とある神器持ちの異世界旅行日記 (ウメ種)
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リリカル1

別世界に上代家+ドラゴン+αを放り込んでみた。第一弾
書きやすかったので、第一弾はリリカル無印。

こちらは別作品として扱っていきます。
こちらの方も読んでいただけると嬉しいですorz



 L月A日

 

 グレートレッドさんの所に遊びに行ったら、帰り道を間違えた。

 ……何を書いているか判らないが、俺もまだ現状を理解できていない。

 ここ何処よ?

 今度から『次元の狭間』に行く時は、帰り道をしっかり確認しよう。

 ちゃんと帰れるよね?

 ――やっぱり、オーフィスちゃんの道案内は不味かったかなぁ。

 

 

 

 L月B日

 

 ヴァーリ君、兵藤と会えた。良かった。

 あと、この建物の持ち主とも。

 プレシアさん。プレシア・テスタロッサさん。魔法使い。

 ……なんで俺って、一般人より、悪魔とか魔法使いとかと知り合う確率が高いんだろう。

 いや、悪い訳じゃないんだけど。

 『次元の狭間』の事を『虚数空間』と言っていた。悪魔の事も知らなかったし。

 ――ここ何処? 異世界だとか認めたくないんです。

 帰れるのかなぁ……まぁ、なんだかんだで俺以外の皆が落ち着いてるから、俺も落ち着いてる。と思う。

 レイナーレさん達は元気かな。

 取り敢えず、どうにかして無事だと知らせたい。

 

 

 

 L月C日

 

 『虚数空間』を通って帰ろうとしたら止められた。

 なんでも、あの空間は安定してないからまた別の世界に行くかもしれないとの事だ。

 ……前科があるからなぁ。

 止めてくれたプレシアさんに感謝。

 身元を証明できない俺達を家に置いてくれてるし、良い人だなぁ。

 オーフィスちゃんが言うとおり、グレートレッドさんが見付けてくれるまで待つことになった。

 レイナーレさんのご飯を食べたい。

 

 

 

 L月D日

 

 オーフィスちゃんに友達が出来た。

 アルフさんとフェイトちゃん。

 フェイトちゃんは仲良く……なれると良いなぁ。

 どっちもあまり喋らないけど、仲は悪くないみたいで安心してる。

 アルフさんは大きな狼。喋る。

 

 あと、プレシアさんから『アルハザード』っていうのを聞かれた。

 何だろう。魔剣? 確か、何かのゲームでそんな名前の魔剣があったような気がする。

 違うだろうから言わなかったけど。

 ヴァーリ君達にも聞いてみたけど、知らないそうだ。

 なんでも、プレシアさんはその『アルハザード』に行ってやりたい事があると言っていた。

 家に置いてもらってる恩もあるので、何か手伝えることがあったら言ってほしい。

 役に立つかは別だけど。

 

 

 

 L月E日

 

 なんでこの家には、料理を作れる人が居ないのか。

 料理当番が俺に決定した。いや、いいんだけど。

 兵藤はともかく、ヴァーリ君も料理をした事が無いそうだ。意外だった。

 何でも出来ると思ってた。

 ちなみに、美猴さんの中華料理は凄いそうだ。それは美味いのか、本当に凄いのか。どっちだろう。

 ……気になる。帰ったら、作ってもらえないか頼んでみよう。

 

 しかし、プレシアさんが料理をしないのは意外だ。

 フェイトちゃんのお母さんなのに。あんまり仲はよくないみたいだけど。

 どうにかして仲良くなってほしいなぁ。フェイトちゃんも仲良くしたいと言っていた。

 

 

 

 L月F日

 

 アルフさんが女の人だった。

 雌だったのか、あの人。

 ……兵藤が興奮してたので、止めたけど。

 恩人の家族なんだから、落ち着けよおっぱい魔人。

 グレモリーと付き合うようになって落ち着いたと思ったけど、相変わらずだった。

 取り敢えず、帰ったらグレモリーに言いつけようと思う。

 黙っててくれと頼まれたが、知るか。

 彼女が居るのに他の女性に興奮するお前が悪い。

 

 あと、ヴァーリ君とフェイトちゃんの仲が良い。

 ……ヴァーリ君に彼女を作ろうと美猴さんと頑張った事があったけど、さすがにフェイトちゃんは年が離れ過ぎだろう。

 でも、悪魔って寿命が長いらしいから、良いのかな?

 

 

 

 L月G日

 

 ドライグさんとアルビオンさんの仲が良い。

 この世界には『おっぱいドラゴン』は無いからね。

 仲が良い二人――二匹?

 仲が良いドライグさんとアルビオンさんを見てると俺も嬉しい。

 いきなり泣き出したり、殺伐としたりしてたからなぁ。

 この世界だと、『神器』の事を『デバイス』と言うらしい。

 多分違うんだろうけど、似たようなものだと思う。

 バルディッシュさんを紹介してもらった。

 英語だった。勉強しててよかったと思う。

 

 今日から、オーフィスちゃんに英語を教える事になった。

 ヴァーリ君、フェイトちゃんと一緒に。

 何だかんだで、こっちの世界での生活に慣れつつある。

 あっちの世界は大丈夫かなぁ。

 

 

 

 L月H日

 

 魔法使いというのは凄いなぁ、と。

 ヴァーリ君とフェイトちゃんの訓練は派手だった。

 その一言に尽きる。

 というか、フェイトちゃんが派手だった。

 凄いなぁ、魔法。

 俺は魔力がほとんどないから、使えないそうだ。残念。

 兵藤とアルフさんは殴り合ってた。

 ……兵藤って強かったんだなぁ、と思った。

 いや、悪魔なんだから強いんだけどさ。

 

 それにしても、この家の掃除がマジで大変だ。

 大きいし、広いし、高いし。

 手が届かない所が多いので困る。あと、入室禁止の部屋も。

 多分、研究所とか汚れてるんだろうなぁ。

 レイナーレさんの大変さが身に沁みてよく判る。

 

 

 

 L月I日

 

 プレシアさんから、なんで俺がヴァーリ君達と仲が良いのか聞かれた。

 いや、判るよ?

 ヴァーリ君や兵藤の魔力って、この世界だとSランクとBランクなんだそうだ。

 そして俺は一般人並。

 判るよ。だって二人とも悪魔だし。俺人間だし。

 オーフィスちゃんとは一緒に暮らしてるから仲が良い、と言っておいた。

 家族だと思ってる。

 兵藤は学校の後輩で、ヴァーリ君は、気付いたら仲良くなってたなぁ。

 今思うと、ヴァーリ君みたいな凄い人とよく友達やってるよなぁ。

 プレシアさんから呆れられた。

 まぁ、そんなもんだよ。男友達ってのは。俺はそう思う。

 

 ヴァーリ君にも聞いてみた。

 「俺と居ると楽しい」からだそうだ。

 俺もヴァーリ君と居ると楽しいよ。

 

 

 

 L月J日

 

 プレシアさんの部屋にご飯を持っていったら怒られた。

 ……まぁ、部屋に近寄ったらダメだって言われてたけどさ。

 大丈夫かな、あの人。

 あんまりご飯食べないけど。

 アルフさんが言うには、気難しい人らしい。

 まぁ、本当は気難しいじゃなくてもっとヒドイ言い方だったけど。

 薄々判ってた事だけど、仲悪いんだなぁ。

 何とかしたいな。家族で仲が悪いって、ダメだと思うんだ。

 

 フェイトちゃんはヴァーリ君に懐いてるし、なんだかんだで兵藤とアルフさんも仲が良い。

 この家の雰囲気は悪くないけど、フェイトちゃんアルフさんとプレシアさんの関係は微妙だ。

 正直、三人が揃うと空気が重いデス……。

 ヴァーリ君と兵藤、アルビオンさんとドライグさんに相談してみたけど、いい案が浮かばなかった。

 難しいなぁ。

 

 

 

 L月K日

 

 最近、食事準備と掃除が板についてきたと言われた。

 ……喜んでいいのだろうか。

 これで、元の世界に帰ったらレイナーレさんの手伝いが出来るね。

 あと、プレシアさんから元の世界の事を聞かれた。

 ――凄いよ、元の世界。

 天使、堕天使、悪魔、神様、ドラゴン。選り取り見取り。

 あと、悪魔は駄目。大体俺を巻き込もうとしてくるから。

 全員じゃないけど、悪魔のトップ辺りは俺を巻き込む事に命を賭けてると思う。

 グレモリー家とか、グレモリーとか、サーゼクスさんとか。

 楽しい時もあるけどさ、大体が危ない事だから困る。

 俺ってただの人間なのに。

 

 苦労してるのね、と同情された。

 うん。まぁでも、俺なんかよりレイナーレさんとかアザゼル先生とか苦労してるんだけど。

 いつも俺を助けてくれる。

 レイナーレさんは大切な家族。

 アザゼル先生は恩師だよ。本当に。

 ……やっぱり、家族は仲良くしないと駄目だよ、プレシアさん。

 今は離れ離れで寂しいけど、家族が居るから帰ろうって頑張れるから。

 というか、フェイトちゃんって家族じゃないの?

 まぁ、髪の色は違うけど。フェイトちゃんはお母さんってプレシアさんを呼んでるし。

 やっぱり複雑そうな家族だなぁ。

 

 

 

 L月L日

 

 元の世界に帰れるかも、と教えてもらった。

 なんでも、『ジュエルシード』って願い事を叶えてくれる宝石があるらしい。

 雑誌の一番後ろに乗ってるパワーストーンみたいなものじゃないよね?

 21個あるんだそうだ。確かに全部集めたら、御利益がありそうだ。

 あと、この世界にも地球があるんだね。

 名前はちょっと違ったけど。『第97管理外世界・地球』だそうだ。

 異世界というか、並行世界って感じなのかな、ここは。

 『ジュエルシード』はヴァーリ君と兵藤、後フェイトちゃんとアルフさんが集めに行く事になった。

 俺とオーフィスちゃんは留守番だ。

 何事も無く、無事に戻ってきてほしい。

 

 まぁ、二人とも信じられないくらい強いから大丈夫だろうけど。

 フェイトちゃんを守ってあげてね、ヴァーリ君。

 ドライグさんとアルビオンさんも頑張って。 

 

 

 

 L月M日

 

 やっぱりこの世界は、俺達が居た世界とは違うんだなぁ、と。

 駒王町って場所は無いそうだ。

 その代わり、海鳴って場所があるらしい。

 色々違うんだなぁ。

 美味しいお菓子屋さんがあったそうなので、戻る時に買ってきてくれるそうだ。

 楽しみだ。

 オーフィスちゃんも、嬉しそうだった。

 でも、フェイトちゃんが居なくなって寂しそうにしてた。

 友達だもんね。

 

 しかし、魔法というのは便利だなぁ。

 『時の庭園』と『地球』の間で通信が出来るんだから。

 どれくらい離れてるのかは知らないけど。

 

 

 

 L月N日

 

 プレシアさんが、最近調子がいいと言っていた。

 笑顔だった。珍しいなぁ。

 でも、プレシアさんの機嫌が良いのはいい事だ。うん。

 機嫌が良いからか、プレシアさんの目標を教えてもらえた。

 娘を蘇らせたいんだそうだ。

 ……笑顔で言われても、重いんですが。

 フェイトちゃんとは別に、もう一人娘が居るって事だろうな。

 居た、か。

 『ジュエルシード』願いを叶えるパワーストーン。

 なんか、そういうのって裏がありそうなんだけど……願い事が叶うと良いなぁ。

 俺達は元の世界に戻りたい。

 プレシアさんはフェイトちゃんのお姉さんか妹さんを蘇らせたい。

 

 叶うといいな。

 そうすれば、フェイトちゃんとも仲良くしてくれるかな?

 でも元の世界に戻るとフェイトちゃんとは会えなくなるのか。

 オーフィスちゃんは悲しむかな……。

 いろいろ複雑だ。

 

 




管理局側の難易度がルナティックでは済まない件。

連れてきてるのはヴァーリ君、兵藤、オーフィス、主人公(笑)の四人。
上代家全員だと人数が多すぎたので、練習としてこの四人です。
もし次にも他作品に突っ込むとなったら、メンツを変えていく予定です。
次があれば、ですが。

主人公は年上キラー(笑)
ほら、ドラゴンって年上だし?



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リリカル2

主人公日記は次で最後かと。
Asまで書くつもりだけど、無印でいったん切ると思います。何となく。
それと、リインフォースさんって銀髪やん?

相変わらずのんびりマイペース。
……主人公っていったいなんだっけ?

PS ラングリッサーを知ってる人が居て嬉しかったですw


 L月O日

 

 オーフィスちゃんと一緒に、掃除の毎日。

 あと食事の準備と、英語の勉強。

 早くバルディッシュさんと話したいと言っていた。和む。

 『インテリジェンスデバイス』――喋る魔法使いの杖という説明を受けたけど、ドライグさん達もこの世界だと『インテリジェンスデバイス』扱いになるんだろうか?

 まぁ、『神器』と『デバイス』の違いはあるけど。

 今日も平和だった。

 オーフィスちゃんに魔法使いの杖……似合いそうだなぁ、と思ったり。

 

 

 

 L月P日

 

 ヴァーリ君達が、『ジュエルシード』を一つ見つけたそうだ。

 あと、この世界の地球の魔法使いとも会ったとの事。

 フェイトちゃんもそうだけど、この世界って小学生から魔法使いをやってるんだろうか?

 プレシアさんは、若い内から魔法の力に目覚めるのは珍しくないと言っていた。

 この前、ヴァーリ君と訓練をしていたフェイトちゃんを思い出すと、かなり複雑だ。

 物騒だなぁ、この世界も。

 小学生のころから、悪魔みたいにドンパチしてるのか……。

 

 

 

 L月Q日

 

 プレシアさんが、最近料理が美味しいと言ってくれた。

 ……作った料理を美味しいって言ってもらうと、滅茶苦茶嬉しい。

 ヤバイです。料理が楽しくなってきてる俺が居る。

 技術は相変わらずだけど。

 帰ったら、レイナーレさんに、本格的に料理を教わろうかなぁ。

 ――その前に、レイナーレさんの料理をちゃんと美味しいと言うように、ってオーフィスちゃんからお叱りを受けた。

 確かに言ってなかったなぁ。

 悪いことしたな。帰ったら、ちゃんと言おうと思う。

 

 

 

 L月R日

 

 止めてください、死んでしまいます。

 魔法の訓練で死に掛けた。まぁ、冗談だけど。

 プレシアさんが魔法の使い方を教えてくれた。あと試作の『デバイス』を貸してくれた。

 研究の息抜きに、との事だったけど、結構スパルタですね、プレシアさん。

 なんとなく、雰囲気で判ってたけど。

 バルディッシュさんのプロトタイプを貸してもらった。

 バルディッシュさんよりもメカメカしいヤツ。

 もちろん使えなかった。

 ……ちょっと期待してたんだけどね。やっぱり駄目だったよ。

 まぁ、この歳で魔法使いっていうのもどうかと思うけど。

 あと、オーフィスちゃんが使おうとして壊した。

 試作品だからどうでもいいと言ってくれたけど、アレって高価なんだろうな。

 機械ばっかりだったし。

 ……本当に、弁償とかしなくていいのかな。

 異世界で借金生活とか、かなり困るんだが。

 家事を頑張ろう。うん。

 

 

 

 L月S日

 

 『ジュエルシード』を一つ見付けて、合計二つだそうだ。

 良いペースだと思う。プレシアさんもフェイトちゃんを褒めていた。

 頑張ってほしい。

 あのパワーストーン、本当に御利益ありそうだな。

 この調子で、プレシアさんとフェイトちゃんの家族仲を良い感じにしてほしい。

 

 

 

 L月T日

 

 羨ましい。

 明日から、ヴァーリ君達は温泉に行くそうだ。

 まぁ、『ジュエルシード』を集めにだけどさ。

 確保した後、絶対温泉入ってくるだろうな……妬ましい。

 こっちのお風呂も大きいけど、温泉はまた別だと思うんだ。

 その辺りを、プレシアさんと話し合った。

 『ジュエルシード』集めが終わって、全部が上手くいったら皆で温泉に行こう、と。

 温泉は良い。テンションが上がって、苦手な人とも結構話せるようになる。

 それでまた少し、プレシアさんとフェイトちゃんが仲良くなってくれたら、と思う。

 

 あと、オーフィスちゃんがかなり乗り気になってる。

 大きいお風呂なら兵藤の家で経験してるだろうけど、温泉には連れて行ったことが無かったなぁ、と。

 早く『ジュエルシード』集めが終わらないかな。

 楽しみだ。

 

 

 

 L月U日

 

 ヴァーリ君達は、今頃温泉宿でお楽しみなんだろうなぁ。

 こっちは相変わらず、掃除洗濯料理を頑張っている。刺身食べたい。

 

 プレシアさんと一緒にお酒を飲んだ。

 ……温泉を気にしてた俺を気にしてくれたんだろうか?

 マジで良い人だな、プレシアさん。

 オーフィスちゃんにまでお酒を勧めるのはアレだけど。

 しかも、オーフィスちゃんも飲むし。

 すぐ酔って、俺の膝枕で寝てたけど。可愛い。

 それと、プレシアさんも結構お酒に弱かった。

 どうして俺の周りって、お酒に弱い女性が多いんだろう。

 俺も一応男なんですが……なんか挫けそうだ。

 

 

 

 L月V日

 

 『ジュエルシード』の三つ目を手に入れた。

 地球の魔法使い――高町なのはと言う小学生と勝負して貰ったそうだ。

 勝負したのはフェイトちゃんらしいけど。

 ……流石に、ヴァーリ君達が戦ったら絵的にアウトだよ。

 小学生と高校生とか。虐めだって。

 その結果に、プレシアさんもフェイトちゃんを褒めていた。

 今度、雑誌の一番最後に載ってるパワーストーンを買ってみようかと思う。

 御利益ありそうな気がしてきた。

 

 

 

 L月W日

 

 ヴァーリ君達が帰ってきた。

 今のところは『ジュエルシード』集めも順調だそうだ。

 プレシアさん的には、もう少し早く集めてほしいみたいだった。そんな感じで話していた。

 地球の魔法使い――高町なのはさんも集めてるそうだけど、脅威ではないとの事。

 というか、一緒に探すのって駄目なの?

 向こうとこっちの目的が違うから難しいそうだけど。

 そんなもんなのかね。

 ヴァーリ君はともかく、兵藤はなんか手加減できないイメージがあるから、高町さんが心配だ。

 まぁ、『非殺傷設定』というプログラムが『デバイス』にはあるらしいから、安全だそうだ。良かった良かった……良くない。

 逆にヴァーリ君と兵藤にはそんなの付いてないから、手加減が難しいと言っていた。

 特に兵藤。

 アイツはパワー特化らしいので、マトモに戦えないそうだ。

 初めて会った時、高町さんの使い魔を吹っ飛ばし掛けて焦ったと言っていた。

 相変わらずだな、兵藤は。

 理由を聞いたら、こっちも驚いたけど。

 『赤龍帝の篭手』を装備した兵藤と同威力の魔法を撃つそうだ。高町さん。

 本当に人間の小学生なんだろうか……最近の小学生って怖い。

 

 

 

 L月X日

 

 相変わらず、プレシアさんとフェイトちゃんの仲はアレだ。気まずい。

 逆に、ヴァーリ君とフェイトちゃんは仲良くなってた。

 地球で何があったんだろう。まぁ、兄と妹的な関係みたいだけど。

 兵藤に聞いたら、ヴァーリ君がプレシアさん達の関係を改善しようとしてるんだそうだ。

 確か、ヴァーリ君の家族関係も複雑だったから。

 ……良い人だよなぁ、ヴァーリ君。

 プレシアさんとフェイトちゃんには、俺も仲良くなってほしい。

 

 

 

 L月Y日

 

 兵藤にしては、良い事を言うなぁ、と。

 日本には“裸の付き合い”という素敵な言葉があった。

 まぁ、あいつの場合は文字通り裸で一緒にお風呂に入るって意味だろうけど。

 ……駄目でした。

 流石にいきなり過ぎました。

 

 でも、なにかを一緒にする、という考えは悪くないと思う。

 お風呂は駄目だった。

 なら別の方法を考えよう。

 

 

 

 L月Z日

 

 フェイトちゃんと一緒に朝食を作った。

 プレシアさんには内緒で。

 最近は調子も良いみたいで、結構食べてくれるから嬉しい。

 フェイトちゃんが作ったと気付かずに、美味しいと言ってくれた。

 ……ヤバイ。思い出してニヤニヤしてきた。

 ヴァーリ君達も、ニヤニヤしてた。

 この調子で頑張ろう。

 

 あと、今日からまたヴァーリ君達は地球に行って『ジュエルシード』集め。

 寂しくなるなぁ。

 でも、集め終って元の世界に帰るのも寂しいな。

 ……それまでに、もっとプレシアさんとフェイトちゃんの距離を縮めたい。

 

 

 

 L月!日

 

 ……気付いてたんですか。そうですか。

 昨日の料理の事、気付いてたそうだ。プレシアさん。

 流石お母さん。

 機嫌は悪くなかったけど、良くもなかった。

 でも、フェイトちゃんの料理を美味しいと言ってくれた事は本当だ。

 ちなみに、ばれた理由が俺よりフェイトちゃんの卵焼きが綺麗だったとの事。

 ――泣いていいですかね?

 味の違いとか何とかも言われたけど、小学生に料理の見た目で負けた事だけで泣ける。

 今日の晩御飯はチャーハンにした。

 手抜きだと言われたが、今日は勘弁してくださいと言いたい。

 

 オーフィスちゃんから慰められた。

 

 

 

 L月#日

 

 時空管理局って何? プレシアさんは、時空の管理者を気取ってる集団だと言っていた。

 『ジュエルシード』を集めてたら現れたそうだ。

 いきなり現れて、横から掻っ攫おうとしたとかなんとか。泥棒か。

 ちなみに現れたのは、また小学生くらいの男の子だそうだ。

 この世界じゃ、本当に小学生怖いな。

 兵藤に手を出して、反射的に吹っ飛ばしたと言っていた。

 やめろ。お前の吹っ飛ばしたは洒落にならん。

 「ちゃんと生きてました」とか言ってたが、当たり前だ。

 

 ちなみに、今日で『ジュエルシード』四つ目ゲットである。

 あと十七個か……まとめて一気に手に入れたいなぁ、と思ったり。

 高町さんも集めてるだろうから、あとどれくらいだろう?

 

 

 

 L月$日

 

 向こう――地球での料理担当はヴァーリ君らしい。

 フェイトちゃんと一緒に勉強中なんだそうだ。料理ができるイケメン……モテそうだ。

 しかし……だからフェイトちゃんは卵焼きが上手だったのか。

 何だろう、この敗北感。……いや、小学生とはいえ女の子。

 料理の才能があるのは良い事だ。うん。

 

 

 

 L月%日

 

 『時空管理局』というのは次元世界全体を管轄とする唯一の治安組織なんだそうだ。

 治安組織というと警察みたいなものなんだろうけど、そこに裁判所と軍隊が混ざって、一つになった機能を持ってるんだとか。

 まぁ、簡単に説明を受けただけだけど。

 警察と裁判所と軍隊が一つに。

 それって、警察の悪事は誰が裁くの? 裁判所の悪事は誰が裁くの? という話。

 その悪事をもみ消すのに軍隊さえ動かせる――極論だけど、そうなるそうだ。

 しかも、次元世界を管轄するのは唯一『時空管理局』だけなんだとか。

 『時空管理局』にも良い人は居るんだろうけど。

 怖いなぁ、なんとなく。

 こっちは『ジュエルシード』を集めたら帰るんだから、無茶はしないでほしいな。

 それか、グレートレッドさんが俺達を見つけてくれるか。

 その前に、プレシアさん達の仲をもう少し柔らかくしたい。

 ……帰る前にやる事あるなぁ。

 

 

 




原作だと、この頃のフェイトって料理できましたっけ?
アルフと二人暮らしの時どうしてたかなぁ、と。

あと、クロノ君は不幸枠。
相手は手加減ができるヴァーリ君ではなく、手加減が苦手なイッセー。
それだけで苦労人の風格が出る不思議。



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リリカル3

そういえば、最後の最後でしか管理局サイドと会ってないな、主人公。
まぁ、いつもの事か。



 M月A日

 

 フェイトちゃんが、壊れたバルディッシュさんを持って帰ってきた。

 『ジュエルシード』を封印しようとして無茶をしたそうだ。

 でも、フェイトちゃんが無事で良かった。

 オーフィスちゃんも心配してた。怪我が無くて良かったよ。

 プレシアさんは――何も言わなかった。

 一言くらい心配してあげようよ、お母さんの為に頑張ってるんだから。

 

 

 

 M月B日

 

 バルディッシュさんが完治? していた。

 ……アレだけ壊れてたのに一晩で直せるものなの、『デバイス』って?

 まぁ、徹夜してたけど。

 夜食作ったし。

 ――素直じゃないなぁ、プレシアさんは。

 フェイトちゃんが地球に行った後、絶対言うなって怒られた。睨まれた。

 俺と他の皆への対応が違いませんかね?

 フェイトちゃんとバルディッシュさんに無茶させたヴァーリ君と兵藤にも一言言っても良いと思うんだ。

 

 

 

 M月C日

 

 宇宙戦艦アースラ。

 プレシアさんに映像を見せてもらったけど、格好良いなぁ、と。

 SFだよ、本当。映画とかでしか見た事無いよ、宇宙戦艦なんて。

 プレシアさんが言うには、悪魔とか天使の方が信じられないそうだけど。

 ちなみに、どこかの次元世界にはドラゴンが居るそうだ。

 スゲェ。見てみたい。

 まぁ、そんな暇は無いんだけど。家事で忙しい。

 

 

 

 M月D日

 

 高町さんが、『時空管理局』に参加するようになったそうだ。

 ……小学生が治安維持部隊に参加して良いんだろうか? ボランティアとかじゃ…無いんだろうなぁ。

 『時空管理局』って軍隊の一面も持ってるって聞いたけど、その辺りの事を高町さんは知ってるのかな?

 今日『ジュエルシード』を探していたヴァーリ君が戦ったそうだ。

 ちゃんと手加減したらしいけど。

 その辺り、やっぱり兵藤とは違うなぁ。安心できる。

 そう言うと、兵藤が泣きそうになってたけど。

 だってお前、前科あるし。『時空管理局』の小学生吹き飛ばしただろーが。

 あれって、異世界だけど、公務執行妨害とかなるんじゃないの?

 『時空管理局』とは関わらないで『ジュエルシード』を集めたいなぁ。

 

 あと、甘い物食べたい。

 俺もプレシアさんも、お菓子作れない。

 甘い物って砂糖くらい……それはお菓子じゃない。

 

 

 

 M月E日

 

 プレシアさんにお暇を戴いて、地球に行ってきた。半日だけど。

 オーフィスちゃんと一緒に、『翠屋』って所でシュークリームを食べた。

 約一か月ぶりの甘味は、かなり美味かった。

 お土産に買って帰ったら、プレシアさんも喜んでいた。

 しかし、この世界でも通貨は円なのは助かった。

 なんだか、異世界なんて気がしないなぁ。

 

 ヴァーリ君達は『ジュエルシード』探しに行ってたので会えなかった。残念。

 会えたら、一緒に昼食を食べたかった。

 

 

 

 M月F日

 

 ヴァーリ君達と『時空管理局』が警戒し合って、動き辛いと言っていた。

 向こうは人数が多いし、こっちは手加減が難しいし、との事。

 手加減しないといけないって、やっぱり悪魔だなぁ、と。

 基本的な能力が人間とはやっぱり違うんだそうだ。

 特に兵藤は手加減が苦手だそうだし。

 俺は、あいつが間違いを犯さないか心配でならない。

 

 あと、プレシアさんから主夫が板についてきた、と言われた。

 褒められてるんだと思う。思う事にする。褒められてるよ、俺。

 ……ああ、今日も一日頑張ったな。

 

 

 

 M月G日

 

 『ジュエルシード』の五つ目、六つ目が見つかった。

 まぁ、『時空管理局』が見付けたのを、兵藤が取ったらしいけど。

 俺達も元の世界に帰らないといけないし。

 プレシアさん達はアルハザードって世界に行くらしいし。

 『時空管理局』には、俺達が居なくなった後に確保してもらおうという話。

 いや、俺も治安維持の軍隊相手にソレはどうかと思ったけど、小学生を最前線に立たせる軍隊はちょっと……。

 悪用するわけじゃないし、使い終わったらちゃんと渡すし、大丈夫だと思いたい。

 ……この考え方って、やっぱり不味いのかな? 不味いんだろうなぁ……。

 

 

 

 M月H日

 

 プレシアさんから、家族の定義は、と聞かれた。

 いきなり哲学ですね、プレシアさん。

 俺としては、傍に居てくれて、寂しさを感じない……とかなんとか。

 家で独りなんて寂しいし、話し相手も居なくて笑い声も無いなんて、苦痛でしかない。

 血の繋がりも大切なんだろうけど、血の繋がりよりも俺は傍に居てくれる人が良い。

 傍に居て、話し掛けてくれて、話し掛けたら返事をしてくれる人。

 まぁ、プレシアさんに言わせたら、家族というよりも仲のいい知人だそうだ。

 否定はできない。

 俺も、レイナーレさん達も、本当の意味では家族じゃない。

 ただ俺達が、家族だと思ってるだけの他人だ。

 でも俺達は、家族だと思っている。

 気の持ちようだと思う。

 血の繋がりが無いただの他人でも家族になれる。

 血の繋がった家族でも、繋がりが無ければただの他人になってしまう。

 

 ――俺達は、プレシアさんとフェイトちゃん、アルフさんには家族になってほしい。

 善意の押し売りは迷惑だと言われた。

 でも、俺達の考えを“善意”だと思ってくれるなら、まだ脈はあると思うんだ。

 まだまだ頑張れそうだ。うん。

 

 

 

 M月I日

 

 『ジュエルシード』を二つも一気に見つけた。

 これで八つ目である。良い調子なんだろうか?

 『時空管理局』が魔法と人海戦術で探し、それをヴァーリ君達が手に入れる。

 ……良いのかな、コレ。

 いくら相手がブラックな企業とはいえ、指名手配とかされるのは嫌なんだけど。

 帰るためとはいえ、もう少しやり様は無いのか。

 まぁ、プレシアさんがご機嫌だから……フェイトちゃんの為にも、いいと思っておこう。

 それに、プレシアさんに聞いたら、こっちの事情は考慮されずに『ジュエルシード』を没収されるそうだし。

 困るなぁ。

 これ、元の世界に影響とかあったら、かなり困りそうだ。

 

 

 

 M月J日

 

 ご飯の味付けが濃いと言われた。

 ……自分で作ろうよ、お母さん。

 というか、料理くらいしようよ、母親。

 昔は出来たとか言ってたけど、今出来ないんじゃ意味が無いと思うんだ。

 とりあえず、今度フェイトちゃんにプレシアさんは薄味が好みと教えよう。

 向こうは大丈夫かなぁ。

 ま、ヴァーリ君とドライグさん、アルビオンさんが居るから大丈夫だろう。

 兵藤とアルフさんは、なんか家事もしないでのんびりしてるそうだし。

 似てるなぁ、あの二人。なんとなく。

 

 

 

 M月K日

 

 兵藤が、海に潜って『ジュエルシード』を確保したそうだ。

 海女さんか、お前は。

 昔はただのおっぱい魔人だったのに、悪魔になってから逞しくなったなぁ。

 お前が逞しくなって、グレモリーも喜ぶだろうな。

 まぁ、海に落ちてるのは四つで、二つは見付けきれなかったそうだけど。

 それが普通だ。海の中で青い宝石とか、そんな小さなものを二つも見付けた兵藤が凄い。

 褒めたら喜んでた。褒めたというか、驚いたんだけど。

 ……グレモリーが、兵藤を可愛がってた理由が少し判った気がする。

 

 

 

 M月L日

 

 海中の『ジュエルシード』をどうやって確保しよう、という話。

 また兵藤に潜らせよう、という話は流石に難しいそうだ。

 まぁ、丸一日潜って二つ。

 しかも、ある程度範囲が限定されているとはいえ海の中で宝石を探すなんて精神的にしんどいそうだ。

 むしろ、よく昨日は海に潜ったと言いたい。

 

 ちなみに、『時空管理局』にも海の『ジュエルシード』の事は知られてるらしい。

 常に兵藤かヴァーリ君が見張ってるから、手出しが出来ないそうだ。

 一応向こうは軍隊なんだけどなぁ。

 それを一人で抑えるって、どんだけチートなんだよ、二人とも。

 

 

 

 M月M日

 

 『時空管理局』も『ジュエルシード』を確保してるだろうし、多分海の二つが最後の『ジュエルシード』だろう、ってプレシアさんが言ってた。

 まぁ、全部が揃わなくても『次元の狭間』――『虚数空間』は安定させられるそうだ。

 後はその時、オーフィスちゃんがグレートレッドさんをこの世界に案内してくれればいいだけだ。

 ……たぶん大丈夫だろう。たぶん。

 

 もうすぐこの世界ともお別れか。

 短いようで長いような。

 寂しいなぁ。

 

 

 

 M月N日

 

 フェイトちゃんとアリシアちゃん。

 違いは、フェイトちゃんはアリシアさんのコピーで、アリシアさんはプレシアさんの本当の娘だって事。

 ……俺は、大切な人を失くした事が無いから、プレシアさんの事をどうこう言えない。

 正しいのか悪いのかも判らない。

 だって、大切な子どもが突然居なくなって、何が正しいかなんて判らないと思う。

 諦めるかもしれないし、代わりを求めるかもしれない。

 そんなの誰だって判らない。

 プレシアさんは、代わりを求めた。

 でも、フェイトちゃんはアリシアちゃんじゃなかった。

 あの人にとってフェイトちゃんは苦痛でしかないのだろうか?

 ――プレシアさんは、俺達がフェイトちゃんに肩入れしてる事を“善意”だと言ってくれた。

 なら、と思うのは甘いのかな?

 

 フェイトちゃん、大丈夫かな。

 アリシアちゃんの事、自分の事、知らないみたいだったし。

 

 

 

 M月O日

 

 『時空管理局』マジで怖い。あと、空気読もう。

 プレシアさんとフェイトちゃんの家族の会話に割り込むのは駄目だと思うんだ。

 軍隊ってあんなものなんだろうなぁ……そして、悪魔関係で慣れつつある俺。

 俺も変わったなぁ。

 それと俺の『神器』。何の役にも立たないし……。

 なんかあの世界だと『神器』が『ロストロギア』とかいうヤバいものみたいで、俺まで目を付けられた。勘弁してほしい。

 やっぱりヴァーリ君とか兵藤の『神器』が強いし格好良いし便利だと思う。羨ましい。

 戦うのは怖いけど。

 『時空管理局』が『ジュエルシード』を確保するために来た時、『時の庭園』の一番奥で隠れてるしかできなかったし。

 まぁ、危なくなる前にグレートレッドさんが見付けてくれたけど。

 いや本当、危なかった。

 

 

 

 M月P日

 

 レイナーレさん達に怒られた。

 ……怒られたというか、心配されたというか、何というか。

 いきなり音信不通になってしまい、申し訳ありませんでした。

 ヴァーリ君と兵藤の三人で謝った。

 多分今頃、グレモリー達にも土下座してるんだろうなぁ、兵藤。

 

 プレシアさん達は今頃、どうしてるかなぁ。

 『時空管理局』でフェイトちゃんたちを守りながら、頑張っていくって言ってたけど。

 無事だと良いな。それだけが心配だ。聞いた限りだと、完全にブラックだし。

 俺達は、プレシアさんとフェイトちゃん、アリシアちゃん、アルフさんがちゃんと家族になれるって信じてる。

 それに、二十一個の『ジュエルシード』にもお願いしたし。

 あのパワーストーンの御利益は馬鹿に出来ないからなぁ。

 なんたって、昏睡状態だったアリシアちゃんが目を覚ましたし。

 今度、雑誌の一番後ろに載ってるパワーストーンを買おうかと思う

 

 ――レイナーレさんの料理は、本当に美味しい。

 ちゃんと伝えたとも。美味しいって。恥ずかしかったけど。

 オーフィスちゃんから褒められた。

 ……なんだかなぁ。

 ただいま。レイナーレさんの料理を食べたら、帰ってきたって気がする。

 




ちなみに、主人公の管理局云々はプレシアさんの意見でしかありません。


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リリカル4(白龍日記)

プレシアさんと管理局側のどっちを書くか迷った。
さて、本編の開始です。
主人公の日記? ……本編かもしれないね。

皆さん、いつも感想ありがとうございます



 L月A日

 

 面倒な事になった。

 『次元の狭間』をオーフィスの先導で進んでいたらはぐれた。

 徹とオーフィスは無事だろうか?

 実際には、危険なのは俺達の方かもしれないが。

 『次元の狭間』が異世界に通じている事は知っていたが、まさか身をもって体験する事になるとは。

 聞いた事も無い地名に知らない魔術式。

 ……異世界、か。どうしたものか。

 相手が兵藤一誠とはいえ、一人ではないというのは心強い。

 何とか帰らなければならない。

 

 俺達を拾ってくれたのは。プレシア・テスタロッサという魔法使いだ。

 あまり、第一印象は良くない。お互いに。

 警戒されている。

 いきなり『神器』の『禁手化』を見せたのは失敗だった。

 この世界では、俺達の力は強すぎるようだ。

 次があるかどうかは判らないが、次は『禁手化』を控えようと思う。

 

 

 

 L月B日

 

 徹、オーフィスと合流出来た。

 これで、あの時『次元の狭間』に居た面子は揃った。

 徹とオーフィスが居るのは心強い。

 俺や兵藤一誠は、戦う力はあるが世界に干渉する能力は無い。

 そういう意味では、今回のような件では最も信頼できる二人だろう。

 ここ――『時の庭園』にて部屋を借りることになった。

 フェイト――という少女と会った。

 不思議な場所だ。

 プレシアにフェイト、魔力を持った獣、アルフ。

 住んでいるのは三人だけ。

 ――何か事情があるのだろうな。

 異世界から来た俺達を、簡単に受け入れたのだから。

 

 

 

 L月C日

 

 『次元の狭間』――この世界では『虚数空間』だが、その道を通って帰るのは難しそうだ。

 徹やオーフィスならどうにでも出来そうだが、あの二人に頼りっぱなしになるのは最後の手段だろう。

 それに、グレートレッドが俺達を探しているそうだ。

 向こうが見付けてくれたら、安全に帰れるだろう。

 それまで待つか、帰る手段を探すか……。

 この場所には本も多い。退屈はしないで済みそうだ。

 図書館――と呼べる場所を、フェイトに案内してもらった。

 プレシアとフェイト。

 何かあるのだろうな。

 ……プレシアの、娘に対するあの態度。

 あまり、良い気分はしない。

 

 

 

 L月D日

 

 フェイトにアルフという獣を紹介してもらった。

 人語を解する狼――フェンリルに似ている、と思った。

 帰ったら、異世界には人語を解する獣が居ると教えてやろう。

 フェンリルは、アルフのように人の言葉は喋れなかったが。

 オーフィスにも紹介すると、仲良くなっていた。

 精神年齢が近いからだろう。

 オーフィスは、長生きしてはいるが、世界に興味を持ち始めたのは最近だ。

 仲が良い友達が増えるのは良い事だ。徹も喜んでいた。

 

 プレシアからアルハザードというものを聞かれた。

 何だろうか? 聞いた事は無い。

 徹と兵藤一誠も知らないそうだ。オーフィスも。

 プレシアは、そのアルハザードを探す研究をしているそうだ。

 

 

 

 L月E日

 

 徹が、料理を作る事になった。

 俺も兵藤一誠も料理の心得は無い。フェイトはまだ子供だ。

 徹としてはプレシアに期待していたようだが、生憎とプレシアの方は作る気が無いようだ。

 俺としては、徹の料理は美味しいと思う。

 そもそも、作れない俺が作ってくれた人に文句を言うのも間違いだろう。

 ルフェイや美猴も料理の心得があった――今度『次元の狭間』に行く時は、料理が出来る誰かも誘おうと思う。

 まぁ、何度も異世界に行くような事も無いだろうが。

 

 

 

 L月F日

 

 プレシアから、フェイトを鍛えるように言われた。

 この家に置いている条件だそうだ。

 兵藤一誠はアルフを、という事だ。

 流石にオーフィスには頼んでいなかった。

 世界は違えど、ある程度の実力――魔力の強さは判るのだろう。

 プレシアは、どこかオーフィスを避けている。怖れていると言っても良いだろう。

 ……いきなり現れた規格外の存在など、恐怖の対象でしかないか。

 昔ならいざ知らず、今は随分と丸くなったのだが。

 それに――規格外というなら、俺達の中では一番平凡な徹が、一番規格外なのだがな。

 

 荒事も無いのだし、徹には料理番を頼むとしよう。

 何だかんだで、一番似合うのだし。

 アルビオンも同意していた。

 

 

 

 L月G日

 

 俺達の『神器』の事を、この世界では『デバイス』というらしい。

 フェイトからバルディッシュという『デバイス』を見せてもらった。

 リニスという、師から貰ったものだそうだ。

 その師が亡くなってから、この『時の庭園』で、三人で暮らしているのだそうだ。

 

 フェイトはプレシアを慕っている。

 だがプレシアは、どういう訳かフェイトを疎んでいる。

 ……なるほど、と思う。

 今日、オーフィスに勉強を教えた。英語をだ。

 バルディッシュの言葉が英語なので、オーフィスには英語を学んでもらう必要があった。

 その時に、俺はフェイトを誘った。

 その理由が、よく判る。

 ――プレシアとフェイト。

 よく似ている。

 昔の俺に。

 俺の家族に。

 俺と父親に。――良く似ている。

 

 

 

 L月H日

 

 フェイトには才能がある。

 戦う才能が。

 随分と気は優しいが、戦いの際中の勝負勘は悪くない。

 足は速いし攻撃も鋭い。

 戦い方は、グレモリー眷属の『騎士』に近いモノがある。

 まぁ、向こうは実体剣、こちらは魔法という違いはあるが。

 中々に鍛え甲斐がある。

 ――フェイトの強くなりたい理由は、母親に褒めてもらいたいからだそうだ。

 だが、恐らく……プレシアがフェイトを褒める事は無いだろう。

 そう言えなかった。

 告げる事が出来なかった。

 

 

 

 L月I日

 

 俺と兵藤一誠の魔力を計られた。

 この世界の基準では、俺はSランク、兵藤一誠はBランクらしい。

 順に記すなら、SSS>SS>S>AAA>AA>A>B>C>D>E。

 それに+と-でランク付けされるのが、この世界の一般評価だそうだ。

 俺は高い。兵藤一誠は魔法を生業にしている兵士の平均レベルくらいらしい。

 まぁ、『神器』ありきならどういう数値が出るかは判らないが。

 やはり、この世界は俺達が居た世界とは全く別だな。

 魔力を測定する――冥界にもその技術はあったが、この世界程正確な物ではなかった。

 ――今回の測定が正しいのかは判らないが。

 俺と兵藤一誠の差は、まぁそんなモノだろう。

 アイツはまだ、成長途中だから。

 もっと強くなって貰わなければ困る。

 それに……『赤龍帝の篭手』の能力は『倍化』。

 魔力量の差など、些細なものだ。

 

 しかし、徹とどうやって仲良くなった、か。

 徹から聞かれたが、どうやってだったか。

 興味を持って、接触して、話して、飯を食べて。

 ――お前と一緒に居る時間は楽しい。そう思った。

 だから仲良くなれた。友となれた。

 お前を知ったから。判ったから。お前は――徹は敵ではないと。

 ああ、そうだな。

 友となるには、仲良くなるには、相手を知らなければならない。

 俺は、父を知らなかった。

 そして、プレシアも、フェイトも。

 

 

 

 L月J日

 

 フェイトは、プレシアと仲良くなりたいと言った。

 昔のように、母と娘の関係になりたいと。

 ――俺に、何が出来るだろうか?

 フェイトは、昔の俺に似ている。

 親に疎まれ、憎まれ――それでも親を信じている。信じる事で、いつか和解できると思っている。

 ……プレシアは、フェイトを受け入れない。

 何故か、そう確信している自分が居る。

 徹も、兵藤一誠も感じている空気の重さ。

 プレシアとフェイト、アルフが揃った時の緊張感。

 プレシアとアルフの仲は悪い。

 そして、プレシアから感じるフェイトへの明確な拒絶。

 

 それでもフェイトは、プレシアとの関係を――。

 判っている。

 俺も、そうだった。

 ……そして、裏切られた。

 殺されかけた。

 あの少女に、その結末だけは……。

 

 

 

 L月K日

 

 俺達がフェイト達を鍛えている間、徹は『時の庭園』を掃除している。

 最近は、その掃除も随分と板についてきたと思う。

 そう言ったら微妙な笑顔を浮かべていたが。

 褒めたつもりだったのだが……。

 オーフィスは喜んでいた。――難しいな、人を褒めるのは。

 フェイトとも、上手く会話が続かない。続いて二、三言だけだ。

 兵藤一誠は、アルフと随分仲良くなっている。

 オーフィスも、少しずつだがフェイトと仲良くなってきている。

 羨ましい才能だ。

 俺は、人と接する才能が無いのだろう。

 フェイトの悩みを理解しているのに、助言をしてやれない。

 もどかしく思う。

 

 それと、プレシアの機嫌が悪い。

 徹が何か言ったようだ。

 ……偶に、いきなり本質を突くからな。

 いったい何を言ったのか。

 

 

 

 L月L日

 

 『ジュエルシード』。使用者の願望を叶える魔法の宝石。

 眉唾物ではあるが、その宝石で俺達が元の世界に帰れる理屈も理解できた。

 『ジュエルシード』は魔力の塊だ。

 『次元の狭間』――『虚数空間』を安定させることが出来るほどの、純粋な魔力の塊。

 その宝石があれば、グレートレッドを呼び、『次元の狭間』を渡る事が出来る。

 ――確かに、元の世界に帰れる可能性は高い。

 恐らくプレシアにも何か目的があるのだろう。

 だが、乗る価値はある。

 俺達を利用するつもりだろうが、ただで利用されるつもりもない。

 目的の場所は地球。

 俺達が居た世界とは異なる、『第97管理外世界・地球』。

 フェイトとアルフを俺達に鍛えさせたのは、多分この為だろう。

 ――『ジュエルシード』の事を、事前に知っていたはずだ。

 

 

 

 L月M日

 

 『第97管理外世界・地球』に駒王町も駒王学園も無かった。

 代わりに、海鳴町という場所があった。

 この町に『ジュエルシード』は散っているそうだ。

 今日は見つける事が出来なかったが。

 それに、この世界には悪魔も天使も、堕天使も居ない。

 今まではそれらのバックアップがあったが、この世界には無い。

 『神器』も目立ち過ぎる――そもそも、俺も兵藤一誠も、戦闘に特化している。

 地道に歩いて探すしかないのか。青い宝石を。

 ……前途は多難だな。

 

 

 

 L月N日

 

 兵藤一誠は適応が早いな。後アルフも。

 羨ましいくらいに、海鳴町に適応している

 プレシアから用意されたマンションで、いきなり昼寝をするくらいに適応している。

 確かに、見付ける目処が立たないなら、探しても無駄と割り切るのも大切だろうが。

 『ジュエルシード』は発動するまで一切の魔力を発しない。

 それで、実物は青い小さな宝石。探しようがない。

 面倒なものだ。

 

 どうしてか、俺が料理を作る事になった。

 しかも、不味いと文句を言われた。

 文句を言うくらいなら、お前が作れ。兵藤一誠が作れ。

 ……料理というのは、存外難しい。

 ルフェイには本当に世話になっていたのだな、と思い知らされた。

 

 




こっちは割とシリアスかもしれない。
主人公がほのぼのしてたからなぁ。


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リリカル5(白龍日記)

原作6話と7話が私の頭の中で逆転していた。
本当にすみません……修正しないでこのまま逝きます(ぉぃ


 L月O日

 

 この世界は、本当に俺達の居た世界と変わらない。

 兵藤一誠は、家や知った学校が無いことに多少驚いていたが。

 それに、美味い店も多い。

 今度、徹にも教えてやろう。

 もしこの世界に自由に来れるようになるなら、美猴やデュリオにも教えていいかもしれない。

 それにしても、フェイトも食べるのが好きだとは驚いた。

 子供だから、沢山食べるのはいい事だ。

 だが、甘い物ばかりでは身体によくない。

 ……これでは子守だな。

 

 それと、俺達の事。オーフィスの事を聞かれた。

 どんな関係かは――難しい所だが。

 宿敵と、友と、その家族。俺はそう思っている。

 フェイトも、オーフィスの事を気にしてくれているようだ。

 仲良くしてほしい。

 それにしても、見た目は確かに同年代だが、中身が想像もつかないほど永い時を生きたドラゴンだと知ったらどう思うだろうか?

 まだ教えていない。

 二人が揃っている時が良いだろうと思ったからだ。

 その時が楽しみだ。

 アルビオン、ドライグともよく話してくれる。

 良い娘だと思う。

 

 

 

 L月P日

 

 やはり、『ジュエルシード』にはいくつかの不明な点がある。

 願いを叶える。

 確かにそうだ。

 だが、その願いを歪んだ形で叶えてしまう。

 大きくなりたいと願った猫が、俺達が見上げるほどの巨大さを手に入れた。

 ――プレシアは、この歪んだ宝石で何を願うのだろうか?

 まぁ、今は徹とオーフィスが傍に居るから、そう妙な動きも出来ないだろうが。

 俺達を利用しているつもりだろうが、ただで利用されるつもりは無い。

 まずは一個。

 猫の願いを叶えた『ジュエルシード』を確保した。

 放出する魔力は強大だが、俺の『神器』の能力も効く事を確認した。

 問題無い。兵藤一誠が戦い、俺が魔力を奪い、フェイトが封印する。

 アルフはフェイトの護衛――取り敢えず、今のところはこれで安定して戦える。

 

 それにしても、この世界の魔法使いの力量は中々悪くない。

 フェイトに――今日会った白い魔法使い。

 まぁ、相手は子供だ。楽しむのも無粋か。

 まずはさっさと『ジュエルシード』を集めてしまおう。

 何かあるにしても、それからだ。

 

 

 

 L月Q日

 

 最近、料理が楽しいと徹が言っていた。

 何をやっているんだか……。

 まぁ、プレシアの相手は徹に任せよう。

 俺達よりも、徹の方が警戒されないだろうしな。

 『神器』を使わないなら、本当に普通の人間なのだし。

 何かあってもオーフィスが傍に居る。

 徹に危害が加えられるようなら、オーフィスが動くだろう。

 こちらは、『ジュエルシード』を集める事に集中しよう。

 

 それと、徹に触発されてか、フェイトが料理に興味を持っていた。

 いい事だと思う。

 プレシアに食べさせたら喜ぶだろうか、か。

 どうだろうか。

 ……フェイトは、強いな。

 危険は少ないとはいえ、魔法を使っての戦いは痛みが伴う。

 だというのに、母親の為に前線に出てきている。

 怖いだろうに。

 フェイトは料理の基礎を教わっていた。

 リニスという、昔一緒に暮らしていたメイドにだそうだ。

 『時の庭園』にリニスというメイドは居なかった。

 辞めたのか、それとも――。

 

 

 

 L月R日

 

 フェイトが先日の魔法使いにやり過ぎた事を気にしていた。

 俺達は敵だから、と割り切れるが、フェイトにはまだ難しいか。

 それに、フェイトは心が優しいのだろう。アルフがそう言っていた。

 これから先、おそらく『ジュエルシード』は奪い合いになる。

 その優しさが、フェイトを傷付けなければいいが。

 ――そもそも、戦場で優しさを見せてしまう子供が戦うのが問題なのだが。

 フェイトを止めようとしたが、ダメだった。

 プレシアに褒めてもらう為、か。

 ……プレシアはフェイトを褒めるだろうか?

 

 兵藤一誠は褒めると言った。

 母親だから、と。

 ――そうだと良いな。本当に。

 それと、俺の料理よりフェイトの料理の方が美味いと言われた。

 兵藤一誠とアルフから。

 ……そうか。

 

 

 

 L月S日

 

 『ジュエルシード』は純粋な願いに呼び寄せられるのかもしれない。

 人間と獣では、願の質が違う。

 先日もそうだったが、今日も犬の願いを叶えた『ジュエルシード』を確保できた。

 アルフの願いなどで呼べないだろうか?

 怒られたが、中々に悪くない案だと思う。……駄目だろうか。

 だがこれで二つ目だ。

 もう少し早いペースで確保したいが、発動するまで発見できないのでは、ペースを上げるのも難しい。

 一応、日中は町を散策して探しているのだが。

 もどかしいな。

 

 プレシアとしては、予想していたより速いペースのようで、フェイトを褒めていた。

 驚いた。

 あの女が、フェイトを褒めるとは。

 ……俺が気にし過ぎなのだろうか。

 父と俺。自分の昔を重ねすぎているだけなのかもしれない。

 それならそれでいい。

 願いを叶える宝石か。

 ――歪んだ形ではなく、正しい意味で叶えてくれればいいのだが。

 

 

 

 L月T日

 

 兵藤一誠が、商店街で温泉宿への旅行券を当てていた。

 変な所で運が良いな、あいつは。ドライグも呆れていた。

 徹達も誘いたかったが、流石にそれは無理か。

 報告だけして、明日から温泉宿に行く事になった。

 息抜きも必要だろう。特にフェイトには。

 海鳴に来てから、『ジュエルシード』を集める事に固執している。

 ずっとという訳ではないが、何時疲れが出るかも判らない。

 息抜きも必要だ。

 もしかしたら、温泉宿の方で『ジュエルシード』が見つかるかもしれないしな。

 『ジュエルシード』を集める事でプレシアがフェイトという個人を見るのなら、その為にあの歪んだ宝石を集めるのも悪くない。

 不思議と、そう思う。

 ――俺は、プレシアとフェイトの関係をどうしたいのだろうか。

 

 

 

 L月U日

 

 新しい『ジュエルシード』は見つからなかったが、白い魔法使いと会う事になった。

 運が良いのか、悪いのか。

 同じ温泉宿に泊まっているとはな。

 それにしても、戦い辛い。

 特に、俺よりも兵藤一誠が『神器』の特性上、そして今までの経験上、上手く動けないでいる。

 兵藤一誠は、今まで自分と互角か格上の相手と戦う事が多かった。

 実力的にも経験的にも、そして年齢的にも自分より下の者と戦った事が少ない。

 そして、『赤龍帝の篭手』の『倍化』の能力は、兵藤一誠ほどの実力者が使うと脅威だ。

 簡単に人間を傷付けてしまう。それ以上も――。

 良い機会だ。手加減を覚えろ、兵藤一誠。

 その兵藤一誠は、白い魔法使いの使い魔を吹き飛ばした事を気にしていた。

 もしこれから先も相対するなら、しばらくは俺が相手をした方がいいかもしれない。

 

 フェイトは、その白い魔法使いの事を気にしているようだ。

 同年代の魔法使いだ。思う所もあるのだろう。

 それに――中々に真っ直ぐな少女だった。

 戦い方も、性格も。

 ああいう性格は、好感が持てる。

 それに彼女の『デバイス』――『インテリジェントデバイス』。

 バルディッシュと同じ、意志を持つ魔法使いの杖。

 主人を守る為に『ジュエルシード』を俺達に渡してきた。

 ――もしこんな形での出会いでなかったら、フェイトとはいい友人になれたかもしれないな。

 

 

 

 L月V日

 

 全力で戦いたいな。

 昨日のフェイトと高町なのはの戦いを見て、少し気分が昂ぶっている。

 白い魔法使い。高町なのは。

 名前は温泉宿の受付員から聞いた。

 素性を調べようとしたが、この世界に伝手が無いので難しい。

 こういう事は、黒歌や美猴に任せていたのが悔やまれる。

 兵藤一誠も、不審者扱いされそうになっていた。

 

 徹の方は、上手くやっているようだ。

 相変わらず、人に信頼されるのが上手だと思う。

 プレシアの雰囲気も、随分柔らかくなっていた気がする。

 フェイトを褒めていたのだから。

 それに、初めて会った時より、随分顔色も良かった気がする。

 明日は『時の庭園』に戻る事になった。

 戻っている間に『ジュエルシード』が発現しても、高町なのはの技量なら、封印前に接触できるだろう。

 俺や兵藤一誠が本気になれば、だが。

 『ジュエルシード』よりも、プレシアとフェイトの関係に比重を置いている。

 ――まぁ、徹がプレシアに肩入れしているのだから、今はそれでいいか。

 帰るのが多少遅れても、だ。

 

 

 

 L月W日

 

 『時の庭園』に戻ってきている。

 集めた『ジュエルシード』も三つ。

 プレシアとしてはもっと集めてほしいようだが、何も言ってこなかった。

 それに、雰囲気が随分と柔らかい。

 俺や兵藤一誠が居るから、『ジュエルシード』集めにあまり焦りを感じていないのだろう。

 あの白い魔法使い――高町なのはも集めているようだが、脅威足り得ない。

 それも、プレシアの機嫌が良い一因だろう。

 問題無く『ジュエルシード』集めは進んでいる。

 

 

 

 L月X日

 

 せっかく『時の庭園』に戻ってきているが、相変わらずプレシアとフェイトの関係は良くない。

 最初の頃より少しはマシになったのかもしれないが、良くない。

 どうにかしたいと思うが、どうすればいいか判らない。

 俺はこんな時、父親から逃げていたから。

 逃げないフェイトを、眩しく思う。

 アルフはプレシアを嫌いだと言っていたが、それが普通だ。

 俺も嫌いなのだろう。――少なくとも、好きではない。

 実の娘に負の感情を向ける。そんな母親を、誰が好きになれるだろうか。

 だが、フェイトは違う。

 あの優しい少女は母親が好きで、母親の為に頑張っている。

 血の繋がりも絆も無い俺達よりも、プレシアという母親の事を知っているのに、信頼している。

 だからこそ辛いだろうに。

 それでも母親を信じている。

 

 

 

 L月Y日

 

 裸の付き合いか。

 確かに、温泉は悪くなかった。兵藤一誠も、あれ以来機嫌が良い。

 ……兵藤一誠はいつもか。いつも前向きだ、あいつは。

 

 だが、いきなりプレシアとフェイトを同じ風呂に入れるのは難しい。

 ――兵藤一誠にしては、良い考えだと思ったのだが。

 母と子を仲良くさせる。

 それがこんなにも難しいとは知らなかった。

 いや……俺が家族というものを理解できていないからだろう。

 信頼できる仲間や友は居る。

 だが――俺に家族は居ない。

 本当の意味での、血と絆で繋がった家族は、もう失くした。壊れてしまった。

 そんな俺が、他人の家族を気に掛ける事が間違いなのだろうか?

 

 

 

 L月Z日

 

 徹は凄いな。

 プレシアが、フェイトの作った朝食を褒めていた。

 本人は、フェイトが作ったとは知らなかったのだろうが、それでもフェイトは喜んでいた。

 俺は、昨日の兵藤一誠の考えすら思い浮かばなかったというのに。

 自分が作った料理だと言って、フェイトが作った料理をプレシアに食べさせる、か。

 良く思い付くものだ。感心する。

 今はまだ、あの朝食をフェイトが用意したと言ったら怒るだろうな。いや、無関心だろうか。

 どうにかして、プレシアの視線をフェイトに向けさせたい。

 その最初の一歩になれば、と思う。

 

 なんだろうな――プレシアが、フェイトの料理と知らなかったとはいえ、美味しいと言った事が嬉しい。

 俺はあの時、父親に嫌われないようにしてきた。

 だが、好かれようと行動していただろうか?

 あの時、徹のように助けてくれる、支えてくれる友が居たら……。そう思ってしまう。

 ――やはり、お前は凄いな、徹。

 明日からまた『ジュエルシード』集めだ。

 集めれば……プレシアはフェイトを褒めるだろうか?

 

 

 

 L月!日

 

 フェイトの調子がいい。

 ――良い事だ。この調子で、『ジュエルシード』を集めたい。

 このまま『ジュエルシード』を集める事が出来れば、もしかしたら――そんな期待がある。

 甘い考えだ。

 裏切られる――その不安もある。

 プレシア・テスタロッサは、その全てを話していない。

 『ジュエルシード』の事もそうだ。

 願いを叶える宝石。だがその願望は、歪んだ形で成就される。

 その事も、事前に教えられなかった。

 知らなかった? そんなはずはない。

 『ジュエルシード』という宝石の存在を知っていたのだ。どんなものかという情報も掴んでいたはずだ。

 それに、どうしてああまでフェイトを目の敵にするのかも。

 フェイトは、急に母親が変わったと言っていた。

 そんな事があり得るのか?

 何かあったと考えるのが普通だろう――だが、何があったのか、調べようも無い。

 この世界には頼れる仲間も、友人もいない。俺たちが信頼できるのは、俺達四人だけだ。

 俺達が出来る事は、今はただ『ジュエルシード』を集めるだけだ。

 元の世界に帰る為にも、だ。

 

 

 

 L月#日

 

 『時空管理局』という組織から接触があった。

 ――いきなり現れて拘束されたからか、兵藤一誠が反射的に行動したが。

 フェイトから聞いたが、この世界――『次元世界』の管理者を名乗る組織なのだそうだ。

 警察……治安維持部隊の意味合いが強いようだが。

 それに、重火器ではなく『デバイス』と魔法を使っていた。

 魔法使いの部隊。

 『禍の団』や『魔女の夜』とは違う、正規の戦闘集団という事だろう。この世界の、だが。

 面倒な事になりそうだ。

 兵藤一誠ではないが、ため息が出そうだ。

 まぁ、あいつの場合はやり過ぎて徹に怒られないか、という事で悩んでいるが。

 

 それにしても、いきなり拘束してきた相手も相手だが、流石にブーストした魔力弾はやり過ぎたかもしれないな。

 直撃の寸前に半減させたから生きてはいるだろうが、無事だといいな。

 防御結界も張っていたようだし。

 徹は人が死ぬのを嫌がるからな。

 そう言うと、兵藤一誠は頭を抱えていた。おそらく、内面ではドライグも。

 フェイトとアルフは、どうして兵藤一誠が徹の事で頭を抱えているか判らないようだった。

 そうだろうな。

 俺としては、笑うしかない。

 徹の本当の力を知ったら驚くだろうか? 驚くだろうな。

 まぁ、そんな事態にならないように俺達は動きたいのだが。

 取り敢えず兵藤一誠には、手加減を覚えてもらいたい。

 

 

 

 

 L月$日

 

 『時空管理局』の事をプレシアに報告した。

 ――よくも、黙っていたものだ。

 『ジュエルシード』。あの宝石はやはり危険だ。

 治安維持部隊と敵対行動をとったとなると、知らなかったとはいえ俺達も犯罪者として見られているだろう。

 いまさら「知らなかった」と説明しても、信じてもらえないだろう。

 むしろ、むざむざ自分から捕まりに行くようなものか。

 まったく……上手く使われたものだ。

 フェイトから謝られたが、知らなかったこっちが悪いのだ、気にする事ではない。

 これからは、悪魔らしく行動する事にした。

 殺しはしないが、さっさと『ジュエルシード』を集めさせてもらおう。

 プレシアは――とりあえず、徹とオーフィスに任せよう。

 流石に、あの二人相手に無茶は出来ないだろう。

 集め終ったら……色々と文句を言わせてもらおう。

 

 それと、兵藤一誠がドライグから怒られたそうだ。

 ドライグも、アルビオンと同じく徹に懐いているからな。

 怒られたくはないのだろう。

 

 

 

 L月%日

 

 

 昨日は『時空管理局』と事を構えてしまったので、今日は様子見で行動しなかった。

 偶には休みも必要だろう、とフェイトには言っておいた。

 ――どう動いたものか。

 相手は組織だ。人海戦術で動かれたら、面倒な事になる。

 戦えば勝てる。だが、『ジュエルシード』の争奪戦では不利になる。

 面倒になった。本当に。

 町に目立った動きも、魔力の発動も無かった。

 向こうはどう動くだろうか。

 後手後手に回るだろうが、しばらくは様子を見ながら行動するしかないだろうな。

 力で捻じ伏せるにも、相手の戦力も規模も判らない。

 

 フェイトが、料理を作ってくれた。

 以前聞いた、リニスというメイド――使い魔から習った料理だそうだ。

 美味しかった。

 リニス――プレシアの使い魔だった山猫。フェイトの魔法の師。

 居ないという事は、今はもう……そういう事だろう。

 

 さて、どこまでプレシア・テスタロッサを信用したものか。

 フェイトに俺達を騙せるような器用な真似が出来るとは思わない。

 アルフもだ。

 とりあえず、兵藤一誠の言う通り、『ジュエルシード』を集めるか。

 まだ情報が足りない。

 プレシア、フェイト、『時空管理局』、『ジュエルシード』。

 この世界にしがらみが無い俺達は、誰に付き、何の為に動くべきだろうか。

 

 




ヴァーリ君は良いお兄ちゃん。……になれるような気がする

フェイト「――ヴァーリお兄ちゃん」

ヴァーリ「なんだ、フェイト?」

……和む(*´ω`*)
プレシアさんは、改心した後に謝れば許してもらえると思う。
このメンツは、その辺りあんまり気にしないだろうし。
誠心誠意謝れば許してくれる人たちだと思う。徹君に危害を加えなければ(ボソッ


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リリカル6(白龍日記)

絶望「(´・ω・`)ノ<よう」


 M月A日

 

 初めて『ジュエルシード』の暴走を見たが――凄まじいな。

 高町なのはの使い魔が言っていた、使い方を間違えたら世界を滅ぼすというのも、あながちウソではないようだ。

 アルビオンの『半減』の力で対応できたが、これが二十一個揃って暴走となると、確かに事だ。

 だが、確かにあの程度は必要なのかもしれない。グレートレッドをこの世界に呼ぶためには。

 フェイトとアルフは、精神的に疲れていた。

 世界を滅ぼしかねない魔力だ、子供が目の当りにしたら、確かに精神的に辛いものがあるだろう。

 ……オーフィスはアレを軽く凌駕する魔力を放てるが。

 慣れとは恐ろしいな。本当に。

 

 今回の『ジュエルシード』封印の際、フェイトのバルディッシュが破損した。

 何度か『半減』したとはいえ、バルディッシュの許容限界以上の魔力を発していたようだ。

 プレシアの所へ行かせたが、アルフと二人で大丈夫だろうか。

 まぁ、徹とオーフィスも居るから、問題無いだろう。

 というよりも、アルビオンとドライグが心配している事は別だったが。

 今回の事は、フェイトが望み、高町なのはと接触する事を願ったからだ。

 確かにフェイトに無理をさせたから、その事で徹から何か言われる――かもしれないが。

 

 

 

 M月B日

 

 今日は色々と情報が手に入った。

 町で『ジュエルシード』を探していたら、『時空管理局』から接触があった。

 向こうは頭となる女性――リンディ・ハラオウン一人だったが。

 この世界では俺達レベルの戦士はかなりの脅威のようだ。

 先日兵藤一誠が反射的に殺し掛けた少年も、管理局では若いながら、それなりの実力者らしい。

 それを、出会い頭に吹き飛ばしたのは失敗だった。目立ち過ぎたな、兵藤一誠。

 元の世界だと、俺や兵藤一誠レベルの者は多い。

 俺達よりも強いヤツも数多くいる。

 ああまで警戒していたが、オーフィスを見たらどう思うだろうか?

 

 『ジュエルシード』の危険性、俺達の『神器』の事、『時空管理局』としての対応。

 俺達としては、『ジュエルシード』を集めたら元の世界に帰る。

 ――その場合、残されたフェイト達はどうなるだろうか?

 面倒だな。

 さて、どうしたものか。

 それにしても、この世界では『神器』の事を『ロストロギア』というそうだ。

 『ジュエルシード』もその『ロストロギア』となるらしい。

 

 それと、フェイトは今日戻ってきた。

 プレシアの『デバイス』修理の技術は相当高いようだ。

 アルフが言うには、昨日徹夜で修理したそうだ。

 ……随分と丸くなったように思うのは、俺だけだろうか?

 アルフも驚いていたが。

 まぁ、フェイトが喜んでいるなら、それでいいか。

 

 

 

 M月C日

 

 フェイトと俺、アルフと兵藤一誠に分かれて『ジュエルシード』を探した。

 見つからなかったが。

 それと、俺と兵藤一誠が昨日『時空管理局』と接触した事は黙っておくことにした。

 フェイトを疑う訳ではないが、どこからプレシアに気付かれるか判らない。

 別に裏切るつもりは無いが、プレシアは管理局の事を黙っていた。

 管理局がどういう組織化は少しは理解したが、プレシア本人にも思う所があるのだろう。

 なら、聞かれるまでは黙っていようと思う。この程度の事で疑われるのも面倒だ。

 

 アルフには内緒にして、フェイトに甘い物を奢った。

 偶には良いだろう。

 小さいのに何時も頑張っているから、と。

 

 

 

 M月D日

 

 高町なのはが『時空管理局』局員と一緒に行動していた。

 リンディ・ハラオウンが勧誘したのか、あの少女が自分から志願したのか。

 どちらにしても、『ジュエルシード』を探すなら、またあの少女とぶつかる事になるだろう。

 ……あまり良い事ではないのかもしれないが。

 俺達が管理局員を相手にするなら、あの少女の相手はフェイトになるだろう。

 そして、フェイトもあの少女と戦う事を望んでいる。

 先日の温泉の時、『ジュエルシード』が暴走した時――何か思う事があったのかもしれない。

 フェイトが自分の意志を出すのは良い事なのかもしれないが、それが戦いの事とは――。

 複雑だな。

 アルフと二人、頑張るしかないな。

 兵藤一誠は……戦いに集中しろ。

 手加減を失敗しても、面倒は見きれない。

 

 

 

 M月E日

 

 俺達が『ジュエルシード』を探している間に、徹とオーフィスが海鳴に来たと言っていた。

 呼べば合流したのだが。

 翠屋のシュークリームを食べたと言っていた。

 アレはかなり美味いからな。

 オーフィスも喜んでいたようだ。あと、プレシアも。

 驚いた。――随分丸くなったな、あの女も。

 俺達も、今日は全員でシュークリームを食べた。美味しかった。

 

 

 

 M月F日

 

 どうにも動き辛い。

 管理局もこちらを警戒しているのか、纏まって行動しているから探索が進まない。

 フェイトとアルフが居るから、俺達も分かれての探索が難しい。

 なので、今日は動かなかった。

 これで少しは警戒を緩めてくれただろうか?

 

 兵藤一誠の案を採用する事にした。

 探索は『時空管理局』に任せ、連中が見付けたら俺達が『ジュエルシード』を奪う。

 悪くない案だ。

 まずは『ジュエルシード』を集める。

 元の世界に帰るには、あれが必要なのは変わらない。

 その後は、『ジュエルシード』を渡すなりすれば……何とかならないだろうか。

 ――プレシアがどう動くかが判らない。それが一番の問題なのだが。

 

 

 

 M月G日

 

 『時空管理局』が見付けた『ジュエルシード』を奪うことに成功した。

 封印できるのがフェイトだけなのでフェイトへの負担が多いが、効率は悪くない。

 高町なのはとは接触しなかったのも、良かった。

 フェイトはあまり戦わせたくない。

 ……母親の為に頑張っているのだ。そこに戦いは必要無い。

 

 

 

 M月H日

 

 今日は『ジュエルシード』が見つからなかった。

 管理局側も探索を急いでいるらしく、今日も探していた。

 俺達の狙いを理解しているのだろうが、それでも探すしかない。

 連中は次元世界を『管理』していると言うのだ、その世界を危機に晒す『ジュエルシード』はどうあっても自分達の手で集めなければ、という思いがあるのだろう。

 その熱意は素晴らしいと思うが、せいぜい利用させてもらうとしよう。

 こちらは人数が少ないので、人海戦術は正直助かる。

 

 フェイトとプレシアの関係は、少しは改善しているのだろうか?

 ……俺達がこの世界に来た時間など、フェイトたちが過ごしてきた時間に比べたら微々たるものだろう。

 だが、恐らくプレシアは少しずつ変わってきている。

 少なくとも、初めて会った頃のような冷たい目をフェイトに向けなくなった。

 本人がその事に気付いているかは判らないが――。

 フェイトも、笑顔が増えた。

 アルフの愚痴も減った。

 このまま『ジュエルシード』を集め終えれば……それは、甘い考えか。

 

 

 

 M月I日

 

 今日も、『ジュエルシード』を二つ見付ける事が出来た。

 見つけたのは、俺達ではないが。

 兵藤一誠も、随分と手加減が上手になった。

 ドライグと精神世界で修行したのだそうだ。

 今回の戦闘ないようにも、満足していた。

 まぁ、手加減が上手になれば徹も喜ぶだろうな。

 ――俺は相手の魔力を『半減』し、無力化するだけだ。

 何か修行が必要か? アルビオンも修行したいそうだが、正直、必要性を感じない。

 ここしばらく『極覇龍』になっていないからか、どこかで暴れたいものだ。

 そういう意味では、修行というのも悪くないのかもしれない。

 ……この世界で『極覇龍』になろうものなら、『時空管理局』にどれだけ警戒されるか判ったモノではないが。

 魔法使いのバリアジャケットの代わりに『禁手』の鎧を纏っているが、アレも必要無い程度だし。

 

 

 

 M月J日

 

 海の底に『ジュエルシード』が沈んでいるようだ。

 ……どうしたものか。

 流石に海に潜って探すのは、骨が折れそうだ。

 取り敢えず、今日は俺とフェイトが見張りをして、兵藤一誠とアルフには管理局側を監視させた。

 進展は無かった。

 どうしたものか。

 今日は、変なタイ焼きを食べた。チョコ味だった。

 タイ焼きの中身は粒あんだろう。

 フェイトには好評だったが。

 今度、粒あんのタイ焼きを食べさせようと思う。

 

 

 

 M月K日

 

 アルビオンが拗ねた。ドライグが徹に褒められたからだ。

 宿主である俺達より、徹の方を優先しているような気がするのは気のせいだろうか?

 まぁ、別にいいが。徹もアルビオンも、俺にとっては大切な存在だ。

 それにしても、褒められたのは兵藤一誠であって、ドライグではないのだが。

 海に潜って『ジュエルシード』を確保したのが良かったようだ。

 昨日、俺が潜れば、と文句を言っていた。

 ――別に、潜っても良かったのだが。

 まぁ、褒められたいなら、行動で示せばいい。

 

 

 

 M月L日

 

 海の『ジュエルシード』も管理局には気付かれている。

 どうやって探したものか――。

 まぁ、俺か兵藤一誠が見張っていれば連中も無理に探す事が出来ない。

 時間はある、何か策を考える事にする。

 取り敢えず、今日は俺が見張りをした。

 いい天気だった。

 釣りをした――今度、美猴と釣りの勝負をしよう。

 勝てる気がする。自信がついた。

 

 今日の晩御飯は、俺が釣った魚を焼き魚にした。

 新鮮な魚は刺身が良いらしいが、誰も魚を刺身用に捌けなかった

 海鳴という名前だけあって、魚が美味かった。

 

 

 

 M月M日

 

 フェイトから、海中の『ジュエルシード』を確保する案が出た。

 魔力をぶつけて、無理矢理発動させる。

 俺が『ジュエルシード』の魔力を『半減』させた後に確保する。

 悪くない案だ。

 俺の心配をしていたが、問題無い。

 

 おそらく、これを集め終ったら、俺達は元の世界に帰る。

 フェイトに泣かれた。

 優しいな、あいつは。

 この関係も、もうすぐ終わる。

 『ジュエルシード』を集め終ったら――プレシアは、フェイトを見るだろうか?

 あの母親は、娘を見るだろうか?

 俺達は、元の世界に帰る。

 ただ――それだけが、心配だ。

 

 

 

 M月N日

 

 今、『時空管理局』の戦艦、アースラに居る。

 プレシア・テスタロッサ。

 SSクラス魔導師で、フェイト・テスタロッサの生みの親。

 生みの親――母親とも言えるし、他人……と言えるのだろうか。

 なるほど、と思う。

 なぜあれほど、プレシアがフェイトを拒絶していたのか。受け入れなかったのか。

 俺達が来るまで――アルフに聞いた話だが――フェイトに冷たく当たっていたのか。

 

 アリシアの代わりとして、フェイトは産まれた。

 造られた、と言えるのだろう。リンディ・ハラオウンに聞いたが、プレシアはそういう技術を持っているらしい。

 何故このタイミングで、と思わなくもない。

 理由は――なんとなく判るが。

 海上で『時空管理局』と『ジュエルシード』の争奪戦を行った。

 俺と兵藤一誠が管理局を抑え、フェイトとアルフが、高町なのはとその使い魔と戦った。

 その最中に、フェイトはプレシアの雷撃に落された。

 『半減』はしたし、兵藤一誠が庇ったが、相当なダメージのようで、まだ眠っている。

 それに――プレシアの『告白』も随分と堪えたようだ。

 自分が普通の人間ではなく、アリシアという少女のクローンだと。

 不器用だな、本当に。

 プレシア・テスタロッサ。

 お前は表情が豊かになった。感情が隠せなくなった。

 ――お前の傍に徹が居てくれて良かったと思う。本当に。

 

 

 

 M月O日

 

 俺達は悪魔だ。

 悪魔は悪魔らしく、暴れさせてもらった。

 全力ではなかったが、中々に楽しかった。

 『悪役』には悪魔が丁度良い。

 『禁手』で叩きのめし、『極覇龍』と『真紅の赫龍帝』まで見せてやった。

 『時空管理局』はあの世界では“正義”なのだろう。

 だが、母親と娘の喧嘩に割り込むのは無粋すぎる。

 オーフィスも前線に出て、グレートレッドまでもがこの世界を見つけ、姿を現した。

 俺達ですら脅威と感じていた連中だ、『無限』と『夢幻』はどう見えただろうか?

 それを確かめられなかったのが、心残りと言えば心残りか。

 

 ――俺達が、プレシア達を利用した。

 プレシア達から『ジュエルシード』の情報を手に入れ、グレートレッドをこの世界に召喚した。

 まぁ、脚本としてはそんな所だ。

 ちなみに、演出家は上代徹。

 どうやって集めたのか、二十一個の『ジュエルシード』を手元に集め、纏めて暴走させた。

 そうやって、グレートレッドが通れるだけの『虚数空間』を創り出した。

 ……相変わらずデタラメだな。

 目的としては――管理局を混乱させたかった、といった所か。

 その辺りは、プレシアが上手くやってくれるだろう。

 アレも犯罪者だったそうだが、今回は“悪魔から世界を救った”側だ。

 それに、フェイトとアリシアは完全に被害者。

 リンディ・ハラオウンとクロノ・ハラオウンの人となりも、決して悪い訳ではないようだった。

 

 ――プレシア。いきなり母親になれとは言わない。

 お前の性格だ、それが難しいだろうという事くらいは、判っている。

 ただ、フェイトを見てやってくれ。目を逸らさないでやってくれ。

 あの少女は、とても優しい。

 ……お前が真実を告げた後も、母親を心配するほどに。

 だから――今ではなくいつか、家族として、接してやってほしい。

 それだけが、俺の願いだ。

 お前と、フェイトと、アリシアと、アルフ。

 お前たちが家族として過ごす――それが、俺の願いだ。

 

 

 

 M月P日

 

 徹の家族に怒られた。

 ……道に迷ったのは、俺達の所為ではないのだが。

 心配させたのは悪いと思う。だが、納得がいかない。

 アザゼルからも怒られた。

 今度から、異世界に行く時は一言言えとの事だ。

 どうやって伝えればいいのか……難しい事を言ってくれる。

 

 そういえば、アリシアの事を徹に聞いたら「ジュエルシードが願いを叶えた」と言っていた。

 ……相変わらずだな、あいつは。

 プレシアにも同じ事を言ったそうだ。

 『ジュエルシード』が願いを叶えた、か。

 悪くないな、ああ。お前らしい答えだ、本当に。

 




果たしてリリカル勢で、戦うだけで『世界』をいくつか壊しそうなこのメンツを相手にできるのか。
取りあえず、無印では無理だろうなぁ……。Asに期待。


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リリカル7(魔女日記)

確かにこの話自体が番外編だから、サブタイトルに番外編を付けるのはおかしいなぁ、とw



 L月*日

 

 今日も、アルハザードへの道を見つける事は叶わなかった。

 ……忘れられし都、アルハザード

 死者さえも蘇らせる秘術があるという、次元断層に沈み、滅んだ魔法王国。

 アリシアの為にその秘術が必要なのだが――いまだ、確かな道へ至る事が出来ていない。

 今日で何日目だろうか。

 今、何年目だろうか。

 ――私は、後どれだけの時間を生きられるのか。

 

 

 

 L月A日

 

 今日、変な物を拾った。

 兵藤一誠、ヴァーリと名乗った二人の魔導師。

 いや、厳密には魔導師とは違う。魔力はあるが、全く未知の力を使う存在。

 おそらく魔法ではない。魔法陣も、呪文の詠唱も無かったからだ。

 ――落ちたら助からないはずの『虚数空間』から現れた。

 しかも、病んでいるとはいえ、私の魔法の直撃を受けて無傷だった。

 何者だろうか。

 だが、一つ判った事がある。

 やはり、『虚数空間』の先には世界がある。

 それも、知的生命体が生きている、文明がある世界が。

 それが判ったのは大きい。

 ……私はまだ、頑張れる。

 待っててアリシア。もう少しよ。

 

 

 

 L月B日

 

 悪魔。ドラゴン。

 昨日拾った二人を、今日見付けた人間はそう言った。

 物語や伝説の中にしかいない、邪悪な存在。

 ――見た目は普通の人間なのだが。

 そして、今日新しく見つけた二人。

 上代徹とオーフィス。

 上代徹は人間だ。何の魔力も感じない。

 『デバイス』――彼らの言葉で言うなら『神器』も持っていないようだった。

 しかし、もう一人。

 オーフィス。

 昨日の二人も私の理解の範疇を超える存在だと言える。

 だが、あの黒い少女。

 アレは違う。

 存在が、次元が、違う。

 

 

 

 L月C日

 

 どうやら連中は、『虚数空間』に対しての知識が無いようだ。

 もしくは、『虚数空間』を自由に行き来できるのか。

 だが後者にしては、私の言葉を簡単に信じていた。

 よく判らない連中だ。

 それに、どうしてか、悪魔やドラゴンが人間と仲良くしている。

 理解に苦しむ光景だ。

 取り敢えず、連中を『時の庭園』に置く事にする。

 折角の『虚数空間』の先を知る連中だ。

 危険だが、手放すには勿体無い。

 ……私には時間が無い。多少危険でも、利用しなければならないのだ。

 

 それと、少し目を離した隙に連中がアレと知り合っていた。

 アリシアの形をした物。

 忌々しい――視界に入るだけで苛々する。

 

 

 

 L月D日

 

 どうやら連中も、アルハザードの事は知らないようだ。

 それとも、アルハザードとはこの世界での呼び名であって、異世界では別の名前があるのか。

 私がその世界を探しているというと、手伝うと言っていた。

 会って間もない、赤の他人でしかないのだが。

 どうにも調子が狂う。

 相当のお人好しのようだ、あの人間は。

 

 しかし、どう利用したものか。

 正直、あの悪魔と黒い少女の力は厄介だ。

 気分を害しただけで、こちらが消されかねない。

 手放すには惜しいが、利用するには危険すぎる。

 ……さて、どうしたものか。

 

 

 

 L月E日

 

 上代徹。あの人間が料理を作っていた。

 確かにこの家には料理を作る者は居ない。

 以前はリニスが用意していたが、それも遠い昔だ。

 それからは、適当な物を用意して食べていた。

 とても料理とは呼べないような、適当なものだ。

 だからだろう。あんな事を言ったのは。

 ただの人間。何の価値も無い男。

 まぁ、台所くらいは自由に使わせてやろう。

 それに――料理を用意してくれるなら、助かる。

 味も悪くなかった、それに――私の身体には、栄養が必要だ。

 一日でも長く生きる為に。

 

 あの悪魔と黒い少女は利用価値があるが、ただの人間には何の価値も無い。

 どうしてか懐かれているようだが、それを知ろうとは思わない。

 そこまで親しくなる必要も無い。

 私はアリシアの為、連中は元の世界に帰る為。

 利用し合おうではないか。

 

 

 

 L月F日

 

 あの悪魔達には、フェイトとアルフを鍛えてもらう事にした。

 とりあえずは、だが。

 兎に角、何もさせずに置いておくのは勿体無い。

 ひとつ、これから先、やろうと考えている事がある。

 フェイトとアルフだけでは心許なかったが、あの悪魔達があの人形を鍛えるなら別だ。

 今よりも使い物になるだろう。

 リニスは甘い――優しさを残した。

 戦う技術を授けたが、どうしてもあの人形には戦いの心構えが無い。

 自分が傷つく覚悟はあっても、傷付ける覚悟は無い。

 ――あの二人が本当に悪魔だというのなら、悪魔の本性を授けてほしいものだ。

 

 

 

 L月I日

 

 あの悪魔二人と、黒い少女の魔力を測定した。

 兵藤一誠はBランク。

 ヴァーリはSランク。

 予想していたよりも低い。

 初めて相対した時の威圧感から、もっと高いと思っていた。

 それに『デバイス』――『神器』にも秘密があるのだろう。

 フェイト達の訓練の際にも、極力身を守る時だけ使い、攻撃には使用していない。

 自己の魔力だけで戦っている。

 ますますもって、不思議な存在だ。

 

 ――それにしても、あの黒い少女。オーフィス。

 アレは何だ。

 魔力を測定する事が出来なかった。

 暫定するなら、SSSクラス。

 既存の最高クラス。

 実際はそれ以上だ。

 測定できない。

 言葉にするなら、人という枠組みを超越した存在。

 あの黒い少女をドラゴンだと称していたが、私の知るドラゴンには、ここまでデタラメな個体は存在しない。

 そしてどうしてか、あの黒い少女は、ただの人間でしかない上代徹に懐いている。

 いつもあの男の後ろを追いかけている。傍に居る。

 ……理解できない。

 

 

 

 L月J日

 

 上代徹が部屋に来た。

 食事を摂れ、だと。

 研究に没頭するのは、私の悪い癖だ。

 長く生きる為には、食事――栄養は必要不可欠だ。

 判っているが、焦ってしまう。

 未だアルハザードへの道は閉ざされたまま。

 目標には近づけていない。その道すら見えていない。

 そして、私には時間が無い。

 ――アリシア。

 私の宝物。私の全て。

 必ず辿り着く。絶対だ。

 だから……もう少し待ってて。

 

 

 

 L月K日

 

 どうやら上代徹は、元の世界では相当苦労していたようだ。

 まぁ、本人の主観なので何とも言えないが。

 それにしても、悪魔、天使、堕天使、ドラゴン――それに、神。

 私達が神話と呼ぶ連中が存在する世界。

 なるほど、確かにあの悪魔――そして黒い少女は、神話の世界の住人なのだろう。

 アレだけの実力と魔力を見せられては、妙に納得できてしまう。

 それが事実かどうかはさておき、面白い話を聞けた。

 研究に行き詰った時は、こういう話で思考を休ませるのが丁度良い。

 それに――神が居るなら、その世界に行くのも悪くない。

 全知全能の代名詞である“神”なら、一つの命を蘇らせることも可能だろうから。

 ……アルハザードへの道が閉ざされたら、悪魔や天使、堕天使達が居る世界に行くのも……。

 悪くないかのかもしれない。

 ――――何を書いているのか。下らない。

 

 最後に変な事を言うからだ。

 本当に、下らない。

 家族など……私の家族は、もうアリシアだけだ。あの子だけだ。

 リニスも、あの人もいない。

 もう、私にはアリシアしかいないのだ。

 アリシアが、家族が居るから頑張れる。

 ……その点だけは、同意する。

 

 

 

 L月L日

 

 『ジュエルシード』二十一からなる『ロストロギア』。

 所持者の“願い”を――歪んだ形ではあるが、叶える道具。

 それが、『第97管理外世界』に落ちた。

 まだ『時空管理局』の手は入っていないが、あれほどの『ロストロギア』だ、近い内に管理局はあの管理外世界に現れるだろう。

 今までのフェイトとアルフだったら、集めるのは至難だった。

 だが今は、違う。

 なにより、あの赤と白の悪魔も手を貸してくれることになった。

 どうやらここ数日で、随分とあの人形に執心しているようだ。

 あんな人形に――気に入らないが、利用できるなら利用させてもらおう。

 

 『虚数空間』を安定させ、私の願い――アルハザードまでの道を。

 アリシアの命を願うのは……難しい。

 アレは願いを歪んだ形で叶える。

 もしアリシアの魂――肉体に何かあれば、私は……。

 おそらく、これが最期の機会だ。

 次は――私の身体がもたないだろう。

 なんとしても、成功させなければ。

 絶対に……私はアルハザードへと、至る。

 

 

 

 L月M日

 

 『時の庭園』には、上代徹とオーフィスが残っている。

 上代徹は戦闘には向いていない、オーフィスはその護衛か。それとも単に、離れたくなかっただけか。

 ……おそらく後者だろうな。

 短い間ではあるが、あの黒い少女が物事を深く捉えていない事は理解できる。

 強者の余裕。

 確かに、私は彼女に何も出来ない。

 敵意を向けたなら、その瞬間に殺されるだろう。

 だから――あの二人が残った事に、裏は無い。

 まぁ、それならそれでいい。

 研究をしていれば勝手に料理が出てくる。

 『時の庭園』の掃除も、勝手にしてくれる。

 なら、それでいい。

 それだけだ。

 

 

 

 L月N日

 

 身体の調子が良い。

 気付いたのはここ最近だ。

 ――蝋燭の最後の瞬きでなければいいのだが。

 上代徹の料理を食べ始めてからだから、単に栄養を摂っているからだろう。

 今までの生活環境を考えると、あながち間違っているとも言えない。

 それにしても、誰かに話し掛けられるのには、慣れない。

 フェイトもアルフも、私を前にしたら黙っていたから――余計にそう思う。

 上代徹。あの男は、よく私に話しかけてくる。

 何も無くても、挨拶はしてくる。

 私を畏れもせず、怖がりもしない。

 まぁ、同じ人間だ。

 悪魔と知り合っているのだから、私よりも胆力はあるのかもしれない。

 不思議なものだ。

 ただの人間。ただの、普通の人間のはずなのに。

 

 ――アリシアの事を話すと、否定されなかった。

 死者を蘇らせる。

 その禁忌を否定しなかった。

 どういうつもりだろうか。

 それとも、あの男の元の世界は、その禁忌が禁忌ではなかったのか。

 ……もしかしたら、という思いがある。

 アルハザード。

 忘れられし都。

 『虚数空間』の向こう側から現れた悪魔とドラゴン――そして、人間。

 その世界が、と。

 ……バカらしい。下らない考えだ。

 

 

 

 L月O日

 

 上代徹が、オーフィスに英語を教えていた。

 喋れないのか……少し意外に思う。

 間違っていた箇所があったので教えると、礼を言われた。

 あの黒い少女は寡黙だ。

 話した事など、数度あるかどうか。

 ありがとうなどと言われると、どうにも落ち着かない。

 アレは、規格外の存在だ。

 バケモノという言葉すら当て嵌まらない。

 だからこそ――礼など言われても困る。

 

 今日も、上代徹と話した。

 研究に行き詰っているからか、下らない会話も悪くない。

 『インテリジェントデバイス』の説明も、半分も理解できていないようだったが、話すと喜んでいた。

 妙な男だ。本当に。

 だが、あんな顔をされるのは悪くない。

 私にとっては基礎とも言えない初歩の初歩の話だったのだが――聞き上手なのだろう、あの男は。

 会話が苦痛ではなかった。

 だが、もう少し頭が良ければ、と。

 なんとなく、そう思う。

 

 

 

 L月P日

 

 『ジュエルシード』の一つ目を確保した。

 それに、『第97管理外世界』に居る魔導師とも接触したようだ。

 『ジュエルシード』の確保は良い情報だが、魔導師との接触は、もう少し控えてほしかった。

 まぁ、管理局の魔導師ではないようだが。

 聞いた限り、民間――しかも、素人だろう。

 フェイトでも相手に出来るレベルなら、あの赤と白の悪魔なら問題無い。

 『時空管理局』が介入してくる前に、数を集めておきたい。

 

 

 

 L月Q日

 

 上代徹に料理の才能は無いのだろう。

 というよりも、経験が少ないのか。

 記憶の中のリニスの料理の方が美味く感じる。

 だが――用意される食事というのも悪くない。

 研究に集中できる。

 上代徹は相変わらず話し掛けてくるが、邪魔はしてこない。

 邪魔にならない範囲で話し掛けてくる。

 それと、あの寡黙な黒い少女も、上代徹の前ではよく話している。

 ……何度も思うが、妙な関係だ。

 何故あんな規格外の存在が、たかが一人の人間にああまで懐いているのか。

 

 

 

 L月R日

 

 気晴らしに身体を動かすのも悪くない。

 今日は、上代徹に魔法を教えるついでに身体を動かした。

 というよりも、あの男は魔法の才能など無かったが。

 そもそも、魔法を使えなかった。発動する事すらできなかった。

 『デバイス』の扱いも素人そのもの。

 強さを隠していると言った風でもなかった。

 まぁ、私もそれほど戦い慣れている訳ではないが。

 ――やはり普通の……ただの人間か。

 

 オーフィスもこの世界の魔法に興味を示していた。

 しかしというか、やはりというか。

 『デバイス』が壊れた。

 あの少女の魔力に耐えられなかった。

 ――推定SSSクラス。それでは足りないな、やはり。

 魔法を発動したではなく、魔力を込めただけで壊れた。

 いったいあの少女の魔力は、どれほど強力なのか。

 

 

 

 L月S日

 

 『ジュエルシード』の二つ目を確保した。

 早いペースとは言えないが、確実に確保しているのは大きい。

 最近は身体の調子も良い。

 以前のような焦燥感も感じない。

 不思議と、落ち着いている自分を感じる。

 ――らしくもなく、フェイトを褒めていた。

 一言だけだったが。自分が信じられない。

 気の持ちようだけで、こうも変わるものなのだろうか。

 ……アレは、アリシアを模した、ただの人形なだけなのに。

 まぁ、褒めることで効率が上がるなら、これからも褒めてあげよう。

 私の役に立ちなさい、フェイト。

 

 




プレシアさんは……ツンツン。デレが無い。(ぉぃ


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リリカル8(魔女日記)

ツンツン? ツンツン……ツンツン?


 L月T日

 

 何を言いだすかと思えば。

 ……すべてが終わったら、温泉に行こうなどと、上代徹が言い出した。

 すべてが終わったら、私達は赤の他人――そもそも、文字通り住む世界が違うというのに。

 能天気な男だ。

 ――温泉、か。

 すべてが終わったら。

 すべてが、最良の形で終結したら。

 そんな夢を願ってもいいのだろうか?

 私が。

 全てを――自分すら、アリシアと同じ姿をした存在すら犠牲にしている私が。

 リニスすら……最後の家族すら、捨てた私が。

 ……下らない夢だ。

 私は。

 私は、アリシアを幸せにしたい。

 何もしてあげられなかった。

 仕事に追われ、何も残せなかった。何も残らなかった。

 だから私は。

 私の願いは、ただ一つ。

 ママ、と。

 もう一度、呼んでほしい。ただそれだけでいい。

 夢は、必要無い。

 

 

 

 L月U日

 

 昨日、下らない事を考えた。

 それもこれも、あの能天気な男が悪い。

 私とあの失敗作の仲を取り持とうとしている。

 言葉で、態度で、簡単に判る。

 あの子はアリシアではない。

 私が愛したい娘ではない。

 私を「母さん」と呼ぶあの少女は――最初から、失敗作なのだ。

 ああ、忌々しい。

 こういう時は飲むに限る。

 嫌な事を忘れる為に。現実から逃げる為に。

 ――私は弱い。

 何かに縋らなければ、生きる事すらできない。

 アリシアに、酒に、誰かに。

 

 

 

 L月V日

 

 あの失敗作を褒めてやったら、愚かしいほどに喜んでいた。

 「母さん」、「母さん」と――忌々しい。

 違う。そうじゃない。そうじゃ

 

 そもそも、アレはフェイトで、アリシアではない。

 比べる事が、間違っているのではないか。

 このままでは、また私は絶望に沈む。

 肉体が死ぬ前に、精神が死ぬ。

 ――どうして私が、フェイトにアリシアという名前を付けなかったか思い出せ。

 初めて私を呼んだ時、母さんと呼ばれた痛みを思い出せ。

 私は、アリシア以外を求めてはいけない。

 それ以外を求め、認めてしまったら――。

 何故、そんな事を思うのか。

 そんな事――とうの昔に理解していたはずなのに。

 ……あの男だ。あの男が、下らない夢物語を語るから。

 その夢物語を……確かにあの時、あの瞬間、私は悪くないと思ってしまったから。

 

 

 

 L月W日

 

 失敗作とヴァーリ達が『時の庭園』に戻ってきている。

 確保した三つの『ジュエルシード』を私に渡す為に。

 私がどういう人間か理解しているはずなのに。

 物心がついた時からずっと、私は変わらなかった。

 変わらず――あの失敗作を拒絶し続けた。

 なのにまだ、あの失敗作は私を「母さん」と呼び続けている。

 違う。

 私が欲しいのは「母さん」ではなく、「ママ」なのに――。

 

 

 

 L月Y日

 

 上代徹が、お風呂を用意した。それはいい。いつもの事だ。

 だが、あの失敗作と私を同じお風呂に入れようとした。

 ……判り易い。

 どうしてあの連中は、あの失敗作にああまで肩入れするのか。

 憐みか、同情か、それともそれ以外の感情か。

 理解に苦しむ。

 悪魔だろうに。赤の他人だろうに。

 悪魔なら、もっと悪魔らしく振舞えと言いたい。

 私はあの失敗作を愛せない。

 それは、あれが失敗作だからだ。

 アリシアではなく、フェイトだからだ。

 

 

 

 L月Z日

 

 本当に、あの男は下らない事をする。

 今日の朝食に、細工されていた。

 細工といっても、害の無いものだが。

 ……懐かしい味だった。

 リニス。

 アリシアのペット――私の使い魔。

 彼女の味がした。

 アレも、私の使い魔なのに、私の言う事を聞かない事が多かった。

 余計な事ばかり言う。邪魔ばかりした。

 ――嫌な事を思いだした。

 本当に、忌々しい。

 そして何より……何も考えず、美味いと感じた自分が忌々しい。

 

 

 

 L月!日

 

 判りやすいのだ。あの男は、感情が顔に出る。

 あのニヤけた顔を見れば、何を考えているかなどすぐに判る。

 それに、あの失敗作とあの男では、味も、見栄えも、何もかもが違う。

 腹いせに「フェイトの料理の方が綺麗だった」と言ってやると、落ち込んでいた。

 ざまあみろ。

 今晩は、随分と手抜きをしていたが。

 栄養など考えず、手軽な料理を作ってきた。

 「手抜き」だというと、「勘弁してくれ」と言っていた。

 ……思った以上に打たれ弱いみたいだ。変な男だ。

 これに懲りたら、下らない事に時間を割くのは止めてほしいものだ。

 

 

 

 L月#日

 

 『時空管理局』が、現れた。

 狙いは間違いなく『ジュエルシード』だろう。

 兵藤一誠が拘束に反撃してしまったと言っていた。

 恐らく敵対行動ととられただろう。

 それと、上代徹からも『時空管理局』の事を聞かれた。

 なるほど、あの男の世界には管理局は存在していないのか。

 どうやら本当に、どこかの次元世界ではなく、完全な異なる世界からの来訪者なのか。

 疑っていたわけではないが、確信に変わった。

 『虚数空間』の先に、その何処かに、私が目指している場所はある。

 ――ここからだ。

 私は、アルハザードへ渡る。

 死者蘇生の秘術。もしくは、過去への渡航。

 アリシア……もうすぐよ。もうすぐ、

 

 

 

 L月$日

 

 ヴァーリ達が、私を疑っている。

 いや、最初から疑っていたのは確かだ。

 ただ、確信を得た。管理局と接触して、『ジュエルシード』の危険性に気付いた。

 そんな所だろう。

 もう遅い。貴方達はフェイトを見捨てる事が出来るかしら? 優しい悪魔。

 賭けだ。

 利用する悪魔に潰されるか、管理局に潰されるか――願いを叶えるか。

 

 

 

 L月%日

 

 上代徹に『時空管理局』の事を説明した。

 私の主観が強い説明になったが、まぁ、問題は無いだろう。

 ただ――あの黒い少女。

 あの視線が忘れられない。

 私の心の奥まで見据えているような、深く昏い――黒い瞳。

 大丈夫だ。

 私は……アリシアを蘇らせる為なら、あのバケモノすら利用してみせる。

 

 

 

 M月A日

 

 あの子はどんな気持ちで戦っているのだろうか?

 バルディッシュを壊して、無茶をして、傷付いて……それでも、私の為にと言う。

 「母さん」、「母さん」――と。

 私は決して、貴方を認めない。認められない。

 フェイト。貴女はフェイト。アリシアではない。私の娘ではない。娘の形をした別人だ。

 愛してなどいない。愛などどこにも無い。

 だから、リニスを使って戦い方を教えた。

 愛する娘を戦場に送る母など居るものか。

 犯罪の片棒を担がせようとする母など居るものか。

 ……何故、そんな簡単な事にも気付かない。

 馬鹿な子。愚かな子。哀れな子。

 

 

 

 M月B日

 

 眠い。

 徹夜なんか、するものじゃない。

 上代徹はニヤニヤと笑っているし。

 今度また、魔法の訓練をしてやろう。長生きには、運動も必要だ。

 ……眠い。

 徹夜までしてバルディッシュを修理したのだ。

 結果を出しなさい、フェイト。

 

 

 

 M月D日

  

 上代徹とオーフィスが、甘い物を食べたいと言っていた。

 作れ。

 ……作れないと言われたが、私にどうしろと。

 これでも、アリシアを失ってから、料理などした事が無い。昔は出来たが。

 甘い菓子の作り方なんて、覚えていない。

 覚えているのは、魔法の術式と、デバイスの知識だけ。

 ――本当に、変な事を言いだす男。

 

 

 

 M月E日

 

 偶には、甘い物も悪くない。

 久しぶりのシュークリームは、とても美味しかった。

 ……溜息しか出ない。

 私は何をしているのか。

 自己嫌悪の海に沈みたい。

 沈んで、浮かんでこなければいいのに……。

 

 あの男が関わると、碌な事が無い。

 忌々しい。

 

 

 

 M月F日

 

 『ジュエルシード』集めの方法は、ヴァーリ達に任せている。

 私が口を出すより、連中の方が戦い慣れているだろう。

 勘ではあるが――組織とも戦い慣れている。そんな気がする。

 管理局の事を黙っていた事に怒ってはいたが、管理局と敵対する事には怒っていなかった。

 理由としてはそれだけだが……不思議と、信じられる気がする。

 

 それと最近、上代徹が妙に主夫染みてきている。

 『時の庭園』の掃除、一日三食の食事の準備に慣れてきた、とも言える。

 言うと、複雑そうな顔をしていたが。

 ……本当によく判らない男だ。

 悪魔やドラゴンも理解できないが、あの男もよく判らない。

 

 

 

 M月G日

 

 『ジュエルシード』の五つ目、六つ目を確保した。

 これでまた、私の目的に一歩近づけた。

 管理局も確保に動いているだろうが、見つけたらヴァーリ達が奪いに動く。

 いくら管理局の精鋭だろうと、あの悪魔達に勝てるとは思わない。

 それこそエースかストライカー級の魔導師が必要になる。

 管理外世界に、それほどの戦力があるとも思えない。

 あとは、管理局が見付けた『ジュエルシード』を私達が回収するだけでいい。

 簡単だ。時間もかからない。

 むしろ、管理局が人海戦術で探してくれるなら、ヴァーリ達が捜すよりも早く見つけるだろう。

 

 『ジュエルシード』を集め終ったら、この関係も終わる。

 私はアルハザードへ、上代徹達は元の世界へ。

 その後の事など、知った事ではない。

 管理局が『ジュエルシード』をどうするかも、興味が無い。

 アリシアを蘇らせる。

 あの子に与えてあげられなかった幸せを――。

 フェイトとアルフは……。

 どうでもいい事か。

 『ジュエルシード』を集め終ったら、私達の関係も終わる。

 

 

 

 M月H日

 

 家族とは何か。

 あの男にも家族が居る。

 ヴァーリ達悪魔を友と呼び、オーフィスのような規格外を家族だという。

 血の繋がりも何も無い、赤の他人でも家族になれる。

 血の繋がりがあっても、家族にはなれない。

 その違いは何か。

 ――傍に居てくれて、寂しさを感じない。

 それが、あの男の家族の定義。

 偶に出る名前はきっと、あの男の傍に居て、寂しさを感じさせない存在。家族の名前なのだろう。

 私にとってはアリシアだ。

 私の心の支え。

 あの子を蘇らせる……あの子に幸せを与えたい。

 それだけが、私が今日まで生きてきた理由だ。

 誰が傍に居たかなどどうでもいい。

 寂しさよりも苛立ちを感じた――それも、関係無い。

 フェイトは私を家族だと思っているのだろう。

 あの子は、アリシアの失敗作だ。アリシアではない。だが、フェイトだ。

 ……アリシアではないが、一つの命ではある。

 

 あの男に話を聞かなければ良かった。

 『ジュエルシード』集めが問題無く進んでいる所為で、気が緩んでいる。

 アリシア以外の事を考える余裕など、私には無いのに。

 フェイトの事を考える余裕は、私には無い。

 だから――上代徹達がフェイトの事をどう思おうが、私はフェイトを受け入れる事が出来ない。

 アリシアとフェイト。私はもう選んでいる。

 ……善意の押し売りは迷惑だ。

 私は、両方に手を伸ばせるほど器用ではない。

 仕事とアリシア。私は以前、仕事を選んだ。

 だから今度こそ、アリシアを手放さない。必ずだ。

 

 

 

 M月I日

 

 今日もまた、新たに『ジュエルシード』を二つ確保した。

 私の目標に、少しずつ、だが確実に近付いている。

 最近は体調も良い。

 身体が軽くすら感じる時がある。

 大丈夫。

 必ず辿り着く。辿り着ける。

 ――アリシア、待っていて。

 ママが必ず、貴女を幸せにしてみせるから。今度こそ。

 

 上代徹が、管理局に事情を説明したら、と言っていた。

 冗談にしては笑えない。

 どこまで本気なのか……それとも、落とし所を私に言ったつもりか。

 ここまで来て退けるものか。

 私はアルハザードへと辿り着く。

 次元世界を支配する管理局と敵対してでも。

 ――もう退けない。

 私は、私の手で、アリシアを蘇らせる。

 ……上代徹が、どうして悪魔達に慕われているのか、理解できた気がする。

 だが、私は受け入れない。

 もう、アリシアが私の全てなのだ。アリシアだけが……。

 

 

 

 M月J日

 

 この関係ももう少しの間だと思うと、名残惜しい気持ちがある。

 美味とは言えないが、食べ慣れた食事も、だ。

 おそらく、数的に今日見付けた海底の『ジュエルシード』が最後だろう。

 私の計算でも、今確保している『ジュエルシード』と海底の分を合わせれば、『虚数空間』を安定させられるはずだ。

 

 残り僅かだと思うと、あの男の料理も悪くないように思える。不思議なものだ。

 今日は味付けが濃かったが。

 そう言うと、自分で作れと言われた。

 昔は出来たのだ。アリシアに、作ってあげていた。

 もう、料理の作り方など、手順など、忘れてしまった。

 ……きっと、アリシアを蘇らせても、元には戻れない。

 幸せとは何だろう。

 私はアリシアを蘇らせて、幸せにしてあげたい。

 あの時してあげられなかった事を、沢山してあげたい。

 でも――あの時してあげた事を、する事が出来ない。

 判っている。判っていた。

 結末が近付くと、余裕が生まれる。

 余裕は、気付きたくない事まで気付かせてくれるのか。

 

 ……上代徹。貴方の料理は美味しいわ。

 絶対に口にはしないが。

 

 

 

 M月K日

 

 今日、『ジュエルシード』が新たに二つ手に入った。

 これで残り二つ。

 

 オーフィスから、フェイトをどうするのか聞かれた。

 私がアルハザードへ――『虚数空間』の先へ渡り、上代徹達は元の世界に帰る。

 残されるフェイトとアルフは、と。

 管理局に保護されるか、自分達の力だけで生きていくか。

 知った事ではない。

 アレは、私が望んだモノではない。

 人形だ。

 アリシアの形をした人形。

 失敗作。だから、知った事ではない。

 

 ――あの、感情を写さない瞳は苦手だ。

 まるで、私の心を見透かしているかのようで。

 私は、アリシアを選ぶ。フェイトではない。

 それだけだ。

 今までと同じだ。

 

 

 

 M月M日

 

 「母さん」、「母さん」と――あの失敗作は私を呼ぶ。

 物心ついた時から、ずっと。

 何度も、何度も、呼んでいた。

 私を――母親と。

 憎かった。

 辛かった。

 悲しかった。

 ……五歳になった時、思い知らされた。

 アレは、アリシアではない。アリシアの形をした、別の何かだと。

 だから拒絶した。

 怖かった。

 アレを受け入れたら、私はアリシアを忘れてしまう。

 そんな気がしたから。

 

 ――フェイト。

 アリシアを失って絶望した。

 絶望しても、死ぬ事が出来なかった。

 そして見付けた……一つの光は、貴女だった。

 フェイト。

 アリシアの紛い物。

 でも、私の傍に居てくれたのは貴女。

 悲しい時、辛い時、寂しい時――私の傍に居たのは貴女。

 だから――そうね。

 生きる場所を、用意してあげる。

 それが、最後に貴女に贈る物。

 私は、アルハザードに行くわ。貴女を置いて。

 

 

 

 M月N日

 

 フェイトに、全てを伝えた。

 管理局――戦艦アースラへも、同様の映像を送った。

 さぞかし同情を得られる内容だったはずだ。

 フェイト。

 アリシアの紛い物。失敗作。出来損ない。……誰からも愛されない、ただの廃棄物。

 それでいい。

 『時空管理局』の頭が腐っていても、その末端までは腐っていない事を信じよう。

 私はね、フェイト。

 貴女が大嫌いだった。

 アリシアの顔を、声を、仕草を真似た別人。

 視界に写るだけで苛々した。

 その声を聞くだけで、気が狂いそうだった。

 傍に寄られるだけで、殺意が湧いた。

 それは本当。

 でもね――それでも傍に居てくれたのはアナタ。

 この日記が貴女の手元に残らない事を祈ります。

 ……神など信じていないのに、何に祈りましょうか。

 そうね――丁度良いから、あのデタラメで規格外の、バケモノという言葉すら相応しくないオーフィスというドラゴンにでも祈りましょうか。

 祈るわ。

 この日記帳が、貴女の手に渡らない事を。

 

 

 ありがとう。

 貴女ともう会えないと思うと、少しだけ寂しいわ。

 フェイト。

 これからは、フェイト・テスタロッサではなく、フェイトとして生きなさい。

 生きて――私なんかよりもずっと幸せになりなさい。

 それが私の願いです。

 『ジュエルシード』には願いません。

 歪まず、真っ直ぐに、貴女が成長してくれる事を、願います。

 リニス。ごめんなさい。

 こんな事なら、貴女の言葉にもっと耳を傾けるべきでした。

 ……間違っていたのは、私だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 *月*日

 

 今日、母さんの日記帳を、管理局の人から渡されました。

 内緒にしておくように言われた理由が判りました。

 アレから随分時間が経ったけど、母さんの日記帳、私に届きました。

 オーフィスは、私の友達は、最高の神様のようです。

 母さんの祈りと願い事は叶えてくれなかったけど、素敵な贈り物を私に届けてくれたから。

 懐かしいです。

 ヴァーリお兄ちゃん、イッセーさん、徹さん。オーフィス。

 『時の庭園』で別れた時が最後です。また会いたいです。

 偶に、あの時間は夢だったのかも、と思う時がありました。

 でも、この日記に書かれているなら、やっぱり本当の事なんだと信じます。

 母さんはあの後、管理局の人達にヴァーリお兄ちゃん達の事を言うなと言いました。

 ヴァーリお兄ちゃん達は良い人なのに、管理局では次元犯罪者扱いです。

 それも、過去に類を見ない、最悪の犯罪者だと皆が言っています。

 そんな事無いのに。

 でも、そう言えば言うほど、皆は私が騙されていると言います。

 悲しかったです。母さんも、家の外では同じ事を言っていたから。

 少し、母さんを嫌いになりそうでした。

 ……でも、嫌いにならなくて良かったです。

 母さんも、私と同じ気持ちですか? アリシアと同じ気持ちですか? アルフと同じ気持ちですか?

 ヴァーリお兄ちゃん達を、信じていますか?

 だと、嬉しいです。

 言葉にしてくれないと判りません。

 徹さんが言ってました。母さんは不器用で鈍感だと。そうだと思います。

 

 私は、フェイト・テスタロッサです。

 母さんの娘。アリシアの妹。

 フェイト・テスタロッサは幸せです。

 母さんの娘で良かったと思っています。

 

 

 

 PS どうして『虚数空間』に落ちた時、私の手を取ってくれたの?

    アリシアを選んだと日記に書いているのに、どうしてフェイトの手を取ったの?

    何時か答えを教えてください。

    『ジュエルシード』には頼りません。

    歪んだ答えは必要無いから。

    真っ直ぐな、母さんの言葉で伝えてほしいです。

    願います。祈ります。

    オーフィス。もし居るなら、ヴァーリお兄ちゃんの世界の神様。優しい悪魔さん。

    私のお願いを聞いてください。

 

 

 

 

 PS 私も、大きなドラゴンの背中に乗ってみたいです。

 




あえて書かないスタイル。
フェイトちゃんは天使。
主人公は、後ろに(笑)が付く宿命。……あ、ピンクのひか――


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リリカル9(管理局員日記)

希望「絶望がお前のゴールだ」


……救いがねぇなorz
謎のモブ日記。
リリカル世界とD×D世界では、致命的に違うことがあります。
『非殺傷設定』? あ、徹君の事ですね(しろいめ


 L月V日

 

 少し、緊張している。

 もうすぐ『第97管理外世界』に到着する。

 仕事内容は把握しているが、どうにも気が重い。

 『ロストロギア』の探索。その確保。

 先ほど艦長からも改めて伝えられたが、やはり『ロストロギア』が関わるとなると緊張してしまう。

 『第97管理外世界』から、相当危険なレベルで『次元震』が確認されたそうだ。

 その仕事内容に不満は無いが、『ロストロギア』が関わる仕事には危険が多い。

 管理局で働いているのだから、危険なのは当たり前だが……出来れば安全に終わってほしい。

 『ロストロギア』なんて碌な物じゃない。

 パトロール中に嫌なクジを当ててしまったもんだ。

 まぁ、本当に『ロストロギア』で、無事に確保できたらボーナス確定だろうが。

 当たりクジ、と言えると良いんだが。

 

 

 

 L月W日

 

 艦長から、最近休みを取ってないが大丈夫かと聞かれた。

 むしろ、取る暇がないんですが。虐めですか。

 まぁ、あの人はそんな裏は無くて、素で言ってるんだろうけど。

 とれるかどうかわからないけど、この仕事が終わったら、休暇を取ろう。

 取り敢えず、申請してみよう。

 なぁに、こんな仕事、すぐに終わるさ。

 

 

 

 L月X日

 

 今日も昔話に付き合わされた。

 ヴィラージュさんの昔話は、本当に長い。勘弁してほしい。

 昔、どこかの次元世界で戦争屋をやってたとかで、その時命を助けてくれたメダルを見せてくるのだ。

 質量兵器の攻撃で形が歪んでしまったメダルだ。

 あの人の話は面白いが、話の内容が似通ってるのがなぁ。

 つーか、流石にメダルじゃ魔法は防げんだろ。

 そう言ったら、気の持ちようだと言っていた。

 幸運のお守りなんだと。

 だったら失くさないように、肌身離さず持ってろよ。

 

 

 

 L月Y日

 

 ちっ、羨ま――妬ましい。

 同僚のヴォルツが、この仕事が終わったら休暇を取ると言っていた。

 彼女と旅行に行くんだそうだ。○ねばいいのに。

 食堂で嬉しそうに言いやがって……しかも、彼女の写真まで見せられた。

 かわいい子だった。陸――ミッドの地上部隊に勤務しているオペレーターだそうだ。

 俺も彼女が欲しいな……くそ。

 管理局――しかも海じゃ出会いなんて少ないからなぁ。

 稼ぎが良いから就職したし、多少の才能はあると思ってる。

 だが、出会いが無いんじゃどうしようもない。

 武装局員なんて、野郎がほとんどだからな……ちくしょう。

 

 

 

 L月Z日

 

 マジかよ!?

 俺と同期のアクティの野郎、宝くじを当てやがった。

 ミッドに戻ったら、飯を奢ってもらう約束をした。

 良いなぁ――宝くじ当選なんて、都市伝説だとか思ってたわ。

 今度から俺も買おう。

 ちなみにアクティの野郎、その金で親孝行をするんだとか。

 あの不良が、何を言いだすんだか……。

 親御さんは大切にしろよ、ったく。

 

 

 

 L月!日

 

 ちくしょう。

 食堂で飯を食ってたら、愛用していたコップが割れちまった。

 あれ、結構長い間使ってて、大切にしてたのにな……。

 俺が管理局に入った時に買ったヤツだからなぁ。今度、新しいのを買うか。

 ツいてねぇなぁ……明日には『第97管理外世界』に到着するってのに。

 

 

 

 L月#日

 

 執務官がやられた。

 なんだあの次元犯罪者は。

 AAAランクのクロノ執務官が為す術も無く――殺されかけた。

 殺傷設定、赤い全身鎧のバリアジャケット。

 現地の魔導師――高町何とかとスクライアの子供からの情報だと『ジュエルシード』を集めている時空犯罪者だとか。

 簡単な仕事だと思っていたってのに、殺し屋紛いの犯罪者と『ロストロギア』の争奪戦だと。

 しかも相手は、AAAランクの執務官を、不意打ちとはいえ一撃で沈めるような奴だ。

 もう一人、白い全身鎧の男も同クラスのレベルで警戒する事になった。

 黒い子供もいたらしいが、そちらはちゃんと『非殺傷設定』の『デバイス』を使用しているらしい。

 だからといって、油断できる相手ではない。

 殺しに掛かってくるヤツだ……くそっ、楽な仕事だと思ったのに。

 

 

 

 L月$日

 

 クロノ執務官が目を覚ました。

 オペレーターのエイミィなんか、泣くほど喜んでいた。

 執務官が目を覚ましたのは嬉しいし、微笑ましいものを見せてもらった。

 やっぱりデキたのかって話だが。

 こんな状況だが、アースラ内での賭けに勝てて良かった。

 ミッドに帰ったら、この金で何を買おうかな。

 

 それと、昨日の連中の魔力ランクの測定が終わった。

 黒い子供はAAAランク相当。これだって異常な数字だ。

 昨日の高町何とかという現地の魔法使いもこれと同レベルなのだとか。

 管理外世界には、偶に掘り出し物があるな。

 まだ子供だが、何とかして管理局に来てもらいたいものだ。将来的に。

 そうすりゃ、仕事が楽になる。

 それよりも問題は、白と赤の全身鎧の二人だ。

 白はSランク。赤はBランクなのだとか。

 AAAの執務官を殺し掛けたやつがBランクなのも驚いたが、Sランクってなんだよ!?

 しかも、向こうは殺しに掛かってくるんだ――どうしろってんだ。

 というか、BランクがAAAランクの防御魔法を貫くってどういう状況なんだ?

 ……アレを相手にするのかと思うと、気が滅入る。

 

 

 

 L月%日

 

 艦長たちが、あの犯罪者連中をどう対応するか話し合っている。

 その間、俺達は待機命令だ。

 まぁ、こっちを殺しに来る連中が居るのに『ジュエルシード』を探しに行けと言われない辺り、助かるけど。

 スクライアの連中が発掘した『ジュエルシード』は二十一個。

 高町何とかが確保していたのが三つだそうだ。

 あの連中は、一体いくつ確保しているのだろうか。

 

 それにしても、アスコットは大丈夫だろうか。

 アイツはまだ若いからな……犯罪者に殺されるなんて現実、確かに辛いだろう。

 いきなり食堂で大声出して、部屋に閉じこもりやがって。

 

 

 

 M月A日

 

 なんだ、あの白い全身鎧の魔導師は。

 『ジュエルシード』の暴走にも肝を冷やしたが、その魔力を吸収しやがった。

 赤い全身鎧の魔導師も、Bランクとは思えない魔力を瞬間的に叩き出しやがった。

 エイミィが言うには、あの赤い奴も一瞬だけならSランク相当の魔力を……。

 俺達の間じゃ、嫌な話が出てきている。

 あの二人の『デバイス』も『ロストロギア』なのでは、と。

 事実、艦長の方も、ミッドチルダの方へ今回の件は『ロストロギア』が三つ関わっていると報告するか迷っているって小耳に挟んだ。

 どうなるんだ、今回の件は。

 

 

 

 M月B日

 

 艦長が、あの白と赤の魔導師に会ったそうだ。

 高町なのは――現地のAAAランク魔導師。

 彼女の力を借りる為に『第97管理外世界』に降りたら、ばったりと。

 一応、話が通じる相手だったようだが……心臓に悪い。

 なんでも連中は、『ジュエルシード』がどういうモノかよく理解せずに集めているようだ。

 危険すぎるだろ……願いを叶えるなんて眉唾物の噂が原因か。

 しかも、艦長が説明し、止めるように言ってもやめないと言ったそうだ。

 これだから次元犯罪者は――。

 『ジュエルシード』が完全に暴走したら、この管理外世界の危機だけじゃ済まないってのに。

 

 

 

 M月C日

 

 高町なのはさんが俺達に手を貸してくれることになった。

 経験も技術も粗削りだが、AAAランク相当の才能は、本気で助かる。

 Sクラス相当の時空犯罪者相手では、俺達武装局員では荷が重すぎる。

 経験や連携云々ではなく、魔力量に差があり過ぎるのだ。

 俺達武装局員の平均ランクはB。

 俺も、B+しかない。

 情けない話だが、今のアースラの戦力であの連中に対抗できるのは、クロノ執務官だけだ。

 そのクロノ執務官が、高町なのはさんを鍛えていた。

 高町さんも、あの黒い少女に用があるらしく、やたらとやる気を出していた。

 お蔭で、今日は疲れた。

 ……若い子に追い越されないように、真面目に働かないとな。

 それに、子供が戦うっていうのも、どうにも格好悪い。

 

 

 

 M月D日

 

 今日は運良く、一つの『ジュエルシード』を見つける事が出来た。

 赤と白と時空犯罪者とも遭遇しなかった。

 だが、これからはこうも簡単にいかないかもしれない。

 あの連中も『ジュエルシード』を探しているなら、いつか必ずぶつかる事になる。

 ……勘弁してほしいもんだ。

 

 

 

 M月E日

 

 高町さんの技術が、日増しに高まっている。

 というよりも、あの子も天才肌なのか。

 俺も何度か手合わせをしたが、正面からではもう勝てない。

 というよりも、こっちの罠を力技で潰される。

 ……魔力量がある連中は、ああいう戦い方が出来るから羨ましい。

 

 それと、スクライアの少年があの赤い魔導師を怖がっていた。

 なんでも、俺達が到着するより前にあの魔導師と接触し、殺されかけたそうだ。

 クロノ執務官ですらアイツの攻撃を防げなかったのだ、しょうがない。

 それにしても、子供にも容赦無しないのだという事実が重い。

 成人してる俺達には、手加減なんかしてくれないよな……。

 

 

 

 M月F日

 

 三人一組に纏まって『ジュエルシード』を探す事になった。

 管理外世界なのであまり目立つ真似は出来ないし、かといって単独ではあの次元犯罪者に襲われる。

 こちらもあまり人数が居ないが、しょうがない。

 それに、『ジュエルシード』が散らばった範囲も、そう広くないようだ。

 今日の探索で、いくつかの目星は点いたそうなので、明日にはいくつか見つかるだろう。

 さっさと集めて、早く帰りたい。

 犯罪者相手は慣れてるが、正面から殺しに来られるのは、どうにも心臓に悪い。

 

 今日も、新しく三つの『ジュエルシード』を確保した。

 ヴォルツの野郎も、早く終わらせて帰る為に頑張っている。

 帰ったら彼女さんと旅行に行くんだもんな。爆発すればいいのに。

 

 

 

 M月G日

 

 ……『ジュエルシード』を奪われた。

 連中、俺達に探させて、見つけた所を奪っていきやがった。

 これからも同じ手段で来るだろうか?

 最悪だ。

 俺達では、あの連中には太刀打ちできない。

 個の強さもそうだが、経験も連携の練度も高すぎる。

 クロノ執務官と高町さんが到着するまでの時間すら稼げなかった。

 奇襲された、と言い訳もあるが、それでも――だ。

 しかも、一番経験豊富なヴィラージュさんがやられた。

 いま、意識を失って医務室で眠っている。

 何が昔は戦場で――だ。

 ぶっ倒されてちゃ、意味無いだろうが。

 

 

 

 M月I日

 

 ヴォルツの野郎……無茶しやがって。

 ミッドに帰ったら彼女と旅行に行くんだろ?

 さっさと目を覚ましやがれ――馬鹿野郎が。

 ヴィラージュさんの敵討ちなんか考えて、突撃して返り討ちに遭いやがった。

 あの赤いのもそうだが、白いのも厄介極まりない。

 俺の魔力を吸い取りやがった。

 詳しくは判らないが、吸い取られたとしか言いようがない。

 しかも、吸い取った魔力を攻撃に回す戦い方だ。

 あの戦い方をされては、俺達魔導師はどうしようもない。

 魔力が無くなって魔法を使えなくさせられるだけだ。

 しかも赤い方は、Bランクの魔力しかないくせにSランク相当の魔力弾を撃ってきやがる。

 ……それでも退けねぇよな、ヴィラージュさん、ヴォルツ。

 仲間やられて黙ってられる程、こっちもお人好しじゃねぇ。

 艦長からは無理をするなと言われたが、無理をしなけりゃSランクオーバーのバケモノなんざ相手にできない。

 

 

 

 M月J日

 

 『ジュエルシード』を見つけたは良いが、海の中か。

 星の海じゃなくて本物の海の中だから、余計に笑えてくる。

 しかも、あの赤と白の魔導師が見張ってやがる。

 手が出せない。

 艦長とクロノ執務官もどうするか悩んでいた。

 高町さんは取りに行くべきだと言っていたが、正直正面からでは勝ち目がない。

 しかも、戦いながら海中を捜索する、というのも難しい。

 海上から無差別に魔力弾を撃たれたら、俺達だけではなく現地の人達にも迷惑が掛かる。

 アレだけの火力だ、最悪ここら一帯の地形が変わりかねない。

 そう教えると、高町さんが驚いていた。

 ……手加減されているのだ、俺達は。

 殺さない程度に痛めつけて、周囲に被害が行かないように魔力弾は空に向けて撃っている。

 その気になれば、簡単にこちらを潰せる。

 なのにそれをしない。

 『ジュエルシード』を探させるために、時空管理局を利用している。俺達を生かしている。

 ――そして、見付けたら襲う。襲って、奪う。

 抵抗したら、ヴィラージュさんやヴォルツのように傷付ける。情け容赦なく。殺す気で。

 そんな……最悪の犯罪者だ。

 

 

 

 M月K日

 

 海の『ジュエルシード』はひとまず置いておいて、他の場所の『ジュエルシード』を集める事にした。

 今日見付けた分で、こちらの手持ちは九個。

 連中もいくつか確保しているだろうから――おそらく、海の分で全部だろう。

 アースラから探索用のサーチャーや魔力波を飛ばしているが、残りは発見できない。

 昨日、あの赤い魔導師が海に潜っていくつか確保したようだ。

 残りはいくつか――。

 『ジュエルシード』は全部で二十一。

 こちらは今九個だけだ。

 決戦が近い。

 ヴィラージュさんとヴォルツは、まだ目を覚まさない。

 ……目が覚めたら、全部が終わってるから、安心して寝ててくれ。

 

 

 

 M月L日

 

 あの白い奴、海で釣りなんざしてやがった。

 しかも、なのはちゃんと同じくらいの歳の女の子と一緒に、並んで、ベタベタしやがって。ロリコン野郎が。

 舐めやがって。

 俺達じゃ相手にならないって思ってやがるんだろう。

 いつかとっ捕まえてやる。

 あと、なのはちゃんからロリコンってなんですか、って聞かれた。

 ……純粋だな。

 クロノ執務官に聞くように言っておいた。

 何気に耳年増だからな、ウチの執務官は。

 十四歳だから、その辺りは知ってても普通なのだろうか?

 俺はどうだったかな……覚えてない。

 

 なのはちゃんは、あの白い奴と一緒にいた女の子と仲良くなりたいと言っていた。

 犯罪者だが――確かにあの子は、『デバイス』に『非殺傷設定』のプログラムを入れている。

 あの二人とは違うのかもしれない。

 それに、まだ子供だ……人の生き死にに関わっているとは、思いたくない。

 

 

 M月N日

 

 プレシア・テスタロッサ。

 昔の情報だが、以前は制限付きSSランクの魔導師で研究者だった女だ。

 そして、なのはちゃんが仲良くしたいと言っていた黒い少女の母親。

 随分昔に、違法実験で事故を起こしている。

 その事故で娘を失い、本人も姿を消していたと情報にあったが――こんな所で会うとは。

 Sランク二人に限定付きとはいえSSランク魔導師が一人。

 どんな戦力だ――ったく。正義の味方は辛いね。

 いくらそれだけの戦力を整えたとはいえ、『ロストロギア』を完全に制御できるか?

 不可能だ。

 向こうは制御する方法を考えているんだろうが、それが絶対、確実とは言えない。

 そういうものだ。『ロストロギア』ってのは。

 どんだけ用意周到に準備しても、ふとした事で失敗する。

 そうやって、滅びかけた次元世界をいくつも知っている。

 

 なのはちゃんとフェイトって子供の勝負は、なのはちゃんの勝ちに終わった。

 同ランクの魔導師なら、経験と心構えが強い方が勝つ。

 少なくとも、なのはちゃんは俺達と同等の心構えを持っている。

 しかも戦うと想定している相手は、殺しに来るのだ。

 才能もあった、嫌が応にも実力は――だ。

 

 しかし、どうしてプレシア・テスタロッサは娘を撃ち落としたのか。

 別次元からの砲撃魔法。

 SSランクの実力は健在のようだ。下手したら、娘が死んでたぞ。

 今は医務室で治療中だが――あの白と赤の魔導師が助けなかったらどうなっていたか……。

 それにしても……同じ艦にあの白と赤の魔導師が居るというのは落ち着かない。

 

 

 

 

 先程、プレシア・テスタロッサから通信が届いた。

 そして、その通信場所から、現在位置を特定できた。

 明日は、決戦になる。

 向こうは十二個の『ジュエルシード』を使って、アルハザードに渡るのだそうだ。

 それが、狙いか。

 ――そして、フェイトという少女に絶望を突き付けていた。

 実は『F計画』――人造生物の開発と記憶移植の技術の産物だったという事実。

 母親だと思っていた人は、自分を造り上げた狂科学者。

 愛しているどころか、憎まれているなどと……あんな子供には重すぎる真実だ。

 黙っててくれた方が、まだマシだろうよ。ふざけんな、クソッタレ。 

 すべては本物の娘――アリシアという少女を造る為。

 それに失敗したから、次はアルハザードへ渡り死者蘇生の秘術を手に入れる。

 もしくは、過去へ渡る技術を……過去を変える為に。娘の死を無かった事にするために。

 アンタにとっては大事なことかもしれないがよ、子供を巻き込むな。

 腹を痛めて産んだ子じゃないのかもしれないが、それでも「母さん」と慕う子を傷付けるな。

 

 

 ――ヴィラージュさん。アンタの幸運のメダル、借りていくぜ。

 リンディ艦長は無理をするなって言ってたが……別に、倒してしまっても構わんだろ?

 とっ捕まえてやる。

 あの白と赤の魔導師も一緒に行くと言ってるんだ、何とかなるさ。

 

 

 

 M月O日

 

 クソッタレが。

 あの白と赤の魔導師――ヴァーリと兵藤一誠とか言う魔導師。

 土壇場で裏切りやがって。

 道案内するどころか、こっちを追い詰めやがった。

 クロノ執務官となのはちゃんも善戦したが、どうしようもなかった。

 それどころか、今まで実力を隠してやがった。アレで。

 銀の全身鎧と、紅の全身鎧。

 ――今までだって手も足も出なかったのに、なんだあれは。反則だろ。

 それに、途中から現れた黒い少女――フェイト・テスタロッサとは違う、オーフィスと呼ばれていた少女。

 髪も、服も、その瞳も……肌以外の全てが黒い、少女。

 そしてなにより……プレシア・テスタロッサ達を騙し、裏で操っていた男。

 トオルと呼ばれていた、男。

 アースラで厳重に封印していた『ジュエルシード』を転移させ、二十一個すべてを完全に操ったバケモノ。

 ――『虚数空間』の果てから、赤いドラゴンを呼び、ヴァーリ達を連れて去って行った……。

 正直、今でも心臓がどうにかなりそうだ。

 アレはヤバい。あの黒い少女と赤いドラゴン。

 見逃された。いや、敵として認識すらされていなかったのだと、思う。

 ……その事に、ほっとしている自分が居る。

 情けない。本当に。

 犯罪者に見向きもされないで、喜んでいる。

 アクティの奴なんて、俺を庇って怪我したのにさ……ホント、情けねぇ。

 

 

 

 M月P日

 

 アースラの計器の故障かと思ったが、昨日の黒い少女と赤いドラゴン。

 魔力測定不能ってどういうことだ。

 昨日の『ジュエルシード』の騒動で気を失っていたプレシアからも話を聞いたが、あの黒い少女は異世界のドラゴンなのだそうだ。

 そして、ヴァーリと兵藤一誠は悪魔なんだと。文字通り、だ。

 ああなるほど、って思う。

 ありゃ悪魔だ。どうしようもない、クソッタレな悪魔だ。

 プレシアやフェイト嬢を騙して、『ジュエルシード』を集めさせた。

 そして、何の目的かは知らないが、あの赤いドラゴンを召還した。

 元の世界に帰る為とか言ってたらしいが、どこまで信用できるか。

 そしてなにより……フェイト嬢が、見ていて辛い。

 あの犯罪者どもに騙されてたと言うと、騙されていないと泣くのだ。

 プレシアも、追い詰められてあんな発言をしたんだろう。

 でなければ、人形だ、失敗作だ、って言ってた娘を抱き締めて泣いたりするもんかよ。

 本気で謝ったりするかよ。

 ……くそったれ。

 

 

 

 M月Q日

 

 アリシア・テスタロッサが目を覚ました。

 昔の事故で死んだはずだが、肉体はプレシアが保管していたらしい。

 そして、『ジュエルシード』の騒動――あの魔力に触れて、生き返った。

 奇跡。

 正直、そうとしか言いようがない。

 問題の『ジュエルシード』についても詳しい事は判らない。

 ただ――アレだけ騙されたんだ。

 それくらいの奇跡はいいだろ。なぁ、神様。

 プレシアとフェイト嬢は騙されたとはいえ、犯罪を手助けした罪に問われる。

 俺達の証言で罪は軽くなるだろうが、無くなるわけじゃない。

 でもさ。

 やり直せるさ。親子三人で。

 ペットのアルフとも仲良くしてな。

 ……あんな悪魔どもに騙された過去だって、すぐに忘れるさ。

 

 

 

 M月R日

 

 なのはちゃんとユーノともお別れか。

 短い間だったが、なんだか名残惜しい。

 もう会う事は無いだろうが。

 フェイト嬢、アリシア嬢とも仲良くなれたようでよかった。

 これから『時の庭園』の封印に、プレシアの実験内容とヴァーリ達の情報を没収。

 時空管理局に提出。

 プレシア、フェイト嬢の裁判の準備。

 アリシア嬢も、目を覚ましたばかりで体調が安定しない。

 ……やる事が多い。

 それに、ヴァーリ達の行方も気になる。

 これからこの次元世界はどうなるのだろうか。

 あの赤と黒の規格外をこの目で見た身としては、不安しかない。

 アレは、管理局の全戦力を集めてもどうにかできる相手なのだろうか。

 

 

 

 

 M月S日

 

 ヴィラージュさんとヴォルツが目を覚ました。

 アクティの奴も、容態は安定している。

 ……良かった。

 ヴィラージュさんにメダルを返そうとしたら、俺にくれるそうだ。

 御利益ありそうだし、預かっておきます。

 

 

 

 M月T日

 

 ミッドチルダに付いたら、プレシアとフェイト嬢は指定された家で保護される事になった。

 犯罪の手助けをしたし、その内容に『ロストロギア』が関わっているから、裁判が長引きそうだ。

 ……というのは建前で、今後ヴァーリ達がまた現れた時の為だそうだ。

 『時の庭園』探索で見つけた日記に、あの男。

 上代徹の事が書いてあった。

 やっていた事は主夫のような事で、そうやってプレシアの信頼を得たようだ。

 フェイト嬢の事も気に掛けていたようだ。

 ならまた、プレシア達に接触してくるかもしれない。

 それに、あの連中の事を一番知っているのも彼女達だ。

 ――利用しようとしているのは、俺達も一緒だ。

 情報をくれたら、住む家も用意するし、家族で暮らせるようにもする。生活も保障する。

 だがその実は、軟禁と言っても良い。

 ……艦長が珍しく悪態を吐く気持ちも判る。

 これじゃ、俺達も連中と変わらない。

 

 

 M月U日

 

 プレシアの体調がよくないと聞いていたが、精密検査をしたものの異常は見つからなかった。

 完治……と言えるのだろうか?

 正直、病巣のようなもの自体が見つからなかったので、健康のままだとしか言いようがないと医者が言っていた。

 それに、肉体年齢の方も。

 四十を超える母親だとはとても思えないそうだ。

 それこそ、事故当時――アリシアを失った時のようだ、と。

 これも奇跡の一つなんだろう。

 アリシア嬢の母親をやり直したいと願ったプレシアの願い。

 母親に愛されたいと願ったフェイト嬢の願い。

 ……俺は、裁判が無事に終わることを祈ろう。

 二十一個の『ジュエルシード』は封印されてしまっているが。

 

 




「大変だ、ほのぼのさんが息してない!?」
「あれは私たちの中でも最弱」
「ククク」

クロノ君かリンディさんを書こうとして、こうなった。
なんでかは知らない。
謎のモブ日記。


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