東方幻想妖 (犠牲者)
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旧時代編
第一話:えーと……私はなんだ?


再スタート、もしかしたらいろいろ変わっているかもしれません。


――――――――――――――――私は誰?

 

 

分かっているのは自分が『元』人間だということ。じゃあ今は何かって?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

多分人間でいうところの妖怪だろう。

私は生まれてすぐに捨てられた。理由は多分この紅い目だと思う。他の人間とは違うから捨てられたのだろう。もちろん最初から妖怪だったわけではない。その兆候は多分私が生きるために妖怪を食らい始めてからだと思う。きっかけは単純だ。妖怪に襲われ逃げたところで崖っぷちに追い込まれ妖怪が突進、反射的に避けたら妖怪が崖から落ちて転落……そのまま死んだのだ。そしてその近くへと寄った。その時の私はひどく餓えていてその妖怪の肉が何よりも美味しそうに見えた。そして火を点ける技術も持っていた、私は人間の理性と必死に闘ったがやはり生存本能には敵わずその肉を焼いて食った。

 

 

 

それから数十…いや百年くらい経っていたのかもしれない。

その日に私は自分が人外だということに気づいた。不意に気付いたのだ、自分は今いくつなんだろう?と…そこで私は澄んだ湖に自分の顔を映した時愕然とした。最後に自分の顔をまじまじと見たときから数年しか経っていないとしても変わっていないのだ。しかも身体能力は未だに衰えるどころかまだまだ成長している。確かにあの時以降、罠を張って妖怪を仕留めその肉を食ってはいたがいつかは死ぬと思っていた。少なからず人間と同じ寿命で死ぬと思っていた。

 

 

そしてそれに呆然としているときだ、突如後ろから現れた腕が4本生えた熊のような妖怪に後ろから引き裂かれたのだ。

 

「あう……」

 

ガアアアアアア!!

 

熊妖怪は雄叫びをあげながら私に近づいてくる。私は人間よりは力があるがそれだけだ。

妖怪視点で見れば私の力は並以下だ。だからこそ罠を張って妖怪をとらえていたのだ。

ここまでと思った時だ。

 

 

ザシュ!!

 

 

最初は自分が引き裂かれた音だと思った。

が、いつまでたっても痛みは来ない……恐る恐る目を開くと私を襲った妖怪の脇腹に黒い腕のようなものが刺さっていた。

そしてその出所を見てみるとなんと自分の肩から出ているではないか!

しかも自分の意思とは関係なく動いている。

熊妖怪はそのまま絶命。そしてそれを確認すると黒い腕も私の中に戻って行った。

 

そして、そこからさらに300年経った。

 

どうやら妖怪の血と肉を食い続けていたら、傷は癒えたが自分が妖怪になっていたらしい。それに伴ってか能力も出てきた。

『原初を操る程度の能力』これが私の能力の名だ。

簡単に言うと、あらゆるものを具現、行使することのできる能力だ。例えば剣が欲しいと思えば剣を作ることもできる。竜巻を起こしたいと願えば竜巻がおこせるというものだ。そして私を守ってくれた黒い腕は今まで食った妖怪の腕だ。いろいろ混ざって結構すごいことになっていたが………話を戻そう…この能力にはもちろん制限はある……あるのだが妖怪を食っていくうちに制限がなくなってきた。このまま食い続ければおそらく制限がなくなるだろう。だって前、隣の山の妖怪達がリンチしに来たとき、人間にはばれないように光線出せないかなぁって思ったら極太の光線が出た。あの時は驚いた、しかも人間たちにはばれていなかったし。

だが、それなら『あらゆるものを具現する程度の能力』もしくは『具現を操る程度の能力』ではないのか?と思うだろう。答えはノーだ。なぜなら、能力を具現できない。つまり『○○する程度の能力』が創れないし具現できない。要は不確定すぎる要素を具現できないのだ。腕力や情報は見えなくとも実際に『ある』ので具現(この場合は知るもしくは付与するだが)できるが、能力なんて『どの能力がどういう条件下で発言するのか?』その法則がどういうのか全く分からないのだから。こればかりはおそらく食い続けても不可能だ。一向にその兆候が出ないのも一因している。

なら『原子もしくは分子または粒子を操る程度の能力』では?これもノーだ。だって原子や分子の情報は具現できたし、なにより原子や分子、粒子を『具現』できた。あの光線がいい例だ。(最も私なりに改造した摩改造光線だが………)さらにこの能力でどうやってあんな生きた黒い獣の腕を出せるのか説明がつかない。

そして結果として原子すら創れるのなら一番最初……つまり原初を操れるのではないかということになる。それなら風を起こすことも、都合通りに光線を出せるのも腕が出せるのも説明がつく。そのほうが妙にしっくりくるので一応『原初を操る程度の能力』と名付けている。

この能力に目覚めてから自分の環境が劇的に変わった。まず単純に力…腕力や脚力といった膂力が付いた。次に自分の住んでいた山での食物連鎖の頂点が私になった。因みに人間は食っていない。やはりこれは自分が元人間だったからかあまり食べたいとも思わない。それに面倒事が起きても嫌だから基本人間とは関わらないようにしている。

そして空腹感以外の問題もあった。空腹なんて我慢すればいいだけである。無い袖は振れないというやつである。しかし一番困るのがこの近くにある集落の人間たちが私を守り神として私を祭っていることだ。まあこの近くの妖怪や村を襲うためにここを通りかかった妖怪を食い物にしているせいであの集落には妖怪関連の被害がほぼ皆無だ。そしてある日、私が妖怪を狩っている姿を目撃されてしまい今に至るというわけだ。なので、思い切って人間と接触しある約束をした。それは『妖怪は自分にとって需要があるから退治するが人間の厄介事には付き合わないし干渉しない』というものである。まあ、ある種の共存というやつである。

 

こうして私は今現在に至るというわけである。

 



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第二話:なんか強いの来た

あれからさらに数百年たった。

 

とりあえず今更ながら家を建てた。別に困っていたわけではないが、ある日山から少し離れたところになんか石碑とお供え物があり『守り神様へ』と書かれていた。自分は食いたいときに狩りをしていたし寝床も洞窟の中だったので家はいらなかったが、お供え物を保存するために仕方なしに家を建てた。だって美味いんだもんお供え物。果物とか甘くてよかったね。

まあ特筆すべきことはないよ。酒虫を大量に手に入れただけで。あ、酒虫というのは水を入れた容器に入れることで水を酒にしてくれる虫のことだよ。

え?人間と関わりもって何も感じないのかって?だってあれから何年経っていると思っているの?その時の人間もう死んでいるよ?なのに、その子孫やらなんやらにいちいちイチャモンつけていたら身が持たないよ。まあ最初は不快感あったけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてある日のこと……

 

「たのもー」

「ん?」

 

外に出てみるとなんか頭から一本の角の生えた妖怪がいた。

 

「何か用で?」

「この地域で人間を守りながら妖怪を食らうものすごく強い変わった妖怪がいると聞いてな。」

 

あ~噂を聞きつけてわざわざこんな田舎に来たのか。

 

「それは遠路はるばる……」

「単刀直入に言う………我と戦え」

「…………なぜ?その角からしてあなたは鬼真でしょ?鬼真はここら一帯の妖怪の中でも最強クラス……それが私のような存在と戦う必要はないでしょ。」

 

私は素直にそう思った。なんせ鬼真はその圧倒的な腕力であまたの妖怪や人間を葬ってきているという噂が絶えないのだ。

 

「確かにそうかもしれんが噂ではおまえは普通の妖怪にはない底知れぬ力があるといわれている戦闘狂の我としては実に興味深い。言っとくが我は承諾するまでここを離れんぞ?」

 

なんてはた迷惑な鬼真なんだ!

別に私はこのままでもいいが流石にこんなごつい妖怪がここにいても鬱陶しいだけだ。

 

「わかった……ただ場所を移させてもらうよ。ここじゃあ私のすみかが被害にあう。なんで相手は『あの』鬼真だからね」

「よかろう……それでお主の全力が見れるならたやすい。」

 

 

 

 

 

少女&鬼真移動中

 

 

 

 

 

「さて………いつでもいいよ」

「ならさっそく」

 

その瞬間鬼真が一瞬で私の懐にまで肉薄してきた。

そしてそこから繰り出されるパンチを私はギリギリで避けた。

 

「………噂以上だね。まさかスピードまであるとは」

 

これは純粋に驚いた。風の噂ではものすごい力で蹂躙するとしか言われていないのだから。

 

「我もだ、初見でこの一撃を躱したのはお前が初めてだ。」

「それは光栄ね。じゃあ次はこっちからいくよ!」

 

そういって、私は地面を踏みつけ衝撃波を生み出す。それは一直線に鬼真に向かっていく

 

「甘いな」

 

そういって衝撃波を飛んで躱す。しかしそんなの想定内だ。

 

「かかったね。」

「!?」

 

私はそこから一対の羽をだし。鬼真が避けるであろう場所を予測し待ち構えたのだ。そして肩から鋭いかぎ爪をもつ黒い腕で鬼人を引き裂いた。

 

 

 

ザシュ!

 

 

 

「へぇ~受ける瞬間に防御じゃなく身をひねって致命傷を回避するなんて……やるじゃん」

「………はぁ…はぁ、お前も。相当頭が切れるじゃないか。あんな芸当は鬼人には無理だ。……それにその力も見たことがない。……噂通りだ。」

「で?どうする……まだやるの?」

「………やめておく。今の我では勝てそうにない。」

「そう………じゃあついてきなさい。治療してあげる」

「……どういうつもりだ?」

「そのままの意味だよ。今私たちはただ『遊んだ』だけ。『殺し合い』じゃないわ。」

「なぜそう思う?」

「でなければ、鬼真が簡単に勝負を捨てるなんてありえないもの。第一、殺気がなかったからね。」

「本音は?」

「話の分かる妖怪と一回話したかった。ここらの妖怪、私みたいに知能が高くなくてね。あなたみたいに話のできる妖怪と話したかった。」

「ふふ」

「?」

「フハハハハハハ!!!話せるから襲った妖怪を救うか!それも鬼真を!!しかも遊びとはな…気に入った!!!よかろう!手当てを受けよう!!」

「なんで偉そうなのよ!!」

 

ゴン!

 

「イテ!何をする!」

「さっさと来なさい!」

 

こうして私は鬼真と出会った。

 



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第三話:亀裂

「じゃあなんだ?お前は人間に捨てられ食い物に困ったから妖怪食ったら妖怪になったのか。ハッハッハ!!コイツは傑作だ!!!」

 

酒飲んで過去話したら意気投合しちゃったよ。妖怪の中じゃ人間に似た姿を持つ妖怪はあまりいないからね。蜘蛛みたいなのや、腕が何本もある妖怪やら人間とは程遠いわけだし。むしろ私や鬼真のような人間に近い妖怪の方が珍しい。なんでも鬼真達の力の源は身体もそうだがもう一つの要因として大地からの力を少し借りているかららしい。そんなことできる種族などほとんどいない私も無理だ。……鬼真KOEEEEE

 

「でしょう?やっぱ話し相手いるといいわね。そうだ!これ飲む?いい気分になれるよ」

「ん?こりゃ酒虫じゃないか!!」

「知っているのか鬼真!?」

「ああ聞いたことがある……じゃなくて…こいつは鬼真の中じゃ必須生命体だぞ!」

 

アル中というやつですね。わかります。て言うかノリいいなこの鬼真。

 

「へえー、よかったら採っていく?近くに巣があるから」

「なん……だと?」

 

その言葉に衝撃を受けたかのように鬼真は固まった。

 

「………決めた」

「ん?」

「ここを拠点にしよう」

「酒虫ですねわかります」

「それもあるが、お前といると楽しい。他の奴より張合いもあるし酒虫もあるし食料も豊富だし酒虫もあるし」

「酒虫ばっかじゃん!……でもそれなら条件が………わかっているよね?」

「ああ、わかっている。向こうから何かしてこない限りは……だろ?」

「ならよし!」

 

こうして鬼真が居候することになった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

200年後

そしてある日のこと

 

私はいつも通り集落からのお供え物をもらおうと山を下りた時である。

 

「なにこれ……」

 

そこにお供え物はなかった。別にそれで怒るわけではないが、普段はあったものがないのだ。流石に不審に思う。

集落の方を見ると集落の方から煙が上っている。最初は祭りでもしているのかと思ったが違う。

そこで私は能力で視力を極限まで上げ集落を見た。

 

「ふーん、そういう事か……なら仕方ないね。私は干渉できないし」

 

見てみたら人間同士が縄張り争いしていたのだ。これは人間同士のいざこざ……私が出る幕じゃない。

 

「はあ~お供え物もこれまでか~まあ結構持った方かな?」

 

予想だと100年前には廃れてこんなことしないだろうとか思っていたし

 

 

実は人間側の方で彼女のことが噂になっていたのは秘密である。

 

「鬼真……お供え物無くちゃった」

「そうか……残念だが仕方ないな。」

 

事情を話すと鬼真もがっかりしていた。しかし私はこれからのことを考えていた。

 

「これから気を付けたほうがいいかもね」

「ん?なぜだ?」

「ここへ移住してくる人間が襲い掛かってくる可能性がある」

「人間なぞただの矮小な生き物だろう?我々の敵ではない」

「人間を侮ったらいけないよ。元人間だった私だからわかる……彼等の知恵と共通の敵を持った時の団結力は恐ろしい」

「お前がそう言うなら気を付けよう」

 

そして三日後

 

ねえ一つ言っていい?

 

 

 

 

 

なんだコレ?

 

 

 

 

 

今私には見たことのない光景が広がっています。なんせものすごい高い建物が家からでも見れるし。あれ?昨日まであんな建物無かったよ?しかも発展速度おかしいだろ!昨日まで確かあそこ焼け野原だったんだよ。ありえん(驚

 

「ん?」

 

よく見るとあの集落から武装した人間がこっちへ向かってきている。私達を退治しようというわけか………いま鬼真は酒虫を盟友とやらに渡すために里帰りしているみたいだし。私一人で相手をするのか………めんどくさいな…

 

とりあえずここに来るためには避けては通れない開けた場所があるのでそこへ向かった。

 

「人間が何の用?」

「お前があの村に住んでいた者達が言っていた守り神か」

「そんなたいそうなものじゃないわ。ただ単に人間でいうなら互いに領土を侵略しないという約束を結んでいただけ……で?そんな物騒なものを持ってきて何しに来たの?」

「ここら一帯を調べてみた結果、此処には未知の鉱石や他の場所では貴重な資源が大量に眠っているのでなお前たちにはもったいない。我々人間が使ってやろうというわけだ。」

 

何言っているんだ?ここは私を含め様々な生き物たちが分け合って生きている場所だ。故にここは誰のものでもない……みんなのものだ。独占していいところではない。人間だって強ければここの資源をとっていってもよかった。前の集落の人間だってこの山の奥深くには入らなかったものの麓あたりに山菜や野草は採っていた。妖怪達だって好き好んで人間を食べていたわけでもない。そこら辺にある木の実で事足りる妖怪もいれば、私のように妖怪を食らう存在だっている。鬼真……というより他の強い妖怪にしたって飢餓状態でもなければ自分から人間を襲うなんてこともしない。強い妖怪のほうがうまいし糧になるからだ。事実人間が入らなかったのだってあの約束に例外がありそれは『あの山に入っている人間に対して自分は何もしない』というものだ。だから人間も山の深くには入らなかったのだ。入れば自分たちが食われてしまうことを知っていたから。

 

「そうえば、他の妖怪たちは?」

「邪魔だからな、駆除させてもらった。」

 

なるほど、ここら一帯の妖怪はそれなりに強い。なんせ妖怪の中での弱肉強食を生き抜いてきた猛者だ。人間が主食の中途半端な妖怪はほとんどいない。それと対等に戦えるのなら強気でいられるのもわかる。

 

……しかしこのままこいつらを放っておけば自分たちの餌場を蹂躙されるだろうそれだけは阻止せねばならぬしなにより

 

 

 

 

 

 

 

…………こいつらの態度が気に入らない

 

 

 

 

 

 

 

自分たちを選ばれた種族か何かと勘違いしている。

この見下した態度は自分に勝る者はいないと思っているがための態度だ。子供ならいいのだが大の大人がとるべき態度ではない。少なからず本物の強者というものは対峙した瞬間に相手の強さはある程度わかるものだ。妖怪だって自分より強いものと出くわしたならすぐに逃げるか鬼真のような種族の持つ戦闘狂性の二つに分かれる。

だからおしえてやろう。本当の強さを、自分たちが妖怪と戦えるのはその『道具』のおかげなのだということを、自分たちの存在をもう一度認識させたうえで殺してやる。

 

「悪いけどお前たちをここから先へ通すわけにはいかない」

「妖怪風情が人間様に何を言っている?別に貴様に許可して入るいわれはない。なに、前の人間どもには『守り神』とかなにかと言われていたようだが所詮は妖怪……我々の敵ではない!」

「そう……なら仕方ないわ…じゃあ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

教育してあげる本当の妖怪の戦いを

 

 

 

 

 

 

 

その後の人間たちの行方を知る者はだれもおらず、帰ってくる者もいなかった。

 

 

そしてこれが人間と妖怪が決別する……決定的な瞬間であったということを今の私が知る由もなかった…

 



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第四話:これ完璧に決別してるよね?

なんか入れなかったので遅れました。すいません


あれからというもの人間はひっきりなしに攻め込んできた。まあ鬼人の助けもあってすぐに殲滅させるが………そして数か月経ったある日…

 

 

 

「にしても…」

「ああ、」

「「これはひどい」」

 

 

 

いま目の前にあるのは焼死体や串刺しの死体や原型のない死体などたくさんある。彼らは人間に襲われた妖怪達のなれの果てだ。といってもこの妖怪たちのほとんどは人間には害意はない存在……なぜここにいるかというとこいつらの仲間の一人が私たちのところにやってきて「我々を食ってくれ」と一言言ってきたのだ。そいつはそれを言ってここへ道案内をして絶命したが私はその一言ですべてを理解した。この時代の妖怪は死ぬときはたいてい誰かの糧になることを望む傾向がある。要はそのまま死ぬのが嫌いなのだ。私も最初はよくわからなかったが今ではよくわかる。自分が培ってきた力を終わらせたくないのだ。我々妖怪は繁殖機能が低い……そのかわり何かを食っていけばそれこそほぼ無限に生きてゆける存在だ。これは私個人の『能力』ではなく妖怪という種族そのものが持つ『機能』だ。故に繁殖する必要性はほぼ皆無そのかわり食う食われることを至高とする生命体なのだ。故に強い妖怪を食らえばソイツの力を得る輩もいれば能力が強くなるもしくは進化することもある。だからこそこういう死に方を嫌う。強い妖怪が人間を襲わない理由はここに起因している。私の場合はこれが特に顕著だ。私は元々人間だから人間の特性を兼ね備えているしよく知っている。なので、人間を食おうとしない。

 

 

 

「さて……食うのは当然としてどうするのだ?」

「無難に半分ずつ分けて食べるのが一番じゃない?」

「そうだな、しかし人間の奴め……」

「今怒っても仕方がないよ…人間の持つ『アレ』はなかなかに厄介だから」

「わかっている……」

「もし私たち妖怪が勝つには食いまくって力を蓄えるかそれとも……」

「それとも?」

「妖怪達で団結するしかないね。」

「団結………か」

「やっぱり嫌だよね」

「いやそうではない…………なるほど団結か……」

 

 

 

私は疑問に思ったがとりあえずこの死体を食うことにした。

死体は私たちが美味しくいただきました。

 

 

 

「さて………唐突だけどさ…」

「なんだ?」

「ちょっと下へ降りてくる」

「な!?……お前正気か?」

「正気だよ~」

「以前あそこに攻め入った奴らみんな死んでるんだぞ」

「大丈夫、私は元人間よ。加えてこの容姿ならそう簡単にはばれない。あの集落からここへ来た人間は一人残らず潰しているわけだから顔も知られてないし」

「……お前がどうしても行くなら我は止めぬが…」

「ありがと、じゃあ言ってくる。」

 

 

 

 

 

元人間移動中…

 

 

 

 

 

「到着!!じゃあ早速情報収集と行こう!」

 

 

旅人ということで自分を偽ってわかったこと。

 

 

この集落は予想以上に大きく、さらに「名家」という支配者層が存在する。ここでの「名家」はただの伝統ある家系というだけでなく、各技術の専門的な側面も持っていた。

やはり開発された銃火器、服飾、建築、医療のどれかを得意とする名家がある。そしてそのなかに近年『天才』もしくは『神童』と呼ばれる子が生まれその子の知恵によって短期間でここまで発展したらしい。…………………天才マジパネェ

にしても支配層ね……ここに来てから思ったのだが、いや別にいいんだけどさ…ここの人間はどうしてなにかと上下関係を決めようとするのかね。強い弱いだけならいいけど、偉い偉くないだ金やらなんやら……私も元人間だがこれがいまいちよくわからない(もうこの時点でかなり妖怪側ね……私。)。そんなものに意味はないのに…最後にものをいうのは純粋な力だ。力と言っても様々だが……必要とするのは腕力や知力そして妖力のようなもので十分だ。能力なしでも不意を討てば倒せるし純粋な腕力で殴り倒すこともできる。それ以外の権力や金力なんて実際には意味はない。同族の人間には通じても私たち妖怪には通じないのだから。

 

「しかし案外、大したことないわね人間も、この程度の擬態も見抜けないだなんて…………しかし問題は…」

 

この国の上層部は今、最高戦力を用いて私の住む山とその近辺に総攻撃を仕掛けようとしているらしい。

 

(これは帰って鬼真達と対策を練る必要があるわね……いくら個人が強くても数で押し切られてしまいかねない。…………にしてもうすうす感じてはいたけどまさかここまで溝があるとはね…前まではそんなことはなかったのに…住みにくい土地になったものね。)

 

 

 

 

人妖問題。

困った事に人と妖怪の不仲は、突如訪れた別の人間がここに移り住んでからたった数週間で、不倫が見つかった夫婦間の問題くらいにドロドロの関係になっていた。

特に最近は私達が住む妖山(人間命名)以外のところにある妖地(人間(ry)も伐採が進み、住家を追われて街に出た小妖怪が撃ち殺される事件が多発していた。

なので、私たちも最近はあの約束はもう反故になっていた。あんな手の平返したように高圧的な態度をとる人間なんて守る必要性なんてない。

 

「さて………と、じゃあある程度情報も集まったし長居は無用か……」

 

不意に角を曲がったところで何かとぶつかった。

 

「きゃあ!?」

「わ!?」

 

私はちょっと体制が崩れたがまあそれだけで目の前を見てみると銀髪で三つ編みの少女が倒れていた。

普通なら無視するがここは人間の集落……そういう態度をとったら不信がられる。なので、声をかけた

 

「君……大丈夫?」

「いたた……だ、大丈夫…あなたは?」

「私も大丈夫」

「そう、ならよかった……」

「立てる?」

 

子ども扱いされたことにムカついたのか、ぷうと頬を膨らませていた

 

「立てるわよ。馬鹿にしないでちょうだい!」

「そ、そう(かわいいわねこの子)じゃあね、今度からちゃんと前見て歩くのよ」

「あ、待って」

「ん?」

「あの……よかったら私の家でお茶でも…」

「私もあいにくと忙しいのよ。子供の相手なんかしてられないわ」

 

子ども扱いされたのが気に入らないのか、また頬を膨らませている。

 

「むぅ~~、じゃあせめて名前だけでも………」

 

とここで数人の男たちが少女の元へ来た

 

「永琳様……そろそろ会議のお時間です」

「……そう………あれ?」

「どうかなさいましたか?」

「いやさっきまでそこに人が……」

「はて……そんなのはいませんが…それよりも…」

「分かっているわよ(それにしてもはじめてね。私を子ども扱いしてくれたのは柄にもなく怒ちゃった……大抵の人間は私を人として見てくれないし、ただの頭脳としてしか見てくれない…………)」

 

永琳は名残惜しそうに後ろを見ながら去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふう……危ない危ない。

あのまま彼女の家に拉致られていたら、私が妖怪だとバレていたかもしれないわね。

それにしてもさっきの黒服の言葉を聞くあたり彼女が『神童』とか呼ばれている『八意永琳』ね。見た感じ只の子供みたいだったけど。あんな子供に頼り切っていて恥ずかしいとか何か思わないのだろうか?少なくともあそこまで高圧的な態度をとる人間なら黙っていないと思うのだが……そういえば私、名前無いわね。まあ困らないけど。私たち妖怪に種族名はあれど、個体名なんてないし必要ないし、「お前」や「おい」で通じてしまうからね。(笑

 

 

 

 



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第五話:さわらぬ神に祟りなしとはこのことだと思う……神じゃないけど

集落を訪れてから2日後……私たちはいつもと変わらぬ日常を謳歌していた。狩りをしたり鬼真と飲み会したり散歩したり鬼真と闘争したりと………

そして今日も狩りをしようとした時だ

 

 

 

「なんだコレ?」

 

 

 

今私たちの目の前には大量の妖怪達がいる。

ちょっと困惑したがとりあえず聞いてみることに

 

 

「何があったの?」

 

 

そこに代表格の見た目は少女の紅い長髪の妖怪が前に出た。

 

「実は……」

 

 

 

話を聞く限り人妖の対立は決定的なものになっていた。人間たちがついに妖怪の駆逐を始めたのだ。

人間は強力な重火器で妖怪を駆逐し始め、私と鬼真の妖山とその周辺、あとは数匹の大妖怪が守る猫の額ほどの土地以外に妖怪が定住できる場所は無くなっていた。そこで未だ唯一広大な土地を持つ私のところへ平和的に移住しようと考えここに来たらしい。

 

「お願いします!どうか私たちをここへ住まわせてください!」

「構わないわ。」

「本当ですか?」

「ただし条件がある」

「なんでしょうか?」

「このままではジリ貧……私たちは人間によって駆逐されてしまう。だから私に策があるから手伝ってほしい………ちょうど妖怪の手が欲しかったし。」

「それはつまり……」

「成功するかはわからないけど私たち妖怪の土地を取り戻しましょ。」

「!?……は、はい!」

 

 

これは事実だ。襲ってくる人間を駆除しても再び攻められてしまう。数では繁殖機能の高い人間が圧倒的に多いのだ。ならば攻めることで自分たちの領土くらいは取り戻さなければならない。

 

 

 

 

 

私たち妖怪も団結する時が来たのだ。

 

 

 

 

 

「だけどまずはいろいろと役割分担しないとね……貴方は?」

「私はクトゥアです。」

「そう私のことは………とりあえず「零」と呼んで頂戴」

「はい!」

「それにしてもクトゥアか……あなたほどの大妖怪までやられたの?」

 

クトゥアと言えばここから南にある火山地帯に生息する『熱と炎を支配する程度の能力』をもつ炎の大妖怪だ。そこが人間の実力でやられたというなら容認できない事態である。

 

「大妖怪とはいえ、私一人では限界がありますし他の妖怪達も……」

「なるほどね……じゃあ今どれだけの妖怪がいるかわかる?」

「ざっと見積もって1500は……」

「ずいぶん多いわね」

「何か嫌な予感がしたので、すぐに逃げられるようにしていたので……」

 

なるほど、勘がよく統制能力まであるとはこの妖怪はなかなかに重要となるカギとなる。

 

「じゃあまずはこの山の周囲の見張りを……それから山の周囲に穴掘って人間が通りにくくするわよ。分担は貴方に任すわ。あなたのほうがその子たちのことわかっているだろうし……鬼真!」

「なんだ?」

「今すぐ此処の妖怪達を集めなさい!これは私たちの生存をかけた戦いになる!!戦力はあるだけあったほうがいいわ!」

「承知した」

 

こうして山に住まう妖怪たち全員が一同に集った。

彼らも人間たちの行いに苦虫を食っていたことと鬼真が前から根回ししていたらしくすぐに集まってくれ、元人間である私の言うことも聞いてくれた。なんでも彼ら曰く「元人間であるアンタだからこそ人間のことを良く知るアンタの知恵が欲しい」とのことだ。これが妖怪の総意だ。

そして私は人間の集落へ赴き諜報活動を行い彼らがこの地へ攻めてくる時期も大体把握した。もとより人間との交渉なんて期待していない。よしんば上手くいっても、またいつか同じことが起こるだろう。人間の欲望は果てしない。

 

「人間たちは今から7回太陽が昇る日に攻めてくるらしい」

「本当ですか?」

 

その朗報にクトゥアたち全員が喜んだ。

………しかし

 

「だけど私はこれが嘘だと思う」

「え?どうしてですか?」

 

その言葉に一同疑問を持つ

 

「第一に、この情報が非戦闘員にまで大々的に伝えられていたこと。士気向上という理由もあるだろうけど、それにしたっておかしい。まるで私たち妖怪に知らしてくれと言わんばかりにね。第二に、人間は強力な重火器を持っていても所詮は人間であること」

「つまりどういうことですか?」

「つまり人間の本質……力の源は腕力や妖力ではなく知力なのよ。故に彼らは狡賢い。あの武器にしたって彼らの知力によって生み出された賜物。彼ら自身に物理的な力はない。そんな彼らがそんな大々的な布告をすると思う?」

「つまり……」

「彼らはおそらく近いうちに来る……それも奇襲とかしてね。だから太陽が昇っている間と沈んでいる間で後退して見張りをするわ。堀は?」

「9割はできている。」

「この短期間にしては上出来ね。じゃあみんな!気を引き締めていこう!!」

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオ!!!』

 

 

 

 

そして二日後の夜

 

「零さん!人間がせめて来ました!」

「来たわね……じゃあみんな作戦通りに……」

「ハイ!」

 

私の予想は完全に的中していた。人間たちは7日ではなく2日にここへ来たしかも夜に……しかしこちらとてただ手を拱いているわけではない。ちゃんと対策も練っている。

 

さて、教えてあげる。妖怪が『団結』し『知恵』を得たその恐ろしさを……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:人間ズ

 

作戦は完璧だ。最近妖怪たちは周囲の妖怪も含め、あの山に籠っているという……確かにあそこは長い間我々の干渉をことごとくはねのけた妖怪がいる。だが………30000の兵器を持った部隊だ。そしてその妖怪も頭がいいが我々人間には劣る。偽の情報につかまされ舞い上がっていることだろう。奇襲すれば敵ではない。周りを囲めば逃げ場もなくなる。たかが妖怪ごときが我ら人間の力にかなうわけがない。さてあの守り神と呼ばれた妖怪をどうやって殺すか。………妖怪も恐怖するのだろうか?見てみたいものだ。そしてそいつを殺せば上層部は殺したものを『大将軍』の地位を与えてくれるらしい。これでやる気がでない者はいないだろう。む……どうやら妖山が見えてきたようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:零

 

戦いは一方的だった。人間たちは濠を超えることはできず、こちらは衝撃波や火球、光線といった遠距離からの攻撃。石や岩などを投げることで人間を駆逐していった。私たち妖怪は腕力や妖力が高い。故に人間にとっては数か月または数年かかる濠も妖怪からしたら数日でできてしまう。ではなぜ作らないのか?簡単だ、面倒だからだ。それに濠を作っても飛び越えたり空からくるものまでは対処できないし、むしろそういう妖怪のほうが多い。なら作っても意味はないのである。だが今回の相手は人間、私たち妖怪にとっては簡単に飛び越えられる距離でも人間にとっては致命的なのだ。しかもこちらは決して濠から先へは出てこないのだから。まさに無双状態である。しかし醜いものだ。最初ここへ攻めてきた人間の下卑た表情はどこにもなく顔面蒼白となって逃げだそうとしている。挙句の果てには命乞いをしている輩までいる始末だ。しかし逃がすつもりも助けるつもりもない。私は指先から光線をだし、足元を崩した。

戦い………というより虐殺は1時間もかからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:人間ズ

 

なんだ……これは?

今我々の前にあるのはとても深い濠だ。それだけでも信じられない光景だというのにさらに信じられない光景がそこにあった。

妖怪どもが統率のとれた動きをしているのだ。こんな光景は今まで見たことがない。奴らは我が強いため、誰かに従うことをしようとはしない。だから奇襲やだまし討ちといったこともしやすかったというのに……しかもこいつら決して濠から出ようとしない。全て遠距離からの攻撃だ。おかげでこちらの攻撃が届かない!

 

「く!?仕方ない……いったん撤退するぞ!!」

 

そういって我々は撤退しようとした……したが

 

 

 

 

 

ドガァン!!

 

 

 

 

 

な!?足元が急に……不味い!このままではこの奈落の底へ……こんなところで死ぬのか?い、嫌だ!死にたくない!!誰か、誰か助けてくれ!!!

 

しかしそんな人間の声なぞ聞こえるわけもなく、人間たちの殆どは奈落の底へと落ちて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして人と妖怪の戦いはひとまずの終結を迎えた。妖怪の勝利によって……

 



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第六話:こと防御に関しては人間はすごいと思う(結論)

 あれから十数年が経過した。私たち妖怪連合は、此処よりさらに北にいる鬼真の盟友である水の大妖怪『水を支配する程度の能力』を持つクトゥリトル、東にいる時空の大妖怪『時空間を操る程度の能力』を持つヨグトース、西に住む風の大妖怪『風を支配する程度の能力』を持つハスラーやその眷属である『風に乗る程度の能力』を持つイクタアを仲間として取り込みそれ以外の妖怪達も傘下に加え領土を拡大し今では人間と妖怪の二大勢力がこの世界を構築していた。とはいえ妖怪側にも問題が出てきた。

 

 

 

 

 それは……………食糧問題である。

 

 

 

 

 だが、かといって妖怪同士で殺し合いをしてはその間に人間に殺されてアウト。その辺は人間たちのだまし討ちや奇襲などのおかげで他の妖怪達もよくわかっていた。かといって人間の集落を攻めようにも特殊な結界のようなものが展開されていて並の妖怪では機関銃で撃ち殺されるしヨグトースの能力すら弾いてしまう。どうやら強力な能力のみを封じる結界らしい。その証拠に私が擬態して入ってもなんともなかったのだから。人間たちもここ数週間全くと言っていいほど攻めてこない。そのせいで食料の確保ができない。 なので、現在緊急会議を開いているのだ。こと防御に関しては人間はすさまじいものである。逆に言えば、それだけ自分たちが弱い(・・)ことを知っているということでもある。

 

 

「さて、今現在の食糧問題についてだが……」

 

 

 因みに今ここにいるのは私、鬼真、クトゥア、クトゥリトル、ハスラー、ヨグトースの六人である。なぜこの六人かって?私たちが妖怪大将で知力がものすごく高いから。

 

 

「やはり無難に人間たちの里を攻めるべきではないか?」

 

 

 最初に手を上げたのは白髪で筋肉モリモリマッチョマンの鬼真だった。しかしそれに紅髪の少女のクトゥアが問題を突きつける

 

 

「でもそれはあの結界みたいなのを何とかしないと……」

「むう……」

 

 

すると今度は金髪の少女のハスラーが手を上げた

 

 

「私の下僕であるイクタアに敵情視察をさせてみたらどう?奴は目がいいし速い。人間にはまずとらえることは不可能だよ」

 

 

 これに今度は青髪の少女であるクトゥリトルが手を上げた

 

 

「だめよ、上空は防衛装置のせいでイクタアの能力が半減……いや下手をしたらそれ以下にされてしまう。そうなっては目も当てられない」

 

 

 これは前に下の妖怪に上空から敵情視察させて判明したものだ。いかにイクタアが速いとはいえあの装置の前では手も足も出ない。唯一の救いはあの装置は地上には作用していないことだろう。

 すると今度は紫髪をした端整な顔をした少女のヨグトースが手を上げた。

 

 

「そもそも人間はなぜ我らを突然攻撃しなくなったのだ?ここの資源は奴らからしたら喉から手が出るほど欲しいはず……それこそこの前まではひっきりなしに攻めてきたではないか。………どちらにせよ一度奴らの内情を見てみなければなるまい。」

「確かに……」

「言われてみればそうだな」

「的を射ている」

「そうね……」

 

 

 これには私を除く全員が賛成していたし私も賛成だ。人間たちが何をたくらんでいるかわからない以上今は情報収集が先だ。

 

 

「でも問題は誰が行くか………」

 

 

 疑問をいったクトゥリトルに対し、今まで何も言わなかった私が言った。

 

 

「なら私が視察してくるわ。」

「え?ですが……」

「この中で私ほど人間に成りすませ、なおかつ妖力を零にできる輩がいるの?」

 

 

そう言われれば他の五人は何も言えない

 

 

「とはいえ、流石に今までの顔じゃ流石に人間たちにも不審がられるだろうから顔をちょっと変えるわ。少し時間がかかるから二日後ね。…………じゃあ」

「「「「「「宴会と行こう!!!!」」」」」」

 

 

食糧問題は犠牲になったのだ……宴会の犠牲にな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二日後……

 

「じゃあ行ってくるね」

「「「「「いてら~(酔ってる)」」」」」

 

 

 

 

 

妖怪大将移動中

 

 

 

 

 

「さて………到着……ん?なんか慌しいな…どうしたんだろう?」

 

 

 新しい情報としてこの集落には『行政部』と『軍事部』そして『技術部』の三つで成り立っており、現在『行政部』の名家と『軍事部』の名家で権力争いしているらしい。『技術部』はそもそも研究さえできればいいというある意味、俗世に離れた者達しかいないらしいので興味がなく、むしろ“ある”場所に何があるのかに興味を抱いているものが多いらしい。

そして私は情報収集をしてある重要な単語を耳にした。

 

 

              月移住計画。

 

 三年ほど前に採決され、既に最終段階へと入った壮大な地上からの脱走計画。まるで図ったようなタイミングの実行日が告げられていた。

そしてその日に攻められることを想定して妖怪の進行を食い止めるために月移住組と残留組に別れることになった。『軍事部』は、間違いなく残留組である。

 

 

          主導は無論『行政部』の名家。

 

 この計画は一週間後に地上が氷河期とかいうせいで生命が生きていくには困難な土地になるらしい。だから月へ行く。それは理解できるのだが、『穢れとやらから脱却するため』というのがいまいちよくわからない。穢れというのは最初、妖怪のことかと思ったがどうやら違うようでなんでも『妖怪を生み出すこの星』のことを指しているらしい。

 ますます訳が分からない。前者の理由は氷河期が訪れるからということで生きる希望を月に見出したということで理解できるのだが、後者の穢れた星からの脱出というのが完璧に理解の外だ。だって妖怪もだが人間だってこの母なる星から生まれたのだ。この星が穢れているというのならそこから生まれた存在は皆穢れているということになる。人間だけが特別だなんてことはありえない。

 しかもこの期に及んで無駄な争いをしているのだ。醜いことこの上ない。

しかし流石に少し怒りが沸いた。自分たちの都合で私たちの住む山を襲い挙句の果てにはこの星のせいにして月に逃げるって……本当にこいつらはこの星から生まれた存在なのだろうか?と疑いたくなる。

しかしここで怒っていても仕方がない。いったん戻ることにした。

 

 

(そういえば、あの子今どうしているのかな……)

 

 

私は不意にあの三つ編みの銀髪の『神童』と呼ばれた子を思い出しながら山へ帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて山に帰り、皆にこのことを話しこれからのことを話した結果。集落へ攻めることになった。ついに妖怪達の堪忍袋の緒が切れた………プツンて感じに……そして協議した結果、私が集落の内部へ行き結界を解き、一気に責め立てるというものだ。しかしその内部に入ったことはないのでとりあえず一週間後の人類が月へ発つ日に総攻撃をかけることになった。おそらく氷河期が来れば私たちは全員死滅するだろう。ヨグトースの能力にも一つ制限があり、それは『能力の使用時に寿命を削るというものだ』故に生き残れない、死期を少し伸ばすだけだ。つまり、どっちを選んでも死ぬなら当たって砕けろというのが我々の最終的な結論だ。さらにいうと、そもそも最初に総攻撃したのはあいつ等なんだからお返ししてやろうという感じでもある。しかし闇雲に動いたって意味がないのだから私が結界を解くことになったというわけだ。

 

 

そして私は再度集落に赴いた再び顔を変えて………

 

 

 

 

 

 




今気づいた。妖怪大将、鬼真以外全員少女だな。


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第七話:潜入と破壊……ソシテ

にじファンから見てくれている方々はもう妖怪側の方々がどういう者たちかはわかっているはず……


5日かけて、この集落の構造は大体把握した。どうやらこの集落にある一番高い建物の地下施設に全ての防衛装置を制御する部屋があるらしく、結界の制御装置もそこにあるらしい。普通なら大変だが2日後の月移住の日なら警備は手薄になる。なんせ主要の部隊は月に行くための『ろけっと』とやらを守らなければならない。なら、もはや必要のないそこの守りも必然的に薄くなる。私はそう考え、2日後に備えた。

 

 

 

 

 

2日後………

 

 

とうとう行動を移した。

 

 

まずは、裏口にいる門番を眠らせた後、私は一直線に最下層を目指した。警報が鳴り警備の人間が武器を持って何かしてくるがそんなことに意味はない。即、殺して奥深くへと入っていく。

やはり月移住の日を襲撃に選んで正解だった。通常ならここの警備は厳重のはずだ。人間だって今までの妖怪の行動で学んでいるはずだ。「ここを壊されたら終わりだ」ということを。だがここを破棄するなら話は別だ。必要ないのだから警備は薄くなる。しかし一気に地下へ行ける『えれべーたー』とやらは使えない。あんな逃げ道のないもので降りたらどうぞ殺してくださいと言っているようなものだ。だが放っておいていいものでもない。幸い階段の近くにあったので、一階ごとにボタンを破壊しておいた。これで使えない。

そして立ち向かってくる人間は容赦なく殺し、最下層までたどり着いた。

そこはいままでの階層よりも異質で螺旋状に下り中央にある制御盤へ行くというものだ。

そして前へ進もうとした時だった。

 

 

 

 

バチン!!

 

 

 

 

「グッ!?」

 

突然私の二の腕が焼けるような痛みに襲われた。慌てて後退し周りを見ると、空間に何か赤い線みたいなのがある。しかも奥へ進めば進むほど、赤い線が増えている。おそらくこれに触れるとなにかしらの攻撃がくるのだろう。

しかし時間はない。こうしている間にも後ろから足跡が聞こえている。私は瞬時に考え、荒療治だが一つの方法を考えた。

全身を黒い装甲に変え、そのままダッシュで突き進む。

 

 

 

 

 

バチバチバチバチバチ!!!!!!

 

 

 

 

 

すさまじい激痛が襲う。私の『原初を操る程度の能力』にはどうしても取り除けない制限がある。それは『能力は具現することができず具現する対象(・・)によってタイムラグがある』そして『具現している間妖力を無尽蔵に消費していく』というものだ。これにより私が実戦で具現できるのはせいぜい巨大な光線や弾幕のようなもの……後は肉体強化だけだ。死を具現させることもできなくはないが、それをするには何百年という歳月を費やさなければならない。そして生物も具現することもできなかった。…………これに関しては例えできてもする気もないが。

しかし流石にマズイ。最大限に硬く創った装甲が見る見るうちに溶けていく。速く進まなければ………

やっとのことでこの赤い線を抜け防衛装置の制御盤へたどり着いた。着いた時には装甲は完全に溶け、身体のいたるところが炭化しており、全身から血を流していた。身体に走る激痛を無視して私はこの装置の情報を『具現』して理解した。あの赤い線にずいぶんと苦しめられたが、とりあえず時間稼ぎにここへ来るまでのところにあった防衛装置を『無差別設定』に変えた。これで人間たちにもあの赤い線が牙をむくだろう。自分たちが作ったものだから対処法は知っているだろうがそれでも数分は持ってくれるはず。

 

「パスワードは………『オモイカネ』と」

 

すると声が聞こえた

 

『声紋チェックをしますパスワードを言ってください』

 

これに関しても問題ない。どのような声にすればいいかわかっている

 

「オモイカネ」

 

『認識しました………次に……』

 

そして1時間後………

 

 

制御室に無数の足音が聞こえた。

でもあと一歩だったわね。

 

 

「ふふ、ようやく来たのね………でも……もう…遅いわ」

「なに!?」

 

 

するとあの機械音が聞こえた。

 

 

『たった今、すべての防衛装置を解除しロックいたしました。』

「な!?」

 

 

私は成功したことで笑ってしまった。これでもうこの制御盤をいじることはできない。『神童』と呼ばれた八意永琳なら可能だろうが、そんな天才をここにおいておくだなんて馬鹿なことはさすがにしないだろう。つまり現在これを解くことは『私』以外実質不可能である。そしてどのみち私はもう助からない、足跡が増えているからおそらくこの施設にいた全勢力がここに向かっているのだろう。普段の私なら問題ないのだが、血を流しすぎた。もう……逃げるだけの体力も残っていない

 

 

「この!」

 

不意に兵士の一人が私を蹴りつけた。私はそれをよけきれずモロに食らう、弱っていることがわかってかそれを合図に他の兵士も私をなぶり始めた。しかも傷口を狙って嬲りはじめてきた

 

 

 

メキャ

 

 

 

「!?ああああああ!!」

 

左手が折れ踏みつけられた。鈍い音が鳴った

あまりの痛さに私は悲鳴を上げた。まだ反撃はできなくもないがあえて攻撃はしない『ここ』なら人間も助からないだろう。するとたくさんの兵士が集まった。

 

「どうだ?これだけの兵力があれば貴様なぞ一捻りだ。」

「フフフフ……」

 

予想以上だ…

 

「この…何笑ってやがる!」

 

再び私を踏みつけ蹴り上げた。血が舞い散る。今の私の姿は、それはもう滑稽だろう。全身血まみれで左腕は壊死して骨が見えている。痛覚神経も痛みを通り越したのか感覚が無い。今の私を妖怪大将と言っても信じるものは皆無だろう。

 

「チッ!俺の服が穢れちまった!!」

 

私に対する罵倒もほとんど聞こえていないが………本当にオメデタイヤツラダ。

 

 

 

 

 

 

 

 

どのみちこの後の氷河期で妖怪は生きていけないということに気づいていない。なのに、勝ち誇った顔をしている。どうやら、私が今までなぜ攻撃しなかったのかすら理解していない、いやそもそも考えてもいないらしい、一つは後の戦いのための力の温存だった(・・・)………そして

…………ソシテ…追い詰めたのはコチラダトイウノニ……

 

 

 

 

 

 

オイツメラレテイルノハニンゲンノホウダトイウノニ…………

 

 

 

 

 

 

私は残った右手を天に掲げ、残る妖力すべてをもって巨大な光線を放った

 

 

 

 

ズバァァァァァン!!!

 

 

 

 

「な!?」

 

突然のことに人間たちは一瞬驚いた。そして少し遅れて崩落が始まった。

この建物の天井をぶち抜いたのだ。

 

 

 

ドゴゴゴゴゴゴゴ

 

 

 

「ク!?貴様!総員退避!!」

 

 

無駄よ……いったいここから地上までどれだけの距離があるのかはあなた達が一番よくわかっているでしょう?人間の足じゃこの崩落からは逃げられない。……コレが私のできる精一杯……だが人間にとっては最大の惨事。

 

 

 

そして瓦礫が降り注いだ。

 

 

 

「う、うわあああ!」

「ま、待ってくれ!!」

「な!?放せ!このままじゃ……ギャアアアアア!!」

 

崩落する瓦礫の音と人間たちの断末魔が聞こえる。それが瀕死の私にはとても心地よく聞こえた。そして天まで貫いたから…これでこの集落から少し離れた私の仲間たちも気付くだろう………でも

 

(楽しかったな…もう一度……皆と宴会したかったな………もういちど…………皆と一緒に戦いたかったな……………鬼真、クトゥア、クトゥリトル、ハスラー、ヨグトース、イクタア、みんな………………ごめんね…………………そして)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アリガトウ

 



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