生物と武器を操る事が出来る能力者の長いようで短い話 (LEIKUN0227)
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第一話 オニナと呼ばれる能力者

 

 

 

 

──俺は…()()()()()()()()

 

?「おに…ち…

 

妹も…

 

?「矢田…ちゃん…」

 

母も…

 

?「…最後に…あのアニメが…見たか…た…

 

?「助けてや…何も…見えへんのや……

 

?「せめて…あいつに…

 

友も…

 

家族との思い出の場所も、住む場所も、

街も世界も守れなかった…

その結果、俺を残して全てが消え失せた、

理由は分からない、理由も分からず消え失せた、

俺は何故かこの身に宿った能力、

【生物になる力】【陸の武器や一部の物を扱う力】を使って逃げた、

逃げ続けてしまった。

 

なんで俺は逃げた?

 

なんで俺は生き残った?

 

なんで俺は誰も守れない?

 

俺は誰も守れないのか?

 

俺は誰も何も救えない男だ、

何も救えない、

自暴自棄になった、

死にたいと何度も思った、

だが死にたくなかった、

そんな俺はもうどうでも良くなった、

世界も、友も、家族も、

もうどうでもいい。

 

そんな俺がいつもする日課は、

()()()()()()()()()()()()()()()

それが俺の日課だ。

 

──世界線27──

 

男「誰かっ…助けッ…《グシャ》グボォ…!」

 

女「いやぁぁぁ!《グキャ》…」

 

少年「誰《メキ…》…」

 

辺りは阿鼻叫喚、

血塗られたアスファルトの上には人だったモノが転がり、

それ等をメキメキと骨をも砕き、人肉を貪る獣がいた。

 

獣「グォオオオオオ……!」

 

雄叫びを上げ、まるでその場を住処に決めたかのように、寝転がる獣、そんな化け物にゆっくりと、

近付いて行く1()()()()()()()がいた。

 

???「…」

 

獣「グルル…グル…」

 

獣は近付いて来ている異形の生物に気が付き、

威嚇で追い払おうと獣は異形の生物に対して唸り声を上げる。

 

???「お前は世界の膿だ。」

 

異形の生物はその一言だけ告げると、

獣の首に目掛けて異形の生物が何かを投げた、

すると獣の首元でその何かが破裂し、

獣は唸り声を上げる。

 

獣「グォオオオオオォ!!?」

 

獣は突如起きた事に驚き、

立ち上がるろうとするのだが、

立ち上がったと思った時に獣は疑問に思った、

首から下の感覚が無い、

体も動かない、

それどころか意識が朦朧としている事にも…

 

獣「…?」

 

獣は薄れゆく意識の中でその異形の生物が何かを言った。

 

???「3.4秒、それがお前に残された最後の時間だ。」

 

獣はなんて言ったのかが理解出来た、

それは自分の体が視界に現れたからだ、

だがおかしい事に獣は気が付く、

何故右腕がそこにある?

そこで獣は気が付いた。

 

獣「…!」

 

獣は首から下を切断され、既に息絶えていたのだと、

だが、それを知った所で、獣は何も出来ない、

獣はそこで意識を失った。

 

???「クソッたれが、まだ幼い子供や家族を襲いやがって…」

 

異形の生物はそんなことを呟き、

既に息絶えた獣の頭を蹴り、

その場を去ろうとした。

 

男性「…!居たぞ!!」

 

男性B「地球外生命体#0227!ここで貴様を捕獲する!」

 

男性C「絶対に危害を加えるんじゃないぞ!」

 

だがそれを阻止された、

異形の生物の周りを取り囲む銃と盾を武装し、防護服を着た人々。

 

女性「動かないでください!()()()さん!話を聞いていただきたいんです!」

 

そんな人々の中から掻き分けて、

銃や盾を武装していない少し大人びた女性が異形の生物の前に立ち、そんな事を言う、

オニナというのは、別称なのか、

人々がそう呼んでいるのか…

 

???「…」

 

異形の生物は一瞬女性を見た後、

自身の身長位はある巨大な腕を使い、

その人々を跨いでいく。

 

女性「えっ!あっ!あの!待って下さい!」

 

男性「待て!待つんだ!」

 

武装した人々は異形の生物を追おうとするが、

異形の生物は足をまるでタコの様に変形させ、

腕は人間というよりも、ゴリラに近い腕に形が変わった。

 

???「…」

 

異形の生物は腕を一軒のビルに向けると手首から軟質の糸の様な物質が飛び出し、一軒のビルの窓や壁に張り付く、かなり勢いがあったものの、ガラスは割れてないどころか、ヒビすらも入っていないようだ。

 

異形の生物は、その糸の様な物を掴むと、

その糸に引き寄せられるかのように、

その異形の体が浮いた。

 

男性C「ヘリコプター隊!至急オニナを追ってくれ!」

 

男性B「A班は車で追え、()()()()捕獲するぞ!」

 

男性Cが発した「今度こそ」は、恐らく、前に捕獲をしようとしたが、失敗したという事だろう。

 

???「…」

 

異形の生物は追いかけてくる人々を一瞬だけ見ると、

その人々の前から姿を消した、

その後ろ姿はまるで映画に出てくるス●イダー●ン、そして形を変形させるヴ●ノムの様だったと言う…

 



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第二話 オニナの過去

 

 

 

 

調査記録#22 ナンバー#0227

 

コードネーム:地球外生命体027

 

危険性:C (少なくとも一般人に対しての被害は無い)

 

敵対度:D (現状では敵対の意思を示していない)

 

発見日:2023/7/12/3:19

 

発見場所:〇〇県〇〇市〇〇区

 

概要:見たモノに肉体を変形できる半人型の異形の生物、発見した際の姿は人であり、役160cm、そして発見した時に「【薄青と薄緑、銀の混は武】【薄黄は生物】」と言っていたり、別の異形の生物と遭遇した際に「世界の膿が出たか」と発言している事から、人語を理解して喋れるという事が分かった。

 

意思疎通を図ろうとした際に一言も発さずに、肉体を変形させて危害を加えずに逃げる事、一般人や部隊には危害を加えない事から、少なくとも敵意は無いと思われる。(現状ではこちら側から攻撃を仕掛けていない為、敵対する意味が無い?)

 

捕獲難易度は高く、発見日の4日後から捕獲をする為に街に警備を行き渡らせたのだが、今に至るまで一度も捕まっていない。

 

現状では街から移動していないため、街でこの異形の生物の情報と一般人からの情報を集める事と、捕まえた際に相応の金額を渡す等が記載されたビラを至る所に貼っているが、それでも成果は無し。

 

 

 

──痾@ä──

 

?「起きて……ィ…起きて…

 

そんな言葉が何処からか聞こえる、

音の出どころを探ると、

その綺麗で、忘れられない声は後ろから聞こえる、

俺はその声の主の名前を呼び、

その声のする方をゆっくりと振り向く。

 

???「おはよう、()。」

 

後ろを振り向くと、

その先には自分の妹である雪が居た、

黒を基調としたオレンジのラインが所々に施された、

俺のお古のパーカーを着ていて、

その腰まである長く薄い黄金色の髪を揺らし、

眠いのか、左手で目を擦り、

右手で俺の服の肩を掴んでいた。

 

足取りは寝ぼけているのか、

千鳥足であり、俺の肩を借りなければ、

恐らく数秒で倒れるだろう。

 

雪「…おはよう…禮@ッ…

 

そう言う雪を支えながら、

俺は階段を共に降りてゆく、

足を踏み外さないように、

怪我をしないように慎重に。

 

雪「ん…ありがと…う…

 

階段を降りきった時に雪にそんな事を言われ、

俺は「はいよ」と答え、

そこから俺はリビング、

雪は顔を洗いに洗面所に向かう。

 

──梦#027──

 

???「おはよう、()()()。」

 

俺はリビングとキッチンの間を繋ぐ通路に居る母親に声を掛ける。

 

?「あーおはよ

 

そんな返事を返しながら母親は、

いつものように料理を作り、

いつものように誰かと連絡を取る。

 

???「さてと…お茶を飲んでから着替えるか。」

 

そんな独り言を呟きながら、

冷蔵庫からお茶を入れたペットボトルを取り出して

コップに注ぐ。

 

???「うん、美味しい」

 

注いだお茶を飲み干した俺は、

ついでに、雪のコップにもお茶を注いでおく、

そして注ぎ終わると、

そのペットボトルを閉じて冷蔵庫に戻すと、

二階に上がる為に再び階段元まで歩いた。

 

その間にすっかり眠気が覚めたのか、

スッと俺の横を通り過ぎる雪に対して

 

???「お茶、注いどいたから」

 

それだけ言い、二階に上がる。

 

雪「あ…ぅん…ありが…と

 

そんな小さな言葉を聞き、俺は二階に上がった。

 

──路地裏──

 

???「…夢……か…」

 

ムクリと身体を起き上がらせる、

どうやらさっきのはいつものように見る夢だったようだ…

こんな夢のような日々に戻りたい。

 

???「さてと…お茶…はもう無いから、今日はそこらへんの雑草とか…」

 

等とブツブツ呟いていた時に、

ふと視線を感じた、

だが敵意とか殺意といった視線ではない、

となるとあのビラを見た市民か?

…考えているところで分からない、

視線を向けているその人物の方を振り向いた。

 

?「……ぁ…」

 

そこに居たのは黒く薄汚れたボロ布を軽く羽織り、

こちらを見ている一人の人間を見つけた、

身長はややこちらが低い…僅差といった所だろうか

その下には使い古されたような白シャツを着ているのが僅かに見えた。

 

髪色はボロ布に付いているフードによって見えはしないが、そこは気にしない、

それよりも1番思った事は、

ファンタジーに出てきそうな、

薄汚れ、衰弱している未熟児そのものであった事だ、

これは例えであり、

この世界はファンタジーでもなければ

SFでもない至って普通の世界である事。

 

とすれば考えれるとするならこの…

青年はこの世界で言うホームレスなのだろう、

その証拠に靴は穴が空いていたり、

羽織っているボロ布が一部破れていたりしている。

 

???「…お前は」

 

そこまで言いかけた時に、

その青年がふらりと前に倒れ込みそうになっているのを瞬時に理解した。

 



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第三話 青年

 

 

 

???「…!危ない!」

 

俺は咄嗟に両腕をタコに変えて、

その青年の倒れ込む地点に

タコに変えた腕を伸ばした。

 

?「ぁ…え…?」

 

青年は何が起きたのかを理解していなかったようだが、

伸ばした腕を自分側に引き寄せた事で、

ようやく理解した様だ。

 

???「大丈夫か?」

 

?「ぁ……は…い…大丈…夫…です…」

 

至近距離で声を聞いたが、

声はお世辞にも綺麗とは言い難い、

声質から女性だと分かった。

 

???「…嘘つけ、こんなにやせ細っている。」

 

大丈夫と答えたこの青年の腕に触れて分かった、

この青年はこの生活を初めてからかなり立っている、

腕はガリガリに痩せ細り、

骨ですらも軽く力を入れただけで

すぐにヒビが入りそうな程までに

カルシウムも不足している。

 

???「お前、家族は…クソ…悪い。」

 

俺はすぐに事情を察して青年に謝罪をする、

こんな状態でここに居るという事は孤児か家出、

もしくはそれ以外…

栄養失調だという事が分かるため何日も食べていない…

そんな事を一瞬のうちに考え、

最適解を考えていると、

青年が顔を上げ、その際に目があった、

水晶やサファイヤの様に薄く青い目、

だが、その青年の目には光は宿っていなかった、

それもその目は少し前の時の俺の目と同じ、

全てを失った目。

 

家族や家、何もかも失った、そんな目。

 

?「ん…別に…良い…」

 

そう言う青年は声色、表情、

それ等には感情が無い、

無機質に近い。

 

?「…ねぇ…」

 

青年は弱々しく口を開く。

 

???「…なんだ…?」

 

俺は青年の話を出来る限り聞くことにした。

 

?「()の話…聞いて…ほし…」

 

???「…分かった、飲み物と食べ物を食べながらでいいから話してほしい。」

 

俺は青年を下ろし、

そこらへんに落ちていたバッグから取り出したかのように見せて、

体内に収納していたカロリーメイトと水のペットボトルを取り出して、青年に差し出す。

 

?「…ありが…と…」

 

ガラガラな声だったが、

なんとなく懐かしさを覚えるような声だ、

兎にも角にも、話を聞いて、

どうするかを考えてみる事にした。

 

──約数分後──

 

オニナ「…よく頑張ったな…俺よりも沢山。」

 

そう言い、差し出したカロリーメイトを食べ終え、

水をちびちびと飲む青年の頭を優しく撫でる、

力を入れると軽々しく壊れてしまうから、

力を絶対に入れずに撫でる。

 

青年「…」

 

青年は小さく頷く。

 

オニナ「…所で、なんで俺を怖がらないんだ?自分で言うのもなんだが、こんな化け物を「違う」」

 

そこまで言った所で、

青年に遮られる、

違う?何が違うのだろうか?

 

青年「こんな…誰も…近寄ら…ない…浮浪者で…臭い私を…貴方…は…話を聞いてくれて…そし…て…食べ物と…水…くれた。」

 

辿々しい口調でそんな事を言い、

フラフラとした足つきで立ち上がる、

言ってる事は単純に、

こんな汚い自分の話を聞いてくれて

食料をくれた事に感謝をしているようだった、

理由にはならな…

 

青年「それに…」

 

オニナ「?」

 

青年が立ち上がると、

俺の元までゆっくりと歩き、

俺の頬に両手を当てる。

 

艾ッ雪@「私の…お兄ちゃんみたい…に…安心出来た…から…?」

 

…ほんと…俺の悪い所だよ、

死んだ妹と似てるからって重ねるなんてな。

 

オニナ「…そうか…」

 

距離感も見誤るのも妹みたいだ、

仕草もその薄く青い目も…

 

オニナ「…なぁ」

 

オニナ「お前は…これからどうしたい?」

 

青年「…これか…ら…?」

 

青年「…出来る…限りでも…いい…貴方に…話を聞いてくれた…貴方に…恩返し…したい」

 

オニナ「…そこじゃあない、お前はこれからの人生をどう生きていきたい?」

 

青年「これから………」

 

青年はその言葉を聞き、

何かを思い出したようで、

バッと、顔を上げてひと呼吸を置き、

言葉を紡いだ。

 

私は…家族に…救ってくれた…この命を…終わらせたくない…終わらせたく…ない…!」

 

その言葉には芯があり、

嘘では無く本心であり、

フードの下で虚ろだった目に、

光が宿った(ような気がした)、

 

だったら俺は、

その気持ちを後押しする、

それだけだ。

 

オニナ「そう…なら…」

 

俺は青年の身体を再びタコに変えた腕で優しく包み込むと、背中にドラゴンの様な羽を生み出して、頭にはミイデラゴミムシの背中をヘルメットとして生み出す。

 

オニナ「俺はそれを後押しする。」

 

俺は背中に生やした羽で空を飛ぶ、

その際に起こした突風で青年のフードが脱げたが、

それには触れずに、俺はある所へ向かう、

それはこの()()に書かれた場所、()()()()()()()()()()()()という場所、

俺を実験対象として捕らえようとしている組織である。



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第四話 研究所

 

 

 

──クリーチャーラボラトリー 探査室──

 

男「はぁ…一体どうしたものか…」

 

何かがあったのか、

少々やつれ気味の男が話を切り出す。

 

その話に乗っかる3人の男女

 

男C「そもそも銃とかで武装した数十人の人が周りを囲んで捕獲しようとするのが逆効果な様な気がするんですけど…」 

 

男「しかし、そうでもしなければ国のお偉いさんにどやされたりクビにされたり…何されるか溜まったもんじゃない。」

 

男B「殺して生体解析をしてその能力を使える様にはできないのか?」

 

男Bはあの異形の生物を快く思っていないみたいで殺してから実験に使う事を提案してみる。

 

男C「現状では捕獲して情報を聞くこと、実験をして、結果を得る事…ですからね…殺すなんて言語道断です、ホントは両方やりたくはないですが。」

 

男Cは過去にあの異形の生物に救われた事があるらしく、男Bの考えに深く反対する。

 

女「あそこまで戦っているオニナさんを捕獲して実験の道具にするのは…私は反対ですよ、

たとえ国がそう命令したとしても、

一般市民や私達職員に対しても、

異形の獣から守ろうとしているオニナさんを

物にできるか分からないあの能力のために

捕まえるなんて…」

 

女は右腕以外が人型の状態の027と遭遇した事があるらしく、

国の能力欲しさの為に実験対象として見られている異形に悲しみと申し訳の無さで、

正直言って辞めたいと思っているようだ。

 

男「俺も反対だ…だが上には逆らえない…せめてお偉いさんの中にあの異形に救われた人が一人でもいれば…」

 

その後に「まぁありえんか、

そんな凄い確率」と付け足し、

一枚のビラに目を通す。

 

男「情報一つで5万、その027の身体のパーツと思わしきパーツ(肉塊や不明なパーツ等)一つ27万、そして027本体をここに連れてくる事で可能な限りでお金やその他を…今見ても嘘っぽい…まぁこれのおかげで、日々集まるパーツで

この()()()()()()()()()()が作れる訳だが…」

 

そう言い取り出したのは人の頭程のサイズはあるザリガニの片腕…名前は【ザリガニシザー】、

人類が獣と戦う術の一つであり、

現状では獣と027から得る方法しかない。

 

ザリガニシザーはこの男専用の武器らしく、

ザリガニシザーの手首辺りには、

この男の名前が彫られている。

 

女「こんな所で武器を出さないで下さいよ()()さん」

 

元山「あっはは、すまない、ついな。」

 

元山は乾いた笑いを飛ばすと、

監視カメラから通じて

施設内に異常がないかを確認していた時、

監視カメラに黒い影が通ったのを確認した。

 

 



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第五話 そして着いた。

 

 

──オニナ視点──

 

オニナ「ここか…」

 

俺は足を馬の足に変えて、着陸の姿勢を取ると、

青年は結局何処に行くのだと口を開く。

 

青年「ん…何処に…行く…の?」

 

オニナ「そういえば、まだ話していなかったな、まぁ降りた時に話す。」

 

そんな事を言いながらゆっくりと目の前にそびえ立つクリーチャーラボラトリー、その入り口前に降り立つ。

 

オニナ「さてと…これを持て」

 

降り立った俺はタコの足で包み込んでいた青年を怪我の無いように降ろすと、青年にある物を渡した、

これは俺の…

 

オニナ「…」

 

俺は来たかと思いながら、

施設の方に視線を向ける、

そこには急ごしらえでやって来たのか多少息切れ気味のこの施設の職員達とその職員を守る為にやや前に出ている一軒家の扉サイズの盾とアサルトライフルを構えた警備員複数人がいた。

 

職員「お…オニナ!何故ここに!?」

 

警備員「…!どうやらあのフードを被った人が捕獲に成功したみたいです、その証拠に…027の手首がフードの男?が所持している手綱によって拘束されています。」

 

職員の近くにいた一人の警備員が、

青年の手元を指差す、

どうやらオニナは自分を捕獲したと思わせる為に手綱等を青年に渡した様だ。

 

青年は「…ぇ…?」と声を漏らしたが、

オニナの意図を理解し、

喉元まで出かかっていた言葉を言わずに口を閉ざしてしまう。

 

職員「ゴホン…そこの君、そのオニナを連れてこちらに着いてきてくれないか?」

 

職員は青年に対してそう言うが青年は手にした手綱を強く握り、その場に立ち尽くしたままだ。

 

青年はこの時、ある迷いが生じた、

それは話を聞き、食料をくれたこの異形を、

自分が生きる為に目の前にいる施設に渡すのか、

渡さないかについてだった。

 

青年はその場に留まり、

己の中で葛藤していると、

肩に何かが触れた、

青年はちらりとその何かが触れている方の肩を見ると、

オニナの右手が置かれていた、

その感覚は生暖かく、

だが嫌な気持ちはしない、

寧ろその逆で心が落ち着く、

ずっとこうしていたいと、

そう思わせる程に。

 

青年「…オニ…な…」

 

青年はやっぱり他のモノを犠牲してまで

生きれる程自分は素晴らしくも無い、

寧ろ醜い、家族に命を挺して守ってもらった、

醜い存在、周りに助けてもらってばかり、

恩返しすら出来ない…

 

青年は手綱を手放した、

きっとそれが最善だと思ったから。

 

職員「な…何をしとるか…!」

 

警備員「…!」

 

青年のした事に職員や警備員は驚きを隠せなかった、

職員達からしたら目の前まで連れてきたオニナの手綱を離して、襲わせようとしている様にしか見えないからだ、更に青年はボロ布で顔を隠しているため、

それが狙いだと思われたようだ、

職員は下がり、

警備員はアサルトライフルの銃口を青年とオニナに向けたのだった。

 

 



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第六話 後悔

 

 

青年「──ぁ…オ…ニナ」

 

青年は直ぐに自分がやってしまったのだと理解した、

一言も発せず、無言で手綱を、独断で手放したのだ、

銃を向けられても仕方ないと言えるだろう、

青年は手綱を拾い、両手をあげようとするが、

慌ててそれすらも叶わず…

 

職員「発砲を許可する!」

 

アサルトライフルから数発の弾丸が放たれる、

青年は心の中でごめんと言い、目を瞑った、

青年は身勝手に生き、

身勝手の末に死亡…仕方ないと青年は思った。

 

…だが、それをオニナは許さなかった。

 

青年「…え?」

 

青年は弾が何かに当たった音で、

当たったと思い、痛みがくるのを待った、

だが一向に来ない、

その代わりに誰かのうめき声が聞こえ、

青年は直ぐに目を開いた。

 

青年「なん…で…」

 

目の前には横にいた筈のオニナがいた、

顔は苦虫を潰した時の様な顔をしており、

低い声で唸り声を上げて、

青年の壁となるように立ちはだかっていたのだ。

 

職員「なっ!?」

 

職員「オニナが守っただと!?」

 

オニナ「…ハァ…」

 

オニナは溜息をつくと、青年の両肩を掴み、

背中に巨大なミイデラゴミムシと

ヒグマの肉体を生み出して

背中を守る盾としてその場に設置したのだ。

 

オニナ「今のは駄目だ。」

 

するとオニナは青年に対して説教を始め、

青年はオニナの気迫により、言葉を紡いだ。

 

青年「ぁ…ぅん」

 

オニナ「俺が盾になったから助かった、だがいつまでも誰かに守ってもらえる訳じゃない」

 

青年「は…い…」

 

オニナ「君の兄や母親は君を守りたい、そう思って命を挺してまで君を助けた、無下にするな…とは言うつもりも無い、()()()()()()()()()だからな。」

 

オニナは思う所があったのか、一瞬目を離して再び目を合わせる。

 

オニナ「助けてもらったのなら恩を返すのは本人が望まない限り恩を返す、その考えは素敵だ、とても俺じゃ真似が出来ない、素晴らしく美しいと言える、だがそれで自分が()()になってでもと考えるのは違う。」

 

糲1…恩は…返せた…?

 

オニナ「ッ…」

 

オニナは何かを思い出したのか、

一瞬顔を歪める。

 

職員や警備員もその会話を聞いていた、

何かを言うのでもなく、

邪魔をするのでもなく、

ただただそのオニナの話を聞いていた。

 

その内に監視カメラでオニナを発見した男女複数人が

動物の一部を模した武器を構えて、

入り口前に集まってゆく。

 

元山「こ…これは一体…」

 

オニナ「これはある人の言葉だ、よく覚えておいてほしい。」

 

その中には元山やその同僚3人もいた、

だが状況を察したのか、直ぐに静かになる。

 

オニナ「人間は毎日、何かから何かを奪う、それは多種多様で、人によって違う、青年は兄や母親に命を間接的に奪ってしまった。」

 

青年「…はい…」

 

オニナ「だがそれで君は明日を生きれるようになった、死んでいった二人が望み、託した結果が君を生かした。」

 

オニナ「そしてもう一つ、人間には言い表せないような()()がある、勿論これも多種多様だ、君の家族の場合は君を明日も生きて暮らしていける様に()を君に託した。」

 

青年「…!」

 

青年はその言葉にハッと視線を、

オニナの目に合わせる、

それにはさっきまで憂鬱としていた薄暗い目では無く、

あの時決心した時のような、そんな目をしている。

 

オニナは話を続ける。

 

オニナ「そして今日までなんとか生きて来た、明日は分からない、だが、それでも、託された()()を背負って生きて行くしかない。」

 

オニナ「託されたのなら、命が尽きるまで背負って、生きて行かねばならないと俺は思っている、そして最後までその()()()を持ち、生きるんだ、そして君の家族の思いを無駄にするな、家族から託された()()を失いたくないなら全力で生きろ。」

 

オニナの目からは一滴の雫が流れ落ちる、

オニナも託されたモノを沢山失った事があり、

それを少しだけ思い出したようだ。

青年も目から沢山の雫を流す。

 

青年「ぁ…あぁ…ごめ…ごめんなさ…ごめんなさ……い…!ごめんなざい…!」

 

青年はオニナの胸の中でゴメンなさいと涙を流し、

オニナは静かに青年の身を抱きしめたのだ。

 

元山「…」

 

職員「…」

 

元山や嫌っていた男性Bですらも黙って青年とオニナの話を聞いていた、

二人が落ち着くまでは待ってあげようと、

周りが配慮した結果である。

 

中にはその青年の泣く声により、

貰い泣きしてしまう者がいたのだとか…

 



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第七話 そして…

 

 

 

 

──そして数分後──

 

その約数分後、オニナと雪は別々に拘束され、

オニナは職員に施設内のとある部屋に案内、

運ばれている最中である。

 

職員「なるほど…このビラを見た事…青年の事情を聞いてビラの情報が本当ならと…自分を捕獲したとして青年に賞金をあげて、そして生きてほしいと…君の精神は素晴らしいものだよ…長年なんとも思わなかった私の心を動かす程にね。」

 

コツコツと職員が歩きながら隣を歩くオニナに対してそんな事を言う、オニナの手首にはさっきの手綱が巻き付いていて、その手綱を職員では無く、

あの時職員の近くにいた警備員が握っている状況だ。

 

オニナ「宣言した事はちゃんと守れよ。」

 

オニナは表情を動かさずに、

もしここの職員等が約束を守らない気でいるならと

ドスの効いた声で念の為に釘を刺しておく。

 

職員「…!守るに決まってるさ、それにせっかく自分から出向いてくれたのだ、まずはこの事を上層部に連絡してから…明日にでも歓迎会を開きたいと思っている、君の歓迎会だ。」

 

職員はオニナのドスの効いた声に少し驚くが、

オニナの気持ちも分かるのか、

直ぐに約束は守ると言い、

ついでに歓迎会を開くからと別の話題にすり替える事に成功した、間を持たせるためにと咄嗟に思いついた事だが、職員は案外やっても良いかもしれないと考える。

 

職員「どうかね、悪くは無いと思うんだが…」

 

職員のその問いにオニナは静かに答えた。

 

オニナ「…要望さえ通れば、出来る限りはやってやろう。」

 

オニナはそれだけ言い、前を向く、職員と警備員は心の中でふぅ、と溜め息をつく(実際にはついていない)。

 

もしここで何かしらでオニナ敵意を買って、

逃がしたり、殺されたり、

人間は敵という意識を植え付けてしまったら、

自分の命は無いとそう直感した、だからこそ、

オニナはそこまで深くは考えていなかったが、

職員と警備員にとっては

生死を分ける会話だったと後で本人等の口から聞いたようだ。

 

──そして──

 

あれから数日経つが、

なんていうか…拍子抜けというか、

映画だと薬漬けや肉体を拘束して自身の血肉を取られてゆくものだと考えていたのだが、

実際は全然違った、

どうやら条件さえ揃えば普通に雇われるらしく、

俺はそれで雇われる形でこの施設に住むようになった、

住むようになったというのは、

簡単に言えば、

俺が今まで倒してた獣(この前の人喰ったりしてた奴)等を収容、保管する部屋の一室を自分用に改造して、

そこを家として住んでる(許可はとってる)

 

そして、物凄く意外だったのだが、

この前の青年、実は()()()だったらしく、

その時の俺は全くと言っていいほど気が付いていなかった。

 

声もガラガラで全然喋らなかったから分かってなかったが、確かに胸元が妙に膨らんでいて、僅かに声が高かった、それにフードでよく分かっていなかったが体型も少し……あれは故意じゃない事を言っておかないともしかしたら捕まるかもしれない。

 

数日後位に休みがもらえるようだから、

その時に話すとしよう。

 

…ん?君は…

 

……なるほど、新人か、これからよろしく…え?名前?

 

俺の名前は()()()、複数の生物に変身出来る男さ。

 

─Fin─



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