EDF ツキトの都へ出陣す (ゲストユーザー)
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第一話


 タイムマシン(リング)の下りはこじつけましまし
 フィクションをお楽しみ下さい
 モンハン要素はまだ少ない

 初投稿なので優しくしてください…


 

 プライマー

 

 それはかつて人類と戦争を繰り広げた異星の存在。

 その正体は遥か未来の火星で生まれた生命体であった。

 

 2006年に発見された宇宙船の残骸により、人類はまだ見ぬ異星人との戦争を想定し、世界全土を巻き込んだ人類史上初となる世界の軍隊

 

ーEarthDefenseForceー

 通称“EDF”

 

と呼ばれる組織を発足すると共に兵器開発に乗り出すこととなる。

 

 既存の兵器をベースとしつつも、それらを凌駕するスペックを持った数々の武器。

 歩兵用の銃火器から戦車などの戦闘車両、さらにはフィクションに出てくるような兵器である、レールガンに有人二足歩行ロボットなど、過剰ともとれるほどの兵器の数々を開発、実装していった。

 

 事情を知らぬ一般市民からの反対はあったものの、軍の上層部はやれるだけのことはやったと息巻いていた。

 

 そして2022年、とうとうプライマーによる世界同時攻撃が行われたことにより、宇宙戦争の火蓋が切って落とされることとなる。

 

 プライマーによる攻撃は苛烈さを極め、数多くの前哨基地が陥落寸前へと追い込まれた。

 しかし、ベース228にいたある一人の男の時空を超えた活躍により、敵の兵器の対処方法が判明。

 その後すぐさま世界に情報が拡散され、すんでのところで敵の進行を食い止めることに成功する。

 この男こそ、のちの英雄ストーム1であった。

 

 しかしプライマーの技術力は凄まじく、テレポート機能を備えた無尽蔵に味方を呼ぶアンカーや、核兵器並みの威力でしか貫けない金色の装甲など、過剰とも思われた人類の兵器を上回るオーバーテクノロジーの数々。

 

 中でも特筆して脅威なのはリングと呼ばれる人類の夢を体現したような兵器であるタイムマシンだ。

 プライマーは自身の納得のいく結果になるまでタイムマシンで何度も時を遡り、過去に持ち帰った情報を元に人類側の有利を不利に塗り替えていく。そしてこの過去改変に気付けるのは、リングを起動させた者のみ。

 

 故に人類は自分たちの作戦が筒抜けだとは思わない。

 真綿で首を締められるようにジワジワと追い詰められているのにも気付けない。

 

 “たった二人を除いて”

 

 軍人であり、精鋭チームストーム1のコードネームを持つ男と、先進技術研究所という兵器開発部門の主任を務める男の二人が、偶然にもリングの誤作動を誘発させたためにタイムリープに成功。

 前述した前哨基地の防衛も、彼らが何度も繰り返し、経験した中での最良の結果であった。

 

 プライマーの第一進行を食い止めた人類は、ストーム1とプロフェッサーの持ち帰った情報を元に各地で一転攻勢。プライマーをジワジワと追い詰め、遂にはプライマーの王である“かの者”を引き摺り出すことに成功。

 精鋭ストームチームを筆頭に複数の歩兵部隊で交戦、これを撃破することに成功する。

 

 最終的には人類の総人口の三割を失うという多大な被害を被りつつも、こうして人類としては5年、二人の英雄からすると数十年にも及ぶ長き闘いに終止符が打たれることとなった。

 

 

 

 〜そして現在〜

 

 

 大戦からおよそ三年。

 未だにプライマーの残党が残っているのではないかという不安が残ってはいるものの、実際は平和そのものであったため大戦中よりも寂れつつあるベース228の一室にて錚々たる顔ぶれが集結していた。

 

 「それでプロフェッサー。大戦が終わり軍人も暇になりつつある中、ストームチームに招集をかけるとは一体どうしたというんだ」

 

 皆が集まったのを確認してから初めに口を開いたのはストーム2の隊長を務める大尉である。

 他の者たちも口には出さないが同じことを思っているのは明白である。

 事実、今のEDFは戦災地の復興が主な仕事であり、プライマーという共通の敵がいたからこそ、人類同士での大きないざこざも今の所は起きてはいない。

 だというのに事前に招集理由も伝えられず、かつEDFの精鋭部隊である、ストームチーム全隊の招集となればそれなり以下の理由では招集命令がかかるはずもない、と疑ってかかるのも仕方ないというもの。

 

 「おいおい、まさか俺たち全員クビになっちまうのか!?」

 

 次にダミ声が特徴的なストーム2隊員が声を上げる。

 勿論彼なりのジョークであることは付き合いの長い全員が分かっていることだが、場合が場合なだけに大尉に睨まれてしまう。

 

 「じょ、冗談だからよ…」

 「…プロフェッサー。…そろそろ本題に入ってくれないか」

 

 大尉に睨まれている彼を不憫に思いつつも話が進まないため、ストーム1は強引に会話を続ける。

 

 「助かるよ、相棒。私も話を進めたいと思っていたからな。皆、察しているとは思うが今回君たちに集まってもらったのは戦災地の復興に伴う人材不足が理由ではない」

 

 そういうと彼は一歩下がり、後ろに設置されているドアのドアノブに手を掛ける。

 

 「君たちに行ってもらいたいところがあるんだ」

 それを言い終わると同時にドアノブを引く。

 

 「話の続きは私たちがしよう」

 

 そこには司令部と戦略情報部の少佐が立っていた。

 

 

 

 〜ベース228のとある一角〜

 

 「諸君、まずはこれを見てほしい」

 

 そう言ってシャッターが開いた先には目を疑うような物が鎮座していた。

 

 「リング…」

 

 誰が呟いたのか皆が思っていることを口にした。

 そう、かつて散々自分たちを苦しめた敵の兵器であるタイムマシンとも呼べる物が置いてあるのである。

 すぐさま全員が戦闘態勢に入り腰に手をやるがすぐに全員が苦虫を噛み潰したよう苦悶の表情を浮かべる。

 まさかこんなところでプライマーの兵器を見ることになるとは思ってもおらず、誰一人として武装をしていない。

 だが後悔をしたって敵は待ってはくれない。各々が今できる最善の行動をしようとしたその時

 

 「皆さん、落ち着いて下さい。これは我々の所有するものです。プライマーの尖兵が送られてくることはありません」

 

 少佐が待ったをかける。

 

 「…どういうことだプロフェッサー」

 

 こいつの危険さをよく知っている相棒が動じていないことから、彼も一枚噛んでいるだろうと思い、プロフェッサーに問いただしてみる。

 

 「なに、そのままの意味だよ。これは私達先進技術研究所が技術の粋を結集し作り上げたものだ。とは言ってもヤツら無くして作れなかったがね」

 

 相棒の言葉に少し考える素振りをし、すぐに答えに辿り着く。

 

 「…そうか、プライマーか」

 

 「その通りですストーム1。火星を汚染することでプライマーは歴史上から姿を消しました。ですが彼らが残した爪痕や兵器の数々は消えることはありませんでした。その結果、残された数々の兵器のお陰で私達は戦前では比べるべくもない程に発展を遂げることができました」

 

 プロフェッサーに変わり少佐が会話を続ける。

 

 「確かに元はプライマーの技術です。しかし人類の歴史を振り返れば分かることです。火や電気など危険な物はただ手放すのではなく、安全な運用で自身のものとしてきました。ならばこの技術も活用し、人類の繁栄の足掛かりとすることが出来ると思うのです。なによりいつかまた来る可能性のある異星人への抑止力として…」

 

 そういう彼女の姿は私利私欲に走った者とは違った、覚悟のこもった雰囲気を醸し出していた。

 

 ストーム1は顎に手を当てて考え込む。

 一応、人類を思っての行動であることには間違いないようだ。

 

 だがストーム1にも譲れないものがある。それはリングを使用したことによるタイムパラドックスだ。

 かつてのプライマーはこの事象が原因で人類に戦争を仕掛けざるを得なくなり滅びていった。人類がリングを使用することによって今度は我々が滅びる側へと回るのでは本末転倒だ。

 プロフェッサーに限ってそんな真似は侵さないと信じたいところではあるが、直接聞いておきたいところである。

 

 「なにか勘違いしているようだが、そもそもこれは“あの”リングでもタイムマシンなどでもない。私だってあの地獄を直接経験しているんだ。そんな危険な代物なら協力したりしないさ。これは…そうだな…この世界とは別の世界に繋ぐ、いわば異世界移動装置とでも思ってもらってかまわない」

 

 別の世界に繋ぐということだがどういうことだと思っているとストーム3の副隊長が声を上げる。

 

 「つまりパラレルワールドってやつなのか?」

 

 するとプロフェッサーは首を横に振り説明を続ける。

 

 「パラレルワールドも歴史を遡れば同じ出発点から始まっている。それではタイムパラドックスが起きる可能性が出てきてしまう。そうではなく、我々の生きている世界がどう足掻いてもなり得ない、出発点がそもそも違う、そんな場所に時空ごと移動するものなんだ」

 

 プロフェッサーは例えば…と続け

 

 「魔法が存在している世界があるとする。だが我々の知る人類はどうやったって魔法を使うことはできない。それは繰り返されてきた人体への研究で明らかとなっている。つまりこの二つは相反する全く別に存在している世界というわけだ。そしてここまでかけ離れていればタイムパラドックスも起きないと私は考えたわけだ」

 

 一旦水を含むとそして…と続ける。

 

 「それは人間に限った話ではないと私は考えている。それが動植物であれ歴史の出発点が違えば問題ないのではと。つまりなにが言いたいかというと、技術の発展には資源が必要不可欠であり、限りある今の地球から全て取り尽くしてしまうのを防ぐために異世界へと進出しようというわけらしい」

 

 言い終えたプロフェッサーはチラリと横目で上層部の二人を見つつこちらに視線を向けてくる。

 その視線を受けストーム1は思考に耽る。

 つまり“A”という今の世界と“B”という別種族等の存在する世界が同時に出発点から歴史を紡いだ時に、無数に枝分かれした可能性のある未来の、ただの一つたりとも掠らなければその世界は問題ないということなのだろう。

 哲学的な話ではあるが一応話の内容は見えてくる。だが思考に耽っていたストーム1は突然の声で現実に引き戻される。

 

 「それはつまり自分の星でなければ資源を強奪してもいいというのか?」

 

 ストーム3隊長の鋭い視線が二人を突き刺す。

 どうやら彼は今回の異世界進出を些か快くは思ってないらしい。今の説明だけだと侵攻とも取れるため無理のない話である。他の者たちも難色を示している方が多い。

 だが司令部は毅然とした態度で言葉を返す。

 

 「それは違う。私達は“EDF”、全地球防衛機構軍である。世界が違うとはいえ人が住んでいればそれは守護する対象となりえる。有効的な関係を築くことを心掛け、決して私達がプライマー側になることだけは許してはいけない。その思いは紛れもなく本物だ」

 

 胸を張り、何の迷いもなく宣言する司令部を前に流石のストーム3もこれ以上食い下がることはなかった。他の者もその姿を目にし、自然と下がっていく。

 

 周囲が静かになったのを確認して少佐が本題を持ち出してくる。

 

 「そこでストームチームの皆さんにお願いしたいのはこの移動装置を使い、転移先の偵察をしてきてほしいのです。知的生命体がいないようなら資源回収に取り掛かり、知的生命体が存在するようなら出来るだけ友好関係を築いてほしいのです」

 

 少し考える素振りを見せ、真意をいち早く理解したストーム1は任務に同意する。少し遅れて各ストームチームの面々も納得していく。だが納得のいかないものが一名存在した。

 

 「どういうことだよ大将!偵察だったらスカウトがいるじゃねぇか!俺ぁ細かいことが苦手なんだよ。それに俺ぁ不眠症なんだ!未知の場所に一番乗りなんて…眠れなくなっちまったらどうすんだ!」

 

 ストーム2隊員である。

 そんな自身の部下に見かねて大尉が説明をし始める。

 

 「確かに偵察能力だけでみればスカウトのほうが適任だ。だが未知の場所でどんな脅威に晒されるか予測も付かない状態でスカウトだけを派遣するには装備に些か不安を覚える。かといって通常の隊を派遣するのなら俺達が行くのと変わらない。だったら有事の際に少数でも効果的に動ける俺達が向かう方がいいというわけだ」

 

 まさしく大尉の言う通りである。EDFにはスカウトと呼ばれる偵察専門部隊がいるのだが、彼らは素早く敵地に乗り込み情報を収集するために、レンジャーでありながら最低限の装備と戦闘訓練しか行わない。そのため一般の兵士に比べ数段実力で劣ってしまうのだ。

 かといって護衛部隊をつけてしまうと、彼ら自慢の機動力が損なわれてしまう。そういった理由からスカウトには偵察力で劣るものの、どんな事態にも柔軟に対応できるストームチームに白羽の矢が立ったのである。

 勿論この案も諸刃の剣なのは誰もが理解している。未知の場所に人類の切り札を送り込む。下手をしたら全滅の憂いに合うかもしれない。だがそれを加味しても彼らに、彼に引き付けられる何かがあるのだ。人類の英雄に…

 

 大尉の説明を聞き、彼も何とか納得してくれたところでプロフェッサーが移動装置の電源を入れる。そろそろ出発の時間というわけだ。

 各員装備の支度が終わったところで装置に目をやると、電源が入った装置は淡い光に包まれ自身を通過する者を今か今かと待っている。

 

 「ストームチーム、そちらはお願いします。こちらもいつでも回収できるよう後続の部隊を編成しておきますので」

 「相棒、なにかあればすぐに連絡してくれ。必ず助けにいく。死ぬなよ」

 「諸君らには何度も世話になる。今回もよろしく頼む」

 

 少佐、プロフェッサー、司令部の三人に見送られながら精鋭部隊は装置に足を踏み入れる。

 するとすぐさま目も開けられないような光に包まれる。この感覚に覚えのあるストーム1はすぐに身を委ね、視界が広がるのを待つのであった。

 

 どれくらい経ったのだろう。

 何度経験してもこればかりは慣れそうもない。徐々に視界が開けていく。

 視界不良から開放され、辺りを見回すと石で作られた何かの中にいた。どうやら何かの建造物のようではあるが情報が少なく断定はできない。耳を澄ませば遠くに鳥の甲高い鳴き声と水の流れる音が聞こえてくる。

 

 山にいるのかと仮説を立てていると無線に連絡が入る。声の主はストーム4隊長であった。

 

 「どうなっている…ここはジュラ紀だとでも言うのか…」

 

 声のトーンからかなり動揺しているのがよくわかった。彼女は一体何を見たというのだろうか。

 まずは現状の把握に努めたいストーム1は無線で集合をかける。幸いヘルメットに映し出されたミニマップで位置は把握していたため集まるのにそこまで時間を要さなかった。

 

 ストーム1が建造物からでると帰還したストーム4含め全員が揃っており、簡易的な防衛線も敷かれていた。どうやら自分が一番最後だったようだ。

 

 「やっと起きたようですね」

 「こんな時でもどっしり寝れる大将は流石だぜぇ!」

 「そう言うな。普段は助けられてるんだ。たまにはいいだろう」

 

 ストーム2隊員の面々に出迎えの声をかけてもらいつつ、情報共有を行う。

 因みに当たり前だがこの世界に衛星は上がっていないため、レーダーに映るミニマップは自分の足でマッピングしなければならない。

 そして情報を共有していく中で分かったことがいくつかあった。

 

 まず、今まで寝ていた建造物はピラミッドであること。明らかに人の手で作られているため知的生命体がいるのは間違いないだろう。だが場所が場所であった。

 

 それが二つ目、ここはアマゾンの奥地のような辺境であったこと。我々の知るピラミッドはこんな鬱蒼とした場所に建ってはいない。ここが地球ではないなによりの証拠なのだろう。

 

 だが一番重要なのはここの生態系だ。飛行ユニットを積んだストーム4が偵察して分かったのだが、まるで恐竜のような見た目をしたオレンジ色の生物たちが闊歩していたという。他にも人間並みの大きさの魚や虫、黄色いトカゲのような生き物まで存在していたそうだ。

 

 たが彼女たち曰く人間サイズを超える生物は発見出来なかったというので一先ずは安心だろう。

 希望的観測に過ぎないのは承知しているが、わざわざ好き好んで絶望する必要もあるまい。

 

 まずは行動の方針を決める必要があったため、話し合いが行われる。

 ストーム2からは情報収集の継続案が出され、ストーム4からは拠点の防備に人員を割く必要があると言われる。実際に目にして来た彼女たちの意見を無碍にするわけにもいかず、とりあえずは二チームに分かれ行動することとなった。

 事実、ピラミッド内には光を失ったリングが鎮座しているため、これを守る必要があった。そして不味いことにどうやら故障しているようなのだ。

 というのも先ほどリングが光を失っていたため、本部に通信したところ応答が一切無く砂嵐が聞こえるのみであった。

 プロフェッサーからは事前に通信できるようにしてあると伝えられているため故障で間違いないだろう。

 

 幸い弾薬、食料と多く持ってきているためその点は問題ないが、元の世界に帰る手段を失ったのは大きい。この世界を生き抜くためにも早急に行動を起こすべきである。

 

 「…では行きましょう、ストーム4。…大尉、ストーム3、ここはお任せしました」

 「フッ、亀のように鈍い動きで防衛線を突破されるなよストーム3」

 

 「ああ、任せておけ。そちらの吉報を待っているぞ。あと無線はオープンにしておけよ。何があってもいいようにな」

 「そっちこそウサギのように飛び回って撃ち落とさ「…やめておけ」…!失礼しました隊長」

 「部下が失礼した。背中は任せろ。安心して行って来い」

 

 やはりどの世界でも頼もしい先輩方だ。

 いつもの下りで場が和んだところでストーム1、4は出発を開始する。

 

 この先に何があるかは予想もつかない。だが我々は精鋭ストームチーム。障害が何であろうとこの仲間となら突き進んでいけるだろう。その思いは皆、同じであった。

 

 

 〜これは後にツキトの英雄と呼ばれる者たちの物語である〜




 
 多忙につき、不定期更新

 拙い文章は許してくれ!


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第二話


 長くなったので二話に分割。

 因みにストーム1は(R)です。


 

 偵察のため拠点を出発したストーム1、4は現在、鬱蒼とした林の中を川沿いに歩いていた。

 

 「ストーム1、これを見てみてくれ」

 

 水分を多く含んだぬかるみに悪戦苦闘しながら進んでいると不意に呼び止められ、振り返るとストーム4が何かを指指していた。

 隊員たちもつられて目線を移すとそこには立派に形成された青く澄んだ色の鉱物が存在していた。

 

 青い鉱物といえば真っ先に思い浮かぶのはサファイアだ。

 しかしここは自分たちの知る星とは違う場所であることは何となくだが分かる。それにこの星は地球では見たこともないような独自の生態系が築かれている。故にこの鉱物も全くの未知の鉱物である可能性もあるというわけである。

 

 「…プロフェッサーなら何か分かるかもしれないですね」

 「なら持ち帰るとしよう。これが我々にとって有益な物であるといいのだがな」

 

 直接鉱物に触れて手持ちの道具でも壊せることを確認すると、少量砕いてポーチの中に仕舞っていく。

 

 全て採取し終わり、ポーチの口を縛っていると後ろから期待と羨望の籠もった声が聞こえてきた。

 

 「隊長たちばっかり羨ましいですよぉ」

 「私持ち帰ってアクセサリーにしたいなぁ」

 「隊長持って帰っちゃダメですか?」

 

 普段は英雄と呼ばれ任務になればクールに遂行する彼女たちも、キレイな宝石を前にしたら一人の女性ということである。

 

 「お前達…ここには任務で来ていることを忘れているわけではあるまいな?第一これは研究サンプルであって私的に拾っているわけではない」

 

 巨大な鉱物を前に色めき立っている自身の部下達に改めて任務の重要性を説く。

 お説教に近い説明を一通り聞かされた彼女たちは、渋々といった感じではありながらも納得はしたのかそれ以上は何も言わなかった。

 

 とはいえ隊長自身も女性であるため彼女たちの心情も分からないでもなかった。

 自身はどちらかというとオシャレな物からは縁遠い存在だと思っている。それでも目の前の圧倒的な光沢と大きさを誇る鉱物を見ていると胸が高鳴らないといえば嘘になる。

 そのため何だかんだ部下思いである彼女は部隊を率いる者としては正しい行動をしたものの、バツの悪そうな表情を浮かべていた。

 

 そんな彼女たちを見かねてストーム1がこんな提案をした。

 

 「…でしたら少し多く持ち帰るとしましょう。…余った分を皆さんに回してもらえるよう俺の方から説得してみます」

 

 そう言うと彼女たちの目が爛々と輝くのが分かった。

 

 「え!いいの?」

 「嬉しい!やった!」

 「ありがとうございますストーム1」

 

 ストーム1からの思わぬ提案により喜びをあらわにする彼女たち。

 そこにストーム4の隊長が困ったように声をかけてくる。

 

 「ストーム1本当にいいのか…お前は自身の権限で物を頼むのをあまり好ましく思ってなかったじゃないか」

 

 今まで本部から何度も希望する物品や待遇などの要望はないか本人に確認がなされていた。

 しかし彼は決まって自身には分不相応だと断っていたのをストーム隊全員が知っている。

 強いて上げた要望など“常に前線にいさせてくれ”である。

 本人が望まないからこそ彼は自身の持つ絶大な権限とは裏腹に階級は一兵卒と変わらない。

 

 異世界の資源という貴重なサンプルを少量とはいえ私的に回してもらうとなると直接調査するプロフェッサーは勿論、司令本部の方にも話を通す必要があるだろう。

 宇宙戦争を勝利に導いた立役者であるストーム1が頼み込めば断られることはまず無いが、それはつまり自身が敬遠していた“立場”を利用するということである。

 

 普段から多くは語らない男だが其の実、隊の誰よりも仲間想いだというのを皆が知っている。

 そのため流石にそこまで気を遣わせるのは気が引けると思っているとストーム1は首を横に振る。

 

 「…どうか気にしないで下さい。…生きて…皆さんがこうして笑って下さっているだけで俺は満足ですから」

 「…?すまない。少し聞き取れなかった所があったのだがなんて言ったのだ」

 

 本人は“気にしないでほしい“と言う。

 EDFの標準装備であるバイザーのせいで目元は見えないものの、何故かその瞳が慈愛に満ちていることは不思議と感じ取ることが出来た。

 

 「そうか…そう言ってもらえるだけ我々も嬉しいものだな」

 

 少しの間、その場に穏やかな静寂が訪れる。

 しばらく皆が無言でいると“ゴホン”とわざとらしく咳払いをし、ストーム4隊長が探索を再開するよう促してくる。

 皆が頷き、同意した所で探索を開始しようと一歩踏み出したその時、茂みの奥から野太い雄叫びのようなものが聞こえてきた。

 

 すぐさま警戒態勢を取るとバイザー越しにマップを表示させる。

 衛星が上がっていないため詳細なマップは表示されないものの、自身を中心に生体反応は感知するためこれで周囲を警戒する。

 

 するとマップ上に赤点が複数点在しているのが確認できた。

 それだけでなく赤点がこちらに集結しつつあるのも見て取れる。

 敵性生物の接近、その事実が現場に緊張を走らせる。

 

 「…ストーム1どうする」

 「…一先ず様子を見ましょう。…これが現地人であればこちらから敵対するわけにはいきません」

 「了解だ、お前達!一旦後退し敵の姿を視認する。いつでも飛べる準備はしておけ!」

 「「「Sir! Yes! Sir!」」」

 

 流石は精鋭というべきか、作戦が決まってからの彼らは早い。

 すぐさま後退しつつ退路を確保し、見晴らしの良い場所で自身の得物に手をやり迎撃態勢に入る。

 

 どれくらいたったか、敵性生物が姿を表すまで秒読みという所まで来ていた。

 

 アサルトライフル“オーキッド”

 

 銃を持つ自身の手に力が入る。

 他の隊員を見ると“マグブラスター”“パワーランス”“サンダーボルト”など多種多彩なプラズマ兵器を持ち、落ち着いた表情で敵が現れるのを待っていた。

 そこには緊張こそあれど、恐れや躊躇いといった感情は見受けられない。

 流石だとストーム1が思っていると遂に対象が茂みを割って姿を表す。

 

 彼らには知り得ないことだが、それはフロギィと呼ばれ鳥竜種に分類される毒を操るモンスターであった。

 ソレらはやや前傾姿勢の二足歩行でオレンジの体色をしており、喉は袋状に膨らんでいるのが確認できる。

 そして中でも一際大きい個体がおり、ドスフロギィと呼ばれる群れを束ねるボスである。

 

 「…大きいですね」

 「ああ…。偵察に赴いた際にはあの大きいのは確認出来なかった。恐らくヤツが群れのボスで間違いないだろう」

 

 人を超える大きさをもつ生物に驚きつつもどう対処すべきか考える。

 

 (…小さいのはあまり脅威には見えないが、問題は群れのボスだ。…生態が分からない以上、無闇に戦えば被害を被る可能性もある)

 

 情報という戦闘に置いて最も重要なファクターを彼は決して軽視しない。

 それはプライマーとの戦争で嫌という程思い知らされたからだ。

 まずはあのボスと思われる生物の情報を引き出すためにストーム4に協力を仰ぐ。

 

 「…露払いは俺が。…皆さんには群れのボスの注意を引きつつ攻撃パターンを探って頂けますか」

 

 ウィングダイバーであるストーム4はフライトユニットを装備しており、空中戦を最も得意とする部隊である。

 見たところ獣たちは空中に届き得る攻撃手段は無いように見える。

 それこそ口から火でも吐けば別だが、生物学に詳しくない自分でもそんな滅茶苦茶な進化はあり得ないことは想像に難くない。

 しかし過去には怪生物サイレンや生物学的に飛行手段を持たない筈なのに大空を浮遊、反射シールドまで装備していたプライマーの尖兵がいる以上、警戒をするに越したことがないのも事実だ。

 

 ストーム4もそのことを理解しているのか、深く頷くと声を張り上げ隊員たちを鼓舞する。

 

 「ストーム4出るぞ!ヤツに空中戦の恐ろしさを教えてやれ!」

 「「「Hoo-ah!」」」

 

 大物を任されたストーム4は隊長の号令のもと、大空を翔けるように飛び立つのであった。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 大空へと飛び立ったストーム4を見送りつつ、ストーム1も戦闘を開始しようとしていた。

 

 匂いで我々の存在は認識していたようだがストーム4が飛び立ったことにより初めてこちらを視認出来たようだ。

 こちらに気付いたフロギィたちはエサを見つけた獣のように突撃を仕掛けてくる。

 鳴き声を発する度に端々から涎を撒き散らす様は醜悪そのものだがその瞳は獲物から逸らされる事はなく、そこから食物連鎖の捕食者としての姿が伺い知れる。

 

 ストーム1は様子見としてまず一番手前に来たフロギィを狙い撃ちする。

 トリガーを引き銃口より発射された弾丸は狙い通り頭部へと着弾する…筈だった。

 

 後方でストーム4と戦闘をしているドスフロギィが突如雄叫びを発したかと思うと、フロギィがサイドステップを繰り出し銃弾を躱したのだ。

 

 「…外した?…いや」

 

 疑問を確信へと変えるためもう一発銃弾を発射する。

 するとやはり、先ほどと同様にドスフロギィが雄叫びを発すると同時に銃弾を躱す仕草を見せたのだ。

 

 「…統率の取れた獣か…厄介だな」

 

 一連の行動により群れのボスが指示を出している事は明白であり、組織的な狩りを行う知恵のある獣に思わず愚痴を零す。

 

 その証拠に突撃を仕掛けてきたフロギィたちは飛び道具を警戒し、ストーム1と一定の距離を保ち威嚇をしている。

 並行してこちらを囲むように少しずつ横に広がりを見せているのにもストーム1は気付いていた。

 

 背後を取られぬよう後方にローリングし、大きく距離を離す。

 しかしそれに気付いたフロギィの一匹が前方に跳躍し何かを吐き掛けてくる。

 喉袋を大きく膨らませ吐き出したそれは、空気中に滞留しているのが目に見えるくらい濃い紫色をしていた。

 その気体は何か、それはストーム4からの無線で分かることとなる。

 

 「気を付けろストーム1!ヤツらは毒を使ってくるぞ!」

 

 ―毒―

 人類にとって最も効果を発揮する危険な物質の一つ。

 

 色の濃さからも強い毒性が伺えるそれをまともに食らう訳にはいかない為、再度ローリングをし距離を大きく離す。

 

 そして直ぐ様体制を整えさらに弾丸を叩き込む。

 

 「…やはりか。…ならば」

 

 しかし結果は同じでありこれでは埒が明かないと、ストーム1は背中に背負って来たもう一つの“武装”に手を伸ばす。

 しかしこれは威力が高すぎる為、周囲を考えるとあまり多用はしたくないというのが本音ではあった。

 

 どうするべきかと悩んでいると突然、爆発音が聞こえ周囲に地響きと衝撃波が走る。

 音の方へ目を向けるとドスフロギィがストーム4にプラズマキャノンを打ち込まれ絶命しているのが見えた。

 

 「…今!」

 

 これを好機と捉えたストーム1は直ぐ様前方のフロギィへと銃口を向ける。

 

 (…群れのボスを失い浮足立っている今のヤツらなら難なく殺れるはずだ)

 

 アサルトライフルの中でも特に火力の高いオーキッドから発射される正確無比の弾丸はいとも容易くフロギィたちの頭を砕いていく。

 仲間を殺されたフロギィたちは怒り狂い次々とストーム1へ体当たりを仕掛けてくるが所詮は統率を失った獣たち。

 それらをすんでのところで躱しすれ違いざまに弾丸を叩き込む。

 

 最後の一匹を片付けた事を確認したストーム1はホッと一息をつく。

 異世界に来て初めての戦闘はこの世界の脅威度を改めさせるには十分過ぎるものであったのだった…

 





 あらすじにストームチームとガッツリ記載してありますがストームチームだけが主人公ではないです。


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第三話


 次で大尉とグリムリーパー出せればと。


 その後、周囲の安全を確保したストーム1、4は合流を果たし雑談も交えて今後の方針を話し始める。

 

 「ふっ…複数を相手に無傷とは流石というべきか」

 

 「…買い被りすぎです。…毒を使うという皆さんからの情報が無ければ危うかったかと」

 

 「そう思うなら普段から我々をもっと頼って欲しいものだがな」

 

 戦時中から口酸っぱく大尉に言われていることをストーム4にも言われストーム1は苦笑することしか出来ない。

 

 その時ストーム1は一つの疑問を思い出す。

 

 「…そういえば何故皆さんはヤツらが毒を使うと分かったのですか」

 

 見るからに毒々しい見た目だったとはいえ、あの時確かな分析もされてない状態でそれが毒だと断言していたストーム4を不思議に思う。

 

 「その事だが…不覚にも攻撃を受けたことでそれが毒だと分かったんだ」

 

 EDF兵士が装備するアーマーにはバイタルセンサが取り付けられており、装着者の状態がバイザー越しに可視化出来る設計となっている。

 

 この機能は開戦時元々備わってなく、スキュラと呼ばれる体から毒ガスを発する恐ろしいエネミーの台頭によりプロフェッサーによって追加されたものであった。

 

 これにより毒ガス内からの迅速な退避が可能となっている。

 

 さらに言えば装備者の異常を感知するとアーマー内に組込まれている解毒剤が自動で投与される機能があり、当時のプロフェッサーの努力が伺い知れると同時に戦時中の生存率が飛躍的に上がったのは言うまでもない。

 

 だが感知してから投与、効き目が出るまでに若干のタイムラグがあるため油断は禁物である。

 

 「済まない。心配を掛けた」

 

 「…いえ皆さんが無事で何よりでした…それで一度この獣のサンプルを持ち帰るために拠点へ戻ろうと思いますがよろしいですか」

 

 そう言って絶命しているドスフロギィたちを指指す。

 

 戦闘によって所々欠損してはいるもののまだまだ採取出来る所は多い。

 

 それに死肉を持ったままウロウロしているとそれを餌にする肉食獣を呼び寄せかねない。

 

 「特に異論は無い。大尉殿に連絡を取り帰投するとしよう。お前達!手早くサンプルを回収し、拠点へと即時帰還するぞ!」

 

 「うへぇ…隊長本気ですか…」

 「ポーチが血で汚れちゃう…」

 「ストーム3に回収に来てもらいませんか」

 

 そういうのは無骨なストーム3にやらせろと騒ぎ立てる隊員たち。

 

 ヤジを飛ばす部下達を聞き流しつつ帰投する旨を大尉へ伝えようと無線に手を掛けるとストーム4は「しかし…」と続ける。

 

 「巨大な体躯に強力な毒性を持った獣か…この世界は我々が思うより危険な進化を遂げているのかも知れないな…黄金の果実を求める余り破滅しなければ良いのだが」

 

 旧約聖書になぞらえて語られたソレが軍上層部の事であるのは言うまでも無かった。

 

 そうこうしているとその場に居た全員がある違和感に気付く。

 

 “風”を感じるのだ。

 

 この大自然の中、風が吹くこと自体は何もおかしい事はない。鬱蒼とした林の中ではむしろ歓迎したい現象である。

 

 しかしそれが“不定期”かつ僅かながら“熱気”を含んでいれば話は別だ。

 

 耳を澄ませばズシン、ズシンと微かに鈍い音も聞こえてくる。

 

 こちらに近付きつつあるその音は自然と鳴るようなものではなく、そこに何かがいるのは明白であった。

 

 「…どうするストーム1」

 「…我々はあくまでも斥候…少数しか居ない今、交戦を避けられるのなら避けるべきです」

 

 いつもは制止しても突撃するのに珍しく慎重な姿勢を見せるストーム1にストーム4は驚きを見せた。

 

 「ほう…以外だな。お前なら一人でも戦闘に行くと思っていたが。だが賢い選択だ。私もその意見には同意する」

 「…あの時は倒すべき敵を知っていて守るべき未来があった…今は敵も未来も分からない…ただそれだけの違いです」

 

 思い出すのは最初のループ。何も分からなかった自分は―武器、戦略、敵―他にも学べる物は何でも学んだ。

 

 無知のまま戦う恐ろしさを身を以て体験したからだ。

 

 「そういえばお前は戦時中、まるで未来を予知してるかのように戦っていたな。どんなカラクリか気になる所だがそれは帰ってからにでもしよう」

 

 そう言って全員が素早く撤退の準備を整える。

 まだミニマップには映って無いものの先ほどより近いことは肌で感じていた。

 

 程なくして準備が完了した所でとうとう赤点がミニマップに表示された。

 しかし点は正確には二つであり、片方は白く表示されていたのだ。

 

 EDF装備のミニマップには三つの識別点があり、青は仲間の識別信号が送られる者に、赤は人間から逸脱した大きさか異なる生体反応を示す者に、そして白は人間に近い大きさか生体反応を示す者に付けられる。

 

 つまり今映っている白点は現地人の可能性があるのだ。

 

 この世界の生物は並みの人間では簡単に命を落とすほどの強さを持つ事は先ほどの一戦で認知しており、この赤点が今倒れている獣と同等であるならば近くにいる現地人がどういう結末を辿るかは想像に難くない。

 

 本来であればそこに居合わせた訳でもない以上、安全をとって撤退を始めるのがベストであるがそうはいかないのがストーム1という男である。

 

 ループすらしてない最初の世界。一般人であった自分を果敢に戦い救ってくれた大尉。

 彼の背中を見たその時からストーム1の心は決まっていた。

 

 ―自分の手で救える人は決して見殺しにはしない―と

 

 故に彼は動く。未知の世界、未知の敵、だから何だと。

 

 “EDFは仲間を見捨てない”

 

 それはまだ見ぬ者に対しても適応されるのである。

 

 「…すみません…俺、行ってきます」

 

 そう言い彼はミニマップを頼りに最短を駆けていく。

 

 レンジャーの着用するアンダーアシスト装備によってぬかるんだ沼地すら物ともせず、あっという間にストーム4から見えなくなった。

 

 「ふっ…やはりお前は英雄ストーム1だ。誰とも知れぬ者のために命を賭けるか…バカだが嫌いじゃない」

 

 お前はいつだって誰かのために戦い続けてきた。

 最初はどうせ早死にするだけだろうと冷めた目で見ていた。

 だが予想は外れ次々と戦果を挙げ続けるお前に何時しか希望を与えられていたことに気付いた。

 かつてスプリガンと呼ばれていたあの頃とは違う。同じストームのコードネームを持つ仲間なのだ。

 

 だからこそ彼女たちの次の行動は決まっていた。

 

 「仲間を見捨てて逃げろと軍で習ったか?違う!EDFは仲間を見捨てない!英雄の援護に向かうぞ!」

 

 「「「Sir! Yes! Sir!」」」

 

 かの英雄の背を追いかける様にストーム4も飛行を開始するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 常人を遥かに超える速度で走るストーム1はミニマップを確認し、もうすぐ対象と接敵することを認識する。

 

 (…敵とやり合わず救出対象を回収出来ればベスト。最悪なのは…)

 

 “救出対象の死亡”

 

 それが脳裏をよぎる。

 

 そして直ぐ様脳内の最悪なビジョンを片隅へと追いやる。

 そうならないために今走っているのだと自分に言い聞かせながら。

 

 そして気付けば目的地が目の前という所まで来ていた。目の前は崖だったがそこまで高くなかったため勢いのまま飛び降りる。

 

 アンダーアシスト装備によって無傷で着地に成功したストーム1は眼前に広がる光景に度肝を抜かれた。

 

 体から血を流し片膝をついている男がいたのだ。まだ息はあるものの危険な状態にあるのが見て分かる。

 よく見ると行李を背負っているようで行商人か何かだと思われる。

 

 

 だがストーム1が驚いたのは男を見たからではない。

 

 その向かいにいる()()()()()()を視界に収めたからだ。

 

 巨大な両翼を大きく羽ばたかせ滞空し、立派に伸びたその尾は先端を毒々しい液体で塗らしながら鋭利に輝いている。

 よく見れば体中どす黒い傷跡がびっしりと付いており、その瞳は世の全てを呪うほどの憎悪で満ちているかのようだ。

 

 竜から目が離せないでいると男が力を振り絞って何かを伝えようとしていた。

 

 「…貴方は…ハンター…ですか…気を付けて…下さい…あれは…恐らくヌシと…呼ばれる…個体…のリオレイア…噂では…原種を超える…猛毒…を使…うと…………」

 

 男の体は酷く傷ついており、とうとう気を失ってしまう。

 

 そんな男の状態を見てストーム1はすぐに腰に付けてあるエリアルリバーサーを周囲に展開してオーキッドを構える。

 

 相手は歴戦の個体。

 別名“陸の女王”と呼ばれる上位捕食者の中でも熾烈な生存競争を生き抜いてきた真の強者。

 

 その圧を肌で嫌というほど感じつつ眼前の敵を視界内に収め油断なく対峙する。

 

 今まさに怒れる女王との死闘に火蓋が切られるのだった。



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