お風呂は好きかな? (みいつけ党下っ端)
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お風呂は好きかな?

狂育番組はいいぞ〜


 

「わかりあえるかどうかは兎も角、話のできる魔族はいるよ。一人」

 

火を囲み、雑談に花を咲かせながら、夕食を食べる勇者一行の四人。

 

そんな中、魔族を見たなら即殺すを実行するエルフ、フリーレンからは考えられない言葉が飛び出すことにより、勇者パーティの面々は、その魔族というのに興味が湧き出る。戦士のアイゼンが先程話していた僧侶のハイターからフリーレンへと視線を映す。

 

「お前がそういうとは珍しいな。普段なら魔族の言葉は鳴き声だ〜と言っているではないか」

 

「うん。それを取り消すつもりはないし、今でもそう思ってる。ただ、その魔族が特殊なだけ。そいつが普通の魔族なら私はここにいないだろうし」

 

フリーレンはそう言い、スープを飲む。しばらくして、火のパチパチとする音だけが耳に届いているのを不思議に思い顔を上げると、驚いたような顔で三人がフリーレンを見ていた。

 

「た、戦ったのかい?」

 

勇者ヒンメルは、恐る恐るとフリーレンに聞く。

 

三人は、勇者パーティとして、共に旅をしているフリーレンの強さを知っている。そんな彼女が、ここにいなかったと言った。彼女が魔族に負けたのだ。ヒンメルとしては、魔族の強さどうこうよりも、密かに思いを寄せている彼女がそんなことになったことに気が気でなかった。

 

「戦った、って言えるのかな。あれは」

 

フリーレンは、少し考えてそう答える。

 

「というと?」

 

「確かに私はアイツに攻撃した。でも、アイツには効かなかったし」

 

「"効かなかった"?」

 

「うん。アイツは、自分の領域の中だったら無敵、みたいな魔法を使ってた。正確には、食らった箇所の体を融解させて、再生させてるってだけだけど」

 

なんともないように言うが、彼女も言うようにそれは、無敵の能力と言っていいだろう。攻撃が当たらないのだから、倒しようがない。

 

「まぁ、融解と再生が間に合わない程に連続的に攻撃を食らわせるか、そもそも再生できないくらい大きな攻撃を打てば問題ないんだけどね」

 

「ならば、問題ないのではないか?お前ならば、その程度の火力出せるだろう」

 

「私が戦ったのは、アイツの領域の中。その領域内だと、アイツの攻撃は"必中"になるんだよ。溜めがいらない乱雑に打った強力な攻撃が全部当たるんだから恐怖以外のなにものでもないとおもうよ」

 

三人は、フリーレンの語るその魔族に戦慄する。そんなのが、この戦いの先にいるのかとなれば、この中の誰かの生命を代償にして勝つような戦いになりそうだからだ。

 

「まぁ、アイツ自身は、今はハイスで温泉宿経営してるような人間好きだし」

 

「なんて?」

 

思わず聞き返してしまった。

 

永久魔族アンチことフリーレンが、魔族の知り合いが、人の街で温泉宿を経営しているんだ、と平然と語っているのだ。聞き返したくもなる。

 

「"みぃつけた"って温泉宿なんだけど」

 

「予約が取れないで有名な高級宿じゃないですか!」

 

そして、その温泉宿の名前が城塞都市ハイスに於いて、もっとも有名であり、誰しもが、一度は泊まってみたいと夢見る高級宿だった。

 

「旅に出る前は、定期的に体を"洗って"もらってたからね。付き合いの時間で言えば、一番長いんじゃないかな」

 

「…………洗った?」

 

ヒンメルが、フリーレンの言葉を小さく復唱する。

 

これは、まずい。

 

ハイターとアイゼンは、ゆっくりと皿を置く。

 

「うん。体の隅々まで。あれは、気持ち良い。心の洗濯と言って過言ではない」

 

「…………………その魔族って男?」

 

「え?うん」

 

瞬間、ヒンメルは立ち上がる。急に立ち上がったヒンメルを見て、首をかしげるフリーレンと、予想していた状況に抑えかかるハイターとアイゼン。

 

「………ろしてやる」

 

「ヒンメル?」

 

「ソイツ、ぶっ殺してやる!」

 

鬼の形相で今にでも剣を持って、駆け出そうとするヒンメルを必死に押さえ込むハイターとアイゼン。

 

「落ち着きなさい。ヒンメル。ハイスは、ここから相当の距離です。今からでは無理ですよ。それに行ったとして、街中で暴れる気ですか」

 

「そんなことはしない。ただ、その宿を粉々にするだけだ。一欠片も残さずに魔族ごと潰すだけだ」

 

「そもそも、そこに奴がいるとは限らんだろう。経営は、他の者に任せているかもしれんだろう」

 

「そんなに会いたいなら、呼ぼうか?」

 

三人の動きが止まる。

 

「皆も一回、アイツに洗ってもらうといいよ。病みつきになるから」

 

ヒンメルから色素が失せていく。

 

「"みぃつけた"に行くのもいいかも。私なら顔パスで泊まれるよ」

 

それに反応を示してたのは、ハイターだった。

 

フリーレンの言葉は、それすなわち、お互い直ぐに連絡の取り合える仲、という事となる。原理はわからないが、きっとそういう魔法でもあるのだろう。そして、定期的に洗ってもらってた発言から肌を見せ合う仲というのも確実。ヒンメルは、ゆっくりと膝から崩れ落ちる。

 

“哀れヒンメル“

 

二人は静かに真っ白に燃え尽きた男に十字を切る。

 

「呼ぶとしてもどうやって?」

 

「簡単だよ。出てくる場所を用意して、名前を呼べばいい」

 

フリーレンは、そういうと、バックの中から白い小さな桶のようなものを取り出すと、地面へと置く。すると、桶の大きさが人一人を入れるようなサイズへと変え、中に水が溜まっていく。水が溜まりきったのを確認したフリーレンは、静かに名を告げる。

 

「オフロスキー」

 

瞬間、桶の中の水がぶくぶくと泡を立て始める。それを見て、なにが出てきてもいいように身構えるハイターとアイゼン。ハイターは、ふとヒンメルに目を向けるが、未だに真っ白のままだった為、無視した。

 

その時、ザバンッ!と桶の中からなにかが出てくる。

 

「呼んだ?」

 

「うん。呼んだ」

 

そこには、雲のような模様のピンク色の服を着ている、緑色の角をはやした魔族がそこにいた。

 

魔族、オフロスキーは周りを見渡し、そこが森の中だと言うことを理解すると、大きくため息をつくと、桶から出てくる。水から出てきた筈なのにオフロスキーには、濡れている様子がなかった。

 

「まったく。最近呼ばれないから遂に身でも固めたのかと思えば、数年、街にでも住んでいたのか、フリーレン?」

 

「いや、今回は皆が会いたいって言ったから呼んだ」

 

「皆?」

 

そこで、オフロスキーはフリーレンの後ろに三人の男がいることに気付く。自身を警戒している男に二人と何故か真っ白になっている男が一人。

 

「旅の仲間ができたのか」

 

「うん。魔王討伐の旅」

 

「ほう、あの魔王をか。長生きなだけの偏屈な奴だが、中々に強いぞ」

 

「問題ないよ。ヒンメルもハイターもアイゼンも強い」

 

オフロスキーは、微笑ましそうにフリーレンを見る。その目はまるで、成長した子供を見る父親や兄のような目だった。

 

二人の会話に置き去りにされているハイターとアイゼンの背中には、宇宙が広がっていた。それもそのはず、魔族絶対殺すウーマンと書いてフリーレンと読む彼女が、その魔族と談笑しているのだ。

 

その時、二人の間から影が飛び出す。

 

死ネ

 

「おっと」

 

オフロスキーの目の前には、修羅となったヒンメルがいた。オフロスキーは、立ち尽くしているハイターとアイゼンを見て、襲いかかってきたのが、何故か燃え尽きていた男だと判断する。

 

「“好運打死(よんだんす)“」

 

衝撃波が吹き荒れ、木々が悲鳴を上げるように揺れる。

 

オフロスキーの手には、細い木の棒の先に木でできた土台と先に緑色のブラシのついた、所謂デッキブラシが握られていた。

 

明らかに掃除用品にしか見えないそれで、剣を防がれたヒンメルは、その掃除用品からとてつもない悪寒を感じ、飛び退いてオフロスキーから距離をとる。

 

「やぁ、お風呂は好きかい?」

 

デッキブラシを肩に担ぎ、オフロスキーは不敵に笑う。

 

 




オフロスキー(偽)
結構長生きしてるオフロスキーになった転生者。
スペックは、狂育番組の方のオフロスキーなため、普通に強い。
前世は、祖母が銭湯経営していただけの一般人。ちなみに銭湯は時代の波に飲まれて、主人公が成人する頃には、畳んでいた。
フリーレン懐柔という偉業をなした最高にイカれた魔族。
ちなみに"洗う"は魔法によるもののため、裸を見たわけではない。決して


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別れは好きかい?


作者です。
ネタがありません。
書いて欲しいシチュエーションあったら教えて欲しいとです。

作者です。
漫画喫茶かなんかで3巻まで読んで、アニメ見てる程度の知識なため、フリーレンのこれじゃない感が否めません。 

作者です。
これを気に漫画買おうかとも思ってるけど、金欠です。

作者です。
作者です。。
作者です。。。


 

「なにをしている」

 

土砂降りの雨の中、一人のエルフが一人の魔族へと杖を向ける。エルフの目の前には、ピンク色の服を着た巫山戯た風貌の魔族が死体を一つの箇所に纏めていた。

 

四肢がバラバラになった者、胸を大きく切り裂かれた者、首が捻れている者。死に方は様々だが、言えることは、どの死体も苦痛に歪んだ顔をしており、"喰われた跡"がないのだ。

 

「弔いだ」

 

「…………なんのためにだ」

 

エルフは杖の握る力を無意識に強くする。

 

「勘違いするな。彼等をやったのは、俺ではなく、同族だ」

 

ここは、一つの小さな村だった。しかし、そこに一人の魔族が入り込み、一瞬にして、昨日まで平和だった村を血まみれの惨状へと変えた。小さな靴がハマった小さな足がエルフの目に映る。

 

杖の先に魔力が溜まっていく。

 

「撃つなら、せめて横から撃ってくれないか?そこから撃たれたら避けるに避けられないからな」

 

「なら、避けるな。潔く死ね」

 

「もう少し、穏やかにいけないものか。いや、無理か」

 

魔族は、諦めたようにため息を一つ吐くと、エルフのことなど気に留めること無く、倒壊した家まで行くと、瓦礫をどかし、そこにある死体を丁寧に運ぶ。

 

「ここを襲った奴は、子供みたいな姿の奴でな。腹を空かした子供の振りをして、村の中に入ったらしい」

 

「なら、その魔族は何処にいった」

 

「殺した」

 

エルフは顔を歪める。

 

魔族とは、"言葉"を理解する生き物だ。しかし、"心"を理解しない生き物だ。便利だから使う、効率的になるから使う、魔族にとって、言葉とはそういうものなのだ。子供の姿をした魔族が"お母さん"と言えば、途端に誰もがその魔族へと攻撃を辞める。逃げる隙を、魔法を編む時間を、相手の油断を、様々なものが生まれる"魔法のような言葉"。だが、何故それが"魔法のような言葉"となるのかを理解しない。それが魔族なのだ。

 

故に顔を歪める。エルフにとっては、目の前の魔族がしているのは、自分への命乞いにしか感じられないからだ。この魔族が村人達を殺し、づらかろうとした時に自分の魔力を感じ、時間稼ぎのために、こうしているようにしか見えないからだ。殺したという言葉も仲間はいないという油断を誘わせる為なのだろう。はっきり言って、反吐が出る。

 

「…………これで全部だな」

 

魔族は、並んだ村人達を一通り見た後、あたりを見渡す。そして、頷くと手を合わせて、目を瞑る。

 

エルフは、いつでも対処できるように杖を構える。

 

「"忌零輝霊(キレイキレイ)"」

 

村人達の周りが光りだす。即座にエルフは、この魔法が目潰しだと考え、魔族へ向けて魔法を放つ。しかし、魔法は魔族に着弾することなく、すり抜け、遥か遠くへと飛んでいって行ってしまう。エルフは、予想のしていなかった出来事に目を見開くが、すぐに気を取り直し、再び魔法を打つために魔力を溜め―――

 

「やめておけ」

 

先程まで視界に捉えていた魔族が目の前に現れ、杖に手を添え、上に向けることで中断される。

 

「時間の無駄だ」

 

男は、杖から手を離し、村人達の下へと戻っていく。そして、エルフが村人達の姿を見て、驚く事になる。

 

「傷が、治って…………」

 

「"修復する魔法"というのがあってな。それを俺なりにアレンジしたものだ」

 

村人達に怪我らしい怪我がなくなっていたのだ。四肢が繋がっている。胸元に大きな傷などない。首は綺麗にまっすぐだ。服も直され、元々なんの傷もなかったかのようになっていた。そして、村人達の表情は安らぐように静かだった。

 

「俺は、この村の弔い方を知らない。だから、俺のやり方となってしまう」

 

魔族は村人達に語りかける。死んだ者へと仲間が弔うように。死んだ者へと友が懐かしむように。死んだ者へと家族が慈しむように。

 

「一つ、聞きたい」

 

「なに?」

 

「人間の一般的な弔い方を知っているか?」

 

「…………土葬だけど」

 

「そうか」

 

その時、村のそこらから大きな透明な泡が湧き出てくる。エルフがその名を今、知る由もないが、"シャボン玉"は村人達へと集まる。そのシャボン玉は、雨が当たろうと割れること無く、村人達を守るように集まってくる。

 

「棺を用意することが出来ないのは済まない。作り方を知らなくてな」

 

シャボン玉は、ゆっくりと形を形成していき、棺のような形をした大きなシャボン玉へとなる。そして、ふわふわと宙に浮き出す。気付けば、雨はやみ、雲から顔を出した太陽は、シャボン玉を照らしていた。

 

その光景にエルフは思わず、目を奪われていた。

 

「おい、エルフ。穴を掘れないか?」

 

「……………はい」

 

「助かる」

 

エルフは、魔族に声をかけられ、はっとする。魔族がこちらを見ており、エルフとしては、聞いてやる義理など何処にもないが、渋々、村人達が置かれていた場所に全員分入る穴を開ける。

 

魔族はエルフに礼を言うと、指示するように手を振る。すると、シャボン玉の棺桶達が続々と穴の中へと入っていく。全て、漏れ無く入ったのを確認する。エルフは、魔族に声を掛けることなく、穴を埋める。そして、わかるように少し山を作る。

 

魔族は、ゆっくりと山へと登ると、頂上に小さな木の枝でできた棒を突き刺す。そして、ゆっくりとしゃがみこんで、静かに手を合わせる。

 

「ここの村の人たちは、いい人たちだった」

 

「…………」

 

エルフは、魔族の背中を見ながら、警戒は解かない。いつでも襲いかかってきてもいいように。

 

「魔族だとわかりながら、倒れていた俺の事を家の中に入れ、パンと温かいスープをくれた」

 

魔族は、思い出を溢す。きっと、自分の油断を誘う為のものだ。心など許してはダメだ。コイツ等の常套句だろう。

 

「礼をと思って、何度か山の動物を狩っては、村人たちに渡していた。子供達がはしゃぐように俺を囲んだのを覚えている」

 

なぜ、そんな悲しそうに語れる。お前は魔族だ。"心"のない化け物だ。やめろ。狙いがズレる。

 

「いつものように山の動物片手に村に行った。また、子供達は喜んでくれるだろうかと。森を出て目に入ったのは、愉快そうに笑うヤツだった」

 

エルフは、気付く。十字架の前にポタポタと雫が落ちているのを。まさか、泣いているのか?

 

「俺は、"心"というものに"理解"がある。だが、"わからない"んだ。それは、きっと魔族だからだろう。心が"人"だろうと、肉体である"魔族"に精神が引っ張られてしまう。だが、あぁ、そうだ。そうだった。悲しい、悲しいんだな、俺は」

 

エルフは、無意識のうちに杖をおろしていた。何故か、わからない。エルフがわかる事などないだろう。今もそしてこれからも。

 

 

エルフは気付くと、魔族の横へと立っていた。

 

 

そして、山には、綺麗な花畑が生まれる。

 

 

魔族は顔を上げ、横を見る。目の前には、自身と目線を合わせ、まっすぐと己を見る名も知らぬエルフ。

 

「聞かせて。この村の人たちのこと」

 

エルフは思う。この魔族のことを知りたい。エルフは、自身の魔族への憎悪がわからなくなるほど、目の前の魔族への興味が強くなっていた。

 

エルフは、魔族に手を差し伸べ、

 

「ぶっ!?」

 

顔に水をぶつけられた。思わず、尻もちをつく。目の前には、目を赤く腫らした魔族が一人。魔族は、エルフを"馬鹿にする"ように笑う。

 

「バカなんじゃないのか、お前は。魔族の言葉なんぞ、信用するもんじゃないぞ」

 

エルフは、カチーンと来た。怒ったのではない、苛ついたのでもない、ムカついたのでもない。しかし、先程までこの魔族に向けていた同情の気持ちなど、先程の泡と共に何処かへ飛んでいった。

 

「いいだろう。そこまで死にたいのなら、殺してやる」

 

「攻撃を外していたが大丈夫か?エルフは見た目の割に歳を食っているらしいな。老眼鏡をかけることをおすすめする」

 

よし、泣かす。コイツ、絶対泣かす。

 

エルフは、静かに決意した。最早、コイツにかけてやる慈悲など何処にもない。ぐちゃぐちゃのけちょんけちょんにしてやる。

 

「外で話そうか。魔族」

 

「寂しんぼか?一人でいけよ。エルフ」

 

その日、心優しき魔族が生まれた小さな村跡の花畑が場違いだと思えるクレーターがいくつも出来る事を二人は、まだ知らない。

 

これは、後の大魔法使い、葬送のフリーレンと呼ばれるエルフと、人と共に生きる魔族、オフロスキーの出会いの物語である。




【小さな村】
外の村との関わりがあまりない小さな村。魔族というのを知る人物は村の老人達。しかも口伝でなんとなく伝わってる程度の知識しか無かった故、危険なのをあまり知らなかった。
そこに魔族(にわか)のオフロスキーくんと交流を持ち、なんだ魔族いい奴やんとなり、魔族(ガチ)を招き入れ、壊滅。残念ながら、どのみち滅んでいた。


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お話は好きかい?


オフロスキー(偽)がフリーレン世界に与えた影響。
その1、クヴァールお爺ちゃん
時系列バラバラになりそうだけど、許して許して。
マハトVSオフロスキーは少し書きたい。


「なるほどのぅ。殺しきれぬ故に封印する。妥当だな」

 

愉快そうに笑う人の数倍はある獣の体躯を持ち合わせた腐敗の賢老と呼ばれる魔族、クヴァールは、膝をつき、自身の石となりかけている体を見る。そして、目の前で瀕死となっている先程まで自身と戦っていた者たち、勇者一行を見据える。

武器を杖代わりに倒れないように立っているドワーフ。立てずに尻もちをついている人間。杖を向けてこそいるが、殆ど魔力が残っていないエルフ。仲間たちの一番前に立ち、未だ自身と向き合うように剣を構える人間。

 

「ヒンメル、ハイター、アイゼン、フリーレン。ふむ。儂がここまで追い詰められたのは、人間相手ならば初めてよな」

 

「まるで、人間以外に追い詰められたことがあるみたいな言い方だね」

 

「オフロスキーという同族よ。普通の条件下ならば勝てるが、やりづらい魔族よ。ヤツは」

 

エルフ、フリーレンは、まさかここで知り合いの名前が出てきたことに驚く。勇者一行として、仲間たちと旅に出る前は、かなりの頻度で会っていた魔族の友人だ。

 

「ヤツの特徴は、なにより手数の多さ。一芸を極める魔族にとっては、異端。殴った相手の内部を破壊可能な打撃武器、それを十全に扱える近接戦闘能力、シャボン玉による攻撃の無力化、水による多種多様な攻撃」

 

クヴァールの言葉にフリーレンは、心の中でうんうんと頷く。彼女もオフロスキーと戦ったことがあるため、その厄介さは身にしみて理解している。

 

「なにより、"領域展開"だったか。いやはや、あれほどまでに完成された結界魔法は見たことがない。まさしく奥の手よ」

 

クヴァールは、思い出すようにうんうんと頷く。

 

「"己の在り方"、いわば"己の世界"を結界の中に発生させる結界魔法。見事綺麗な魔法術式、しかし、長生きしている大魔族か、優れた才能ある魔法使いにしか使えない魔法。結界魔法の一つの完成形に近いな」

 

「随分と詳しいじゃないか」

 

「ん?あぁ、ヤツの口から概要だけ教えられたのよ。そこから解析するのに何十年要したか」

 

その時、フリーレンの体に稲妻が走る。なにそれ、聞いてない。長年、オフロスキーと関わりのあるフリーレンは、勿論、彼の"領域"についても研究していた。しかし、上手く進んでいないのだ。

 

「ククク。どうやら、オフロスキーの知り合いのようだな。なにも教えてもらえてないのか?」

 

「…………お前には関係ない」

 

「…………ふむ。長命故に感情の起伏が乏しいエルフに一定の"独占欲"を湧かせるか。尚更、面白いやつよな。ヤツは」

 

「ど、独占欲?」

 

ここから、勇者一行を殺すことなど幾らでも出来る魔法を持つクヴァールに警戒しながらも、明らかに冷静さを少し無くしているフリーレンと、剣を構える人間、ヒンメルは別の意味でフリーレンを心配するような声を上げる。喋る余裕のない他二人は、大丈夫かコイツ等という目でフリーレンとヒンメルを見ていた。

 

対応こそできるであろうが、ここで"人を殺す魔法"なんぞ撃たれれば、普通に被弾するのではないかと心配してしまう。それを見て、クヴァールは不思議そうに首をかしげる。

 

「??不思議な事ではないだろう。仲の良い友人の秘密を敵が知っているというのは、お前たちからすれば、良くは思わんのだろう?」

 

「…………あ、あぁ。なるほど」

 

何処か安心したようなヒンメルを見て、クヴァールは顎に手を当てる。そして、手の平をポンと叩く。

 

「あぁ、なるほど。ヒンメル、おぬし。フリーレンに思いをよせ―――」

 

「切り刻むぞ、この野郎!」

 

「―――う、うむ」

 

先程の戦闘で感じた気迫とは、また違う。普段ならば、向けられる事のない気迫にクヴァールは思わず、たじろぐ。

 

「………いい加減、封印されたらどうだ」

 

「そうケチくさい事を言うな、フリーレン。人と言葉を交わす事など無いのでな。思いの外、楽しくてのぅ」

 

本来ならば、既に封印魔法は完了しているはず。しかし、未だ腰までしか封印出来ていないクヴァール。見て、フリーレンは警戒を強くする。

 

「フリーレンよ。お節介だろうが教えてやる。あれは、基本になる結界魔法の構造式に別の魔法の構造式を完全に融合させて完成する。故に人それぞれ構造が違う」

 

「…………なるほど、わからないはずだ」

 

フリーレンは、今の今まで何故、領域展開が解析出来ないのかがわかった。つまるところ、オフロスキーの魔法の構造式が合わさって、オフロスキーの領域が成り立っているのだ。元々1や2なのではなく、1と1を足して、新たな1を作っていたのだ。わからないはずだ。

 

「オフロスキーがよく話していたおったぞ。人は面白いと。まぁ、そうさな。1000年以上、魔族と戦争をして生き残っているのだ。そんな種族が弱いわけない」

 

クヴァールは、感慨深いと言うように腕を組み、目らしき黒い窪みを細める。

 

「"人を殺す魔法"も100年もすれば、一般的な魔法にでもなっているだろう。自慢ではないが、あれの開発には、かなりの時間を要したのだ。ん?となると、新たに防ぐための魔法も開発されるのか。ククク、今から封印が解けるのが楽しみよ」

 

「安心しろ。封印が解けた時は、私が殺してやる」

 

「おぉ、怖い怖い」

 

フリーレンがクヴァールを睨めば、それを流すように手を上げる。ヒンメルは感じる。まるで、人と話しているみたいだ。

 

「ならば、話題を変えよう。例えば、魔族にも"感情"はある、などどうだ?」

 

「……それは本当か?」

 

すると、ヒンメルは驚いたようにクヴァールに聞き返す。すぐにフリーレンがヒンメルを諌め、クヴァールを睨む。

 

「耳を貸すな、ヒンメル。戯れ言だ」

 

「フリーレン。"感情"と"心"は別物だ」

 

クヴァールの言葉にフリーレンは思わず、首をかしげる。

 

「"感情"とは、相手に向ける"願望"よ。こうしてほしい。こうあってほしい。といったな。我等魔族は、貴様等に"願望"を向けておるよ。"どうか油断してください"とな」

 

「それに対し、"心"とは、相手が向けてくる"感情"の"受け皿"よ。相手が自身をどう思い、どう願うのかを理解する。それに対し、返す"感情"を選ぶ。それが、"心"だ。故に"魔族"には"心"がない。向けられる"感情"の"受け皿"がないのだからな」

 

まぁ、魔族の儂なりの考え方だがな。そう付け加え、クヴァールは口を閉じる。ヒンメルは、少し考えるように目線を下にする。対するフリーレンは、軽く鼻を鳴らすのみ。そこにきっと、二人の魔族への考え方の違いが出ているのだろう。魔族アンチのフリーレンは、そんなんいいから喋ってないで早く封印されろとしか思っていない。というか、この問答でヒンメルが変に希望を持っても困る。

 

「一つ聞きたい」

 

「どうした?ヒンメルよ」

 

「人と魔族はわかりあえると思うか?」

 

「無理だろうよ」

 

ヒンメルの質問にクヴァールは即答する。あまりにも早い回答にヒンメルは、呆気にとられる。

 

「人は、内省的で普遍的な生き物よ。"群れの中でいかに明日を生きる"かを考える。故に村を、町を、国を作る」

 

「それに対し、魔族は、短絡的で刹那的な生き物なのだ。"一匹でいかに今日を生きる"かを考える。魔王様に従っているのも、"ただ自分より強いから"基本、その一点のみ」

 

「生き方から違うのだ。生物は環境が変われば、生きることに窮屈する。魚など良い例だ。陸の上で共に生きられるか?出来んだろう?つまり、そういうことよ」

 

クヴァールの石化は、やっと胸元にまで進行していた。

 

「オフロスキーに言われ、人に興味を持ち、観察し、まさに今、その人間たちと意見を交わしている。故に言い切ろう。オフロスキーは、異端だ。人間と魔族は共生は出来るだろうが、わかりあえる時は永遠に来ない」

 

「…………そうか」

 

クヴァールがそう締めくくると、ヒンメルは悲しそうに目を伏せる。クヴァールは目の前の自身を退けた者たちを見据える。

 

「…………さて、そろそろいいかのぅ」

 

その時、フリーレンは感じた。クヴァールの封印への抵抗が弱くなったことを。

 

「儂の魔力はもうすぐ底を突く。既にヒンメルは息を整え、フリーレンは魔力を最低限回復し、後ろの二人も十分に動けるであろう?」

 

「…………なにが目的だ」

 

「なに。せめて、この腐敗のクヴァールを退けた猛者共への報奨よ。死なれたり、戦えなくなるほどの怪我を負われては、報奨とは言わんのでな」

 

「なにを、いって………」

 

その時、ヒンメルの勘が今すぐ逃げろと、今までにないほど大きな警鐘を鳴らす。

 

「時にフリーレン。儂が最初になにを話したか覚えているか?」

 

「そんなの――――」

 

フリーレンは、背後から何者かに首に鎌のようなものが当てられるような感覚がした。

 

「同族ができたのだ。儂に出来ぬ道理はあるまい?

 

「逃げろ!皆!」

 

「もう遅いわ!」

 

クヴァールの口が、大きく歪む。

 

 

「"領域展開"」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「"衆生比良坂遊行(しゅじょうひらさかゆうこう)"」

 

 

 

 




【腐敗の賢老 クヴァール】
どれだけもっても許されるヤバい魔族。オフロスキーの影響で、人間っておもしろ!となったお爺ちゃん。クヴァールに付随して、その友人の黄金さんとも知り合いであるオフロスキー。つまり、黄金さんも領域展開できる。その後、それを知ったフリーレンの肘がオフロスキーを襲う。


【衆生比良坂遊行】
入れたら勝ちタイプの領域
"人を殺す魔法"が"必中"で大量に飛んでくる領域。入ったら死ぬ。今回の展開時間は、魔力ギリギリで封印完了までの時間の僅かの数秒。四人は、五体満足で出ることはできた。真面目にフリーレンは、領域対策の開発が必要と感じた。その後、旅の裏でフリーレンの膝もオフロスキーを襲う。


一芸魔族くんが受け入れられるように一芸の発展という形で落ち着いた領域展開。
アウラが領域展開するとき、印とかじゃなくて天秤使って欲しい。やりなおしじゃない。とか言って欲しい。


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リンゴは好きかい?


どうも、祖母からもらったカステラを紙ごと食べて、親に爆笑された作者です。感想欄でご指摘いただいたので、活動報告に作らせてもらいました。ガイドライン違反なの初めて知りました。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=305190&uid=278414
これで、大丈夫だよね?


 

子供の魔族は、木の陰から目の前に広がる不思議な光景を眺めていた。

 

「いい加減、引いてくれないか?死ぬぞ、お前」

 

「黙れ!人間に与する裏切り者が!」

 

睨み合っているのは、魔族同士。誰が見てもボロボロとなった牛のような見た目の魔族と、余裕そうに相手の魔族の心配をしている人型の魔族。魔族同士が戦うことというのは、よくある光景だ。どちらが強いかの証明であったり、縄張り争いであったり、魔族とは野蛮な生き物だ。しかし、リーニエが不思議に思うのは、余裕そうにしている魔族の後ろには、人間の親子がいるのだ。

 

「………裏切り者、か」

 

「何故だ!何故、人間の味方をする!」

 

牛の魔族は叫ぶ。理解のできないものを否定するように。

 

「人間などという下等生物の味方なぞして、貴様になんの得があるというのだ!いくら、貴様が人を救ったところで、貴様を受け入れる人間などいない!」

 

牛の魔族は、向き合う魔族に手を伸ばす。

 

「我の手を取れ、同胞よ!今ならば、まだ間に合う!共に人間を滅ぼそうではないか!」

 

「…………」

 

人型の魔族は、ただ黙って、牛の魔族が自身へと伸ばした手を見る。その後ろで、ただ震えている人間は、人型の魔族を見ることしかできない。ここで、彼が牛の魔族の手を取ってしまったら、自分達は死ぬことになるのだから。

 

「……………そうだな」

 

人型の魔族は、牛の魔族へとゆっくりと歩み寄る。子供の魔族は、人間達の方を見る。その顔は、絶望したような顔をしていた。

 

人型の魔族が、牛の魔族の手を握るためか、手を伸ばした瞬間。

 

「バカめ!裏切り者の貴様を許す者など、いるはずがないだろうが!」

 

その瞬間、牛の魔族は、伸ばしていた手を握り、大きく振りかぶる。そして、牛の魔族の腕が肥大化する。

 

「死ねぇっ!裏切り者がぁ!」

 

「"波水(バス)魔法清浄(マジックリン)"」

 

そう叫び、牛の魔族は、腕を振り下ろす。しかし、それより先に人型の魔族が出した手から、水の魔法が飛び出し、牛の魔族の胸を貫く。

 

「が………は………」

 

そして、牛の魔族は、放たれた魔法の威力に仰け反りながら、ゆっくりと消滅していく。

それを見届けた人型の魔族は、後ろにいる親子へと顔を向ける。母親らしき人間は、怯えながら子供を抱きかかえ、目を瞑る。

 

「怪我はあるか?」

 

「……………え?」

 

人型の魔族は、親子の前に立つと、そう聞いた。親らしき人間は、そう聞かれ、呆然と人型の魔族を見るのみ。すると、親の腕の隙間から子供が顔を出す。

 

「ううん!怪我してないよ!」

 

「そうか、なら良かった」

 

魔族は、安心したように微笑む。そして、屈んで、子供と目を合わせる。子供は、怖がる様子なく、魔族の事を凄い凄いとはしゃぐ。母親は、どうすればいいのかわからないのか、未だに石のように固まっていた。

 

「兄ちゃん強いんだな!あの大きな魔族を一発でやっつけちゃうんだもん!」

 

「あぁ、そうだな。でも、俺も魔族だ」

 

「でも!兄ちゃんは、いい魔族だよ!」

 

子供が嬉しそうに魔族へと喋りかける。魔族は、困った顔を浮かべながら少年を見る。少年にいい魔族、というものがいると思われるのは困るからだ。それは将来、少年の身を危険にさらす考えでしかない。

 

「魔族にいい魔族はいない。みんな、悪い魔族だ」

 

「じゃあなんで、兄ちゃんは助けてくれたの?」

 

「……………機嫌が良かったんだ」

 

「じゃあ、今はいい魔族だ!」

 

魔族は、更に困ったような顔をして子供を見る。それを見ている子供の魔族は、困っているのなら、さっさと殺してしまえばいいのに、とどこかもどかしい気持ちになって、魔族を見ていた。

 

「俺、兄ちゃんみたいに強くなりたい!」

 

「なら、お前が大事だと思う人を魔族から守れ。そうすれば、強くなれる」

 

「わかった!俺、村の皆を魔族から守る!」

 

それを聞いた魔族は、手を伸ばして子供の頭を撫でる。すると、子供は気持ち良さそうに目を細める。なぜ気持ち良さそうにするのか、わからない子供の魔族は、自分で自分の頭を撫でてみる。しかし、なにも気持ち良くなどなかった。

 

「俺はついていけない。村は近いか?」

 

「うん!ここからすぐだよ!」

 

「なら、しっかり母親を守れ」

 

「分かった!俺、母ちゃん守る!」

 

その後、開けた山道まで案内された親子は、未だ自分達を見ている魔族に対して、子供は笑顔で大きく手を振りながら、母親は気味悪そうにしながら、魔族に軽く頭を下げて、山道を下りていく。

 

「それで、さっきから見ているが。俺に用でもあるのか?」

 

魔族と子供の魔族の目が合う。子供の魔族は、今までにない殺気を感じる。逃げるために足を一歩引くが、逃げられないことを悟ったからか、子供の魔族は木の影から出てくる。

 

「子供の魔族か」

 

「なぜ」

 

「ん?」

 

「なぜ人を助けるの?」

 

子供の魔族は異常な行動をする魔族に問う。

 

「人を助けても意味なんてない。私たちは、魔族だ。人間をいくら助けたところで、魔族が受け入れられるわけじゃない。なぜ?」

 

子供の魔族は、他の魔族に比べて生まれて間もない。しかし、魔族だ。目の前の魔族が異端なのは理解できる。なぜ、人を助けるなどという生産性皆無の行為をしているのか。気になった。

 

魔族は、しばらく考えるように顎に手を当てた後、答える。

 

「さぁ、何故だろうな」

 

子供の魔族は唖然とする。異常な行動をする魔族に行動する理由を聞いたら、まさかの"わからない"だった。

 

「お前は、人と魔族の違いはなんだと思う?」

 

「…………角の有無?」

 

「わかりやすいな」

 

子供の魔族は、首をかしげながら答える。それを聞いて、魔族は可笑しそうに笑う。それに子供の魔族は、むっとする。

 

「なら、魔族と人間の違いはなに?」

 

「"心"の有無だと、俺は思っている」

 

「…………"心"?」

 

子供の魔族は再び首をかしげる。聞いたことのない言葉だったからだ。もしかしたら、何処かで聞いたことがあるのかもしれないが、子供の魔族は覚えていなかった。

 

「"心"は"在り方"だ。なにをするにしても、曲げることのない、"自分で決めた生き方"の事だ」

 

「………なら、魔族もしている」

 

「だったら、魔王軍なんてものは存在しないだろうな」

 

子供の魔族は魔族がなにを言っているのかがわからなかった。子供の魔族は魔族の言った自分の決めた生き方というものがわからない。自分で、これをするあれをする、と決めて行動するのがそれではないのか?と。

 

「なら、こうしよう。例えば、お前は、"強い者と戦う"ことを"自分の決めた生き方"としよう」

 

「……………」

 

子供の魔族は考える。魔族に出されたその生き方で生きていくとして、そうなった場合だ。

 

「自分よりも強い。が、相手に勝てる確率は五分五分な相手が現れた。お前はどうする?」

 

子供の魔族は、魔族を見てみる。目の前の魔族は、それに合わせてなのか、今の自分でも勝てるのでは?と思えるような魔力量を放出していた。これを目安にということだろうか?

 

「………戦う」

 

「それはなんでだ?」

 

「強い者と、戦うって決めたから」

 

「そうだな」

 

魔族は子供の魔族の回答に頷く。

 

「なら」

 

瞬間、目の前の魔族の放出される魔力量が膨れ上がる。子供の魔族は血の気が引く感覚がした。勝てない。なんだこの化け物は。殺される。

 

「これなら、どうする?」

 

「逃げる」

 

即答だった。子供の魔族に迷いなど無い。

 

「それはどうしてだ?」

 

「死にたくないから」

 

"強い者と戦う"?そんなことどうでもいい。こんな絶対に勝てない相手に挑んで何になるっていうんだ。子供の魔族は、今をどうやって生き残るかを考えていた。

 

子供の魔族が震えているのを見て、魔族は魔力の放出を抑える。すると、子供の魔族の震えは徐々に収まっていき、顔色も回復していく。

 

「お前は今の判断を、間違いだと思うか?」

 

「思わない」

 

「だろうな」

 

魔族はふと後ろを向く。子供の魔族は不思議に思い、横にずれて、魔族がなにを見ているのかを見る。そこにはシャボン玉があり、シャボン玉には先程の親子が写っていた。

 

「無事に帰ったみたいだな」

 

「それは、さっきの?」

 

「あぁ。話を戻すが。人間はその判断を"間違いだった"と後悔するんだ」

 

「……………イカれてる」

 

子供の魔族は人間という生き物に対して、一定の恐怖を覚えた。なぜ、生き残ったのに間違いだと言うのか。死んだらそこで終わりじゃないかと。

 

「それが"心"だ。自分の決めた生き方を自分で否定したことを後悔する。自分の命なんて二の次でな」

 

「……………」

 

子供の魔族には、わからなかった。なぜ、そんな生き方をするのか。命あってのそういうものだろう。そこまでしてまで、その生き方というものを優先させる理由がわからない。

 

「これが"心"だ。"心"があるから、人は強い」

 

「…………やっぱりわからない」

 

「そうか」

 

子供の魔族は俯く。魔族は子供の魔族がそう言うとわかっていたのか、特に困っている様子もなかった。だが、その後に顔を上げた子供の魔族が言う言葉に、魔族は驚くこととなる。

 

「だから貴方が教えて」

 

まさか、そんなことを言うとは思っていなかったからか、目を見開いたまま子供の魔族を見続けてしまう。子供の魔族は、それに引くことなく、魔族の目を見続ける。

 

「代わりに私を守って」

 

「…………なるほど、考えたな」

 

しかし、続けた言葉に魔族は思わず笑みを溢す。子供の魔族は、魔族と話して感じとったのだ。その"心"を理解しようとするのならば、この魔族は同族を見捨てたりしないのだと。そして、先程見せた異常な魔力量。この魔族は、今まで見てきた魔族の中で一番強い。ならば、そうしようとしていれば、この魔族の庇護下にいられると。

 

確かに打算的であり、魔族らしい考え方だった。だがそれが逆に魔族の興味をひいた。

 

「いいぞ。代わりに"自分から人に危害を加えない"、"襲われたとしても殺さずに無力化"、"俺の言う事には従う"。この三つを最低限は守れ」

 

「わかった」

 

「なら、ついてこい」

 

魔族が歩き出す。すると、その後ろをトコトコと子供の魔族がついていく。

 

「名前はなんていうんだ?」

 

「リーニエ」

 

「オフロスキーだ。なにか食べたい物はあるか?」

 

「…………リンゴ」

 

「なら、後で買ってやる」

 

魔族、オフロスキーは子供の魔族、リーニエの頭を撫でる。先程の子供のように優しくなどではなく、どこか乱雑にワシャワシャと。

 

「どうした?」

 

「……………なんでもない」

 

頭を撫でられたリーニエは立ち止まって、不思議そうに自分の頭に触れる。リーニエが足を止めたのを不審に思ったのか、オフロスキーが足を止めて、リーニエに声をかける。

リーニエは、急いでオフロスキーの下へと行く中、思う。

 

 

自分の頭を撫でたオフロスキーの手は、何故かほんの少し温かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで、お母さんってなに?」

 

「自分の事を守ってくれる存在の事だ」

 

「じゃあ、オフロスキーは私のお母さん?」

 

「お母さんは女性に使う言葉だな」

 

「なら、男はなんていうの?」

 

「お父さんだ」

 

「じゃあ、オフロスキーは私のお父さんだ」

 

「なんでそうなる」

 

「違うの?」

 

「違うな」

 

「ふーん。よくわかんない」

 

これは、勇者ヒンメルが誕生するほんの少し前の話。




【子供の魔族】
将来、ドワーフの弟子にやられる魔族。現在は、生まれて間もない(魔族視点)魔族の子供。勇者一行が旅を始める頃には宿泊宿"みぃつけた"にて時折、手伝いをしているのを見るオーナーの娘という立ち位置を確立している。"模倣する魔法"のおかげで包丁捌きはプロ並み。なぜか、火の前には立たせてもらえない。角はオフロスキーの魔法で隠している。"みぃつけた"の従業員は、彼女が魔族だと知っている。

彼女を登場させたのは作者の趣味です。リーニエちゃん可愛いよね。特にシュタルクくんに致命食らった時。


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魔導書は好きかい?


朝起きたら日間一位になってて、驚きました。
友達に即自慢したよね()
皆さんがくれた感想を見てニヤニヤしてる作者です。

色々ネタを提供してくれて本当に助かります。
初のヒンメル没後回。
なんか、色々良くわからないこと語りすぎて知恵熱出したので、ネタ(?)に走りました。作者は小難し話は苦手なのです。


 

 

「前日までには間に合ったね」

 

勇者ヒンメルの没後28年。ここは、中央諸国のグランツ海峡の街。

 

ここでフリーレンは、弟子のフェルンと共に海岸の清掃の依頼を受けて、3ヶ月が経っており、もう年を越そうとしていた。

 

「助かりましたフリーレン様。新年祭には参加されますかな?」

 

「うん」

 

「歓迎いたしますぞ」

 

そう言い、町長はお辞儀をして海岸を去っていく。

 

 

「正気ですか、フリーレン様。太陽が昇る前に起きるなんて不可能でございます」

 

自分たちの借りている宿舎への帰り道の中、フェルンは心配そうにフリーレンへと聞く。この街の新年祭とは、いわば初日の出を見る祭りである。早起きができないフリーレンが初日の出を見ると言っているのだ。心配にもなる。

 

「徹夜するから大丈夫だよ」

 

「そこまでして見たいのですか?」

 

「うん。そこまでして見たい。ヒンメル達と旅をしている時だって見たからね」

 

フェルンにはよくわからなかった。あのフリーレンがそこまでして、見たいというのだ。そんなに特別なものなのだろうか?と。それにフリーレンは、そんなことないと返すのだった。

 

 

 

 

「おはようございます。フリーレンさ―――

 

 

 

 

 

―――寝てる!?」

 

フェルンが起きると、そこにはベッドの上で丸くなっているフリーレンだった。フェルンは飛び起きて、フリーレンの体を揺らす。

 

「起きてくださいフリーレン様!新年祭に遅れますよ!」

 

「むにゃ……お母さん……」

 

「誰がお母さんですか!!」

 

フェルンは急いで、フリーレンを起こして着替えさせる。そのまま、彼女の手を引き、街へと繰り出すのであった。

 

そして、海岸沿いの道に辿り着いたとき、丁度日が昇る頃だった。

 

「うん。やっぱり。ただの日の出だ」

 

それを見たフリーレンの感想は、なんとも味気のないものだった。

 

「そうでしょうか。とても、綺麗ではありませんか」

 

「そうだね。ただの、綺麗な日の出だ」

 

「なんか、嬉しそうですね。フリーレン様」

 

「……………うん。そうだね」

 

フリーレンは、手摺によっかかりながら、日の出を眺める。

 

「今回は、私一人じゃ見られなかったな」

 

「当たり前ですよ。フリーレン様、一人で起きれないじゃないですか。というか、本当にヒンメル様達と旅をしていた時も徹夜したのですか?」

 

「うん。予めヒンメルに言ってたから、起こしてもらった」

 

「徹夜できてないじゃないですか。なにが、今回は、ですか」

 

フェルンは仕方がないとでも言うようにフリーレンを見る。それにフリーレンは余裕そうに笑みを浮かべる。

 

「でも私。一人で起きて、ここで日の出を見たことがあるんだ」

 

「嘘ですね」

 

「えぇ〜〜!?信じてくれないの!?」

 

フリーレンは自分の話す事を信じてくれないフェルンに非難の声を上げる。しかし、普段の彼女を知っている者からすれば、信じられないのは、残念でもなく当然の結果でもある。勇者一行の旅のときにドヤ顔で、ヒンメル達に話した時も三人同時に嘘だと真顔で言われ、流石に凹んだのを覚えている。

 

『おーい!お前もこっちで飲めよー!』

 

その時ふと、呼ばれた気がして、フリーレンはそちらへと顔を向ける。そこには、魔王討伐の旅よりも遥か昔の、自分の本当の名前を最後まで明かす事のなかった仲間達が自分を呼んでいた。しかし、瞬きをした次の時には、彼等は何処かへ消えてしまっていた。

 

「…………ふふ」

 

フリーレンは、静かに微笑む。

 

『フリーレン。新年の日の出は、特別らしいぞ』

 

『そうかな?普通の日の出だけど』

 

『新しい年の始まりを"友"や"仲間"と共に見るのは、特別な事だろう?』

 

『よくわかんないや』

 

『………そうか』

 

フリーレンの脳内に溢れ出す、かつて、友と見た日の出の記憶。寝落ちして、起きた時に徹夜で飲み明かしている阿呆共に辟易して、抜け出して一人で海を見ていた記憶。

 

『先に帰っていいかな?』

 

『そう言わずに雑談に付き合ってくれてもいいだろ?』

 

『そんなの、いつでもできるでしょ』

 

『今したいんだ』

 

そこまで意味のある行動とは思えないそれにフリーレンは当時、顔をしかめたものだ。それを見て、友はぶん殴りたくなる顔でこちらを見ていたのを覚えている。

 

『おーい二人共!お前たちもこっち来て飲めよー!』

 

『こんな所でイチャツイててもしょーがねーだろー?』

 

『ほら、行くぞフリーレン』

 

『…………わかった』

 

耳をふさぎたくなるほど、騒がしい仲間達の輪に友が自身の手を引き、向かっていく。騒がしくて、うっとおしくて、懐かしい思い出。

 

『覚えていろフリーレン。いつでも話ができるとは限らない。アイツ等とも、俺とも。思った時に出来る時に沢山しておけ。お前は、時間の取り方が広すぎる』

 

『なんで?』

 

『話しておいたら、ちょっとは後悔が少なくなるだろ?』

 

フリーレンは、友がなぜそんなことを言ったのかを理解していなかった。だが、仲間達が死んだ時になって、話したい事が次々と溢れてきて、死ぬほど後悔したことを覚えている。

その後悔を活かしきれず、また同じことで後悔したから、今のフリーレンは旅をすることになっているのだが。そこからあまりにも人と関わらない時間が長すぎたのだ。だからフリーレンは旅をする。彼女は、ヒンメルやハイターとまだ話し足りていない。一年くらいは話のネタが尽きないくらいには。アイゼンとも話し足りないけど、付き合ってくれなかった。まったく薄情な奴だ。

 

「どうかされましたか?フリーレン様」

 

「…………ううん。なんでもない」

 

ふと、フリーレンは横を見る。その横にいるのは、自分の弟子のフェルン。友でも、魔王を倒した仲間でもなく、弟子と見る日の出。だが、友と見た日の出とも、ヒンメル達と見た日の出とも、何処か違うように見えた。

 

「そろそろ戻ろうか」

 

「はい」

 

「あぁ、フリーレン様。良かった。まだいらしたのですね」

 

十分に日の出を楽しんだ二人が宿舎に戻ろうとした時、そこに町長がフリーレンへと杖をついて歩いてきていた。町長の手には、一冊の本が握られていた。

 

「今回の海岸の清掃の依頼。まことにありがとうございました。こちら、ほんの気持ちでございます」

 

「これは?」

 

「800年前の英雄"フロス"が残したと言われている魔導書でございます。文字が昔の文字で書かれており、未だ解読のされていない魔導書です。長命な貴方ならもしや、と」

 

「"フロス"が?」

 

「フリーレン様。"フロス"というのは?」

 

「800年前の英雄だよ。魔法使いの"リーレ"や仲間達と一緒に魔族と戦ったね。今の時代で知っている人は少ないんじゃないかな」

 

フェルンは聞いたこともない人名に首をかしげ、フリーレンに聞く。どうやら、かなり前の時代の人物達のようだ。

 

「かつて、いくつもの強大な魔族を仲間たちと共に打ち倒した英雄でございましょう?」

 

「うん。そうだね。いくつもの魔族を倒した」

 

「おや、フロスとお知り合いで?」

 

「え?あ、あー。うん知り合い知り合い」

 

町長がフリーレンに聞くと、急に目を泳がせながら答える。フェルンは察する。あ、これなにかあったやつだ、と。

 

「この一帯は、言い伝えでフロスとリーレ縁の地だと言われております」

 

「そうなの?特別なことはなかったと思うけど」

 

フリーレンは心当たりがないようで、なにかあったかと思い出すように考える。きっと、彼女にとっては、そこまで伝えられるようなことのない些細なことなのだろう。

 

「新年祭もかつてここで、フロスがリーレと共に新年の日の出を見ながら愛を誓いあったことが、起源と言われております」

 

「へぇ。そうだったんだ。…………ん?」

 

フリーレンは、興味深そうに頷く。ヒンメル達と見た時が初めての参加だったが、そんなことが由来していることは驚いた。フロスとリーレが愛を誓いあったのが起源、か。中々ロマンチックじゃないか。

 

ん?誓いあった?

 

「え、ちょっと待って。誰と誰が?なにを?」

 

「フロスとリーレが愛を誓いあったと」

 

「なにそれ知らない」

 

フリーレンは、思わず頭を抱える。まさかそんなふうに言い伝えられているとは思いもよらなかった。いや、確かに二人で見たけども。

 

「…………ふ、二人はそんなこと、し、してないと、思うよ?」

 

「む。そうなのですか?しかし、それでいいのです。言い伝えとは、そういうものですから」

 

「そ、そっか。で、でも二人の名誉の為にも直した方がいいんじゃないかな」

 

「良いのではありませんか?二人は、後に夫婦になったと言われております。ラブストーリーの一つや二つあっても」

 

「夫婦ぅっ!?」

 

フリーレンらしからぬ大声に、思わずフェルンは耳をふさぐ。昔の英雄の話を聞かされてから、フリーレンの様子が明らかにおかしかった。

 

「夫婦花と呼ばれるフースとリレの花は、お二人の名前が由来だと言われております」

 

「なにそれ知らない。本当に知らない」

 

知らない知らないと頭を振って否定するフリーレン。どうやら、現実を受け入れられないようだ。そんなになるほど?とフェルンは衝撃を受ける。

 

「その魔導書は、そのフロスが"生涯でただ一人、唯一背中を預けられる者と共にいるために必要な魔法を記したものだ"と言っていたと語られています」

 

「…………へー」

 

すると、フリーレンは先程の取り乱しようが嘘のように落ち着くと魔導書を見る。まるで、いったいなにを書いたんだ?と本の著者に聞いているように。なんか、耳がピコピコしてる。なんか、目がキラキラしてる。魚を見つけた猫みたいな顔をしている。

 

「どうやら、フロスとは親しい仲だったご様子。ならば、その魔導書は貴方が持っておくべきですな」

 

「うん。もらっておくよ」

 

フリーレンは頷くと、満足そうに宿舎へと歩きだし、フェルンがそれについていく。フリーレンは歩きながら、魔導書を読み出す。

 

「フリーレン様、どんな魔法が書かれているのですか?」

 

そんな昔の英雄の書いた魔導書だ。フェルンだって、興味が無いわけではない。むしろ、フリーレンの知り合いの書いた魔導書だ。興味津々である。

 

「アイツが仲間と作ったくだらない魔法ばかりだよ。"服の後ろにつららを入れる魔法"や"猫の後ろに野菜を置く魔法"、"徹夜でベッドの上を跳ね続けることができる魔法"。効果も、全部知ってる」

 

「すごくくだらない魔法だった!?」

 

フリーレンは、懐かしむように本の文字をなぞるように触れる。フェルンは、800年前の英雄の作ったと思われる魔法があまりにもくだらない効果のものが多すぎて驚いている。

 

「まったく、アイツもよく考えるよ。何回付き合わされたことか」

 

「付き合わされたんですね」

 

「うん。私の枕元でずっとピョンピョンピョンピョン仲間全員で跳ねられた時は、寝れなくて全員殴ってやったけど」

 

「うわぁ………」

 

フェルンは思ったよりも使われ方が酷い事にドン引きする。仲間が自分の枕元で跳ね続けるというのは、鬼の所業だ。やってることは、子供のそれである。うざいったらありゃしない。自分でも殴ってる。

 

「………ん?最重要魔法?」

 

ペラペラと本を捲っていくと、文字が殆ど無いページがあり、そこに"最重要魔法"とだけ書かれていた。それが聞こえたのか、フェルンも魔導書を覗き込んでくる。読めるわけではないが、気分の問題だ。

 

「……………それほどまでに危険な魔法なのでしょうか?」

 

「アイツは、そういう危険な魔法を媒体に残すタイプじゃないんだけどな」

 

フリーレンは、この本の著者が最重要魔法と書くような魔法を媒体に残しているとは思えなかった。彼は、そういう類いのものは頭の中に永遠にしまっている。勇者一行の旅の時にまさかその類いのものの一つがまさかの本人伝手で、敵側に伝わっていて地獄を見たものだ。

なにを書いたのか、確認の為にも見ておくべきだ。もしかしたらこのページの隠滅も必要になる。

 

「えっと、なになに………………」

 

「フリーレン様?」

 

「ッ!」

 

「フリーレン様!?」

 

書いてあった魔法を見て、フリーレンは静かになる。急にどうしたのかと思い、フェルンがフリーレンになんの魔法が書かれているのか聞こうとした時、フリーレンは本をビターン!と音がなるほど思いっきり地面へと叩きつける。

 

「…………ふん」

 

「フリーレン様?フリーレン様!」

 

そして、そのまま魔導書を放って歩いていってしまう。フェルンはフリーレンが怒った理由がわからないまま、魔導書を拾ってフリーレンを追いかける。

 

「なにが、"ものぐさ寝坊助エルフを朝起こす魔法"だ。バカ」

 

フリーレンの耳はほんのり赤くなっていた。

 

 

 

 




【英雄フロス】
魔法使い"リーレ"と共に800年前に魔族との戦争にて活躍したとされるピンク色の髪の英雄。彼とその仲間の活躍が無くしては、今の人間はいないと歴史学者達は語っている。しかし、800年前という事もありマイナーな人物。
かつて彼とその仲間が倒した敵には、山をも両断する力を持った棘の持つ植物のような魔族、人や魔族を改造することを愉悦としていた科学者、人や魔族を見境無く喰らう魔獣などがいたとされ、現代にどれか一つでも生きていたのなら人類の大きな脅威となっていた。
仲間達の死後、リーレと共に忽然と姿を消し、その後の動向が不明となっている。


書いてて、オチに何処か既視感あるなぁ……って思ってたらpixivのお気に入り作品に入ってて笑った作者です。サボさんを登場させたいと、でも強すぎね?って言う気持ちが合わさった結果こうなりました。許して許して。
フリーレンは、フランメとの約束守る為に当時は名前も姿も偽ってます。


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支配は好きかしら?


大学の課題提出期限間近に掴んだアウラの能力の核心!!!!(欠片も掴めていない)
どうも、書き溜めが出来ずにその日その日のノリとテンションで書いていることに焦っている作者です。
申し訳ないですが、感想への返信が少ししかできなくなりそうです。課題が、課題が終わらんのや(泣)

バタフライエフェクト起きすぎぃ!注意報発令。



 

「久しぶりね、フリーレン。ざっと80年振りかしら」

 

「そうだね、アウラ。引き返してくれると助かるんだけど」

 

勇者ヒンメルの没後28年。北側諸国グラナト伯爵領郊外。

 

ここは伯爵領の街を一望できる崖の上。そこで魔族とエルフが相対する。魔族、アウラの後には沢山の首のない鎧を身に纏った兵士達が控えている。それに対しエルフ、フリーレンの側には誰もおらず、一人でアウラの前に立ったことがわかる。

 

「いやよ。だって――――」

 

アウラが言葉を続ける前に彼女の後ろに控えている兵士の数人がフリーレンへと襲いかかる。フリーレンは慌てる様子もなく、兵士達の攻撃を躱す。彼女の周りを首のない兵士達が囲う。

 

「―――私の方が優勢だから」

 

アウラの顔は余裕に溢れている。かつて、自分は目の前のエルフに敗れた。しかし、それは彼女と共にいた勇者ヒンメルといった仲間がいたからだ。

アウラはフリーレンからあふれる魔力を見て、そう判断付ける。

 

フリーレンは落ち着いて自身やアウラの周りを見る。

 

「あのときより増えてる。これだけの数を操れる魔族の魔法はとんでもないね。人類の魔法技術では想像もつかないほどの高みだ」

 

フリーレンはその一点に対してのみ素直に敬意を示す。未だ人類には到達できていない、高みにある魔法技術。

 

「でも」

 

フリーレンは一人の兵士へと魔法を打つ。兵士に大きな外傷などない。しかし、普通の死体に戻ったように力なく倒れる。

 

「最悪で醜悪な魔法だ」

 

「あら酷い。頑張って集めたのに」

 

フリーレンの目からはアウラから見ても怒りが滲み出ていた。

 

その時、フリーレンは気付く。一人、アウラの横に控える死体に。

 

「そいつの首は落ちてないんだね。いや違う。縫い合わせたのか」

 

アウラの横には首に糸でなのか他の死体と違い、首を繋ぎ合わされた死体があった。その死体の顔は、グラナト伯爵領の領主グラナト伯爵に似ていた。

 

「ウィリアムのこと?私のお気に入りなの」

 

アウラは横にいる死体を見て、彼の頭をポンポンと撫でる。

 

「面白いのよ、この子。私のこと、死ぬほど憎しみの籠もった目で見てたのに、首を落とす前に私のこと"可哀想"って言ったの」

 

アウラは無機質な目で死体の首をなぞる。

 

「だから、生かしてあげたの。生きたまま、仲間の首を落とさせてあげたの。そしたら、自分で自分の首切っちゃったのよ」

 

アウラはその時の光景を思い出してなのか、薄く笑みを浮かべる。

 

「死に際にこの子、私になんて言ったと思――――」

 

「もういい」

 

瞬間、彼女に直線的に"人を殺す魔法"が飛んでくる。しかし、何処で学んだのか人間の魔法体系において開発された防御魔法で防ぐ。

 

「お前はもう喋るな」

 

「…………いいわ、最高の気分よ」

 

アウラは理解している。人は、怒りに支配された人間は単調になる。それは、人間と戦っていれば自然とわかる人間の"習性"。

 

フリーレンへと首無しの兵士達が襲いかかる。死体というのは、いわばただの人形だ。人形に複雑な命令は実行できない。例えば、平民の死体に剣を持たせて襲いかからせた所で、不格好で周りの死体を斬りつけることだってある。それに対し、兵士の死体は生前、戦いの訓練を積み、戦場を経験している。するとどうだ。死体の彼等も洗練された剣を振るえるじゃないか。

死体を操る上で必要なのは死体の生前の"経験"だ。だが、そういうものは大抵一瞬でも自分の支配から抗う。だから首を落とす。それにより、最強の不死の軍団が完成する。実に簡単なことなのだ。

 

フリーレンは死体へと魔法を打つ。その魔法に当たった死体達は、傷一つつくことなく、その場に力なく倒れる。

 

「驚いたわ。私の魔法が解除されてる」

 

そういう彼女は、特段驚いているようには見えない。

 

「でもどうして?前は派手に吹き飛ばしてたじゃない。魔力消費が激しいのにそんな回りくどいことするの?」

 

アウラの記憶に映るのは、容赦なく自分の兵隊達を跡形もなく消し飛ばすフリーレンの姿だ。しかし、今の彼女には死体を消し飛ばそうとする姿は見えない。

 

「後でヒンメルに怒られたんだよ」

 

「なら、尚更どうして?」

 

アウラはなにも知らぬ幼い子が親に何故?と聞くように何処までも純粋にフリーレンに問う。

 

「ヒンメルはもういないじゃない」

 

既にいない人に言われたから何だと言うんだ。また言われるのが面倒だからしない、それならわかる。鬱陶しいったらありはしないのだから。だが、もう言われることがないのなら、それをやる必要なんてない。

 

文句を言うやつは既にいないのだから。

 

『アウラ。人の、"意志の力"を舐めるなよ。いつかお前の首に、それは届く』

 

「それとも、それも"意志"というやつなのかしら」

 

アウラの頭にウィリアムが死に際に自身に言った言葉が過る。"無垢"な魔族にはそれがなんのか、さっぱりと言っていいほどわからなかった。

 

「うん。よかった」

 

それを聞いて、フリーレンは安心したように言う。

 

「やっぱり、お前たち魔族は"化け物"だ。容赦なく殺せる」

 

「あら、それは貴方の大好きなあの物好きにも言えるのかしら?」

 

「言えるよ。アイツも立派な"化け物"だ」

 

それを聞いて、アウラはつまらなそうな顔をする。面白い反応でも期待したのだろうか。

 

「行きなさい」

 

アウラがそう命じると、死体達はフリーレンへと押し寄せる。剣を持つ者、槍を持つ者、弓を持つ者。多種多様な兵士がフリーレンへと襲いかかる。

 

フリーレンは振り下ろされる剣を杖で受け流し、自身の顔へと突かれる槍を躱す。弓の兵士達が放った矢を魔法で打ち落として、通りすがりに何人かの死体をアウラの魔法から解放しながら、弓の兵士達へと近づき、その中の一人の胸を足場にして空へと翔ぶ。

 

弓兵達は空へと翔んだフリーレンへと弓を構え、

 

「"魔法を解除する魔法(リパーゼル)"」

 

矢を放つ前にフリーレンの魔法により解放され、地面へとバタバタと倒れていく。

フリーレンは着地するために地面へと向かうが、空中で無防備なフリーレンを死体が逃すわけなく、槍を持った兵士達はフリーレンへと槍を突き出す。フリーレンは自身を狩るために突き出された槍の一つを掴むと、滑るように槍を伝い、地面へと素早く降りて、槍を突き出した兵士達の死体を解放する。

 

解放した死体から次の死体へと顔を向けた時、死体達の動きが止まっていた。

 

「…………リュグナーが死んだわ」

 

フリーレンが死体達と戦っているさなか、アウラは感じとった。街の中にいる部下の支配の魔法が切れた事に。

 

「これで首切り役人は全滅だ。失敗したね、アウラ」

 

「そうかしら?貴方を討ち取れれば戦果としては十分。あの子達も"報われる"わ」

 

フリーレンは顔を少し顰める。"報われる"などと仲間意識の欠片もないような奴が死んだ奴に対してよく言ったものだな、と。

 

「やっぱり。貴方、魔力が尽きる気配が全くない。保有する魔力に対して放出している魔力をも抑えているのね」

 

そして、アウラは考察するようにフリーレンを見る。それにフリーレンは目を見開く。

 

「普通に"服従させる魔法"を使えば、押し負けるのは私。まったく、魔力総量を偽るなんて魔法使いとしての誇りとかないのかしら?」

 

「言葉を使って欺くお前たちには言われたくない」

 

「使える手段を使わないなんて、馬鹿のすることよ」

 

すると、アウラは天秤を前へと出す。フリーレンはその行動を訝しむ。先程、使えば負けるのは自分と言っていたのに使うとでもいうのだろうか?

 

「直接が駄目なら、代理でも頼もうかしら」

 

瞬間、フリーレンは最近嫌でも見慣れてしまった特殊な魔力の流れ方を感じ取る。フリーレンは急いでアウラを始末するために魔法を――

 

「"領域展開"」

 

打つ前に魔力が霧散し、周りが真っ暗に染まる。自身の視界には、目の前のアウラだけが鮮明に写っている。

次の瞬間、スポットライトがアウラとフリーレンに当てられ、次に全体の光がつき、赤や銀色の紙吹雪が舞い踊る。赤い絨毯に赤と黒のチェックの柄壁に見たこともないうるさい機械が沢山おいてある目が煩い場所。自分とアウラは高台のような場所で、巨大な真っ白なルーレットが見える場所に立っていた。

 

「"帰順土場(きじゅんどば)"」

 

フリーレンは、まさかアウラが領域展開を使えるとは思っていなかった。できる素質はあったであろうが、アウラがそれを使えるようになるために誰かに教えを請うとは思えない。

 

「クヴァールが基本を教えてくれてたの。私が使えるようになったのはこの前だけど」

 

おのれクヴァール。またお前かクヴァール。

 

フリーレンの頭には、自身を馬鹿にするように高笑いをする獣のような顔の魔族が思い浮かぶ。フリーレンへの嫌がらせというものに関しては、クヴァールという魔族はトップレベルである。彼女の嫌な部分を的確についてくる。

 

「私の"服従させる魔法(アゼリューゼ)"はわかるわね?あれって、私より魔力量が多い奴には通用しないのも知ってるわね?この領域はね、それを可能にするための領域なの」

 

フリーレンはアウラの話を聞くしか出来ない。何故か攻撃魔法の一切が使えなくなっており、殴りに行こうにも死体達が邪魔してアウラへと直接いけない。

 

「ここでは"賭場"が終わるまで、お互いのあらゆる暴力行為、魔法による接触は禁止。"賭け金"はお互いの"所有する魂の魔力量"。負けたものは"賭け金"に使われた"魂"の"支配権"を相手に譲渡する。これがここ、"帰順土場"のルール」

 

「随分丁寧に教えてくれるね」

 

「"格上"を服従させるには、これくらいのことはしなくちゃいけないのよ。面倒くさいことこの上ないわ」

 

アウラがフリーレンの目線を右へと促す。フリーレンは促させれるままに右を見る。そこには、大きな天秤が二人の間に佇んでいた。

 

『親。アウラ様、"賭け金"を』

 

「"ベット"」

 

アウラがそう言うと、アウラの周りにいる兵士達の死体から青白いものが溢れ出し、天秤へと乗っていく。天秤の皿に重みが乗せられ始めたアウラ側の皿が段々下へと落ちていく。そして、白かったルーレットが全て黒に染まる。

 

「なるほどね。アウラ、魂も服従させられるようになったんだね」

 

「えぇ。お陰様でね」

 

この領域において、アウラのメリットは本来ならば服従させることの不可能な格上の相手を服従させられるようになること。デメリットは領域の能力の説明義務、自身が不利なゲーム、負けた時に自分が服従することとなる可能性の三つ。メリットの代償にいくつかのデメリットを背負う。いわば"縛り"である。

 

本来なら。

 

アウラもただ80年こそこそと隠れていた訳では無い。アウラの"服従させる魔法"は、魂を媒介に体の支配権の奪取する魔法だ。しかし、アウラはこの80年で"魂"の支配までもを可能とした。実際は己の力だけでなく、クヴァールの研究成果を勝手に読んだことが大きく起因しているのだが。

 

人間に興味を持つようになったクヴァールは、同族の魔法にも興味を持つようになった。そんなクヴァールは戦争の裏で研究の限りを尽くしていた。その中でも魔王に唯一性を認められた"七崩賢"の魔法の研究には特に力を入れていた。戦闘が好きであるが、元来研究肌なクヴァールには様々な魔法を解き明かし、進化させるという過程はクヴァールの性分と合っていたのだ。

 

その過程で得た研究成果も特に見せびらかす為にではなく、単純な知識欲を満たす為に行った行為の副産物。故に研究成果を調子に乗って人間の真似をして魔導書としてまとめこそすれど、それを自分から誰かに見せることはしなかった。だが、それを見たものがいた。

 

それがアウラだ。

 

"服従させる魔法"の進化の先。領域展開。その対策方法etc。それは、アウラにとって宝の宝庫だった。一つを極める魔族にとって、これほど完成された教科書はなかった。アウラは最終的に勝てばようかろうの精神の持ち主である。使わない手はない。

 

「さぁ、貴方の番よ?フリーレン」

 

それにより、彼女はデメリットの一つを克服したのだ。自分以外の魂を天秤の皿に乗せられるようになったのだ。

 

『子。フリーレン様、"賭け金"を』

 

「……………"ベット"」

 

フリーレンは自分の魔力を天秤へと乗せていく。乗せられた兵士達の魂とつりあうように。すると、ルーレットは黒と赤が交互になるように色が分かれる。

 

「あら、これ以上賭けなくていいの?」

 

「お前の事だ。負けた時の事も考えてる」

 

「信用ないわね」

 

アウラは肩を竦めるが、その通りである。"帰順土場"の最もな利点は、自分の魔力を殆ど使うこと無く、相手の魔力のみを強制的に消費させること。沢山乗せなければ負けてしまう可能性が高くなる、だからといって沢山乗せたら"賭場"が終了した瞬間、アウラの"服従させる魔法"をくらってアウト。

 

アウラにとっては完璧な布陣である。

 

「それじゃあ、ルーレットスタート」

 

ルーレットが回りだし、何処からか巨大なボールが飛び出すと、音を鳴らしながらルーレットの外側を回り始める。動体視力で追おうと思えば追える程度のスピードでボールは、ルーレットの外側を回る。

 

段々とボールが遅くなっていき、遠心力がなくなり、ゆっくりと下に落ちては台に弾かれるを繰り返していた。そして、勢いを無くしたボールはゆっくりと赤の枠に入った。

 

『フリーレン様WIN。"賭け金"の譲渡が行われます』

 

「あら、おめでとう」

 

「…………」

 

アウラは問題ないというように答える。フリーレンは自分に掛け金にされた兵隊達の魂の支配権が譲渡されるのがわかる。どうしたらどうなるというのが大凡その時に知識が頭に流れ込んでくる。突然の不快な情報にフリーレンは顔を変えることなく、アウラを見る。

 

その時、フリーレンは魔力が練れるようになっている事に気付く。

 

「"安らかに眠れ"」

 

支配権を譲渡された兵士達に一つ、命令を命じて、フリーレンはアウラへと"人を殺す魔法"を撃ち込む。フリーレンの命令を受けた兵士達は、アウラの横に控えるウィリアムを除いて、力なく全員が地面へと倒れる。

 

「野蛮じゃない」

 

アウラはフリーレンの放った"人を殺す魔法"をバックステップで避ける。しかし、それを逃がすフリーレンではない。フリーレンは天秤を使わせる暇を与えるアウラに与えない。

 

「"地獄の業火を出す魔法(ヴォルザンベル)"」

 

「ウィリアム」

 

アウラをフリーレンの出した炎が飲み込む。炎が晴れると、そこにはアウラを守るように盾を構えたウィリアムが立っていた。

 

「"賭け金"で魔力を大量に賭けさせた。さっきから魔法も散々使っている。そろそろ"服従させる魔法"を使っても…………は?」

 

アウラは天秤を構え、固まる。

 

フリーレンはその隙を見逃してやるほど甘くはない。アウラへと魔法を放とうとすると、ウィリアムがそれを阻止するようにフリーレンへと剣を振るう。フリーレンはウィリアムを解放させるために魔法を使い、

 

「ッ!?」

 

()()()()

 

「戻りなさい。ウィリアム」

 

アウラがそう告げると、ウィリアムはフリーレンから離れ、再びアウラの横へと控える。

 

「"服従させる魔法(アゼリューゼ)"」

 

アウラが天秤を構える。天秤の両方に大量の魂が集まる。

 

「"再契約(リサイン)"」

 

魔力が無くなった筈のモノから再び魔力を感じ、フリーレンは周りを見る。そこには、アウラの支配から解放した兵士の死体達が再びゆっくりと起き上がり、フリーレンへと武器を構えていた。

 

次の瞬間、フリーレンは再び、"賭場"のルーレットの高台へと立っていた。

 

「あーホント。なにが、"魔族は化け物"よ。お前のほうが遥かに"化け物"だ」

 

高台の上で、アウラは頭を掻きむしる。それは、今まで余裕を保っていた彼女からは考えられなかった。

 

「全部、全部全部全部全部」

 

天秤に再び、大量の兵士の魂が"ベット"される。

 

 

 

「やりなおしじゃない」

 

 

 

 




【帰順土場】
七崩賢、断頭台のアウラの領域。
彼女の魔法、"服従させる魔法"の弱点。自身以上の強者を服従させる事を可能にさせる領域。自身の領域へと入った者と、己の"所有する魂の魔力量"を"賭け金"に"賭場"を行う。"賭け金"が多ければ多いほど、ルーレットは賭けた者の色が増える。この"賭場"に勝利すると、"服従させる魔法"により、"賭け金の支配権"が所有者に譲渡される。



アウラ戦は、まだまだこれからだろ?

あ゛ー?そうか?そうだな。そーかもなぁ!!



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紅茶は好きかしら?


ちょっと、投稿が遅れた作者です。

呪術ネタ放り込みすぎて、呪術廻戦のタグがついちゃった。

オフロスキーが主人公なのに主人公が欠片も出てない。これもうオフロスキーじゃなくて良くない?

あと、アウラの勝ちです。


 

「可哀想だな。お前」

 

自身の前で跪いている男が、私の顔を見てそういった。

先程まで憎しみの籠もった目で私を見ていたこの男は、私に“可哀想“と言ったのだ。

 

「面白いことを言うわね。なら、参考までになにが可哀想なのかしら?」

 

「全部。魔族ってのは、悲しい生き物なんだな」

 

その時、私はこの男に強い興味が湧いた。

 

恐怖というのはわかる。人間の中には恐ろしい存在と遭遇すると震えて動かなくなる“習性“を持つ人間がいる。それにはこれが起因している。

 

悲しみというのはわかる。人間の中には同族を殺されるとそれの前で動かなくなる“習性“を持つ人間がいる。それにはこれが起因している。

 

怒りというものはわかる。人間の中には同族を殺されると我を見失う“習性“を持つ人間がいる。それはこれに起因している。

 

殺意というのもわかる。これは怒りの中に複合されていることが多い。兵士といった戦いに出てくる人間に多い“傾向“がある。

 

私は500年生きた大魔族だ。何千何万の人間を殺した。だから人間の“感情“とやらも沢山見てきた。

 

だが、この男が私に抱くこの感情はなんだ?

 

“恐怖“ではない。

この男は私を見て体は欠片も震えていない。

 

“悲しみ“ではない。

この男の前には私と部下しかいない。

 

“怒り“ではない。

この男は我を失っているように見えない。

 

知らないものだ。この男が私に向けている感情が何処か気に入らなかった。

 

「アウラ様、剣を」

 

「いらないわ」

 

「は?」

 

この男を服従させたのを確認させたリュグナーが私に剣を差し出してきたから、受け取らなかった。

 

私の魔法“服従させる魔法“は、相手を“支配“する魔法だ。だけど、あくまで支配するのは“体“だけ、本来の体の所有者の“魂“までは支配できない。だから、私の支配に抗う奴が少なからずいた。

“魂“を支配できるようになってそれは克服した。しかし、“魂“を支配したとしても良くわからない力で“命令“には抗われる。なにがいけないのかは私にはわからない。だから首を落として完全に私の言うことを聞く人形を作る。魂は入れておくだけ。奥の手のために。

 

だが、“命令“を与える機会がないのなら別に首なんて落とす必要はない。“魂“を支配できるようになった私の“支配“からは逃れることはできないのだから。

 

「あなた、名前はなに?」

 

「言うかよ」

 

「“名前を言いなさい“」

 

「…………………ウィリアムだ」

 

“服従させる魔法“に抗ったようだが、意味なんてない。どうやら、この男の名前はウィリアムと言うらしい。

 

「そう。ドラート、もう一人適当に連れてきなさい」

 

「はっ」

 

私は部下のドラートに命令して、もう一人捕まえた兵士を連れてこさせ、ウィリアムを私の横で控えさせる。ドラートが連れてきた兵士は、私の横にいるウィリアムを見て驚いていた。喋りかけもしていたが、黙っているように言ったため、ウィリアムは苦しそうに兵士を見ている。

そして私は、その兵士に“服従させる魔法“をかけて、いつも通り首を落とす為に剣を受け取る。そして、

 

「はい」

 

「は?」

 

ウィリアムに差し出す。

 

「あなたがコイツの首を落としなさい」

 

「なにを、言って………」

 

「“剣で兵士の首を落としなさい“」

 

「ふざ、けんな……!」

 

ウィリアムは剣を受け取って、ゆっくりと兵士の下へと歩いていく。

 

「なん、で………俺に……!」

 

「さぁ、なんでかしら?」

 

ウィリアムの顔は“怒り“に染まっていた。そう、それでいい。お前たち人間はそういう顔がよく似合っている。

 

ウィリアムは、首を差し出す兵士へと剣を振り上げていた。そして、剣を兵士へと振り下ろす。

 

「俺、は…………!」

 

しかし、それは兵士の首の寸前で止まっていた。どうやら抗われたらしい。いつも忌々しく感じるそれに、なぜか“愛おしさ“のようなものを感じる。

 

「“早くソイツの首を落としなさい“」

 

「ぐ………ぐぅ………!」

 

ウィリアムは苦しそうな顔をして、再び剣を振り上げる。

 

「俺、は………!」

 

「………ウィリアム様」

 

未だ抗うウィリアムに兵士が喋りかける。

 

「お先に失礼します」

 

「………ッ!!」

 

ウィリアムが剣を振り下ろした。ウィリアムは血に汚れ、床に金属の転がる音が部屋の中に響く。ウィリアムは剣を手放し、呆然と首を切り落とした兵士を見る。

 

「お疲れ様。汚いから汚れを落として来なさい」

 

「なぁ」

 

「ん?」

 

「なんで、こんなことをした?」

 

ウィリアムの言葉には“怒り“が滲み出ていた。

 

「さぁ?気分よ気分」

 

そういったら、私を見るウィリアムの顔は、またあの顔になった。

 

「……………そうか」

 

ウィリアムは、そう言って部屋を出ていった。

 

 

それからしばらく、ウィリアムには雑用と兵士を捕えた時に毎回一人、首を落とさせていた。彼が私を見ている目は、ずっと気に入らなかったが。

 

「ねぇ、ウィリアム。紅茶を淹れてくれないかしら?」

 

「……………わかった」

 

しばらく雑用をやらせていて、わかったことがある。彼の淹れる紅茶は美味しいということ。少なくともドラートやリュグナーが淹れるより。

 

「ねぇ、どうしてあなたに首を落とされる兵士と私が首を落とす兵士は最期に言うことが違うの?」

 

「別に、そんなもんだよ」

 

「そうなの?」

 

「あぁ」

 

私は彼に人間について沢山聞いてみた。そうしていれば、彼が私に向ける目がなんなのか知れると思ったから。

 

「お前は、なんで俺を生かしてるんだ?」

 

「あなたの私を見る目が気に入らないから」

 

ウィリアムは私に自分を生かしている理由をよく聞く。理由は簡単。彼の私を見ている目が気に入らないから。だから、彼を生かして仲間の首を斬らせる。そうすれば、彼の見る目も他の人間と一緒になると思うから。

 

「…………そうか」

 

彼の私を見る目は、相変わらず気に入らなかった。

 

 

「……………はぁ、はぁ」

 

「お〜。人間、今日も派手にやったな〜!」

 

今日もウィリアムに捕まえた兵士の一人の首を落とさせた。それを見て、部下の一人がそれを囃し立てる。兵士は、剣を振り下ろすウィリアムに対して恨み言の一つも言うこと無く死んだ。

 

「…………ッ!」

 

「“止まりなさい“」

 

ウィリアムが私に襲い掛かる。彼は今なお私を殺そうとしている。そうできるように少し支配の力も少し弱くしている。しかし、私が一言命令するだけで彼は止まる。彼の“魂“は既に抵抗する気力を無くしていた。こうなるのに一人に対してのあまりにも時間が長すぎる。あまり効率的とは言えない。普段使いはできなさそうだ。

彼を処分しようと、リュグナーが動こうとするのを私が手で制す。

 

「なぁ、アウラ」

 

「なにかしら、ウィリアム」

 

ウィリアムは剣を私に振り上げたまま、私に聞く。

 

「俺と話してて、なにかわかったか?」

 

ウィリアムの私を見る目は、今までとは少し違った。しばらくの沈黙の後で、私は答える。

 

「なにも」

 

彼の私を見る目はいつも通りの気に入らない目だった。

 

「…………そうか」

 

「ッ!“止まりなさい“!!」

 

その時、彼は自分の持つ剣を自身の首へと当てる。私は咄嗟に命令して止める。

 

「“剣を降ろしなさい“」

 

「アウラ。人の、"意志の力"を舐めるなよ。いつかお前の首に、それは届く」

 

「もう一度言うわ。“剣を降ろし―――“」

 

「断る」

 

命令の完全拒絶。

なにが起こったのか、わからなかった。

 

「先に行ってる」

 

彼の私を見る目は、最期まで変わらなかった。

 

「お前は―――」

 

 

 

 

 

 

 

「お前の負けだ。アウラ」

 

私の開いた領域が崩れていく。

膝をついている私にフリーレンは杖を突き出す。

 

「どうして?二回も“賭場“をしたのに、なんであなたは、そんな余裕で。1000年以上生きてたって」

 

二回も“賭場“をした。私の集めた兵士達の魔力を全員使ったのだ。その総数は500年以上生きた私の魔力にも匹敵するほどだ。一回開けば、充分に私が支配できるはずだった。なのにフリーレンは、二回開いても私には支配できる量じゃなかった。

 

もう一度、“服従させる魔法“を使おうとした時、私はフリーレンに撃ち抜かれた。

 

「やっぱりお前、“わからない“んだな」

 

フリーレンの私を見る目は、何処までも冷たい。私の知っている人間が私を見る目だ。

 

「確かに兵士達の魔力の“総量“は大したものだよ。でも、兵士達が“賭けている魔力“は“全部“じゃないんだよ」

 

彼女の言っている意味が理解できなかった。

 

「天秤にどれだけ魔力を乗せられるのか、お前でも外からはわからない。でも、天秤に魔力が乗せられれば、天秤にどれだけの魔力が乗せられているのかわかる。でも、お前は見ようとしなかった。だから、天秤に乗せられている魔力の量がわからなかった」

 

どうやらフリーレンは私の説明しなかった私の領域の弱点を理解していたようだ。

 

「100年」

 

「え?」

 

「お前の天秤に乗せられていた魔力量だ。お前は、“意志の力“を舐めすぎた」

 

「…………ハハッ」

 

思わず、笑いが溢れた。たった100年。減らない訳だ。天秤に乗せた兵士達がまさか、魔力を出し渋っていたなど、思いもよらなかった。

 

「ねぇ、最期に聞かせて。フリーレン」

 

「………なに?」

 

ここでいくら抵抗しようと、意味なんてない。死ぬ時間が数秒延びるだけだ。私の魔法では、もうどうしようもない。だから、最期にまでわからなかった事を彼女に聞くことにした。同じ人間なら、わかるかも知れないから。

 

私は、今でも横に控えているウィリアムを見る。

 

「この子、死ぬ時私に“生きろ“って言ったの。なんでかしら」

 

一瞬、ウィリアムを見たフリーレンは長い沈黙の後、答えた。

 

「自分で聞きなよ」

 

瞬間、私の体が消し飛ぶ。

 

 

死体の筈のウィリアムが私を見る目は、どこか温かかった。

 

 




次回からオフロスキー出演します。

話の半分以上主人公が出てないじゃない。
草生えることじゃないので、草消しました。すいません。


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クリスマスは好きかい?


お久しぶりです
アウラを書いて、燃え尽き症候群に陥った作者です。

友達に呪術味強いし、一回呪術廻戦書いたら?って言われたけどあんまりいいネタ浮かばなかった。思いついたので言えば、真人inブルーアーカイブとかいう透き通るような世界観ガン無視キャラをぶち込むとかいうのだった。

そういや今日、クリスマスだなって帰りの電車の中で書きました。



 

「オフロスキー。これはなに?」

 

「サンタ服、というやつだ」

 

「サンタ、服………」

 

赤い服に赤い帽子、所謂サンタ服に身を包んだリーニエが同じような格好をしたオフロスキーを見る。彼女としては、なぜこの服を着せられているのかがよくわからなかった。

 

「今日は特別な日だ。毎年街の子供達にはやっていたが、今年は最近会っていない知り合いにもプレゼントを届けようと思ってな」

 

オフロスキーは昨晩、子供達が寝静まった時間帯に街の子供のいる世帯を訪れ、子供達の枕へとプレゼントを届けていた。城塞都市ハイスにおいて恒例行事であり、現在住む大人達も子供の頃にはオフロスキーにプレゼントを届けてもらっていた。

 

「私は?やる必要性を感じない」

 

「手伝ってくれるのならば、アップルパイを作ってやろう」

 

「やる。大きいのがいい」

 

「いいだろう」

 

オフロスキーの提案にリーニエは即座に頷く。やる必要性は感じないが、対価を用意されるのであれば、リーニエとしても彼のよくわからない行動に付き合うのも吝かではない、というやつだ。

 

オフロスキーはそんな彼女を見て、微笑むと襖を開け、外へと出る。オフロスキーについていこうとしたリーニエは外にあるものを見て、思わず足を止める。

 

「これ、は?」

 

「800年程昔のとある人間が作った兵器の一つだ。“岌戎覇悉(ぎゅうにゅうぱっく)”と呼ばれる特殊な素材からできている」

 

リーニエの目が捉えたのは、明らかに今までリーニエが生きてきたこの世界の世界観を全否定するようなソリと繋がれている謎の鉄でできた生き物だった。

魔法が主流だったこの世界に“科学”というものを取り入れた人も魔族も滅ぼそうとした人族の男の残したものの一つだ。簡単に言えば、ソリとトナカイもどきだ。能力は空を飛べる。以上だ。

そんな彼の発明をまともに使えるはオフロスキーのみである。オフロスキーは唯一弄れるかもしれないと賢老クヴァールに使わせて見たことがあるが、スマホを手にしたお祖父ちゃんの如くなにもできなかった。賢老クヴァール、実は重度の機械音痴である。

 

「早く乗れ」

 

「…………わかった」

 

リーニエは警戒しながら、ソリに座ったオフロスキーの横に座る。どうなるのかわからないリーニエはオフロスキーの腕をがっちりと掴んでいる。

 

「では、行くぞ」

 

「―――ッ!?!!???!!」

 

オフロスキーがボタンを押した瞬間、二人を乗せたソリはトナカイもどきと共に星空へと消えていった。

 

普通の人間や魔族ならまず吐いているそれを数分のフライトでリーニエはなんとか状況に適応することができた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まずはコイツだが」

 

「寝てる」

 

オフロスキーとリーニエは寝袋に包まって寝ているエルフを見る。

オフロスキーの長年の友であるフリーレンだ。

魔王討伐の旅を終え、彼女は現在、一人旅の真っ最中のようだ。

 

「ここに置いていけばいいだろう」

 

オフロスキーは適当に持ってきた魔導書をフリーレンの鞄の近くにメッセージカード付きで置いておく。

 

「雑。女性へのプレゼントとは思えない」

 

「魔導書の内容は“肌年齢を10才若くする魔法”と“手を保湿する魔法”、“あかぎれを治す魔法”だ」

 

「前言撤回。これ以上のプレゼントなんて早々見つからない」

 

リーニエは、何年もオフロスキーと共に過ごしている。それに付随して“みぃつけた”にいる年月も人間で言えば中々の年月だ。彼女は、女性従業員の悩みも理解できるくらいには成長していた。

 

せっかくだからと秘蔵の魔導書の一つをフリーレンにプレゼントしたオフロスキー。ちなみに次会った時にこんなのあるなら早く寄越せとフリーレンのライダーキックがオフロスキーを襲うこととなるがそれは別の話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、次は俺か」

 

「あぁ。クヴァールは石化してるからな」

 

ワインレッドの髪の魔族のいる黄金郷。

 

魔王軍幹部“七崩賢”最強の魔族、マハト。ここは、マハトがかつて拠点としていた都市を黄金へと変えたものだ。街の中を歩けば、当時のまま黄金の像として街の人々は笑い合っている。

 

「まだ“答え”は見つけてないのか?」

 

「あぁ、だがもう少しのような気がするんだ」

 

オフロスキーはこの都市が黄金へと姿を変えることをなんとなく理解していた。しかし、彼はそれを止めることはしなかった。友の“夢”が叶うことを願っているが故に。

 

「ほら、メリークリスマスだ」

 

オフロスキーはマハトに手帳とペンを差し出す。

 

「お前は相変わらず、こういった行事が好きだな」

 

「そういうことを理解することも、大切だと思うぞ」

 

「理解はしている。ヴァイゼの行事にも参加した」

 

手帳とペンを受け取ったマハトは振り返るように目を閉じる。

 

かつて、この街で行われた行事。

 

花吹雪が舞い、人々は賑わう。自身の姿を見た街の者達は笑顔で自身に店の商品を差し出し、子供達は自分へと一緒に回ろうとせがんみ、手を引っ張っていた。自身はその子供達に引かれるがまま――――

 

「そういえば、お前に会うのは初めてだな」

 

「ッ!!」

 

再び目を開けたマハトは、ソリの後ろに隠れているリーニエを見る。声を掛けられたリーニエはビクッと大きく体を揺らす。そして、そりからひょっこりと目元だけを出す。

 

明らかな警戒。普通の魔族ならば、不敬だと切り捨てられてもしょうがないような態度だが、マハトは気にする素振りはない。

 

「随分利口だな」

 

「“みぃつけた”の手伝いをさせている。お前よりも人といた期間は長いんじゃないか?」

 

「ほう?」

 

マハトは面白いものを見つけたと言わんばかりにリーニエを捉えると、手に自身の魔法で黄金の剣を作り出し、リーニエと向ける。

 

「ほら、そんな所で隠れなくてもいいだろう?()()()()が遊んでやる」

 

「お、オフロスキー………」

 

「揉まれてやれ」

 

リーニエは絶望した。

必ず、目の前の黄金郷から生き残ってみせると心に決めた。リーニエは“七崩賢”を良く知らぬ。しかし、これだけはわかる。気を抜けば死ぬ。

 

リーニエは観念して、マハトの前に出てくると、魔法で生み出した剣を握る。

 

「なに、殺しはしない」

 

「“模倣する魔法(エアファーゼン)”」

 

その後、マハトの攻撃を躱すいなすを繰り返したリーニエは、マハトが興に乗り“領域展開”をされかけオフロスキーがストップをかけるまで襲われ続けた。

 

「そういえば、ソリテールが会いたがっていたぞ?なんでも“領域”の対策をできるようになったとか」

 

「よし、次に行くぞ。早くしろリーニエ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから拗ねてるんだね。自分の娘に随分なことするじゃないか」

 

「いい機会だったからな」

 

椅子に座り、夜空を眺めながら語り合う初老の男とオフロスキー。リーニエはオフロスキーの座る椅子の横で頬を膨らませて体育座りをしている。

 

男の名はヒンメル。

数十年前に勇者として魔王を討伐した勇者パーティーのリーダーである。今は王都にて余生を過ごしている。

 

「ほら、メリークリスマス」

 

「ありがたくいただくよ。でも、杖って君ねぇ」

 

オフロスキーはヒンメルに杖を差し出す。クリスマスプレゼントとして渡されたためありがたくいただくヒンメルだが、クリスマスプレゼントにそれぇ?と思わずオフロスキーを見る。

 

「悪いが、勇者パーティーはフリーレンでの繋がりしかないからな。ついでにこれをやる」

 

「これは?」

 

「髪の寿命を伸ばすものだ」

 

「余計なお世話だよ」

 

「言葉を選んだ方がいい。お前、今際の際だぞ」

 

「余計なお世話だよ!」

 

ヒンメルはオフロスキーの貰った杖を使ってオフロスキーを叩く。ヒンメルの頭は最近薄くなってきており、何故か身長も縮んできていた。

 

「アレをどうにかすれば、まだなんとかなるぞ?」

 

「………そういうわけにもいかないんだよ」

 

オフロスキーの視線の先には、邪悪なオーラを吐き出す棚。中には暗黒竜と呼ばれる魔物の角が入っている。

 

「フリーレンに預かっててほしいといわれた。なら、彼女が取りに来るまで預かるよ」

 

「………甲斐甲斐しいことだ」

 

「君にも言えることじゃないかな?」

 

「あのアホを放っておいたらどうなるかわかったもんじゃない。生きてはいけるだろうがな」

 

「それは同感だね」

 

オフロスキーは椅子から立ち上がる。

 

「そろそろ行く」

 

「そうかい。次会うのはいつになるだろうね」

 

「長生きすることだな」

 

「うん。そうさせてもらうよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………」

 

「なんだ?まだ拗ねてるのか?」

 

空をかけるソリの上、リーニエは未だ体育座りでそっぽを向いていた。

 

「オフロスキー。私といるより楽しそうだった」

 

「………………嫉妬してるのか?」

 

「違うそんなんじゃない」

 

リーニエはこの気持ちがよくわからない。ただ、オフロスキーが自分を放ったらかして、自分の知らない彼の知り合いと楽しそうに話しているのを見て、もやもやしていた。と言ってもヒンメルとは一度会ったことはあるし、フリーレンとも面識はある。しかし、これはこれそれはそれだ。

 

「オフロスキーは私のお父さん。なら、お父さんらしくするべきだと思う」

 

「あぁ、そうだな」

 

「ん」

 

オフロスキーはリーニエの頭を撫でる。

リーニエは気持ち良さそうに目を細め、オフロスキーにされるがまま頭を揺らす。どこか雑で温かいそれは、リーニエに明確な変化を与えていた。

 

「ん?」

 

その時、リーニエは帽子になにかが掛けられたことを感じ、手にとって目の前には持ってくる。それは、リンゴのパーツがついたネックレスだった。

 

「付き合ってくれた娘に父親から些細なプレゼントだ」

 

「…………もらっておく」

 

「あぁ、そうしておけ」

 

黄色く輝く丸い月が照らす夜空を、一組の親子を乗せたソリが駆けていく。





色々な作品でクリスマス回が書かれていて、自分もせっかくだからってクリスマス回書きました。構想のこの字も練っていなかったから後悔してます。クリスマス回とか考えておけばよかったです。

みんなはクリスマス誰と過ごします?

私ですか?

一人ですよ?


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喧嘩は好きかい

大学が一段落ついた作者です。

凄い遅筆なものですいません。モチベがゴミカスな作者です。筆が乗っても一日2000が限界な作者です。最近フリーレン追えてなくて辛い作者です。ジャンプは追えてる作者です。

休日だし朝の7時投稿でいいかな、とか思っちゃった作者です。


 

「喧嘩をしたい」

 

突如としてオフロスキーの部屋を訪ねてきたワインレッドの髪の魔族の名は、マハト。

魔王軍幹部、七崩賢に名を連ねる猛者だ。

 

彼の片手にある酒瓶は手土産のつもりなのだろう。

 

「いきなりだな」

 

オフロスキーは突然訪問してきた数少ない同族の友人にお茶を差し出す。差し出されたお茶を一口。味を楽しむ、という行為を魔族は基本行わない。出された茶っぱがいくら良かろうとも魔族は、なんか飲みやすいな、くらいにしか思わない。

 

「人に仕えてみることにした」

 

オフロスキーはマハトのその言葉に目を見開く。

 

「そうすれば、なにかわかるかと思ってな」

 

「そうか。それで、なぜ喧嘩をすることになる?」

 

「クヴァールが言っていた。“人はお互いのことを喧嘩とやらでわかりあう“と」

 

オフロスキーは思わず、それ何処のヤンキー漫画?と口にしそうになるが、既の所でとどまる。共通の友人であるクヴァールにそういった知識を与えたのは、自分しか心当たりがないからだ。

 

「ならば、と。“理解のある友人”に手伝ってもらおうと考えた」

 

マハトは“人との共存“を夢見る魔族だ。しかし、それが成されることは永劫にないと言える。生物としての感性が違うのだ。オフロスキーとて、“人の心“を獲得こそしているが、それは“もと”があるからに過ぎない。

 

「………わかった」

 

だが、オフロスキーがそれをマハトに伝えることはしない。意味がないから、とかではない。友人として、マハトという魔族がどのような答えに至るのかを見届けるために。

 

 

 

 

 

「始めようか」

 

「あぁ、そうだな」

 

オフロスキーの拠点である城塞都市ハイスから離れて数キロ。少しばかし開けた原っぱ。そこに魔王軍幹部と魔族の裏切り者が向き合う。

 

オフロスキーは殴殺魔具“好運打死“を取り出して肩に担ぎ、魔力を使い右手に水を集める。

 

「“螺・禍水断(ラ・カスタ)“」

 

オフロスキーがそのまま右手を振るえば、水は円盤状になり、回転をしてマハトの下へと向かっていく。マハトは自身が身に纏うマントを目の前に広げ、黄金にかえる。

次の瞬間マハトの耳には水が当たったとは思えない音が耳に届く。

 

「ふっ!」

 

「ッ!!」

 

そして強い衝撃がマハトへと届き、マハトを後方へと吹き飛ばす。吹き飛ばされる中、姿勢を整え着地、前を見たマハトの目には大量の小さな水の粒が浮いていた。

 

「“裂攻水(サクセス)“」

 

水の粒が弾け、水の針が周囲をへと飛び散る。それは到底水とは思えない水の針であり、マハトは金でできた剣を形成して弾くことで防ぐが、全てを防げる訳ではなく、マハトの顔や体にかすり傷がいくつかできる。

 

「そういえばだが、お前と戦う時に気になっていたことがある」

 

「……なんだ?」

 

攻撃がやんだマハトは、ふと前々から気になっていたことをオフロスキーへと聞いてみることにした。

 

「なぜ攻撃の前に名前を叫ぶ?全て一貫して“水を操る魔法”だろう?」

 

「……………………………知らないのか」

 

オフロスキーはまさかここで、そこを疑問に思われるとは思っていなかったのか、どう言ったものかと思考を回す。まだ若い魔族だった頃にテンション上がって技名を叫んびながら魔法を使っていたからか、それが身に馴染んでしまったなど口が裂けても言えない。

 

「人間の戦士の中で強い奴は、技の名前を叫ぶんだ」

 

「そうなのか」

 

考え抜いた結果、偉大な海賊王の言葉を借りることにしたオフロスキーの言葉を真に受けるマハト。ただの方便なのだが、マハトとしては関係のないこと。人間の強者は技名を叫ぶ、初めて知ったな。と感動しているほどだ。

 

「なら、俺もそうするとしよう」

 

マハトが右手を上げると、マハトの周りに黄金でできた剣が生成される。その剣先は余すことなくオフロスキーへと向けられていた。

 

「“金剣(ゴルドザード)”」

 

マハトが手を振り下ろす。

 

「“(キャノン)”」

 

オフロスキーに向けて大量の金の剣が射出されていく。まさしくそれは某英雄王。オフロスキーは横に走って剣の射線から外れる事で飛んでくる剣を回避する。マハトは射線を動かす事でオフロスキーを追跡すると同時にオフロスキーの頭上に大量の金の塊を作り出す。

 

「“金雨(ゴルザイン)“」

 

「“磨蔵氷群泡(スクラビングバブル)“」

 

オフロスキーは自身を囲むように小さな泡の塊を展開する。泡に当たった金達は溶かされ、一欠片たりともオフロスキーに届くことはなかった。しかしそのまま打ち続けると、だんだんと泡の許容量を越えていったのか、降り注ぐ金の雨が泡を貫通する。しかし、既にそこにはオフロスキーはいなかった。

マハトはオフロスキーの魔力が自身の後ろへと回っていることに気づく。

 

「“潤屠乱鳥(ウルトラバード)“」

 

マハトが振り返ろうとしたその時、マハトへと向かって巨大な水の鳥が突進してくる。

 

「“金獅子(ゴルレイオ)“」

 

躱せないと判断したマハトは金でできた獅子を作り出し、水の鳥へと突進させる。衝突した二匹は衝撃波を生み、鳥は弾け、獅子は粉砕された。

 

「“金龍(ゴルドラコ)”」

 

「“波水光(バスピカ)”」

 

そして、未だに空中にいるオフロスキーへと追撃するために地面から飛び出してきた金色の龍はオフロスキーから出てきた水のネズミの大群により、一瞬で元から無かったかのように食べられてしまう。

 

「……………ふむ」

 

それを見て、マハトはどこか納得がいかないような顔つきで顎を触る。

 

「今度はなんだ?」

 

「いや、小手調べではきりが無いと思ってな。時間は有限だ。喧嘩とは全力を出し合うものなのだろう?」

 

「…………まぁ、そうだな」

 

「ならば、“余興”は仕舞いだ」

 

マハトの周囲が徐々に黄金へと変わっていく。それは予兆。オフロスキーは瞬時に理解する。魔族内においても、“それ”を使えるものは数少ない。なぜか?開発者がオフロスキーだからである。

 

オフロスキーは理解している。“それ”の難易度が人と魔族でかけ離れていることを。故に両方に力を知識を与えても、強くなるのは魔族側だけである。

一部例外として、“天才賢者(クヴァール)”や“チョコラータ(ソリテール)”や“クソ師匠(ゼーリエ)”など、発動する場面を見ただけで殆ど理解したり、勝手に対策法を思いついたり、急に現れたと思ったら勝手に弟子にして知識共有(無理矢理)をしてくるようなおかしな奴はいるが。だが、前者二名は魔族だ。それによりなにが起こったか。魔王軍幹部の強化パッチの適用である。

 

「“領域展開”」

 

オフロスキーはどうしたものかと考えた。明らかに強さの均衡が崩れたからだ。だが、それもなんとかなった。最後のイカれた奴こと長生きエルフが開発した領域対策の魔法をとある人物に授けたからである。

 

「“黄金曼荼羅(おうごんまんだら)”」

 

開かれたるは巨大な黄金の花がいくつも足場に形成された美しき領域。招かれたるモノ全てをまたたくまに黄金に変える、まさしく“必中必殺”。しかし、そんな領域に招かれたオフロスキーが黄金へと変わることはない。

 

領域の対策は別の領域を開くことである。それにより、領域の効果が中和され、必中の効果が無くなるのだ。マハトは疑問に思う。なぜ、オフロスキーは領域を展開していないのに黄金へと変化しないのか。

 

「あぁ。なるほど」

 

それは、領域を開けない無力な者達の為に作られた魔法。故に広がることを恐れ、一部の者にしか与えられることのなかった魔法。

 

名を

 

「“空白領域(ホリーティア)”」

 

言ってしまえば“簡易領域”である。だが、これには問題もある。

 

領域の使えない者の為に作った領域。それはいわば、魔法にある程度理解があれば誰でも使えるということ。そんなものを某賢老に見せてみろ、瞬く間に解析、対策される。故に開発者は教える人間を絞った。オフロスキーも開発者の意を汲んで、魔王軍と人間の決着がつく間、そしてこれからの生涯において教えたのはたった二人である。

 

“南の勇者”と“娘”である。

 

後者は念の為。前者はテコ入れの為。

 

前者の場合は、これまた突然訪ねてきて「君の知る“術”が必要だ」と言われた時は驚いたものだ。実際、これを得ただけで七崩賢と渡り合えたのだから頭がおかしい。

 

「…………だが、何故だ?お前は“そんなもの”使わずとも領域を使えるだろう」

 

「せっかくだ。お前にいいものを見せてやる」

 

マハトは理解できなかった。マハトにとってそれは、“弱者”の力だ。ライオンが兎を真似してピョンピョン跳ねているようなもの。

 

「これには、少し“タメ”が必要でな。領域の押し合いをしながらだと流石に面倒だ」

 

オフロスキーとて、領域展開の“先”を考えていなかった訳では無い。似せてこそいるが、元ネタとは別物であるのもまたそう。

 

「“領域展開”。簡単に言うと、それは術者の“原点”だ」

 

「“原点”?」

 

「在り方、起源、根源。術者を構成する“始まり”を起点としている」

 

これが魔族が領域展開を容易にでき、人間にはできない理由。

 

魔族は生涯、一つの魔法を極める。それに対し、人は広く浅く様々な魔法に手を出す。究極の一と凡庸の百。領域展開に必要なのは究極とまではいかないが、極めた一なのだ。

魔法協会創始者の面接の回答がそれとも言っていい。だが、人間がそれと向き合うようになった頃には“百”から“一”を選べなくなっている。

 

「生涯において“原点”の次にあるのは“分岐点”だ。そして、最後に“終点”だ」

 

領域展開のその先。

オフロスキーはそれを完成させた際、こう結論つけた。

 

『魔族がこれに辿りつくのはほぼ不可能である』

 

それはなぜか?簡単である。

 

“一”の次が“二”だからだ。

 

「いまから見せるのは“分岐点”。お前の目指す所だろうな」

 

「………………いいだろう。見せてみろ」

 

ならばなぜ、オフロスキーは魔族であるマハトにそれを見せるのか。

 

 

その理由もまた簡単である。

 

「“領域発展”」

 

自分なりに努力する“友”がいるのだから。

 

見過ごせるわけないだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

「“空沱天涅帝(からだてんけんたい)”」

 

 




戦闘描写ってホント難しい。
マハトくん強化パッチ入ります。

Q.いったいどうするつもりですか?

A.大丈夫だ。フリーレンがきっとなんとかしてくれる。

次はいつになるかな次話投稿(ゴミカス)

現在の作者のブームはリメイクされた心の仮面だったりする。4と5はやってたから3のリメイク出て嬉しい。設定そのまま使って1から作れないかなぁとか考えてる。


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