横島っ! (緋踏そら)
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プロローグ―横島忠夫逝く

プロローグ書き直しました。
指摘され、一体何処が悪いのか、其処が分かりずらい
と言った所を探し自分の出来る限りの直しを入れました。


「横島クンッ!目を覚ましてちょうだい!」

 

「横島さん!死なないで!」

 

二人の女性の声で横島忠夫は僅かに意識を取り戻した。

そんな横島に気付いたのか二人の女性―美神令子と氷室おキヌは横島に駆け寄ってきた。

 

「横島くん、大丈夫!?もうすぐ小竜姫達が来るわッ!」

 

「そうですよッ!小竜姫さまや冥子さん達が来てくれます、それまでッ!」

 

美神とおキヌの二人は目じりに涙をため必死に呼びかける。そんな二人を少しでも安心させようと声を出そうとする横島だが、喉が潰れているのか掠れた音しか出なかった。

 

「ッ!ダメよ喋ったらッ!お願いだからじっとしていて!」

 

今の横島はある筈の左腕がもぎ取られ、両足はあらゆ方向に曲がり、左目も潰れ…喉が焼かれ炭化と化し……致死量を超えた血を流し瀕死の状態であった。

そんな状態で喋ろうとする横島を止めるのは当たり前のことだと言えよう。

美神によって、喋る事は止めた横島だがいきなりに血の塊を吐き出した。美神とおキヌは青く染まってた顔を更に青くしある筈のない物の名を叫ぶ。

 

「くッ!こんな時に文珠があれば!」

―文珠

霊力を凝縮しキーワードで一定の特性を持たせて解凍する技。

有史以来、横島含め数人しか発現しなかったとされる。

文珠を使えば例え瀕死であろうが生きていればどうな怪我も治せる…が今、 文珠は一つもない…いや、無くなったと言った方が正しいだろう。

元々、文珠のストックは数個あり、つい数十分前には確かに存在していた。

たった数十分の間に一体何があったのか…

 

襲われたのだ。

 

横島達…厳密には横島を狙った魔族にだ。理由なんて幾らでもあった。

“神界・魔界・人界の三界の英雄

“人界の切り札”

“魔神殺し”

“文珠使い”

……様々な称号が先の大戦で横島に付いた者である。その中でも“魔神殺し”が今回の事件の元凶といえる。

 

魔神…魔の神と呼ばれる最上級魔族。

到底人には打倒されることのない存在であるが、そんな魔神を複数とはいえ

倒したのは横島達であり、魔神アシュタロスにトドメを刺したのが横島である。魔族は弱肉強食で力の強い者が弱き者を従えさせる。肉体的にも精神的にも魔族より劣る人間を見下すプライドの高い種族……

そんな弱肉強食の世界で生きる魔族が文珠が使えると言えど自分等より劣る人間の横島を野放しにする訳がなく数多の魔族が横島の命を狙ってきた。

最初は、単体の下級魔族が、次は複数の下級魔族、そのまた次は下級魔族と

中級魔族が複数………一流の霊能力者なら下級魔族なら倒すことが出来るかもしれないが複数になると話は別である。その上、中級魔族も加われば一流であろうと倒すことも逃げることも叶わない……けど、横島も含め令子やおキヌ…その仲間たちは一流ではなく超一流。中級魔族など敵ではない。現に横島と共に居た者達は下級、中級魔族を難なく倒し生き延びている 。

 

……しかし、今回は違った。

下級魔族の姿は見られず、中級魔族が数体と上級魔族が数体が街中で襲ってきた。

不意打ちという形でありながら…そこはやはり、横島と一緒に魔神…アシュタロスを倒した強者たち、横島はサイキック・ソーサー、ハンズ・オブ・グローリーそして文珠を使い、美神は神通棍とお札で、おキヌはネクロマンサーの笛を使い応戦し押されぎみだったが着実にその数を減らしていた。残り一体という所で最悪な事態が起こった…………

母親とはぐれたのか一人の子供の泣き声が横島達と魔族の耳に届いた。

その声を聞いた魔族はその場の誰よりも速く反応し、あろうことか、魔族は横島や美神じゃなく子供にすぐさま攻撃を放った。

子供を見殺しに出来る筈もなく、横島は子供と魔族の間に立ちサイキック・ソーサーで攻撃を防ぐことに成功したが追い討ちをかけるかの様に更に二発の攻撃を魔族は放った。

最初の攻撃の防いだサイキック・ソーサーは二発目で左腕と共に吹き飛ぶ、

三発目が横島に直撃した……

左目は吹き飛んだコンクリートの破片が直撃し潰れ、両足は攻撃の余波で折り曲がり、高熱を帯びた攻撃で喉は炭化し体中から血が吹き出た。

常人なら即死か意識を保ってなれないだろう横島は最後の力を振り絞り残り最後の文珠に〈癒〉ではなく〈滅〉の一文字をいれ、背を向けて逃げる上級魔族に投げ魔族は呆気なく消滅した。

子供を守れた安心か敵を倒した安堵なのかは分からないが横島はそのまま意識を失ってしまった。

 

そして、美神とおキヌの必死の呼び掛けにより意識を取り戻した横島だった。

 

「美神さん!小竜姫さま達と冥子さん達がもうすぐ来るそうですッ!」

 

「分かったわッ!おキヌちゃんはそれまで横島クンにヒーリングを使って少しでも傷を治してッ!無いよりはマシよッ!!」

 

「はいッ!!」

 

了承ともにすぐさま横島の隣に座り手を添えた。すると手の平から緑色のあわい光が溢れ出した。ヒーリングを使っている証拠だ。

……しかし、おキヌは本来ネクロマンサーでヒーリングを、使えるも掠り傷や打撲程度しか治せない…横島の怪我は誰が見ても掠り傷、打撲なんかとは比べ物にならない程酷い…

治せる筈がない…筈がないのにそれでもヒーリングをかけ続けるのは横島に死んでほしくない一心だからだった。

神族の小竜姫と日本屈指の式神使いの

六道冥子が来るまでなんとしても生かすため。小竜姫と冥子は神通力、式神十二神が一神ショウトラによる高い治療能力でなければ横島の怪我は治すことは出来ない。あと、数分もすれば高い治癒能力を持つ者たちがやってる。

それまで、横島の命が持つかどうかで

ある。

 

「ッ!? そんな、ダメッ! お願い治って、治ってよッ!! 」

 

ヒーリングを休まずかけているにも、

微かに上下していた胸は次第に小さくなっていっていく。おキヌは必死ヒーリングをかけ続ける。それでも、弱くなる呼吸、それに美神も気付いたのか

小竜姫や冥子達が来るのを待っていた美神は急いで横島の側に駆け寄った。

 

「横島クン! 横島クン! ダメよッ! 目を開けなさい!死んじゃダメ、まだ 好きだって言ってないのに!」

 

その言葉におキヌは若干驚きと戸惑いの表情を見せた。

この場に、美神令子を良く知るものが

居ればおキヌ同様驚いていただろう。

確かに美神は横島に好意を覚えていた 。横島以外の他の皆もそれを分かっていた…だからこそなのだ。

美神は横島が他の女をナンパしたり、

仲良くしていると制裁と言い訳し殴る蹴る…しまいには神通棍でしばき倒す

といった手段に出てしまう…しかし、

これらは横島に対しての嫉妬から来るものであったのだ。

例えばある時、横島が美神に好きと言った事があった。(上司として)

その時、美神は顔を赤く染め神通棍を

横島の頭に振り切っていた。

様するに…照れ隠しがヘタな乙女と言うことだ。

そういった場面は何回もあり、皆もそれを呆れながら見ていた。だからこそ

今の美神の言葉に驚きを隠せなかった。

 

「ちょっ! 美神さんこんな時に何言ってるんですかッ!! …………私だって横島さんのこと」

 

「う、うるさいわねッ! こんな時だからよッ!邪魔しないでッ!」

 

「邪魔しますよ! 時と場合を考えて下さいッ!横島さんが死にそうなんですよッ!」

 

「だからよ! こんな切羽詰まった状況じゃなきゃ言えないのよ!」

 

「貴女って人はッ! こんな時じゃないと告白出来ないんですか!?」

 

醜い…小竜姫やワルキューレが居たら

美神とおキヌのやり取りをそう言うだろう。というより、誰でもそう言うだろう。

すっかり、存在を忘れられてる横島というと……

 

「(だ…誰か助け……て)」

 

美神の言葉に驚きヒーリングを止めてしまた為、唯でさえ弱っていた心拍は

直ぐにでもその動きをやめてしまいそうだった。

それに気付かない美神とおキヌは醜いやり取りはその後数分後…小竜姫達が来るまで続いていた。

 

その数分間、おキヌが横島にヒーリングをかけ続けていたら小竜姫や冥子達が来るまで辛うじて生きていたかもしれなかった。が、時すでに遅し。

“人界の切り札”

“魔神殺し”

と名だたる称号をもった横島忠夫は

誰にも気付かれず逝ってしまった。

享年二三年の若き歳でこの世を去った。誰にも気付かれずに………

 

横島忠夫憐れなり。




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プロローグ―最高指導者

この作品はオリ主ではなく、横島忠夫がマケン姫っ!の原作
キャラの誰かに憑依するお話です。



『三界の英雄…おっと、この呼び方は嫌がってましったね。…横島君が逝ったそうですよ』

 

『……あぁ、此方にも今連絡がきようたでェ…』

 

神々しい光を纏ったシルエットから優しげで哀しみ満ちた声が上がった。

それに答えるのは禍々しいオーラを纏い関西弁で喋った。

 

この二つは神族の最高指導者キリストことキーやんであり。

もう片方は魔族の最高指導者サタンことサッちゃんである。

普通ならけして一緒にいることの考えられない組み合わせだが、実のところ

この指導者たちはアダ名で呼びあい、

ゴルフに行ったり、食事に行く仲であるのだ。

キリスト教徒等のイエス・キリストを崇拝する者やサタンを崇拝する者が見たら目を疑う光景であること間違いない。

 

そんな指導者たちは今、横島忠夫の死を聞き頭を捻らせ悩んでいた。

魔神アシュタロスを殺した横島忠夫が死んだ今…人界・神界・魔界での影響力がどれ程か…ではなく。

 

『ほな…横っちは魔族に転生ってことでいいかぁ?』

 

『何を言ってますか…横島君は此方…

神族に是非、転生してもらいます』

 

……横島の魂の取り合いををしていた。

本来、三界を救った英雄と言えど最高指導者の両方から名が出るなどそうあることではない。

そう、させるのは…やはり横島の体質と能力にあるだろう。

文珠といった希少な能力に、人外に異常にモテるといった人外キラーな体質。

 

 

……しかし、この指導者たちは文珠といった能力を欲しがってる訳ではない

文珠だけを欲しいなら神族の〈学問と雷の神〉菅原道真も文珠を創り使用出来る為そこまで文珠を求めていないし

、加え文珠を使っても余りにも実力差があるため効かない。

 

ぶっちゃけ言ってしまえば、横島の人外にはやたらとモテる体質が面白そうだったので神族か魔族のどちらかに転生させ、その日々を見る事を自分達の娯楽の一種にしようとしてるだけなのだが…

 

『なんでやねん! 横っちの中にはアシュタロスの娘はんの魔の霊基構造が入ってるやんけ…殆んど魔族みたいなもんや!』

 

『何を………只でさえ、生前は性欲に忠実だった横島君が魔族になっら…生前以上に罪を犯すでしょう……そうならない為に神族に転生させ、罪を犯さないようにするのです! 』

 

本人が居ないといえ、どちらも酷いことを言う。しかも、両方間違ったことを言っていないのだから……

 

『そう言うなら此方にも考えがあるわァ!アシュタロスの娘はん……確かルシ…オラはんだけか…?を一緒に転生させて横っちがナンパやらスケベせん へん様に……』

 

『……却下ですね。そんな事してしまったら、横島君のハーレムへの道が閉ざされてしまいます』

 

『それはァ、キーやんの賭けた山やろうがぁッ!それは汚ないと思うでぇ!

無しや!無しッ!』

 

今、神界・魔界の一部の者達は横島が

死に転生後のモテぷりに予想し誰が当てるかを賭ける娯楽を開催していた。

その中でも……キーやんが予想した

神族・魔族・人間問わないハーレムルートに賭けていた。

一方……サッちゃんは魔族一択であろうと予想しそれに賭けた。

サッちゃんはハーレムを創らせない為に生前死に別れたルシオラを一緒に転生させ、ハーレムルートなんて折る作戦だった。が、ハーレムルートに入って欲しいキーやんはそれを拒否した。

そんな存在が居たら…ハーレムなんて無理である…と。

 

『それならば、転生は……少し待って下さい。横島君の魂を回収ししょ…話はそれからですよ』

 

『う、そんやな…輪廻の輪に入ったら

魔族どこらか人間に転生出来るかも怪しいからな…』

 

輪廻の輪―

死した者が生前の罪を清算し、次の肉体に転生する場所のことである。

これには、人間は勿論…神族、魔族にも当てはまる。

人間が神族に、神族が魔族に、魔族が人間にと転生する種族は様々で動物や虫、魚といった者にも転生する。

サッちゃんのいった通り、人間に転生するのも危ういのだ。

今回は神魔のどれかに転生しなければ賭けも無かったことになる、人間どころか動物や魚に転生してしまったら何の面白みがない上に娯楽が消えしまうのは自分等にとって嫌なので必死に探し始める指導者たち。

 

『…………ありませんね。サッちゃんそっちはどうです。ありましたか?』

 

『……輪廻にはまだ、来てへんって』

見つからない。

横島が死んだ場所、輪廻の輪、地獄、

神界、魔界……

何処を探しても横島の魂は見つからなかった。

 

『ワイらでも見つからないとすると、 横っちに魂は…』

 

サッちゃんは心当たりがあるのか、顎に手をやり苦笑していた。

キーやんも同様思い当たる節があるのか困った表情を浮かべていた。

 

『はぁ~……しょうがあらへん…あそこはワイらでも手が届きへんさかいになァ……』

 

『そうですね。我々と言えど流石にあそこは無理ですからね…』

 

 

『『宇宙意志』』

 

両者は口を揃えその言葉を吐いた。

 

 




次でプロローグは終わります。

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プロローグ―彼女

まことに勝ってながら少し話の内容を変えさせて貰います。
憑依とではなく、タケルの代わりに横島を入れようと思います。
この話は別に憑依じゃ無くても良いんじゃねと思い書き直します。

書き直しは直ぐに終わるので、今週中には壱話の後半を投稿しますので
自分勝手な私にもう少しお付き合いください。


『ふふ、そんな目的の為だけにあの子を転生させる訳無いじゃない…』

 

―黒

地面も壁もなく、ただその一色だけの異様な空間。

そんな空間に一人の女と思わしい者がいた…

 

『……それにしても、あの子が死んじゃうなんてちょっと驚きだったわね… 』

 

彼女もまた、最高指導者達と同じく生前の横島の生活を覗き見していた一人であった。

美神に神通棍で殴り飛ばされ、小竜姫やワルキューレに折檻を受けボロ雑巾の様に成りながらも、次の瞬間には何事も無かったかの様に立ち上がりナンパなんかをしていた。

そんな、神魔のお仕置きを受けても瞬間回復してしまう横島が死んだという事実は彼女にとって、信じられなかった。

アシュタロスとの対決でさえ、ギャク補正により生き延びた…メドーサしかり、デミアンしかり……ギャク補正によって戦い勝ってきた。

 

『……この私が驚くなんていつ以来かしら…やっぱり、魂を回収しておいて 良かったわ』

 

そう言い、彼女はおもむろに腕をあげ

手の平を開いた。……すると、蒼き時折、黒く輝く火の玉の様な物が現れる。

 

『普通、魂の色は一色と決まっているのに…この子の魂は二色。やっぱり、 あの子の霊基構造のせいなのね』

 

彼女の手の平で静かに形を保ち、蒼と黒の色の正体は…横島忠夫の魂。

何故、彼女が横島の魂を持っているのか?

それは横島が息を引き取った直後、死んだことを知った彼女は本来、輪廻の輪に行く筈の魂を横から取ってしまったのだ。

 

どの道、横島の魂は輪廻の輪に行かず

キーやんとサッちゃんの最高指導者達に回収され、賭けの対象にされってしまうだけだったのだ。

そう考えると、彼女に回収されて正解だったのかもしれない。

 

『私は君を転生させて遊びたい訳じゃないの…ただ………もう一度、君に生を謳歌して欲しい』

 

聞こえている筈のない横島の魂に向か って彼女は言った。

 

『あ、もちろんあの子も忘れないわ。

愛し合ってた二人を切り離すなんてロマンチストがすることではないもの』

 

微笑みと共にそうこぼした。

聞こえてない筈の横島の魂は、彼女の言葉聞こえ喜んでいるのか激しく動いていた。

 

『ふ…ふふ、まさかロマンチストなんて言葉が私から出るなんて。君を見るまで想像もしたことがなかったわ…』

 

『……私にも…感情っていうのが有った。それだけが、分かっただけでも君には感謝しなきゃ』

 

『けど、言葉だけの感謝じゃあ私の気が収まらないの……勝ってな事だと思うかもしれないけど君に…君達にもう一度生きてほしいから……』

 

彼女は一旦そこで言葉を区切った。

少しして、彼女は口をゆっくり開いた。

 

『だけどあの世界にもう一度転生させられない……』

 

あの世界に横島を転生させる事は簡単だ。しかし、その後はどうする?

また死んだら今度こそ最高指導者達のオモチャになってしまうかもしれない。

それが回避出来たとしても、また死んだら…さらに回避しても…いつかは限界が来てしまう。

 

『でも…安心して。あの世界では転生出来ないけど……別の世界なら大丈夫よ』

 

別の世界。

確かに、彼女の力を持ってすれば別の世界へ横島を転生させられるし……いくら最高指導者だろうが別の世界なら手出しの仕様がない。

 

『……その選択をするのは貴方よ…あの世界には両親、友、仲間…大事な人達がいる。それを切り捨てでも生きて彼女に会いたい?』

 

それは究極の選択であった。

両親、友、仲間……かけがえのない人達を捨て、ただ一人……愛した女に会うか。まるであの時の様だ。

 

アシュタロスと対峙し、世界を取るか、愛した女を取るか…あの時、横島は涙を流し世界を取った。

 

しかし、今回は違う。愛した女を選んでも誰も死ぬことはない………なら。

 

『ふふ、分かるわ。君から火傷しそうな程…熱い気持ちが体全体に伝わっていく…』

 

握っていた横島の魂をそっと離し腕を前に突きだす。

すると、なにもない所に小さな罅が出来ると徐々に罅は拡がり光輝く扉らしき物が出来た。

 

『この光の扉は…あの世界の輪廻の輪に直接繋がってるわ。そのまま直ぐに転生できる筈よ…そして』

 

また、彼女は腕を突き出すと光の扉の真横に紅い扉が現れる。

 

『これが…別の世界に通じる扉』

 

『さあ! 選択をするのは貴方よ、横島忠夫っ! 仲間や家族にまた会えるが神々のオモチャになる運命…愛する女に会うため仲間と家族を切り捨て別の世界に行くのか!! さぁ、選べ!』

 

声を張り上げ口調は荒々しくなる彼女の姿はどんな神魔よりも恐ろしく……頼もしかった…

 

横島の魂はゆらりとゆっくり扉に向かい動き出す。

 

『…私の声聞こえてたんだね…やっぱり君は凄いよ』

 

横島の魂は×××の扉の前まで移動しいったん止まった。

 

『ふふ…お礼なんていいの…言ったでしょ。お礼って』

 

荒々しかった口調は戻り、横島に対して小さく笑いをこぼす。

横島の魂は喋れない筈だが、何故か彼女は横島が何を言ってるのか分かってるらしい。

 

『モタモタしてたら私の気が変わって神魔みたいに私専用のオモチャにしちゃうわよ?……嘘よ、そんなに慌てないでゆっくりくぐりなさい』

 

その声色は優しく。まるで息子の門出を祝う母親のような優しい…とっても優しい顔つきだ。

横島の魂は再度動き出し扉に差し掛かった。

 

『………バイバイ』

 

横島の魂に手を振り、別れの挨拶をする。同時に完全に扉の中に入った横島の魂。

 

『……バイバイ…か………あぁ、もっと話したかった…』

 

横島の魂が潜った扉を名残惜しそうに見つめる彼女の表情はとっても寂しそうだった………

 




プロローグ―彼女から直しを入れました。
明日は設定を書き直し投稿します。
余裕があれば、壱話―前半も投稿しようと思います。

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設定

題名を変えました。
横島憑依物語から横島っ!と言う題名に変えました。
ま、マケン姫っ!のマケン姫を横島って変えただけなんですけどね。

今回は生前と転生後の横島の設定を書きました。
大山武に憑依した設定を無くし、新たに書き直しました。



おおまかな設定

 

主人公“横島忠夫”

【ヒロイン】

・ヒロイン未定

 

【能力】

・仙術

大戦から五年の月日で老師(斉天大聖)の術を盗み見しモドキだが身に付け、それを見ていた老師に本格的に修業をさせられ修得。転生した後も勘を取り戻す為に仙術を使用し、全盛期には届かないがそれなりに扱える。

 

・霊能力

サイキック・ソーサー、ハンズ・オブ・グローリー等は使え、文珠も精製出来たがその精製速度は全盛期よりも遅い、後に霊力を鍛え精製速度をあげる(幼少期は週に一個出来るか出来ないかで、天日学園に入る頃には三日に一個になった)

 

・エレメント

霊力と何処か違う物だが、その扱い方は非常に似ており直ぐに物にした。

 

・身体能力

幼少期からある目標を掲げ一心不乱に鍛えた為、その身体レベルは凄まじいの一言で高校に入る頃にはエレメントや霊力を使った身体強化をしなくてもエレメント強化したマケン使い並に動ける。

 

【魂の収束】“ブラットポインター”

幼少期、横島がエレメントを引き出そうとした時に違和感を覚え、発見しその力の大きさと偉大さ(大地と一体となり女性のスカートの中を見れること)を知り、たった数ヵ月で扱えるようになった。そのさい、女性のスカートの中、お風呂の中、着替え等を思う存分堪能したと言う完全に間違った使い方をしていた。

 

・ルシオラの魔の霊基構造(魔因子)

不明。

 

(その他)

・気配を極限まで消すことが出来る

(生前に加え、魂の収束を発現するまで女湯や女子更衣室を覗くため自然と修得したスキル)。

 

・直感

霊感、天性により培われたスキル

自分の身に危険や身近の人に危険が迫ると教えてくれる。

 

・超再生(または、超回復)

生前から受け継がれるスキル。

直視出来ないほどの大怪我を負っても次の瞬間には何事もなく復活している

(これはギャク補正によるもので、シリアス状態だと発揮しない。故に、ギャク展開とはほど遠いシリアスで負った傷はそのままでヒーリング等で治すしかない)。

 

・武術

中国拳法、軍人格闘(ワルキューレやジークフリード師匠)、ソバット、

柔術、剣術、空手、カラリパヤット等の多彩な武術を修得。

 

・武器の扱い

ハンズ・オブ・グローリーの霊波刀を扱うために小竜姫から剣術を学び、サイキック・ソーサーを扱うためにワルキュレーとジークから銃の扱い方を学んだ。次いでに、面白そうという理由で老師が槍術と棍術と棒術を教え込んだ。その教えは他の者よりキツく惨い光景過ぎて止めに入ったぐらい。

 

【家族関係】

生前と同じ苗字と名前だが、両親は前とは違い…父親は高位のマケン使いで妻一筋の真面目人間。母親も父親と同じ高位のマケン使いだったが病にかかり横島が小学校の時亡くなった。

 

 

【経歴】

中学校は寮制の男子校(これは、 父親が無理矢理入学させた)

後に卒業し天日学園に入学。

 

【マケン】

エレメント以外に、霊力、魔力が有るためどんなマケンかは不明。

 

【生前】

アシュタロスを倒し、五年の歳月の中で心身ともに成長。

霊能力も鍛えられ、大戦の時とは比べ物にならない強さになった。

仙術、陰陽術を修得。だが、転生後は陰陽術は何故か使えず仙術は全盛期とは程遠く使えた技も少なかった。

 

中級魔族・上級魔族も怖じけず立ち向かい倒す強さを誇った。けれども、防御力は一般人より高いが中級・上級魔族の攻撃を受ければ人溜まりもない。(此れは、神族にも当たる話)。

 

亡くなるまで、誰とも結婚せず恋人も作らなかった(勿論、多くの女性からアプローチと好意を気付いていた)。

何故、結婚も恋人も作らなかったかは 不明。

 

 




感想文にも書かれましたがこの横島……ヨコシマンですね。
けれど、スケベは変わりませんので……

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壱話―前半

設定だけ、投稿し直しと言いました…壱話―前半を読み直すと
タケルの部分を忠夫と直すだけで良かったので直し投稿しました。
壱話―後半は明日、直し投稿しようと思います。



『我が子タダオよ……』

 

突如、頭に響く謎の声。

目の前には高身長で鍛えられた筋肉を惜しげもなく晒した何故か裸の男が居た。その表情 は影が濃く全く伺えない。

 

「また、この夢…」

 

此れで何回目か分からない夢…

思わず、顔をしかめてしまう。

 

「………」

 

『……?』

 

「うがぁぁぁッ! またか、またなんかッ! なんで毎度、毎度裸の男が出てくるんだよ!」

 

幼少期から不定期に見せられる裸の男が出てくる夢。毎回疑問や文句を言おうとしても言えずにすぐに目が覚めてしまう故に鬱憤が溜まりにも溜まり我慢の限界を超えた横島は爆発した。

 

生前から女好きで美形が嫌いな横島は、今世も 変わらず…美人を見たらナンパをしていた…その結果は言わずも、馬鹿にされるか無視のどちらかで成功した試しがなかった。

この世界が、横島忠夫として生きてた世界と同じ位神魔やハーフなんかの類いがいれば話は変わっていたかもしれないが…

 

話は脱線したが、男嫌いで超が付くほど女好きの横島が毎回好きでもないどころか嫌いな男の裸を見せられ怒らない筈がなかった……その上、目の前の男は表情は見えないが女受けしそうな顔をしている。それが分かった横島の怒りは油に水を注いだようにヒートアップした。

 

「俺が何したって言うじゃぁッ! 女湯や女子更衣室を覗いたからかッ!? 神様の罰か!? ………ハッ!小竜姫様が嫉妬して裸の男の夢を…いやいや、ワルキューレかも知れない!!」

 

本人達が聞いたら、神剣と精霊石弾のお仕置き間違いなしの狂言的台詞を吐く。と言うより、女湯や女子更衣室を覗いた時点で神通棍が加わり、想像も出来ないお仕置きが実行される。

 

『……え、いや…ちょっと……違っ… と言うか、小竜姫って誰?それにワルキューレって』

 

いきなり、大声でキレ出したと思った次の瞬間…気持ち悪いニヤケ面と涎を垂らしながら狂言に近い台詞を吐く横島に戸惑いが隠せない裸の男。

……横島をよく知る者でもドン引きであろう光景。

 

「ハハハ! おいおい、俺を取り合うのは良いが生憎体は一つだけだぜ! ここはみんな仲良く……ハーレムじゃあ~!!」

 

断言しよう。ドン引き間違いなしだ。

自分の世界入り込み一体何が起こってるのか分からないが自分の頭の中の出来事が垂れ流し状態。

こんなとんでもない状況に、どうしたら良いのか分かんない裸の男は冷やかな視線で茫然と見ることしか出来なかった。

 

「どわははははははー!!」

 

ニヤケきった表情で愉快そうに大笑いする横島。…一体、どんな妄想をしているのか。

 

『……』

 

「どわはは! どわははははー!」

 

『………』

 

「ハハハハハハハハッ!!」

 

唯でさえ、煩かった笑いは更に音量を 上げ甲高く笑いをあげた……その時、 糸…縄が切れるような音が横島の笑いと交じり聞こえた。

 

その音の発生源は…裸の男の方から聞こえた。

 

『すぅー。………せいッ!!』

 

勢いよく息を吐く音と、何かを殴った打撃音と…

 

「ぶぎゃぁッ!」

 

横島の悲鳴が辺りに響いた。

 

「な…なにすんじゃあ~ッ!あと…あと、もうちょいだったんだぞッ! どないしてくれる!?」

 

一体、何がもうちょいだったのかは横島だけにしか分からない事だった。

折角良い気持ちだったのを邪魔された横島は激怒した…自分は悪くない、コイツが悪いのに怒られた裸の男だが、 やっと正気に戻った横島を見これで話が出来ると思うと怒られた事なんて、 どうでも良かった。

 

『…やっと戻ったな……お前には色々 と言いたいが……時間も無いのでな、 今は言いたい事だけ言っておこう』

 

「おいこら、無視するな!」

 

『………お前が我の真の“宿主”になるのはまだ早い』

 

横島の声が聞こえてないのか、そのまま話を続ける男。

 

「話を聞けよっ!ってか、アンタ誰なんだよっ!」

 

『だが、お前は目覚めた……』

 

そう言い。後ろに振り向き去っていく男。……全く、噛み合ってない会話は終わり横島一人が残された…

 

 

…起……て…

 

 

……起き…て

 

 

起きて……

 

 

 

 

 

 

×××

 

「まっ!…て……ん?」

 

夢から覚めた横島の目の前には、自分を覗き込む一人の少女がいた。

察するに、自分を起こしに来たのだと理解する。そんな、ギャルゲー的展開と右手に掴む爆乳と言える胸を揉んでいる嬉しさが頭の中を支配する。

 

「ん~? これはGカップ…いや、それ以上かっ! …あ」

 

「…………へぇ~…」

 

最初は寝たふりをしながら、もうちょっと揉んでいようとしたが余りの胸の大きさに声をあげてしまい起きてた事がバレ。

 

「……ハルコちゃん…オ、オハヨウゴサイマス…イイアサダネ…」

 

寝たふりがバレた事に焦りに取り合えず、 取り繕った挨拶をするがその声は震えていた。

 

「登校初日に遅刻しないよう起こしにきた……久しぶりに会う幼なじみにこんなコトするようになったんだ……」

 

「(あ、あれ…? もしかしたら、怒ってないのか?)」

 

こういった事をすれば、すぐに美神にお仕置きされていた横島は春恋の態度に(これは、怒られずにまだ揉めるんじゃないのかと)と少し期待した。

 

「とりあえず……いつまで人の胸を揉んでる! 手をどけろ!エロシマっ! !!」

 

…が、そんな事はあり得る筈もなく。

春恋は後ろに持っていた竹刀に手をかけ…抜き横島を殴り付けた。

 

「フギャ!!」

 

 

 

 

×××

朝から一悶着あったが、なんとか春恋の怒りをサラリマーンばりの土下座を繰り出し許してもらった。

そんな横島は新品の制服に着替え春恋と共に学園への登校道を歩いていた。

 

「まったく…忠夫は、考えなしに行動するのは昔のままね」

 

春恋は愚痴を吐きながらも横島の隣に並んでいた。

 

「道場に顔をださなくなったと思ったら、家出同然で全寮制の中学に入って…今度は何も知らない学園に入るなんて」

 

「(家出と言うか…親父に無理矢理入れられただけども…ハルコちゃん知らないんだな……この学園の事だって結構知ってるし…今は言わない方がいいな)」

 

ここで本当の事を言っても、「なんで、黙ってたのよッ!」と理不尽の折檻を受けるかもしれないと感じた横島は口を閉じた。

 

それに、この学園を知ってながらも入学した理由は別にあった。

 

「試験も面接もなしで、書類を送るだけで入学出来る上に全寮制だって言うし。それに……今年から共学化の名門女学園だし!!」

 

握りこぶしを作りガッツポーズをし、

「男子校よ、さらばっ!」と血の涙を流しながら言う姿は凄い迫力だ。

 

「そういう所まで変わらないわね………」

 

春恋も呆れて何も言えなかった。

 

「(ホント……昔のまんま―全然変わってない……また昔みたいに一緒にいられるんだ―一緒に―……でも―)」

 

「女子高校生ッ! 女教師との個人授業ッ! やってやる…やってやるぞ!俺は! 素晴らしき学園をッ!」

 

「(シメる所は、シメとかないと―)」

 

うふふと妖しげに笑い持ってきてた竹刀を取り出す春恋の様子に気付いた横島は誤魔化すように「学園の行事は何がある!?」とたずねた。

 

「もう、まったく…そうねぇ……例えば矢倉を組んだりブドウ会開いたり…」

 

ピクッ

ブドウ会…その単語を聞き、僅かに反応する。

 

「あとは巫女装束、着て神楽を舞ったりとか……」

 

ピクッピクッ

巫女装束…

 

「それはつまり、元旦を待たずに巫女さんが拝めちゃう訳か!? 天日に入って良かったぁ! 」

 

「そこに食いつくのか!!」

 

「おぎゃあ!」

 

素早く竹刀でつっこまれた横島は小さい悲鳴を発し、地面にめり込んだ。頭を地面の中に埋めた横島に追い打ちをかけるように勢いよく誰かに踏まれた。そのさい、地面から何か聞こえた気がしたが春恋は気付くことはなかった。

 

「いっ!会いたかったです~!」

 

横島を踏んづけた人物はハートマークが付きそうな位甘えた声を出しながら

春恋に勢いよく抱きついた。

 

「お久しぶりです。春恋先輩!うるちは、先輩に会うために頑張って十五歳になりました」

 

「う、うるちさん。お久しぶり……年齢は頑張らなくてもとれますわよ」

 

春恋のますわよ発言に若干の疑問を持つが、地面から頭を出した横島は春恋とうるちと言う女子を見ていた。

 

「ハイっ! ところで……さっきから先輩の近くにいる……そこのゴミはなんですか?」

 

「(突き飛ばした上にゴミ扱いッ!?

こ、この貧乳痛い目あわせたろうか!……いや。ここで怒ったら学園生活初日から俺の爽やかなイメージが台無しになる……我慢、我慢)」

 

今にもうるちに食って掛かりそうになるが、今後の学園生活が台無しになることを惜しみなんとか我慢した。

 

「彼は私の幼なじみの横島忠夫さん。あなたと同じ天日学園の一年生ですわ」

 

春恋は横島の事を知らないうるちに紹介をし、今度は反対にうるちの事を横島に紹介した。

 

「うるちさんは中等部で後輩だったの……良いコだから忠夫さんも仲良くしてあげて…」

 

「ハジメマシテ。水屋うるちです。好きなものはパスタと春恋先輩…キライなモノはゴキブリと短足男です……ヨロシクッ」

 

そう。横島に自己紹介したうるちの目には不機嫌と不愉快といった、決して好意的な目ではなかった。

 

「(初見から思ってたけど、この子…百合だ…)よっ…ヨロシクッ」

 

うるちの性癖を知った横島はなんとも言えない気持ちだった。

 

「じゃあ、参りましょう先輩!うるちは入学準備委員に選ばれたので…」

 

すぐにも、春恋から横島を引き離したいうるちは春恋と共に目的地に行こうとするが春恋は横島を見、うるちに待ったをかけられる。

 

「もう。しょうがないんだから忠夫は……」

 

地面に座っている横島に手を差し伸べ、握りしめ……顔を近付ける。

その距離はお互いの吐息が聞こえる程の近さに横島は心拍数をあげていた。

 

「そう言えば……三年ぶりに会った…幼なじみにまだ言ってない事あるでしょ?」

 

「え? ……う……あっ……」

 

やっと春恋の問の意味が分かったのか横島は……

 

「胸……大きくなったなハルコちゃん」

 

キメ顔で春恋の爆乳を揉みながらとっても爽やかに言った。

春恋とうるちの表情は石像のように固まり辺りは沈黙に支配された。

 

「ん…んふふ♪んふふふ♪……なーんで、そこにいくのかしら…ね? 」

 

「は、春恋先輩のむ、胸をっ!!」

 

「え、え? ちょ…ごめん!……冗談だからッ!! 」

 

謝っても既に時遅し…殺気を出しながら竹刀を構える春恋……と春恋の胸を揉んだ横島に対し、うらやましく嫉妬の感情で拳を作り構えるうるち。

 

両者は同時に竹刀と拳を振り上げた…

 

「ぶぎゃぁぁっ!!」

 

その日、天日学園に男の奇声が聞こえたとさ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ! 今、何時!? ……こんな時間! 大変、遅れちゃうっ!」

 

「行きましょ春恋先輩っ!」

 

「えぇ! ……………入学おめでとう忠夫…」




やはり小説を書くのは難しい……
眠いときなんて更に難しい……

脱字・誤字等の指摘またはお気に入りへの投稿宜しければ




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壱話―後半

誤字の指摘がありましたので直し再度投稿しました。



春恋とうるちは横島をボロボロになるまでお仕置きした後、慌てて何処かに行ってしまい…その場には、ピクリとも動かない横島だけがいた。

 

それから、数分の刻が過ぎ…ある変化が見られた。

 

「…行ったな……それにしても自業自得と言え、ひどい目にあった」

 

さっきまでボロボロに倒れてた筈の横島が何事もなく、スッと立ち上がり体の汚れを払い落としてた。

 

「……水屋は気付いてなかったがハルコちゃんは……あれゃあ、気付いてたな…」

 

横島は気絶したフリをしながら、春恋が去り際に言った、「入学おめでとう忠夫」の台詞をばっちり聞こえていた。

 

その事を思い出すと、嬉しくもあり照れくさくもあった。同時に申し訳ない気持ちがうまれた。

 

「ふざけないで…ちゃんと言ってやれば良かったな………」

 

冗談で胸のことなんかを言わずに……素直に「キレイになった」と言えば良かったのだが、改めて言おうとしたが照れてしまい胸を触ってしまった。

 

「ま……過ぎたことをいくら言ってもしょうがねぇ……俺も入学式に行くとするか…な」

 

チラッと、目に写った時計を見るとあれから結構経っており入学式が始まるまで時間がそう長くないと悟ると入学式の会場…体育館に向かって走り出す。

 

 

 

×××

「ん? 男……?」

 

「今年から男子生徒を入れるって言ってただろ?」

 

「聞いても、ムダだからのぉ―」

 

木の枝にぶら下がってる少女と…炎のように荒々しく動く髪を持つ小人らしき男の男女が会話していた。他の人から分かりづらい所にいるといえ…下着丸出しでぶら下がってる少女は行き交う学生や教師を観察していた。

 

「しかし……学園長もよくこれだけアホ面を……ん?」

 

言葉の途中に二人の見知った少女達に目が行った。

 

「アハハ…またやっとるのか、あの二人は」

 

「………人のケンカ楽しむなんて趣味悪いぜ………」

 

“人の不幸は蜜の味”と言うのか…… 少女達のケンカを見て、面白いのか愉快そうに笑い、横でそれを見ていた小人の男は少女に注意する……が

 

「そうは言ってものぉ、原因を知っとるとあやつ等のイザコザは面白うてかなわん」

 

仕方なしと全く反省の色を見せない。

 

「お嬢。イザコザってか一方的に絡んでるだけに見えるが…」

 

小人の男の言う通り、少女が一方的に絡んで、もう一方の少女は嫌そうにしている。

 

「確かに」

 

小人の男の言葉を聞き、更に可笑しそうに笑いながら同意する。

 

「おい~!!」

 

予想だにしない、大声にびっくりし体をビクッとさせた少女は声の主の方向を見る。

 

「……」

 

「…あっ」

 

そこには、まの抜けた声を出す横島が何故かいた。

少女は横島をじ~と見ると自分の状態を思いだし慌てて降りようとするが大きくバランスを崩し逆さまのまま横島の真上に落下した。

 

「お嬢!?」

 

「きゃあ!!!」

 

「ほぐッ!?」

 

可愛らしい悲鳴と衝突音がした。

 

「んっ……!!? くっ!!!」

 

横島の上に落ちた少女は、横島に覆い被さり…神様のイタズラなのか偶然にも横島とキスをしていた。

 

「あっ……あっ……」

 

すぐに離れた少女はキスをしていたと言う事実に戸惑ってた。

しかし、横島はキスをしていたことを分からないが……

 

「……純潔の……白レース…」

 

スカートから見える少女の下着をガン見してた。しかも、口に出しながら。

勿論、少女の耳にも横島の言葉は聞こえてた。

 

「っ! 」

 

「……はっ。ちがうんだ、ちがうんだ、ちがうんだーっ!! ドキドキ…じゃない……見てない! 見てないゾ! 白のレースなんてっ!」

 

言い訳を言うが、殆んど私は見ましたと言ってるようなものだ。その証拠に少女は横島の胸元を掴み、首に手刀を当ててる。

 

「ひ…ひえぇッ! す、すみません! わざとじゃあ……」

 

謝罪の言葉を無視し、手に力を入れる少女は…ふっと横島の胸元のアザがうつる。

アザを見た瞬間、目の色が変わり直ぐに元に戻った。

しかし、横島はそれに気付いてた。

 

「……わしに何か用があったのではないか?」

 

「へ? あっそだ。た、体育館。体育館の場所を……」

 

この男は、元気よく走り出したと思えば体育館は何処だと思い人に聞こうと

木にぶら下がってた少女に教えて貰おうと声を掛けたのだ。因みに、その事に気付いたのは走り出してから数分後のことだった。

 

「そこを出て、道沿いに行けば辿り着く」

 

「な…なるほどっ。あんがと」

 

お礼を言い、教えられた道を行く横島の跡をじっと見る少女と小人の男。

 

「なんだ、アリャ? ……大丈夫か? お嬢…?」

 

落ちたことを心配してるのだろう。小人の男は心配そうに聞くのだが、少女の耳には届いてなかった。

 

「………見つけた。見つけたぞ我が仇敵……」

 

その呟きは隣にいた、小人の男にも聞こえなかった。

 

 

 

 

×××

『あ~~テステス。ここの学園長、六条実です』

 

場所は体育館。壇上には赤いスーツを着た女性……学園長が自己紹介をしていた。

 

『え~皆さん。ご入学おめでとう。本日は新入生を迎えるにあたり、当学園について話をしたいと思います』

 

新入生…一年生に向かって、祝いの言葉を送る学園長…実は話を続ける。

実の話を黙って聞く、一年生と上級生達……そんな中で一人―横島は違う事を考えてた。

 

「(朝からヒドイ目にあったが…良いこともおきたな……やっぱ共学選んで良かった!これからの学園生活が楽しみだ…ゲヘヘ)」

 

ゲスい笑みを浮かべ、ヨダレを垂らす横島に周囲の人間は引いていた。

 

「(けど……)」

 

『っと。正直かたっ苦しい話って苦手だから、短くチャッチャッとまとめると――我が学園のモットーは……』

 

気持ちが高ぶってるのか、実はマイクを豪快に持ち…

 

『心・美・体!!』

 

『心も体も強く美しくあれってことね…この考えは共学化した今でも変わる事はありません!! 男女共、この信念のもと己を磨きあい校則を守りつつ“恋”なり“決闘”なり自由にやっちゃって!!』

 

「(…これさぇ、なかったら…な)」

 

“決闘”という言葉を聞き、決闘の意味を知る横島は心底嫌そうな表情をする。

 

『んで、気になってる人も多いだろう。“ヒメガクラ”だけど』

 

ヒメガクラ―この言葉は、詳しくは知らないが父親にある程度聞いている横島は更に嫌そうにする。

 

『これは天日の学園祭…であると同時に八つの“マケン”の所有者を決める大会でもあります…魔力・霊力…』

 

魔力、霊力と随分懐かしい言葉を聞いた横島は、生前生きてた世界を思い出す。

 

「(美神さんやおキヌちゃんは一体どうしてるだろう…? 最後にケンカしてたことしか覚えてないんだが…)」

 

段々と不安になる気持ちに、こりゃ、いかんと思い頭を振り忘れようとする。

 

『…様々な力があるけど我々はこういった力を総括して“エレメント”って呼んでます』

 

エレメント―この世界に来てから新しく覚えた物の一つ。

生前から霊力を操る横島は直ぐにエレメントの力に目覚め才能ありと言われた横島は幼少期から両親に嫌々ながら鍛えられた。

 

『八“マケン”の所有者になれるくらい“エレメント”が扱えれば、輝かしい未来が約束されるでしょう…しかし、本物ではありませんが全生徒には個々に合った“マケン”の模造品が渡されます』

 

「(マケン…な。自惚れてる訳じゃ、ないけども…別にマケンなくっても強いし……よな俺?)」

 

自分の強さに自信がないのか弱気な考えを持つがその考えはけして間違いではなかった。

霊力やエレメントを使った身体強化だけでも、そこいらのマケン使いに苦もなく勝ってるだろう横島に……マケンを持たしたら一体どれだけ強くなるのか…想像も出来ない。

 

『それを使って三年間“エレメント”の扱い方を学んで下さいっと…ま、コレを聞くより見て貰った方が早いから……』

 

『余興も兼ねて実演すんね。呼ばれた在校生三名と新入生一名は武台にあがってねー!』

 

言葉を合図に二つの武台らしき物が浮上する。実は横に待機してた女生徒から幾つかの玉を貰い受け、そこに書いてある文字を読み上げる。

 

『二ーB六番…絹亜ガレットと同じく―二ーB七番志那都アズキ。両者、私から奥の武台に―』

 

まず、二人の上級生が呼ばれ武台に上がっていく…

 

『続いて…二ーA二十番…姫神コダマ……最後に新入生…横島忠夫! 手前の武台へ!!』

 

姫神コダマと呼ばれた少女はさっきほど…横島とキスをし、自分の下着を見られた少女であった。

一方…名前を呼ばれた横島は、「へぇ~、横島って奴入学初日から運が悪いな~それにしても俺とおんなじ名前かぁ~」と他人事のように言うが、直ぐに自分だと分かると他人の目を気にせず大声で「いやぁー! 入学初日から決闘なんてイヤじゃあーッ!」とわめき散らしてた。

 

その様子を見てた春恋は呆れかえってなんとも言えない表情だった。

 

『あ、ちなみに試合時間は三分…デモンストレーションみたいなもんだから。医療班も控えてるし、気楽にね~』

 

試合をする横島を含め、上級生三人に対して……なんとも気の抜けた応援をする実。

 

「ウフフ…ようやく捕まえましたわアズキさん。こんな形で再戦なんて……何か縁を感じますわね?」

 

「まったくだ。一刻も早く絶ち切りたいぜ」

 

お嬢様口調でポーズを決め剣を携えたガレットと準備運動をする男勝りなアズキ。

 

「ウフフ…しかし、これはもう“決闘”以外の何ものでもないと思いません?」

 

回りくどい言い方をするガレットにアズキは内心苛立ってた。

 

「つまり何が言いたいかと申しますと…私が勝ったら彼を返して頂きますわっ!!」

 

“彼”と聞き、横島は頭の中一つの思考に至った……

「彼は私のよ!」

「は、コイツはあたしの物だ!」

「だったら、力づくで…!」

………何を思ったのか、二人の少女が一人の男を奪い合う姿を想像していた何故か男の方は美形だ…実に横島らしい思考だった。

 

「うおぉー! ちくしょー!! 何だかとてもちくしょー!! ………ぐはっ!」

 

藁人形に釘を打ち、会ったこともない相手に呪いをかけていた……が呪いは横島に帰ってきた。周りは、何だコイツ?と気味悪がっている。

 

「こじつけやがってコンニャロ。こっちが勝ったらその事で金輪際絡んでくんなよ」

 

「了解しました“決闘”成立ですわね…」

 

『じゃあ、在校生の方から始めようか……始め!!!』

 

両者の準備が整い、開始の合図を出した。

開始とともに、ガレットは剣の鞘を抜き捨てた。

 

「出番ですわ…魔剣“サイズ”!!!」

 

そう言い。剣を振るうとアズキに向かって斬撃が飛んだ。

アズキは受けるのは危険と判断し、横にずれ攻撃を避けた。

 

「きゃっ!!」

 

目標に当たらなかった斬撃は観戦してた生徒達の真上を通り、紅白の布を真っ二つに切り裂いた。

その光景を見てた横島は……

 

「(剣から斬撃…か。マケンって奴は知ってたけど、実物はなんとも物騒な道具だな)」

 

ガレットのマケンを凝視してた。

その視線に、近くにいたコダマは気付きガレットの持つマケンを説明し始めた。

 

「魔剣“サイズ”は“宿主”の意思に応じて…刀身から“かまいたち”に似た真空の高速衝撃波を繰り出す事ができる……」

 

「ほへぇ~…やっぱ、マケンってスゴい物なんだな~」

 

本当に分かってるのかと横島の態度に疑問を持つコダマだが、今は試合の方が大事であるため試合に目を向ける。

 

「……“暴れ鷹”相手では、その速さも意味を成さんか…」

 

「なっ! ……上っ!?」

 

ガレットの攻撃を避けたアズキは武台の上空にいた。

白鳥のように鮮やかに翔び、鷹の様に荒々しく獲物を見る目は狩人のようだ……

 

「ちょ…ちょっと意表を突かれましたけど………私相手に上空に逃げても唯の的になるだけですわ!!」

 

ガレットは上空に剣を構え…

 

「遊びが過ぎましたわね!!」

 

勢いよく振りかぶる。

ガレットの攻撃は誰もが当たると思ったが…

 

「翔べ。魔腱“ホーク”……エア・ステップ!!!」

 

寸前になり、自身のマケンを発動させたアズキは地面を蹴るみたい空中を蹴り攻撃を回避しガレットの背後に降り立った。

ガレットもいちテンポ遅れ背後を振り向くが、顔の傍にはアズキの脚があった。

 

『フッ…両者そこまで!! 勝者!! 志那都アズキ』

 

勝負あり。と判断した実は試合を止め勝者の名を口に出した。

 

「ま、また負けるなんて………」

 

負けたガレットはこの世の終わりと思わせる暗い表情に……

そんなガレットにアズキは敗因を教える。

 

「…………彼はもう私のもとには戻ってこないのですね……」

 

表情だけではなく声色も悲哀が満ちてた。

 

「まっ…そういうこった。潔く諦めな」

 

「……そう。かわいそうな私のテディベア。クーちゃん…これからも毎晩アズキさんにギュッキュッされながら涙で枕を濡らすのですわ!」

 

……どうやら、彼とは人ではなくぬいぐるみの人形の事だったらしく。それを知った周囲はアズキの事を意外そうに見てた。

二人の可憐な少女が取り合ってたのがぬいぐるみだと分かった横島は何故呪いが帰ってきたのか漸く分かった。

 

「(それりゃあ…相手も居ないのに呪い掛けたら……掛けた本人の…俺に帰ってくるわな……それよりも!)」

 

「カメラ持ってくるんだったッ! あぁッ!パンチラがぁ、あんなに見えてたのに勿体なーいッ!!」

 

「神聖な決闘で何を撮ろうとしとるか、お主はーッ!!」

 

「ぐはぁっ!」

 

決闘中にパンチラを撮ろうなどと言う決闘を汚す様な考えに思わず拳で突っ込んでしまったコダマに女子生徒全員がよくやった!と心のなかで拍手を送り…男子生徒は心の中で横島に賛同してた。

 

「な、なんでの俺の考えが…もしかしてエスパーかッ!?」

 

「エスパーなんて居るわけないわ…お主が声に出してただけじゃ」

 

「え、知り合いに居たけどエスパー…」

 

「……」

 

本当におるのか…と少し驚愕してるコダマ。

 

『それじゃあ、最後の試合だ。二人とも手前の武台にあがって…』

 

そう言われ、武台に昇るコダマと嫌々ながらも大人しく昇る横島。

しかし、横島は試合前からいきなりダメージを負ってる横島を心配する者が……春恋だ。

 

「(……大丈夫かな?いきなり怪我してるけど。それに相手はあの姫神さんだけど……)」

 

コダマの実力をよく知る春恋は横島が怪我を負わないか心配だった。

 

「(う~心配だぁ)」

 

「決闘とかよく分からんが…三分間試合してたら言い訳だろ…ま、大丈夫だろ」

 

軽い口調でそんな事を言う横島にコダマは全然別の事を考えてた。

 

「(あの胸の紋……見間違うはずもない…となるとヤツは――)」

 

「(わしの―倒すべき敵じゃ――)」

 

その表情は横島を敵として認識し、その他の感情を捨てた覚悟した顔付きだった……の筈だが…

 

「(お気に入りを見られた上に唇まで奪われたしのぉ……)」

 

結構私情を挟んでるようだ。

 

「何、企んでんだ? お嬢」

 

「心配か? カクヅチ安心せい。今は殺らぬ……今はな……」

 

何時もと雰囲気が違うコダマを心配する小人の男…カクヅチ。

 

「イカヅチ!」

 

カクヅチの横に雷みたいな髪形をしたイカヅチという名前の小人が出現した。

 

「今から時限式の雷玉をあやつの心臓に埋め込む。見た所、奴には“エレメント”耐性が皆無……守る術を知らん今なら……後日に心臓ショックを与え殺す事が可能じゃ」

 

横島にエレメント耐性がないと思い込むコダマだが、横島はエレメントを一般人と同じ位に抑えてるだけでエレメント耐性はきちんと備わっているのだ。

この事に気付いてるのは実と極僅な人だけだった。

 

「お嬢。ここで目を付けられちゃ意味ないぜ。それによアイツ自身に恨みは……」

 

「わかっておる! わかっておるのじゃ……だがな…騒ぐのじゃ―血がな――」

 

困った風に自分の心臓に手を置くコダマを見てカクヅチはそれ以上何も言わなかった。

 

 

 

『んじゃ新入生気張ってな……それでは…始め!!!』

 

「(相手は女なんだよな…あんま、傷付けたくないし…ひたすら防御に徹するか…)」

 

そう。決めた横島は自身の使う武術の構えをとる。両腕を前に突きだし……

 

「“前羽構え”!!」

 

「ーッ!」

 

横島は空手の構え……絶対防御の前羽の構えをとる。相手の攻撃がきたら、十全に守れる前羽の構えは相手と自身を傷付けることのない構えである。その前羽の構えをとった横島の姿は素人なんと呼べぬ洗礼された正真正銘の達人の姿にコダマを含め多数の生徒、教師が驚愕した。

先までの藁人形に釘を打ってたり、パンチラ、パンチラと言ってた人物がいきなり達人級の構えを見せたのだから更に驚愕した。

 

「(なんという隙のない構え―先程の童とは思えん!)」

 

攻撃しようにも、隙がない。もし、突撃でもしようものなら気付かぬうちに倒されると悟るコダマ。だが、横島に空手を教えた者が見れば…まだまだ隙だらけ! と激怒するだろう。

 

「(あ、あれ… 掛かってこないぞ? こりゃ…どうすれば良いんだ?)」

 

困った横島はチラッと審判の実の方を見る。視線に気付いた実自身もこの事態に困り果ていた。

クジと言え、適当に選んだ新入生が自分並みの達人だとは予想だにしなかった故、どうすれば良いのか考えてた。

 

「(このままじゃ、試合に成らないな……仕方ない。引き分…ん?)」

 

考え抜いた結果……仕方なく引き分けにしようとマイクを取ろうとする手が止まった。実の視線の先には横島に突撃するコダマの姿があった。

 

「(おいおいッ! 私でも攻撃するのは躊躇するってのに…いきなり突っ込むなんてどうするつもりだ!?)」

 

確かに、今の横島に攻撃できる者は数少ないだろう。実も攻撃できる一人だ。実の主な攻撃は近接戦闘が得意だが、そう易々と攻撃を繰り出す事は出来ず、仮に攻撃が通ったとしても避けてしまうだろう。遠・中距離戦闘を得意とするコダマの格闘が横島の防御を突破出来ると思えない実もコダマ自身も分かっていた。

それでは…何故コダマは態々突撃しに行ったのか…

 

「(確かに…ワシの攻撃は届かない…それでも…)」

 

「エレメントが通らぬ道理はないじゃ……ろッ!!!」

 

確かに…攻撃が通らなくてもエレメント耐性のない者にはエレメント攻撃は通る……が、それは横島がエレメントが使えてなかったらの場合である。

 

コダマの指先には高密度のエレメント…雷玉が光ってる。

「ゲッ! エレメントで攻撃しようとしてやがる!」

 

「今さら遅いわ!」

 

「ならッ! ……はっ!」

 

前羽の構えを解き、素早く手をコダマに向け突きだし手の平に霊力を集め、瞬く間に形作ってく。

 

「サイキック・ソーサーッ!!」

 

その掛け声と共に手の平に霊力の盾が現れ、コダマの攻撃を防ぐ。

 

「な、防いだっ!? 」

 

前羽の構えを解いたと思ったら、目に見える程の高密度の盾が自分の渾身の一撃を易々と防いでみせた。

防いだ事にも驚いたが…一般人レベルのエレメントしか無いと思っていたのが突如、目に見える程のエレメントを集めた事が驚きだった。

 

「(…あの盾、あれはエレメントとはどこか違う……それに)お主…」

 

「あ~ぶねぇ。もうちょっとで攻撃当たってたぞ………え? 」

 

「お主は……エレメント数を自在に変化できるじゃろ…?」

 

その言葉に周りはざわつき始める。

エレメント数を自在に操る事が出来るのは高ランクのマケン使いにしか出来る所業が今日入学した新入生に出来るなど………

 

「へ? 出来るけど…あれ、なんかアカンのか?」

 

「……いや」

 

さも同然と答える横島に何も言わなくなったコダマ。

するとコダマは、おもむろに手を挙げ……

 

「この勝負…我の降参でよい…」

 

自ら…負けを宣言したコダマは武台から降り、何処かに行ってしまった。

残された横島は困り果ててた。

降参したコダマと困り果てる横島を見、仕方なしと勝敗を言い渡す実。

 

『姫神コダマの棄権により、勝者横島忠夫!!!』

 

こうして靄のようにモヤモヤとした気持ちを抱きながら横島は無事試合に勝利し……この日は終わった。

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

「はぁー! 疲れたぁ…」

 

「だらしないわよ。実」

 

「良いじゃんか~…今日は驚きぱなっしで疲れたんだよ~」

 

「…あぁ、入学式に決闘した男子生徒の事ね」

 

「そっ。最初はバカでスケベで面白い奴って思ったけど…いざ、始めたら…」

 

「……別人の様だった?」

 

「………達人級の構えにタイムラグのないエレメントによる防御…」

 

「そうね。あれは私も驚いちゃったわ…それに、あの盾……エレメントじゃ無かったわね」

 

「…………はぁ~! 今年はなんでこんなに面倒な奴が多いの~!」

 

「仮にも学園長なんだから生徒を面倒って言っちゃ駄目じゃない。」

 

「だってえー。調査とか…コイツらの部屋割りとか…」

 

「もう……そうね、だったら皆一緒にしちゃったらどうかしら? ……ふふ、冗」

 

「それだっ! 」

 

「ちょ、実っ! 冗談のつもりで私言ったんだけど…」

 

「ルンルンルン♪ 終わったら飲むぞー!」

 

 




何回も同じ話を投稿すると怒る人もいるかもしれませんが
目次にそう言った、直した後が表示されるのが嫌なので
脱字・誤字なんかの指摘がありましたら直し再度投稿しますのでご理解がありますように…

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弐話―前半

なんか予告した少し前に投稿してしまう。


横島とコダマの試合は……コダマの棄権という形で幕を閉じた。試合の後の入学式はなんとも言えない雰囲気のまま終わり……横島は学園長たる実に呼び出された。

 

「こっちは試合で疲れてるってのに…呼び出されるなんて…ほんと今日はとことんついてないな」

 

愚痴を吐きながら学園長の実がいる校長室の前までやって来た横島。

 

「…呼ばれて来ました…横島です。入りますよ」

 

扉をノックし、扉を開ける。

中には自分を呼んだ実と三人の少女達が居た。三人の少女の中には横島がよく知る人物も居た。

 

「あれ? ハルコちゃん何でいるの? それにさっきの子まで…」

 

春恋の他にさっきまで自分と試合をしてたコダマが居たことに疑問と若干の驚きをみせる横島。

 

「あぁ、それは私が呼んだんだ…そんな所に突っ立てないでこっちに来い」

 

実は横島を手招きする。

手招きされた横島は素直に従い春恋達の横に立つ。

 

「実よ。早よう了見をもうせ…」

 

「(俺も早くしてほしい…疲れてるから帰って寝たいんだが)」

 

口には出さないが隣のコダマに賛成する横島。

 

「そう。急かすなっての…お前たち四人を呼んだのはちゃんと訳があるって」

 

そう言いながら一同を見る実は楽しそうな表情をしながら口を開く。

 

「お前たち…四人には一緒の部屋に住んでもらう!」

 

勢いよく指を指しながらとんでもない事を言う。

 

「なっ! 学園長何を言ってるんです!? 」

 

頬を染めながら実に抗議する春恋に対して…

 

「なんか他にあったっけ?」

 

頭をかきながら返す。そんな態度に頭にきた春恋は怒鳴り散らす。

 

「何って! ふ、不純異姓交遊です! それはっ!!」

 

「そっか…春恋は嫌か…けどアイツは喜んでるぞ…ほらっ」

 

「え?」

 

実の指した指の先には…

 

「美女三人と一つ屋根の下で三年間過ごす!! うおぉぉーっ!! 学園生活初日から不幸だと思ってたのにパラダイスな展開がぁっ!」

 

涙を流しながら、もの凄く喜んでる横島の姿があった。

その姿を見た春恋は昭和の芸人みたいにずっこけた。

 

「そうだった…忠夫はこう言う人だったわ……だったら、姫神さんはどうなの男の人と住むの!?」

 

怒る気力もなく、コダマの意見を聞く。

 

「…ワシは別に気にしないが…」

 

考える素振りをするが、すぐに返事を返し……予想外の返事に唖然とする春恋。

 

「(一緒におれば…こやつの正体がわかるじゃろう…)」

 

コダマの本当の目的は誰には分からなかった。

 

「じ、じゃあ、そこの貴女はどうなの!? 男の人と同室なんて嫌でしょ!?」

 

全く話に入ってこなかった少女にすがり付く思いで聞き、返事を待つ春恋の心は焦りまくってる。

このままでは、自分の大好きな人が他の女の子と一緒に暮らしちゃうと言う羨ましくもあり、悲しくもあるそんな状態であった。

 

「私は……私は忠夫様と一緒で全然良いですっ!」

 

その返事とともに…嬉しそうに横島に抱きつく少女。いきなりの出来事に抱きつかれた横島は驚き、春恋は体からエレメントとは違う黒い何かが溢れ出てた。その謎のオーラを見てた実とコダマは驚愕したが……横島には結構に見に覚えのある物だった。

 

「(ッ! あれは、おキヌちゃんと同じ黒いオーラッ!? や、ヤバい! ……けど、この柔らかい感触と良い匂いに負けちゃう)」

 

今、春恋が出してる黒いオーラの正体は……嫉妬である。

この嫉妬のオーラはおキヌも出していた物と同じで、横島が自分以外の女性と仲良くしてると嫉妬のあまり出てしまうと言うとっても厄介な物だった。

その危険性を身をもって知ってる横島は脂汗を大量にかきながら、この状態を打破しようとするが抱きついてる少女の非常に大きい胸の柔らかさと香水とは違う実にいい匂いが横島の思考を鈍らせる。

 

「(あぁ、もうどうでもいい……いやいや、駄目だッ! この子誰だ!? 俺の事知ってるようだが…)」

 

欲望に飲まれそうになったが、なんとか踏ん張り理性を保つ横島は自分を知ってる少女のことを見る。

 

「な、なぁ…俺のこと知ってるようだけど……君は誰なんだ?」

 

相手は自分を知ってるが…自分は相手を知らない。この少女とは過去に会った筈だと思う横島は必至に記憶を探る。

 

「ッ……申し遅れました。私は櫛八イナホです」

 

名前をたずねた瞬間、少女の表情が一瞬暗くなったが……すぐに笑顔になり自己紹介を始める。

 

「櫛…八……イナホ……ッ! イナホちゃん!?」

 

その名前に聞き、漸く少女の事を思い出した横島は小さい頃に何度か遊んだ女の子が同じ高校に入り美少女に成長してたことに驚愕してた。

 

「なっ……覚えていてくれたのですか? 私のこと……」

 

頬を染め、嬉しそうにするイナホ。

 

「ま、名前聞くまで忘れてたけどな…それにしても久しぶりだな。元気だった?」

 

「はいっ! イナホは元気でした! 忠夫様もお元気そうでっ! 」

 

「おう!」

 

二人だけの世界に入り込んだ横島とイナホは春恋達三人をすっかり忘れていた。

 

「あぁ~…おぉい、そこの二人そろそろ話に戻りたいから良いか?」

 

いつまでもこうしてる訳にはいかない為、呼び掛ける実の声に気付き実の方を向く横島とイナホ。

 

「よし……そっちの櫛屋と姫神は横島と同室で良いんだな? 良いなら今日の」

 

「ちょっ! りょ、寮長としてそんな話、認める訳にはいきません!!」

 

横島が二人の美少女と同室になることを認めない春恋は必至の言い訳をする……が

 

「学園長!! ……勝った!」

 

権力の前にはなんの意味もない。

実は先輩たるコダマに横島とイナホの二人の面倒をみるように頼み…コダマは快く了承した。

 

「ダメ……私だって………私だって忠夫と一緒になりたいのに!!」

 

目元に涙を溜めた春恋は心のうちを盛大に暴露し、それに気付き顔を真っ赤に染め恥ずかしそうにしている。

 

春恋の暴露を聞いた横島は春恋の手を取る。

 

「部屋どころかッ!墓の中までッ! 」

 

瞬時にその言葉の意味を理解した春恋は体を震わせて…

 

「もうっ! 忠夫のバカ! 」

 

「ぐべっ!」

 

平手をくらわし、横島をぶっ飛ばした。

勿論、この行為が照れ隠しだと理解した実達三人は面白そうに笑っていた。

 

「副会長も良いって事だから……四人ともこの住所に荷物持って今日から暮らしてくれ!」

 

そう。締めくくり四人は解散した。

残った実は……

 

「いやー! 面倒な奴等を一緒に出来て良かったわ~! これで仕事も減るし、お酒を飲める! ほんと秋は良いこと思い付くなっ!」

 

教師とは思えない発言をお酒を飲みながらぶっちゃけてた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

「んっ………」

 

雲一つない快晴の日。

日の光はガラスを越え、横島の顔を照らす。

 

「んんっ、んっ?……えっ?」

 

目を覚まし、違和感に襲われる。

顔になんとも言えない柔らかさの物が密着している。それが何なのかを確かめようとするが…誰かが頭を押さえ込み確かめられなかった……しかし、横島はすぐさまそれが何なのか理解した。

 

 

胸だ。

 

そう。目の前には爆乳と言える大きさの胸があることを知った横島の心情は……

 

「(コ、コレはどういう―いや、分かる! 分かるぞ! …この状況はっ!)」

 

「(この状況を楽しめってことだな! そうでしょ神様!)」

 

全然違うぞ~と謎の声が頭の中に聞こえたが知らんぷりする。

 

「(あぁっ! なんて柔らかいんだ! て、天国じゃ~! 神様ありがとう! )」

 

感謝されても困るわぁ~とまたもや謎の声が聞こえたが知らんぷりし、爆乳に顔を埋める横島の顔は実に幸せそうだ。

 

「んぅ……なんだろ。胸がムズムズす……るっ!?」

 

「うおぉー! まるでマシュマロみたいな柔らかさと固くもなく柔らかすぎない弾力…最高の乳だぁ!」

 

この男は胸の持ち主が起きたことも気付かず声に出しながら胸の感想を述べていた。

 

「柔らかいな! ……う? ………あっ」

 

頭を押さえ付けていた力が無くなったと思い顔をあげると鬼のような形相をし拳を握る春恋がいた。

額は大量に汗が吹き出し、鉄のように固まってしまった横島は小さく口を動かした。

 

「……や、優しくしてね」

 

気でも狂ったのか大変気色悪い女口調で春恋に言う。

 

「ああぁぁぁ!!!」

 

無情にもその拳は降り下ろされた。

 

こうして横島忠夫の学園生活二日目が始まった。と言うより入学初日と同じ始まり方だった。

 

 




キャラの口調が難しい。
主人公と春恋達の同室ルートをここで入れました。
ま、場所が医務室から校長室に変わっただけですが…

あと、主人公がイナホの事を忘れてなく、覚えているという事にしました。
この小説は大山武じゃなく、横島忠夫が主人公なので美少女の事は覚えている
だろうと思いこうしました。

あと同室ルートは壱話だろと言うかも知れませんがそれを含め弐話という事になりますので……

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弐話―後半

投稿が遅くなりました。
睡魔や疲労で中々執筆が進まなくてなんとか書き終わりました。




「うぅ……朝から…非道い目にあった…」

 

一人机に潰れる横島の顔には痛々しい傷がついてた。その傷は春恋の胸に顔を埋めていた為、付いた傷であった。

要するに横島の自業自得である。

 

「もうっ……悪かったってば…昨日はあまり寝つけなかったし忠夫が一人ロフトだから心配で……」

 

一方傷をつけた張本人は申し訳なさそうにしていた。しかしこれは横島の寝床で寝ていたことに対する謝罪で決して胸のことではない。

 

「寝ボケてそのまま上で寝ちゃったみたいね……」

 

食事の準備をしながら、朝の事を思い出す。

 

「私は忠夫様が寂しいかと思いまして」

 

春恋の隣で同じく食事の準備をするイナホは堂々と本音をぶちまける。

 

「 ってか、イナホちゃんも居たんだ…全然分からんかった」

 

横島の言う通り。横島の寝床にいたのは春恋の他にイナホも居たのだ。しかも此方は忍び込んでいたらしい。

 

「(はぁ……イナホちゃんも居たんだったら…イナホちゃんの胸にしとけば良かった…)」

 

春恋に痛めつけられても反省の色が無い横島……確かに、イナホの場合だったら結果は変わっていたかも知れないが…いや、結局春恋にバレ折檻を受ける事には代わりない。

 

「それに昨日は荷物運ぶのでバタバタしてたし………」

 

「バタバタって……動いてたの殆んど俺だけやないか!」

 

涙を流し恨めしそうに春恋を見る。

実に言われ昨日の内に寮に自分等の荷物を運ぼうとしたら…コダマに自分等の荷物も運べと言われた。勿論、その事を拒否しようとしたが……コダマの色仕掛けにより横島は喜んでコダマ達三人の荷物を運んでいた。

 

「で、でも、忠夫も忠夫よ? 姫神さんの色仕掛けで喜んで運んでたじゃない…」

 

「うぅっ」

 

春恋の言い分に唸り声しか上がらない横島にトドメを刺すようにもう一言付け足す。

 

「止めようとしたけど…忠夫凄い早さで荷物運んでたから声掛けられなかったのよ…」

 

自身の高い身体能力を駆使し目にも止まらない早さで寮と荷物を行き来していた横島には春恋の声は聞こえず一人横島を応援してたイナホの声しか聞こえていなかった…

もう何も言えなくなった横島は大人しく朝ごはんが出来るのを待つことにしようとしたが…一つの考えが浮かぶ。

 

「(コダマちゃんは今もなお寝ている……ハルコちゃん達にばれず寝室に行けたら…コダマちゃんの寝姿を見れるのでは!?)」

 

この男には性欲しかないのか…

朝あれだけ折檻されていたのに、また同じようにバレって折檻されるだけなのだが懲りない男である。

 

「……トイレ行こーと…」

 

春恋とイナホの目を盗みながら適当の理由をつけ、席を立つ横島。

泥棒の様に抜き足忍び足となんとも怪しい動きで移動する横島に気付かない訳がなく…

 

「忠夫…姫神さんの所に行かないように…ね?」

 

包丁を持ちながら此方を見る春恋は眉間にシワを寄せ怖い顔で見る。

幼い頃から横島の行動を見てきた春恋はすぐさま嘘を見抜き釘を刺す。

しかし、横島はこんな事では諦めない。

 

「な、何を言ってるんだ…と、トイレだよ!」

 

「そう……あ、イナホちゃん悪いんだけど姫神さんを起こして貰える?」

 

イナホの方を向き先程の怖い表情から笑みを浮かべ優しげな表情で頼み事をする。

 

「はいっ! おまかせあれっ! 起こすのは得意なんですっ!」

 

快く了承したイナホはちょんど切り終わった食材を春恋に渡し扉に向かう。

そんなやり取りを見ていた横島は流石に無理だと悟り、涙を流す思いで諦め脱力しながら椅子に座る。それをしっかり見ていた春恋はやっと安心し、調理に戻った。

 

「(まったく! 忠夫は本当にどうしようもないんだからっ! ……そういえば………昨日は聞きそびれたけど忠夫と知り合いだったみたいだし……忠夫との関係とか…聞きたい…)」

 

コダマを起こしに行くイナホの背中を見て昨日聞こうと思っていたことを思い出すと同時に不安に駆られる。

もし…自分が考えている関係だったらどうしようか、自分以上に横島に好かれていたら……と不安が募っていく一方だ。

 

不安をよそに誰かが扉を開けた。

 

「ん~まったく……先程からガヤガヤと……朝っぱらから騒がしくて敵わん……」

 

入ってきたのはコダマ。

眠そうに欠伸をし、迷惑そうな顔で文句を言う。

 

「あっ…オハヨーです。コダマ先輩っ」

 

文句を気にする事なく挨拶をするイナホと挨拶を返すコダマ。

イナホの後ろには顔をトマトのように真っ赤にし、大口を開けコダマを見ている春恋の姿が。

 

「姫神さんっ! 下っ! 下っ!!」

 

今だに寝ぼけているのか一向に自身の格好に気付こうとしないコダマに痺れを切らし注意する。

 

「むっ? …………む~むむっ!!?」

 

最初は何の事か分からなかったが、横島の食い入るように見てくる視線を追いやっと自分の格好を把握する。

彼女の格好は露出が高く下着がはっきりと見えてしまう程透けている、とってもアダルティな寝巻きを着ていた。

 

「…黒のレース…き、際どい! ……はっ! しまった余りのエロさについ口にッ!」

 

愚かすぎる……

言わなくても血走った目と鼻から垂れてる鼻血でどのみち何を考えているのか一目瞭然だ。

コダマは黙りこむ。次第に体が怒りに震えていく。気のせいかコダマの周りの空気が怒りで歪んで見える……

 

「な、なんという事じゃ…一度ならず二度までも……おヌシの不浄の眼ワシが清めておこうか……」

 

横島がコダマの下着を見たのはこれで二回目である。最初は入学当初…つまり昨日。そして二回目は今日…今現在進行形で見られてる。

最初は横島の胸元のアザを見て怒りを忘れそのまま見逃したが、今回は流石にそうは行かないらしい。

 

「ま、待ったッ! 流石にそれはアカン! 確かに見たのは悪かったけどこれは事故だ! 」

 

言葉通り清めようと…目潰しの構えを取るコダマに横島は必死に言い訳をする。

 

「事故じゃと…?昨日のもか?」

 

今すぐにも感情に任せ、横島に腕を奮いたいが横島の言い分を聞くため腕をおろす。それを見た横島はほっと少し安心する。

 

「そうだ! 昨日のも、今日のも不幸が重なった悲しい事故だ! ………だ、だから…ゆ、許して欲しい~なって?」

 

なんとも情けない事を言い、許しを請う。それを聞いた彼女はおろしていた手を再度振り上げ………降りおろす。

 

「ふ、不幸で唇を奪われてたまるかっ!」

 

キスをされた上、下着を二回も見られたコダマは横島の言う不幸で納得いくわけもなかった…それどころか怒りを大きくしただけであった。

 

「ですよねっ! ……ぎゃあぁぁ!!」

 

朝から二回も折檻を受けるはめになった横島は春恋とイナホが止めるまで折檻は続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

「ワシの艶姿を拝めたのじゃ、光を失って釣りがくるわっ……って!」

 

春恋とイナホに止められ、仕方なく止め自室に向かい着替え終えたコダマは朝食をとってた。

 

「聞いておるのかおヌシはっ!?」

 

マナー違反だと分かっているが机を勢いよく叩き怒りをぶつける。

 

「うまい! こらうまい! あ、こっちもうまい!」

 

怒られてる横島は聞いておらず春恋とイナホが作った料理を味わって食べてるのか疑問に抱くほど口に入れてる。

その光景を呆れながら見ていたコダマは怒る気力も無くし自身も朝食を食べることに戻った。

 

「忠夫様っ! このおかずイナホが作ったんです! どうですか!?」

 

自身が作った物が入った小鉢を横島に差し出し、すかさず横島は箸を伸ばし小鉢の中のおかずを取り口に運ぶ。

 

「おぉ、これもうまい! こんなうまいの久しぶりに食ったよ!」

 

間をおかず味の感想を述べるとイナホはとっても嬉しそうにしている。

それを見てた春恋は羨ましそうに思う。

 

「(イナホちゃん…いいな…美味しいって言ってもらって…)」

 

「この味噌汁も美味しいなぁー!作ったのハルコちゃんだろ?」

 

「え? ……わ、私が作ったって分かるの!?」

 

一度も自分が作ったなんて言ってもないに関わらず、春恋が作った物だと見破る横島に嬉しそうに聞き返す。

 

「何言ってるんだよ。昔何回か作ってくれたじゃんか」

 

嘘偽りのない言葉に驚愕を通り越して歓喜している春恋に横からちゃちゃを入れてくる者が…

 

「よかったのぉ…愛しの「忠夫」に誉められて……その上、昔の味を覚えていてもらってのぉ」

 

悪戯っ子の様にコダマはとっても楽しそうに言う。

 

「ひっ、姫神さんっ!?」

 

いきなり横槍を入れてきたコダマに驚くがコダマの言葉を聞いて顔処か耳まで赤く染める春恋は少し怒ったようにも見える。

 

「それよりよいのか? こんなノンビリしていて……あの時計……四、五十分遅れておるぞ」

 

これは少しばかり怒らせたか?と思ったコダマは先程から他の皆が知らないだろう事を教える。

 

「えっ?」

 

コダマ以外の三人は動かしていた箸が止まり、大口を開け間抜けな声を出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

「くっ! 何故ワシまで!!」

 

「私が同室になったからには……」

 

春恋と平行して走るコダマとその後ろには元気よく走るイナホ…更に後ろに横島がついてきてる。四人以外に誰も居ない学園までの通学路を全速力で走ってる。

 

「ハァハァ…遅刻は許しませんっ!!」

 

その言葉に顔をしかめたコダマは同室に成ったことを少し後悔しながら走り続ける。

 

「忠夫様大丈夫ですか!?」

 

フラフラと危なっかしい足取りで脇に手を置きながら走る横島を心配する。

 

「ハァ…ハァ……食べ過ぎて…わ、脇腹が……痛くて走りづらい!」

 

朝からおかわりをしまくった横島にとって食べてすぐの運動は堪えたらしく情けなく走ってる。

 

「我慢してあともう少しだから!……ん?」

 

「オラァ!! お前たちぃ!! 新年度早々、実ちゃんのハリセンに火を吹かせる気かっ!!?」

 

校門が見えたと同時にジャージ姿の実が目に入った。実はハリセンを肩に担ぎ愉快そうに大声を出す。実が居ることを知ると尚更遅刻出来ず必至に足を動かす。

 

「おーしっ!女子三名ギリセーフ!!」

 

なんとか遅刻ギリギリで春恋達三名が到着した。同時に門が閉じていく。

 

「ハァハァ…やっと着いた…」

 

「まったく…朝から走らせないでもらいたい…」

 

「あっ……忠夫様が」

 

イナホの呟きに全員横島の方に視線を向ける。 今だに門に向かって走ってるが門は徐々に閉まっていく…誰もが間に合わないと思ったが横島の姿が一瞬にして消え、実を含む四人は驚愕した。

 

「キャッ! 誰ですか貴方はっ!?」

 

横島が消えたと同時に後ろから女性の悲鳴が聞こえた。

何事かと四人は後ろを振り向く。

 

「初めましてっ! 僕、横島忠夫って言います! 生まれる前から愛してましたっ!!」

 

一人の女性徒に言い寄る横島の姿が…ちゃっかり手も握っている。

その光景にギャグ漫画かと思ってしまう程ずっこけてしまう四人。

 

「貴方とは初対面ですっ!! それよりも手を離しなさい!!」

 

「愛は時空を超えるんです!! ぼかー、ぼかーもおっ!!」

 

無茶苦茶な発言である。

一人勝手に盛り上がってる横島は唇を尖らせ、キスをしようとする横島を黙って見過ごす輩はこの場にはいない。

 

「何をやってるのよ!?」

 

「どわあぁぁっ!」

 

横島は誰かに叩かれ盛大に吹き飛び林の中に突っ込んだ。復活した春恋は持っていた竹刀でお仕置きをする。

 

「は、ハルコさん……何なんですか今の男性は…」

 

横島を吹き飛ばした春恋をみた女性徒は目元を引きつかせ横島の事を聞く。

 

「アハハ…会長」

 

問われた春恋は横島の事をなんて言って説明しようか困っていた。まさか、自分と同室の男性とは言えるわけもなく…必至に思考をフル回転して考えてると自分の肩を叩く者が…

 

「春恋先輩この方はどなたですか?」

 

肩を叩いていたのはイナホであった。

イナホの登場に思わず助かったと思った春恋はイナホに目の前の女性を紹介することにした。

 

「こちらは天日学園三年の高貴楓蘭さんで統生会の会長を務めてますわ」

 

紹介されたイナホは会長と聞いて驚いたが春恋の口調が変わったことに驚いていた。

 

「会長こちら私と同室の櫛八イナホさんですわ」

 

「あ、よろしくです! 会長さん!」

 

今度はイナホ自身が紹介され、頭を下げる。

 

「えぇ、よろしくイナホさん」

 

「あと……さっきの男性は…横島忠夫さんと言って私の知り合いですわ…」

 

イナホと楓蘭の紹介してる最中に考えついた横島の紹介をする。教えられた楓蘭は横島が吹き飛んだ林の中を思わず見て、いつまたさっきみたいなナンパ紛いな事をされるか分からないと身の毛がよだつ。一刻も早くこの場から去りたい楓蘭は春恋の手を取る。

 

「春恋さん、今日は測定の日です! 急ぎますわよっ!!」

 

「え…あ…は、はい! そ、それでは皆さんご機嫌よー」

 

逃げるように春恋を連れて何処かに行ってしまった。

 

横島は今だに林の中から出てくる気配が見られず、心配になったイナホが中に入ろうとしたが実に止められ実は林を指差した。指差した先に人らしき影が見えた。

 

「いって~…何もあんな強く叩かなくても……」

 

苦痛の声をあげるが、見る限りでは怪我などしてなく…体に付いた埃を落としながら中から出てくる横島。イナホはすぐさま横島に駆け寄る。

 

「忠夫様、大丈夫ですか? おケガないですか?」

 

「あんがと、大丈夫だから」

 

「ハイ♪」

 

「ケガないなら早く、教室行きなっ!!」

 

時間も時間だが、目の前で甘ったるい雰囲気出され腹が立った実は声を張り上げ注意する。

 

「は、ハイッ!!」

 

横島はイナホの手を取り、自分等の教室に急いで向かう。

 

やっと行ったと思い、先程の横島の事を思い出す。

 

「……私の目でも見えなかった移動速度…竹刀と言えど無傷の耐久力……」

 

エレメント強化してない素の視力と言え、捉える事の出来ない出鱈目な速さ。

数メートル飛ばされたのに何処も怪我を負ってない高い耐久力。

先日の入学式で行った試合で見せた達人級の構え……

 

「こりゃあ、ヤバいかな~……アイツ、私より強いかも…」

 

全く焦った様に見えないが、額には汗をかいていた。




キャラの口調が少し掴みにくいですね。

今回の横島は横島らしいかなと思いますが、出来たら感想お願いします。

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参話―前半

一週間ぶりの投稿です。
マケン姫っ!十三巻買いました。
なんか、パワーバランス凄く壊れてると思いながら読んでました。


う~ん、この小説のパワーバランスどうしようかな~


時間には間に合わなかったが無事教室に到着した横島とイナホ。

途中から入ってきた為、他の生徒達から視線を向けられるが横島の行動に更に視線が集まる。

 

「おぉっ! お美しい! こんな美しい人が担任なんて僕はなんて運がいいんだ!」

 

最早、やらないと気が済まないのか。

教室に入るや否や自身の担任を口説いていた。遅刻した上に先生を口説いた横島に生徒達は唖然となる。

 

一方の口説かれた張本人…雨度豊華はナンパした横島に嫌悪感どころかぽわぽわと太陽の様な暖かい雰囲気をかもし出してる。

 

「あら~先生嬉しいわ~でも、今は席に着いてくださいね~?」

 

褒められた事に対するお礼、優しげに注意する態度……今までに無い返しにただ驚愕する。過去にナンパしたら無視をされるか、馬鹿にされる…或いは誰かに止められるぐらいだったのに豊華のようなお礼をされ、優しくされるなんて一度もなかった為驚愕が止まらない。

 

「……」

 

「ん~? どうしたんですか~? 急に固まって~?」

 

驚き過ぎて思考が固まってしまった横島に意識があるか顔の近くで手を振り確かめる豊華。

 

「はっ! い、いや…なんでもありません」

 

彼女の呼び掛けにより、正気に戻った横島はそそくさと自分の席に座る。

それを確認した豊華は話し始める。

 

「それでは、自己紹介しますね~このクラスの担任で一年の文系、主に文学と歴史を担当します~雨度豊華です。よろしく~」

 

ぽわぽわした雰囲気、優しく笑顔を見せ独特な口調で自己紹介をする。

 

「(雰囲気やしゃべり方が冥子ちゃんみたいな人だな……性格は違うだろうな? 嫌だぞ、ぷっつんとか…)」

 

ぷっつんっ子こと六道冥子は横島にとってトラウマでしかなかった。

十二神を操る冥子はちょっとした事で式神を暴走される困ったちゃんで生前、一緒に徐霊をした時など悪霊が襲ってきただけで式神を暴走させマンション一つ破壊した程である。その時巻き添えを食らい大怪我とトラウマを負った。

 

冥子同様、どこかぽわぽわした雰囲気を出す豊華を冥子の生まれ変わりなのではと警戒しだす横島を他所に話は進む。

 

「で~主に一年生の体育などを担当されます。このクラスの副担任は~!」

 

誰かが廊下を走る音が豊華を含め横島達の耳に届く……横島はどうやら、一体誰なのか感づいた。

 

「(この気配…あの人か……)」

 

遠くから感じる気配はつい先程別れたばかりの人だった。

 

足音の主は横島達のいる教室で止まり勢いよく扉を開けた。

 

「男子諸君!! 喜び喚け!! 天日の学園長六条実ちゃんだぁー!!」

 

「で、早速ですけど今日は~……」

 

「華麗にスルー!?」

 

なんとまー個性的な挨拶と紹介をする実に誰もが驚く中、豊華は何事も無かったかの様に話を続ける。それに突っ込む実。まるでコントを見てる様だ。

 

「保健室で身体測定を行います~」

 

「(ッ! 何!? ……身体…測定………身体測定だと!?)」

 

豊華の言葉を脳内で、リピートする横島は口に出しそうになったが堪え、頭を働かせる。

 

「(ここには男子だけじゃない…成熟してないと言え、立派な女性がいる…そして身体測定……これは)」

 

「(神様がくれたチャンスだな!!)」

 

何処の世界に覗きをする機会を与える神がいるか。どっちかと言うと、神よりもサキュバスか悪魔の類いだ。

 

「(男子校に通った三年間! 親父に無理矢理入れられたと言え、血の涙を流しながらも我慢して通った俺に与えられたご褒美! このチャンスを逃す手は絶対にない!)」

 

この男は女性が絡むと無茶苦茶な解釈をするらしい…

一人勝手に決意を固める横島を他所に女子達は実に引率され次々、教室を出ていくなか…一人横島に声をかける人物が。

 

「忠夫様っ! 行って参ります! 」

 

他の女子と一緒に教室を出ていくイナホは人目も気にせず笑顔で手を振ってくる。お陰で周りから小さく笑い声が漏れるが、イナホはどうやらさほど気にしてない様子だ。

 

「お、おぉ…行ってらしゃい」

 

自分以外の男子から視線を感じながらも手を返すと、嬉しそうにして教室を出るまで手を振り続けるイナホに苦笑する横島。

 

「(行ったな………さてと…)」

 

周りは談笑するなか、女子が身体測定に行ったことを確認すると目的の為に行動を開始する。

 

「せ…先……生…」

 

騒がしい教室内で、横島の弱々しい声が豊華の耳に届いた。

 

「あら~横島君どうしました~?」

 

「ちょ…ちょっ……と……お、お腹の…調子が…悪くて…」

 

苦しそうに喋る横島は、顔色を真っ青にして、腹部に手を当てている。その姿は誰もが見ても元気とは思えない状態だった。

 

「あら~大変。まだ時間はありますけど、急いで下さい~」

 

「は…い…」

 

仮病とは思えない状態に、豊華は教室を出ることを許可する。その時、真っ青な顔をしていた横島の顔が笑った様に見えたが豊華には生憎、見えていなかった。

 

よろよろと席から立ち上がった横島に、周りの視線が集まるが本人は気にした様子もなくゆっくりと教室を出ていき、扉を閉めたと同時に、真っ青だった顔は赤みを帯び健康そうな顔色になり、その場で屈伸運動を始めた。

ついさっきまで具合を悪そうにしていた人物とは思えない。

 

次の瞬間、更に病人とは思えない行動を取る。

 

「よっ!」

 

軽く息を吐き、勢いよく廊下を走り出したではないか…

今の横島は、コダマとの試合の時とは違い霊力とエレメントの二つで脚力を強化しており、そのスピードは高位のマケン使いでも影さえ見えないであろう速さだ。

 

何故、戦いでもない状況にここまでのスピードを出しているのかと言うと……

 

 

覗きの為である。

 

具合が悪いと言って教室を出たのも嘘で、顔色を悪くしたのも演技であった。この男は、覗きをするために仮病を使ってまで、覗こうとしている。

 

「うおぉぉぉっ!! 女子高生の生着替えッ! 急げ俺の足! 生着替えが待ってるんだ! 」

 

豊華に嘘をついたことに罪悪感の欠片も無い横島は欲望丸出しで、凄まじい速さで走り続ける横島は、道を間違うこともなく、保健室がある校舎に向かう。

 

 

 

 

 

 

×××

 

「……ここだな…」

 

横島は一つの大木の前にいた。

昨日のコダマ達の荷物を運んでいる最中に、保健室、更衣室と言った場所を既に調べていた横島は、一切迷うこともなく保健室の窓の真下に来ていた。

 

「窓とカーテンは閉まってるが、昨日見たときに少し隙間があったはず…………ん?」

 

横島の言うとおり、保健室の窓はカーテンが閉められており外からは見えない…が、よく見ると完全にカーテンは閉まっておらず僅かに隙間が存在していた。

 

それを確認した横島は、頬がつり上がるが誰かが近づいてくることに気付き、気配のする方向に目をやると一人の男子生徒が此方に向かって走ってくる。

 

「あっ、お前は…」

 

僅かに息を切らせ、横島がいる木の前で止まる男は横島に気付き、声を上げる。

 

「(くっ! こんな時に、邪魔者が……いや、コイツも此処に来たってことは目的は一緒のはずだ…)」

 

横島は、横にいる男をどうするか考えたが男の目的が自分と同じ覗きをするために、来たとさとる。

昔の横島だったら、追い払う所だが今の横島は昔と一味も二味も違う。

 

「(なんだコイツ? スゲェ顔色して出ていたと思ったら、こんな場所に居るしよう…)」

 

男は動かない横島に訝しげな視線を送りながら、大木を登り始めた。

それを黙って見ていた横島は、おもむろに大木に手を当て目を閉じ集中力とエレメントを高める。

 

「万物と一体になり、同化する……“魂の収束”」

 

小さく呟かれた言葉と共に、横島と大木の周りに淡いグリーン色の光が漏れだし、光は枝に、葉へと流れていき大木全体に光が行き渡った。

 

「おおぉ!! ちち! しり! ふともも! まだ、高一のなのになんとけしからん体だ!!」

 

いきなり、大声を出した横島は鼻血を出しながら歓喜していた。

 

一見すると唯の鼻血を出して妄言を言ってる、変質者にしか見えないが……横島の脳内では見えるはずのない光景が写し出されていた。

 

横島の脳内では、多数の下着姿の女性が写し出されていた。

その光景は、妄想や幻覚ではなく今現在保健室で身体測定をしている女子生徒達の光景であった。

 

何故、横島の脳内でそんな光景が写し出されているかと言うと……横島の持つ力のお陰だ。

 

“魂の収束”これが横島が使った力の名前である。早い話、強力なエレメント吸引能力である。吸引能力はありとあらゆる生命からエレメントを吸引することができる。そして今回、横島がしたことは森羅万象との調和と融合だ。魂の収束は唯、エレメントを吸引するだけではなく吸引した物と呼吸を合わせ一体となり、五感を共有することが可能になる。

 

横島は大木のエレメントを吸い大木と呼吸を合わせ五感を共有したため、保健室の中が覗けたのだ。

 

「うおっ! この世の天国かっ! 」

 

「ならば、ワシが連れて行ってやろうか? 本物の天の国へ…忠夫」

 

「はっ!? 」

 

覗きを堪能する横島に背後から声がかかった。声をかけてきたのはコダマだった。コダマの横には木の上に登って覗きをしていた男が倒れ伏せていた。どうやら、既にコダマに折檻を受けたもよう。

 

「(げ!? バレたか!?…いや! 冷静になるんだ。端から見たら、唯木を見ていただけだ! 誰も覗きをしてるなんて思わん!」

 

「ほぉ~…やはり覗きをしておったか…どうのような手を使って覗き見をしておったか知らんが……まずは女の敵に天罰を与えるかのぉ」

 

心のうちが駄々漏れの横島は、覗きをしていたことを言い当てられ混乱する。

 

「な、なんで分かったんだ!? やっぱ、エスパーか!!」

 

「違うわ! おヌシが、勝手に口に出しておっただけじゃ!」

 

余りのアホさ加減に蹴りをおみまいするコダマは前回もこんなやり取りが、と思ってしまった。

 

「全く、色々と物申したいがおヌシの痴呆さに呆れて何も言えぬわ……」

 

「ふぁい……すみまへん…」

 

顔に足の跡をくっきり残した横島はさっさと謝罪をして、倒れ伏せていた男を背負い教室に戻っていた。

 

「しかし、意外だな」

 

コダマの横から、小人ことカクヅチが話し掛けてきた。

 

「怒りに任せてヤっちまうかと肝を冷やしたぜ」

 

「………違う…昨日感じた胸のざわつきも、血の猛りも…感じておったのじゃが………アヤツの痴呆さに何処かに行ってしまったのだ……」

 

「………」

 

コダマの一言に何も言えなくなってしまったカクヅチ。

 

 

場面は変わり、横島は身体測定を受けていた。

 

「先生…胸の辺りが苦しいんです…」

 

上半身裸の横島は目の前に座る女医に自身の症状を述べる。深刻そうに顔を暗くする横島にただ事では無いと思い、症状を聞く。

 

「あら、大丈夫? どうゆう風に苦しいの?」

 

「貴女を思うと引き千切られそうなんです!! だから、この思い受け止めてくださいッ!!」

 

「お前を引き千切ってやろうか!!」

 

「げふっ!!!」

 

目の前の女医に飛び掛かろうとした横島を止めたのは実であった。

外で待機していた実は部屋の中が静かなのを不審に思い、覗いてみたら横島が女医に襲いかかっているのを見て、拳を用いて横島を止めたのであった。

 

「ったく、楓蘭の時もそうだったけど教師をナンパすんな! 秋大丈夫か?」

 

「え、ええ。私は大丈夫よ…」

 

横島の突然の行動に、驚愕した秋と呼ばれる女性は派手に殴り飛ばされた横島を心配そうに見つめる。襲われそうになったと言うのに横島を心配するのは教師としてなのか、人としてなのか…

 

「真面目にやんな」

 

「ふぁい…」

 

実のドスのきいた声を聞き、素直に返事をした横島は立ち上がり今度は真面目に測定をすることにした。

 

「すんません…測定の続きお願いします…」

 

「もう、あんな事しちゃ駄目よ……それじゃあ、この穴に腕を通してね」

 

優しく注意されたが、何処か色ぽい女医にまたもや襲いかかりそうになったが、堪え黙って言われたとおりに目の前に置いてある箱に腕を通す。

 

「ん? ……これって…」

 

言われたまま、通した横島は一体自分は何をしているのかを尋ねる。

 

「フフ、コレはね。貴方達の“マケン”の適性を検査してるの…どんな性質の子にも合う“レプリカ”は用意してあるから、これは“マケン”との相性を測る“魔検”ってトコかしら…」

 

「アッチの世界でも、似たような有ったな…」

 

霊具に似た道具に、懐かしさを感じる横島は口に出してしまい目の前の女医に聞こえていた。

 

「え、なぁに? 」

 

「いや何もないッス……」

 

幸い、ハッキリとは聞こえていなかった様でなんとか誤魔化せ安心する横島はあることを思う。

 

「これ、長くないっすか?」

 

腕を通して、結構経つがうんともすんとも言わない。

女医も横島に言われ、時間がかかり過ぎてることに疑問を持つ。

 

『判別不能』

 

やっと、何か言ったマケンは衝撃的な事を言う。

 

『判別不能! コイツに適したマケンなんて、見つかんねーよ! チクショー!!』

 

若干、口が悪いところが気になるが、今はそれどころではない。

 

「なっ!? ……ぎふっ!?」

 

余りの結果に驚愕する横島が、突然吹き飛ぶ。

 

「秋、どうした!? また、ナンパでもされたかい!?」

 

横島を蹴り飛ばしながら、入ってきたのは実。

マケンの判別結果の声を聞き、また横島がやらかしたと思った実はすぐさま、部屋に入り横島を蹴り飛ばした。

 

「み、実…」

 

「え? …何、この空気…」

 

 




ラブコメとかやめて、横島がバトルしてるシーンだけ書いた短編集にしようかな…
屍姫とGSの小説書きたいしな…

脱字・誤字の指摘お願いします。
お気に入り・感想お願いします。
あと、ラブコメシーンをやめてバトルシーンだけの短編集を書きたいなと思いますが、皆さんはどう思うかを感想蘭に書いて欲しいです。


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参話―後半

文化祭の準備や病気にかかり、投稿が遅くなりました。
すみません。



保健室の騒ぎの後、横島と何故かイナホは校長室に呼び出された。

 

部屋の中には、横島達の他に実と見慣れない男が座っていた。

 

「ありえねぇ」

 

「…………」

 

横島達が呼ばれてから続いていた長い沈黙は一人の男に破られた。

 

「玄、残念だけど事実で真実よ」

 

実に玄と呼ばれた男は目元を吊り上げ睨むように実を見る。

 

「けどな!! 十年前に造ったとはいえ、この素因測定器は自信作だ!!」

 

素因測定器…通称魔検“ケロンボ”に手を当て、声を張り上げる玄の顔には疑惑の感情がみられた。

 

「廃材で造ったって秋は言ってたけど?」

 

「バっ…天才は材料を選ばねぇんだ!!」

 

秋と玄の言い争いを苦笑いを浮かべ見ているイナホ…横島も苦笑いしてるが此方は別の意味で苦笑していた。

 

「(すげぇな、廃材で造ってこの機能と性能かよ…隊長が見たら絶対スカウトすんだろうな…)」

 

生前、色んな意味で世話になった隊長こと美神美智恵が目の前の玄の技術を知ったらどんな手を使ってでもオカルトGメンにスカウトし、霊具を製作されるだろう……ま、マケンが造れても霊具を造れるかは分からないが…

 

「(この人もある種の天才か…しかも、超が付くほどの…)」

 

出されたお茶を飲みながら、まじまじと玄を見る。

 

「ちょっと、聞いてるのか!?」

 

少しばかり、考え事にふけていた横島に実は机を叩き注意する。

 

「え…は、はい…スンマセン」

 

「ったく…よく聞いてきなよ、お前の為の話なんだから…」

 

呆れた声色で言ってくる実に対して、横島は今度は真面目に聞こうと姿勢を正し実と玄の方に目線をやる。

 

「マケンを使えないと授業に置いてかれるってのもあるけど、そんな物はこの際どうでもいいの…一番困るのは“自衛”だね」

 

教師が授業をどうでもいいと言う発言に、眉をひそめるが自衛と聞き納得する横島。

 

「身を守るために必要なんスよね?」

 

「そっ、当たり。この学園で起きるトラブルは大抵マケン絡み“決闘”もあるし、それに決闘以外でマケンを使ってくる輩もいるんだ。そんな時、身を守るのは他の誰でもない自分自身だ」

 

マケンに対抗するにはマケンを使うしかないため、マケンはどうしても必要になってしまうが……その人の身体能力やエレメントに絶対的な違いがあれば別だが……。

 

「って言っても、お前はマケン無しでも大丈夫な気がするけど…ま、ないに越したことはないからね」

 

確実とは言えないが、横島の高い身体能力や武術ならば下手な事が起きない限り大丈夫だと踏む実。

 

横島自身も、マケンがなくともある程度大丈夫だと思っている。

 

「悪いけど、一ヶ月程なんとか凌いでくれると助かるわ」

 

「(一ヶ月か…遅いんか、早いんか分からんが楽しみだな……どうせなら、魔見とかを希望だな…)」

 

……どうせ、覗きかなんかに使用するだろうに。

 

話は済み、横島とイナホは退室し、部屋には玄と実の二人が残った。

 

 

「どう、 先生に似てたでしょ?」

 

実は先ほど出ていた横島の事を聞く。

 

「あぁ、目元がソックリだ…んで、女の子が持ってたのが例のマケンだろ?」

 

今度は、玄がイナホの事を聞く。

 

「えぇ、ヤマタノオロチを封ぜし霊峰“アマノハラ”と八つのマケン……」

 

 

 

 

 

一方、部屋を出ていた横島とイナホはと言うと……

 

「(うんにしても、なんでイナホちゃん呼ばれたんだ?)」

 

結構、どうでもいいことを考えていた。

 

 

 

 

 

 

×××

横島とイナホの二人は、校長室を後に部活へ加入するため様々な部活動に足を運んでいた。

 

いつのまにか時間はお昼時になり、春恋が加わり三人でお昼をとっている。

 

「検警部? …って、何さ?」

 

春恋の持ってきた、お弁当をつつきながら疑問を浮かべる横島は不思議そうに聞く。

 

「“検警部”っていうのは、統生会だけでは数が多くて手がつけられない事件や事故の解決をサポートする部なの…」

 

春恋は、マシンガンの様に次々と説明していく。説明を聞いていた横島は、辛うじて理解をしていた。一緒に説明を聞いていたイナホは理解が追い付いてないのか、目を回している。

 

「……ちなみに“魔導執行部”と“検警部”を合わせて“魔導検警機構”。通称“マケンキ”って呼ばれてるわ」

 

長らく続いた説明は終わり、横島は「(よ、良かった~。これ以上説明されたら、理解が追い付かんかった)」と一安心する。目を回していたイナホの頭からは煙のような物が上がっていたが、見なかったことにした横島は目線を斜め後ろに向ける。春恋も横島の目線の先を見るが、其処には一つの芝生しかない。

疑問を抱く春恋は横島に聞こうとするが、先に横島の口が開いた。

 

「っで、お前はいつまで其処に隠れてるつもりなんだよ?」

 

突如、声を上げる横島になんぞやと思う春恋と復活したイナホ。

 

「ぶはっ!! 」

 

「きゃっ!!」

 

芝生の中から、いきなり一人の男子生徒が出てきた。突然のことに、可愛らしい悲鳴を上げる春恋とイナホ。

 

「へへっ、面白そうな話を聞かせて貰ったぜ……ってか、よく気付いたなお前…」

 

「(コイツ、今朝の…俺と同じで除きしてた野郎じゃえねか…芝生の中で何してるんだ?)男の気配なんて知りたくなかったけど…こんだけ近けりゃ分かるっての」

 

なんて事はないという顔をする横島を裏腹に春恋は男子生徒の名を聞き出している。

 

「初めまして、統生会福会長の天谷春恋さんですね」

 

「うっわぁ…」

 

張り付けた様な笑顔と媚を売る様な甘ったるい声を出す男子に、ドン引きする横島。

 

「……一年生の碓健悟といいます。以後、お見知りおきを」

 

横島の態度に一言もの申したい男子生徒…健悟だが、これ以上は駄目だと悟る。自身の爽やかなイメージを崩さないようにする為、我慢する……ま、イメージは健悟の妄想だが。

 

「ん?…春恋ちゃん、春恋ちゃん。あれ今朝の…」

 

「えっ? ……あら、うるちさん。どうしたの、そんなに慌てって?」

 

横島の教えた先には春恋LOVEの水屋うるちが慌てた様子で走ってくるのが見えた。乱れた呼吸を整えることもなく、春恋に用件を報告する。

 

「大変なんですっ! 校門前で“決闘”が! すぐ来て下さいっ!」

 

 

 

 

 

×××

「ゴメンなさい、通して下さいっ」

 

「邪魔じゃ」

 

うるちの“決闘”の報告を聞き、すぐ近くに居たコダマを連れ校門前にやって来た横島達。

 

校門前には、幾つもの人影が出来ており、その中央には二人の男女が向き合ってた。

 

男の方は、大柄で天日の制服ではなく…何故か袖を破れた学ランを着て下駄を履いていた。まさに、番長……完全に生まれてくる時代を間違えっていると感じてしまう格好であった。

 

そして女の方は、見覚えのある顔だ。

先日の入学式の時の試合をしていた…

鼻に貼ってある絆創膏と大きな胸が特徴の志那都アズキだ。

 

「お、副会長遅かったな」

 

「アズキさん。また、貴女ですか…それじゃ、お願いします姫神さん」

 

アズキに色々と言いたい春恋だが、今はこの騒動を解決することが最優先と判断した春恋はコダマに立ち会いをお願いする。

 

「しょうがないのぉ……両者、決闘で賭ける魂は決まっているな?」

 

「オイが勝ったら…こ、恋人に……」

 

「アタシが勝ったら金輪際、アタシに近づかない…」

 

ストーカーと被害者の構図を思い浮かべてしまう決闘の内容に横島は拍子抜けする。

 

「(こ、こんなくだらん事で決闘しても良いんかい! ……わざわざ決闘しなくても教師に言えば、どうにかしてくれるだろ)」

 

横島をよそにコダマは決闘の儀を執り行っていた。

 

男とアズキはおもむろに拳を突き出した。

 

「ここに対なす二つの流れ、二人の道は交わらん。己が道を開くため、己が証を立てるため魂賭して天日に示せ」

 

着実に決闘の儀を進めていくコダマ。

 

「日の子の道を!!」

 

『天に契んで!!!』

 

アズキと男は声を張り上げ、誓いを宣言する。決闘の儀は終わり、男はすぐさまアズキから間合いを取る…一方アズキは間合いどころか構えさえ取っていない。

 

「どういうつもりか? 構えもとらんたぁ!」

 

「入りたての新入生に気取り過ぎてもな……マケンなしでやってやるから―来な」

 

それは、明らかな挑発行為。

たかが入学したばかりの一年生。

自身より強いわけがない。

ろくにマケンも使えないだろう。

そんな事を思っているアズキは隙だらけで油断をしていた。

それは男の目からも決闘を見に来た野次馬でさえ感じ取っていた。

 

「フン、気が強いな……そこが魅力……ばってん……後悔すっぞ!!」

 

その言葉を合図に男はアズキに襲いかかる。

 

「フン! ん?」

 

力強い動きでアズキを捕らえようと巨腕を振るうが、腕の中にはアズキはいなかった。

 

アズキはどこに?

 

その考えが頭の中で埋め尽くされたが、答えはすぐに分かった。

 

「―ッ!!」

 

「シッ!!」

 

アズキは強力な脚力を生かし、男の攻撃を真上に跳ぶことで避けた。

しかし、避けただけで終わずアズキは男の顔面目掛けて蹴りをいれる。

突然の攻撃に避ける暇もなく、直撃する……確かに…確かに入った攻撃だが、聞こえたのは呻き声でも叫び声でも無かった。鉄あるいは金属を殴ったような音が周りに響きわたる。

 

「クフフ、コレがオイのマケン。頑ななり、魔堅“フルメタル”!!!」

 

男の腕に付いてた腕輪が、機械じみた姿に変わっていた。

 

魔堅“フルメタル”

体を鋼鉄以上の硬度に変えることができ、部分的に硬質化することが可能である。男はこの能力を使い、顔面を部分硬質化しアズキの蹴りを真っ正面から受けても傷ひとつ負わなかった。

 

「ムン!!」

 

「おぉぉ!!!」

 

今度はマケンにより強化された腕で、アズキに殴りかかる。危なげに避けたアズキは当たりはしなかったが、制服が破れ下着が丸見え状態になり、周囲の男達が歓喜の叫びをあげた。

 

「あやつ部分的硬質化出来とるの」

 

「えぇ」

 

「魔堅は体を鉄の様に硬くする事が出来るけど、全身を硬めると身動きとれないから一部分だけ硬質化させる部分硬質化……それを入学したてで出来るなんて」

 

コダマと春恋は口には出さないが、男を称賛する。二人の説明を聞いていたイナホも「スゴいです」と取り合えず褒めてる。

 

「忠夫もすぐにあれぐらい出来ると良いわね……あれ、忠夫?―っ! まさか!!」

 

「下着ーッ!! 女子高生の下着ーッ!! これは決してやましい事じゃない! この決闘の真実を記録し、後世に伝えねばッ!!」

 

「うわっ! なんだテメェ!? と、撮るんじゃねぇッ!!」

 

横島は何処から取り出したのか、分からないが立派なカメラを携え、アズキと男の………アズキだけを激写していた。

それを見た、男子生徒達は後で焼き回しして貰おうと考えた者が何人か居たとか居なかったとか…

 

「脳ミソ、ピンぼけてんのか! おのれはーッ!?」

 

すかさず、突っ込むコダマに突っ込み魂が染み付いてきたと殴り飛ばされながら、思っていた。

コダマからしたら、たまったもんじゃ無いことこの上ないだろう。

 

アクシデントがあったが、決闘は終わりへと進んでいく。

 

「邪魔が入ったばってんが、これで終わりたい! ……なっ、速い!! 硬化!!」

 

幾千の攻防のすえ、舞え上がった土煙の中からアズキが突然現れ、それに体がすぐに反応出来ない男は体を硬質化させた。

 

「ムダたい!! なんばしよっても、こな体にはきかんばい!!」

 

男の言う通り、マケンを使ってないアズキの攻撃は硬質化した男の体を傷付ける事は叶わない…が、策も無しに攻撃をしに出てきた訳ではなかった。

 

「どいつも、こいつも……口数が多いッ!!」

 

「あがぺ!!!」

 

金属音ではなく、何かが潰れる音が聞こえた。攻撃が通った音だ。

 

男は言葉にならない声を上げ、大の字に倒れる。

 

「……どれ確認…うっ…勝者志那都アズキ!!」

 

「喋ってたら口、硬質化出来ねぇだろ…バカで助かった…」

 

コダマの言葉を聞き、アズキは体の力を抜き安吐する。

 

男の魔堅“フルメタル”は防御力に優れたマケンであるが、出来るのは薄皮一枚程度だ。口の中までは出来ないと悟ったアズキは男が口を開いた瞬間を狙い、蹴りを撃ち込んだ。生身の場所にアズキの蹴りは想像以上のダメージを与え、見事アズキは勝者を勝ち取ったのである。

 

余談だが、アズキの下着姿を写した横島のカメラは誰かさんに、ズタボロにされていたらしい…

 

 




ムヒョや屍姫のどっちらかを、GSとクロスさせた小説を書きたいと思います。
どの作品とコラボした小説が読みたいか感想覧に書いてくれる幸いです。

脱字・誤字の指摘お願いします。
お気に入り・感想もよろしかったら。


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