リュウのラーニング大冒険 (トッシー)
しおりを挟む

ラーニング1

ブレスオブファイア3は今やっても神ゲーだと思います。




「ここ、どこだ?」

 

リュウは当たりを見渡して呟いた。

青い髪に青い瞳の青年は空を仰いだ。

太陽の光が自身の身につけている鎧に反射して煌めく。

思わずリュウはドサリと肩にかけていた荷物を落とした。

 

 

自分は転送装置を使って移動したはずである。

ならば周りは転送装置の設置された機械の部屋である筈だ。

しかし視界に映る景色は青々と茂る木々が立ち並び、冷たく吹き抜ける風に潮の香りが漂う。

海が近いのだろうか?

そもそも何故、自分一人しかいないのだろう。

転送装置には仲間たちと入ったはずなのである。

ならどうして周りには仲間がいないのか?

リュウは久しく忘れていた孤独を感じて冷や汗を流した。

 

「ニーナ!レイ兄っ!モモさん!」

 

リュウは仲間たちの名前を呼んでみるが返事は帰ってこなかった。

 

「ペコロス!」

 

やはり返事がない。

 

理屈は分からない。

どうやら自分だけが、転送装置の事故によって他の場所に転送されてしまったようだ。

しかも子機である転送装置の無い場所に。

 

「つまり、帰れないって事か…」

 

リュウは少し寂しそうに溜息を付いた。

皆のことだから心配はないだろう。

例え自分のように事故で何処とも知れない場所に送られていたとしても…。

何しろ女神ミリアと共に戦った仲間たちだ。

一人一人が正に一騎当千の実力者だ。余程の事がない限り大丈夫な筈だ。

 

「ならばやることは一つだな」

 

リュウは荷物を持ち上げると歩き出した。

 

 

 

ザバァンッ!!

大波小波が何度も島の崖に押し寄せる。

 

「……フィーーーーッシュッ!!!」

 

リュウは今、釣りをしていた。

潮風を頼りに海までやって来たリュウは趣味と実益を兼ねた釣りを堪能していた。

釣りを初めて既に数時間、リュウの脇には魚いっぱいのバケツが4つ。

元気よくビチビチと跳ねていた。

先程から釣れる魚の全てはリュウが未だ見たこともないものであり、釣り師のリュウの心に火を付けていた。

仲間が居ないことなど既に頭の片隅に追いやられ、完全に満喫していた。

 

「大漁大漁♪」

 

リュウはホクホクしながら釣れた魚をバケツに投入する。

何匹か海の魔物が混じっていたがリュウには知る由もない事だった。

 

 

「ここって無人島だよな」

 

バケツに入りきらなくなった為、小さな魚はリリースし釣りを終了したリュウ。

彼は魚の入ったバケツを下げて散策していた。

島の外側をぐるりと歩いたが、どうやらそれ程広い島ではないらしい。

リュウの知らない見たことのない魔物の姿も何度か確認している。

当たりからはリュウの様子を伺うような視線を感じるのだが人のものではない。

これもモンスターだろう。

 

「しかしこれだけ歩きまわっても全く襲ってこないとは、この島の怪物は大人しいんだな」

 

リュウは常に警戒しながら歩く自分に苦笑する。

当たりからは殺意は愚か敵意すら感じないのだ。

身構えている自分が馬鹿らしくなってきた。

その時だった。

ガサガサと茂みから何かが飛び出してきた。

小さな黒い茂み、いやツンツンの黒髪だった。

 

「ああぁっ!?やっぱりっ!人間だ!俺以外の人間っ!?」

 

現れたのは小さな少年だった。恐らく十歳にもなっていないだろう。

あどけない表情とリュウの腰あたりまでの身長。間違いなく子供だ。

どうやら無人島ではなかったらしい。

 

「キメラの言ったとおりだった…、本当にいたんだ」

 

上空で禿鷹の様な魔物が旋回している。

おそらくあれがキメラだろう。

 

「君は?」

 

リュウは少年に近づくが、少年は驚いたようにビクリとすると回れ右で後ろを向いた。

 

「じいちゃんっ!じーちゃんっ!!」

 

そして猛ダッシュ。

結構なスピードで走り去っていった。

リュウはそんな少年の後ろ姿を唖然と見送った。

 

「……まいったな」

 

それにしてもあの男の子、なんだか懐かしい感じがしたな…。

子供の頃ティーポに会った時みたいな。

リュウは取り敢えず少年の後を追って見ることにした。

 

 

 

ここは南海の孤島デルムリン島。

別名、怪物島とも呼ばれている無人島だ。

嘗て世界征服を企む魔王の手下だった邪悪な怪物達。

現在は魔王は倒され、その邪悪な意志から開放された怪物達は争いを避けるために移り住んだ島だ。

 

デルムリン島の中心、そこに建つ簡素な作りの家。

先程リュウから逃げた少年が、家の中に飛び込んでいった。

 

「じいちゃん!じいちゃん!!」

 

「なんじゃダイ、騒々しい…、まじめに呪文の修業をする気になったのか?」

 

そこにいたのは少年、ダイの祖父ではなく年老いた怪物だった。

杖を手にした怪人、奇面道士のブラスはこの島の長老であり、ダイの育ての親だった。

 

「に、人間っ!この島に人間が来たんだよ!」

 

「な、何じゃとっ!?それは本当か!?それで人数は!?」

 

「う、うん…一人だったよ。何か見たこともない格好してたけど…あと剣を持ってたから戦士だと思う」

 

怪物を退治しに来た戦士だろうか?

だとしたら一大事だ。島の住人全体に招集をかけるべきか?

しかし相手は一人、唯単に迷い込んできただけならば…。

 

「あのう…、すいませーん」

 

呼びかけられて振り向くと、そこには青い髪の青年がバツの悪そうな顔で覗きこんでいた。

 

「な、なんじゃお前はっ!?ダイの言っていた人間か…っ!?」

 

「うわっ!?もう来たっ!」

 

「こっちに敵意はないよ…、ここを脅かす気はない。良ければ話を聞かせて欲しい」

 

リュウの言葉にブラスとダイは顔を見合わせた。

これが後の勇者、竜の騎士ダイと竜族の勇者リュウの出会いだった。

 

 

 

「なるほどのぅ…、気がついたらこの島に…?」

 

「ああ、信じられないかもしれないけど、俺自身、何が起こったのかまだ把握できてないんだ。ここは一体?」

 

「ここはデルムリン島。怪物達が人間との戦いを避けて移り住んだ島じゃよ」

 

「そうか…、やはり聞いたこともない場所だ」

 

リュウはブラスが出してきた地図を眺めながら溜息を付いた。

 

「ピピィ!ピィピィ!!」

 

「あ、ゴメちゃん!」

 

窓から飛び込んできたのは金色に輝く羽の生えた何か。

愛らしい声を上げてダイの周りを飛び回る。

 

「何だコイツは?」

 

「ああ、ゴメちゃんといってな。わしらの家族じゃよ」

 

「へぇ…、可愛いなぁ。よろしくなゴメちゃん」

 

何でも幻の珍獣、生きた宝石とも言われる怪物でゴールデンメタルスライムいうらしい。

ダイにブラス、そしてゴメちゃん。話をしてみて分かったが、みんな好感の持てる者達だ。

リュウは女神ミリアや竜族の事は伏せて冒険の話を。

ダイ達は島での暮らしを互いに話した。

特にダイとはすぐに打ち解けて、仲良くなった。やっぱり何か懐かしい感じがする。

 

 

リュウの予感が正しければ此処は自分の世界とは異なる異世界というところだろう。

簡単に帰れるとは思えない。

 

「仕方ないか…それに丁度いい機会だ」

 

「どうしたんじゃ?」

 

「ブラスさん、ダイくん。俺をこの島の仲間に入れてもらえないか?」

 

「え、ええぇっ!?」

 

「お主、人間の町に行きたいとは思わんのか?」

 

「いえ、それ程は…?それにこの島は凄くいいところだ。気に入った」

 

「ほんとに!?本当にここで暮らすの兄ちゃん!?」

 

「ああ、君らさえ良ければ」

 

「じいちゃん!」

 

「そうじゃな。ダイも他の人間と接しても良い頃じゃ」

 

「それじゃあ」

 

「うむ、リュウとやらわしらはお主を歓迎しよう」

 

「やったああああっ!!」

 

ダイは飛び上がって喜んだ。

こうしてリュウはデルムリン島に受け入れられて島の住人として暮らしていくことになった。

 

 

 

そしてリュウの行動は早かった。

勝手に自分のパーソナルコーナーを作り、ダラダラと日々を過ごし始めた。

大地の精霊が逐わすという洞窟。リュウは洞窟の前にテントを張った。

いざとなれば雨風も凌げるし海も近い。不満はなかった。

嘗てガーランドから竜族や自分の事を知りたくはないかと問われた時、「どうでもいい」と答えて、ガーランドを仰天させた時と同じ態度。

ゴースト鉱から目覚めて今まで、戦いの日々だったリュウは平和を満喫していたのだ。

仲間の事は気になるが、今は自分の人生を楽しもうと決めた。

 

 

この島でのリュウは基本的にダラダラしている。

好きな時に起きて好きな時に眠る。ダメ人間のような暮らしだ。

そんなリュウにも島での仕事はあった。

それが釣だった。

リュウが釣った大漁の魚はダイの家の食卓に並ぶ。

ダイも怪物達が捕ってきた果物や木の実をリュウに分けてくれた。

 

 

ある日、リュウはいつもの様に島をぶらついていた。

思いのままに島を歩き、ダイの家までやって来る。

 

「お、今日もやってるな」

 

リュウの視線の先ではブラスとダイが向き合って難しい顔をしていた。

 

「火炎呪文(メラ)!!」

 

ダイは手を突き出して叫ぶ。

するとその掌にマッチの様な火が現れて、直ぐに消えた。

 

「ばっかも~~ん!!」

 

「あいてっ!?」

 

ゴチン!と叩かれてダイは頭を押さえる。

 

「何度言ったら分かるんじゃ!集中力が足りん!」

 

「だってじいちゃん、何度やったって無駄だよ。俺、魔法の才能ないもん」

 

ダイは涙目になりながら膨れ上がったタンコブをさすった。

 

「ええいっ!情けないっ!お前は殆どの呪文との契約を成功しておるんじゃ!出来ない筈なかろうっ!もう一度手本を見せる」

 

ブラスは空に向かって杖をかざすと呪文を唱えた。

 

「火炎呪文(メラ)」

 

杖の先に掌大の火球が出現、高速で撃ちだされた。

ブラスはダイの為に次々と自分の魔法を説明しながら放っていく。

リュウのその様子をじっと見ていた。

 

「へえ、この世界の魔法って契約して使えるようになるのか?スキルノートに記録しとこ」

 

リュウは怒られて涙目になっているダイを尻目にブラスの使った魔法をちゃっかり身につけていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く?

 

本日のラーニング

 

メラ メラミ ホイミ ベホイミ キアリー

 

リュウ

 

レベル:80

 

装備 

 

ドラゴンブレイド ドラゴンアーマー ドラゴンシールド ドラゴンヘルム 竜の涙

 

皇帝の剣 グミオウの剣 テイルウィング 命の鎧 武神の籠手 愛の腕輪 

 

シャーマンリング

 

スキル

 

竜変身

リリフ アプリフ トプリフ リフラル リフレスト

ヤクリ ヤクリフ リバル

カテクト ミカテクト パリア

テラブレイク

 

オーラバリア セブンセンシズ 大防御 シャドウウォーク

けっかい 気合いため 魔法ため スーパーコンボ

マジックボール オーラスマッシュ バトルソング キリエ

やる気なし ねる

 

BOFⅢの主人公。

青い髪に青い瞳。

女神ミリアを討ち取った後、仲間たちと旅立つ。

その後、知らず知らずのうちに異世界の孤島デルムリン島に迷い込んだ。

温厚で心優しい竜族の青年。

文字通り神々が恐れる程の世界を滅ぼす事が出来る力をその身に秘めている。

趣味は道具収集と釣りで腕はかなりのモノ。

戦闘では相手を観察することで技や魔法をラーニングする事が出来る。

切り札は竜変身『カイザードラゴン』と『ウォリアセカンド』。

最後の戦いを終えて燃え尽き今ではすっかり面倒くさがり屋の『やる気なし』。

しかし釣りには乗り気でやる気。

見た目は16、7歳くらいだが年齢不詳。

リンゴが好物で何時も持ち歩いている。




ラーニングって良いですよね。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ラーニング2

今更投稿。
遅くてすいません。
昔書きかけていた続きを書いて投稿。
随分昔なので食い違いがあるかもしれません。

竜変身が唯の移動手段にw


リュウがデルムリン島で暮らし始めて既に半月。

すっかり島に馴染んだリュウはダイは勿論、島の怪物達とも仲良くなっていた。

ダイの勇者ごっこに付き合って魔王役(やられやく )になったり、釣った魚を皆に振舞ったり、ダラダラと怠けてみたりと。

そんな毎日を送っていた。

島は平穏そのもので退屈だが、日々が戦いの連続だったリュウにとっては楽園の様だった。

 

そんなある日の事、

 

ピィーーーーーッ!!!

 

「ん?集合の合図?」

 

島全体に響く高い指笛。ダイの合図だった。

リュウは釣りを中断して溜息をついた。

 

「まだ大物、釣ってないんだけどな…」

 

今度は盗賊役か、それとも勇者の仲間の戦士役か…。

最近になって更にバリエーションの増えた勇者ごっこの配役を思い浮かべてリュウは苦笑いした。

 

 

「こ、これは…?」

 

リュウが辿り着いた場所で目にしたのは地獄絵図だった。

島の仲間達が傷だらけで倒れており、目につく全てが虫の息だった。

地面に出来た焼け跡やクレーターの中心で蹲っている怪物達。

滅茶苦茶に荒らされた島の広場の隅には杖で身体を支えている鬼面道士の姿があった。

 

「ブラスさん!」

 

「おお、リュウ……」

 

 

リュウは傷だらけのブラスの身体を支えると回復魔法のアプリフをかけてやる。

 

「たすかったわい…、それよりもダイが、ゴメは…」

 

「何があったんだ?」

 

リュウは島の仲間達に回復魔法を掛けると、改めてブラスに事情を聴いた。

数刻前、この島に新たに人間がやってきたらしい。

勇者。そう名乗った人間たちは、罪のない怪物たちを保護しているという事でデルムリン島にやってきたのであった。

勇者にあこがれるダイは、言われるままに島を案内し、ゴールデンメタルスライムのゴメちゃんを紹介。

本性を現した勇者達はダイと怪物達を傷つけ、ゴメちゃんを誘拐していった。

生きた宝石、幻の珍獣と呼ばれるゴールデンメタルスライムは莫大な利益に成るがために。

そう、勇者を名乗った者達は偽物だったのだ。

ダイはゴメちゃんを救うためにキメラを駆り、後を追っていったのだという。

行先はおそらくロモス王国。

この島からもっとも近い大陸にある国だろう。

 

 

 

「ダイが…」

 

リュウは無言で海を睨み付けた。

思い浮かべるのはダイの笑顔。

ティーポを思わせる懐かしい感じの少年。

そして太陽を思わせる温かさ。

リュウは決意した。

 

「……いくか」

 

「リュ、リュウ……おぬし?」

 

「ダイには内緒にしといてくれ…」

 

虹色の光を身体から放ち始めたリュウにブラスは困惑する。

リュウは数年ぶりにその力を解放した。

体内の竜の因子( ジーン)を選択、

 

≪トランス≫  ≪ライト≫  ≪アンフィニ≫

 

そして、

 

「でやあああああああああああっ!!!」

 

紫電が奔り轟雷がリュウへと降り注いだ。

眩い閃光がブラスの視界を埋め尽くし、金色の光を放つ鱗が現れた。

そこにいたのは青い髪の青年ではなかった。

山の如き巨躯を覆う金色の鱗と王者の如き神威。

カイザードラゴン。

竜の王は、その巨大な身体よりも更に雄大な翼を開き咆哮を上げた。

 

「こいつは夢か…?」

 

金色の巨竜が凄まじい速さで遠ざかっていく光景にブラスは開いた口が塞がらなかった。

 

 

 

 

 

カイザードラゴンの翼で海を越えたリュウは一分と係らずにロモス王国に到着した。

騒ぎを避けるため変身を解除し、城へ潜入したリュウが見たのは意外と善戦するダイの姿だった。

 

場内は既に大混乱。

多種多様な怪物達が城内で大暴れしていたのだった。

ブラスに持たされたという怪物を封じ込めておける魔法の筒。

これらを用いてダイは首尾よく事を進めていた。

おばけキノコの甘い息で僧侶を拘束し、どろにんぎょうの不思議な踊りで魔法使いの魔法力を奪い、金目の物に目がない戦士をおどるほうせきで足止め。

ダイは魔物使いの才能でもあるのかと、リュウはその采配に感心した。

 

「へぇ?心配してきてみたけど俺、必要なくね?」

 

しかし、

 

『メラ』

 

突如として放たれた火炎呪文によって呼び出した怪物が焼き尽くされた。

 

「言っておくが俺に小細工は通用せんぞ」

 

偽勇者が剣を抜きながらダイを睨み付けた。

ダイは落ちていた剣を取ると偽勇者に挑みかかった。

剣を交える両者。

しかし実力の違いは圧倒的だった。

才能はあれど修業、実戦経験ともに足りないダイでは曲がりなりにも勇者を名乗る男には歯が立たなかった。

ダイは猫の手を払うように往なされると、その細い首を締め上げられた。

 

「くそ…、何が勇者様だ!俺の友達を浚った悪者のくせに…っ」

「黙れ!」

 

偽勇者の剣がダイに迫る。

その切っ先が正にダイを貫こうした瞬間、なんと剣は砕け散った。

 

「な、なにっ!?」

 

いつの間にか割り込んでいたリュウが剣の刃を握り潰したのだった。

 

「な、何者だ?」

 

「大丈夫か?ダイ」

 

リュウは偽勇者の声を無視してダイを支える。

捕まえていたダイをいつの間にか奪われて偽勇者は目を白黒させた。

 

「リュ、リュウ兄ちゃん?どうして…?」

 

「助けに来たに決まってるだろ?ブラスさんも心配してたぞ」

 

「お前も怪物小僧の仲間か……よくも俺の剣を…喰らえ!イオラ!!!」

 

偽勇者は砕けた剣を捨てると呪文を唱えた。

リュウは咄嗟にその身体を盾にダイを庇った。

 

ズガガガガガガッ!!!!!!

 

偽勇者が放った光球が肥大化するように爆発する。

轟音と爆風がリュウを包み込み衝撃波が広がる。

「ざまぁ見ろ……な、なんだと…」

 

爆煙が晴れたその場所には全くの無傷の状態のリュウが何事もなく立っていた。

リュウの指に嵌められた指輪が光る。

それは火属性を吸収して活力に変える紅蓮の指輪だ。

 

「俺の剣と魔法が……ば、化け物か…」

 

全くの無傷のリュウに偽勇者は怯えたように後ずさった。

 

「リュ、リュウ兄ちゃん……オレ、まだ…」

 

ダイは魔法の筒を取り出すと偽勇者を睨み付けた。

 

「ゴメちゃんは俺の友達だ……だから…」

 

王様の傍で捉えられているゴメちゃんをダイは心配そうに目つめた。

そのダイの姿にロモス王は狼狽えた顔をする。

 

「だから、俺が助けるんだ!デルパーーーッ!!!」

 

魔法の筒から姿を現したのはリュウは勿論、ダイすら目にしたことのない怪物たち。

少なくともデルムリン島で見た記憶はなかった。

威圧感からしてデルムリン島の怪物達とは一線を画す。

その戦闘力は、偽勇者とその仲間たちを圧倒した。

ダイの合図によってあっという間に無力化されてしまった。

 

「そこまでよ!」

 

そこに現れたのは偽勇者の仲間の僧侶だった。

手には金網によって捉えられたスライム達と鈍く光るショートソード。

僧侶は捕えたスライムに剣を突き付けてニヤリと笑った。

 

「さぁ、その化け物をひっこめな…アンタも動くんじゃないよ」

 

「でかした!ずるぼん」

 

その時だった。

捕えられていた筈のスライムが輝き、風船のように肥大化していく。

 

「……へ?」

 

網を破り一個の怪物へと変身した。

 

「きゃああああああっ」

 

キングスライムはプクーッと膨れ上がると、その巨体で僧侶を押しつぶしたのだった。

 

「今だダイ!」

 

ダイは魔法の筒を構えて呪文を唱えた。

 

「イルイルーーッ!」

 

その先には偽勇者。

偽勇者は無防備に魔法の筒が放つ光に引き寄せられ、封じ込められてしまった。

そしてダイは安堵の表情を浮かべると、その場に倒れこんだ。

怪物によって解放されたゴメちゃんが泣きながらダイへと飛び込んだ。

 

「どうやら目が曇っていたのはわしの様じゃな…」

 

ゴメちゃんの為に傷つきながらも戦い倒れたダイ。

そしてそれを気遣う怪物達。

その光景を眺めながらロモスの国王は金色に光る冠を取ると、そっとダイの頭にかぶせるのだった。

 

「いかに強く立派な姿をしていようと、子供を殺そうとしたり人質を取ったりするものが勇者の筈はなかった…見抜けなかった自分が恥ずかしいわい…」

 

それは勇者に贈られる覇者の冠。

偽勇者に与えられる筈だったそれは、より相応しい勇敢な少年へと送られるのであった。

怪物達から上がる声援にダイは笑顔を浮かべるのであった。

 

「あの王様…、大した人物だな…どこかの世界の国の王族とはえらい違いだな…」

 

リュウは気を失っている偽勇者の仲間を拘束しながら溜息をついた。

 

「潮時、か…」

 

随分長くデルムリン島にいた気がする。

こうして外の大陸まで来て、国というものを目にしてリュウは思った。

自分が暮らしていた箱庭のような小さな世界とは比べ物にならないくらいこの世界は広いのだと。

 

「もう心配なさそうだし」

 

多くの怪物達と、その怪物達に囲まれて安心して眠る少年に理解を示す王様の姿。

その光景にリュウは笑うと踵を返し歩き出した。

 

「バイバイ、また何処かで会おうなダイ…」

 

リュウは眠っているダイに小さく別れの言葉を継げるとロモスを後にするのだった。

雄大なこの世界に惹かれる様に…。

 

 

 

 

 

 

本日のラーニング

 

 

イオラ

 

 




リュウ役立たずですね。

紅蓮の指輪、雷の指輪、氷河の指輪はこの世界ではチートかもしれないw

バギとべダンくらいしか効かないんじゃw


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ラーニング3

話は一気に魔王軍復活まで飛びます。



リュウがロモスから旅立って幾ばくかの時が流れた。

竜変身は自重し、徒歩での移動の為、未だ世界中を回っていない。

先ずリュウは最も近くにある北のカール王国を目指した。

騎士の国カール王国。

嘗ての魔王を打倒した勇者の国であり美貌の女王フローラの治める国だ。

歴史と伝統深い国.

 

破邪の迷宮

 

王国が建国される以前から存在する迷宮で数々の呪文が秘められているという。

その存在を知った時のリュウの行動は速かった。

この迷宮を攻略し、全ての呪文をスキルノートに記録する事を決めたのであった。

 

それから3ヶ月の時が流れ、リュウは未だ破邪の迷宮に潜り続けていた。

 

 

―破邪の迷宮 地下365階―

 

リュウはこれまで培ってきた技術と新たに修得した呪文、ドラゴンの力を駆使して次々と階層を攻略していった。

 

「はああああああっ」

 

迫りくるギガンテスを棍棒ごと両断し、振り向き様に背後から襲ってくるうごく石像に向けて雷撃の魔法バルハラーを放つ。

辺りは無数の怪物だったモノが転がっており、正に死屍累々の光景だ。

 

 

GAAAAAAA!!!

 

新たに現れたギガンテスがいきり立って襲いかかってきた。

 

「おっと!?」

 

攻撃を避けたリュウの隣にいたメカバーンが棍棒に叩き潰された。

 

 

襲い来る魔物や罠を剣で切り伏せ魔法で薙ぎ払う。

ここ数日そんな行動しか取っておらず、流石のリュウも疲れが見え肩で息をしていた。

ここまで来て引き返すという選択肢は無い。

歩いて戻るには距離が有り過ぎるし、脱出する為の呪文( リレミト)はこの階層では封じられていて使えない。

退路は無いのだ。

 

「こんな事なら250階で素直に帰ればよかった…」

 

ここまで来るまでに通った階層には呪文( リレミト)の封じられていないフロアも存在した。

もう少し進めば帰れる。あと少しで攻略の筈と希望的観測でここまで降りてきた自分の判断が恨めしい。

そもそも死んでしまえば全て無駄になってしまう。

既に持ってきていた食料は底をつき、襲ってくる怪物や虫、生えている苔で飢えを凌いでいる始末だ。

しかもここ数日、襲ってくる怪物の殆どは無機物系が殆どで碌なものを食べていない。

 

「腹減ったなぁ」

 

リュウの腹の虫が栄養を催促するようにグゥっと鳴った。

竜の青年は腹の虫を宥めながらも階段を下りていく。

そして地下380階、

 

「ここはもしかして…」

 

そこは迷宮ではない一部屋で構成された階層だった。

通路は存在せず、中央には巨大な魔方陣。そして次の階層へ下りる階段があった。

リュウはその階層の存在する意味を知っていた。

 

「やった…、やっと帰れる…」

 

緊張が切れたようにリュウは膝をついた。

大して怪我はしていないし、まだ体力は持つが流石に地上が恋しい。

それに人間らしい食事も摂りたい。何よりも着替えたい。

この下の階層も気にはなるがリュウは帰ることに決めた。

 

「おっと、その前に」

 

リュウは魔方陣の中心に立つ。

この世界の魔法は呪文そのものと契約を行う事で初めて習得できるのだ。

リュウは自身の中に宿った新たな呪文の存在を確認する。

そして地上へ帰るための呪文( リレミト)を唱えた。

 

 

 

「……は?」

 

地上へと帰ってきたリュウが目にしたのは美しいカールの街並みではなかった。

焼け焦げた石畳と破壊されつくした後の瓦礫の山。

辺りには食い散らかされた兵士の死体と黒ずんだ血の跡。

酷い有様だった。

自分が破邪の迷宮に籠っている3ヶ月の間に何があったのか。

リュウは気を取り直すと生存者を捜すために歩きだした。

 

 

ぐるるる…

 

そこにいたのは生存者ではなく怪物だった。

間違いなくこの街を破壊した存在。

この世界でも最強と称される怪物。

ドラゴン種の群れだった。

初めて破邪の迷宮の深部で遭遇したときは驚いたものだが、自分の知る竜族とは異なり知能のない力だけの怪物だった事に複雑な気持ちを持ったものだ。

目の前でリュウを睨みつけているのはヒドラが2体にダースドラゴンが6体。

並の戦士や魔法使いの適う相手ではない。

カールの騎士団は精鋭と聞いているが成程、これなら敗退しても仕方がないとリュウは剣を抜き放った。

 

 

数分後、

全ての敵を切り伏せたリュウは剣を鞘に戻して一息。

 

「……た、倒したのか?」

 

瓦礫の影から人が現れた。

リュウはその鎧姿には見覚えがあった。

カール王国の騎士だろう。

騎士は身体の到る所に傷や火傷を負っており満身創痍だった。

リュウは男に回復呪文をかけて介抱する。

 

「すまない…助かった…」

 

「一体この有様は…何があった?」

 

「……あんた、何も知らないのか…」

 

「ああ、ここ最近ずっと迷宮に篭ってたから…」

 

リュウは破邪の迷宮の方を指した。

 

「破邪の迷宮か…それなら納得だ…実は」

 

数日前、大人しかった怪物たちが急に凶暴化し、人々を襲い始めたのだという。

穏やかな心は失われ、殺意を漲らせた怪物たちは暴走した。

この自体の意味するところは一つ。

魔王の復活。

その邪悪な意思の影響を受けた怪物たちは再び人々への脅威となったのだ。

 

「あのドラゴンも?」

 

「ああ、魔王軍の軍団の一つだろう…」

 

「それは超竜軍団だろう…、何があったのか俺にも詳しく教えてくれないか?」

 

現われたのは銀の髪の美男子だった。

この男も戦士だろう。マントの隙間から禍々しい鞘に包まれた剣が見えた。

 

「おれの名前はヒュンケル……お前たちは?」

 

「お、俺はカール王国の騎士でクロスという……」

 

「俺はリュウだ」

 

クロスと名乗った騎士は語り始める。

ドラゴンの群れが美しかったカールを滅ぼしたのだと。

最強と謳われたカール騎士団がまるで歯が立たなかったと。

 

「初対面なのに気が引けるが、頼みがある。城門前に俺の兄の亡骸がある。犠牲になった他の騎士と一緒に弔うのを手伝ってほしい」

 

ヒュンケルは無言で頷いた。

クロスに肩を貸してやり城へと移動する。

その道中、クロスが泣きそうな声で話しだした。

 

「おれの兄はこの国の騎士団長だった…騎士ホルキンスは隣国でも名の通った英雄だった」

 

それほどの男も敵の軍団長には、まるで歯が立たなかったというのだ。

 

「あんなに凄いのを俺は見たことがない…っ」

 

クロスは自身が目にした記憶を反芻しながら身震いした。

剣を交えるホルキンスと軍団長の男。その戦いは互角だった。

しかし突如として軍団長は剣を鞘に納めた。

ホルキンスは攻めてきておいて引く気なのかと激高し、

 

「ここまでの事をしておいて、臆したかっ!!!」

 

怒りの斬撃が軍団長を襲う。

しかしその剣は軍団長を討つ事は叶わなかった。

敵の額が輝いたかと思うと、凄まじい速さの光線がホルキンスの胸を貫いたのだ。

 

「たったの一撃…、一撃で兄はやられてしまったんだ…ちくしょう…魔王軍めっ」

 

悔しそうなクロスの嘆きに居たたまれなくなる。

ヒュンケルは目を伏せて、まるで懺悔するかのように口元を噤んだ。

 

(おれの正体が竜だとしれば、この人はおれを恨むかな・・・)

 

程無くして城に到着したリュウ達は、ホルキンスの遺体を見つけた。

その有様は酷いもので、遺体は瓦礫の下敷きになっており、胸には奇妙な形、まるで何かの紋章の様な形の傷があった。

これが致命傷となり即死したのだろう。

 

「こ、この紋章は…」

 

ホルキンスの傷を見てヒュンケルが愕然とした…。

そして身を翻して走り出した。

 

「ダイが…、ダイが危ないっ!!」

 

ダイが危ない。

ヒュンケルは確かにそう言った。

リュウの頭が真っ白になる。

脳裏にはデルムリン島で共に過ごした弟分の笑顔が浮かんだ。

 

「おいっ!」

「すまない!俺にはやらねばならん事が出来た。無責任だとは思うが後は頼む!」

 

ヒュンケルは一方的に会話を切ると、その場から走り去って行った。

 

「……ダイが…偶然おなじ名前ということも…いや」

「どうした……、あの男は?」

 

クロスは走っていくヒュンケルの背中を見ながら首を傾げる。

 

「見ての通り、なにか用事があるみたいだ…」

「そうか…」

 

さすがにこの状況で見て見ぬふりはリュウには出来なかった。

ダイの事は気になるが、クロスの仲間を弔うのを手伝って上げたい。

リュウは、クロスの手伝いが終わればヒュンケルの後を追うことを決めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く?

 

 

今回のラーニングと習得呪文

 

みなごろし さみだれぎり しっぷうづき たいあたり

 

おたけび ちからため ふしぎなおどり さそうおどり

 

 

火の息 火炎の息 激しい炎 灼熱の炎

 

冷たい息 凍りつく息 凍える吹雪 いてつくはどう

 

どくの息 もうどくの霧 あまい息  すなけむり

 

 

べホマ マホイミ マホトラ マホアゲル

 

ザオラル シャナク

 

スクルト バイキルト ピオリム フバーハ

 

マホキテ マホカンタ アストロン

 

マホカトール ミナカトール

 

 

イオナズン バギクロス べギラゴン

 

ザラキ

 

ライデイン ギガデイン

 

パルプンテ

 

 

ルーラ リリルーラ トベルーラ リレミト

 

アバカム レミーラ レミラーマ トヘロス

 

インパス レムオル フローミ

 

 

追加あるかもしれませんw

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ラーニング4

短めですが連続投稿です。


カール王国で騎士団達を弔ったリュウは、クロスに別れを告げてヒュンケルの後を追った。

幸いにもクロスから礼に路銀を幾らか貰ったリュウは無一文を脱出することが出来た。

ヒュンケルが立ち去った方角から向かう先は、

 

「テランかベンガーナか…」

 

リュウは地図を見ながら目的地を予想する。

ギルドメイン大陸最大の都市にして最も安全な商業国ベンガーナ。

そのベンガーナの北に位置する隣国。自然を愛するあまり繁栄を捨てた小国テラン。

 

「魔王軍が襲うなら間違いなくベンガーナだよなぁ…」

 

侵略価値もなく人口の少ないテランを魔王軍が積極的に襲うとは考えにくい。

リュウは次の目的地をベンガーナに決めるのだった。

その選択が誤りである事に気がつかないまま…。

 

 

 

「またこのパターンか…」

 

ベンガーナに到着したリュウが目にしたのはカール王国の時と同じだった。

眼前に映ったのは破壊されつくした街並みだった。

焼け焦げた地面と鋭い爪痕が刻まれた建物。

カールを襲った超竜軍団のドラゴン達だろう。

軍備、商業ともに世界一とまで呼ばれた国が見る影もなかった。

既に自体は収まっており、街の復興が始まっている。

人々の話では、やはり襲ってきたのはドラゴンの群れであったらしい。

そしてドラゴンの群れを倒したのは年端もいかない黒髪の少年だったらしい。

戦鬼の様な強さで瞬く間に竜の群れを倒してしまったというのだ。

ドラゴンは並のモンスターとは訳が違う。

その鱗は鋼よりも硬く、生命力あふれる巨体は並の攻撃ではビクともしないのだ。

吐き出される炎のブレスはベギラマに匹敵するともいわれている。

そんなドラゴンの群れを倒した少年、

 

「もしかしたらあの小僧の方が怪物かもな…」

 

心無い住人の言葉にリュウの心がチクリと痛んだ。

自分が人間ではないと知れば、この街の住人はどう思うだろう。

それにドラゴンの群れを退けて街を救った少年は、どんな気持ちでこの街を去ったのか?

 

「……お前なのか?ダイ…」

 

この街にはダイは居ない。

立ち去った後と考えるのが妥当だろう。

なら次の目的地は…。

 

「隣のテランか…可能性は低いけど行ってみよう」

 

「キャアアアア!!」

 

リュウがベンガーナから去ろうとしたその時だった。

女性の悲鳴が上がったかと思うと、上空から強い殺気が放たれた。

足元に見えるのは巨大な蛇の様な影。

強い熱気を感じ取ったリュウは高く跳躍してその身を宙へと躍らせた。

ドラゴンライダー、竜騎士、竜使い…。

どう表現するのがいいだろうか。大蛇の如き巨大なスカイドラゴンを駆る鳥人が獰猛な眼で街を見下ろしていた。

スカイドラゴンが激しい炎を吐きだした。

このままでは復興中の街が再び焼かれてしまう。

それだけではない。下には多くの人々がいる。

リュウは自らスカイドラゴンのブレスに突っ込んだ。

 

「馬鹿か!こいつ自分からルードの炎に突っ込みやがった!自殺志願者かよぉ!」

 

鳥人が高笑いしながら手綱を握り締めた。

しかし突如として鳥人の笑みが凍りついた。

炎の中からリュウが飛び出してきたのだ。全くの無傷で。

衣服も燃えていなければ、火傷一つ負っていない。

 

「ば、ばかな…っ!?」

 

「ちょいと失礼」

 

リュウはスカイドラゴンへ飛び乗ると鳥人へと不敵に笑って見せるのだった。

 

 

「て、てめえ!俺のドラゴンから降りやがれ!!」

 

「おっとっとっ」

 

鳥人は怒りの形相で手綱を操り、リュウを振り落とそうとする。

リュウはウネウネと動く巨体の上でバランスをとりながら、

 

「暴れるなよっと!」

 

ギャアアアアアアアアッ!!!

 

スカイドラゴンに剣を突き立てた。

 

「ル、ルードォォッ!?」

 

鳥人が狼狽し、スカイドラゴンが激痛の悲鳴を上げる。

竜の鱗は鋼以上の強度を誇る。

それにここはスカイドラゴンの身体。

足場が安定せずに攻撃の威力など乗らない筈。

目の前の人間はそんな状況で剣で相棒の鱗に深々と突き立てたのだ。

人間如きが有り得ない。

鳥人は愛竜を傷付けられた恨みと見下している人間の思わぬ抵抗に激しく怒りの漲らせるのだった。

 

「人間如きがよくも俺のルードを!!」

 

レイピアを抜き放ち凄まじい速さでラッシュしてくる。

しかしリュウにとってその攻撃は、速さは大したものだがそれだけだ。

リュウは何度か刺突を回避し、なんと素手でレイピアを受け止めた!

 

「な、なんだと!?」

 

唯でさえバランスの悪い足場だというのに…。

鳥人はここで漸く目の前の人間が別の生き物のように思えてきたのだ。

人の様な姿でありながらこの圧倒的な強さと纏う空気。

鳥人の脳裏に自身が敬服する将の姿がリュウと重なった。

 

「そ、そんなバカな事が…」

 

鳥人はその考えを無理やり振り払うと再び手綱を繰り叫んだ。

 

「あって、たまるかぁーーっ!!」

 

瞬間、リュウの足元の感触が消えた。

スカイドラゴンが鳥人の意を組むように上空へと舞い上がったのだ。

リュウは突き立てた剣の柄を握り締めて落下を防ぐ。

 

「そっか、自分で飛べばいいんだ」

 

GAAAAAAAA!!?

 

リュウはスカイドラゴンから剣を引き抜いて呪文を唱えた。

 

飛翔呪文( トベルーラ)

 

リュウの身体が舞い上がり、街を襲ったドラゴンライダーに相対する様に眼前でとまる。

スカイドラゴンは血飛沫を巻きながらも主を乗せて宙に浮いていた。

「こ、この野郎…ルード、大丈夫か…」

 

ぐるるる

 

スカイドラゴンは力なく鳴く。その視線はリュウを捉えているが、その眼の色からは恐怖が宿っていた。スカイドラゴンのルードは同じというにはおこがましい程の竜族としての格の次元の違いを感じ取っていた。

 

鳥人はスカイドラゴンの気持ちを汲み取って愕然とした。

 

「嘘、だろ?お前が戦意を喪失するなんて…」

 

鳥人は逡巡の後、自らの翼を広げるとスカイドラゴンの背中から離れた。

竜使いとしての経験がこれ以上は無理だとはんだんしたのだろう。

鳥人はスカイドラゴンを後退させるのだった。

そして殺意、敵意、憤怒、様々な負の感情がリュウに叩きつけられた。

 

「てめえ…、どこの誰だか知らねえが楽には殺さん。ハラワタぶちまいてぶっ殺してやるぅっ!!」

 

こうしてリュウと魔王軍の初めての戦いが幕を開けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く?

 

 

 

 

 

 




竜騎衆のかませガルダンディーさんです。
登場早々、ベンガーナを襲う鳥さんです。
そこに彼にとっては運悪く居合せたリュウさんと鉢合わせ。
どうなることやらですね。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ラーニング5

ベンガーナの街で始まった魔王軍との戦い。

リュウは鳥人のドラゴンライダーと相対していた。

 

「俺様は魔王軍超竜軍団…、竜騎将バラン様に仕える竜騎衆が一人!空戦騎ガルダンディー!!」

 

ガルダンディーと名乗った鳥人は自身の翼に手をやると、その羽を毟り取った。

 

「くらえぃっ!!」

 

そしてダーツの様に投げる。

フェザースラッシュ―、

その羽根の数は4、5枚。

羽根の刃が空気を切り裂きリュウへと殺到する。

 

トス、トス!

 

そんな音をたててリュウの衣服の上から羽が突き刺さっていく。

 

「ケケケ!これでテメエは終わりだ!人間如きにその羽は抜けん!ジワジワと嬲ってルードの餌にしてくれるっ!!」

 

「いや俺の身体には刺さってないから」

「なぁっ!?」

 

リュウは何事もなかったかのように羽を引き抜いて宙へと投げ捨てる。

ガルダンディーがその光景に唖然とした。

何故ならフェザースラッシュは自身の切り札とも言うべき業だ。

その羽の餌食になった者は、羽を抜くことも出来ずにジワジワと生命力と魔法力を奪われていくことになるのだ。

力の強い戦士や武道家でさえ簡単には抜けない恐るべき技。

それを簡単に抜く、いやそもそも刺さっていなかったなど有り得ないことなのだ。

ガルダンディーのそんな隙をリュウは見逃さなかった。

凄まじい速さで空戦騎に肉薄すると見せかけてスカイドラゴンのルードに向けて“命令”を下した。

 

「街から離れろ!」

 

GAAAAAAッ!!!

 

それは了承の意思を示す声。

相棒の答えにガルダンディーは悲鳴にも似た叫び声を上げた。

 

「な、なんだとぉっ!?」

 

このまま街で戦うのは拙い。

リュウの思惑通り、スカイドラゴンは街の上空から離れ城壁の外に見える湖の方へと飛ぶ。

 

「おい!どうしたんだよルード!俺の言うことがわからねぇのか!」

 

ガルダンディーは愛竜を追いかけながら叫ぶ。

その声で漸くスカイドラゴンの動きが止まる。

しかし既にその巨体は街の外に出ており、

 

「うまくいった」

 

リュウはしてやったりといった表情でにやりと笑った。

 

「てめえっ!ぶっ殺して―」「そこまでだガルダンディー」

 

どうやったか分らないが愛竜に手を出されて頭に血が上ったガルダンディーはリュウへと突進する。

しかしその行動を止めるように男の声が空に響いた。

湖のほとり。そこにいたのはガルダンディーと同様、二人のドラゴンライダーだった。

青色の肌と尖った耳が特徴の戦士風の男とトドの貌を持つ重戦士がリュウへと鋭い視線を向けていた。

 

「…っ、ボラホーン、ラーハルト…」

「お遊びはそこまでだ。バラン様は寛大なお方。お前の何時もの遊びも笑って許してくださるだろう…だがっ!」

 

男の眼光に射抜かれてガルダンディーがたじろく。

 

「竜騎衆に敗北は許されんっ!人間の街に攻め込んで攻め滅ぼすどころかその様は何だっ!」

 

「その通り、バラン様も直にもどられる。それに大事の前にその様ではバラン様も失望されるぞ……人間如きに後れを取るとは」

 

「……あー、ちょっといいか?」

 

仲間内での会話にリュウは割り込むように声をかける。

 

「誤解のないように言っとくけど俺、人間じゃないぞ」

 

「なんだと?」

 

リュウの思わぬ言葉に反応したのは青い肌の男。

その容姿から普通に人間ではない事が分かる。魔族だろう。

以前ブラスから聞いたことがあった。

 

「人間じゃねぇだと…てめえっ、だったら何で人間の街なんぞ守る!」

 

「いや普通に便利だろ?買い物とか宿とか…今さら野宿とか嫌だし」

 

だから街を破壊されると非常に困るのだ。

新しい釣り具も欲しいし、珍しい武具にも興味がある。

ベンガーナの住人は好きにはなれないが、それでも見捨ててよい理由にもならない。

寝覚めが悪い上に勇者に憧れている弟分(ダイ )に対して胸を張れない。

魔族の戦士が口を開く。

 

「貴様、いったい何者だ?」

 

ならばお前は何なのだと。

 

「人に名乗らせるならそっちから名乗ったらどうだ?」

 

リュウは魔王軍の情報を少しでも掴もうとする。

もしかしたらダイが魔王軍と関わっているかもしれないのだ。

リュウの記憶の中のダイは、まだほんの子供でとても目の前の敵に対抗できる様な子ではないのだ。

 

 

リュウの問にガルダンディーが、仲間の側に降り立った。

 

「海戦騎…、ボラホーン!」

 

「空戦騎…、ガルダンディー!」

 

「陸戦騎…、ラーハルト」

 

超竜軍団直属の精鋭部隊が名乗りを上げた。

 

「……じゃあ今度はこっちの番だな…俺は言葉よりも行動で示すタイプでな」

 

今度は先程までの様には往かないだろう…。

そう感じ取ったリュウは自身の力を解放する事を選んだ。

この三人は間違いなく連携を取って挑んでくるだろう。

確かにガルダンディーは大した敵ではなかった。

しかし個々の力では及ばなくても力を合わせる事によって、その力は何倍にも跳ね上がる。リュウは仲間たちとの戦いで痛いほどその事実を知っていた。

格下だと舐めて掛かれば痛い目を見る。

 

「…な、なんだこの威圧感は…」

 

「気を引き締めろっ!来るぞっ!」

 

「こ、この化け物が…っ!!?」

 

虹色に輝くリュウの身体とその力の流れに呼応するように揺れる大気。

竜騎衆の三人は各々の武器に力を込めた。

 

体内に宿る竜の因子(ジーン )

多目的広範囲に戦える力を選択、

即ちー

 

≪フレイム≫ ≪アイス≫ ≪サンダー≫

 

「俺は竜族のリュウ…、いくぞ!」

 

―でやあああああああああっ!!!!!

 

その力の一端が解放された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く?

 




また短めです。
すいません。
ハーケンディストールをラーニングしたいw


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ラーニング6

最近一話の文章量が激減してます。
スランプですね。
御目汚ししてスイマセン。


「ば、ばかな…こんな事が…」

 

竜騎衆が一人、ボラホーンが総毛立つ。

彼らはその役割故か多くのドラゴンを見て触れてきた。

しかし目の前の存在は明らかに常軌を逸していた。

 

火竜変化呪文(ドラゴラム )

 

そう呼ばれる呪文が存在するが、明らかに異なる変身だ。

そもそも敵は呪文を唱えていなかった。

 

彼らが騎乗してきたドラゴン達は既に戦意喪失、怯えた表情で震えていた。

竜騎衆の前に存在するのは威風堂々とした巨躯を誇る一頭のドラゴンだった。

城壁の様な巨体を覆う金色の鱗は淡く光を放っており、強すぎる程の生命力が三人の肌に伝わってくる。

炎、氷、雷の三種の属性を司る竜。

その名を【トライゴン】

 

「…くっ!?皆避けろっ!」

 

ラーハルトはそう叫びながら目の前のドラゴンに向かって前転飛び。

ボラホーンは自身のドラゴンの身体の影に隠れるように伏せる。

ガルダンディーは凄まじい速さで羽ばたく。

 

「く、鎧化(アムド )っ!!」

 

いきなりの事だった。

トライゴンはその巨大な顎から咆哮と共に凄まじいまでのエネルギーの奔流を吐き出した。

それはあらゆる属性何れかにも分類されない無属性の力【ドラゴンブレス】

ドラゴンの生命エネルギーそのものを反映し威力となす超高エネルギー波だ。

ドラゴンブレスはラーハルトの背中を焼きながら、その背後の湖を蒸発させて山を貫いた。

ボラホーンはドラゴンを盾にしたことで即死は免れたが、エネルギー波の余波で体中に傷を負いながら吹き飛ばされる。

ガルダンディーは、咄嗟に空に逃げた為、無傷で済んだ。

 

「な、なんという威力だ…」

 

いつの間にか鎧を装着したラーハルトが穴が開いた山を見て冷や汗をかいた。

 

「大丈夫か?ボラホーン…」

 

「あ、ああ…この程度でくたばるほどワシは軟ではない」

 

「くっ!お前たち!散開しろ!」

 

ラーハルトの檄が飛ぶ。

陸戦騎は既に駈け出しており、トライゴンの側面を奔っていた。

戦士の行動で他の竜騎衆も動き出す。

ラーハルトの行動を全力でサポート。それが他の二人の使命。

ガルダンディーとボラホーンは命を賭して上空と地上からトライゴンに肉薄した。

 

「こいつはこの場で仕留めなければならんっ!分かっているな!」

「おうっ!バラン様の為に!」

 

残像を残すほどの凄まじい速さでラーハルトはトライゴンの死角へと移動。

巨体のドラゴンとしては有り得ない程の速さを持つとはいえ、それは直線の動きのみ。

流石に小回りは人間の動きには及ばない。

 

ラーハルトの魔槍がトライゴンの腹を、ボラホーンのイカリが足を、ガルダンディーのフェザースラッシュが眼を狙う。

 

トライゴンは竜騎衆の連携に翻弄されていく。

 

「ちぃっ!やっぱりな…っ!」

 

「俺たちの攻撃が全く効いてねえっ」

 

竜騎衆達はトライゴン相手に一歩も引かず善戦している。

しかし、やはり決定打には欠ける。

攻撃が通らないのだ。

いや唯一ラーハルトの攻撃だけは、かすかな掠り傷を残している。

しかしトライゴンの巨体にはあまり意味がないように思える。

もしも致命的なダメージを与えるには、急所に最大の技を叩き込む以外にない。

ここで三人の心は一つになった。

 

ラーハルトが最高の攻撃を叩き込む為の隙を作るため、命を捨てる覚悟を。

その為に必要な事は何か?

 

竜騎衆は眼で合図をするとトライゴンから距離をとり固まった。

そうなるとトライゴンの行動は、

 

「来るぞ!ブレスだ!」

 

「悪いがお前たちの命、貰うぞっ!」

 

「勘違いするなよ!お前の為じゃねぇっ!バラン様とディーノ様の為だからな!」

 

「最高の攻撃を放つ瞬間、最大の隙が生じる…狙いはそこだ。しくじるなよっ!」

 

そして放たれるファイヤーブレス。

煉獄の奔流は周囲を薙ぎ払い焼き払いながら竜騎士達に殺到する。

ボラホーンとガルダンディーは敢えて避けようとしなかった。

ラーハルトはボラホーンのその剛腕を踏み台として、

 

「行くぞっ!」

 

「この技は趣味じゃねぇが…、俺の残りの力、受け取りやがれ!」

 

ガルダンディーがフェザースラッシュをラーハルトに放つ。

これは攻撃の為ではない。

その逆、自らのエネルギーを活力として仲間に分け与える空戦騎らしからぬ技だ。

ガルダンディーの力を受け取りラーハルトの力が漲る。

既にラーハルト以外はブレスの攻撃範囲内。

回避は不可能、しかし勝利を確信してか、死の間際にして二人の表情は明るい。

 

「受けろっ!我ら竜騎衆最強の一撃をっ!!」

 

ラーハルトは頭上で魔槍を高速回転させて闘気を高める。

そして繰り出される最強の奥義っ!!!

その名は、

 

 

ハーケンディストールッッ!!!!

 

 

「悪いけど受けてやらん」

 

その圧倒的な一閃が繰り出される瞬間、

トライゴンの姿がその場から消えた。

ハーケンディストール…、

ラーハルトの放った闘気の斬撃は空を引き裂き虚しく大地を両断した。

そこにはトライゴンではなく、青い髪の青年が無傷で佇んでいた。

 

「ば、馬鹿な…」

 

何のことはない。

リュウがハーケンディストールを回避した手段は変身解除だった。

ドラゴンの巨体だと直撃は免れない。

しかもブレスを放った直後で無防備だった為、このままだと流石に大きなダメージを受けてしまう。

その為リュウは急遽もとの姿に戻る事によって攻撃を回避したのだった。

 

「凄い技だ…、その礼をしてやるよ」

 

リュウは空高く跳躍すると己の剣を凄まじい速さで回転させていく。

 

「…っ、ばか…なっ、そんな、まさか…っ」

 

有り得ない。

認めたくない事実がラーハルトの心臓の鼓動を早鐘の如く高まっていく。

 

「見様見真似っ!ハーケンディストールッ!!!」

 

「ば、ばかなぁぁぁぁっ!!!」

 

なんとリュウは陸戦騎の秘技を武器こそ異なるが再現して見せたのだった。

即席の為、技の錬度こそ劣るものリュウ自身の凄まじい性能もあってかその威力は本人のそれを凌駕した。

そして、

 

「うおおおおおおおおっ!!?」

 

 

 

―バラン様、申し訳ありません-

 

 

ラーハルトの魔鎧が砕け散った。

吹き飛ばされて山に空いた穴を通って飛んでいくラーハルトを背に着地する。

もう戦える竜騎衆は存在しない。

リュウは辺りを見回して溜め息をついた。

 

「これって俺の方が悪人っぽくね?」

 

ラーハルトの最後の呻きにリュウは何とも云えない気持ちになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本日のラーニング

 

ハーケンディストール

 

消費AP15

 

必殺 必中 防御無視 素早さによって威力増加 スタン

 

 

ドラクエ風リュウのステータス

 

リュウ 

 

まほうせんし

 

レベル80

 

HP:675

MP:492

 

ちから:323

すばやさ:312

たいりょく:331

かしこさ:188

うんのよさ:44

 

こうげきりょく:453(ドラゴンブレイド装備)

ぼうぎょりょく:301(ドラゴン装備)

 

 

 




なんかリュウの方が悪役っぽい話でしたw

力を与えるフェザースラッシュはオリジナルです。
原作には有りません。
ラーハルトのファンの方々、申し訳ないです。
死んでないので許してください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ラーニング7

ベンガーナ郊外の湖。

辺りは散々な惨状になっていた。

湖の水は蒸発し、地面にはスプーンで繰り抜かれたようなクレーターが出来き、山には穴が開いていた。ベンガーナの街の住人はいきなり現れた強大な竜とそれを相手に戦う魔王軍に恐怖していた。超竜軍団の竜の群れに襲われた直後なのだから、その恐怖は更に深まっていた。

竜騎衆を倒したリュウは、これで完全に魔王軍を敵に回してしまった事になった。

そして戦いの様子を見た人間からも…。

 

「こ、これは…っ!?ラ、ラーハルトッ!!?」

 

そこに現れたのは一人の壮年の男だった。

黒眼に逆立った黒髪。攻撃的な空気を纏った戦士。

背中に大剣を背負っており、立ち振る舞いに隙がない。

 

「う、ううぅ……バ、……ンさま…」

 

男はラーハルトに駆け寄ると、その身を抱き起こす。

 

「何があった?他の二人は…っ?」

 

「も、もうしわけ…ありません……俺以外は……もう」

 

男はこれ以上しゃべらせないようにラーハルトを制すると回復呪文(ベホマ )を唱えた。

淡い光がラーハルトの傷を癒してゆく。

 

「貴様の仕業か…我が竜騎衆をたった一人で倒すとは只者ではないようだが…」

 

「倒しておいて言うのも何だけど、先に仕掛けてきたのはそっちだからな?」

 

リュウは睨みつけてくる男に手を振りながら答えた。

まるでこの状況は不本意だと言わんばかりに。

 

「私は魔王軍超竜軍団の団長……、竜騎将バラン」

 

「そっか、カール王国を滅ぼしたのはお前か」

 

「そうだ」

 

バランを前にしたリュウは、何ともいえない不思議な感覚を感じた。

ここに至ってリュウは目の前の男が人間だとは考えない。

見た目は人そのものだが、リュウの竜眼には凄まじいまでの圧力(プレッシャー )を放つ竜人が映っていた。

 

「最近は名乗ってばっかだな……俺はリュウ、竜族だ」

 

「竜族、だと?貴様は人間ではないと?」

 

「そっちもだろ?混じってるみたいだけど竜の気配を感じるぞ」

 

バランはリュウの問いかけに無言で剣を抜き放った。

ドラゴンの意匠が施された長剣。

それはリュウの持つ剣『ドラゴンブレイド』に良く似ていた。

リュウはバランの戦意に溜息をつくとドラゴンブレイドを構えた。

 

「はぁ…、やっぱりこうなるのか」

 

「貴様の正体が何であろうと人間の味方をした挙げ句、部下を倒した者を生かしてはおけん…」

 

別に人間の味方をした訳ではないのだが、そう言ったところでもう遅いのだろう。

明確な殺意を向けてくるバランを相手に説得は無理だとリュウは思考を切り替えた。

バランの額が光り輝き、紋章が浮かび上がった。

それはカール王国で見た騎士の遺体に刻まれていたものと同じもの。

それはまるで竜の貌の様な形をしていた。

 

「成程、それで竜騎将か…」

 

「行くぞ…」

 

バランは身体から闘気を噴出し大地を蹴った。

凄まじい速さで肉薄してくる竜騎将をリュウも闘気を解放して迎え撃つ。

両者の剣が激しく交差し火花を散らした。

 

「……ぎぎっ」「……おおおおっ!」

 

ギィンッ!キンッ!!ギギンッ!!!

 

幾度と刃を交えてリュウは後方に跳躍、同時に呪文を唱えた。

極大爆裂呪文(イオナズン )ッ!!!

 

リュウの呪文によって圧縮された魔力球が大爆発を起こした。

大気を揺らすほどの震動がバランを飲み込み、その身を激しく揺らす。

しかし、

 

「はあああああっ」

 

バランは何事も無かったかのように爆風の中から飛び出しリュウに剣を振り下ろす。

その斬撃を紙一重で防いだリュウは舌打ちしてバランを睨みつけた。

バランの全身を包み込む光の気流の様な闘気は一体?

 

「ちっ、この闘気、唯の闘気じゃないな…っ!?」

 

「そうだっ!この光を竜闘気(ドラゴニックオーラ )と呼ぶ」

 

「ドラゴニックオーラ…っ?」

 

「貴様の云ったとおり私は人間ではない」

 

剣を鞘に戻したバランは語りだす。

遥か昔、人と魔族、そして竜の三神が生み出した全く新しい生命体にして、竜の力と魔族の魔力、そして人間の心を併せ持った究極の戦士。

いずれかの種族が野心を抱き世界を我が物にせんとした時、これを打ち滅ぼし天罰を下す万物の調停者。

 

「それが私…、(ドラゴン )の騎士なのだ」

 

竜の騎士はその額に(ドラゴン )の紋章が輝く時、竜闘気(ドラゴニックオーラ )と呼ばれる光の気流に覆われる。

それは肉体を鋼のように強化し、あらゆる攻撃呪文を防ぐ最強の矛にして最硬の盾なのだ。

そして竜闘気(ドラゴニックオーラ )を全力で解放した(ドラゴン )の騎士は、

 

「この地上のいかなる者でも太刀打ち出来んっ!!」

 

「ぐぁっ!?」

 

バランの闘志に呼応するように輝く竜闘気(ドラゴニックオーラ )は暴風の様な連撃を可能にした。

この世界にきて初めての苦戦。

リュウはバランの殴打に、脚激に打ちのめされていく。

その眼には部下を殺された事と人間に味方するリュウへの憤りが宿っていた。

殴る!殴る!殴る!蹴る!!蹴る!

剣を収めたのはこの為、リュウへの怒りを直接ぶつける為。

そして自身の戦闘力への絶対的な自信から。

次々と繰り出される攻撃をただその身で受け続けるリュウ。

しかし其の眼光は一切衰えておらず、唯じっとバランを見続けていた。

 

……いけない、バラン様

 

それは小さな呟きだった。

ラーハルトがまだ回復しきっていない身体をどうにか起こそうと足掻いていた。

ベホマで傷は癒えたものの、体力までは回復しきっていなかったのだ。

 

「これで沈め!」

 

バランの強烈な拳打がリュウに迫る。

しかし、その拳がリュウの顔面に叩きこまれる事は無かった。

 

「な、なに……っ」

 

瞬間、リュウはバランの拳を受け止めていたのだ。

驚愕するバラン。しかしそれは攻撃が防がれた事に対するものではなかった。

そしてリュウの全身か光の気流が噴き上がった。

バランはリュウの額に注目する。そこには紋章は輝いていない。

当然だ。(ドラゴン )の騎士は一代かぎり。唯一つの例外を除き有り得ない。

しかしこれはまるで、

 

「馬鹿な…っ、ド、竜闘気(ドラゴニックオーラ )…だと?」

 

そう、リュウは戦いの中で文字通りバランから竜闘気(ドラゴニックオーラ )学習(ラーニング )したのであった。

 

「それに、竜闘気(ドラゴニックオーラ )で強化した私の攻撃が…っ!?」

 

まるで効いていなかったのだ。

リュウの身体には痣一つ出来ていなかった。

ネタばらしは何の事はない。

スキル『オーラバリア』 スキル『大防御』

リュウはこの二つのスキルを凄まじい行動速度(EXターン )で併用しバランの猛攻をノーダメージで防いだのだ。

 

 

戦いの様子を見守っていたラーハルトが唇を噛みしめる。

有り得ない事だと思っていた。いくら自身の必殺技(ハーケンディストール)を真似た事実が有ろうと、(ドラゴン )の騎士だけに許された固有技とも云える竜闘気(ドラゴニックオーラ )を真似るなど…。

先程、自身がバラン様に忠告出来ていればこんな事には…。ラーハルトはギュッと拳を握り締める。

 

「俺も竜族、その闘気の真似事くらい朝飯前っ!」

「ぐあっ!?」

 

お返しとばかりに今度はリュウが拳を振るった。

完全に攻守逆転。

 

「らああああああああああっ!」

「ぐあああああああああああああっ!!!?」

 

リュウの超速度から繰り出されるスキル『飛び蹴り』がバランの顎を捉えた。

バランは大きく脳を揺らしながら吹っ飛んでいった。

 

「これでどうだ!?」

 

大の字に地面に伏したバランにリュウが吼えた。

この戦いで得た新たな力にリュウのテンションは高まる。

この世界は新スキルの宝庫だ。

未知への好奇心に火がついたリュウを止められる者は誰も無い。

以前の世界でも本来の目的を後回しにして寄り道ばかりしていた男だ。

だからこそ、リュウはバランへの止めは刺さなかったのだ。

この選択がリュウにどんな未来を齎す事になるのか、その結果に気付かないままに…。

 

 

 

 

 

 

続く?

 

本日のラーニング

 

 

竜闘気(ドラゴニックオーラ ) AP30

 

 

攻撃力 防御力 素早さ 2倍 魔法無効化

 




なんかリュウの性格が…。
まぁリュウ=プレイヤーですから…。
私は寄り道ばっかりしてましたから。
妖精ばっかり愛でてましたw


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。