星の潮流 (fw187)
しおりを挟む

太陽系防衛戦
時空転換点


「大ガミラスの勇敢なる戦士諸君、勇戦に感謝する。

 無限艦隊の襲来から、約365時間が経過した。

 誠に残念ではあるが、太陽系防衛戦の現状は諸君も御存知の通りだ。

 

 我々を第1次人類の末裔と認めてくれた盟友、地球人《テラナー》も絶滅の危機に瀕している。

 風前の灯となった第2次人類の代表者、太陽系連邦の首席から連絡が届いた。

 

『太陽系の第4惑星、火星《ガミラス》を祖先の地とする方々に申し上げる。

 我々を護る為に奮闘を重ね、多数の死傷者を出した貴軍の勇戦に感謝する。

 地球人類の恩人スターシア、サーシャ殿を貴軍に託し新天地へ御連れ願いたい。

 これ以上の戦闘継続は不要、太陽系を脱出し大宇宙の何処かへ転進されよ』と。

 

 諸君も御承知の通り、火星防衛軍も音信不通。

 本来であれば最高司令部の戦術的失敗を認め、自由行動を認める状況ではあるが。

 私は第2次人類の犠牲を代償とする敵前逃亡、戦術的撤退の選択肢を放棄する。

 『我等の前に勇者無く、我等の後に勇者無し』。

 火星防衛の任を買って出た勇将、シュルツが私に教えてくれた言葉だ。

 

 我々、ガミラス星人は戦闘民族である。

 今この瞬間に至るまで、ガミラス宇宙軍が敵に背を向けた事は無い。

 人類発祥の地、太陽系第3惑星に崩壊の刻が迫っている。

 我が軍の転進は最終防衛線の崩壊、地球人類の全滅に直結する筈だ。

 第1次人類の名誉に懸け、彼等の恩に報いねばならぬ。

 最期まで闘い抜く事に、同意を得られると信じている。

 

 戦友諸君。

 これまで、良く、私の拙い指揮に従いて来てくれた。

 私は、諸君と共に戦えた事を誇りに思う。

 

 栄光ある大ガミラスの総統として、諸君に、一言だけ申し上げたい。

 ありがとう。

 …以上だ」

 

 

 

 時は、遡る。

 西暦2199年、某月某日。

 私の脳裏に、精妙な《声》が響いた。

女神救出作戦(プロジェクト・スワティ)が、発動されました。

 この鍵言葉《キイ・ワード》に拠り、真の記憶が回復します」

 

 ガミラス帝国は、未曾有の大混乱に陥った。

 私も、ヒスも、ドメルも、シュルツも。

 自らの最期、死の瞬間を『思い出した』。

 我々が《現実》と信じていた世界は、複製世界《レプリカ》であった。

 

 

 時空変換点《クロス・ポイント》は、地球艦隊の冥王星《ハデス》遠征であったらしい。

 冥王星前線基地は当時、ガミラス本星から厳命を受けていた。

 波動エンジンの設計図を、地球人類へ渡してはならぬ。

 サーシャ搭乗の恒星間宇宙巡航艇を捕獲、または破壊せよと。

 

 シュルツ指揮の艦列は冥王星軌道に展開、万全の態勢を敷き待ち構えていたが。

 ガミラス艦隊が命令を実行する直前、沖田率いる地球艦隊11隻が突入して来た。

 古代守の指揮する駆逐艦『ゆきかぜ』、無謀な急襲に攪乱され阻止線に隙が生じた。

 

 快速艇の制御頭脳は戦場に突入、混乱に乗じ強行突破を選択。

 外宇宙航行速度を維持した儘、内惑星の軌道に達した。

 火星に墜落する直前、緊急脱出装置《エマージェンシー・ロケット》が射出されたが。

 出発以前に白血病を発症する乗員、サーシャは既に死亡していたと思われる。

 

 地球艦隊が劣勢を顧みず冥王星宙域へ赴き、挑戦する勇気を発揮しなかったとすれば。

 波動エンジン設計図は、地球人類に届かなかったであろう。

 天は、自ら助ける者を助く。

 10隻の犠牲、旗艦の被弾時に落命した勇者達の奮闘は、無駄ではなかったのだ。

 

 

 地球人達の勇気に感銘を受け、時を操る者が動いた。

 数兆数京に及ぶ試行錯誤の後、可能性の扉を開いたのだが。

 記憶封鎖《メモリー・プロテクト》の為、我々は恩恵に気付かなかった。

 

 イスカンダル星の姉妹も超次元の精神波、心話、詳細な情報を受信した。

 数万年の歴史を誇る高度な医療技術を以てしても、治癒不可能であったのだが。

 ビーメラ星の蜂蜜に指示通りの処方を施し、薄命の妹に投与の数分後。

 サーシャ完治、の奇蹟《ミラクル》が起きた。

 

 謎の《声》は青色人《ブルー・マン》、ガミラス系人類の事も忘れていなかった。

 別の処方で精製の薬を服用の後、我々の身体は《脱皮》を開始。

 金星《アムター》の生命延長血清と同様、数時間に及ぶ細胞転換を経験した。

 放射能を適度に含まねば、息苦しく感じる筈であったが。

 イスカンダル星人、地球人類と共存可能になった。

 

 次元間遠隔感応能力者は更に、重大な情報を提供。

 此処は重要な時空連続点《クロス・ポイント》、数多の世界に影響の及ぶ《鍵》であるらしい。

 数時間後に無限艦隊が現れ、地球を襲う。

 宇宙戦艦ヤマト発進には後、数週間を要する。

 

 強大な侵略者に対抗し得る戦力は唯一、ガミラス宇宙軍のみ。

 他の複製世界から援軍が到達するまで、人類の絶滅を阻止しなければならぬ。

 私は超緊急非常事態の宣言、全軍の集結を選択に最優先至上命令を通達。

 ガミラス帝国領全域の放棄、太陽系に集結を命じた。

 

 地球連邦政府は第4惑星への移住、火星《ガミラス》の制式名称も公認。

 謎の《声》に従い地球艦隊11隻の乗組員、候補生達を異世界に送る。

 次元回廊の彼方、精神と時の部屋に類似の亜空間は許容量が僅少。

 人類の大半は地球に残り、1日が数ヶ月に匹敵する世界に数百名を送り込む。

 

 超次元回廊の接続、次に訪れる帰還の機会《チャンス》は特定し難い。

 数時間後か、数日後か、数週間後か、数ヵ月後か、誰にも分からぬが。

 猶予は、無かった。

 ガミラス宇宙軍が冥王星前線基地に集結の直後、無限艦隊が殺到。

 女神救出作戦(プロジェクト・スワティ)の第1段階、太陽系防衛戦が開始された。




 冥王星沖会戦の解釈ですが…地球艦隊9隻の乗組員に偉業達成、緑と海の復興を伝えてあげたいです。

 松本零士先生、たくさんの夢、希望の贈り物、作品群に感謝致します。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

火星の戦士達

 火星防衛軍司令官シュルツ、副官ガンツ以下10数名の志願者。

 青色人《ブルー・マン》の宇宙戦士達は、砂の嵐に護られた惑星地下の秘密基地に篭城していた。

 

 他に十数名が第1衛星ディモス内部に潜み、第2衛星フォボス地表の重火器を遠隔制御。

 火星《ガミラス》地表の遠隔操作火力陣地と連携、協同で無限艦隊に立ち向かうが。

 無限艦隊の誇る圧倒的な物量は効し難く、次第に押され直接砲撃を受ける反射衛星砲基地。

 短距離射程の高出力熱線砲が火を噴き、至近距離迎撃用の大型電磁砲から青紫色の電光が閃く。

 

 大気圏を持たぬ衛星を無限艦隊の砲撃が直撃、反射衛星砲の周辺に配置された偽装陣地を破壊。

 対宇宙用迎撃火砲陣地群も次々に被弾、指令室《コントロール・ルーム》に非常警報が反響する。

「お前達、先に脱出しろ!」

「副司令官殿は?」

 

「最後に持ち場を離れる者は、最高責任者と決まっている!

 火星防衛軍指令官シュルツ閣下の代理、ディモス反射衛星砲基地の指揮官は俺だ。

 如何なる状況であれ、例外は無い!

 

 お前達が地下要塞に着くまで、援護してやる。

 俺は重いからな、非常用脱出艇の速度は少しでも上げた方が良いだろう。

 事態は一刻を争う、口答えは許さん!

 絶対真空仕様の戦車で後から脱出する、先に行け!!」

 

 上官の言葉に理を認め、青色人戦士達は一斉に敬礼。

 反射衛生砲の熟練兵達は唇を噛み締め、司令室の外へ走り去る。

 宇宙戦士達が席を離れてから数分後、動力施設からの電力供給が途絶えた。

 

 無限艦隊の砲撃を受け厳重に被覆、防護された導線も何処か破壊された模様。

 非常用制御装置《エマージェンシー・コントローラー》は無効、異常信号の点滅は消えない。

 大音量の非常警報《アラーム》が鳴り響き、耳に痛い。

 

「くそっ、動け!

 火星と連携して、敵を片付けなけりゃならんのに!!」

 思い付く限りの操作を試みるが、全く反応は無い。

 操作盤《コンソール》を撲る拳から、鮮血が噴出した。

 

 反射衛星砲の援護が消失すれば、火星は成す術も無く蹂躙される。

 数百から数千の単位で敵艦を撃破した筈だが、焼け石に水か。

「シュルツ閣下!」

 打つ手は無く、悔し涙が溢れた。

 

 表示画面《スクリーン》に映る地表、火力陣地が被弾炎上。

 このままでは地下要塞の崩壊、火星防衛軍の全滅も免れぬだろう。

 背後から不意に手が伸び、鍵盤《キーボード》を操作。

 水晶《クリスタル》の光輝《ライト》が煌き、緑色《グリーン》の表示《ランプ》が灯る。

 人工合成音声の宣告が、反射衛星砲の制御室に響く。

 

「接続完了《アクセス・オープン》、動力供給回復《リカバリー・コンプリート》。

 始動命令《スタート・コマンド》、正常完了《ノーマル・エンディッド》。

 目標選定《アタック・セレクト》、自動追尾《ロック・オン》完了。

 射撃準備完了、砲撃可能です」

 予想外の事態に眼を見開き、背後を振り返る。

 既に脱出した筈の部下達が揃って、驚愕の視線に見事な敬礼で応えた。

 

「貴様等、何をしとる!?

 何故、火星へ向かわず戻って来た!

 まさか敵《エネミー》の攻撃は既に、地下基地に及んでいるのか?」

 シュルツの身を案じる忠実な副官、ガンツの脳裏に悪夢の予感が閃く。

 脱出を命じた部下の出現に最悪の事態を予想、悲鳴か詰問か解らぬ絶叫を浴びせるが。

 酷い傷跡の目立つ顔面が凄愴に歪み、最古参の大男が不逞不逞しく笑う。

 気の弱い者なら、失神するかもしれない。

 

「マニュアル通りの操作したって、動きゃしませんよ。

 こんな状況の時こそ職人の腕、名人の見せ場でさぁ。

 司令部に知れたら大目玉間違い無し、非正規操作術《アブノーマル・オペレーション》。

 上手くやらないとエネルギー・プラントが暴走して、大爆発を引き起こしちまう。

 正規のやり方じゃありやせんが、自分しか知らない裏技がありましてね。

 この状況じゃあ危険も糞も無い、無理を承知でやるしかないでしょう。

 火星軍司令部との通信も途絶してますし、大目に見て貰えやせんかね。

 

 先刻はびびっちまって、情けないマネを晒しやした。

 反射衛星砲が無けりゃ、火星に逃げても持ち堪えられやしませんわな。

 ありったけの裏技を駆使して、反射衛星砲を使用可能にして見せます。

 副司令官殿には目標選定と、砲撃開始の時間調整をお願いしやす。

 火星で御荷物扱いされるより、ずっと気が利いてまさぁ。

 

 我々も副司令官を見倣い、最後まで持場で本分を尽くします。

 副司令官殿1人残して敵前逃亡する訳には行きません、一蓮托生ですな。

 我々一同、副司令官閣下の許で最後まで戦える事を誇りに思います。

 他の者も自分の持場に戻りました、副司令官殿1人だけ良い恰好は無しですぜ」

 上官を上官とも思わず、絶対に言う事を聞かない事では定評のある古強者。

 一筋縄では行かぬ傲岸無比の古参兵が初めて、心の籠った敬礼を贈る。

 

「ありがとう、感謝する!

 一生、恩に着るぞ」

 ガンツの眼が潤み、視界が霞んだ。

 ディモス基地残留を志願した十数名、全員に敬礼を返し右掌を差し出す。

 酷い傷跡の残る歴戦の強者、豊富な経験を物語る風貌が照れた様に微笑む。

 本来の持ち場に戻った全員が不退転の決意を瞳に宿らせ、力強い握手で応えた。

 

「こっちこそ、申し訳ありやせん。

 一度は、生命惜しさに逃げ出しちまいやした。

 反射衛星砲の光線が停止したのを見て、我に返ったんでさぁ。

 此処は我々の持場、家みたいなもんです。

 本来は他所者の副司令官を残して、家の者が先に逃げちまうのは筋違いってもんです。

 どんな処罰を受けても、文句は言えませんわな」

 

「よし、罰を与える!

 全員、後で俺の居住室に出頭せよ!!

 火酒でも葡萄酒でも麦酒でも、眼の玉が飛び出る程に豪勢な高級料理でも構わん!

 好きなだけ飲み食いさせてやる、費用は総て俺が持つ!!

 だが勘違いするなよ、これは罰だからな!

 全員が俺と同じ体型になるまで放免せんぞ、覚悟しろ!!」

 各自の定位置に着席した要員が爆笑、指揮官の冗句に応え腹の底から哄笑を響かせた。

 

 司令室を爆笑の渦が包み動力部や砲塔室、各部署に波及。

「自分が操作を代わります、副司令官殿。

 ガミラスの意地、奴等に見せてやりやしょうぜ」

 

 

「ディモス基地の応答は皆無、フォボス反射衛星砲も完全に沈黙しました!

 反射衛星は残存していますが戦闘衛星は爆発、ハンター衛星も全滅です!!」

 火星(ガミラス)地下要塞、対宙防衛陣地指令室に絶叫が響く。

「宇宙空間の戦闘は、これまでだな」

 冥王星《ハデス》前線基地、火星防衛軍の指揮官から溜息が洩れる。

 

 火星周辺宙域は無限艦隊が埋め尽くし、月面基地も通信不通。

 折れ掛かる心を立て直した直後、眼も眩む目映い閃光が絶望の闇を切り裂いた。

 走査員《スキャナー》の絶叫、歓声の声が総司令部に響き渡る。

「反射衛星砲が復活、次々に敵艦を撃破!

 発光信号を確認、射撃目標の指示を求めています!!」

 

「両極付近の敵艦を撃て、後は衛星基地の自衛を優先!」

 火星防衛施設も駆使、ディモス周辺の敵を撃滅せよ!!」

「了解《ラジャー》!」

 真紅の砂塵を撒き上げ、地下基地から無数の誘導弾が飛翔。

 多弾頭爆弾が敵艦を襲い、爆発に捲き込む。

 

「総司令部は無事だ、充分な戦闘力を維持している!

 我々を援護してくれているぞ、相互連係で撃退可能だ!!

 こっちも負けるな、全砲門解放射撃【オール・ウェポンズ・フリー】!」

「応っ!」

 衛星を刳り抜いた基地、火力陣地を制御する司令室の内部で声が重なる。

 

 

「無限艦隊の反撃です、重層防御力場が突破されました!」

 予想を覆す迅速な新手の殺到、無数の弾幕射撃を受け瓦礫の山と化す反射衛星の群れ。

 ディモス内部を激震が疾り電力供給が途絶え、各部署の照明が消失。

 司令室の天井が崩落、火星防衛軍副司令官ガンツの意識が失せた。

 

「ガンツ!」

 火星防衛軍の最高指揮官、シュルツの口から痛恨の呻き。

 女神救出作戦の開始後、嘗ての頼り無い副官は見違える働きを見せた。

 ガミラス人の新たな故郷、火星の防衛体制を構築の際に衛星陣地の責任者を志願。

 冥王星基地の防戦で得た教訓、経験値を基に判明した弱点の補強に奔走している。

 創意工夫を凝らし対策の考案、限られた時間と資材で第3善の実現に漕ぎ着けた。

 

 火星に戦線が迫ると最前線に赴任を志願、反射衛星砲の陣頭指揮を執り無数の敵艦を撃破。

 今まで何とか踏ん張れたのは、忠実な副官の功績と云っても過言ではない。

「わしも途くぞ、ガンツ。

 必ず、礼を言わせて貰うからな」

 

 太陽系第3惑星、地球人類の護衛を優先する総統の判断に異論は無い。

 火星防衛陣地の活用を図り代役を買って出たが、総統の重荷を少しは減らせただろうか。

 大規模な爆撃が惑星の地軸を破壊、と錯覚する程に強烈な衝撃波に地下都市が震撼。

 太陽系の絶対防衛線、小惑星帯《アステロイド・ベルト》の軌道以内に残された最後の砦。

 火星防衛軍の総司令部、無人火力陣地の制御室から照明が消えた。




 コミック・アンソロジー『宇宙戦艦ヤマト 遙かなる星イスカンダル』に触発されました。
 シュルツの仇を討つ為、ガンツは戦い続けたのですね。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

お母さん軍団の活躍

・太陽系第3惑星、水星(テラ)中央総合病院にて

 

 水星のすべての人々も女神によって記憶封鎖は解かれた。

 あのガミラスとの戦いも既に記憶の一部と化し、既成事実として受け入れられている。

 太陽系内で戦っているガミラス軍は、未だに意気軒昂ではあるが。

 「エネミー」に寄生された無限艦隊の前には残念ながら、劣勢と言わざるを得なかった。

 そんな中、嘗ての地球地下都市中央総合病院へ。

 太陽系各戦線で負傷したガミラスや地球防衛軍の兵士達が、続々と搬送されて来ていた。

 以前の確執は一切、残っておらぬ。

 今となっては肌が青かろうが白かろうが、赤かろうが全く関係はなかった。

 そして、地下都市中央総合病院前の大庭園には。

 集合する女性の大軍団があった。

 

 全員が三角巾とマスクを被り、純白のエプロンの胸には大きな赤十字マーク。

 周りの女性達が準備したミカン箱に乗り、代表と思われる女性が大音声で話し始めた。

「皆さん、準備は良いですか?

 此処で治療を受けている兵士の皆さんは、我らが太陽系の各戦線で負傷された方々です。

 傷が早く治る為に是非とも、私達の手料理を食べて貰おうではありませんか!」

 賛同する声の渦が轟き、代表の女性が合図すると同時に全員が大庭園の周りに散った。

 空いた中央部にトレーラーが幾台も並び、サイド・ボンネットを大きく開口。

 其処には一大キッチン・システムが小型化、合理化され詰め込まれていた。

 次の車両には大鍋を搭載する大型コンロ群。

 後続の車両には世界各地から搬送された米や小麦を始め、大量の食材が満載されている。

 各地域の兵士が運び込まれる総ての病院に、妙齢の女性達が集合。

 名称は異なるが水星の旧国別に婦人会が組織され、大軍団となっていた。

 水星全体で団結した結果、大量の各種食材が中央総合病院に集積される。

 此処、旧日本と呼ばれた地域でも同様であった。

 トレーラーのサイド・ボンネットが開口されると同時に、一糸乱れぬ行動で集合する女性達。

 「お母さん」達は各自の持ち場に就き、ベルト・コンベアーが敷設され電源車も到着。

 中央総合病院の大庭園は一気に、喧噪に包まれた。

 

 病院内からも数十人の女性達が現れ、エプロンを身に付け行動に加わる。

 十数分で最初の御飯が炊きあがり、5分後には煮え滾った油鍋から程好く火の通った唐揚げが姿を現す。

 更に煮染め、野菜の天ぷら等々、手で摘まんで食べられる品々が次々に出来上がった。

「おにぎりは、あんまり大きく握っちゃダメだよ。

 ちょっと小さめに握るんだ。

 怪我をしている方達の咽喉でも、通り易い様にね!

 次の御飯はもう少し、柔らかめに炊こうね!」

 湯気の立つ御飯は握ると、とても熱い筈であるが。

 しかし、お母さん達はひるまない。

 更に他の大鍋には味噌や牛蒡(ゴボウ)の良い香りが湧き立つ、暖かい豚汁が出来上がっていた。

 調理を終えた料理は一食分ずつ使い捨ての皿、或いはどんぶりに盛られ食事搬送用動力車に乗り病院内へ搬送。

 最初の30分で殆どの食材がトレーラーからなくなった頃、お母さん達も庭園から消え失せた。

 運び込んだ食事と共に負傷した兵士の食事を介助する為、白衣の軍団が病院の内部を疾走。

 病棟には並べられる限りの寝台が並び、通行の邪魔にならぬ廊下にも布団が敷かれ青色人の兵士が寝ている。

 赤十字のエプロン姿の女性は病院のベッドがある所全てに、おにぎりや豚汁等を持って突入した。

 

 血相を変えたのは、兵士達であった。

 地球防衛軍の連絡将校として共に戦った地球人兵士達は、特に慌てる事は無なかったが。

 ガミラス軍兵士達は憤怒とも取れる表情で突進してくる女性達に、遊星爆弾の怨みかと恐れ慄いた。

 戦友の地球防衛軍兵士達は、ガミラス兵を宥め一緒に食事を勧める。

 戸惑っていた兵士達も報復措置ではないと悟り、お母さん方が差し出す自慢の品を恐る恐る頬張った。

 暖かい料理を咀嚼すると血の気が戻り、何とも言えない複雑な感情が薄れ柔らかい表情に変わる。

「美味しいだろう? もっとお食べ」

 彼方此方から、無数の声が聞こえる。

 重傷の兵士は起き上がれず、口から食べられないが。

 優しく頭を膝枕され、脱脂綿に含まれた水を口に当てられ涙ぐんでいた。

 

 またお母さん方も自分の息子や孫と同年代の負傷兵達に、涙を禁じ得なかった。

 両手を吹き飛ばされた無残な姿の青色人、ガミラスの少年兵を含む負傷者達。

 彼等は頭を撫でられながら、小さく千切ったおにぎりを口に運んで貰っていた。

 ガミラス兵も泣いていたが、食事の介助をする女性も目を真っ赤にして泣いていた。

「元気になって、この戦争が終わったら、必ず家に来るんだ、わかったね?

 必ず元気になるんだよ、そして、うちの子と一緒に御飯を食べておくれ」

 そんな声が聞こえる一方では様々な電子機器に繋がれ、包帯で殆ど全身を覆われた重傷兵士の前にも。

 「お母さん」は、来ていた。

 口元にスプーンで掬った豚汁を寄せると、僅かに飲み込む。

 何か言おうとするがガミラスの兵士は無情にも力は尽き、満足気な表情を見せ静かに息を引き取った。

 青い肌の兵士の頭を胸に抱き、「お母さん」は号泣していた。

 この場では国境や民族を越え、この一団はすべて「母」であった。




『かずき屋』様、作者には思い付かなかった寄稿を贈って頂いた事に感謝です!
御了承を得ていますので、掲載させていただきます


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ドメル将軍の報告

「我々は第一次人類の故郷、太陽系第三惑星に還って来た。

 ガミラス宇宙軍の名誉を懸け、無限艦隊と闘わねばならぬ。

 緒戦は艦隊指揮官ドメル将軍以下、勇敢な戦士達の双肩に委ねる。

 冥王星前線基地、シュルツ司令官と連携し敵の先鋒を撃破せよ。

 

 千変万化する戦場に於いて、最善の判断は存在せぬ。

 失敗しても構わん、やり直せば良い。

 背後には、私が控えているのだからな。

 

 ドメル将軍には独断専行、戦術的撤退を認める。

 諸君の凱旋を待っているぞ、存分に戦って来て欲しい!」

 私は、耳を疑った。

 人工太陽を落下させ、バラン星で宇宙戦艦ヤマト抹殺を図った記憶が甦る。

 

 総統の命令で勝利を逃した原型《オリジナル》の世界では、考えられない事だが。

 再戦の機会を得た以上、宇宙の狼《スペース・ウルフ》の名に恥じぬ行動を貫くのみ。

 無限艦隊の先鋒は蹴散らし、太陽系最外縁の準惑星エリス軌道に後退させたが。

 敵は冥王星前線基地の支援が届かぬ遠方に、ガミラス艦隊の誘い出しを図っていた。

 

 

 爆撃機と雷撃機を搭載していれば、更に遠方まで追撃していたかもしれない。

 狡猾な敵は用意周到に幾重もの包囲網を敷き、一網打尽を狙っていた。

 総統の指示で両機種を離艦させていた為、我々は辛うじて罠を逃れたが。

 誘い出しに失敗したと悟り、無限艦隊は直ちに逆襲へ転じた。

 

 無数の敵艦を撃破したが、波状攻撃は続いた。

 ガンツの構築した機雷原が無ければ、一気に冥王星前線基地を破壊された確率が高い。

 宇宙艦隊と反射衛星砲の連係攻撃により、更に数多の敵艦を破壊したが。

 高揚していた士気は徐々に低下し、疲労が蓄積された。

 

 無限艦隊の名を冠する侵攻軍の補充力は、伊達ではなかった。

 『名は体を表す』の格言に背かず、文字通り無限に艦隊が押し寄せるのだ。

 心理的恐慌《パニック》が密かに忍び寄り、戦術判断に齟齬が生じた。

 

 反射衛星と機雷原は破壊され、冥王星前線基地も強襲を受けたが。

 窮地に陥った私達を救う為、総統が動いた。

 

 

 お偉方《ディレクトリクス》の異名を持つ艦隊指揮専用艦、ドメラーズⅢ世。

 円盤型宇宙戦闘機母艦を基幹とする機動部隊、艦載機を戦場に投入。

 私の発想を超える瞬間物質移送装置の用法、斬新な新戦術が披露された。

 圧倒的な物量構成の事態を予見した総統は、対策を講じていたのだ。

 

 空母を離れた爆撃機と雷撃機は爆弾、魚雷の搭載機能と偵察員席及び爆撃手席を撤去。

 重量削減に拠り数倍、強力な破壊光線砲を機首に装備する事が可能となった。

 改造された機体は戦車の天敵《タンク・キラー》、重防御の地上襲撃機に相当する。

 従来の雷爆撃を凌駕、隔絶する累積効果も実証された。

 

 一撃離脱戦法《ヒット・アンド・アウェイ》に徹し、劇的に向上した最高速度を駆使。

 被撃墜率は劇的に改善され、殆どの搭乗員が無事に帰還している。

 多数の熟練者《ベテラン》が姿を消し、新米に頼らざるを得ぬ悪循環を免れたが。

 特筆すべきは、瞬間物質移送装置の運用法であった。

 

 発想が転換され、宇宙魚雷と多弾頭爆弾を瞬送《テレポート》。

 敵艦の眼前で実体化させ、驚異的な命中率を記録している。

 直接照準の雷爆撃を避ける手段は無く、確実に敵艦を撃破。

 被弾の際も重防御の襲撃機は破壊を免れ、多数の操縦士達が帰還した。

 

 私は瞬間移送装置で爆撃機や雷撃機を瞬間移動させ、奇襲効果を狙ったのだが。

 魚雷や爆弾を直接、敵艦に直撃させる方が理に適っている。

 搭乗員達を危機に晒さぬ方策を、なぜ、思い付かなかったのか。

 あまりにも単純明快な解答を見過ごした私に、総統は悪戯っ子の様な微笑を見せた。

 

 

「私も、全く、気付かなかったよ。

 宇宙は、広いな。

 君の用意した瞬間移送装置は、百発百中の砲として使える。

 人員を危険に曝さず、敵艦を撃破可能と或る人物が教えてくれた。

 

 勉強させられたよ、まったく、盲点だった。

 数多の世界が協力すれば、思いがけない効果が生じる。

 ヤマト同様、無限の可能性が拓けるのだな。

 

 異世界の賢者に脱帽だが、同時に確信したよ。

 平行宇宙《パラレル・ワールド》の相乗効果が実現すれば、不可能も可能となる。

 無限艦隊と云えども、無敵ではない。

 女神に救われた者達が協力すれば、撃退する事は可能だ。

 

 鉄壁の布陣を敷く時間を稼いだ諸君の奮闘、勇戦は賞賛に値する。

 冥王星前線基地も立派に任務を果たし、その役割を終えた。

 火星《ガミラス》で食事と睡眠を摂り、体力と気力を回復してくれ給え。

 諸君は数時間後、充分に英気を養った上で戦列に復帰せよ」

 

 

 シュルツと私の部下達も直接、総統から労いの言葉を受けた。

 力強い握手を賜った彼等は、疲労が滲み憔悴した顔を紅潮させた。

 この方の為なら、死ねる。

 そう思った途端、私と部下達の前で、総統は声を張った。

 

「皆、聞いてくれ。

 私から諸君に是が非でも、御願いしたい事がある。

 只一言、『死ぬな』と云う事だ。

 

 宇宙戦艦ヤマト艦長、沖田十三が死地に赴く部下の古代守に贈った言葉でもある。

 ガミラス軍の将兵に知らぬ者は無かろうが今一度、引用させて頂く。

『古代、死ぬな。

 我々が全滅してしまっては、地球を護る為に戦う者がいなくなってしまうのだ。

 明日の為に、今日の屈辱に耐えるのだ、それが、男だ』。

 

 冥王星から撤退の後、ヤマトを勝利に導いた実績は敬服に値する。

 沖田艦長を見習い、無限艦隊の波状攻撃に耐えねばならぬ。

 絶対に諦めず万難を排し、石に噛り付いてでも生還せよ。

 各自、肝に銘じて貰いたい」

 

 

 

「『ドメルが滅びる時は、ヤマトも滅びる時だ』。

 将軍の言葉は、現在の状況にも当て嵌まる。

 我々が全滅すれば、地球人類も滅亡するのだからな。

 自爆攻撃は厳禁だ、例外は認めん。

 

 『地球人《テラナー》が諦めるのは、死んだ後』と異世界では噂されている模様だ。

 我々も嘗ての第五惑星が崩壊の際、移住を強いられた第一次人類の末裔に他ならぬ。

 最後の最後まで希望を捨てぬ強い心、勇者の持つ最大の武器を諸君に期待する。

 

 演説の分だけ、休憩の時間を延長する。

 諸君は直ちに寝室、食堂に直行し疲労回復に努めよ。

 心置き無く、熟睡してくれ給え」

 

 

 自動録画装置は働き続け、総統の演説も記録された。

 3次元立体映像と音響効果も総て、全艦艇で再現する事が可能。

 多数の将兵が演説に感銘を受け、沖田艦長の言葉を胸に刻んでいる。

 ガミラス宇宙軍は無限艦隊と激闘を繰り広げ、月軌道上の最終防衛線に追い詰められた。

 

 艦隊は被弾損傷が激しく、満足に戦えるのは数隻しか残されておらぬ。

 私の乗艦、改ガミラス型宇宙戦艦『ドメラーズⅡ世』。

 総統の旗艦、及び護衛の宇宙駆逐艦《スペース・デストロイヤー》のみ。

 大気圏内では熱線砲、光線砲の有効射程距離は激減するが。

 損傷艦艇は運動能力が低下の為、地上砲台とせざるを得ぬ。

 

「くそっ、もう水星《テラ》を守る手は尽きた…」

 私の希望により再び傍に立つ副官、ゲールの呻き声が『ドメラーズⅡ世』艦橋に洩れた。

 

 

「確かに、その通りではあるな。

 逃げ道の無い、絶望的状況に見える。

 

 だが、思い出したまえ。

 七色混色発光星域の艦隊決戦に於いて、我々は何を見た?

 君も、聞いているだろう?

 全砲門使用不可能となった際、ヤマト艦橋で古代進が同じ言葉を発した事を。

 

 沖田艦長は最後の最後まで希望を棄てず、巧妙な操艦を命じた。

 ドリル・ミサイルの逆回転を待たせ、何時爆発するかわからぬ恐怖にも耐えた。

 勝利を確信した我が艦隊を誘導し、一直線上に並べて見せたではないか。

 

 奇蹟《ミラクル》を起こした原動力は、絶体絶命の窮地にも怯まぬ強い心。

 沖田艦長は勇者の最大の武器を用い、宇宙戦艦ヤマトに勝利を齎した。

 全ての武器を使い果たした後も、勝利の可能性を探し続けた姿勢を見習わねばならん。

 

 

 それに、まだ、君には礼を言っていない。

 ここまで我が軍が戦って来れたのは、君の努力に拠る処が大きい。

 急造の最終防衛線《ファイナル・ディフェンス・ライン》は、素晴らしかった。

 資材も時間も限られた中で、あれだけの設備を整えた手腕は賞賛に値する。

 

 火力陣地の要員達から、聞かされたよ。

 君が精魂を傾け、不眠不休で施設の構築に奔走した模様をね。

 過去の経緯から君を過小評価していたが、眼が覚めた。

 次の戦闘が済み次第、謝罪させて貰う。

 

 再言するまでも無いが、総統の命令は遵守する。

 次の戦闘で生命を捨てる覚悟など、決めていない。

 最後の最後まで諦めず希望を棄てずに戦い、沖田艦長を見習う。

 

 総統への忠誠心に於いて、君は私に負けぬ筈だ。

 どんな手段を使っても構わん、私の自爆を阻止してくれ給え。

 頼んだよ、ゲール君」

 

 

 宇宙機雷も数秒後に尽き、無限艦隊が地球を蹂躙する事は避けられまいが。

 ゲールは虚脱状態を脱し、光と熱が瞳に戻っている。

 

「無限艦隊、接近して来ます!」

 観測員の絶叫が響き、スクリーン上の艦影《シルエット》が急速に拡大。

 ドメラーズ2世の艦橋に緊張が走り、誰もが迫り来る破滅の足音を聞いた。

 

 総統府の面影を残す旗艦、私の乗艦、駆逐艦4隻の眼前で機雷の防壁が崩壊する。

 その、とき。

 其の時であった。




コミック・アンソロジー『宇宙戦艦ヤマト 遙かなる星イスカンダル』に触発されました。
沖田艦長が島に転舵の角度、後退の方向を指示する模様が描写されています。
ドリル・ミサイル逆回転の開始を制止、ドメル艦隊を誘い込む状況にも感銘を受けました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

大帝の救援

「重力波スクリーン、異常事態《エマージェンシー》発生!

 遷移出現《ワープ・アウト》の兆候を探知、天体クラスの巨大質量です!!」

 観測員《スキャナー》の絶叫が艦橋《ブリッジ》に響いた、次の瞬間。

 白光の爆発が闇を切り裂き、見覚えのある勇姿が無限艦隊の背後に現れた。

 

「大帝!」

 私の名を冠した戦艦の艦橋《ブリッジ》は静寂に包まれ、皆が息を呑み巨大な闖入者を凝視していたが。

 思わず洩れた呟き、安堵の溜息が緊張を解いた。

 忠実な副官タラン准将も事態を悟り、面に歓喜の色が昇る。

 

「彗星《クェーサー》が何故、太陽系内に遷移《ワープ》してくるのだ!?

 おお、動き始めた!」

 ガミラス帝国が一旦崩壊した後の事情を知らぬ幕僚の唇から、困惑の声が迸る。

 

「凄い、奴等を踏み潰している!

 何者か知らんが、味方だぞ!!」

「間違いありません、意図的に密集地帯を狙い敵陣を疾走しています!

 無限艦隊が算を乱し、後退し始めました!!」

 

 嵐の化身が縦横無尽に表示画面《スクリーン》を駆け巡り、無限艦隊を蹂躙。

 皆の瞳から希望の光が溢れ、歓喜の声が艦橋に響き渡った。

 大帝の座乗する戦闘要塞、白色彗星《ホワイト・クェーサー》は我々の眼前で本領を発揮。

 高速回転する表層の激流に数多の艦艇が粉砕され、宇宙の塵と化す。

 

「総統、援軍から連絡《コンタクト》が入りました!

 艦橋《ブリッジ》前方の表示枠、主画面《メインパネル》へ表示します!!」

 通信科士官が操作、表示枠《ウィンドゥ》を瞬時に拡大。

 一度は宇宙の塵と化した敗者、私に再戦の機会を与えてくれた盟友。

 壮年の緑色人《グリーン・マン》が表示盤に映り、豪快な笑い声を轟かせた。

 

 

「間に合ったな、総統!

 ガミラスの戦士諸君が見せた勇戦、敢闘は敬服に値し我々の模範とすべき所だ。

 我等も宇宙航行種族《スペーサー》の一員、女神救出作戦に賛同し参戦を申し入れる。

 火星の青色人戦士、ガミラス星人は信頼出来る勇者である事を実戦の場で証明した。

 今度は我々、木星の緑色人戦士が諸君の信頼を得られるかどうか試される番だ。

 

 無限艦隊は容易ならぬ敵だが我々も総統と同様、宇宙戦艦ヤマトと対等に戦った者。

 小惑星帯《アステロイド・ベルト》の彼方、第5惑星軌道以遠に撃退して見せる。

 火星《ガミラス》軍に劣らぬ実力と証明する様、我等もまた死力を尽くし戦う事を誓うぞ。

 我々の言葉が真実と証明する為、現在只今より総力を挙げ無限艦隊と戦闘を開始する。

 

 宇宙戦士《スペース・ファイター》の同志諸君、我々の戦い振りを見て頂こう。

 無限艦隊との戦いは未だ続く故、総統以下の勇者達には充分な休息を取って貰いたい。

 女神を救う為に数日後の交代に備え、戦力の回復をお願いする次第である。

 ゆっくりと休んでくれ、ガミラスの勇者達」

 

「感謝致しますぞ、大帝、幾重にも御礼を申し上げる!

 貴軍の救援が今少し遅ければ我等、ガミラス軍は全滅しておりました。

 誠に失礼極まりない申し出だが、水星《テラ》の防衛を一任して構わぬだろうか?

 火星《ガミラス》に残った部下達を、救出に向かいたいのです」

 私は大帝に一礼すると別画面枠に映る副将、次席指揮官ドメルに頷いた。

 

「聞いての通りだ、我々の努力は無駄ではなかった様だな。

 行動可能な艦は、残っているか?」

「本艦の他、1隻だけです」

 

「こちらも同様だが、シュルツ達の安否確認は我々の手で行わねばならん。

 水星《テラ》防衛は彗星帝国の方々に委ね、火星《ガミラス》に向かう」

「僭越ながら、比較的損傷の少ない『ドメラーズ2世』に先鋒を御任せ下さい。

 副長ゲール以下全乗組員の総意です、必ずや第4惑星への道を切り拓きます」

 

 

「総統、その必要は無いぞ。

 ハルゼー、報告せよ!」

 大白色彗星帝国皇帝の声が響き、通信用画面に別の映像が割り込んだ。

 血塗れの青色人が操作卓にもたれかかり、懸命に何事かを訴えている。

 

「…我々の事は構わず、水星《テラ》を護る艦隊の援護に廻って欲しい!

 自分達の始末を付ける覚悟は出来ている、第3惑星を頼む!!

 女神救出作戦の鍵を握る地球人《テラナー》、総統を救援せよ!」

 雑音《ノイズ》と共に音響回路が繋がり、聞き慣れた部下の声が耳に飛び込んで来た。

 

「シュルツ!」

 枠《ウィンドゥ》の中で、火星防衛の責任者が瞳を見開いた。

「総統!

 御無事で!!」

 

「水星《テラ》防衛は問題無い、無限艦隊も撃退されつつある。

 他の者も大丈夫か、ガンツは無事か?」

「副官は急造陣地、ディモス基地に赴き援護射撃を指揮しておりましたが。

 反射衛星砲の制御室《コントロール・ルーム》は現在、連絡不通であります!」

 

「ハルゼー!?」

「ナスカ、衛星と繋げ!

 大帝に直接、報告せよ!!」

「中継します!」

 

 ナスカ提督の率いる先遣艦隊、高速中型空母を経由の音声が交錯。

 別の画面枠に倒壊した瓦礫の中から、負傷者を掘り起こす模様が映る。

 肥満体の男が最後に現れ、血の気の失せた顔を画面に拡大。

 シュルツの唇から、絶叫が響く。

「ガンツ!」

 

 我々の声が先方に届いたと見え、別の音声が割り込む。

「呼吸は安定しています、心配ありません!

 白色彗星帝国軍の名誉に懸け、1人残らず救助いたします!!」

 画面に映る陸戦隊の勇士達に謝意を示し、私は深々と頭を下げた。

 

「大ガミラス総統として、大白色彗星帝国の戦士諸君に御礼を申し上げる。

 配慮に感謝する、ありがとう!」

 

 画面《スクリーン》の中でハルゼー提督、ナスカ司令官が顔を輝かせた。

「光栄であります!

 我等もまた貴軍の戦況、勇士の方々と奮戦の模様は拝見しておりました!

 青色人の戦い振り、敢闘精神は我々の模範とする処であります!!」

 

 安堵の溜息が洩れ、視野が霞む。

 気力を奮い立たせ、薄れかかる意識を強引に引き締める。

「充分です、我等もまた白色彗星帝国の方々と共に戦える事を誇りに思いますぞ。

 ガミラス民族を代表して貴官の御心遣いに感謝し、幾重にも御礼を申し上げる」

 ハルゼー提督、ナスカ司令官が画面の中から最敬礼で応えた。

 

「ありがとう、総統。

 私の部下達も、為すべき事は心得ている。

 無限艦隊との戦闘は引き受ける、休憩を取って貰いたい」

 大帝の満足気な声が響き、主表示画面《メインパネル》に視線を戻す。

「重ねて感謝を申し上げます、大帝殿」

 緊張の糸が切れ、意識が暗闇に吸い込まれた。

 

 

 水星《テラ》周辺宙域の敵、主力部隊は彗星が蹂躙。

 火星《ガミラス》周辺宙域の敵も激戦の末、ハルゼー機動部隊に駆逐されている。

 私が意識を喪っている間に、火星基地の負傷者も総て救出。

 旗艦メダルーサ装備、火炎直撃砲に数多の敵艦が殲滅された。

 

 宇宙戦闘機イーターⅡ、超高速邀撃機パラノイア、宇宙駆逐艦は連係攻撃を披露。

 狩人達が猛獣を倒す様に緻密、細心の注意を払い犠牲者を出さぬ集団戦闘を繰り広げる。

 長距離偵察攻撃機デスバデーター、宇宙潜航艦《スペース・サブマリン》は後方を攪乱。

 大戦艦の回転式砲塔が敵艦を屠り、大型ミサイル艦も数多の誘導弾を自在に操り突破を許さぬ。

 

 白色彗星帝国軍の機体、艦艇は貫通不能物質モルケックス装甲を纏い事実上無敵。

 瞬間物質移送装置も遮断する異次元空間、耐エネルギー構造力場が敵艦の砲撃を軽々と退ける。

 激戦数時間の後、火星宙域に展開する無限艦隊は一掃されたが。

 早急に戦力を回復し、無限艦隊に再び対抗せねばならぬ。

 

 

 大帝は異なる分岐先、別の複製世界《レプリカ》で連絡《メッセージ》を受信。

 女神の封印を解く鍵《キイワード》を得て、総ての記憶が甦った。

 太陽系防衛戦の戦場は異なる複製世界《レプリカ》の為、通常の超光速機関では到達不可能。

 我々が無限艦隊と闘う間、白色彗星帝国の戦士達も厳しい試練に曝された。

 

 テレザート星唯一の生存者、反物質を操る超能力者にも連絡は到達。

 彼女は宇宙戦艦ヤマト航海班長を務める島大介を救う為、大帝に協力の要請を承諾した。

 高次元重層物質《ホワルゴニウム》の制御を試み、白色彗星帝国軍の超次元間移動を援助。

 異世界に接続する時空転換力場、多元宇宙の門《ゲート》を抜ける事は真に至難の業であった。

 

 転移力場の所在地は燃え盛る赤色巨星の核心、或いは超重力の渦巻く黒太陽《ブラックホール》。

 多元宇宙の壁を越える為には相応の覚悟が要求され、生死を超越せねば越える事が出来ぬ。

 強靭な防御力場を備えた宇宙戦艦も爆発四散は間違い無し、猪武者も尻込みする破滅必至の地。

 白色彗星帝国の戦士諸君は幾度と無く、底無し沼にも等しい恐怖と闘い克服する事を要求された。

 

 彗星帝国の勇者達は無限艦隊と闘い続けた我が軍と同様、希望を棄てず無数の罠と時空の壁を突破。

 思い掛けぬ盟友の参戦により地下都市に残留する地球人、ガミラス宇宙軍は壊滅を免れた。

 他の複製世界にも惑星メル女王、メローラ姫が接続《アクセス》の詳細な手順を送信中。

 太陽系防衛戦は最大の危機を乗り越え、次なる段階へ突入する事となった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

三惑星連合軍

 白色彗星帝国軍は無数の敵艦を蹴散らし、木星《ゼウス》に進撃。

 土星《クロノス》の衛星タイタン、氷の世界に遺棄された秘密基地も奪還するが。 大帝は戦略的に無意味な消耗戦を避け、威力偵察の終結を選択。

 攻勢終末点の超過を許さず、木星《ゼウス》周辺宙域に敵艦を誘い込む。

 

 浮遊大陸には遠隔操作の無人施設、誘導弾発射陣地を急造。

 巨大惑星の側に敵艦を誘い、想定外の角度から援護射撃を浴びせている。

 無数の敵艦が混乱状態に陥り、態勢を立て直す前に熟練の戦士達は撤退。

 火炎直撃砲を戦闘衛星に仕込み、小惑星に配置の第二防衛線に誘った。

 

 ガミラス軍の参戦を申し出たが、ズォーダー大帝は固辞。

 多数の負傷者と艦艇の損傷を指摘、戦力回復前の逐次投入案は厳禁と暗示された。

 白色彗星帝国軍は瞬間物質移送装置、設計図の提供を受け簡易量産化も推進。

 火炎直撃砲に原理を適用、超小型化トランスフォーム砲の標準装備を完遂している。

 

 ハルゼー提督の旗艦『メダルーサ』同様、大戦艦・ミサイル艦・駆逐艦も備砲を換装。

 光線砲《レーザー》と熱線砲《ブラスター》の射線、火球は百発百中となった。

 ミサイル艦の標準装備《オプション》、大小の誘導弾も無航跡で宇宙空間を疾走。

 探知不能で避ける術は無く、遠距離攻撃を受けた敵艦は次々に姿を消している。

 狙撃手の位置を暴露せず弾道、斜線の見えぬ秘密兵器には無限艦隊も苦戦。

 緑色人戦士【グリーン・マン】達は遮蔽陣地に潜み、第二防衛線を維持し続けた。

 

 

 大白色彗星帝国軍は総力を挙げ戦線の安定化、勢力の均衡を成し遂げたかに見えたが。

 数日後に無限艦隊は想定を遙かに上回る厄介な敵、有能な宇宙戦士である事が判明した。

 大した知性を持たぬと過小評価していた《敵》、タナトス生命体《エネミー》は対抗策を用意。

 モルケックス装甲を無効化する唯一の物質、過酸化水素を添付した爆弾を投入して来たのだ。

 

 過酸化水素を浴び変質した鉄壁の鎧は謎の特性、ドライブ効果により銀河系中枢部に超光速で飛翔。

 ガトランティス艦隊は強靭な装甲を失い、被弾時の防御力が激減。

 長期修理が必要と判断され、戦列を離脱する艦艇や機体が続出。

 無限の物量を誇る敵艦隊に圧倒され、緑色人戦士達は徐々に後退を余儀無くされた。

 

 白色彗星もまた集中砲撃を受け、一点に集中した点射により外周の防御回転渦流層を喪失。

 帝国都市要塞の防御火力も多数の敵艦を撃破したが、砲撃を浴び続けた岩盤に亀裂が生じる。

 伝説の宇宙要塞《オールド・マン》同様、無数の礫を撒き散らし閃光と共に崩壊。

 時限式の散開式焼夷弾や榴散弾、散弾銃《ショットガン》の要領で無数の敵艦を撃破している。

 

 大帝は要塞の深奥部に隠匿された第3段階の最終兵器、超巨大戦艦《ジャイアント》を投入。

 大型の衛星である《月》を一撃で破壊、ヤマトを威圧した巨艦も縦横無尽の奮戦を繰り広げるが。

 多大な戦果を挙げた代償に集中砲火を浴び、徐々に戦闘力が低下。

 超巨大戦艦も数多の敵艦を道連れに爆発、宇宙の塵と化したが。

 ズォーダー大帝以下、自爆前に全乗員は整然と脱出している。

 

 太陽系防衛軍は再び最後の砦である第3惑星、水星《テラ》周辺宙域に追い詰められたが。

 土壇場で超弩級宇宙戦艦アンドロメダ、ヤマトを筆頭とする地球防衛艦隊が参戦。

 強力な増幅装置を備えた拡散波動砲から、タキオン粒子の奔流を侵攻軍に投射。

 白色彗星帝国艦隊に後方退避が要請され、無限艦隊との激闘を開始する事となった。

 

 

 

 地球防衛艦隊は疲労困憊した我等ガミラス宇宙軍、白色彗星帝国軍と交代。

 記憶と異なる熟練の技を披露し、無限艦隊に反撃を浴びせる事となったが。

 驚くべき事に地球人技術スタッフは、時間流の異なる次元界に於いて。

 超弩級宇宙戦艦ヤマトの他に、想定外の戦力を準備していた。

 

 増幅装置付きの拡散波動砲2門、大口径の衝撃波砲12門を装備する最新鋭艦アンドロメダ。

 拡散波動砲2門を装備する主力戦艦、改造型の《航空戦艦》とも称するべき宇宙空母。

 小型拡散波動砲を装備の巡洋艦、パトロール艦、護衛艦。

 波動砲は無いが強力な宇宙魚雷を多数、搭載した駆逐艦。

 戦闘爆撃機《コスモ・タイガー2》、中型雷撃艇。

 空母機動部隊を含む地球防衛艦隊までをも竣工させ、戦線に投入して来たが。

 天才・真田志郎が率いる技術班《メカニック》に、抜かりは無かった。

 大白色彗星帝国軍との対決に敗れ去った戦訓を、確実に盛り込んでいた。

 

 新造戦艦アンドロメダ以下の地球防衛艦隊は、史実と完全に別物。

 完全自動制御で乗組員は黙って見ているだけの、想定外の事態に全く対処し得ない欠陥品ではなかった。

 戦闘証明済《コンバット・ブローブン》の我々ガミラス軍、大白色彗星帝国軍に優るとも劣らぬ。

 全く遜色の無い、いや、或る意味では我々を遥に凌ぐ。

 高度な戦闘能力を装備する優秀な宇宙艦隊、達人《プロフェッショナル》へと変貌を遂げていた。

 

 気息奄々たる状態に追い込まれた我々、ガミラス及びガトランティス軍と交代した宇宙の戦士。

 地球人達は私の予想を遙かに上回る、巧みな連係動作≪コンビネーション≫を披露。

 多数の宇宙戦闘機隊≪コスモ・タイガー≫が、宇宙空間を乱舞。

 高速と機動性を生かし、無限艦隊の隊列を掻き乱す。

 反撃に移る無限艦隊の包囲網から、命辛々脱出する態を装い。

 一直線に味方艦隊へと進路を変更し、弱敵と侮った敵を罠へと誘導。

 追いすがる無限艦隊の砲撃を、紙一重の差で避け続ける≪見切り≫。

 主力戦艦群の射程距離内へと誘い入れ袋の鼠、一網打尽とする意図は明白である。

 

 既に有効射程距離内に入った筈の、無限艦隊に対し。

 地球防衛艦隊は何故か、頑なに沈黙を守り続けた。

 勝ち誇る無限艦隊が、更に肉薄。

 冥王星ハデス沖宇宙戦で見せた、地球艦隊の回避運動が再現される。

 既に危険な程、敵を引き付けている筈だが。

 沖田は、何を狙っているのか。

 反撃が無いまま、至近距離≪クロス・レンジ≫へ殺到する無限艦隊。

 一瞬の出来事だった。

 

 巡洋艦、パトロール艦、護衛艦。

 小型艦が一斉に艦首を煌かせ、拡散波動砲を発射。

 駄目だ、戦闘機隊≪コスモ・タイガー≫が巻き込まれる!

 波動砲の直撃を受け、全滅してしまうではないか!!

 

 実戦慣れしておらぬ地球人達は、冷静さを欠いている。

 小型艦艇に配属された新米の戦士達が、緊張に堪え切れなくなったか。

 不気味な沈黙を守り続ける沖田に不信の念が募り、戦闘機隊を巻き添えにしてしまった。

 私もドメルも大帝も、ガミラス並びガトランティスの戦士全員がそう思った。

 

 一直線に地球艦隊へ向かっていた、戦闘機隊≪コスモ・タイガー≫の群れが。

 不意に、四散。

 海中の魚群よろしく、一斉に方向転換。

 極限の間合いで擦り抜け、タキオン粒子の奔流を回避する。

 

 石を投げても届きそうな距離に肉薄していた、無限艦隊の先鋒が。

 拡散波動砲の眩い光条の中へ、頭から突っ込んだ。

 強風に吹き散らされる、木の葉の如く。

 翻弄され、霧の様に消失する無数の艦影。

 

 完璧な罠≪トラップ≫。

 全ては緻密に計算され尽くした、一部の隙も無い見事な作戦。

 狡猾にして綿密に練り上げられた、絶妙な機動。

 驚異的な練度を必要とする、艦隊と戦闘機隊の連係動作であった。

 

 先鋒の壊滅により、接近し過ぎたと悟ったか。

 敵の後続部隊が、慌てて反転に移る。

 算を乱して逃走する無限艦隊に向け、地球軍の駆逐艦≪デストロイヤー≫が魚雷を発射。

 青白い殺人者が、標的に迫る。

 

 魚雷を回避する為、焦って強引に変針する無限艦隊。

 至る所で衝突、接触する艦が続出。

 撤退を援護する為、突進して来た後続部隊が立ち往生。

 地球軍の駆逐艦≪デストロイヤー≫を攻撃、出来ぬ。

 

 防御力に劣る巡洋艦、パトロール艦、護衛艦が後退。

 駆逐艦も反転、離脱。

 アンドロメダ、ヤマト以下。

 主力戦艦群の大口径衝撃波砲≪ショック・カノン≫が、猛烈な砲撃を開始する。

 冥王星ハデス沖宇宙戦に於ける地球艦隊の練度が、再び再現された。

 

 高い命中精度を披露し、衝撃波砲が敵を捕捉。

 無限艦隊の大型艦が次々に、炎に包まれる。

 中小型艦も被弾、一撃で爆発。

 不利と見て、一斉に反転する敵部隊。

 全速力で射程距離外へ、一目散に離脱を試みる。

 

 先刻の閃光を遥かに上回る、強烈な光輝。

 地球軍戦艦に装備された大型拡散波動砲が火を噴いた。

 増幅装置付きの大型波動砲は、小型波動砲と比べ物にならぬ長射程を誇る。

 一斉に回頭し離脱を図るが、逃げる術は無い。

 

 宇宙蛸クトゥルーが舞わせる偽足の如く、四方八方に拡がり飛散するタキオン粒子。

 光の粒子流に飲み込まれ、消失≪ホワイト・アウト≫する無限艦隊。

 激減した残存艦が恐慌状態≪パニック≫に陥り、必死で逃走を図る。

 

 群集心理に煽られ、一団となって疾走する無限艦隊。

 満を持して宇宙戦艦ヤマトの代名詞、波動砲が火を噴く。

 他艦に装備の拡散波動砲と異なり、一直線に突き進む光の破砕流。

 一方向に誘導されていた敵部隊を捕捉し、隙間無く貫通。

 完全撃砕、ストライク。

 残存艦が、全滅した。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

地球人の魔術

 防御力に劣る護衛艦、パトロール艦は短射程の決戦兵器で最大の効果を発揮。

 次回の小型の拡散波動砲を再び、発射する好機に備え後方に温存する。

 防御力の高い戦艦は数か所、被弾したが戦闘の継続は可能。

 大型の拡散波動砲を発射の為、エネルギー再充填まで多少の時間は必要だが。

 射程距離内の敵艦は既に全滅しており、全く問題は無い。

 

 無限艦隊の新手が、押し寄せた。

 地球防衛艦隊は戦艦を先頭に押し立て、前進。

 一糸乱れぬ艦隊運動を見せ、手足の様に動く。

 エネルギー充填中の護衛艦、パトロール艦も比較的安全な後方で援護射撃を実施。

 流れる様に滑らかな魚群の動き、編隊機動を再び披露する。

 

 地球人達は、幾つかの集団に分かれた。

 一見無造作に、小集団毎に無限艦隊へと突入。

 各所で激しい砲撃戦が展開される。

 防衛艦隊は戦闘を続けながら、互いに接近。

 

 戦艦を中心とする艦隊、球状の編隊が猛烈な速度で真正面から交錯。

 正面衝突は免れず、大爆発が起こる事は間違いない。

 地球防衛艦隊は軌道を誤り、大損害を出して自滅の道を辿ったのか?

 思わず、身を乗り出した。

 

 

 何も、起こらぬ。

 予想は、見事に裏切られた。

 正面から突っ込み、高速で激突した筈の地球防衛艦隊は。

 密集隊形を保った儘、互いの隊列を透り抜けた。

 

 嘘だろう?

 私は、呆れた。

 ガミラス宇宙軍の最精鋭、ドメル将軍の部下達にも此の様な芸当は出来ぬ。

 強行すれば必ず、接触事故が発生する。

 

 不信の念に満たされた私の心中を、逆撫でするかの如く。

 魔法の様な地球防衛艦隊の機動≪アクロバット≫は、次々に実演され続けた。

 怪しい、絶対に怪しい、怪しさ大爆発だ。

 何か、手品の種が隠されているに違いあるまい。

 

 眼を皿の様に凝らし、懸命に魔術の種を見破ろうとしたが。

 無駄、であった。

 地球人達は驚異的、神業の様な艦隊運動を連発。

 幸運に恵まれた僥倖の確率を遙かに超え、手練の技と認めざるを得ぬ。

 

 

 地球艦隊は真正面から、3次元立体的に交錯。

 上下、左右、斜め45度。

 ありとあらゆる角度から、集団交差運動を実行。

 敵は、全く対応できぬ。

 

 当然だ。

 同じ機動を行えば間違い無く、正面衝突し全滅する。

 無限艦隊は追随を諦め、戦術を転換。

 地球艦隊の周囲を埋め尽くし、環状砲撃を浴びせる態勢を整えた。

 今度こそ、避ける術は無い。

 

 だが、次の瞬間。

 地球軍艦艇は魚の群れの如く、一瞬で散った。

 巡洋艦以下の中小型艦は同艦種に纏まり、単縦陣を形成。

 主力戦艦の援護射撃に気を取られ、砲撃の衰えた無限艦隊の舷側を。

 擦らんばかりの至近距離で、高速突破してのける。

 

 環状包囲網の外側に抜け出た小艦隊が、単横陣に変化。

 速度を落とさず、直角に転針する。

 再び、高速の集団交差。

 何度見ても、魔術としか思えぬ。

 

 

 包囲する側の無限艦隊が大混乱に陥り、砲撃が乱れる。

 地球艦隊を狙った筈のエネルギービームが、環状包囲網の反対側に位置する味方艦を直撃。

 巡洋艦以下の地球軍艦艇が背後に現れ、的確に衝撃波砲(ショック・カノン)を浴びせる。

 敵味方から砲撃を受け、無数の爆発が生じ宇宙空間を彩った。

 

 無限艦隊の環状包囲網に大穴が開き、地球艦隊を狙った集中砲火が乱れる。

 巡洋艦以下の小艦艇を脱出させ、囮となった戦艦群は多少の手傷を負った模様だが。

 充分な戦闘力を維持して環状包囲網を崩し、巡洋艦以下と新たな編隊を組む。

 

 戦艦、巡洋艦、パトロール艦、護衛艦の順に配置。

 円錐形の開口部には、主力戦艦。

 小型艦が最奥、円錐形の頂点を占める。

 見慣れぬ陣形だが、逆ではないのか?

 

 

 口惜しい事に、地球艦隊が正解だった。

 無限艦隊の砲撃を受けた主力戦艦は頑強に、位置(ポジション)を維持(キープ)。

 防御力に劣る小型艦への砲撃を妨害。

 円錐形の開口部に、敵の指揮艦が呑み込まれる。

 

 集中砲撃を受け、旗艦が爆発。指揮系統が喪われ、敵部隊の動きが乱れた。

 指揮艦を狙う意図に気付いた無限艦隊は、円錐形の周囲に廻り込む。

 頂点に位置する小型艦への砲撃を試みるが。

 地球艦隊は魚群の如く、一瞬で散開し電光石化の方向転換が再び実演された。

 

 今度は先刻の円錐形と異なる陣形を組み、主力戦艦と巡洋艦が外側に並ぶ。

 パトロール艦と護衛艦は内側を占め、散開した無限艦隊の一部を円筒形が呑み込む。

 円筒形の内部に集中砲撃を加え、外側の艦隊には戦艦と巡洋艦が応戦。

 パトロール艦と護衛艦は防御力に劣るが、狙撃の隙を与えず敵艦隊の射程距離圏内から離脱する。

 

 

 右往左往する無限艦隊は密かに、或る一点へと誘導されていた。

 団子状態に重なった無限艦隊を、貫通力の高い大出力光線が照射。

 新鋭戦艦アンドロメダ艦橋に装備された、大口径レーザー砲。

 骨法秘拳≪徹し≫の如く、何隻もの敵艦が串刺しとなる。

 

 何時の間にか忍び寄った駆逐艦の群れが、多数の宇宙魚雷を発射。

 辛うじて回避した無限艦隊の眼前で、待ち構えた護衛艦が一斉に拡散波動砲を発射する。

 新手が反撃に出る寸前、身を翻して逃走。

 追撃に移る無限艦隊に再び、魚雷の網が被せられた。

 

 火力に物を言わせて突破した敵艦に向け、パトロール艦が拡散波動砲を発射。

 新たな大群の殺到する直前、防御力の劣る高速偵察艦は逸早く逃走。

 何時の間にか背後に控えていた戦艦、巡洋艦の衝撃波砲が痛打を浴びせる。

 爆発する艦の破片を物ともせず重防御、大型の敵艦が前面に躍り出た。

 

 

 地球軍主力戦艦に真正面から砲撃戦を挑むが、幻の如く雷撃機の編隊が出現。

 魚雷を命中させると風の様に去り、追撃に移る敵艦の鼻先に別の魚雷が殺到する。

 駆逐艦の集団雷撃に襲われ混乱する艦列に照準を定め、巡洋艦が拡散波動砲を発射。

 巡洋艦に突撃する新手の敵を緻密に計算され、誤射とならぬ絶妙の角度から戦艦が迎え撃つ。

 

 主力戦艦、アンドロメダ、ヤマト装備の重衝撃波砲が唸り激減した敵艦を次々に撃破。

 地球艦隊の各艦が波動砲の再充填を終えるまで、最大最強の戦艦が警戒に当たる。

 二重三重どころか数十手も先を読み、敵艦の行動を完璧に予測した絶妙の連携動作(コンビネーション)。

 異次元の艦隊機動、集団運動を見せ付けられた私は劣等感すら覚えた。

 

 

「一体、どういう事だ?

 この様な難易度の高い技、一体どうやって身に付けた!?」

「我々には、逆立ちしても出来ん芸当だ!

 異次元の世界で、精神感応能力を身に付けたとでも云うのか?」

 

 ハルゼー提督の怒鳴り声に副将ナスカ司令官、ドメル将軍も同時に頷いた。

 重大な心理的衝撃を受けたと見え、語尾は悲鳴に近い。

 遺憾ながら、全く同感である。

 ズォーダー大帝も唸り、続いて感嘆の声を挙げる。

 

 次の瞬間。

 見覚えのある光景が展開され、息が止まった。

 盲目的な感情の爆発を抑え切れず、絶叫が洩れる。

「こんな、馬鹿な!」

 

 

 恐怖で身体が硬直し、心の奥底に封じ込めた悪夢が蘇る。

 放射能除去装置の作動開始に伴う、放射能の希薄化を察知した私は。

 宇宙戦艦ヤマト艦内の白兵戦を中断し、実用化に成功した決戦秘密兵器で決着を図った。

 

 私の名を冠し無断で複製(コピー)した波動砲の引き金を引き、勝利を確信。

 心眼では既に爆発四散する宿敵、ヤマトの最期を視ていたが。

 波動砲の猛威も弾き返す特殊装備、空間磁力メッキ。

 想定外の掟破り、真田志郎の発明品が私の意識を切り裂いた次第。

 

 観艦式の際に艦上を彩る満艦飾の如く、地球防衛艦隊の纏う最強の鏡(レンズ)。

 空間磁力メッキの光芒が煌き、宇宙空間を蒼氷色(アイス・ブルー)に染める。

 喉元まで出掛かった罵詈雑言を、辛うじて呑み込む。

 感情的短絡《ヒステリー》を抑え込む為、渾身の意志力を必要とした。

 

 

 鏡面塗装を施された救命艇、『空しい希望(フォーローン・ホープ)』号の如く。

 小型戦闘機や魚雷艇も銀色の鎧を纏い、水晶《クリスタル》の様に輝いていた。

 敵の光線砲は足掛かりを得られず、全てが反射され撥ね返される。

 砲撃の軌道を逆走、発射艦の砲塔を貫く事となった。

 

 無限艦隊が大量に発射した、対モルケックス装甲の秘密兵器。

 過酸化水素水封入ミサイルが命中し、炸裂する。

 モルケックス装甲を装備せぬ地球艦には、何の効果も無い。

 下瀬火薬が海中で威力を発揮せぬ様に、宇宙空間に拡散するのみ。

 

 円錐形、円筒形、単縦陣、単横陣、螺旋形、鏃形、球形、弓形、楕円形、投網形、楔形。

 ありとあらゆる隊形が現出し、高速集団交差運動が繰り返された。

 眼目眩しく回転変化する、万華鏡《カレイド・スコープ》の如き連係機動。

 幻惑された敵艦が照準を誤り、同士討ちを演じる。

 

 

 戦闘機コスモ・タイガー2型、雷撃機が乱入。

 不規則な乱舞で混乱を助長し、風の様に去る。

 駆逐艦も敵陣を駆け抜け、追撃に移る敵艦の鼻先を魚雷が直撃。

 主力戦艦の重火器が閃き、縦横無尽に宙域を薙ぎ払う。

 

 地球人達は遠隔視能力、千里眼《クレアボワイヤンス》を会得したのであろうか。

 対手の反応を完璧に読み、天衣無縫に剣を操り無数の敵を斬り倒す魔戦士の如く。

 超絶の域に達した感嘆すべき魔術、立体交差集団運動を織り交ぜた驚異の多重連携攻撃を連発。

 敵艦には、悪夢としか思えぬであろう。

 

 窮地に追い詰め、確実に討ち取れる筈の標的が。

 射線に貫かれる寸前、想定外の機動を見せ視界の外に消える。

 同時に、異なる角度から衝撃波砲の光芒が殺到。

 凄腕の狩人達は確実に標的を射抜き、虚空に砕け散る。

 

 パルス・レーザーの断続的な光弾、衝撃波砲の軌跡が宇宙空間の闇を切り裂く。

 無限艦隊は総崩れとなり、全面的撤退を強いられた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

奇蹟の要諦

 地球防衛軍の魔術師(マニアック)、失礼、優れた手腕を発揮する練達者(エキスパート)達は。

 火星を新たな故郷と定めた青色人(ガミラス)、金星に拠る事となった緑色人(ガトランティス)の艦艇も修理してくれたが。

 作業の片手間に銀色の魔鏡、空間磁力メッキ発生装置を取り付け防御力を飛躍的に強化。

 小型の波動砲も超光速跳航(ワープ)機関を備える駆逐艦(デストロイヤー)、小型護衛艦尾標準装備となっている。

 

 真田志郎に至っては空間磁力メッキ発生装置の超小型化、ハルマン切換え装置に匹敵する増幅装置の量産も完遂。

 嬉々として修理改造に精を出す機械班《メカニック》により、全機に追加装備が行われた。

 戦闘機イーター2、戦闘攻撃機デスバデーター、超高速迎撃機パラノイア等の小型機にまで。

 光線反射式の鏡面状防御力場(レンズ・フィールド)が装備され、格段に防御力の向上を見た。

 

 水星(アクエリアス)の地球人(テラナー)、火星(ガミラス)の|青色人(ブルー・マン)、金星(ガトランティス)の|緑色人(グリーン・マン)。

 汎人類連合の艦隊は青い惑星(プラネット・ブルー)の戦闘旗、太陽系防衛軍の象徴(シンボル)を掲げ無限艦隊と激闘を展開。

 非公認の愛称《ニック・ネーム》ではあるが銀河パトロール隊の前身に準え、三惑星連合軍《トリプル・ファイター》と宣伝された。

 

 

 《精神と時の部屋》に類似する性質の、地空防衛艦隊が建造された次元界に於いて。

 銀河パトロール隊の艦政本部に勤務する造艦設計家達も、多大な貢献を成し遂げた。

 波動砲を発明した真田志郎と大いに共鳴し、意気投合した彼等は。

 様々な決戦秘密兵器を考案し試作実験を重ね、実用的な兵器へと進化させる事となった。

 空間磁力メッキ発生装置を小型化し、戦闘機や雷撃機にまで搭載可能とし得た先端技術。

 数々の技術的成果は彼等の技術的助言や実際的意見等、真摯な協力の上で実現を見た。

 

 甚だ不本意ではあるが、文句を付ける訳には行かぬ。

 小型化された空間磁力メッキ発生装置をガミラス機へ追加装備、の事態も甘受せざるを得ない。

 感情的反発に突き動かされ、無益に異を唱えている場合ではない。

 個人的感情は、慎まねばならぬ。

 

 星雲名級超弩級戦艦《アンドロメダ》型、星団名級宇宙空母《オリオン》型。

 恒星級主力戦艦《シリウス》型、国名級巡洋艦《アトランティス》型。

 都市名級パトロール艦《カルタゴ》型、動物名級護衛艦《ヴォルフ》型。

 鳥類名級突撃駆逐艦《コンドル》型、F型、T型、S型の戦闘艇。

 地球防衛艦隊の全艦艇も既に、小型《空間磁力メッキ》発生装置を追加装備している。

 外見上は史実と同一であるが、防御力は格段に強化された。

 

 

 銀河パトロール隊の艦政本部は、創造力《イマジネーション》に優れる。

 多彩な発想と割り切り、思い切りの良さは後世の研究家からも高く評価されている。

 攻撃力は皆無、防御スクリーンの塊と化した装甲巡洋艦《アーマード・クルーザー》。

 火力に特化し機動力を軽視した鈍重の常識外れ、空飛ぶ鉄槌《モーラー》。

 惑星規模の要塞に匹敵する重火力、攻撃力を備えた超大型砲艦《スーパー・ガンボート》。

 更にマニアックな案も提示され、地球人技師達も乗り気になった。

 

 頭の痛い事に、問題の次元界には。

 汎用人型決戦兵器の開祖『マジンガーZ』創造者(クエイエイター)、兜十蔵博士を筆頭に。

 数多の高名な天才科学者《マッド・サイエンティス》達が大集結を果たし、待ち構えていたのだ。

 真田志郎技師長は彼等に感化され、超能力の域に達する機械親和能力を得た模様である。

 

 銀河文明史上屈指の超兵器(スーパー・ウェポン)、ディスラプター装備は地球人達が猛反対。

 我々には空間磁力メッキ発生装置、大小の波動砲で充分である。

 過ぎたるは及ばざるが如し、の諺を遵守。

 レンズマン達の精神干渉に拠り、空間破砕爆弾《スペース・スマッシャー》搭載案も辛うじて撤回された。

 小型の瞬間物質移送装置12基を取り付け、衝撃波砲《ショック・カノン》の連続射撃性能を改善。

 パルス・レーザー砲も遠距離偵察機や探査艇に増設され、襲撃機の総数を増している。

 

 

 驚異の連係動作《コンビネーション》、艦隊規模の集団運動についても説明があった。

 《精神と時の部屋》に似た性質の次元界では、数年に渡る時が経過。

 真田志郎達の艦隊建造と並行して、乗組員達も飛躍的な技量向上に取り組んでいるが。

 スターシャとサーシャの次元間遠隔感応能力、ミラとジェラの精神感応能力も彼等を支えていた。

 

 疲れ果て精魂尽き果てた地球人《テラナー》、宇宙戦士《スペース・ファイター》達は。

 睡眠中にも関わらず我々ガミラス宇宙軍の身を案じ、太陽系防衛戦の情況を知らんと欲した。

 如何なる理由に拠るものか。

 地球人達の想念と女性4人の精神感応能力、次元間遠隔感応能力が共鳴《リンク》した。

 

 超次元に跨る千里眼《クレア・ボワイヤンス》、時空を超越する遠隔視が実現した。

 《夢の回廊》が、開通したのだ。

 未知の精神作用により、地球人宇宙戦士達の夢に。

 太陽系防衛戦の映像が次元間の深遠を越え、精神の視野へと投影される事となった。

 

 翌朝起床した地球人達は気力を奮い起こし、過酷な目標に再挑戦《リトライ》を繰り返した。

 努力目標を達成すると、更に高次元の精妙無比なる編隊機動に挑戦。

 一切の容赦は無く、無理難題と同義の完璧を要求する猛特訓の末に。

 筆舌に尽くせぬ艱難辛苦に耐え、地球防衛艦隊は驚異的な集団運動実現能力を会得したのだ。

 

 

 地球人達は自ら新たな集団戦術を考案し、実現体得すべく懸命の努力を重ねた。

 銀河パトロール隊の誇る第1段階、及び第2段階レンズマン達による艦隊操作。

 指揮専用宇宙艦、御偉方《ディレクトリクス》を投入して初めて成し得た集団戦術。

 レンズマンにのみ可能な集団的精神融合、テレパシーに匹敵するレベルの意思疎通能力。

 宇宙塵回避高速飛行技術《クラッシャー・フォーメーション》、曲芸紛いの秘術も参考とされている。

 

 数多の熟練操縦者達は惜しみなく、無数の超絶的な技術《テクニック》を伝授してくれた。

 会得する為には、想像を絶する過酷な修練を要求されるが。

 銀河パトロール隊の指揮専用艦、御偉方《ディレクトリクス》抜きで。

 複雑精妙な艦隊運動を上演し得る、超人的な技量と練度を体得した。

 

 互いの意思疎通能力を駆使する同時連係動作、瞬間的伝達運動《フラッシュ・パス》。

 複雑精緻な多重反転《ダブル・クライフ》、幻惑動作《ミラージュ・フェイント》。

 数々の妙技を織込み、万華鏡《カレイド・スコープ》の如くに千変万化する超高等宇宙飛行技術。

 超高速の3次元立体集団交差運動を、完璧《パーフェクト》に実演する腕前を身に付けた。

 

 種も、仕掛けも、何も無かった。

 尽きせぬ反復訓練を繰り返す事で、体得するに至った基本動作。

 互いを完璧に信頼する事無しには、実現し得ぬ正確な加速度と方向の一致。

 血の滲む努力こそが齎した集団運動の秘訣、奇蹟《ミラクル》の要諦であったのだ。

 

 

 次元回廊の彼方に赴いた地球人達は他にも、銀河パトロール隊からの贈り物を携えていた。

 知覚力を用いて或る脳内細胞の潜在能力を活性化させ、治癒力を劇的に強化する夢の魔法。

 ポセニア人医師フィリップスの偉大なる発明、惑星メドンで誕生した松果腺刺激手術。

 伝説の男キムボール・キニスン負傷の際、四肢の再生と現役復帰を成し遂げた要因である。

 

 沖田艦長の言葉を引用した訓示は幸い、ガミラス全軍に深く浸透していた。

 ドメル将軍を筆頭に艦隊の乗組員達は被弾、爆発の際も最後の最後まで諦めなかった。

 生還の希望を棄てず懸命に脱出の道を探り、負傷者も含め多数を脱出させている。

 

 シュルツの統率する冥王星基地の戦友達もまた、反射衛星砲が破壊された後に奮闘。

 知恵と機転を総動員して極力大勢の要員、不時着した損傷機の搭乗員達に帰還の道を講じた。

 水星《テラ》各地の医療施設に収容され、重傷の為に戦列復帰は困難と診断された者も多い。

 

 大半は身体の麻痺・欠損・機能低下が原因であり、息を引き取った者も皆無とは言わぬが。

 運動神経の要諦である情報伝達細胞の再生手術、銀河文明の恩恵は多数の負傷者に道を拓いた。

 マゼラン星雲の青色人戦士、白色彗星帝国の緑色人戦士達にも松果腺刺激手術は有効であった。

 

 艦隊の乗組員、地上火力陣地の要員、小型機の搭乗員。

 太陽系防衛戦の負傷者は、次々に手術を受け戦列に復帰。

 艦艇と機体、魚雷と爆弾は物質複製装置(マルチ・デュプリケーター)で急造。

 驚異の集団運動を自在に操る魔術師、達人達の援護射撃を実施する事となった。

 

 

 小惑星帯まで戦線を押し返した我々、三惑星連合軍の優勢も長くは続かなかった。

 無限艦隊は空間磁力メッキを無効化する新兵器、コントラ・フィールド放射装置を投入したのだ。

 或る時空で無敵と畏怖された防御力場、パラトロン・バリアを打破し時間警察を崩壊させた切札。

 真田技師長の偉大なる発明も衆寡敵せず、強風に吹き散らされる砂塵の如く超空間に吸い込まれた。

 

 絶対的な防御を失った三惑星連合軍に対し、無限艦隊は数に物を言わせ猛烈な強襲を反復。

 水星《テラ》近接宙域の絶対防衛線に再び、追い詰められた我々の前に。

 思いがけぬ味方が、現れた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

女神の蒔いた種
地球戦団の援護


 或る時空に於いて銀河系最強の侵略者、エイバアド軍は数多の星間航行種族を蹂躙した。

 アリシア人の導師≪メンター≫ならぬ減物力、造物力を兼備の哲学種族ヒロソ人も打ち砕いたが。

 イースター・ゾーンの戦士達を含む地球戦団、総勢1億の挑戦者達が乾坤一擲の放胆な作戦を完遂。

 宇宙侵略者≪スペース・インベーダー≫は姿を消し、人類は滅亡を免れている。

 

 炭素=水素系種族の惑星エリダヌに於ける探検船の報告、超映動が終了した其の時。

 ヒンラート博士の大胆な仮説が披露され、会場全体が興奮の坩堝と化した直後に。

 出席者全員の精神平面に想定外の思考、心話が響いた。

 

(博士の思考様式、挑戦の気概を喪わない姿勢を賞賛します。

 私は地球戦団の別働隊、約2千万の乗組員を超空間に一時退避させました。

 戦士達の勇気に敬意を表し、4次元時空連続体への帰還を援助しますが。

 代償として、支援を要請します。

 

 多次元世界の知識が無い世界の皆様には、過酷過ぎる要求かもしれません。

 ですが私は無限の可能性を信じ、希望を託します。

 或る時空連続点≪クロス・ポイント≫、異次元の地球に到達してください。

 皆様の世界に、祝福を」

 

 

 独立星域≪イースター・ゾーン≫出身の別働隊指揮官タルイ以下、2千万の乗組員が実体化した。

 荒唐無稽と思われていた仮説が、出席者全員の眼前で実証された。

 無限の宇宙には、想像を遙かに超える存在が実在する。

 人類を救う為に生命を投げ出し、全滅した筈の2千万人を救ってくれた。

 

 炭素=水素系種族の筆頭エリダヌ人、地球人(エスピーヌン)達は哲学種族に協力を要請。

 新たな努力目標に挑むが、無数の障害と困難に直面した。

 ヒンラート博士の精神的把握法、挑戦の姿勢は有益と認められたが。

 次元跳航《ディメンション・ワープ》、時間跳躍《タイム・リープ》の実験は悉く失敗に終わった。

 

 弗素系種族や機械生命体、珪素系種族の援助も得るが顕著な進展は皆無。

 手探りで暗中模索し試行錯誤を積み重ねる以外に、方法は無い。

 無数の実験が繰り返されたが、光明は見えなかった。

 科学者達の忍耐力も限界に達し、研究の放棄を唱えている。

 

 タルイ副戦団長と最大の理解者、リンゲ・サン戦団長は研究の継続を主張。

 無数の挫折にも倦まず弛まず、思い付く限りの荒唐無稽な方法も地道に試し続けた。

 素人集団は想像力を駆使、実験を繰り返す無謀な挑戦者達の前で奇蹟《ミラクル》が突発。

 次元断層が生じ観測中、エネルギー枯渇寸前の戦闘艦から微弱な信号も検出された。

 

 宇宙海賊船《シャーク》の制御頭脳《ボースン》、人工生命体《アヤ》は最低限の電力消費量に設定。

 駆逐官の輪《リング》を預かった船長、深層睡眠状態の地球人を護り続けていた。

 地球を追放された鮫島豪は或る異星人と遭い、後継者の証を託され侵略者を駆逐。

 エネルギー供給後に異星人の遺産、母星を喪った異種族達の歴史と様々な情報が提供されている。

 

 《シャーク》装備の自動観測装置は漂流中、多種多様な現象を記録。

 銀河連邦に属する異種知性体、哲学種族の援助も得て徐々に解析が進んだ。

 無限に拡がる時空体系、百万の天球を自在に通過する転送機の創造には至らなかったが。

 次元断層の実験は繰り返され、太陽系防衛戦を展開中の複製世界に繋がった。

 

 

 地球戦団は重力場推進機構と瞬送装置を備え、エネルギー奪取弾も携えていた。

 絶対真空と絶対零度の宇宙空間に於いて、熱量を奪えば敵は戦闘不能と化す。

 防御力場は外部からの攻撃を防止するが、艦体内部のエネルギー流失を防ぐ機能は無い。

 合理的な判断、発想の転換は高く評価される。

 

 自艦のエネルギーを消費し、枯渇化させる必要は無い。

 敵艦のエネルギーを喪失させれば、戦闘不能となるのだから。

 次元断層に落ち込んだ宇宙戦艦ヤマトも、エネルギーを周囲の空間に吸収され艦橋の照明が消えた。

 スターシャの援助が無ければ、遭難した可能性が高い。

 

 エネルギー奪取弾の捕捉した敵艦は全動力が停まり、行動不能となる。

 周囲に拡がる絶対零度の宇宙空間へ熱量を吸収され、凍結するしかない。

 敵の体力を吸引する魔法≪リザイア≫、別名≪ストーム・ブリンガー≫と同じ発想だ。

 良く考えたものだ、発明者に敬意を表する。

 

 

 地球戦団の瞬送装置は跳航《ワープ》と異なり、人間を転送の場合に狂気となる確率が高いそうだが。

 小型の瞬送連絡装置で瞬間物質移送装置と同様、手榴弾を転送する分には何の問題も無い。

 再び真田志郎率いる地球人科学者、マッド・サイエンティスト達の出番となった。

 彼等は瞳を輝かせ舌舐め擦りし、エネルギー奪取弾を分解し構造を研究。

 エネルギー奪取弾の製造施設を設計、量産準備も整え稼働を開始する。

 

 三惑星連合軍に逆転の発想が供給され、防御力場を無効化。

 地球戦団の贈り物は真価を発揮、無数の敵艦が凍結し戦闘不能に陥った。

 

 宇宙海賊船≪シャーク≫に装備された歪曲波砲もまた、絶大な威力を発揮した。

 と共に太陽系防衛戦に駆け付ける際にも、歪曲波砲が効力を発揮したと聞く。

 

 

 

 宇宙戦艦ヤマトの衝撃波砲≪ショック・カノン≫と、一見似ているが。

 一種の次元振動を発生させ、敵艦を破壊する原理であるらしい。

 

 伝説の魔界都市、新宿の超能力者部隊≪サイキック・フォース≫。

 超戦士≪スーパー・ソルジャー≫副長が駆使する超能力、次元刀に近いのかもしれぬ。

 

 歪曲波砲もまた大口径レーザー砲に代わり、艦橋と艦体側面に装備される運びとなった。

 波動砲と衝撃波砲≪ショック・カノン≫の中間を埋め、広範囲影響攻撃砲として使用。

 

 

 天衣無縫の天才科学者達と接し、薫陶を受けた真田志郎は防御兵装を飛躍的に強化。

 天才科学者は宇宙海賊船≪シャーク≫の装備、エネルギー吸収光帆に注目。

 

 エネルギー奪取弾の原理を応用し更に発展させ、究極の進化形を追求。

 進化を強力に推し進め、≪エネルギー吸収防御壁≫を完成させた。

 

 空間磁力メッキと異なり、周囲の宇宙空間に展開する力場≪エネルギー・フィールド≫に非ず。

 艦体装甲板が攻撃エネルギーを無限に吸収し、蓄電器に受容可能な波動形態へ変換する。

 

 

 モルケックス装甲と共通する、物質性エネルギー透過不能重層次元力場。

 コントラ・フィールド放射装置により高次元空間へ誘導され、消失する事は無い。

 

 真田以下の技術スタッフは異次元世界で体得した、機械親和能力を駆使。

 伝説的タンペレ飛行機修理工場に匹敵する、魔術的な職人芸を発揮。

 大型艦艇から小型機体に至るまで。

 太陽系全艦艇へエネルギー吸収防御壁の追加装備を行い、エネルギー奪取弾への兵装転換を完遂した。

 

 

 

 三惑星連合軍は嘗ての第5番惑星、小惑星帯≪アステロイド・ベルト≫を奪還。

 寸暇を惜しみ、防衛線の再構築を急いだ。

 エネルギー吸収防御壁、エネルギー奪取弾を備える戦闘衛星≪デス・スター≫も配置。

 鋼鉄の砦を築くが、戦線の悪い予感は的中した。

 

 伝説の電脳機械人《ポスビ》が操る破片船、フラグメント・シップに装備される時間バリア。

 ≪相対時間フィールド≫を投入してきたのだ。

 

 

 最大80時間先の未来へと力場内部を時間移動させ得る、相対時間フィールド。

 時間の壁に隔てられた無限艦隊には、エネルギー奪取弾も無効であった。

 

 対抗策は点射、多数の火砲を1点に集中するピン・ポイント砲撃である。

 瞬間的にエネルギー転換能力を超える過負荷を生じさせれば。

 

 相対時間フィールドを破壊する事が、可能となる。

 再び集団行動戦術が、太陽系防衛戦の要となった。

 

 イースター・ゾーン出身の副戦団長、タルイ統率の勇者達。

 火星ガミラス、水星テラ、金星ガトランティス連合軍も奮闘を重ねるが。

 膨大な損害を省みず、雲霞の如く後続の敵艦が出現。

 波状攻撃に曝され、地球衛星軌道に絶対防衛線を敷いた我々の前に。

 伝説の天使が、舞い降りた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

伝説の事件相談員

 或る時空の銀河連合に関連する組織、WWWA所属の事件相談員≪トラブル・コンサルタント≫。

 ラブリー・エンゼル発信の無線、超空間経由の映像が届いた。

 

「…ったくもう、か弱い少女に重労働させんじゃないわよ!

 ホント、しんどかったわぁ。

 次元断層を使った時間移動の実績、なんて何にも無いし。

 誰も、な~んも知らないんだから!

 

 銀河連合の科学者も、無責任よね!

 ぶっつけ本番するしか手が無いなんて、サイテーよ!!

 手探り状態で何とかなっちゃったけど、もう2度とやりたくないわ!

 ソラナカ部長に、ガタガタ言われたって、やーよ。

 ずぇったい、御免蒙るかんね。

 

 惑星メルの王女、メローラの依頼だから引き受けたけどね。

 事件が解決しなかったら、どーなるかって事を、完璧に説明してくれたのよ。

 

 惑星ダングルで、ルーシファの計画を阻止してなかったら。

 ガルクロンΣ≪シグマ≫が充満して、人間の中枢神経に作用して意志を奪ったのよ。

 グラバース重工業の巨大複合製造施設は、ぜ~んぶ、ルーシファの物。

 連合宇宙軍の艦隊を数倍、上回る数の戦闘艦が揃って征服されちょうのよね。

 

 問題は、その後。

 セルダン計画が無かった場合の、≪銀河帝国興亡史≫よ。

 人類は徐々に退化を続けて原子力、宇宙航行技術を無くしちゃうんだよね。

 3万年にも及ぶ大暗黒時代が銀河系、人類全体を覆う事になんのよ。

 

 

 ラメールの空間破砕爆弾、スペース・スマッシャー事件も似た様なもんね。

 ルーシファが空間破砕爆弾の量産化に成功しちゃったら、打つ手なんて無いわよ。

 強請ってゆーか恐喝されると、銀河連合は言いなりになっちゃうのよねぇ~。

 根性、無いんだから。

 

 ボスコーンみたく中世封建的、時代錯誤、血縁関係重視の身分制度が発達しちゃってさ~。

 非人権的独裁国家、専制強権的な銀河帝国が成立しちゃうのよ。

 終いには内乱で空間破砕爆弾が盛大に使われて、平行宇宙を隔てる壁が大崩壊よ。

 数多の次元界が沸騰して溶解して、み~んな虚無の海になっちゃうんだからね。

 

 

 ドルロイだって、甘く見んじゃないわ。

 銀河系で最も優秀な技能職人集団が、ルーシファの手下にされちゃうのよ?

 セクサロイド、なんてもんじゃないわ。

 連合宇宙軍の制式兵器は足元にも及ばない高性能火器、優秀な兵器が次々に開発されんのよ。

 

 クラッシュ・ジャケットやら何やらがみ~んな、ルーシファの私設軍隊に装備されちゃってね。

 銀河連合は逆立ちしても勝てなくて、あっさり征服されちゃううんだけど。

 これまた、後が大変なのよ。

 ルーシファの後継組織、銀河系帝国がやたら張り切んのよね。

 

 超銀河系集団の征服を夢見て、攻勢終末点なんか頭から無視して領域を拡げるんだけど。

 終いには超越者の文明に抹消されて、時間犯罪者≪タイム・テロリスト≫扱いだかんね。

 

 

 チャクラも、そーよ。

 異次元の高等知的生命体、ポーラルーラと恒常的に接触が可能となった後にね。

 人類は進化するどころか、衰退し始めちゃったのよ。

 高度な精神文明のポーラルーラと接触して、人類に内在する暗黒面が表面化したって事かな。

 精神的汚濁、怠惰、依存、無気力、怨嗟、嫉妬、怨恨、差別、復讐、報復の無限連鎖。

 あー、うっとうしい、やんなっちゃうわ。

 

 オフィーリアなんて、もっと、ひどいわよ?

 グ・ジッフスが銀河連合の指揮中枢機能、中央大コンピュータ本体を乗っ取っちゃってね。

 ン・ガッファの染色体に全人類が汚染されて、異種生命体に変質させられんのよ。

 

 他にも色々言いたい事はあんだけど、キリが無いから省略するわね。

 アムニール、ノグロス、ダングル、ラメール、チャクラ、ドルロイ、オフィーリア。

 以下省略するけど、み~んな無事になってたんよ。

 

 惑星チャクラの稀元素イシャーナ発見者を、保安官ジェフみたいな善人に変えるのは簡単だけど。

 異種族ン・ガッファ、人工頭脳グ・ジッフスの《調整》はどうやったのかな?

 人類に協力する様、ばっちし言い聞かせてくれたのよね。

 どんだけ時間流を遡って、平行宇宙の分岐先を当たってくれたか見当もつかないわ。

 

 

 メローラの連絡で銀河連合、ポーラルーラ、ン・ガッファが大慌てで行動を開始したのよ。

 銀河連合の中央大コンピュータ、人工頭脳グ・ジッフスの計算能力を総動員してね。

 

 空間破砕爆弾≪スペース・スマッシャー≫の量産、製造手段も再発見したんだけど。

 惑星メルからの指示で相乗効果ってゆ~か、共鳴させて次元の壁を越えて来たのよ。

 

 何度もあさっての方向に向かいかけたり、次元遭難の一歩手前まで行ったりもしたんだけど。

 最後の決め手になったのは何たって、うちらの超能力なんだかんね。

 ダーティなんとか、なんて間違っても言っちゃ駄目よ。

 

 

 あたしらは、先遣隊。

 援軍に来たのは、うちらの宇宙からだけじゃないわ。

 太陽系国家と連合宇宙軍が総掛かりでも、無限艦隊には太刀打ち出来ないのよ。

 あたし達に続いて、もっと強力な連中が来るかんね。

 

 空間破砕爆弾≪スペース・スマッシャー≫を使って一気に吹き飛ばす、って手もあるけどさ。

 もっと、良い手があんのよ。

 多元宇宙が崩壊したら、あんた達も困るでしょ?

 

 もうちょっとだけ、踏ん張ってて。

 36個だけ残してある、空間破砕爆弾≪スペース・スマッシャー≫を使うの。

 水星≪テラ≫と太陽≪ソル≫の間に、次元回廊を開くわ。

 

 無限艦隊だって、タメ張れちゃう味方を呼んだげる。

 ぶないから、近付くんじゃないわよ?

 撒き込まれて、外宇宙に飛ばされても知らないかんね~」

 

 

 

 応答する隙を与えず、一方的に喋り続けた後で。

 長時間に渡る通信は、唐突に切れたが。

 水星後方に出現した宇宙艦隊は、遙かに真面目であった。

 

 要領良く情報を伝え、太陽系防衛戦に参戦する意志を表明してくれた。

 疲労の蓄積していた我々は厚意に感謝し、彼等と交代して損傷艦艇と機体の修理整備を急ぐ。

 太陽系防衛艦隊は各惑星に着陸し、乗員は体力と気力の回復に努める余裕を与えられた。

 

 次元回廊の開設作業は、クラッシャー・ダンのチームが担当。

 万能型宇宙船アトラスからの通信連絡は要領が良く、簡潔明瞭。

 チームリーダーと名乗る船長、ダンは優秀な宇宙戦士と知れた。

 クラッシャーの先駆者と聞くが、是非とも部下に欲しい逸材である。

 

 

 WWWAの宇宙船、ラブリーエンゼルから再び通信が入ったが。

 お喋りを延々と聞かされ、緊急の用事と称し副総統ヘスに代わる。

 通信は唐突に打ち切られ、単なる暇潰しと判明した。

 

 空間破砕爆弾≪スペース・スマッシャー≫6個を等間隔、同心円状に配置。

 更に精密な星型六角形、六芳星の魔法陣5個が闇黒の宇宙空間に描かれた。

 小六芒星6個の魔法陣を等間隔、同心円状に並べた大六芒星が数時間後に完成。

 次元共鳴波の発振装置、空間破砕爆弾≪スペース・スマッシャー≫36基が作動する。

 

 心底から嫌悪と反感を生じさせる妖波動、闇黒の波動が押し寄せて着た。

 3次元生物に属する人類には理解し難い、未知なる要素と本能的な拒絶。

 あの中へ突入しろと言われたら、私は迷わず脱走するが。

 思わず、眼を瞠った。

 

 

 小型宇宙艦が現れ、空間を走査。

 機敏な動作、共通する鮮やかな流星の徽章≪マーク≫が眼を引く。

 続いて数千隻に及ぶ艦隊、援軍が闇の中から現れた。

 

 私は彼等の勇気に敬服し、多大な尊敬の念を持つ事となったが。

 見事な操縦技術を披露する編隊を離脱し、1隻が接近して来る。

 大気圏内の飛行特性と航空力学を考慮、流線型の優美な船体《フォルム》。

 蛍光塗料で描かれた流線型の記号書体、『J』の一字が星の光を受けて輝く。

 

 或いは軽快な偵察巡洋艦《スカウト》かも知れぬが、全長は約100メートル。

 通信表示画面《スクリーン》が煌き、10代の少年とも思える立体映像を映し出す。

 若き勇者の唇が動き、溌剌とした声が流れ出た。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

宇宙生活者達の邂逅

「こちら、クラッシャー・ジョウ。

 惑星アラミス評議会議長、ダンの代理だ。

 銀河連合より艦隊の前方航路確認、周囲の警戒任務を請け負っている。

 2140年代の銀河系から、クラッシャーのチームが派遣されていると聞いた。

 詳細な数値《データ》を確認《チェック》したい、応答を願う」

 

「こちら、クラッシャー・ダン。

 2140年代のクラッシャーから、2160年代のクラッシャーへ挨拶を贈る。

 俺もWWWAの担当官に協力、次元間通路を開設する任務を請け負った。

 計測データを送信する、コンピュータの認識番号を教えてくれ」

 

 通信表示画面《スクリーン》の中で、クラッシャージョウが驚愕。

 動揺を隠し切れず、両眼を見開き正面を凝視する。

 視線を外す余裕も無く、通信表示画面《スクリーン》の外へ呼び掛けた。

 

 

「タロス!」

 のっそりとした動作で、フランケンシュタインを思わせる風貌の巨漢が現れた。

 ジロリ、と睨み付ける。

 野獣を思わせる鋭い眼光が、史上初めてクラッシャーと呼ばれた男を射抜く。

 

 圧倒的な迫力に気圧され、思わず後退るクラッシャーダン。

 改造人間の顔が異様に歪み、獰猛な唸り声を捻り出すかと見えたが。

 歪んだのではなく笑ったらしく、大男は唇を緩ませた。

 

「間違い、ありやせんぜ。

 若い頃の、おやっさんでさぁ」

 ジョウの後方から金髪碧眼(プラチナ・ブロンド)の美少女、童顔の少年も顔を覗かせる。

 思わぬ注目を浴び、当惑するクラッシャーダン。

 

 

「呼んだか?」

 ダンの背後から、別の声が響いた。

 長身の優男が、スクリーンを覗き込もうとする。

 

「!」

 後方で寛いでいた黒豹が跳ね起き、見事な跳躍《ジャンプ》を披露。

 不意を突かれた伊達男はあっさり倒され、仰向けにひっくり返る。

 前脚を胸に置き、至近距離で凄絶な唸り声を挙げる漆黒の猛獣。

 クァールのムギに睨まれ顔面蒼白、悲鳴とも取れる声で伊達男が喚いた。

 

「なんだよ、黒いの!

 おめぇを怒らせるようなこたぁ、何もしてねぇぞ!!」

 宇宙最強の完全生物と尊称される(後で知った)黒豹が、触手を震わせる。

 言語変換装置から、滑らかな声が流れ出した。

 

「スクリーンに顔を出すな、言い伝えを知らんのか?

 北の豹と南の鷹が対面する時、≪会≫が起こる。

 4次元時空連続体内部で過去、未来の同一存在が対面する事は禁忌≪タブー≫だ。

 時間矛盾排斥現象≪タイム・パラドックス≫、時震≪タイム・ショック≫が起こる。

 ≪百万の天球の合≫が生じ、混沌界に繋がる可能性も否定は出来ない。

 ましてや僅か数光秒先、至近距離に次元変換力場(アナザー・ディメンション)が在る。

 時間軸の異なる自分を見る為、スクリーンに顔を出す事は許さん。

 警告を無視すれば、どうなるか解っているな?」

 

 

「わあった、わあったよ!

 おとなしくしてっから、吼えるなよ!!

 頼むから、物騒な牙を引っ込めてくれや。

 なかよくしよーぜ、クァールのムギさんよ」

 

 両掌を挙げ、降参の意思を示す操縦士のタロス。

 操縦士が情けない表情を浮かべ、異種の様子を窺う。

 泣き言とも取れる嘆願を聴き、トパーズ色の瞳が和んだ。

 丸い耳を伏せ、戦意の無い事を示す。

 

 クラッシャーダンの片腕、荒事を好む優男は大袈裟に安堵の溜息を吐いた。

 大男の胸から前脚を外し、のそのそと歩を運んだ後で。

 壁際で丸くなり、ゆったりと毛繕いを始める黒豹。

 

 長身の伊達男はスクリーンに映らぬ様、慎重に遠回りして操縦席に戻った。

 眼を丸くして一部始終を見詰める、ケイとユリ。

 ムギがこれ見よがしに大欠伸≪あくび≫、鋭い牙を覗かせ相棒を促す。

 

 幕間劇はもう良いから、早く本題に入れ。

 宇宙最強の戦闘用改造生命体、黒豹の意思が雄弁に示される。

 航法士のガンビーノが、後方で大きく首を振った。

 わざとらしい咳払いは、機関士のバード。

 

 

「話を進めても、良いかな?」

 頬をヒクヒク痙攣させ、懸命に笑いを堪えるクラッシャージョウ。

 クラッシャーダンは気を取り直し、スクリーンに顔を向けた。

 画面には映らないが、大声で爆笑する声をマイクが拾う。

 笑死寸前の3人が腹を抱え、転げ回る気配が伝わってくる。

 

 

「うっさいわね、余計なお世話よ!

 さっさと、連合宇宙軍の連中を呼んで来な!!」

 操縦席から離れようとしないタロスに代わり、ケイが喚いた。

 ユリの黒い瞳が、焦茶色《アンバー》の瞳を覗き込む。

 

「あんた、会った事ある?

 変ね、妙に見覚えがあるんだけど。

 あなたのお母さんは何て名前なの?

 お父さんは?」

 

 質問の嵐が、奔流の様に流れた瞬間。

 何故か眼を見開き、驚愕の表情で後退する生え抜きのクラッシャー。

「ユリア姐さん!」

 フランケンシュタインが、唐突に喚いた。

 

 

 たくもう、そんな大声出すんじゃないわよ。

 鼓膜が破れちゃったら、どーすんのよ?

「えっ?」

 眼を円くして小首を傾げる、黒髪の少女。

 傷面の大男を力任せに押しのけ、金髪碧眼の新顔が此方を覗き込む。

 

「ジョウのお母さんにそっくしだわ!

 写真でしか見た事ないけど。

 貴女の名前、聞いても良いかしら?」

 長い金髪が優雅に拡がり、燦然と輝いた。

 澄明水の湧泉みたく、透き通る様な白い肌。

 星水晶≪スター・クリスタル≫の碧い瞳を煌かせ、微笑む。

 

 か、勝てない。

 金髪碧眼白い肌には、無意識の内に尻尾を巻いちゃう。

 腹ン中で毒づくのが精一杯、勝負になんないわ。

 無法者の代名詞、クラッシャーに何で、こんな美人が混ざってんのよ!

 

 

 あたしは肩を竦め、顔を逸らした。

 ユリもがっくし、肩を落としている。

 太刀打ち出来ない、と悟ったんだね。

 

 まぁ、しょうがないよ。

 あたしでも、勝てないんだもん。

 反則よ、やり直しを要求するわ。

 

「俺の父親なんぞ、どーでもいい。

 認識番号を送る、様式《フォーマット》は合ってる筈だ」

 おいしそ-な坊やの背後で、豪快な笑いが弾ける。

 縦横に傷が走り、歴戦の戦士を思わせる迫力満点の風貌。

 

 チーム・リーダーが振り返り電光石火、鋭い強烈な蹴りを入れる。

 サイボーグ化されたタロスの身体は、全く応えない。

 異音が響き、足を抱えて転げ回るジョウ。

 後方で金髪碧眼の美少女、童顔の少年がケラケラ笑う。

 次元回廊の奥から、更に無数の艦艇が現れた。

 

 2140年代の連合宇宙軍が派遣した艦隊を凌駕、構成する艦種も多岐に渡る。

 全長2千m(メートル)級の超大型戦艦、1500m級の超弩級戦艦。

 全長800m級の弩級戦艦、全長600m級の巡洋戦艦、全長400m級の重巡洋艦。

 全長300m級の軽巡洋艦、全長200m級の重雷装駆逐艦、全長150m級の護衛駆逐艦。

 

 全長500m級の戦闘艇母艦は直径30m級、円盤型の戦闘艇50隻を運ぶ。

 戦艦、巡洋戦艦、重巡洋艦も全長10~15m級の戦闘機2~4機を搭載。

 宇宙戦闘艦艇群は見事な統制を見せ、周囲空光分の宙域に展開。

 到底、数え切れない。

 

 大艦隊の旗艦、お偉方≪ディレクトリクス≫ならぬ全長300メートルの宇宙巡洋艦。

 銀河の栄光≪ザ・グローリー・オブ・ギャラクシー≫から、入電があった。

 

「太陽系防衛軍の方々へ、銀河連合主席より伝言を預かっております。

 銀河連合に所属する太陽系国家、8000以上の惑星に住む全人類が貴方達の味方です。

 現時点に於いて戦艦、巡洋戦艦の総数は合計1万隻を超えますが。

 宇宙母艦搭載の戦闘艇、戦闘機を含め総数1億に達します。

 

 各太陽系国家は製造施設を総動員し艦艇、戦闘機の製造を継続中。

 後続の艦隊も順次、貴太陽系に送り無限艦隊に対抗する予定です。

 女神の恩恵は当世界にも様々な波及効果を齎し、異種族の運命も変転を遂げましたが。

 太陽系国家タラオの第5惑星、ランドックの研究機関が援軍派遣の鍵となりました」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ランドックの秘密

 銀河連合首席からの親書《メッセージ》、派遣軍の編成に至る過程を要約する。

 

 太陽系国家タラオの基幹産業創出を模索する大統領、フォン・ドミネートは或る研究に注目。

 時も次元も解明され巨大女神アウラ・カーの統べる神々の都、アリシア星系の第三惑星に非ず。

 首都タルカサールの存在する第5惑星、ランドックへと招致活動を行った。

 太陽系国家ザルード第3惑星ツアーン、タルボ大学トートミア校レイチェ生化学研究所。

 主任研究員プロフェッサー・イトウの掲げる野心的、天才的な研究《プロジェクト》である。

 

 主題《テーマ》は直感的な閃き(インスピレーション)、大発明の原理(メカニズム)解明。

 創造力を飛躍的に高め、天才的発明を科学的に誘発する目的の研究だが。

 或る日、突然、ピンと来た。

 『これだ!』と直感が閃き、前人未到の画期的な(アイディア)が《降りて来る》超心理学的現象の再現は難しい。

 奇蹟《ミラクル》発生の確率を向上させ、人類の進歩と発展に貢献する意欲的な試み。

 人類の更なる発展を促し、多大な貢献を齎す可能性を秘めている。

 

 発想が、凄い。

 実用化に成功すれば飛躍的な各種技術の進歩、人類全体の進化さえもが可能となるかも知れぬ。

 だが、残念な事に。

 実用化には、程遠かった。

 創造的直感《インスピレーション》と、超能力《サイキック》。

 類似性に着目した所までは良かったが、其処から先に進まない。

 

 プロフェッサー・イトウの実験、暗中模索の試行錯誤は幾度も繰り返された。

 超能力の源、ESP波の存在は確認されたのだが。

 天才的な直感の誘発は果たせず、増幅の糸口も見えない状況が続く。

 色々試している内に何故か、ESP波を重力場が遮断する(マイナス)効果を発見してしまった。

 

 足踏み状態から抜け出せない彼等の疲労は募り、県境の放棄も検討されたが。

 或る日、突然。

 彼等の研究に、大いなる変化が訪れた。

 

 

 我々ガミラス帝国を宇宙侵略者から、火星防衛軍へと変貌させた要因。

 全宇宙へ向け発信された、とも思われる超次元間遠隔感応映像。

 女神救出作戦の発動を告げる惑星メルの王女、プリンセス・メローラの超3次元映像。

 太陽系国家タラオ第5惑星ランドック、イトウ率いる研究所のスクリーンも例外ではなかった。

 

 キイ・ワードの効果が顕れ、女神の封印した記憶が解放された。

 史上最凶の超能力者クリスが率いる神聖アスタロード王国の来襲、己の死。

 多大な心理的衝撃を受け、混乱するプロジェクト・チームの眼前に。

 思いがけぬ味方が、現れた。

 

 銀河連合も未確認の遠隔瞬間移送能力、圧倒的な《サイキック・パワー》を兼ね備えた大導師。

 アスタロッチの再建した暗黒邪神教団に、2千名にも及ぶ超能力者の指導者として合流した男。

 超越者《スーパー・サイキック》とも噂される偉大な長老、オーティス・ザ・グレイテスト。

 ESP波検出器のメーターが振り切れる程、強大な《フォース》を発揮する超能力者集団である。

 

 分岐点の異なる世界で体験した記憶が甦り、畏怖の念を禁じ得ぬ天才科学者の脳裏に《声》が響く。

(貴公の研究、《インスピレーション》の実験に協力する。

 現在時空の超能力者を総動員し集団超能力を用い、超次元間往復遠隔感応を実現する為に。

 超次元間の遠隔感応能力者メローラ姫と、心話連絡《コンタクト》を取る為に。

 銀河連合所属の連合宇宙軍と協力しESP波増幅装置を試作実験し、超能力を増幅せねばならぬ。

 超能力部隊《サイキック・フォース》、超戦士《スーパー・ソルジャー》編成の用意がある)

 

 

 女神を救う事は、全てに優先する。

 事情は超能力者《エスパー》達の間でも、共通していた。

 惑星カインを死の星へ変えた後天的な精神感応能力者《テレパス》、元大統領アスタロッチは。

 幽体遊離の実験に失敗し、通常の輪廻転生を経る事となった。

 

 史上最強の素質を秘めた少年、クリスへの憑依融合も女神に阻止されていたのだ。

 父の連合宇宙軍大佐も、息子の潜在超能力に気付いていなかった。

 強力な精神感応能力と念動力を有し、ベティ・タウフリーの転生やもしれぬ第2の実力者。

 少女ソニアもまた無事に成長を遂げ、オーティスの許で強力な才能を開花させていた。

 

 10代の若者2人も含め暗黒邪神教、及び神聖アスタロード王国に参加し落命した者達。

 超能力者達の記憶封鎖も解除《リセット》され、己の《死》と異分岐の記憶が鮮明に蘇った。

 クリスの潜在超能力は覚醒し、強力な精神感応波が銀河系を駆け巡った。

 オーティスの許にも、銀河系各地から数多の超能力者達が参集している。

 

 

 異なる分岐世界に於いて、惑星カインの暗黒邪神教に参加した超能力者達。

 切札となる超念動波増幅破壊砲《サイコ・フォース・デストロイヤー》の要員を務めた3千名。

 更に暗黒邪神教の後身、神聖アスタロード王国に参加した超能力者達。

 念により時空を歪め、超次元の幻影惑星《ファンタズム・プラネット》を実体化させた2千名。

 総計5千を越える超能力者達が、惑星カインへ集結を果たした。

 前代未聞のESP波が発信され、超時空の精神感応《テレパシー》放送が行われた。

 

 史上最大の超能力者集団、超戦士《スーパー・ソルジャー》は精神融合体を形成。

 多数のESP波を共鳴させ心を一つにして、メローラに向けてメッセージを送り出した。

 余談だがミュータント部隊ならぬ超能力者集団、超戦士《スーパー・ソルジャー》の呼称は。

 史上最凶の禍津神が全人類の記憶へ強烈に刻印した悪印象を、払拭する為に選択された。

 『人類の神は光の神であり、超能力者の神は闇の神である』。

 惑星国家カイン大統領アスタロッチの着想も、高名な2人組の《実績》が影響している。

 

 人類を敵視し対エスパー同盟を壊滅させた暗黒邪神教の思想原理、行動原理は。

 銀河系を震撼させた《トラブル・コンサルタント》、2140年代最凶の超能力者に由来する。

 泣く子も黙るWWWAの鬼、犯罪捜査部門の統括責任者ソラナカ部長の遺した報告に拠れば。

 事態を収拾する為に派遣された連合宇宙軍の艦隊が全滅した事も、1度や2度ではなかった。

 

 秘密結社《ルーシファ》を遙かに上回り、惑星壊滅規模の甚大な災害を齎した事が覗える。

 私も後に直接、オーティス・ザ・グレイテストから愚痴交じりに聞かされたが。

 連合宇宙軍内部に対エスパー同盟が普及し、結構な割合で支持を得ている事実からも。

 『些細な事件が大戦争に発展する』と畏怖された伝説、災厄《トラブル》の甚大さが知れる。

 

 

 話を戻そう。

 メローラ姫から、応答は無かった。

 

 テレパシー波は、届かなかったと推察される。

 遙か次元を隔てる惑星メルに到達するには、彼等のESP波は力不足だったのだ。

 

 突破口を見出す為、多数の記憶が走査≪スキャン≫され精査された。

 種々の可能性が探索≪サーチ≫され、様々な角度から検討が試みられる事となった。

 

 ひとつの名前が、浮上した。

 太陽系国家タラオの首都、第5惑星ランドック。

 

 インスピレーションのメカニズム解明を主題とする研究者、イトウの存在が確認された。

 詳細な情報が追加検索され、ESP波を研究するプロフェッサーの発想は高く評価された。

 

 ESP波遮断装置≪ブレーカー≫は存在するが、増幅する方法は解明されていない。

 イトウはESP波増幅の可能性を探る為に本物の超能力者を探し、実験への参加を切望している。

 

 オーティス・ザ・グレイテスト、少年クリス、少女ソニアを含む本物の超能力者集団。

 超戦士≪スーパー・ソルジャー≫は即刻、タラオ星系第5惑星ランドックへ飛んだ。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

人類先行種族の贈物

 オーティス・ザ・グレイテスト率いる超能力者集団は早速、惑星ランドックで実験に参加。

 プロフェッサー・イトウ率いるプロジェクト・チームの実験が、繰り返された。

 

 地球戦団副長タルイを産んだ念力研究の先進地、東洋的宙域≪イースター・ゾーン≫の如く。

 インド哲学を源流とする禅、ヨーガ、密教を始めとする非科学的手法も多数応用された。

 

 精神文明の基幹と推察される瞑想≪メディテーション≫等、各種の試行錯誤が反復された。

 ESP波を物理学的に増幅する方法は見出せず、数千数万の可能性が試され放棄された。

 

 

 棄てられた数多の可能性が積み重なり、奇蹟≪ミラクル≫が生じた。

 超能力者達は精神統合の方法を模索し、短時間ながら統一体≪コンプリート≫形成に成功。

 

 一時的に集束された強力なESP波が時空の彼方、超次元の惑星メルへと送信された。

 

 メローラとの精神接触≪コンタクト≫は成立しなかったが、或る異次元宇宙から応答があった。

 嘗て銀河系に留まり、人類との共存を模索した非人類種族。

 

 

 人類以前の銀河系先住民族、≪銀河系最後の秘宝≫を開発し姿を消した宇宙航行種族。

 時空間転移機構≪アナザー・ディメンション≫を創造した≪ドウットントロウパの子≫。

 

 ≪銀河系最後の秘宝≫の≪護人≫、≪偉大な種族≫の変種とも言うべき後継者達。

 巨大恒星の重力崩壊を利用し、異次元へと旅立った≪オオルル人≫。

 

 女神の導きに拠り、多次元宇宙の一角に安住の地を得た彼等の許にも。

 メローラの超次元間遠隔感応映像は、到達していた。

 

 

 異世界へ旅立ったオオルル人達は無事、≪ドウットントロウパの子≫と邂逅を果たした。

 新たな宇宙を求めて旅立つ事を選んだ彼等の為に、新たな次元回廊が創造された。

 

 無論、通常の条件下では起こり得ぬ奇蹟的な出来事である。

 女神の再試行が無数に繰り返され、奇蹟≪ミラクル≫を生起させた事は言うまでもあるまい。

 

 新たな可能性を贈呈された新種族、オオルル人は彼等に感謝し別れを告げた。

 異次元世界から時空間転移機構を使用し、未知の世界へと次元跳躍を行っていた。

 

 

 人類と訣別する途を選択した異種、オオルル人もまた。

 ≪女神救出作戦≫に参加すべく、懸命の努力を続けていた。

 

 異次元宇宙の銀河系先住者達と、銀河系人類の次元間遠話≪コンタクト≫が成立。

 飽くなき挑戦を続ける3者の連絡が可能となり、次元学の研究が加速された。

 

 

 異なる時空に位置する惑星ランドック、オオルル人と≪ドウットントロウパの子≫は。

 協力して3点観測のデータを突き合わせ、次元界の構造が徐々に解明される事となった。

 

 時も次元も解明された、とまでは行かなかったが。

 或る程度の次元間移動が、可能となった。

 

 各次元界より惑星メルの次元方位を測定し、次元座標ポジションを探査する試みも行われた。

 結果は、否定的≪ネガティブ≫なものでしかなかった。

 

 

 

 或いは幻夢境≪ドリーム・ランド≫にして極寒の荒地、超次元の王国カダスであるのかもしれぬ。

 惑星メルの次元方位は観測の度に異なる結果が顕れ、座標確定に至る道は発見出来なかった。

 

 試行錯誤を重ねる3種族の前に、或る次元界が姿を現す事となった。

 宇宙航行時代から平安時代へ、エネルギー生命体≪手天童子郎≫が時を超えるを得た特殊空間。

 

 不規則≪ランダム≫に接近する平行宇宙と一瞬のみ、擦違う事の可能な超次元回廊空間に於いて。

 あらゆる手掛かりを求め、執拗且つ徹底的な観測が継続された。

 

 平行宇宙と接する次元窓≪ウィンドゥ≫は数秒で閉じてしまう。

 無数の実験が行われたが、安定化の試みは全て失敗に終わった。

 

 

 同一の時空間と数回、接触が生じた。

 共通するESP波、思考様式≪サイコ・パターン≫が確認された。

 

 統一体≪コンプリート≫を形成する超能力者達、超戦士≪スーパー・ソルジャー≫の脳裏に。

 思いがけぬ思考波が、響き渡った。

 

 

 思考波の主はケイとユリ、と名乗りを上げた。

 世界福祉事業協会(略称、WWWA)所属の犯罪担当トラコン、ラブリー・エンゼル。

 

 知らぬ者は皆無、とまで尊称された伝説の事件相談員≪トラブル・コンサルタント≫である。

 時を超え過去界の銀河系から届いた一瞬のESP波が、事態打開の切り札となった。

 

 2140年代に活躍を演じたラブリー・エンゼルの名は、広く銀河系全域に知れ渡っていた。

 最凶の超能力戦士と畏怖された伝説の数々は、20年の歳月を経過後も全く色褪せていなかった。

 

 泣く子も黙る勇名は健在であり、2160年代の銀河系に於いても知名度No.1であった。

 管理職ソラナカ部長を襲う頭痛と悩みの種、ダーティペアの勇名と共に悪夢の記憶が蘇った。

 

 

 

 WWWA犯罪担当部門を代表する事件創造者(トラブル・メーカー)、もとい、美女二人組の事件相談員(トラブル・コンサルタント)

 正式な暗号名(コード・ネーム)、ラブリーエンゼルの名を知らぬ者は星の数にも優るが。

 非公認名称ダーティペアの活躍を描いた映画が約20年後に製作、配信された。

 

 幸か不幸か、映画は驚異的な興行成績を記録。

 2140年代の銀河連合が総力を挙げ、懸命に揉み消した異名。

 裏社会で絶大な知名度を獲得した綽名、代名詞は銀河系全域に知れ渡った。

 

 オーティス・ザ・グレイテスト、プロフェッサー・イトウの言に拠れば。

 一般大衆の興味が彼女達の実績に集約され、全人類の潜在超能力を統一。

 史上空前の集団超能力、想像を絶する規模の思念波が渦巻き時空を歪めた模様であるが。

 物質文明の理解が及ばぬ超能力(サイキック)の源泉と同様、真相は闇の中。

 銀河連合の『頭脳(マザー・ブレイン)』、中央コンピュータも超常現象の論理的な解明は諦めている。

 

「宇宙軍の反乱を鎮めて、()()()()、死の星に『()()()()()』んだ!」

「『ついでに』じゃないわ、『やむなく』よ!

 『しちまった』んでもないわ、『なっちゃった』のよ!!」

 

 某クラッシャーの名文句(スーパー・フレーズ)は、本人の弁明に増幅され銀河中を駆け巡った。

 ダーティペア現役当時に数々の事件、実績の詳細な情報を知る者は限られていたが。

 銀河連合の努力も空しく、総ての太陽系国家で彼女達は爆発的な人気を獲得。

 WWWA犯罪担当部門の管理職、ソラナカ部長の後継者達は総て辞表を書いたと聞く。

 

 

 超能力の吸収増幅を可能とするバアロル教団の祭司≪アンティ≫、ならぬ中継者≪リレイヤー≫。

 或いはファウンデーションの≪選ぶ者≫が発見した宇宙人国家≪スペーサー≫、ソラリア人。

 

 ESP波を中継し念動力や映像投影能力へ転換し得る男、≪エネルギー転換能力者≫が派遣された。

 思念波が増幅され送受信が可能となり、時空を超え思考交換が実現した。

 

 メローラ姫の超3次元映像は過去界の銀河系にも到達しており、WWWAが即座に動いた。

 報告書≪レポート≫が急遽作成され、上司のソラナカ部長を経由し銀河連合主席へと提出された。

 

 2140年代、3千前後の惑星国家が参加し通称WWWA等の機関も運営する銀河連合。

 2160年代、太陽系国家間の紛争を調停し超能力者を敵視に傾いた銀河連合。

 銀河全域を統括する星間組織は時を越え、女神救出作戦の為に協力する事となった。

 

 

 太陽系に銀河連合艦隊、通称GF≪ギャラクティカ・フリート≫が参戦の数日後。

 防衛線は押し返され、冥王星の奪還も実現している。

 各惑星と衛星には重防御、大火力兼備の基地が再建された。

 新たな敵の襲撃に備え、防衛力増強を急いだのだが。

 生体宇宙船ドラン群を擁する震動守護者、最悪の敵が現れた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

M87星雲の調整者

 或る時点で銀河系最強の戦闘用改造生命体、ハルト人達が第一次人類を襲撃の数年前。

 アンドロメダ星雲の最高種族、光の守護者に第三段階の思考が届いた。

 光の守護者マルドック・レトス、ユガ・レトス、テングリ・レトス。

 非暴力主義の調整者は隣接銀河に赴き、調停を試みたが。

 魅力的な論理と弁舌は侵略者に通じず、破壊と荒廃が島宇宙を覆ってしまう。

 女神の援護で幾度も試行錯誤が繰り返され、新たな道が拓いた。

 

 

 多元宇宙の一角で現実界に昇格し得た選択肢、分岐の経緯を要約する。

 光の守護者は島の王、時間エージェント達と接触を避け慎重に事を運んだ。

 惑星ワシュン周回軌道の『MA天才的』乗員、宇宙エンジニア種族4千名強。

 パドラー達の親戚筋、遺伝子モデュレーター達も遭難を装い長時間計画の一翼を担う。 

 『クレストⅣ』が地球を離れた後、タム評議員4名の希望を叶え或る情報も得た。

 

 ルナ=クラブ議長は有能な物理学者達を誘い、《時の目》開発を試みたが。

 複数の有力候補者が提案を辞し、タム評議員スキモル暗躍の為と嗅ぎ付けた。

 研究施設の場所も判明の直後、ハルト軍の侵攻開始で情報を盗む腹案は潰えたのだが。

 スコーチ星系第三惑星を偵察の際、レムール文明屈指の科学者達を見出した。

 

 光の守護者は超能力機械生物、《時の目》融合体ドゥル捜索も試み提携を説く。

 ラッキー・ログ製造種族の植物化、遺伝子変更を阻む論理が効いた。

 ペリー・ローダン、イホ・トロト掌握の精緻な催眠暗示波は時間工作員も知らぬ。

 タム評議員フラスブール、島の王ファクターⅦ捕獲の価値は計り知れない。

 レグナル=オルトンは催眠暗示命令に屈し、約2万年前に権力奪取の詳細を語った。

 

 パラスプリンター達が時を越え、西暦2404年に転送後レトス達も動く。

 月面都市マドゥン襲撃の際、ハルト空挺部隊は撤退を選んだ。

 或る種族の製造した超ロボット、ラッキー・ログの催眠暗示波に拠る行動だが。

 惑星ハルト着陸と総司令部に直訴を試み軍律違反、任務放棄の罪で撃ち殺される直前。

 光の守護者達が現れ、彼等を連れ異次元の領域に姿を消した。

 

 

 未来より補給艦『ディノⅢ』到着の際、ペリー・ローダン達との邂逅は実現していない。

 光の守護者は時を越える為、細胞凝固睡眠状態に乗員を置いた。

 約500年後アトラン達の地球偵察時、巧妙な催眠暗示波が島の王ファクターⅥを襲う。

 トセル=バン提供の情報に基き、ネヴィス=ラタン捕獲の為『クレストⅣ』は隣接銀河に渡る。

 『MA天才的』乗員パドラー約4千名、遺伝子モデュレーター達も西暦2404年に帰還した。

 

 スコーチ星系の科学者達は膨大な技術情報を得て、超巨大要塞の構想を練った。

 物理学者達の第一ファウンデーション設立後、オールドマン建造案は詳細設計に進む。

 生物学、遺伝学、心理学等の研究者も第二ファウンデーション設立後ハルト軍対策を練る。

 遺伝子モデュレーター達の実績、経験値を盛り込み《歌う兵器》改良に励んだ。

 元マドゥン襲撃者も機密情報を隠さず、衛星ダラク産クリシュン達の訓練も応じている。

 トランスフォーム砲と爆弾千個で閃光信号、《良き友》と描いた《永遠の船》は直径30km。

 エネミー星系偵察の際ドラン群の最強兵器、構造亀裂も弾き衛星ウレブ周回軌道に乗った。

 クリシュン達の活躍で捕虜も得て撤収後、《歌う兵器》は更に進化を遂げる。

 

 

 心因性リ・ジェネレーター、構成放射装置の影響力発現には約50年を要する。

 3200万光年の彼方に跳躍は惑星ハルト、衛星ウレブ地底神殿を構築の後に実施された。

 M87星雲に現れた《永遠の船》は情報収集、偵察を続け連合軍の指揮系統も探る。

 哲人種族オケフェノケース転生体、中枢部の設計者は猜疑心旺盛で理性的交渉を嫌う。

 レトス達は情報を集め、ウレブ達の親戚筋が暗黒星雲に棲息の事実を知った。

 ハルト人同様モーグ、ペレヴォン理性的平和愛好種族に変貌の種を機械生物の融合体が蒔く。

 第三段階の《歌う兵器》が稼働を開始、深く静かに暴力衝動の鎮静作用が進む。

 50年後、光溢れるM87星雲の宇宙警備隊を創設の準備が整った。

 クリスタル惑星モノル掌握、封鎖の後オケフェノケース達の傲岸不遜な態度が潰える。

 光の守護者は権力移譲、平和維持活動の開始を確認の後M87星雲を離れた。

 

 アンドロメダ星雲では数千年後、或る酸素惑星の育んだ生命が進化の過程を昇った。

 独立細胞群の集合生物は意識を備え、透明種族が数トン輸送後ポスビ誕生に繋がる。

 惑星メカニカ知性体、爬虫類に似た外見の住民達は銀河系北側に移った。

 数千年後に時間フィールド、相対防御バリア装備フラグメント船約3千隻が揃う。

 ローリン軍と激戦の際、数十隻は損傷し消息を絶ったが。

 自爆の前に直径2500m、球形戦闘艦が現れ敵を追い払った。

 フラグメント船司令、有機プラズマ塊に遠隔感応波が届く。

 同族の精神波、思考を以て驚くべき情報が提供された。

 損傷船数十隻は最高司令部に通報せず、惑星スキモル曳航を認める。

 時間フィールド発生装置の調査、オールドマン及び搭載艦に装備が軌道に乗った。

 

 

 紀元前1万8千年頃、アンドロメダ星雲の野心家達が動いた。

 光の守護者も惑星レムリア監視、偵察は怠っていない。

 時間転送機構の稼働、ハルト軍の侵攻後に動いた。

 島の王ファクターⅠ、ミロナ・テティン逮捕の際に細胞活性装置を奪う。

 独裁者失踪の後アンドロメダ星雲先住民、水素呼吸種族マークス帰郷が推進された。

 メタン型大気圏を有する惑星に着陸の後、生存環境の整備と居住設備の建設も進む。

 レムール系第一次人類の避難民、テフローダー達の棲む酸素惑星に影響は無い。

 高度な話術で魅力的論理を展開する調整者、交渉人(ネゴシエイター)達の真価が実証された。

 

 透明種族ローリン達の惑星デストロイ撤収、アンドロ・アルファ星雲安住も叶う。

 ポスビ乗務の直径2500m宇宙戦艦、1万5千隻は惑星ランドⅠ周辺宙域に飛んだ。

 反重力推進の搭載艇750万隻が地表に降り、独立細胞プラズマ集合生物を慎重に載せる。

 二百の太陽の惑星に着いた《母》、原細胞群を熱烈な歓迎と慰謝の念が包む。

 ホイール星系にも集合生物が運ばれ、数億倍に膨張後M87星雲の調整者となった。

 

 数万年後メローラ姫の遠隔精神感応波、超次元間通信が複数の渦状星雲に届く。

 記憶封鎖(メモリー・プロテクト)解除(リセット)後、超光速通信が飛び交った。

 培養アンドロイド起源の銀河警備隊勇士達、レムール系人類、ポスビ、マークス。

 アンドロメダ星雲、銀河系、M87星雲の星間航行種族が動いた。

 光の守護者も《永遠の船》推進装置の秘密を明かし、援軍派遣の準備が整う。

 太陽系防衛線を蹂躙する震動守護者、ドラン群の前に数万隻の超巨大要塞が現れた。

 オールドマン搭載『アンドロメダ』級の他、数億隻の戦艦も侵攻軍に殴り込む。

 

 三銀河連合艦隊の戦闘参加後、数時間で無限艦隊は海王星の軌道から追い払われた。

 数千隻の特務艦が第三段階の重力爆弾、特殊フィールド構築の為に幾何学模様を描く。

 太陽系全域を真空管と化し、常識を無視した熱量で敵を屠る《太陽ビーム》の極大化現象。

 空間破砕爆弾(スペース・デストロイヤー)に準拠、次元共鳴波動の(ヴォルテクス)が侵攻軍の前進を阻む。

 存在確率急落力場は虚無の海に等しく、次元重層バリア展開の戦艦も強制消滅を免れぬ。

 ダッカル・ゾーン通過、超空間(ハイパー・スペース)経由の遷移(ワープ)、リニア航行艦も例外ではない。

 宇宙航行種族多数が連携の地球防衛戦は実を結び、女神救出作戦は第三段階に移った。



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。