ラピスラズリ・エース (がらっしー)
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第一球 5人の1年生

 

 

 

 

 

 

 

「ここで今日から野球が出来るのか…楽しみだなぁ。」

 

京濱大学付属横濱高校の入学式を終え、野球部の顧問と部室を探す顔がキリッと整った少年、青島蒼洋はそう言い、彷徨いていると、1人の爽やかな少年を見つけた。

 

「おーい‼︎赤志‼︎」

 

他とは決して間違わない美男子を見つけると蒼洋はすぐさまその少年に駆け寄った。

 

「ん。蒼洋‼︎」

 

「野球部探しに行こーぜ‼︎」

 

「そーだな‼︎」

 

この少年、紅原赤志はシニア時代、蒼洋とバッテリーを組み、県準優勝まで行った実力者だ。

 

その後、2人で歩き出してすぐ、蒼洋は固まった。

 

「なんで、あいつが…⁉︎」

 

蒼洋と赤志の視線の先には1人のキョロついた少年がいた。その少年こそ、蒼洋達を破り、関東大会も勝ち抜いて全国まで行ったシニアの3番打者、黄嶋茶だった。

 

「とりあえず声かけてみよーぜ、蒼洋。」

 

「あゝ。」

 

「君は、黄嶋茶君かな?僕は君のいた西横浜シニアに県大会決勝で敗れた新横浜シニアにいた紅原赤志。よろしく。因みにこっちは元エースの青島蒼洋。」

 

「新横浜シニア⁉︎マジか‼︎宜しく‼︎ところで、野球部探してて、迷ってるんだけど一緒に来ない?」

 

「いいよ。行こうか。」

 

迷ってるのか…雰囲気といいひょっとしてバカなのか…?と2人は思いながらも、こんな感じで以外にも天然な雰囲気を持つライバルの黄嶋とひょんな出会いをしつつ、野球部の部室に辿り着いた3人は2人の1年生と出会うことになる。その2人、緑川浅葱と黒澤紺亮を含めたこの5人がこの野球部を変える事になる。

 

そして、後日、入部テストの日、中堅校と言わている濱濱でも異例な事態が起こる。

なんとその5人がいきなり一軍となったのだ。中堅校ながらにここ最近スポーツに力を入れている濱濱には一軍と二軍があり、部員数は80を超えている。そんな中いきなり一軍に入るのは中堅校であっても異例なことだった。勿論、過去にもそういう人も居るのだが、5人もの新入生がいきなり一軍に入るのは初めてのことだった。

 

 

 

 

 

そして、初練習の日…

 

 

 

「寝みーなぁ…最近スポーツに力を入れているからって、朝練早過ぎ。」

 

「おい、茶。お前よくそんな気楽でいれるな…俺ら先輩達を押し退けて一軍にいんだぜ?」

 

「心配すんなよ、蒼洋。皆高校まで野球を続けてる人達だ。根は悪くない。」

 

「紅原の言う通りだ、蒼洋。それより、レギュラーを奪う事を考えたらどうだ?」

 

「浅葱〜、勿論レギュラー取るつもりだけどとりあえず茶の言う通り眠いよね〜。」

 

「紺亮も気楽だな〜、全く。こっちの気が抜けちまうぜ。」

 

「ごちゃごちゃ言ってねーで、もうすぐ練習始まんぞ。個人のアップが終わったからってペチャクチャ言ってたらどうなるかわかんねーぞ。」

 

「はいよー、赤志ぃ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回、この少年達が一軍でその実力を見せ付ける‼︎



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第二球 1年の実力‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

新入生を迎えての最初の練習…

 

「各自アップは済ませてあるな⁉︎ではバッテリー組はブルペンへ、野手は守備に着け‼︎」

監督の落合が選手全体に指示を出す

 

『はい‼︎』

 

「うはぁ〜、気合いが違うな、高校野球は…」

 

「そんなこと言ってないで守備に着くぞ、茶。初日から監督に叱られたんじゃシャレにならんぞ。」

 

「わあってるよ。1年の野手は俺ら2人だけだけど行こーぜ、浅葱‼︎」

 

 

 

 

 

 

「じゃ、俺らも行くか‼︎赤志、紺亮!」

 

「おう!」

 

「ふぁ〜、眠い…」

 

 

 

 

 

 

ーーーー蒼洋の回想ーーーー

 

 

 

 

「これより入部テストを行う‼︎入部希望者はまず体力テストだ‼︎」

 

 

ここでは遠投、ベーラン、背筋力測定などのテストが行われた。ここから、一軍に入った1年は輝きを放っていた。特にこのテストでは黄嶋と黒澤が目立ち、黄嶋は遠投とベーランで、黒澤は遠投と背筋力で目を見張る値を叩き出した。中でも黒澤の遠投は飛び抜けていて、高1にして120m越えを叩き出したのだ。黄嶋の身体能力の高さと万能性にも目を見張ったがやはりこのテストの主役は黒澤だった。

 

 

 

次に行われたのが技能テストで攻撃側はは体力テストの結果に基づいた打順によりケースごとのシートバッティングや走塁を行い、守備側はそれぞれのポジションに着き、守備をするというゲーム式だった。黄嶋は持ち前の高いミート力と体全体を無駄なく使うことで飛距離を生み出す長打力・高い走力と走塁技術・完成度が非常に高い守備と総合力と才能・センスの桁の違いを見せ付け、紅原は非常に高いキャッチャーとしての能力と勝負強く長巧打揃ったバッティング、黒澤は技術が追いついて無いものの荒削りな才能と肩力・パワーを発揮し、緑川は高度な外野守備と小技やミート力・走塁技術とパワー不足ながらバランスとセンスの良さをアピールした。そして俺は…

 

 

 

 

 

ゲーム式技術テストにて…

 

「バッター、紫野崇‼︎」

地味ながら、体力テストで黒澤よりも高い値を叩き出した紫野崇との対戦を迎えた。

俺はバッテリーを組んだキャッチャーとサイン交換をし、軽めのフォームからサイドスローで初球、まっすぐを投じた。この一球で、監督や先輩、緑川、そして誰よりも紫野自身が1番俺の球の質に気づいた。一見して130km程のまっすぐにしか見えないボールは紫野のバットの上を通過し、全く動いていないキャッチャーのミットに収まった。2球目、縦スラに見えるパワードロップ(カーブ)を放り、ツーストライク。

3球勝負でストレートと速度がほとんど変わらない本物の縦スラを投じた。ストレートだと思い振りに来た紫野のバットの手前で急激に落ち、紫野のバットは空を切った。

本当なら、本来の決め球で圧倒的なキレと変化量を誇るこの球ではなくとっておきの球を投げたかったが、このピッチングだけで俺の一軍入りが決まってしまい投げれなかった。

だが、俺はこの日のテストで、剛腕を誇る黒澤との決定的な違いをこの肌で感じてしまった…。

 

 

ーーーー回想終わりーーーー

 

 

 

 

 

ノックではショートで黄嶋が、レフトで緑川が他を圧倒する華麗な守備を見せていた。

圧倒的な打球勘と反射神経、グラブ捌きに的確な判断、素早く正確なスローイング。既に黄嶋の内野守備はチームでもトップクラスのものだった。

一方緑川も足が速く、ポジショ二ングや捕球、打球勘に優れていて守備範囲が広く、肩も強くて投げるまでも早いため、既にチームトップクラスの外野守備を誇っていた。

 

そして、ブルペンでは…

 

ドパァン‼︎

 

黒澤が剛腕を唸らせてゲーム式でも見せた他を寄せ付けない速球を投げ込んでいた。もはや現正捕手の阿倍野でも取れないそのボールは紅原が平然と受けている。

一方青島は腕をしならせ、一球一球丁寧に構えた所に14球種も投げ込んでいた。ゲーム式テストで見せたストレートに加え、指の間を広くすることで一度浮いてから落ちるように見えるツーシーム、縦横斜めのHスライダー、Hシュート、ワンシーム、カットボール、スロードロップ(カーブ)、パワードロップ、スクリュー、パームなどを自在に操っていた。

 

 

 

 

 

「・・・凄すぎる・・・」

 

 

彼らは先輩達を十二分に戦慄させていた。レギュラー陣を除いては…

 

 

 

次回、レギュラー陣が1年に実力の差を思い知らせる‼︎



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第3球 先輩の実力‼︎

 

 

 

 

 

 

 

初日の練習で…

 

「一軍にいきなり入って来た1年達…やばくね?」

 

「まだ未熟な奴も居るけど、その分身体能力が高いしな〜。」

 

1年生達はその力や可能性を十分に発揮していた。

 

だが…

 

「うろたえるな。強豪校なら驚く事でもないだろう。それともお前らはあいつらに勝つ自信が無いのか?」

 

キャプテンの灰谷鉄哉が1年に面食らう部員に檄を飛ばす。

彼は中堅校の部員ながらに全国選抜に選ばれる程のチーム1の実力者だ。

 

「そんな弱気だからレギュラー取れないんじゃないの?」

 

優しい口調で2年生レギュラー桃丘修三も同じく弱気な部員を攻める。

 

レギュラー陣はチームで唯一、1年生のプレーに驚くこと無く淡々と驚く部員をなだめると、レギュラーとしての実力を見せた。

 

守備で目立ったのはセカンドレギュラーの桃丘修三と3年生のセンター、山吹純次郎だった。

 

桃丘は一目で艶ややかさとしっとり感がわかる程良質で良く手入れされているであろうグラブを巧みに操り、目を見張るプレーを連発し、緑川と同じシニアで彼の目標である山吹は普通なら絶対に抜かれるであろう打球にも鋭い打球勘と適切なポジショニングで余裕で追いつき、

投手としても通用するのではないかという程の強肩でランナーを制していた。

 

 

だが、誰よりも輝きを放ったのは、キャプテンの灰谷だった。

神奈川の中堅校在籍ながら全国選抜に選ばれる彼は守備練習の後のシートバッティングで守備陣が反応出来ない程の速さの打球を性格に打ち分け、柵越えも連発し、圧倒的な実力を見せつけた。

 

初練習で自分達の実力を見せたと同時にレギュラー陣の実力の高さを見た1年生はその日、5人共午後練をそれなりにこなし、それぞれが考えを巡らせていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー蒼洋の回想ーーーーー

 

(今日の練習…自分のピッチングは出来た。けど、エースの藍川さんのピッチングはどうだ?いくら中堅校といえどもやはり神奈川でエースを張るだけあって凄いピッチングだった。140km位のまっすぐにカーブ、スライダーとシュート、フォーク…オーソドックスタイプだけど制球も自由自在、完成度は高い…あんな人と毎日一緒に投げられるのか…‼︎)

 

 

ーーーーー回想終わりーーーーー

 

 

 

 

 

ーーーーー赤志の回想ーーーーー

 

 

(全国選抜に選ばれる程のスラッガー灰谷さん…あの人は別格だった…キャッチャーとしては十分やってける自信はある。けど俺はあの人と同じグラウンドに立てるのか?立つ資格があるのか?…)

 

ーーーーー回想終わりーーーーー

 

 

ーーーーー茶の回想ーーーーー

 

(桃丘さんの守備…どんな打球もファインプレーも普通にこなす…なんて人だ…それに灰谷さん…あの人のバッティングも見習わなきゃな…‼︎)

 

ーーーーー回想終わりーーーーー

 

 

ーーーーー浅葱の回想ーーーーー

 

 

(山吹さんの守備…相変わらず…いや、以前の比じゃ無い位に上手い。やっぱりあの人には見習ってばっかだ。あの人と同じグラウンドに立ちたい…‼︎)

 

 

ーーーーー回想終わりーーーーー

 

 

 

ーーーーー紺亮の回想ーーーーー

 

 

(灰谷さんの長打に、藍川さんのピッチング…早く試合に出たい…‼︎)

 

 

ーーーーー回想終わりーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして次回…監督・落合の計らいで1年と彼らが憧れを抱いた上級生と試合を…⁉︎

 

 

 



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