世界最古の魔法使い【一章完結】 (I'mあいむ)
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~世界で最もいらないピース~
プロローグ The フリーレン


色々ゴッチャになると書きづらいんで最初はフリーレンの世界で行きます。その後でフェイトらへんの世界へ行こうかなと。つまりクロスオーバーではない!?
一発ネタですお願いします。


死んだ

 

端的に言おう、死んだのだ。

 

死んだ理由は思い出せる。しょうもないものだ。未熟なる身は朽ち、何故か精神が、確かに存在している。

思考は止まず、自我の崩壊は無いことを悟った。

 

死ぬってこういうことなのか?

 

いやほんとマジで。どうなっとるんこれ?精神だけが漂っている状態はマジで意味分からんて。

 

どうしよう…………?

 

 

***

 

視界は真っ暗で何も見えない。というか視覚ってものが無いんだろう。そもそも体が存在しないんだ。精神が存在するのもおかしいが。精神は脳ではなく、魂に宿るものだったのか。ほんとこの状況だとそれしか分からんね。

 

しばらくこの状態でいたら少しは落ち着いた。それにしても俺の人生も終わったのか。感慨深いというかなんと言うか。ほんと若くして終わった感半端ねえな。18は流石になあ。まだ新成人の歳だぞ?いや、誕生日遅いからまだ17か。

満足していない訳でも無い。それなりに上手くやれていた時期だった。恐らく全盛期ともとれる時期に終われたというのはある意味幸運かもしれない。俺の人生は彼処から転落する一方だったのかもしれない。

でもなあ、別に未練という程でも無いが、もう少しだけ夢を見ていたかった。彼らとの幸せな夢を。普通の高校生活という幸せをもう少しは享受したかった。30、40になって誰かと話がしたかった。

 

俺まだ童貞だよって、今更後悔したよって、そう言いたいだけだったんだけどな。万人から認められるような夢は持たなかった。持たないようにしてきたつもりだ。だけど下らなく、低俗な、それでも友人とは笑えるような夢があった。

結果的にその夢は叶ったけど、過程が足りない。一生童貞っていう馬鹿な夢は、不本意な形で叶えられた訳だ。魔法使いくらいにはなりたかったんだけどなあ。

 

結局未練タラタラだな俺。仕方ないか、楽しかったんだから。

ここで俺は意識を手放した。これ以上考えるのは必要無いと思ったから。ここが死後の世界で永遠に続くのなら、取り敢えず今はいいやって思った。

 

 

***

 

 

どれだけ時間が経ったのか、果てしない時間が流れたのか、数時間しか経ってないのか。そんな時、何故か視界があるのに気づいた。色の存在を認識したのだ。緑が見えた。

 

は?どういうことだ?なんで見えてる?自分はどうなってる?

手は、ある。足もある。体が存在し、嗅覚と聴覚も機能を果たしていた。そういう感触がある。見えてはいないが感覚がある。

いつの間に?何時からこうなっていた?全く分からないが取り敢えず周りを見渡した。見渡そうとした、がそれは出来なかった。首が動かない。どうなってる?なんだこれ?

 

「オギャァ」

 

は?

 

***

 

感覚機能を取り戻してから暫く、どうやら体が思ったように動かせない。いやはやどうなってんのやら。いやまあ……分かってはいる。自分がどういう存在なのかは分かってるんだが理解したくない。いやだってそりゃあ赤子って。嫌だよそれは。現実逃避の一つもしたくなるもんさ。

 

という訳で赤子になった森田です。はい。いやーどうしたもんかなこの状況。八方塞がりですよホンマ。親がいるのかどうかも分からないからなにも出来んし、俺このまま餓死確定?

最悪なので抗いましょう。俺に出来ること無いけど。

赤子の状態でどうしろってんだ!!ふざけんな!

 

恥ずかしいけど泣くか?腹括るか?いやそれ以外に選択肢もないのか。やるしかねえ(必死)!!

 

***

 

はい。何の成果も、得られませんでしたあ!!

いやどうするよこれ。どうすれば良い?誰か助けてクレメンス。

魔力とかねえのかよ魔力とかさ。便利チートねえの?この状態じゃあおれ死ぬぞ。もってあと数日だろ?死ぬのか?俺死ぬのか?クソッ!まだ死にたくねえ!

 

***

 

結論。魔力有りました。何で?何であるん君?なにここ異世界なん?俺異世界転生したん?

 

何か頑張って見たら浮けるわ。でも浮けるだけ。俺が浮けるだけで動くことは出来ない。けど浮けるってことは力が掛かってる。もしくは重力とか引力とかを弱める力が発生してるってことだよな。それなら体勢とか絶対変えられるだろ。自由自在に動けるようになるだろ。

はい、修行します。

 

 

完了!!パーフェクト森之内様だぜ!!

でもヤバいな。時間を掛けすぎた。急がないと餓死するかもしれない。取り敢えずここは森だ。何か木が生えてるし森やろ。つまりは木の実だ。

やるしかねえ!急げ!まだ間に合う!

 

***

 

まじ疲れた。木の実無さすぎ。見つけられたの三個だけ。一つの木から全部採った奴だけど。というか木の実探す為に使った魔法のせいで本当に疲れた。木の実三つ程度足りるかな?

 

 

足りました。赤ちゃん効率良いね。

 

 

***

 

 

はい。数年経ちました。え?時間経ちすぎ?うるせえ!!何も無かったんだよ!精々が立てるようになったのと使える魔法が増えたくらいだ。ずっと森から抜けらんねえから何もねえんだよ!!異世界だからって主人公とかヒロインがいるとか思ってんじゃねえ!!

 

いやーそれにしてもこの森広すぎない?(情緒不安定)

数年進んで抜けらんないとか舐めてんのかな?そりゃ勿論子供の歩幅だから遅いのはそうなんだけどね。疲れたら魔法使ってるし其れなりに進んでる筈なんだけどねえ。動物も見掛けないし。川は在るんだけどなあ。

 

はい、馬鹿でした。魔法で森の上に行って進めば良いだけでした。このままいけば出れますね、ええ。

 

***

 

俺がこの世界に来てからまあ数年?数十年?経ったんだろう。

 

マジで言いたいことがある。文明はどこですか?俺の日本はどこですか?

 

無いのだ。存在しないのだ。高度文明が無い。中世時代すらない。ていうか人間を見かけるのすら稀。というか猿。何ここ紀元前?服着てないし、言語あるかどうか分からんし。

俺が人間じゃないってのも駄目だ。耳が横に尖ってるのがその証拠。エルフやん。俺バリバリエルフやん。しかもブス。マジでブス。だって顔変わって無いんだもん。前世と顔変わってないはクソだろ。この世界の人型生物基本美形なのになあ。俺だけクソブス。何ならモンスターとして扱われた時もあったぞ。今は仮面してるから大丈夫だけど。

 

この世界には動物もモンスターもいるし、存外危ない世界なんだよなあ。あの森に居なかったのは只の幸運でしかなかったみたい。俺自身まだそんなに強くないからな。最初にモンスターと出くわした時は死ぬかと思った。腕消し飛ばされたからもうパニックどころの話じゃなかったし。攻撃魔法覚えておいて本当に良かった。

 

 

***

 

 

俺が筋トレとか魔法の修行をしている間に随分と人間やモンスターの文明が進んだらしい。

俺どれくらい生きてるんだ?娯楽無いなら作れば良いの精神で躍起になってたからな。俺も暇すぎれば研究気質になるらしい。百年や二百年はとうに過ぎている。少なくとも数千年はいっただろう。万の時代が過ぎてても可笑しくはないんだよねえ。

最初の百年で人間には見切りを付けたからな。いやまあちょくちょく関わってはいたんだけどね。さっさと戦国時代くらいにはなってくれないかなあとか思ってたら結構進んでるじゃん。

 

魔王軍と人間の戦いとかいつの間にって感じだな。んまあ俺以外に魔法使ってる奴とか魔族以外で見たこともないしなあ。人間側はじり貧だな。どんどん数を減らしてる。でも大丈夫だ。

 

この世界がどういう世界か検討はついてる。ここからだ。ここから世界が加速していくだろう。未だにネームドキャラには会っていないがもう存在している筈だ。

この世界の名は葬送のフリーレン。その世界の太古の場、神話の時代に俺が居た。只、それだけだ。

 

 

 

 

 




はいガバガバガイドラインに沿ってやっていきます。フリーレンは世界の歴史が重要なのに色々と判明してないから難しい。女神とか出す気無いんだろうなあ感ありますし。そこら辺には触れず、素直にフリーレンが産まれてからのゼーリエとかそこら辺行きます。


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行動開始

独自設定多めです。漫画の内容なのでアニメ勢の方はすみません。


久しぶりに外の空気を吸う。うんまい!! 

はいという訳でフリーレンの世界にやって来た元高校生、森田です。

まあもう何千年も過ぎてるだろうから、只の老人なんだけどね。見た目はエルフだから変わらんけど。顔の不細工さが際立つゥ!

 

さて、娯楽の為に引き込もってきた訳だけども。最近出くわした魔族との戦闘で驚きの発見があったんだよね。それが魔王の台頭。ほんといつの間にか居たね。つまりもうフリーレンとかはいるかも。というかフランメかゼーリエらへんは居るだろ。

俺今の人間の生活圏とか行ったことないから、どこ行けばいいか分からないんだけどね。

 

正直ゼーリエは発見不可能だ。あれはもう分からん。原作でもどっかの森の中に居た気がするし、フリーレンも同様だ。可能性があるのはフランメだ。原作通りなら死ぬ前までに人間の魔法の開祖になってる筈だ。もしくはフォル盆地。彼処はフランメの魔法書と拠点がある。フリーレンも居る可能性あるしね。

それ以前の時代だった場合は詰む。どうにかしてエルフの里を探ってフリーレンの子供時代に会いに行くしかないんだけど。

 

無理だわ流石に。やるなら魔法を使うしか無いけど、流石に会ったこともない奴を見つける魔法なんてのはキツイ。原作でフリーレンも言ってたが、魔法に必要なのは、技術や経験、扱う魔法やコントロール、努力と根性、そして才能だ。

 

魔法を使う上で重要なのは才能だ。才有る者と無い者じゃ違いが圧倒的だ。それはフリーレンやゼーリエ等を見れば分かる。

分かりやすい才能で言えば、後の時代のフェルンなんかは良い例だろう。

 

俺は才能の壁に阻まれたし、どうしても無理と思った時もあった。

しかし才能を持つ者達は違うのだろう。俺は日本での記憶や原作の記憶があるから何とかやれているのだ。そのせいでやりづらくもあるが。

この世界でどれだけ才能が重要かはもう痛い程理解した。奴らがどれだけ凄いのかも分かったよ。

 

特にイカれてんのはやっぱ大体何でも切れるユーベルさんな。マジであれは可笑しいわ。絶対に切れない外套を布だから切れるって。彼女曰く布は切れる物らしい。彼女は切れると認識したら何でも切れる。

例えどんな格上の魔法でも、《その大体何でも切れる魔法》で。

 

いやまあ俺もその類いだから何とも言えないけども。出来ると最初から思って疑わなければ、他の可能性が介在する余地が無ければ魔法は使える。イメージの世界だからな。

 

だから俺には魔法の才が無い。日本で育ったら魔法なんて信じれないんだ。結局そこがネックになる。魔法発動のイメージは俺にとって結構キツイ物だ。もしかしたらこの世界で一番魔法に向いてないのは俺かもしれない。だから体鍛えてるんだけどね。

 

閑話休題。

 

つまり俺に彼女らを探す手立ては無い。他にこの時代で出来ることなんて無いよなあ。取り敢えず宛の無い旅をしてみるか。フリーレンみたいに魔法集めも悪くない。

 

それか、北部高原を越えて魔王に殴り込みでもしてみようか。いや原作破壊は良くないな。俺がやって良いのは登場人物への干渉までだ。破壊はする気が無い。未来視持ちの奴等と争うわけにもいかないしな。シュラハトとか南の勇者とかね。まあ最悪勝てるけども。伊達に長く生きてないからね。

 

どうしようかな。あ、後あれが有るか。聖杖の証。たぶんあれはここら辺の時代の物だろ?原作じゃ正確には明かされてなかったけど、あれはたぶん大魔法使いの証だ。大魔法使いってのが何なのかよく分からんけど、あれを取れば俺もフリーレンに会えるのでは?

いや取り方分からんし、人間の生活圏も分からない状態じゃ無理か。

 

取り敢えずやることは只一つ。俺が今何処にいるかの確認だな。知性のある魔物、魔族を拷問。というか魔王軍のある程度の地位の奴らから聞き出すか。北部高原とかじゃ無いと良いな。

 

 

***

 

 

今更思い出したけど、魔王ってエルフ根絶やし作戦みたいなのやってたよな。それのせいでフリーレンの故郷やられた訳だし。王座のなんたらみたいな野郎がいた筈。まあ俺には関係無いな。俺もエルフだけどまあ負ける気はない。普通の七崩賢とかなら俺は勝つ気でいるぞ?生きてる年数ならゼーリエぐらいあるだろうからな俺。魔力量の差でゴリ押せば良いだけだ。

 

それにしても良さげなのがいないな。魔力探知で結構な範囲を索敵してるんだけどなあ。めぼしい魔族がとんといない。どうしよ。とか思ってたら誰か来てるな。この速度ってことは確実に俺目当てだねえ。ネームドなら最高。魔王軍の将なら御の字ってとこかな。構えますか。

 

何時も通りに魔法を展開していく。作中と同じ?なのかは分からないが鉄壁の防御魔法を張る。何枚もの同時展開により更に防御力を上げている。これで少なくとも作中の防御魔法と同じくらいの耐久性はある筈だ。うん、きっとそうに違いない

 

敵が見えてきた。うん、突っ込んできてるね。何の対策もせずに突撃とは。全く芸が無いな。俺もこんなガチガチにやってたら人のこと言えないな。

 

うん?てかあれって?………やっべ!何でこんなとこにいるんだよ!流石にヤバいだろそれは!この時代に存在したのかよてめえ!!

 

辺りに幾つもの剣が想像され、俺に放たれる。

 

「うっ、おおお!!」

 

間一髪で防御したり避けたりしながらと言った形になった。

相手はあのフェルンをも上回った大魔族。俺の防御魔法など軽く突破する威力。全くやってらんないねえ。だからこそこいつが誰なのか確定した。

………………流石にこのレベルとはやりたくないぞおい。

 

奴のヤバい所はその魔力コントロールだ。圧倒的な魔力から打ち出す魔法は絶大で鉄壁。魔王軍最高幹部たる七崩賢の最高戦力、黄金のマハトと同格。フリーレンをしてそう言わしめたクソ研究者。自身の研究の為だけに築き上げた屍の山は数知れず。人間にとっては最悪の敵。

  

「ソリテール」

 

フリーレンとはほぼ互角。どころか原作じゃあフリーレンが押されていた。フェルンが超遠距離からのゾルトラークとかいう頭可笑しい戦法のおかげで勝てたんだったか。原作破壊を防ぐにはそれ以外でやるしかない。どうしたもんか。

 

「あら?私の名前を知っているの?嬉しいわね」

 

「はっ、言ってろ。というか随分余裕だな?得意魔法は使わないのかい?」

 

こいつの得意魔法。それがただ魔力をぶつけるだけの魔法。高密度の魔力を操り攻防一体の戦法を奥の手としていた筈だが。

 

「得意魔法?そんな物は無いわ」

 

うん、この反応を見るにまだ開発してないな。まあしてた所でどうにでもなる。一応未来の邪魔にならないよう魔法の可能性は示したくない。となると、最速で殴るか。それが一番早い。

 

油断は出来ない。俺がどんなに長く生きていたって負ける時は負ける。才能は全てを覆してくる。しかも相手はソリテール。フェルンとシュタルクを余裕で倒しきった未来の大魔族だ。まあ俺は大魔族の基準をしらないんだけどね。

 

「そこまででもない攻撃魔法。なのに防御は上手なのね。私の攻撃が全く通らないなんて」

 

そりゃ俺の使う魔法はフリーレン達の魔法に近いからな。俺独自の奴を使うとそれはそれで面倒だ。もし解析されて使われたら未来のフリーレン達がこいつに勝てなくなる。何時までも防御してるとこの防御魔法すら解析されるな。チンタラしてる場合じゃないな。

 

「そりゃお褒めに預かり恐悦至極。あんたの方は全く足りないがね。ていうかなんで俺を狙った?」

 

どうせ人間を知るためだとか、感情を理解するだとかイカれた理由だろうな。

 

「私は人間を知りたいの。会話から人間の生活習慣や文化を知るのが私の研究テーマ。ねえ、貴方をもっと私に見せて?」

 

それだけは昔からなんだな。良い迷惑だよ、全く。てかきもいって!!なんだよその剣!お前は何処ぞの慢心王か?領域展開覚悟ガンギマリ少年なのか?ゲートオブバビロンしてんじゃねえよ!!

 

「生憎とお前とは違うんでね。ここら辺で逝ってくれ!」

 

《移動する魔法》

 

「えっ」

 

光速すらも越えた認識外の速度での移動。瞬間移動とすら言えるかもしれない。他の追随を許さない、ゾルトラークすら越える圧倒的な速度。俺の目の前にはもうソリテールが居た。んでそのまま殴って気絶させる。

 

「がっ!?」

 

よし、成功。やっぱ脳筋スタイルは正義だな。これに限る。

 

《拘束する魔法》

 

取り敢えずそこら辺の木に縛り着けてみた。これで大丈夫かな。魔法発動されたら厄介だけど、まあ拷問ってのはそういうもんだ。相手の反撃ぐらい対応せねばならない。防御魔法だけは掛けときますかね。

 

「おーい起きろー」

 

水をかけてソリテールを起こす。魔族って気絶とかあるんだな。今更過ぎるか。無能さが出てるわー。

 

「ん……う………っ!!」

 

「おー、暴れないのは賢いねえ。先に用件を言っておく。質問に答えたら見逃してやる。これだけだ。簡単だろ?」

 

「……………そう。何が聞きたいの?」

 

うーん反抗的な目。これは拘束解いた後が怖いねえ。まあでも嘘を付く気配はない。大丈夫そうだ。

 

「此処って何処?人間研究してるなら此処が何処かくらい分かるだろ?」

 

「………人間からはシュティールと呼ばれているわ」

 

何処だよそれ。フリーレンの地名にそんな所ねえだろ。前の時代だから地名も違うのかよ。質問を変えるか。

 

「人間の住んでる場所って何処?」

 

「あっちね」

 

右か。けどまだあるだろ。

 

「他には?」

 

「あっちとそっち」

 

OK。これだけ分かれば良いだろう。

 

「よし、約束は完了だ。ほら、拘束は解いてやる」

 

ガアンッという音が鳴り響く。解いた瞬間に攻撃するなよ。

 

「好戦的だねえ。まあ約束事通り見逃してやる。じゃあな。」

 

《移動する魔法》

 

「まっ」

 

 

追跡を逃れる為に距離を離し、魔力の痕跡を消す。よし、完璧だ。人が居るのはあっちだったな。まさかソリテールが来るとは思わなかった。俺との戦闘で未来が変わったりしないよな?まあ良いか。人間がいるってことは料理も発展してるだろうし、楽しみだな~。

 

 

 

 




ソリテール上手く書けないなあ。


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魔法使いの始祖

これからどうしようかめっちゃ迷う


はいという訳で無事フリーレン達に会えなかった森田です(号泣)。

 

いやー聖杖の証取りてーとか思ってたら全然取れないし、てか取り方結局分からないし、フランメはフランメで王国のお偉いさんとしか関わって無いから俺は何も出来ず。今はしがない宿屋の店員として働いております。

 

こんなことならソリテールと仲良くなっとくべきだったのかもしれん。折角会えたネームドキャラだってのに。逃がした魚はデカイなあ。いやあんなサイコと共存は無理やな(呆れ)。彼女と会ったのももう数年前。あれからまた歳月は流れてしまった。

 

「モリタさーん!掃除終わった~?」

 

「はーい!今すぐ!」

 

いやーもうこの労働も板に付いてきた。人間として生きるためには労働は必須。

 

これでも俺はまだ価値観が人間だ。時間の捉え方も余り変わっていない。その一瞬に、刹那に全力のノリで生きている。

今までは魔法の修行とか、筋トレとか、日本の娯楽の再現とか、それらを義務として、仕事としてこなしてきたから良かったけど。今は旅しているようなものだからな。

無職はどうしても俺には無理だ。やるべきことが無いと壊れてしまう。そういう人間だ俺は。何も変わらない。前世から変わらない俺のスタンスだ。

 

もしかして社畜の才能が俺にはあったのか?前世で長生きすれば良かった!

 

閑話休題。

 

変わらないと言えばそう。人間の言葉もだ。俺は遥か昔。この世界がフリーレンの世界だと分かった頃に人間の言語を勉強した。第二言語の習得は死ぬ程大変だったけど、体がこの世界のだからかなんとかなった。この体、エルフってだけあって優秀なんだよな。記憶したこと忘れなかったりするし。

 

てな感じであんな昔の言葉が今でも使われているのだ。本当に楽で助かるよ全く。

まあ他にも変わらない物がある。俺の顔に対しての反応だ。今でも俺の顔は魔物だと思われてしまう。俺は整形とかは嫌いだ。他人には推奨したりするが自分は絶対にやりたくない。自分の体を余り弄りたくは無いのだ。

 

だから素直に《幻覚を見せる魔法》で顔を誤魔化している。けど敏い魔法使いが見たら分かってしまうだろうから店員をやる時以外は仮面をしている。色々注目を集めてしまうが仕方ない。美味い食事の為だ。仕方ない!

 

「掃除終わりましたー」

 

「はーい、お疲れ様ー。じゃあ厨房で肉の下処理お願いできる?その次はソテー作っちゃって」

 

「はい、分かりました」

 

この宿屋はレストランも兼ねているのが良いところだよな。時々素材の余りをくれるのも有難い。金を貰えて食材も貰える。俺の欲は満たされてばかりだ。

 

「あ、いらっしゃいませ~。何名様ですか?」

 

どうやら客が来たらしい。こんな時間に来るなんて珍しいな。まだ日本時間で言うところの3時だ。食事の時間じゃないし、宿を取るにも早いなあ。もしかして町の人かな?

ん?厨房に誰か来るな。女将さんか?

 

「モリタさん!今すぐ来てくれる!?」

 

「え?あ、はい」

 

鬼気迫ると言った表情の女将さんに呼ばれた。どうなってる?俺何かやっちゃった系?だとしたらヤバくね?

 

女将さんに着いていくといかにも貴族っぽそうな服に身を包んだ方々と、へえ、人間にしては凄い魔力を纏ったオレンジ髪の女性。随分と綺麗な方だこと。魔力を抑えているな?成る程、相当な使い手だ。何時だったか見掛けたような気もするな。

よし、取り敢えず、跪くか。女将さんもやろうとしてるしね。俺も一緒に倣っとこう。

 

「あー良いんだ。そんなことしなくて。顔を上げてくれ」

 

オレンジ髪が話かけてくる。この人どっかで見たような?マジで何処だっけ?

 

「私の名前はフランメ。此処に魔法使いが居ると聞いて来た。お前だな?」

 

!?!????!!!!

 

はっ!?嘘?!マジか!ほんとだ!本当にフランメだ!何で気づかなかったんだ。マジかよ!おい!?

 

「ははっ、その表情だと私の事は知ってるらしいね」

 

「お、お噂は予々。まさかお会いすることが出来るとは思ってもみませんでした」

 

「随分と仰々しいね。此処では何だし、少し話さないか?」

 

行きてえ~。フランメと話してみたい~。マジでネームドと話す為にこんな修行したんだからこちとら。でも仕事投げ出すのもなあ。流石によ。

 

「大丈夫よ。今日はもう上がっちゃって」

 

「え、本当ですか?有難うございます!」

 

女将さん優し~~!!よし、行こう!

 

***

 

いつの間にかおしゃんティーなカッフェに居たのだが。どうなっている。まさか時間操作の魔法?

 

こんなおしゃんティーな所に俺は来て良いのだろうか。あ、駄目ですよねそうですよねすいません。周りの視線が怖い。前世の頃からスタバとか一回も行かなかった俺にこれはキツイ!死ぬ~~!!

 

「あの、その、な、何でこんな所に……?」

 

「ん?ああ、話し合いだからな。落ち着ける所が良いと思ってね」

 

そういうことじゃねえんだよなあ。いつの間にか貴族の人達いないし、マジでこんなトラップがあるとか聞いてないぞ。これは罠だ!!

 

「そ、それで、話っていうのは?」

 

「ああ、まあ、単刀直入に言うと国の魔法使いになってみないかという話だ。後お前の名前は?」

 

国の魔法使い?…………ああ、成る程。国専属の魔法使いになってフランメと一緒に魔法を広めろと。人間に広める手伝いをして国に認めさせろと。そういう事だろうな。

 

「ああ、忘れてました。森田です。よろしくお願いします」

 

「ふーん。モリタか、よろしく」

 

「それで、国の魔法使い、でしたっけ?」

 

「ああ」

 

うーん無理だな。断る以外あり得ない。此処で下手な事をしたら俺は歴史に名を残しかねない。

 

この時代、魔法を使える人間の方が珍しい。まだ誰もが魔法を使える時代じゃないし、それは魔族の物という認識だろう。だからフランメは此処に来た。魔法を使える人材が珍しいから。末端として利用する気なんだろう。

 

別にフランメからどう思われていようが構わない。勿論魔力は抑えているし、ムラが無いように何千年とその状態で過ごしている。だから俺の魔力の膨大さがバレることは無い筈だ。けどバレたって別に変わらない。

 

そりゃバレないに越したことは無いさ。強い存在ってのはそれだけで記憶に残る。

それでフランメの何かが変わるかもしれない。会話の内容がほんの少しだけ変わるかもしれない。フランメはそれだけで未来を変えるだろう。それほど強大な人物だ。歴史に名を残す英雄だからな。

 

けどまあその程度だ。物語は大きく変わることはない。ただそういう人物が居たと。過去に居たのではないかという幻想が残るだけ。物語に変な一ページが加わるだけで、物語の内容に変化は無い筈だ。

だから断る。断った方が何もならない確率は高い。彼女からの心象が悪くなる程度なら、仕方ないだろう。

 

次に必要なのは断る理由だ。聞かれないかもしれないが、聞かれた場合はヤバい。流石にこんな意味不明な理由で断る訳にもいかないからな。単純に責任が重いってことにするか。うん、それが妥当だろうな。

 

さて、こんな重大な嘘なんて久しぶりだけどいけるかな?鈍ってないと良いけど……

 

「随分と考えるんだな?」

 

「え?あ、ああ、すいません。もう大丈夫です。それで、今回はまあお断りさせて頂こうかと……」

 

「理由を聞いても良いか?私はそれなりに良い条件だったと思うんだけどな」

 

「いやあ、流石に重大過ぎますよ。国の魔法使いなんて僕には無理です。何かあった時が怖いですから」

 

「………なるほどな。分かった。うん、今回は諦めるさ」

 

随分あっさりと引き下がったな。何か感づいたか?いや、そうだとしたも断れるなら良い。

 

「はい、今回はありがとうございました。また何かあった時はお願いします」

 

「ああ、そうだね。それで、ここからは個人的な話になるんだけどさ、お前どれくらい出来る?」

 

?????

 

おいおいおい、待て、待ってくれって。可笑しいだろ。いやまだそうだと決まった訳じゃあ無いんだ。そうだよ、全然大丈夫に決まってるだろ(震え)

 

「どれくらいとはどういう……?主語が無いと何も分からないのですが」

 

「魔法だよ。分かってるだろ?」

 

「ああ、そういう。でもそんなに出来ませんよ?他人と比べたことも無いので分かりませんが、少なくともフランメ様よりは下ですよね」

 

少し雰囲気が強まった。フランメから圧を感じる。

 

「………お前は色々隠し過ぎじゃないか?さっきから私はお前の素性が全く見えない。その顔の魔法もそうだし、その雰囲気もだ。血にまみれている感じはするのに私やゼーリエなんかとは違う。まるであの子みたいな、平和の時代の魔法使いみたいだ」

 

なるほどな。今ので確定した。そう、二つ確定したことがある。一つ目はフランメは俺をいぶかしんでいること。何か悪印象がある訳じゃない。何かを疑っている訳ではなく、単純に疑問に思っているだけだ。

 

二つ目はフリーレンとフランメが会っていること。ゼーリエとフリーレンは分からんけど、エルフの村はやられたらしい。行ってみたかったな………。

 

「別に隠している訳じゃないんですよ。顔は違いますけど。安心して下さい。僕は只の人間ですから」

 

じっと彼女らの目を見つめた。此処で目を反らしてしまえば嘘だと断定される。自身の誠実さは視線に、表情に、身体の機敏に現れるから。

 

「………はあ、嘘じゃなさそうだね。あと、その敬語も止めなよ。お前には何故か使われたくない」

 

敬語使われたく無いってなんだよ。まあ良いや。雰囲気も弛緩したし、取り敢えずやりきっただろう。

 

……………これさ、何か知ってる謎の怪しい奴ムーブいけるくね?謎キャラムーブとか思春期の夢だよな。ちょっとだけ試してみるか。

 

「分かったよ。敬語は止める。じゃあ俺はここら辺で行くわ」

 

「そう、じゃあまたいつかね」

 

「……フランメ、人の時代を切り開くのは偉大なる誰かだ。人間の幸せを願えるのは人間しかいない。けどもういるだろ?平和な時代の魔法使いは。あんたも頑張れよ」

 

「………お前本当に何者だい?」

 

「言ったろ。只の人間だよ」

 

 

これがフランメとの最初の出会いだった。

 

 

 

 




謎の色々知ってそうな人って良いよね


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少年少女の願いをかけて

めっちゃストーリー悩むんすよねえ


旅に行きてえ!

 

はいという訳で謎キャラムーブの為に原作キャラと話す機会を失ったマヌケ森田です(自業自得)。

 

今の俺は普通に事務処理をしている。店の金銭の管理や土地代、国に提出する税金等やることはまあ有る。こんなのはバイトにやらせることでは無いんだけどなあと思いつつ処理していく。

 

自分で言うのも何だが俺は書類関係の仕事が得意だ。というのもこの体の頭の回りが本当に速いのだ。単純に頭の性能が上がったからこそ仕事の処理速度は常人の比じゃない。それは日本で育ったというのもあるだろうし、魔法の研究時に頭を回す必要があったというのも関係してるだろう。

しかし俺はこの仕事が嫌いだ。得意だからといってやりたくはない。俺は基本頭を使いたくないのだ。何も考えずに楽しんでいたいというのも本音ではあるから。

 

話を戻そう。俺は先日最重要ネームドキャラの一人、フランメと会った訳だ。今更になって変なことしないでもっと話しておけば良かったと思ったが、まあ仕方ない。関わりすぎたら色々変わってしまうかもしれないから、やはりあの行動は間違いじゃねえ。

 

で、フランメと会って思い出したのだ。俺が魔法を鍛えたり、近接戦闘を頑張ったのは楽しかったのもあるが、それ以上に生き残る為だ。この世界で生きるには余りに俺は弱すぎた。好きに生きるには圧倒的な強さが必要だった。

 

けどこんな世界だ。俺はもっと色々な物を見てみたい。フランメと出会ったことでフリーレンみたいに旅をすることを思い出した。

今はそれなりに金も貯まってきた。後少ししたら俺もどこかへふらっと行ってみようと思う。

まず目指すのはフォル盆地。フリーレンやフランメがいる可能性があるからな。数年前の拠点を出た時に一回行ってみたんだが居なかっただよな。魔力探知に引っ掛からなかったから丁度居なかったんだろう。

で、その道中で色々な地方へ寄ってみようと思う。俺が今いるのは原作で言うとどこら辺なのだろう?

以前ソリテールと出会ったのは北部高原に片足突っ込んだ所だった。俺の元々の拠点北部高原にあったという事だ。そりゃ人間が少ない訳だ。

 

取り敢えず今の俺は北に位置する場所にいる。北側諸国のどこかという訳だな。行くのは南。正直凄い楽しみ。俺もここまで強くなれば一人旅が出来るだろうか?

 

勇者一行の場合は何故か強すぎる勇者ヒンメル、生臭系最高修道士ハイター、ただの化け物ドワーフのアイゼン、千年以上生きたエルフのフリーレンという豪華メンツでの旅だった。

 

魔王軍に喧嘩売る訳でもないから大丈夫だとは思うが、勇者一行ぐらいの強さがおれにはあるだろうか?恐らくギリギリだ。

 

アイゼン程のタフネスは俺には無いし、ハイターみたいに回復系統の魔法が使える訳でもない。フリーレンとは互角か?ヒンメルは、何が強いのか分からないんだよなあいつ。戦闘描写が少ないからなあ。

 

俺は魔法使いとしてはある程度戦える。作中じゃあ一級魔法使いレベル、フリーレンとすら競えるだろう。しかしもっと強い奴もいるのだ。七崩賢もそうだが、魔物とかもそうだ。煌獄竜なんかはヤバいしな。こいつらは勇者一行全員でギリギリレベルだ。本当に強い。

 

ソリテールには勝てたがあれもまあ運だ。千年後じゃもう分からない。本気を出すなら俺は七崩賢にも勝てるだろう。相性次第では負けるかも。

しかしゼーリエは無理だ。あれは俺じゃ勝てない気がする。この世の全ての魔法を使えるらしいからね。俺のやること全部防がれる気がする。まあその上でどう戦うか、どう勝ちにいくか考えるんだが。

 

近接戦闘を考えるなら俺は弱い。アイゼンには遠く及ばないのでは無いだろうか。この世界の近接戦闘は流派とか技術とかより根性や筋肉だ。あとなんか、才能?

シュタルクすら俺には危うい。ドラゴンを近接で倒せるかと言われたら分からないのが俺だ。適当な魔物なら流石にいけるが。

 

そう考えるとフランメもよくこんな所まで来たなあと思いつつ目の前の紙束を無くしていく。俺煌獄竜とかと出くわしてたらヤバかったのかもしれないな。いつかシュタルクとかモンクのクラフトとかと手合わせしたいなあ。

 

 

***

 

 

「モリタさん、今日はちょっと頼みたいことがあって」

 

この世界の仕事ってのは基本ガバガバだ。そりゃ日本みたいにきっちり何でも管理される訳がない。この世界はファンタジーで貴族社会で絶対君主制だ。

だから決まった仕事以外にも臨時で色々な事に巻き込まれる。

 

俺の家は森の中にあるため誰にも知られていない。そうすると俺に何かを頼む時はこの宿屋を通すしかないのだ。

 

「どんなですか?」

 

俺の今の立ち位置はいたって簡単。色々できる宿屋の怪しい店員だ。何故か色々できるし、何故か店以外では仮面を被っている。性格もどことなく変。けどいろんなやってもらえる名物店員なのだ。何となくこの生活愉しいから旅するのやめようかな?

 

「アルリアさんて分かる?ほらあっちの方の家の」

 

「ああ、時々料理を食べに来てくれる方ですよね」

 

「うん、その親戚の子がどうやら熱を出しちゃったみたいでね。変わりに仕事を頼みたいってさ」

 

「分かりました。でも何処へ行けば良いんです?」

 

「あーたぶんそろそろ……」

 

そろそろ?

 

「すいませーん」

 

店の入り口の方から声が聞こえた。誰だ?

 

「ほらね?」

 

あんたは超能力者かよ。

 

 

 

「今日はよろしくお願いします」

 

「ああ、よろしく」

 

店に来たのは随分と若い青年だった。年は二十歳もいってない。まだ年端もいかない………と言ったらあれだが、まあ高校生ぐらいの子が来た。

 

「俺の名前はリアス。あんたの名前はいいよ。皆この町の人間は知ってる」

 

しかし、よく鍛えられている。一目で分かる。彼は強い。この青髪の少年は強いね。近接系だ。戦い方は、拳ではないか。何らかの武器を使うみたいだ。見当たらないけど。まあ仕事に武器はいらないよね。

 

「そうでしたか。分かりました。それで今回やる仕事というのは?」

 

「貴族の護衛だ」

 

「……何ですって?」

 

 

***

 

 

とんだ厄ネタだ。クソ依頼じゃないか。貴族の護衛なんて最悪だぞ?失敗したら処刑ものだ。失敗=貴族の死だからな。女将さんも知ってて言わなかったな?俺が断るって分かってたんだろう。全くこんなの他人にやらせようとするなよ………。

 

「嫌なら帰ってくれて構わない。アルリアさんにもそう言われてる」

 

仮面してるのによく分かったな。こういうのに敏い子は人間社会で強いよ。強者には少ない部類だ。

 

「いえ仕事なんで。仕事ならやりますよ」

 

そう、これは仕事だ。受理した依頼はこなすさ。それが俺みたいなはみ出し者の信用に繋がる。やらないという概念は無い。

 

「そうかよ。俺は武器を取ってくる」

 

 

暫くしてリアスは武器を取って来た。得物はどうやら剣だったらしい。彼の身の丈程も有る両刃の剣。

 

成る程、剣を持って来た彼はさっきまでとは纏う雰囲気が違った。それは彼が今まで積み上げてきた鍛錬や戦闘によるものだろう。と同時に並々ならぬ決意を感じた。この依頼にはまだ何かあるのだろう。知る必要もないが。

 

お、ようやくお貴族様のご登場らしい。俺は離れてるかな。

 

リアスが色々話してくれているが、ああそういう。どうやら貴族の少女はリアスと知り合いらしい。いずれ恋仲にでもなるのかね。若者の青春は邪魔するべきじゃあない。

 

「話は終わりましたか?」

 

「ああ、もう出発だ」

 

「最初に聞いておきます。この依頼の内容と報酬。危険な可能性と経緯は?」

 

「内容はハイル家息女の護衛、報酬は100万までなら好きな形で払うそうだ。可能性は分からない。今回の道程は彼女を都市へ送り届けて欲しいそうだ。彼女は魔法?の才能があるらしくてな。その勉強に行くらしい」

 

………フランメの計画の影響だな。まあいい。報酬は好きな形か。魔法書とか武器とかでも良いと。そりゃそうだな。此処は北部高原に近い。南とは比べ物にならない程危険だ。強力な魔物もいるからな。

 

「分かりました。じゃあリアスさんは普通にお願いします。僕はもう行きますから」

 

さあ気張っていこうか!

 

***

 

「フゥっ!やっぱキツいねぇ!」

 

リアス達の道中。その半径一キロ程にいる魔物の全てを俺は殲滅していた。しかし北部高原近くの魔物。そう一筋縄にはいかない。勿論ソリテールなんかよりは弱い。何ならゾルトラークで一発な野郎もいる。しかし数が数なのだ。竜種なんかも多いから一苦労だ。

 

「死ねクソガキ……!………これで終わりか」

 

流石に多いな。ここ数日はこんな労働が続いている。日ももうすぐ落ちる。彼らももう夜営の準備に入るだろうし、俺も合流するか。

 

日中、というか明朝から日暮れまでの彼らが行動する時間は魔物や魔族を倒して露払いしている。ここまで戦闘を行えば魔力も馬鹿にならない。明日中に着けなかったら何かあった時はヤバいかもな。

 

「モリタさんお疲れ様です」

 

「ああお疲れっす」

 

戻ると護衛の方々が夜営していた。俺ら以外にも雇っていたらしく、騎士っぽい人や傭兵の方なんかがちらほら見て取れる。

 

「モリタっていつも何をしてるんだ?道中魔物と出くわさないから何かはしてるんだろうが」

 

「てきとうに魔物を狩ってるだけです。特別なことは特に何も」

 

「ここらの魔物相手に一人で彷徨く方がおかしいだろ……」

 

そうかもしれない。実際俺が百年も生きれない体だったら無理だったな。人間の身体のままだったら近接も魔法も全く出来なかっただろう。

 

「そらまあ長く生きてればね。色々あるんすよ」

 

「あんたそのなりで俺らより歳上なのか?」

 

「伊達に何千年も活きてませんよ。あ、これ秘密にしといて下さいね」

 

適当に喋ってたら口が滑っちまった。まあいいか。所詮一度限りの関係だ。どうとでもなるだろ。

 

「胡散臭い野郎だなあんた…」

 

「本人にそれ言う!?」

 

***

 

誰もが寝静まる丑三つ時。こんな時間に動いてるのは心にやましいことがある奴だけだ。例えばそう彼のような。

 

「ようやく職務も終わりですか?」

 

「起きてたのかよ……」

 

リアスが貴族の居る夜営地から出てきた所だった。大人達が真剣にやってる中同年代の女の子と話すのは後ろ暗いんだろうな。若いってのは良いね。俺にこんな青春は無かったけど。

 

俺はこの時間はいつも見張りをしているからな。気付いてしまうわけだ。つまり最近はほぼ不眠不休な訳だけどな。食事の時間にだけが心の拠り所である。

 

「ふふっ、若者の青春にあれこれは言いません。ただしっかり寝て欲しいだけです」

 

「それはあんたもだろ。あんたいつ寝てるんだ。日中はいつも何処かで戦闘音が響いてる。あれはあんたのだろ?それに夜になったらまた居なくなってる。本当に人間か?」

 

「耳が良いんですね。結構距離を取っていたんですけど」

 

「今回はすまなかった。迷惑をかけてばかりだ」

 

こりゃ驚いた。謝罪とかするように見えなかったが、案外義理固いのか。

 

「いやいや僕は万が一を起こしたくないだけですから。もう後悔を見たくないだけです」

 

「?そうか」

 

あんたみたいな人の後悔を俺はみたくないんだよ。ただそれだけなんだ。

 

「ええ、リアスさんも頑張って下さいね。メンタルケアは重要ですからw」

 

「ちっ、そうかよ」

 

ガサッ

 

「リアスさん、構えて下さい」

 

「分かってる」

 

そう言った時にはもう剣が抜かれていた。

ヤバい、俺の魔力探知を抜けてきやがった。これは……強いぞ。

 

「何かあったら皆を起こして逃げて下さい。守り切れないかもしれない」

 

「へえ、それが分かるのか」

 

「なっ!魔族……!」

 

出て来たのは片角の魔族。こいつは見たことがある。よく記憶に残っているさ。印象に残るほど強かった。

 

「まあ分かった所でだけどな」

 

「本当にそうか?」

 

《破滅の光を放つ魔法》

 

「ちっ!これを防ぐのか」

 

リアスの前に移動した俺と、いつの間にかリアスの前に来ていた魔族。俺はそのまま魔法を放ったが、奴にその魔法が届くことはなかった。

 

「もう目の前まで……!」

 

「リアスさん、こいつに身体を触れられないで下さい」

 

「おいおい魔法までバレてるのかよ。やりにくいな」

 

 

こいつは初見殺しが強すぎる。だから防げた。だから覚えていた。しかしどうするか。こいつは殺す訳にはいかない。物語上こいつは必要だ。

 

残影のツァルト。

 

七崩賢奇跡のグラオザームの配下であり、使う魔法は空間転移魔法。その名の通り触れた相手を転移させたり、自分が瞬間移動したりする魔法。それで空高くに飛ばされたら非常に厄介だ。高所からの落下を対応出来る人間の魔法使いはこの時代にはいない。

 

他の奴らを飛ばされたら対処がキツくなる。未来でフリーレンとの戦闘もあるから無駄な知識は与えたくない。制限が多すぎるな。どうすればいい?

 

そうだ、リアスがいる。彼の強さの程は分からない。けど彼は強い。それだけは分かってるんだ。

しかし、こんな子どもを巻き込んで良いのか?俺一人で対処するべきではないのか?

 

「モリタ、この際お前の素性はどうでも良い。やるぞ」

 

!……情けないな。彼は、もう覚悟を決めていた。そうだ、この依頼を受けた時点で覚悟なんてとっくに決めていたんだ。その覚悟が無駄では無かったと証明せねばならない。

そうであって欲しいから。少年少女の抗いは無駄では無かったと思いたいから。

 

「リアスさん、腹を括って下さい。死闘になります」

 

「……ああ、任せろ!」

 

戦いとは無情だ。こんな子どもにまで殺し合いをさせてくる。弱肉強食だからこそ戦わねばならない。生き残らねばならない。

 

負けられない一戦が幕を開けた。

 

 

 

 

 

 




会って欲しいキャラとかいたらお願いします。


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少年少女の願いをかけて②

この時代だとまだ魔族とかしか出せないんですよねえ。適当なオリキャラを作るしかねえ!ということでリアス君が出来ました。


「ははっ、何だよこれ」

 

凄すぎる。ただそう思った。

 

辺りに轟音が響き、砂塵が舞う。リアスの振り下ろした一撃は周りの木々を薙ぎ倒し、衝撃波で何十メートルも先まで破壊しつくされていた。

 

これが只の斬撃か?明らかに強すぎるだろう。ほんとにイカれてる。それこそ勇者レベル。アイゼンやヒンメルと比べても遜色無いじゃねえか。

呆けてる場合じゃねえ。俺も武器を取り出した。

 

「お前本当に魔法使いか?」

 

リアスに呆れられてしまった。まあ確かにそう思われるのもしかたない。俺が使うのはハンマーだったから。二メートル程ある細長い持ち手に、30センチ程の頭がついたハンマー。

 

俺はこいつを杖変わりにもするし普通に殴ったりもする。この世界の武器は基本刃がついているからなあ。俺は少々異端かもしれない。

 

《地獄の炎を放つ魔法》

 

「人間ですよ、普通の。リアスさんの方がおかしいでしょう。どうなってるんですかその身体」

 

「そんな油断してて良いのか?」

 

今度は俺の方を狙ってきたらしいが、甘いな。もうリアスが来てる。

 

「誰が油断してるって?」

 

「なっ!?」

 

「こっちもわすれるなよ!」

 

そのまま二人で攻撃を叩き込む。結構なダメージになったぞこれは。

 

「これで終わりだ」

 

「もう勝ったと思ってるのか?」

 

リアスに魔法が襲いかかる。あの攻撃生き残るとか魔族化け物すぎて笑えんわ。これは避けらねえな。しょうがない。

 

「そのまま進んで下さい。僕が守ります」

 

「ああ!」

 

防御魔法を展開し、リアスの進む道を作る。

これもまた未来の魔法だ。いや、未来の防御魔法を俺なりに再現したものだ。ソリテール程なら問題は無かったと言える。フリーレンとソリテールの戦闘時には防御魔法がもう開発されていた。

しかしツァルトの時にはまだ無いと思われる。

 

人類の叡知の結晶でもあるだろうこの魔法。解析されたらかなり痛い。

 

「なっ!何だその魔法は!?」

 

そりゃそういう反応もするわ。自分の攻撃を防げる魔法なんか人間に使えないと思ってたんだろう。少なくともこの時代だからな。

 

「驚いている場合じゃないだろ」

 

彼の斬撃がツァルトに迫る。勝てるとそう思っていた。しかし、俺の見立てはことごとく甘かった。

 

***

 

突然俺達の前に現れた魔族。魔王城が比較的に近いと言えるここら辺で出会う魔族なんて、嫌な予感しかしなかった。

 

モリタ曰く瞬間移動ができると、触れられると何処かへ飛ばされると言うことだった。そんなのありか?魔法使いってやつはそんなことまで出来るのか?そう思ったが目の前の光景が否定してくる。

 

そもそもモリタは何故そんなことを知っている?こいつが何物なのか。あの町でそれを知っている奴はいない。

 

俺はあの町の生まれだが物心ついた時にはいた。あの町で一番の変人。普段はいつも付けてるのに、仕事の時だけ仮面を外している。家が何処かも、何処から来ているのかも分からない。

何より何を頼んでも引き受け、解決してしまうのだ。人の病気、魔物の討伐依頼、こわれた家の修理。

でもそれをやってるところを誰も見たことがない。だれにも見せない。

 

謎だ。俺はこいつを信用出来ない。けどこいつは、何故か強い。その理由が今分かった。

全く強い気がしなかったこいつから放たれる一撃。そもそもこんな魔法を人間が使ってるのを見たことがない。今だって強い奴の気配が一切しない。なのに、一秒毎にその偏見が否定されていく。

 

あいつの戦い方もそうだ。まるでこちらの意志が全て分かっているかのような攻撃。場を支配しているのは間違いなくこいつだと、否応なく理解する。

魔族も俺もこいつに操られている。攻撃のタイミングも、避けるタイミングも全て読まれている。

 

やりやす過ぎる。的確な援護で相手の攻撃が阻まれる。だからこそ欲が出た。ここで倒せるとそう思ったからこそ、油断が産まれた。

いつの間にか俺の攻撃は単調になっていたんだろう。長い時間戦闘を続けたのもあったのかもしれない。

 

だから俺は、こんな所で倒れてる。

魔族の一撃を食らった。たった一度の攻撃。人生で初めてこんなに傷ついた。一瞬の隙をつかれた致命的な一撃に俺はボロボロになってしまった。今まで戦ってきた中で一番強かった。

 

俺はここで死ぬのか?

嫌だ、まだ死にたくない。死ねない。こんなところで死ねない、あいつを残して死ぬなんて出来ない。やっとなんだ!やっと仲直りできたんた!俺は……あいつともう一度話すんだ!

 

しかし俺の身体は応えない。何処かが折れている。クソっ!まだだ。身体に鞭を打って立ち上がる。しかし、思うように動けない。俺はただその戦いを見ることしか出来なかった。

 

瞬間移動を繰り返し攻撃を繰り返す魔族と、それを避け、防御し、反撃を繰り返すモリタ。

 

徐々に、微かにモリタが押されている。けど決定的な攻撃に至れない。これじゃあ終わりが見えない。そう思っていた時だった。

 

「埒があかない。これで死んでもらうぞ!」

 

そう言って魔族はいなくなった。逃げたのか、と思ったがそうじゃない。少し離れた所にいた。しかしその時には手遅れだった。

 

辺りが真っ暗になった。明けかけている日の光が無くなり闇に包まれる。

 

「なっ!?これは……嘘だろ」

 

理由は明白だった。上を向けば地面があった。地面とも言える程の巨大な岩が落ちて来ていたのだ。そうか、何でも転移させられるなら地面も転移させられるのか。

 

これは……無理だな。

 

「ははっ、何だよ…最初から遊ばれてたのか」

 

言い様の無い感情がこみ上げてくる。何も出来なかった。手も足も出せてやいなかったんだ。

 

「諦めますか?」

 

「モリタ……そりゃそうだろ。こんなのさ、どうしようもないだろうが」

 

「抗ってみませんか?まだやり残しことがあるんじゃないですか?成し遂げたいことはありませんか?」

 

「そりゃ無くはないが……」

 

「醜く、意地汚く、往生際が悪く。その先に何があるかは分かりません。絶望に終わるか、希望を手にするか。でも、抗ってみなきゃ分からない。人間に諦めてる時間なんて無いんです。死ぬか生きるか、今際の際まで抗い続ける。それも悪くありませんよ?」

 

この期に及んで何を言っているんだこいつは。ああ、けど、そうだな。そうだった。まだ終わってない。俺はまだ生きている。あの勝ち誇った顔をしてる魔族に一撃ぐらい入れてやる。

 

「ああ、そうだな。俺はまだ生きているんだからな」

 

***

 

吹っ切れたような顔をして走り去っていくリアス。その顔はかの勇者と重なって見えた。

 

「さてと、俺もやりますかね」

 

ここまでされたらもう、やるしかない。原作でもそうだった。ツァルトはフリーレン達をこうやって仕留めようとした。こうならないように隙を与えず戦ったんだがなあ。

奇しくも同じ展開になってしまったな。

 

手加減したせいで何度も攻撃を食らってしまった。身体はとっくに悲鳴をあげている。何処が折れて、何処が折れてないのか。そんなのは分からなくて良い。重要なのは戦う意志が有るか無いか。それ以外は気合いで何とかなるさ。

 

魔力の出力を上げる。抑えていた魔力を解放し、魔法のイメージを練り上げる。高出力の魔力反応で辺りが震え、放つ魔法の強大さを証明していく。

太古の魔族でさえ震え上がらす、只ひたすらに夢想し続けた破滅の結晶。

 

「格の違いを見せてやる若僧」

 

 

《全てを悉く破壊する魔法》

 

 

ただのビーム砲。どんな魔法も、威力と速さを突き詰めるならばこうなってしまう。回避不能の絶対照射。魔力消費が激しく、威力が高すぎて下手に撃てないこの魔法はただのロマン砲だ。

 

隕石のように降ってくる山のような岩が轟音と共に破壊される。打ち放った光は消え、まるで世界に穴が開いたかのように、そこだけ雲が無くなっていた。

 

これでもう後戻りは出来ない。しかし対処方法は元々あったんだ。単純だ。紛れもなく単純で、でも難しい行為。

そもそも自身の覚悟が足りないと言われたらそこまでなのだが……。

 

視線の先には魔族とリアスが戦っている。岩が破壊されたのが相当堪えたのか、魔族には先程までのキレが無くなっていた。

 

「うおおお!!」

 

最後の最後まで諦めない。だからこそ彼の一撃はツァルトに届いた。致命の一撃。死闘の末に繰り出された凶刃が奴の命に手をかける。

 

醜く抗う人間は時に救われるのかもしれない。まあそんな上手くいくのは少数だけど、それでもやってみれば良い。それもまた人間としてあるべき姿だと俺は思う。

 

《移動する魔法》

 

いち速く移動し、逃げる隙を与えない。リアスが稼いでくれた時間。退却を選ぶか逡巡するこの一瞬。この隙がどうしても欲しかったんだ。触れなければこの魔法は使えないから。

 

《気絶させる魔法》

 

「なっ、クソっ!卑怯……モノ……」

 

「卑怯だからこそ生き残れるんだ。どんな手段を取っても生きる。お前はそれに負けた。それでこそ弱肉強食だろ?」

 

確かに卑怯かもしれない。彼ら魔族にしてみれば魔力を制限することは卑怯。正々堂々としていない、魔法を扱う者として一番のタブーだろう。

けど、卑怯なんて言ってられない。生き死にの世界にそんな物はない。どちらが上回ったか、それだけしか残らない。

 

「まさか………本当に生き残れるなんてな」

 

随分と呆けた顔をしている。まあ、あんなのを使えばな。

 

「抗ってみるのも悪くないでしょう?」

 

「ああ、そうみたいだ」

 

安堵したような、呆れたような笑みが、なんとなくこの戦いの終わりを知らせた。

 

俺は彼らの青春を、誰かの日常を、少年少女の願いを守れたんだろうか。

 

こんな自分でも出来たのだと、そう思いたい限りだ。




戦闘描写キッツ。何も書けないです。


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閑話 嘗ての誰も知らない魔法使い

うんまい!!

 

ということで酒場で酒を飲まないでツマミだけ食う男、森田です。

 

元々酒は好きじゃない。何て言うか苦くない?大人ではないと言われればそう。アルコール独特のあの感じが苦手なのだ。やっぱり日本が恋しいねえ。メロンソーダが飲みてえよ俺は。

 

まあツマミは美味いし良いや。しかしまあこの世界の料理水準も上がってきたように感じる。数千年前までは全然だったんだけどなあ。人類の成長とかいう意味分からん程デカイ物を感じつつツマミを食べ進める。

 

それでも近代日本、特に2010年以降には遠く及ばない。少々割高だがコンビニ一つであそこまでの物を食べられたことは忘れられない。俺が子供の頃、初めて食べたコンビニのサンドイッチは衝撃だった。まあその後の物価高騰は耐えられる物では無かったし、こっちに来れたのもあながち間違いじゃないのかもしれないが。

 

今世では昔から料理に力を入れているが、正直一から全部作るのはダルい。この世界の物をあちらと同じように使おうとすると大体失敗する。味とか食感とか色々違うんだよねえ。誰かさっさと文明進めてくれないかな。魔物がいるし無理だな。

 

「すまん、ここ座るぞ?」

 

む?そんなに客が来てるのか?

 

「ああ!どうぞど、う……ぞ」

 

何で居んねんてめえ!

何故か目の前にはフランメがいました。絶対狙ってたなお前?俺がここに居るの分かってたろ絶対。

 

「何の用です?」

 

「敬語」

 

「ちっ、何なんすか今日は?」

 

「仕方ない、今回はそれで良いさ」

 

この人と会えたのは良いさ。別に構わない。ネームドキャラと会うのは俺の楽しみでもあるからな。けどタイミングがねえ。たぶんあれだろ?この前の魔法のことだろ?面倒な予感しかしないね。

 

「それで、実はこの前有ることがあったのさ。私が魔物を討伐している時、馬鹿デカイ魔力反応があった。明らかに強い魔法だった。魔王にすら匹敵する程の魔法だ。

その時は北部高原辺りにいたんだが、ここら辺の魔法使いなんざあんたしかいない。魔族かとも思ったんだけどねえ。それらしい痕跡は見つからなかった。何か知らないか?」

 

そっすよねー。その話ですよねー。ていうかこれバレとるやろ。ほぼ確信に近い形だったから俺のとこにわざわざ来たんやろがい。

 

「単刀直入にどうぞ」

 

「お前やったな?」

 

「うん、やったけど何か?」

 

はあーと溜め息をついて皺を寄せるフランメ。まだ若いんだから止めなさいよ。美人の顔が崩れちまう。

 

「まずその魔力はなんなんだ?抑えてるだろ?」

 

「おん」

 

「いつから?」

 

「さあ、もう数千年は」

 

「……はぁ、何で表舞台に立とうとしない。誰も聞いたことのない、得体の知れない魔法使い。お前怪し過ぎるぞ?」

 

「ゼーリエだってそうだろうに」

 

「あの人は昔は有名だったろう。お前のことなんて何処にも載っていない。この歴史上の何処にも」

 

「別にわざわざ目立つ必要は無いだろ。何をするかは俺の自由だ」

 

「それはそうだが……」

 

なんか呆れられた気がする。それにしてもこんな表情もするんだねえ。原作じゃあフリーレン視点でしかフランメは見れなかったからな。ちょっと新鮮。

てか原作から少し離れたからこうなった可能性ある?修正力君さあ………(自業自得)

 

「それだけっすか?」

 

「………?ああ」

 

いやマジかよ。それ問いただす為に来たとか暇すぎじゃない?

 

「まあ良いですわ。取り敢えず食べましょ」

 

「なあ、一つ良いか?」

 

「答えられることなら」

 

「何でいきなり使ったんだ?」

 

「コンプライアンス違反になるから無理」

 

 

***

 

あの後、つまりはあのツァルトとの戦い。その後は大変だった。俺の魔法が見られたってのは余りに外聞が悪い。だからその部分の記憶を消した。本当に大変だった。血をダラダラ流した状態で魔族の精神世界に入り込むんだ。最悪過ぎる。

 

そもそも精神系の魔法ってのは相手に共感したり感情を理解しないと使えない魔法だ。そして魔族ってのは人間と根本的に価値観が違う。奴らには罪悪感や悪意という物が存在しないんだ。そういうように作られてると言ったらいいか。

 

だからそいつら相手に記憶を探ったりするのはマジで疲れる。てか気持ち悪い。倦怠感や吐き気が凄いのだ。二度とやりたくない体験だった。

 

その後ツァルトはてきとうな場所に移動させた。リアスと俺は夜営場所に戻って行動不能。どちらも重症と言える傷だった。町に付いて入院する羽目になった。その後リアスとは別れて俺は一人でいつもの町に戻ってきた訳だ。

 

リアスは貴族の少女と上手くいったのだろうか?人の恋路は余り考えるべきではないかもしれないな。

 

つまりは何も無かった。戦闘の後は普通に依頼をクリアして結構な金を踏んだくって終わり。平穏無事その物であった訳だ。今回の件で金が完全に貯まった。遂に旅の準備が整った。

 

あと数ヶ月したら女将さんらともお別れだ。今世で俺と深い関係を、と言うか何度も会う関係だった人は少ない。深い関係の友人を作るのは苦手なのもある。だからこそ何度も会う機会のある知り合いは少ないし、そういう奴らは全員もうこの世にはいない。いつか魂の眠る場所に行ってみるのも悪くないかもな。

 

だからこそ女将さんは今世じゃ本当に数少ない知り合いだ。それも一旦これで終わり。

長く生きるというのは、それ以上の別れを見つめ続けるってことでもある。誰かはそれに辟易して、誰かはそれで壊れてしまったのだろう。けど別れも含めて人生だ。最後まで楽しむ人生でいたい。

 

その瞬間に涙して、悲しんで生きる。乗り越える必要なんて無いんだ。変わる必要も無い。刹那的に生き続ける。いつか薄れて、懐かしんで、そうなる日まで全力で泣いていこう。

 

こういう別れが近い時はいつも思い出す。

かつて世界を救った英雄、かつて隣に住んでいたおせっかい、かつて隣で死んだ戦友、あの幸せだった日々の事。

 

そして、もう誰も知らない戦いの最後。

 

「二度と会えないんだよなあ」

 

「誰の事を言ってるんだ?」

 

「遠い昔の話だ」

 

またいつかあんな奴らと出会えると良いな。少し懐かしい記憶だ。でもこれらは全てプロローグですらない。この世界の物語はまだ始まってない。あれをスタートとするか、エンディングとするかの違いはあれど、どちらであってもまだ物語は始まっていないんだ。

 

この世界にいらないピースが今も尚紡がれていく。

 

「俺からも一つ良いか?」

 

「答えられない物じゃなければ」

 

「オレオールは見つかったかい?」

 

「さあね」

 

「ああ、そうかい」

 

まだ物語は始まってない。




評価と感想ありがとうございます!どんどん低評価して下さい!


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旅に出て見よう!

この時代ももう少しで終わらせたいですねー。ギャグ要素が少なくなってきたな。あれ、おかしいな?


ギンッと金属同士のぶつかる音が響く。

力任せに振るってはいけない。絶対に間違えてはならない。そんな緊張感の中、俺は武器を構えていた。

 

という訳でリアスと修行中の森田です。いやこいつ強すぎやろ。何で武器で衝撃波生まれてんだよ。頭可笑しいんちゃうん?

 

「クソっ!化け物が!」

 

「いやそれはあんたの方だろ。この前のあんたと俺、どっちが化け物だと」

 

「そっちやろがい!」

 

「頭おかしいのかあんた!?」

 

近接戦闘が弱いのが浮き彫りになったからリアスに稽古を付けてもらってる訳だ。いやあ人に何かを教えて貰うなんて前世ぶりだからな。ちょっと感慨深「うおっ!」

 

くっそ!強すぎる!相手の猛攻が凄すぎて守りに徹するしかねえ。さっきからギリギリだ。何度も負けそうになってる。

 

「そもそもっ!何でっ!衝撃波が出るんだよっ!」

 

「うーんと…根性!」

 

「ふざけんなああああ!!」

 

何だよ根性根性って!戦士ってのはそれしかねえのか!?

こっちは数百年前から筋トレしてモンスター相手に戦ってきたのに、結局才能か?才能なのか?

 

「甘いっ!」

 

「ぐえっ!」

 

やられてしまった。やっぱり近接戦闘が俺はおざなりだ。魔法の方が期間が長いんだからそりゃそうなるんだが。

元々この身に才は無し。というか前世が圧倒的に無かったのだ。いやあったのかもしれないがそれを体型が邪魔していた。つまりデブ。普通に太ってたのだ。今のこの筋肉からは考えられないね。

そしてその身体の状態を基礎として身体を動かすのが身に染み付いてしまっている。今世の身体の才能は発揮出来ないし元々無いのかもしれないし。

 

そもそもの話にもなるのだが、俺はこの身体の才能を生かせていない。前世の頭の使い方やら体の動かし方に引っ張られて何も生かせていないのだ。

 

勿論前世の知識によって上手くいってる部分もある。ファンタジーとかに触れてきたからそれなりに良い魔法も生み出せた。けど純粋な才能は全くいかせていないのでは?単純なスペックの問題で頭の回転とか筋肉の付きやすさとかは上がってるけども。

 

結局発想とか、感覚的な何かを掴む行いが上手く出来ない。

俺は他の人の数十倍の努力で何かを手に入れる必要があったりするのだ。一つの魔法を解読し覚えるのに速くて数ヶ月、遅くて数十年。新しく生み出すなら大体100年ぐらいかかる。それをふまえて考えると俺は大体一億年程生きたのかもしれない。

 

ジジイどころじゃねえな俺。ていうか流石にないだろ。流石に。

 

でもまあそうして積み上げて来たからここまで強くなれたのだ。近接は未だ数百年。筋トレはもう少し昔からだけど、まあこんなもんなのかもしれない。

 

「どうやったらそんな強くなるん……?」

 

「知らねえよ。俺もいつの間にか出来るようになってたんだ。ひたすらにやるしか無いんじゃないか?」

 

「リアスさん、俺はね、努力ってのが嫌いなんですよ。才能を持ってる野郎が嫌いなんですよ。努力が出来るかどうかも結局そうなってしまうのは余り好きじゃない。まあそれを覆すような英雄には俺はなれないんですけどね」

 

「ただのダメ野郎じゃねえか…」

 

そう、元々俺の性根は腐ってる。誰かに嫉妬し、自信の才や運の無さに絶望する、情けなく傲慢で矮小な一個人だ。

この世界じゃ生きる為に必要だったから鍛えたし、異世界で俺は好き勝手出来たからここまで来たのだ。本来はやらなかっただろう。

フリーレンと会いたいってのも大きいな。漫画を何回か見返すくらいには好きだった。

 

けど遠いなあ。あと千年かあ。あーでももうフリーレンとゼーリエは会ってるだろうから950年くらい?長えー。それ迄に何をしてろって言うんだ。旅だってそんな長くは続けたく無いような気もする。

 

「リアスさん」

 

「なんだ?」

 

「もし、フリーレンっていうエルフと会ったら教えて下さい」

 

「知り合いか?」

 

「魔王を倒す魔法使いです」

 

「はっ、面白い冗談だな」

 

「でしょ?」

 

***

 

「そう、遂に行くのね」

 

「ええ、本当にお世話になりました。と言ってももう少し先の話ですが」

 

俺は女将さんにここを発つ旨を伝えていた。

 

「それはそうだけどねえ。……あなたが来てもう十数年経つけど、何も変わらないのね」

 

「エルフですから」

 

当時の女将さんはまだ若く、何も知らない少女だった。二十歳にも満たないというのに、親が先立ち、その失意も冷めやらぬまま受け継いだ宿の切り盛りを行っていた。

 

そんな時に現れたのが俺。当時金を稼ぐ手段を探していた俺はここの事情を知り、頼み込んで働くのを許可して貰った。

彼女としても計算やら料理やらを出来る人間が欲しかったから渡りに船だったのだろう。

 

「それにしては人間過ぎるわよ。最初から最後まで謎だったわねあなた」

 

今では彼女も立派な大人。まあ未だに二十代で店を切り盛りするには若すぎるくらいなんだが。

 

「ええまあ。でも謎を聞きたい訳でも無いでしょう?退屈なだけですから。………常識を知らない浮浪者を働かせて頂いた恩は一生忘れません」

 

「そうね。いつかまた会いに来て」

 

「十年以内には必ず。女将さんもさっさと男を捕まえて下さいね。気になってるんでしょう?あの薬屋の子」

 

死ぬ前には必ず戻って来たいからね。知らない間に知り合いが死んだとか最悪だし。

 

「………本当に何でもお見通しね。別にあなたでも良いのよ?」

 

「冗談は止してくださいよ。僕の顔見たことあるでしょうに……」

 

こんなに年が離れてるんだ。それに、知り合いの子孫に手を出すとかあり得ないだろ。前世のあいつらとの約束もあるからな。

 

「ふふっ、そうね。その反応も十年前から変わらないわね。確かに警備に突き出さなかったのは自分でも驚きだわ」

 

「でしょう?まああの頃の女将さんにこの顔を見せたのはほんとに申し訳ないですけど」

 

俺だったら問答無用で突き出してるな。正味化け物でしかないからな俺。

 

「なら申し訳ないついでに聞いて良いかしら?」

 

「どうぞ」

 

「あなたは何であの時私に手を差しのべたの?経営困難に陥ってた宿に、何も出来ない小娘だった私に、あなたは何故か着いてきてくれた」

 

 

「別に手を差しのべた訳じゃありません。金が欲しかっただけです」

 

「本当に?ご先祖様は関係ないの?」

 

確かに彼女の祖先とは知り合いだった。しかし別に仲が良い訳じゃなかった。ちょっと会って話す機会が数回あっただけ。それも全部成りゆきで基本的には話さないような関係だ。

 

「……ええ、何も関係はないです。全くどうやって知ったんですかそれ」

 

「昔の日記に書いてあった」

 

「なるほど、まだ残ってたんですねそれ」

 

彼女の書いていた日記。一度だけちらっと聞いたことがある。最近日記を書いていると。お前のことも書いてやると。そんなことを言っていた。何でまだ残ってんのかは知らんけど。

 

「うん、世界を救ったのにいつの間にか居なくなってたって。何でそんなことしたの?」

 

「別に言う必要が無かったですから。数回しか会ってない人に別れを言う必要は無いでしょう」

 

「それはそうだけど」

 

「世界を救うのなんて簡単です。その最後に何があろうとも、救うことは出来ます。人一人救うことの方が何十倍も難しいですよ。だから別れなんていらなかった。ちょっと話をしただけですから」

 

「こんな宿の店員が英雄だなんて誰も思わないでしょうね」

 

「知らなくて良いんですよそんなこと。世界が平和になった訳でもなし。何か大層なことをした訳じゃないんですから」

 

「変わってるのも相変わらずね」

 

「ええ、本当に。恥ずかしい限りです」

 

***

 

それなりの準備をして、それなりに金を稼いで、そうしてまた季節は巡ってきた。

 

ぼちぼち別れの挨拶も済ませ、後は出発するだけ。この町では本当にお世話になった。色々な人と話して文化を知り、営みを見て自分がどうあるべきか、どうであったかを思い出させて貰った。

 

人と関わる機会が少なくなっていた俺は少しだけ自身のあり方を見失っていた。会話の楽しさを忘れていた。一定の場所に居着くのもここで一旦終了。これからは旅のターンだ。

 

「行くんだな?」

 

「ええ、そろそろ」

 

最後の準備をしていたところリアスが来た。女将さんも一緒らしい。

 

「最後だから聞くけど、何でいつも仮面してたんだ?」

 

「ほいっ」

 

「えっ、は?、ちょっと待て何だそれ!?」

 

幻の魔法を解き本来の自分の顔を見せる。自信の無い、不細工な顔だ。あっちでもこの顔は不評だったよ。

 

「分かりました?こんな顔で彷徨くと色々面倒なんです。魔物として扱われてしまいますから。仕事中に他の事に気を配るのも面倒ですしね」

 

「そういうことだったのかよ……」

 

「私は知ってたけど……。仕方ないわよそんな顔じゃ」

 

「あなた方美男美女には一生分からんでしょうね!」

 

「そんなに言わなくても…」

 

転生特典一つもない癖してこんなところは律儀なんだから、異世界ライフとしては最低な方だな全く。

 

「これから何処へ行くんだ?」

 

「北部高原を越えて中央の方へ」

 

「統一帝国の方に行くのか……。心配無いとは思うが気をつけてな」

 

「ええ、女将さんとリアスさんもお気をつけて。後これどうぞ」

 

「これは……」

 

「手形の束と……何かの飾り?」

 

この日の為に用意しておいた物だ。折角出来た知り合いだ。餞別くらい用意しとかないとね。

 

「そっちの手紙は名前を書いて念じればその人の所に届けることが出来ます。結婚式とかあったら僕も呼んで下さいね」

 

「なるほど。ならこっちのは」

 

「魔除け、のような物です。大抵の魔物はそれで寄ってこなくなりますから」

 

「便利過ぎるわねこれ……いくらかかったの?」

 

「自前ですから。しっかり無料です」

 

二人が明らかに顔をしかめた。そんな化け物を見るような目をしないでくれよ。

 

「何でも出来すぎだろ……」

 

「出来ないこともありますよ。生きてる長さが違うだけです」

 

「本当に、あなたって何時から生きてるのよ」

 

「僕も覚えてませんよそんなの。どうでも良いことです」

 

「まあ、ありがとな。上手く使わせて貰うよ」

 

うん、二人とも喜んでくれてはいるみたいだな。人のプレゼントとか考えたこともないからな。ちょっと緊張してたんだ。

 

「じゃあ、僕はもう行きますね。また何年後かに帰って来ますんで」

 

「ええ、またいつかね」

 

「俺らが死ぬ前には来いよ」

 

「その前には手紙をお願いします。それじゃ、さようなら」

 

 

これから何をしようか。

 

この世界のどうでも良い部分を見ていこう。紡がれない部分を記録していこう。

 

ヒロインすら居ないモブの異世界ライフだ。俺にとっては好都合。

 

「取り敢えず、楽しんでいこう」

 

こんなにも綺麗な世界で自由なんだからな。

 

***

 

 

「行っちゃったわね」

 

「そっすね。行っちゃいました」

 

ずっと分からないままだった。自分のことなんて何も話してくれなかったが、まあそれなりに信用はしてくれていたんだな。こんなのをくれるくらいだしな。

 

「エルネアさん……」

 

隣の良く知る顔は泣いていてた。そりゃそうだ。彼女は俺なんかよりも長くあいつと一緒に居たんだろうから。

 

「ずっと居ると思ってたのよ。いきなりに現れて、こんなに長い間付いてきてくれたのに……今さら行かなくても良いじゃない……」

 

「行きましょうエルネアさん。あいつの話聞かせて下さいよ。俺は何も知らないんで」

 

「リアス君………そうね。ええ、こんな所で泣いてたらまたあの人が来ちゃうわよ」

 

少しだけ治まったようだ。様子を見てみればいつもの笑顔が戻ってきていた。

 

何者だったのか、何をしていたのか、何が目的だったのか、全く分からない奴だった。けどまあ悪い奴ではないんだろうな。

 

「次はいつ来るんでしょうね」

 

「そんなの、分かるわけないわ。誰も彼のことを知らないんだから」

 

「エルネアさんもなんですか?」

 

「ええ、家も、何処から来たのかも、何をしに来たのかも。まあ昔何をしたのかだけは知ってるわ」

 

なるほど。エルネアさんも知ってることは少ないらしい。本当に謎だなあいつ。

 

「え、何すかそれ」

 

「うーん、これは秘密かな」

 

「まじっすか。でもエルネアさんも知らないなんて。あいつ本当に胡散臭いですね」

 

「ええ、最初っから胡散臭くて、怪しくて、謎で、変な人だったわ」

 

いつの間にか隣には満面の笑みが咲いていた。

 

 




誤字報告や感想ありがとうございます!
因みにこの作品恋愛とか想いが重い(激寒ギャグ)が無いです。そこのところお願いします。


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モンクのクラフト

千年前編終了!!


「今日は、ここで良いか」

 

北部高原を越えて雪山を越えて、後に中央諸国と呼ばれる所を目指している森田です。寒いねえ、北部高原もそうだがここら辺は寒すぎる。フォル盆地に早く行きたいなあ…。

 

「む、こんな所に人が居るとは。珍しいな」

 

「へぇ…!あんたは」

まじか!まさかこんな所で会うとはな。とんだビックネームだぜ。異世界最高~~!!

 

「モンクのクラフト!」

 

「ん?まさか俺の事を知ってるのか?」

 

あれは……何年前だったか。100年か…200年か?いやもっと前かもしれない。年数を数えてないから分からないが、まあ相当前に世界を救ったって話を聞いた。それを為したのがこいつだ。

 

原作のネームドキャラでもある。

雪山でフリーレン達と会い、女神を信仰してることと、何か偉業を為したことを仄めかした人物。その後にこいつとその相方の像が出てきて、こいつが世界を救ったっぽいこととか、どんなことも忘れ去られることを描写していた。

 

以前名を馳せた時は会いそびれたからな。あの時はまあショックだったよ。

 

「ああ知ってるさ。どういう内容だったかは知らないが、あんたは世界を救ったんだろ?」

 

「まさかまだ覚えてる奴が居るとはな。本当に人間か?」

 

「……まあ、あんたにならいいか」

 

「その顔……ああ、なるほどな」

 

「分かったろ?俺もエルフさ」

 

やっぱりこの顔を見せると駄目だな。クラフトも一瞬身構えた。魔物かなんかだと思ったんだろう。

 

「お前の名前は?」

 

「森田だ。よろしく」

 

「おう、よろしくな」

 

***

 

「へえ、お前料理上手いな」

 

「あんたに言われるのは照れるねえ」

 

まさかクラフトと会えるとはな。今日は良い日だ。折角だし、前から考えてたことも頼んでみるか。

 

「なあクラフト」

 

「なんだ?」

 

「もし良かったら手合わせしてくれないか?」

 

「手合わせ?」

 

「ああ、今近接戦闘の修行をしていてね。どうにも強くなれないからさ」

 

以前のリアスとの修行を通して少しは強くなっんだが、いやあ先は遠い。でも人に教えて貰うのは重要だ。闇雲にやるより上手くなる。ただ求道するのも良いが、それだと色々出来なくなるからな。それに人生捧げる気はない。

 

「へえ、俺とか。まあ飯を貰った恩だ。良いだろう」

 

「ありがてえ!」

 

まじか!ダメ元だったが頼んでみるもんだな!?いやあ本当に運が良い!料理頑張ってきて良かったぜ!

 

「なあ、モリタ」

 

「なんすか?」

 

「お前は……どうしてそんな楽しそうなんだ?」

 

「え?」

 

…………あー何となく先が読めたかも。

 

「俺たちは生きた軌跡ってのを誰も覚えてくれちゃいない。俺たちはそれほど長い年月を歩んでる。分かるだろう?それは酷なことだ。それなのにお前は随分楽しそうだ」

 

聞いたことのある言葉だ。いや、見たことのある言葉だな。この人はある程度闇を抱えたキャラなんだよな。ま、ここは少しだけ話をしますか。

 

「だからあんたはモンクなんだろ?」

 

「なに?」

 

「神様に誉めて貰うためにあんたはモンクをやってるんだろ?」

 

「………何でそれを…」

 

知ってるさ。そりゃあな。何回も見直して、その度に長く生きるってのを考えた。でもやってみれば大したことはない。

 

「この世は楽しいぜクラフト。果てしない大地と海が続いてる。例え俺たちの為した偉業が誰も覚えてちゃいなくても、俺にはそんなの関係ない。そもそも世界を救ったからなんだ。偉業を為したから何なんだ?俺はさ、そんなことより楽しくいたいんだ。自由でいたいだけなんだ」

 

「お前は……」

 

その一瞬に、気分に全てを賭けられるならどうとでもなる。ノリと勢いとパッションで面白可笑しくやっていく。

 

「なあに、どんな偉業も伝説も誰もが忘れ去る。誰に誉められなくたってさ、俺は生きたいんだ。見てみたいんだ。こんな幸せな人生だ。楽しまなきゃ勿体無い」

 

「そうか、お前はそうなのか」

 

女神がいるかも分からないし、何で俺がここにいるのかも分からない。意味なんてのもありはしない。誰に決められた訳でも無い人生だ。

 

「ああ、誰がどうとか関係ない。現にお前も俺の事を知らないだろ?いやまあ俺の場合は俺が悪い時もあるんだが…….。まあ、世界を救うのは良いことかもしれないが、俺にとっては良いこととかどうでもいい。やりたいようにやるだけだ。」

 

「変人だなお前は」

 

前世の時からよく言われるよ。人のことなんだと思ってるんだよ。

 

「あんたもだろ?価値観の違いだ」

 

「そうだな。そういうこともあるんだろう。なあ、何でお前は旅をしてるんだ?」

 

「会いたい人達がいてね。何処にいるかも分からないし、何をやってるか分からない人もいる」

 

「なんだそれは……」

 

「ははっ、あんたもその一人だったんだよ。俺はあんたに会ってみたかったんだ。もう遠い、遥か昔から、あんたが産まれるよりずっと前からさ」

 

「何の冗談だ?未来でもみれるのか?」

 

分からないだろうな。分からなくていいんだ。もしかしたらこの世界が物語の世界かもしれないなんて。全部妄想で、フィクションで、夢物語。自分達が只のピエロかもしれないなんて、それこそ夢が無い。絶望するかもしれない。そんなの知らなくて良いんだ。

 

「いいや、まあそういうこともあるのさ。生も死も自分の自由だ。勿論信仰もな。俺はそういう人間だ。長生きしてもクソガキのまんま。そんな人生もあるんだよ世の中には」

 

「そうかもな。だがいずれそうじゃいられなくなるだろう」

 

「そうだな。そうでいられなくなるかもしれない。けどね、世の中にはそのまま夢を成し遂げちまう馬鹿がいるもんだ」

 

「っ、それは…」

 

未来には馬鹿みたいな勇者が待ってる。只の村人Aのまま、勇者の剣も抜かずに自身が勇者だと証明する男が居る。

 

「子供の頃の夢のまま、友達に煽られて偽物のまま、それでも俺は本物になると。成せばなると言って本当にやってしまう奴もいる」

 

「そうか。ああ、そういう奴もいるんだろうさ。長く生きてると耐えられくなってしまう。でもそうじゃない奴もいるのか」

 

「ああ、気持ちの問題だ。どうしようもねえ。でもどうにかする必要も無いとは思うよ。そのままで良い。何をするのも自由なんだからな」

 

「そうだな…」

 

***

 

「がっ!…うえっ、流石だな」

 

「お前も案外出来るじゃないか」

 

何処がだよ!手も足も出せねえじゃねえか!

今はクラフトとの手合わせをしている。強い奴とやれば何か掴めないかとも思ったんだがな。どうにも上手くいかないなあ。

 

「しかしまだ甘いな。気合いが足りねえ」

 

「結局それかよ……」

 

これ以上鍛えるのは無駄なのかもな。けど諦めきれねえなあ。魔法がここまで出来たんだし、折角ならやりたいよなあ。やっぱ戦闘の華は近接だしな。アニメの動き再現出来たりしたらカッコいいよなあ。

 

「どうした?やらないのか?」

 

「やるに決まってるでしょ!貴重な機会だ。ひたすら付き合って貰うぞ!」

 

***

 

「ここらでお別れだな」

 

「ああ、ありがとうな。付き合ってくれて」

 

「良いさ、この一年間お前のお陰で退屈はしなかった」

 

最初に会ってから一年間。俺はクラフトに付いて回り、食事なんかを用意する代わりに稽古をお願いしていた。それも今日で終わりだ。クラフトはこれから東へ行くようだが、俺が目指すのはフォル盆地。ここでお別れだ。

 

「あんたの信仰が上手くいくことを願ってるよ」

 

「ははっ、別に女神様を信じてる訳でもないだろう。誰に願うんだ?」

 

「うん?別に神を信じてないわけじゃないぞ?」

 

「そうなのか?」

 

おかしいな。俺は言っていなかっただろうか。

 

「俺にとって神ってのは居ても良いし居なくても良いんだ。結局答えが出ないからな。まあ祈る時は祈るんだけどさ。でも今回は違う。この世界に、その運命に願うんだ」

 

無神論者とも異なる、別に信じてるわけでも、信じてないわけでもない。駄目で元々。居たら良いな程度に祈る。曖昧なあり方かもしれないが俺はそういう人間だ。日本人には多いかもな。

 

「ふっ、聞いたことないなそんなのは」

 

「信仰は自由だからな。何を信じるのも、何を考えて生きるのもさ」

 

「ああ、そうかもな。今生の別れとは思わん。またな。モリタ」

 

「ああ、さようならクラフト」

 

もう会えないかもしれないが、それでも貴方の旅路を祈るよクラフト。何れ会うフリーレンとユーベルによろしく。

 




取り敢えず回収出来る所は出来るだけやりました。やってない所あったらオネシャス。


オマケのキャラ紹介

森田

いつから存在したのか分からない転生者のエルフ。魔法の実力は折り紙つきで作中トップクラスを誇るが才能自体はほぼ無し。実は世界を何度か救っているが、クラフトより遥か昔の時代のため忘れ去られている。もしかしたら神話の時代より前に存在した可能性も……?

「転生特典貰ってねえんだから好きに生きさせろ。」


女将さん

本名はエルネア。12の時に親族が全て魔族に殺され自分だけ生き残ってしまった。両親から残された貯金と宿の経営で何とかしようとしたが失敗。金が底を尽き掛けた所で森田と出会った。森田が世界を救った時の知り合いの子孫であり、家の古いタンスに眠っていた日記から森田と似ている人物を発見。森田が世界を救ったことを知っている数少ない人物。森田に助けてもらい、長い間一緒に居たため家族のように思ってるが、森田に対して恋愛感情は無い。意中の相手は時々来る薬屋の男性。

「世の中上手くいくことの方が少ないけど生きるしかないのよ。例え泥水を啜ってもね」


リアス

貴族の幼馴染みの女の子と上手く行ってるうらやま野郎。本人曰く捨て子らしく、育て親のアルリアの下で働いている。貴族の女の子とはアルリアの仕事に付いて回っていたら出会った。戦士としての才能があり、武器での近接戦闘に優れている。森田曰くその強さは後の時代の勇者に通じる物が有るらしい。

「戦争の無い平和な世界が来ると良いな。俺に出来るのはその時代までの道を託すことだけだ」


フランメ

後の勇者一行の魔法使い、フリーレンの師匠。人類の魔法の開祖であり、正に伝説の魔法使い。ゼーリエの弟子であり、その強さは絶大で魔王軍の将軍を一撃で葬り去っている。人間の中の魔法使いとしての才能はトップクラスであり、ゼーリエには及ばなかったものの「あれ程の才を持ちながら───」と言わしめた。もしかしたら魔王を倒せる実力があったのかもしれない。魂の眠る場所をエンデで発見したらしい。好きな魔法は花畑を出す魔法。原作キャラの一人。

「魔法を愚弄するような卑怯者は私達だけでいい。
戦いを追い求める私には魔王を殺せない。平和な時代に生きる自分が想像できねえからな」


クラフト

いつかの時代に世界を救った二人の片割れ。エルフとして果てしない時間を生きている。自身の生きた軌跡を誰にも覚えていてもらえず、偉業も伝説も忘れ去られたことに悲しみを覚えている。善行を積み、死んだ後は女神様に褒めてもらおうと思っている。近接戦闘の能力は凄まじく、リアスや森田でもその実力は計り知れない。モンクとして拳を武器にしており、作中で近接が右に出る者は居ないのでは無いだろうか。原作キャラの一人。

「俺は女神様を信じている。いてくれなきゃ困るさ。俺は長い人生を歩んでここにいるんだからな」


ソリテール

作中でフリーレンを苦しめた大魔族。七崩賢クラスの実力があり、人間を研究している。魔王の末路を見て人間との共存は夢物語だと考えている。研究の為に殺された人間は数えきれない。原作キャラの一人。

「実験とは失敗するものなの。たくさんたくさん失敗して最後に1つの答えを導き出すものなの」


ツァルト

七崩賢奇跡のグラザオームの配下。幻影のツァルトとよばれており、空間転移魔法を使える。元々の勇者一行が魔王を倒す旅の途中で接敵していたら負けていた。原作キャラの一人。

「人間はどうせ皆殺しにするだけだ」




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祝福された始まり

新章突入(3、4話ぐらいしか続かなさそう)

アンケートの内容がマナー違反になっていたため取り消しました。誠に申し訳ありません。新しい物を作り直します。ご迷惑をおかけしました。


(あれから)何も、無かった!!!!(三刀流の剣士風)

 

はい、何も無かった(出来なかった)無能、森田です。いやまあ、有ったにはあったんだが……..。今は勇者一行が出発する一時間前でございます。

ええ、ええ、何で何も出来て無いんだって?やろうと思えばいくらでも出来ただろって?皆さまの言いたいことはよく分かります。まあ、その通りなんですけどね。

 

でもさあ、正直ヒンメルに付いていけば大抵のシナリオは見れるんすよ。ゲーエンとかさ、苦労に見合わない足湯とかね。

だったらもうヒンメル達を中央でスタンバった方が早いでしょって言うね。いつ頃なのか全く分からないからね。これで北側に居て出立を見れなかったとか死刑よ死刑。許されんわ。

 

え?何で今日はこんな解説口調なんだって?

 

あー、いやまあ、前からあんたらに見られてんのは気付いてたんだよ。たださ、どうにも人との会話中とかにそっちに意識を割くことは難しくて。まあなんだ。あんたらが最後に見てた時から大体千年くらい経つ訳よ。

 

あれから色々あったさ。俺は積極的に人と関わったし、800年程は旅を続けたよ。というのもあの後色々あってね。魔王の戦争が激化したりとかさ。千年も経てば人間も減っちまうんだよ。最終的には人間は三分の一にまで減るらしいからな。

 

あと統一帝国の崩壊。これによって大体中央諸国のどこら辺にヒンメルが居たのか分かった。この千年は本当に頑張ったよ。勇者一行に付いていく用の金を貯めるためにね。とんだ小金持ちだよ俺は。そっちで言うところの五千万ぐらいを地道に貯めたんだ。流石にキツいよ。

 

あと魔法ね。実はあの後魔法を使ってるのがバレて重罪人扱いされたんだよね。急いで逃げて何とかやり過ごしたけどさ。統一帝国じゃその後魔法の使用が認められてどうにかなった。

 

あと透明化とか浮遊とか魔力を他人に悟られないようにする系の魔法を努力した。ほんとまじで。血が滲む程頑張ったよ。まあ元々この魔法達に関してはずーっと頑張ってたんだよね。

 

勇者一行に付いていく可能性は考えてたから昔っから頑張ってた。それをここ数百年は常時オンにしてたよ。人と話す時以外はずーっと使って魔力のブレとか抑えてたんだよね。

 

それにしてもあんたらも暇だねえ。何で俺なんかを見てるんだか。俺は主人公って器じゃないからな。つまらないだろ。この世界のモブを見たところで何もならんだろうに。

 

まあだけどこれからだ。こっからは主人公の登場だ。彼らの物語がついには始まる。恐らくここがこの世界のエピローグだ。本番であり前日譚だ。俺ももう何処までいけるか分からない。ここまで来れたのは一種の運だ。

 

お、そろそろ来るみたいだ。

 

ははっ、随分と辛気臭い面してんなあ。あの青いのがヒンメル、そして長身のハイター、そしてアイゼン。それであれが……うん、フリーレンだな。本当にここまで来て良かった。笑ってしまう程に嬉しい。何だか泣いてしまいそうだ。これからなんだけどな。

 

それにしてもフリーレンとハイターはどことなく機嫌が悪そうだ。まあどうせ初手で処刑されかけたからだろうな。生意気な口聞いて処刑とか終わってんなこのパーティー。まあ魔王倒すのもこいつらなんだが。

 

さて、何処で彼らと合流しようか。魔法で気配消してついて行きたいけど、取り敢えず森に入ったらで良いかな。

 

 

 

***

 

 

んまあという訳で数日が経った。今のところ旅は順調だ。やはりこのパーティーはバランスが良い。何より治療を出来る者がいるというのが重要だ。天上の女神様の魔法。それは聖職者が得意とする魔法であり習得条件やら何やら分かって居ない。

 

いやまあ聖書に暗号化されて載ってるんだけどさ。実際今解読された魔法は全体の3%ぐらいだそうだ。

 

俺も少しは使えるんだが……まあ、あんまり得意じゃない。実際適正的なのが結構必要なのだ。ある程度理解はしてるんだが、難しいんだよこれ。

 

まあこれを覚えてたお陰で色々何とかなって来たんだけどな。最初に魔物とあった時に消しとばされた腕を直せたのもそれだ。その後片腕で過ごしたり義手を使ったりしたんだが、この魔法を覚えたお陰でどうにかなった。普通の魔法で補助しつつ使えば腕も治せる。使い勝手が良いよなこれ。

 

………これ以上何も言う事がない。いやさ、別に日記みたいな感じで今日はこれこれこういうことがあって……とかやっても良いよ?けどそれが見たい訳じゃないだろ?俺は楽しいさ。

そりゃね。彼らの会話を聞いているだけで面白いよ。でもまだイベントが起こって無いからね。どうしようも無い。

 

これからは日常をお送りしつつダイジェストで見ていくことになるかもね。

 

 

***

 

 

勇者一行の旅が始まって数日。俺はこのパーティーが本当に上手く行けるのか怪しく思っていた。

 

戦士として勇者一行に選ばれ、ヒンメルを信用してここまで来たが、まさかあの程度で処刑されかけるとも思わなかった。人間の器量というのは分からないものだな。

 

そしてこの男、勇者ヒンメル。こいつは誘ってきた時から可笑しかったが、それは留まるところを知らないのか?どうやら自身をイケメンと称してやまないナルシストらしく、口を開けば自分を褒め称えている。変人……ではあるのだろう。

 

しかし実力は本物だ。そこらの兵隊では絶対敵わないだろう。

 

次に僧侶のハイター。こいつはもう駄目な気がする。どうやら相当酒が好きらしいが二日酔いのまま旅をするとは思わなかったぞ。赤い顔をしたり青い顔をしたりと面白い奴ではあるが、こいつは一番先に死ぬかもしれんな。

 

しかし実力は本物だ。ここまでの僧侶を俺は見たことがない。

 

最後に魔法使いのフリーレン。エルフらしく人間と少し齟齬が産まれているが、概ね問題はない。恐らくこいつは大丈夫だろう。多くの魔法を使えるようだし、長く生きてるから落ち着いている。料理をしないのが難点だが、それ以外は優秀だ。

 

実力は高く、魔法使いとして相当習練を積んだのだろう。

 

 

 

どうやらフリーレンも駄目だったようだ。このパーティーは大丈夫だろうか?

 

 

「暗いよー!怖いよー!」




予想外以上に書くことが無いかもしれません。この章でフリーレンは終わらす気なので今度投票を取ろうと思います。諸事情により更新が止まるかもしれません。


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その影に埋もれて

誤字報告や感想ありがとうございます。前回の内容にほんの少しだけ付け足しました。
諸事情で更新がストップします。すいません。

アンケートの内容がマナー違反になっていたため取り消しました。誠に申し訳ありません。新しい物を作り直します。ご迷惑をおかけしました。


「次の村はどこだ?」

 

「うーん、もうすぐだと思うんだけど…」

 

ええ、1キロぐらい先にありますね。

という訳で勇者一行のストーカー、森田です。いやー本当に語ることが無いよ。まああれからもう一年程経つんですけどね?ダンジョン攻略したり、ドラゴンから逃げたりと色々やりました。

 

勿論イベントもあったよ。最初のはヒンメルの銅像製作て何時間も待たされるやつな。あれクソだわ。何やってんのこの勇者。フリーレン泣くし、ヒンメルクソだし、ハイター寝るし、作る人怒るし。本当にカオスだったよ。何で収拾ついたんだろうね?

 

次はメルクーアプリン回。ヒンメル表情だけで読み取るんだもん。凄いもんさ。これがイケメンって奴よ。ナルシストなのがゴミだけど。作中通りヒンメルの好みはルフォオムレツだったよ。

 

原作じゃ明かされなかったけど色々他にもあったよ。フリーレンは思い出さないだろうが、ヒンメルは本当にフリーレンを気遣ってた。それが自分の為かフリーレンの為かはさておきね。

 

そして一番の目玉はやっぱり宝箱に食われたフリーレンね。ミークハイト使っとるのに何で行くんこいつ?ここだけは当時の様子を思い出そうか。

 

 

***

 

 

「暗いよー!怖いよー!」

 

「ヒンメル、こいつは本当に大丈夫なのか?」

 

「うーん、罠だって言った筈なんだけどな」

 

「ここで置いていくのが身のためでは?」

 

うわぁ…………。

 

 

***

 

 

どうしたらああなるんだろうな?勇者パーティーとしてマジで終わっとるわこいつら。あれが何千年も待った光景とか思いたくも無いよなあ。あのグダグタ感は端から見てると良いんだけどね。当事者になると腹が立つだけだわ。

 

お、ついたみたいだ。ん?てかこの村ははもしかして………。ああ、やっぱり。あの人もいるし確定かな。

 

少し楽しみにしててくれ。面白いものが見れるかもしれない。

 

 

***

 

 

「はぁ……はぁ……くっ、強い……!」

 

「成る程、人間にしてはよくやるのう。勇者、と呼ばれるだけはあるわい」

 

何故こんなところにここまで強い魔族が居るのか。そんなことを考えてる暇すらない。七崩賢に勝るとも劣らない大物。いずれ相対する事にはなっただろう最大の障害の1つ。

 

腐敗の賢老クヴァール

 

その異名は広く轟いていた。この地方の冒険者の4割、魔法使いは7割がこいつに殺されたという。それも全てこの魔法が原因だろう。

 

「っ!避けろ!」

 

「グッ!」

 

人を殺す魔法。魔王軍屈指の実力者が使うこの魔法は人類に対して驚異的な威力を誇っている。

このままじゃジリ貧だね……。

 

「ヒンメル、時間を稼いで」

 

「「「!」」」

 

流石だなフリーレン。この状況で何とか出来るらしい。僕やアイゼンはもうギリギリだ。正直打開策が無い。本当に君を誘って良かったよ。

 

「アイゼン」

 

「ああ」

 

二人でとにかく時間を稼ぐしかない。それ以外にやれることもない。

 

右から二つ、上から1つ、左に3つ、避けて、避けて、更に避ける。

どんな装備も貫通し死に至らしめるこの魔法は人が当たることを許さない。考えれば考えるだけイカれてる。魔族というのはこれ程までに強大なのだと。

 

まだか、まだかフリーレン。避けるのもそろそろ限界だ。

 

ハイターの攻撃が援護してくれるがそれも微々たる物だ。隙があれば攻撃を加えているが全て避けられる。僕らの勝てる相手じゃない。絶望的だ。

 

それでも、やるしかないんだ。僕は勇者だから。

 

「うおおお!」

 

「甘いのう」

 

まただ。僕達の攻撃が全く通じない。全て見切られている。これじゃ時間稼ぎにもならない。更に苛烈になる攻撃。これじゃ避けるのに手一杯だ。攻撃に思考を割けないな。

 

「ふむ、何か策があるか。成る程のう。しかし儂もそのままやらせる程甘くない」

 

「っ!やらせないよ!」

 

こちらの狙いに気付かれた!まずい。フリーレンがやられれば僕達の勝ち目が無くなる!

必死で猛攻を仕掛けた。魔法を打つ暇が無いほど。避けることで手一杯になる程全力で仕掛けた。アイゼンの斧が、僕の剣が、ハイターの魔法が何度も襲いかかる。けど倒せない。致命傷には至らない。

 

ジリ貧になりかけていたその時、女神の声が響いた。

 

「ごめん、遅くなった」

 

フリーレンの手から光が溢れている。

クヴァールが石になり始めていた。

 

「くっ……がっ……フリー……レ……」

 

ああ、これで終わりだ。

 

「クヴァール、今回は僕らの敗けだ。ここで眠っていてくれ」

 

「……いいや、相討ちとさせてもらおうかのう」

 

「なっ!」

 

向かってくる破壊と殺戮の象徴。魔族の英雄が放つ魔法は酷く美しく無骨だった。

 

ここで僕は終わりか。まだいけると思っていたんだけどな。

目は閉じない。最後の最後まで向き合いたいから。

 

死が目と鼻の先まで迫るその瞬間

 

「えっ」

 

それは呆気なく霧散した

 

その先に見えたのは封印されたクヴァール。どうやら封印される方が速かったらしいね。

 

「ふふ、ふ、あはははは!!」

 

何故か笑いが溢れてしまった。止まらない。生き延びた喜びか、重度の緊張感からの解放故か。

 

「遂にヒンメルがおかしく………」

 

「死ぬ寸前になって何かが壊れてしまったのかもしれませんね………」

 

仲間達が呆れてる。ああ、そんな顔がまだ見れて僕は幸せだ。そうだ、僕は勇者だ。弱気ではいられない。死の淵だからって希望にしてみせる。

 

それにしても、あの攻撃が霧散したとき何か見えた気がする。透明なガラスのような………気のせいかな。

 

***

 

やべえやっちまった!これはマズくね!?

まじかあ、原作介入しちゃったよ。だってあそこで死んじゃうと思わないじゃん。フリーレンとかハイターも対応出来ないだろうし。

 

…………どうしよ。




フェイト人気ですねえ。参考にします。最終的にどうするかはちょっと分からないです。ルート上書きにくかったり、深くストーリーを把握出来てない物もあるので。ただ一番人気だったものはいつか絶対に完成させます。


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追憶 南の勇者

やらなきゃいけないことあるのにサボって書いちゃった。本当にヤバいかもしれない。


「うん、上出来だね」

 

「リテイク5回か……」

 

「今回は早く終わりましたね……」

 

これで良い方とか終わってんなあ。という訳で前回原作介入した無能森田です。

原作介入………しちゃった♡うわっキッッショ!!男の俺がやるのはキショイわあ。やってる途中で気付いてしまった。

 

原作介入とかマジで終わってるなあ。どうしよこれ。まさかあの状況で負けるとは。あれは誰も防げなかったろうしなあ。まあバレた時はバレた時だな。未来の俺が何とかするだろう。

 

今はシュタルクを仲間にした後の解放祭の追憶に出ていた村に来てる。未来でフリーレンが一人ぼっちにならない為にやっているんだそうな。本当にこの人は勇者だな。

 

その行動にどれだけの意味が詰まってるのかと思ってしまう。叶わない恋を抱きながら思い人の幸せを願う。切ないが故に、言葉で表せない何かを彼は背負っているのだろう。

 

いずれ魔王を打ち倒す彼は物語の主人公のような存在じゃない。バックボーンが無いのだ。よくある勇者のように特別な物は何も持っていない。その最後も実に主人公らしく無かった。

 

恐らく生涯独身だったんだろう。思い人と結ばれず、勇者の剣を持たず、村人Aのまま勇者としての証明をし続ける。実績だけが勇者であり、その実態は異なっている。

 

………この人何なんだろうなあ。

この人の勇者としてのあり方。それは間違ってはいない。でも少し人間離れしてるよな。結局彼が手に入れたかったのは何なのか。勇者として魔王を倒すことが目的だし、人の助けが目的でもある。

しかしその報酬は無いに等しい。正統な報酬を受け取ろうと思っていない。

 

………この旅の最後を知ってるからこそ少し悲しい。本当にヒンメルは幸せだったのか。考えても仕方ないか。

 

 

そう言えば俺がどうやってストーカーしてるのかとか言ったこと説明して無かったな。俺は空中に浮遊しながら魔力隠蔽と透明化を使いつつ、音波遮断をしている。つまりバレないようにめちゃくちゃ気を使ってる訳だ。見てくれはキモイストーカーだけど。

 

これらをずっーと使い続けてると魔力消費は激しい。けど俺の魔力総量は凄いぞ。魔力回復もあるから何とか賄えてる。みんな寝たら離れた所で野営してるから夜の内に回復っていう流れだ。料理してる暇ないから朝か夜の内に食事を作っておく必要あるんだよね。おにぎりうめえ。

 

食材はどうしてるのかって?そりゃ買っておいたんだよ。勿論バレないように買い足す時もある。まあそういうのは大体亜空間に入れておくんだ。分かりやすく言うとアイテムボックス。

 

いやこれ本当にチートなんだよ。俺が作り上げた物の中の最高傑作の一つだね。その代わりやってることも凄まじい。先ずは空間生成。これは良い。大変だけどまあ何とかなる。やれると便利。

 

次に時空間操作。これがだるい。本当にヤバい。正直未だに理論が分かってないんだよね。ある研究の副産物だったからそれ関係ではあるんだろうけど。取り敢えず使い方は分かったけど他に転用が出来ないんだよね。だからこの世界の時間を止めるようなことは出来ない。

 

この時間を止めるってのは原子を動かないようにしてるのとは若干違う。まあ常識の通じない話だと思って欲しい。

 

次に空間の開閉とその異相の点在。要は開いたり閉めたりする時の注意点と何処にその異空間を置いて、どうやって持ってくるのかって話。

 

まず時間が動いてる空間と止まってる空間。この二つがいきなり触れたらヤバくねってのは分かると思う。まあ色々大変だ。本当にそれしか言えない。

因果やら運命やらが拗れたりぶっ壊れたりと、とにかくやべえのだ。これらを解決するために細かな色々が必要なんですね。境界線の空気一枚にどれだけの苦労が詰まってるのか察してくれ。

 

次に異相の点在。これは空間生成の応用。最終的には座標とかベクトルとか仮想的な物を現実に当て嵌めて頑張ればいける。この世界とは違う所にあるけど俺の真横に存在する。存在する異世界の中で最も俺に近いように作ってる。それだけ。

 

それ以外にも細かな色々があるが、まあこれらよりも凄いことをやってる訳じゃない。概念に触れたりなんだりはしているけとね。

 

はい、魔法スゲー自慢終わり。要はよくある転生チートにはこれだけの苦労が詰まってますよーって話だ。どれもこれも戦闘で使うと魔力消費が激しくて使えない物だしな。つまりは転生チートをくれって話だよクソ女神。本当にいたのか知らんが寄越せ。

 

そんなこんなで飯を食べながら旅をしている。彼らの旅路は楽しいけれど、娯楽はやっぱり必要だ。そんな時はやはり食事に限る。上手いものを食べる。俺にとっては一番……と言ったらあれだが、少なくとも執着してることではある。

 

今日の昼飯は頑張って作った自家製ラーメンだ。アイテムボックスから取り出して啜る。

 

うま~。豚骨ラーメン最高。まあ実際は豚骨じゃなくて魔骨なんだけど。豚の魔物から取った魔豚ラーメン、うまし。

 

前世じゃあラーメンなんてそんなに食わなかったからなあ。カップ麺は人並み位だったけど店に行く頻度は少なかった。きっと五回も行ってない。一年に一回あるかないか位だったし。まず外食自体が少ない家庭だったからな。

 

最後のクラスメイトにはよく驚かれたものだ。あれは私立に通ったのが悪いのだが、周りが妙に金を持っていた。

何だ?おこずかい貰えないのがそんなに珍しいか?なけなしのお年玉が兄の眼鏡代として奪われるのがそんなに変か?

全く、公立じゃ常識だろ?知らんけど。

 

まあだからラーメン店に行くなんて基本無かったな。しかし周りが全員焼き肉に行ったことあるなんてのも驚いたな。家族で焼き肉って行くんだな。そういうのって友達と行くものじゃないのか?卒業式の打ち上げとかな。俺?誘われなかったから行ったこと無いよ。高そうだから行かなくて良いとも思ってたけど。

 

てな訳で俺の舌は基本貧乏舌だ。米に醤油で満足系の人間。おすすめは卵かけご飯。醤油だけも良いけど、めんつゆ、納豆のタレはおすすめ。好みによるかも知れないけどエバラのキムチ鍋の素と醤油は最高だった。辛い卵かけご飯ってジャンキーで最高。美味いものは美味いのだ。ラーメン最高!

 

今世は本当に良い思いをさせてもらってるなあ。それはそれとして女神、貴様は許さん。

 

そうこうしてる内にも彼らは進んでいく。その旅路はどうなるのだろうか。俺の終幕も近い。

 

***

 

「これは……」

 

「南の勇者だね」

 

人類最強南の勇者。その果ては凄惨だったが、それでも人類の希望であり続けた。

 

フリーレンは覚えているだろう。数年前に会いに行っただろうからな彼は。

 

「僕のイケメンさには叶わないがね」

 

「また始まった……」

 

南の勇者について分かっていることは少ない。彼らも余り知らないだろう。しかし何か思うところはあるだろう。自分達の先達。自分達の道を切り開いた英雄。

 

実際彼は勇者、というよりかは英雄だった。主人公ではなく成すべきことを成す剣鬼。俺ですら勝つのには相当苦労する。生半可な魔法は最初から対策されている。戦闘は最初の不意打ちを俺が避けられるかという勝負だ。

 

彼にもらった物は本当に大きい。そう、俺は南の勇者と会っている。そんな彼のことをヒンメルがどう思っているか知りたいと思った。まあ無理なのだが。

 

南の勇者と会って俺は未来を知った。精確にどうなるかは分からない。しかし、俺の最後は近い。恐らくフェルンやシュタルクを見ることは叶わないだろう。

南の勇者に告げられた事実は俺にとって重く、しかしすんなりと受け入れられるものだった。

 

彼と会ったのは数年前、まだヒンメル達についていく前の話だ。

 



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南の勇者と廚二病患者

皆さんフェイト好きすぎません?
やるとしたらステイナイトがゼロですかね。履修が大変だなあ……(諦め)


「そこにいるんだろう?出てきてもらえるか?」

 

「………敵意は無いみたいだな」

 

南の勇者。まさか俺に会いにくるなんてな。突然のことだったから身構えたが大丈夫らしい。不意打ちしないということはそうなのだろう。

 

「何でこんなところに?まさか俺を誘いに来たわけでも無いだろう」

 

「少し話をしたくなったのだ。あなたがここに居るのを知ったからな」

 

「それは未来予知か?それとも人伝てにか?」

 

「!………やはり貴方はしっているか……」

 

当たり前だ。俺はあの漫画の知識を持っているし、南の勇者の快進撃はこの耳まで届いている。つまり原作通り未来視ができるということだ。恐らくそういう魔法なのだろう。

俺はその魔法を諦めた。才能の領域だあれは。俺には到底できそうもない。それに未来が見えたら面白くないからね。

 

「知らない未来でもあったのか?大方言わなかっただけだろうよ。あんたの最後も、その妥協点も、魔王を倒す勇者も知ってる。その上で何をしに来たんだ?」

 

少し冷たいだろうか?しかしこの物語で一番関わるべきではない相手だ。未来が変わる可能性があるから。しかもわざわざ俺に会いに来たんだ。何かあるのだろう。

 

「あなたは近い内に死ぬ。魔物の手によって」

 

「え?」

 

………え?

 

***

 

いやあ~まじ?マジか。

どうやら本当に俺は死ぬらしい。彼が言うのだからそうなのだろう。しかしまあその為に来た訳でも無いだろう。

 

「それで。俺に何をして欲しいんだ?」

 

「いや、何もしなくて良い」

 

「は?」

 

何を言って………いや、ああ、成る程な。

 

「凄いなあんた。今のやり取りで未来を確定させたのか」

 

「ふむ、そこまで分かるとは。本当に何者なのだあなたは……」

 

何者と言われてもな。ただの人間でしかない。それ以下でも、それ以上でもない。そもそも立場に縛られていないのだから名乗れる物も無いのだ。

 

「何者と言われても……別に只の人間だろ」

 

エルフだが精神は人間だ。生き方も人間だ。ちょっと耳が長いだけ。ホモサピエンスかエルフかの違い。どちらも人間なんだよ。

 

「そうか…」

 

「それよりもさ、あんたもこれ食う?」

 

「これは……何だ?」

 

「ラーメンだよ、ラーメン」

 

「ラー……?いや、遠慮しておくよ」

 

分からないよなラーメン。美味しいから食べていけば良いのに。

 

「そっかぁ………。それで、次はフリーレンか?それとももう会ってきたとか?」

 

「いや、今から行くところだが、あなたも未来が見えているのか?」

 

胡乱げに見てくる彼は漫画の中の英雄とは異なり困惑気味だった。あの自信満々な英雄のこんな顔を見れたのは儲けものだ。

 

「…………ぶっちゃけさ、あんたなら選びとる未来を変えないだろ?なら、話しても良いよな」

 

「ああ、それを心配していたのか。なら大丈夫と言える。私が進む道は変わることがない」

 

「なら話すさ。それでも全てじゃない。概要だけ。いいか?」

 

「ふむ、まあ良いだろう。それで構わない」

 

少し不満そうだが納得してくれたらしい。

 

「まず俺が知ってるのは大まかな物だ。この人類と魔王の戦いがもうすぐ終わること。倒すのは勇者ヒンメル率いるパーティー。そしてそれに絶対に必要なピースがあんたとシュラハトの戦い。七崩賢三体の殺害とシュラハトとの相討ち。関係あるので知ってるのはそれぐらいだ」

 

「どうやってそれを?」

 

どうやって、か。恐らくどの未来を見ても俺は話さなかったのだろう。これを知って彼は絶望しないだろうか。……これはやはり言うべきでは無いのだろう。誰も知らなくて良い真実だ。

 

これだけは言えないだろう。常人ならば笑えない。俺みたいな馬鹿だけだ。人に笑い者にされるのを良しとするような馬鹿しか笑えない事実だ。俺みたいに滑稽に踊るのを生き方と定めたなら受け入れられるだろうな。

 

しかし彼は全力だ。その死に様を定め、世界を救うことに文字通り命を賭けている。

言える訳が無いだろう?これを見てるあんたらならどうしたんだろうな。

 

あんたらも俺が人付き合いが下手なのは分かってるだろう?

俺は人と話すのがある程度好きだ。でも人付き合いは下手だ。正解ってのが分からないし、人の気持ちも汲み取れない。

本当に、人ってのは難しい。世界を救うより人一人を救う方が難しい程に。

 

全く、俺には恋愛とかそんなものは程遠いな。青春もそのほとんどが録な物では無かったな。けどそれはそれとして楽しんだつもりだが。

 

話を戻そう。つまりは言えない訳だ。答えはそれだけ。この為だけに結構時間を要してしまった。

 

「それは言えない。てか知ってたんだろう?」

 

「やはりか。あなたはどれだけの未来を見てもその事に関してはどうしても答えない」

 

「だろうな。これは同類のどうしようもないクズにしか話せない。悪い意味で夢を手放して足掻いてる奴にしか言えない」

 

「成る程。確かに私はそうでは無いのだろう。しかしそんな人間がいるのか?」

 

「さあな。いるかもしれないしいないかもな」

 

「……なら質問を変えよう。あなたは何処から来たんだ?」

 

「異世界」

 

「異世界!?本当に………いや、成る程。それは初めて聞いたが、そうか。異世界からの来訪者か。……常識も色々と違うのだろうな」

 

「そうだな。色々違うよ。けど別にそれを聞いたところでどうにもならないだろ?打開策なんて探そうとするなよ。

俺を犠牲に何かしようってんならそれで良いが、どうにもならないんだろ?もう俺の使用法は決めたんだろ?それに従ってやる。だからそんな辛気くさい顔すんなよ」

 

「……あなたは、それで良いのか?」

 

「もしかしたら身から出た錆びかもしれないんだ。それにあんたもそうであろうとしてるじゃないか。」

 

この世には自己犠牲を否定しようとする者はいるだろう。生きていなきゃ意味が無いなどと宣う者もいるだろう。素晴らしい言葉だ。確かにその通りだ。そっちの世界ではな。しかし俺に言わせてみれば詭弁でしかない。

 

何かを犠牲にしなければ何を成すこともできない。

平和を産み出す為にはその禊が、死をもって区切りをつけなければならない。それしかないんだ。

俺だってこの世界で幾つもの死を見てきた。誰も彼も死んだ。殺された。それでも生きていたい。そんな世界だ。

 

自己犠牲で世界が救えるなら安いさ。自己犠牲で人を救い、平和をもたらせる。そんなの出来すぎてるさ。力があるからこそ選び取れる未来だ。躊躇してる場合じゃない。

 

「そうだな。そうであったな。本当にままならない物だ」

 

「そうだな。どうしようもないさ。あんたの話を聞いて分かったよ。録な死に方じゃないんだろうな。お互い大変だ」

 

変に笑みが溢れる。同類が居るからこその安心か。諦め故の嘲笑か。そりゃ分からないがそんなに悪くない物だ。彼もそう思っているのだろう。その顔は希望に溢れていた。

 

「ああ、私はもう行く。申し訳ないが後は頼んだ。あなたにも彼らの道を切り開いてもらうことになる」

 

後に来る勇者ヒンメル。そのパーティーの道を俺も切り開くことになるらしい。それはいつ頃なんだろうか。もうどうにもならないんだろうな。

 

「御安いご用さ。この命の使い道がそこまで上等なら嬉しいよ。あと最後に一つ」

 

「なんだ?」

 

彼は俺を利用する為にここまで来たのかもしれない。しかし彼もその道に殉じようとしている。シュラハトもまた、同じ。どちらも種族の存亡を賭けて、その上で見つけた妥協点。

 

例え誰が何と言おうと文句なんて言わせない。もしかしたら誰かに頼れば良いなんて、そう思う奴もいるかもしれないが。だったら誰を頼れば良いんだって話で。当たり前だ。自分にしか出来ないのだから。

 

「迷惑をかけたな。ありがとう」

 

「……ふっ。さらばだ」

 

何が彼を突き動かすのか。だから勇者なのか。俺には理解できない。でも一つだけ。よくある自己満足の為の自己犠牲。それとは違うんだろう。もっと崇高な何かを賭けて挑んでる。そんな気がする。

 

身を翻し、その姿が見えなくなっていく。彼の背中が夜に溶けていった。

 

 

***

 

なんかあの会話廚二病みたいだな。まぁここファンだジー世界だしいっか。

 

南の勇者はその後シナリオ通りに死んだ。しかし死体は残ってない。作中でフリーレンが言ったように食われたか、もしくは生き延びたのか。片腕無くなったりして戦線から離脱した可能性もある。

 

でも結果自体は変わらない。敵対しなくて本当に良かった。もし戦っていたらと思うと………寒気がするな。

 

俺も同じように何かをして死ぬことになるらしい。せめてその時までは楽しんでいよう。本当にいつになるのやら。

 

うん、ラーメン美味い。そう言えばあの時もラーメンだったなあ。塩と魔骨の違いはあるけど。魔骨ラーメンはここ数年で一番の成果かもな。魔法も頑張ってはいるがどうにもな。新しいのはあと五年はかかりそうだ。

 

あ、ハイターがまた死にそうな顔してる。酒飲み過ぎなんだよ。

 

「生臭坊主」

 

「気持ち悪い………」

 

酒ってそんな美味いか?俺好きじゃないんだよなあ。あ、吐いた。うわあ、気持ち悪い。フリーレンも顔をしかめてるよ。あ、ヒンメルにかかった。

 

「ギャアアア!」

 

楽しいなあ。さて、次は何処に行くんだろうな。

 



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ステイナイトはUBWとHFを見てないんですよ。履修頑張ります。


「クソが……!」

 

何でこんなところにいんだよこいつ!正史でもそうだったらどうやってあいつらは生き残った!いや無理無理無理!!こいつだけはマジでヤバいだろ!

 

という訳で自分とリアル鬼ごっこをしている転生者、森田です。

 

 

 

水鏡の悪魔

原作ではそう言われるようになる神話の時代の魔物。呼び名も昔と今じゃ随分違う。昔は複製してくるクソやベー奴とか、相手の力を使えないと勝てない雑魚とか、試練の影照石等と呼ばれていた。

能力は簡単。挑んでくる敵の体をそっくりそのまま複製する能力。記憶も読んでるのか使える魔法や体の使い方もしっかり理解して複製するのだ。単純に自分と戦うことになるって話だ。フリーレン達は大陸魔法協会の試験でこいつと戦っていたな。

 

いつもなら楽……ではないが絶対に倒しやすい部類の魔物だ。何せこいつに対しては特攻のような物を持ってるからな。しかし今は違う。

 

こことは結構距離が離れてるがヒンメル達がいるのだ。ここで俺が魔法を使えばバレる。しかも今回使う魔法は確実にバレる系の魔法だ。

 

何でこんなことになったのか………。俺は自身の状況に絶望しながら逃げ回っていた──────────────────

 

 

 

 

グラナト伯爵領の都市。そこは魔王軍と人類の戦いにおいて非常に重要な場所だろう。分水嶺、とまでは言わないがここではまあ重要な事柄が起こる。

 

七崩賢アウラと勇者一行の戦い。アウラの不死の軍勢によるグラナト領への強襲。それがこれから行われようとしている………筈だ。

まあそんな危機が迫っているグラナト領なんですが今はまだ平和そのもの。というのもそろそろ物資が底をつきそうなのだ。食べ物や飲み物、魔法の研究の為の物等々。そろそろ補給が欲しいからヒンメル達から離れて先に来ている。

 

これで何かのイベントあったらどうしよう。結構不安があるが、久しぶりに魔法を解いて自由に過ごしているのだ。緊張感もなくフラフラして過ごしている。

 

そんな訳でご飯ターイム!今日のご飯はそこら辺にあったレストランのパスタ。味はペペロンチーノのみたいな感じ!

ガツンと来る辛さによく効いてる塩味が合う。

つまり美味い!!俺が数十年研究したパスタより美味い!完成度高い!うぅ……(悲しみ)

 

後でパスタの作り方教えてもらえないかな?今じゃ結構一般的みたいだし、普通のパスタの作り方ぐらい教えてもらえないだろうか。こういう時ぐらいしか教えてもらえないからな。

 

 

 

「無理です」

 

「そうですか……すいません、ありがとうございました」

 

無理かあ……そうだよなあ……。ちょっとくらい……駄目ですよねそうですよね。

 

あ~あ、せっかくのチャンスだったのに。最近調子にのりすぎかな。やったら叶うと思ってしまっているなあ。自重しないと。

 

「へえ、パスタが作り方が知りたいの?」

 

「え?え、ええ。そうなんですよ、って」

 

反射的に答えながら前を見るとそこに居たのは金髪の女性。数年ぶりに会う知り合いの顔だった。

 

「よっ、久しぶり」

 

「……そっすね」

 

「ちょちょちょ!そんな嫌そうな顔しなくても良いじゃない!」

 

当たり前だろう。こいつの名前はハーティリア。俺がこの世界で唯一嫌いな野郎だ。まあ女だが。

 

「そりゃそうでしょう。あなたみたいな人を僕が嫌いなのは知ってるでしょう?それで、何の用です?」

 

何で嫌いかって?そりゃあ勿論俺みたいな弱者男性を嵌めて甘い汁啜ろうとするクソみてえな野郎だからに決まってんだろ。

 

俺は基本的に人を嫌いにならないからな。珍しいさ。けどこういう世間を舐め腐って人を見下すような野郎が嫌いだ。前世の頃もそういう奴はいたよ。そのせい……と言ったらあれだな。俺が悪かったがそれでもそんな野郎が許されるべきではない。

 

つまり俺はこいつが嫌いだ。

 

「いや、数年ぶりに見かけた知り合いが居たら声かけるでしょ」

 

「ああ、そうですか。それではお出口はあちらになります」

 

「ああ、ありがとう。って何で帰らそうとしたの!?」

 

本当に今日は運がないなあ。こんなのと会うとかマジでそう。

 

「はあ、じゃあ僕はもう行きます。さよなら」

 

「いや待って待って!!本当に!用事あるから!」

 

「……」

 

中指立てたろかな本当に。このクソガキが。さっさと死んでくれよ。

 

「それで、何なんですか?さっさとどうぞ」

 

「あなたパスタの作り方教えて欲しいんでしょ?」

 

「そうですね」

 

「私が教えてあげるわ」

 

論外。死ね。

 

「結構です。それで用件は?」

 

「うん、そうよね。感謝しな…え?今、何て……」

 

「だから、本来の用件は何ですか?」

 

こういうのは用件を聞いた方が早い。こいつに何かを教えてもらってるとこっちのストレスが半端ないからな。

 

「いや、そっちじゃなくて!何で断ったのかって聞いてるのよ!」

 

「どうでも良いでしょそんなの。それより何か有ったからわざわざ話しかけたんでしょう?」

 

「あ、いや、あの。ああもう!言えば良いんでしょ言えば!ダンジョンに挑んでもらいたいのよ!」

 

ダンジョン?ほーん。めんどっ。

 

「それで、理由は?」

 

「実は村の人達が───────」

 

 

 

「正体不明の魔物ぉ?」

 

用件はこうだ。こいつが今世話になってる村で正体不明の魔物の被害が出てるらしい。曰く自分にやられただとか、鏡がこっちを見ていただとか。だからこの都市まで来て冒険者を探していたらしい。

 

「自分でやれば良いでしょう。それぐらい出きる筈だ」

 

「私より強い人がやられたの!良いからさっさと受けてよ!」

 

「ふざけないで下さいよ。何でそんなことを言われなきゃいけないんです?それなら村人共々くたばってください。それとも今僕に殺されたいですか?」

 

「ひっ……」

 

「まあ分かりました。そういうことならやります。あと報酬はパスタのレシピ以外にもう一つ」

 

「え?」

 

「二度と僕に話しかけないでください」

 

 

***

 

とまあそんな訳で今の俺はピンチなってる。マジであの野郎ふざけやがって!!

 

もうパスタのレシピの書いた紙はあるしこのまま放置しても良いが、流石に外道すぎるな。やめとこう。

 

やるしかないんだろうか?いや、それは時期尚早というものだろう。例え勝てなくとも本体を殺せば良いのだ。ここはダンジョンじゃない。只の森だ。何とか逃げ回るしかないだろう。いやそもそもこいつが野良で生息してるのもおかしいんだが。

 

 

それから数時間、走った。あっちはバカスカ魔法を撃ってくるのにこっち何も出来ない。体術や近接戦闘も俺を模倣しているのでやりあう訳にもいかない。そうして限界が近づいて来る中俺は遂に希望を見つけた。

 

あれは……居た!

 

「そこかテメェ!!」

 

思い切り踏み込みそのまま飛び上がる。本体はどうやら空を漂って居たらしい。こいつってそんなこと出来たのか。いや、そんなことはどうでも良い!兎に角殺す!ふざけやがってこの野郎!

 

ハンマーを握り潰すかのような力で振り下ろす。只目の前の敵を砕くことを考える。

 

「死ねえ!!」

 

怒りと憎しみを込めた渾身の一撃でその全てを破壊した。

 

やった……!終わった…!

涙が出てしまいそうだ。

感動に撃ち振るえていると何だか周りが騒がしい。何事だ?

ん?てか周りにめちゃくちゃ魔力反応があるんだが。どうなって

 

「あ」

 

目の前に居たのは首の無い鎧の大軍。死屍累々の様相を呈し、現実ではなく地獄の光景だと言われても疑わないだろう。

 

………………やっちゃったぜ。クソが!



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断頭台の先へ②

 

「ちくしょおおおおお!!」

 

という訳で首無し死体から逃げ回っている転生者、森田です。

俺、逃げ回りすぎじゃない?

 

現在は七崩賢アウラの不死の軍勢から逃走中。アウラの魔法、服従の天秤によって魔力量の低い者は従わなければならない。意志が強ければ逆らえるんだが……それをさせない為に首を切る。思考力を失くす為の措置だ。

 

まあ死者を愚弄する行為と言ったらそうだし、惨たらしい行為でもある。でもこれに関して俺はそこまで嫌悪感は無い。なんでだろうな?選択を尊重してるってことなのかもな。

 

俺は正義の味方じゃない。自己中心的で傲慢だ。自己満足の為に人を助けるし偽善もする。そういう人間だ。そんな俺だが自分の中でやっちゃいけないことがあったりする。

 

それが価値観の押し付け。誰かの選択を貶すこと。この二つだ。

 

自身の意思を押し付けたり、相手に強要するのはあまり好きじゃない。それは俺自身が嫌いだからだ。

 

二つ目の誰かの選択を貶すことってのは言い換えれば誰かの選択を尊重することだ。苦心して出した結論や決断を否定することは実はこの世で一番残酷なんじゃないか?

その結果どうなろうともそれは知らない。後悔すれば良い。しかし自分が必死こいて選んだ選択は後悔があったとしても良いものだ。

一方他人に委ねた結果は失敗したら最悪だ。成功しても自身に酷い喪失感を生み出す。

 

まあ別に軽いことなら良いんだ。例えばゲームのガチャを引くか引かないかとか、今日の夕飯なんかは他人が決めても変わらない。だが人生の選択ともなればそうじゃない。重いもの程他人に委ねるべきじゃないからな。

 

勿論委ねるのも選択ではあるし、それを選んだならそれでも良い。でもそういう場合は基本的に思考放棄をしたいからだ。それは選択じゃない。

 

……………まあ行き過ぎた選択は流石に止めるけどな。絶対に失敗が見えていて、それをそいつ自身が望んでいない場合は止めてやる。それを見過ごすのも可哀想だしね。偉そうだな俺。

 

ま、そうでない限り選択は尊重するべきだと思ってる。アウラのそれもまた選択。それによって多くの人に迷惑をかけているのはいただけないが、原作準拠なこともあり俺は何も言えない。

 

言いはしないが、俺に喧嘩を売ったんだ。対処ぐらいはさせてもらおう。

 

《魔法を解析する魔法》

 

俺は魔法を解析するのに酷く時間がかかる。本に書かれていたりする魔法なら数十年かかるだろう。まあ速いときは数ヶ月。実演されているものならもっと早い。基本数日あれば終わる。……………まあ遅いよね。これは正直マジで遅い。アウラ程の魔法なら基本の中には入らないからなあ。という訳で作り出したのがこの魔法。

 

めちゃくちゃ便利。相手の魔法解析するのって大変だからね。けどこれがあればへっちゃら。どんな魔法も数分で解いちゃうぞ!言ってしまえばパソコンみたいなものだ。自動でめっちゃ速くやってくれます。

 

そうこうしてたら解析が終わったねえ。

どれどれ…………ワーオ。これは凄いわ。何だこの密度。構成が半端ねえ。完成度も高すぎる。真っ向からの戦闘に向いてないから結構特殊な物かと思ったが………凄いな。無駄が省かれ過ぎてる。極限まで実用的で合理的だ。

 

俺じゃ無理だなこれは。これが魔法の高みか。俺が年月をかけて使い処も無いような規模の魔法を造り出したのに対し、こいつはどこまでも実用的。使いやすく無駄を省き、最低限で最大限の成果を出せる。まあどちらも他人が使えない程複雑ではあるんだが。

 

しかし解析してしまってはゴミも同然。そういう何かに影響を及ぼす系統の魔法は解析してしまえばこちらの物。あとはその魔法を無効化するだけだ。

 

「ほいっとな」

 

《呪いを解く魔法》

 

辺りを光が包み、周りの鎧がバタバタと糸が切れたように倒れていく。アウラは一度も魔法を解除されたことがない。それは未来のフリーレンとの一戦で明言している。まあ軽く原作崩壊だ。

そんなことやって良いのかって?まあやりようはいくらでもあるさ。

 

それよりも最低限の魔力で解除できるし、完成度の高い魔法も知れたしでメリットの方がデカイ。案外良かったな今回は。

 

強制的な呪いの解除をする魔法もあるが、それは女神の魔法なんだよね。そこまでは俺も習得出来てない。俺に出来るのは自分の傷の回復だけだ。後は普通の魔法で呪いを跳ね返すとかね。それだけだ。

 

それに解析したことによってもしかしたら俺がこの魔法を習得できるかもしれないのだ。流石にここまで悪趣味な魔法は使い処が難しいが、まあ覚えておいて損はない。

 

正直破壊って方法もあった。この軍勢を見る限りヒンメル達では絶対に無理だ。何かが原作とは異なっている。勿論作中では語られなかっただけで何者かの手助けがあった可能性もある。しかし順当にいけばヒンメル達は負ける。どうあってもこれじゃ倒せない。

 

だからこそ、ヒンメル達が来る前に破壊してどうにかする方が良かった。そちらの方が速いし、ヒンメル達にバレる確率も少ない。しかしどうしてもそれは嫌だった。

 

本当によく頑張ったとそう言いたかったから。

ここにいる死体は全員アウラに立ち向かった者達だ。中には俺が知る者もいる。百年以上前に名を馳せた英雄や何度か一緒に依頼をこなした冒険者。名も知らないが、それでも最後まで足掻いた者達。そいつらに終わりが必要だと思ったから。

 

確かに今回アウラの魔法が知れたことは嬉しい。アウラの選択も尊重はする。しかしだ。それによって犠牲になった人達に対して何も思う処が無いのか、と言われたらそれは違う。

 

だからこそ祈りを捧げる。誰にかは分からない。形式的な物かもしれない。けど彼らは犠牲になった。弱肉強食、それが自然の摂理とはいえだ。その最後が残酷だったことに変わりはない。彼等が少しでも幸せになれたらと、そう願っておくことにした。

 

 

***

 

 

うーん。まあ粗方片づいたがどうしようかな。フリーレンやハイターには気づかれてないだろうが、さっさとやらないとキツイだろうな。まだアウラも進軍する前だ。町から結構離れてるからな。ここならある程度は大丈夫だろ。

 

「さてと、やるか」

 

久しく出していない全力を出す。勿論魔法の方じゃない。近接戦闘の方だ。

俺もこの千年只待っていた訳じゃない。金を稼ぐ傍らてきとうな魔法を発動し続け、戦闘は出来るだけ近接で行った。

俺の場合は冒険者だったからな。討伐依頼も多かったから助かった。

 

時には無茶なこともやった。村中が魔物の巣窟になっていたところに飛び込んだり、凶暴な魔物の住む山で暴れたり。

そのお陰で今では単独でのドラゴン討伐も出来る。アイゼンとは体の作りや才能の差が激しいから難しいが、それに近しい強さは手に入れた。自由落下も五キロまでなら無傷だろうな。

 

つまり、アウラ単体なら負ける要素はない。

 

魔力を使わず飛び上がる。全力でやれば結構移動できるものだ。さてアウラは………見つけた。ここから左に五百メートルくらいか?お、いたいた。特徴的な角に濃いピンク髪。

うーんギルティ!

 

「よっと」

 

「ッッッ!………あなた何者?」

 

「じゃあまずは自己紹介から。俺の名前は森田。只の弱者男性だ」

 

 

***

 

 

「おかしい」

 

そう言ったのはヒンメルかフリーレンか、アイゼンかもしれないし、私かもしれない。けど全員が思っているだろう。明らかに少ない。

 

私達は魔王軍幹部、七崩賢アウラとの戦闘を行っている。最初にその惨い戦い方を聞いた時は頭に血が登った。魔族はどこまでも魔族なのだと思いしらされた。

 

しかし腐っても魔王軍幹部。その戦略は強い。今まで旅をしてきた中でも一番の苦境。クヴァールとの一戦が思い出される程に。そう、確かに強いのですが………

 

「うん、やっぱりおかしい」

 

フリーレンの言葉で確信する。そう、不死の軍勢の数が少ない。事前に私達が聞いていた数と違う。見ていて三割程少なくなっている。これは、どういうことでしょうか。

 

「ヒンメル、これは……」

 

「うん、明らかに少ないね。けど好都合だ。元々の数だったら負ける可能性があったけどこれならいける。僕らなら負けない」

 

「………そうですね」

 

ヒンメルの言葉はいつしか信じられるものに変わっていた。最初に勇者に成るなんて言われた時は、お前には無理だなんて言ってしまいましたが。それがこんなところまで来てしまった。今では彼の言葉が信じられる。私達ならこの苦境も乗り越えられるでしょう。

 

 

***

 

 

「ッ!あなた何なのよっ!」

 

分からなかった。突如前に現れたこの存在が何なのか。自分よりも明らかに弱い。取るに足らない存在だと認識した。しかし目の前の光景はそれを否定する。自分の魔法を解析され手駒が減っていく。自身のプライドが人生をかけた魔法への執念が崩れ去っていく。

 

こんなのが私より強いなんて、あり得ない!

 

しかし現実問題打開策が思いつかない。このままでは戦力は減らされていくだけだ。自分が攻撃したところで何も通用しないだろう。どうする?どうすれば………

 

そうだ、私にはこの魔法がある。

 

最後の最後まで頼りになるのはやはり自分だ。何を弱気になることがある。魔力は私より低いのは明らか。この私が人間に負けるわけがない。

 

「どんなにやろうとあなたは私には及ばないわ」

 

この天秤は絶対だ。私は500年表以上生きた大魔族なのだから、負けるなんてあり得ない。ましてやこんな魔力量の低いゴミになんて……

 

「ああ、そうだなぁ」

 

瞬間、不気味な笑顔が顔に張り付いた。

 

嫌悪感が増す。底知れなさが一気に表層に表れた。自身の本能が何かを訴えている気がした。

 

何?何なのこの感じは。いや、大丈夫。何を不安がることがあるの。私の勝ちは揺るがない。何も心配はいらないわ。

 

「その笑顔もここまでよ。《服従させる魔法》」

 

私と相手の魂が天秤に乗る。徐々に天秤が傾いていく。やはり私の勝ちだった。どこに不安になる要素があったのだろう。おおよそただのハッタリの類いだったのだろう。

 

ああ、いつものようにそこには泣き顔があるだろう。人間では私に敵うことなど出来ないのだから。?どうしたのだろう。天秤が……震えてる?

 

どうなって、いや、何でそんな顔をしている?まるで勝ち誇ったような。何?何を見落としているの!?

 

「ははっ」

 

「あなた何をっ、ッッ!!!」

 

思わず顔を睨み付けて、絶句した。

 

不気味だ。どこまで言っても恐怖が晴れない。そんな、この世の怨嗟が詰まったような笑顔をしている。何故、何故そんな顔をしているのよ。

 

「本当に………あんた馬鹿だよ」

 

「えっ、嘘……」

 

なによ………これ

 

「嘘よ!どうなってっ!」

 

「いいや、嘘じゃない」

 

あり得ない光景だった。

奴が言葉を発した瞬間に圧倒的な魔力が溢れた。恐怖で身がすくむ程の魔力量。もう魂が天秤に乗ってしまっている。取り止めは間に合わない。

非常にも、天秤は傾き全てが喫した。

 

「何でっ!どうしてこんなこと!」

 

「何で?どうして?そりゃあんたらに勝つためだ。生き残るためだ。そして今それが証明された」

 

「そんな……、私がこんなことで……!」

 

「卑怯か?ならそれで良いさ。戦いに油断も何も言ってる暇はないんだ。誇りなんて犬の餌にもなりやしねえ。お前らはそこを履き違えてんだ」

 

「嫌……嫌よ!こんなのあり得ない!」

 

「じゃあな。アウラ、俺を一生忘れ、今まで通りに振る舞え」

 

勝者の言葉によって戦いは幕を閉じた。

 




フェイトはゼロからの方が良いですかね?それともステイナイト?


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部外者のぼやき


モリタさん?恩人よ。幾度となく私を救ってくれたわ。最後に会ったのは何時だったかしら。あの時にお礼を言えていればどれだけ良かったか。結局最後まで嫌われたままだったもの。いつの間にか感じられなくなったあの魔力………年老いた私にとって唯一の心残りよ。それよりレルネン、そんな昔の話をどうして知ってるのかしら?

大陸魔法協会特別外部顧問 ハーティリア


 

「抜けねえ………」

 

勇者の剣。それは選ばれた勇者にしか抜けないという剣。天上の女神が残した物。抜いた者は世界を滅ぼす大いなる災いを撃ち払うらしい。

 

という訳で雪山スニーキングミッション完了、森田です。

 

いやあ雪山の主相手にスニーキングして勇者の剣までたどりつくのは無理があるって。まあやったんですけどね。誰だよ余裕って言った奴!ざけんな!

 

勇者の剣による影響かここら辺の魔物は本能や感覚といったものがエグい。勇者一行やフランメですら気づかなかった俺のスニーキングがバレかけた。周りの魔物全員がこっちを向いた時は流石に肝が冷えた。

 

何でそんなことしてるのかって?だって勇者の剣だよ勇者の剣。一回ぐらいは挑戦してみたいじゃん!お前ら男の子だろ!?下のモン付いてんなら一度は憧れるだろ!

 

まあそんな甘いことはないわな。ヒンメルに抜けないのが俺に抜ける訳がない。特に魔法的な物は感じないんだけどなあ。どうなってんだろこれ。まあ俺の魔法の力が足りないだけの可能性もある。

 

この世界の魔法ってのにはある法則がある。力量が離れすぎてる魔法は魔法として認識出来ないって奴だ。魔力が感じられないんだな。作中じゃマハトの魔法をフリーレンやフェルンが認識出来なかった。いや、フリーレンは解析出来たし(作中から)600年前には一回解除してる。

それを考えるとフリーレンすげえわ。俺なんかよりよっぽどすげえ。すいません作中の魔法使い全員俺より凄かったです。

 

てな訳でお手上げだ。相も変わらず俺は魔法の才能の無さに苦しんでるってことだ。まあ天上の女神が残した物だし、俺には荷が重すぎたかな。

 

さて、そろそろ彼らが来る。後は作中通りに進むだろうよ。ヒンメルは偽者のまま進むんだ。この世に本物が存在したとしてもだからなんだって話なんだ。それを証明するってのはどうしても難しいけどね。

 

 

アイゼンパネェ………。

 

***

 

 

雪山を越えて、恐らく作中でクラフトと出会う小屋も抜けたのだろう。ここは……うんまあ恐らくそうなんだろう。

 

北側諸国アルト森林近くの村。

 

という訳でザインの村に来ました森田です。

 

ここでのイベントは……んまあ特に無し。あんたらもさっさと次の話にいくことをオススメするぜ。それにしてもザインかあ。あの僧侶はまあ結構好きなんだよね。それに、ヒンメルのあの言葉がある。

 

「今、かあ」

 

ザインを誘う下りは残酷だ。そこには大人としての、大人になりきれていない青年の苦しみがある。その苦しみを否定して、その変化を消して、踏み出せと言うんだ。

 

そりゃ後悔は無い方が良いとか言うんだろう。それが普通なんだろう。しかしだからと言って、そこでウジウジしてるのが悪い訳でもないと思う。でも俺にとって耳の痛い話だったのも事実。

 

後悔する選択が無い人生はあり得ない。それを後からでも取り戻せと言ってくる。今どうしたいかが重要だとヒンメルは言ったから。俺のような半端者には後悔が無い人生なんて存在しないからな。それを諦めるのは、夢を諦める人生ってのは結構ありふれた物だろう?

 

それが否定される。辛いが、相容れない思いもある。プライドも夢も希望も、先ずはバキバキに折るところから俺は始まったってのに。取り戻せない人間もこの世には居る。只、それだけなんだろう。それは酷く寂しいけど、仕方ないって言葉で諦めるしかないんだとも思う。そういう人生でも楽しいもんだ。

 

そうやって諦めた代わりに人間は色々知ることが出来る。経験ってのはそういうもんだ。

 

思いは言葉にしないと伝わらない。よく言われる言葉だ。けどここまで難しくて簡単なことはない。

でもまあどんなに言葉にしても伝わらない時もあるんだけどな。

 

伝わらないと言えばだ。ヒンメルもさっさと言えば良いものを。まあこのままフリーレンに言う気は無いんだろうな。そうして原作が始まる訳だ。伝えない選択もあるってことだ。思いは言葉にしなきゃ伝わることはない。良くも悪くもな。

 

でもプロポーズ紛いのことしといて告白しねえお前は何なんだヒンメル!!

 

まあ鏡蓮華のアクセサリーなんて分かった時は流石に可哀想だったけどさ。フリーレンが分かってないのを理解したあたり皮肉すぎる。

………フリーレンを思ってのことなんだろうけどなあ。

 

さ、折角だしクラフトの像でも探しますか。

 

 

***

 

 

「うっひょぉ~!!!死ぬってこれ!!」

 

フォルさんツヨスギィ!!

 

右!と見せかけて足!見えてるぞ!!

 

「首!胴!甘いわぁ!!」

 

「………儂の敗けだな」

 

よっしゃあ!!俺の勝ち!シュタルク敗北!!

 

「ま、通算67敗3勝5引き分けだけどな!クソが!!」

 

という訳でフォル爺との修行中、森田です。

 

フォル爺ことフォルさんとはヒンメル達よりもずっと前、数百年程前に偶然出会えたのだ。その頃から修行相手としたちょくちょく会っていた。腕の鈍りを解消するのには良い相手だ。当時は俺より圧倒的に格上だったからな。力を付けるために追い込んだ時期は助かったものだ。

 

ヒンメル達がここに来るのはあと一週間ぐらいはあるだろう。今回が最後かもしれないからな。話がしたかったし別れも言っておきたかった。

 

「なあ、フォルさん───────────────────

 

 

 

 

 

一通り話を終え、時間が過ぎ、あっという間に最後の日になっていた。そろそろヒンメル達も来るだろう。バレない為にも離れなければいけない。

 

「行くのか」

 

「ん?ああ、まあね。…………フォルさん、あんたはまだあの人の声を覚えているかい?」

 

恐らく覚えているだろう。自身の嫁のことなど、それはもう鮮明に。けど、敢えて聞く。一応聞いておく。

 

「覚えておる。当たり前だ」

 

「そう……じゃあその記憶を未来に連れていってくれよ。いずれ人は忘れてしまう。声から姿から匂いまで、全て忘れてしまうからさ。だから大切にしてくれ。その記憶を」

 

重要な、とても重要なその記憶。いずれ、100年もしたら忘れてしまうのだろうけど。それでも少しでも長く覚えていて欲しい。そうしたらより多くの記憶を思い出せるだろうから。

 

「ああ、覚えておこう」

 

「よし、これでお別れだフォルさん。前に言った通り俺はこれから死にに往く。俺の記憶は未来に連れてくなよ?」

 

空元気とは違う。死にに往くことがそんなに悪いことでもないと、俺は本気でそう思ってしまう。死ぬことへの恐怖はある。でもそれは健全なことだ。それを抱きながら死ねるのは素晴らしいことだなんて。俺はやはりイカれてるんだろうな。

 

まあ前世の頃からこんなだったし今更だ。前世の知り合いにも軒並み頭がおかしいとは言われてたんだけどなあ。只の冗談だなんて笑ってしまっていた。

 

「………分かった。それは良い。しかし本当にお前が死ぬようなことがあるのか?」

 

少し心配そうな、同時に疑うような、この戦士には似合わない反応をされた。まあ逆の立場だったらあまり受け入れられることでは無いよな。それを尊重しようとしてくれる辺りこの人は優しい。

 

「フォルさん、南の勇者って知ってるかい?」

 

「ああ、会ったことはないが」

 

「あいつはさ、未来が見えていたんだ。自分の死が、最後の戦いが、人類と魔族の未来が」

 

「そうだったのか。あの最強の勇者が」

 

「信じられないだろ?でもまあそんな奴から言われたんだ。俺は近いうちに死ぬってさ。だからさ、それに乗ってやろうと思うんだ」

 

「死ぬことは恐くないのか?」

 

「ふふ、恐いさ。そりゃな。でもそれで良いんだよ。死への恐怖が失くなるような化け物にはなったつもりはないからね」

 

「そうか、妻は恐くないと言っていた」

 

「ああ、あの子は確かにそう言っていた」

 

何年も前に死んだ彼の妻。彼女とも俺は面識があった。何度も会ったし、一緒に話もした。料理も作った。思い出すってのはやっぱり独特の寂しさと嬉しさがある。

 

「俺とあの子は違うってことだ。実は俺って死ぬの二回目だしね」

 

「冗談が上手いなお前は」

 

「ああ、本当に嘘が上手いだろう?俺の唯一誇れる汚点さ」

 

「昔から変わらないこれも終わるのだな」

 

「ああ、永遠は無い。この会話もこれで終わりだ。俺もそろそろ往くよ」

 

「森田、お前と会えて良かった」

 

「ああ、俺もだよ。最後だからな、餞別だ」

 

辺りが淡い光に包まれる。何時ものように発動する魔法。けどこの魔法は少し特別だな。願わくば、その追憶が上手くいくように。

 

「いつか思い出す時が来たらそれを使うといい。それじゃ、さようなら、フォルさん。元気で」

 

「ああ、ありがとう森田」

 

もう会えない。できれば、そんなのは嫌だった。自分が死ぬからなんておかしい話だ。けどやらねばならない。南の勇者、あんたも同じだったのかもな。

 

「さて、次はと」

 

ペラペラと手帳のページを捲る。原作のイベントを覚えてる限り書いた手帳。覚えてるうちにと昔作ったものだ。順番もしっかり整えられてる筈だ。

 

「ローア街道、後はオッフェン群峰………氷柱桜か。というと、あそこかもな」

 

何となくあの世界を思い出す。いつか帰れたら、なんて思うけど。叶わない夢だろう。置いてきた物もない。特段執着や繋がりも無かった。戻りたいと思うのはゲームがしたいからとか、その程度の理由だ。

 

そう言えば次の氷柱桜ってあれか。しだれ桜みたいな感じだったよな?まだ冬の氷柱桜は見たことないな。

 

「ふふ、楽しみだ」

 

もう少し要らない物語は続く。





お久しぶりです。

結構重要なところなんですが、短くまとめました。フォル爺とか勇者の剣はもう少し書きたかったなあ。自分の文章力の無さが恨めしい……。

追記

主人公の本気っていりますか?


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閑話 道化じゃなくなった誰か


今回はいらない話です。主人公の本気が見たい方はどうぞ。

─────────────────────────────


あー、あいつか。もう随分会ってないが、まあそのうち顔を出すよ。そういう奴だ。あいつに勝つ?無理無理。そんなのが出来るのは魔王とかぐらいだろ。才能とか努力とか、それ以前の問題なんだ。戦意が失くなるんだ。あいつの本気ってのは死と直結してる。挑んだら絶対に死ぬことが分かるんだよ。一度だけ挑んだけどな。相手にされなかったよ。

ハイル伯爵領ハイル・リアス伯爵


 

………ん?あれ、あんたらか。

あー、すまない今回はいつものようなヒンメル達との旅じゃないんだ。あんたら読者?観測者?視聴者?………まあこれを見てるあんたらに話すことがないんだよ。

 

原作じゃあ氷柱桜を越えた後は大陸魔法協会の話だった筈なんだがな。ヒンメル達の方じゃ大した話がないんだよ。次はダッハ伯爵の剣の魔物かエトヴァス山の秘湯だろう。

 

別に日常会話を楽しみたいならそれでも良いんだがな。今もそれは、ほら。

 

「今日の夕食は───」

 

「ハイター吐くなよ───」

 

な?いつも通りの会話が続いてる。けどさ、正直こんなの求めてないだろ?あんたらは娯楽の為にこれを見てるんじゃないか?

 

俺の知ってるそういうのだと、もしかしてアニメとか?いや二次創作ではあるだろうからなあ。………なろう?いやハーメルンとかか?ていうか全然知らない異世界の媒体の可能性もあるか。

 

という訳で話すことが無い語り部、森田です。ま、今回はこんな所で終わりになっちまうんだよ。すまない。じゃあまた次回までさようなら。

 

 

 

 

 

ん?あれ?何でまだ終わっとらんの?えぇ……まだ何か続けないといけないのこれ?そういうことなの?だるっ。

 

え?てかどうするよ。実際問題何もないぞ?

 

話せること話せること………話せること?あー分からん!くっそ!俺の話なんてねえんだよ!!前世のことでも話すか?いやつまらないだけなんだよなあ。只のいじめられっこ物語でしかない。

 

今世も人から見ればつまらない人生だ。俺としては楽しいことをやってきただけだ。修行や鍛練もおれにとっては夢の景色。さらにやらねば死ぬときた。だからこその修行漬け。一瞬一瞬生きるのに全力だった。結局前世と変わらない。

 

あんたらの声が聞こえたらなあ。そうじゃなくとも意志疎通が出来たら楽なんだけどな。

 

そうだ、あの時の話しでもするか。ほら、前にちょろっと話に出てきただろう?女将さん………エルネアさんの祖先の時の話だ。まあそこまで何かあった訳じゃないんだが。俺の人生の中じゃそれなりに面白い方の話だ。逆にこれ以外に面白い話は早々無いんだけどね。

 

あれはもういつ頃の話だったか。それなりに関係の薄い仲間達と世界を救った話だ。

 

****

 

荒廃する大地。緑など一欠片も失く、青い空と涸れ果てた地面が地平線のその先まで続いている。

そこに居るのは四人と一人の人間、そしてそれらを滅ぼさんとする魔物の大群。

 

一体でも取り残せば何処かの国が地図上から消えることになるだろう。だからこそ、ここに居るのは周辺国、どころか大陸中から選ばれた屈指の精鋭だった。

 

 

「ははっ!キッツ!」

 

「そう言うなよ……」

 

元気に、というより狂気に染まったような声音で剣を振り続ける者。焦りを感じながらも確実に敵を殺す者、自身の死を悟り半ば諦めながら戦う者。女神に祈り自分達の安寧を願う者。

 

対応も連携も点でバラバラな四人だった。しかし一人一人の強さの凄まじさによって何とかなっていた。パーティーとしてはなっていないが確かに集団として、集まりとしての力を発揮出来ていた。

ただ一人を除いて。そう、つまり俺だった。彼らが纏まってるのに対して俺は一人離れた所で戦っていた。

 

「クソガあああああ!!死ねクソゴミ!ぶっ殺してやる!!」

 

荒れてた。それはもうめちゃくちゃに荒れてた。加減とか後々のこと考えてとか気にせずに本気で戦ってた。

 

《全て悉く破壊する魔法》

 

《流星群を落とす魔法》

 

《地平線まで滅ぼしつくす魔法》

 

《天丼万象!!》

 

《ゲートオブバビロン・レプリカ》

 

《げつがてんしょう■!イエーイ!?◆!》

 

《にせもん紫ィ》

 

《全方位無限釘パンチ・レプリカ》

 

「はあ………はあ……ぜはあ……うあぁ…………ふぅー、マジで……ふざけんなよ………!」

 

攻撃魔法の奥の手中の奥の手を惜しみ無く使っていた。これらは一人一人が魔王軍幹部級はある。どころか七崩賢クラスもちらほら見えるのだ。だというのに紙切れのように吹き飛び死んでいく。魔王軍すら上回るだろう最恐の軍勢。それが一人に蹂躙されているのだ。明らかに異常だった。

しかしそれでも終わらない。未だに魔物の軍勢には底が見えない。

 

なんでこんなクソッタレな状況になってるのか。

大元を辿ればちょっとした依頼だった。薬草を集めるだけ。その依頼を受けたばっかりに全てが狂った。そこで出会った子供を助けたせいで俺の居場所が知られて、依頼が舞い込んでくるようになった。

 

最初は良かった。適当な討伐依頼や迷子の捜索なんかだった。けど雪だるま式に事は大きくなって今じゃこんな大事にまで巻き込まれたのだ。

ふざけるな!何でこんなことをしなきゃいけないんだよ!!何で片腕無くて片目潰れてる野郎にそんなの依頼すんだよ!!明らかに無理だろうが!?

 

「クソッタレがあああ!!」

 

《天地割る光を放つ魔法》

 

《天候を操る魔法》

 

《嵐を災害にする魔法》

 

「さっさと死ねカァス!!」

 

「うわぁ……」

 

「なぁにこれぇ……?」

 

「人間じゃねえよ……」

 

「化け物……」

 

「誰が化け物じゃい!」

 

あーイライラしてきた。こいつらにも文句言ってやろうかな!?

 

「そもそもてめぇらが対処できれば俺がこんなことしなくても良かったんだろうが!」

 

「そんなことっ!言われてもっ!こんなのどうやって対処するんですか!」

 

言い返してくるのは赤髪の女戦士。結構ギリギリらしい。はっ!良い気味だ。

 

「知らんわ!!そんなん気合いだ気合い!てめぇら才能もってんだろ!何とかしろや!」

 

「んなこと言われたって……!」

 

「ッ!!この野郎……!ふざけやがって」

 

新しい魔力反応。それも特大。今までで一番ヤバい!!距離は……結構遠いな。

はあ……しゃあねえか。

 

「おいそこのクソ共四人組!」

 

「何ですか!」

 

「ひっ……なに」

 

「てめえらあのやべえの倒してこい!!こいつらは俺がやってやる!」

 

「いやそんなこと言ったって!どうやって行くんすか!?」

 

「道は作ってやる!」

 

《か●は●波》

 

日本なら誰もが知るあれのパクり技だ。片手か両手か違いはあるんだが。直線に極太の光線が突き進む。直線上にいた者を飲み込み消滅させる。いくら突き進んでも止まらない。着弾地点はあのラスボス相手だ。

 

「さっさと行け!」

 

「えぇ……」

 

「マジかよこの人」

 

「黙ってろ!ほれ、さっさと行け!」

 

「分かりました。じゃあまた後で」

 

「ああ、じゃあな」

 

「何で今までその力隠してたのか教えて下さいねー!」

 

「ほんとだよ!後で覚悟しとけよ!」

 

「またね……」

 

「ああ、分かったから、行ってこい」

 

これで終わりだ。あいつらのお守りももううんざりだ。しかしお世話になったのそうだ。一応魔法かけておこうか。

 

「ふふ、さようなら」

 

これであいつらとはお別れだ。もう会うことはない。今の家にも帰る気はない。引っ越しだ。それじゃ、さっさととんずらこかせて貰おう。

 

「さて、お前ら」

 

クルリと周りの敵を見渡す。

 

「地獄を見て貰うぞ。第二ラウンドだ」

 

《異世界に引きずりこむ魔法》

 

大地が黒く染まる。数秒後、そこには荒れ果てた地以外に何もなかった。

 

 

***

 

 

「やられた……!」

 

「うーん完全にもぬけの殻だね……」

 

そう口にしているのは赤髪の男と茶髪の女。世界の危機を救い救世主として迎えられた四人。しかし彼らは今森の中にある木と一体化した家に来ていた。

 

「何処に行ってしまったんでしょう?」

 

「分からない。全ての痕跡が綺麗に消えてる」

 

白髪の女と男は思う。何故こんなことになっているのか、と。

 

「ああ、何もかもがなくなってる。というかそもそもがおかしいんだ。誰もがあいつのことを覚えてなかった。」

 

「ええ、私達以外に誰も覚えていない。最初からいなかったかのように扱われています」

 

「残ってるのはこの家と、ニーアの日記に書かれてるものだけか」

 

町に迎えられ、町中の歓待ムードに彼らは酔いしれていた。最初はまだ帰ってきていないだとか、何処かで寝てるだけだとだれもが思っていた。そういう奴だった。

しかし幾ら待とうと一向に現れないのを不審に思い誰かに聞けば、誰もがそんな人は知らないと言う始末。業を煮やしてこんな奥まで出張ってきたらまさかのもぬけの殻。

 

困惑が思考を満たしていた。

 

「どういうことなの……?あいつが敵にやられたなんてあり得るの?」

 

「無くはないが……最後の様子を見るにそれは無いだろうな。それに誰も覚えてないってのは明らかに何かある。それこそあいつ自身が何かやったとかな」

 

「そんなことありえるんでしょうか?」

 

「最後のあいつの戦い。あれを見せられて出来ないとは言えないよな」

 

そう、無いとは言いきれない。彼らの最後に見たあの光景は神の戦いと言われてもおかしくないものだった。そして面倒くさいことが嫌いな性格だった。自分が逃げるためにこのようなことをしたというのもあり得なくはない。というかそれが一番確率が高い。実際それは正解だった。

 

「もう会えないかもな」

 

「そんなことある?」

 

「あいつだぞ?」

 

「ありえるなあ…….。ニーアの日記には何か書いてなかったか?」

 

「何も、私の字しか書いてないわ」

 

「こういうの、あいつらしいっちゃらしいよな」

 

「そうね」

 

彼の言葉を、姿を、仕草を思い浮かべる。最後まで彼を理解することは出来なかったが、それも仕方なかったのだろう。どこか変なところが目立つ人だったから。隻腕隻眼の不審者。そうとしか言い表せないような人だ。そうして誰もが過去に思いを馳せている時だった。

 

『ういーっす』

 

「「「「えっ」」」」

 

現れたのは件の男。いや、それを忠実に再現した光だった。何故か音もする。魔法、というやつだろうか?

 

『いやーここまで来たってことはたぶんお前らだろ?おめでとうー!世界救済の立役者。歴史に名を残した英雄!いやあ素晴らしいねえ。それで、そんな英雄サマがこんなクソ田舎まで何のご用ですか?』

 

「こんの……いちいちうっざいなあ!」

 

いきなり現れて煽られては流石に怒りを隠せない。四人は本題も忘れてイラついてしまっていた。

 

『これ記録された物だからお前らの声は届かないから。そこんところよろしく。それで、何の話だっけ?……ああ、何でお前らが来たのかってやつか。

まあ俺も大体理由は分かる。大方俺を問い詰めに来たとかだろ?ま、俺はお前らとは会う気は無いけどな!いやー、お疲れぇ!こんなところまで来て?無駄足?とんだお笑い草ですなぁww』

 

「くっそ!本当にムカつく!!絶対にあいつしばいてやる!!」

 

『後は何だっけ?えーと、あれか。何でこんなことしたっかて言うと、まあ一言で言えば面倒臭かったからだ。それだけ。だってやる気無いって言ったのに連れてこられるとか嫌なんだよ。あれもお前らが頑張ればいけたんじゃね?』

 

「相変わらずてきとうだなあ……」

 

『あ、それとニーアさんすんません。日記見して貰う約束でしたよね。それはまたあの世の方でお願いします。ま、そんな訳で皆さんご苦労様でした。

最後に、君たちは色々と後悔しないようにね。まだ間に合うだろうからさ。世界を救ったのは凄い。けどその重責に潰されないでね。俺も君たちも人間なんだ。何をしたって自由なんだぜ?世界救済、本当におめでとう。………はい!話終わり!それじゃまたあの世で会おう!じゃあね~~』

 

ブツッ

 

光は嵐のように過ぎ去り、残されたのは何とも言えない不快感だけだった。

 

「ははっ、何だよそれ」

 

「ほんと、理解できないわ」

 

草木が舞う。風が佇ずむ。四人の英雄が確かにそこにはいた。

 




何か締まりが悪いというか、駄作になっちゃった。


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ラストステージはもう


あの人について、ですか?恩人です。ここで働いてた時はたまに何でも屋みたいなことをしてました。それ以外は何も知らないです。だって何も教えてくれませんでしたから。秘密主義と言えば良いんでしょうか。ああ、けどあの人は私を一人の人間として接してくれていましたね。子を授かって分かったんです。あれは子供を見る目でも、憐れみの目でもありませんでした。私を他と何ら変わらない人間として見てくれていました。え?好きだったかって?ふふっ、ありえないです。何でって、あの人この店名を考えたんですよ?そんな変人ですから。

フェダル伯爵領 幻異亭女将エルネア


 

ハグッハグッゴクッムグッ

 

「やっと終わった……」

 

ズルズルバクッズー

 

「何でこんなことに……」

 

ボリボリゴクッハグッズル

 

はい、シュベア山脈の頂でパーティーする転生者、森田です。

いやマジで暇だった。だって何度も探索探索探索探索。しかも手がかり無し。西へ東へ南へ北へ。ここにたどり着くまで軽く一週間はかかったぞ。流石にあり得ない。あの貴族のクソジジイ殺してやろうかな。そんなガラクタ家宝にすんなよカス。奪われんなよゴミが。

 

自分がそこまで被害を食らった訳でもないのにここまで悪態が出てくるのだ。それほど面倒な依頼だったというのを理解しておいてもらいたい。

実際俺も少しばかり手助けしてしまった。しかしそれでもこの依頼は受けて貰わなければいけなかった。この世界の運命を、作品を変えたくないから。身勝手だが、それでもやるべきだと思っただけだ。

 

さて、そんな訳で剣の魔物は倒し、あとは戻ってまた旅を続けるだけだ。

 

 

 

ん?ああ、これだけだよ。少し面白くなかったかな。でも仕方ない。それしかないんだから。あ、そういえば魔物達の様子がおかしい。何やらそわそわしてるというか、凶暴性が増したというか。とにかくいつもと違う。まるで何かに急かされているようだった。まあこういうのは時々あるもんだ。理由は分からないけどな。

 

次はエトヴァス山の秘湯かな。いやーこの寒さをさっさと解消したいよ。……………もう時間が無いなあ

 

 

***

 

 

 

「ホントに労力に見合わねえなあ………」

 

という訳でエトヴァス山の足湯到着!森田です。

いや、初めて来たけど想像以上だわ。道中のモンスターが面倒すぎる。俺でも行きたくないと思うレベルだったよ。北部高原みたいに命の危機っていう感じじゃないんだ。モンスターの多さ、その配置とモンスター自体の知能。全てが嫌がらせかと思う程に面倒な道のりだった。

 

ゲームとかでもよくあるだろ?クリアはしやすいけど時間がとにかくかかるステージ。そんな感じのやつだった。結論だるい。結局この一言に全てが詰まってるね。

 

そんなこんなでみんな結構疲労困憊。ヒンメルの顔にも疲れが滲んでいた。近くの町に温泉がある筈だし、しっかりと休んで欲しいな。少なくとも北部高原前までには疲れを抜いておかなきゃいけないからね。

 

北部高原の難易度は相当だ。今の彼らでは運が悪ければ死ぬだろう。それだけヤバい場所なのだ。

そしてそれは当たり前になっていく。何れ慣れる訳だ。人間っておかしいね。

 

北部高原を越えれば更に戦いは激化する。特に北はレベルが違うからね。今回はその前哨戦とも言えるかもしれない。いつか果てしない死闘、極限の戦いに直面することになる。

 

彼らは勝てるだろうか?俺のせいで何かが変わってしまったらと思うと、どうしても不安になる。いや、やるしかないのだ。もう腹は括るしかない。彼らもそれを承知でこの道を進んでいるんだ。今までどれだけの命を踏みにじってきたのかという話だ。その程度の予想外、全てはね除けるのだろう。

 

何故なら彼は勇者ヒンメルなんだから。

 

 

***

 

 

辺り一帯に広がる混沌とした気配。幾つもの生物が生息し、食らい合う場所。その生存競争を生き抜き、ヒエラルキーの頂点に立つことで明日がある。正しく弱肉強食の世界であり、剥き出しの野生がそこには存在していた。

 

とまあ長々と偉そうなナレーションをした訳だけど、もう俺はここを離れるんだよね。

 

という訳で、祝ストーカー脱却!森田です。

 

今まで散々語ってきた事態が遂に来たらしいのだ。らしいってのはまだ自分の目で確認できていないからだ。けどこの魔力反応はヤバい。

俺は大陸の半分くらいなら魔力探知が可能だ。勿論色々な工夫が必要だが。そしてそんな工夫凝らしてみたところ、これまで感じたことの無い程のデカイ魔力反応があった。

 

確実に人類が滅びる。勇者一行じゃ敵わない。明らかにゼーリエ案件。そういう類いの物だった。

 

俺はギリギリまで待った。彼らを見ていたいから。そして俺が対処出来そうなギリギリ、それが今だった。

一番最初に感知した時でさえ思ったのだ。死ぬのは確定だと。どうしても死ぬ。それが分かってしまった。けど死ぬとしても治癒不可能なレベルの傷を負うだけ。それからどれだけ戦い続けられるかを考慮した場合ここまで粘れたのだ。

 

そして今から俺はその死地へ赴く。分かっていた。分かっていたことだった。

 

『あなたは近い内に死ぬ。魔物の手によって』

 

あの時から覚悟はしていた。そして今、その覚悟が試されようとしている。

 

だけどさ、行かないなんて選択肢は無くて、俺にはもう答えは一つだけだった。

南の勇者の戦い、ヒンメルの魔王討伐、後の時代の魔法使い。俺には負けられない理由があった。

 

世界を救うこと。それが俺の命で叶うならとても安いものだ。けどそれ以上に、後の時代にヒンメルが残したもの、その美しさが分かるからこそ俺に止まることは出来なかった。

 

最早深夜に差し掛かるかという時間。何故か今日はヒンメルだけが一人で起きていた。

 

静謐が流れる。しかし俺はこんな時間も嫌いじゃなかった。最後は彼らの顔を見たかったが、それは高望みかな。彼らと一緒に居れたこと。それこそが俺の人生への報酬のように感じた。

 

青い髪が火に照らされて靡いている。月の光が差し込み、辺りは神秘的な雰囲気を纏っていた。

 

この光景もこれで最後だ。勇者ヒンメル。それは正しく勇者だった。そのあり方は確かな救世主だ。人を救い、世界を救い、平和にする。この人にならそれができるのだと思ってしまった。

 

惜しむらくはその先をこの目で見れなかったことだが、まあ仕方ないことだ。

 

時間だ。もう行こう。グズグズしてたら手遅れになるかもしれない。

 

 

「もう行くのかい?」

 

 

ハスキーな声が響き俺の足を止める。その響きは何処から発せられのだろうか。振り返ればその透き通るような虹彩が、確かに俺を貫いていた。

 

「マジかよ…」

 

未来への精算が始まる。

 

 

 




次回フリーレン編最終話です。


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最終話 五人目


偽物のままでも本物を成し遂げられる

付いていくからこそ信じて往ける

恐怖が人を勝利へ導く

運の良さが世界を平和にする

これはこの世で最もいらない物語だ




 

「もう行くのかい?」

 

「マジかよ…」

 

動揺せずにはいられなかった。考慮していなかったかと言われればそんなことはない。しかし、限りなく低いと思っていたから。

 

「……いつ気付いた」

 

「うーん、クヴァールもそうだけど……確信したのは雪山かな」

 

何とも無さげに答える勇者。それにしても雪山か……。この旅の途中、何回か手助けに入る機会があった。その一つが雪山。寒さに凍えそうなところを魔物に襲われるとかいう可哀想なことがあった時のことだろう。

 

「それで、君はもう行くのかい?」

 

「ああ、もう行くさ。すまなかったな。ストーカーみたいなことして」

 

「いや、そんなところで謝らなくても良いさ。それにしても、君はそういう性格なんだね」

 

「………あんたと話すことがあるとは思わなかったんだけどな。他の奴らも気付いてるのか?」

 

「いや、僕だけだよ。みんな気付く素振りすらない」

 

良かったぁ。まじでフリーレンに気付かれてたらそれこそオワコン。これならどうにかなるだろうな。

 

「何で僕らについて来たんだい?」

 

そうか、それが気になるのか。けど、それは早々答えられる物じゃなくて、答えて良い物でもなかった。

 

「どこから話せば良いんだろうな。一言で言えば面白そうだったから、かな」

 

「そうか。それだけでこの旅に着いてきたのか。……もしかして、フリーレンと知り合いかい?」

 

ええ……。何でそこら辺当ててくるん?おかしいやろこいつ。

 

「知り合いではないかな。俺が一方的に知ってただけ」

 

「えぇ……ちょっと気持ち悪い」

 

「ふふっ、だよなあ」

 

少し、楽しかった。まるで旧知の友人と話しているかのようだった。しかし本来これは許されない行為だろう。これによって大きく未来が代わる可能性もあるのだ。それ程までに重要な存在が目の前の男なのだ。

 

「勇者ヒンメル」

 

「なんだい?」

 

「あんたはきっと魔王討伐を果たす。そしてその後、この旅の終わりで何がしたいんだ?」

 

 

***

 

 

僕らは勇者一行だ。数ある勇者パーティーの中の一つ。人々からは四人だと思われている。しかしそれは違う。恐らくパーティー内でも僕だけしか気付いていないだろう。

 

いつも斜め後ろから気配を感じる。微弱で極限まで消された、微かな気配。明確な何かが無ければ気付けない。気付いても居るのか居ないのか分からなくなってしまうような存在。それがいつも僕らを付いてきていた。

 

でも危険な存在じゃなくて、いつも僕らの味方をしている、と思う。普段は何もしない。どんな死戦だとしても基本は手を出さない。けど、時々、本当に時々だけど助けてくれる時がある。

 

今日は何故かそんな存在がいなくなる。そんな気がした。起きていた方が良いと、そう感じた。

 

それはきっと正解だったんだと思う。

 

 

現れたのは灰色の服に身を包んだ仮面の男。おおよそ魔法使いと言われる風貌をしているにも関わらずその雰囲気は戦士のようだった。その仮面のセンスだけは良く分からないけど……。

 

気配が一気に濃くなった。いつも感じていたものとは違う。しかし同じ存在ではあるのだろう。いつもと似た消え入ってしまいそうなその雰囲気は、まるで生物ではないように感じられた。

 

「いつ気付いた」

 

最初に聞かれたのはどうしようもなく事務的な一言。

自身が思っているように返し、話を紡ぐ。

 

「ああ、もう行くさ。すまなかったな。ストーカーみたいなことして」

 

やはり、行ってしまうらしい。このままどこまで付いてくるのかとは思っていた。もしかしたら魔王との戦いでは一緒に戦うかもしれないとどこか期待していた。しかしそうはならないらしい。

 

何故僕らに付いてきたのか、と問えば、面白そうだから、と返された。本当にそれだけなんだろうか?けど思い当たるものも、……魔法使い繋がりでフリーレン?そう言えばフリーレンが危なくなった時少し気配が強まっていた気がする。

 

ああ、やはりそういうことらしい。けどそれが全てでもない。そんな感じだった。

 

どうやら僕が魔王を倒すことを確信しているらしい。そしてその質問は僕にとって当たり前のものだった。

 

 

***

 

 

南の勇者ならばどう言うだろうか?フランメならばどう言っただろうか?考えても答えなど出ない。しかし考えることは止めない。それもまた、忘れないという行為だから。

 

「僕は世界を平和にする。それだけさ」

 

ああ、なんて馬鹿げた夢だろう。それは本来成し遂げられるものではない。この世の英雄達がこぞってそれに挑み、失敗した最高の難題。けど、それでも挑もうと言うのだ。そしてその行動は確かに世界を平和にした。

 

やはりその行動を無駄にするわけにはいかないよな。

 

「ははっ、やっぱあんたは勇者だな」

 

「当たり前さ」

 

あの時の南の勇者と同じように、とは出来ない。俺は何も託さない。彼の道はもう出来ているから

 

「なら、勇者として役目を果たせ」

 

「ああ」

 

言わなくても分かるのだろう。俺に気付いていたのなら恐らく伝わっている。

 

「俺としては、フリーレンに伝えても良いと思うけどなあ……」

 

「けど、それはいずれ重りになるだろう?」

 

「…ああ、そうだよなあ」

 

もうそろそろ行かなくてはいけない。楽しい時間にも終わりは来る。誰よりもその事は理解している。

 

「俺のことは誰にも話すなよ」

 

「誰も知らない五人目なんて悲しくないのかい?」

 

少しだけ悲しそうにそう言った。けど否定しなきゃいけない言葉だった。

 

「俺は五人目じゃない。ヒンメル、それだけは間違えちゃいけない。俺はただのストーカーだ」

 

「……そっか。君がそう言うなら。代わりに君の顔を見してくれないかい?」

 

えぇ………。それはちょっと……と言いたい処ではある

あまり、見せたい顔では無かった。けどヒンメルになら良いだろう。彼になら恐らく何も起こらない。

 

「それは……」

 

「酷いもんだろ?こうでもしないと色々大変なんだ」

 

長らく人に見せることの無かった顔。俺は今、笑えているだろうか。

 

「それじゃあさようなら。ヒンメル」

 

ああ、本当に似ているな。あの蒼い髪の彼と。ツァルトと戦ったときの彼と。うん、これなら笑えているだろう。

 

「ああ、さようなら」

 

その蒼い瞳は最後まで輝いていた。

 

 

***

 

魔王城のあるエンデとは違う、しかし大陸の最北端である地に俺が死ぬ原因は有った。

 

「絶望的だな」

 

ワラワラと群れる魔物の大群。そしてその先に見える木の幹と思わしき何か。それを丘の上から眺めつつ溢れた一言だった。

 

俺が死ぬ原因。それは果てしない程の魔物の大群だ。この世の光景とは思えない程の大群だ。これは死ぬ。当たり前だ。これを周りに被害を出さず処理するなど無理だ。命懸けでやるしかなくなる。

 

極めつけはあの木だ。

 

何だあれは?全く聞いたことの無い代物だ。少なくとも自然界にあるような物じゃない。明らかに作為的な何がが働いている。そしてその膨大な魔力量。明らかに俺以上だ。ゼーリエも怪しいだろうなこれじゃ。

 

天まで越えんとして聳え立つそれに最早俺では対処不可能に思える。まず木なのかどうかすら怪しい。デカすぎて全貌が伺えないのだ。

 

これは確かに、俺がやるべきことだろう。今現在これに対処できる人員が思い当たらない。ゼーリエならワンチャン、と言ったところだった。しかも魔物の大群は明らかに魔王軍よりも強いぞ。魔王討伐よりもキツイだろこれ。

 

「やってくれたなあの野郎……!」

 

今は亡き南の勇者を恨む。こうなったのは結局奴の行動故だ。全く、嫌な役回りだ。

 

「?…………ははっ!」

 

背後から何かが近づいて来てるな。こんなところに来るようなのは録な奴じゃないんだがなあ………。

 

けど、今回は当たりを引いたらしい。こんな大物が来たんだから。

 

「まさかこんなところに来るとは思わなかったな」

 

「こんな馬鹿でかい魔力反応があれば誰でも見に来るだろう」

 

「そうかもな。じゃあまずは自己紹介だ。俺の名は森田。あんたの弟子の知り合いだ。宜しくゼーリエ」

 

そこに居たのは後の大陸魔法協会創始者、天上の女神に最も近い魔法使いゼーリエその人だった。

 

 

***

 

最初にそれを知覚したのはいつだったか。興味本位で魔王城近くを彷徨いた時だったろうか。しかし魔力量は特筆すべきところもなく、只の人間。そういう認識で居た。

 

そして今、その認識は大きく覆された。魔法の世界では天地が引っくり返ることもある。しかしこれはそうではない。最初からそうであったと見るべきなのだろう。天地は元のまま。ただ世界の広さを知っただけだった。

 

「俺の名は森田。あんたの弟子の知り合いだ」

 

どうやら私のことは知っていたらしい。モリタ、変な名前だ。聞いたことがない。しかし邪魔な物を使っているな。

 

「その邪魔な魔法は消したらどうだ?」

 

「ああ、流石にあんたにゃバレるか」

 

モリタの見た目が変わる。現れたのは灰色の魔法使い。その変な仮面は何なんだ………。仮面はどうやら外すらしい。魔物かとも思ったが同族のようだな。醜い顔だ。

 

それにしてもだ。私を出し抜こう等と片腹痛い、と言いたいところだが本来の魔力見破れなかった手前何も言うことは出来ない。

 

「というかそれならあんたもそうだろう?俺もあんたも魔力は隠してる」

 

「!」

 

まさか見破って来るとは思わなかった。そこまでの実力があるのか?いや、そうは思えないのだが……。

 

「それで、まだ何かあるのか?もしかして魔法でもくれるのか?」

 

そこまで知っているか。しかし何故そんなことを知られている?いや、私の弟子と知り合いならありえるな。

 

「いいや、お前には才能を感じない。それどころか魔法に適正がない。論外だ」

 

しかし才の無さにも関わらず私を出し抜くとはな。……興味が湧いてきた。少し覗いてみるか。

 

ッ!?精神に干渉できない!どうなっている!?

 

「その程度じゃ突破出来ないさ。あまり舐めるなよ」

 

「まさかここまでとはな。才能の無い癖に、随分と研鑽を積んだな」

 

「ああ、あんたが嫌いなクチだろうな。魔法使いとしての資格が無いってか?」

 

ぐうの音も出ない。ここまでの魔法使いがこの世に存在するとは思わなかった。

 

「お前私の」

「弟子になれ、か?そりゃ無理だな」

 

………先を読まれた?思考を読まれた感じはしない。魔力反応もない。どういうことだ?

 

「本来なら、あんたの弟子に、なんて大歓迎だ。けどもうこんな状況だ。あんたはこれを対処する気は無いだろ?それに約束もあるからな」

 

モリタはどこか諦めたよう顔をしていた。確かにあれ程の物は驚異だ。こいつが死ぬ可能性もあるだろう。しかしこの顔は諦めないだろう。………もう興味もないな。

 

もう帰ろうか、と考えていた時だった。

 

「ッ!!これは……!」

 

「ゼーリエ、あんたに見せてやる。繰り返される歴史の中の世界救済。その一つを」

 

「なっ!?」

 

途端に溢れだした魔力はさっきまで感じていた物とはまるで比べ物にならず、同時に物凄い魔力反応が前方からした。

 

あれは魔法か!?

 

魔物共の方をみれば広大に広がった闇が魔物を飲み込んでいる。町一つ、いや国一つ飲み込めるだろう範囲で展開されていく。あの魔力を持った大樹でさえももう見えなくなっていた。

 

「化け物め…………!」

 

忽然と魔物共と奴が消え、全てが元通りになった世界を眺める。

 

最後の奴の魔力量は、確かに私を越えていた。私と同等か、それ以上の魔法使いが確かにそこに居たのだ。

 

笑顔が抑えられない。これ程まで興奮したのはいつぶりだろうか。本当に惜しいことをしてしまったことに気付いたのはそれから少し経った後だった。

 

***

 

偽物でも本物でも必用なのは信じる勇気だとヒンメルから学んだ。

 

信じられなかったら付いていけば良い。行動こそが最も信頼に繋がるから。ハイターの俗物さから教わった。

 

恐怖こそが人を人たらしめ、それを持ちながら進むことが重要だと、アイゼンの震えが物語っていた。

 

人との廻り合わせ、偶然や運の良さが世界を平和にすることをフリーレンの言葉が示した。

 

ヒンメルが、ハイターが、アイゼンが、フランメが、ゼーリエが、クラフトが、南の勇者が、フリーレンが、彼らが俺をここまで導いた。

 

さあ、クライマックスだ。最後まで踊ってみせようじゃないか。

 

だってきっと、その方が面白いだろ?

 

往こう、ラストバトルだ。

 

《異世界を創る魔法》

 

 

***

 

 

切って、撃って、千切って、殴る。いつまで続くのか。もうどれほど経ったのか。何処がイカれて、何処が無事か、自分は今何の為に何処にいるのか、まるで分からなかった。

 

最初に大方の魔物は処理した。広範囲を殲滅し大半を殺したとそう思った。しかし現実はそう甘くなかった。魔法無効化の魔物が居たのだ。既存の魔物の亜種や希少種、果ては新種の魔物まで。兎に角激戦を強いられた。

 

枯渇した魔力を貯めてあった魔力で回復させて永遠に戦い続ける。負った傷を端から治し延命を行う。それでも限界は来る。俺の体はもうボロボロだった。しかし、どうやら間に合ったらしい。

 

辺りにはもう魔物はおらず、残されたのは大木のみ。こいつは確かに内包する魔力量が途轍もなく、そこから放たれる攻撃は一撃で俺を消し去る驚異的な威力だった。だがそれも全部避けきった。もう一対一だ。

 

ここで死んで貰う……!

 

光沢のある金属板を三つ取り出す。魔力留金と呼んでいるそれは魔力を貯め、自由に取り出すことのできる俺の作品だ。この戦いの最中何度もこれに助けられた。今までこれに魔力を貯め続けてきた。一つ一つに俺の全魔力を注いでいるのだ。一つだけで相当保つ。

 

そしてこれは最後の三つ。それを全て一つの魔法に注ぎ込む。

 

金属板が蒼く、蒼く輝く。もっと、もっとだ!最後の最後だ!全て寄越せ!

 

「……成る程」

 

どうやら彼方も最大級の攻撃を放つらしい。莫大な魔力反応を感じる。俺に有効打が無いからこそ、相手に有効打が無いからこそ、どちらも行動は同じだった。

 

「乗るぜ、その勝負」

 

強大な一撃による排除。負けた方が死ぬ。最後の生存競争だ。

 

命を燃やせ。思考を止めるな。イメージしろ。全て越えてみせる。この瞬間に、一瞬に賭ける。限界など無い。刹那に生きろ。

 

夢も希望も絶望も全てを魔法に乗せる。

 

想像するのは未来の彼ら。勇者の旅が、その後の旅が、その平和が、守れるようにと。

 

そして最後に浮かんだのは、会ったこともない少女の、しかしいつか見た光景。

 

少女が理想の魔法を撃つ姿だった。

 

 

 

「《一般攻撃魔法(ゾルトラーク)》!!」

 

 

 

その世界がいつか叶いますように。

 

 

***

 

 

俺は成し遂げた。自身の命と引き換えに確かに成し遂げた。彼らの世界を守れたのだ。物語へバトンを繋ぐことが出来たのだ。

 

歩く、歩く。ボロボロの体を引きずって、折れた左足を気合いで保って。何処に向かおうと言うのだろうか。しかし何かが、誰かが呼んでいる気がした。

 

自身の構築した異世界から戻り、そのまま何処かへ進んでいた。もうすぐ夜が明けるだろう。そんな時、そこに辿り着いた。

 

「あ、ああ……あああ!」

 

そこに有ったのは石で作られた何か。それは石碑だった。墓とも言えるのだろう。その石碑には文字が書かれていた。俺の知るあの文字で。

 

 

『俺はやったぞ。次はお前らだ』

 

『あんたらはどうだった?』

 

『俺もやったさ』

 

『やあ、同郷』

 

『俺もやり遂げたよ』

 

 

「何だよ……!来てたのかよっ!」

 

涙がどうしようもなく溢れてしまった。

この世界にきて、果てしない時を生きて、その間に彼らは死んだ。

出会うことの無かった彼らを思うと少し寂しく思う。出会えていればどれだけ良かったか。

彼らはこの最北端に行き着き、死んだのだ。

 

そこには確かにいたんだろう。近代日本からの転生者。誰もがとにかく生きたんだろうなあ。生きるのに必死で、兎に角頑張って、その末に何かをした。じゃなきゃこんなところに来ない。何人もここで死んだんだろう。ここは少し、死の匂いが強い。

 

石碑に寄りかかって上を見ると、白む空に桜が咲いていた。桜だ。あの世界の花が確かに咲いていた。

 

「あんたらが持ち込んだのか………」

 

目が上手く見えなくて気付かなかったんだろう。実際片目は使い物にならなくなっている。俺の魔法じゃ、もうどうしようもなかった。

 

花びらが舞い散る中、思い、考える。ふと、あれからどれぐらい経ったのかと思った。なけなしの魔力で時間を確認する。

 

「五年………」

 

成る程、相当経ったらしい。ヒンメルは魔王を倒せたのかな。原作も始まる。俺の分まで見てきてくれ。

 

楽しかった。楽しい人生だった。面白可笑しく生き続けた。後悔が、無いわけじゃない。

 

「会いたかったなあ……」

 

死の感覚が迫る。あの時と同じだ。恐怖と焦りが迫ってくる。声が掠れ、視界が上手く保てなくなる。感覚なんて疾うに消え去って、残ったのはまだ生きてるという盲信だけ。

 

やっぱり、最後くらい笑顔が良いよな。

 

「最高だった……ありがとう……」

 

誰に言っているのか。世界へか、知り合いへか、魔法へか、女神へか。いや、それはないよなあ。

 

俺はオレオールへ逝けるのだろうか。死語の世界なんて本当に在るんだろうか。そんなの分からないけど。

取り敢えずは、中指立てて笑って逝こう。

 

 

いらないピースは紡がれて、歯車は元に戻っていく。

 

「ファッキュークソ女神……」

 

世界は回り、物語(後日譚)が始まる

 

 




これにてフリーレン編終了となります。
視聴、評価、感想、誤字報告等ありがとうございました!皆様のお陰でここまで書くことが出来ました。
次回まで間が空きますので暫くお待ちください。
次は何を書こうかな。


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~聖杯ぶっ壊しRTA~
 どうやらまだ終わらないらしい



新章です。まだ次の作品とは関わらないけど。
履修やら何やらで時間が空く可能性があるので匿名やめました。


 

 

懐かしい、本当に懐かしい夢を見ていた

 

 

 ◆◆◆

 

「森田ー」

 

「んあ?」

 

いつも通りの高校生活。何も不思議なことはなくて、平凡で退屈な日々。けどそれは幸せの証だと思う。

 

「どしたん?」

 

「実は───」

 

誰もが享受できる訳ではない、ありふれた日常。今の俺は、何よりも幸せだったのだろう。

 

「はあ!? 今日課題あんの!?」

 

「ん、ああ、あるよー」

 

劇的な物語など必用無い。主人公になどなれやしないし、ならなくて良いだろう。そんなの疲れて死んでしまう。モブで良いから、全力で楽しみたいものだ。

 

 

 ◆◆◆

 

「これで、お前の敗けだ」

 

「ああ、敗けたよ」

 

敗けてしまった。やっぱ、ここで終わりかあ。まあそうなるよう頑張ってた訳だしな。イレギュラーが起こらなかっただけだ。

 

「なあ、本当にこれで良かったのか?」

 

「あ?」

 

辺りは喧騒に包まれている。誰もが俺を恨み、憎んでいる。全く、世の中そう上手くいかないもんだよな。

 

「お前の掌の上で転がされてたんじゃないかって思ってさ。これも、全部お前の思惑通りだったんじゃないかって」

 

「…………やっぱ分かる?」

 

これで良いのかと、これで上手くいくのかと、幾度も問うてきた。けど答えなんていらなかったんだ。考えるべくもなかった。

 

「はぁ、お前……」

 

「いやあ、すまんね。ま、あんたなら大丈夫だろ?」

 

「尊い犠牲」なんてこの世にはない。あるのは残酷な事実だけだ。それだけで良い。

 

「んじゃまあ、後は頼むわ主人公」

 

「だからなんで俺が主人公なんだよ…………」

 

「はっ、そんなんだからだよ」

 

ほんと、ツいてないねえ俺の人生。こんなことばっか上手くいくんだから。

 

 ◆◆◆

 

「…………」

 

「…………」

 

 撃鉄が鳴る。退場の時だ。

 

「ふざけんなよ」

 

「…………」

 

さっさとすれば良いものを。いや、こんな時だからだな。しっかり言っておこうか。

 

「なあ、他になかったのかよ。俺達を頼れば良かったじゃねえかよ……!」

 

「これを、お前らに出来たか?」

 

「それは……!」

 

「そういうことだろ」

 

申し訳なかった。本当に、本当に。どうしようなかったなんて言い訳だけど。そんなことないって分かってるけど。でも、もう上手くいってしまったから。

 

「でも、ごめん」

 

「ッッ…………。なあ、お前はさ──────」

 

「ああ、あったなそんな──────」

 

それじゃ、終わりだ。

 

「じゃあな」

 

「ああ」

 

 

破砕音が、鳴った

 

 

 ───────────────────────────

 

◆◆◆

 

久しぶりに見たなこの夢。というか何だ?思考が出来ているし、オレオールにでも着いたか?

 

それにしても暗いなあ。

 

「は?」

 

おい待て。何で目が覚めている。

 

「ここは……」

 

暗い、森の中か?どうなっている。オレオール……ではないだろこれ。

 

「ん……光?」

 

何だあれ。月は見えている。夜の筈だ。ならあれは……

 

「嘘だろ……」

 

途端に走りだした。全速力で兎に角走った。走って走って走った。あの光が確かなら。あれは

 

「はあ、はあ……はあ」

 

木々を越える。微かな光を追い求める。

森を抜け、土を蹴り、木々を突破していく。もう見えている。あれはそうだ。あの光は間違いない。

 

「お願いだ、そうであってくれ……!」

 

地面が土から変わる。その硬質な大地を踏みしめる。黒いような灰色のようなコンクリートを。

 

「うっ、うあ、あ、あああ!!」

 

ガードレールに手を掛けて、その煌々とした色とりどりの光が視界に映る。懐かしい景色が目の前に広がって、涙が溢れて止まらない。

 

俺は日本に帰って来たのだ。確かに、俺の目の前には文明の光が溢れていた。近代以降の日本の光が、確かにそこにあるのだ。もう手遅れになってしまった物もあるけど。でも、それでも帰ってこれた。

 

「ふっ、ははっ」

 

物凄い安堵感で思わずへたりこんでしまった。ここからだ。俺はまた、人生を始めるんだ。あの人間社会を生きていくんだ。

 

この時の俺はまだ知らない。この町の名前を。この世界の名前を。あのイカれた英雄譚が始まることを。

 

これは、俺が平穏を取り戻す物語だ。

 

エクストラステージはまだ終わらないらしい。

 

 





という訳で現代です。やっとクロスオーバーになりそうですね。せっかくなんで主人公の紹介です。

森田 ■

主人公。でも実際の性格は只のモブ。果てしない時間を生きた魔法使いである。体に備わった才能を活かせない一般人であり、一番最初の体に何も才能が備わっていなかった為扱い方が分からない。恋愛や童貞を捨てることをしないと高校の知り合い達に誓っており、半ば呪いになっている。

フリーレンの世界では本来の物語を変えることを嫌った。しかし、本来いない筈の存在が居たことによるバタフライエフェクトは防げず、その始末に奔走することになった。

勇者死後この存在を知っている者はごく僅かであり、原作の流れは変わることはなかった。正しく歴史に埋もれた誰かとなった。

裏設定

実は不幸体質。人間関係に関して壊滅的に運が悪い。いじめや親からの扱いによって精神的に鍛えられた。

前世の死因は高校の友人による殺害。突如デスゲームに巻き込まれ、その最終ゲームで死ぬこととなった。

本人は自分の人生を暇はしないが平凡の域を出ていない、と考えており、ついぞその異常性に気付くことはなかった。鍛えられた異常な精神は無敵に近く、幻影や精神攻撃が全く効かなくなっている。その関係で自己暗示や記憶消去等が得意。


「ごめん。お前にこんなこと背負わせて。でもありがとう。俺はお前を恨まない。どんなにトラウマがあっても思い出してくれ。俺はお前を恨まない。感謝してるんだ。お前は何にも縛られず、自由になって良いんだ」

「この世はどんな事柄にも犠牲、つまり代価が伴う。その犠牲の上に俺達は立っているんだ。けどそんなのは気付かなくて良いことだ。ハッピーエンドって最高だろ? その悪役がどうであったとしてもさ」


得意なこと 戦闘、嘘をつくこと、人に嫌われること

苦手なこと 基本全て


ヒンメル

特に変わることはなかった勇者。森田を知ってはいるがそれについてを表に出すことはなかった。周りの誰もが彼を知らないことに少し寂しさを感じたが、自分はそうならないようにとより一層村を救った。

「誰も知らないあの人を未来に連れていくことは出来ないけど、少しだけ憶えておくよ。僕は勇者だからね」

得意なこと 原作と変化なし

嫌いなこと 原作と変化なし


ゼーリエ

森田の影響で少しだけ変わったロリバ………エルフ。何があっても依然最強。森田の方が長く生きていたため魔力量で負けたが、それ以外で圧倒的に勝っている化け物。最近は魔法の才が無い者への考え方が変わった。諦めずに突き進んだら少しだけ魔法を教えてくれる。

「魔法の世界では天地がひっくりかえることもある。魔法の才程それに直結するものはない。しかしだ、諦めなければ、真の意味で諦めなければ出来るかもしれない。その可能性を私は見たことがある」

得意なこと 原作と変化なし

苦手なこと 原作と変化なし


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HEIWAな新生活

お久し振りです。待ってる人もいないと思うけど投稿させていただきます。長いくせにZEROに入るのはもう少し先です。すいません。


 

「ビバ!!現っっっ代!!!!」

 

はい、という訳で現代日本に戻ってきた弱者男性、森田です。

 

もはや俺は、転生者ではない!

いや、全然転生者なんだけどさ。でもファンタジー転生はしていないのだ。ちょっと前世の記憶があるだけの日本人に俺は戻ったのだ。つまりは只の弱者男性。

 

別に何か意味やメリットが有るわけじゃあないけどさ、こう、なんというか、自分が何者でもなく只のしょうもない人間だというのが大事なんだ。自分自身でもよく分からないし、言語化も出来ないけどね。そりゃ俺は何処ぞの高名な学者様とかじゃないんだから仕方ないだろうよ。

 

さて、そろそろ移動をしよう。今の俺は寒空の下(体感氷点下)半袖短パンとかいうあたおかコーデだ。

 

誰だこんなの考えた野郎は……

 

俺だよ!!(白目)

 

いや、実際には俺じゃない。俺が宿る前の奴の凶行だ。この体、前回とは違い赤子スタートではない。誰か違う人に宿った形になった。そもそもの話魔力量が圧倒的に少ない。これ自体は解決案がいくらでもあるが、それはまあ良い。

取り敢えず違う人の体なのだ。つまり今までの人生があると見て良いだろう。いや、もしかしたらよくわからん神様とかが新しく体を都合よく作ったとかなら…………いやねえよそんなん。現実にそんなトンデモ理論は通らん(目逸らし)

 

元の人の記憶は…………思い出そうとすれば思い出せるな。やっぱ今までの人生がしっかりとあるな。ふむ、成る程。いや、あー、それは………まあ、しゃあないか。

 

うん、これたぶん俺だ。前世の記憶がなかっただけの俺なんだ。まず性格が終わってる。ゴミカスだ。コミュ障で陰キャ。いじめられてて卑屈。顔も変わらんし、太ってないのだけはまだ良いのかもなあ。ま、この世界じゃ俺の顔は結構キモい程度だ。まだ救いもある。

 

取り敢えず身辺情報の整理だ。どうやら俺は今中学生らしい。んで、安定のいじめられっ子。

 

まあでもボコボコにされる程度。最悪脆い骨が折れるぐらいだろうな。………正直に言ってぬるいな。一番最初の時の方が何倍もキツい。今回の人生は楽そうだ。

 

今は何年くらいだ?うーんそれは出てこないか。まあ年代に関しては元から頓着のある性格じゃない。この体の俺もそうだったんだろうな。自分に直接関係のある事柄にしか興味がないんだろう。

 

親族関係は………へえ、天涯孤独か。いや、下に弟か妹かがいるのか。随分と古い記憶だ。恐らく幼少期に少ししか会っていないな?そのせいで性別はもう覚えていないと。金はどうやって………孤児院か。ま、まだ良い方だな。

 

親は幼少期に死に、家族からたらい回し。最終的には強引に孤児院に押し込めたと。下の兄弟(性別不詳)は物心付く前だから引き取り手が現れたらしい。引き取り手によってはそれは都合が良いんだろうな。なんてったって自分達が本当の親として見て貰えるからな。自身は特に何もなく今まで来たらしいな。

 

あんな森の中で寝てたのは………ああ、殴られて気絶か。わざわざ森の中までとは、いじめっ子もやるねえ。そっちの方がこの体の俺より評価高いわ。将来有望だね。

 

この体の俺ってなんか言いにくいな。元々の名前は……佐藤か。これで良いな。日本で多い名字ランキング一位の佐藤さんね。

お亡くなりになった佐藤さんに敬礼!ざまあみろ!恨みは無いし、彼が消えたのは十中八九俺のせいだがやりたくなったので仕方ない。そこにいたお前が悪い(ミラーワールド風味)

 

それじゃ、キチガイムーヴをかましたところで行きますか。

 

俺の状況は未だにガードレールの前にへたりこんだままだ。足に力を込めて

 

「よっと………うん、問題ないな」

 

パンパンと体を払い周りを見る。あっちに行けば良いのか?うーんと、ああこっちか。

 

そうだ、折角だし最初にやってしまうか。こういうのは機会がある内にだ。早い方が良い。

 

体が紫色の光を放つ。ゆらゆらと忙しなく動くそれを落ち着かせるようにゆっくり、ゆっくりと力を込める。イメージは充分。脳裏に焼き付いてる。体は慣れないだろうが、強制的に呼び起こす。

詠唱も必要だな。この体だと補助がないとキツイだろう。まあ、こんなの最初の数百年で使ってた迷信みたいな物だが。とにかくそれっぽくで良いんだよこういうのは。

 

「時を越え、世から浮き、変移と侵食を受け、糧とする。それ即ち風化せず、色褪せない永遠と成す。《体を記録された形に戻す魔法》」

 

たちまち体が変わる。そのまだ成熟しきっていない体が見慣れた物へと変化した。筋肉が付き、灰色のローブを纏う。どうやら成功のようだ。全ての感覚がいつも通りに感じる。これなら今までの魔法も扱えるだろうな。

 

そもそもの話になるが何で魔力があるんだ?地球にこんなものがあるというのは何とも不思議だ。聞いたことがない。魔族がいないせいで感知することが無かったのか?………ま、こういうのは考えても仕方ない。

 

さて、ちょっといじりますか。このまま帰る訳には行かないだろう。内包する魔力はそのままにしたいし、表面と筋肉だけ変えよう。そうすれば出来なくもない。佐藤の筋肉量が少なすぎるから少しは残したいし、ちょっと敷き詰めよう。外見はそのままに落としこんでいく。

 

「よいしょっと。うし、悪くないな」

 

うん、これなら早々バレないだろう。耳もエルフの尖った物へとじゃなくて丸まっている。やっぱり元のベースがあるとやりやすいな。いちいちイメージしてどうにかしようとするとキツイんだよなこれ。

 

このあたおかコーデもどうやら孤児院に関係してそうだな。そこは色々事情があるんだろう。俺が詮索すべきでは無いかもな。

 

ああ、それにしてもあんたらも暇人だねえ。これを見てるあんた達の話だよ。まさかまだあんたらに見られてるとは思わなかった。

 

今回は普通の転生話だろうしつまらないと思うが、まあ見ていってくれるならそれも良いかもな。前回程面白可笑しくとはいかないと思うけどね。

 

もしかしたら貞操観念逆転とかあるかもしれないし、そこら辺期待しといてくれよな。面白い方に人生を賭けてみるのも悪くないかもな。ま、取り敢えずは自堕落な安定が欲しいなあ。

 

***

 

「ん、あれって………」

 

夜に放つ煌めいた光が俺の視界に差した。他の家々とは違う、それは砂漠の中に存在するオアシスのような、この世で最も甘美な果実に見えた。

 

「相変わらず眩しいなあ……」

 

視覚情報が伝える魅力とは裏腹に、こぼれ出た言葉は随分おっさんくさい物だった。

 

そこにあったのはコンビニエンスストアと呼ばれる部類の店。言ってしまえばセ●ンイ●ブン。

 

「そりゃあるよなあ」

 

近代日本文化の象徴と言っても差し支えない程には増えすぎた物だ。無きゃおかしい。忘れていた、というより念頭に無かった。……よし、行ってみるか。何千ぶり?かのコンビニだ。ワクワクするなこりゃ。

 

 

 

 

わあぁ……あ……ああ

 

 

 

 

「はっ!」

 

ここは……コンビニの外?ああ、感動の余り思考が飛んだと………。んなことある?いやあるのか。実際そうなった訳だし、けど納得したくも……。いや今考えることじゃないな。

 

取り敢えず今の時間は……コンビニに時計くらいあるか。

そうなるとまたコンビニに入ることになるのか。また思考が飛ばないか不安だが、そうも言ってられないか。

いやしかしだ。金無いくせにこんなことやるなんて迷惑客も良いとこ。ただの冷やかしだ。………仕方ないか。死活問題だし。

 

………よし、入るぞ。

ぐっ!光が眩しい!だが耐えた。よしっ!耐えたぞ!ここからは簡単だな。

 

えーと、時計時計。お、6時か。これならまだ大丈夫だろうな。孤児院の人の説教は軽くすみそうだ。記憶に門限を破った時の説教の記憶があるしな。面倒なのは避けたい。

 

よし、次は情報収集だ。何事も情報があるに越したことはない。まずは年代が知りたい所だが……漫画だな。ああいうのは基本的に年の巻合が乗ってるからな。流石にジャ●プとかならあるだろうし。

 

「あ?何だあれ」

 

雑誌のコーナーに赤い括りなんてあったっけ?うーん、少なくとも2023ではなさそうだな。それよりも後か前か。俺の最初の人生の記憶にはそんなもの存在しない筈だしな。……少し怖くなってきたな。

 

開けよう。いざっ!

 

……………………まじかあ。うわあ、まじかよ……。

 

外れだな。今の年代は1980年。この年代の出来事を俺は知らない。つまり、未来予測的なチートも出来ない。クソッ、結局転生チートなんて嘘っぱちじゃねえか(自業自得)

 

この赤い括りは18禁コーナーのあれということだ。あれがコンビニから無くなったのなんていつの話だよ。

そもそも前の時はこの時代よりももっと後に生まれたんだよな。

 

スマホも無いし、テレビも画質とかまだまだだろうなあ。いや、パソコンだけはなんとか買って2ちゃんねるでもやろう。そのぐらいなら出来るだろう。ひろゆきなんかとも話せるかもしれない。ニコニコで動画投稿なんかも良いな。

 

………………未来は遠いなあ。

 

 

***

 

「ちょっと!聞いてるんですか!?」

 

この年でこんな若い子から説教されると思わなかった………。結構恥ずかしいぞこれ。俺は今孤児院の職員から説教を受けていた。

コンビニでの情報収集の後は無事に孤児院にたどり着いた。しかし門限はバリバリ過ぎていた。正直これで怒られない方がおかしい。

それに俺は門限破りの常習犯。いつもよりは早く戻ってこれたものの説教は長く続いていた。

 

「はい、すいませんでした……」

 

「あら、今日は随分と素直なのね」

 

いやこれで素直て。たしかに素直だけども。佐藤どんな奴だったんだよ。もしかして思春期か中二病にでもなってたか。そうだったら相当恥ずかしいな。周りから生暖かい目で見られること間違いなし。流石に避けたいところだ。

 

「ま、今日は反省してるみたいだしこれで終わりにします。自分の部屋に戻って下さい」

 

「はい、ご迷惑をお掛けしました」

 

やっと終わった………。いや、久しぶりの説教は体に堪えるなあ。まあこの感覚も本当に久しぶりだ。この社会に戻ってこれた証だろう。それにしても、今までの態度とは明らかに変わってしまったが大丈夫だろうか?

 

記憶はあやふやだが、この体の態度と今の俺の態度は酷く乖離してしまっているように思う。まあ話す人が元々いないから大丈夫ではあるだろうが、職員みたいな大人とは会話が必要不可欠。少し気を付けた方が良いか?

いや、別に良くはなってるんだし悪いこともないか?けどなあ、気味が悪いと思われても面倒だし、やっぱ少し気にかけながらやるしかないな。

 

この体覚えてるところと覚えてないところがあってやりにいんだよな。折角なら日常的な知識ぐらい全部覚えていて欲しいんだがな。

 

取り敢えず記憶を頼りに自分の部屋と思われる所の前まで来たが、出来れば一人が良いなあ。相部屋はちょっと怖いしね。期待半分不安半分だな。

 

新しい日常にはガチャが付き物。部屋ガチャ、イッキマース!!(~ア●ロを添えて~)

 

ガチャ

 

「ちょっと!ノックぐら──────」

 

バタン

 

そういえば、俺は無課金なのに毎回天井だったなあ、なんて、嫌な記憶が蘇った。

 

 

***

 

結論から言うと相部屋だった。しかも女性との。正確には女児だが。面倒だ。とても面倒だ。というか何故異性との相部屋がありえるのだ。流石におかしいだろう。この年頃に少年少女ならば部屋は分けるのが当たり前では?

これが時代か…………。1900年代ともなればこういうことあり得てしまうのか。ふざけやがって。

 

「ねえ!」

 

「はい?」

 

「あんた話聞いてた?」

 

「ええ勿論」

 

そしてこの人が件のお方。名前は………分からないからA子さんで良いだろう。Aは俺の部屋の相手だ。

ショートに黒目のよくいる日本人タイプ。髪は若干茶色も混ざってるだろうか。時代が時代なら体罰の対象だろう。頭髪検査に引っ掛かって染めてくる羽目になるかもというあれだ。

 

「じゃあ私何て言ってた?」

 

「あー、えっと……な、何でこんなに帰りが遅かったのか。職員の方々を困らせるな。ですか?」

 

「聞いてたのね……」

 

分かりやすく眉を下げる少女。まあこの年の子なんてそんなもんだ。相手への失礼の無いように表情を操る、なんてしない。表情がコロコロ変わるのは面白いから良いけどね。

 

それにしてもこのコミュ障具合は何とかならんのかね。無理か。無理やな。フリーレン世界の時は人と関わるのは仕事が多かったから何とかなったんだけどなあ。

 

「まあ良いわ。それよりあんたこれからどうするの?」

 

「こ、これから?ですか?」

 

「まさか何も考えてないの?卒業した後どうするかぐらい考えておかないと不味いよ?」

 

成る程。将来についてってことね。確かにそれは大事だ。ここは日本だしな。将来の夢とか何一つないが、まあそんなのはいらない。取り敢えず生存出来る住居と食事だな。日本の法律にもある健康で文化的な最低限の生活を手に入れたい。

 

そのためには………ま、中卒でも問題は無い訳だ。

 

「ちなみに、もう決めたんですか?」

 

「私?私は高校に進もうって考えてる。基本はそうだよね」

 

それはもうこの時代からスタンダードなんやなあ。まあこの後日本は恐らくバブル期に入るからなあ。色々金回りも良くなるだろうし、正直その前までには自由に動ける金が欲しい。

 

別にそれで金稼ぎをする訳じゃないが、でも普通に働くだけでも色々と違う。銀行に金を預ければ次第によっては莫大な利益にもなる。金利が違うんだよ金利が。確かこの時期は3%ぐらいあるんだっけ?あー金が欲しくなってきた。圧倒的に足りねえな金がよ。

 

「で、分かってるけどあんたは?」

 

分かってる?ああ、同じ部屋の人間だし佐藤の将来とか知ってたのか。いや厄介だなあ。そんな記憶一切無いぞ。まあ仕方ないしそのままいくか。

 

「あー、ぼ、僕は働こうかと思います」

 

「ふーんまああんたなら、え?」

 

「え?」

 

何かヤバいこと言ったか?いやまあ中卒ってのは珍しいかもしれないが、まあそれでもそこまで変わらんやろ(鼻ホジ)

 

「あんた今働くって……」

 

「え、はい」

 

「………ちょっと待ってなさい」

 

スッと立ち上がって何処かへ向かったAさん。さようならAさん。もう二度と会うことは無いかもしれないが、あなたのことは忘れないよ。ちっ、戻ってきやがった。

 

「佐藤君大丈夫!?」

 

「は?え?」

 

何で職員さん連れてきたん?てか何でそんな焦っとるんよ。いやおかしいおかしい。どうしてこうなった。

 

「ど、どうしたんですか?」

 

「だって………佐藤君中学卒業したら働くって……」

 

「え?はい、そうしたいですけど……」

 

「どうしちゃったの!?」

 

どうしちゃったのはこっちのセリフやぞおい。え、マジで何で来たんこの人。

 

「いや働くことの何がおかしいんですか?」

 

「だって……ねえ?」

 

「佐藤が働くとかあり得ないでしょ」

 

Aさんは人のことを何だと思ってるんだ?てかこれ絶対佐藤のせいじゃん。めんどっ。マジでやりやがったなあ。うーん、でもどうしようかな。まあ少し変わったと思ってもらえれば良いか。

 

「僕は心を入れ換えたんですよ!」

 

「急にどうした?」

 

「兎に角、これからは働くことにしたんです!心機一転てやつです!」

 

「あんたねえ────」

 

てな感じで初日は終わった。とりあえずこれからの自分の道は示されたから楽っちゃ楽だな。新生活は楽しみだ。

 

 

***

 

 

「すいません行ってきます」

 

「え?ああ、行ってらっしゃい」

 

久しぶりの朝の住宅街に郷愁を覚えながら歩く。本当に戻ってきたという実感がおれの中で湧いてきた気がした。この朝の住宅街特有の空気感は人によって全く違う物となるだろう。小学生、中学生、高校生。これだけで全く異なった感情を抱く。俺のような転生者なら特に感慨深い訳だ。こういうどうでもいいことを考えながら登校できるのは学生の特権だな。

 

そうしてどうでも良いことを考えているといつの間にか学校へ付く訳だ。

 

少し早過ぎたかな。誰もいねえよ。閑散とした朝の校庭を通って靴箱があるだろう所へ向かう。良いねえ、自然に体が動く。もう体に染み着いてるんだろうな。へえ、ここが教室か。2-3か。俺は二年生だったのね。席は……前かよ、ハズレだな。

 

次は……教科書の確認だな。これは重要だ。

陰キャが授業で目立たないようにするには出来るだけ物事をそつなくこなすことが理想だ。変に失敗せず、変に成功しない。スッと終わらせて何も言わせない。それが理想なのだが……それは学力があるから出来るのであって今の俺には難しい。

 

ならそれ以外での失敗を無くしたい。例えば………単純なミス。忘れ物なんかは最悪だ。こういうのは笑われるからな。宿題が出てたならまあ謝るしかないが、他は対処出来る。少なくとも授業前の準備はスムーズに終わらせたい。だから教科書の確認だ。

 

これが理科で、これが数学、国語と、英語。そうか、物理とか数Aとか無いんだっけ?うーんこのギャップは怖いな。話の齟齬が生まれそうだ。話す人もいないか。まあ高校から中学に戻るとか普通あり得ないし何とかなるやろ。

 

ん?何だこれ。おっまさかこれ図書室の本か?つまり文庫本?うっひょー!目当ての物が出て参りましたー!あ、でもラノベじゃない………。殺すぞー!!まあ良いわ。しゃあないからこれ読もう。後で図書室探しに行こうかな。

 

***

 

 

「何笑ってんだてめえ!!」

 

「ひひっ」

 

はい、という訳で絶賛いじめられっ子の森田です。うっひょおーー!懐かしいー!!いやあ良いねこの感じ。全員が全員敵敵敵。回りを見渡して目にはいるのは悪意悪意悪意。懐かしすぎて吐き気すらしそうだ。

 

まあ、ぬるいことやってんのに変わりはないんだが。

つまらないよなあ。この程度だ。この程度のことしか出来てねえんだ。机に花瓶と遺影を置いて葬式気取り。後はパシりか暴力だけ。弁当隠したり画ビョウを置いたりはしてるが、これじゃちょっと弱すぎる。

 

あいつらならもっと陰湿にやる。あいつらならもっと姑息で狡猾で最悪だ。これじゃ人の心を折れやしない。張り合いが無い。

 

それに邪魔だ。本が読めない。折角なんだから俺は図書室に行きたいんだ。学校生活と言ったら陰キャは読書と相場が決まってんだ。こいつらはそれの邪魔をしている。全くもってつまらない。

 

それに、何だがムカついてきた。彼らはプラス側の人間だ。何故こんなことをされなければならない。いや勿論こんなことになったのには佐藤にも原因があるわけで、彼らが何もかも悪いわけじゃない。しかしやって良いことをしてるわけでもない。

 

いや、これにはもう結論は出てる筈だ。考えるだけ無駄だ。グダグダと何を昔に答えを出した物を考えてるんだ俺は。駄目だな、少し人の悪意から離れすぎたか。

 

取り敢えずは陰キャムーヴで乗り切ろう。

 

「すっ、すいませんっ」

 

「話しかけんなゴミ」

 

「キショイから近付くな」

 

よし、これでもう席へ戻って良いだろう。この学校図書室は何処にあるんだろうな?昼休みは学校探索でもしますかね。

 

 

***

 

 

「佐藤、これ分かるか」

 

「え、X=3と2です」

 

「正解だ」

 

うん、案外いけるもんやね。取り敢えず4時間受けているが感覚的には数学が一番楽だな。国語も教科書を最初から読むのはだるかったが何とかなる。しかし苦手なのは歴史とは。昔から変わらないなあ。社会科目はどうも苦手だ。どう学べば良いのか分からんね。

 

次は……ここか。それにしても汚いノートだなおい。まあ中学の頃の俺もこんなもんだった気はするが、これから直すしかないなこりゃ。

 

それにしてもこの学校は治安が良いね。授業中にふざけない学校とか俺の中では都市伝説だったんだけどな。まあネットでそういう治安が良いところもあるとは聞いてたが、実際体験するのが悪い方だけだったのが駄目だな。でも俺がついていけない程でも無い。学力が少し上がった程度なんだろう。

 

……………こんなことを考えるくらいには暇な授業だ。全く、魔法の研究でもしていた方が良い気がしてきた。頭の中でだけでも出来ることはあるからな。気が向いたらそうしよう。勉強は嫌いだからな。

 

……………暇だなあ。

 

 

 



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きっと俺は悪くない

なんか書けたのでいきます。感想ヨロシク


 

「なめんな!」

 

「すいません、もう少し静かに……」

 

「くそ!終わっとるやんけ………」

 

という訳で絶賛絶望中の森田です。

ラノベが無え!!ふざけんな!!やる気あんのか!?オオン!?

 

昼休みに図書室を見つけてウッキウキで入ってみたら何もねえの。ラノベ、何もねえの。嗚呼、俺の癒しはどこに……

 

時代的にまだラノベが出てないことを忘れてた。どうしようかな。本当に、どうしようかな………。

 

「あの、大丈夫ですか?」

 

「へ?」

 

何だこの人。いきなり人に話しかけてくるとか頭おかし、いやヤバいのは俺の方か。四つん這いで絶望感出してる奴がいたら邪魔だよな。常識が無いのは俺だったか。すまん、名も知らない誰か。

 

「だ、大丈夫、です」

 

「佐藤君、だよね?何かあったの?」

 

いや大丈夫って言ったやん。グイグイ来ないでー!怖いからー!

 

「いえ、何でも無いんです。それより、な、何で僕の名前を知ってるんですか?」

 

取り敢えず話を逸らさなければ。未来にあった本を探してるとか控えめに言って意味不明だからな。絶対に突っ込まれてはいけない。

 

「え、だってクラス同じだし……」

 

…………そっかあ。クラス同じかあ。因みに俺はあんたが誰か全く分からないよ。

 

「あー、えっと、すいません。僕あんまり人の名前と顔覚えられないんですよ……」

 

「もう10月なのに?」

 

「………………すいませんでした」

 

何で?何で俺謝っとるん?俺何も悪くないって。控えめに言って名前を覚えてない佐藤が悪いって。

 

「い、言い訳して良いですか?」

 

「………まあ、うん」

 

「じ、じ実は記憶喪失で」

 

「あり得ないわよね」

 

「すいませんでした」

 

謝罪だけは淀み無い。数少ない俺の美徳だな。

 

***

 

「じゃあ改めて自己紹介ね。私の名前は禅城葵。4月にもこの自己紹介したんだけどね」

 

ぜんじょう、ぜんじょうさんね。それにしてもすげえ髪の色してんな。それにめっちゃ美人。なんかめっちゃ緑がかった髪してんだけど。これ大丈夫?絶対検査引っ掛かるだろ。てか日本人なのか?それとも中学生で髪染めてるヤバい人なのか?若しくはこの世界が…………この考えは止めよう。こういうのは考えたら負けだ。

 

「えー、佐藤です」

 

「知ってるわ」

 

「…………」

 

いや気まずッ。特段話すことがある訳でもないからな。ここは………普通に話すしかないか。出来れば距離を取りたいけどなあ。出来れば男子と下ネタ話して盛り上がりたい所だったんだが。まあ先ずは知り合いを増やすところからか。

 

「えー、ぜ、禅城さんは何故図書室に?」

 

「本を見たいからだけど……」

 

「どど、どんな本が好きなんです?こ、答えにくかったら大丈夫デス………」

 

「うーん、ファンタジーな奴ね」

 

「ファンタジー……」

 

なんか的を得ない回答やな。つまりどういうこと?

 

「ええ、こう、何て言うのかしら。神秘的な物が好きなのよ」

 

「へぇ、良いですね。とても綺麗じゃないですか」

 

なるほど。そういうのが基本的に好きなのか。俺も好きなんだよなそういうの。魔法とか好きそうやねこの人。

 

「貴方は?」

 

「あー、えーと、人には言えないような奴ですね」

 

実際ラノベが好きってのは人によっては憚れる物だ。そうじゃない人に対しては失礼に当たるのだろうが、俺は基本的に自分の本の好みは隠してしまう。否定されたくないからね。言う必要も無いし。

 

「何それっ、変ね」

 

うわー美人。そういう笑顔されたら世の男子はキツいだろうな。この人魔性の女とか言われてそう。

 

「じ、じゃあ僕はこの辺で」

 

「え?何処か行くの?」

 

「目当ての本も無かったので。教室に戻ろうと思います」

 

「そう、じゃあまた後でね」

 

「はい、後で」

 

扉を開けて図書館から出る。一気に廊下の喧騒がぶつかってきた。

 

「若いなあ……」

 

少しだけ年齢差を感じつつ廊下を歩いていく。ああ、ひそひそ声が聞こえてくる。十中八九どころか聞こえてるよ。やっぱり佐藤は嫌われものらしい。というよりは避けられてるんだろうな。ぜんじょうさんとも距離を置いた方が良いねこりゃ。

 

あん?キツくないのかって?

最初の人生の時に慣れた。2ちゃんねるとかの人達とかと同じだ。イジメやら何やらはいずれ慣れる。最終的にそれが日常になって現状に疑問も抱かなくなる。

人生のイジメを受けた年月が受けてない年月より多くなったら、誰だってこうなるのだろう。二度と取り返しのつかない心の歪みだ。別段悲しいことでも無いけどね。普通の人生を送ってたらこんなの当たり前に思わなきゃいけないんだろうしさ。

 

あんたらから聞かれた気がするから答えたけど、別に聞かれてないような気がしてきたわ。はずっ、俺只の痛い奴やんけ。こういうの控えないとなあ。

 

あ、折角ならてきとうな本でも漁ってくれば良かった。

 

***

 

「「「ありがとうございました」」」

 

 

「はぁ………やっと終わった」

 

ああー疲れたー。いやあ慣れないことをやると体がおかしくなるというか、精神がどっと疲れるよね。

 

さて、これからは放課後な訳だが、まあやることが有るわけもなく、何もする事はない。いやあ、何も無いね。どうしようかな。別に部活には入って無いだろうしねえ………。帰るのが安定定期。俺の脳内CPUがそう言っている!

 

「佐藤ちょっと」

 

「終わったぁ……」

 

「お前先生に向かって何だその態度は」

 

「あっ、つい、すいません」

 

話かけてきたのは担任のこだか先生(覚えなくて良い)よくいる男性教師だ。それ以上でもそれ以下でも無い。名前はクラスメイトの話を盗み聞いた。陰キャの情報なんてこんなもんでしかない。

 

「全く、まあ良い。それで話なんだが、お前体育祭のリレーに二回走ってくれないか?」

 

「正気ですか?」

 

「いや、すまん頼まれてくれないか?」

 

「いや何故です?まず理由を聞かないと何とも言えないんですが」

 

「そうだな。確かにその通りだな。実は多田が足を痛めてな。あいつは成績の良い選手なのは知ってるだろう?贔屓するようで悪いんだがな」

 

ああー、大人の事情やなあ。色々ごちゃごちゃしとるんやろなあ。生徒を平等に扱いたいんだろうけど、これで足を痛めさせたら色々言われてしまうと。二回走らせる人も慎重に決めたい訳だ。

それで嫌われ者の俺の出番か。生徒間の不和にもなりかねないしな。こういうのはうら若き少年少女にとっては刺激あるイベントだし。

 

「たださんがですか?(全く知らない)分かりました。やってみます」

 

只それで生徒を利用したこのクソ教師は許さんが。子供を嫌われてるって認知しといてそれを利用するとかクソ野郎でしかない。ま、俺でもそうするから今回は折れてやるか。

 

「ああ、すまんな」

 

面倒の多い話だが、頭の片隅には置いておこう。しかし体育祭って何時やるんだ?え、一週間後?いやどうしてくれんのこれ(呆れ)

 

 

***

 

 

「~~~~」

 

 

さてさてどうしようかねえ。

 

深夜、一人の時間が欲しくなった俺は孤児院を抜け出して散歩していた。なに、隠蔽は完璧だ。今更俺はそんなミスはしない。

 

綺麗な月の下、歌を歌いながら考えごとをしていた。

 

内容はこれからの自分の生活についてだ。思ってもみないところで弊害が出ている。しかし人間関係が上手くいかない。やはり今までの記憶が無いのが一番の問題だな。解決のしようがないってのが面倒でもある。

 

体育祭もそうなんだよな。別に早く走ることは出来る。本気を出せば今の世界記録なんてぶっち切れるだろう。しかしそれをやるわけにもいかない。こればっかりは正解が無いような気もする。

 

成る程、新生活ってのは面倒なことが多いな。まあ懐かしいしこのだるさは幸せの証でもあるけど。

 

「あん?」

 

おかしい。何だこれは。血の匂い?この世界で?嗅ぎ慣れたこの匂いは流石に間違えない筈だ。………………警戒が必要か?事件?それ以外にあり得ないな。全く、何で転生して早々こんなのが起こるんだ………。

 

…………あっちだな。魔法もいらん。死臭がする。もう手遅れだぞこれは。どうなっているのやら……。

 

 

ここは、成る程、深夜の公園とは随分とお誂え向きだな。広そうだが………あれか。

 

人がうずくまっているように見えるが………………!?

 

人を、食っている!?

ゾンビ?いや違う!なんだあれは!ここは日本だぞ!いやいやいや現実的に考えておかしいだろう!

これは、どういう………。

 

「………ちっ」

 

気づかれたな。いや、他にも何体かいるな?

 

調査は……いらんな。関わりたくない。先手必勝だ。

 

「!へえ、早いのは良いことだぜ、ほんとに」

 

上と正面、後方で手を出さないのが一人。合計三名。出鼻は挫かれたが、この体でもいけるな。

外見は人間。武器は、無しか。スピードはそこそこ。人間じゃないなこりゃ。しっかし、弱いな。魔族と比べても何もかもが足りない。技術が伴わなきゃゴミも同然の攻撃だな。

 

正面のは蹴り飛ばして、上はあと一手遅い。掴んで対処出来る。そのままそこら辺に投げ飛ばせば良い。トドメだ。

 

「後ろの、もう遅えぞ」

 

一般攻撃魔法(ゾルトラーク)

 

幾重もの光が殺到し、食い潰す。その圧倒的な殺人性能は攻撃特化に極振りしてるとしか思えない。

 

討伐完了だな。というか、何であんなのがいるんだよ。人型の人を襲う化け物?それで片付けて良いのか?あれが当たり前なのか?何かが狂っているとしか思えない。

おいおい……この世界、どうなっている?

 

 

 




というわけで遂に色々登場です。待たせてスミマセン。今回の世界はフェイトとか月姫とか設定ごちゃごちゃで行こうかと。まあこれから月姫設定出す気は無いんですけどね。


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