「先生!もっとあたしらに構って!」 (アキラゼミ)
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Vol.1 第1章:ハドマ学園
第1話:始まり


 

「────では、会議を始めましょう。まず本校が廃校、もしくはゲヘナ学園と併合されるというお話ですが。やはり、如何に連邦生徒会であろうとも、在校生の存在は無視できないと思うのです。皆さん何か意見はありますか?(わたくし)としましては、やはり、各方面との話し合いが大事かと思いますが」

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 ハドマ学園生徒会失楽園(ダイモニオン・ソサエティー)議長、我猛(がもう)リエが口火を切る。

 制服ではなくて、私服のロリータファッションを身に纏っている辺り、彼女も大概、自由人である。

 

「やっぱし、抗議文を提出するか乗り込むのが一番じゃないの?」

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 連邦生徒会対策委員会の委員長、弖使魔(てしま)シエルがリエに同意を示す。

 本来ならリエが委員長の座に着くべきところを、既に生徒会長として忙しくしているからと、リエの友人であるシエルがこうして対策委員会の委員長を請け負っているとの事だった。

 

「抗議文は意味無い、と思います。普段から仕事で忙しくしているから、手付かずの書類もあるとか。郵便物すら溜まっているようなので、抗議文とかは尚更、見てくれないんじゃないかな……と」

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 シエルの意見の一部を否定するのは、美食研究会対策委員会の委員長、三重(みえ)アスカ

 一部とはいえ年下に真っ向から意見を否定され、シエルはちょっぴりムッとなりアスカに向けて目を細める。

 

「それ、どこ情報よ?そりゃ、連邦生徒会は忙しくしてるでしょーけど?どこでそんなの聞いたの?」

 

「妹の友達が、連邦生徒会に入ってるらしくって。だから、少しくらいなら情報は得られるので……」

 

「あっそう、それはイイね。んじゃあ、どうしよ?書類が溜まってるから抗議文は見てくれる可能性が低い────なら、現地に乗り込むのがいいよね。デモとかヤッちゃう?」

 

「それも……面白そうではありますけど…………」

 

「ふむふむ、これで2票ね。他に意見あるヤツは?居ないんなら、この方向で話、進めない?」

 

 シエルは連邦生徒会対策委員会の委員長である。しかも話題がその連邦生徒会対策についてなので、シエルの土俵である。こうなってはあまり表立って誰も口を挟めない。

 内心、どうしようかと思っている。先生の私も。しかしもう少し生徒に話し合わせてみようと思う。もしもの時はもしもの時に考えよう。

 

「────お言葉ですが、シエルさん」

 

「……何よ?」

 

 あまり逆らおうとしない他5人の生徒達に対し、シエルに抗議しようと口を開いたのはハドマ学園の生徒会副会長、針村(はりむら)ルーシィである。

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「不知火カヤ元代行が、七神リン行政官に代わって台頭したあのクーデター、覚えてますよね?」

 

「そりゃ覚えてるけど、それが何よ?」

 

「あの時は、レッドウィンター連邦学園の工務部の連中が現場に押しかけていたようですが、あまり、効果は無かったそうです。何日、何週間と居座れど効果は無く、かのレッドウィンターの工務部でさえ撤退を余儀なくされた──とのことですよ?勿論、レッドウィンターのこのデモは、リン行政官が復帰した後も続き、それを含めての数日、数週間です」

 

「うっ……」

 

「そんな不屈の連邦生徒会を相手にデモをすると?しかもこの場には、連邦生徒会と親密な関係にあるシャーレの先生も居ますし。そんな事をするのは、あまり利口とは言えないのでは?」

 

「の、乗り込んで私達と話し合いさせるとか!多分それくらいならしてくれるでしょ!歴史は浅いけど昔はゲヘナ学園との姉妹校扱いだったんだしさ!」

 

 ギリリと歯を食い縛って私を見るシエル。確かに私はリンちゃんら連邦生徒会の子と仲良くしてる。何なら、この子達には言わないが不祥事を起こしたカヤをシャーレに引き取って面倒を見るばかりか、私の専属秘書としているくらいだ。

 だから確かにルーシィの言う通り、私の前で連邦生徒会と真っ向からやり合おうという話をするのもそういう事を考えるのも、あまり利口ではない。

 

「抗議文も乗り込んで話し合いさせろと言うのも、意味無いと思います……。だって、連邦生徒会って、慈悲の欠片も無いですし……。実績を残してる学校も潰すじゃないですかぁ……」

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「実績を……?そんな事あった?」

 

 紙にペンを走らせながらも連邦生徒会を悪し様に言うのは、生徒会書記の天河(あまがわ)アンナ

 彼女自身「慈悲の天使」などという二つ名があるらしく、口癖のように「慈悲」という言葉を使う。ちなみにこの場にいる学園内の上位7人を「7人の天使と悪魔」という事で略して七天魔(しちてんま)と称するらしいが、その七天魔の中では、唯一のスナイパーらしい。

 慈悲を以て敵を貫く────そんな戦術との事。

 

「SRT特殊学園、七囚人の狐坂ワカモを捕らえた実績もあるのに……そんな優秀な所を潰した七神リン行政官は慈悲の欠片も無いと思うんです……」

 

「あー……そんな事もあったなぁ、そういえば」

 

「やっぱ連邦生徒会クソじゃん!実力行使で潰しに行かない!?あたしらならヤレるって!!」

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「それ、私も一枚噛んでいい?腕には自信あるし」

 

「おっ、ルーシィも来る!?やったろーじゃないの連邦生徒会!」

 

「おーっ!」

 

 実力行使に出ようとするのは、ゲヘナ学園で言う風紀委員会に相当する委員会、統治委員会の委員長である鐘蟲(かねむし)スズ

 ついさっきの会議開始直前に、七天魔の誰かからボソッと「クソバエ」呼ばわりされて、滅茶苦茶にキレ散らかしていた子だ。

 ただし、戦闘力の上がり下がりが極めて激しく、この七天魔の中では最強にも最弱にもなるそうだ。その詳細は、私はまだ分からない。

 

「やれやれ、先輩は相変わらず脳筋の単細胞です。シャーレの先生が目の前に居るというのに、今から作戦会議でも始めそうな勢いですね……」

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「あぁん?なんか文句あんの!?」

 

 スズを「先輩」と呼びつつ罵倒もするのは、同じ統治委員会の副委員長、零得(ぜろえ)ルビー。年下であるがスズイジリは七天魔の中でも随一である。

 趣味はボクシングやキックボクシングらしいが、それを「殴るのと蹴るのが好き」という表現をするなどなど、言葉足らずな面が目立つ子だ。

 

「だって……普通にバカだなぁって……」

 

「何ですってぇ!?今日はヤケに逆らうじゃない、今日という今日はブッ潰して────」

 

「お静かに。──風紀を守る委員会の、長としての発言とは思えませんわね?スズさん?そして我が校生徒会の副会長とは思えませんよ、ルーシィさん」

 

「でもさぁリエ?アイツら連邦生徒会は抗議文とか見ても無視するだろうし、デモに屈しないってのはレッドウィンターの工務部が証明してる。んじゃ、どうやって廃校や併合を阻止するってのさ?」

 

「そのくらいの事、私とて把握済みです。わざわざその位の事で会議を開いたりしませんよ。その為にこうして『シャーレの先生』をお呼びしたのです。こうして皆さんの意見を聞きつつどのような答えをお出しするのか────今回の会議の本命はそちらなのですから」

 

 殆ど全員の視線が私を貫く。

 実は今回、ハドマ学園に来る道中、リンちゃんに問い合わせて「ハドマ学園併合の問題は凍結中」と回答を得ている。

 理由は、単純に忙しすぎて、ハドマの問題に回す時間が無いからである。

 ハドマ学園は教員ロボも居ない上に、学校機能は既に死んでいるようなものだそうだ。リンちゃんがそう判断し、学校として死んでいるなら併合を、と考えるのは、至極当然のことである。

 

「その前に──アスカの意見も聞いてみたいな」

 

「え……私……?」

 

 この会議に招集される直前まで自分が作っていたクッキーを、空を眺めながら頬張っている。会議を上の空で聞いていた様子だったのが気になったので意識を引き戻す意味で意見を尋ねてみた。

 先程、シエルに反対意見は出したが、特に彼女の意見らしい意見は聞けなかった事から、彼女自身の意見を聞いてみたくなった。

 三重アスカ────晄輪大祭にてお菓子の出店を出していたが、後夜祭で美食研究会に見つかって、ハルナとアカリに砂糖の多さについて酷評されて、イズミに調味料らしき物でゲテモノにアレンジされ頬張られた事で、美食研究会に恨みを抱いている。

 なお、ジュンコについては、酷評しなかったので特に恨みは無いとの事である。

 自分で立ち上げた美食研究会対策委員会の委員長という立場であり、強さの面ではハドマ学園の上位7名、七天魔に加えられている。そしてアスカは、その七天魔で唯一のヒーラーである。

 

「私は──併合は、嫌です。美食研究会のヤツらと同じ空気を吸いたくないので……」

 

「そ……そっ、か……」

 

「……り、理由はともかく!併合に反対という想いは同じ、という事ですね!七天魔の総意、改めて確認できたこと、とても嬉しく思いますわ」

 

 理由が理由だけに、リエも困惑している。しかし彼女の言う通り、アスカもまた、ゲヘナとの併合は嫌だという想いは確かなもののようだ。

 

「さ、先生。ここまでの流れを見て聞いて、何か、思う所や提案などはございますか……?」

 

「そうだね──まず実力行使に出るのは良くない。もしそうするなら私は連邦生徒会側につくと思う。それは、皆が思っている通りだろうけれど」

 

「……はい。ですが、生徒の味方であると公言されているので、連邦生徒会に味方するであろう事を既に知りつつ、こうしてお呼びしたのです」

 

「それについては、ありがとう。もしそうせずに、シエルやルーシィの言う通り実力行使に出ていたら私達の出会い方は最悪なものになっていたと思う。きっと、敵として出会っていただろうね」

 

「はい……恐らくは」

 

「この問題について、私の考えを言うとするなら、これだけ胸に留めておいてほしい。──まず、焦る必要は無い。落ち着いて解決策を見つけていこう」

 

「というと……?」

 

「ここに来る前に、ハドマ学園併合問題について、連邦生徒会に問い合わせてみたんだ。回答としては

『他の問題で手一杯である為、ハドマ学園の問題については凍結中』って内容だったんだ」

 

「そうだったのですね……一先(ひとま)ずは安心、ですか」

 

「うん……あくまでとりあえずは、だけれど」

 

「連邦生徒会は忙しいそうですし、暫くこの問題も大丈夫なのでは……?」

 

 緊張した空気が解けて、空気が柔らかくなった。もう少し落ち着いて話せると思ったが、机をバンと強く叩き椅子を後ろに飛ばすようにしてルーシィが立ち上がる。

 

「リエ会長もアスカも甘いッ!先生もです!」

 

「え……?」

 

「?」

 

「甘い、かな……?」

 

「甘いです!アスカのお菓子くらい!連邦生徒会のその答えは『今の問題が解決したら連邦生徒会内で話し合いを再開する』って事でしょう!?今ここで私達が手を抜いていい理由にはならない!ハッキリ言いますが、ここでの手抜きなんて、問題の先送りでしかないでしょう!?」

 

「……そうかもしれない。でも、再開する見通しまであるワケじゃないよ。私は『いつか考えよう』って言っているんじゃない。『焦る必要は無い』、ただそれだけを伝えたいんだ」

 

「甘すぎます……!学校が無くなるかどうかの瀬戸際なのにそんな悠長な!こっちから向こうに抗議して問題を再燃させてもいいんですよッ!?その方が、解決も早くなるんだから!その方が、私達としても安心できるんですからっ!!」

 

 ルーシィの言う通りかもしれない。無期限に問題を先延ばしにするのも、それはそれで問題だろう。それならそれで問題を再燃させた方が────と、そういう結論に至るのもおかしくはない。

 だがどちらかといえば連邦生徒会側の人間である私としては、リンちゃんを急かすような事はあまりしたくはないというのが本音だ。

 どうにかハドマの生徒を抑えつつ、連邦生徒会にこの問題を無かったことにできないか打診するのが良いのかもしれないが、リンちゃんの口振りから、この問題をなぁなぁにするつもりが無いのは私にもよく伝わってしまった。

 廃校か併合なら併合、これ自体は合致していると見てもいい。しかし併合は実質的な「故郷剥奪」と同義とこの子達は考えている。こればかりは、幾ら私でも──多分、リンちゃんら連邦生徒会に味方はできないかもしれない……。

 

「──私から連邦生徒会に問い合わせて、この話を無かった事にできないか打診してみるよ」

 

「それでダメだったら?あのカタブツ連中が先生の話を聞いて説得されるとでも?そんなに堕ちやすい連中なんですか?連邦生徒会ってヤツらは?」

 

「……分からない。全力を尽くすと約束するよ」

 

「どーせダメでしょ。ゲヘナと同じくらいに治安も悪い、しかもゲヘナと違って教員すら壊されてる(・・・・・)!お陰で治安が死んでるゲヘナより終わってる扱い!学校機能が死んでる以上、廃校や併合に逆らう方がバカ扱いだ!ふざっけんなッ!このハドマの土地で生まれ育ってんだよ、私達は!それを連邦生徒会の話し合い程度で、地獄みたいなゲヘナに併合されてたまるかっ!!」

 

「落ち着いて下さいルーシィさん、相手は先せ……」

 

「落ち着いてられるかッ!!どーせ先生も、外部の人間だからそんな他人事で居られるんだ!土地への思い入れとか、そういうの分かんないんだろ!?」

 

「そんな事は無……」

 

「キヴォトス外の住人だったアンタは!その土地を捨てて、このキヴォトスに来てるんだよなァッ!?自分が住んでた所に思い入れもクソも無いだろ!?アンタの経歴がそう示してるだろ!?もし思い入れあるんなら、どうしてキヴォトスに来れたんだ!?どうしてこんな治安の悪い世界に住んでるんだ!?自分の土地に思い入れがあるんなら、帰れよッ!!帰れないとか言われても、帰る為に足掻けよ!何もしてないクセに!帰る為に動いていないクセにッ!解決する気も無いクセによくもそんな事────」

 

 涙ながらに怒鳴るルーシィ。しかしある瞬間に、彼女の言葉は途切れて、彼女の身体はバタリと倒れ床に転がる。

 

「……スズ……」

 

「別に。先生の為じゃないし。キーキーウザイから黙らせただけよ」

 

 何故かツインテールになったスズは、ルーシィの首への手刀一発のみで彼女を気絶させてしまった。そしてツインテールのスズを見たルビー、シエル、更にアンナなどは、彼女を警戒して銃を手にする。

 

「あー、大丈夫だっつの。別に。ルーシィを一撃で仕留めるにゃ、こう(・・)すんのが楽だっただけよ」

 

 しゅるりとヘアゴムを取り、ポケットに仕舞うとドカッと椅子に腰を下ろす。気絶したルーシィは、アンナが椅子に座らせた。ヘイローも消えている、どうやら完全に気絶してしまっているようだ。

 

「……スズ、今のツインテールは……?」

 

「ん?あぁ、髪を分けると集中力がアガんのよね。ただそれだけよ」

 

「それにしてはルビーとか凄く警戒してたけれど。シエルも、睨むような顔で見てたよ?」

 

「えー?ひっどぉ〜!」

 

「そりゃ、アレはスズ先輩の戦闘モードですから。食事中でもないなら、警戒するのが普通ですから。なので今のは、寧ろ────」

 

「寧ろ、リエがどうして静観を決め込んでたのかが不思議。アンナですらライフル構えてたのにさ?」

 

「わっ、私の麻酔ならルーシィさん眠らせられるなって……」

 

「────私としては、スズさんなら、あの一撃でルーシィさんを鎮めてくれると信じていましたし、この場には先生もいらっしゃいますから、あんまり大事には至らないと確信しておりましたわ?」

 

「あん?あたしの強さについてはともかくとして、何であたしの事に先生が関係あんのよ?」

 

「ご自分の胸に聞いてみては?」

 

「もしもし私、なんで先生が関係あるんですかぁ?って、答えてくれるワケあるか!!リエのクソデカおっぱいじゃあるまいし!打っても響かねー(・・・・・・・・)のよ!プルンプル〜ンッて、バッカじゃないの!?」

 

「ふふ、ノリとツッコミがお上手ですわね」

 

「あーもう、うっさいなぁ!……何で睨むのよ!」

 

「いや……先輩の貧乳芸に巻き込まれた気がして」

 

「うんうん。マジ無理、後で殴らせてくれない?」

 

「いーよぉ、殴らせてあげる〜!シエル先輩は特にザコザコだしィ?シエル先輩で、あたしにダメージ与えられるんですかぁ〜?」

 

「……ルビー、私の代わりにスズ殴っといてよ」

 

「任されました」

 

「ゲェッ!?ルビーは無しでしょ、先輩!?」

 

「こういう時ばっか先輩呼ばわりはやめな〜?」

 

「う、ぐ…………分かったわよ!ここは、リエの胸を羨む貧乳同士、仲良くしましょ!」

 

「「別に羨んでないから(です)」」

 

「あっそ!あっそへっそ!ばーか!あーほ!」

 

「クソバエがブンブンうるさいですね。サングラスあげますから、今後そうやってブンブン言う時にはそれを装着してください。きっと似合いますから」

 

「あー!ルビーだったのね、それ言ったの!!」

 

「私以外に先輩をハエ呼ばわりする人は居ません。居たら私が潰してますから……」

 

「ッ!?……あ…………あっ、そ……どうでもいいわ」

 

 ルビーとスズだけ、他より関係が少し湿っている気がしたが、聞かなかった事にしておこう。

 そして彼女らに聞く所によると、スズは場に応じ髪型を変えるのだそう。

 戦闘時や食事の際にはツインテール、遊ぶ際にはポニーテールに。普段はこうして結ばないそうだ。スズ曰く「集中力がアガる」との事だがツインテに変えてどうして集中力が上がるのかは分からない。気分的なものなのだろうが、良いルーティンだ。

 ただし、スズは目の前の事に集中しがちなので、あのままルーシィと戦闘に突入するのではないかと他の子達は警戒をしていたようだ。実際は、一撃でルーシィが鎮んでくれたので事なきを得たが……。

 

「……そういえばさ」

 

「……?どうされましたか?」

 

「さっき、ルーシィは『教員ロボは壊されてる』と言ってたけど、誰が壊したの?」

 

「……っ!」

 

「ゲヘナ学園でも教員ロボは普通に教鞭を執ってるくらいだから、気になってね。何なら、教員ロボに手を出すのはご法度みたいな扱いな所もあるしね。やっぱり……アレかな?暴れた生徒達がやったの?」

 

「「「「「「──────……」」」」」」

 

 私がただ純粋にその疑問を口にした瞬間、室内の空気が凍りついた……そんな気がした。




次回────ダイモニオンの真実

3年
リエ、シエル

2年
スズ、ルーシィ、アンナ、アスカ

1年
ルビー、サエ、アスカ妹


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第2話:ダイモニオンの真実

 

「……?」

 

 場の空気が凍りついた。特に鈍感ではない私は、自分が何か、この子達にとってマズイ事を言ったと直感的に理解した。

 とはいえ──だ。そもそもハドマ学園併合問題の発端となったのは、教員ロボの喪失を始めとする、

「学校機能の喪失」が原因だ。

 つまり、如何に地雷発言であろうと、この問題を乗り越えていく上で、避けては通れない道だった。

 

「それ、は────」

 

「…………ふふッ」

 

「ちょっと、スズ先輩っ……」

 

「ま、言えないよねリエは。自校の恥だもんねぇ。あんな奴らを野放しにしてさ。生徒会長──議長の面目、丸潰れだもの」

 

「私達の恥でもある気がするんですが……」

 

「ヤツらすばしっこいのよ、本当にさぁ。マジヤダ絶対潰したい」

 

「……それは、そうですけど」

 

 リエ以外の大半のメンバーも俯き、黙り込む中、スズとルビーという統治委員会の2人だけが、他の生徒に比べて平然としていた。

 どうやって聞き出そうかと考えている内に、私が疑問符を浮かべているのに気付いたスズは、派手に机に肘をついたまま、相変わらずのニヤケ顔で解説してくれた。

 

「ハドマ学園に、居るんだよね。ヤベーヤツがさ」

 

「……ヤベーヤツ、とは?」

 

「まぁ、一種のテロ組織みたいなモンかな。学校を潰そうと目論んでるヤツ。素性もよく分かんない、だけどソイツらは正体を隠してのうのうとハドマの学園に通ってんのよ」

 

「学校を潰すのが目的のテロ組織────」

 

 参ったな。気に入らない店を爆破する程度で済む美食研究会が可愛く見えてきてしまった。

 そんなの、ホンモノのテロ組織じゃないか。もしそんなのが紛れているともなれば、問題が起きてる程度では済まないだろうに……。

 

「ソイツら『飂熾冘巫髏(ル・シュ・フェル)』って名乗ってんだけど、結構な実力者揃いの組織でね。七天魔(しちてんま)と、あんまり変わらないくらいじゃないかな。それでいて頭脳派みたいなのも居るみたいで、中々捕まえらんない。あたしら統治委員会からすりゃ、ライバルみたいな存在かもね」

 

「そんな可愛いモンでもありませんけどね。実際、ヤツらはゲヘナ学園の万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)とも接触して、ハドマ学園を明け渡すつもりで動いているみたいな噂もありますし」

 

「統治委員会にとってもだけど、私達、連邦生徒会対策委員会にとっても敵なんだよね。連邦生徒会がゲヘナと併合に向けて動いてるって分かってから、丁度いいと言わんばかりに更に過激化してるしね」

 

 その「飂熾冘巫髏」という組織は、連邦生徒会がハドマ学園とゲヘナ学園を併合しようとする()からハドマ学園を潰す為に活動をしていたようだ。

 そして、遂に教員ロボを破壊するなど学校機能を喪失させるに至り、とうとう連邦生徒会がハドマに目を付け、ゲヘナとの併合に向けて動き出し……。

 しかし、連邦生徒会は他に大きな問題がある為、ハドマ学園併合問題は凍結し────連邦生徒会の作った「併合」の流れに乗れないと判断したらしい飂熾冘巫髏は、連邦生徒会すらスルーし、併合先のゲヘナにその手を伸ばし始めている──というのがハドマ学園の生徒会が現時点で掴んでいる情報だ。

 

「────実際、問題はかなり深刻です。彼女らが教員ロボを破壊し、学校機能を停止させた事により連邦生徒会に目をつけられたのが事の発端ですし。以前から、ちょっかいを掛けられる程度のことならありましたけれど……最近はどうも……」

 

過激化してる(・・・・・・)──よねぇ。1週間に1回は校舎の1フロア吹き飛ばしてるよ」

 

「明らかにしてますね。というか末端(ザコ)のレベルまで急激に上がった気がしますし……」

 

「連中、何か焦ってるような様子があんのよねー。ゲヘナ学園との併合を急ぐ理由でもあんのかしら」

 

 ゲヘナ学園との併合により得られるメリット──広い領土に、多量の人員などが挙げられるだろう。ゲヘナの自治区もかなり広大だ。三大校の1つだ、決して伊達ではない。

 併合ともなれば、ハドマのみならず、両校の問題だと思うので……。

 

「ハドマの生徒会からゲヘナの生徒会に問い合わせしてみるのはダメかな?」

 

「私としては、それは、避けたいと考えています。ゲヘナ学園の生徒会──やはり万魔殿でしょうが、実はハドマ生徒会『失楽園(ダイモニオン・ソサエティー)』は、数年前までゲヘナ学園と対立していたゲヘナ学園内部の組織を前身としていまして……」

 

「!!」

 

「先生は、ゲヘナ学園内で起きていた抗争についてご存知ですか?」

 

「……うん」

 

 知っている。だって私は、当時を過ごした生徒を知っている*1から。

 数年前────ゲヘナ学園内では生徒同士による激しい抗争が起きていた。

 万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)、それに反発する失楽殿(ダイモニオン・ソサエティー)の。

 あまりに過剰な攻撃の応酬は、死者すら出したと言われている。そしてその抗争は生徒の青春を奪い復讐鬼に変えてしまった忌まわしいものでもある。

 

「ご存知ならばお話は早いですわ。本校生徒会は、ゲヘナ学園での抗争に敗北した『失楽殿』の生徒の後輩がこちらで新たに立ち上げた生徒会なのです」

 

「────じゃあ、まさか。ハドマ学園の生徒会が失楽殿()ではなく失楽()なのは……」

 

「……ええ、恐らく失楽殿の先輩をリスペクトして、そして、ゲヘナ学園(楽園)から落ち延びたのを自嘲して、そのように『失楽園』と名付けたのでしょう」

 

「そっか……」

 

「その後、元の生徒会より力もあるということで、実質的に成り代わったのだとか。しかしそんな事は万魔殿に負けて逃げてきたからできた事で……」

 

 そんな成り立ちなら、万魔殿に手を出そうなどとできないのは当たり前だった。ハドマ学園生徒会、失楽園の成り立ちからしてそもそも万魔殿に負けて追いやられたようなもの。

 それならば、尚更、ゲヘナ学園に接触を図るなどという行動には出られないだろう。

 ハナから、両者は対等な立場ではないのだから。

 

「──飂熾冘巫髏の子達は、ハドマ学園を潰して、またはゲヘナ学園と併合させて、その先に一体何を見てるんだろう……」

 

その先(・・・)とは……?」

 

「学校を1つ潰すなんてのは、到底、ノリと勢いでできる事じゃない。きっと何か、計画的に動いてるハズ。でもその『計画』は、ハドマ学園を潰すのが最終目的なのかな────って、ふと思ってさ」

 

「それ以外に目的があるようには思えませんが……」

 

 リエをはじめ、うーん、と頭を悩ませる生徒達。しかし、ぶっきらぼうな口調で、スズがそんな重い沈黙を破った。

 

「いやいや……流石にそれは無いっしょ。リエ、それマジで言ってんの?」

 

「はい?」

 

「考えてもみなよ。ハドマ学園を潰したいんなら、学校のあちこちに爆弾でも仕掛けてドカーン!って爆破すりゃそれで済む話でしょうがよ。わざわざ、教員ロボ補給の道中を襲撃してきた事もあったし、建物だって1フロア毎しか破壊しない時点で学校を潰す以外に目的があんのは明白でしょ?」

 

「そう、でしょうか……?」

 

「学校を壊しても再建すりゃ済む話。教員ロボとか破壊されても、補給すりゃそれで済むわ。だけど、ヤツらはそれらの選択肢を徹底的に、しかも的確に潰しに来てるワケ。廃校じゃなく『併合』するのに意味があるような……そんなやり方よ」

 

「……言われてみればそーかも?さっすが、ヤツらと最前線で()り合ってきた統治委員長は違うねぇ」

 

「あんたは書類仕事ばっかやってっから頭の回転も鈍っちゃったのよ。ねぇ、シエル先輩(・・)?」

 

「生意気ね……クソ後輩」

 

 バチバチ睨み合うシエルとスズ。しかしルビーがグッと拳を握ると、両者はヒュッと息を飲み身体を縮ませて黙り込んでしまった。

 そんな様子を見て苦笑いするアンナ、相変わらずのほほんとクッキーを頬張っているアスカ……。

 

「とっ、とにかく!ゲヘナと接触するわよ!ヤツらよりも早くゲヘナ、いや万魔殿と接触して、もしも飂熾冘巫髏の連中が接触してきても無視するように言っておかないと!」

 

「……大丈夫でしょうか?飂熾冘巫髏、既に向こうと接触済みって……。も、もしかしたら、飂熾冘巫髏の強化に、ゲヘナが関わっているんじゃ……?」

 

「既に接触してるって、そんなの、今んとこただの噂でしかないでしょ?というか、生徒会ともあろうものが、ただのテロ組織と取引すると思う!?」

 

「……そ、そうですよねっ……!飂熾冘巫髏なんて、ただのテロ組織ですもんね……」

 

「ええ、アンナさんの言う通りです。飂熾冘巫髏はただのテロ組織です。我々の先輩を下した万魔殿がただのテロ組織と懇意にするハズがありませんわ。ですが、今は、我々はその『ただのテロ組織』からここまで追い詰められているのもまた事実……」

 

「チッ、言いにくい事を言ってくれるじゃん」

 

「……事実ですから、仕方ありません」

 

「──ですから先生。どうか、お願いです。我々の代わりと言っては失礼ですが──万魔殿に、探りを入れて頂く事は……可能でしょうか?」

 

 エデン条約事件に比べれば、これくらいの政治的問題、まだマシだと言えるだろう。問題は、両校の立場に圧倒的な差がある事。そこは「シャーレ」の立場を少しプラスしてやれば補えるハズだ。

 

"私に任せて"

 

"全力を尽くすよ"

 

 ◆

 

「────ねぇ?あんた、私に嘘ついてなぁい?」

 

「んん……?何の事だ?」

 

「併合に成功したら、ホントにゲヘナ最強のヤツと戦わせてくれんの?ってハナシだよ。忘れた、とは言わせないからね?」

 

「キキキ……!あぁ、その話か。勿論覚えているぞ。だからこそ我々も武器や弾薬を貴様ら飂熾冘巫髏(ル・シュ・フェル)に提供しているんだ。嘘つき呼ばわりするとは、感心しないな?」

 

「フンッ。……風紀委員長、空崎ヒナ……ねェ」

 

「どうだ?潰せそうか?」

 

「愚問ね。────()ってみなきゃわからん!!」

 

「キキキッ!まぁいいさ、イマイチ頼りにならない外見だが、私は『見た目で判断してはならない』と既に学習しているんだ。現に、空崎ヒナは、あんな小学生みたいなナリでもゲヘナでは最強だからな。だからこそ、お前もそう(・・)なんだろうな……」

 

「ま、少なくともハドマ最強は私かな。七天魔とか雑魚の寄せ集め、烏合の衆よ。──議長さんさぁ、

『三本の矢』って逸話、知ってる?」

 

「唐突だな。『三本の矢』……確か……矢の話か?」

 

「そっ。1本の矢は簡単に折れるのよ。それでね、3本束ねると────」

 

「折れないって事か!」

 

「ブッブー、違う違う大ハズレ!」

 

「あれ……?」

 

『3本束ねても簡単に折れる』が正解♡」

 

「んん……?そんな逸話だったか……?」

 

「そうだよ?だって『三本の矢』ってのは『雑魚は幾ら集まっても雑魚でしかないんだよね』っていう教訓を分かりやすくしたエピソードなんだしっ♪」

 

「………………」

 

「ま、楽しみにしてな。私ら飂熾冘巫髏(ル・シュ・フェル)がハドマを乗っ取り、あんたらゲヘナにハドマを差し出す」

 

「あァ、楽しみにしているぞ。ハドマとの統一後、お前らが、風紀委員会をブッ潰してくれるのをな。統一した後でないと、外交問題に発展するのでね。両校を統一しないと、お話にすらならないんだ」

 

「あはははは!!あんたってヤバイ奴ねっ!」

 

「キキキキ……自ら故郷を差し出す売国奴め……!」

 

「売国奴?結構よ、私はただ強い奴と戦う為だけに動いてるんだから…………!!」

 

「お前のようなバーサーカー気質なヤツならヒナを消せるだろう!まぁ、いざ戦力が拮抗する可能性が出てきても、安心するがいいさ。既に、ある程度は手を回してあるからなァ。風紀委員会ナンバー2、ナンバー3の2人を一気に都市部に派遣している!シャーレのご近所さ、ゲヘナからはかなり遠いぞ!キキキッ……!」

 

「ふぅん?ナンバー2、ね。そいつ、強いの?」

 

「腕は立つ。まず確実にな。それでも、風紀委員長空崎ヒナよりかは弱い、とだけ言っておこうか」

 

「ふぅん?余計な事してくれやがって──と思ってキレそうだったけど……」

 

「えっ」

 

「空崎ヒナの方が強いってんならそれでいいかな。楽な方が、議長さんとの契約も遂行しやすいしね」

 

「……ホッ……」

 

(まっ──総長(・・)の目的は、私とは違うんだけどね。おバカなマコトさん……♪)

 

 飂熾冘巫髏(ル・シュ・フェル)────遂に、本格始動。

*1
第2部の第15話参照。リンクは後書きに。




次回────学園崩壊

ゲヘナ学園で起きた抗争などなどについて。
第2部「ハーレムルートを目指しましょう、先生」
第15話「Welcome Teacher ─心の無痛症─」
https://syosetu.org/novel/319579/15.html


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第3話:学園崩壊

 

 ハドマ学園への初めての出張から数日後────ハドマでは私の案内役を務めてくれるという事で、統治委員長の鐘蟲(かねむし)スズとモモトークなどの連絡先を交換していた私は、ある日、彼女からメッセージを受け取った。

 それも「飂熾冘巫髏(ル・シュ・フェル)からメッセージが来た」と、ピンチが服を着て目の前に現れたような、鬼気迫るメッセージが続いた。私はスーツを引っ掴み急いでハドマに出張した……。

 

 ◆

 

 数時間後、ハドマ学園に到着した私は、真っ先に生徒会室もとい校長室へ向かう。けれどもそこは、扉が枠ごと吹っ飛ばされている上、室内も、手酷く荒らされていた。

 床に蹲るリエ、寄り添うシエル、紙を手に取ってワナワナ震えているスズ、スズについてきたらしいルビーの4人だけがこの場に来ていた。

 

「あ……来てくれたんだ、先生」

 

「まぁね。それで……何があったの?」

 

「……なんというか、いよいよヤバくなってきた」

 

 

 

ダイモニオンのセンパイたちへ

 

今日の1時過ぎに襲撃する

今日がハドマ学園最後の日になる!

何故なら学園を破壊するからだ!!

イヤならル・シュ・フェルに学校を明け渡せ

そうすれば破壊はしない

逆らったらお前ら潰して破壊もする

悔いが残らない方を選ぶといい

 

ハドマ最強の悪魔より

 

 

 

「……字が力強いね。潰れてて所々読めないや」

 

「そんな能天気なコト言ってる場合っ!?」

 

「分かってる。……この紙は、どこにあったの?」

 

「2人が言うには……床に放ってあった、ってさ」

 

「放ってあった?」

 

 リエは、今にも吐き出しそうな顔で震えている。背中をさすっていたシエルが、よく分かっていないスズと、既に泣き始めているリエに代わって簡単に解説してくれた。

 

「私とリエが来た時にはもう入口は破壊されてて、その余波でなのか知らないけど、物色されたというよりはシンプルにグッチャグチャに荒らされてて、この有様。弱めの爆弾でも使ったみたいな、破壊のされ方だよね。で、瓦礫だらけの床の上にフツーに置いてあったんだ」

 

「……1時、かぁ」

 

 何日、そして午前か午後か分からない書き方だ。これを書いた子はきっと直情的で、あれやこれやと難しくは考えないタイプの子なんだろう。

 それにしてもお腹空いたな、お昼ご飯も食べずに来たからな……今は何時────。

 

「……12時55分……?」

 

「えっ?私達来たのが8時前、それからスズ呼んで先生にメッセしてもらったのが8時過ぎくらい……のハズだけど?この時計も、11時半頃を指して……」

 

 シエルがそう言った瞬間、ルビーと私は同時に、時差のカラクリに気が付いた。

 この部屋が破壊されたのが、昨晩の11時半頃だ。だからこの部屋の時計はその時間に壊れ、止まってしまっている。すぐ身近な時計がこうして全く機能していないからこそ、気付くのが遅くなった。

 襲撃予定時間まで、もう、まもなくだと。

 

「先輩、皆を集めましょう!」

 

「え」

 

「もう時間です!!ヤツらが襲撃を仕掛けてくるとするなら、もう、2階か1階しか残ってないッ!!3階以上は……壊滅してるから……ッ」

 

「!!」

 

「ルビーの言う通りだ。戦闘になったら、その時は私が指揮する。でもまずは、人員を集められるだけ集めよう。……シエルは、リエのこと頼んだよ」

 

「オッケ、分かった。……行こう、リエ」

 

「っ……はい……」

 

 シエルはリエに肩を貸し、避難させようと部屋を出ようとする────が、入口にハドマ学園の黒い制服を着た集団がゾロゾロと現れ、行く手を塞ぐ。

 

「そうはいかないよォ、議長さーん?」

 

「メンタルザコザコ生徒会長〜♪」

 

「「!!」」

 

 一目見て分かった。この子達が「飂熾冘巫髏(ル・シュ・フェル)」、ハドマ学園とゲヘナ学園の併合を望む者────。

 ヘルメット団のように、特定の衣装などの何かがあるのではなく、制服のままだというのが厄介だ。個々人の顔を覚える事でしか犯人探しができない。だから、タチが悪い。

 シエルはリエを抱えて飛び退き、距離をとった。構成員の子全員が、ピカピカの銃を所持している。如何にも「卸したて」というか、手入れしたてにも見えなくもない。

 

「げッ、統治委員長も居るじゃん。最ッ悪……」

 

「だから思ったんだよ宣戦布告とか要らねーって。敵の数が増えるだけじゃん?」

 

「思っただけじゃねーか」

 

「副委員長も居るが、まァ、数の差で潰せるな!」

 

「私達だけで副総長が来る前に終わらせられる?」

 

「いけるっしょ!」

 

 チラリと窓から逃げられないかと窓の外を見る。そんな私の考えはお見通しだったのか、窓の外にも同じように飂熾冘巫髏の生徒達が居て、それぞれが銃を所持していた。

 万事休す、逃げられる隙間など既に存在しない。入口は1つ、窓も1つ。挟み撃ちされてしまっては逃走など不可能に等しい。

 

『先生!生徒さんを編成してください!』

 

「!」

 

 アロナの声は、私にしか聞こえない。助かった。イベント戦らしく、編成できる生徒は固定だった。統治委員長のスズ、副委員長のルビーのみだ。

 たった2人だけでこの包囲網を突破するという、これまでにもあった「いつも通りのピンチ」だ。

 

 

 

 鐘蟲(かねむし)スズ

 STRIKER(FRONT)

 レア度:☆3

 クラス:アタッカー

 射程距離:450

 攻撃タイプ:貫通

 防御タイプ:弾力装甲

 屋内戦:S

 屋外戦:S

 市街地戦:S

 

 EX:あたしの邪魔をするヤツは喰ってやるわ!(コスト2)

 扇形範囲内の敵全員に対し、攻撃力の666%分のダメージ

 

 NS+:局所的暴食+(強化時)

 敵を倒した時、攻撃力を15%増加

 2人以上を同時に倒した場合、会心ダメージ率も同時に15%増加(50秒)

 

 PS+:2つの顔+(強化時)

 攻撃力19.0%増加と防御力19.0%増加の2つが、20秒毎に入れ替わる

 対象は自分のみ

 

 SS:気高き暴食の王

 30秒の間敵を倒さないでいると、自身に「空腹」状態を付与する

 空腹時は攻撃力が2.9倍になる(重複可)

 その後に自分の攻撃で敵を倒した場合は「空腹」状態と攻撃力増加を解除

 

 固有武器:サブマシンガン(2丁)

 

 

 

 零得(ぜろえ)ルビー

 STRIKER(FRONT)

 レア度:☆3

 クラス:アタッカー

 射程距離:450

 攻撃タイプ:振動

 防御タイプ:軽装備

 屋内戦:S

 屋外戦:D

 市街地戦:A

 

 EX:プリンシパル☆スター(コスト5)

 最もHPが高い敵1体に対し、攻撃力1150%分の確定会心ダメージ

 その敵に一番近い敵1体に対し、攻撃力115%分の持続ダメージを付与(40秒間)

 

 NS+:脳筋ではありません+(強化時)

 20秒毎に攻撃力を15%増加させる

 

 PS+:唯一の知恵袋枠です+(強化時)

 ノーマルスキル3回毎に自分を含めた味方全体の攻撃力を20%増加(重複可)

 

 SS:回る炎の剣

 通常、EXを問わず、攻撃時に50分の1の確率で攻撃力310%分の火傷持続ダメージを付与(20秒)

 

 固有武器:ショットガン

 

 

 

「……屋内特化ってワケでもないのかな?」

 

 2人揃って屋内の適正はS。それでいてスキルやステータスはゴリゴリのアタッカー。今の状況には最適なメンバーだと言える。

 シエルとリエは今回は不参加らしい。しかし今はこれでいい。この包囲さえ突破できるのなら……。

 

「スズ、ルビー!()るよっ!!」

 

「「了解(はい)ッ!!」」

 

 押し寄せてくる飂熾冘巫髏の構成員18人(Wave1)、次いで同じく構成員22人(Wave2)────ちょっと強い生徒は居たけど、序盤の雑魚処理はスズ、強い子にはルビーのEXをぶつける事によって、事なきを得た。

 なお、スズの最強の運用方法としては、ある程度好きに攻撃させ、尚且つトドメはルビーに任せて、スズには「空腹」状態を維持させて──その上で、PSで攻撃力が上がっている時にEXで終わりだ。攻撃力2.9倍はEXにも適用可能らしい。思ったより壊れた性能だ。溜めに溜めれば、フルパワーミカと遜色ないダメージが出せる。

 あとシンプルに、ルビーとの相性が完璧過ぎた。2人共、短期決戦には(・・・・・・)少し向かない(・・・・・・)ものの、時間を掛ければ掛けた分だけ強くなるのが美味しい。

 因みに戦闘は、援護射撃程度ではあるがシエルも参加はしてくれた。2人の背後──窓の外の方は、彼女が対処してくれたと言っても過言ではない。

 やはり何だかんだでスズとルビーの先輩なだけはあるようだ。

 

「くっ、くそぉ……!副総長さえ来ればお前らなんか木っ端微塵なんだからなぁっ!」

 

「おっぼえてろ〜っ!!」

 

「うわーーーんっ!!」

 

 次々に襲いかかってくる飂熾冘巫髏の構成員とのバトルを合計3Wave突破し、遂に勝利を収めた。

 構成員達は、絵に描いたような捨て台詞を吐いてドタバタと次々に逃げていく。しかしまぁその数の多いこと多いこと。合計で60人くらいは居るので、逃げるのも一苦労なようだ。

 

「フンッ、副総長がどんなんか知らないけど一昨日来やがれっての!……ゼェ、ハァ……

 

「……はぁ……疲れました……狭い上に数が多い……」

 

「先生の指揮と、シエル先輩の援護射撃が無きゃ、正直、キツかったかも……ッ」

 

「どーお?リエを庇いながらでも、これくらいならデキるんだから♪」

 

「……ちっ。助かったよ、先輩。…………悔しいけど

 

「お礼を言う態度には見えないけど、まぁいっか♪ ほらほら飂熾冘巫髏の雑魚共?さっさと尻尾巻いて帰りなさーい?いつまでチンタラしてんのよ」

 

「廊下が狭いんだよ!バーカ!アホ生徒会!」

 

「改装工事でもしやがれってんだ!」

 

「……だってさ、リエ。廊下、狭いってさ」

 

 すっかり憔悴してしまっているリエは、口元での弱々しい笑みしか返せないでいる。よっこらせと、シエルが再びリエに肩を貸しながら立ち上がる。

 飂熾冘巫髏の生徒は相変わらずで、仲間達に肩を貸したりしてヨタヨタと頼りない足取りで、部屋を出て右の方へと逃げていく。

 最後の生徒をひっそり尾行すれば、敵のアジトを特定できるんじゃ────と思い、スズ達に作戦を伝えようとしたそのとき。

 

「……じゃあ、手っ取り早く壊してあげるねっ♪」

 

 ルンルンとした様子の声が、撤退する構成員達の背後の方から聞こえてくる。すると次の瞬間、壁にミシリと亀裂が走ったかと思うと、爆破音も無しに破壊され、一気にガラガラと部屋周辺の壁が完全に破壊されてしまった。天井すらヒビが入っていて、今にも天井が落ちてきそうだ。

 

「ど〜も〜、セ〜ンパイっ♪」

 

「「「「…………ッ!?」」」」

 

 壁の瓦礫にヒョイと飛び乗り、平然とした様子でこちらに手を振ってくる初対面の生徒。「先輩」とスズ達に向けて言ってくるが、スズ達もまた、私と同じように「誰だコイツ?」と言わんばかりの顔をしている。

 

「あんた誰────」

 

「来たぁぁああああっ!!?」

 

「ヤバイヤバイヤバイヤバイ!!」

 

「緊急退避、緊急退避ぃ!!」

 

 来た(・・)──そう言った構成員達の動きが、明らかに変わる。

 仲間を放り投げてでも逃げる者に、仲間の手足を引っ張り少しでも場を離れようと足掻く者。彼女に破壊されたらしい壁の瓦礫を使い近くの窓ガラスを破って、ガラス片で怪我をするのも厭わずそこから逃げ出す者。瓦礫に埋もれた仲間を助ける者など。

 

「透明な翼────あんたが噂の統治委員長?」

 

「そう言うあんたは誰よ……」

 

「名乗りを聞きたいんなら、名乗ってもいいけど。ちょっと待ってね、口上考えるから」

 

「いやそういうのいいから」

 

「あ、そう?つまんない女ね……」

 

「あ゙?」

 

 途端に2丁の(サブマシンガン)を向けるスズ、しかし少女はそれにも怯まない。

 ニヤニヤした顔で、1歩、また1歩、瓦礫の山を降りてくる。床に降り立って対等な目線になると、ぺろりと舌なめずりした上で、宣言する。

 

「────今日、この場を以て、ハドマ学園は私ら飂熾冘巫髏(ル・シュ・フェル)が頂点に立つわ。生徒会の象徴でもあるこの場を、破壊してやる事でね」

 

「そんな事させない!あんたらの目的がゲヘナとの併合なのは分かってんの!絶対に阻止するッ!!」

 

「あー……ね……?ん〜……まぁ、いいんじゃないの?勝手に頑張ればいいじゃん?それ、私に言われても困るっつーか……なんつーか……」

 

「はぁ?あんたが仕組んだんでしょうが!?」

 

「え、違うけど」

 

「あぁ!?何言って──」

 

「待ってください、先輩。怒鳴っても始まらない。とりあえず落ち着いてください」

 

「ルビー……」

 

 ルビーの言う通りだ。どうやら、私達が思ってる状況とは、ほんの少し異なっているようだった。

 一旦、探りを入れて、状況を軽く整理する必要がありそうだ。でないと情報と想定と事実が錯綜していよいよ取り返しのつかない事態になってしまう。

 

"君があのメッセージを残したの?"

 

「そうだよ?そうするように言われたから仕事しただけよ。……つーか誰よ、あんた。大人?」

 

"シャーレの先生です、よろしくね"

 

「あんたが?──ふぅん、よろしく。とりあえず、先生は失楽園(そっち)の味方してるって認識でOK?」

 

"それで構わないよ"

 

「はーい、りょーかい。てかさ、先生が居たら学校壊しにくいし、さっさと避難してくんない?」

 

"私が居たら?"

 

"この状況で避難すると思う?"

 

「イヤ、だって、あんた雑魚でしょ。キヴォトスの人間は埋もれた程度じゃ簡単には死なないけどさ、先生はヤワな人なんでしょう?噂になってるよ?」

 

"……確かに、私は弱いよ"

 

"でもそれは私が逃げる理由にはならない"

 

「……。覚悟キマッてんのね。嫌いじゃないかも」

 

"さっき「言われたから」って言ってたよね"

 

"君が飂熾冘巫髏のボスじゃないの?"

 

「え、違うけど。これは別に、ボスっつーか総長の指示でやったことだしね。私の意思じゃないのよ。私の目的は別にあるし……」

 

 テロ組織「飂熾冘巫髏」のボスは、総長(・・)らしい。まるで、暴走族か何かのようだ。

 しかしそれにしても厄介な事になった。この子の口振りから察するに、飂熾冘巫髏は幾つかの目的があって行動していると見ても良さそうだ。

 つまり、生徒会室という名の校長室を破壊して、ハドマ学園を乗っ取りゲヘナ学園と併合させる──これ「以外」にも目的アリと見た方が良さそうだ。

 だがこの子は「言われたからやる」などの行動を見るに、見た目に反して、素直な所があるようだ。少なくとも私には、そう見えている。

 もしかしたら、もしかする……かもしれない。

 

"君の目的は、一体何なの?"

 

「ッ!よく聞いてくれましたっ!ふふんっ、ずっとそれ言いたかったのっ!答えてあげる〜っ!!」

 

 やはりだ。わざわざ「私の目的は別にあるし」と口に出す辺り、そこに私から追求が来ると分かって言っていたようだ。

 

「『最強』の名をキヴォトスに刻むのよ!この私がキヴォトスで最強だってね!!ハドマ学園の併合?勘違いしてるようだけど、そんなモン私にとっちゃ目的でも何でもないッ!私にとっちゃあ、スタート地点に立つ前の準備運動に過ぎないんだよッ!!」

 

「ッ!!」

 

「そう──まずは手始めに統治委員長、鐘蟲スズ。ハドマ最強を自称してるあんただ。掛かって来な。格の違いってモンを分からせてやるわ」

 

「1年のクセに生意気ね!見ない顔だしッ、あんた1年でしょうっ!?」

 

「お、せーかいせーかいっ!よくできました〜っ!でもねぇ、統治委員長さん?その生意気な1年に、あんたは負けんのよ」

 

「ッ……!?」

 

「私はね。もっと先を()てんのよ。ハドマを潰し、乗っ取り、ゲヘナと併合した後は────ゲヘナで内乱を起こし、風紀委員会を潰すッ!!」

 

「なっ」

 

「そこまでやって、やっと契約が完了する(・・・・・・・)んだよ。私を縛る契約が無くなったら、後は簡単さ。お次は万魔殿を潰して生徒会……ゲヘナ学園を乗っ取る」

 

「何ですって!?ゲヘナ学園を乗っ取るだなんて、何をするつもりッ!?」

 

「言ったでしょ?私が『最強』になるのよ!だけどそれには順序を踏む必要があると見ているわ。まず手始めにゲヘナ学園を乗っ取ったなら、その後は、トリニティ総合学園ッ!!トリニティの戦略兵器、剣先ツルギ────そこまでキたら後は分かるね?そう、最後はミレニアムサイエンススクールッ!!会長の保有すると言われる超高性能戦闘ロボット、アバンギャルド君を、この私がブッ壊すッ!!」

 

「アバン……なに??」

 

「アバンギャルド君とは一体……?」

 

"…………"

 

"(ここでその名を聞く事になるとは……)"

 

「と・に・か・く!私は最強になるのっ!その為にこの組織に加入したんだから!私1人じゃ計画とか練れないし……『旅は道連れ世は無情』ってヤツ?」

 

「それを言うなら『旅は道連れ世は情け』では?」

 

「ツッコミうざ〜」

 

「あんた!飂熾冘巫髏のボス?総長?じゃないならそいつを呼んできな!なんなら幹部でもいいよ!」

 

「?……あ、そっか。幹部格は誰も顔とか見せないで暗躍してるから、あんたらには知られてないんだ。良かったねぇ鐘蟲スズ、あんたらにとって出会った幹部第1号がこの私よ?先に私と出会ったお陰で、他の幹部は雑魚に見えるかもしれないねェ♪」

 

「あんたが……飂熾冘巫髏の幹部!?」

 

飂熾冘巫髏(ル・シュ・フェル)・副総長博愛(はくあ)レイコッ!!この先も私らに歯向かうなら覚えときな、自称最強!総長は私よりずっと弱いけど────私よりずっと、頭がイイからねぇッ!!」

【挿絵表示】

 

 瞳に鈍い光を湛えながら、彼女────レイコは副総長を名乗り、そして彼女との戦闘が始まった。




次回────

飂熾冘巫髏(ル・シュ・フェル)の総長とレイコの関係は、進撃の巨人で例えるならエルヴィンとリヴァイに近いかもです。
でも、パッと見「近い」だけで、全ッ然違います。


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 ──飂熾冘巫髏(ル・シュ・フェル)・副総長、博愛(はくあ)レイコとの戦闘が始まった。彼女は「最強を目指す者」を称するだけあって、かなりの手練だった。

 統治委員長でありハドマ最強を自称するスズと、付き従うルビーの2人を同時に相手して、負けてる様子をまるで見せない。

 

「……今です、先輩ッ!」

 

「せぇぇーーーのッ!!」

 

「……!」

 

 前後からの挟撃だ、アサルトライフルを1丁しか所持していないレイコは対応できない。

 彼女はまず、一撃一撃の攻撃力に優れるルビーへ攻撃を加える。被弾し後退するルビーに対し更なる追撃をと肉薄するレイコだが……。

 

「はぁぁああっっ!!」

 

「!!」

 

 ガガガガガガガッ!とスズの凄まじい攻撃の雨がレイコを一身に襲う。スズのSSが「空腹状態」をスズ自身に付与する事によって、レイコが倒れずに戦闘が継続される事により、30秒が経つ毎にスズの攻撃力は2.9倍される。

 

「ふふ……ケッコーやるじゃない、センパイ……♡」

 

「〜〜〜〜〜っっ……何でまだ倒れないのよ……!」

 

「さぁ?先輩の攻撃が地味なんじゃない?まぁでもセンパイよりも総長の攻撃の方が地味だけどねー。チクチクチクチクと、()でも刺すみたいにダメージ与えてくんのよ」

 

「んなこた、どーでも、いいのよぉぉっ!!!」

 

「!」

 

 戦闘開始から1分。スズの攻撃力が更に2.9倍に。今回の敵はレイコ1人だけであるせいで複数の敵が居ることが前提のNSによる恩恵は受けられない。しかし、SSの「空腹状態」とPSとを併用すれば十分に攻撃力は上がる。

 

「80、秒ぉ……ッ」

 

(敵がカウントしてる?)

 

(……何か……マズイ……!)

 

「ルビー、仕留めるよッ!!」

 

「ハイッ!!」

 

 戦闘開始から、1分と20秒が経過。疲労からか、レイコの攻撃がめっきり2人に当たらなくなった。流石に腕利き2人が相手ではキツイらしい。

 好機と見たスズはルビーに合図を出し、再度共に攻撃を仕掛ける。コストは7溜まっている、ここでトドメとしてルビー(コスト5)スズ(コスト2)のEXを同時に発動し、ジ・エンドだ。

 

「「これで…………終わりよォ(トドメです)ッ!!!」」

 

 ──勝てる。何本もあったレイコのHPバーが、残り1本目の半分しかない。これくらいであれば、今のスズの攻撃力なら、通常攻撃でも倒せる。いやここは万全を期してコスト2溜まったらEXを使い彼女を倒した方が確実だろうか────。

 

「『荒ぶる破壊神の顕現(EXスキル)』」

 

「「え」」

 

 キィィン──と聞こえるか聞こえないかくらいの甲高い音が鳴り響く。紅色に眼を輝かせたレイコは大きく口を開け、聞こえない叫び(・・・・・・・)を上げた。

 

「ッ……!?」

 

 するとレイコを中心に爆発でも起きたかのように瓦礫やら壁やらが吹き飛ばされ、窓ガラスなんか、窓枠すら残さずに吹き飛んでしまった。

 私は──私だけでなくスズにシエル、リエも特に何ともない様子だったが、唯一、ルビーだけが耳を塞いでその場に倒れ込んでしまった。

 スズはそんなルビーに駆け寄ろうとするも、未だ戦闘は継続中である。さっさとトドメを──と銃を構えるが、何故か、攻撃が不発に終わってしまう。

 

「え……な、なんでよ……!?攻撃、できない……」

 

「単純に、そーゆースキルだから、よ……。この私のEXスキルは敵も味方も関係ない(・・・・・・・・・)……機械も構造物も全てを破壊する…………!!」

 

「じ、じゃあ、私の銃は……ッ」

 

「あァ……武器に関しちゃ、例外よ……。10()秒だけ(・・・)、銃で攻撃できなくなる、だけだからさ……」

 

「何よそれ……メチャクチャじゃない……!!」

 

 声を震わせながら、ズ、ズッ、と後退る。そんなスズに反して、耳と膝を押さえながらも、ルビーが立ち上がる。

 

「あなた……私と同族(・・)でしたか……」

 

「────ヘェ?じゃあ、あなたのそれ(・・)って、別に演技じゃなかったんだ?」

 

「ええ、お陰様で特に大ダメージ受けました。でも幾ら同族だからって……こんな強烈なのは有り得ないはずなのに……」

 

「有り得るんだな〜、これが……♪」

 

 同族、演技じゃない──、2人にしか分からない会話が続く。すると、遂に我慢できなくなったか、怯えきった様子で、声を震わせながらスズが叫ぶ。

 

「何よ、何なのよっ!?同族?何言ってんのよ!?まさかルビー、飂熾冘巫髏(そいつ)の仲間なんじゃ……」

 

「違いますよ……。えっと、簡単に言うと、レイコは私と同じ、吸血鬼です……」

 

「……えっ」

 

「日焼け止めが欠かせない私と違って、どうやら、素で太陽を克服していそうですが……。恐らく彼女は私などとは違う────『突然変異個体』……!!」

 

「突然変異……?」

 

「ええ、そうでないと今の攻撃(EX)は──今の超音波の威力は有り得ない。遮蔽物(瓦礫)すら破壊する威力なんてそんなの、御伽噺ですらない……ッ!!」

 

「……そっ。変幻自在の超音波(・・・・・・・・)による『共振破壊』、これが私の神秘(のうりょく)。ホントはこんなとこで見せる予定無かったんだけど、思ってたよりもずっとあんたら強かったからさ」

 

「「……」」

 

「私のSS、ガチでクソでさ。私にとって戦闘は、100秒以内に終わらせなきゃいけない事なの。所謂短期決戦型ってヤツ。だからね、悪いけどリミットだからさ。使用(つか)わせてもらうわ……!!」

 

 瞬間、レイコの眼が再び紅く光る。またさっきのアレが来る。その前にスズのEXスキルでレイコを倒せばいけると思いEXの指示を飛ばすが……。

 

「なんでっ……まだ、使えないのよぉっ……!!」

 

「先輩、伏せてっ……」

 

「──────ッ!!」

 

 スズのEXはやはり封じられたままで──私達は為す術なくレイコによって蹂躙されてしまった。

 画面に表示される赤い「DEFEAT」の文字……もう打つ手無しなのかと思った、その時。

 

「お待たせしました、シエル先輩っ!!」

 

「うわー……ぐっちゃぐちゃですねー……。校長室が吹き飛んで部屋と廊下が繋がってる……広い……」

 

 レイコの背後に現れたのは、七天魔に数えられる2人の少女。失楽園書記、天河アンナ──そして、美食研究会対策委員長、三重アスカだった。

 

「あんたら遅い!スズ達、負けちゃったでしょ!?コンティニューさせんのも心苦しいってのにっ!」

 

「はわわわ……あっ、アスカちゃん、早く2人のこと回復させないとっ……!」

 

「うん、そーだね。とりあえず先輩、激甘クッキーどうぞ〜。ルビーちゃんも、ほら食べて食べて♪」

 

「くっ……今はこの甘さに助けられてるわね……」

 

「……ありがとうございます、アスカ先輩……」

 

 七天魔唯一のヒーラーであるアスカの手により、傷付いたスズとルビーは回復を果たす。それを見てレイコは、ニタリと口角を釣り上げる。

 

「へぇ?コンティニューするつもりなの?ここまでボロクソにやられておいて?私はもう回復してるし別に構わないけど……」

 

「そうよ!まだやれるわよね、ルビー!?」

 

「ええ、少し難聴気味ではありますが……」

 

「その辺は私達でカバーするから安心しな!ねっ、アスカ!アンナ!」

 

「「はい!」」

 

「シエル先輩が参戦……!?」

 

「まァ、リエを守りながらにはなるけど、イけないコトは無いかなって。リエが居れば助かるけど今のリエには(こく)でしょ?」

 

「……ま……誰よりこの場に思い入れあるしね」

 

「そーゆーことっ!んじゃ先生、指揮任せたよ☆」

 

"うん、任された"

 

"絶対にここであの子を止めよう"

 

「「「「「了解(はい)ッッ!!!」」」」」

 

『編成された生徒さんの確認をお願いします!』

 

『STRIKERが3人、SPECIALが2人の編成です』

 

 今回は回復済みのスズとルビーに加えて、新たにシエル、アスカ、アンナが参戦した。コスト回復力だけでなく、スズ以外のアタッカーが増えた辺り、スズの「空腹」を維持しやすくなった。かなり高い水準で彼女の攻撃力を維持できるようになった、と言えるだろう。

 しかも、スキルの関係からか、今回のリーダーはスズではなくシエルに切り替わっている。アロナ、これは名采配が過ぎる。シンプルに有難い。

 

 

 

 弖使魔(てしま)シエル

 STRIKER(MIDDLE)

 レア度:☆3

 クラス:アタッカー

 射程距離:650

 攻撃タイプ:神秘

 防御タイプ:特殊装甲

 屋内戦:B

 屋外戦:SS

 市街地戦:B

 

 EX:こんな世界、燃え尽きろ!(コスト5)

 敵全体に攻撃力365%分の火傷持続ダメージ(36秒間)

 

 NS+:気分アゲてこ〜!+(強化時)

 15秒毎に一番近い敵1人に対し攻撃力115%分のダメージ

 

 PS+:私についてきな!+(強化時)

 攻撃力を11.5%増加

 自分がリーダーの時、追加で8.5%増加

 

 SS:天に弓引く愚か者

 25秒毎に手榴弾を投擲して、一番HPが低い敵を中心にして円形範囲内の敵全体に攻撃力514%分のダメージ

 

 固有武器:アサルトライフル

 

 

 

 三重(みえ)アスカ

 SPECIAL(BACK)

 レア度:☆3

 クラス:ヒーラー

 射程距離:450

 攻撃タイプ:神秘

 防御タイプ:重装甲

 屋内戦:A

 屋外戦:C

 市街地戦:A

 

 EX:オヤツの時間だよ!(コスト3)

 範囲内の味方全体に対し治癒力の145%分の回復

 

 NS+:過去と未来を視る悪魔+(強化時)

 15秒毎に、残りHPが一番少ない味方の防御力を33.4%増加(重複可)

 

 PS+:最高の癒し手+(強化時)

 治癒力を25.5%増加

 

 SS:頑張れば勝てるよ!……多分ね

 HPが半分未満の味方が2人以上の時、攻撃力を35.5%増加/50秒毎に最も残りHPが多い味方1人のHPを治癒力の130%分回復

 

 固有武器:ショットガン

 

 

 

 天河(あまがわ)アンナ

 SPECIAL(BACK)

 レア度:☆3

 クラス:アタッカー

 射程距離:1000

 攻撃タイプ:爆発

 防御タイプ:軽装備

 屋内戦:D

 屋外戦:A

 市街地戦:S

 

 EX:下克上のとき(コスト4)

 攻撃力の990%分のダメージで敵3体を撃ち抜く

 

 NS+:観察者より愛を込めて+(強化時)

 25秒毎にHPが最も低い敵に対し攻撃力800%分のダメージ

 

 PS+:神を見る者+(強化時)

 命中率15.5%増加

 

 SS:神の栄光

 爆発タイプの味方全員の攻撃力を20%増加

 

 固有武器:スナイパーライフル

 

 

 

「…………」

 

 アンナのSSだけあまりにも──あまりにもだ。嘘だろオイ、とツッコミを入れてしまいたくなる。

 だってこのパーティの攻撃タイプで言うのなら、スズは貫通で、ルビーは振動で、シエルとアスカは神秘。……爆発は、アンナだけだ。

 なんという噛み合わなさ。まるで、トリニティのティーパーティー。ミカ達のような噛み合わなさと言わざるを得ない。

 

「……アロナ、レイコのスキルも見れるかな?」

 

『はいっ!』

 

『一部、不明な情報あり。警戒してください』

 

 

 

 博愛(はくあ)レイコ

 STRIKER(FRONT)

 レア度:☆3

 クラス:アタッカー

 射程距離:?

 攻撃タイプ:?

 防御タイプ:特殊装甲

 屋内戦:A

 屋外戦:SS

 市街地戦:S

 

 EX:荒ぶる破壊神の顕現(コスト10)

 自分を中心とする特大円形範囲内の生徒に、敵や味方を問わず攻撃力1340%分の確定会心ダメージと10秒間銃での攻撃ができなくなる効果を与える

 戦車、ドローン含む機械系、遮蔽物、構造物等は問答無用で破壊

 EX使用後は攻撃力が10%増加

 

 NS+:幼き破壊神+(強化時)

 敵を倒す毎に攻撃力が15%増加

 20秒毎に一番近い敵に攻撃力850%分のダメージ

 

 PS+:強者との戦いを求めて+(強化時)

 ハドマ学園に所属している生徒の攻撃力が18.5%増加

 ただし「飂熾冘巫髏」に所属している生徒のみ、攻撃力が30.5%増加

 

 SS:眠りのとき

 10秒毎に命中率が10%減少する

 100秒経過で命中率が100%減少した後はノーコストでEXを連発する

 

 固有武器:?

 

 

 

 待て待て待て待て。屋内適正Sのスズとルビーが圧倒されているのに、レイコの屋内適正はAだと?スズとルビーよりも下回っているじゃないか。

 適正ではこちらが既に下なのに、レイコには更に市街地、屋外といった、2段階ものパワーアップが残ってるというのか。シエルの「屋外:SS」しか釣り合っていない。

 

「いやちょっと待って、射程は?固有武器は?攻撃タイプすら分からない……のかな?」

 

『少なくとも今はアサルトライフルを装備しているみたいですが……』

 

『不明。彼女の「適正武器」が、割り出せません。どの生徒にも、適正の武器種があり、合法や違法を問わず銃火器が流通している今のキヴォトスでは、誰もが固有の武器を所有しているハズですが……』

 

『もしかしてレイコさんは、先生と同じ────』

 

適正らしい(・・・・・)適正を持たず(・・・・・・)ありとあらゆる武器を(・・・・・・・・・・)

扱う事が可能(・・・・・・)……と見た方が良さそうです』

 

「…………ッ!!」

 

 完全に盲点だった。私自身が前に検査した時は、スナイパーライフルが最も適正アリだった。ただしこれは、あくまでどの武器も扱える中で(・・・・・・・・・・)最もコレが使いこなせるであろう、という話だった。

 だからこそ私は、サオリとの訓練の中であらゆる武器を扱えるように鍛えているんだから。

 でもこれは、神秘を持たない私だからこそだと、心の中で、そうタカを括っていた。それがまさか、生徒の中でそんな子が出てくるだなんて。

 

「ッ……全員、警戒ッ!!距離を保つんだッ!!」

 

「えっ」

 

AR(アサルトライフル)だし別にそんな……」

 

「……やっぱ気付いちゃうかァ♪」

 

「「「ッ!?」」」

 

 ポイッとARを放るレイコ。すると飂熾冘巫髏の構成員が逃げる際に捨てて行ったであろうSRと、更にはGLを拾い上げて構えた。

 

「……ッ!?なんでそんなもの……」

 

「ARは弾切れな上に、どちらも付け焼き刃よッ!全員で掛かれば勝てる!!」

 

 ダメだ──生徒達は「自分の武器しか使えない」という常識に慣れ過ぎている。慣れ過ぎているから警戒させようとも心から受け入れてもらえない。

 けれども、もう遅い。戦闘は既に始まっている。どうにか、最善の結果で終われるように、生徒達を指揮しなくては。

 

「最初のスキル3枚は────」

 

 最初に選択可能なスキル3つはアスカ、シエル、ルビーのモノ。回復のアスカが居るのなら有難い、この盤面で一発クリアしなくては。コンティニューなんか、したくない。

 

「ちっ、威力無いなぁGL(これ)MG(コイツ)ならどうッ!?」

 

 GLを投げたかと思うと、今度はMGを引っ掴みSRとは別の方向に構える。重心が大きく変わったことによってフラついたと判断したスズとルビーは一気に畳み掛けようとするが────。

 

「オラオラオラオラァァァッ!!」

 

「〜〜〜〜〜ッッ!?」

 

「キャアアアッ!?」

 

 接近したスズとルビーをMG、そこから少しだけ離れたシエルをSRで的確に狙撃し蹂躙していく。フラつくも何もあったものではない。というより、ハナからそんなモノは無かった。ただひたすらに、一方的に蹂躙されていく……。

 

「スズは、もっと攻撃力を上げてからスキルブッパしていくとして……。アスカ、回復お願い!!」

 

「はーい」

 

 それぞれのHPを、アスカのEXで癒していく。続いてルビーのEXで大きめにHPを削る。ここでコストは8も消費しているので次にスキルが使えるようになるまで少し耐える必要がある。

 次のスキルはスズ、シエル、アンナのどれかだ。やはりここは、アンナで削って、シエルでスリップダメージを与えつつ、ルビーで大ダメージを与え、アスカで回復────そこでやっと時間的には1分手前辺りに到達するだろうか。

 そうするとレイコの命中率は60%減る事になる、目標としてこの辺りの時間に設定しておこう。

 1分40秒でレイコのEX連発ゾーンに入るので、こうなれば負け確定。最悪でも、1分30秒でスズの攻撃の倍率が×2.9³になった瞬間に倒さなければ。

 

「────にしても、凄い攻撃力の上がり方だね。最大効率でバフを掛けたミカよりもエゲツナイよ、数字だけ見れば……」

 

『そうですね、90秒敵を倒さないだけで約24倍もの攻撃力に達する生徒さんなんて見た事も……』

 

『流石は暴食の王────と言った所でしょうか。常識に囚われませんね』

 

『そもそもスズさんは、スロースターターみたいな所がありますからね!素の攻撃力が低めなところを他のスキルで補っている、といいますか。だから、数字の跳ね上がり方だけで言うならキヴォトスでも最高かも……』

 

『逆に言うなら、今スズさんが戦っている相手とは人生最悪レベルで相性が悪い……という事です』

 

 大器晩成型のスズ、超短期決戦型のレイコ──。トコトン、タイムアタックに向いていない性能だ。平均的なパワーの方が、編成しやすいというもの。

 しかもスキルの内容的に、スズは味方が多い方が真価を発揮しやすく、単騎だと殆ど強みが薄れる。

 しかしレイコはその反対で、彼女のEXは味方も巻き込むので、単騎の方が真価を発揮するという。本当に、対称的な2人だ。

 

「あーあッ、ホントに困るわ!どぉして腕ってのは2本しかないのかしらァ!?もっと腕がありゃあ、武器だって選り取りみどりだってぇのにさァッ!!ハァァアアアアッッ!!」

 

「くぁっ……あああ゙あぁあっ……!!」

 

「アスカ先輩、回復をっ……」

 

「待ってルビーちゃん、まだ……」

 

「し、支援します!」

 

「くっ、こんなの……こんなのってぇ……!!」

 

 今度はSRすら放り、MGを拾う。最悪な事に、MG2丁になってしまい一気に前線の3人の体力を削りにかかる。やがて3人の中で一番体力が削れてしまっていたルビーがダウン──次いでシエルまでダウンし、最後にはボロボロのスズだけが残る。

 

「もうHPもスッカラカンでしょう?センパイ♡」

 

「……そー、かも、ね……ゲホッ、ゲホッ……」

 

「戦闘開始から70秒……ってとこかな?どぉ?まだ、私に勝てるつもりしてる?」

 

「…………勝たなきゃ、ダメなのよ……!」

 

「それは、ゲヘナとの併合が嫌だから?」

 

「そうに決まってんでしょーが……!!」

 

「ふぅん、そっか。でも、もう遅いよ。私なんか、陽動に過ぎないんだから」

 

「……え?」

 

「今頃、総長が万魔殿の議長と会談に臨んでるよ。そこで正式に、調印式が行われるの。ハドマ学園をゲヘナ学園の一部とします────ってね♡」

 

 この場の全員が、絶望の表情を浮かべる。しかしこの言葉を聞いてずっと絶望に打ちひしがれていたリエがハッと顔を上げる。

 

「────いや!それは、不可能ですわ!他校とのやり取りには印が必要です!『調印式』の名の通りハドマ学園生徒会として、失楽園としての『印』が必要になる!!そして、その印は────」

 

「『私が金庫に入れて保管している』、でしょ?」

 

「な……んで……っ……まさか……まさか(・・・)ッ!?」

 

「お察しの通り♡ もう学園(ここ)にはありませーん♡」

 

「────っ!!」

 

 ベッと紅い舌を出して笑うレイコ。それを聞いて弾かれたように飛び出したリエは、すっかり瓦礫に埋まってしまったかつて自分が座っていた席の下の床を開け────がらんどうの空間を目の当たりにしてしまった。

 

「埋め込んだ金庫ごと持っていかれてる……!?」

 

「なんか苦労したっぽいよ、引き抜くの。流石に、床を丸ごとくり抜くワケにもいかないらしくって。くり抜いた方が早いんじゃないのって言ったのに、労力がどうのって却下されてさ」

 

「誰、が……こんな事を……!!」

 

「総長に決まってんじゃん。私は陽動っていうか、学園の制圧を任されただけだから」

 

 壁ではなく床に埋め込んでたのか。しかも自分の足元の床板の下という徹底した隠しっぷり。もしやここまで酷く部屋が荒らされてるのは金庫を探した名残りなのだろうか。

 

「なんで、どうして!?印の隠し場所を知るのは、生徒会長の私と、副会長の(・・・・)ルーシィさんだけ(・・・・・・・・)のハズだというのに……っ!!」

 

 その場の全員がその名にハッとした。そして場の全員が察してしまった。ルーシィが、ハドマ学園を裏切っていたのだと。

 

「ま、待ってよっ?ルーシィは何処よっ!?スズとルビーだけで戦ってた時から連絡もつかないのよ!ヘルプに来てくれたのはアスカとアンナだけだし、ルーシィ、まさか学校に来てないっての!?」

 

「────まさか、ルーシィさんが……?」

 

「リエ!ルーシィ何処に居んのか知らないっ!?」

 

「きょ、今日は、足りなくなった備品の買い出しをお願いしていまして……。ですから今日は、元から、午後からの登校の予定ですし……」

 

「午後登校って、もう、1時を過ぎてんだけど!?ルーシィがあたしらを裏切ったっつーの!?」

 

「そんなハズありませんっ!ルーシィさんが私達を裏切るハズなど、決して!」

 

「っっ……おい、あんた!レイコ、だっけ!?」

 

「どしたの?……連邦生徒会対策委員長さん?」

 

「あんたら飂熾冘巫髏(ル・シュ・フェル)のアタマは──総長はッ!!針村ルーシィ……なのっ……!?」

 

 シエルの叫ぶような問いかけに副総長のレイコがどう答えるのか。全員の視線が、レイコに集まる。リエはルーシィを信じたい。それ以外はルーシィが裏切り者なのだと殆ど確信していた。

 私も──エデン条約事件のミカの事があったから首脳陣さえ疑える思考回路は、持ち合わせている。ミカという前例があるのだから、絶対に無いなどと口が裂けても言えない。しかしレイコはそんな私の予想を見事に裏切った。

 

「え、全然違うけど。総長は『ルージュ』よ」

 

「「「「「えっ」」」」」

 

「……そ……そう、でしたか……!」

 

「てか身内疑うとか、無いわー。針村?ってそれ、確か、うちの学園の副会長さんだよね?……副会長、かわいそー……」

 

「「「「「…………」」」」」

 

「そっかぁ、副会長、お買い物に行ってるんだね。じゃあ、お買い物から帰ってきたら、学校潰れててびっくり仰天だ♡」

 

「あ?」

 

「えっ」

 

「なっ」

 

「は?」

 

「はい……?」

 

 スゥゥゥゥゥ────と大きく息を吸うレイコ。その瞬間、私は、何が起きるのか察してしまった。同じく察したらしいルビー、スズは武器を捨て耳を塞いでしゃがみ、そして……。

 

「「「みんな伏せてっっ!!!」」」

 

「『荒ぶる破壊神の顕現』ッ!!」

 

 私とスズ、ルビーは、同時に皆に警告を飛ばす。その直後にレイコはEXスキルを発動し、今度は、周辺の壁や床の破壊だけでなく、ヒビの入っていた天井を崩落させ────学校そのものも、やがて、ダイナマイトでも爆発させたかのように物の見事に崩壊してしまった────。

 

 ◆

 

「……」

 

 学校の崩落に巻き込まれたものの、例によって、私自身はアロナのバリアにて事なきを得た。しかし私の近くではスズが、ルビーが、シエルが、リエ、アスカ、アンナが……血を流して倒れていた……。

 しかし、レイコ本人の姿は何処にもない。しかも一部とはいえ、飂熾冘巫髏の構成員も学校の崩落に巻き込まれているようだった。どこまでも、味方も敵も気にしない子だ。

 

「……アロナ」

 

『……はい』

 

「これは……負けイベ……ってヤツなのかな……?」

 

『それは……私には、何とも……』

 

「アバンギャルド君とエリドゥで戦った時みたいな感じが……するんだよね……」

 

『敵の体力もそれなりに削れているからこそ、負けイベントなのかどうか、判断に困りますね……』

 

『────演算終了。先生、演算結果が出ました』

 

「え……?」

 

『私の演算によると──、シエルさん、スズさん、ルビーさん、アスカさん、アンナさん、以上5人のパーティでレイコさんに勝てる見込みは、0です』

 

「…………じゃあ、これは…………」

 

『はい。恐らくは……先生の、ご想像の通りです』

 

「ッ…………なんだよ、それ……ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第4話

 

負けイベント

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第5話:暴露

 

「ハロハロ〜、万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)の議長さ〜ん♪」

 

「……貴様が『飂熾冘巫髏(ル・シュ・フェル)』の総長……か?」

 

「そーだよー?こんな可憐な乙女で意外かな?☆」

 

「思っていたより、普通だな。カリスマのカケラも無いように見える。本当に貴様があの荒くれ集団の首領なのか?」

 

「疑うんならそれでもいいんじゃない?それより、さっさと始めようよ、調印式さ。これからちょっと予定あんのよ」

 

「キキッ、たった2人だけで行う調印式というのも変な話だがな」

 

「アハッ、違いないね」

 

 ゲヘナ自治区とハドマ自治区の境の某所にて──お忍びで学園を抜け出してきたらしい万魔殿議長の羽沼マコト、そしてレイコをハドマ学園制圧に派遣してきた飂熾冘巫髏の総長は、調印式を始めた。

 それぞれ合意を示す為の「印」を所持している。しかし調印前にマコトはある事を総長に確認する。

 

「最後に確認したい。貴様らは本当にハドマ学園を手中に納めたのか?ハドマの統治委員長とやらは、並の強者では倒せやしないと耳にした事があるぞ。その『印』を盗むくらい、誰だってできるだろう。夜中に忍び込めば済むのだからな。なれば、学園を乗っ取った確固たる証拠が欲しいところだがな?」

 

「うっさいなぁ、制圧どころか学園の破壊だとか、生徒会長の我猛リエの無力化まで完了してるって。写真、見せたげよーか?さっき『制圧完了〜』って部下から送られてきた写真(ヤツ)。ホラ、その細っこくて小さい目ん玉かっぽじってよく見な?」

 

「────翼の無い白ロリータファッションの女、透き通る翼に、黄色の長髪──成程、確かに、予めこちらで入手していた我猛リエ、鐘蟲スズの特徴と一致している……」

 

「ご覧の通り学園は崩壊してる。そして生徒会長は無力化済み。これはどの学校、学園もそうだけど、権力者のトップである生徒会長が機能しなくなった場合、その学園、及び周辺の自治区における全ての権限は……生徒会副会長に移る(・・・・・・・・・)……!!」

 

「キキキキキッ!まさか、テロ組織の首領が生徒会副会長とはな!提案を聞いた時には目を剥いたぞ。しかし貴様──この罪、外患誘致では済まないぞ?とんでもない事を考えるものだなぁ……!」

 

「外患誘致もクソも無いわよ。それに私はただ──惚れ込んだヤツの望みを叶えてやりたいってだけ。ただ……それだけなんだから」

 

「ほう……?キキキッ、面白そうだな。聞かせろ」

 

「……。あんたに話す義理は無いわ。そんじゃあね。私、リエに買い物頼まれてんのよ」

 

「おい待て。何処へ行く。まだ調印していないぞ」

 

「え?……あ、そーね。んじゃ、あんたが押してよ、議長さん。はいこれ、『印』はあげるから」

 

「何だと?……貴様、どういうつもりだ」

 

「私が調印しようがあんたが勝手に調印しようが、どっちにしても同じ事よね?この場には2人きり、しかもハドマ学園はゲヘナ学園と併合するんだし、その『印』は最早あんたのモノよ、羽沼マコト」

 

「あァ、全くその通りだ。だが私は用心深いんだ。貴様が調印しろ、そして拇印と署名も頂く」

 

「ちっ。なんだ、あんた、しっかりしてんじゃん。どこの誰よ『羽沼マコトは付け入る隙がある』とかほざいたのは……」

 

「キキキキッ!残念だったな!さぁ貴様の拇印諸共調印しろ!朱肉ならばこちらにあるぞ!」

 

「……小指でいい?」

 

「バカを言うな。────全部の指だ」

 

「はぁ!?全部って……」

 

「なぁに、これは念の為(・・・)だぞ。貴様がこの後、自ら指を切り落として──『ゲヘナ学園の襲撃に遭って指を切られ、勝手に調印に利用されたんだ』などと言わないように、念の為(・・・)に……な?」

 

「ッッ、これだから悪魔同士の取引は嫌なのよね。お互いに腹の探り合いになるから気持ちが悪いわ」

 

「キキッ、あァ、全くその通りだな。同意するよ、ハドマ学園()生徒会副会長殿」

 

「────ほいほい、と。名前も書きましたっと。じゃあ、この『印』はそっちで保管してよね。私が持ってちゃ、向こうで身体検査とかあったら速攻でバレちゃうもの」

 

「何ッ?お前、まだ正体をバラしていないのか?」

 

「当たり前でしょバカなの?飂熾冘巫髏は『総長は勿論、幹部すら顔を見せない』正体不明の組織よ。ただ、スズを制圧できるのはレイコだけだからね。今回は私達にとって総力戦の一歩手前だったのよ」

 

「お互いに苦労するな、目の上のたんこぶには」

 

「ええ、本当にね。──じゃあ、後は連邦生徒会やクロノスにこの情報を流して……」

 

「『ハドマ学園併合を公のモノとする』────!キキキキッ、楽しみにしているがいい……!!」

 

「そして、ハドマ学園併合の情報の開示と同時に、副会長であるこの私が(・・・・・・・・・・)飂熾冘巫髏の(・・・・・・)総長であると(・・・・・・)、バラす……!」

 

その後(・・・)も頼んだぞ、飂熾冘巫髏よ」

 

「そいつはレイコに言ってもらわないとねー」

 

「おっと、そうだったな。キキキッ……!」

 

 ◆

 

 ハドマ学園崩壊から数日後────私はスッキリしない思いのまま、業務に向かっていた。

 学園が崩壊したあの日、私は、大人のカードにて救護騎士団や救急医学部の生徒を召喚し、もしくは電話などで呼び、負傷者の治療をしてもらった。

 その後は皆で瓦礫の撤去を行い、行方不明者など発生していないかを確認……。

 しかし元から治安の悪い学校で、出席率も悪く、行方不明者なのか単にサボッているのか、はたまた飂熾冘巫髏の構成員で退散したままだったのかは、遂に、誰にも分からずじまいだった。

 しかも何より最悪な事に、生徒会長であるリエ、更にはアスカが崩壊に巻き込まれ意識不明の重体に陥り、つい先日まで入院していた事でハドマ学園における学校機能が完全に停止してしまっていた。

 その間、スズやルビーを始めとする統治委員会や生徒会の残りのメンバーが頑張ってくれていたが、それでもまだ、足りないと言わざるを得なかった。

 ────これらの、学園崩壊、生徒会長他数名の意識不明などについては、大々的に報道された。

 

「他に私に出来る事は無かったのかな……」

 

「負け戦だったのでしょう?なら仕方ないですよ。時には諦めも肝心です。私のようにね」

 

「……今、ハドマ学園の子達はプレハブ校舎だから、大変そうだし……差し入れでもするかな」

 

「無視しないでくださいよ」

 

 そして、裏切り者の可能性があると(もく)されていたルーシィだが、あの日、少し登校は遅れたものの、リエが頼んだという備品の調達に行っており、更に領収書までちゃんと持ってきていた事、レイコから

「ルーシィ」とは別の「ルージュ」といった名前が出ていた事などなどから、彼女への疑いは晴れた。

 寧ろ、負傷者の救護やら瓦礫の撤去やら、かなり尽力してくれていた。そんな彼女を疑うなんてと、私を含めリエ以外の全員がルーシィに対し罪悪感を抱いていた。

 

「────はい、こちらシャーレの先生専属秘書、不知火カヤです。……ゲッ、リン行政官……。はい……え、緊急の会見?はい、はい。ええ分かりました、確実に伝えておきます。はい……失礼します……」

 

「……?リンちゃんから電話?」

 

「ええ。ハドマ学園について、緊急の会見を行うと言っていました」

 

「えっ?」

 

「とりあえずクロノスチャンネルつけましょうか、話はそれからです」

 

 クロノスチャンネルの中継をつける。いつも通りリンちゃん他、連邦生徒会の幹部格が並んでいる。以前なら、あそこにカヤの姿もあったのに……。

 

 ◆

 

『────緊急の招集にも関わらず、お集まり頂きありがとうございます。今回の会見についてです。この度、とある1つの学園の併合が決定致しましたので、通達、及び広報が目的で会見を開きました』

 

『その学園とは一体どこの学園でしょう!?』

 

『ハドマ学園です』

 

『ハドマ学園と言うと、ゲヘナやトリニティ、更にヴァルキューレやらレッドウィンターからも程近い自治区が細長〜いあの学園ですね!?』

 

『はい。そのハドマ学園です。この度ハドマ学園とゲヘナ学園の首脳陣が『両校を併合する』と合意に至ったと、(しら)せを受けました。両校の生徒会からの調印及び拇印、署名など、確たる証拠もあります』

 

『なんと!それにしても急ですね!?』

 

『実は、兼ねてよりハドマ学園には連邦生徒会からゲヘナ学園と併合する事等々を、何度も提案させて頂いていました。理由と致しましては、学校機能の維持が難しい事、及び機能の衰退──1つの学校の形を維持する事が少し前から難しくなっていた──というのが主な理由となります』

 

『その、度重なる連邦生徒会からの打診について、やっと頷いてくれた──という事でしょうか!?』

 

『先日報道されたハドマ学園崩壊の話題は、皆様の記憶に新しいと思います。事件の際に、生徒会長が意識不明の重体となってしまった事もまた、当時、報道されていたと思います。学校を運営する上での全権限が、その時、副会長に移りました(・・・・・・・・・)。これは、その副会長の決断となります』

 

『な、成程っ!確かに、副会長という役職は会長の補佐であり、会長の予備──という言い方は語弊があるでしょうが、実質的な予備の人員ですからね!副会長に全権限が移るのは当然の事ですし、規定の通りであるとは言えますが、しかし────学校の併合という何よりも大きな命運を、副会長が決めてしまっても、本当に良いのでしょうか?』

 

規定上(・・・)、問題ありません。現に意識不明の重体と医師が診断していたのです。いつ意識が戻るのかも不明だった以上、ハドマ学園の運営をゲヘナ学園の生徒会に委ねた、と見るのが妥当でしょう。元よりこの2校は姉妹校だった過去を持ちますから、特に不自然はありません』

 

『しかしハドマ学園の生徒会長さんは既に目覚めていますよね?2日前には、その様に報道されていたはずです。その調印はいつ行われたのですか?』

 

『学園崩壊の日────およそ5日前の事です』

 

『決定があまりに早すぎませんか?これではまるで副会長が実権を握る為に自校を崩壊させたと見ても不自然はありませんよね?』

 

『極めて迅速な対応──と我々は受け取りました。そして副会長が自校の実権を握る為に崩壊させたと受け取るのは勝手ですが、仮にそうだったとしてもそれについては我々連邦生徒会の預かり知らぬ所の話です。我々連邦生徒会は「両校が遂に併合に合意した」という報せを受け取り、受諾したのみです』

 

『な、なる、ほど……確かに一部、連邦生徒会の仕事ではない事項ではありますが……』

 

『……他に質問はありますか?』

 

『先程、行政官は会見開始時に「通達及び広報」と仰っていました。これは我々のようなハドマ学園と無関係の者へ、という解釈で、宜しいのですよね?普段、行政官はこのような文言をお使いにならないハズなので……』

 

『いいえ。これは、ハドマ学園の皆さんも含めた、キヴォトス全域に向けて────の話です』

 

『……え?』

 

『ゲヘナ学園との併合について打診していた頃からずっと、ハドマ学園とは、音信不通だったのです。返送が必要となる書類の未提出の他、留守番電話を残しても折り返しの連絡も無く……』

 

『えぇ……それは、流石に……』

 

『ですので、ハドマ学園生徒会の方が自校の生徒の皆さんにお知らせしていない場合には────この会見で初めて既に自校がゲヘナ学園と併合している事実を知る事になるのでしょう』

 

『それ、は……生徒達からすれば、なんじゃそりゃ、という話になりますよね……?暴動モノでは?』

 

『そうなる事でしょう。しかし、もし併合するのが安易な決断だったとしても、それこそ「副会長」の責任なのです。既に併合されているとはいえ、元は副会長だったのですから、説明責任は果たしているだろうと我々は踏んでいます』

 

『そうですね、流石に説明くらいしますよね……』

 

『──他に質問は?』

 

『はいッ!もしも、生徒会長さんが併合に反対した場合はどうするおつもりですか?たとえば「自分が意識不明だった時の決定は無効だ」とか……!』

 

『どうもしません。生徒会長の不在時には副会長が全てを決定する権限を持つ。当然です。ですので、生徒会長が今になって「併合には反対だ、副会長の独断だ」と言い出したり、署名を集めてもそれらは完全に無意味です。これは、この件に限らず全てにおいて言えることですが、指揮系統というモノは、得てしてそういうものですから』

 

『どうしても!!と言い出した場合は!?』

 

『その場合はゲヘナ学園側と話し合ってください。何度も言いますが、これは連邦生徒会による勝手な決定ではありません。あくまで両校の合意によって成立しています。調印を破棄する際もまた、併合と同様に両校の合意によってのみ、成立します』

 

 ◆

 

「なん、だって…………?」

 

 ハドマ学園とゲヘナ学園が、併合した?

 会長であるリエが意識不明の重体で入院していて不在だった、それは分かる。送り出したのは私だ。救急医学部の救急車に乗せてアスカと一緒にリエを運んでもらったんだ。

 他にも意識不明の子や重症の子も居たから他にも何台かの救急車に乗せて病院に……。

 意識が戻らなかったから、そのまま入院させた。だから、私達は、学校の運営は副会長のルーシィに任せたんだ。併合は──その副会長(・・・)の、決定で?

 

「……カヤ」

 

「…………はい」

 

「ハドマ学園の、生徒会副会長……って……誰?」

 

針村ルーシィ(・・・・・・)さんで(・・・)…………間違いありません(・・・・・・・・)

 

「────────ッッッ!!!!」

 

 ……やられた。まんまと、してやられた。

 

 ◆

 

 その頃、ハドマ学園プレハブ校舎内では────七天魔の生徒達が針村ルーシィの招集で集まって、連邦生徒会の記者会見を見ていた。

 そして、私が「やられた」と感じたと同時に──全員の視線が、ただ1人に集中していた…………。

 

「…………うそ、ですわよね……?まさかそんな……」

 

「ルーシィ……あんたやっぱり……ッ!!」

 

「そんな……ルーシィ……先輩……?」

 

「どういう事?ルーシィが飂熾冘巫髏と協力して、学園を壊して、ゲヘナ学園に、ハドマ学園を丸ごと売ったってこと?」

 

「きっと違いますアスカ先輩、ルーシィさんこそが飂熾冘巫髏だと……そういう事でしょう」

 

「レイコが言ってた『ルージュ』は嘘か……ッ!」

 

 会見中はずっと真顔を決め込んでいたルーシィ、しかし全員の目線が懐疑的なものに変わるや否や、口元をクッと釣り上げ、三日月より細く口を歪め、薄く笑う……。

 

「……クヒッ!やぁっと気付いたんだぁ?」

【挿絵表示】

 

「「「「「っっっ!!!」」」」」

 

「そう──ハドマ学園は(・・・・・・)既に存在しない(・・・・・・・)。今私達が存在しているここは、ゲヘナ学園第3校舎ッ!!」

 

「そんな……ルーシィさん……あなた……っ!!」

 

「……お前……よくも……お前ええええっっ!!!」

 

 殴り掛かろうとするスズの手を、ルビーが無言で掴んで止める。ルーシィ以外全員がルビーを見た、まさかルビーまでもがルーシィ側なのかと。

 しかし、ルビーの瞳に映る仄暗い怒りの炎を見て逆に察した、今ここで誰よりもブチギレているのはルビーだったのだと。

 

「……説明を、求めます」

 

「説明?いいけど、何から説明すればいいかな?」

 

「構うものか。洗いざらい、全てですよ……!!」

 

「──ったく、ホント吸血鬼ってのは揃いも揃って普通の悪魔より獰猛だよねぇ。分かりやすい明確な弱点がある分、普通じゃないっていうか──逆に、普通のヤツより強化されてるっていうか?」

 

「ンなことはどうでもいいんですよ、さっさと何か言ったらどうなんですか?」

 

「あァ────そっか。ルビーはハドマ自治区出身だったね。そりゃ、ハドマには思い入れもあるか。吸血鬼は、そういうモノへの執着が強いんだよね。多分、今のルビーは、スズやシエル、下手したら、リエよりもブチギレてるのかもね」

 

「……何なんですか?あなた。あなたは。それとも、ゲヘナ自治区出身だとでも言うのですか?だから、自らの古巣に、ハドマを明け渡したのですか?」

 

 掴んでいたスズの手を離し逆に自分が拳を握る。対するルーシィは余裕な様子だ。机の上に足を乗せその上で足を組んで見せる程の余裕がある。

 

「んー。やっぱ、悪魔は悪魔でも『吸血鬼』なんて別にカテゴライズされる辺り、似通ってても私達、結局の所は別種なのかもね。夢魔──は、2人しか知らないけど、私の知らない何かが────」

 

「ゴチャゴチャとさっきからうるさい口ですね──私の質問に答えないなら、潰して差し上げますが。どうします?せ・ん・ぱ・い……?」

 

 ルビーの趣味、そして特技はボクシングである。それも関連してなのか、殴る蹴るなどの単純な暴力行為であれば、レイコを除きハドマで最強と言える強さを持った、統治委員長のスズさえも遥かに凌ぐ強さを誇っている。

 そんなルビーから「潰す」と脅されては、流石のルーシィも口元を引き攣らせてしまう……。

 

「ひひっ♡ ざぁんねん、それは私じゃないわね!こう見えて私、トリニティ自治区出身(・・・・・・・・・・)でーす♡」

 

「なっ」

 

「意外でしょ。でも幼稚園の時だけよ。お嬢様〜な雰囲気が気に入らなくて、ハドマ自治区に来てさ。小学生の時くらいだったか、ゲヘナとの境の辺りで遊んでた時に──年上のチンピラや不良相手にして無双する、あの子(・・・)に出会った……」

 

「……成程、レイコですね」

 

「そ。レイコはゲヘナ自治区出身よ、私と違って。それでもハドマで出会った私とレイコは幼馴染よ。あの子は私の1つ年下だけど関係ない、レイコとは肩を並べていたいって思ったの。だから、私、天に誓ったのよ。レイコのことを、キヴォトスで最強にしてみせるってね」

 

「──レイコを最強に仕立て上げる事と、ハドマをゲヘナに明け渡す事に、何の関係があるんですか?それとも時間稼ぎか何かですか?」

 

「レイコって意外と律儀なの。戦う為のステージを自ら用意する。正当な場で戦いたい────って。でも、私につられてハドマに来ちゃったレイコが、ゲヘナの風紀委員長と戦う為には──ゲヘナ学園に入学する必要があった。でも私には既に別の目的があったから、私はゲヘナに行けなくなっちゃった。だからレイコのその目的は果たせない。夢が、露と消えてしまった」

 

「普通に、ゲヘナ自治区の中で問題でも起こせば、風紀委員会が駆け付けて来るのでは?」

 

「あーあー、これだから獰猛なヤツは。それじゃあハドマ学園とゲヘナ学園の外交問題になるでしょ。しかも、ハドマ学園の生徒会『失楽園』は、過去にゲヘナ学園内で万魔殿との抗争に負けて、ハドマに逃げてきた『失楽殿』の後輩だかが設立した組織。万魔殿に対しては今でも頭が上がらないのよねぇ?そうでしょ、リエ()議長?」

 

「ッ……」

 

「まっ、そんなこんなでさ。公の場って言っても、そういうやり方はレイコが好まないらしいからさ。私の目的と併せて行動する事にしたのよ。ハドマをゲヘナと併合させる……その為だけにね」

 

「併合させたらゲヘナ学園内での内紛で済むから?そう言いたいのですか?ですがよく万魔殿の議長を騙して併合にまで漕ぎつけましたね?」

 

「騙してなんか無いわ。万魔殿議長、羽沼マコトは元から飂熾冘巫髏と風紀委員会の衝突を望んでる。そして、レイコが風紀委員長、空崎ヒナを潰す事を望んでいるわ」

 

「……えっ」

 

「じゃあ、つまり、ゲヘナとの併合の話がトントン拍子に進んでたっぽいのは、ハナから飂熾冘巫髏と万魔殿の利害が一致してたからって言いたいの!?どんだけ腐ってんのよ、万魔殿は……ッ!!」

 

「そうよね、腐ってるわよねぇ。スズの言う通り。なら、こぉんな腐ってる生徒会、サクッと一新する必要があると思わない?」

 

「……待って。それじゃあ、ルーシィ……あんたの、目的ってのは……」

 

「わかったぁ?レイコが空崎ヒナを潰した暁には、飂熾冘巫髏がゲヘナ学園の生徒会に成り代わる!!悪魔の楽園、ゲヘナ学園の頂点に立つのはこの私!飂熾冘巫髏総長、針村ルーシィよッッ!!!」

 

「────分かりましたわ。ルーシィさん」

 

「……ヘェ?」

 

「……ッ!?リエッ!?」

 

「それが、あなたの目的であれば。リン行政官が、会見内で仰っていた通り、併合されてしまった以上もう遅いのでしょうが。それでも、あなたを倒し、矯正局に差し出せば──せめて──これから起こる悲劇だけは、避けられるという事ですわね」

 

「ええ、そう。その通り。でもねリエ。忘れないでもらいたいんだけどね。あんたをこの場で潰すのもこの私の計画の一部、いいや、目的(・・)の1つ(・・・)なのよ。達成すべき、大いなる目的の1つなのよッ!!」

 

 机を蹴り飛ばしルーシィが立ち上がる。同時に、近くの窓を突き破りレイコが侵入してきた。手にはマシンガンとスナイパーライフルを持っている。

 

「そろそろイイかなぁ、ルーちゃん?」

 

「うん、もういいよ、レーちゃん。……やろう」

 

 自前のマシンガンを構えるルーシィ。それを見て七天魔の残り6人は、戦闘が始まると察知。6人も武器を取り、同時に構えた。

 

「失楽園──前身の失楽殿は、ゲヘナ学園で抗争を起こし、万魔殿に敗北した。これは皆が知る通りの事実。でもね、リエ。失楽殿はね、その抗争の中で何人もの人を殺してるのよ。あんた、知ってた?」

 

「……それは、前の議長から、伝え聞いていますわ。我々、歴代議長は、その()を背負うのだと。そして先輩方の犯した罪を、少しでも軽くするのだと」

 

「なぁにが『業を背負う』よ!頭おかしいのッ!?そんな事で、こっちの気が済むと思ってるワケ!?実際に友達──お姉さん(・・・・)が殺されてるっつーのに!あんたの先輩の罪はあんたの罪でもあんの!リエ!ここで、失楽園の議長だったあんたを潰してッ!!お姉さんの恨みを、綺麗サッパリ晴らしてやるわ!そしてそのままゲヘナ風紀委員会をブッ潰す!!」

 

 ハドマを乗っ取りゲヘナへ明け渡したルーシィもまた、誰かの命を背負っている──そんな気配を、リエは感じ取っていた。

 しかし、それはそれとして、失楽園議長としての最後の仕事──裏切り者の副議長への制裁を、遂に始めることにした。

 

「────皆さん。私に力を貸してください。もう全て遅いのかもしれない。それでも足掻くのです。たとえ少しの間でも、たとえ仮初でも、上辺でも、仲間だった(よしみ)として……ルーシィさんを止めます」

 

 涙ながらに語りかけるようなリエの呼び掛けに、全員が頷いた。こうして、決裂した七天魔の戦いが始まった……。




次回────想いの行方


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第6話:想いの行方

 

 ハドマ学園改めゲヘナ学園第3校舎では、荒ぶる少女達が、弾丸のやり取りに興じていた。しかし、そこに笑顔を浮かべているのは────戦闘こそが生き甲斐、趣味である、レイコのみ。

 裏切り者のルーシィを含めたそれ以外の全員が、相手のヘイローをも消さんばかりの勢いで、弾丸を打ち込み合っていた。

 

「どうして裏切ったのよ……ルーシィッ!!」

 

「いえ、ハナから仲間ではなかったとしても。共に苦難を乗り越えたり────苦労した仲ではあったハズです。それでもあなたは改心などしなかったし計画を変えるなんて事も無かった。全く残念です。残念でなりません」

 

「────苦難、ねぇ。ハドマ自治区って、やたらめったら細長いわよね。ゲヘナとトリニティの間にヴァルキューレあって、だけどそれらの隙間を縫うように確かに存在してさ。空が赤く染まった時は、自治区内に実質2つ3つのタワーが出現したようなものだったから、飛び抜けて大変だったわよねぇ。七天魔として、あちこちから助けを求められてさ」

 

「ええそうよッ!あの時は、飂熾冘巫髏も協力してバケモノ共をブッ飛ばしてたハズでしょッ!?私ら統治委員会とも、手ェ組んだっつーか、シンプルに同じ目的だったから、休戦状態だった!!」

 

「それなのに事態が終息した途端、また、学園への加害が目立つようになって。私もスズ先輩も、他の皆も……結構、落胆してたんですよ?」

 

落胆(・・)?アッハハッ♪ なんかコイツら面白いこと言ってるね、ルーちゃん?」

 

「そーね。そんなの、あんたらが勝手に期待してただけでしょ?私達の目的は、昔っから変わらない。あんなバケモノなんかに学園を壊されたり、世界を滅茶苦茶にされちゃったらさ。ハドマやゲヘナで、この私が頂点に立てなくなっちゃうでしょ……?」

 

「「ッッ!!!」」

 

「私が頂点に立つには、それ以外を排除しなきゃ。さぁ、私達の計画も折り返し地点よ……!!」

 

「もうちょっと溜めたら全力ブッパ!アッハハハ、プレハブ校舎もブッ壊してやるわぁ!!」

 

 SSにより時間経過と共に確実に下がる命中率。レイコはそれを、装弾数に優れるマシンガンで補い戦闘を継続していた。現在、戦闘開始から30秒──レイコの命中率は現在、通常時の70%だ。

 

「リエを泣かせやがってッ!生意気な後輩共ねッ!私も1発──『こんな世界、燃え尽きろ!(EXスキル)』ッ!」

 

「「ッッ!!」」

 

 シエルのEXにより、2人に対し36秒の火傷持続ダメージ。続けざまにアスカによる回復(EX)で範囲内の味方全員の体力を癒して、一度目のレイコのEXに備える──しかし。

 

回復(それ)を待ってたのよ!星々の先導者(EXスキル)ッ!!」

 

「「「「!?」」」」

 

 レイコのEXを警戒していた6人、しかし相手が使用したのはレイコのEXではなくルーシィのEXだった。

 地雷を取り出したルーシィは校舎内にも関わらずそれを設置し、爆発させる。攻撃力は高くはない。しかしその凄まじい轟音で、前線に出ている4人をスタンさせてしまった。

 

「あ、ぅ……!?」

 

「くっ……」

 

「ッ……クソォ……」

 

「失念、してましたわ…………!!」

 

 ルーシィのEX────それは、対象へのほんの少しのダメージに加え、残り体力に応じたスタン。残り体力(HP)が多ければスタンの時間も長くなり、逆に少なければスタンの時間も短くなる、というもの。

 だからこそ、ルーシィは待った。ある程度削ればアスカが体力(HP)を回復してくれる。体力(HP)が、増える。それだけスタンの時間(・・・・・・)が延長する(・・・・・)────!!

 

「今よ、レーちゃん!!」

 

「待って、あと3秒くらい……!!」

 

「よしきたッ!」

 

 ルーシィのスタン時間は、最長5秒、最短3秒。前衛であるスズ、ルビー、更に中衛であるシエルは範囲内であった為にアスカの回復(EX)を受けている。

 しかし後衛(・・)のリエは、唯一、アスカのEX範囲の外に居たのである。

 故に────4人の中で誰よりも早くルーシィのスタンからの復帰を果たす事ができた。

 

「……これで終わりです。ルーシィさん」

 

「なッ……は…………リエ……あんたどうしてッ……!」

 

EX(これ)であなたを倒し、その後はヴァルキューレにあなた方を連行してもらいます。あなたが矯正局を出られた暁には、心から笑い合えると────私は信じております」

 

「ッッッ、レイコ逃げてぇッッ!!!

 

「え」

 

「────『大紅蓮地獄(マカハドマ)』ッ!!」

 

 リエがEXを発動したその刹那、プレハブ校舎の外が一気に暗くなる。直後、メキメキと音を立てて校舎が軋み、そして次の瞬間……。

 

「……全ての因縁を、消し去りますわ」

 

「ぎゃんっ!!」

 

「ふぎゃあっ!!」

 

 リエの神秘により生み出された氷山は、的確に、敵2人のみを押し潰した。それによってルーシィは気絶、ヘイローの消失等からリエ達はそれを確信。しかし、レイコは……。

 

『荒ぶる破壊神の顕現』ッ!!」

 

「しまっ……」

 

「く……っ」

 

「「ッッ!!」」

 

 リエの落とした氷山を自らのEXで破壊するのと同時に、回復済みのハズの、前衛のスズとルビーを倒してしまった。次いで、氷山を破壊し自由の身となったことで、スタンから回復しそうになっていたシエルをも打ち倒してしまう。

 レイコの敵はリエと後方支援のみ────そしてリエの敵は、既にレイコのみであった。

 

「く、そォ……!そんな力を隠してたのね……ッ!」

 

「……隠していたワケではありませんわ。私、戦いが好きではありませんの。最強だとか、最弱だとか、そんなもの、私にとっては何の価値もありません。ですからハドマ最強など、スズさんでもあなたでもどうでもよいのです。……私でなくとも、ね」

 

「ッ……!?」

 

「そろそろ、ヴァルキューレが駆け付ける頃です。逃げるなり隠れるなり、それとも最後に暴れるなりお好きにどうぞ?」

 

「ヴァルッ……なっ、い、いつの間に呼んだのよッ、そんなのッ……ッ!?」

 

「知れた事を────戦闘開始前に、アスカさんにお願いしておいたのです。美食研究会対策委員会(同じ委員会)サエさん(部下の方)に、ヴァルキューレを呼ぶように、とね。アスカさんには、あなた方と私達の戦闘に集中して頂きたかったので、この場に居ない第三者(お友達)の手をもお借りしましたの。ごめんあそばせ?」

 

「……アスカが呼んだ(・・・・・・・)ワケじゃないのね?(・・・・・・・・・)

 

「……?ええ、そうですけれど、それが何か?」

 

「…………………………」

 

 項垂れ、黙り込んだレイコ。先程までは雄々しくバサバサと翼を動かしていたのに、今はもう、翼も萎れてしまっている。

 しかし次の瞬間、これまで見せた事のないような凶悪な笑みを貼り付けながら顔を上げ、獰猛な獣のような笑い声を上げた。

 

「ヒヒヒヒャヒャヒャヒャヒャアッ!アッハハハハァッ!ヒャハハハッ、ハハハァッ!!」

 

「!?」

 

「あぁ、凄い、本ッ当に凄いよぉ、ルーちゃぁん♡ そう、あなたはいつも……いつも、先の先まで……!鼻で笑っちゃうくらい、バカみたいに用心深くて!だけど、いつも、その通りになるのよねぇ……!」

 

「何を言って──」

 

「ルーちゃんはねぇ!副会長としてあんたのそばで過ごしてる間、計画を練る事しかやってなかったと思った?飂熾冘巫髏への指示出しと裏工作(スパイ)以外に、何にもしてないとでも思ったァ!?」

 

「……まさか」

 

「あんたの性格を、間近で調べてたんだよぉっ!!物事の流れだとか展開だとか!全て予測して計画を打ち立てて!それでも性格ってのは読めないから!間近で観察する事で、あんたの人となり(・・・・)を知った!その上で、こうして行動を起こしてんのよッ!!」

 

「ッ!?まっ──まさか、樫田さんも飂熾冘巫髏の一員だとでも!?あんな……あんな……太陽のような明るさのサエさんが、まさか…………」

 

「あー、違う違う。飂熾冘巫髏の一員は、コッチ。おいで…………アガリちゃん(・・・・・・)

 

 レイコの呼び掛けに応じ、1人の生徒が、風穴の空いた天井から飛び降りてくる。その腕の中には、気絶してヘイローの消えたサエが抱えられている。

 

「アガリさん……ですって……?」

 

「……お久しぶりですリエ議長。……いえ、元議長」

【挿絵表示】

 

 三重アガリ────三重アスカの妹にして、姉と同じ美食研究会対策委員会の一員であり、そして、クラスメイトである樫田サエの、親友である。

 ルーシィ達との戦闘開始前に、リエは後方支援を担うアスカに「同じ委員のサエにヴァルキューレに通報してもらうように」と指示を出した。

 そして委員長のアスカから指示を受けたサエは、その場でヴァルキューレに通報……しようとした(・・・・・・)

 

「なん……で…………」

 

 ────()しき()と書いて、親友(・・)である。

 アスカからの連絡をもらったサエのすぐ傍には、クラスメイトであり親友であるアガリが居たのだ。

 サエを、そして姉のアスカをも飂熾冘巫髏に勧誘する為にと、ルーシィから美食研究会対策委員会に送り込まれていたアスカの妹が。よりにもよって、アスカからの連絡を受けたサエの傍に居たのだ。

 

「もし、あんたが『サエ以外にも』頼んでたなら。多分、きっと──十中八九だけど、もしかしたら、ヴァルキューレに囲まれてたかもねぇ?」

 

「……っ!」

 

「でも残念。ルーちゃんは『リエならそうする』と読んでたから──連邦生徒会の記者会見が始まると知ってあんたら七天魔に招集をかけるのと同時に、アガリに、サエの傍に居るように指示し──更に、飂熾冘巫髏の構成員に『飂熾冘巫髏ではない友達の傍に居ろ、通報されそうなら堕とせ』って、事前に指示を出してたのよぉ♡♡」

 

「な……ッ」

 

「用意周到ってのはルーシィの事よね。うふふっ♡ 弱くたっていいの。こういうキレ者なルーちゃんのコトが……本ッ当に、大好きぃ……♡♡」

 

「…………」

 

「計画通りにコトが進んだ時の気持ち良さったら、どんな快感にも勝るモノ!この後も、勝利の快感に酔わせてあげるわ……ルーちゃぁん♡♡」

 

(口を大きく開けた、あの構えは────ッ!!)

 

 戦闘開始から、既に100秒以上が経過していた。

 レイコのSSによって、100秒以降は通常攻撃が全く機能しなくなってしまう代わりにノーコストでEXスキルが使用可能である。

 リエ、そしてアンナの狙撃にアスカの回復などの奮闘も虚しく────レイコ、いや、ルーシィ達に改めて勝利を与えてしまった。




次回、離反。


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第7話:離反

 

 私がハドマ学園に到着した時には、もう、全てが遅かったようだった。

 記者会見の終わりを待たず、続きはスマホで視聴する事にして、シャーレの自動操縦のヘリを使用しハドマ学園へと向かった。特急なんぞ使っていては乗り換えだの何だのの問題で時間が掛かるからだ。

 

「なんだ、これ……雪?氷……?」

 

 プレハブ校舎の一角が大きく崩れていた。しかも空気中にはキラキラとダイヤモンドダストのように日光を反射する粒子状の物体が輝いていて、地面はガラスの破片か氷か何かで白く染まっていた。

 とにかく今はリエ達を探さなくては、と思ったがあの瓦礫に押し潰されている生徒が居ては大変だ。だからその確認の為にもまず瓦礫の元へ急行した。

 

「ッ!?リエ……みんな!?」

 

 そこには、ボロボロの状態で4人が倒れていた。いや、よく見たらサエも倒れている。部屋の隅ではアンナが同じく倒れており、瓦礫の向こうには薄くヘイローが透けて見えるので、アスカだけどうにか意識を保っているのが見て取れた。急いでアスカの元へ駆け付けるも、彼女の様子がどうもおかしい。

 

「アスカ……アスカッ!!」

 

「……せん……せい?」

 

「何があったの?これは……!!」

 

「……ルーシィが、ね…………裏切ってて……」

 

「ッ!!」

 

 見れば、リエ達が倒れている辺りには液晶らしき破片もある。恐らくテレビで記者会見を見たのだ。そしてルーシィが正体をバラしたのか、それとも、バラすつもりは無くとも露見したのか……。

 どちらにせよ、ここでリエ達とルーシィの戦いが起きていたであろう事は、まず間違いない。

 

飂熾冘巫髏(ル・シュ・フェル)の……総長、だってさ……あははっ……!私の妹も……飂熾冘巫髏の構成員だった……!!」

 

「な……アスカの、妹……!?」

 

 妹──名前は聞いていないものの、入学と同時にアスカの設立した美食研究会対策委員会に加入し、それにつられて、クラスメイトで友達の樫田サエも加入した……という流れは聞いていた。

 すると、サエも────いやしかしあそこで気絶している所を見るに、サエは飂熾冘巫髏ではないのだろうか。

 飂熾冘巫髏は正体不明のテロ組織、総長も幹部も誰も彼もが顔を、正体を隠して行動していたのが、ここにきて凄まじい効力を発揮しやがった──と。

 

「……何が起きたのか、教えてくれる?」

 

「ごめんなさい…………先生。少し……1人にして」

 

「っ!……わかった。大変な時にごめんね」

 

「ううん、謝らないで。私が悪いの。だから…………先生は、何にも……何にも、気にしないでね」

 

「?……うん……」

 

 妹までもが裏切り者となれば、姉としてはもう、気が気でないのも仕方がない事なのかもしれない。今のアスカの事は、きっと、私なんかにはどうにもできないのだろう。

 肉親に裏切られた痛みというのは、きっと友達に裏切られたソレよりも辛いものがあるはず。だから今の彼女を慰めてくれるものは、時間だけだろう。

 今の私は、時間がアスカの気持ちに整理をつけてくれると……解決してくれると、願うしかない。

 

「さて、と。この前よりはマシそうだし私にも治療できるかな……道具は複製(ミメシス)でどうにかできるし」

 

 いや、待て。流石に、そこまでアレらの道具への造詣は深くないか。理解が深くなければ、マトモな品質にはならない。コンドームやローションでさえギリなのだから医療品はやめておいた方がいいか。

 

「……大人しくプロの手を借りるか……」

 

 またまた、ハナエやセリナなどの救護騎士団と、セナなど救急医学部を大人のカードで呼び出した。急に呼び出すのは本当に申し訳ないとは思う。だが傷だらけの状態で放置はしたくない。

 というか大人のカードって、こんなにポンポンと使っていて良いのだろうか。まぁいいか、生徒達の為に使ってるんだから、正解の道ではあるだろう。

 

 ◆

 

「……そう、か……ルーシィ自ら明かしたんだね」

 

「ま、それに少し近かったかな。ルーシィの事は、よく知ってるつもりだったけど……まさか、あんなに悪い顔をする女だったとはね」

 

「相変わらず、チクチク刺すような攻撃でしたね。大技らしい大技とかもあまり無いクセに、厄介な事この上ない」

 

「チッ。アイツらを取り逃したのは、あんたら統治委員会の責任じゃないわ。私の腕が鈍ってたから。スズの言う通り、書類仕事ばぁ〜ッかやってるから雑魚になっちゃったわ。……悪かったわよ」

 

「別に……シエルのせ……シエル先輩のせいだとは、思ってないから。……負けたのは、私も同じだし」

 

「敗北は1人の責任ではありません。全員ですよ。ですよね、スズ先輩」

 

「ええそう。強いて言うなら、私がツインテ綺麗に結べてなかったのが敗因かしらね〜!あーあ、私がこんなヘマしなきゃあ、アイツら潰せてたのに!」

 

「…………」

 

「ちょっとは庇いなさいよ!?」

 

「──いえ。スズさん、ルビーさん、シエルさんのせいではありません。全ては、私のせいなのです。ルーシィさんの本性を見抜けず迎え入れ、尚且つ、2人を仕留めきれなかった、私の未熟さ故に……」

 

 リエは身を縮こめるばかり。先程話を聞いたが、校舎を潰したのはリエの技によるものらしかった。2人の事も同時に押し潰したがレイコに破壊され、脱出され……今に至るのだそう。

 そこはまぁ納得できた、筋も通っている。しかし私は更なる疑問に襲われていた。

 

「スズ。ツインテ綺麗に結べてなかった、って──こんな時に冗談は言うものじゃないよ」

 

「じょ、冗談じゃないし!事実だし!」

 

「スズ先輩は七天魔で最強にも最弱にもなる──と以前にお話した事を覚えてますか?」

 

「うん」

 

「スズ先輩の戦闘モードはツインテール。しかし、それが綺麗に2つに分けられていない場合、満足に強さを発揮できないんです」

 

「えぇ……!?」

 

「綺麗に分けられていない場合は全力の7、8割と見積もっていいでしょう。しかし綺麗に分けられた場合は、十二分にその強さを発揮してくれます」

 

「……ウソ……」

 

「あの弱さが演技でないなら、大マジです。なのでこれは事実ではあるのです────が、スズ先輩、さっきの戦い、普通に綺麗に結べてませんでした?私から見たら、綺麗だったと思うのですが」

 

「っ、うっ、うっさい!下手だったのよ!」

 

「そーですか。まぁそれならそれでいいんですよ。同じ戦いで二度も同じ言い訳は通じませんし、もし今のお話が嘘でないのなら、次のルーシィさんとの戦いでは本気を見せて下さるのでしょうから」

 

「ッ!!……っ……ええ、そうよ!次で仕留める!」

 

 きっと──スズは、先程の戦いで十二分に本気を出せていたのだろう。けれど、それでもこうして、圧倒的な力の差で捻じ伏せられてしまった。

 辛い現実から目を背けたいのだろう。仕方ない。最強を自負していた自分が、こうもアッサリ倒され後輩や先輩に負けた姿を晒す事になったのだから。

 

「そういえば先生、アスカは?さっきからアイツの姿が見えないんだけど」

 

「うん……アスカは、1人になりたいって言うから、今はそっとしておくことにしたよ。救護班の手配もあったからね」

 

「ん?待って。あたしらは気絶させられてたけど、アスカは無事だったって事?」

 

「無事と言えば無事、かなぁ。アンナ共々、かなりボロボロではあったからね。アスカにも同じ治療は受けてもらいたかったんだけど……」

 

「…………」

 

「……スズ先輩?」

 

「いや……なんか妙だなって思って。レイコって結構容赦無いタイプじゃない?なのに、アスカだけ……?同じく後方支援のアンナさえ気絶させられてたのにアスカだけ無事ってのもな……」

 

「そりゃあ、アスカ先輩の方が頑丈ですし……」

 

「さっきのリエの話によるとアスカの妹のアガリが裏切ってたのよね?」

 

「だからってアスカ先輩まで裏切ってるとでも?」

 

「有り得なくは無いでしょ」

 

「有り得ません。もし裏切ってたなら、それこそ、あの戦闘中に裏切ってた方が確実だったでしょう。リエ先輩だけアスカ先輩の回復を受けていなかったというのはシンプルに範囲の問題ですし、それならリエ先輩を仕留める絶好のチャンスだったはず」

 

「そう、よね……。現にあたしらなんかは、アスカの回復を受けてたからこそルーシィので足止め喰らう事になったものの、でも、それがリエがブッパするキッカケだったんだしね。そうよね、別にアスカが裏切ってるなんて事は無いか」

 

「そうですよ。疑り深くなりすぎです」

 

「……そーよね。ごめん」

 

 ルーシィの件があったら、疑り深くなってしまうというのも仕方ない。寧ろ今のは、裏切りと仮定しそれを否定できるだけの材料を論理的に考えられるルビーの方が凄いくらいだ。

 ──サエなんか、親友に裏切られていたと知って目覚めてから今まで泣き通しだというのに……。

 

「うう……アガリちゃぁん……うえぇぇん……」

 

「よしよし、大丈夫よ……しっかり捕まえてあなたに謝らせるから……ね?」

 

「だって……アガリちゃん達が学校を壊したなんて、そんなの…………矯正局行き確実じゃないですか!?どうしてこんな事に……」

 

「それは……飂熾冘巫髏を捕まえれば、分かる事よ。流石に、ここ最近のはオイタ(・・・)が過ぎてるからねぇ。そうでしょ、スズ?」

 

「つっても、アイツらどこ行ったのよ……?最後まで意識が残ってたアスカなら見てたかもだけど、連絡つかないみたいだし。リエも見れてないんでしょ?アイツらが逃げるとこ」

 

「ええ……レイコさんにやられましたから……」

 

「チッ、何なのよあのバケモノ……!どこまで削れば倒れるのよ……!!」

 

「彼女は余程、打たれ強いのでしょうね。ただただ鍛えるのにも限界はありますからね。素で強い、と思っていた方がいいでしょう。それに加え、私達と違って、どの武器も扱える器用さまである。まさに彼女は『規格外』が服を着て歩いてるようなもの。恐れ入りますよ、本当に……ッ」

 

 同族──同じ吸血鬼だからこそルビーはレイコのヤバさをこの場の誰よりも理解している節がある。しかしそれは、最前で撃ち合っていたスズも同じ。彼女の異常すぎるタフネスと、あまりにも突出した短期決戦型という彼女の戦術が恐ろしい程に綺麗に噛み合って初めて生まれる化学反応────。

 

「ねぇ、ルビー?」

 

「どうしました、先生?」

 

「他の吸血鬼の子達とかにも、声を掛けてみるのはどうかな?私の生徒にも1人、吸血鬼の子が居るんだけど、確かに、その子も飛び抜けてタフだった。継戦能力だけなら、ゲヘナの風紀委員長も超えてるくらい。……ルビーもかなりタフな方だよね?」

 

「ええ、まぁ……。私もタフな方だとは思いますし、私達吸血鬼は、生まれ持った『日光』という弱点があるのと引き換えにこのタフネスを得ているものと思っていますが……他の吸血鬼はアテになりません。時間を使ってまで、わざわざこちらから話し掛けるまでもありませんね」

 

「それはどうして?」

 

吸血鬼は軒並み飂熾冘巫髏に加入してるから──ただそれだけです」

 

「────ッ!?」

 

「私もこれで一応思春期の女の子ですから、あまり深くは聞かないでください。──ただ、それぞれ、コミュニティのようなものがあるんです。だから、それくらいの事なら私だって知ってます。私以外の吸血鬼が……既に敵だということくらい……」

 

「待って、ルビー……だからあんた、統治委員会への志願者も全部ブチのめして門前払いしてたの?」

 

「ええまぁ。──アガリが美食研究会対策委員会に加入したのも、恐らく姉のアスカさんを勧誘する為でしょう。吸血鬼が志願してきた時点で、私自らが門前払いしていたのは────スズ先輩、あなたが飂熾冘巫髏に勧誘されないようにする為です」

 

「…………バカね。あたしがそんな勧誘に乗るハズが無いでしょ?」

 

「それは……そうですが。ですが……先輩は、ずっと私だけの先輩で良いんですよ……これだからドンカンクソバエは……

 

「あー?なんか言ったァ?」

 

「……何も」

 

 スズとルビーの湿っぽさは相変わらずか。いや、ルビーからの一方的なものか……?

 それはまぁ一旦置いておくとして。相変わらず、ハドマではブルーな気分に陥る事が続く。流石に、ヴァルキューレが割って入れる域を超えているとも思えるのだが……。

 

「──実は私も、何度も何度も勧誘されてまして。まぁ七天魔の1人ですし、レイコを除けば吸血鬼で最強は私でしょうから、スカウトしたくなるのも、分かります。でも、例え私以外の吸血鬼が敵に回り裏切り者と後ろ指を指される事になっても────私は、統治委員会に残り続けます」

 

「……ありがと。助かるわ」

 

「!?……スズ先輩が素直に礼を……熱あります?」

 

「あのねぇっ!礼くらい普通に言うわよ!それよりアスカ、早く戻ってきなさいよ……!何だかんだで、アスカのお菓子を食べると回復できるし……」

 

 治療も終わり、そう愚痴を言い合ったり、今後の作戦を考えたりなどしている中──急に、アンナがワッと声を上げる。

 

「あっ!アスカさんからメッセージ来ましたよっ!七天魔グルです!…………えっ……?

 

「「「「────ッッ!!」」」」

 

 共に七天魔をサポートする立場にあるアスカに、自分が気絶から目覚めてからというもの常に連絡を取ろうとし続けていたアンナは、真っ先にアスカのメッセージに気付く。

 その時は全員、パッと表情が明るくなった。

 しかしそのメッセージを見た瞬間、明るくなった表情も、急転直下。一瞬で凍り付くことになった。

 

 

 

 

 

ごめんね

 

私もあっちに行く

 

さよなら

 

アスカが七天魔を退会しました。

 

 

 

 

 




次回、絶望の淵に立たされて。


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第2章:旧ハドマ学園
第8話:絶望の淵に立たされて


 

 シャーレの先生が到着する少し前────。

 

「っ……アンナ!アンナッ!起きてアンナッ!!」

 

「アンナもとっくに気絶(オチ)たよ。スナイパーってのは厄介だから。……後はあんただけよ、三重アスカ」

 

「っ……!!アガリッ!!あんた、なんで飂熾冘巫髏なんかに……!!」

 

「だって……楽しそうだもの」

 

「……は?楽し……そう……?」

 

「そうっ!悪魔はさ、暴れてなんぼだと思うのっ♪ 折角、普通の人間より強めに生まれたんだしさ?」

 

「なに……言ってんの…………?」

 

「……副総長〜、やっぱ私にお姉ちゃんの勧誘は無理ですよ。考えが合わないもん」

 

「あんたがアスカに合わせなさすぎなのよ。バカ。勧誘ってぇのは、こうやんのよ」

 

「……ッ!?」

 

「──三重アスカ。あんた、飂熾冘巫髏に来な」

 

「行くワケないでしょ!?ゲヘナのヤツなんかと、同じ空気なんか吸えないわ!というか誰があんたらなんかに手を貸すものですか……!!」

 

「うんうん、アスカが美食研究会のヤツを憎んでる話は知ってるよ。だからこそ、私達についてきな」

 

「はあ……!?」

 

「飂熾冘巫髏の目的はゲヘナを乗っ取る事よ!前に言ったわよねェ?風紀委員会も何もかも、邪魔者をブッ潰して私達が新たな生徒会として君臨するの、それが目的よ」

 

「……」

 

「あんたの憎む美食研究会もブッ潰せるわ。私ら、飂熾冘巫髏の力なら……!!」

 

「っっ!!」

 

「あんたのお菓子って、甘々で美味しいんでしょ?よくルーちゃ……ルーシィから聞かされてるのよね。そんな美味しいお菓子を酷評されて、貶されてさ。ムカつくわよね、悔しいわよねェ。私達があんたの復讐に、手ェ貸してやるわ」

 

「…………ッ」

 

「あんたは七天魔だし、幹部の座は確約したげる。副総長である、この私のお墨付きよ。──どう?」

 

「かッ……幹部なんか、興味無いわよ……!」

 

「……てか、なんか反応薄くない?」

 

「…………」

 

「ま、いいや。そろそろ撤退するわ。もしその気になったら、妹に連絡しなよ。そんときゃ、アガリ。あんたがアスカを連れてくるのよ?」

 

「はーい。……じゃーね、お姉ちゃん。また後で(・・・・)

 

「…………」

 

 ◆

 

「そんな……アスカさんまで、なんて……」

 

「委員長ぉ……うわあああぁぁぁっっ!!なんでっ、なんで!どうしてですかぁ……私、委員長達に、何かしちゃったんですか……?ああぁぁっっ……!!」

 

 親友のアガリの裏切りに続き、自分が慕っていた委員長のアスカまでハドマを裏切り、飂熾冘巫髏に味方してしまう事態に、2人と同じ委員会であったサエは悲しみに暮れる。

 同日、しかも殆ど同時に慕っていた2人がこうも裏切ったとなっては、リエすら、サエをどのように慰めたものかと言葉が見つからない様子だ。

 幾つものベッドが詰め込まれている保健室にて、手当された少女達は、悲しみに暮れる……。

 

「アスカの妹も飂熾冘巫髏だったのなら、その妹に勧誘された──と見るのが自然かな?」

 

「先生はアガリに会ったことは無さそうだからアレだけど、アガリとアスカって、姉妹だけどあんまし仲は良くなかったハズよ」

 

「ですね。アガリは──何と言うかプライベートに踏み込むようなところがあって。アスカさんは天然みたいな所がありますが、そういう所については、人一倍敏感なんです。だから、あの姉妹はあんまり仲は良くない。それが私達の中での、三重姉妹への共通認識でした。……サエさん、委員会の活動中でのあの2人は、仲良さそうでしたか?」

 

「ひぐっ……ぐすっ…………え、と、そんなに、話す、事とかも……無くって……いつも、間に私が居て……。私の隣には……いつも、あの、2人が居て……ッ!」

 

 それ以上は言葉を紡ぐ事ができず、ただひたすら泣く事しかできなかった。

 私も、どうにか慰めの言葉を掛けたいが────ダメだ、今は何を言っても彼女を傷付けそうだ。

 

「んなコト言ってさ。あんたも、あたしらハドマを裏切って飂熾冘巫髏に加入しそーな勢いねェ」

 

「そんな事ッ……無いです!!」

 

「スズ先輩、待って……」

 

「親友に続き敬愛する委員長まで。知ってるわよ、サエ。アスカってあんたを可愛がってたでしょう?委員長委員長ってついてくるあんたを妹みたいに。だからこそ、実の妹のアガリを差し置いて、自分の補佐役にする為にあんたを副委員長に据えてさ」

 

「そん……な……事……っ…………」

 

「ハッキリ言ったらどうなん?『私も飂熾冘巫髏に加入しちゃいたいです』って────」

 

 閃光の如きビンタが迸る。特に何の前触れもなく発せられたビンタは、スズの頬でバチィッと派手な音を立てて振り抜かれる。

 ビンタをしたのはルビー。スズに重い感情を抱く後輩、ルビーであった。

 

「…………」

 

「る、ルビー……?」

 

「どうして、2人に裏切られたばっかりのサエに……そんなこと、言えるんですか……?」

 

「別に……思ったこと言っただけよ……!」

 

「最ッ低!なら私にも同じこと言ってくださいよ!私だって何人もの友達が飂熾冘巫髏に流れたっ!!それでも先輩が統治委員会で踏ん張ってるから!!私だって耐えてたのに……っ」

 

「──っ」

 

 瞬間、スズの脳裏に去来するのは、先程ルビーが言っていた「吸血鬼は軒並み飂熾冘巫髏」の言葉。同族だけのコミュニティがあり、そこからドンドン友人が飂熾冘巫髏へと流れて行き、今のルビーは、言わば「コミュニティからハブられている」状態。

 つまり今のスズの言葉は、そんな孤独なルビーに対し「なんであんたは飂熾冘巫髏に行かないの」と言っているようなものでもあったのだ。

 

「っ……ごめ……」

 

「謝るなら私よりサエに謝ってください、ハッキリ言いますが今の先輩の発言は最低です、マジ本気で見損ないました」

 

「ごッ……ごめんなさい、サエ………………私、その……あなたに、酷い事言った……」

 

「……いいんです。飂熾冘巫髏の2人に挟まれてたんですから……疑われるのは、仕方ないですから」

 

「いや!……あれはその……疑ってたんじゃないの!そうじゃなくて、なんていうか、ヤケクソで……!!どいつもこいつも裏切ってくるからっ、おかしく、なりそうで……だから…………ごめん、なさい……」

 

「……大丈夫ですよ。それより、皆さん。お菓子でも食べませんか?落ち込んでばかりも良くないです!作戦会議の前にちょっとお菓子タイムにしましょ!ちょっと待っててくださいっ、お菓子のストック、持ってきますから!」

 

 無理に笑顔を作っているのが何となく分かった。そっとしておきたい気持ちもあったものの、サエに飂熾冘巫髏の構成員が接触してこないとも限らないハズなので、私はサエについて行く事にした。

 

「……」

 

「ストックなんて言ったら聞こえはいいですけど、実際は廃棄する手前なんです……。私、まだ、委員長みたいには美味しく作れないから……」

 

「それでも、今の皆には、染み渡ると思うよ」

 

「そう、ですかね……」

 

 そんな話をしている内に家庭科室に到着。校内は荒れてはいるが、全体が荒廃しているワケでもないらしい。何と言うか荒れ方まで中途半端に思えた。

 まるで売り物のように個包装にされて、缶の中に並べられていた彼女の手作りクッキー等のお菓子は見た目の綺麗さだけで言うのなら売り物と遜色ない完成度に思える。

 

「先生、1つ食べてみてください。ダメそうなら、委員長の置き土産の方でも持って行きますし……」

 

「頂きます」

 

 サエのお菓子は美味しかった。飛び抜けた甘さは無いが、砂糖の甘みの主張が強くなく、材料本来の風味や甘みが、砂糖に引き立てられていて、上手く効いている。放課後スイーツ部の子が食べても私と似た反応になりそうな気さえする。

 

「美味しいよ。これ全部、持っていこうか」

 

「えっ、ええっ!?」

 

「アスカの置き土産の方を持って行ったら、余計に空気が荒れそうってのもあるけど、サエのお菓子も美味しいよ」

 

「そうですかね……先輩の作る方が美味しいと思うんですけど……」

 

「甘さだけが美味しさじゃないよ。自信持って!」

 

「っ!……ありがとうございますっ……!」

 

 アスカやアガリのお菓子はまた後日、私達2人で消費する事で合意し、今はサエのお菓子だけ持って皆の待つ保健室に戻る事にした。

 その道中は、先輩との思い出話に花を咲かせた。サエから見たアスカやアガリなどなどについても、色々と教えてもらった……。

 私達が保健室に戻ると、これからどうするのか、という議論が白熱しているようだった。スズ達は、統治委員の情報網や人数の多さを駆使して今すぐに飂熾冘巫髏を探しに行こうとしているし、シエルやリエなどは、まだ早すぎると、もう少し待つべきと窘めたりなどしている。

 

「奴らの目的はゲヘナの乗っ取りでしょ?そんならさっさと奴らを止めないと今よりヤバい事になるに決まってんじゃん!追撃よ、追撃!」

 

「逃がしてしまったとはいえ、深手を負わせたので今すぐにゲヘナに侵攻される可能性は低いですわ」

 

「それに加えて、今は私達の方がボロボロでしょ。この状態で飂熾冘巫髏と決戦とか無理に決まってんじゃん。本気出したとして、スズ1人でアイツらに勝てんの?」

 

「統治委員会はスズ先輩や私の強さよりも、人数がウリです。人数の差を活かした人海戦術なら……」

 

「人数の差?何言ってんの?飂熾冘巫髏がどこに、何人居るかなんて分かんないでしょうがよ?初めてレイコと戦ったあの時みたいに、一気に60人くらい攻めてくるかもよ?勝てんの?統治委員長さん?」

 

「勝てるに決まってんでしょ、私はハドマ最きょ……結構強い方なんだから!」

 

「あー良かった、自覚はあったんだ?これでもし、まだ『最強』とか言おうものなら殴ってたわ」

 

「っ……このッ………………クソッ!!」

 

「シエルさんっ!……今はとにかく、私達だけでも、纏まりましょう。我々がこんな様では、皆様にも、示しがつきませんわ」

 

「……ちぇっ。リエの言う通りではあるけどさー」

 

「実際問題どうすんのよ、これから……」

 

 スズとシエルの言い合いは相変わらず。アンナは布団を被って寝ている──いや震えているようだ。流石にアンナにこんな言い合いに割って入るなんてことはできないか……。

 しかし私もサエもそれは同じで、こうして2人でお菓子を持ってきたのはいいものの、中々、議論の白熱する保健室に入れないでいた。

 すると曇りガラスに映る私の影に気付いたのか、議論を中断させようとするルビーの声が……。

 

「まぁとりあえず、お菓子が届いたようですから、甘い物でも食べて落ち着きませんか?」

 

「「!!」」

 

 ナイスルビー!と、心の中で彼女にグッと親指を立てる。持ってきたお菓子を小皿に移して皆に配る私達だったが──皆の顔は曇るばかりだった。

 

「よりによってクッキーか……」

 

「美味しいですけど……」

 

「サエさんのも美味しいですわね……」

 

「……何だかんだ、あの甘さも嫌いじゃなかったよ」

 

 クッキーだったが故に逆にアスカを思い出させてしまったようだ。しんみりとお通夜モードになるが次の瞬間、スズはバチッと自らの頬を叩く。

 

「よしっ!さっさと回復して、さっさと決戦よッ!そんでアスカのことは連れ戻そうっ!!ルーシィは飂熾冘巫髏のボスだから、連れ戻すも何も、倒して矯正局にブチ込む!これでどーよ!完璧っしょ!」

 

「……それしかないですね」

 

「ったく、私が言おうとしてた事だっつの。ホントスズってば生意気な後輩ね」

 

「ええ、そう致しましょう。矯正局へと送るのは、主犯格だけで……ルーシィさんとレイコさんだけで、事足りるでしょう」

 

「そうね!」

 

「そうですね」

 

「……そーと決まりゃあ……サエ!おかわり!」

 

「ふぇっ!?……あっ、は、はいっ!!ありったけのお菓子、持ってきますね!」

 

「アスカ達の分も食べてやりましょ!甘ったる〜い砂糖だらけのねッ!連れ戻したら、嫌になるくらい作らせてやるんだから!」

 

「……ですって、先生!」

 

"そうだね"

 

"全部、持ってこようか"

 

「はいっ!!」

 

 ◆

 

 一方、現在より少し前、連邦生徒会の記者会見が始まった頃のゲヘナ学園、万魔殿では────。

 

「みんな集まれ〜って、何があったんだろーね?」

 

「さて……。マコト先輩ですから、まぁたロクなこと企んでないでしょうね……」

 

 万魔殿の主なメンバーが集められて、記者会見を皆で視聴することに。当然ながら、イロハ達とて、マコトから「ハドマ学園と併合した」という事など聞かされてはいない。

 そう、ゲヘナ学園もまた、当事者であるマコトは連邦生徒会からの発表まで全て秘密にしていた。

 当然──そんな会見を見せられては誰もが困惑、驚きを隠せない。事態をよく分かっていないイブキなどはともかく普段から飄々としているイロハさえ困惑が隠せないでいた。

 

「マコト、先輩……?」

 

「キキキ、まァそういう事だ。あの細長い自治区を有するハドマ学園は、既にッ!!──我らがゲヘナ学園の一部となった……!!ハドマ学園第1校舎は、ゲヘナ学園第3校舎に──ハドマ学園第2校舎は、ゲヘナ学園第4校舎となったのだ!!」

 

「副会長と、調印式を執り行ったと……?」

 

「あァ、ハドマ学園崩壊の直後にな」

 

「ハドマ学園生徒会の副会長────確か、名は、針村ルーシィ……でしたか」

 

「お?流石はイロハ、知っていたか」

 

「まぁ……姉妹校だった過去があるようですからね。知識だけで、顔も知りませんし、当然、会った事もありませんけど……」

 

「────いいや。お前は会った事があるぞ」

 

「え……?」

 

 マコトの言葉にイロハは再度困惑してしまった。会った事がある、一体どこで?記憶を巡らせるも、全くそんな記憶は無い。ふと思い立って、スマホでハドマ学園のホームページにアクセス──生徒会の役員の写真を見ても、やはりルーシィに見覚えなど欠片も無かった。

 首を傾げ、マコトに「やっぱり知りませんよ」と言葉を返そうとした、その時。

 

「イロハ。……確かお前は、シャーレの先生の誕生日パーティとやらに顔を出してたハズだ、違うか?」

 

「行きましたけど……それが何か?」

 

「あの場に居たんだよ。針村ルーシィはな」

 

「!?」

 

「ま、シャーレの先生とやらは教職員でありながらハーレムなんぞ作っているものだから、彼女やら、そういう女の対応でいっぱいいっぱいだったろう。元の関わりなんて皆無なルーシィ(あの女)の事など、ろくに頭にも残っていないハズさ、キキキキ……!」

 

「副会長自ら、密偵に行っていたとでも……?」

 

「そんな所だろうな。あの女は生徒会の副会長だ、会長がシャーレの先生へ救援の手紙を出そうと計画していた事も知っていたハズ。故に……」

 

「──副会長という立場であるが故、先生に救援を求めるのを止めるのは不自然。それならば、先生が来る事を見越して計画を立てよう、と……?」

 

「そ、そういう事だ。だからあの場に堂々と参加、先生の言動などから性格などを大まかだが把握し、それも含めて計画を立てたんだ。それでも急ピッチだったがな。やはり『先生』という異分子は可能な限り排除したかったそうだが、奴は、未知の部分が大きすぎるそうだ。だから、奴が深入りする前に、事を起こしたんだそうだぞ」

 

「…………悪知恵が働きますね、その女」

 

「全くだ」

 

「ですが先輩、また、騙されていませんか?その、針村ルーシィという女に。アリウスの時みたいに、爆破されたりしません?」

 

「大丈夫だろう。何か贈り物を受け取ったワケでも無いからな。それに、ハドマとゲヘナの併合後は、奴らと風紀委員会をぶつける計画、いや、そういう契約になっているんだ。これで風紀委員会とも遂にオサラバというワケさ!キキキキッ……!!」

 

「風紀委員会、かなり強いですけど。勝てます?」

 

「ハドマ学園を乗っ取った、針村ルーシィの率いるテロ組織『飂熾冘巫髏(ル・シュ・フェル)』には、我々の銃火器を少し提供している。人数もさることながら、質まで向上しているのだ。勝ってもらわなくては困るさ」

 

 周囲がザワつく。生徒会の副会長が、テロ組織を率いている──にわかには信じ難い話だし、普通、有り得ない事だ。それは常識的に考えてもそうだし荒れまくっているゲヘナにおいてもそうであった。

 

「副会長の率いるテロ組織?──イマイチ、先輩の話だと全貌が見えませんね。ただそれでも、ハドマ学園崩壊からゲヘナとの併合については、ハドマの副会長とマコト先輩の2人による、あまりに悪質な出来レース……という所までは、理解しましたよ」

 

「フンッ。──今頃、ハドマでは、あの女が会長に最後の復讐を果たしている頃さ。それが終わり次第ゲヘナにやってくる計画だ。その後は風紀委員会と交戦────そして現在モルモとイオリは都市部、風紀委員会支部に派遣済み!切り込み隊長2人抜きという現状を鑑みるに、完全に、ヒナのワンマンで戦うしかなくなるッ!数も質も飂熾冘巫髏が上だ、ヒナでさえ敗色濃厚さ……!」

 

「……マコト先輩らしくない程に計画的ですね」

 

「これはルーシィの案さ、悔しいがな。風紀委員会支部をシャーレの近所に設置し、そこにモルモを、そして幹部格1人を目付け役として派遣させるのも全てはルーシィの計画の内さ!何故か副総長の方はそれを知らないようだったが、まあどうでもいい」

 

(これは……少々、まずいですね……)

 

 ◆

 

 その頃、風紀委員会では────。

 

「はぁ!?ゲヘナ学園とハドマ学園が併合した!?そんな、風紀委員会(わたしたち)に何の相談も通達も無く!?」

 

「……あのクソタヌキ、行く所まで行ったわね」

 

「どっ、どうするんですかヒナ委員長……!?」

 

「アコ。モルモとイオリにすぐ連絡を。今すぐに、あの2人をD.U.から呼び戻す」

 

「は、はいっ!」

 

「委員長──恐らく議長は、ハドマ学園を使って、何か企んでいますよ」

 

「分かってる。チナツはとりあえず2個、いや3個小隊くらいで編成して、出撃準備しなさい」

 

「3個小隊ですか!?……万魔殿に、ですか?」

 

「違う。私達に何の相談も通達も無く──ってのは別にどうでもいいけど、こんな急に併合だなんて、どう考えても怪しい。ハドマ学園崩壊と、何らかの関係があると考えて動いた方が良さそう。──もし最悪の場合は……ハドマ学園を崩壊させた連中との、戦争になりかねないわ」

 

「「────ッ!?」」

 

「ハドマ学園を崩壊させた奴らにゲヘナ学園も崩壊させられるかもしれない。各自そのつもりで警戒。迅速に動きなさい。私も、すぐに戦闘用意につく」

 

「「了解っ!!」」

 

「アコ、ハドマ学園生徒会のデータと、ハドマ学園崩壊事件の犯人と思しき奴らのデータを寄越して。確か事件捜査にヴァルキューレが関わってたハズ。データ共有だとか、ハドマ学園はもうゲヘナ学園の一部になったからみたいに、ヴァルキューレから、事件に関する情報を引き出して私のスマホに共有。モルモとイオリへの連絡を終えたら、急ピッチで。いいわね」

 

「はっ、はい!すぐに!!」

 

 ヒナの懸念は、当たっていた。

 現に、針村ルーシィ率いる飂熾冘巫髏はゲヘナの乗っ取り、つまり「現体制の崩壊」を目論んで行動しているからである。

 ハドマの場合と1つ違う所があるとすれば「学園自体の崩壊」は望んでいない、という所のみ。

 そして、ヒナの懸念の通り────飂熾冘巫髏の魔の手は既に、ヒナ率いる風紀委員会のすぐそばに迫っていた。




次回────風紀委員会vs飂熾冘巫髏


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第9話:風紀委員会vs飂熾冘巫髏(ル・シュ・フェル)

 

 ヒナが懸念していた通り、飂熾冘巫髏の手によるゲヘナ学園への侵攻は極めて速やかに行われようとしていた。

 連邦生徒会による記者会見が行われた日の夕方、ヒナの命令にて厳戒態勢を敷いている風紀委員会の本部に、予定外の来客が訪れる……。

 

「いっ、委員長!報告ですっ!」

 

「何かあった?」

 

「そ、それが、本部の外に『旧ハドマ学園生徒会の副会長・針村ルーシィ』を名乗る生徒が来まして。なんでも、『ヒナ委員長に是非ともご挨拶を』と、部下も連れず……1人で」

 

「!!」

 

「……委員長、ハドマ学園生徒会副会長って……」

 

「ええ、生徒会長が意識不明だった間にマコトとの調印式を執り行ったという、あの副会長ね。学園の運営に自信が無く、連邦生徒会からの打診の通りにゲヘナ学園に委ねたと見る事はできる。でも……」

 

「タイミングがタイミングですしね」

 

「そう。ゲヘナ学園との併合に反対する生徒会長が不在の間にとっとと調印を済ませようとしたように見えて仕方ない。何ならその生徒会長が意識不明に陥った学園崩壊の事件だって副会長とやらの計画の内かもしれないし」

 

「……どう対処しますか?」

 

「急な訪問って事で、失礼を承知でこのまま入口で対応するわ」

 

「!?」

 

「ただし─────……」

 

「……!」

 

「私は大丈夫だから。あと、アコも来て」

 

「は……はいっ!!」

 

 そんな会話、手配を2、3分で済ませたヒナ達はルーシィの待つ本部の入口へ急ぐ。

 扉を開けるとそこには確かにルーシィ1人だけがそこに居て、部下など引き連れている様子は無い。人懐っこそうな笑みを浮かべて、ヒナの顔を見ると同時に、にこやかに話しかけてくる。

 

「ハロハロ〜、こんにちはヒナさん!初めまして!旧ハドマ学園生徒会副会長、針村ルーシィです!」

 

「はろは……?こんにちは。風紀委員長、空崎ヒナ。よろしく」

 

「はいっ!よろしくお願いしますっ!」

 

「……1つ、聞きたいのだけど」

 

「はい、何でしょう!」

 

「あなた、生徒会の副会長だったのでしょう?何故マコトとの調印に──併合って結論に至ったの?」

 

「っ!……それは……」

 

 ────カァン!!

 

 突如として鳴り響く甲高い金属音。目を丸くするルーシィ、対して何食わぬ顔のヒナ、アコ。ヒナの額には、薄く、擦り傷のようなものが出来ていた。

 

「……は?」

 

「──悪いわね。生憎、その程度の銃弾なら私には効かないのよ」

 

「〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ!!?だからって金属音が鳴るなんて……どんな頭蓋骨してん……ギャッ!?」

 

 アコが指を鳴らす、同時に今度はルーシィが頭を押さえてその場に蹲る。予め待機させていた、風紀委員会のスナイパーが彼女を撃ったのだった。

 それを皮切りにして、風紀委員会の生徒が一斉にルーシィに銃口を向けて取り囲む。

 

「旧ハドマ学園不正併合の疑いで、針村ルーシィ、あなたを連行する。洗いざらい吐いてもらうわよ」

 

「……全てお見通しってワケね?」

 

「全てではないけれど、大体は読めてる。あなたが学園を崩壊させ、生徒会長を行動不能の状態にして実権を手にした上で、マコトと調印式を行う事で、曲がりなりにも規定通りに、規則に則って、両校を併合させたんでしょう?」

 

「あぁそう、そこまでバレてちゃあ仕方ないわね、もう実力行使でいくしかないわッ!!」

 

「「!!」」

 

「レイコッ!!」

 

「アイアイサ〜♪」

 

 ルーシィの呼び掛けに応じて、レイコが現れる。その手にはやはりマシンガンとスナイパーライフルという異色の銃器が握られていた。

 レイコが何処かにSRを発砲すると「うっ!」と小さい呻き声が上がる。ルーシィを狙撃した、風紀委員会の生徒だった。

 それを見たヒナとアコは同時に違和感に気付く。レイコが手にしているソレはゲヘナ学園の支給品(・・・・・・・・・)のマシンガンとスナイパーライフルだったからだ。

 

「……成程、マコトと取引したのね?併合してすぐにゲヘナ学園の銃器が支給されるハズがないもの」

 

「ええそうよ、飂熾冘巫髏(ル・シュ・フェル)の強化にはゲヘナ(こっち)の銃が必要だったからね。お陰様で、ハドマ学園の連中を良い目(・・・)に遭わせてやれたわ」

 

「ルシュフェル……?」

 

「私の組織の名よ。ハドマを乗っ取って、ゲヘナと併合し────ゲヘナをも乗っ取る為のねェ!!」

 

「「ッ!!」」

 

 ルーシィの言葉と同時に、彼女の隣からレイコが激しくマシンガンを発砲。

 戦闘開始──ヒナが最前線でレイコとルーシィと撃ち合い、アコとチナツがヒナをサポートしつつ、他の風紀委員の生徒を前線に送り込む。風紀委員会本部を前にして、遂に、両組織が衝突した。

 

「目には目を、歯には歯を。雑魚には雑魚を──!あんたら、総力戦よォッ!!」

 

 ルーシィの声に合わせて、本部近くの建物から、ワァワァと飂熾冘巫髏の構成員が溢れ出してくる。その数、実に80人は超えている。風紀委員の生徒は現在、5、60人程度。

 数では負けているものの、質では上回っている。チンピラや、ただのテロ組織構成員などと比べて、伊達に訓練を重ねていない。

 ましてや最近は風紀委員会に副委員長が設置され後進の育成にも力を入れ始めた風紀委員会である、それなら尚更、質は高まりつつある。

 

「ヒナ委員長に続けー!!」

 

「行けぇ!新武器の性能見せてやれぇーっっ!!」

 

「敵の武器はゲヘナの支給品!そんなに強くない!今の内に攻めろ攻めろー!!」

 

「量産型風紀委員なんぞに負けんなぁぁーッ!!」

 

「『終幕:イシュ・ボシェテ(EXスキル)』────!!」

 

「「「ぎゃああああああ〜〜っっ!!!」」」

 

 アコやチナツのサポートを受けたヒナは、まさに無敵と言うべき暴れっぷりを発揮する。飂熾冘巫髏構成員を容赦なく蜂の巣にして、後方で指揮を執るルーシィ、レイコに進撃していくヒナだが構成員が肉の壁となりヒナの前に立ち塞がる。

 そこでルーシィは、構成員に向けて新たな指示を飛ばした。

 

「あんた達ィ!『熱殺蜂球(ねっさつほうきゅう)の陣』ッ!!」

 

「ねっさ……!?」

 

「……もう少しの辛抱だ!行けぇッ!!」

 

 その瞬間、構成員達の動きが変わった。風紀委員全体への攻撃だったのが、ヒナ周辺の風紀委員への攻撃に切り替わる。構えも何も無いところに急激に攻撃対象が切り替わってしまっては、風紀委員達は為す術なく打ち倒されてしまう。

 そして、ヒナ周辺の風紀委員が倒されて生まれたその空間に、再び風紀委員が駆け付けて囲む前に、構成員達が一気になだれ込みヒナを囲んでしまう。

 

「怯むな怯むなッ!風紀委員長がどんなもんだ!」

 

「副総長に比べてみろ!逃げたいヤツは死ね!!」

 

「副総長の準備が整うまで、耐えるんだぁぁッ!!飂熾冘巫髏、進めェェェーーーッッ!!!」

 

「「雑魚同然!雑魚同然!!雑魚同然!!!」」

 

 自ら声を張り上げ、ますます密集する構成員達。その様子はまさに、スズメバチに群がるミツバチのようで、ルーシィはそんな構成員達を見て、密かに頬を緩ませていた。

 当然とも言うべきか、ヒナは集中砲火を浴びても大したダメージは受けない。寧ろブンブンうるさいハエ程度にしか思えなかった。さっさと一掃したいくらいだった。

 しかしヒナのEXスキルは、強くとも連続しては使えないのが玉に瑕である。だからこそ溜めるまで耐えなくてはならない。

 

「チッ。塵も積もれば、か。……チナツ、回復!」

 

『…………』

 

「?……チナツ、応答!」

 

 そろそろチナツによる回復ができる頃のはずだと感じたヒナは、回復させるようにとチナツに無線で指示を飛ばす。

 しかし、チナツからの返答は無く、同じく無線を聞いていたアコが悲痛な声を漏らした。

 

『委員長ッ、本部にもル・シュ・フェルの連中が!そちらに増援を送れません!!』

 

「増援はもう要らない、それよりチナツは?」

 

『恐らくですが、本部へと侵入した敵の対応の為に別働隊の指揮をしているか、もしくは────』

 

「……やられた、とでも言うの?」

 

『ッッッ……最悪の場合は……!!』

 

「後方支援の者まで狙うだなんて、随分と汚い真似してくれるじゃない」

 

『どう、なさいますか……このままでは……』

 

「アコは迎撃の用意。人員を集めて。もしそちらに敵が向かえば私への支援は切っていい、自分の方に集中して。何があっても本部の中枢は守り通して。悪いけれど『死守』よ」

 

『りょ、了解っ!!』

 

 ヒナのHPも段々と削られてきた。そんな中で、集中砲火の浴び具合を見て、ルーシィは構成員に、最後の指示を出した。

 

「あんた達ッ!『海開きの陣』ッッ!!」

 

「「「うわあああああああああっっ!!!」」」

 

「?」

 

 ヒナを取り囲んでいた構成員は、一気に左右へと散っていく。すると構成員が左右に退けた事により生まれた1本の道の間を悠々と歩く者が、1人。

 

「……!!」

 

 ヒナがEXを使用した上でチナツの回復を求めるという事は、それだけ準備期間があったという事。それならば、それとイコールで、レイコもレイコでコストを溜められる時間が経過していたという事。

 左右に引いたのは、シンプルに、レイコのEXの範囲外へと逃れる為。余計な人員を減らさないよう気を付ける為の、ルーシィの配慮であった。

 

「『荒ぶる破壊神の顕現(EXスキル)』ッ!!」

 

「「「……ッッ!?」」」

 

 レイコを中心にした特大円形範囲内の全員に対し特大ダメージ。風紀委員達の多くは倒れるがヒナは持ち前のタフさで耐える。

 そしてギリギリ倒れなかった風紀委員達は、銃の違和感を口々に訴え始める。

 

「委員長っ、銃が!銃が使えません……!」

 

「攻撃できません!」

 

(私の銃もダメだ──引き金が引けない?不具合?いや、これは「銃での攻撃」を阻害する効果──!一体何秒?壊れたワケではないのは体感で分かる、そんなに長くは無いハズ。効果範囲が広いスキルは範囲と引き換えに効果時間が短くなりがち────それなら、今は銃しか攻撃手段は無いと思わせて、次、もう一度(・・・・)あの攻撃が来たら(・・・・・・・・)…………!!)

 

 ヒナは風紀委員の誰より頑丈で、誰よりタフだ。それこそ、突然変異とか、生まれもってのバグとかそういう言われ方をしても仕方ないくらい、誰より飛び抜けて頑丈だ。

 だからこそ、たった今こうやって受けたレイコのEXスキルを、もう一度なら耐えられると、自分でそのように計算していたのだ。

 

「……60秒……」

 

「?」

 

「今よ飂熾冘巫髏!!『熱殺蜂球の陣』ッ!!」

 

 レイコのEX効果が切れない内に、範囲外に退避していた構成員がルーシィの指示で再び風紀委員を蹴散らし、ヒナを孤立させようとする。

 

「……!」

 

 引き金に乗せた指から伝わる感触が、変わった。先程まで動かなかった引き金が動くようになった。攻撃が──できるようになった。

 

「アコ、今いける?」

 

『むっ無理です!すみません!こっちも……』

 

「わかった。ならそれでいい、そちらに集中して。

終幕:イシュ・ボシェテ(EXスキル)』────ッ!!」

 

「「「ぎゃあああああああああ〜〜!!!」」」

 

 ヒナのEXが、構成員達をぶっ飛ばした。遂に、互いの末端を担う生徒達が尽きてきて、大将のみを残すばかりとなった。

 紅色の瞳をギラつかせて、レイコはヒナに迫る。手には相変わらずマシンガン、スナイパーライフルという異色の組み合わせ。

 ヒナはそれらを共に警戒しながら迎撃する事に。

 

「80ッ、秒ォッ!!当たれぇぇぇぇぇッッ!!!」

 

「さっきから、あなた、何をカウントしているのか知らないけど。銃弾も殆ど当たっていないし、もう終わりよ」

 

「終わりはそっちよ!!『星々の先導者(EXスキル)』ッ!!」

 

「…………っ!?」

 

 ルーシィのEXが炸裂。元からHPが少ない風紀委員の生徒はともかく何度も全方位からの袋叩きに遭っていたヒナにもクリーンヒットしてしまう。

 残りHPが多ければスタンする時間も長く、逆に少なければ短い──今のヒナは後者であった。

 故にそこから逆算して、たった3秒でスタンから脱したヒナのHPは少ないと飂熾冘巫髏側に露見。遂に、更なる集中砲火を浴びる事になってしまう。

 

「くっ…………後から後から、しつこい……!!」

 

「後方支援とも分断した!切り込み隊長も不在!!委員長の動きが鈍ってる今だ!畳み掛けるよッ!!勝つなら今、この場でよ!!レイコ、準備──」

 

「だ〜れが、不在だってぇ?」

 

「ゲヘナ風紀委員会切り込み隊長……現着だッ!」

 

 不敵な笑みと共に上空から降ってきたのは、風紀委員会副委員長である盛宮モルモ。そして、最速の切り込み隊長、銀鏡イオリ────!!

 幹部2人のいきなりの現着にルーシィとレイコは揃って攻撃の手を止めてしまう。けれども2人は、驚きを示した直後に、銃を取り落とす程のあまりに強烈な衝撃を受けた。

 

「ッ!?る、ルーちゃ……あ、あれ……って……」

 

「う……うそ、でしょ?モル(ねえ)ッ!?」

 

「……あれ?あんた達、もしかして────」




次回────ルーシィの誤算


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第10話:ルーシィの計算

 

「──あんた達、もしかしてルーシィとレイコ?」

 

「やっぱりモル姉……なの!?」

 

「いや、おかしい!もしモル姉なら、どうしてまだゲヘナ学園で学生やってんのよ!?何年生よ!?」

 

「絶賛、3年生を無限ループ中でーす☆」

 

「「!?」」

 

 モルモと2人は、どうやら知り合いらしかった。それをやり取りからすぐに察したヒナは3人の間にニュッと割り込む。

 

「連絡早々来てくれてありがとうモルモ、イオリ。早速で悪いけど、本部は今、この2人とその手下によって襲撃を受けてる。イオリはすぐ本部に入ってチナツとアコの援護に行ってくれる?」

 

「わ、分かった!!」

 

 ヒナの指示を受け、イオリはすぐさま本部の中へ向かう。場には死屍累々と積み上がる風紀委員達と飂熾冘巫髏の構成員達、そしてルーシィとレイコ、ヒナとモルモだけが残った。

 

「……モルモ、説明して。この子達とあなたの関係」

 

「いやぁ、関係っつーか、私がゲヘナ学園1年生んくらいの時に遊んでた近所の子っつーか顔見知り?みたいな……知り合いの女の子……って感じかな?」

 

「その割には親しいようだけれど」

 

「まぁ5年前だしね。あの2人が小学生の頃だから懐かれてたってのもあるよ」

 

「……そうか、モルモはもう5年以上はゲヘナ学園に居るんだったわね」

 

「うんうん」

 

 5年前────ゲヘナ学園にて抗争が起きていた時代である。モルモは当時1年生であった。そしてルーシィは小学6年生、レイコは小学5年生……。

 友人が健在であった頃のモルモは、まさに普通の高校生と変わらぬ青春を謳歌していた。学校帰りは友人と食べ歩き、遊び歩き……。

 そんな最中に彼女達は邂逅を果たしていたのだ。

 

「──で?あんた達ィ?今度はなぁにやらかしたのかしらァ?」

 

「も、モル姉こそ!なんでまだ学生やってんのよ!留年にしても留年しすぎよ!」

 

「私はまァ……失った青春を取り戻したくて、ね?」

 

「青、春……!?」

 

 遠い目のモルモ、けれどもそれを見てルーシィは顔を引き攣らせ、レイコはギリッと強く強く奥歯を噛み締める。そしてレイコはモルモを心底非難するように、指を突きつけながら激昂した。

 

「ラミ姉とプーさん殺されておいて、あんただけ!あんただけ、青春なんか謳歌しようってのッッ!?私ですらっ!私とルーちゃんですら、青春(そんなモン)、とうに投げ打ってるってのにッッ!!」

 

「あら、あんたらはまだやり直し効くでしょうよ。えぇと、ルーシィは2年、レイコは1年だっけェ?まだまだ青臭いガキじゃないのよ。若人は『今』を楽しんでこそよ〜?」

 

「ふざけ、ないで……ッ!どうしてよ、どうして!?2人も友達を殺されておきながら、のうのうと!」

 

「だってぇ……復讐って、ヤッてる内は必死んなって頑張るけど、いざ復讐を終えたら燃え尽き症候群になるんだもの……」

 

「!?」

 

「自分が復讐を終えたみたいな言い方────!」

 

「あらぁ、失礼しちゃうわ?あのクソッタレ集団の失楽殿を潰したの──どこの誰だと思ってんのよ

 

 ヘラヘラしていた様子から一転、別の人格にでも切り替わったのかと思ってしまうくらいに顔付き、声色が変化するモルモ。

 ルーシィは既に足に力が入らなくなり、ぺたりとその場にへたり込む。レイコもまた足をガクガクと震わせ、モルモに向けていた銃口すら、その照準を合わせられない。

 

「そんな燃え尽き症候群になってた私に、もう一度青春をやり直す機会をくれたのが、先生ってワケ♡ もっかい風紀委員会に力を貸す事になるとか、誰が予想デキんのよ?モルちゃん自身がまず驚いたわ。予想なんてまず無理だし〜」

 

「まさか……モル姉、なの……!?」

 

「失楽殿の後輩が……ハドマ学園で台頭するキッカケ作ったの……!」

 

「あん?失楽殿の後輩……?──あぁ、逃げたんだ。先輩が私に処理されてく中で、おめおめと?尻尾を巻いて逃げたんだ?アハッ!まぁそんくらい無様な奴らだったわぁ、失楽殿の奴らは。──で?まさかルーシィ?あんたら、私の復讐をなぞる(・・・)つもり?」

 

なぞる(・・・)……?」

 

「復讐はもう、終わってんのよ。私が終わらせた。だからあんたらは、この件から手ェ引きな。復讐に囚われンのは私だけで十分。あの2人の恨みは私が晴らしてやった。あんたらはフツーに過ごしなよ。フツーの女子高生みたいに食べ歩きして、映画とか観たり、ゲーセンで遊んだり。下らない復讐からは手ェ引きなさい。……『モル姉』からの、警告よ」

 

「「…………ッ!!」」

 

 睨み合うモルモとレイコ、ルーシィ。しかし未だ足を震わせながらも、膝に手を添えて、ルーシィはどうにか立ち上がり、真っ直ぐモルモを見据える。

 

「──残念だけど、私達の復讐も終わってんのよ。私自身が失楽園に入り、ハドマとゲヘナを併合し!ハドマに逃げ(おお)せた意味を無かった事にしたッ!!失楽園の議長のことも、ボロクソにしてやったッ!モル姉とは復讐相手は違うけれど、私達の復讐も、もう終わってる!今は復讐以外が目的で動いてる。邪魔するならモル姉と言えど容赦はしないから!」

 

「目的、ね。ゲヘナ学園を乗っ取るのが最終目的……じゃあなさそうねぇ。どうせルーシィ発案でしょ?ルーシィが考えたんなら……大方、レ────」

 

「うるさいうるさいッ!!何も言わないで、私達の前から消えたクセにッッ!!レイコッ!思いっきりブチカマしてやりな!!」

 

「はいはい!!」

 

 大きく口を開けるその構えを見たヒナは、再び、レイコのEXが来ると身構える。そして読み通りにレイコのEXが放たれるが──その効力は、普段の半分以下、いや100分の1程度に抑えられていた。

 ヒナ、モルモ、ルーシィへのダメージは、殆ど、皆無に等しかった。

 

「……え?」

 

「おバカさんねぇ。未熟なレイコの超音波程度──この私が相殺できないとでも思ったの……?」

 

「「────ッ!?」」

 

「モルモ……イマイチ話が見えないのだけど……?」

 

「ヒナちゃんは吸血鬼じゃないもんね。んとねー、レイコのあの攻撃はね、吸血鬼がデフォで備えてる超音波発射機能──反響定位(エコロケーション)を超絶強化したようなモンでさ。でも、音は波。逆の波をぶつけりゃあ、簡単に相殺できるものなのよ」

 

 音を打ち消す音────「逆位相」の音。これは吸血鬼ならば誰もが習得可能な基本技能の1つだ。特にモルモに限った話ではない。レイコもできる、ハドマ学園の吸血鬼の一般生徒もできる。ルビーも鍛えれば可能だ。

 そして、シッテムの箱。レイコのEXを受けて、先生がノーダメージだったのは、アロナが逆位相の音波を発する事で、局所的ではあったが、レイコの攻撃を完璧なまでに打ち消していたからであった。

 先生が聞いた「キィィン」という音は、ギリギリ超音波に分類されない程度の高周波の音。先生には無害であると、アロナ達が判断した音である。

 これまで散々この攻撃で無双してきたレイコは、自身の技が全く通じず、相手にダメージを通せないという事実に、先程のルーシィのように膝から崩れ落ちてしまった。

 

「吸血鬼として鍛えられる部分はトコトン鍛えた、なんて言ってたけれど……成程ね、こういう所ね」

 

「そゆこと〜」

 

「「……!!」」

 

 ギリリと歯を食いしばる2人。単なる火力ですら劣っているというのに、必殺技すら全く通じない。もう、2人に打つ手は残されていなかった。

 

「ヒナちゃぁん、どうすんの?」

 

「捕まえて計画を洗いざらい吐いてもらう。場合によっては、風紀委員会では対応不可だと判断して、矯正局に送る事になるでしょうけど」

 

「そっ……か。矯正局は、やぁねぇ……」

 

 哀れむような目を向ける。モルモにとってのこの2人は、紛れもなく「子供」であった。実際、既に成人している年齢のモルモからすれば、高校1年や2年など、紛れもなく子供である。

 そんな子供が──ましてや幼い頃を知る子供が、こんな事をしでかした。モルモの心境は、決して、穏やかではないだろう。

 

「……レイコ。あんた確か、ゲヘナ自治区に住んでたハズよね。わざわざハドマに通ってんの?」

 

「ううん。ハドマに引っ越したし」

 

「あんたもハドマに流れたクチか……そっか」

 

「……?何が言いたいのよ」

 

「今のゲヘナは、吸血鬼は私しか居ないけど、昔はそれなりに居たのよ?今はハドマに流れてるみたいなんだけど。──同族のコミュニティってヤツね。向こうに居るのが多数派と分かるや否や、そっちに流れるの。バカよね〜。『自分』っての無いの?」

 

「……『自分』……」

 

「確固たる己自身。それが無いから流されてばっかなのよ。そんなんだから廃れるのよね、ハドマは。わざわざルーシィが手を汚さなくたってさ、きっとそう遠くない未来、ゲヘナ学園との併合に至ってたでしょうね……まず間違いなく」

 

「ええそうね、分かってる。私は副会長として書類仕事もしてたし、連邦生徒会からの通達の書類とか全て目を通してる。でも捨てたし無視してきたわ、連邦生徒会に実力行使される前に私達で壊そうって決めてたからね」

 

「なぁるほど?ハドマ学園と連邦生徒会が音信不通状態だったのは、ルーシィのせいなワケだ?」

 

「ええ、だからあの会見を見るまで会長はハドマと連邦生徒会が音信不通だった事さえ知らなかった。私は校外に向けて、会長は校内に向けた仕事って、分担して仕事してたからね」

 

「普通逆だと思うけど、まぁ中途半端な連中だから何を考えてそんな結論に至ったのかは突っ込むのはやめておく。──バカね、ルーシィ。もし来年なら計画も上手くいっただろうに。今年はヒナちゃんがゲヘナで猛威を振るってるのよ?」

 

「私が空崎ヒナと戦うのが目的だったんだ!だから今年しかできない事だった!ルーちゃんの計画に、穴があったワケじゃないッ!」

 

「……最近になって設置された『副委員長』が私だと知っていたら、その計画、実行に移したかしら?」

 

「「────……」」

 

「ルーシィ。あんたは昔っからそうなの。策略家を気取ってはいるけど、肝心な所でガバるのよ。私とイオリちゃんを都市部に派遣したのも、下手したらマコトちゃんじゃあなくてルーシィの案かもねェ。現に、人員不足のお陰でヒナちゃんの事をここまで追い詰めたワケだし。もう少し私とイオリちゃんの到着が遅れていたら、最悪、風紀委員会本部も陥落してたかもしれない……」

 

「確かにその子の率いるル・シュ・フェルとやらは構成員が多いから、私1人で、一気に相手できる数じゃなかった。──正直、かなり危なかったわ」

 

「んね。かなりイイトコまでイッてた。だからこそ残念よルーシィ。あんたらの野望はここで終わり。大人しくお縄になりなさァい?」

 

「…………ルーちゃん……」

 

「────」

 

「ん?何か言った?」

 

「ここで負けても、既に目的は達成したも同然よ。私は常に、1つの行動につき『2つ以上の意味』を持たせて行動してる。確かに、風紀委員会の本部は乗っ取れなかった。悔しいけど、負けを認めるわ。でもね、第2の目的は既に達成されてるのよ!!」

 

「「!?」」

 

 ルーシィが銃に手を掛けたその刹那──レイコも同時に動き出す。

 ヒナとモルモも同時に銃を構え迎撃態勢に入るがレイコはルーシィを抱え上げ、逃走を開始した。

 

ッ!?待ちなさ────」

 

「モルモッ!!」

 

「ヒナちゃん!?なんで止めんのよ!?」

 

「見て、本部から敵の構成員が逃げ出してる。多分イオリが加勢した事で形勢が逆転したんでしょう。敵の目的が分からない以上は、深入りは禁物。もしこの先で待ち伏せされて、袋叩きにでもされたら、目も当てられないわ」

 

「けどっ……」

 

私さえ数の暴力(・・・・・・・)には負けたの(・・・・・・)。あなた達の加勢が無ければ、もっと酷い目に遭ってた。だからお願いモルモ、ここは耐えて。捕まえるにしても、もっと開けた土地でないと不利になるのはこっち。だから仕方ないわ。今は見逃しましょう」

 

「〜〜〜〜〜〜ッッ……!!!」

 

 段々と小さくなりゆくレイコとルーシィの背中。速度では上回っている自覚があるにも関わらず、今捕えられないもどかしさ。モルモが強く噛み締める下唇は切れ、鮮血が垂れ落ちた。

 

「──現に、あの手下達は、本部の近くの建物から出てきたの。だから、待ち伏せされている可能性の方が高いハズよ」

 

「あーもう、分かったわよ!んじゃせめて、本部の中に居るザコ共くらいは捕まえましょうかァ!!」

 

「ええ。それは遠慮なく、容赦なく。本部は私達の家も同然。待ち伏せの危険箇所は当然、把握済み。行くわよモルモ──殲滅戦(・・・)よ」

 

「りょーかいッ!!」

 

 その後、イオリ達とヒナ達との挟み撃ちに遭った飂熾冘巫髏の構成員は、50人以上が風紀委員によりお縄となり、風紀委員の牢屋に入れられる事に。

 しかし本部の中での殲滅戦の最中、1人、堂々と逃げ果せた者が居る事をチナツ以外の誰も知らず、また、気が付く事も無かった。

 そしてルーシィの「第2の目的」が、戦闘開始後ずっと音信不通だったチナツの口から語られる事になる……。




次回────計算通り


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第11話:計算通り

 

 殲滅戦の直前──イオリ参戦直後。資料室では、チナツが飂熾冘巫髏の幹部から拷問を受けていた。ただし、所謂「苦痛」による拷問ではなく、快楽(・・)によるものだった。

 

「ほぉら、分かる?イイ感じにプックリしてるわ?パンツの上からでも分かるなんて、相当ね♡」

 

「はぁっ、はぁっ♡ やめ、てください……っ、どこ触ってるんです、かぁっ……♡」

 

「クリ周りをこう、ク〜リク〜リってなぞってぇ♡ ふふっ、イイ感じに焦らせてるかしら?」

 

「っっ……あ゙……っ♡」

 

 チナツを後ろから抱き締め、片手では胸を揉み、もう片手ではパンツの上から陰部をイジる。

 ルーシィからある任務を任された少女は、本部になだれ込む末端の構成員達と共に侵入してきたが、彼女はただの構成員ではない。幹部(・・)の1人である。

 

「だぁめ、イカせやしないわ?ふふっ、思ったより口が堅そうだから、もっとイジメちゃおうかしら」

 

「やめ……っ♡」

 

「ふふっ、汗かいちゃってカワイイ♡ うなじも、すっかりしょっぱいじゃない……♡」

 

「ひぃっ♡ ひぁっ、あっ♡ はぁ、はぐぁ♡♡」

 

「イキたいのにイケなくてもどかしいわよねぇ〜、よーく分かるわぁ……?」

 

「っっ……ッ♡」

 

「ほらぁ、早く言ったらどう?そしたら気持ち良くイカせてあげるわ?『トリニティ最強の倒し方』、あなたなら知ってるんでしょう?」

 

「です、からぁっ!最強だけじゃ、誰のことかっ♡ わか、わからにゃいっ、ですってぇっ♡♡」

 

「トリニティの最強って剣先ツルギじゃないのぉ?他に有力なの誰か居たっけ?『団長が壊して団員が直す救護騎士団』の……蒼森ミネ?」

 

「確かにっ、ツルギさんは最強との呼び声も高く、実際、強いです、がぁっ♡♡ もっ、もぉ1人っ、飛び抜けて、はぁ、強い方が、居てっ……!!」

 

「へぇ?そいつは初耳。イイわ、じゃあソイツの事教えてよ。それから、戦い方とかも教えてね?」

 

「その人っ、はっ……も、元ティーパーティーのっ、みっ、みそ、聖園ミカ、さん……でずっ……♡♡」

 

「ティーパーティー……生徒会?へぇ、そんなヤツが居たんだ?総長達でも知らなさそうねぇ。ふぅん、面白いこと聞いちゃった……♡」

 

 ひぃひぃと息が上がった様子のチナツを見て興奮したのか、それとも未知の情報を得た興奮からか、ぺろりと、舌舐めずり。

 約束通りチナツをイかせようとして、クリ周りを攻めていた指をクリに当て……。

 

「お゙ひっ♡ ひぐっ、イグッ♡♡」

 

「ほ〜ら、さっさとイッ……」

 

「ゲヘナ風紀委員会、銀鏡イオリだッ!お前ら大人しく投降しろ!!」

 

「…………」

 

「……?ろぉひたんれふか……?」

 

「ごめんねぇ〜、ホントはチナツちゃんと、もっとエッチなことシたかったんだけど♡──どうやら、もうタイムリミットみたい。それじゃあね♡」

 

「あ……っ」

 

 ウインクと共に資料室を飛び出す少女。そして、彼女が出て行った数秒後に、入れ違いに、イオリがチナツの援護及び救助にやってきた。

 

「チナツちゃんッ!!……あ、居た。大丈夫か?」

 

「イオリ……?」

 

「ずっと音信不通だったらしいから心配してたぞ、アコちゃんも……」

 

「おんしん…………ごめんなさい……」

 

「……?まぁ無事なら良かったけど大丈夫か?ヤケに顔が赤いけど……」

 

「……ええ、大丈夫です。それより、1人この辺から逃げて行きませんでしたか……?」

 

「いや、見てないな」

 

「そう、ですか……分かりました」

 

「何かあったのか?」

 

「いえ、特に……何もありませんでしたよ」

 

「?……まぁいい、援護頼む!」

 

「はい。……では、いきましょう」

 

 ◆

 

 そしてルーシィとレイコが撤退し、アジトに帰還してから数分後────1人の幹部が、同じく風紀委員会の本部から撤退し、帰還した。

 飂熾冘巫髏(ル・シュ・フェル)幹部────萌山(もえやま)ライム。

 現在のキヴォトスで、唯一の純血の夢魔である。

 彼女はアジトに帰還するなり、その足で、組織の幹部達の部屋へ向かう。幹部達の部屋には、総長や副総長、幹部の他、幹部補佐しか入室は許されないという、唯一と言っていい規則がある。

 

「たっだいま〜。……あらぁ?何か空気悪い?」

 

「お帰りなさい、ライム先輩っ!」

 

「ただいま〜、アガリちゃぁん♡──んっ?あの、アガリちゃんそっくりの子って……」

 

「あ、はい!お姉ちゃんのアスカです!」

 

「あらぁ!遂に勧誘に成功したの?」

 

「いえ、その……結局、副総長が後押しして……」

 

「なぁんだ残念。それじゃ〜、ご褒美は無しね?」

 

「ぶーぶー……」

 

 頬を膨らませるアガリの頭をポンポンと撫でて、ライムは端の席で居心地が悪そうに縮こまっているアスカの後ろに立ち、その豊満な胸をアスカの首に押し付けて、ぎゅむっと抱きついた。

 

「初めまして、アスカちゃ〜ん?飂熾冘巫髏に加入してくれたんですってね?ありがと♡」

 

「っ!?あ……あなたは……?」

 

「ハドマ学園3年生、萌山ライム────と聞いてしっくり来たなら、情報通ね♡」

 

「ッ!?ハドマ学園イチのヤリマ……」

 

「ノンノン、そんな汚らしい呼び方はやめなさい?せめてそこは『遊び人』と呼んでちょうだい?♡」

 

「……どちらも変わらない気が……」

 

「自分より小さい女の子を手篭めにするのってぇ、何回ヤッても飽きないのよねー♡」

 

「…………」

 

 萌山ライム───ハドマ学園イチ、下手をするとキヴォトスイチとも言える究極のヤリマン。

 食べてきた女子生徒は、自治区内外を合わせても合わせずとも数知れず。ハドマの学園内ですれ違うあの生徒もこの生徒も、実は既にライムに喰われた過去を持つ────なんて事も起こり得る。

 そしてライムはその温和な性格が故に、非合意は望まない。あくまでも合意を得て。あくまで和姦で交わっている。

 それは「夢魔」としての彼女のポリシーであり、エゴである。そして相手の理性を蕩けさせる魅了(チャーム)をキヴォトス最高精度で扱える。

 

「アガリちゃんも中々だったわよ♡」

 

「そうですか」

 

「お姉さん、アスカちゃんとも遊びたいなー♡」

 

「結構です。興味ありません。私は、美食研究会を潰す為に、飂熾冘巫髏の力を利用させてもらうだけですから」

 

「あら怖い。……ま、復讐が終わってスッキリしたらお姉さんのトコに来なね?終わった復讐の虚しさ、お姉さんが埋めてあげるから♡」

 

「……あなたも、飂熾冘巫髏の幹部なんですか?」

 

「そーよぉ?戦闘には向かないからサポートばかりだしィ、なんならスパイの真似事がメインだけど」

 

「……」

 

 チナツにクリ攻めという拷問をしていたライムは本当なら適当な誰かを襲ってしまいたいという程に酷くムラムラしていた。

 しかし、それでも幹部として、総長のルーシィに任された仕事の報告だけは先に済ませたかった。

 

「でさー、報告したいんだけど。この空気の悪さは何なのー?総長さぁん?副総長さぁん?」

 

「っさいなー……60人近くお縄になったせいで、少し人的被害が痛いのよね」

 

「それらも含めて、初めて明確に作戦失敗したからイラついてんのよ。悪いわね。……んで?何か情報は得られたワケ?」

 

「元ティーパーティーのぉ、聖園ミカ?って感じの名前の子がトリニティ最強っぽいよ?二大巨頭的な言い方だったから剣先ツルギとあんまり変わらないくらいなのかなぁ。……どうすんの、副総長?」

 

「……空崎ヒナを潰さずに、次になんかいけない!!私は空崎ヒナを潰してからトリニティに向かう!」

 

「今後の方針を決めた。レイコは一旦、別行動ね」

 

「つっても、まだゲヘナも乗っ取ってないじゃん。サポートの私が口出すのもどうかとは思うけどぉ、それはいいの?もうトリニティに手ぇ出すの?」

 

「当然、トリニティの前にゲヘナに決まってるわ。レイコが空崎ヒナを潰しに行く日に合わせて私達は万魔殿に侵攻する。だから、レイコとは別行動よ。後方支援はアスカとアガリ。今回の戦績によってはアガリも幹部に昇格してやってもいいわ」

 

「ホントですか!?」

 

「え〜?アーちゃんは私のお気に入りだゾっ♡」

 

「そこは好きにしなさいよ……。とにかく、万魔殿はレイコ抜きの私達で乗っ取る。……イケるわね?」

 

「「「「イケる!!」」」」

 

「よし。皆でやるよ、ゲヘナの乗っ取り。レイコ、空崎ヒナの引き付け──いや、打倒、よろしくね」

 

「それはいいけど、私は、モル姉が居ない時を狙うつもりよ。ルーちゃんの策略でモル姉とイオリって幹部はD.U.に飛ばされてるんでしょ。だからまぁその辺は────」

 

「風紀委員会の監視については、皆のお姉ちゃん、ライムお姉ちゃんに任せな☆」

 

「はいっ、お姉様っ!」

 

(アガリ……あんな女をお姉様だなんて……)

 

「誰が『皆のお姉ちゃん』よ、アホくさ」

 

「反吐が出る。モル姉の方がお姉ちゃんしてるわ、色んな意味で。プーちゃんの方がお姉ちゃんだし」

 

「その通り過ぎて首がもげるくらい頷きそう……」

 

「そりゃあ、レイコやルーシィのハジメテの相手は私のお姉ちゃんだし?仕方ないけどさー。ちょっとくらい私の事もお姉ちゃん扱いしてよ〜……」

 

「「絶対にヤダ」」

 

 ◆

 

 飂熾冘巫髏が今後の作戦についてあれやこれやと話し合っている頃、風紀委員会は風紀委員会で先の戦闘について反省会をしたり、幹部達は幹部達で、それぞれが情報共有を推し進めていた……。

 

「チナツ。あなた、戦闘開始からイオリの援護までずっと音信不通だったけれど、何があったの?」

 

「……敵から、拷も……尋問を受けていました」

 

「「「ッッ!?」」」

 

「拷問って言いそうになってるじゃん。相手に何をされたのよ?」

 

 拷問────チナツのその言い間違いを聞き逃す風紀委員達ではない。

 アコは驚愕、ヒナとイオリは殺気立ち、モルモは平然としている。拷問でも尋問でも、チナツ本人が無事なようなのでそこまで警戒していないらしい。

 

「……その……下着の上から、お股を……はい……」

 

「下着の上からクチュクチュされたの?アハハッ、敵さんも凄いエッチな拷問してくるねぇ。そんなのエロ漫画だけの出来事だと思ってたわ」

 

「そうか、だからチナツちゃん、私が駆け付けた時あんなに顔が赤かったのか」

 

「まさか本当に気付いていなかったなんて……。全て気付いた上で黙ってるものとばかり思ってました」

 

「いやまさかそんな事になってるとは微塵も……」

 

 モルモが囃し立てて、イオリとチナツがそれぞれ別の意味で縮こまる中、ちょっぴり眉間に皺を深く刻んだヒナが声を上げる。

 

「とにかくチナツが無事なら良かったわ。それで、敵は何を求めてそんな尋問をしてきたの?あなたの身体を弄ぶのが主目的なワケではないのでしょう?ましてや戦闘中なのだし」

 

「あ、はい。あの人は────『トリニティ最強、剣先ツルギについての情報を寄越しなさい?』と、迫ってきました」

 

「それで、それを言わなかったら身体を弄ってきたということ?」

 

「はい……」

 

「ゲヘナの事ではなくトリニティの事というのが、ちょっと解せないわ。まさかトリニティとも併合をするつもりなんてこともあるのかも────いや。ゲヘナ学園だったらトリニティの『最強』の情報を持ってると、想定されている……?」

 

「「「!!」」」

 

「有り得るわね。でもトリニティってツルギちゃん最強なの?総力戦で組んだけど、ミカちゃんの方が強ぉ〜い感じ、したけどなぁ」

 

「そこはあまり関係ないのでは?ハドマからすればどちらも強いがより厄介なのがツルギさん、という話なのかもしれませんし」

 

「──それで、チナツはそれを敵に言ったの?」

 

「しょ、所属と名前だけですが、ミカさんの名前も挙げてしまいました……ち、ちょっと……我慢できず……

 

 所属と名前だけ、言ってしまえばたったこれだけだった。しかし、こちらから敵に新たな情報すらも提供してしまったというのは事実。

 ヒナは眉間の皺をより深く刻んで、アコは小さく溜め息をついてしまう。

 

「……まぁ、彼女は元からゲヘナが嫌いらしいから、何かしら情報が漏洩したとしても評価は変わらないでしょう。それでチナツ。何か身体に薬や毒の類を仕込まれた可能性は?」

 

「いやっ、流石に無いと思います。下着の中に手を入れられたら、疑いますが……。ずっと下着の上から触られていただけですので……」

 

「じゃあ精密検査は受けなくて大丈夫?」

 

「ええ、特に異変もありませんし……」

 

「そう……。もし異変があったらすぐに言いなさい。その時は、アコ。チナツに精密検査を受けさせて」

 

「分かりました、用意だけはさせておきます」

 

 その他、幹部達も反省会をし、次回の襲撃に備え警戒を強める事で合意した。そして遂に……。

 

「────これはさっき判明したのだけど、敵方のボス格2人とうちのモルモは知り合いらしくって」

 

「「「!?」」」

 

「しかも、因縁みたいなのもあるから──モルモ。知ってる限りの事、話してくれるかしら」

 

「え〜。どうしても?」

 

「どうしても。D.U.(向こう)に帰る前にね」

 

「んぅ……仕方ないかぁ」

 

 これまでずっと、誰もが気になりつつ、それでも聞けずにいた「ゲヘナ学園の魔女・盛宮モルモ」の過去。ヒナに促されたモルモはとうとう、復讐者に身を落とす以前の過去を、話し始めた。

 

「あれは5年前──万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)失楽殿(ダイモニオン・ソサエティー)が抗争してた頃の話よ」

 

 ◆

 

 純血の吸血鬼、盛宮モルモ。少し前までアビドス自治区に住んでいた彼女は、戦闘が趣味であった。そして人々の観察も、同様に趣味であった。

 しかしアビドス高等学校は、既に人数が少なく、砂漠化の影響で荒廃しつつあった。だから彼女は、多数の人間と荒れた校風に惹かれ、ゲヘナ自治区へ引っ越し、そのままゲヘナ学園に入学……。

 程なくして、彼女には親しい友人が2人できた。

 蛇の尻尾を持つ少女──通称・蛇尻尾のラミィ。純血の夢魔の生き残り──通称・夢魔のプーサン。

 戦闘が趣味であるモルモは、帰宅部でありながら風紀委員会に手を貸して好きな時に助力して暴れる傍ら、ラミィ、プーサンとつるみ、ギャルデビューしてしまう。

 そしてある日、ゲヘナ自治区から、お隣のハドマ自治区に遊びに行った時のこと────。

 

「くそっ、ザコザコのクセに!離せ!くそっ!」

「雑魚はそっちだろうがクソガキが!」

「あまり年長者を舐めんなよッ!?」

「やめて!レーちゃんを離してぇ!」

 

「……なぁんか、ガキ共が絡まれてんね」

 

「げッ。つーかあれ、ゲヘナ生じゃん。ガキ相手に何やってんの?相手、小学生2人じゃん。だっせ、情けなさすぎ……」

 

「ん〜……可哀想だしぃ、助けてあげる……?」

 

「面倒事はゴメンだから、あたしはパス。プーさん助けに行くん?」

 

「ん〜……数が数だしぃ……モルちゃんは?」

 

「トーゼン、助けに行くっしょ!ついでにアイツらボコれるしィ!?WRYYYYYYーーーーっっ!!!」

 

「「……行くかぁ〜」」

 

 小学生2人を囲むチンピラ集団に単身で突っ込むモルモ。見ているのも──と、ラミィとプーサンも彼女に続いて突撃し、ギャル3人組はチンピラ達をたちどころに処理してしまった。

 

「ふぅ、いっちょあがりィ!大丈夫?ガキ共!」

 

「ふ、ふん!あれくらい、どうにかできたもん!」

 

「れ、レーちゃんっ!──あのっ、おねーさんっ!助けてくれて、ありがとうございましたっ……!」

 

「良いッてコトよ、ちょーど暴れたかったし!」

 

「あたしは手助け程度だけどな」

 

「モルちゃんの付き添いだから気にしないでね〜」

 

「モル、お姉ちゃん?が助けてくれたんですね!」

 

「ええそうよ、深く感謝なさい!私は盛宮モルモ、あんたらは?」

 

「は、針村ルーシィ、です……!」

 

「……博愛レイコ。ホントなら、あんな雑魚相手なら勝てたのよ!今のは数が多すぎたの!!」

 

「はいはい。雑魚ってのは数が(・・・・・・・・)多くても雑魚なの(・・・・・・・・)。それに負けたレイコはその雑魚より弱いって事よ」

 

「っっ……うぇぇぇん……ルーちゃぁぁん……」

 

「も、モルお姉ちゃんっ!レーちゃんだって強いんですよ!今はたまたまチンピラさんに負けたけど、いつもなら……」

 

「いい、ガキ共?世の中はね、結果が全てなのよ。強い者が勝つんじゃない。勝った者が強いの。逆に言うなら、弱いから負けるんじゃない。負けた者が弱いの。辛くても、それが現実よ」

 

「ッ……」

 

「理解できなくても仕方ないわ、あんたらまだまだ乳臭いガキンチョだもの。これから理解していけばそれでいいわ。……そんじゃあ、そろそろ行くわね。あんたらも、気を付けて帰んなよ?」

 

「あっ……はい、ありがとうございました……」

 

「ッッ……モルお姉ちゃん!そんなに言うなら勝負!勝負して!!絶対、私が勝つもん!!」

 

「あっそォ。言っとくけど、私ィ……大人気ないよ(・・・・・・)?加減とか、期待しないでよ?」

 

「ジョートーじゃない!やってやるわ!!」

 

 結果はレイコの惨敗であった。当然だ、モルモは修羅の学園・ゲヘナ学園にて風紀委員会に助力して好き放題に暴れているのだから。訓練を経ずとも、実戦経験ばかりのモルモに、レイコが敵うハズなどありはしなかった。

 あまりに残酷な現実を突き付けられたレイコは、先程のように涙を流す余裕すらも無かった。

 

「ぐっ……こんな、強いなんて……」

 

「んじゃ、そろそろ帰らせてもらうわよー?」

 

「待って……!もっと戦いたい、強くなりたいっ!!私を、強くして!モルお姉ちゃんッ!」

 

「師弟関係的な〜?んまぁ別にイイけどぉ。んじゃこれから私の事は──『モル姉』とお呼びなさい!いちいち『モルお姉ちゃん』じゃ長すぎるし。あと私だけじゃなくて、ラミィとプーサンにも、色々と教えてもらいな?」

 

「……その2人も、モル姉くらい強いの?」

 

「んー……まぁ、別の意味で……ね♡」

 

「「……?」」

 

 その日から、放課後の特訓は始まった。

 レイコはモルモと違い尻尾を持っているものの、一応種族は吸血鬼であるという事から、種族由来の技能などはモルモに直に伝授してもらい、戦闘時の立ち回りや尻尾の扱い方はラミィに教わった。

 そして、夢魔のプーサンからは────。

 

「うふふっ、まさに『両手に花』ね……♡」

 

「はぁはぁ♡ んぐっ、はうっ♡ しゅごいよぉ♡ おまたの、奥の方♡ ぐちゅぐちゅ、あちゅくて♡ ジンジンすりゅうっ♡♡」

 

「レーちゃんっ、レーちゃぁんっ♡ やらよぉ♡♡ おまんこの、おぐぅっ♡♡ んぉっ♡ んぐっ♡♡ ほぉぉっ♡ イグッ♡♡ イグぅぅうッッ♡♡」

 

「ん〜良い反応ねぇ♡ 一度、こうやって妹以外のガチロリっ子、思い切り犯してみたかったの〜♡」

 

「……相変わらずプーちんはエゲツねーなー……」

 

「激しいようで、そのコのイチバン敏感なトコロを的確にエグッてくるあの手マン♡ あ〜ん、見てるだけで濡れてきた……♡」

 

「我慢しろよな。レイコとルーシィに『あんたらに大人の階段登らせてあげるわ!プーサンがね!!』なんて言ったのお前だろ?」

 

「んぅぅぅっ、ヤダ!もう我慢できないわ!ヤろ、ラミィ!!」

 

「ふざっけんな!お前の性欲は強すぎるんだよ!!付き合わされる身にもなれ!」

 

「ヤダ!犯す!!」

 

「ぎゃああああ〜〜〜ッッ!?」

 

 時には5人でラブホに突入し、乱交パーティにも似た爛れきった関係に至ったりなど。そして……。

 

「初めまして、2人共♪……お姉ちゃんの言う通り、美味しそうな2人……♡」

 

「私の妹、ライムって言うの。ルーシィの1つ上。2人のことを話したらヤッてみたいって言うから、連れてきちゃった♡」

 

 プーサンの紹介で、当時中学1年生のライムが、その乱交に参戦したりもした。

 特訓にエッチに、たまに食べ歩きなど、年の差をまるで気にしない楽しい生活が続いていた。しかしそんなある日────。

 

「……ごめん、2人共。私が雑魚だったから……」

 

 蛇尻尾のラミィ、夢魔のプーサン──共に抗争に巻き込まれ死亡。2人に逃がされたモルモだけが、辛うじて生還できていた。

 そして……この日以降、モルモは、年下の友人達に会うのをやめ、自分の能力を研ぎ澄ませ、敵の事を調べる事だけに時間を費やす、復讐鬼と化した。

 

 ◆◆◆

 

「…………あれからもう5年だってさ、レイコ」

 

「…………早いね」

 

「……私達との再会……モル姉、喜んでなかったね」

 

「……再会の仕方がクソだったもん」

 

「ハハッ。確かに、それはあるのかもね」

 

 アジトの屋根の上で、月光を浴びながら横になるレイコ。そこは彼女の定位置。吸血鬼は月光が好物なので、夜は、屋根によく居る。

 幼馴染故にそれを知っているルーシィは、部屋に居ないレイコを探して屋根にやってきていた。

 そしてレイコの横に横になり、血のように赤くて丸い満月を眺めながら、あの時(・・・)の回想に耽る……。

 

「……モル姉達、遅いね」

 

「……うん……遅いね」

 

「最近忙しいって言ってたし今日は久しぶりにって思ってたのに……」

 

 いつもの集合場所で、2人が幾ら待っていても、モルモ、ラミィ、プーサンが現れる事は無かった。

 そして陽が沈む頃────レイコ達も遂に諦めて帰ろうとしたその時、集合場所に、涙と鼻水で顔がぐしゃぐしゃになったライムがトボトボフラフラとまともではない様子で歩いてやってきた。

 

「どうしたの……?」

 

「どうしたのライムッ!?何かあったの!?」

 

「……た」

 

「え?なにっ?なんて言ったの?」

 

「聞こえないよ!吸血鬼(地獄耳)なのに!」

 

「……おねーちゃんたち……死んじゃったぁ……」

 

 ぽそりと、しかし今度はハッキリと2人も彼女の言葉が聞き取れた。

 頑丈なキヴォトス人、しかし「死」は存在する。この2人も小学生とはいえ高学年故か「死」という概念自体は知っていたし、理解もしていた。

 だからこそ、ライムの言葉が理解できなかった。

 

「……死…………え?」

 

「誰が……?」

 

「おねーちゃん……と……ラミィ、おねーちゃん……」

 

「モル姉は!?まさか、モル姉もっ……」

 

「──モルお姉ちゃんは、お姉ちゃん達を────おうちまで……運んで(・・・)、きてくれた……」

 

「「……ッ!?」」

 

 この時代のゲヘナ学園は、抗争中であった。

 万魔殿と失楽殿の銃撃戦からそう遠くない所を、3人がたまたま通り掛かった。モルモ達は万魔殿の構成員かと、一員なのかと、殺気立っていた失楽殿構成員に疑われ、強襲に遭った。

 当然逃げようとした3人だったが、包囲されて、どうにも逃げられない状態だった。だからモルモは応戦しようとした。しかし2人は、血路を拓いて、モルモを逃がした。

 命懸けの行為にモルモは2人の覚悟を汲み取り、その場から逃げた。

 後から現場に戻ってみれば、原型を留めぬ2人の亡骸が血の水溜まりの中に沈んでいた────。

 

「……し…………死ん………………」

 

「誰が、そんな事、したッてのよ……!!」

 

「ゲヘナの、生徒会に楯突いてばかりの、失楽殿?みたいな名前の組織……だって……」

 

「「…………ッッ!?」」

 

 その日────2人は誓った。失楽殿を潰すと。その存在全てを否定し消し去ってやろうと。そして自らが最強に至るまでの踏み台にしよう、と。

 しかしその矢先、ある日を境に失楽殿が消えたとゲヘナ中で話題になった。その話題はゲヘナを超えハドマにまで轟く。

 誰が失楽殿を潰したのか?モルモか?一旦逃げたモルモが逆襲したのか?──様々な候補はあったが明確な答えは出なかった。

 ──それからしばらく時が流れ、ハドマ学園にて

「ダイモニオン・ソサエティー」と名乗りを上げた組織が発足、ハドマ学園の生徒会と争いになるが、よほどその組織は生徒の心を惹き付けたのだろう、争いが激化する事はなく平和に生徒会が交代した。

 ライムは夢魔である。理性を溶かす「魅了」など使わずとも、人の心に取り入るのが極めて上手い。だから彼女はそれを利用し、中学生でありながらも初期のダイモニオン・ソサエティーメンバーに深く取り入り、情報を得た。

 だから、そこからルーシィ達はハドマ学園生徒会

「失楽園」こそ「失楽殿」の後釜の組織であると……失楽殿の後輩が発足させた組織なのだとモルモさえ知らなかった情報を得て、知っていたのだ。

 

「とうとう来たわね、レーちゃん」

 

「うん。入学した(来た)よ、ルーちゃん」

 

 そして今年の春──3年生に進級したライムと、2年生でありつつ副会長の座に就任したルーシィと新入生のレイコが、遂にハドマ学園で揃ったのだ。

 

「……ライムは?」

 

「私と同じく生徒会に潜入済み……だった(・・・)

 

「過去形?」

 

「色んな子とハメ外しすぎて会計クビになった……。相変わらずよ、ライムは……」

 

「あはは……でも、相変わらずで何よりだよ……」

 

「まぁ確かに相変わらずなんだけどね」

 

 現在の失楽園に「会計」が居ないのは、ただ単に新任が決まらないだけである。新入生の入学直前にライムは会計をクビになり、空席のままで現在まで来てしまっているだけだった。

 会計分の働きもルーシィが行う事で、議長であるリエの信頼を得ていった──といった、良い面での効果もあるにはあるのだが。

 

「それで、人手は?」

 

「当然、確保済みよ。私が副会長に当選したのも、手下に投票させたからだし」

 

「じゃあ……作ったんだね。ルーシィの組織を……」

 

「私達の、ね。総長は私、でも副総長はあなたよ」

 

「っ!?ライムは?」

 

「幹部第1号よ。生徒会の会計クビになっちゃうんだもの、副総長には不向きよ。まぁ、人数集めにはかなり貢献してくれたけどね」

 

「あははっ、ライムは夢魔だもんね、その辺は得意だよね。……わかった。やるよ、副総長」

 

「ええ、任せたわよ。飂熾冘巫髏(ル・シュ・フェル)の未来も……!」

 

「……名前ダサッ……マジでその名前にしたの?」

 

「えぇ〜っ!?ハドマ生徒会に復讐するって決めたあの日に、2人で考えた名前じゃないっ!」

 

「それはさぁ!小学生のノリと勢いじゃん!?もう高校生だよ!?」

 

「そんなぁ〜……トリニティからハドマに堕ちてきた私にピッタリだって言ってくれてたのにぃ……」

 

「……そんな気に入ってんならいいよ、それで」

 

「ホントッ!?いいの!?」

 

「その代わりッ!復讐を果たした上で、私が最強に登り詰めるまで!ルーちゃん──飂熾冘巫髏には、付き合ってもらうわよ!覚悟しなよね!」

 

「ッ!ええ、もちろん!最強になるまで、いいえ、最強になっても!私達は一緒よ!……ライムもね」

 

「そーね!……ついでに、ライムもね!」

 

 ◆◆◆

 

「……レイコ、何考えてる?」

 

「……多分、同じ事」

 

「……」

 

「……」

 

屋根(ここ)に来る前──ライムから連絡があったわよ。モル姉、切り込み隊長とD.U.に帰ったって」

 

「じゃあ……決戦だね」

 

「うん」

 

「私……勝てるかな。空崎ヒナに……」

 

「勝てるよ。モル姉、半日も居なかったんだから、今の仲間に私達の弱点とかを教える時間は無いよ。だから、レーちゃんも、勝つんだよ。──万魔殿を乗っ取ったら、援護に行くからね」

 

「タイマンが良いんだけどな……」

 

「それで負けたら話にならないけどね」

 

「…………。はぁ……頑張ろ」

 

「頑張って。私も、頑張るから」

 

「うん。……ありがと、ルーちゃん」

 

 数時間後、太陽と共に訪れる決戦の日。まさしくゲヘナ学園の運命が左右される日である────。




次回────ゲヘナ大戦争

念の為にR-18タグをつけました。
今後の為にも。


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第12話:ゲヘナ大戦争

 

「委員長!ヒナ委員長ーーーっ!!」

 

「……朝から何……?」

 

「たたっ大変ですっ!本部の前に、昨日攻めてきた白い髪の女の子が!ひっ……1人で来てます!」

 

「何ですって……?」

 

 飂熾冘巫髏が風紀委員会本部に強襲を仕掛けた、まさに次の日。飂熾冘巫髏の構成員など引き連れずレイコがただ1人で風紀委員会本部にやってきた。

 しかも末端の風紀委員に「空崎ヒナを呼んで」と堂々と告げる始末。

 

(モルモは、夕方から夜に攻めてくるハズって予想していたけれど……朝っぱらも良いところだわ……)

 

「ど、どうしますか!?委員長は不在だとか言って追い返しますか!?」

 

「バカね、それじゃあ本部(ここ)に攻め入る隙と思われるだけでしょ」

 

「委員長が待ち伏せする、とか……!?」

 

「沢山の敵がなだれ込んできたら対処は不可能よ。私でも多すぎる敵には対応できないわ」

 

「あう……」

 

「そいつの目的は?」

 

「『ヒナ委員長を呼んで』と、それだけでした!」

 

「…………」

 

「ど、どうしますか!?モルモ副委員長に連絡して呼び戻しますか!?」

 

「何時間も掛かるでしょ。私が対処する、チナツとアコに援護させるから、無線を繋げるよう言って。今すぐに」

 

「はいっっ!!」

 

 その生徒をアコ、チナツへの伝令役とし、ヒナは本部を出る。銃痕が生々しく残ったエントランスを一瞥し、眉間に皺を寄せながら、コツコツと靴音を鳴らしながら本部を出る。

 扉を開ける瞬間に狙撃される事まで想定していたヒナは銃弾から眼球を守る為に薄目で扉を開ける。しかし狙撃される気配は無い、そればかりか……。

 

「おはよーさん、空崎ヒナ」

 

 堂々と腰に手を当てて扉の前で仁王立ちしていた少女──レイコは、これから戦うヒナに向かって、軽く「おはよう」と口にする始末。ヒナの混乱は、言うまでもない。

 

「……あなた、何しに来たの」

 

空崎ヒナ(あんた)と戦いに来た」

 

「それが目的?」

 

「そっ。飂熾冘巫髏っつーより、私個人の目的よ。だから仲間なんて連れて来てない。まずはあんたを倒す。それこそが私の『最強』への道の第一歩だと思ってるから」

 

「────……私の次は?」

 

「次?そーね、剣先ツルギと聖園ミカ、この2人を潰しにトリニティに行くつもり。顔も知らないけど有名人らしいから、とりあえずトリニティに行けば分かるでしょ。この2人は、どっちが強いのかすらよく分かんないし。────その点、ゲヘナ最強は分かりやすくって、本当に助かるわァ。あんた1人だけだもの」

 

「……」

 

「だから勝負よ、空崎ヒナッ!私が『最強』に至る踏み台になりなさい!!1対1(タイマン)よッ!!」

 

「……いいわ、ノッてあげる。私が勝ったら大人しく捕まりなさい」

 

「!……わかった。あんたも援護無しで()りなよ」

 

「勿論。──アコ、チナツ、援護は無用よ。じゃ」

 

 無線をパキッと軽く握り潰し破片を投げ捨てる。それを見たレイコは、獣のように牙を見せるようにニィッと口角を釣り上げ、ポキポキと指を鳴らす。

 

「タイマンにノッてくれるんだ?ありがと♡」

 

「あなた、まだ1年生なんでしょう?1年生たった1人の為に、援護まで受けながら戦う程、私はまだ落ちぶれちゃいない」

 

「──年下のガキ相手だろうと援護を受けるのは、決して『落ちぶれ』じゃないけどね。『獅子は虫を狩るのにも全力を尽くす』、それだけだからね」

 

(それを言うなら『兎』じゃないかしら……)

 

「じゃあ()リ合おうかァ!!空崎ヒナァァッ!!」

 

 背中に備えていたマシンガン2丁を取り出して、同時にヒナに向ける。先日は乱戦だった為に上手く観察できなかったが、改めて見て、ヒナはレイコの銃が改造されている事に気付く。

 

「そのMG────ゲヘナ学園の支給品をそのまま使ってるんじゃないのね。見た目はそのまま性能を向上させている……」

 

「ええそーよ、片手で扱えるようにイジッてるし、左右どちらの手でも同じように扱えるようにした!私は両利きなのよッ!ハアァァァ〜〜ッ!!」

 

「それは随分と、器用なことで……!!」

 

 撃ち合い、距離を取り、撃ち合い、距離を取る。2人の動きは機敏で、並の生徒にはついていけないまさにトップレベルの戦いだった。リロードすらも隙らしい隙にはならない。

 

「『終幕:イシュ・ボシェテ(EXスキル)』」

 

「……あーはん?範囲、そんなに広くないね」

 

「ッ!」

 

「そんなにタメが無いからなのかな。いやそれでもルーちゃんよか、よっぽどある(・・)ね」

 

 ルーシィのEXに比べてしまえば誰のEXだって攻撃力があると言えてしまうだろう。しかしヒナのEXは攻撃がメインであり、特殊効果らしい効果は無いのが、余計にそう思わせてしまうのだろう。

 

「狙撃して思ったけど、あんた、マジで堅すぎっ!何よ、カァン!って!ヘッショキメたのにさぁ!」

 

「っ!……あの狙撃はあなただったの?」

 

「ええそーよ、それが何かァ!?」

 

「悪くないんじゃない?専業スナイパーと遜色ない腕前よ」

 

「あっそ、サンキュ!けど、武器なんか扱えても、倒せなきゃ……強くなれなきゃ意味無いのよッ!!」

 

 ドガガガガガガガガッッ!!と2人の撃ち合いは続く。互いにダメージは余り入らない、いやヒナが堅い分、レイコにダメージが蓄積して段々と劣勢に傾きつつある。

 

(確かに、昨日のこの子はMGの他にSRも持って攻めてきていた。適当な付け焼き刃だと思って軽視していたけれど……ひょっとしてこの子、自分の固有武器を持っていないんじゃ────?)

 

「戦闘中に考え事なんて、ヨユーあるじゃない!」

 

「!」

 

 レイコは引き金から指を離し、銃床を握る。銃を鈍器のように振りかぶりながら、左右にちょこまか移動し接近してくる。

 銃を構えているヒナと構えないレイコでは移動や反応の速度に大きめの差が出る。レイコの急接近に出遅れたヒナは大きな隙を見せてしまった。

 

「これで終わりよォッ!!!」

 

 思い切りMGを振り下ろす。銃を支え、引き金に指を置いている状態では腕で受け止めるのは絶対に間に合わない。かと言ってこのまま頭で受けるのはそのまま気絶(脳震盪)──敗北に繋がりかねない。

 瞬時に思考を巡らせたか、それとも反射なのか。ヒナは振り下ろされるMGを前に、僅か1歩、いや2歩分だけステップバックした。

 

「────ッ!!」

 

 彼女のMGは、ヒナという殴る対象が消えた事で空を切りそのままの勢いで地面を殴る。今だ──と咄嗟に銃を構え直したヒナは、頭を垂れるレイコに向かって大火力を放とうとするが。

 

「だりゃあッッ!!」

 

「がッ……!?」

 

 地面に突き立てたMGを起点にして空中で倒立、回転をキメたレイコは銃を振り下ろしたあの勢いのままで、ヒナの脳天に踵落とし────!

 

「ッ!?……ガヒュッ……」

 

「ふぅ。角に当たってたらヤバかったかもだけど、どうよ?中々の精度でしょう?私の蹴り♡」

 

「あ゙……ぅ……?」

 

「ふふ、焦点が合ってないわー?衝撃とか、その他物理攻撃に弱そうだとは思ってたけど、そのまさかだったなんてね」

 

「ぐ、ぅ……くっ……!!」

 

 堅い、硬い、固い────「カタい」とは同時に

「脆くて壊れやすい」である。ヒナの異常な堅さを思い知らされたレイコは作戦を練った。真っ向から撃ち合っていては、勝てやしないと知ったからだ。

 だから作戦を切り替えた。銃撃以外の「衝撃」を与える物理攻撃にシフトした。

 銃撃戦の最中にそんな事をされては、ヒナですら反応が遅れるだろうと、そこまで想定し、予測して起こされた行動だった。

 

「確かに銃撃戦においては、あんたは強かったわ。私の知る限り最強よ。モル姉より強いでしょうね、まず間違いなく……」

 

「…………ッ」

 

「惜しむらくは『それだけ』だったことね。近接、物理も含めた『何でもあり』なら、私の方が上よ。じゃあね空崎ヒナ──『荒ぶる破壊神の顕現(EXスキル)』!」

 

「……ッッッ!!!」

 

 その日、風紀委員長・空崎ヒナは、数ヶ月ぶりの敗北を喫した。

 ヒナを倒されたのを見ていた風紀委員達は慌てて助けに入り、または本部の防衛にあたる。彼女達のそんな行動を見つつ、レイコは、本部には何もせずフラリとどこかへ行ってしまった。

 勿論、向かう先はルーシィの居る万魔殿だが──ヒナがやられてしまった今の風紀委員会にレイコの向かう先を気にする余裕などあるはずもなく……。

 

 ◆

 

「マコトちゃ〜ん?お客さん来てるわよぉ?」

 

「何っ?今日、来客の予定なんかあったか……?おいイロハ、今日の予定を確認しろ」

 

「確認するまでもなく、予定なんかありませんよ」

 

「だろうな。サツキ、そんなヤツ追い返しとけ」

 

「え〜……なんか大所帯だからイヤなのよねェ」

 

「大所帯……?」

 

 レイコとヒナが戦い始めた頃、万魔殿でも1つのアクシデントが起きていた。偶然外に居た万魔殿の構成員サツキは、万魔殿前にやってくる謎の集団を見るなり、議長の羽沼マコトに「客」として報告。

 しかし当然そんな客の予定などあるはずもない。マコトは訝しんだ。

 

「イロハ、外を見てこい」

 

「これからイブキに読み聞かせの時間です」

 

「なら仕方ない。私が行くか」

 

 ゲヘナのアイドル的存在、イブキの為なら、他に用事など押し付けられないのも仕方ない。重い腰を上げたマコトが万魔殿前で目にしたソレは……。

 

「あ!やっと来たァ、議長さーん。お〜い♡」

 

「な……に…………ルーシィ……だと?」

 

 飂熾冘巫髏の構成員達を引き連れたルーシィが、万魔殿を包囲していた。マコトがそれを見て驚愕の表情になると、わざとらしいくらいの笑顔で、手を振って見せる。

 

「あの赤髪……ホームページで見た顔だと思ったら。あれ、ハドマ学園の副会長ですよね?」

 

「読み聞かせはどうした」

 

「それどころじゃなさそうなので。で、なんですかコレ。囲まれてません?」

 

「……コイツら、ルーシィの組織の構成員だぞ……」

 

「……やっぱり騙されてたんじゃないですか……」

 

 イロハは溜め息をつき、読んでいた本を閉じて、ひっそりとその場を離れた。マコトはそんな事にも気が付かず、にやけ顔のルーシィを見てワナワナと震えている。

 

「あっれぇ?どーしたのォ?」

 

「おい貴様!ルーシィ!風紀委員会をどうこうする話はどうした!」

 

「その相手は私じゃないよね?その話は、あくまでうちの副総長とあなたの契約。私には関係ないわ」

 

「なん……だと……!?」

 

「まぁ気にしなくともいいわ。今頃、風紀委員長と戦ってる頃だからさ」

 

「!そうか、では……」

 

「その間に私は万魔殿を潰すってワケ♡」

 

「…………は?」

 

「憐れ、羽沼マコト。万魔殿も今日でおしまいよ。これからは私達が──飂熾冘巫髏(ル・シュ・フェル)が!ゲヘナ学園を統治するのよッ!!」

 

「何ィィィーーーーッッ!?!?」

 

 しかし、マコトの隣で話を聞いていたサツキは、ルーシィのその堂々たる宣言を聞いて「プッ」と、小さく吹き出してしまった。

 

「何かおかしい事でもあるかしら?ピンクさん?」

 

「いえね?お粗末な計画だなぁ〜って思ったのよ」

 

「……は?」

 

「ゲヘナ学園は、こう見えても選挙制なの。思わず笑っちゃいたくなるくらい、荒れているのにねぇ。でもマコトちゃんは、そんな中で最も票数を集めて万魔殿の、しかも議長として君臨してるの。そんなマコトちゃんに勝てるの?」

 

「あぁ、3%だっけ?」

 

「「ッ!?」」

 

「あ、違った。3.8%か♪」

 

「「!?!?」」

 

「まっ、どっちも似たようなもんか。ゲヘナ学園の生徒数が4000人だとしたら、4%で計算した所で、マコトへ投票したのは僅か160人。……カスね」

 

「何だと?」

 

「この飂熾冘巫髏はハドマ学園全生徒の6、7割を占めてるわ。数にして、およそ300人よッ!!」

 

「なッ……」

 

「なぁんと倍近くの差があるの!笑っちゃうわね、マコト議長!?アハハハハハハッ!!」

 

 昨日の風紀委員会との戦いで80人近くの構成員が拘束された。それでも220人。マコトへの投票数と比べるまでもない。

 ────とはいえ、%に直せば大した差は無い。そんな事、ルーシィは理解している。しかしそれはマコトも同様であった。

 

「キキキ……私は知っているぞ、ルーシィ。そちらの構成員が数十人、昨日、風紀委員に捕まったろう。もし今から選挙を行うとて、大した差は無いはず。いいや、知名度の差からして我々が勝つだろう」

 

「あんたバカァ?ノータリンじゃないでしょうよ、マコトさんはさァ。あの時の調印式で見せてくれた頭のキレはもう失われたの?」

 

「!?」

 

「────この私が、飂熾冘巫髏からの票数だけで私より有名なあんた相手に勝負すると思ってんの?そんな……場当たり的に行動すると思ってんの?」

 

「何だと……?」

 

「ゲヘナ学園との併合が完了したあの日のうちに、ゲヘナ学園に構成員達を送り込んでたわ。各所への挨拶回りも完了。選挙になったら、まず負けない。そういう『準備』を整えてるから、今、私はここに居るのよ……議長さん♪」

 

「くっ……!!ならば実力行使するまで!イロハァ!戦車隊の出番だ!!ヤツらを焼き払ってしまえ!!さぁ早く!…………イロハ?」

 

「とっくにどこかに行ってるわよ。というか、まだ気付いてなかったのね、マコトちゃんったら……」

 

「イロハァァ〜〜〜〜〜ッッ!!!!クソッならばサツキ、お前が指揮するんだッ!」

 

「うーん……」

 

「……サツキ?」

 

「……ごめんねぇ、マコトちゃん。この前、あの子の紹介でイイ感じの子に引き合わせてもらったのよ。受けも攻めもどちらもできる、スゴい子♡」

 

「?」

 

「だから──私は飂熾冘巫髏(あちらさん)に付くわ」

 

「何だと!?お前っ、そっちに付くだと!?」

 

「自称・夢魔──悪魔の学園であるゲヘナ学園にも存在しない、滅びた悪魔の末裔が居るだなんてね。あの子の事、もっと詳しく知りたいのよ。だから、ここはアッチを勝たせてみたいのよね、敢えて♡」

 

「……根回しは十分、か。針村ルーシィィィ!!」

 

「ええそうよ、羽沼マコトォ!!飂熾冘巫髏──」

 

「万魔殿────」

 

「「攻撃開始ィィッッ!!!」」

 

 リーダーの号令が放たれ、それぞれ指揮下にある生徒達が動き出し、戦闘を開始した。飂熾冘巫髏の構成員は万魔殿の下っ端達に比べて数倍もの人数が居る。

 個々の実力は拮抗している、しかし数が変わればその拮抗している状況は大きく変わる。それに加え万魔殿にとっては最悪な事に、飂熾冘巫髏の方には範囲型の回復役が揃っているという要素も加わる。

 幹部格が参戦してもしなくても────戦況は、着実に飂熾冘巫髏に傾いてきていた。

 

「クソッ、イロハさえ居ればこのような状況ッッ!どこに行ったんだイロハぁッ!!」

 

『────本当にうるさいですよマコト先輩……』

 

「ッ!?」

 

 ガァァァァッと戦車で突撃してきたのは、イロハ率いる戦車隊であった。当然、イロハの姿もある。そして彼女の運転する虎丸の中にはイブキも居る。戦車隊はイロハが合図するまでもなく一斉に砲撃を開始し、飂熾冘巫髏を蹴散らしていく。

 パカリと虎丸のハッチが開かれイロハとイブキが揃って顔を出す。マコトは口元を釣り上げて、牙を見せながら笑う。

 

「遅いぞッ!」

 

「参戦する気なんかありませんでしたよ」

 

「何ィッ!?」

 

「こうもドンパチうるさいと、昼寝も読み聞かせもできないんですよ。だから、うるさいヤツを戦車(これ)で黙らせます。それだけです」

 

「……フン!素直じゃないヤツめ!」

 

「何とでも言ってください」

 

 溜め息と共にハッチを閉め、イロハも参戦する。飂熾冘巫髏の構成員は、己の装備以外の攻撃手段を持たない。故に、歩兵多数のみならともかく戦車も現れた事で一気に形勢が逆転してしまった。

 

「ぎゃあああっ!?」

 

「いたたっ、いててててっ!?」

 

 飂熾冘巫髏の構成員の多くは対戦車の戦闘技術を持たない。相性などの問題は確かにある。けれどもそれ以上に、対戦車については、圧倒的な経験不足という事実が挙げられる。

 飂熾冘巫髏にだって、過去に何度も戦車との戦闘経験がある。スズ率いる統治委員会も数台とはいえ戦車を保有しているし、その他の委員会も、型式が古いとはいえ保有してはいる。飂熾冘巫髏だって、その他のチンピラとの戦闘経験もある。

 それでも──それはあくまで飂熾冘巫髏としての戦闘経験の話である。構成員1人1人はレイコ1人だけで蹂躙できる程度の実力だし、それより何より大きいのは、対戦車はレイコに任せっきりだった、というのがある。

 ご存知の通り、レイコのEXは、その攻撃範囲もさることながら、何よりも対物に特化している。

 故にルーシィ含め飂熾冘巫髏はレイコにそれらの攻撃を任せっきりにしてしまっていた。

 今回の予想外の戦車隊という助太刀は、まさに、ルーシィの誤算であった。

 

「くっ、そ……!アスカ!アガリ!!」

 

『はい……!』

 

『はいっ!!』

 

 ルーシィの指示で2人がEXを使用し、仲間達を癒していく。しかし範囲は限られている。戦車隊に蹴散らされ散り散りになりつつある混戦の中では、2人だけで回復してあげられる生徒の数は、かなり限られてしまっている。

 

「行け!行けェッ戦車隊!裏切り者の飂熾冘巫髏を蹴散らしてしまえッ!!やれ、イロハァッッ!!!キキキキ……ハハハハハハハッ!!万魔殿に逆らうとどうなるのか、見せ付けてやる良い機会だッ!!」

 

「クソッ、ゲヘナバカマコトのクセに……!!部下に任せまくって良い気になってんじゃあないわよッ!ブッ潰してや────」

 

「『荒ぶる破壊神の顕現(EXスキル)』────ッッ!!!」

 

「「「ッッッ!?!??!」」」

 

 瞬間、一定範囲内にある全ての戦車が爆発四散。イロハの搭乗している虎丸も例外ではなく、2人が脱出を果たす前に爆発……破壊されてしまった。

 

「なん…………だと…………?」

 

 ────ルーシィには、もう1つ誤算があった(・・・・・・・・・・)

 それは、レイコが五体満足な状態のままでヒナを打ち倒し、尚且つ自分達の援護に来れる余力があるという事であった。

 勝てたとしてももっと拮抗し、ボロボロな状態と予測していたルーシィとしては、レイコの強さとはそれ程までなのかと、目の前に現れた彼女を見て、心の中から褒めちぎりたい程であった。

 

「お待たせ〜、ルーちゃん♡」

 

「レーちゃ……レイコ!?」

 

「戦車に囲まれちゃあ、弱いよねぇ。飂熾冘巫髏、戦車とか保有してないせいで演習もできやしない。対戦車の戦いに、全く慣れてないからねぇ」

 

「随分と……早かったわね……」

 

「ま……決着が早かったから」

 

「……そう……」

 

「空崎ヒナ──良い奴だった。ノる必要なんて無いタイマンにノッてくれてさ。銃撃戦だけだったら、私、フツーに負けてた」

 

「……てことは……使用(つか)ったのね?物理(あの手)を……」

 

「そうしなきゃ勝てなかったもん。無理無理絶対に負ける。ゲヘナ学園最強は、伊達じゃなかったよ」

 

「…………」

 

「できれば、私がそういう手も使うって情報はまだ出したくなかった。風紀委員会、バカじゃなさそうだから、対策されかねないからね。でも負けるのはもっと嫌だから、出し惜しみしなかったよ」

 

「……それでいいわ。お陰で助かった」

 

「で……私が居ない間にそれなりに追い込んでくれたワケだ♡ マ・コ・ト・さん♪」

 

「っ────!!」

 

「頼りの戦車もこのザマ。風紀委員会は空崎ヒナがやられて、てんてこ舞いよ。最速で連絡されてたと仮定しても、シャーレの先生やら風紀委員会支部の誰も助けには来れない。時間的に考えて無理よ」

 

「……まだだ!まだ終わらん!」

 

「あんたの時代は今日この場で終わり。これから、次のクーデターが達成されるまで──飂熾冘巫髏の暗黒時代が始まる事になるのよ────!!」

 

 主力部隊を失った万魔殿は陥落──飂熾冘巫髏が万魔殿の本拠地に六芒星の旗を立て、新たな生徒会として台頭する事になった。

 なお政治に興味の無い大多数の生徒達は、今回のクーデターについて知っても「ふぅん」程度の反応だったという……。




ツルギにやられたら「潰れた缶ジュース」みたいになるようです。でもこれ明らかに「ショットガンでやられた子の様子を表す描写」ではないですよね。
なのであの辺の子は銃撃だけじゃなく殴る蹴るなど普通にしてるんだろう、と解釈しています。
・奇声を上げて銃で敵を蹂躙するツルギ
・奇声を上げて撃つ殴る蹴るして敵を潰すツルギ
ツルギが暴れる様子を見てた人質の子がPTSDになるという事は、恐らく後者じゃないかなぁ、と。
解釈違いならごめんなさい。

巡航ミサイルだって、古聖堂に当たったのであってヒナに直撃はしてないハズですからね。
ヒナに当たったのは瓦礫です。それなのにあんなに血を流す程にダメージ受けてたんだから銃撃以外の物理攻撃なら効くんでしょう。
キヴォトス人はダイラタンシー流体か何かなの……?


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第13話:ゲヘナ学園、陥落

 

 万魔殿が陥落してから暫くして、レイコによって気絶させられていたヒナは風紀委員会の仮眠室で目を覚ました。チナツによって手当てされていて、一部にはガーゼが貼ってあったりしている。

 

「お目覚めですか、委員長。……よかったです」

 

「チナツ……私……」

 

「見ていましたよ。私も、行政官も」

 

「……そう」

 

「飂熾冘巫髏でしたか。まさか、あのような戦いをするとは思いませんでした」

 

「……アコは?」

 

「それが────先程、校内放送で『飂熾冘巫髏がゲヘナ学園を乗っ取った』との放送があってから、各所に連絡を取っています」

 

「な……に?飂熾冘巫髏が、学園を乗っ取った?」

 

「ッ…………はい……」

 

 重苦しい沈黙が広がる。ヒナは血が出る程に唇を噛み、掛け布団に爪を食い込ませる。自分が彼女に負けたばかりに、学園そのものが乗っ取られた──風紀委員会としては最大の醜態を晒したと言っても過言ではない有様だ。

 

「──そうだ、マコトは?奴は、何をしているの?タダで乗っ取られる程のバカじゃないハズよ」

 

「それも含めて行政官が確認中です」

 

「……そう。とりあえず、万魔殿に行くわ」

 

「まっ、待ってください!ヒナ委員長はそれなりに重度の脳震盪で倒れられていたんです、それなのに無理に動いたら……」

 

「大丈夫。調子が悪いのは、自分で分かってるわ。戦闘行為はしないつもり。ただ、飂熾冘巫髏に──針村ルーシィに、意図を聞かずには居られない」

 

「でしたら私も行きます」

 

「あまり人数が多いと戦意があると受け取られる。1人の方が都合がいい」

 

「ッ……しかしそれでは──」

 

 チナツが更にヒナを引き留めようとしたその時、仮眠室の扉が開かれアコがやってきた。その顔は、焦りや混乱というよりも、懐疑に満ちていた。

 

「ご無事で何よりです、委員長」

 

「各所に連絡してくれてたんだって?ありがとう」

 

「緊急事態ですから。イオリとモルモさんは先生を護衛しながらゲヘナ学園(こちら)に向かっています、到着も時間の問題かと」

 

「先生が?危険だし寧ろ遠ざけてほしいのだけど」

 

「それが、先生が仰るには万魔殿の棗イロハさんと連絡がつかないのだそうです。いつもすぐに返事ができる時間帯なのに、とか。なので『万魔殿の子は飂熾冘巫髏に拘束されている可能性がある』と」

 

「ッ!追い出しただけだろうと思っていたけれど、拘束とは穏やかじゃないわね」

 

「勿論、拘束されているとは限りません。それこそヒナ委員長の仰る通り、追い出されているだけだと私も思います。戦力に大きなバラツキがありますし拘束する程の余裕があったとは思えませんから……。しかし先生は、その……心配性、ですからね……」

 

「……あぁ、成程。その棗イロハもハーレムの……」

 

「……はい。なのでモルモさん達でも飛び出す先生を止められなかったそうで。たった1人で自動操縦のヘリに乗ろうとした所をどうにか宥め、今は3人でこちらに向かっているそうです」

 

「そう。なら先生の事はあの2人に任せる。私は、先生の到着を待つ気は無い。拘束してるのか否か、直接、針村ルーシィに問い質してやる」

 

 遠くからチナツとアコが見守る中、ヒナは単身で万魔殿の拠点に向かう。そこには飂熾冘巫髏を象徴するらしい六芒星の旗が立てられていて、構成員が拠点の掃除や瓦礫などの後片付けをしていた。

 銃痕を舗装して、戦車のキャタピラ跡を消して、戦車の残骸などもバケツリレーで撤去している。

 

「こんにちはー」

 

「風紀委員長じゃん、お疲れー」

 

「お疲れ様でーす」

 

 構成員達はヒナを見ても、構えるどころか呑気に挨拶してくる。ついこの先日、飂熾冘巫髏の仲間をヒナ率いる風紀委員会が捕らえたというのに。

 言い知れぬ違和感、奇妙な感覚を覚えながらも、ヒナは改装中の万魔殿の議長の部屋へ。

 

「あれっ、お客さん?待って待って、こっちもまだ掃除中なの────空崎ヒナ……!?」

 

「1対1で話すのは始めてね。針村ルーシィ」

 

「……早かったね。まさかクーデターのお返し?」

 

「そんなものに興味は無い。質問に答えて」

 

「いいよ、答えられる範囲なら」

 

「……羽沼マコト──万魔殿のメンバーはどこ?」

 

「知らない。戦いで負かした後は、奴らを建物から追い出しただけ。逃げた先まで追いかけるつもりは無かったからね」

 

「ゲヘナ学園を乗っ取って、どうするつもり?」

 

「どうもしない。もう私の目的は殆ど達成されたも同然だもの。──安心しなよ、トリニティと戦争を起こすつもりは無いわ」

 

「!」

 

「ただ、レイコの個人的な願望でね。トリニティの強い子との戦いは起きるわ、近い内に。でもそれは交流会的な名目で行うつもりだから、戦争なんかに発展はしないだろうし、させるつもりも無い。後は平和に統治するわ」

 

「……どうも胡散臭いわね」

 

「トリニティ、一応私の生まれ故郷なの。だから、破壊したいとか、荒らしたいとは思っていないわ」

 

「あなたの目的は何?」

 

「────そう、ね。これで殆ど達成されたから、あなたにも教えてあげるわ。適当に座りなさいよ、立ち話なんてさせるつもりは無いわ」

 

「……」

 

 ルーシィは室内を掃除する手を止めて、ウェットティッシュで軽く手を拭く。応接用ソファに座り、自分の前に座るようにとヒナに手で促す。

 警戒は継続して、ヒナは銃をそばに置きながらもルーシィの前に腰掛ける。ソファそのものに仕掛けなどが施されている様子は無かった。

 

「私の目的はね、主に5つあるわ。その殆どは既に達成されているんだけど……聞く?」

 

「聞かせて」

 

・ハドマの生徒会を潰した上でハドマを乗っ取る

・ハドマの乗っ取りに成功したらゲヘナと併合

・ゲヘナと併合したら万魔殿を乗っ取り統治する

(・レイコは風紀委員会を倒す契約を履行する)

・乗っ取り後は他の主な学園に新生徒会として挨拶

・その際トリニティとミレニアムには交流会を提案

 

「────とまぁ、ザックリ言うならこんな所ね」

 

 しかしそれらは全て「レイコの最強への道を補助する」という言葉でも纏めることができてしまう。ルーシィとしては実際そんなつもりで動いている。私利私欲はとうに頭に無いと言ってもいい。

 

「もしマコト達があなた達を襲ってきたら?」

 

「応戦するわ、当然よ。負けたら負けたで、もう、私としてはそれでいい。勝てないのなら、私は所詮その程度の器だったって事だし。本気で抗った末の運命なら、受け入れるわ」

 

「……私が今ここであなたを倒そうとしても?」

 

「ええ、応戦するわ。私が負けるでしょうけどね」

 

「!」

 

「だって私、弱いもんね。唯一と言ってもいい私の取り柄は、作戦を練れる事だけ。それしか、私にはできないからさ」

 

「……そこまで分かってて……」

 

「別にゲヘナ学園の治安を良くしようだなんて事は考えてないわ。でも、今よりはマシになると思う。こう、自然な形でね。あなたも少しは暇ができると思うけど?」

 

「いくらゲヘナ学園でも、軍事クーデターで学園を乗っ取ってマシになると思えないけどね」

 

「もし羽沼マコト達が復活してきたなら、選挙でもやるかもね。その方が公正でしょ。一般生徒も既に丸め込みつつあるし……卑怯な手段を使わなくとも、順当に勝てそうね」

 

「……。針村ルーシィ。あなたは、このゲヘナ学園をどうするつもり?」

 

「さっきも言ったでしょ。『どうもしない』、ただこれしか答えようがないわ。とりあえず、書類でも整理してさ。地道に生徒会の仕事してくわ」

 

「ハドマ学園の生徒会に入ったのも、飂熾冘巫髏の構成員に投票させただけでしょう。飾りの副会長のあなたに、何ができるのかしら?」

 

「あらヒド〜い。確かに部下にも投票させたけど。リエ──生徒会長から信頼を得たのはこの私自身の手腕よ。会計がヘマしてクビになっちゃったから、副会長として書類整理する傍ら、会計も兼任して。普通の生徒会役員の1.5倍以上は仕事してたわ?」

 

「……」

 

 ヒナが懐疑的な視線を向ける中、平然とした顔でルーシィは立ち上がり、マコトの──今となってはルーシィの席となった机に向かう。

 書類を何枚か手に取りそれをヒナに見せ付ける。

 

「さっきチラッと見たけど、ひっどい予算管理ね。風紀委員会なんて、学園内でも特に酷いわ。人数と予算が不釣り合いにも程がある。私の可愛い部下を使って風紀委員会を潰そうとしてた辺り、万魔殿は風紀委員会が嫌いで嫌がらせしてたって所かな?」

 

「……そうね、マコトの嫌がらせはいつもの事よ」

 

「風紀委員会の支部なんか作って、モル姉を含めて幹部2人をD.U.に出向させるとかさ。まぁ、幹部を出向させるのは私の案だったんだけど」

 

「!?」

 

「まさかその中の1人がモル姉だなんて……名前まで聞いてなかったから本気で驚いたわ」

 

「支部の設置は、あなたの仕業だったのね」

 

「『幹部を出向させる』って案は、ね。でもそれはマコトが『本当に風紀委員会に勝てるのか?』って気にしてたからなの。だから私は『戦力を削ぐ為に生徒会権限でどこかに派遣したらどうなの?』って提案したの。そうしたら、アイツってば『鬱陶しいあの女をトバす良い機会だ』なんて笑ってたわ」

 

「……そういうの、言っていいの?守秘義務は?」

 

「マコトは生徒会から追い出されてるじゃない」

 

 本人が居ないのに義務も何も無いじゃない──と言わんばかりの言い草だ。ヒナは、自分に関係ない守秘義務はどうでもいいかと溜め息1つ。

 

「本当にあなた達が拘束しているんじゃないのね?万魔殿の他の子とも連絡がつかないみたいだけど」

 

「うーん。私は何もしてないし、ましてや、部下に指示もしてないわ。今は飂熾冘巫髏の皆で大掃除をしてるところだしね。屋外も含めてね」

 

 掃除や舗装をしている所はヒナもここに来る時に目にしている。それについては、疑うハズも無い。ゲヘナ学園と併合したばかりだからなのか、未だにハドマ学園の制服だったので見てすぐに分かった。

 飂熾冘巫髏ではないハドマ学園の生徒は、未だにハドマ学園の校舎──ゲヘナ学園第3、第4校舎に留まっているという話は、アコ経由で情報部からの情報を得ていた。

 ──つまり「今ゲヘナ学園に居る旧ハドマ学園の生徒」は、殆どイコールで飂熾冘巫髏と解釈しても間違いは無さそうだった。

 これからどうしたものかとヒナが考えていると、思い付いたようにルーシィは言う。

 

「……あ。その連絡がつかない子って、ひょっとしてサツキって子?ピンクの髪の……」

 

「棗イロハ。赤髪の……戦車長よ」

 

「戦車長か。それなら多分、今頃、保健室かもね。怪我人は保健室にブチ込んでるからさ」

 

「保健室に?……どうして?」

 

「どうしてって、私達は別にマコト達に恨みがあるワケじゃないし。文句言えないくらいに打ち倒すか相手が負けを認めたなら用済みよ。それなら、同じゲヘナ学園の生徒同士、保健室に運ぶくらいの事はするけどね」

 

「あなたは……何なの?割り切りが良すぎるの?」

 

「別に……目的を果たしたらどうでもいいってだけ。敵も味方も無いわ」

 

「……サツキの名を出したのは何故?」

 

「うちの幹部の1人がさ、そのサツキって子のこと気に入っちゃったのよね。イチャコラしてるかも。だから連絡つかないのかな〜って思ったの。まさか別の子とは思わなかったけどね」

 

「ふぅん……まぁ、その辺の事はいいわ。あなた達がゲヘナ学園の生徒会として君臨しようとも、私にはあまり関係無い。嫌がらせさえしてこなければね」

 

「あ、そぉ?思ったより寛大────」

 

「でも。ハドマ学園を不法に乗っ取った件について不問になったとは思わないことね」

 

「────不法、ね。確かに、私が指示して学校を壊させてリエを行動不能にしたわ。でも、ゲヘナのあなたにそれについて追求する権限はあるかしら?空崎ヒナ風紀委員長?」

 

「私はただ忠告をしただけ。これから──それらを追求する権限を持つ人が来る。覚悟するといいわ」

 

「あー怖い。感情抜きにどう論破してやろう……」

 

「論破できる要素があるの?」

 

「さぁね。でも、表向きとはいえ法規に則って私が権限を行使したワケだからね。──どう言いくるめようかしらねェ……シャーレの先生……♪」

 

「……今のうちに言っておくわ、これも『警告』よ。先生に手を出したら、絶対に許さないから」

 

「アハッ♪ その『手を出したら』、どういう意味なのか聞いてもいーい?」

 

「『どういう意味』の『意味』が分からないわね」

 

「フン、白々しい。とぼけんじゃないわよ。でも、そうねぇ。()いて、そう、本当に強いて言うなら……

『攻撃』なのか『女として』なのか……かしら♪」

 

「────ッ!?」

 

「私のことを、何でも部下任せの女と思わない方がいいわよ。私は本質的にはあなたと同じ──『自ら動き、現場に立つ』タイプだから」

 

「……肝に銘じておくわ」

 

「そっ。それならいいわ。んじゃ、風紀委員会への予算案は見直しとくわね。近い内に連絡するから、期待しといて〜」

 

「……あなたが捕まればそれも水の泡になるんだし、何も期待しないでおくわ」

 

「食えない女ね……空崎ヒナ」



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第14話:先生vsルーシィ①

 

「────ようこそ、シャーレの先生。万魔殿改め飂熾冘巫髏の本拠地へ……♪」

 

「ルーシィ……」

 

 数十分前にイロハから「ルシュフェルとの戦闘になりそうです」といった連絡を受けて以降、彼女と音信不通になっている。

 たまに連絡は送りながら、そしてヒナがレイコに負けたという連絡を受け取りつつも、私はすぐさまシャーレに格納されている自動操縦のヘリを使ってゲヘナ学園に向かおうとしていた。

 今にも飛び立とうとしていたその時、私のそんな行動を読んだイオリとモルモが突入してきた。私を止めようとしてくるが、2人を説得し2人と一緒にゲヘナ学園まで移動してくるに至った。

 現在あの2人は風紀委員会の本部に居る。やはり1人と1人の方が腹を割って話しやすいと思った。私をずっと護衛しようとしてくれていたイオリには悪いと思ってる。でも、1人の方が、ルーシィから本音を聞き出しやすいのも間違いではないはずだ。

 

「どうぞ、座って。アスカ達のお菓子もあるよ?」

 

「……」

 

「まさか警戒してる?生徒からのお出し物だよ?」

 

「警戒はしてないよ。……じゃ、頂くね」

 

 流石に毒やその類のモノは入っていないだろう。そこの所はルーシィの良心を信じている。というかルーシィの目的に「シャーレの先生の排除」などは入っていなさそうだから、警戒する必要性が薄い。

 

「はーい。感想あったら言ってね、伝えとくから。できれば優しい言葉でね?」

 

「……甘さは疲れを癒してくれるね」

 

「ねー。私もこれでやっと少しは休めそうよ」

 

 ズズッと紅茶を一啜り。ナギサ達ほどではないがルーシィも中々のお手前だ。紅茶は適切な温度やら煎れ方がある。マスターするのは、至難の業だ。

 

「……ハドマ学園について、追求してもいいかな」

 

「お、単刀直入に来たね。どうぞ?」

 

「どうして、リエを裏切ったの?」

 

「裏切るも何も、当初の予定通りだからね。潰すの目的でハドマ学園に入学して、生徒会に入ったの。本当は会計も構成員の予定だったんだけど、不祥事やらかしてクビになってさ」

 

「もし会計まで入られてたら色々と大変だったね」

 

「ええ、もっとガッツリ横領できる予定だったわ、本当ならね。部下達にも、もっともっと良い装備を配りたかったなー……」

 

「……君が部下に指示を出してハドマ学園を崩壊させリエに重症を負わせ、行動不能にさせて、その上で副会長としての権限を行使しゲヘナ学園との併合を果たした──その証拠はヴァルキューレに預けた」

 

「へぇ、録音でもしたのかな?」

 

「まぁね。それから、学園崩壊以降、スズはずっと君を疑っていたらしいよ」

 

「でしょうね。スズだけよ、私が飂熾冘巫髏だって明かした時に『やっぱり』って反応したの。前線で飂熾冘巫髏とやり合ってるからこそかな、部下達の行動に私の作戦っぽさを感じていたのかもね……」

 

「そうなのかもしれない。君は、効率を重視して、かと言って効率だけを重視してはいない良い塩梅の作戦を選べるんだよね」

 

「そうかしら。そこまでの自覚は特に無いけれど。まぁ、結果的にそうなってるのかもしれないね」

 

「……君は、ヴァルキューレに捕まる。下手をすると矯正局に送致される事になるだろう」

 

「何の証拠があって?」

 

「君の自白があって」

 

「ここまでの流れ含め作り話かもしれないよねェ」

 

「頭脳派を演じ、私は裏から全てを操ってました、なんて……ルーシィが主人公のイタい物語かな?」

 

「ッ……言うじゃん」

 

 額にピクリと筋が浮かび上がる。少し心は痛むが煽ってでも何をしてでももっと証拠を吐かせよう。そうしなければ証拠不十分だ。

 

「あっ、そーだ。これだけは言っとこうか。学園を崩壊させてリエを行動不能にした、そして副会長(わたし)が会長代理として調印式をって流れだけど、リエが行動不能になったの……ただの偶然だよ?」

 

 現に意識不明の重体に陥ったのはリエ、アスカと他数名で、その他の生徒はせいぜい打撲、擦り傷や切り傷などなどその程度で済んだようだし、確かに偶然なのだろう。

 

「……その偶然に便乗したんだよね?」

 

「さぁ、どうかしら。そもそもキヴォトスの人間が崩落程度で意識不明になるなんて変だと思わない?打ち所が悪かったからって言ってしまえばそれまでだけどさ。偶然にせよ、万が一に起こるかどうかの確率でしかないわよね?」

 

「……」

 

「そんな『起きるかどうか分からない事』を計画に組み込むような馬鹿に見えるの?私が?」

 

「馬鹿には……見えないけれど」

 

「じゃあ無理よね。明確な計画性を証明できなきゃ私を矯正局に送るなんて無理。それこそ防衛室長……カヤ元代行じゃあるまいし」

 

「ッ!」

 

「知ってるよ?先生、カヤ元代行を庇ってるよね。世間じゃ行方不明、人によっちゃ既に死んでる扱いだけどさ……シャーレに居るよね?」

 

「……」

 

「ふふっ、なんで知ってるんだって顔だね。先生も迂闊だなー。誕生日パーティ、生徒達を招くんなら元代行だけ別室に居させればいいのにさ。あんなに堂々と居るんだもん、私、ビックリしちゃったよ」

 

「……居たの?あの時の……パーティに」

 

「勿論。先生の性格を観察する為に、潜入したの。この私自らね」

 

 あの時、見知らぬ制服の生徒が居るな──とは、思っていた。だけど、アレがハドマ学園の制服で、しかもルーシィだったなんて思いもしなかった。

 まさかカヤをシャーレに匿っていると外部の子にバレる日が来るだなんて。何だかんだ隠し通せると思っていた。だけど、そんな私の想像は希望的観測でしかなかったというのか。

 

「……」

 

「一応、これでもゲヘナ学園の生徒会長だからさ。私に余計な疑念が掛けられそうな事は、広めないでほしいんだよね〜、先生〜?」

 

「…………」

 

「元代行の事を世間にバラされたくなかったら──たとえ不確定な情報でも、ヴァルキューレに渡すのやめてくれるかな?先生……?」

 

「………………」

 

 脅迫──という事か。カヤを匿っている事を世に黙っている代わりに、不確定だろうと、ルーシィに疑念が掛かりかねない事は言うなと。

 ルーシィの言うこれは完全に私のミス。平時からシャーレに通ってくれている生徒(とゲマトリアの面々)だけをパーティに招くべきだった。

 もしバラされたら、私はともかくカヤへの批判が再燃するだろう、シャーレにデモやら襲撃なんかも有り得るかもしれない。

 何故カヤを庇うんだ、と私がバッシングを受けるというのはもう構わない、前にも受けた事だしね。しかし再びカヤが批判を受けるのは違う気がする。

 

「……ね?そうする方がWin-Winでしょう?」

 

「……そうだね。まず間違いなくルーシィの言う事を聞く方が合理的だと、私も思うよ」

 

「ふふっ、イイね。物分かりが良い人は好きだよ」

 

「……」

 

「もしこれに合意してくれるならぁ……私から先生に

『お礼』、シテあげてもイイんだけどな〜……♡」

 

「『お礼』?お菓子でも奢ってくれるのかな?」

 

「もぉっ、ニブいなぁ♡……エッチ……シよ?♡」

 

 制服をはだけ、白いブラジャーの肩紐を見せる。潤んだ瞳での上目遣い──交尾する為だけに異性に媚びるような、メスのフェロモンを振り撒くような胸の谷間を強調する扇情的な角度……。

 計算されている。完全に計算され尽くしている。そんな事は分かってる、分かってるんだ。それでも私だって先生である前に1人のオスで──魅力的な異性を前にして、一歩引く事など────。

 

「ほら……せんせ?ソファに来なよ♡」

 

「……本当に、良いの?」

 

「イイよ♡ 今は大掃除中だから、少しくらい声や音が漏れたって誰も気にしないしさ♡」

 

「……そっか」

 

 ルーシィの隣に移動して腰を下ろすなり、横から抱きついて胸を押し付けてくる。大きくはないが、決して小さくもない。体感、イオリより少し大きいくらいかもしれない。

 

「……脱がして、先生♡ それとも制服は着たままの方が興奮するかな?」

 

「私はどっちでもいいけれど、強いて言うのなら、着たままの方が後が楽かな」

 

「?……まぁいいや、んじゃあ着たままね。このままソファでハメちゃおっか♡ ね、好きな体位は?」

 

「……対面座位」

 

「対面座位ねぇ、りょーかい♡ じゃ、先生の上、ちょっと失礼するね〜……♡」

 

 ソファに腰を下ろす私の上に跨り、頬を赤く染め照れた仕草をする。果たして、これすら計算されているのか、自然体なのか……。

 

「……先生は脱ぐ?チャックから出そっか?」

 

「そうしてくれると嬉しいかな」

 

「は〜い♡……わっ、おっきぃ……♡ 私でこんなにおっきくしてくれたの……?♡」

 

「……」

 

 ジジーッとチャックを開けて、ズボンとパンツをちょっぴりズリ下げる。すると、かなり反り返ってドクドクと脈打つペニスが飛び出した。

 

「どーする?舐めよっか?」

 

「……ルーシィの好きなようにしていいよ」

 

「それじゃ、もう挿れていーよねっ?先生とこんな密着してたら……もう、濡れてきちゃって……♡」

 

「……」

 

 スカートの中に手を入れパンツをズラした彼女は私のペニスに手を添えながら、ゆっくり腰を下ろし挿入を開始する。

 

「あッ♡ すご……本物のちんぽってこんな……♡」

 

 ルーシィの膣は、まるでソフトタイプのホールのようにニュルニュルと厚いヒダが絡み付いてくる。たんっ、たんっ、と彼女はリズミカルに腰を振り、その度にヒダがカリを的確にシゴいてくれて、軽くイキそうになってしまう。

 

「ッ♡ くぅんっ♡ すご、イイっ……アツいよぉ♡ ディルドなんかっ、メじゃないね……はぁ、はぁ♡ こんな気持ちイイなら、もっとぉ♡ は、早くっ、先生のこと……襲っとけば、良かったぁっ♡♡」

 

「今更だけど、生だったね……ゴムしよっか」

 

「イイよォっ、そんなの……あんっ♡ ナマの方が、ゼッタイ気持ちイイもんっ♡ はぁはぁ、あんッ♡ 奥の方、すんごいコツコツしてるよぉ♡ 子宮に、響くっ……んあぁっ♡♡」

 

「ッ……」

 

「ねぇ先生、チューしよぉ?折角の対面だしさぁ♡ 先生もキス(これ)が欲しくって対面座位(この体位)にしたんでしょ♡ ほらほらぁ……ちゅー♡」

 

 唇を尖らせる彼女の背中を無言で抱き寄せ、胸を押し潰すくらいに強く抱き締めて唇を奪う。きっとディルドなんかでオナニーしていたんだろう、私のペニスも中々奥までズッポリと挿入(いれ)られる。

 舌で強制的に唇をこじ開けてやり、ぢゅーっ、と舌を吸い、唾液を啜ってやる。この間、私が彼女を強く抱いている事もあって、彼女のペースではなく私のペースでゴツゴツと膣奥を突きまくっている。

 

「んッ♡ んぶっ、はぐっ♡ ふぐっ……んうぅ♡♡ イグッ♡ せんせぇっ……そんな突いちゃ♡ イク♡ イクッ♡ イグッ♡♡ イクぅぅぅっっ……♡♡」

 

 ぎゅうううっとルーシィの爪が立てられる。私も着衣のままで良かった、さもないと怪我をしていたかもしれない。

 かなり強めにイッたらしいルーシィは、すっかり蕩けた顔で、唾液を垂らしながらも私の胸板に額をくっつけ、はぁはぁと、荒い息を整えている。

 

「えへ、へへ……もぉ、イッちゃった……♡♡」

 

「……気持ち良かった?」

 

「うん、すっごく♡ ごめんね、先生。まだ先生はイッてないでしょ?……ちょ、ちょっと待ってね……連続でイッたからかな、力が入んないや……♡」

 

「大丈夫、とりあえず落ち着いて」

 

「うん……ありがと♡」

 

 彼女を抱き締めると落ち着いたような顔で彼女も私をキュッと抱き締めてくれる。お互いに、着衣で激しく動いたから結構汗をかいてしまった。

 この後、このまま外に出ると思うと……。ちょっと汗をかき過ぎてしまったかもしれない。

 

「……ゴム付けよっか、生はもう味わったでしょ?」

 

「え〜……?私は別にぃ……生でもいいけど……♡」

 

「避妊は大事だよ。さ、一旦抜いて」

 

「じゃあ、次はゴムありでいいから、もうちょっと先生とこうやって繋がってたいな……♡」

 

「……もう少しだけね」

 

「うんっ♡」

 

 ゆっくり腰を前後に揺らして、ピストンせずとも私の精液を搾ろうとしてくるのが分かる。くねくねヌルヌルと良い絡み方をしてくれる。

 

「……ルーシィ、そろそろ動きたいかも……」

 

「んっ♡ それじゃ、セックスの続きとイこっか♡ 次はゴム付けるんだったよね?」

 

「もちろん。待って、今出すから」

 

「スーツのポケット……?えーまさか常備してるの?先生ってば、ヤバイ人だなぁ〜……♡」

 

「────今だ、カンナ」

 

「っ、手榴──」

 

 スーツのポケットに手を入れて、ゴムを取り出すように見せ掛けて、手榴弾を複製(ミメシス)する。ルーシィの背中を抱き寄せながら歯でピンを抜き、扉の方へと投擲。

 小さめの爆発と一緒に扉は吹き飛んで、カンナがヴァルキューレの生徒を引き連れて突入してきた。

 

「ヴァルキューレ公安局だッ!手を挙げろッ!!」

 

「はッ!?」

 

「やぁカンナ、お疲れ。忙しい所ごめん。この子が例の、針村ルーシィだよ」

 

「見事に先生の策にハマった、というワケですか」

 

「ま、こうなる事は読めていたからね」

 

「────そのようですね。立て、針村ルーシィ。ハドマ学園崩壊及び不当な学園併合の件について、お前に容疑が掛かっている」

 

「なっ……なんで……!!」

 

 ガチャンと無情にも彼女の細い手首に鈍色の輪が掛けられる。ポタポタと愛液を垂らしながら彼女は引っ張られ、部屋から連れ出されていく。

 その隙に私はさっさとパンツ、ズボンを上げる。随分と情けない……。

 

「クッソ……!!ヤるだけヤッて捨てるってワケ!?大人として、先生として!人としてどうなのよ!?最低だと思わないのッ!?」

 

逆ハニトラ(・・・・・)だよ。まず、ルーシィが私にハニトラ仕掛けてきたよね。私は、ハニトラ(それ)に引っ掛かったフリをしてただけだから」

 

「な……ん…………」

 

「そもそも。『ヤるだけヤッて』って言ってたね。申し訳ないけど……私、1回もイッてないワケだし。ヤッた感は……殆ど無いよね、悪いけれど」

 

「────ッ!?」

 

「ヴァルキューレか矯正局かは分からないけれど、よく反省してくるんだ。──リエは、最後まで君を信用していた。あの子は……どこまでも優しいね」

 

「クッ、ソォォッ……!!」

 

「制服、脱がなくて良かったじゃない。皆から裸を見られなくて済んだね?」

 

「ッ!!その、為に……ッッ……クズ教師ッ!!」

 

 ヴァルキューレの生徒に引っ張られ、ズリズリと引きずられていく。掃除したから汚れはしないが、服にも肌にも傷がついてしまう……。

 

「ッ。……クックック……ルーシィってば面白い事を言うね」

 

「何ッ!?」

 

「私がクズだなんてそんな……今更感が凄いなって」

 

「────ッ!?」

 

「逆ハニトラの為とはいえ、愛し合ってもない子とこうして交わってしまう時点で、君を突き出そうが突き出すまいが……私がクズなのは確定していた」

 

「っっ………」

 

「無事、そこから出られたら……。その時は平和に、普通に、お出掛けでもお買い物でもしようね。君も私の生徒の1人だから」

 

「誰がそんな事ォッ!ふざけてる……ふざけてるよ!先生ッ!!こんな……こんな終わりなんか認めない!絶対に認めないッ!!」

 

「ちなみに──君の頼みの綱であろうレイコは今、保健室に居るみたいだよ。気が付いたイロハから、さっき連絡があった」

 

「!?」

 

「『久しぶりの対戦車で盛り上がりすぎた』って。

『やりすぎた』って、万魔殿の戦車隊の子に謝りに来たみたいだね」

 

「────ッ!!」

 

「あの子も、良い子だね。『強くなりたい、だけどそれはそれとして』……ってスタンスに見える」

 

 そこで言葉を切ると、ルーシィは項垂れ、抵抗を止めてしまう。そのまま、本拠地の前に停めてあるヴァルキューレの車に乗せられそうになるが彼女が何かを言いたそうにしているので、私が手で合図し護送を一旦止める。

 

「……そうよ、レイコは良い子なの。私が私の計画の為に、あの子を利用してたに過ぎないわ」

 

「『計画』……じゃあ、認めるんだね?」

 

「ええ、全て認めるわよ。私が不当にハドマ学園を乗っ取り、何も知らない羽沼マコトと調印式を行い両校を併合させた。その後、万魔殿を乗っ取った」

 

「……そっか」

 

「最後の万魔殿の乗っ取りについては、学園内での小競り合いという事で話はつく。我々が問題として挙げているのは、学園併合の計画についてのみだ。洗いざらいヴァルキューレ(こちら)で吐いてもらうぞ」

 

「分かった。でもレイコには────部下達には、手を出さないで。私は、何も知らない部下達を利用していただけに過ぎないの。全ては私が立てた計画だから、捕まえたり罰するなら全て私だけにして。それなら全部白状する。部下達にも手を出すなら、死んでも黙秘するわ」

 

「──分かった、お前の部下についてはそのようにこの場で決定しよう」

 

「…………ありがとう。それなら安心して行けるわ」

 

 車に乗せられ、今にも出発しそうになったまさにその瞬間────!!

 

「行かせないわよぉ、ルーシィ?」

 

 ガシャアアアアアッ!!とガラスが砕け散る音と一緒に、ボンネットに生徒が1人、飛び降りてきていた。

 車はプスプスと煙を上げて、今にも爆発しそうな雰囲気に見える。ヴァルキューレの生徒達は、突如出現したその生徒に一斉に銃を向けて威嚇する。

 

「動くな!止まれ!」

 

「手を上げろ!」

 

「……♪」

 

 全方位から囲まれるが、飄々とした様子で屋根に座ってみせる。大したパフォーマンスだ、ああして目の前で座られては「すぐには動けないだろう」と無意識下で思わされ──恐らく殆ど全員の警戒心はほんのりと弛緩する。

 

「私達の総長(ボス)を連れてくなんて、言語道断だわ〜。ましてやルーシィ、あなたが諦めてどうするのよ」

 

「なんで……ラ────」

 

「ヴァルキューレ共に告ぐわぁ!飂熾冘巫髏の絆、舐めないことねッ!総長(ボス)が全てを諦めてもねェ──その総長(ボス)以外は諦めが悪いのよぉッ!!」

 

 ギラリと彼女の紅い目が光を放つ。それと同時にヴァルキューレの生徒達は銃を取り落として、胸を強く押さえてその場に膝をつく。

 カンナも頭を押さえてギリリと歯を食い縛って、その生徒から目を逸らしている。

 そして私は────ルーシィとの行為を中断して萎えつつあったペニスが、ズボンの中で再びフルにガチガチギンギンのバキバキに勃起してしまった。

 

「ッ……なんだ、これ……」

 

「せ、先生ッ、お気を確かに……!!」

 

「カンナ……」

 

 カンナのケモ耳が、ギザ歯が、鋭い目が。彼女の全てがエロく見えてきてしまう。ヴァルキューレの生徒達も、あんな軽装備で自分の身を守れるとでも思っているのだろうか、今すぐ襲ってしまいたい。

 頭の中がピンク色の妄想で埋め尽くされる中で、その生徒は車の扉を強引に引っこ抜き、ルーシィを連れ出した。

 

「なんで来たのよ……」

 

「何でって、幼馴染にそれ言う?」

 

「幼馴染……」

 

「あなたの幼馴染はレイコだけじゃないってのに。飂熾冘巫髏はまるで2人の組織みたいに扱ってさ。そりゃ、ハドマの会計への潜入はミスったけどぉ?けどさ……そんな私にもさ……助けに来させてよ」

 

「……ありがと、ライ──ムグッ!?」

 

「もー、名前はヒ・ミ・ツ!でしょ?飂熾冘巫髏は正体不明の組織なんだから……♡」

 

「……そーね。ありがと、助けてくれて」

 

「モーマンタイ!逃げるわよぉ、ルーちゃん♡」

 

 車を蹴り付けて立ち去ろうと背を向ける生徒に、カンナは一発、彼女の背に発砲。大したダメージは入っていなさそうだが……。

 

「うっざいわね〜。さっさとあんたの部下みたいに情けなくオナりなさいよね〜」

 

「「ッ!?」」

 

 見れば、ヴァルキューレモブちゃんズがその場に寝転がり身体を丸め、銃身をグリグリと股間に強く押し付けて角オナモドキで……致して(・・・)いる。

 中には、冷静なヴァルキューレ警察学校の生徒も混ざっている。彼女は直に下半身をクチュクチュと音が鳴るくらいにまさぐっている。

 

「おい、お前達!何を──」

 

「先生とヴァルキューレの指揮官も中々耐えるね。やるじゃなぁい♡……で・も♡」

 

「「うっ……ッ!?」」

 

 身体が動かない。目が、彼女のことを真っ直ぐに見つめて視線を外せない。どうして、どうして──あんなにも彼女はムチムチで……エロいんだ。

 

「このクッソ広いキヴォトスで唯一の夢魔の末裔、舐めんじゃあないわよッ!吸血鬼やタダの悪魔共のちゃっちぃ魅了(チャーム)なんかと同じと思わないことね!」

 

 ルーシィをお姫様抱っこした彼女は、ユウカにも迫るような極太の太ももをたぷたぷと揺らしながらその場から優雅に歩いて立ち去って行った──。




冷静なヴァルキューレ警察学校の生徒、イイよね。
SDの時点で可愛さが溢れている。


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第15話:飂熾冘巫髏(ル・シュ・フェル)の全貌

 

 謎の生徒の介入にてルーシィを取り逃して、暫くしてから、私やカンナ、ヴァルキューレの生徒達は正気を取り戻した。

 彼女の姿が完全に見えなくなってやっと回復だ、追い掛けたとして追い付けるかどうか分からない。それでもカンナはヴァルキューレの生徒達に指示を飛ばして、ルーシィ確保に戻るようだった。

 

「申し訳ありません、我々が不甲斐ないばかりに」

 

「今のは仕方ない。あの子の事は情報に無かった。完全に、警戒すべきはレイコだけだと思っていた。そうだったな──そもそも飂熾冘巫髏は幹部すらも不明な組織なんだった……警戒のしようが……」

 

「恐らく先程の生徒は……」

 

「うん。きっと幹部だ。ルーシィとのやり取りや、幼馴染という発言からしてもそんな感じがするね」

 

「それと、会計がどうのと言っていましたね」

 

「ッ!」

 

 会計、生徒会、失楽園、ハドマ学園────。

 これまで薄らとしか感じていなかった「疑問」が浮き彫りになったと同時に解決、ずっと欠けていたピースが綺麗に隙間にハマッた感覚があった。

 

「カンナは引き続きルーシィの捜索をお願い」

 

「えっ?……それはそうですが、先生は?」

 

「旧ハドマ学園──現ゲヘナ学園第3校舎に行く。もし仮に私の予想が正しければ、あの幹部の事なら特定できそうだ。それがルーシィ発見に繋がるかはまだ分からないけれど……何もしないよりマシさ」

 

「分かりました。お気を付けて」

 

「カンナもね」

 

 カンナに別れを告げて解散、モモトークでスズに

「これからハドマ学園に行くよ」と連絡を飛ばす。

 今は「ゲヘナ学園第3校舎」だがスズ達の手前、あちらの学園について「旧ハドマ学園」や「ゲヘナ学園第3校舎」などという呼び方はできない。

 それから暫くして、ハドマ学園のプレハブ校舎の一室で、ルーシィとアスカ以外の七天魔の5人が、一堂に会していた。

 

「数日ぶりだね。少し皆に聞きたい事があってね。忙しいところ悪いんだけれど、集まってもらった」

 

「構いませんわ。先生に比べれば私など。ましてや今はもう、生徒会長ですらありませんもの」

 

「お、同じくです……私も書記の仕事をする機会すら無くて……いつも暇で……」

 

「私も。私の連邦生徒会対策委員会も解散したわ。もう全てが遅い。もう全員、諦めてるし。私もね。てか敵視する相手を間違ってたわ、完全にね」

 

 ハドマ学園がゲヘナ学園と併合したことにより、リエとアンナは生徒会という役職を追われて、連邦生徒会対策委員会の委員長のシエルは、遂に学園が併合した事により存在意義を失い、委員会としては既に解散してしまったそうだ。

 

「この前の子……サエは?元気にしてるかな?」

 

「ええ。アガリさんが飂熾冘巫髏だと判明し、姉のアスカさんがあちらに行ってしまっても、あの子は今も、ハドマの家庭科室でお2人を待っています」

 

「……」

 

 あの子は良い子だ。掛け値なしに純粋に良い子と褒められる子は、私の生徒の中でもそうは多くないだろうに……。ヒフミさえファウストだし、コハルは知っての通り脳内ピンクのエ駄死だし。

 

「ところで、本日は何用で……?」

 

「うん。そろそろ本題に入ろうか。ハドマ生徒会の失楽園って、会計の生徒は居ないの?」

 

「っ!それ、は……」

 

「言いにくそうだね。──多分だけれど、その子も飂熾冘巫髏の一員、しかも十中八九、幹部だよ」

 

「「!?」」

 

「そんな!ライム先輩まで……っ」

 

 アンナが悲痛な声と共にペンを落とした。今にも泣き出しそうな顔になるが、それをグッと耐えて、書記の仕事を続ける。

 

「ライム──それがその生徒の名前なんだね?」

 

「……はい。萌山(もえやま)ライムさん、私とシエルさんと同じ3年生です。ルーシィさんが、選挙で副会長になる直前までは……会計を務めておりましたわ」

 

「その子が写ってる写真とかあるかな?」

 

「ええ、確か私が議長に就任した時に撮影した物があったハズですけれど……」

 

 そう言ってスマホのカメラロールを遡っていく。彼女が見せてくれた写真には、確かに、私達の前に現れたあのムチムチな太ももの少女が写っていた。

 

「会計でなくなったのは何故?辞めたの?それともクビになったの?」

 

「……私が、クビにしました。彼女はその、女遊びがあまりに激しかったと言いますか、気品を落とすと再三注意しても……、あちらこちらで他の生徒さんとその……交わったりして……」

 

「わーお……レズなのかな?」

 

「さぁ……それは分かりかねますが……」

 

(私もライム先輩とエッチしてたなんて言えない……言えない雰囲気だよぉ……///)

 

 アンナは顔を真っ赤にして、ペンを走らせる手を止めてしまう。そのライムという子がエッチしてる様子でも想像してしまったのだろうか。

 私も、彼女が乱れる様を妄想して──ピクンと、ペニスが反応してしまうのを薄らと感じた。

 

「レズは見てて癒されるからいいけど、生徒会ともあろう者が誰彼構わずってのはね……確かにね……」

 

「……はい。そういう事で、会計は、ルーシィさんに任せておりました」

 

「ルーシィは副会長と会計の兼任だったんだ、中々大変だったんじゃない?」

 

「そうですね……」

 

「でもまぁ、ルーシィは対外的な仕事はサボってたみたいじゃん。連邦生徒会からの書類なんてリエは存在すら知らなかったんだよ?この前の会見まで。全部ルーシィが処分してたから……!」

 

「ですがルーシィさんて、それ以外であれば普通に仕事していましたよ……。書記として、仕事の現場はいつもそばで見てましたし……」

 

ルーシィ(アイツ)的にも元から学園を破壊するつもりとか無かったんでしょ?連邦生徒会からのお達し通りに平和に併合するつもりだったのに、リエやら私やら反対する勢力が居る上に、その連邦生徒会もハドマ併合の問題を後回しにしたから強硬手段に出たって感じでさ」

 

「その強硬手段の、手段の執り方を誤ってしまったような感じに思えますね……ルーシィさんは」

 

「そうですわね……。こんな事なら、スズさんが以前言っていたように、連邦生徒会の本部に殴り込みに行く方がまだ良かったです……」

 

 リエの発言にスズ本人含め皆が苦笑した。こんな大きな問題に発展するくらいならそうされてた方が幾分かマシだった、というのはあるだろう。

 たとえその問題によって自分が議長を辞める事になったとしても。学園がこんな事になるのなら、とリエは思っている。

 

「……誰か、ライムの居そうな場所、知らないかな?ここに来る前にスズに伝えた通りだけど、ライムがルーシィを連れ去った以上、ルーシィよりライムの居そうな所を探すべきだと思うんだ」

 

「ライムだし、ホテル街じゃない?」

 

「パトロールでもよくホテル街で見掛けるわよ」

 

「ホテル街……でしょうね」

 

「……だと思いますわ……」

 

「ハドマ自治区6-9にあるラブホテルですかね、ライム先輩はよくそこでナンパを────」

 

「「「「「………………」」」」」

 

「……皆さん?先生まで……どうして私を見て……」

 

「いや……具体的過ぎないかなって」

 

「アンナさん、あなたも……?」

 

「〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!ちちち違います!私っ、飂熾冘巫髏なんかじゃありません!ただその、前にライム先輩とエッチした事あるホテルだからっ!!しかも先輩は、他の生徒もそこに連れ込んでエッチしてるから……────ッ!??違うんです今のは!違うのぉっ!あうっ……はうぅぅ……///」

 

「……き、聞かなかった事にしてあげるわ……///」

 

「それが良さそうです」

 

「アイツ、アンナの事も食ってたのね」

 

「アンナさんまで……全くライムさんは……」

 

 焦り過ぎて自爆してしまったアンナは遂にペンを置いて泣き出してしまった。そりゃ泣く。私だってこんな流れでそんな事を言ってしまったら泣くさ。自爆にも程があるもの。

 

「あ、そーだ。そういえば、アンナが髪型をそれにしたのって生徒会に入って少ししてからじゃない?ほら、さっきのリエが見せてくれた写真に写ってるアンナは、スズみたいなフツーのストレートだし」

 

「はぅっ!?」

 

「そういえばアンナさん、いつからかライムさんと同じツーサイドアップにしてましたわね……」

 

「髪型まで真似るとか、どこまで慕ってんのよ……。憧れ過ぎて飂熾冘巫髏に入らないでよ?アンナまであたしら統治委員会の敵にしたくないし」

 

「全くですね」

 

「入らないですよぅっ!ライム先輩がそう(・・)だって、今の今まで知らなかったですし……!」

 

 ハドマ学園は百合の花園なのだろうか。そうなら私はさっさとここからお暇したいところだ。百合に割り込む趣味は無いし、というか遠くから眺めたいまであるし。

 

「ともかく──ライムはハドマ自治区6─9にあるラブホテルに居る可能性が高い……そうだね?」

 

「は、はい……先輩はよくそこに女の子を連れ込んでいますので……。あ、座標を送りますねっ!」

 

「ありがとう、じゃあモモトーク交換して、と」

 

「っ!えへへ……先生の連絡先、ゲットです♪」

 

「ム。……何だか嫌な予感がしました。先生、私とも連絡先を交換しましょう」

 

「私も私も〜!!スズみたいにエッチな自撮りとか送ってあげるよ〜♡」

 

「シエルあんたねぇ!ありもしないこと言ってるんじゃないわよ!1歳だけとはいえあたしより先輩のクセに、リテラシーもデリカシーも無いな!!」

 

「い、一応、元生徒会長として、シャーレの先生と懇意にする事もあると思うので、念の為にですね、ええ、念の為に(わたくし)とも……♪」

 

「え、えぇ〜ッ!?どうして急に、皆してこぞって連絡先交換してんのよ〜……。ハドマ学園での先生の案内役はこの私なのにィ……」

 

「あはは……スズの事は頼りにしてるよ」

 

「っ!へへんっ、そうでしょそうでしょ!じゃっ、そのラブホテルの方も、あたしが案内するからね!ついてきて、先生!」

 

「えっえっ、ええっっ!?」

 

「抜け駆けしちゃダメだよ〜スズ〜♪」

 

「うっさい!いつまでも処女腐らせてろってんだ!シエルのロリババア!」

 

「な、なんですって!?1歳しか違わないクセに!待ちなさいよスズ〜ッ!!」

 

「ま、まぁまぁ、シエルさんっ……!」

 

 べッ!と舌を出したスズは私の手を引いて部屋、校舎を後にする。大股でズンズンと早く歩くスズはやがてその歩みを緩め……。

 

「……ね、先生。もしライムが居たらどうするの?」

 

「ルーシィの居場所を教えてもらうよ」

 

「教えてくれなかったら?」

 

「教えてもらえるまで頼み込む。もしくは、何かを条件にして教えてもらうかな」

 

「……そもそも居なかったら?」

 

「その時は帰るよ。でもスズの事はハドマ学園まで送り届けるから、そこについては安心して」

 

「じゃ……じゃあさっ!もしライムが居なかったり、すぐ用事が終わったりしたらさっ……」

 

 歩みを止め、顔を真っ赤に染めて私を見上げる。どこか潤んだ瞳には私しか映ってはいない。こんな目を潤ませる彼女からは、さっきまでの、ちょっとガサツで勝気なスズの面影は感じられない。

 この後に続くであろう彼女のセリフを予感して、軽くピクリとペニスが反応したのを感じる。

 

「そのまま……ホテルでえっち、シちゃわない?」

 

「……流石にそれはちょっと」

 

「何でよ、別にいいでしょ?ゲヘナ学園で噂程度で聞いたけど、先生って実はハーレム作ってるらしいじゃん。あたしらの前じゃ、全ッ然そんな素振りは見せないけど!」

 

「そりゃあ……」

 

「それとも先生は……『ハドマの子とは仕事上だけの付き合いだから』……なんて言うの……?」

 

「っ!」

 

「違う……よねっ……?」

 

 やめろ。そんな潤んだ目で上目遣いをするのは、本当にやめてくれ。見てると胸が痛くなってくる。

 そうだ、まさにスズの言う通りなんだ。

 彼女達の事を好きにならない為に、敢えて距離を取っていたのだ。ただの「生徒」の1人としてしか見ないようにする為に。

 

「……違うさ。そうは思っていないよ」

 

「それならっ……」

 

「それでも。……それでも、今は(・・)、仕事をしに来てるワケだからね」

 

「っ!」

 

「分かってくれると嬉しいな」

 

「……仕事が終わったらいいの?仕事って何なの?」

 

「難しい問題だね。そうだね──強いて言うなら、ハドマ学園とゲヘナ学園を取り巻くこの騒動を全て引っ括めて『私の仕事』……かな」

 

「────っ!」

 

「だからこそ、早くこの騒動を終わらせなくちゃ。スズも、手伝ってくれると嬉しいんだけれど」

 

 指を絡ませて、地面を見つめて黙り込む。強気なスズらしくもない──と思っていると、キッと強い決意をその瞳に込めて、私を見上げる。

 

「分かった!さっさと終わらせる為だから、全力で手伝うし!だから、全部終わったら!──ハドマの誰より早く、私とデートして!エッチもしてっ!!先生のハーレムに私も混ぜてっ!!」

 

「……分かった。ハドマの誰より早く、ね」

 

「うんっ!!」

 

 これまでの私は大体の生徒と早々に連絡先を交換していた。それは何故なのか?理由は実に単純だ。私は────ガチャ禁していなかったからだ。

 これまでずっと女の子と知り合うとすぐガチャに(連絡先を)実装される(交換してた)けど、今回は少し控えていた。

 実装された子があまりに多く、課金するのに少し躊躇っていたから。

 それなのにどうしてあの時、アンナを始めとする他の生徒と連絡先を交換した、いや、できた(・・・)のか?

 そう──アロナとプラナによって実装されていた特別中の特別な募集(ガチャ)「ハドマ学園ガチャ」を、遂に解禁したから……ガチャ禁から解放したからだ。

 今回の実装キャラはまさかの11人。地獄も地獄、超大地獄の11PUガチャ。大人のカードを消費したというのは最早言うまでもないだろう。

 

 

〈七つ目の白い地獄〉PUキャラ

【儚き元生徒会長】☆3 我猛(がもう)リエ

【ムッツリ書記長】☆3 天河(あまがわ)アンナ

【イタズラっこあくま天使】☆3 弖使魔(てしま)シエル

【誇り高き暴食の女王】☆3 鐘蟲(かねむし)スズ

【良心の吸血鬼】☆3 零得(ぜろえ)ルビー

【幼き太陽】☆3 樫田(かしだ)サエ

 

〈反翼の悪魔軍〉PUキャラ

【堕天の女王】☆3 針村(はりむら)ルーシィ

【無垢なる狂戦士】☆3 博愛(はくあ)レイコ

【純粋な遊び人】☆3 萌山(もえやま)ライム

【甘美な時間】☆3 三重(みえ)アスカ

【女子高生迷探偵】☆3 三重(みえ)アガリ

 

 

 ────以上11人のうち〈七つ目の白い地獄〉に実装された6人は、既にコンプリートできている。青封筒(最低保証)しか寄越さないアロナをハメ倒したからだ。

 対して〈反翼の悪魔軍〉に実装された5人だが、ルーシィとライムしか迎えられていない。因みに、目玉キャラとも言えるルーシィは2回も被った。

 つまり、だ。

 そんなこんなでシッテムの箱を(・・・・・・・)通じて(・・・)ルーシィとライムには、私と縁ができているワケだ。だから、そう遠くない未来に……アレ(絆ストーリー)が始まるはずだ。

 ライムをガチャで迎えていなければ、こうして、彼女を探しに出発できなかったかもしれない。素で会える確率は低そうだから。

 

 ◆

 

「凄いな、学生も堂々と入れるラブホか……」

 

「というかコレ運営してるのハドマの学生だしね」

 

「え゙ッ!?」

 

 学生が施設を運営か──とは思ったが、梅花園と似たような位置付けだろうか。いや、流石にそれは無理があるか。

 普通にラブホの外見なのに、外の看板には「学生料金」なんてのも書かれている。頭がバグる感覚がしてきてしまう。ここは映画館じゃないんだぞ。

 しかしこれで、統治委員長のスズが私をホテルに誘った理由が分かった。堂々と入れるからだ。

 

「ハドマの雑務や物作り担当に技術開発部ってのがあるんだけどさ。このホテルは、その部の資金源の1つなんだよ。トリニティやミレニアムみたいな、金持ちばっかじゃないし」

 

「取り締まらなくていいの?統治委員って風紀委員みたいなものなんでしょ?」

 

「そりゃあ、取り締まり対象ではあるんだけどさ。ぶっちゃけ無理。技術開発部にはハドマの誰しもが世話になってる。学生も一般人も等しくね。だものそんな部活の資金源ともなれば見逃すしかないよ、あたしらの戦闘の後処理も技術開発部の仕事だし」

 

「あらー……頭が上がらないね」

 

「そーなのよねー。先代とかの過去の委員長がさ、後処理は自分達でやるから、技術を分けてくれって向こうの部長に言ったらしいんだけど、にべもなく断られたとか。技術を独占して儲ける気なのよ」

 

「特許料……みたいなのを設定すればいいのに」

 

「ヤツらにそんなの教えたらダメよ、バカみたいな料金請求されて予算がパァになるわ」

 

「あら……。まぁホテルだしね、黙認でもまぁ……」

 

 ラブホとはいえホテルはホテル。スルーしよう。それに、私とハドマの生徒達との逢瀬の場としてはお誂え向きじゃないか。

 ハドマの学生も潤い、私は楽しめる。恐らくは、完全なるWin-Winの関係。デメリットの無い関係は最高だ。

 

「じゃ……ライムを探しに行こっか。万が一の時は、スズ、頼んだよ」

 

「うん、もちろんよ」

 

「────その必要は無いわぁ」

 

 カロッと棒付きの飴を舌で転がしながら、電柱に寄り掛かったライムが、背後から声を掛けてきた。

 思わず身構えるスズと、シッテムの箱を取り出す私。しかし、戦闘開始らしい雰囲気にはならない。

 

「さっきぶりねェ、せ〜んせっ♡」

 

「……君が、萌山ライムだね?」

 

「そぉよ?ふふっ、さっきはどーもぉ♡ あの犬のおまわりさん達とエッチでもシてきたの〜?やけにスッキリした顔してるわね♡」

 

「シてないよ」

 

「あら。じゃあ、オナニーだけで発散させたとか?我慢は良くないわよぉ、せんせ♡」

 

「……」

 

 私を襲おうとしている──ようには見えないな。かと言ってスルーする様子も無いし、恐らく何かを企んでいる。スズは今にも飛び掛かりそうな雰囲気だから、さっさと話を進めなくては……。

 

「ルーシィはどこ?」

 

「随分と単刀直入に来たわね。まぁいいわ。私も、あの子の動向と伝言を伝えにここに来たからさ〜」

 

「ッ!私がここに居ると知って?」

 

「そぉよ?私の部下にねぇ、優秀な探偵が居るの♡ その子に尾行させたわ♡」

 

「……!?」

 

「ルーシィは多分、今日で全てを終わらせる気よ。だから先生、覚悟してよね」

 

「……ルーシィについて、教えて」

 

「ルーシィは────」

 

 ライムから伝えられるこの伝言を皮切りとして、ルーシィとの最後の戦いが始まろうとしていた。



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第16話:先生vsルーシィ②

 

「はぁっ……はぁっ……嘘、だろ……暑すぎ……!」

 

 ライムからルーシィの伝言を受け取った私は今、汗水垂らして、ヒノム火山を登山している。

 あの時、伝言をもらうと同時に連絡先を交換して座標を送ってもらい、教えられた道順で、ゲヘナの自治区内にある活火山、ヒノム火山を登っている。

 活火山だけあって暑いし熱い。並の登山装備では登れそうにないからと、一旦シャーレに帰還して、ある程度の装備を整えてからヘリで途中まで来て、今に至る。

 目的の場所に行くには徒歩でなくてはならない。だから、ヘリからは途中で降りるしかなかった。

 ライムの「全てを終わらせる気」という言葉が、どうにも引っ掛かって仕方ない。だから、アロナとプラナにも警戒を強めさせ、ここまで来た。

 

「────見付けた……」

 

 ルーシィは、火口付近に居た。柵も無く危険だしさっさとこちらに連れ戻さないと、と思い彼女へと声を張り上げるも、全く聞く耳を持ってくれない。距離があるとはいえ、私の声はしっかり届いているはずなのに。

 仕方なく、もう少し彼女の方へ近付く事にした。間違っても火口に放り込まれないよう、しっかりと準備して。

 

「はぁ、はぁ……疲れた……!!」

 

「アハッ、そんな荷物背負ってるからでしょ!何よそのバカデカリュック!先生は登山家ですか〜?」

 

「これは、まぁ、はぁ、はぁ、暑さ対策、かなぁ?バカ暑いや、何なのここは……さっすが火山……」

 

「ね。ゲヘナ出身の人でも流石に暑いよ、ここは」

 

「ルーシィ……危ないからこっちに来なさい、一緒に下山しよう」

 

「まぁたそんな事言ってぇ。ヴァルキューレに私を突き出すつもりでしょう?」

 

「下山して、一旦落ち着いたらね」

 

「やーよ。捕まっちゃったら、私、いつになったら出られるか……分かんないもん」

 

 ベッと舌を出す。そんな彼女もまた可愛らしい。しかし今はそんな事を言っていられる時ではない。暑いし、早々に彼女を連れて退散してしまいたい。

 

「それだけの事をしたって自覚さえあれば、それで大丈夫だよ。私も、減刑というか、短縮してくれるように口添えする。──それでも、犯してしまった罪の分、相応の罰は受けなくてはいけないよ」

 

「口添えする?不知火カヤの時みたいに?」

 

「っ!」

 

「それで、私をシャーレに引き取るつもりかな?」

 

「それはルーシィが望めばの話だよ。カヤの時は、世間的な批判が凄まじかった。ルーシィの場合は、そうでもない。まさに賛否両論って感じかな」

 

「そっ、か。ある程度の批判は覚悟してたけどね。賛否両論なら、まあ、良かったかな」

 

 言葉通り、どこか安心した様子だ。両校の併合を薦めていた連邦生徒会側が、ルーシィがマコトに、ハドマの運営を任せたという前向きな受け取り方をしたと公表して「迅速な判断だと受け取った」とも口添えしたのも大きいだろう。

 勿論、今度はあの発言でルーシィの代わりなのか連邦生徒会が炎上する事になってしまっているが。

 

「だから、戻ろう?」

 

「……減刑してくれた所でね。私の経歴には傷が付くワケだしねぇ……」

 

「それは……やった事がやった事だし仕方がない」

 

「それは分かるんだけどね。──何より、レイコに会えなくなるのがイヤだなぁ」

 

「レイコなら面会に行くよ。間違いなくね。私も、ルーシィの面会になら行くさ」

 

「アハッ、なにそれウケる!セックスしたからって先生のこと好きになったとか勘違いしてるの?」

 

「そうじゃない。ルーシィも私の生徒だからだよ」

 

「ッ!?……私が何をしたのか分かってるよね?」

 

「もちろん」

 

「なのに、どうしてよ?こんな問題児、フツーなら見捨てるでしょ」

 

「なら私はフツーじゃないのかもね。だけど私は、それでいいよ。私は君の先生で、君は私の生徒だ。良い所も悪い所も全て受け入れる。それでいて君の成長に繋がるようにと促す。それが私の役目だ」

 

 ミカの外患誘致とカヤのクーデターとルーシィの学園併合、どれが一番罪が重いのだろう。私には、とてもではないが判断なんてできない。

 どれも等しく重くて、どれも等しく裁かれるべき大罪だと思う。

 ミカは事件後からずっと社会的罰を受けている。恐らく、言うまでもないだろう。私が、この両足を吹っ飛ばされた事件のキッカケがそもそもこれだ。

 カヤはシャーレで匿ってはいるものの、実質的な軟禁にも近い状態だ。これは私がカヤのことを軟禁しているのではなく、カヤへの世間的な目が彼女にそうさせている。

そしてルーシィは……。

 

「……バカだよ、先生。こんな私の事、生徒なんて」

 

「バカで結構。さっ、戻っておいで。食べ歩きでもしながら、まったりヴァルキューレに出頭しよう。私も一緒に行くからさ」

 

「……私さ、レイコ達のことは助けてって、あの犬のおまわりさんに言ったよね」

 

「言ってたね」

 

「あの子、私とのあの約束、守ってくれると思う?私、こうして逃げちゃったけど」

 

「勿論。──カンナとは、結構前から仲良くさせてもらってるけど、約束はしっかりと守る子だよ」

 

「そっか。じゃ……少しは安心かな」

 

「そう、安心していい。私も、ルーシィの事を弁護するよ。事情さえ伝われば、リエ達も少しくらいは庇ってくれるかもしれない。だから……行こう」

 

「……うんっ。私、もう、逝くね」

 

「?…………ルーシィ?そっちは危ないよ」

 

 ズッ、ズッ、と1歩ずつ後退する。彼女の背後は噴煙の立ち上る火口、中はマグマが煮え滾っているまさに地獄のような環境。キヴォトス人だろうともそんな環境ではまず生きられない。

 

「じゃあね、先生。今のやり取りで、ちょっとだけ好きになったよ。────バイバイ♪」

 

 フッ、と目の前からルーシィの姿が消えた。一瞬何が起きたのかまるで理解できなかった、それでも弾かれたように飛び出し、火口の中へ飛び込んだ。

 

「ルーシィィイイイッッ!!!」

 

「……!?」

 

 クソデカリュックの重みもあってなのか、私より先に落ちたルーシィより落下速度がある。お陰で、どうにかルーシィに触れる事ができた。

 確か、重さに限らず落下速度が等しくなるのは、空気抵抗が無い状態だったか。詳しい事は忘れたがもしそうなら今は物理法則に感謝だ。

 私が大人で、身体が子供である彼女より大きく、重く、更に荷物も背負っているからこそ、こうして自殺に臨んだルーシィを助けられるんだから。

 

「バカッ、なんで落ちてくんのよ!?死ぬよ!?」

 

「死なない!ルーシィも、死なせない……ッ!!」

 

 ルーシィの足を掴む。暴れる彼女を手繰り寄せ、絶対に逃がさないようにと彼女の胴体をガッシリと抱き締める。

 

「主犯が死ねば被疑者死亡で書類送検で終わるの!これで全てが終わるッ!私が死ねばそれだけで全部丸く収まるの!先生が死ぬのは私の計画外よッ!」

 

「バカ言うんじゃない!!」

 

「!?」

 

「子供が命懸けで責任を取る世界なんか、存在していいもんか!!そんな世界、私は認めないッ!!」

 

「認めるとか認めないとかの話じゃ────!!」

 

 あついアツイ暑い熱い。マグマの熱が、落下時の空気と一緒に顔面にブチ当たり、目が乾き喉が渇き全身が熱風で炙られているんだと理解させられる。

 

「転送ォッッッ!!!!」

 

「!?」

 

 オレンジに、赤に輝くマグマだらけの景色から、真っ白な世界に移る。気温の変化で心臓がキュッと縮むような気さえした。

 

「きゃうっ!?」

 

「ぐぇっ!!」

 

 ボフンッ!と柔らかい物体に着地し、何度か軽くバウンドする。マグマで赤々と照らされていた火山内部とは違って、仄暗い光しか灯っていない薄暗い部屋にやってきた。

 

「え……こ、ここって……」

 

「ハドマ自治区の、とあるラブホテル(・・・・・・・・)さ」

 

「!!」

 

 ゲマトリア製のインスタント転送装置*1。物体の運動状態は転送の前後で維持されてしまうので下に柔らかいベッドのあるホテルが最適だった。

 私がリュックを背負っていたのはコレを背負って移動していたからである。有事の際は、ルーシィと共にその場から緊急退避できるように。

 

「……なんで、一瞬で……『転送』って……?」

 

「……ルーシィ。死んで終わらせるなんてバカな事、考えちゃダメだ。何事も、生きてこそなんだから」

 

「だからっ……それじゃ私が捕まるだけじゃんっ!!捕まって自由を奪われた私が見たいの!?」

 

「ルーシィはそんな事にならないよ」

 

「なるでしょうよ!?先生が私をヴァルキューレに突き出すんだからさぁっ!!」

 

「だとしてもいつまでも出てこられないなんて事は絶対に起きないよ。私が保証する」

 

「はァ!?」

 

「君は頭がいい。捕まった所で、レイコの助けとか無くても……すぐに出てくるさ」

 

「!?……まさか、脱獄するとでも思ってんの?」

 

君ならそうする(・・・・・・・)でしょう?(・・・・・)

 

「────ッ!!」

 

 私は信じている。ルーシィの頭の良さを。そして要領の良さを。だからこそ信じられる。ルーシィは絶対にすぐに、シャバ(こちら)に戻ってくる……と。

 

「先生ってホンット……ヤバイ人ね……♡」

 

「ヤバくも何ともないよ。私はただ、自分の生徒を信じているだけだからね」

 

「アハハッ……物は言いようってヤツね。先生としてどうなのよ、脱獄を勧めるような物言いは……」

 

「先生というか、人としてマズイとは思うかなぁ。だけど、私は生徒を信じてる。というよりかは──信じてあげたいと、そう思ってるだけだからね」

 

「そっか。……うん、分かったよ。これからすぐに、ヴァルキューレに出頭するよ。先生が、私と一緒に来てくれるならね」

 

「当然、そうさせてもらうよ」

 

「先生が何でワープしたのとか、色々気になる事はあるけど、ま、いっか。過程はどうあれ私も先生も生き延びたワケだし」

 

「そうしてくれると助かるかな」

 

「あと、せっかくラブホ来たんだしぃ、どうせなら出頭する前にもう1回だけ、先生と濃厚なエッチがシたいな〜♡……とは思うけどさ♡」

 

「……ダメだよ。今はね」

 

 ヤるつもりは──ない。今は、まだ。これでも、スズとの約束は守るつもりだ。ルーシィとデートをしたりハーレムに引き込んだりするのは、スズより後にしなくては。

 

「ちぇー、ざんねーん。……あ、そっか。私は先生が好きでも、先生が私のこと好きじゃないから……」

 

「そんな事は無いよ」

 

「……え?」

 

「ルーシィも私の可愛い生徒だよ。大好きさ」

 

「〜〜〜〜ッ……そういう意味じゃないんだけど……まっ、今はそれでいっか……♪」

 

 その後、カンナに電話し、今日中に出頭する事を伝えた。危険だ、自分達が迎えに行きます、と再三言われたものの、もう逃げる心配は無いとのことでどうにか宥め、待機してもらう事に。

 そして出頭前の様々な準備などを済ませ、遂に、ホテルを出発。そこからは、火山にて彼女に言ったように、食べ歩きをしながらまったりと出頭した。

 

「……ここまでありがと、先生」

 

「……うん」

 

「レイコの事、お願いね。あの子、どこまでも私にベッタリだからさ。戦いと、少しのエッチな事と、ほんの少しだけのお菓子作りしか知らないような、ただの子供なの。……だからよろしくね、先生」

 

「分かった。レイコの面倒は私が見るよ」

 

「……ありがと。あと最後に1つだけ……いい?」

 

「うん?」

 

「……キス、したい。先生と……」

 

「!」

 

続きはまた今度(・・・・・・・)、ってさ。希望を捨てない為に、先生への想いを腐らせない為に。……お願い」

 

「……そういう事なら」

 

 カンナや、他のヴァルキューレの生徒が見ている中、真正面からルーシィと抱き合った。そのまま、ドラマのラブシーンのようにゆっくり、ゆっくりと互いの顔を近付け──口付けを交わした。

 1秒、2秒、3秒──6秒、7秒、8秒。一体、何秒間こうして唇を触れ合わせているだろう。舌も触れ合わさず、息すら殺して。

 一瞬だったろうか、または分単位だったろうか。それすら分からなくなる中で、ルーシィが私の背をトントンと指で叩いて、キスの終わりを告げた。

 

「じゃ…………今度こそ、行くね」

 

「……うん」

 

「ありがと、先生。私を助けてくれて。……大好き。レイコの次に、だけどね」

 

「ありがとう、ルーシィ。気持ちは受け取ったよ」

 

 最後にもう一度だけ、軽く唇を触れ合わせる。

 くるんと背を向けたルーシィは、軽い足取りで、両手を前に突き出しながらカンナの前に立った。

 

「────19:59、針村ルーシィの出頭を、認める。ハドマ学園不当併合の容疑で逮捕する」

*1
第2部の第79話参照。



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第17話:復活のL

 

 ルーシィがヴァルキューレに出頭した、次の日。その日のゲヘナ学園内では、新しい生徒会長が逮捕されたという話題でもちきりだった。

 それはもう、政治に興味の無い生徒さえその噂を口にするくらい、大きな話題となっていた。

 その頃、飂熾冘巫髏(ル・シュ・フェル)の本拠地では────。

 

「は……?ルーちゃんが、なんだって?」

 

「だから、ルーシィは出頭したのよ。自分からね」

 

「はぁ!?」

 

「そうする事で、この併合問題は収まるからって。まぁルーシィが居なくなった後の事の行動は事前にあの子に聞いてるから、大丈夫だけどさ」

 

「いやいやいやいや、大丈夫なわきゃないでしょ?何言ってんのライム?頭湧いてる?」

 

「落ち着きな、レイコ。ルーシィの目的は既に達成されてるからこその勝ち逃げ(・・・・)なのよ。だから、次はあんたの番よ────レイコ。トリニティ最強を、潰しに行くのよ」

 

「ルーちゃんが捕まってるこの状況で!?無理よ、そんなの!ルーちゃんもなんてことしてんのよッ、まだ『交流会』って名目すら完成してないのに!」

 

「それくらいならあんた1人でもどうにかなるって思ってるからでしょ」

 

「私1人で?組織をやりくりしろっての!?無理よ私には!私にはルーちゃんしか居なかったのに!」

 

「……。組織は私がやりくりできるわぁ、元ハドマの会計だもの、それくらいはヤレて当然よ」

 

 嘘だとレイコは直感した。ライムは飽きっぽい。気に入ったセフレもふとした拍子に捨てるくらい、他者への思い入れというものが「無い」のが彼女。組織への思い入れも無いに等しい。ここに居るのはルーシィが居たからだ──とレイコは思っている。

 今はアガリを手元に置いているライムだがそれもいつまで続くのか分からないくらいだ。

 だからこそ、レイコは気付いた。ライムの発言に込められた裏の意味に。

 

「……ルーちゃんが戻るまで耐えろって事ね?」

 

「そ。ルーシィが戻ってくるまでの辛抱よ」

 

「いつになるかも分かんないのに……」

 

「すぐに戻ってくるわよ。大丈夫」

 

「私と違ってルーちゃんの腕っぷしはカスだけど……大丈夫なのかなぁ……」

 

(腕っぷし含めて、ルーシィ自ら脱獄できるなんて思えないのよねぇ〜。とはいえ、シャーレの先生はたとえ甘くても脱獄には手を貸さないだろうから、そうすると────どうやって脱獄するのか……)

 

 レイコもライムも、そこについては同じ想いだ。ルーシィは決して強くない、タイマンだと本気でも七天魔で下位レベルだ。

 素の腕っぷしも強くはない、ひたすら頭脳だけが戦闘における彼女の持ち味なのに……と。

 

「──あれ?確かこの学園併合問題って、ハドマの生徒会長を騙して、勝手にゲヘナの生徒会長と調印したのが原因だよね?連邦生徒会も、調印の破棄も両校の合意があれば可能って言ってたし」

 

「そうよ?」

 

「てことはだよ?ルーちゃんに騙されたマコトが、ルーちゃんの計画を台無しにしてやろうとハドマの生徒会長と『調印破棄』で合意したら……」

 

「…………あっ!?」

 

「ハドマの生徒会長は、ハドマを復活させたいって今でも思ってるはずよ。ならマコトの返答次第ではゲヘナ学園とハドマ学園が再び別々になる可能性があるんじゃない……?」

 

「ヤバい、かも……!?アガリ、今すぐ皆を集めて!羽沼マコトを捜索するわよぉ!!さっさと見つけて捕らえて──私自ら魅了(チャーム)で洗脳してやるわぁ!!」

 

 こうしてレイコとライムの指揮で、飂熾冘巫髏はゲヘナ学園の旧生徒会「万魔殿」の議長、マコトの捜索を開始した。

 

 ◆

 

 ゲヘナ学園でマコト捜索が始まった頃────。当のマコトは、捕らえられたルーシィの面会の為にヴァルキューレに来ていた。

 まだ簡単な取り調べの段階なので、まだ矯正局に送致されていないからである。そもそも、矯正局に行く事になるのかさえ、未だに不明瞭であった。

 

「キキキ、捕まったと噂を聞いて来てみれば、か。まさか本当に捕まっていたとはなァ」

 

「……面会者ってマコトの事だったの……!?」

 

「何とも無様な姿だなァ、針村ルーシィ?この私を裏切るからこうなるんだぞ」

 

「まさか初っ端からあんたが面会に来るとはね」

 

「話を聞け」

 

「で?何の用よ。捕まった私を、虫籠の虫を見るが如く観察しに来たのかしら?」

 

「フン、虫籠の虫とは言い得て妙だな。そうだな、幾つか話したい事はあるにはある。が、面会時間は限られているようなのでな。手短に話すとしよう」

 

「そーね、こちらとしてもその方が助かるわ。私、まだやる事あるし」

 

「囚人風情が……」

 

「あんたも一歩踏み出してりゃこうなってたわよ。今回はたまたま、それが私だったってだけでね」

 

「どうだかな」

 

 ガラス越しにルーシィを見下ろし、パイプ椅子にふんぞり返る。そんな彼女の様子を、ルーシィは、相変わらずだと溜め息混じりに冷たい目で見る。

 

「──今日か明日、旧ハドマ学園に、万魔殿からの使いを送る。サツキはお前の部下に籠絡され、最早使い物にならないからな。面倒臭がりだが、優秀な部下が居てな。ソイツを使いとして送る事にした」

 

「!」

 

「無論、旧生徒会の『失楽園』にな」

 

「……私との調印を『無かったこと』にするつもり?確かに、私が犯罪者として捕まった以上、あんたがリエと合意さえすれば……今回の併合は無かった事になるんでしょうね」

 

「あぁ、相変わらず話が分かるヤツだな、お前は。まさにその通りさ。私を裏切った罰だ、達成されたハズのお前の計画をも滅茶苦茶にしてやる」

 

「……あっそ。そんな杜撰な計画、上手くいくなんて思えないけどね。お粗末過ぎて鼻で笑っちゃうわ」

 

「フンッ!負け犬の遠吠えだな。愚かにも捕まり、檻の中に押し込められた貴様に、そう鼻で笑われる筋合いは無いと思うが?」

 

 達成されたハズの計画を滅茶苦茶にされるのは、ルーシィにとっては屈辱だった。マコトも、それが分かっているからこそ、彼女を煽りに来たのだ。

 しかしルーシィはここで、別のカードを切った。

 

「──ホント、バカよね。私が捕まったって認識がそもそも間違ってんのにさ」

 

「……何だと?」

 

「私は『出頭した』のよ。自分からね。そんな奴が何も用意してないとでも思ってんのかしら?」

 

「「!?」」

 

 ルーシィとマコトのやり取りを字で記録しているヴァルキューレ生徒は、ビクリと肩を震えさせる。つい昨日「シャーレの先生」により連れてこられたルーシィが、更なる手を用意していたとは、到底、思えなかったから。

 

「とはいえ、飂熾冘巫髏のハドマ部隊(・・・・・)はきっと私が居なくなって混乱してるでしょうから使えないわ。それなら、動かすべきはハドマ部隊以外よね」

 

「……ハドマ部隊?何を言っている?まるでハドマの生徒以外にも飂熾冘巫髏の構成員が居るかのような物言いだな?」

 

「あらぁ、この程度の文脈なら読み取れるのねぇ♡ 偉い偉い♡────まさに、その通りよ」

 

「!?」

 

「ハドマ自治区は、他の自治区と比べて細長くて、隣接している自治区がキヴォトスでトップクラスに多いのが特徴よ。私、こう見えてトリニティ出身のトリニティ育ちなの。────ならさ、居るよね(・・・・)?トリニティにも──幼馴染ってのがさ♡♡」

 

「な……にィ……ッ!?」

 

「私がハドマに来たのは小学校に上がる時なのよ。でも私の家はトリニティに近い所にあったからね。引っ越してハドマに進学した後も普通に交流くらいあった。──後は簡単。友達の友達の友達の友達の友達の友達────みたいにさ、まさに、芋蔓式に人員を確保できちゃったわ。ゲヘナとの確執を煽る感じで勧誘したら秒よ、トリニティならね」

 

「じゃ、じゃあ……飂熾冘巫髏の構成員は……!!」

 

「んー、おおよその数字だけど、ハドマで300人、トリニティで500人、レッドウィンターで100人──それと……ゲヘナで少なくとも400人は居るわね」

 

「なッ、何ィィィーーーーッ!?!?」

 

「ホントはレッドウィンターだけで1000人は稼げる予定だったんだけど、アイツら思想強すぎ。私じゃレッドウィンターのヤツら束ねるのは無理だわ」

 

 やれやれ、と肩を竦める。レッドウィンター生の思想の強さは言わずもがな。マコトでも、まともに返事をすることは出来なかった。

 ルーシィは、ハドマ自治区という「他の自治区に接している」という立地をもフルに活用している。

 他の自治区にもメンバーが居るからこそ、スズ達率いる統治委員会からの追跡から逃れられている。飂熾冘巫髏の規模がハドマを超えているのは幹部や一部の部下くらいしか知らない情報であり、これはハドマの上層部、七天魔すら知り得ない事だった。

 

「所謂、レイコの舎弟?ってのもいるらしいから、舎弟のチンピラとかも全員含めたら、軽く2000人は超えるんじゃなかったっけ?この前、ライムが算出してたけど忘れちゃったな……うーん……」

 

「に……にせん……にっ、にせ…………」

 

「ふふっ、どうしようね?ゲヘナ学園の全校生徒の半分だよ?もう、十分に大きな学園レベルの戦力があるワケだけどさ。学園内で3%の支持率しかないマコトちゃんはぁ、どう対抗するのかしら♡」

 

「……風紀委員会を使う!!」

 

「バカなの?その風紀委員会ってさ、風紀委員長のワンマンでしょ?モル姉を含めたって2000人なんか到底倒せない数字よ」

 

「ッッ…………!!」

 

「しかも様々な方向から同時に襲われたら?対処が追いつかないわ?」

 

「っ!……いや!司令塔たる貴様がここに居るんだ、誰がソイツらを統率する?統率者無くして、人数は纏まらない!ましてや、飂熾冘巫髏のような荒くれ集団ならな!!」

 

 ピクリと眉が反応する。マコトにしてはいい所を突いてきたな──と、ルーシィは密かに感心する。しかしその感心もすぐに薄れ、彼女の口元は、薄い笑いを形作るに至る。

 

「だから──私は近い内にここを出るのよ」

 

「何を言っている?……まさか頼んだのか!?その、ハドマ部隊以外に……!!」

 

「いいや違うわ。私が今回、助力を頼んだのは──飂熾冘巫髏とは無関係もいいところの、完全なる第三者よ。でも決して単なるバカではないハズよ、私の見込み違いでなければ……だけどね」

 

「貴様……何を企んでいる……?」

 

「べぇつにぃ?マコトちゃんがリエと合意して学園併合を解消したって、それはそれで構わないわよ?どちらにせよハドマ学園はプレハブ校舎状態だし、ゲヘナからの支援が無きゃキツイ状態なワケだから併合を解消したら困る事になるのはハドマの方よ。寧ろ、ゲヘナと併合している今だからこそ、学園を建て直すチャンスだからねぇ」

 

「どちらにせよ、私がどう動こうと貴様にとっては何の痛手にもならない……のか」

 

「せーかい♡ そもそも今は囚われの身だしねェ?損も得も無いよね〜☆」

 

「……」

 

「どうせ動くなら自分に──自分達に得がある方を選ぼうよ。広い目で、長い目で見てさ」

 

「なら私はハドマとの併合を解消し切り捨てるぞ。あの広大な土地は確かに魅力的ではあるがな……」

 

「トリニティにも攻め込みやすいのになー♡」

 

「ッッ!!」

 

「次に私達が会う時はシャバよ♡」

 

「言ってろ、囚人め。次に貴様が私の顔を見るのはテレビ越しだろうな。ハドマとの併合を解消すると記者会見を開いてやる」

 

「あ、そ。──最後に1つ、教えてあげる。『善は急げ』、『思い立ったが吉日』よ、マコトちゃん」

 

「何を思ってそんな事を言うのか知らないが、私は貴様に『ちゃん』付けで呼ばれる筋合いは無いぞ。牢に居るのは貴様であり、自由なのは私だ。そこを履き違え────」

 

 履き違えるなよ──マコトのその言葉は最後までルーシィに向けられる事はなかった。けたたましく鳴り響き始めたサイレンがマコトの声を掻き消したからだった。

 ジリリリリリリッ!!と鼓膜が震えるような音が響き、面会は当然ながら中断となってしまう。何が起きたのか分からないまま房に戻されそうになったルーシィ、しかしその時、壁を突き破って拳が1つ飛び出してきた。その拳は、まるでウエハースでも裂くように、メリメリと壁を引き裂き──呆気なく破壊されてしまった。

 

「うわあああっ!?」

 

「きゃっ!!」

 

 マコト側の監視員は、素早くマコトを面会室から避難させる。ルーシィの監視員はと言うと、彼女と一緒に瓦礫の下敷きになってしまった。

 そこからすぐに身体を起こすと、壁を突き破って侵入してきた少女──赤い着物を纏い2本のツノを生やした金髪ツインテールの鬼の少女に銃を向け、威嚇する。

 

「止まれッ!!どこから来た、お前!」

 

「邪魔」

 

「きゃんっ!」

 

 突き飛ばされただけに見えたヴァルキューレ生、しかしそのパワーは、ただの突き飛ばしにあらず。壁に叩き付けられ、瞬時に気絶してしまった。

 

「あ。下敷きになっちゃった?ごめんなさいねー」

 

「イタタタタ……ッ……あんたの脱獄方法ってマジにこんな強引な方法なワケ……!?」

 

「力で解決できる事なら力で解決するのが手っ取り早くてイイのよ。──えっと赤髪ポニテ、金の目、大して大きくもない胸。うん、聞いてた特徴と一致してる。あんたが針村ルーシィね?」

 

「誰の胸が貧乳よ!……まぁいいわ。で、どうやって外に出るの?」

 

「え?来た道を戻ればいいだけじゃない」

 

「えぇ……」

 

「とりあえずコレ。あんたのスマホと制服。名前で管理されてあったから、持ってきといてやったわ」

 

「あっ、助かる〜!ありがと!」

 

「いいからさっさと着替えなさいよ。囚人服で外に出るワケにもいくまいし」

 

「そーなのよね、助かったわ〜」

 

 鬼の少女──賽鬼(さいき)ユウナの助力を得たルーシィは急いで着替え、ユウナに導かれるままに最短距離で脱獄していく。

 ユウナの脱獄経路はまさに最短だ。壁など、全て破壊しているからである。お陰で、ヴァルキューレ生徒の追手の処理も最小限に抑えられ遂にユウナとルーシィは脱獄を果たす────。

 

「あはははっ♡ ホントに脱獄できちゃった♡」

【挿絵表示】

 

「さぁ、見ず知らずのあんたを脱獄させたんだし、絶対に約束を果たしてもらうわよ、針村ルーシィ。思う存分、破壊を(たの)しませなさいッ!!」

 

「えぇ、もちろんよ──鬼神魔王、賽鬼ユウナ!!あんたの力を借りたいなら、金なんかじゃない──あんたが暴れる『場』を用意すればいいのよね!」

 

「そうよ!ヘルメット団のバカはそれくらいの事に気付けないから、このあたしに破壊されるのよ!!アーッハッハッハッハッハ!!」

 

 出頭前────全ての用意を整えたルーシィは、トリニティの仲間へ連絡を飛ばしていた。

 トリニティの自治区に新設されたというブラックマーケットに住まう、百鬼夜行を停学中の生徒は、きっと力になってくれると。

 交渉条件なども全て、事細かに指示をしていた。

 ユウナは連邦生徒会が「新・総力戦」に指定する程度には、外部にもそれなりの情報が漏れている。だからルーシィもそれらを前提とした作戦を立てることができていた。

 

「飂熾冘巫髏、最初で最後の大舞台!天使も悪魔も関係ないッ!キヴォトスをステージとした大戦争を起こしてやるわッ!!」

 

「おっ!イイねイイねぇ!!トリニティとゲヘナの軋轢に火ィつけちゃうカンジ〜?」

 

「それも悪くないわ──いや!それくらいのことをやらなきゃねぇ!火は大きく燃えるほど熱く、高く燃え上がる!!飂熾冘巫髏の幹部と合流でき次第、トリニティとゲヘナの両校に宣戦を布告する!!」

 

「ひゅー!やるねぇあんた!気に入ったわ!戦争が終わるまでは、あんたについてってやる!」

 

「そいつは助かるわね……!」

 

「いたぞ!こっちだ!!」

「捕まえろー!」

「ひえぇぇ、こんなのバレたら始末書モノだぁぁ!」

 

「おっと。来たわね、逃げましょ♪」

 

「そーね!しばらく撒いて、それから本部に帰る。でないと、本部がバレちゃうからねぇ」

 

「回りくどいなぁ、全員ブッ倒せば?」

 

「ダメよ。もし無理にヤツらに接触して発信機とか取り付けられたら大変だし。ぶっちゃけこの制服も怪しいと思ってるわよ、私は」

 

「あっそーか!頭良いなぁ」

 

「あんたが向こう見ずなだけよ……」

 

 ヴァルキューレから逃れた2人は、ハドマにある飂熾冘巫髏の本部へ向け逃走を開始。飂熾冘巫髏と各学校とを巡る大きな戦いは、もう、目の前にまで迫ってきていた────。

 

「待っててレイコ────とびっきりの、最ッ高のステージをあなたに用意してあげるわ……♡」



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第3章:飂熾冘巫髏(ル・シュ・フェル)大決戦
第18話:幹部集結


 

 ルーシィが8人目の脱獄囚・賽鬼ユウナの助力によってヴァルキューレから逃れた少し後のこと。

 見事に脱獄を果たしたルーシィから脱獄と集合の連絡を受けた面々は、マコトの捜索を打ち切って、ハドマ自治区の某所にある本部へと帰還していた。

 

「あの……ライム先輩」

 

「ん〜?どったのアスカちゃん」

 

「えっと、私、幹部待遇で飂熾冘巫髏(ル・シュ・フェル)に入れさせてもらったんですが、どうして『第2』なんですか?この組織ほどの規模なら私は末席じゃないかなって思うんですけど……あと幹部室にも私とライム先輩とアガリと総長(ルーシィ)副総長(レイコ)しか出入りしませんし……」

 

「あー、他の幹部はどこ?ってこと?」

 

「あ、はい……」

 

「心配せずとももうすぐ会えるわ。私達はあくまでハドマ部隊の第1、第2幹部でしかないし、第2のアスカちゃんはしっかり末席よ?」

 

「そ、そうなんですね………………え?ハドマ部隊?」

 

「あっ、そーか、アスカちゃんこっち来たばっかでそういうの分かんないか。まぁ、ザックリとだけど教えといてあげるわ」

 

 曰く、飂熾冘巫髏とはハドマの生徒が主体(・・)である組織である。

 曰く、飂熾冘巫髏の構成員はハドマのみならず、トリニティ、レッドウィンター、ゲヘナなど周辺の自治区の生徒にも存在している。

 曰く、更に下部組織には、レイコの舎弟や傘下のチンピラ組織なども存在している為、全体で数えるならば総勢2500人を超えている。

 

「他の自治区にも……!?」

 

「そっ!ルーシィがトリニティ出身なのは知ってるでしょう?だから、向こうにも幼い頃からの友達は居るワケよ。私と出会うより前の友達がさ。後は、ゲヘナとの対立を煽るカタチで誘えば、トリニティだったら秒で集まるってワケね♪」

 

「トリニティはそうだとしてもレッドウィンターもそんなに居るなんて……」

 

「レッドウィンターは100人居るか居ないかくらい。だから、そんなに多くはないわ」

 

「──そっか。スズとか統治委員会が追い掛けてもすぐ行方をくらましてるのは、頭が良いルーシィの作戦があってこそだと思ってたけど……」

 

「他の自治区にも仲間が居るから──ってワケね。統治委員の子はこれについて知らないんでしょう?それなら、普段の戦いで飂熾冘巫髏を捕まえられるハズないわ。こういう他の自治区の協力者の存在を知らないんだもの」

 

「……」

 

 トリニティやゲヘナは、人数を集めるのも簡単な話だった。歴史的な背景を鑑みれば察せる通りだがこの2校に関しては両校の対立を煽ればそれで済む話だからだ。

 レッドウィンターはその点、因縁なども無いので人数を集めるのに苦労している。だから、ただ単に闘争を求めるバーサーカー気質な者ばかりが多めに集まっている。

 

「現代の戦争は情報戦よぉ、アスカちゃん。情報をより多く集めた方が、戦いを有利に進められるの。ルーシィは元より、私やアガリちゃんが諜報活動をしてるから、ここまでのし上がれたのよ」

 

「っ!アガリもですか……?」

 

「そっ!あの子、探偵ごっこしてるでしょぉ?」

 

「ま、まぁ、小さい頃から、推理小説の探偵とか、怪盗に憧れてるっぽい所はありましたけど……」

 

「アハッ、怪盗!?探偵と逆じゃん!アガリちゃん可愛いな〜♪」

 

 それから程なくして、飂熾冘巫髏の本部に客人が4人、同時に到着した。

 トリニティからは2人、レッドウィンターからは1人、そしてゲヘナからは1人──計4人である。それぞれの支部を任されている代表者として幹部が1人、または2人、こうして本部にやってくる。

 

「やぁやぁ、みんな久しぶり〜!元気してた!?」

 

「ライム姐さん程じゃないけどね!」

 

「それなりには、元気ですよ。それなりにはね」

 

「相変わらず大きい……」

 

(胸デッカ……太ももふっと……)

 

「おやおやぁ?あなたは見ない顔だねぇ?新人?」

 

「っ!は、初めまして……」

 

「ゲヘナ部隊の子だよね?前の子は?」

 

「あ、そのー……前任者は私より弱いので、今は私の部下をやってもらってます」

 

「!……へぇ、あなたそんなに強いんだ?」

 

「ええ、少なくとも前任者よりは強いですよ」

 

「ふぅん、面白いわ。んじゃ、ルーシィがそろそろ来るからさぁ、幹部同士だけでとりあえず自己紹介やっておこっかぁ!部下同士の繋がりを上に見せるみたいなのも大事よぉ」

 

 ルーシィが来てからでも遅くない。そんなのは、誰しも分かっていた。しかし組織は上下関係が大事なのもまた誰しもが分かっていた。第1幹部であるライムの提案だからこそ、誰も反対せずに、彼女の意見を受け入れた。

 

「ほらレイコ、自己紹介くらいまともにしなさい」

 

「んぁ?……ごめん寝てた」

 

「ったくこの子は……。えーっと、このちっこいのは博愛(はくあ)レイコ。ゲヘナ出身、今はハドマ。ちょっぴり特殊体質の吸血鬼で、生まれつき日光すら弱点でも何でもない。──こんなちっこいけど、レイコは、まず間違いなくこの場の誰より強いわよ」

 

「強いぞ〜ぅ。ふぁ〜ぁ……ねむ……

 

「んで1年にして飂熾冘巫髏の副総長。No.2よ」

 

「「「「ッッ!!」」」」

 

「新人の子以外は、私の事は知ってくれてるわね。私は萌山(もえやま)ライム、旧ハドマ学園3年。キヴォトスで唯一の夢魔の生き残りっぽいから、もしもエッチなコトが知りたかったら、いつでもお姉さんのとこに来るんだぞ♡」

 

「姐さんとするエッチってぇ、オナニーの数百倍は気持ち良くイケるから好きー♡」

 

「え〜?数百倍程度なのぉ?♡」

 

「ううん、数億倍〜っ!」

 

「足りないけど今はそれでいいわ。──あっ、私がハドマの第1幹部ね。──さ、アスカちゃん♡」

 

「え、と……三重(みえ)アスカ、です。レイコ──副総長に勧誘されて加入しました、よろしくお願いします。旧ハドマ学園、2年生です」

 

「幹部待遇で勧誘された、超優秀な子だからね〜?皆、アスカちゃんには逆らっちゃダメよ☆──あとこの子がハドマの第2幹部ね。実質的なNo.4♡」

 

「えっ。ライム先輩!?」

 

「当たり前でしょぉ?飂熾冘巫髏はハドマが主体の組織なんだから、複数の隊で比べるんなら、序列はハドマが最上位よ」

 

「え、えぇ……全然末席じゃないですよね……」

 

「ハドマでは末席よ、ハ・ド・マ・で・は♡」

 

 騙されたのかとアスカはライムに対して恨めしく思う。しかし逆に、幹部として高い地位だからこそ美食研究会を打倒するのに、組織の力が使えると、そう考える事もできた。

 そもそも、アスカが飂熾冘巫髏に加入したのは、ルーシィの思想に共感したからではない。ましてやレイコに賛同したり、レイコのサポートをしたくて加入したのでもない。

 ハナから、組織の力を自分の野望の為に利用する事だけを考えていたからだ。

 

「これで残りは4人ね!じゃあね〜、トリニティ、レッドウィンター、ゲヘナの順で行こっか!」

 

「トリニティ部隊第1幹部、時計(とけい)クロノ!よろ〜♪トリニティ総合学園2年生、去年は補習授業部で、今年は帰宅部よ!自警団?ってのは部活に入るのかよく分かんないけど……自警団もやってるわ!」

 

「トリニティ部隊第2幹部、桜庭(さくらば)マトイ。同じく、トリニティ総合学園2年生の帰宅部です。よろしくお願いします」

 

「レッドウィンター部隊、第1幹部、寒崎(かんざき)マフユ。レッドウィンター連邦学園2年生で、部活は工務部辞めてから特に入ってない……です……」

 

「ゲヘナ部隊第1幹部、古谷(ふるや)レティ。2年生。まだ入って数日の超新参者だけど、その分頑張るから、宜しくね」

 

「あら?クロノ、学校通えるようになったの!?」

 

「うんっ!ライム姐さんとエッチしてから、自分に自信持てるようになって……///」

 

「そーなのね、それは良かったわぁ♡ あんたってイジメられっ子だったから、今年もまた補習授業部なんだろうなぁって思ってたわ」

 

 トリニティにおける「補習授業部」とは不定期に設置されるものである。

 今年の補習授業部は、エデン条約締結にむけての別の意味があって設置されたもの。シャーレの力を利用してまで急遽設置されたモノなので、むしろ、今年の補習授業部の方が異例(・・)であった。

 前回──エデン条約締結関係無く設置されていた補習授業部に所属していたクロノこそ、通例通り(・・・・)の補習授業部の生徒だと言える。

 

「今年の補習授業部には超ド級のおバカが入ったんだって、ウケるよね!私の場合は不登校だったからだけどさ、素で補習授業部はエグい!」

 

「補習授業部って、退学手前の滑り止めみたいな、そんな救済措置だったわよね?素でそこに入るのはヤバイわね、確かに」

 

「ね〜!退学寸前って事だしね!」

 

「まぁあなたもそうだったんだけどね」

 

「わっ、私の場合は不登校だったもん!」

 

「自主勉自主勉♪ あったりまえよねぇ♪」

 

「うぐぐぅ……!」

 

 再三になるが、ライム自身は女遊びが激しすぎて生徒会の会計をクビになったが、それでも、会計を素で任される程度には優秀な生徒だ。当然テストも最上位クラスであり、一体いつ勉強しているのかも不明瞭だった。

 

「マトイちゃんはどぉ?相変わらず元気らしいけど何か近況報告みたいなの無い?」

 

「クロノさんと一緒に居ると、嫌でも時間がわかるので、最近になって私の体内時計の誤差が大体2分くらいになりました」

 

「えっぐ!クロノセラピーの効果抜群じゃない!」

 

「セラピストちゃうわー!」

 

「す、凄いですね……!レッドウィンターに居ると、いつでもお腹空くので……。体内時計とか全くアテにならないので……あはは……」

 

「……へぇー、クロノさんのヘイロー、スゴイのね。まさか、ヘイローが時計になっているだなんて……。しかも秒針まで……」

 

「少し前までこれでよく虐められてたんだよねー。マジでトリニティのクソカス共……」

 

 クロノが毒づくと、ライムが肩を揉んで窘める。マトイも口をつぐんでしまい、殆どの生徒は空気が悪くなった事を肌で感じ取る。

 そんな中、静寂を破るようにして、よりによってトリニティと対立している、ゲヘナの部隊を率いる生徒が口を開く。

 

「もしかして、だけどさ。ゲヘナの私が言うのも、申し訳ないんだけどさ。クロノさんが飂熾冘巫髏に入ったのって、ゲヘナとの確執じゃなくて……」

 

トリニティをブッ壊す為よ!カス共のおかげで、私の青春はメチャクチャよ!小学生の頃からずっとヘイローイジメに遭ってて、お嬢様校ならイジメも無いだろうって嫌いな勉強も頑張ってトリニティに入ったのに!1年生からガッツリイジメられて補習授業部で潰れるし、2年に上がっても今更友達とかデキやしないッ!!トリニティごとブッ壊さないと気が済まないっつーのよッ!!」

 

 地団駄を踏んで怒鳴り散らすクロノ、しかしその過去を知るマトイは過去を知るからこそ彼女の事を止められず、黙り込むしか無かった。

 ライムは彼女と直接的な関わりこそ薄かったが、ルーシィを通して知り合って、彼女の状況を知って勧誘に至ったので、大いに同情の意を示していた。

 

「────そっか。トリニティにも私と同じような子……居たんだ」

 

「えっと、あなた……レティ、だっけ?あなたも何かゲヘナでイジメられてたりしたの?」

 

「うん……そんなとこ。私ね、何故か、夜にしか本気出せないんだ。勉強にしても運動にしても。勿論、戦いにしたって、夜じゃないとダメなの。なのに、誰も信じてくれないし……」

 

「夜ならデキるって見せ付けてやればいいじゃん、そいつらの目の前でさ」

 

「何回もやってるよ。でも、ダメなの。というか、逆にそんな姿を見せたせいで『本当は優秀なクセに普段は手を抜いてバカを演じて、私達の事をバカにしてるんだ』とか言いがかりつけてきたり……」

 

「うわ……」

 

「別に人格が変わるワケでもないのに、多重人格を疑われて、酷い時には精神病院に入れられたこともあったよ。すぐ逃げてきたけど」

 

「……あなたも苦労してきたのね」

 

「まぁ、それなりにね。だけど、クロノさんよりはマシだと思う。小中はこんな事、無かったもの」

 

「どっちも大変ってことでいいじゃん。──私は、ゲヘナに恨みは無いけど。私と同じようにレティが苦労してたんなら……復讐、手伝ってあげるよ」

 

「ありがとう。私もトリニティに恨みは無いけど、クロノさんと同じような理由で、クロノさんの復讐手伝わせてほしいな」

 

「クロノでいーよ!同学年(タメ)だし!」

 

「じ、じゃあ……クロノ?」

 

「うん!レティ!」

 

「──良かったですね、クロノさん。ゲヘナ学園のお友達ができて」

 

「マトイも特にゲヘナに恨みは無いでしょ?なら、仲良くしよ?」

 

「私は──クロノさんとルーシィさんが居るから、飂熾冘巫髏に身を置いているだけですから。それに私は、他所の生徒と馴れ合うつもりはありません」

 

「あんたさァ、もう少しでルーシィが到着すんのにまだそんな事言ってんの!?」

 

「……下手に馴れ合ったなら、思い入れとか、できてしまいそうですから……」

 

「できていいじゃないのよ!マトイのわからず屋!マフユもレティも、マトイは頑固だから気にしちゃダメよ!根は悪いヤツじゃないんだけどね!」

 

「あはは、相変わらずですねマトイさん。何にせよ宜しくお願いしますね、皆さん」

 

「できるだけ仲良くしようね、マトイさん」

 

 他の幹部からもそう声を掛けられるが、マトイは相変わらず目を反らしてばかり。

 ライムはそんな幹部のやり取りを目を細めて観察していて、アスカは幹部同士のやり取りに馴染めずマゴマゴとしていた。

 そして、脱獄の共犯を伴って、総長のルーシィが遂に、本部に降臨した────!



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第19話:前代未聞の大戦争

 

「──たっだいま〜!飂熾冘巫髏総長、ルーシィの帰還だぞ〜ぅ!!」

 

「ルーちゃんっ!!」

 

「ルーシィッ!」

 

 百鬼夜行を停学中で、現在ブラックマーケットを放浪中の身である少女、賽鬼ユウナを協力者としたルーシィは、飂熾冘巫髏(ル・シュ・フェル)の幹部集合から間もなく、同じくハドマの自治区にある本部へ到着した。

 レイコは飛び付きライムは駆け寄り、他の幹部は背筋を伸ばして居住まいを正し、畏まる。

 

「ルーシィっ!捕まったってホントだったの!?」

 

「『出頭した』ですって。……ユウナさん……総長を助けて頂き、ありがとうございました」

 

「破壊を(たの)しませてくれるって言うから、お誘いにノッてやっただけよ。別に他意は無いわ」

 

 ルーシィは出頭前、トリニティの幹部──特に、より優秀であるマトイの方に、ユウナと連絡を取るように指示をしていた。

 ユウナは金銭より破壊を好む。それを交渉条件にルーシィの脱獄を手伝ってほしい。ただそれだけで鬼神魔王こと賽鬼ユウナは、飂熾冘巫髏の為だけにその溢れんばかりの力を貸してくれた。

 

「マフユも元気そうね!」

 

「えぇ、まぁ……それなりですけどね……」

 

「やたら疲れてる顔してるけど大丈夫?」

 

「あ、はい……この前まで工務部でデモしてて……。でも流石に疲れ過ぎたので、辞めました……」

 

「え、工務部、辞めちゃったの?まぁいいけどさ、こっちデモより疲れるけど大丈夫?」

 

「いえ……ルーシィさんの指示に従っていれば、デモなんかと比べたら全然疲れないので……」

 

「あっはは!じゃ、マフユ達レッドウィンターにはライムとアスカとアガリと一緒に、後方支援の方を頼もっかな。元々、人数も少ない事だしね」

 

「あ、それなら助かります……」

 

 この一連の会話の流れが無くとも、ルーシィは、最初からレッドウィンター部隊に後方支援を任せるつもりだったのは秘密である。幹部で好戦的なのは副総長でもあるレイコを除けば、トリニティ部隊、ゲヘナ部隊だ。

 それなら必然的に、レッドウィンターを主とする後方支援が必要となる。2、3人程度で後方支援が成り立つ程、3人のカバー範囲は広くはない。

 

「あ。あなた初めましてだよね?あなたがゲヘナで入れ替わりで幹部になったっていう子だね?連絡はもらってるから把握してる。総長の針村ルーシィ、よろしくね?」

 

「古谷レティです。よろしくお願いします」

 

「私ら同学年(タメ)でしょ?いいよ、タメ口で。そこまで上下関係ガチガチにする気は無いからさ」

 

「ありがとうございます。じゃ、これからタメで」

 

 ルーシィの帰還によって、飂熾冘巫髏は本格的に再始動を図れるようになった。しかしそれよりも、まずはライムとレイコがルーシィに報告を上げる。

 

「集合の連絡来るまでマコトを探してたんだけど、それ、今、中断してるんだ。どうすればいい?」

 

「マコトを?なんで探してたの?」

 

「脱獄したとはいえ、ルーシィが捕まった以上は、ハドマ学園との併合を無かった事にできるのは羽沼マコトだけ。リエは当然、併合なんて解消したいと思ってるでしょうから。マコトからリエに接触とかされたら困るでしょ?」

 

「その話か。それなら、マコトから直接聞いたよ。私を煽る為に面会に来たんだよ、アイツ」

 

「「面会に!?」」

 

「だから『そんな事しても意味無いよ』って、逆に笑ってやったわ。実際、復讐は果たしたと思ってる私にとって、ハドマ学園とゲヘナ学園の併合が解消されても、今更どうでもいいっていうのが本音よ」

 

「……本当にどうでもいいの?」

 

「ええ、構わないわ。寧ろ、併合を解消された方がハドマにとっては苦しい状況に陥る事になるから、どちらにせよ都合いいのよ」

 

「一挙両得ってか。さっすがルーちゃん……」

 

「おっそろしいわー、この娘。敵に回したくない女堂々のナンバーワンよ、ルーシィは」

 

「ふふん、この程度すぐ思いつくわ。だから私は、ハドマの方は放置していたの。どちらにせよ、私はすぐにハドマに戻れる計画だったし。賽鬼ユウナの協力さえあれば、だけどね」

 

「もしあの鬼娘が協力してくれなかったら?」

 

「──その場合は、元々指示を出してた通りに行動してくれてたはずよ。そうでしょ、マトイ?」

 

「はい。ユウナさんから断られた場合は、総長自ら出頭した事を含めて、事前に頂いていた指示を全て副総長にお伝えし────副総長が、総長を救助に行かれるという手筈でした」

 

「ぶっちゃけそれが早かったんじゃない?わざわざこんなロリ巨乳鬼の協力なんか得る必要あった?」

 

「ロリ貧乳吸血鬼は黙ってなさい。胸も小さいなら器も小さいのねェ、お可哀想に……」

 

「あ゙ぁ!?」

 

「まぁまぁ落ち着いて2人共。特にレイコ」

 

「うぐぅ……」

 

「まずね、私が彼女に目を付けたのは、シンプルにその強さにあるわ。SRT特殊学園のエリート達が束になってようやく──という圧倒的な戦闘能力に加え、狐坂ワカモと同時に脱獄できたにも関わらず自力で脱獄するのに拘るその胆力──飂熾冘巫髏に欲しいと思った。でも流石にそれは無理そうだからせめて短期で構わないから、力を貸してほしいって頼むことにしたの」

 

「……でもさ、飂熾冘巫髏の活動目的から考えても、もう、そこまでの戦力は要らなくない?復讐とかも果たした、併合も達成できたのに、これ以上、私が最強になる以外に目的なんか無いじゃん」

 

「分かってないわねレイコ。それは飂熾冘巫髏の、というよりハドマ部隊の目的でしかないでしょ?」

 

「!」

 

「それぞれの部隊の目的を果たすのに、それぞれの自治区の垣根を越えて協力し合う──それが私達、飂熾冘巫髏の存在意義よ。下っ端共にやらせていた統治委員会との戦闘だってそうよね。逃走の時にはトリニティ部隊やら何やらに何度も世話になってるワケだし。──要は、助け合いは大事ってコトよ」

 

「それは……そう、だけどさ。でも……」

 

「ハドマ部隊の目的は九分九厘達成済みよ。だから今度は、ハドマ部隊が他部隊に力を貸す番。これに異論は認めないわよ、レイコでもね」

 

「……そりゃ、うん。分かるけどさ。リエにやられてレーちゃんを連れて逃げた時は、トリニティ部隊に匿ってもらったしね……」

 

「そうよね。だからこれからは私達ハドマ部隊から他部隊への恩返しのターン。そうね、私達が揃って助けられた事だし、レイコの目的と併せて考えると最も効率的なのは────うん、とりあえずここはトリニティ部隊の目的から果たしていきましょうか」

 

「「!!」」

 

 トリニティ部隊のクロノとマトイは、揃って目を丸くする。自分達が真っ先に野望を果たせるとは、全く予想すらしていなかったから。

 そして2人はルーシィに目的を問われ────。

 

「もちろん、トリニティをブッ壊す事よッ!!私の青春を壊してくれたトリニティを壊してやって!!他のヤツらの青春も壊してやる!!煌びやかな学園生活を丸ごと、全部!ブッ壊す!破壊よ!!」

 

「私は──クロノさんの傍に居られればそれで……」

 

「聞いての通りよ。多分だけどゲヘナとハドマとの併合のゴタゴタより大きい問題になる。これは私達飂熾冘巫髏とトリニティとの戦争になるわ」

 

「「「「「「────ッ!!」」」」」」

 

「ユウナ。建物を破壊するのに、腕に覚えは?」

 

「腕にも身にも、覚えしかないわねぇ♡ あたし、構造物破壊の専門だからさ♡」

 

「……念の為に、レッドウィンターとゲヘナの方も、目的だけでも聞いておきましょうか」

 

「わっ、私は……!チェリノ会長相手にクーデターを起こしてみたいなって……飂熾冘巫髏の戦力があれば叶えられない夢でもないから……えへへ……」

 

「私は、クロノにはさっき言ったけれど、ゲヘナをブッ壊したい。私も、クロノ程ではないけどずっとイジメられてたから……その復讐がしたい」

 

「うーん……。難易度としてはトリニティ、ゲヘナ、レッドウィンターの順か。難しいのからやってこ。目的を果たすのも、この順番でいいかな?」

 

「私はオッケー!」

 

「クロノさんがそれでいいなら」

 

「私、新参者なのに……最後じゃなくていいの?」

 

「新参者かどうかは、関係ないですから……えへへ。私の目的は皆さんのと比べて簡単なんです。だってレッドウィンター連邦学園って毎週というか毎日のようにクーデターが起きてますから……」

 

「「「成程納得……」」」

 

 こうして、今後の飂熾冘巫髏の動きが決定した。しかしそれに対し、口には出さないものの、不満を抱いている者が、およそ2人────。

 

 ◆

 

「……お。来たね、アスカ」

 

「……副総長……」

 

「いいよ、レイコで。そっちのが歳上でしょ」

 

 ルーシィを交えた会議が終わってしばらくして、それぞれ訓練なり休養なりに入った時のこと。

 ハドマ学園第2校舎もといゲヘナ学園第4校舎の家庭科室に、レイコはアスカのことを呼びつけた。

 

「……」

 

「そんなに警戒しないでよ。取って食おうってワケじゃないんだから」

 

「……」

 

「アスカ。あんたは、さっさと飂熾冘巫髏やめて、ハドマのヤツらんとこ戻りな」

 

「……え?」

 

「ルーちゃん──ルーシィはああ言ってるけどさ、実際の所、自分達の目的の為に組織を立ち上げたし自分達の目的の為に組織を運営してきた。ゲヘナやトリニティ、レッドウィンターのヤツの事なんか、都合のいい手足程度にしか思ってないハズなのよ。ルーシィの幼馴染はトリニティのクロノだけだし、それ以外は大して関わりすらも無いハズよ」

 

「っ!」

 

「だからおかしいのよ。ルーシィ、目的を果たして燃え尽き症候群になってるだろーと思ってたのに、急に戦争とか言い出すし。マコトは放置するのに、レティの希望ってだけで、ゲヘナ潰す事すらも賛成してる。曲がりなりにも、自分が生徒会長やってるゲヘナ学園よ?ハドマの併合とは、ワケが違うわ」

 

「どういう事……?」

 

「だから……!!なんかよく分かんないけど、組織にズレが発生してきてるのよ!アスカ、あんたはただ美食研究会を潰したいだけなんでしょ?だったら、もう飂熾冘巫髏はやめな!美食研究会を潰すとか、潰さないとか……そんな話じゃなくなってきてるの!あんたまでこっちに来る事ないから……だから……!あんたは元通りの生活に戻って!」

 

「どうしてそこまで……?」

 

「あんたは私が勧誘しただけだからさ。テキトーに理由くっつけて、クビにしたって言うよ。副総長の私なら、ある程度はワガママも通じるでしょうし」

 

「ッ……私はそれでもいいけど……!レイコちゃん(・・・)はどうするの!?」

 

「私はこのまま作戦を進めるフリして、ルーシィの目を覚まさせる。戦争なんかダメだ、そんなの私は望まない。私が望むのは強いヤツとの戦い、それはずっと変わらない。これからもね。でもルーシィのやり方──戦争を始めるのは、絶対に違う!!」

 

 淡々と、それでも力の籠った口調で語るレイコ。しかしアスカは何も返答せず、黙り込んでレイコの話に耳を傾けている。

 

「……分かったらさっさとあっちに戻りな」

 

「…………」

 

「私が信じられない?」

 

「逆にどうあなたを信じろって言うの?この前まで敵対してて、リエ議長を生き埋め状態にしたのに!というかあなたって、ルーシィの信奉者でしょ!?ルーシィが大好きで、ルーシィのイエスマンでっ!ルーシィに従ってばかりのあなたに止められるの?そんなワケないでしょ!?だったらどうしてずっとルーシィに従ってたのよ!?」

 

 反撃だとばかりに強めの口調で言い返す。自分も生き埋めにされた、それでもアスカにとってそれはどうでも良かった。

 自分より他人を思いやるのがアスカだ。それも、あまり行き過ぎるとバカみたいに見えるとかつての仲間達には思われていたが。

 

「ンなの言わなくても分かるでしょ!?ルーシィと私の思惑がピッタリ合致してたからだよ!それに、私が好きなのは、確かな勝利に導いてくれて、頭が良くって、現実逃避しない、リアリストのルーシィなんだ!あんなのっ……あんなのルーシィじゃない!ルーシィが戦争なんか起こすハズ無いんだ!!」

 

「何でそう言い切れるのよっ!」

 

「当たり前でしょ!?そもそも私達がこんな組織を立ち上げたのだって、戦争に対する復讐なのよ!?それなのに、どうしてまた!今度は自分達が戦争を起こしたいなんて願うのよッッ!?」

 

「……!?ゲヘナとの併合、ゲヘナの乗っ取りが目的じゃなかったの……!?」

 

「それもあるにはあるわ!でも大元はハドマへの……私達のお友達を殺した失楽殿の、後釜の失楽園さえ潰せればそれで良かったの!私はそれで良かった!ルーシィだけなのよ、ずっと先を見てるのはっ!!私はそれが凄いと思ってた、だけど違ってた!私はずっと……盲目的に従ってた……!」

 

「!!」

 

「だから……だから、ルーシィの目を覚まさせなきゃダメなの!それは私にしかできないのよ!!だけどアスカまでこんなバカな事に付き合う必要は無い!だからハドマに帰って!……お願いだからっ……!」

 

「……」

 

「アスカの事は私が勝手に巻き込んじゃっただけ、それだけだから……まだ戻れる。まだやり直しできるハズだから……今なら間に合うから……っ」

 

 段々と声が掠れてくる。涙を流してまでアスカを元の生活に戻そうとしてくるレイコを、真っ直ぐに見つめる。アスカの固い表情は、変わらない。

 

「ルーシィの目を覚まさせたいのなら、もっと良い確実な方法があるよ」

 

「え……っ」

 

「──私は、ルーシィの目を覚まさせようとしてるレイコちゃんのことを信じてあげたいと思ったよ。だから今度はレイコちゃんが私を信じてくれる?」

 

「私が……アスカを??」

 

「多分、この方法でなら────戦争は防げるし、ルーシィの目を覚ますことができる!……と思う

 

「最後の一言で、ちょっとだけ不安になったけど……教えて、アスカ!その方法ってヤツ!!」

 

 ぐしぐしと袖で涙を拭い、強い決意を秘めた目でアスカを見る。その強い目を見てアスカは、本気でルーシィを止めるつもりなのだと改めて思わされ、アスカもまた本気でレイコの事をサポートしようと思ったのだった────。

 

 ◆

 

「アスカさんからメッセージが来ました……!」

 

「何ですって?ルーシィの脱獄といい、滅茶苦茶な状況なのに……アイツ、どの面下げて……!」

 

「一旦スズ先輩は黙って聞いてください。ひとまず読み上げてください、アンナ先輩」

 

「うん!『ルーシィは戦争を始めるつもりみたい。トリニティやゲヘナやレッドウィンターとか、他の自治区を巻き込む大きな戦争が始まる。こんなはずじゃなかった。美食研究会さえ倒せたら私はそれで良かったのに、そんな事も言っていられない状況になってしまいました。みんなの事を裏切ってしまい本当にごめんなさい』……だそうで……」

 

 アスカのメッセージにある「戦争」という言葉に一同は息を飲んだ。そんな事は、ルーシィからも、レイコからも聞いていない。

 ましてや先生の私も聞かされていなかった事で、完全に初耳だったから。

 

「……アンナ、とりあえず『皆にも伝えました』って返信してみてくれるかな。ブロックされてなければアスカを取り戻せるばかりか、飂熾冘巫髏の情報も色々と得られそうだ。それから、可能な限り会話を引き伸ばして。少しでも情報が欲しい」

 

「は、はいっ!」

 

「あれ?先生、会計やってたライムって奴の連絡先ゲットしたんじゃなかったの?」

 

「うん、そうなんだけど……話にならなくてね」

 

「話にならない?」

 

「こっちがどんなに話題を変えても……そのね……。卑猥な方に話題をすり替えようとしてくるから……」

 

「あまりにもビッチ過ぎてクビになったんだっけ。ねぇ、リエ?そのライムってヤツ、リエも連絡先は生徒会時代に交換してるんでしょ?」

 

「とうにブロックされてますわ」

 

「ちぇっ。シエルパイセンは?」

 

「クラスも違うし関わりも薄いから、連絡先なんて交換してないよ」

 

「まぁそれもそっか」

 

 それにしても「戦争」ときたか。そんなの断じて許すワケにはいかない。この前のルーシィは、別にそんな事は言っていなかったけれど。何か思う所があるのだろうか。

 いつどこで、何をどうやって戦争を起こすのかがまるで不明瞭だ。どうしたものか検討が付かないがとりあえず今はアンナに情報収集を任せて……。

 

「……?」

 

 モモトークの通知が鳴った。

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

博愛レイコだけど

 

先生の連絡先で、合ってる?

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 レイコからの連絡だ。レイコといえば飂熾冘巫髏副総長──私とは敵対関係にあるはずで、こうして彼女から連絡をしてくる理由は無い。

 

「……ふむ」

 

 無視するべきか、応じるべきか。応じるなら罠と考えた上で引っ掛かりに向かうのか、罠ではないとレイコの事を信じるべきなのか。

 考えなくてはならない事がこの一瞬で私の脳内で溢れ返った。

 

「どったの、先生?」

 

「ん……他の自治区を巻き込むとなったら、かなりの大騒動に発展しそうだなと」

 

「ね。ホントダルい。レイコにも勝てないあたし達だけじゃ、絶対に止められないじゃん」

 

 それについては私がどうにかする。ゲマトリア、上手くすればデカグラマトンの技術も利用できる*1今の私なら、戦力の確保についてなら問題は無い。

 問題はそこじゃあない。他の自治区にまで影響を及ぼす飂熾冘巫髏の規模が、未だ不明瞭なことだ。

 飂熾冘巫髏は正体不明の組織────それが今も効いているという現実が、骨身に染みてくる。

 最悪な事にならなければいいが、と悩んでいるとレイコからの追いメッセージが。

 

「『ルーシィを止めたいから協力してほしい』……?」

 

 レイコがルーシィを止めたい?何故?仲間では?一体、飂熾冘巫髏で、何が起きている…………?

*1
第2部の第80話参照。



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第20話:総力戦にむけて

 

「────本当に1人で来たんだ」

 

「そういう約束だからね」

 

「……先生、バカでしょ。どうして、私と裏切り者のアスカ相手に1人で会いに来れるの?」

 

「それでも私の生徒だから」

 

「ハッ。意味わかんない……」

 

 レイコからメッセージを受け取った私は、彼女と待ち合わせの為にゲヘナ学園第4校舎(旧ハドマ学園第2校舎)の家庭科室へやってきた。

 彼女からのメッセージ曰く「先生は1人で来て。私はアスカと2人で行く」とのこと。

 スズ達には、もちろん言っていない。もし言えばどうなるか私でもある程度は想像できる。なので、とりあえず今は「仕事の連絡の為に席を外す」と、少し誤魔化しを入れて席を外してここに居る。

 

「それで──『ルーシィを止めたい』、だよね?」

 

「そう。七天魔(しちてんま)の方にはアスカに連絡させたけど、今、ルーシィは戦争を起こそうとしてる。それも、幹部が胸の内に抱えてる鬱憤を晴らす(復讐を果たす)って名目で、少なくともトリニティ、ゲヘナ、レッドウィンターあたりを巻き込むつもりよ」

 

「──引き抜かれたアスカはともかく、どうして、副総長の君がルーシィに反旗を翻すような事を?」

 

「そんなのは飂熾冘巫髏の活動目的に反してるし、何よりルーシィらしくない。ズレてキてるのよね、当初の目的から。ハドマ学園を併合して、実質的にハドマの名を消すのに成功した今となっては、もう組織は解散していいハズなの。それなのに今度は、幹部のお悩み相談の真似事をしてみたり、攻め込む先に宣戦布告をするつもりだとか……」

 

「宣戦布告──『戦争』って言っているけど、一体何をどうするつもりなの?」

 

「私はルーシィじゃないから知らないわよ。でも、私もアスカも戦争なんか望んじゃいない」

 

「アスカは美食研究会を打倒するのが目的だって、出会った頃に言ってたね。飂熾冘巫髏に入ったのも組織の力をアテにしての事なんだろうと思ってる。じゃあ、レイコの目的は?」

 

「強いヤツと戦うコトよ。私が負けようが勝とうが結果はどうでもいい。いやまぁそりゃ勝ちたいわ、勝ちたいけど!──それはそれとして、戦争なんて起こしたくないのよ」

 

 リエから聞いた話によると、ルーシィがハドマに恨みを持っている理由が、5年前のゲヘナ学園内の抗争が原因なのだったか。

 その抗争で失楽殿は当時のモルモによって潰され失楽殿の後輩がハドマに逃れ、失楽園として新たに組織を立ち上げ、ハドマ学園で生徒会として君臨。

 だから、ルーシィの恨みの矛先はハドマ学園及び失楽園に向いており、人員を集め組織を立ち上げ、会計に幹部を送り込み、自らも生徒会に加入……。

 確かにこれだけ見ればレイコの言う通り「新たな戦争を起こす事」は活動の主旨とは違う。レイコが組織について「ズレてキてる」と言うのも、きっとこういうのが1つの要因なのだろう。

 

「ルーシィはとても頭が良いよね。会計にライムを潜り込ませただけでなく、自らも潜入、でも会計のライムがクビになってしまったからと、自分がその仕事を請け負う事でリエの信頼を得た。──正直、レイコとアスカがこうして『ルーシィを止めるのを手伝ってくれ』って私を呼び出すのも、ルーシィの作戦じゃないかと、少しは思っているよ」

 

「!?」

 

「『私の生徒だから』とか言ってなかった?」

 

「もちろん。だけどレイコ、君はルーシィが好きで好きでたまらないハズだよ。なのに、その大好きなルーシィのことを裏切る真似ができるのかな?」

 

「ルーシィの暴走を止められるのは私だけなのよ!ハッキリ言って今のルーシィは暴走してんのよ!!こんな事なら、自分達の目的が達成されて燃え尽き症候群になって即解散の方がマシだったよ!!」

 

 暴走────確かにそんな様子は見受けられる。出頭前のルーシィからは考えられない方向転換だ。

 出頭前の彼女に対して抱いていた感想としては、脱獄後はこれまで通り統治委員会との追いかけっこなんかを楽しんだり、マコトとバチバチにやり合うくらいだろうと思っていた。

 

「変な方に野心を燃やして、意味分かんないくらい他の幹部と盛り上がって!どうやって攻めようか、アレコレずっと考えてる!戦争なんかの為に!!」

 

「だから私とレイコちゃんはルーシィを止める方で合意したんです!でも流石に、規模が大きすぎて、私達だけじゃどうにもならないから!だからっ!!先生に頼るしかないって思って……!!」

 

 サオリの時と今回では、状況も前提条件も違う。ルーシィやライムの前例を見れば分かる通りだが、飂熾冘巫髏は堂々と敵組織に乗り込んでくる組織。

 総長であるルーシィが乗り込んできたのだから、副総長であるレイコを送り込んでくる事だって当然有り得ると考えた方がいい。

 ──しかし、ここで2人を突っぱねて、みすみす情報源を逃すのか?それに、もし本当なら……。

 というより、ルーシィはいつだって、最後は自ら動き、潰す予定の組織に乗り込んできていたハズ。リエを倒した時もそうだ。イロハの連絡によれば、万魔殿に乗り込んできたのも、ルーシィ自ら(・・・・・・)……。

 

「……そうか」

 

 逆に疑り深くなりすぎていたか。

 ルーシィは自らトドメを刺すのに固執している。だから、最初にレイコに襲撃させた時も、トドメを刺さずに放置し、最後の最後は自分でリエを……。

 それならばここは、寧ろ、この2人の事は信じるべき──なのか。

 

「──2人の言い分としては『飂熾冘巫髏(ルーシィ)は戦争を起こそうとしているから止めたい。だから、先生(わたし)に知恵を貸してほしい』、こんな解釈でいいかな?」

 

「はい……」

 

「まぁ、うん。合ってる。私としてはずっと間近でルーシィを見てきたから、内部から止めるつもりで居るんだけど」

 

「……分かった、一緒にルーシィを止めよう」

 

「「じゃあッ……!!」」

 

ただし(・・・)。──ただし、だよ。2人には、1つだけ条件を飲んでもらいたいかな」

 

「えッ……!」

 

「!……そう、良いじゃない。生徒相手に何言うのか知らないけど言ってみなよ……!!」

 

 拳を握って、身構える。変な事を言われるとでも思っているのだろう、だが私にそのつもりは無い。

 正直、ここは、疑うのが正解だと思う。だけど、それだと満足に情報も引き出せなさそうだし、万事上手くいくとは考えにくい。だからここは……。

 

「2人共、飂熾冘巫髏を抜けなさい」

 

「え」

 

「……あ゙!?」

 

「アスカのことは……まぁ、皆、分かってくれるさ。レイコについても私から口添えする。もし七天魔が受け入れなくても、また別な受け入れ先はあるからそこで動いてもらうようにする」

 

「私はそうかもだけど、レイコちゃんは……」

 

「そーよ!リエ議長の事とか普通にぶっ飛ばして、校舎も壊したじゃんっ!どうやって私を受け入れてもらおうっての!?禊と称してボコさせるつもり?もしそうなら受けて立つよッ!」

 

「話し合いだよ、まずはね。だけど、もしもお互い手を出したら、その時点で交渉決裂。レイコには、別の組織に移動してもらう」

 

「……別の組織って、どこよ」

 

「候補としてはゲヘナの風紀委員会だね。そして、トリニティの正義実現委員会。およそこの2択だと思ってもらいたいね」

 

「いっ!?ルーシィが宣戦布告を出す予定の学園(ところ)!スパイ疑われかねないじゃん!!」

 

「大丈夫、私のお墨付きだから」

 

「……今更だけど、シャーレの先生って無法ね……」

 

 こうして2人を説得し終えた私は、2人を連れて七天魔の待っている会議室へ向かう。

 それから事情を説明するが────やはり当然と言うべきか、アスカはともかく、レイコのことなどそう簡単に受け入れてはもらえないようで……。

 

「納得いかないッ!アイツのスパイでしょ、絶対!アスカは天然だからスパイじゃなさそうだけどさ!てかできないでしょ!だけどそっちは絶対アウト!アウトだよ先生!」

 

「ちがっ……スパイじゃない!私は──」

 

「流石に先輩に同意しますよ、先生。レイコを脱退させた上でこちらに引き入れるなどというのは些か無理があります」

 

「普段は、完全にスズに同意するなんてコトは無いけど、こればっかりは無理。……悪いけど反対よ」

 

「私も、ちょっと……。それに、いざ裏切られたら、誰もレイコさんを止められませんしね……」

 

「申し訳ありません、先生。打倒ルーシィさんには人手が必要というのは理解します、しかし────幾らルーシィさんにより命じられていたとはいえ、学園を実質的に壊した張本人を、というのは……」

 

 やはり、そう簡単に受け入れられるものではないだろう。分かってた。分かってはいたさ。だけど、こうもバッサリ切り捨てられるとまでは……。

 

「…………………………そっか。皆の意見は分かったよ。それなら、他の協力してくれそうな子に頼むから、心配しないで。この話は無かった事にしてくれると助かるよ」

 

「言われなくてもそうするわよ、アホくさ」

 

「じゃあ行こうか、レイコ、アスカ」

 

「……うん」

 

「はい」

 

「はっ!?なんでアスカも連れてくのよ、先生!?ちょっと待って!!」

 

 しょぼくれた2人を連れて部屋を出ようとするがそんな私の肩をスズがガッシリと掴む。それなりに強い力だ、呻き声が出そうな程に。

 けれども、私がここで引いてはいけない。少し、キツイ言葉を浴びせる事になったとしても、私には言わなくてはいけない事がある。絶対伝えなくてはいけない事が、ある。

 

「アスカにはレイコのお目付け役も頼んでるんだ。なら2人をセットにしておくのは当然でしょう?」

 

「────ッ!!」

 

「レイコが飂熾冘巫髏を裏切るのはルーシィの策の可能性がある──そうだね、そう疑うのが自然だ。その気持ちは私もよく分かるさ。だけどそれなら、アスカはどうだろう?どうしてアスカの事だけは、自分達の元に取り戻そうとするの?」

 

「アスカにスパイなんて──」

 

「無理だ、できるはずが無い──って言いたいの?どうしてそう言い切れるのかな?」

 

「だって!七天魔の同僚として、委員長同士としてずっと身近で見てきたもんっ!アスカがどんな物の考え方して動いてるの、とか!どうせ飂熾冘巫髏に入ったのも、美食研を潰す為に飂熾冘巫髏の兵力を利用してやろうとか思ってたんでしょうがよ!?」

 

「うっ……」

 

「そうだね、アスカは確かにそう言ってた。でもねスズ、その説は根拠が無い(・・・・・)。ルーシィの事だって、ずっと傍で見てきたハズだよ。特にリエ。そして、アンナは、生徒会の仲間として接してきたハズだ。それなのにルーシィの本性を見抜けなかったよね。会計をやっていたライムの事もそうだよね」

 

「「「……ッ!!」」」

 

「──改めて言い直そう。どうしてアスカが白で、レイコが黒だと……そう言い切れるのかな?

 

「……だっ…………だっ、て……それは……それはっ!」

 

レイコと違って、アスカ先輩と接した時間の方が遥かに長いから。……そう言わざるを得ません」

 

「ルビー!」

 

「そう、まさにルビーの言う通り。だけど、現に、接した時間が同じく長いルーシィが、飂熾冘巫髏の総長だったよね。もう、分かったよね。そういった先入観は、全くアテに(・・・・・)ならないんだ(・・・・・・)

 

「「!!」」

 

「ここでアスカを信じ再び仲間に迎え入れるなら、レイコの事も同条件で扱ってほしい。どちらにせよ所属が違うだけで2人も皆もハドマの子なんだし、仲良くできないなんて事は無いんだ。絶対にね」

 

「「「「「…………」」」」」

 

「もう一度言う、アスカを迎え入れるならレイコも受け入れなさい。それができないのなら他の組織に行く。──例えば、トリニティの正義実現委員会が良いかもしれない。2人への先入観が皆無だから、話せば分かってくれる確率は非常に高いと言える」

 

 全員が黙り込む。当然だ。こんな事を言われて、すぐに「はいそうですかレイコも受け入れます」と言えるハズが無いんだ。

 アスカと同等に扱え、か。我ながら無茶ぶりにも程がある発言だ。他所の組織に引き取ってもらうの前提の作戦だから、七天魔に認めてもらわなくともある意味で想定通りだと言えるのは間違いのだが。

 

「……行こう、2人共」

 

「ッ……はい」

 

「行くかぁ」

 

 アスカは名残惜しそうにしつつ、レイコは溜め息混じりに私の後ろをついてくる。しかしここで再びスズが声を張り上げる。

 

「待ってってばッ!!」

 

「あまり時間が無いかもしれない。他の学園に話をするのなら、より早い方がいいんだ」

 

「だからッ!こっちで面倒見てやるわよ2人共!」

 

「えっ」

 

「ッ……!?」

 

「はぁ!?」

 

「!?」

 

 そう啖呵を切るスズを見て、残りの4人は驚きを露わに。何を言っているんだ、バカなのか、と散々スズを諌めるが、まるで聞く耳を持たない。

 

「もしあんたが──レイコがあたし達を裏切らず、最後まで飂熾冘巫髏と戦い通して、アイツらを全員ブチ倒したら──レイコは統治委員に加入しなッ!今の元ハドマ学園の勢力の中では、一番実権がある委員会よッ!」

 

「へぇ……いいの?統治委員会ってのは実力主義って聞いたけど?」

 

「それがどうしたのよ?」

 

「ニブいんだなぁ。先輩は私よりも弱いんだから、もしも私なんかが統治委員会に入ったら、委員長が交代しちゃうんだよ?いいの?」

 

「ええ、構わない!!」

 

「──スズ先輩ッ!?」

 

 ルビーはスズの胸ぐらを掴んだ。ふざけるなと、そう今にも叫びそうな程に、奥歯をギリギリと強く噛み締め、額に青筋を浮かべる。

 スズを直にサポートする為にと副委員長の地位に甘んじているルビーとしてはたまったもんじゃない話だろう、しかしそれを知らないスズは今も平然としている。

 

「暴れ馬の手綱を握るのも委員長である私の仕事。交代戦はタイマンよ、あんたに勝ちは(・・・・・・・)譲らないわ(・・・・・)。当然、委員長の座もね」

 

「スズ……せん、ぱ…………」

 

「……そ。そんな覚悟してるなら……それでいいわ」

 

「交渉成立ね。──言っとくけどあたし、あんたに勝てる算段があるからこんな事を言ってんのよ?」

 

「でしょうね。そうじゃなけりゃ、ブラフにも程があるってもんよ」

 

「あんたもバカじゃなさそーね。話が分かる部下は有難いわ?」

 

「……フンッ」

 

 こうして七天魔に新たにレイコが加入、アスカが復帰を果たしたことで、久しぶりに七天魔の七つの席が埋まることになった。

 アスカは同時に美食研究会対策委員会に復帰し、副委員長のサエと再会。レイコはスズの部下として仮の措置ではあるが、スズの監督下に置く為にと、統治委員会へ加入した。

 

「──よしっ。それじゃあ、2人から飂熾冘巫髏の話を聞いて、その上で作戦を考えてみよう。絶対に戦争なんてのは阻止しなくちゃね」

 

 ────ルーシィが2人の裏切りを知ったのは、それから間も無くの事である。



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第21話:作戦会議

 

「忙しい所ありがとう、ナギサ──セイア、ミカ。急になってしまって本当に申し訳ないと思ってる。この埋め合わせは、近い内に必ず……」

 

「先生の為です。時間くらい、いつでも空けます。私だって、先生の彼女……なのですから」

 

「そうだとも。水臭い事を言うな。私だって先生の婚約者なのだからね。先生はいつも私達の為だけに時間を空けてくれる、ならば私達だって先生の為に時間を空けるというものさ」

 

「そうそう!それでこそ恋人関係だもんね☆」

 

「……ありがとう、みんな」

 

 曲がりなりにもハドマの生徒達が一致団結できた今、懸念するべきは、飂熾冘巫髏の侵攻対象であるトリニティ、ゲヘナ、レッドウィンターの3校だ。

 レイコとアスカによるとルーシィはトリニティを優先して潰そうと目論んでいるようなので、私も、真っ先にトリニティに連絡にやってきた。

 トリニティが標的である意味助かったと言える。生徒会のティーパーティーは、3人揃って私の彼女または婚約者。普通の生徒より時間を作りやすく、その上で、荒唐無稽な話でも理解してもらいやすい柔軟さを持っているから。

 

「──それで、先生の言っていた『大問題』とは、一体どういうものなのかな?」

 

「うん、早速本題に入ろう──と言いたいんだけどまずは背景から説明させてくれるかな?」

 

「「「?」」」

 

「だいぶ、込み入った話なんだ。結論から言ってもきっと『何言ってんだコイツ』みたいになるんだ、まず間違いなく。私でさえそう思っちゃうくらい、滅茶苦茶な結論になる。だから、長話になるけど、概要というか──大まかな流れの方から説明させてほしいんだけど……大丈夫……かな?」

 

「ええ、まぁ、私は構いませんが……」

 

「そーだね、先生がそこまで言うってメチャクチャ珍しいもんね?」

 

「ふむ。先生がそれ程までに念を押すのであれば、そうした方が良さそうだ。是非、最初から最後までゆっくり話を聞かせてもらおう」

 

「ありがとう。──じゃあ、ハドマ学園崩壊事件、ハドマ学園併合について、どれぐらい知ってるかをまず教えてくれるかな?知ってる事を改めてここで言っても、話が進まないだけだからね」

 

「ハドマ学園ですか。自治区が隣接しているという事もありますから、普段の事件より積極的に情報を仕入れるよう心掛けております。ですので、一般に報道され、出回っているような情報であれば、殆ど全て頭に入っているかと思います」

 

「私もナギサに同じだね。副会長による独断の調印強行及び学園の併合、お隣のハドマ学園でなくとも興味が湧くというものさ。これでも生徒会だから、特にね」

 

「…………」

 

「……ミカ?」

 

「えっ!?あ、うん!ハドマ学園ね!うーん……」

 

 頑張ってハドマ学園に纏わる情報を引き出そうと頭を悩ませるミカ、しかしそれだけで知りもしない情報が出せるハズも無く、彼女の両翼がシナシナになってしまった。

 

「──ハドマ学園では内部抗争が起きていたんだ。ハドマ学園とゲヘナ学園の併合を目論むテロ組織と生徒会やそれらに付随する組織との、ね。そして、あの学園崩壊事件はその組織によって起こされた。直後の、学園併合の調印式も、組織のボスによって行われてしまったんだ。飂熾冘巫髏って名前の組織なんだけどね」

 

「一旦ちょっと待ってくれ、先生。それだと、私の知っている情報と照らし合わせると、調印したのは生徒会副会長でありテロ組織のボス──という事になるのだけど、これはどうなるんだ?」

 

「テロ組織のボスが、生徒会に潜入していたんだ。だから一見矛盾しているように見える『テロ組織のボスが調印した』と『生徒会副会長が調印した』の2つの情報は、ものの見事に、イコールで結ばれてしまっているんだ」

 

「「……!!」」

 

「なんて事だ。副会長と言えば学園のナンバー2、テロ組織の長だなんて誰が思うだろう?ましてや、テロ組織と敵対していた生徒会を裏切っていたとは思わないだろうに。上手く漬け込んだものだな」

 

「………………」

 

「あ。……すまない、ミカに言ったワケではない」

 

「う、うん、知ってる知ってる……あはは……」

 

 ナギサとセイアは、ニュースのお陰でルーシィの名前やハドマ学園における役職までは知っていた。ただし、学園併合の犯人のルーシィは、現在は一旦逮捕された上で次の日に脱獄した──という事実は知らなさそうだった。

 ルーシィの逮捕と脱獄は、未だ報道されていない情報。寧ろ、私のような関係者以外にも知っている者がいたら、そいつは怪しいという事にもなる。

 

「いよいよ本題に入ろうか。そのルーシィだけど、ルーシィの目的は、殆ど果たしてしまったんだよ。じゃあ組織を解散するのかな──って一部の幹部は考えたそうだけど、なんとルーシィは、幹部達に、

『やりたい事』を聞いたそうなんだ」

 

「やりたい事?」

 

「テロ組織に属しているんだ、そんな子が望む事がどんな事なのか、おおよそでも想像はつくと思う。恨みを晴らそうとか、そんな事だね。今その組織はトリニティ、ゲヘナ、更にレッドウィンターという3校を相手にして戦争を起こそうとしているんだ」

 

「ゲヘナにレッドウィンターまで……!」

 

「つまり、何だ?そのルシフェル?とやらの幹部がトリニティに恨みを抱いているから、戦争を始めるつもりだ、と?──確かに、こんな結論を真っ先に聞かされては『何を言っているんだ』と思いたくもなってしまうよ。ここに至るまでの長い前置きにもきちんと意味はあったワケだ」

 

「まぁ、アリウスを初め、他にも恨まれる事柄にはある程度の心当たりはありますけれど……」

 

 総合学園と成立する時に色々ゴタゴタがあったのだろう。今はそれが主題ではないので特に深堀りはしないでおくし、なんならレイコ達の話を聞くに、そういう意味の恨みではなく単に私怨のようだが。

 

「飂熾冘巫髏はハドマの内部組織、ではあるんだ。でも実は、主体がハドマ学園の生徒というだけで、組織の構成員だけで言うのなら──他の自治区にも数多く存在しているんだ」

 

「────!まさかトリニティにも……!?」

 

「判明しているだけでトリニティには2人の幹部が在籍してるそうだよ。単なる構成員は数百人単位」

 

「……ッ!!」

 

「そうなると些かマズイ事になったな。内部情報も漏れている可能性が無きにしも非ずだ」

 

「こんな目に遭うのは私だけで十分だよ。その子の事も、止めなくちゃ……」

 

 迫害され、今も尚、満足に学生らしい学生生活が送れないミカは、その生徒には私のようにはなってほしくないと言葉を漏らす。相変わらず優しい。

 ミカは、ゲヘナ以外に関して言うのなら、普通に優しい子なんだ。ゲヘナさえ絡まなければ……。

 

「その幹部2人のうち1人については、少し多めに情報を得てる。ナギサ、悪いけれど……」

 

「拘束とまではいかずとも、監視くらいであれば、その生徒につけられるでしょう」

 

「……ありがとう。それでいこう」

 

 それから具体的にどうやって監視をつけるか等を話し合った。街中の監視カメラとドローンの併用、更にはティーパーティー傘下の組織の生徒に任せるという結論に至った。

 

「──で、その1人についてなんだけれど。去年は補習授業部、今年は帰宅部もしくは自警団に所属、名前は『時計クロノ』。残念ながら、写真はゲットできなかった。もう1人は帰宅部らしいけど」

 

「補習授業部……ですか?」

 

「そう、去年のね。だからそこからその子に関するデータを探せると思う」

 

「────であれば、そこまで躍起になって該当のデータを探す必要は無さそうですね」

 

「えっ?」

 

「去年、補習授業部に所属していたのですよね?」

 

「うん、そうらしい」

 

「でしたら既に、ある程度のデータはあります」

 

「!?」

 

「以前にもお話しましたが、補習授業部とは、常設ではなく特設の部活です。それも退学寸前になった生徒の救済の為の組織。退学寸前の生徒となれば、私達生徒会の者であるならば、最低限の情報は頭に入れておく必要があります」

 

 そういえばそうだったか。エデン条約事件の前に設置したヒフミ、アズサ、ハナコ、コハルの4人の補習授業部は裏切り者を炙り出す為のものであり、しかもシャーレの力を利用して急遽設立したもの。

 言わば「補習授業部の名前こそ使ってはいるが、いつも通りの補習授業部ではない」ようなものだ。

 名目もその内情も、普段の補習授業部とは違う。だから補習授業部に所属していた過去があるなら、通例通りの補習授業部のデータを探せばいい。

 ────にも関わらず、そのデータは、ナギサの頭に入っている──と。流石はティーパーティーのホスト、凄まじい。

 

「特にここ2、3年程度のデータでしたら、身近に保管しているはずです。恐らくですが補習授業部の記録を遡るよりかは、生徒会としての記録の方が、より詳細にその生徒について記録が成されていると思われます」

 

「そっか……じゃあそれでお願いできる?」

 

「お任せ下さい。──にしても、自警団、ですか。こちらについては、やはり、正確な人数などは特定できかねますね。あくまでも『自警団』ですから。ましてや帰宅部など、多すぎて……」

 

「うん。それについては、覚悟してるよ。だから、もう1人の幹部でクロノの友人の、桜庭マトイって生徒については──クロノを補足してから、地道に追っていくしかないね」

 

「クロノを捉えたが最後、彼女を基準にして残りも芋蔓式に補足し、トリニティに潜伏している組織の構成員の全貌を把握してしまおう、というワケだ。中々、一筋縄ではいかないね」

 

「そういうこった。いやー、骨が折れるねぇ……」

 

「ナギサの双肩に懸かっているよ。私も手伝うから頑張ろう」

 

「私も手伝うよー☆」

 

「…………ありがとうございます、皆さん」

 

 ◆

 

「どりゃあっ!!」

 

「「「ぎゃあああああっ!?」」」

 

「ナイスッ!……これで、トドメぇっ!!」

 

「「ぐあああーーーっ!!」」

 

 トリニティ自治区内の某所では──自警団の少女2人とチンピラ集団が銃撃戦を繰り広げていた。

 圧倒的な人数差、けれども2人はその人数差などものともせず、チンピラ集団を撃退してしまった。絵に描いたような捨て台詞を残し、チンピラは場を去っていく。

 

「ふぅ、やったわね!」

 

「はいっ!!!お疲れ様でしたっ!!!」

 

「そっちこそお疲れ。えっと、ごめん、なにちゃんだっけ……?」

 

「まだ名乗ってませんでしたね!!!そう私こそは自警団のスーパースター!宇沢レイサ!!です!!よろしくお願いします!!!」

 

「レイサちゃん、覚えた覚えた。──えっと、私は時計クロノ。自警団同士、よろしくね」

 

「はい!!こちらこそよろしくお願いします!!」

 

 クロノは、やたらハイテンションな子だなぁ、と思いながらレイサと握手を交わす。自警団同士だが自警団の全員が全員、お互いの人相を把握しているワケではない。

 ましてやクロノのように、他者によって虐められ孤立した過去があれば、尚更であった。

 今回はたまたま、クロノが苦戦していたところにレイサが割って入ったからというだけで、これは、クロノにとっては全くの誤算で、偶然であった。

 

「あんたタンクっぽいのによく攻めるねー……」

 

「はわっ!?分かりますか!?私タンクなんです!でも攻めるんです!!」

 

「タンクって仲間を守るイメージしかなかったわ。でもまぁ、そういうのも面白いよね」

 

「ですね!!」

 

「──ね、レイサ。あんた時間ある?」

 

「はい!!時間なら幾らでも!!」

 

「そ、良かった。じゃ甘い物でも食べに行こうよ、助けてくれたお礼に奢るよ?」

 

「え、ええっ!?いいんですか!?やったぁ!」

 

 戦闘後、助太刀の礼としてクレープなど屋台でも食べられるような甘味を奢る。ハムハムと、リスのようにぷっくりと頬を膨らませてクレープを食べるレイサを見て、クロノはやんわりと目を細める。

 

「……なんでレイサみたいなのが自警団やってんの?私みたいな鬱憤晴らし……には見えないけど」

 

「悪事は見過ごせませんからね!」

 

「あー、正義感(そういうヤツ)ね……成程ね」

 

「クロノさんはどうして自警団やってらっしゃるんです?鬱憤晴らし?との事ですが!」

 

「まぁね。鬱憤晴らしというか好き勝手にボコせる八つ当たりの的を探してるというか、そんな感じ。でもさ、正義実現委員会だと、しっかり委員として活動しなきゃダメだからさ。なんかダルいんだよ。それなら自警団の方が気が楽じゃん?」

 

「あはは……ま、まぁ、分かります!」

 

 嘘だとクロノは勘づく。レイサのような正義感が強い者は、寧ろ、八つ当たりのような理由で他者に暴力を振るう事を嫌悪するハズだ。

 レイサの「分かる」というあの言葉は、あくまで表面上だけの相槌だと、クロノには分かっていた。そして次に、レイサが紡ぐであろう言葉も。

 

「でも────」

 

 ほら来た、と呆れるような目をレイサに向ける。レイサのような──この手(・・・)の者が言う言葉は相場が決まっているのだ。

 やれ「最低な理由だ」だの、やれ「お前なんかが自警団を名乗るな」だの……。

 イジメられっ子を脱却した今の彼女には、ハドマ自治区が由来の飂熾冘巫髏という後ろ盾があった。だからこそ、今は、良くも悪くも、常に本音で話すようにしている。いつか真に腹を割って話せる友に巡り会えることを信じて。

 本音で話すからこそのバッシング、そんなものはもう呆れるくらいに聞いてきた。だからクロノは、

「コイツもそのパターンか」と、一気にレイサへの興味を失った。

 

「私が言うのもアレですが!──愚痴とかあるなら聞きますよ!!」

 

「…………え?」

 

「鬱憤を晴らす為とはいえ、クロノさんが手を出す相手は悪人だけでしたからね!まぁ理由はあんまり褒められたものではないと思いますけど!ですが、もし嫌な事があったり愚痴を言いたい時があれば!暴れる前に、遠慮なく!私を頼ってください!!」

 

「…………」

 

「────あうっ!?も、もしかして私、また何か変な事を言ってしまいましたか……!?」

 

「……ううん。ありがと、レイサ。あんた、やっぱり良い奴ね」

 

「えっ!?……えへへ、ありがとーございます!」

 

 自分が褒められた理由も、よく分かっていない。それでも褒められた気がするというレイサの感覚は間違ってはいないし、クロノもまた、上記の言葉を皮肉で言っているつもりも無く、これも紛れもなく彼女の本心であった。

 

「それで……クロノさんはどうして八つ当たりなんてしてるんです?」

 

「あ、もう聞いちゃうカンジ?」

 

「気になるので!それに、自警団の仲間の事ですしもし話せるのであれば知っておきたいなぁって!」

 

(……仲間、ね)

 

 本当は、トリニティを潰そうとしてるテロ組織の幹部なんだけどね────と、ついポロッと言ってしまいそうになる。

 レイサがあまりにも目を輝かせるので、話す気も無かった自分の事を、適当に、概要だけ掻い摘んで話すことにした。

 

「私、さ。小学生の頃から去年まで、ずーーーっとイジめられてたんだよね」

 

「!」

 

「積もりに積もったこんな鬱憤を晴らすのにはさ、やっぱ、暴力しかないじゃん。でもそうするにも、理由無く他人を襲うのは──気が引けてさ。だから悪い事をしてる奴なら、気兼ねなくブッ飛ばせる。要は、良心の呵責?に苛まれないよーにする為に、わざと不良やチンピラを狙って、その上で自警団を名乗ってるってワケ」

 

「そーだったんですね……。ちなみに、原因とかって聞いても……?」

 

「あんた、なんかスゴイ踏み込んでくるね……アガリ(知り合い)思い出すわ」

 

「あ゙っ!ごめんなさい!!悪気は無くて!!」

 

「あったら困るわよ」

 

「あうっ」

 

「────見て、私のヘイロー」

 

「ッ……!?ヘイローが動いて……え゙っ!?」

 

 声を上げるのも仕方なかった。レイサにしては、寧ろ声を抑えた方だと言える。

 クロノのヘイローは、時計だった。短針と長針で時間を表示している上に秒針までが備わっている、所謂、アナログ時計だった。文字盤は無いものの、代わりに12分割された目盛りがあり、それを見れば現在の時刻が分かる──というものだった。

 

「うわぁ!スゴイ!スゴイですよクロノさんっ!!ヘイローが時計になってるんですね!珍しいですしカッコイイですよ!!」

 

「──ってさ。そんな反応を貰えたのは幼稚園までだった。でも、小学校に上がってからは『動くとか変だ』とか『気持ち悪い』とか……」

 

「っ!!『ヘイローイジメ』ですか……!」

 

「流石に知ってるよね」

 

「まぁ、はい。私もそれを聞いた事はありますし、その現場を見た事も……ありますから」

 

「そっか。……ヘイローと言えばやっぱアレだよね」

 

「アレですね!!」

 

「「『キヴォトスで名を挙げる人物は大なり小なり異端なヘイローをしているものだ』!!」」

 

 2人の声は不意に重なった。それが可笑しくて、ケラケラと涙が出るまで笑い合う。

 キヴォトスには、有名な都市伝説のようなものがあった。それがこの「名を挙げる人物のヘイローは異端な形状をしている」というもの。多少表記揺れだったり言葉に違いはあれど、大体同じ意味の事が都市伝説的に囁かれている。

 大多数の生徒のヘイローは、色に違いはあれど、ただの輪っかの形をしている。しかし稀に、輪とは呼べないような────図形だったり、幾何学模様だったり、何かを簡易的に表したようなヘイローの生徒が現れる。

 そして、精神の成長と共に(・・・・・・・・)変化する者も(・・・・・・)────。

 そういった生徒達は、良くも悪くも──そして、どういった形であれ、キヴォトスで名を挙げると、有名になるとされている。

 ヘイローは、その者の神秘、精神などの具現化。異端なヘイローというのは、異端な精神性を表す。所謂「天才」や「超人」と称される者達は得てして

「普通」とは違っているものである。

 キヴォトスの民においては、それが、ヘイローに分かりやすく出ているのだった。

 ────しかし「普通とは違う」とは「少数派」という事であり、イジメや排斥にも多かれ少なかれ繋がりやすい事でもあるのだった。

 

「私のような単なる図形や模様みたいなヘイローはそれなりに見かけますけど──クロノさんみたいな動くヘイローは、レア中のレアですよねぇ……」

 

「ね。有名どころだと、正義実現委員会の委員長、剣先ツルギだよね」

 

「あの人は有名ですね!見た目はシンプルながら、液体のようなものが垂れ落ちてくるという……」

 

「アレも『動くヘイロー』だよね」

 

「間違いなくそうですね!……成程、そうでしたか。クロノさんは『ヘイローイジメ』に……」

 

「鬱憤も溜まるってもんでしょう?」

 

「まぁ正直……理解はできます……」

 

「そりゃー良かった良かった」

 

「でも……他の人に八つ当たりは、ダメですからね!お話だったら私が聞きますから!!」

 

「でもねー。やっぱね、人々の目が私のヘイローに向く度にさ、思い出しちゃうワケ。あの時の事を。お嬢様学校として有名なトリニティなら──って、嫌いな勉強を頑張って入学したのに。トリニティが一番、いっっっっっちばん、酷かった!小中の頃のイジメすら笑ってスルーできるくらいね……!!」

 

「そ、そんなにですか!?」

 

「ええ!陰湿だし気持ち悪いイジメ方よ!『時間が分からないから前を向くな』なんて言ってくる事がザラにあるし『何故アナログ時計なの、パッと見ですぐに時間が分かるようにデジタル表示にしろ』、なんてムチャクチャを言いやがる!!ふざけんな!苗字がたまたま『時計』ってだけで苗字まで絡めてイジメてくるし!ほんっとヤダブッ殺したいよぉ!マジでガチでムカついてきたぁ〜〜〜っ!!」

 

「おっおち、落ち着いてくださいっ!」

 

「フーッ。……フンッ。ま、そんな感じよ。だけど、あんたがそう言うんなら……あんたと会った日にゃ、八つ当たりで自警団ゴッコすんのはやめたげるわ」

 

「!!」

 

「なんか、また助けられちゃったね。ありがとね、レイサ。……なんだっけ?自警団のス────」

 

「自警団のスーパーヒーローッッ!!!宇沢レイサッ!!仲間をも助け出す、正真正銘のヒーローっっ!!!ですっっっ!!!!」

 

「……ははっ。スターから(さっきと)変わってるじゃんよ」

 

「ハーッハッハッハッ!!!」

 

 無邪気に笑うレイサを見て、何故か、シスターに懺悔をしたように、どこか救われたような気がしたクロノであった……。

 

 ◆

 

「もうすぐ夜だっていうのに、ごめんね、ヒナ……。この埋め合わせは必ず……」

 

「私の事はいいから。それより先生、どうしたの?そんな疲れた顔で……大事な話があるって事だけど」

 

「うん、とりあえずだけどハドマ学園関連と言えば分かるかな?」

 

「!!」

 

 ヒナは、如何にも心当たりアリという顔をする。キリッとした、仕事人の顔だ。今すぐ抱き締めて、髪をモッフモッフと弄んで頬をムニムニイジりたい欲求に駆られるが、今は我慢だ、我慢しなくては。頭皮を嗅ぐのも我慢だ、角を舐めたいのも我慢だ。

 

「また、何か起きたの?風の噂で、ルーシィは既に逮捕されたと聞いたけれど」

 

「……脱獄した」

 

「ッ!?」

 

「今は行方知れずさ。引率して、ヴァルキューレに出頭させたんだけど。その次の日に、他の脱獄囚のサポートを受けて脱獄したんだって」

 

「他の脱獄囚ですって?飂熾冘巫髏は、七囚人とも繋がりがあるとでも言うの?」

 

「七囚人じゃないよ。この前脱獄したばかりの──8人目の脱獄囚、賽鬼(さいき)ユウナさ」

 

「私の代わりに副委員長(モルモ)が出撃した、トリニティで行われた総力戦のボスだったかしら」

 

「そう。一匹狼のユウナが誰かと手を組むなんて、絶対に有り得ないハズ──って、サオ、じゃなくてヘルメット団の子が言っていたんだけどね。現に、ユウナがヘルメット団からの誘いを跳ね除けた事が発端で、あの総力戦が発生したんだし……」

 

「飂熾冘巫髏は、ユウナが望む報酬を提示した?」

 

「──だと思うんだ。ただ、私が疑問に思うのは、飂熾冘巫髏よりもヘルメット団の方が規模が大きい組織って事なんだ。これは最近判明した事だけど、飂熾冘巫髏の構成員はハドマだけじゃなくゲヘナ、トリニティ、レッドウィンターにも存在している。幾つもの自治区を跨いで存在してるんだよ。だけどヘルメット団ってさ、それこそキヴォトス全域とも言えるくらいにその辺に居るよね?」

 

「確かにね。飂熾冘巫髏以上に、倒しても倒しても湧いてくるわ。なのにユウナが、そんな弱小組織に手を貸すハズが無い……と」

 

「そう。もっと言うなら、飂熾冘巫髏が用意できる報酬くらいだったら、ヘルメット団に用意できないハズがないんだ」

 

「資金力も段違いだしね。飂熾冘巫髏、戦車すらもロクに保有してないから、万魔殿の戦車隊に危うく全滅させられる所だったって聞くし」

 

「ハハハッ……。だから私としては、どうにかして、ユウナとの繋がりを切れればいいなって思ってる」

 

「それは確かにいいとは思うけど、さっきサラッと流した『各自治区にも構成員が居る』って本当?」

 

「うん。ゲヘナ、トリニティは数百人程度の規模、レッドウィンターは100人前後とか」

 

「数百人規模……風紀委員とどちらが多いかしら」

 

「数は問題じゃないよ。量より質さ。質ならヒナの風紀委員会が上回ってる。大丈夫だよ。もし戦争になっても、ヒナ達なら勝てるさ」

 

「戦争……?」

 

「飂熾冘巫髏、戦争を起こそうとしてるらしくて。しかも、トリニティ、ゲヘナ、レッドウィンターの順で……」

 

「!?──いや、待って。どうして先生がそんなに飂熾冘巫髏の内部事情に詳しいの?」

 

「レイコとアスカ──飂熾冘巫髏の副総長と幹部が組織を脱退して、投降してきた」

 

「ッ……!?レイコって、確か……あの白い髪の?」

 

「ヒナはもうレイコと交戦済みだっけ?」

 

「……久々に負けたわ」

 

「!?」

 

「近接戦も得意らしくてね。不意討ちだったけれど負けは負けよ。アイツは強いわ、かなりね」

 

 七天魔の大半がレイコとルーシィコンビに負けたという話は聞いていた、そしてその大半がレイコの活躍によるものだという事も。

 ヒナが負けるなんてそんな事……。

 

「……ヒナ。力を貸して」

 

「え?」

 

「トリニティが戦争に巻き込まれるとしても、正義実現委員会だけじゃ、到底、戦力として心許ない。だけど、既に正義実現委員会との繋がりがある風紀委員会なら、助太刀に参戦しても不自然は無い」

 

「……見方によっては、飂熾冘巫髏の助力に現れたと受け取られかねないわ。飂熾冘巫髏による万魔殿の転覆は成功し、今も尚、ゲヘナ学園の生徒会長は、ルーシィのままよ」

 

「逮捕されたのに?」

 

「それも私達にとっては噂程度だからね。生徒会長だからと言って、常に万魔殿に居なくてはいけないワケでもないし、逮捕された証拠も無い。そもそもゲヘナの生徒は、自分達の生徒会長が誰だろうとも興味無いのよ。だけど、トリニティは違うでしょ。もし、ルーシィがゲヘナの生徒会を乗っ取った話が向こうで浸透すれば、私達風紀委員会が参戦しても疑われるか参戦を妨害されて終わりよ」

 

「そうか……。風紀委員会と言えど生徒会より立場が下の組織だから……」

 

「そういう事。──その辺、誤解が起きないように先生が間を取り持ってくれるなら──私は、喜んでトリニティに力を貸す」

 

「!!」

 

「だから……お願い。私だって、トリニティだからと見捨てるつもりは無いわ。条約は破談になっても、交流が途絶えたワケじゃない。寧ろ、全てこれからなんだから……」

 

「ヒナ…………ありがとう」

 

「……乗っ取られた形とはいえ、現在の生徒会に背く事になるから……準備は綿密に進めないとね」

 

「そうだね。──正義実現委員会や、他に助力してくれる組織や生徒については、私が間を取り持つ。学園の垣根を越えて飂熾冘巫髏という1つの組織に立ち向かう事になると思うけど……頑張ろう」

 

「了解よ。指揮はお願いね、先生」

 

「勿論。全て終わったらゆっくりデートしようね」

 

「……先生、それ死亡フラグじゃ……」

 

「え」

 

 ◆

 

「や、おはようスズ、ルビー」

 

「はよー」

 

「おはようございます。どうしたんですか、『次の戦いに向けて話したい事がある』なんて……」

 

「他の自治区の風紀委員会的な組織にも話して力を貸してもらえる事になった。ルーシィが起こそうとしている戦争は──3校の実力派の組織によって、食い止める事になる。だからまぁ、とりあえず近い内に顔合わせだけはしようと思ってね。各組織から委員長と副委員長、計6人に加えて、飂熾冘巫髏の事情に詳しいレイコ、あとアスカ。最後に纏め役の私の、合計9人で話し合いを行う事にした。いや、もっと多くなる可能性もあると思ってもらいたい」

 

「「!?」」

 

 戦闘に対する話し合いと、戦争そのものに対する話し合いは枠が別だ。後者の方には各校の生徒会のメンバーも参戦するのだから、人数は増えるはず。

 プチエデン条約みたいにならないかコレ。何だか荒れそうな気配しかしないのだが。

 

「急になったけれど、2人共、明日から数日間は、予定を空けておいてね。ルーシィ──飂熾冘巫髏はいつ動くか分からないから、いつでも動けるよう、備えておかなくちゃ」

 

 私も、いつ来るか分からない宣戦布告に備えて、シャーレの仕事は最速も最速で終わらせなくては。カヤと寝る前のエッチ〜なんてシテる余裕など今の私には無いと思った方がいいだろう。

 

「……うん、わかった。纏め役はお願いね、先生」

 

「分かりました。バイト先の方には、休みの連絡をしておきますね」

 

「ルビー、バイトしてたんだ。知らなかった……」

 

「あ、そうなの?ルビーね、こう見えても──」

 

「先輩。それは、今は関係無いですよね。……先生、それについては追々……」

 

「うん。分かった。じゃあ、2人共、よろしくね」

 

 数的に足りないだろうから、サオリを通して再びヘルメット団の力を借りる事になりそうだ。

 そして向こうにはヘルメット団キラーのユウナが居るのだから、ユウナの引きつけ役としてどうにか頑張ってもらおう。

 サオリの土俵に持ち込む事ができれば、ユウナが相手でもサオリが単騎討伐できそうだが──そんな幻想をブチ壊してくれるのがユウナだ、あまりにもサオリ頼りになるのだけはやめておこう。

 

「……絶対に勝たないとね。次は絶対負けないわ」

 

 そんなスズの呟きに、私とルビーは力強く頷いて答えた。

 そして迎えた、顔合わせの日────。




レイサの事は、モモイやヒフミ、ユカリのような、圧倒的光属性キャラとして書きたいですね。
それはそれとしてモジモジしてたり陰キャボッチのムーブをしてるとそれはそれで愛おしいですけど。
名誉放課後スイーツ部のレイサ、本当に好き。


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第22話:勢揃い

 その日──会議はトリニティ総合学園で、それもティーパーティーが会議等に使用している、中庭の見えるテラスで行われようとしていた────。

 

「………………皆、ちょっと表情が硬いね。もう少し、気を楽ゥ〜にして……ねッ?」

 

 などと言ってみるが効果は無し。そりゃそうだ。こんなメンツで、どう気を楽にできるというのか。

 まずはトリニティ総合学園からツルギ、ハスミ。

 アリウススクワッドからサオリ、ヒヨリ。

 ゲヘナ学園からヒナ、モルモ、カスミ、カヨコ。

 今は併合状態とはいえ一応ここでは別枠として、旧ハドマ学園からスズ、ルビー、レイコ、アスカ。

 本当はミネも連れてくるべきではあるのだろうが話が拗れかねないと判断し、今回は呼んでいない。トリニティやハドマの首脳陣については、今回とはまた別日に機会を設けるとして合意している。

 

「──まず、どうして戦争が起きかねないとかいう状況に陥ったのかを、改めて説明してもらいたい。先日、先生に説明して頂いたものの、やはり組織に属していたというその2人から直接、話を……」

 

「待ってくださいツルギ。それより謝罪が先では?副総長と幹部とやらが組織を裏切ったそうですが、部下であるあなた方が上を止めないからそんな事になるのではないのですか?──というよりも、そのテロ組織を裏切って脱退したからとこれまでの行いなどが許されるとでも思っているのですか?」

 

「ハドマのヤツになら謝るけど、トリニティ相手に謝る義理はないわ。飂熾冘巫髏(ル・シュ・フェル)側として言うけど、まだトリニティに実害は与えてないワケだし」

 

トリニティ(こちら)の生徒も数百人規模でそちらの組織に属していると聞きましたが?」

 

「それって実害?情報が抜かれてる事実があるかも不明だし、なんなら、トリニティに恨みがある子が飂熾冘巫髏に加入してきてるだけだよ?実害云々の話をするなら、そんなに恨まれるような事をしてるトリニティ側に問題があるんじゃない?あの組織が不良の受け皿になってるっつー現状も考えてね?」

 

「まぁまぁ落ち着いて、レイコ。多かれ少なかれ、誰しも不満ってモノはあるよ。トリニティだろうとハドマだろうとゲヘナだろうとそれは変わらない。それにアスカはともかくレイコは謝った方がいい」

 

「はぁ!?なんで先生まで……」

 

「副総長として、これまでルーシィを誰より近くで支えてきたワケだし。それに、トリニティが生徒に不満に感じるコトをしてきたとしても、その生徒がテロ組織に加入するかは別の問題だ。それが原因でこうなってるんだから、組織側として(・・・・・・)発言するなら(・・・・・・)ここは謝っておいた方がいいよ」

 

「ッッ……分かったよ…………ごめんなさい……」

 

「先程の『飂熾冘巫髏側として』という言葉といいまだ組織を裏切ってなさそうな感じがしますがね。まぁ、ここは先生のお顔を立てると考えて、不問にしたいと思いますが」

 

「いちいちそうやって口に出す辺り、不問にしたいなんて微塵も思ってなさそうね」

 

「分かります?その通りです。正直に言いますが、私は、あなたはこの場で話された事を組織とやらに報告するつもりだと睨んでいます。なのでハナから真面目に会議をするつもりはありません」

 

「妄想乙〜」

 

「なっ……」

 

「そりゃあさぁ、私はルーちゃんが好きだけどー?それはそれとして、好きな子の暴走は止めたいって思うのが自然じゃあないのかな?」

 

「……さて、どうだか」

 

「それに?ハスミ、だっけ?『部下であるあなたが上を止めないからそんな事になる』って私に対してイチャモン付けてくれたけどさァ?」

 

「それがどうかしましたか?」

 

テメーも部下のクセに委員長サマの暴走、微塵も止められてねーだろーがよ……なァ〜んてツッコミを入れちゃうのは無粋かなぁ?」

 

「「!?」」

 

「飂熾冘巫髏の諜報員──つってもまぁ2人くらいしか居ないんだけど、それなりに優秀でさ?そこの委員長、剣先ツルギは暴れて建物破壊は当たり前、人質とかにまで精神的ダメージを与えまくる始末。そんなザマで、副委員長のあんたがこの私に説教をカマすつもりかっての。テメーを棚に上げてさァ。ウケるんですけど〜?」

 

「…………」

 

「金持ち学校だしどーせ修繕費とかも生徒会とかに任せっきりで、好き放題に暴れてるんだろーけど。実際に戦果も残してるみたいだし。──だからってこの私に説教タレんじゃねーよ?デカ女(・・・)ァ……!」

 

「────口に気を付けなさい。先生の前だから、敢えて武器を手にしないでいるだけだということ、努々忘れないで頂きたいものですね」

 

「だったら何だよ、アホくさ。先生の前だから猫を被ってるって自白してんのか?自分だって委員長の暴れっぷりを止められてもねークセに、いざそこをツッコミ入れられたら暴力で解決しようとするの?正義実現って……どこが正義だよエゴイストが」

 

 ギロリとキツイ目でハスミを睨み付けるレイコ。ツルギの暴れっぷりを知りながらも止めていない、または止めたい時があっても止められないハスミは返す言葉も無く、ほんの少し視線を外す。

 次いでレイコはツルギを睨みつける。が、対するツルギは真っ直ぐに彼女を見つめ返すのみだった。彼女は自らが戦略兵器的な立ち位置であると誰より理解している。そればかりか、自分がそうする事で事態が解決に向かう事も、理解していた。

 だから、言い返したい言葉は山のようにあるが、それでも唇を真一文字に結んで沈黙を貫き、自分の沈黙を以てレイコへの返答とした。

 

「統治委員会の方がその辺はスマートだよ、周辺に余計な被害とか出さないからね。まぁ飂熾冘巫髏が絡んでる分、検挙率はクッソ低いんだけどね☆」

 

「……やっぱレイコ(あんた)潰す!!」

 

「落ち着いてください先輩ッ、ここで身内同士での喧嘩ほど愚かしい事は無いですよ!」

 

「チッ……!やっぱレイコ(コイツ)が味方になったっての今も信じらんない……!!トリニティに迷惑掛けてんのはハドマが主体の組織なんだから、明らかにこっちの立場が弱いでしょッつーのに……!」

 

「先輩……立場とかそういうの考えられる頭をお持ちだったんですね……今世紀最大の驚きです」

 

「ルビーは私を何だと思ってんのよ!?」

 

「……ハドマの皆さんは見た目通り幼いですね……」

 

「「「あ゙?」」」

 

「抑えろハスミ。外見でイジられたくないお前が、何故同じ事をする。いい加減、抑えろ」

 

「ッ……はい……」

 

「まぁいいや、デカ女(こんなの)に付き合ってる時間がスゴくもったいないね。あのルーシィの事だから、今頃、ドデカイ作戦を立ててるハズだよん。裏をかいて、どうにか戦争勃発を食い止めないとね」

 

 あぁもう、胃が痛い。ツルギが居なかったら既に私の胃袋には大穴が空いていたと思う。というか、どうしてそんなに煽るかなあ。

 レイコがここまでトリニティに対してバチバチに煽るような子だと知ってたらレイコは留守番させて飂熾冘巫髏側からはアスカだけにしていたよ……。

 ヒナも瞑想状態というか。モルモさえどう2人を止めたものかと軽く戸惑っている……。

 

「ハーハッハッハッ!今日はあの糸目お嬢ちゃんは来ていないのか?なぁ先生!呼んでいないのか〜?今からでも呼ぼう、楽しい事になるぞ!」

 

「落ち着いてカスミ……落ち着いて……」

 

「そもそも、どうして先生は温泉開発部の部長など呼んだの?この件には関係無いでしょう?というか指名手配犯なのに風紀委員(わたしたち)の目の前に出てこられる鬼怒川カスミも大概ね。図太い性格してるわ……」

 

「あんなにイジめてやったのにまた暴れるなんて、まぁたお姉さんにエッチなお仕置き、シテほしいのかなぁ〜?カ・ス・ミ・ちゃん♡」

 

「図太い、か!褒め言葉として受け取っておこう、ヒナ委員長!そしてモルモ副委員長、あのお仕置き(・・・・・・)だけは勘弁してくれ!!嫁に行けなくなる!!」

 

 堂々としているように見せかけているが、実際、カスミの足はガクガクと震えている。腕も萌え袖がブレて見えるくらいに震えまくっている。明らかに虚勢を張っているのが分かるからこそ、ヒナも殆ど追求しないのだった。

 

「あっは!だったらもぉ〜っとイジめてやるわ♡」

 

「うん、この件には関係無いけれど、飂熾冘巫髏と戦闘する事になったら、カスミ率いる温泉開発部の協力があった方がコトを進ませやすいと思ってね」

 

「協力……?コイツらの?」

 

「レイコ。飂熾冘巫髏の抱える弱点について簡単に解説をお願い」

 

「あーうん。飂熾冘巫髏って、雑魚なのよ。数だけ多いから、その点で言えば厄介ではあるんだけど、戦車で一網打尽にできるくらいには弱いわ。確か、温泉開発部って、戦車だけじゃなく色んな珍兵器を保有してるわよね?爆発する系だったり、戦車とか改造したヘンテコなヤツとか」

 

「ふむふむ、確かにな!我が温泉開発部の開発は、爆破による掘削などが主な所がある!珍兵器という呼ばれ方は些か癇に障るが、傍から見ればその様に見えてしまうのもさもありなん!」

 

「あと、正義実現委員会も。この辺の組織にしては兵器は充実してるし、武器とかの整備もしっかりとしてるハズよ。ルーシィは、トリニティを壊すのと同時に、それらも全て強奪するつもりのハズだし」

 

「「!!」」

 

「なんせゲヘナ学園の戦車は、万魔殿所有のは私が壊したし、風紀委員会のは万魔殿のイジメによって安めの戦車、しかも台数も少ないでしょ?」

 

「っ!」

 

「確かにマコトちゃん、風紀委員会を嫌ってロクに予算を回してくれないからなー……」

 

「そんでハドマ学園は貧乏だから、戦車なんてのはロクに買えないワケよ。だもんで、飂熾冘巫髏って組織は、戦車との戦闘経験が殆ど皆無なの。戦車は私が相手してきたから私ばっか経験値を積んでる。だから戦車をある程度揃えられれば勝機はあるわ」

 

 強い確信を持ったレイコの言葉に、ハスミすらもゴクリと喉を鳴らした。

 

「──その組織が、戦車を苦手とするといった事は理解した。戦闘時は正義実現委員会(こちら)からも戦車隊も出そう。しかし未だに、トリニティがその組織から攻められるという話に現実味が無い……急すぎる」

 

「それについては同じ気持ちよ。ハドマとゲヘナを併合したら組織の目標達成〜、てな感じだったし。そもそもトリニティを潰したいってのはルーシィが言い出した事じゃなくて、トリニティ部隊の幹部が言い出したのよね。ルーシィは、それに組織の力を使ってやろうって決定しただけで。──とはいえ、組織として見れば総長の暴走に違いないワケだし、本当に困ったもんだわ」

 

「トリニティに在籍するというその幹部についても教えてもらいたいが」

 

「それについては先生、教えたげなよ。もう、捕捉済みなんでしょ?」

 

「うん。ティーパーティーの協力で、トリニティの幹部2人のうち1人──『時計クロノ』は昨日からティーパーティーの監視下にあるみたい。多分まだ監視されてる事はバレてないよ。だけどもう1人がイマイチ発見できないんだよね」

 

「マトイが見つからないってコト?アイツ、いつもクロノと一緒に居るはずだけど。紫髪の白い天使の翼の生徒よ、マジに見つかんないの?」

 

「見つからない。レイコからその子の特徴は事前に聞いてたから、ティーパーティーにも伝えてある。でも……うん。見つからないらしい」

 

「成程。人探しという名目であれば──ツルギ」

 

「ああ。正義実現委員会(こちら)の人員をその幹部の捜索に宛てよう。……そいつの写真か何か、あるか?」

 

「無いわ、申し訳ないけど。外見の特徴で言うと、白い翼に紫髪のポニーテール、白が多めの制服に、金色の眼、それとガーターベルト?っての見えてるハズよ。だけど、キャピキャピしてるっつー感じはしなくて、スゴく物静かな雰囲気の、私くらい背ぇ低い子よ」

 

「……せめて写真があれば探しやすくなるんだが」

 

「しかし、有翼人種が多いトリニティですが、白い翼にガーターベルト、金の眼、紫の髪というだけでかなり絞れますね。一先ずイチカやマシロに指示を出してきます」

 

「接触はさせずに、遠目からの監視を徹底させろ。ただし何か動きを見せたら連絡を。──念の為に、対象を発見したら、スナイパーも何人か監視の方に常駐させておくか……?」

 

「そうしましょう。先生はどう思われますか?」

 

「スナイパーを常駐させるのは良いと思う。でも、何か動きを見せたらすぐに撃つ──ってのはナシ。正義実現委員会の子がマトイに襲われてからとか、後手に回るなら大丈夫だと思う」

 

「……!?な、何故ですか?後手に回る意味が……」

 

「聞いての通り、その相手は敵組織の幹部だ。先にこちらが手を出してしまったら、報復という名目を敵に与える事になるだろう。だから、スナイパーを常駐させるにしても、こちらの攻撃は向こうからの手が回ってからだ。──先生が仰っているのは凡そこのような意図があっての事だ」

 

「な、成程……。彼女達を撒き餌にするようで、些かスッキリしませんが……そもそもが監視目的ですし、その相手が手を出してくるとも限らないですしね」

 

「……警戒は怠るなと、強く伝えておけ。そもそも、まずはその生徒を見付けてからだが……」

 

「ですね。では──」

 

 ハスミが部下への連絡の為に席を外す。しかして彼女を待つ事はせず、その最中も話し合いは進む。

 戦車などの兵器については温泉開発部と正義実現委員会から主に出してもらう事に。風紀委員会やら統治委員会などは歩兵として。

 カスミは、温泉開発部が参戦する事のメリットが無いと論理的な理屈を並べ立てていたが、レイコとヒナが強い口調で強引に言いくるめた。

 

「ったく……。大体、ゲヘナが壊滅したらあなた達が目指す温泉開発もできなくなるんじゃないの?」

 

「創造の前に破壊あり、だよ。ヒナ委員長。もしもその組織がゲヘナを壊滅させたとして我々の有する建築技術も失われるワケではない。──おやおや?寧ろ、向こうに加担し、壊滅させた方が温泉開発が進むのではないか?」

 

「…………」

 

「そう睨むな。現生徒会長殿の組織に歯向かう方が異端だと──無謀だと、そう言いたいだけさ。ただここで力を貸すのは、風紀委員会をはじめ、先生に恩を売る事にも繋がる。ならば理屈抜きで、たとえ異端だろうとも、喜んで力を貸すさ。──それに!邪魔者を消し去ってから悠々と温泉を開発した方が気持ちいいだろうしなぁ!ハーハッハッハァ!!」

 

「温泉開発部って、噂通りの狂人ね。何がそんなに楽しくてそんな事してンのよ……?」

 

「フッ。君には分かるまい、温泉のロマンは……」

 

「分かりたくもないけどね」

 

「ム」

 

 カスミは人心掌握術に長けている。飂熾冘巫髏の構成員をこちら側の陣営に引き込む事も、きっと、できなくはないだろう。

 そのように伝えると、含みのある笑みを浮かべ、私の案を快諾してくれた。

 

 ◆

 

「──で、流石に多少は街中に侵入とかもしてくるだろうから、そこをアリウススクワッドや便利屋に叩いてもらって、中枢に入り込まれないよう──」

 

 それにしてもヒヨリが静かだ。いつも通りなら、積極的に発言はしないだろうがネガティブな発言を連発しそうなものだが……それが全く無い。

 カヤ、シュロからネガティブ発言についてかなりキレられたから、もしそれを意識して癖を治そうとしているのなら良い傾向だ。褒めてあげたい。

 ただ、それにしては様子が変だ。ただ黙っているワケではなく、サオリの陰に隠れ、何故かビクビクしているように見える……。

 私からの視線に気付いたらしいサオリは軽く私に目配せ。私の代わりにヒヨリにツッコんでくれた。

 

「ヒヨリ。さっきから何をそんなに震えている?」

 

「はぅっ!?そそ、そんなに震えてましたか……?」

 

「真冬の屋外で寝ている時のように震えていた」

 

「えへ、えへへ、し、仕方ないですよね、だって、ここ、こんな所に、有名人の方が……えへへ、もう、ずっとニヤケ顔が止まらなくて……えへへへへ……」

 

「……?ゲヘナの風紀委員長か?」

 

「違いますよぉっ!確かに風紀委員長さんも有名人ですが、そうじゃなくて!私がよく読んでる雑誌によく載ってる、モデルの零得ルビーちゃんです!」

 

 スズ、ルビーは平然としている。しかしそれ以外全員の目がルビーに向けられた。ルビーがモデル?どういう事だ、同姓同名では──と思ったが本人は特に否定しないし平然としているし何が何やらだ。

 

「モデル……って、どういう事?」

 

「読モですね。バイトでやってまして」

 

「あ……バイトってそういう……」

 

「『近接戦闘系、格闘系ロリータ吸血鬼モデル』と銘打って大手雑誌『MyanMyan』などでモデル活動してるんですよねぇ!」

 

「そ!『ハドマイチカワイイ吸血鬼』っつーことで統治委員会からも公認で強く推してんのっ!雑誌の出版社が外部スポンサーになってくれてるから活動資金の確保にも繋がるし」

 

「私、ずっとずーっと前からルビーちゃんのファンなんですっ!まさか、先生にお呼ばれして来てみた作戦会議にルビーちゃんが居るだなんて、そんなの僥倖どころの話じゃないですよぉ!こ、この会議が終わったらルビーちゃんのサインください、それと私とのツーショット、先生とのスリーショットと、もし良かったら連絡先も……!!」

 

 多い多い、欲張り過ぎだ。サオリは固まってるしスズはドン引きしてる、ハスミは汚物を見るような目でヒヨリを見ているし、ツルギは──ツルギは、どんな感情の顔だろうか。なんとも形容し難い顔でルビーを凝視している。

 

「あまり返信できませんが、それでもいいですか?副委員長としての仕事が山積みなものでして……」

 

(嘘つけ、あんた私より仕事早いでしょーが)

 

「ひゃいいいいいっ!それでもいいので、是非ともお願いしますううぅぅ!!」

 

「ふふっ……。まさかこんな所でファンの方にお会い出来るなんて……嬉しいですっ♡」

 

「ひぃぃああぁぁあああ〜〜〜っっ!!?な、生の

『悪魔の天使スマイル』ぅぅうううっ!!」

 

「……ただのファンサなので悪しからず」

 

「あああああああああっっ!!!生きてて良かったですうぅっ!うわあぁぁぁん!!一生ルビーちゃん推し続けましゅううううっっ!!」

 

 す、スゴイ。人生を悲観してばかりのヒヨリに、ここまで言わせてしまうのか。モデル活動しているルビー……ヤバいな、気になってきた。

 ヒヨリの発言から察するに、本名で活動しているようだから、雑誌名からも探れるだろう。

 

「──あれっ?ルビーちゃんって、確か『来月号はチョットお休み!』……なんですよねっ……?」

 

「ええ」

 

「もしかして…………この、ルシュフェルとかいう、テロ組織のせいですか……?」

 

「言ってしまえば、そうなりますね。統治委員会の副委員長として、我がハドマ学園の恥を雪ぐ必要があります。……それでも力が及ばないので、こうして皆様に助力をお願いしていますけれど……」

 

「──許せない。そんなの許せないです!私達からルビーちゃんを奪うだなんて!ルシュフェルさんは潰さないといけないです、早めに潰さないと撮影や印刷に間に合わないんですよねっ?それなら今すぐ敵の本拠地に乗り込んで殲滅戦しませんか?サオリ姉さん率いる私達ならイケますよね、ねぇ先生っ!先生が指揮してくださったら、ただのテロ組織如き私達アリウススクワッドの敵じゃ──」

 

「落ち着けヒヨリ。飛躍し過ぎだ」

 

「はうっ……」

 

「折角ここまで──ゲヘナもトリニティも関係なく協力しようと話が出ているのに、私達がまたそれを乱すような真似をするのは良くない」

 

「で……でも……それだとルビーちゃんの撮影が……」

 

「来月はお休みだと雑誌で告知されてるのだろう?多少の不満はあれど……納得するさ」

 

「納得できませんっ!!ルシュフェルのせいだって知っちゃったら!だったらそいつら潰そうって!!私だけじゃないですリーダー!皆が知ったら、皆がこうなりますよぉ!だってルビーちゃんっ、愛されキャラですしっ……支持する人も多いですし……っ」

 

 確かに、理由はどうあれ、敵戦力が1ヶ所に集中していない今であれば、奇襲をしかけ一網打尽にもできるかもしれない……。ただ、そうするには、まだ情報が足りなさすぎる。

 

「アホくさ。何それ意味不明。カワイさなんかより強さでしょ。同じ吸血鬼として軽蔑するわ」

 

「レイコも良いところ行くと思いますよ」

 

「は?」

 

「そーそー!カワイさも自信持ちなよ、モル姉から見てもレイコは可愛いぞっ♪」

 

「う、うっさいなぁ!カワイかったらどーなのよ、それで稼げるの!?それで生きていけんの!?」

 

「まぁ私はそれを生業にできてますし」

 

「統治委員会でしょあんた!」

 

「副業ですね」

 

「いや逆ゥ!学生の本分は勉強に部活とか、それと委員会活動よ!」

 

「……意外に真面目なんですね」

 

「フツーよ、フツー!あんたがおかしいだけ!」

 

「いやいや、レイコは真面目なのよこう見えても。吸血鬼の技能とかを私が指導してるときだって反復練習したり分からない事は聞いてきて。それがまぁホンットに可愛くて♡」

 

「あああああもうっ、あんま余計な事言わないでよモル姉!ブッ飛ばすよ!?」

 

「やーん、助けてヒナちゃーん♡ 」

 

「はぁ……」

 

 こうして話は進み──私の有する人工天使擬人化シリーズ4姉妹も動員するという話にもなりつつ、作戦が練り上げられていく。

 しかしそれでも、副総長であったレイコの有する情報を交えても敵戦力については不明な事が未だに多く、飂熾冘巫髏が「正体不明」を守り続けていた事実が大きな障壁となっていた。

 

「まさかゲヘナの私達がトリニティを守る事になる日が来るとはね。人生って、本当に分からないね」

 

「……そうだね。カヨコとしては……どうなの?」

 

「どうって……トリニティとの確執、とか?」

 

「……うん」

 

「別に私は、なんともないよ。大丈夫。先生が私達便利屋の力を必要としているのなら、社長も皆も、喜んで力を貸すからさ。もう皆とは話もつけてるし何も問題は無いよ。……だから、気にしないで」

 

「……ありがとう」

 

「それより先生は、私や便利屋より……モルモさんとハドマのことを気にかけた方がいいと思う」

 

「えっ?」

 

「明らかにあのレイコ以外のハドマの生徒との間に壁がある。正義実現委員会とも凄くフランクなのに逆に身内(ゲヘナ)に近いハズのハドマとは……」

 

「……思う所があるのは、仕方ないさ」

 

「そだね……」

 

 復讐を果たしたと思っていたら、実はその後輩がお隣の自治区に逃げ延びていて、更には別の組織を立ち上げ、学校の頂点に君臨していた────。

 モルモの視点から見たら、こうなる。モルモからすれば、自分の復讐は果たせていなかったと思ってしまっても仕方ない流れだ。

 そんな時──復讐心に身を委ねた過去を持つ子はどのように考え、どのように行動するのだろうか。

 

「……モルモ、ちょっといい?話があるんだけど」

 

「ん?……うん、いーよ?」

 

 一旦会議を抜け出し部屋を離れ2人きりになる。エッチな事でもするのかな?──とでも思っていたらしいモルモは胸元のボタンを外すが、雰囲気からそうではないと感じたらしく、ボタンを留めた。

 

「……それで?話って、なぁに?」

 

「旧ハドマ学園の生徒会……失楽園について」

 

「!」

 

「モルモの復讐相手は失楽殿で、それは果たされたハズだ。……そうだよね?」

 

「……そーよ?」

 

「その後輩が立ち上げた失楽園は……復讐対象?」

 

「……さぁね。私、思い立ったら徹底的にヤるタイプだからさァ。復讐前は殺すヤツをリスト化したの。失楽殿の構成員達は私がこの手で皆殺しにしたわ、ヘイローが砕けるまで撃ち込んでね。だから、私の復讐はあの時、名実共に終わってんのよ」

 

「信じて……いいんだね?」

 

「さぁね?好きにすればいいんじゃなぁい?特に、信じてほしいとも思ってないけれど。──でもま、リストに載ってない『後輩』が居たんだなー、とは思ったわ、正直に言えばね」

 

「!!」

 

「でもハドマに逃げ延びたヤツはとうに卒業済み。結局『後輩』なんてのは、学校が残ってる限り続く枠組みでしかない。だから『後輩』相手に復讐するなんてのは、バカのする事よね。──だけど生憎、モルモちゃんはバカじゃないのよ。終わったものは終わった、蒸し返さないし再燃したりもしないわ」

 

「モルモ……」

 

「心配……してくれたんでしょ?私がまた、人殺しに手を染めるんじゃないかって」

 

「っ!」

 

「復讐はイイわ、最高よ。気分が晴れるんだもの。だけどもう、私の復讐対象は居ない。復讐心を抱く理由も無いわ。だから……安心してよ、先生?」

 

「……それが聞けて安心したよ。私も賛成派ではあるけれど、今この状況でするべき事ではないからね」

 

「それもそーよね。ま、そんな事より、あのバカを止めなきゃねぇ。ったく、ルーシィってば、どこで道を踏み外したんだか……」

 

 モルモの意思を確認できたあとは、揃って会議に戻り、敵に対してどのように対処するかの流れを、おおよそだが決めていくことに。

 しかしそんな会議の中でも、依然としてクロノの友人だというマトイの位置は掴めず、捜索は続けるとして一旦お開きに。

 他の自治区の幹部は4人。せめて4人の位置さえ掴めれば具体的な作戦の立てようもあるのだが今はそれさえ満足にできない。

 しかし、会議をお開きにした直後────。

 

「……アコから連絡が来た。ゲヘナ学園生徒会改め、飂熾冘巫髏が、モモッターで宣戦布告したそうよ」

 

「なっ!」

 

「バカな!」

 

「キヴォトス全域に!?」

 

「見られるの前提で!?」

 

「それで。その組織とやらは何と言ってるんだ?」

 

「…………見ての通りよ」

【挿絵表示】

 

「……『魔を祓う』だと?ふざけているな……」

 

「ルーシィのヤツ……ッ!!」

 

「敵からしたら私達が『魔』ですって。呆れたわ」

 

「ハスミ」

 

「はい。イチカからナギサ様へ連絡させます」

 

「ねぇ、先生。レッドウィンターの方の生徒会とも連携は取れないの?」

 

「チェリノだけど大丈夫?」

 

「ごめん、聞かなかった事にして」

 

 流石にチェリノ、マリナ、トモエは頼れないにも程がある。生徒会としてレッドウィンターほど私が頼りにできない学校も無い。ミノリの方が幾分かはマシかもしれない──それは無いか。

 

「────決戦は、2月3日。各自、そのつもりで備えよう。私も作戦は考えとく。ハドマ、ゲヘナ、トリニティ──それとレッドウィンター。これ以上他自治区を巻き込んで大変な事になる前に、全部、私達の手で終わらせよう」




ルーシィ登場時に「ハロハロ〜」言わせたらまさかブルアカ本家で「はろはろ〜」出てきて、腹抱えて笑ったんですよね。
似たような発想なのかもしれねぇ……。

次回更新は2月3日0時。


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第23話:開戦

 

 2月2日深夜────ハドマ自治区、飂熾冘巫髏(ル・シュ・フェル)本拠地にて。

 

「明日で全て終わらせる。トリニティを……潰す」

 

「そんなの、ルーちゃんの真意じゃないクセに〜。クロノが言ったくらいで本当に戦争仕掛けるの?」

 

「……何が言いたいの?ライム?」

 

「べっつにィ?ただ、レイコとアスカに逃げられたストレスを、わざわざトリニティにぶつけるつもりなんじゃないかな〜……ってさ?予定まで早めてさ、わざわざ宣戦布告なんてしてさ。元々の予定じゃ、トリニティ部隊を内部で暴れさせるのがスタートの合図だったのにィ……」

 

「そんなんじゃないッ!!」

 

「っ!」

 

 ライムに図星を突かれ、ルーシィは反射的に机を叩いてしまう。ビクリと肩を震わせるライムだが、ルーシィのこの反応こそが言葉とは裏腹にライムの言葉が是であると認めている事に気付き、心の中でほくそ笑む。

 

「そっかそっかぁ、ごめんね?それじゃあどうしてトリニティを攻める予定を早めたのかな?」

 

「別に。クロノが言い出したから、ただそれだけ。それに、別にレイコが居たって予定は早めてたよ、節分にかこつけて宣戦布告するつもりだったし!」

 

「あらそぉ?余計な事言っちゃってゴメンね?」

 

「……明日で、トリニティ潰すわよ」

 

「んー、大丈夫かなぁ。サツキ、だっけ。万魔殿のヤツもトリニティの内部の重要そうな情報とか何も持ってなかったのよねー。アガリちゃんには潜入も任せにくいから、今回の前情報はクロノとマトイの報告から得られた情報だけ。本当に大丈夫なの?」

 

「智略で攻められないなら物量で押すまでよ」

 

「トリニティの正義実現委員会と、それとハドマの統治委員会は連携しそうね」

 

「ゲヘナの風紀委員会も来るかもね。トリニティの正義実現委員会と、ゲヘナ学園内で合同で演習した記録が万魔殿にあったわ」

 

「マジでぇ!?なんとかハスミだっけ?副委員長のそいつ、ゲヘナ嫌いで有名らしいじゃん!なのに、ゲヘナに来てゲヘナ相手に演習したの!?それとも暴れる前提だったとか……?」

 

「そんな記録は無かったけど、仲は良さそうだったそうよ。マコトは、両委員会の繋がりを警戒しつつあったらしいわ」

 

「!……成程ねェ。勝算はあるの?」

 

「レッドウィンター部隊を2つに分ける。ヤツらが学園からかっぱらった戦車があるの。敵の戦車は、レッドウィンター部隊に処理させましょう。私達は悠々と攻めるのみよ」

 

「りょーかいっ♪」

 

「さ〜て……そろそろ進軍()きますか、と」

 

 ◆

 

 2月2日深夜、トリニティ総合学園────正義実現委員会の会議室にて。

 数時間後に始まるであろう戦いに備えて、会議を終えた委員達が身体を休める中、委員長のツルギは会議室に残り、椅子に腰掛け物思いに耽っていた。

 そんな所に、ツルギを探しに副委員長のハスミがやってきた。

 

「っ!ツルギ……こんな所に居ましたか。とうに消灯時間を過ぎていますよ」

 

「ハスミ」

 

「はい?」

 

「飂熾冘巫髏の宣戦布告──アレを見てどう思う」

 

「どう思う、とは?他所様に喧嘩をふっかけるのが好きな連中なのかな、とか……?」

 

「違う。明日、2月3日のいつ攻めてくるのか──そこが不明瞭で気になっていた。確か飂熾冘巫髏は前にも宣戦布告をしていたそうだ、ハドマ学園内で内ゲバをヤッていた頃にな」

 

「ああ、確か、博愛レイコが針村ルーシィの指示で生徒会室?に書き残したというアレですか?先生が写真で見せてくれた……」

 

「そうだ。あちらにはおよその時間指定があった。だが今回は時間指定が無かったな。そこが、どこか引っ掛かったんだ」

 

「考え過ぎではないですか?前回より大規模ですし前回通りにはいかないと相手さんも分かっていると思います。ましてや今回は3学園が合同で迎え撃つ手筈になってます。敵もそこを警戒しているのだと思いますよ」

 

「ハスミならどうする?」

 

「え」

 

「敵が大人数になると分かっていて、それでも正面戦闘を仕掛けるか?」

 

「────ッ!!」

 

「私ならそうしない。まして飂熾冘巫髏は対戦車が苦手だと自覚しているらしい。しかしこちらには、その戦車が多数存在している。自らの弱点であると自覚していながら、正面から突っ込んでくるとは、到底思えなくてな」

 

「……つまり、敵は奇襲を仕掛けてくる、と?」

 

「……憶測に過ぎないがな」

 

「しかし、奇襲を仕掛けるつもりなら、嘘の時間を指定した方が効果を発揮するのでは?敵の警戒心が高まる時間を敢えて設定すれば、それ以外の時間に奇襲を仕掛けやすくなると思いますし」

 

「そうも考えた。だから、24時間警戒は私がする。私個人の考え、まして憶測の段階で、休ませるべき部下達を動かすワケにはいかないからな。杞憂ならそれでいいし、もしこれが現実となれば私が足止めしている間に部下達を起こしに走れ」

 

「……本来なら、憶測だろうとも委員会全体で警戒はしておくべきでしょう。交代で寝るなど、それこそやりようはあるじゃないですか」

 

「……そうだな。せめて、もう少し早くハスミ達には相談しておくべきだったかもしれない。すまない」

 

「いえ。──おいそれと予想を口にできなくなる程この問題は大きい問題ですし気持ちはわかります。でも、抱え込まないでくださいね」

 

「ああ……そうする」

 

 ハスミの淹れたハーブティーでホッと一息つく。ハスミも彼女の向かいに座ると、同じものを飲む。ツルギの刺々しい雰囲気も、紅茶を飲む毎に段々と落ち着いていく。

 

「ナギサ様の取り計らいで明日は臨時休校だから、24時間警戒できるが──。先程の委員会の会議でも伝えたが、お前達も食事と排泄以外などでは決して持ち場から離れるな、持ち場の警戒に努めるんだ」

 

「それはもちろんです」

 

 当然の事のように答えながら、ハスミもハスミで色々と考えていた。妙だ、と。ツルギの言う通り、前回の宣戦布告とまるで違うやり方と指摘されて、今更ながらに不安が募りつつあった。

 

(2月3日──時間の指定が無い?いいや、違う。そもそも、時間指定する(・・・・・・)必要が無いから(・・・・・・・)……?)

 

「……ハスミ?」

 

「最悪の可能性を考えていました。連中はこの後、日付が変わると同時に────2月3日深夜0時に開戦するつもりなのでは……と」

 

「ッ!!」

 

「時間指定が無いのは、そもそもその必要が無いと判断したから。日付のみ指定されているのは日付が変わると同時に開戦だから……なんて事は、まさか、無いでしょうけれど……」

 

「────今は……23時57分か。……ハスミ」

 

「皆を起こしてきます!」

 

「緊急招集だ、0時に間に合わせろ!!」

 

 ハスミに任せるだけでなく自分も部下を起こしに行こうとはしたが、部下は信頼できるハスミに任せ自分はとにかく警戒を強める事を優先した。

 冷たい風が入ってくるのも構わず窓を開け、外の音を耳に取り込む。消灯時間ともなれば、不良生徒以外に外を出歩く者など、トリニティには居ない。

 ナギサとセイアは2月2日の会議後にセーフティハウスに移動済みなので、正義実現委員会は学校や自治区の保護にのみ集中できる──ハズだった。

 

「……そこの植木に隠れてる奴。出てこい」

 

 会議室の窓からそう遠くない植え込みに、窓から声を掛けるツルギ。呼び掛けから少しの間を置いて2人の少女がニョキッと顔を出した。

 そこに居たのは飂熾冘巫髏トリニティ部隊幹部、クロノとマトイであった。

 

(アイツは確か────時計クロノ、桜庭マトイ!何故こんな所に……?クロノへのティーパーティーの見張りはどうした!?)

 

「あっれぇ……アッサリとバレてない?」

 

「だから言ったじゃないですか、明かりが点いてるから別の所から攻めようって……はぁ」

 

「戦争前夜ともなれば警戒も高まる、か。はぁ……。気分が盛り上がり過ぎて、我慢できなかったよ」

 

 ヘラヘラするクロノ、それを見て呆れるマトイ。2人のやり取りを聞いている内に、ツルギは段々と嫌な予感が現実となった事に気が付きつつあった。

 そして腕時計を確認した2人は────。

 

「始まるね……!」

 

「ええ。最初で最後の殲滅大決戦(アポカリプス)

 

「「始まりは正義実現委員会本部(この場所)から──!」」

 

 銃を構えてツルギに向ける2人。それを見るや、ツルギは窓を飛び越えて外に出るなり、整備された2丁のショットガンをそれぞれに向ける。

 

「まずは剣先ツルギ!あんたを撃ち抜いて、戦争の開始の合図としてやるわ!!」

 

「……」

 

「そうはさせませんよ」

 

「「ッ!?」」

 

 2人を囲むように現れた正義実現委員会の面々。ネズミ1匹すら逃がさない、という気迫を感じる。

 彼女達を率いているのはハスミ、そしてイチカ。見覚えしかない面々の登場に、クロノは舌打ちし、マトイは小さく溜め息をついた。

 飂熾冘巫髏からはクロノとマトイの幹部2人しかこの場には居ない。初手から幹部を完封できるのは大きい、この場の誰しもがそう感じ取っていた。

 

「既に、複数人のスナイパーも待機させています。あなた方の動きは丸見え……大人しく投降なさい」

 

「スナイパー、ね。つーことは、静山マシロとかも居んのかな?アイツ、1年のクセに凄腕らしいね」

 

「……クロノ、時間ですよ」

 

「おっと。んじゃ、コイツぶっぱなしますかぁ!」

 

 ツルギに向けている自前の固有武器とは別の物をポケットから取り出す。それは信号弾が込められた連絡用の小銃──それを天に向けたクロノは口頭でカウントダウンを開始する。

 

「3、2、1────!!」

 

 グッと引き金を握る指に力が籠る。クロノにより引き金が引かれるその瞬間、バキャッと音を立てて小銃が粉々に砕け散った。合図など送らせまいと、高所からマシロが撃ち抜いたからだった。

 

「え」

 

「……はぁ。こうなると思いました」

 

「今です、確保ッ!!」

 

 ハスミの合図で彼女の部下達が飛び出して2人をたちどころに拘束してしまった。あまりに呆気なく拘束されるのでツルギもハスミも警戒していたが、しかし……。

 

「あーあ、捕まっちゃった!」

 

「……」

 

 マトイは沈黙を貫き、クロノは堂々としている。というかあっけらかんとしている。捕まった事などどうでもいいと言わんばかりに。

 

「……全く、なんでこんな事をしたのか。あなた方と同じトリニティ生として、恥ずかしい限りです」

 

「あぁ?恥ずかしい(・・・・・)!?アッハ!正義を謳うクズのクセに、それ以上に恥ずかしい事があんのかよ!?ウケるんですけどぉ!?」

 

「何を……」

 

「どうして私が去年、補習授業部行きになったのか教えてやろーか?テメーら正実(せいじつ)が使えねーからだ!カスだからだ!!私へのイジメを見て見ぬふりするクズの集団がよ!そんなザマで、何が『正義』だ!寝ぼけたこと抜かしてんじゃねーよ、ダボが!!」

 

「……イジメと補習授業部に、何の関係が?」

 

「そんな事も分かんねーのかよ副委員長サマはよ!脳ミソの代わりに綿菓子でも詰まってンのかッ!?イジメられたら不登校、成績ダウン、留年の危機!その程度の想像もできないから、同じ学園のヤツが他校のテロ集団に加担してるのに気付けないんだ!バカばっかなんだよッ、どいつもこいつもッ!!」

 

「それとこれとは話が別……」

 

「トリニティなんかなぁッ!お嬢様ぶったクズ女、カス女ばっかりなんだよッ!!学校と一緒にここで一生おねんねしてなッ!!アハハハハハァッ!!」

 

 ひとしきり怒鳴り散らしたクロノは、肩で大きく息をして咳払いなどする。ハスミは部下に「連れて行きなさい」と指示するがツルギがそれを制する。

 

「時計クロノ──だったな」

 

「あぁん?カス共のボスが何か用ですかァ?」

 

「どうして私を頼らなかった」

 

「……あ?」

 

「イジメを見て見ぬふりをする者は、確かにどこの学校にも居るだろう。頼る者も見つけられず助けも求められず、自暴自棄になってしまったからお前はテロ組織なんぞに加担したんだろう」

 

「だったら何だってんだよ!」

 

「私が居るじゃないか。トリニティには、正義実現委員会が、私が居るじゃないか。身近な者に助けを求められない事もあるだろう。しかし、それなら、ほんの少し先に手を伸ばせ。そこには必ず、お前を助けられる何者かが居たハズだ」

 

「ッ……!」

 

「確かに、私達は、お前へのイジメに気付くことができなかった。それについては、私達の甘さとしてお前の言葉を甘んじて受け取ろう。────だが、こうしてヤケを起こす前に、お前にも何か、他にもできることがあったんじゃないか……?」

 

「……イジメられた事もないアンタに何が分かんの。アンタみたいなのイジメるヤツなんか居ないよね。そんなヤツには、追い詰められた私の気持ちなんか1ミリも理解できやしないだろーさ」

 

「ああ、全く理解できないな。私はイジメる者ほど弱くないしイジメられる者ほど弱くもない。常に、私は私だからだ。陰で誰に何を言われようと、何と思われようと、私には関係のない事だ」

 

「……そーね。私は弱いわ。だからこうやって学園やアンタら正実(せいじつ)に八つ当たりしてんだから」

 

 ハッキリ「八つ当たり」と言い切ると、項垂れ、黙り込んでしまった。ツルギもこれ以上かける言葉など無いと言わんばかりにクロノから目を逸らす。

 

「戦争を未然に防ぐ。お前達の仲間はどこだ?」

 

「……もうすぐ、ここに来るわ」

 

「何……?」

 

「私に合図を送らせなきゃ戦争は始まらないなんて思ってたんなら悪かったわねェ!!私達じゃ合図が送れない状況になった、この状況自体が(・・・・・・・)!仲間への合図になってるんだよ!!」

 

 その瞬間、正門の方から爆発音が聞こえてくる。パチパチと木が燃える音、炸裂音、そして笑い声や戦車を運転するような機械の駆動音が爆風に乗ってやってきた。

 

「はっ……!あはははははははははっ!!始まった!始まったよ、トリニティの崩壊が!あはははっ!!ド派手にヤッてくれるじゃん、マフユ!!いや──レッドウィンター部隊!!」

 

「寒崎マフユの通り名は『寒空の悪魔』……。まさにゲヘナ的なやり方です……レッドウィンター生なのにやり方がゲヘナなんですよね」

 

 拘束されながらも2人は嬉しそうだ。ハスミは、そんな2人に軽蔑の視線をくれてやる。ツルギは、これ以上はもう何も言うまいと部下に指示を出す。

 

「──正門の方か。お前達、拘束した2人を、牢に閉じ込めておけ。終わり次第、私達に合流しろ」

 

「くれぐれも閉じ込めるまで油断はしないように」

 

「先に行ってるっすよ〜、お2人も気を付けて!」

 

「「は、はいっ!!」」

 

 部下2人にクロノとマトイを任せ、ツルギ率いる正義実現委員会の面々は正門方面へと移動を開始。先輩に任されたので、より気合を入れて飂熾冘巫髏幹部の護送という任務を遂行しようと意気込む。

 クロノとマトイがどれだけ暴れようとも、2人を拘束する縄は解けやしなかった。

 

「っ……ッ…!!」

 

「くっ、そ……解けない……!」

 

「絶対に逃げられませんよ!」

 

「大人しくしてください!」

 

「……ちぇっ。モブのクセに……!」

 

「私達も似たようなものですよ」

 

「違うし!私達は飂熾冘巫髏の幹部だし!」

 

「捨て駒同然のね……」

 

「……ケッ!」

 

 騒ぎを聞き付け、眠そうに目を擦りながら4人の元にある人物がやってくる。自称自警団のスーパーヒーロー……宇沢レイサであった。

 

「ワーワー騒ぐ声が聞こえたので来てみればっ!!敵を捕まえたんですか!?お疲れ様ですッ!!!」

 

「「お、お疲れ様、です……?」」

 

「捕まえた敵の護送ですねッ!?自警団のスーパースターこと宇沢レイサが!!護衛しましょうッ!!私が来たからにはもう逃げられませんよ、テロ組織ルシフェルさん!!」

 

「地味に違うけど、まぁいいや、それで」

 

「……うんっ?その声、私のお友達に似てますねぇ。あ、お友達というのはですね、私と同じ自警団に、時計クロノというお友達が居て………………えっ?」

 

 正義実現委員会に護送されている2人の内1人がその「お友達」であると気が付いたレイサは、一瞬言葉を失った。全ての思考が停止し、手足の動きも失われてしまった。

 彼女からはもう驚きの文字しか出てこなかった。そんなレイサに、今度はクロノから声を掛ける。

 

「何驚いてんのよ。本人よ、私本人」

 

「な……う…………えっ……?クロノ、さん……?」

 

「そんなに驚くことかしらね?自警団やってんのも八つ当たりだって言ったでしょ?モロにテロ組織に入るような奴の思考でしょうよ、そんなの」

 

「え……?だ、だって、クロノさん、は、自警団で、私の、お友達、で……テロ組織は、敵、で……?」

 

「フン。分かんないようだから、教えてあげるわ。私はあんたの敵だよ────宇沢レイサ」

 

「ッッ!?!?」

 

 口元に手を当てて後ずさる。有り得ない物を見るような目でクロノを見て、そして────。

 

「……私を撃つ気?拘束された私を?」

 

「こ……これは、決別の、意思表示、ですっ!私は、あなたとお友達になれたと思ってました!だけど、それは間違ってた!あなたはテロ組織の人だった!テロ組織は、私の敵で!トリニティの敵です!!」

 

「……」

 

「起きてたら暴れると思うので!あなたを大人しくさせる為に敢えて撃ちます!!そしてあなたと決別します!!今、ここで!!」

 

「……イイじゃん。やってみなよ」

 

 フン、と鼻で笑うクロノ。それを見て、レイサの目から溢れる涙は加速する。遂には鼻水まで垂れて端正な彼女の顔がぐちゃぐちゃになってしまった。

 友達だと思っていたクロノが学園を破壊しようと目論む敵だった。それだけで、レイサにとっては、怒りなんかよりも悲しみに値する現実であった。

 

「ッそして!捕まって、罪を償って!テロ組織の人じゃなくなって!!綺麗さっぱり、改心したら!!また私とっ、お友達になってくださいっっ!!!」

 

「……!?け、決別するんじゃなかったの……?」

 

「はい!!悪いクロノさんとここで決別します!!でも絶交はしません!!将来のお友達なので!!」

 

「あんたってヤツは……バカだね……」

 

「はい!!バカです!!それでも、私は!お友達は絶対に大事にするんですッッ!!またいつか、改心したら、お友達になりましょう!また食べ歩きしてスイーツとか色々食べましょうねッ!!お隣の人も一緒に行きましょう!!」

 

 ついでとばかりにマトイにも声を掛けたレイサは2人に向けて銃を乱射。マトイはすぐにダウンし、気を張っていたクロノもまた……。

 

「……本当の正義はあんただけだよ…………レイサ」

 

 そう弱々しく微笑んで見せ、その言葉を最後に、レイサの弾によってクロノは気絶してしまった。

 

「ッ……ううぅ……うわぁぁぁぁん……」

 

 自ら友を手に掛けたレイサは、その場に座り込み泣き出してしまった。クロノとマトイを運ぶべく、2人を任された正実モブちゃん2人は、泣き出したレイサを前にして、ただただオロオロするばかり。

 レイサの涙が収まるまで正実2人は彼女を優しく慰め、それから、クロノ達を牢へと収監し、現場に向かう事にした。

 

 ◆

 

「合図が上がらないという事は──お疲れ様です、クロノさん、マトイさん。後は、任せてください」

 

「新参の私がトリニティ部隊まで率いていいの……?後で後ろから刺されたりしない?」

 

「問題ありません。レティさんが本気を出せる夜の間に、全て終わらせましょう。クロノさん達は幹部だからこその囮になってくれたんです。あの2人が学園生活を賭して作ってくれたこの機会、みすみす逃すワケにはいきません」

 

 レッドウィンター部隊の戦車隊を指揮して学園を砲撃しながら、幹部の寒崎マフユと古谷レティは、ほのぼのとした口調で言葉を重ねる。

 マフユは、俗に言う「ほわほわ」した外見の女子生徒だ。雰囲気だけなら、知識解放戦線のモミジに近いと言える。けれどもその中身は、目的の為なら手段を選ばない性根の持ち主。

 生まれも育ちもレッドウィンター、しかしてその精神性は、ゲヘナの悪魔そのもの。そこから付いたマフユの通り名が「寒空の悪魔」であった。

 

「──しっかし、あなたもよく考えるね。まさか、レッドウィンター自治区からトリニティの正門まで戦車が通れる大坑道を掘ってくるなんて……」

 

「地上は監視カメラが、人の目が、スナイパーやらセンサーやらの目がありますから。──となれば、新しく作るしかないでしょう?新たな道を……」

 

「無ければ作る、か。まさにレッドウィンターって感じするね。工務部だっけ?」

 

「はい、去年は工務部でした」

 

 その時、彼方から猛スピードで迫る1つの赤黒い人影を発見。戦車隊を指揮し砲撃を浴びせかけるも幽霊でも攻撃しているかのようにその謎の人影には掠りもしない。

 

「ケヒャヒャヒャヒャアァアアーーーーッ!!!」

 

「「「「ギャーーーッ!?」」」」

 

 レッドウィンター部隊の戦車隊、あっという間に壊滅の危機に追い込まれてしまう。歩兵達が襲うも次々と投げ飛ばされ、潰されるようにたった1人に蹂躙されていく……。

 

「お前達……飂熾冘巫髏、だなァ……?」

 

 ──0時9分、正義実現委員会が正門に現着。

 誰より早くやってきたのは委員長、剣先ツルギ。戦車隊を蹴散らし、戦車に付き従う歩兵を蹴散らしマフユとレティへ続く道を自ら切り拓く。

 

「ひぃっ!き、来たっ……正実の委員長ッッ!!」

 

「こんな早いなんて聞いてないよっ……」

 

「あの2人は囮もロクにできないんですのっ!?」

 

「やだっ、やだぁ!!もうヤダ、私逃げる!!」

 

「え、えっ、ちょっ……みんな!?」

 

 レティに従うトリニティ部隊の生徒は、ツルギが現れただけで瓦解してしまった。逃げ惑うも遅れてやってきた正義実現委員会の面々によって尽く拘束されてしまう。

 マフユの率いるレッドウィンター部隊の残りと、レティ率いるトリニティ部隊の残りとゲヘナ部隊は移動に使用した坑道の周辺に固まり、身を守るしか手段は無かった。

 その周辺は既に包囲されており、逃げ場は既に、坑道しか残されていない。

 

「もう囲まれた……!?」

 

「まだ正門周辺しか破壊できてないんですけど……」

 

「そういう問題!?どうにかして逃げないと……」

 

「それは無理です、もう少しで総長が来るので」

 

「ッ!」

 

 総長が来る、そのマフユの言葉を聞いてざわめく飂熾冘巫髏の構成員だったが、正義実現委員会は、全く容赦する様子を見せない。

 

「──しょうがないなぁっ!総長が来るまで、私が本気出すから……どうにか持ち堪えよう!」

 

「……頼みます、レティさん」

 

 自軍の生徒を掻き分け進み出る。ツルギは彼女の存在に気付くなり、他の生徒達を撃つ手を止めて、ギョロリとした目でレティを見据える。

 

「任せて!夜は────私の時間だから……!」

 

「……お前も、飂熾冘巫髏の幹部……だな?」

 

「ええ、そう!この前入った新参者だけどねっ!!ゲヘナ部隊幹部、古谷レティ!行くよッ!」

 

「正義実現委員会委員長、剣先ツルギだ。私が相手しよう。……叩き、潰す……!!」

 

 ベロォッと長い舌を出して、超がつくほどの前傾姿勢でレティに向かって突撃。自前の武器を構えて放つレティ、しかしツルギはそれを喰らっても全く怯まずに大砲から放たれた砲弾のように突き進む。

 

「えっえっえっ、なんで……」

 

「ケヒャアッッ!!!」

 

「ぎゃふっ……」

 

 ツルギの横払い一閃でレティは吹き飛ばされて、近くの樹木に叩きつけられる。壁を破壊する彼女の攻撃を喰らってしまっては、吹き飛ばされた彼女を受け止めた樹木も簡単にへし折れてしまった。

 

「お前程度の攻撃──粉雪に等しい。ゲヘナ部隊の幹部だか何だか知らないが、テロ組織に入る前に、自分の学校の風紀委員長を見習ったらどうだ?」

 

「ッ!風紀委員なんか……!自治区内の問題ばっかり解決しに行って、学校内の問題なんか見ないフリ!学校内の問題を注視してたら、自治区になんか目を向ける暇とか無いもの!そんなヤツらの事なんて、見習う価値なんか無いわっ!あんなヤツら、自警団名乗ってればいいのよっ!!」

 

「……お前もそのクチか。私達、風紀を担う集団も、万能じゃあない。他力本願にも程があるだろう」

 

「それが風紀委員の仕事でしょうが!風紀委員長は強いから手ェ出せないけど……正実の委員長だったら頑張れば私でもボコせるよ……ッ!!」

 

「舐められたもんだ。掛かってこい、叩き潰す」

 

 レティはこの後、滅茶苦茶にボコボコにされた。

 

 ◆

 

「────まさか、深夜0時に動き出すなんてね。近くの宿を取ってもらってて助かったわ」

 

「ホントよね〜。というか夜の戦闘とか久しぶりでワクワクしかしないわ♡」

 

「あのなモルモ……戦争が始まろうとしてるんだぞ?もう少し緊張感を持ってだな……」

 

 トリニティで本格的な戦闘が始まった頃、学園の近くの宿を飛び出したゲヘナ学園の風紀委員会は、事前にヒナにより指示されていた通りの動きで散開して、前線に出る3人のみ、学園へ向かっていた。

 

「ハイハイごめんね〜。イオリちゃんも少しは肩の力、抜いたらどう?」

 

「お前は肩の力を抜きすぎなんだよ!」

 

「それよりヒナちゃん。モブちゃんズとアコちゃんチナツちゃんは、本当に後方支援でいーの?」

 

「さっき正実の副委員長から連絡もらったでしょ。既に正実だけで包囲できているそうだから、私達の部下までそちらに回す必要は無いわ。更に大回りで学園を包囲すれば、それで更に逃げ場は無くなる」

 

「まぁ理屈ではそうなんだけど、なーんかなぁ……。妙に呆気ないのよねぇ……」

 

「……確かに、末端と幹部数名を投入してるってのは連絡で聞いたけど。そもそも飂熾冘巫髏って幹部も表舞台に出てこない組織だったんだろ?それなのにどうして今になって……?」

 

「飂熾冘巫髏も総力戦のつもりって事でしょ?」

 

 その時────3人の背後で(とき)の声が上がった。振り返るとそこには、レッドウィンターの制服やらゲヘナ学園の制服やらが入り交じった多くの生徒が現れたようで、猛スピードで、彼女達と同じく学園方面へ向かってきていた。

 しかも、レッドウィンター部隊の戦車隊までもが混ざっているようだった。ヒナ、モルモ、イオリの3人だけで対処できる物量を超えかねない密度だ。

 

「なっ……コイツら!!」

 

「何で後ろから出てきたのよッ!?……ルーシィ……あんたって子は……何重の策を用意して……!!」

 

「そんな事はどうでもいい。敵が現れた、それなら私達のやる事は1つ」

 

 ヒナは表情1つ変えずに銃を構える。ここで一番頼りになるのは、やはり、範囲攻撃と火力のヒナ。スピード特化のイオリ、奇襲特化のモルモはあまり戦果を出せそうになかった。

 それでも、モルモが爆弾をばらまいたり、ヒナが火力で薙ぎ払い、その2人が撃ち漏らせばイオリが的確に処理していくことで、地道ながらも圧倒的な物量相手に抵抗できてはいた。しかしそれも長くは続かず……。

 

「やっば、爆弾が尽きたっ……!?」

 

「!」

 

「嘘だろモルモ!?足りてなかったのか!?」

 

「────今だ!突っ込め突っ込めーーーっ!!」

 

 戦車が突っ込んでくる。ヒナはリロードして更に撃ち抜いてやろうとするが間に合わず……。

 

「火力も物量も足りてないよ、先パイっ♡」

 

「しししし、死んでくださいっっ……!!」

 

 3人の背後から現れた少女達が戦車の方に爆弾やカバンを投げる。瞬間、それは大きな爆発を起こし戦車や近くの生徒達を吹き飛ばし……。

 

「うっ……わぁ……エグい火力ねぇ……」

 

「って、お前達は……便利屋の!」

 

「くふふ♡ ここは、私とハルカちゃんと──」

 

「……はぁ……リーダー命令なら、仕方ないか……」

 

「かつての敵に協力する事になるなんて、まるで、漫画か何かのような……でも……なんだか、悪くないですねっ……!」

 

「──私達アリウススクワッドが引き受けるから」

 

 ──ムツキ、ハルカ、ミサキ、ヒヨリ、アツコ、現着。倒した敵の装備を奪い、爆破しつつ参戦。

 

「……そう、分かった。3人くらい足りない気がするけれど、また別の所で動いてるんでしょうね」

 

「そっ!ここって正門前に続く大通りだから、範囲攻撃の私達が向いてるだろうってさ!カヨコっちの予想と先生の作戦、見事にハマってるね〜♡」

 

「そうだ、先生は!?先生はどこだっ?シャーレに居るんならそれでいいんだけど……」

 

「あぁ、先生なら────」

 

 ◆

 

「──うん、わかった。ありがとう、ゴルコンダ。お陰で早めに戦争を終わらせられそうだ」

 

『それは良かった。それではまたいつか、先生には私の実験にお付き合い願いたいですね』

 

『そういうこったぁ!!』

 

「ハハッ、前みたいなヤツならね。じゃ、また」

 

『ええ。では、ご武運を』

 

 ゲマトリアに協力を要請し、飂熾冘巫髏の本隊を捜索した私は、ハドマ学園の生徒を指揮して、隊の最後方に控えているという本隊へと向かっていた。

 トリニティでは既に始まっているらしい。私も、ハスミから連絡をもらって宿を出たけど、ハドマの生徒を集めるのに少し手間取ってしまった。

 そして移動しながらアル達に連絡し、ハスミから受けた連絡から「ルーシィはその場には居ない」と判断して、ルーシィや飂熾冘巫髏の本隊を探す方にシフト。

 それからは早かった。ゲマトリアにコンタクトを取ってゴルコンダ&デカルコマニーと通話しつつ、本隊の位置を調べてもらい座標を教えてもらう。

 後は、私達が本隊を叩いて、戦争を終わらせる。

 

「────そういう事だから、私達はルーシィ達を直接、倒しに行くよ」

 

「それは良いけど、ホントにこの先に居るの?結構トリニティから離れてるけど……」

 

 トリニティ内では既にレッドウィンター部隊①とゲヘナ部隊①が正実と衝突しているようだ。しかしトリニティ部隊①はツルギの姿を見て逃走、投降、拘束のどれか。そして、学園の少し手前ではレッドウィンター部隊②とゲヘナ部隊②、ちらほらだけどトリニティ部隊②の存在も確認できたそう。だからこちらには、便利屋とアリスクを配置しておいた。アルとカヨコ、サオリもあの近くに居るはず。

 

「この先でいい、大丈夫。ねぇスズ、ルーシィって

『いいとこ取り』みたいなのする感じは無い?」

 

「え。……まぁ、無くはない……かなぁ?」

 

「あると思いますよ。例えば失楽園の会計を再募集しなかったのも、まさにそれなんじゃないですか」

 

「どういう事よ、ルビー?」

 

「ライム先輩も飂熾冘巫髏で、会計に潜入してたんですよね。そんなライム先輩がクビになったなら、フツーに考えて会計なんて重要な役職、再募集するでしょう。でもそれをしなかった。あの人なら別の構成員を会計に立候補させる事だってできたはず。それなのに、敢えて、しなかった。そうですよね、リエ議長?」

 

「……ええ。ルーシィさんが全て、滞りなく、仕事を終わらせて下さっていたので……」

 

「……自分がそうする事で、リエ議長からの信頼度が高まると理解していたんでしょう。ルーシィさんはそこまで見越して、ライム先輩がクビになったのをいい事に、より強く生徒会の仲間の信頼を得るのに成功したんです」

 

「ッ……ニャロォ……どっちに転んでもルーシィにはノーダメだったのね……!」

 

「……結果、当初の計画に比べると横領できなかったそうなので、学園は併合したものの、飂熾冘巫髏はそこまで強化できなかったようですし、ある意味、今の状況は好機ですね。万魔殿からの武器の融通はあったものの、強度に難アリのようですし」

 

「────まぁ、そんな感じ。ルーシィはここでもその『いいとこ取り』を狙ってるんだ。それぞれの部隊と敵対組織をぶつけ、敵が消耗したところで、一気にトリニティに攻め込む。その後は勢いのまま学園を壊すだけさ」

 

「んなこと、させるもんですか!!」

 

 そうだ。スズの言う通り、そんなことはさせてはならない。ゴルコンダによると、多少の戦車もまだ保有しているようだから、そちらはレイコに任せ、それ以外の歩兵を叩く。それだけでいい。

 頼んだよ、私の生徒達。




次回────シッテムの箱、アップデート!
魅せろ、アロナとプラナの本気!


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第24話:スイッチングシステム

 

 トリニティ総合学園の正門前の大通りをひたすら真っ直ぐに進んだその先に、飂熾冘巫髏の本隊が、時が来るのを今か今かと待ち受けている────。

 ゴルコンダ&デカルコマニーにその報せを受けた私は、ハドマ学園の主力生徒を率い、彼等に送ってもらった地点へ急行する。

 遥か後方からは爆音や銃声が聞こえてくる。今もきっと学園外では風紀委員会や便利屋やアリスク、学園内では正義実現委員会がそれぞれの部隊と交戦しているのだろう。

 人数は多くとも、戦闘経験なら彼女達の方が上。それに加え、トリニティ部隊の過半数──学園内を担当していた方は、既に正実の手によって拘束済みらしいので、きっと、こちらに分があると言っても過言ではない。

 

「幹部すら捨て駒にするのか……。ルーシィのヤツ、堕ちるとこまで堕ちたわね……!」

 

「捨て駒というか陽動作戦?が主な気がしますね」

 

「どちらにせよ同じ事よ、本命は自分なんだから。全く、そのクセ人を惹きつける要素はあんのよね、アイツ……。フツーに腹立つわ」

 

「悪魔の甘言、とでも言うんでしょうかね。彼女の口車に上手くノセられた結果『飂熾冘巫髏』という巨大な組織が誕生してしまったような、何となく、そんな感じがします。カリスマがあるというより、単に、口が上手いんでしょうね」

 

「悪魔のあんたがそれを言うか」

 

「吸血鬼です」

 

「大別したら悪魔でしょうがよ」

 

「スズ先輩こそ。立派な悪魔でしょーに……」

 

「ふーんだっ。所詮、私のカリスマはルーシィ以下ですよーだ。ケッ!」

 

「まぁ……それは認めざるを得ませんね」

 

「んなっ……!?」

 

 まぁまぁ、とスズを宥めつつ目標地点へ。しかしその時、懐の中でシッテムの箱が振動したのを胸で感じ取り、移動しつつシッテムの箱を取り出す。

 画面を起動させると、アロナとプラナが机の上でグッタリしているのが表示される。

 どうしたのかと冷や汗のようなものが飛び出す。反射的に意識を箱の中にダイブさせて、シッテムの箱の教室にログインする。

 

「どうしたの2人共っ!?何かあったの!?」

 

「えへへ〜……大仕事が、あったものでぇ……」

 

「え?」

 

「な、何とか、決戦の前に機能実装の準備が整って良かったですぅ……ふぃ〜……」

 

「結構、疲れました……アロナ先輩も、私も、かなりヘトヘトに……なってしまいましたが……」

 

「で、でもっ、先生の事はバッチリ守りますっ!」

 

「ちょっと待って、話が見えないよ。どういう事?機能実装って?決戦っていうのは、これから始まる飂熾冘巫髏との決戦だっていう意味だと解釈しても良いんだよね?」

 

「そうですぅ……はひぃ……」

 

「……ギュッと、してください……復活します……」

 

「え、あ、うん……」

 

「あーっ!プラナちゃんばっかりズルいですよぉ!私にも、私にも〜っ!!」

 

 プラナとアロナが可愛くハグをせがんできたのでギュッと抱き締めてみた。数秒間そうやっていると目が死んでいた2人も即座に復活。アロナなんかはいつものキラキラの目で、机の上に登らんばかりの勢いでピョコピョコとジャンプするくらい元気に。

 

「それで、機能っていうのは?」

 

「はいっ!今回新たに実装するのは『スイッチングシステム』です!!」

 

「スイッチング……システム……?スイッチ……何かを切り替えたりするのかな?」

 

「肯定。戦闘の前に予め複数の部隊を設定しておくことで、戦闘中でも、先生の任意のタイミングで、それらの部隊を入れ替える事が可能になります」

 

「!?」

 

「ただ、任意とは言っても、一度入れ替えたら次に入れ替えられるようになるまで1分クールタイムがあるので……」

 

「いやいやそんなの気にならないくらい破格でしょその機能!神機能では……?」

 

「しかぁし!この機能の追加だけで終わらないのがアロプラクオリティですっ!!──この機能の追加だけで、スーパーAI姉妹のアロプラが、こんなにぐったりと疲れると思いましたか〜っ!?」

 

「恐らく先輩とは姉妹ではありませんが……」

 

「超超超〜っ、超大型アップデートなので!今回は更にもう1つ、大きなお知らせがあります!!」

 

「おおっ!?」

 

「プラナちゃん!ドラムロールスタート!!」

 

「ダカダカダカダカダカダカダカ〜…………ジャンッ……?」

 

「「先生も本格的に、部隊に編成ができるようになりました!!」」

 

「…………ッ!?」

 

 口をあんぐり開けてしまう程に驚いてしまった。私を部隊に編成可能に──いや待って、この子達は一体何を言っているのだろうか……?

 

「いやぁ〜それなりに苦労したんですよぉ?先生、自分で戦いたい欲が強いんですから……」

 

「っ!」

 

「先生の『戦闘欲』を安全に発散させるには──とアロナ先輩と繰り返し議論してきました。そして、その結果が今回の追加機能です」

 

「生徒さんを指揮しつつ、自分も前線に立てます。勿論、先生の身は私達が全力で守りますから、安心してくださいねっ!」

 

「先生の身を守りつつ先生の強さを発揮させるにはやはり先生の戦型はTS──タクティカルサポートだろうと、結論付けました」

 

「これは、先生がハーレムを作ってきたからこその結果です!胸を張ってくださいっ!先生も、安全に前線に出られますよ!」

 

「ッ……」

 

「ただし、どの戦闘でも可能ということではなく、今回みたいな特殊な戦闘だけなんですけど……!」

 

「十分過ぎるよ」

 

 夢みたいな話だ。特撮のヒーローみたいに、弱い私も、前に出て戦いたかった。でもキヴォトスではそんな望みは叶わない──ハズだったのに。

 

「本当に……安全なの?」

 

「はいっ!アロナバリアは無敵ですから!先生には怪我1つさせま……」

 

「そうじゃない。私の怪我はどうでもいい。意識があれば複製(ミメシス)で細胞分裂もできるし。だけど、生徒を悲しませてしまわないのか、ただ、それだけが心配だったんだ」

 

「問題ありません!なんなら、先生が思ってる事(・・・・・・・・)も実現できますよ♪」

 

「!!」

 

「部隊に編成可能な『先生』は2種類実装します。先生が改めて募集をする(ガチャを回す)必要も、全くありません。なにせ『先生』はあなたですから」

 

「2種類?それって別衣装みたいな?」

 

「それに近いと思われます」

 

「スイッチングシステムと先生の実装に10分近くの時間が必要です。その間は、もしルーシィさん達と出会ったとしても、戦闘開始してはいけません!」

 

「会話などで時間稼ぎをお願いします。それでは、シッテムの箱──アップデートを開始します」

 

 プラナの言葉を最後にして、私の意識は強制的にシッテムの箱からログアウト。画面は真っ暗で何も反応しない。今頃この中でアロナとプラナが……。

 

「──ッ!……先生、見えてきました。前方450m、このまま直進です。ルーシィさんが隊列の前で──真正面で待ち構えています」

 

「え」

 

 ルビーは走りながらそんな事を言うが、さっぱりよく見えない。確かに結構先に黒っぽいモヤらしい何かがあるようで、街灯に照らされて、夏の道路によく見られる陽炎のように揺らめいているのは少し見えなくもないものの、普通に遠すぎて何が何やら判別できたものではない。

 

「あ。……私、夜目が効くんです。吸血鬼なので」

 

「あぁ、成程……」

 

「先生も吸血鬼になってみれば分かると思います。結構、便利ですよ……?」

 

「吸血鬼化って可逆性あるの!?そういうのって、不可逆性じゃないかな!?」

 

「まだ吸血鬼として不完全……未熟者ですので……」

 

「あー!こらルビー!先生のこと、絶対に吸血鬼にするんじゃないわよ!?めっちゃ不便なんだから!先生が吸血鬼になったら致命的だっての!」

 

「え、なになに……何があったの……」

 

「コイツの吸血鬼化、太陽にスゴく弱くなんのよ!マジでもう二度と勘弁なのよ、日光を浴びただけで全身が痒くなるアレ!ハンドクリーム如きじゃあ、到底カバーしきれないあの絶望的な痛痒さ!晴れの昼間には全く外に出られなくなるのが、軽く3日は続くのよ!マジ勘弁なんですけど!ガラス越しでも日光は日光だから、当たると痒くなるし!!」

 

「……そこまで言わなくても……」

 

「てか首を噛まれるのも痛いし、二度とゴメンよ!デメリットがメリットを打ち消してるのよ!」

 

「……」

 

 スズのアンチ吸血鬼化っぷりに誰が見ても分かるくらいにショボンとしてしまった。こんな、顔文字みたいなショボン顔が見られるなんて……。

 スズの発言的に、彼女はルビーによる吸血鬼化の経験がありそうだ。

 首筋に噛み付く……って、めっちゃエッチでは?

 

「ん〜、でもまぁ、身体能力やら素の再生力やらが上がるのはシンプルに良かったよねぇ♪」

 

「シエル先輩……!」

 

「それが短時間のバフとして使えればいいんだけどルビーってばまだそこまでの制御はできないから、まぁ、仕方ないとこはあるよ。寧ろルビーはレイコ以外だったらハドマの中でもトップクラスじゃん?よくやってる方だと思うよ〜?」

 

「〜〜〜〜〜っ、そ、そりゃ確かに、まぁ未熟ではあるけどっ?その他大勢よかマシではあるけど!」

 

 わちゃわちゃしながらも、段々とルーシィ達との距離が縮まってくる。このまま進めば、数分後には真正面から睨み合う事になる。

 

「ハンッ。どーやら戦車もあるみたいだね。アレは私に任せて、あんなの秒で壊せるから」

 

「わかった。任せたよ、レイコ」

 

 しかし──真正面に堂々と立つルーシィが私にも視認できる距離になった、その時。ルーシィの頭を飛び越え、何者かが隊列から飛び出してきた。

 肩に細長い金棒を乗せ、牙を見せる獰猛な笑みを湛えた、太い金髪ツインテールの少女。バリバリの戦意しかなさそうなあの笑顔は────。

 

「博愛レイコってぇのはあんたね、白いの!」

 

「……何よあんた?誰?」

 

「あれ、ニュースとか見ないの?私のこと、かなり大きく報道されてたけど────まぁいいわ。私は百鬼夜行を停学中の賽鬼(さいき)ユウナ!ルーシィの脱獄に手を貸した女よ!」

 

 まさか、ここに来てユウナが立ち塞がるとは……。ルーシィのカリスマというか話術で外部にもツテを持たれるのは普通に面倒だ。

 唯一ラッキーだと思える事があるとすれば、まだルーシィの魔の手がヘルメット団やチンピラにまで及んでいない事くらいか。

 レイコが言うには、飂熾冘巫髏の傘下には確かにチンピラなども居るが、ルーシィではなくレイコに従っているのだそう。だから問題は無いらしい。

 

「────ルーちゃん!何で急にトリニティ攻めるなんて言い出したの!?」

 

「裏切り者と言葉を交わすつもりは無いわ」

 

「ッ戦争なんて間違ってるでしょうがよ!?てか、そもそも私達、復讐する側じゃん!まるでされる側(・・・・)みたいなアホムーブしてんじゃん!」

 

「……ユウナ。来る前に言った通りよ」

 

「はいはい。あの白いのを潰したら、トリニティは潰し放題、ブッ壊し放題ってワケね♡♡」

 

「構わないわ。堕天使ルーシィの名の下に……!」

 

「だてんし?ってぇのはよく分かんないけど、街を壊せるんなら、ヤル気もアガるってモンよッ!!」

 

「────ッ!!」

 

 ユウナvsレイコの戦闘が、始まった。戦車による援護射撃もある。ユウナもレイコも銃より近接攻撃主体なところがあるので、相性自体は悪くはない。しかし、パワーではやはり、ユウナが上回っているようだ。

 

「レイコ、単独で戦っちゃダメだ!私が指揮する!従ってもらうよ!」

 

「あぁ!?援護射撃があろうと、1人くらい私なら片付けられるっつーの!舐めてんの!?」

 

「一旦冷静になって考えるんだ!レイコの強さを、誰よりも知っているルーシィが選んだ相手なんだ!レイコを倒せる自信があるから──」

 

「うっさいなぁ」

 

「ッ!!」

 

 舌打ち混じりにハンドガンを発砲するルーシィ、その弾丸は私の胸元に向かって────。

 

「っ……」

 

「スズ!!」

 

 危なかった。咄嗟にスズが庇ってくれなければ、きっと死んでいた。今はまだシッテムの箱のアプデ途中で、アロナバリアは働かない状態。ギリギリ、九死に一生を得たようだ。

 

「当たってないわよね、せんせー……?」

 

「あ、あぁ……ありがとう、スズ……助かったよ」

 

「ッ、ルーシィッ!あんた、今、マジに先生のこと撃ったわね……!?」

 

「どーせ死なないと思うしィ、実際、無事じゃん。こっちにはこっちの計画があんのよ。邪魔されたら嫌じゃん?だから先生、さっさとリタイアして?」

 

「……ルーシィ。大人しくしろ──とは言わないよ。どうせ無駄だろうしね。だけど、抵抗するのなら、タダじゃ済まさないよ」

 

「だったら何だっての?やってみなよ。こちとら、レイコやアスカの裏切りでずっとはらわた煮えくり返ってんのよ!」

 

「君の暴走を見かねたから組織を飛び出したんだ。レイコ達の想いに答える為にも、絶対にここで君を止める。……これ以上、君の手を汚させはしない」

 

「ッ!!ユウナ!さっさとレイコをブッ倒しな!」

 

「言われなくとも……!!」

 

 その時、シッテムの箱が再起動を果たす。しかも起動と同時に編成画面に移行している辺り、やはりアロナとプラナは有能だ。

 どうやらレイコの事は固定で編成する必要があるらしい。それならそれでいい。総力戦のときと同じようなパーティで構わないだろう──と思ったが、ツルギとモルモは今も前線で活動中な上、ナギサはセーフティハウスに避難中だった。

 編成も出撃も一応できるようだが、今その3人をこちらに呼んでしまうのはちょっぴり都合が悪い。それならその3人の代わりの3人を選んで……。

 

「────よし。総力戦じゃないしこれくらいでも勝てるハズだ」

 

 第1部隊にレイコ、コハル、ミカ、私、ヒマリ、水着シロコを編成。念の為の第2部隊にはハドマの生徒を編成し、レイコと合流して戦闘を開始する。

 

「せ……先生っ!?」

 

「先生が前線に出てきちゃダメじゃんッ!?」

 

「問題無いよ。今の私ならね」

 

「「……!?」」

 

「もう少し溜めて…………ヒマリ!お願い!!」

 

『天才美少女ハッカーの真髄、お見せしましょう』

 

 ヒマリのEXで、ミカにバフをかける。続けて、ミカのEXでユウナに大ダメージを与えHPバーを大幅に消し飛ばしてやる。

 

「ッッ……そのピンク頭とは前にも会ったわね……!また私の邪魔をしようっての!?」

 

「ツノ生えてるクセに記憶力イイね☆」

 

「あ゙ぁ゙ッ!?ふざけてンじゃ──」

 

「余所見してんじゃあないよッ!!」

 

「がはっ……!?」

 

 ミカが煽り、それにノッたところをレイコが隙を突いて攻撃を与えていく。EX以外でも、こうして的確にダメージを与えていくが────。

 

"アロナとプラナが選んだ、私のスキル──!!"

 

自分のスキルを使用する

 

「『"召喚!キヴォトス最強AI軍"(EXスキル)』ッ!!」

 

 その瞬間、地面を突き破ってビナーが出現した。少し小型化しているようだ。ミカは、コハルと私を抱え咄嗟に回避、レイコも無事に回避したようだ。しかしユウナや飂熾冘巫髏の陣営はそうもいかないようだった。

 

「ぎゃああああぁぁっ!?何なのよコイツ!?」

 

「コイツは確か──ビナー……ってヤツ……!?」

 

「モル姉に聞いた事ある!アビドス(モル姉の地元)にほんのたまに出現して大暴れする、機械の蛇のバケモノ……!!」

 

 ルーシィの指示でレッドウィンター部隊の戦車隊がビナーに砲撃を浴びせる、しかしビナーに大したダメージは通せないらしく、飂熾冘巫髏はどんどん蹂躙されていく。

 

「ねぇ、先生?これ、どうなってるの……?どうしてビナーがアビドスじゃなくてトリニティに……?」

 

「……」

 

「しかも敵対してるのは相手の方で、私達の方には見向きもしないし……」

 

「……ルーちゃん……」

 

 ────成程。アロナの言っていた言葉の意味がやっとわかった。確かにこれはハーレムの結果だ。アイン、ソフ、オウルとの関係があってようやく、私のスキルとして組み込めたんだろう。

 しかもスキルの効果を今更ながらに確認したが、ビナーを召喚するのではなくて「デカグラマトンの預言者」をランダムで召喚するスキルらしい。*1

 

「『"召喚!SRT特殊学園"+(Nスキル)』!!」

 

 戦闘開始から60秒経過。追い討ちとばかりに私のスキルが発動した。すると上空からヘリでミヤコとサキとミユが参戦。モエの援護射撃も加わり、敵を素早く制圧していく。

 彼女達の手際に見惚れていると、ハッと気付いたようにミカが拳をギュッギュッと握る。

 

「────あ、攻撃力上がった(バフ掛かった)

 

「!?……よしっ、ミカ、ユウナにトドメだ!」

 

「オッケー☆…………あなた達の為に、祈るね☆」

 

「────ッッ!!!」

 

 RABBIT小隊が帰還するのと同時に、ミカのEXでユウナを倒してしまった。ユウナの気絶を確認し、ビナーも来た穴に戻ってしまった。

 これで、残るは、ルーシィの率いる飂熾冘巫髏の本隊だけだ。シッテムの箱は戦闘終了画面────私達の勝利だ。戦闘終了後は、ミカ達は帰還させ、私達の会話ターン。

 

「……ルーシィ。降参するんだ」

 

「く……っ!!」

 

「これでもう分かったでしょう、ルーシィ?先生の指揮には敵わない。助っ人も何も関係無く、ね」

 

「もう終わりだよ、ルーちゃん。もう、こんな事はやめよう?本格的に始まる前に終わりを宣言して、平和に終わらそう?」

 

うるさいッ!!やると決めたら、最後までやり通すのよ!総員ッ、敵を叩き潰しなッッ!!」

 

 ルーシィの指示を受けて、飂熾冘巫髏の本隊が、とうとう動き出す。本番は、これからである。

*1
ただし稀にアイン達を召喚する事もある。




次回────存在しない記憶


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第25話:存在しない(・・・・・)記憶

 

 飂熾冘巫髏とシャーレの衝突は、飂熾冘巫髏側の助っ人であるユウナを倒してからも尚、収まる事も無く、ひたすら激化し続けていた。

 

「次は誰を召喚()ぼうっかなっと……」

 

「ちょ、先生ッ!?指揮に集中するなら下がって!危ないでしょーがぁ!?」

 

「大丈夫だよ、スズ。安心して戦って」

 

「安心できるかぁ〜ッ!!」

 

 さっき部隊を編成した時、2部隊編成した。私が率いる第1部隊、ハドマの生徒で組んだ第2部隊。総力戦でもないからかユウナの事は第1部隊だけで倒せたのでその場で解散してしまった。

 しかしそこから飂熾冘巫髏との戦闘が激化した、今は第2部隊のハドマの生徒でどうにかしているが少しばかり手が足りないかもしれない。

 というか、ハドマの生徒は、範囲攻撃系の生徒が少ない気がする。辛うじてリエくらいか。スズも、範囲攻撃ではあるが……素の攻撃力が低過ぎて……。

 

「……やっぱり火力か。────来い、ミカ!!」

 

召喚()ばれて飛び出て、ジャジャジャジャーンッ☆ 先生のヒロイン、聖園ミカ!遂に登場☆」

 

「よく来てくれたね。何度もごめんね」

 

「ううん!先生の為だもん、何度でも来るよ!」

 

「ありがとう。──制圧()こうか、私のお姫様」

 

「うん!こんな戦い、さっさと終わらせちゃお!」

 

 更に水着ハナコ、コハル、ヒマリ、コタマを編成してから出撃──と思ったら、出撃の前に確認画面らしきものが表示される。

 こんなの初めてだ、何だろうと思いよく見ると、今編成した「私」のスキルの関係で、戦闘開始前に

「強化するステータス」を選べるらしかった。

 その選択肢は攻撃力、防御力、治癒力、命中値、会心値、回避値の6つ。

 このうちの1つを強化できるらしい。数値にしてどれくらい強化されるかはまだ分からない、しかし今は火力を求めてこの編成にしたので、ここでも、攻撃力を選択しておこう。

 さっきの「私」ではこの画面は出なかったから、今編成した「2種類目の私」ならではのスキルなんだろう。アロナとプラナ、別衣装枠として2人目も用意してくれたみたいだし。────プレナパテスみたいな感じで、なんか良いね。

 

「よし、皆、ここ一番の勝負だ、気張っていこう。戦闘開始だッ!!──『テクストの試験場+(Pスキル)』!」

 

 戦闘開始直後、私のパッシブスキルが発動する。スキル名からしてゴルコンダっぽいが──そうか、2種類目の私は「ゲマトリアの名誉顧問」としての私のスキルなんだ。

 発動と同時に全体の攻撃力が大幅にアップした。こんなにアップしてもいいのかな。ミカの攻撃力、既にだいぶヤバイ事になってるけど。サブスキルもステータスアップ系だから、今の素の状態でかなりヤバい状態だ。ヒマリとコタマのバフ追加したら、例えばハイタッチでも敵が吹っ飛びかねないような強烈なバフになってしまいそうで……。

 

「っ、何なのこのバカみたいな火力!誰か回復して回復!戦車隊、次に幹部陣の優先順位(じゅん)よ!」

 

「「はいっ!!」」

 

 成程、アスカは脱退していても、ヒーラー自体は飂熾冘巫髏にも居るらしい。まぁ、そりゃそうか。

 コタマ、ヒマリのバフを水着ハナコに掛け、範囲攻撃で広範囲を吹き飛ばしながら敵陣へ切り込む。ミカは、新たにバフを掛けずとも二重に掛けられた私のスキルで既にバグのような火力なのでこのまま進んでしまおう。

 ──ハナコとミカの間に流れる空気が少し不穏に感じるのが気になるが……。

 

「『"召喚!平行世界(いせかい)先生(ティーチャー)ズ!"』ッ!」

 

 ここで、私のもう1つのEXスキルを発動する。すると黒服が現れた。

 

「クックックッ、まさか私を召喚して頂けるとは。光栄ですよ、先生……!」

 

 黒服の召喚時、召喚者の私を含めた味方全員に、黒服からのバリアを付与。ホシノが編成されていた場合は効果が上がるようだ。が、残念ながら今回はホシノは居ないので、またの機会に確認しよう。

 

私のシッテムの箱に常駐する(私がプログラムした)メインOSマロンのバリアは、その者の治癒力ではなく、防御力依存の硬さのバリア──更に耐久力は最大HP依存です。クックックッ……それなりに有用だと思いますよ」

 

「時間経過では消えないんだ」

 

「その通りです」

 

「……」

 

「……」

 

「帰らないの?」

 

「ええ、遮蔽物ですので」

 

「バリア付与したら黒服は遮蔽物になるの!?」

 

「ええ、ただし一撃でも喰らえば──あ゙うっ」

 

「黒服ーーーーーーっっ!?!?」

 

 流れ弾を背中に受けた黒服は、瞬間移動で消えるように帰還した。後でゲマトリア本部にお見舞いに行こう。自分にはバリア付与できないらしい……。

 

「き、気を取り直してっ!ハナコ連発──からの、バフミカブッパからの、部隊切り替え──!!」

 

 ハドマの生徒を指揮下に置いてやっと編成ミスに気が付いた。スズは時間経過で火力が上がる特性、つまり初期の火力はかなり低い。そういう生徒こそ私と一緒に編成して素の火力をブチ上げるべきだ。

 まあ、戦闘が始まってしまった以上は仕方ない。指揮下に置く部隊の切り替えはできても入れ替えはできないし、ここは甘んじて受け入れるしかない。

 

「スズ!雑魚狩りはルビーとシエルに任せるんだ!君が前に出てちゃあ火力を高められない!」

 

「それは分かってるけど、手数が足りない……!」

 

 そう、範囲攻撃型が少ないので、シンプルに手が足りない。2丁のサブマシンガン持ちのスズが手数多い方にカウントできるあたり、お察しだろう。

 

「ルビー!スズの補助、頼んだよ!」

 

「勿論です」

 

 第1部隊に切り替え、私のスキルを発動させる。今度現れたのは────マエストロだ。

 

「やぁ先生。まさか久しぶりに戦場で相見える事になろうとはな。この私を召喚した際の効果は極めてシンプルだぞ。時間制限はあるものの、味方全員の攻撃力を各個人の157%アップだ」

 

「わぁバランス崩壊。会心出たらブッ壊れじゃん」

 

「更にッ!トリニティの生徒が編成されていれば、そこから58%上乗せされッ!」

 

「もういいて」

 

「特定の生徒『聖園ミカ』編成にて更に58%上乗せされるのだッ!!」

 

「過剰火力が過ぎるよッ!!」

 

 私のサブスキルとパッシブスキル、マエストロの召喚効果で得られるバフと特殊効果でのバフを合計するだけで、この部隊への攻撃力バフは343.5%

 私のスキルだけでこの有様だ。ヒマリやコタマのバフはカウントしていない。

 アロナとプラナよ──私を死なせたくないのかもしれないけど、流石にシャーレの先生(ゲマトリア名誉顧問)、壊れすぎだろ。

 

「わーお……紙装甲だね☆」

 

「いやいやいやいや、あんたの火力がエグいのよ!何なのよ、そのバ火力は!?」

 

「あなたも、ハドマの生徒にしちゃあ、それなりにイイんじゃない?」

 

「ッ……これでも、ハドマじゃ最強だッて自負してんだけどなぁ……。あんた、トリニティの生徒でしょ?最強って、剣先ツルギと聖園ミカって聞いてるけどあんた何者よ?……まさか、あんたが聖園ミカ?」

 

「そーだよ?」

 

「っ……!この戦争が終わったら勝負しなッ!元々、強い奴と勝負する為に飂熾冘巫髏に入ってたんだ!もし勝負しないってんなら私1人でもトリニティに攻め入ってやる!」

 

「あははっ☆ あなたこそ何者だか知らないけど、そういう事だったら受けてあげるよ?でも、まずは目の前の敵を蹴散らさなきゃね?」

 

「モチのロンよッ!!」

 

 ミカとレイコの火力、ヤバイ事になってるなぁ。通常攻撃で戦車が吹き飛んでる。ミカがEXなんて使ったら過剰過ぎて死人でも出るんじゃ……。

 更に、程なくしてノーマルスキルが発動。先程はSRT特殊学園の生徒が召喚された。しかし今回は私の抱える私兵、人工天使擬人化シリーズ4姉妹の次女、アンブロジウスのアンが現れた。

 

「っ!お久しぶりですわ、マスター・マエストロ」

 

「アンブロジウスが来たか。元気にしているかね」

 

「ええ、4人共。ただ、グレゴリオ改め、グレイとリンゴの2人は、ミレニアムの早瀬ユウカにかなり甘えん坊なんですの。困ったものですわ。ローニィお姉様は毎日オヤツに目玉焼きをお食べになるので卵の消費量がとんでもない事になってますしね」

 

「ふふ……そうか、そうか。ヒエロニムス──いや、ローニィの目玉焼きへの情熱は、何なのだろうな。作りの親である私にも、彼女の事はよく分からん」

 

「先生も、マエストロと同じこと言ってますわよ。やっぱりお2人は、元々住んでいた世界は違えど、根本的には同じなんですのね」

 

「──さて、先生。アンの召喚効果を見るがいい。先程よりも狂った数値になっているぞ」

 

「……完ッ全に脳筋パーティになった……」

 

 アンの召喚時の効果も、まさかまさかの攻撃力のアップであった。その効果も加味すると、ヒマリやコタマからのバフを抜いて380%を超えるバフだ。

 素の攻撃力だけでかなりのブッ壊れだ、こんなの敵に回したらと思うと……鳥肌が立つ。

 

「もう少しで雑魚は片付くよ、先生っ!」

 

「よし……ミカ、レイコ、アン!今だ!!」

 

「あなた達の為に────祈るね☆」

 

「誰に指示してんのよ!」

 

「了解しましたわ、先生」

 

 ミカは当然、私の指揮下にある。しかしレイコは今は第1部隊と第2部隊のどちらにも編成してないお陰で、コストを10も消費せずに、レイコ本人さえその気になればEXを発動できる。そしてアンも、私が召喚しただけなので、コスト消費を気にせずにEXスキルを使えるのがイイ。

 ミカで残る戦車を消し飛ばし、レイコで広範囲を吹き飛ばし、アンで更に広範囲を掃討してやった。とんでもない火力だ。バルバラのHPバーですら、一瞬で消え去りそうだ。これが重ねがけパワーか。

 

 ◆

 

「はぁっ、はぁっ……!これで、飂熾冘巫髏の雑魚は殆ど片付いたわよォ……ルーシィ!!」

 

「ちっ……!」

 

 シエル、ルビー、リエは脱落してしまったものの後方支援とスズは部隊としてまだ残っており、更にソロでレイコ、ミカもまだ残っていた。

 3人と後方支援さえ残っていれば、ルーシィなら倒せなくもない……が、懸念すべき点が、まだ……。

 

(さっきからライムの支援が来ない!何やってんのこんな時にッ!まさか別働隊に潰されたっての!?いや、先生の部隊操作権限はそこまで及ぶ……?)

 

「ルーシィらしくもない焦りっぷりねェ。まさか、万策尽きたのかしら?」

 

「……そーかもしれないわねぇ。でもま、あんたらをここまで追い詰められたなら、それでいいよ。私もここからは背水の陣でいくからさぁ……!」

 

「あぁん?私達を追い詰めたァ?そりゃ、前線には3人しか出て来てないけど。予備の人員なら、まだ控えてるからね?」

 

「そうじゃあないわよ。────もうあんたらには回復させない……そう言ってんのよ」

 

「「「……ッ!?」」」

 

 回復は主に後方支援の生徒の役割だ。それなのに回復「させない」──つまり、後方支援の生徒にも手を出している、またはこれから手を出すという、ある種の宣言であると受け取れる。

 それなら話は早い、そうさせないようにと防御に回るだけだ。

 

「スズッ!レイコッ!!アンナやアスカ達を!!」

 

「りょ、了解っ!」

 

「聖園ミカだけで大丈夫なんでしょうね!?」

 

「誰に言ってるのかな?あなたよりかは強いから、私達の方は大丈夫だよ☆」

 

「ちっ、いけ好かないヤツねェ……!」

 

 仲間割れすな!とスズに襟首を掴まれ半ば強引に引っ張られていくレイコ。2人を見送る間、ミカはルーシィから目を離さないで居たようだ。

 

(これまでずっと、どんな策にも裏を用意していたお陰かな?あっさりとブラフに引っ掛かってくれたけれど……逆に心配になるわね)

 

「あなたこそ、後方支援が無さそうだけど、それは大丈夫なのかな?☆」

 

「……ええ、自分への後方支援として配置するより、別働隊に派遣した方が有意義だからね」

 

「へぇ、なんか凄いね?自分が可愛いだけのトップじゃないんだ?」

 

「私は万魔殿じゃあないのでね」

 

「……」

 

「ところで、その銀河みたいなヘイロー……そっか、そうなのね。アンタが、トリニティ総合学園最強の女、聖園ミカね?」

 

「そうだけど、あなたは?トリニティの生徒っぽく見えるけど、ハドマの生徒……なんだよね?」

 

「私は元ハドマ学園生徒会副会長────そして、現ゲヘナ学園生徒会長。トリニティ出身の堕天使、針村ルーシィよ」

 

「……ルーシィ?────ッ……な、に……っ?」

 

 頭を抱え、汗を流す。ズキズキと脈動するように頭が痛み、その激しい頭痛に、思わずミカさえ顔を歪めてしまう。

 

 

 

突如、ミカの脳内に溢れ出した

 

存在しない(・・・・・)記憶

 

 

 

 ──ナッちゃん、こんどいっしょにあそぼっ!

 

 ──ええ、ぜひ!

 

 ──ナギちゃんはわたしとあそぶんだよっ!

 

 ──ナギちゃんじゃなくてナッちゃん!

 

 ──ナギサちゃんはナギちゃんなのっ!

 

 ──まぁまぁ、おふたりとも。また、さんにんでいっしょにあそびましょう?

 

 ──ナギちゃん(ナッちゃん)はだまっててっ!!

 

 ──ぴぃ……。

 

 

 

「え……ぁ……?ルーシィ……いや……ルーちゃん(・・・・・)?」

 

「……♪」

 

「有り得ない……。どうしてあなたが……、私達も……お……幼馴染、だった……?」

 

「……そーだよぉ、ミッちゃん(・・・・・)♡ まさか私のこと、忘れてたの?ひっどいなぁ☆」

 

「────そうだ、確か私とルーちゃんは従姉妹で私がお姉ちゃん役で、ナギちゃんとも遊んでた──でもルーちゃんは、親の都合で小学校に上がる時にハドマ(お隣の)自治区に引っ越して、それで、ずっと疎遠になってた…………?」

 

「そーそー♪」

 

「……久しぶり、だね。どうしたの、宣戦布告なんかしちゃってさ」

 

「内容は聞いてるでしょ?予告通り、トリニティを潰しに来たよ」

 

「……そっか。だけど、トリニティは、私にとっての数少ない居場所なの。嫌な奴も多いし、なんなら、あなたが潰してくれた方がスッキリするのかもね。でも……私はあなたを止めなくちゃ」

 

「っ!?」

 

「後方支援なんか間に合わせない。あなたはここで私に──ううん、シャーレの先生に負けるんだよ」

 

「やばっ……ライムッ!!」

 

「あなたの為に、祈るね。Kyrie Eleison」

 

 ミカに吹っ飛ばされたルーシィを見て、辛うじて意識を保っていた飂熾冘巫髏残党は各方面に連絡を飛ばし、または逃走していく……。

 

 ◆

 

「りょ、了解!……い、命拾いしたな!今回はこれでズラかってやる!!やろー共、逃げるぞー!!」

 

 トリニティ自治区某所、学園へ続く大通りにて。便利屋68と交戦していた飂熾冘巫髏の残党も敗北の報を受け取り、逃走を開始するが。

 

「あはははっ、逃がすワケないじゃん!」

 

「先生から依頼された任務だし──事態も事態だし完璧中の完璧で終わらせよう」

 

「そういう事ですので死んでくださいっ……!!」

 

「「「「ぎゃああああああ〜っっ!!」」」」

 

「クッソ……コイツら!」

 

「反撃しようとするな!仲間は連れてけない、自分だけでも逃げるんだ!散れ、散れ!散開っ!!」

 

「へぇ、仲間を見捨てる判断もできるんだ。ただのバカじゃあなさそうだね?」

 

「でも、この状況で投降しないなら、どちらにせよバカには変わりないだろうね」

 

 飂熾冘巫髏の残党が逃げた先には便利屋68社長の陸八魔アル、更にはアリウススクワッドのリーダー錠前サオリ、支援にその他のスクワッドメンバーが待ち構えており、一網打尽にされてしまった。

 

 ◆

 

「────了解しました。まぁ負けますよね。ではあなた方もお気を付けて。白き世界で、また」

 

『マフユさんも……ご武運を!』

 

「────。皆さん、現時刻を以て作戦終了です。トリニティ総合学園から即時撤退。各々、自決用のダイナマイトを装備して抜け穴に。穴を破壊しつつのんびり帰るとしましょうか」

 

「りょ、了解っ!」

 

「あ、仲間も戦車も置いて行きますよ。そんなもの足でまといです」

 

「え!?で、でもッ……」

 

「では、あなたも置いて行きますね」

 

「えっ!ちょっと、待っ……」

 

 ツルギにボコられ敗北、気絶してしまった同僚のレティを抱えていたマフユだったがそんなレティを投げるようにその場に落とすと、逃走を開始する。

 

「──さよなら、レティさん。楽しかったですね、復讐を目論むテロ組織ごっこ。次はもう少し私達の役に立ってくださいね」

 

 同じ「幹部」であるレティの事すらも、ツルギに負けたからとその場に放置してしまった。

 戦車やその残骸を盾や障害物にしながら、進軍に利用した穴へ進む。途中、何人もの仲間が正義実現委員会のスナイパー達に倒されていくが、気にせず進み続け、遂に地下道へと到達。

 ツルギ率いる正義実現委員会もそこに追いつくがマフユ率いる飂熾冘巫髏のレッドウィンター部隊はとびきり逃げ慣れているようで、自分達が地下道に生き埋めになる事も厭わず爆弾を起爆──地下道を塞ぎ、正義実現委員会の追跡を、事もなげに完璧に振り切ってしまった。




次回────万魔殿の反撃

ミカエルとルシファーは双子なので、2人の元ネタ繋がりで、呪術廻戦の存在しない記憶ネタを。

幼稚園時代の記憶自体は本当に存在しないですが、ミカとルーシィは一応、従姉妹です。ただしミカもルーシィも自分達が本当に従姉妹だと知りません。
ルーシィはミカの呟きに適当に同調してるだけで、内心「何言ってんの?」程度にしか思ってません。

従姉妹揃って自校にも他校にも迷惑かけてるんだ。血は争えないみたいです。可愛いですね。


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第26話:終戦 〜万魔殿の反撃〜

 

「う……ん……?ここは……」

 

「おはよう、針村ルーシィ。ぐっすりだったことを考えると、特別牢の床の寝心地も、そんなに悪くはなさそうだなァ?キキキキッ!」

 

 聞き覚えのある、嫌味が込められている笑いに、ルーシィの意識は一気に覚醒する。

 無機質極まりない牢屋の中に閉じ込められていることに気付く。そして、逃げたハズのマコトが牢の前でルーシィを見下ろしている事も。

 

「……飂熾冘巫髏との戦闘に負けて、このゲヘナから逃げたんじゃなかったの?」

 

「フン、見くびるなよ。戦略的撤退というヤツだ。うちの議員に取り入っている飂熾冘巫髏の構成員の存在を確認したのでね。そいつから情報を搾り取る為にも、ある程度の纏まった時間が欲しかった──逃げたのは逃げたがまさに戦略的撤退だったのさ」

 

「チッ。……ライムのヤツ、しくったの……?いや、偽の情報を掴まされてたのかな」

 

「いいや本当の情報さ。その、ライム──とやらの認識では、間違いなく、な」

 

「は?」

 

「我が万魔殿の中には優秀な催眠術師が居てなァ。この私ですら、催眠術を使用されたら、アイツには逆らえなくなる。性格が変わるのだそうだ」

 

「!?」

 

「不運な事に、お前の部下のライムが取り入ろうとしたのは、その催眠術師だったのさ。だから、逆に利用してやったんだ。あの女に堕とされたフリまで演じてな。そして今日まで作戦を進めさせてきた。シャーレの先生がお前を倒した後で、お前の身元を引き受けたのも、このマコト様に他ならない。故にシャーレの先生にも助けは求められんぞ?」

 

「ッ……ちぇっ。やっぱり、レイコに抜けられたのは何よりも痛かったな……」

 

「聞けば、そのレイコも、お前に振り回されていただけだったんだろう?ならば、タラレバは無いさ。遅かれ早かれあの女も飂熾冘巫髏を脱退していた」

 

 手足に拘束などはされていないらしかった。牢に入れられた以上、もうルーシィは逃げられないと、タカをくくっているのだろう。

 身体を起こしたルーシィは、適当に座り直して、いつもの余裕そうな表情を作る。

 

「────トリニティはどうなったの?」

 

「トリニティで部隊を率いていた幹部は、地下へと続く道で逃走したと聞いている。部下も幹部も全て見捨てて、だと。レッドウィンターの気候のように冷たい女だそうだなァ……キキキッ!」

 

「まぁ、マフユなら、そうするか。するってーと、結局トリニティは壊せずじまい、クロノもマトイもレティもそれぞれ捕まったって感じかな」

 

「本件を受けて、レッドウィンター事務局も幹部の捜索に乗り出したそうだ。恐らくは、殲滅も時間の問題だろうなぁ。シャーレの先生はチェリノ会長を巻き込むのを避けていたが、どこかの誰かさんが(・・・・・・・・・)、事務局に伝えてしまったのだそうだ」

 

「……」

 

「それからここは、ゲヘナ風紀委員会の特別牢さ。あの空崎ヒナも通うから、覚悟しておくがいいぞ!キャハハハハ!」

 

「なんで……風紀委員会の施設にあんたが居んのよ。仲悪いんでしょ……?」

 

「──自覚してないのか?誰の地雷を踏んだのか」

 

「あ……?マコトの地雷なんか知らないわよ」

 

「マコト様のじゃあない。……お前、万魔殿に攻めてきたときに……イロハの戦車(虎丸)を壊した挙句、イロハを保健室送りにしただろう」

 

「?それが何よ、戦闘なんだから当たり前でしょ」

 

「それが理由だ」

 

「はぁ?」

 

「飂熾冘巫髏──いいや、針村ルーシィの敗因は、たったひとつだ。たったひとつの単純(シンプル)な答えだ」

 

「……?」

 

「────『お前はイブキを(・・・・・・・)泣かせた(・・・・)』」

 

 ◆◆◆

 

 飂熾冘巫髏──ルーシィの起こしたこの事件は、未然には防げなかったものの、各校の生徒の協力もあって、被害は最小限に抑えることができた。

 正義実現委員会が捕らえたトリニティ部隊の幹部2人は無期限の停学、ゲヘナ学園に籍を置いているレティは送致されて、ルーシィが起きる数時間前に風紀委員会の尋問を受けた後に釈放……。

 レッドウィンター自治区に帰って行ったマフユやマフユ率いるレッドウィンター部隊の一部などは、逃走中に事務局に捕まりそうになったものの、常に携帯している爆弾を使用し逃げ果せたようだった。

 その他、幹部ではない下っ端についてになるが、トリニティの生徒については、期限付きではあるが停学処分が下された。ゲヘナの生徒については殆どお察し状態。数時間の拘留と尋問で釈放である。

 そして──この事件の後始末について、万魔殿が本格的に顔を出すようになったのはシャーレの先生率いる部隊がルーシィを倒してからであった。

 ルーシィが目覚めた現在より、半日程前────ルーシィが倒された頃にまで遡る。

 

「これで終わりだね、先生!」

 

「流石はミカ、相変わらずの超火力だ。君を選んで正解だったよ……本当にね」

 

「従姉妹だろうと、敵は敵だもん。敵に回ったなら容赦はしないよ☆」

 

「従姉妹……だったんだね。知らなかったよ」

 

 そういえばルーシィのヘイローは六芒星、ミカは銀河っぽいけれど──宇宙モチーフなのだろうか。いや、そういうのは無いかな。それで言うのなら、レイサも星型だし……。

 

「私も今の今まで忘れてたよ、なんでだろ?」

 

「……」

 

 そんな折に、よく見覚えのある戦車が、ほんのりぎこちない駆動音を奏でて私達の前にやってくる。万魔殿の文字があるその戦車は、私がよく戦闘中に見ている、イロハの虎丸であった。

 するとイロハと、その隣のハッチからは4本角の生徒会長──羽沼マコトがニョキッと顔を出した。

 

「キキキキッ!ご苦労であった、シャーレの先生!主犯である針村ルーシィの身柄は我々万魔殿の方で預からせてもらう!」

 

「やぁ、マコト。元気そうで何よりだよ。──で、ルーシィの身柄を預かりたいって……どうして?」

 

「今はまだコイツがゲヘナ学園の生徒会長なんだ。ハドマ学園との併合をも無かった事にする以上は、ハドマの生徒であるルーシィにゲヘナ学園の頂点にいつまでも居座られてもらっちゃあ困るんだ」

 

「あ……併合、無かった事にするんだね」

 

「もちろん!全てがコイツの策謀であると判明した現在、リセットできるのならばそうするさ。そしてハドマ学園の生徒会長、我猛リエとの協議も正式に行いたいと思っている。姿が見えないから、戦闘でダウンしてしまっているのだろうが──。先生よ。私の代わりに、我猛リエ議長への伝言を頼んだぞ。詳細は後ほど、イロハに連絡させる」

 

「うん……分かった。任されたよ」

 

「クックック……あぁ、助かるよ。もうじき、戦闘を切り上げた風紀委員会が到着する頃だ。そうしたらルーシィを引き渡してやってくれ」

 

「あ……そこは風紀委員会に任せるのね」

 

「虎丸はもう満員どころかキャパオーバーだから、仕方なくだ。そこは、勘違いしないでもらおうか。イロハ、イブキ、私、チアキ、サツキ、ライム──流石に満員さ」

 

「……んっ?ライムって、飂熾冘巫髏の幹部だよね?ライムがそこに居るの?」

 

「あぁ。スパイとしてサツキに接触してきたから、催眠術で、二重スパイとして使ってやったのさ」

 

「……ひぇ……」

 

「スパイを利用してやるだなんて、なんッて斬新なアイデア!流石はマコト様だァあはははは!」

 

「言うほど斬新でもありませんけどね」

 

「んなっ……」

 

 イロハのツッコミに軽く吹き出しそうになるが、そこをどうにか堪える。

 程なくして、マコトの言う通り、ヒナ率いる風紀委員会が現着した。アコを通してマコトから指示を受けていたようで、溜め息をつきながら、渋々だが引き受けたのだそう。

 ルーシィの事はモルモが見張りとして着くことになって、迎えの車が来るまでは、私も風紀委員会の皆と談笑しつつ、今後の事を話し合って過ごした。

 

 ◆

 

「────了解。倒した構成員の事は風紀委員会に引き渡す……で良いんだな。……そうか、分かった。陸八魔社長にも伝えておく。じゃ、また──」

 

「さ、サオリ……さん?何かあった……?」

 

「あぁ、社長。先生から連絡をもらった」

 

「先生から!?」

 

「現時刻を以て戦闘終了。先生達が、飂熾冘巫髏のボスを討ち取ったそうだ」

 

「……そう……良かった……っ!!」

 

 便利屋68、そしてアリウススクワッド────。互いの部下を組ませて広範囲への攻撃を任せ、上に立つ2人は、部下が取り逃した、または逃げ果せた敵をそれぞれが討ち取っていた。

 そんな中で互いの呼び方は「サオリさん」またはシンプルに「サオリ」と名前呼び、更にサオリからアルには「社長」や「陸八魔社長」と社長としての彼女を敬った呼び方で呼んでいたようだ。

 

「私達や部下達が倒したコイツらは、風紀委員会や正義実現委員会に引き渡してくれればいいそうだ。もしくは目立つ所に捕縛しておいてほしい、と」

 

「!」

 

「風紀委員会やら正義実現委員会から逃げる立場の私を気遣っての事なんだろうな。手間を掛けさせる事になってしまうが……それに甘えたい私が居る」

 

「……良いのよ、甘えちゃえば」

 

「っ!」

 

「先生がそれでいいって言ってくれてるんだから、そうしちゃえばいいのよ。サオリさ……サオリが悪い人じゃないのは、一緒に戦った私はよく分かるわ!だけど世間的にはそうもいかないんでしょうから、逃げる立場に在るってのは仕方ないの。私達もね、ゲヘナ学園きってのアウトローだから?割と常に、風紀委員会からは逃げてるもの!」

 

「しかし……甘えてばかりでは、な……」

 

「それでもそう思っちゃうんなら、先生に、何かをお返しすればいいんだわ!それで万事OK!何にも気負うことなんか無いの!対等なパートナーとして仲良くやっていくのが、私達自身にとっても相手にとっても、いっちばん、気が楽なんだから!」

 

「……お返し……」

 

「私なんかは、先生とビジネスパートナーだから、常にそう心掛けているわ。パートナーなら、対等であってこそ!サオリも、先生にこんな大事な任務を任されてるんだもの、立派なパートナーよ!もっと自分に自信を持ちなさいなっ!」

 

「っ……ああ」

 

 ずっと厳しい顔つきだったサオリ、しかしアルの言葉に励まされ、やっと頬を緩めることができた。

 

「──あなた、確か自分探し中?なんだっけ?」

 

「あぁ。やりたい事も、何をしたいのかも、まだ、よく分からない。追っ手から逃げながらアチコチを転々としている」

 

「なら、便利屋に来なさい!」

 

「……え」

 

「戦闘の腕はかなりのものだし!それに戦闘以外も色々とこなすから、普通のバイトよりも良い経験になると思うのよ」

 

「っ!!」

 

「どう?まずは体験入社みたいな感じで♪」

 

「アリウス分校中退、アリウススクワッドリーダー錠前サオリだ。よろしく頼む、陸八魔社長」

 

「こちらこそよろしく!じゃ、この後、アイツらを分かりやすい所に捕縛したら、部下達と合流ね!」

 

「ああ……!」

 

 ◆

 

「ツルギ。先生より戦闘終了の連絡が入りました。敵の総長を討ち取ったとの事で、現時刻を以て戦闘終了……と」

 

「ッ!………………フーッッ……そうか……。それなら、これ以上の深追いは、やめておいた方が懸命か」

 

「はい。拘束した者達については────」

 

「ゲヘナの者はゲヘナに送致しろ、そう多くは無いハズだ。その辺の事柄は、既に、ヒナ委員長と話がついている。トリニティの者については牢に。後はナギサ様とセイア様の裁量にお任せする」

 

「はい。……それで、レッドウィンターの者は……」

 

「一旦、我々の牢に。前以てその話ができなかった以上、レッドウィンターの者については先生からの指示を仰ぐしかない」

 

「ですね。では、マシロ達も呼び戻して、後処理の補佐をさせます」

 

「任せた」

 

 そして────やがて、それぞれが安穏とした、平和な日常へと戻っていく…………。




次回────その後

後日談(エピローグ)で第3部のメインストーリーは終わりです。
次はいよいよ、プロフ開示を挟んで絆ストーリー、グループストーリー。エロもちょこちょこ。

ハドマ学園側も飂熾冘巫髏側も書いていきますよ。
だって「先生」だものね。アリウススクワッドとも仲良くしちゃうくらいだから、飂熾冘巫髏とも絶対仲良くできるなら仲良くするでしょ。


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第27話:後日談(エピローグ)

 

 飂熾冘巫髏との戦争が終わって僅か数日後──。複数の学園や自治区を巻き込んだ戦争騒ぎも世間の記憶に新しいうちに、失楽園と万魔殿による会談が正式に執り行われた。

 結果的には、両校は再び分かたれるとして騒動に終止符が打たれることとなった。

 ルーシィとマコトの調印式により、ゲヘナ学園に吸収される形で併合したハドマ学園。ルーシィは、決してバカではない。寧ろ、かなり頭が働く方で、強かな生徒なので、調印式そのものは(まさ)しく法規に則ったものだった。

 だから今更その調印式を無かった事にできるかと多くの生徒達が疑問に思っていた。が、兼ねてより連邦生徒会が「両校の合意により」と強調していたお陰で、マコトやリエによる圧政などではないと、世間的にもすぐに受け入れられたようだ。

 

「──それで、ルーシィの事はどうするつもりだ?今の所はまだ風紀委員会の特別牢に入れているが」

 

「ルーシィさんの事は──我々(ハドマ)が引き取りますわ。色々ありましたが、ルーシィさんも、我々ハドマの生徒ですもの。生徒会は、残念ながらクビですが。次こそ、ルーシィさんにも楽しい学園生活を送って頂きたいものです」

 

「キキッ。分かった、ではそのように手配しよう。日時については、護送の都合もあるのでシャーレの先生を通して改めて連絡するつもりだが、それでも構わないか?」

 

「ええ、それでお願いしますわ」

 

「それと、萌山ライムについてだが……」

 

「!」

 

「サツキ──うちの議員の催眠が思ったより強力に効いてしまってな。正常に戻したらすぐにハドマに帰すつもりだ」

 

「ふふっ、分かりましたわ。何なら、催眠とやらで少しくらい品行方正に正して欲しいものですわね。全く、ライムさんはいつもいつも、色んな方に手を出して……」

 

「──らしいな。うちの議員も奴の手に堕ちかけたそうだし、中々に厄介だったそうだ」

 

「あらまぁ……」

 

 そんなこんなで、ハドマ学園は、ゲヘナ学園から分離される形で、再び独立を果たした。

 リエはマコトに「思っていたよりかは話が通じる議長」という印象を抱いたようだったが、マコトは逆に、リエに対し「腹の底が読めない女」といった印象を抱いたそうだ。

 お嬢様っぽく振る舞ってはいるが、どこか飄々としていて、彼女という人間像に、薄らとだがモヤが掛かったようにも思える、と。

 更に、この会談を以て、万魔殿と失楽園の立場は対等であると暗に示され、過去の遺恨は全て忘れるという事で話は纏まった。

 

「────さぁ、これで公的な会談は終わりだ」

 

「?」

 

「ここからは、ただの個人として言葉を交わそう」

 

「……!」

 

「先程、ハドマ学園とは対等な関係を結ぶ──とは言ったものの。正直、ハドマ学園は、それに見合う学園だとは到底思えん!!」

 

「────……」

 

 当然だった。今のゲヘナ学園は4000人規模の巨大学園であるのに対し、ハドマ学園は1000人未満。

 姉妹校だった過去こそあれど、対等な関係なんて結べそうもない。マコトでなくともそう判断を下すだろう。そこに思い至ったリエは俯いて、キュッと拳を握り下唇を噛み締める。

 マコトの言う「対等な関係」というのは表向きの方便というもので、実際のところは、対等どころかお互いに不可侵、ノータッチな、元の関係に戻るのだろう。

 迂闊に喜んだ自分が憎い──と、リエが恨めしく思っていると、マコトはまるでイブキに向けるかのような優しい目をリエに向ける。

 

「──だから、我がゲヘナ学園と見合うくらいに、大きい校舎を持て!!」

 

「…………え?」

 

校舎がちゃっちぃから(・・・・・・・・・・)生徒が来ないんだ(・・・・・・・・)!ろくに使われない第2校舎なんぞ別館扱いにしてしまえ、本館に力を入れろ!……なぁに、倒壊しているからと別に気にする事など無い。ゲヘナ学園が常日頃から世話になっている業者を紹介してやる。だからまず校舎をさっさと建て直せ!」

 

「っ……そう言って頂けるのは嬉しいのですが……」

 

「領収証の名義は、我が万魔殿にしておくがいい。どうせ紹介料で安くなるだろうしな。今更、校舎の1つや2つを新たに建築した所で、こちらにとって大した痛手にもならんさ」

 

「え、いや、しかし」

 

「あぁあぁ、皆まで言うな。分かっているぞ。金を借りるようなものだろう、と思っているだろう?」

 

「っ!」

 

「そうだな、校舎1つ分の金を貸すようなものだ。無論、ただで貸すとは言わない、万魔殿は慈善事業じゃあないんだ。──そこで、だ。ちょっとばかり業務提携のようなものを組みたいと思う。なんだ、例えばだが、学校の運営についての協議だとか──色々とあるだろう?我々には……悩みの種が!」

 

「それ、は……はい……」

 

「今後は定期的に、意見交換会やら交流会のようなものを開きたいと思っていてな。折角、こうやって繋がりを復活させたのだから、そうでもしなくては勿体ないと思わないか?」

 

「……はい……」

 

「互いの抱える治安維持組織の交流会を経て2校の繋がりを強化するのもいいだろう。少し前になるがコチラはトリニティと合同訓練を開いた事がある。お陰で向こうの正義実現委員会とそれなりに良好な関係を築けているようだぞ?」

 

「!……成程、そういう運営方針もアリですわね」

 

「だろう?特に、そちらの統治委員会は──今回の戦争でもトップの2人は特に活躍したそうだしな。うちの風紀委員会にもかなりの手練れが居るから、手合わせには持ってこいだろう」

 

「──分かりました。考えておきますわね」

 

「前向きな答えを期待しているぞ」

 

「ええ、是非ともそう在りたいものですわ」

 

 ◆

 

「というコトで、ハドマ学園及び生徒会・失楽園が復活したワケですけれど。副会長と会計の穴が未だ埋まっておりません。誰か、これらに立候補されるつもりの方はいらっしゃいませんか?」

 

 全校集会で、生徒会長のリエは皆に呼びかける。しかし手は上がらない。横領していたり一部書類を勝手に破棄などしていても、それを差し引いても、ルーシィは確かに仕事がデキる女だった。

 誰が、そんなルーシィの後釜になりたいと、自ら立候補できてしまうのだろうか?

 長い沈黙がハドマの体育館を包む。すると大きな溜め息と共に色白な細い腕が、しかし力強くピンと真っ直ぐに立てられた。

 

「ハドマの併合問題が無くなって暇だし、生徒会の仕事、手伝ったげるわ」

 

「シエルさん……」

 

 七天魔の1人、シエルが議長であるリエの補佐の副議長もとい副会長に立候補した。他に立候補者が居なかった為、シエルについてはこれで決定。

 連邦生徒会対策委員会から一転、生徒会になり、新たな役目をその小さな背中に背負う事となった。

 そして会計についてだが……。

 

「レイコちゃんやっちゃいなよ♪」

「誰が生徒会なんかやるかっての!」

「でも、皆で活動するの楽しいよ?」

「あんたがやればいいでしょ!?」

「私は美食研究会対策委員会の委員長だもん?」

「兼任すりゃイイでしょうがよ!」

「ダーメ、ダメダメ〜。そんなんじゃ集中できないもん」

「ンじゃ他の奴に擦り付ければいいよ、私はやらない!」

「まぁまぁ、そう言わずに♪」

 

「そこ。今は集会中ですよ、私語は慎むように」

 

「はいはーい。リエ議長、レイコちゃんが生徒会の仕事に興味があるそうでーすっ!」

 

「んなぁっ!?ちょっ……あ、アスカ!?余計なこと言わないでよっ!」

 

「では会計はレイコさんという事で宜しいですね」

 

「待って待って!宜しくない!全然宜しくないっ!アスカが勝手に言っただけだから!」

 

「自薦も他薦も不問ですからね。ですが──ああ、レイコさんは、会計は未経験でしたでしょうか?」

 

「……会計どころか、そういう役職すら……」

 

「でしたら、書記のアンナさんを補佐にしますよ。大丈夫ですね、アンナさん?」

 

「あ、はい。会計の仕事でしたら、平常時から傍で見ていましたし記録してますから、大丈夫ですよ」

 

「──そういう事ですので、まずはお試し程度で、どうでしょう?」

 

「ッ……」

 

 レイコは今でもルーシィを想っている。しかし、それはそれとして一定期間停学となったルーシィの代わりにと、生徒会の何かの役割に就く事も色々と考えていた。

 それらを感じ取ったアスカだからこそ、そんな、奥手なレイコの背中を押してやったのだった。

 

「……分かったよ、お試し程度ね!深入りはしない!バックれる前提で考えときなよ!?」

 

「ふふっ、覚えておきますわ」

 

 こうして七天魔や生徒会の欠員にレイコが入り、欠員が補充される事となった。

 七天魔の最新メンバーは、レイコ、リエ、スズ、ルビー、シエル、アンナ、アスカ。生徒会の方はと言うと──議長(リエ)副議長(シエル)書記兼会計補佐(アンナ)会計(レイコ)である。

 少々歪な形ではあるが、こうしてゲヘナ学園との併合から脱却したハドマ学園は明るい再スタートを切ることとなったのであった。

 

 ◆

 

「────何ですって?ルーシィが脱獄した?」

 

「は、はい!牢を何者かが外から破壊し、それで、針村ルーシィを連れ出したようで……!見張りの者も全滅でした!今は保健室で治療中ですが……」

 

「……そう。分かった」

 

「申し訳ありませんっ!!」

 

「警戒が甘かったのは私も同じ。仕方ない。それに元々はマコトから押し付けられていただけだから、あんまり気負う必要は無いわ。それより、今日も、校内校外問わずまた問題児達は暴れてる。そっちに行こう」

 

「はいっ!!」

 

 ◆

 

「──ふぃ〜ッ、ここまで来ればもう安心でしょ。ゲヘナ自治区は出たし、風紀委員会ならそこまでは深くは追ってこないハズ……」

 

「……どうして私を助けたの?…………ユウナ」

 

「別に……深い理由は無いわ。ただ……あの戦争で、殆ど役に立てなかったから。償いみたいなモンよ」

 

「そんな理由?バカね。そもそも、あんたに破壊を愉しませるっつったのもヴァルキューレから逃げる為にあんたを利用したいが為の言葉なのよ?」

 

「ンなの知ってるわよ。でも、あたしが負けたからそれが実現しなかっただけでしょう?もしあの時、あたしが勝ってたら──フツーに楽しませてくれたでしょ、トリニティの破壊をさ」

 

「そりゃあ、まぁ……口約束とはいえ約束だしね」

 

「そんなら、あの時に楽しめなかったのはあたしの実力不足が原因でしかない。それで話はおしまい」

 

「……ユウナ……」

 

「んで?これからどーすんのよ、総長?」

 

「っ!」

 

「レッドウィンター部隊、逃げ回ってるそうよ〜?マフユだっけ?アイツ割と冷酷よね。レティの事も放ったらかしにして逃げたそうよ?」

 

「──幹部でマフユだけが無事なのも、ある意味、仲間すら切り捨てられる非情さを持ち合わせているお陰──なのかもしれないわね」

 

「かも、ね。あいつ、一番静かなようで、仲間すら値踏みしてるような雰囲気あったし。ちょっと苦手かもしんないわ、あたしは……」

 

「ねぇ、ユウナ。あんた──飂熾冘巫髏に来なよ。副総長ポジ、空いてるわよ?」

 

「停学中とはいえ、まだ百鬼夜行に籍置いてるけどイイの?」

 

「ンなもん気にしないわ。ヘルメット団よろしく、このキヴォトスに巨大組織としてのさばってやろうじゃないの!私について来れば、実力次第で好きに破壊を楽しめるわよ?捕まる心配も殆ど(・・)無く、ね」

 

「────ノッた!このあたしを楽しませなさい、ルーシィ!ヘルメット団はこのあたしを金なんかで雇おうとするけど、あたしを雇いたいなら『破壊』させろっつー話よ!」

 

「ははっ……そーね、あんたにはそれが合ってる」

 

 敗北を果たした飂熾冘巫髏だったが、ルーシィが総長なのは変わらず、副総長には新たに百鬼夜行の生徒である賽鬼ユウナを迎え入れ、更には逃走中のレッドウィンター部隊とも程なくして合流して──トリニティでは停学処分を受けたクロノとマトイ、ゲヘナからはレティを迎え入れ、更にその他多数の生徒と合流を果たした。

 それを受けて連邦生徒会は、カイテンジャー等と同じく飂熾冘巫髏を指名手配として指定する事に。しかし、かねてより正体不明としてやってきていた飂熾冘巫髏という組織は、あの戦争を経ても未だに全貌が明らかになっているとは言い難い状況であり指名手配されても事態はあまり変わらなかった。

 

 ◆

 

 そして、クロノとマトイが飂熾冘巫髏の本隊へと合流を果たす、少し前のこと────。

 

「無期限の停学……か」

 

「私達は幹部ですし、妥当かと」

 

「ま、それもそーね。あーあ!これでもう、留年は確定かぁ。補習授業部で頑張ってた去年の1年間はなんだったんだろ」

 

「…………すみませんでした」

 

「あん?」

 

「私が……私が、クロノさんへのイジメを、見て見ぬフリしてたから……だからクロノさんは、不登校にもなって、成績不振で補習授業部に入らされた上に、復讐として飂熾冘巫髏に入って……」

 

「……」

 

「全部、全部全部っ、私が悪────」

 

「自惚れんな、バーカ」

 

「っ!?」

 

 ペシッとマトイの後頭部を平手打ちする。すると意外なくらいに目をぱっちりと見開いたマトイが、瞳を潤ませてクロノを見る。

 

「クラスの全員が、私にとっちゃあ敵だったのよ。イジメてくるカスに傍観者を決め込むクズ、だけどあんたは補習授業部でヤサグレてた私にあんたから声を掛けてくれた。確かにあんたもクズだったわ、でも結果的にはマシなクズよ。私からすればね」

 

「……でも、それじゃ遅かった……!」

 

「遅くはないわよ。私はルーシィとガキの頃からの付き合いなのよ?遅かれ早かれ、飂熾冘巫髏として勧誘されたらノッてたわ」

 

「ッ……」

 

「私の方こそ──ごめんね。私についてきたから、あんたも、無期限の停学になったんだからさ」

 

「いえ。それは、私への罰だと思ってますので」

 

「ったく……」

 

 そんな会話をしつつ、トリニティ総合学園を出る2人の前に──1人の生徒が立ちはだかる。紫系のカラフルな髪を風に揺らし、星型のヘイローが頭に追従する、あの生徒。

 

「聞きましたよ、クロノさん!幹部さんだからと、停学になったそうですね!!」

 

「レイサ……!」

 

「騒動が終わった記念に、じゃないですけど!何か甘いものでも食べに行きませんか!?」

 

「はぁ??言っとくけど、飂熾冘巫髏の幹部なのはまだ変わんないからね……?」

 

「それでも今は悪いことしてませんからっ!!隣のお友達の方も!一緒に、どうですか!!!」

 

「え……いや、私は──」

 

「クロノさん!!悪いあなたとは決別しましたが、前に私とお友達だった良いクロノさんとは、やはりお友達なので!い、一緒に、食べ歩きしませんか!良いお店、知ってますよ!!」

 

 レイサのどこか必死さの籠る訴え掛けに、思わずクロノは小さく吹き出してしまう。あの戦争の時、呆気なく崩れ去ったと思った関係が、まさか、まだ続いていたのかと、レイサの言葉に、優しさに心を打たれてしまったのだ。

 

「……そーね、またクレープでも食べに行きましょ!ほら、マトイ!あんたも行くわよ!」

 

「え、でも」

 

「いーからいーから!ほらレイサ、案内して!」

 

「はいっ!!あ、でも!また悪いことしたら、私が止めますからねっ!!なんたってこの私は自警団のスーパーヒーローですから!!」

 

「やれるもんならやってみなさいっ!」

 

 ────こうして無事に和解(?)したクロノとレイサ、更にマトイはトリニティの自治区内にあるスイーツ店を夕方まで食べ歩きし続けた……。

 

 ◆

 

「ハーハッハッハッハーッ!愉快愉快!増えたぞ、新たな戦力が!部員が!人手がッ!!飂熾冘巫髏のゲヘナ部隊とやらの、その大半の吸収に成功だ!」

 

「これからもっともーっと忙しくなるね、部長♪」

 

 なお、参戦していたはずの温泉開発部は、戦闘は殆ど行わず、カスミの超人的な話術と人心掌握術によって、飂熾冘巫髏のゲヘナ部隊の人員の多くを、温泉開発部に取り込んでいた。

 鬼怒川カスミがヒナとモルモへのトラウマを克服する日も、そう遠くはない────かもしれない。




というワケで、遂に次回のプロフ開示後にグループストーリー、絆ストーリーです。
絆では先生との絡みも本格的になるかと思います。実質、次からが第3部の本番と言えるかも。


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第4章:絆ストーリー
ハドマ学園の生徒一覧


 

ハドマ学園

校章

 逆さクラウンと月桂樹の冠

【挿絵表示】

 

自治区

 とてつもなく細長い自治区を有しておりゲヘナ、トリニティ、レッドウィンター、ヴァルキューレをはじめとする様々な大きい学園と隣接している。

 他所と比べて少し小さめのブラックマーケットが存在しているが、トリニティに新設された方へ人が流れてしまっておりこちらも廃れつつあった。

 しかし、最近トリニティのブラックマーケットで起きた総力戦(賽鬼ユウナ)をキッカケにしてか、少しずつハドマのブラックマーケットに人が戻り、活気を取り戻しつつある。

 

過去

 他の学園よりも悪魔の生徒が多いということで、ゲヘナ学園と姉妹校だった過去を持つ。今は学園の規模に大きな差が生まれてしまった為に、その事を知る者も減ってきている。

 成長を果たしたゲヘナ学園側からは姉妹校だった過去を忘れられ、ハドマ学園側はゲヘナとの姉妹校だった過去にしがみついている。

 様々な自治区に隣接していることから、周辺から生徒が流れてくる事がある。逆にハドマから周辺の自治区へ出ていく生徒も、決して少なくない。

 最近ではゲヘナのように治安が悪化してきた事に辟易した生徒達がハドマを出て行くパターンの方が格段に多くなってきている。

 

主な部活・委員会など

失楽園(ダイモニオン・ソサエティー)

 生徒会。議長、副議長、書記、会計といった主な役職から成り立つ。

 5年前、ゲヘナ学園では万魔殿と失楽殿といった両組織による抗争が勃発していた。

 どちらの組織の味方でもないある1人の生徒が、失楽殿の構成員に親友を殺された恨みを晴らす為に失楽殿に急襲を仕掛け、ある夜、失楽殿の構成員を全滅させるのに成功。

 しかし構成員の後輩はゲヘナ学園を飛び出して、ハドマ学園へと落ち延びていた。

 その「失楽殿構成員の後輩」が、ハドマ学園にて新たに立ち上げた組織こそが「失楽園」であった。学園こそ違えど、失楽殿構成員である先輩の遺志を継ぎ、あくまで平和的に旧生徒会と交代し、学園を統治する事になった。

 以降、成り立ちの経緯については歴代議長にのみ口伝していく事に取り決められた。

 

統治委員会

 風紀委員会と言い換えてもいい。ハドマ自治区を所構わず暴れているチンピラや不良を倒していき、争いを沈静化させるのが主な仕事。

 所属人数は多いものの強さは大した事ないせいで委員長のスズと副委員長のルビーのワンマン組織になっている。

 2人のじゃれあいは、統治委員の中では夫婦漫才みたいな扱いをされている。

 スズは戦闘がメイン。ルビーは戦闘も書類仕事もこなしている。ハドマの苦労人枠はルビーである。

 委員会の活動資金の一部はルビーのバイト代や、ルビーの所属事務所から出ていたりする。

 

連邦生徒会対策委員会

 連邦生徒会がハドマ学園とゲヘナ学園との併合を薦めてくる事を受けて、生徒会長の親友の3年生、シエルが発足させた委員会。

 発足の経緯も含めて、本来は生徒会長が委員長の座に就くべきではあるものの、生徒会長として既に忙しい日々を送っていた事から、表向きではあるが彼女の親友のシエルが委員長に就任している。

 現在のハドマ学園は、もうゲヘナ学園と併合する心配が無い為、既に解散済みの委員会である。

 

美食研究会対策委員会

 お菓子作りが好きな生徒が集まる委員会。ただしアスカの私怨により彼女の思い付きでゲヘナ学園の美食研究会と戦う際のシミュレーションをする事もあるらしい。

 アスカが脱退していた期間は、殆ど空中分解にも等しい状態になっていたものの、副委員長のサエがどうにか元通りの姿を保とうと頑張っていた。

 

技術開発部

 名前の通り様々な技術や道具を開発する部活。

 ミレニアムサイエンススクールのエンジニア部とヴェリタスを足して2で割ったに等しい活動内容。ただし技術は科学最先端を行くミレニアムより数段劣る。

 後述のテロ組織に破壊された教員ロボの代わりに授業を行うAIの開発も、彼女達の作品である。

 レイコに破壊された校舎の修復も彼女達の仕事。プレハブ校舎も大半は彼女達の仕事の賜物である。

 統治委員会の戦闘後の後処理などの雑務も含めて彼女達の活躍は計り知れない。

 ハドマ自治区6─9にあるラブホテルなど複数の施設を運営して活動資金にしている。

 

七天魔(しちてんま)

 ハドマ学園内での強さ上位7名とされる生徒達を指す。七天魔のメンバー内で序列などは決まってはいないものの、リエとシエル、レイコ以外はスズが最強だと認識している。

 実際に七天魔の中で最強なのはレイコである。

 最新の七天魔メンバーは、レイコ、リエ、スズ、ルビー、シエル、アンナ、アスカの7名である。

 

飂熾冘巫髏(ル・シュ・フェル)

 ルーシィが自分や幼馴染の抱く目的を達するべく立ち上げたハドマ学園の生徒の半数以上(ルーシィ曰く6、7割=300人程度)を取り込んだ組織。

 総長はルーシィ、副総長に幼馴染のレイコを据え第1の幹部に同じ幼馴染のライムを据えていたが、レイコが脱退しユウナが参入した今では、ユウナを副総長に据えている。

 第2の幹部には、レイコによってスカウトされたアスカが加えられていたが、同じく現在は脱退済みである為、欠員となっている。

 なお、幹部には補佐役を付けることができる為、ライムはアスカの妹であり自身のお気に入りであるアガリを手元に置いて、補佐役としている。

 ただし、ライム自身が生徒会で会計を務める事ができるくらいには有能である為、補佐役なんて殆ど要らない。アガリはライムにとって性欲を発散する相手その1でしかない。

 

 

 

ハドマ学園の主な人物

【儚き生徒会長】我猛(がもう)リエ

【挿絵表示】

 

種族:天使(翼無し)

出身:ハドマ自治区

学年:3年生

年齢:17歳

身長:172cm

趣味:ロリータファッション探し、占い、読書

所属:失楽園(ダイモニオン・ソサエティー)

役職:議長

愛用品:名刺*1

元ネタ:ガブリエル

ヘイロー:

【挿絵表示】

 

 STRIKER(BACK)

 レア度:☆3

 クラス:アタッカー

 射程距離:1000

 攻撃タイプ:神秘

 防御タイプ:弾力装甲

 屋内戦:S

 屋外戦:S

 市街地戦:S

 

 EX:大紅蓮地獄(マカハドマ)(コスト8)

 溢れる神秘を氷山の形に固めて投擲し、敵全体に対して攻撃力1860%分のダメージ

 

 NS+:最後の審判+(強化時)

 戦闘終了まで残り1分になると、退場した生徒を全員HP全回復の状態で復活させる

 復活した生徒は無敵状態(30秒間)

 それ以降はダメージを通せるようになる

 

 PS+:運命を司る女神+(強化時)

 攻撃力17.5%増加

 

 SS:天使祝詞(アヴェ・マリア)

 自分の攻撃で敵を1人以上倒した時、自分を含む自軍のハドマ学園の生徒に、10秒間の攻撃力99.5%増加を付与(10回まで重複可)

 失楽園の生徒には105.5%付与

 パーティ内にシエルがいる場合は、それぞれ2.5%追加で増加

 

 固有武器:スナイパーライフル

 固有武器名:ロザリオ

 

基本情報

 生徒会「失楽園」で議長を務めている。

 白ロリータファッションを好んで着用している。リエの制服姿を見た事があるのは、七天魔の中だと同じ3年生のシエルただ1人である。

 実はハドマ学園で2番目に強い。

 ロリータ願望があるのにそれなりに背が高くて、そのギャップに悩んでいる。

 

 

【ムッツリ書記】天河(あまがわ)アンナ

【挿絵表示】

 

種族:天使

出身:ハドマ自治区

学年:2年生

年齢:16歳

身長:156cm

趣味:観察、アダルトグッズ集め

所属:失楽園(ダイモニオン・ソサエティー)

役職:書記

愛用品:スコープ*2、バイブ*3

元ネタ:アナエル

ヘイロー:

【挿絵表示】

 

 SPECIAL(BACK)

 レア度:☆3

 クラス:アタッカー

 射程距離:1000

 攻撃タイプ:爆発

 防御タイプ:軽装備

 屋内戦:D

 屋外戦:A

 市街地戦:S

 

 EX:下克上のとき(コスト4)

 攻撃力の990%分のダメージで敵を3回撃ち抜く

 

 NS+:観察者より愛を込めて+(強化時)

 25秒毎にHPが最も低い敵に対し攻撃力800%分のダメージ

 

 PS+:神を見る者+(強化時)

 命中率15.5%増加

 

 SS:神の栄光

 爆発タイプの味方全員の攻撃力を20%増加

 

 固有武器:スナイパーライフル

 固有武器名:平和の使者

 

基本情報

 生徒会「失楽園」で書記を務めている。

 二つ名に「慈悲の天使」というものがあり実際に慈悲を以て処理されるという。アンナ本人は、別にそんな事は考えていない。

 少し前まで、同じく生徒会にて会計を務めていたライムによって、ハジメテを奪われる。

 初めてのセックスでライムのテクに溺れた彼女はその後しばらく、生徒会の仕事などが終わった後はライムとホテル通いする事にハマった。

 その際に使用されたのが、ハドマ自治区6─9に建っているラブホテル。

 元は普段のスズのような縛らない髪型だったが、ライムに堕とされてからずっとライムと同じ髪型のツーサイドアップにしている。

 

 

【イタズラっこあくま天使】弖使魔(てしま)シエル

【挿絵表示】

 

種族:天使

出身:トリニティ自治区

学年:3年生

年齢:17歳

身長:145cm

趣味:リエとのペアルック

特技:アーチェリー

所属:旧連邦生徒会対策委員会→失楽園

役職:委員長→副議長

愛用品:抜け羽*4

元ネタ:シャムシエル

ヘイロー:

【挿絵表示】

 

 STRIKER(MIDDLE)

 レア度:☆3

 クラス:アタッカー

 射程距離:650

 攻撃タイプ:神秘

 防御タイプ:特殊装甲

 屋内戦:B

 屋外戦:SS

 市街地戦:B

 

 EX:こんな世界、燃え尽きろ!(コスト5)

 敵全体に対し攻撃力365%分の火傷持続ダメージを与える(36秒間)

 

 NS+:気分アゲてこ〜!+(強化時)

 15秒毎に一番近い敵1人に対し攻撃力115%分のダメージ

 

 PS+:私についてきな!+(強化時)

 攻撃力を11.5%増加

 自分がリーダーの時、追加で8.5%増加

 

 SS:天に弓引く愚か者

 25秒毎に手榴弾を投擲して、一番HPが低い敵を中心にして円形範囲内の敵全体に攻撃力514%分のダメージ

 

 固有武器:アサルトライフル

 固有武器名:ゾハール

 

基本情報

 親友であり生徒会長でもあるリエの代わりとして連邦生徒会対策委員会の委員長に就任していた。

 今は生徒会をクビになったルーシィの後継として副議長に就任している。

 水泳の授業がある日は制服の下に水着を着てくるタイプ。授業後、下着が無くてリエに貸してもらうまでがワンセットである。

 その為、水泳の授業がある日のリエは、シエルがそうする事を見越して予備の下着を持って登校するようにしている。

 なお、突発的に水泳の授業が入る事もあるので、そういう時はノーパンでやり過ごす。

 ノーパンで過ごしていた所をスズに見られた事があるので、スズからは隠れ露出狂と思われている。一方のスズは「性癖は人それぞれ」と性的な事への理解はあるので、口喧嘩になってもそれについては黙っている。

 シエル本人はスズに見られた事すらも知らない。

 

 

【誇り高き暴食の女王】鐘蟲(かねむし)スズ

【挿絵表示】

 

種族:悪魔

出身:ハドマ自治区

学年:2年生

年齢:16歳

身長:148cm

趣味:戦闘、食べ歩き

特技:大食い

所属:統治委員会

役職:委員長

愛用品:マイ箸*5

元ネタ:ベルゼブブ

ヘイロー:

【挿絵表示】

 

 STRIKER(FRONT)

 レア度:☆3

 クラス:アタッカー

 射程距離:450

 攻撃タイプ:貫通

 防御タイプ:弾力装甲

 屋内戦:S

 屋外戦:S

 市街地戦:S

 

 EX:あたしの邪魔をするヤツは喰ってやるわ!(コスト2)

 扇形範囲内の敵全員に対し、攻撃力の666%分のダメージ

 

 NS+:局所的暴食+(強化時)

 敵を倒した時、攻撃力を15%増加

 2人以上を同時に倒した場合、会心ダメージ率も同時に15%増加(50秒)

 

 PS+:2つの顔+(強化時)

 攻撃力19.0%増加と防御力19.0%増加の2つが、20秒毎に入れ替わる

 対象は自分のみ

 

 SS:気高き暴食の王

 30秒の間敵を倒さないでいると、自身に「空腹」状態を付与する

 空腹時は攻撃力が2.9倍になる(重複可)

 その後に自分の攻撃で敵を倒した場合は「空腹」状態と攻撃力増加を解除

 

 固有武器:サブマシンガン(2丁)

 固有武器名:バアル&ゼブル

 

基本情報

 ハドマ学園最強を名乗る。ハドマ学園の生徒達の大半が認めているものの、実際にはレイコが最強、次点でリエがスズを上回っている為、実際の所は、スズは三番手である。

 リエやシエルは先輩だが、敬語などは使わない。

 暴食を名乗るくらいには沢山食べるのが好き。

 実は先生に一目惚れしたのでハドマ学園における先生の案内役を買って出る。

 統治委員会の委員長として、ハドマ学園の転覆を目論むテロ組織「飂熾冘巫髏(ル・シュ・フェル)」を潰そうと奮闘中。

 

 

【良心の吸血鬼】零得(ぜろえ)ルビー

【挿絵表示】

 

種族:吸血鬼

出身:ハドマ自治区

学年:1年生

年齢:15歳

身長:148cm

趣味:ボクシング系、バイト(読モ)

特技:スズの居場所特定、木の剪定

所属:統治委員会

役職:副委員長

愛用品:ヘッドギア*6

元ネタ:ゼルエル(ゼロエル)、ケルビム

ヘイロー:

【挿絵表示】

 

 STRIKER(FRONT)

 レア度:☆3

 クラス:アタッカー

 射程距離:450

 攻撃タイプ:振動

 防御タイプ:軽装備

 屋内戦:S

 屋外戦:D

 市街地戦:A

 

 EX:プリンシパル☆スター(コスト5)

 最もHPが高い敵1体に対し、攻撃力1150%分の確定会心ダメージ

 その敵に一番近い敵1体に対し、攻撃力115%分の持続ダメージを付与(40秒間)

 

 NS+:脳筋ではありません+(強化時)

 20秒毎に攻撃力を15%増加させる

 

 PS+:唯一の知恵袋枠です+(強化時)

 ノーマルスキル3回毎に自分を含めた味方全体の攻撃力を20%増加(重複可)

 

 SS:回る炎の剣

 通常、EXを問わず、攻撃時に50分の1の確率で攻撃力310%分の火傷持続ダメージを付与(20秒)

 

 固有武器:ショットガン

 固有武器名:(ラハット)(・ハヘレ)(ヴ・ハ)(ミトゥハ)(ペヘット)

 炎が燃え盛るような模様が描かれている、砲身が太めのショットガン。

 

基本情報

 日光に弱いオーソドックスな吸血鬼であり、季節関係無く常に日焼け止めが手放せない。

 スズの強さに憧れ統治委員会に加入。副委員長に上り詰めることで直接的にスズを補佐できるからと実力主義の統治委員会でメキメキと成長を遂げる。

 なにかとスズをイジる事が多いルビー。

 しかし彼女の強さに嫉妬しているワケでも彼女を疎ましく思っているワケでもなく、素直になるのがただただ恥ずかしいからイジっているだけ。

 自分以外がスズをイジろうものなら割とキレる。

 自分達より七天魔歴が長く、また自分よりスズと接している時間が長いシエルだけは、渋々ながらもスズへのイジリを認めている。

 本当ならスズに甘えたいし、褒められたいとさえ思っているが素直に言えないでいる。

 読モのバイトもスズに「可愛い」と褒められたい一心で始めたのがキッカケである。

 なので今では、せめて自分が今より強くなって、本気のスズを倒す事で褒められようと思っている。

 

 

【成長の吸血鬼】零得(ぜろえ)ルビー(読モ)

【挿絵表示】

 

種族:吸血鬼

出身:ハドマ自治区

学年:1年生

年齢:15歳

身長:148cm

趣味:ボクシング系、バイト(読モ)

特技:スズの居場所特定、木の剪定

所属:統治委員会

役職:副委員長

愛用品:手鏡*7

元ネタ:ゼルエル(ゼロエル)、ケルビム

ヘイロー:

【挿絵表示】

 

 STRIKER(FRONT)

 レア度:☆3

 クラス:サポーター

 射程距離:450

 攻撃タイプ:振動

 防御タイプ:軽装備

 屋内戦:A

 屋外戦:S

 市街地戦:B

 

 EX:ブレイディ・ヴェーグ(コスト3)

 直線的に力任せに突っ込んで、範囲内の敵全員に攻撃力995%分のダメージ

 

 NS+:ヴァンパイアキッス+(強化時)

 40秒毎に、一番近くの仲間の攻撃力、移動速度、治癒力を125%増加させる(35秒間)

 

 PS+:足並みを揃えて+(強化時)

 ノーマルスキル3回毎に自分を含めた味方全体の攻撃力を20%増加(重複可)

 

 SS:ファンサの鬼

 味方の攻撃力、防御力、リロード速度のどれかをランダムで倍増させる(30秒間)

 ヒヨリが編成されている場合は、彼女のスキルの効果の全ての数値を50%アップ

 

 固有武器:ショットガン

 固有武器名:(ラハット)(・ハヘレ)(ヴ・ハ)(ミトゥハ)(ペヘット)

 炎が燃え盛るような模様が描かれている、砲身が太めのショットガン。

 

基本情報

 読モとして活動中のルビー。いつもより気持ちが引き締まっているからか、苦手な吸血鬼化も少しはコントロールができるようになったらしい。日光のデメリットはあるが、症状は少し抑えられている。

 なお、編成時の衣装はランダム。

 

 

【幼き太陽】樫田(かしだ)サエ

【挿絵表示】

 

種族:天使

出身:トリニティ自治区

学年:1年生

年齢:15歳

身長:146cm

趣味:お菓子作り

特技:誰かを癒すこと(無自覚)

所属:美食研究会対策委員会

役職:副委員長

愛用品:手動泡立て器*8、絆創膏*9

元ネタ:カシエル、アルミサエル

ヘイロー:

【挿絵表示】

 

 SPECIAL(BACK)

 レア度:☆3

 クラス:ヒーラー

 射程距離:650

 攻撃タイプ:貫通

 防御タイプ:特殊装甲

 屋内戦:S

 屋外戦:C

 市街地戦:C

 

 EX:支援参上!ですっ!(コスト5)

 ランダムの味方1人に対し治癒力66.6%、16秒の持続回復

 

 NS+:どっちがどっちで……+(強化時)

 最もHPが低い味方にEXスキルが当たった場合最もHPが高い敵に対し攻撃力530%分のダメージ

 最もHPが高い味方にEXスキルが当たった場合最もHPが低い敵に対し攻撃力350%分のダメージ

 味方が1人しかおらず両者が同一人物である場合敵全体に対し攻撃力880%分のダメージ

 

 PS+:第4の宮を司りし者+(強化時)

 味方の治癒力を20.9%増加

 

 SS:ただいま支援準備中です!

 味方の攻撃速度を17%増加

 

 固有武器:グレネードランチャー

 固有武器名:バンソーコー発射機

 

基本情報

 アスカへの届け物などの為に、七天魔の集まりに顔を出す事もしばしばあった為、七天魔の生徒との繋がりは、一般生徒の中では一番濃い。

 その為、密かにルーシィに目をつけられていたが持ち前の善性にて飂熾冘巫髏には加入していない。

 ドジでいつもどこか怪我しているので、絆創膏は常に持ち歩いている。

 ドジだがとても明るい、ゆるふわ系ロリ天使。

 

 

【堕天の女王】針村(はりむら)ルーシィ

【挿絵表示】

 

種族:天使→堕天使

出身:トリニティ自治区

学年:2年生

年齢:16歳

身長:166cm

趣味:レイコ観察

特技:作戦を練ること

所属:飂熾冘巫髏(ル・シュ・フェル)失楽園(ダイモニオン・ソサエティー)

役職:総長、元副議長

愛用品:鎖鎌*10

元ネタ:サハリエル、ルシファー

ヘイロー:

【挿絵表示】

 

 STRIKER(BACK)

 レア度:☆3

 クラス:サポーター

 射程距離:750

 攻撃タイプ:爆発

 防御タイプ:軽装備

 屋内戦:C

 屋外戦:A

 市街地戦:A

 

 EX:星々の先導者(コスト5)

 轟音の地雷を爆破、敵全体に攻撃力の550%分のダメージ、3〜5秒スタンさせる

 スタンさせる時間は敵の残りHPが多ければ長く少なければ短い

 その後に、EXスキルで倒した者を除いて、一番ダメージを受けた者1人に対して、パーティ全員が集中攻撃を仕掛ける(20秒間)

 

 NS+:傲慢な叛逆者+(強化時)

 サブスキルが12回発動する毎に、最もHPが低い敵1人に対し攻撃力240%分のダメージ

 

 PS+:天から零れ落ちた星+(強化時)

 通常攻撃時、3分の1の確率で攻撃力333.3%分の会心ダメージになる

 対象は自分のみ

 

 SS:知恵者の長

 通常攻撃12回毎に敵全体に対し攻撃力120%分のダメージ

 

 固有武器:マシンガン

 固有武器名:アポカリプス

 

基本情報

 生徒会「失楽園」で副議長を務めていたが離反。というより、最初から裏切り前提で加入していた。

 生徒会の副会長でありながらハドマ学園きってのテロ組織「飂熾冘巫髏(ル・シュ・フェル)」の総長である。

 ゲヘナ学園との併合を目的に活動し、その後は、ゲヘナ学園の敵対組織を潰して、次はゲヘナ学園を乗っ取ろうと企んでいた。

 実際の飂熾冘巫髏は、風紀委員会の幹部格のみで殲滅されうる程度の戦力ではあるものの、モルモとイオリはルーシィの策によって風紀委員会の支部に出向させられているので、この状況で戦争したら、ヒナでも倒す事はできず消耗戦を強いられる事に。

 幼い頃に、戦闘中のレイコと出会い、一目惚れ。

 幼い頃に遊んだ年上の友人「夢魔のプーさん」や

「蛇尻尾のラミィ」の仇討ちの為に、ハドマ学園に潜入して生徒会を潰し、ゲヘナとの併合を以て存在意義を消そうと目論む。

 なおプーサンはライムの実姉であり、ルーシィのハジメテの相手である。

 

 

【無垢なる狂戦士】博愛(はくあ)レイコ

【挿絵表示】

 

種族:吸血鬼

出身:ゲヘナ自治区

学年:1年生

年齢:15歳

身長:153cm

趣味:戦闘

特技:戦闘

所属:飂熾冘巫髏(ル・シュ・フェル)→失楽園

役職:副総長→会計

愛用品:グリモワール・オブ・レイコ*11

元ネタ:吸血鬼

ヘイロー:

【挿絵表示】

 

 STRIKER(FRONT)

 レア度:☆3

 クラス:アタッカー

 射程距離:?

 攻撃タイプ:?

 防御タイプ:特殊装甲

 屋内戦:A

 屋外戦:SS

 市街地戦:S

 

 EX:荒ぶる破壊神の顕現(コスト10)

 自分を中心とする特大円形範囲内の生徒に、敵や味方を問わず攻撃力1340%分の確定会心ダメージと10秒間銃での攻撃ができなくなる効果を与える

 戦車、ドローン含む機械系、遮蔽物、構造物等は問答無用で破壊

 EX使用後は攻撃力が10%増加

 

 NS+:幼き破壊神+(強化時)

 敵を倒す毎に攻撃力が15%増加

 20秒毎に一番近い敵に攻撃力850%分のダメージ

 

 PS+:強者との戦いを求めて+(強化時)

 ハドマ学園に所属している生徒の攻撃力が18.5%増加

 ただし「飂熾冘巫髏」に所属している生徒のみ、攻撃力が30.5%増加

 

 SS:眠りのとき

 10秒毎に命中率が10%減少する

 100秒経過によって命中率が100%減少した後は、ノーコストでEXを連発する

 

 固有武器:無し

 固有武器名:無し

 

基本情報

 根っからの戦い好き。ハドマ学園最強。

 小学5年生の頃、不良やらチンピラと戦っていた場面を当時小学6年生だったルーシィに見られて、一目惚れされる。

 レイコもまた、自分と比べかなりの頭脳派であり自分を確かな勝利へと導いてくれるルーシィの事が大好きになる。

 突然変異の吸血鬼。

 生まれながらに日光を克服している他、尻尾まで生えており、それでいて、ヒナのような飛び抜けて頑強な肉体を持つ。

 そんな彼女が溜めに溜めて発射する特殊な波長の超音波は、半径10m内の硬い物体ならば問答無用で共振破壊に至らしめるという変幻自在の破壊音波。

 そういう特殊な「神秘」を有している。

 美食研究会対策委員会にも所属しようとしていた過去があるが、有名なテロリストの美食研究会との戦争を見据えてのことである。

 戦いと甘いモノが好き。ただしゼリー、プリンは自分の超音波で共振破壊できないからと、少しだけ警戒しているらしい。

 本来なら我慢を強いられる事を嫌うが、強者との戦いの為ならば我慢できなくもないらしい。

 ルーシィの計画はレイコ自身が最強へ至る道にも通じている事から、ルーシィの計画に加担。

 幼い頃に遊んだ年上の友人「夢魔のプーさん」や

「蛇尻尾のラミィ」の仇討ち、ルーシィの補助の為一緒にハドマ学園に潜入して、ルーシィの組織内で副総長を務める。

 なお、プーサンはライムの実姉であり、レイコのハジメテの相手である。

 

 

【純粋な遊び人】萌山(もえやま)ライム

【挿絵表示】

 

種族:夢魔

出身:ゲヘナ自治区

学年:3年生

年齢:17歳

身長:165cm

趣味:女遊び

特技:籠絡、潜入

所属:飂熾冘巫髏(ル・シュ・フェル)失楽園(ダイモニオン・ソサエティー)

役職:第1幹部、会計

愛用品:ローター*12、ウーマナイザー*13

元ネタ:エンプーサ

ヘイロー:

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 SPECIAL(BACK)

 レア度:☆3

 クラス:サポーター

 射程距離:1000

 攻撃タイプ:爆発

 防御タイプ:重装甲

 屋内戦:S

 屋外戦:C

 市街地戦:A

 

 EX:お姉さんと、あ〜そぼっ♡(コスト6)

 10秒間、自分の前方扇形範囲内の敵全体に対して混乱状態を付与する

 機械系、戦車に乗っている敵などには通じない

 

 NS+:勝利のご・ほ・う・び♡+(強化時)

 1WAVE突破する毎に、味方全体対して治癒力の250%分の持続回復を付与(20秒間)

 

 PS+:もっと私を楽しませて♡+(強化時)

 治癒力を26.8%増加

 

 SS:まだまだイケるわよね?♡

 敵を5体倒す毎に、残った敵全体の防御力を10%減少、味方全体の防御力を10%増加(8秒間)

 

 固有武器:スナイパーライフル

 固有武器名:ハドマ式旧型ライフル

 

基本情報

 ハドマの生徒会「失楽園」で会計を務めていた。

 5年前のゲヘナ学園の抗争で実姉を失う。そこでルーシィが立てた復讐計画に加担する事にした。

 ルーシィが選挙で副議長に就任するのと同時に、女遊びが激し過ぎるとリエにより会計をクビに。

 またライムのクビについては突然の事ではなく、再三リエに注意されまくってからの措置であった。

 ゲヘナ風紀委員会の盛宮(もりみや)モルモとは、姉繋がりで知り合い、何度も百合セックスした仲である。

 幼馴染のルーシィやレイコなども例外ではない。

 姉を失った今、キヴォトスで唯一の純血の夢魔。

 実は尻尾があるが、性感帯の為、あんまり表には見せないようにしている。

 

 

【甘美な時間】三重(みえ)アスカ

【挿絵表示】

 

種族:悪魔

出身:ハドマ自治区

学年:2年生

年齢:16歳

身長:164cm

趣味:砂糖たっぷりのお菓子作り

特技:

所属:美食研究会対策委員会、飂熾冘巫髏(ル・シュ・フェル)

役職:委員長、第2幹部

愛用品:レシピブック

元ネタ:エレミエル、アスタロト

ヘイロー:

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 SPECIAL(BACK)

 レア度:☆3

 クラス:ヒーラー

 射程距離:450

 攻撃タイプ:神秘

 防御タイプ:重装甲

 屋内戦:A

 屋外戦:C

 市街地戦:A

 

 EX:オヤツの時間だよ!(コスト3)

 範囲内の味方全体に対し治癒力の145%分の回復

 

 NS+:過去と未来を視る悪魔+(強化時)

 15秒毎に、残りHPが一番少ない味方の防御力を33.4%増加(重複可)

 

 PS+:最高の癒し手+(強化時)

 治癒力を25.5%増加

 

 SS:頑張れば勝てるよ!……多分ね

 HPが半分未満の味方が2人以上の時、攻撃力を35.5%増加/50秒毎に最も残りHPが多い味方1人のHPを治癒力の130%分回復

 

 固有武器:ショットガン

 固有武器名:アシュトレト

 

基本情報

 ちょっぴり天然っぽい所がある。

 お菓子作りが好きなだけの、ただの女の子。

 晄輪大祭の時はお菓子の屋台を出していたものの

「砂糖が多すぎる、口にベタつく、甘過ぎる」と、ハルナにボロクソに言われて屋台諸共爆破された。

 それがキッカケで、大運動会の直後に美食研究会対策委員会を立ち上げて、美食研究会を潰そうと、復讐を目論んでいる。

 イズミはパクパクと誰より食べてくれたものの、なにか歯磨き粉のようなゲテモノを掛けて「もっと美味しくなった!!」と言われて、ブチギレた。

 アカリに「お菓子本体より砂糖でお腹いっぱいになりそうです☆」と言われ、これまたブチギレた。

 アスカの恨みの対象に入ってないのは「甘いけど美味しい」と言ってくれたジュンコのみである。

 実妹であるアガリが飂熾冘巫髏の構成員だったと判明してからは、アスカも同じく構成員に堕ちた。

 しかし、プライベートにも踏み込んでくるような節がある妹とは、ほんのちょっぴり仲が悪い。

 アスカはそれについて悩んでいるが、当の妹は、姉とはいえ自分とは違う人間だから──と、完全に割り切っている模様。

 飂熾冘巫髏に加入後、ライムに可愛がられているアガリを見て、胸がモヤモヤしていた。

 

 

【女子高生迷探偵】三重(みえ)アガリ

【挿絵表示】

 

種族:悪魔

出身:ハドマ自治区

学年:1年生

年齢:15歳

身長:161cm

趣味:探偵ごっこ

特技:潜入

所属:飂熾冘巫髏(ル・シュ・フェル)、美食研究会対策委員会

役職:第1幹部補佐

愛用品:メモ帳&ペン*14

元ネタ:エレミエル、アガリアレプト

ヘイロー:

【挿絵表示】

 

 STRIKER(BACK)

 レア度:☆3

 クラス:サポーター

 射程距離:1000

 攻撃タイプ:貫通

 防御タイプ:軽装備

 屋内戦:A

 屋外戦:D

 市街地戦:B

 

 EX:成長途中の迷探偵ちゃん(ライジング・プライベート・アイ)(コスト4)

 味方1人に対して、会心値を34%増加。更に会心ダメージ率を72%増加(18秒間)

 

 NS+:掴むは胃より弱点+(強化時)

 40秒毎に敵1人の防御力を0にする(5秒間)

 

 PS+:最高機密も私の手に+(強化時)

 防御力を38%増加

 

 SS:バレたらマズイ事でも?

 自分のスキルで会心値を強化した者が敵を倒した場合、1人につき18%、SPECIAL枠の生徒も含めて味方全体の攻撃力が上がる(重複可)

 

 固有武器:スナイパーライフル

 固有武器名:開示くん

 

基本情報

 アスカの妹。姉とは違ってショートヘアであり、白い翼である。

 飂熾冘巫髏の総長であるルーシィによって、姉のアスカが居るからと、監視と勧誘を目的として姉と同じ委員会に送り込まれている。

 その為か、普通に美食研究会対策委員会としても活動しているが、お菓子作りはあまり上達しない。

 プライベートに踏み込むような発言も普通にする性格の為、姉からは少し距離を置かれている。

 本人は「姉とはいえ他人だから多少は仕方ない」などと間違った方向に割り切っている。

 飂熾冘巫髏への加入後は、同じくスパイや調査を得意とするライムに従うようになる。そこで彼女にハジメテを奪われ心酔する事になる。

 ライムとしてもホイホイ言うことを聞くアガリは可愛いペットのようなモノで、性欲処理にアガリをよく付き合わせる。

*1
丁寧に応対する時の必需品である。

*2
観察が趣味であるアンナは望遠鏡を有している天見ノドカを勝手に敵視している。なお、もう1つの趣味さえ無ければ、アンナはもっと良質なスコープを購入できる。

*3
ホテルでライムにイジめてもらった時の事が忘れられない。

*4
抜け羽を使って弱点(意味深)を擽る遊びにハマっている。

*5
箸、スプーン、フォークはスズの三種の神器。

*6
誰しも、頭への一撃は割と致命的なものである。

*7
細かなメイクの手直しはモデルの必須スキル!

*8
手で泡立てた方が、自分で作った実感が出るのだそう。

*9
ドジで、よく怪我をしてしまう為。

*10
レイコとは違って接近戦が苦手なので、銃以外に遠距離戦ができそうなものは──と模索した時期があった。

*11
戦術や作戦、戦果などを記録しておくレイコ専用のメモ帳。アスカが飂熾冘巫髏に加入した後はアスカからお菓子作りを教わっているので、そのレシピなどもメモしている。実は、日記バージョンも存在しているらしい。

*12
ムラつく日はすぐにヤレるようにローターで濡らしておいてある程度濡れてから適当な子をナンパする。

*13
膣内のみならずクリの開発も欠かさない。モテる女は、自分磨きを欠かさないものである。

*14
スパイが得意なライムと同じく、調査などが得意なアガリの必需品である。




作者が思う「彼女にしたいハドマ生ランキング」

1位:サエ
 妹系、小動物系、ゆるふわ系などの甘々な属性をコンプリートしている天然系女子
 あま〜いお菓子、さっぱり食べられるお菓子など様々なジャンルのお菓子もお手の物である
 誰より甘い匂いで思わず抱き締めたくなる
 感情も表情も豊かで、見ていて飽きる事は無い

同率1位:ルビー
 ロリ系モデルのサンドバッグになりたい♡
 撮影が好きなのでドンドン写真を撮ってあげよう
 自分が可愛いと理解していながらも、ぶりっ子な様子は見せずさり気なくアピールしてくるところがいじらしい
 幼い体格に似合わず大人っぽいところがある
 というより、身体が幼いからこそ、中身だけでも早く大人にならざるを得なかったのかもしれない

3位:ルーシィ
 智略で攻めてくる系女子
 ツラが良いから忘れがちだがかなり理屈っぽいしネチネチと言葉で攻めてくる事がある
 感情と論理を分けて思考できる優等生タイプ
 理屈っぽい所が嫌になる事もあるが自然と身体はルーシィの元へ向かっていく

4位:レイコ
 常に自信満々、自分に真っ直ぐな女王様タイプ
 己に絶対の自信があるからこそ「そんな私が彼女なんだからあんたも自信持ちなさいね!」と強烈に背中を叩きながら励ましてくれる
 SMプレイしようものなら極めて高レベルなSな女王様を演じてくれるであろうこと請け合い
 椅子になりたい

5位:アスカ
 甘いお菓子専門だが彼女のお菓子は確実に疲れが吹き飛び、癒しを得られる
 他人を思いやるばかりで自分を顧みないところは数少ない彼女の欠点である
 ちょっぴり天然だがそれもまた良し

6位:スズ
 ツン1割、デレ9割のツンデレで、王道には遠い
 かなり尽くしてくれるしラブラブになれることは絶対に間違いない
 身を呈して守ってくれる上、ルビーに次いで腕に自信があり、暴力系ヒロインも兼任できる系女子
 漫才(ツッコミ)も割とできる方だったりする

7位:アンナ
 ムッツリスケベが好きなら最高かもしれない
 彼女と付き合い始めると、こちらの裸体や行為を想像して顔を赤らめるアンナに遭遇する事がグンと増えるだろう
 ムチャクチャになるまで愛してあげよう

8位:ライム
 色んな女子に手を出すので、浮気、そしてレズが許せる者しかライムとは付き合えない
 どちらかというとSなので、ちょいMのレズ好きくらいの男でないとライムとは付き合えないだろう

9位:シエル
 彼より友達を優先する系女子
 それだけなら全然いいがデートの際のお会計では財布を取り出す素振りすら見せない系女子でもある
 コツコツとバイトをして稼いではいるが、彼には全く使わず友人との交遊費として消えていくばかり
 ロリ系天使が好きなら最高かもしれない

10位:リエ
 服にかなりのお金を使う系女子
 ファッションに興味無い者が見ると殆ど差が無い白ロリファッションばかりを集めるので「その服、昨日の服の差分?」と問いたくなってしまう
 もちろんリエは(静かに)キレる
 パワー系、巨乳が好きなら最高かもしれない

11位:アガリ
 秘密を暴こうとしてくる、理由無く尾行してくる
 決してヤンデレやメンヘラなのではなく理由無く尾行してくるし秘密を暴こうとしてくる、スマホを覗いてくる、ロックを解除しようとしてくる
 ストーカー系の女子が好きなら最高かもしれない


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スズ編第1話:ハドマの統治委員長

 

先生

 

スズだけど

 

今日の案内についてだけど

ちょっと集合時間に遅れそう

 

分かった

気を付けて来るんだよ

 

ありがと

忙しいのにごめん

 

時間はあるから気にしないで

絆イベント          

 スズの絆ストーリーへ    

 

EP1 ハドマの統治委員長

 

絆ストーリーの報酬

 

???×10

 

絆ストーリーを始める

 

───────────────────────

 

 ハドマ学園を中心とした騒動も終わりを告げて、世間が落ち着きを取り戻し始めた頃……。

 遅れるかもしれないとのことだったので、約束の時間丁度くらいに到着するように時間を調整して、スズとの待ち合わせ場所に向かってみた。

 事前に伝えてくれただけあり確かに元々の約束の時間には遅れてしまったものの、程なくしてサイドテール状態のスズが待ち合わせ場所にやってきた。

 

「ごめん先生っ、お待たせ!」

 

「そんなに待ってないから大丈夫だよ」

 

「待った人の常套句じゃん!……はぁ、はぁ……」

 

 膝に手を付き、肩で大きく息をしている。見れば分かる通りかなり急いでいたようだ。サイドテールだったのはツインテールを解く途中だったようで、走りながらヘアゴムを解いていたら髪と絡まって、仕方なくこのまま来たのだそう。

 

「ツインテールにしてたって事は……ここに来る前に戦ってきたのかな?」

 

「よく覚えてるね、先生!あたしの戦闘モードは、ツインテにしてからが本番だかんね〜」

 

 ハドマ学園の統治委員長、鐘蟲スズは、ちょっと変わったルーティンの持ち主だ。

 戦闘時には、そのロングヘアーをツインテールにすると、やる気がアップするらしく、戦闘をかなり有利に進められるらしい。

 ただし、上手く髪を分けられないと逆に戦力減になりかねないので、より早くより綺麗に髪を二分割するのが肝要なのだそう。

 

「実は、また飂熾冘巫髏(ル・シュ・フェル)のザコ共が暴れてね」

 

「!」

 

「ルーシィの指示なのか、他の幹部の指示なのかは分かんない。けどまぁ、チンピラレベルのザコだし別にいいんだけど……相ッ変わらず数が多いのよ!!ホントにさぁ!次から次へと湧いてくるもん!!」

 

「お疲れ様……」

 

「マジでお疲れ様だわ!こういう時に限ってルビー居ないしさぁ!いやまぁ、飂熾冘巫髏が暴れるのは別にいつも通りなんだけど……」

 

「あれ、ルビーはどうしたの?」

 

「今日は撮影。ほら、今月号は飂熾冘巫髏の騒動で撮影できなかったでしょ?だから代わりに、ルビー単体の本を出す為に撮影しまくりなのよ」

 

「ルビー単体!?そりゃ凄いね……」

 

「当然よ、ハドマ1の売れっ子モデルだもん♪」

 

 スズ率いる統治委員会のナンバー2、副委員長の零得ルビーは、バイトとして読モやらのモデル業で稼いでいるそうだ。そのバイト代の一部は、彼女ら統治委員会の活動資金の一部になっている事から、スズとしてもルビーの活動をバックアップした方が後々お得に働くのだそう。

 ────だが、先日の飂熾冘巫髏の騒動の鎮圧に統治委員会として奔走したお陰で、今月号の雑誌にルビーが載る事は無かった。

 ただ、ルビーは売れっ子なので、出版社としても何も出さないワケにはいかないようだった。今日の撮影はまさに、普段の雑誌の代わりに彼女単体での本を出す為の撮影なのだそうだ。

 

「まーそんなワケでさ。しかもそんなタイミングで飂熾冘巫髏のザコが暴れ出したから……」

 

「最悪なタイミングだったワケだ」

 

「そーそー……ホンット疲れちゃうわー」

 

 スズの戦闘能力──というより特性ってヤツか。彼女の特性として、素の攻撃力がとんでもなく低い代わりに、時間経過と共に爆上がりしてくるというものがある。ただしそれも、ルビーの補佐があってやっと輝くようなものだ。

 スズだけでは満足な運用は難しいだろうに……。

 

「……それで、今はどこに向かってるの?」

 

「あ、言ってなかったっけ。スイーツ店よ、なんか甘い物が食べたくなってさー」

 

「疲れた時にはそれが一番だよね。何でも好きなの注文してね。お疲れ様って事で私が出すから」

 

「ホント!?……ホントに言ってるの!?」

 

「いつも頑張ってるからね」

 

「〜〜〜〜〜ッ……頑張って良かったぁっ……!!」

 

 きゅっと可愛らしく手を握り満面の笑みになる。奢るだけでそんな可愛い笑顔を見せてくれるなら、私としても、奢り得ってものだ。

 そのまま2人並んで彼女イチオシのスイーツ店へ移動。学校終わりの時間だからなのか、それなりに混んでいるようで……。

 

「んー、並んじゃってるかぁ。せんせーって並ぶの大丈夫な人?」

 

「うん、3時間くらいなら待てるよ」

 

「それは気が長すぎじゃ……?いやさ、たまに待つのスゴく嫌いな人って居るじゃない?だから確認だけしとこうって思ってさ」

 

「そうなんだ。私の知ってる子は大体が待てるから少し新鮮かも」

 

 トリニティのスイーツ店の方が並んでいるから、このくらいなら、私からすれば並んでない判定でも構わないくらいだ。20人も並んでないし……。

 

「オラッ、退きなァッ!」

 

「邪魔だ邪魔だぁ!」

 

「きゃっ!?な、何なのよあんたら!?」

 

「あぁん?……あっ、テメッ……」

 

「おうおう統治委員長サマかぁ!?買い食いなんてしてもいいんか?統治委員長サマがよぅ!!」

 

 ハドマの制服──見たところ、飂熾冘巫髏の残党らしかった。残党が2人ほど私達の前に割り込み、オラついて他の客を追い払っている。

 

「ハドマの校則に『買い食い禁止』は無いでしょ。それよりあんたら、割り込むんじゃあないわよッ!先に並んでたのはあたし達なんだから!」

 

「へっ、関係無いね!なんなら今ここで、テメーに復讐しても良いんだ!」

 

「部下も居ない、副委員長は休み!今ここで、処理してやんよ!」

 

 パチンと指を鳴らす、するとどこからともなく、10数人前後の飂熾冘巫髏の残党がやってきて、私とスズを囲んでしまう。

 

「うっそ、囲まれた……ッ」

 

「私が指揮する。大丈夫だよ」

 

「っ!……うんっ!お願い、先生!」

 

 そして、私の指揮にて飂熾冘巫髏を撃退するも、戦闘が終わった頃には、お店の人も避難したらしく既に閉店してしまっており、並んでまで食べようとしていたスイーツは、堪能できなかった……。

 

 ◆

 

あーもうっ、ホント最悪!

それもこれもルーシィのせいよ!

 

今回は偶然だと思うけど

 

まぁ……ドンマイってヤツだね

 

ドンマイで済む!?

 

先生もかなり危なかったでしょ!

 

私は何ともなかったからセーフだよ

 

見てて危ないのよ!

 

今度はリベンジするわよ!

絶対にスイーツを食べてやる!

 

先生と2人で!

 

楽しみにしてるね

 

もし戦いになっても任せてよね!



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ルビー編第1話:たった1人の少女

本当はスズ編2話を投稿する予定でしたが、挿絵が使えないバグが発生中らしいので先にルビー編に。
早急に対応を願います……。
てか運営さんこの数日間ずっと反応無いが大丈夫?



 

先生

 

お疲れ様です

 

ハドマ1のアイドルから連絡が来た!

今日は良い日になる!!

 

何ですかそれ

 

あと私はモデルです

 

そんな事よりちょっと先生に

相談したい事があるのですが

 

大丈夫ですか?

 

いつでもいいよ

 

良かった

 

来てください

 

校門前で待ってます

 

わかった、すぐ行くね

絆イベント          

 ルビーの絆ストーリーへ   

 

 

 

EP1 たった1人の少女

 

絆ストーリーの報酬

 

???×10

 

絆ストーリーを始める

 

───────────────────────

 

 ルビーから連絡を貰った私は、急遽ハドマ学園へ急行する。彼女の文から何やら「良くない」ものを感じ取った。これは何だろう。一種の勘だろうか。第六感が働いた、虫の知らせと感じ取った、とでも言うべきか──そう、胸騒ぎがしたのだ。

 待ち合わせ場所である校門前に行くと、ルビーが俯きながら塀に寄りかかっていた。モデルだけあり黙っていても非常に絵になる少女だ。

 しかしどこか彼女の様子がおかしい。(しお)れているというか、シナシナになっているというか。しかもよく見ると、目元が赤い。泣き腫らした跡のように見える。

 

「や、ルビー」

 

「先生……。待って、ました……」

 

「……何か、あったの?」

 

「……歩きながら、話せますか?」

 

「うん」

 

 学園前を出発、適当に近くの河川敷を歩く事に。

 晴れの昼間なのに吐く息も真っ白な寒空の下で、川のせせらぎを聞きながら、ゆったり歩く。自然に身を任せるようなこの空気感は、激しく泣いた後のような彼女の心を落ち着かせるのに十分であった。

 

「実は今日、というかさっき──リンチに遭って」

 

「……え」

 

「まぁそれ自体は割といつもの事なんです。例えば数だけ多い飂熾冘巫髏(ル・シュ・フェル)との戦闘だと、割と普段からそうなりがちですから。でも、今日は……その……」

 

「飂熾冘巫髏に強いヤツが居た、とか?」

 

「いえ、飂熾冘巫髏は関係無くて。あ、いや、関係ある事はありますが、ちょっと事情が違くて……」

 

「?」

 

「────以前、議長が先生を初めてハドマ学園にお招きした時に、こう言ったのを覚えていますか?

『私以外の吸血鬼は全員が飂熾冘巫髏だ』……と」

 

「覚えているよ。寧ろ、どうしてルビーだけずっと統治委員会に居るんだろうって疑問に感じたくらいだからね、忘れるハズないよ」

 

「その飂熾冘巫髏の吸血鬼──同族が、私に『この裏切り者』だの『吸血鬼の面汚し』と、それはもう酷い八つ当たりをしてきたんです」

 

「……酷い」

 

「そもそも裏切ってなんかないんですけどね、私。飂熾冘巫髏に入った事も無いし。でも『同族の者は全員が飂熾冘巫髏に加入してるからそれに倣わないお前は裏切り者だ』と。吸血鬼のコミュニティからハブられて久しいですけど、まさか飂熾冘巫髏との決戦の後に、改めてこんなリンチされるだなんて、全く……思いもよりませんでしたよ」

 

 騙されて呼び出されたりなんかしたのだろうか。とても自嘲的に思える笑いをフッと小さく漏らす。

 大きな溜め息をつき遠い目をしながら話し出す。

 

「──現代のキヴォトスは、自治区は別れていても民族的にはそこまで大差ありません。なんなら今は

『天使』や『悪魔』や『獣人』という実に大雑把な括りがある程度ですから。そんな中、どうして私達だけが自ら『吸血鬼』と固有の名称で自称するか、分かりますか……?」

 

「……ごめん、分からない」

 

「私自身はこのハドマ自治区が地元です。ですが、私の家はゲヘナ自治区が由来です。そしてハドマに籍を置いている他の吸血鬼の子も。──かつては、どの吸血鬼の家もゲヘナにありました。ある時期を境に、このハドマに『民族大移動』をしたんです。治安が悪くなりつつあったかつてのゲヘナを捨て、安穏としていたハドマを選んだのだと思いますが」

 

「……ふむ」

 

「どうして私達が『悪魔』ではなく『吸血鬼』だと名乗るのか。それは、私達が、純血の吸血鬼だからなんです。現代のキヴォトスには、もう、私達しか純血の吸血鬼は残ってはいません。唯一の例外は、ゲヘナ学園にお住まいの──モルモさんでしたか。その方だけなんです」

 

「モルモ以外は、純血の吸血鬼の子はハドマにしか居ない……?」

 

「少なくとも私はそういう認識です。他の自治区に吸血鬼なんて居ないでしょう。──この『純血』が何を意味するのか……先生、ご存知ですか?」

 

「……純血……『血』だし……血の繋がり、とか?」

 

「はい。血にこだわる性質(タチ)ですからね、吸血鬼は。だからなのか、血統主義とでも言うんでしょうか、血の繋がりを重視しがちなんです。言うなれば──ハドマ学園の吸血鬼は全員が親戚縁者なんです」

 

「ッ!!」

 

「そんな中、飂熾冘巫髏に加入しない零得ルビーの存在はどれだけ一族のコミュニティの中で目立ち、どれだけ目障りなことでしょうか……」

 

「……えらく目立ちそうだね」

 

「現在進行形でえらく目立ってます、リンチされるくらいですし。ふふっ……」

 

「いや笑えないよ……」

 

「────先生。私は、一体どうするべきだったんでしょうか」

 

「!」

 

「一族の流れに身を任せて、統治委員会──先輩を裏切ってでも、飂熾冘巫髏に加入して、あの戦争でスズ先輩と戦うべきだったんでしょうか。だけど、それをした所で、先輩との関係が崩れるばかりか、指名手配されるだけだと思うんです。読モ業(しごと)からも離れなくてはいけません。そしたらファンの方──主にヒヨリさんとかを悲しませてしまいますよね。でも……私は統治委員会のルビーで居たいんです」

 

「……それでいいと思う。時には流されることも必要かもしれない、だけど流されるばかりじゃダメだ。特に、飂熾冘巫髏はテロ組織なんだから。ルビーはよくやってるよ。よく、自分で考えて決断したよ」

 

「私も、例え嫌われようと、ハブられようと、私の決断は間違ってなかったって思ってますよ。でも、あの子達も、この世界中で数少ない同族なんです。仲良くしたいって思うのは……変でしょうか……?」

 

「変ではないよ。ルビーらしい優しさだって思う。だけどそれを実現するには──まずは飂熾冘巫髏を解体しなくちゃね」

 

「ッ!!」

 

「組織を潰せば加入するしないの問題も消えるし、少しは変わるんじゃないかな……って思うよ」

 

「やっぱり、統治委員会の副委員長として、もっと頑張るしかない、ですねっ……!」

 

「そうだね。応援してるよ」

 

「ありがとうございます、先生」

 

「何かあったら、すぐに頼ってね。いつでも君達の力になるから」

 

「……はいっ♪」

 

 ◆

 

あれから学園に帰るまでに

4人の構成員を捕まえました

 

4人も!?

 

これで少しは飂熾冘巫髏潰しも

進んだでしょうか……?

 

かなり爆速で進んだと思う……

 

それなら良かったです

 

……先生

 

また、よろしくお願いしますね

 

色々とね



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ルビー編第2話:自己研鑽は忘れずに

 

先生、付き合ってください

 

いいよ!!

 

……言葉足らずでした

「特訓に付き合ってください」です

 

失礼しました

 

いいよ!!

 

どういう意味の「いいよ」なんだか

よく分かりませんけど……

 

勘違いされても知りませんよ?

 

勘違い上等!

 

そんなこと言えないようにさせるから

 

えっ

絆イベント          

 ルビーの絆ストーリーへ   

 

EP2 自己研鑽は忘れずに

 

絆ストーリーの報酬

 

???×1

 

絆ストーリーを始める

 

───────────────────────

 

 ルビーに呼ばれた私はハドマ学園の第1体育館へやってきた。鍵は開いているから好きに入っていいとのことなので、遠慮なくそうさせてもらう。

 しかし何やら様子が変だ。ルビーではなく体育館そのものの様子がおかしい。まるで、中で映画でも見たり、スクリーンに映像を投影しているように、内部が暗い。どうやら、体育館内に設置されているあの分厚くて黒い遮光カーテンをしているらしい。

 体育館内は普通に電灯を点けているらしく、外と変わらない明るさだった。尚更、何故カーテンなど閉め切っているのか分からない。

 

「ルビー、居る?……あ、居た」

 

「あ、先生。早かったですね」

 

「たまたまだよ。さっきまで、ゲヘナ自治区内での仕事があったものだから」

 

「成程です」

 

 体育館らしくバスケットボールのゴールリングが幾つも設置されていて、ルビーはその中の1つに、何度も3ポイントをキメていた。普通に上手い。

 私に気付くと、体育倉庫らしい近くの扉を開けて無造作にボールを投げ入れる。ボールの籠なんかが中にあって、そこにシュートで入れたんだろう。

 私も学生の時分にはよくやった。寧ろ、ボールを片付けるのに「置きに行く」者など居るだろうか?大抵は、籠があるなら「投げ入れる」だろうな、と何となくだがそう思っている。

 

「それで、特訓っていうのは?まさか体育とか?」

 

「えぇ、まぁ……体育と言えば、体育ですかね」

 

「?」

 

「ですが、これは……保健体育かもです……♡」

 

「────ッ!?」

 

 ハドマ1の美少女モデルのルビーと行う保健体育なんて、そんなの、セックス一択だろう。喜び勇みスーツを脱ぐが、当のルビーは……。

 

「あ、別に脱がなくても結構ですよ」

 

「着衣がお好みなのね!?」

 

「??……まさかとは思いますが、先生……そっち(・・・)を思い浮かべて……?」

 

「!!」

 

「全く────まだ早い(・・・・)ですよ、せ・ん・せ♡

 

「ゔっ♡」

 

 唐突な美少女吸血鬼モデルの耳元囁きASMR、助かるゥ〜……♡

 

 ◆

 

「あ。……はぁ。少しは落ち着きました?先生?」

 

「お陰様で……ふぅ」

 

「なら良かったですが……」

 

 体育館近くのお手洗いを借りて「処理」した私は冷静になった頭で体育館に戻る。その間、ルビーは今度はバレーボールでサーブの練習をしていたが、先程と同じように、床にスパイクを打つようにして体育倉庫にボールを返却していた。

 

「それでですね、保健体育かもっていうのは、実は私の生態に関わる事だからでして」

 

「ルビーの……って事は、吸血鬼のって意味?」

 

「はい。吸血鬼は、交配だけでなく吸血する事でも同族──いえこの場合は『眷属』と呼ぶ方が語弊が無いでしょう。吸血で眷属を増やせるワケですが、実は、生まれつき備わっている機能にも関わらず、速く走るのと同じように、ある程度とはいえ研鑽が必要らしいんです」

 

「成程、だからそれに付き合って欲しいと」

 

「はい。私がコレを苦手としているのはスズ先輩に聞いているでしょう?」

 

「あー……うん」

 

 やたらボロカスに言ってたから記憶に残ってる。確か3日くらい吸血鬼化したままなんだったっけ。だけど私の場合はそうなると困るんだよなぁ……。

 

「可逆性があるって事は聞いてる。でもその技術の終着点は、本物の『眷属』を完成させる事でしょ?それだと特訓に付き合ってる内に、ルビーの技術の向上に伴って、私も、本物の吸血鬼になっちゃうと思うんだ。それだと色々と都合が悪くてさ……」

 

「──先日、ゲヘナ学園の風紀委員会と、交流会を行いまして。その場で、風紀委員会のモルモさんに吸血鬼の技能について、軽くご指導を頂きました。少なくとも注入するエキスの量で調節できますし、私の技術が成長しても先生の事は本当の吸血鬼にはしません」

 

「うーん……」

 

 これはどうするべきだろう。もしも「私は人間をやめるぞ!ミカーッ!!」状態になったとしたら、それはきっと大変な事になるし、なによりルビーが色々と思い詰めてしまうかもしれない。

 

「……先生。どうしても、ダメ……ですか……?」

 

「うっ」

 

 もしもの時の事を考慮して頭を悩ませていると、上目遣いの彼女がうるうるした瞳で見つめてくる。見ているだけで吸い込まれそうな真紅の瞳が、私を真っ直ぐ、逆らえぬ可愛さを帯びて見つめてくる。こんなの、どう逆らえと言うのだ────。

 

 ◆

 

「──それで、どうやって『吸血鬼化エキス』?を私に投与するの?ホントに吸血しながら?」

 

「吸血しながらです。私達の吸血には2パターンがあります。1つは食事の為の。もう1つが、眷属を増やす為のモノです。前者はただ血を吸うだけで、後者は血を吸いつつ己のエキスを注入するんです。その使い分けは本能で理解し生まれつきできます」

 

 蚊みたいなものか。蚊も、血を吸うだけじゃなく自分の唾液を注入する。それが痒みの元になるのは有名な話だ。吸血鬼の場合はそれが、痒みではなく吸血鬼化として表れるらしい。

 

「じゃ……いただきますね、先生の血……♡」

 

「っ……」

 

 首に噛み付くらしいので、首元を大きめに露出し彼女に差し出す。大きく牙を剥き出したルビーは、私に抱きつくように手を回して身体を固定すると、ズブリと深く牙を突き立てた。

 一瞬だけ鋭い痛みが走った。しかし次の瞬間には痺れるような甘い感覚が噛まれた部分を中心にして全身に広がるようになった。

 

「あッ……?なっ……何、これ……ッ」

 

 じんわりゆっくりと、私の身も心も浸食してくるような快感の波に襲われる。

 手コキされるような一気に押し寄せてくる波ならどれだけ良かっただろうか。こんなにもじんわり、じんわりと──沈没していく船舶の中で、どんどん酸素が減っていくような感覚に近いかもしれない。

 あまりにゆっくり襲い掛かってくるから、いっそ一思いに殺し(イかせ)てくれと願いたくなってしまうような快感の広がり方だ。

 

「……♡ はぁ……あ゙っ…………クッ……うぅ……♡」

 

「ぷは……っ。先生の血、濃いですね。しかも少し、ドロッとしてます。あまり健康的ではない味です。でも、嫌いじゃない……寧ろ好きかも、です……♡」

 

 ペロッと噛み跡を舐めて、垂れた血を舐め取る。不意に熱い舌で首を舐められて、背筋がビクビクと震えてしまった。

 

「なんで、噛まれて気持ちイイの……っ……」

 

「そういえばまだ言ってませんでしたね。吸血鬼に吸われるの、気持ちイイんですよ。子孫を残す為の行為であるセックスが気持ちイイのと同じですね。私達にとって、眷属を増やすのは第二の生殖行為と言えます。気持ちイイのは、ある意味で当然です。まぁ、セックスと同じだと言っても、私はまだ処女なんですけどね」

 

「ゔっ……♡♡」

 

 ルビーが処女だという情報を得た直後、反射的にルビーを抱く腕に力が籠る。

 

「っ……先生、力が強くなってます……?」

 

「え」

 

 力が強くなった自覚もあまり無いまま、背中に、ムズ痒さを感じる。やがてワイシャツやスーツ等を突き破り、肉厚で力強さのある悪魔の──吸血鬼の翼が、私の背中から生えた────!!

 

「えっ……えええええっっ!?ちょっ、私、これっ、人間やめてない!?」

 

「おぉ……眷属化で翼まで生やせたの、初めてです」

 

「ええっ!?いつもはどうだったの!?」

 

「せいぜい力が強くなり、牙が伸びて、私と同じく眼が紅くなり、日光に弱くなる程度でした。元から翼が生えてるからとかではなく、新たに翼が生える等も無かったです。翼が無いリエ議長の事も以前、少し吸血鬼化させた事がありますし、それは確かなハズです」

 

「ルビーも割と色んな子に手を出してるね!?」

 

「七天魔って、横の繋がりは割と強いので……」

 

「そういう問題かなぁ……?」

 

「まぁ、何にせよ──体育館の遮光カーテン、予め閉めておいて正解でしたね。もしも開けていたら、吸血鬼化と同時にジリジリと焼かれていましたよ」

 

「ヒェッ」

 

「一気に焼けることはないと思いますけどね。私、少し苦手な程度ですし、今の先生はそんな私の眷属ですから」

 

「……?弱点は眷属に引き継がれるの?」

 

「ええ、大体の場合はそうですね。私は日光だけが苦手なんですけど、人によってはニンニク、流水、銀、行った事の無い場所、炒った豆──などなど。人によって苦手なモノは様々ですし、複数のモノが苦手な場合もあります」

 

「十字架は?ファンタジーだと十字架もよく弱点とされてる事が多いけれど」

 

「十字架は平気です。基本的に皆、無宗教なので」

 

「無宗教」

 

「日光が弱点なら焼け、酷ければ爛れます。最悪の場合は蒸発するように消えるとか。まぁ単なる伝説レベルですが、そう聞いた事があります」

 

「ひっ……」

 

「ニンニク、銀、炒った豆は……まぁ大した事ないと思います。アレルギーのようなものですし、程度があるようですが、最悪死ぬとはいえ酷くても重症で済みますから」

 

(それもかなりヤバくない……?)

 

「問題は流水ですね。シャワーを浴びられないのはもちろん、川にも近付けません。橋を渡るにしてもかなり高い橋でないと渡れません。もっと言うなら雨すらもダメです」

 

「え……じゃあそういう子はどうしてるの?」

 

「簡単な話ですよ。シャワーを浴びられないので、バスタブにお湯を溜めて、慎重に入り、風呂の中で身体を洗うんです。髪を洗うのさえ、風呂の中で。髪を流すのも、ゆっくり潜って、石鹸が流れるまで手揉み洗いするんです」

 

「……大変、だね……」

 

「日光と流水は生活に支障が出まくりですからね」

 

「もし流水に触れると、どうなるの……?」

 

「大きく分けて2択です。身体が動かなくなるか、逆に、手が付けられないくらい大暴れするかです。前者なら誰かが運ぶか放置するしかありませんし、後者なら体力が完全に尽きるまで放置してひたすら暴れさせるか、どうにか気絶させるか、ですね」

 

「た、大変だね、吸血鬼って……」

 

「大変ですよ。ただその分、他の平均的な悪魔の方よりも膂力はありますし、特殊な技能もあるので、感謝してる子もそれなりには居ます。私もその1人ですから。それに、種族特有のアレルギーみたいなものだと考えれば、少しは我慢もできますよ」

 

「アレルギー……かぁ」

 

 それにしたって随分と致命的だ。花粉症の生徒が春と秋に苦労していたりするし、それと似たようなものなのかもしれない。どちらにせよ大変だな。

 

「どうですか、先生。身体の具合は。いつもよりも力が出てる感じ……しませんか?」

 

「と、言われても……」

 

「試しにバスケットボールでも投げますか。片手でコートの端から反対のゴールに入れてください」

 

「それは流石に無理じゃないかな!?」

 

「いいからやってみてください、私の眷属なら余裕ですから」

 

「は、はい……」

 

 ルビーからパスをもらってボールを投げてみる。すると私の投球で、ド派手な音を立てて、ボードがへし折れてしまった。

 

「わ……わぁ……やっちゃった……」

 

「……先生、加減が下手なんですね……」

 

「い、今のはちょっと力を入れ過ぎたかな……!」

 

 試しにダンクシュートしてみたら、思ったよりもジャンプが高くなってリングに身体をぶつけるし、力の制御ができない化け物みたいな体験ができた。できればもう体験したくないところである。

 

 ◆

 

 なお、不完全な吸血鬼化についてのみ、その人の代謝にて解除されるのが早くも遅くもなるようだ。

 この時の私はルビーと体育館で運動したお陰で、汗として排出したからなのか、ものの数時間で人に戻る事ができた。

 その後、シエルやリエなどに過去の経験について深掘りして得られた結論によると、誰よりも解除が遅かったスズは日光を恐れて室内に引き篭っていたから、それだけ解除も遅かったらしい。

 思ったよりも気軽に人と吸血鬼を行き来できると知った私は、若返りの薬よりずっと、ルビーによる吸血鬼化にハマる事になった……。




次回────遂にルビーと結ばれ……!?

Q.ドロッとしてて健康的じゃない血なのに、なんでそれが美味しいの?先生補正?

A.ポテチって美味しいでしょ。ジャンクフードも。健康的じゃない食べ物だと頭では分かっていても、また食べたくなる。世にある美味しいモノの多くはきっと健康的じゃない。先生の血はルビーにとってマクドナルドのようなジャンクフードなのです。


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ルビー編第3話:成長のご褒美は……♡

 

先生、聞いてください

 

色々と技能を鍛えた結果として

敵へのデバフにも味方へのバフにも

利用できるようになりましたよ

 

凄いと思いませんか?

 

凄いと思う

 

よくそこまで鍛え上げたね

 

なのでご褒美をください

 

先生のハーレムに入れてください

 

それでいいの?

 

もちろん

 

先生は私と、ナニをシたいですか?

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EP3 成長のご褒美は……♡

 

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───────────────────────

 

 ご褒美をください──との事だったので、私は、そのままハドマ学園に向かう。統治委員会の部室はルビーしかおらず、スズをはじめ、他のメンバーは出払っているようだった。

 机に座って物憂げな様子で外を眺める彼女もまたかなり絵になると感じる。整った顔だからなのか、どんな表情をしていても、ポスターやら雑誌の表紙なんかを飾れそうに思う。

 

「あ。来ましたね、先生」

 

「やっ。……スズや、他の子は?」

 

「今日はオフです。最近は飂熾冘巫髏もほんの少し大人しくなっていますから」

 

「そっか」

 

「鍵、閉めてくださいね。近くを通り掛かった人に見られたら、困るでしょう?」

 

「何を見られたら困るのかな?」

 

「……分かっているクセに。私に言わせる気ですか?とんだ歪んだ性癖の持ち主ですね、先生?」

 

「さぁね。どうだろう……?」

 

「ふふっ……♡」

 

 部室の鍵をカチャリと閉めてやり、ルビーの方を向き直ると、そこにはとうに「いつものルビー」は居なかった。机に座り服を脱いで、熱っぽい視線を向けてくる彼女が、そこには居た。

 

「ほーら、先生?食べ頃JKが、お皿の上で先生を待っていますよ……♡」

【挿絵表示】

 

 

 なんッちゅー扇情的な……。性欲の化身かな?

 

「ぐ……グラビアでも撮影するのかなっ……?」

 

「もー。ストレートに言わなきゃダメなんですか?じゃあ…………エッチしましょ、先生……♡」

 

「っ……ホントに、ストレートに来たね」

 

「分かってるクセに焦らすんですもん♡」

 

 カーテンも閉めないでコレだ。ハラハラドキドキという意味でも緊張している。少し身を乗り出せば外に居る生徒からもコチラが見えてしまうだろう。

 真っ昼間の教室で、生徒と先生の逢瀬──全く、危険な匂いしかしない。だが……ヤらなくては。

 

「……ふふ、先生もちゃんと脱ぐんですね。てっきり着衣のままでエッチするのかと」

 

「ルビーが脱いだからね」

 

「成程、相手に合わせる主義なんですね」

 

「基本的には、そうだね」

 

 彼女の瑞々しく美しい裸体を目にした直後から、この蒼い天を衝かんばかりに顕現したサンクトゥムタワー。コレをどうやって彼女の薄い身体に挿入し射精したものか。──まぁキヴォトスの子は頑丈にできているし、その辺の心配は無用なのだろう。

 

「っ……触っていい?」

 

「もう濡れてますので……このまま、挿れて頂いてもいいんですよ?」

 

「まぁまぁ。濡らすだけじゃなくて解す意味もあるからさ」

 

「んもぅ……慎重ですねぇ。そんなの痛くもないのに今更そんな……。ま、別にいいんですけどね、先生がそうしたいのなら……」

 

 震える手で、机に座る彼女の陰部に手を伸ばす。クチュッ……と温く、何本もの太い糸を引く体液が、指にまとわりつく。

 スジのように細い割れ目を掻き分け指を挿入──焼けるように熱くて、蕩けるように優しく全方位を包み込まれる。

 

「んッ……♡」

 

「……どう?痛くない?」

 

「そんな浅いとこ……自分でもイジッてますし、別に何ともありませんっ……」

 

「じゃあもう少し深めに──足開いてくれる?」

 

「はい……っ」

 

 かぱっと可愛らしく開脚される。柔らかくって、程良く肉付きのいい太ももに手を添えながら、更に指を膣の奥へと進めていく。

 

「ッ♡」

 

「お。ココかな……?」

 

「せんせっ、待っ──〜〜〜〜〜っっ♡♡♡」

 

 膣内の天井の感触が少しだけ変わった。そこまで深くない所に彼女のGスポがあり、そこをトントン優しく連打してやると、ビクビクと身体を震わせて軽くイッてしまったようだった。

 イク時の締まり、その後の脱力感。そのギャップだけでも既に興奮する。ピストン無しに、私も軽くイケてしまいそうだ。

 

「はーっ♡ はーっ♡ ん、うぅ……♡♡」

 

「さっきまでより解れたね。良い感じだ」

 

「挿れてください、先生……。もう、ずっと、疼いてしまって……♡」

 

「言われなくとも……」

 

 机にヘソ天で寝転ぶ彼女は、さながら猫のよう。机に乗っているから高さも丁度いいから、ベッドで普通に交わる時とは違って、正常位なのに枕などで高さを調整しなくて良いのが助かる。

 私とルビーのように、こうして体格差があると、普段は高さ調整の工程があるから……。だからこそ、高さ調整の必要が無い対面座位が楽チンなワケだ。

 

「ハドマ1の現役JKモデルの処女……ッ」

 

 そう考えただけで興奮が凄まじい。変態的だ、と自分でも分かっている。しかし現役JK、ましてや美しさや可愛さをウリにしているモデルが相手だ、興奮が高まってしまうのは自然なことだろう。

 

「っあ……♡」

 

「呑まれる……!!」

 

 一度先端をのめり込ませてしまえば、後は簡単。腰を前に進めようと意識せずとも、吸われるようにニュプププッ……と挿入されていく。

 

んっ♡……んぐ、うう〜っ……はぁん♡」

 

「お゙っ……!?」

 

 跳ねるような喘ぎ声に触発され、グツグツと煮え滾る熱い精液が瞬間的に装填される。膣の奥にまだペニスが到達していないのに、射精してしまった。

 

「うぐ……搾り取られる……」

 

「ま、まだ殆ど動いてませんよ……?」

 

「……フーッ……」

 

「ちょっと、休みますか?」

 

「休まない。動くよ」

 

「え──ひぁあっ♡♡ せーえきでっ、ヌルヌル、滑りが良くなって……♡ すごっ、イイッ♡♡」

 

「キツさの中に確かに存在する、搾られる感覚──スゴイよ、ルビー!可愛いだけじゃなくて、まさに名器だよ、間違いなくッ……ああッ……!!」

 

「んぁっ♡ はぁっ、はぐっ♡ あん♡ あぅっ♡ 先生っ、あん♡ 奥、そんなに突いちゃ、あんっ♡ だめっ、声が止まらな……イッ♡♡」

 

 ピストンはひたすら加速していく。私とルビーを共に絶頂に導く為に。

 腰を打ち付ける度に、彼女の慎ましやかな胸も、可愛らしくプルプルと揺れる。小さな乳首を指先で弄ぶと、私の手をキュッと握ってきて可愛さがもう限界突破してしまい、更にピストンが加速する。

 

「ルビー……ルビーっ、うあぁ……!」

 

「はぁあん♡ せんせっ、先生っ♡ そんなにっ♡ 激しく動いちゃっ……ひぁあん♡♡」

 

 華奢な肩を掴み、プレスするように動く。遂に、抜かずの2発目に至りそうだ。

 私の雰囲気からか、それとも、過激になっていくピストンから絶頂の気配を感じ取ったのか、彼女は私の首に手を回して身体を引き寄せて、チュウッと吸い付くようなキスをしてくる。

 

「れるっ♡……れろ、むちゅっ♡……んむっ♡♡」

 

「はぁっ、うぐっ……あ゙ぁっ!!」

 

「ひゃう♡ ひぐっ、んあぁぁんっっ♡♡」

 

「はーっ、はーっ♡ せ、せんせ……ちょ、ちょっと休みま……」

 

「まだ……」

 

「……え?」

 

"まだ、終わってない……!!"

 

「ひゃっ!?えっちょっと!?せ、先生、ちょっと待ってくださ……んお゙ぉっ!?♡♡♡」

 

 挿入したまま彼女の身体を持ち上げ、今度は私が背後の机に乗り、そのまま寝転ぶ。正常位からの、挿入したままの騎乗位だ。

 抜かずの3発目、とうにルビーの小さな膣からはゴフゴプと精液が溢れてきているがそんなもん既に知っているし床を汚そうと机を汚そうと関係ない。

 何なら、こうして腰を打ち付けるのが強すぎて、溢れた精液が彼女のお腹や顔にまでピュッピュッとハネているくらいだ。まるでぶっかけたみたいに。

 

「あぁん♡ イキます、先生ぇ♡ もぉ、イクッ♡ イクッ、イクぅぅっ♡♡♡」

 

 一足先にルビーがイッた。先程指で体感したあの凄まじい締め付けが、今度はペニスを襲う……!

 

「うっっ……」

 

 熱く包み込まれ、そして全方位からの締め付け。そんな中でもピストンは止まらず、己を絶頂へ最高速度で導いていく。

 

「先生っ♡ 先生、好きっ♡ 好きれす♡ んっ、出してっ♡ また私の膣内に射精()してください♡」

【挿絵表示】

 

 

「うっ……イクよルビー、イクッ……イクッ……!」

 

「んぁぁっ♡ あ゙あ゙あぁーーーっっ♡♡♡」

 

 三度目の正直。流石に今度こそ、少し、休憩だ。射精が収まってから、ジュルジュルと、舌と唾液を絡めるキスを数分間、彼女の身体が唾液で濡れる程長く続け、それからやっと、次に移る。

 

「一旦下ろすよ……ッ」

 

「んっ……♡」

 

 机に彼女を下ろしてペニスを抜く。行為中ずっと溢れてきていた精液の何倍もの精液が、どろりと、凄まじい粘性を帯びて零れてきた。

 

「いっぱい射精()しましたね、先生……♡」

【挿絵表示】

 

 

「もう……ルビーの存在自体がエロく見えてきた」

 

「それはもう末期ですよ……」

 

「私は末期だった……?」

 

「……。自覚無しが一番おっかないと思います……」

 

 それからも数時間、陽が落ちるまで統治委員会の部室でルビーとヤリまくり、ハメまくった。最後はもう、妊娠初期の妊婦さんのようにルビーのお腹が精液でボテッ♡……となってしまって、私の意識も、半ば途切れ途切れになっていた……。

 

 ◆

 

聞き忘れてました

 

これで私も先生のハーレムに

入ったって事でいいですよね?

 

もちろん

 

じゃあ改めまして

 

不束者ですが

末永くよろしくお願いしますね

 

こちらこそよろしく

 

お世話になるね

 

それについてはお互い様です

持ちつ持たれつでいきましょう

 

日常生活も、性生活も……ね♡




高評価とお気に入り登録もよろしくお願いします。


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ルビー(読モ)編第1話:ファンサの鬼

 

先生

またハドマに来られる予定があるって

本当ですか?

 

本当だよ

 

新しく追加されたスケジュールが

色々あるからこなして行かないと

 

スケジュール?とやらの事は

よく分かりませんが……

 

先生に案内したい場所があるので

良かったら来てください

 

分かった

よろしくね

 

座標は後ほど送ります

 

では、また

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EP1 ファンサの鬼

 

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───────────────────────

 

 ある日「ハドマ自治区」で日課のスケジュールをこなしていると、ルビーから座標が送られてきた。

 今朝の会話からするに、ルビーが見せたいというその場所の座標なのだろう。とりあえずいつも通りスケジュールをこなしてから予定に取り掛かろうとシッテムの箱に目をやると、ロケーションランクが上がった事で新しいスポットが解放されていた。

 ハドマ自治区で最大手のフォトスタジオとのことだったので、ルビーとの予定の前に、先にこちらに行ってハドマでの仕事を終わらせてしまおう。

 

 ◆

 

「こんにちは〜!撮影ですか?製本ですか?予約はされてますでしょうか?」

 

「あ、えっと……」

 

 到着後、フォトスタジオに入るなり、受付を担当しているらしいロボットに矢継ぎ早に質問される。いつも通り、ラグビーボールみたいな頭のロボだ。コイツどこにでも居るな。

 

「シャーレの先生です。今日はスケジュー……」

 

「ああっ!先生でしたか!これは失礼致しました、どうぞこちらへ!予定より随分と早いですが、まぁ大丈夫でしょう!」

 

「え?」

 

 スケジュールと言えばシッテムの箱に登録済みの大抵の施設には普通に入れてしまう。だから今日も普通にそうするつもりだった──が、今回は少し、いつもと違うようだ。

 別に案内される事は無いのだが、案内してくれるようなので、折角なので案内してもらおう。

 施設に関する解説を聞きながら、施設の中をただひたすら歩く。やがて大きな扉の前にやって来るとそれを開けるなり……。

 

「シャーレの先生、入られまーーーす!!」

 

「「「ハァーイ!!」」」

 

 案内人に誘導されるがままに、スタジオに入る。スクリーン?の向こうからは、シャッターを連続で切る音が絶え間なく聞こえてくる。誰かが向こうで撮影中らしい。

 しかし私が入って間もなく、そのシャッター音が止み、代わりに少女の声が聞こえてくるように。

 

「先生が到着したんですか?なら休憩入りますね」

 

「休憩入られまーーーす!!」

 

「「「ハァーイ!!」」」

 

 いそいそとロボ達が片付けを開始し、別の機材や道具なんかを、あちこちから引っ張り出してくる。

 案内人までそちらに加わってしまった事もあり、こんな空気の中で私だけポツンと突っ立ってるのもおかしいな──と思い、彼らを手伝おうとすると、ロボ達の流れに逆らうようにして、汗を拭きながら1人の少女がやってきた。

 

「お疲れ様です、先生」

 

「あれ……ルビー!?どうしたの!?」

 

「どうしたのって……。私が先生を呼んだからここに来たのではないんですか?」

 

「ここには仕事の一環で来たんだけど……」

 

「そうだったんですね。私が送った座標ですけど、アレ、このスタジオですよ」

 

「えっ」

 

「ここ、私のバ先なので」

 

「!!」

 

 そういえばルビーはモデルだったか読者モデルをバイトにしているんだったか。その違いは、私にはよく分からないが……。

 

「今日は主に、私の本に付けられる袋とじの撮影をする予定なんですが……」

 

「袋とじ!?……大丈夫なのかな……!?」

 

「まぁ大丈夫だろうとは思うんですが、初めてって事もあってちょっと不安ではあるので、念の為に、先生に見守ってもらおうと思いまして」

 

「でも、そういう事ならもっと早く来たのに……」

 

「あー……確かにそうでしたね、迂闊でした」

 

 久しぶりにルビーの言葉足らずっぷりが見れた、そんな気がした。

 袋とじとは言っても、ほんのちょっっっぴりだけエッチっぽいようなエッチっぽくないような──と思えるような要素を入れるくらいのものらしい。

 休憩を終えて撮影に戻っていった彼女を、私も、スタッフに混ざりながら見守る。

 

「先生、先生。本日撮影したルビーちゃんの写真、見てみます?」

 

「あ、良いんですか?それなら是非」

 

「これが先生が来られる前に撮影してたものです。どうですか、凄いでしょう?」

 

「ほぉお〜……こりゃあ……中々……」

 

 体操服ルビーの破壊力は、こちらの想像を絶するものがあった。子供のように元気いっぱいな様子で跳び箱を跳ぶその写真なんか、子供のような純粋さだけでなく、左右に広げられた両翼からは、まるで魔王のように佇むヒナのような力強さも感じられるくらいだ。

 汗を拭いて微笑む仕草なんかは、体操服マリーに近いレベルの、かなりレベルの高い清楚さなんかも感じ取れる。

 

「今の撮影は、袋とじ用の、ちょいエロってところでしょうか。まぁ、彼女はまだ学生ですから、エロなんて言った所でタカが知れてますけど」

 

「……」

 

 前屈みになり、腕で胸を寄せる。首元の隙間から見える、微かに存在する彼女の2つの膨らみ……。

 もし彼女の単体の雑誌が販売されたら、買おう。というか本屋で予約しておこう。保存用、観賞用、使用用、ヒヨリへのプレゼント用、布教用の5部で大丈夫だろうか。

 

「彼女に変な事はさせてないですよね?」

 

「させてませんさせてませんっ!力関係では完全にルビーちゃんの方が上ですし!現場指揮でさえ我々じゃなくて彼女の主導ですからね!?」

 

「!?」

 

「そんな中で彼女に変な撮影をさせようものなら、完全に(こわ)されちゃいますよ〜、全くも〜」

 

「あはは……」

 

 さ、流石は悪魔の中でも凶暴な吸血鬼──彼らがこう言うって事は過去に実際にあったんだろうな。血も通ってないから容赦なく(こわ)せそうだし。

 

 ◆

 

「──じゃ、後はよろしくお願いします。お疲れ様でした」

 

「「「お疲れ様でーーーす!!」」」

 

 撮影を終えたルビーは、スタジオ内のシャワーを浴びるらしいので、楽屋で待ち合わせることに。

 やがて、タオルを首に巻いて水を滴らせる彼女が楽屋に戻ってきた。肌着は着ている、というか殆ど下着にも近いような────。

 

「お疲れ様です、先生」

 

「お疲れ──って、着てない!?」

 

「下着も着てますよ、ほら」

 

「み、見せなくてイイから!」

 

「ホントですか?目線がチラチラ下の方に……」

 

「向いてません!向いてませんから!」

 

「向いてもいいのに……。今の私は、水も滴る良い女ですよ?」

 

「ルビーも元々良い女だから……」

 

「っ!……そ、そーですか……」

 

 ラックに掛けられているハンガーから服を取り、それに着替えていく。着替えなどはシャワールームではなく楽屋に置いてあるようで、どうしてそこに私を呼んだのやら彼女の意図が分からない。

 

「着替えシーンですよ?見なくていいんですか?」

 

「音で聞いてるから……」

 

「音で知覚するつもりですか?先生は蝙蝠か吸血鬼ですか……?」

 

 やがて彼女の着替えが終わると、今日のバイトも終わりということで、スタジオを後にする事に。

 

「先生も、私のファンになってくださいね?」

 

「……もうなってるよ」

 

「本当に?」

 

「もちろん。ルビーが載ってる雑誌、可能な限りは集めるさ。今度発売されるのも購入する予定だし」

 

本の購入(それ)もイイですけど……会いに来てくれると、もっと嬉しいんですけどね」

 

「会いに行けるアイドルってヤツ?」

 

「まぁ……そんな感じのを目指していたりしますね。本を持ってきてくれたらサインもしますよ」

 

「おっ、それは良いかも。お願いしてみようかな。それなら色紙にもお願いできる?」

 

「構いませんよ。……あ。転売は禁止ですよ?」

 

「もちろん。額縁に入れて日焼けとかケアした上でシャーレの執務室とか休憩所に飾らせてもらうよ」

 

「ま……そういう人にしかサインはしませんけどね。私、『生活に困ったらコレ売ってね』なんて言えるような聖人みたいなメンタルしていないので」

 

「そんな人は中々居ないよ……」

 

 この日はそのまま、ルビーをハドマ学園の寮まで送り届けて解散した。

 

 ◆

 

今日はありがとうございました

 

一緒に居たのは帰り道だけでしたが

デートみたいで楽しかったです

 

それなら良かった

 

……

感想的なのは無いんですか?

 

モデルさんとデートできるなんて

ファン冥利に尽きるよ

 

あ、デート扱いでいいんですね

なんか軽い気もしますが

まぁいいです

 

先生が重度のオタクになるよう

私、頑張りますね?

 

お手柔らかにお願いします……




次回──スズ編2話目。デートリベンジなるか!?


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スズ編第2話:これで私もハーレムに……♡

 

この前のリベンジよ!

 

先生、付き合って!

 

スイーツ食べれなかったもんね

 

そーゆーこと!

 

集合時間はこの前と同じ!

 

今日よ!

思い立ったが吉日って言うからね!

 

了解

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EP2 これで私もハーレムに……♡

 

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───────────────────────

 

 前回は飂熾冘巫髏の下っ端の妨害があって折角のスイーツを楽しめなかった。だからなのか、今日のスズはヤケに気合いが入っているようだ。

 

「来たわね先生!早速リベンジよ!」

 

「よしっ。行こうか」

 

「レッツゴー♪」

 

 きゅっと腕を組んでくるのが可愛らしい。唐突に距離を縮めてくるので一瞬だけ驚いてしまったが、そもそもスズはかねてより私に好意を寄せてくれていたから、なにもおかしい事ではなかった。

 

「──いらっしゃいませっ!2名様でよろしかったでしょうか?」

 

「2名でーっす♪」

 

 いつものラグビーボールみたいな頭のロボ市民が席に案内してくれた。キレイな店内なだけあって、応対もとても丁寧……と思っていたのだが。

 

「こちらメニューになります。なお、カップル割もございますが、お2人は──」

 

「っ!そ、そーね!カップル、カップルよ!だからそのカップル割っての、お願い!」

 

「では、証明としてキスをお願いします♪」

 

「は?……はぁああっ!?」

 

「?カップルの方、ですよね?それならキスくらいできるのでは……?まさか詐欺……?」

 

「ちがっ……き、清い交際をしてんのよッ、私達は!ね、先生っ!」

 

「そ、そうだね、うん。年齢差もある事だしあまりそういう事は……ね?」

 

「では、カップル割は適用されませんが、よろしいですか?申し訳ありませんが、規則ですので……」

 

「〜〜〜〜〜〜ッッッ」

 

 お会計くらい私が出すから──と言おうとした、まさにその瞬間。向かいに座るスズが私の顔に手を伸ばし、グッと顔を固定。

 

「あの……スズ、さん?」

 

「どうせ一度シちゃえば後は何度でも同じでしょ」

 

「……いいの?」

 

「私も先生のハーレムに入るって言ってんでしょ。これくらい、余裕なんだから。……店員(アンタ)ッ!ちょっと離れなさい!恋人同士のキスの邪魔よ!見たいなら見せてあげる、でも視界には入らないことね!」

 

「失礼致しました、すぐに♪」

 

 ニッコリ顔でペコリと頭を下げた店員は、かなり距離を取る。機械の駆動音さえ聞こえなくなる頃、ゆっくり目を閉じたスズは、唇を窄ませながら顔を近付けてくる。

 私からも、ほんのり冷たい彼女の頬に手を置き、店員や他の客が見守る中、スズと、唇を交わした。

 

「っ……んっ……♡」

 

「……ッ」

 

 中々唇を離そうとしない。鼻で静かに呼吸して、唇の感触を楽しむかのように僅かに唇を動かして、更に唇を強く押し付けてくる。

 すると、にわかに彼女の唇がちょっぴり開かれ、ヌルヌルの唾液を纏った舌が私の唇に触れ────私からも応じようとした、その時。

 

「んはぁ〜〜〜〜〜〜っっ♡♡ 非常に尊きものを見せて頂きましたのでお代は結構でございます♡♡ 寧ろ払わせて下さい♡♡♡」

 

「「……え?」」

 

 例の店員が、ガシャアァッとド派手な音を立てて倒れたので、思わずキスを中断してしまった。目をバツにさせて、悶え苦しんでいるように見える。

 

「実は私、カプ厨でして。カップルのイチャつきが見たくて、カップル向けのスウィ〜ツ店をこうして経営しているのでございます♡♡♡」

 

「「……」」

 

 私の知ってる「カプ厨」の意味とは違うが、まぁそれはどうでもいいか。というか、このロボ市民に性癖とかあるのかよ……。知りたくはなかったな。

 

「どうか末永くお幸せにお過ごし下さいませ♡♡♡ そして当店をどうかこれからもご贔屓に♡♡♡」

 

 頼んでもいない、カップルストローのジュースを置いて「ご注文がお決まりになりましたらボタンでお呼びください♡」と言い残し、奥に引っ込んだ。

 

 ◆

 

「何だったの、あの店員さん……」

 

「知らないわよ……人気店だとは聞いてたけどまさかあんな店だったとは。ま……尊い?キスをするだけでお金もらえるなら、そりゃリピーター増えるわね」

 

 ────待て。キヴォトスに男って私1人だぞ。

 という事は、なんだ?まさか、まさかあの店──もしや、百合カップルの巣窟になっているのか?

 

「…………」

 

「どったの?先生?」

 

「あいや、なんでも。それより、なんかごめんね。あんな流れでキスする事になるなんて」

 

「何言ってんの、カップル割にするって言ったのはあたしよ?自分で望んだ事なんだから謝らないで」

 

「でもあの場面でキスしちゃうのは不本意だったりしない?大丈夫ならいいんだけれど……」

 

「まあ、シチュがどうこうより──あたしだって、早く先生と、そう(・・)なりたかったから……さ……♡」

 

「スズ……」

 

「前にも言ったでしょう?ハドマで一番先に先生のハーレムに入るのは、このあたしよ。それなのに、そのあたしがちんたらしてたら後がつっかえるわ。ルビーとかルビーとかルビーとかルビーが待ってるハズだもん」

 

「ルビーの圧がスゴイなぁ」

 

「とにかく!……これであたしも、先生のハーレムにイン!文句は言わせないわよ?」

 

「文句なんか無いさ」

 

「……そ。なら、良かったわ……♪」

 

 そのまま腕を組み、または手を繋いだまま歩く。スズは何も言わずに、黙って歩く。するとやがて、見覚えのあるホテルが見えてきた。

 

「あの……スズ?」

 

「……何よ」

 

「どこに向かってるの……かな?」

 

「見れば分かんでしょ。アレよ」

 

「ホテル、だよね?ラブが付く方の」

 

「そうよ。……嫌?」

 

「嫌ではないけど」

 

「なら黙って着いてきて。あたしも緊張してんの。先生とは違って……慣れてないんだもの」

 

 そうか、あのホテルはハドマ学園の技術開発部が資金調達の為に運営しているホテル──フロントがあるタイプのホテルだが未成年が入ってもバレないどころか、未成年が運営してるからそもそも年齢は関係無いんだった。

 

 ◆

 

「……シャワー、浴びてくるね」

 

「うん」

 

 私としては浴びない方が匂いも濃くて好きだが、スズがそうしたいようなので、ハジメテでもあるし彼女の好きにさせる。

 ガラスの壁の向こうで、全裸のスズがシャワーを浴びている。私の視線に気付くとサッと目を逸らし赤らめた顔を髪で隠す。

 彼女の透明な翼は、濡れる事で更に透明度を増すようだ。さながら虫の羽のよう……。

 アレで種族はちゃんと「悪魔」なんだから驚く。スズ、実は「妖精」だったりしない?……しないか。

 

「ふぅっ……気持ち良かった〜……」

 

「じゃ、私も浴びてくるね」

 

「あっ……」

 

「ん?」

 

「先生は……いい、そのままでいいわ」

 

「えぇ?結構歩いたし、汗臭いと思うけど」

 

「そんな事は分かるわよ。ここまで歩いてくる時、ずっとくっついてたんだから。──その、先生さ、良い匂いだって言ってたのよ。ルビーがさ」

 

「ルビーが?」

 

「鼻が利くのよ、吸血鬼は。餌を嗅ぎ分ける本能?みたいなのが働くみたいで。だから、先生の血は、ルビーにとって美味しいんだと思う」

 

「不健康な血そのものだと思うけどね」

 

「だとしても、良い匂いだって言ってたんだから、あたしも……もっと、傍で嗅ぎたいなって……!」

 

「……ま……スズがそうしたいなら」

 

「っ……♡」

 

「その代わり条件ね。次にエッチする時は、スズもシャワー浴びないこと。いいね」

 

「えっ!?なっ、なんでよ!?乙女にとって体臭はデリケートな問題なのよ!?」

 

「それは男女関係なく私も同じね。それとね、私、結構重度の匂いフェチなの。本当ならスズの匂いを堪能したかった。でもまぁ今回はハジメテだから、言わないでおいたんだ」

 

「そ……そっか。じゃあ……うん、分かったわ。次はそーするわ」

 

「ん……ありがとね」

 

「じゃあ……スる?」

 

「それより先に──ちょっと解さないとね。さっ、ベッドにおいで?」

 

「っ!……ん……うんっ……!」

 

 石鹸の香りが色濃く漂う彼女をベッドに呼び寄せそのまま寝かせる。ムチムチの太ももを手のひらでさすり感触を楽しみつつ足を持ち上げ秘部を露わにさせる。

 

「んッ……」

 

「ツルツルだ」

 

「悪かったわね、子供おまんこで……///」

 

「どっちも好きだから大丈夫だよ。いや、スズにはツルツルが似合ってるから、こっちのが好きかな」

 

「どーゆー意味よそれぇ……」

 

「……舐めるよ?」

 

「う……な、舐めるの……?」

 

「指で解すより早いし……早くスズに挿れたいから」

 

「っ!そーよね、その為に来たんだし……。なら……な、舐めて、私の……おまんこ……♡」

 

 M字に開かれた彼女の足の間に顔を埋め、スジのような秘部にチュッと軽くキス。大陰唇ごと全てを一気に舐め上げ、まずは全体的に濡らしていく。

 次いで、割れ目にそのまま唇をつけ、ちゅるりと舌を忍ばせ隙間へと捩じ込んでいく。

 舌は指と違って、筋肉の塊でありながら柔軟性に極めて優れている。彼女の細い膣内を掻き分けて、可能な限り舌を挿入するなり、ぴちゃぴちゃ水音を立てて、時折、陰唇へのキスも交えながらクンニで濡らしていく。

 膣内まで指を挿れてよく洗ったのだろう。かなりしつこく強めに舐めたり吸ったりしないと、純粋にスズの匂いを放つ膣内へと塗り替えられなかった。

 

「んぁあっ♡ やん、そんな音っ……ひぁっ♡♡」

 

「奥からトロトロ溢れてきたね?感じてる?」

 

「だっ、だってぇ♡ そんな(とこ)……怖くって、自分の指でも触れないのにっ……♡♡」

 

「セックス、この倍以上は奥に届くけど大丈夫?」

 

「倍以上…………倍!?以上っ……!?」

 

「舌や指で届くところなんて、たかが知れてるよ。だからバイブとかローターとか、そういう奥にまで届くようなアダルトグッズが存在してるんだから」

 

「うぅ〜っ……。アンナなら、そういうのも慣れてるだろーけど、こちとら処女膜も残ってんのよ……?」

 

「待って、アンナって慣れてるの?」

 

「?そりゃ、元会計のライムに喰われてるし……」

 

 ライムって夢魔だっけ。そうか、百合プレイか。それもそれで興奮するな。ハドマは百合の楽園か?いつかスズとルビーの百合プレイも見てみたいな。それが無理なら3Pか。

 興奮が止まらん。かなり濡れてるし、挿れるか。

 

「あ……♡」

 

 身体を起こして、シーツを濡らす程に垂れているカウパーに濡れたペニスを、スジのようなおまんこ表面に添える。クチュリと押し当ててやると愛液とカウパーが混ざって、離すと透明の糸を引く。

 

「……スズの処女、貰っちゃうね」

 

「うん……キて、先生……♡」

 

 腰を前に押し出す。同時に亀頭はズルンと強めに滑り込むが竿が半分くらい挿入できた時点で挿入の速度が緩んでしまう。やはりかなりキツイ、体型が幼いから分かってはいた事だが……。

 

「力抜いてっ……」

 

「抜いてるわよぉ……んむっ!?んっ……うぅ……♡」

 

 力が入っているようだったのでキスの方に彼女の意識を移し、膣の方の力を抜かせる。更に、両耳を手で塞いでやった状態で、口内に舌を挿入して少し乱雑に舌を絡め、唾液を吸い、舌を吸うと……。

 

「〜〜〜〜〜っ♡♡ うっ♡ んぐっ、ひぅっ♡♡ んぁっ、はぷっ……ぢゅるるっ、ふっ、んんっ♡♡」

 

「っ……どう?耳塞ぎ(これ)、頭の中から犯されてるような感じ、するでしょ」

 

「あぅ……うう……♡ せん、せぇ……♡♡」

 

 気付けば、私のペニスは既に彼女の子宮口に強くキスしていて、そればかりか、かなり強く奥の方へ押し上げていた。

 ピストンの為に腰を引けば、チュウチュウと軽く吸い付いてくるのがよく伝わってくる。

 

「お゙っ♡ おんっ♡ おくっ、ゴリッてなって♡♡ やばこれ……あっ♡ ひっ♡ せんせ……んあ゙っ♡」

 

「良い具合に解れてきたから、動きやすいや」

 

「んんっ♡ せんせっ……せん、せぇぇええっっ♡♡ もぉらめぇ♡ イクッ♡ イクぅうう〜〜っっ♡♡」

 

 スズが深イキするのと同時に彼女の腰を抱き寄せ亀頭を強く押し付けてやり、溜め込んでいた精液を一息に吐き出す。最後の最後に、もう一度だけ強く奥へと押し付け、尿道に残った精液を絞り出して、初めてづくしの膣内を、精液で満たしてやった。

 

「あんっ♡ 抜いちゃった……♡ はぁ……はぁ♡」

 

「……ははっ……溢れるくらい射精しちゃった」

 

「はーっ……はーっ……♡」

【挿絵表示】

 

 

 垂れ落ちた精液は肛門の上を通過、シーツにまで至り、簡単に染み込んではくれない。

 

「……綺麗にしてくれる?」

 

「おそーじフェラ?ってヤツ……?」

 

「そうそう。精液と愛液のヌルヌルが取れるまで、舐めるか、口に含んで……綺麗にしてくれる?」

 

「んっ♡ んぶっ……ちゅ……はふ、んっ……♡♡」

 

 不器用ながらも、ペニスにチロチロと舌を這わせヌルヌルを舐め取っていく。自分の愛液を舐める……どういう気分だろう。中出しした後の陰部をクンニするような気持ちだろうか。もしもそうなら、割と理解できる気がする。

 

「ぷぁっ……はぁ、はぁ♡ これでどう……?」

 

「うん、綺麗になってるね。流石はスズ。物覚えが早いし、上手だよ」

 

「えへへっ……♡」

 

 汗でしっとりしている柔らかな頬に手を添えて、お掃除フェラを終えてほんのりと精液の匂いのする彼女の小さな口に、そっとキスをする。

 

「ね……先生……?」

 

「うん?」

 

「……大好き……っ♡」

 

「ッ……挿れるよスズ、次はバックでエッチしよ」

 

 彼女の身体を抱き起こして後ろを向かせ、身体の下に手を入れてお尻を上げさせるなり、覆い被さるようにバックで挿入────。

 

「ひゃん♡ あっ♡ はぁん、あん♡ あぁんっ♡ せんせ……あぅんっ♡ そんな♡ きゅーに、いィ♡ せっかく、おちんちん、キレーにしたのにっ♡♡」

 

「スズがッ!色々と、エッチすぎるのっ……!そんなエッチな顔して、誘ってるんでしょ……っ!」

 

「そ……そぉだけど、さぁ……っ♡♡」

 

「!?」

 

 こちらを振り向きまるで小悪魔のようにチロッと舌をチラ見せ。小さくて可愛らしい舌をそんな風に見せられてしまっては、我慢できるものもできなくなってしまうというものである。

 

「────っっ♡♡♡」

 

「んぁあっ♡ あんっ♡ も、もぉ射精()てるっ♡♡ あぁっ……んああああぁぁ〜〜〜〜っっ♡♡♡」

 

「ふぅ……はぁ…………フゥ〜〜ッ……スズ、舌出して、舌出してッ……」

 

「んッ……れろ……んちゅ……ちゅるるっ……ちゅ♡♡」

 

「ッ……ハァ…………フ……ッ……」

 

「ぷは♡……も、もぉ〜……せんせーってばホントにエッチなんだから……先生のばか……♡」

【挿絵表示】

 

 

 それからも私達は数時間にわたりヤリまくった。前回のデートでの失った時間を取り戻すように──また暫く会えない間に生じるであろう心の隙間を、予め塗り潰しておくかのように、お互いを求め合い満たし合った。

 遂には、初めてセックスしたばかりだというのにラブホテルで夜を過ごしてしまうくらい、お互いに時間を忘れて、行為に没頭した。

 スズがハドマ学園に、私がシャーレに戻ったのは次の日の昼前である────。

 

 ◆

 

ちょっと先生ッ!?

これどういう事よ!!

 

【挿絵表示】

 

何であたしのスマホに!?

 

あ、そうだ

送ってって言うの忘れてたね

 

助かったよ、ありがとう

 

そーじゃなくってぇ!!

 

ハメ撮り動画もあると思う

送ってくれると嬉しいな

 

だからどうしてあたしのスマホ!?

 

私のスマホより画質が良くて……

 

そういう問題!?

 

1枚目は私ので撮ったんだけど

ちょっとイマイチだったからね

 

えぇ……?

 

画質が良い方が、より綺麗にスズの

可愛い所を記録に残せるでしょ?

 

……バカ!!

 

またエッチしようね

 

するけど!……するけどさぁ!!




スズはソッコーでメモロビ解放するユウカタイプ。しかも絆ストーリーは、絆レベル2、3、4とかでそれぞれ解放されて早々に見終わっちゃう。
ルーシィはああ見えて警戒心は強い女だから4話目だとか5話目くらいでやっとメモロビが解放できるタイプ。しかも肝心の絆ストーリーは絆レベル2、4、8、12、16──みたいに、かなりの飛び飛びで解放されていく。

あぁ〜早くカヤに感情剥き出しでブチギレるシエル書きてぇ〜〜〜〜〜〜ッッッ。


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