

翌日から再開されるであろう修行のことを思いながら、湯船に浸かり直す祐斗。

身体の重い状態での修行はかなりの負担になるだろう。

 

 

 

 

 

「―――――へぇ、結構広いな」

 

「……えっ?」

 

背後から聞こえてくる入口の開く音と聞き覚えのある声に、祐斗は間抜けな声を漏らしてしまう。

そして、ゆっくりと振り向くとそこには―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よぉ祐斗。

悪ぃな俺も一緒に入らせてもらうぜ?」

 

―――――美しき少女の姿があった。

否、外見は少女のようだが、彼は紛れもなく男だ、という事実が祐斗にはいまひとつ信じられないでいる。

 

「し、士織……さん?」

 

「おぅ。どうかしたのか?」

 

いつもは下ろしている士織の暗めながらも美しい青髪は現在、入浴するためかポニーテールにまとめてあるため、違った雰囲気を感じられる。

 

「いや、あの……」

 

「なんだ?何か言いたいことでもあるのか?」

 

士織はそう言いながら湯船へと入っていく。祐斗の横まで移動するとふぅ、と短く息を吐いた。

 

「……本当に男だったんだね」

 

「当たり前だろぅが。

つか、祐斗。お前は何処を見てそう判断した?ん?」

 

ジト目を祐斗に向けながら、士織はそう口にする。

 

「何処を……って……その……」

 

「だから頬を染めるんじゃねぇよ気持ち悪い」

 

士織の問いに対して答えようとする祐斗の顔は赤く染まっていた。

それが湯船に浸かっているからなのか、それとも恥ずかしがっているのかは分からない。……と言いたい所だがそれは見るに明らかだろう。

 

「そういや……お前と2人でゆっくり話したこと無かったな」

 

士織は風呂に入ったことでリラックスしたのか、優しい声音でそう言った。

 

「そ、そうだね。

僕としては士織さんとお喋りしたかったんだけど……」

 

「そうだったのか?」

 

士織は祐斗の方を向きながら意外だという表情を浮かべる。その表情を見た祐斗は苦笑いをしながらこくり、と首を縦に振った。

 

「……小猫とはよく話すんだが……」

 

「小猫ちゃんばかりずるいと思っていたんだよ?」

 

「そりゃ気付かなかったわ」

 

―――これからは暇なときにでも話し掛けてくれ。士織はそう言うと優しい笑みを浮かべた。

 

「も、ももももも、勿論だよっ!!」

 

士織の方を見ていた祐斗はバッと顔を逸らしてそう口にする。

 

「……なぁに挙動不審になってんだよ」

 

「別に深い意味は無いよ?!」

 

「顔がまた赤くなってるが?」

 

「いや~のぼせちゃったかな!!」

 

士織とほんの少ししか入浴時間は変わらないのにのぼせたかもという言い訳は苦しい。祐斗も冷静ならばそれに気付けたはずだが今は何故か冷静ではなかった。

 

「こっち見て話せよ」

 

「ちょ、ちょっと無理かな~なんて……」

 

「ったく……」

 

士織は溜息を吐くと立ち上がり、祐斗の前に回り込んだ。

 

「お喋りしたいんだろ?」

 

悪戯な笑みを浮かべた士織。慌てている祐斗で遊んでいるのだろう。

 

「……僕で遊んで楽しんでるね?」

 

祐斗はあわあわと忙しなく表情を変えていたが、笑いを堪えている士織の様子に冷静になったのか、そう言うとジト目を浮かべながら顔を少しだけ湯船に沈めた。

 

「悪ぃ悪ぃ。

祐斗の反応があまりにもおもしれぇからな」

 

士織は笑いを堪えるのを止め、涙を浮かべながら口を開くと軽い口調でそう言う。

 

「全く……士織さんは酷い……よ」

 

突然、祐斗の身体が光り始める。

士織はそれを訝しげに見ていると今度は祐斗が目に見えて焦り始めた。しかも、この慌て様は尋常ではない。

 

「ま、まずい―――――!?」

 

湯船から急いで立ち上がった祐斗だったが、足を滑らし士織の方へと倒れてしまう。

2人は激しく水飛沫を散らせながら湯船の中に消えた。そして、一瞬、湯船の中が光で輝いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side Out

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

Side 士織

 

「ぷはぁっ!!」

 

祐斗に押し倒されて湯船の中に沈んだ俺はなんとか倒れてきた祐斗ごと身体を起こし湯船から顔を出す。

 

「危ねぇだろぅが!!!

……ったく……お前は何を―――――」

 

しているんだ。その言葉は続けることが出来なかった。

何故なら、俺の目の前には―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――見たことのない少女(・・)の姿があったから。

 

腰に届く程の美しい金髪を湯によって濡らしその細身の肢体に貼り付けており、その細身の肢体に反して、たわわに実った2つの果実は俺の胸に当たり、潰れている。

清楚そうな雰囲気を纏った、泣きボクロが特徴的な、そんな少女。

 

 

 

「だ、誰だお前!?」

 

俺はそんな少女を素早く引き剥がすと後退りする。

少女はハッとした表情で身体を隠すように自らの腕で抱きしめると、湯船に浸かり顔を真っ赤に染めた。

 

「―――――ぼ、僕だよ。木場祐斗だよ」

 

その名前が聞こえると、途端に俺の頭は冷静になった。それはまるで今までバラバラだった歯車が、噛み合った様に正確に。

 

 

 

―――――『僕は木場……祐斗。

クラスは違うけど兵藤さん達と同じ2年生です。

えーっと……僕も悪魔です。

宜しくね』

 

自分の名前を言うときに躊躇ったが何かあるのだろうか……?

 

 

 

―――――『お前は乙女かっ!!!』

 

『痛っ!ひ、酷いな士織さん!

僕は紛れもなく―――――じゃなくて!

手刀を落とすなんて酷いじゃないか!』

 

『お前が変な反応するからだろうが!』

 

そうは言ったものの、祐斗の発言に何処か引っかかるところがあったのは気のせいだったのだろうか……。

 

 

 

「…………」

 

「…………」

 

互いに無言のまま、時間が過ぎていく。

俺は祐斗から顔を逸らしたまま口を開いた。

 

「……取り敢えず風呂からあがれ祐斗。

お前が祐斗だってのは信じてやるから。

……その格好は目に毒だ」

 

ちらりと祐斗の姿を見る。

唯一の布は腰に巻かれたタオルだけ。それも濡れてしまっていて巻いているのか張り付いているのかわからないほどだ。

 

「う、うん……。

そうさせて……もらうね」

 

「安心しろ。

きちんと目を瞑っててやるから……。

上がったら俺の部屋にいてくれ。俺は後から行く」

 

それだけを言うと、俺は目を閉じ祐斗とは真逆の方を向いた。

 

―――――ちゃぷん……。

 

―――――うぅ……髪が……張り付いて……。

 

―――――タオルの意味もないよね……これって……。

 

……あぁ……音だけってのも耳に悪いな……。

俺は【遮断】の魔法を使い、しばらく聞こえてくる音を遮断した。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

祐斗があがっていって三十分程の間をあけてあがり、素早く着流しに着替えた俺は祐斗の待つ自室へと急いだ。

 

扉を開けて中に入るとベットに腰を下ろした祐斗の姿が目に入る。

 

「……待たせたな」

 

「ま、待ってなんかないよ」

 

俺は息を整えつつ祐斗の横に腰を下ろした。そしてまた、2人の間に沈黙が降りる。

 

「……説明、した方がいいよね……」

 

しばしの後、祐斗が先に沈黙を破り、そう口にした。俯き気味の祐斗。俺はそれを見た時無意識のうちに手を伸ばしていた。

 

「―――――いいや。無理に説明しろとは言わねぇよ。

何時か、何時か教えてくれるのならそれは今じゃなくてもいい」

 

祐斗の頭を優しく撫でながら、そう口にしていた。

祐斗は驚いた様な表情で俺を見たが、頭の手を払う事はなく、ただ気持ちよさそうに受け入れてくれる。

 

 

 

―――――閑話休題。

 

 

 

「……ありがとう士織さん」

 

「気にすんな。

人には言えない秘密の1つや2つあるもんだ」

 

しばらくして落ち着いた様子の祐斗。

今ではいつものようなスマイルを浮かべることもできるようになっている。

 

「士織さんにも……あるの?」

 

「何がだ?」

 

「ほら……その……誰にも言えない秘密……とか」

 

「無いこともないな」

 

俺はベットに寝転び、そう言う。

祐斗はそうなんだ……と言って秘密について聞こうとはしない。

 

「祐斗、1つ聞いていいか?」

 

「何かな?」

 

「お前の【身体変化】の魔法は自作か?」

 

「いや、違うよ。

これは僕の剣の師匠に教えてもらったんだ。

でも、師匠も誰かに教えてもらったって言っていたような……」

 

祐斗は首を傾げながら俺の質問に答えてくれる。

それにしてもリミッター付きとは言え、俺にも気づけない程の高度な【身体変化】……誰が作ったのかが気になってしまう。

 

「ねぇ、士織さん」

 

「なんだ?祐斗」

 

「木場……祐奈」

 

祐斗は、ゆっくりとそう言った。

 

「ん?」

 

「男の時の僕の名前は『木場祐斗』。

だけど女の時の名前は『木場祐奈』っていうんだ」

 

祐奈(ゆうな)……それがお前の本当の名前か」

 

俺は祐斗の方を向きながら『祐奈』と言う名前を反復させる。

 

 

 

「いや、これは僕が部長の眷属になってから貰った名前。

僕の本当の名前は―――――あの時置いてきた」

 

そう言った祐斗の瞳には暗い炎が灯り、哀し気な雰囲気を纏わせた。俺はそれが何なのか、すぐに分かった。分かってしまった。

 

「……復讐か?祐斗」

 

「……まぁね。

僕にとってそれは何よりも優先すべき大切な事だ。

例え何が立ちはだかったとしても……それを全て排除して、成し遂げる」

 

―――――みんなのために。

祐斗はそう続けると瞳を閉じた。

そして、再び開かれた時、その瞳には暗い炎など見る影もなく無くなり、いつもどおりの祐斗のモノへとなっていた。

しかし、哀し気な雰囲気は消しきれてはいなかった。

 

「……なぁ、祐斗」

 

「何かな?士織さん」

 

「復讐の先に何があるのかは分かっているか?」

 

「…………」

 

祐斗は答えない。何も答えない。

俺は溜息を1つ吐くとゆっくりと重たくなってしまった口を、開く。

 

「―――――【虚無】だ。

復讐の後に残るのは【虚無】だけだ」

 

「……それでも、僕はっ!!!」

 

「だから!!!」

 

俺は祐斗の言葉を遮るように声を張った。

 

 

 

「『木場祐奈』その名を俺に預けろ」

 

 

 

「……え……?」

 

祐斗はわからないと言ったような表情を浮かべ俺の方を見詰める。

 

 

 

「復讐が終わって、お前は【虚無】に囚われるだろう。自分の思っている存在意義を失ってしまうんだから。

でも、そんな時は俺のところへ来い。

その時はこの名前をお前に返して―――――新しい『木場祐奈』(お前)にしてやる」

 

言って、俺は祐斗に向けて笑みを浮かべた。

祐斗はしばらくぽかんとした表情をしていたが、一瞬顔を俯かせて俺の方を向いた。

 

「……わかったよ。

君に預ける。僕の名前も、この姿も、この声も。

そして―――――」

 

祐斗は満面の笑みを浮かべてこう言った。

 

 

 

「―――――女としての幸せも」

 

 

 

 

「おぉっと……こりゃ、とんでもないものを預かっちまったな……」

 

「預かってくれるんでしょ?

嫌だとは言わせないからね?」

 

そう言った祐斗の顔は小悪魔的な笑みが浮かんでいた。

 

その姿は―――――輝いて見えた。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

Side 木場

 

「そ、それじゃあ、僕はもう戻るよ!

明日からも修行宜しくお願いします」

 

僕は自分の言った言葉に恥ずかしくなり、ぺこりと頭を垂れると急いで部屋から出ようとした。

 

「祐斗!!」

 

「…………」

 

僕を呼び止める士織さんの声。

振り向くことはせずにそのまま聞く。

 

「……お前がもし、復讐を終えて、俺でいいと思えたのなら……」

 

「…………」

 

「その時は、お前に―――――女としての幸せも返してやるよ。

勿論嫌っていう程な?」

 

「……っ!!」

 

僕は急いで扉を開けて廊下に出る。

扉にもたれ掛かってさっきの士織さんのセリフについて考える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――そういう意味で受け取っても……良いんだよね……?」

 

僕の顔が熱くなったのがよく分かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編はいかがでしたでしょうか??
予想していた人はたくさんいらしたでしょうか??(笑)

ともかく、祐斗君は祐奈さんということになります!!
こう言った話が嫌いだった読者様にはお詫び申し上げます……(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)

これからも頑張りますのでどうか宜しくお願い致しますっ!!

それでは、また次回お会いしましょう♪


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~修行終わりました~

皆さんこんばんゎなのですぅ~(*_ _)zzZ

今回の話ではグレモリー眷属がかなりの成長を遂げていますのであしからず……(苦笑)

ひとまず、本編をどうぞ♪


どうも、兵藤士織だ。

 

祐斗女の子事件を過ぎて気づけば修行も最終日。10日の修行でどこまでレベルを上げられたか……今日はそれを確かめるために全員を一人一人試験する予定だ。

 

 

 

 

 

「さて、やるか祐斗」

 

「うん!僕がどれくらい強くなったかその目で確かめて貰うよ!!」

 

祐斗は木刀を握り締めやる気満々と言った表情を浮かべる。ちなみに、祐斗に掛けていた【重力増加】の魔法は既に解いてある。

 

「行くよ……士織さんっ!!!」

 

声を張った祐斗は地面を蹴り出した。

そのスピードは【重力増加】を掛けた日とはまるで違う。

一閃された祐斗の木刀をガードしながら自然と浮かぶ笑みを隠せない。

 

「やるじゃねぇか祐斗!!」

 

「あれだけ士織さんに扱かれて強くならない訳には……行かないからねっ!!」

 

鍔迫り合いをしていたその時、祐斗はふと、姿を消した。

 

「おっと……こりゃびっくりした」

 

「……言ってる割にはあっさりとガードするね……」

 

背後からの攻撃を木刀を滑らせガードした俺に祐斗は苦笑混じりにそう言い、距離を取る。

 

「いやいや、そうは言うが祐斗。

俺の視界から一瞬でも消えられたんだからそのスピード、自信を持ってもいいぞ?」

 

リミッター付きの状態だったとはいえ、まさか見失うとは思ってもみなかった。

 

「でも……まだまだ士織さんには届きそうにないな……」

 

これは参った……。祐斗はそう言いながらも俺に一矢報いようという気迫が感じられる。

祐斗はふぅ、と息を1つ吐くと木刀を腰の位置に、まるで納刀するかのように構えた。

 

「へぇ……抜刀術か?」

 

「僕の剣は速さに特化してるからね……。

行き着く先はどうしても抜刀術(ここ)になるんだ」

 

そう言った祐斗はその構えのまま前傾姿勢を取る。

 

(はや)く、(はや)く、(はや)く……士織さんに一撃当てるためにスピードを特化させたんだ……」

 

しばしの沈黙の後、祐斗は極端な程の前傾姿勢から地面を抉り飛び出したのだ。

 

「……っ!?」

 

祐斗の姿が一瞬ぶれる。

その一瞬が俺の反応を鈍らせた。

祐斗の抜刀はただ純粋に速さを求めたのだろう。

 

その一閃は―――――速かった。

 

木刀によるガードも既に間に合わない所まで祐斗の一閃は迫っている。

俺は木刀を手放し―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――合格」

 

「な……っ!!!?」

 

祐斗の一閃を素手(・・)で掴みとった。自信のある抜刀術を素手で防がれた為か、祐斗は俯き、震え、立ち尽くす。

流石に素手で掴むのはやり過ぎたか?そんな考えが頭に浮かぶ。

 

 

 

「―――――流石、士織さん……。

まだ、この()()()の技じゃ足りない……」

 

そう言って、上げられた祐斗の顔にはまだ先へ行こうという向上心を感じた。そして何より、今の抜刀術を防がれるのを望んでいた。祐斗の瞳はそんな雰囲気を孕んでいた。

どうやら、俺の行動はやり過ぎでは無かったようだ。

 

俺はそんな祐斗の頭を軽くポンポン、と叩き、口を開く。

 

「……良くやったな」

 

「士織さん……」

 

自分でも、驚くほどに優しい声音だった。

祐斗も嬉しそうな表情を浮かべてくれる。

 

「……さて、他の奴らも見てこねぇとな……」

 

掴んだままだった祐斗の木刀を返すと踵を返して歩み出す。

最低ラインくらいはみんなにクリアしてもらわないと……。

 

士織(・・)!僕はまだ強くなるよ。

また、相手をお願いするね!」

 

突然聞こえてきた祐斗の声。

しかも、俺のことを初めて呼び捨てで呼んだ……。

 

「頑張れ、祐斗」

 

後ろ手に手を振りながら、呟くくらいの声でそういった。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「……行きます」

 

小猫の所を訪れ、真っ先に言われた言葉、それは『相手をして下さい』という小猫の自信に満ちた声だった。

 

「来いよ小猫。遊んでやる」

 

修行開始時にも言ったその言葉を小猫にかける。それに対して小猫は初めと同じ言葉を返すわけではなく、フェイントを混ぜながらのステップで近付いて来る。

驚くことに混ぜられるフェイントはレベルが大幅に上がっていた。

 

「イイねぇ……」

 

呟く俺の声が聞こえたのか、小猫の口角が少しだけ動く。そして、一瞬の隙を作ってあげると―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……流石に学びました」

 

それとは逆の方向から小猫は接近し、ラッシュを始めた。

攻撃の威力は勿論、フェイントの上手さが改めて感じられる。

あの時のフェイントの甘さはもう感じない。あるのはただ、本気で騙しにかかる小猫の技。

 

「……これだけで驚かないで下さい」

 

小猫は右腕を大きく振りかぶると……その拳の部分に魔力を纏わせ、俺に向かって放つ。俺は放たれた拳の部分を掌で滑らせ、地面へと誘導させる。

そしてそのままバックステップで距離を開けた。

 

「おぉ……中々の威力……」

 

「……当たって下さい」

 

そう言いながら、小猫は外してしまった拳を再び構え直す。

小猫の拳が放たれた地面はまるで爆撃の後のように抉れ、散っていた。

 

「その威力の直撃は遠慮しとくわ」

 

「……遠慮は要りません。さぁ……」

 

そう言った小猫は両の拳に魔力を集め、ボクシンググローブのようにして見せる。

 

「……次は、これです」

 

「うっわぁ……えげつないねぇ……」

 

俺はそう言いながら、またも予想以上の成長を見せられ、自然と微笑んでしまう。

 

「……うん。合格だ小猫」

 

「……っ!!」

 

俺の呟きは聞こえなかったのだろう、小猫はそのまま接近してラッシュを始めようとする。

 

「だから合格だ。小猫」

 

両の拳を受け止め、そのまま一本背負いの要領で地面に叩きつけた。

小猫は一瞬目を見開いたものの、むくり、と立ち上がり服についた土埃を払って口を開く。

 

「……やっぱり廃スペック過ぎます」

 

「まぁ、小猫も成長したじゃねぇか」

 

「……まだまだです」

 

そう言った小猫はまたも魔力を纏わせ始める。何事か、まだやるつもりかと思考したがそれは違うのだと、小猫の表情から読み取ることができた。

 

「……本来、なら……これを両腕……に、やりた……かった、です……っ!」

 

辛そうにそう言った小猫の右腕には魔力でできた……【白虎】の顔があった。

魔力の密度が濃い為か、その白虎は白く輝いている。

小猫は俺が見たのを確認したのか、腕の白虎を消し、荒い呼吸を取り始めた。

 

「……流石に……完成……しませんでした……」

 

額には玉のような汗を浮かべ、辛そうな小猫。どうやら相当無理しないと出来ない芸当らしい。

 

「いや、今のだけでも十二分に驚いた……。

まさかあんなモノを作っているとは……」

 

俺は素直にそう言うと、小猫の頭をこれでもかという程に撫でた。

 

「うにゃ~……♪」

 

気持ち良さそうに擦り寄る小猫。

……やばい……小猫が猫みたい……。いや、小猫は猫だけども……っ!!

 

(次は……姫島先輩か……)

 

時間にはまだ余裕がある。

気持ち良さそうに目を細める小猫の姿を見ると何処か心が安らぐ気がする。

俺はそんな小猫をしばらく撫で続けた。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

小猫を撫で終えた俺は姫島先輩が居るであろう場所へと向かっていた。

 

「……修行場所を変えなくても良いだろうに……」

 

森の中を歩みながらそう呟く。

アーシアと共に修行しているようだが……果たして結果が出ているのか?それが気になる所だ。

 

―――――と、俺が姫島先輩たちの姿を探していると、前方から複数個の魔力球が飛来して来るのが見えた。

その動きはまるで―――――

 

―――――宇宙(ソラ)から流れる流星の如き力強さ。

 

―――――(ソラ)を舞う星々の如き流麗さ。

 

2つを兼ね備えているかのようだ。

 

俺は飛来して来る魔力球を躱しながら、その場を駆け出す。

木々を使いながら複雑な道を辿るが、魔力球はそれをものともせず、時には躱し、時には木ごと粉砕し俺を追ってくる。

 

「……やるじゃねぇか」

 

グレモリー眷属はどうしてこうもイイ意味で俺の予想を裏切ってくれるのだろうか……。

俺は背後から迫る魔力球に気を配りながら笑みをこぼす。

 

「取り敢えずそろそろ反撃と―――――っ!!?」

 

魔力球を迎撃しようと反転し、跳躍しようとした矢先、足をつるりと滑べらせてしまった。

足下を見るとそこには何時の間にか広がる氷の地面。視線をずらせば地面に手を触れながらこちらへ微笑んでいるアーシアの姿が見受けられる。

 

「やべ……っ!」

 

反転したことにより前方から迫ってくる魔力球。滑らせ、崩れた体勢から捉えられた魔力球の数は【10】……いや、【11】!?

俺はその事実に目を見開く。

このコントロールだけではなく操作数も増やしてくるとは……!!

俺の言ったことをこうもこなして来られるとまだ上を見せてみたくなる。

 

「此処までやられるとは思わなかったぜ!!」

 

2人に届くほどの大声で叫ぶ。

そして、俺は崩れた体勢のまま大きく口を開き迎撃のための【妖精の魔法(エンジェリック・スペル)】を発動する。

 

「【火竜の咆哮】ッッ!!!!!」

 

口から吐き出すのは竜の焔、紅の業火。

その炎は魔力球を全て飲み込み、そして焼き尽くす。

俺はそのまま体勢を整えると着地と同時に口を開いた。

 

「お前らも合格だ」

 

アーシアの方を改めて見てみると、そこには姫島先輩の姿もある。

どうやら移動してきたようだ。

 

「あらあら……折角奇襲しましたのに……残念ですわ」

 

「やっぱり士織さんは凄いですね!」

 

姫島先輩はニコニコしながら、アーシアは瞳を輝かせながらそう言った。

 

「流石にやられるわけにはいかねぇからな……。

まぁ、2人の作戦は中々のものだったぞ?」

 

「そういって貰えると嬉しいですわ」

 

「朱乃お姉様のおかげですね!」

 

アーシアは姫島先輩のことを尊敬の眼差しで見つめ、満面の笑みを浮かべる。

 

「……【朱乃お姉様】って……」

 

「うふふ……アーシアちゃんに試しに呼んで貰ったら気に入ってしまいましたわ」

 

口元に手を当てながら笑う姫島先輩。

それにしても朱乃お姉様とは……まぁ、アーシアも嫌がってはいないようなので何も文句は無いが……。

 

「そうだ、2人とも」

 

俺は思い出したかのように手を叩く。

2人は首を傾げながら俺の発言に耳を傾けているようだ。

 

「2人には約束通り、修行の結果の褒美をやらねぇとな……?」

 

そう言うと、姫島先輩は一瞬で俺の元まで移動し、手を握った。その時の姫島先輩は子供のような笑顔を浮かべていた。

 

「私はそれを待ってましたわ!」

 

「お、おう……約束したからな……」

 

あまりの迫力に苦笑いを浮かべながらも俺は興奮冷めやらぬ姫島先輩をなだめ、アーシアも一緒に【妖精の魔法】をひとつずつ伝授した。

 

この【妖精の魔法】を2人が使いこなせるようになるのは何時になるか……それも楽しみである。

 

「……頑張れよアーシア、朱乃(・・)先輩」

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

夕食、入浴を終えての静かな一時。

俺は唯一試験をしていないグレモリー先輩の姿を探していた。

 

「あら?士織?」

 

「此処に居たかグレモリー先輩」

 

リビングにあるテーブルの所に腰掛けていた。ティーライトキャンドルの淡い灯がその場を包んでいる。

俺は持ってきていたチェス盤と駒を置き、グレモリー先輩の向かいに腰掛けた。

 

「へぇ?眼鏡か……。

グレモリー先輩は目が悪かったのか?」

 

赤いネグリジェ姿のグレモリー先輩は紅の髪を1本に束ね、眼鏡をかけている。その姿が珍しかったもので、そう聞いてみる。

 

「あー、これ?気分的なものよ。

考え事をしている時に眼鏡をかけていると頭が回るの。

ふふふ……人間界の暮らしが長い証拠ね」

 

クスクスと小さく笑うグレモリー先輩。

気のせいだろうか、今のグレモリー先輩は何時もよりも集中力と冷静さが研ぎ澄まされているように見える。

ふと、テーブルの方へ視線を向けると、そこには無数の紙が広げられていた。その紙一枚一枚にはフォーメーション、地図、作戦と言ったものがびっしりと書き込まれている。

 

「……よく考えられてるじゃねぇか」

 

俺はテーブルの上に置かれていた紙の中から1枚を手に取りそう口にする。

 

「それは……ついさっき書いたものね……」

 

―――――でもそれはあまり使いたくないわ。グレモリー先輩は苦笑いを浮かべながら呟いた。

 

「……そうだろうな。

なんせこの作戦、成功させるには―――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――アンタの嫌いな【犠牲(サクリファイス)】が必要不可欠だ」

 

「…………」

 

無言のグレモリー先輩。しかし、その表情を見るにもう迷いはないのだろう。

 

「……私は【犠牲】は嫌い。

可愛い眷属たちが傷付くのを見たくないの……。

―――――でも、それは私の我が儘……」

 

ギュッと、ネグリジェの端を握る。

 

「……朱乃も、祐斗も、小猫も、アーシアもそしてイッセーも……あの子たちは私の勝利を望んでくれる。勝利の為に戦ってくれる……。

それなのに、私は傷付いた姿を見たくないなんて言ってあの子たちの頑張りを無駄にしようとしていたわ……」

 

「…………」

 

「最後まで足掻いて、藻掻いて……格好悪くとも、泥臭くとも―――――勝つ。

それが私の為に戦ってくれるあの子たちへの私なりの恩返し……」

 

言って、グレモリー先輩は微笑んだ。

俺は大量の紙を束ね、持ってきていたチェス盤をテーブルの上に乗せた。

 

「……取り敢えず1戦、やるぞ?」

 

「……まだ勝ててなかったわね……」

 

グレモリー先輩はかけている眼鏡のブリッジ部分をクイッと指で押し上げ、笑う。

綺麗に並べられた白と黒の駒達(なかまたち)

 

「勝たしてもらうわね」

 

「……敗けねぇよ」

 

俺は初手で白の【兵士(ポーン)】を2マス進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――ゲーム開始からしばらく経った。

戦況は五分五分。グレモリー先輩の何時もより冷静なプレイングは容易に攻めさせてはくれない。

 

「チェック」

 

「……やるじゃねぇか」

 

俺はグレモリー先輩の一手に思考する。

本当に冷静なプレイングだ……いくら揺さぶりを掛けても動じない。

俺は残っている駒を1つ動かしグレモリー先輩の駒の進路を塞ぐ。

すると、グレモリー先輩はクスリと笑い、俺を見た。

 

「士織、それは悪手よ?」

 

そう言って即断の一手、それも最高の一手を打った。

 

「―――――チェック」

 

「く……っ!!」

 

俺にやれることは【(キング)】を逃がす事のみ。しかし、その一手の先には―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――チェック・メイト。

私の勝ちね?士織」

 

―――――グレモリー先輩の勝ちがあった。

 

「あぁ~あ……等々敗けちまったか」

 

「とは言ってもこれが初勝利なのよ?」

 

グレモリー先輩は眼鏡を外しながら苦笑いを浮かべる。

 

「でも―――――勝ちは勝ち、だろ?」

 

「……えぇ、そうね」

 

俺の一言にグレモリー先輩は柔らかな微笑みを見せた。

俺は立ち上がりポケットに手を突っ込み部屋の方へと向かい始める。

 

「もう行くの?士織」

 

「ん?まぁ、夜も遅い。

人間の俺にはちっと辛いからな」

 

「そう。じゃあ、おやすみな―――――「あぁ、そうだグレモリー先輩」……何かしら?」

 

グレモリー先輩の言葉に被せるように俺は立ち止まって言葉を挟む。

 

「気になっていたんだが……なんでライザー・フェニックスとの縁談を拒絶してるんだ?」

 

俺の言葉にグレモリー先輩は腕を組む。

そして、ゆっくりと口を開いた。

 

「……ライザーは私との結婚をいつも『仕方がない』『不本意ながら』『家のために』『純血が』『悪魔の未来の為に』……そう言って来るのよ」

 

「……確かにこの間も言っていたな……」

 

「……これは本当に我が儘なのだけれど、結婚するなら本当に私のことを好きな人としたいの……」

 

―――――私は本当に迷惑ばかり掛けているわね。グレモリー先輩は悲しげに言った。

 

「……まぁ、我が儘って程じゃねぇだろ。

普通だ普通。気にすんな」

 

「……ありがとう、士織」

 

俺は後ろ手に手を振りながらそのグレモリー先輩の呟きを聞く。

そして、薄い笑みを浮かべながら言葉を述べる。

 

「んじゃ、お休みリアス(・・・)先輩」

 

「っ!?士織今私のこと―――――」

 

リアス先輩の言葉を残しながら足早に部屋へと向かった。

明日はゲーム本番なんだ。頑張ってくれよ?リアス先輩。

 

 

 

―――――こうして、修行最終日は幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編はいかがでしたでしょうか?
楽しんで頂けたのなら幸いです♪

と、言うわけでグレモリー眷属をかなり強化しましたが……こんなに強くなったらライザーは確実に勝てない気がするんです……(苦笑)
そして、空気化した一誠君……(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
ライザーとのゲームではしっかり活躍させます!夜叉猫さんの約束ですっ!!

感想をお待ちしておりますっ!!!

それでは、また次回お会いしましょう♪


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~ゲーム開始直前です~

皆さんこんばんゎ♪
ウイルス性胃腸炎でダウンしていた夜叉猫です(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)

やっと更新することができました……(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)

ひとまず、本編をどうぞ♪


どうも、兵藤士織だ。

 

ライザーとのゲーム当日。

俺は指導役のためゲームには参加しないがグレモリー眷属全員からの希望によりゲーム開始まで一緒にいることとなった。

 

 

 

 

 

「……うにゃぁ~♪」

 

「随分とリラックスしてるな?小猫」

 

俺の膝枕に寝ている小猫の頭を撫でながらそう言う。

小猫の両手にはオープンフィンガーグローブがはめられている。服装は制服のようだがこれが小猫の戦闘スタイルなのだろう。

 

「随分と羨ましいことをしているみたいだね」

 

俺の隣にあるソファーに腰を下ろしている祐斗がそう言う。何処か皮肉の混じったような言葉だったが俺はわざと気が付かなかったふうに口を開く。

 

「そうか?祐斗なら膝枕して欲しいって言う女子はたくさんいるだろ?」

 

「……そういう意味じゃないよ」

 

思いのほか不機嫌になった祐斗。ムスッとした表情で腕を組み、そっぽを向いてしまった。どうやら少々言葉の選択をミスしてしまったようだ。

俺は小猫を膝枕したまま、隣の祐斗の耳元まで顔を近づけ、本当に小さな呟きを伝える。

 

「……今度してやるから機嫌直せ」

 

「……っ!!」

 

祐斗の頭を優しくポンポンと叩き元の姿勢に戻った。祐斗は先程とは一転し、顔を紅くしながら俯いている。簡単なご機嫌取りのつもりだったのだが祐斗があまりにもいい反応を見せてくれたため、俺はそれが微笑ましくて、ついクスクスと笑ってしまった。

 

「そういや祐斗。

お前武器を変えたんだな」

 

「はぇっ!?

う、うん。まだ未完成とはいえ抜刀術を使うには『(こっち)』の方が都合が良いからね」

 

祐斗は以前のような片手用の直剣ではなく、日本刀に限りなく近い刀を持っていた。

祐斗も制服姿だが防具を付けていない所を見ると行動の邪魔だと考えたのだろう。

修行編前と比べると随分と変わったものだ。

 

「お前はスピード特化のテクニックタイプだということを忘れるなよ?

それさえ忘れなければお前は確実に勝てる」

 

「ありがとう士織さん。

肝に銘じておくよ」

 

爽やかなスマイルを浮かべる祐斗。

それにしても祐斗はグレモリー眷属の中で一番成長したと思う。そのスピードは並の悪魔では追いつけないだろう。

俺がそんなことを考えていると膝枕で寝ていた小猫が俺の服を引っ張ってくる。

 

「……祐斗先輩だけアドバイスはズルいです」

 

「なんだ?俺からのアドバイスが欲しいのか?」

 

俺が悪戯っぽい笑みを浮かべながら聞くとコクりと頷く小猫。

俺は素直に反応した小猫の頭を撫でながら思いついた事を伝える。

 

「そうだな……小猫は一撃で倒しに行こうとするな。

お前は細かな連続攻撃で確実に仕留めにいくんだ」

 

「……ありがとうございます」

 

俺は小猫からの言葉に微笑みを返した。

 

 

 

「―――――そろそろ時間です。

皆様、転移用の魔法陣の上へ……」

 

俺たちが個々リラックスしていると、控えていたグレイフィア・ルキフグスがそう言った。

俺はグレモリー眷属一人一人と少しばかり会話をすると、1人魔法陣の上には立たず、少し離れてグレモリー眷属たちが転移して行くのを見守った。

 

「勝ってこい、みんな」

 

俺の呟いたその言葉に、グレモリー眷属の皆は自信のある笑みを浮かべ、そして消えていった。

―――――全く……いい顔をするもんだ……。

俺が微笑みながらしばらくそのままでいると、グレイフィア・ルキフグスが俺の前に立ち、何処か畏まった態度を取り口を開いた。

 

「―――――兵藤士織様。

魔王ルシファーさまからの提案なのですが、兵藤士織様も観覧席へいらっしゃいませんでしょうか?」

 

「観覧席?」

 

「今回のゲームを観覧するための特等席となっております。

如何でしょうか?」

 

「そうだな……ありがたく行かせてもらう事にしよう」

 

俺がそう言うと、グレイフィア・ルキフグスは魔法陣を広げた。

 

「こちらの魔法陣の上へお願い致します。

此処から転移致します故に……」

 

「了解した」

 

俺はグレイフィア・ルキフグスの言葉に従い、魔法陣の上へと移動する。

魔法陣は光を発し始め、視界を閃光で染めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

Side 三人称

 

「へぇ~今回のゲームのフィールドは学校のコピーなんだな」

 

転移が終了し、目を開いた一誠は辺りを確認するとそう呟いた。

オカルト研究部の部室。その風景は寸分の狂いもなく再現されており、アーシアは目を見開いて驚いている。

 

 

 

『皆様。この度グレモリー家、フェニックス家の【レーティングゲーム】の❮審判(アービター)役❯を担うこととなりました、グレモリー家の使用人グレイフィアでございます』

 

校内放送のチャイムの後に流れてきたのはグレイフィアの声。凛としたその声はよく通り、響いていく。

 

『我が主、サーゼクス・ルシファーの名のもと、ご両家の戦いを公平に見守らせて頂きます。どうぞ宜しくお願い致します。

……早速ですが今戦いのフィールドについてのご説明をさせて頂きます。

フィールドはライザーさま、リアスさまのご意見を参考にし、リアスさまが通う人間界の学び舎【駒王学園】のレプリカを異空間にご用意致しました』

 

窓の外に見える景色は駒王学園の敷地内そのもの。違う点といえば空が―――――白い。深夜であるにも関わらず、フィールドは明るく照らされているのだ。

 

『両陣営、転移された場所が【本陣】でございます。

リアスさまの本陣が旧校舎のオカルト研究部の部室。ライザーさまの本陣は新校舎の生徒会室。【兵士(ポーン)】の方は【プロモーション】をする際、相手の本陣の周囲まで赴いて下さい』

 

グレイフィアの放送で流れた【プロモーション】とは、チェスのルールと同様、【兵士】が相手陣地の最新部に駒を進めた時に発動できる特殊なものだ。【(キング)】以外の駒である、【騎士(ナイト)】、【僧侶(ビショップ)】、【戦車(ルーク)】、【女王(クイーン)】のいずれかの駒の特性を得ることができる、言わば戦略の要となるもの。

一誠もそれがわかっているからこそ【プロモーション】の単語が聞こえた後、表情を引き締めたのだろう。

 

「全員、この通信機器を耳につけてください」

 

朱乃はイヤホンマイクタイプの通信機器を配る。全員の目に緊張の色が浮かぶが、1人だけは静かに瞑目していた。

 

『―――――開始の時間となりました。

なお、今回のゲームの制限時間は人間界の夜明けまでとします。

それでは、ゲームスタートです』

 

―――――キンコンカンコーン。

一般的な学校のチャイム。

その音が途切れる頃には、皆がリアスの方を向いていた。

 

―――――祐斗は刀の柄に手を添え。

 

―――――小猫はグローブを直し。

 

―――――朱乃は真剣な表情を浮かべ。

 

そして。

 

―――――一誠は静かに瞳を開いた。

 

 

 

「―――――皆、勝つわよ。絶対に」

 

その声への返事はゆっくりとした頷きだけだった。

 

 

 

今、【レーティングゲーム】の狼煙が上がる。

 

 

 

 

 

Side Out

―――――――――――――――――――――――

 

グレイフィア・ルキフグスの転移魔法陣により転移してきた俺は一人の男と向き合っていた。

周りからは殺気立った様な視線を感じるが気にするまでもない。今の俺は目の前の男にしか興味がない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――初めまして、だな。【紅髪の魔王(クリムゾン・サタン)】サーゼクス・ルシファー」

 

「こちらこそ初めまして。君が兵藤士織……君だね?」

 

紅髪の男―――――サーゼクス・ルシファーは『(くん)』と言うのを少し躊躇った後、手を出し握手を求めてくる。

俺はその手を拒むことなく握り握手をした。

 

「リアス達を鍛えてくれたそうだね?

お礼を言わせてくれ」

 

フレンドリーな笑顔を見せながらそう言うサーゼクス・ルシファー。

 

「いやいや、あの程度のことなら苦労はしない。

それに、俺がやりたくてやっただけだ」

 

「それでもだよ。

リアス達は随分と強くなったようだしね……」

 

モニターに視線を移したサーゼクス・ルシファーは優しい微笑みを見せる。ゲームが始まったばかりだというのにそれを感じ取るということは、流石は四人の魔王の1人だと言うべきだろうか。

 

―――――その後、俺はサーゼクス・ルシファーに勧められるがまま、隣の席に座った。

……それにしても先程から周りからの視線が鬱陶しい……。初めはサーゼクス・ルシファーへの興味でスルーしていたが流石にぼそぼそと聞こえるか聞こえないかといった声で陰口を叩かれると腹が立つというものだ。

 

「……魔王様」

 

「ははは、そんな堅い呼び方じゃなくても、サーゼクスと呼んでくれればいいよ」

 

「じゃぁ、サーゼクス。

―――――ちょっと黙らせても?」

 

「ふふふ……君に任せようじゃないか」

 

サーゼクスからの許可も得たため、俺は立ち上がりくるりと後ろを向く。

そこにあるのは俺の方を見下すように見つめる数人の悪魔の姿。

……どいつもこいつも偉そうなだけで力は本当に弱そうだ。

俺は自身に掛けられたリミッターを全て(・・)外す。そしてふぅ、と一息付くと―――――魔力を少しだけ漏れ出させる。

少しだけ、とは言っても俺の持つ魔力は【無限】。その結果―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――【黙れ】」

 

 

 

魔力の重圧に耐えかねたのか、俺の言葉の後には静寂だけが広がった。

俺はそのまま少しだけ前に進み出ると口を開く。

 

「さっきから黙っていればペラペラと……良くもまぁ達者な口が減らねぇなぁ?」

 

その場にいる全員(・・)の顔に冷や汗が浮かんでいる。

……ふむ、魔王ですらこの量で冷や汗を流すのか……。

俺は指を一本立て、口の前まで持って行く。

 

「―――――口を閉じろ?」

 

言って、笑みを浮かべる。意識したのは攻撃的な笑み。魔力の濃度をほんの少し濃くしてあげれば面白いように表情を歪め壊れたオモチャのように首を縦に振る悪魔たち。

俺はその姿を視界に収めると、サーゼクスの隣の席に戻り腰掛けた。

 

「……まったく、心強いね」

 

「ん?何がだ?」

 

リミッターを掛直しながら、隣のサーゼクスの言葉に耳を傾ける。

 

「君みたいな人間がリアス達の傍に居てくれるならこれ程心強いものはない」

 

「……俺は別に悪魔の味方じゃねぇぞ?」

 

「それならそれで構わないさ」

 

―――――何故なら。サーゼクスはモニターに映るリアス先輩たちの方を見る。

 

 

 

「君は私と同じ香りがする」

 

「……へぇ?」

 

サーゼクスの言葉につい声を出して反応してしまう。全く面白いことを言うものだ……。

 

「私はね、家族や仲間といった身の回りの親しい人に対して甘すぎると良く言われるんだ。

もし、親しかった者が敵になったとしてもおそらく倒すのに……いや、言葉を濁すのは止めよう……殺すのに躊躇いが出ると思う」

 

「……自分の命に関わるとしてもか?」

 

「……そうだよ」

 

哀愁漂う雰囲気に包まれながら、サーゼクスは言葉を続ける。

 

「君からは私と同じような何かを感じた。

この先、その優しさは命取りになる。

これは少しだけ長く生きている私からのアドバイスだ」

 

「……ありがたく受け取っておく」

 

無愛想気味な返事にサーゼクスはニコリと笑った。

足を組み、ふぅ、と息を吐く。

今はまだゲームは動かない。

 

 

 

 

 

―――――閑話休題。

 

 

 

 

 

「―――――時に士織君」

 

「なんだ?サーゼクス」

 

モニターを通して静かに観戦していたサーゼクスは唐突に口を開く

 

「このゲームどちらが勝つと思う?」

 

「そんなのは決まっている。

―――――というよりこのゲームは始まった時から既に詰んでるんだよ」

 

「ほぅ……?どういうことかな?」

 

サーゼクスは目を細めて聞き返す。俺はその問いにはぁ、と溜息を吐いた。

 

「リアス先輩たちの勝ち。

俺の弟―――――兵藤一誠が仲間のうちはその定義が崩れる事はない」

 

「そうか……それは楽しみだ」

 

「兄的には結婚に反対だったりするのか?」

 

「ん?いや……それについてはノーコメントだよ。

ただ言えることは―――――ライザー君は嫌いではないということだね」

 

サーゼクスは楽しそうに笑いモニターを改めて注目し始める。

『嫌いではない』……か。

その言葉についつい頬が緩む。

 

 

 

(……サーゼクスは分かっているんだろう……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――ライザーがどのような男なのかを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編はいかがでしたでしょうか?
楽しんでいただけたのなら幸いです♪


さてさて、雑談なのです!!
ウイルス性胃腸炎でダウンしていた夜叉猫さんなのですが……家族の看病のおかげで復活することができました!!
主に兄と姉が看病してくれたのですが……(苦笑)
見返りを要求されそうで怖いです……(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)

さてさて、それではまた次回お会いしましょう♪


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~レーティングゲーム【序盤】~

皆さんどうもなのです(〃・д・) -д-))ペコリン

何故か最近筆の進まない夜叉猫なのです……(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
更新が遅くなってしまってすみません……。

ひとまず、本編をどうぞ!!


オッス!兵藤一誠だ。

 

ようやく始まったライザーとのレーティングゲーム。

この日のために俺は10日間の修行を皆とは別で行っていた。やっていたのは主に封印の解除と【赤龍帝の籠手(ブーステット・ギア)】の調整。

幸いなことに封印に関しては8割程は解くことができ、【禁手(バランス・ブレイカー)】も問題なく使える。しかし、残念な事に【亜種禁手】は未だに調整中だ。

 

 

 

 

 

「さて、まずはライザーの【兵士(ポーン)】を撃破(キャプチャー)しないといけないわね……。

8人全員が【女王(クイーン)】に【プロモーション】したら厄介だわ……」

 

リアス部長はソファに腰を下ろしながら言う。その姿はとても余裕なものだ。

さらに、朱乃先輩はお茶の用意まで始めてしまった……。

 

「随分と余裕な態度ですね?リアス部長」

 

「ふふふっ。やっぱりそう見えてしまうのかしら?

でもね、イッセー。私は今とても頭が回るの。作戦が湧き水のように溢れてくるわ」

 

そう言ったリアス部長は笑みを浮かべる。

周りを見ると比較的皆落ち着いているようで、力が入り過ぎているということはなさそうだ。

……まぁ、アーシアは別なのだが……。

 

「【レーティングゲーム】は戦場を使い込んでこそ意義がある……。

まずは正確な地形把握からね。今回は私たちも良く知る学校が舞台。―――――祐斗」

 

「はい」

 

リアス部長に促され、木場がテーブルに地図を広げた。

マスで仕切られ、縦と横に数字や英字などが書き込まれた―――――なるほどチェスのボードを意識して書かれているのか。

リアス部長は旧校舎、新校舎の端を赤ペンで丸をつけた。

……こうして丸を付けられると分かり易いものだ。

 

「私たちの本陣周辺には森があるわ。これは私たちの領土と思って構わない。

逆に新校舎はライザーの領土……。入った瞬間相手の巣の中に飛び込んだも同然と考えて頂戴。

そして新校舎へのルートなのだけれど……」

 

「普通なら運動場の裏から、と行きたいところですけど……」

 

リアス部長の方へと視線を向ける。

俺の考えていることと同じだったのだろう。リアス部長は笑みを浮かべながら口を開いた。

 

「えぇ。十中八九、そのルートはライザーも予想しているわ。

そうね……【騎士(ナイト)】1名、【兵士(ポーン)】4名配置してくるんじゃないかしら?その配置なら運動場全域を把握できる」

 

「部長、旧校舎寄りの体育館。これを先に落とし(・・・)ませんか?

此処を落とせば新校舎までのルートを確保することが出来ます。

体育館は新校舎とも旧校舎とも隣接していますし、相手への牽制にもなります」

 

木場は地図の体育館の場所を指さしながらそう言う。その意見に俺も首肯することで賛成するとリアス部長も頷いた。

 

「えぇ、そうしましょう。

体育館はキーポイントね」

 

「なら、体育館の占拠には俺が行きます」

 

俺はそう言いながらストレッチを始める。

リアス部長もそれについて反対はせず、寧ろ歓迎してくれてる感もある。

 

「……イッセー先輩私も一緒に行きます」

 

「小猫ちゃんも?分かったぜ。

良いですよね?リアス部長」

 

「えぇ。二人の方がもしイレギュラーが起きたときの対応が簡単になるからいいわよ」

 

リアス部長はニコリと笑みを向けながら柔らかな物腰で言った。そして、ソファーから立ち上がると凛とした表情を浮かべて口を開いた。

 

「作戦開始の前に……祐斗と小猫は、まず森にトラップを仕掛けてきて頂戴。

予備の地図も持っていって、トラップ設置場所に印をつけるように。後でそれをコピーして全員に配るわ」

 

「はい」

 

「……了解」

 

リアス部長の指示を受けるやいなや、木場と小猫ちゃんは地図と見るからに怪しいトラップグッズを手に持って部室を出ていった。

 

「朱乃は二人が戻って来たら森周辺、空も含めて霧と幻術を掛けておいてくれるかしら?勿論ライザーの眷属のみに反応する仕組みよ?」

 

「分かりました、部長」

 

朱乃先輩はリアス部長の言葉に了承すると何処かへ行ってしまう。

 

「イッセー」

 

「何ですか?リアス部長」

 

ソファーに座り直したリアス部長が俺の名前を呼ぶ。そして、自らの隣を叩きながら口を開く。

 

「こっちに来てくれないかしら?」

 

「わかりました」

 

俺は別に断る理由もなかったため、隣に腰をおろした。

すると、リアス部長は俺の頭を優しく撫で始める。

 

「今日はお願いね?」

 

「はい。貴女が俺の主である限り力を尽くしますよ」

 

「ふふふっ。心強いわね」

 

微笑みながらしばらく俺の頭を撫で続けたリアス部長であった。

……ちなみに後からアーシアも撫で始めたのだが……まぁ、気にするようなことではない。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「さて、行くか……」

 

俺は旧校舎の玄関に立ちそう呟いた。

隣には小猫が居り、静かにストレッチをしている。

 

「イッセー、小猫。体育館に入ったら戦闘は避けられないと考えなさい?

あなたたちなら必ず勝てるわ」

 

玄関まで見送りに来ていたリアス部長。俺と小猫ちゃんはただ首を振ってその言葉を聞く。

俺は【兵士(ポーン)】のため【プロモーション】することが出来るが……恐らく今回は使わないため考えから外しておく。

 

「では、僕も動きます」

 

木場も帯刀し、出向く準備を進めていた。

 

「祐斗、例の作戦通りに動いて頂戴」

 

「了解しました」

 

刀の柄の場所を調節しながら祐斗は頷く。

 

「朱乃は頃合を見計らって、お願いね」

 

「はい、部長」

 

流石は【女王(クイーン)】の朱乃先輩。その落ち着いた物腰とは裏腹に激しい魔力の対流が見えた。

これはどう見ても士織が何かしたんだろうと苦笑いが浮かぶ。

 

「アーシアは私と待機よ。

回復役であるあなたは絶対にやられては駄目よ」

 

「は、はいっ!!」

 

アーシアは緊張しているのにも関わらずみんなのために何かをしようという心意気を感じさせる声を上げた。

全員の確認を取ったリアス部長は一歩前へ出る。

 

「さて、私の可愛い下僕たち。準備はいいかしら?

敵は不死身のフェニックス家の中でも有望視されている才児ライザー・フェニックスよ。

さぁ、消し飛ばして上げましょう!!」

 

 

 

「「「「「はい!!」」」」」

 

 

 

その返事を開始の合図に、全員が駆け出す。

俺と小猫ちゃんは体育館へと向かい、木場はトラップを仕掛けた森の中へ。朱乃先輩は空へと舞い上がる。

 

「イッセーさん!皆さん!頑張ってくださいっ!!」

 

アーシアからの声援を背に駆ける。

後ろ手に手を振りながら俺は小猫ちゃんとともに体育館へと全力で駆けた。

 

「どうする?小猫ちゃん。

体育館への侵入だけど……正面突破でもしてみるか?」

 

「……相手も居るでしょうし……先手を打つのもありですね」

 

その言葉に笑みを浮かべ、俺は戦闘への準備へと移る。

 

(さぁ、行こうぜ相棒!)

 

(俺たちの力を見せよう!!)

 

やる気に満ち溢れたドライグの咆哮が俺には聞こえる。俺は右腕(・・)に【赤龍帝の籠手】を出現させた。

そして、体育館につくやいなや。入口を蹴り飛ばして中に入っていく。

 

「まさか正面から来るとは思わなかったわ……。案外脳筋だらけなのかしら?グレモリーの下僕さんたちは」

 

中に居たのは四人の女性悪魔。

チャイナドレスを身に纏った娘と双子の娘、それと1度俺に突撃して来ようとした小柄で童顔な娘。

その顔を確認した俺はポツリと呟く。

 

「……【兵士】3、【戦車】1……か」

 

「……数で上回られただけです」

 

「そうだな。グレモリー眷属(俺たち)は量より質だ」

 

「……イッセー先輩は【兵士】をお願いします。私は【戦車】を」

 

「承知した」

 

「……何をコソコソと話しているのかしら?敵を前にして随分と余裕ね?」

 

チャイナドレスを身に纏った娘―――確か名前は雪蘭(シュエラン)だったはず……―――は何処か中国拳法を想像させる構えを取りながらそう言った。

 

「なぁに、簡単な作戦会議だ。

気にしなくてもいいぞ~?」

 

俺は笑顔を浮かべながらそういう。

 

「……ひとまず、勝負です」

 

そう言った小猫ちゃんは我先にと雪蘭の方へと駆けていった。

 

「ミラ!イル!ネル!あなたたちはそっちの赤龍帝の相手を!」

 

雪蘭はそれを言うと小猫ちゃんと格闘戦を始めた。

俺の前には3人の女性悪魔。

小柄で童顔な娘―――ミラ―――は武闘家が使うであろう長い棍を構え、双子の娘―――イルとネル―――は小型のチェーンソーをニコニコ笑顔で構えた。

……武器が些か物騒な気がするがそれは気にしたら駄目だろう。

 

「解体しまーす♪」

 

「台詞が物々しいな……オイ」

 

『Boost!!』という音声が俺の籠手から響く。

 

「「バラバラバラバラ!」」

 

双子のイル、ネルはそんな言葉をシンクロさせながら言うと、チェーンソーを床に当てながら同時に直進してくる。

俺に肉薄したイル、ネルはタイミングをほんの少しだけずらして振り上げた。

 

「……っと……」

 

俺はそれを身体をずらして躱すと片方を裏拳で吹き飛ばした。

そして、右腕を立て、ガードの姿勢を取る。背後から近づいていたミラの棍での攻撃をそれで受け止めると回し蹴りで今度は武器を吹き飛ばし無力化を図る。

……此処で時間を掛ける理由はない。

俺は3人と少しだけ距離を取ると5度の倍加をした【赤龍帝の籠手】の力を解放する。

 

Explosion!!(エクスプロージョン)

 

魔力を集め意識を集中させる。

俺は出現した小さい魔力球を右手で殴りつけた。

 

「喰らいな!新技【拡散する龍の息吹(ディスパーション・ブレス)】ッ!!!」

 

魔力球は炸裂し打ち上がると、まるで雨のように降り注いだ。

魔力の少ない俺の現在の状態で唯一の広範囲攻撃。

3人に降り注いだ魔力の雨は見事命中。

しかし、その威力は微々たるもので、あまりダメージは与えられてないようだ。

つまり―――――作戦通り。

 

『イッセー!準備が整ったわ!』

 

さらに、ナイスなタイミングでリアス部長からの指令が入った。

俺は小猫ちゃんと視線で合図を送り合い、頷いた。

そして、俺たちはその場から走り出し離脱する。

 

「に、逃げる気なの!?

此処は重要拠点なのにっ!!」

 

俺たちの行動に驚く4人。

まぁ、普通ならその反応だろう。

だが、此処が重要だからこそ俺たちの行動に繋がるのだ。

中央口からいち早く飛び出した俺と小猫ちゃん。

一瞬の閃光。刹那―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――先程まで俺たちの居た体育館には、巨大な雷柱が降り注いだ。

雷柱がなくなったとき、目の前の体育館もまた、消えてなくなっていた。

 

「―――――撃破(テイク)

 

朱乃先輩の声が上から聞こえてくる。

視線を少し上げてみると、そこにはニコニコ顔の朱乃先輩が黒い翼を広げて空に浮いていた。右手を天にかざしており、電気が迸っている。

 

『ライザー・フェニックスさまの【兵士】3名、【戦車】1名、戦闘不能!』

 

審判役のグレイフィアさんの声がフィールド中に響く。

 

「中々の威力ですね朱乃先輩」

 

「あらあら、ありがとうございます」

 

朱乃先輩は嬉しそうな表情を浮かべてそういう。

体育館ごと消し去る威力というのは目を見張るモノがある。

 

「小猫ちゃんもお疲れ様」

 

「……そんなに疲れてないです」

 

小猫ちゃんは物足りなさそうに手首を回していた。

さて、此処までの作戦は思い通りに行っている。

 

「……次は祐斗先輩と合流です」

 

「そうだな。

行こうか、小猫ちゃん、朱乃先輩」

 

木場が待っているのは運動場。

俺たちはそこを目指して駆け出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――瞬間。

 

辺りを熱風と粉塵、爆砕音が包んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――撃破(テイク)……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編はいかがでしたでしょうか??
楽しんで頂けたのなら幸いですっ!!


さてさて、雑談なのですが……。
早く一誠とライザーの戦いを書きたいのです……(苦笑)
頭の中ではもう完成しているのに文章に起こせないこの切なさ……(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)


それにしても最近は性格が何処か球磨川先輩に似ているキャラの出ている作品を読んでいます……!!
なんでしょう……私は球磨川先輩のような人がタイプなのでしょうか……??
少し、好きなキャラクターを並べてみましょう……。

【めだかボックス】……球磨川先輩。
【俺妹】……あやせちゃん。
【ソードアートオンライン】……シノン。

……なんでしょう、適当な作品を3つ上げてみたのですが……どことなく病んでいきそうなキャラクターばかりのような……(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
き、気のせいですよねっ!!!{{(>_<)}}


と、ともかく!!
また次回お会いしましょう!!(苦笑)


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~レーティングゲーム【中盤】~

皆さんこんばんは♪
後輩が出来るということに楽しみを見出してしまった夜叉猫ですっ!!

来年度が楽しみですねっ!!!


とまぁ、ともかく、本編をどうぞ♪


Side 三人称

 

「―――――撃破(テイク)……」

 

宙に浮かんだ女性―――ユーベルーナ―――は淡々と呟いた。

彼女の眼下には炎を使った爆破により土煙と黒煙の入り混じったモノが立ち上っている。

 

『倒したか?』

 

「……おそらく。

私の最大火力を撃ち込みましたライザー様」

 

『……そうか。

―――――よくやったなユーベルーナ』

 

ユーベルーナの持つ通信機器から聞こえてきたライザーの声は優しく、相手を労わっているのが良く分かる声。ユーベルーナはその声に嬉しそうに微笑みながら頬を染めていた。

 

『引き続き頼むぞ?俺の【女王(クイーン)】』

 

「分かりましたライザー様。

ご期待に答えられるよう、精進致します」

 

ユーベルーナはその場には居ないライザーに向かってか、頭を垂れた。

通信を終えた後、一瞬だけ下を見下ろしそのまま運動場の方へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――しかしそれは、

 

 

 

 

 

 

―――――ユーベルーナの、

 

 

 

 

 

 

―――――油断に他ならなかった。

 

 

 

 

 

「―――――【雷竜の咆哮】っ!!!」

 

「な……っ!!!?」

 

ユーベルーナの下―――――地上から女性(・・)の声が響いたかと思うと、彼女の真横スレスレを金色の帯電する光柱が通り過ぎて行った。

 

「……な、何故……」

 

ユーベルーナは眼下に広がる現実に目を見開く。

……予想外。彼女の心情を月並みに言えばそれに尽きるだろう。

 

 

 

 

 

「―――――何故3人とも無傷なの!?」

 

ユーベルーナの悲痛な叫び。

そう、彼女が倒したと思い込んでいた一誠、小猫、朱乃の3名は、全くの無傷で地に立っていたのだ。

 

「うふふ……私の障壁を舐めないで欲しいですわ」

 

ニコニコと笑う朱乃。

一誠と小猫を庇うように前に出た彼女はそう言って半透明に輝く障壁を解除した。

 

「ありがとうございます朱乃先輩。

おかげで無駄な力を使わずに済みました」

 

「あらあら、お役に立てたようで嬉しいですわ」

 

一誠の言葉にそう返す朱乃。

小猫も朱乃に頭を下げてお礼を言っている。

 

「……さて、どうします?朱乃先輩。

相手はライザーの【女王】みたいですけど……」

 

一誠がワザとらしく話を振ると、朱乃はニコニコ笑顔を崩さぬままに即答した。

 

「―――――私がお相手しますわ」

 

瞬間、朱乃の身体から雷が迸る。

まるで朱乃の意志に呼応するような激しい雷は遠目からでもかなりのものだと分かるだろう。

現に、ユーベルーナは顔を歪め冷や汗を垂らしている。

 

「うふふ……士織君に教えてもらった魔法……まだ完璧に使える訳じゃありませんので……練習に付き合っていただきますわよ?【爆弾王妃(ボム・クイーン)】さん」

 

「……練習とはよく言います……。

それに、その二つ名はセンスが無くて好きではないのよ【雷の巫女】さん」

 

ユーベルーナは手に持った杖を朱乃に向けながら笑った。それは強者の余裕の笑みではなく、挑戦者のあわよくば喰らってしまおうという獰猛な笑みだ。

一誠は二人の姿を視界に収めると、小猫の方を叩き、口を開いた。

 

「此処は朱乃先輩に任せて俺たちは先を急ぐとしようぜ?」

 

「……分かりました」

 

「うふふ……そうしてくれると助かりますわ。

なにせ本当に調整も出来ていませんの……巻き込んでしまったら大変ですわ」

 

苦笑い気味の表情を浮かべながら朱乃は一誠立ちの会話へ言葉を掛ける。

ユーベルーナは一誠たちを行かせたくはないのだろう。苦虫を噛み潰したような顔になっている。

 

「木場のやつも待ってるだろうしな……早く行こうぜ」

 

「……超特急です」

 

言って、一誠たちはその場を駆け出した。

二人の姿を見送るように静かに立つ朱乃とユーベルーナ。完全に姿が見えなくなった時―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――激しい爆裂音と雷鳴が轟いた。

 

 

 

戦いは序盤(オープニング)から中盤(ミドルゲーム)へと確実に移ろって行く。

 

 

 

 

 

Side Out

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

Side 一誠

 

『ライザー・フェニックスさまの【兵士(ポーン)】3名、戦闘不能』

 

運動場への移動中、校内アナウンスによるライザー眷属の戦闘不能のコール。

……なるほど、木場が倒したのか……。

俺は頬を緩めながら―――――

 

 

 

 

 

―――――背後から伸ばされてくる腕を掴んだ。

 

「……木場……気配がダダ漏れだぜ?

俺が士織だったらしごかれてるぞ?」

 

「こ、怖いことを言わないで欲しいな……」

 

木場は苦笑いを浮かべながらそう言う。

俺は掴んでいた手を離し、木場が隠れていた体育倉庫の影に身を潜めた。

 

「……祐斗先輩現状は??」

 

「ここを仕切っているのは【騎士(ナイト)】、【戦車(ルーク)】、【僧侶(ビショップ)】が1名ずつの計3名だよ」

 

「そりゃ、厳重なことだな」

 

「それはそうだよ。

何と言っても体育館を文字通り落としたからね……。

こちらからの侵入を警戒しているんだよ」

 

体育館というルートを潰したからにはもう片方の運動場というルートを警戒するのが道理……それもそうか。

俺は木場と小猫ちゃんとで同行動するかを相談しようと口を開くが、しかし。

 

 

 

「私はライザーさまに仕える【騎士】カーラマイン!

こそこそと腹の探り合いをするのももう飽きた!

リアス・グレモリーの【騎士】よ、いざ尋常に剣を交えようではないか!!」

 

女性の声が響きわたる。

ちらりと運動場の方を覗いてみる。

野球部のグラウンド。その中心で甲冑を装備した女性が堂々と立っていた。

……うん。アホの娘なんだろうか?

あんなこと言って出ていく奴がいるわけ……―――――

 

 

 

「名乗られてしまったら、【騎士】として、剣士として、隠れているわけにもいかないよね」

 

そう呟き、体育倉庫の影から出ていってしまう木場。

 

「……グレモリー眷属(うち)にもアホがいたぞ……オイ……」

 

「……仕方がありません私たちも行きましょう」

 

小猫ちゃんは諦めたような表情で立ち上がると木場の後を追っていく。

俺も溜息を吐きながら立ち上がり歩み出した。

 

「僕はリアス・グレモリーの眷属、【騎士】木場祐斗」

 

「……同じく【戦車】塔城小猫です」

 

「あ~……【兵士】の兵藤一誠だ」

 

木場、小猫ちゃん、俺の順番で甲冑姿の女性―――カーラマイン―――に名乗る。

カーラマインはそれを聞き嬉しそうに口の端を釣り上げた。

 

「リアス・グレモリーの眷属悪魔にお前たちのような戦士がいた事を嬉しく思うぞ。

堂々と真正面から出てくるなど、正気の沙汰ではないからな!」

 

……違います。その正気の沙汰じゃないことをしでかしたのは木場だけです。俺と小猫ちゃんを巻き込まないで下さい。

 

「だが……私はお前たちのような馬鹿が大好きだ!!!さて、やるか!」

 

剣を鞘から抜き放ち、構えるカーラマイン。木場もそれに応じるように抜刀した。

 

「【騎士】同士の戦い―――――待ち望んでいたよ。

個人的には尋常じゃない斬り合いを演じたいものなのだけど……まずはすぐに斬られないようにして欲しいな」

 

生き生きとした笑みを浮かべながら木場は挑発するように言い放った。

 

「強気な物腰も嫌いではないぞ!!

さぁいくぞ!リアス・グレモリーの【騎士】よ!!!」

 

カーラマインは踊るように斬撃を繰り出し始める。

中々の速度だが―――――木場より遅い。

打ち合いを見ているだけならカーラマインが有利のようにも見えるが、しかし、木場の表情は余裕のものだ。

 

「……様子見でもしてるのかよ」

 

苦笑いを浮かべながら、俺は腕を組み傍観の体勢を取る。小猫ちゃんも誘おうかとも思ったがあちらはあちらで【戦士】同士話しているようだ。

 

「……まったく……頭の中まで剣、剣、剣で塗り潰された者同士、泥臭くてたまりませんわ……。

カーラマインったら、【兵士(ポーン)】を『犠牲』にするときも渋い顔をしていましたし、主である【(キング)】の戦略がお嫌いなのかしら?

しかも、せっかくカワイイ子を見つけたと思ったら、そちらも剣バカだなんてついていませんわね……」

 

何処ぞのお姫様のようなドレスを着込んだ女性。確か士織から聞いたところによるとこの娘、ライザーの【僧侶】であるのと同時に妹だったはずだ。確か名前はレイヴェル・フェニックス。

俺がそんなことを考えているとレイヴェル・フェニックスが俺の方を見つめてくる。

 

「この方が……」

 

ぽけーっとした表情で頬を染めたレイヴェル・フェニックス。

 

「どうかしたのか?」

 

俺は首をかしげながらそう言う。

すると、レイヴェル・フェニックスははっとした顔になり手を振って焦ったように口を開いた。

 

「な、なんでもありませんわ!えぇ!

別に格好いい殿方だなぁなんて思っていませんわ!!」

 

「そりゃどうも。

あんたも可愛いと思うぜ?」

 

「あ、ありがとうございます―――――って違いますわ!!わ、私が先ほど言ったことを忘れなさい!!」

 

「忘れるって何をだ?」

 

「そ、それはその……」

 

「俺のことをいきなり口説いたアレか?」

 

「言わないで下さいましっ!!」

 

真っ赤になった顔を両の手の平で覆いながら恥ずかしそうにそういったレイヴェル・フェニックス。

おっちょこちょいなんだろうか?この娘は。

 

「悪ぃ悪ぃ。からかいすぎたな。

許してくれよ」

 

そう言って、レイヴェル・フェニックスの頭を撫でる。

 

「あ、あなた何をして……はふぅ~……♪」

 

気持ちよさそうに受け入れるレイヴェル・フェニックスに俺からしたことながら苦笑いを浮かべてしまう。

今は戦闘中だということが分かっていないのだろうか?

 

と、俺とレイヴェル・フェニックスが戯れていると、木場とカーラマインの戦いの流れが変わったのを感じた。

 

 

 

「残念だが、私に貴様の【神器(セイクリッド・ギア)】は通用しない」

 

カーラマインの剣は炎を纏い、煌々と燃えている。なるほど……木場の闇を纏わせた刀は折られてしまったのか……。

 

「では、僕もこう返そうかな。

―――――様子見は此処までだ」

 

「何?戯言を。

グレモリーの【騎士】よ、見苦しさは剣士としての本質を曇らせて―――――」

 

「―――――凍えよ」

 

低く唸るような木場の声の後、刀身を無くした刀に何かが集まっていく。

辺りの気温が少し下がり、木場の周りには冷気が漂い始めた。

そして、木場の刀は凍っていき、氷が積み重なっていく。氷は刀身を形作り……。

 

―――――パリィン……。

 

氷の割れる音とともに、木場の刀は氷の刃を作り出した。

 

「【炎凍刀(フレイム・デリート)】―――――この刀の前では、いかなる炎も消え失せる……」

 

「ば、馬鹿な!?

【神器】を二つも有するというのか!?」

 

木場に向かって炎の剣を横薙ぎに放つカーラマイン。しかし、その表情には余裕などなく、ただあるのは焦りのみ。

 

「……言ったよね?この刀の前ではいかなる炎も消え失せる、って」

 

木場の呟きの後、カーラマインの剣は凍りついていき、儚い音を立てながら、崩れて消えてしまった。

しかし、武器を失ったにも関わらずカーラマインは攻撃の手を休めない。

砕けてしまった剣を早々に捨てると、腰に携えてあった短剣を抜き、それを天にかざして叫んだ。

 

「我ら誇り高きフェニックス眷属は炎と風命を司る!!受けよ!炎の旋風をッ!!!」

 

カーラマインと木場を中心にして、グラウンドに炎の渦が巻き起こる。熱風を撒き散らしながら巨大化する炎の渦に気持ちよさそうに目を細めていたレイヴェル・フェニックスもふと、我に帰り眉を顰めた。

……頬が赤いのは……熱いからではないだろう……。

 

「まったくカーラマインったら……。

周りのことも考えて欲しいですわ……」

 

「まぁまぁ、戦ってない俺たちが愚痴っても仕方ないだろ?」

 

「また撫でるなんてあなたは何を……はふぅ~♪」

 

……ちょろいんだけどこの娘……。

頭を撫でるだけで無力化できるって何なのさ……。

とまぁ、そんなことを考えながらだが、再び木場たちの方へと視線を戻した。

やはり氷の刀は熱に弱いらしく、その刀身は溶けだしていた。

 

「なるほど、熱波で僕らを蒸し焼きにするつもりか……。だけど、甘いね」

 

木場は刀身が溶けてしまった刀を前に突き出すと、力強い言葉を吐き出す。

 

「―――――止まれ」

 

その一言で、場の状態が一変した。

旋風は木場の刀の方へと流れて行き、遂には熱風は止み、グラウンドがしんと静まり返ってしまう。

 

「【風凪刀(リプレッション・カーム)】、一度の戦闘で2本以上も魔剣を出したのは久しぶりだよ」

 

そう言った木場の刀は特殊な形をしていた。剣先が円状になっており、円の中心には不可解な謎の渦が生まれている。

……なるほど……アレで風を吸い込ませたのか……。

 

「……複数の【神器】。神器所有者から獲物を奪い、自分のモノにしている後天的な神器所有者か……?」

 

カーラマインの質問に木場は首を横に振る。

 

「僕は複数の【神器】を有してもいないし、後天的な神器所有者でもない。

―――――創ったのさ」

 

「創る……だと……?」

 

「そう。僕の持っている【神器(セイクリッド・ギア)】は【魔剣創造(ソード・バース)】。

僕は任意的に魔剣を創り出せるんだよ」

 

木場が指を鳴らすと、木場を中心にグラウンドから剣、刀が勢い良く飛び出した。

形状も、刀身も、大きさも全てが違うあれが全て魔剣……。なんて応用が利く【神器】なのだろうか。

 

「そうか……魔剣使い……数奇なものだ。

私は特殊な剣を使う剣士と戦い合う運命なのかもしれないな」

 

「へぇ、僕以外に魔剣使いでも居たのかな?」

 

「いや、魔剣ではない。―――――聖剣だ」

 

「―――――っ!!!」

 

その一言を聞いた瞬間、木場の雰囲気がガラリと変わったのを此処に居る全員が認識した。

……士織が心配して気にかけてたのはこれか……。

俺はレイヴェル・フェニックスを撫でるのを止め、腕を組んだ。

 

「……あっ……」

 

……レイヴェルさんや……残念そうな声を上げないで欲しい……。

俺は二つの意味で溜息を吐いた。

 

「その聖剣使いについて聞かせてもらおうか……?」

 

聖剣への恨みを持ってるみたいだな……。

俺は木場が行き過ぎた真似をしないように目を光らせる。

 

「ほう、あの剣士と貴様は因縁があるのか?

だが、剣士同士、言葉で応じるのも無粋。剣にて応えよう!!」

 

「……そうかい……。

すまないけど―――――手加減は出来そうにない」

 

目を細めた木場は刀を創り直し、構えた。

なるほど、先程までの様子見は本当に可愛いものだと感じさせるほどの覇気を感じる。

俺はそんな木場から視線を外し、背後へと移す。そこにいたのは四人の女性。

 

「……眷属全員集合か……」

 

【兵士】2名、【僧侶】1名、【騎士】1名……木場や、小猫ちゃんの方に回したら少し苦しそうだ……。

俺は今戦っている二人をちらりと見ながらそんな思考をする。

 

「ねーねーそこの【兵士】くん」

 

「ん?なんだ?」

 

「ライザーさまがね、あなたの所のお姫様と一騎討ちするんですって~。ほら、あそこ」

 

女の子の指さす方へと視線を移すと、新校舎の屋上で炎の翼を羽ばたかせる人影と黒い翼を羽ばたかせる人影が視界に入った。

……【(キング)】が一騎討ちって……戦略的には駄目だろう……。

苦笑いしか出てこなかった。

 

「お兄さまったら、リアスさまが意外に善戦するものだから高揚したのかしらね。

普通に戦えば私たちの勝利ですもの、情けを与えたのでしょう。

このままでは、対峙する前にやられてしまいそうですし?」

 

レイヴェル・フェニックスがほほほ、と口に手を当てて笑っている。

先程まで俺の横にいた筈なのだが……何故に四人の近くに居るのだろうか?しかも何故か強気……?

ともかく、現状はピンチと変わりない。

俺は【赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)】を出現させ戦闘態勢に入る。

 

『相棒、そのままの状態じゃ時間が掛かるぞ?』

 

(分かってる。時間をかけてる余裕はねぇからな)

 

『ならば?』

 

(あぁ、使うぞ)

 

ドライグとの短い会話を終えて俺は四人―――――【兵士】のリィ、ニィ、【僧侶】の美南風(みはえ)、【騎士】のシーリスを倒すことに決めた。

 

「……取り敢えず、リアス部長のところに行かねぇといけねぇから……倒させてもらうぜ?」

 

言って、一拍開けると右手を掲げて叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――【禁手化(バランス・ブレイク)】!!」

 

『Welsh Dragon Balance Breaker !!!!』

 

 

 

「「「「「「「「「なっ!!?」」」」」」」」」

 

その場にいる俺以外の全ての者が驚きの声をあげた。

俺が【禁手化】したことについて驚いているのだろう。

 

「【赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)】……力ずくで通らせてもらうぜ?」

 

俺が纏っているのは赤い龍を模した全身鎧(プレートアーマー)

全体的に鋭角なフォルムであり、力がみなぎってくる。

 

「さぁ、行こうぜ相棒!!」

 

『Boost Boost Boost Boost Boost Boost !!』

 

「一撃で決めるッ!!!」

 

『Explosion!!』

 

「これが全力の……【拡散する龍の息吹(ディスパーション・ブレス)】ッッ!!!」

 

炸裂、そして、打ち上がる魔力球。降り注ぐ魔力の雨は先程体育館で使ったものとはレベルが違う。

先程の【拡散する龍の息吹】は相手の足止めが目的だったが……今回のものは敵を仕留めるために放ったのだ。

魔力の雨は一撃一撃が地を穿ち、そして―――――敵を確実に仕留める。

 

リィ、ニィ、美南風、シーリス、レイヴェルの5人全てを【拡散する龍の息吹】が捉え、悲鳴を上げる間もなく戦闘不能に追い込んだ。

 

 

 

『ライザー・フェニックスさまの【兵士(ポーン)】2名、【僧侶(ビショップ)】1名、【騎士(ナイト)】1名、戦闘不能』

 

少しの間を空け、アナウンスが流れる。

……1人足りない……?

俺は先程まで5人の居た方へと目を凝らした。

 

「き、規格外……ですわ……っ!!」

 

「そうか、アンタもフェニックス家の娘だもんな……不死の属性持ちだよな」

 

「当然……ですわ!!」

 

気丈にそう言うが見たところ肩で息をしてる。俺の一撃は不死のフェニックスへのダメージとしてはかなり有効なようだ。

 

「……くぅ……っ」

 

ふらりと体勢が崩れたかと思えば、レイヴェル・フェニックスは前のめりに倒れ始める。俺は地を蹴り、彼女に接近すると優しく抱きとめた。

そして、彼女の頭を撫でながら口を開いた。

 

「……お疲れ様」

 

その言葉を聞いたのだろう彼女は少しだけ微笑むと光の粒子となり消えていった。

 

 

 

『ライザー・フェニックスさまの【僧侶(ビショップ)】1名、戦闘不能』

 

そのアナウンスを聞いた俺は少しだけ振り向く。そして、出来るだけ大きな声で、

 

「木場!小猫ちゃん!ちょっと行ってくるわ!」

 

そう叫んだ。

二人はまだ戦っている最中だったが一瞬こちらへと視線を向けてくれた。

 

―――――……イッセー先輩……頼みます。

 

―――――イッセー君、頼んだよ。

 

二人が、そう、言っているようだった。

俺はニヤつく顔を何とか引き締めながら新校舎の屋上へと飛び立つ。

ここからでも見える―――――紅い魔力と炎の魔力のぶつかり合い。

ライザーの方は無傷なのに対して、リアス部長の方は服が所々破け、心なしか息も上がっているように見える。

後少し、後少しでリアス部長のところに辿り着く。

 

 

 

 

 

Side Out

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

Side 三人称

 

「……もう終わりにしようリアス。

キミじゃ俺には勝てない」

 

ライザーはリアスとの間合いを取りながらそう言った。

ボロボロと言っても過言ではないリアスに対して思うところがあったのだろう。

 

「いいえ、ライザー。私は諦めないわ。

せっかく皆が頑張ってあなたを追い詰めているのよ?

(キング)】である私が諦められるわけが無いわ!!」

 

意志の固い、芯の通った光を宿したリアスの瞳。ライザーはそれを見てこれ以上言っても意味が無いのがわかったのか、口を開くのを止め、片手を上げた。

 

「……なら、この一撃で終わろう。

倒れていった眷属たちの思いも背負った【王】の攻撃だ」

 

ライザーの上げられた片手の上に炎が渦巻き球体を作り出す。

ジリジリと皮膚を焼くような熱さにリアスも顔を歪めた。

 

「くっ……!!」

 

何とかしてそれに対応しようとするリアスだったが―――――魔力が足りない。

ライザーとの打ち合いで使い切ってしまったようだ。

 

「チェックメイトだ、リアス」

 

何もできないリアスは悔しそうにその言葉を聞く。そして、ライザーはそんなリアスに向けて、炎の球体を、放った。

 

―――――迫り来る絶望の炎球。

 

―――――対処不能の現状。

 

―――――奇跡を願うしかできない状態。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――そのチェックメイト待った」

 

そんな、詰んだ状況で現れたのは、赤い鎧を身に纏った、一誠だった。

一誠は右腕を振りかぶり―――――

 

 

『Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost!!』

 

 

『Explosion!!』

 

 

―――――炎球を殴りつけた。

 

一誠の拳を中心に弾ける炎球。

リアスとライザーは目の前で行われた現象を目を見開いて見つめた。

一誠はそんなことを気にしないふうにリアスの方へと歩み寄り、兜部分のマスクを収納させて微笑みかける。

リアスは一瞬戸惑ったような表情を浮かべたがすぐに嬉しそうな笑みへと変化した。

 

「……イッセー」

 

その呟きに一誠はこくりと頷き―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――リアスの両の頬を両手で摘んだ。

 

「い、いひゃい!いひゃいわよぅ!」

 

「アホなんですか部長?

あなたが、【(キング)】が倒されたら負けなんですよ?分かってますかそこんところ」

 

「わ、わかっひぇるわよ!」

 

「だったらなんで一騎討ちなんかしてるんですか?やっぱりアホでしょ?馬鹿なんでしょ?」

 

一誠は微笑みを浮かべたままリアスの方を抓る。最早涙目のリアスの姿に置いてけぼりになっているライザーは絶句していた。

 

「しかもボロボロじゃないですか!

魔力も空になってるし……本当にチェックメイト寸前ですよ!?」

 

「わ、わかっひゃから……もぅはなひてぇ~……」

 

こんなに弱々しい表情の彼女が凛とした表情を浮かべるだなんて誰も想像できないだろう。そう言えるほどにの表情をリアスは浮かべていた。

 

「お、おい?

そろそろ離してやったらどうだ?

敵側の俺が言うのもなんだがそれは酷くないか……?」

 

ライザーも流石に我に帰ったのか引き攣った表情でそう言った。一誠はその一言を聞くと一瞬だけ考えるとリアスの頬を離した。

 

「い、痛かったわ……」

 

そう言いながらリアスは頬を撫でる。

 

「だ、大丈夫か?リアス」

 

ライザーはそんなリアスを見ながら心配そうに口を開く。

一誠はそれを見ながら一言。

 

 

 

「……しまったグダグダだ」

 

 

 

登場はカッコイイものだった筈なのに、完璧に不意にしてしまった一誠の行動だった。

 

 

 

 

 

 

 




本編はいかがでしたでしょうか??
楽しんでいただけたのなら幸いです♪

今回は9千字となかなかの量を書いてしまいました(笑)
私自身も文字数を見て驚いてしまったのです(笑)

次回がレーティングゲーム最終話となる予定ですが……終わるのでしょうか……(苦笑)

夜鶴シリーズを早く書いて欲しいと言ってくださる読者様もいらっしゃるので……そろそろ手をつけようかとも思っているのですよっ!!


さてさて、雑談なのですが……。
そろそろ2月14日!!
男性の皆さんはお楽しみのバレンタインデーです♥
私はどんなチョコレートを作って誰に渡そうか……まだまだ悩み中なのです(苦笑)
驚いたことに、兄は毎年チョコレートをかなり貰って来るので渡さなくてもいいような気がするのですが……ついつい渡してしまいます(苦笑)
やはり喜んでもらえると嬉しいですよね♪


さてさて、また次回お会いしましょう♪
皆さん良いバレンタインデーを♥


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~レーティングゲーム【終盤】~

皆さんこんばんは♪
最近は寒くて人にくっ付いたり、抱き着いたりして暖をとっている子供っぽい夜叉猫なのです♪


今回はかなり短いですが楽しんで下さると嬉しいのですっ!!

それでは、本編をどうぞ♪


Side 三人称

 

「ちょっとしたアクシデントはあったが……お前を倒しに来たぜ?」

 

一誠は兜部分のマスクを収納させたまま、ライザーの方を向くと不敵な笑みを見せる。

 

「中々変わった登場だったな?」

 

一誠からの言葉に、苦笑いを浮かべながらライザーは腕を組む。

どうやらライザーは先程の一誠の行動を思い出しているようだ。

 

「ウチの【(キング)】の頭がちっとばかしおかしかったからな」

 

「そう言ってやるな。

リアスは中々やる女だぞ?」

 

「へぇ?素直な物腰だな?」

 

「……お前、いや、お前たちは気付いているんだろう?」

 

ライザーは既に下へと降りて心配そうな表情を浮かべるリアスの方を見つめながらそう言った。その表情は何処か熱っぽい。

 

「アンタの態度見てりゃ大体分かるさ」

 

「……リアスたちには伝わらないんだがな……」

 

二人の思わせぶりな会話。

その会話はまだ、誰にも聞こえてはいない。

一誠は真面目な表情を浮かべると咳払いをし、口を開いた。

 

「種蒔き鳥……いや、ライザー」

 

「……なんだ」

 

「一丁殺るか?」

 

短な言葉をやりとると、ライザーは好戦的な笑みを浮かべる。

 

「はっ……!

ダラダラと話してるよりかはマシだな。

それに……」

 

その背後に炎の翼を大きく広げたライザー。そして、大きく息を吸い込むと割れんばかりの声で叫んだ。

 

「このゲーム……敗けるわけにはいかないからな!!!!」

 

その言葉と共に、二人は足を動かした。

ライザーは後方へと飛びながら炎弾をばら蒔き、一誠はそこに迷うことなく飛び込む。

 

『Boost Boost Boost Boost Boost!!』

 

「ちっ……!地味に火力高いなっ!」

 

極力躱しながら進む一誠であったがしかし、全てを躱せているわけではない。

一誠の鎧に当たったライザーの炎弾は表面を焦がしていた。

 

『Explosion!!』

 

「【龍の咆哮(ドラゴン・ショット)】ッッ!!!」

 

一誠が握り拳程の魔力球を殴りつけたかと思うと、それは炸裂せず、ただ巨大な魔力の柱となり未だにばら蒔かれる炎弾と共にライザーを飲み込まんと襲いかかった。

 

「ぐぉっ……!?

なんだその馬鹿げた威力は……!?」

 

ライザーは苦悶の声、そして驚愕の表情を浮かべる。なんとか直撃は避けたものの、その左腕を魔力の柱に飲み込まれてしまったのだ。

ライザーの右腕は綺麗に削り取られていたが、流石はフェニックス。数秒と掛らずして修復してしまう。

 

「流石は『赤龍帝』……その能力は厄介極まりない……」

 

「アンタの不死性もチート級だろうが」

 

「違いない……!!!」

 

言葉とともに、ライザーは一誠に急接近すると今度は至近距離から炎弾をぶつけた。

一誠は短く呻いたが、ぶつけるために伸ばされたライザーの腕を掴む。

 

「近づいて来たのは愚策だぜ……!!ライザー!!!」

 

『Boost Boost Boost Boost Boost Boost!!』

 

『Explosion!!』

 

「ぶっ飛びな……っ!!【龍の剛腕(りゅうのごうわん)】!!!!」

 

――――― 一撃炸裂。

一誠はライザーの腹部を抉るように殴りつけた。ライザーは身体をくの字に折り曲げ吹き飛び、校舎の壁へと激突することでようやく止まる。

 

「……手応えが……薄い……?」

 

一誠は壁に激突したライザーの方を見ながら拳を握ったり開いたりを繰り返す。

壁を崩しながら立ち上がるライザーは口端から垂れる血を拭いながら笑った。

 

「―――――【陽炎(ミラージュ)】。

お前が俺を殴る瞬間俺の姿を歪ませることで直撃を避けさせてもらった……」

 

「その割にはダメージ深いみたいだな?」

 

「……正直ぶっ倒れそうだ。

全く……これだからパワー馬鹿は……」

 

自傷気味に笑うライザーであったがその瞳にはまだ光が灯っている。強い、意思の現れだろう。

一誠は兜部分のマスクを収納させて溜息を吐いた。

 

「なら、リタイアしたらどうだ?

このゲームに敗けてもリアス部長っていうハーレム要員が1人居なくなるだけだろ?」

 

「……お前性格が悪いと言われないか?」

 

「さぁ?何のことだろうな?」

 

半眼で睨むライザーに何のことだか分からない、という表情で肩を上げる一誠。

ライザーはしばらく考えるように腕を組み、チラリとリアスの方へと視線を移す。

 

「……ハァ……逃げるのは俺らしくないな」

 

ライザーはそう呟くとしっかりと2本の足で立ち、決意の眼差しを向ける。

 

 

 

 

 

「―――――俺はな、リアスが大好きなんだよッッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

その声は空気を震わせ大きく木霊した。

勿論、リアス本人にも聞こえたはずだ。

ライザーは拳を握り、身体を震わせる。

 

「俺が女癖が悪い事なんざ百も承知だ!

こんなんだからリアスに嫌われ、拒絶される……。

周りからリアスをハーレムの一人としてしか見ていないという評価を貰うのも仕方がねぇことだろうよ……」

 

ライザーは今まで告げなかったであろう本音を吐露し始め、それを静かに聞く一誠。

 

「だがな!俺はリアスと出会って変わった!!

初めて会ったとき、これが一目惚れと言う奴か、とそう思った!!」

 

ライザーはリアスの方を横目で見ると心底幸せそうな表情を浮かべる。

 

「ハーレムなんていうくだらないものは必要ない……。俺はただ、リアス・グレモリーという一人の女が欲しい!!

その為なら俺はどんな代償でも、対価でも払うさ!!!」

 

ライザーはそう叫ぶと、屋上の端に立ち、リアスの方へと指をさす。

 

 

 

 

 

「―――――俺はリアス・グレモリーを愛しているッッ!!!!」

 

 

 

 

 

木霊するその言葉とライザーの荒い息。新校舎の屋上にはその音しか無かった。

しばしの間を開けて、息を整えたライザーは振り返り炎の翼を勢い良く噴出させる。

 

「惚れた女の手前、このゲーム……敗けるわけには行かねぇんだよォォォォオッッ!!!」

 

感情に呼応する如く煌々と燃え上がるライザーの炎。

これこそフェニックスの【生命の炎】だろう。

 

―――――そして、ライザーの宣言の後、森の方で激しい閃光と共に爆裂音が鳴り響いた。

 

 

 

『ライザー・フェニックスさまの【女王(クイーン)】1名、リアス・グレモリーさまの『女王(クイーン)』1名、戦闘不能』

 

 

 

そのアナウンスは予想外のものだった。

 

 

 

 

 

Side Out

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

Side 一誠

 

「……ユーベルーナ」

 

「朱乃先輩……」

 

まさか朱乃先輩が負けるとは……。

俺は予想外の出来事に動揺を隠しきれなかった。

ライザーも【女王】の名前を呼び俯く。

 

「……相討ちに持って行ったんだな……」

 

慈愛に満ちたライザーの言葉。

視線は先程爆発の起こった森の方を向いている。

そして、ライザーは俺の方を睨むと雄叫びをあげた。

……気合の入り方が違うな……。

どうやら【女王】の戦闘不能が起爆剤になりライザーを奮い起たせたようだ。

 

「さぁ……!!

決着を付けるぞ兵藤一誠ッッ!!!」

 

ライザーはそう言うと初めとは比べ物にならない量の炎弾を放った。

俺は何とか躱そうと身を捻るが、如何せん量が多過ぎた。かなりの量が俺の身体に直撃してしまう。

 

「ぐうぅ……っ!?」

 

膝をつきながら着弾したところを押さえる。

……と、着弾部分の触り心地に違和感を感じた。視線をずらしてみると、何と、俺の鎧である【赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)】が破壊されていたのだ。

 

『……相棒』

 

(何だ……?

今どうするか悩んでる所なんだけど?)

 

『今の奴にならアレ(・・)を見せてもいいのではないか?』

 

ドライグの言葉に俺は目を見開く。

 

(使えねぇんじゃなかったのかよ?)

 

『なに、たった今調整が終わった。

それで……どうする?』

 

(使えるっていうなら話は早い。

……俺も今のライザーになら使ってもいいんじゃねぇかって思ってたところだ!)

 

ライザーの気合い。そして抱いている想いと覚悟。それは敬意に価する程だろう。

俺は立ち上がると深呼吸をし、口を開いた。

 

「―――――ライザー」

 

「なんだ兵藤一誠!

まさか降参などと吐かすわけじゃ無いだろうな!」

 

「そんなわけねぇだろ」

 

「なら、何の用だ……?」

 

ライザーは俺の言葉に訝しげな表情を見せる。

俺は1度【禁手(バランス・ブレイカー)】を解除するとライザーをしっかりと視界に入れる。

 

「今から俺の本気を見せてやる」

 

「本気……だと……?」

 

眉を顰めるライザー。

今まで手を抜いていたのだと思われていそうだ……。

 

「訳あって今まで使えなかったが……俺の相棒が使えるようにしてくれたんでな。

取り敢えず先に言わせてもらう。

―――――簡単に倒れないでくれよ?」

 

その言葉の後、静かに俺は呟く。

 

 

 

「……【禁手化(バランス・ブレイク)】」

 

 

 

『Welsh Dragon Balance Breaker second edition !!!!!!!』

 

 

 

赤いオーラ、そして【龍の力】が荒々しく俺の周りを包み込む。

まるで意思を持ったかのように俺の体へとまとわり付いて、形作って行く。

俺は装着が終わったのだと感覚的に感じ取り、周りの俺を包んでいるモノを散らせるため腕で払った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なんだ……それは……」

 

ライザーからの驚愕の表情と視線に晒され、俺は姿を表した。

 

赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)】よりもさらに赤さを増した美しき深紅の全身鎧(プレートアーマー)。元からの鋭角なフォルムがさらに増している。

―――――まさに【龍】の体躯。

 

俺は身体から力を抜きただ仁王立ちする。

 

「―――――【赫龍帝の四皇鎧(ブーステッド・ギア・プロモーションメイル)】……。

これが俺のもうひとつの【禁手】だ」

 

「もうひとつの……【禁手】!?」

 

「奥の手とまではいかないがこれは切り札の一つ……初めは使う気なんてなかったんだけど……ライザーの姿勢に敬意を評して使わせてもらったぜ?」

 

俺がそう言うとライザーはふっ、と笑い構えた。

 

「切り札?いいじゃないか!

それを破ってこそ俺は本当の勝利を手に入れることができる!!!」

 

俺とライザーは互いに睨み合い、笑みを浮かべると、

 

 

 

「行くぞッ!ライザーァァァァア!!!」

 

「行くぞッ!イッセーェェェェエ!!!」

 

 

 

互いに叫び合いながら戦闘を再開した。

 

 

 

 

 

 

 

 




本編はいかがでしたでしょうか??
楽しんで頂けたのなら幸いです♪


今回、ライザーの本心を唐突に出させて頂きましたが……いかがでしたでしょう??
前々から考えていた展開でございます♪

そして!!
とうとう登場した一誠くんの【亜種禁手】!!!
能力は……「あれっ??」と思うものかもしれませんがお楽しみに♪

感想をとても、とてもお待ちしていますっ!!!

それではまた次回お会いしましょう♪


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~レーティングゲーム【決着】~

皆さんこんばんは♪
最近はやっと暇になって更新できている夜叉猫なのです♪

さてさて、今回の話なのですが……とても短いです……(苦笑)
それでも一生懸命書きましたので、楽しんで頂けると幸いですっ!!

それでは、本編をどうぞっ♪


Side 一誠

 

真正面から激突した俺とライザー。

 

―――――片や炎を纏った右拳。

 

―――――片や籠手に包まれた右拳。

 

互いにぶつかり合い、そして仰け反る。

俺は鎧を纏っているために無傷。ライザーも再生することで外傷は見当たらない。

 

「燃やせ……!【炎ノ海(ヒノウミ)】ッ!!」

 

言って、ライザーの放った炎球は俺の足元へと着弾し、一瞬にして燃え広がる。

鎧を纏っているのにも関わらず、ジリジリと焦がすような火力は侮れない証だろう。

俺は抜け出すために龍の翼を広げ飛び上がる。

 

『相棒!!

先に行っておくが今回【換装】は2度しか使えないと考えておけ!

まだ調整が完璧ではなかったようだ!』

 

(了解っ!!)

 

ドライグの言葉に短く返事を返した俺は急降下を始めた。

目標はライザー!ダイブアタックを決める!!

 

「焦がせ!!【炎ノ柱(ヒノハシラ)】ッ!!」

 

ライザーが腕を振り上げた瞬間、まるでライザーを囲むかのように巨大な炎の柱が噴出された。

俺はダイブアタックを急遽停止し、その炎の柱を回避する。

 

「討てッ!【炎ノ槍(ヒノヤリ)】ッ!!」

 

ほんの一瞬、ライザーに背を向けた時、その声が響き渡る。そして、その声から数秒も経たぬうちに、背後から無数の爆撃を受けたかのような衝撃が襲って来た。

 

「ぐぅ……っ!」

 

空中を錐揉み回転しながら吹き飛ぶも、何とか体制を立て直す。

 

『相棒……』

 

そんな時、ドライグから低い声を掛けられた。

……しまった……ドライグを怒らせたか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『―――――何時まで遊んでいるつもりだ……?』

 

不満げなドライグの声は嫌に響く。

俺は空中で静止しながら頭を掻き苦笑いを浮かべる。

 

「悪い悪い……ちょっとライザーの技が見たくてな……」

 

『ふん……早く決めてしまえ。

お前はあの男に敬意を評してこの鎧を纏ったのだろう?

ならば遊んでいるのは些か礼儀がなってないぞ?』

 

その正論にグウの音も出ない。

俺は悪いなと短く呟くと深呼吸をし、言葉を紡ぐ。

 

―――――勝利への一言を。

 

 

 

 

 

「―――――換装……【赫龍魔帝(ウェルシュ・ドラグーン・ビショップ)】」

 

 

 

Change(チェンジ)!! Dragoon(ドラグーン) Bishop(ビショップ)!!!!!!』

 

 

 

その音声と共に、俺の鎧は変化を始める。

左右の腰辺りに二丁のレールガンが装備され、両肩に出現するビーム砲。両腕には二丁のビームライフルを持ち、極めつけは背後に浮遊する四対八機のドラグーン。

形は剣の刀身部分に酷似している。

 

「行くぞ……相棒(ドライグ)

 

『直ぐに終わらせるぞ……相棒(イッセー)

 

呟きざまに移動を始める。

視界に入るライザーからは驚愕と、それ以上の期待の視線を感じた。

薄く笑っているライザーに俺は遠慮などいらないことを悟る。

 

「本当に面白いぞイッセー!!!

お前はまだ強くなるのか!!!」

 

そう言いながら炎の翼を羽ばたかせるライザー。そして、まるで弾幕の如く炎弾をばら撒く。

 

「ドラグーン起動ッッ!!!」

 

『Starting Dragoon!!!!!!!』

 

背後に浮遊していたドラグーンが赤い粒子を撒きながら動き始める。

 

「向かい撃て……ドラグーン!!!!」

 

『Boost Boost Boost Boost Boost!!』

 

『Explosion!!』

 

弾幕となった炎弾に向かってドラグーンは赤いレーザーを放つ。

 

元々魔力の少ない俺が普通にドラグーンを使えば直ぐに空になってしまう。そのため、俺は別の力に目をつけた。

それは―――――【龍の力】。

幸いにも俺の中には二天龍の片割れであるドライグがいるため殆ど無尽蔵に引き出すことが出る。

つまり、今ドラグーンから放たれているのは【龍の力】。

威力は……言うまでもないだろう。

 

「焼き斬れッ!【炎ノ剣(ヒノツルギ)】!!!」

 

爆煙に紛れて近付いて来ていたライザーがその手に炎を剣状にしたモノを持ち横薙ぎに振るってくる。

近接武器を持たない今の俺はただそれを避けるしかない。半身になりライザーからの攻撃を避けた俺は零距離でビームライフルを放つ。

 

「ガグゥ……ッ!!?」

 

ライザーは苦悶の声を漏らすと、腹を貫かれた姿で後方へと吹き飛ばされる。しかし、今回は壁にぶつかることはなく、炎を吹き出すことで減速し、着弾した。

 

「くっ……!【陽炎(ミラージュ)】を使うよりも早いか……!!」

 

貫かれた腹を再生させるライザーだったが見るからに再生速度が遅くなっている。

俺はそんなライザーに向かって口を開く。

 

「ライザー……次で終わらせようぜ?

俺は最大の攻撃を放つから……お前も最大の攻撃をぶつけて来い!!」

 

ライザーは一瞬目を見開くとニヤリと笑い俺を見上げてきた。

かなり好戦的な瞳だ……!

 

「良いだろう……!

次で決着といこうじゃないか!!!」

 

そう叫んだライザーは両腕を頭上に掲げると巨大な炎の球を作り始めた。

ライザーの行動に頬が緩むのが分かる。

俺は両足を肩幅に開くと最大火力をもつ攻撃を放つための準備へと移った。

 

 

 

「……全武装開放」

 

『Armament All Clear!!!!』

 

―――――腰辺りにある二丁のレールガンは可動し、前方へと向けられ、固定。

 

―――――肩のビーム砲はスライドすることで開き、準備完了。

 

―――――両腕のビームライフルは腕を締めることで固定し、ブレを無くす。

 

―――――ドラグーンは俺の背後を円状に浮遊することで発射準備を整える。

 

 

 

『相棒……準備が完了した。

後はエネルギーを装填するだけだ』

 

ドライグの言葉を受けた俺はライザーの方へと視線を移動させる。

 

「ぐっ……!

やっと……やっと完成したか……!!」

 

炎球は最早―――――小さな太陽。

ライザーは顔を歪めながらもその炎球を支えていた。

 

「遅かったな?ライザー。

やっと完成したか??」

 

「はっ……!抜かせ……。

貴様もつい先程準備が終わった癖によく言う……!」

 

ライザーはそう言いながら笑う。

その姿は何処かボロボロで……しかし、自信に満ち溢れたものだ。

 

「なら……やるか?」

 

「あぁ……良いだろう」

 

その短い呟きの後俺とライザーは動いた。

 

―――――最後の一撃を放つため。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――尽きることなきこの炎は我らが魂ッッ!!

滅せよ炎……【滅スル炎ノ星(プロミネンス・スター)】ッッ!!!」

 

その叫びと共にライザーは頭上の炎球……いや炎星を放った。それと同時に、放ったライザーは膝をつき肩で息をする。

 

「過去……最高の……一撃……だ……っ!!」

 

見るからに疲労困憊のライザーはそう呟き、事の終りを見守る。

俺はそのライザーの姿に笑みを浮かべてしまう。

 

「俺も……最高の一撃で迎え撃とう!!」

 

その声に呼応してか、鎧に付いた宝玉が一層煌めく。

 

 

 

『BBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBust!!!!!!』

 

 

 

音声の間に合わないほどの瞬間倍加。

身体からミシミシ……という限界を告げる悲鳴が聞こえてくる。

 

『Explosion!!!!』

 

力の開放に皮膚が裂けた音が耳へ届く。

しかし、不思議と痛みはない。

俺は開放した力を全て武装へと送る。

 

 

 

「これが……っ!

最高の一撃だ、ライザーァァァァァァア!!!!」

 

 

 

「『FULLBURST!!!!!』」

 

 

 

そのドライグの声と俺の声を受けて、全ての武装から極太の光線が放たれる。

ライザーの一撃は一瞬拮抗したかとも思われたが直ぐに飲み込まれてしまう。

……これが力の暴力。

俺は自らの一撃にそんな感想を持った。

 

(……どうだライザー……これが俺の……最高の一撃だ……)

 

身体から力の抜けた俺は頭から地へと落ちてゆく。

偶然にも一瞬ライザーの姿が視界に入る。

腕を前に……いや、俺の方へと突き出しクールに笑っていた。

その姿からは―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――お前の勝ちだ。

 

そんな意志を感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ライザー・フェニックスさま……戦闘不能。ゲーム終了となります。

よって勝者はリアス・グレモリーさまとなります』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編はいかがでしたでしょうか??
楽しんでいただけたのなら幸いです♪


さて、今回登場致しました一誠くんの【赫龍魔帝】の見た目ですが……わかる人にはわかるかもしれません(笑)
そして、ちょっとした情報ですが……【赫龍帝の四皇鎧】は切り札の一つであって奥の手ではないのですよ??ニヤリ


それではまた次回お会いしましょう♪



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~エピローグです~

皆さんこんばんは♪
バレンタインは誰にチョコを渡すか未だに迷っている夜叉猫です(苦笑)

今回でフェニックス編は終了となりますっ!!!


それでは、本編をどうぞ♪


Side サーゼクス・ルシファー

 

『ライザー・フェニックスさま……戦闘不能。ゲーム終了となります。

よって勝者はリアス・グレモリーさまとなります』

 

私はグレイフィアのアナウンスが聞こえているのにも関わらず声を出すことが出来なかった。

何故ならば、壊れることなどまずないと言われているフィールドに亀裂を入れる一撃を放った人物をこの目で見てしまったから。

 

「……これが……」

 

やっと出てきた言葉はそんな一言。

 

―――――これが今代の【赤龍帝】か……。

 

私は未だに自分の目を信じることが出来なかった。

そんな時、私の隣に座る彼女……いや彼はクスリと笑った。

 

「……良い一撃じゃねぇか」

 

神をも滅ぼしかねない一撃を見て『良い一撃』……??

そんな馬鹿な……彼はこれ以上の力を持つというのか……?

冷や汗が垂れるのを感じる。

 

「さてと……」

 

彼―――兵藤士織―――は徐ろに立ち上がると私の方を向いて口を開いた。

 

「サーゼクス、ちょっとライザーと一誠の所に行ってくるわ……。

流石にライザーの方は治療しねぇとやべぇだろうしな」

 

そう言われて私は改めて事実を認識し始める。

神をも滅ぼしかねない一撃をライザー君は生身で受けたのだ、いくらフェニックスであったとしても死にかねない!!

 

「安心しろよサーゼクス。

ライザーのことなら任せとけ。

完璧に治しておいてやる」

 

私のそんな焦りを感じたのか、士織君は苦笑いを浮かべながらさも簡単なことだと言うふうにそういった。

 

「ほ、本当かね!?

私の息子を救ってくれるのかね!!?」

 

「フェニックス卿……」

 

慌てた様子のフェニックス卿は士織君に詰め寄って心配そうな声で話す。

 

「今回は俺の弟のせいでピンチだしな……。任せなよ」

 

士織君はそう言うとその場から消え去った。

……なんて無駄の無い転移魔法……展開速度が段違いだ……彼は魔術師タイプなのだろうか……?

いや、なんにせよ、少なくとも彼は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私よりも強いのだろうな……」

 

その呟きは無意識のうちに漏らしていた。

 

 

 

 

 

 

Side Out

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

どうも、兵藤士織だ。

レーティングゲーム関係には無干渉を貫こうと思っていたのだが、流石に死人を出すわけにはいかないため急遽動き出すことにした。

 

俺はライザーの居場所を探知するとすぐさま転移魔法を使い移動した。

 

 

 

「ライザーさまっ!!

死なないで下さいませっ!!!」

 

「死なないでぇ~!!」

 

「ライザーさまぁ~っ!!」

 

「シーリスっ!!【フェニックスの涙】を用意できるだけ持ってきなさいっ!!」

 

「ぎょ、御意ッ!!!」

 

「にゃぁ~っ!!!」

 

「にゃにゃぁ~っ!!!」

 

自らの身体がボロボロ、瀕死なのにも関わらず、自分の事をそっちのけでライザーを助けようとする眷属の姿が視界に入る。

 

「……貴様何のようだ」

 

「ライザーさまに何かするようでしたら容赦致しません」

 

右からは剣が、左からは魔法陣を向けられ敵意と警戒心剥き出しの声を掛けられる。

……確かこの二人は剣を持っている方が【騎士(ナイト)】のイザベラ、魔法陣を展開している方が【僧侶(ビショップ)】の美南風だったはずだ。

俺は肩を竦めながら口を開く。

 

「ライザーを治療しに来た。

流石に死なれると困るからな」

 

その言葉を吐くと、ライザーのそばで魔法陣を展開していた女性―――ユーベルーナ―――は俺の方へと駆け寄り涙をこぼしながら口を開く。

 

「ライザーさまを助けられるのですか……っ?!」

 

「当たり前だろ。

出来ないなら来ねぇよ」

 

素っ気なくそう言うと、ユーベルーナは俺の服を掴みながら何かに縋るかのごと言葉を漏らした。

 

「……ライザーさまを……っ……助けて……ください……っ!!!!」

 

その言葉の後、その場にいたライザーの眷属たちは深く頭を下げる。

……いやぁ~……眷属に愛されてるねぇ~。

俺は無言でライザーの側へと歩み寄り状態を確認する。

フェニックスであるために再生するはずの傷が開いたままになり最早血だるま。辛うじて息をしているもののこのままではいつ死んでも可笑しくない。

普通ならこの傷を治すのは不可能だ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――まぁ、俺は『普通』じゃねぇから関係ねぇけど」

 

言って、ライザーの方へ手を向ける。

正直【時間を戻す】方が楽なんだが……まだバレたくねぇしな……。

ライザーの身体を全て覆うほどの多重魔方陣同時展開を行う。

全ての魔法陣から淡い緑の光が発せられた。

 

「【多重回復魔法陣(マルチ・リザレクション)】」

 

ライザーを照らす淡い緑の光は見る見るうちに傷を塞いでいく。

その傷を治していくスピードに周りの眷属たちは息を呑んで見守っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うし……傷も塞がったし内傷も治した……。

後は意識が戻るのを待っときな」

 

ライザーの治療を終えた俺はそれだけ告げると部屋から出ていくためにドアへ手を掛ける。

 

『ありがとうございましたっ!!!』

 

背後から聞こえてくるライザー眷属たちのお礼の言葉に後ろでに手を振るとそのまま出ていく。

廊下へと出た俺は背伸びをすると再び転移魔法を使用した。

さて……一誠の様子でも見に行くかな。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

Side ライザー

 

―――――此処は何処だ……?

 

前を見ても後ろを見ても右を見ても左を見ても上を見ても下を見ても何処を見ても闇が広がっている。

 

―――――俺は一体……。

 

頭を悩ませ、そしてやっとのことで思い出す。

 

―――――そうだ俺はイッセーの一撃を受けたんだ……。

 

あのとてつもない威力……。

身体が、頭が、しっかりと憶えている。

再生する力も残ってない身体で受けたあの一撃……。

 

―――――……死んじまったか……。

 

リタイアする手もあったが、何故かその手を取る気にはなれなかった。

あの一撃を……何故か真正面から受けてみたかったのだ。

 

―――――あ~……未練タラタラだな……。

 

死んでしまったと、そう思うと何故か冷静になった。

もっと慌ててしまうものかと思ったがどうやらそうでもないらしい。

 

 

 

―――――『ライザー……』

 

 

 

ふと、俺の名を呼ぶ声が聞こえた気がした。

 

―――――リアスの声を幻聴で聞くとか……俺どんだけだよ……。

 

 

 

―――――『起きて……ライザー……』

 

 

 

今度はやけにはっきりと、リアスの声が聞こえてくる。

そして、右手が暖かい光で包まれた。

 

 

 

―――――『ライザー……』

 

 

 

今度は悲しそうなリアスの声。

俺は暖かい光で包まれた右手を少しだけ握ってみる。

すると、柔らかな……そんな感覚を覚えた。

 

 

 

―――――『……ライザー?』

 

 

 

はっきりと、此処には居ないのに耳元で俺の名を呼ぶリアスの声が聞こえる。

右手を包む暖かい光は大きく広がり辺りを照らす。

俺の意識は何処かへと引っ張られていき―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……リアス……??」

 

―――――口が開き声が漏れ出た。

目を開けば心配そうな表情を浮かべるリアスの顔が視界を埋めている。

 

「ら、ライザー!

意識を取り戻したのね!」

 

「……なんだ、死んだわけじゃ、無かったか……」

 

どうやら俺は意識を失った状態で夢のようなものを見ていたらしい。

リアスは俺の右手を両の手で握っていた。

 

「大丈夫?ライザー」

 

「……思ったよりか、楽だ」

 

そう言うと体を起こしてみる。

包帯が巻かれていたが傷が開くといった感覚は全くなかった。

 

「さっきまでは眷属のみんながあなたを見守っていたのだけれど……」

 

「そうなのか?」

 

「えぇ。

無理を言って私だけにしてもらったの」

 

リアスはそう言うと気まずそうに笑う。

なるほど……先程までは皆がいたのか……通りで包帯にまぎれて猫のシールが貼ってあったり何故かチェーンソーが置いてあったりしているのか……。

俺はついつい頬が緩むのを感じた。

 

「皆いい子たちね」

 

「……俺の自慢の眷属だ」

 

そう言って、俺とリアスは口を閉ざしてしまい、広がる気まずい静寂。

 

「……ねぇ、ライザー」

 

「な、なんだ?」

 

「私、あなたのことを誤解していたわ……」

 

「……仕方ないさ……。

俺は誤解されても仕方がない事をしてきたからな……」

 

思い返せば何故あんな馬鹿なことをしてきたのだろうと改めて思う。

そんな馬鹿なことをやめることが出来たのもリアスに会えたおかげだ。

 

「いいえ……私が知ろうとしなかったせいよ……本当にごめんなさい……」

 

「そ、そんなに謝らないでくれ!

俺がいつもいつも素直に『好きだ』と言わなかったせいなんだから……」

 

「そんなことないわ!

私が悪いの……」

 

「いやいや、俺が悪いんだ!」

 

「いや、私よ……」

 

「いやいや俺が……」

 

2人して頭を下げあっていると、どちらからともなく笑い声が漏れた。

2人とも頭をペコペコと下げているのが面白かったからだろう。

しばしの間部屋には笑い声が満ちた。

 

 

 

「ふふふっ……。

……ねぇ、ライザー」

 

「あぁ~……笑った。

なんだ?リアス」

 

「その……恋人……からじゃ駄目かしら……?」

 

「……えっ……?」

 

り、リアスは今何と言った……?『こいびと』……?

こいびと……コイビト……恋人!!?

俺は目を見開いてリアスの方を向く。

 

「い、良いのか!?」

 

「ら、ライザーが……嫌じゃないのなら……その……お願いします……」

 

顔を真っ赤にしながらそういうリアス。

ペコリと頭を下げるその姿が小動物のようで……愛らしい……!!!

俺はにやける顔を必死に引き締めながら返事を返す。

 

 

 

「是非、頼む!!」

 

俺のその言葉に微笑みを返してくれるリアス。

なんだ負けたのにも関わらず感じるこの幸福感は……!!!

なるほど……!これが『試合に負けて勝負に勝つ』と言う奴か!!

俺が小さくガッツポーズをしているとリアスが立ち上がって口を開いた。

 

「ライザー。目を……閉じてくれないかしら?」

 

「ん?あ、あぁ。目を閉じれば良いんだな?」

 

リアスのいうがままに目を閉じる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――ちゅっ。

 

 

 

「は……っ!!!?」

 

唇に感じた柔らかな感触に目を見開く。

目の前にいるのは顔を赤くしながらしかし凛とした表情で唇を触るリアス。

 

「これから宜しくね?ライザー。

これはお詫び。私のファーストキスよ。日本では女の子がとても大切にするんだからね??」

 

そう言うと、リアスはドアの方へと心なしか速歩で向かっていく。

 

「俺からも宜しく頼む!!」

 

キスで放心していた俺がやっと絞りたせたのはそんな言葉だけ。

リアスは少しだけ振り返るとにこっと微笑みを見せてくれる。

 

「また後で会いましょう?ライザー」

 

そしてドアをゆっくりと開くと―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『おめでとうございます!ライザーさま!!!』

 

「うふふ……おめでとうございます部長」

 

「部長、おめでとうございます」

 

「……おめでとうございます」

 

「おめでとうございます、部長。

ライザーとなら上手くいくと思いますよ」

 

「おめでとさん。

まぁ、こんな事になるだろうとは思ったけどな……」

 

 

 

―――――俺の眷属たちとリアスの眷属たち、それと兵藤士織の姿があった。

皆が皆、暖かな瞳を向けている。

 

「あ、あなた……たち……」

 

「お、お前……たち……」

 

頬が引き攣るのを感じる。

リアスは後ろ姿しか見えないがその顔が引き攣っているだろうと容易に予想できた。

 

「……あなたたち……いつからいたの……?」

 

「あん?いつから居たか?

んなの一番最初っからに決まってるだろ?

なぁ、皆?」

 

兵藤士織の言葉の後に全員が首を縦に振る。

……最初からということは……。

 

「お、お前たち―――――」

 

「~~~~~~~~~っっ!!!」

 

俺が言葉を最後まで言う前に、リアスが声にならない悲鳴を上げる。そして、ドアを力強く閉めた。

肩で息をするリアス。

こちらの方を向くとまだ赤い顔のままニコリと微笑むと口を開いた。

 

 

 

「……まだ此処に居てもいいかしら?」

 

「……勿論だ。

互いにこれから大変そうだな……」

 

「……そうかもしれないわね……」

 

 

 

それから俺たちはたくさん会話をした。

昔のこと、今のこと、そしてこれからのことを……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編はいかがでしょうか?
楽しんで頂けたのなら幸いです♪

さて、今回はライザーが幸せるになる……という原作ではありえなかった展開となりましたが……いかがでしたでしょう??


感想お待ちしていますね♪

それでは、また次回お会いしましょう♪


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~月光校庭のエクスカリバー~
~動き出しました~


皆さんこんばんは♪
勉強に追われる夜叉猫なのです……(苦笑)

明日から学年末考査が始まる中、息抜きとして書き上げた第三章の1話目なのです……!!
短いですが楽しんで下さると嬉しいです。

それでは本編をどうぞ♪


……どうも、兵藤士織……です。

 

突然だが皆さんは朝起きると不測の事態に陥っていた場合どうするだろうか……?

混乱して取り乱す?

ひとまず状況を把握して取り乱す?

いっそのこと現実逃避して取り乱す?

 

俺はというと―――――

 

 

 

 

 

「……すぅ……すぅ……」

 

 

 

……うん。混乱してたんだが取り乱す前に、一周回って冷静になれた。

というかなんで俺のベッドに―――――

 

 

 

 

 

「―――――オーフィスが寝てんだよ……」

 

俺はベッドから上半身を起こすと、頭を掻きながら、丸まって眠っているオーフィスの顔を覗き込んだ。

……何と言うか……まぁ、可愛い寝顔だ。

 

「士織、我の顔を見て、面白い?」

 

「うぉっ!?

オーフィスお前起きてたのか?!」

 

突然目を開いたオーフィスは無表情にそう言ったため、驚きのあまり飛び退いてしまう。

 

「起きてた……?

我、最初から意識あった」

 

「……ならなんで寝たふりなんかしてたんだ?」

 

「それは士織の真似」

 

「……寝てる時の吐息は……」

 

「それも士織の真似」

 

「……丸まって寝てたのは……」

 

「勿論、士織の真似」

 

オーフィスは身体を振り子のように振って起き上がると得意気な表情を浮かべてそう言った。

そうだな……題名を付けるのなら『我はキメ顔でそういった。』ってところか?

いや、本当にキメ顔になってちゃ使えねぇか??

 

「さようですか……」

 

俺は苦笑いを浮かべながら、そんなオーフィスの頭……いや、頬を優しく撫でる。

目を細め、猫のように手に擦り寄るオーフィスに自然と頬が緩むのを感じた。

 

「やっぱりあったかい……」

 

「そうか?」

 

「士織……我の、【居場所】……。

だからこんなにあったかい?」

 

不思議なモノを見た、といったふうな表情で首を傾げるオーフィス。しかし、頬にある俺の手は離そうとはしない。

 

「どうだろうな?

そういうのはこれから分かっていけば良いだろ。

……なぁに、遅すぎるって事はねぇよ」

 

「わかった。士織がそういうなら……そう」

 

そう言ったオーフィスは再び目を細めると幸せそうな雰囲気を纏わせながら俺の手に擦り寄って来た。

 

 

 

―――――閑話休題。

 

 

 

「そう言えばオーフィス。

今日は突然どうしたんだ?」

 

「我、士織に会いたくなった。だから来た」

 

迷惑?、心なしか悲しそうな表情でそう続けたオーフィス。

俺は今度は頭を優しく撫でながらニコリと微笑む。

 

「そんなことねぇよ。

寧ろ嬉しいぜ?オーフィス」

 

「ん……」

 

俺が頭から手を離そうとすると、オーフィスはその手を押さえて頭に引っ付けさせる。

 

「我、これも好き。もっと」

 

「……りょーかいだ」

 

オーフィスのサラサラの髪に指を通しながら優しく撫で続ける。

 

「そう言えばオーフィス、お前が作った組織……【禍の団(カオス・ブリケード)】だったか?そっからは抜けられたのか?」

 

「……まだ。曹操たちがうるさい。

……でも大丈夫。直ぐ抜ける」

 

そう言ったオーフィスはもぞもぞと動き始め、俺の膝の上に収まった。

 

「此処、良い……。我の居場所?」

 

「まぁ、俺はお前の【居場所】だからな。

確かにそりゃ間違ってねぇかもな」

 

「……ん」

 

俺の方へと背を預け、頭を撫でられるオーフィス。

初めて会った時よりも表情が柔らかくなった気がするのは俺の気のせいなのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい士織~っ!!

早く行かねぇと遅刻すんぞ~!」

 

「……っ!」

 

「士織、呼ばれてる?」

 

突然の一誠の声に今日が平日だったことを思い出す。

オーフィスは首を傾げながら俺の方を向いた。

 

「あぁ……そろそろ行かねぇと駄目みたいだ……。

どうする?オーフィス。

家にいるなら【遮断魔法】使ってやるけど……」

 

「士織が行くなら我は戻る」

 

言って、少し名残惜しそうに立ち上がるオーフィス。

俺もベッドから降りて背伸びをする。

 

「早く士織のところに来れるように……頑張る」

 

「……そうか。

まぁ、たまには家に来いよ?

また頭撫でてやるぜ?」

 

「来る」

 

俺が頭を撫でるジェスチャーをすると即答でそう返すオーフィス。

余程頭を撫でられるのが気に入ったのだと見える……。

 

「んじゃ……またな、オーフィス」

 

「ん……」

 

小さく反応したオーフィスは俺の前から姿を消した。

 

「……さて、着替えるか……」

 

起きてそのままオーフィスを撫でたりしていたため、未だにパジャマ姿な俺はそう呟くと着替えを始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい士織っ!!

本当に遅刻しちまう……ぞ……?」

 

「……」

 

突然開かれた部屋の扉。

そこには慌てた様子で俺を呼びに来たのであろう一誠の姿があった。

そして、その一誠の顔が俺と目を合わせた瞬間、一瞬で焦り、青い顔になる。

 

「すんませんしたぁぁぁぁあ!!!」

 

ガチャンッ!!

余程慌てて閉めたんだろうな……と容易に予想できるほどの大きな音を立ててドアは閉められた。

 

「……今度からはノックしろ一誠」

 

「わ、わかった」

 

正直たかが男の着替えを見てそんなに慌てる必要もない気がするが……。

俺は部屋の姿見に視線を移す。

 

「……やっぱりこの見た目のせいだよな……」

 

どう見ても女にしか見えない自分の姿に溜め息を漏らす俺だった。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「で、こっちが小学生の時の一誠ちゃん!」

 

「あらあら、全裸で海に」

 

「これはその時の一誠ちゃんを見ていた士織ちゃんよ!!」

 

「……アホの子を見る目ですね」

 

「ちょっ!?母さん?!

変な写真を見せないでくれよ!!?」

 

時は飛びに飛び、放課後。

現在オカルト研究部のメンバーは俺たちの家に来ていた。

初めは部室が使えないために家で会議をする、という名目で来ていた筈なのだが、母さんの登場により崩壊してしまった。

 

「そう言えば母さん。

夕麻たち4人はどこ行ったんだ?」

 

「夕麻ちゃんたちなら賢夜さんと一緒に買い物に行ってくれてるわよ~♪」

 

母さんはご機嫌にそう言うと再びアルバムの写真の説明に戻っていった。

それにしても興味津々だな朱乃先輩と小猫は……。

 

「そう言えば士織の家には……」

 

「あぁ、あの4人が居るぜ?」

 

リアス先輩は思い出したかのように口を開き俺の方を向く。

あの4人、とはレイナーレこと夕麻、ミッテルトこと美憧(みと)、ドーナシークこと綯奈(とうな)、カラワーナこと華那(かな)の堕天使4人のことを指している。

 

「1度買い物途中に出会ったけど……」

 

リアス先輩は顎に手を当て考えるように唸ると苦笑いを浮かべた。

 

「……ドーナシークはあれでいいのかしら?」

 

「……本人も気にしてねぇらしいからいいんじゃねぇか?」

 

どうやら女体化したことに対して言っているらしいリアス先輩。

俺の出した紅茶を優雅に一口飲むと、自然な流れでアルバムへと手を伸ばす。

 

「あら、この写真面白いわね」

 

そう言って1枚の写真を指さすリアス先輩。俺は首を伸ばしその写真に目を移した。

そこに写っていたのは――――――

 

 

 

 

 

―――――フリフリのドレスに身を包んだ……紛れもない俺の姿。

 

「…………」

 

俺は無言でリアス先輩からアルバムを奪い取るとその写真だけを取り出し、一心不乱に破り捨てた。

 

「……し、士織……??」

 

「……何も―――――見テナイナ?」

 

「は、はいっ!!」

 

俺がちょっとだけ気を入れながらそう言うと、まるで壊れた玩具のように首を縦に振るリアス先輩。

酷いなぁ……そんなに怯えなくてもいいのに……。

 

「……おーい士織~??

殺気、殺気漏れてるから……。

リアス部長、もう顔真っ青だから……」

 

「ん?……あぁ、なるほど。

悪ぃなリアス先輩。なんかちょこっとだけ漏れちまってたわ」

 

一誠から掛けられた声によって気付いた俺は無意識のうちに漏れていた微妙な殺気を収める。

周りを見れば一誠を除く皆が顔を青くさせていて―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――士織ちゃんが怒っちゃったわねぇ~」

 

「……あれ??」

 

ニコニコと微笑みながら頬に手を当てる母さん。

怖がっている様子など皆無だ……。

 

「……葵泉さん、何とも無いんですか……?」

 

「えぇ~??

だって士織ちゃんがちょこっと怒っただけじゃな~い」

 

―――――可愛いわね~♪、母さんは頬を染めながらそう言った。

その言葉に無言になるグレモリー眷属たち。

 

「……まぁ、母さんだし」

 

「……そうだな……母さんだもんな」

 

俺と一誠は互いに苦笑いを浮かべ、そう言った。

 

 

 

 

 

―――――閑話休題。

 

 

 

 

 

「ねぇ……士織さん……」

 

「ん?なんだよ祐斗」

 

祐斗は1冊のアルバムを持ち俺の方へと近寄って来る。

その瞳には暗い炎が灯っていた。

……やはり始まるのか。

 

「これ……」

 

祐斗が指さした写真。

そこに写っていたのは俺と一誠、そして一人の……少女とその親であろう男性。

しかし、祐斗が興味を示しているのは人物ではなく―――――1本の古ぼけた西洋剣。

 

「まさか……こんなところで見かけるなんて……」

 

憎々しそうに歯を食いしばる祐斗。

俺は何も言わず、祐斗の言葉を聞く。

 

「これは―――――聖剣だ」

 

パタン、とアルバムの閉じる音が嫌に静かに響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――哀しみの罪歌。

それは彼女(・・)の歌う過去への思い。

 

 

 

―――――憎しみの狂歌。

それは()の歌う聖なる剣への思い。

 

 

 

復讐のために人を止め、

 

復讐のために女であることを捨て、

 

復讐のために力を求めた。

 

 

 

聖なる剣と相対する魔なる剣を持ち―――――

 

 

 

―――――木場祐斗(木場祐奈)の物語が動き始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編はいかがでしたでしょうか?
楽しんで頂けたのなら幸いですっ!!


さてさて……始まりました第三章。
今回の話は私自身厨二病になる覚悟で書こうと思います(笑)

とは言いましても、明日から学年末考査なのでしばらく更新できないかもしれません(苦笑)


感想お待ちしています♪


それでは、また次回お会いしましょう♪


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~紹介しました~

皆さんこんばんは♪
一週間に1度更新といいましたね……あれは嘘d……


……冗談です(笑)
更新は遅くとも一週間に一度はするのですよっ!!

今回の話はとても短いですが楽しんでくだされば幸いです♪


どうも、兵藤士織だ。

 

現在俺と一誠は珍しく2人でオカルト研究部の部室へと向かっていた。

 

「アーシアがお前と居ないなんて珍しいな?」

 

「あぁ……アーシアなら桐生に呼ばれてたからなぁ。

遅くなるかもしれないので別々に行きましょう、って言われたんだよ」

 

「……桐生か」

 

「そう……桐生なんだ……」

 

俺と一誠は互いに引き攣った表情でそう呟く。

俺たちの言う桐生とは、クラスメイトの1人だ。名を桐生藍華(きりゅうあいか)と言い、綺麗な橙色の髪を三つ編みにまとめ、眼鏡を掛けた古典的な『文学少女』や『委員長』を思わせるような風貌なのだが……。

 

「……アーシアに変な事を吹き込むんだよなぁ……」

 

「そういやあの『アーシア裸の付き合い事件』も桐生の仕業だったな」

 

「……アレは本当に焦った……」

 

一誠は遠い目をしながらそう言う。

何があったのか、それはまた次の機会に話すとしよう。

 

「……なぁ士織。歩いて行くのが物凄くめんどくさくなったんだけど……」

 

「……転移するか……」

 

別に転移する程度どうってことも無いため、俺は周りに人がいないことを確認した上で、速やかに転移魔法を行使した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――到着っと……」

 

「なんだ部室前にしたのか」

 

転移を終了し、到着したのは部室の扉前。

一誠はどうやら中に転移すると思っていたようだが……。

 

「突然現れたら流石に驚かれるだろうが」

 

「いやリアス部長たちなら―――――ってそっか……それもそうだな」

 

一誠は思い出したかのようにそういうと扉に手を掛ける。

 

「行こうぜ?

俺たちは待たせてる側なんだろ?」

 

「そうだな。

早く行った方がいい」

 

俺がそういうと、一誠は扉を開き部室の中へ足を踏み入れた。俺はそれに続き中に入って行く。

全員が集合した部室の中。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――遅かったわねイッセー、士織」

 

ソファーに腰掛けたままのリアス先輩は俺と一誠の方を向くとそう言った。

 

「すんません。

ちょっと話してたら遅くなりました」

 

「悪ぃなリアス先輩。

それと―――――」

 

一誠の言葉に続けるように謝罪する。そして、リアス先輩の対面のソファーに座る人の方を向く。

 

 

 

「待たせて悪いな。

―――――支取(しとり)蒼那(そうな)生徒会長」

 

「いえ、私たちも今来たところですから」

 

淡々と言い放った支取蒼那。

俺はその隣に立つ男子生徒の方にも視線を向ける。

何処か困惑したような表情を浮かべている男子生徒。

 

「な、なんで士織さんが此処に……?」

 

「俺もオカルト研究部に入ってるからだけど?」

 

「……いや、そうじゃなくて……」

 

言葉に詰まった様子の男子生徒に俺は溜息を吐きながら口を開く。

 

「俺も関係者って訳だ……察しろ」

 

俺は悪魔というわけではないが、関係者であることは事実。

というよりいちいち説明しないとわからないとは……面倒くさい奴だ……。

 

 

 

 

 

―――――閑話休題―――――

 

 

 

 

 

「ひとまず互いの紹介でもしましょう」

 

支取蒼那は咳払いをするとそう言い放つ。

そして、横に立っていた先ほどの男子生徒に目配せをした。

 

「さっきは取り乱してすんませんした。

俺の名前は匙元士郎。2年生で会長の【兵士(ポーン)】だ」

 

「おぉ、同学年で同じ【兵士】か。

俺は兵藤一誠、リアス部長の【兵士】だ」

 

そう言って握手を求める一誠。

男子生徒―――匙元士郎―――はその手を固く、固く力一杯に握り締めた。

……おぉ~……随分と一誠を敵視してる様子だな。

 

「宜しく兵藤くぅん?

本当にハーレム状態で羨ましい限りだねぇ……死ねイケメン野郎!!!」

 

「ハハハハハハ!

そんなこと考えたこともなかったよ匙くぅん?」

 

一誠はそう言いながら満面の笑みで匙元士郎の手を握り返す。

 

「この際この場で殺っちゃおうかなぁ??

ねぇ、兵藤くぅぅぅん??!!

こう見えても俺は駒4つ消費の【兵士】だぜ?

最近悪魔になったばっかだが負ける気はしねぇなぁ!!!」

 

一誠に向かって挑戦的な物言いをする匙元士郎だが、支取蒼那が鋭く睨んだ。

 

「サジ、お止めなさい」

 

「うっ……すみません……」

 

匙元士郎はその言葉を聞くとバツが悪そうな表情を浮かべ、一誠から離れると嫌々という雰囲気だったがぺこりと頭を下げた。

まさに鶴の一声だな……。

 

「今日此処に来たのは、この学園を根城にする上級悪魔同士、最近眷属にした悪魔を紹介し合うためです。

いきなりそのような態度をとって私に恥をかかせないこと。

―――――それに、」

 

支取蒼那は匙元士郎をそう叱ると一誠の方へと視線を移した。

 

「サジ、今のあなたでは兵藤くんに勝てません。フェニックス家の三男を倒したのは彼なのだから。

―――――【兵士】の駒8つですら足りず、力を封印してまで転生させた彼の強さは未知数というわけです」

 

「駒8つでも足りない!?しかもフェニックスをこいつが!?

あのライザーを倒したのがこいつだったなんて……。俺はてっきり木場か姫島先輩がリアス先輩を助けたものだと……」

 

匙元士郎は目元を引き攣らせながら、一誠のことを物珍しそうに見つめる。

一誠は苦笑しながらその視線に晒されていた。

支取蒼那は綺麗な姿勢で一誠に頭を下げる。

 

「ごめんなさい、兵藤一誠くん。

うちの眷属はあなたのような実績がないので失礼な部分が多いのです。

宜しければ同じ新人の悪魔同士、仲良くしてあげて下さい」

 

薄い微笑み。氷の微笑とでもいうのだろうか、悪意的なものは全く感じないところを見ると……元来こういう笑い方しかできないのかもしれないな……。

 

「サジ」

 

「え、は、はいっ!宜しく!」

 

「はい、宜しくお願いします」

 

「俺も一応な」

 

アーシアが屈託なくニッコリとしながら挨拶を返し、俺はそのついでのような言葉を並べた。

 

「アーシアさんと士織さんなら大歓迎だよ!!」

 

「……一誠とは正反対の対応だな……」

 

あまりの正直さに苦笑いが浮かんでしまう。

匙元士郎―――匙とでも呼ぼうか―――はアーシアの手を取りながら頬を緩めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編はいかがでしたでしょうか?
楽しんでいただけたのなら幸いですっ!

さてさて……無事に2年生へと進級した私ですが……

後輩が可愛すぎます!!!!

なんですかなんですかっ!!
何故後輩はあんなにも可愛いのですかっ!!
ついつい抱きしめちゃった子も居ましたよっ!!

とまぁ、2年生を全力で楽しんでいる夜叉猫さんなのです(笑)

それではまた一週間、何処かでお会いしましょう♪


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~日常楽しみました~

皆さんどうも♪
最近絵を描くのが楽しい夜叉猫なのです♪



それではさっそく本編をどうぞ♪


どうも、兵藤士織だ。

 

今日は駒王学園の球技大会の日。

周りの生徒たちは何処か浮かれているように見える。

 

『漫画研究部の塚本くん、橋岡先生がお呼びです。至急、職員室まで―――――』

 

校庭に設置されたテントのスピーカーも休み無しにアナウンスを発し続けている。

体操服のジャージに身を包んだ俺はオカルト研究部の部員たちが集まる校庭の一角へと来ていた。

 

「そういやリアス先輩は何処行ったんだ?」

 

「あぁ……リアス部長なら部活対抗戦の種目確認に……っと……帰って来た」

 

テント方面から帰ってきたリアス先輩は不敵な笑みを浮かべている。

一誠と俺は顔を見合わせ苦笑いを浮かべてしまう。

 

「ふふふ……勝ったわよ、この勝負!」

 

「随分と強気な発言だが……一体種目はなんだったんだ?」

 

俺の言葉にリアス先輩はピースサインをしながら口を開く。

 

「ドッヂボールよ!」

 

リアス先輩が強気な理由を、部員を見渡し……何となく察した。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

部活対抗戦前に行われるクラス対抗戦。

俺はバスケットボールを選択していた。

チームは俺、一誠、元浜、松田、そして羽鳥というクラスメイト。

 

 

 

「士織!」

 

一誠の呼びかけに顔を向けることなく走るスピードをワンテンポ速くする。

スリーポイントラインよりも内側まで走り、体を反転させるとまるで吸い込まれるかのようにボールが俺の手に収まった。

 

「行かせるかっ!!」

 

立ちはだかるのは相手クラスの男子生徒。確かバスケットボール部の生徒だったはずだ。

俺はわざと緩めのクロスオーバー用いて相手を自分に引き付ける。

 

「それくらいなら付いていけるぜ!!」

 

「いちいちうるさいな……」

 

俺は溜息を吐きながら……予定通り(・・・・)の行動を取る。

ボールを背面に移動させビハインドパス。

 

「なっ!?」

 

俺のプレーに驚愕の表情を見せる相手生徒。それを他所に俺からのパスを受け取った一誠はそのままドリブルで切り込んでゆく。

 

「よっ……と」

 

流れるような動作からのレイアップはゴールに吸い込まれていった。

 

「ナイッシュ」

 

「士織こそナイスパス」

 

俺と一誠はハイタッチを交わしながら自陣に戻りデイフェンスを行う。

 

 

 

「マンツーマン!」

 

「「「「了解!」」」」

 

もとより運動神経の良いメンバーで固めたチームのため大体のことはこなしてくれるため、指示が出しやすい。

俺はボールを持った相手生徒を担当する。

軽く圧を掛けてみれば慌てたようにボールを手放す。

 

「ちょ……っ!?ぱ、パス!!」

 

苦し紛れのようなパスだったが奇跡的にボールが回ってしまう。

 

「元浜!」

 

「!!」

 

俺の声に反応した元浜はそれだけで察したのか、パスを受けた相手生徒から少しだけ離れた。

すると、それをチャンスと思ったのか直ぐにシュートへと移行する。

しかし、焦って放たれたボールは飛距離が足りずにエアボール。

 

「一誠!」

 

「分かってる!」

 

一誠はいち早くボールを拾い、サイドへボールをパスした。

攻守の入れ替わりのため全員が走り出す。

出来ればディフェンスが戻る前にシュートへ移りたかったが……まぁ、良いだろう。

 

「松田!回してくれ!」

 

「ほれ!」

 

一誠程の精度ではないがなかなかの位置にボールが放られた。

俺がボールを持てば次はダブルチームでディフェンスにつかれてしまう。

……あぁ~……今度は突破だな……。

俺はふぅ、と息を吐くと間合いを開け、ドリブルを始める。

 

―――――ダムダムダムダム…ダム…ダム…ダム……ダム……ダム……ダム―――――

 

だんだんと遅くなるドリブルスピード。

目が慣れたであろうタイミングで―――――

 

 

 

 

 

―――――最速の低姿勢ドライブ!

 

「「っ!!?」」

 

一瞬の隙さえ出来てしまえば後は簡単、反応が遅れた二人を置き去りにしながら素早く抜いてゆく。

抜きさったが、リングから遠いため、そのままスクリープシュートへと繋げた。

 

「くっそぉぉおっ!!!」

 

無理矢理のブロックに飛んだ相手生徒だったが、ボールは嘲笑うかのように放物線を描き、ブロックなど無いものとしリングに吸い込まれていく。

 

「えげつないな~……士織」

 

「まだマシだろ……スリー打ってないし」

 

「……それもそうか」

 

そう言いながら再びプレーに戻っていった。

 

 

 

 

 

……これは余談だが、球技大会のバスケットボールでは俺たちのクラスが余裕の優勝を果たした。

さて、次は部活対抗戦のドッヂボールか……。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

俺はバスケで汗をかいてしまったため、予備のジャージに着替え、オカルト研究部のメンバーたちに合流した。

 

「……何故に女子勢は皆ブルマ……?」

 

タオル片手に俺はそう口にしてしまう。

リアス先輩、朱乃先輩、アーシア、小猫。

4人が4人とも何故かブルマ姿という……何ともリアクションしにくい格好である。

 

「あら、士織。

あなたは着ないのね……ブルマ」

 

「あらあら……士織君は着ないんですの?ブルマ」

 

「あれ?士織さんは着ないんですか??ブルマ」

 

「……士織先輩も着てください……ブルマ」

 

「いや着ねぇよ」

 

「「「「えぇ~……」」」」

 

「残念そうにしてるんじゃねぇよ!!」

 

何度も言うが俺は男なのだ……。

何度目かわからない溜息を吐いてしまう。

 

「……士織先輩……」

 

「……おい、小猫。

その手に持ったブルマは何だ……?」

 

にじり寄ってくる小猫に一抹の恐怖を覚えながら、後ずさりをする俺。

 

「……逃げないでください」

 

「……お前に捕まったら男としての威厳が無くなる気がするから無理だ……っ!」

 

最早戦闘態勢になっている俺と小猫。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――ふふふっ。

士織君捕まえましたわ」

 

「なっ!?」

 

脇から腕を通されて動きを制限させられる。

小猫に警戒しすぎたために、朱乃先輩の接近に気が付かなかった!?そんな馬鹿な……っ!?

 

「……ナイスです」

 

「ちょ、ちょっと待て小猫!?」

 

「……士織先輩……覚悟……っ!」

 

飛びかかってくる小猫、俺は朱乃先輩に捕まっているため逃げられない……その結果は―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やめろ小猫ぉぉぉぉぉおっ!!!!!」

 

 

 

此処に男としての威厳を保つためのバトルが開始された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編はいかがでしたでしょうか?
楽しんでいただけたのなら幸いです♪


さてさて、絵を描くのが楽しい夜叉猫と先に述べましたが……何故か挿絵投稿ができないのです(苦笑)
何故なのでしょう???
私が情弱過ぎなのでしょうか……。



ともかく!!
今回は此処まで!!

また一週間、何処かでお会いしましょう♪


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〜日常楽しめました〜

皆さんこんばんゎ♪
最近睡魔に襲われ続けている夜叉猫なのですよっ!!(笑)

週一更新もギリギリの投稿で申し訳ありません……(苦笑)

私としては早く士織に戦闘させたいのですよ(笑)

ともかく、さっそく本編をどうぞ♪


ど、どうも……兵藤士織……だ……。

 

度重なる妨害を受けながらも小猫とのバトルに何とか勝利した俺はジャージ姿のまま肩で息をしていた。

……無駄な事する時に限って実力以上の力を発揮しやがって……。

 

「……残念です」

 

「小猫……お前なぁ……」

 

「ま、まぁ士織。

そう怒んなって……」

 

苦笑い気味の一誠が俺にそう声をかける。

俺は溜息を吐きながらも頷きを返す。

 

 

 

「……後で覚えとけ」

 

「……っ!!」

 

意外と出た低い声音に小猫は身震いをしていた。

 

 

 

『それでは試合を開始しますのでオカルト研究部の皆さんと野球部の皆さんはグラウンドへお集まり下さい』

 

 

 

アナウンスでの呼び出しに俺たちは歩みを進めた。

……開始前に何故こんなに疲れなければならないのか……。

……小猫許すまじ……。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

『く……っ!!!』

 

ボールを持った野球部チーム。

しかし、ボールを投げるような気配が感じられない。

 

「ふふふ……完璧ね」

 

得意気な表情のリアス先輩。

俺は頭を掻きながら葛藤中の野球部チームへと視線を向けた。

 

「なんというか……可愛そうだな」

 

「そうだな……」

 

一誠の言葉に同意の言葉を返す。

そもそも、何故野球部チームはボールを投げて来ないのか、それは俺たちオカルト研究部チームのメンバーに関係する。

 

リアス先輩―――――駒王学園の二大お姉様の1人。大人気の学園アイドル。よって当てられない。

 

朱乃先輩―――――リアス先輩と同じく二大お姉様の1人。学園のアイドル。よって当てられない。

 

アーシア―――――2年生ナンバー1の癒し系天然美少女。当てれば男女問わずに恨みを買う。よって当てられない。

 

小猫―――――学園のマスコット的なロリ系少女。当てたら可哀想。

 

祐斗―――――男子生徒の敵ではあるが、当てれば女子に恨まれる。当てられない。

 

一誠―――――男女共に少なからず人気を得ている。そもそも当てた時の逆襲が恐ろしい。当てられない。

 

俺は―――――まぁ、うん……。

 

 

 

「士織が狙われないのは駒王学園ナンバー1の人気を誇るアイドルだからだな。

もし当てでもしたら学園全生徒からボコボコにされかねねぇよ。

……まぁ、そもそもお前に当てようなんて考えが皆には浮かばねぇだろうけどな」

 

「……一誠……?

意味の分からない解釈をのたまってるんじゃねぇよ。

そして俺の思考を読むなんて荒業何処で修得しやがった……?」

 

「いや、なんか……流れで?」

 

「……もういいわ……」

 

深い、深い溜息を吐いた。

肩を落としながら頭を抱える。

……最近俺の扱いが更に女子相手のそれになってきているような……。

 

 

 

「ちっくしょゥ!!!

恨みがなんじゃ!!くたばれイケメンめぇぇぇぇぇえっ!!!!!」

 

 

 

俺が悩んでいれば野球部チームの生徒の一人が叫びながら祐斗の方へとボールを打ち出した。

……おぉ、何と言うやる気……。

どうやら恨まれる怖さにイケメンへの憎悪が打ち勝った様だ。

 

 

 

「―――――って、何棒立ちしてんだよ!!」

 

俺はボールが放たれたのにも関わらず動こうとしない祐斗を守るべく前に出る。

 

「……あ、士織さん……?」

 

気の抜けた祐斗の声に溜息を吐きたくなる。……が、それよりも先にボールの対処はしておかなければ……。

なかなかの勢いのボールは祐斗の前に立った俺に向かって直進してきた。

少しばかり無理な体勢ではあったが捕るぶんには何ら心配はない。

 

 

 

―――――はずだった。

今まで直進してきていたボールが突然軌道を変えたのだ。

 

「フォーク……っ!?」

 

そう、ボールは急降下したのである。

俺は何とかその変化に反応し、降下してくるボールに合わせるように片手を伸ばす。

 

(股間にボールが当たったらたまったもんじゃねぇ……っ!!!)

 

その考えのもと、俺は飛んできたボールの勢いに逆らうことなく、ただ軌道を変え、そのまま上へと投げ上げた。

真上に上がってゆくボールはやがて落下して行く。それを祐斗が動かぬままにキャッチする。

 

 

 

『………………』

 

 

 

刹那のうちに起きた俺のプレーに周りの人々が唖然とした表情を浮かべていた。

しかし、一瞬の間を空けて歓声が上がる。

 

 

 

『すげぇな!?

何だあの動き!!』

 

『まさに神技を見たわ……』

 

『流石は士織様……』

 

『しおりんは何しても絵になる……。

これぞ世の理か……』

 

『しおりんペロペロ』

 

『しおりんクンカクンカ』

 

 

 

「おいこら!!後半の奴ら!!

何意味不明なこと言ってやがる!!

取り敢えず一発殴らせろッ!!!!」

 

観客なった生徒の方へそう言い放つが返ってきたのは何故か黄色い歓声。

……本当に意味が分からない……。

 

「士織!

反撃するわよ!!」

 

俺が頭を抱えていると、後ろからリアス先輩の声が掛けられた。

振り返って見てみればその顔にはとても良い笑みが浮かんでおり、実に楽しそうだ。

 

俺はそんなリアス先輩に苦笑いを浮かべながらも頷きを返す。

2歩ほど下がり祐斗からボールを渡してもらう。片手でボールを弄びながら祐斗の方を叩く。

 

「……今は楽しめ。

気を張ってばかりじゃ疲れるだろ?」

 

「……士織……さん……」

 

微笑みを向け、祐斗の纏う雰囲気を霧散させてやる。

……最近の祐斗は色々と危なっかしかったからな……。

 

「……そうだね……。

……うん、ありがとう士織さん」

 

そう言った祐斗の顔にはいつも通り……とまではいかないが、確かに笑顔が浮かんでいた。

俺は弄んでいたボールを両腕でしっかりと掴むとにやりと笑いながら野球部チームの方を向く。

 

「さてさて……やりますか……!!」

 

言って、ボールを放った。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

球技大会も無事終了し、場所はオカルト研究部の部室へと移っていた。

外はすっかり雨模様。ザーッ……という雨音が響いてくる。

 

「祐斗、あなた最近変よ?

一体何があったの……?」

 

リアス先輩は心配そうに祐斗の方を向いて話しかけていた。

祐斗は申し訳なさそうな表情を浮かべながら口を開く。

 

「……すみません。

ちょっと……いえ、かなり他のことに気を取られていたようです……。

士織さんに言われてなかったら……もっと迷惑を掛けてしまっていたと思います……」

 

「……そう……もう、大丈夫なのね……?」

 

「……いえ、まだです……」

 

祐斗は暗いオーラを身に纏い始める。

鋭い目つきをした祐斗はリアス先輩に向かって頭を下げた。

 

 

 

「すみません部長。

……やはり僕は―――――復讐を諦めきれない」

 

 

 

その言葉に重たい雰囲気が部室を包む。

そんな中、祐斗は出口に向かって歩みだし、ドアの前で止まると振り向くことなく、

 

「……頭を冷やして来ます。

それとしばらく休ませて下さい……。

このままじゃ僕は皆に迷惑しかかけない……」

 

そう言って部室を後にしていった。

 

 

 

 

 

「……士織」

 

「……なんだよ」

 

「木場の奴……」

 

「今は一人にしてやれ。

あいつも考えなしに行動するやつじゃねぇ」

 

俺がそう言えば一誠は納得行かないというような表情を浮かべたが、それ以上何を言うこともなかった。

 

 

 

―――――雨音が、響きわたる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編はいかがでしたでしょうか??
楽しんでいただけたのなら幸いです!!


さてさて……この間漫画喫茶に行ってきたのですが……あれですね、恋愛モノはとてもいいっ!!
となりの怪物くんしかり、日々蝶々しかり、神様はじめましたしかり……ドキドキしてしまいます…///
それと、ToLOVEるを読んでみたのですが……アレはすごいですね……(笑)
何がとは言いませんが……すごいです……(笑)

そ〜いえば、最近リクエストで官能的な場面も欲しいというモノを頂いたのですが……皆さん読みたいです……??
というより書いてもいいのでしょうか……(苦笑)


とまぁ、今日は此処まで!!
また1週間のうちのどれかでお会いしましょう♪


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〜冷静さ失いました〜

皆さんこんばんはっ!!

まさかの書きだめしていた話が全ロストするという出来事が起きてしまって少しだけ泣いてしまった夜叉猫です……。
なんとか1話だけを再現できたので早速投稿なのですよっ!!

それでは本編をどうぞっ!!(>_<)



Side 木場 祐斗

 

土砂降りの雨の中、僕は傘もささずに歩いていた。

傘をさすのも億劫で……冷たい雨が僕を打つ。

……頭を冷やすのにはちょうどいい……。

 

 

 

―――――要らぬ迷惑をかけてしまった。

 

自分を救ってくれた主に、僕を慕ってくれる友に、そして……僕の好きな人に……。

呆れられただろうか……?

……そんなことはないと考えたい。

迷惑をかけるつもりなんて全く、これっぽっちもなかった……でも、最近は気持ちが落ち着かない。静めようとしても、波打つ。

 

……そう、聖剣エクスカリバーへの復讐心が溢れて仕方が無いのだ。

 

あぁ……制御できるようになった……そう思っていたのに……。

 

そもそも、今の僕は幸せすぎる。

仲間も、友も、生活も得て、素敵な名前を2つも与えられた。生き甲斐も貰った。

これ以上の幸せを願うのは悪いことだ。悪いことに決まっている。

 

想いを果たすまで、同志たちの分を生きていいなんて思ったことなど―――――。

 

 

 

……ぴちゃ……。

雨音ととは違う、水の音を僕の耳が捉える。

顔を上げれば、眼前には神父がいた。

十字架を胸につけ、憎き神の名のもとに聖を語る者。

僕の大嫌いなもののひとつだ。憎悪の対象とも言える。

エクソシストならば、此処で牽制しても構わないとさえ思った。

 

「―――――ッ!?」

 

神父は腹部から血を滲ませ、口から血反吐を吐き出すと、苦しげな表情を浮かべその場に倒れ伏した。

誰かにやられた……?誰だ……?―――――敵?

 

「ッッ!!」

 

異常な気配、殺気を感じ取り、僕は瞬時に魔剣―――今は魔刀か……―――を創り出し、振り抜いた。

雨の中で銀光が走り、火花が散った。やはり斬りかかってきていたようだ。

殺気を感じた方へ距離を取りながら体を向ける。相手は眼前で死んだ聖職者と同じ格好―――――神父。ただ、こちらは明確なほどの強烈な殺気を飛ばし、しかし、冷静に立っていた。

 

「やっほ、おひさだね騎士(ナイト)クン」

 

そう言いながら乾いた笑みを浮かべるその少年神父を僕は知っていた。

白髪の少年神父―――――フリード・セルゼン。

先日の堕天使との一戦で僕たちとやり合った輩だ。

……なかなかの強さだったのを僕は忘れもしない。

 

「……まだこの町に潜伏していたようだね?

今日は一体何の用かな?」

 

警戒の体勢をとりながらも、しかしそれを悟られないように……。そんな考えを巡らせながら言葉を紡ぐ。

 

「ん?別に騎士クンに用はなかったんだけど……まぁ、いっか。

ド腐れ神父の皆様の掃除もちょうど終わったとこだしぃ?

ついでに悪魔狩りするってのも……一興だよなぁ……?」

 

膨れ上がる殺気と威圧感。

そして、それに伴うように、彼の振るう長剣が聖なるオーラを発し始める。

 

 

 

そして僕は―――――冷静さを無くした。

 

 

 

「その……剣……ッッ!!!」

 

「おぉ〜怖い怖い……。

取り敢えず……殺りましょうぜ?」

 

そう言った彼が構えたのは、僕の怨敵―――――聖剣エクスカリバーだった。

頭が、目が、手が、足が……体全てが。

【憎悪】で埋め尽くされる。

 

 

僕は―――――無意識に魔剣(・・)を構えた。

 

 

 

 

 

Side Out

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

Side 三人称

 

しばしの間睨み合い、先に行動を起こしたのは祐斗。

自慢のスピードを最大限利用しフリードへと一瞬で肉迫する。

 

「ふ……ッ!!!」

 

―――――気合を入れた【一閃】。

 

祐斗はその手に持つ西洋剣(・・・)を横薙ぎに振るった。

 

「おっとっと……」

 

しかし、その単調な攻撃はフリードに通用しない。足を一歩下げるだけで躱すのだ。

そして反撃の斬り下しを祐斗へと放つ。

 

「……くっ!」

 

祐斗はフリードの一撃をなんとか身を捻り、紙一重で躱したが掠り傷を負ってしまう。

悪魔にとって聖剣というのはまさに天敵。斬られるのは勿論、掠ることすら避けたい存在である。

 

バックステップでフリードとの距離をとった祐斗は改めて西洋剣を構える。

互いにたった1度だけしか剣を振っていないのにも関わらず、フリードは何処かつまらなそうな表情を浮かべていた。

 

「ん〜……キレがないなぁ〜キレが。

全くオモシロクないねぇ〜……」

 

「うるさい。

無駄な口を叩かずに早く掛かって来なよ……っ!」

 

憤怒の表情を浮かべた祐斗を冷めた目で見つめるフリード。

構えも何もない、最早ただ立っているだけ。

 

「来ないならこっちから―――――ッッ?!」

 

 

 

祐斗が、一歩踏み出そうとしたその時、

 

 

 

「……全くダメ。

騎士クン……キミってこんなに弱かったっけ?」

 

いつの間にか祐斗はフリードに間合いを詰められていた。それも、剣を使う者として致命的な間合いを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――【魔剣創造(ソード・バース)】ッッッ!!!!!」

 

しかし、流石は士織に鍛えられただけはある。

祐斗は咄嗟に【魔剣創造】を解放し、地面から数々の魔剣を全方位に向かって大量に出現させたのだ。

それにより、フリードは斬りかかるよりも先に回避へと行動を移さなければならなくなってしまった。

 

「……ちっ……ちょーっと斬られちった……」

 

愚痴をこぼすかのようにそう言ったフリードは斬られた部分に舌を這わせ、ぺろりと血を舐めとる。

 

「……掠り傷……」

 

「ん?そっすねぇ〜……お揃いってか?

まぁ、さっきのは流石に危なかったわ〜。

このエクスカリバーじゃないとやばかったやばかった……」

 

フリードは危なかったと言いつつもその顔には獰猛な笑みが浮かんでいた。

 

「んじゃ、今度は……スピード勝負と行きましょーや……騎士クン?」

 

―――――瞬間、エクスカリバーから放たれる聖なるオーラが増大する。

祐斗は目を見開き、冷汗を流した。

 

「俺のエクスカリバーは【天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)】。

スピード勝負には持って来いのエクスカリバーっしょ?」

 

聖なるオーラをその身に纏わせながら語るフリード。

悪魔として当たり前の聖なるオーラに対する【恐怖心】。祐斗はそれを憎悪という感情で塗り潰し新たな剣を構える。

 

雨音が響く。

 

互いに睨み合い、そして―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――すぐに決着は着いた。

 

「……かは……っ?!!」

 

倒れ込む人影。

雨に濡れた道に無様にうずくまる姿はまさに敗者のそれだ。

しかし、その身体に斬られた後は見当たらない。

見られたのは腹部に残る打撃後のみ。

 

「……何故……だ……っ!!」

 

苦痛に顔を歪めながら敗者は勝者を見上げる。

 

「今のキミは殺す価値もないよ―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――騎士クン(・・・・)

 

見下した視線で勝者(フリード)敗者(祐斗)を見つめる。

 

「本当に……弱くなったわ」

 

「……ッ!」

 

その言葉は地に伏す祐斗へ遠慮なく突き刺さる。

フリードは溜息を吐くと踵を返して雨音の響く中に消えていった。

 

 

 

 

 

「……そ……くそ……くそッ……くそォォォォォオッ!!!!!」

 

祐斗は顔を歪め、叫び声を上げた。

雨に濡れた地面を何度も、何度も何度も何度も殴りつける。

 

血だらけになった拳。

祐斗はゆらりと立ち上がると、おぼつかない足取りで歩み始めた。

 

雨によってぐしょぐしょになったその顔には、明らかに雨以外のモノが混じっていた。

 

 

 

 

 

―――――この日、祐斗は屈辱的な完全敗北を味わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編の方はいかがでしたでしょうか?
楽しんでいただけたのなら幸いですっ!!


さてさて、先にも述べましたが……まさかの書きだめ全ロストです……(涙)
これはもうやけ食いだ!!という考えのもと、コンビニで買ってきたデザートを食べている真っ最中です!!(>_<)
ちなみにこのやけ食いに三千円が飛んでいきました……(涙)
……でも美味しいから許します……(笑)


とまぁ、愚痴も此処まで!!
また次回お会いしましょう♪


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〜訪れられました〜

皆さんどうも♪
何とか消えた書きだめ分を取り戻そうと四苦八苦している夜叉猫さんです(苦笑)

ひとまず書きだめで3巻終了まで出来ていたので早く書き出したいのですよ……(苦笑)

それでは!久しぶりの更新となりました!
短い内容となっていますがどうぞ、ご覧下さい♪


どうも、兵藤士織だ。

 

球技大会も終わった次の日、しばらく休ませて下さいと言う言葉通り、祐斗は部活はおろか学校にすら来ていないようだ。

そのためか、オカルト研究部のメンバーは何処か全員上の空だったような気がする。

 

 

 

1日の学業と表の部活―――今日はただ暇を潰しただけだったが……―――を終わらせた俺、一誠、アーシアは家路についていた。

 

「……木場の奴学校にすら来てなかったな……」

 

「大丈夫でしょうか……」

 

一誠とアーシアは不安そうな声音でそう呟く。

俺はそんな2人の肩を優しく叩き口を開いた。

 

「今は信じて待っててやるのが正解だと思うぞ?

安心しろ、祐斗だって無茶はしないはずだ」

 

気休めのような言葉ではあったが2人には効いたらしい。

2人とも納得したように頷くと、先程までの暗い表情を解き、少しだけだが頬を緩めた。

 

 

 

「……まぁ、それはそれとして……」

 

俺は咳払いを一つ挟み、一誠の方へ視線を向ける。

 

「……感じるか?」

 

「……まぁ、なんとなくだけど背筋が冷える気配がするな……」

 

どうやら一誠も感じていたようで、しかし背筋が冷えるか……やはりコレ(・・)は予想通りのものなのだろう。

 

「イッセーさんも士織さんも何の話をしているんですか……??」

 

頭の上にハテナマークを浮かべ首を傾げるアーシア。

流石にアーシアが感じるにはまだ遠すぎたようだ。

 

「ちょっと家から俺だったり、アーシアだったりには害のありそうな気配がしてるんだよ」

 

「そ、そうなんですか……??」

 

一誠の言葉に不安げな表情を浮かべるアーシア。その手は一誠の制服を握っていた。

 

「……家から夕麻たちの気配が感じられない……。

ひとまずは家に急ぐぞ」

 

「そうだな……」

 

「はい……」

 

そう言って、俺たち3人は早歩き気味に家へと急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

急ぎ目に帰宅した俺たちは玄関の扉を開けて中に入る。

そして、リビングに直行した俺たち。そこには―――――

 

 

 

 

 

「でねでね?これが一誠ちゃんと士織ちゃんの小学生時代の写真なの!

こっちはイッセーちゃんと士織ちゃんがプールに入ってるんだけど……士織ちゃんはどうしても女の子物の水着を着ないと入れなくて不機嫌になってるのよ〜♪」

 

 

 

―――――見知らぬ女性2人と楽しそうに話す母さんの姿があった。

……しかもよりにもよって俺の黒歴史を会話に織り込んでいる……。

 

 

 

「か、母さん……??」

 

俺が引き攣った笑みを浮べ声をかけると満面の笑みを浮かべた母さんが振り向いた。

 

「あら♪一誠ちゃん士織ちゃんアーシアちゃんお帰りなさい♪」

 

そしていつものように、俺たち一人一人にハグをしていく。

母さん曰く、俺たちの成長をハグで確かめているらしい……。

 

「母さん……人前でもするんだな……」

 

一誠は疲弊したような声で呟く。

―――――が、その瞳は俺同様、ソファーに腰掛けている2人の少女に向けられていた。……最大の警戒を敷いたまま。

 

栗毛をツインテールに纏めた少女と緑色のメッシュを髪に入れている目つきの悪い少女。物腰を見るにまだまだ成長段階と言ったところか……。

2人とも白いローブのようなモノを着込み、首には十字架のネックレス。

 

―――――キリスト教会の関係者。

 

彼女らが誰なのか、俺は原作知識によって知っているが……。

ちらりと一誠たちの方を見る。

そこには警戒心の見え隠れする一誠とおどおどしているアーシアの姿があった。

 

「兵藤一誠くん、兵藤士織ちゃんこんにちは。

あ、もう、こんばんはかな?」

 

栗毛の少女は微笑みながらそう言う。

……兵藤士織『ちゃん』……??

自分の名前の呼ばれ方に一抹の不安を覚えながらも、ひとまずは視線を横―――――緑色のメッシュを髪に入れている少女の傍らへと移した。

そこにあるのは布に巻かれた長い得物。

 

(……なるほど……アレが……)

 

得物からはそこまで強大なオーラは感じられない……むしろ……。

俺は緑色のメッシュを髪に入れている少女の方を見た。

 

「…………」

 

「…………」

 

偶然にも、少女と目が合う。

無言ではあったものの俺の技量を測っているように見えた。

 

「……確かにもう時間的にはこんばんはだな……それと、久しぶり」

 

一誠はようやく相手が誰なのか分かったようで、警戒心が少しだけ緩んでいる。

 

「覚えててくれたんだ……」

 

嬉しそうに笑う栗毛の少女。

そして、今度は俺の方を見てきた。

どうやら、俺にも覚えているのか確かめたいようだ。

 

「……久しぶり。

昔は男みたいだったのに今じゃすっかり女の子だな―――――イリナ」

 

「うん!

そういう士織ちゃんは相変わらず『俺』なんて使ってるんだね?」

 

栗毛の少女―――紫藤(しどう) イリナ―――は軽口を叩くかのようにそう言ってみせる。

 

「……それにしても、お互い、しばらく会わないうちに色々とあったみたいだね。

―――――本当、再会って何があるか分からないものだわ……」

 

一誠へと視線を移してからの一言。

その意味深な言葉に一誠は何も返さない。

 

―――――彼女は一誠の正体に気が付いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後、イリナと緑色のメッシュを髪に入れている少女は談笑を30分ほどしてから帰っていった。

その帰り際、母さんがいない玄関でイリナは一言口にする。

 

『じゃぁ、また明日』

 

緑色のメッシュを髪に入れている少女は目礼だけして、その言葉に否定をすることはなかった。

 

俺と一誠は互いに視線を交わし、明日は面倒な事が起きるのを覚悟し、アーシアを連れて家の中に戻ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編はいかがでしたでしょうか??
楽しんで頂けたのなら幸いです♪

さてさて……最近は少しずつ暑くなってきましたね……(苦笑)
私は暑いの苦手なので辛い季節が近づいてきています……(苦笑)
そろそろ制服も衣替えかなぁ……だなんて思っています(笑)

さて、それでは今回は此処まで!!
書きだめが終わりましたら一気に更新する予定なのでお楽しみに♪
また次回お会いしましょう♪


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〜対話しました〜

皆さんこんばんは♪
テストが近づいてきて内心怯えている夜叉猫さんですっ!!

勉強しなければいけないのに感想欄に触発されて兄と遊戯王をしてしまう始末……。
えっと……ペンデュラム召喚ってなんですか……??
いっぱい出てきましたよ……??


とまぁ、ひとまずは本編をどうぞ♪


どうも、兵藤士織だ。

 

キリスト教会の関係者であるイリナと緑色のメッシュを髪に入れている少女の来訪から次の日の放課後。

俺はグレモリー眷属の皆と一緒に部室へと集められていた。その中には祐斗の姿もある。

部室のソファーにはリアス先輩と朱乃先輩。その対面に例の2人が座っていた。

俺たちは部室の片隅で4人のやり取りを静かに見守っていた。

 

―――――が、しかし。

そんな中でも祐斗は違った。

例の2人へまるで射殺さんばかりの怨恨の眼差しを向け睨みつけているのだ。

今にも突然斬りかかりそうな雰囲気の祐斗を俺は注意深く監視していた。

 

(……憎いのはわかるが……もっと冷静になってくれよ……)

 

内心呆れたような気持ちではあったが祐斗の過去を考えてみればまぁ、仕方ないかと思えなくもない。

 

そんな、様々な思考の入り混じった重たい空気の中、最初に話を切り出したのは、教会側―――――イリナだった。

 

「先日、カトリック教会本部ヴァチカン及び、プロテスタント側、正教会側に保管、管理されていた聖剣【エクスカリバー】が奪われました」

 

その言葉に疑問符を浮かべる一誠。

……こいつ昔教えたのに覚えてないな……。

 

「聖剣エクスカリバーそのものは現存していないわ」

 

そんな一誠の気配を察知したのか、リアス先輩はそんな言葉を口にする。

 

「ごめんなさいね。

私の眷属に悪魔に成り立ての子がいるから……エクスカリバーの説明込みで話を進めてもいいかしら?」

 

リアス先輩の申し出にイリナは快く頷き、口を開く。

 

「イッセーくん、エクスカリバーは大昔の戦争で折れたの」

 

その言葉ではっとした表情を浮かべる一誠。

どうやらやっと思い出したらしい。

 

「今はこのような姿さ」

 

緑色のメッシュを髪に入れている少女が傍らに置いていた、布に巻かれた長い得物を解き放つ。

現れたのは一本の長剣―――――。

 

「これがエクスカリバーだ―――――」

 

その姿に一誠も眉を動かす。

アーシアに至っては震えているようだ。

 

「大昔の戦争で四散したエクスカリバー。

折れた刃の破片を拾い集め、錬金術によって新たな姿となったのさ。

その時、7本作られた。コレがそのうちの一つ」

 

――――― 一拍置いて、少女は口を開く。

 

「【破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)】。

コレが私の持っているエクスカリバーだ。カトリックが管理している」

 

1度自分の得物を紹介した緑色のメッシュを髪に入れている少女は、再び布でエクスカリバーを覆った。

なるほど……完璧とまでは言わないがあの布でエクスカリバーを封印しているのか……。

布に書かれた呪術の文字にそういう解釈を得る。

イリナの方も長い紐のようなモノを懐から取り出す。

そして、次の瞬間、その紐がまるで意思を持ったかのように動きだし、形を変えた。

現れたのは一本の日本刀だ。

 

「私の方は【擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)】。こんな風に形を自由自在に変化させる事が出来るからすっごく便利なんだから。

このように、エクスカリバーにはそれぞれ特殊な力があるの。

こちらはプロテスタント側が管理しているわ」

 

自慢げに胸を張りそう言うイリナ。

なるほど……2つとも気配が弱かったのは片や封印、片や使われていなかったからか……。

 

「イリナ……悪魔にわざわざエクスカリバーの能力を喋る必要もないだろう?」

 

「あら、ゼノヴィア。

いくら悪魔だからと言っても信頼関係を築かなければ、この場ではしょうがないでしょ?

……それに、私の剣の能力を知られたからと言って、この悪魔の皆さんに遅れを取るなんてことないわ」

 

自信満々の様子でそう言うイリナ。

……慢心にも程がある。

現に、この2人相手なら今のグレモリー眷属は誰も負けないだろう……そう、アーシアであっても……だ。

 

「……ッ!」

 

祐斗の表情が憎しみに染まる。

……動いてくれるなよ?祐斗……。

今この場で戦闘するのはメリットがない。むしろデメリットしかないのだから……。

 

「……それで、奪われたエクスカリバーがどうしてこんな極東の国にある地方都市に関係あるのかしら?」

 

リアス先輩はなんら変わることなく自然な態度で話を進める。

祐斗もどうやら我慢したようだ……。

 

緑色のメッシュを髪に入れている少女―――確かゼノヴィアと呼ばれていたな……―――は話を続ける。

 

「カトリック教会の本部に残っているのは私のを含めて2本だった。プロテスタントのもとに2本。正教会にも2本。残る1本は神、悪魔、堕天使の三つどもえ戦争の折に行方不明。

そのうち、各陣営にあるエクスカリバーが1本ずつ奪われた。奪った連中は日本に逃れ、この地に持ち込んだって話なのさ」

 

ゼノヴィアの言葉にリアス先輩も額に手を当てて、深い溜息を吐いた。

 

「……私の縄張りは出来事が豊富ね……。

それで、エクスカリバーを奪ったのは?」

 

「……奪ったのは『神の子を見張る者(グリゴリ)』だ」

 

……アザゼルのアホが総督をしている組織か……。

全く……面倒ごとを運んでくるとは……今度シェムハザさんと一緒に説教でもするべきか……?

 

「堕天使の組織に聖剣を奪われたの?

……失態どころの話じゃないわね……。

でも、確かに奪うとしたら堕天使ぐらいのものかしら。上の悪魔にとって聖剣は興味の薄いものだもの……」

 

「奪った主な連中は把握している。

グリゴリの幹部、コカビエルだ」

 

「コカビエル……。

古の戦いから生き残る堕天使の幹部……。

聖書にも記された者の名前が出されるとはね……」

 

リアス先輩も相手の名前に苦笑している。

まぁ、確かに、コカビエル相手となると……まだちょっと心配な面があるな……。

 

「先日からこの町に神父―――――エクソシストを秘密裏に潜り込ませていたんだが……数人を除いてことごとく始末されている。

始末されていない者たちも重傷を負っていた」

 

「……それで、何かしら?

私たちにエクスカリバー奪還を手伝えと言いたいの?」

 

リアス先輩のストレートな言葉に、ゼノヴィアは―――――首を横に振った。

 

「むしろ逆だ。

今回此処に来たのは協力の要請ではなく不干渉の注文をしに来たんだ。

―――――つまり、悪魔はこの件に首を突っ込むなと言いに来た」

 

随分な物言いだな……リアス先輩も眉を吊り上げている。

 

「随分な言い方ね。それは牽制かしら?

もしかして、私たちがその堕天使と関わりを持つかもしれないと思っているの?―――――手を組んで聖剣をどうにかすると」

 

「本部は可能性はゼロではないと思っているのでね」

 

見下したようなゼノヴィアの視線と物言いに、リアス先輩は爆発寸前。

これだけ好き勝手言われたのだ、上級悪魔たるリアス先輩のプライドは黙ってはいないだろう……。

 

「上は悪魔と堕天使を信用していない。

聖剣を神側から取り払うことができれば、悪魔も万々歳だろう?堕天使どもと同様に利益がある。

それ故、手を組んでもおかしくない。

だから先に牽制球を放つ。

―――――堕天使コカビエルと手を組めば、我々はあなたたちを完全に消滅させる。

例え、そちらが魔王の妹でもだよ。―――――と、私たちの上司より」

 

「……私が魔王の妹だと知っているということは、あなたたちも相当上に通じている者たちのようね……。

ならば、言わせてもらうわ。

―――――私は堕天使などと手を組まない。絶対によ。グレモリーの名にかけて、魔王の顔に泥を塗るような真似はしない!!」

 

互いに視線を混ぜ合わせ拮抗状態の両者。

だが、ゼノヴィアはフッと笑った。

 

「それが聞けただけでもいいさ。

一応、この町にコカビエルがエクスカリバーを3本持って潜んでいることをそちらに伝えておかなければ何か起こった時に、私が、教会本部が様々な者に恨まれる。

まぁ、協力は仰がない。そちらも神側と一時的にでも手を組んだら、三竦みの様子に影響を与えるだろう?特に魔王の妹ならば尚更だよ」

 

それと先程は失礼な物言いをしてすまなかった。

謝罪の言葉を続け軽く頭を下げるゼノヴィア。悪い娘ではないようだ……。

 

「……正教会からの派遣は?」

 

先程よりかは多少表情を緩和させたリアス先輩は口を開く。

 

「奴らは今回のこの話を保留した。

仮に私とイリナが奪還に失敗した場合を想定して、最後に残った1本を死守するつもりなのだろうさ……」

 

「では、2人で……?

2人だけで堕天使の幹部からエクスカリバーを奪還するの?

……無謀ね。死ぬつもり?」

 

呆れ声のリアス先輩だが、イリナとゼノヴィアは決意の眼差しを向けていた。

 

「そうよ」

 

「私もイリナと同意見だが、できるだけ死にたくはないな」

 

「―――――っ。

……死ぬ覚悟でこの日本に来たというの?

相変わらず、あなたたちの信仰は常軌を逸しているのね」

 

「我々の信仰をバカにしないでちょうだい、リアス・グレモリー。ね、ゼノヴィア」

 

「まぁね。

それに教会は堕天使に利用されるぐらいなら、エクスカリバーが消滅しても構わないと決定した。

私たちの役目は最低でもエクスカリバーを堕天使の手から無くすことだ。

そのためなら、私たちは死んでもいいのさ。エクスカリバーに対抗できるのはエクスカリバーだけなのだから」

 

その言葉には待ったをかけたいくらいなのだが……あまり興味がないためスルーしておく。

それにしても確かにこの信仰は常軌を逸しているな……。苦笑いが込み上げてくるのを感じる。

 

「2人だけでそれは可能なのかしら?」

 

「あぁ、無論、ただで死ぬつもりはないよ」

 

ゼノヴィアは不敵にそう言ってみせた。

 

「自信満々ね。秘密兵器でもあるのかしら?」

 

「さてね。それは想像にお任せする」

 

「…………」

 

「…………」

 

そのやり取り以降、両者は見つめ合ったまま、会話も途絶した。

互いに腹の中を探りあっているようだ。

そんな中、イリナとゼノヴィアが目で合図を交わすと、立ち上がる。

 

「……それではそろそろおいとまさせてもらおうかな。イリナ、帰るぞ」

 

「そう、お茶は飲んでいかないの?お菓子くらい振舞わせてもらうわ」

 

「いらない」

 

リアス先輩の誘いをゼノヴィアは手を振って断った。

 

「ごめんなさいね。それでは」

 

イリナも手でごめん、としながらまるで興味のないように断る。

そしてそのまま2人はその場を後に―――――しなかった。

2人の視線は俺の隣、一誠の横で縮こまっているアーシアへと向けられたのだ。

 

「兵藤家で出会った時、もしやと思ったが、【魔女】アーシア・アルジェントか?

まさか、この地で会おうとは」

 

と、ゼノヴィアは口にする。

【魔女】と呼ばれ、ビクンと、アーシアは体を震わせた。その言葉はアーシアにとって辛いものだというのに……。

 

(……そのまま帰ればいいものを……)

 

イリナもそれに気がついたのか、アーシアをまじまじと見てくる。

 

「あなたが一時期内部で噂になっていた【魔女】になった元【聖女】さん?

悪魔や堕天使をも癒す能力を持っていたらしいわね?

追放されて何処かに流れたとは聞いていたけれど……まさか悪魔なんかになっているとは思わなかったわ」

 

「……あ、あの……私は……」

 

2人に言い寄られ、対応に困っている様子のアーシア。

 

「大丈夫よ。ここで見たことは上には伝えないから安心して。

【聖女】アーシアの周囲にいた方々に今のあなたの状況を話したら、ショックを受けるでしょうからね」

 

「………………」

 

イリナの言葉に複雑極まりない、そして泣き出しそうな表情を浮かべるアーシア。

 

「しかし、悪魔か……。

【聖女】と呼ばれていた者。堕ちるところまで堕ちたものだな。

まだ我らの神を信じているか?」

 

「ゼノヴィア。悪魔になった彼女が主を信仰しているはずが無いでしょう?」

 

呆れた様子でイリナは言う。

 

「いや、その子から信仰の匂い―――――香りがする。抽象的な言い方かもしれないが私はそういうのに敏感でね。

背信行為をする輩でも罪の意識を感じながら、信仰心を忘れない者がいる。

それと同じものをその娘から感じられるんだよ」

 

ゼノヴィアが目を細めながらそう言うと、イリナが興味深そうにまじまじとアーシアを見る。

 

「そうなの?

アーシアさんは悪魔になったその身でも主を信じているのかしら?」

 

その問いかけにアーシアは悲しそうな表情で言う。

 

「……捨てきれないだけです。ずっと信じてきたのですから……」

 

そして伝う一筋の涙。

しかし、それを見てもまだゼノヴィアはアーシアに向かって布に包まれた聖剣を突き出す。

 

「そうか。ならば今すぐ私たちに斬られるといい。

今なら神の名の下に断罪しよう。

罪深くとも、我らの神ならば救いの手を差し伸べてくれるはずだ」

 

なんて勝手な物言いか……俺は腹の中で例えようのない怒りが込み上げてくるのを感じる。

しかし、まだ俺は動かない。動くべきではない。

何故なら―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――触れるな」

 

―――――アーシアには一誠がいるのだから。

 

「アーシアに近づいたら、俺が許さない。

アンタ、アーシアを【魔女】だと言ったな……?」

 

「そうだよ。

少なくとも今の彼女は【魔女】と呼ばれるだけの存在であると思うが?」

 

「ふざけたこと言ってんじゃねぇよッ!

救いを求めていたアーシアを誰一人として助けなかったんだろう!?

アーシアの優しさが理解できない連中にそんなこという資格はないはずだ!!

友達になってくれる奴すら居ないなんて、そんなの間違ってるだろうがッ!!!」

 

「【聖女】に友人が必要だと思うか?

大切なのは分け隔てない慈悲と慈愛だ。

他者に友情と愛情を求めたとき、【聖女】は終わる。

彼女は神からの愛だけがあれば生きていけた筈なんだ。

最初からアーシア・アルジェントに【聖女】の資格はなかったのだろう」

 

 

 

 

 

―――――ぷちり、と俺の中で何かが切れた。

 

 

 

 

 

Side Out

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

Side 一誠

 

俺はゼノヴィアのまるでそれが当然だと言う言葉に怒りが爆発寸前だった。

いや、今も怒りに震えている。

しかし、それでもまだ言い返す程度で抑えられてた。

 

「自分たちで勝手に【聖女】にしておいて―――――ッッ!!?」

 

俺が再び口を開いた時、その場に―――――

 

 

 

―――――濃密な死の気配が充満した。

 

冷や汗が止まらい。

こんな濃密な死の気配……出せるのは一人だけ……。

俺はちらりとその発生源たる人物へ視線を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――面白いこと言うじゃねぇか……この狂信者(・・・)

 

その発生源たる人物―――――我が兄、士織は無表情でそう呟いた。

その姿におそらく反射的な行動だろう、ゼノヴィアとイリナはエクスカリバーを構えた。

カタカタと震える剣先。

士織から放たれるその殺気をダイレクトに浴びているであろう2人は恐怖に襲われているのだろう。

……余波でさえこの濃密な死の気配……ダイレクトに浴びているであろうあの2人は一体どれほどの恐怖を感じているのか……想像することすらできない……。

 

「そんなに固くなるなよ……ほら、さっきみたいにゴミみたいな自己解釈を語ってくれよ?」

 

「……ッ!?」

 

ゼノヴィアは声も出せない様子でしかし、剣は下げなかった。イリナは既に剣を下げて膝をついている。

 

「【聖女】?なんだそのふざけた呼び名は。

アーシアが何をした?

貴様らが求めている分け隔てない慈悲と慈愛を与えるために行動しただけだろう?」

 

士織から発せられる殺気が止み、残ったのは冷たい雰囲気。

しかし、それがまた―――――恐ろしかった。

 

「ほら、早く反論しろよ。

せっかく喋れるようにしてやったんだから……」

 

冷たい士織の視線は刺すようにゼノヴィアとイリナに注がれる。

ゼノヴィアは震える体を無理矢理止め、口を開いた。

 

「あ、悪魔を……癒したんだ……それは異端なことで―――――」

 

 

 

「……くっだらねぇ」

 

ゼノヴィアの言葉に被せるように言った士織の言葉にゼノヴィアは目を見開いて言葉を噤んだ。

 

「分け隔てない慈悲と慈愛って言う言葉は何処に行ったんだよ?

悪魔を癒すのは異端?ふざけるな。

アーシアは悪魔をも癒す分け隔てない慈悲と慈愛を持っているんだろうが」

 

まるで溜息を吐くかのように吐き出された士織言葉にゼノヴィアもイリナも反論することが出来ない。

 

「……結局その程度かよ……狂信者が……。

全く、話にならねぇわ……」

 

士織は今までの雰囲気を霧散させ、くるりと背を向けた。

そしてそのまま扉に向かって歩みだす。

 

「……ま、待てッ!!」

 

士織を呼び止める声がゼノヴィアから上がる。

 

「あそこまで……コケにされて……黙ってはいられない……ッ!」

 

ゼノヴィアは震える剣先を士織に向かって突き出す。

 

「私と戦え!兵藤士織……ッ!!」

 

その言葉に立ち止まる士織。

そして、一瞬考えるように腕を組むと口を開いた。

 

 

 

 

 

「……俺と戦いたいならそこの祐斗に勝ってからにしろ」

 

 

 

 

 

「……っ!?

し、士織さん……っ?!」

 

突然名指しにされた木場は驚愕の表情を浮かべる。

しかし、その表情の中に何処か嬉しそうなものが混じっているように見えた。

ゼノヴィアは木場の方を品定めするように見つめるとフッ、と笑う。

どうやら木場の事を弱いと思ったらしい。

 

「祐斗……戦うよな?」

 

士織の言葉に初めは戸惑っていた木場もこくりと頷き笑った……獰猛に……。

 

「うん。……僕が相手になろう」

 

特大の殺気を体から発して、木場は剣を携える。その殺気も先程の士織に比べれば赤子の遊びのようなもの。

しかし―――――

 

「キミで相手になるわけが無い……」

 

―――――それが弱いという訳ではない。

ただ、狂ってしまったのだ、士織の極大な殺気を浴びたせいで……。

ゼノヴィアはまるで興味を示さずフッと、また笑った。

 

「そんなことはないさ……何せ僕は君たちの先輩なんだから。

―――――失敗だったようだけどね」

 

瞬間、木場を囲むように無数の魔剣が出現していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編の方はいかがでしたでしょうか??
楽しんでいただけたのなら幸いです♪


さてさて……最近暖かく……最早暑くなってきましたが……そのせいでしょうか?
―――――アイスが美味しいですっ!!(>_<)
昨日は抹茶モナカに釣られて友人に弄られる始末……。
そろそろ弄られキャラを卒業なければ……っ!!


それでは、また次回お会いしましょう♪


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〜戦って取り戻しました〜

皆さんこんにちは♪
最近マインクラフトにはまってしまった夜叉猫です♪
あの地味な作業が意外と面白かったり……(笑)


ともかく、本編をどうぞ♪



オッス、兵藤一誠だ。

 

先程までは確かに部室にいたのはずなのだが……―――――

 

「……いやはや、どうしたもんかな……」

 

―――――俺は球技大会の練習をしていた場所に木場とともに立っていた。

 

顔を上げてみれば、少し離れた場所にイリナとゼノヴィアがやる気十分といった姿で立っている。

そんな俺たち4人の周辺を丸ごと囲むように紅い魔力の結界が発生していた。

 

「では始めようか」

 

イリナとゼノヴィアは白いローブを脱ぎ捨て、黒い戦闘服……って何だあれ……もはや全身タイツっぽいな……。

俺は苦笑いを浮かべながら二人の姿を観察する。

 

ゼノヴィアは得物の布を取り払い、エクスカリバーを解き放つと軽く振り回す。

イリナの方は紐のような姿をとっていたエクスカリバーを日本刀の形へと変えていた。

 

 

 

―――――さてさて、少し遅いが何故俺がこの場に立っているのかを説明しておこうと思う。

初めは木場とゼノヴィアの一騎討ちの予定だったのだが、イリナも参戦することになり、では相手は誰がする?という雰囲気になった。

そんな中、士織の視線が俺に突き刺さったのだ。

そして、なぁなぁの内に此処に立つ……という状況に陥ってしまった……。

 

 

 

「……まぁ、やるからには勝たないとな……」

 

内心愚痴を吐きながらも俺は、【赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)】を発動させる。

いつも通りの赤い籠手が右腕に出現し、頭が冴えるような感覚が身体を包む。

木場の方へも視線をのばせば既に神器を発動させており、自らの周りに魔剣を数本出現させているのが見え―――――

 

 

 

―――――【魔剣(・・)】……??

 

俺は(必要ないと思うが……)安全上、結界外で観戦している士織の方へと顔を向けた。

 

その顔には幾ばくかの怒りとしかし、それを上回るほどの呆れの色が見える。

額に手を当てながらも静かに戦いの始まりを待っているようだ。

 

 

 

「……笑っているのか?」

 

ゼノヴィアが不意に木場へと問いかけた。

木場は不気味なほどの笑みを浮かべており、何時もの爽やかフェイスの面影などひとつもなくなっている。

 

(……そこまで憎いのか……聖剣が……)

 

俺は木場の様子にその思いがどれほどのものなのかを少しだが感じた。

 

「うん。

倒したくて、壊したくて仕方がなかったモノが目の前に現れたんだ……。それが凄く嬉しくてさ……。

……ふふふ、悪魔やドラゴンの傍に居ると力が集まるとは聞いていたんだけど……まさかこんな幸運を運んできてくれるなんて……ね……?」

 

木場の周りの地面が見えなくなるほどの魔剣が出現する。

その一本一本に禍々しい気配を感じた。

 

「……【魔剣創造(ソード・バース)】か。

【魔剣創造】の所有者は頭の中で思い描いた魔剣を創り出すことが可能。

魔剣系神器の中でも特異なもの。

……『聖剣計画』の被験者で処分を免れた者がいるかもしれないとは聞いていたが……それはキミか?」

 

その問に木場は答えない。その代わりに殺気を放ち威圧している。

今にもゼノヴィアごと殺しそうな雰囲気だけど……まぁ、士織もいることだし大丈夫だろう。

俺はそう自分に言い聞かせ、自分の相手であるイリナの方へ向き直った。

 

「兵藤一誠くん」

 

「おう。何だよイリナ」

 

昔は男の子のような見た目で、言動で、一時期は本当に男だと思っていた幼馴染。

今ではすっかり女の子らしくなって……うん、普通に可愛い。

 

「再会したら、懐かしの男の子は悪魔になっていた……。ショックだったわ」

 

「そう残念そうな顔すんなって。

悪魔でも別に不自由なんてしてないぜ?」

 

そう言った俺に対して、イリナは哀れむような視線を向ける。しかも頬を涙が一筋伝っていた……。

 

「可哀想な兵藤一誠くん……。ううん、昔のよしみでイッセーくんって呼ばせてもらうわね。

そして、なんて運命のイタズラ!

聖剣の適性があって、イギリスに渡り、晴れて主のお役に立てる代行者となれたと思ったのに!

あぁ……これも主の試練なんだわ!

久しぶりに帰って来た故郷の地!懐かしのお友達が悪魔になっていた過酷な運命!

時間の流れって残酷だわ!

でも、それを乗り越えることで私は一歩また一歩と真の信仰に進めるはずなのよ!

さぁ、イッセーくん!私がこのエクスカリバーであなたの罪を裁いてあげるわ!アーメンっ!!!」

 

イリナは涙を浮かべつつも張り切った様子で聖剣の切っ先をこちらへ向けてくる。

……あ、あれ?この娘、難易度の高い言葉をマシンガンのように飛ばして来るよ!?

おぉ?!瞳がお星様のようにキラキラ輝いてやがるぞ!?

 

(信仰に酔っていやがりますか……)

 

『相棒、加減はしろよ?』

 

突然、ドライグが声をかけてくる。

……そんなに心配しなくても大丈夫だっつーの。

 

(分かってる……流石に殺しちまう訳にはいかねぇしな)

 

ひとまずは【禁手】は勿論倍加のし過ぎも厳禁……そうだな……多くても5回……か?

 

『それでも多いくらいはあるが……まぁ良いだろう』

 

ドライグはそれだけを言い残すと言葉をかけるのをやめた。そして、その代わりに【赤龍帝の籠手】から『Boost!!』の音声が流れた。

俺の神器からの音声を聞いたイリナとゼノヴィアが驚いたような表情を浮かべる。

 

「……【神滅具(ロンギヌス)】」

 

「それって……【赤龍帝の籠手】?

こんな極東の地で赤い龍の帝王(ウェルシュ・ドラゴン)の力を宿した者に出会うなんて……」

 

どちらも顔をしかめ、俺の方を向いていた。

 

―――――と、その時、木場の方から殺気が溢れ出す。

 

 

 

「……イッセーくんにばかり気を取られているとケガじゃ済まなくなるよ……?」

 

しかし、ゼノヴィアはその殺気に大した反応を見せる訳でなく、ただ不敵に笑った。

 

「【魔剣創造】に【赤龍帝の籠手】。さらにはアーシア・アルジェントの持つ【聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)】。

……我々にとって異端視されている神器ばかりだ。悪魔になるのも必然と言えるかもしれないな……」

 

そう言い切るとエクスカリバーを構える。

木場もそれに対して魔剣を一本手に取ると、青眼に構えた。

 

「……僕の力は無念の中で殺されていった同志の恨みが生み出したモノでもある……。

この力でエクスカリバーを持つものを倒し……そのエクスカリバーを叩き折るッッ!!!」

 

やはり、木場は復讐を誓っていたか……。

ゼノヴィアと木場。二人の剣士の斬り合いを片手間に見ながらそんな考えが頭に浮かんだ。

 

「こちらもいくよ、イッセーくん!」

 

「おっと……!

流石にその剣に斬られるわけにはいかねぇからな……」

 

俺は斬りかかってきたイリナの太刀筋を読み、最低限の動きで躱す。

そのまま幾度となく日本刀と化したエクスカリバーを振るってくるが、しかし遅い。

この程度の動きなら完全に見切る事が可能だ。

 

『Boost!!』

 

「おし……3回もありゃ十分か……」

 

【赤龍帝の籠手】から響く倍加の合図に反応し、バックステップでイリナから距離を取る。

 

「んじゃ……終わらせるか」

 

『Explosion!!』

 

その音声と共に、俺の体に力が溢れるのを感じた。

 

(この感じなら……いけそうだな)

 

俺は右手に魔力を集める。

イリナは俺の行動、そして急に上がった【力】に一瞬驚愕の表情を浮かべたが、このままでは不味いと感じたのだろう、エクスカリバーを構えて走り寄って来た。

 

 

 

 

 

『―――――それは悪手だ小娘』

 

俺の中に響くドライグの声。

まぁ、確かにその通りだけどな……。

俺は集めた魔力を握り締め、地面へと叩きつけた。しかし、地面が傷つくことはない。

 

「何をして―――――ッッ!?」

 

イリナは怪訝そうな表情を浮かべたがそれも一瞬。

何故なら、イリナの足元から魔力の纏った土の槍が飛び出したから。

 

「新技……【龍の鋭骨(ドラゴーネ・オッソ)】。

魔力の扱いがアホみたいに難しいけど……応用が利くんだぜ?」

 

土の槍はイリナの行動を阻害するように、しかし、直撃はさせずに飛び出ていた。

なんとか抜け出そうとしているようだがしかし、それはかなわない。

 

「ほら、無駄に動くなって。

どうせこれで俺の勝ちだし?」

 

「そ、そんなのわからな―――――くないですごめんなさいっ!!」

 

俺の方を向いて否定しようとしたイリナだったが、俺の手に再び集められる魔力を見た途端謝罪の言葉を口にした。

 

「んじゃ、俺の勝ちだな?」

 

「……悔しいけど……私の負けみたい……」

 

イリナが負けを認めたので、俺は土の槍を纏っている魔力を消して、イリナを救出する。

地面にそのまま座り込み頬をふくらませ、俺を見つめるイリナ。

 

「そんなに強いなんて聞いてないわ!」

 

「聞いてないわって……それくらい言わなくてもわかれよ」

 

俺はため息混じりにそう返すと、すぐに視線を別の場所へと移した。

横でギャーギャー何かを言っているようだったが俺はそれを聞き流していた。

視線と意識は斬り合いを行っている木場とゼノヴィアの方へ向ける。

 

 

 

「……この剣はもう駄目か……」

 

「【破壊の聖剣】相手によく持ったほうだ」

 

ボロボロの様子の木場の魔剣。

木場の魔剣も聖剣相手には分が悪いようだ。

 

「なら、気を取直して!

燃え尽きろ!そして凍り付け!【炎燃剣(フレア・ブランド)】!【氷空剣(フリーズ・ミスト)】!」

 

魔剣を投げ捨てたかと思えば、次の瞬間には2本の魔剣が木場の手には握られていた。片や業火を渦巻き、片や冷気放ち、霧氷を発生させる。

騎士(ナイト)】である木場の長所はスピード。2本の魔剣を巧みに操り、ゼノヴィアを攻め立てていた。

少々苦しそうな表情を浮かべるゼノヴィアであったが……

 

「ふッッ!!」

 

掛け声とともにエクスカリバーを一振り。

その一振りだけで、木場の魔剣は粉々になってしまう。

 

「―――――ッッ?!!」

 

たったの一撃により破壊された自分の魔剣を見て木場は絶句する。

 

「我が剣は破壊の権化。砕けぬモノなど存在しない」

 

ゼノヴィアは器用に長剣を回したかと思えば、天にかざし、地面へと振り下ろした。

 

 

 

―――――ドォォォォオオオオンッッ!!!

 

 

 

激しい地響きと砂埃が辺りを支配する。

俺は手で顔を覆って砂埃を防ぐ。

砂埃が収まり、目を開けば、そこに広がっていたのは―――――クレーター。

ゼノヴィアが聖剣を振り下ろした場所が大きく抉れ、クレーターを作り出していたのだ。

……アレが聖剣の力か……。

思いの外強力だった聖剣に俺は眉をひそめる。

破壊力的には俺の【禁手(バランス・ブレイカー)】と同じかそれより少し下ってところか……。

あれを相手するなら【亜種禁手】の方でしたいところだな……。

俺はそんな思考を巡らせながら、明らかに変わるであろう戦況を見逃さぬように集中することにした。

 

 

 

 

 

 

Side Out

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

Side 三人称

 

 

「……真のエクスカリバーでなくてもこの破壊力……。

七本全てを消滅させるのは修羅の道か」

 

そう呟いた祐斗は偶然にも視線を外に向けた。

今から行う破壊力比べに負けぬ魔剣を創り出すために気分を変えたかったのだ。

 

―――――しかし、そんな祐斗の視線はある人物と交わることとなる。

 

「…………」

 

「…………」

 

交わった視線は祐斗と士織。

互いに無言で見つめ合うと―――――祐斗は笑った。

 

「……どうした?気でもやったか?先輩」

 

祐斗の笑みにそんな挑発めいた言葉をかけるゼノヴィア。

どうやら祐斗の笑みを絶望的な力の差から出たものだと感じたようだ。

 

「―――――いや、違う」

 

聞こえてきた祐斗の声は先程までの憎しみに支配されたような声ではなく、まるで自分に呆れたような声だった。

 

「僕はなんて馬鹿な事をしたんだろうって思っただけさ。何せ―――――」

 

―――――本気で戦ってなかったんだから。

 

「……何?」

 

祐斗の言葉に眉をひそめるゼノヴィア。

しかし、祐斗はそんなこと関係ないと言わんばかりに口を開いた。

 

「此処から仕切り直しだよ。

……さっきまでの僕と同じだと思ったら―――――今度こそケガじゃ済まなくなるよ?」

 

言って、祐斗はひと振りの()を創り出す。

これといって特徴のないシンプルな日本刀(・・・)を……。

 

「……へぇ……?

確かにさっきとは違う雰囲気だ」

 

ゼノヴィアは祐斗を見つめるとそう口にした。そして、【破壊の聖剣】を構えると駆け出す。

それに対して祐斗は姿勢を低く、足を開く。刀を腰の位置で固定すると柄を握り締めた。

 

 

 

―――――抜刀術の構えだ。

 

 

 

「はぁぁぁぁぁああああああッッ!!」

 

「ぉぉぉぉぉぉぉおおおおおッッ!!」

 

雄叫びを上げながら、2人は交差する。

 

―――――鳴り響く金属音。

 

―――――吹き飛ばす衝撃波。

 

―――――抉れる大地。

 

 

 

そして、立ち尽くす背を向けあった2人。

 

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 

無言で2人は動かない。

しばしの静寂の後―――――笑った。

 

そして、祐斗の日本刀は粉々に砕け散る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……やるじゃないか先輩(・・)

 

ゼノヴィア(・・・・・)はそう言うと腹部を押さえた。

見ればうっすらとだが血が滲んでいる。

だが、それは致命傷ではない。いうなら少々動きにくくなっただけだろう。

 

 

 

2人は振り返ると、ふっ、と笑いそれ以上のことは何もしなかった。

 

「イリナ!!」

 

「な、なに?」

 

ゼノヴィアはイリナの名を呼ぶと2つの白いローブを手に取ると、片方を羽織り、もう一方の白いローブをイリナに投げ渡す。

 

「帰るぞ」

 

「え……?

しょ、勝負はもういいの?!」

 

ゼノヴィアの短い言葉にイリナはそう返事をする。

 

「あぁ。

この勝負はもういい。

それに、あちらも戦う気はないみたいだしな」

 

言いながら、ゼノヴィアはエクスカリバーに布を巻き付ける。

そして、一誠の方へ視線を移すと事務的な口調で言葉を放った。

 

「赤龍帝、ひとつだけ言っておく。

白い龍(バニシング・ドラゴン)】は既に目覚めているぞ」

 

その言葉を聞いた一誠は眉をひそめる。

しかし、返事は返さない。

その様子を見たゼノヴィアは再びふっ、と笑うとフードを被り、その場を後にした。

 

「え、えっと……今度は負けないからね!イッセーくん!!

ちょっと待ってよゼノヴィア〜っ!!」

 

イリナも捨て台詞のようなモノを残して、スタスタと歩いていくゼノヴィアを追いかけて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イッセーくん」

 

「な、なんだ?」

 

2人の姿が消えた後、祐斗は一誠に声をかけた。

 

「ごめん、僕はもう少しだけここを離れる。

だから、みんなに言っておいて欲しいんだ。

『僕はもう大丈夫』ってね」

 

「そんなの自分で言えば―――――「頼んだよ」……ってオイ!!」

 

祐斗は一誠の言葉に被せるようにそれだけを言い残すと足早に去っていった。

一誠はため息を吐くと頭をガシガシと掻く。

そして、こちらへとやってくる皆の方へ歩み寄って行った。

祐斗の言葉を伝えるために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編の方はいかがでしたでしょうか??
楽しんでいただけたのなら幸いです♪


さてさて、雑談となりますが……。
活動報告でも言いましたが……問題児最新刊が二次創作殺しすぎますっ!!!(>_<)
今まで書いていたものの矛盾がないか心配で心配で……(苦笑)

ハイスクールD×D編では早く士織の無双を書いてあげたくて仕方が無いのですっ!!(笑)


とまぁ、今回はこのあたりで……。
また次回お会いしましょう♪

……私はエロ猫じゃないよ……??(=^ óωò)ドヨーン


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~捜索しました~

皆さんこんばんは♪
テストの返却まで終わり、清々しい気分の夜叉猫です♪

それでは早速本編をどうぞ♪


オッス、兵藤一誠っス。

 

教会の関係者であるゼノヴィア、イリナとの衝突から次の日、俺は小猫ちゃんと会長眷属の【兵士(ポーン)】である匙を呼び出し、近場のカフェに訪れていた。

 

「あ〜……。で?俺を呼び出した理由は?」

 

気だるそうな匙。

今日は無理言って呼び出したために仕方がない態度だろう。

 

「……そうです。

私まで呼び出して何の用事ですか?」

 

小猫ちゃんはチョコレートパフェをつつきながら無表情にそう言った。

 

「あぁ……。

休みの日に呼び出しちまって悪いな。

……実は折り入って頼みがあるんだわ」

 

「……頼みですか?」

 

「面倒事の予感が……」

 

小猫ちゃんは首をこてんと横に倒し、匙は引き攣った表情を浮かべる。

……匙はまぁ、イイ勘をしているな。

俺は咳払いを挟みゆっくりと口を開いた。

 

 

 

 

 

「―――――聖剣エクスカリバーの破壊許可を取るのを手伝ってくれ」

 

俺の言葉に匙どころか、小猫ちゃんまで目を丸くして驚愕の表情を作り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「嫌だぁぁぁぁぁっ!!俺は帰るんだぁぁぁぁぁっ!!!」

 

悲鳴をあげて逃げようとしている匙。それを小猫ちゃんが掴んで離さないでいる。

少々……いや、普通に騒がしいがこれを見越して外の席にしといて良かった……。

俺がエクスカリバー破壊作戦を提案すると、小猫ちゃんはしばしの間考え込んで『……私も協力します。祐斗先輩のことですよね?』と察してくれた。

匙の方は聞くなり青ざめて逃げようとしたのだが、それを小猫ちゃんが許さなかったと……。

 

「兵藤!なんで俺なんだよ!!

これはお前ら眷属の問題だろう!?俺はシトリー眷属だぞ!!

関係ねぇ!関係ねぇぇぇぇぇっ!!!」

 

匙は涙を流しながら訴える。

 

「まぁ、そう言ってくれるなよ。

俺が知ってる悪魔で協力してくれそうなのはお前くらいだったからよ」

 

「ふざけんなぁぁあっ!!!

俺がテメェの協力なんかするわけねぇぇえだろぉぉぉっ!!!

殺されるっ!!俺は会長に殺されるぅぅぅっ!!!」

 

更に青ざめた表情を浮かべる匙。

随分と会長のことが怖いと見える……。

 

「お前んところのリアス先輩は厳しいながらも優しいだろうよ!!

でもな!?俺ん所の会長はな!厳しくて恐ろしいんだぞ!!?」

 

「そうか、それはお気の毒様。

……んじゃ、イリナたちを探しに行くか……。

小猫ちゃん、匙を連れてきてもらっていいか?」

 

「……わかりました」

 

「ちょっ!?

俺の意思はどうなって―――――って力強っ!?」

 

なんとか逃げようとする匙であったがしかし、小猫ちゃんに引きずられながら連行されていく。

 

 

 

「なぁ、小猫ちゃん。

小猫ちゃんは木場が『聖剣計画』の犠牲者でエクスカリバーに恨みを持っているのは知ってるよね?」

 

俺の問いかけに小猫ちゃんは首を縦に振り、肯定の意をあらわす。

 

「イリナとゼノヴィアが俺たちのところへ来た時に2人は『教会は堕天使に利用されるぐらいなら、エクスカリバーが消滅しても構わない。

私たちの役目は最低でもエクスカリバーを堕天使の手から無くすことだ』って言った。

つまり、2人は奪われたエクスカリバーを最悪破壊して回収するってことだろ?」

 

「……はい、そうですね」

 

「なら、その奪還作業を手伝わせてくれないかなって思ったんだよ。

勿論だけど木場を中心にして。

3本も奪われたんだから1本くらい俺らがやっちまっても構わないだろ?」

 

「……祐斗先輩にそこでエクスカリバーに打ち勝ってもらい、想いを果たして欲しいと言うわけですね?」

 

「そ〜ゆうこと」

 

俺は小猫ちゃんの言葉に笑顔で頷く。

木場自身はもう大丈夫だと言ったけどいつまた暴走するかわからない。

だったら、合法的にその想いを果たして貰えばいいというわけだ。

 

「木場はエクスカリバーに勝って、自分と昔の仲間の復讐を果たしたい。

ゼノヴィアたちは堕天使たちからエクスカリバーを破壊してでも奪いたい。

この2つの意見は一致してる。後は2人が俺ら【悪魔】の言葉に耳を傾けてくれるかが問題だな……」

 

「……それは難しそうですね……」

 

「あぁ〜……やっぱり?

小猫ちゃんもそう思う?」

 

やはり俺たちが【悪魔】だってことがマイナスだろう。可能性は高くない。しかも―――――。

 

「……部長やほかの部員には内緒」

 

そう。小猫ちゃんの言う通りだ。

この話、リアス部長や朱乃先輩の耳にいれるわけにはいかない。リアス部長は絶対に拒否するだろう。

『祐斗のためとはいえ、天使側の問題に首を突っ込むべきではないわ』―――――と。

上級悪魔だもんな、その辺厳しいはずだ。

 

「……その話し合いがうまく行ったとしても相手はかなりの手練れみたいだし……もしかしたら……というかほぼほぼ確実に危険な目に遭う……」

 

敵はコカビエルとかいう名の知れた堕天使らしいし、更にはエクスカリバーという悪魔の天敵を相手にしなければならない。

 

「だから、小猫ちゃんは降りてもいいよ。

匙は……まぁ、ギリギリまで踏ん張ってくれ」

 

「いや、降りさせろよ!?

それだけ脅しておいて俺だけ降りる選択肢がないとかどういう了見だ兵藤!!?

しかも、エクスカリバー破壊なんて勝手なことしたら会長に殺されちまう!絶対に拷問だぁぁぁぁぁっ!!!」

 

小猫ちゃんに連行されながらじたばたと体を動かしてなんとか逃げ出そうとする匙。

おぉ……男の号泣とか滅多に見られねぇわ……。

 

「私は逃げません。仲間の為です」

 

「……そっか」

 

小猫ちゃんのはっきりとした物言いとその強い眼差しに俺は頬が緩むのを感じる。

小猫ちゃんってなんだかんだ熱い娘だな……。

 

 

 

と、ゴタゴタがありながらも町中を探すこと約20分。

やはり、ゼノヴィアたちは見つからない。

……それもそうか。極秘任務中である白いローブを着た女性2人組みなんてそう簡単に見つかるはずが―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えー、迷える子羊にお恵みを〜」

 

「どうか、天の父に代わって哀れな私たちにお慈悲をぉぉぉぉお!!!」

 

―――――簡単に見つかった……。

 

「……何やってんだ?あいつら」

 

「……怪しすぎます」

 

「……おい兵藤。あいつらが探してた奴らなのかよ?

……どう考えてもアホの子だろアレは……」

 

先程まで泣き喚いていた匙が突然真顔になったかと思うとそんなことを呟く。

俺たち3人は物陰に隠れて、そんな言われたい放題の2人を観察してみる事にした。

路頭で祈りを捧げる白いローブの女の子2人組み。……いや〜、目立つ目立つ。

何やら相当困っているようだ。通り過ぎて行く人々も奇異な視線を向けていた。

 

「……なんてことだ。これが超先進国であり経済大国日本の現実か……。

これだから信仰の匂いもしない国は嫌なんだ」

 

「毒づかないでよゼノヴィア。

路銀の尽きた私たちはこうやって、異教徒どもの慈悲なしでは食事を取ることもままならないのよ?

あぁ……パンひとつさえ買えない私たち!」

 

「ふん。もとはといえば、お前が詐欺まがいのその変な絵画を購入するからだろう」

 

ゼノヴィアが指さす先には辛うじて人と認識できる物体が描かれた下手な絵画があった。

……何故買った?イリナ、お前は何故その変な絵を買っちまったんだ……?

 

「何を言うの!この絵には聖なるお方が描かれているのよ!

展示会の関係者もそんなことを言っていたわ!」

 

「ほぅ?じゃぁそれが誰かわかるのか?

私には誰一人として脳裏に浮かばないぞ?」

 

ゼノヴィアは腕を組みジトっとした視線をイリナに向ける。

 

「……私には変なオブジェクトにしか見えません」

 

「右に同じく」

 

「以下同文」

 

俺たち3人はそんなことを呟く。

 

「……多分……ペトロ……さま?」

 

「ふざけるな。聖ペトロがこんな姿をしているわけ無いだろう」

 

ゼノヴィアの言う通りだと俺たち3人は合わせてもないのに同時に首を縦に振る。

 

「いいえ!こんな姿なのよ!

私にはわかるもんっ!!」

 

「……あぁ……どうしてこんなのが私のパートナーなんだ……。

主よ……これも私に課された試練なのですか……?」

 

「ちょっと!頭を抱えないでよ!

あなたって沈むときはとことん沈むわよね」

 

「うるさい!

これだからプロテスタントは異教徒だと言うんだ!

我々カトリックと価値観が違う!聖人をもっと敬え!」

 

「何よ!古臭いしきたりに縛られてるカトリックの方がおかしいのよ!!」

 

「……なんだと?異教徒め」

 

「何よ!異教徒!!」

 

ついには頭をぶつけながら喧嘩を始めてしまう始末……。

 

 

 

―――――ぐぅぅぅぅぅぅぅぅう……。

 

 

 

しかし、離れたところで観察していた俺たちのもとにも届くほど大きな腹の虫。

腹がなるなり、2人は力なくその場に崩れ落ちる。

 

「……まずはどうにかして腹を満たそう。

そうしなければエクスカリバー奪還どころではない……」

 

「……そうね。それじゃぁ、異教徒を脅してお金を貰う?

主も異教徒相手なら許してくれそうなの……」

 

「寺を襲撃するのか?それとも賽銭箱とやらを奪うか?どちらもやめておけ。

此処は剣を使って大道芸でもしよう。

どの国でも通じるインターナショナルな娯楽だ」

 

「それは名案ね!エクスカリバーで果物でも斬れば路銀は溜まるはず!」

 

お前たちはエクスカリバーをなんだと思っているんだ……。

俺は2人の会話に頭を抱える。

すると、小猫ちゃんと匙がポン、と肩を叩いてくれた。

……2人も俺と同じ気持ちなのか……。

 

「まぁ、その、果物がない訳だが。

……仕方がない。その絵を斬るか」

 

「ダメっ!これはダメよ!」

 

そういいながら再び喧嘩を始めてしまう2人。

俺はそんな2人の様子に溜息をつきながらと、小猫ちゃんと匙に待っているよう伝える。そして、立ち上がるとゆっくりとアホの子2人組みに近づいていった。

 

 

 

「そこの御2人さん?」

 

俺が声をかければ今にも泣き出しそうな表情をしながらこちらに振り向くイリナとゼノヴィア。

 

「今から飯食いに行くんだけど……来る?」

 

「「行くっ!!!」」

 

瞳を輝かせ身体を乗り出しながら即答するイリナとゼノヴィアだった。

……何このちょろい2人組み……。

俺は苦笑いを浮かべながらも近くのファミレスに2人を案内した。

勿論だが、小猫ちゃんと匙も一緒だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編の方はいかがでしたでしょうか?
楽しんでいただけたのなら幸いですっ!!

さてさて……最近ではマインクラフトで半自動収穫機を作ったり……8×8マスを岩盤まで掘ったりと……暇人を謳歌していました……(笑)

それでは、また次回お会いしましょう♪


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〜交渉しました〜

皆さんどうも♪
最近前々から友達にオススメと言われていたマギを読んで影響された夜叉猫ですっ!!!(>_<)

更新が遅くなってすみません(苦笑)
ちょっと他の事に頭を埋め尽くされてしまいまして……お恥ずかしい限りです(////∧////)

ひとまず!
本編をどうぞ♪


Side 一誠

 

「美味いっ!

日本の食事は美味いぞっ!!」

 

「うんうんっ!これよ!これが故郷の味なのよ!」

 

ガツガツとファミレスで注文したメニューを腹に収めていくゼノヴィアとイリナ。

……圧巻の食べっぷりだな……こいつら本当にキリスト教本部からの刺客なのか……?

 

ファミレスに着くまでに小猫ちゃんがお金を出しましょうか?と言ってくれたが流石に女の子に出してもらうのは俺のプライド的にダメだったため丁重にお断りした。

……が、ゼノヴィアとイリナの食べている量を見ると溜息が出てくる。

……あぁ……俺の財布が……軽くなっていく……。

 

「ふぅ~……落ち着いた。

キミたち悪魔に救われるとは、世も末だな」

 

「おいおい……遠慮なく食っておいてその言い草はないだろ」

 

ゼノヴィアの言葉に苦笑いが浮かぶ。

 

「はふぅ〜……ご馳走様でした。

あぁ……主よ。心優しき悪魔たちにご慈悲を」

 

胸で十字を切るイリナ。

 

「「「うっ!」」」

 

その瞬間、俺の頭に鈍い痛みがはしる。

周りを見れば小猫ちゃんと匙も同じように頭へ手を当てていた。

どうやら目の前で十字を切られたため、俺ら悪魔は軽めであったがダメージを受けたようだ。

 

「あー、ごめんなさい。

つい十字を切ってしまったわ」

 

てへっと可愛らしく笑うイリナ。

……普通に見るぶんには可愛い女の子なんだけどな……。

昨日の姿を思い出すとやはり苦笑いに包まれる。

水を飲み、息をついたゼノヴィアは改めて俺たちに訊く。

 

「で、私たちに接触してきた理由はなんだ?」

 

「あ〜……やっぱり偶然じゃなかったって分かっちまうか……」

 

まぁ、確かにあの出会い方は偶然ではないとわかるだろう。

 

「単刀直入に言わせてもらう。

―――――エクスカリバーの破壊に俺たちも参加させてくれ」

 

俺の言葉にゼノヴィアとイリナは目を丸くさせて驚いている様子だった。互いに顔を見合わせてもいた。

しばしの沈黙の後、ゼノヴィアが口を開く。

 

「……そうだな。1本くらい任せても良いだろう。……破壊できるのであればね。

ただし、そちらの正体がバレないようにしてくれ。こちらもそちらと関わりを持っているように上にも敵にも思われたくはない」

 

「……随分とすんなり許可してくれるんだな。

話を持ちかけた俺が言うのもなんだが……良いのか?」

 

「そ、そうよ!ゼノヴィア、本当に良いの?

相手はイッセーくんとはいえ、悪魔なのよ?」

 

俺の言葉に乗るようにして異を唱えるイリナ。まぁ、普通の反応はそうだ。

 

「イリナ、正直言って私たちだけでは3本のエクスカリバーを回収するのとコカビエルとの戦闘は辛い」

 

「それはわかるわ!けれど!」

 

「最低でも私たちは3本のエクスカリバーを破壊して逃げ帰ってくればいい。

私たちのエクスカリバーも奪われるくらいなら、自らの手で壊せばいいだろう。

……で、奥の手を使ったとしても任務を終えれる確率は高くて6割、無事帰れる確率にいたっては3割を切るだろう」

 

「それでも高い確率だと私たちは覚悟を決めてこの国に来たはずよ……?」

 

「そうだな、上にも任務遂行して来いと送り出された。

……これは自己犠牲に等しい」

 

「それこそ、私たち信徒の本懐じゃないの」

 

「気が変わったのさ。私の信仰は柔軟でね。いつでもベストなカタチで動き出す」

 

「あなたね!前々から思っていたけれど、信仰心が微妙におかしいわ!!」

 

「否定はしないよ。

……だが、任務を遂行して無事帰ることこそが、本当の信仰だと信じる。

生きて、これからも主のために戦う。―――――違う……?」

 

「……違わないわ。……でも……」

 

「だからこそ、【悪魔】の力は借りない。

―――――その代わりに【ドラゴン】の力を借りる。上もドラゴンの力を借りるなとは言っていない」

 

そう言ったゼノヴィアの視線が俺に向けられる。

何と言う屁理屈……だが、俺たちにとってはその屁理屈が都合がいい。

 

「まさか、こんな極東の島国で【赤龍帝】に出会えるとは思わなかった。

先日の戦いを少しだが見せてもらったが……かなりの実力を持っていると見た。

キミほどの実力があればエクスカリバーを破壊することも可能だろうし、この出会いも主のお導きと見るべきだね」

 

嬉々とした表情を浮かべゼノヴィアはそう語る。

 

「た、確かにドラゴンの力を借りるなとは言ってこなかったけど……。

いくらなんでも屁理屈が過ぎるわ!

やっぱりあなたの信仰心は変よ!」

 

「変で結構。しかし、イリナ。

彼はキミの古い馴染みだろう?信じてみようじゃないか。彼の実力とドラゴンの力を」

 

ゼノヴィアの言葉にイリナも黙り、承知の空気を出していた。

まぁ、そこまで期待されると答えないわけにはいかないだろう。

俺は頼んでおいたコーヒー口にし、笑う。

 

「OK。商談成立ってな。

俺はドラゴンの力を貸す。

んじゃ、今回の俺のパートナーを呼ばせてもらうぜ?」

 

俺は懐のスマホに手を伸ばし、木場へ連絡を入れたのだった。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「話は分かったよ」

 

木場は真面目な表情を浮かべ、コーヒーに口をつけた。

 

「正直言うと、エクスカリバー使いに破壊を承認されるのは遺憾だけど……感謝するよ」

 

「へぇ……?なんだか雰囲気が変わったみたいだね?先輩?」

 

「……少しだけ冷静になっただけさ。

まだ憎いものは憎い。……けど憎しみにだけ目を向けていては出来るものも出来なくなるからね」

 

木場の瞳に一瞬灯った憎しみの炎は以前より濃くなっているように見えた。しかし、それを補うような冷静な雰囲気が今の木場にはあった。

 

「ところで、今回の件に関しての情報は?」

 

「……今のところこれと言ったものはない」

 

ゼノヴィアは難しそうな表情を浮かべる。

が、その一瞬後に、何か思い出したかのように口を開く。

 

「……いや、今思い出したが……今回の件にあの『皆殺しの大司教』バルパー・ガリレイが関与している可能性がある」

 

「……バルパー・ガリレイ?」

 

木場はその名前に疑問符を浮かべ復唱する。そして、それに対してゼノヴィアが表情を変えることももったいぶる事もなく、口を開いた。

 

「―――――『聖剣計画』の責任者だ」

 

「ッッ!?」

 

ゼノヴィアから告げられた言葉に、木場は動揺してか、慌てたように立ち上がる。

何か言いたそうな表情を浮かべたが、深呼吸すると、ゆっくりと座り、呟くような口調で口を開いた。

 

「……それが僕の……目標(ターゲット)

 

木場の瞳には新たな決意のようなものが生まれていた。明確な目標ができただけでもその情報はありがたい物だろう。

 

「僕も情報を提供した方がいいみたいだね。

先日、エクスカリバー―――――確か【天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)】と言ったかな?それを持った者に襲撃されたよ 」

 

「「「「「!!」」」」」

 

木場の話した内容にこの場にいた全員が驚きの表情を浮かべた。

―――――が、俺はそれだけでなく、一瞬だが浮かべられた木場の悔しそうな表情に意識を奪われた。

 

「相手の名はフリード・セルゼン。

この名前に覚えは?」

 

フリード・セルゼン……奴がまだこの町に潜伏してるのかよ……。

木場の言葉にゼノヴィアとイリナが目を細めた。

 

「なるほど、奴か……」

 

「フリード・セルゼン。

元ヴァチカン法王庁直属のエースエクソシスト。齢十三歳でエクソシストになったかと思えばその僅か1ヶ月後には最強の名を思うがままにした本物の天才……。悪魔や魔獣を次々と滅していく功績は大きかったわ」

 

「……だが、奴はあまりにも強すぎ、そしてやり過ぎた。同胞すらその手に掛けたのだからね。

フリード・セルゼンには信仰心なんてものは最初からなかった。あったのは人外、特に悪魔や堕天使への敵対意思と濃密な殺意。

そして、異常なまでの復讐心。

異端に掛けられるのも時間の問題だった」

 

「……復讐心?」

 

俺はその言葉に疑問を抱き、つい質問として言葉を発してしまう。

 

「……私はあまり知らないが……奴は『奴らは許さない……絶対に』繰り返しこう言っていたそうだ」

 

「『奴らは許さない……絶対に』……か」

 

ゼノヴィアからの返答に、フリード・セルゼンには何か裏があるのではないかと、そう思ってしまい、気になって仕方がない。

 

「しかし……そうか……。

あのフリード・セルゼンが聖剣を持っているのか……これは一筋縄では行かないようだな……」

 

苦虫を噛み潰したような表情で重々しくそう呟くゼノヴィア。イリナもそれと同意見らしく、表情が曇っていた。

……それほどまでに強いのか、あの男は。

 

「まぁいい。

取り敢えず、エクスカリバー破壊の共同戦線といこう」

 

ゼノヴィアはペンを取り出すと、メモ用紙にペンを走らせ、連絡先をこちらへとよこした。

 

「何かあったらそこへ連絡をくれ」

 

「サンキュー。じゃぁ、俺たちの方も―――――」

 

「イッセーくんの番号は葵泉さんから頂いてるわ」

 

「はぃ!?

母さん何勝手なことしてるの!?」

 

イリナの言葉にその場にはいない母さんへの疑問を口に出してしまう。

どうせ母さんのことだから軽い気持ちで「電話でもしてみたら?」と言う感じにわたしたのだろう……。

この分だと士織の番号も渡してるんだろうなぁ……。

俺は頭が痛くなるのを感じ、溜息を吐いた。

 

「では、そういうことで。

食事の礼、いつかかならず。赤龍帝の兵藤一誠」

 

「食事ありがとうね、イッセーくん!また奢ってね!

悪魔だけど、イッセーくんの奢りならアリだと主も許してくれるはずだわ!ご飯ならOKなのよ! 」

 

二人はそう言い残して席を立って行った。

 

 

 

 

 

見送りも軽く済ませた俺たちは再び元の席に戻る。

 

「……イッセーくん。どうしてこんなことを?」

 

木場が静かに訊いてくる。

こいつにしてみれば自分の私的な恨み事をどうして手助けしてくれるのか不思議なんだろうな。

 

「ま、仲間だし、眷属だしな。

それに、お前には助けられたことがあったし、別に借りを返すとかそんなんじゃないけど、今回はお前の力になりたくてな」

 

「僕が勝手に動けば部長に迷惑がかかるから。―――――それもあるんだよね?」

 

「まぁ、もう大丈夫だとか言われたけど……もしもってことがあるからな。

それに、お前が『はぐれ』になるよりはどんなことと比べてもマシだろ?」

 

俺の言葉にどこか納得できていないような表情を浮かべる木場。

そこへ小猫ちゃんが口を開く。

 

「……祐斗先輩。私は、先輩がいなくなるのは……寂しいです」

 

少しだけ寂しげな小猫ちゃんの表情に俺と匙は衝撃を受け、固まった。

 

「……お手伝いします。……だから、いなくならないで」

 

小猫ちゃんの訴え。

前のもう大丈夫発言を伝えたことでいなくならないことは小猫ちゃんにもわかっているはずだが、しかし思うところがあったのだろう。

それよりも……あの小猫ちゃんの訴えはやばい。何がやばいっていつもとのギャップが可愛さを増して俺の理性にダイレクトアタックを仕掛けているから。

匙の方をチラリと見てみるが幸せそうな表情を浮かべていた。余波だけで匙をココまでするとは……おそるべし、小猫ちゃん。

 

……とまぁ、そんな俺たちに対して、木場は優しく微笑みながら小猫ちゃんの頭を撫でた。

 

「小猫ちゃん……。流石にそんなこと言われたら僕も無茶はできないよ。

わかった。今回は皆の好意に甘えさせてもらおうかな。

イッセーくんたちのおかげで真の敵もわかったしね。

でも、やるからには絶対にエクスカリバーを倒す」

 

木場の言葉に安堵したのか、小猫ちゃんは小さく微笑んだ。

 

「よし!んじゃ、話もまとまったことだし、これからエクスカリバー破壊に向けていっちょ頑張りますか!!」

 

パン!と柏手を打ち、俺はそう声を掛けた。

そうすれば、匙も木場も小猫ちゃんも、首を縦に振り拳を突き上げた。

 

 

 

此処にエクスカリバー破壊を目的としたチームが結成された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編の方はいかがでしたでしょうか?
楽しで頂けたのなら幸いです♪

さてさて、ここからは雑談ですが……。
最近お土産と称してまとりょしかを貰ったのですが……これって何処のお土産何ですか……??(苦笑)
可愛い……?のでお部屋に置いているのですが……ちょっと異様です(笑)


それでは、また次回お会いしましょう♪


―――追記―――
七月十九日 本文改定
ゼノヴィアのセリフを一部変更しました。
フリードの憎しみの対象をバケモノから人外へと変更。
悪魔だけでなく、堕天使も憎しみの対象へと変更。


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〜話しました〜

皆さんどうも♪
風邪でダウンしてしまった夜叉猫なのです(苦笑)

何とか書きだめが完成していたのでギリギリですが更新できましたっ!!(>_<)

それでは、本編をどうぞ♪


Side 一誠

 

「……つーか、さっきはノリで賛同しちまったけど……。

結局、何がどうなって木場とエクスカリバーが関係あるんだ?」

 

と、匙が何処か気恥ずかしそうにそう聞いてきた。ノリで賛同したと言うのが羞恥を煽ったのだろう。

 

「……少し、話をしようか」

 

コーヒーに口を付けた後、木場は自分の過去を語った。

 

 

 

 

 

曰く、カトリック協会が秘密裏に計画した『聖剣計画』。聖剣に対応した者を輩出するための実験が、とある施設で執り行われていた。

 

曰く、被験者は剣に関する才能と神器を有した少年少女たちだった。

 

曰く、被験者である少年少女たちは来る日も来る日も辛く非人道的な実験ばかりを繰り返されていた。

 

曰く、彼らは散々実験を繰り返され、自由を奪われ、人間として扱われる事などなく、生を……命を無視された。

 

曰く、彼らにも夢があった。

 

―――――生きていたかった。

 

―――――『人に』愛されたかった。

 

―――――『人を』愛したかった。

 

 

 

神に愛されていると信じ込まされ、ひたすら『その日』が来るのを待ち焦がれた。

自分たちが特別な存在になれると信じて―――――。

聖剣を使える者になれると信じて―――――。

 

365日、毎日毎日何度も何度も聖歌を口ずさみながら、過酷な実験に耐えたその結果が『処分』だった……。

 

 

 

 

 

―――――木場たちは聖剣に対応できなかったのだ。

 

 

 

 

 

「……皆、死んだ。殺された。神に、神に仕える者に。

誰も……誰一人として救ってはくれなかった。

『聖剣に対応できなかった』、たった……それだけの理由で、少年少女たちは生きながら毒ガスを浴びたのさ。

彼らは『アーメン』と言いながら僕らに毒ガスを撒いた。

血反吐を吐きながら、床でもがき苦しみながら、僕たちはそれでも神に救いを求めた。奇跡が起こるのを願いながら、皆……皆……」

 

木場は静かに語る。俺たちはそれを無言で聞いていた。

 

「同志たちの無念を晴らしたい。

いや、彼らの死を無駄にしたくない。

僕は彼らの分も生きて、エクスカリバーよりも強いと証明しなくてはいけないんだ」

 

木場から聞かされたその凄まじい過去に開いた口が塞がらない。

アーシアも悲しい過去を持っているが……木場はそれ以上に悲しく、辛い過去を持っていたのだから……。

 

 

 

 

 

「ううぅぅぅぅ……」

 

沈痛な面持ちの俺たちの中からすすり泣く声が聞こえてくる。

 

―――――匙だ。

 

号泣している。ボロボロと涙を流して、大泣きしていた。鼻水まで垂らして……。

匙は木場の手を取り言う。

 

「木場!辛かっただろう!キツかっただろう!

……チクショウ……この世には神も仏もないのかよ……っ!!

俺は、今、非常にお前に同情している!あぁ、酷い話しさ!

その施設の指導者やエクスカリバーに恨みを持つ理由もわかる!わかるぞ!!」

 

力強く頷く匙。

木場はそんな匙の姿を目を丸くしながら見ていた。

 

「俺はイケメンのお前が正直いけすかなかったが、そういう話なら別だ!

俺もお前たちのエクスカリバー破壊に協力する!

あぁ、やってやるさ!会長のシゴキを敢えて受けよう!

俺も頑張るからさ!お前も頑張って生きろよ!絶対にお前を救ってくれたリアス先輩を裏切るな!」

 

匙の言葉から熱意を感じる。

やはり、こいつはイイ奴だ。協力を仰いで良かった。俺はそう思えた。

 

「よっし!

そうと決まれば作戦会議しようぜ!

俺、お前たちの事を何にも知らねぇからさ!

まずは互いの実力の把握ぐらいしとこうぜ!」

 

そういう匙の顔はやる気に道溢れていた。

俺と小猫ちゃん、木場は顔を見合わせるとくすりと笑ってそんな匙と話を始めた。

 

 

 

―――――絶対にエクスカリバーを倒すんだ。

 

 

 

 

 

Side Out

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

―――――時は一誠たちがゼノヴィアたちを探している時ほどまで遡る。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

Side 士織

 

朝起きた俺は家の中が嫌に静かなのを感じた。

……などと言ってみたがそれもその筈。時計を見てみれば既に10時を回っている。

 

「……ふぁ……。

……昨日は遅く寝すぎたか……」

 

いくら休日とはいえこんな時間に起きてしまうとは不覚である。

ちょっとだけのつもりで俺の【神器(セイクリッド・ギア)】を調整していたのだが……集中し過ぎたのが原因か……。

俺は自分の部屋からリビングへと向かってみる。案の定、リビングのテーブルの上には4枚の書置きが残されていた。1枚ずつ上から手に取り、目を通す。

 

『木場の手助けをしてくる』

 

ふむ、これは一誠だな。

 

『美憧と一緒にショッピングしてくるわ』

 

これは……字的に夕麻か。

美憧と夕麻はショッピングに行ったようだな。

 

『華那と共に鍛錬を積みに山へ向かう。

捜さないでくれ』

 

……綯奈……ツッコミどころ満載の書置きを残さないでくれ……。

ついつい苦笑いが漏れる。

 

『遊びに行ってくるわね〜♪』

 

……母さん……何故1番子供っぽい書置きが母さんの書置きなんだ……。

俺は4枚の書置きに全て目を通したあと、最後の母さんの書置きに頭を抱える。

幼さを忘れないというか……幼さを残したまま大人になったというか……。

我が母親ながら謎な部分が多々ある……。

 

 

 

 

 

―――――閑話休題。

 

 

 

 

 

「あぁ〜……腹減ったし……飯でも作るか……」

 

俺はそんなことをつぶやきながらキッチンへと向かい、冷蔵庫を開く。

 

「ん〜……オムライスでいっか……」

 

冷蔵庫の中身的に作れるであろう物を考えると、材料である鶏肉、玉葱、卵を取り出す。

 

「んん〜……たんぽぽか……それともツチノコか……」

 

ちょっとしたことだが、卵を手にしながら考える。

 

「我はたんぽぽ」

 

「そうか、たんぽぽがいいか。

なら、今日はたんぽぽオムライスに―――――!?」

 

俺は隣から聞こえてきた居るはずのない人の声に驚愕し、そしてすぐにそちらへと顔を向けた。

 

 

 

 

 

「?士織、どうした?」

 

こてんと首を傾げる少女。

俺はその姿()と居るという事実に目を見開きながら口を開いた。

 

「なんでここにいるんだよオーフィス!!」

 

「士織に会いに来た」

 

「あ、いや……うん、それはいいとしてだ、お前服真っ赤だぞ?!」

 

そう、俺が何故此処まで驚いているのか。

いつも通り突然現れるだけなら大して驚きはしなかったが、オーフィスの服が赤く染まっていたため、過剰に反応してしまったのだ。

 

「曹操がうるさかったから『えぃ』ってした」

 

オーフィスはそう言うとデコピンをして見せた。

 

「……それって曹操の返り血……?」

 

「多分そう」

 

「曹操死んじゃった?」

 

「多分そう」

 

「……マジで?」

 

俺が深刻そうな表情を浮かべながらオーフィスにたずねると、くすりと笑い口を開いた。

 

「冗談。

曹操、多分死んでない」

 

「そ、そうか……」

 

オーフィスがいうとなんだか冗談に聞こえないため肝を冷やしたぜ……。

俺はふぅ、と息を一つ吐き、気持ちを落ち着かせる。

 

「……取り敢えず服、綺麗にしてやるよ」

 

俺はぱちん、と指を鳴らして幾つかの魔法を同時に発動させ、オーフィスの体、服を綺麗にする。

 

「士織、凄い」

 

キラキラとした瞳を俺に向けるオーフィス。自分を綺麗にした俺の魔法が珍しかったのだろう。

俺は頬を緩ませながら、オーフィスの頭を優しく撫でる。

 

「今から飯作るから、ちっとだけ待っててくれな?」

 

「わかった」

 

俺の手に擦り寄りながらオーフィスはそう言った。そして、リビングの方へとたとたと駆けていくとソファーに座った。

 

「我、待ってる。

士織のご飯、楽しみ」

 

「おう。楽しみにしてな?

最高に美味いやつ食わせてやるよ」

 

俺は追加の食材を取り出すと気合を入れるようにエプロンに袖を通した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編の方はいかがでしたでしょうか??
楽しんで頂けたのなら幸いですっ!!(>_<)


さてさて、今回の雑談ですが……。

風邪、現在風邪でダウンしているのですが……休んでいるのをイイことにのんびりしています(笑)
クッションやぬいぐるみをもふもふしながら動画を視聴してもぅ天国ですっ!!(>_<)
……風邪は辛いですけど(苦笑)

皆さんも風邪にはお気をつけください……。くれぐれもですよぅ……??


今回はここまで!
ちなみに、感想などお待ちしています♪
では、また次回お会いしましょう♪


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〜進展しました〜

皆さんこんばんはっ!!(>_<)
更新が遅くなってしまってすみませんっ!!
試合だったり、模試だったり、誕生日だったりで忙しくて書けなかったのですよぅ……(涙)

本当に遅くなりましたが、ひとまず本編をどうぞっ!!(>_<)


Side 士織

 

「美味しかった」

 

オーフィスはオムライスを完食すると満足そうに頬を緩め、そう口にした。

オーフィスには大きいかと思ったが……あの食べっぷりを見るに余裕だったみたいだな。

 

「我、これ気に入った」

 

「そうか?

なら、また今度来た時に作ってやるよ」

 

「お願い」

 

即答で返事を返すオーフィス。

ここまで気に入ってもらえると作った俺としては嬉しい限りだ。

 

「んじゃ、ちょっと洗い物してくるから……」

 

そう言って席を立つと、オーフィスはせかせかと動き始め、テーブルに乗っている皿を全て持って俺の方へと近寄ってきた。

 

「我も、士織手伝う」

 

「そっか……ならその食器持ったまんま俺についてきてくれ」

 

「わかった」

 

オーフィスはこくりと首を振り、まるでアヒルの子が親を追いかけるようにトコトコと可愛らしくついてくる。

 

「此処に置く?」

 

シンクを見つめながらそういうオーフィス。

 

「おう。

さんきゅなオーフィス。洗い物は俺がすっからさ」

 

そう言って微笑みながらオーフィスの頭を優しく撫でる。すると、オーフィスは頬を緩め、気持ちよさそうに目を細めた。

良く懐いた猫のような愛らしさに引き込まれてしまいそうだ。

 

「士織、手伝ったら撫でてくれる?」

 

洗い物という作業を忘れ、オーフィスを撫でているとそう言い出した。

 

「我、士織に撫でて欲しい。

だから……手伝ったら撫でてくれる?」

 

「いや……別にそんなの関係なく撫でてやるよ。

でも……そうだな……手伝ってくれたらその場でご褒美として撫でてやる」

 

「……!わかった」

 

オーフィスはそう言うと嬉しそうに、笑った(・・・)

 

(ったく……何時もはほとんど無表情のくせに……たまに見せる笑顔が可愛いとか反則だろ……」

 

オーフィスの笑顔に毎度毎度ドキッとさせられるのは慣れないものだ。

 

「士織、士織」

 

「ん?なんだ?」

 

オーフィスは俺の服の裾を引っ張りながら名前を呼んでくる。

 

 

 

 

 

「―――――我、笑うと可愛い?」

 

「……は?」

 

「士織、我の笑顔、可愛いって言った」

 

「んなっ!?」

 

初めにキタのは驚愕、それに遅れて羞恥が俺の身体を走った。

どうやら声に出てしまっていたようだ……。何たる不覚……。

 

「我、可愛い??」

 

こてん、と小さく首を傾げながらそう言うオーフィス。

俺は熱くなった自分の頬を冷ますように手で仰ぎ口を開いた。

 

「―――――あぁ。可愛いぜ?」

 

……我ながら上手く平然を装えたはずだ。

とは言っても顔が赤いのは気のせいではない筈なので見る人が見れば一発だろう。

 

「……そ、そう」

 

オーフィスは顔を俯かせながらそう言うと、足早にキッチンから出ていった。

顔を俯かせていたオーフィスだったが、俺は見た。

 

―――――紛れもなく顔を赤く染めたオーフィスの顔を。

 

(……表情豊かになってきたのはイイ事だな)

 

子を見守る親の心境とはこんなことをいうのか、いや、しかし、俺はそれ以上のモノを心の中に感じたのを忘れはしないだろう。

 

 

 

 

 

Side Out

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

Side 一誠

 

エクスカリバー破壊のための同盟を組んで、そして、士織が『ちょっと留守にする』という書置きを残して姿を消して早数日。

 

連日俺、木場、小猫ちゃん、匙の四人で夕方にエクスカリバーの捜索を行っているのだが、手掛かりすら掴めていなかった。

捜索時にはゼノヴィアたちから貰った魔の力を抑える神父の服を着ているため、神父狩りをしているのなら出会える筈なのだが……。

 

俺の心中は焦りに染まっていた。

タイムリミット―――――リアス部長たちにバレるのも近いだろう……。

 

 

 

 

 

「ふぅ……。今日も収穫なしかよ……」

 

気落ちするように匙が言う。

いつものように、表の部活動を終えた俺たちはエクスカリバーの捜索を行っていたのだ。

 

「簡単には見つからないもんだな……」

 

匙と同じく少々の気落ちを感じながらそう口にする。

―――――と、そんな時、先頭を歩いていた木場が足を止めた。

 

「……祐斗先輩」

 

小猫ちゃんも何かを感じたようで、俺もそれまでの散漫な警戒心を引き締める。

……これだけの接近を易々と許すとは……。

こんなことが士織に知られたらと考えると背筋が凍りそうだ。

 

「上だ!」

 

匙の叫び。

全員が上空を見上げたとき、長剣を構えた少年神父が降ってきた。

 

「……死ね」

 

殺気の塊のようなその声と共に振るわれる長剣。

木場が素早く魔刀を創り出し、少年神父―――――フリードの一撃を防いだ。

 

「フリード!!」

 

「っ!……その声は赤龍帝クンかい?

へぇ……これはまた珍妙な再会で……。

悪魔の香りがすると思ったらまさかの悪魔そのものでしたかぃ……」

 

飛び退いたフリードは長剣―――――おそらくアレがエクスカリバーなのだろう―――――を構え直した。

俺たちは移動の障害にしかならない神父の服を脱ぎ捨て、各々の戦闘スタイルを取る。

 

「ドライグ!」

 

『Boost!!』

 

呼びかけに答えるように俺の力が膨れるのを感じた。

今回の俺の仕事は木場のサポート。

……まぁ、ピンチになれば話は別だが……。

 

「伸びろ、ラインよ!!」

 

真っ先に動いたのは匙。

手元から黒く細い触手らしきモノがフリード目掛けて飛んでいく。

手の甲には可愛らしくデフォルメ化されたトカゲの顔らしきものが装着されていた。

……つまり、あの触手はトカゲの舌か。

 

「うぜぇ」

 

それを聖剣で薙ぎ払おうとするフリードだったが、トカゲの舌は軌道を変えて下へ落ちていく。

ピタリとフリードの右足に張り付き、そのままグルグルと巻き付いた。

 

「そいつはちょっとやそっとじゃ斬れないぜ。

木場!これでそいつは逃げられねぇ!存分にやっちまえ!」

 

匙はそう叫び、木場へと伝える。

―――――しかし、フリードはそう甘くは無かった。

 

「だからうぜぇって」

 

吐き捨てるような台詞の後、フリードの持つ聖剣にオーラが集まる。そして、無造作に振るわれた。

フリードの聖剣による一撃は匙の拘束を斬り裂くだけでは飽き足らず、その下、地面をも抉った。

 

「んなバカな?!」

 

匙もまさかこんなにも簡単に拘束を解かれるとは思っていなかったようだ。

 

「……やっぱりキミに拘束なんて無意味だったみたいだね」

 

「おろろ?

……雰囲気変わったみたいだねぇ……?」

 

木場とフリードは向かい合いながら言葉を交わす。

 

「リベンジ……させてもらうよ」

 

木場はそう呟くと、一振りの刀を創り出す。

無駄な装飾は全くない。

ただ、振るいやすいように創られたであろうその一振りの刀を木場は鞘から抜き放ち、構えた。

 

「……この刀はキミに敗けて創った新しいモノ。

今までみたいな剣からの変換ではない、一から創り出した刀だ。

名前を付けるなら安易にこう付けよう―――――【下剋上(リベンジ)】……と」

 

「……いいねいいね!

今の騎士(ナイト)クンなら殺す価値大だわ!!」

 

今まではやる気のなさそうに刀身を下げていたフリードだったが、木場の姿に獰猛な笑みを浮かべ構えをとった。

 

「…………」

 

「…………」

 

無言の2人、そして、幾ばくかの間を空けて、2人の姿がブレた。

斬り合いを重ねた2人は少し離れていたところで鍔迫り合いを行う。

 

「やるじゃん騎士クン。

この間とは大違いだねぃ……。

流石の俺も斬られそうで冷や冷やモンだわ〜」

 

「……その割には随分と余裕があるね」

 

「ありぃ?

騎士クンにはそう見えちゃう?」

 

その通りなんだけど!と言葉を発したフリードは力業で木場との鍔迫り合いを終わらせ、一歩後ろに下がる。

 

 

 

 

 

―――――そこからの移動が異常だった。

 

瞬きの間に木場の背後へと回り込んでいたのだ。

 

「取り敢えずばいちゃ♪」

 

フリードは無慈悲にオーラを纏わせた聖剣を横薙ぎに振るった。

 

「―――――【魔剣創造(ソード・バース)】ッッッ!!!!」

 

木場はフリードの一撃を見ること無く叫びを上げる。

すると、木場の背後をいくつもの魔剣、魔刀が組み合わさり防壁を一瞬で創り上げた。そして、フリードの一撃が当たった瞬間に、木場は前へと飛び、残った衝撃を緩和させる。

 

「……く……っ!」

 

魔剣、魔刀による防壁はほとんどが破壊されてしまったものの、木場の身にはその一撃が通ることは無かったようだ。

……一瞬の判断であそこまでの行動を取るとは……流石は士織に鍛えられただけのことはあるな……。

 

「わぁぉ……まさか無傷とは……。

やるねぇ……騎士クン」

 

そういったフリードの瞳には驚き、そして純粋な好奇心が見える。

木場は回避行動により付いた土埃を払い、刀を握り直しフリードの方を向く。

 

「……やった本人が一番驚いてるよ」

 

「くは〜♪

面白すぎ!面白すぎるよ騎士クン!!!

いいね……いいねいいね!!!

もっと殺ろう!

キミは悪魔だけど……評価してやってもいいな!!!」

 

「……そりゃ光栄だね」

 

片や楽しそうに笑い、片や冷や汗を垂らす。

2人の状況は火を見るより明らかだろう。

 

 

 

 

 

「行くぜ!騎士クン!」

 

聖剣のオーラが長剣のみならず、フリードをも覆う。

 

「……来い」

 

木場は納刀し、独特の構えをとる。

今の木場の最高、抜刀術の構えだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――ほう、【魔剣創造】か?

使い手の技量次第では無類の力を発揮する神器だ」

 

まさに2人が決着を付けるであろう場面に、第三者の声が届く。

そちらへ視線を送れば、神父の格好をした初老の男が立っていた。

 

「……バルパーの爺さんか」

 

フリードがいかにもしらけたといった表情を浮かべながらその男の名を呼んだ。

……アイツがバルパー・ガリレイか……。

 

「……バルパー・ガリレイッ!」

 

木場もその男の姿を捉え、憎々しげな視線を向けた。

 

「……おいおい……。

バルパーの爺さんよぉ……タイミング最悪だぜ全く……」

 

「ふん、そんなことは知らない。

もたもたしているから迎えに来てやったんだ。

さぁ、帰るぞ、フリード」

 

「……へいへい……分かりましたよ」

 

渋々といった雰囲気でフリードはそう返事をすると、木場の方をちらりと見て口を開いた。

 

「今日は邪魔が入ったし……また今度殺ろうぜ?騎士クン。

んじゃ、ばいちゃ♪」

 

捨て台詞のようにいうフリードだったが―――――。

 

 

 

 

 

「逃がさん!」

 

その声とともに俺の横を走り抜けていく影。

フリードの聖剣と真正面から打ち合い火花を散らす。―――――ゼノヴィアだ。

 

「やっほ。イッセーくん」

 

「やっほ、イリナ」

 

ゼノヴィアが居るのだからやはりイリナも居たか。

俺はひょっこりと顔を出すイリナに軽い挨拶を返した。

 

「フリード・セルゼン、バルパー・ガリレイ。

反逆の徒め。神の名のもと、断罪してくれる!」

 

「……ハッ!

俺の前で神がどうだとか言ってんじゃねぇよ」

 

フリードはゼノヴィアをも力業で押し返すと、懐から見覚えのある球体を取り出した。

 

「ほら、帰ってやるよバルパーの爺さん。

コカビエルの旦那に報告すんだろ?」

 

「致し方あるまい」

 

「んじゃぁな、糞教会と糞悪魔の連合諸君」

 

その言葉を最後に、フリードは球体を地面に叩きつけた。瞬間、閃光があたりを包み込む。

視力が戻ってきた頃にはフリードもバルパーも視界からは(・・・・・)消えていた。

 

「追うぞ、イリナ」

 

「うん!」

 

2人は頷き合うとその場を駆け出す。

 

「……イッセーくん」

 

「行ってこいよ木場。

後のことは俺らがなんとかしといてやる」

 

「!……ありがとう、イッセーくん」

 

そう言った木場は2人の後を追ってこの場を駆け出していった。

 

……さて、今回はサポートだとか静観だとかで大した出番がなかったけど――――――

 

 

 

俺は背後に現れた気配に反応し、身を反転させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「力の流れが不規則になっていると思ったら……」

 

「これは、困ったものね」

 

 

 

―――――この場は俺がなんとかしねぇとだよな……。

 

そこには、一際険しい表情のリアス部長と、会長さまの姿があった。

……おぉ……匙の顔が死んでる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編の方はいかがでしたでしょうか?
楽しんでいただけたのなら幸いです♪


さてさて、ここからはいつもの通りに雑談なのですが……。
今回は先日のたんぽぽオムライスとツチノコオムライスについてのポイントでもお話しようかと……(笑)
私としてはたんぽぽオムライスの方が簡単でかつ美味しいので好きなのですが、半熟はダメっていうお友達ようにツチノコオムライスも作るのです(笑)

さて、たんぽぽオムライスですが……やはりポイントは卵ですよね♪
あのふわとろ感を作るのが難しいという人も多いですが、私はまず、卵に生クリームor牛乳を少量入れます!
これだけでも仕上がりが変わるのですよ♪
次に、焼くときですが……私は少しずつ約4回に分けて少し固まったら次〜というふうに入れて焼いています♪

ツチノコオムライスの方はやはり、入れるご飯の量をミスしないことが最大のポイントだと思います!
卵が破れてしまうと見た目が悪くなってしまいますからね(苦笑)

みなさんもオムライス、作って見てください♪


それでは、また次回お会いしましょう♪


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〜またメガネのせいでした〜

皆さんお久しぶりなのですっ!!(>_<)
しばらく更新できなかったのは期末テストに追われていたからなのですよ……(苦笑)

今日からはまた更新していきますのでどうぞ、よろしくお願いしますっ!!(>_<)

それでは久しぶりの本編をどうぞ♪


Side 一誠

 

「……エクスカリバー破壊って……あなたたちね……」

 

額に手を当て、極めて機嫌の宜しくない表情を浮かべるリアス部長。

あの後、俺と小猫ちゃん、匙の3人は近くの公園に連れていかれ、噴水の前で正座を命じられていた。

 

「サジ。あなたはこんなにも勝手なことをしていたのですね?本当に困った子です」

 

「す、すみません……会長……」

 

支取会長の方も冷たい表情で匙に詰め寄っていた。匙の顔色は危険なほどに青く見える。……よほど怖いんだろう。

 

「支取会長。匙のやつをそんなに責めないでください。

今回のことは俺が協力させてただけっすから」

 

俺がそう言って、匙への助け船を出す。

そうすれば、支取会長は一瞬厳しい視線を俺に向けたが、ハァ、と溜息を吐き軽く首を振った。

 

「……今回は兵藤くんに免じてお仕置きはなしにします。……が、次はありませんよ?サジ」

 

「はいっ!!!以後気をつけます!!!」

 

敬礼しながら気持ちがいい程の声を張り上げて匙は言う。

 

「……イッセー。

なんでこんなに危険なことをしたの?

下手をすれば悪魔の世界にも影響を出しかねないことだったのよ?」

 

「……木場の奴を助けてやりたかったんです。

あいつの話を聞いたらいてもたってもいられなくて……」

 

正直に、偽ることなくそう口にする。

見れば小猫ちゃんも俺の言葉に首を縦に振って同意の意を示していた。

リアス部長はそんな俺たちに微笑ましいものを見るかのような視線を向け、頬をなでた。

 

「……バカな子たちね……。

本当に、心配ばかりかけて……」

 

「以後気をつけます……」

 

「……すいません」

 

……やはり、リアス部長の眷属になったのは間違いではなかった。

こんなにも優しい【(キング)】の元に居られるグレモリー眷属(俺たち)は幸せ者ってもんだろう。

 

 

 

「でも、今回のお仕置きはしないといけないわね。

2人とも、おでこをだしなさい」

 

俺と小猫ちゃんは言われるがままに額を出す。すると、紅いオーラの纏った手で―――――

 

「……あぅ……?!」

 

「あ痛……っ!?」

 

―――――デコピンをしたのだった。

 

 

 

「使い魔を祐斗探索に出させたから発見しだい、部員全員で迎えに行きましょう?

それからのことはその時に決めるわ」

 

「「はい」」

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

俺とリアス部長、小猫ちゃんが家に帰る頃には夕日も落ちて夜になりかけていた。

何故、リアス部長と小猫ちゃんまで家に来ているかというと、簡単に言えば夕食に誘ったのだ。

 

「ただいまー」

 

「お邪魔いたします」

 

「……お邪魔します」

 

俺たちが玄関で靴を脱いで上へ上がろうとしたとき、台所の方から母さんが顔を覗かせて、ニヤニヤと笑っているのが視界に入った。

 

「……な、なんだよ母さん」

 

「ん〜??

一誠ちゃんが女の子を3人もはべらせるようになったのがなんだか嬉しくって♪」

 

両の頬に手を当てテンション高めの母さん。

……3人はべらせるように……って……。

俺は苦笑いが浮かぶのを感じる。

そもそもリアス部長には婚約者(ライザー)がいるしな。

 

「あ、それよりそれより!

一誠ちゃん!こっちに来て!イイもの見れるわよ♪」

 

母さんは満面の笑みで手招きをする。

俺は首を傾げながらも台所の方へと向かってみることにした。

そして、台所を覗くと―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なななな、何やってんだよ!!!?」

 

―――――そう叫んでしまっていた。

 

台所に居たのは母さんを除いて5人。

アーシアと夕麻、美憧、華那、綯奈だった。

何の変哲もない何時も通りのメンバーだが……しかし、その姿が俺の心を揺さぶり冷静さを奪ったのだ。

 

エプロン姿の5人。と、思ったが、ちょっと違う。肌の露出が必要以上に多いのだ。

つまりそれは―――――裸エプロン。

……あぁ……クラっときた……。

 

「……く、クラスのお友達に聞いたんです……。日本のキッチンに立つときには、は、裸にエプロンだって……。

は、恥ずかしいですけど……、に、日本の文化に溶け込まないとダメですから……っ!」

 

顔を真っ赤にして、もじもじしながらアーシアは呟く。

 

「わ、私はその……一誠くんが喜んでくれるかなぁ……って思って……」

 

恥ずかしがりながらもその姿を見せようとする夕麻。

 

「う、ウチはアーシアがするっていったから……仕方なくっす!」

 

必然的に丈の短くなるエプロンの裾を引っ張りながら頬を赤く染める美憧。

 

「私は葵泉さんに進められてだな……やはり恥ずかしい……」

 

そう言って頬は染めつつもクールな印象を損なわない華那。

 

「私は勿論ノリだ!」

 

綯奈は胸を張り、恥ずかしがることなくそう言い放った。

 

(……ちょっと待て……家の天然娘(アーシア)にピンク文化教えたアホは何処のどいつだ……?

しかも堕天使娘たちにまで広がって被害が拡大してんじゃねぇか!!!)

 

確かに絶景だけど!

永久保存レベルの絶景だけども!!

 

「……一応聞いとくけど……誰から聞いたんだ?アーシア」

 

ふと、冷静になった俺は予想ができてはいるが……一応の確認のためアーシアに質問を投げ掛ける。

 

「は、はい、クラスのお友達で桐生さんから……。……も、もちろん、下に下着は着けていません。スースーしますぅ……あうぅ……」

 

聞いてもいないことまで話してくれるアーシア。……アカン、この娘、天然エロ娘の階段を下手したら二段飛ばしで上ってるよ……っ!?

 

「また……またなのか……あのエロメガネ女ぁぁぁぁぁあっ!!!!!」

 

風呂の件しかり、毎度毎度あのエロメガネ女―――――桐生に頭を抱えさせられている気がする……。

 

「んふふ〜♪かわいいでしょ〜?

お母さん、こういうの大賛成よ♪

んん〜♪若い頃を思い出すわぁ……」

 

賢夜さんそこはダメよ〜♡と、母さんは体を抱きしめながら自分の世界へと旅立っていった。

……というか母さん、父さんとそんなことしてたんだな……。

 

「……私もしてみようかしら……」

 

「……ライザーにでもしてやってください。

ライザーなら飛び上がって喜びますよ」

 

「そ、そうかしら?」

 

顔を赤く染めながらそう言うリアス部長。

ライザー、援護はしておいた後は撃墜されないように頑張れ……。そんなことを心の中で祈ってみる俺だった。

 

「……まぁ、何より……みんな似合ってるよ。

昔の俺だったら襲いかかっちまいそうだわ」

 

正直今も封印した煩悩が炸裂しそうで大変です。

俺がそんな褒め言葉を述べるとアーシア、夕麻は顔を赤くし、美憧は頬を緩め、華那はクールな微笑みを浮かべ、綯奈は誇らしげに胸を張った。

そんな、個々様々な反応に俺は微笑ましくなり、頬が勝手に緩んでしまう。

と、そんな時、俺の服を後ろから引く手。

 

「ん?どうしたんだ?小猫ちゃん」

 

「……し、士織先輩は……ああいうの好きなのか知ってますか……?」

 

顔を赤くしながらそう聞いてくる小猫ちゃん。

俺はくすりと笑うと頷きながら口を開いた。

 

「好きなんじゃないか?

まぁ、士織なら人の好意を嫌がりはしないと思うぜ?」

 

「……ありがとうございます」

 

「おう」

 

それにしても小猫ちゃんはわかりやすいなぁ……。

俺はそんなことを考えながら、今は皆を見守ることにした。

 

……決して裸エプロンを記憶に焼き付けようという意図ではない。決してだ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば父さんは?」

 

「それがまだ帰ってきてないのよ〜。

一体何処で何をしてるのかしらねぇ〜」

 

姿の見えない父さんのことを話題にすれば母さんが頬に手を当て、困ったようにそう言った。

 

「賢夜殿ならばまた夜回りでもしているのでは?

そして何か人助けでもしておられるのだろう」

 

「ありそうで困るな」

 

綯奈の言葉にそう返した俺はまぁ、心配する必要は無いだろうという結論を出す。

母さんも賢夜さんなら仕方が無いわねぇと言って微笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編の方はいかがでしたでしょうか?
楽しんで頂けたのなら幸いです♪


さてさて、ここから雑談なのですが……。
……最近物凄い悩みを抱えている夜叉猫さん……。

……太りました……(涙)

な、なぜですかっ!!(>_<)
やっぱりテスト期間で部活がなかったからですかっ!!?
3キロも太るってどういうことですか……っ!!!(>_<)
……心当たりがありすぎて泣きそうです……(涙)

……これはもう……明日からの部活で毎日全力を尽くさなければ……(涙)


とまぁ、どうでもいい雑談はこの辺で……(笑)
また次回お会いしましょう♪


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〜触れてしまいました〜

皆さんお久しぶりです♪
今回はなんとか間に合ったのですよっ!!!(>_<)

そして……やっと、やっとここまで来たのですっ!!(>_<)


取り敢えず、本編をどうぞ!!!


Side 一誠

 

リアス部長、小猫ちゃんを我が家に招いた日の夜。

初めは確かに1人で寝ていたはずなのに、ベットには2つの人影があった。

―――――アーシアと夕麻だ。

この2人、何時からか俺のベットに潜り込んでくるようになってしまっていた。

 

「……幸せそうに眠ってるな」

 

それが微笑ましくて、つい、頭を撫でてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――そんな時、外に何者かの気配が現れた。

 

それと同時に感じるプレッシャー。

今まで眠っていたアーシア、夕麻は飛び起きてしまう。

 

「い、イッセーさん……っ!」

 

「……これは……っ!」

 

アーシアは俺の腕にしがみつき、夕麻は起きたばかりというのに額に汗を浮かべていた。見れば2人とも体を震わせている。

 

「大丈夫か?」

 

2人を安心させるように頭を撫で、少しでも気を落ち着かせる。

 

「だ、大丈夫です」

 

「私も、問題ないわ」

 

少々の(ども)りがあるものの起きたすぐに比べれば余裕が出来ているだろう。

俺は立ち上がり、今の状況を確認するために玄関へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっほー、赤龍帝クンにその他諸々の諸君。夜分遅くにすんませんねぇ〜」

 

玄関でその日は泊まっていたリアス部長と合流し、家の外に出ると、ケラケラと笑いながらフリードが話しかけてきた。

 

「本当に夜遅くは迷惑だぜ?」

 

軽口に軽口で返すかのように俺は気楽にそんな言葉を返す。

……フリードがさっきのプレッシャーを……?いや、違う。今まで幾度となく戦ったことはあってもプレッシャーを感じたことはない。

 

(……つぅことは……)

 

俺は空を見上げた。

月をバックに空で浮かんでいた者―――――。

漆黒の翼を生やした……男の堕天使だ。

黒い翼は十枚五対。無駄に凝った黒いローブを身に纏っている。男の堕天使はリアス部長を捉えると、苦笑した。

 

「初めましてかな、グレモリー家の娘。紅髪が麗しいものだ。

―――――忌々しい兄君を思い出して反吐が出そうな程にな」

 

「ごきげんよう、堕ちた天使の幹部―――――コカビエル。

それと、私の名前はリアス・グレモリーよ。お見尻おきを。

もうひとつ付け加えさせてもらうなら、グレモリー家と我らが魔王は最も近く、最も遠い存在。この場で政治的なやり取りに私との接触を求めるなら無駄だわ」

 

……やはり、アイツが堕天使の幹部、コカビエルか……。

通りでそこそこのプレッシャーを放ってる訳だ。

 

「おぉ、そうだ。

これは土産だ。受け取れ」

 

コカビエルはそう言うと指をパチン、と鳴らし魔法陣を展開させる。すると、そこから2つの影が落下してきた。

 

「……ぐ……っ!」

 

片方の影が片方の影を抱きかかえて、うめき声を上げながら俺の前に着地する。

その影に目を凝らしてみると、そこには―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――ボロボロのイリナを抱えた血塗れの父さんの姿があった。

 

「と、父さん!?イリナっ!?」

 

「……い、一誠か……。

すまんな……お前の友人を……守りきれなかった……」

 

父さんはそう言うと、糸が切れたマリオネットのように倒れ込んだ。

イリナの方は気絶しているだけのようだが父さんの方は本格的にまずい!

 

「アーシア!!!!!

頼む、助けてくれ……っ!!!」

 

俺はアーシアの名を呼び、父さんの治癒を頼む。アーシアは父さんの隣に来ると神器を迷いなく発動してくれた。淡い緑色の光がアーシアの身体から発せられ、父さんの体を包み込んだ。

 

「なんだ、その男はお前の父親か。

俺たちの根城に来たその女どもを歓迎していたら突然現れてな。

嫌にしつこかったがやはり、たかが人間だったようだ。二匹逃がしたがまぁ、いい」

 

コカビエルは嘲笑しながら言う。

……たかが人間……??

 

「先程の話だが……魔王と交渉などというバカげたことはしない。

そんなことはしても無駄だからな」

 

「……それで、私との接触は何が目的かしら?」

 

「そんなもの簡単さ。

―――――俺は戦争が望みさ!!!」

 

コカビエルは笑みを浮かべてそう叫んだ。

……戦争が望み……??

 

「お前の根城である駒王学園を中心にしてこの町で暴れればサーゼクスも出てくるだろう?

エクスカリバーでも盗めばミカエルが戦争を仕掛けてくれるかと思ったが……寄越したのが雑魚ども……。興醒めにも程がある。

これではあまりにもつまらん……つまらんだろう!!!!

だから今度は悪魔の、サーゼクスの妹の根城で暴れるんだ。

ほら―――――楽しめそうだろう?」

 

……楽しめそうだろう……??

コカビエルのその言葉に俺はついに―――――キレた。

 

「【禁手化(バランス・ブレイク)】」

 

『Welsh Dragon Balance Breaker !!!!!!』

 

「コカビエぇぇぇぇぇぇルッッ!!!」

 

俺は【赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)】を見に纏うと、雄叫びをあげ、地を蹴り、コカビエルに向かって高速で肉薄する。

 

『Boost Boost Boost Boost Boost !!!!!』

 

『Explosion !!』

 

「ぶっ飛びやがれッ!!」

 

コカビエルの懐まで潜り込んだ俺は、解放された力を全て右拳に込め、コカビエルを殴りつけた。

 

「ぬぅぅぅうッッ!!!?」

 

両腕をクロスさせガードするコカビエル。

……流石は堕天使の幹部なだけはある。俺の拳を受け止めたのだから。

 

「……やるじゃねぇか」

 

「当たり前だ。

貴様のような奴と戦えるのが何より嬉しくてな!

だからこそ俺は戦争をやめられんのだ!」

 

コカビエルは笑みを浮かべながらそう言うと鎧の胴の部分を蹴りつけ、俺から距離を取る。

 

「フリード!

惜しいが此処は一時退却だ!

駒王学園に向かうぞ!!」

 

「…………」

 

コカビエルの声に反応を返さないフリードだったが、退却という言葉は効いていたらしく、その懐から球体を取り出し、地面に叩きつけた。

見覚えのある閃光が辺りを包み、ほんの一瞬、視界を奪われてしまう。

 

「……くそ……っ!」

 

俺はまたこの閃光に引っかかってしまったことに苛立ちを覚えながらも、父さんのことが心配になり、コカビエルたちを追うのではなく、下に降りて行った。

禁手(バランス・ブレイカー)】を解除し、未だに治療を続けているアーシアの元へと駆け寄る。

 

「アーシア、父さんは大丈夫そうか?」

 

「は、はい!

もう傷はなくなりましたから……後は意識が回復してくだされば安心です!」

 

「……そうか……」

 

俺は胸をなで下ろし、立ち上がる。

リアス部長の方へ近づくと声をかけた。

 

「リアス部長」

 

「……イッセー、学園に向かうわよ。

他のみんなにはもう使い魔を通じて伝えたわ。

―――――コカビエルを止めるわよ」

 

「わかりました」

 

俺はその場で拳を握った。

……父さんとイリナを傷つけたんだ……コカビエル、お前は()の逆鱗に触れたんだ。

―――――無事で済むと思うなよ……ッッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編の方はいかがでしたでしょうか?
楽しんでいただけたのなら幸いです♪

さてさて、やっとコカビエルを出すことができましたが……はい、もう既にフラグが乱立してますね……(苦笑)
手を出してはいけないものに手を出してますし……。

早くバトルシーンを書きたいところですっ!!(>_<)


さてさて、今回はこの辺で……。
では、また次回お会いしましょう♪


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〜コカビエル戦前です〜

皆さんこんにちは♪
今回はかなり短い内容ですが楽しんで頂けると嬉しいです♪

それでは、早速本編の方をどうぞ♪


Side 三人称

 

「リアス先輩。学園を大きな結界で覆ってます。

これで余程のことが無い限りは外に被害は出ません」

 

匙はその場の現状をリアスたちに報告する。

駒王学園を目と鼻の先にした公園で、グレモリー眷属とシトリー眷属が集合していた。―――――しかし、その場に木場の姿、そして、もう一人の姿も、やはり見当たらなかった。

匙からの結界の説明にリアスは耳を傾け、他の眷属たちは戦いに備え、準備を進める。

 

「これは最小限に抑えるためのものです。正直言って、コカビエルが本気を出せば、学園だけではなく、この地方都市そのものが崩壊するでしょう。

さらに言うなら、既にその準備に入っている模様なのです。校庭で力を解放しつつあるコカビエルの姿を私の眷属が捉えました」

 

ソーナの言葉に一誠までも眉をひそめた。

先程の戦闘から苦戦を強いられるであろうと考えていた一誠だったが、話を聞く限り、苦戦で済むか五分五分だという考えが浮かんだのだろう。

なにせ、一誠の【禁手(バランス・ブレイカー)】を纏った一撃を防いで見せたのだから。

 

「攻撃を少しでも抑えるために私と眷属はそれぞれの配置について、結果を張り続けます。

出来るだけ被害を最小に抑えたいものですから……。学園が傷つくのは耐え難いものですが、堕天使の幹部が動いた以上、堪えなければならないでしょうね」

 

ソーナは目を細め、学園の方を憎々しげに見つめる。おそらくそれは学園にいるコカビエルへ向けたモノだろう。

 

「ありがとう、ソーナ。あとは私たちが何とかするわ」

 

「……リアス、相手は桁違いのバケモノですよ?いくら兵藤くんが、【赤龍帝】がいるからとはいえ負けてしまうでしょう。

今からでも遅くない、あなたのお兄さまへ―――――」

 

ソーナの言葉を聞き終わる前にリアスは首を横に振る。

 

「あなただって、お姉さまを呼ばなかったじゃない」

 

「私のところは……。あなたのお兄さまはあなたを愛している。

サーゼクスさまなら必ず動いてくれます。だから―――――」

 

「既にサーゼクスさまに打診しましたわ」

 

2人の会話を遮るように前に出た朱乃はそう言った。

 

「朱乃!」

 

非難の色を含んだ声を上げるリアスだが、朱乃は珍しく怒った表情を浮かべていた。

 

「リアス、あなたがサーゼクスさまにご迷惑をおかけしたくないのは分かるわ。あなたの領土、あなたの根城で起こったことでもあるものね。しかも御家騒動の後だもの。

―――――けれど、幹部が来てしまった以上、話は別よ。あなた個人で解決できるレベルを遥かに超えているわ。―――――魔王さまの力を借りましょう」

 

リアスへと詰め寄り言い聞かせる朱乃。

いつもは『部長』と呼んでいるが、プライベートモードだと『リアス』と呼び捨て、タメ口となるのだ。

リアスは何か言いたげな表情を浮かべていたが、大きな息を吐き、静かに頷いた。

それを確認した朱乃はいつも通りのニコニコとした顔になる。

 

「お話を理解してくれてありがとうございます、部長。

ソーナさま、サーゼクスの加勢が到着するのは1時間後だそうですわ」

 

「1時間……。わかりました、その間、私たち生徒会はシトリー眷属の名にかけて、結界を張り続けてみせます」

 

ソーナの決意を聞いたリアスは表情を引き締め直す。

 

「……1時間ね。さて、私の眷属悪魔たち。私たちはオフェンスよ。結界内の学園に飛び込んでコカビエルの注意を引くわ。

これはゲームじゃなくて死戦よ!それでも死ぬことは許さない!生きて帰ってあの学園に通うわよ、皆!」

 

「「「「はい!」」」」

 

皆の気合の入った声が響く。

 

「……リアス部長」

 

「何?イッセー」

 

「多分ですけど―――――結界、耐えられませんよ」

 

「……え……?」

 

一誠はそれだけ言うと入口へと向かった。

 

『相棒、さっきの言葉……』

 

「……あぁ、感じるんだアイツの―――――」

 

一誠は歩みを止めて自宅の方を見つめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――士織の怒りを」

 

『……そうか』

 

一誠の背筋に冷や汗が浮かぶ。

それは、今からあるコカビエルとの戦いへの恐怖ではない。

 

 

 

―――――遥か高みに存在する強者の怒りを目の当たりにすることへの恐怖だ。

 

 

 

 

 

―――――士織はまだ現れない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編の方はいかがでしたでしょうか?
楽しんで頂けたなら幸いです♪


さてさて、今回は短いものになってしまいましたが、次回はもっと長いものを書く予定ですのでお許しくださいっ!!(>_<)


さてさて……雑談ですが……。
もうすぐ夏休みですねっ!!!(>_<)
最近は暑くて暑くて……(苦笑)
ついこの間部活でタンクトップを使おうかと思ったらみんなに止められました(笑)

これから暑くなってくると思いますので、皆さん熱中症にお気を付けて!!!(>_<)


それでは、また次回お会いしましょう♪


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~迷いと後悔は捨てました~

皆さんお久しぶりですっ!!(>_<)

さてさて……夏休みに入った夜叉猫さんですが……。
嬉しくて更新するのを忘れていましたっ!!!(>_<)
……本当にごめんなさい……(。ŏ_ŏ)

これからはきちんと更新しますのでお許しを……っ!!(涙)


ひとまず、本編をどうぞ!!(>_<)


Side 一誠

 

正門から堂々と入り込む俺たち。

未だに背筋を伝う冷や汗は止まらないが、これくらいならコカビエルを相手にしても大丈夫だろう。

 

「……なかなか悪趣味な空間になったな」

 

俺はその風景にそう呟いた。

校庭の中央に4本の剣が神々しい光を発しながら、宙に浮いている。それを中心に魔法陣が校庭全体に描かれていたのだ。

魔法陣の中央には初老の男―――――バルパー・ガリレイの姿があった。

……一体何をするつもりなんだ……?

 

「4本のエクスカリバーをひとつにするのだよ」

 

俺の考えを読んだかのようなタイミングでバルパーはおかしそうに口を開いた。

 

「バルパー、後どれくらいでエクスカリバーは統合する?」

 

空中から聞こえてくるもう一人の男の声。

全員が空へと視線を向けた時、月光を浴びるコカビエルの姿が視界に入る。

宙で椅子に座り、こちらを見下ろしていた。……足を組んで余裕そうな表情だな……。全く滑稽っつーかなんつうか……。

 

「5分もいらんよ、コカビエル」

 

「そうか。では、頼むぞ」

 

コカビエルはバルパーからリアス部長に視線を移す。

 

「サーゼクスは来るのか?それともセラフォルーか?」

 

「お兄さまとレヴィアタンさまの代わりに私たちが―――――」

 

―――――ヒュッ!

ドォォォオオオオオオオオオンッッ!!!

 

突然の爆音。

それとともに辺り一帯に爆風が広がっていく。

爆風が発生した先にあるのは―――――いや、あったのは体育館だった。

しかし、影もカタチもなく消し飛んでいた。

 

「つまらん。まぁ、いい。

赤龍帝がいるのだ、余興にはもってこいだろう」

 

体育館のあった場所には巨大な光の柱が斜めに突き刺さっていた。

……流石は堕天使の幹部ってところか……防御だけじゃなくて攻撃もかなりのもんだな……。

 

『相棒、アレを使うのか?』

 

(いや、ここは普通の【禁手(バランス・ブレイカー)】でいく。

流石に長丁場となると燃費が悪いアレを使うわけにはいかねぇ)

 

『そうか、だが、負ける気はせんな!』

 

「当たり前だろ!ドライグ!」

 

俺は雄叫びを上げる。

そして、【赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)】を出現させた。

 

「【禁手化(バランス・ブレイク)】!!!」

 

『Welsh Dragon Balance Breaker !!!!!!』

 

その音声に呼応して、俺の身を【赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)】が包んだ。

 

「さて、まず始めに地獄から連れて来た俺のペットと遊んでもらおうかな」

 

コカビエルが指を鳴らす。すると、闇夜の奥から地を揺らしながら近づいてくるのが感じられた。

推定10メートルはあるであろう、黒い巨体。四足は一つ一つが太く、そこから生えている鋭い爪は人なんて簡単に引き裂けるだろう。

闇夜にギラギラと輝く血のような真紅の双眸。突き出た口から覗かせるのは凶悪な牙。3つの首を持つその生物の名は―――――

 

「―――――ケルベロスか……」

 

「地獄の番犬の異名を持つ有名な魔物……。

本来は地獄―――――冥界へ続く門の周辺に生息しているのだけれど、人間界に持ち込むなんて……ッ!!!」

 

リアス部長は眉を潜め、そう口にする。

 

「やるしかないわ!消し飛ばすわよ、皆!!!」

 

「「「「はい!!!」」」」

 

皆は戦闘態勢を整える。

俺もこのまま突っ込もうとしていたのだが、リアス部長が俺の肩に手を置いた。

 

「イッセー、此処はサポートに回って頂戴。あなたはコカビエルとの戦いのために力を温存しておいて?」

 

「……つまり、俺は極力動くなと?」

 

「……えぇ、私たちではコカビエルは倒せない。でも、イッセー、あなたなら……」

 

リアス部長は真剣な眼差しでこちらを見つめる。

俺は兜部分のマスクを収納させて微笑んだ。

 

「わかりました。

でも、ピンチになったら俺も動きます」

 

「えぇ、頼んだわね」

 

リアス部長はそう言うと、俺以外の眷属を連れて前に出た。

 

リアス部長は紅い魔力を全身から迸らせる。

 

朱乃先輩は雷を纏わせ怪しく微笑む。

 

アーシアは冷気を体から漂わせる。

 

小猫ちゃんは両腕に魔力を纏わせてファイティングポーズを取る。

 

―――――ガルルルルゥルルルウルルッ!!

 

ケルベロスは威嚇するように低く唸ったかと思うと、突然遠吠えを始めた。

何事か、そんな考えは次の一瞬で消え去った。

―――――ケルベロスが2体、増えたのだ。

 

「仲間を呼んだのか……っ!」

 

これは流石に不味いと加勢に入ろうとした時、皆が首を振った。

 

「この程度どうってことないわ」

 

「私たちの力を見せてあげますわ」

 

「……楽勝です」

 

「頑張ります!!」

 

そういった4人はそれぞれケルベロスに向かって行った。

 

 

 

背中から翼を出して空へと舞ったリアス部長と朱乃先輩。

 

「朱乃!」

 

「わかってるわ!

【雷竜の咆哮】ッ!!!!」

 

リアス部長の掛け声にコンマの間もなく、朱乃先輩は攻撃を仕掛けた。

金色の雷を纏った光柱が朱乃先輩の顔の前に展開された魔法陣から放たれる。

ケルベロスも負けじと炎のブレスを吐くが、威力に差がありすぎた。炎のブレスは金色の光柱に一瞬で飲み込まれ、そして直撃する。

ふらつくケルベロスに、トドメと言わんばかりの真っ黒な魔力球をリアス部長が放った。

 

―――――滅びの魔力。

 

それがリアス部長の魔力の特性。

だからこそ、計り知れない破壊力を持つのだ。

リアス部長の魔力球はケルベロスの首を削り取り、身体をも半分滅ぼしてしまう。

 

―――――一体撃破。

 

 

 

小猫ちゃんはケルベロスから繰り出される炎の球を軽々と躱しながら、接近していく。

そして、足元に来たかと思うと、突然腕の魔力を拳に集中させた。

 

「……1発……っ!」

 

そして、真上に跳躍し、ケルベロスの頭を殴り上げる。

これにはケルベロスも大勢を崩したが、残りの2つの首が落下中の小猫ちゃんを襲う。

 

「させません!【アイスメイク……“氷壁(ウォール)”】!!」

 

しかし、その攻撃を防ぐように、氷の壁が出現する。

どうやらアーシアが小猫ちゃんを守ったようだ。

 

「……ありがとうございます……っ!」

 

小猫ちゃんは簡単なお礼を述べると、着地と同時に腹部の方へと潜り込んだ。

 

「……これで決めます」

 

小猫ちゃんはそう呟くと、両手に集めていた魔力を右腕にのみ、集中させ始めた。

小猫ちゃんの魔力は波打ち、収束されてゆき―――――ついには白い色を纏う。

 

「……まだ未完成ですけど……【白虎白打(びゃっこはくだ)】ッ!!!」

 

小猫ちゃんの拳には、その名の通り白い虎が現れ、当たった瞬間に炸裂する。

その威力、驚くなかれ、ケルベロスの身体を貫通させたのだ。

しかし、その後の小猫ちゃんは膝をつき、肩で息をしていた。

……あの技、相当燃費が悪いみたいだな……。

 

「……けど、かなり凄い」

 

アレで未完成というのだから、更に上があるのだろう。これは完成が楽しみになる。

 

―――――一体撃破。

 

 

 

最後一体のケルベロス。奴はここで、予想外……いや、ある意味妥当な行動をとった。

今のところ一番弱い、アーシアを狙ったのだ。

 

「アーシア!!」

 

「大丈夫です!イッセーさん!」

 

アーシアはそう言うと、手のひらに手を当てて、魔力を練った。その間にもケルベロスが近づいてきている。

 

「行きます!【アイスメイク……“氷竜(スノードラゴン)”】!!」

 

その掛け声とともに、アーシアの手から大量の冷気とともに魔力が射出された。冷気は魔力を伴い、カタチを作り上げ、そしてそこに誕生した。

 

―――――氷でできた美しい竜が。

 

「行ってください!」

 

アーシアがひとたび命令すれば、その氷でできた竜は、ケルベロスを殲滅せんと向かってゆく。

ケルベロスと氷でできた竜は組みあい、戦う。しかし、氷でできた竜であるため、少しずつだがケルベロスの攻撃である炎に溶かされて行っている。

これでは時間の問題だと、俺が飛び出そうとしたその瞬間、ケルベロスの首がひとつ宙に舞った。

俺の視界に入ったのは長剣のエクスカリバーを振るう少女―――――ゼノヴィアだった。

 

「加勢に来たぞ」

 

ゼノヴィアが着地したかと思えば、残りの2つの首も宙を舞う。これもゼノヴィアが……?いや、違う、この気配は……!

 

「木場!!」

 

ゼノヴィアの横に、見覚えのあるイケメンが着地するのが見える。

 

「……ちょっと遅くなっちゃったみたいだね。

でも、イイところは見せられたかな?イッセーくん」

 

木場はそう言うとその手に持った刀を斬り払い、納刀した。

首を全て斬られたケルベロスは地に沈み、その体を塵芥と化し、宙へと霧散していった。

 

 

 

「―――――完成だ」

 

不意に聞こえてくるバルパーの声。

それと同時に、校庭の中央にあった4本のエクスカリバーが眩い光を発し始めた。

空中で拍手を送るコカビエル。

 

「4本のエクスカリバーが1本になる」

 

バルパーはまるで狂ったかのような笑みを顔に貼り付け、エクスカリバーを見つめていた。

エクスカリバーから発される光に一瞬顔を手で覆う俺たち。

光が止んだかと思えば、校庭の中央にあった4本のエクスカリバーは姿を消し、青白いオーラを纏った1本の聖剣が浮かんでいた。

 

「エクスカリバーが1本になった光で、下の術式も完成した。

あと二十分もしないうちにこの町は崩壊するだろう。解除するにはコカビエルを倒すしかないぞ!!!」

 

バルパーはそう言うと、狂ったような笑い声を上げた。

 

「チッ!

なんてもん起動させてるんだよ!」

 

俺は眉を潜め悪態をつく。

リアス部長たちも焦燥の表情を浮かべていた。

 

「フリード!」

 

「……はいな」

 

先程まで姿の見えなかったフリードが暗闇の向こうから歩いてくる。

しかし、フリードの返事は嫌悪のような雰囲気を孕んでいた。

 

「陣のエクスカリバーを使え。

最後の余興だ。4本の力を得たエクスカリバーで戦って見せろ」

 

「……りょーかい」

 

フリードは短くそう言うと校庭のエクスカリバーを握った。

……やっぱり、使えるのか……。

木場の話では因子がないと使えないって聞いてたんだけど……フリードはそれを持っているのか……。

 

「リアス・グレモリーの【騎士(ナイト)】、共同戦線が生きているのならば、あのエクスカリバーをともに破壊しないか……?」

 

「……いいのかい?」

 

ゼノヴィアと木場はそんな会話を始める。

 

「最悪、私はあのエクスカリバーの核になっている【かけら】を回収できれば問題ない。

……悔しいがあれほどの力を持つ剣をあのフリード・セルゼンが得てしまったんだ……。

私だけの場合の勝率はゼロに等しい……」

 

ゼノヴィアは悔しそうに顔を歪めた。

そんなゼノヴィアと木場のやり取りを笑う者がいた。―――――バルパーだ。

 

「バルパー・ガリレイ。僕は『聖剣計画』の生き残りだ。

……いや、正確にはあなたに殺された身だ。悪魔に転生したことで生き永らえている」

 

「ほう、あの計画の生き残りか。これは数奇なものだ。こんな極東の国で会うことになろうとは。縁を感じるな……ふふふ」

 

小馬鹿にしたような笑いで話すその姿に苛立ちめいたものが溜まるのを感じた。

 

「―――――私はな。聖剣が好きなのだよ。

それこそ、夢にまで見る程に。

幼少の頃、エクスカリバーの伝記に心を躍らせたからなのだろうな。

だからこそ、自分に聖剣使いの適性がないと知った時の絶望と言ったらなかった……」

 

突然、バルパーは語りだす。

 

「自分では使えないからこそ、使える者に憧れを抱いた。

その思いは高まり、聖剣を使える者を人工的に創り出す研究に没頭するようになったのだよ。

……そして―――――完成した。キミたちのおかげだ」

 

「……なに?完成?

僕たちを『失敗作』だと断じて処分したじゃないか!」

 

眉を吊り上げ、まるで噛み付くように叫ぶ木場。

だが、そんな木場の言葉とは裏腹にバルパーは首を横に振った。

 

「聖剣を使うのに必要な『因子』があることに気が付いた私は、その因子の数値で適性を調べた。

被験者の少年少女、ほぼ全員に因子はあるものの、どれもこれもエクスカリバーを扱える数値に満たなかったのだ。

そこで私は一つの結論に至った。ならば『因子だけを抽出し、集めることは出来ないか?』―――――とな」

 

「……なるほど。読めたぞ。聖剣使いが祝福を受ける時、体に入れられるのは―――――」

 

ゼノヴィアは事の真相に気づいたようで、忌々しそうに歯噛みしていた。

……俺もやっとわかった。

 

「そうだ、聖剣使いの少女よ。

持っている者たちから、聖なる因子を抜き取り、結晶を作ったのだ。こんな風にな」

 

バルパーはそう言うと、懐から光り輝く球体を取り出した。

遠目から見てもわかる、あれからは聖なるオーラを強く感じる……。

 

「これにより、聖剣使いの研究は飛躍的に向上した。

それなのに、教会の者共は私だけを異端として排除したのだ。研究資料だけは奪ってな!

貴殿を見るに、私の研究は誰かに引き継がれているようだ。

……ミカエルめ。あれだけ私を断罪しておいて、その結果がこれか。まぁ、あの天使のことだ。被験者から因子を引き出すにしても殺すまではしていないか。

その分だけは私よりも人道的と言えるな。くくくくくくくく」

 

愉快そうにバルパーは笑う。

……犠牲を払ってまで聖剣使いを増やす意味はあるのだろうか……?

俺は眉を潜め、奥歯を噛んだ。

 

「―――――同志たちを殺して、聖剣適合の因子を抜いたのか?」

 

木場から静かな殺気が迸る。

 

「そうだ。この球体はその時のものだぞ?なにせ初めての実験だったからな、錬度が悪くてこれ一つ程度しかできなかったがね」

 

「……バルパー・ガリレイ……っ!

自分の研究、自分の欲望のために、どれだけの命を弄んだんだ……っ!!!」

 

木場の手が震え、怒りに呼応するかのように魔力のオーラが溢れ、木場の全身を覆った。

 

「ふん。それだけ言うのならばこの因子の結晶を貴様にくれてやる。環境さえ整えば後で量産できる段階まで研究は来ている。

まずはこの町をコカビエルと共に破壊しよう。

あとは世界の各地で保管されている伝説の聖剣をかき集めようか。そして聖剣使いを量産し、統合されたエクスカリバーを用いて、ミカエルとヴァチカンに戦争を仕掛けてくれる。

私を断罪した愚かな天使どもと信徒どもに私の研究を見せ付けてやるのだよ」

 

……それがバルパーがコカビエルと手を組んだ理由……。

どちらも天使を憎み、そして戦争を望んでいる。―――――最悪のコンビとはまさにこのことか……。

バルパーは興味を無くしたかのように持っていた因子の結晶を放り投げた。コロコロと地面を転がり、木場の足元に行き着く。

木場は静かに屈み込んで、それを手に取った。

 

哀しそうに、愛しそうに、懐かしそうに、その結晶を優しく撫でていた。

 

「……皆……」

 

木場の頬を涙が伝っていく。

なんて綺麗で……悲しい涙なんだろう。

 

「木場……」

 

俺が声を掛けようとしたその時。木場の持つ結晶が淡い光を発し始める。

光は徐々に広がっていき、木場を中心に校庭を包み込むまでに拡大していった。

校庭の地面、その各所から光がポツポツと浮き上がり、形を成してゆく。

それはハッキリとしたモノに形成されてゆき―――――人のカタチとなった。

木場を囲むように現れたのは、青白く淡い光を放つ少年少女たちだった。

 

(……そうか……あれは……)

 

 

 

―――――木場の守りたかった同志たちか。

 

 

 

 

 

Side Out

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

Side 木場 祐斗

 

僕を囲むように現れたのは、そう、見間違うはずが無い……皆の姿だった。

 

「……皆っ!僕は……僕は……っ!」

 

自然と溢れる涙があった。泣いているつもりは無いのに、皆の姿を見た瞬間、溢れたのだ。

 

「……ずっと……ずっと、思っていたんだ。

僕が、僕だけが生きていていいのかって……。

僕よりも夢を持った子がいた。

僕よりも生きたかった子がいた。

僕よりも立派な子がいた。

……なのに、なのに僕だけが……平和な暮らしをしてもいいのか……僕だけが楽しい日常を過ごしてもいいのかって……!!」

 

僕は結晶をギュッと抱きしめて心中を吐露する。

 

『良いんだよ』

 

『だって私たちのことをずっと思ってくれた』

 

『ずっと忘れないでいてくれた』

 

『僕たちは知ってるよ?』

 

『イザイヤが誰よりも優しかったって』

 

「……みんなぁ……」

 

僕の周りで笑いながらそう言ってくれる。

そして、皆がいっせいに歌を歌い始めた。

それは僕が……僕たちが大好きだった歌。

 

 

「―――――聖歌」

 

 

聞いたことがあるのだろう、アーシアさんがそう呟く。

 

『さぁ、一緒に歌おう?』

 

『イザイヤの歌を聞かせて?』

 

僕はその時絶対に自らの意思では解かなかった【身体変化】の魔法を自然と解いていた。男性だった僕の身体は本来の女性のモノへと変化する。

後ろでは皆の驚きの声が聞こえる。

でも、今は関係ない。

僕はみんなに続いて聖歌を口ずさんだ。

 

皆の笑顔が見える。

 

優しい笑み。

 

勇気づけてくれる笑み。

 

元気な笑み。

 

昔見た大好きな皆の笑顔だ。

僕もそれに吊られて微笑みを浮かべる。

本来、悪魔である僕は聖歌を歌えばダメージを受けてしまう。

だけど、今は、今この時は、僕に勇気と力を分けてくれる。

 

皆は青白い光を放ち、僕を取り囲む。

 

 

 

『僕らは一人じゃダメだった』

 

 

『だけど皆がいれば大丈夫』

 

 

『聖剣を受け入れよう』

 

 

『怖くなんてない』

 

 

『例え、神がいなくても』

 

 

『私たちが、そして今のイザイヤには仲間がいる』

 

 

『例え神が見守ってくれていなかったとしても』

 

 

『僕たちの心はいつだって―――――』

 

 

 

 

 

「―――――ひとつだ」

 

皆の魂が僕の中に入ってくるのがわかる。

暖かな光とともに僕を包んでくれる。

 

 

 

「……いこう、皆。

―――――僕はもう、迷わない」

 

 

 

……僕は流れる涙を拭った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編の方はいかがでしたでしょうか?
楽しんで頂けたのなら幸いです♪


さてさて、今回のお話ですが……残念ながら今回も士織は現れませんでした……っ!!(>_<)
軽い書き溜めをしているのですが……次回で少しだけ登場するかもです(笑)


さてさて、今回はここまで!
また次回お会いしましょう♪


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~至りました~

皆さんお久しぶりなのですっ!!!(>_<)
更新が遅くなってしまってすみません……。
学校での実習などで忙しくて遅くなってしまいました……。

なんとか今日中にっ!!と書き上げた話なのであまり面白くないかもしれませんが、楽しんでいただけると嬉しいですっ!!(>_<)

それでは本編をどうぞ♪


Side 木場 祐斗

 

「バルパー・ガリレイ。

まだ全てが終わったわけじゃない。

あなたを滅ぼさない限り、第二、第三の僕たちが生まれてしまう」

 

僕は迷いなく、バルパー・ガリレイを見据えた。

 

「ふん。研究には犠牲はつきものだと昔から言うではないか。ただそれだけのことだぞ?

それに、さっきまでボロボロと泣いていた奴がよく言う。

ただの幽霊どもと戦場のど真ん中で聖歌など歌いおって……。

私はな、聖歌というものが大嫌い―――――「黙れよクソ野郎」―――――クハッ!!!?」

 

「な……っ?!」

 

バルパーが喋っている時、背後から襲う影があった。―――――フリード・セルゼンだ。

フリード・セルゼンはバルパーをエクスカリバーの柄で殴りつけると踏みつけた。

 

「あんたさぁ……俺のほかにも実験してたんだな」

 

「ふ、フリード……っ!

き、貴様どういうつもりだ……っ!!」

 

「どうもこうも……あんたが俺にした所業を胸に手を当てて考えてみろよ」

 

フリード・セルゼンは冷ややかな視線をバルパー・ガリレイに向けたかと思うと、その体を蹴り飛ばした。

そして、僕の方を向くとエクスカリバーを肩に担いだ。

 

「……さっきの言葉、どういう意味だい?」

 

「ん〜?何?知りたいの?」

 

フリード・セルゼンは首を軽く横に倒すとそういった。僕は無言のままフリード・セルゼンを見つめる。

すると、肩をすくめて口を開いた。

 

「可愛い女の子にそんなに見つめられたら話さざるおえないなぁ〜。悪魔だけど。

じゃ、ほんの少しだけ昔話をしよーじゃあ〜りませんか〜」

 

そう言ったフリード・セルゼンは顎に手を当てながら話を始めた。

 

 

 

 

 

「そうだなぁ……まずは俺がなんでエクソシストになったか……ってとこから話すかな〜」

 

「俺ってさ、元はただの一般家庭の産まれなわけ。

父親と母親と妹2人と俺で幸せに暮らしてたんだよねぇ〜」

 

「でもさ〜ある日突然悪魔がやってきてねぇ〜……」

 

「父親と母親は俺と妹2人を逃がした後に悪魔に殺されちゃった★」

 

「それから俺たち兄妹は行くあてもなく彷徨ってたんだけどさ〜……餓死しかけの時に一人のエクソシストに拾われたんだわ」

 

「んで、そっから金稼ぎと憎い悪魔を殺すためにエクソシストになったわけ〜。

運良く俺には戦闘の才能があったから困らなかったんだよねぃ」

 

「エクソシストになってからはろくに家にも帰らず悪魔殺しの日々。

たまに電話で妹たちの声を聞くぐらいだったのよ〜」

 

「で、ある時そこの爺さんが現れて『力が欲しくはないか?』って言ってきたんだよねぃ」

 

「そん時の俺はまだ餓鬼も餓鬼でさぁ〜。

力欲しさに爺さんにホイホイついて行っちまったわ。笑えるだろ?」

 

「爺さんについて行ったら一つの結晶を渡された。

それを身体に取り込んだら確かに力は手に入ったさ……それも飛びっきりのな」

 

 

 

「―――――けどな」

 

 

 

「俺は力と引き換えに大切なもんを失ってたのさ」

 

「……唯一の家族―――――2人の妹を……な……」

 

 

 

 

 

フリード・セルゼンは顔を少しだけ伏せるとそう言った。

 

「い、一体……どういう……」

 

「あん?

なに、簡単なことさ。

俺の妹たちは―――――聖剣適合の因子を命ごと抜かれて死んでたのさ★」

 

―――――それに気づいたのは爺さんから因子をもらってゴキゲンに帰った時だけどな、とフリード・セルゼンは自嘲気味な表情を浮かべて僕にそう言った。

 

「聞いたところによると俺の妹たちは他の奴らよりも聖剣適合の因子を多く持ってたみたいでなぁ……」

 

フリード・セルゼンはゆっくりとバルパー・ガリレイに近づいていく。

 

「この爺さんは妹たちを攫って因子とさらに命まで抜いて、それを兄妹だから適合率が高いだろって理由で俺に渡したんだとッ!!!」

 

「ぐふ……っ?!!!」

 

フリード・セルゼンはバルパー・ガリレイの腹部を思いっきり蹴り、地面を転がした。

 

「いやぁ〜あん時は荒れたなぁ……。

なんたって関係者皆殺しにしたし★

まぁ、逃げてた何人かは殺し損ねたけどぉ~」

 

フリード・セルゼンは憤怒の表情を一瞬だけ浮かべると、直ぐにヘラヘラと笑う。

 

「……なら、何故バルパー・ガリレイに協力を……。

君にとっては復讐の対象だろう?」

 

「協力?バカを言わないでくれたまえ~。

俺はコイツの全てを奪うために力を蓄えてたのさ!

だから、この爺さんの実験も素直に受け入れた!何せ力が手に入るんだからな!!」

 

フリード・セルゼンは瞳を黒く濁らせてそう言った。

……何という黒い感情なのだろうか……。

僕には到底予想できないほどのモノがそこにはあった。

 

「……とまぁ、これが不肖私めの人生ですぜぃ」

 

フリード・セルゼンは濁らせた瞳を元に戻し、わざとらしく礼をした。

 

「……キミも辛い思いを……」

 

「あ〜……やめてくれやめてくれ。

悪魔に憐れんでもらわないといけないほど俺も落ちぶれちゃいねぇよ」

 

フリード・セルゼンは手をひらひらとさせると迷惑そうな表情を浮かべた。

 

 

 

 

 

―――――閑話休題。

 

 

 

 

 

「さてさてさて……騎士(ナイト)クン改めて騎士(ナイト)チャン。

この前の続き……殺りましょーぜぃ」

 

そう言ったフリード・セルゼンはエクスカリバーを軽めに構えた。

 

「……わかった。

やろうか―――――フリード」

 

僕は目を閉じて集中する。

すると、突然仲間の、部長たちの声が聞こえてきた。

 

「木場!!

お前の覚悟見せつけてやれ!!!」

 

―――――イッセーくん。

 

「お前は、リアス・グレモリー眷属の『騎士』で、俺の仲間だ!俺のダチなんだよ!

それはお前が男だろうと女だろうと関係ねぇ!!!」

 

キミは僕を助けてくれた。何も得がないのに、主に罰を受けるかもしれなかったのに―――――。

 

「祐斗……いえ、『祐奈』!

あなたがその姿になるってことはもう迷わないのね……なら、行きなさい。あなたの信じるあなたの道を行きなさい!

私の『騎士』はエクスカリバーごときに負けはしないわ!」

 

「祐斗くん……いえ、祐奈ちゃん!信じてますわよ!」

 

部長、副部長……。リアス部長!朱乃さん!

 

「……ゆ、祐奈……先輩!」

 

小猫ちゃん。

 

「ファイトです!」

 

―――――皆。

 

自然と笑みがこぼれてくる。

僕にはこんなにも優しい仲間がいるんだ……。

僕は目を開けると魂に呼びかけ、決意を口にする。

 

「―――――僕は、剣になる」

 

一緒に超えよう―――――。

あの時、達せなかった想いを、願いを、今こそッッ!!!

 

「部長、仲間たちの剣となる!

今こそ僕の思いに答えてくれッ!

―――――『魔剣創造(ソード・バース)』ッッ!!!」

 

僕の神器(セイクリッド・ギア)と同志たちの魂が混ざり合う。同調し、カタチを成してゆく。

魔なる力と聖なる力。相反する2つの力が反発することなく融合して行った。

 

―――――そう、この感覚。

僕の神器が、僕の同志たちが教えてくれる。これは『昇華』だと。

神々しい青白光と禍々しいオーラは螺旋を描きながら僕の手元へと集まっていく。

そして、現れたのは鞘に納刀された一振りの日本刀。

 

―――――完成したよ、皆。

 

 

 

 

 

「―――――【禁手(バランス・ブレイカー)】、『双覇の聖魔剣(ソード・オブ・ビトレイヤー)』。

【聖】と【魔】を有する剣―――――今は日本刀だけどね―――――の力、その身に受け止めるといいよ」

 

そう言って、僕は日本刀を腰に差し、フリード目掛けて走り出した。

騎士(ナイト)』の僕の特性はスピード。士織さんと鍛えたこのスピードが僕の最大の力だ。

僕はフェイントを織り交ぜながらフリードに接近していく。

しかし、フリードはそのフェイントに反応し、目で追って来ていた。

 

「流石だねッ!」

 

「いや〜!

これは本当に追うので精一杯だ!」

 

そう言ったフリードの表情には余裕は見当たらない。

そうはいうものの、これでは拉致があかない。

僕はフェイント無しにフリードに接近するのを最優先に動いた。

 

(まずは一撃……ッ!)

 

接近と同時に抜刀、そして斬る。

 

「ひゅ〜!

今のは危なかったわぁ〜」

 

フリードはそういいながらエクスカリバーでガードしていた。その刀身は広がり、まるでシールドのようになっている。

 

「……【擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)】の能力で刀身を広げて、【天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)】の能力で防御を間に合わせたんだね……」

 

「ご名答〜★」

 

僕は一旦フリードとの距離を取り、再び納刀する。

 

「……もう1段階、上のステージに……」

 

僕は納刀した刀の性質を創り変える。何の能力も付与していないままの聖魔剣ではフリードには届かない。そう感じたから。

 

「……くっ!」

 

今までとは比べ物にならない程の扱いの難しさ。

―――――だが、僕は負けるわけにはいかない。

 

(聖魔剣……僕の魔力をありったけ……喰らえ……っ!!)

 

魔力が枯渇する寸前まで聖魔剣に供給する。

思い描け……。

僕が今欲している聖魔剣の姿を―――――っ!!!!

 

 

 

 

 

―――――そして僕は、

 

 

 

 

 

「がぁあぁ……っっっ!!!?」

 

 

 

 

 

―――――極地に1つ近づいた。

 

 

 

 

 

僕の背後には斬つけられ膝をつくフリードの姿がある。

そして、僕は納刀し、柄に手を添える姿で静止していた。

 

「……名付けるとしたら【露往霜来(ろおうそうらい)】……スピードに特化した聖魔剣だ」

 

僕がやったのはフリードに近づき、抜刀術の要領で斬つけ、走り去り納刀しただけだ。

フリードは顔をひそめながらも立ち上がり、僕の方へと視線を移す。

 

「こりゃ……大化け……しやがったな」

 

苦しそうに言葉を紡ぐが、しかし、その体には斬傷が見当たらない。

 

「咄嗟に……【夢幻の聖剣(エクスカリバー・ナイトメア)】で……体の、位置を……間違って見せた……が……それでも、剣圧が……シャレになんねーよ……」

 

そう言って血を吐きだすフリード。口元を拭いエクスカリバーを再び構えた。

僕もそれに対して抜刀術の構えを取ろうとしたのだが、体に力が入らず、膝をついてしまう。

 

「……ま、魔力が……っ!」

 

「あれ~……?

騎士チャン……満身創痍……?」

 

聖魔剣に魔力が枯渇する寸前まで与えたため、魔力枯渇による脱力が僕の体を襲っているのだ。

あの一撃で決めようと思っていた僕としてはかなりのピンチに陥っている。

 

 

 

 

 

「―――――では、私が引き継がせて貰おう」

 

そんなとき、先程まで静かだったゼノヴィアの声が響いた。

僕が膝をついている横まで歩いてくると勇ましく仁王立ちになる。

 

「私では力不足かな?」

 

ゼノヴィアの言葉にフリードが反応、そしてその姿をじっくりと見ると眉をひそめて口を開いた。

 

「ん~……やっぱり、騎士チャンと……比べると、ねぇ……」

 

「そうか……ならば……」

 

ゼノヴィアは左手に聖剣を持ち、右手を宙に広げた。

 

 

 

「―――――ペトロ、バシレイオス、ディオニュシウス、そして聖母マリアよ。我が声に耳を傾けてくれ」

 

何かの言霊を発し始めている。彼女は一体何を……?

疑問に感じていた僕の視界で空間が歪む。そして、歪みの中にゼノヴィアが手を入れた。

無造作に探り、何かを掴むと次元の狭間から一気にソレを引き出す。

 

―――――そこにあったのは1本の聖なるオーラを放つ剣。

 

「この刃に宿りしセイントの御名において、我は開放する。―――――【デュランダル】!」

 

デュランダル!?

エクスカリバーに並ぶほど有名な伝説の聖剣じゃないか!確か斬れ味だけなら、最強だと聞いている。何故彼女が……?

 

「イリナたち現存する人工聖剣使いと違って私は数少ない天然モノの1人でね。

エクスカリバーの方は兼任していただけなのさ」

 

周りの視線に気がついてか、彼女はそう説明をした。

ゼノヴィアはフリードの方を見つめると再び口を開く。

 

「デュランダルは想像を遥かに超える暴君でね。触れたものは何でもかんでも切り刻んでしまう。

所有者である私の命令でさえろくに聞かない。故に異空間へ閉じ込めておかないと危険極まりないのさ。使い手の私ですら手に余る剣だ。

―――――さて、フリード・セルゼン。

今の私でも……力不足と言うかな?」

 

そう言って、左手の【破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)】右手の【デュランダル】を構え、聖なるオーラを放たせ始める。

 

「いいや―――――イイよイイね!!

騎士チャンとまでは行かないけどキミとも戦いたいね!!!」

 

フリードは楽しそうに笑いゼノヴィアをしっかりと見た。

ゼノヴィアは僕に視線だけ向けると、柔らかく笑う。

 

「……ここからは任せてくれ先輩」

 

僕にかろうじて聞こえるような声でそう言った。

 

「……じゃぁ、頼んだよ後輩」

 

僕はそう言うと聖魔剣を消した。体はもう動かない。フリードに勝てなかった。悔しい思いはあるけど……もう、いいかな……。

 

(復讐はもう、良いんだ……。

これから強くなって、僕の、僕たちの【チカラ】を証明していこう……)

 

何処からか、みんなの声が、聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編の方はいかがでしたでしょうか?
楽しんでいただけたのなら幸いですっ!!!(>_<)

ちなみにですが……サブタイトルが全く思いつきません……(苦笑)
しばらくは無題で行かせてください……っ!!!(>_<)


さてさて、今回ですが……フリードくんの過去話が大雑把に登場しました!!!(>_<)
フリードくんの今後は一体!?

それではまた次回お会いしましょう♪


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〜怒りに震えました〜

皆さんこんにちは♪
今回はきちんと更新することができましたっ!!!(>_<)

それでは早速、本編の方をどうぞ♪


Side 三人称

 

「行くぞ……ッ!!!」

 

ゼノヴィアの動きに迷いはなかった。破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)とデュランダル、2本の剣を持ち、フリードへと突撃する。

 

「わっかりやすっ!!でもイイッ!!」

 

フリードはゼノヴィアの行動に対してそのような言葉を述べ、笑う。そして、ゼノヴィア迎撃のためにエクスカリバーを構えた。

 

「ハァァァァッッ!!」

 

左手に持つ破壊の聖剣による一閃をフリードは器用にも刀身を滑らせて受け流す。しかし、ゼノヴィアにはもう1本右手のデュランダルがあるのだ。

 

「喰らえッ!!」

 

「喰らいませんってなぁ!!」

 

フリードはデュランダルによる一閃をもエクスカリバーで受け流す。さらに、フリードは防御に回るのではなく、そこから反撃をみせた。【擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)】の能力を使い、刀身を伸ばし斬りかかったのだ。

 

「く……っ?!」

 

流石は聖剣使いになっただけのことはある。ゼノヴィアはその攻撃を身を捻って躱す。

 

「まだまだァ!」

 

そんなゼノヴィアに追撃と言わんばかりにフリードはエクスカリバーを振るう。何本にも枝分かれしたエクスカリバーは恐ろしいスピードでゼノヴィアを襲った。

何とか2本の剣により防御は成功しているものの、これはどう見ても押されている。

 

「これ程か……ッ!」

 

ついつい悪態を吐くゼノヴィア。フリードの猛攻に守りに徹するしか手がなくなってしまっていた。しかも、攻撃している方のフリードには祐奈から受けた若干のダメージが見えるもののその表情は余裕そのもの。

 

「ほらほら!どったの?青髪チャン!

さっきまでの威勢の良さは何処に置いてきちゃったの?」

 

「く……ッ!!」

 

(これほど……これほどまでか……っ!?)

 

最強とまで言われたエクソシスト。ゼノヴィアは改めてフリードの強さを認識した。

そして、理解した。

―――――彼に勝つにはまだ自分は未熟なのだと。

 

「……それでも……ッ!!」

 

ゼノヴィアは二刀流からくる手数の多さで何とかフリードの猛攻をさばききる。

そして不意に、何故かフリードの猛攻が弱まった。

 

「……ちっ」

 

「……今しかない……ッ!!」

 

フリードの舌打ちの意味はなんなのかは分からないがゼノヴィアもこの隙を逃すことは出来ない。

破壊の聖剣を放り投げ、デュランダルの制御へ意識を絞った。

 

「デュランダルッッッ!!!!」

 

荒々しい聖なるオーラはデュランダルとゼノヴィアを包み込む。

ゼノヴィアはデュランダルを大きく振りかぶると、兜割りの要領でフリードに振り下ろした。

 

「マジですかい……ッ!!?」

 

フリードもその一撃には目を開き、対処を急いだ。エクスカリバーは聖なるオーラを纏い、デュランダルの一撃を防ぐ。

 

 

 

―――――途端、周囲に突風と砂埃が巻き起こる。

 

聖なるオーラを迸らせながら、デュランダルとエクスカリバーは火花を散らし、一進一退の攻防を見せていた。

 

「おおおぉぉぉぉぉぉお……ッッ!!!」

 

ゼノヴィアはこの一撃が最後だと言わんばかりに力を込めている。

 

「……ッ!?」

 

と、その時、フリードが表情を歪めて初めて焦りを見せた。

 

「ちぃ……っ!」

 

フリードは不本意そうに舌打ちをするとゼノヴィアにローキックを放つ。

 

「くっ!?」

 

ゼノヴィアはフリードによるその攻撃に反応することが出来ずに、体制を崩してしまう。

 

「おらぁ……っ!!」

 

フリードはすかさず体制を崩したために力が抜けたデュランダルを刀身を使って滑らせ、地面へとその一撃を流した。

デュランダルの一撃は、地面に炸裂。地面をデタラメに斬り裂き、破壊する。

フリードはその余波に巻き込まれないようにゼノヴィアから距離を取ると憎々しげにエクスカリバーを眺めた。

 

「エクスカリバーつっても所詮は折れた聖剣か……」

 

フリードの言葉を待っていたかのように、そのエクスカリバーは―――――ヒビを入れた。

 

「耐久力なさすぎだろ……まぁ、あの爺さんが統合したモノにしちゃマシな出来だったか……」

 

フリードはそう言うと、渾身の一撃をあろうことか逸らされ、膝をついているゼノヴィアに視線を向ける。

 

「オモシロかったぜ?青髪チャン。

もちっと遊んでたかったけどこっちの得物が壊れちまったし……今回は青髪チャンたちの勝ちでいーわ」

 

ケラケラと笑いながらそう言うフリード。ゼノヴィアは勝ちと言われながらも悔しそうに表情を歪めている。

 

「あ、そ〜いえば、そこに転がってる狸寝入りした爺さんだけど、もう興味無いし、好きにしていいぜ~」

 

狸寝入りという言葉に、ビクンと反応するバルパー・ガリレイ。フリードは冷めきった視線を向けていた。

 

「さてさて……これ以上ここにいてもろくなことないし……俺は一足先に帰らせてもらうわ~。

あ、騎士(ナイト)チャン……確か祐奈チャンだっけ?その娘に『また殺ろうぜライバルチャン』って言っといてね~!

んじゃ、ばいちゃ♪」

 

フリードは言いたいことだけ言うと、エクスカリバーは放り捨て、懐から複数の閃光玉をばら撒き、逃げ出した。

視界が回復した頃には、その場には捨てられたエクスカリバーのみが残されていた。

 

「……くそ……ッ!」

 

ゼノヴィアは悔しそうに地面を殴った。

祐奈、ゼノヴィアの両者は意識はあるものの力を使いすぎて立つことも出来ない。対してフリードは得物が壊れたもののほとんど無傷で逃走。

 

―――――今回もまた、事実上フリードの圧勝であった。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

「フリードのやつ……私の計画を引っかき回すだけでは飽き足らずエクスカリバーを傷物にするとは……。

それよりも聖魔剣だ!

反発し合う2つの要素が混じり合うなんてあるはずがないのだ……」

 

バルパー・ガリレイはフリードが去った途端に立ち上がるとブツブツと呟き始める。

一誠はそれを見ながらも傷ついた仲間を救出し、一点に固まっていた。

 

「……そうか!わかったぞ!『聖』と『魔』、それらを司る存在のバランスが大きく崩れているとするならば説明はつく!

つまり、魔王だけではなく、神も―――――」

 

何かに思考が達したかに見えたバルパー・ガリレイの胸部を、突然光の槍が貫いた。

 

「……ごふ……っ?!」

 

バルパー・ガリレイは目を見開き、口から血の塊を吐き出すと、そのままグラウンドへ倒れ伏した。生死の確認などする間もなく、即死だろう。

 

「バルパー。お前は優秀だったよ。

そこに思考が至ったのも優れているがゆえだろうな。

―――――だが、俺はお前が居なくても別にいいんだ。最初から1人でやれる」

 

宙に浮かぶコカビエルが嘲笑っていた。

協力していたはずのバルパー・ガリレイをなんのためらいもなく殺したコカビエル。初めから、バルパー・ガリレイのことを使い勝手のいい駒程度にしか思っていなかったのだろう。

 

「ハハハハ!カァーハッハッハハハハハハッ!」

 

コカビエルは哄笑を上げ、地に降り立つ。

凄まじいまでの自信を身に纏い、流石は堕天使の幹部。オーラ量は膨大だ。

 

「……さて……赤龍帝!

お前の全力、俺に見せてくれ!!」

 

獰猛な笑みを浮かべ、一誠を視界にとらえる。

 

「お前と戦うのが楽しみで楽しみで仕方がなかった!

血沸き肉踊るとはこのことかと言わんばかりだ!!」

 

拳を握り、猛った様子のコカビエル。しかし、そんなコカビエルに対して、一誠は全くの()()()()()()()()()

そして、あろうことか 【禁手(バランス・ブレイカー)】を解除してしまう。

 

「悪ぃけど、俺が相手することはないと思うぜ?」

 

「……何だと……?」

 

一誠の言葉に不機嫌そうに表情を歪めるコカビエル。

 

「俺がぶちのめしたいところだけど……あいつの邪魔したら俺が殺されちまうよ」

 

肩をすくめながら一誠はそう言う。

コカビエルは怪訝そうな表情を浮かべる。

 

―――――その時、辺りを覆う結界が一瞬揺らめき、再構築された。

 

「……何処行ってたんだよ……」

 

溜息混じりの言葉を吐く一誠。

その視線は正門の方を向いていた。

 

 

 

―――――そこにいたのは1人の人間。

美少女とも取れるそんな風貌をした少年は、自然体でその場に立っていた。

 

 

 

 

 

「……潰しに来たぞ……コカビエル」

 

 

 

 

 

その言葉は辺りに重圧を生み出した。

コカビエルは少年を視界に入れるやいなや、その表情を驚愕に染める。

 

「……ほう……」

 

そして、短く唸ると、一誠を相手にした時以上に獰猛な笑みを浮かべ、コカビエルは一瞬で標的を少年に変更した。

 

「俺の家族に手ぇ出したんだ……塵も残らないものと思いやがれ……ッ!」

 

憤怒の表情を浮かべる少年、いや、士織。

感じられるオーラと重圧はコカビエルがまるで赤ん坊の様に感じてしまえるほどだ。

 

 

 

―――――ここにきて、士織は姿を現した。

 

―――――怒りをその身に宿しながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編の方はいかがでしたでしょうか?
楽しんでいただけたのなら幸いです♪

さてさて、今回ですが……やっと、やっと士織がやってきましたね!!(>_<)
次回は活躍してくれることでしょう!!(おそらく)

それでは、また次回お会いしましょう♪


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〜失言しました〜

皆さん本当に遅くなってすみませんっ!!!(>_<)
待っていて下さった皆さんには本当に頭が上がらないのです……m(。>__<。)m


久しぶりの新話……楽しんでいただけると嬉しいですっ!!!(>_<)


Side 三人称

 

「凄まじいな……一体何者だ?」

 

コカビエルは士織をジッと見つめて口を開く。

 

「ただの人間だカラス野郎」

 

そう言って、オーラが吹き出す。士織の身体を中心に、オーラは渦を巻いた。

 

「ハハハハッ!

赤龍帝よりも圧倒的なその力……実に高ぶるぞ!!!」

 

コカビエルは笑い声を上げ、さらなる強者の登場に心を躍らせる。

しかし、その額には汗が吹き出ていた。士織との力量差がわからない訳ではないらしい。

 

「年甲斐も無くはしゃいでしまいそうだぞ……人間!!!」

 

コカビエルは更なるオーラを滲み出させる。なるほど、先程までのものは手加減していたようだ。

 

「御託はイイから……掛かってこいよ」

 

士織は構えることなどなく、ただ棒立ちでそう言い放った。

コカビエルはそれを侮りとは取らない。士織と自分には月とすっぽん程の力の差があるのだと、そう理解しているから。

 

「どんな攻撃も1発だけ躱さないでいてやる……さぁ、遠慮するな」

 

コカビエルに向けて手を伸ばすとクイッと曲げて掛かってこいという意思を見せた。

 

「……後悔するな……人間ッッ!!!!」

 

コカビエルの咆哮と同時にその頭上で無数の光の槍が現れる。

 

「―――――行け、光の槍よッッ!!!!」

 

怒涛の槍の雨がが士織を襲う。

地を抉り、土埃が舞い、轟音が鳴り響く。

それを見たリアスたちは口に手を当て目を見開いた。

 

「……やったか……?」

 

コカビエルの呟きはやけに響く。

士織がいた場所、つまりは攻撃をした場所をじっと見つめ、事の行方を見守るコカビエル。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――んなわけねぇだろ」

 

土埃を切り裂いて現れたのは無傷の士織。

コカビエルはその姿に目を剥いた。

 

「ったく……脆すぎる槍だったな……」

 

頭が痛いと言うかのように顔を顰めながらそう呟く。そして、士織は顔を上げると、コカビエルを睨みつける。

 

「お前みたいな雑魚に家族を傷付けられたと考えると……まったく虫酸が走る」

 

「……言いたい放題言ってくれるじゃないか……所詮は人間のくせに……ッッ!!!」

 

そう叫んだコカビエルはその手に光の槍を出現させると、士織に向かって突撃していく。

 

「……だから無駄だって……」

 

士織は迫り来るコカビエルの攻撃に全くの動揺を見せず、あろう事か手で払うだけで光の槍を破壊してしまう。

 

「な……っ!?」

 

まさか払われるだけで破壊されるとは思っていなかったのだろう、コカビエルの顔に驚愕の表情が張り付いた。

 

「まさかここまで……ッ!」

 

急上昇することで士織と距離をとったコカビエルは舌打ちをする。

先程からありえないことばかりを体験しているかのようで、コカビエルは相当参っているようだ。

チラリとリアスたちの方を見たコカビエルは不本意そうな表情を浮かべながらも口を開いた。

 

「……時に人間、ひとつ面白い話を聞かせてやろう」

 

「何のつもりだ……?」

 

怪訝そうな表情でコカビエルを見つめる士織。コカビエルは口角を上げ、得意気な表情を浮かべていた。

 

「先の三つ巴戦争で四大魔王が死んだのは知っているだろう?」

 

その言葉は士織へと向けられたというよりか、リアスたちの方へ、言うなら特定の人物たちへと向けられた言葉のようだった。

 

 

 

 

 

「これはお前達下々には語られていない真実なのだが……あの時、四大魔王だけではなく―――――神も死んだのさ」

 

 

 

 

 

まさにそれは―――――爆弾。

コカビエルは今まで隠されていた、隠さなくてはいけなかった事をここでばらしたのだ。

そしてそれは、士織ではなく、リアスたちの方を混乱に陥れた。

 

「フハハハハハハハハ!

知らなくて当然だろう!神が死んだなどと、一体誰が言える?人間は神がいなくては心の均衡と定めた法も機能しない不完全な者の集まりだぞ?

我ら堕天使、悪魔でさえも下々にそれらを教えるわけにはいかなかった。何処から神が死んだと漏れるか分かったものじゃないからな。

三大勢力でもこの真相を知っているのは各陣営のトップと一部の者たちだけだ。

……まぁ、先程バルパーが気づいた様だったがな……」

 

コカビエルの言葉に少し俯く士織。その姿に気を良くしたのか、コカビエルは更に饒舌に語り続ける。

 

「戦後残されたのは、神を失った天使、四大魔王全てと上級悪魔の大半を失った悪魔、幹部以外の殆どを失った堕天使。

最早、疲弊状態どころの騒ぎでは無かった。何処の勢力も人間に頼らねば存続の危機に陥る程にまでなってしまったのだ。特に天使と堕天使は人間と交わらねば種を残せない。堕天使は天使が堕ちれば数は増えるが、純粋な天使は神を失った今では増えることなどできない。悪魔も純血種が希少だろう?」

 

「う、ウソだ……。そんなの……ウソだ……」

 

耐え切れなくなったのだろう。ゼノヴィアが力が抜け、うなだれる。その表情は見ていられないほど、狼狽に包まれている。

現役の信仰者。神の下僕。神に従えることを使命として今まで生きてきたのだ……それにも関わらず、今此処で神の存在を否定され、生き甲斐を失い……そのショックは計り知れない。

 

―――――士織がピクリと動く。

 

「正直に言えば、もう大きな戦争など故意にでも起こさない限り、再び起きない。

それだけ、何処の勢力も先の戦争で泣きを見た。お互い争い合う大元である神と魔王が死んだ以上、戦争継続は無意味だと、そう判断したのだ。

アザゼルの奴も戦争で部下を大半亡くしてしまったせいか、『2度目の戦争はない』と宣言する始末だ!全く持って耐え難い!耐え難いんだよ!!!一度振り上げた拳を収めるだと!?ふざけるな、ふざけるなッ!!

あのまま継続すれば、俺たちが勝てたかもしれない……いや勝てたのだ!それを奴はッ!人間の神器所有者を招き入れなければ生きていけぬ堕天使どもなぞ何の価値がある!?」

 

自らの持論を力強く語ったコカビエルはその表情を憤怒に染めていた。

『神の死亡』という事実に、アーシアは口元を手で押さえ、目を大きく見開いて、全身を震わせていた。

 

「……主がいないのですか……?主は……死んでいる……??

……では、私たちに与えられる『愛』は……」

 

「そうだ。

神の守護、愛がなくても当然なんだよ。

神は既にいないのだからな。

そう考えるとミカエルの奴は良くやっている。神の代わりをして天使と人間をまとめているのだからな。

まぁ、神が使用していた『システム』が機能していれば、神への祈りも祝福も悪霊祓い(エクソシスト)もある程度動作はする。

―――――ただ、神がいた頃に比べて切られる信徒の数が格段に増えたがな。

そこの小娘が【聖魔剣】を創り出せたのも神と魔王のバランスが崩れているからだ。

本来なら、【聖】と【魔】は混じり合わない。【聖】と【魔】のパワーバランスを司る神と魔王が死んでしまえば、様々なところで特異な現象も起こるといったものだ」

 

コカビエルの言葉を聞き、アーシアは―――――その場で崩れ落ちた。

 

「アーシア!アーシアしっかりしろ!!」

 

一誠はアーシアを抱きかかえ、呼びかける。アーシアの目からは絶え間なく涙が流れていた。

倒れたアーシアに動揺を隠しきれない様子の一誠。

 

―――――士織が顔を上げた。

 

そんなもの関係ないと言わんばかりに、コカビエルは拳を天に掲げた。

 

「俺は戦争を始める、これを機に!お前たちの首を土産に!!

俺だけでもあの時の続きをしてやる!

我ら堕天使こそが最強だとサーゼクスにも、ミカエルにも見せつけてやる!!!!」

 

そう言って高笑いするコカビエル。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――どうでもいいけど……何俺の家族(アーシア)泣かしてんだよ……クソカラス」

 

何時の間にか、士織はコカビエルの目前に現れていた。

目を見開くコカビエル。なんとか距離を取ろうとするものの、遅い。

 

「―――――墜ちろ」

 

「ぐはぁ……っ!!?」

 

コカビエルの脳天に士織の踵落としが炸裂。まるで隕石のように地面へと落下していった。

士織もそれを追うように、重力に引かれて落ちていく。どうやら士織はただの跳躍でコカビエルに接近したようだ。

 

「ぐぅ……っ!」

 

地面へと墜ちたコカビエルはカオを歪めながら立ち上がり、翼を広げた。

コカビエルの前に立つ士織はその翼を見て眉をひそめる。

 

 

 

「まさに『カラスの羽』だな。薄汚い色をしてやがる。

……俺が唯一褒めたアザゼルの羽はもっと薄暗く、常闇のようだったのにな」

 

 

 

言って、一歩前に出る。

 

「父さんを傷つけられたのだけでも俺は怒ってたのにさぁ……」

 

また、一歩前に出る。

 

「アーシアまで泣かしやがって……」

 

また、一歩。

 

「挙句の果てに俺たちの首を土産に戦争……?」

 

立ち止まり、コカビエルを睨み付ける。

 

 

 

 

 

「―――――調子に乗ってんじゃねぇぞクソカラスッッ!!!」

 

 

 

途端、士織から、凄まじい聖なるオーラが吹き出した。

 

「ッッ!?き、貴様一体それは……ッ!?」

 

コカビエルも士織から感じる聖なるオーラに驚きを隠せない。

リアスたちですら、士織のそのオーラに目を見開き、驚く。鱗片だけだが、見たことのある一誠、アーシアですら、その光景に目を奪われていた。

 

 

 

「……コイツは知られると厄介だからな……使うつもりはなかったんだけど……まぁ、どうとでもなるだろ」

 

―――――何せ、家族の敵を潰すために使うんだから。後始末ぐらい安いもんだ。士織は笑顔でそう言い、吹き出す聖なるオーラを凝縮しながら、そして、その名を呼んだ。

 

 

 

 

 

「―――――【精霊天使(フェアリー・エンジェル)】」

 

 

 

 

 

凝縮された聖なるオーラをその身に纏い、士織は口を開いた。

 

「……今日は特別だ……『この先』を見せてやる」

 

神器である【精霊天使】の能力を一つも見せる間もなく、士織は『この先』という言葉を口にする。

 

 

 

 

 

「―――――【禁手化(バランス・ブレイク)】」

 

 

 

 

 

―――――瞬間、光が爆発した。

 

 

 

 

 

「『神威霊装・神番(ヤハウェ・エロヒム)』」

 

 

 

士織の呟きと共に、聖なるオーラは質量を持つ物体へと変化を遂げる。

 

黒の袴に藍色の羽織。

二本の刀を腰に携え、首には漆黒の長布が巻かれ、たなびいていた。

 

決して派手ではない。しかし、それは見るもの全てを魅了しうる―――――和装。

 

士織はそれに身を包むと、静かに地を踏み鳴らす。

 

 

 

 

 

「【現界せし天魔の奇跡(ディセント・オブ・セフィロト)】……これが俺の神器【精霊天使】の【禁手化】だ……」

 

士織の背後に光り輝く果実が11個浮かぶ。

 

「さぁ、コカビエル……消える覚悟は出来たか?

俺はもう既に―――――消す覚悟は出来てる」

 

 

 

士織は笑った。口を三日月状に開いて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




新話はいかがでしたでしょうか?
久しぶりの更新で色々と忘れていしまってわからない!という方がいらしたら本当にすみませんっ!!!(>_<)

今回やっと、士織の神器を出すことが出来ましたが……【禁手】の名前が全く浮かばないというピンチでした(苦笑)

次回は出来るだけ早く更新できるように頑張りますっ!!!(>_<)


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〜白と出逢いました〜

皆さんこんばんはっ!!!(>_<)
私には珍しい、連日投稿なのですっ!!!o(`・ω´・+o) ドヤァ…!

これからは短いものを短いスパンで更新できるように頑張るのですよっ!!!(>_<)

それでは早速本編をどうぞ♪


Side 3人称

 

「『ヤハウェ』……だと!?

……貴様……『人間』ではなかったのか……っ!?」

 

笑う士織をコカビエルは眉をひそめて見つめると、慌てたように声を荒げる。

 

「俺は人間さ。

初めに言っただろう?

それとも何か?お前はそれくらいも記憶出来ない程の鶏頭なのか?

カラスなのに鶏頭とは傑作じゃねぇか」

 

「……貴様ぁ……っ!!」

 

コカビエルは殺気を振り撒きながら、士織を射殺さんばかりに睨む。しかし、当の士織はその視線をまるで微風だと言わんばかりに気にしない。

 

「さぁて……さっきも言ったけど……消される覚悟は出来たよな?」

 

士織の問いにコカビエルは額から汗を垂らす。今この場を支配しているのはコカビエルの殺気ではない。

 

―――――士織のコカビエルに対する敵意だ。

 

「く……っ!」

 

コカビエルは構える。士織の一挙一動を見逃すことがないように。

重心は低く、咄嗟の判断もミスしない。そんな雰囲気を漂わせ、コカビエルは士織の行動を見守る。

 

「ふぅ……」

 

士織は小さく息を吐くと、手を動かす。

それを見たコカビエルは大袈裟に反応すると、その手に光の槍を作り出し、迎撃の体勢をとった。

そんなコカビエルを嘲笑うかのように、士織は背後の光り輝く果実に手を伸ばした。

 

「じゃぁ……これ♪」

 

碧色に輝く果実を握り、口づけを落とす士織。

そして、その果実を―――――噛じる。

 

 

 

 

 

「―――――おいで【ハーミット】」

 

 

 

瞬間、その場の気温が急激に下がった。

 

「な、何事だ……っ!?」

 

コカビエルはその現象にキョロキョロと目を動かす。

見れば士織の傍に大小2匹の碧色ウサギが飛び跳ねていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『やっほーしおりくーん♪

よしのんを使ってくれるなんてうれしーなーこのこのー♪』

 

 

 

「っっ!!!?」

 

突然聞こえてくる声にコカビエルは反応する。その声は一体何処から聞こえてくるのか、コカビエルは発生源を探し、発見した。

その声は、士織の傍にいるウサギから聞こえてきていたのだ。

 

「おぉ、よしのん。

元気がいいなぁ……何かイイことでもあったか?」

 

『もっちろん♪

よしのん的には士織くんに会えてすごくうれしいよー』

 

ぴょんぴょんと元気よく飛び跳ねる小ウサギ。士織はそれを笑って見ると、縮こまっている大ウサギの方へと視線を移した。

 

「四糸乃はご機嫌斜めか?」

 

『……っ!?……そ、そんなこと……ない、です……!

……わ、私も……士織さんに、会えて……その……嬉しい、です……っ!』

 

慌てたようにふるふると首を振る大ウサギ。士織はそれを微笑ましそうに見つめて、ニコリと笑った。

 

「それなら良かった。

……さて、今回はちっとばっかし荒々しい事しないとだけど……力、貸してくれるか?」

 

『もちろんさー』

 

『も、もちろん……です……!』

 

大小のウサギは2匹とも飛び跳ねた。

士織はそんな2匹にありがとうと言うと、優しく撫でる。

 

 

 

「じゃぁ……やろうか。

―――――【氷結傀儡(ザドキエル)】」

 

士織の呼びかけ。

氷結傀儡(ザドキエル)】とそう言うと、2匹のウサギは今までで一番大きく飛び跳ねた。2匹は形を崩し、溶けるように交わると、士織の前で新たな形を成した。

 

それは(しゃく)

碧色の美しい笏はおおよそ二尺ほどの大きさ。淡い氷の結晶のような模様が見え、芸術品のようだ。

 

士織はその笏を手に取ると、コカビエルを見据える。

 

「……あんなに無防備に話してたのに攻撃の一つもしてこないとは……堕天使の幹部が聞いて呆れるな」

 

「ぐうぅ……っ!!」

 

怒りの形相でコカビエルは歯軋りをする。

そう、士織とウサギたちの会話は無防備で、攻撃する隙などいくらでもあったのだ。

 

「まぁいい……取り敢えず……速やかに退場願う。―――――この世からな」

 

そう言った士織は笏を横薙ぎに軽く振った。すると、その軌跡をなぞるように氷の帯が現れ、そこから幾数もの氷の塊が打ち出され始めた。

 

「そんなもの……っ!!」

 

コカビエルは魔法陣を広げ防御の体勢をとる。しかし、氷の塊はその魔法陣をまるで豆腐を崩すかのように破壊してしまう。

 

「んな……っ!!?」

 

コカビエルは目を見開きながらも、次の行動は早かった。魔法陣の破壊を認識した瞬間、翼を羽ばたかせ後退し、氷の塊を躱したのだ。

そして、間髪入れずに己の持っていた光の槍を投げつけ士織へと反撃を行った。

 

「【氷結領域(アイス・テリトリー)】」

 

士織がそう呟くと、士織を中心に半径3メートル程の場所が一瞬で凍りつく。コカビエルの槍もその範囲に入った途端、凍りつき、砕け散る。

 

「……通用せんか……」

 

コカビエルはその光景に驚くことはなく、予想通りと言ったふうに納得の表情を浮かべた。

 

「驚きなれちまったか?」

 

「……ふん。普通にやっても通用しなかった物が通用すると思うほど俺も馬鹿じゃないんでな」

 

そう言ったコカビエルはその手に新たな光の槍を作り出した。

 

「まぁ、あんまり時間をかけるのも面倒だからな……次で終わらせてやる」

 

士織がそう言うとコカビエルは槍を構えるがその穂先が震え始める。心なしかコカビエルの額の汗の量も増えたように思える。

それを見た士織はクスリと笑い、笏を天へと掲げた。

 

 

 

「―――――舞え永久(とわ)氷花(ひょうか)

 

士織の頭上に氷で出来た美しい花が咲き乱れる。

 

 

 

「―――――散らせ刹那の生命(いのち)

 

舞い散る花びらが地に落ち、そして凍りつく。

 

 

 

「―――――凍てつく世界に、一輪……」

 

士織は掲げた笏を振り下ろし、コカビエルへと向けた。

―――――瞬間、氷の花たちは舞い踊り、コカビエルへと襲いかかる。

コカビエルは花びらたちを迎撃するために槍を振るうが、しかし、花びらが槍に触れた途端凍りつき……そしてコカビエル自身の命すらも凍りつかせる。

コカビエルの命を土台に、氷の花たちは美しく舞い、姿を変える。

 

 

 

 

 

「咲け……【生命の氷花(ライフ・アイス・フラワー)】」

 

 

 

士織は目を閉じそう言う。

コカビエルのいた場所には巨大な花が一輪咲いていた。

冷気を漂わせ咲くその花は美しく、目を奪われる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――これは凄いな」

 

その時、今まで聞かなかった声がその場に響いた。

今まで士織の戦いに圧倒され無言だったリアスたち、そして士織が声の主の方へと顔を向ける。

 

 

 

―――――闇の中で輝く、一切の曇りも陰りも見せない白きモノ。地面すれすれにそれは浮かんでいた。

白き全身鎧(プレートアーマー)。体の各所に宝石らしき物が埋め込まれ、顔まで鎧に包まれており、その者の表情は窺えない。

背中から生える八枚の光の翼は、闇夜を切り裂き、神々しいまでの輝きを発している。

一誠はその姿に目を細め、士織は無表情に見つめていた。

 

 

 

 

 

「……何だ?白龍皇(・・・)

今頃現れて何か用かよ?」

 

士織の『白龍皇』という言葉に息を呑むリアスたち。

一方、白龍皇呼ばれた全身鎧の者は士織の言葉への返答を行う。

 

「へぇ……オレが白龍皇だってことはバレてるんだ?

……まぁ、アザゼルにコカビエルを連れて帰るように言われてたんだが……」

 

自らを白龍皇だと認めた全身鎧の者はちらりと氷の花となったコカビエルへと視線を移す。

 

「……少し遅かったようだね」

 

苦笑気味の声でそう言うと士織の方へと改めて視線を向けた。

 

「で?

コカビエルは連れていけないんだし……後は帰るだけってか?」

 

「オレとしては君と一戦交えたいところなんだけど……」

 

白龍皇から、威圧的なオーラが吹き出す。それはコカビエルよりも濃く、猛々しい。

白龍皇という存在がコカビエルよりも格上なのがよく分かるオーラだ。

しかし、そのオーラもすぐに止んでしまう。

 

「……今回はコカビエルの回収しか命じられてないし……何よりオレが勝手したらアザゼルが怒るからな。

別に怖くないが……説教が面倒だ……」

 

肩をすくめてそう言う白龍皇。

士織は白龍皇の物言いに少々の苦笑を浮かべていた。

 

「残念だけど今回は大人しく引き下がるさ。

だけど覚えておいてくれ……。

―――――オレは君といつか死闘をする」

 

それを言うと満足したのか光の翼を展開し、空へ飛び立とうとした。

 

 

 

 

 

『無視か、白いの』

 

―――――しかし、それを止める声が響く。

その声の発生元は一誠の籠手、【赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)】だ。

 

『起きていたか、赤いの』

 

白龍皇の鎧に付いている宝玉も白き輝きを発し、声を響かせる。

 

『せっかく出会ったのにこの状況ではな』

 

『いいさ、お前の宿主は俺以外に興味を持ったようだしな。

それが士織というのなら仕方が無いというものだ。

しかし、白いの。以前のような敵意が伝わってこないが?』

 

『赤いの、そちらも敵意が段違いに低い……いや、最早感じぬではないか』

 

『今代の宿主はちょっと変わっていてな。

何、戦い以外への興味が深いのさ』

 

『ふっ……。

そういうことならこちらもしばらく独自に楽しませてもらうよ。

たまには悪くないだろう?

また会おう、ドライグ』

 

『それもまた一興。

じゃぁな、アルビオン』

 

赤龍帝ドライグと白龍皇アルビオンの会話。

互いが別れを告げると、白龍皇は空へと飛び上がり、口を開いた。

 

「君と戦うのは運命。

―――――強くなれよ、いずれ戦うオレの宿敵くん」

 

「お前に負ける気なんて毛頭ないね。

俺の目標はお前に負ける程度じゃ達成できねぇんだよ」

 

白龍皇の挑発とも取れる言葉に強気で返す一誠。白龍皇はふっ、と短く笑うと、白き閃光と化して、飛び去っていった。

 

 

 

―――――こうして、堕天使の幹部コカビエルとの戦いは幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回はいかがでしたでしょうか??
楽しんでいただけたのなら幸いです!!(>_<)

さてさて……今回でやっとコカビエルをぼこぼこにしましたが……士織の神器のせいで今後の展開が難しくなったです……っ!!(>_<)
オリジナルが入るとなると悩むところが多いですが……みなさんに楽しんでもらえるようなものにできるように頑張るのですよっ!!!

それではまた次回、お会いしましょう♪


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〜『女の幸せ』返しました〜

皆さんこんばんは♪
今回もまたまた遅くなってしまったです……(苦笑)
問題児の方も書こうかなぁ……なんて思って手をつけたら全く進まずに気がつけば日にちが過ぎてました……っ!!(>_<)

ひとまず、本編をどうぞ♪


Side 一誠

 

士織によるコカビエルの蹂躙。

それが終わればまさかの俺のライバルである白龍皇の登場。

色々と驚きはあったものの、これだけは言える。

 

―――――やっと、終わったんだ。

 

俺はぐったりとしているアーシアを支えながら、失意のうちに呆然としているゼノヴィアへと近づいていく。

 

「……ゼノヴィア」

 

「……あぁ……赤龍帝か……。

……はは……聞いたか?神が……神がいないそうだ……」

 

そう言うゼノヴィアの顔は見ていられないほどに酷かった。

士織の姿を見て、少しは元気を取り戻すかと思っていたが……どうやら、その姿を見ることすら出来ないほどに狼狽し、周りのことが頭に入っていなかったようだ……。

アーシアもそうだったように、ゼノヴィアもまた精神的なダメージが大きいように見える。

 

「神がいなければ……私の……存在意義は……」

 

乾いた声で笑うゼノヴィア。

俺はそんなに彼女を見ていられず、ただ―――――抱き締めた。

 

「……せき……りゅうてい……?」

 

 

 

 

 

「神はいない……だけどな、ゼノヴィア。

―――――お前はお前だろう?

お前は神がいるから生きてるんじゃない。

生きているからこそ、神を信仰するっていう一つの行動を取れたんだ。

 

それになぁ……ゼノヴィア。俺は神様ってやつを信じてない。

だってそうだろ?神様ってやつは気まぐれすぎる。

 

無償の愛?そんなもの神がくれなくたって俺が、家族が、仲間が与えてくれる。

 

救済?そんなもん俺がなんとかしてやる。

 

もし何かに縋りたい時があるのなら、神じゃなくて、周りの、自分が一番信用できる奴に縋れ。

それが俺だって言うなら、それもいいさ。

 

泣きたいならいくらでもこの胸を貸してやる。

疲れたなら一緒に休もうぜ?

助けて欲しいなら俺はこの力を使うのを迷わねぇ。

 

俺が目指してるのは【最高の赤龍帝】。

仲間1人支えてやれないでなれるわけねぇだろ?」

 

我ながら小っ恥ずかしいことばかりを言ってる気がする。……けど、これは俺の本心。

 

「……仲間……?」

 

「あぁ……。

ゼノヴィア、俺たちは力を合わせて戦ったんだ。もう、仲間だろ……?」

 

俺の言葉を聞いていたゼノヴィアの瞳にほんの少しだが、光が灯った気がした。

 

「それと……アーシア。

アーシアは俺の大切な家族だ」

 

ゼノヴィアだけではなく、今度はアーシアも一緒に包み込み、抱き締める。

 

「神様はいないかもしれない。

だけどな?アーシア。

アーシアにはその代わりに大切なものができたはずだ」

 

「……大切な……もの……」

 

「あぁ。

リアス部長たちや俺たち……それに学校の友達たち。

沢山の優しい人たちに、アーシアは今囲まれてる。

これから先、アーシアには沢山の友達が、仲間が増えるさ。俺が保証してやる。

……だからさ、アーシア。

そんなに悲しまないでくれ……俺の大好きなアーシアはやっぱり、笑顔が一番だ」

 

そう言って、俺はアーシアに微笑みかけた。

 

「……イッセーさん……」

 

そのつぶやきを境に、段々と光が宿り始めるアーシアの瞳はキラキラと輝いて見える。

俺はゼノヴィアを、アーシアを優しく抱き締めた。すると、今度は2人も抱きしめ返してくれた。

2人は瞳に涙を溜めていたが、それは悲しい涙ではないと、俺は断言できる。

何故って……?それは―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――こんなに綺麗な涙……悲しくてでるわけないだろ……」

 

 

 

俺は2人の頭を優しく撫で、泣き止むのを待った。

 

 

 

 

 

Side Out

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

Side 士織

 

「祐斗……いえ、祐奈。

よく、頑張ったわね……。

それにその姿……きちんと過去と決別出来たのね?」

 

リアス先輩は優しげな声で祐斗……いや、祐奈へと話しかけ始めた。

祐奈は感慨深そうに頷くと、表情を曇らせ、俯く。

 

「……部長、僕は……部員の皆に……。何よりも、一度命を救ってくれたあなたを危険に晒し、あまつさえ過度の心配をかけてしまいました……。

……お詫びする言葉が……見つかりません……」

 

そう言う祐奈にリアス先輩は近寄り、優しく頬を撫でた。

 

「いいのよ祐奈……。

私はあなたの悩みが消えてくれたのなら、この程度のこと気にしないわ。

それに【禁手(バランス・ブレイカー)】だなんて……あなたは私の誇りよ」

 

慈愛深い笑みを祐奈に向けながらそう言うリアス先輩。祐奈は今にも泣きそうになりながらも、肩膝をつき、跪く。

 

「部長……。僕はここに改めて誓います。

僕、『木場祐奈』は主リアス・グレモリーの眷属―――【騎士(ナイト)】として、あなたと仲間たちを終生お守りする、【最強の騎士】となることを」

 

強い決意の篭った言葉。

祐奈は揺らぎのない覇気を纏いながらそう宣言した。

……迷いがなくなるだけでここまで変わるとはな……。

 

「【最強の騎士】……大きく出たわね、祐奈」

 

リアス先輩は跪く祐奈をじっと見つめながらぽつりと呟く。

そして、一瞬瞳を閉ざすとふぅ、と息を吐き口を開いた。

 

 

 

 

 

「―――――言ったからにはなりなさい。あなたの師をも越え、【最強の騎士】に」

 

「はい……っ!!!」

 

リアス先輩の言葉に祐奈は大きな返事を返す。

そんな2人の表情は何処か満足気だったのをここに記そう。

 

 

 

 

 

―――――閑話休題。

 

 

 

 

 

「士織さん」

 

リアス先輩への宣言を終えて、祐奈は立ち上がると俺の方へと近づいてくる。

 

「おう、祐奈」

 

短く淡々としたそんな言葉を口にし、俺は祐奈の方を向き直す。

 

「その……ね……?

全部終わったから……その……来たよ?」

 

もじもじとしながらそう言う祐奈は頬を赤く染めていた。

 

「んん?なんだ?褒めてもらいに来たのか?」

 

祐奈が何をしに来たのかは薄々分かってはいたが、少し意地悪をしてみることにする。

 

「えっ……?ち、違うよ!

いや、確かにそれもして欲しいけど……。

もう!忘れちゃったの……?」

 

俺を見つめながらの不安げな表情と声音。

……ふむ……これはこれでイイな。

 

「さぁ……?

何を言ってるのか分かんねぇけど……祐奈が自分から言ってくれると分かるかもな?」

 

「ぼ、僕から……っ?!」

 

面白いように慌て出す祐奈。どうやら俺から言ってくれると思っていたようで……ところがどっこいこれが現実ですってな。

 

「う、う~~~~……」

 

顔をさらに赤く染めながら唸るように声を出す祐奈に俺はにやにやとした笑みを向ける。すると、ようやく気がついたようで、ジトっとした目で俺を見始めた。

 

「……また僕で遊んで楽しんでるね……?」

 

「ははっ!気がつくのが遅ぇよ祐奈。

だいたい俺が約束を忘れるわけねぇだろ?」

 

そう言ってやれば、祐奈はほっとしたような表情を浮かべる。

俺はそんな祐奈に自ら近づくと、優しく頭を撫でた。

 

 

 

 

 

「―――――俺でいいのか?」

 

祐奈は俺の言葉に少しだけ目を開くと恥ずかしそうに顔を俯かせ、こくりと小さく首を振った。

 

「……そうか。

ならまぁ……俺が教えてやるよ―――――『女の幸せ』ってやつをな」

 

言って、俺は祐奈を抱き締めた。すると、祐奈は俺の胸に顔を埋めた。

ドクンドクン、と脈打つ鼓動が俺の方にまで伝わってくる。

 

「……どんだけ緊張してたんだよ」

 

「し、仕方ないよ……僕の……その……初恋なんだし……」

 

「へぇ……?

なぁ知ってるか?『初恋は実らない』ってやつ」

 

俺が意地悪にもそう言うと祐奈は抱き締める俺の背に腕を回してぎゅっと力を入れた。

 

「……僕の場合は実ったから関係ないよ」

 

「ははっ!そりゃ違いねぇな」

 

俺がからからと笑うと、祐奈は俺の胸から顔を上げて俺の顔を見つめる。

 

「ねぇ、士織さん」

 

「ん?今度はなんだ?」

 

俺がそう返せば、祐奈はちらりと周りを見て、体を反転させ俺が後ろから抱きしめている形にする。そして、大きな声で言った。

 

 

 

 

 

「―――――誰にも負けないから。

一番は……僕だよ!」

 

その声は俺に向けて言ったのか……はたまた、()()()に言ったのか……。

まぁ、おそらくは後者なのだろうが……。

 

 

 

 

 

「ったく……可愛い奴め」

 

俺は祐奈の行動にそんな感想を漏らす。

周りを見ればいろんな反応を返す者が見えた。

暖かな微笑みを向けるリアス先輩と朱乃先輩。

ゼノヴィアとアーシアを抱き締めながら器用にもこちらににやにやとした笑みを向ける一誠。

そして……羨ましそうな表情を浮かべる小猫。

 

 

 

 

 

(……悪ぃ……祐奈)

 

想いを伝えてくれた祐奈には悪いが、今後の自分を考えて心の中で先に謝っておく。

 

(……おそらく俺は最低な事をするだろう。

それでもイイって言うのなら……俺は……)

 

無意識のうちに抱き締める腕に力を入れる。

すると、祐奈は俺の手を胸に抱きながら、優しく呟いた。

 

 

 

 

 

「―――――良いよ。全部分かってたから」

 

「……っ!?

……祐奈……お前……」

 

そのタイミングで言われた祐奈の言葉に驚く。まるで心の中を透かされたようで。

 

「だけど……」

 

また体を反転させ、俺の方へと向き直る祐奈。頬をふくらませながら言う。

 

「あんまり多いと怒っちゃうからね!」

 

そして、俺の胸に顔を埋め、強く、強く抱き締めた。

俺はその言葉に間抜けな表情を浮かべていたと思う。だからこそ、直ぐに笑みへと表情を変え、抱きしめ返した。

 

「寛容過ぎやしませんかねぇ……祐奈さんよ」

 

俺がうだうだと考えていたのが馬鹿馬鹿しくなるというもんだ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――その後、魔王の加勢が到着したのは全てに決着が着いた30分ほど経ってからだった。

 

その時に俺の【神器】の情報が渡ってしまったが……まぁ、何とかなるだろう。

 

今後の事に少々の不安を抱きながらも、俺は苦笑いを浮かべ空を見上げた―――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい♪
というわけで……士織のヒロインその1!!
祐斗くんならぬ祐奈ちゃんとくっついた今回の話でした♪

結構無理矢理感が出てしまいましたが……お許しください……っ!!(>_<)


それでは、また次回お会いしましょう♪


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〜エピローグです〜

私には珍しい連日更新っ!!(>_<)
シルバーウィーク中ということでやってみましたっ!!

とは言ったものの……今回は3巻終了の部分なのですぐに書き上がっただけなのですが……(苦笑)

ひとまず、本編の方をどうぞ♪


オッス、兵藤 一誠だ。

 

コカビエルとの戦いから早数日―――――。

放課後の部室に1人遅れ気味で訪れてみれば、それはもう愉快な風景が広がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「士織様っ!!!」

 

我が兄を様付けで呼び、足に絡みつく、見覚えのある緑のメッシュを入れた女子がそこには居た。

 

「……いい加減離れろ―――――ゼノヴィア」

 

「嫌ですっ!!」

 

「……まったく……」

 

頭を抱えながら、士織はため息を吐く。

俺はその光景に苦笑いが浮かんでくるのを感じる。

 

「おぉ……一誠。遅かったじゃねぇか」

 

足に頬擦りをするゼノヴィアを放置する方向で決めたのか、士織は俺の方へ視線を向けると口を開いた。

 

「ちょっと用事がな……。

つか、なかなか愉快なことになってるな……?」

 

「……ゼノヴィアの信仰心が変に働いてな……。

初めは俺のことを『神ぃぃぃい!!』とか言って突撃してきたんだぞ?」

 

まぁ、撃墜したけど。士織は心底疲れたように言った。

どうやら士織の神器、それも【禁手】の情報がゼノヴィアにも伝わったようだ。

 

「そりゃ……お疲れ様」

 

「さんきゅ……」

 

俺は士織の疲労感を感じながらも未だ来ていない部員―――――小猫ちゃんと木場……いや祐奈―――――を待つために空いているソファーに腰を下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――いい加減離れろうっとおしい」

 

「へぶん……っ!!?」

 

いよいよその行動に我慢できなくなった士織からの脳天直撃チョップを喰らったゼノヴィアは変な声を上げながら目を回して床に沈んで行った。

……本当に天国(ヘブン)に行ったりしてねぇよな……?

 

 

 

 

 

―――――閑話休題。

 

 

 

 

 

「物凄い今更だけど何でゼノヴィアが居るんだ?」

 

小猫ちゃんと祐奈が揃ったところで、正気を取り戻したであろうゼノヴィアに向けてそんな言葉をかける。

 

「ん?あぁ……神の不在を知ったのでな。破れかぶれで悪魔に転生してみた。

リアス・グレモリーから【騎士(ナイト)】の駒を頂いてな。で、眷属になるのと同時にこの学園にも編入させてもらった。

今日から高校二年の同級生でオカルト研究部所属だそうだ。

よろしくね、イッセーくん♪」

 

背中から黒い翼を生やし、ゼノヴィアに似合わないような声を出す。

 

「……真顔で可愛い声を出すんじゃない」

 

「イリナの真似をしてみたのだが、うまくいかないものだな……」

 

「お前らしくないから止めとけ。

それに、そんなことしなくてもゼノヴィアには良いところがあるんだし……な?」

 

俺が頭を優しくポンポンと叩き、そう言うと、頬をほんのり赤く染めて視線をそらすゼノヴィア。

 

「……そ、そうか」

 

……な、なんだろう……このラブコメ臭の凄い展開は……?俺は一体いつの間にフラグを……??

俺はそんな馬鹿げた考えを払うように、話を変えるべく口を開いた。

 

「そ、そういやイリナはどうしたんだ?」

 

「あ、あぁ……イリナなら、私のエクスカリバーを合わせた5本とバルパーの遺体を持って本部に帰ったよ」

 

ゼノヴィアは真面目な顔をしながらそう説明してくれる。

……どうやら話をそらせたようだ……。

 

「エクスカリバーは流石に返したか……。

それよりも良かったのか?教会を裏切っちまって……」

 

「……まぁ、良かったのかと聞かれると……良くはなかったのだが……。

神の不在を知ったことで異分子となった私が教会(あそこ)に居られる道理はないのさ……。教会は異分子を、異端を酷く嫌うからね……」

 

ゼノヴィアは自嘲した。暗い影を差す表情に俺は心が痛むのを感じる。

 

「イリナは運がいい。ケガをしたため、戦線離脱をしていたとはいえ、あの場で、あの真実を知らずに済んだのだからね。

私以上に信仰の深かった彼女だ。神がいないことを知れば、心の均衡はどうなっていたかわからない」

 

そう言うゼノヴィアの表情にはイリナを心配するような色が見える。自らは傷ついたのにも関わらず、仲間を、イリナを心配するとは、優しい女の子だ……。

 

「ただ、私が悪魔になったことをとても残念がっていた。

神の不在が理由だとは口が裂けても言えないしね。なんとも言えない別れだった。

……次に会うときは敵かな……?」

 

目元を細めながらゼノヴィアは言った。

……イリナ、どんな気持ちで帰国したんだろうか……。

 

 

 

俺とゼノヴィアがそんな会話をしていれば、リアス部長が立ち上がり咳払いをした。そして、周りを見回すと話を始める。

 

「教会は今回のことで悪魔側―――――つまり、魔王に打診してきたそうよ。

『堕天使の動きが不透明で不誠実のため、遺憾ではあるが連絡を取り合いたい』―――――と。

それとバルパーの件についても過去逃したことに関して自分たちにも非があると謝罪してきたわ」

 

俺とゼノヴィアは自然とソファーに腰掛けながら、リアス部長の話を静かに聞く。

 

「今回のことは、堕天使の総督アザゼルから、神側と悪魔側に真相が伝わってきたわ。

エクスカリバー強奪はコカビエルの単独行為。他の幹部は知らないことだった。三すくみの均衡を崩そうと画策し、再び戦争を起こそうとした罪により、『地獄の最下層(コキュートス)』で永久冷凍の刑―――――のはずだったらしいけど、士織の氷が全く溶けなくて、堕天使領の一角で封印処置してるそうよ」

 

リアス部長は苦笑いを浮かべながら士織の方を見た。

当の士織は右サイドに小猫ちゃん、左サイドに祐奈という布陣でソファー一つを固めており2人の相手に忙しそうだ。

 

「近いうちに天使側の代表、悪魔側の代表、アザゼルが会談を開くらしいわ。

何でもアザゼルから話したいことがあるみたいだから。

その時にコカビエルのことを謝罪するかもしれないなんて言われているけど……あのアザゼルが謝るかしら……」

 

肩をすくめながら、リアス部長が忌々しそうに言う。

アザゼルかぁ……俺のイメージとしては悪戯好きな親戚の叔父さんみたいな感じなんだよなぁ……。

 

「私たちもその場に招待されているわ。

事件に関わってしまったから、そこで今回の報告をしなくてはならないの」

 

リアス部長の言葉に驚愕の表情を浮かべる俺と士織以外の部員たち。

 

「あぁ〜……なんだかんだで魔王様たちの加勢が来る前に全部終わっちゃいましたしね……」

 

主犯であるコカビエルは士織によって冷凍。バルパーは殺され、フリードは逃走。俺たちがやったことと言えばケルベロスを倒したくらいだろうか?

コカビエルとの戦いを思い出すと同時に、俺はひとつの疑問が湧き上がった。

 

「そういえば……『白龍皇』は堕天使側って認識でも良いのか?」

 

「そうだ。アザゼルは【神滅具(ロンギヌス)】を持つ神器所有者を集めている。

何を考えているかは分からないが、ロクでも無いことをしようとしているのは確かだね。

『白龍皇』はその中でもトップクラスの使い手。『神の子を見張る者(グリゴリ)』の幹部を含めた強者の中でも4番目か5番目に強いと聞く。

既に完全な【禁手(バランス・ブレイカー)】状態。現時点で言えばライバルのキミよりも強いかもしれない」

 

ゼノヴィアは俺の疑問に答えてくれると最後にそう締めくくった。

……今の俺よりも強い……か……。

やはり魔力の総量が少なすぎるというのがネックか……?

 

 

 

(『確かにそれもあるかもしれんな』)

 

(ドライグ……)

 

(『だが、相棒にはそれを補って余りある発想力がある。

あの【亜種禁手】がいい例だろう』)

 

(……サンキュな)

 

(『なに、弱気な相棒はらしくないのさ』)

 

 

 

ドライグはそう言い残すと再び神器の中に潜っていった。

俺がドライグと会話をしていれば、いつの間にかゼノヴィアがアーシアに近づいていた。

 

「……そうだな。アーシア・アルジェントに謝らねばならないな。

主がいないのならば、救いも愛も無かったわけだからね。

―――――すまなかった。アーシア・アルジェント。キミの気が済むのなら、殴ってくれても構わない。私はそれほどのことをしたのだから……」

 

ゼノヴィアは深く頭を下げてアーシアに謝罪の言葉を口にする。

 

「……そんな、私はそのようなことをするつもりはありません。

ゼノヴィアさん。私は今の生活に満足しています。悪魔ですけど、大切な人に―――――大切な方々に出会えたのですから。

私はこの出会いと、今の環境だけで本当に幸せなんです」

 

聖母のような微笑みでアーシアはゼノヴィアを許した。

あの日、コカビエルとの戦いの日に俺の掛けた言葉がアーシアにとっては救いだったのだという。あんなに小っ恥ずかしい台詞を並べただけのような俺の言葉をそんなふうに受け取ってくれていたとは思いもしなかった……。

 

「……クリスチャンで神の不在を知ったのは私とキミだけか。

もうキミを断罪するなんてことは言えやしないな。

異端視か。尊敬されるべき聖剣使いから、異端の徒。私を見る目の変わった彼らの態度を生涯忘れることは出来ないよ……」

 

その時、ゼノヴィアの瞳に哀しみの影が移った。

 

「―――――さて、そろそろ私は失礼する。

この学園に転校するにあたって、まだまだ知らねばならない事が多すぎるからね」

 

そう言いながら部室をあとにしようとするゼノヴィア。

 

「あ、あのっ!」

 

そのゼノヴィアを、アーシアが引き止めた。

 

「今度の休日、皆で遊びに行くんです。

ゼノヴィアさんもご一緒にいかがですか?」

 

屈託のない笑顔で言うアーシア。ゼノヴィアはそんなアーシアの態度に驚くように目を見開くが、すぐに苦笑する。

 

「今度……機会があればね。

今回は興が乗らないかな。

……ただ―――――」

 

「ただ?」

 

首をかしげるアーシアにゼノヴィアは柔らかな笑顔で問う。

 

「今度、私にこの学園を案内してくれるかい?」

 

「―――――はいっ!!」

 

アーシアもゼノヴィアの問いに笑顔で答える。

この2人、すぐに仲良くなれそうな気がするな……。

 

「我が聖剣デュランダルの名にかけて―――――。

そちらの聖魔剣使いの先輩とも再び手合わせしたいものだね」

 

「いいよ。今度も僕の勝ちは譲らない」

 

「私こそ、次は負けないさ」

 

祐奈の言葉にゼノヴィアは気合十分と言った体で答える。そして、周りを確認すると、ゼノヴィアは部室を後にしていった。

 

 

 

 

 

「さて!」

 

ポン!とリアス部長が柏手を打つ。

 

「さ、全員が再び揃ったのだから、部活動も再開よ!」

 

「「「「「「はい(おう)!」」」」」」

 

全員が元気よく返事をする。

その日、久しぶりに俺たちは部室で談笑した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ゼノヴィアはたまにポンコツになるキャラで行こうと思います←唐突に

さて、今回でやっと3巻も終了……次は4巻の内容に入っていくのですが……みなさんからの問題児の方の更新を待ってますという言葉に二作品同時進行をするべきか否かを悩んでいるのです……(苦笑)


それでは、また次回……問題児編または引き続きハイスクールD×D編でお会いしましょう♪


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〜停止教室のヴァンパイア〜
51話


皆さん遅くなりましたっ!!!(>_<)
ちょっとした諸事情で更新が遅くなってしまったのです(苦笑)

ひとまず、本編をどうぞっ!!(>_<)


どうも、兵藤 士織だ。

 

 

 

 

 

気がつけば季節も移ろい、蝉の鳴く夏へとなっていた。

原作の開始が春だったのを考えると今の夏という季節は案外早く訪れたように感じるものだ。

 

「―――――ねぇ、聞いてる?士織くん」

 

俺の名前が横から呼ばれる。

首をそちらに向けてみると、デニムのショートパンツに大きめのTシャツといったカジュアルな服装をした少女―――――祐奈がこちらをのぞき込むように見ていた。

 

「ん?……あぁ……昼は何を食べるかだったっけか?」

 

「違うよっ!!

もぅ……やっぱり聞いてなかったんだね……」

 

ジトッとした視線を向けながら頬をふくらませる祐奈。

……あらら……話聞いてなかったのがバレちまったか。

 

「悪ぃ悪ぃ。

んで?何の話だったっけ?」

 

「……この後僕の水着を選んで欲しいって話だよ」

 

仕方がないといったふうにそういった祐奈はそっぽを向く。

俺はそんな祐奈の頭を撫でることでご機嫌取りしようと近づいた。

 

「ほらほら、そんなに拗ねんなって」

 

「す、拗ねてないよっ!」

 

うりうりとからかうように、しかし、髪が乱れないような絶妙な力加減で撫でれば、案の定祐奈は言葉では嫌がりながらも頬を緩ませ始める。

 

「取り敢えず……水着買いに行くなら早速行動に起こそうぜ?」

 

俺はそう言うとテーブルに置かれた伝票を回収してスムーズに精算へと向かう。

……あぁ、言うのが遅くなったが俺と祐奈が今いるのは家からもそんなに遠くないカフェ。俗に言うデートっつうもんの最中だ。

 

「ま、待ってよ!」

 

祐奈も俺に続くようにテーブル席から立ち上がり、小走りに俺へと追いつく。

 

「僕もお金払うよ……って、あぁっ!」

 

そう言って財布に手を伸ばす祐奈だったがそれはいらない行動だ。何故ならもう既に俺が払い終えてる。

 

「気にすんな」

 

「で、でも僕パフェとか頼んじゃってるのに!」

 

「はいはい気にしない気にしな〜い」

 

俺はそう言いながら未だに何か言い続ける祐奈の背を押し、カフェを後にしていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

所変わってショッピングモール。

俺と祐奈は水着売り場へと一直線で訪れていた。

 

「水着か……そういや俺、持ってなかったな……」

 

記憶を辿ってみても、小さな頃にプールに連れて行かれ女物の水着を身に着けた以外水着を着た覚えがない。

……とは言っても俺が実際に体験した記憶はどれだけ遡ろうと中学3年の時からしかないのだが……。

 

「士織くん水着持ってないの?」

 

祐奈は不思議そうにそう言った。

……俺が水着を持っていないのがそんなにも意外なのだろうか?

俺が軽く頷いてやると、祐奈はにこっと微笑みながら口を開く。

 

「ならこの機会に士織くんも水着買ったらどうかな?」

 

「……そうだな。

そういやオカルト研究部でプール開きするとか言ってたし……ついでに俺の水着も買っとくか」

 

この間生徒会からのお願いでプール掃除をしたが、その報酬がオカルト研究部が1番最初にプールを使用できるというものだったのを思い出す。

 

「祐奈が買いに来た水着ってその時に使うやつか?」

 

「もぅ……それもさっき言ったのに……。

本当に話を聞いていなかったんだね……」

 

再び頬を膨らませる祐奈。

おっと……これは薮蛇だったな……。

 

「悪かったって……ほら、せっかく来たんだし祐奈の水着選んじまおうぜ?」

 

女性用の水着の並んである場所を指さしながら祐奈の背を押す。

たくさんの水着が並ぶ中で立ち止まった祐奈はしなをつくりながらこちらを振り向く。

 

「ねぇねぇ士織くん」

 

「ん?どうした?祐奈」

 

「士織くんは僕にどんな水着着て欲しい?」

 

「祐奈にか?」

 

「そうそう♪

それに今なら―――――どんな水着でも着てあげるよ……?」

 

上目使いに笑いそう言う祐奈。何処か小悪魔的な笑みに思えるのは気のせいではないだろう。

……ほぅ?これは俺をからかって遊ぶつもりか……?

俺はニヤッと笑うと水着の方へ視線を移した。

そして、極端に面積の少ない青のマイクロビキニを手に取ると祐奈に見せつけるように持ち上げる。

 

「こんなのがイイんじゃねぇか?」

 

「ふぁっ!?

ちょ、ちょっと待って士織くんっ!

それは流石に……っ!!」

 

俺がこう返してくるとは思わなかったのか祐奈は慌てながら手をバタバタとしていた。

 

「んん〜?どうした?

何でも着てくれるんだろ?」

 

「そ、それは……その……っ!」

 

「取り敢えず試着室はすぐそこだし……ちょっと着てこいよ」

 

「えっ……?えぇっ!!?」

 

俺の手にした水着を祐奈の手に持たせて試着室の方へと誘導していく。

 

「ま、待って待ってっ!!

これは流石に着れな―――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――あら?やっぱり士織に祐奈じゃない」

 

俺と祐奈が戯れていると、後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。

振り返ってみればそこには、

 

 

 

「2人も買い物かしら?」

 

 

 

明らかにプライベートの状態のリアス先輩の姿があった。

赤のフレアワンピースにブーツという出で立ちのリアス先輩。

 

「まぁ、祐奈の奴が水着が欲しいって言ったからな。

後はついでに俺の水着も買おうって話も出てる」

 

「そうなの……それで祐奈はそんな水着を持っているのね」

 

リアス先輩はそう言って、祐奈が持っている……正確には俺が持たせた水着を指さした。

 

「ち、違……っ!」

 

「あなたはもう少し大人しめの物を選ぶかと思っていたのだけれど……やっぱり恋で人は変わるのね」

 

分かっているわというような微笑みで祐奈を見つめるリアス先輩。そんな視線に祐奈は恥ずかしさいっぱいなのか顔を真っ赤にして縮こまっていた。

 

 

 

 

 

「―――――リアス!此処に居たか……」

 

と、そんな祐奈の姿を楽しんでいれば1人の男性が近づいて来る。

赤いスーツを見事に気崩し、胸までシャツをワイルドに開いている姿はどこかで見たような……。

 

 

 

「……あぁ、思い出した。ライザー・フェニックスか」

 

「そういう君は……確かイッセーの姉弟(・・)の兵藤士織だったか?」

 

ライザーは思い出すかのように顎に手を当てそう言った。

俺はリアス先輩をにやにやとしながら見る。

 

「なんだリアス先輩もデートかよ」

 

「え、えぇ……」

 

「仲良く進展してるようで良かったじゃねぇか」

 

恋人から始めたこの2人が仲良くデートしているのだ。

……こりゃ後日朱乃先輩たちに報告だな。

 

「と、とにかく!

今日は私たちも水着を買いに来たのよ」

 

若干頬を染めながら強引に話を変更させるリアス先輩。俺はくすくすと笑いながらも話を元に戻す事はしなかった。

 

「リアス先輩はライザーに水着を選んでもらうのか?」

 

「えぇ。ライザーの好みも知っておきたかったのよ。

そういう士織は祐奈に水着を選んであげたの?」

 

「まぁ、今祐奈の持ってるやつは流石に冗談だけどな。―――――本命はこっち」

 

そう言って顔を赤くし、呆然としていた祐奈から水着を回収すると密かに用意しておいたもう1着を祐奈に持たせる。

 

「え……?」

 

「ほら、ちょっと着てこいよ。

その水着は真面目に選んで祐奈に似合うだろうと思ったやつだからさ」

 

そう言って優しく頭を撫でてやれば祐奈は恥ずかしそうにコクリと頷き、試着室の方へと小走りで向かって行った。

 

「……また祐奈をからかって遊んでいたの?」

 

「まぁな。

祐奈の反応が良すぎてクセになっちまうんだよ」

 

「全く……程々にしておきなさい?」

 

「以後気をつけまーす」

 

カラカラと笑いながらリアス先輩の言葉に返事をすれば、リアス先輩は肩をすくめてくすりと笑った。

 

「それで?

リアス先輩はライザーに水着を選んでもらわなくても良いのか?」

 

「ふふふ……私はもう選んでもらって買ってるのよ」

 

そう言ってライザーの持つ袋を指さすリアス先輩。

 

「此処にはただあなたたちが見えたから来ただけなのよ」

 

「突然居なくなるから探したぞ?」

 

「あら、ごめんなさいライザー」

 

ライザーの言葉に素直に謝るリアス先輩。

それにしても俺たちが見えたから来たとは……デート中じゃなかったのか?

俺はひとまずそんな思考は置いておき、祐奈が入っていった試着室から祐奈の声がかかるのを待つことにした。

 

「あぁ……士織。

祐奈を待つつもりなら先にあなたの水着を見てきたらどうかしら?」

 

「いや、着替えくらいすぐに終わるだろ?」

 

「ふふふ……祐奈のことだから恥ずかしがってなかなか出てこないと思うわよ?」

 

そう言ったリアス先輩は咳払いをすると試着室の方を向いて口を開く。

 

「祐奈!」

 

『は、はいっ?!』

 

若干裏返ったような声で返事を返す祐奈。

 

「士織の水着を見てきてもいいかしら?」

 

『い、いいですよ!

ただ……その……着たところは士織くんに……』

 

「分かっているわ。

一番初めに見せたいのね?

私が此処に残っているから声をかけてくれれば士織を呼ぶわ」

 

『は、はぃ……。

あ、ありがとうございます部長……』

 

祐奈は消え入りそうな声でお礼を述べる。なかなかどうして恥ずかしがっているようだ。

リアス先輩は会話を終えるとこちらを向く。

 

「私は此処にいないといけないから……ライザー一緒に行ってあげて?」

 

「お、俺がか?」

 

突然の指名に驚くライザー。まさか自分が呼ばれるなんて思っていなかったのだろう。

 

「男性であるあなたの意見は必要なはずよ」

 

「ふむ……」

 

顎に手を当てたライザーは俺の方を見てくる。そして頷くと分かったと短く言った。

 

「じゃぁ、お願いね?ライザー。

ほら、士織も行ってきなさい」

 

「あ〜……わかったわかった。

んじゃ、適当に買ってくるわ」

 

踵を返しながら、後ろ手に手を振り歩み出す。すると、後ろからライザーがついてくるのが気配でわかった。

 

 

 

 

 

「―――――それで兵藤士織」

 

唐突に声を掛けてくるライザーは隣に並ぶように立ち、周りを見回す。

 

「お前はどんな水着を買おうと思ってるんだ?」

 

「あぁ〜……シンプルなやつだな。

それとライザー。フルネームはやめろ。俺のことは士織でいい」

 

フルネームで呼ばれ続けるというのもむず痒いからな。

 

「そうか。ならば士織と呼ばせてもらおう」

 

「そうしてくれ」

 

そんな、短い会話を交わすと俺も軽く周りを見回す。ライザーは俺に合いそうな水着を何着か見つけているようだが……期待はしない。

と、俺が周りをキョロキョロしているのがまるで水着選びに困っているようにでも見えたのかライザーが再び口を開く。

 

「なんだ水着選びに迷っているのか?

何なら俺が見繕うが……どうする?」

 

案の定、予想通りの言葉を発するライザー。まぁ、暇潰しにその案に乗るのも悪くは無いかもしれない。

そういうわけで、俺はその言葉に頷く。

 

「じゃぁ、少し待っていろ何着か目は付けていたからな。そんなに時間は取らせん」

 

ライザーはそう言い残すと迷いなく歩みだし、合計3着の水着を持って俺の方へと戻ってきた。

 

「ほら、こんな風な物はどうだ?」

 

そう言ってライザーが見せてきたのはまず、白のビキニ。これは至ってシンプルなもので、布が少ないだとかそういったことはない。

 

次に黒のリボンデザインホルターネックビキニ。どちらかといえばこれは白のビキニよりも布の面積がある。

 

最後にこちらも黒のバンドゥビキニ。チューブトップ型でフリルがあしらっているのが特徴だろう。

……ふむ……こういう水着を持ってきたか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――却下。

全部棚に戻してこいこのアホ雛鳥が」

 

「なっ!?

そ、そこまで言うか!?」

 

目を見開き俺からの暴言に驚くライザー。

 

「そもそも俺は水着選びに迷ってない」

 

「……そうなのか。

ならお前が選んだという水着は?」

 

明らかに不機嫌そうなライザー。

まぁ、折角選んだものを頭から否定され、暴言まで吐かれれば誰しも不機嫌になるか……。

ひとまず俺の選んだ水着を取りに行く。

 

「ちょ、ちょっと待て士織っ!そっちは―――――」

 

「何慌ててんだよ。

―――――ほら、これなんかシンプルでいいじゃねぇか」

 

そういいながら慌てだしたライザーに水着を見せる。

俺が手に取った水着は、ライザーが選んだような『女性物』ではなく、列記とした『男性物』―――――黒のサーフパンツだった。

 

「お、お前……それは……」

 

「うん。やっぱりこれイイじゃねぇか。

ちょっくら試着してくるわ」

 

そう言って試着室に向かおうとするとライザーが俺の目の前に立ちはだかった。

 

「ま、待て待て待てぇッ!!

百歩譲ってその水着は良しとしよう……だがお前上には何もつけない気かッ!?」

 

「はぁ?何言ってんだよライザー。

お前その程度もわかんねぇのかよ」

 

「……そ、そうだよな?

勿論パーカーくらい羽織って―――――」

 

「んな邪魔クセぇもんいらねぇだろ」

 

「アウトぉぉぉぉお!!!」

 

いきなりそう言うライザー。そして何処から取り出したのか、はたまた高速で取ってきたのか、ライザーの手には黒のパーカーが握られていた。

 

「せ、せめてこれくらい羽織れ……ッ!」

 

「嫌だよ。俺の水着程度で無駄な出費はいらん」

 

「よし分かった!このパーカーは俺が買ってやろう!だから着てくれッ!!」

 

必死にそう言うライザー。

……さて、そろそろからかうのも止めるとするか……。

 

「―――――ライザー」

 

「っ!わ、わかってくれたか!?」

 

俺はスーッとライザーに近づくと、その手を掴み―――――俺の胸板に触れさせた。

 

「なッッ!!!?

し、士織っ!?お前は一体何をッッ?!!!」

 

面白いように狼狽するライザー。

……あれ?こいつなんか異常なまでに焦ってねぇか?いくら俺が男だって言ってないから女だと勘違いしててもこの慌てようは一体……?

 

 

 

まさかこいつ―――――原作より女慣れしてない……??

 

 

 

……やべぇ……からかうの続行だわ。こりゃ面白そうだ。

 

「ん……っ。俺って胸ないから別に良いだろ?」

 

「い、いやいやいやッ!!

そんなこと関係ないだろ?!」

 

そう言って慌てて手を離そうとするライザー。しかし、そんなことはさせない。何せ……ある気配が近づいてきているから。

 

 

 

 

 

「―――――ライザー?」

 

「……り、リアス……」

 

顔面蒼白。

その言葉が似合うような表情をライザーは浮かべていた。

 

「こ、これは違うんだ!これは士織が勝手に俺の手を……!」

 

ライザーの言葉に俺の方を見るリアス先輩。

……流石にここまでだな。

俺はリアス先輩にニヤッとした笑みを向ける。

 

「……全く……。

ライザーをからかって遊ぶのも止めてちょうだい?士織。

それとライザー?そんなに慌てなくても大丈夫よ。

流石に私も―――――男の胸を触っていて怒りはしないわ」

 

「す、すまな―――――男……?」

 

顔面蒼白から一転、ライザーはキョトンとした表情を浮かべ、俺の顔を見、そして胸を見て、もう一度俺の顔を見た。

 

「……士織?お前は男……なのか?」

 

「あぁ。俺は列記とした男だぜ?

いつから俺が女だと勘違いしていた……?」

 

「う、嘘だろ……」

 

「本当よライザー。

私も学校で名簿を見るまで女の子と思っていたのだけれど……」

 

苦笑い気味にそういったリアス先輩。ライザーもリアス先輩の言葉と俺本人からの言葉にそれが真実なのだと認識したようだ。

 

「……取り敢えず手を離してくれないか?」

 

「ん?あぁ……からかうのに集中してて忘れてたわ」

 

ライザーからそう言われて掴んでいたライザーの腕手を話す。

そうすれば今度はリアス先輩が俺に声をかけてきた。

 

「そうそう、祐奈が着替え終わったそうよ?」

 

「おっけーおっけー。

んじゃ、会計は後にして祐奈を見に行くかな」

 

俺はリアス先輩からの報告を受けて、水着の会計は後回しにすることを即座に決め、祐奈の着替える試着室へと足を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――その後、祐奈の水着姿を拝んだ俺は、その水着と自分の水着の会計を済ませ、リアス先輩とライザーと別れた。

ただひとつ、言いたいことがある。

 

 

 

―――――3人して俺にパーカーまで買わせるなッッ!!!

 

 

 

まさか男だとわかったのにも関わらず、ライザーまでもパーカーを買わせようとするとは……。

 

……まぁ、いろいろとあったが、今回のデートかなり楽しめたと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編の方はいかがでしたでしょうか?
楽しんでいただけたのなら幸いです♪

今回は久しぶりのライザーの登場となりましたっ!!(>_<)
本当は堕天使組の日常的なものも挟もうと思っていたのですが……それはまた今度ということで……!

それではまた次回お会いしましょう♪


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52話

皆さんお久しぶりなのですっ!!(>_<)
予約投稿していたはずなのになっていなくて慌てた夜叉猫なのです(苦笑)

ひとまず!
本編の方をどうぞっ!!(>_<)


Side 士織

 

「冗談じゃないわ」

 

夜中の裏の部活―――――悪魔家業をするためにいつも通り部室に集まれば、紅髪の美少女さまはまゆを吊り上げて怒りを露にしていた。

俺はいつも通り……一つのソファーに3人で座っている。祐奈は言わずもがな……俺を挟むようにして小猫も座っていたりする。

 

「確かに悪魔、天使、堕天使の三すくみのトップ会談がこの町で執り行われるとはいえ、突然堕天使の総督が私の縄張りに侵入し、営業妨害していたなんて……」

 

「いや〜……営業妨害というかむしろイイお客さんだったと言うか……」

 

一誠は怒りで震えるリアス先輩を見ながら苦笑気味にそう言った。

……まぁ、つまりはだ。一誠の契約相手として、アザゼルの阿呆が接触していたということか……。

 

「しかも私の大切な眷属であるイッセーにまで手を出そうなんて……万死に値するわ!

アザゼルは神器(セイクリッド・ギア)に強い興味を持つと聞くわ。きっとイッセーが【赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)】を持っているから接触してきたのね……。

大丈夫よイッセー、私がイッセーを絶対に守ってあげる」

 

一誠の頭を撫でながらリアス先輩は言う。

……それにしても言われたい放題だなアザゼルのやつ。

まぁ、リアス先輩は眷属を大切に可愛がるタイプだし、何より自分の所有物を他人に触れられたり、害されたりするのを酷く嫌う節があるからなぁ……。

 

「士織くんは心配じゃないの?」

 

「ん?何がだ?」

 

唐突にかけられた祐奈の声に首をかしげて見せる。

 

「イッセーくんの神器が狙われるのがだよ」

 

「あぁ……まぁ、その辺の有象無象にやられるほど一誠は弱くねぇし……それにアザゼルなら警戒しなくてもただの神器オタクだから大丈夫だろ」

 

まぁ、今あいつが……というより各陣営が気になっているのは俺の【神器】だろうしな。

と、そんなことを考えていると小猫の座っている方の袖を引かれるのを感じた。

何事かと顔を向けてみると、

 

 

 

 

 

「……士織先輩……にゃーん」

 

そう言いながら本日のお菓子であろうチョコレートケーキをフォークですくい、こちらへと向けている小猫の姿があった。

 

「あーん」

 

それを何のためらいもなく頂く。

うむ、甘すぎないのがポイント高いな!

 

「こ、小猫ちゃんズルイ!」

 

それを見た祐奈は慌てながらそう言う。小猫はと言うと頬を染めながら幸せそうな表情を浮かべている。

 

「士織くんは僕のか、彼氏なんだよっ!」

 

「……士織先輩は私の食べ歩き仲間です」

 

俺を挟んで火花を散らす祐奈と小猫。

なんとも可愛い戦いである。

 

「しかし、どうしたものかしら……。

あちらの動きがわからない以上、こちらも動きにくいわ。

相手は堕天使の総督。下手に接することも出来ないわね」

 

祐奈と小猫の戦いをひとまず置いておくとして、リアス先輩の方へ耳を傾けるとそんなことを呟いていた。表情を見るにかなり悩んでいるように見える。

……お、その悩みの解決はすぐそこみたいだな。

俺は傍に感じる気配にそんなことを心の中で呟く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――アザゼルは昔から、あぁいう男だよ、リアス」

 

入口の方から、聞き覚えのある男の声が聞こえてくる。予想はついているが視線を移す。

―――――案の定、そこにいたのは紅髪の男。

朱乃先輩たち古参のグレモリー眷属は跪き、一誠、アーシアは遅れながらもゆっくりと跪く。ただ、新顔であるゼノヴィアだけは疑問符を浮かべながらアワアワとしていた。

 

「お、お兄さまっ?!」

 

そう、紅髪の男とは悪魔業界の現魔王『サーゼクス・ルシファー』だ。

 

「先日のコカビエルのようなことはしないよ、アザゼルは。

今回みたいな悪戯はするだろうけどね。

しかし、総督殿は予定よりも早い来日だな」

 

サーゼクスはそういった。いつも通りなのだろうが、サーゼクスの後方には銀髪のメイドである、グレイフィア・ルキフグスがいるのが見える。

 

「くつろいでくれたまえ。今日はプライベートで来ている。

そうだね……そこの士織くんのようにね」

 

跪くグレモリー眷属を見たサーゼクスは変わりなくソファーに腰を下ろす俺へと視線を移しながら手をあげて、跪くのを止めるように促す。

 

「やぁ、我が妹よ。

しかし、この部屋は殺風景だ。年頃の娘たちが集まるにしても魔方陣だらけというのはどうだろうか……?」

 

部屋を見渡しながら、サーゼクスは苦笑いを浮かべる。

……確かに変な部屋だが……慣れというのは怖いな。

 

「お兄さまど、どうして此処へ……?」

 

怪訝そうにリアス先輩が訊く。

すると、サーゼクスは1枚のプリント用紙を取り出した。

 

「何を言っているんだ。授業参観が近いのだろう?私も参加しようと思っていてね。

是非とも妹が勉学に励む姿を間近で見たいものだ」

 

……あぁ〜……そういやもうすぐこの学園で授業参観があったな……。俺のところの父さんと母さんもノリノリで乗り込むと張り切っていた。

なんでも自分たちの子供の授業風景を見たいらしい。

しかも、堕天使組の3人も来るらしい。

 

「ぐ、グレイフィアね?お兄さまに伝えたのは……」

 

何処か困った様子のリアス先輩の問いにグレイフィア・ルキフグスは頷く。

 

「はい。学園からの報告はグレモリー眷属のスケジュールを任されている私のもとへ届きます。むろん、サーゼクスさまの【女王(クイーン)】でもありますので主への報告も致しました」

 

それを聞き、リアス先輩は嘆息する。

……まぁ、原作を知ってる身とすればリアス先輩の乗り気じゃない雰囲気も察することができるのだが……。

 

「報告を受けた私は魔王職が激務であろうと、休暇を入れてでも妹の授業参観に参加したかったのだよ。

安心しなさい。父上もちゃんとお越しになられる」

 

「そ、そうではありませんっ!

お兄さまは魔王なのですよ?仕事をほっぽり出してくるなんて!

魔王がいち悪魔を特別視されてはいけませんわ!」

 

確かに魔王という立場から身内だからといって特別にしてもらうのは問題があるな……。まぁ、今回は大丈夫だろうけど。

予想通り、サーゼクスはリアス先輩の言葉に首を横に振った。

 

「いやいや、これは仕事でもあるんだよ、リアス。

実は三すくみの会談をこの学園で執り行おうと思っていてね。会場の下見にも来ているんだよ」

 

サーゼクスの言葉に俺以外の全員が驚きの表情を浮かべている。

 

「―――――っ!!此処で?本当に?」

 

「あぁ。この学園とはどうやら何かしらの縁があるようだ。

私の妹であるお前と、伝説の赤龍帝、聖魔剣使い、聖剣デュランダル使い、魔王『セラフォルー・レヴィアタン』の妹が所属し、コカビエルと白龍皇が襲来してきた。

更には……」

 

そう後を濁して、意味深な視線を俺の方へと向けるサーゼクス。俺は肩をすくめて軽く返す。

 

「……何はともあれ、これは偶然で片付けられない事象だ。

様々な力が入り混じり、うねりとなっているのだろう。

そのうねりを加速度的に増しているのは恐らく―――――兵藤くんたち(・・)だと思うのだが」

 

目を細めながらそう締めるサーゼクスに一誠は苦笑する。

 

「―――――そこで、だ。

士織くん、当日の会談に君も参加して欲しいんだが……」

 

「…………」

 

俺は無言で首を縦に振り、了解の意思を伝える。サーゼクスはそれに満足そうに微笑んだ。

 

 

 

 

 

「あなたが魔王か。

初めまして、ゼノヴィアという者だ」

 

そんな中、新たに話かけてきたのは緑色のメッシュを髪の毛に入れているポンコツ――――いや、新人悪魔のゼノヴィアだ。

 

「ごきげんよう、ゼノヴィア。

私はサーゼクス・ルシファー。リアスから報告を受けている。

聖剣デュランダルの使い手が悪魔に転生し、しかも我が妹の眷属となるとは……正直最初に聞いたときは耳を疑ったよ」

 

「私も悪魔に転生するとは思わなかったさ。

今まで屠ってきた側に転生するなんて、我ながら大胆なことをしたとたまに後悔して……いや、そんなことは無いな。毎日楽しく生活させてもらっている」

 

柔らかな笑みを浮かべてそう言うゼノヴィア。一誠もそんなゼノヴィアを見て安心しているようだ。

 

「ハハハ、妹の眷属は楽しい者が多くていい。

ゼノヴィア、転生したばかりで勝手がわからないかもしれないが、リアスの眷属としてグレモリーを支えて欲しい。

―――――宜しく頼むよ」

 

「聖書にも記されている伝説の魔王ルシファーにそこまで言われては私も後には引けない。

どこまでやれるかわからないが、やれるところまではやらせてもらう」

 

ゼノヴィアの言葉を聞き、サーゼクスは微笑む。何処かリアス先輩に似たものを感じるのはやはり兄妹だからだろうか。

 

「ありがとう」

 

サーゼクスのお礼を聞くと、ゼノヴィアは頭を下げて一誠の方へと近寄っていった。

 

「さて、これ以上難しい話をここでしても仕方が無い。

うーむ、しかし、人間界に来たとはいえ、夜中だ。

こんな時間に宿泊施設は空いているのだろうか……?」

 

……予約を取ってるわけじゃなかったのか……。

俺は溜息をひとつ吐くと、口を開く。

 

「だったら家に来るか?サーゼクス」

 

「ちょっと士織!

魔王さまにその口調は失礼よ!?」

 

リアス先輩は慌てた様子でそう言うが、サーゼクスは笑いながらそれを制する。

 

「いいんだよリアス。

彼にいつも通り接して欲しいと言ったのは私なんだからね。

それで士織くん。君の家にと言うのは?」

 

「なぁに、泊まるところがねぇんだろ?

だったら家に来ればいい。

……ただし、家には引き取った堕天使4人が居るがそれを気にしないなら、だが」

 

含みを持ったようにわざとらしく聞くとサーゼクスはクスリと笑って口を開いた。

 

「気にすることなんて何も無いよ。

じゃぁ、お願いできるかな?」

 

「任せておけ」

 

そう言って俺は家に電話を入れる。

―――――『友人を今夜泊めてもいいか』と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編の方はいかがでしたでしょうか?
楽しんでいただけたのなら幸いです♪

更新速度を上げると言ったはずなのに遅くなってごめんなさい……(*óㅿò*)シュン。。。
一応書き貯めはあるので少しは早くなると思うですっ!!!(>_<)

さて、それではまた次回お会いしましょう♪


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53話

皆さんこんばんはっ!!(>_<)
私には珍しい連日更新が再びなのですっ♪

とは言っても短いものなのですが……(苦笑)

それではさっそく、本編をどうぞっ!!


どうも、兵藤 士織だ。

 

 

 

俺たちは部室での悪魔家業終了後、約束通り、サーゼクスとグレイフィアを連れて兵藤家に向かっていた。

 

「ただいま〜」

 

「おかえりなさい♪士織ちゃんに一誠ちゃんにアーシアちゃん♪」

 

まず初めに玄関で出迎えたのは母さん。

客が来ると言ったのに、母さんは全くブレず俺たちを一人一人抱き締めていく。こうして俺たちの存在と成長を確認しているらしい。

 

「ほら、お客さんがいるんだから離れて!」

 

「あ、ごめんなさいね!

ついついいつもの癖が抜けなくって……」

 

恥ずかしがる一誠に肩をつかんで離された母さんは笑顔を浮かべながらそう言った。

 

「いやいや、気にしないで。

所でお母さんはいらっしゃるかな?」

 

サーゼクスは微笑ましいものを見たという風に笑うと優しい声音で訊ねた。

 

「えっと……」

 

その言葉に母さんは首をこてんと横に倒す。……どうやら母さん、サーゼクスが自分を母親だと認識されていないのに気が付いていないようだ。

……まぁ、この見た目だとな……。

 

「……サーゼクス。

今目の前にいるのが俺たちの母さんだ」

 

「何冗談を……―――――本当かい……?」

 

こちらを見て笑うサーゼクスに真顔で返すと、母さんの方を二度見した。

そして、咳払いをすると改めて笑みを浮かべて口を開く。

 

「これは失礼致しました。

お若く、可愛らしいので、てっきり妹さんかと思ってしまいました。

私はサーゼクス・グレモリーと申します」

 

「えへへ♪

そんなに褒めないでくださいよ〜♪

あ、士織ちゃんたちの母親の兵藤 葵泉です♪」

 

にへらと表情を緩め、自己紹介を返す母さん。――――――と、その背後から1人の男が現れた。

 

 

 

 

 

「―――――士織、一誠、アーシアお帰り。

そして……いらっしゃい。

玄関で立ち話もなんだ、士織、リビングにお通ししろ」

 

母さんを守るように仁王立ちして凄む我らがお父様……。

……父さん……サーゼクスを威嚇するのはやめろ……。最早サーゼクスが苦笑いを浮かべてるから……。

 

「ふふっ♪

大丈夫よ賢夜さん♪」

 

そう言って父さんの頬に口づけする母さん。それだけで父さんからの威嚇は消え、頬がほんの少しだけだが緩む。

……だから客の前では自重しろし……。

俺は溜息を吐き、ひとまずリビングへとサーゼクスとグレイフィアを案内することにした。

 

 

 

 

 

……ちなみにだが、母さんを褒めるサーゼクスを見て、いつもは無表情のグレイフィアが一瞬だけ表情を崩したが……これは言わぬが良しだろう。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

リビングにおいてあるソファーに父さんと母さん、対面にサーゼクスが座り、その隣にグレイフィアが立つ構図となり、俺と一誠、アーシア、そして何処からともなく現れた堕天使4人娘は少し離れた所から4人の様子を窺っていた。

 

 

 

「こんな夜分遅くに宿泊を許可していただきありがとうございます。

奥さまには自己紹介しましたが、私はサーゼクス・グレモリーと申します」

 

「兵藤 賢夜だ。

何、士織の友人だと聞いたら断るわけにはいかんからな……。

で、その隣のメイドさんは……?」

 

簡単な自己紹介を交わした後に、父さんはグレイフィアの方に視線を移すとそう口にする。

 

「ええ、彼女はグレイフィアと言います。

私の仕事の補佐をしているのですよ」

 

サーゼクスがそう返すと、グレイフィアは頭を下げる。

 

「ほぅ……会社か何かを経営で?」

 

「えぇ、まぁ、父の経営していた会社を継いだような形になりますが……。

未だに若輩者故に、グレイフィアが居なければ仕事も思うように回せません」

 

サーゼクスは苦笑しながら隣のグレイフィアを見つめる。

そんなサーゼクスの様子を見た父さんは顎に手を当てながら口を開いた。

 

「随分と彼女を大切にしているようですな?」

 

父さんのその発言に一瞬驚いた様子のサーゼクスだったがクスリと笑い言葉を発する。

 

 

 

「それはもちろん。

なにせ彼女は――――――私の愛する妻ですから」

 

 

 

サーゼクスは先程まで浮かべていた苦笑から、暖かな微笑みへと表情を変貌させて見るもの全てが彼は幸せなのだろうとわかるような表情を見せた。

 

「さ、サーゼクスっ!」

 

そんなサーゼクスの頬をグレイフィアは抓る。だが、頬を抓るグレイフィアはいつもの無表情から一転、恥ずかしそうな表情を浮かべていた。

 

「め、メイドのグレイフィアです。

我が主がつまらない冗談を口にして申し訳ありません……っ」

 

「いたひ、いたひひょ、ぐれいふぃあ」

 

頬を羞恥に染めるグレイフィアと涙目で朗らかに笑っているサーゼクス。

……こりゃ見てたら一目瞭然だな……。

2人の仲の良さがよく分かる一面を見たような気がする。

 

 

 

 

 

―――――閑話休題。

 

 

 

 

 

「御二人も授業参観に参加しに来たんですか?」

 

母さんがサーゼクスに話しかける。

先程まで立っていたグレイフィアも今ではサーゼクスの隣に腰掛けている。

 

「えぇ、仕事が一段落しているので、この機会に1度妹の学舎を見つつ、授業の風景も見学出来たらと思いましてね。

当日は父も顔を出す予定です」

 

「まぁ、お父さんもいらっしゃるんですか」

 

「父は駒王学園の建設などにも携わっておりまして、私同様、良い機会だからと顔を出すようです。

……まぁ、本音はリアスの顔を見たいだけだと思いますが」

 

「サーゼクスもそうでしょう?」

 

「ははは……これは痛いところをついてくるね」

 

グレイフィアからの言葉に笑いながら頬を掻くサーゼクス。

 

「グレモリーさん、お腹は空いていませんか?」

 

そんな2人の様子を微笑ましそうに見つめていた母さんが手をパン、と叩くとそう言った。

 

「えっと……お恥ずかしながら少し……」

 

「うふふ♪良かった♪

ちょうど料理を作ってたんです♪

どうですか?お食べになられます?」

 

「本当ですか?

では……お言葉に甘えて……」

 

「申し訳ありません……」

 

サーゼクスとグレイフィアは頭を下げながらそう言う。それを見た母さんは待っててください♪と言い、機嫌も良さそうにキッチンの方へと向かっていく。

 

「2人はお酒はいけるクチかな?

ちょうど日本の美味い酒が手に入っていてね」

 

そう言った父さんは自分専用の酒部屋から数本の日本酒らしきものを持ってきた。

 

「そ、それは!」

 

「……ほぅ?コイツを知っているようで?」

 

父さんの持ってきた日本酒のラベルを見たサーゼクスが目を見開いて声を上げる。

 

「それは勿論!

【悪魔殺し】に【冥界崩し】、それに【魔王の涙】じゃないですか!

そのような高級品を見たのは初めてです!」

 

目を輝かせながら興奮気味に喜ぶサーゼクス。

……なんだそのいかにも含みのある酒のチョイスは……。偶然か?偶然だよな??

俺は父さんの顔をついつい見てしまう。

 

「料理お待ちしました〜♪」

 

そんな時、キッチンからたくさんの料理を皿に盛り付けて持ってくる母さんの声が響く。

 

「―――――()()()()の手料理だ。

酒を飲みながら一緒に味わおうではないか」

 

「ふふふ……!

それは素晴らしい!是非とも味わわせてください!」

 

父さんとサーゼクスはニヤリと笑い意気揚々と、コップを手に持った。

……こりゃ、この飲み会は長いな……。

俺は苦笑しながら、部屋へと戻ろうという旨の話をみんなにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――これは完全に余談だが、次の日の朝、遅くまで客間で仲良く眠るサーゼクスとグレイフィアの姿を見た。

どうやら2人して父さんに飲み負かされたようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編の方はいかがでしたでしょうか?
楽しんでいただけたのなら幸いです♪


さてさて、今回の話でわかった人もいるでしょうが……グレイフィアさんの微妙なキャラ崩壊がっ!!(>_<)
今後どんな変化が出てくるかはお楽しみに♪


それでは、また次回お会いしましょう♪


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54話

皆さん遅くなってすみませんっ!!(>_<)
中間テストの時期でして……執筆することが出来なかったのですよ……(苦笑)


ひとまず、本編をどうぞ!


どうも、兵藤 士織だ。

 

 

サーゼクス来訪から数日。

もう既に家には泊まっていないが、今は町の下見をしているようだ。

 

……ただ、1日だけ俺も一緒に下見とやらに行ったが……ほとんど遊んでいたイメージしかない。

ゲームセンターに行けば目を輝かせ、冥界に作りたいだのと言い、ハンバーガーショップに行けばメニュー全てを制覇し、冥界にもこの味を!とテンションを上げ、神社に行けばサーゼクスの持つ大量の魔力で神聖なパワーを吹き飛ばして力ずくの御参りをする始末……。

……あの時は溜息の連発だったなぁ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……暑い……」

 

青い空に白い雲。肌を焼くような陽射しを浴びながら、俺は1人通学路を歩んでいた。

―――――しかし、今日は日曜日。

勿論学校は休みなのだが、(くだん)のオカルト研究部でのプール開きがあるため、俺は駒王学園に向かっているのだ。

何故、一誠やアーシアが一緒に来ていないかというと、楽しみすぎて2人して先に皆を呼びに行ったのだという。

 

 

 

 

 

……決して俺が寝坊したわけではない。

 

「……つかマジで暑いな……」

 

祐奈と一緒に買った水着を入れた袋を気怠げに持って、うんざりと呟く。

暑すぎるというのも考えものだ……寒すぎるのも嫌だが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――いやぁ〜……本当に暑いね」

 

 

 

「……ッッ!!?」

 

―――――刹那。

俺はその場から跳躍し逃げ出す。

 

(一体いつの間に俺に近寄ってきた……っ?!)

 

着地するやいなや、俺は先程まで自分の居た場所へと警戒の視線を向け、いつでも攻撃の出来る体勢へとシフトさせる。

 

 

 

 

 

「―――――久しぶりだね兵藤士織くん?」

 

だが、そこには、ニコニコと笑う少女が1人立っているだけ。

 

 

 

 

 

―――――否、彼女は……いや、彼は……。

 

 

 

 

 

「……こちらこそ久しぶり、()()

 

俺のことを転生させてくれた―――――【神様】が、初めて会った時同様、和服を着こなし、羽織を纏いそこに立っていた。

 

当然、俺は警戒の体勢を崩していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――それにしても神様が来ちまっても良いのかよ?」

 

俺は近くのコンビニで買った『ギャリギャリくん』なるソーダ味のアイスを座りながら齧り、夜鶴に言う。

 

「ん〜……俺としては観光みたいなものだしね……。

誰かを殺したりして物語を歪めなければ大丈夫なんじゃないかな?」

 

夜鶴も俺の渡した『ギャリギャリくん』を齧りながら、ベンチに座って足をブラブラとしていた。

 

「それでどうかな?

転生させた側としては第2の人生、楽しんでもらえてるか気になるところなんだけど?」

 

「そりゃ、楽しいさ。

毎日が幸せで満ち満ちてる。

この後だって仲間とプールで遊ぶんだぜ?」

 

自然と浮かぶ笑みを隠すことなく、夜鶴に向ける。

 

「プールに行くのかい?

こんな暑い日には最高じゃないか」

 

「なんなら夜鶴も一緒に行くか?」

 

「ん〜……それもいいかもしれないねぇ……」

 

そう言いつつ再びアイスを齧る夜鶴。俺もそれに倣ってアイス咀嚼していく。

 

「でもいいのかい?

俺は全く関係ないと思うんだけど……?」

 

「なぁに、リアス先輩たちのことだし快く許可してくれるさ」

 

プールに入るんだし、人数は多くワイワイとした方が楽しいだろう。俺は笑みを浮かべて夜鶴にそう言った。

 

「……なら、お言葉に甘えようかな?」

 

クスクスと笑いながら夜鶴は俺の提案に乗ってくれる。

 

「―――――おっし!!」

 

俺は残ったアイスを一気に頬張ると、冷たさで眉をひそめながら振り子の如く立ち上がる。

 

「ならそろそろ行こーぜ!

時間的にも今から行けば丁度いい筈だからよ!」

 

「ん……。了解したよ」

 

そう言った夜鶴は残ったアイスをシャリシャリと言わせながら食べ終わらせていた。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「遅いなぁ……」

 

「遅ぇなぁ……」

 

「遅いねぇ……」

 

「遅いな……」

 

俺と一誠、夜鶴、そして()()()()は水着に着替えてプールサイドで陽射しに晒されていた。

どうも、このプール開き、オカルト研究部だけではなく、ただの仲のいい友人同士で遊ぼうという感じのものだったらしく、夜鶴の参加も快く認められたのだ。

……ライザーはリアス先輩とイチャつきにでも来たのだろう。

 

 

 

 

 

「というか、2人とも水着似合ってるな」

 

「さんきゅ、一誠。

まぁ、パーカーを着ないといけないのが不満だけどな」

 

「仕方ないさ士織くん。

俺たちみたいな人種っていうのはこういうのが運命なんだよ」

 

夜鶴はもう既に諦めているというような表情で俺の肩をぽん、と叩く。

……言わずもがな、俺と夜鶴はパーカー着用だ。

 

「リアスから聞いた士織はともかく……夜鶴、お前は本当に男か……?」

 

腕を組み、夜鶴を見ながらライザーは神妙な面持ちでそういった。

 

「これでも一応男なんだよね……」

 

苦笑しながら夜鶴は言う。

……やはり未だにライザーは男だと思えないらしい。

 

「ほら、俺っていう前例があるんだから信じろよライザー」

 

「……それもそうだな」

 

ライザーはふっ、と笑みを浮かべた。

そんなふうにして、俺たち4人は雑談を交えながら互いに交友を深めていた。

……しかしメンバーを改めて見ると凄いな。

【人間】、【赤龍帝】、【神様】、【不死鳥】……過剰戦力の塊みたいなもんだな……。

 

―――――そうこうしているうちに、女子更衣室の方から声と足音が聞こえて来る。

 

 

 

 

 

「―――――あら、4人とも早いのね」

 

初めに姿を現したのはリアス先輩。

流石と言うべきか、そのスタイルを際立たせる様に布の面積が少なめの赤いマイクロビキニを着こなし、自らの肢体の魅せ方を熟知しているようだ。

 

「うふふ、張り切ってますわね。

ライザーさんがいるからかしら?」

 

口元に手を当ててお淑やかに笑う朱乃先輩。こちらもマイクロビキニであったが、対極的な白。白い肌に合わさり、淡いながらそのスタイルで妖艶さが出ている。

 

「イッセーさん!わ、私の水着どうですかっ?」

 

先輩2人に続いてアーシアと小猫の登場。

タンキニを2人とも着ていたが、アーシアはボトムがスカートでライトグリーン、小猫はボトムがショートパンツで黒といった違いがあった。

 

「可愛いぞアーシア。よく似合ってる」

 

「えへへ♪

イッセーさんにそう言われると嬉しいです」

 

にこにこと笑うアーシア。一誠もそれを見て微笑んでいる。

 

「……士織先輩……どうですか……?」

 

小猫は俺の方に近寄ってきて恥ずかしそうにそういった。俺は微笑みながら口を開く。

 

「小猫らしくて可愛いと思うぜ?」

 

「……ありがとうございます」

 

ぷいっとそっぽを向きながらも何処か嬉しそうだ。

 

 

 

 

 

「―――――し、士織くんっ!」

 

そんな中、俺の名を呼ぶ緊張した声が聞こえてくる。

発生源の方へと視線を送れば、そこにいたのは淡い空色のホルターネックビキニを身に纏い、薄いパレオを巻いた少女―――――祐奈。

 

「どう……かな?」

 

祐奈はゆっくりと俺の前まで来ると、上目遣いに言った。

 

「試着室で見た時より、外で着てる方が映えるな。―――――綺麗だぜ?」

 

「~~~~~~~~~っっ!」

 

俺の言葉に顔を赤く染めて悶える祐奈だったが、その頬は緩みに緩みきっていた。俺はそんな様子の祐奈の頭を優しく撫でる。

 

「ど、どうしたの?」

 

「ん?いや、可愛かったからついな」

 

「あぅ……」

 

湯気が吹き出てくるのではないかと心配になるほど祐奈の顔は更に赤く染まってしまう。

……全く……反応がわかりやすいやつだ。

 

「おい見てみろよライザー。

士織の奴締まりのない顔してるぜ?」

 

「あぁ一誠俺も思ってた所だ。

士織もあんな顔をするんだな」

 

「幸せそうで何よりだね」

 

傍から聞こえてくるのは一誠たちの言葉。ちらりとそちらを向けばニヤニヤとした笑みを浮かべているのがわかった。

どうやら反応がわかりやすいなどと思いながらも俺も祐奈のことは言えないらしい……。

 

 

 

「さて、それじゃぁ皆!

私たちのプール開きを始めましょう!」

 

『おう!(はい!)』

 

リアス先輩の掛け声に、その場の皆は笑顔で声を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういやゼノヴィアの奴はいねぇのか?」

 

俺がふと、思ったことを口にする。

 

「ゼノヴィアなら『先に始めておいてくれ』って言ってたから後で来ると思うよ?」

 

「そうか。いないわけじゃないなら良いんだ」

 

俺と祐奈はそんな会話を交わして、プールを楽しむことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編の方は如何でしたでしょうか?
楽しんで頂けたのなら幸いです♪


さてさて……久しぶりの登場の夜鶴なのですっ!(>_<)
問題児の方を書いていなかったので本当に久しぶりでした(苦笑)
問題児の方も執筆しないといけないのですが……ついついハイスクールD×Dの方ばかり書いてしまいまして……(苦笑)


ひとまず、今回はここまでっ!
また次回お会いしましょう♪




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55話

皆さんハッピーハロウィンなのですっ♪
とは言ってもいつもとそんなに変わらない日を過ごす夜叉猫なのですよ~(笑)

ともかく、本編のほうをお楽しみください♪


side 3人称

 

「ほら、リズム良く脚を動かすんだ」

 

「はい、いち、に、いち、に……」

 

ぱしゃぱしゃぱしゃ―――――と、水音が鳴る。プールの中に見えたのは小猫の手を握り、バタ足の練習に付き合う士織、そしてその隣にはアーシアが一誠と共に小猫と同じバタ足の練習をしている姿だった。

 

―――――小猫とアーシア。

この2人、話を聞くところによると泳げないという。そんな2人に士織と一誠は泳ぎの練習を手伝っているのだ。

 

「2人とも頑張って!」

 

プールサイドでは祐奈が一生懸命練習する2人へのエールが飛んでいた。

それに応えるように、小猫とアーシアは時折『ぷはぁ』と息継ぎしては懸命にバタバタと足を動かしている。

 

「ぷはぁ……っ。

……士織先輩、付き合わせてしまってゴメンなさい……」

 

小猫は申し訳なさそうにそう言った。

 

「ん?気にすんなよ。

泳ぎの練習に付き合うってのもなかなか面白い経験だしな。

それに、小猫に頼まれたんなら断れねぇよ」

 

にかっと笑う士織に小猫は頬を緩ませる。その様子を見る祐奈は見るからに面白くなさそうだ。

 

「っと……端に着いたぜ」

 

25メートルをバタ足で泳ぎきった小猫は勢い余って、士織にぶつかってしまう。偶然にもそれは抱きついているかのように見えた。

 

「……士織先輩は、やっぱり優しいですね。

……だからこそ私は……」

 

頬をほんのりと赤く染めながら小猫は言葉の終いをごにょごにょと喋る。

 

「優しかねぇよ。

俺は俺の好きなように行動してるだけだしな。

どっちかというと我侭で自己中な男さ」

 

小猫の頭を撫でながら、士織は自傷気味に言う。

 

「い、いつまで抱き着いてるの!?小猫ちゃんっ!

士織くんは僕のなんだよっ!!」

 

そんな時、プールサイドで見ているだけだった祐奈が我慢しきれずに飛び込んで来る。

 

「……泳げないから捕まってただけです」

 

「ここは足がつくでしょっ!」

 

「……私、小さいですから」

 

「む、むうぅ~!!」

 

小猫と祐奈は火花を散らしているかのように睨み合う。まさにキャットファイト寸前である。

 

「―――――ほら、2人とも仲良く遊べ」

 

「にゃっ?!」

 

「あぅ?!」

 

そんな2人を止めたのは言わずもがな士織。額にデコピンを放ったのだ。

おでこを2人して押さえながら文句あり気な表情で士織を見つめる。

 

「取り敢えず……どうする?小猫。

もう1周行っとくか?」

 

「……お願いします」

 

「こ、今度は僕も一緒に隣で泳ぐからねっ!」

 

「……祐奈先輩は思いっきり泳いでても良いですよ……?」

 

「僕も行くのっ!」

 

「ほらほら、ケンカしてねぇで仲良くな?仲良く」

 

士織はそう言いつつ、2人へ微笑ましいものを見るような視線を送っていた。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「皆楽しんでんなぁ……」

 

小猫との泳ぎの練習を終えた士織はプールサイドに用意していたビニールシートの上で祐奈、小猫に寄り掛かられながら周りを見渡していた。

 

 

 

「リアス、どうだ?」

 

「んっ……マッサージまでしてくれるなんて……流石ね、ライザー」

 

うつ伏せに寝るリアスに、ライザーはオイルを塗りながらのマッサージ。

互いに話しながら自分たちの空気を作り出していた。

 

 

 

「朱乃先輩泳ぐの上手っすね」

 

「あらあら、うふふ。

ありがとうございますイッセーくん」

 

朱乃と一誠はプールで泳ぎを満喫している。アーシアもいるかと思いきや、泳ぎの練習で疲れたのだろう。プールサイドでコクリコクリと船をこいでいた。

 

 

 

「む……また負けたか……。

……やるな夜鶴……」

 

「ふふふ……。

ゼノヴィアちゃんもなかなかだよ」

 

後からきちんと現れたゼノヴィアは夜鶴と共にプールで競争をしていた。

今のところは夜鶴の全勝。負けず嫌いなゼノヴィアは何度も挑戦しているのだ。

 

 

 

「俺たちはどうする?」

 

士織は寄りかかっている小猫と祐奈に声をかける。

 

「……私は疲れたので少し休憩です」

 

そう言った小猫は何処からともなく取り出した饅頭を小さな口ではむはむと食べ始める。

 

「僕も休憩かな……。

あ、小猫ちゃん小猫ちゃん。

僕にもひとつくれない?」

 

「……どうぞ」

 

「ありがとう♪」

 

祐奈は小猫から饅頭を貰って幸せそうに食べる。士織はそんな2人に寄り掛かられながら、このままゆっくりするのも乙か……と考え小さく笑った。

 

「小猫俺にも饅頭くれよ」

 

「どうぞ」

 

「さんきゅー」

 

明らかに返事の速度の違う小猫だったが、それに気が付き、あまつさえ言葉にするものなどこの場には居なかった。

 

 

 

 

 

Side Out

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

Side 一誠

 

「んん~!今日は遊んだなぁ……」

 

皆よりもひと足早く更衣を済ませた俺は校庭の方へ足を向けていた。

それにしても今日は楽しかった。こうやって皆で集まって思いっきり遊ぶというのもやっぱり良いものだ。

 

―――――そんなことを考えながら、校舎を出ようとした俺の視界に銀が映り込む。校門のところだ。

 

「…………」

 

無言で校舎を見上げる……美少年。グレイフィアさんの銀髪よりもダークカラーの長い銀髪を無造作に後ろで纏めたその姿はまるで1枚の絵画と勘違いしそうだ。

見た目から年齢を予想するに俺と同い年か少し若いくらいだろう。

ふと、その美少年が俺に気がついたのか視線をこちらに移した。

引き込まれるほどに透き通った蒼い瞳。それがまるで芸術品のようだ。

 

「―――――やぁ、いい学校だね」

 

「まぁな。俺の大切なモノがたくさん詰まった場所だから」

 

この美少年の正体は薄々気がついている。

俺の中の神器が疼くんだ……まるで積年のライバルが現れたと言わんばかりに。

―――――そして、彼は口を開く。

 

 

 

 

 

「オレはヴァーリ。白龍皇―――――【白い龍(バニシング・ドラゴン)】だ」

 

「あぁ……分かってた。

ここで会うのは2度目だったよな?

前は全身鎧だったから顔まではわかんなかったけど……そのオーラと声は覚えてる」

 

俺は不敵な笑みを浮かべて言った。

白龍皇―――――ヴァーリも俺の言葉に笑みを浮かべる。

 

「それで?今回は何の用だ?

『赤』と『白』の決着でもつけに来たのか?」

 

龍のオーラを漏らしながらヴァーリに問う。

 

「これは……心地良い龍の波動だな……。

戦うつもりはなかったんだが……気が変わってしまいそうだ」

 

そう言って、ヴァーリが俺の方に手を伸ばしてきた―――――その時。

 

 

 

 

 

「―――――何をするつもりかは知らないけど、冗談が過ぎるんじゃないかな?」

 

「―――――ここで赤龍帝との決戦を始めさせるわけにはいかないな、白龍皇」

 

2本の剣―――――祐奈の聖魔刀とゼノヴィアの聖剣がヴァーリの首に突きつけられていた。

祐奈とゼノヴィア、2人の剣は強烈なオーラを発している。

しかし、剣を向けられたヴァーリは全く動じることなく立っていた。

 

 

 

「止めておいた方がいい。

キミたち程度じゃオレを害することなんてできないさ」

 

ヴァーリの涼しい表情にその言葉が伊達や酔狂で言ったものではないことが分かる。

祐奈とゼノヴィアも表情を強ばらせているのが見えた。

 

「誇っていい。相手との実力差が分かるのは、強い証拠だ」

 

それは俺も同意する。

士織にも初めに教えられた。相手の実力を見誤ることだけはするな、と……。

 

「兵藤一誠、キミはこの世界で自分が何番目に強いと思う?」

 

突然の問いかけ。

……俺の強さか……。

自分は決して弱くは無いと言える自身はあるが……しかし、自分が最強だと言えるほど俺も自惚れてはいない。

 

「先ほど感じた龍の波動から感じるに、【禁手】となったキミの強さは上から数えれば3桁に入ることもできるだろう」

 

一体何が言いたいのかがわからない俺は怪訝な表情を浮かべていたと思う。

 

「この世界は強いものが多い。

紅髪の魔王(クリムゾン・サタン)】と呼ばれるサーゼクス・ルシファーでさえトップ10内に入らない。

……まぁ、あの士織とかいう少女ならトップ5入りは夢ではないかもしれないけどね」

 

士織よりも強い奴がいる……その言葉に俺は驚く。

あの士織が負けるかもしれない相手がいるっていうのか……?

俺がそんなことを考えていると、ヴァーリが指を1本立てた。

 

「だが、1位は決まっている。―――――不動の存在が」

 

「不動の存在……か」

 

俺の呟きにヴァーリはくすりと笑う。

 

「いずれわかるだろう。ただ、オレじゃないことだけは確かだ」

 

「んなもん言われなくても分かってる」

 

どうやら、ヴァーリの奴が自惚れているということはないようだ。

 

 

 

それから一拍あけて、獰猛に笑うヴァーリ。

 

「なぁ―――――自分よりも強い奴がいるって考えるとワクワクしないか?」

 

その笑みと言葉は俺ではない方に向けられていた。

 

 

 

 

 

「―――――しないな。というかどうでもいい」

 

向けられていたのは俺の背後に来ていた士織。更にその後ろに他の皆も揃っていた。

 

「生憎と俺はお前と違って戦闘狂じゃないんでね」

 

「酷いな、オレだって戦闘狂じゃないさ。

ただ、強者との戦いを楽しんでいるだけだ」

 

「それが戦闘狂っていうんだよ……」

 

淡々と交わされる会話に俺は口を挟まなかった……いや、挟めなかった。

士織の顔が無表情だったから……。

 

「取り敢えず帰れ、白龍皇。

折角の楽しさがお前のせいで台無しだ」

 

「これはこれは……すまなかった。

じゃぁ、言われた通り帰るとしよう。

―――――兵藤一誠、また会おう。君とも戦いたくなった」

 

肩をすくめながら、そういったヴァーリ。

そして、校門を出る寸前、何かを思い出したかのように振り返って口を開いた。

 

 

 

 

 

「―――――【二天龍】と称されたドラゴン。『赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)』と『白い龍(バニシング・ドラゴン)』。

過去、関わった者はろくな生き方をしていない。―――――キミたちはどうなるんだろうな?」

 

 

 

 

 

そう言い残して、今度こそヴァーリは俺たちの前から姿を消していった。

 

 

 

 

 

ヴァーリの残した言葉にその場の緊張感は晴れない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編の方はいかがでしたでしょうか?
楽しんでいただけたのなら幸いです♪

さぁ、やっと登場しましたヴァーリさんっ!(>_<)
一誠くんの強化によりヴァーリさんも強化しないとなぁ……と思っています!
今後の展開をお楽しみに♪

それではまた次回お会いしましょう♪


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56話

皆さんこんばん♪
最近では一週間に1度更新を守れそうで嬉しい夜叉猫です(*´ω`*)

ひとまず本編をどうぞ♪


どうも、兵藤士織だ。

 

 

 

白龍皇であるヴァーリの来訪からしばらくして、ある日の朝。

 

「士織ちゃん!一誠ちゃん!アーシアちゃん!後で賢夜さんと一緒に絶対行くからねっ!」

 

朝からかなりの気合を入れた母さん。登校直前の玄関前でまでそんなことを言わなくてもいいんだが……。

ついつい苦笑いが浮かぶ。

 

「はいっ!楽しみにしてます!」

 

母さんの言葉に満面の笑みを浮かべて嬉しそうなアーシアの姿。

……一誠、アーシアを微笑ましそうな表情で見るのはいいが母さんまでそんな表情で見るんじゃない……。

 

「遅れてしまうぞ、3人とも。

ほら、葵泉も着替えなければいけないだろう?」

 

「あ、ゴメンなさい賢夜さんっ!

それじゃぁ、士織ちゃん、一誠ちゃん、アーシアちゃん行ってらっしゃい♪」

 

そういった母さんはぱたぱたと自分の服のある部屋へかけていった。

 

「全く……事故に遭わないように気をつけていくんだぞ?3人とも」

 

父さんはそれだけ言い残すと母さんの向かった方に歩んでいく。

 

 

 

「……取り敢えず、行くか」

 

俺がそう呟くと、一誠とアーシアは頷いた。そして、3人とも一切ズレることなく口を開いた。

 

『行ってきます!』

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

―――――さて、朝の母さんが何故あんなにも気合が入っていたのかを説明しよう。

 

簡単に言えば、今日は駒王学園の授業参観の日―――――そのため、母さんは気合を入れ、父さんにいたっては有給休暇を取ってまで訪れる気満々というわけだ。

 

先ほど授業参観と言ったが駒王学園のものは正確には『公開授業』というものに当たる。

親御さんが来ていいのは当然だが、中等部の学生が授業風景を見学してもいいことになっている。その中学生の保護者も同伴で見学することが可能という、結構……いや、かなりフリーダムなスタイルだ。

 

自分の親御さんだけでなく、駒王学園中等部の後輩たちも見に来るとあって、意外と高等部の学生たちは無駄な緊張をしたりする。

 

……今も教室内の学生たちは変な緊張をしているように見えるしな……。

 

 

 

 

 

「なぁなぁ、イッセーんところは両親来るのか?」

 

一誠の席の周りに俺とアーシアが集まってのんびりしていれば、松田と元浜が近寄って来るなりそう言った。

 

「あぁ……。朝から気合入りまくりだったわ」

 

「両親に愛されてるねぇ……」

 

元浜がそう言って、松田とともにニヤニヤし始める。

 

「母さんも父さんも優しいしな。

アーシアだって楽しみにしてるし」

 

「はいっ!

私、こういうの初めてなんで、すごく楽しみですっ!」

 

一誠は松田と元浜のニヤニヤとした表情をスルーして、アーシアの方へと視線を移して和んでいた。

 

「やぁ、おはようイッセーそして―――――おはようございます士織様っ!」

 

「わかったから跪くな、祈るな、讃えるな……」

 

一誠への挨拶までは普通だったのになぜ俺の時だけ変わってしまうのか……解せん……。

 

「お、なんだなんだ?

士織の信者になっちまったのか?」

 

「かーっ!ゼノヴィアちゃんも士織信者か!流石だな士織様(笑)」

 

「……取り敢えず松田と元浜は後で絞める」

 

無性にイラつく言動をした2人には私刑を与えると心に強く刻み、今は目の前で崇め始めたゼノヴィアの対処をすることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――天罰!」

 

「痛いっ??!!」

 

……まぁ、実力行使なんだけど。

俺はデコピンを喰らいうずくまったゼノヴィアを放置して次は松田と元浜への私刑実行へと移る。

 

「お、おい士織さん?

ゼノヴィアちゃん物凄く痛そうだけど大丈夫か……?」

 

「そしてなんでこっちににじり寄って来るんだ……?」

 

そう言いつつ少しずつ後退していく松田と元浜。

俺はニヤリと笑みを浮かべて口を開く。

 

「もちろん……私刑実行のために決まってんだろ……?」

 

『に、逃げろぉぉぉぉぉぉぉお!!!』

 

「逃がすわけねぇだろ!」

 

いきなり走り出して逃げようとした2人の前に回り込み、頭を掴む。

 

 

 

 

 

「知らなかったのか?―――――大魔王からは、逃げられない」

 

無慈悲にそう言って、俺はにっこりと笑い手に力を入れた。

 

 

 

『うぎゃぁぁぁぁぁあっ!!!?

割るっ!?あたまがわれるぅぅぅぅうっ!!!?』

 

 

 

―――――その後2人の男子生徒が後輩たちに『絶叫先輩』と呼ばれるようになったという……。

 

 

 

 

 

―――――閑話休題。

 

 

 

 

 

朝は色々とあったが、無事に授業の時間となる。開け放たれた教室後方の扉からクラスメイトの親御さん、そして俺の母さんと父さんも入ってくる。

 

授業は英語。いつもよりも気合の入った様子の男性教諭が何やら袋に包まれた長方形の物体を生徒に配っていく。

 

……ん?なんだあれは……英語であんなもの使ったことあったか……?

 

そんなことを思いつつ、俺の机にも長方形の物体が置かれる。

 

……えっと……これは……紙粘土……??

 

怪訝に思う俺へ……というより俺たちへ教師は嬉々に言う。

 

「いいですかー、今渡した紙粘土で好きな物を作ってみてください。

動物でもいい、人でもいい、家でもいい。

自分が今脳に思い描いたありのままの表現を形作ってください。

―――――そういう英会話もある!!」

 

「……いやいやねぇよ」

 

教師の言葉に頭を抱えて呟く俺。一誠の方へ視線を移せば俺と同じく頭を抱えていた。

 

Let's try!!!(レッツ トライ)

 

イイ笑顔でサムズアップする教師。しかも無駄に……無駄にいつもよりも発音が良かった。

 

「む、難しいです……」

 

声の方へと視線を向ければアーシアが紙粘土をこねて何かを作り始めているのが目に入る。

 

……アーシアまずは人を疑う事を覚えよう……。

 

なんてことを考えながらなんとなく周りを見れば俺と一誠以外渋々ながら紙粘土をこねくりだしていた。

 

「……仕方ないか」

 

周りの様子に合わせるように俺も紙粘土に手を伸ばす。

 

作るものは何でもいいとは言ったが……何を作ろうか……。

 

「……そうだ」

 

頭の中にふと思い浮かんだものを作るために紙粘土を分割していく。

紙粘土の量からそんなにたくさんは作れないため、3つに分割。そして意識を内側へと潜らせる。

 

 

 

 

 

(誰か起きてるか~?)

 

(ど、どう……しましたか?士織……さん)

 

(おぉ!シオリ!

今日はどうしたのだ?)

 

(どーしたんですかぁー?だーりんっ!)

 

(ちょうど3人だな……。

なに、ちょっと紙粘土で工作するからそのモデルを3人探してたんだよ)

 

(も、モデル……ですか……?)

 

(もでる?なんだそれは?美味しいのか?)

 

(きゃーっ♪だーりんからのモデルの指名だなんて感激ですぅ)

 

(あ~……つっても動物形態の作品になるからな?

そしてモデルは食べ物じゃねぇぞ?

……それで……3人ともモデルになってもらっても良いか?)

 

(わ、私は……いい……ですよ……?)

 

(うむ!私ももでるになるぞ!)

 

(だーりんからのお願いなら何でも聞いちゃいますよー)

 

(ありがとな、3人とも)

 

 

 

 

 

「……ふぅ……」

 

3人との会話を終えた俺は意識を浮上させ、早速作業に取り掛かる。

 

まずは分割しておいたうちの1つを更に二つに分けて……よし!次はこっちの……むぅ……難しいな……でも形はできた……最後にこれを……こうして……っと。

 

「うし!完成だな」

 

そう呟いて俺は作業を終了する。

俺の机の上に並んだのは重なり合うようにした2匹のウサギ、のんびりと背伸びする柴犬とそれにもたれかかるようにする猫だった。

 

「うぉ!凄いな士織……今にも動き出しそうじゃん」

 

「そういう一誠のほうもスゲェじゃねぇか。

それは……ドライグか?」

 

俺に声をかけてきた一誠の机の方へ視線を移せば、臨場感あふれる1匹のドラゴンが出来上がっていた。

 

「まぁな。

頭に浮かんだのはやっぱり相棒だったからさ」

 

ニカッと笑う一誠。その人懐っこい笑みはつい微笑ましく感じてしまう。

 

「ドライグの奴喜んでるんじゃねぇか?」

 

「さっきから俺の中で泣いてるよ……」

 

そういう一誠は何処か照れ臭そうだった。

……ドライグとは良い関係を築けているらしいな……原作みたいに可哀想な扱いを受ける可能性はほとんどない……だろう。

未だにない、と断言できないのは何故だろうか。

 

「す、素晴らしい……!

2人にこんな才能があっただなんて!

やはりこの授業は正解だった。

また2人、生徒の隠された才能を私は引き出したのです……」

 

いつの間にか側にいた教師は目元を濡らしながらそんなことを言う。

……大袈裟すぎる気がするのは俺だけじゃない……はずだ……。

 

「カッコイイドラゴンだな!イッセー!」

 

「士織ちゃんこの動物たち可愛い!」

 

クラスメイトたちも近寄ってきて俺と一誠の作品を見る。そして、何処からともなく「5000!」と言った声が上がる。

 

「イッセーのドラゴンなら6000出すぞ!」

 

「私は士織様の作品になら8000出します!」

 

紙粘土を用いた英語の授業は一転、俺と一誠の作品を巡ったオークション会場へと化してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編の方はいかがでしたでしょうか?
楽しんでいただけたのなら幸いです♪

さてさて……最近ではすっかり図書室に入り浸っている夜叉猫さんですが……やっぱり読書はいいですね!(>_<)
楽しくてしかたがありませんっ!!(*´ω`*)


それでは、また次回お会いしましょう♪


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57話

皆さんおひさしぶりですっ!(>_<)
最近ではテストや検定などがあって忙しくて更新が遅くなってしまいました……(。í _ ì。)シュン
楽しみにしていただいている皆様、本当にごめんなさいですっ!!(>_<)


ひとまず、最新話をどうぞっ!!(>_<)


side 士織

 

「あ~……疲れた……」

 

教室で開催されたオークションをなんとか回避し、自分で作った紙粘土の作品を死守した俺たちは自販機の前まで来ていた。

 

「しっかし……みんな鬼気迫る表情だったな……」

 

「確かに……。

あそこまでされると怖いな……」

 

「皆さんそんなに欲しかったんでしょうか?」

 

一緒に来ていた一誠、アーシアは苦笑いを浮かべてそう言った。

 

「あら、士織たちも飲み物を買いに来たの?」

 

3人で話していれば、リアス先輩と朱乃先輩が近づいてくる。

 

「正確には教室から逃げ出すついでに喉を潤しに来たんだよ……」

 

「ちょっと授業がおかしな方に行っちゃったんですよ……」

 

俺と一誠はため息を吐くようにそう口にする。2人の表情を見たリアス先輩、朱乃先輩は何かを察したように苦笑いの表情を浮かべた。

 

「た、大変だったのね……」

 

「あらあら……お疲れですわね……」

 

「……取り敢えず飲み物でも買おうぜ?

特別に奢ってやるから……何が飲みたい?」

 

俺はそう言ってズボンのポケットから財布を取り出す。皆は俺が奢ってやると言ったのを聞いて表情を緩めた。

 

「俺は炭酸ならなんでも」

 

「私はオレンジジュースがいいです!」

 

「私は紅茶をお願い」

 

「私はお茶がイイですわ」

 

4人のリクエスト通りの飲み物を買い、俺の分を買おうと硬貨を入れる。何を飲もうか考えていれば、横から人影が現れて自販機のボタンを押した。

 

 

 

 

 

「僕はりんごジュースで♪」

 

「いきなり現れるなよ……祐奈」

 

自販機からジュースのパックを取り出しながら笑顔を浮かべる祐奈に、頬が緩むのを感じる。

そんな俺と祐奈を一誠たちは飲み物を口にしながらニヤニヤと見ているのを視界の端で捉えた。

 

「……なんだよ」

 

「いや?ホントにラブラブだなぁってな?」

 

一誠がそう言うと、他の3人も頷いて同意していた。

 

「あ、そう言えば士織くん知ってる?」

 

そんな中、4人からの視線なんて何でもないといった様子の祐奈がそう問う。

……随分と精神が強くなった……いや、そんなことないか……よく見りゃ顔赤いじゃねぇか。

そんな祐奈についついクスリと笑ってしまう。

 

「な、なんで笑ってるの……?」

 

「いや?笑ってないぜ?」

 

俺は口元を隠しながらそう言うと、頬を膨らませてジトっとした視線を向けてくる。

 

「ほら、そんなに拗ねた表情すんなって。

それより、さっきの話の続きは何なんだ?気になるじゃねぇか」

 

祐奈の頭を優しく撫でてやれば、拗ねた表情から柔らかな表情に変化させる。

 

「あ、あのね?魔女っ子が撮影会をしてるんだって。

ちょうどその魔女っ子を見に行こうとしてたんだ」

 

そう言い終えた祐奈は頭を撫でる俺の手に擦り寄り、もっと撫でてとアピールしていた。俺はそんな祐奈を撫でながら耳元に顔を近づける。

 

「……可愛いな祐奈」

 

「ふぁっ?!!」

 

それには耐えきれなかったのか、祐奈の顔が爆発的に赤に染まった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「お、アレじゃねぇか?」

 

「人もいっぱい集まってるし、多分そうだよ」

 

祐奈からの話を聞きながら魔女っ子とやらを探していると、廊下の一角でカメラのフラッシュがたかれているのが目に入った。

人垣をなんとかくぐり抜けて、前の方に体を向ける。

そこにいたのは1人の少女だった。

 

(……なんだっけか?確か……アニメのキャラだったはずだけど……)

 

その少女の()()はわかるものの、コスプレの内容だけは思い出せなかった。

俺に少し遅れて人垣を通り抜けてきたリアス先輩たちが俺の周りに到着し、前方でカメラ目線でポーズ決める少女を目にした途端、慌てふためく。

 

「なっ?!」

 

特にリアス先輩の狼狽ぶりには苦笑いが浮かんでしまいそうな程だ。

 

 

 

 

 

「オラオラ!天下の往来で撮影会たぁーイイご身分だぜ!」

 

そんなことを言いながら、生徒会所属の匙が人だかりに飛び込んでいく。

 

「ほらほら、解散解散っ!

今日は公開授業の日なんだぜ?

こんなところでいらない騒ぎを作るな!」

 

あれほどの人だかりが蜘蛛の子を散らすようになくなっていく。撮影していたカメラ男子も渋々の様子だったが去っていった。

 

……匙もなかなかいい仕事をするじゃねぇか。

 

その場に残っているのは俺たちと匙たち、コスプレ少女だけだ。

 

「アンタもそんな格好しないでくれ……って、もしかして……親御さん……ですか?

……いや、そうだとしても場に合う衣装ってものがあるでしょう?そんな格好されてちゃ困りますよ」

 

「え〜、だって、これが私の正装だもん☆」

 

匙が注意を促すが、少女はポージングするだけで聞く耳を持たない。

その様子に奥歯をギリギリと鳴らす匙だが、リアス先輩を確認するなり頭を下げる。そして、少女をチラリと横目で見て、咳払いをした。

 

「―――――これはリアス先輩。ちょうど良かった。

今、先輩の親御様方をご案内していたところなんですよ」

 

匙が廊下の後方へ顔を向けると、支取()()の先導で、紅髪の男性2人が近づいてくるのが見える。

 

「何事ですか?サジ、問題は簡潔に解決しなさいといつも言って―――――」

 

厳しい表情を浮かべて匙に注意をしていた支取先輩はそこまで言いかけて、コスプレ少女を見るなり言葉を止めた。

 

「ソーナちゃん!やっと見つけた☆」

 

コスプレ少女は支取先輩を見つけると嬉しそうに抱きついていく。

その様子に匙も対応に困り出した表情を浮かべ始める。

そして、そんな中サーゼクスが構わずにコスプレ少女に声をかけた。

 

 

 

「あぁ、セラフォルーか。

キミもここへ来ていたんだな」

 

 

 

その言葉に空気が凍った。……主に一誠とアーシアの。

眼を剥いてコスプレ少女改めセラフォルー・()()()()()()を見つめる2人。

一誠は引き攣った笑みを浮かべながらリアス先輩に質問する。

 

「……あ、あの……リアス部長?

『セラフォルー』ってまさか……」

 

「……えぇ、そうよ。

あの方は現四大魔王のお1人、【セラフォルー・レヴィアタン】さま。

そして、ソーナのお姉さまよ」

 

「ま、マジっすか……」

 

引き攣った笑みが苦笑いへと変化する一誠。

俺はふと、魔王の名前は教えたことはあったが性格などを伝えた覚えがないのを思い出す。

 

「セラフォルーさま、おひさしぶりです」

 

「あら、リアスちゃん☆おひさ〜☆

元気にしてましたか〜??」

 

彼女が魔王だと言われても今の状態では納得できる者はいないのではないか?そんな風に思わせるセラフォルー・レヴィアタンの口調にリアス先輩も困り顔だ。

 

「は、はい。おかげさまで。

今日はソーナの授業参観に?」

 

「うん☆

でもねでもね?ソーナちゃんったら酷いのよ??

今日のこと黙ってたんだから!

もぅ!お姉ちゃん、ショックで天界に攻め込んじゃおうかと思っちゃった☆」

 

「冗談にしてもなかなか怖いことを言うんだな」

 

セラフォルー・レヴィアタンの言葉に俺がそう返せば頭上に『???』を浮かべて俺の方を見てくる。

 

「初めまして、四大魔王の1人セラフォルー・レヴィアタン。

俺は兵藤士織。ただの人間だ」

 

そう言って手を差し出せば、セラフォルー・レヴィアタンは一瞬キョトンとした表情を見せたが次の瞬間にはにっこりと笑ってその手を取った。つまりは『握手』だ。

 

「初めまして☆

もう知ってるみたいだけど私はセラフォルー・レヴィアタンです☆

気軽に『レヴィアたん』って呼んでね☆」

 

握手していない方の手を顔の前で横ピースにするセラフォルー・レヴィアタン。なんとも軽い展開だ。

 

「ねぇ、サーゼクスちゃん。

この子ってサーゼクスちゃんの言ってたあの子?」

 

「そう、彼があの『兵藤士織』くんだ」

 

サーゼクスとセラフォルー・レヴィアタンのいう【あの】という単語が気になるが……まぁ、次の機会にでも聞けば良いだろう。

 

「そうなんだ☆

じゃぁ……もしかしてこっちの子は?」

 

俺との握手を何故か崩さないまま今度は一誠の方を向く。

 

「彼は兵藤一誠くん。

彼が『赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)』を宿す、今代の【赤龍帝】だよ」

 

「やっぱり!私の予想通り☆」

 

あいもかわらずテンションの高いセラフォルー・レヴィアタン。

 

「……つうか、そろそろ手を離してくんねぇか?」

 

俺が呆れ気味な声でそう言うと、セラフォルー・レヴィアタンは口に手を当てて俺の手を離した。

 

「ごめんね?士織ちゃん☆

ついつい可愛くてずっと握っちゃってた☆」

 

「あ〜……言っとくけど俺は男だぜ?」

 

「またまたぁ〜☆

そんな冗談通じないぞ☆

ね?サーゼクスちゃん☆」

 

ニコニコと笑いながらサーゼクスの方を向くセラフォルー・レヴィアタン。

しかし、その視線の先に居るサーゼクスは苦笑いを浮かべるだけでセラフォルー・レヴィアタンの言葉に同意はしない。

 

「えっと……冗談じゃないの……??」

 

「まぁね。

士織くんは列記とした男の子だよ」

 

「うっそぉ!!?」

 

わざとのような大きな身振りで驚きを表現するセラフォルー・レヴィアタン。

そして、俺にいきなり接近してきたかと思うと俺の顔をジロジロと遠慮なく見始めた。一通り見て満足したのか、セラフォルー・レヴィアタンは俺から離れていき、ふぅ、と一息つく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――これが【男の娘】ってやつなんだね☆」

 

セラフォルー・レヴィアタンはサムズアップしながらイイ笑顔でそう言った。

 

 

 

……俺は今後の自分の扱いを考えてついついため息が漏れてしまうのを感じた。

 

 

 

 

 

―――――閑話休題。

 

 

 

 

 

「それにしても、セラフォルー殿。

これはまた奇抜な衣装ですな。いささか魔王としてはどうかと思いますが……」

 

グレモリー卿は()()()()()()の服装を訝しげに見るとそう言った。

 

「あら、グレモリーのおじさま☆

ご存知ないのですか?今この国ではこれが流行りですのよ?」

 

くるりとその場で一回転してからポーズを決めるセラフォルー。

 

「ほう、そうなのですか。

これは失礼。私が無知だったようだ」

 

「ハハハハ、父上。信じてはなりませんよ」

 

サーゼクスは半分信じかけていたグレモリー卿に笑いながらそれは嘘だと伝える。

 

「……なぁ、士織。

俺の見間違いとかじゃなけりゃセラフォルーさんのノリがすごく軽いんだけど?」

 

「あ〜……まぁ、確かにな。

そういうのはリアス先輩にでも聞いたらどうだ?」

 

俺がリアス先輩の方を向いてそう言えば額に手を当てながら口を開いた。

 

「……言うのを忘れていた―――――いえ、言いたくなかったのだけれど、現四大魔王さま方は、どなたもこんな感じなのよ。

……つまり、プライベート時、軽いのよ、それは酷いくらいに……ね……?」

 

頭を抱えてため息を吐くリアス先輩。

それと似た状況か、支取先輩も顔を真っ赤にして羞恥を噛み締めていた。

まぁ、支取先輩の場合は姉の言動への恥ずかしさだろうがな……。

そんな支取先輩の様子を見たセラフォルーはその顔を心配そうにのぞき込んだ。

 

「ソーナちゃん、どうしたの?

お顔が真っ赤ですよ?せっかくお姉さまである私との再会なのだから、もっと喜んでくれてもいいと思うのよ?

具体的には『お姉さま!』『ソーたん!』って抱き合いながら百合百合な展開でもいいと思うのよ、お姉ちゃんは!」

 

支取先輩は遺憾そうな表情で口を開く。目元を引き攣らせながら。

 

「……お、お姉さま。ここは私の学舎であり、私はここの生徒会長を任されているのです……。

いくら身内だとしてもお姉さまの行動は、あまりに……。

そのような格好は容認できません」

 

「そんなソーナちゃん!

ソーナちゃんにそんな事言われたら、お姉ちゃん悲しい!

お姉ちゃんが魔法少女に憧れているって、ソーナちゃんは知っているじゃない!

きらめくスティックで天使、堕天使をまとめて抹殺なんだから☆」

 

「お姉さま、ご自重ください。

魔王のお姉さまがきらめかれたら小国が数分で滅びます」

 

「……だから会話内容が物騒だと言っとろーが……」

 

誰にも聞こえないレベルでため息を吐くかのようにそう呟く。

 

 

 

「うぅ……もう耐えられませんっ!」

 

支取先輩は目元を潤ませながら、この場を走り去っていく。

 

「待って!ソーナちゃん!お姉ちゃんを置いて何処に行くの!」

 

魔法少女ならぬ魔王少女なセラフォルーがそれを追って走り出した。

 

「ついてこないでください!」

 

「いやぁぁぁん!お姉ちゃんを見捨てないでぇぇぇぇぇぇっ!ソーたぁぁぁぁん!!」

 

「『たん』付けはお止めになってくださいとあれほど!!」

 

魔王姉妹の追いかけっこ……下手なことが起きなけりゃいいのだが……。

俺は2人の走り去っていく様を暖かな目で見守った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編の方はいかがでしたでしょうか?
楽しんでいただけたのなら幸いですっ!!(>_<)



それにしても最近急に冷え込んできたですが……みなさんは体調管理はできてるですか??
私は寒くて寒くてお布団で丸まってるです……(苦笑)
皆さんも暖かくしないとですよっ!!(>_<)

それではまた次回お会いしましょう♪


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58話

約束を破ってしまって本当に申し訳ありません……。
せっかく楽しみにしてくださいっている方もいらしたのに更新出来なくて本当に申し訳ないです……。

遅くなりましたが、新話を楽しんで頂けると幸いですっ!!(>_<)


side 士織

 

「うむ。シトリー家は平和だ。

そう思うだろう?リーアたん」

 

「……お兄さま、私の愛称を『たん』付けで呼ばないでください……っ!」

 

サーゼクスの言葉にリアス先輩は嫌がるような言葉を返す。

 

「そんな……リーアたん。

昔はお兄さまお兄さまといつも私の後ろを付いてきていたのに……。反抗期か……」

 

ショックを受けたような様子のサーゼクス。しかし、その表情には少しばかりからかいも入っているように見える。

……全く……子供みたいな奴だ……。

 

「もう!お兄さま!どうして幼少時の私のことを―――――」

 

 

 

 

 

―――――パシャッ!

 

怒っているリアス先輩を余所に突然カメラのフラッシュが焚かれる。

カメラを構えていたのはリアス先輩の父親であるグレモリー卿。その表情から読み取るに感無量の様子だ。

 

「良い顔だ、リアス。

よくぞここまで立派に育って……。

此処に来られなかった妻の分まで私は今日張り切らせてもらおうか」

 

「お、お父さま!もうっ!」

 

怒るに怒れないと言った様子のリアス先輩。

そんな、平和な家族の姿を見てついつい微笑みが漏れる。

 

「魔王さまと、魔王さまの御家はおもしろい共通点があるのですよ」

 

朱乃先輩は心底愉快そうに微笑みながら口を開く。そうすれば、一誠は首をかしげて朱乃先輩の方を向いた。

 

「共通点?」

 

「魔王さまは皆さまおもしろい方々ばかりなのです。

そして、そのご兄弟は例外なく真面目な方ばかり。

うふふ。きっとフリーダムなご兄弟が魔王さまになったせいで、真面目にならざるを得なかったのでしょうね」

 

「……まぁ、シトリー家がいい例だってことだな」

 

朱乃先輩の言葉に補助をつけるように俺はため息混じりに言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――士織、一誠、アーシア此処に居たのか」

 

―――――と、そんな時。聞きなれた声が耳に届いてくる。

声の方へと視線を送ると、そこには学内を一通り見回ったのか、父さんと母さんの姿があった。

 

「兵藤一誠くん、お父さまかな?」

 

グレモリー卿が一誠に訊いているのが視界の端に見える。

 

「はい。

……と、いうより父さんだけじゃなくて母さんもいますよ?」

 

「……なんと、あの少女はお母さまなのかね?」

 

「えっと……まぁ」

 

……やっぱり母さんは親に見られないんだな……。

あの若過ぎる容姿はメリットもあるだろうけどデメリットも存在するようだ。

 

「初めまして、リアスの父です」

 

グレモリー卿は父さんと母さんの前まで移動すると、握手を求めながら挨拶をしていた。

 

「ご丁寧にどうも。

士織たちの父親の兵藤賢夜という」

 

堂々とした様子だが、少しばかり厳しめの表情の父さんはグレモリー卿からの握手を受ける。

 

「先日は私の息子たちがお世話になったそうで……。

日頃から娘たちとも仲良くして下さっていると聞いて、ご挨拶に伺おうと思っていたのですが、なにぶん私もサーゼクスも多忙な身でして、なかなか機会を作れませんでした。

この度、幸運に恵まれたようです。今日はお会いできて光栄です」

 

「リアスちゃんたちみんな良い子たちですから当たり前ですよ♪」

 

母さんは優しく微笑みながらそういうと父さんにも微笑みを向けた。

その微笑みが効いたのだろう。父さんの表情は少し、柔らかくなり角が取れたように見える。

 

「うむ。落ち着いた場所でゆっくりとお話したいものです。

此処はどうしても目立つ。何よりお互いの子供たちが恥ずかしいでしょう」

 

グレモリー卿は周りを見渡し、集まっている視線を感じていたのだろう。そう提案した。そして、祐奈の方へ手をあげる。

 

「木場くん」

 

「はい」

 

「すまないが、落ち着ける場所まで案内してくれないだろうか?」

 

「……はい。それでは、ご案内します」

 

一瞬、俺の方を見て詰まった祐奈だったが、すぐに持ち直してそう口にする。

 

「ふふふ……気にせずとも、案内してくれればすぐにでも彼女……いや、彼に合流してもらって構わないよ」

 

祐奈の様子に気がついたのだろう。グレモリー卿は祐奈に微笑みかけた。

当の祐奈本人は顔を赤くしてわたわたとしている。

 

「それでは私は少しお話してくる。

サーゼクス、あとは頼めるかな?」

 

「はい、父上」

 

なるほど、サーゼクスは残るのか。

この間挨拶を済ませたばかりだしな。今回は互いの親だけの話ということだろう。

 

「士織ちゃん、一誠ちゃん、アーシアちゃん、私たちはちょこっとお話してくるね?」

 

「いってらっしゃい。

変なことは話さないでくれよ?

もちろん、父さんも。くれぐれも威嚇なんてしないように!」

 

「……善処しよう」

 

俺が父さんを指さしながらジト目でそう言うと、間を開けてそう口にした。

……本当に大丈夫かは定かではないが、父さんと母さん、グレモリー卿は祐奈の先導のもとこの場を後にして行った。

 

 

 

「―――――リアス」

 

4人を見送った後、サーゼクスはくるりと向きを変えてリアス先輩の名を呼ぶ。

 

「なんでしょう、お兄さま」

 

「ちょっと、いいだろうか。

すまないね、士織くん、イッセーくん。

妹を少し借りるよ。朱乃くんも一緒に来てくれるかな?」

 

「はい」

 

朱乃先輩もサーゼクスの言葉に応じる。

 

「俺たちのことは気にせずに行ってこい、サーゼクス。

聴いた感じだと結構重要なお知らせ話みたいだしな」

 

「分かってくれて嬉しいよ」

 

にこりとサーゼクスは笑みを俺に向けてそう言った。そして、サーゼクスはリアス先輩、朱乃先輩を連れて、いずこかへ消えていく。

 

その場に残されたのはアーシアと一誠、そして俺。

 

「……取り敢えず教室に戻るか」

 

「そうだな」

 

「はいっ!」

 

こうして、俺たち3人は1度教室へと戻ることにしたのだった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「うふふ♪アーシアちゃん、よく映ってるわ♪」

 

テレビに映し出されたアーシアの姿を見て、にこにこと笑う母さん。

 

「ハハハハ!やはり娘の晴れ姿を視聴するのは親のつとめです!」

 

父さんの用意した日本酒を飲みながら、豪快に笑うグレモリー卿。酒を飲むと人が変わったように陽気になったのだ。

兵藤家の夕食後、リビングではお酒を飲みながらの今日あった授業参観映像の鑑賞会が行われていた。

参加者は父さん母さん、グレモリー卿とサーゼクス、グレイフィアである。

酒をあおりながら、ビデオで撮影したものを交互に見比べていた。

一誠とリアス先輩は顔を赤くしながら「早く終われ早く終われ早く終われ!」と念じているのが視界の端に見える。

 

「これは……かつてないほどの地獄だわ……」

 

顔を最大に紅潮させたリアス先輩は全身をぷるぷると震わせてそうつぶやく。

 

「見てください!うちのリーアたんが先生にさされて答えるのです!」

 

サーゼクスはアルコールが入っているためか、いつもよりもハイテンションでリアス先輩の晴れ姿を解説し始めた。

 

「た、耐えられないわっ!お兄さまのおたんこなすっ!」

 

リアス先輩は我慢の限界なのか、そう叫ぶとこの場を走り去っていく。一誠も今が機会かとリアス先輩を追って逃げ出した。

 

「リーアたんが……。

……仕方がない……」

 

サーゼクスはため息をつきながらふところを探り始める。

そして、1冊の本を取り出す。

 

「っ!?さ、サーゼクスそれは―――――」

 

その本を見た途端、グレイフィアが慌て始める。

 

 

 

 

 

「ここは―――――嫁自慢でもいかがですか?」

 

ニヤリ、と笑いながらサーゼクスは言った。

 

 

 

 

 

 

 




本編の方はいかがでしたでしょうか??
楽しんでいただけたのなら幸いですっ!!(>_<)

さて、次回はサーゼクスたちのハッチャケを見せれると思うので、お楽しみにっ!!(>_<)

それでは、また次回お会いしましよう♪


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59話

皆様、新年明けましておめでとうございます。
本年度も皆様が楽しむことの出来る作品を執筆して行こうと思っておりますので、何とぞ宜しくお願い致します。
感想欄での新年の挨拶をしてくださった皆様、本当にありがとうございました。
新年から幸せな気分になることができました。



※5月15日 グレモリー卿の名前を正しいものに変更しました。


Side 三人称

 

「ほぅ……嫁自慢か」

 

兵藤家野大黒柱である兵藤賢夜はサーゼクスの言葉に興味を持ったのか、視線を向ける。

 

「えぇ。

私の……いえ、我々の自慢の嫁を自慢し合うというのはいかかでしょう?」

 

「ハハハハハ!それはイイ!

サーゼクスもなかなか面白いことを言うようになったな!」

 

ジオティクス・グレモリーは自らの子の成長を楽しむかのようにそう口にした。

 

「さ、サーゼクスっ!!

巫山戯るのもいいかげんに―――――「士織」「はいはい……グレイフィアはこっちなー」な、なにをっ?!」

 

士織は賢夜からの指示で騒ぎ出したグレイフィアを引きずってアーシアやいつの間にかやって来ていた美憧、綯奈、華那の座っている場所まで連れていく。

 

「し、士織様っ!

私はあの巫山戯の過ぎる阿呆を止めなければならないのですっ!」

 

「はいはい……恥ずかしいだろうけど大人しくしてよ〜な〜」

 

そう言いつつ椅子にグレイフィアを座らせる士織。淡々としたその行動に抵抗は無駄だと理解したのかグレイフィアはため息を吐きつつ大人しくなった。

 

「……リアスの気持ちが分かった気がするわ……」

 

口調が崩れ、プライベートモードになるグレイフィア。士織はそんなグレイフィアの様子をケラケラと可笑しそうに笑う。

 

「大変そうだな?」

 

「サーゼクスのせいです」

 

「おいおい、即答かよ」

 

そう言った士織は1度キッチンの方へと向かっていく。

そしてしばらくの後、お盆に人数分のコップを乗せて戻ってきた。

 

「ほら、コーヒーを淹れてきた。

父さんたちの嫁自慢っつーことはどえらい惚気を聞くことになるんだからコレで何とかしろ」

 

「ありがとっす♪

丁度ウチ、コーヒーが欲しかったんすよ〜♪」

 

美憧は嬉しそうに士織の用意したコーヒーを受け取る。

 

「すまないな士織。

というよりも、私に言ってくれれば私が淹れたのだが……」

 

「気にするな華那。

コーヒーを淹れるのが上手い士織に任せるのが安牌だろう」

 

申し訳なさそうな華那を他所に、綯奈はカラカラと笑ってそんなことを言った。

 

「ったく……綯奈は少しは気にしろっての……。

……ほら、グレイフィアもカップを取ってくれ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「あ〜……その余所余所しいのはむず痒いから止めてくれや。

それに様付けなんてしなくていいからな?」

 

士織はそう言って残ったカップをアーシアの前と自分の座る席に置く。

 

「……では、士織さんと」

 

「おう。それでいいぜ」

 

 

 

―――――グレイフィアと士織がそのようなやり取りをしている時、サーゼクスたちの方では嫁自慢が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

〜〜〜~〜~〜~〜~〜~〜~〜~〜~〜

 

 

賢夜、サーゼクス、ジオティクスはそれぞれアルバムを用意してニヤリと笑う。

初めにアルバムを開いたのはサーゼクス。

 

「まずは軽めに……グレイフィアのウエディング姿です!

どうですか!このキリッとした瞳にしかし、嬉しさで口元がほんのりと緩んでいる表情!

―――――愛しいですよ!!」

 

「ふっ……。

なら私も葵泉のウエディングドレス姿を見せてやろう。

どうだ、この幼さを感じさせる柔らかな微笑み。

もう20年ほど昔のものだが今もほとんど容姿の変わらない可愛らしさだ」

 

「ははははは!

私の妻も容姿の変わらない美しさだ!

リーアたんと姉妹に間違われるほどですぞ?

リーアたんとは違うあの亜麻色の髪の美しさと言ったら……まさに私の妻は宝だ!」

 

「2人ともやりますね……しかしっ!

この―――――湯上りグレイフィアに勝てますかなっ?!」

 

そう言って、サーゼクスはアルバムをめくり、1枚の写真を掲げた。

そこに写っていたのはしっとりと濡れた髪に湯上り特有の赤みを帯びた柔らかな微笑みを浮かべる浴衣姿のグレイフィア。

士織たちの方からは「いつの間に撮ったんですかサーゼクスっ!!?」と言う叫びが聞こえてきているが何のその。得意げな表情を浮かべるサーゼクスは何処か自慢げだ。

 

「まだまだだな……サーゼクス殿。

私の妻の―――――寝惚け葵泉の前にはそのようなものはお遊戯に過ぎぬよ」

 

賢夜はニヤリと笑いながらアルバムではなく、懐からラミネート加工された写真を取り出した。寝惚けと名のつく所から分かる通り、その写真にはまだ眠そうに目を擦る葵泉の姿があった。その目の擦り方はまるで猫のようだったのをここに記す。

 

「いやいや!

私の妻の―――――甘えん坊モードに比べれば2人のものなどとてもとても……」

 

ジオティクスは自然な流れで魔法陣から1枚の額縁に入った写真をドヤ顔で取り出す。

魔法陣を見たにも関わらず、一般人であるはずの賢夜は反応しない―――――というより写真しか見ていなかった。

ジオティクスの持つ額縁に入っていたのは頬を紅く染めて両手をこちらに伸ばす何処か艶やかな雰囲気を感じさせる写真。

 

「父上がそのような写真をを出すのであれば私はこの裸エプロングレイフィアを―――――」

 

「ならば私は裸ワイシャツ葵泉を―――――」

 

「まだまだ!

ならばこの手ブラジーンズ姿の―――――」

 

だんだんとアダルティーな雰囲気の写真を公開していく3人。

グレイフィアは顔をこれでもかと紅く染めて悶絶。葵泉も恥ずかしそうにクッションに顔を埋めている。

 

士織はそんな大人組の様子に頭を抱えながら、アーシアと美憧の視界と聴覚を遮断魔法で隠すのだった。

 

 

 

 

 

「……これは流石に……教育に悪い……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――結果、この暴走が顔を真っ赤にし、羞恥心の極地に追いやられたグレイフィアと葵泉によって終止符を打たれたのは語るまでもないだろう……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編の方はいかがでしたでしょうか?
楽しんで頂けたのなら幸いです♪

今回は大人組……主にサーゼクスたちの暴走を簡単に書きましたが……いかがでしたでしょう??
こういったおふざけもたまには必要かと思いまして♪


さて、次回は早めにお会い出来ると思いますので、お楽しみに!
それでは、皆さん体調には十分お気をつけください♪(*´ω`*)


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60話

皆さんこんばんは♪(*´ω`*)
昨日に続き更新してみました♪

できるだけ短いスパンで更新できるように頑張りたいと思いますっ!!(>_<)

それでは本編をどうぞ♪


どうも、兵藤士織だ。

 

 

 

サーゼクスたちの暴走から次の日の放課後。

俺は旧校舎1階の『開かずの教室』とされていた部屋の前に立っていた。

勿論だが、オカルト研究部の部員全員が集まっている。

この教室の中にいるのはもう1人の『僧侶(ビショップ)』。

原作と変わっていなければ女装少年ダンボールくんがいるはずだが……。

 

 

 

「―――――さて、扉を開けるわ」

 

俺が思考している間に、もう扉を開けるまで話が進んでいたらしい。

呪術的な刻印の刻まれていた扉からその刻印が消え去り、その扉をリアス先輩がゆっくりと開く―――――。

 

 

 

 

 

「イヤァァァァァァァァァァァァァァッッ!!!!!」

 

―――――大絶叫。

扉が開かれた途端に俺たちを襲ったのはそれだった。

しかし、そんな中リアス先輩、朱乃先輩はため息を吐きながら中に入っていく。

 

『ごきげんよう。

元気そうでよかったわ』

 

『な、な、何事なんですかぁぁぁぁぁ?』

 

酷く狼狽した、中性的な声。

声だけ聞くとやはり男なのか女なのかの判断は付かないな。

 

『あらあら。

封印が解けたのですよ?もうお外に出られるのです。

さぁ、私たちと一緒に出ましょう?』

 

相手をいたわるような、優しい声音で朱乃先輩は『僧侶』を連れ出そうとしている。

 

『やですぅぅぅぅぅぅ!!

ココがいいですぅぅぅぅぅぅ!

お外に行きたくないっ!人に会いたくありませぇぇぇぇぇんっ!!!』

 

「……おい、こりゃ重症じゃねぇか」

 

「ま、まぁ……ね」

 

「……ヘタレですから」

 

事情を知っているであろう祐奈と小猫は苦笑を浮かべてそういった。

 

「取り敢えず入ってみようぜ?」

 

一誠はそう言って扉に手をかける。

開かれた扉の奥に広がるのはカーテンで締め切られた薄暗い部屋。

内装はその薄暗さに反して可愛らしく装飾それており、ただ一つ棺桶だけが異様な雰囲気を発していた。

完全に部屋の中に入ると、リアス先輩たちの前に1つ人影が見える。

 

―――――金髪と赤い双眸をした西洋人形のように端整な顔立ちをした少女……いや、違うか……。

床にヘタリ込み、ブルブルと震え、力なく座り込んでいた。

見るからにリアス先輩と朱乃先輩から逃げようとしているのが分かる。

 

「えっと……この子がリアス先輩のもう1人の僧侶っつー事で良いのか?」

 

「えぇ。そうよ。

それと言っておくけどこの子は……「男なんだろ?」っ?!わ、分かるの?士織」

 

俺の間に被せるように言った言葉にリアス先輩は驚きの表情を浮かべる。

 

「当たり前だろ。

俺もこんなナリだからな。そういう事には敏感なんだよ」

 

そう言って新しい僧侶の方へ視線をずらすと、ふと目が合った。

 

「っ!!」

 

……まぁ、ビクンと身体を震わせて凄い勢いで目を逸らされたが。

 

「と、と、と、ところで……その……この方たちは誰ですか……?」

 

「そうね、紹介するわ」

 

そういったリアス先輩は一誠、ゼノヴィア、アーシア、俺の順番で指しながら紹介を始める。

 

「あなたが此処にいる間に増えた眷属と協力者よ。

兵士(ポーン)』の兵藤一誠、『騎士(ナイト)』のゼノヴィア、あなたと同じ『僧侶(ビショップ)』のアーシア、そして協力者の兵藤士織よ」

 

「ヒィィィィ!?

ひ、人がいっぱい増えてるぅぅぅ!!」

 

「……引きこもりで対人恐怖症か……なかなかレベル高い眷属だな?」

 

「ご、ご、ごめんなさぃぃぃぃ!!」

 

俺の言葉に泣き目になりながら謝る僧侶くん。

 

「もぅ、イジメないで頂戴?

―――――お願いだから、外に出ましょう?ね?

もうあなたは封印されなくていいのよ?」

 

リアス先輩は優しくそういったのだが、僧侶くんは未だに怯えた様子で震える。

 

「嫌ですぅぅぅぅぅぅ!

僕に外の世界なんて無理なんだぁぁぁぁぁっ!

怖いっ!お外怖いっ!!

どうせ、僕が出ていっても迷惑をかけるだけだよぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

……難易度の高い僧侶だな……。

事前に知識として知ってはいたが……ここまでか……。

などと思っていると、僧侶くんの前にゼノヴィアが痺れを切らしたかのように飛び出す。

 

「えぇい!軟弱者め!

外に出ろと言ったのだから行くぞ!」

 

腕を掴み引っ張って行こうとした、その時だった。

 

「ヒィィィィっ!!!」

 

僧侶くんの絶叫と共に―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――時が停まった。

 

 

 

 

 

Side Out

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

Side ???

 

「ま、また……やっちゃった……」

 

僕は誰もが停まった世界でそう呟く。

あの……ぜ、ゼノヴィア?とかいう人に怒鳴られて、腕を掴まれたのが怖くて、また無意識に発動してしまった……。

 

僕の視界に入ったモノの時を停めてしまうこの【停止世界の邪眼(フォービトゥン・バロール・ビュー)】の能力を……。

 

本当は誰も停めたくないのに……。

こんな……こんな【神器(セイクリッド・ギア)】欲しくなかったのに……。

 

「……また、怖がられちゃう……」

 

新しく眷属になったという人たちもこんな時を停める力を持った僕を怖がらないわけがない……。

そんな思考をすればするほど、憂鬱な気持ちが広がって―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――こりゃスゲェな」

 

「―――――皆停まってるなぁ」

 

 

 

聞こえるはずのない、僕以外の声が聞こえてきた。

 

―――――心臓がバクバクとなっている。

 

―――――そんなはずない。

 

―――――僕以外は皆停まってるはず。

 

僕は恐る恐る声の聞こえた方へと視線を移した。

 

 

 

 

 

「やっほー僧侶くん。

ちょっと俺たちとオハナシしよーぜ?」

 

「そうそう!

こんな機会だしオハナシしよーぜ!」

 

「ヒィィィィっ!!!?!!!?

な、な、な、な、なんで……停まってないんですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ?!!!!」

 

2人の男の人たちは笑顔で僕に近づいてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編の方はいかがでしたでしょうか??
楽しんで頂けたのなら幸いです♪


今日、問題児の新話を書こうとしていたのですが……何故か書けませんでしたっ!!!(>_<)
あ、あまりにも久しぶりすぎて全然書けないのですよ……(苦笑)
これはリメイクするべきかなぁ……と思いつつ……(苦笑)

さてさて、今回はここまで♪
また次回お会いしましょう♪(*´ω`*)


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61話

皆さんこんばんは♪

―――――奇跡の3日連続投稿なのですっ!!(>_<)

もうすぐ新学期が始まるという時になって筆が進み始めた夜叉猫さんです(苦笑)

さて、早速本編の方をどうぞ♪(*´ω`*)


Side 士織

 

「な、な、なんで、とととと、停まってないんですか……っ?!」

 

僧侶くんは俺と一誠を驚愕の表情で見つめていた。

 

「そりゃ、力の差だな。

その【神器(セイクリッド・ギア)】だって格上の奴を停めることは出来ないっつーわけだ」

 

そう言って、僧侶くんに近づいていく。

 

「ヒィィィィ!!」

 

しかし、悲鳴を上げて立ち上がった僧侶くんは俺たちから逃げるように走り出し、後方に置かれていた棺桶―――――ではなく段ボール箱の中にスッポリと入ってしまった。

俺はその様子に苦笑いを浮かべて一誠の方を見る。一誠の方も困ったような表情を浮かべていたが、それもすぐに消し、僧侶くんに歩み寄って行く。

 

「どうも僧侶くん。

俺の名前は兵藤一誠。そっちは?」

 

僧侶くんの入った段ボール箱の前でしゃがむと人懐っこい笑顔でそう言った。

すると、段ボール箱が少しだけ開いて頭が恐る恐るといった風に出てくる。

 

「……ギャスパー・ウラディですぅ」

 

「ギャスパーって言うのか。

これから宜しくな!」

 

手を差し出して握手を要求する一誠。

僧侶くん―――――ギャスパーはその手を不思議そうに見つめた。

 

「……そ、その……」

 

「ん?どーしたんだ?」

 

「……ぼ、僕が……怖くないんですか……?」

 

その質問にきょとんとした顔になる一誠。そしてすぐに笑い出した。

 

「な、なんで笑うんですかっ!」

 

「いや、悪ぃ悪ぃ。

そんな時間を停めるぐらいじゃ怖くねぇよ。

なんなら士織の方が怖ぇよ」

 

「……なんか言ったか?一誠」

 

「―――――ほらな??」

 

ウインクしながらギャスパーにそう言うと、そんな一誠を目を大きくして見つめるギャスパー。

俺も一誠の横まで行ってしゃがむと、ギャスパーに話しかける。

 

「時間停止っつーのは確かに強力な力だ。

見たところコントロール出来てないみたいだし、そりゃ怖いよなギャスパー。

―――――でも、怖がってばっかじゃ前に進めねぇぞ?」

 

段ボール箱からちょこんと飛び出ているギャスパーの頭を優しく撫でる。

それと同時か、ギャスパーの停止の能力が解除され、リアス先輩たちも動き始めた。

 

 

 

 

 

「あれ?イッセーさんたちがいつの間にかあんな所に……」

 

「……何かされたのは確かだね」

 

アーシアとゼノヴィアは不思議な現象に首を傾げていた。

 

「……予想はしていたけど2人には効かないのね」

 

リアス先輩は俺たちの方を見ながらそう呟く。

そして、何のことかわかっていない様子のアーシアとゼノヴィアに向かって説明するように口を開いた。

 

「その子は興奮すると、視界に映した全ての物体の時間を停止することが出来る【神器(セイクリッド・ギア)】を持っているのよ」

 

アーシアとゼノヴィアはその説明に目を見開いていた。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

あの後、みんなでギャスパーについての説明を聞いた。

 

 

 

 

 

―――――曰く、吸血鬼の中でも特殊なデイウォーカーと呼ばれる日中に活動出来る吸血鬼の血を引いている。

 

 

 

―――――曰く、類稀な才能を持ち、無意識のうちに【神器】の力を高め、将来的には【禁手(バランス・ブレイカー)】へ至る可能性を秘めている。

 

 

 

―――――曰く、強くなる力をコントロールすることが出来ず、暴走してしまうため今まで封じられていた。

 

 

 

終始段ボール箱の中に入っていたギャスパーだったが、側面に開いた2つの穴からこちらを……と言うより俺と一誠を見つめていたのはどういう意味だろうか……?

 

 

 

 

 

―――――閑話休題。

 

 

 

 

 

何にせよ、あの後の話し合いで決まったのは―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほら、走れ。

デイウォーカーなら日中でも走り回れるだろう?」

 

「ヒィィィィッ!?

デュランダルを振り回しながら追いかけてこないでぇぇぇぇぇっ!!

ほ、滅ぼされるぅぅぅぅぅぅっ!!!」

 

 

 

 

 

―――――『特訓』……の筈なんだが……イジメられてるようにしか見えねぇな……。

 

夕方に差しかかった時間帯、旧校舎近くで男の娘な吸血鬼が聖剣使いに全力で追いかけられていた。

傍から見たら完全に吸血鬼狩りです、ありがとうございます……ってか?

 

「ゼノヴィアー程々にしとけよー?」

 

「はいっ!!

分かっています士織様っ!!」

 

そんなきらきらした目でこちらを見るんじゃない……様をつけるんじゃない……。

頭が痛くなるのを感じる……。

 

「……ギャーくん、ニンニク食べれば健康になれる」

 

気がつけば小猫までもがニンニクを持ってゼノヴィアと共にギャスパーを追いかけていた。

 

「いやぁぁぁぁぁん!

小猫ちゃんが僕をいじめるぅぅぅぅぅ!!

助けてぇぇぇぇぇ!士織せんぱぁぁぁぁぁぃぃぃぃい!!イッセーせんぱぁぁぁぁぁぃぃぃぃい!!」

 

「本当に危なくなったら助けてやるから頑張れギャスパー」

 

「今がその時ですぅぅぅぅぅぅっ!!!」

 

最早泣きべそをかきながら逃げ惑うギャスパー。

……アイツ引きこもってた割には動けるんだな。

 

「おーおー、やってるやってる」

 

と、そこへ生徒会メンバーである匙が現れた。

 

「おっ、匙じゃねぇか」

 

一誠はやって来た匙に向かって手を上げた。

 

「よー、兵藤。

解禁された引きこもり眷属がいるとかって聞いてちょっと見に来たぜ」

 

「あぁ、それならあそこだ。

ゼノヴィアと小猫ちゃんに追いかけ回されてる子がそうだぜ」

 

「オイオイ……ゼノヴィア嬢、伝説の聖剣豪快に振り回してるぞ?良いのか、あれ……。

……おっ!てか女の子か!しかも金髪美少女!」

 

そう言って嬉しそうに興奮する匙。そしてそれを可笑しそうに見る一誠。

 

「残念、だが男だ」

 

その一言を聞いた瞬間、匙のテンションがガタ落ちするのが目に見えた。ガックリしてるし……。

 

「そりゃ詐欺だろ……。

てか、女装って誰かに見せたいためにするものじゃねぇのか?

それで引きこもりって、矛盾が過ぎるだろ……難易度高いなぁ……」

 

「まぁ、そう言ってやるなよ。

そういうのは本人の自由だろ?

それに似合ってるんだから別にいいじゃねぇか。

ところで匙は何してんだよ?」

 

一誠の言葉に続いて俺は匙の格好を確認する。

上下をジャージに身を包み、軍手と花壇用の小さなシャベルを持っていた。

 

「見ての通りだぜ?

学園の花壇の手入れをしてんだ。

1週間前から会長からの命令でな。

ほら、ここ最近学園の行事が多かっただろう?

それに今度魔王さま方も此処へいらっしゃるし、学園を綺麗に見せないとな」

 

にかっと笑いながら匙は得意げに胸を張った。

 

 

 

 

 

「―――――へぇ。魔王眷属の悪魔さん方は此処で集まってお遊戯してる訳か」

 

聞き覚えのある声が響く。

正直な所気配は掴んでいたため此処に来るだろうとは思っていたが……実際来られると面倒だという気持ちが湧き出てくる。

 

 

 

「一体何のようだよ―――――アザゼル」

 

渋めの浴衣に袖を通した少々悪そうな雰囲気を纏った男性―――――アザゼルに怠そうな声でそう言った。

 

「よー士織〜アイツらは元気か?」

 

カラカラと笑うアザゼルに対して、俺と一誠以外が警戒の体制を取った。

ゼノヴィアはデュランダルを青眼に構え、アーシアが一誠の後ろに隠れる。小猫はファイティングポーズを取り、匙は右の手の甲にデフォルメされたトカゲの頭のようなものを出現させる。恐らくあれが匙の【神器(セイクリッド・ギア)】だな。

そしてギャスパーだが……何処からともなく取り出した段ボール箱に入り込み俺の後ろに位置取っていた。

 

「し、士織さん、アザゼルって……」

 

「あぁ……コイツのことだぜ?

あの堕天使の総督のアザゼルだ」

 

俺の言葉はすぐに信用するらしく、匙は表情を引き締めて、戦闘の構えを取った。

アザゼルは皆の姿勢に苦笑いを浮かべて手を振った。

 

「やる気はねぇよ。

ほら、構えを解きな、下級悪魔くんたち。

此処に居る連中じゃ俺には「あぁ?」……士織以外じゃ「士織……?」……士織さん以外には!!ってか士織!俺をおちょくって遊びすぎだぞ!?

俺はこれでも堕天使の総督だぞ、そ・う・と・く!!」

 

声を荒らげて俺に怒鳴るアザゼル。

俺はそれを笑いながら「悪ぃ悪ぃ」と言って受け流す。

 

「……ったく!話がズレたじゃねぇか。

とにかく、今日此処に来たのは散歩がてら悪魔さんの所の見学だ。

聖魔剣使いはいるか?ちょっと見に来たんだが……」

 

「祐奈なら居ないぞ残念だったな無駄足だ帰れ」

 

「……おい士織、なんか俺への当たりが辛辣じゃねぇか?」

 

「つい最近何処ぞの堕天使の幹部から家族に手を出されたからな」

 

「あ〜……その件に関しては本当に申し訳ない。俺の管理不届きだ……」

 

そう言って頭を下げるアザゼル。

……まぁ、アザゼルが全て悪いってわけじゃねぇし、謝罪も貰ったことだから許すとするか……。

 

「頭を上げろよアザゼル。

別にそこまで怒ってるわけじゃねぇし、謝罪してくれるならそれで十分だ」

 

「そう言って貰えると助かる。

お前とことを構えるなんて死んでもゴメンだからな。

俺としちゃ友好的な関係を築いて行きたい所だ」

 

アザゼルはそう言い、笑いながら頭を上げた。

ったく……切り替えが早いというか、軽いというか……。

ついついため息がこぼれる。

 

 

 

 

 

―――――閑話休題。

 

 

 

 

 

「それにしてもヴァンパイアの特訓か?

確か【停止世界の邪眼(フォービトゥン・バロールビュー)】持ちだったな」

 

アザゼルはギャスパーの入っている段ボール箱を見つめ、顎に手を当てながらそう言った。

 

「あぁ。

一応特訓方法の候補としてはそこの匙が持ってる【黒い龍脈(アブソーブション・ライン)】を使って【神器】の余分な力を吸い取ってもらいながらコントロールを覚えるってのがひとつだ。

後は一誠―――――赤龍帝の血を飲ませるってのが手っ取り早い方法だな」

 

「へぇ?

士織、お前神器(そっち)関係もいけるクチか?」

 

アザゼルが嬉しそうに俺の方へ寄ってくる。

肩を組もうとしていたのだろうアザゼルの腕を叩き落として腕を組む。

 

「少しはな。

ただアザゼルほどマニアじゃねぇよ」

 

「ちぇ……面白くねぇな……。

せっかくこの手の話ができるやつを見つけたと思ったのによ」

 

明らかに残念そうな表情を浮かべて肩をすくめるアザゼル。

 

「……今度少しだけ付き合ってやるから他の奴に付きまとうなよ?」

 

俺が溜息を吐きながら渋々そう言うと、アザゼルはニヤリと笑った。

 

「言ったな?言いやがったな?

絶対だぞ?もし破ったらストーカーもびっくりなほど絡みに行ってやるからな?」

 

「あぁ〜もぅ!

分かったから帰れよアザゼル!

お前の目的は終わったんだろ?!」

 

「あぁ、むしろ今日は得しかしてねぇな!

あ〜今日は気分がいい!シェムハザでも誘って酒でも飲むか!!」

 

アザゼルは御機嫌に、スキップしながら帰っていった。

 

 

 

「……あ〜……なんて言うかお疲れ様?」

 

「……さんきゅな一誠。

今日は嫌に疲れちまったよ……」

 

今日何度目か分からない溜息を吐き出す。

 

「と、取り敢えず特訓手伝いましょうか?士織さん」

 

「あぁ……そうしてもらえると助かる。

今度お礼に花壇の仕事手伝うから……」

 

「い、いや、いいですよ!

これは俺の善意っすから!」

 

テンパり気味の匙だったが、もうこの際どうでも良かった。

 

 

 

―――――この後、匙の【黒い龍脈】を使ってギャスパーの特訓を再開させたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編の方はいかがでしたでしょうか??
楽しんで頂けたのなら幸いです♪(*´ω`*)


さてさて、今回はよく喋るアザゼルさんでしたね(笑)
そしてギャスパーくんのきちんとした登場っ!!(>_<)
これからどうなるのかお楽しみに♪


それでは、今回はここまでっ!!
また次回お会いしましょう♪(*´ω`*)


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62話

皆さんお久しぶりなのですっ!!(>_<)
執筆に夢中になっていて投稿し忘れてました……(苦笑)



な、なにはともあれ、本編のほうをどうぞ!!


どうも、兵藤士織だ。

 

ギャスパーとの特訓が開始されて次の日の夜。

その日は一誠とギャスパーが悪魔稼業をしに行くということで少しの時間を潰して旧校舎の方へ向かうと、ギャスパーの部屋の前でおろおろしている一誠と、謝っているリアス先輩の姿が視界に入った。

 

「ギャスパー、出てきてちょうだい。

無理してイッセーに連れて行かせた私が悪かったわ……。

イッセーとならあなたも安心して仕事が出来るのではないかと思ったのだけれど……」

 

『ふぇええええぇぇぇぇええんっっ!』

 

ギャスパーの部屋からは大音量の泣き声が響く。

 

「何事だ?リアス先輩。

ギャスパーに何かあったみたいだけど」

 

「士織……。

その……仕事で停めてしまったようなのよ……」

 

「……なるほど」

 

俺はふと、リアス先輩から聞いた話を思い出した。

ギャスパーは名門の吸血鬼を父に持つが、母が人間で妾だったため、純血ではなかった。

純血主義者の多い悪魔以上に純血ではない者を軽視し、侮蔑するという吸血鬼たちは、例え親兄弟であったとしても扱い方は差別的なのだという。

ギャスパーは腹違いの兄弟たちに子供の頃からいじめられ、それから逃げるために行った人間界でもバケモノとして扱われて居場所がなかったらしい。

しかし、ギャスパーは類稀なる吸血鬼としての才能と、人間としての恩恵―――――特殊な【神器(セイクリッド・ギア)】を両方兼ね備えて生まれてきてしまったため、望まなくともその力は歳を取るにつれて大きくなってしまった……。

誰かと仲良くしようとしても、ちょっとした拍子で【神器】が発動してしまい、相手を停めてしまう。

 

「……ねぇ、イッセー、士織。

もし時を停められたら、どんな気分?」

 

リアス先輩は表情に影を落としつつそう言う。

 

「俺は何ともないさ」

 

「右に同じくです」

 

「……っ!?

……怖くはないの……?」

 

俺と一誠の言葉に目を見開くリアス先輩。

 

「……まぁ、相手によるがな。

ただ……ギャスパーのような優しい奴ならいくら時間を停められようと何とも思わねぇんだよ」

 

「そうですよ。

ギャスパーだって悪気があってやってるんじゃない。

それなのに怖いだなんて―――――思うはずありません」

 

俺と一誠はこう考えるが……ギャスパーに停められた連中は『怖い』と思ってしまっただろう。

不信が1度でも心に生まれてしまえば、付き合うのはほぼ不可能。そしてギャスパーを恐怖するようになってしまう。

 

 

 

ギャスパーはそれを永遠と体験し、孤独を味わっただろう……。

それではあまりに……悲惨である。

これが【神器】を得る人間が味わう不幸なのだろうか……。

 

 

 

 

 

『ぼ、僕は……こんな神器いらない……っ!

だ、だって、皆停まっちゃうんだ!

怖がって嫌がって気味がられて!

僕だって嫌なのに!!

と、友達を、な、仲間を停めたくないのに……っ!

大切な人が停まった顔を見るのは……1人しかいない停まった世界は……もう嫌だ……』

 

悲痛なギャスパーの叫び。

家からも追い出され、人も吸血鬼もどちらの世界でも生きられないギャスパーは路頭に迷い、そして―――――ヴァンパイアハンターに狙われて命を落とした。そこをリアス先輩に拾われたらしい。

しかし、強力な力を有するギャスパーを当時のリアス先輩では使いこなすことが出来ず、上から封印を命じられていた。

―――――が、今のリアス先輩なら使いこなせると判断され、封印を解除し現在に至る。

 

「困ったわ……。

この子をまた引きこもらせてしまうなんて……。

……『(キング)』失格ね……」

 

落ち込むリアス先輩。

俺はそんなリアス先輩の姿にため息を吐いて口を開いた。

 

「リアス先輩、この後サーゼクスたちとの打ち合わせがあるんだろ?」

 

「……えぇ。

でももう少しだけ時間を延ばしてもらうわ。

先にギャスパーを―――――」

 

「ギャスパーの事は俺と一誠に任せろ。

―――――可愛い後輩のために一肌脱いでやるよ」

 

「……士織……」

 

リアス先輩は俺の申し出に異を唱えずにただ名前を呟く。

俺はそんなリアス先輩の肩を優しく叩いて言葉をかける。

 

「心配すんな。

俺と一誠が男同士の会話で立ち直らせるから」

 

「……わかったわ。

士織、イッセー、お願いできるかしら?」

 

「任せとけ」

 

「はい!」

 

リアス先輩は微笑みを浮かべて頷いた。

そして、名残惜しそうに、心配そうに、ギャスパーの部屋の扉を一瞥し、この場を後にしていく。

見送りを終えた後、俺と一誠はアイコンタクトを交わすと扉の前にゆっくりと座り込んだ。

 

「……なぁ、ギャスパー。

怖いか?【神器】と……俺たちが」

 

一誠は早速扉越しに話しかける。

 

『……違うんです。

先輩たちが怖いんじゃ……ないんです』

 

ぽつりぽつりとギャスパーは口を開き始めた。

 

「なら何が怖いんだ?」

 

俺の問いかけにしばしの沈黙の後に深呼吸をするのがわかった。

 

『僕は……暴走して誰かを傷付けるのが……怖いんです……』

 

「そうか……」

 

『大切な友達で……先輩で……仲間で……。

今まで1人だった僕に居場所をくれた……そんな皆だから……。

もし、傷つけちゃったら……皆また離れていっちゃう……。

……独りは嫌なんです……』

 

すすり泣く声が聞こえてくる。

……いつも1人でいて、外に出たがらなかったのはそういうことだったのか……。

 

「なぁ、ギャスパー。

俺はお前のことを嫌わないぞ。

先輩としてずっと面倒見てやる。

……まぁ、悪魔としてはお前の方が先輩だろうけどさ。でも、実生活なら俺の方が先輩だから、任せろ」

 

「俺もだぜ?ギャスパー。

一誠に比べればお前なんか可愛いもんだ。

時間を停める?―――――だからどうした。

むしろ俺を停めれるようになったら褒めてやるよ」

 

一誠と俺の言葉を聞いたギャスパー。

そして、今まで閉ざされていた扉が鈍い音を立てながら少しだけ開かれた。

 

「……そんな風に言ってくれたのは先輩たちが初めてです……」

 

泣き腫らした目をしながらギャスパーが顔を出す。

 

「なぁ、ギャスパー。

俺の血、飲んでみるか?

士織が言ってたし……もしかしたら【神器】をコントロールできるようになるかもしんないだろ?」

 

一誠の言葉に、しかしギャスパーは首を横に振る。

 

「……怖いんです。

生きた者から直接血を吸うのが。

ただでさえ、自分の力に振り回されてるのに……これ以上何かが高まったりしたら……僕は……僕は……」

 

俺はその場から立ち上がり、少しだけ出てきているギャスパーの頭を撫でた。

 

「怖いなら怖いでいい。

お前の力はそれくらいの認識でいいんだよ。

ただ―――――怖いからと言って向き合わないのは駄目だ」

 

「……先輩……でも……僕は……」

 

俯き口篭るギャスパー。

俺はそんなギャスパーに優しく言葉を投げかける。

 

「自信がないんだろう?」

 

「……はい」

 

小さい、しかしはっきりとした言葉。

 

「安心しろギャスパー。

お前はお前が考えているよりも―――――()()

 

「えっ……?」

 

目を見開いて顔を上げるギャスパー。

俺の言葉が信じられないという表情を浮かべていた。

 

「お前の幼い頃の話はリアス先輩から聞いた。

……普通ならあんな環境で育ったのなら性格が歪んじまうだろうぜ?

だけど、お前は―――――『優しさ』を忘れなかった。

芯の通った真っ直ぐなその『優しさ』……俺は強いと思うぞ?」

 

ぽんぽん、と優しくギャスパーの頭を叩く。すると、ギャスパーの瞳か1粒、また1粒と涙が伝い始める。

 

「お、おい士織?!

ギャスパー泣いちまったぞ!?」

 

ギャスパーの涙に慌て出す一誠。

俺はそれを一睨みすることで黙らせ、再びギャスパーへと視線を向けた。

 

 

 

「辛かったよな……苦しかったよな……誰も―――――自分のことを評価してくれないってのは」

 

「うぅ……っ……ぅ……うぅ……っ」

 

「『1人』と『独り』は違う。

……お前は長い間『1人』を味わったからこそ、本当の意味での『独り』を怖がってんだよな……」

 

「ふぅぅ……っ……ぅぅ……うぅ……っ」

 

「安心しろギャスパー。

お前にはもう絶対に離れていかない―――――【仲間(俺たち)】がいるぞ」

 

「うわぁぁぁぁぁぁん……っ!!!」

 

遂に声を上げて泣き始めたギャスパー。

俺に抱きつき、憑き物が落ちたかのように大泣きする。

そんなギャスパーの頭を何度も、何度も、優しく撫でた。

 

「なぁ……士織」

 

「ん?」

 

「俺の強くなる理由……増えたかもしんない」

 

「……甘ちゃんだな」

 

「士織に言われたくねーよ」

 

俺たちは微笑みあった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

しばらくの間泣いていたギャスパーだったが、今となっては恥ずかしそうにダンボールの中に入っていた。

 

「……落ち着いたか?ギャスパー」

 

「は、はい……お見苦しい姿を見せてしまってすみません……」

 

頭をひょっこりと出してそういうギャスパーの姿は違和感どころか似合ってさえいる。

 

「気にすんな。

泣くのは悪いことじゃねぇしな」

 

「そうだぞギャスパー」

 

俺と一誠が微笑みながら言えば、ギャスパーは照れたように視線を泳がせた。

 

「んじゃまぁ……時間もある事だし、ボーイズトークでもするか!」

 

「い、いいですね!

僕、その……友達と話すのは初めてです……っ!」

 

ギャスパーは嬉しそうにそう言うと、器用にもダンボールに入ったままこちらに近づいてくる。

 

「ボーイズトーク……??

絵面的にはガールズトークしてる中に男が一人混ざってる感じが……」

 

「……なんか言ったか?一誠」

 

「めっそーもございませーん!!」

 

余計なことを言おうとした一誠に圧力を掛けてやればまるで壊れた人形のように首を横に振る。

そして、苦笑いを浮かべたままの一誠は俺とギャスパーの方への来ると、3人で円を作るように座った。

 

「んで?何について話すんだ?」

 

「決めなくてイイだろ。

自由に話して互いを知るっても大事だぜ?」

 

「じゃ、じゃぁ可愛いお洋服のお話を……!」

 

 

 

 

 

―――――そう言って、俺たち3人は夜通しいろんな話をしたのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編の方はいかがでしたでしょうか?
楽しんでいただけたのなら幸いです♪(*´ω`*)


現在ハイスクールD×D編の書きだめが3話、問題児編が4話分書き上がったのですが……ほとんど勢いで書いてしまったので修正箇所が多々あるのですよ……(苦笑)
修正出来次第投稿しますので、お楽しみにっ!!(>_<)


それでは今回はここまで!
また次回お会いしましょう♪(*´ω`*)


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63話

皆さんお久しぶりですっ!!(>_<)
更新が遅くなってしまってすみませんでした……(。í _ ì。)

本編の方を楽しんで貰えれば幸いですっ!!(>_<)


どうも、兵藤士織だ。

 

 

 

ギャスパーと語り明かした日から数日経った休日。

俺は目的もなく街をぶらついていた。

初めは一誠でも誘って組手でもしようとしていたのだが、今日は朱乃先輩に呼び出されていたらしく断られてしまった。

 

 

 

仕方無しに街に出てきたものの、如何せんやることが無い。

何か退屈を紛らわす事が無いものかと周りを見渡していると―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「士織見つけた」

 

―――――何故か俺よりも少し高い位置に顔があるオーフィスと目が合う。

俺は冷静に視線をほんの少しだけ下に向けると、そこにあったのは見間違えるまでもなく、見知った()()の顔だった。

 

 

 

 

 

「……何してんの?()()

 

俺がそう言えば、ヤハハと苦笑混じりに笑う夜鶴。

 

「ちょっと食べ歩きしてたらこの娘に話しかけられちゃってね?

『空腹……士織探す。手伝って?』っていきなり言われた時はキョトンとなってしまったよ……」

 

「へぇ……良く夜鶴が俺のこと知ってるって分かったな?」

 

夜鶴に肩車された状態のオーフィスの頭を優しく撫でながらそう言うと、オーフィスは気持ちよさそうに目を細めて口を開いた。

 

「夜鶴、士織と似てる」

 

「そ〜か?

全く似てないと思うんだが……あぁ、女顔ってのは似てるな」

 

「違う。

()()()が、似てる」

 

オーフィスの言葉に夜鶴がぴくりと反応する。

 

「流石は【無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)】と言ったところかな?

まぁ確かにそう言われれば俺と士織くんは似てるよ」

 

「そうなのか?」

 

俺が首を傾げれば、夜鶴はにこりと笑って口を開く。

 

「此処で話すのもなんだから何処か落ち着けるところに行こうか?」

 

「それもそうだな……」

 

「士織、我空腹」

 

夜鶴の肩から俺の肩に飛び移ってきたオーフィスは俺の髪を引っ張りながらそういう。

 

「わかったわかった!

だから髪を引っ張るのは止めてくれオーフィス!

……オーフィスはお腹が空いてるみたいだし、近くの公園にでも行かねぇか?

ちょうど美味いホットドッグを売ってる所があるんだ」

 

「ふふふ……士織くんに任せるよ」

 

微笑んだ夜鶴はそう言って、俺とオーフィスを暖かい目で見ていた。

 

「なら……早速行くか」

 

「れっつごー」

 

上機嫌なオーフィスの掛け声とともに俺達は公園を目指した。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

公園に到着した俺達はまず初めにホットドッグを買うことにした。

後回しにしたら空腹のオーフィスに頭を食べられてしまいそうだったからである。

 

「お、いらっしゃい嬢ちゃん。

今日はお友達と一緒かい?」

 

ホットドッグを売る車の中から俺を見つけたのか、店主である筋肉隆々のスキンヘッドな男性が顔を出す。

 

「どーもオッサン。元気そうだな。

それと、俺は嬢ちゃんじゃないって言ってるだろ?」

 

「ガハハハハ!

悪ぃ悪ぃ!

今日もサービスすっから許してくれや嬢ちゃん」

 

「……わざとだな?わざとなんだろ?

いつになったらその嬢ちゃんっての止めんだよオッサン」

 

「そうだな……そのオッサン呼びを止めたらだな」

 

「そうだな……じゃぁ―――――」

 

俺は一瞬悩んだ後に、咳払いをした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――オジサマ♪」

 

柔らかな笑みを浮かべて明るいトーンでそう言ってあげた。

 

「おいこら止めろ。

限りなく似合ってるが止めろ。

俺がアレな人みたいに聞こえるだろうが」

 

スキンヘッドの頭をぽりぽりと掻きながら、なんとも言えないような表情を浮かべる。

 

「えっと……注文してもいいですか?」

 

俺とオッサンがふざけあっていると、夜鶴は苦笑いを浮かべながら話しかけた。

 

「おぉ、悪ぃな。

嬢ちゃんの友達ってならサービスするぜ?

ウチのお得意様だからな!」

 

にかっと笑うオッサン。

夜鶴もそんなオッサンの人柄の良さが分かったのか柔らかな笑みを浮かべていた。

 

「オススメってなんですか?」

 

「ウチはなんでもオススメだぜ?」

 

「えっと……」

 

オッサンの答えに困ったような表情を浮かべる夜鶴。

なんでもオススメと言われると、オススメを聞いた方からすれば困ってしまう。

 

「そんなの悩むに決まってんだろ!

あ〜……俺はいつもので夜鶴は……まぁ、初回だしスタンダードなヤツで。

んで、オーフィスは……」

 

「コレがいい」

 

そう言ってオーフィスが指を指すメニューはこの店でも最大のボリュームを誇るホットドッグだ。

1m程もの大きさのパンに千切りのキャベツと自家製の長大ソーセージを挟み、ケチャップではなく特性の甘辛いソースを掛けたそれは空腹のオーフィスには輝いて見えたのだろう。

 

「……んじゃコレをひとつ」

 

「……いいのか?嬢ちゃん。

こりゃ食べ盛りの男やらが喰う用に作ったヤツだぞ?

そのちっこい嬢ちゃんが喰うにはデカすぎると思うんだが……」

 

流石のオッサンも真顔で止めにかかるがオーフィスなら大丈夫だろうと俺はそれを否定する。

 

「大丈夫大丈夫。

最悪残ったら俺が喰うし」

 

「……まぁ、無理にとは言わねぇ、喰えなかったら俺んとこに持ってきな。

分割して持ち帰れるようにしてやるからよ」

 

そう言ったオッサンは俺達の注文した品を作り始める。

 

「ほら、そこのベンチにでも座っときな。

出来上がったら持ってってやるからよ」

 

「サンキューオッサン。

お代は此処に置いとくぜー」

 

お代用のトレイにお金を置いた俺たちはオッサンの言うようにベンチに向かった。

 

「あの人優しい人みたいだね」

 

「優しいというかフレンドリーというか……悪い人じゃねぇってのは確かだ。

……まぁ、オッサンの前では言わねぇけどな」

 

そう言って笑えば、夜鶴も釣られたようにクスクスと笑い出す。

オーフィスは俺の膝の上に座って御機嫌の様子だ。

 

 

 

 

 

「―――――そんで?

本題に入ろうぜ?夜鶴」

 

俺と夜鶴が似ている、オーラ云々の話を聞こうと俺は切り出す。

 

「そうだね……簡単に言ってしまえば―――――俺も元は転生者なんだ」

 

「なっ?!」

 

サラッとそういった夜鶴だったが、しかし内容が内容。

俺はオーフィスが膝に乗っているのも忘れて立ち上がってしまう。

 

「か、神様が元転生者?!

何の冗談だよそりゃ……!」

 

「ふふふ……驚くのも無理はないね……。

まぁ、何はともあれ、君と俺が似ているというのはそういう訳さ。

1度死を経験した魂が再びリセットされること無く新たな輪廻の輪に乗った……その過程で特殊なカタチに変化するんだよ。

……オーフィスちゃんはその変化した魂から発せられる特殊なオーラを見たんだろうね」

 

「あ〜……どっから突っ込むべきか……。

……いや、深く考えるだけ無駄か。

まぁ、要するにだ、俺と夜鶴の魂のカタチが似てるってことと、夜鶴は転生者だけど神様になったってことだよな?」

 

「おそろしく簡単に纏めたね……。

だけど……うん、その考えは的を射てるよ」

 

簡潔に纏められた言葉に夜鶴は頷きそう言う。

俺はどさりとベンチに腰を下ろして溜息を吐く。

 

「あ〜……にしても夜鶴はすげぇな。

一般人から転生して更には神様にジョブチェンジ?

なんつーサクセスストーリーだよ」

 

「確かに文字に起こしてみたらとんでもない話だね……」

 

俺と夜鶴は顔を見合わせて笑った。

別に深く考える必要は無い。

俺は俺で、夜鶴は夜鶴。

元がどうであれ、今の関係を築けたのだし、驚くことはあるにせよ拒絶することなどない。

俺が何となくスッキリした気分で背伸びをしていると、突然何かが飛び付いてきた衝撃の後に俺の頭に鈍い痛みが走った。

 

「ってぇ?!

な、なんだなんだ!?」

 

「……士織、我、頭打った。痛い」

 

見てみればオーフィスがジトーっとした目を俺に向けながら手刀を落としたのがわかる。

 

「あぁ……俺がいきなり立ったから落ちちまったのか……悪ぃなオーフィス」

 

ぶつけたであろう部分を優しく撫でてそう言う。撫でられているオーフィスは目を細めて気持ちよさそうだ。

 

「……ん。

もっと、撫でて……」

 

撫でる手に擦り寄るオーフィス。

俺はそんなオーフィスに愛しさを感じながら優しく撫で続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――待たせたなぁ!

注文の品が出来たぜ、嬢ちゃん」

 

オーフィスを撫で続けてしばらく経っただろう頃に、オッサンの元気な声が響く。

その手には俺達の注文した品があった。

 

「ほら、嬢ちゃんはいつものでそっちの娘にはスタンダードな。

そんでちっこい嬢ちゃんは……これだよな」

 

俺の手に渡されたのはやや大ぶりのホットドッグ。

レタスやトマトなどの野菜と太めのソーセージが挟まれ、ピリ辛ソースのかかったものだ。

夜鶴に手渡されたのは俺のパンよりもやや小ぶりなパンにレタスとソーセージが挟まれ、マスタードとケチャップのかかった、いたってシンプルなもの。

そして、オーフィス渡されたのは下手をすれば身の丈サイズのホットドッグ……。

目をキラキラさせながらそのホットドッグを見つめていた。

 

「ほら、コイツはサービスだ。

嬢ちゃんはいつも通りコーラでいいよな?

そっちの娘には勝手なイメージだがコーヒーを、ちっこい嬢ちゃんにはオレンジジュースを用意したが……良かったか?」

 

「いつも悪いなオッサン」

 

「ありがとうございます。

俺はコーヒーが好きですから有難いです」

 

「我、感謝」

 

「がハハハハ!

先行投資だ先行投資!

これからも贔屓にしてくれよ?」

 

んじゃ、ゆっくり喰ってくれと言ったオッサンは戻って行った。

 

「取り敢えず腹ごしらえしようぜ?

温かいうちに喰った方が美味いしな」

 

「そうだね。

それじゃぁ……頂きます」

 

「頂きます」

 

夜鶴とオーフィスは行儀良く手を合わせて、ホットドッグを口に運んだ。

 

「これは……美味しいね」

 

1口齧って咀嚼した夜鶴は驚いたようにそう口にする。

 

「だろ?

此処なら俺も安心してオススメできるからな」

 

行儀が少々悪いが、手早く頂きますと呟いた俺はいつものようにホットドッグにかぶりついた。

ジューシーなソーセージと新鮮な野菜、そしてそれを纏めるピリ辛のソースが美味い。

オーフィスの方を見てみれば口いっぱいに頬張って幸せそうな表情を浮かべているのが見えた。

 

「オーフィス、そんなに慌てて食べなくてもいいんだぞ?」

 

俺の言葉に反応して、オーフィスはコクコクと首を縦に振るが、食べる速度は遅くならない。

 

「喉につまらせるなよ?」

 

そう言いつつ、頬が緩むのを感じた。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「さて、俺はそろそろ行くよ」

 

ホットドッグを食べ終えて、公園でのんびりと雑談をしていると、夜鶴がそう言い出す。

 

「帰るのか?」

 

「ん〜……いや、街を少し散策して帰るとするよ」

 

「今日は悪かったな……オーフィスに付き合わせちまって」

 

「ふふふ……気にしなくていいよ?

結果、楽しい1日だったしね?」

 

柔らかな笑みを浮かべる夜鶴はお腹がいっぱいになって寝てしまったオーフィスの頭を優しく撫でた。

 

「それじゃぁ……また会おう、士織くん」

 

ベンチから立ち上がり、夜鶴はそう言うと歩んでいく。

 

 

 

―――――が、何かを思い出したかのように立ち止まると、こちらを振り返った。

 

「おっと……危ない危ない……伝え忘れるところだったよ……」

 

「ん?何かあったのか?」

 

「君に伝えておこうと思ってたことがあったんだ。

実はね?士織くん」

 

夜鶴は満面の笑みで口を開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――この世界にもう一人、転生させたからね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編の方は如何でしたでしょうか?
楽しんでいただけたのなら幸いです♪(*´ω`*)


さて、今回のお話ですが……最後に夜鶴くんが爆弾を落としていきました♪(*´ω`*)
前々から考えていたことをやっと出すことが出来ました♪
今後、どうなっていくのかはお楽しみに♪(*´ω`*)


では、今回はここまで!
また次回お会いしましょう♪


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64話

皆さんこんにちは♪
今回は早めに投稿することできました〜♪(*´ω`*)

それでは早速本編をどうぞっ!(>_<)


Side 士織

 

「―――――さて、行くわよ」

 

オカルト研究部の部室に集まるいつものメンバー。リアス先輩の言葉に頷いた。

周りを見れば少々緊張気味の面々。

そう、今日は3大勢力の会談の日である。

 

会場となるのは、駒王学園新校舎にある職員会議室らしく、既に各陣営のトップたちは新校舎の休憩室で待機しているようだ。

そして、この学園全体に強固な結界がはられ、誰も中へ入れない状態となっていた。

つまり、この会談が終わるまで外にも出られない。

 

俺はリアス先輩たちに続いて部室を後にしようとする。

 

「ぶ、部長!み、皆さぁぁぁぁん!」

 

部室に置かれた段ボール。そこにすっぽりとはまっているギャスパーの弱々しい声が響く。

 

「ギャスパー、今日の会談は大事なものだから、時間停止の神器をまだ使いこなせていないあなたは参加できないの……ごめんなさいね……?」

 

リアス先輩は柔らかな声音で告げる。

残念ながら、未だギャスパーは神器を使いこなすまでには至らなかったのだ。

俺はギャスパーの側まで行くと、頭を優しく撫でる。

 

「ギャスパー、大人しく待ってろよ?」

 

「は、はい、士織先輩……」

 

「部室には一誠が自分のゲームを持ってきてくれてるからそれで遊んでもいいし、俺が作ったお菓子もあるから食べていい。

リラックスして待ってろ」

 

「はいぃ……わかりましたぁ……」

 

既にリラックスしているのか、表情が柔らかなギャスパーは俺の言葉にそう言って頷く。

 

「……むぅ……羨ましい……」

 

祐奈はギャスパーを見ながらそう呟く。

俺はそんな祐奈に微笑ましさを感じながら立ち上がると、祐奈に近づき頭を撫でる。

 

「ふぇっ?!

し、士織くんっ!?

いきなりどうしたのっ!?」

 

「祐奈がギャスパーを見て羨ましいなんて言ってたからな。

撫でて欲しかったんだろ?」

 

「き、聞こえてたの……?」

 

顔を赤くしながら恥ずかしそうにうつむく祐奈。しかし、撫でている手は拒否せず、むしろ自分から手の方へと擦り寄ってきていた。

 

「いちゃついてるとこ悪いけど……置いてかれるぞ?」

 

そんな俺と祐奈に、一誠は苦笑混じりにそう言ってくる。

確かに今はこんなことをしてる場合ではない。

 

「おぉ、悪いな一誠。

んじゃ、行くか祐奈」

 

「う、うん」

 

若干残念そうな表情の祐奈であったが、それもすぐに無くなる。

やはり緊張しているのだろう。

 

「行ってくるぜ、ギャスパー」

 

「はいぃ……いってらっしゃいですぅ……」

 

ギャスパーのそんな言葉に送り出され、俺たちはリアス先輩たちのあとを追った。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

会議室の扉前に立ち、深呼吸をするリアス先輩。ふぅ、とひとつ息を吐くと扉をノックした。

 

「失礼します」

 

中に入っていくリアス先輩たちに続き中に入ると、そこには―――――。

 

 

 

特別に用意させたという豪華絢爛なテーブル。そこを囲むように見知った人物たちが全員、真剣な面持ちで腰を下ろしていた。

静寂な空間の中、ピリピリとした空気が充ちている。

 

 

 

―――――悪魔側。

サーゼクス・ルシファー、セラフォルー・レヴィアタン。

そして給仕係としてグレイフィア・ルキフグスの姿。

 

 

 

―――――天使側。

金色の翼の女性と白い翼の少女。

おそらく金色の翼を持つ女性が一誠から聞いたミカエルだろう。

 

 

 

―――――堕天使側。

6対12枚の黒い翼を生やしたアザゼル、【白龍皇】ヴァーリ。

 

 

 

3大勢力のお偉いさんが揃いぶみしていた。

 

 

 

「私の妹と、その眷属たち、そして……士織くんだ」

 

サーゼクスが他の陣営にリアス先輩、眷属、俺を紹介する。

 

「先日のコカビエル襲撃での活躍した面々だよ」

 

「報告は受けています。改めてお礼を申し上げます。

それと―――――」

 

ミカエルはリアス先輩に礼を言うと、俺の方へ視線を向けた。

 

「あなたが士織様―――――ごほん、士織さんですね?

初めまして、私はミカエル。天使の長をしています」

 

頭を深く下げて自己紹介をするミカエル。

一瞬聞き間違えたか俺の名前に『様』とついた気がしたが……気のせいだろう。

 

「俺は兵藤士織だどうぞよろしく」

 

簡単な言葉を並べ、会釈を返す。

 

「あ〜……俺のところのコカビエルが迷惑かけちまったみたいですまんかったな」

 

あまり悪びれたような様子は感じさせないものの、謝罪の言葉は述べるアザゼル。

 

「そこの席に座りなさい。

士織くんはすまないがそちらの席に……」

 

サーゼクスの指示を受け、グレイフィアがリアス先輩たち、そして俺を席に促す。

俺だけ1人で座ることとなったが、それは気にしないこととし、全員が席についたのを合図にサーゼクスが口を開いた。

 

「全員が揃ったところで、この会談の前提条件をひとつ……。

―――――此処にいる者たちは、最重要禁則事項である『神の不在』を認知している」

 

『………………』

 

しんとしたその場の空気は変わらず。つまりは全員が『神の不在』を認知しているということだろう。

 

「……では、それを認知しているとして、話を進める」

 

こうして3大勢力の会談が始まった―――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……さて、リアス。

そろそろ、先日の事件について話してもらおうかな」

 

悪魔、天使、堕天使、それぞれの簡単な話し合いは順調に進み、次はあのコカビエルとの戦いについての話に切り替わるらしい。

指名されたリアス先輩は勿論のこと、支取蒼那、朱乃先輩が立ち上がり、コカビエル戦での一部始終を話し始める。

緊張気味のリアス先輩だったがリアス先輩は冷静に淡々と自分の体験した事件の概要を伝えていく。

報告を受けている各陣営のトップは溜息を吐くものもいれば、顔を顰める者、笑う者など、個々違った反応を見せていた。

 

「―――――以上が、私、リアス・グレモリーと、その眷属悪魔、そして兵藤士織が関与した事件の報告です」

 

全てを語り終えたリアス先輩はサーゼクスの「ご苦労、座ってくれたまえ」という言葉で着席し、胸をなで下ろした。

 

「ありがとう、リアスちゃん☆」

 

セラフォルーもリアス先輩にウインクを送っている。

 

「さて、アザゼル。

この報告を受けて、堕天使総督の意見を聞きたい」

 

サーゼクスの問いに全員の視線がアザゼルへと集中する。

アザゼルはそんな視線どうってことないと言わんばかりに不敵な笑みを浮かべて口を開き始めた。

 

「先日の事件は我が堕天使中枢組織『神の子を見張る者(グリゴリ)』の幹部コカビエルが、他の幹部及び総督の俺に黙って、単独で起こしたものだ。

奴の処理はうちの『白龍皇』が行う予定だったが……兵藤士織の奴がやっちまった上に、全く溶けない氷で閉じ込めちまったからな。今は堕天使領の一角で封印処置して監視も付けてる。

まぁ、その辺の説明はこの間転送した資料に詳しく書いといただろう?それが全部だよ」

 

ミカエルは嘆息しながら言う。

 

「説明としては最低の部類ですが―――――あなた個人が我々と大きな事を起こしたくないという話は知っています。

それに関しては本当なのでしょう?」

 

「あぁ……。

俺は戦争なんて興味はねぇ。

コカビエルも俺のことをこきおろしていたと、そっちの報告でもあったじゃねぇか」

 

アザゼルはそう言って瞳を閉じた。

戦争に消極的で、神器にしか興味の無い者―――――的を射た評価だと俺は思う。

今度はサーゼクスがアザゼルに問い掛ける。

 

「アザゼル、ひとつ訊きたいのだが、どうしてここ数十年、神器(セイクリッド・ギア)の所有者をかき集めている?

最初は人間たちを集めて戦力増強を図っているのかと思っていた。

天界か我々に戦争を仕掛けるのではないかとも危惧していたのだが……」

 

「そう、いつまで経ってもあなたは戦争を仕掛けてなど来なかった。

白い龍(バニシング・ドラゴン)』を手に入れたと聞いた時には、強い警戒心を抱いたものです」

 

ミカエルの意見もサーゼクスと同様の様子だった。

2人の意見を聞いて、アザゼルは苦笑する。

 

神器(セイクリッド・ギア)研究のためさ。

なんなら、一部研究資料もお前たちに送ってやろうか?

……何より研究してるからってそれで戦争なんざ仕掛けねぇよ。

戦に今更興味なんてないからな。

俺は今の戦をしていない世界に十分過ぎるくらいに満足している。

部下に『人間の政治にまで手を出すな』と強く言い渡しているぐらいだぜ?

宗教に介入するつもりはねぇし、悪魔の業界にも影響を及ぼすつもりもねぇ。

―――――ったく、俺の信用は三すくみの中でも最低かよ……」

 

「それはそうだ」

 

「そうですね」

 

「その通りね☆」

 

「当たり前だろ」

 

サーゼクス、ミカエル、セラフォルー、俺の声が揃って、アザゼルに向けられた。

アザゼルはそれを聞き、面白くなさそうに耳をかっぽじっていた。

 

「チッ……。

神や先代ルシファーよりもマシかと思ってたが、お前らもお前らで面倒臭い奴らだ。

こそこそ研究するのもこれ以上性に合わねぇか。

あー……わかったよ。

―――――なら、和平を結ぼうぜ。

元々そのつもりもあったんだろ?天使も悪魔もよ」

 

アザゼルから発せられた『和平』という言葉に各陣営は少しの間、驚きに包まれていた。

表情から読み取るに、まさかアザゼルから提示されるとは思っていなかったようだ……。

しばしの後、アザゼルの言葉に驚きを見せていたミカエルが微笑む。

 

「えぇ、私も悪魔側とグリゴリに和平を持ちかける予定でした。

このままこれ以上三すくみの関係を続けていても今の世界の害にしかなりません。

天使の長の私が言うのも何ですが―――――戦争の大本である『神』と『魔王』は消滅したのですから」

 

アザゼルはミカエルの言葉に噴き出して笑う。

 

「ハッ!あの堅物ミカエルさまが言うようになったじゃねぇか。

あれほど『神、神、神ぃぃぃ!』とか言ってたのによ」

 

「……失ったモノは大きい。

けれど、いないものをいつまでも求めても仕方がありません。

人間たちを導くのが、我らの使命。

神の子らをこれからも見守り、先導していくのが一番大事なことだと私たちセラフのメンバーの意見も一致しています」

 

「……おいおい、今の発言は『堕ちる』ぜ?―――――と思ったが、『システム』はお前らが受け継いだんだったな。

いい世界になったもんだ。

俺らが『堕ちた』頃とはまるで違う」

 

アザゼルとミカエルの言い合いに、サーゼクスも同意見を口に出す。

 

「我らも同じだ。

魔王がなくとも種を存続するため、悪魔も先に進まねばならない。

戦争は我らも望むべきものではない。

それに―――――次また戦争をすれば、悪魔は滅ぶ」

 

サーゼクスの言葉にアザゼルも頷く。

 

「そう。

次の戦争をすれば、三すくみは今度こそ共倒れだ。

そして、人間界にも影響を大きく及ぼし、世界は終わる。

俺らはもう、戦争なんて起こせない」

 

先程までふざけた様子だったアザゼルが一転して真剣な面持ちとなる。

 

「神がいない世界は間違いだと思うか?

神がいない世界は衰退すると思うか?

……残念ながらそうじゃなかった。

俺もお前たちも今こうやって元気に生きている」

 

アザゼルは腕を広げながら、言った。

 

 

 

 

 

「―――――神がいなくても世界は回るのさ」

 

 

 

 

 

その言葉はこの場にいる者の心に大きく、強く刻まれた。

その後、会談は今後の戦力云々の話へと移っていき、現在の兵力、各陣営との対応、これからの勢力図などと話し合っている。

初めに此処へ来た時の様なピリピリとした空気はなくなり、若干の心の余裕ができた様な雰囲気を感じる。

 

「―――――と、こんなところだろうか?」

 

サーゼクスの一言で、各陣営のトップたちは大きく息を吐いた。どうやら一通りの重要な話が終わったようだ。

おおよそ、会談が始まって1時間程。

俺はやることもなくただ無言でこの場にいたためか長く感じ、暇を持て余すこととなってしまった。

ただ、白龍皇であるヴァーリがずっとこちらを見てくるのは、面倒以外の何者でもなかったのは確実だろう。

 

「さて、そろそろ俺たち以外に、世界に影響を及ぼしそうな奴らへ意見を訊こうか。

無敵の二天龍さまたちによ。

まずはヴァーリ、お前は世界をどうしたい?」

 

アザゼルの問い掛けに白龍皇ヴァーリは笑む。

 

「オレは強い奴と戦えればそれでイィ」

 

何とも『らしい』答えだが……強い奴という言葉の時にこちらを見つめるのはやめて欲しい。

 

「じゃぁ、赤龍帝、お前はどうだ?」

 

一誠はそう言われると息を吐いて答えた。

 

「俺は俺の目標を達成したいです」

 

「目標?なんなんだそれは?」

 

「それは……」

 

一瞬、こちらを見て言葉に詰まる一誠。

しかし、何かを思いついたかのように表情を変えると口を開く。

 

「俺の目標、それは―――――最高の赤龍帝になることです。

才能も無い、馬鹿な俺だけど……そんな俺でも相棒となら強くなれる。

そして、俺には大切な人たちがいます。

それを護れるように強くなって、皆で笑って過ごす。

それが俺の望みです」

 

一誠は覚悟を決めた表情でそう言い切った。

そんな一誠にアザゼルはにやりと笑い、頷いた。

 

「イイじゃねぇか!

おいサーゼクス。

お前、こいつが自分の陣営にいて良かったじゃねぇか。

こりゃかなりの逸材だぜ?」

 

「あぁ。

彼は私も注目している人物のひとりさ」

 

サーゼクスも暖かな目をして、そう言った。当の一誠は何処か恥ずかしそうに視線を泳がせていた。

 

「んじゃ、二天龍の意見も聞いたことだし―――――もうひとつの本題にでも入ろうぜ?」

 

アザゼルは柏手を打つとそう言い出す。

先程息を吐いたばかりの各陣営のトップたちは再び表情を引き締めた。

 

「コカビエル戦での兵藤士織の【神器(セイクリッド・ギア)】についての話だ」

 

そうして、俺の方に視線が集まる。

やはり、そのことについてを此処で語らないといけないのか……。

……まぁ、全てを語るつもりは毛頭ないが……。

 

「確か……神器の名称は【精霊天使(フェアリー・エンジェル)】。

そしてその禁手(バランス・ブレイカー)現界せし天魔の奇跡(ディセント・オブ・セフィロト)】。

更にそこからの派生であろう『神威霊装・神番(ヤハウェ・エロヒム)』……。

……単刀直入に聞く。

士織、こりゃ一体なんだ?」

 

アザゼルは与えられた情報を羅列し、神妙な表情で俺にそう言った。

 

「ただの【神器(セイクリッド・ギア)】さ。

ただ、他のとはちょっと違う特別製だけどな」

 

「で、では、『ヤハウェ』という名を持つ意味は?!」

 

俺の言葉のすぐ後に、ミカエルは身を乗り出してそう言った。

やっぱりそこが一番気になるのか……。

 

「さぁ?なんでだろうな?

案外、神の意識でも封印されてるんじゃねぇか?」

 

俺がにやりと笑ってやれば、ミカエルは何とも言えない表情を浮かべて俺を見つめた。

 

「……何にせよこりゃ最早【神滅具(ロンギヌス)】に分類するべき神器だぞ……。

あの溶けない氷だけじゃねぇだろ?その神器の能力は」

 

鋭い眼光でこちらを見つめる。

流石はアザゼルと言ったところだろうか、俺の神器を直接見た訳では無いのにそこまで見抜くとは……。

 

「へぇ……よくわかったなアザゼル。

まぁ、少なくともアザゼルが思ってる数は能力があるぜ?」

 

「マジかよ……規格外にも程があんだろ……!」

 

言葉では悩ましげにそう言いつつも、アザゼルの瞳は輝いていた。

神器オタクの面が顔を出してきたな……。

 

「……ひとつはっきりさせておきたいことがあるんだが……良いかな?士織くん」

 

俺がぼやかしながら質問に答えていた時、サーゼクスが口を開いた。

 

「君は今後どうするんだい?」

 

「どうする……ねぇ?」

 

「此処には各陣営のトップが揃っている。

君の今後によって各々の行動が変わってくるんだ。

だから、此処ではっきりさせてくれないかい?」

 

何処か掴ませないそんな笑みを浮かべてそういうサーゼクス。

何とも回りくどく、わかりにくい言い回しである。

 

「そんなわかりにくく言うんじゃなくてさ。もっとわかりやすく行こうぜ?サーゼクス。

―――――俺がどの陣営につくかが知りたいんだろ?」

 

「……君にはかなわないね……。

そうだよ。私たちはそれを知りたい」

 

その言葉に、アザゼルもミカエルも真剣な表情を浮かべる。

3人とも、やはりそれが知りたかったようだ。

確かに、これだけの力を持つ【神器】を宿した俺が何処の陣営につくのかによってはパワーバランスが大きく傾いてしまう。

そのため、俺のついた陣営は他の陣営にその分何かを対価として渡さなければならない。和平を結ぼうとしているのだからそういうことだろう。

 

しかし、俺はそれについては前々から決めていた。

 

「俺は―――――」

 

 

 

 

 

意見を言うために口を開いた途端いつか感じたあの感覚が襲ってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――時が、停まったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編の方はいかがでしたでしょうか?
楽しんでいただけたのなら幸いです♪(*´ω`*)


さて、やっと会談までこれました……っ!
バトルシーンも書きやすいところなのでやる気を出して頑張るのですよっ!!(>_<)


それでは今回はここまでっ!
また次回お会いしましょう♪(*´ω`*)


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65話

皆さんこんにちは♪(*´ω`*)
筆が進む夜叉猫ですよ〜♪

再び早めの投稿となりましたっ!!(>_<)
楽しんでいただけたら嬉しいですっ♪

それでは、早速本編をどうぞ♪(*´ω`*)


Side 士織

 

「これは……」

 

「……チッ!やっぱり来やがったか」

 

アザゼルは忌々しそうに悪態を吐く。

 

「動ける奴は返事をしろ。

現状を確認しときたい」

 

そういって周りを見回すアザゼル。

俺も誰が動けるのかを確認していった。

各陣営のトップは言わずもがな、停止しておらず、オカルト研究部のメンバーではリアス先輩、祐奈、ゼノヴィア、そして一誠か……。

 

「眷属で動けるのは私とイッセー、祐奈にゼノヴィアだけよ」

 

アザゼルの言葉にいち早く反応したのはリアス先輩。

冷静な判断が出来ているようだ。

 

「イッセーは赤龍帝、祐奈は禁手(バランス・ブレイカー)に至り、イレギュラーな聖魔剣を持っているから無事なのかしら……。

ゼノヴィアは直前でデュランダルを発動させたのね?」

 

リアス先輩の言うように、ゼノヴィアは聖なるオーラを放ち続けるデュランダルを持っていた。

ちょうど、しまうところだったらしく、空間の歪みに聖剣を戻している。

 

「時間停止の感覚はなんとなく体で覚えた。

―――――停止させられる寸前にデュランダルの力を盾に使えば防げると思ったのだが……正解だったな」

 

にやりと笑ってそういうゼノヴィアは何処か得意気であった。

 

「おい、アザゼル。

これはやっぱり……」

 

俺が呼べば、アザゼルは頷き、口を開く。

 

「あぁ……こりゃテロだ。

外見てみろ……面倒ったらありゃしねぇ……」

 

職員会議室の窓の方を顎で示し頭を掻く。

それと同時に、窓の外で閃光が広がり、建物も微妙な揺れが襲う。

 

「攻撃を受けているのさ。

何時の時代も勢力と勢力が和平を結ぼうとすると、それを何処ぞの集まりが嫌がって邪魔しようとするのさ……」

 

窓の外に視線を移せば、そこには無数の人影があった。

黒いローブを着込んだ魔術師のような連中がこちらへ魔力弾を撃ち込んでいるのだ。

 

「一体誰ですか?あいつら」

 

一誠が眉をひそめながらアザゼルに問う。

アザゼルは不敵な笑みを浮かべながら一誠に近づくと、肩を組んで口を開く。

 

「ありゃ所謂『魔法使い』って連中だな。

悪魔の魔力体系を伝説の魔術師『マーリン・アンブロジウス』が独自に解釈して再構築したのが【魔術】・【魔法】の類だ。

……放たれてる魔術の威力から察するに一人一人が中級悪魔クラスの魔力を持ってやがりそうだ。

……まぁ、今は俺とサーゼクスとミカエルで強力無比な防壁結界を展開してるからどうってことはねぇけどな?」

 

一誠の肩をパンパンと叩きながら笑うアザゼル。一誠の表情は何とも言えないものになっている。

 

「あ〜……じゃぁ、さっきの時間停止は?」

 

「それは力を譲渡できる神器か魔術かでギャスパーの神器を強制的に禁手状態にしたんだろうよ……。

……ったく……イラつかせるのが上手い奴らだ」

 

俺がアザゼルに代わって言えば、一誠も表情に怒りを浮かばせる。

 

「ギャスパーは旧校舎でテロリストの武器にされている……。

何処で私の眷属の情報を得たのかしら……。

しかも、大事な会談をつけ狙う戦力にされるなんて……ッ!

これ程、侮辱される行為はないわっ!、」

 

リアス先輩は紅いオーラをほとばしらせながら怒りを主張していた。

 

「ちなみにこの校舎を外で取り囲んでいた堕天使、天使、悪魔の軍勢も全員停止させられてるようだぜ?

まったく……リアス・グレモリーの眷属は末恐ろしい奴らばかりだな」

 

アザゼルがリアス先輩の肩に手をポンと置くが、リアス先輩は容赦なくその手を払い除ける。

払い除けられたアザゼルは肩をすくめながらその手を窓へ向ける。

すると、外の空に無数の光の槍が現れ、アザゼルが何でもないように手を下ろせば、その光の槍が雨となって地上の魔術師たちに降り注いだ。

防御障壁を展開していたものの、そんなものなどなんなく貫き、魔術師たちを一掃するアザゼルの光の槍。

 

「うわ……すげぇ……」

 

その光景に一誠は声を上げる。

しかし、アザゼルにとってこんなことは朝飯前よりも楽な仕事だろう。

 

「この学園は結界に囲われている。

それにも関わらず、こいつらは結界内に出現してきた。

つまり、この敷地内に外の転移用魔法陣とゲートを繋げている奴がいるってことだ。

どちらにしても【停止世界の邪眼(フォービトゥン・バロール・ビュー)】の効果をこれ以上高められると、俺たちも誰か1人ぐらい停止させられるかもしんねぇ。

この猛攻撃で此処に俺達を留まらせて、時間を停めた瞬間校舎ごと屠るつもりだろう。

あちらは相当な兵力を割いてきているようだしな……」

 

アザゼルの視線の先、校庭の各所で魔法陣が出現し、怪しく輝き始める。

魔法陣から現れるのは先程アザゼルにやられた魔術師集団と同じ格好の者たち。

塵芥のように性懲りもなく現れるとは……。

頭が痛くなるのを感じた。

 

「さっきからこれの繰り返しだ……。

俺たちが倒しても倒しても次の奴らが現れる。

しかし、タイミングといい、テロの方法といい、こちらの内情に詳しい奴がいるのかもしれない。

案外此処に裏切り者がいるのかもな?」

 

呆れるようにアザゼルは息を吐く。

しかし、アザゼルの言い方からは大方予想がついているように聞こえる。

 

「取り敢えず、この結界を解いちまえば人間界に被害を出すかもしんねぇし、俺は相手の親玉が出てくるのを待ってんだ。

しばらくここで篭城でもしてりゃ痺れを切らして顔出すかもしんねぇだろ?

早く黒幕の顔を拝みたいもんだぜ……」

 

余裕の表情を浮かべてそう語るアザゼル。

 

「……というように、我々首脳陣は下調べ中で動けない。

だが、まずはテロリストの活動拠点となっている旧校舎からギャスパーくんを奪い返すのが目的となるね」

 

サーゼクスはこれからのことを口にする。

つまりは現状一番危険なものを先に返してもらうということか。

 

「お兄さま、私が行きますわ。

ギャスパーは私の眷属です。

私が責任を持って奪い返してきます!」

 

強い意志を瞳に乗せてリアス先輩が進言する。その様子にサーゼクスはふっと笑う。

 

「言うと思っていたよ。

妹の性格ぐらい把握している。

―――――しかし、旧校舎までどう行く?

この新校舎の外は魔術師だらけだ。

勿論、通常の転移も魔法に阻まれる」

 

「旧校舎―――――根城の部室に未使用で残りの駒である【戦車(ルーク)】を保管していますわ」

 

「なるほど『キャスリング』か。

普通に奪い返しに行くのは彼らも予想しているだろうから、これは相手の虚をつける。何手か先んじえるね」

 

『キャスリング』―――――確か【(キング)】と【戦車(ルーク)】の位置を瞬間的に入れ替わらせる技だったはず。

なるほど、リアス先輩はそれを利用して旧校舎に行こうという考えか。

 

「よし。

だが、1人で行くのは無謀だね。

―――――グレイフィア、『キャスリング』を私の魔力方式で複数人転移可能にできるかな?」

 

「そうですね、此処では簡易術式でしか展開できそうにありませんが、お嬢さまともうひとりなら転移可能かと」

 

「リアスと誰かか……」

 

サーゼクスはもう1人を誰にするか悩んでいるようだった。

 

「サーゼクス。

もう1人なら一誠を連れていけ。

―――――良いな?一誠」

 

俺がそう言って、一誠の方を向く。

一誠は一瞬驚いた表情を浮かべたが、直ぐににやりと笑って頷く。

 

「勿論だ!

俺が行きます!ギャスパーは俺の大切な後輩ですから!」

 

その言葉を聞いたサーゼクスは満足気に頷くとアザゼルに視線を向けた。

 

「アザゼル、噂では神器の力を一定時間自由に扱える研究をしていたね?」

 

「あぁ、そうだが、それがどうした?」

 

「ギャスパーくんの力を抑えれるだろうか?」

 

「…………」

 

サーゼクスの問いにアザゼルは黙り込んだ。

しかし、アザゼルは懐を探り出すと一誠に向けて何かを投げた。

 

「おっと……」

 

「そいつは神器をある程度抑える力を持つ腕輪だ。

例のハーフヴァンパイアを見つけたらそいつを付けてやれ。

多少なりとも力の制御に役立つだろう」

 

「オッケーです!

ギャスパーに会ったら直ぐに渡します!」

 

にかっと無邪気に笑う一誠。

にやりと不敵な笑みを浮かべるアザゼル。

……こいつら案外相性がいいのかもな……。

 

「アザゼル、神器の研究は何処までいっているというのですか?」

 

ミカエルが嘆息しながらアザゼルに訊くが、アザゼルは笑ったまま詳しくは語らない。

 

「イイじゃねぇか。

神器を作り出した神がいないんだぜ?

少しでも神器を解明できる奴が居た方がいいだろ?

お前だってしらないことだらけだと耳にしたぜ?」

 

「研究しているのがあなただというのが問題だとは思うのですが……」

 

額に手を当てて頭を横に振るミカエル。

その様子を見てケラケラと笑うアザゼルはまるで悪戯っ子のようだった。

 

「お嬢さま、しばしお待ちください」

 

「急いでね、グレイフィア」

 

ふと、視線を向ければ、リアス先輩はグレイフィアに特殊な術式とやらを額から受けているのが見える。

 

「おい、ヴァーリ」

 

「なんだ?アザゼル」

 

「お前は外で敵の目を引け。

白龍皇が前に出てくれば、野郎どもの作戦も多少は乱せるだろうさ。

それに何かが動くかもしれない」

 

「……オレが此処にいることはあっちも承知なんじゃないかな?」

 

「だとしても『キャスリング』で赤龍帝が中央に転移してくるとまでは予想していないだろう。

注意を引きつけるのは多少なりとも効果はあるさ」

 

「ハァ……。

旧校舎のテロリストごと、その問題になっているハーフヴァンパイアを吹き飛ばした方が早いんじゃないかな?」

 

ヴァーリは何処か面倒くさそうに言うが、アザゼルは苦笑いを浮かべて首を横に振る。

 

「和平を結ぼうって時にそれはやめろ。

最悪の場合、それにするかもしれないが、魔王の身内を助けられるのなら、助けた方がこれからのためになるのさ」

 

「了解」

 

アザゼルの意見にヴァーリは息を吐きながらも同意する。

そして、ヴァーリはその背から光の翼を展開した。

あれが【白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)】か……。

 

 

 

 

 

「―――――【禁手化(バランス・ブレイク)】」

 

『Vanishing Dragon Balance Breaker !!!!』

 

音声が響いた後、ヴァーリの体を真っ白なオーラが覆う。

光が止んだ時、ヴァーリの体は白い輝きを放つ全身鎧(プレート・アーマー)に包まれていた。

ヴァーリはこちらを一瞥した後、にやりと笑い、マスクが顔を覆う。

そして、職員会議室の窓を開き、空へ飛び出していった。

 

 

 

 

 

―――――刹那。

 

激しい爆音と爆風が巻き起こる。

見れば、魔術師の群れが白い鎧を着込んだヴァーリに蹂躙されていた。

夜の空に光の軌跡を描きながら舞うように蹴散らし、一騎当千の様相を見せていた。

ちらりと一誠の方を見てみれば、その様子を真剣な表情をして見つめている。

自分のライバルの様子を焼き付けようとしているようだ。

 

 

 

 

 

「アザゼル。先程の話の続きだ」

 

不意に、サーゼクスの声が響く。

 

「あー……なんだ?」

 

「神器を集めて、何をしようとした?

神滅具(ロンギヌス)】の所有者も何名か集めたそうだね?

神もいないのに『神殺し』でもするつもりだったのかな?」

 

アザゼルはその問いに首を横に振った。

 

「―――――備えていたのさ」

 

「備えていた?

……戦争を否定したばかりで不安を煽る物言いです」

 

ミカエルはアザゼルの物言いに呆れるように言う。

 

「言ったろ?

お前ら相手に戦争はしない。

こちらからも戦争を仕掛けない。

―――――ただ、自衛の手段は必要だ。

何回も言うがお前らの攻撃に備えているわけじゃねぇぞ?」

 

「では?」

 

アザゼルは突然真面目な表情になり、呟く。

 

「―――――【禍の団(カオス・ブリゲード)】」

 

「カオス、ブリゲード……?」

 

サーゼクスもその存在を知らなかったらしく、眉根を寄せていた。

 

「組織名と背景が判明したのはつい最近だが、それ以前からもうちの副総督シェムハザが不審な行為をする集団に目をつけていたのさ。

そいつらは3大勢力の危険分子を集めているそうだと……。

中には【禁手】に至った神器持ちの人間も含まれている。

……最悪なことに【神滅具(ロンギヌス)】持ちも数人確認してる……」

 

「その者たちの……目的は……?」

 

「破壊と混乱。単純だろう?

この世界の『平和』が気に入らないのさ。

―――――テロリストだ。

しかも最大級にタチが悪い……」

 

「……【神滅具(ロンギヌス)】持ちがいる時点で最悪ですね……」

 

ミカエルは忌々しそうに呟く。

神をも滅ぼす神器……それを持った者が複数人いるという事実に、サーゼクスも頭を抱える。

 

「しかもだ、組織の頭は『赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)』と『白い龍(バニシング・ドラゴン)』の他に強大で凶悪なドラゴンだ……」

 

『―――――ッ!?』

 

アザゼルの言葉に俺以外の全員が絶句していた。……いや、一誠は若干わかっていないようだ。

 

「……そうか、彼が動いたのか。

無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)】オーフィス―――――。

……神が恐れたドラゴン。

この世界が出来上がった時から最強の座に君臨し続けている者……」

 

サーゼクスは険しい表情を浮かべてそう言い、この場にいる他の皆は表情を曇らせていた。

俺は内情について触り程度だが知っており、その『強大で凶悪なドラゴン』と接点もあるため、何とも言えず、ただ苦笑いを浮かべる。

 

「あ〜……サーゼクス?

その件についてだが―――――」

 

俺が口を開こうとした瞬間、職員会議室の床に魔法陣が浮かび上がった。

 

 

 

 

 

『―――――そう!

あのオーフィスが【禍の団(カオス・ブリゲード)】のトップなのです!』

 

何処からともなく響く声にサーゼクスは舌打ちをして眉をひそめる。

 

「そうか。そう来るわけか!

今回の黒幕は……ッ!

グレイフィア!

リアスとイッセーくんを早く飛ばせ!」

 

「はいっ!」

 

グレイフィアはリアス先輩と一誠を職員会議室の隅に行くよう急かせると、小さな魔法陣を床に展開させた。

 

「お嬢さま、ご武運を」

 

「ちょ、ちょっとグレイフィアっ?!お兄さま!」

 

転送の光が広がり始めまさに転送直前、一誠がこちらを真っ直ぐ見つめてくる。

 

「士織!

こっちは任せとけ!」

 

俺は何を言うわけでもなく、一誠に背を向けて後ろ手を振った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……まぁ、頑張れや」

 

俺の呟きが一誠に聞こえたかは分からない。

―――――しかし、後ろで一誠が笑ったような、そんな気配を感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




皆さん、本編の方はいかがでしたでしょうか?
楽しんでいただけたのなら幸いです♪


さて、今回はまったく関係ない雑談なのですが……。
私はFGOをしているのですが、先日何気なくガチャを回すと……来ました!
とうとう来てくれました!!!
初の☆5サーヴァントさんですっ!(>_<)
その名も『ヴラド三世』さん!
ついつい飛び上がりました……(苦笑)
ホクホク顔ですよぉ〜(*´ω`*)



さてさて、今回はここまで!
また次回お会いしましょう♪(*´ω`*)


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66話

皆さんこんにちは♪(*´ω`*)
最近はもう3年生かぁ……なんて思っている夜叉猫ですっ!(>_<)

今回も比較的早く投稿できてほっとしています(*´ω`*)
それでは早速本編の方をどうぞ♪


Side 士織

 

リアス先輩と一誠が転移してすぐ、俺は溜息を吐く。

職員会議室の床に現れた魔法陣。

それを見て、3大勢力のトップの面々は驚愕の表情を浮かべていた。

 

―――――いや、アザゼルは笑い、サーゼクスは苦虫を噛み潰したような表情だ。

 

 

 

 

 

「―――――レヴィアタンの魔法陣」

 

サーゼクスの呟きにゼノヴィアが反応する。

 

「ヴァチカンの書物で見たことがあるぞ……。

―――――アレは『旧魔王レヴィアタン』の魔法陣だ……」

 

魔法陣から現れたのは1人の女性。

胸元が大きく開き、深いスリットの入った何とも露出の多いドレスに身を包む、さながら痴女のようだ。

 

「ごきげんよう、現魔王のサーゼクス殿?」

 

不敵な物言いで、サーゼクスへの挨拶を口にする痴女。

 

「先代レヴィアタンの血を引く者……カテレア・レヴィアタン。

これは一体どういうことだ?」

 

痴女―――――カテレア・レヴィアタンは挑戦的な笑みを浮かべて言う。

 

「旧魔王派の者達はほとんどが『禍の団(カオス・ブリゲード)』に協力する事に決めました」

 

「……新旧魔王サイドの確執が本格的になったわけか……。

あらら……悪魔も大変なこった……」

 

アザゼルは他人事のように笑い頭を掻く。

 

「カテレア……それは……言葉通りと受け取っていいのだな……?」

 

悲しそうな表情を浮かべて言葉を吐き出すサーゼクス。

しかし、そんなサーゼクスをよそにカテレア・レヴィアタンは誇らしげに口を開く。

 

「サーゼクス、その通りです。

今回のこの攻撃も我々が受け持っております」

 

「―――――クーデターか」

 

『現魔王派』に対する『旧魔王派』の反乱。

それをこの和平を願う会談出するところを見ると余程『現魔王派』が気に入らないらしい。

 

「……カテレア、何故なんだ……?」

 

「サーゼクス、それは簡単なことです。

今日この会談のまさに逆の考えに至っただけなのですよ。

神と先代魔王がいないのならば、この世界を変革すべきだと、私たちはそう結論付けました」

 

至った思考は真逆の、『戦乱』を望むもの。サーゼクスの顔は更に曇る。

 

「オーフィスの野郎はそこまで未来を見ているのか?

……到底そうとは思えないんだがな……」

 

アザゼルの問いかけにカテレア・レヴィアタンは溜息を吐く。

 

「そんなはずがないでしょう?

オーフィスには、力の象徴として力を集結する為の役を担って貰っているだけ。

言わばお飾りのトップです。

彼の力を借り、一度世界を滅ぼし、もう一度構築します。

―――――新世界を私たちが取り仕切るのです」

 

そう言って、高笑いを始めるカテレア・レヴィアタン。

 

―――――嗚呼、五月蝿い。

 

―――――嗚呼、煩わしい。

 

―――――嗚呼、なんて―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――馬鹿馬鹿しいんだ」

 

俺の呟きを境に、その場に静寂が広がる。

先程まで高笑いをしていたカテレア・レヴィアタンですら、口をつぐんでいた。

 

「……お前ら……こぞって世界の変革の真似事か?」

 

カテレア・レヴィアタンは見下した視線を向けてイラついた様子で口を開く。

 

「……ふん!

たかが人間が……。

そうです。それが一番正しいのですよ!

だいたいこの世界は―――――」

 

「腐敗している?人間が愚か?地球が滅ぶ?

―――――おいおいおい……今時そんなの流行らねぇよ」

 

俺は吐き捨てるように言う。

カテレア・レヴィアタンは目元を引き攣らせていた。

 

「そもそも、オーフィスがお前たちに力を貸した理由を覚えていねぇのか?」

 

「ふん!そんなもの―――――」

 

「『静寂を得るためグレートレッドを倒すのを手伝って欲しい』」

 

「な……ッ?!!

な、何故それを人間ごときが!?」

 

『―――――ッ?!!』

 

カテレア・レヴィアタンを含め、その場の全員が俺の言葉に驚愕の表情を浮かべる。

 

「士織くん……君は……」

 

「別に俺は『禍の団(カオス・ブリゲード)』の一員じゃねぇから安心しろサーゼクス」

 

その一言で、サーゼクスたちはほっとした表情になる。

 

「……お前まで『禍の団(カオス・ブリゲード)』所属とか言い出したらもうどうしようもねぇところだったわ……」

 

アザゼルはそう言いつつ、冷や汗を浮かべていた。

周りをちらりと見たところ皆その言葉に賛同しているのを見る限り俺の認識はそのようなものらしい。

俺は溜息を吐きながら、再びカテレア・レヴィアタンの方へ視線を向けた。

 

「……お前らみたいな奴らに利用されるなんて……オーフィスが可哀想だ……」

 

憐れむような視線でそう言えば、カテレア・レヴィアタンは激怒し、全身から魔力を迸らせる。

 

「黙って聞いていれば……ッ!

たかが人間ごときが調子に乗るなッ!!!」

 

「……サーゼクス、ミカエル、アザゼル。

お前らは手を出すなよ?

俺は今―――――怒ってんだ」

 

後輩を悪用されたのには勿論怒っている。

しかし、それよりも何より許し難いのは―――――オーフィスをこんなことのために利用したということだ。

 

「……カテレア、降るつもりは……ないんだね……?」

 

「何を当然のことを。

此処までしておいて投降など……有り得ません」

 

「……そうか。残念だ」

 

そういったサーゼクスは目を伏せた。

以前聞いた『甘すぎる』という言葉。

今ここでその実例を見たような気がした。

 

 

 

俺は窓際に手を向けて、ただ魔力を放出した。

それだけで窓際全域は吹き飛び、風穴が開く。

 

「来いよ旧魔王レヴィアタンの末裔、カテレア・レヴィアタン。

お前は俺の逆鱗に触れた―――――万死に値する」

 

「ふん!

良いでしょう。

格の違いというものを見せてあげます」

 

そうして、俺とカテレア・レヴィアタンは外へと飛び出した。

 

 

 

 

 

Side Out

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

Side 三人称

 

外へと飛び出した士織とカテレア。

カテレアは空を飛び、士織は構えることもなく地上でカテレアを見据えていた。

 

「空も飛べないとは、やはり人間は劣等種ですね!」

 

「うっせぇなぁ……いいから来いよ」

 

士織の言葉に嘲笑を止め、明らかにイラついた表情を浮かべたカテレアは魔力弾を放つ。

流石は旧魔王レヴィアタンの末裔というべきだろうか。その数は多く、士織の視界を埋めていた。

 

「……はぁ……」

 

しかし、士織はそれを見つめて溜息を吐く。

 

「……これならコカビエルの方が良かったかもな」

 

そう呟きながら、顔の前に魔法陣を出現させる。

 

「散れ……【炎神の怒号】」

 

―――――溢れるは黒き焔。

全てを飲み込み全てを焼き尽くす神の焔はカテレアの魔力弾と拮抗することなどなく、ただ一直線にカテレアへと向かった。

 

「な……ッ?!!」

 

驚愕の表情のカテレア。

慌てて防御障壁を展開するがそれも意味をなさない。

一瞬の拮抗すら許さず、神をも焼き尽くす黒き焔はカテレア・レヴィアタンという存在ごと消し去ってしまった。

 

「…………」

 

なんとも味気なく、恐ろしく早い決着。

士織は冷めた目をしていた。

 

「はぁ……」

 

吐き出すのは溜息。

周りを軽く探るが敵の気配はない。

士織はアザゼルたちのいる校舎の方へ方向を変えて歩き始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――うわぁ〜強そーなヒトぉ〜」

 

「……ッッ?!!」

 

何処か間延びしたその声は、突然、士織の背後から聞こえた。

 

 

 

その時の士織の表情は―――――過去最高の驚愕の色を浮かべ、狼狽しているように見えた―――――。

 

 

 

 

 

Side Out

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

Side 一誠

 

気がついた時、そこは既に部室だった。

あのドタバタの中、転送は成功したようだ。

……ただし―――――。

 

 

 

 

 

「―――――ッ!

まさか、此処に転移してくるとは!」

 

「悪魔めッ!」

 

部室内は悪趣味なローブを着た魔術師の集団で占拠されていた。

まさに敵地のど真ん中に放り出された。

 

「ぶ、ぶちょー!いっせーせんぱぃ!」

 

ギャスパーの声が聞こえる。

そちらへ視線を向ければ、ベソをかきながら椅子に縄でくくりつけられているギャスパーの姿が視界に入った。

一応の無事を確認し、リアス部長もほっとした表情を浮かべる。

 

「ギャスパー!

良かったわ……無事だったのね……」

 

「ごめん……なさぃ……。

ぼく、またみなさんに……めいわくを……っ!」

 

ぼろぼろと涙をこぼすギャスパー。

利用されたことを悔いているのだろう。

 

「気にするなギャスパー!

お前が悪いんじゃない。

だから泣くな!

向き合うって、決めただろ!」

 

俺がそういって励ますと、ギャスパーは涙をこぼしながら無理矢理笑った。

そんなギャスパーについ微笑んでしまう。

 

 

 

―――――が、次の瞬間、俺の目の前でギャスパーが女の魔術師に殴られた。

 

「愚かね、あなたたち。

こんな危なっかしいハーフヴァンパイアを普通に使うなんて。

旧魔王派の言う通りね。

グレモリー一族は情愛が深くて力に溢れている割には頭が悪いって」

 

魔術師はリアス部長を侮蔑的な視線で見ている。

 

「さっさとこんなヴァンパイア、洗脳して道具として有効活用すればいいのに……。

敵対している堕天使の領域にこの子を放り込んで神器を暴走させれば幹部の1人でも退けたかもしれないわ。

それをしないのは何?もしかして、仲良しこよしで下僕を扱う気なの?」

 

ギャスパーが殴られ、【(キング)】を侮蔑され、憤怒の感情が溢れかけるが、止まる。

今ここで俺がなすべきは怒るだけではないのだから。

 

「―――――私は自分の眷属を大切にするわ」

 

リアス部長の冷静な言葉。

それが気に入らなかったのか、魔術師が小さな魔力弾をリアス部長目掛けて放つ。

俺はそれを【赤龍帝の篭手】を出現させて防ぐ。

 

「チッ!

……生意気な口ね。

それに悪魔のくせに美しいのも気に入らないわグレモリーの娘」

 

嫉妬にまみれたどうしようもない言葉に失笑が浮かぶのを止められない。

魔術師はギャスパーの首元に刃を突きつける。

 

「……動くとこの子が死ぬわちょっと遊びましょう?

―――――そこのボウヤ。

もし勝手に動いたら……分かってるわね?」

 

脅しのつもりか、殺気を向けてくるがそれは貧相なものだった。

 

「まずはその綺麗な顔……ボコボコにしてあげる」

 

そういって、魔力弾を連続して放つ魔術師。

リアス部長は躱す素振りもなくただその攻撃を受けた。

 

「ぶちょーっ!!」

 

ギャスパーの叫びが反響する。

 

「あはははは!

いい気味ね!グレモリーの娘ぇ!!」

 

リアス部長の顔は魔力弾の直撃により血にまみれている―――――はずだった。

 

 

 

 

 

リアス部長の顔の前には俺が出現させた()()()()()

魔力弾はこれに当たっていたのだ。

 

「―――――もう、そろそろうるさいわ」

 

『Explosion!!』

 

俺は倍加3回分の力を解放する。

そして魔力を握り締め、床へと叩きつけた。

そうすれば、ギャスパーの近くにいた魔術師に向けて地面から鋭く尖った木材が飛び出す。

 

「なっ?!」

 

魔術師はその現象に驚いたのか、ギャスパーから離れて躱す。

俺はその隙にギャスパーに近づき、自らの人差し指の皮膚を噛み切った。

 

「ギャスパーもう、逃げないよな」

 

「いっせー、せんぱい……」

 

指からは俺の血が滴る。

俺はギャスパーが拘束されている縄を切り、口を開く。

 

「―――――飲めよ。

最強のドラゴンを宿してる俺の血だ。

これからはお前も一緒に戦うんだろ?」

 

ギャスパーは強い眼差しでその言葉に頷くと、俺の人差し指を咥えた。

 

その瞬間、この部室内の空気が一気に変化する。

悪寒とも言い得るそれはしかし敵意によるものではなかった。

 

『ふふ……ふふふ……ふふふふふ……』

 

何処か艶やかな笑い声。

それとともに不気味な鳴き声が聞こえてくる。天井近くを無数の赤い瞳をしたコウモリが、飛んでいたのだ。

コウモリたちは一斉に魔術師たちに襲いかかる。

魔術師たちはそれを迎撃しようと魔力弾を放とうとするが、いきなり大きく大勢を崩して不発に終わってしまった。

―――――魔術師たちの影から黒い手がいくつも伸びていたのだ。

 

「吸血鬼の能力か!」

 

「くらえ……っ!」

 

影へ魔力弾を撃ち出すが、影の手は何事もなく霧散し、そして再び形を作る。

その間にもコウモリは魔術師の体を包み込んで、各部位へと噛み付いた。

 

「血を吸うつもりか?!」

 

「いや、私たちの魔力も吸い出しているぞ!」

 

明らかに苦戦する魔術師たち。

もう、俺の出番はなさそうだ。

リアス部長もその様子に何処か嬉しげである。

 

「くぅ……ッ!

ならば……こうするだけよ!」

 

魔術師たちは影を相手にするのを諦め、こちらに魔力弾を放ってきた。

全て直撃コースであるが、しかし、俺とリアス部長は動かない。

なにせ魔力弾は―――――空中で停止してしまったのだから。

 

 

 

『無駄ですよぉ〜。

あなた達の動き、攻撃、すべては僕がみてるんですからぁ……』

 

部室内に響き渡るギャスパーの声。

その声に恐怖する魔術師たち。

 

『次はぁ……あなた達自身を停めますよぉ……』

 

無数のコウモリたちが赤い瞳を光らせる。

すると、全ての魔術師たちはぴくりとも動かなくなる。

―――――つまり、『停止』したのだ。

 

無数のコウモリたちが集まり、形を作ると、それはギャスパーへと変化する。

 

「お疲れ様、ギャスパー。

よく頑張っ―――――」

 

俺の言葉を言うよりも早く、ギャスパーが俺に体当たりを食らわせる。

あまりにも不意打ち過ぎて俺は尻餅をついてしまった。

 

「せんぱぁぃ……」

 

ギャスパーから聞こえたのは甘えるような声。ギャスパーの様子がえらくおかしい。

擦り寄るように、ギャスパーは俺と密着する。

 

「ど、どうした?ギャスパー」

 

「せんぱぁぃ……。

せんぱいの血、美味しすぎますよぉ……」

 

語尾にハートマークが付いていそうなほどに甘ったるい声を上げるギャスパー。

どことなく体が柔らかく感じるのは気のせいだろうか。

 

「知ってますかぁ?せんぱぁぃ……。

吸血鬼が吸血した時に満たされるのはぁ……『食欲』だけじゃないってことぉ……」

 

ギャスパーは舌舐りしながらそういう。

 

「ごく稀になんですけどぉ……『性欲』が刺激されることがぁ……あるんですぅ……」

 

「性欲?!!」

 

俺はつい、ギャスパーの言葉で声を上げてしまう。

 

「ふふふ……せんぱぁぃ……」

 

俺の首筋に近づくと、ギャスパーは口を開く。血を吸われるかと思ったが、次の瞬間感じた感覚はぬるりとしたものだった。

 

「お、おいギャスパー!舐めるな!!」

 

「慌てるせんぱいもぉ……イイですぅ……」

 

「だぁーっ!!

俺は男色の気はねぇって!」

 

ギャスパーの肩を掴んで俺から引き離させる。

ギャスパーは一瞬きょとんとした表情を浮かべたが、その表情は直ぐに怪しげな笑みに変わった。

 

「大丈夫ですよぉ……だってぇ―――――()()()()()ですからぁ……」

 

「……は?」

 

今度は俺がきょとんとした表情を浮かべただろう。

ギャスパーは俺の手を掴むと自分の胸へと誘導する。

 

「……んっ……。

小さいけどぉ……ある、でしよぉ……?」

 

手のひらに伝わるのは柔らかな感触。

俺は手を直ぐにギャスパーから離した。

 

「お、お前……男……女……あれ……??」

 

「ふふふ……僕はぁ……半端者なんですよぉ……。

純粋なぁ……吸血鬼でも、人間でも、悪魔でもなくてぇ……男でもぉ……女でもないんですぅ……」

 

俺にはそれが悲しげな呟きに聞こえた。

ギャスパーは一瞬影の差した表情を浮かべていたように見えたが、それが気のせいだと感じてしまう程に、再び表情を艶やかに緩める。

 

「せんぱぁぃい……」

 

再び首元に近づいてきたギャスパーは今度は甘嚙みしてくる。

歯は当たっているものの、皮膚を破る程の強さではない。

 

「……()()()()()()()……()()()()()……?」

 

淫靡なギャスパーの呟き。

頭が真っ白になる感覚が俺を襲う。

俺はギャスパーの呟きに答えるように、口を開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――正気に戻れボケナス」

 

「きゃん……っ?!!」

 

ギャスパーの首筋へ手刀を落として一瞬で意識を刈り取る。

ぐったりとするギャスパーを抱えて、部室のソファーに寝かせた。

 

「あっぶねぇ……なんだ今の……一瞬……」

 

―――――このままギャスパーの言葉通りにしてもいいかも、などと考えてしまった。

 

『相棒、それは吸血鬼の【魅了】の力だ』

 

突然、ドライグから声が上がる。

 

「【魅了】?」

 

『あぁ。

全ての吸血鬼が扱える訳では無いが、一応強者に分類されるであろう相棒を【魅了】させたところを見ると、このヴァンパイアの……娘?はかなりの力を有してるのだろうよ』

 

「そうか……」

 

『全く……俺が【魅了】を打ち消さなければ今頃相棒はあのヴァンパイアの娘と生殖行為をおこなっていたかもしれんのだぞ?』

 

ドライグは溜息を吐くようにそう言った。

 

「ま、マジか……すまんドライグ。

助かった……凄く助かった……」

 

俺は驚きの事実に心臓がバクバクとなる。

自らを落ち着かせるために深呼吸を行う。

 

 

 

 

 

「あら?なんでギャスパーが寝ているのかしら?」

 

その時、リアス部長の声が聞こえた。

それはまるで、今までのことがわからないかのような言葉だった。

 

「あれ……?

リアス部長、見てたんじゃないんですか?」

 

「何のことかしら?

イッセーがギャスパーに血を飲ませたところまでは覚えているのだけれど……」

 

頭の上にハテナマークを浮かべるリアス部長。

つまり、リアス部長はギャスパーに停止させられていたということになる。

 

「まぁいいわ。

何より……ギャスパーが無事ならそれで……」

 

気絶しているギャスパーに近づくと、愛おしそうに頭を撫でるリアス部長。

……それにしてもギャスパーは何故リアス部長まで停めたのだろうか……。

 

『邪魔されたくなかったのだろう。

相棒との生殖行為をな』

 

(……生々しいこと言うなよ。

もしかしたら間違えて停めたのかもしれねぇだろ?)

 

そうだ。

間違えてリアス部長まで停めてしまったのだ。それしかありえない。

俺が自分に言い聞かせるように心の中でそう言っていると―――――突然、窓際ごと吹き飛ばし、何かが飛び込んできた。

俺はその姿に驚愕する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――()()ッ?!!」

 

何せそれは、あの、士織だったから―――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編の方はいかがでしたでしょうか?
楽しんでいただけたのなら幸いです♪(*´ω`*)


さてさて、今回はの話ではギャスパーくんの性別がどちらにでもなれるという設定を出しましたが……書いていて思いました。


―――――一誠の血を吸ったギャスパーちゃんが何故かエロ路線に乗ってしまっているっ?!Σ(///□///)

……まぁ、それもまた一興ですよね?!


とまぁ、今回はここまで!
また次回お会いしましょう♪(*´ω`*)


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67話

皆さんこんにちは♪(*´ω`*)
いろいろありまして……やっと投稿できたのですよ……(苦笑)

何はともあれ、さっそく本編の方をどうぞ♪


Side 三人称

 

「ど、どうしたんだよ士織っ!」

 

一誠は割れたガラス片などを叩き落としながら立ち上がる士織に言う。

 

「おぉ、一誠。

ギャスパーは助けれたみたいだな」

 

しかし、慌てる様子の一誠とはうってかわり、呆気からんとした朗らかな雰囲気で、士織は笑った。

 

「そ、そうだけど……。

いや、なんでお前が吹き飛ばされてんだよ?!」

 

「そう興奮するな。

何、俺と()()の奴に一撃貰っただけだ。

大したダメージは入ってないから気にすんな」

 

そういう士織に何とも言えない表情を浮かべる一誠。

士織程の強者が一撃を貰ったのだと言うならば、それは一体如何程の強さなのか。

一誠は己の額から汗が一筋流れるのを感じた。

 

「あ〜……取り敢えず付いてこい一誠。

外でいろいろと厄介なことが起きてる。

……リアス先輩、ギャスパーを頼む」

 

士織はそれだけ言うと、一誠の返事も待たずにその手を引いて、たったいま飛び込んできた方向へと走り出し、跳躍して行く。

 

その場に残されたリアスはあまりに素早く進んでいく話についていけず、ぽかんとした表情を浮かべていた。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

校庭に着地した士織と一誠は、上空を睨むアザゼルの姿を見つけた。

 

 

 

視線の先にいるのは―――――白龍皇ヴァーリ。

そして、ダボッとした和服を身に纏い、腰に刀らしき物を差す綺麗な黒髪をした女性。

 

「……まさかとは思っていたが……。

この状況下で反旗か!ヴァーリ!!」

 

「そうだよ、アザゼル」

 

眩い光を放ちながら、ヴァーリはアザゼルたちの前に舞い降りる。

和服の女性もヴァーリに続くように地面へと降り立った。

和服の女性は士織の姿を捉えると笑顔を浮かべて手を振る。

 

「あ、士織くんやっほ〜♪

さっきぶりだねぇ〜」

 

「まさか初対面で蹴り飛ばされるとは思わなかったけどな」

 

「ほら、挨拶的なぁ??」

 

ケラケラと笑う和服の女性。

一誠、そしてアザゼルは士織の蹴り飛ばされたという発言を聞き、その女性に注目する。

 

「それにわざと飛んでいったくせにぃ〜」

 

「威力を殺そうとしたら思いの外お前の蹴りが強かったんだよ」

 

軽い雑談のように交わされる言葉。

しかし、それは士織の実力を知るものからすれば驚愕に値するものだったに違いない。

 

「……まったく、俺もヤキが回ったもんだ……。

せっかくの身内がこんなだとはな……」

 

先程までの会話に驚いたが、ヴァーリを視界に入れるとそう言って自嘲するアザゼル。

ヴァーリはマスクを兜に収納させて顔を出した。

 

「いつからだ?

いつから、そういうことになった?」

 

「コカビエルを本部に輸送する途中でオファーを受けたんだ。

悪いね、アザゼル。

こちらの方がオレにとっては面白そうなんだ」

 

「ヴァーリ、『白い龍(バニシング・ドラゴン)』がオーフィスに降るのか?」

 

「いや、違うよ。

俺をスカウトしてきたのはオーフィスじゃなかった。

だが、魅力的なオファーをされてね。

『アースガルズと戦ってみないか?』―――――こんなことを言われたら、自分の力を試してみたいオレでは断れない。

アザゼルはヴァルハラ―――――アース神族と戦うことを嫌がるだろう?

戦争自体が嫌いだものな」

 

「……俺はお前に『強くなれ』とは言ったが、同時に『世界を滅ぼす要因だけは作るな』とも言ったはずだぞ?」

 

「それは済まなかった、アザゼル。

でも、オレの性格上、無理なのは分かっていただろう?」

 

「……そうかよ。

確かに、俺は心の何処かで遅かれ早かれお前が手元から離れて行くのを予想はしていたさ。

―――――お前は出会った時から今日までずっと、強者との戦いを求めていたもんな」

 

そう言って苦笑を浮かべるアザゼル。

そんなアザゼルを尻目にヴァーリは自身の胸に手を当て、士織たちの方に向かっていう。

 

 

 

 

 

「―――――オレの本名は『ヴァーリ・ルシファー』だ」

 

いつの間にか静かになっていた校庭にはその名前が響き渡る。

 

「死んだ先代の魔王ルシファーの血を引く者なんだ。

けど、オレは旧魔王の孫である父と人間の母の間に生まれた混血児。

―――――『白い龍(バニシング・ドラゴン)』の神器は半分人間だから手に入れたものだ。まぁ、偶然だけどな。

でも、ルシファーの真の血縁者でもあり『白い龍(バニシング・ドラゴン)』でもあるオレが誕生した。

『運命』『奇跡』というものがあるなら、オレのことかもしれない。―――――なんてな」

 

そういうヴァーリの背中から光の翼の他にも悪魔の翼が幾重にも生え出す。

 

「……もし、冗談のような存在がいるとしたら、こいつの事に違いねぇ……。

俺が知ってる中でも過去現在、おそらく未来永劫においても最強の【白龍皇】になる……」

 

アザゼルはそう言ったあと、その隣にいる和服の女性に視線を送る。

 

「……それよりもだ、お前は何者だ……?

あの士織を蹴り飛ばしたとかいう話を聞くに、もしそんな実力を持っているなら有名になっていそうなもんだが……」

 

「あ、私??

ん〜……私はねぇ〜」

 

口元に指を当て考える様子の女性。

ふと、士織の方に視線を向けた女性は微笑み、そしてアザゼルの方を向き直した。

 

「私の名前は【玉梓(たまずさ)】。

ん〜……楽しいこと大好きな半妖の自由気ままな野良狐だコーン―――――なんちって♪」

 

そう言った女性は頭に狐耳を、お尻の辺りから九本の尾を出した。

 

「なっ?!九本の尾に玉梓だと!?

まさかあの【玉梓の前】に関係があるって言うのか……っ?!」

 

アザゼルは驚愕の表情を浮かべて声をあげる。

それに対して玉梓と名乗った女性はニヤリと笑って口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――まったく関係ないよ!」

 

豊満な胸を張ってそう言う玉梓。

 

「紛らわしい言い回しすんなよ!」

 

士織のツッコミが炸裂。

アザゼルはなんとも言えない表情を浮かべていた。

 

「いや〜ごめんごめ〜ん!

こうした方が面白いかなーって!」

 

テヘペロと言わんばかりに舌を出す玉梓。

アザゼルは頭をガシガシと掻くと何処か緊張の解けたような雰囲気で口を開く。

 

「……まぁいい。

お前も【禍の団(カオス・ブリゲード)】の一員だな?」

 

「え?違う違〜う。

私はヴァーリちゃんに付いてきただけ。

流石にテロリストになるつもりはないでーす」

 

ケラケラと笑いながらそう言う玉梓に呆気にとられるアザゼル。

 

「……それで?

どうするんだ?ヴァーリ。

お前の性格上このまま大人しく捕まってくれる気はないんだろ?」

 

鋭い視線をヴァーリに向けたアザゼルは覇気を纏わせて言う。

ヴァーリは獰猛な笑みを浮かべていた。

 

「その言い方だとオレが捕まるのは前提条件みたいだなアザゼル」

 

「当たり前だろうが。

―――――説教タイムだ」

 

6対12枚の漆黒の翼を展開させたアザゼルはヴァーリに向かって突進していく。

 

「おっとっと〜!

おじさんは私と遊ぼっか!

ヴァーリちゃんは赤龍帝くんに興味があるらしいから〜」

 

しかし、アザゼルはその突進を玉梓に止められた。

ニコニコと笑いながら尾を振る玉梓。

アザゼルは舌打ちをしながら玉梓から少し距離を取る。

 

「しゃぁねぇ……おい、一誠!

ヴァーリのこと頼んだぞ!

俺はこのボイン狐と戯れてくる」

 

「ヴァーリちゃん!

あなたのお父さんすっごくヘンタイ!

なんだか邪な視線を感じる!

主に私の胸に向かって!!」

 

胸を尻尾で覆い隠しながらも玉梓は頬も染めずに言った。

アザゼルはその懐から1本の短剣らしきものを取り出して構える。

 

「お前さんが士織クラスってなら俺も瞬殺されちまうが……まぁ、堕天使の総督としては負けれねぇわな」

 

「ふっふっふ……私としては士織くんと戦いたかったんだけど……おじさんと遊ぶのも楽しそうだし良いよね☆」

 

アザゼルと玉梓は此処では戦いにくいと判断したのか、何処かへと移動していった。

 

 

 

 

 

「―――――さて、兵藤一誠」

 

ヴァーリの視線が今は士織ではなく、一誠に向けられる。

 

「此処で【赤】と【白】の戦いをしてみるのも良いと思わないか?」

 

「……拒否権は?」

 

「ないさ。

君が拒否するっていうなら、その気にさせるまでのこと。

そうだな―――――手始めに君の想い人を殺そう」

 

ぴくりと一誠の体が揺れる。

 

「君のことは少し調べた。

確か君の家には堕天使の3人がいたね?

その中の1人と君はかなり親しい仲だったはずだ。

―――――だからそいつを殺そう」

 

一誠は顔を上げ、ヴァーリを睨みつける。

その様子にヴァーリは満足気に表情を変えた。

 

「……戦ってやるよヴァーリ」

 

「いいね……!

あの時に感じた龍の波動よりも更に濃密になっている……ッ!!」

 

ヴァーリはマスクで顔を覆うと構える。

戦闘態勢は万全のようだ。

 

「……士織、手ぇだすなよ……」

 

「そんな無粋なことはしねぇよ。

―――――だから存分にやってこい、一誠」

 

士織はそれだけ言うと、離れるように跳躍して行った。

どうやら完全に傍観者となるようだ。

一誠は手のひらを握ったり開いたりを数回繰り返すと、息をひとつ吐き出した。

 

 

 

 

 

「―――――【禁手化(バランス・ブレイク)】」

 

『Welsh Dragon Balance Breaker !!!!』

 

一誠が纏ったのは赤い龍を模した全身鎧(プレートアーマー)

ヴァーリの鎧【白龍皇(ディバイン・ディバイディング・)の鎧(スケイルメイル)】と対となる【赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)】だ。

 

「……行くぞ」

 

一誠の低く小さな呟きにヴァーリは興奮した様子を見せる。

 

「あぁ!来い兵藤一誠―――――」

 

しかし、その言葉は最後まで紡がれることは無かった。

何故なら、ヴァーリは一瞬で接近してきた一誠のボディブローを受けたのだから。

 

「かふ……っ?!!!」

 

地面を擦るように吹き飛ばされたヴァーリは体勢を立て直し立ち上がる。

見ればヴァーリが攻撃を受けた部分、腹部の鎧にヒビが入っていた。

一誠は冷ややかな視線をヴァーリに向けていた。

 

「倍加無しでこの威力か……!

想像以上だ!兵藤一誠ッ!!」

 

「あぁ……忘れてた。

取り敢えず1発ぶん殴らないと気がすまなかったから……発動させるの忘れてた」

 

そう言って、一誠は悪魔の翼を、ヴァーリは光翼を広げ空中で―――――衝突する。

 

 

 

―――――『Divide!!』

 

一方は相手の力を半減し、糧とする。

 

 

 

―――――『Boost!!』

 

一方は己の力を倍加し、力を高める。

 

 

 

 

 

『相棒!

半分にされた力は俺の力で元に戻るが―――――『白い龍(バニシング・ドラゴン)』の他の能力が厄介だ!』

 

「どういうことだ?!」

 

一誠はヴァーリと殴り合いをしながら叫ぶように聞く。

 

『奴は相手の力を半分にするだけでなく、減らした分の力を自分に加算するのさ!』

 

「なら、半分にされる前にぶん殴りゃ関係ねぇ!!」

 

『Boost!!』『Divide!!』という音声が幾度となく流れる。

 

『なんとも相棒らしい脳筋な考えだが……それもありだろう!』

 

ドライグの心底楽しそうな声に一誠も笑いながら向かっていく。

 

「これならどうだ!」

 

ヴァーリは接近してくる一誠に向けて無数の魔力弾をばら撒き、確実にダメージを与えようとする。

 

「しゃらくせぇ!!」

 

しかし、ヴァーリの避けるであろうという考えとはまったく真逆の行動を見せる一誠。

無数の魔力弾へと突っ込んでいくのだ。

その行動にはヴァーリも驚きを隠せない。

一誠はボロボロになりながらも前進をやめない。

 

「くたばれボケぇぇぇッ!!!」

 

叫びながら拳を振りかぶる。

 

『Boost Boost Boost Boost Boost!!』

 

『Explosion!!』

 

「【龍の剛腕】ッッッ!!!」

 

「ぐがぁ……っ!!??」

 

ヴァーリは防御障壁を張りはしたものの、一誠の拳はそれすらやすやすと貫き、ヴァーリの腹部を抉った。

地面へと落下していくヴァーリ。

衝突するかと思いきや、ヴァーリは光翼をはためかせて地面をすれすれで上昇する。

 

「くっ……!

半減が間に合ってなかったら今のは危なかった……!」

 

そういいながらも、壊れた兜から見えるヴァーリの顔は心底嬉しそうに笑っていた。

互いに鎧もボロボロになり、血を流していたが、戦意はむしろ向上しているように見える。

 

「あぁ、楽しいな!兵藤一誠!」

 

「別に楽しくねぇよ!」

 

「そういいながらも気がついているか?

―――――君も笑っているぞ!」

 

ヴァーリ同様に壊れた兜から見える一誠の顔には笑みが浮かんでいた。

 

「やはり、ドラゴン同士の戦いはこうでなくては!」

 

そう言ったヴァーリは壊れた鎧に自らの魔力を送り込み修復する。

 

「チッ!

修復機能とか勘弁してくれよ……!」

 

『相棒にも魔力さえあれば修復できるが……相棒は不自然なまでに魔力の絶対量が少ないからな……』

 

「ないものねだりなんてしても意味ねぇだろ、相棒!

俺には魔力はないけど、相棒(ドライグ)がいる!

それだけで十分だッ!!!」

 

『ふっ……嬉しいことを言ってくれる。

―――――しかし、どうする相棒。

このままではジリ貧だぞ?』

 

「【赫龍帝の四皇鎧(ブーステッド・ギア・プロモーションメイル)】ならどうだ?」

 

『なることは可能だろう。

しかし、今の相棒の残り魔力では【換装】は行えないぞ』

 

「チッ!

……最初から使っとくべきだったか……」

 

一誠は悔しそうに顔を歪める。

その体に残る最早雀の涙程もない魔力では、本来の性能を発揮することはできないとドライグは言っているのだ。

 

 

 

 

 

―――――そんな時、一誠の視界にあるものが映り込んだ。

 

そして閃く―――――奇策。

一誠は獰猛な笑みを浮かべて口を開いた。

 

「なぁ、ドライグ。

神器(セイクリッド・ギア)ってのは想いに応えて進化するよな……」

 

『あぁ、そのおかげで相棒は今までにない進化を遂げてきたではないか』

 

赫龍帝の四皇鎧(ブーステッド・ギア・プロモーションメイル)】。

それこそが良い例だろう。

一誠は己の視界に映り込んだモノ―――――『白い龍』の宝玉を拾い上げた。

 

『ま、まさか?!正気か相棒っ!?』

 

その行動で一誠が何をしようとしているのかを悟ったドライグは慌てた様子で言う。

ヴァーリはその様子を興味深そうに眺めるだけで、攻撃をしようという素振りは見えなかった。

 

「当たり前だろうが!

―――――無理を通して、道理を蹴っ飛ばす。

それが俺とお前の真骨頂だろ?」

 

『……ふっ。それもそうだな』

 

一誠はヴァーリの方を向くと、にやりと笑った。

 

 

 

 

 

「『白い龍』アルビオン!ヴァーリ!

―――――貰うぜ、お前たちの力を!!」

 

言って、一誠は右手の甲に存在する赤龍帝の宝玉を叩き割り、そこへ先程拾った『白い龍』の宝玉をねじ込んだ。

すると、一誠の右手から白銀のオーラが漏れ出し始め、そのまま右半身を覆ってしまう。

 

「うがぁぁぁぁぁぁぁぉぁあああッッ?!!!!」

 

苦悶の声を上げ、激痛に表情を歪める一誠。呼吸は荒くなり、体をガクガクと震わせる。

 

「まさか……オレの力を取り込むつもりなのか?」

 

一誠のやろうとしていることに気がついたのか、ヴァーリは驚愕の表情を浮かべた。

 

『無謀なことを……。

ドライグよ、我らは【魔】と【聖】、【邪】と【善】のように相反する存在だ。

それを混ぜ合わせようなど……自滅行為にほかならない。

―――――こんなことでお前は消滅するつもりなのか?』

 

『ぐぉぉぉぉぉおおおっっ!!』

 

ドライグもまた、一誠のように苦悶を漏らしていた。

だが、ドライグは悲鳴を出しながらも、笑いを含ませる。

 

『アルビオンよ!

お前は相変わらず頭が固いものだ!

我らは長きに亘り、人に宿り、争い続けてきた!

毎回毎回同じことの繰り返しだった!』

 

『そうだ、ドライグ。

それが我らの運命。

お互いの宿主が違ったとしても、戦い方だけは同じだ。

お前が力を上げ、私が奪う。

神器をうまく使いこなした方がトドメをさして終わりとなる。

……今までも、そしてこれからもな』

 

アルビオンの言葉にドライグは不敵な笑いを向ける。

 

『俺はこの宿主―――――兵藤一誠と出会っていいことを知った。

―――――無理を通して、道理を蹴っ飛ばす!そうすれば新しい世界を見れるのだと!!』

 

「俺の想いに応えろォォォォオッッ!!!!」

 

一誠は絶叫しながら、己の右手を天に掲げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『Vanishing Dragon Power is taken !!』

 

 

 

 

 

その音声と共に、一誠の右手は眩い白光に包まれる。

そして現れたのは、白銀のオーラを発する白き籠手。

 

「―――――【白龍皇の籠手(バニシング・ギア)】ってところか?」

 

『有り得ん!こんなことは有り得ない!』

 

アルビオンの声は驚愕で染まっていた。

 

「いや、可能性はあったんだよ。

俺の仲間が【聖】と【魔】の力を融合させて、【聖魔剣】なんてものを創り出した。

神がいないから崩れたバランスのせいで現れたシステムバグ的なものを利用したのさ」

 

『……【神器(セイクリッド・ギア)プログラム】の不備をついて、実現させたというのか?

……いや、しかし、こんなことは……。

思いついたとしても実現に行うのは愚かだ……。

相反する力の融合は何が起こるかわからない。

それがドラゴンの関わるものだとしたら、死ぬかも知れなかったのだぞ?否、死ぬほうが自然だ』

 

未だ信じられない様子のアルビオン。

一誠はあっけらかんとして朗らかに笑った。

 

「あぁ、確かに無謀だった。失敗するかもしれなかった。死ぬかもしれなかった。

―――――だが、俺は生きている」

 

そんな一誠の言葉に嘆息するドライグ。

 

『だが、確実に寿命を縮ませたぞ?

いくら悪魔に転生し、永遠に近い時間を生きるとしても―――――』

 

「一万年も生きるつもりなんて無いさ。

俺は自分の大切な人たちの寿命より、1秒でも長く生きれたらそれでいい」

 

一誠は優しい微笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編の方はいかがでしたでしょうか?
楽しんでいただけたのなら幸いです♪

さて、今回は一誠くんとヴァーリの戦いの序盤がメインとなりましたが、楽しんでいただけましたか??

次回も戦闘シーンがたくさんあるはずなのでおたのしみに♪(*´ω`*)


それでは今回はここまで!
また次回お会いしましょう♪


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68話

皆さんこんにちは♪(*´ω`*)
春休みに突入した夜叉猫ですっ!


最近では日向ぼっこをしてて外で寝てたりするのですが……暖かくていいですね〜♪(*´ω`*)


それでは早速本編をどうぞ♪(*´ω`*)


Side 三人称

 

「―――――面白い。

オレの知っている中でも君の意外性はピカイチだ!」

 

一誠に向けて拍手を送るヴァーリ。

その視線には熱っぽいモノが混じっているようにも見えた。

 

「ひとつ、賭けをしよう兵藤一誠」

 

「……賭けだと?」

 

怪訝そうな表情を浮かべてヴァーリを見つめる一誠。

 

「オレが勝ったら君の全てと君の周りにある全ても白龍皇の力で半分にしてみせよう!」

 

ヴァーリが空中を漂い、腕を大きく広げる。背にある光の翼もその大きさを増して行く。

 

「半分?

俺の力ならともかく、俺の周囲を半分にするってどういうことだ……?」

 

一誠の問いかけにヴァーリは哄笑をあげる。

 

「無知は怖いな!

知らずに死ぬのも悪くないだろうが……今回は教えてあげよう!」

 

Half(ハーフ) Dimension(ディメンション) !!』

 

宝玉から響く音声と共に眩いオーラに包まれたヴァーリが眼下に広がる木々へ手を向ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――は……?」

 

漏れたのは間抜けな声。

一誠はその光景に開いた口が閉じなかった。

 

―――――木々が一瞬で半分の太さになってしまっていたのだ。

さらに、周囲の木々も圧縮されるかのように半分になっていく。

 

『相棒、わかりやすく教えてやる』

 

半分になっていく光景に唖然としていた一誠にドライグの声がかかる。

 

『あの能力は周囲のモノを全て半分にしていく。

―――――つまり、もしアレをお前の護るべき対象に使われれば寿命という概念ですら半分にされかねんぞ。

それを繰り返し使われてみろ―――――幾ら永遠に近い時間を生きるとしても……すぐに死んでしまうぞ?』

 

「……は……??」

 

再び間抜けな声がもれる。

一誠は表情というものを忘れたかのように無表情になり―――――次の瞬間には憤怒の表情を浮かべた。

 

―――――そして溢れる龍のオーラ。

 

 

 

 

 

「ふざけんなァァァァァァァァァァァァァァァァアッッッッ!!!!!!」

 

一誠の周囲が弾け飛ぶ。立っていた地面も大きく抉れ、クレーターと化している。

旧校舎の窓ガラスが全て割れ、外壁にヒビが入り、崩れていく。

 

「俺の……俺の仲間に手ぇ出してみろ……お前、この世に生を受けたことを後悔させてやるッッッ!!!」

 

『Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost !!!!!!』

 

「特に……士織に……家族に手ぇ出してみろ……。

そんときは―――――お前という存在そのものをぶち殺すッッッッ!!!!」

 

特大の殺気を乗せた一誠の視線がヴァーリを射抜く。

 

「……イィ……イィなぁ!

その殺気、その視線!

まさに狩られる寸前のこの獲物の気持ちッ!!」

 

そんな視線に射抜かれながらも、恍惚の表情を浮かべて一誠を見つめるヴァーリ。

 

「さぁ!殺ろう!

君のその力をオレにぶつけてくれ!

オレはそれを―――――上回ろう!!!」

 

「言われなくても……殺ってやるよ!」

 

『Explosion!!』

 

その音声と共に一誠のオーラが莫大に増長された。

先に仕掛けたのはヴァーリ。

その身を光速で動かし、一誠へと接近する。

 

「―――――士織より、遅い」

 

しかし、一誠はその姿をしっかりと捉えていたらしく、逆にヴァーリの体へボディブローをカウンターで叩き込む。

 

「がふっ?!!」

 

吐瀉物を口から吐き出すヴァーリ。

一誠は今が好機と思ったのか、吹き飛んで行こうとするヴァーリの腕を乱暴に掴み自分へと引き寄せた。

 

『Divide!!』

 

同時に、移植したばかりの白龍皇の力までも発動し、ヴァーリを包むオーラは激減する。

 

「―――――墜ちろッッ!!!」

 

一誠は右足を振り上げると、踵落としの要領でヴァーリの頭を蹴りおろした。

 

「〜〜〜〜〜〜ッッ!!?」

 

声にならない声を上げ、ヴァーリは地面に叩きつけられる。

ヴァーリの鎧はボロボロに砕け、ヒビが入り、まさに満身創痍の状態となり、当の本人は血反吐を吐き出しながらヨロヨロと立ち上がった。

 

「あ、圧倒……的……だな……」

 

しかし、その表情は満足げであり、楽しげである。

一誠はそんなヴァーリの様子に舌打ちをする。

 

「……まだ倒れねぇのかよ……」

 

「あぁ……こんなところで倒れてしまっては、勿体無いだろう……?」

 

『ヴァーリ、奴の半減の力に対する解析は済んだ。

こちらの力の制御方法と照らし合わせれば対処できる』

 

「……そうか……なら、もうアレは怖くないな」

 

ヴァーリは口から血の塊を吐き出すと深呼吸をした。

ボロボロの鎧は修復されることはなく、しかしヴァーリは俄然やる気である。

 

「アルビオン、彼ならば【覇龍(ジャガーノート・ドライブ)】を見せるだけの価値があるんじゃないか?」

 

【覇龍】という言葉に一誠は眉をひそめる。

 

『ヴァーリ、この場でそれは良い選択ではない。

無闇に【覇龍】となればドライグの呪縛が解けるかもしれないのだ』

 

「願ったり叶ったりだ、アルビオン。

―――――『我、目覚めるは、覇の理に―――――』」

 

『自重しろヴァーリッ!!!

我が力に翻弄されるのがお前の本懐か?!』

 

怒りの色を含ませて声を上げるアルビオン。

一誠はヴァーリが何かを唱えようとした瞬間、接近し、攻撃を与えようとしていた。

 

「させるか……ッ!!」

 

ただ拳を握り、ヴァーリに放つ一誠。

 

 

 

 

 

―――――しかし。

 

一誠の攻撃はヴァーリをとらえることはなかった。

 

 

 

 

 

「―――――ヴァーリ、迎えに来たぜぃ」

 

一誠の拳は突然現れた三国志の武将が着ているような鎧を身に纏った男性に止められていたのだから。

一誠はバックステップでその男性から離れると、鋭く睨みつける。

 

「美候か……。

何をしに来た?」

 

「それは酷いんだぜぃ?

相方がピンチだっつーから遠路はるばるこの島国まで来たってのによぅ?

他の奴らが本部で騒いでるぜぃ?

北の田舎(アース)神族と一戦交えるから任務に失敗したのならさっさと逃げ帰って来いってよ?

カテレアの奴、暗殺に失敗したんだろう?

なら監察役のお前の役目も終わりだ。

俺っちと一緒に帰ろうや」

 

「……そうか、もう時間か」

 

明らかに残念そうな表情を浮かべるヴァーリ。対して突然現れた男性はカラカラと笑っていた。

 

「なんだ、お前は?」

 

一誠の問いに男性は笑いながら答える。

 

「俺っちか?

俺っちの名前は美候。

闘戦勝仏の末裔さぁ〜」

 

突然現れた男性―――――美候は手元に棍を出現させるとクルクルと器用に回して遊んでいた。

 

「闘戦勝仏……?

……あぁ!孫悟空か!!!」

 

「おぉ!

ビンゴだぜぃ、赤龍帝。

ただ、俺っちは仏になった初代とは違うんだぜぃ?

自由気ままに生きるのさ〜。

まぁ、何はともあれよろしくなぁ〜」

 

毒気も抜けるような気楽さでそう言う美候。

 

「あ、お猿さん来てたんだ!」

 

そんな時、一誠の背後から女性の声が響く。

一誠はその声にびくりと身体を震わせると、直ぐにその場から離れた。

 

「おぉ、乳狐(ちちぎつね)

お前こんなところにいたのかぃ!」

 

乳狐と呼ばれた女性―――――玉梓は美候の言葉に頬を膨らませる。

 

「もぉ〜!

その名前は止めてよお猿さん!

セクハラだよぉー!

それに猫さんの方が私よりおっきいでしょ!」

 

「んならアイツは乳猫だな!」

 

「そういう問題じゃないでしょー!!」

 

玉梓は美候に近づいていくとまるで絵文字の『(>_<)』のような表情を浮かべて抗議するが、美候は笑うだけで真剣に聞こうとはしない。

 

「あ、ヴァーリちゃん!

あなたのお父さん、あっちに寝かせてるから!

安心して!怪我はないから!」

 

玉梓はそういいながら満身創痍のヴァーリに抱きつく。

 

「……止めろ玉梓」

 

「えぇ〜!

いーじゃんいーじゃん!

治療してあげるんだし〜♪」

 

玉梓がそういった瞬間、ヴァーリの体がオレンジ色の暖かそうな光に包まれた。

 

「なっ……?!」

 

今まで黙っていた一誠もその光景に声を上げる。

―――――ヴァーリの傷が全て治って行くのだ。

 

「……別に抱き着かなくても良いだろう?」

 

「役得役得♪」

 

玉梓はにこにこと笑ってそう言う。ヴァーリは今にもため息を吐きそうな表情を浮かべていた。

 

「ヴァーリの治療も済んだことだし、帰ろーぜぃ?」

 

 

 

 

 

「―――――帰らせると思うか?」

 

―――――その場の誰の声でもないものが響いた。

声の発生源、そこにいたのは―――――士織だった。

 

「ありゃ〜……バケモン出てきちった……」

 

士織の姿を確認すると同時に引き攣った笑みを浮かべる美候。

 

「オーラの量がわかんねぇや……。

あれか?次元が違うってやつ……」

 

「まだお猿さんには早かったんだよ……」

 

戦慄する美候の肩をポンポンと優しく叩く玉梓。が、その表情は笑いをこらえているようだ。

 

「ねーねー士織くん!

お土産あげるから此処は見逃してくれないかなぁ??」

 

「寝ぼけてんのか?

土産なら俺の目の前に3人いるんだが?」

 

士織はそう言うと指の骨をポキポキと鳴らす。

 

「そ〜いわずに!

―――――ほら!ぷれぜんとふぉーゆー!」

 

玉梓はそういいながらいつの間にか取り出したラッピングされた大きな箱を士織に投げつける。

士織はその箱を破壊しようと拳を振り上げたが、次の瞬間眉をひそめてその箱を受け止めた。

 

「気に入って貰えた??

曹操くんにバレないように用意するの大変だったんだよ〜??」

 

「…………」

 

「敵意も無くなったし、ありがたく帰らせてもらうね?

ほら、お猿さん!帰るよっ!」

 

玉梓はそう言って美候のお尻をひっぱたいた。

 

「痛ぁっ?!

て、手加減しやがれぃ!」

 

美候は若干涙目になりながらも、手に持つ棍を地面に突き立てる。

刹那、地面に黒い闇が広がり、ヴァーリ、美候、玉梓の3人を捉えると、ズブズブと沈ませていく。

 

 

 

 

 

「―――――兵藤一誠!!」

 

ヴァーリの声が響く。

一誠はヴァーリの方を向くと睨みつけた。

 

「オレは君を気に入った。

その俺をも超える強さ……実に惹かれる」

 

「……だからなんだよ」

 

不機嫌そうに吐き捨てる一誠。

それに対してヴァーリは不敵に笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オレは決めたぞ。

―――――君をオレの()()にする!」

 

 

 

 

 

―――――瞬間、場の空気が凍った。

一誠は一瞬何を言われたかわからなかった様だが、しばしの間を開けて顔を真っ青に変化させる。

 

「や、やめろッ!?

お、俺はノーマルなんだ!

男色の気なんてねぇんだよぉぉぉぉお!!!」

 

士織の影に隠れるようにすると体を震わせる一誠。

 

「……何を言っているんだ?

オレはお―――――」

 

ヴァーリの言葉は最後まで紡がれることなく闇の中へ消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編の方はいかがでしたでしょうか?
楽しんでいただけたのなら幸いです♪(*´ω`*)


さて、今回はヴァーリが最後に爆弾を落としていきましたね〜(笑)
こういう展開もいいのでは?と思って書いてみました♪

問題児の方も待って下さる読者様がいるので早く書かないとと思いながら今日も今から昼寝です(笑)

みなさんも日向ぼっこをしてみると案外ハマっちゃうかもですよ??(*´ω`*)


それでは今回はここまで♪
また次回お会いしましょう♪

感想など、お待ちしてます!(>_<)


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69話

皆さんおはようございます♪(*´ω`*)
春休みをのんびりと過ごす夜叉猫です(笑)

今回も比較的早めの更新が出来て安心しているのですよ……(笑)

それでは早速本編をどうぞ♪


Side 士織

 

「……良かったのかよ士織」

 

ヴァーリたちが逃げていった後、一誠がぽつりと呟いた。

 

「何がだ?」

 

「ヴァーリたちを逃がして良かったのかって聞いてるんだよ」

 

「今回だけだ。

今回は―――――こいつを連れてきてくれたからな」

 

俺は箱を優しく地面に下ろしてそう言う。

 

「こいつ……??」

 

一誠は俺の言葉に不思議そうに首を傾げると、俺の視線の先である箱を見つめた。

下ろした箱の包装を外し、ゆっくりと蓋を開ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――我、空腹」

 

そこにいたのは案の定、俺の思った通りの人物。

体操座りをして、こちらを見つめるの姿はまさしく―――――

 

「お前はいつも腹が減ってんだな()()()()()

 

無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)】オーフィス―――――つまり【禍の団(カオス・ブリゲード)】の頂点に立つ存在だった。

俺は自然と微笑んでいた―――――。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

俺はオーフィスを肩車し、一誠と共にサーゼクスたちの居るであろう場所へと向かう。

先程から戦闘後の処理、つまり倒した魔術師の死体を運んだりする者の姿が見られた。

 

少し歩いていけば、そこにはサーゼクス、セラフォルー、ミカエルの3人がそれぞれの部下に指示を出している姿が目に入る。

目を凝らせばアザゼルも座り込んではいるがいるのがわかった。

 

サーゼクスたちもこちらに気がついた様で、口を開こうとし―――――止まる。

その表情は驚愕で染められ、視線は俺の顔より少し上、つまりオーフィスに向かっていた。

 

「し、士織……そいつは……」

 

アザゼルは引き攣った表情でオーフィスを指さす。

 

「アザゼル。久しい」

 

「おいおい……こりゃどういうこった?

禍の団(カオス・ブリゲード)】トップの龍神様がなんで士織に肩車されてる……?」

 

ヨロヨロと立ち上がるアザゼル。

オーフィスはその様子を見ながら口を開いた。

 

「違う。我、【禍の団(カオス・ブリゲード)】辞めた」

 

オーフィスの口から出た言葉にアザゼルたちは目を丸くする。

 

「や、辞めた……?」

 

「そう。我、静寂もういらない。

士織、我の居場所―――――暖かい」

 

俺の頭を抱き締めるオーフィス。

穏やかな息遣いで頬ずりしていた。

その様子にアザゼルは笑い始める。

 

「おいおいおい!マジかよ!

士織、お前はとことん俺たちの予想の上を行くな!

無限の龍神様を手なずけるとか予想外にも程があんぜ全くよぉ!!」

 

どさりと座り込みながらアザゼルはふぅ、と息を吐く。

 

「取り敢えずオーフィス。

お前は俺たちの味方になったっていう認識でいいんだな?」

 

 

 

 

 

「……違う。我は士織の味方。

士織、傷つけるなら―――――滅ぼす」

 

オーフィスは俺の頭から飛び降りると俺を護るように立ちはだかり、アザゼルたちに殺気を向けた。

アザゼルは冷や汗を流しながらも手を上げて口を開く。

 

「……わ、わかった。

そのへんのことは肝に銘じとくぜ……」

 

アザゼルの言葉にサーゼクス、セラフォルー、ミカエルの3人も頷き、同意の意を示した。

 

「……ところで士織くん」

 

「なんだよサーゼクス」

 

真剣な表情を浮かべるサーゼクス。

 

「オーフィスが仲間になった今、君は一体どうするつもりだい?」

 

会談で聞きそびれたそれはオーフィスが俺の仲間になるという予想外の結果を経て再び問われる事となる。

 

「わかってんだろ?サーゼクス。

オーフィスと俺っていう過剰な力を持つ者は何処に行っても戦争の火種にしかならねぇ。

―――――だから俺は、どの勢力にもつかない」

 

「……つまり、君は……」

 

サーゼクスも薄々感づいてはいたのだろう。さして驚くこともなくこちらを見つめていた。

 

 

 

 

 

「あぁ。お前の思ってる通りだサーゼクス。

俺は3大勢力や既存の勢力の何処にもつく気は無い。

―――――つまり、俺は新たに『第4の勢力』を作ろうと思ってる」

 

その言葉に対する反応は様々。

サーゼクスやアザゼルたちのような各陣営のトップたちは納得したような表情を浮かべ、その他の者たちは驚きの表情を浮かべていた。

 

「これなら何処かの勢力だけ強くなるっていうパワーバランスの崩壊もないし、オーフィスの扱いに困ることもない。

勿論、何かあれば力は貸す。

……どうだ?これが最善の手だと思うが?」

 

俺の問いかけにいち早く反応したのはアザゼル。

 

「いいと思うぜ?

ただ、今はお前とオーフィスしかいねぇから『中立チーム』ってところで落ち着いとけ」

 

「それが良いだろうね。

『第4の勢力』として活動するとしたらもう少しメンバーが欲しいところだよ」

 

「士織ちゃんなら1人でどんな作業でもこなしちゃいそうだけどね☆」

 

「異論はありません」

 

4人の言葉を聞いた俺はゆっくりと頷く。

 

「あぁ、なら今後は『中立チーム』として活動させてもらう。

―――――よろしく頼むぜ?」

 

俺はニヤリと笑った。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「―――――そういえば一誠。

お前、うちのヴァーリに求婚されたんだって?」

 

アザゼルは一誠と肩を組むとニヤニヤと笑いながらそう言う。

俺は再びオーフィスを肩車しながらそれを眺めていた。

 

「そ、そうなんですよ!

俺は男色の気はないのに……どうにかなりませんかね……」

 

ため息を吐きながらそう言うと、アザゼルは笑い声を上げる。

 

「笑い事じゃないんですよ?!」

 

「いや〜……悪ぃ悪ぃ。

だがな、一誠。お前さん勘違いしてるぞ?」

 

「勘違い……??」

 

一誠は眉をひそめてアザゼルの言葉を聞く。

 

 

 

 

 

「ヴァーリはああ見えて―――――女だぜ?」

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!!!!?」

 

一誠の驚愕の声が響き渡る。

その後、1人百面相を披露しながら、一誠は頭の上にハテナマークを浮かべた。

 

「ヴ、ヴァーリが……女……??

え、ちょ、ま……はぁ?!」

 

「おぉ、おぉ。

激しく混乱してるなぁ。

ヴァーリの奴、俺がいくら言っても言葉どころか一人称すら直さなかったからなぁ……ま、勘違いすんのもしかたねぇか」

 

愉快そうに笑うアザゼル。

どことなく嬉しそうな雰囲気を醸し出している。

 

「おい一誠。

俺のことを『お義父さん』って呼んでもいいんだぜ??」

 

「……勘弁してください」

 

なんとも言えない表情を浮かべて一誠はため息を吐くように言った。

 

 

 

「―――――さて、色々と一段落ついたようなので、私は1度天界に帰ります。

直ぐに戻ってきますので、その時正式な和平協定を結びましょう。

それと士織さん、お暇な時にでもいいので天界へお越しください。

色々とお話をいたしましょう?」

 

後半、ミカエルは俺に向かって微笑みながら言って、この場を後にしようとする。

 

「気が向いたらな?

それと、帰るのは少し待ってくれ」

 

「?なんですか?士織さん」

 

「俺の弟が言いたいことがあるらしいんでな。聞いてもらえるか?」

 

俺はそう言って、一誠の方へ視線を向ける。先程までは何処か疲弊した様子の一誠だったが、俺の言葉を聞いて真剣な表情を浮かべた。

 

「はい。

時間があまりありませんが、それくらいならば」

 

そう言って、ミカエルは一誠の方に視線を移動させる。

一誠は1度咳払いすると口を開いた。

 

「ひとつ、お願いがあります。

―――――アーシアとぜノヴィアが祈りを捧げる時のダメージを無しにできませんか?」

 

「―――――っ!」

 

その願いにミカエルは驚きの表情を見せる。

いつの間にやら合流していたアーシア、ゼノヴィアの2人も一誠の願いに驚いているようだ。

 

「……わかりました。

2人分ぐらいならシステムに干渉することでなんとかなるかもしれません。

―――――アーシア、ゼノヴィア、問います。

神は既にいません。それでも祈りを捧げますか?」

 

ミカエルの問いに2人は直ぐに頷き、にこりと笑った。

 

「はい、主がおられなくとも私は祈りを捧げたいです」

 

「同じく。

主への感謝と―――――ミカエルさまへの感謝を込めて」

 

2人の答えにミカエルは優しく微笑むと、2人に歩み寄り頭を優しく1度だけ撫でる。

 

「わかりました。

本部に戻ったら、早速そうしましょう。

……あなたたちのような優しい者にあのような酷いことをしてしまい、本当に申し訳ありません……」

 

「いえ、ミカエルさま、謝らないでください。

多少、後悔も致しましたが、教会に仕えていた頃にはできなかったこと、封じられていたことが現在、私の日常を華やかに彩ってくれています。

……こんなことを言ったら、他の信徒に怒られるかもしれませんが……。

―――――それでも、今の私はこの生活に満足しているのです。」

 

柔らかに微笑むゼノヴィアは瞳を閉じて思い出すかのように言った。

それに続いてアーシアも手を組みながら言う。

 

「ミカエルさま、私も今が幸せだと感じております。

大切な人たちがたくさん出来ましたから……。

それに、憧れのミカエルさまにお会いしてお話、そして頭を撫でていただけるなんて光栄ですっ!」

 

ミカエルはゼノヴィアとアーシアの言葉に安堵の表情を見せる。

 

「すみません……。

あなたたちの寛大な心に感謝します。

デュランダルについてはゼノヴィアにおまかせします。

あなたなら安心して任せることができますから……」

 

「ありがとうございます」

 

ぜノヴィアは恭しく頭を下げた。

 

 

 

 

 

「ミカエルさま、例の件もお願いします」

 

そんな中、ミカエルに近づいていってそう言ったのは祐奈。

アーシアたちとの会話も終えたミカエルは祐奈に向き直ると真面目な表情で口を開いた。

 

「あなたから進言のあった聖剣研究のことも今後犠牲者を出さぬようにすると、あなたからいただいた聖魔剣に誓いましょう。

大切な信徒をこれ以上無下にすることは大きな過ちですからね」

 

なるほど、祐奈はいつの間にかそのことについてミカエルと話をしていたらしい。

 

「やったな!祐奈!」

 

「うん、ありがとう、イッセーくん」

 

そんな2人のやり取りを微笑ましく見ていたミカエルに、アザゼルが言う。

 

「ミカエル、『ヴァルハラ』の連中への説明はお前がしておけよ?

ヘタにオーディンに動かれても困るからな。

あと、須弥山にも今回のことを伝えておかないとうるさそうだ……」

 

「えぇ、堕天使の総督と魔王が説明しても説得力がないでしょうから、私が伝えておきます。

『神』への報告は慣れてますから……」

 

それだけを言い残すと、ミカエルは大勢の部下を連れて、天へと飛んでいった。

その後、アザゼルは再び立ち上がると、堕天使の軍勢を前に言い放つ。

 

 

 

 

 

「俺は和平を選ぶ。

堕天使は今後一切天使と悪魔とは争わない。

不服な奴は去ってもいい。

だが、次に会うときは遠慮なく殺す。

―――――ついてきたい者だけ俺についてこい!」

 

『我らが命、滅びのその時までアザゼル総督のためにッッ!!』

 

怒号となった部下たちの忠誠。

アザゼルはそれを見て何処か嬉しそうにふっ、と笑うと「ありがとよ」と小さく礼を言った。

カリスマという点で言えば、アザゼルは3大勢力中で1番だろう。

 

アザゼルが自分の軍勢に指示を出すと、魔方陣を展開させて堕天使たちが帰っていく。

悪魔の軍勢も同様に魔方陣から転移していくようだ。

先程までかなりの人数がいた校庭も、転移し終わった後では寂しくなり、ついには俺たちを合わせた極小数の人員だけとなっていた。

堕天使で唯一残ったアザゼルは、大きく息を吐くとしっかりとした足取りで校門の方へ去っていく。

 

「後始末は、サーゼクスに任せる。

俺は疲れちまった……帰るぞ」

 

あくびを隠そうともせず、手を振って帰ろうとするが、一度だけ立ち止まり、振り向いた。

 

「そうだ、一誠。

当分此処に滞在する予定だからそっちのヴァンパイアの特訓を手伝ってやるよ。

お前の血を飲ませたんだろ?

下手な結果にならねぇようにしないとな。

制御出来ていないレア神器を見るのはムカつく」

 

「えっと……ありがとうございます?」

 

一誠はアザゼルの言葉に疑問符を浮かべながら頭を少し下げた。

 

「赤は仲間を、白は力を。

―――――どちらも驚くほどに純粋で単純なもんだ」

 

アザゼルはそれだけいうと、口笛を吹きながら去っていった。

 

 

 

 

 

「アザゼル、ゴキゲン?」

 

オーフィスはペチペチと俺の頭を叩きながらそう言う。

 

「そうかもな。

……それとオーフィス、叩くな痛い」

 

俺がそう言うとオーフィスは叩く手を止め、地面に滑り降りていく。

そして、身長差からこちらを見上げると手を広げて口を開いた。

 

「士織、抱っこ」

 

「……はいはい」

 

俺はその姿に微笑ましさを感じながらオーフィスを抱き抱えるのだった。

 

 

 

 

 

Side Out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

西暦 20✕✕年7月―――――。

 

天界代表『天使長ミカエル』

 

堕天使中枢組織神の子を見張る者 『総督アザゼル』

 

冥界代表 『魔王サーゼクス・ルシファー』

 

3大勢力各代表のもと、和平協定調印。

以降、3大勢力の争いは禁則事項とし、協調体制へ―――――。

 

 

『兵藤士織』、『無限の龍神オーフィス』、両名による『中立チーム』創設。

後に『第4の勢力』となる予定―――――。

 

 

 

 

 

今回結ばれた和平協定は舞台となった学園から名前を採り、【駒王協定】と称することとする―――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編の方はいかがでしたでしょうか?
楽しんでいただけたのなら幸いです♪

今回は会談の締めのような話でしたね(笑)
次回、もしくは次々回で4巻の内容が終わりそうなのですよ♪


そして!
一応の報告ですが……Twitter始めました(笑)
@Yasyaneko51615ですので、気軽にフォローおねがいします♪


それでは今回はここまで!
また次回お会いしましょう♪(*´ω`*)



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70話

皆さんこんばんは♪
お風呂上りを満喫している夜叉猫です(笑)

今回は物凄くご都合主義的な話が出てきますが……お許しください……っ!!(>_<)


それでは早速本編の方をどうぞっ!!


どうも、兵藤士織だ。

 

 

 

3大勢力の会談、そして【禍の団(カオス・ブリゲード)】の襲撃を乗り越えてから早数日。

いつも通りに放課後、オカルト研究部の部室に俺たちは集まっていた。

そう、集まっていたのだが……―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――てなわけで、今日からこのオカルト研究部の顧問になることになった。

『アザゼル先生』と呼べ。

あ、一誠は『お義父さん』でもいいぞ?」

 

そこには着崩したスーツ姿のアザゼルが何故かいた。

 

「……どうして、あなたがここに?」

 

額に手を当て、困惑している様子のリアス先輩。

 

「ハッ!セラフォルーの妹に頼んだらこの役職だ!

まぁ、俺は知的でチョーイケメンだからな。

女生徒と先生でも喰いまくってやるさ!」

 

「んなことしたら俺が去勢するぞ色ボケ総督」

 

俺が指を鳴らしながらニッコリと笑ってそう言ってやればアザゼルは引き攣った表情を浮かべて冷や汗をかく。

 

「じょ、冗談だぜ?士織」

 

「ならいいんだけどな?」

 

そう言って、俺はソファーに座る祐奈の隣に腰を下ろした。

 

「あ〜……取り敢えず、俺がこの学園に滞在できる条件はグレモリー眷属の悪魔が持つ未成熟な神器を正しく成長させること。

まぁ、士織がいりゃ十分だが、士織でもわからない専門的なことは俺が教えてやる。

禍の団(カオス・ブリゲード)】ってけったいな組織もあることだし、将来的な抑止力のひとつとしてお前らの名前が挙がったのさ。

いや、どちらかといえば対『白い龍(バニシング・ドラゴン)』専門だな。

仕入れた情報では、ヴァーリは独立した自分のチームを持っているって話だ。

そいつらを仮に『白龍皇眷属』と呼ぶとして、判明しているのは今のところヴァーリと孫悟空、玉梓を合わせて数名だ」

 

「強いんですか?」

 

一誠の質問にアザゼルは頷く。

 

「当たり前だ。

ヴァーリはアレが全力じゃねぇ。

……そうだな……今はお前さんの方が強いが、時期に追いつかれるだろうよ。

それよりも厄介なのが―――――玉梓だ。

俺は直接戦ったから言えるが……アイツはバケモンだぞ……?」

 

アザゼルは神妙な面持ちで語る。

 

「……俺は全力で戦った。

持てる策を全て使ったのにも関わらずアイツは終始遊んでいる様子だった……。

俺が唯一()()()武器は最後に俺の意識を刈り取っていきやがった巨大な鉄の扇だ……」

 

その言葉に俺は眉をひそめる。

『転生者』『九尾狐』『回復能力』『鉄の扇』……このキーワードだけで絞りこめる訳では無いが、あの玉梓という転生者がどのような能力を持つのか考えやすくはなる。

 

「何はともあれ、『白龍皇眷属』のメンバーは確実に今のお前達より強い。

士織は例外として一番実力があるだろう一誠でもまだ足りない」

 

アザゼルの言葉にリアス先輩たちは表情を曇らせた。

 

 

 

 

 

「―――――なぁに暗い表情してやがる。

お前らにはまだ伸びしろってもんがあるんだよ。

力不足なら鍛えるまでだ。

―――――夏休みなんてないものと思えよ?」

 

そう言ってニヤリと笑ったアザゼルはいつもはリアス先輩が座っている椅子の方へ移動すると、怠そうに腰を下ろしたのだった。

 

 

 

 

 

―――――閑話休題。

 

 

 

 

 

「そうだ、忘れるとこだった……。

―――――ほら、士織。サーゼクスの奴からだ」

 

アザゼルはそう言って少し大きめの箱を俺に投げ渡してくる。

眉をひそめてそれを開けてみれば、中に入っていたのは―――――【悪魔の駒(イーヴィル・ピース)】。

 

「おいアザゼル。

これは一体どういう意味なんだ?」

 

俺はどの勢力につくつもりもないと言ったはずだ。

それなのに何故この駒を渡すのだろうか……?

 

「サーゼクスが言うには『レーティングゲームに参加してみないか?』だとよ。

その駒の使い道はお前に任せるらしいぞ」

 

「……使ったら悪魔になっちまうだろうが……」

 

「なら使っても悪魔にならねぇように改造したらどうだ?

お前ならできるだろ?」

 

「アザゼル、お前は俺をなんだと思ってんだ……」

 

流石の俺もそんな改造を施せる力を持ってはいない。

 

「ハハハハハ!

冗談だジョーダン。

その駒は特別製らしくてな。

なんでもアジュカが新しく創り出したモンで、悪魔化はしないが寿命は伸び、駒の特性は使えるようになるらしい。

―――――アジュカ曰く、『【悪魔の駒】を創るより簡単だった』だとよ」

 

からからと笑うアザゼル。

まさかサーゼクスがこんなモノを創らせるとは思ってもみなかった。

 

「士織、なんだかんだ言ってもお前は人間だ。

俺たちみたいに永遠に近い時間を生きることはできねぇ。

だからこそ、アイツ(サーゼクス)はそれを創らせたんだろうよ」

 

椅子から立ち上がったアザゼルは俺に近づき、箱の中からひとつの駒を摘まみ出す。

 

「―――――コイツは普通の【悪魔の駒】にはねぇ、【帝王(カイザー)】の駒だ。

お前でも使えるようにかなりの調整を加えた正真正銘お前のためだけに創られた駒なんだとよ」

 

俺はその駒をアザゼルから受け取り手の内で転がす。

 

「そいつには寿命を伸ばす効果しかないらしいが……十分だろう?」

 

「……まぁな」

 

「ただ、そいつを使っちまうと確実に人間ではなくなる。

悪魔になるわけでもないが、人間でもない―――――そんな存在に」

 

アザゼルの言葉を聞いた俺は思考する。

もしこれを使った場合のことをだ。

 

メリットは寿命が伸びること。

デメリットはこれを使えば人間でも悪魔でもないものになること。

 

俺はふっ、と小さく笑い駒を握りしめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――メリットしかねぇじゃねぇか」

 

そういって、駒を受け入れた。

 

 

 

 

 

Side Out

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

駒王学園 一学期 終業

 

駒王学園高等部 オカルト研究部

 

顧問教諭/アザゼル(堕天使総督)

 

部長/リアス・グレモリー((キング))3年生

 

副部長/姫島朱乃(女王(クイーン))3年生

 

部員/塔城小猫(戦車(ルーク))1年生

   木場祐奈(騎士(ナイト))2年生

   ゼノヴィア(騎士(ナイト))2年生

   アーシア・アルジェント(僧侶(ビショップ))2年生

   ギャスパー・ヴラディ(僧侶(ビショップ))1年生

   兵藤一誠(兵士(ポーン))2年生

 

   兵藤士織(帝王(カイザー))2年生

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

Side 三人称

 

誰もいない駒王学園の屋上。

夕焼けでオレンジに染まるそこでアザゼルは耳にスマートフォンを当てていた。

 

「―――――あぁ、電話で悪いな、シェムハザ。

ちょいと野暮用でしばらくここにいるからよ」

 

『了解しました。

……しかし、アザゼル。

今回の和平であなたを快く思わない部下も―――――』

 

「いいさ。別にいい。

俺のことなんかよりもお前だ。

―――――ガキ、産まれるんだろ?」

 

そういうアザゼルの表情はとても、とても優しいものだった。

 

『……アザゼル。私は……私はッ!!!』

 

「……大事にしろよ?悪魔の嫁さんをよ。

イイ女じゃねぇか。

謀殺されるかもしれねぇのにここまでお前についてきたんだからよ。

子供は悪魔と堕天使の架け橋になるぜ?」

 

『私が……私が恨まれれば良かったのです……ッ!

あ、あなたに……このような……ッ!!』

 

「泣くなよ、戦友。

恨まれるのは慣れてる。

朱乃の件も俺に任せとけ。

―――――この黒い12枚の翼と共に全部背負ってやるからさ、イイから黙って俺についてこい、シェムハザ!!」

 

『…………っ!!!

―――――イエス、マイマスター!!!』

 

涙で声が震えるシェムハザ。

アザゼルは優しく笑っていた。

 

「今日はゆっくり休め、シェムハザ。

俺がいないんだ、忙しくなるぞ?」

 

いたわるような言葉を口にするアザゼルに電話先のシェムハザは笑い声をあげる。

 

『ふ、ふふふ……冗談を。

あなたはほとんど仕事をしなかったでしょう?』

 

「かーっ!

痛いとこついてくるなぁ……シェムハザよぉ……」

 

『あなたが戻ってくる頃にはやることがなくなっているでしょうね』

 

「おいおい、俺を干すつもりかよ」

 

『それもいいかもしれませんね。

―――――あなたは今まで頑張ってきたんですから、そろそろ休んだらどうです?』

 

「……馬鹿野郎。

お前らが頑張るってのに休んでられるかよ」

 

空を見上げてアザゼルは言った。

 

「……また掛けるぜシェムハザ」

 

『えぇ……どうかご無事で』

 

その言葉を最後に電話を切ったアザゼル。

ふぅ、とひとつ息を吐き出すと背伸びをした。

 

 

 

「……忙しくなりそうだ」

 

夕日に照らされてアザゼルはそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編の方は如何でしたでしょうか?
楽しんでいただけたのなら幸いです♪


さて、今回は士織くんを謎の種族に転生させましたが……正直必要だったのかな……と思い始めました(笑)
ただ、これでレーティングゲームに出場させれるようにするという目的は達成しました!!
……眷属の目処は全くたっていませんが……(苦笑)


それでは今回はここまで!
また次回お会いしましょう♪


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〜冥界合宿のヘルキャット〜
71話


皆さんこんにちは♪
外もぽかぽかしてきて……花粉の季節ですねっ!!(>_<)
マスクは大切ですよっ!!

それでは早速本編の方をどうぞ♪


どうも、兵藤士織だ。

 

 

 

夏という季節は意外と長いもので、やっと夏休みという長期休暇に入った今日この頃。

しかも、リアス先輩の眷属全員が兵藤家に下宿することとなり父さん、母さんの説得が大変だったのもそう古くはない記憶だ。

 

いくらなんでも16人という大所帯が、初めは4人で過ごしていた家に居るのは狭すぎるとのことで、リアス先輩の発案で改築するということになっていたのだが―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……一晩で豪邸が出来上がってらぁ……」

 

朝起き、異変を感じ、何故か俺のベッドで寝ていたオーフィスを背負いながら外に出た俺は一言そう呟く。

 

―――――夢でないなら8階建て相当の豪邸が眼前に広がっていた。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「ふむ、現代では寝ている間にリフォームが終わっているのだな。

流石の私も驚いた……」

 

朝食の席。

以前の5倍は広くなった食卓で父さんがお茶を啜りながら言った。

食卓にはこの家に住む全員が集合しており、俺の右隣には祐奈、左隣には小猫、膝の上にはオーフィスが陣取り、他は好きなように座っている。

同じように5倍以上広がったキッチンの方からは母さん、夕麻、美憧、綯奈、華那が朝食のメニューを運んでくる。

 

「リアスちゃんのお父さまがね、建築関連のお仕事もされてるそうで、モデルハウスの一環でここを無料でリフォームしてくれたそうなの♪」

 

ここまでの豪邸へのリフォームが無料だなんて話を信じる母さん。

……普通なら正気を疑うレベルなのだが……俺の母さんなら仕方がないというしかない……。

そもそもリフォームどころか、敷地面積自体が広がっているようだが……。

 

「そういえばお隣の鈴木さんや田村さんはお引越ししたらしいの。

なんでも急に好条件の土地が入手出来たって話してね?そっちに移り住んだんだって〜」

 

母さんはなんとなしにそう言ったが、俺は苦笑気味にリアス先輩の方を見た。

 

「大丈夫よ。

以前よりも好条件の土地、物件を紹介したの。

平和な解決だったわ。皆、幸せになれたのよ」

 

俺にしか聞こえないであろう絶妙な声の大きさでそう告げたリアス先輩。

そういうことならば俺がグチグチということではない。

そして今度は、家の図面らしきものを持ってトタトタとかけてくる母さん。

 

「1階は客間とリビング、キッチン、和室。

2階は一誠ちゃんとアーシアちゃん、夕麻ちゃん、ギャスパーちゃんのお部屋ね♪

3階は私と賢夜さんのお部屋と、書斎、物置♪

4階は士織ちゃんとオーフィスちゃん、祐奈ちゃん、小猫ちゃんのお部屋で〜♪

5階はリアスちゃん、朱乃ちゃん、綯奈ちゃん、華那ちゃん、のお部屋よ♪

6階はゼノヴィアちゃんと美憧ちゃんのお部屋と2部屋のあまりね♪

7階と8階は誰も使ってないから客間かしら〜♪」

 

ウキウキした様子の母さんは楽しそうにそう言っていく。

 

「屋上には空中庭園があるらしくてな。

野菜でも育ててみようかと思っている」

 

父さんは瞳を閉じ、腕を組んで満足げに頷いている。

 

「頑丈に建ててありますので、戦争になっても崩れませんわ」

 

「ほう……それはまた良い建築だ」

 

全くの疑問を持たずに父さんはそういう。

これが当たり前なのだろうか……?

 

「地下もある……そうだね」

 

ゼノヴィアは箸に苦戦しながらも言う。

 

「ち、地下まであるのか……」

 

「えぇ、地下3階まであるわ」

 

「…………」

 

最早声すら出なかった。

リアス先輩は追加の図面を取り出して説明を始める。

 

「地下1階は広いスペースのお部屋。

トレーニングルームにもできるし、映画鑑賞会もできます。

ちなみに大浴場もありますから、汗を流すのにも困りません。

地下2階は丸々室内プールです。温水も可能ですわ。

地下3階には書庫と倉庫を作っています。

エレベーターも完備していますので、地上8階から地下3階までスムーズに乗り降りできます」

 

トレーニングルームと聞いて父さん、綯奈、華那の3人の目が輝いていた。

今までは山などに行きトレーニングをしていたようなので、家でできるのが嬉しいのだろう。

 

 

 

 

 

食事を終えた後、俺はそのまま椅子に深く腰掛けていた。

 

「あぁ〜……なんか疲れたわ……」

 

「士織、疲れた?」

 

俺の呟きに膝に座るオーフィスが反応する。

小首を傾げているオーフィスの様子に微笑みが漏れるのを感じた。

 

「いや、大丈夫だ。

心配してくれてありがとな、オーフィス」

 

頭を優しく撫でてオーフィスを愛でる。

 

「んん……」

 

幸せそうな表情を浮かべるオーフィス。

俺に擦り寄ってくるその姿が可愛く、癒される。

 

「……しーおーりーくーん?」

 

そんな時、隣に座っていた祐奈の声がかかる。

隣を見てみれば頬をぱんぱんに膨らませた祐奈の姿。

 

「オーフィスちゃんばっかりじゃなくて僕にも構って欲しいな……」

 

そういう祐奈の瞳は潤んでおり、小動物的な可愛さを感じた。

俺は微笑みながらオーフィスを撫でる手とは別の手で祐奈の頭を優しく撫でる。

 

「ごめんな祐奈」

 

「……これからはもっと構ってくれないと許さないよ……?

僕は士織くんの彼女なんだから!」

 

「あぁ……わかってる」

 

祐奈の美しい金髪に手を通し、頬を撫でる。

くすぐったそうに目を細める祐奈の姿がこれまた愛しくて抱きしめてしまいそうだ。

……家族もいることだし実行はしないが。

 

「後で買い物にでも行くか」

 

「買い物?

何か買わないといけないの?」

 

「オーフィスの私物が全く無いからな。

ベッドだったりはリアス先輩……というかサーゼクスが揃えてくれたみたいなんだが、服がないんだよ」

 

オーフィスに視線を落としてそういう。

今のオーフィスは俺のジャージをぶかぶかの状態で着ているというより巻いているだけなのだ。

 

「あ〜……やっぱり洋服ないんだね……」

 

祐奈もオーフィスの姿に薄々感じていたのか苦笑いを浮かべながらそういう。

 

「???」

 

祐奈の視線に首を傾げるオーフィス。

彼女にとって服というものはあってもなくてもいいという認識らしい。

 

「……うん。

そうだね、オーフィスちゃんの洋服を買いに行こう!」

 

「なら、取り敢えず着替えて玄関に集合だな」

 

「わかったよ!

なるべく早く来るから待っててね?」

 

「急がなくていいぞ?」

 

俺の言葉を聞いた祐奈は慌てた様子で自室に向けて走って行った。

 

「俺たちも準備しないとな」

 

オーフィスの頭を優しくぽんぽん、と叩いて肩車をすると、俺も自室に向かって歩き出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編の方は如何でしたでしょうか?
楽しんでいただけたのなら幸いです♪


さてさて……春休みも終わり新たな出会いとお別れの季節ですが……私もとても慕っていた先生が他の学校に行ってしまうので残念です……。

残りの1年間をまた新たにくる先生と思い出を作れればイイなぁと思っているところなのです♪


それでは今回はここまで!
また次回お会いしましょう♪


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72話

皆さんこんばんはっ!(>_<)
遅くなってすみません……部活が少し忙しくて更新できませんでした……(苦笑)


今回は短いですけど、早速本編の方をどうぞ♪(*´ω`*)


どうも、兵藤士織だ。

 

 

 

着替え終わった俺、祐奈、オーフィスの3人は、先に言ったようにオーフィスの為の買い物をするためにショッピングモールを訪れていた。

 

「さて……まずは何を何処で買うかな……」

 

俺はオーフィスを肩車したまま辺りを見回して言う。

ちなみにオーフィスの今の格好だが、ちょうど小猫の服がサイズ的に1番近かったために借りて着ている状態だ。

 

「まずは見てまわろうよ、士織くん」

 

白地に水色の水玉模様のあしらわれたサマーワンピースに身を包んだ祐奈は俺の左手を握りながらニコニコと笑っていた。

 

「それもそうだな……。

急いでるわけでもなし……見て回るのも悪くねぇか!」

 

俺はそう言って、祐奈に握られた手を優しく握り返す。

 

「オーフィス。

何処か興味があるところあるか?

軍資金なら3大勢力のトップたちから使いきれないだろってくらい貰ってるから気にしなくていいぞ」

 

今の自分の使える資金の量に若干の苦笑を隠せずに言った。

 

3大勢力のトップたちから援助という形で俺は資金を貰っている。

サーゼクスも、アザゼルも、ミカエルも、善意でという話だったはずなのだが……3者ともにちゃっかり俺たちへの依頼を3回分対価なしにしてくれないだろうかと頼んでくる辺り3大勢力を引っ張っている者の強かさを感じたのを覚えている。

 

「我、あそこ行きたい」

 

オーフィスは俺に肩車されながら指を指した。俺が指の先を辿っていけば―――――そこにあったのはフードコート。

 

「……美味しそう」

 

じゅるり、と涎を啜るような音が俺の頭上で聞こえてくる。

そんなオーフィスの様子に、隣では祐奈も苦笑い気味だ。

 

「……うちの龍神さまはなんでこんな腹ペコキャラになっちまったかねぇ……」

 

俺自身、身に覚えがないためそういうしかなかった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「―――――うまうま」

 

無表情ながら嬉しそうな雰囲気を振りまくオーフィス。

彼女の目の前にはそれはそれは大量の食べ物が置かれていた。

 

「……す、すごいね……」

 

「……あぁ……こいつは胃袋まで無限なんだろうよ……」

 

俺と祐奈はコーヒーを飲みながら、幸せそうに食べるオーフィスの様子を眺めて休んでいる。

オーフィスは自分の顔ほどはありそうな肉まんを口いっぱいに頬張りながら咀嚼する。

 

「ほらオーフィス。

頬に食べ残しが付いてるぞ」

 

「???」

 

俺の言葉に首を傾げるオーフィス。

その仕草に微笑みながら俺は頬に付いた食べ残しを取り、口に放り込む。

 

「そんなに急いで食べなくていいぞ?

誰も取りゃしねぇよ」

 

オーフィスの頭をぽんぽんと撫でて言った。

 

「なんだか士織くんお父さんみたいだね」

 

そんな俺とオーフィスの様子を見ていた祐奈がクスクスと笑いながらそんなことを言う。

 

「ならお母さんはお前か?祐奈」

 

「なっ……?!」

 

俺からの返答に顔を真っ赤に染めた祐奈。

しかし、その表情は嫌がるというものではなく、満更でもないようなものだ。

 

「も、もう!

からかわないでよ士織くんっ!」

 

「からかってねぇんだけどな」

 

そう言って、コーヒーを一口飲む。

オーフィスもいつの間にか食事を終え、満足気にお腹を撫でていた。

 

「我、満足。美味しかった」

 

「も、もう食べちゃったの……?」

 

祐奈はオーフィスが食事を終えたという事実に目を丸くしている。

それもそうだろう、一瞬目を離した隙にあの大量の食べ物が消えていたのだから。

オーフィスは椅子から降りると何処かにトコトコと歩いていき、何をするわけでもなく戻ってくる。

 

 

 

「―――――消化完了」

 

「早すぎるよっ?!」

 

サムズアップするオーフィスに祐奈は声を上げてツッコム。

そんな2人の様子を何となしに見つめ、俺は頬が緩むのを感じた。

 

「オーフィスもこう言ってることだし、本題の服を買いに行くか」

 

立ち上がりながら呟く。

俺の行動を見たオーフィスは立ち上がりきった俺をよじ登り、肩車の形に落ち着く。

祐奈はそれに対抗するように俺の腕を抱き締めるように密着した。

 

「……行くか」

 

動きにくいがそれを言ったところで変わらないだろう。それに、嫌なわけでもないので俺はこのままゆっくり歩き始めた。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「結構買ったな……」

 

買い物を終えた俺たち3人はのんびりと帰路についていた。

俺の手にはオーフィスのために悩みながら買った服が入った紙袋が複数個さげられている。

 

「服を一式揃えないといけなかったからね。

でもね?士織くん。

女の子の服を揃えるならまだ少ない方だよ?」

 

祐奈はそういうが、どちらかといえば着の身着のままとまでは言わないが適当な服しか着ない俺や、もともとオシャレなどに興味の薄いオーフィスは首を捻り唸る。

 

「今度は士織くんの洋服も買いに行こうね?

今日はオーフィスちゃんの服しか買えなかったから……。

僕がコーディネートしてあげるよ!」

 

腕を胸の前まで上げてガッツポーズをすることでやる気を滲み出させる祐奈。

俺はそんな祐奈の頭を優しく撫でた。

 

「楽しみにしてるぞ?」

 

「うんっ!」

 

えへへ〜と表情をだらしなく緩める祐奈は愛らしく、自分の表情も自然と柔らかくなってしまう。

 

「我も士織の服選ぶ」

 

肩車状態のオーフィスが俺の頭をペチペチと叩きながらそういった。

 

「さんきゅなオーフィス。

……だけど叩くのだけはやめてくれ。普通に痛い」

 

苦笑混じりに言うと、オーフィスは叩くのをやめてくれる。

その代わりに俺の顔をある場所に向けさせた。

 

 

 

 

 

「……たこ焼き屋か?」

 

そこにあったのは『たこ焼き』と書かれた暖簾のかかったお店。

 

「我、アレ食べたい」

 

「……お前本当に食いしん坊だな……」

 

「褒め言葉」

 

顔は見えないが、オーフィスがドヤ顔をしているのが気配でわかる。

俺はふぅ、とため息混じりに言葉を吐き出した。

 

「……みんなの土産に買っていくか」

 

「そうだね。

オーフィスちゃんの希望も叶うし、みんなも喜ぶと思うよ?」

 

隣で祐奈がクスクスと笑う。

俺はそんな祐奈も引き連れて、オーフィスが強請ったたこ焼き屋に足を向けた。

 

 

 

 

 

「―――――すみませーん。

たこ焼きを持ち帰りたいんですけどー」

 

 

 

 

 

―――――ソースの香りを嗅ぎながら、何気ない日常の幸せを感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編の方は如何でしたでしょうか?
楽しんでいただけたのなら幸いです♪


さてさて、最近は地震が多いですね……(苦笑)
私自身、九州に住んでいるのですが……夜中に揺れるのはやめてほしーのですっ!(>_<)
流石に怖いのですよ……(苦笑)
読者の方にも九州に住んでいる方もいると思いますので、どうか、お気をつけくださいっ!!(>_<)

それでは今回はここまで!
また次回お会いしましょう♪


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73話

皆さん遅くなってしまってすみませんっ!!(>_<)
3年生の新学期の忙しさを甘く見ていました……(苦笑)

待っていてくださった皆様にはご迷惑をかけてしまったことをお詫びします……。

今後も更新が遅くなるかもしれませんが、週1更新を目処に頑張りますのでよろしくお願いしますっ!!(>_<)

それでは早速本編の方をどうぞ!


Side 士織

 

「冥界に帰る?」

 

朝食を終え、リラックスモードの俺たちにリアス先輩は言う。

場所は地下の書庫。オカルト研究部に所属するメンバー、堕天使4人娘、そしてオーフィスがその場にはいた。

 

「夏休みだし、故郷へ帰るの。

毎年のことなのよ。

突然で申し訳ないのだけれど、長期旅行の準備をしておいてちょうだいね?」

 

リアス先輩の言葉にその場の全員が頷く。

個々にしていることはあったが、その話だけは静かに聞いていたのだ。

 

 

 

 

 

「―――――俺も冥界に行くぜ」

 

『ッ!?』

 

突然響いた声に俺と、辛うじて一誠の2人以外が驚愕の表情を浮かべる。

声の発生源の方へ視線を向ければ、案の定予想通りの人物―――――アザゼルが書庫の一角から歩んで来ていた。

 

「ど、何処から、入ってきたの?」

 

リアス先輩が目をパチクリさせながらアザゼルに訊く。

 

「うん?

普通に玄関から入ってからここまで来たぜ?」

 

「……気配すら感じませんでした……」

 

背伸びの格好のまま、祐奈はそう呟く。

日頃の鍛錬により力を伸ばした祐奈ですら気づけないところを見るとやはりアザゼルも実力者なのだとわかる。

 

「そりゃまだまだ修行不足だな。

俺は気配を消すわけでもなくただ普通に来ただけだ。

それよりも冥界に帰るんだろう?

なら俺も行くぜ。

なにせ俺はお前たちの『先生』だからな」

 

アザゼルは得意気に言う。

―――――そう、アザゼルは豊富な神器の知識を使って、俺とともにオカルト研究の部員、つまりリアス先輩の眷属を鍛えているのだ。

俺と違ったアプローチをするので、いつもとは違ったきっかけを掴んだ奴も多い。

懐からメモ帳を取り出すと、おもむろに開いて読み上げ始めた。

 

「冥界でのスケジュールは……リアスの里帰りと、現当主に眷属悪魔の紹介、例の新鋭若手悪魔たちの会合にお前達の修行か。

俺は主に修行に付き合うわけだが……。

お前らがグレモリー家にいる間、俺はサーゼクスたちと会合か。……ったく、面倒くさいもんだ……」

 

嘆息するアザゼル。

果てしなく面倒くさいのが伝わってくる表情だ。

神の子を見張る者(グリゴリ)】の総督であるのにも関わらずいい加減な態度なのはどうかとは思うが……そのカリスマ性により部下からの支持は凄いのだという。

それがよくわかるのが、最近家を訪ねてくる堕天使たちだろう。

「秘書にしてください!」、「人間界にいる間、身の回りの世話を!」、「身辺警護は絶対に必要です!」。

訪れる堕天使皆がアザゼルの身を案じているようだ。

ただ、そのすべてを「いいから帰れ。命令だ」という言葉で送り返していた。

 

「ではアザゼル……先生はあちらまでは同行するのね?

行きの予約をこちらでしておいていいかしら?」

 

リアス先輩は呼びにくそうにアザゼルのことを先生と呼びそう尋ねる。

 

「あぁ。よろしく頼む。

悪魔のルートで冥界入りするのは初めてだ。楽しみだぜ。

いつもは当たり前だが堕天使側のルートだからな」

 

カラカラと笑うアザゼル。

そして、思い出したかのように笑いを止めると俺の方を向いて口を開いた。

 

「士織、今回の冥界への里帰りだが、お前も来てもらうぜ?

新鋭若手悪魔の会合の時にお前を紹介するらしい。

早いとこ眷属を見つけておけよ?

レーティングゲームはお前もやらないといけないんだからな」

 

「……やっぱり俺も行かないといけないのか」

 

よりにもよって紹介されるために行かないといけないとは、つくづく気分が乗らない。

 

「しっかり準備しておけよ?

どうせお前も修行するつもりで予定なんか入れてねぇだろ?」

 

アザゼルの言葉に俺は言い返せなくなる。……図星だったからだ。

 

「んじゃぁ、いろいろ頼んどくぜ〜。

俺はこの後ちょっくら飲みに行ってくるからよ」

 

ウキウキした様子でアザゼルは言う。

朝っぱらから酒を飲みに行くダメな大人が目の前にいた。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

―――――旅立ちの日。

 

 

 

俺たちがまず向かったのは最寄りの駅。

今回は堕天使4人娘、オーフィスの姿もあった。

ちなみにオーフィスだが、俺が【封印魔法】、【認識阻害魔法】を全力でかけているため彼女がオーフィスだとバレることはないだろう。

リアス先輩、朱乃先輩は迷いなく駅に設置されているエレベーターの方へ向かっていた。

少し狭いエレベーターに2人が入ると言う。

 

「じゃぁ、まずはイッセーとアーシアと士織が乗ってちょうだい。先に降りるわ」

 

「降りる……?

此処って上にしか行けなかったはずじゃ……」

 

リアス先輩の言葉に怪訝そうな表情を浮かべる一誠。

 

「良いから入ってちょうだい?」

 

苦笑混じりに手招きをするリアス先輩。

俺たちはそれに応じて素直にエレベーターに乗り込む。

 

「慣れている祐奈たちは他の皆もつれて来てちょうだいね?」

 

「わかりました部長」

 

祐奈は微笑んで答える。

それと同時にエレベーターの扉は閉まった。

階層表示はやはり【1】と【2】しかないわけだが、リアス先輩はスカートのポケットからカードらしきものを取り出し、電子パネルに向ける。

すると、ピッという何かしらの電子音が響き、カードに反応した。

 

 

 

 

 

「うぉっ?!」

 

一誠の驚いたような声。

それもそうだろう。

上にしか行かないと思っていたエレベーターが下へと降り始めたのだから。

 

「……なるほど。

所謂悪魔専用の秘密の経路があったのか」

 

「流石は士織ね……。

えぇ。その通りよ。

この駅の地下に秘密の階層があるのよ」

 

「そうなんですか?

……知らなかったなぁ……俺、この町で育ちましたけど気づきませんでした」

 

「それはそうよ。

士織の言う通り悪魔専用のルートだもの。

普通の人間は一生辿り着けないわ。

こんなふうにこの町には悪魔専用の領域が結構隠れているのよ?」

 

クスクスと笑って、リアス先輩は一誠に説明した。

今まで何故か訪れた場所で少々の違和感を感じていたのはおそらくその経路のせいだったのだろう。

 

エレベーターに乗り込み、降りていくこと一分程。ようやくエレベーターは停止した。

開かれた扉をくぐって出た俺の視界に映ったのは―――――だだっ広い人工的な空間。

何処か駅のホームをイメージさせる造りだがなどと考えながら見渡すと、案の定線路を見つける。

俺たちは少し待って全員が揃うのを待つ。

 

 

 

「―――――全員揃ったみたいね。

それじゃぁ、3番ホームまで歩くわよ」

 

リアス先輩と朱乃先輩の先導のもと、俺たちは歩き出す。

 

「……士織」

 

「ん?どうしたんだ?綯奈」

 

いつの間にか俺の隣にやってきていた綯奈。その表情は何処か真剣で、何かを言いたそうだった。

しばしの間無言だったが、綯奈は覚悟を決めたように口を開く。

 

「士織。眷属を持つんだろう?」

 

「まぁな。

サーゼクスからの依頼っつーことだし早めに眷属を作んないとなとは思ってる」

 

「ならば―――――私を眷属にしてみないか?」

 

俺の歩みが止まる。

綯奈の顔を見つめてその言葉を頭の中で反復させた。

まさか綯奈がそんなことを言うとは全く考えていなかった。

 

「……なんでだ?」

 

俺は今怪訝そうな表情を浮かべているだろう。綯奈を正面に見据えて言った。

 

「なに、深い意味は無いさ。

しいて言うのなら……士織といれば楽しそうなことがたくさんありそうな香りがする。

それに強くなれそうだ」

 

にやりと笑う綯奈の姿に俺はクスリと笑ってしまう。

―――――一変して、真面目な表情を向けた。

 

「俺の眷属になるってことは面倒ごとが増えるぞ?

面倒臭がりなお前にそれが耐えられるか?」

 

「ふん、私は実はマメだぞ?」

 

―――――綯奈は笑う。

 

「中途半端は許さない。

最低でも一誠と互角に戦える強さになってもらうぞ?」

 

「望むところだ」

 

―――――綯奈は満足気な表情を浮かべる。

 

「……後の人生を不意にするかもしれないぞ?」

 

「それこそありえないだろう?

士織ならば嫌でも愉快な事を引き連れてきそうだ」

 

―――――綯奈が微笑む。

 

俺は綯奈の即答の数々に言葉をなくす。

そして、バックを乱暴にだが漁ってひとつのモノを掴み出すと、綯奈に向けてそれを放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――【兵士(ポーン)】だ。

よろしく頼むぜ?綯奈」

 

綯奈は俺が放ったモノ―――――【兵士】の駒をキャッチすると、目を丸くしてこちらを見つめてくる。

 

「な、なんで……」

 

「なんで?

お前が俺の眷属になりたいって言ったんだろ?」

 

「そ、それはそうだが……。

……こんなに簡単に決めてしまってもいいのか……?」

 

しおらしい態度で綯奈は言う。

その姿はどうも違和感を覚える。

元は男だったくせに、最近では精神が身体に引っ張られているようだ。

 

「良いんだよ。

それに、お前にならその駒を預けても良さそうだ」

 

俺はそれだけ告げると随分と置いていかれてしまったリアス先輩たちの後を追っていった。

 

 

 

 

 

「―――――ありがとう、士織」

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

リアス先輩たちに追いついた俺の前にあったのは列車らしきもの。

『らしき』と俺が言ったのは、普通にある列車よりもフォルムが独特だったからである。

鋭角で、悪魔を表す紋様がこれでもかと刻まれている。その中には、グレモリーの、そしてサーゼクスの紋様もあった。

 

「グレモリー家所有の列車よ」

 

俺の考えたことを先読みしたかのようにリアス先輩がいう。

 

「さぁ、乗りましょう?」

 

リアス先輩の言葉に合わせるかのように、列車のドアが自動で開かれた。初めに乗り込んだリアス先輩に続いて俺たちも列車の中へ足を踏み入れる。

 

 

 

―――――冥界への旅路はどうやら列車のようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 




本編の方は如何でしたでしょうか?
楽しんでいただけたのなら幸いです♪


さてさて、今回では士織の眷属が1人増えましたねっ!(>_<)
これから眷属を選んでいくのが楽しみです♪(*´ω`*)


近々、今はシークレットな今後のご報告もあるのでお楽しみに♪


それでは今回はここまで!
また次回お会いしましょう♪


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74話

皆さんお久しぶりなのです♪(*´ω`*)
ゴールデンウィークはとにかく部活ばかりで疲れてしまった夜叉猫なのです(苦笑)

更新が遅くなってしまってすみませんっ!!(>_<)

それでは早速本編の方をどうぞ♪


Side 士織

 

―――――リィィィィィィイイイィィィン。

 

発車の汽笛が鳴らされ、俺たちを乗せた列車は動き出す。

座っているのは列車の中央。リアス先輩は列車の1番前の車両にいるのだが、何でも眷属などは中央から後ろの車両に乗らないといけないらしい。

俺としてはどうでもいいのだが、細かいしきたりは面倒である。

 

「あ〜!

綯奈、士織から【悪魔の駒(イーヴィル・ピース)】貰ったんすか?!」

 

俺の対面席に座っている美憧がその隣に座っている綯奈が持つ【悪魔の駒】を見て声を上げた。

 

「ふっ。

どうだ?羨ましいだろう?」

 

見せびらかすように綯奈は【兵士(ポーン)】の駒を手に置き、指先で弄んでいる。

 

「士織くん、僕にはくれないの?」

 

隣に座っていた祐奈は俺の顔を覗き込みながら言う。

俺はそんな祐奈の頭を優しく撫でて口を開いた。

 

「既にリアス先輩の眷属なんだから横取りするのは悪いだろ?」

 

「……それもそうだけど……」

 

「そう拗ねんなって。

別に眷属にならなくてもずっと一緒だろ?」

 

「……ん……」

 

手を少し滑らせて、祐奈の頬を撫でてやれば気持ちよさそうな声を出す。まるで猫のようでこのままずっと愛でてられそうだ。

 

「士織っ!

ウチも【悪魔の駒】欲しいっす!

綯奈が貰えたならウチもイイっすよね?!」

 

体を乗り出してそう言った美憧。

俺はその行動に目を丸くしてしまう。

 

「こらこら美憧。

士織を困らせるな。

士織の眷属になりたいならそれなりの―――――」

 

「あぁ、良いぞ。

【兵士】の駒で良いならだけどな」

 

「モチロンっす!!

士織の眷属になれるなら何でもイイっすよ!!」

 

キラキラとした瞳で嬉しそうに言う美憧。

それと対照的に、綯奈は何故?という表情を浮かべていた。

 

「な、何故だ?!

私の時はもっとシリアスだっただろう!?」

 

少々の涙を目尻に浮かべて綯奈は勢いよく立ち上がる。

 

「お前は日頃の自分のことを考えてみろ。

飽き性で面倒くさがり屋のお前にすんなり駒を渡せるわけがないだろ?」

 

「う、うぐぐ……そ、それはそうだが……」

 

「士織!士織!

そんなことはどうでもいいっすからウチにも早く駒をちょーだいっす!」

 

ニコニコとした表情で美憧は俺の手を掴む。

俺はバックを手に取ると、中を漁って駒を1つ取り出し、美憧に差し出した。

 

「美憧、綯奈にも言ったが俺の眷属になるのなら中途半端は許さない。

最低でも一誠と互角に戦えるくらいにはなってもらうからな?」

 

「望むところっす!」

 

美憧は気合い十分にそう言うと、【兵士】の駒を受け取った。

 

「これでウチも士織の眷属っす♪

綯奈だけ抜けがけはさせないっすよ?」

 

「……ふん!

抜けがけなんてつもりは全くなかったさ」

 

「ホントっすかねぇ〜??」

 

それからは綯奈と美憧の2人でこれからのことを話し始め、2人の世界に入っていっていた。

 

 

 

 

 

―――――閑話休題。

 

 

 

 

 

「そういえばどれくらいで着くんですか?」

 

俺とは別の席に座っていた一誠が言う。

 

「一時間程で着きますわ。

この列車は次元の壁を正式な方法で通過して冥界にたどり着けるようになってますから」

 

その問いかけに答えたのは朱乃先輩。

一誠の対面席に座っているため、朱乃先輩も俺とは別の席である。

 

「俺、てっきり魔法陣での転移で冥界入だとおもってたんですけど……」

 

「通常はそれでもいいのですけれど、イッセーくんたち新眷属の悪魔は正式なルートで1度は入国しないと違法入国として罰せられてしまうのです。

だから今回はこうやって正式なルートでいっているのですわ」

 

「へぇ……。

そういうことだったんですか」

 

色々と面倒な決まりがあるようで俺はついついあくびがでてしまう。

 

 

 

 

 

「―――――みんなリラックス出来てるみたいね」

 

おそらく1番前の車両から来たのであろうリアス先輩の声が聞こえてくる。

そちらの方へ視線を向けるとリアス先輩と初老の男性の姿が見えた。

 

「ホッホッホッ。

リアス姫の眷属の皆さんは良い者ばかりのようですな」

 

初老の男性は楽しそうな笑い声を上げてこちらを見てくる。

 

「初めまして、姫の新たな眷属悪魔の皆さん。

私はこのグレモリー専用車両の車掌をしているレイナルドと申します。

―――――以後、お見知りおきを」

 

丁寧な挨拶と一礼。

俺たちはそれに返すように立ち上がると一礼を返した。

 

「こちらこそ初めまして。

リアス・グレモリー眷属、【兵士】の兵藤一誠です。

どうぞよろしくお願いします」

 

「アーシア・アルジェントです!

僧侶(ビショップ)】です!

よろしくお願いします!」

 

「ゼノヴィアです。

騎士(ナイト)】、今後もどうぞよろしくお願いします」

 

「兵藤士織。

リアス先輩とは……協力関係といったところだな。

一応【帝王(カイザー)】の駒を持つ中立チームのトップだ」

 

ひとまず俺たち4人だけがこの場では自己紹介をしておく。

こういった挨拶を終えると、車掌のレイナルドは何やら特殊な機器を取り出し、モニターらしきもので一誠たちを捉え始めた。

 

「え、えっと……?」

 

一誠、アーシア、ゼノヴィアは困ったような表情を浮かべていたが、それに気がついたレイナルドが口を開く。

 

「これはあなた方を確認、照合する悪魔世界の機械です。

この列車は正式に冥界へ入国する重要かつ厳重を要する移動手段です。

もし、偽りがあった場合、大変なことになりますもので。

今のご時世、列車を占拠されたら大変なのです」

 

「あなたたちの登録は駒を与え、転生した時冥界にデータとして記載されたわ。

だからそれをその機械で照合させるのよ。

問題ないわ。みんな本物だから」

 

リアス先輩は微笑みながら告げる。

一誠たちが終わると次は俺たちの方へも向けられて、簡単にスキャンされていった。

 

「姫、これで照合と同時にニューフェイスの皆さんの入国手続きも済みました。

あとは到着予定の駅までごゆるりとお休みできますぞ。

寝台車両やお食事を取れるところもありますので目的地までご利用ください」

 

レイナルドはニッコリと微笑む。

入国手続き自体は簡単なものだったため、俺としては楽でよかったとしか言いようがない。

 

「ありがとう、レイナルド。

あとは……アザゼルね」

 

リアス先輩はアザゼルがいる席の方へ視線を向けるが―――――アザゼルはぐっすりと眠りこけていた。

 

「……よくもまぁ、ついこの間まで敵対していた種族の移動列車で眠れるものね……」

 

リアス先輩は呆れ顔ではあったが、少し笑っていた。

 

「ホッホッホッ。

堕天使の総督さまは平和ですな」

 

レイナルドも愉快そうに笑っている。

アザゼルは寝たままであったが照合も済ませ、全員無事入国手続きを済ませたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




本編の方は如何でしたでしょうか?
楽しんでいただけたのなら幸いです♪


今回はかなり短かったですがお許しを……(苦笑)
次回はもう少し長くなるように頑張りますっ!!(>_<)


それでは今回はここまで!
また次回お会いしましょう♪


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75話

皆さんお待たせしてしまってすみませんっ!!(>_<)

度々更新が遅くなってしまって本当に申し訳ありません……( ´・ω・`)

3年生の忙しさを侮っていました……(苦笑)


何はともあれ!
本編の方を早速どうぞ♪(*´ω`*)


Side 士織

 

俺たちの乗る列車は何事もなく進んでいく。

窓の外には紫色の空が広がり、広大な土地が広がっていた。

しばらく前に次元の壁を突破するというアナウンスも入り、一誠たちは興味深そうに窓の外へ視線を向けている。

 

 

 

『―――――間もなくグレモリー本邸前。間もなくグレモリー本邸前。

皆さま、長時間のご乗車お疲れ様でした』

 

「着いたか……」

 

俺はアナウンスを聞き終えると背伸びをする。

列車はほとんど揺れを感じさせないほどに停止し、俺たちは降車しようと立ち上がった。

 

「あれ?先生は降りないんですか?」

 

一誠が未だに座ったままのアザゼルに向けて言う。

 

「あぁ、俺はこのままグレモリー領を抜けて、魔王領の方への行く予定だ。

サーゼクスたちと会談があるからな。

……所謂『お呼ばれ』だ。

終わったら俺もグレモリーの本邸に向かうから先に行って挨拶でも済ませてこい」

 

アザゼルは手を振ってそう説明すると席に座り直し、欠伸を噛み殺していた。

 

「俺も行くべきか?」

 

「いや、士織もあいつらと一緒に行ってこい。

何、まだ面倒なことはしなくていいんだよ」

 

からからと笑うアザゼルは俺を急かすように手を振る。

 

「……そうか。

じゃぁ、また後で」

 

それだけ言い残すと改めてアザゼルを除いたメンバーで駅のホームに降りた。

―――――瞬間。

 

 

 

 

 

『リアスお嬢さま、おかえりなさいませっ!!』

 

怒号のような声、そして花火の音、銃の空砲、楽隊の音楽といった様々な音が響く。

突然のことに一誠たちは顔を引き攣らせている。祐奈たちにとってはなれたことのようだが、初見の者にとっては驚くしかない状況だ。

 

「ヒィィィィ……。

ひ、人が、いっぱいぃ……」

 

ギャスパーは瞳に涙を溜めて一誠の腕にしがみついていた。

 

『リアスお嬢さま、おかえりなさいませ』

 

執事、メイドといった人たちが改めてリアス先輩に向けて頭を下げている。

 

「ありがとう、皆。

ただいま。今帰ってきたわ」

 

満面の笑みを浮かべて、リアス先輩は言う。

そこへ見知った顔の女性―――――銀髪のメイド、グレイフィアが1歩出てきた。

 

「お嬢さま、おかえりなさいませ。お早いお着きでしたね。道中ご無事で何よりです。

そして、兵藤士織さま、ようこそおいでくださりました。長旅ご苦労さまです。

さぁ、皆さま馬車へお乗りください。

本邸までコレで移動しますので」

 

グレイフィアに誘導されて、豪華絢爛そうな馬車のもとへと向かう。

 

「私は眷族たちと行くわ。

イッセーやアーシアは初めてで不安そうだから」

 

「わかりました。

何台かご用意いたしましたので、皆さまもご自由にお乗りください」

 

俺たちはその言葉に頷くと軽く話し合いをして馬車に乗り込んで行く。

俺が乗った馬車にはオーフィス、綯奈、美憧、祐奈が同乗していた。

全員が乗り込むと、馬車は蹄の音を鳴らしながら進み出す。

外の風景をちらりと見ると、舗装された道と綺麗に剪定された木々。

なんとなしに道の先を見れば、巨大な建造物が視界に飛び込んできた。

 

「……うわ……でか……」

 

「あぁ、あれは部長のお家のひとつだよ士織くん」

 

「ひとつってことはまだ他にも?」

 

「えっと……まぁね?」

 

苦笑混じりの表情で祐奈が答える。

 

「流石だな……」

 

魔王を排出した家ともなるとそれ相応の位にいるのだろう。

ふと、外を見れば美しい花々が咲き誇り、見事な造形の噴水、その周りを色彩様々な鳥が飛び回っていた。

 

「……着いたみたいだな」

 

馬車の揺れも止まり、ドアも開かれる。

執事らしき者が俺たちに会釈すると外へと促していた。

俺たちはそれに従い馬車から降りていく。

両脇にメイドと執事が整列しており、道を作っていた。赤いカーペットが巨大な建造物の方へと伸びており、城門が鈍い音をたてて開かれていく。

なんとも盛大な出迎えだ……。

 

「お嬢さま、眷族の皆さま、兵藤士織さま、そしてお連れの皆さま。

どうぞ、お進みくださいませ」

 

グレイフィアが会釈して、俺たちを促してくれる。

 

「さぁ、行くわよ」

 

リアス先輩がカーペットの上を歩きだそうとしたその時だった。

綺麗に整列したメイドの列から小さな人影が飛び出し、リアス先輩に抱きついたのだ。

 

「リアスお姉さま!おかえりなさい!」

 

揺れるのはサーゼクスを彷彿とさせる紅髪。まだ幼い少年だった。

 

「―――――ミリキャス!ただいま。

大きくなったわね」

 

リアス先輩もその少年を愛おしそうに抱きしめていた。

何処と無く、リアス先輩にサーゼクスと似た気配を感じる。

 

「えっと……リアス部長。

この子は一体……?」

 

一誠は目を丸くしながらその様子を眺め、口を開いた。

 

「この子はミリキャス。ミリキャス・グレモリー。

お兄さま―――――サーゼクス・ルシファーさまの子供なの。

つまり……私の甥ということになるわね」

 

その説明に俺は納得する。

あの紅髪はサーゼクス譲りということだろう。

 

「ほら、ミリキャス。挨拶をして?

この子は私の新しい眷族なの。

それにまだあなたを知らない子たちがいるわ」

 

「はい。

ミリキャス・グレモリーです。初めまして」

 

丁寧な物言い、緊張もしていないところを見るとこれくらいの場面は慣れているのだろう。

 

「どうも初めまして。

リアス・グレモリーさまの眷族、【兵士(ポーン)】の兵藤一誠です」

 

会釈を返した一誠は少年―――――ミリキャスに人懐っこい笑みを向けた。

 

「魔王の名は継承した本人のみしか名乗れないから、この子はお兄さまの子でも『グレモリー』なの。

私の次の当主候補でもあるのよ?」

 

ミリキャスの頭を優しく撫でながらリアス先輩は言う。

 

「さぁ、屋敷へ入りましょう?」

 

リアス先輩はミリキャスと手を繋いで門の方へ進み出す。俺たちもそれについて行くように歩みだした。

巨大な城門を潜り、中を進む。城門の奥にはまだいくつかの門があり、次々と開門されて行き、そこを潜っていく。

ついに玄関のホールらしきところへ辿り着いた。

玄関のホールにしては広く、そこは舞踏会でも開かれるのではないかと言わんばかりの絢爛さである。

 

「お嬢さま、早速皆さまをお部屋へお通ししたいと思うのですが」

 

グレイフィアが手を上げると、俺たち1人につき1人のメイドが傍にやって来る。

……俺の所だけ3人いるのはどういうことだろうか?

 

「そうね、私もお父さまとお母さまに帰国の挨拶をしないといけないし」

 

「旦那さまは現在外出中です。

夕刻までお戻りにならないと聞いております。

夕餉の席で皆さまと会食をしながら、お顔合わせされたいとおっしゃっておりました」

 

「そう、わかったわ、グレイフィア。

それじゃぁ、皆にはそれぞれ自分の部屋で休んでもらおうかしら。

荷物は既に運んでいるわね?」

 

「はい。

お部屋の方は今すぐにでもお使いになれるよう準備しております」

 

グレイフィアの言葉に俺の周りにいた美憧や綯奈などからは息を吐くのがわかった。

どうやらここまでの道のりに緊張して疲れていたようだ。

見れば一誠の近くでもギャスパーやアーシアが疲れているようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――あら、リアス。帰ってきてたのね」

 

その時、2階の方から女性の声が聞こえてくる。

前方の階段から下りてきたのはドレスを身に纏った女性、と言うよりは少女。

リアス先輩よりも少し歳が上だろうという見た目であった。

 

―――――亜麻色の髪に少々目つきがキツめの女性。

 

それは何処かで見覚えのある姿。

 

 

 

 

 

 

「お母さま。ただ今帰りました」

 

そう、以前嫁自慢という話の時に見えた、グレモリー卿の嫁―――――つまりリアス先輩のお母さんである。確か名前をヴェネラナ・グレモリーだったはずだ。

 

「お母さん……家の母さんとどっこいどっこいだな……。

まるでリアス部長のお姉さんみたいだ……」

 

「あら、そんなに若く見えるかしら?

嬉しいことをおっしゃいますのね」

 

一誠の呟きにヴェネラナ・グレモリーは頬に手をやり微笑む。

 

「悪魔は歳を経れば魔力で見た目を自由に出来るのよ。

お母さまはいつも今の私くらいの年格好な姿で過ごされているの」

 

「便利なんですね……」

 

一誠は顎に手を当てて呟いた。

確かにその一言につきるだろう。

ヴェネラナ・グレモリーはクスクスと小さく笑うと、こちらを見据えて口を開く。

 

「初めまして、私はリアスの母、ヴェネラナ・グレモリーですわ。

皆さん此処を我が家だと思ってゆったりしていってくださいまし?」

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

―――――玄関ホールから各々の部屋へ向かって数時間。

 

現在俺たちはダイニングルームにて、夕食の席についていた。

席についているのは今回、冥界に来たメンバー全員と、リアス先輩の母親であるヴェネラナ・グレモリー、父親であるグレモリー卿―――――ジオティクス・グレモリー、そしてミリキャスである。

 

「遠慮せずに楽しんでくれたまえ」

 

どう考えても普通なら食べ切ることは不可能な程の料理が長大なテーブルに並べられ、ジオティクス・グレモリーの言葉で会食が始まった。

こういう場の食べ方は本の知識でしか持っていないが、一応様にはなっているはず。

俺が教えた一誠もなんだかんだ綺麗に食べれているのだから。

 

―――――ふと、視線を対面の席に向けてみると、表情を曇らせた小猫の姿があった。

料理にも全く手をつけず、様子がおかしい。

小猫と目が合ったため、少し微笑んでみるが―――――無表情のまま視線を外されてしまう。

 

「うむ。

本日遠方から足を運んでくれた諸君、此処を我が家と思ってくれるといい。

冥界に来たばかりで勝手がわからないだろう。

欲しい物があったら、遠慮なくメイドや執事に言ってくれたまえ。直ぐに用意させよう」

 

朗らかに言うジオティクス・グレモリー。

 

「ところで兵藤一誠くん」

 

「はい?なんでしょうか?」

 

ジオティクス・グレモリーは一誠に顔を向けると口を開く。

 

「ご両親はお変わりないかな?」

 

「えぇ。

2人とも元気すぎるほどですよ。

リアス部長の故郷に行ってくると言ったらお土産を期待するほどに。

あんなに家を立派な物にしていただいた上でそんなことを言うとはどうもわがままな親で……」

 

一誠は冗談も交えつつ、当たり障りのない会話をしていた。

 

「ふむ、お土産か……なるほど」

 

ジオティクス・グレモリーは手元にある鈴を1度軽く鳴らす。

すると直ぐに執事らしき人が傍に寄っていく。

何かお土産に料理でも持たせるつもりなのだろうか?

 

「旦那さま、御用でしょうか?」

 

 

 

 

 

「―――――うむ。

兵藤さん御夫婦宛に城をひとつ用意しろ」

 

訂正しよう。

―――――スケールが違いすぎる。

俺はジオティクス・グレモリーの言葉に唖然とした表情を浮かべてしまう。

見れば、一誠も目を点にしていた。

 

「はっ。

西洋式でしょうか?それとも和式でしょうか?」

 

「悩むところだな……。

いっそのこと両方でも良いのでは……」

 

「ちょ、ちょっと待ってください!

それはいくら何でもお土産の中に入らないかと思うんですが……」

 

一誠は焦り気味の態度でそういう。

確かにそれも仕方が無い会話だったと思うが。

 

「あなた、日本は領土が狭いのですから、城なんてものを渡しても困ってしまわれますわ」

 

「なんと。確かにそうだったな。

ふーむ……城が駄目ならば何が良いのだろうか……」

 

「お父さま。

あまりそういう気遣いは逆にあちらへ迷惑をかけますわ。

イッセーと士織のご両親は物欲の強い方ではありませんし」

 

リアス先輩のフォローも入り、お土産が城になることはほとんどなくなっただろう。

ジオティクス・グレモリーは「なるほど」と深く頷いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――兵藤士織くん」

 

お土産の話も終わり、ゆっくりと食事を進めていると、今度は俺に向かってジオティクス・グレモリーは口を開いた。

 

「何か?」

 

「いや何、ちょっとした質問をね……」

 

真剣な表情を浮かべたジオティクス・グレモリー。

この場で話すべき重要な話かと意識をそちらへと移す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――リアスとライザーくんの関係に進展はないか知らないかね?」

 

「……は……?」

 

一瞬、何を言われたのかがわからなかった。

 

「リアスは話したがらなくてね。

それならば近しい者に話を聞くのが良いと思って聞かせてもらったんだ」

 

「あら、それは私も気になるわ。

士織くん……だったわね?

私にも聞かせてちょうだい?」

 

気がつけばヴェネラナ・グレモリーもこちらを見ていて、興味深そうな表情を浮かべていた。

 

「お父さま!お母さま!

そ、そんな話を聞かないでくださいっ!」

 

顔を真っ赤に染めて、リアス先輩が立ち上がる。

 

「あら、少しくらいいいじゃないの。

あなたが話してくれないから私もジオも気になっているのよ?」

 

「む、娘の恋路に興味津々にならないでください!」

 

「娘の恋路だから気になるのよ?」

 

クスクスと笑うヴェネラナ・グレモリー。ジオティクス・グレモリーもその様子を微笑ましそうに見ていた。

 

「それで、どうなのかしら?士織くん」

 

「あ〜……リアス先輩が話してくれないならライザーに直接聞いてみたらどうです?」

 

「まぁ!それはいい考えね。

2人っきりでオハナシしましょう」

 

口に手を当てて今気がついたというような反応を見せるヴェネラナ・グレモリー。

 

「だ、駄目ですからね?!お母さま!」

 

「あらあら?何故かしら?」

 

「そ、それは……」

 

リアス先輩はヴェネラナ・グレモリーの姿をしっかりと見直してから、頭を振った。

 

「と、とにかく!

ライザーと2人っきりで話すなんて駄目ですからね!」

 

「ふふふ……変なリアスね」

 

可笑しそうに笑うヴェネラナ・グレモリーだったが、その表情にはリアス先輩をからかっているような色が見えた。

 

 

 

 

 

―――――その後も、賑やかな食事が続いていった。

 

 

 

 

 

 

 




本編の方は如何でしたでしょうか?
楽しんでいただけたのなら幸いです♪


さてさて、最近ではどんどん暑くなってきていますが、皆さん体調は崩していませんでしょうか?
水分補給などは大切にしましょう!(>_<)
私も部活中の水分補給は怠らないように気をつけているのですよ……。

それでは今回はここまで!
また次回お会いしましょう♪

次回はもう少し早い更新を心がけますっ!(>_<)


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76話

な、なんとか1週間以内に更新ですっ!!(>_<)
いつもは遅いので今回は間に合ってホットしています……(苦笑)

それでは早速本編の方をどうぞ♪(*´ω`*)


どうも、兵藤士織だ。

 

 

 

冥界にあるリアス先輩の自宅に着いた次の日。

俺たちは早速別の場所へと向かっていた。

冥界へとやってくる時に使った列車に再び乗車し、3時間ほどの道のりを終えた先にあったのは―――――かなり大きな都市。

近代的なデザインを見せるその風景は此処がそれだけ発展しているのを理解するのには十分だ。

 

「此処は魔王領の都市ルシファード。

旧ルシファーさまがおられたと言われる冥界の旧都市なんだよ?」

 

祐奈は俺の隣を位置取り、説明するような口調で言った。

 

「このまま地下鉄に乗り換えるよ?

表から行くと騒ぎになっちゃうから……」

 

苦笑いを浮かべる祐奈。

周りの一誠たち新眷属以外こリアス先輩の眷属たちはその言葉に頷いていた。

 

 

 

 

 

「―――――キャーッ!

リアス姫さまぁぁぁぁあっ!!」

 

突然、黄色い歓声が耳を襲ってくる。

見ればホームにいた悪魔たちがリアス先輩を見て憧れの眼差しを向けていた。

 

「部長は魔王の妹。

しかも美しいのですから、下級、中級悪魔から憧れの的なのですよ?」

 

微笑みを浮かべる朱乃先輩が言う。

なるほど、確かに容姿端麗ならば人気があってもおかしくはないだろう。

 

「ヒィィィィィィ……。

あ、あくまがいっぱいぃ……」

 

ギャスパーは一誠の背中に張り付いて悪魔の多さと声に反応して慌てふためいていた。

 

「困ったわね……。

これ以上騒ぎになる前に急いで列車に乗りましょう?

専用の列車は用意してあるのよね?」

 

リアス先輩は連れ添いの黒服男性の1人に聞く。

どうやら俺たちへのボディガードらしいのだが……正直道案内程度にしかならないと俺は思っている。

 

「はい。ついてきてください」

 

こうして俺たちはボディガードに連れられて地下鉄の列車へと移動したのだった。

 

「リアスさまぁぁぁぁぁあっ!!」

 

女性だけではなく男性にもやはり人気らしく、リアス先輩は苦笑しながらも男性の群れに手を振っていた。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

地下鉄からさらに乗り換え、5分程。

着いたのは―――――都市で1番大きい建物の地下にあるというホームだった。

若手悪魔、旧家、上級悪魔のお偉いさん方が集まるという会場がこの建物にあるのだという。

俺たちはリアス先輩を先頭に地下からエレベーターに乗り込む。随分と広いエレベーターだ。

 

 

 

「―――――皆、もう1度確認するわ。

何があっても平常心、何を言われても手を出さない。

常に冷静でいつもの自分をイメージしなさい?

―――――上にいるのは将来の私たちのライバルたちよ。無様な姿は見せられない」

 

気合の入ったリアス先輩の言葉に眷属たちは表情を引き締めていた。

 

「士織からは何かないのか?」

 

「そうっすよ!

ウチたちに言うことはないんすか?」

 

綯奈、美憧の2人は俺の方を向いて期待の眼差しを向けてくる。

俺は一瞬苦笑いを浮かべ、口を開いた。

 

「―――――肩の力を抜け。

自然体で、リラックスしろ。

堂々とした態度で背を伸ばせ。

……それさえできれば恥ずかしくない。

後はその胸に挫けることのないプライドを持て。

―――――それでお前たちは『最強』だ」

 

言い終えて、軽く頭を撫でてやる。

そして、エレベーターが停止して扉が開いた。

 

「さて、行くか」

 

俺はそう呟いて、エレベーターから足を踏み出した。もちろん、リアス先輩たちも一緒にだ。

 

 

 

 

 

「―――――ようこそ、グレモリーさま。そして兵藤さま。

こちらへどうぞ」

 

広いホール。そこには使用人らしき者が居て、俺たちに会釈をしてきた。

使用人の後に続く俺たち。

通路を進んで行くと、一角に複数の人影が―――――。

 

 

 

 

 

「―――――サイラオーグ!」

 

リアス先輩はその人影の1人を知っている様子だった。

あちらもリアス先輩を確認すると近づいてくる。

大体俺たちと同い年程の男性。

黒髪の短髪で野性的なイメージを持たせる。活動的な格好をしていて、露出されている肉体は引き締まり、筋肉質だ。

そして、感じるオーラの質からかなりの強者というのが分かる。

 

「久しぶりだな、リアス」

 

リアス先輩とにこやかに握手をかわすサイラオーグと呼ばれた男性。

 

「えぇ、懐かしいわ。

変わりないようで何よりよ。

初めての者もいるわね……。

彼はサイラオーグ。私の母方の従兄弟でもあるのよ?」

 

「俺はサイラオーグ・バアル。

バアル家の次期当主だ」

 

堂々としたその姿に落ち着いた様子はまさしく強者のそれ。

彼が若手悪魔だというのならその強さは群を抜いてるだろう。

 

「それで、こんな通路で何をしていたの?」

 

「……あぁ、くだらんから出てきただけだ」

 

「……くだらない?他のメンバーも来ているの?」

 

「『アガレス』も『アスタロト』も既に来ている。

挙句『ゼファードル』だ。

着いた早々にゼファードルとアガレスがやり合い始めてな」

 

心底嫌そうな表情を浮かべる男性―――――サイラオーグ。

やり合い始めたということはそういうことだろう。

俺が溜息を吐いていると建物が揺れ、巨大な破砕音が響いた。

リアス先輩はそれが気になったのか、躊躇いもなく音のした方向―――――大きな扉へ向かった。

 

「まったく……だから開始前の会合などいらないと進言したんだ……」

 

サイラオーグは嘆息しながらも自分の眷属らしき者たちとリアス先輩の後に続く。

俺もその後を追いかけるように足を進めた。

 

 

 

開かれた大きな扉の向こうには―――――破壊され尽くした大広間。

テーブルから装飾品にいたる全てが見るも無残に破壊されている。

その中央には両陣営に分かれた悪魔たちが睨み合っていた。

その手には武器が握られ一触即発の様相だ。

一方は邪悪そうな格好の魔物や悪魔たち。

もう一方は比較的普通そうな悪魔たち。

ただ、両方共に殺意の混じったオーラを放っていた。

まだ、リアス先輩たちよりも少し上にいる。

俺の目測だがそう感じられた。

 

 

 

 

 

「ゼファードル、こんなところで戦いを始めても仕方なくてはなくて?馬鹿なの?死ぬの?死にたいの?殺しても上に咎められないかしら?」

 

睨み合う二陣営の片方。比較的普通そうな悪魔たちの1人、女性の悪魔が息継ぎも無しにまくし立てるように言う。

 

「ハッ!言ってろよクソアマッ!

俺がせっかくそっちの個室で1発仕込んでやるって言ってやってんのによ!

アガレスのお姉さんはガードが堅くて嫌だね!

へっ、だから未だに男も寄ってこずに処女やってんだろ?!

……ったく、魔王眷属の女共はどいつもこいつも処女臭くて敵わねぇわ!

だからこそこの俺が開通式をしてやろうって言ってんのによぉ!」

 

えらく下品な言動の男性。

顔に魔術的なタトゥーを入れており、緑色の髪を逆立てている姿は何処かチンピラじみていた。

 

「此処は時間が来るまで待機する広間だったんだがな……。

もっと言うなら、若手が集まって軽い挨拶を交わすところでもあった。

ところが若手同士で挨拶したらこの始末だ……。

血の気の多い連中を集めるんだ、問題のひとつも出てくる。

それも良しとする旧家や上級悪魔の古き悪魔たちはどうしようもない。

―――――無駄なモノに関わりたくはなかったのだが……流石に目に余る」

 

首をコキコキッ、と鳴らすとサイラオーグは睨み合う二陣営の方へと歩を進めた。

 

「一誠」

 

「……何だよ士織」

 

「アイツを見ておけ。

少なくとも―――――今のお前じゃ敵わない」

 

「……んなことわかってるよ」

 

俺の言葉を最後に俺たちは黙り込んでサイラオーグの姿を目で追った。

 

「アガレス家の姫シーグヴァイラ、グラシャボス家の凶児ゼファードル。

これ以上やるなら俺が相手をしよう。

いいか?いきなりだがこれは『最後通告』だ。

次の言動次第で俺は拳を容赦なく放つ」

 

サイラオーグの身体からはその身に収まりきらないオーラを感じる。

チンピラ悪魔はサイラオーグの言動が気に入らなかったのか、青筋を立てて、怒りの色を濃くする。

 

「バアル家の無能がチョーシのって―――――」

 

しかし、その言葉は最後まで紡がれることはなかった。

響いたのは激しい打撃音。

チンピラ悪魔はサイラオーグの一撃で広間の壁に叩きつけられたのだ。

壁が崩れるのと同時にチンピラ悪魔も落ちる。

既に気を失っているようで、立ち上がる気配はない。

 

 

 

 

 

「―――――言ったはずだ。『最後通告』だと」

 

リアス先輩たちよりも上にいるであろう若手悪魔を一撃……。

俺がふと、一誠の方を見ればその表情は獰猛な笑みに変わっていた。

サイラオーグの強者のそれに刺激されたようだ。

 

「……士織」

 

「なんだ?」

 

「俺を……鍛えてくれ。

アイツに……サイラオーグ・バアルと互角にやりあってみたい……っ!!」

 

―――――迸る赤いオーラ。

感情に呼応して、一誠の中で赤い龍の帝王が叫びをあげているようにも見えた。

サイラオーグにもそれは感じられたようで、一誠の方を向いて口角を少しだけ、上げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編の方は如何でしたでしょうか?
楽しんでいただけたのなら幸いです♪

今回はサイラオーグさんの登場ですっ!(>_<)
最後は一誠とのライバルフラグっぽいですね(笑)
今後どのように絡めていくかをお楽しみにっ!

それでは今回はここまで!
また次回お会いしましょう♪


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77話

皆さん遅くなってすみませんっ!(>_<)
FGOで酒呑童子ちゃんの育成に集中していて投稿を忘れていた夜叉猫です←Σ\(゚Д゚;)

書きだめがいやに溜まってるなぁ……とのんきに考えていたのですが、更新の日にちを見て投稿していないことに気が付きました……(苦笑)

ひとまず、今回はすごく短いですが、お楽しみくださいっ!(>_<)



Side 士織

 

サイラオーグがチンピラ悪魔を殴り倒した後、一時はチンピラ悪魔の眷属たちが襲いかからんばかりの雰囲気だったが、サイラオーグの「主を介抱するのが先ではないのか?」という言葉でその場は収まりを見せた。

そして、シーグヴァイラと呼ばれた女性を化粧直しに向かわせ、傍にいたスタッフたちにその場の掃除を命じるという行動をしたサイラオーグは面倒ごとをやっと終えたと言わんばかりに息をひとつ吐き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――騒ぎからしばらくして、化粧直しを終えたシーグヴァイラと呼ばれた女性、そして支取先輩が合流するとその場では若手悪魔たちが挨拶を交わしていた。

その席には一応俺もまざっている。

 

「私はシーグヴァイラ・アガレス。

大公、アガレス家の次期当主です」

 

涼しい顔をして初めに言葉を発したのは彼女。

 

「ごきげんよう、私はリアス・グレモリー。

グレモリー家の次期当主です」

 

「私はソーナ・シトリー。

シトリー家の次期当主です」

 

そして、それに続くようにリアス先輩、支取先輩が挨拶をする。

主たちが席に着き、眷属はその後方で待機していた。

 

「俺はサイラオーグ・バアル。

大王、バアル家の次期当主だ」

 

堂々とした自己紹介をするサイラオーグ。

威風堂々とした態度に舌をまいてしまう。

そして、先ほどの騒ぎの中で優雅にお茶を飲んでいた優しげな雰囲気の少年も口を開く。

 

「僕はディオドラ・アスタロト。

アスタロト家の次期当主です。

皆さんどうぞ宜しく」

 

虫も殺せなさそうな雰囲気。

―――――しかし、その中にはきな臭いモノを感じた。

俺が目を細めていると、サイラオーグが口を開く。

 

「グラシャボス家は先日、御家騒動があったらしくてな。

次期当主とされていた者が不慮の事故死を遂げたばかりだ。

先程のゼファードルは新たな次期当主の候補ということになる。

……ところで、先程から無言で座ってるが、自己紹介はないのか?」

 

サイラオーグは俺を見てそう言う。

確かに此処に座っておきながら何も言わないというのはおかしいか……。

 

「俺は兵藤士織。

まだ知らない者の方が多いと思うが『中立チーム』のトップだ。

今回はサーゼクス・ルシファーからの依頼で此処にいる。

……レーティングゲームにも出る予定だ」

 

「なるほど……噂では聞いていたが本当だったとは……。

つまり、今日が正式な発表というわけだな?」

 

俺の言葉の意味を冷静に理解したサイラオーグは言う。

 

「おそらくだけどな。

俺はサーゼクス・ルシファーに呼ばれただけだ。

詳しいことは聞かされてないのさ」

 

俺が肩をすくめながら答えれば、サイラオーグは少々の笑みを浮かべた。

 

「何にせよ、戦うのが楽しみだ」

 

「そ〜いうのは俺の弟とやってくれ」

 

親指を立てて、一誠が待機している方を指しながら、サイラオーグの言葉を躱す。

 

 

 

「―――――皆さま、大変長らくお待たせいたしました。

皆さまがお待ちでございます」

 

扉が開かれ、使用人が入ってきたかと思えばそう言って、俺たちを誘導しようとしていた。

―――――ついに、行事とやらが始まるようだ。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

俺たちが案内されたのは異様な雰囲気が漂う場所だった。

かなり高いところに席が置かれており、そこに偉そうにふんぞり返る悪魔が座り、更にその上の段にも悪魔の姿。

そしてもうひとつ上の段には見知った顔―――――サーゼクス、その隣にはコスプレをしていないセラフォルー。

他にも若い男性が2人。

何処か怪しげな雰囲気のあるを醸し出す男性と恐ろしく気だるげな表情の男性。

おそらく『アジュカ・ベルゼブブ』と『ファルビウム・アスモデウス』なのだろう。

 

―――――あれが、冥界のトップ『四大魔王』。

 

いずれにせよ、俺たちは今、お偉いさん方に高い位置から見下ろされている状態だ。

明らかに見下した視線に苛立ちを感じる。

若手悪魔、そして俺は1歩前に出て、言葉を待った。

 

 

 

「よく、集まってくれた。

次世代を担う貴殿らの顔を改めて確認するため、集まってもらった。

そして、はるばるご苦労、中立チームとやらのリーダー殿。

この度は我々のレーティングゲームに試験的に参加するとの話……()()には十二分にお気をつけくだされ」

 

初老の男性悪魔がにやついた表情で俺の方を見ていた。周りの悪魔たちもクスクスと笑っている。

俺を見下して蔑んでいるのが丸わかりだ。

 

「―――――君たち6人は家柄、実力共に申し分のない次世代の悪魔だ。

だからこそ、デビュー前にお互い競い合い、力を高めてもらおうと思う。

そして、中立チームのリーダーである兵藤士織くんのレーティングゲーム参加が今後の新たな取り組みに良い影響を与えてくれることを願っている」

 

その場の空気を断ち切るようにサーゼクスは立ち上がって言った。

 

「我々もいずれ『禍の団(カオス・ブリゲード)』との(いくさ)に投入されるのですね?」

 

サイラオーグはサーゼクスに向かって直球に訊く。

 

「それはまだわからない。

だが、出来るだけ若い悪魔たちは投入したくないと思っている」

 

サーゼクスの答えに納得出来ない様子のサイラオーグは眉をつり上げた。

 

「何故です?

若いとはいえ、我らとて悪魔の一端を担います。

この歳になるまで先人の方々からご厚意を受け、なお何も出来ないとなれ―――――」

 

「サイラオーグ、その勇気は認めよう。

しかし、それはまだ無謀というもの。

何より未だ成長途中の君たちを戦場に送るのは避けたい。

それに次世代の悪魔を失うというのはあまりに大きいのだよ。

理解して欲しい。君たちは君たちが思っている以上に我々にとって宝なのだよ。

だからこそ、大事に、段階を踏んで大きく成長して欲しいと思っている」

 

気持ちの籠ったサーゼクスの言葉にサイラオーグも一応の納得をしたようだが、その表情にはまだ不満が見て取れた。

 

 

 

―――――そしてその後は、お偉いさん方のどうでもいい話や、レーティングゲームについての詳しい説明。

俺という存在の立ち位置などの話が進められていったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編の方は如何でしたでしょうか?
楽しんでいただけたのなら幸いです♪

さてさて、最近ではFGOで三蔵ちゃんのイベントをやったり、パズドラでゼウスさんにコテンパンにされたりという日々を過ごしていますが……。



―――――暑すぎます!!!
帰宅してから扇風機の前で涼んでいる毎日……(苦笑)
この時期だと私の家では皆薄着でおくたばり状態です(笑)
……クーラーを入れればいい話なのですが(苦笑)

皆さんも暑さに負けずに頑張りましょうっ!!

それでは今回はここまで!
また次回お会いしましょう♪


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78話

皆さんこんにちは♪(*´ω`*)
ちょうど1週間ぶりの更新となりましたっ!(>_<)

最近ではすっかり天気も悪くなってしまっていますが気分は晴れ晴れと頑張りましょうっ!

それでは早速本編をどうぞ♪(*´ω`*)


Side 士織

 

「―――――さて、長い話に付き合わせてしまって申し訳なかった。

なに、私たちは若い君たちに私たちなりの夢や希望を見ているのだよ。

それだけは理解して欲しい。

君たちは―――――冥界の宝なのだ」

 

サーゼクスの言葉に嘘偽りの色は見えない。

愚直なまでに優しい、甘過ぎるといえばそれまでだが、そこがサーゼクスの持ち味なのだろうか?

 

「最後にそれぞれの今後の目標を聞かせてもらえないだろうか?」

 

サーゼクスの問いかけにいち早く答えたのはサイラオーグだった。

 

「俺は魔王になるのが夢です」

 

『―――――ほぅ……』

 

数人のお偉いさん方は、正面から迷いもなく言い切ったサイラオーグの目標に感嘆の声を漏らしていた。

 

「大王家から魔王が出るとしたら前代未聞だな」

 

「俺が魔王になるしかないと冥界の民が感じれば、そうなるでしょう」

 

再び、顔を逸らすことなく、自信満々に言い切るサイラオーグ。

その精神面の強さも己を強者たらしめるものだろう。

そして次はリアス先輩が言う。

 

「私はグレモリーの次期当主として生き、そしてレーティングゲームの各大会で優勝することが近い将来の目的ですわ」

 

堅実な、しかしリアス先輩らしい目標。

その後も若手悪魔たちが夢、目標を、口にしていき、最後に残ったのは支取先輩だった。

 

 

 

「―――――冥界にレーティングゲームの学校を建てることです」

 

「……レーティングゲームを学ぶところならば、既にあるはずだが?」

 

眉根を寄せていたお偉いさんは確認するように支取先輩に訊く。

それに対して表情を変えることなく、支取先輩は淡々と答える。

 

「それは上級悪魔と一部の特権階級の悪魔のみしか行くことが許されていない学校のことです。

私が建てたいのは下級悪魔、転生悪魔も通える分け隔てのない学舎です」

 

差別のない学校。

支取先輩の夢に俺は自然と頬が緩むのがわかった。

これからの冥界には良い場所になるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――そう、思ったのに。

 

 

 

 

 

『ハハハハハハハハハハハハハハッ!!』

 

お偉いさん方の笑い声が会場を支配する。

 

「それは無理だ!」

 

「これは傑作だ!」

 

「なるほど!

所謂、夢見る乙女と言うわけですな!」

 

「若いと言うのは良い!しかし、シトリー家の次期当主ともあろう者がその様な夢を語るとは。

此処がデビュー前の顔合わせの場で良かったというものだ」

 

見下し、馬鹿にするような言い草。

そんな中でも支取先輩は真っ直ぐに言う。

 

「―――――私は本気です」

 

セラフォルーも力強く頷き、その表情は満足げである。

しかし、お偉いさんは嘲笑うかのように口を開く。

 

「ソーナ・シトリー殿。

下級悪魔、転生悪魔は上級悪魔たる主に仕え、才能を見出だされるのが常。

その様な養成施設を作っては伝統と誇りを重んじる旧家の顔を潰す事となりますぞ?

いくら悪魔の世界が変革の時期に入っていると言っても変えて良いものと悪いものがあります。

―――――全く関係の無い、たかが下級悪魔に教えるなど……」

 

そして、我慢出来なくなったのは―――――匙だった。

 

「黙って聞いてれば、なんでそんなに会長の―――――ソーナさまの夢をバカにするんスか!?

こんなのおかしいっスよ!!

叶えられないなんて決まったことじゃないじゃないですか!

俺たちは本気なんスよッ!!!」

 

「口を慎め、転生悪魔の若者よ。

……ソーナ殿、下僕の躾がなってませんな」

 

「……申し訳ありま―――――」

 

謝罪の言葉を口にしようとした支取先輩―――――いや、蒼那先輩を手で制する。

俺の行動に驚いたような視線を向ける蒼那先輩。

 

「……何のつもりかな?

中立チームのリーダー殿?」

 

苛立った様子で低い声を出すお偉いさん。

しかし、俺はそれに無視を決め込み、サーゼクスの方へ視線を向けた。

 

 

 

 

 

「―――――おい、サーゼクス。

立派な人の夢を笑う畜生共がいるぞ?

老害の教育がなってないんじゃねぇか?」

 

俺の言葉にサーゼクスは目を丸くする。

他の四大魔王も面食らった様な表情を浮かべていた。

 

「き、貴様ァァァアッ!!!

こちらが下手に出ていればつけあがりおってッ!

たかが人間風情が―――――」

 

顔を真っ赤にさせたお偉いさんの1人が立ち上がり怒声を撒き散らす。

あまりに鬱陶しい声に俺はちらりと視線を向ける。

 

「―――――『黙れ』」

 

「―――――ッッッ!!!!??」

 

少し殺気を込めてやれば、脂汗を浮かべて何も言えなくなってしまうお偉いさん。

他のお偉いさん方も同様で、ガタガタ震える者すらもいる。

その姿にデジャヴを感じないでもないが……今は関係ない。

 

「……サーゼクス。

お前が目標を聞かせろって言ったんだ。

―――――それを笑う奴がこの場にいるってことはどういうことだ?」

 

俺の指摘に苦い表情を浮かべるサーゼクス。

 

「夢を叶えることを目標に努力を重ねてる奴もいる―――――そこの匙が良い例だろうよ。

……配慮が足りてねぇんじゃねぇか?」

 

「……確かに、その通りだ……。

すまなかった士織くん―――――いや、謝るべき相手はソーナだね。

本当にすまなかった。

私の落ち度だ、どうか許して欲しい」

 

根本的な間違いに自分で気がついたサーゼクスは蒼那先輩の方を向いて頭を下げていた。

 

「あ、頭を上げてくださいサーゼクスさま!

私は気にしていませんから!」

 

慌て気味にそういった蒼那先輩。

サーゼクスもその言葉を聞いて頭を下げるのをやめる。

 

「もう!おじさまたちはうちのソーナちゃんをよってたかっていじめるんだもの!

私だって我慢の限界があるのよ!

今日は士織ちゃんがしてくれたけど、今度は私がおじさまたちをいじめちゃうんだからっ!」

 

セラフォルーは涙目になりつつ、お偉いさん方に物申していた。

もちろん、俺からの殺気は止んでいる。

 

「ちょうどいい。

では、ゲームをしよう。若手同士のだ」

 

サーゼクスの一言にその場の空気がふたたび変化する。

 

 

 

 

 

「―――――リアス、ソーナ、戦ってみないか?」

 

リアス先輩、蒼那先輩の2人を見つめて、サーゼクスは提案した。

 

「…………」

 

「…………」

 

その提案に顔を見合わせ、驚きの表情を浮かべる2人。

かまわずにサーゼクスは話を続ける。

 

「もともと、近日中にリアスのゲームをする予定だった。

アザゼルが各勢力のレーティングゲームファンを集めてデビュー前の若手の試合を観戦させる名目もあったものだからね。

―――――だからこそ、ちょうどいい。

リアスとソーナで1ゲーム執り行ってみようではないか」

 

リアス先輩は一度息を吐くと、挑戦的な笑みを浮かべて蒼那先輩に向ける。

対して蒼那先輩は冷笑を浮かべ、やる気も十分の様だ。

 

「公式ではないとはいえ、私にとっての初のレーティングゲームの相手があなただなんて運命を感じてしまうわね、リアス」

 

「そうね、ソーナ。

競う以上は負けないわ」

 

部長VS生徒会長。

オカルト研究部VS生徒会。

グレモリー家VSシトリー家。

様々なプライドを持つ2人が全力で戦おうという意思を見せていた。

 

「リアスちゃんとソーナちゃんの試合!

うーん☆燃えてきたかも!」

 

セラフォルーも大興奮だ。

 

「対戦の日取りは、人間界の時間で8月20日。

それまでは各自好きに時間を割り振ってくれて構わない。

詳細は改めて後日送信する」

 

サーゼクスはそう締めくくり、リアス先輩と蒼那先輩のレーティングゲームが行われることが決定した―――――。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「―――――そうか、シトリー家と対決とはな」

 

グレモリーの本邸に帰ってきた俺たち。

そこで迎えに出てきたのはアザゼルだった。

広いリビングに集合し、先の話をすればアザゼルは何やら計算を始める。

 

「……人間界の時間で現在7月28日。

対戦日まで約20日か……」

 

「修行か?アザゼル」

 

俺がソファーに腰を埋めつつ訊けば、アザゼルは頷く。

 

「あぁ、当然だ。

明日から開始予定ってところだな。

既に各自のトレーニングメニューは考えてある」

 

にやりと不敵に笑うアザゼル。

 

「へぇ……?

随分と手際がいいな?アザゼル」

 

「こいつらの修行は随分前から考えてたからな。

それがちょっとばかり早くなっただけだ」

 

懐から『オカルト研究部メンバー』と書かれたくたびれたノートを取り出したアザゼル。

 

「まぁいい。

明日の朝、庭に集合だ。

そこで各自の修行方法を教える。

―――――覚悟しろ?短期間で強くなるんだ、生半可な覚悟なら死ぬぞ?」

 

『はい!!!』

 

リアス先輩を筆頭に、眷属は皆言葉を重ねて返事をした。

 

―――――と、そこへグレイフィアが現れる。

 

「皆さま、温泉のご用意ができました」

 

どうやら息抜きの時間がやってきたようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編の方は如何でしたでしょうか?
楽しんでいただけたのなら幸いです♪

さてさて!
今回はちょっとしたお知らせです♪

実は……【ハイスクールD×D】の新しい話を投稿しますっ!(>_<)
リメイク版も終わってないのに何を言うか……という人もいると思いますが、ついつい書いてしまったので……(苦笑)
設定が何番煎じだ……っていうものでところどころ似通ったシーンが出るかもしれませんが、その時は教えて下さると助かりますっ!(>_<)
できれば修正しますので……(苦笑)

それでは今回はここまで!
また次回お会いしましょう♪


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79話

皆さんお久しぶりですっ!!!(>_<)
携帯もやっと修理から返ってきて投稿することができます……!

更新を待ってくださっていた皆様、ご迷惑をかけてしまって本当に申し訳ありません……( ´・ω・`)


それでは久しぶりの更新1回目!
士織たちの物語をどーぞっ!!(>_<)


オッス!兵藤一誠だ!

 

 

 

リアス部長の家にある庭の一角。

そこにはポッツリと純和風の温泉が存在していた。

俺は早速アザゼル先生と共に浸かって、疲れを癒している。

 

「―――――旅ぃゆけぇばぁ〜♪」

 

温泉に浸かりながら鼻歌混じりな堕天使総督さま。

その背には黒い6対12枚の翼も全開にしていた。

 

「ハハハハ、やっぱり冥界―――――地獄といえば温泉だよな。

しかも冥界でも屈指の名家グレモリーの私有温泉とくれば銘泉も銘泉だろう」

 

なんとも温泉に慣れている総督さまだなぁ……。

そういえば初めて会った時も依頼で会ったときも浴衣を着ていたような……もしかして日本文化大好き?

 

「ふいぃ〜……」

 

何はともあれ、俺は頭にタオルを乗せ直し、まったりと湯に浸かっていた。

 

「ん?そういや士織とギャスパーの奴はどうした?」

 

「確かにいませんね……まだ来てないんじゃないですか?」

 

辺りをキョロキョロと見渡し、アザゼル先生に言う。

―――――と、そんな時、入口付近でウロウロしている人影と、それを連れ出そうとする人影とが見え隠れしているのが俺の視界に入った。

 

 

 

「ほら、折角の温泉なんだから入らねぇと意味ねぇだろ?

なんなら今からでも女湯の方に行くか?」

 

「そ、それは……い、イッセー先輩と入りたいのでお断りしますぅぅぅう!」

 

ウロウロしていた人影―――――ギャスパーが、意を決したかのような表情でこちらに走ってくる。

 

―――――しかし、此処は温泉。

濡れている床をそんな風に走ればどうなるか。

 

 

 

 

 

「―――――きゃっ?!」

 

そう、滑って転んでしまうのだ。

ギャスパーは可愛らしく悲鳴をあげて顔から倒れ込みそうになる。

俺が急いで助けようとしたがこの湯船に浸かっている状態では間に合わない。

これは万事休すか……そう思った時、もうひとつの人影がギャスパーを抱きとめ、床との接触を回避させた。

 

「ったく……気をつけろよ?ギャスパー」

 

「あ、ありがとうございますうぅ……士織先輩ぃ……」

 

涙目のギャスパーは受け止めてくれた士織に感謝を述べてペタンと座り込んだ。

 

「ほら、取り敢えず身体を流すぞギャスパー。

温泉に入る前のマナーだ」

 

「わ、わかりました」

 

士織の言葉に頷いたギャスパーは軽く身体を流した後に俺とアザゼル先生が浸かる湯の方へと向かってくる。

 

「……あ、あの……あんまり、見ないでください……」

 

タオルを胸の位置で巻いたギャスパーは頬を赤く染め、恥ずかしそうに言う。

 

「お、お前な!そんなに恥ずかしいなら女湯の方に行けばいいだろ?!

というか、結局お前は男と女、どっちとして扱えばいいんだよ!?」

 

「い、イッセー先輩には女の子として扱って欲しいかもですぅ……」

 

そう言ったギャスパーは素早い動きで温泉に入ると、俺の傍へと近寄り、腕に絡みつく。

 

「……っ!?!?

ぎゃ、ギャスパー!お前、性別変化させただろ?!」

 

「そ、そんなことしてないですよぉ〜」

 

「な、ならなんでこんなにや、柔らか……っ!」

 

腕に感じる確かな柔らかさ……これはどう考えても男の身体の感触なんかじゃない。

 

「い、イッセー先輩のえっちぃ……」

 

「んな……っ!?」

 

口ではそう言っているものの、ギャスパーは更に俺の方へと身体を寄せてくる。

こいつ、こんなに積極的な奴だったか?!

 

 

 

(お、俺の腕に柔らかい、それでいて張りのあるモノがぁぁぁぁぁッ!!

あ?!い、今なんかコリッて!コリってしたぁぁぁぁッ?!

く、くそっ!!

さ、去れ、去れぇぇぇぇぇえ!!

―――――煩・悩・退・散ッッッ!!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――おい見ろよ士織。

お前の弟おもしれぇ事になってるぜ?」

 

「案外初心な奴だろ?」

 

聞こえてくるのは笑い合う2人の―――――士織とアザゼル先生のからかうような言葉。

 

「ありゃ女への耐性皆無だな。

ハニートラップとか喰らったらイチコロじゃねぇか?」

 

「それなら安心しろ。

悪意には敏感になってるからハニートラップくらいなら気づくさ。

今回は仲間のギャスパーからの純粋な好意だから無碍にもできなくなってんだろ」

 

「はっ!

士織が言うならそうなんだろうな」

 

「そ、そこぉ!!

士織もアザゼル先生もニヤついた顔をやめろくださいっ?!」

 

未だ身体を寄せてくるギャスパーに思考が沸騰しかけながらも2人に向かって叫ぶ。

 

「「はいはい、お楽しみください」」

 

肩をすくめてやれやれと言わんばかりの表情の2人はまるで打ち合わせでもしたかのように同時に言い放った。

 

「ハモるなぁぁぁぁあ!!!!」

 

 

 

 

 

―――――閑話休題。

 

 

 

 

 

―――――Side 士織

 

「ふいぃ〜……」

 

日頃の疲れを落とすように温泉に浸かっていると、アザゼルの視線が俺に向けられているのに気がつく。

 

「……なんだよアザゼル」

 

「お前ってちゃんと男だったんだな」

 

「くだらねぇこと言ってんじゃねぇよ……」

 

ついついため息をもらしてしまう。

今までも言われ続けてきた言葉ではあるが、その言葉にはなれることのない、何とも言えない感覚がある。

 

「そういえば士織。

お前、木場と付き合ってるんだってなぁ?」

 

「……そのニヤついた表情を止めろアザゼル」

 

「はっはっは!

やっぱりそんなナリしてても女に興味があるんだな」

 

俺の肩に腕を回し、楽しそうに笑うアザゼル。

その姿は何処と無く酔っ払った親戚の叔父さんを彷彿させるものだった。

 

―――――しかし、次の瞬間には真顔になり顎に手を当てる仕草を見せる。

 

「……お前、本当に男だよな……?

今まで俺が抱いてきた女よりも格別に女らしい身体付きだぞ……?」

 

「……アザゼル、お前、ぶち殺すぞ……?」

 

冗談の余地すら残さないアザゼルの真面目な声に、俺は拳を握りしめて睨みつける。

 

「いや、だけどよ!

これで貧乳の女だって言ったら誰もが信じるレベルだぞ?!

オンナ遊びのプロの俺が言うんだから間違いねぇ!」

 

「……俺から離れろアザゼル。

―――――身の危険を感じるからな」

 

肩に回された腕から逃げ出し、アザゼルから一定の距離を取る。

 

『アザゼル先生っ!

士織くんに手を出したら許しませんよ!!』

 

『……ぶっ飛ばします』

 

『アザゼル殺す……』

 

女湯の方からは祐奈、小猫、オーフィスの声が聞こえてくる。

どうやらこちらの会話は向こうに丸聞こえだったようだ。

 

「冗談だジョーダン!

お前らも本気にしてんじゃねぇよ!」

 

そう叫んだアザゼルは肩をすくめて、ため息を吐き出した。

そして、いきなりニヤリとイタズラを思いついた少年のような表情を浮かべて再び俺の方へと近づいてきた。

 

「……なんだよアザゼル。

俺に近づくなって言っただろうがぶっ殺すぞ」

 

「おいおい、そう邪険になるなよ士織。

ちょっとばかしイイコトしてやろうってのによ?」

 

「悪い予感しかしねぇからパスな」

 

本当に悪い予感しかしない。

アザゼルがこういう顔をする時はろくなことがないのだから。

 

「まぁまぁ、遠慮すんな―――――よっ!!」

 

俺の腕を掴んだアザゼルは、力任せに俺を投げ飛ばした。

 

 

 

 

 

「あ、アザゼルコノヤロォォォォオッッ!!」

 

―――――宙を舞う俺。

そして―――――祐奈と目が合った。

つまり、俺は女湯の方へと投げ飛ばされたのだ。

 

「……地味に痛てぇ……」

 

背中から湯に着水した俺は立ち上がって口を開いた。

視界に入って来たのは―――――当たり前だがリアス先輩を初めとする女子組たちの裸。

タオルの1枚でも巻いていればいいものの、全員もれなく全裸だ。

 

「あら、士織。

アザゼルに飛ばされてきたのね?

何も変な事はされなかった?」

 

「あらあら、うふふ……本当に女の子みたいですわね」

 

「……あ〜……隠すくらいしたらどうだ?」

 

俺が女湯に飛ばされてきたというのに、誰1人として身体を隠そうとはしないという実態に苦笑いを隠しきれない。

 

「隠さないといけないほど自信の無い身体はしていないつもりよ?」

 

逆に胸を張るリアス先輩。

 

「私も士織くんにならいいですわ、うふふ……」

 

艶やかに微笑む朱乃先輩。

 

「ぼ、僕も前に見られちゃってるしね……」

 

頬を染めつつもそう言って俺の方へと近づいてくる祐奈。

他にもゼノヴィアやアーシアたちもいるもののやはり隠そうとはしていなかった。

 

 

 

 

 

「―――――我の特等席」

 

「オーフィス……お前もか……」

 

いつの間にか俺の膝の上に座っているオーフィスに再び苦笑いが浮かぶ。

俺は頭をガシガシと乱暴に掻き毟ると膝の上に座るオーフィスを隣に移動させ、立ち上がって口を開く。

 

「取り敢えず俺はもうあがるわ」

 

そう言い残して出入口の方へと足を進める。

それにしてもアザゼルの奴無茶苦茶なことをしでかしやがって……後で後悔させてやる―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――そんな事言わずに一緒に入りましょう?」

 

「うぉっ?!!」

 

背後から朱乃先輩に抱きつかれたことによりバランスを崩してお湯にダイブしてしまう俺。

 

「そうね、あまりあなたとはスキンシップが取れていないから……この際皆で士織の身体を洗ってあげましょう♪」

 

リアス先輩の提案に俺は顔が引き攣った。

 

「ちょ、ちょっと待て!

そういうのは一誠の役割だろ!?

そもそもリアス先輩はライザーに怒られるぞ!!」

 

「あら、大丈夫よ。

私はしないから♪」

 

「なるほどそれなら大丈夫―――――じゃねぇよ?!」

 

「……士織先輩大人しくしてください」

 

「そ、そうだよ士織くん!

大人しく僕たちに洗われるんだ!」

 

「うふふ……髪の毛の手入れ教えてあげますわ」

 

背中に朱乃先輩、右腕に祐奈、左腕に小猫が引っ付き、俺を逃がさないようにと拘束する。

 

「お前ら離れろ―――――って強っ?!

いつの間にそんな力を……っ!?」

 

「……火事場の馬鹿力です」

 

「こんな時に発揮してんじゃねぇよ!!!」

 

じたばたともがくものの、何故か逃げ出すことができない。

必死に逃げ出そうとしていると、視界が何か柔らかなもので塞がれた。

 

「我も手伝う」

 

「オーフィス!?」

 

どうやらこれはオーフィスのお腹だったようだ。

 

 

 

 

 

「楽しそうね、士織」

 

俺には見えないがきっと満面の笑みを浮かべているであろうリアス先輩の声が聞こえてくる。

 

 

 

 

 

「―――――アザゼル覚悟してろよォォォオッッ!!!」

 

この状況の元凶に復讐を誓い、俺は再びもがくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編の方はいかがでしたでしょうか?
楽しんでいただけたのなら幸いですっ!!(>_<)


しばらくは更新出来ると思いますので、読んでいただけたらすっごく嬉しいです!

それでは今回はここまで!
また次回お会いしましょう♪(*´ω`*)


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80話

皆さんお久しぶりですっ!(>_<)
更新を放置していてすみませんっ!

続きを楽しみにしていてくれた皆様には本当に申し訳ないことをしてしまいました……( ´・ω・`)

本編を楽しんでいただけると嬉しいですっ!


どうも、兵藤士織だ。

 

 

 

温泉での騒動から次の日。

俺とアザゼル、リアス先輩の眷属はグレモリー家の広い庭の一角に集まっていた。

服装は全員動きやすさ重視のジャージ。

庭に置かれているテーブルと椅子に座って修行開始前のミーティングを行っている。

資料やデータらしきものを手にしたアザゼルが口を開く。

 

「先に言っておく。

今から俺が言うメニューは将来的なものを見据えてのトレーニングメニューだ。

直ぐに効果が出る者も居るが、長期的に見なければならない者もいる。

ただ、お前らは成長中の若手だ。

方向性さえ見誤らなければイイ成長をするだろう。

―――――さて、まずはリアス、お前だ」

 

アザゼルが最初に呼んだのはリアス先輩。

 

「お前は最初から才能、身体能力、魔力全てが高スペックの悪魔だ。

それに加えて極短期間だが士織との修行で戦術面も補われている。

このまま普通に暮らしていてもそれらは高まり、大人になる頃には最上級悪魔の候補となっているだろう。

―――――だが、将来よりも今強くなりたい、それがお前の望みだな?」

 

「えぇ。

眷属たちよりも圧倒的に弱いというのは示しがつかないわ。

それに、絶対に負けたくないもの」

 

力強く頷くリアス先輩の瞳には決意の炎が灯っていた。

 

「なら、この紙に記してあるトレーニング通り、決戦直前までこなせ」

 

アザゼルから渡された紙を見てリアス先輩は首を傾げる。

 

「……これって別段凄いトレーニングとは思えないのだけれど?」

 

「そりゃそうだ。

基本的なトレーニング方法だからな。

お前はそれでいいんだ。全てが総合的に纏まっている。

1番心配な戦術面も強化されたお前はその基本的なメニューをこなすだけで力が高められる。

……そうだな、後は1日に1回以上、俺か士織とチェスをしろ。

決戦当日までに俺か士織に一勝しなけりゃ……そうだな、サーゼクスにでもお前の黒歴史聞いてばらまいてやる」

 

「わ、わかったわ!!!」

 

鬼気迫る表情とはこのことだろうか。

リアス先輩の真剣な表情には焦りも色濃く出ていた。

 

「次に朱乃」

 

「……はい」

 

アザゼルから呼ばれるものの、朱乃先輩は何処か不機嫌そうだ。

朱乃先輩はどうにもアザゼルのことを苦手、もしくは嫌っている節がある。

それはやはり父親絡みでなのだろうか?

 

「お前は自分の中に流れる血を受け入れろ」

 

「―――――ッ!!!」

 

「フェニックス家との1戦、記録映像で見せてもらったぜ。

なんだありゃ……士織に習ったっつう魔法がなけりゃ負けてたのは確実。

本来のお前のスペックなら敵の『女王(クイーン)』を苦もなく打倒できた筈だ。

―――――何故、堕天使の力を振るわなかった?

雷だけでは限界がある。

光を雷に乗せ、『雷光』にしなければお前の本当の力は発揮できない」

 

アザゼルの言葉は的を射ている。

俺が教えたあの魔法にもし、光を乗せることが出来るのなら、威力は数倍、数十倍にまで膨れ上がり、それこそ『必殺技』と呼べるものになるだろう。

 

「……私は、あのような力に頼らなくても……」

 

「否定するな。

自分を認めないでどうする?

最後に頼れるのは己の体だけだぞ?

否定がお前を弱くしている。

……辛くとも苦しくとも自分を全て受け入れろ。

自分自身を受け入れることができない奴に強さを求める資格はない。

決戦日までにそれを乗り越えてみせろ。

じゃなければ、お前は今後の戦闘で邪魔になるだけだ。

―――――『雷の巫女』から『雷光の巫女』になってみせろよ」

 

「…………」

 

アザゼルの言葉に朱乃先輩は応えなかった。

しかし、やらなければいけないという事は朱乃先輩自身がよくわかっているはずだ。

 

「次は木場だ」

 

「はい」

 

「まずは『禁手(バランス・ブレイカー)』を解放している状態で1日保たせてみろ。

それになれたら実践形式の中で1日保たせる。

それを続けていき、状態維持を少しでも長く出来るようにしていくのがお前の目標だ。

後はリアスのように基本トレーニングをしていけば十分に強くなれるだろうさ。

神器(セイクリッド・ギア)の扱い方は後でマンツーマンで教えてやる。

……剣術の方はお前の師匠にもう1度習うんだったな?」

 

「ええ。

僕の剣が抜刀術、つまりスピードに特化したものになったと言うと、それは嬉しそうに1から教えてあげると言われました」

 

祐奈に剣の師匠がいたのは聞いていたが誰なのかまでは聞いていなかったのを思い出す。

抜刀術を使うようになった祐奈がさらに強くなるかはその師匠にかかっているな……。

 

「次、ゼノヴィア。

お前は『デュランダル』を今以上に使いこなせるようにすることと―――――もう1本の聖剣になれてもらうことにある」

 

「もう1本の聖剣?」

 

「あぁ、お前は元々二刀流の剣士だろ?

特別な剣だが、使いこなせばお前の強さは跳ね上がるだろうよ」

 

首を傾げているゼノヴィアにアザゼルはにやけ顔で言った。

そして、直ぐにその笑みを止めたかと思えば、一誠にくっつくギャスパーに視線を向ける。

 

「次にギャスパー」

 

「は、はいぃぃぃぃ!」

 

一誠に尚一層強く引っ付くギャスパーだったが、隠れる事はなく、アザゼルの方を向いていた。

 

「そうビビるな。

お前の最大の壁はその恐怖心だ。

何に対しても恐怖するその心身を一から鍛えなきゃならん。

一誠の血を飲んだ時のお前の積極性を飲んでいない状態でも出せるようになるのが今後の目標だな。

安心しろ、お前専用の『目指せ!一誠攻略計画!』なる積極性が増すプログラムを組んだからな」

 

「は、はいぃぃぃ!!

全身全霊、当たって砕けろの精神で頑張りますぅぅぅう!!」

 

「―――――って!

その計画なんですかアザゼル先生?!」

 

今まで黙って聞いていた一誠が叫ぶ。

 

「あん?

ギャスパーのやる気を出させるためのメニューだ気にするな。

それともなにか?

せっかくやる気になったギャスパーにこの計画はなしだって言うのか?ん?」

 

「……わ、わかりましたよ……なんでもないです……」

 

渋々といった様子の一誠。

アザゼルは悪い笑みを浮かべていた。

 

「さて、どんどん行くぞ。

次はアーシア」

 

「は、はい!」

 

アーシアも気合が入っているようで、やる気満々の表情を浮かべている。

 

「お前も基本的なトレーニングで、身体と魔力の向上。

ついでに士織に教えてもらったっていう魔法にも慣れておけ。

あれが完璧に使えるのと使えないのじゃかなりの差があるからな。

だけど、今回のメインは―――――神器の強化だ」

 

「アーシアの神器は最高ですよ?

触れるだけで……あ……」

 

一誠は自分で喋っていて気がついたのだろう。アーシアの神器の決定的な弱点に。

 

「気がついたみたいだな。

そう、アーシアの神器の回復能力の速度は大したもんだ。

だがな、味方が怪我しているのにわざわざ至近距離まで行かないといけないってのは不便だ。

回復役ってのは何時の時代も狙われやすく、真っ先に落とされるんだよ」

 

自己防衛が可能ってなら話は別だが―――――アザゼルはそう呟く。

 

「つ、つまり私は離れたところから皆さんを回復できるようになればいいんですか……?」

 

アーシアは何かを飛ばす様なジェスチャーを交えて言う。

それに対してアザゼルは満足気に頷いて口を開く。

 

「あぁ、直接飛ばす感じだな。

それさえ出来れば活躍の場が格段に増えるぞ?

そして、グレモリー眷属としての戦略の幅が格段に増す」

 

「は、はいっ!

がんばりますっ!!」

 

皆からの期待を受けるのが嬉しいのだろう。アーシアは更に気合いを入れていた。

 

「次は小猫」

 

「……はい」

 

小猫は妙に張り切っていた。

その表情からは焦りを感じる。

 

「お前は申し分ないほど、オフェンス、ディフェンス、『戦車(ルーク)』としての素養を持っている。身体能力も何の問題もない。

―――――だが、リアスの眷属には『戦車(ルーク)』のお前よりもオフェンスが上の奴らばかりだ」

 

「………………わかっています」

 

アザゼルのハッキリとした物言いに小猫は心底悔しそうな表情で俯く。

 

「リアスの眷属でトップのオフェンスは一誠、そしてその次に木場とゼノヴィアだ。

赤龍帝としての力を使いこなして新たな進化を果たした一誠、禁手(バランス・ブレイカー)の聖魔刀、聖剣デュランダル、どれも一級品だ。

……小猫、お前も他の連中同様、基礎の向上をしておけ。

その上でお前が自ら封じているものを晒けだせ。

朱乃と同じだ。自分を受け入れなければ大きな成長なんて出来やしねぇのさ」

 

「………………」

 

アザゼルの言葉に小猫は何も答えなかった。

小猫の抱えているソレは俺がどうこう言うものではない。

俺は小猫の頭を撫でようとして払いのけられる。

険しい表情で俺を睨みつけているようだ。

 

「……慰めなんて―――――」

 

「何をそんなに焦ってんだ?小猫」

 

小猫にそう言ってやれば顔を逸らして俯く。溜息を一つ吐き出した俺は腕を組んで口を開いた。

 

「焦ったところで何も変わりはしねぇよ。

落ち着いて、考えろ小猫。

―――――お前に出来ることは何かを」

 

「………………はい」

 

それだけ消え入るような声で呟いた小猫の表情は未だに険しいものだった。

 

「……さて、最後はイッセー。

お前は……ちょっと待ってろ。遅れてるみたいだからな。

他の奴らは早速修行メニューをこなせ。

時間は待ってくれないぞ?無駄に過ごすも過ごさないもお前達次第だ」

 

「「「「「「はい!」」」」」」

 

数名を除いた気合の入った声の後、各々メニューをこなすためにこの場を後にしていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――それで、俺の修行って何なんですか?」

 

この場に残ったのは俺と一誠とアザゼルのみ。

一誠は気になっていたであろう事柄について質問する。

 

「それなら―――――よし、来たぞ」

 

空を見上げるアザゼル。

一誠と俺はアザゼルと同じように空を見上げた。

視界に映ったのは何か巨大な影。

こちらへ猛スピードで向かってきている。

 

それは地響きと共に目の前に飛来してくる。

土煙が舞い上がり、それが収まった後にいたのは―――――巨大なドラゴン。

 

「ど、ドラゴン!」

 

「そうだイッセー。こいつはドラゴンだ」

 

アザゼルは満足気に頷き、一誠は瞳をキラキラと輝かせていた。

 

「―――――アザゼル、良くもまぁ悪魔の領土に堂々と入れたものだな」

 

ドラゴンは口を端を釣り上げて言う。

 

「ハッ!ちゃんと魔王さま直々の許可を貰って堂々と入国したぜ?

文句でもあんのか?―――――タンニーン」

 

「ふん。まぁいい。

サーゼクスの頼みだというから特別に来てやったんだ。その辺を忘れるなよ、堕天使の総督殿」

 

「ヘイヘイ、感謝しとりますよー。

―――――てなわけで、イッセー。

こいつがお前の修行相手だ」

 

「このドラゴンが……俺の修行相手……」

 

一誠がタンニーンと呼ばれたドラゴンをじっくり観察していると語りかけるように口を開いた。

 

「久しいな、ドライグ。

聞こえるのだろう?」

 

すると、一誠の左腕に赤龍帝の篭手(ブーステッド・ギア)が出現する。

 

『あぁ、懐かしいな、タンニーン』

 

「知り合いなのか?ドライグ」

 

辺りに響いたドライグの声に一誠は質問を投げかけた。

 

『あぁ。こいつは元龍王の一角だ。

【五大龍王】のことは以前話しただろう?

こいつ―――――タンニーンは【六大龍王】だった頃の龍王の1匹だ。

聖書に記された龍をタンニーンというのだがこいつをさしている』

 

ドライグの説明にあぁ、あの話の時かと納得するように頷く一誠。

どうやらきちんとドライグと対話して色々な知識を取り入れているようだ。

 

「タンニーンが悪魔になって『六大龍王』から『五大龍王』になったんだったな。

今じゃ、転生悪魔の中でも最強クラス。最上級悪魔だ」

 

最上級悪魔という言葉に反応する一誠。

ドラゴンで悪魔、その上最上級の地位にいると聞けばどれほどの実力なのかは分かるだろう。

 

「『魔龍聖(ブレイズ・ミーティア・ドラゴン)』タンニーン。

その火の息は隕石の衝撃に匹敵するとさえ言われている。

未だ現役で活動している数少ない伝説のドラゴンだよ。

悪いがタンニーン、この赤龍帝であるイッセーの修行に付き合ってくれ。

既にドラゴンの力を使えているからそれの精度をあげてやって欲しい。

どうもこいつは燃費が悪くていけねぇ」

 

アザゼルはタンニーンにそう頼み込む。

確かに一誠はちょっとばかり脳筋の気があるからテクニックを磨くのも悪くは無いだろう。

タンニーンは嘆息して言う。

 

「俺がしなくてもドライグが直接教えればいいのではないか?」

 

「それはもう限界値まで行ってる。

そこから実力をつけるのであればやはり―――――」

 

「なるほど、元来からドラゴンの修行と言えば実戦方式。

俺はこの少年をいじめ抜けば良いのだな?

ふふふ……ドライグを宿す者を鍛えるのは初めてだ」

 

タンニーンは目を細めながら楽しげに言った。対する一誠もウズウズしている様子だ。

 

『手加減などするなよ?タンニーン。

今代の宿主……いや、相棒は今までの誰よりも才能は無いがそれを努力と発想で越えてきた男だ。

俺が保証してやる―――――相棒は過去から未来、全てを通してみたとしても()()()()()()だ』

 

ドライグから発せられたその言葉に一誠は目を見開いて照れくさそうに頬をか掻いた。

 

「……ほぅ?ドライグにそこまで言わせるか少年……。

―――――面白くなりそうだ」

 

一方、その話を聞かされたタンニーンは目を細めて一誠を視界の中央に収めている。

そんな様子のタンニーンにアザゼルが腕を組んで話しかけた。

 

「ヒートアップしてるとこ悪いがタンニーン。期間は人間界の時間で20日間ほど。

それまで存分にやってくれ。

イッセー、さらに強くなりたいなら死ぬ気でやれ。

―――――ヴァーリは身内贔屓を無しに見ても天才だ。

のんびりしてると直ぐに追い抜かれるぞ?」

 

「言われなくても」

 

アザゼルの焚き付けるような言葉に一誠は笑いながら答えた。

ヴァーリ程とまでは行かなくとも一誠も強者との戦いに胸を躍らせているんだろう。

 

「アザゼル。

あそこに見える山でやってもいいか?」

 

タンニーンは遥か先に見える山を指して言う。

 

「お前ならそういうだろうと思って許可は取ってるぜ?」

 

「用意のいい奴め。

―――――さて、行くとするか少年」

 

「おう!これから宜しくお願いします!」

 

そう言い合った後、一誠はタンニーンの背に乗って修行場所となる山へ飛び立って行った。

 

 

 

 

 

「……俺も行くとするか……」

 

「何だ?何か用事でもあるのか?」

 

俺の呟きに興味を持ったのかアザゼルが反応する。

 

「俺もレーティングゲームに参加しないといけないからな。

―――――ただの眷属という名前の仲間探しだ」

 

未だに『兵士(ポーン)』の2枠しか埋まっていないのだから少しは探さないと行けないだろう。

美憧と綯奈には修行メニューは渡しているからたまに様子を見に来るだけでいいはず。

 

「へぇ……お前の眷属か……」

 

「今回は1人、『僧侶(ビショップ)』候補が居るからそいつのスカウトだ」

 

実力などは噂に聞いただけだから本当に眷属にするかどうかは分からないが直接会ってみる価値はある。

 

「士織がスカウトするほどのやり手か……何て名前なんだ?」

 

興味津々の様子のアザゼル。

俺はニヤリと笑ってその名前を伝える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――『シオン・エリファス・レヴィ』って知ってるか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編の方は如何でしたでしょうか?
楽しんで頂けたのなら幸いです!(>_<)


さてさて、次回の話から修行や眷属探しのオリジナルの話が混ざってくると思いますが楽しんでいただけるように頑張って執筆しますっ!(>_<)
士織くんの眷属を考えるのにも頭を悩ませています(苦笑)


それではまた次回お会いしましょう♪
感想、お待ちしていますっ!


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