剣姫に兄が居るのは間違っているだろうか (Fina)
しおりを挟む
プロローグ
帰ってきましたこれから続きを投稿しますっ!!と言いたかったのですが、前のアカウントのパスワードを忘れたため1からの投稿となります。
1からの投稿と言っても前とはかなり違う物語の進行となってますのでお楽しみください。
前よりは投稿すると思います。
それでは始まりの物語……序章をお楽しみください
とある村『離れの花畑』
「ベル」
「アイズちゃんどしたの?」
白くモフモフな髪の毛でとても紅く今にも呑まれそうになる瞳を持っているヒューマンの少年に悲しそうな表情を浮かべている金髪の少女が問う。
「英雄は居るの?」と
その表情は、幼い少女がするようなものではなかった。
少年も幼いながら少女の気持ちを察することが出来た。
それは少女に……誰よりも可愛いと思っているからなのかは少年にしか分からない。 そしてその少年は咄嗟なのか立ち上がりいった。
「僕が」
「ベル……?」
「僕がアイズちゃんの英雄になる!!なってやる!!」
少年は少女に誓う。
これは少女を愛し、英雄に憧れた1人の弱く強い少年とその周りの後に英雄と呼ばれるもの達が織り成す英雄譚。
「すいませんゼウス様ステータスの更新お願いします」
俺はアーク・ヴァレンシュタイン。アイズの兄であり、現在レベル2のただの村人である。さっきまでバカ父さんにしごかれていた。
「来たかアーク」
「はい、しごかれてきたので」
「そうかそうか」
高らかに笑っているのはゼウス。一応俺の主神である。
ゼウスファミリア……いやゼウス様達がこの村に来てから強くなるために恩恵を刻んで貰っている。
ゼウス様達は前居た場所を追放されてこの村にたどり着いたらしい。今はベルと畑仕事しながらのんびり暮らしている。
「うむ、かなり上がっておるな。だが相変わらず魔法もスキルも発現しないのぉ」
「そっか……」
「まぁそう落ち込むな。いつかオラリオに行きいい神の元で冒険することじゃな!」
「っ……オラリオ」
都市オラリオ。そこにはダンジョンがある。何も言わないけどゼウス様はそのオラリオを追放されたんじゃないかと勝手に思っている。
まぁそんなことは置いておき、俺は家に帰るために「ベルに夜ご飯食べに来なって言っといてください、失礼します」と言葉を残してゼウス様達の家を出た。
「ただいま〜」
「おかえりアーク」
家に帰るとお母さんが出迎えてくれた。ゼウス様が言ってたマザコン?みたいだがとても美しい親だと思う。
そして父親は……
「ん?帰ってきたのか、おかえり」
リビングの方から顔を出したお父さん。さっきまで俺をボコボコにして少し楽しんでいるようだった人だ。
一応元冒険者でかなりの実力者……だったらしい。
「ただいま。本見に行ってくるから、ご飯できたら教えて」
「わかったわ」
そうして近くにある書物室に向かった。
そして色々なものをみること数分、とある英雄譚を見ていて次のページをめくった瞬間紙がヒラヒラと床に落ちた。
「ん?なにこれ」
それはこの村周辺の地図らしく、近くの森あたりにばってんが記してあった。
「明日、行ってみてるか……」
「お兄ちゃんご飯できた」
「おっ?!アイズ」
アイズの声を聞いて咄嗟に地図をポケットにいれた。
どうやらご飯ができたらしい。
「パパとママあとベルが待ってる」
「そっかじゃあ急ご」
「うん!」
俺とアイズは3人が待ってるであろう場所に早歩きで向かうのだった。
次の日早速朝一でばってんの場所に向かうことにした。幸運なことに今日の訓練は休み、暇なのだ。
「あれ、お兄ちゃんどこかいくの?」
「ん?アイズ早起きだな」
「うん……少し木刀ふろうかなって」
眠そうなアイズは小さな木刀を持って俺の方に近づいてくる。アイズは小さい時から俺やお父さんの姿を見てきているから、剣を振るのが当たり前だと思っている。
お父さんはあまり握らせたくないらしいがお母さんは賛成らしいから何も言えない。
「俺は少し散歩かな。」
「わかった。気をつけてね」
「あぁ。 行ってくる」
そうしてアイズに背を向け歩き始めた。
「ここだよな?」
目の前にあるのはツタやらえだやらがもじゃもじゃしている洞窟。 生まれた時から近くの村で住んでるけどこんなところ来たのは初めてだ。
「とりあえず入ってみるか……」
腰に着けた剣に手を添えながらゆっくりと奥へ進んでいく。 そして五分くらい進んだだろうか、先に進めないところまで来てしまった。 そして奥にあったのは1つの綺麗な剣だった。
「綺麗……」
思わず手が伸びる。 そして手と剣が触れた瞬間目の前が光り輝いた。
「うっ!眩しっ」
――あら?久しぶりのお客さんですね
やっと周りが見えるようになったと思ったら、目の前には綺麗な女性。一言で表すなら《透き通っている》ような人。 俺は言葉を発しようとする。 が、なぜか声を発することは出来ない。
――あ、そうでした!お客さんは話すことは出来ませんでしたね?
胸の前で手を合わせて言う。
――まずは自己紹介させてもらいますね?私の名はクリスタル。 生命の精霊です。
精霊?
――今から貴方は私のマスターになるお人。 よろしくお願いしますね? アーク・ヴァレンシュタイン。
は?なんで俺の名前を知っているの?
――ふふっ、これも奇跡ですかね?同士の血が混ざっている子を主人にするなんて
色々勝手に話を進めているクリスタルという精霊に対して不信感を抱くどころか不思議とこの子に引かれている気がする。
――とにかく!契約しますかっ
ものすごく可愛い笑顔で言う。 どこかお母さんに似ているような気もするがそれは気のせいだろう。
クリスタルは俺に近ずいて言う。
――私は貴方と……マスターと共にあります。いつでもお呼びください。
そうしてクリスタルの顔は俺の顔に近づいていった気がしたが、気がついたら剣をしっかりと手に持ち洞窟を立っていた。
「さっきのは、夢ではなさそう」
綺麗でどんな色にもなりそうな片手細剣をみて思う。
「よしっ!帰るか」
そうして歩いてきた道を戻り家へ。非日常から日常へ戻る。 だがその日常が数週間後、壊れてしまうことをアークどころか村のみんなは知らないのであった。
2週間後
「なぁ……クリスタルこの剣の名前あんな簡単に決まって本当に良かったのか?」
『何回言うんですか!私は気に入ってますよ?結晶の翼と書いて《クリスタル・ウィング》』
「まぁお前がいいならいいけどさ」
修行の休憩時間にこうやって普通にクリスタルと話しているが、話せるとわかった時は本当にびっくりした。発端はあの日クリスタルと出会ったあと家に帰って両親に剣のことを突っ込まれたときに遡る。
「ただいまぁ」
「おかえりなさい」
帰るとお母さんが言ってくれる。そしてそれと同時にお父さんが反応する。
「お前その剣……」
「え?ぁあーこれは」
そういえばなんて説明するか考えてなかった、どうしよ。
「綺麗ね……結晶みたい。それになんか見てると懐かしい気持ちになるわね」
「え?」
お母さんが言った。 綺麗という言葉には賛成だ。 ただ懐かしいという気持ちはどういうことなのだろうか。
「ねぇその剣の名前って?」
「特にないけど……」
「じゃあ《結晶の翼》。クリスタル・ウィングというのはどう?」
「っ……」
そんな安直な……そう思った。 実際知らないだけで名前があるかもしれない。すぐにいいねとはいえなかった。だが頭の中で声が聞こえる。
『いいですね!!』
「っ!?」
「どうした?そんなビクッとして」
お父さんが心配する。
「いやっ!なんでもない!お母さんそれでいこう!めっちゃいいと思う!!俺少し素振りしてくるわ!」
そうして俺は逃げるように家を出た。
(クリスタル……?)
『あれ?どうしたんですか?』
頭の中だけに聞こえる彼女の声。
(なんでお前直接脳内に語りかけてくるんだよ)
『言ったじゃないですか。 マスターと共にあるって』
(言ってたけど……)
『まぁとにかくこれからもよろしくおねがいしますねっ!』
みたいなことがあった。そこから俺から呼び掛けたり勝手に脳内で話しかけられたりする。
「はぁ、とりあえず修行開始するか」
俺はそうして、剣に慣れるために素振りを始めるのだった。
その日の夜
「アイズ!アーク!逃げるんだ!!」
アイズは寝て俺はあと少しで寝ようとしていた時お父さんが突然玄関のドアを開いて叫んだ。
「どっ!どうしたの?!お父さん」
「押さえ込んでいた黒龍が攻めてきた」
「なんですって?!」
お父さんの言葉にいつも静かなお母さんが強く反応する。
「んぅ、どうしたの?みんな」
「アイズ?よくききなさい」
お母さんは起きてしまったアイズの肩を強く掴んだ。アイズは少しビクッとしたあと「なに?」といった。
「今からお母さんとお父さんはあなた達をなるべく遠くへ逃がすわ!」
「は?ちょっと待ってよ!」
聞き捨てならなかった。 その言い方じゃあまるで死ぬみたいだと思ったから。だから言葉をさえぎる。
「アーク?アイズを頼んだわよ?」
「っ……!」
覚悟を決めたような表情のお母さんそしてお父さん。
「アイズ?お兄ちゃんの言うことしっかり聞いて元気に過ごすのよ?」
「ママ……?」
少しアイズの目から涙が零れる。
「とりあえず外に出てなるべく遠くに!ゼウス様達は先に逃げてる」
「ねぇ……ベルは大丈夫だよね?」
「それはっ」
合図がベルのことをお父さんが何故だか話すのを渋っていた。
「ねぇお父さんベルに何かあったの?」
「とりあえず外に「お父さん!!」っ……わからない俺が知っている限りだと瓦礫に巻き込まれてかなりの重症だった……ゼウス様に簡単な治療を受けて先に逃げた。いや逃げてもらった」
少し間を置いてお父さんはいった。
「ベル……」
ボソッと名前を呼んだのはアイズだ。アイズはこれ以上声を出さない。だが涙を流し続ける。
確かにベルのことは心配だ。だけど今は
「「「「っ!!??」」」」
突然建物が崩れた音がした。 そして徐々に周りが暑くなっていく。
「くそっ!こっちまで燃え移って来たか!」
「行くわよ2人とも!『吹け(テンペスト)』エアリアル!」
お母さんは魔法を使ったあと、俺とアイズを抱えて走り出した。
かなりのスピードで走っているお母さんにお父さんは同じスピードで並ぶ。
そして村を出て近くの草原まで行く。
「アリア……本陣がこっちを追いかけてきてるぞ」
「えぇ、覚悟を決めましょうあなた」
ふたりは止まってお母さんは俺たちを下ろし2人で俺たち兄妹を抱いた。それも力強く。
「ママ?」
「お父さん?」
「「2人とも……愛してる。幸せになれよ(なりなさい)」」
耳元で……俺とアイズに聞こえるように言う。
これが俺たちが聞いた肉親の最後の声だった。
「くそっ!くそっ!」
「ママ!!パパ!!」
俺は泣き叫んでいるアイズを抱えて前へ前へと走り抜ける。
「ぁあ……あぁああああああああああああぁぁぁ!!!」
アイズが声を荒らげて叫ぶ。 後ろで何が起こっているかなんて前しか向いていない俺にはわからない。 知りたくない。 両親が死んだかもという可能性を考えたくない。 今すぐ後ろを振り向いて助けに行きたい。一緒に逃げたい。 だけど手遅れだ。 それはアイズの声で察することが出来た。
この苦しい現実を。
「アイズは寝てるか……そりゃあベルやお父さん、お母さんのことがあったんだ。 」
俺は逃げ続けてかなり離れた森に入った。ここだったら大丈夫……なはず。
ガサガサ
「っ!?だれ?!」
突然の草の音。 俺はアイズを守るように音の方に剣を向ける。
「アーク。ワシだ」
「ゼウス様!」
音の正体はゼウス様だった。
「お前ら無事か?」
「うん……でもお母さん達が」
「そう、か」
ゼウス様は曇った表情をした。 だが俺は自分たちの現状報告よりも気になることがあった。
「ベルは……無事なんですよね?」
「大丈夫。と言いたいが、分からないというのが現状じゃ」
「そっか」
「お主らはオラリオに行け。そこにいるはずのロキのところに行きワシの名前を出せば生活はさせてもらえるはずだ」
「オラリオ……」
こんな事で行ってみたいと思っていたところに行くとは思わなかった。 だが今はそれしか選択肢がない。
「わかりました」
「お前が18になる年にベルが無事だったら必ずそっちに行かせる。お前宛に手紙もだそう」
「はい。ベルをよろしくお願いします」
「あぁ。達者でな」
そうしてゼウス様と別れた。
俺たちは森を出た。俺はほんとに運がないと思う。何故かって?それは
「魔物が出待ち?ふざけんじゃねーよ」
残党のドラゴン達が待ち伏せをしていた。ほんとに思わず笑みが出てしまう。 その笑みは絶望だ。
「せめてアイズだけでも」
アイズに生きてもらうため、俺が身を呈すことを考えた。
《アイズを頼んだわよ?》
「違う」
お母さんは俺が死んでアイズを活かせという意味で言ったわけじゃない。
「違うだろ。 俺も生きるんだ」
決意を決める。アイズを地面に下ろしクリスタル・ウィングを構えた。そして脳内で彼女に話しかける。
(クリスタル力を貸せ)
『やっとですか!待ってましたよ!私の名を呼んでください!』
「あぁ。《クリスタル》俺に力を家族を護る力をくれ!!!!」
俺は口に出して叫ぶ。そして彼女は最後に微笑んで言った。
『はい。 我が《マスター》』
10年後
とある少女は、自分が愛した少年が死んだと思っている。
でも少女は強くなったみんなから❮剣姫❯と呼ばれるようにまで成長した。
でも少女の絶望はまだ消えていないこの絶望はまた自分が愛した少年に会うまで消えないだろう。だが彼女の絶望が消えるのはそう遠くない未来…
とある少女の兄は、この年を来るのを待っていた。前の主神からの手紙をこの十年間まち続けたそうして、あの人からの手紙が来る年になった
そうして、妹が愛している少年が来るのをずっと待っていた。
その少年が俺たち兄妹の目の前に現れたならば、前みたいな妹の笑顔が……本心の笑顔が十年ぶりに見れるだろう。
とある村の少年は、離ればなれになった少女…自分が好きな人に会うために、護るため、《英雄》になるために
この十年間の修行を死ぬ気で頑張った。
とある日お祖父ちゃんから…
「□□よお前は厳しい修行によく耐えた。だからお前はオラリオへ向かうのじゃ」
少年はこの言葉をずっと待っていた。十年間ずっとまっていた。
「はい!お爺ちゃん」
そして今一人の少年が今都市❮オラリオ❯へ向かおうとしていた。
「アイズ……やっとそっちに行けるよ」
16になった少年は空を向いて笑うのだった。
プロローグ時点の年齢
アーク・ヴァレンシュタイン(8歳)
レベル2
一応恩恵を授かって2ヶ月程度でレベル2になっているがオラリオに居ないため何も音沙汰がない。
熟練度は魔力以外オールA
最近の悩みは本を沢山読んでるのに魔法が発現しないこと。そしてスキルも……
アビリティは狩人
父親にほとんど毎日と言ってもいいくらいボコボコにされていることを除けば普通の村人。
クリスタルという精霊に出会った。そして彼女には秘密が……?
アイズ・ヴァレンシュタイン(6歳)
アークの2歳離れた妹。
この時はまだ感情を表に出していた。
親の関係に憧れ英雄を求めているか弱い女の子
ベルの英雄になる宣言で元々好きだったのがもっと好きになった。
時々アークや父親の真似をして剣を振っている。才能はあるみたいでかなり上達してきている。
ベル・クラネル(6歳)
この世界軸だと6歳のアイズの英雄になる宣言をした兎のような少年。
一応ゼウスの恩恵を刻まれているが、まずベルがおじいちゃんと思っている人のことをゼウス様……神様と知らないため、まだ知らされていない。更新もしていない。
アイズには一目惚れである。
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
第1話 アーク・ヴァレンシュタイン
ここからが1話になります!
補足などはおいおい説明しようと思ってるのですが、気になる点とか普通に感想はいつでもお待ちしてますっ!
それではお話をお楽しみくださいっ!!
アーク視点
コンコンとドアが鳴る。
「あーくん入ってもええか?」
今の主神ロキの声が聞こえ俺は反応する。
「ロキか……いいよ」
ガチャとドアが開くのと同時に手に持っている紙をヒラヒラして言う。
「あーくん宛に手紙や」
「え?」
俺はロキに近づき、その手紙を手に取る。
「渡したで。 じゃっうちは戻るわ」
「おう……ありがとう」
いつもは鬱陶しいくらいのロキが今日はめんどくさい絡みをしてこないで部屋を出る。
「珍しいこともあるもんだな」
ボソッと声に出す。
まぁそれにしても
「誰からだ?」
手紙の裏表を見るが、アーク・ヴァレンシュタインへとしか書いていない。 とりあえず俺は手紙の封を切って手紙を見た。
「そうか。 もうこんな時期か……ベル」
ゼウスよりと書いてある子を見て俺はなんとも言えない喜びを胸に秘める。
「生きて……いてくれたんだな」
ベルが生きていた。 それは俺にとって、アイズにとってとても嬉しいことでって、アイズに関しては100パーセント死んでいると思っているため嬉しい所の問題ではないだろう。
だからこそ俺は涙腺が爆発しそうになっているのだ。
復讐の炎に燃えている妹を少しでも落ち着かせることが出来る。
今日をきっかけに少しでも明るくなって、年相応の女の子になって欲しいという願いが叶うかもしれない。
そんな可能性を胸に秘めて心が踊る。
「それにしてもまぁ……」
そして手紙の内容を見て絶句する。
内容はこうだ。
アーク。アイズも含め元気にしとるか?
この手紙をそっちに送ったってことはそういう事じゃ。
ベルは生きている。 明日にはオラリオに着いているはずじゃ。ベルはワシの恩恵を刻んでいる状態で修行もした。 ステータスは更新し続けているが何も伝えとらん。ロキにはまぁごめんと伝えといてくれ。
いつか顔を見せに来い。約束じゃ
ps、ベルには少々特殊な武器を持たせとる
「はぁ……もういいや。 」
一瞬めんどくさいことが起こりそうだなぁと思いつつ俺は明日が楽しみだなと笑みを浮かべるのだった。
手紙を置いて少し外を見ているとドアからコンコン音が聞こえた。
「あのっ!アークさん3週間後の遠征についてフィン団長からお話があるみたいで」
「あぁ、わかった。すぐ行くよ」
ドア前から可愛らしい女の子、よく知っているエルフの声を聞き、俺はこのロキ・ファミリアの団長の所へ向かうのだった。
「フィン、アークだ」
「待ってたよ。」
一言事かけて団長室へ入る。 そこには団長《勇者》フィン・ディムナが居た。
「遠征の話ってレフィーヤから聞いたけど?」
「そうだ。まぁその前に別のことがあってね。さっき親指が疼いたんだ」
「は?」
突然意味のわからないことを言い始める。 まぁ今日に限った話じゃないが。 まぁフィンの勘はよく当たるんだけども。
「今失礼なことおもわなかったかい?」
「いやっ?」
――心を読まれた……。
思わず視線をずらす。
「まぁいい。 話を戻すけど新しい風が吹く感じがしたんだ」
「っ……」
――もしかしてフィンは、ベルのことを……
フィンのその勘は時々未来を見てきたんじゃないか?と思う時がある。 今がそれだ。
「明日……」
「ん?」
「アイズの英雄が来る」
「そうか。じゃあ新しい風ってのはその事かな?」
フィンは最初に会った時に言ってた子だね。と言って笑う。
「それは分からないけど可能性はある」
「会ってみないと分からないね。うちのファミリアに来る予定なのかい?」
「多分」
ゼウス様の事だからべルにロキ・ファミリアに行けと言っているはずだ。 だけどベルが他に行きたいところがあるならそれを肯定すべきだと思っている。 だからここは曖昧な言葉で返す。
「了解だ。 とりあえず明日楽しみにしてるよ。 そして遠征のはなしだが……」
「わかった。 基本的に後衛の援護ね」
「あぁ、頼むよ」
「了解」
話を聞くといつもなら中衛で前と後ろを行き来するのだが次の遠征はずっと後ろらしい。
前にいるよりは窮屈になる。
「でもアークには臨機応変に対応してもらう。 頼むよ期待のレベル6」
「その言い方やめてくれ。 最近伸び悩んでるんだから」
俺は今レベル6。 都市内でもファミリア内でも最強の一角……らしい。 最近ステータスの伸びが悪いこともありそれを聞くと少しとモヤモヤする。
ていうかうちは別にレベル6が少ない訳では無い。他に比べれば多い方だ。
「まぁ、とにかく頼んだよ」
「ん」
そうして俺は部屋を出た。
「あ、あの!アークさん!!」
少し廊下を歩いていると後ろの方から声が聞こえた。
「お、レフィーヤ。さっきはありがとね」
振り向いて言う
「いえいえ!」
レフィーヤは両手を振りながら言った。
この子はレフィーヤ。 エルフで魔力お化け。 レベル3でリヴェリアの後釜。
この子はほんとに仕草のひとつひとつが女の子って感じがする。アイズも年頃なんだからもう少し女の子感を出して欲しい。私服もあんまり持ってないらしいし。
「次の遠征、後衛の援護になったからよろしく」
「ほんとですか?!足を引っ張らないよう頑張らさせていただきます!」
レフィーヤは謙遜をする。
正直レフィーヤは十分強いし力になってくれてる。
この子は要するに自分に自信がないんだ。
どれだけみんなが褒めたりしても自分を下に下げる。
「レフィーヤは充分仕事をしてくれてるよ。 少し贅沢言うなら平行詠唱はできるようになって欲しいけどな」
全て本音だ。それは笑い事のように言う。 平行詠唱の習得は一応難しいだけどできるだけで助かる場面は絶対出てくる。リヴェリアの後継者なら尚更だ。
ちなみに俺は平行詠唱は余裕でできる。
「ぅぅぅぅ……練習してるんですけど実践になるとどうしても」
「ふーん……じゃあ遠征の時覚悟しときなね」
少し考えたあと、俺はこの子に自信をつけて欲しいということで、遠回しの練習に付き合うよと伝えた。それが伝わっているかは分からないけど
「本当、ですか?」
どうやらすぐに伝わったらしい。
さっきまで少し曇ってた表情がパァっと明るくなった。
「さすがにずっとは無理だけどな」
「よろしくおねがいします! 早速今から色々勉強とか準備しないと!失礼しまーす!!」
「お、おーう。頑張れよぉ(?)」
レフィーヤと俺は別れた。 というかレフィーヤが少し耳を赤くして食堂の方へ行ってしまった。
『相変わらずマスターも隅におけませんねぇ』
(なにが)
『ナンデモアリマセン』
突然話しかけてく、ふふふっと笑っているクリスタルに対して塩対応をする。
なんかめっちゃウキウキしてたし、そういう時のこいつとロキほどだるいものは無い。
ていうかクリスタルはなんで俺をいじる時ウキウキし始めるのだろうか。ていうかさっきの会話のどこにいじる要素があったのかが分からない。
「というかなぁ」
俺はレフィーヤに関して少し思うことがあった。
――あの子は今のままのスタイルがいいと思うんだよなぁ。
レフィーヤからちょくちょく聞く理想系。あの子はリヴェリアの後継者。 俺の戦闘スタイルである魔法剣士には合ってないと思う。憧れているのは嬉しい。だけどあの子の良さを引き出すなら……
「はぁ、とりあえず明日の準備するか」
俺は色々考えていたがそれを1回放棄して部屋に戻るために歩く。
――――――――――――――――
神様視点
「アークさんに、あのアークさんに並行詠唱のご教授を願えるなんてっっ!!」
「良かったじゃんレフィーヤ。でもさ少し落ち着こ?」
食堂にてレフィーヤと同室のヒューマンエルフィと話していた。
レフィーヤは少々興奮しているようで、その話すテンションでエルフィは引いていた。
「だって!あのアークさんだよっ?!」
「そうだよねぇ、アークさんの戦闘スタイルが目標だもんねぇ」
「はい!!」
レフィーヤはとびっきりの笑顔で返す。
アーク・ヴァレンシュタイン。
《剣姫》アイズ・ヴァレンシュタインの兄であり、神々からは《守護者》と書いてガーディアンという2つ名が与えられているレベル6の第1級冒険者である。
彼の戦闘スタイルは、魔法剣士。 剣術にも魔法にも長けておりまさにオールラウンダーと呼ばれるものだ。
そんなアークのことを魔道士のレフィーヤは目標としているのだ。というかレフィーヤはヴァレンシュタイン兄妹を尊敬している。
「(まぁ、レフィーヤは憧れとか目標とか言ってるけど、アークさんに対する想いは絶対ほかの感情があると思うんだけどなぁ……明らかにアイズさんとは少し違う)」
恋愛ガチ勢エルフィは心の中でエルフの少女を見ながら思うのだった。
翌日
アーク視点
「よしっ行くか」
普段の服装。ダンジョンに行く時には着ない私服を着てホームを出る。
「おっ!今日はおしゃんやーん」
「げ、ロキ」
「げとはなんやげとは」
ホームの玄関へ向かうために歩いているとロキと会う。
「ちょっとね」
「ふーん……楽しみにしてるで」
「っ!!」
ニヤッと笑って俺の横を通る。
「ベルのこと言ってなかったと思うんだけど?」
後ろのロキを見てボソッと言う。 あの主神はほんとに何が見えてるのかが分からない。
「とりまっ、出ますかぁ」
「お兄ちゃん……お出かけ?」
「んお?アイズ」
背伸びをしてまた歩き始めると次はアイズと出会う。
愛剣を腰にぶら下げている。
そのまま話しながら外へ繋がるホールへとむかう。
「いや?ちょっと知り合いにね」
「そっか。」
「アイズは?」
「素振り……しようと思って」
昔みたいな明るい感じは無くなったが、アイズは余り変わらない。 朝起きて素振りをする。その後にダンジョンに入り浸るが追加されただけだ。 まぁそれが問題なんだけど。
「いつも通りね。 今日はダンジョンに行かないでホームにいな」
「え、どうして?」
アイズは顔を傾けた。
まぁ理由はまだ言わない方がいいと思ってるから「なんでも」といってゴリ押しでいく。
「わかった……」
「ん、偉い。 たまには休むのも大切だからな。 遠征も近いし」
「うん」
アイズは縦に頷いた。
そして他愛のない話をしていたらホールにつき、ドアを開いた。そして憎悪と復讐の炎で少しの感情を燃やされたアイズは少し微笑んで言う。
「行ってらっしゃい」
「ありがとアイズ。行ってきます」
アイズは俺に対して行ってらっしゃいという時だけ前みたいに微笑む。
昔みたいな明るさは少し無くなったけどこうやって変わらないところを見ると、落ち着く。
アイズはそう言うと歩いていつもの訓練場所へ向かった。
それを見送り、いなくなった所を確認して俺はオラリオの入口に向かうのだった。
「それにしても……いつ来るのか分からないんだよなぁ」
門前のベンチに座って絶望する。
ここに座って1時間くらいが経過した。一応朝早くから来てみたが案の定それっぽい子は見当たらない。早く来すぎたのだ。
白い髪に紅い瞳。まるで兎のような特徴な彼はわかりやすいはず……少し背とかは伸びてるかもしれないけど特徴的な髪とかは変わってないはず。だからそれを目印にして正門から検問を終わらせて入ってくる人を眺める。
「ん〜……ん?」
特徴に当てはまる子が周りの人が怪しむほどキョロキョロ周りを見ながら検問所からでてきた。
――あれだ!
ベンチから立って、近くまで寄る。近ずいて行くと少し低くなった声が聞こえる。
「ここがオラリオ……やっと会える!」
そんなことを声に出して言う。
そして俺はその子に対して言うんだ。
「そこの少年!オラリオは初めてかい? 良かったらお兄さんが案内してあげよう」
と。
続く
〜クリスタルと???の設定公開のコーナー〜
「みんなさんお久しぶりです!クリスタルです!今回でもここの枠を貰ってマスターやそのお仲間さんたちの紹介をしていこうとおもいます!!え?なんか1人少ないって? あの子は今後ろで待機中です! 早速ですが今回は、マスターの魔法を一つだけ簡単に説明させていただきますよ!」
魔法名…クリスタル
詠唱……輝け《シャイン》
効果……付加魔法。 精霊の光を身にまとう。全ステータスの大幅上昇。
攻撃をすればするほど周りの光の粒子は光を増し、光線として放出することができ攻撃に使うことが出来る。
「こちらですね!これは付与魔法。 マスター自身を強化するものになってます! 魔法名が私の名前だって? そうなんですよ!これは私がマスターと契約した時に与えられた加護の1つで、とても強力なものとなってます! 強化だけではなく攻撃をすればするほどマスターの周りで輝いてる光の粒子が大きくなって光線としてつかえるんです。遠くからの攻撃も可能としている万能魔法になってます! それではっ今日はこれで終了です。 次回第2話は《再会》です!お楽しみに」
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
第2話 再会
皆様プロローグや1話を見てのお気に入りに登録ありがとうございます。
感想等も待っているので気が向いたらしてくれると嬉しいです。
??視点
「すごい高い……」
僕は今知り合いのおじさんの馬車をおり大きな壁の前に居た。
ここは迷宮都市オラリオの入口。
ずっと憧れて、行かなきゃと思っていた場所。
「ベルここで別れることになるが気をつけろよ」
「ありがとうございます!おじさん!!」
僕はここまで馬車を引いてくれた村のおじさんに感謝の言葉を言って、別れた。
そして長蛇の列が出来ているオラリオに入るための検問所に行くために並ぶのだった。
「次の人〜」
「はっはい!よろしくおねがいします!」
30分くらいだろうか。それくらい並んだくらいでやっと自分の番になった。
「あの、よろしくおねがいします」
「そんなに緊張しなくていいよ〜」
検問所に入って待っていたのは、可愛らしい女性だった。
「私の名前はアーディ・ヴァルマ。あなたは?」
「ベル・クラネルです!」
なるべく明るく、いい印象を与えるようにいった。
「クラネル君ね……珍しいね」
「そうなんですかね?」
「オラリオにはどこいった目的で?」
「10年会ってない知り合いに会うのと、冒険者になろうと」
本当のことだ。
「ふぅーん。どこかのファミリアには所属してる?」
「いえっ!ずっと祖父と一緒だったので入ってません。」
「無所属っと。ごめんね?持ってる物見させてもらっていいかな?結構な荷物だから軽くだけど」
「大丈夫ですよ!」
僕はそれなりに大きいカバンを床に置き、見せるように開く。カバンの中には少しの衣服とおじいちゃんから貰ったナイフ二刀、本くらいだ。
「英雄譚すきなの?!私もなんだよぉ。 機会があったら語り合おうね」
「はいっ!」
おじいちゃんオラリオの人は積極的って本当だったんだね……アイズも昔と変わってるかも。
少し不安になる。 アイズがあんなに色々な男性に積極的だったらって考えると寒気がする。
「最後なんだけど、背中見せてくれないかな?」
「え?」
「外の神様の恩恵貰ってるかもしれないからね」
「はい」
僕は後ろを向いて、背中を出す。
「これって」
アーディさんが驚いたような声を出す。
「本当にファミリアには入ってないんだよね?」
「?そうですけど」
「(これってゼウスファミリアのエンブレム。 でもこの子はファミリアには入ってないって言ってた。この子が悪い子にも見れない)」
「ちなみになんだけど、会う人の名前って言える?」
少し震えて言うアーディさんに疑問を抱きつつ僕は、1番会いたかった人たちの名前を言う。
「アーク・ヴァレンシュタインとアイズ……アイズ・ヴァレンシュタインです」
「っ!?そっか!じゃあもういいよ! 頑張ってね未来の第1級冒険者!」
「はいっ!ありがとうございました!!」
2人の名前を言ったら、ほっとしたような顔をして笑顔を返してくれた。
そして僕はやっとオラリオの中へと足を踏み入れるのだった。
「アーク君達が知り合いなら安心かな」
辺りには僕が住んでいたところでは見た事のないような高さの建物が沢山だった。
「ここがオラリオ……やっと会える!」
ついに来れたことに対しての感動と、さっき2人の名前を言ったことで、早く会いたいという気持ちが僕の中で強くなる。でも2人がどこにいるか分からない。 というか最初どうすればいいのかも分からない。周りをキョロキョロ見渡していると、おじいちゃんに言われたことを思い出した。
――あっ確かおじいちゃんがオラリオに着いたら手紙を見ろって……
「そこの少年!オラリオは初めてかい? 良かったらお兄さんが案内してあげよう」
カバンの中を見ようとしたら後ろから男の人の声後聞こえる。オラリオってこんな僕ににも優しくしてくれる人が居るんだなぁと思ったのと同時に後ろを振り向く。
「ほんとです……か?」
後ろを振り向くと、金髪で身長が高い人。 僕はこの人みたいな特徴を持った知り合いを知っている。
「アーク……さん?」
「よう!ベル久しぶり。大きくなったな」
「アークさん!!」
思わず抱きつく。 10年ぶり久しぶりに会った憧れていたお兄ちゃん。とても大きくなっててかっこよくなっている僕の姫のお兄ちゃん。
「僕……ぼく…」
今までの事を思い出す。 気がついたらおじいちゃんと二人っきり、アイズやアークさんと会いたくても無理だと一掃されてとても寂しい思いをしてた。 おじいちゃんから課される修行を沢山して紛らわしてた。 そんな10年間を思い出して涙が出そうになる。
「あぁ、見た感じ頑張ったんだな」
アークさんは僕の状態を見て判断してくれた。
「うん」
――そうなんだよ。 頑張ったんだよ僕。
「ベルのことずっと待ってた。 お前が、アイズの英雄がここに来るのを」
「ねぇ、アイズは」
アークさんからアイズという名を聞いて思わず聞く。
「元気にしてるよ。 でもベルのことをあの日のモンスター達に殺されたと思い込んでる。 実際俺もぜう……お前のおじいさんから手紙が来るまで分からなかったしな」
「そっか……」
おじいちゃんがアークさんに手紙を送ってたの初めて知った。 それだけ僕は外からの情報を閉ざされていたんだと感じた。おじいちゃんがなにかの目的を持って僕を育ている感じ。でもそこにはしっかりと愛情があったから特に何も思ってない。
「とりあえずベルはこの後どうする?」
「えっと……おじいちゃんから手紙を持たされてて、着いたら見ろって」
「ん〜じゃああそこのベンチで見るか」
アークさんは少し遠くにあるベンチを指さし「いくよ」と僕に行って歩き座った。
「手紙って?」
「えっとぉ、これなんだけど」
僕は少し折れ曲がってる手紙を手にとった。
そして封を切って手紙を見る。
ベルか?
ワシじゃ愛しのおじいちゃんだ。
これを見ているということはオラリオに無事ついたみたいじゃな。恐らくお前は、何をすればいいか分かってないであろう?安心せい!
アークにお前のことを伝えといた。色々紹介してくれるだろう。 そしてこの手紙と一緒にロキという神宛に手紙をつけとく。それをロキに渡したらファミリアに入れてくれるだろう。 そしたらお前さんは冒険者じゃ!
いつかベル、アーク、アイズでワシに顔を見せに来い。約束じゃ。
愛しのおじいちゃんより
「おじいちゃん……」
「おじいさんも考えたな。 これだったらファミリアに入れる。」
「ほんと?!でもロキファミリアって?」
誰も知らない場所でしっかり冒険者できるのか不安になる。アークさんやアイズがどこに所属してるかなんて分からないし。
そんな不安を抱いていた。
「俺もアイズも所属しているこのオラリオの2トップのファミリアのひとつだぞ」
「え、アークさん達もいる?」
「あぁ」
一気に緊張の紐が解けたような感覚がした。
安心したんだ。
「よかったぁ」
「なんだよ、俺とか居ないと思ったのか?」
「だってぇ」
久しぶりに会ってこんな弱々しい声を出すなんて思わなかった。 できるなら強くなったところを見せたかったのに。
「安心しろ、できる限りの事はサポートする。」
「ありがとうございます」
「じゃあ早速だけど、俺たちロキファミリアのホーム《黄昏の館》に行こうか」
「はいっ!!」
そうして僕はアークさんに案内されて、初めての道を歩くのだった。
神様視点
「アークさん先に行きますよ!あそこですよね!!」
「そんな急がなくても大丈夫だって!ここからだと歩いて10分くらいなんだからそれくらい我慢しなって」
「いやっ!先に行きます!!」
ベルはアークにそういい一瞬でアークとの差を作った。
「おっおい!(はやっ!!この速さ普通にベート以上なんじゃ……レベル4位か?)」
そんなことをアークは心の中で思い、小走りでホームへ向かう。
そしてベルはまぁまぁ距離があったのにも関わらず3分程で門の前へ立った。そして門番の男に話しかけるのだった。
「あのっ!」
「なんだ?」
「このファミリアに入りたくてきました!」
「帰れ帰れ!お前みたいな弱そうなやつ、このロキファミリアに望まれてない」
「えっ、でも招待状?だって」
男はベルに冷たい態度をとり、それに対してベルは困惑する。それは行く道中で俺の家族は良い奴ばっかりとアークに聞いていたからだ。
「そんなわけないだろう!さっさと別の弱小ファミリアに行くんだな」
「おい」
そこにちょうど合流したアークがいつもより圧強めで声を発する。
「なっ!アークさん」
「何をしている?」
「この小僧がこのファミリアに入りたいと「ならなんでさっきから入れようとしない?」それはこんな弱そうなやつ入れるべきではっ」
「それはお前が決めることじゃない。 ロキやフィンだ。 それに入団希望者がきたら入れるようにって言われてるだろお前」
「そっそれは!」
アークは門番の男を言葉で押しつぶす。
ベルにとってこんなアークは見たことはなくて唖然としていた。
「ここの団員だからって調子に乗ってんじゃねぇぞ?」
その発言とともに顔を近づけた。
「ひっ?!」
顔を一気に近ずけ威圧したアークの行動で門番の男は腰を抜かしその場でしりを地面につける。
「ベル行くぞ」
「え、でも」
「いいんだ」
「わかった」
ベルは少し悲しそうな顔をして門番を見たがすぐにアークについて行った。
そうしてやっと、アークとベルは黄昏の館に入るのだった。
「ロキはいるぞ」
そんな言葉と同時にドアを開ける。
「あーくんな。そういうのは1回ノックするもんやで?」
「ごめんだけど、今そんなに心豊かじゃない」
「ん?どうしたんや?」
明らかにイライラしているアークに対してロキは疑問をぶつける。
「あの今日の門番についてだけど、この後ろにいる俺の大切な弟のような存在でもあり、アイズの英雄のベルを弱そうっていう理由で追い出そうとしてた」
「おっ!その子やな小さい時に言ってた子は」
ロキは立ち上がりアークの目の前に立つ。
そしてベルはアークの背中から隠れていた体を見える位置に移動して口を開く。
「ベル・クラネルです!」
「申し訳なかったなぁベル。 その門番にはそれ相応の対応をさせてもらうわ」
「そんな事しなくても「たのんだ」アークさん?!」
ベルが門番を守ろうとしたらその言葉をさえぎってアークが言った。
「ベルお前の優しいところは変わってないしいい所なんだが、こういう時は人に厳しくなれ」
「そっそれは……はい」
「まぁまぁ。そんなことよりもベルはうちの入団希望者であっとるか?」
「はい」
ベルは元気よく返事をした。
「おっ、アーク戻ったようだね」
そのタイミングでフィンがロキの部屋に入ってくる。
「フィン……お前もか」
「え?何がだい? そんなことよりさっきは我々の団員が失礼なことをした。団長として改めて謝罪させてもらうよ」
あの状況を見たのか、それとも盗み聞きをしてたのか不明だがフィンはロキからの言葉を一言でスルーしベルに謝罪する。
「いえいえ!ご丁寧に……えっと」
「僕はフィン・ディムナ。このロキ・ファミリアの団長をさせてもらっている」
「ベル・クラネルです!」
フィンはベルに名乗りベルも名乗った。
「ベル、手紙渡さないと」
「あっ!そうだった!ロキ様。 僕のおじいちゃんから手紙があって」
「手紙?(あぁ、あのクソジジィからか)わかった。貸してみ?」
ベルはロキに手紙を渡し、ロキはそれを眺める。
「(なるほどなぁ……)ベル!実力テストしよか」
「テスト……ですか?」
「おい!ロキそんなこと今まで「アーク?ロキの話を聞こう」わかった」
「そや!この手紙を見て直接実力を見たくなった。もちろん恩恵を更新させてもらう」
「どういうことは?」
「これからベルはウチらの家族や」
ロキからのその言葉にアークは胸を撫で下ろし、ベルは目を輝かせる。
「ホントですか?!」
「せや?ちなみにお前の爺さんは知り合いの神に頼んでベルに恩恵を刻んでもらってたらしいんや、それも内緒でな?だから改宗っていう流れになるがええか?」
「そうなんですか?!よろしくおねがいします」
「ちなみにレベルは4らしいな」
「っ?!」
「へぇ」
その言葉にアークは驚き、フィンはニヤッと笑った。
「ベルお前……おじいさんとどんな修行をした?」
アークは思わずベルに聞いた。そしてベルは少し考えたあと口を開く。
オラリオのモンスターより弱いのもあって外の世界でそこまで強くなるのは難しい。 あの最高神と一緒にいたとしてもだ、
「えっと、アークさんと別れなくならなくなった時の事件からドラゴンが出てきたのは知ってる?」
「あぁ」
あの黒龍の襲来から、オラリオの外で推奨レベル5のドラゴンが大量発生した。 最初は騒がしかったらしいが知らない間にその話を効かなくなった。
誰かが倒したか、自然消滅したか。当時のアーク達には分からなかった。
「それをひたすら1人で倒してた。」
「「「は?」」」
思わず3人の声が揃った。
「僕魔法とか使えないから大変だったんですよぉ〜」
「純粋なステータスや技術のみであのドラゴンをやった……やと?」
「あはは……面白くなってきたじゃないか」
ロキは純粋に絶句し、フィンは笑う。
アークはと言うと
「あのベルが逞しくなって……」
少し涙を零していた。
アークにとってはあの、弱虫兎のベルがそこまで強くなっているという事実が誰よりも嬉しいのだ。
「とっとりあえず、恩恵刻もか。そこに上裸で寝っ転がって欲しいんやけど」
「あっはいっ!!」
ロキはアークがいるということで今回は変なことをせずに普通に作業をしていた。
そんな無言が続くかかフィンが口を開いた。
「僕がベルの相手で構わないよね?」
と。
「「え?」」
「え?!フィンさんですか?!」
寝っ転がっているベルがすぐに反応する同時にアークと、ロキは間抜けな声を出した。
レベル6の第1級冒険者《勇者》フィン・ディムナがベルの相手をすることになった。
これはロキ・ファミリアにとって新たな風が吹くということを予期しているのはこのパルゥムしか居ないだろう。
続く
〜クリスタルと??の設定紹介のコーナー〜
「皆様どうもクリスタルです。今回もアーク・ヴァレンタイン……マスターの魔法についてひとつ説明させてもらいます。」
《色彩の記録》カラーメモリー
超短文詠唱のチート級魔法のひとつ
効果は色から連想される属性を纏うこともできる。連想するものによって魔法は変化する。
発動中、常に魔力が消費される。
発動文例》 の記憶 の力を解き放て
「これも私の加護によって発現した魔法なんですが、かなりのチートですね。 ただかなりの知識がないとこの魔法は強力にならないので、小さい時からたくさんの本を読んで知識があるマスターだからこそ使える魔法と言ってもいいかもしれないですね。ちなみにこの魔法使うとマスターの目の瞳やクリスタルウィングに埋め込まれてる結晶がその色に変化します。マスターのお気に入りは炎らしいですね。この魔法があるからこそマスターは魔法剣士として最強と言われてるんです。説明文には纏うって書いてますけど色によって回復したりもできるんですよ。 言ってしまえば魔法の拡張ですね」
「それではこれで以上です。次回第3話は《兎と少女》ベルさんがあのフィンさんと戦って…?!ちょっ!アイズちゃんどうしちゃったんですか?!みたいなはなしになってます。それでは次回また会いましょう!」
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
第3話 兎と少女
なんと前のアカウントに接続出来ました。
かなーりまえのメアドで昔使ってたパスワードを使ってみたらログイン出来ました。
その証拠に《剣姫に兄がいるのは間違っているだろうか(再)》を削除しているのが確認できると思います。
削除させて頂きました。
これからはこちらでやらせて頂きますことをここでご報告させてください。
本当は(再)の前のやつも消したいんですけどそっちは俺も確認のために読み返したいので消してません。ご了承ください。
前より格段に面白くなっていると思っているのでこっちで楽しんで貰えると嬉しいです。
それでは旧AKTN。現フィナからのご報告でした。
これからも感想等お待ちしております。
ベル・クラネル レベル4
ステータス
力A843 耐久C611 器用 B788 俊敏 SS1022 魔力C677
発展アビリティ
幸運 F 耐異常G 逃走I
魔法
《雷炎》ヴローガ
詠唱式(雷)『ブロンテ』
また
詠唱式(火)『カプセト』
詠唱式(同時)『ブロン・セト』
火・雷属性
どちらかまた両方の属性の使用が可能
付与魔法
スキル
《誓炎》
呪い、状態異常への耐性
…………
《ドラゴンキラー》
龍種に対して超攻撃補正
「これが僕のスキル……魔法があります!!まほうがありますよ神様!!」
「なんや?憧れてたんか?」
「はい!!」
ベルは2歳くらい精神年齢が下がったように笑う。
ベルは英雄譚に載っている英雄たちに憧れているのもあって魔法とかそういう類に強い憧れや理想を抱いている。
「まるでここに来たばっかのあーくんやな」
それを見たロキは昔のまだ可愛げがあったここに来て改宗した時のアークを思い出す。
『っ!?魔法とスキルだ』
『そうや?発言してたで?』
『今まで全然スキルも魔法も発現しなかったのに……やった。やったよロキ様!』
「懐かしいなぁ。なぁ?フィン」
「そうだね。あの時の笑顔は今でも忘れないよ」
フィンも少し思い出しはははっと笑う。
「ベルの前でやめて……恥ずかしい」
アークは手の甲を口に触れ後ろをむく。その後ろ姿から見える耳はほんのり赤くなっていた。
「アークさんの魔法ってどんなやつなんですか?!」
「え?ん〜俺のやつは付与魔法と色の数だけある魔法かな……まぁ最後と色の数だけ〜ってのはチート過ぎて1部の色と3個目の魔法はロキから禁止令が出されてるんだけどね。」
「そうなんだ」
アークは優しい眼でベルを見つめ言う。
「チートってのは認めてたんやな」
「そりゃあ、色につきひとつ以上魔法が使えて、色で連想できる俺の中の知識に能力が反映されるって意味わからんし」
「何それ」
ベルはそれを聞き苦笑いをする。
「えっと、魔法のストックって1人3つまでが普通なんだ。まぁうちにいるリヴェリアやレフィーヤとかは異例だけど。そんな魔法の上限を俺は色から連想できる俺の知識内のものの力を使うことが出来る。例えば赤なら炎とか青なら水、緑なら風、黄なら雷、白なら光、黒なら闇かな」
アークは淡々と自分魔法についてベルに説明する。
「それって強すぎません?」
「ん〜そうとも言えないんだよね。俺の中の知識が更新されたら変わってしまう時があって今までとは違う能力が出てしまう。それって戦いの場だとウザイんだよね。今まで通りの戦い方が出来なくなる」
「っ。なるほど」
「だから、なるべく根本となる認識は変えないようにしてる。というか沢山使ってなかなか変わらないものを使うようにしてる」
「大変……だね」
「そんなことない。魔力の消費が激しいけどこれに何度も助けられた。俺も仲間もな」
「そっか。僕もこの力で助けられるかな」
「あぁ、きっとな」
少ししんみりする。 それはあの時家族を失ったアーク。そして村の人はもちろんたくさんの別れがあったベルだからこそあの時この力があればとか思ってしまうのだろう。
「ほら2人とも!しんみりした雰囲気はなしや!これからテストがあるんやからな!」
ロキが口を開き明るく言う。
流石神ロキというところだろうか、場の空気を壊して良い雰囲気にした。
「じゃあうちは今いる団員訓練所に集めるわ。フィンも頼む」
「わかったよ」
「ベルはえっとぉ。ちょっとまってな?」
ロキはフィンに指示したあと、クローゼットの方へ走ってすぐ戻ってきた。ダンスパーティーとかで使われる仮面を持って。
「これをつけてフードとかで髪の毛を隠してフィンと戦ってもらうで」
「これ……ですか?」
「ロキ……(こいつもしかしてアイズの反応楽しむために)俺はリヴェリアとガレスにベルのこと言ってくるわ。ベルはここで待ってな」
「はっはい!」
アーク、ロキ、フィンはロキの部屋を出るのだった。
そして3人は歩きながら少し険しいような楽しそうな、複雑な表情をしていた。
「ホントなんやこのステータス。SSて」
「ロキそこだけでは無いだろう?」
「分かっとるでフィン。ベルには見せてないスキルやろ?」
《想愛一途》ムータル・フレーゼ
想愛相手と共鳴する
相手を想えば想う程早熟する
魅了に対して高耐性
「多分これがクラネル君が外であれほどのステータスになった要因だね」
「俊足に関してはベートと一緒かあれ以上だった」
アークは目の前からすぐいなくなったことなどを思い出し少し笑って言った。
ベルがまだアイズのことを想ってくれている証拠としてスキルが発言しているのもとても嬉しい。
「これは少し考えないといけないね」
「「?」」
フィンがボソッと言っていたことに対してアークとロキは頭にはてなマークを浮かべていた。
そして各自テストのことを伝えに行くのだった。
「ねぇアイズ〜。今日ダンジョン行かないの?」
「うん。お兄ちゃんと行かないって約束した」
アイズは、同じレベル5ティオナ・ヒュリテと部屋で話していた。
「いつも、無視して行くじゃん」
「それは、そうだけど。今日はなんかある気がするの」
「え〜?なにそれぇ」
アイズのその言葉にティオナは不服らしくブー垂れている。
「ティオナそこら辺にしておきなさい? せっかくアイズが休もうとしてるのよ? いい機会じゃない」
「ティオネ……」
タイミングよくティオネ・ヒュリテが部屋に帰ってきた。
「ティオネ!せっかくのアイズと2人っきりでの女子会に勝手に入って来ないでよー!」
「ここは私の部屋でもあるのよ? それが嫌なら別のところでやりなさい。ていうか女子会って言うよりただダンジョンに誘ってただけじゃない」
「む〜。ただ暇になったから誘っただけだもん!」
「あら、そうなの。 ていうか団長からの言付けよ。 今から新しい団員のテストをするらしいわ」
たまたまティオネはフィンと会っていたのだ。
そこで、テストをやるからアイズたちに伝えといて欲しいと言われたようだ。
「楽しみだね!アイズ」
「うん。 たのしみ」
アイズはいつも通りに返事をする。
彼女たちにとっての当たり前、感情があまり出ていない笑顔で。
「ロキ〜。リヴェリア様知りませんか〜?って誰ですか?」
「え?えっと」
ベルはソファに座って、テストまで待っているの3回ノックした後に、ドアが開いた。
ベルは可愛らしいエルフに見とれてしまう。
「侵入者……では無いですよね。」
「ちっ!違います違います!」
ベルは我に返って勢いよく否定する。
「その否定の仕方逆に怪しいです」
「あぅ。すいません」
レフィーヤは「ふふふ」と笑う。
「私はレフィーヤ・ウィリディス。このロキファミリアのレベル3の魔道士です。」
「僕は、ベル・クラネルです。一応コンバージョン?をして今日からここでお世話になります。」
お互い自己紹介をする。そしてベルがレベルを言おうと口をまた開こうとした瞬間ドアが開く。
「ベル行くで!ってレフィーヤおったんか!ちょうどええ!一緒に行くで」
「あ、はい!」
「え?これからなんかするんですか?」
何も知らないレフィーヤだった。
2人はロキに連れられ第1訓練所へと足を運ぶ。
その道中でベルは仮面付け、フードを被った。その姿を少しレフィーヤに「ベル、なんですかその仮面」と弄られ、顔を真っ赤にしていた。
「みんな突然集まってもらって申し訳ない。 今から他のファミリアからコンバージョンしてくる子の実力を見るためにテストをする!」
フィンがそう言うと少し周りがガヤガヤする。
「そしてテストを受けてくれる子がこの子だ! 名前はテストが終わったあとに自己紹介として本人から言ってもらう」
奥からロキと一緒に出てくる仮面をかけ、フードを被ったベル。
それを見た人は少し笑った。それはそうだろう。明らかにフードと仮面の雰囲気が合っていない。
「レフィーヤ!こっちだよぉ」
「あっ!すいませんティオナさん」
別の所ではレフィーヤはティオナに呼ばれ、ディオネ、アイズの所へと移動していた。
「どこ行ってたのよ。全く」
「ほんとにすいません」
ティオネは最後に全然見つからないレフィーヤを探していたらしく、少し怒っていた。がそんなガミガミする暇はない。 何故かと言うと、フィンとベルはお互いに武器を構えていたからだ。
「おっ!面白い仮面してる子とフィン戦うらしいよ!アイズ楽しみだね」
「うん」
「ロキ合図をたのむ」
「任せろ。 模擬戦開始や!!」
ロキの合図と共にベルはフィンに向かい全速で詰める。
「っ!?(確かにこれはベート以上か)速いけど甘い!」
「っあ!くっ!!」
ベルの攻撃は容易く捌かれ反撃の一撃を貰ってしまう。
ベルは倒れかけてた体をすぐに正して木刀をクルクル回しているフィンにまた向かう。
「そんながむしゃらにやったって当たらなきゃ意味が無いよ?」
「そんなの……分かってます!!」
ベルは連撃と言うにふさわしい連続攻撃をフィンに与え、反撃の余地を与えない。フィン自身余裕はあるが捌くことしか今は出来ないらしい。
「(もしかして、僕みたいなタイプとは対人戦したことがないのかな?)はぁッ!!」
フィンは、ベルの攻撃が木刀に当たる瞬間に思いっきり力で押した。その時のベルは少し笑っていたをまるで作戦通りと言わんばかりに。
「(きたっ!!)」
ベルは短剣を弾かれた瞬間、弾かれた方の短剣を捨てもう片方を持ち替え後ろに回り込む。
「(いける!!)っ!!」
ベルの短剣の刃先はフィンの腹部にあたりそうな所までいきあと少しの所まで行った……だが強い衝撃がベルを襲う。
「ァガっ!!」
フィンはベルに後ろに回り込まれた瞬間片足を捻り、回し蹴りをした。 それはベルの肩に当たりベルは地面に引きずられ距離が離れた。
「あのままだったら僕が倒されてたよ。 凄いね」
「はぁはぁ。ご謙遜を」
ベルはすぐに立ち上がりその紅い瞳でフィンを見つめるのだった。
アイズ視点
試合が始まった瞬間2人は早速激しい攻防を繰り広げていた。仮面の少年の連撃は目にも止まらぬ早業。思わず見とれてしまうほど。
初速で言うなら多分ベートさんより速い。
「アイズ……あの子すごいね」
「うん……」
ティオネも多分私と同じことを考えているんだと思う。周りの人達も私たち同様2人の闘いに魅入っている。
――あの仮面の少年を見てるとなんか心が暖かくなる。なんでだろう?
何となく2人を見ると言うより少年の方を見てしまう。
なんでかなんて理由を考える暇なんてない。
「っあ!!」
思わず声が出てしまった。少年の猛攻は防がれてしまった。だが少年はまたフィンに突っ込む。
――無謀すぎる
そう思った。すぐに反撃されてさっきと同じようになると思った。だが少年はそれを狙っていた。
フィンが反撃して右手で持っている短剣の攻撃を弾いた瞬間、少年は右手の短剣を捨ててすぐに持ち替え回り込んだ。
勝てるかもしれない。そんな思いが芽生える瞬間かもしれない。 だけどそれは、私たちは驚かせてもフィンは驚かない。
今までの私の経験上回し蹴りを食らわせられると一瞬で予想する。そしてそれは当たってしまう。
フィンの一撃は、少年の肩にクリーンヒットしてしまう。
「っ……」
「アイズ心配?」
「うん。なんか目が離せない」
ゆっくりとだけどすぐに立ち上がって戦いに挑む少年に目が離せない。 その普通の人なら諦めるけど諦めない姿は何故か亡くなった私の英雄にとても似ているから。
少年は完全に立ち上がって、言った。
『カプセト』
っと
神様視点
「フィンさん1ギアあげます『カプセト』」
そう言った瞬間、ベルの周りには暖かい炎が身体を護るように纏った。
「(凄いこれが魔法……少し魔力を短剣の方に集中させてみるか)っ!?」
「面白くなりそうだね」
ベルのナイフが熱く燃え上がった。
それを見たフィンおろか、周りの団員全員は人それぞれの意味を含んだ笑みを浮かべた。
「っ!!いきます!!」
ベルはさっきみたいに特攻する。
そのまま連撃というより一撃を確かめるために攻撃をする。
「っ?!(さっきの力とは桁違いだ。)」
フィンが少し押される。
ベルは魔法を初めて使って感動する。
こんなに世界が違うのかと。
「まだまだ行きますよっ!!」
「いくらでもきてみな」
「はああああああああ!!!!」
いつの間にか拾っていたもう一本にも炎を纏ってしている攻撃は徐々に速さが増し団員の中では見えなくなったと言った人がいる。それほどの速さでベルは攻撃をしている。
だがそれをフィンはさっきより辛くはなっているが、捌ききっている。
「ごふっ!」
「誰も反撃しないなんて言ってないだろう?」
フィンの木刀がベルの腹部にクリーンヒットした。
ベルは少し怯み、フィンは追い打ちをかける。
そしてより一層の団員達がこの戦いを見入っている中アイズの隣に立っていたレフィーヤがぼそっと言う。
「ベル凄い……」と
アイズ視点
「え?レフィーヤ今なんて」
――今ベルって言ってた?なんでレフィーヤがその子の名前を知っているの?
「アイズ!!決着が着いたよ!!」
ティオナが興奮して肩にしがみついてくる。
少年……は2つの短剣を失い完全に戦闘が出来ない状態になっていた。
そして少年は仮面に手を置いていた。
――やめて。
「ねぇねぇ!レフィーヤ!!さっきあの面白い子の名前っぽいこと言ってたよね?教えてよ!!」
――やだ!
「えっと」
――あの名前を出さないで。 今の私をあの子に見て欲しくない!
「ベル・クラネルって言うらしいですよ?」
――っ!?
今の可愛くない復讐に囚われていた私をベルに見て欲しくなかった。でもまだ信じきれてない自分がいた。いや信じたくない私がいた。あの白い髪に紅い目を見ない限り絶対に信じないって心の底から決めていた。だけどそんなに現実は甘くなかった。
少年は……フードを取り仮面をとった。
紅い瞳に白い髪その姿はまるで兎だった。
「ッ!!!!」
私はその少年を人目見て、いや少し目が合ってその場から逃げた。走り去った。
ティオナやティオネ、レフィーヤとかが名前を呼んでくれてたのは少し聞こえたけど、そんなこと気にしてられない。
今の私を……私の英雄に見て欲しくないから。
ベル視点
――負けた
猛攻から守ることしか出来なくなった瞬間から呆気なかった。2つの短剣は床に落とされ完全に何も出来なくなった。
そう僕の完全敗北だ。
「仮面とフード取ってもいいよ」
フィンさんから囁かれた。
その瞬間戦闘中ずっと探してて、魔法の瞬間見つけたアイズの方を向き仮面とフードを撮った。
「え?」
だけどすぐに目を逸らされ次の瞬間。
「アイズさん?!」
「アイズ!?」
アイズは走り去ってしまった。それもすごい速度で。
レフィーヤさんやアイズの友達?はアイズの名前を叫び困惑していた。
「おい!!ベル!!アイズはダンジョンだ!追いかけろ!!」
アークさんの声が聞こえて僕は一言はい!と言ってアイズを追いかけるのだった。
アイズ視点
「どいて!!」
街の人に剣姫だとか言われてる中、走り去ってダンジョンの下へどんどん敵を薙ぎ倒しながら進んでいく。
そして17階層。
「忘れてた……」
ちょうど階層主が復活するタイミングだ。
さすがに1人での討伐は骨が折れる……。でもどうにかするしかない。
私は腰にかけていた愛剣を抜き戦闘態勢に入った。
その瞬間ダンジョンが揺れた。
「え?」
もう一体階層主が現れるというイレギュラーが発生した。
ベル視点
ダンジョンについてとにかく走りまくる。
始めてきたところだけど何となくアイズがどこにいるのなわかる気がする。
それを信じて僕は階段を降り続けた。
もうどれくらい降りたか分からないだけど、アイズが近くなっている気がする。
「っ!?何この揺れ!」
激しい揺れがベルを襲う。
ベルの直感が急がないとという気持ちを早ませる。
《GAAAAAAAAAAAAA!!》
もうひとつ階段を降りようとした瞬間魔物の雄叫びが聞こえる。
「この下にアイズがいる!」
そう思い僕は飛び降りながら階段をおりていくのだった。
「アイズ!!」
階段を降りきると長く広い通路に行き着きそこにはデカい魔物と戦っているアイズがいた。
「ベル!」
「アイズ僕も今すぐ「来ないで!」は?」
アイズは僕を少し見たあと魔物の方を向く。
「これは私の問題だから……ベルは来ないで。それに今の私はベルに相応しくない。」
――なんでそんな寂しいことをいうの?アイズ。
「いやだ。僕も戦う」
僕はアイズの隣に立つ。
「来ないでっ「アイズ」っ」
「アイズがこれまでどんな想いで過ごしてきたなんて分からない。分からないけど!それを一緒に背負わせてよ。隣に立たせてよ。」
僕はアイズの言葉を遮って言ったことはどうやらアイズの心に刺さったらしい。ようやく僕を見てくれた。
「ベル戦おう」
「うん。帰ってアークさんに一緒に怒られよう。昔みたいに」
「うん!!行くよベル!!」
「もちろん!!」
決意を決めた僕とアイズ。
そして唱える。
『テンペスト』
『ブロン・セト』
僕にとって、アイズにとって今までやってきたことを証明するために。
「エアリアル!!」
「ヴローガ!!」
昔とは違う戦う力を互いに見せるために。
続く
〜クリスタルと??の設定公開のコーナー〜
「毎度毎度名前が変わってるなぁと思っているコーナーを進行していくクリスタルです!うちの制作者兼この物語の神がバカしでかしたせいで作品自体がややこしくなってしまい誠に申し訳ございません。今回紹介させて頂くのはマスターの趣味ですね。短く言います料理です。フィンさんやロキさん、リヴェリアさんとかに夜食を頼まれるほどですよ!マスターのとあるスキルととても相性というか料理が楽になるものがあるので遠征とかでもものすごく作っていてたまに乾涸びてます。それでは今回は簡単に終わります!」
「次回!《ロキ・ファミリア》です。マスターがあんなに怒ってるの久しぶりに見ました……お楽しみに!」
目次 感想へのリンク しおりを挟む